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1978-04-06 第84回国会 衆議院 内閣委員会 第10号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和五十三年四月六日(木曜日)     午前十時三十分開議  出席委員    委員長 始関 伊平君   理事 小宮山重四郎君 理事 高鳥  修君    理事 藤尾 正行君 理事 村田敬次郎君    理事 岩垂寿喜男君 理事 上原 康助君    理事 鈴切 康雄君 理事 受田 新吉君       逢沢 英雄君    宇野  亨君       小島 静馬君    関谷 勝嗣君       玉生 孝久君    塚原 俊平君       福田  一君    安井 吉典君       新井 彬之君    市川 雄一君       柴田 睦夫君    中川 秀直君  出席国務大臣         国 務 大 臣         (科学技術庁長         官)      熊谷太三郎君  出席政府委員         科学技術庁長官         官房長     半澤 治雄君         科学技術庁計画         局長      大澤 弘之君         科学技術庁研究         調整局長    園山 重道君         科学技術庁振興         局長      杉浦  博君         科学技術庁原子         力局長     山野 正登君         科学技術庁原子         力安全局長   牧村 信之君  委員外出席者         行政管理庁行政         管理局審議官  關  言行君         国土庁長官官房         震災対策課長  城野 好樹君         外務省国際連合         局科学課長   太田  博君         農林水産技術会         議事務局研究総         務官      北野 茂夫君         通商産業省生活         産業局日用品課         長       脇山  俊君         工業技術院総務         部研究業務課長 山中 正美君         資源エネルギー         庁長官官房省エ         ネルギー対策室         長       高沢 信行君         資源エネルギー         庁長官官房国際         資源課長    木下 博生君         海上保安庁警備         救難部航行安全         企画課長    渡辺純一郎君         気象庁観測部参         事官      末広 重二君         建設省住宅局建         築指導課長   大田 敏彦君         消防庁予防救急         課長      荒井 紀雄君         参  考  人         (本州四国連絡         橋公団理事)  浅間 敏雄君         内閣委員会調査         室長      長倉 司郎君     ――――――――――――― 委員の異動 三月二十八日  辞任         補欠選任   上田 卓三君     川本 敏美君   田川 誠一君     中川 秀直君 同日  辞任         補欠選任   川本 敏美君     上田 卓三君 同月二十九日  辞任         補欠選任   宇野  亨君     金子 岩三君   小島 静馬君     熊谷 義雄君   関谷 勝嗣君     倉成  正君   玉生 孝久君     久野 忠治君 同日  辞任         補欠選任   金子 岩三君     宇野  亨君   久野 忠治君     玉生 孝久君   熊谷 義雄君     小島 静馬君   倉成  正君     関谷 勝嗣君 同月三十一日  辞任         補欠選任   宇野  亨君     内海 英男君 同日  辞任         補欠選任   内海 英男君     宇野  亨君 四月四日  辞任         補欠選任   関谷 勝嗣君     前尾繁三郎君   塚原 俊平君     田中伊三次君   上田 卓三君     小川 国彦君 同日  辞任         補欠選任   田中伊三次君     塚原 俊平君   前尾繁三郎君     関谷 勝嗣君   小川 国彦君     上田 卓三君 同月五日  辞任         補欠選任   宇野  亨君     山中 貞則君   関谷 勝嗣君     林  大幹君   塚原 俊平君     本名  武君 同日  辞任         補欠選任   林  大幹君     関谷 勝嗣君   本名  武君     塚原 俊平君   山中 貞則君     宇野  亨君 同月六日  辞任         補欠選任   中川 秀直君     田川 誠一君     ――――――――――――― 四月四日  中小企業省設置法案鈴切康雄君外二名提出、  衆法第二号) 三月二十七日  救護看護婦に対する恩給法適用に関する請願(  小宮山重四郎紹介)(第二五一二号)  遺族年金扶助料改善に関する請願馬場昇  君紹介)(第二五一三号) 四月三日  靖国神社公式参拝に関する請願藤井勝志君紹  介)(第二六三四号)  遺族年金扶助料改善に関する請願坂本恭  一君紹介)(第二七三四号)  救護看護婦に対する恩給法適用に関する請願(  谷川寛三君紹介)(第二七七九号) は本委員会に付託された。     ――――――――――――― 四月三日  同和対策事業特別措置法強化延長に関する陳  情書外三件(第二  二八号)  元号の法制化に関する陳情書  (第二二九号) は本委員会に参考送付された。     ――――――――――――― 本日の会議に付した案件  参考人出頭要求に関する件  科学技術庁設置法の一部を改正する法律案(内  閣提出第一二号)      ――――◇―――――
  2. 始関伊平

    始関委員長 これより会議を開きます。  この際、参考人出頭要求に関する件についてお諮りいたします。  科学技術庁設置法の一部を改正する法律案審査のため、本日、本州四国連絡橋公団理事浅間敏雄君に参考人として御出席を願い、御意見を聴取することにいたしたいと存じますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  3. 始関伊平

    始関委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決しました。  なお、参考人からの御意見質疑応答の形式でお聞きすることにいたしたいと存じますので、さよう御了承願います。      ————◇—————
  4. 始関伊平

    始関委員長 科学技術庁設置法の一部を改正する法律案を議題といたします。  これより質疑に入ります。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。安井吉典君。
  5. 安井吉典

    安井委員 科学技術庁設置法の一部を改正する法律案内容については、余り多くの問題はないかと思いますが、きょうは科学技術庁所管中心とする科学技術政策に関連する問題について若干のお尋ねをしてまいりたいと思います。  今度の法案には防災科学技術センターの移転の改正規定もあるわけでありますが、そのセンターの数々ある担当の仕事の中でも、とりわけ地震予知技術の問題は最近の国民的な大きな関心事であるプロジェクトだ、こう思います。予算の方を調べてみますと、センターの新年度予算も、震災対策特別研究費などかなり増額を見ているようであります。そして特にいま関心を払わなければならないのは、今度大規模地震対策特別措置法案国会への提出が行われたわけですが、この法案の特徴は、予知情報から警戒宣言を発して防災応急対策に入るというところにいわば目玉があるような気がするわけです。そうなりますと、予知技術に一層大きな期待がかけられるということになるのではないかと思います。したがって、研究所としてもあるいは広く科学技術庁としても、いかにして予知の精度を高めるかとか新しい予知技術の開発とか、そういう点について努力が必要になっていると思うのですが、現段階状況について、まずお話しいただきたいと思います。
  6. 園山重道

    園山政府委員 お答えいたします。  先生指摘のように、今回の特別立法が考えられました契機といたしましては、地震予知につきましてだんだんその可能性が高まってきたというところにあるかと思うわけでございます。その直接の契機となりましたのは、先生承知のように、一昨年夏ごろから東海地域につきまして駿河湾を中心とする大地震可能性があるということが学者先生方の中で指摘されまして、国会での御議論も踏まえまして、一昨年十月に閣議決定によりまして内閣科学技術庁長官本部長といたします地震予知推進本部が設置されまして、そこで関係各機関並びに大学を含めました予知推進が図られてきたわけでございます。  御承知のように、地震地下深いところで起こります一種の破壊現象でございますので、なかなかいつどこでどのくらいの地震が起こるということを明快に知る段階にはまだ至っていないわけでございますけれども、現在の東海地域のように、あらゆる観測手段を網羅いたしましてここに観測を集中いたしますれば、大きい地震が起こるというときには必ずやその前兆現象をつかまえることができるということが、学者方々を含めてその可能性が信じられるに至りましたので、これを契機として今回の特別立法が考えられた、このように承知いたしているわけでございます。  私ども科学技術庁といたしましては、ただいま申し上げました地震予知推進本部事務局といたしまして、関係省庁並びに大学観測研究が協力して効率的に進むように努力をいたしておりますし、また科学技術庁本来の任務といたしまして、研究に関します総合調整の中で防災技術に対して重点を置くということ、さらにはただいま御審議いただいております防災科学技術センターにおきまして、特に東京中心とする地震予知のために二、三千メートルの深い井戸を掘りまして、その底に非常に高感度の地震計を設置いたしまして、東京直下型地震等に備えて地震前兆現象をとらえるというような努力をいたしておるところでございます。  国全体の地震予知に関する予算も、昨年度の三十七億円から五十三年度は四十七億円が計上されまして、相当な伸びということで、今後とも科学技術庁といたしましては、一層この地震予知が確実になってまいるように努力をしていきたいと考えておるところでございます。
  7. 安井吉典

    安井委員 気象庁ではマグニチュード八以上は絶対に見逃さない、こう言っているそうですか、そのような明確な予知というのは、いまの技術状況でかなり早目にできるのですか、どうなんですか。
  8. 園山重道

    園山政府委員 お答えいたします。  気象庁は、現在東海地域につきましては、特に体積ひずみ計でございますとかあるいは地震計、その他各省庁がいろいろな観測装置を入れておるわけでございますけれども、現在マグニチュード程度地震が起こるとすれば必ずやその前兆現象をつかまえられる。これはまだその経験を繰り返して持っておるわけではございませんので、いつつかまえられるかということははっきり申し上げられるわけではございませんけれども、大方の学者方々等の御意見では、数時間ないし一日、二日前には必ず異常現象がつかまえられるだろう、このように承知しているところでございます。
  9. 安井吉典

    安井委員 それはこの間わからなかったわけですね。予知のあれもなかったように思うのですが、今度はいつ起きるのかわからぬが大丈夫だ、こう言うんですね。
  10. 園山重道

    園山政府委員 前回の伊豆大島近海地震におきましても、気象庁はある程度の予感を持っておりまして、一時間前程度にある程度地震が起きるかもしれないということを出されたそうでございます。しかしこれはその予想に反して、より大きい地震でございましたので、気象庁としては予知はできなかった、こういう評価をみずからしておられるわけでございますけれども、今回東海地域先生指摘マグニチュード八というような地震が起こるとするならば、必ずやその前兆現象はつかまえられるだろう。よく学者先生方は、空振りをすることはあっても見逃しをすることはないだろうというような言葉でおっしゃっておりますが、そのようなものであると信じておるわけでございます。
  11. 安井吉典

    安井委員 私も技術的なことはよくわからないから一応伺っておきますが、今度発表されました地震対策特別措置法の中にも三十三条ですか、「科学技術振興等」という規定が加えられて、「国は、地震発生予知するため、地震に関する観測及び測量のための施設及び設備の整備に努めるとともに、地震発生予知に資する科学技術振興を図るため、研究体制整備研究推進及びその成果の普及に努めなければならない。」という新しい規定が入れられたようでありますが、先ほど来局長の御説明にこれはつながっていくんだと思いますが、いまのような施策で将来ともそれはいいのですか。もう少し力を入れていかなければ、完璧という言葉はできないにしても、技術的により進んだ体制をつくるためには、いまのでは十分じゃないのじゃないか、十分でないからこんな規定も入れたんじゃないかと思うのですが、その辺、どうですか。
  12. 園山重道

    園山政府委員 お答えいたします。  御指摘のように地震予知ということが、先ほども申し上げましたが、地殻の深くでの現象でございますし、実際にそこに観測機器を張りめぐらしましたところに地震が起こるということが何回かの繰り返しを経まして、そのデータ地震との相関関係というのはだんだんと明確に知ることができるというものであるかと思っております。  しかしながら、そういうことで地震が起こるのを待っておるというわけではございませんで、やはり少なくともこの次に起こるものを予知するということでの技術推進をしなければならないということでございまして、現在、そのためには非常にたくさんの手法が動員されておる、また考えられておるわけでございます。土地の測量から地震計による地震活動観測、あるいは岩石のひずみを調べるひずみ計でありますとかあるいは傾斜計その他、地下水等々が考えられておるわけでございますので、これらを十分に観測網として配置していくということが必要かと思われます。したがいまして、地震予知推進本部としましては、このような手段を各省庁がよく連携し合って進めていくように努力をいたしておるわけでございますけれども、このような努力を進めていけば、必ずやだんだんとこの確度というものが向上していく、このように考えておるところでございます。
  13. 安井吉典

    安井委員 地震予知については、民間でも物すごい数の技術といいますか、そういうような提起があるわけです。ナマズを飼うことから始めて、とにかく実にたくさんの考え方ややり方提起されて、私どものところにもこれをやれば必ずわかりますというようなのを持ち込んでこられる方もある。どこかの市長さんの雲を見てのあれもありますね。ところが学者学者の間で意見の対立その他があって、こちらの人の言うのをこちらの人が否定してみたり、こちらの提起をこちらが認めなかったり、そういうようなケースも実に多いわけですよ。地震学会のいろいろな話し合いも、それらの問題の整理のためにたくさん努力が尽くされているようでありますけれども中国などは民間とのタイアップで大きな総合的な対応というものを進めているという話も聞くわけですね。科学技術庁任務は、科学技術の総合的な調整も大きな任務なんですから、いまの本部もできていることでありますかり、たくさんある予知技術等整理の方がまず先決ではないか。私は、だっと持ち込まれてきて、それじゃ最後はどれに信憑性を置いて結論を出すのかということになると、これも大変な問題があるのではないか、そう思うのですが、その辺はそう簡単に考えておられるわけではないと思うのですが、どうですか。
  14. 園山重道

    園山政府委員 先生指摘のように非常にたくさんの手法、また民間におきますところの動物地下水等の挙動について、あるいはまた雲でありますとかにじでありますとかいうようなお話もいろいろ伺うわけでございます。しかしながら、これがきわめて学問的段階と申しますか、何が最も有効であるかということがまだ画然とわかっておるという段階ではございませんので、また、何が有効かという判断につきまして私ども行政サイドで判断するという段階ではまだないような気がいたします。  したがいまして、日本の地震予知につきましては、文部省に置かれております測地学審議会というのがございますが、ここで学者専門家方々がお集まりになりまして地震予知研究計画を立てておられるわけでございまして、五ヵ年計画を常に立てておられまして、現在も第三次五ヵ年計画、四十九年から五十三年度までの五ヵ年でございますが、これの進行中にやるわけでございます。さらに現在、測地学審議会におかれましては、第四次の五ヵ年計画、五十四年度から始まる五ヵ年計画を検討しておられまして、私どもは、学者先生方専門家方々のコンセンサスとしてこういう観測研究をすべきであるということを尊重するのが現在のたてまえかと思っております。また一方、先生指摘のように、民間におきましても非常にたくさんの熱心な方々がおられるわけでございまして、特に中国におきましては、そういう一般大衆の力も使って予知に成功したというようなこともございますので、最近におきましては、科学技術庁におきましてもあるいは文部省におきましても、こういった民間情報をいかに活用すべきかということの研究に着手しておるところでございまして、文部省におかれては、動物の自然の異常に関する刺激の受け方ということの研究がなされておりますし、また科学技術庁といたしましては、最近神奈川県に委託をいたしまして、民間方々地下水井戸の水位の変化を調べておられるグループがございますので、こういったところにお願いをいたしまして、そういうデータ収集、これをどう活用するかということの研究をやり始めたという段階でございます。
  15. 安井吉典

    安井委員 私は、予知というのがいままでのように技術的な、科学的な一つの、まあ当たっても当たらなくともという言葉は悪いかもしれませんけれども、そういうものであった段階はまだいいと思うのです。しかし、今度の新しい法律はそれから動き出すという重大な契機になるということになれば、この予知技術をどういうふうにして統括するか、情報手法等が実は多過ぎるのです。しかも、それがどれもこれもこれならというみんな自信を持った提起であるだけに、あなたのはだめでこちらの方でいきますという最終決定、それによって新しい法律が動くのですから、自衛隊までが出るのですから、そういう重大なものになるという点、これはもっともっとしっかりした検討なり対応科学技術庁はやってもらわなければいかぬと思います。長官に、地震予知技術をどんどん進めるということについての御決意を、この際伺っておきましょう。
  16. 熊谷太三郎

    熊谷国務大臣 地震の被害をできるだけ少なくいたしますために、予知技術推進しまして、これを万一の場合に十分に活用するということがきわめて必要なことと存じますので、この上とも御発言の内容につきまして十分ひとつ善処してまいりたい、このように考えます。
  17. 安井吉典

    安井委員 自衛隊ということをいま私出したわけですけれども、今度の新しい法律の十三条で、地震防災応急対策のため自衛隊派遣要請をすることができるし、それから附則自衛隊法改正をやっているわけですね。いまの自衛隊法災害派遣という規定の次に、地震防災派遣の新しい規定を加える自衛隊法改正を新しい地震法律でやっているわけです。  ほかの法律附則自衛隊法改正するというやり方は、私は恐らくこれが初めてじゃないかと思う、こういう特に重大な改正は。自衛隊法はこの委員会所管ですから、私はそういうことを特に申し上げたいし、それからまた地震を含めて、災害が起きてから自衛隊が出ていくというのならいままでも現行法でやっていることであります。しかし、地震のおそれがあるからということで、すぐ自衛隊出動することができるというあり方には重大な疑義を持たざるを得ないわけです。いままでの局長お話を聞いても、何月何日の何時から地震が起きるでしょうと、警告をすかっと出してやれるような状況でもないようだし、とりわけ、このことによって、自衛隊出動はどういうときにやるかということも問題がありますけれども、今度の予知警告ということになると、それによって国の財政も大変な支出にもなっていくし、大きな出動態勢で出ていくわけですから、それに見合うだけの予知技術という段階まで行っているのかどうかということに私はまず第一の疑問があるし、そういう中で、起きてから出ていくのはいいけれども、いつあたり地震が起きそうですよと、起きてもいない地震のときに自衛隊が出ていって、戒厳令みたいな体制をつくるなどということを想像しますと、これはどうもはだにアワを生ずるような思いがするわけです。この問題は、きょうここで議論をする問題じゃないし、国会もどう審議をするのかまだ決めてないようですから、これ以上触れませんけれども予知とそれからいまの問題の法案との絡みにおいて、国土庁からもおいでですから、ちょっと伺っておきます。
  18. 城野好樹

    城野説明員 御説明いたします。  今回の大規模地震対策特別措置法は、地震予知技術の進歩に伴いまして、特に東海地域中心として観測機器を集中し、それの観測成果気象庁に、二十四時間体制集中観測を続けられる、異常が発見された場合におきまして気象庁長官の方から内閣総理大臣の方へ報告が行く、内閣総理大臣はその結果を閣議にかけまして警戒宣言を出す、こういうシステムでございます。いきなり警戒宣言を出しますと、それは非常な混乱に陥るだけでございますので、あらかじめ中長期の予知といたしまして、地域の指定をしておきまして、政府地方公共団体、それから民間重要施設におきまして、警戒宣言が出ましてから不幸にして発災するまでの間、できるだけ地震災害、特に災害が大きくなります二次災害の拡大の防止のための計画をそれぞれつくっていただき、実行していただくというシステムをとっておるわけでございます。  先ほどお触れになりました自衛隊派遣ということでございますが、これは自衛隊法の八十三条の災害派遣というものとやや性格を異にしまして、国、都道府県、市町村等が講じます地震防災応急対策支援という形をとっておるわけでございます。  その内容法制局等といろいろ御相談をいたしましたが、非常災害に際しという現行の八十三条ではやや読みがたいということから、地震防災派遣ということを自衛隊法改正としてお願いをするという形にしたわけでございます。  ただ、この場合に行います。つまり自衛隊の方に何をやっていただくかということでございますが、特に航空機、艦艇等によります情報収集通信連絡支援、それから避難の支援、誘導、それから医療、給水、緊急物資の輸送というものは常々準備をしていただきまして、自衛隊の方の防災業務計画というのを強化地域別につくっていただきまして、それらの地震防災応急対策支援ということでお願いをしておる次第でございます。
  19. 安井吉典

    安井委員 この問題はここで突き詰めた議論はいたしませんけれども、なるほどいま課長の御説明のように、法律の条文ではあるいは読めるかもしれませんよ。しかし、一たん国会を通ってしまえば、これはどうにでも使われるわけで、予知技術のために一生懸命努力をされている技術者の意に反して、千葉県の方に地震が起きそうだ、成田の方に自衛隊予防出動をするという、そんなことに使われるとは書いてありませんよ、これは。そしてまたこんなことは恐らくないだろうと思いますけれども、長い間に何が起きるかわからないのですよ。だから自衛隊法審議の中で、実にあらゆる角度から問題点を突き詰めた議論が行われてきた、そういう経過をすっかり忘れて、あるいはわざと無視して、この新しい法律の中に自衛隊法改正をこっそり入れるという魂胆自体が私は問題があるように思うのです。初め、国土庁計画の中になかったのだが、後でいつの間にかこれがひょっこり入ってきた。警察の職務執行の問題もありますけれども地震が来そうだから、それは外部には漏らさないで、その予知技術の中で役所がみんなで万全の構えをしておく、もし起きたらぱっと出ていく、それは私はいいと思いますね。それはいいと思いますけれども警戒宣言までして事前出動ができるような仕組みをつくることには問題がある。きょうは問題点指摘だけしておきたいと思います。  次に、科学技術庁の大きな仕事の中に原子力行政があるわけです。日本の原子力発電もいつの間にか一千万キロワットの大台を超えるという、世界第二位というところまで原発大国になりつつある、そういう状況であるだけに原子力行政について問題が多いと思います。  この国会にも原子力基本法等の改正法案が昨年から引き続いて討議されているわけで、安全委員会が新しくできるのはいいとしても、その安全委員会なら安全委員会の中ですべてを一元化していくというのなら、私は従来からの基本的な考え方ですからわかると思うのですけれども、しかし実際開発を進める方の通産省や運輸省が安全審査から運転管理まで一貫的にやっていく、「一貫化」という余り耳なれない言葉が使われているようですけれども、それではいわばどろぼうが自分を監督する、と言うとこれは言い過ぎかもしれません。言い過ぎなら取り消しますけれども、実際は運輸省の原子力船やあるいは通産省の管轄である原子力発電所が環境破壊をやったりいろいろな問題を起こしているわけですから、それが一貫的に自己規制をしなければいかぬなどというのはおかしいので、科学技術庁という役所がちゃんとあるわけですから、科学技術庁こそが一元的に見るという仕組みがなければ、私は科学技術庁の存在理由なんてないのじゃないかと思う。そういう基本的な問題があるわけですが、これはひとつ特別委員会の方に任せておきます。  もう一つ、最近の情報の中で、アメリカの政府が核拡散防止法の成立に伴って日米原子力協定の改定交渉に日本は応じてくれというような通告をしてきたという報道もありますが、これは外務省ですね、とりあえずそのことについてお聞かせをいただきたいと思います。
  20. 太田博

    ○太田説明員 お答え申し上げます。  いままでのところ、アメリカの政府の方から、核不拡散法の成立に基づきまして日米原子力協定の交渉をしたいという正式の申し入れはございません。
  21. 安井吉典

    安井委員 一部の新聞に、三月十九日政府筋が明らかにしたところによるとということで、いま私が申し上げたような情報が載っているわけです。では、これは間違いですか。
  22. 太田博

    ○太田説明員 お答え申し上げます。  このたびのアメリカの核不拡散法の成立に伴いまして、アメリカはその法律に基づいていずれ各国との原子力協定を見直したいということでございますが、わが方に対しましては、非公式に、とりあえず核不拡散法の内容について説明をいたしたいという申し入れが行われておりますので、先生の御指摘になりました新聞の記事は、恐らくその核不拡散法の説明をしたいということに基づいているものだと思われます。
  23. 安井吉典

    安井委員 そうすると、四月中にもアメリカの原子力担当官が来日するという情報は、これは当たっているわけですね。
  24. 太田博

    ○太田説明員 ただいま非公式にアメリカ側と、いつアメリカの担当官が核不拡散法の説明にわが方にやってくるかにつきまして協議中でございまして、果たして四月中にそういうことになるかどうか、これはまだわかりませんけれども可能性としては四月中にも来るということは排除できないと思います。
  25. 安井吉典

    安井委員 アメリカの新しい法律説明ということであるにしても、いまアメリカが意図しているのは、やはり日本だけではなしに、ユーラトムをも含めて、協定を結び直したい、そういう意図を持っていることは明らかですね。そこで、日本に対して協定を結び直したいという申し入れがあった場合は、政府はどうされますか。
  26. 太田博

    ○太田説明員 政府の基本的な考え方は、核拡散の防止あるいは核拡散の危険に関しますアメリカ政府の懸念、これはわれわれも理解するところでございますけれども、それによって各国の原子力の開発利用が不当に妨げられてはならないということが基本でございまして、実はアメリカ自身も、核不拡散法を成立させはいたしましたけれども、原子力の利用については、これを推進していきたいという考えであると思われます。  協定の改定につきましては、アメリカの今回の核不拡散法を読んでみますと、すべてが日本の原子力開発にとって不当な制約を課する条件であるとも必ずしも言い切れない面もございまして、アメリカから核不拡散法の十分な説明を受けましてから、今後の取り進め方につきまして十分検討いたしてまいりたいと考えております。
  27. 安井吉典

