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1978-02-28 第84回国会 衆議院 内閣委員会 第6号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和五十三年二月二十八日(火曜日)     午前十時三十三分開議  出席委員    委員長 始関 伊平君   理事 小宮山重四郎君 理事 高鳥  修君    理事 藤尾 正行君 理事 村田敬次郎君    理事 岩垂寿喜男君 理事 上原 康助君    理事 鈴切 康雄君 理事 受田 新吉君       逢沢 英雄君    宇野  亨君       小島 静馬君    関谷 勝嗣君       玉生 孝久君    塚原 俊平君       中村 弘海君    福田  一君       上田 卓三君    木原  実君       栂野 泰二君    新井 彬之君       市川 雄一君    柴田 睦夫君       中川 秀直君  出席国務大臣         外 務 大 臣 園田  直君  出席政府委員         人事院事務総局         給与局長    角野幸三郎君         人事院事務総局         職員局長    金井 八郎君         防衛庁防衛局長 伊藤 圭一君         法務省入国管理         局長      吉田 長雄君         外務大臣官房長 山崎 敏夫君         外務大臣官房審         議官      内藤  武君         外務省アジア局         長       中江 要介君         外務省アメリカ         局長      中島敏次郎君         外務省欧亜局長 宮澤  泰君         外務省中近東ア         フリカ局長   千葉 一夫君         外務省経済局長 手島れい志君         外務省経済協力         局長      武藤 利昭君         外務省条約局長 大森 誠一君         外務省国際連合         局長      大川 美雄君  委員外出席者         内閣官房内閣審         議官      黒木 忠正君         外務大臣官房在         外公館課長   松田 慶文君         外務大臣官房領         事移住部長   賀陽 治憲君         外務省アジア局         北東アジア課長 佐藤 嘉恭君         文部省学術国際         局国際教育文化         課長      川村 恒明君         通商産業省通商         政策局北アジア         課長      広海 正光君         通商産業省基礎         産業局鉄鋼業務         課長      岩崎 八男君         資源エネルギー         庁石油部計画課         長       箕輪  哲君         内閣委員会調査         室長      長倉 司郎君     ――――――――――――― 委員の異動 二月二十二日  辞任         補欠選任   上田 卓三君     石橋 政嗣君 同日  辞任         補欠選任   石橋 政嗣君     上田 卓三君 同月二十七日  辞任         補欠選任   上田 卓三君     石橋 政嗣君   山花 貞夫君     岡田 利春君   市川 雄一君     権藤 恒夫君   柴田 睦夫君     寺前  巖君 同日  辞任         補欠選任   石橋 政嗣君     上田 卓三君   岡田 利春君     山花 貞夫君   権藤 恒夫君     市川 雄一君   寺前  巖君     柴田 睦夫君 同月二十八日  辞任         補欠選任   上田 卓三君     藤田 高敏君   山花 貞夫君     石橋 政嗣君   市川 雄一君     広沢 直樹君   田川 誠一君     中川 秀直君 同日  辞任         補欠選任   石橋 政嗣君     山花 貞夫君   藤田 高敏君     上田 卓三君   広沢 直樹君     市川 雄一君   中川 秀直君     田川 誠一君     ――――――――――――― 二月二十四日  国家公務員法及び地方公務員法の一部を改正す  る法律案内閣提出第四四号)  職員団体等に対する法人格の付与に関する法律  案(内閣提出第四五号) 同月二十七日  台湾残置私有財産補償に関する請願瀬野栄次  郎君紹介)(第一四六九号)  救護看護婦に対する恩給法適用に関する請願(  関谷勝嗣君紹介)(第一五六二号)  同(小島静馬紹介)(第一五九八号)  同外一件(谷川寛三君紹介)(第一五九九号)  同(藤本孝雄紹介)(第一六〇〇号) は本委員会に付託された。     ――――――――――――― 本日の会議に付した案件  在外公館名称及び位置並びに在外公館に勤務  する外務公務員給与に関する法律の一部を改  正する法律案内閣提出第一〇号)      ――――◇―――――
  2. 始関伊平

    始関委員長 これより会議を開きます。  在外公館名称及び位置並びに在外公館に勤務する外務公務員給与に関する法律の一部を改正する法律案議題といたします。  これより質疑に入ります。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。岩垂寿喜男君。
  3. 岩垂寿喜男

    岩垂委員 外交問題全般関連をして質問をさせていただきたいと思います。  最初に日中問題についてお伺いをいたします。  日中平和友好条約締結に向けて園田外務大臣が積極的な御努力を重ねてこられたことに敬意を表したいと思います。いま交渉再開を目前にいたしまして、交渉内容について余り立ち入って質問をすることはできるだけ避けたいと思いますけれども、そのスケジュール基本的な姿勢といいましょうか、立場について、この際お伺いをしておきたいと思います。  中国全国人民代表大会が終了した直後には日中交渉再開をされるというふうに考えてよろしいかどうか。それと同時に、佐藤大使韓念竜外務次官会談のこれからの手順あるいは段取り、それらについての見通しを示していただきたいものだと考えます。もう一つ、この再開交渉の中には園田外務大臣訪中問題が含まれているかどうか。この三点について御答弁を煩わしたいと思います。
  4. 園田直

    園田国務大臣 お答えをいたします。  佐藤大使韓念竜氏との会談は、中国大会には関係なしにやろうということになっておりますが、現実としては、大会が終わってから次の会談が行われると想像するのが妥当だと考えておりまして、大会が終わりましたら、なるべく早く両方で会ってもらいたいという希望佐藤大使の方を通じて申し入れてございますから、大会直後ということになるかどうかわかりませんが、大会が終わりましたら遠からず会談が始まるものと考えます。  なお、相手のあることでありますし、公開の席上でありますから私もはっきり申し上げられませんけれども、もう一回で段取りはつくのじゃないかと想像しておりますが、場合によっては、手段その他のことでありますからそれで済まないかもわかりませんが、大体もう一回会えば両方交渉再開合意するということになるのではなかろうか。それからいよいよ日程詰め場所等詰め、これは合意ができればそうむずかしい問題でございませんから、そのような段取り話し合いが進められていくと想像いたしております。  私の訪中の問題は、佐藤大使韓念竜両氏会談では出ておりませんし、また正式に申し入れてもおりませんが、しばしば私はそういう意向を表明しておりまするし、中国の方には私の気持ちはわかってもらえていると思いますので、いよいよ再開になって私が向こうへお伺いした方がよろしいという判断総理がなされれば、これまた向こうも受け入れてもらえるのではなかろうか、こう思っております。
  5. 岩垂寿喜男

    岩垂委員 すでに日中間には七五年四月に条約草案を交換いたしておりますけれども、今回の交渉では改めて草案を出し合って議論をするという形になるのかどうか、その点についても御見解を承っておきたいと思います。
  6. 園田直

    園田国務大臣 御指摘のとおりに七五年四月に交換をしておるわけでありますが、この草案中断になったわけでありますから、このままで進められるはずはございませんけれども、しかし、私の方から出したばかりでなく向こうからももらっているわけでありますから、ここでこの条約は別個にどうこうということを私が申し上げるわけにまいりませんので、これをどうやるか、改めて両方で出し合うか、あるいはもとのままのものを基本にしてお互い意見を交換するか、これは両者が合意をしてやらなければならぬ、こう考えておりますので、さよう御理解を願いたいと存じます。
  7. 岩垂寿喜男

    岩垂委員 問題になっているいわゆる覇権条項については日中共同声明表明された、つまり「日中両国間の国交正常化は、第三国に対するものではない。両国のいずれも、アジア太平洋地域において覇権を求めるべきではなく、このような覇権を確立しようとする他のいかなる国あるいは国の集団による試みにも反対する。」というこの原則をはっきり確認することになると考えるけれども、その点についての外務大臣決意を念のために承っておきたいと思います。
  8. 園田直

    園田国務大臣 覇権の問題については、いま御指摘のとおりでありまして、日中共同声明表明された立場をそのままわれわれは守るわけでありまして、この際これは第三国関係ないものである、こういうことはこれまた当然のことであります。そういうものをどのように扱い、どのようにするかということは、今後の交渉の中身でございますから、いまから申し上げるわけにはまいりませんので、お許しを願いたいと存じます。
  9. 岩垂寿喜男

    岩垂委員 いずれにしても、日中平和友好条約は、国際情勢、なかんずくアジア情勢に大きな影響を及ぼすことになることは言うまでもありません。覇権という言葉について、それぞれの国がみずからの世界戦略に基づいてどんな解釈を下そうとしたとしても、わが国にとっては、日本中国の不幸な歴史の一つの区切りをつけて、相ともに世界の平和、なかんずくアジアの平和をつくり出していくという決意表明を確かめ合う機会だろうと私は考えています。そしてそれは、われわれ国民にとってみれば、平和憲法精神、当然のことでありますが、それに基づいて、日中が共同して特定の第三国に敵対するものではないという立場を再確認するものであると思います。これは少しくどいようでございますが、この機会外務大臣からこれらの点についての所信をお述べいただきたいと思います。
  10. 園田直

    園田国務大臣 ただいまの御発言は非常に大事な御発言であると私も大事に考えております。覇権という言葉一つでありますけれども、覇権という問題を使って、世界のそれぞれの国が覇権反対という表明をしているわけであります。わが国中国との間に話し合われる覇権というのは、真の平和を願った本当の覇権反対、第一に日本中国お互い覇権をやらない、お互いに侵略したり力ずくで話し合いをしたりすることはしない、これが第一歩であります。続いて、アジアの平和、ひいては世界の平和のために努力をする、こういうことである。これが日本憲法精神であり、国連憲章精神であるということは、ただいまの御発言のとおり私も考えております。
  11. 岩垂寿喜男

    岩垂委員 日中平和友好条約関連をいたしまして、中ソ同盟条約のいわゆる日本敵視条項、これはかねてからいろいろ問題にされてきたことでございますけれども、これは中国の問題、ソ連の問題でございますから、日本立場からどういう見解を述べるかということは別といたしまして、外務大臣は、あるいは日本国政府立場は、この日本敵視条項の扱いをどのように期待し、あるいはどのように日中平和友好条約の中に位置づけていかれようとしているか、この点を承っておきたいと思います。
  12. 園田直

    園田国務大臣 中ソ同盟条約及びその中の敵視条項、これは日本ソ連の間では日ソ共同声明があるし、中国との間にも日中共同声明友好関係を回復しているわけでありまするし、中ソの関係もその後大変換をいたしておりまして、中国ではこれを名前だけであって実際はもうないのだ、こう言っているし、ソ連の方でもそういう表現をしておりますから、日中友好条約締結のためには、この中ソ同盟条約が障害になるとは考えておりません。考えておりませんが、この敵視条項がありますから、外務大臣としては締結交渉を始めるについては、日本国民がなるほどと納得されるような何らかの形でこれを確認する必要があると考えておるわけでございます。
  13. 岩垂寿喜男

    岩垂委員 中ソ同盟条約というのは、御存じのとおりに、三十年の期限で、一年前に手続をとって、いわばその条約のあり方について新しい判断を下すことになるわけであります。ちょうど八〇年が期限でございますから、一年前ということになると七九年、ここが中ソの交渉の問題になると思うのですけれども、中国政府の側から、これらの問題についての評価と、これからどのように対応しようとしているかなどということについて見解日本側が受けたことはございますか。
  14. 園田直

    園田国務大臣 中ソ同盟条約に対する中国見解は、公に承ったことはまだ一度もございません。あるいは訪中された議員の方とか日本訪中団とかに中国側見解を発表されておるのを間接に聞いておるわけでありますから、今度参りましたならば、その点は正式に承る必要があると考えておるわけであります。
  15. 岩垂寿喜男

    岩垂委員 いわゆる敵視条項について、日中平和友好条約位置づけの中で、日本国民理解ができる、そういう立場をどういう形かで表明するということについて、先ほど大臣が言われましたが、そういうふうに理解してよろしゅうございますか。
  16. 園田直

    園田国務大臣 そのとおりでございます。
  17. 岩垂寿喜男

    岩垂委員 外交というのは政府のいわば専権事項でございます。しかし、日中交渉日中国交回復過程の中では、非常に大きな国民運動の高まりがあったことも大臣御存じのとおりでございます。そして、外務大臣は、外交基本はむしろ国内にある、そういう見解所信表明の中で述べられております。そういう立場からいきますと、日中交渉の重要な段階で、党首会談などを含めた、国民理解協力を得るための手だてというものをお考えになる必要があるのではないだろうか、こんなふうにも考えますが、これは外務大臣寸場でどのようにということにはならぬかもしれませんけれども、福田内閣の枢要な地位を占めておられ、そして占めてこられた外務大臣は、これらについてどんなお考えを持っていらっしゃるか、この機会に承っておきたいと思います。
  18. 園田直

    園田国務大臣 党首会談をして相談をするかどうかは総理考えられるところではありますけれども、私が外務大臣として総理に御意見を申し上げるならば、現段階では、外交上の問題で政府専権事項とは言いながら、国民の方の御意見国会の御意見等を承ることは必要でありますけれども、少なくとも日中問題については、国民の大多数も国会の中の大多数も御理解を願っておるところでありますから、今後何か重大な支障が出てくるなり、あるいは重大な問題が出てくれば別でございますけれども、いまここで改めて党首会談などということは、いまのところはなさらなくても、むしろいまからやりますからよろしくというあいさつの程度の方がいいのではないか、かように心得ております。
  19. 岩垂寿喜男

    岩垂委員 まあそれは、外務大臣立場ではそういう御見解にとどまるだろうと思います。  そこで先ほど、もう一回ぐらいの佐藤韓念竜会談で話が詰まるのじゃないかというふうに言われました。昨日大阪で外務大臣は、交渉再開合意ができれば、条約締結への交渉中断したり、ひっかかったりしないようにしたいという意見を述べて、そして訪中によって覇権条項の解決を自分がやるつもりだ、こういうことを述べられているわけでございます。率直に申し上げます。そういう日程からいきますと、たとえば三月の二十一日前後にできれば訪中をして、この局面打開に当たりたいという決意を持っていらっしゃるということを漏れ承っておりますけれども、そのように私どもは理解をしてよろしいかどうか、そのことについて、いわば外務大臣スケジュールといいましょうか、日程決意を承っておきたいと思います。
  20. 園田直

    園田国務大臣 いままでの経緯、諸般の情勢等から考えて、交渉再開すれば、両国の長きにわたる関係を結ぶわけでありますから、いろいろ検討はしなければならぬけれども、再びこれが中断をしたりあるいは後下がりをしたりするようなことでは大変なことであると考えております。しかし、やはり両国には両国のいろいろの考えがあるわけでありますから、事務的に詰めるだけではなかなか詰まらぬと思いまするし、また詰まってから私がお伺いすることも、これは外務大臣としての存在価値がないわけでありますから、粗筋合意ということ、再開するということができたら、まあ何月何日と申し上げるのは妥当でございませんけれども、総理お許しがあれば早目に行って交渉をしたい、こう考えております。
  21. 岩垂寿喜男

    岩垂委員 平和友好条約の場合は、平和条約の場合はそうでございますけれども、一般的に国境の画定というものが基本になります。これは余り立ち入って質問しませんが、尖閣列島の領有問題もこの交渉の中に含まれているというふうに理解してよろしゅうございますか。
  22. 園田直

    園田国務大臣 尖閣列島の問題は日中平和友好条約には関係がない、このように考えております。
  23. 岩垂寿喜男

    岩垂委員 そうしますと、尖閣列島の問題について、その領有関係を明確にするということは引き続いて交渉が行われていくというふうに理解してようございますか。
  24. 園田直

    園田国務大臣 尖閣列島は北方四島とは全然逆の立場でありまして、尖閣列島にただいま日本は主権の行使を行っているわけでございまして、日本の領土だということであります。その後問題はなかったわけでありますが、石油その他の話が出てきたときに台湾の方からあれは違うと言われ、続いて中国の方でもそういう話が出たわけでありますけれども、日本はあくまで自分のものだ、こう言っているわけでありますから、ソ連と全く立場が逆でありまして、その問題をこちらが持ち出すことは、日本にとって北海道はおれのものだということをソ連に言うようなものでございますから、これはなかなか微妙な問題でございますから、国民感情、それからあなたの御質問意味もよくわかりますけれども、これは余り深く立ち入らずにおきたいと私は考えております。
  25. 岩垂寿喜男

    岩垂委員 この問題については余り深入りというか、立ち入って御質問を申し上げようとは思いません。  それから日中問題とも関連をいたしますが、日米首脳会議が少し早くなったというようなことを新聞でも報道されておりますけれども、その日程あるいは議題について、とりわけ議題についてこの機会にお伺いをしておきたいと思います。
  26. 園田直

    園田国務大臣 まず日程でございますが、日本の方ではなるべく早くやりたい、米国の方ではもう少し様子を見たらどうだという話がありましたが、その後相談をいたしまして、大体意見が合いそうになってきております。そこで近く米国の方から何月の何日ごろがいいのじゃなかろうかということで妥結する見込みでございますが、まだ今日では何月何日ごろと申し上げる段階ではございません。  そこで、その日にちが決まりましたら、会談が一日に及ぶものか二日に及ぶものか、その議題はどういうものであるべきことかということも、まだ具体的に御報告をする段階ではございませんけれども、外務大臣としては総理大臣にお願いするのに、いやしくも米国大統領日本総理でありますから、余り細々した話はしないで、やはり世界的な経済問題、国際情勢、二国間の基本的な問題、こういう大きな政治上の問題で御討議願えればいいと思っておりますが、まだ総理相談をして決めておる段階ではございません。
  27. 岩垂寿喜男

    岩垂委員 両方意見が煮詰まってきた、利害が共通してきたという意味は、日本が早くしてくれ、つまり、できたら五月の上旬にしてほしいという希望を軸にして大体意見が合ってきたというふうに理解してよろしゅうございますか。
  28. 園田直

    園田国務大臣 そのとおりに御理解願って結構でございます。
  29. 岩垂寿喜男

    岩垂委員 繰り返しますけれども、訪中の問題です。日本のこの条約に対する熱意というものを示すことは、できるだけ早くという意味もありますけれども、ある程度国会日程もありますし、法案審議過程もございますので、少し立ち入って恐縮でございますが、一回交渉があって大体煮詰まるだろう、そうすれば中ごろというふうに訪中日程について、もちろん総理相談をしなければなりませんけれども、外務大臣決意をされておられるだろうと私は思うのです。お差し支えなければ外務大臣スケジュール、そんな決意をもう一遍確かめておきたいと思います。
  30. 園田直

    園田国務大臣 交渉両方から始めようということになりますと、それから余り日程を置くことはとかくいろいろ問題が起こってくるおそれがあります。しかも共同声明以後数年間たっておって、いま話を始めてもさあどうだと言われるようなものではなくて、本当はもっと早くこういう段階詰めたかったわけでありますから、私としてはいよいよやろうということになれば、国会中で外務大臣が各位に大変御迷惑をかけるわけでありますけれども、十分日程をいただいてゆっくり向こうと話し合う。それも国会中でもひとつお許しを願ってという御相談をそのときになればするつもりでおりますので、何分よろしくお願いをいたします。
  31. 岩垂寿喜男

    岩垂委員 日中友好平和条約アジア情勢についてどういう影響を与えるかという問題について、外務省防衛庁中心にしていろいろ分析をなさったということを承っております。こんな機会ですからその分析内容、あるいはそれが文書になっているとすればぜひそれをお見せいただきたいのですが、その概要について、これはどちらになりますか、外務省になりますか、ぜひお話しをいただきたいと思います。
  32. 園田直

    園田国務大臣 私もけさ早く新聞で拝見をして、全然大臣が知らなかったことでございますので、きょうの委員会であるいは御質問を受けるかもわからぬ。また一つには、こういう問題を大声が知らぬということは私の怠慢でありますから、直ちに事務当局、それぞれアメリカ局国連局、安保関係調査いたしましたが、こういうことについて意見交換した事実は全くございません。防衛庁の方で何かやっておるかどうか知りませんが、私の方でこの問題でやったことはない。そこで、年に二回ぐらいいまの関係省定期会議をやっておるわけであります。そこらあたりで何かそういう話は出なかったか、これを聞いてもそれは出なかった。それじゃこの前のハワイの会議ではそういう話は出なかったか、これは全然出てない、こういうことでありますから、けさ記事については外務省は全然関係がございません。
  33. 岩垂寿喜男

    岩垂委員 それじゃ防衛庁から伺いたいと思います。
  34. 伊藤圭一

    伊藤(圭)政府委員 実は私もけさこの新聞を見まして、そういった報告が出されているということが記事になっておりますので、私自身がこれを存じておりませんので調べましたけれども、御承知のように、防衛庁におきましては担当の分野におきまして極東軍事情勢につきましては常時いろいろな資料を分析し、検討をいたしているのは事実でございます。したがいまして、この幹部会等におきまして軍事的な問題としてどういう動きがあるのかというようなことが話し合われることはございます。しかしながら、長官の命令を受けて統合幕僚会議中心となり、その判断文書をつくって提出したということはございません。  しかし、極東におきますソ連軍の増強というものは、過去十年間非常に変化をいたしております。そういった情報の分析等に基づきまして、また最近のソ連海軍動きなどは分析いたしているわけでございますけれども、その話題になりましたときにも、日中が友好条約を結ぶことによって極東軍事環境変化はないだろうというような話し合いはしたことはございますけれども、文書をつくって報告をしたということはございません。
  35. 岩垂寿喜男

    岩垂委員 その相談をしたレベルをもう一遍お教えいただきたいことと、その相談をした結果が本日、読売新聞に出ているようなものであるか、つまり詳細に立ち入ってこういうふうにやったものであるかどうか。それから同時に、いま外務省に聞けば、外務省関係ない、こう言っています。  それから、私は常識的に、これは後で質問をいたしますが、一月にハワイで行われた日米安全保障事務関係会議などで議論されているというふうに私は思うのですけれども、真実そういう事情はないのかどうか。新聞報道ですから、出所のないところからこれだけのものが出るわけはないのですから、それはやはりある程度、意識的であるかどうかは別として、防衛庁が明らかにしたのだろうと私は思います。それらについて、相談のレベルと内容と、そしてこの新聞記事に出ているような意味が本当かどうか、これらについてもう一遍確かめておきたいと思います。
  36. 伊藤圭一

    伊藤(圭)政府委員 先ほども申し上げましたように各幕僚監部には情報を担当している部局がございます。そこにおきまして極東軍事情勢というものは常時分析しているわけでございますが、その結果に基づきまして、いわゆる幹部会議といいますか、幕僚長あるいは内局の参事官等が、週に一回、大臣を囲んで会議をいたしますが、そういった席におきまして、極東におきますソ連の軍事力の推移等、あるいは最近のソ連の海軍の動向、そういったものを報告する際に、最近、この日中友好条約の問題が促進される段階において、特異な現象というものもない、したがいまして、防衛庁といたしましては、いろいろな軍事的な面から判断いたしまして、この日中友好条約というものによって軍事的に環境が変わるということはないだろうというふうに考えているわけでございます。  したがいまして、この中に書いてございます。たとえばキエフ級がいつごろ来るだろうかというようなことは、これは日中の問題とは別個の問題といたしまして、軍事情勢分析の中で、八〇年代にはそういうこともあり得るだろう、あるいは飛行機の新しい機種というものも配備されるだろうというようなことは報告され議論されることはあったわけでございますけれども、そういうものを集大成して、日中条約との関連において、いわゆるどういう動きになるだろうかという判断ではございませんで、それはその議論のときにも、大きな軍事的な変化はないだろうということであったわけでございます。
  37. 岩垂寿喜男

    岩垂委員 そうしますと、くくりのところに、「条約締結されれば、極東ソ連軍は従来も行ってきた日本領空、近海への航空機、艦船による偵察、示威行動の密度を増すことは当然考えられると判断しており、航空、海上両自衛隊による海空両面での対応体制を整えることにしている。」と防衛庁立場から述べているわけであります。  これは、少なくともいま国の大きな方針として日中の平和友好条約が結ばれようとしているときに、それを実は足がかりにして、あるいはそれを口実にして軍備を一層強めていく、そういうような見解に立つことは、私はアジアの平和な環境をつくっていこうという方向からも、きわめて遺憾な、そうして同時に不謹慎だと言われてもやむを得ないような、そういう見解だろうと思うのです。そういう見解に立つのか立たないのか、そして、そういう結論が得られていないとすれば、そういうことを率直に、この際ですから、述べていただきたいと思うのです。
  38. 伊藤圭一

    伊藤(圭)政府委員 先ほどから申し上げておりますように、日中友好条約によってそういうような現象にはならないだろうという一般的な判断でございます。  したがいまして、従来の極東におきますソ連軍の増強ぶりというものは事実でございますけれども、それが日中友好条約と結びついて活発に動くだろうという判断はいたしておりません。したがいまして、ここに報道されているようなことが報告され了承されたということはないわけでございます。
  39. 岩垂寿喜男

    岩垂委員 念のために申し上げておきますが、これは外務省とは関係なしに、防衛庁独自の統幕の情報をいわば検討している部局が、これはどういう位置づけになるのですか、公式に議論し合ったことになるのですか、非公式に話し合ったことになるのですか、そういうことのいわば意向としていまあなたがおっしゃったような結論になっている、それは防衛庁見解とはどうなるのかということ、これは外務省関係ないということをはっきりさせておいてほしいことと、それから、もし日米安全保障事務関係会議、ここではこういう問題は議論になってないなら、なってないということをはっきり言ってください。
  40. 伊藤圭一

    伊藤(圭)政府委員 この極東軍事情勢分析というのは、統幕の二室というところがございます。それから陸海空にそれぞれ情報を担当している部局がございます。そこら辺で集めました分析というものがあるわけでございます。したがいまして、公式にこれを決めたということではございませんで、幹部が集まったところのフリートーキングの場でいろいろそういった話し合いがあったというのが事実でございます。しかも、これは軍事力の趨勢から見た判断でございますので、外務省とは関係がないわけでございます。  さらに、日米事務レベルの会議でこういうことが話し合われたかということでございますけれども、私が聞いております報告といいますか、その結果の中では、そういうことはなかったというふうに聞いております。
  41. 岩垂寿喜男