    安井委員 これはむしろ科学技術庁の方に伺うことではないかと思うのですが、アメリカ側の意図というのはよくわかりませんけれども、アメリカが供給した核燃料の処理、それについてある程度の規制を日本に課してくるというごとは仕方ないかもしれない。しかし、燃料はどこから来ても、アメリカ製の炉で処理したものについては、一切その再処理等についてアメリカの事前承認が必要だ、何でもかんでも抑え込んでしまおうというようなことを新しい協定の中に盛り込もうとアメリカが意図しているのではないかということを私は心配するのですが、アメリカがそう言ってきたらどうしますか。
  28. 山野正登

    ○山野政府委員 米国の核不拡散法制定の一つの大きな目的と申しますのは、先ほど外務省からも説明がございましたように、米国から原子力の機材なりあるいは核物質を輸出いたします際に、その規制を強化して核の不拡散を図ろうというのが目的でございまして、そういう観点から、米国から輸出いたします核物質につきまして、わが国がこれを形を変えるとかあるいは再移転をするといった場合に、米国の事前同意を求めるといったふうな仕組みになっておるわけでございまして、このうち一部のものにつきましては、たとえば米国から入れました濃縮ウランの再処理をいたします場合とかあるいはさらに、米国から入れましたものを第三国に再移転をする場合には、現行の日米原子力協定によりましても、米国の事前同意が必要なわけでございまして、そういう点におきましては、基本的に考え方自体が変わったものではないわけでございます。  ただ、先生指摘のように、今後、核不拡散法を見てみますと、米国から入れた施設でできた核物質といったふうなものも規制の対象になるといったふうなことになっておるわけでございまして、この点につきましては、この米国から入れた施設といったものが具体的にいかなるものを指すかといったふうな具体的な内容がわかりませんと、この規制が厳しいかどうか——厳しいと申し上げますのは、不当に原子力の平和利用を抑制することになるかどうかという判断はできないわけでございますので、今後米国側の出方を待ちまして、わが国の平和利用というものを損なわないような方向でこれに対処したいというふうに考えております。
  29. 安井吉典

    安井委員 日本の原子力への対応としては、濃縮だとか再処理の技術の自主開発計画といいますか、あるいは核燃料サイクルの確立、そういうのが基本でなければならぬと思うわけです。また、現に科学技術庁もそういう方針を立てているはずなんですが、それを損なうような先方の提案については、これはやはり拒否すべきではないかと思うのです。その点はどうですか。  それからまた、大臣から、新しい段階において、燃料も炉も含めて全くアメリカに一辺倒で依存しているといういまの体制が問題なんですよ。それからの脱却ということについてもっと熱心にやらなければいかぬと思うのです。それもひとつあわせて伺います。
  30. 山野正登

    ○山野政府委員 わが国が原子力の開発利用を進めてまいります上で燃料サイクルの確立というものが喫緊の急務であるということは御指摘のとおりでございまして、できるだけ対外依存を減らす方向で私ども鋭意努力をいたしておるわけでございますが、今般の核不拡散法の適用に当たりまして、将来米国がわが国に協定改定交渉を申し入れ、その結果としてわが国がこの核燃料サイクルの確立に支障が起こるといったようなことがございますれば、これはゆゆきし問題でございますので、私どもは当然わが国の平和利用の権利というものを主張するわけでございますが、一方、先生も御承知のとおりただいま国際的な核燃料サイクルの評価計画というものが進められておりまして、これは世界各国、四十ヵ国ばかりのものが集まってやっておるわけでございますが、この計画自体米国が提唱したものでございますし、またこの評価計画の目的といたしますものが核の不拡散の強化と原子力平和利用との調和点を求めようということでございますので、このような計画を提唱し、また参加しておる米国が不当に平和利用を損なうような主張をあえてしてくるというふうにも考えておりませんが、またそのような場合には先ほど申し上げましたように、わが国の平和利用の権利というものを十分に尊重してまいりたいと思います。  それから第二の御質問の燃料等の確保につきまして対米依存をやめろという点でございますが、これは天然ウランの確保あるいはこの濃縮等核燃料サイクルのいわゆる上流部分につきましても、私ども供給源の多様化ということを考えておるわけでございまして、ウラン資源は国内には非常に乏しいわけでございますが、これを入手しました後の濃縮事業につきましては、将来はできるだけ国内でこれを自給するということを中心にして後は国際協力でこれを補完するという方向で考えたいと思っておるわけでございます。それからまた下流部門につきましても、非常に重要な問題でございます再処理につきましても、昨年日米交渉の結果、東海村の再処理工場は幸いにして運転を開始したわけでございますが、この技術、経験をベースといたしまして将来はぜひ国内に自前の再処理工場を建設する、その間のつなぎとしまして対外依存等も考えるといったような、処理の多様化を図るという方向で対処しておるわけでございまして、そういう意味合いにおきまして先生の御趣旨に沿った方向で本件は進められておるというふうに考えております。
  31. 熊谷太三郎

    熊谷国務大臣 ただいま局長から御答弁申し上げたとおりでございますが、大臣もというお言葉もございましたので、私からも簡単につけ加えさしていただきます。  お話しのように原子力の平和利用とそれから核不拡散という問題、これは非常に対立しておりまして、ともすればそういう核不拡散ということのために日本のような国の原子力の平和利用が妨げられるというような傾向もないではないと存じますので、この点はわれわれ日本としてはもとよりはっきり区別をしておりますが、それをはっきり世界に明らかにして、日本は決して核をそういう平和目的以外に使用するのではなく、平和目的に専念してこれを利用していくという趣旨をさらに徹底してまいらねばならぬと考えておるわけでございます。  それから核燃料サイクルの確立でございますが、これは原料につきましては、天然ウランにつきましては各国から輸入せざるを得ない状況でございますが、同じ輸入にいたしましても、なるべく開発に関係いたしまして、そして共同開発その他の趣旨によりまして少しでも自主性のあるウランの入手ということに努めていくようにしておるわけであります。  それから新型転換炉あるいは高速増殖炉、こういうものは、御承知のように研究が成功いたしますと非常に天然ウランが節約されるわけでございますので、こういう点も世界の各国に劣らない熱意と実際のスピードといいますか速度で研究開発を進めてまいってきているところであります。  再処理、濃縮等につきましても、先ほど申しましたように、いよいよ日本も自主的な技術で濃縮、再処理等のことも見込みがついてまいりましたので、こういうことも推進しまして、そして自主的な核燃料サイクルの確立に進んでまいりたい、このように思っておるわけでございます。
  32. 安井吉典

    安井委員 いま大臣から原子力政策の政府の考え方についてお話があったのですが、私どもは、同調できるところもありますけれども、安全第一、それから第二も安全、第三も安全というぐらいな腹づもりで対応しなければ、かっての被爆国であった日本として間違うことになるという基本線を持っておりますことだけ申し上げておきたいと思います。  もう一つ、宇宙開発の問題について伺うつもりでしたが、余り時間がないようですから、例のソ連のコスモス954原子炉衛星墜落事故について、国会でも、禁止をすべきである、そういう厳しい内容にはなっていないようですけれども、とにかくそういう方向の決議がなされ、福田総理も園田外務大臣も、国連その他の場できちっと主張していきますというお答えをいただいているわけでありますが、いまの段階で、切れ切れの情報しか新聞で見ないのですけれども、国連ではどういうふうな扱いになっているか、日本はどのような主張で、その扱いの見通しはどうなのか、それを伺います。
  33. 太田博

    ○太田説明員 お答え申し上げます。  ただいま先生から、原子力衛星の問題につきまして、国連でどういう討議が行われてきて、その見通しいかんという御質問でございますが、わが国といたしましては、先般の事件にかんがみまして、このような危険は放置されるべきでない、原子力衛星の安全性というものがあらゆる手段によって確保されなければならないという基本的認識に立ちまして、まず、去る二月十三日からニューヨークで行われました国連の宇宙空間平和利用委員会科学技術委員会、ここの場におきまして、強い懸念を表明するとともに、直ちにこの問題の討議を進めるべきであるという発言をいたしまして、具体的に原子力衛星の打ち上げの禁止の可能性、それから破壊兵器として使用することを目的とする人工衛星の打ち上げ禁止の措置の可能性、こういうものまで含めまして、幅広く、いかにして宇宙の平和利用及びその安全を確保すべきかを直ちに検討すべきである、そのために特別作業部会を設置すべきであるという提案をいたしました。わが国のこの提案につきましては、数多くの国から支持を受けたわけでございますけれども、残念ながら、ソ連が特別作業部会の設置に強硬に反対いたしまして、科学技術委員会議論の結果、わが方の希望どおり特別作業部会を設置するということには至りませんでした。  引き続きまして、先月の十三日から、今度は国連の宇宙空間平和利用委員会法律委員会が行われまして、ここでもわが方は、先ほど御説明いたしましたような基本的な認識に立ちまして、強い懸念を表明するとともに、具体的に三点、すなわち人工衛星の安全の基準の強化及び破壊兵器としての人工衛星の打ち上げ禁止の可能性を含めた人工衛星、特に原子力衛星の法的規制に関する諸措置、それから第二点といたしまして、人工衛星特に原子力衛星の打ち上げの事前通報を義務的に行うべきであるということ、それから第三点といたしまして、万一、異常運行が生じた場合に、緊急通報を行うとともに、もし不幸にして事故が起こった場合には国際的に協力して、それの調査、救援活動を遅滞なく行うべきであろう、こういう三点を実現するために、これは法律委員会でございましたので、直ちに法律的側面の検討をすべきであるという提案をいたしました。その後法律委員会におきまして、わが方の呼びかけを具体化するために、特にわが方は、本件問題に強い関心を持っておりますカナダ、スウェーデンと協議をいたしまして、各国に呼びかけて、実は昨日でございますけれども、十四ヵ国の共同提案ということで、これは文書といたしましては作業文書と呼んでおりますが、このような安全の確保の問題、それから事前通報の義務制度の確立の問題、それから緊急事態における救助等に関する国際協力の強化の問題をさらに詳しく検討すべきであるという文書を法律委員会提出した次第でございます。ただ、この法律委員会におきましても、残念ながらソ連が依然としてこの問題を正面から取り上げることに強く反対をいたしておりますので、恐らくこの作業文書は法律委員会の正式の勧告という形をとることなく、最終報告書に一応言及されまして、それを受けまして、来る六月の下旬からニューヨークで行われます親委員会、すなわち宇宙空間平和利用委員会そのものでございますが、ここで取り上げられることになると思います。  わが国といたしましては、この問題の重要性にかんがみまして、六月二十六日からニューヨークで行われます親委員会におきましてぜひこの問題を正式の議題として取り上げて、早急に国際的な対策を講じたいというふうに考えております。
  34. 安井吉典

    安井委員 十四ヵ国の中にアメリカは入っていますか。
  35. 太田博

    ○太田説明員 アメリカは入っておりません。
  36. 安井吉典

    安井委員 これはソ連も自分でああいう事故を起こしておきながら反対だけをしていくというのはいかぬと思うし、またアメリカも、カーター大統領が初めのうちはかっこいい言い方をしておりましたけれども、実際は自分の方にも影響が出てくるというようなことがあって、どうも同じ穴のムジナという感じもあるし、そんなようなことが、全体的に国連の審議がわれわれの希望する方向に行きかねる原因になっているのではなかろうか、そんな気がするわけですが、その点は、いまのお話では、これ以上お尋ねしても新しい答えが出てきそうもありませんから、六月の平和利用委員会の全体会議の中で、さらにもっと強い主張をしてもらわなければならない、そう思います。  そのほか、米ソの宇宙の軍事的利用競争そのものが、今日最大の問題点だ、そう思うのですが、その軍事衛星を競争の中でどんどん進めていくというようなことで大きな電源が必要になってき、原子炉を載せなければ困る、そういうところに行き着くわけで、原子力発電所が地球の周りを回る、そういう危険な状況をつくり上げている、その根本にメスを入れていかなければならない問題だと思います。ですから、そういう観点からもやはり国連での主張を強めてもらいたいと思います。  まだたくさん問題があるのですけれども、時間になってきましたので、もう一つ伺っておきたいのですが、新聞によると、アメリカの宇宙ステーションのスカイラブが予想より早く地球に接近し、早ければ年内に地球に墜落する可能性もあるという情報が出ていましたが、これはNASAが二月一日確認ということになっていたようです。そういう問題について科学技術庁ではどのような情報を持ち、処理をするおつもりか。それからまた、いまこのスカイラブ以外にも落ちてきそうな危険な衛星、そういうようなものについての情報はあるのかないのか、それも含めて伺います。
  37. 園山重道

    園山政府委員 お答えいたします。  先生指摘のように、スカイラブが落ちそうだという情報が新聞で伝えられましたが、実は先生指摘の二月一日のNASAの発表ということで、早ければ一九七八年内、ことしのうちにというような情報が出たわけでございますけれども、その後、二月六日になりまして、NASAの公式なデータとして、落下の予想時期は早ければ一九七九年の夏ごろというように、いわば訂正された発表がなされております。これにつきましては、私どもも在米の日本大使館を通じまして再確認をしたところでございまして、後から申し上げました、早ければ一九七九年の夏、現在約四百キロメートルの高度の軌道にあるというように承知しております。このスカイラブにつきましては、NASAでもいろいろ検討がなされておると聞いておりまして、現在残っております姿勢制御の装置を働かせまして、できるだけいわゆる高層での空気抵抗等を少なくして、再突入の時期をできるだけおくらせる、あるいは現在アメリカが開発いたしておりますスペースシャトルが間に合えば、これによってそのスカイラブに制御装置を取りつけて軌道を高くするか、制御しながら海に落とすというようなことが検討されている、このように承知いたしております。  なお、そのほか現在危ない衛星があるかというお尋ねでございますけれども、御承知のように非常にたくさんの人工物体が地球を回っているわけでございます。前回たまたまコスモス954号が落ちてきたわけでございますけれども、大部分につきましては再突入のときに燃え尽きてしまうということで、現在大きいスカイラブのようなものが問題になっているわけでございますが、そのほかに現在特段危ないというようなものがあるとは承知しておりません。
  38. 安井吉典

    安井委員 もう一つ、宇宙関係三条約の批准を急げという国会決議事項があるわけですが、その批准準備の促進について、政府としてはどう取り組んでおられるか伺います。
  39. 太田博

    ○太田説明員 お答え申し上げます。  政府としては、宇宙関係の三条約の早期批准のためにどういう国内的な法令の措置が必要であるかという点についてこれまで鋭意検討を行ってまいりましたけれども、今回の事故を契機といたしまして、今後この検討をできるだけ早く済ませて、早期に批准ができるように最大限の努力をしていきたいと考えております。
  40. 安井吉典

    安井委員 そんなに時間がかかるのですか。早期提出がおくれている理由は何なのか、隘路は何なのか、それを伺います。
  41. 太田博

    ○太田説明員 お答え申し上げます。  ただいま御説明申し上げましたように、三条約を批准するに際しまして国内的にどのような措置をとる必要があるかということを十分検討する必要があるわけでございます。もちろん条約によりましてその検討が非常に複雑な場合とより簡単な場合がございます。たとえば国内措置の検討の点から一番複雑でございますのは、いわゆる損害賠償条約でございます。特にわが国として新規の立法が必要であるかどうかという点につきまして、いままで関係各省と何回か協議を行ってきたところでございまして、それが批准のおくれている最大の理由でございますが、先ほど申しましたように、今回の事故もございましたので、こういう検討をできるだけ早く終わらせて、早期に批准の実現を図りたいと考えております。
  42. 安井吉典

    安井委員 まだありますけれども、時間ですから終わりたいと思いますが、いずれにしても、中国に昔からある杞憂という言葉、その杞憂という言葉は、空から隕石が落ちてくるかもしれないということで、心配だというのが語源だそうです。少し学のあるところがちらっと出ましたけれども、その杞憂がいまこの新しい時代の中でさらに増幅されているという状況にあるわけですよ。ですから、新しい三条約の批准ができたらもう落ちてこないということになるわけではないにしても、あらゆる準備をきちっとしておくことが国の政治の一番大事な点ではないかと思います。そういう意味で、国会の決議でもあるのですから、この三条約の批准、まだほかにも決議事項がありますけれども、それを確実に実行してほしいということを結びに申し上げて終わります。
  43. 始関伊平

    始関委員長 新井彬之君。
  44. 新井彬之

    ○新井委員 科学技術の問題につきまして若干の問題を質問させていただきたいと思います。  初めに今回の法案でございますが、金属材料技術研究所の支所を今度設けるということでございますけれども、この金属材料技術研究所におきましては、いままで非常に成果を上げてこられたというぐあいに承っておるわけでございます。今回またその支所を設けるに当たりましては、機械も非常に充実しておるし、いろいろな面で非常に充実したものができるということでございます。まだ完全には移転を完了してないように聞いておるわけでございますが、これによって今後、こういう面についての科学技術の進歩がどのように図れるのか、それについてお伺いしておきたいと思います。
  45. 杉浦博

    ○杉浦政府委員 お答え申し上げます。金属材料技術研究所を所管させていただいております振興局長でございます。  ただいまの、金属材料技術研究所に今後どういう成果を期待しておるかという御質問でございますが、金属材料技術研究所はただいま目黒にございまして、四百七十三名という定員で約三百四十名の研究者を擁して研究をさせていただいております。全体的に新しい金属の創製、従来いろいろな金属がございますけれども、冶金の技術あるいは加工の技術、材料の強さ、こういう点に重点を置いて研究をしております。そういった目的に従いまして、材料部門を一、二と分け、それから冶金の技術、加工の技術、材料の強さ、こういう五部門に分けて研究をいたしております。その中でいろいろな研究成果がございますけれども、学会誌に年間約百件ばかりの研究発表を行っておりますし、これらの研究成果につきましては、できるだけ特許の取得を図るように指導しております。  従来いろいろな新技術がここから生まれてまいりましたが、これから材料としての金属の研究が要請されます部門では、いろいろな原子力の分野だとか宇宙開発あるいは海洋開発、こういったニーズが出てまいります。そういうニーズに対応しましてこの研究所をどのように運営していくかというのがこれからの任務でございますが、いままでの成果で申し上げますと、高性能の超伝導材料というのがございまして、これは絶対零度に近づいてきますと電気の抵抗がゼロになってくる、こういう金属があることがわかったということでございまして、電力の損失のない送電が可能になってくる。これができますと、強力な磁石を必要としますいわゆる核融合の分野だとかあるいは磁気で浮上する列車、これあたりの能率も非常によくなってくるのではないかというようなことを期待いたしておりますが、この金属につきましては、バナジウム3、それからガリウムという金属につきまして、この間この研究所の職員が恩賜発明賞をもらったというようなことになっております。これあたりはすでに超伝導のマグネットが実用化されるというようなところにまいっております。  それからもう一つ、粉末による金属の加工法というのが特異の分野でございまして、非常に複雑な構造ないしはその加工に必要な商品といいますか物品をつくりますのに、金属を一回粉体にしまして適当な形に加工する、こういうことが考えられております。これはわれわれ身近に実は使っておるわけでございまして、いわゆる給油といいますか、油を差す必要がないような経済的な金属粉末の焼結の加工、これあたりがすでに扇風機だとか電気洗たく機といった家庭用の電気製品に使われ、注油という労力が省かれておる。気がついてみますと、われわれ身の回りで確かに油を差す必要がないな、これあたりは金属材料技術研究所の発明である、こういうふうに伺っております。  それから、これからエネルギーの問題その他につきましていろいろ、たとえば省エネルギーだとか公害の問題あたりがございますけれども、連続精錬と申しまして、いわゆる自動車その他のスクラップを直ちに炉に入れまして連続してそういった精錬をする。この方法が確立いたしますと省エネルギーにもなりますし、あるいは公害の問題も片づく、こういった期待を寄せておるわけでございます。  このようにわれわれの目に見えないところで材料のいろいろな研究が進んでおるなという感じを受けておりますけれども、今後の問題としましては、先ほど申し上げましたようないわゆる宇宙開発だとか海洋開発、この辺になりますと非常に大きな圧力を受けますので、そういったものに適応する金属というものをつくり上げていこうというようなことで鋭意研究をいたしておりますが、そういった新しい金属の分野につきまして、ただいまお願い申し上げております筑波の支所でやらしていただきたい、こういうふうに考えている次第でございます。
  46. 新井彬之

    ○新井委員 次に、国立防災科学技術センターにつきましては法律にも載っているわけでございます。「試験研究のため必要な施設及び設備であって、関係行政機関に重複して設置することが、多額の経費を要するため、適当でないと認められるものを設置して、これを関係行政機関の共用に供すること。」こういうことでされておるわけでございますけれども、ここでは具体的にどういう内容のことをやられておるか、それを一言お伺いしておきたいと思います。
  47. 園山重道

    園山政府委員 御説明いたします。  ただいま御質問のございました大型の共用施設、設備というものの典型といたしましては、実際に地震に対します耐震の構造等の研究をいたしますための非常に大型の振動台でございますとか、それから雨が降りましたときの地盤その他の問題を研究いたしますための、雨を降らして下で実験する大型降雨実験装置と言っております装置でございますとか、直接に地震予知にも寄与いたしておりますけれども東京都を囲みます三つの地点に深さ二千メートルから三千メートルの井戸を掘りまして、その底に非常に高感度の地震計を入れましてごく微小な地震につきましても全部捕捉するというような装置、施設、これらがいま御指摘の大型の施設の典型になるかと思われます。  全体の業務といたしましては、防災科学技術ということで、ただいまの地震予知あるいは耐震、地震に耐える工作物その他の研究、さらに風水害、雪害、さらには波浪によります沿岸の被害等に対する研究をいたしておるところでございます。現在、雪に関しましては、新潟県の長岡あるいは新庄に支所を持っておりまして、豪雪地帯におきまして雪の害をいかに軽減するかという研究も進めておるところでございまして、防災一般にわたっての研究をいたしておるところでございます。
  48. 新井彬之

    ○新井委員 地震に関する問題につきましては、多方面にわたって研究がされておると思いますが、科学技術庁としては第四条の十一ですか、「科学技術に関する基本的な政策を企画し、立案し、及び推進すること。」こうなっておりますが、地震についてはどういうことを企画し、立案し、推進をされておるか、お伺いをしておきたいと思います。
  49. 園山重道

    園山政府委員 科学技術庁本来の任務といたしまして、ただいま先生指摘になりました基本的政策の企画、立案、推進というのがございまして、特に地震予知に関しましては、科学技術庁本来の業務といたしまして、従来からいわゆる関係省庁研究予算に対します見積方針の調整ということをいたしております。したがいまして、この中で関係省庁地震予知あるいは耐震に関します研究推進ということをいたしております。  さらに、特別研究促進調整費というのが科学技術庁に計上されておりまして、これによりまして二省庁以上が協力して行うべき研究、この地震予知などはまさにその典型に当たるかと思いますが、こういった協力研究推進、あるいは緊急に起こってまいりました研究推進、これらを行っておるところでございます。  また、ただいま御説明申し上げました科学技術庁の付属機関としての防災科学技術センターにおきまして、防災科学技術の大きな柱といたしましてこの地震に関する研究推進しておるところでございまして、これらを総合いたしまして科学技術庁としての地震予知の、地震に対する研究推進を行っておるわけでございます。  さらに一昨年、東海地域における大地震可能性というのが指摘されまして、その際、急遽内閣閣議決定によりまして科学技術庁長官本部長とする地震予知推進本部が設置されまして、私どもがその総括事務局を担当いたしておりますので、具体的にこの推進本部におきまして関係省庁、これは大学を含めましてどのように研究推進していくか、また予知推進していくかということを企画し、推進しておるところでございます。     〔委員長退席、高鳥委員長代理着席〕
  50. 新井彬之

    ○新井委員 第四条の十三では「関係行政機関の試験研究機関の科学技術に関する経費及び関係行政機関の科学技術に関する試験研究補助金、交付金、委託費その他これらに類する経費の見積の方針の調整を行うこと。」こういうことになっております。これは十一号から受けてやっておると思いますが、これはいつから、たとえて言いますと、本年度予算については具体的にどういう形でこういうことをやったのか、ちょっと具体的に教えていただきたいと思います。
  51. 園山重道

    園山政府委員 お答えいたします。  この見積方針の調整という仕事につきましては、具体的に申し上げますと、年度がかわりまして、各省庁が概算要求を作成いたします前、大体六月といった時点に見積方針調整の基本方針というのを定めます。これは科学技術会議の答申、その他情勢を踏まえまして、来年度における科学技術推進、特に研究につきましてはこういう方針で科学技術庁としては見積方針の調整を行いますという基本方針でございますが、あわせて共通指針というものを出しまして、各研究所におきますところの研究員等積算庁費、俗に人頭研究費と言っておりますけれども、こういった額を各省庁と相談をいたしまして、これらにつきましても統一単価で要求するということで、そういったものを中心といたします共通指針、基本方針と共通指針というのを大体六月時点に出しまして関係省庁に知らせるわけでございます。  その後関係省庁は概算要求作成に入るわけでございますが、その段階におきまして、各省庁から研究関係の経費、これは補助金等も含みますけれども、これにつきまして説明を聞きまして、その間にいろいろ調整をいたします。これはむだな重複がないように、また本来行うべきものが抜け落ちていないかというような点で各省庁と十分相談をしながら調整をいたすわけでございまして、その結果、各省庁が概算要求をつくって大蔵省に出すわけでございますが、その段階で最終的な各省庁の概算要求につきましてすべて掌握をいたしまして、これにつきまして科学技術庁としての見積方針調整意見書を作成いたしまして、大蔵省あるいは行政管理庁等に意見を申し述べるわけでございます。その結果、御承知のように十二月末あるいは一月早々に政府予算案の編成、内示という段階になりますが、その段階におきましても、財政当同等に対しまして科学技術庁としての意見を申し述べることにいたしております。  大体こういった手順で行っておるところでございます。
  52. 新井彬之

    ○新井委員 いまお話しございましたが、大体各省が継続的にいろいろ研究をやっておりますから、それは去年の引き継ぎであるとか、そういうようなことで基本的に予算は出てくる。確かにある程度の打ち合わせみたいなことをやっておりますけれども……。そうすると、第十一にかかわる「基本的な政策を企画し、立案し、及び推進する」という一つの具体的なきちっとしたものがあって、その上でこういう予算調整というのが行われなければいけませんし、少ない場合においてはやはり予算もそれにつけなければいけない、こういうことをやらなければいけないのです。打ち合わせはやっておるけれども、現実的にそういうようなことが力を持ってやられているということはお聞きしていないわけです。  そうしますと、たとえて言いますと、いま非常に問題になっておりますのは、地震予知技術というものが何とか早くわからなければいけない。東海沖のあの地震におきましても非常にパニックが起こったとかいろいろありますね。そこで、新しい法案もつくらなければいけないということ、いろいろ出ておりますけれども、要するに、当たるか当たらないかということが非常に問題だと思います。そこで、地震予知については、目的としてはいつごろまでにこれだけぐらいの予知をするんだというような一つの基本といいますか、そういうものの考えに立って今回地震の、予知なら予知に対しての配分をちゃんとやりましたか。
  53. 園山重道

    園山政府委員 地震予知につきましては、先ほど安井先生の御質問にも御説明したところでございますけれども、幾つかの段階予知があるわけでございまして、現在、特別措置法におきまして最も必要といたしておりますのは、少なくとも大地震が起こるというときにはその前兆現象をなるべく早い時期につかまえるということでございます。ただ、これは大体におきまして数時間から一日、二日前に地殻の大きな変化等がございますので、これをつかまえることができるかということでございますので、当面の目下の最大の任務といたしましては、大地震発生指摘されております東海地域におきまして、少なくともこの前兆現象を見逃さないためにどれだけの観測施設を配備するかということでございまして、これにつきましては、先ほど申し上げました地震予知推進本部におきまして、あるいはまた文部省にございます測地学審議会意見等を聞きまして、最大の努力をして観測機器の配備をいたしたところでございまして、現状におきましては学者先生方も、これだけの配置をしておけば、少なくともマグニチュード八というような地震が起こるとすれば、その前兆現象は必ずつかまえられるだろう、こう確信していただいている段階に来たわけでございます。  しかしながら、さらに地震予知というのは何が目標かということになりますと、恐らくは、将来におきましては長期予知から中期予知、つまり何ヵ月後、どこで、どの程度の大きさの地震が起きるということが明確に予知できるということになりますれば、これはまた一つの大きな進歩でございますし、技術的にはそれを目標にしなければならないと思うわけでございますが、これにつきましては、やはり実際の地震と各種の現象との相関関係というものが実証されませんと、なかなか確実なものとはならないわけでございまして、したがいまして、このためには、現在特定地域というようなことで、方々地震可能性のある地域ということが言われておりますので、そういう地域中心にできるだけの観測網を充実していくということが必要である、このように考えておるところでございます。
  54. 新井彬之

    ○新井委員 この予知の問題も、私は専門家でもありませんし、一般の一国民としていつ来るのか、そのとき全然知らなければいろいろなたくさんの被害もあることになるだろうということになるわけですから、これは当然確実な予知というものが早い機会にできたらいい、こういう希望を持っている方はたくさんおると思いますね。いま、確かに学者の方の御意見はいろいろありますけれども、たとえて言いますと、地震雲というわけですか、奈良の鍵田市長さん、あの方が、あの雲が出るとこういう地震があるぞということで比較的当たっているというようなことがありますね。あるいはまたナマズが動けばこうだとかというようなことがありますね。そうしますと、確かに現在の一部——まあ学者の間ではそういうことはわからない。そういうようないろいろの考え方を持っている方はたくさんいらっしゃると思いますけれども、それは論理的に解明はされなくても、現実問題として、中国なら中国でやっている方式とか、世界各国で地震の多い国というのは特にそういうことの研究開発をやっていると思いますけれども、そういうものをとにかく力を入れて、日本は何といってもすごい地震国でございますから、多方面にわたっていろいろやるというようなことについては、余りおやりになってなかったんじゃないか。ほとんど一つの物理的な状態におけるエネルギーの蓄積によるところの地震であるとか、そういうようなことが非常に力が入っている。これは何も私は否定をするわけではなく、それが何も間違っているということではございませんけれども、まだまだ、いまの話によると、マグニチュード八ぐらいのものだったら予想できる——何もマグニチュードの一だとか二だとか、そんな細かいものまでやれと言うわけではないですけれども、少なくとも家に被害があるとか、あるいは人間に何らかの影響をする程度地震が起こり得る場合においては、当然これは知り得たいということになるわけですね。そういうわけで、予知技術についてもっと幅広くやっていくような考え方はないのか、こういうぐあいに思うわけですけれども、一体どのようにお考えになっておりますか。
  55. 園山重道

    園山政府委員 お答えいたします。  確かに先生指摘のように、中国におきまして動物の挙動等が非常に予知の参考になっている、これによって予知に成功した例があるということも伺っております。また先般来新聞で、御指摘のような地震雲ということの報道もされております。現在わが国におきましては、先ほども申し上げましたが、地震予知計画というものが学者先生中心にいたしまして測地学審議会で検討され、そのデータはまた地震予知連絡会に持ち寄られて検討されているということでございまして、またわが国の状態からいきまして、できますればやはり器械による観測によって、データ地震との相関がはっきりつかまえられまして、こういうデータを示したらば地震が起こるということが確立されることが一番確実であり、望ましいことであるということで、重点がそこに置かれていることは御指摘のとおりでございます。  しかしながら、やはり中国の例もございますし、なかなか器械の観測による地震予知が明確にでき上がったという段階でもございませんので、一般の民間情報等につきましても十分これを活用しなければならないという気風が、最近に至りまして学者先生方の中にも出てまいりまして、文部省では魚の自然現象の異常に対する反応についての研究を進めておられますし、また科学技術庁におきましても、先般神奈川県の温泉研究所に委託いたしまして、よく言われておりますなまずの会といったようなことで、名前はなまずでございますが、熱心に井戸の水位を観測しておられるグループがございますので、こういったグループの力をかりまして、井戸水の水位と地震との関係というようなことについての研究にも着手したところでございます。  今後やはり先ほども申し上げましたように、器械観測によりましてある種のデータが示されれば、これによって地震が起こるということが明確になってくることが望ましいわけでございますが、少なくともその間におきまして、あるいはその補助手段といたしまして、いろいろな自然現象地震との関係ということにも注目をしていかなければいけないと思っておりますので、関係の専門の方々の御意見を聞きながら、そういう方面についても力を入れていくべきものと考えておるところでございます。
  56. 新井彬之

    ○新井委員 学術的な内容はともあれ、とにかく的確に当たるということが一番大事な地震予知だと思いますので、非常におくればせみたいな感じでございますけれども、とにかく多方面にわたってそういうものをいろいろ拾い上げてやはり着実に研究をやっていただきたい、こういうことを要望しておきたいわけです。  地震の巣と言われておる宮城県沖の観測状況についてはどうなっているか、これは気象庁にお伺いしたいと思います。
  57. 末広重二

    ○末広説明員 御説明申し上げます。  御指摘の宮城県の沖合いは地震がたびたび起こるところで、地震の巣と確かに言われているところでございますが、この震源地に近い東北地方には、大船渡、宮古、石巻、仙台等には気象庁の二十四時間の地震観測点が配備されておりますし、さらに昭和五十二年度には小さい地震まで検知可能な特別な高倍率の地震計を配備しました観測点を大船渡付近に増強いたしまして、この辺で起こる地震を常時監視しているわけでございます。この辺に起こります地震は、海岸からやや離れておりますために、過去の例を見ましても、地面が揺れることによる直接の震害よりはむしろ二次的な津波の被害の方が大変こわいわけでございまして、これに対しましては、仙台の管区気象台に、地震が起これば即時、あるいはもう地震が揺れているうちにどこで起こった地震であるかということを突きとめられる速報装置というのが備えつけてございまして、津波警報業務に対しましてはできるだけの措置をとっておるわけでございます。
  58. 新井彬之

    ○新井委員 三陸地区に計器が非常にそろっていないとか、あるいはひずみ計の能率が非常に悪いのがあるということでございますけれども、そういうのは今後是正されるわけですね。
  59. 末広重二

    ○末広説明員 地震観測につきましては昭和五十三年度で全国的な増強を一応完了いたしますし、また御指摘のひずみ計、これは現在は東海地方、南関東地方で大変能率よく働いておりますが、この観測も全国的に見ましてここぞと思う必要な地点には今後増強していく、あるいは新たにそういった観測の網をつくっていくという計画を現在立てておる次第でございます。
  60. 新井彬之

    ○新井委員 そこで科学技術庁にお伺いしておきたいのですけれども、この地震予知体制確立の必要経費はどのくらい見込まれておりますか。
  61. 園山重道

    園山政府委員 今年度の予算で申し上げますと、地震予知関係が特別研究促進調整費を入れまして約四十七億円ということで予定をいたしておるわけでございます。なお、現在測地学審議会におきまして第四次の五ヵ年計画が検討されておるところでございまして、これは五十四年度から五ヵ年の計画でございますが、現在まだその検討が詰まっておる段階ではございませんけれども、漏れ伺うところによりますと、五年間において四百億程度といったような数字も浮かんでおる、このように承知いたしております。
  62. 新井彬之

    ○新井委員 そうしますと、いまの私の質問は地震予知体制ですが、さっき言ったひずみ計であるとかあるいはいろいろの計器の配置ですね。これは御存じのように空白地域があったりいろいろするわけです。あるいは特別観測地域があったり、観測強化地域があるというようなことでいろいろ区分がされているようでございますが、そういうところを全体的にこれだけ観測すれば大丈夫なんだ、いまの科学技術でもって地震予知というものができる、それが大体五百億あればできるということですか。
  63. 園山重道

    園山政府委員 現在の測地学審議会の第四次計画につきましては、まだ御検討中でございますので、その最終の形がどうなりますか、私どもからいま申し上げる段階ではないと思っておりますけれども、全国に対しまして全く均一の密度で観測網を配置するということは、やはり経費の面でも、また人員の面でもなかなか大変なことであろうかと思われます。したがいまして、先生指摘のようないろいろ観測を強化すべき地域といったところを中心に、まずそこから全国に及ぼしていくということが行われるものかと思いますが、そういった考え方で、今後五十四年度からの五ヵ年間で四百億円というような大まかな数字が浮かんでおる、このように承知しておるところでございます。
  64. 新井彬之

    ○新井委員 次に、建築物の安全性について建設省にお伺いしておきたいと思いますが、五十三年の二月二十日、東日本一帯を襲った広域地震で、仙台を中心に東北各県でビルの窓ガラスが大量に割れたわけです。震度四でこんなに大量にガラスが割れた例というのは非常に少ないわけですが、東北各県でこの地震でどのくらいの被害報告が来ておるのか。それから特に仙台市の仙台富士ビルのガラスの割れがひどいと報告されております。その報道の中では五百二十枚中五十三枚が割れた、こういうふうになっておりますが、宮城県だけで八十一ヵ所も建物のガラスが破損している。これらの建物の大半が四十年以前に建てられたもので、これらのビルの安全性についてはどのように考えられるか。それから建物等の調査結果はどのようになっておるか。それから、はめ殺しが問題かどうかだけではなく、建物の設計、施工等に問題はなかったか。それから今後の都市防災上心配が残るが、何かこれから対策があるか。この問題についてお答えを願いたいと思います。
  65. 大田敏彦

    ○大田説明員 宮城県沖の地震によります被害状況でありますが、私ども早速建設省の建築研究所に命じまして、直ちに宮城県の仙台市、大般渡市を中心にしまして現地調査をいたしております。全数ではございませんが、このレポートによりますと、大体宮城県下で四十五棟、岩手県では十二棟、山形県では一棟という報告になっております。特にこの調査では顕著な被害がございました宮城県下の十二棟の建築物について調査を実施しておりますが、構造体にはほとんど大きな被害がございません。ただし、窓ガラスが破壊した例が非常に多く、一つの建築物で、少ないものは数枚から多いものは百枚を超す、そしてそれが落下していることがわかりました。  なお、そのレポートの分析によりますと、被害のあった窓ガラスのほとんどは昭和三十五年から四十年にかけてできましたビルのものでございまして、スチールサッシ、鉄の窓枠でございますが、これがはめ殺しになっておる。はめ殺しと申しますのは開閉できない固定窓でございまして、かつガラスをパテどめにしておる、鉱物質を油等で固めた材料でございますが、これで窓枠にガラスを取りつけておる。したがいまして、これが長年の間に硬化したのではなかろうか。簡単に申しますと、窓枠とガラスとの間にいわゆる遊びがなくなったのではなかろうかというふうな結論になっております。同じはめ殺し窓でも網入りのガラスはそういうことはないという報告になっております。  対策でございますが、最近の建築物で使用されております窓枠は主にアルミサッシでございますけれども、そういったことが非常に問題になっておりまして、ガラス戸を取りつける場合には弾力性のある弾性シーリングなどを用いておりますので、最近のビルにつきましてはこのような被害は生じないものと考えておりますが、既存のビル、特に昭和三十五年から四十年にできましたビルで固定窓のようなものについてはいろいろ問題があるということで、現在法令的には三十一メーターを超える建築物につきましては変形の制限、それからガラスの厚さの制限等を設けておりますけれども、それ以下の建築物あるいは古い建築物につきましても、現在建築研究所と共同で詳細な分析を行っております。その結果を待ちまして必要な措置を講じてまいりたい、このように考えております。
  66. 新井彬之

    ○新井委員 次に、これは通産省にお伺いしますが、耐震自動消火装置つきの石油スートブの安全上の規定の問題でございますが、やはり宮城県沖の地震直後の仙台市消防局のアンケート調査の結果では、四十六台中火が消えたのは十八台だけで、起振器を使ってテストをした結果、震度六に加速度を増してやっと消えたということが出ているわけでございます。われわれの各家庭にある耐震自動消火装置つきの石油ストーブというのは地震が来れば勝手に消えるのだということで安心しているわけですね。ただ、現実に震度六でもまだ消えなくて、何かほかに加速を加えてあげなければいけないというような現状が出ておりますけれども、これについては一体どうなっておりますか。
  67. 脇山俊

    ○脇山説明員 説明いたします。  石油ストーブに関しましてはJISの規定と地方自治体の条例、この二つの方法によって規制されているわけでございまして、いずれにおきましても地震の水平方向の加速度、これをガルという単位であらわしまして、ガル二百五十になったらこれは必ず十秒以内に消えなければならない、こういうふうにしているわけでございます。  御指摘の仙台における実験の場合、新聞にはいろいろと報道されておりましたが、われわれが仙台の消防署から聴取したところによりますと、まず実験に使った起振器が非常に正確なガルを検出することの困難な器械であったということが報告されております。  それから、十秒以内に必ず消えなければならないという規定になっているわけですが、多くの場合十秒以内で、その起振器によっても十秒以内で作動しておる。若干の場合、これを二十秒間揺らせて作動した場合もあったそうですか、これは実験を行った消防署自身が言っておりますが、起振器の正確なガル検出ができなかったことによるのではなかろうかというようなことであるわけでございます。
  68. 新井彬之

    ○新井委員 そうすると、確かに起振器のガルの出方が非常に明確でないということから、その基準には適合しておったということだと思いますけれども、たとえて言うと震度四でガラスが割れたりいろいろな状態になっている中で、余り石油ストーブの耐震自動消火装置というものが作動しない。何でもかんでも作動したらいいというわけではないでしょうけれども地震の規模とか被害の状況から言いまして、いまのこの基準で絶対に被害を免れるんだということで間違いないですか。
  69. 脇山俊

    ○脇山説明員 どの程度地震で作動させるかということは非常にむずかしい問題でございまして、先生もいまちょっとおっしゃいましたように、余りしばしば作動いたしますと、これは必ず消費者から苦情が出ますし、また消費者があらかじめ自動消火装置をめんどうくさいので外しておいてしまうというようなこともございます。部屋の中で子供が非常に暴れるとか、こういう場合でもかなりのガルが出ることもあるわけで、どの辺に置いたらいいかということは正直のところきわめてむずかしい問題でございまして、現在もいろいろと検討した結果二百五十ガルでは必ずということになっているわけで、これはかつては三百ガルで必ず作動しろということにしていたときもあったわけです。これを五十ガル下げて二百五十ガルにしているわけですが、最近の静岡地震、仙台地震等の経験を勘案しまして、これについてはわれわれとしてもさらにいろいろな方の御意見を聞いて研究しなければいけないというふうに考えております。
  70. 新井彬之

    ○新井委員 その辺は今後またよく研究していただきたいと思いますが、製品そのものが今度はそういう安全基準でできているんだというときに、間違いなくテストをして問題ないんだということで出ていると思いますが、そういう面につきましても、これはやはり地震等の場合に大きな災害の基礎になるわけでございますから、そういう一つ一つのチェックもひとつよくやっていただきたい、このように思うわけでございます。  それから、伊豆地震で伊豆急の稲取トンネルに非常に被害が出たということでございますが、これは活断層との関係というのがあるわけでございますが、この前の予算委員会等におきましても、活断層の上に物を建ててはいけないのだとかというようないろいろなことが大学の教授あたりによって言われているわけでございますけれども、活断層と地震との関係について通産省にお伺いしておきたいと思います。
  71. 山中正美

    山中説明員 お答え申し上げます。  一般に地震は地殻内に断層変位が生ずることで起こるのだ、こういうふうに考えられているわけでございます。言いかえますと、地震発生というのは地殻内のひずみのエネルギーがだんだん蓄積してまいりまして、それがひずみの限界に達しましていわゆる岩石破壊が起こりまして、一挙にエネルギーを放出する、それが地震だということになるわけでございますが、一方、地質図等に言っております活断層というのは、そういうふうな過去の地震によって生じました断層の歴史といいますか、地震の歴史を物語っているわけでございますけれども、一般的に活断層というのは活火山と非常に誤解されておりまして、活火山というのは現在火を噴いているわけでございますけれども、活断層というのは、いわゆる新生代第四紀と言いますけれども、地質的には、現在からさかのぼりまして約百八十万年前までの間、この間に断層が生じたものを一応活断層と言っておるわけでございまして、必ず現在断層が動いているというものではない、こういうことになるわけでございます。  したがいまして、地震と活断層の関係、こういうことになってまいりますと、過去に地震が起こったから断層があるということはわかっているわけでございますけれども、活断層が即、今度地震があるたびにまた断層が大きくなっていくというものではない。一般的に言われておりますのは、歴史的に明らかな断層によりましても、大体数千年から数万年に一回ぐらいではないか、早いもので千年に一回ぐらいではないかと言われております。したがいまして、その活断層があるから必ず地震のときに大きい被害が生ずるのだと言うことは非常にむずかしゅうございますし、同時に、逆に言いますと、いわゆる活断層がたくさんありましてその直下に地震が起こりましても、一部の活断層は動きますけれども大部分の活断層は動かないというような場合もある。先日の伊豆大島沖地震の場合にも二つぐらいの断層が動いたのではないかと言われておりますけれども、そういうふうに、活断層があれば必ず動くというわけではないわけでございます。  したがいまして、活断層といわゆる建築物その他の関係というのは非常にむずかしくなってまいりまして、いわゆる断層がありましても、その周辺の地形だとかあるいは地質状況によりまして影響が違ってまいりますし、同時に、上に建っております構造物の耐震構造あるいは材料等によりまして、また影響が違ってくるわけでございます。  いずれにしましても、私どもとしては活断層図というのを早急に完成してまいりまして、一般の皆さんにそれをもとにいたしましていろいろな判断をしていただきたい、こういうふうに考えているところでございます。  以上でございます。
  72. 新井彬之

    ○新井委員 そうすると、この前の予算委員会で、早急に活断層の所在の分布状況をわりかた小まめにつくるというようなことで言われておりますけれども、それについては、やはりつくる方向でやるわけですね。
  73. 山中正美

    山中説明員 お答え申し上げます。現在、地質調査所におきましては、東京周辺、大阪周辺を大体五十万分の一の地図で四十八年、四十九年につくっておりまして、今回地震が起こりました伊豆地方につきましては、一応調査が終了いたしまして、活断層図は現在最終校正に入っておりますので、近日中に五万分の一図幅二枚及び十万分の一図幅一枚というかっこうで発行できるのではないかと思っております。それから日本全体を非常にマクロにとらえました二百万分の一の活断層図というのも、五十三年中には完成いたしたいというふうに考えております。それからさらに、観測強化地域であります信越地域だとかそれから秋田・山形地域につきましては、五十四年中にも完成させたい、こういうふうに一応考えているところでございます。  以上でございます。
  74. 新井彬之

    ○新井委員 これは、ちょっと科学技術庁と直接関係ないかもわかりませんけれども地震の被害より情報パニックが非常に恐ろしい、地震の被害は、これは大変に恐ろしいと思いますけれども、パニックがこの前も起こったということが言われておるわけですけれども、こういうことについて、何か科学技術の面で、情報伝達であるとかあるいはやはりこうあるべきだということについての研究はありますか。
  75. 園山重道

    園山政府委員 お答えいたします。  地震によりますパニック、この間の伊豆大島地震のときに若干、余震情報に伴ってのパニックが起きたということが言われたわけでございますが、科学技術庁といたしましては、すでに昨年からこの地震情報の伝達をどうすべきかという研究を未来工学研究所に委託いたしまして、五十二年度、五十三年度、二年の計画で実施しているところでございます。たまたまこれを実施している途中に伊豆大島の余震情報によって騒動が起きたということがございましたので、緊急にこの状態の調査ということもいたしております。  それからなお全般的に災害がいわゆる社会経済に及ぼす影響ということにつきまして、やはり私ども研究を進めるべきだということを考えておりまして、まだ具体的に研究プロジェクトを起こしたということではございませんけれども、先般防災関係研究機関等の方々にお集まりいただきまして、災害の社会経済に及ぼす影響に関する予備討議というような形で意見の交換をしていただいたわけでございまして、そのときも大変御熱心に、こういった分野の研究を進めるべきであるという御意見が多々出ておりますので、今後このような研究をどのように進めていくかということについて真剣に考えていきたい、このように考えておるところでございます。
  76. 新井彬之

    ○新井委員 いま地震対策の基本法みたいなものができようとしているところなんですけれども、これはやはりパニックというのはどうしたらいいかわからない人が右往左往することがパニックだろうと思います。たとえて言いますと、地震予知があった、予知があったために何らかの形で行動しなければいけない、そのときに自分はどの場所に避難をして、何と何を持っていけばいいのかということが明確になれば、これは一つの規律のとれた行動でございますから、よしんば地震が来なくても、一日、二日は仕事ができなかったということはあろうかと思いますけれども、決してそんなに恐怖感を感じたとか、そういうようなこともないと思うわけです。ちょうど五十一年の九月十三日でございましたか、台風十七号が来まして、非常な集中豪雨がありました。そのときに、水が余り出たために当然舟でしか行けないような状態になりまして、そのときに市役所とかあるいは町役場で人を連絡に出すのですけれども、出たら、絶対帰ってこないんですね。ということは、電話は不通ですし、どうしようもないというような状況で、確かに県庁には災害対策特別本部が設けられておりますし、それを受けて各市町村にも災害対策特別本部が設けられて、警察も消防署も全部出ている。ところが実際は何にもなすすべがないということですね。したがいまして、そういうときにどういう科学技術のあれをもってやったらいいか、あのときにもしもヘリコプターが一台ありまして、上から状態を見て、マイクか何かで連絡をすれば非常に安心感を与えることがありますし、それからまた、その出ていって帰ってこられない人も、その指示に従って、救援活動といいますか、そういうことができたというようなことを非常に思ったわけでございますけれども、ヘリコプターにマイクを積んで上から指示をするということも、まだもう一歩進んでいないような感じもするわけでございますけれども、そういうときにやはりその情報伝達というのがきちんと対策本部から一人一人に流される方法というのはどうだろうというようなことも、これは大事な問題として今後ひとつ科学技術の面でお考えをいただきたい、このようにお願いをしておくわけでございます。  次に、ちょっと、基本的な問題についてお伺いをしておきたいと思うのでございますが、科学技術庁設置法には、第七条の八に「日本学術会議への諮問及び日本学術会議の答申又は勧告に関すること。」ということで事務をやるようになっておりますけれども、この日本学術会議へ諮問をして答申が来る、あるいはまた勧告を受けたという場合については、これはどういう方向で実現をするというぐあいにお考えになっておりますか。
  77. 大澤弘之