    岩垂委員 この問題は、率直に言って、この二月の初めに発表された国防白書によると、アメリカはもはや米中紛争を想定した戦力を計画しないということを言い切っております。つまりこのことは、ある意味で、アメリカは中国覇権争いはしないということの軍事的な確認である、そのことは日米安保条約と連動して日本の自衛隊の戦力のあり方をも規定することになると私は思うのです。  そこで園田外務大臣伺いますが、この一月の二十六日に、自民党の外交調査会で、日本外交日米関係が基軸である、日中平和友好条約はアメリカの世界戦略の一環であると考えている、このように指摘をしておられます。この見解についてもう少し立ち入った御見解を賜りたいことと、このような一連の動きというものを見ますと、結果的には米中、そして日中という外交的なつながりを通して、やはりソ連封じ込めというふうに、受け取る側がどういう見解に立とうとしても、そういうふうに受け取らざるを得ない面というのは、率直に言ってあると思うのです。  園田外務大臣は、かねてからバランス感覚のすぐれた政治家であると私は考えておりますが、今後のソ連やあるいは朝鮮民主主義人民共和国に対する外交というものをどのようにお進めになろうとお考えになっていらっしゃるか、これについて、この機会ですから承っておきたいと思います。
  42. 園田直

    園田国務大臣 私、ソ連に参りましたときの会談でも、その点は明確に申し述べてきたところでありますが、日本外交基本は、どこの国に対しても敵対行為はとらない、敵をつくらない、こういうのが基本であります。したがって、ソ連と手を握って中国を敵に回すこともいたさぬかわりに、中国と手を握ってあなたの国を敵にしようということは考えておりません、こう申し上げてきたわけでありますが、私が自民党の外交調査会、外交部会合同部会で言いましたことについては前後がありまして、日中友好条約を進めるについて、慎重派の方から、米国日本関係でその話はしてあるのか、そしてその結果アメリカは、やるならやってもいい、やらぬならやらぬでもいい、勝手にしろ、こういう言い分なのか、それともアメリカも日本中国がさらに条約締結して善隣友好の関係を進めていくことがいいと言うのかどっちだ、アメリカの世界戦略からいってどうだ、こういう質問があったので、つい私も戦略という言葉を使ったわけであります。とかく近ごろ戦略と方略と一緒にして商業上でも戦略という言葉があったものですから。しかし、その際断って、軍事上の話ではなくて、アメリカと話もしてあります。そこで、アメリカの方では、どうでも勝手にしろというのじゃなくて、日本中国がさらに提携して善隣友好関係を進めるということがアメリカの世界的視野からもアメリカは心中好むところでありますと、こういう意味発言をしたわけで、私の発言が一方また第三国にとっては刺激的に聞こえることは確かに御指摘のとおり、これは注意をしなければならぬことがございますので、各所でその真意をよく表明して、御了承願っておるところでございます。
  43. 岩垂寿喜男

    岩垂委員 質問の後段の対ソあるいは朝鮮民主主義人民共和国に対する外交、それらの問題について承っておきたいと思います。
  44. 園田直

    園田国務大臣 したがいまして、ソ連に対するわが国外交は、四島返還の問題ではまだ意見が食い違っておりますけれども、その他のことについては、日ソの間にある問題は共通の利害関係が非常に多いわけでありまして、したがって、領土の問題以外は、平和交渉の継続ということも含めてほとんど合意に至ったわけでありまして、日中友好条約を進め、また締結した場合についても、ソ連とはできるだけお互いに相互理解を深めて、そして友好関係を深めていく、こういう考え方であります。  北朝鮮に対しましては、しばしば申し上げておりますとおりに、日本はあの半島の平和、そして将来は両国話し合いによって平和的に統一されることを望んでおるわけでありますが、ただいまは韓国の方と国交が結ばれて、北の方とはまだ正常化されておらぬわけであります。しかし、北側の方もわが日本に対していままでとはやや違ったような、向こうに行かれた議員団とかあるいは日本人で訪問した方々に対する言葉等から見ると、大分変わってこられるのじゃないかという感じもしております。こちらも、漁業問題初めいろいろ起こる問題を積み重ねていって、そして両国の緊張緩和の方向に行くように北朝鮮の方にも事あるごとにその事々をつかまえて話し合いができるような方向にしたいと考えておるわけでございます。
  45. 岩垂寿喜男

    岩垂委員 日中問題が一つの区切りをつけますと、大きな外交的な懸案事項として言えば朝鮮民主主義人民共和国の関係、国交の正常化、これらの課題というのを除いて考えることはできないと思うのですが、それらの問題についても、外務大臣は前向きな態度をとって臨もうとなさっておられるか。その点について、朝鮮民主主義人民共和国と南、韓国の民族の平和的、自主的な統一というものを前提としながらもどのようにお考えになっていらっしゃると考えてよろしいか。
  46. 園田直

    園田国務大臣 朝鮮人民共和国と日本の間が少なくとも対決の姿勢ではなくて、逐次話し合いが進んでいって、そしていろいろな障害が取り除かれれば朝鮮人民共和国との方とも相互理解を深めたい、こういうことは両国の緊張緩和の点についても当然のことであり、日本外交の面からいってもどこの国とも友好を深めたいということでありますから、そういう方向をにらみつつやりたいと思っておりますので、そのように御理解願っても結構でございます。
  47. 岩垂寿喜男

    岩垂委員 これはどういう理解になるのか私もちょっとわからないのでお伺いをするのですが、元になりますか、田中総理ソ連との間の共同声明の中で、懸案事項の解決という問題が問題になっていますね。そしてその後外務大臣が訪ソされるたびに、いわば共同声明みたいな形でそれが明らかになってきた。今回は、園田外務大臣との間では共同声明はなかったわけであります。これらの懸案事項の解決という問題、日本側はこれを領土問題を含めてとこう言っているわけですが、これらは、外交的に言いますと、外務大臣が訪ソされて、そして共同声明が出なかった、そこで切れるわけですか、それとも継続しているのですか。それらの判断をこの際お伺いしておきたいと思います。
  48. 大森誠一

    ○大森政府委員 日本国ソ連との間の関係につきましては、先生御承知のように日ソ共同宣言というものがございまして、北方領土の返還問題を含めて今後とも平和条約交渉を行うということは明確になっております。その点は、日ソ共同宣言に先立ちますいわゆる松本・グロムイコ書簡においても明らかにされておるところでございます。また先ほど先生御指摘の一九七三年の田中・ブレジネフの共同声明におきましては「双方は、第二次大戦の時からの未解決の諸問題を解決して平和条約締結することが、両国間の真の善隣友好関係の確立に寄与することを認識し、平和条約内容に関する諸問題について交渉した。双方は一九七四年の適当な時期に両国間で平和条約締結交渉を継続することに合意した。」というふうにうたわれております。  ここでもわかりますように、日ソが国交回復して以来この未解決の諸問題、すなわち北方領土の一括返還というものを達成しての平和条約締結という方向で以前からもいろいろなレベルで交渉が継続されてきておるわけでございます。このたびの園田外務大臣ソ連訪問に当たりましては、平和条約交渉を継続するというそのこと自体につきましては、ソ連側もはっきりその点は同意し得ると言っているところでございます。ただ、その点につきまして、未解決の問題を解決して平和条約をつくるという趣旨のことを今回の大臣訪ソに当たっての共同声明にうたうことを先方が拒否してまいりましたので、そういうもののうたわれない共同声明を発出するよりはむしろ、それでは後退ということにもなりかねませんので、あえてこの際は共同コミュニケといったようなものはつくらないでお帰りになった、こういうふうに理解しているわけでございます。
  49. 岩垂寿喜男

    岩垂委員 日本側としては、田中・ブレジネフ共同宣言と言われるものの筋道が引き続いておる、当然このように理解しておるわけですね。
  50. 大森誠一

    ○大森政府委員 そのとおりでございまして、日ソ間では平和条約締結交渉が継続しております。
  51. 岩垂寿喜男

    岩垂委員 時間が少し迫ってきましたので、国連の軍縮特別総会の問題について承っておきたいと思うのです。  総理大臣が出席を希望しておられるということを新聞報道で承っておるのですが、実際問題として日米首脳会談などとの兼ね合いで可能なのかどうか、その辺のところの判断。この総会では日本独自の立場から積極的な提案を行うべきだろうというふうに私は思っているのです。新聞報道によりますと、準備委員会日本政府が提案をした、特に核兵器問題についての提案というのはどうも及び腰の感じが私否めないのであります。世界で唯一の被爆国民として考えてみるならば、核実験の停止、禁止はもちろんでありますけれども、拡散の防止あるいは核兵器の使用禁止という問題を含めた全面的な核廃絶を訴えることが政治的にも日本人のモラルとしても非常に重要な課題ではないだろうかと思うのです。ところが、日本政府が提案をしたのは、実験禁止はありますけれども、核兵器については削減という言い方になっているわけでありまして、これはどうもアメリカなりに気がねをしているのではないだろうかというふうに思わざるを得ません。しかし、現実には、たとえばソ連も最初には核兵器を使わない、中国も同じ、アメリカのカーター政権もそういう見解について一定の見解を示しているわけでございまして、その意味では、当面核全廃というものができるかできないかという政治的判断は別にしても、核保有国の手を縛るということ、核保有国に核使用禁止条約締結させるということ、ここのところが核保有国の公式に明らかにされた方針から見てもいわば現実的、具体的な提案ではないかと思うのですけれども、その問題についても少し及び腰だという日本政府の提案を軍縮総会などを舞台にして積極的に訴えていくお気持ちがあるかないか。そして同時に、政府は軍縮総会に一体どういう態度で臨もうとしておられるかということを念のために承っておきたいと思うのです。
  52. 園田直

    園田国務大臣 ただいま核の問題について及び腰というおしかりを受けましたが、そのおしかりは私も深く頭の中にあるところでありまして、外務省としては現実に世界各国と交渉しているものでありますから、実際にこの点までで控えておかぬとまとまらぬという現実の面からいままでいろいろやってきたわけでありますが、しかし、それはとかく、目標を五に置くと四か三にしか行かぬというような感じがいたします。  今度のソ連の人工衛星の落下の問題について意見がありましたけれども、国会の御激励もあって、わが代表はいち早く原子炉を動力とする人工衛星打ち上げ禁止ということを先頭に打ち出しましてやりましたところ、わが国のイニシアチブによってそれを検討する特別小委員会ができつつあるということは一つの自信でございますので、今度の軍縮総会は非常にそういう点で私は重大視しているわけであります。まず、現実にできるかできぬかは別として、核の洗礼を受けた唯一の日本である、それからわが国基本的な非核三原則、こういうものを大きく打ち出して、核兵器全面禁止、核廃絶ということを世界に向かって主張すべきである、主張してどこまでできるかは今後の問題である、こういうふうに私も考えて、そういう方向でただいま準備をしているところでございます。
  53. 岩垂寿喜男

    岩垂委員 非同盟諸国などの見解もあるわけでございます。いま外務大臣が言われたように、核保有国に核使用の禁止を迫っていく、そういう条約締結させていく、そういう国際的な世論がきわめて具体的、現実的に政治日程に上って差し支えないし、その可能性がある、実現性がある、このように私は思います。くどいようですが、こういう立場日本政府の中で積極的に討論する、そういう方向でまとめるために努力をするというふうに考えてようございますか。  それから、総理大臣日程についても、もしおわかりでございましたら、この機会に明らかにしていただきたいと思います。
  54. 園田直

    園田国務大臣 私はこういう観点から、できれば総理大臣に御出席を願って軍縮総会に訴える比重が大きくなるようにと考えておるわけでありますが、いまのところ、まだ決まってはおりませんが、首脳者会議その他を考えると総理にお出まし願うのはやや困難ではなかろうか。そうなると私が行くことになっておりますが、私が参りましても、総理大臣以上の決意影響力があるように、私は向こうで訴える所存でございます。そしてまた、軍縮総会では、いまおっしゃいました核廃絶、核兵器全面禁止、こういうことを冒頭に強く訴える所存でございます。
  55. 岩垂寿喜男

    岩垂委員 全面禁止というのは削減とは違うわけでございますから、その点も含めて、いま私が提案いたしましたことを十分生かすように努力をいただきたいと思うのです。  それから、この特別総会には、大変大ぜいの民間の組織が代表団を送ろうと準備をしております。外務大臣は、先ほどもちょっと触れましたけれども、この国会外交演説の中で、「私は、かねてより、外交の基盤は国内にあると信じ、外交とは常に国民理解と支持を得たものでなければならないと考えておりました。」と述べているわけであります。外交政府主導が原則であったとしても、今日のような相互依存の世界の現実が民間外交の分野を非常に広げていることも事実でございまして、外務大臣がこの認識に立っておられるとすれば、外交へのいわば国民参加という方針を検討すべき時期ではないだろうかというふうに私は思います。これらについての見解とあわせて、いま国民代表ということで数百人の人々が国連の軍縮特別総会へ日本代表団を送ろうと努力をしている、こういう人々との話し合いといいましょうか、そういう機会をお持ちになるおつもりがあるかどうか、この辺についての見解を承っておきたいと思います。
  56. 園田直

    園田国務大臣 いま御発言のとおりに、民間の方々からも、ぜひ向こうに行ってこの会議にオブザーバーとして参加したいという意見が出ておりますが、これは国連の手続その他もございますし、ただいま事務的に局長の方で詰めておる段階でございますので、詳しくは局長から御報告をいたさせます。
  57. 大川美雄

    ○大川政府委員 民間の人たちの国連軍縮総会への出席の問題は、私どもも従来から重視いたしておりまして、ことしの初めに入りましてから何度か、行かれる御希望を持っておられる団体の方々の代表とお目にかかりまして、いろいろ情報交換をするように努めております。私どもとしては、政府立場を御説明申し上げるし、皆さん方からは民間団体としての軍縮問題についての御希望考え方を聴取してわれわれの参考とさせていただくという気持ちで何度かお目にかかっております。それから具体的に、軍縮総会に出られる場合の、たとえば座席の問題であるとか通行証の問題であるとか、こういった点につきましては国連事務局においてだんだん準備を進めてまいりまして、ごく最近も事務局から、世界各国から集まる民間の方々に幾つの議席を留保してあるというようなことを通報してまいりました。これは逐次私どもから民間の方々に御連絡し、御説明申し上げるように努めております。
  58. 岩垂寿喜男

    岩垂委員 この特別総会に日本側から武器輸出の規制の問題を取り上げていきたい、こういう意向もあるようでございます。日本の中でも、この際景気対策に武器を外国に売ろうじゃないかなどという意見が出ておるようでございますが、こういうときでございますから、やはり日本立場からそういう武器輸出の規制という問題を積極的に取り上げていただく、これについて見解を煩わしておきたいと思います。
  59. 園田直

    園田国務大臣 通常兵器の規制、武器輸出の規制、これはわが外務省はなかなか熱心にやっております。むしろ私は、それを余り言い過ぎて核の問題がおろそかにならぬように、最優先は核、次には通常兵器の規制、武器輸出の規制、こういうふうに言っておりますものの、わが外務省はなかなか熱心にこれを訴える準備をしております。
  60. 岩垂寿喜男

    岩垂委員 ジュネーブの軍縮委員会、これは御存じのとおりフランスや中国が参加していないわけですね。これはいろいろな経過があるわけです。しかし結果として、それが米ソ主導型とでも言いましょうか、その同意がなければ何にも前に進まない、こういう実態があることについて、かねてから非同盟諸国を初めとする多くの批判があることは事実です。この軍縮特別総会でも軍縮委員会の改組問題と言いましょうか、機構の問題について議題になっていますね。これについて日本政府はいままででいいのか。いままででいいはずはないので、別にフランスのジスカールデスタンの提案ということを具体的に言うつもりはございませんが、とにかく何とかしなければ、もうちょっと工夫しなければ、グローバルの意味ではその機能を十分果たし得ないと私は思うのです。これについては外務省検討したことがあるのか、あるいは今度の総会にこれらの問題について日本政府が何か物を言おうとしていらっしゃるか、そうした見解を承っておきたいと思うのです。
  61. 大川美雄

    ○大川政府委員 いまの問題につきましては、もちろん私どもとして検討いたしております。今度の軍縮特別総会におきましてもこの問題は論議される予定でございますし、さらにジュネーブの軍縮委員会自体の場におきましても、数年前からいろいろの議論が出ております。非同盟諸国の中から、軍縮交渉はすべて核兵器国の間の話で終始して、なかなか軍縮委員会自体に問題が出てこないということに対する不満もございますし、それから軍縮委員会が米ソ二核大国の共同議長制のもとに運営されているということに対する不満もございます。  それからいま一つ中国とフランスがあの場に出てまいらないということは軍縮、ことに核軍縮交渉の面で大きな制約要因になっておると私どもも考えておりますので、従来からフランス、中国の軍縮委員会への参加、出席ということを何度か呼びかけております。  軍縮委員会は、そういう面でいろいろいままで制約がございましたけれども、それでも私どもとしては、軍縮交渉あるいは軍縮条約交渉の場としてはきわめて有用な場でございまして、これは今後ともいろいろ改善していく必要があろうかと思います。軍縮交渉の場としては非常に有益な場でありますし、ぜひとも今後とも存続していくべきものであると考えております。
  62. 岩垂寿喜男

    岩垂委員 やはりいまのままではいけないということなんです。中国やフランスに呼びかけただけでは、入ってこないと言えばそれまでなんですね。ですから、やはり機構の問題を少し本格的に取り上げないことには、構成の問題や運営の問題でまずいと私は思うのです。そういう意味では、やはり積極的に日本がこの改組の問題について提案をすべき時期が来ている、私はこう思うのです。日本はそれを呼びかけていく資格があると私は思うのです。これについて外務省の中で御検討なさる用意があるかどうか、そのことを聞いておきたいと思います。
  63. 大川美雄

    ○大川政府委員 御趣旨を踏まえて私どもとしても十分検討して今後努力してまいりたいと思います。
  64. 岩垂寿喜男

    岩垂委員 この特別総会、私はやはり相当重視すべきだと思うのです。これは日本立場からいえば一番積極的に物が言える場所だと私は思うのです。ですから、そういう意味でも、一種の国民運動的な意味を含めて、単に外交という問題に限らず、この政治的な意味、それから世界の平和にもたらすであろう価値というものをもっと積極的に取り上げていただきたいものだ、その意味で、いまのジュネーブの軍縮委員会の問題も含めて、ぜひもうちょっと本腰を入れて考えてほしいものだというふうに思いますので、その点はその点で終わりたいと思います。  国連軍縮特別総会で全面完全軍縮の立場を一番胸を張って主張できるのは、だれが何と言っても平和憲法で非武装中立を宣言した日本代表だろうと思うのです。園田さん、私はあなただろうと思うのです。その意味で、園田外務大臣あるいは伊藤防衛局長がさきの外務委員会で、わが国は憲法の法理に照らして大型であろうと小型であろうと核兵器を持つことは許されないということをはっきり述べられました。心から敬意を表したいと思います。無論憲法九条の問題についての見解は、私は違います。違いますが、それは別として、一つの見識だろうと思います。  この問題は、実はわが党の土井たか子議員の質問でございます。土井議員は政府の統一見解を求めておられまして、聞くところによりますと、外務委員会理事懇談会で、統一見解は外務委員会に示すようにということになっているそうでございますので、私はここでは立ち入ってそのことについての統一見解を求めようとはしません。  しかし、私、実は速記録を見せていただきまして、これを写してきました。ここで「〇園田国務大臣 お答えいたします。国際会議でいまのような発言をしたこともありませんし、これから発言する意思もございません。」この意味は、要するに小型防御的な核兵器なら持ってもよろしいという見解などを申し上げるつもりはないということを言っているわけです。「いまの御指摘のことについて申し上げますならば、憲法九条だけ限定して見ると、法制的、法理論的な問題はあるかもわかりませんが、いまおっしゃいました結んだ条約は遵守しなければならぬ、それから憲法の各所に、日本国民の生命と財産を守るということが書いてあるわけでありますから、」これは憲法十三条ですけれども、「この精神からいっても、小型、大型であろうと、条約を結び、非核三原則の今日、憲法からいっても私は大型、小型は持てない。」というふうに断言しているわけです。引き続いて、「まして小型であろうとも、日本国民に被害を与えるおそれのあるようなものは、憲法の精神からいっても、いまおっしゃいました憲法の各所の条文からいっても私は持てない、このように申し上げておきたいと思います。」というふうに述べられております。先ほど申し上げましたように、第九条についての見解、これについては私も意見を持っていますが、ここでは述べません。しかしそれはそれとして、率直なところ、さすがは厚生大臣を経験なすった園田さんの見識だと私は感じました。  実はあしたはビキニデーです。ビキニの水爆実験で久保山さんがとうとい生命を落とした、あるいは日本じゅう魚が食えない、こういう状態が起こったわけでございまして、あの経験というのは、核実験によって日本国民の生命と財産が損なわれたことを実証しています。大型であろうと小型であろうと、核を持てば当然実験をせざるを得ない。実験はもちろんのことでございますが、実際に使用すれば、国民の生命、財産が非常に大きな損傷を受けることは避けられないわけでありますから、核武装は憲法第十三条に明白に違反しているということは言うまでもありません。この立場をあくまでも貫いていただきたい。外務大臣がお述べになったみずからの言葉に対して、ぜひ政治的な信念を貫いていただきたいものだ、このように思います。  それから、これは憲法じゃありませんけれども、原子力基本法によっても、原子力の平和利用の立場から核武装は禁止されているという見解を私は持つわけですが、これについての御見解を承っておきたいと思います。
  65. 大森誠一

    ○大森政府委員 原子力基本法は、その第二条におきまして、「原子力の研究、開発及び利用は、平和の目的に限り、民主的な運営の下に、自主的にこれを行うものとし、その成果を公開し、進んで国際協力に資するものとする。」こういうふうに規定されているところでございます。原子力基本法自体の解釈につきましては、むしろ関係省庁の方が御答弁されるのが適当かと思いますけれども、従来の政府国会における答弁に徴しましても、この原子力基本法というものによりましても、この原子力基本法は平和の目的に限るということになっておりますから、結論といたしましては、政策上も法律上も核兵器を持つことは現在においてはいたさない、できないという結論になるわけでございますと、こういう趣旨の答弁がありまして、原子力基本法から申しましても現在は持てない、こういうことであろうと私なりに理解いたしたところでございます。
  66. 岩垂寿喜男

    岩垂委員 本会議が予定どおりだそうですので、この辺で区切っておきます。
  67. 始関伊平

    始関委員長 午後一時三十分から委員会再開することとし、この際、暫時休憩いたします。     午前十一時四十二分休憩      ――――◇―――――     午後一時四十二分開議
  68. 始関伊平

    始関委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  在外公館名称及び位置並びに在外公館に勤務する外務公務員給与に関する法律の一部を改正する法律案議題とし、質疑を続行いたします。岩垂寿喜男君。
  69. 岩垂寿喜男

    岩垂委員 安保問題について質問をいたしたいと思います。  三月七日から十一日まで南朝鮮全域とその周辺地域で行われる米韓合同演習、いわゆるチームスピリット78は、新たな朝鮮戦争を想定した演習であります。これがかえって朝鮮半島での緊張を非常に激化させるものにならざるを得ない、このように指摘をせざるを得ません。そしてその規模は、朝鮮戦争以来最大規模と言われるものであります。これには、ハワイの米陸軍第二十五師団、米オクラホマ州フォートシル基地の核弾頭装備可能の新型地対地ミサイルランス部隊、及び空母機動部隊を含む第七艦隊、海軍海兵隊の水陸両用機動部隊、空軍戦略爆撃機部隊など、アメリカ軍約三万人が参加すると言われておりますが、この演習の規模について、この機会に詳細にわかっていましたら明らかにしていただきたい。  そして、外務省アメリカ局長は二月の十六日の衆議院予算委員会で、在日米軍もこの演習に参加することを明らかにされましたが、沖繩の海兵隊の参加はすでに明らかになったけれども、岩国の海兵隊は参加するのかしないのか、一つ一つ伺ってまいりたいと思いますので、御答弁をいただきたいと思います。
  70. 中島敏次郎

    ○中島政府委員 お答え申し上げます。  まず第一点の米韓合同演習、チームスピリット78というものにつきましては、わが方もアメリカ大使館より一般的な説明を受けておりますが、第一点の、その全体の規模が幾らかということでございます。この点につきまして私、当面お答え申し上げることができますのは、韓国にある米軍を除きましたものでございますが、これが陸軍が八百名、それから海兵隊が約四千名、それから海軍が人数にいたしまして約八千五百名、それから空軍が九千七百名という数字を把握いたしております。  わが国におります米軍の参加につきましての第二点の御質問でございますが、まずミッドウェーを含む第七艦隊の艦艇及び航空機の一部が参加する予定だというふうに承知いたしております。それから横田の空軍の第六五五戦術病院部隊の一部、それから沖繩におりますところの空軍の第一八戦術戦闘航空団の一部、それから海兵隊の第三海兵師団の一部、それから第一海兵航空団の一部がそれぞれ参加するというふうに承知いたしております。
  71. 岩垂寿喜男

    岩垂委員 いま横須賀にミッドウェーが入っていますが、このほかに航空母艦が寄港しているかどうか、その情報をつかまえているかどうか。まだ報道も何もございませんが、明らかにしていただきたいと思います。
  72. 伊藤圭一

    伊藤(圭)政府委員 現在横須賀に入港しておりますのはミッドウェー、空母が一隻でございますが、そのほかに航空母艦はございません。
  73. 岩垂寿喜男

    岩垂委員 ヘリコプター空母トリポリが入港しているということは事実でございますが、それについてはいかがでしょうか。
  74. 伊藤圭一

    伊藤(圭)政府委員 本日二月二十八日時点では、それは入っておりません。
  75. 岩垂寿喜男

    岩垂委員 これはきょう調べたのですね。確かですね。
  76. 伊藤圭一

    伊藤(圭)政府委員 先ほど電話で確かめたところでございます。
  77. 岩垂寿喜男

    岩垂委員 それは米軍に確かめたのですね。
  78. 伊藤圭一

    伊藤(圭)政府委員 在日米軍司令部に問い合わせたものだそうでございます。
  79. 岩垂寿喜男

    岩垂委員 また後で問題になろうと思いますが、この際念のためにお聞きをしておきますが、在日米軍と在韓米軍あるいは韓国軍との合同演習というのは、日米安保条約のどの条項に照らして可能になるのか、この機会に条文に照らして明らかにしていただきたいと思います。
  80. 中島敏次郎