    ○大澤政府委員 お答えいたします。  日本学術会議の勧告は、先生承知のように従来から非常にたくさんございます。それで科学技術庁といたしましては、その窓口というような感じでございまして、学術会議からの勧告を一応受け付けまして、その勧告は各省庁にわたるものが大変多うございます。したがいまして、科学技術庁では各省庁の連絡会というのを開催いたしまして、それぞれ各省庁がその内容に応じて担当していいものを担当していただく、担当省庁を明確にして科学技術会議を通じて学術会議の方にお答えをしておく、こういうようなやり方をしておるわけでございます。
  78. 新井彬之

    ○新井委員 そうしますと、勧告が二回出たということについては非常に珍しいことだそうでございますが、日本学術会議の勧告ということで昭和五十一年六月三日、再び科学研究基本法の制定について勧告をするということが出ておりますね。これは昭和三十七年の四月に日本学術会議より科学研究基本法の制定について勧告をされて現在に至っておるわけですね。ところが、そういうものの制定が全然できない。そこで、昭和五十一年の六月三日に再勧告された、こういうことでございますが、なぜそういう勧告をされておるにかかわらずやろうとしないのか、その辺をお伺いしたいと思います。
  79. 大澤弘之

    ○大澤政府委員 お答えいたします。  科学技術基本法につきましては、実は科学技術会議、これは昭和三十四年にできたわけでございますが、そこでわが国の科学技術振興ということにつきまして、昭和三十五年に第一号答申というのを出しております。その中で、科学技術基本法を考えていくべきような方向を指示しております。それに基づきまして科学技術会議ではそれ以後、科学技術基本法の制定につきましていろいろ長い問審議をしておったわけでございます。その間に、先生からいまお話がございました最初の学術会議の勧告、つまり学術会議側からは、科学技術基本法を考えるならばこういうふうにせいといった感じのものでございますが、そういうものが出たわけでございます。  それで科学技術会議ではそれをも踏まえまして審議を続けた結果、昭和四十年だったと思いますが、科学技術会議として科学技術基本法についての意見提出いたされました。この意見に基づきまして政府科学技術庁科学技術基本法案をつくったわけでございます。それで、昭和四十三年二月に国会閣議を経まして科学技術基本法を提出したわけでございます。三つの国会を経まして、結局この成立は見ませんで、同年十二月に廃案になった、こういういきさつがございます。このときの廃案になりました一番大きないきさつは、人文科学というものをどういうふうに扱っていくかということにつきまして国会での御審議がなかなか結論が得られないというようなことで継続審議、その結果廃案になった、こういういきさつがございます。  それ以後、科学技術庁といたしましては、科学技術基本法につきましてはむしろ人文科学の問題がそういうことでございましたので、これを切り離すような感じでございますが、科学技術振興法案というようなことで考えていかなければならないのかということで、昭和四十五、六年ごろまではそういう構想で科学技術振興対策特別委員会等でもいろいろ御審議をされてきたところでございます。  そういう情勢でございましたが、昭和四十六年に科学技術会議は第五号答申と称しまして一九七〇年代の科学技術政策について基本的な考え方を明らかにしたのでございます。ここの段階では、科学技術基本法なり振興法なりにつきましてそれほど強い線は出ていないわけでございます。むしろ振興法につきましては、その後国会あるいは私どもにおきましても、振興法案という具体的なことについての検討は実はしてきていなかったわけでございます。  そこに昭和五十一年、再び科学研究基本法についてという学術会議からの勧告が出まして、私どもいまそれを受けとめて検討しておる、こういう段階に現在なっておるわけでございます。
  80. 新井彬之

    ○新井委員 非常にわかりにくいのは、科学技術庁とすれば答申なり勧告なりは日本学術会議から受ける、それを何とか実現しなければいけない。ところが総理の諮問機関である科学技術会議というのがございまして、そこへまた総理が諮問をして、その答申をもって科学技術基本法を制定しよう、こういうようなことになっていますね。科学技術会議の実際の企画なり立案をしているのは、科学技術庁にちゃんと事務局が置いてあるわけですね。したがって、勧告があって、確かにそれはそういういきさつで廃案になっておるということですからいろいろ問題点等があったのだと思いますけれども、それならばそれを生かしてどのような形で出すかということで当然検討してやはり出すべきではないか、こういうぐあいに思うわけです。そういうわけで、基本法というのは原子力にもございますし、いろいろな基本法のもとに進んでいかなければいけないということがあるわけでございますけれども、どうしてもそれがないと、今後の科学技術の進歩に伴って本当に一面から言えば国民と遊離したようなものになってしまいますし、一体そのところの調整とかいろいろどのようにしていくのかということで、基本法というものが当然国民から要望されるという時代に入っている、こういうぐあいに考えるわけでございまして、今後そういう問題についてもひとつ検討していただきたい、このように思うわけです。  それから、科学者憲章というものをつくるべきだという御意見の方も多いわけでございます。児童憲章、自然保護憲章、こういうことで数多くの憲章がありますが、最近では企業憲章というようなことも考えられているようでございます。そこで科学についても当然検討するべきではないかという意見が出ておるわけでございますが、こういうことについては科学技術庁としてはどのようにお考えになっておりますか。
  81. 大澤弘之

    ○大澤政府委員 科学憲章という案は、固有名詞かどうかは存じませんけれども、学術会議におきまして科学研究基本法案についての勧告を出しました後、学術会議の中ではむしろ科学者自身がもっと厳しいあれにならなければならぬのじゃないかというようなこともございまして、そういうことについて御議論はされておるというふうに伺っております。私ども科学技術庁なり科学技術会議なりにおきましては、まだ科学技術憲章というようなことについての話題は出ていない状況でございます。
  82. 新井彬之

    ○新井委員 それから科学技術庁長官にお伺いしたいのでございますが、「長官は、科学技術振興及び資源の総合的利用を図るため特に必要があると認めるときは、関係行政機関の長に対し科学技術振興及び資源の総合的利用に関する重要事項について勧告することができる。」ということがございますね。そういう勧告を近ごろされたことがありますか。
  83. 大澤弘之

    ○大澤政府委員 勧告は最近いたしたことはございません。これは設置法ができましたときのいきさつからそういう条項が入っておるわけでございますが、むしろそのことは伝家の宝刀で抜くべきものではないということで、実際上の科学技術庁の行政におきましてなされてきておるということでございます。
  84. 新井彬之

    ○新井委員 総合的にそういう科学技術のことをやっていく場合に、当然どれに重点を置いてやるべきかとか、いろいろなことがあると思います。しかしながら各省庁それなりの任務を持っておりますから、そうはなかなかいかない場合がある。やはりそういうことを考えて、こういう法案になっていると思うのです。したがって、何も言わないで、ただ事務レベルで、ああこういう予算を請求していました、ああ妥当な線です。ちょっと多いから大蔵省で削られそうな金があるからこれはこっち側にしておきましょうということをやるんだったら、科学技術庁は別にあってもなくてもいいのじゃないか。原子力の部門と宇宙開発の部門については多大な力を持ち、また貢献をされていることはわかりますけれども、ほかの全体的な科学技術振興ということを目的につくられた科学技術庁としては、何か非常に力の弱いような感じもするわけです。やはり筋の通った基本方針があり、ちゃんとやっていく場合においては、決して各省においても反対をしないのではないか、こういうふうに思うわけでございます。  そこで、今度は白書の内容についても質問をしておきたいと思うのですけれども、いま科学技術が経済成長率に占めておる役割りといいますか、寄与率というのをどのような形で見ておりますか。
  85. 大澤弘之

    ○大澤政府委員 昨年十二月に出しました白書におきまして、経済成長率の中で科学技術といいますか、技術革新が寄与している分につきましては六割というようなことが、これは実は経済企画庁の試算みたいなものがございましたので、それによりまして科学技術白書の中で取り上げておるものでございます。最近といいますか、日本の経済成長を支えているものは技術革新であるということの一つのよりどころとしてそういうものを挙げておるわけでございます。
  86. 新井彬之

    ○新井委員 全くそのとおりだと思います。たとえて言いますと、いまは安い石油のために非常に日本経済というのは当たって、これだけの経済大国になったわけでございますけれども、その石油だって今後余り期待できない。原子力も六千万キロワットですか、何とかそれだけの発電をしないといけないと言うけれども、いろいろな事情があって三千三百万キロワット、それくらいに落ちている。それから石炭は石炭で、液化したりいろいろなことで活用しなければならぬということになっておりますけれども、これも余り進んでおりませんね。あるいはまた通産省でやっておりますサンシャイン計画ですね、これは太陽熱だとか地熱エネルギーだとか、そういうものをやっているようでございますが、これも本当に早急にやらないとエネルギーが足らなくなる。  そこで、これからの世界の状況を見ましても、食糧をどのように解決するか、次のエネルギーをどのように確保するか、これを技術革新でかち得なければ、当然日本国のみならず地球そのものが不況になっていくだろう、生活もしにくくなるだろうということが考えられるわけですね。そういうことで、白書では、昭和五十年代では四〇%、これからずっと六五%ぐらい寄与率があるということになっておりますけれども、そうしますと、何とか技術革新に対してもっと予算をつけなければいけないということも白書では指摘しております。指摘しておりますが、現実的にはどのように予算をとっていくのか、あるいは計画をしていくのかということについてはちっとも触れておりませんけれども、その件についてはいかがお考えになっておりますか。
  87. 大澤弘之

    ○大澤政府委員 研究投資が科学技術振興していきます場合に最大の問題点であるということは、私どもそういうふうに思っております。  政府科学技術への投資、それから民間企業は民間企業として科学技術へ投資をしているわけでありますが、そういうのを総計いたしますと、ごく最近の数字では二兆九千億円というような数字になっておりまして、そのうち三割が政府というような数字でございます。  これをもう少し伸ばさなければならないということは諸外国との比較におきましても言われておることでございまして、私ども科学技術政策についていろいろとあります際には、常に投資の拡大ということをいろいろな面で申し上げておるわけでございますし、また国民所得との比率での一つの目標もつくっております。できるだけ早い時期に国民所得の二・五%に到達してくれ。現在は国民所得の二%という数字になっておるわけでございます。そんなことで官民挙げて研究投資の増大に向かわなければならない、こういうふうに思っておるわけでございます。  なお政府の方は予算の獲得ということで努力していかなければならぬわけでございますが、民間の場合につきましては研究費の税額控除制度というのがございまして、研究費の増分に対してはある一定の割合で税額の控除をするということで民間研究投資意欲を引っ張り出していこう、こういうようなこともいたしているわけでございます。
  88. 新井彬之

    ○新井委員 これは答申にも出ております。科学技術会議の昨年五月の答申では、研究費の水準を当面二・五%にする、長期的には三%にするということを言っておりますね。ところが、さっきも話がありましたように、現在では二兆九千億円で、国民所得の二・〇三%、これは欧米に比べましても日本の国というのは技術の蓄積は少ないわけでございますし、それからアメリカ、西ドイツの二・四%よりもまだ低いということで、昭和四十八年度の二・一六%をピークにして年々逆に低下をしている、こういう現状ですね。確かに一般の企業というのは不況のために研究投資どころの騒ぎではないのだ、こういうぐあいに言って、それがますます減少傾向にあるのではないか、こういうぐあいに思うわけです。  そこで一番問題なことは、前からそうですけれども、国防費を除いた研究費の総額、そのうち政府負担の割合というのが日本は二七%、フランスは四九・九%、西ドイツは四九・一%、アメリカは三五・九%、こういうことで、非常に格差があるわけでございます。当然これは政府予算というものをふやしてやっていかなければいかぬ、こういうぐあいに思うわけですけれども、それはどうですか。ことしはこれで予算が通過して決まったとして、来年からずっと伸ばして二・五%まで持っていけますか。それから長期的には三%まで持っていけますか。
  89. 熊谷太三郎

    熊谷国務大臣 研究投資の問題につきましていろいろ御発言がありましたが、全くそのとおりであると考えております。持っていけますかと言われれば、いけますというように先のことをちょっとはっきり申し上げかねますけれども、いけるように極力努力したい、こういうことをひとつ申し上げたいと思います。
  90. 新井彬之

    ○新井委員 国の一つの施設だけで研究するということも大事なことだと思いますけれども、諸外国の例を見ますと、民間企業への委託というのが非常に多いわけです。現在日本では一・九%ぐらい委託をしているようでございますが、これを国際的に見ますと、米国では二六%、西ドイツが一三%、こういうことで、民間の有識者に対して研究費を与えて、非常な成果を得ているということがあるわけでございますが、今後日本の国としても一・九%というようなことにとどまらず、もっと頭脳のある方を多数登用して、そして民間委託というものをやっていくべきではないかと思いますけれども、いかがでございますか。
  91. 大澤弘之

    ○大澤政府委員 私どもも仰せのとおりと申しますか、そういうことで努力はしてまいっておるところでございます。特にいま御指摘がございました西独あるいはアメリカ、いわゆる技術革新の先導的な役割りを果たしております国々につきましては、この中身を分析いたしますと、つまり民間への委託の金額的に非常に大きいのは電気機械と航空機でございます。それで日本では、この電気機械と航空機につきましては従来余りそういう政府からの委託費というのは出さず、つまり民間主導でここまで来ておるわけでございます。そんなことで金額には差があるのでございますけれども、だんだん世の中の情勢が厳しくなってまいりまして、さらに長い将来の日本を見まして、日本の国がいわゆる安定成長を継続していくためにはやはりそういうような措置がだんだん必要になってくるのではないかというふうに私どもも考えておる次第でございます。
  92. 新井彬之

    ○新井委員 それからこの白書の副題に「技術開発試練の時」ということを掲げておるわけですけれども、具体的な対策としては国内の技術移転の促進ですね。この技術移転の促進についても、本来ならば企業間でそういうメリットがあればどんどんやっているわけですね。ところがなかなかそういうものがないために移転が少ない。だからこういうことを掲げただけではそういうことの実効が上がらないと思いますけれども、具体的にどういうぐあいにして移転を進めるか、その件についてお伺いしておきたいと思います。
  93. 大澤弘之

    ○大澤政府委員 白書は問題点指摘ということでございますが、私どもそういう問題意識を持っております上から当然いろいろな具体的な施策を展開していかなければならないと考えておるわけでございますが、技術移転につきましては技術の提供者、出す方と、それから技術を受け入れる導入者、というのは国立試験研究機関あるいは大学民間企業等幅広くなっておるわけでございますが、こういうそれぞれの機関と申しますか、それぞれのところでの窓口をまずはっきりさせなければいかぬ。現在まだそういうところまで行っていないわけでございまして、そういう窓口の設置などの体制整備を図っていかなければならないということが一点でございます。  それからもう一つは、技術移転をしていく際にはどういう技術があるのかという、まず技術情報がよく流れていなければならぬわけでございますので、その情報の流通と利用体制整備を図っていかなければならぬということが二つ目でございます。  それから三番目は、技術情報というのはたくさんあるわけでございますけれども、むしろその評価がきちんとしていませんと適切な技術が移転されないということになるわけでございますので、技術評価の円滑化を図っていくということが三番目に大事なことではないかと考えております。  それからもう一つは、技術の提供者の導入者への技術的な指導、これは特に中小企業といったようなところへの技術移転ということも考えますと、そういう指導の面が重要であろうか、あるいはまたそれを進めていく際には、場合によりましては共同研究ということで技術移転を進めていくということも大事であるというふうな、この四点を考えているわけでございますが、科学技術庁といたしましては、実はこの技術移転を活発に行うシステムといたしまして特殊法人でございます新技術開発事業団というものがございまして、ここで国立試験研究機関、大学民間企業等の特許と申しますか、新しくできた技術のあっせん、あるいは場合によりましてはそれを企業化する場合の融資をするというようなことで技術移転の促進に努めておるわけでございます。  また情報の円滑化につきましては、同じく科学技術庁にございます特殊法人の科学技術情報センター、こういうところでいろいろ新しい技術情報の拡散、円滑化に努めておりますし、またこの科学技術情報センターにおきましてはオンラインによります技術サービスという新しいシステムをごく最近はやっておるわけでございまして、できるだけ技術移転の促進に努めてまいりたい、こう思っております。  なお、中小企業の方につきましては、通産省の中小企業振興事業団というところで中小企業を対象とした技術移転の促進政策を行っておるという現状でございます。
  94. 新井彬之

    ○新井委員 これは一年ないし二年の経過を見ないと何とも言えませんけれども、いままでどおりのことを言っただけではなかなかできることはないと思いますね。これは技術の出し手と受け手の評価が一致しない、また技術移転の場が存在しない、将来についての不安があるとかいろいろな障害があるようでございますけれども、いままでのようなこういう考え方でなしに、本当に技術移転をして技術をどんどん発展させていくところにこれからの日本の企業があるのだ、あるいはまた世界の繁栄があるのだということをやはり腹に決めてかからなければいけないのじゃないかというぐあいに思うわけでございます。  それから、白書でも長期計画は必要だ、こういうぐあいに言っているわけです。私が非常におもしろいなと思いますのは、科学技術庁の設置法から見ましても、そういう長期的な計画なんというのは大体科学技術庁が出してきて、各省にこうじゃないかというような意見も皆調整をしましてやっていくというのが本当じゃないかと思うのです。だから、科学技術庁の白書で長期計画が必要だと言うが、一体それはどこがやるのだ、どの省でやっていくのだ、こういうぐあいに考えますと、やはり科学技術庁しかないじゃないか。そうすると、科学技術庁はそういう長期計画をこれから一生懸命つくりますよ、それでそれに合わせて各省庁関係のあるところは調整をとってやっていきますよ、こういうぐあいに理解して読むべきかどうか、その辺ちょっと教えておいていただきたいと思うわけです。
  95. 大澤弘之

    ○大澤政府委員 科学技術の分野というのは実は大変広うございますし、それから研究開発の先端で行われておりますことというのは項目的には非常に細かいことでございます。これが全体を一つの長期計画と申しますか大きな計画の中にひっくるめてしまいまして、それを全部科学技術庁でということにつきましては科学技術庁自体としてもなかなか無理がございますし、またそういう種類のものではないのではなかろうかと思っております。ただ、基本的な点につきましてはやはりそういうものを科学技術庁がまとめていくべきであろう。科学技術庁任務総合調整官庁でございます。したがいまして、そういう基本的な線についての計画はまとめていくべきであろう、こういうことでございまして、先ほど来ちょっと申し上げましたいわゆる私ども六号答申と言っております昨年の五月に出ました「長期的展望に立った総合的科学技術政策の基本について」という科学技術会議の答申がございますが、これは答申そのものの中にも書いてあるのでございますけれども、これからの日本の十年間にわたる基本的な計画であるということで、これをまず基本的な計画ということに位置づけておるわけでございます。ところが、実際に研究開発を進めてまいります際にはやはりそれだけでは十分ではございません。たとえば先ほど先生ちょっとお話がございましたような食糧とかエネルギーとかいうような重要な分野の研究開発につきましてはもう少し具体的なターゲットを持ったような計画をつくらないといけないのじゃなかろうかということで、先ほどのその答申の中におきましては、主要分野別に研究開発の基本計画をつくるべきであろう、こういう提言が出ておるわけでございます。私ども現在それを受けまして、主要分野につきましての基本計画を策定していこうということでの検討といいますか仕事をいたしておる、こういう事情でございます。
  96. 新井彬之

    ○新井委員 だから、非常に幅が広いわけですから、一つ一つの長期計画をどうするかということについては、非常に細かい分野にわたろうかと思いますからあれですけれども、基本的な一つの考え方あるいはまに長期的な考え方、たとえて言いますと宇宙開発ということがありますね。これはもうソ連でもアメリカでも有人飛行をやっておりますから、そういうことでは非常に立ちおくれておる、こういう考え方があるわけです。ところが現実のわれわれの生活を見ましたときに、いまの時点でそういうことに多額の金を投資する。たとえて言いますと、十五年間で三兆円も投下してあそこで有人飛行をやったことが一体いまのわれわれにとって何か意義があるのか。そうすると、確かに自然科学が解明できたとかあるいはまたロケットを打ち上げるためにいろいろな技術が開発されてほかの分野に影響を与えて、それがまたプラスになるんだ、あるいはまた通信衛星等によって電話とかテレビ等が即座に簡単に開けるようになるんだとか、いろいろあると思いますけれども、やはりそういう面についても、考え方として、アメリカとかソビエトから技術提携でもしてでき上がったものを、何も日本が改めて基礎的なデータからやらなくたって——やろうという国もありますね。あるいはまたわが国には昂てんなことは関係ない、やりたい国にやらしておけというところもありますね。あるいはまた実益だけ目指すなら、衛星を一つ賃借して、それで一月に使用料幾らですと払ってやった方がいいんじゃないか、こういうぐあいにいろいろあるわけなんですけれども、そうかといって日本の国の置かれている立場は、いままでと違って、やはりアメリカ、ソビエト、西ドイツとかに続いて当然日本で技術開発に対して投資をして、今度は世界各国にまたそれを教えたり、技術を分けてあげたりして貢献をしていかなければならない立場にある、こういうことでございます。  議論はいろいろあろうかと思いますけれども、やはり国民の方が、宇宙開発一つにしましてもこういうことなんだということがある程度わかるような長期計画でなければ、よしんばいまそれを十五年三兆円でやります。それで宇宙開発です。そして有人飛行やったから日本の国もアメリカやソビエトに並びましたよなんということを言って喜ぶ人もいるでしょうけれども、それは何だというようなことにもなろうかと思いますね。そういうわけで、確かに幅広い問題があると思いますし、科学技術会議からもそういう基本的なことは出ておりますけれども、そういうことを踏まえて実現のできる方向で一つ一つやっていただきたい、こういうぐあいに思うわけです。  それがさっきも言ったように、本当の実現する方途というのは国民所得に対する二・五%でしょう、あるいは三%でしょう。それだけのパーセントの技術開発費というものができなければ、あと基本計画だとかなんとかといったってできるわけはありませんよ、そんなものは。だから、たった一つの科学技術会議から言われていることについてもそれができないわけですから、あとの計画なんというのは絶対できない、こういうぐあいにぼくは理解してしまうわけですね。  そういうわけでございますから、ひとつそういう面についても、予算それから計画、そういうものが相伴って、技術はこれからの日本が背負って立っていくんだ、六五%なんですから。それがなければ日本はこれから発展もしないし、世界にも貢献はできないんだという、固い決意でやっていただきたい、こういうことをお願いしておくわけでございます。  それから、まだ質問はたくさんあったのですけれども、時間ですからもう一つだけ、これは言いっ放しになるかわかりませんが、科学技術庁長官お話をしておきたいと思いますが、科学技術会議、これについては科学技術会議設置法にちゃんと載っておりますけれども、ここで答申が出たり、あるいはまた報告書が出たりしているわけでございますが、どうなっているんだと思うようなことは、まず昭和四十八年七月に科学技術会議は部会を設けまして、エネルギー科学技術部会というのを設けていろいろ検討していただいていますね、エネルギーの問題について。そして五十年七月に報告書にして出していますね。それから今度は五十一年二月に科学技術会議は国家レベルの統一のとれた計画を策定すべきだという法律に基づいた意見書を提出しているわけですね。そういうことで来ていまして、この間、一年三ヵ月を経て五十二年五月二十五日に今度は諮問第七号で「エネルギー研究開発基本計画について」を科学技術会議に諮問していますね。それから、昭和五十一年二月十五日、諮問第六号の「長期的展望に立った総合的科学技術政策の基本について」というのが、やはり五十二年五月二十五日に答申されておる。そこで、さっきの五十二年五月二十五日の諮問第七号については、五十三年八月、もうすぐ答申が出てくるわけですが、この答申だとかあるいは意見だとか報告書だとか、いろいろ見てまいりますと、これは一番新しい諮問でございますけれども、諮問第七号「エネルギー研究開発基本計画について」、理由は、エネルギー科学技術振興は、わが国のエネルギー問題の解決にとって緊要かつ重大なる課題であるというようなことで、短い文章が書いてありますね。ところが、これに対しては諮問第六号においてどういうぐあいになっているかと言えば——要するにいままでの答申の内容と似たり寄ったりのことを聞いたり答えたりしているんじゃないかということを非常に思うわけですね。  それからもう一つは、科学技術会議というのは総理大臣が議長でありますし、科学技術庁長官も入っていますね。大蔵大臣も文部大臣も入っている。それだけではなしに、なお専門家の方も入っているわけでしょう。そうすると、閣僚会議をやっているよりもまだ強烈な科学技術に対する認識のあるメンバーが入っていて、そしてそこでいろいろやっているわけですから、たとえて言いますと、予算を二・五%にしなければいけないとか、あるいはまた三%にしなければいけないとか、そういうことだってどんどんやっていかなければいけないし、ある意味ではそこが調整機能をとってもっと機能しなければ何にもならないのじゃないかということを考えるわけですけれども、一体科学技術庁長官はそこに出られておって、そしていろいろな諮問とか答申をやっておられますけれども、本当に科学技術庁長官として科学技術を今後どう進めればいいかということについてどのような立場で言われているのかお伺いしておきたいと思います。
  97. 熊谷太三郎

    熊谷国務大臣 仰せのように科学技術会議のメンバーは、大蔵大臣初めたくさんの閣僚が入っておられますので、一面から考えますと、これは大蔵大臣が入っているわけですから、費用を制限されまして、将来の明るい展望といいますか、非常に奔放な展望をするということができかねる面もあると思います。しかし一面から言えば、やはり結局は何とかして実現していかなければならぬ問題でございますから、必ずしもそういうことを排斥するということもできかねる、いろいろそういう面もありまして、私も就任早々でございまして、どういう方向が本当に適当であるかどうかということについてはまだ十分確信を持って申し上げられるような段階ではありませんが、やはり今後ひとつ十分にこのあり方をさらに考えてみたいという点もございます。いろいろ御意見のありました点も十分考えてみまして、そして万全の方法を確立していきたい、このように考えております。
  98. 新井彬之

    ○新井委員 時間ですから終わりますけれども、確かに白書にあるように、これからの日本は科学技術の進歩によるしかないということを私も思います。したがって、いま景気が悪いといいましても、どういうところで悪いかといえば、いろいろの条件はありますけれども、新しいそういう技術革新があり、また、エネルギーが開発されていったときにやはり日本の国というのは盤石だというぐあいに考えるわけです。逆に今度は世界にも貢献できるんだ、そういういまの時代をわきまえて科学技術庁長官科学技術会議に出て、それこそいま景気浮揚策で融資はこれだけにしましょうとか、あるいはまた、職業転換はこうだと言うよりも、ほかの国に勝つだけの技術革新をやれば、どんな産業だってこわくなんかないわけですよ。そういう一番基礎の——これはちょっと時間もかかるし、科学技術というのは初めは空想的な話みたいなところから始まっていくということもあるかもわかりませんけれども、やはり先進国の中でも日本がそういうことではトップなんだという立場をとっていかなければならぬ、こういうぐあいに思うわけでございます。  あと、エネルギー問題とか、その中ではまたサンシャイン計画、ムーンライト、原子力問題、宇宙問題、こういうことでいろいろお伺いしたいと思いましたが、時間が参りましたので終わります。きょう来ていただいて質問しなかった方については、本当に心からおわびを申し上げまして、質問を終わります。
  99. 高鳥修

    ○高鳥委員長代理 午後三時から委員会を再開することとし、この際、暫時休憩いたします。     午後一時十一分休憩      ————◇—————     午後三時四分開議
  100. 始関伊平

    始関委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  科学技術庁設置法の一部を改正する法律案を議題とし、質疑を続行いたします。受田新吉君。
  101. 受田新吉

    ○受田委員 今回の改正案の質問に当たりまして、基本的な問題をまずお尋ねしたいことがございます。  長官科学技術庁というお役所の設置以来二十年有余の歴史の中で、あなたのお役所の持つ権限、科学技術に関する勧告権なるものが、伝家の宝刀が存在しているわけです。これはかって池田内閣時代に、同じ名前の池田科学技術庁長官大学技術者養成に対する注文をつけました。これが一度きり。この勧告権の行使を要請した一人としまして当時を顧みておるのでありまするが、後にも先にもこれが一度きりと私は思っておりますが、そのことと、勧告権の行使に対する長官としての御意見を承ります。
  102. 熊谷太三郎

    熊谷国務大臣 勧告権というものが存在しておりますことは、ある意味できわめて意義のあることかと考えておるわけであります。私も、このような非常に重要で微妙な問題につきましては、まだはっきりした自信を持ったお答えをすることはできませんが、ただ、勧告権の行使という問題について思いつきますことは、そういう勧告権という非常に強い意味の権限を背景にして、そしていろいろ必要な措置を進めていく、相なるべくはこの勧告権を、形式的な、そういう強制ともいうべき形では使わない方が、かえって円滑に目的を達成できるのではないか、しかし、その趣旨は十分にわきまえて、やはりそういう推進すべき点については率直に推進していくというようなふうに思いついているようなわけでございます。
  103. 受田新吉

    ○受田委員 三十一年以来の科学技術庁の歴史は、顧みて、その置かれた任務の重さを政策の上にどしどしと勇敢に実践してきたと、私、判断します。科学日本の基本的なお役所として、国会にもその特別委員会もあるし、また当委員会で設置法関係を扱いまして、文化日本の面目躍如たるようにわれわれも心がけてきたわけでございますが、ひとつここで具体的な問題に触れていきたいと思います。  わが国は四面海に囲まれております。海国日本である。したがって、この四面海に囲まれて、海水の利用、そして海底の利用、大陸棚の利用、利用面は幾つもあることだし、二百海里時代を迎えたこの機会に、海の科学的利用というものには総合的にどういう対策を持っておられるか、お伺いしたいのです。
  104. 園山重道

    園山政府委員 お答えいたします。  先生指摘のように、日本は四面海に囲まれておりまして、昔から海洋国と言われておったわけでございます。また近年、海洋開発ということが新たに言われまして、世界各国も海洋開発に非常に力を入れてきたところでございます。また、ごく最近に至りましては、二百海里問題等、海洋の新しい秩序を国際的にもつくろう。また、この問題に絡みまして、先進国、発展途上国間の問題等もいろいろ出てきておるわけでございます。したがいまして、私ども科学技術庁といたしましてはこの海洋科学技術推進ということにつきまして総合的に推進を図らなければならないと思っているところでございまして、この海洋開発につきまして二つの面を持っております。  一つは、御承知のように、総理の諮問機関といたしまして海洋開発審議会というのがございまして、多くの省庁がこれに関係いたしておりますけれども、単に科学技術のみならず、今日の海洋開発はいかにあるべきかということが審議される場合でございますが、先般海洋開発審議会に対しまして、長期的展望に立つ海洋開発の基本的構想とその推進方策という諮問が出されまして、二十一世紀を望みました日本の長期的な海洋開発はいかにあるべきかということが、目下鋭意御審議されておるところでございます。  一方、科学技術庁といたしましては、研究開発の推進という意味におきまして、一つは、関係省庁研究に対します総合調整等の場におきまして海洋科学技術推進を図りますとともに、所管の法人といたしまして海洋科学技術センターを持っておりますので、海洋科学技術センターを充実いたしまして、今日の海洋開発に必要な、特に共通的、基盤的なプロジェクトにつきましてこれを推進していかなければならない、このように考えておるところでございます。
  105. 受田新吉

    ○受田委員 いまわが国の当面する重大な問題のポイントにエネルギー開発の問題があるわけです。海洋エネルギー資源として見る見方に幾つも方法がある。波の力を利用する波力発電、これは無限と言っていいほどの波力を利用できるわけでございますが、すでに実験を試みておられると承知しておりますが、お答え願いたい。
  106. 園山重道

    園山政府委員 お答えいたします。  御質問のように、海洋の利用の中で、海洋の持つエネルギーを利用するということでいろいろな様式がございますけれども、その中で特に、科学技術庁といたしましては、海洋科学技術センターのプロジェクトといたしまして波力発電ということを考えております。これは波のエネルギーを空気ポンプに集めまして、これで発電機を回しまして発電をするということでございまして、まだ総体的にはいわゆる研究段階でございますけれども、現在、大体長さ八十メートル、幅十二メートルの船の形をいたしておりますけれども、こういったものをつくりまして、これに発電機を積みまして、最終的にはこれ一隻で約二千キロワットの発電の実験をいたしたいということを考えておりまして、昨年度この船の本体をつくりまして、今年度から発電機を積みまして、来年度実海域におきます実験を行いたい、このように考えております。なお、この研究実験につきましては国際協力も取り入れてやっていきたい、このように考えておるところでございます。
  107. 受田新吉

    ○受田委員 防衛庁の技術本部で、この波力発電で航路標識用のブイに灯をともしたことがあるということですね。防衛庁と一緒にこの問題と取っ組まれたことがございますか。
  108. 園山重道

    園山政府委員 現在、海洋科学技術センターにおきましてこの波力発電につきましての研究をしておられる方は、もと防衛庁におられたこともある、このように聞いておりますけれども、この方の非常な御努力によりまして現在波力発電の実験が進んでおりますけれども、現在、直接に防衛庁と共同してこの研究を進めておるということではございません。
  109. 受田新吉

    ○受田委員 科学技術振興については、科学技術庁研究調整局長さんを中心にいまやっておられるわけだし、それぞれの専門分野で行政運営に当たっておられるわけですが、まず大学関係、われわれも先般種子島の東大の研究所を視察に行きましたし、筑波学園研究都市も何回かながめさせていただいて、今回の法案改正の中にも、筑波学園研究都市の一部にあなた方のお役所ができるわけでございまして、いろいろな点で各省の科学技術研究を集中し、調整し、その成果を上げる、そこは科学技術庁任務だと思うのです。各大学の宇宙開発その他の研究、それから防衛庁——防衛庁というのは、やはり科学技術研究の機関としては、防衛力を高める上に大変大事な役を果たしているわけですね。そうした各省閥の連絡調整というものについて科学技術庁はどう対処しておられるか、御答弁ください。
  110. 園山重道

    園山政府委員 先生指摘のように、今日の研究開発につきましては、できるだけ力を結集いたしまして、協力いたしましての研究開発が必要かと思っております。このため、科学技術庁におきましては、関係省庁研究総合調整といった役割りを持っておるわけでございます。ただ、科学技術庁設置法にも明らかに示されておりますように、大学に関しまして——人文科学に関しては除外されておるわけでございますけれども、そういった大学関係につきましても、先生から先ほども指摘がありましたような宇宙開発につきましては、たとえば宇宙開発委員会におかれて、大学計画も含めて総合的な調整推進がされておりますし、科学技術庁がその事務局も相務めておりますので、こういったあらゆる場をとらえまして、できる限り日本の科学技術推進のための研究開発というものが全体として効率よく組み合わされ、推進されるように努力していくのが私ども任務かと考えております。
  111. 受田新吉

    ○受田委員 科学技術振興は、その対象が常に平和目的に利用されなければならないわけです。防衛庁が研究開発することは専守防衛のためでなければならない。アメリカのNASAのような広大な規模で、一部は軍事利用という問題を担当する問題も起こってくるわけでございますが、わが国はあくまでもこれは平和利用でなければいかぬ。その点について各省間の連絡調整研究調整をされるあなたの方として、平和目的への利用というのが終始念頭に輝いておるのかどうか、研究が勇み足になるという懸念はないか。筑波学園研究都市をつくるときにも、その点で無機材の研究所などをわれわれが視察したときにも、これが軍事目的に使われるというようなことがあってはならぬという声が各方面から出た、私、印象を強くとどめておるのでございますが、その科学技術庁の御所管研究開発に、常に高度の平和目的への開発というところが念頭を占領しておらなければいかぬと思うのです。この政策的な問題がここにかかわります。研究は平和目的という大きな目標を掲げておる、それについての態度が、具体的にも常にそういう方向にあるのかどうかを御答弁願いたい。
  112. 園山重道

    園山政府委員 先生指摘のとおり、私ども、仕事をいたします場合に、当然、日本の国民の一人といたしまして、平和ということが最大の理念としてあるわけでございます。したがいまして、当然、研究開発の調整にいたしましてもそういった方向で進めておるわけでございます。ただ、いわゆる技術というものそのものにつきましては、これが平和、軍事というような具体的な形を持った目的的なものになりますと、そのような色合いが出てまいりますけれども、特に基礎的研究等におきましては色がついているというものでもございませんので、これは私どもとしては、日本の科学技術推進のために必要な基礎研究というものを推進するときに、これが具体的化して個々の具体の目的を持った仕事になっていく場合にどういう形であるかということを細かく見ておるわけではございませんで、むしろ逆に、やはり科学技術というものはその根底におきましては色のついてないものでございまして、要は、軍事、平和というお話でございますけれども、それを使うときの立場の問題ではないか、このようなことも考えておるわけでございます。
  113. 受田新吉

    ○受田委員 この研究開発については惜しみなく金を使うという問題に制約のある予算上の問題、いま局長自身が指摘された国際的な連携の問題とそういうものの制約を受けるわけでございますが、及ばずながら、わが国は、軍事大国でなくして文化大国である、文化的には大国であると意識していいと私は思うのです。長官、軍事大国にあらずして文化大国であるという感覚でおられるかどうか。
  114. 熊谷太三郎

    熊谷国務大臣 科学技術庁関係のいろいろな研究開発はどこまでも平和目的に徹しなければならぬというお話でございますが、全くそのとおりでございまして、特に、先ほどいろいろ申し上げました研究開発のほかにも、いわゆる原子力の平和利用ということも言われておりますが、どこまでも平和目的に徹した原子力利用ということで推進しているわけでございます。  なお、いま言われました文化国家という意識を持っているかというお話でございますが、文化大国であり平和大国である、このような意識を常に持って仕事に当たっているわけでございます
  115. 受田新吉

    ○受田委員 御共鳴をいただいておるようでございます。  私、いまから二十六年前にモラルリアーマメントの世界旅行に参加したときに、ドイツの青年がわが国は日本と一緒に第二次世界大戦で祖国は廃墟になった、されどわれわれに残された一つの大きな宝がある、それはわが国の頭脳だ、あなたの国日本とドイツは頭脳を壊していないのだと叫んだ声が、いまでも脳裏に強く残っておるのです。戦後三十三年、わが国は文化大国として、その日本人の持つ頭脳を最高に生かして今日を迎えている。西ドイツまたしかり。そういう観点から、科学技術庁の果たす役割りは、その日本の頭脳をみがき上げる役所として大変重要な使命を持っておるのです。予算上の要求についても、惜しみなく科学技術振興に、宇宙開発についてもわが国なりに列強に伍していけるような道を開き、世界のどこの国にもたとえようのない裨益を受ける可能性のある日本が、地震の防災対策に科学技術的に最も賢明な措置をとるべきである。地震、雪害、台風。台風の進路、発生地点の南太平洋あたりで何かの原子力平和利用によってその発生を打ち壊していく道はないか。地震予知を徹底的に研究する道はないか。今度防災センターをつくるわけでございますが、とにかく科学技術の力で、こうしたわが国に襲いくる、よその国にちょっと例のない災害を受ける日本の災害防止に科学技術庁の果たす役割りは大変なものだと思うのです。長官、老躯であってもまだかくしゃくとしておられる。われわれもそうですか、あなたが先頭に立って、長官としての御在任中にその大目標達成のために大きなる意気込みでがんばってほしい、御注文をつけておきます。
  116. 熊谷太三郎

    熊谷国務大臣 大変御理解と御激励の御発言をいただきまして、すこぶる意を強くしている次第でございます。  いま、いろいろ原子力平和利用のことも御発言の中にありましたが、同じ原子力の中でも、現在の、いわゆる核分裂とは異なりまして核融合、これも先ほどお話がありました海水からの重水素を材料としているわけでございますが、この研究も、国会の御協力を得まして順調な予算をいただきまして、現在の研究段階ではアメリカ、ソ連、ヨーロッパグループ、これと相並びまして少しも遜色のない段階に来ているようでございます。こういう問題も少し先のことになりますが、こういう非常に革新的な強力なエネルギーが利用できるようになれば、そういうエネルギーも挙げて国民の生活の向上と災害の防除あるいは全世界の平和目的のために活用する、そういった考え方、とにかくいまおっしゃいましたように、科学技術は国民の頭脳であるという自覚をさらに強めまして、一層この仕事に専念させていただきたい。任期のうちにと言われましたが、任期はもうわずかな任期しかございませんので、果たしてそういうことが実現できるかどうかは別としまして、そういう道をますます強固にしていくということについてはでき得る限りの努力を払う決心でおります。
  117. 受田新吉

    ○受田委員 大臣の御決心を伺いましてありがたく思いますが、私、災害によって後始末をする金額をその予防に使えばいかに大きな効果があるかと思うのです。一たび大地震が襲ったときの恐るべき被害をわれわれは予測せざるを得ません。これが最小限の被害にとどめられるように、台風の被害を最小限に、伊豆半島の被害を最小限に、そういうことで、被害跡の災害対策につぎ込む金のことを思えば、思い切って防災の方面に金をつぎ込んで、少し金を使い過ぎたと思うほどやっていいと思うのです。後始末に莫大な金がかかることを思うとき、地球よりも重い人命を尊重するために災害の予防、そのために科学技術庁が果たす役割りは非常に大きい。今度の防災科学センターはその一翼を承ってくださるのですけれども、今後惜しみなく、災害発生した時点の後始末の金を思うときには、その金を予防につぎ込むということに政治の総力を結集してもらいたいと思うのです。国務大臣としてこの点、もう一度御決意を承りたいと思います。
  118. 熊谷太三郎

    熊谷国務大臣 改めて申し上げるまでもありませんが、その趣旨を十分体して邁進いたしたいと存じます。
  119. 受田新吉

    ○受田委員 その意味において各省を叱咤激励して、つまり各省間にまたがる科学技術センター科学技術庁なのである、その国家の科学技術センターで各国務大臣をその点であなたが率いて、時に勧告をしていくくらいにやらなければいかぬです。勧告はめったにやるべきじゃないと弱いことを考えられないで、この大任を果たすためにはどんどん勧告すべきですよ。権限がある。伝家の宝刀を抜かざることをもって誇りとするようなことでは、これはろくなことにならぬです。やはり敢然と、言うことを聞かぬ役所には勧告を出すべきです。ばんばん弾を撃つのです。
  120. 熊谷太三郎

    熊谷国務大臣 先ほどは少し言葉足らずで、あるいは物足りないと思われたかと存じますが、私が申し上げた趣旨は、形式的な勧告ということはしなくても、実質において勧告以上の勧告をしまして、そしてどんどん科学技術の発展のために大いに役立たせよう、このように考えておりますから、どうかその点御了承いただきたいと考えます。
  121. 受田新吉

    ○受田委員 中近東のイスラエルの死海に面したアカネという町がありまして、そこに海水から真水をとる装置があります。世界でも各国に相次いでできたわけでございますが、海水から真水をとる、これは、水に対する不安のある住民には太陽の光を投げかけたようなものでありますが、脱塩装置というものについて、四面海に囲まれたわが国でこの研究はどのように進み、また実際面ではどういうふうに生かされておりますか。
  122. 園山重道

    園山政府委員 先生指摘の海水の淡水化ということにつきましては、特に通産省が大型プロジェクトにおきまして数年間にわたる研究をされまして非常に成果を上げられまして、その成果が、先生指摘のように、諸外国に対しましても海水淡水化の装置として輸出されておる、このように承知いたしております。そのような次第で、現在、この通産省の大型プロジェクトにおきます海水淡水化のプロジェクトは一応終了いたしております。したがいまして、現在大きくその研究が続行しておるということではございませんけれども先生指摘のように、水の問題は非常に大きな問題でございますので、今後必要な時期には、いずれまた新たな研究開発の課題として取り上げられていくべきものであるか、このように考えておるところでございます。
  123. 受田新吉

    ○受田委員 きょうはせっかく、四面海に囲まれた海国日本の問題を提起しておりますので、海に関係のある科学技術の問題をもう一つ。御担当が科学技術庁というより他省に属する問題でございまするが、あえてこれを提起したいのです。  私が住まっている、世界の公園瀬戸内海。私は、その瀬戸内海西部の公園の一角にある大島という島の住民でございます。真帆片帆が島の間を縫うて、島かと見ればみさきであった、みさきかと見れば島であったという、美しい世界の公園に浮かんでいる大島に、おととしの七月四日に道路公団が橋をかけてくれました。島民念願の、大陸との続きを願っておった祖先の願いがかなえられた。島の住民である私も大変満足をさせてもらっておるのですが、道路公団がつくった大島大橋は、現に航行する船のレーダーに偽像がひょいひょいあらわれて、航行に非常に不安を与えておるわけです。この事実を本四公団は御存じでございますか。
  124. 浅間敏雄

    浅間参考人 お答えいたします。  本四公団といたしまして、大島大橋のレーダー映像障害については承知いたしております。
  125. 受田新吉

    ○受田委員 船を操って航行する責任者である船長が、たとえレーダーに対する技術的な免状を持っておるにせよ、偽像のあらわれによって終始航行の不安に悩まされておる、この心理的な苦しみというのは大変なものです。私もこの大島大橋の下を航行する船に乗って、事実上、何回も何回もその後においても通っておりまして、船長の苦悩を身にしみて承っております。ところが今度、本四架橋は目下西部の計画が進んでおりまして、近く大三島に及ぼうとしておるわけです。その愛媛県の大三島の工事に当たってこの偽像の心配が出ておることを御存じでございますか。
  126. 浅間敏雄

    浅間参考人 十分承知しております。
  127. 受田新吉

    ○受田委員 本四架橋の責任者である浅間理事の御答弁でございます。十分承知しているとおっしゃった。したがって、いまからその問題に触れたいのでございます。  ここで一つ大事なことは、橋をかけることによって偽像が出てくるということでございまするから、蜃気楼などという、大洋を航行するときの夢のような物語とは違って、現実に非常に地域の狭いところで偽像が生まれてくるのでございますから、これに対する対策を十分用意しておかなければならないのでございまするが、本四架橋については、大三島は特に両岸が切り立っておる、そして海がその谷底のようなところにある、電波障害、偽像を生み出す電波障害にかっこうの地域であるという点につきましては、どのような対策を用意しておられるのか、御答弁ください。
  128. 浅間敏雄

    浅間参考人 お答えいたします。  架橋が舶用のレーダー映像に及ぼします影響につきましては、重要な問題でございますので、国におきましてもかねてから調査研究が行われてきたわけでございますが、本四公団は発足以降、大島大橋の実例にかんがみまして、理論的な面から調査研究をいたしてまいりました。また、運航実務面からの検討も鋭意行っているわけでございます。理論的な面からの調査研究といたしましては、昭和五十一年度から、レーダー偽像の発生機構を理論的に解明いたしまして、将来架橋する橋梁についてのレーダー偽像の出現の予測及び偽像対策についての調査研究を行っております。  また、レーダー偽像そのものを減少させるためには、昨年からでございますが、フェライトというような、電波を吸収する性質を持ちます物質を塗料等に組み込みまして、電波吸収材の開発を行っております。これらの調査研究につきましてはまだ理論的に解明されない点もあり、電波吸収材につきましては施工性、耐候性、天候に耐え得る性質についての実験を重ねる必要がありますので、今後とも引き続き調査研究を行う予定にしております。
  129. 受田新吉

    ○受田委員 私、いまこの大三島の工事現場を図面で見させてもらうのですが、対岸との間にアーチリブの架設が始まっておりますね。それが最後にドッキングするまでの間に途中で何回か前進過程があるわけですが、この偽像のそうした出現というものに対して終始この工事の進行過程で抜かりなく何回も何回もやっていくのか、あるいはでき上がってやるのかということです。お答え願います。
  130. 浅間敏雄

    浅間参考人 お答えいたします。  橋に起因いたしましてレーダーの映像障害がいろいろ出てまいりますが、これは橋の架設の進行状況によりまして変わるものだと考えております。したがいまして、公団の船をもちまして、また鼻栗瀬戸を航行しております旅客船にもお願いいたしまして、常にレーダー映像を監視いたしましてその実態を周知するようにいたし、様子、経過を見ることといたしております。
  131. 受田新吉

    ○受田委員 これは、工事中ということであれば一時的で、工事中だけに起こるのならそれで済むことですが、工事完了後は永久的になるわけですから、非常に大事な問題になってくる。それで、上のロープ、それから両岸の工事用タワー、こういうものに皆当たって電波が反射してそうした虚像をつくってくる、こういうことでございますので、その研究はたゆみなく続けられなければならない。そして最終段階では塗料等によってその偽像は防ぎ得るという判断でございますか。完成後にも偽像の起こる可能性は残ると御判断されますか。
  132. 浅間敏雄

    浅間参考人 お答えいたします。  先ほど申し上げました塗料系によります電波吸収材、これの開発研究を行っておりますけれども、現在、実験室段階におきましては相当な効果は認められましたけれども、橋梁という巨大な工作物にそれを適用する場合には、先ほど申し上げました耐候性、施工性にまだ十分な確信が持てない段階でございまして、まだまだ実験を続けなければならないと思っております。また塗料の厚みにいたしましても、普通の塗料が〇・三ミリ程度でございますのに対して二・六ミリの厚さを必要といたしますので、この点は早急に実用化には至らないのではないかと考えておる次第でございます。
  133. 受田新吉

    ○受田委員 私が懸念するのは、工事中の一時的な障害ということであればそれは工事中だけがまんできますが、最後にドッキングして両方から進んだアーチが併合した時点で、橋が完成して後に、両方のタワーも消えた、上のロープも消えた、されどアーチの橋が残った、その時点で偽像が出る可能性があるかないかということです。
  134. 浅間敏雄

    浅間参考人 お答えいたします。  偽像が出る可能性は、レーダーの使用状態いかんにもよりますけれども、十分その可能性はあると考えております。
  135. 受田新吉

    ○受田委員 大変心配な御答弁が出たわけです。橋が完成した後においても電波障害による偽像が出る、その偽像が残る可能性があるという御答弁で、かもしれないでなくて可能性があるという御答弁なので、非常にこれは心配なのです。  その問題について、本四架橋の公団としてはその対策にどういうものを用意されておるか。私はいま一部を御説明を聞いたのでございますが、橋に塗る塗料について、潜水艦に塗る塗料と同じ塗料を塗って、つまり潜水艦が敵に発見されないために塗る、橋の塗料もそれと同じ色にしてやっていくという構想があるのですかどうですか。瀬戸内海を航行する潜水艦に塗る色とそれから橋に塗る色、それを双方で話し合いされたことがあるのですか。
  136. 浅間敏雄