    ○中島政府委員 先生御承知のとおり、アメリカが安保条約によりましてわが国の施設、区域の使用を認められておりますのは、「日本国の安全に寄与し、並びに極東における国際の平和及び安全の維持に寄与する」ということで認められているわけでございます。したがいまして、この安保条約第六条の目的に沿う限りにおいて日本にありますところの米軍が所要の訓練を行うことは、これは安保条約上許されているところでございます。
  81. 岩垂寿喜男

    岩垂委員 率直に申し上げて、私どもはいまの安保体制のことを日米韓の共同作戦、こういう危惧を持って指摘をしてきました。はからずも、今度のチームスピリット78の計画に関連をして言うと、在日米軍と在韓米軍が自由に行き来できる、その関係を通して韓国軍と演習をやる、在日米軍は自衛隊と演習をやる、こんな関係が出てくるわけであります。言葉をかえて言いますと、アメリカの部隊が韓国にいるときには米韓相互援助条約の第四条に基づいて韓国の基地を使うことができる、同時に、その同じ部隊が日本に入ってきますと、安保条約第六条に基づいてその部隊は在日米軍という編成になるわけであります。まして、第五空軍の司令部は横田にございますが、これは御存じのとおりに日本と韓国に、その司令部のもとに配置をされているという実態でございます。そして、韓国では韓国軍と演習をやる、日本では日本の自衛隊と演習をやる。そうなりますと、事実上の日米韓の共同演習を実際に予定をしている、こう言わざるを得ませんけれども、自衛隊はこの演習にもちろん参加しないと思いますが、確かめておきたいと思います。
  82. 伊藤圭一

    伊藤(圭)政府委員 自衛隊は参加いたしておりません。
  83. 岩垂寿喜男

    岩垂委員 自衛隊と在韓米軍、自衛隊と韓国軍との合同演習というものはあり得ないと思うけれども、その点も確かめておきたいと思います。
  84. 伊藤圭一

    伊藤(圭)政府委員 おっしゃったとおりでございます。
  85. 岩垂寿喜男

    岩垂委員 在沖米軍が作戦行動をとるときに、沖繩の自衛隊は支援任務を負うのかどうか、この点を御答弁を煩わせたいと思います。
  86. 伊藤圭一

    伊藤(圭)政府委員 支援任務は負っておりません。
  87. 岩垂寿喜男

    岩垂委員 何回か恐縮ですが、自衛隊は支援任務を全く持っていない、こういうふうに理解しておいてよろしゅうございますか。
  88. 伊藤圭一

    伊藤(圭)政府委員 支援任務は全く持っておりません。
  89. 岩垂寿喜男

    岩垂委員 そうしますと、アメリカ軍の行動がいわば日本の安全のためにとられたときにのみ自衛隊は協力をするということであって、アメリカ軍がいわゆる極東の安全ということに関連をして行動をするときには自衛隊は一切協力の任務を持っていない、このように理解をしてよろしゅうございますか。
  90. 伊藤圭一

    伊藤(圭)政府委員 安保条約の第五条によりまして、日本の安全のために共同対処をする場合にはお互い協力することになっておりますが、それ以外には米軍に協力する任務はないわけでございます。
  91. 岩垂寿喜男

    岩垂委員 有事の際の日米の作戦の調整を行っているわけですね。たとえば作戦協力の大綱とかあるいは情報交換とかあるいは補給の問題とか、こういう窓口と、それがやっている作業の内容について承っておきたいと思います。
  92. 伊藤圭一

    伊藤(圭)政府委員 実はいま先生がおっしゃいましたようないわゆる協力関係、このものはかつて統合幕僚会議の事務局の担当官と在日米軍の担当官の間で研究、協議をしていた時代がございます。しかしながら、三矢研究が国会で論議されました以降というものは具体的にそういった研究、協議も行われていなかったわけでございます。そこで昭和五十年に坂田・シュレジンジャー会談におきまして、日米防衛協力態勢というものが有事の際に円滑に行われるように、日米防衛協力委員会というものをつくって、そこでお互いにいま申されましたような運用面あるいは補給面等において、有事の際にどうやれば整々と共同対処ができるかということを研究をしようということになりまして、現在、日米防衛協力委員会においてその問題を研究しているわけでございます。  現在はいわゆる技術的な面ということでございまして、主として統合幕僚会議あるいは陸海空の担当部局の者と在日米軍の担当部局の者、それに内局の担当課長外務省の担当課長が加わりまして、部会というのをつくっておりまして、この部会には三つございます。作戦部会と情報部会と後方支援部会というもので、具体的にたとえば指揮系統が分かれるわけでございますが、その際の調整はどういう形でやればよいのか、あるいは情報交換をするあるいは情報活動するに当たってはどういう協力態勢がとれるであろうか、後方支援につきましては、後方補給活動のそれぞれの機能におきましてどういう形の協力態勢がとれるかということを研究いたしておりまして、その結果に基づきまして防衛協力委員会におきまして今後の計画を立てるガイドラインを検討し、日米安保協議委員会報告いたしまして、それぞれの政府の責任において今後方針を定めていただこうという段階でございます。
  93. 岩垂寿喜男

    岩垂委員 それはどんなスケジュールを予定しているか、そしてそれが結論が出た段階では国民の前に明らかにすることができるかどうか、お伺いをしたいと思います。
  94. 伊藤圭一

    伊藤(圭)政府委員 この指揮調整あるいは作戦準備等につきましても、現在部会で研究中でございます。したがいまして、この結論がどういう形で防衛協力委員会の場で検討され、それが日米安保協議委員会報告される時期等につきましてはまだはっきりしためどを持っておりませんけれども、五十一年の八月に最初のこの防衛協力委員会の会合が持たれましたときに、一応二年ないし三年という時間をかける必要があるだろうというようなことはめどとして持っておりました。したがいまして、現在各部会で問題を詰めておりますが、それが出るのは、私どもいまはっきりは申し上げられませんけれども、夏から秋にかけて一応その勉強の成果というものは出てくるのではないか。それを御報告し、さらに国会等にも御報告できる時期というのはそれ以降になろうかと思いますが、日米防衛協力委員会におきまして検討されましたガイドライン等につきましては、できる範囲で御報告申し上げたいと考えておるわけでございます。
  95. 岩垂寿喜男

    岩垂委員 ことしの一月に日米の安保事務レベル協議の会議がありましたね。その内容をこの機会に明らかにしていただきたいと思います。
  96. 中島敏次郎

    ○中島政府委員 お尋ねの協議は日米安保事務レベル協議の第十回会合ということでございまして、本年の一月十六、十七の両日ホノルルで開催されたものでございます。  この協議におきましては、日米双方に関心のある安全保障上の諸問題について日米両国外交、防衛の事務レベル当局間で自由かつ率直な意見交換を行う、こういう場でございます。したがいまして、この会議においては、特に議題を特定するということなしに意見の交換を行ったものでございます。大体その内容は、日本を含む西太平洋における最近の軍事情勢、この地域における米軍の体制、在日米軍施設、区域に関する諸問題をめぐっての意見交換ということでございます。
  97. 岩垂寿喜男

    岩垂委員 この演習の問題は、また後で触れることにいたしまして、アメリカのブラウン国防長官が二月二十一日にアメリカの下院国際関係委員会で証言をいたしました。それは朝鮮有事における軍事的対応策を具体的に述べたものでありますけれども、この証言の中でブラウン長官は、アメリカ軍の展開について、日本などアジアの友好国はこの計画を納得している、こう公式に述べておられますが、どんなレベルで説明を受け、納得をしたのか、この機会に明らかにしていただきたいと思います。
  98. 中島敏次郎

    ○中島政府委員 まことに恐縮でございます。十分にポイントがとれませんでしたので、もう一度お聞かせいただければと思いますが……。
  99. 岩垂寿喜男

    岩垂委員 ブラウン発言の中で、やりとりの中で、このアメリカ軍の展開については、日本などアジアの友好国はこの計画を納得していると、こう言っているわけですね。それをどんなレベルで説明を受けて納得をしたのかということです。
  100. 中島敏次郎

    ○中島政府委員 あるいは防衛局長からお答えいただいた方が適当かもしれませんが、ブラウン長官が議会で述べましたことのアジアについての要点は、要するに、アメリカがいわゆるアジア離れをするのではないかという誤解が一部にある、その誤解を解いて、アメリカがアジア太平洋国家として、アジア太平洋地域の平和、安全に依然として重大な関心を持っておるということ、そしてその地域におけるアメリカの軍事体制を依然として維持するものであるということを強調したものでございます。その限りにおきまして、わが国といたしましても、アメリカのそのような姿勢そのもの、アメリカのそのような考え方そのものは、一般的にこれを了とするという立場をとっているわけでございます。
  101. 岩垂寿喜男

    岩垂委員 今度のブラウン発言というのは、つまり日本政府は有事の際のアメリカ軍の展開について、これを了としている、こういう意味ですね。
  102. 中島敏次郎

    ○中島政府委員 私がただいま了とすると申しましたのは、先ほど申し上げましたような、アメリカの東アジアにおける一般的な軍事体制の維持という姿勢を了としておるということを申し上げたわけでございます。  他方、ブラウン長官は、朝鮮半島における有事の際に、その近隣の地域におけるところの米軍の兵力が支援態勢を比較的短い時間に行い得るということを述べたことも事実でございまして、先生のお尋ねはその点に関するものかと思いますが、(岩垂委員「具体的な内容を言っているのです。アメリカ軍の展開について」と呼ぶ)アメリカとして、東アジア地域におけるところの異常な事態に対して、その即応態勢を短時間のうちにとり得るということ自身は、これを安保条約に照らしましても、特に異とするには当たらないのではないかと考えておりますし、その支援態勢がわが国における施設、区域を使用して戦闘作戦行動を発進させるということになれば、これは安保条約上の義務として、当然に事前協議をかけてくるべき問題であるわけでございます。
  103. 岩垂寿喜男

    岩垂委員 私の質問をしているのは、それは後で聞きますけれども、ブラウン長官がザブロッキー委員長質問に答えて、一つは「事態発生と同時に西太平洋地域に配備されている飛行中隊(複数)が追加投入される」、二つ目は「米西海岸に配備の、少なくとも二十四個飛行中隊が一週間以内に支援に向かう」、三つ目は「五日以内に韓国隣接海域の海軍機動部隊が急行する」、四つ目は「引き続き二週間以内に米西海岸の海軍部隊が派遣される」、五番目は「地上兵力としては沖繩の海兵隊が二日以内に投下される」、六番目は「続いて西海岸などから後続部隊が投入されるが、空輸能力いかんで数週間ないし一カ月かかろう」という具体的なことを言っているのです。この具体的なことについてブラウン長官は、日本などアジアの友好国はこの計画を納得していると述べているのです。私は一般的なことを言っているのじゃないのです。この具体的なことについて日本にその計画がどんなレベルで説明をされて、そしてそれを納得したのかしないのか、このことを聞いているのです。
  104. 中島敏次郎

    ○中島政府委員 いま先生の御指摘のような事実に関して、わが国にアメリカから説明があったということはございません。
  105. 岩垂寿喜男

    岩垂委員 それではブラウン長官が言っている言葉というのは正確でない、このように理解してよろしゅうございますか。
  106. 中島敏次郎

    ○中島政府委員 先ほどから申し上げておりますように、アメリカ自身の支援態勢について、ブラウン長官がその考えを軍事面から述べたものでございまして、そのことについてあらかじめわが国に説明があって、その了承を求めたというような事実はないということを申し上げたわけでございます。
  107. 岩垂寿喜男

    岩垂委員 それは委員会でのやりとりと違うわけですが、それはそれで、日本には説明がなかった、ブラウン長官の方が正確でない、こういう意味に私もとってみたいと思います。  それでは伺いますけれども、西太平洋地域配備の飛行中隊、これは在日米軍第五空軍を含むものである、あるいは韓国隣接海域の海軍機動部隊というのは、空母ミッドウェーを含む第七艦隊を指すものと理解してよろしゅうございますか。
  108. 伊藤圭一

    伊藤(圭)政府委員 実は私ども正確にブラウン長官の証言の内容というものをまだ入手しておりません。しかしながら、伝えられるところによりますと、いま先生がおっしゃったような内容のことではないかと判断をいたしております。
  109. 岩垂寿喜男

    岩垂委員 これはカーター大統領が昨年の五月に、韓国防衛に必要ならば核兵器使用もあり得るというふうに示唆され、国防白書でも、朝鮮有事には九個戦闘飛行隊、二個海兵旅団、空母二隻を含む第七艦隊機動部隊を即時に投入できる態勢にあると指摘しています。そして今度のブラウン証言であります。これらは明らかに在日米軍基地を朝鮮半島への直接発進基地と想定をし、いわば緊急出撃に利用しようとするものであると実は言わざるを得ないのであります。実はここに日米安保体制の危険性を浮き彫りさせていると指摘をせざるを得ません。  いま、たとえば横須賀など米軍の基地の周辺、特に沖繩は非常に不安を持っている、こういう状況というものを御判断を願った上で、具体的に日米安保との関係で聞きたいと思いますが、朝鮮民主主義人民共和国は、安保条約に言う極東の範囲及び極東の周辺には入っていないということを再確認できますか。
  110. 中島敏次郎

    ○中島政府委員 朝鮮民主主義人民共和国は、安保条約に言うところの極東の範囲には入っておりません。  次のお尋ねは、極東の周辺に入っておるかということでございますが、極東の周辺という概念は、先生も御承知のように、もともと安保条約の中に定められた概念ではないのでございまして、これは極東における事態との関連において、その周辺からの攻撃ないし脅威が起こったときに、在日米軍がこれに対していかなる行動をとるか、なし得るかという観点から論じられている概念でございまして、もともと極東の周辺というような固定した観念があるわけではない、そういう意味におきましても、基本的には相対的な観念であるわけでございます。  このお尋ねの地域における事態が、日米両国が共通の関心を持っておりますところの極東の平和、安全に直接これを脅威するというような関係にはないという意味におきまして、いずれにせよ極東の周辺云々ということでこれを論ずるのは適当でないというふうに考えております。
  111. 岩垂寿喜男

    岩垂委員 それは新しい解釈なんですよ。昭和五十年の十月二十八日の予算委員会で、宮澤外務大臣はこう言っています。「ただいま御引例のような場合はこの条約に言う極東あるいは極東の範囲ではない。繰り返すようでございますが、もとよりそれらの地域に何があってもわれわれの知ったことではないと申しておるわけではございません。」「この条約との関連では、周辺とはやはり考えないというふうに思っております。」こう答えているのです。これは実は極東の範囲、そして極東の周辺という問題について、アメリカとベトナム戦争との関係の中で指摘をされた、いろいろなやりとりがあった結論の答えです。  ところが、いま極東の周辺に朝鮮民主主義人民共和国が入るというふうな御答弁でございます。これは新しい解釈だと私は理解をせざるを得ませんが、どうですか。
  112. 中島敏次郎

    ○中島政府委員 先ほどの私の答弁が明確でなかったかもしれませんが、私の申し上げたいと思っておりましたのは、北鮮における事態が直ちに極東における国際の平和、安全に対する脅威を構成するものとは考えられていない、そういう意味におきまして、北鮮が極東の周辺に含まれる区域には該当していないということを申し上げたつもりでございます。
  113. 岩垂寿喜男

    岩垂委員 それでは宮澤大臣の答弁のように、極東の範囲はもちろんのこと、周辺にもとは考えないというふうに答えていますが、そのとおりですか。
  114. 中島敏次郎

    ○中島政府委員 宮澤外務大臣のお答えになられたとおりでございます。
  115. 岩垂寿喜男

    岩垂委員 それでは伺うけれども、朝鮮半島における極東の範囲の境目というのは、ある答弁によると、北緯三十八度線というふうに言っているところもありますし、韓国の支配下にある地域というふうに言っている言葉もある、二つあるわけです。どちらが正しいか、この際お伺いをしておきたいと思います。
  116. 中島敏次郎

    ○中島政府委員 御承知のとおり、極東の範囲に関する従来からの政府統一見解によりますれば、韓国の支配下にある地域は極東に含まれているということでございます。その韓国というのは具体的にどこであるかということはそれなりに明確であろうと思いますが、お尋ねの三十八度線ということは、これを厳密にとらえて、そこで極東が終わり、極東が始まるというような厳密な意味考えられていることではないだろうと思います。しかし、いずれにせよ、韓国の支配下にある地域が極東に含まれていることは事実でございます。
  117. 岩垂寿喜男

    岩垂委員 これは後で、この問題も実は非常に重要な意味を持っていると思いますので、伺います。  事のついでに大変恐縮ですが、ベトナム戦争のときに、ベトナムは極東の周辺ということになりました。これについては、われわれは、これは政府の統一見解と違うじゃないかという指摘をしてきたことを実はいまでも覚えているわけですが、日本の平和と安全に関係があるということで、実は極東の周辺という新しい位置づけが行われて、日本の基地がアメリカのベトナム侵略に使われてきたということも事実であります。  その理由づけというのは、私いろいろ調べてみたのですが、当時のサイゴン政権とアメリカとの関係で、アメリカがベトナムに介入した、そのアメリカと日本の安全保障上の取り決めによって、極東の周辺に拡大解釈された、拡大というふうにぼくらは言うのですが、こういうふうに承知をいたしております。つまりサイゴン政権が守るべき対象であるということを前提にして、安保条約上、極東の周辺となったわけでございます。  さて今日では、アメリカ軍は撤退をし、ベトナムは統一し、平和が訪れたわけであります。したがって、南ベトナムの安全問題というのは日米両国の共通の関心事ではなくなったというふうに言えると思うのですが、だとすれば、今日ベトナムは極東の周辺から外されたものというふうに論理上理解ができますけれども、この点についての解釈をお尋ねをしておきたいと思います。
  118. 中島敏次郎

    ○中島政府委員 ベトナムが極東の範囲に含まれていないことは、これは従来より明確でございます。ベトナムにおいてアメリカが行動をとっておりました当時の論議といたしましては、ベトナムにおける事態というものは、極東の平和、安全と無関係ではないであろうというのが、当時の政府の説明でございました。  ただいま先生は、その後事態が変わっておる、そういう事態に照らしてどういうふうに観念するのか、こういう御質問かと存じますが、その点につきましては、現在の状況でベトナムにおける事態が、極東における国際の平和、安全を脅威するというような関係には立たないというふうに考えておる次第でございます。
  119. 岩垂寿喜男

    岩垂委員 ブラウン証言は、朝鮮民主主義人民共和国が韓国を攻撃した、こういう前提に立っています。しかし、かつての朝鮮戦争のきっかけがその逆であったというふうに言われているように、そしてまた北進をその政治的信念として、人権と民主主義を踏みにじっている大統領のもとでどんな事態が発生するかわからない、これが私は三十八度線の実態だろうと思うのであります。  さっきアメリカ局長が、たとえば厳密な意味で三十八度線、これが極東の範囲の線ではない、こういうふうにお答えになりました。そういうふうに考えてみますと、朝鮮有事というのは、極端な緊張状態、あるいは緊張の状態というものが延長してどういう事態に発展するかわからないというときに、朝鮮の緊張を激化させるためにしか役立たないこうしたブラウン証言、つまりアメリカ軍の作戦計画について、わが国はこれには余り賛成できない、あるいは協力できない、こういう立場を明らかにすべきではないだろうか、こういうふうに私は思いますが、この点について御所見を承っておきたいと思います。
  120. 中島敏次郎

    ○中島政府委員 先ほどもお答え申し上げましたとおり、アメリカ軍はわが国においてわが国の安全に寄与し、極東における国際の平和、安全に寄与する目的で、わが国におけるところの施設を使用することを許されているわけでございます。したがいまして、そのような安保条約第六条の目的に照らして、合理的な使用をアメリカ側がすること自身については、安保条約上許容されるところでございます。  アメリカ合衆国の軍隊も、常にその練度を維持するということは、軍隊として当然必要なことでございますし、そのような練度の保たれたアメリカ軍が、わが国の施設、区域を使用しているということ自身は、その侵略の発生を未然に防ぐという意味における抑止力としての効果を発揮するものであるというふうに考えている次第でございます。
  121. 岩垂寿喜男

    岩垂委員 それは見解の相違ですから、それ以上言いませんけれども、昭和五十年の十月二十八日、私さっき言いました衆議院予算委員会におけるやりとりの中で、これは大変長いやりとりがありまして、ずっと最終的に締めくくった言葉として、松永政府委員が公明党の山田議員の質問に対して答えているのですけれども、正確に読みます。「ベトナムにおいて紛争が発生している、それに対して米軍が行動するということが安保条約上許容されるかという趣旨の御質問に対して、ベトナムというのは極東の周辺であって、そこにおける事態は極東の平和、安全と無関係ではない、したがって、米軍の行動というものは安保条約上許容されるという御説明をしてまいったわけでございます。」こう言っていまして、以下ちょっとこれも読みましょう。「その意味合いにおきまして、北朝鮮というものが、ベトナムで紛争が発生している、あるいは武力抗争という状態が発生している、それと同じような状況が北朝鮮で起こった場合に米軍が行動することがあるかという御質問になるだろうと思うのでございます。その場合に、ベトナムにおいて発生した事態と同じような事態が北朝鮮において発生した場合に、米軍が行動することはない、そういう意味でこれは極東の周辺でないという御答弁でございます。そうでなければ論理的には合わないわけでございまして、その点は御了解いただきたいと思います。」と、こう答弁しておりますが、この答弁は今日もいささかも変わっていないというふうに確認をしてよろしゅうございますか。
  122. 中島敏次郎

    ○中島政府委員 そのとおりでございます。
  123. 岩垂寿喜男

    岩垂委員 引き続いてこの事前協議の問題に入ってみたいと思うのです。  事前協議の問題については、六〇年の安保のとき以来ずっとそうでございますが、つまり戦争に巻き込まれないための歯どめだ、こうおっしゃってこられました。これに対して私たちは、いや、歯どめになっていない、そんな役割りは果たせないと主張してきました。しかし、もしこれが歯どめになっているとすれば、その実態をこの機会に、その効用とあわせてはっきりさせていただきたい、こういうふうに私は思うわけでございます。  それに関連して、これは昭和四十七年の五月二十三日の参議院の外務委員会で、当時の福田外務大臣が、「これは、ベトナムがわが日本と地理的に非常に遠い地域にあるという点、そこに着目をされる必要があるんじゃないか、そういうふうに思うんです。アメリカは、何もわが日本の米軍基地を戦闘作戦行動の基地として使う必要はないような立場にあるわけです。戦闘作戦行動の基地としては各所にそういう陣形を整えておる、そういうようなアメリカの布陣であります。そういうようなことを考えますと、ベトナムの場合と、それからわが国のほんとうの周辺の場合とこれを同一に論ずる、ベトナムにおいて事前協議問題が起こらなかったから周辺にも起こらないんだと、こういうふうな論理は、私は、少しそこに飛躍があるんじゃないか、そういうふうに思います。いずれにいたしましても、事前協議は非常に大事な制度でございますので、」大事にしていきたいと、こう言っております。  この言葉が今の内閣総理大臣言葉でありますから、それを前提にしてお尋ねをしますが、戦闘作戦行動というのは当然事前協議の対象とするわけですが、日本の基地を発進する以前に作戦行動命令を受けていることが要件だと、こういうふうに言われていますが、戦闘作戦行動のいわば要件というものをこの機会に明らかにしていただきたいと思います。
  124. 中島敏次郎

    ○中島政府委員 御質問の戦闘作戦行動の要件なるものの意味が、必ずしも明確につかめなかったわけでございますが、いずれにせよ、戦闘作戦行動に関する事前協議の要点は、わが国の施設、区域から戦闘作戦行動が発進されるか否かというところが決め手になるわけでございます。
  125. 岩垂寿喜男

    岩垂委員 何を言っているのですか。そんなことを聞いているのじゃないのですよ。要するに、戦闘作戦行動として評価される、つまり事前協議の対象になる場合は、日本の基地から飛行機なり船なりが出かけていく、そのときに、作戦命令を受けているかどうかということが一つのめどだということを言ってきたわけですよね。これについてはどのように思っていらっしゃいますか。
  126. 大森誠一

    ○大森政府委員 事前協議の主題となります際の戦闘作戦行動と申しますのは、御承知のように、直接戦闘に従事することを目的とした軍事行動を指すものでありまして、したがいまして、米軍がわが国の施設、区域から発進する際の任務、態様というものが、このような行動のための施設、区域の使用に該当するかどうかということで事前協議という問題が出てくるわけでございます。
  127. 岩垂寿喜男

    岩垂委員 そのときには、その戦闘作戦命令というふうなことがあるかないかということは大したことではない、こういうふうに理解してようございますか。
  128. 大森誠一

    ○大森政府委員 ただいま申し上げましたように、わが国の施設、区域から発進する際の任務、態様に係るという点から見ますれば、当然に戦闘作戦行動に従事するという命令、任務は受けているというふうに解します。
  129. 岩垂寿喜男

    岩垂委員 勝手に解しちゃ困るのです。それは。これも四十七年の五月二十三日の参議院外務委員会で、これも福田外務大臣の答弁なんですが、これは長いので時間がかかりますから省略しますが、「しかし、作戦行動命令をかりに受けておらぬといたしましても、」いいですか。「実態といたしまして、確かにこれは完全武装しておる、そしてベトナム水域に向かうんだ、こういうようなことでありますれば、これはまさに私は事前協議の対象になり得るものと、」考えております。こう答えておるのです。したがって、戦闘作戦命令を受けていたかいないかということが問題ではなくて、まあそれももちろん要件の中に入るケースもありますが、それだけがメルクマールではなくて、実態として確かにこれは完全武装して出ていくのだという場合には事前協議の対象になる、このように理解をしてようございますか。
  130. 大森誠一

    ○大森政府委員 ただいまの先生の御指摘の点につきましては、先ほど私が申し上げました米軍がわが国の施設、区域から発進する際の任務、態様という二つの点を挙げたわけでございますが、先ほどの福田大臣の御答弁は、このうちの態様という点をとらえてお答えになられたものと理解いたします。
  131. 岩垂寿喜男