    浅間参考人 まだお話し合いをいたしておりません。
  137. 受田新吉

    ○受田委員 お話し合いをしていないけれどもお話し合いをする可能性があるのですか。
  138. 浅間敏雄

    浅間参考人 お答えいたします。  非常に研究が進んだということで御指導いただけるなら、十分その意見を聞きまして今後の参考にいたしたいと考えております。
  139. 受田新吉

    ○受田委員 私、潜水艦の色と橋に塗る塗料と同じ色にせよと申し上げているわけじゃないのですが、そうすることによって、今度は航行船の側から見たならば、その虚像をつくらないための、電波を吸収するための塗料ということになると、潜水艦の色と同じ色にして片づく問題かどうかということです。そして、もし潜水艦と同じ色にして、しかも電波障害を防ごうとするということになるならば、経費の点でどういう限界があるのか。大したことはないのか、あるいは非常に多額の経費を必要とするのかということで、いささか心配が起こりました。
  140. 浅間敏雄

    浅間参考人 お答えいたします。  潜水艦に塗りますのは塗料ではなくて、その塗料の下に使います電波吸収材的なものを先生はおっしゃっておられると思いますが、その点につきましては、われわれも防衛庁の方にいろいろお伺いして御指導を仰ごうというような段階にございまして、先生指摘のようなことで今後研究は進めたい、こう思っておる次第でございます。
  141. 受田新吉

    ○受田委員 本四架橋を推進されるお立場で、この虚像とそれから実像の混乱を防ぐためにも、橋がかかったがゆえに航行が不安になったということをその航行船舶の運転者にも所有者にも与えてはならぬし、また船の乗員にも与えてはならないわけです。できるだけその被害を少なくする努力をしなければならぬのですが、ここで海上保安庁にちょっとお伺いしなければなりません。  どなたが来ておられますか。——課長さん。たびたび立ったり座られたりするので、なるべく前の方へおいでいただきまして御答弁いただきたいのですが、本四架橋の公団の役員の方からの御説明は、いまお聞きになられたと思います。     〔委員長退席、村田委員長代理着席〕 橋がかかった後において、完成後において実像に対する偽像が残る可能性がある。つまり、橋によって、いままでなかった偽像が生まれる。航行者にとって大変不安なものが生まれるという御答弁です。それに対して海上保安庁として質問をお受け願いたい。  海上交通安全法と海上衝突予防法の上で、海上保安庁は航路の保全、整備について責任と権限をどう持っておるのかをお答え願いたい。
  142. 渡辺純一郎

    ○渡辺説明員 海上保安庁は、船舶の海上交通の安全を確保するために、海上衝突予防法という法律でもって全般的な海上の船舶の航行安全のためのルールというものを設けておるわけでございます。さらに、船舶のふくそうする海域につきましては、海上交通安全法という法律がございまして、これに基づいて航路を指定いたしまして、海上衝突予防法に対する特例としての法規制を行っているところでございます。
  143. 受田新吉

    ○受田委員 そこで、責任の所在を明確に御答弁いただいておるのですが、船が航行するのを阻害するような障害物とか行為とかがあらわれた場合には、海上保安庁はそのものをほうっておくのかどうかということです。
  144. 渡辺純一郎

    ○渡辺説明員 具体的に申しますと、海上交通安全法の指定海域の場合には工作物設置は許可に係らしめておるわけでございます。
  145. 受田新吉

    ○受田委員 陸上であるならば、赤信号が出たときにはそこを通行してはならぬわけです。海上であるならば、そこに偽像が出てまやかしの目標が出てきたが、それを実像と誤りやすいものがあらわれたというときに、陸上に対応する対策として、それを除去させる義務と責任はないのですか。
  146. 渡辺純一郎

    ○渡辺説明員 先生指摘の偽像が発生いたしました場合に、私どもといたしましては本四公団に対しまして、工事進捗に伴いまして新規偽像が出現しておりますので、それについての対策を十分検討して対策を行うように指導を行っているところでございます。
  147. 受田新吉

    ○受田委員 本四公団の浅間理事さん、そういう指導を受けておりますか。
  148. 浅間敏雄

    浅間参考人 十分指導、御指示を受けております。
  149. 受田新吉

    ○受田委員 御指示を受け、奮励努力しても最後に偽像が残るという可能性を、いま浅間先生は言われたのです。そうしますと海上保安庁としては、御指導しても残るとなればどういうことになるでございましょうか。
  150. 渡辺純一郎

    ○渡辺説明員 当庁といたしましては、海上における危険の防止ということは最大の使命でございますので、当該海域におきましては巡視船艇によりまして警戒を行う、あるいは航行警報によりまして周知徹底を図りますとともに、偽像の具体的な実態調査を行いまして航行の安全を期するということで臨んでおるわけでございます。
  151. 受田新吉

    ○受田委員 そういう指導を加えて片づく問題でなくて、航行の障害になる偽像がもうそこへ出ないようにしなければならぬわけですが、偽像を残したままでもやむを得ぬ、そのときいろいろ指導を加えて航行させるということですか。
  152. 渡辺純一郎

    ○渡辺説明員 先ほど先生から御指摘ございましたように、私どもとしましては、偽像の除去等につきましては、工事に伴います新たな偽像の実態に応じまして適切な措置を講じまして、できるだけ偽像が出ないようにする研究を行うように、本四公団に対して指導を行っているところでございます。
  153. 受田新吉

    ○受田委員 指導を行っても最後に偽像が残るということでございます。橋が完成した時点で偽像が残るのです。そのときはどういうことになるかということです。過程を言うのでなくして、アーチ橋ができ上がったその時点で偽像が生まれる可能性がありますということでなくて、いまからちゃんとそのことを用意しておかないと、航行の船にしても船長にしても大変な不安です。また乗組員にしても、いつガチーンとやるかもしれない。現に、この偽像ということに直接関与はなかったけれども、大島大橋で、ガチーンと橋げたにぶち当たって一人死亡したのです。そういう事件が起こっておる。特に、瀬戸内海は最も安全な世界の楽園でありますが、楽園が地獄になっては大変ですからね。瀬戸内海でも、広島県、山口県の周辺は一番美しい島々です。そこに悲劇が起こる可能性のあるような偽像が残りますと言われたときに、完成した時点の偽像の扱いをどうするかを、いま課長さんに御答弁をしていただいて、なおむずかしいことがあれば、お帰りになって御相談していただきたいと思うのです。課長さんで御答弁できる範囲、つまり、橋完成の時点において偽像が残る、航行障害物が出る、その問題について海上保安庁はどういう態度をとられるかということです。
  154. 渡辺純一郎

    ○渡辺説明員 橋脚完成時の偽像の問題につきましては、橋梁の完成までに、先ほどから申しておりますように、本四公団には十分に研究していただきますとともに、われわれといたしましても、われわれの使命といたしましては海上の安全を確保するということが最大の課題でございますので、あらゆる施策を講じまして事故というものが起きないように対策をしてまいる所存でございます。
  155. 受田新吉

    ○受田委員 浅間先生、本四架橋公団はどうですか、塗料によって電波を吸収して反射せしめないで偽像をつくらないようにしたい、そのときに莫大な金がかかってもそういう吸収塗料を用いたい、厚さも厚くしたいということでございますか、費用の限界がございますか。
  156. 浅間敏雄

    浅間参考人 お答えいたします。  研究の過程におきましてはあらゆる手段を尽くしまして可能性のあるものを探求するのは、これは当然でございます。しかしながら、実用段階に入りますと、その他の工夫を用いまして、両方いろいろ併用することによりまして非常な効果が生まれることがございますので、橋の形の工夫であるとか、それに塗ります塗料、こういったものの組み合わせを考えますとある程度安価にできる場合も考えられますので、そういうことを目標にわれわれとしては研究を進める所存でございまして、高価なものを全面に塗るということだけで解決するとは考えておりません。
  157. 受田新吉

    ○受田委員 課長さん、レーダーに映る実像と虚像、それはレーダーの研究が十分足りて、その免許を取った人には明確にわかるということになりますかどうですか。非常な不安な状態だが判別はできるという程度かどうかです。
  158. 渡辺純一郎

    ○渡辺説明員 私どもの役所にも船舶関係の運航をしている者が多数おるわけでございますが、その経験によりますと、かなり識別ができるということでございます。
  159. 受田新吉

    ○受田委員 天候が悪く霧の中を航行するというような状態、いろいろな状態が海上には起こるわけですが、そのときには適切な指導も加えられるということをわれわれはよく承知しております。そうした視界が十分でないときの船長の航行安全のための措置については、それぞれ適切な指導が加えられており、また基準がある。しかし、いま課長さん御自身がおっしゃったように、虚像か実像かが、非常に洗練されたら識別ができるというようなことでは、非常にこれは不安がある。外国の船がここへ入ってくることもある。ここら辺は偽像ができる地区ですよ、大島、大三島は偽像が生まれますよという注意をしても、外国の船などはそういうものを簡単にすっと通っていってガチンとやる危険がある。常に明確に、人間の生命は地球よりも重いんだ、だから海上航行は完全に安全であるという道を選んでこそ船長は安心して航行するんですよ。非常に洗練された船長でなければ、実像か偽像かどうかが、いまおっしゃるように明確にすぐ判断できるんじゃない。課長さんの御答弁は私は非常に不安がある。そんなときはすかっと判別ができるような方法をとってあげないと、多くの人の生命を預かって海上航行する人が、虚像が出た、あれは実像と偽像とどうかなということで判断に苦しむようなことではこれは大変なんで、そこをぴしつと、海上交通の安全を担当する海上保安庁として、これに対策を立ててもらいたい。  それで、私いま非常に不安があるのは、浅間先生御自身の、本四架橋の一番大事なポストにおられる方が、現在進行中の過程でなく、過程なら私あえて言いません、この工事ができ上がったら消えるのです。アーチが結んで本当にりっぱな橋ができ上がった、大三島と伯方島とが結ばれた時点、完成した時点で偽像が残る可能性があるというこのお言葉に、私は非常に不安があるのです。だから、大三島を航行する人には常に偽像の不安があって、船長でもここは通りたくない、橋がなかったら安全じゃがのうという、橋がかかったために大変な不安を抱くということになると、むしろ橋がかからない方がいい、橋をかけるのは反対だと訴訟でも起こされたらおしまいだというような問題にも発展する可能性があると思う。どうでしょう、この際本四架橋に当たりまして、特に一番西部のこの架橋、大三島という、両岸が切り立っておる、岩石等で非常に電波障害になりやすい地区、大三島、大島、こういうところは、ひとつ本当に偽像をなくする努力を本四公団としても熱心に取り組まれ、海上保安庁としても交通安全の責任者、衝突防止の責任者として熱心に取っ組んでもらいたい。これは橋が完成する時点までにその双方の責任を明確にして航行者の不安を除去する、広島県、山口県、海上交通者の不安をなくするための御努力を願いたいのです。非常にきょう心配が起こっておるのですが、この点についてもう一度重ねて、本四架橋の浅間理事さんからと課長さんから、この問題の解決に最後の努力をかくかくしたい、費用が少々よけいにかかっても、その費用を問わずがんばってみたい、生命を大事にする方が橋がかかるよりも大事であるという観点から御答弁をいただき、それをいただいたら私の質問を終わることにします。御答弁が十分でなかったら、また質問を繰り返します。
  160. 浅間敏雄

    浅間参考人 お答えいたします。  今後とも、電波吸収材その他の研究開発に努めまして、技術の確立を待って対処するような覚悟で進めるつもりでございます。また工事中の対策で、いろいろ視界情報であるとか船舶の動静の通報とか、こういうものを出してレーダー障害に対応することでございますが、完成後もそういった情報の提供を自動化システムでやれないかというふうなことを研究いたしておりますので、あわせて申し上げる次第でございます。
  161. 渡辺純一郎

    ○渡辺説明員 海上保安庁といたしましては、船舶の航行安全の確保というのは最大の課題でございますので、現在時点における対策はもちろんのことでございますが、架橋完成以後の問題につきましても十分な決意を持ってこの対策に当たりたい、こういうふうに考える次第でございます。
  162. 受田新吉

    ○受田委員 これでおきましょう。御苦労でありました。
  163. 村田敬次郎

    ○村田委員長代理 これにて受田新吉君の質疑は終了いたしました。  次に、柴田睦夫君。
  164. 柴田睦夫

    ○柴田(睦)委員 今回の科学技術庁設置法改正案の内容は、筑波研究学園都市に科学技術庁の二つの機関であります金属材料技術研究所の一部と国立防災科学技術センターを移転するという内容になっているわけですが、科学技術庁長官は、筑波研究学園都市建設に関して、科学技術に関する基本的な事項を統率しておられるわけですから、この筑波研究学園都市建設問題について幾つか質問をしておきたいと思います。  まず、この筑波研究学園都市が本当に研究学園都市としての機能を十分果たすために科学技術庁はどのような対策を実施しておられるのか、ここからお伺いします。
  165. 大澤弘之

    ○大澤政府委員 お答え申し上げます。  筑波研究学園都市構想というのは、非常に古うございまして昭和三十年代なんでございますが、その当時から科学技術庁といたしましては、日本に研究都市と申しますか、大きないろいろな種類の研究所が集まってその集積効果を高めると申しますか、一大研究学園を形成していくということは日本の科学技術振興上非常に重要なことであるということで、この都市構想につきましてはその推進に努めてまいってきたところでございます。そうして、だんだんこれが具体化してまいります過程におきましては、一時、東京に所在いたします既存の各国立試験研究機関では移転反対とか、そういったようなことがたくさんございました。このことにつきましては、新しい都市での研究の条件、あるいは生活環境の条件といったものについての心配とかいろいろなことが問題点として挙げられまして、移転の促進というようなことにつきまして、そういう諸般の問題につきまして推進の役割りを果たしてきております。特に科学技術庁関係研究所ができるだけ早く行って、そうして先導的な役割りを果たして、それによりましてむしろ他省庁研究機関にもどんどん行っていただくようにというようなことで、そういうような努力もしてまいりました。  一方、大体東京都の中にあります研究機関が移転をしていくわけでございますので、この移転をしましたときの研究者の処遇というようなことにつきましてもいろいろ問題がございました。当時は手当の問題等が東京ではわりあい高くて地方が低い、しかし新しい都市に行きますとそこでの生活条件が大変悪いので、やはりそういうことについての補償といいますか、そういうようなものも必要だといったような声もあったりいたしますので、こういう移転研究者の処遇と申しますか、手当の問題につきましても、まとめて人事院勧告等々に有利な条件を盛り込んでいただくようにお願いをしていくといったような役割りをやってきておりました。  だんだん研究機関の移転が、現在幸いにして進みつつございまして、昭和五十四年に概成ということで、ほぼ当初に予定いたしました機関の移転がだんだん進んでまいるわけでございます。ここにおきますいろんな建設関係の問題につきましては、国土庁の方で担当をしてきておるものでございますので、私どもの方としましては、むしろ研究者側あるいは研究所側に立っていろいろな条件についてのお願いをしたり、それを進めることについてお手伝いするというようなことをしてきておるのでございますが、特に最近におきましては、むしろ移転した後に、あれだけの研究所があそこに集まっておりますので、研究の集積の効果を高めると申しますか、最近のいろいろな研究開発におきましては、いわゆる学際的な研究がふえてきておる、いろいろな分野の研究者が力を合わせて一つの研究開発の目標に向かって進まなければならぬという種類の研究がどんどんふえてきております。そういうようなことを遂行していくためにも大変すぐれた研究環境にございますので、そういう集積効果を高めていくといったようなこととか、あるいはあれだけの研究所群が挙がっておりますので、そういうところで研究情報といったものを円滑に流していくような役割りとか、各研究所に共通するような基盤的なことについて科学技術庁としてやれることがあったらやってまいりたい、こういうことで推進の役を果たしてきておるつもりでございます。
  166. 柴田睦夫

    ○柴田(睦)委員 国土庁お話が出ましたけれども、五十年の二月十四日の建設委員会で、当時の金丸国土庁長官が、筑波移転の政府の窓口は国土庁であるということを言われました。しかし、これは国土庁としては施設の建設や環境対策などということになると思うのです。将来の問題を考えても、筑波が本当に研究学園都市の機能を十分に果たすためには、研究条件、研究体制の確立が図られなければならないと考えるわけです。この点の責任は科学技術庁がとるというように考えてよろしいのでしょうか。
  167. 大澤弘之

    ○大澤政府委員 筑波に移転いたします研究機関は、それぞれの省庁に属する付属機関が多うございまして、その範囲におきましては、それぞれの所属機関が当然責任を持っておるわけでございます。科学技術庁といたしましては、ただいま申し上げましたように共通的、基盤的な問題について側面的になし得ることがあればしていくし、また各省庁の御援助をしていくというような立場にあるかと思っております。  一言つけ加えさせていただきますが、当科学技術庁自身といたしましても、ただいま設置法等に出ておりますように研究所がございますので、これは科学技術庁としてのあれでございます。
  168. 柴田睦夫

    ○柴田(睦)委員 筑波には五十一年十一月に研究交流推進連絡会が移転する四十三機関の省庁によってつくられて、科学技術庁がその事務局ということになっております。現段階ではこの研究条件、研究体制について論議し、要求をまとめるという点から見ますと、ただ一つの機関であるわけです。しかし、これは単なる連絡会で、研究条件の充実を求める要求というのはすべて各省庁と大蔵省の折衝に任されるというのが実態であります。これでは総合的な研究体制の確立が図られることを期待することはできないと思うのです。いままでの閣議の決定などを見てみましても、学園都市の建設のおくれがあったために、その方ばかりに力がとられて、筑波での総合的な研究体制については十分に考慮が加えられていないというのが現状であると思います。科学技術庁科学技術に関する基本的な政策の企画、立案などを図る責任を果たすためにも、この総合的な研究体制の確立を要求すべきであると思うのですが、この点は長官からお伺いしたいと思います。
  169. 大澤弘之

    ○大澤政府委員 私から先に事務的な点を申し上げさせていただきたいと思います。  総合的な研究体制は、先生おっしゃいますように、国立試験研究機関全体にとりましては大変大事なことでございまして、単に筑波だけの問題ではないと思っておるのでございますが、この点につきましては科学技術庁と申しますか科学技術会議におきまして、これから十年間における総合的な科学技術政策の基本についてということを示しておるわけでございます。これは広く日本全体のことをとらえておりまして、いわゆる産官学と申しますか、学界もあるいは国立試験研究機関も民間企業においても、日本の科学技術政策の方向はこういう方向なので、それに沿って各研究開発なり何なり科学技術振興に努めてほしいというような意味合いでの指針的なものとして出されておるわけでございます。  そういう意味合いにおきまして、筑波に移転いたします国立機関というのも非常に数多くいろいろな機関がございまして、それぞれまた違った仕事をしておりますので、それらの方々がそういう分野においてやっていく上では、ただいま申し上げましたような指針に従ってやっていくわけでございますが、先生お話で筑波において特にというのは、むしろ、筑波にあれだけの機関が行きまして、そこで何かまとまった一つの大きな研究課題なりあるいはその研究の方向なりを打ち出してと、こういうことかと考えるのでございますけれども、それについてはいまお話がございました研究連絡会というところで、まだ現在は非常に実務的なところで出発をしておるのでございますけれども、行く行くは研究者の皆さんの総意がまとまりつつありますれば、そういうような共同の研究テーマなり何なりを掲げて、筑波としての集積効果の高まった具体的な課題に取り組んでまいるようにいたしていきたい、こんなふうに考えておるわけでございます。
  170. 熊谷太三郎

    熊谷国務大臣 いま大体局長がお答え申し上げたような状態でございまして、まあ移転早々でございますので、だんだんそういうことをもとにいたしまして、いい意味でまたそういう考えが盛り上がってさましたり必要を感じましたらそういう方向に考えていきたい、このように思っております。
  171. 柴田睦夫

    ○柴田(睦)委員 要は総合的な研究というものが必要であると考えるわけで、そういう中で科学技術庁が中、心になってリードしていく権限というかそういうものを持って推進に当たるべきだという考えであります。  次に、この研究条件の改善に関連して具体的に幾つかお伺いしたいと思うのです。  第一は、現在の移転機関の中には含まれていないのですが、移転する各研究機関から要求が出ておる歴史的な記念物を保存する施設の建設という問題についてであります。  移転する研究所や試験場の中には、技術研究の歴史を物語るものがたくさんあるわけです。たとえば農林省の蚕糸試験場のものを見てみますと、まず門扉が明治四年の当時の蚕業試験場のもので、製糸用ボイラーのパイプでつくられている貴重なものであると聞いております。そしてまた科学博物館からも注目されているということであります。また、繭の品種保存ということを見てみましても、二百年前からのものが保存され、蚕も五百三十二種類に及ぶものが保存されているということであります。  また通産省では、三省堂の教科書にも紹介されておりますリンデ式空気液化分離機、これは大正十一年にドイツから輸入されたわが国最初の空中窒素の固定に使用されたものだそうであります。  二つほど例を挙げましたけれども、この二つをとってみましても、いずれも日本の産業、科学技術の発達を後世に伝えていくという点できわめて重要なものであります。こういうものにつきまして、移転に当たってどういう対策をとろうとしているのか、農林省と通産省にお伺いします。
  172. 北野茂夫

    ○北野説明員 農林省の試験研究機関で筑波研究学園都市に移転する研究機関としては十一ございまして、その中ですでに五機関が移転を完了しておりますけれども、それぞれの研究機関は、ただいま先生お話のとおり歴史も非常に古く、明治以来の急速な技術の進歩に伴いましていろいろの研究がなされ、かついろいろの試験場ができまして、その間に植物、動物あるいは機械等いろいろの標本等が蓄積されておりまして、それらが、現在におきましても試験研究推進上非常に役立っているところでございます。  そのような貴重なものにつきましては、移転に際しまして極力現状のまま全部持っていくということを原則にしておりまして、すでに移転をいたしました果樹試験場あるいは林業試験場等におきましては、研究機関に植栽してありました樹木等も持っていけるものは全部抜いて向こうに持っていって植えかえるというようなことをしておりますし、ただいま先生お話のありました蚕糸試験場につきましては、五十四年度移転計画でございますけれども、蚕糸試験場には古い繭とかあるいは繰糸機とかいろいろの機械その他たくさんの標本がございますので、標本室として運営しておりますけれども、それもそっくり持ってまいりまして、筑波におきましても標本室を開きたい。それからなお、そういうものの中から一般の普及、啓蒙に役立つものにつきましては、特に共同利用施設の一部に展示室を設けまして広く公開いたしまして、一般大衆の便に供し、いろいろと参考にしたい、そのように考えておるところでございまして、なるべく現状のまま持っていけるものはみんな持っていきたい、そのように考えております。
  173. 山中正美

    山中説明員 工業技術院傘下の九つの試験所が五十四年度に筑波学園都市に移転することになっておりまして、現在引っ越しの担当者を決めましていろいろ検討している最中でございますけれども、先ほど農林省からも御説明がございましたように、私どもも一応科学技術の発展あるいは産業の発達にいろいろ貢献した種々の資料があるわけでございますけれども、これは当然現状のまま筑波に移転しまして長く保存していきたい、こういうふうに考えておるところであります。  たとえばメートル条約によりまして、メートル原器自体はもうなくなっているわけでございますけれども、そういうふうな過去数十年にわたりまして日本の度量の中心になっておりましたメートル原器等も当然持ってまいりまして、今後いろんな参考にしていきたい、そういうふうに考えている所存でございます。  以上でございます。
  174. 柴田睦夫

    ○柴田(睦)委員 こういう例はたくさんあるわけです。この技術研究の記念物については、一九七五年の九月には技術記念保存国際会議が開かれまして、そこに出席された現広島大学教授であります山崎俊雄という方が日本の技術記念物の保存はおくれているということを述べて、技術記念物の保存は一九七〇年代の国際的課題であるということを指摘されております。これは昭和五十年度には文部省の科学研究費も出されて、研究が進められているものであるわけです。こういうことですから、移転するすべての試験研究機関の技術記念物のリストを早急にまとめる必要があると思うのですが、このリストをつくることについての意見を科技庁、農林省、通産省にお尋ねをいたします。
  175. 大澤弘之

    ○大澤政府委員 私ども先ほど御説明申し上げましたように、研究を進めることにつきまして、研究条件とか生活環境とかいうようなことで各省庁にお集まりを願って、過去十年ぐらいずっと連絡会というものを開きまして、各省庁の御要望とかそういうことの中で、共通的なことでこれからの学園都市として必要なことはどういうことだろうということも検討いたし、それに従いまして科学技術庁としてできることをさせていただいてきたつもりでございますが、実は従来のこの検討の中には、ただいま先生指摘のようなことが私どもの方までは、正直に申し上げまして余り上がってきてなかったことで、私どもの方もまだ十分な関心を持たずと申しますか、むしろ各省庁がそれぞれにおやりになること、こういうふうに考えておったわけでございまして、科学技術庁の付属の研究所はみんな若うございますので、余り歴史的な記念物を実は持っていなかった、こういういきさつがございます。何か共通的に科学技術庁としてそういうものについて仕事ができることがありますれば、科学技術庁としては前向きに対処してまいりたい、こう考えておるわけでございます。
  176. 北野茂夫

    ○北野説明員 農林省の研究機関におきましては、現在のところ統一的にそういう物の名称を整理し保管するための計画はございませんけれども、各研究機関それぞれにおきまして貴重な資料でございますので、備品としての整備関係等からも十分にそのような品目の整理、保管について今後検討していきたい、そのように考えております。
  177. 山中正美

    山中説明員 お答えいたします。  工業技術院傘下の九つの試験所の移転備品は一応現在リストを作成中でありますけれども、一応コンテナ等に入れる物品自体が、コンテナにいたしまして大体十八万個、その他特別な物品といたしまして個々に運ぶ物品が大体十六万個あるわけでございまして、そのリストを現在作成中でございますので、その間、先生のおっしゃいましたリスト等についても考慮していきたい、そういうように考えております。  以上でございます。
  178. 柴田睦夫

    ○柴田(睦)委員 これらの貴重な資料の中ですでに破損したものあるいは破棄したもの、こうしたものがあるそうですか、保存については早急に対策をとらなければならないと考えます。  先ほど言いました山崎教授は、国際的にはスイスの技術産業博物館、ドイツの博物館、アメリカなどの国立歴史技術博物館など、先進国ではそういったことが進められているのに、日本では科学技術史を総合した中央博物館はないと述べて、この博物館の必要性を強調しております。  こういう実情ですから、筑波移転機関の貴重な資料を保存する科学博物館などの施設の建設を筑波計画へ追加するということも提案するわけですけれども、その追加することも含めて積極的な対策をとらなければならないと思うのですが、この点、長官の見解をお伺いします。
  179. 熊谷太三郎

    熊谷国務大臣 先ほどからの御発言を承っておりまして、いろいろ貴重な歴史的な、そういういわば記念品を保存するというような内容の御発言を承りまして、私も非常に共鳴いたしておるところでございます。なおさらには、今後科学技術関係の博物館というような構想を一つ持てということでございますが、これは非常に結構なお考えであると思っております。ただ、現在はまだ必要な研究施設が十分整っていない状態でございますが、先日私も筑波学園都市を視察いたしまして、非常にいろいろな状況が進捗した様子を見まして、いまさらのように非常に感慨が深かったわけでございますが、いま言われましたようなそういういろいろの問題につきましては、私も心から共鳴いたしておりますので、今後筑波学園都市の実質的な完成と並行いたしまして、ひとつ前向きに考えてまいりたい、このように感じております。     〔村田委員長代理退席、岩垂委員長代理着席〕
  180. 柴田睦夫

    ○柴田(睦)委員 次に、筑波に建設される研究交流センターについてお尋ねいたします。  この研究交流センターは、研究者相互間の研究上の接触交流の場の提供、科学技術情報と資料の提供を目的として設けられたものであるわけですが、一万名を超える研究者などの研究交流施設としては、定員二百名程度の国際会議室が一つ、一般会議室が三つ、定員約九十名、そのほか資料閲覧室と情報検索室が各一部屋というように、これを見てみますときわめて貧弱であると思うわけです。現在科学技術庁はこれで十分と考えておられるのかどうかお伺いします。
  181. 大澤弘之

    ○大澤政府委員 お答えいたします。  研究交流センターにつきましての目的と申しますか、それから現在の施設につきまして、いま先生からお話があったとおりでございます。これにつきましては、実は当初の構想はそう雄大な構想というほどではないのでございますけれども、いまよりも実は多少大き目な構想であったのでございますが、構想を立てた時点以後の物価諸費の値上がりが大変激しゅうございまして、三分の一程度当初の構想よりも縮小はいたしております。しかし、現時点でまだ移転機関が来年概成ということでございますし、その後筑波研究学園都市というのは、私どもは大発展をしていくというふうには踏んでおるのでございますけれども、しばらくの間はこのぐらいの設備で十分やっていけるものということで建設をいたしたものでございます。  十年先、二十年先の国際会議ということにつきましての議論も現在出ておるわけでございまして、千人程度の収容力のある国際会議場をという声が研究者の間にあることも十分承知をしておりまして、それにつきましては、むしろいま国土庁の方が積極的にそういう施設の建設等も考えておるわけでございますが、私ども国土庁とよく連絡をとりまして、将来の非常に大きな研究交流の構想につきましては、またそれなりの対処をしていかなければならないものかと考えておるわけでございます。
  182. 柴田睦夫

    ○柴田(睦)委員 この施設の設置目的から見てみましても、各機関で行われております研究に総合性を持たせるという意味から見てみましても、非常に重要な機関であって、この規模ではいずれにしろ貧弱過ぎると思います。科学技術庁研究学園都市にふさわしいものをつくらなければならない、そういう意味で早急に増設計画を持つべきであると思うのですけれども、その点についてはいかがですか。
  183. 大澤弘之

    ○大澤政府委員 ただいま御答弁申し上げましたとおり、しばらくの間は現在の施設の広さで十分やっていけるのではないかと私どもも考えております。ただ、十年ぐらい先のことを考えますと、少し大きな国際会議場といったものが必要になるかとも考えておるのでございますが、この辺、東京と筑波との交通機関の問題とか宿泊施設の問題とか、関連的なこともございますので、まだ具体的に私どもとしては大きな国際会議場自身が何年にというふうなところまでは行っておりません。
  184. 柴田睦夫

    ○柴田(睦)委員 いずれにしてもこのセンターが、一大国策として推進されております総合的研究学園都市建設という大事業のかなめとなる最重要の施設の一つであります。将来展望としては、言われておりますように一千名から二千名規模の国際会議場を設置して、一般会議室を大幅に増設する、同時に研究者のための情報、資料の交換、集積センターとしてその機能を大幅に拡充強化すべきものであるというように考えます。  そのために、研究学園都市の研究者を中心に民主的に構成された検討機関を設けるとか、既存の研究者総合交流専門委員会などを活用するなどの方法によって、研究者本位、利用者本位の強化拡充の基本計画を早急に策定すべきであると考えます。科学技術庁としてはまだ消極的なように思うのですけれども、ひとつ科技庁の決意と今後の方針をお伺いします。
  185. 熊谷太三郎

    熊谷国務大臣 現在の施設に関しましては、ただいま局長からお答えしたとおりでございます。     〔岩垂委員長代理退席、村田委員長代理着席〕 何分にもいろいろ費用その他の関係もありまして、決して十分とは思いませんけれども、まず当分の間は一応現在の程度で目的はほぼ達成できるのではないかと考えているわけでございますが、しかし、先ほども局長からも申し上げておりますように、将来にわたって、今後にわたってあの施設で十分であると考えているわけではありませんので、ひとつできるだけそういう御発言の内容も十分考えまして、前向きに善処いたしたいと、このように考えております。
  186. 柴田睦夫

    ○柴田(睦)委員 次に、研究交流センターと行政組織法との関係ですが、この点につきましては、立法府と行政府という立場の違いによってこの見解の相違が出てくる問題であるかもしれませんが、立法府のサイドからの問題提起として二、三の点について伺っておきます。  科技庁は、同センターの行政組織法上の位置づけについて、同センターの規模が小さく、かつ将来展望が確定していないことなどを理由にいたしまして第八条の機関、つまり「附属機関その他の機関」とするよりも、第七条の機関、つまり「内部部局」の一部とするのが妥当であるという法解釈をしているようであります。立法府サイドから見た場合に、このセンターを第七条機関として設置することについてはいろいろ問題があると思うのです。  これを言いますと、第一に法解釈上の問題、これは同センターを八条機関として設置することは、機構、組織を機動的に管理、運営するという点では規制が強過ぎるという議論があるわけですけれども、だからといって第七条機関として位置づけるという法解釈は、これは拡大し過ぎであって、結果的には第八条の規定を空文化するということにもつながりかねないと思うわけです。     〔村田委員長代理退席、委員長着席〕  二番目には、国会サイドから見た機構管理のあり方という点の問題です。そもそも行政組織法の第八条の規定は、その立法過程で国会修正によって盛り込まれた条文であって、その趣旨は、国会サイドからも行政機構管理をチェックし規制するという観点から第三条へ第七条、第九条以外の「附属機関その他の機関」の設置については立法措置を講じなければならないということにしたのであります。このセンターを第七条機関として設置するという今回の措置は、第八条の規定の空文化をもたらす危険ということをさきに言いましたけれども、それだけではなくて、国会修正でわざわざ盛り込んだ立法府の意思に反するということにもなりかねないわけです。  第三番目に、今度は組織政策論としての問題。このセンターは、一大国策として実施されている総合的研究学園都市建設のかなめともなる重要な施設であって、将来展望としては、その機構と機能は大事業にふさわしく大幅に拡充強化すべき性質のものであります。施設の管理、運営については、この大事業が一大国策であることにかんがみて、科学技術総合調整官庁としての科技庁が責任を持って当たるべきものであると考えます。責任と権限があいまいにされるおそれのある特殊法人や公益法人などへの委託はやるべきじゃない。科技庁が責任を持って当たらなくちゃならない。とすれば、組織政策論としては、第七条機関の一部というような変則的なことをやるよりも、初めから第八条機関として位置づけるべきであるというように私は考えるわけです。この点について科技庁は行政管理庁や法制局との間で公式の詰めはやっていないというようにいままで聞いてきたんですけれども、これはなぜか。私のいまの問題提起に対する見解も含めて、科技庁側から御答弁を願いたいと思います。
  187. 半澤治雄

    ○半澤政府委員 お答え申し上げます。  ただいま先生からいろいろ問題点指摘されてございますが、科学技術庁といたしましては、公式に行政管理庁と詰めたということではございませんけれども、まさに先生指摘のように、現在の段階では研究学園都市全体の管理に関する当庁の業務とも関連いたしまして、その業務の一環として職員を派遣して管理に当たれば足りるというふうに考えてございます。当庁のただいま申し上げました研究学園都市管理の一般的な業務との関係におきまして、そのもとに管理官を置いているわけでございますので、そういう意味から七条機関と見るのが至当であるというふうに考えておるわけでございます。  将来の展望との関係では、先ほど計画局長からお答えいたしましたように、現在の段階ではまだ具体的な問題として提示されるに至っておりませんので、当面の問題としていま申し上げましたような考え方をとっておるわけでございます。
  188. 柴田睦夫

    ○柴田(睦)委員 では行政管理庁の方にお伺いしますが、科技庁側から正式の話がないという段階ですから、行管庁としては、八条機関として設置すべきであるとかそうではないとか、そういう点について見解を表明することはやりづらいことではないかと思うのですけれども、一般論としていま私が言った問題提起、これをどう思っておられるか。機構管理官庁としての見解をお伺いしたいと思います。
  189. 關言行

    ○關説明員 先生指摘のように、国家行政組織法の第八条におきましては「第三条の各行政機関には、前条」これは内部部局を決めております。条でございますけれども、「の内部部局の外、法律の定める所掌事務の範囲内で、特に必要がある場合においては、法律の定めるところにより、審議会又は協議会及び試験所、研究所、文教施設、医療施設その他の機関を置くことができる。」というふうに規定をされておるわけでございます。  ただいま先生指摘の点は、このようなセンターを七条の内部部局の一部分として置くということが、八条で法律によってそのようなものを置くことができるという精神に反しないかということでございますけれども、私どもといたしましては、先ほどから御指摘もございましたように、このセンターの場合には規模もまだ非常に小さいものでございまして、特に独立の機関というようなものに近い八条機関にいたすのはいかがかと思います。  それから第二番目には、御指摘のように研究者の交流の場あるいは情報研究者に提供する場ということでございまして、これが特定の事業をみずからの責任において相当多量に処理をいたすという性質の機関でもないわけでございます。それのみではなくて、先ほど言及されましたように、科学技術庁が持っております研究調整機能の一環としてお役に立つ機関であろうと思います。そういう研究調整機能というのはやはり内部部局が持っておるわけでございまして、そういう機能の性格から見ましても、内部部局の方がむしろふさわしいのではないかというふうに考えておるわけでございます。  なお蛇足になるかもしれませんけれども、このような施設をつくること自体につきましては、その施設整備段階から予算等を通じまして国会の方の御審議をいただいておるというふうに私どもは見ておるわけでございます。
  190. 柴田睦夫

    ○柴田(睦)委員 議論しなくちゃならぬ問題があると思いますけれども、これはまた次の機会に譲りたいと思います。  同センターの今後の運営のあり方について、二つほど意見を交えながら聞きたいと思います。  科技庁から説明を聞きますと、内外の専門家十名程度を委嘱して、任期を定めて恒常的な委員会議のようなものを設置し、運営の基本方針を審議してもらうということでありますが、このセンターが第七条機関の一部とされている中では、運営委員会議を恒常的なものとして設置するためには第八条機関として設置する必要が出てくる、法律に基づかない私的諮問機関にした場合には第八条違反の問題が出てくるというように考えるわけです。同センターをさしあたり第七条機関の一部として運営し、かつ恒常的な運営委員会議を置くという場合に、運営委員会議は研究学園都市の研究者、利用者を中心にした連絡会議的なものにする必要があると考えます。  そこでお伺いするのですが、第一に、センターのさしあたっての運営については、研究学園都市の研究者、利用者を中心にした連絡会議的な運営委員会議を設けるとか、いまある研究者総合交流専門委員会を活用するなどの方法によって関係者の意見を総合的に反映させ、研究者本位、利用者本位の民主的かつ合理的な運営が確保されるような措置を講ずべきであると考えますが、この点が一つ。  もう一つは、関係者の意見を総合的に反映させるという点で、運営委員会議の構成を十人程度とすることでは少な過ぎて問題があるのじゃないか。構成員はさしあたり少なくとも二十人以上とすべきであると考えるわけです。施設の利用者は公務員たる研究者などであるわけですから、経費の点では十人にしても二十人にしても大きな差は出てこないはずであります。  以上、二つの点について科技庁の見解をお伺いします。
  191. 大澤弘之

    ○大澤政府委員 お答えいたします。  先生の御質問の最初の方でございますが、運営委員会と申しますのは、私ども先生お話がありましたような大きな運営委員会と申しますか、いわゆる政府の諮問機関的な形で実は考えているわけではございませんで、委員会と言うのが、むしろ先生の御指摘のような形ではふさわしくないのかもしれません。学識経験とか、こういうことにつきましていろいろ御意見のあります方々に御相談を申し上げようということで、十人というふうなことで一応予算の要求をいたしまして、その方々に今後の運営につきまして、わりあい大所高所的な角度から御意見をいただこうか、こういうことでの構想でございます。  一方、先生そういうふうなことから御指摘がございました、むしろ筑波の研究者を集めて、そうしてその筑波の研究者の方々意見を聞きながら、つまり研究者本位とかいういまお話がございましたが、そういうことでの意見反映を図るべきであろうということでございます。私ども、筑波の交流センターというのは、筑波の研究者の方々のために運営をしていかなければならないものでございますので、当然そういう措置が必要だと思っておりまして、これに関しましては、すでに研究交流推進連絡会というものを私ども筑波に設けておりまして、ここでは現在移転をいたしました研究所の所長さん方が連絡会のメンバーというふうなことをいたしておりまして、ですからこれは、現在もうすでに二十何機関移転しておりますが、そういう方々がメンバーになりまして、年に二回会合を開いております。  さらにそれには幹事会というもの、あるいは各専門委員会というようなものも設けまして、きめ細かに意見を吸い上げて、交流センターの運営を筑波の研究者の皆さん方のためになるような形で進めてまいる、こういうふうにしておるわけでございますので、先生ただいま御指摘がありましたような線に沿っておるのではないかと思っておるわけでございます。
  192. 柴田睦夫

    ○柴田(睦)委員 次に、地震対策についてお伺いします。  国立防災科学技術センターに関連して、防災科学技術、特に地震対策の問題です。  午前中にもありましたが、政府は大規模地震対策特別措置法案を決定して国会提出しました。これによりますと、総理大臣は、地震予知情報を受けたときは警戒宣言を発するということになっております。ところで、この予知技術そのものはまだ実用化できる段階でないということが各界から指摘をされているのが現状であろうと思うわけです。そういう状況の中にありながら、今回の法案は、予知情報があたかも十分であるかのように、それを前提として出されてきているわけです。  そこでお伺いするのですが、科学技術庁長官は、地震予知推進本部長という立場におられるわけですけれども地震予知は万全であって、実用化できるという考え方に立っておられるのかどうか、お伺いします。
  193. 熊谷太三郎

    熊谷国務大臣 地震予知は万全であるかというようなお尋ねかと思いますが、これもいろいろな程度の問題がありまして、もう完全に大丈夫だというような段階ではないと思っております。  ただ、局地的に非常に地震が多発、あるいは近く起きるというような可能性のあるところにおきまして、ある程度施設をいたしますれば、いろいろな規模とか範囲とか、そういう細かい点についてはまだ不十分かと思いますが、ある程度予知は必ずしも不可能でないと思っておりますから、やはりそういう大規模地震対策特別措置法というようなものも現在の予知能力というものを活用してということになろうかと思いますけれども、それに呼応するような予知能力が全然ないとも考えておりませんが、決して完全なものであるということはまだまだ言えないと思っております。
  194. 柴田睦夫

    ○柴田(睦)委員 地震予知の問題につきましては、昭和四十八年六月二十九日、測地学審議会から第三次地震予知計画というのが建議されておりますけれども、この建議事項につきましてどう対応されているのか、簡単にお伺いします。
  195. 園山重道

    園山政府委員 お答えいたします。  先生指摘のように、地震予知につきましては、文部省にございます測地学審議会が五ヵ年計画を立てておられます。御指摘のように第三次五ヵ年計画が、今年度、五十三年度を最終年度として進行いたしておるところでございまして、なお、第三次建議には、一昨年東海地方の地震可能性指摘がございました時点でさらに追加の建議が出ておりまして、それまでの第三次建議につきましては、いわば通常のペースで進められてきたわけでございますが、特に追加建議が出まして、東海地域について特段の対策をすべしということが指摘されまして、政府におきましては、一昨年内閣に設置されました地震予知推進本部におきまして、これに急遽対応したわけでございまして、おおむねこの第三次建議並びに追加建議で示されました地震予知のための対策は行われている、このように理解いたしております。
  196. 柴田睦夫

    ○柴田(睦)委員 それでは具体的に聞きますけれども、第一に、地震予知の基本となる測地測量の問題です。  精密測地網基準点測量は国土地理院で行われていますけれども、この実施状況を見ますと、一次基準点網は全国で年間千二百点、第三次地震予知計画で計七千点をやるということになっているわけですけれども、実績では三千点に及ばないわけで、計画の半分以下というのが実態であります。これは民間に委託するので、この値段が上がって予算内ではこれしかできないという説明を聞いているのですけれども、このような実際に予算をつければできるところになぜ予算をつけないのか、お伺いします。
  197. 園山重道

    園山政府委員 先生指摘のように、第三次の測地学審議会の建議の中で、特に測量につきまして相当なおくれがあるということは御指摘のとおりでございます。しかし、だんだん国土地理院の、あるいは建設省の御努力によりまして予算のつき方もふえてまいりまして、逐次この第三次建議で示されました線に近づきつつあるというように理解いたしております。  御指摘のように予算の問題につきまして、これはやはり、私ども内閣に置かれました地震予知推進本部事務局をいたしておりますけれども、やはり各省庁、各機関での御努力が必要でございまして、私どもも何とかこの目標に近づけるように努力お願いいたしておるところでございまして、これからもできるだけこの予算獲得につきまして、各省庁の御努力に加えまして私どもも応援をしていきたい、このように考えておるところでございます。
  198. 柴田睦夫

    ○柴田(睦)委員 二番目は、観測強化地域、特に関東南部地域観測体制の問題ですが、第三次地震予知計画では、昭和四十五年二月十二日の地震予知連絡会の決定以来、関東南部地域観測強化地域として観測体側の強化を決めているのですが、この観測体制についてはどういう対策がとられているのか、お伺いします。
  199. 園山重道

    園山政府委員 お答えいたします。  御指摘のように関東南部が昭和四十五年地震予知連絡会におきまして観測強化地域に指定されております。この地域におきます観測の強化につきましては、やはり測地学審議会の建議の線に沿いまして測地測量あるいは微小地震観測、ひずみ計による観測等を行いますとともに、特に東京周辺は非常に厚い堆積層に覆われておりますので、科学技術庁防災科学技術センターが三本の深井戸、二千メートルないし三千メートルございますが、これを掘りまして、高感度の微小地震計を埋めるということを進めておりまして、すでに二本の井戸、これは埼玉県の岩槻と千葉県の下総でございますが、これが完成をいたしまして、五十三年度、三番目の府中の井戸の掘削を開始する予定でございます。  大体そういったことでございまして、具体的な数で申し上げますと、連続観測網といたしまして、地震計が二十四個、体積ひずみ計が五個、傾斜計が四個、伸縮・水管が三個、地下水観測一個、検潮観測七個ということで合計四十四個が整備されておりまして、新たに五十三年度に四ヵ所の地震計整備をいたす予定でございます。このほかに測量あるいは地殻応力の測定とか活断層の調査、人工地震による地震波速度変化の観測といったものも行われる予定でございます。
  200. 柴田睦夫

    ○柴田(睦)委員 いまの深井戸の問題ですが、三ヵ所必要であって、そしてそれが非常に重要であるわけで、これを五十五年に開始されるということですけれども、これを繰り上げて実施することが必要であるというのがいまの現状であると思うのですが、そういう繰り上げてやろうというような考え方はないかどうか、お伺いします。
  201. 園山重道

    園山政府委員 この深井戸につきましては、御指摘のように三本そろいますと非常に理想的に極微小地震の震源も決定できるわけでありますけれども、現在この三本そろわないから必ずしも役に立たないということではございませんで、大学その他が持っております微小地震計と協力いたしまして地震の震源決定に活躍いたしておるところでございます。  三番目の井戸につきまして繰り上げてというお話もございましたけれども、これはやはり相当な深い井戸を掘りますので、場所の選定等につきましていろいろな条件があるわけでございまして、かねてからこの場所の選定につきまして努力をしてきましたところ、ようやくこれが府中付近で定まりましたので、これで五十三年度、今年度予算が計上されておりますので、この五十三年度予算をもちまして、至急この掘削を開始するところでございまして、現在のところいまから申し上げますならば最大限のスピードでやっていける状態にある、このように理解いたしております。
  202. 柴田睦夫

    ○柴田(睦)委員 地殻変動の連続観測の問題で、第三次計画及びその見直しの中でもこの連続観測がきわめて重要であるということが指摘されております。また先日の科技特の地震対策の集中審議でも、予知連のメンバーである浅田東大教授も、観測強化地域については地殻変動関係の計器はもう少し密に置いた方がよいと指摘しているわけです。地震予知についてのブループリントでは、地殻変動の連続観測所の計画について、全国に百ヵ所、特定の地域では三十ヵ所を設けると述べております。この計画から見れば科技庁の実態がきわめてかけ離れたものである、科技庁としては全国に百ヵ所、特定地域に三十ヵ所の実施を早くやらなければならないと考えておりますか。  そこで結論を申し上げますと、深井戸観測にしても地殻変動観測所にしても、測地学審議会の建議を受けて、行政側すなわち推進本部が適確な計画を立ててその予算もつけ、政府として責任を持って実施するという体制がいまのところ十分でないと思うわけです。やはり測地学審議会は建議をするということであるわけですから、推進本部がその計画を適確に立ててその進行状況も確認しつつやらなければ、予知体制は万全にできないと思うのですが、この点、最後に長官の御見解をお伺いして、終わりたいと思います。
  203. 熊谷太三郎

    熊谷国務大臣 地震予知推進本部の現在の状況につきまして、なおまだ十分いろいろ検討いたさねばならぬ点もあると思っておりますので、いま御発言の趣旨も体しまして、ひとつできるだけ前向きに進めてまいりたい、このように考えております。
  204. 始関伊平

  205. 中川秀直

    中川(秀)委員 科学技術庁設置法改正案について若干お尋ねをいたします前に科学技術行政全般のことにつきまして、特に長官の御見解をお伺いしたいと思います。  国なり社会なりの発展というものには私は三つのファクターがあると思うのです。かつてわれわれの歴史の中で、その発展は、資源を求めあるいは領土を求めるという空間のフロンティアというか、そういうものを求めていく、それが国の発展だという時代がありました。しかし、それはもはやすでに終わった時代であります。残されたフロンティアが、それじゃわが国においてあるいは国際的に何があるかということを考えてみますと、現在の世界における社会の発展のためのフロンティアというのは、やはり技術のフロンティアが第一、第二に、これは政治なり行政なり全般の努力に負うわけでありますし、同時にまた国民各般の御協力がなければいけない問題でありますけれども、秩序のフロンティアといいますか、技術と秩序の新しい形態あるいは前進というものを図っていくということが社会あるいは国家あるいは世界の発展の重要なかぎだと私は思うのであります。  その意味から、私は、科学技術庁というお役所は、あるいは科学技術庁長官というお役目は、少し大げさな言い方をすれば、わが国の総理大臣と等しいぐらいのわが国の発展については重要なお役目だと思うのであります。しかるに現下の科学技術振興という見地から考えてみますと、わが国の科学技術研究費の趨勢、国際比較、そういうことを考えてみましても、あるいは各般の体制を考えてみましても、いまのようなペースで果たしていいのかということは、私個人の考え方からいたしましても寒心にたえない、薄ら寒い思いをするというのが印象なのでございます。大臣の御見解並びに今後の御方針、ひとつ、勇断どころではない、思い切ったことをやっていただかなければいけないという段階だと思うのでありますが、ひとつ御答弁を願いたいと思うのであります。
  206. 熊谷太三郎