    岩垂委員 任務ということの中には、戦闘行動命令というものが前提となるというふうにやはり主張なさるのですか。
  132. 大森誠一

    ○大森政府委員 任務というわけでございますから、当然そういう任務、命令を与えられていると、こういうふうに考えます。
  133. 岩垂寿喜男

    岩垂委員 そうしますと、「作戦行動命令をかりに受けておらぬといたしましても、」と、こうはっきり言っておるのですよ。あなた、いま態様というふうに答えましたけれども、二つあるうちの一つでなくて、こっちの方だけでも、その完全武装という方だけでも事前協議の対象になると、こう言っておるのです。あなたがいま答弁しているのとはかなり違うのです。  そこで伺いますけれども、第七艦隊、特にミッドウェーが横須賀に寄港して、このブラウン証言のような形で戦闘作戦行動に参加するときには、当然事前協議の対象になる、このように思いますが、いかがですか。
  134. 中島敏次郎

    ○中島政府委員 先ほどの条約局長の答弁にございますように、事前協議にかかるか否かということは、基本的には、具体的事態に即して判断せざるを得ないわけでございます。  そこで、ミッドウェーが、先生の御指摘のような事態に対処するために、(岩垂委員「ブラウン発言のことです」と呼ぶ)ブラウン発言の御質問でございますが、ブラウンの証言自身も、これこれこういうような場合にこれこれの軍隊を移動させることができるということを言っているだけのことでございまして、それがいかなる態様の移動を考えているかということは、そこからははっきりしていないわけでございます。ブラウンさん自身といえども、具体的な事態が発生するとか、具体的な事態の発生が近いという状況にならなければ、具体的な支援兵力の移動についてのまさに具体的な計画は立てられないわけでございまして、事前協議というのは、いま申し上げましたような具体的な事態に即して判断をせざるを得ない。ミッドウェーが横須賀を出ていきますときが、それが単なる国外に出て所定のポジションをとるために移動していくということであれば、これは事前協議の対象にはならないわけでございます。
  135. 岩垂寿喜男

    岩垂委員 実は余り時間がないものですから、これを議論していくと、それだけで時間がたってしまいますから……。たとえばいま第七艦隊の例を申し上げましたけれども、第三海兵隊の出動、これは御存じのとおり、海兵隊というものは常時臨戦態勢にあります。そうしてブラウン長官の証言によれば、できるだけ速やかに要するに韓国に投入をする、こうなっておるわけですね。これも事前協議の対象ということになるのですか、ならないのですか。
  136. 中島敏次郎

    ○中島政府委員 これも基本的な考え方は同じでございまして、当該海兵隊の部隊がわが国の施設を離れていきますときに、いかなる態様をもって離れていくかということによるわけでございます。単に移動をしていって、所定の位置についたときに戦闘作戦行動が発進されるということだけであれば、その結果から、日本を出て行くときの事態が事前協議の対象であるというふうには判断し得ないわけでございます。
  137. 岩垂寿喜男

    岩垂委員 念のために伺っておきますが、事前協議というのは、日本側から申し出るよりも、アメリカの一方的な権限である、これはそのとおりですね。
  138. 中島敏次郎

    ○中島政府委員 法律的な事態の説明といたしましては、おっしゃられるとおりでございます。
  139. 岩垂寿喜男

    岩垂委員 そうしますと、朝鮮有事という形でいまブラウン長官がいろいろなことを指摘された。これは事実上日本が戦争に巻き込まれるという事態ですよ。国会の議事録を、ベトナムのときのいきさつをずっと読んでみても、ベトナムは遠い国だから戦争に巻き込まれるという心配はないと、こう答えて、その言葉の次に、日本の周辺で起こったときには別だけれども、というふうな言葉政府関係者は全部言っている。つまりその事態なんです。その事態に対してさえ実はアメリカの一方的な判断、アメリカの軍の移動についてアメリカが一方的に判断をして、そうしてこれを事前協議にするのかしないのか、向こう側の判断ですよ。どうやってそれを日本がチェックすることができるのですか。しかも、ブラウン証言に盛られている作戦行動というものが、実は前もって日本政府の中にも連絡がない。アメリカが一方的に要するに計画を立てて、その計画を実行することをいつでも備えている。そういう状況の中で、事前協議というものがアメリカの一方通行であるということでは、これは何とも国民の不安というものはおさまらぬ、このように思います。やはり事前協議というものが、それはすべてのケースでと言いませんけれども、日本側からも申し入れる権限、こういうものを考えなければいけないのではないか。安保条約に賛成、反対ということは別としても、その立場というのは、私は日本政府立場として考えていいのじゃないか、このように思います。これについてどんな御見解を持っていらっしゃるか、承りたいと思います。
  140. 中島敏次郎

    ○中島政府委員 この点につきましても、従来の国会論議でたびたび問題になっていたと承知いたしておりますが、いずれにせよ、事前協議をかけるのは、事前協議の対象たる行為をとる当事者、すなわちアメリカがその行為をとらんとするときに、相手方に対して協議を申し出てくるというのが先ほど申しましたように法律的な構造でございます。それでは他方、反面わが国がこの事前協議の問題をアメリカ側からしかけてくるまでは何もできないかと言えば、そうではないのでございまして、従来御答弁申し上げておるとおり、安保条約第四条におきますところの随時協議というものを活用いたしまして、いつでも日本側において必要があると考えれば事前協議の問題をアメリカに提起して、いかなる意向をアメリカ側が持っておるかということを議論することはできるわけでございます。
  141. 岩垂寿喜男

    岩垂委員 緊急の事態、さて日本の方から随時協議でもってこっちから申し出て、事前協議をやってほしい、こういうふうに催促をするという手続があるというわけですか。
  142. 中島敏次郎

    ○中島政府委員 大体おっしゃられるとおりだと思います。ことに具体的に異常な事態が生じてくるというような場合は、これはまさに第四条でいいますところの「日本国の安全又は極東における国際の平和及び安全に対する脅威が生じたとき」でありますから、そのような脅威が生じたときには、「いつでも、いずれか一方の締約国の要請により協議する。」ことができるというのが第四条の定めるところでございますから、この制度を活用して、幾らでもその必要な事態に対処することが日本国としてもできるということでございます。
  143. 岩垂寿喜男

    岩垂委員 事前協議の問題というのは、それを必要とする要件を含めて、これまで国会でケース・バイ・ケースで議論をし答弁をしてきたわけであります。またその答弁をした日の違いによっていろいろ意見の違ったところがあったりして、われわれが判断をするのに大変判断しにくい要素があるわけであります。その意味では、事前協議を必要とする要件というものをはっきりさせておく必要があるのじゃないかと私は思うのです。そうしていわば日本政府の統一見解みたいなものを示して、私どもの立場から言えば、それが本当に歯どめになるのかならぬのか国民の前に示してほしいものだと思いますし、アメリカに対してももう一遍、こういう点は日本が戦争に巻き込まれる危険というものを国民がひしひしと感じておる、そういう点で、こういう枠組みがあるのだよということを示しておく必要があるのじゃないかと思いますが、そういう御努力をなさるおつもりはございませんか。
  144. 中島敏次郎

    ○中島政府委員 お言葉ではございますが、事前協議の対象は、安全保障条約第六条の実施に関する交換公文に明記されております。ここに、ただ  いまの戦闘作戦行動の問題であれば、「日本国から行なわれる戦闘作戦行動のための基地としての日本国内の施設及び区域の使用は、」事前協議の対象とするということを法律上の義務として明確化されているわけでございます。したがいまして、これをもって、私どもといたしましては、この事前協議にかけられるべき事態に対しては事前協議が現実に行われるという点については、問題がないというふうに考えている次第でございます。
  145. 岩垂寿喜男

    岩垂委員 実は私は、この質問を準備する中で事前協議条項というのを改めて勉強させていただきました。率直に申し上げてほとんど抜け穴だというふうに言わざるを得ない。事前協議にはひっかからない、そこへ尋ねていってみても、そこのところが何となく外れているというような状態のところがたくさんあるわけでありまして、どういう意味でこれが戦争の歯どめになり得るのかということを実はびっくりして、改めて確認をしたわけでございます。これでは、事実上はアメリカ軍が自由な基地使用というものが可能だというふうに考えざるを得ません。その上に一九六九年の佐藤・ニクソン共同声明の、韓国の安全は日本自身の安全にとって死活的な役割りを担うものだという意味合意を思い出すわけであります。さらに佐藤首相がその後ナショナルプレスクラブの演説で、日本政府は、アメリカ軍の基地使用について事前協議に対し前向きに、速やかに態度を決定すると断言されておられるわけでありまして、ここで改めて私は、くどいようで申しわけないのですが伺いますけれども、ブラウン証言にあるような事態という、つまり作戦行動をいつもすり合わせているわけですから、そう言ってはなんだけれども、あれがどういう戦闘作戦を予定しているのかわからぬという答弁ではなくて、こういう事態の中で、在日米軍の基地の使用について、もし事前協議を申し入れられたときには、私は、やはり日本が戦争に巻き込まれる危険というものの立場から、ノーと答えることを求めたいと思うわけでありますけれども、この点について、法律論ではなしに、現実に国民が不安に思っている状態というものを配慮しながら答えてほしいものだと思いますが、その点についてはどのようにお感じになっていらっしゃるか、考えておられるか、御答弁をいただきたいと思います。
  146. 中島敏次郎

    ○中島政府委員 ブラウン長官の想定する事態に即して答えよという御質問内容だと承知いたしておりますが、先ほど来申し上げておるようにブラウン長官の触れております事態も、これはもっと具体性を持って論じられなければ事前協議との関連では論じ得ない次第でございまして、ただ、先生御指摘の事前協議というのは、それはどういうふうにしてやるのだ、どういう形でこれに臨むのかという点についての御質問であれば、従来から政府国会での御論議を通じて明らかにいたしておりますことは、事前協議の運用について日本政府としては、わが国益確保の見地から具体的事案に即して自主的に判断して諾否を決定するということをもって基本的な態度としており、そしてわが方の諾否の基準は、わが国益、すなわち日本の安全を確保するということであって、その際、極東の安全なくしてはわが国の安全を十分に確保し得ないという認識のもとに、極東の安全に関係する事態を常にわが国自身の安全との関連において判断し、わが国の安全に直接またきわめて密接な関係を有するかどうかという見地から対処することとなるというのが従来から政府がお答え申し上げているところでございます。
  147. 岩垂寿喜男

    岩垂委員 もう時間が来てしまったのですけれども、少なくとも前向きに対処するというナショナルプレスクラブの演説というのは、変な言い方をして恐縮ですが、横向きかあるいは後ろ向きでないことは事実なんです。つまりイエスという方向に日本政府の意思があり、そしてそういうことを前提にして、実は今度のブラウン証言などというものも行われている。つまり包括的に事前協議をできるだけ避けて、どうしても避けられない問題についても日本政府はイエスと言ってくれるであろうということを期待をして実は行われているというふうに考えざるを得ないのであります。これは安保が発効してから今日まで事前協議が行われたことが一遍もないという事態に即してもそのことが言える。  そういう点で、この運用について、少なくとも日本を戦争に巻き込むおそれというものを考えて、外務大臣慎重にというのではなしに、日本を戦争に巻き込まないための歯どめとしての機能を事前協議制度が持っているように努力をするだけでなしに、こういうブラウン発言みたいな形の中で、何か日本人が知らないところで、日本国民が知らないところでアメリカの戦争が動いている、それでいつの間にか戦争に巻き込まれてしまっている、そういうことのないように努力をすることを求めますが、御答弁をいただきたいと思います。
  148. 園田直

    園田国務大臣 事前協議の際、拒否をするか受諾をするかということは、これはアメリカの作戦行動に協力するという意味ではなくて、先ほど局長が申し上げましたとおり、日本の安全、平和、国益、日本の安全、平和、国益ということは、狭義の意味ではなくて、その作戦行動が極東の平和を守ると言いながら、それが大きな戦争につながっていくか、あるいは局部的の平和を守るために日本が戦争に巻き込まれるおそれはないか、こういう点等も十分考慮をして事前協議に応ずべきことは当然でありまして、その際こそ、そのときの態度、判断によってこそ事前協議が歯どめになるかならぬか、こういうことでございますから、その点は十分慎重にやるべきことであると考えております。
  149. 岩垂寿喜男

    岩垂委員 時間が来ましたから、最後に一つだけですが、ベトナム戦争のエスカレートの際に、日本の基地が戦闘作戦行動や補給のために使われた。そのときに自由民主党の鯨岡議員がこういうふうに質問しています。日本はいまベトナム戦争に対して日米安保条約のおかげで中立ではないと言うが、もしそうであれば、日本が北ベトナムから見れば敵性国家になる、そうすると、米軍発進基地の沖繩が報復攻撃を受けてもやむを得ないことになるのではないか、こういう質問をされたわけであります。時の椎名外務大臣は、こう答えています。確かにそのとおりです。ただし幸いにして北ベトナムと沖繩は距離が離れていますから、現実にはその危険性はありませんと言っているのであります。  日本がもしブラウン証言のとおりに、日本の基地が米軍の発進基地に使われたときには、朝鮮民主主義人民共和国のいわば敵性国家に日本がならざるを得ない。そうして報復攻撃を受けることもあり得ないことではない。そのときにはもはや、距離が遠いからそんな御心配は要りませんというやりとりでは済まされないと私は思うのであります。この点について、国民に対してどのように説明をなさるのか。当時の椎名外務大臣の答弁というものは、今日でもそのとおりだというふうに外務省考えておられるかどうか。この点について再度外務大臣の御答弁を煩わして、終わりたいと思います。
  150. 園田直

    園田国務大臣 ただいま御発言のとおりでありますからこそ、今後の事前協議に対するイエスかノーかはきわめて重大に判断をしなければならぬと考えます。椎名外務大臣の答弁はまさに論理的にはそのとおりであると考えております。
  151. 始関伊平

    始関委員長 新井彬之君。
  152. 新井彬之

    ○新井委員 昨日園田外相が大阪市内のホテルで開かれた関経連でいろいろ発言をされておる問題でございますが、去る二十二日のブレジネフソ連共産党書記長から福田首相あての親書がポリャンスキー大使によって届けられて、その内容については、日ソ善隣協力条約締結福田首相の訪ソを要請するものであったということでございますが、この首相訪ソの要請に対して、外務大臣としてはどう考えているのか、まず初めにお伺いしたいと思います。
  153. 園田直

    園田国務大臣 総理の招請がございましたが、わが国からはソ連に対して、しばしば最高首脳者の訪日を要請しているわけでございます。これについては全然まだ訪日が行われてないわけでありますから、こちらが先に招請したわけでありますから、総理の訪ソを要請するならば、向こうから礼儀を尽くされてから、こちらもこれに応ずるのが大体順当であると考えております。
  154. 新井彬之

    ○新井委員 ソ連当局は二十三日ソ連政府機関紙イズベスチャによって、ことし一月に園田外相に条約草案として一方的に手渡した日ソ善隣協力条約草案を公表したわけでございますが、ソ連側がこれを公表したねらい、意図というものをどのように受け取っておるのか。きのういろいろなことを発表しているわけでございますが、このことは外交上の不信行為である、こういうぐあいに思うわけでございますが、いかがですか。
  155. 園田直

    園田国務大臣 ソ連が善隣協力条約の案をみずから公表しましたことはどういう意図かわかりませんが、これを想像するに、この案を発表すれば、日本国民の世論に変化があり、動揺があり、あるいは世論が分断されるなどと考えたからやったのかなと想像はいたしますけれども、正確なところは理解に苦しむところでございます。  なお、この文書が、わが方として条約文書外交文書として受け取ったものであれば、これはわが方の了解を得て発表されるのが礼儀でありましょうけれども、わが方は正式にこれを受け取ってないということでありますから、ソ連の方が自分の案を発表されることはいささかも礼儀を失したとは私は考えておりませんが、ただ何のためにやられたかわからぬ、こういうところであります。
  156. 新井彬之

    ○新井委員 一つは、日中条約締結に対する一つの揺さぶりだ、さっきも外務大臣おっしゃいましたが、国民世論に何か変化が起こるのではないか、こういう見方があるわけでございますが、その件についてはいかがですか。
  157. 園田直

    園田国務大臣 そういう意図があるのかという推測等も一部には行われておりますけれども、あの内容を拝見して、日中友好条約締結交渉にいささかも影響があるものではなくて、むしろ外務大臣としては、ソ連の方もあの中で見る限り反覇権は同意である、こういうふうに考えているわけでございます。
  158. 新井彬之

    ○新井委員 日本政府はこの善隣協力条約というのは一応断っている、再三持ち出すことについては理解できない、こういう立場に立っているわけでございますが、ソ連側が一方的にそういうことを発表するということは、日ソ友好という立場からも非常に好ましくない状態ですね。そういうことについては、いかが見ておりますか。
  159. 園田直

    園田国務大臣 あの案をソ連が発表した意図はどこにあるかわかりませんが、ではありますけれども、ああいうものを自分の方から発表して、それで新聞その他でどんどん宣伝しておることは、少なくとも意図があるわけでありましょうから、日本国民の世論が分断をされるか、あるいは何かあるかということでございましょうから、国際慣例上から礼を失すると思いませんけれども、必ずしも日本政府に対する友好的な態度ではないのじゃなかろうかと思います。
  160. 新井彬之

    ○新井委員 昨日、園田外務大臣は、ソ連の公表した日ソ善隣協力条約草案に対して、東欧などの同盟条約とほぼ同じであり、日本を東欧諸国と同様の関係に持っていくことがソ連の本心と判断している、こういうぐあいに新聞に出ておりますけれども、このことは対ソ従属を意味したものであると外相が認識しているということを述べたものかどうか、その点についてお伺いしたいと思います。
  161. 園田直

    園田国務大臣 ソ連わが国に対して対ソ従属を要求していると思いませんけれども、あの内容を拝見した限りにおいては、東欧諸国同盟国と結んでいる条約に似たところが非常に多い、こういうふうに判断をいたします。
  162. 新井彬之

    ○新井委員 これは一つソ連の大国主義的発想と言うべきものであると考えるのですけれども、いかがですか。
  163. 園田直

    園田国務大臣 いま御発言のことを私はそのまま認めるわけではありませんが、ソ連邦は日本に対してそのような関係、いわゆる協力条約を結ぼうとしている、こういうことは事実だと思います。
  164. 新井彬之

    ○新井委員 この条約草案に対しては、持って帰るが日本政府としては検討はしない、こういうぐあいに言っておりますが、この公表された条約草案の第十二条には、日ソはアジア極東地域で勢力圏の拡大、特権、優越を求めず、いかなる国のそうした要求を認めない、こういうぐあいに出ているわけでございますが、先ほども話がありましたように、現在最大の懸案となっている日中平和友好条約の反覇権条項との関連では非常に注目されなければいかぬ、こういうぐあいに見るわけでございますが、ソ連側の意図として、日中条約での反覇権条項において、その意味がこの十二条と同内容であれば、ソ連側はとやかく文句を言う筋合いはないという一つの意思表示とも受け取られるし、この点については、外相はどのような見解を持っておられますか。
  165. 園田直

    園田国務大臣 外務大臣としてはソ連の方も覇権には反対であって、まことに結構なことであると思っております。
  166. 新井彬之

    ○新井委員 これは二つの取り方ができると思います。これ以上のことはいけませんよ、これまでならばよろしいという取り方ができると思うのですけれども、そういうことについて、反覇権というものは、完璧なまでに歯どめをかけないでいいのだ、そういうぐあいに見ているわけですか。
  167. 園田直

    園田国務大臣 反覇権ということは、抽象的な言葉でございますから、向こうが発表した案の中の反覇権が具体的にどういうものかということはお答えはしない方がよいと考えますので、御理解を願いたいと思います。
  168. 新井彬之

    ○新井委員 首相への親書、ポリャンスキー・安倍会談など、ソ連側は日中条約に非常に神経をとがらせているということですが、政府としては、日中条約早期締結という方針については何ら変らないということで理解してもよろしいですね。
  169. 園田直

    園田国務大臣 そのとおりでございます。
  170. 新井彬之

    ○新井委員 先ほどからいろいろ議論があったわけでございますけれども、いよいよ全人代大会終了後、佐藤・韓会談、これが行われる。その後、いよいよ外務大臣訪中をして、いろいろ締めくくりのことになるというような予定でございますけれども、総理が五月に訪米をするわけでございますが、日本政府一つスケジュールといいますか、目標としては、総理の訪米までにこの問題の決着をつけたいというような考えで進んでおりますか。     〔委員長退席、藤尾委員長代理着席〕
  171. 園田直

    園田国務大臣 相手があり、これから折衝することでございますから、前になるか後になるかわかりませんけれども、考えてみると、五月というと、いまから九十日近くもあるわけでありますから、そこまでいけばこれは大変なことだと思うわけでありまして、九十日もかかってこれから交渉再開するのでは、これは想像されるようなことではない、そうあっては困る、こう思っております。
  172. 新井彬之

    ○新井委員 そうすると、もっと早くこの日中平和条約というものは締結をされる、こう見てよろしいですね。
  173. 園田直

    園田国務大臣 締結する時期までの日数を計算をして、ここでいつごろまでには締結できるということは申し上げるわけにはまいりません。
  174. 新井彬之

    ○新井委員 日中条約締結によって、ソ連側が日本への報復措置というのはとらない、こういうぐあいに考えているのか、それとも何らかの措置がとられると考えているのか。確認でございますけれども、お答え願いたいと思います。
  175. 園田直

    園田国務大臣 これまたソ連の腹中をこちらが想像するわけにはまいりませんけれども、少なくとも日本中国が進めていく日中友好条約なるものが、世界各国からも見られ、日本の方からも見られて当然であって、ソ連の方が怒るのはおかしい、ですから、世界各国の常識なり通念が、これは当然のことであるという正しい条約交渉締結できるならば、ソ連が何を考えておられるかわかりませんけれども、そのようなことはあり得べきはずはない、このように思います。
  176. 新井彬之

    ○新井委員 一月に園田外相が訪ソした際、コスイギン首相は、日ソ間に未解決の領土問題はないと明言しているわけですが、これは一九七三年の田中・ブレジネフ共同声明の、双方は第二次大戦のときからの未解決問題を解決して平和条約締結するという内容の修正になるのではないかと思いますけれども、いかがですか。
  177. 園田直

    園田国務大臣 私は、向こうでは修正とは申しませんでした。共同声明にちゃんと明記してあることを、何らの理由なしに一方的にそのように言われることは、ソ連に対する国際信用を持てなくなるではないか、こういうふうに向こうには言っておきました。
  178. 新井彬之

    ○新井委員 そうすると、園田外相の訪ソによって後退したのか、ソ連側の態度が変わったのか、あるいは一九七三年の共同声明自体に本来北方領土問題が入っていなかったのか、このいずれかだと思いますけれども、外相の見解はいかがですか。
  179. 園田直

    園田国務大臣 私がモスクワに行って交渉しましたことで、領土問題が後退したとはいささかも考えておりません。共同声明を出さなかったことによって、私は、共同声明の中に書かれた未解決の問題、これを解決をして、速やかに平和条約締結交渉を始めよう、こう言ってきたわけでありますから、前進はしなかったが、後退はしなかった、あくまで日本の不変不動の見解ソ連に伝えた、こういうふうに考えております。
  180. 新井彬之

    ○新井委員 まあ日本の主張はよくわかるわけでございますけれども、これは先ほども申しましたように、一九七三年の田中・ブレジネフ共同声明では、双方は第二次大戦のときからの未解決の問題を解決して平和条約締結する。その未解決という問題の中に、当然日本側とすれば、これは領土問題というのが入っておる。ソ連側としても、これは領土問題を入れておったかどうかですね。したがって、一月に外相が訪ソしたときは、日ソ間に未解決の領土問題はないという明言をしているわけですね。そうしますと、いつの時点でその領土問題は解決をしたのだと向こうがとっておるのか。われわれとしてはそんなことは当然納得できる問題ではありませんけれども、要するに、ソビエトの態度が変わったのか、あるいはこの共同声明内容がもともとそういう問題が含まれていなかったのか、それとも外相が訪ソしたときに非常に後退したのか、この三つしかないわけですけれども、そうしますと、外相は後退はしたことはないと言うなら、もともとこの共同声明にはそういうことが入っていなかったのですか。
  181. 園田直

    園田国務大臣 共同声明には御承知のとおり入っておるわけでありますから、私は、ソ連がいついかなる理由でそういうふうに未解決の問題はないというふうに変えたのか、修正したのか、そういうことを聞きただす立場にはなくて、約束をなぜほごにするのか、これだけを言い合ってきたわけであります。
  182. 新井彬之

    ○新井委員 この北方領土問題というのは、長年の懸案であり、政府も粘り強く対ソ交渉を続けると言っておるけれども、このままでは何らかの解決の方途を見出すことはなかなか困難ではないかというのが実感でございますが、政府としては、この解決のために何らかの方途があるのかどうか、お伺いしたいと思います。
  183. 園田直

    園田国務大臣 領土を一括返還させて平和条約を結ぶということはなかなか困難であり、厳しいものではありますけれども、それは絶望と言うべきものではなくて、日ソの間にはいろいろその他の問題もあるわけでありますから、お互いに相互理解を深め、そして日本国民の世論が終始これを支持し、政府がまた不動の信念を持って臨むならば、いつの日にか解決をするという確信を持って努力をしておるところでございます。
  184. 新井彬之

    ○新井委員 この領土問題は、わが国としては全力を挙げてやる、歴代の外相ががんばっておるわけでございますけれども、現実の問題としてなかなか進展のしようがないような状態ですね。しかし、歴史的な経緯もありますし、サンフランシスコ平和条約とかヤルタ協定などの関連もあるわけでございますから、アメリカ等の協力を求めるようなことを考えたことはありませんか。
  185. 宮澤泰

    ○宮澤政府委員 この領土問題に関しまして、桑港平和条約日本が千島を放棄いたしました。その千島につきまして、当時桑港平和条約の起草その他最大の責任を負っておりました米国政府にその解釈を求めて、日本政府の解釈が正しいというその裏書きを米国政府から得ております。日本政府はそれに基づいてソ連政府交渉を続けてきたわけでございます。
  186. 新井彬之

    ○新井委員 それでなかなかこれは進展しませんですね。まあそういうことで、確かにそういう裏づけもあり、きちっとしてやっておるわけでございますけれども、なかなか進展をしない。こういうことで、外相が行くたびに、あるいは共同声明を出してもそれを否認する、これは本当にけしからぬことだと思いますけれども、そういうことで、もう一歩やはりそういう問題についても研究をしていく必要があるのではないか、こういうぐあいに思うわけでございます。  次に、先ほども問題になりました事前協議の問題ですね。これについて若干お伺いをしておきたいと思うのでございますが、内容は先ほどから再三論議されておりますから、細かい問題は申し上げませんが、とにかくブラウン米国防長官が米下院の国際関係委員会発言した内容を見ますと、これは、当然西太平洋の空軍は横田基地が含まれておりますし、また、海軍の最も近いところというのは横須賀になる。沖繩は明確に入っておるわけでございますけれども、この作戦というのが、再三にわたって戦略上検討されて、それからいろいろ演習をするという形になっておると思うわけでございますから、当然これは米軍としては、こういう形でやりますよというのが既定の事実であるというぐあいにとれるわけでございます。これは事前協議が行われることは米国も知っておるわけでございますから、これはまあノーと言うことはないだろう、先ほどもいろいろ議論があったように、これはもう緊急事態だ、こうだということを言えば、必ずイエスになるということを考えて、こういう予定を組んでいるのではないかということが考えられるわけでございますけれども、その辺のところはいかがでございますか。
  187. 中島敏次郎

    ○中島政府委員 お尋ねのブラウン長官の証言でございますが、実はその証言の正確な内容が、まだ議事録という形で入手されておらないのでございます。そういう意味で、正確さを必ずしも確保し得ないわけでございますが、ブラウン長官自身も、その状況次第によってこういうことが考えられるというようなことを証言しておられるわけでございまして、その具体的な、朝鮮半島で何らかの事態が起これば必ずこういうふうにするというような意味で証言してはおられないということを申し上げさせていただきたいと存じます。
  188. 新井彬之

    ○新井委員 いまのその答弁でございますけれども、現実に細かい内容をやると時間がかかりますから、先ほどから議論されておるので、内容はおわかりだと思いますけれども、絶対にこういうぐあいにするということは言ってないとしても、よしんばこういう発言をされたとおりにやるのだという場合、これは現実に来たときに事前協議の対象になるかどうかは検討いたします。こういうことになると思いますけれども、作戦行動を行う場合に、やはりそういろいろ変えるというようなことを想定して演習はやらない、こういうぐあいにわれわれは見るわけです。したがいまして、やはりこれについては、向こうとすればイエスというものを想定しているのではないか、こういうぐあいに考えられるわけです。したがって、ブラウン長官の報告書がまだ届いてないということでございますから、その報告書が来た段階でよく検討し、その上において、もしもそういうやり方ならばこれはまずい、これは問題になるというようなことであれば、それについて日本政府として何か言う気持ちはございますか。
  189. 中島敏次郎

    ○中島政府委員 ブラウン長官の証言は、先ほど申し上げましたように、正確にはとれていないわけでございますが、いずれにせよ、ブラウン長官は、朝鮮半島において異常な事態が発生した場合における軍事的な事態について述べられたわけで、事前協議というような安全保障条約上の問題には触れておられないということが一つございます。そこでブラウン長官自身も、先ほど申し上げましたように、その証言の中では、状況によっていろいろ違ってくるのだけれどもと言いながら、朝鮮半島近隣の地域からいかなる支援態勢、即応態勢がとり得るかということを一般的に述べているだけでございまして、それをもって、具体的な事態発生の場合に必ずそのようになるというふうにとるべきものではなかろうというふうに考えるわけでございます。  いずれにいたしましても、先生御指摘のように、安保条約上の事前協議というのは、条約に基づく義務としてアメリカ合衆国政府が負っておる事態でございますので、そのような事態が生ずれば、当然に事前協議をかけてくるというふうに考えている次第でございます。
  190. 新井彬之

    ○新井委員 この事前協議というのはちゃんと明確にありますけれども、実際問題として、そういう作戦行動をとるのは、やはりブラウン国防長官とか、そういう方々がつくった作戦行動によってやるわけですね。したがって、これはこういうぐあいにしますよということについては、確かに外務省を通じていろいろ言ってくると思いますけれども、作戦行動というのは、やはりそういう一つ米国なら米国の軍隊というものが明確に考えてくるわけでございますから、その場合に向こうが、日本との日米安保条約があるのだ、そうしてまた事前協議というものがあるので、いろいろそういうことも想定されるけれども、これはイエスもある、ノーもあるということは、明確に米側もわかっておるというようなことははっきりしていますか。
  191. 中島敏次郎

    ○中島政府委員 事前協議にイエスもありノーもある、核兵器の持ち込みの場合にはノーを言うという日本政府立場というものは、安保条約締結以来のここの国会における御論議を通じて明確にされておりまして、アメリカ側も十分にこれを承知しているわけでございます。  そこで安保条約上の制度といたしましては、事前協議にかかわる問題については、アメリカ合衆国政府日本国政府の意思に反して行動することはないということを、当時のアイゼンハワー大統領が岸総理大臣に対してその共同コミュニケの中で明記しておりますし、その後も同じような立場を、アメリカ政府はトップレベルにおいて再三にわたって明らかにしている次第でございます。
  192. 新井彬之

    ○新井委員 これがさっきも議論されておりましたけれども、現実の問題として非常に空洞化されてしまうという可能性が大ですね。先ほどもベトナムの例が出ましたけれども、直接戦闘作戦行動ではなく、米軍が移動であるとか、あるいはこれまで言われてきた飛び石によって在日米軍基地が使用されることに対し、日本政府としては有事において米軍のそうした行動を規制すること、あるいはまた断ることが可能なのかと言うと、いまの状態ではなかなかそういうことにならないと思うのですけれども、いかがですか。
  193. 中島敏次郎

    ○中島政府委員 御承知のように、事前協議の当該部分に関する表現は、「合衆国軍隊の日本国への配置における重要な変更」、これが事前協議にかかることになっております。日本国への配置が事前協議でございまして、日本国から軍隊を移動させていくということは、そもそもこの事前協議の対象になっておらないわけでございます。そういう意味におきまして、アメリカ側が日本の中から軍隊を移動させて、そこで具体的事態に対して対処していくということは、安保条約上これは許容されているということを従来より申し上げている次第でございます。
  194. 新井彬之

    ○新井委員 だから私は、さっきも言いましたように、移動とかあるいは飛び石というような形を一回とれば、一切何も事前協議の対象にはなりませんけれども、実際問題は、やはり日本から発進をしてきたのだと相手側は見るわけですね。やはりあそこに基地があって、あそこから出てくるのだというように見られる。そうすると、本来ならば日本から見て何も敵でないものが敵だとか、そういうことに一切関係ないものまでが日本の国というのはやはり敵だというぐあいに見られる、こういうようなことで、何も関係のない一般の日本国民まで戦争に巻き込まれるということが出てくるわけですね。したがいまして、そこら辺のところがやはり明確に、それが飛び石的なやり方であれ何であれ、やはり明確に断るなり規制するなりということの歯どめがかかればこれは問題ないと思いますけれども、そうでない場合というのはやはり問題が残る、こういうぐあいに思うわけです。  そこで今度の三月七日から行われる米韓合同演習のチームスピリットの計画でございますけれども、これについてお伺いします。これについては外務省米国から通告を受けておるわけですか。
  195. 中島敏次郎

    ○中島政府委員 一般的な説明を受けております。
  196. 新井彬之

    ○新井委員 この米韓合同演習が行われるわけですが、沖繩あるいは駐日部隊が参加した事実というのはありますか。
  197. 中島敏次郎

    ○中島政府委員 参加した事実があるかという点は、過去の事例に対してのお尋ねかと存じますが、御承知のように、チームスピリット七八年の演習というのは、過去二年間にも同じ名前でチームスピリットと称しながらやっておる演習でございます。それらの過去の二つの演習、七六年と七七年のチームスピリット演習においては、日本にある米軍の一部がこれに参加したというふうに理解いたしております。
  198. 新井彬之

    ○新井委員 この沖繩を含む在日米軍の演習出動というのは、やはり自由発進というものを前提としておると思うのですけれども、いかがですか。
  199. 中島敏次郎

    ○中島政府委員 先ほど来申し上げておりますように、戦闘作戦行動をわが国から発進させるということであれば、当然に事前協議がかかります。そういう意味におきまして、沖繩の米軍が自由発進を前提にしておるということはあり得ないことであるというふうに考えております。
  200. 新井彬之

    ○新井委員 そこが実際問題として納得できないところでございますけれども、この米韓の軍事演習に際して在日米軍が参加するということは、有事においての事前協議を対象として演習するということになりますと、先ほどから言っておるように、当然にやはりノーと言うことがあるならば、やはり事前にこういう場合はどうだということまで話し合いが進んでないと、その演習を幾らやっても現実には役に立たないということになるのではないか、こういうぐあいに私は考えるわけです。したがいまして、そういう場合についてはイエスだというようなことが、アメリカは日本が言わなくても日本はイエスと言うのだというようなことがやはりどうしても前提にあるのではないかと思うわけですけれども、そういうことはございませんか。
  201. 中島敏次郎

    ○中島政府委員 たびたび同じことを繰り返すようで恐縮でございますが、事前協議にはイエスもあり、ノーもあるという立場はアメリカ側としても明確に理解いたしておる次第でございまして、アメリカ側は日本国政府の意思に反して行動するつもりはないということを明らかにいたしておるわけでございます。
  202. 新井彬之

    ○新井委員 交換公文における事前協議制度の戦闘作戦行動については、包括的になるのか、あるいは一機、一艦というようにその都度行われるのか、それをお伺いしたいと思います。
  203. 中島敏次郎

    ○中島政府委員 事前協議を特定の将来の事態を全部包括的にとらえてかけてくるということはあり得ないことだろうと思います。事前協議は具体的事案に即して行われてくるということでございます。他方、それでは一機、一艦でなければならないかと言えば必ずしもそうではないのでございまして、たとえば戦闘作戦行動を発進させるときに、それは何機が戦闘作戦行動をとるかということによってそれが一緒に事前協議にかかるということは当然に考えられる事態でございます。
  204. 新井彬之

    ○新井委員 それは一機、一艦ということでないけれども、一回ずつにかかるということですね。
  205. 中島敏次郎

    ○中島政府委員 一回と申します場合に、一回なるものをいかなる意味でとらえておられるかということによるだろうと思います。場合によりましては、大きな具体的な戦闘作戦行動をとるときに、それを一回その事前協議にかけて当該戦闘作戦行動をとるということもありますでしょうし、これはすべてその具体的事案に即して考えなければならないことではないかというふうに考えております。     〔藤尾委員長代理退席、委員長着席〕
  206. 新井彬之

    ○新井委員 そこが非常にまた問題のところだと思うのですけれども、どれを一回に考えるか、こういうことでございますけれども、たとえて言うと、朝鮮戦争が前にあったときでも足かけ三年ですか、かかっておりますね。そういうようなことで、それをどういう段階でもしもそういうことがあった場合に認めるかという場合に、やはりこれは包括的といいますか、どの程度で切るかということについては非常に問題が出てくるのではないかと思いますけれども、そういうときに一機、一艦でない、ある程度一つの作戦行動については全部認める、そういうように理解していいわけですか。
  207. 中島敏次郎

    ○中島政府委員 事前協議の対象はあくまでも戦闘作戦行動の発進基地として日本を使用するということでございますから、具体的な戦闘作戦行動がとられるときに事前協議が行われる。したがいまして、当該戦闘作戦行動に関して事前協議が行われるということでございます。
  208. 新井彬之

    ○新井委員 私がわからないのは、作戦行動というものはいろいろありますね。一つ出ていくのも作戦行動でございますし、あるいはまた、ある程度朝鮮戦争みたいに上陸をして、こうしてああしてということでずっとやるのも一貫した一つの作戦行動になるわけですね。そういう場合の事前協議というのはどうなのかということをお伺いしております。
  209. 中島敏次郎

    ○中島政府委員 たとえば朝鮮戦争のような事態に対しては、イエスかノーかというような事前協議の聞き方はあり得ないことであろう。そういう意味におきまして、包括的な事前協議というのはないということを申し上げたわけでございます。他方、ある特定の戦闘作戦行動をアメリカ側がとろうといたします場合に、その当該戦闘作戦行動に何機、何艦の航空機、軍艦が関与しようとも、それがその当該作戦行動との関連において一括して事前協議にかけられるということは当然にあり得ることであるというふうに考えます。
  210. 新井彬之

    ○新井委員 日米安保条約第六条の実施に関する交換公文、日米安保第五条が発動した場合にだけ戦闘作戦行動に際して事前協議制度の適用は解除されることになっておるわけですが、この事前協議制度の適用解除は、戦闘作戦行動に対してのみであって、他の配置、装備に対しては適用解除はないと解釈してよろしいですか。
  211. 中島敏次郎

    ○中島政府委員 仰せのとおりでございます。
  212. 新井彬之

    ○新井委員 ソ連極東での海空軍は核装備されているという認識を政府は持っておりますか。
  213. 中島敏次郎

    ○中島政府委員 まことに申しわけございませんが、その点についての情報を、私どもといたしまして当面所持いたしておりません。
  214. 新井彬之

    ○新井委員 アメリカは公然と、米国の国防報告なんかによりますと、対ソ戦を前提とする戦略戦術を設定していることは明らかであります。このアメリカと安保条約を結び、いわゆる日米安保体制にある日本はいやおうなくアメリカの戦略下に組み込まれてしまっているという情勢分析を一貫してわれわれは行ってきておるわけでございますが、アメリカの軍事戦略に日本が連動することの危険性を考えるわけでございますけれども、そういうことについてはいかがですか。
  215. 中島敏次郎

    ○中島政府委員 アメリカの軍事戦略に連動しておるという御指摘がいかなることを意味するのか、申しわけありませんが、正確に把握し得ないわけでございますが、いずれにせよ、わが国日米安保条約締結いたしまして、わが国の安全の確保につきアメリカの抑止力に依存しておるということは、これは事実でございます。
  216. 新井彬之

    ○新井委員 日本には仮想敵国というものはない、こういうぐあいになっておりますね。しかし、アメリカは国防報告等によりましても当然ソ連を対象としての軍事力、そういうものをやっているわけでございますね。したがいまして、これはもう日米安保条約を結んでいるということ自体が、やはりいやおうなくソビエトから見て日本の国が米国と組んでいるということは当然認識されるわけですね。したがいまして、そういうようなことで、ただいまそういうお話がありましたけれども、そういう認識というのはわれわれは十分に持っておるわけでございます。そのために、日米安保体制にある限り、日本も仮想敵をソ連とせざるを得ないのではないか、こういうぐあいに考えるわけでございますが、いかがですか。
  217. 中島敏次郎

    ○中島政府委員 御承知のように、安保条約第五条におきまして、日米両国は「日本国の施政の下にある領域における、いずれか一方に対する武力攻撃が、自国の平和及び安全を危うくするものであることを認め、自国の憲法上の規定及び手続に従って共通の危険に対処するように行動することを宣言する。」ということになっております。したがいまして、日本国の領域における日本国に対する武力攻撃は、アメリカの共同対処行動によって対処されるということを他国も当然に知っているわけでございまして、それがいわゆるアメリカの抑止力に依存するということでございます。このアメリカの抑止力によりまして、わが国に対する脅威を未然に防止するというのが安保条約の趣旨というふうに考えております。
  218. 新井彬之

    ○新井委員 それはよくわかるわけです。そういうことは再三答弁を聞いておりますからわかりますが、ソ連から見て、それでは日米安保があるのとないのとやはり見方が違うと思いますが、それはあってもなくても同じだという見方をしますか。
  219. 中島敏次郎

    ○中島政府委員 ソ連であるかどうかは私の口から申し上げるのは控えさせていただきますが、いずれの国であれ、日本に対する武力攻撃をかけるということはアメリカの行動にも対処しなければならないというふうには当然に考えるだろうと思います。
  220. 新井彬之

    ○新井委員 だから日米安保の問題というのは、逆に言えば、そういう枠組みの中で、日本としては仮想敵国はなくても、当然やはり米国がするその仮想敵国に対して日本も組み込まれてしまうのではないか、こういうぐあいに言っているわけですね。だから、さっきも聞きましたように、ソビエトから見てとにかく日米安保があるのとないのと見方が違うのじゃないか、こう言っているわけですね。それはいかがですか。
  221. 中島敏次郎

    ○中島政府委員 ただいま申し上げましたように、日本に対する攻撃はアメリカからも反撃を覚悟しなければならないというのが安保条約でございますから、安保条約があるかないかによってその国の認識は当然に異なってくるというふうに考えます。
  222. 新井彬之

    ○新井委員 朝鮮半島の問題についてちょっとお伺いしたいのでございますが、今日の朝鮮半島の情勢をどう見るか、韓国条項、新韓国条項を修正する情勢変化を認めないかということでございますが、いかがですか。
  223. 中島敏次郎

    ○中島政府委員 ただいま御指摘の新韓国条項またはもともとの韓国条項と称せられるコミュニケにおきますところの特定の条項につきましては、従来から御説明申し上げておりますように、そのときどきにおける政府の朝鮮半島をめぐる情勢に対する認識を述べたものでございます。他方、朝鮮半島における平和と安全がわが国の安全と深いかかわりがあるということはこれは共通した認識でございまして、その点につきましては、現在においても政府は同様に考えている次第でございます。
  224. 新井彬之

    ○新井委員 南北朝鮮統一の見通しについてはどのように判断をされておりますか。
  225. 園田直

    園田国務大臣 南北朝鮮が一九七二年の南北共同声明精神に立ち戻り、平和的、自主的統一を実現することが望ましいと考えておりますが、しかし統一実現までの過渡期においては、少なくとも南北双方が平和的に共存を続けることが現実的ではないかと考えております。このような平和的共存をもたらすために、中ソ等が韓国を承認してもらうことをわれわれは望んでいるわけであります。と同時に、日米等もこれを承認するという方向に両方が行けば非常にうまくいく。現在、よその国のことでございますから、この現状を批判することは差し控えますが、当面、南北が緊張して遠からざるときに紛争があるとは考えてはおりません。
  226. 新井彬之

    ○新井委員 南北統一を阻害する要因というものをどのように見ているか、何がネックになっているのか、また、日本政府として、そのネックを取り去るために何かなし得る政策というものを考えておりますか。
  227. 園田直

    園田国務大臣 南北朝鮮の統一が阻害されておるということはいろいろ問題がありましょうし、南北両方にそれぞれ理由があると思いますので、これについては私が発言することは差し控えますが、日本としてはそのような方向を望みつつ、北朝鮮との関係についても、今後とも貿易、人的、文化等の分野における交流を漸次積み重ねることによって、何よりもまず相互理解の増進を図ることが必要であると考えております。
  228. 新井彬之

    ○新井委員 ここ当分平和統一の見通しがないということだと思いますが、日本政府が依然として韓国のみを承認して朝鮮民主主義人民共和国を承認しない、そういう政策をとっておるというのは公平を失した政策ではないかと思いますが、いかがですか。
  229. 園田直

    園田国務大臣 先ほど申し上げましたとおり、韓国を承認してない中ソの方も韓国を承認されることが好ましいし、これと同様に、日米も北の方を承認することが好ましい。したがって、これは両方の進捗状態でございますから、そういう方向を希望しながら逐次日本国としてやるべきことをやりたい、こう考えております。
  230. 新井彬之

    ○新井委員 そうしますと、日本の国がそれを承認するときというのは、中ソが韓国を承認して米国が北朝鮮を承認する、それが終わってから日本が承認するということですか。
  231. 園田直

    園田国務大臣 よその国が全部終わってから日本がやるという意味ではございませんけれども、このような状態においては両方が逐次歩み寄っていかなければならぬと考えております。
  232. 新井彬之

    ○新井委員 現在、韓国の承認国あるいは北朝鮮の承認国、また南北の承認国は何カ国ありますか。
  233. 佐藤嘉恭

    佐藤説明員 承認国の数でございますが、七八年一月二十日現在、韓国を承認しております数が百二カ国、北朝鮮を承認しております国が九十一カ国、そのうち双方を承認しております国が五十二カ国、そういう数字になってございます。
  234. 新井彬之

    ○新井委員 そういうような状態ですね。また、国際法上からいきましても、新しい国家がすでに国際法上の承認要件を備えているにもかかわらず、もっぱら政策的にこれを承認しないのは権利乱用である、こういうぐあいに言われております。そういうことで、この不承認の政策というのはどうも納得できないわけでございますが、そうしますと、園田外務大臣が言われましたように、中ソが韓国を承認するあるいは米国が北朝鮮を承認する、こういうことについて、この実現のために外交折衝を行う用意というものはあるわけですか。
  235. 園田直

    園田国務大臣 そういう外交交渉をする環境が来ることを望んでおります。
  236. 新井彬之

    ○新井委員 それはさっきも、どういうネックがあるかということをお伺いしたのでございますけれども、どういう状態になればそれならそういうことを行いますか。
  237. 園田直

    園田国務大臣 これは先ほども申し上げましたように、両方に対立をしておる、一方は北の方、一方は南の方という国際環境の変化もありましょうし、それから今後直接北朝鮮と日本との間の相互理解を深めるということもありまするし、そういうもろもろの要素が加わってきて、そういう時期が来るものと考えます。
  238. 新井彬之

    ○新井委員 この南北が平和統一あるいは連邦制が成立するまでは、当然これは韓国政府あるいはまた朝鮮民主主義人民共和国、この二カ国というのは最後まで残ると思うわけです。したがいまして、これを両方とも認めるということがこれからの朝鮮半島の平和にとって非常に大事なことじゃないか、こういうようにわれわれ考えるわけでございますが、分断をしてやっていることが逆に平和を脅かすと私は考えるわけでございますけれども、政府見解はいかがでございますか。
  239. 園田直

    園田国務大臣 先ほどから申し上げますとおりに、それぞれ南北の対立が緩和をされ統一の機運で具体的に進み、そしてこれを取り巻く中ソ、日米、こういうものの相互理解が進む、そして両方を承認をする時期が来ることを希望しつつそっちの方向に努力をしたいと考えております。
  240. 新井彬之

    ○新井委員 希望していてもなかなか進むような状況じゃないと思うわけです。やはり南北の両国を認めていくことが平和と安全を守るのだ、国連加盟とかいろいろなことがありましても、統一されるまでは両国は残るのだ、そういうことで日本の国としてはどっちに偏るというのじゃなしに、国際法上からも認められている国については当然認めていかなければいけない、こういうように考えるわけでございます。それについてはもう少し具体的に考えて、今後進めていただきたいと思います。  それから、今回の法案について若干の質問をしておきたいと思います。  まず初めに、大使館、領事館の建物等についてお伺いをしておきたいと思うのでございますが、現在世界の国の数は百五十五カ国あると聞いております。それからまた十一月二十日現在国連加盟国は百四十九ある。その中で日本の大使館が九十八、総領事館、領事館が五十三、それから政府代表部が四、合計百五十五。それで大使館や領事館等のある国は現在九十九となっておるわけでございますが、あとまだ国連加盟国だけでも五十カ国には何らそういうものがないわけですね。したがいまして、そういうところにはどういう予定で今後設置をしていくのかまずお伺いをしておきたいと思います。
  241. 山崎敏夫

    ○山崎政府委員 わが国と国交のあります国との間におきましては、できるだけ在外公館を設置いたしたいというのがわが外務省の方針でございます。しかしながら、人員及び予算の制約からして直ちに全部を実施し得ないのが現状でございまして、今後ともその方針で努力してまいりたいと存じます。
  242. 新井彬之

    ○新井委員 本来ならばもっとつくりたいのだけれども、予算の制限のためにできないのだ、こういうことですか。
  243. 山崎敏夫

    ○山崎政府委員 もちろん予算の制約が大きな理由でございますが、さらに人員の制約も非常に大きいわけでございます。外務公務員の養成にはかなり時間も要しますし、また国家公務員の定員もいま厳しく抑制されている現状でございますので、その面からも直ちにわが国と国交関係のあるすべての国に在外公館を設置するということは行い得ないのが実情でございます。
  244. 新井彬之

    ○新井委員 それは直ちにすべての国にやる、こういうことはないわけでございますけれども、現在のところ本当はあそこの国ともやりたいのだけれども人が足らないからできないのだ、予算の関係もあると言いますけれども、人が足らないということを言われましたね。どの程度足らないのですか。
  245. 山崎敏夫

    ○山崎政府委員 外務省は現在定員が約三千三百名でございまして、そのうち本省は千五百名余り、在外が千七百名余りでございます。わずか千七百名余りで主な国に在外公館を設置しておるわけでございます。われわれの願望といたしましては、これを五千名程度に持っていきたい、その程度までいけばかなりの人員の充実と、そして先生の仰せのありますように、われわれとして設置したいと考えておる国に在外公館の実館を設置することができるようなことになるかと思っております。
  246. 新井彬之

    ○新井委員 それから今度は、大使館、総領事館、領事館等の事務所の国有化というのは二五%というぐあいに聞いています。それから公邸の関係は五〇%というぐあいに聞いていますが、これらについて今後どのように伸ばしていくのかをちょっとお伺いしておきたいと思います。
  247. 山崎敏夫

    ○山崎政府委員 外務省としては一般的な方針として在外公館の国有化を進めてまいる考えでございます。これは大使館あるいは総領事館としての体面の維持あるいは機密の保持とか、また事務能率の点、あらゆる面から見まして望ましい次第であります。さらに最近は、世界の各地におきまして家賃が著しく高騰いたしております。したがいまして、高い借料をいつまでも払い続けるよりも、国がこれを建築するか、あるいは適当な物件を購入する方が得策であると考えておる次第でございます。  したがって、従来から個々の国有化を進めてまいっておるわけでございますが、この結果、先生もいま御指摘のありましたように昭和五十三年一月末の現在で、国有化されました在外公館の事務所は三十八で全体の約二四%、国有化された公邸は七十八で全体の約五〇%に達しております。外務省といたしましては、今後ともこの国有化の問題に関して真剣に取り組んでまいる所存でございまして、必要に応じ、また予算の許す限り国有化を進めていきたいと考えております。
  248. 新井彬之