    熊谷国務大臣 大変次元の高い御発言の内容でありまして、果たして御期待に沿える御答弁ができるかどうかわかりませんが、いまの御発言に対しまして考えていることを簡単に申し上げたいと存じます。  お言葉の中にもありましたように、今後国民生活の安定なりあるいは発展なりを考えてまいりますためには、ことに資源有限時代ということもありまして、どうしても頭脳、すなわち国民の頭脳、科学技術に頼っていかなければならぬということを考えますと、一国の科学技術推進ということは何にも増して重要な問題である、このように考えます。ただ、そういう重要な科学技術庁長官だから総理大臣にも劣らぬ重要な職責であるというようなお言葉がございましたが、いま仮に総理大臣と科学技術庁長官とが一緒に誕生したというならばまさにお言葉のとおりの表現が当てはまるかとも存じますが、御承知のように、科学技術庁は非常に設置の歴史が新しいわけでございまして、二十数年そこそこの状況でございます。したがって、科学技術研究推進等もすでにそれぞれの分野において十分研究体制も整い、伝統も積み重ねられ、相当の成果が上がっているわけであります。  したがって、科学技術庁といたしましては、これは私の考えというよりは内閣自体の問題でございますが、すでに存在しておりましたそういう各省庁にまたがる科学技術行政を皆それぞれ切り離して、そうしてこれを一本にして日本全体の科学技術行政を行うということは、これは実際的にもむずかしいわけでありますし、それから科学技術研究ということについては、その技術なり科学性を実際日常の処理、実用に供しながら研究開発を進めていくという面もございまして、従来までそういう実用と並行していろいろな研究開発を進められてきました科学技術関係の仕事をいま直ちに各省庁から切り離して、科学技術行政として一貫した体制のもとに置くということについては、非常に問題が多いのではないかと考えているわけであります。  したがって、科学技術庁の仕事といたしましては、それまでにまだ手をつけられなかった貴重な専門的な分野、そういうものを直接に管理しますとともに、国の科学技術行政全般にわたる総合調整という機能を持ちまして、そしてそういう各方面に存在しております科学技術研究推進というものがむだがないように、あるいはよく連絡して能率よくその成果が発揮できるように、そういういわゆる総合調整任務を果たしていく、こういうようなことになって今日に及んでいるかと考えているわけであります。いまこれをどうしたらいいかということは、これは非常に重要な問題でありますけれども、一科学技術庁長官としましては、それをそこまで掘り下げて検討するという立場でもないかと考えているわけでありまして、ただわれわれとしましては、科学技術行政のきわめて重要なことを認識し、与えられました守備範囲におきまして全力を尽くしていく、こういうことを申し上げるほかないかと思うわけでございますが、一応それだけ申し上げまして、なおまた御意見があれば承ることにいたします。
  207. 中川秀直

    中川(秀)委員 私申し上げたいと思いましたのは、長官のいまの御答弁で、長官のお立場なりあるいは総合調整機能としての科学技術庁のお役割り、その使命ということについての認識というのは、私も基本的には了解するものでありますが、現実に、たとえばわが国の代替エネルギーの研究開発にいたしましてもその他重要な技術開発にいたしましても、政府全体あるいは民間を含めた国全体の科学技術振興のためのお金の使い方だとかそういった大きな問題になりますと、これは、科学技術庁長官内閣の一員でございますから、政府自身がもっと本格的に取り組んでいかなければいけないのじゃないか、こういう趣旨で御答弁を求めたわけでございます。  たとえば、長官も大臣におなりになる前に政治家以外のお仕事を実際お持ちになっておられたわけでございますが、土木建築等の技術開発にしましても、民間のそれぞれの会社がそれぞれ研究費を使い、研究所を設け、やっておるわけです。ところが、それは相当重複する部分もあるわけです。経営者としてその点歯がゆい思いをなさったことだってあると思うのです。一方で共同開発等もっと力を入れたらかなりのことができるのじゃないかという部分もあります。これは、政府相互間の総合調整という以上に民間相互閥の総合調整だって必要な部分もあるわけですね。  これは思いつき的な発言と受け取られては残念なんですが、わが国の国民の科学技術振興にかけられる方々の熱意というものは相当なものがあると思うのです。たとえば特許なんかの申請を見てみますと、大変な件数が上がっております。しかし、そういう中でも案外見過ごされてしまっておる技術というものがかなりあるような気がしてならない。一例を申し上げますと、先般私のところにある方が来られまして、廃棄物の処理ということについて、私は素人ですからわからないのですけれども、マイクロ波というものを使って、水分とかそういったものを抜いて固型化物にして石のようにしてしまう、実物を持ってこられましたが、そういう特許をお持ちになっておる。これについて各県の工業試験所やそういうところに依頼して、その後、その石から硫酸につけても有害物質が湧出しない、そういうお墨つきをもらっておるのですが、厚生省の産業廃棄物の処理基準によりますと、水硬性セメントでスラッジはパッケージにしなければいけない、こういうきちっとした省令があるんですね。このためにこの技術は全然普及しない。あるいはそういうことを議論するためのさらに大がかりな研究をしてくれと言っても国は受け入れてくれない。それは技術的にどのようなものであるかということは私もよくわからないのですけれども、そういう個人の発案というものがお金がないために結局採用されない、こういうこともあるらしいですね。これは一例にしかすぎませんが、そういった共同研究開発あるいは個人のそういった創意工夫による特許、たとえば特許庁に上がってくる実用新案なり特許なりでも、科学技術庁が時折はトレースしてみて、これはちょっとおもしろいから民間なりあるいは公的研究機関なりにさらにお金を出して研究さしてみようとか、あるいは補助金を出してやろうとか、あるいはどこかに紹介してあげようとか、そんな努力だって私は一方においてあってもいいと思う。あるいは長官のかつてお携わりになっていた、そういう部分についての研究などは、総合調整をしてみるということがあってもいい。その辺はいかがですか。もっと国全体でお金の使い方、量もふやさなければならない。同時にまた交通整理をする必要もある。あるいはお金の使い方の工夫というものももっとあってもいいのではないか、こういう印象を強くするのですが、大臣、御見解いかがですか。
  208. 熊谷太三郎

    熊谷国務大臣 大体御発言の趣旨はわかるような気もいたしております。  結論から言いますと、やはりわが国全体の科学技術といいますか、研究開発というか、そういう体制の現状、そういうものがまだまだ不十分ではないか、まだるっこしいといいますか、そういう点があるのではないか、こういうふうな御趣旨のように承っておるわけでございます。たとえば、いま例としてお取り上げになりました廃棄物にしましても、せっかく民間の、どなたか知りませんが、そういう御工夫が示されましたなら、それを直ちに取り上げて、そうしてそれが実用化できないかどうか研究すべきではないかというような御趣旨かと考えるわけでありますが、そういう意味におきまして、御発言の趣旨はよく御共鳴できるわけでございます。その例が適切かどうかは別としまして、とにかくいままで決まった研究開発のほかに、いろいろなまだ必要な研究開発の対象もございますでしょうし、今後もそういうものが出てくると思いますが、要するに、それに取り組む姿勢がどうも不十分のような気がする、大体そういう趣旨かと思いますし、私も、ごもっともであると考えます。したがって、当面科学技術庁長官としましては、そういう問題を十分考えて、積極的にそういうことにも取り組んでまいらねばならぬという考えがわくわけでございます。  ただ、そういうことを私がここで申し上げましても、やはり科学技術庁という一つの組織といいますか、現在の存在がそれを解決していくわけでございます。したがって、科学技術庁としましても、やはり役所としての組織、そういうものは、歴史的な背景もありまして、あるいはそこまでまだ、取り残されましたあらゆる研究開発の対象を取り上げるというところまでには、現実的に申し上げまして、いきかねるかと思いますが、方向としましては、いま仰せのような、ほかの省庁では手がけていない、しかも非常に重要なものを今後どんどん取り上げて、そしてそれを実用化していくとか、あるいは発展させていくとかしなければならぬ、そういう方向に進むべきだ、そういう方向に進むように努力すべきだ、このように考えるわけでございます。
  209. 中川秀直

    中川(秀)委員 大臣の御懸命な御答弁、かつまた私のやや思いつき的なことに対しましても御懇切な御答弁がありましたから、あえてこれ以上申し上げませんが、要するに、現状だけに目を奪われることなく、行政のいまの範囲ということの当面の御処理だけに追われることなく、まさに国運をかけた、先ほど申し上げましたような技術のフロンティアというものがわが国の将来にとってまさに重要な時期に来ている、重要な最大の要素であるという御見地に立って、科学技術庁全体、御当局の方々にも、十分柔軟な発想の中で、いかにフルに力が発揮できるかという行政のあり方を大いに研究をし、展開をしていただきたい、このようにひとつお願いをする次第であります。  さて、もうあらかたの時間はその第二点で使ってしまったわけですが、時間はなるべく守らせていただきたいと思いますけれども、設置法のお尋ねを若干させていただきます。  今回移転をいたします金属材料技術研究所あるいは国立防災科学技術センター、これの移転のメリットといいますか、そんなことを若干御説明をしていただきたいと思います。同時にまた、たとえば金属材料技術研究所の残された部門というものの、冶金だとか加工技術だとか材料の強さ研究部門だとか、残された東京施設、こんなものの移転の御計画はあるのかどうか。それから金属材料技術研究所だけで六十八人ですか、職員の方が筑波へ行かれるわけですが、この方々の生活環境なんかはいろいろお考えになって対策は立てておられるのか。そんな点、非常に一遍に何もかもお伺いして恐縮ですが、かいつまんで御答弁を願います。
  210. 杉浦博

    ○杉浦政府委員 お答えいたします。  金属材料技術研究所は、いろいろなことをやっておりまして、筑波に移転いたしますのは、新しい分野に対する金属の研究、こういうふうになっておりまして、たとえて申し上げますと、これから海洋開発あたりが非常に盛んになってまいりますが、これは聞きかじりでございますけれども、たとえば六千メーターの海中に行きますには、約百二十キログラム・パー・平方ミリメーターというような非常に強い強度を持つ材料が必要でございますし、それから核融合、これが今後の命題になるかと思いますが、これが、炉壁が数百度になる。しかも、中性子が当たりますとその部分が損傷を受ける。これをどうするか。こういう問題とか、いろいろございまして、特に、低温で超伝導なんという金属ができまして、新しい分野が非常に二ーズとして出てまいります。したがって、そういったものを筑波の方でやってもらおうと、こういう考えになっておりまして、いま目黒にございますけれども、これが約四万五千平米、非常に狭うございます。新しい需要にはとても応じ切れないということで、筑波の方に約十五万平米の土地を用意いたしまして、ここに建設をして移転してもらおうと、こういうふうに思っておるわけです。したがいまして、目黒の方に残りますのは、冶金だとか加工だとか、いま先生おっしゃいました材料の強さ、こういった部門はそのまま残るのでございます。したがいまして、そういった部門につきまして、大型の設備というようなものはいままで入れようとしても入らなかった、こういう状況でございますので、残ったところは残ったところでひとつ整備さしていただきたいと思います。  それから筑波の方に参ります職員の住居その他の問題は、これは十分に手当てをした上で移ってもらおうかと、研究本館がことしの十月ぐらいに完成いたしますので、それからすぐ移転にかかりたいと思いますが、そういった手当ては万端抜かりなくやらしていただきたいと思っております。
  211. 中川秀直

    中川(秀)委員 残された部門は移転の御計画はないのですか。
  212. 杉浦博

    ○杉浦政府委員 金属材料技術研究所に関しては、残された部門は全然動きません。そのまま拡充したいと思っております。
  213. 中川秀直

    中川(秀)委員 将来ともないのですか。
  214. 杉浦博

    ○杉浦政府委員 ございません。
  215. 園山重道

    園山政府委員 防災科学技術センターにつきまして御説明申し上げます。  国立防災科学技術センターは、三十八年に設立されまして、設立当初五十名程度で発足いたしましたので、銀座にございます。工業品検査所でございますか、このビルに間借りをいたしておったわけでございます。ただ、この防災センターは、法律にもございますように、大型の共用施設整備して共用に供するということでございますので、すでに四十五年ごろから大型の耐震施設でありますとか大型降雨実験施設というものを筑波に建設いたしまして、そういった部門は筑波に持っておったわけでございますけれども、今般それらの設備に加えまして本館等も完成をいたしましたので、全体を移転させていただきたい、このように考えておるところでございます。
  216. 中川秀直

    中川(秀)委員 先ほど来午前中から質問がずいぶんありましたが、大規模地震対策特別措置法案に関連してちょっとお尋ねをいたします。  ダブリはちょっと省略をいたしますけれども、いわゆる地震防災対策強化地域に指定されたところは病院、デパート、石油、高圧ガス取扱者等に地震防災応急計画の策定を義務づける、こういうことになっていますが、なかなか素人で簡単にそんな計画はできないと思うのですね。これは行政としてそういった指導、行政指導になると思いますが、策定の仕方、研修会とか、そんなことはお考えになっているのか、そういう準備をなさっているのかというのが第一点。  それから第二点は、地震防災対策強化地域の指定の問題ですが、現在地震予知推進本部観測強化地域、南関東、東海地域、二地域あると私は理解をしておりますけれども、この両地域ども指定をされる見通しなのか。これは中央防災会議に諮問するということになっていますが、諮問する方向は、いずれも、二地域とも指定すべきだと思うがどうかという諮問の形になるのか、どちらかになるのか、その点について簡単に御答弁願います。
  217. 城野好樹

    城野説明員 御説明いたします。  第一点のいろいろな病院、劇場、それからガス、石油類取り扱いの機関というものにつきまして、それぞれ地震防災応急計画を作成しなければならないということを新たに義務づけるというのは御指摘のとおりでございます。  ただ、この計画を策定いたします手順といたしましては、大部分のものはこの法案の八条にございます消防計画なりそれぞれの法令で定められました危害予防規程なりというようなものの中で、数量的に申しますと、ほとんど九十何%のものはそれらの消防計画なり危害予防規程なりというものの改正によりまして当該部分を、現在ございます危害予防規程等を前提として、その部分を付加するというような形で義務づけすることを考えております。したがいまして、七条の本来的な、新たに義務づけられるという方々の部分と申しますのは、たとえば津波危険地域におきます貯木場でございますとか、あるかどうかわかりませんが、サファリパークというような非常に特殊なものに限られるというふうに考えます。後者の部分につきましては、県を通じてその作成について特段の御指導をいただくということになろうかと思いますが、前者の、現在消防計画なり危害予防規程なりというようなものがございますのは、監督の各主管官庁及び業界を通じまして、一つのモデルプランと申しますか、パターンというようなものをそれぞれ設定をいたしまして、それらの業界を通じて御指導をしていただくという体制を現在各省と詰めておるところでございます。  第二点のお尋ねの点でございますが、午前中来いろいろ議論がございましたように、東海地域につきましては、これは早急に設備その他の観測体制も相当整っておることではあり、相当差し迫っているという学者意見等もわりあい早くコンセンサスが得られて、早急に指定をする準備にかかり、指定をいたしたいという予定を持っておりますが、南関東地域につきましては、まだその海洋型のいわゆるマグニチュード八前後の大きな地震、それについては明白な前兆現象があるだろう。ただ、マグニチュード七ないしは六程度ということになりますと、その規模が三十分の一でございますとか約千分の一というふうに小さくなります。それをつかまえられるような観測体制が果たしてできるのかどうか、そういう施設整備計画対応で強化地域というものを指定するかどうかという議論がなされるのであろうというふうに思っております。したがいまして、現在段階ではまず東海地域を指定し、南関東地域については中央防災会議の中に専門委員会を設けまして、そこで議論をさせていただく予定でございます。その結果を見まして、確かに地震予知可能性があるという段階に至りますれば指定ということになろうかと思いますが、現在時点ではまだ確たる、そういうことは今後の検討課題であろうということではないかと思います。
  218. 中川秀直

    中川(秀)委員 御答弁はもうそれで結構でございますが、私個人の意見、御注文としてお聞きおきいただきたいと思うのですけれども、一応観測強化地域としていままでやっていた地域を、いろいろいまの御答弁の趣旨はよくわかるのですが、この法案の強化地域の対象にしないということについても私は若干の懸念を持ちます。そういう意味で、議論をしているうちに直下型地震でも起きた場合にどうするかという問題だってあるわけですし、同時にまた、これだけの体制をおとりになろうということになれば、相当の準備期間なりあるいは行政指導なり、そういうものにしても簡単ではない。現実に消防計画等にいたしましても、大分指導してもらって現行でもやっているのでしょうけれども、実際どうかということになると寒心にたえない現状にあるわけなので、私個人の意見としては、やはりいままで予知本部観測強化地域にしてきたところについては、南関東もできるだけ早く詰めていただいて地域指定をする方向にしていただきたい、このように思います。  それから次の問題で、最近の非常に急ぐ問題として問題提起をさせていただきたいと思いますが、これは科学技術庁の御所管だと思いますけれども、原子力発電所で働く労働者の被曝放射線量というものは最近非常に急増している。たとえば日本原子力発電東海発電所はここ四、五年横ばいの状態ですが、東電の福島第一原発の場合には、平均被曝線量が四十九年の〇三一レムから五十二年上半期だけで〇・五二レム、五十一年が〇・四九レムですから、上半期だけで〇・五二レムというのは大変な量だと思います。あるいは日本原子力発電敦賀発電所の場合は、五十年が〇・六七レムで五十二年は上半期だけで〇・七四レム、平均被曝線量が非常にふえている。あるいは東電の福島第一原発では五十一年度の年間最大許容線量、これが国際放射線防護委員会の定めておりますところの五レムぎりぎりの被曝をしたという人が百七十四人に達している、こういう現実があるわけであります。私は、これは大変な問題だと思います。こういう対策をきちっと立てていかないと、原子力のわが国においてのいろいろな議論、平和利用についての議論、こういうものに対しても多大な影響があると思いますので、ひとつこれについては十分な対策を立てていただきたいと御注文を申し上げたいと思います。これについてお答えを願います。
  219. 牧村信之

    ○牧村政府委員 ただいま先生が御指摘のように、原子力発電所の増設に伴いまして、その定期検査あるいは原子力発電所に起きました故障、トラブル等の修理等のために原子力発電所の放射線下で働く従業員の方々の人数もふえております。また施設によりましては、増加の傾向のある施設もございます。ただ、最近の状況を申し上げますと、被曝を受けました従業者の平均値のトータルはそれほどふえておるわけではございませんけれども、個々の発電所では御指摘のような増加を見ておるところもあるわけでございます。また、中には先ほど御指摘のような比較的高い数字の放射線を受けた方もおりますけれども、大部分の方は五レムというようなぎりぎりの線量ではございませんで、大体三レム以下におさまっておることも事実でございます。しかしながら、このような従業員の方が放射線を受ける量はできるだけ少ない方が望ましいことは申すまでもないことでございますし、この辺につきましては、通産省、また私どもの方もできるだけの低減化を図って放射線下の作業をするような指導をしてまいりたいと考えておるわけでございます。これらの放射線を受ける従業員の方々が、これからこの原子力関係の作業を進めていく上に、被曝による障害を受けることがないように、また発電所に働く方々の中でメーカーあるいは下請というような方々は、ある一定の発電所で働くことなくいろいろ渡り歩く方もおられるわけでございますので、私どもといたしましては、かねてからこの体制をどうしようかということでいろいろ検討してまいったわけでございますが、昨年の末にこの放射線を受けられた方々の線量を一元的に登録管理する登録管理制度というのを設置いたしまして、現在そのセンターにおきまして体制整備しております。近々その業務が発足する段階に来ております。したがいまして、このような措置をとりまして、当面は原子炉等規制法に基づきます主として発電あるいは燃料加工等の事業に従事しておられる方を対象に進めてまいりたいと思っておりますが、将来はアイソトープ等を使っていろいろな研究あるいは作業に従事される方々を含めまして、その範囲を広げて、放射線による従業者の方々への影響を可能な限り防止していくというような線にこの登録制度を役立てていきたい、かように考えておる次第でございます。
  220. 熊谷太三郎

    熊谷国務大臣 いま大体申し上げたとおりでございますが、御発言の御趣旨に沿いまして一層厳格にその点を推進してまいりたいと考えております。
  221. 中川秀直

    中川(秀)委員 時間を過ぎてしまって申しわけありませんが、最後にもう一問だけ簡単にお尋ねをいたします。  報道によりますと、つい最近、通産大臣の諮問機関である総合エネルギー調査会原子力部会の基本政策小委員会で今後の日本の原子力政策の基本的方向として、プルトニウムの軽水炉への利用、濃縮あるいは再処理施設の建設などは、日本が自主的立場を貫くために必要な線として守り抜く、しかし濃縮、再処理など核燃料サイクルの各分野で完全な国産化を図ることは無理なので、共同濃縮などの国際的協力や、供給源の多角化で必要量を確保すべきだ——まあこれは時間がないから新聞の前文だけ、全部は申し上げられないのですが、自主路線は基本的な部分では貫くけれども、共同濃縮など国際協力の部分で譲るべきところは譲ろう、こういう基本方向を出しておられるわけなんです。これについて、科学技術庁の御見解、あるいは小委員会がまとめられたこの一つの提言というものをどのように政府がこれから措置をなさっていかれるのか、その辺のことをお伺いします。  それから、最後でございますので、ついでに私どもの原子力政策についての見解をちょっとだけ簡単に申し上げさせていただいて、最後の質問にさせていただきたいと思います。  われわれは、エネルギーというものの非常な重要性、緊急性にかんがみて、GNPの一%ぐらいをエネルギーの研究開発もしくは石油の備蓄といったようなものに予算化をしなさい、そのために必要な財源については総合エネルギー税というようなものを創設してもいいではないか、そのくらいの意気込みで取り組まなければいけない、これが第一点でございます。それから、原子力については在来の濃縮ウランを主体として再処理、高速増殖炉といった核燃料サイクルの確立を図るとともに、天然ウランの活用あるいはトリウムサイクルの開発、核融合の研究開発など、技術と資金、人材を徹底的に投入して、わが国原子力開発の技術的独立をあくまで目指すべきだ、こういう見解でございます。  以上、私どもの立場を明らかにさせていただいて、あわせて先ほどの有沢委員会の提言についての御見解、今後の方向というものを最後にお伺いをしておきたいと思います。
  222. 山野正登

    ○山野政府委員 総合エネルギー調査会の御提言につきましては、先般原子力委員会の中に設けられております原子力国際問題等懇談会の場でも披露されまして、ただいまちょうど原子力委員会におきまして、原子力開発利用の長期計画の見直しをしておるさなかでございますので、この中で十分貴重な提言として参考にさせていただくことになると思いますが、私どもかねて考えております今後の核燃料サイクル確立のための基本路線と申しますのは、これも先生指摘のように、できるだけ自主技術によりまして国内に自立体制を整えるというのを基本にしておるわけでございます。  ただ、これは濃縮にいたしましても再処理にいたしましても、きわめて先端的な技術を使って行うことでございますので、一挙にそのような自主体制というものはできるものではございませんし、また一方、現在原子力の平和利用につきましては、核の不拡散と平和利用の調和を求めるという各種の活動が国際的に行われておるわけでございまして、その中におきましても濃縮、再処理等につきまして国際的な共同事業としてこれを行おうといったふうな提言等もあるわけでございますから、そういった国際協力活動との調和というものももちろん考える必要があるわけでございます。そういう意味で、今後この自立体制をつくるということを基本路線にいたしますが、そういった国際協調との絡みというものも頭に置きながら今後進めてまいるといったふうなことになろうと思いますが、この八月ぐらいまでに長期計画の改定というものをつくりまして、その路線に従って今後燃料サイクル確立を進めていくということになろうかと存じております。
  223. 中川秀直

    中川(秀)委員 基本路線を一〇〇とするならば、一〇〇のうちの九〇台にもう迫るぐらい、数量化することは不可能ですが、自主技術という基本路線があるならば九〇%以上はそれでいくんだというような、そのくらいの不動の御信念、御方針のもとに、その上で、国際協力ということを考える、私は、わが国の将来のためにそうあってもらいたい、こう思います。最後に御注文申し上げまして、御質問を終わります。  時間が超過しまして申しわけありません。ありがとうございました。
  224. 始関伊平

    始関委員長 次回は、来る十一日火曜日午前十時理事会、十時三十分から委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。     午後五時五十一分散会