    ○新井委員 いろいろ外務省の事情を伺いますと、そういう予算はなかなかありませんということで遅々として進まないというのが現状だそうでございますが、実際問題、海外に参りまして現状を見ますと、非常な物価値上がりの国もあるわけですね。あるいは比較的物価が安定しているようなところもあります。したがいまして、家賃なんかも本当に年々高くなりまして、日本の大使館あるいは領事館としてそれだけの品位を保ち、活動をやりやすくするために買って確保しておかないと持てないのじゃないかというところも多々あるわけですね。そういうようなことをよく分析をされまして今後やっていっていただきたい、こういうぐあいに思うわけでございます。  それから、その次に、在外公館の職員の待遇について若干お伺いしたいと思います。  この職員の待遇につきましては、物価であるとか地域差によって決める、また、生計費はワシントンを一〇〇といたしまして八五から一三五の間で決めるということですね。また、勤務条件の非常に厳しいところについては五段階に分けて、五%から二五%というぐあいに格差をつけてやっておるわけでございます。今回もこの改正が一部出ておりますけれども、私の感じでは、どうも八五から一三五ぐらいの差じゃおさまらないような状態になっているのじゃないか。たとえて言いますと、オーストラリアなんかに行きますと東南アジア地域とかと比べて非常に高い、あるいはまたヨーロッパの方も非常に高いところがある。こういうことからいきますと、もう少し考えてあげないと、外交官としていろいろ仕事をする上において不自由があるのじゃないか、こういうぐあいに思いますけれども、そういう問題はないと見ておられますか。
  249. 松田慶文

    ○松田説明員 お答え申し上げます。  御指摘のとおり、地域差は現在上下約五〇%の範囲内で動かしておりますが、これは各地の生計費調査、諸外国の外交給与実態調査等々を総合的に比較勘案いたしまして、かつ外交再開以来長い年月の経過を踏まえまして、私どもとしてはおおむね妥当な給与格差になっているものと考えております。
  250. 新井彬之

    ○新井委員 在外公館勤務については、大体四年で交代をするということになっておるようでございますけれども、日本へ転勤になったり、あるいはまた別の国へ転勤をするというときに、これらの転勤異動についてはどのように決められて、また転勤異動に伴う一切の経費についてはどのように処置をされておるか、お伺いしたいと思います。
  251. 山崎敏夫

    ○山崎政府委員 在外の勤務につきましては、在外公館の所在地に応じて勤務年限もおのずから異なってきております。仰せのとおり、一般的な方針としましては四年ということはありますが、先進国の場合などは三年で本省に帰すということもございます。また、不健康地その他の場合には、二年勤務した後に他の地に転勤させるということもございます。これは人事政策上の考慮に基づき、また公平の見地からもやっておるわけでございます。  この転勤ないし帰国はかなりの費用を伴うということは御指摘のとおりでございまして、この点につきましては、移転費用の実費を賄うようにわれわれとしては随時移転料の改定を図ってまいっておるわけでございます。この移転料は旅費法に規定されておりまして、大蔵省所管でございますので、大蔵省と協議しながら実情に合うように随時改定いたしております。
  252. 新井彬之

    ○新井委員 実際の状況というのは、非常に困っている方がたくさんいらっしゃいます。  これは「在勤諸手当の改善に関する外務人事審議会勧告」ですが、五十二年の十二月十三日のこの勧告におきましても、「在外職員がわが国外交官としての体面を維持し、外交活動を遂行するにふさわしい条件を備えた住居を構えうるよう住居手当制度を一層整備してゆく必要がある。」というようなことを言われているわけでございます。住宅一つを探す場合もなかなか探しにくい。転勤になりますときに、実際は、現地に赴くわけでございますけれども、住宅が探せないわけでございますから、本来十日間の費用がホテル滞在費とか出るわけですが、現実は一カ月間ぐらいたってもまだ探せないということで、そのホテルに泊まっているわけです。そうしますと、その費用というのは全部自分が出さなければいかぬのだ、こういうようなことがありますから、当然在外公館の方々が住宅を探してあげるとかいろいろなことでは協力されているとは思いますけれども、そういうものについては現実に合った実費というのをきちっと出してあげなければいけないと思いますけれども、いかがですか。
  253. 山崎敏夫

    ○山崎政府委員 いま御指摘の点は、実情は全くそのとおりでございます。場所によっては住居がすぐ見つかるものもございますけれども、大部分の場合には十日ぐらいは適当な家が見つからない。そのためにホテルに長期問滞在を余儀なくされるという事態が非常に多いわけでございます。これは在外公館の館員の相互扶助によりまして、お互いに助け合ってできるだけ早く見つけるように努力いたしているようでございますが、在勤地の実情によってはそういう自助努力というか、あるいは相互扶助だけではうまくいかない場合が多いわけでございます。  いま御指摘の点は着後手当の問題かと思いますけれども、われわれとしては十日では十分でないようにも感じておりますが、これは内地の国家公務員の手当との関係もございまして、その範囲に認められておるわけでございます。われわれといたしましてはそういう実情でもございますので、非常に住宅が不足しておるところでは館員宿舎の建設あるいは有料の館員宿舎の借り上げ等をもって現在対処いたしております。
  254. 新井彬之

    ○新井委員 また子女教育手当については五十二年度に支給額が月額一万二千円から一万八千円に改定されたわけでございますが、この子女教育費が非常に現在上回っておるという状況も出ているわけでございます。したがって、この子女教育に伴う負担の公平を保つべく制度の改正をしなければいかぬという勧告も出ております。現実的には国によって違うと思いますけれども、教育費が一番高くかかるところ、これは幾らぐらいになっておりますか。それからまた、平均的にかかるところですね。
  255. 山崎敏夫

    ○山崎政府委員 海外におります者の子女教育費の実態は非常にまちまちでございます。一部の公館におきましては、この教育費が非常に高くついておるということは事実でございます。何か例を挙げよということでございますので一、二の例を挙げますと、アラブ首長国連邦に勤務している者の場合、小学校の子供の教育費で月額九万一千四百円かかっております。またパキスタンの場合を見ますと月額七万五千円かかっているような状態でございまして、現在の月額一万八千円ではとうてい賄えないというのが実情でございます。
  256. 新井彬之

    ○新井委員 これは非常な問題になっているわけですね。これはその教育を受けないと、日本へ帰ってきてからでも日本の学校にどうしてもついていけない。これは大分前から言われて、いろいろと日本の文部省も手当てをしたり、いろいろしているところでございますけれども、やはり現実に見合ったやり方をしてあげないと、もう本当にほっておけないような問題だというぐあいに思うわけでございます。そういうわけでこのことについては勧告も出ておりますから、現実に即してやってあげる。何も一律に高い金をたくさん上げましょうなんということをすることはないと思うのです。現実を見て、その現実に合うように、後はそういうことで心配をしなくてもちゃんと仕事ができるような雰囲気をつくらなければ、そんなことばかり心配をしていて外交官としての仕事ができるとはわれわれ思わないわけでございますから、ひとつそういうところは明確に実態を把握してやっていただきたい、このように思うわけです。  それから、治安状態が非常に悪いために、本来ならば妻子を連れていこうという気持ちがあっても現実にはそれが行けない、そのために妻子を日本に残しまして行く場合に二重生活になる、そのために非常に生活が苦しい、こういうところはわりかたあるようでございますけれども、そういう方に対してはどのような処置を考えておりますか。
  257. 山崎敏夫

    ○山崎政府委員 仰せのとおり、そういう実例もございます。これはことに不健康地に在勤する者の場合には、こういう二重生活を強いられている場合があるわけでございまして、われわれとしてもその点についてはまことに同情し、何とか解決策はないかと苦慮しておる次第でございます。  ただこの問題も、内地の場合のへんぴなところに在勤される国家公務員との比較という問題もございまして、こういう制度について特別の手当を支給するということについて、実現が直ちにできない次第でございます。しかし、その点については今後ともわれわれとしては、さらに実態をよく調べました上で対策を検討してまいりたいというふうに考えております。
  258. 新井彬之

    ○新井委員 参考までにひとつお伺いしておきたいのですけれども、諸外国政府や本邦主要商社等は、海外在勤者に対していかなる形で子女教育手当を支給しているか。わかっている範囲でちょっとお教え願いたいと思います。
  259. 山崎敏夫

    ○山崎政府委員 わが国の場合は、子女教育手当は定額支給制をとっておりまして、先ほど仰せられましたように、月額子女一人につき一万八千円となっておりますが、主要な先進国の子女教育手当を見ますと、わが国と同様に定額支給を行っている国といたしましては、イタリア等がございます。また、ある限度額を設けた上での実費支給を行っております国がかなり多くございまして、例としてはアメリカ、イギリス、西独等でございます。他方、子女養育手当として定額を支給しておりますが、子女教育手当制度というものを設けていない国といたしましては、フランス等がございます。わが国の主な商社の大部分は、海外の駐在員に対して、限度額を設けた上で子女教育手当を実費支給しております。
  260. 新井彬之

    ○新井委員 じゃ、時間が余りありませんから、文部省も来ていただいているので、その方についてちょっと質問をしておきたいと思いますが、海外在勤者子女教育問題については、先ほども申しましたように、いろいろと問題になっているところです。現在十八万人ぐらいが海外に出ておるというデータになっておりますが、その一割 一万八千人ぐらいが子女教育を受けている。ところが、ほとんどやはり日本の学校に帰ってきて高校なり大学へ行かなければいけないということで、国によっても違いますけれども、非常に苦労をして勉強をして、そして中学生なり、あるいは早いときには小学生になって日本の国へ帰すということがほとんど行われているという現状ですね。それに対して日本の国もこれを受け入れるについては何とか考えなければいけないということで、文部省はいろいろやっておるわけでございますけれども、この前の二月十四日の衆議院予算委員会で砂田文部大臣が、筑波大学で帰国子弟が九月からでも入学できるように検討している、こういう答弁をしているわけでございますけれども、筑波大学ぐらいでは、人数をどのくらいにしてどうということはこのときは発表しておりませんけれども、今後どういう形で受け入れるのか、それについてちょっと文部省にお伺いしておきたいと思います。
  261. 川村恒明

    ○川村説明員 ただいまお尋ねの帰国子女の受け入れの問題でございますけれども、私どもが昭和四十八年に実施いたしました調査によれば、帰ってきたお子さんのうちで、おおむね三分の一程度の方は、日本語の指導を中心に何らかの特別の指導をする必要があるのではないかという実態もあるわけでございます。そういうことでございますので、私どもは、ただいま先生御指摘のようにいろいろな形での受け入れ、つまり海外から帰ってきた子供たちが、その海外生活で身につけた長所は保存しながら、かつ日本の教育へいかに円滑に適応できるか、そのための受け入れ体制を整備したいということでございます。  ただいま御指摘の九月入学にということにつきましては、すでにこれは昭和五十一年に文部省令を改正いたしまして、大学につきまして、そういう九月に帰ってきた者を受け入れるというような制度的な手当てもしてございます。  それから言葉の非常に不自由なお子さん、特に問題の多い高等学校段階の子弟につきましては、その受け入れを主目的とする高等学校の建設について特別の補助を行うというようなこともございますし、あるいはそれほどではないけれども、やはり特別の指導を必要とするお子さんのためには、たとえば帰国子女教育研究協力校を指定するというような、そのお子様の持って帰られた資質、状態に応じた適切な受け入れ状態をつくりたいということで努力をしておるという状態でございます。
  262. 新井彬之

    ○新井委員 じゃ、ちょっと具体的にお伺いするわけですが、帰国学齢子女の数というのは、年間どのぐらいになりますか。
  263. 川村恒明

    ○川村説明員 私どもの最近の調査によりますと、年間に約五千人ほどの子供さんが帰ってこられるというふうに承知しております。
  264. 新井彬之

    ○新井委員 国が受け入れ校としている国立大学付属学校というのは幾つありますか。
  265. 川村恒明

    ○川村説明員 特に国立大学の付属の小、中、高等学校につきまして、たとえば帰国子女の受け入れのための特別学級を設置するとか、あるいは特別の学級は設けませんが、普通の子供と混合教育をやる、そういう特別の受け入れ体制を整えている学校は、昭和五十二年度現在で八校ほどございます。これは、昭和五十三年度にはなお二校ほど追加をしたいというふうに考えております。
  266. 新井彬之

    ○新井委員 いまあります国立大学付属学校は、小学校が二、中学校が四、高校は一校と一施設ですね。それから、これに新年度からお茶の水大学付属小学校、横浜国立大学付属中学校が加わる。  じゃ、その収容定数は一体何名ですか。
  267. 川村恒明

    ○川村説明員 現在、国立大学の関係で申しますと、小、中、高合わせまして入学定員で百八十人、総定員で四百六十五人という五十三年度の予定でございます。
  268. 新井彬之

    ○新井委員 しかし五千名が帰ってくるわけでしょう。五千名が帰ってきて、それで三千名、あとの二千名は日本語も普通にできるし、そのまま公立の学校へすっと入ればいい、それはそうですけれども、三千名は、半分英語で半分日本語だとか、あるいは半分ドイツ語で半分が日本語だ。だから、それは何とかそういうこともひっくるめて教育をしてあげなければいけないのに、定員が四百六十五名でしょう。これでは、いつになったらこういう海外から帰ってこられた子供さん方が安心して教育が受けられるかということですね。それについてはどうですか。
  269. 川村恒明

    ○川村説明員 ただいま申し上げました数は国立の受け入れ学校でございますが、このほかに、公私立学校につきまして帰国子女教育研究協力校というものをお願いしてございます。研究協力校につきましては特段の定員を設けておりませんので、それぞれ学校の事情によりまして受け入れているわけでございますけれども、現在、その研究協力校が四十八校ほど大都会を中心にしてございまして、約千五百人ほどの子供を受け入れているということでございます。そういうことで、五十三年度に新しく研究協力校も増加するということもございますので、そういう国公私立、先ほどの特別の受け入れ高校というものも考えに入れますと、五十三年度では大体二千五百人ぐらいの受け入れの間口はできようかというふうに考えております。ただ、それだけの数でも、ただいま御指摘のように、年々帰国子女の数は急増してございますので、なかなか十分ではないということは御指摘のとおりでございまして、なお今後ともこういう体制の整備に努めてまいりたいということでございます。
  270. 新井彬之

    ○新井委員 現在海外に十八万人出ているわけですけれども、これからだんだんふえるのじゃないかと私は見るのですが、外務省としては、だんだん減りますか、それともだんだんふえると見ておりますか。どうですか。
  271. 賀陽治憲

    ○賀陽説明員 私どもの判断では、やはり逓増する方向にあるものと考えられます。
  272. 新井彬之

    ○新井委員 そこで、いまも受け入れ体制の話がありましたけれども、外国において学校に行った、そうすると、少なくともその国の一つのいいところ、そういうものもよくわかって、日本の小中学校ではそれこそ教えられない、いいものを持った子供がたくさん帰ってくるわけです。ところが、御存じのように日本の場合は、何といったって勉強ができて、そして高等学校へ行って大学まで行く、そういうことで、どのくらいいろいろなことを知っているかということが唯一の判断基準になっているわけです。したがいまして、当然、その子たちにそういう受け入れ校をつくってやっておっても、やはり知識偏重の教育というものが行われている、こういうことでございますから、それを何とかしてあげなければいけないというのが現在いろいろと言われている問題でございますけれども、今後漸増していく海外居住者に対して、その子女の教育について、そういうこともひっくるめて、今後どのようにしていこうというぐあいに現在文部省は考えているのか、再度お伺いをいたしておきたいと思います。
  273. 川村恒明

    ○川村説明員 ただいま御指摘がございましたように、海外の生活を経験された子供たちというのは、やはり国内では身につかない大変すぐれた長所を数多く持っているわけでございます。これからの日本の将来を考えますと、そういうふうな、特に国際性を身につけた日本国民の育成ということが大変重要になってまいりますし、そういう観点から考えますと、この海外子女教育というのは、これからの日本のあるべき姿、一つの理想を示すということがあるのではないかと思うわけでございます。現実には、ただいま先生御指摘のように、いろいろな国内の現実の態勢がございまして、ともすれば海外での教育というのもそういう国内の方に傾斜をした形になっているのが現状でございますが、私どもは常日ごろから、できるだけ海外での教育というメリットを生かして、国際性の啓培に努めてほしいということを海外の方にはお願いをしておりますし、同時に、安心して国内に帰れるということをつくるのが理想ではなかろうかということで、そういうことで国内のいわゆる教育の国際化の問題についても努力をしておるというのが現状でございます。
  274. 新井彬之

    ○新井委員 努力していることはわかりますけれども、現実の問題としては、やはり当然小学校かあるいは中学のときには帰らせて日本の高校に受けさせなければいかぬということで、日本の受験地獄が全く海外まで及んでいるということですね。そのために多額な教育費を使って、それだけじゃなしに、日本語は夜お父さんとかお母さんが教えなければいけない、こういうことになっているわけですから、当然受け入れ校というものを、四百六十五名なんというのではなくて、帰ってきた人はとりあえずここに入りなさいというようなものをもっときちっと整備をしてあげて、その中からりっぱな教育をし、人材を育て上げる、こういうぐあいに現実的な問題でないと、言っているだけではいつまでも変わらない、こういうぐあいに思うわけでございます。  したがいまして、筑波大学の問題が出ましたけれども、本当は、それだけじゃなしに、ある程度の枠を設けて、外国から帰ったらストレートでそういう大学にも入れる、それでこそ外国でもっと、大学生になるまで向こうの国のいいところとか、そういうものも学べるのじゃないか。そういう人が一番少ないのはやっぱり日本の国じゃないかと思うのです。したがいまして、さっきも局長が言っておりましたけれども、外交官一人育てるのになかなか時間もかかるし金もかかる。本来なら、いま子供のときから外交官をどんどん外国で育てようとしておるのに、それをまた日本に引き戻して日本流に育て上げてもう一遍また外国に出そうなんて、そういうようなことを考えておるのではいけないのではないか。ましてこれからは、日本は資源小国でございますから、世界各国至るところへ出かけていって相互間の繁栄というものを図っていく、そのためにはやはりどんどん日本人が外国に出ていかなければいかぬと、こういうぐあいに思っているわけです。私も、昨年ですか、南米の方へ行きましたけれども、南米というのは、もちろんブラジルとかペルーとか、いろいろなところへ移民で行っておりますけれども、本当に余り目が届かないわけですね。したがいまして、外務省に南米局がなかったとか、こういうことは大問題ですと、向こう外交官の方はみんな口をそろえて、これからの日本の国が目をつけるところというのは南米しかありませんよと。向こうではそれだけ外交官の方ががんばっていられるわけですけれども、一たん子女の教育のことになると、これは大変なことですということで、同じようにやっぱり力がそがれておる。しかし、向こうにいる日本の子供さん方は、この国はこういうものだということを現在から学んで、りっぱな人材に育とうとしておるわけです。だから、外務省と文部省がよくそういう実情の問題というものを打ち合わせをしてやっていっていただきたいと思いますけれども、外務省と文部省にその件について答弁を願いたいと思います。
  275. 川村恒明

    ○川村説明員 ただいま御指摘のように、これからの日本にとって最も必要な人材、つまり国際性を身につけた日本国民の育成ということをこの仕事の視点に据えまして、現実的な受け入れ体制の整備その他に努めてまいりたい。この点につきましては従前から外務省と全く密接な協力態勢で進んでおりますけれども、今後ともそういうことで進めてまいりたいというふうに思っております。
  276. 賀陽治憲

    ○賀陽説明員 外務省といたしましても、ただいま文部省からも申し上げましたように、協力態勢をさらに緊密化いたしまして、御趣旨に沿うように一層努力いたすつもりでございます。
  277. 新井彬之

    ○新井委員 時間が来ましたから、最後に外務大臣にお伺いしたいと思うのですけれども、外務省はもう本当に、ある意味では日本の国の興亡を背負って立っている。本来は昔から外務省はそうでなくちゃいけないわけでございます。特に現在の世界各国との関連から見ましても、やはり外務省の一挙手一投足というものは、これからの日本の繁栄、あるいはまた他国との友好を図り、そしてまた他国との繁栄を図ることができるか、こういう大事なことがあると思います。したがいまして、やはり外務省意見というものがどんどん国会にも反映をされていかなければならない、こういうぐあいに思うわけでございますけれども、本当にそういう使命に立った外務大臣の答弁を聞きたいことが一つ。  それからもう一つは、さっきから問題になっております海外の子女の方々というのは、現在外交官として育っているのです。そういう方々の就職なんかにつきましては、やはり同じように就職試験をやったときには、片方は日本で受験勉強ばかりに耐えてきたような子ですから、これは通るに決まっておるわけです。したがいまして、少なくとも外務省とかあるいは海外に支店を持つような会社がそういう子供さん方を本当に採って、そして日本の繁栄、そしてまた他国の繁栄を図れるような就職というようなことについても推進をしていただきたいと思いますけれども、この二点の答弁を聞いて、質問を終わります。
  278. 園田直

    園田国務大臣 ありがたい数々の御意見をちょうだいをいたしまして、感激をいたしております。  外交はきわめて重大であって、いまのような貧弱な機構、貧弱な省でおることは、国内経済、国際経済を含めて、すべての問題にいろいろ問題が出てきますので、国内外の政治、経済の先頭に立って外務省が進んでいく、こういうためには、いま発言されました数々の問題、機構の問題、特に二十四時間勤務の婦人の手当の問題、子女の教育問題、こういうことを、財政困難の折とは言いながら逐次改善していくことが、日本の優秀な外交官僚の持ち場を、そして機能を十分発揮するゆえんであると深く感じて大臣としての仕事をやっていきたいと考えております。
  279. 始関伊平

    始関委員長 受田新吉君。
  280. 受田新吉

    ○受田委員 いまの新井さんの質問関連する問題が一つありまして、アメリカ局長にもお残りを願いたいと思いますので、取り急ぎ韓国関係、朝鮮半島の問題についてまず質問をして、それから今日通告してある本論に入りたいと思います。  いまの新井委員質問に対して、南北朝鮮問題に対する政府見解は、私が承ったところでは非常に不熱心と言えば適切かと思うような態度でいらっしゃることです。これまでに日本総理米国の大統領を訪問して、すでに何回かの共同声明を発しておられます。佐藤さんの時代から始まって、三木さん、そしていまの福田総理という流れを見るときに、朝鮮半島に関する認識がだんだん変わってきておるのです。朝鮮半島に対する非常な緊急感がだんだん緩和されて、平和的な感覚にこれが進んできておると私は認識します。それは、これまでの韓国条項に関する三代の総理共同声明を拝見しましても明確に出ている。六九年の佐藤・ニクソン会談のときの韓国条項は、「韓国の安全は日本自身の安全にとって緊要」という厳しいものであり、事前協議に対しては前向きに、かつ速やかに態度を決定するという内容を持っておりました。それが今度七五年の三木さんとフォードさんの会談では「韓国の安全が朝鮮半島における平和の維持にとり緊要であり、また、朝鮮半島における平和の維持は日本を含む東アジアにおける平和と安全にとり必要」といういわゆる新韓国条項となってきました。それが今度はさらにいわば新々韓国条項とも指摘すべきものでございましょう。福田先生の認識の中には、「日本及び東アジア全体の安全のために、朝鮮半島における平和と安定の維持が引続き重要」という表現に落ちついてきたわけです。もう一つの特徴として例の米地上軍撤退問題が非常に神経をとがらす問題として最後にこれを福田さんは取り上げておられるのでございますが、撤退でなくて削減という表現を用いておられるのでございます。  私ここで大変重要なことを指摘したいのです。それは福田総理はカーター大統領との会見の中におきまして、朝鮮半島の問題に関しましては、特に南北の対話を促進するという非常に進歩的な認識を示しておられるわけです。これはいかがでしょうか、韓国と朝鮮民主主義人民共和国との間の対話を促進するところに福田内閣はどのような前進的な措置をとっておられるのか。これは園田先生外務大臣になられて、前の鳩山さんの跡を継がれているわけでございますが、園田さんはまさにユニークな感覚でこの問題と取っ組んでいただけると思うのですけれども、私実は昭和四十一年以来、日韓条約を制定して以来南朝鮮、韓国へ四回、北朝鮮へ二回旅行しました。昭和四十六年以後は交互に両国の親善に貢献をしてきたつもりでございます。したがって、南朝鮮、すなわち韓国へ旅をするときには北の、朝鮮民主主義人民共和国の悪口を韓国の要人たちはしきりに言う。韓国を訪問する人も、北というのは大変厳しい国であって、共産主義によって非常に固陋、かたくなな政治が行われておるという批判をするわけです。また北朝鮮すなわち朝鮮民主主義人民共和国へ参りますと、南は資本主義の政治で極端な国家主義国家であって、外国軍隊を持って、まさに民主主義の敵である、こういう批判が北朝鮮の要人からも、また訪問した人からも出る。両方を訪問する国会議員も、韓国を訪問する国会議員は朝鮮民主主義人民共和国、北朝鮮の方は共産主義国家であるからもうわれわれは行きたくないのだ、また北朝鮮の方を訪問する国会議員の皆さんは、南は米政権のかいらいであり朴独裁政治である、こういう批判をしてきておるわけです。ここに南北の対話を促進するのに非常に残念な障害があるわけで、私自身も両方を交互に訪問してきただけに、この南北の対話という、せっかく福田総理がカーターさんとの間で取り決めをした共同声明を実践するためには、別に党派根性を抜きにして――同じ朝鮮半島で朝鮮民族として長い歴史と日本につながってきたこの国、一番近い国、しかも言葉と言い人間関係の文化と言い、すべてのものがきょうだい国として世界のどこにもない親近感のあふれるこの国です。歴史的には幾つかの変遷があって、むしろこちらが朝鮮をいじめておる、向こうへ大変迷惑をかけているような歴史があるのですが、そんなものを抜きにして、どの国よりもじっこんにしなければならないこの国に、南と北に分かれた姿というのは耐え得ないものがあるのです。  園田さん、あなたのようなすかっとした感覚の外務大臣が出た機会に、ぜひこの朝鮮問題には福田・カーター共同声明の真の趣旨徹底のために具体的に共同声明を実践してもらう。言葉だけではない、南北の対話を促進して、朝鮮半島の安全と平和というものに、「安定」という言葉が使ってあるが、積極的に取っ組むのだという熱意を持ってもらいたいのです。佐藤時代よりも大幅に前進した三木時代、さらに福田時代です。この韓国条項に対する認識の進みぐあいにおいて緊張が緩和して、いま非常に融和の状況にあるというこの歴史の過程において、外務大臣としての決断を承りたいのです。
  281. 園田直

    園田国務大臣 南北対話は一番好ましいことではありますが、残念ながら現実においては南北の対話は停滞をしておる、とぎれておるような現状でございます。そこでいまおっしゃいましたが韓国並びに朝鮮人民共和国両方を訪問する方々もだんだんとふえてまいりまするし、また漁業問題を初め、いろいろな日本と直接関係のある問題も出てくるわけでありますから、朝鮮人民共和国の方とも人的、物的、文化その他の交流及び起こる事態を積み重ねていって、そしてだんだん相互理解を深め、一方日本は、韓国の方に対しては朝鮮半島のバランスをとりつつ平和共存の方向へいかれるように、また朝鮮人民共和国の方に向かっては韓国を、相互に両方理解し合うように、決意をし、具体的に進めていくべきときであると考えております。
  282. 受田新吉

    ○受田委員 具体的に進めていくべきときである、そのときであれば具体的に何をするか。福田内閣成立以来もう一年有余たっているわけです。外務大臣も二代にわたって、園田官房長官が大変手腕、力量のある外務大臣として閣内において最も重きをなし、もし総理が今度国連総会へでも行くときにはあなたが総理大臣の代理をなさるという説もあるわけです。そういう重い地位にあるあなたとしてはこの際、南北の対話を一つの看板には掲げたが一向能率が上がらぬというようなことではいけないのです。これは、外務大臣の部下である関係局長さん、南北の対話についての積極的な施策は何をしてきたか、お答えを願いたい。
  283. 中江要介

    ○中江政府委員 南北朝鮮の対話につきましては、いま受田先生が言われましたように、一度は一九七三年の六月二十三日の朴大統領声明によって韓国政府も非常に前向きな姿勢を出した。その一年前一九七二年の七月四日の南北共同声明では、南北朝鮮とも政治的な問題についても対話をしようということを天下に明らかにした時代があったわけでございますので、日本はもちろんのこと、関係国はこの共同声明を大歓迎したわけでございます。そして一年経過いたしまして、一九七三年の六月二十三日には朴大統領の声明が出まして、韓国は体制のいかんを問わず、あらゆる国と国交を調整する用意がある、その辺までは非常に好ましい状況で推移したわけでございますが、一九七三年の暮れあたりから再び、先ほど園田外務大臣が言われましたように南北対話がとだえてまいりまして、いまだにそれが再開されない、そしてお互いに不信の念が解かれないということで非常に残念なことであったと思っておるわけです。  それに対して日本政府はどういうことをしてきたかということが御質問の要旨だと思いますが、その点につきましては、まず第一に南北両朝鮮の自主性を尊重しなければいけない、よその国からああしろこうしろと言うわけにはまいらない。そこで日本政府がとってまいりました政策というのは、南北両朝鮮が共同声明の線に沿って再び対話ができやすいような環境を醸成していく、これは日本もできるではないかということでございまして、南北両朝鮮に深いかかわり合いを持っておりますアメリカ、ソ連中国、こういった国とわが国とわが政府首脳との会話、対話の場において朝鮮半島情勢について意見を交換する、また国連その他国際会議の場におきまして御承知のように、すでに七つの国連の専門機関、その他の国際会議において南北両朝鮮は同席しておるわけでございますし、ニューヨークにおきましても南北両朝鮮のオブザーバーが認められておるわけでございます。そういうところを通じまして日本政府としては、南北朝鮮の間の不信感がとれて、会話が、対話が再び始まることを期待するのだ、そういう意図を絶えず努力をして伝える、理解していただく、そういうところからだんだん解きほぐされるのがよかろう。他方日本政府といたしましては、先ほど申されましたように、南北両朝鮮がお互いに相手を非常に厳しく認識しているにもかかわらず、やはりいま承認している韓国政府との友好関係はもとよりのこと、まだ承認しておりませんけれども、朝鮮民主主義人民共和国の間にもこれを敵視するというようなことは少なくとも日本政府はそういう態度ではない、でき得ることならば対話も持ち、そして南北鮮の不信の解消に努力したい、こういう日本政府の意図は、先ほど御引用になりました国会の施政方針演説あるいは国会のこういう委員会審議のやりとりを通じまして日本政府考え方というものを広く両当事者に理解していただきながら、しんぼう強く環境の改善を待つ。じれったいようでございますけれども、いま日本政府にできることはそういうことである。そして、いささかでも日本政府考え方が誤解されないように、特に北朝鮮の政権の南に対する考え方というものが現実的でない、南をもうすでに百二カ国ですか承認している国があるわけです。そういう韓国の存在というものを無視するような政策はやはり現実的ではないじゃないか、そういう点を理解していただく努力を継続していくことによって、行く行く南北間の対話が一九七二年の共同声明の線にまず戻っていただきたい、こういう努力をしている、こういうことでございます。
  284. 受田新吉

    ○受田委員 御努力の意思はよくわかるのですが、実際の効果というものは上がっていない。いまお説のように、百を超える南を承認する国、九十を超える北を承認する国、六十の双方を承認する国というものがあるわけです。百と九十ならもう大体同じですよ。それから両方を承認している国が六十もあるということは、これはその中に日本が入っておらぬということもおかしい話なんで、この点では、この機会に南北対話を強く提唱される、それから国連に対する両国の共同加盟についても骨を折られるという、日本政府としてはこのあたりで承認への前進的な措置としての外交努力などをしてしかるべきだと思うのです。それには文化、産業、そういうものの交流ということへも頭を向けなければならぬし、現に漁業関係、貿易関係で双方の間にはいろいろな取引が行われておる。私も昨年行ってみて、ちょっと北は厳しいことを言っておりますけれども、こちらがおおらかな感じをもってこれを受け入れるならば、漁業協定などにおいてもきっと六月三十日以後の問題等の解決も可能であると思うのです。貿易協定においても、支払いの遅延、支払いをやっていない状態などに一つの解決のめどがつくであろう。北朝鮮に対してもっと愛情のある、つまり南には大変力を入れてきたのだから、北に対しても、ある意味においてはその不幸な状態の中で北のあの経済的な苦境に対して、ある意味では朝鮮民族に対する愛情として経済的な支援態勢などしいてしかるべきだと思うのです。余り厳しくやる必要はない。そういうところから北側も漸次日本に対する認識が変わってくる。いま確かにお説のとおり北は厳しいですよ。南よりも北の方の認識が厳しい。私もよくわかります。これは、南にだけ力を入れて、北におろそかであった日本外交の欠陥があらわれていると思うのです。たとえば今度日韓大陸棚共同開発について問題がある。これについてわれわれは、大陸棚の共同開発をわが党としては大いに推進する方針を持っております。持っておるけれども、ちょっと私気にかかることがあるのです。大陸棚協定の批准を日本がおくらせるならば韓国は独自の力をもって開発していく、こういう意見を持っておりますね、これは間違いありませんか。
  285. 中江要介

    ○中江政府委員 私どもの承知しております限り、韓国政府があるいは国としてそういう考えを持っているということは承知しておりませんが、いま御指摘のような意見が韓国内に国内世論の一部としてあることは承知しております。
  286. 受田新吉

    ○受田委員 現に日本は韓国に対して、双方の条約締結以来友邦として温かい力を注いでおる。これはもうわれわれが例の有償無償の三億ドル、二億ドルの協力をして以来御縁は長く、毎年協力関係は続いている。そのときに、批准がおくれると独自の技術水準、経済力等で開発をする、こういうようなことを考えておる人たちがあるとするならば、これは大変な間違いである。そういうことがもしあるなら、いま局長がおっしゃるような世論が一つの拠点となって風潮を広げるならば、日本がせっかく経済協力してあげている、その経済協力してあげている分を独自の開発へ持っていってくれるなら、もしそういうことをやるとするなら、経済協力に対する一つの再検討という問題が当然起こってこなければいかぬ、そうですね。お答え願いたい。
  287. 中江要介

    ○中江政府委員 共同開発区域の開発を韓国が独自にやるかどうかという点は、私先ほど申し上げましたように、韓国の国内世論の一部にあるということで、韓国政府がそれを真剣に考えているということはまずない、これは間違いないと思います。同時に、韓国政府は、日本が韓国を大事な隣国と認識しているのと同じように、韓国も日本を大切な隣国として認識しておりますので、せっかく両国間で協定ができまして、先方は承認を終えている、わが方は協定の承認は終わっているが関連国内法がもう一息というところである、こういう事態に直面いたしまして、韓国の方でこの日韓問の信頼を破るようなことをするということは考えられないということがございます。  他方経済協力、これは毎回申し上げておりますように、韓国の民生の向上と経済の発展に寄与する、そういう平和目的に限定して、また韓国の民生と経済の伸展に寄与するかどうかという観点からもっぱら政府の経済技術協力が行われているわけでございますので、そのことと一部の世論にある考え方とをいまここで結びつけてどうするということは私ども考えておりませんし、また考えるべきでない、まだそういうことを考え段階でない、こういうふうに思っております。
  288. 受田新吉

    ○受田委員 この問題は両国の親善にひびの入る問題なんです。双方の国で海底の共同開発をしようというときに、批准がおくれるならばおれたちは単独でやる。これは莫大な海底開発事業です。それは韓国一国だけでやれるような筋じゃない。そういう意味からも、誤解を与えているようなところがあるならば、われわれはそれを是正しなければならぬ。どこらにまずいところがあったのか。南北の対話に事欠く一つの世論がどこかに出てきたわけだ。そういう意味で、一番近いお隣の国に対しては、政府はこの際積極的に南北の融和を図る、この朝鮮民族の悲劇を解消するための努力を懸命に注ぎ込む国家は日本が第一でなければならぬと思う。どの国よりも熱情がなければいけない。外務大臣どうですか。
  289. 園田直

    園田国務大臣 南北の対話を促進して、南北が将来両民族の話し合いによって統一されることを望むことは御意見のとおりでございます。
  290. 受田新吉

    ○受田委員 この際ひとつ指摘したような点について、大臣、具体的な策と積極的に取り組んでいく。われわれは共産主義と対決する政党であるが、なおかつ共産主義の国といえども、国家としては友好親善を図るのが当然なのであって、南北の対話に対して日本政府は積極的に取り組んでもらいたい。  この問題はおきますので、質問の通告を申し上げた以外の政府委員の方はお帰り願ってよろしゅうございます。  それでは質問の通告を申し上げた順序によって、今回提出されている法案に関する質問をいたします。  新しいお役所ができるわけだ。総領事館もできるわけだ。カンザスシティー等にできておる必要性、これは大変大事な、要望にこたえて在外公館が設置されるわけでございますから思いつきではないと思いますが、特に今回提案された在外公館の新設その他の理由について、提案理由の説明では余りにも簡単過ぎるのです。ちょっと掘り下げて御答弁願いたい。
  291. 山崎敏夫

    ○山崎政府委員 今回新設をお願いしております公館は三つございます。コモロ及びジブチに大使館を設置すること、それからアメリカのカンザスシティーに総領事館を設置することでございます。  コモロにつきましては、一九七五年の七月六日に、またジブチは一九七七年六月二十七日にそれぞれフランスの施設下から独立したものでございますが、わが国としては、これらの国との友好親善関係の増進を図って、対アフリカ外交実施体制を強化するために、これらの国に大使館を設置するものでございます。コモロはマダガスカルとモザンビークとの間にございまして、人口は約二十七万でございますけれども、香料等を産出いたしております。わが国は、この国の産業の開発を援助することによりまして両国の貿易の拡大を期しております。それからジブチにつきましてはアフリカの角と称せられる部分にある独立国でございますが、この辺は、御承知のとおり、最近の情勢にかんがみて非常に重要な地域となってきておるのでございます。またジブチ港はエチオピアとの輸出入の貿易港といたしまして非常に重要なところでございます。  なお、この両大使館は、実は直ちに実館として設置するには至っておりません。これは先ほどから申し上げております予算あるいは人員の制約の問題がございまして、兼館として設置するものでございます。したがいまして、われわれの考えといたしましては、在コモロ大使館は在マダガスカル大使館が兼轄する、また在ジブチ大使館は在エチオピア大使館が兼轄するというふうにしたいと考えております。  次にカンザスシティーの総領事館でございますが、御承知のとおり、アメリカの中西部地域は最近目覚ましい発展を遂げておりまして、また政治的にもその発言力は非常に強化されております。しかるにわが国の場合、この中西部にあります総領事館はシカゴにあります総領事館のみでございます。このシカゴ総領事館が中西部全部の十二州を管轄いたしておるわけでございます。これでは十分のこれらの諸州の動向を把握できないということもございまして、われわれといたしましては、このシカゴにあります総領事館の管轄区域を二つに分けまして、その半分をカンザスシティー総領事館に管轄せしめたいというふうに考えておるわけでございます。またこの方面は農業が最も重要な産業でございますけれども、近年自動車、航空機、鉄鋼等の基幹産業の発達が非常に著しいわけでございます。また政治的にもこの地方は非常に発言権を増大いたしておりまして、たとえば一九七六年のアメリカ大統領総選挙に際しましては、この地域で共和党大会が開かれたのでございます。それからまたさらに、この地域は日本の企業を積極的に誘致する姿勢を示しておりまして、本邦企業が逐次進出いたしており、今後もさらに進出していくものと思われます。また現在すでに約二千人の邦人がこの地域に在留いたしております。  以上のような理由によりまして、カンザスシティーに総領事館を設置したいと考えておる次第でございます。
  292. 受田新吉

    ○受田委員 カンザスの事情はよくわかります。われわれもちょいちょい旅をしてそこへ宿泊したこともある町でございまして、総領事館の設置の必要性については同感でありますが、このジブチ、この国は現にエチオピアとソマリアの間で紛争の拠点になっておるのですね。そうじゃないですか。
  293. 千葉一夫

    ○千葉政府委員 ただいまのジブチの状況につきましては、別にエチオピア、ソマリア間の紛争の拠点とはなっておらないものと承知いたしております。
  294. 受田新吉

    ○受田委員 双方の国からこの国へ入り込んでおるのじゃないですか。
  295. 千葉一夫

    ○千葉政府委員 双方ともこの国と友好関係を持っておると承知いたしております。
  296. 受田新吉

    ○受田委員 エチオピアとソマリアの間の紛争について外務省が認識している原点の説明を願います。
  297. 千葉一夫

    ○千葉政府委員 私どもの知っております限り、エチオピアのオガデン地区と申す地方がございまして、そちらに元来ソマリアと歴史的、人種的、宗教的その他の関係を持っております系統の住民が住んでおるわけでありますが、その住民のうちの一分子が反乱を起こしまして、エチオピアからオガデン地区を外して自分らと同じ系統の国でありますソマリアと合体いたしたい、そういうことでエチオピア軍と戦闘を交えておると承知しております。なお、ソマリアの方では、これに対しまして物心両面の援助を行い、正規軍の派遣等は行っていないと申しておるように承知しております。
  298. 受田新吉

    ○受田委員 東アフリカには、ここにケニア、タンザニア、その西にウガンダという国があるわけですね。かつてケニアにはマウマウ殺人団というのがおって激しい民族的な闘争もやってきたようですが、これらの小国の間にすでに大使を交換している国が相次いでおるわけです。おととしは私多年の要望であるウガンダの国に、向こう様が専任大使を置いているのにこちらは専任を置かないというのは片手落ちであるという強い要請をしたわけで、それにこたえて専任大使を置くことを決めておるようです。  向こう様が専任大使を置いているのにこちらが専任大使を置いていない、そんな片手落ちの冷酷な外交をやっておる相手国はどの国であるか、まだ残った国が少しあるはずです。お答え願いたい。
  299. 山崎敏夫

    ○山崎政府委員 主な国でウガンダに大使館を置いてない国がどれだけあるかということにつきましては、十分まだ情報を得ておりませんが……
  300. 受田新吉

    ○受田委員 そうじゃないのです。いま私が質問しているのは、従来片手落ちでウガンダの日本大使館には専任の大使がいなかったが、向こうはこちらに専任大使を置いておる。今度の新しいコモロはマダガスカルの大使に兼任させよう、ジブチはエチオピアの大使に兼任させよう、兼摂大使ということで片づけるわけですが、向こうが専任大使を置いておればこちらも専任大使を置け、こういうことです。したがって、ほかに日本で、向こうが専任大使を置いているのにこっちが置いてない国はないか、全部片づいたかということを尋ねているわけです。
  301. 山崎敏夫

    ○山崎政府委員 御質問の趣旨を十分理解いたさないで失礼いたしました。向こうが専任大使を置いておってこちらが専任大使を置いていないという国は三つございます。南イエメンとハイチとそしてウガンダでございます。ただ南イエメンとハイチにつきましては、わが国は人員、予算その他の制約から専任大使を置くに至っておりませんが、兼勤駐在という形でそれぞれ一名ずつわが方の外交官を駐在せしめております。ウガンダにつきましては、昨今のウガンダをめぐる国際情勢が若干微妙であるということもございまして、今年度内の開設はまだ見ておりませんが、今後さらに情勢検討してまいりたいと考えております。
  302. 受田新吉

    ○受田委員 ウガンダの大使館は専任の大使は置いておるのじゃないですか。まだ置いてないのですか。まだ専任大使を置くことになっていないのですか。これは私、松永前官房長からは、専任大使を置くことに決まりましたと報告を受けたのです。予算の要求もしてありますと。うそだったのですか。
  303. 山崎敏夫

    ○山崎政府委員 ウガンダに大使館を設置するということは予算も認められております。ただ、いまだ専任大使を置くに至っていないわけでございます。
  304. 受田新吉

    ○受田委員 ウガンダはこちらへ専任大使を置いている。いままで兼任大使を置いておったはずですよ。いま始まったわけじゃないのだ。兼任の大使はケニアの大使が兼ねておったのです。かつて太田大使が兼ねておられた。そういうことだから現に大使館はあるはずですよ。いま新しく置いたはずじゃないはずです。
  305. 山崎敏夫

    ○山崎政府委員 説明が不十分であったかもしれませんが、確かにウガンダ大使館は法律上は設置されております。そしてウガンダにあります大使館はケニアにおります大使が兼任しております。ただ、先ほどから申し上げておりますのは、専任の、つまりウガンダだけに派遣する大使は、まだ任命に至っていないということでございます。
  306. 受田新吉

    ○受田委員 外務省はまことにスローモーであって、せっかくあちらの国から専任大使を置いていただきたい、対等の外交を進めるためには、向こうが専任を置いているのにこっちは兼任でごまかすようなそういう外交では、本当に東アジアの国々として、開発途上国としては痛憤にたえないことになるわけです。いまの南イエメンにしてもハイチにしてもそうです。小国たりといえども侮らず、大国たりとも恐れずという外交でなければならない。小国を愛せにゃいかぬですよ、小さな国だといってなめちゃいかぬ。向こうが専任を置いている誠意を持てば、こちらも専任をもってこたえるべきです。外務大臣、こういう不届きな外交をあなたの部下たちはやっておられる。向こうさんは専任を置いて、専任に来ていただきたいと強い要請をしている。小さな国だからと、なめてはいかぬです。日本外交の大欠陥がここにある。向こうさんはせっかく専任を置いて、国交を樹立して友好親善を図ろうとしているときに、どうですか、大臣の答弁を。ひとつよく進言をしておいていただきたい。
  307. 山崎敏夫

    ○山崎政府委員 ちょっと大臣の御答弁になる前に、私の答弁で不十分な点がございましたので、補足さしていただきます。  まず第一に、先ほどハイチは専任のフルの大使を置いておると申し上げましたが、これは誤りでございまして、ハイチは一九七三年九月に先方の臨時代理大使が離日いたしまして、同国の大使館は一時閉鎖されたままになっております。  次に、ウガンダにつきましては、先方はフルのと申しますか、特命全権大使を派遣しておりませんで、臨時代理大使がおるわけでございます。
  308. 園田直

    園田国務大臣 ただいまの発言の中にありました小さい国、遠くの国であるからと侮ってはならぬ、こういうことをおっしゃいましたが、私も外交演説で、政治形態、遠近、大小を問わず、こう言っております。ややもすると、アフリカであるとか、余り関係のない方で利害の少ないところであるとか、辺境の土地であるとか、小さい国には、当然のことをやっておっても、小さいから侮っておるという誤解を与えてはなりませんので、その点は十分注意をして、今後事務当局相談をしてやる所存でございます。  ただいま言われました大使の発令がおくれておりますのは、向こうの国の国内情勢等考えて、じっと模様を見ておるわけでありまして、なるべく早くいまおっしゃいましたようなことにするようにやりたいと考えております。
  309. 受田新吉

    ○受田委員 外務大臣、私いま小国といえども侮ってはならないという、日本外交に対する厳しい要請についてひっかけてお尋ねしたいことがあるのです。  いま外務省の公務員、本省千五百名、在外千七百名、三千名を超えるこの公務員、海外に勤務される大使以下の在外公館の職員、外務公務員、この方々の中には外交官の上級試験にパスした、いわゆるキャリア組と、ノンキャリアとがあるわけです。ノンキャリアといえども、ちゃんとそれぞれの試験の通過者がこれになっている。あるいは特別の才能を持って採用されるというわけです。試験一本で人生を決めるという、その本筋においての一つの問題があるわけで、そういう原則は原則として認めていった上で、奮励努力する人士を重く用いるという道を開かないと、上級職試験をガリ勉で通った人は、もう将来大使までエスカレーターでいくのだという安易な感じになっては、これは困るわけです。これは園田さんたちのようなすかっとした感じの外務大臣がこの体制の転換を図らぬとそこに問題が起こるというのは、小さな国はキャリア組がなかなか任地へ行かない。そういうところへは理事官とかあるいは外務公務員のみやすい試験を受けた方に行ってもらうとか、こういうことでキャリア組は大国へ赴任したがる。そしてできるだけ本省にいて、子供を連れて小さな国に赴任することをいやがるという風潮が起こるわけです。  これは、この一月でしたか、わが日本の有力な新聞もこの問題を指摘していたのを私はちょっと読んだわけでございますが、私はこの委員会でも何回かこれを指摘しておる。認証官が百名を超えるという外務省、その認証官のポストをほとんどキャリア組がせしめている。せしめるというのはちょっといけぬですが、事実、そのポストを占領しているわけですね。それで、ノンキャリアで奮励努力した人の道というものはまことに微々たる、小国に専任大使として退任の直前にちょっぴり申しわけ的にこれを任命しているという外務省の人事がある。園田外務大臣、これはおわかりですか。わかっているかどうかだけ、先に承っておきたい。
  310. 園田直

    園田国務大臣 往々にしてそういうことがあるという話は聞いておりましたが、近時、大国、小国を問わず、大事なところには進んで行く気配は出てきたわけであります。しかし、たくさんあるところの中には、注意をしないと往々にしてそういうことになりがちでありますから、働いて力がある者、真剣にやる者、こういう人々がそれぞれ自分の働き場所に登用されるようなことについては、特に注意をして、実情を検討し、さらに将来に向かってそういう措置を講じたいと考えます。
  311. 受田新吉

    ○受田委員 外交官、在外公館の人事は、官房長の手元で一応整理されますか、大臣の補佐をされて。
  312. 山崎敏夫

    ○山崎政府委員 官房長がすべて決めるなんということはございません。人事課長、官房長それから次官等の間で種々相談いたしまして大臣の御決定を仰ぐわけでございます。
  313. 受田新吉

    ○受田委員 人事課長は、官房長の部下ではございませんか。
  314. 山崎敏夫

    ○山崎政府委員 人事課長は官房長の下におります。
  315. 受田新吉

    ○受田委員 そうしますと、結局部下が決めるということよりも、官房長が官房の責任者でやられるわけです。事務次官がそれにタッチする。これは大臣の事務処理の補佐の最高である。政務次官はそれにタッチしないのですか。いま官房長と人事課長と事務次官がやるというのですが、政務次官はノータッチですか。政務次官は忘れているのですか、あるいはやらぬのかどうか。
  316. 山崎敏夫

    ○山崎政府委員 いまのは事務の処理として申し上げたわけでございまして、もちろん主要な大使の人事等につきましては、私なり次官から政務次官にも御相談申し上げるわけでございます。
  317. 受田新吉

    ○受田委員 重要な大使だけで、重要でない大使は相談しないのですか。
  318. 山崎敏夫

    ○山崎政府委員 一般的な話として申し上げたわけでございますが、在外公館も百五十を超えておりますし、各任地の状況も千差万別でございますので、そういう状況を勘案して、われわれとしては適当な者を選任すべく努力をいたしておるわけでございます。その点で、特に重要なものについては、もちろん政務次官の御意見も十分伺った上で処理いたしております。
  319. 受田新吉

    ○受田委員 そうすると、政務次官の意見を聞いて官房長が処理する、政務次官は単に意見を聞くわけで、つまり官房長の下役のような感じになるわけですが、政務次官も何か御意見があれば言うてくださいと、こういう人事というのは――私は外務省の人事は、人事課長、官房長が一応各局の意見など調整して持ってきた、その時点で政務次官の意見大臣が聞き、そして事務次官と政務次官の意見を聞いて大臣が決定する、そういう立場であって、官房長の下に政務次官がおるとは私は知らなかったのです。いままでは。政務次官の政務補佐ということは――やはり高級人事は大臣の政務補佐を持つ政務次官にも必要になってくるのです。かつて運輸省には佐藤政務次官という大変な実力を発揮して、大臣以上の権威を持った政務次官もいたわけですが、そのぐらい政務次官というものは権威を持たせにゃいかぬと思うのです。ちょっと国会の連絡係というような意味考えられては困りますよ。政務次官というのは副大臣ですからね。その副大臣が官房長の方へちょっと意見を申し上げるというようなことはおかしいと思うのですが、大臣、御見解を。
  320. 園田直

    園田国務大臣 人事については、人事のあり方について次官、官房長には大綱を私指示をいたします。指示をした上でそれぞれ人選をしてまいります。したがいまして人事は、いま御指摘になりましたように働く人が埋もれたりあるいは一生懸命にやっている人が報われなかったり、間々あることでありますから、そういう点は政務次官と手分けをしてよく実情を知ることが先決問題でありまして、人事の問題をうかつに政務次官、大臣が勝手にかき回しますとこれまた非常な弊害があるわけでありますから、ただいま私はなるべく報告等も、小さい問題は直接係が自分のところに持ってこい、こう言って報告を受けておりますのもそういうことに対する関心から、なるべく外務省で働いているすべての人々のことをおぼろげながら私がわかるようにやっておるわけであります。政務次官もまた省内の人事の実情を詳細勉強することから始めて、そして事務次官と政務次官が両方相談し合って適材適所、しかもすべての人々が喜んで安心して働けるような、これが国益につながるよう、これは特に私留意をしておりますが、ただいま就任間もないことでございまするから、まず実情を知ることに重点を置いているわけであります。
  321. 受田新吉

    ○受田委員 私は外務省の人事は非常に大事な問題だと思います。つもり国際的な視野に立った人材を簡抜してやるべきである。だからただ単に試験に合格してそのままエスカレートにいくということでなくして、終始その後の努力も十分買い、国際的な感覚からその国々からも大変貴重な人物として評価されるような人を用いなければならぬ。別に外務省で育った人でなくして、ほかの省で育ったいわゆる他省から外務省に出向した参事官、最近は公使まで出た。こういう公使まで出た参事官、書記官、こういう他の省、通産省とか大蔵省とか文部省とか一緒にして外交官になるわけです。防衛庁の自衛官も書記官であるいは参事官で行くこともある。そういう者の中から人材を広く吸収して適材適所でいく。そういう非常に高い視野に立った、認識を持った人ですから、たとえば通産から行った人は外務省の事務処理をしてきた外交交渉の腕前だけでなくして、もっと高い感覚から経済外交の雄であるはずです。そういう人がおるはずです。それから、そういう外交官でない民間会社その他の民間人の中に適材もおるわけです。百人以上も認証大使がおれば四、五人ぐらいはそういう人が大使になってしかるべきである。女性の大使がおってしかるべきです。女性、民間人、こういう者が各地から人材が発掘されて、そして外務省の中に適当にはまり込んで在外公館の長としてのポストについていく。もう日本外交のバラエティーに富んだ非常な大きな迫力に、諸外国が仰ぎ見て、おお日本よというふうになるのですよ。そういうことをいま日本外交はばあっとやるべきだ。  山崎官房長はアメリカ局長時代からずっとここで御答弁に立って、なかなか有能な高級官僚でいらっしゃるのはよく知っている。知っているけれども、そういう事務当局中心になってやった人事の中には、そうした外部から女性大使を招く、民間人から簡抜というような高い視野で人材の発掘はなかなかできない。それは総理が、むしろ官房長官が、国務大臣が、閣僚が、閣議みたいなところで、おい適当な女性大使はおらぬか、民間人で大使に簡抜するような者はおらぬか、外務大臣が提案されたら、おおおれのところは候補者一人出そう、これはこうだ。そうするとそこで、閣議で、日本在外公館の責任者というものがすばらしい人物によって占められるようになってくるのです。外務省の古い歴史と伝統を尊重しながら、そこに新しい外務省の人事というものを築くべきではないですか。これは大臣そこは英断をふるわぬと、事務当局が持ってきたものに盲判を押すような外務大臣じゃそういう英断はできないのですよ。その意味で、あなたのようにかつて官房長官をされて各省のまとめ役もされた、各閣僚にもなった。福田総理が行かれたときは留守に総理の臨時代理をやられるかという世評も強いあなたが、そういうときにやらぬとなかなかいかないのです。これは非常に大事なことなんです。ついそのうちに外務大臣をやめてしまって次にいくということになって、この大事な大構想が実現せぬままで外務省の人事が引き続き萎靡停滞した人事で終わる危険がある。英断をふるう時期が来ておるのです。余り時間をかけぬ問にやらぬと問に合わぬようになってくる。園田さん、あなたひとつ日本外交の本当にすばらしい展開を私はこいねがいたいのだ。あなたと一緒に昭和二十二年以来国会へ出て感無量で、あなたがこうしていま大事なポストでやってくれておることに対して私は本当にうれしいわけだが、この際に、外務大臣といういいポストをお占めになった機会に勇気ある決断を出してもらいたい。
  322. 園田直

    園田国務大臣 人事に対する御発言は全く同感であります。なお、民間人、女性等の登用等もこれは十分考慮して今後やっていきたいと思います。
  323. 受田新吉

    ○受田委員 私もう一つ。さっき新井さんの質問のときにも出ておりましたが、外国に勤務する外交官は大変な苦労をしているのだ、これは私はよく知っている。ここで外務公務員に対するいろいろな法律外務公務員法という法律もあって、その規則もありまして、そこで一々道を開く制度的なものがありますが、しかし実際は海外で悪疫がはやり瘴癘の地などで勤務する人、もうそこに一年も三年も長く勤めたらとんでもない生命が危ないようなところに住む人もいる。  この間ラオスで代理大使、杉江二等書記官が故人となられた。あの人のお父さんは文部省の局長さんでもあったし、私よく存じ上げておる。その杉江二等書記官が夜奥さんとともに、新婚間もない夢多き将来を描くこの若きキャリア組の外交官がラオスという国際情勢、治安の非常に不安定な国に進んで出かけてついに亡くなった、殺された。この国の治安というものは、当時の報道によると夜でも外出ができない。自動車の運転手をそばへ置いておかぬと、運転手を夜呼ぶわけにいかない。そうなれば自然に運転手も現地の人を採用しなければならぬ。日本から運転手を連れていくわけにいかぬということになると、もうラオスという国の政情、これはベトナムにしてもラオスにしても同様でいまのところは不安定だ。そういうところへ行く外交官、いわば戦場に行くような外交官です。いつ危険が襲うかわからないようなところに行く外交官に対する心遣いが外務省はできておるのかどうか。いざというときに戦場で殉職をするそういう人に対する補償というものはどのような職種の人よりも高い補償がされなければならぬ。私は、あの若い未来ある杉江書記官に心から弔意を表するとともに、外交官にこういうことが二度と起こらないような外交努力が要るし、現地との問の交渉もやって、そういうときに補償をどうするかという問題も外務省努力しなければいかぬ、なめられてはいかぬ、泣き寝入りではいかぬのです。あの若い奥さんも御主人と一緒に本当は行きたくなかったかもしれないけれども、国家の使命を帯びて行ったのですよ。そうして、青春を犠牲にした。さあ、この問題についてちょっと聞きたい。この処理はどうなさっておるか。
  324. 山崎敏夫

    ○山崎政府委員 最初に、われわれとしましては、今回の杉江臨時代理大使があのような状況のもとに殺害されたことについて非常なショックを受けたわけでございまして、これはまさに外務省員の士気に関する問題として慎重に取り扱っておる次第でございます。  ただ、この殺害事件の捜査結果につきましては、ラオス政府から断片的な通報は受けておるわけでございますが、犯人及びその犯行の動機を含めまして、事件の全貌はまだ十分解明されておらない次第でございます。したがいまして、われわれといたしましては、犯人逮捕を含めまして事件の真相の速やかな究明、また、今後このような不祥事が再び発生することのないように申し入れるとともに、わが方大使館館員及び在留邦人の保護をラオス政府に対して強く申し入れておる次第でございます。また、この事件に関連しましても、ラオス政府に対する賠償請求等の権利は留保いたしております。  また、わが方独自の措置としましては、このような事件が再び起こることがないように、ラオスのみならず全在外公館に対しまして、事務所、公邸、さらには館員宿舎の警備対策を一層厳重にするように指示しておる次第でございます。
  325. 受田新吉

    ○受田委員 国家公務員としての公務災害補償の措置はどうされましたか。
  326. 山崎敏夫

    ○山崎政府委員 本件に関しましては、事件が発生いたしました直後より、人事院と鋭意折衝を重ねまして、この件につきまして公務に起因する死亡と認められまして、公務上の災害と認定を受け、国家公務員災害補償法に基づいて補償手続を進めております。
  327. 受田新吉

    ○受田委員 国家公務員の災害補償法の適用をすることになってきた。この法律は、人事院が所管をしておるわけでございますが、この実施官庁がこの場合は外務省ということで、この仕事の権限を外務省に与えておられるということになると、人事院は何ら用がないことになるのかどうか。人事院は、国家公務員全体の問題を把握する上において何らかの目標を持たなければいかぬわけです。お答え願います。
  328. 金井八郎

    ○金井政府委員 お答えいたします。  一般職の国家公務員の災害補償につきましては、人事院及び実施機関がこれに当たっておりますが、規則におきまして、補償法上の公務上外の認定であるとか、平均給与額の決定であるとか、基本の事項につきましては実施機関がその権限に当たるということにしております。人事院の方は、その実施機関から上外の認定についての協議、相談であるとかあるいは補償の実施につきましての種々の指導あるいは調査、監査、そういうものにつきまして人事院は当たっておりまして、いわば補償法の実施につきましての総合調整に当たっているわけでございます。
  329. 受田新吉

    ○受田委員 こうした事件というものは、ある意味では戦地に準じたような国です。いまのような事変の後始末が満ち足りてないわけです。こういう国においては、例の特別の戦争状態にある国々に対する規定もあるわけですが、夜間の通行禁止というようなところまで厳しくやっておる。いつどういう状態が起こるかわからないというような危険な国家に勤務する者にもっと優遇された措置、もう一つ上の戦争状態にある国々に対する特別措置があったと思うのですが、ああいうものを適用されてはどうなんですか。普通の公務災害よりもっと進んだ、夜寝ているところを殺されたのじゃないか、日本の国内であったら問題にならぬくらいな軽い考えではいけません。常時戦場みたいなものです。そういう意味では、一般の公務員が寝込みを襲われて殺されたのでは公務災害にならぬから、それと同じように見られたら大変です。それから、後に続く士気にも影響する。外務公務員の士気にも影響する。実施官庁としてもっと強いものをやってもいいと思うのですよ。山崎さんどうですか。
  330. 山崎敏夫

    ○山崎政府委員 この点につきましては、単なる公務災害補償ではなくて、特別の公務災害補償とすべきではないかという御趣旨と存じます。  御承知のとおり、ある一定の要件を満たしました場合には、補償額の五割加算の制度がございます。ただ、その要件を見ますと、「戦争、事変、内乱その他の異常事態の発生時にその生命又は身体に対する高度の危険が予測される状況の下において、外交領事事務に従事し、そのため公務上の災害を受けた」、こういう要件になっております。そういう要件を今回の場合十分満たしておるかどうかということについて、人事院との間で協議いたしました。われわれは心情としては、杉江君のケースについても五割の加算措置をできれば講じたいということで協議いたしたわけでございますが、人事院規則の解釈としては、そこまで言うのは無理であるというふうな御意見もございまして、この点は実現を見なかったわけでございます。
  331. 受田新吉

    ○受田委員 外務公務員というものは、いつどういう状態になるかわからぬ、そういう危険を顧みず行動するというときもあるわけです。それに準じて私は扱ってもらいたいと思ったわけですが、その気持ちも一応考えたということですから、それで一応納得しましょう。  それから、もう一つ外務公務員の待遇問題で、在外勤務の在勤手当というのがある、基本手当、扶養手当、住宅手当、こういうのがいろいろある。こういう制度は、外務公務員も一般公務員ですから、人事院で一般公務員法の中でそれをまとめていってしかるべきものじゃないですか。これだけ別に外務公務員の中へ抜き書きしないで、ちょうど教員の場合の主任手当と同じような意味で、いろいろな省にまたがるものがあるのですから、外務省にある独特の手当を、国際的な関係で物価問題等があれば、その方は人事院に資料を外務省から出してくれればいいのです。公務員全体の問題として、俸給、諸手当、こういうものは一貫して人事院が掌握してしかるべきじゃないですか。
  332. 角野幸三郎

    ○角野政府委員 お答え申し上げます。  在外公館に勤務なさいます外務公務員給与は、その勤務の特殊性ということで、昭和二十七年から現在のような特別の給与法ということで取り扱いになっております。それはやはりその特殊性ということで特別の取り扱いがずっとなされておりますが、その問現在に至りますまでの間でもその手当のあり方でありますとか、あるいはその体系、金額等、やはりその時点時点の実情でありますとか、それから時代の変化、実態の変化等に合わせてずっと外務省でよく調査をなさり、御研究なさって維持してこられているものと私ども見ております。たとえば最近でございますが、子女教育手当でありますとか、住宅手当でありますとか、あるいは戦時の特例でありますとか、そういうときには外務省外務大臣がおやりになっておりますけれども、私どもとしても御相談を受け、御相談に乗って助言をするというような関係には立っておりますし、現在の時点で、一方たとえば額の改定のようなときでも、最近の事例でもそうでありますが、外務人事審議会でその審議をいたしまして、それで大体在外公館で直接の公館長が実感を持ってお調べになりました実際のデータに基づいて、それで外務人事審議会でそれを審議して、なさる、そういう関係になっておりますので、私どももやはりそういう在外職員の特殊性、特に体面を維持するとか、特別の面がございますし、それから時々刻々に動いておりますそういう社会情勢あるいは経済情勢、為替相場等の把握も時宜に適した把握の仕方がなさり得ると思っておりますので、そういう点で、もちろん無関心ではございませんが、それなりに合理的な運用がなされておる、そういうように考えております。
  333. 受田新吉

    ○受田委員 この問題は人事院として常に心を入れておらなければいけなかったので、かつて在勤手当は在勤俸という名称であったのです。私はこの在勤俸を手当にせよと言って、十年がかりでやっと直してくれたのです。毎回委員会を開くたびに私がこれを言うものだから、歴代の官房長はまたこの質問がありますかと先へお尋ねがあったようなわけで、やっと在勤俸の俸の字を――俸給の一部という認識だったのです。昔は。それじゃいかぬ、海外に勤務するための手当だから在勤俸でなくて在外勤務手当と要求をしたわけです。やっとこれが実ったくらい外務省は非常に抵抗があったのです。そういういきさつがあるから、人事院というものはそういうところを大所高所から俸給の一部というよりは諸手当であるという意味の解釈を指導してくれなければ――私は非常にくたびれたのです。やっとこの牙城を陥落せしむることができたのは十年かかっている。十年一剣をみがいてやっと在勤手当になったわけですが、これは大変な努力が要ったのです。それだから在勤手当となると今度気が楽だから何ぼ上げてもいい。何ぼというのは幾らという意味で、幾ら上げてもいいわけなんです。だからこの在勤手当をしっかり、その国の実情において物価上昇に見合うようにおくれをとらぬように上げてもらいたい。ただ円高の場合は逆に三百二円で円建てが決まったなら、いまは二百四十円になっておるのなら六十円もうけておるのだから、もうけを吐き出さなければいかぬです。円建てで円貨の利益を得ておるのでございますから、これはドル安の利益の分は国へ戻すべきだ。それから物価その他で上がる。当然在勤手当を上げる方は円高で得たメリットを乗り越えてもそれを上へ上げてもいいですから、実情に即してやるべきだ。これをこの間俸給関係法律の審査のときに、物価その他が上がるから多少円高の利益くらいは差し引いてもいいじゃないかという御答弁のような印象を受けたが、これはいけないです。円高メリットはメリットで返せ、物価上昇における在勤手当は引き上げよ、筋を通さぬと、給与というものは筋が通らぬと、国民の税金で賄うのですからね、納得できないのです。ここのところをひとつ明確にしていただきたいのです。
  334. 山崎敏夫

    ○山崎政府委員 在外の諸手当はまさに手当でございますから、よく在外における実情を反映したものでなければならないという御趣旨は全くそのとおりでございまして、われわれもその趣旨を体してこの手当については常時検討を加えております。  そこで、昨年後半におきます米ドル等の相当数の先進国通貨に対する円の価値の上昇傾向にかんがみまして、昭和五十三年度におきましては、各在外公館所在地の消費者物価変動等の諸要素を勘案してもなお支給額の実質的価値に大幅な上昇が見られる一部地域の公館を対象といたしまして妥当な範囲で円建て支給額の減額調整を行う方針で検討を進めております。その結果として、全在外公館の約三分の一の公館について五ないし一〇%程度の減額が行われる予定でございます。
  335. 受田新吉

    ○受田委員 それは非常にいい措置になったですが、そういう措置をすると同時に、その国の物価上昇等の実情に応じての在勤手当の増加分の方を忘れぬようにしなさいよ。マイナスの方だけを納得して、プラスの方をおろそかにされぬように御留意を願いたい。  もう一つ、在外勤務をされる方々に対して、本当に待遇などもよいか、住宅その他もいいか、子弟の教育はいいかというための査察制度がある。法律の規定に基づいた査察制度がある。この外務公務員法の査察制度による査察使は最近出しましたか。
  336. 山崎敏夫

    ○山崎政府委員 外務省には御承知のとおり在外公館の査察制度がございまして、省令の規定では一年に一回全在外公館を査察することになっておるわけでございますが、これは人員及び予算の制約上、実行を見ておりません。大体三年ないしそれ以上の間隔を置いてやっております。  そこで、この査察制度につきましては、さらに刷新を図る必要があるということで、実は私がアメリカ局長を外れましてから査察関係の仕事を担当いたしまして制度の改善につき研究いたしまして、さらに私自身も査察使となって中近東、アフリカ地域の主な公館を査察いたしました。そして省内で種々検討を重ねまして、今回、内部の措置でございますが、査察制度の改善を行いました。具体的には官房審議官の一人を査察担当に任命いたしました。これは具体的には情報文化局長をしておりました柳谷君を査察担当審議官に任命し、さらにその柳谷査察使は先週日曜日から東欧方面の査察に出かけております。われわれの理想としましては、今後二年ないし三年に一回は全在外公館が査察できるようにしていきたいと考えております。
  337. 受田新吉

    ○受田委員 外務公務員法の中には、厳然と第十六条に査察制度があるのです。この法律の趣旨を生かさないで、いままでこれを実行していないというようなことは大変問題があると私は思うのです。いま在外勤務、とにかく交通の不便な国、小国として政情の不安な国、そういう国々で勤務する公務員、これは民間人を含めて大変なものです。それをどうしているかという査察もやっておらぬ。つい机上の数字で在勤手当の数字を出すというようなことになっておると思うのです。  委員長外務省はそのように査察制度もやらぬ、在外勤務の人がどんなに苦労するかの実態把握なども、法律の趣旨にあるのに積極的に実行していないわけなんだ。この際、内閣委員会は、外務公務員のそうした待遇の問題、任地における苦労を知って、十分それに報いてあげるような問題を担当する委員会ですから、内閣委員会で、世界各国の小国を含めた適当な国の在外公館や民間諸団体、商社等あるいは日本人学校等の視察、査察に当たる、つまり公開視察です。内閣委員長を先頭にして、各党代表者が世界の国々を一回りして、在外公館の士気を高め、諸外国との円満な外交関係を樹立する大変大事な役割りを果たす問題について、どうですか委員長、ひとつ骨を折ってみませんか。私の提案を理事会でも諮ってやるという気持ちはないか。いまの答弁を聞いてみて、そう思うでしょう。これが非常に不用意になっておるのです。答弁を願いたい。委員長として気持ちを言えばいいのです。
  338. 始関伊平

    始関委員長 大変適切な御提案のように感じております。理事会で御相談申し上げ、また関係機関と御相談しまして善処いたしたい、かように存じております。
  339. 受田新吉

    ○受田委員 そういうことで善処を約束していただきました。  質問時間が十分しかないようになったので非常に急ぐ質問になりますが、園田先生、あなたは日中の条約締結に熱意を持っておられることはよくわかるのですが、この日中の問題に関連して、私が一つ気にかかることがあるのです。日中平和方好条約締結する際に、台湾問題というのは一切触れることはないのですか、また台湾日中平和友好条約締結に支障となることもないのですね。これだけちょっとお答え願いたい。
  340. 中江要介

    ○中江政府委員 日中平和友好条約は、先生も御承知のように、日中共同声明にすでに交渉を開始することについて合意されておりますが、この共同声明の中で言われておりますように、正常化いたしました日中問の将来にわたる平和友好関係を律する条約ということでございますので、台湾とは関係のないものである、こういう認識でございます。
  341. 受田新吉

    ○受田委員 一切台湾にはノータッチである、従来の、現に行われている台湾との関係は黙殺ということになるわけですか。
  342. 中江要介

    ○中江政府委員 日本台湾との関係は、一九七二年九月二十九日の日中共同声明が出されたことに伴いまして、日台間は事実上の地域間の関係ということで維持継続するということになっておりまして、その後も事実上の地域間の関係として維持継続されておりますし、この状態については、今回の日中平和友好条約締結関係のないもの、こういうふうに認識しております。
  343. 受田新吉

    ○受田委員 事実上の問題には一切ノータッチということでございます。  そこでもう一つ、私この機会にはっきりしておきたい。中ソ友好同盟条約国連憲章第五十三条の敵国条項によってつくられておる、日本を敵国としてちゃんと条約に明記して中ソが条約を結んでいるわけですが、友好条約が成立した時点においては、中国自身も日本に対する敵国条項はもう削除するということになるのですね。
  344. 中江要介

    ○中江政府委員 中ソ同盟条約日本を敵視している敵国条項があると一般に言われておりますけれども、あの条約で敵視しておりますのは、日本の新たな侵略及び平和の破壊という行為ということでございまして、日本は新たに侵略をするはずはございませんし、平和の破壊をしないという平和憲法日本国になっておるわけでございますので、理論上の問題といたしましては、この中ソ同盟条約の対象になり得なくなっている、こう思いますが、それはともかくといたしまして、中国ソ連も、今回の日中平和友好条約締結を待つことなく、すでに日ソ間及び日中間には平和が回復しておるわけでございますので、あの条約は事実上その存在意義を失っていると私どもは考えておるわけです。ただ、この条約の当事国は中国及びソ連でございますので、当事国がどう考えているかは、これは私どもの立ち入る問題ではございませんけれども、少なくとも中国は、この条約は名存実亡であるということは繰り返し言われておるとおりでございます。
  345. 受田新吉

    ○受田委員 これはちょっと問題があるのです。侵略をする日本を敵国と見るということですが、日本をことさらに取り上げて、国連憲章五十三条にその敵国条項があるから、そういうのを向こうは取り上げたわけですからね。それは、侵略しない日本なら敵国でないというような、そんな言いわけの規定じゃないですよ。日本をちゃんとうたって、その日本の国と、これと結ぶ侵略に対処して、こういうのですから、日本がちゃんと明記してある。侵略するときにはこれを抑える、そんな言いわけではなくて、日本をわざわざ挙げておる。このことは、敵国条項そのものが問題じゃないかということですからね。この憲章ができてもう三十二年たっておる。敵国条項削除を次の国連総会などで提案してしかるべきだと私は思うのです。中ソの問題なども含めて、アジアの平和も本当に維持されようとしているときに、憲章の五十三条、この敵国条項削除の憲章改正に日本はいまこそ乗り出すべきときじゃないかと思うのです。いかがですか。
  346. 大川美雄

    ○大川政府委員 わが国は、憲章から見ます限り、憲章四条の平和愛好国家として認められて、それで国連加盟を実現したわけでございます。したがいまして、いわゆる旧敵国条項は、わが国に関する限りは適用がないという考えを従来から持っております。さりとて、依然としてその条項が国連憲章に残っておりますので、これは問題でございますから、従来からいろいろの機会を通じて、それの不適当であること、それの削除を主張してまいっております。  現在も国連の場において、国連憲章検討及び国連機能強化に関する特別委員会、まさにきのうからニューヨークで開会中でございますけれども、この場におきましても、またこの問題を取り上げることになろうかと思います。これはしかし、国連憲章の改正という非常に厄介な手続を伴うことでございますので、なかなか容易なことではございませんけれども、日本としては、引き続き各国の理解を求めながら、これの削除に努力してまいりたいと思います。
  347. 受田新吉

    ○受田委員 外務大臣、これは日本国民の多年の要望です。国連憲章のこの規定は、われわれは非常に頭にくる規定なんです。旧枢軸国というこの言葉からきて、日本とドイツがその対象になっておるなどという悲劇は、条約の文章からさっと削除すべきいいチャンスだ。中国日本友好条約をつくろうという段階で、日本はこの秋の総会には、敢然とした提案を強く、従来にない勇気をもって提案してもらいたい。いまの局長の意思をもっと積極的に大臣が取り組んでもらいたいのです。
  348. 園田直

    園田国務大臣 まず国連憲章における問題でありますが、御指摘のとおりでありまして、いま局長が答えましたとおりに、国連に日本が加入したときに実質的にはそれはなくなったとは言いながら、文章に残っておるわけでありますから、これは絶えず言い続けてきたことではありますが、さらにこれは強く主張する覚悟でございます。  中ソ同盟条約については、ソ連では、この前の会談で、中ソ同盟条約を継続されるのかあるいはこれをやめられるのか、これはまあ両国間の関係で、私は内政干渉はいたしません、しかし日本を敵視する条項は削除してもらわなければ困るとはっきり主張してまいりました。中国と今度友好条約を進めるにつきましては、理論的に言うと、すでに共同声明でその実質的な価値はなくなり、中国はまた、日本訪中された方々に、名存実亡ということを言っておられますけれども、これはあくまで訪中をされた方に言われた話でありまして、政府としては正式に承っておらぬわけでありますから、この問題については、条約再開交渉をするときに何らかの方法で日本国民が納得するように、向こう見解を聞き、それに対する措置をするつもりでおります。
  349. 受田新吉

    ○受田委員 時間が来ました。覇権問題、覇権という言葉、その他残した言葉、それから難民援助の問題、日本人学校その他の問題、せっかく政府委員の人に来ていただいておるのですが、約束の時間を守ることにします。はみ出ぬように私も協力します。御参加をいただいたことを感謝して、質問のできなかったことをおわびしたいと思います。どうも済みません。
  350. 始関伊平

    始関委員長 藤尾正行君。
  351. 藤尾正行

    ○藤尾委員 ただいま私がいただいております御報告によりますと、外務大臣が六時半から外国使臣とのお話し合い、あるいは食事等々の御日程がある、こういうことでございますから、私は、それに間に合うようにできるだけ外務大臣に冒頭においてお答えをいただきたい、かように思います。  私は、主として日中問題について御質問をさしていただくわけでございますけれども、それはそれといたしまして、まず、ここに提案をされております在外公館の新たな開設、そういった問題について、原則といたしまして私は賛成でございます。非常に結構なことだと思いますし、また当然の措置であろう、かように思うわけでありますけれども、いま受田先生からもお話がございましたとおり、いまの日本在外公館といいまするものも、あるところの在外公館は非常にりっぱにできております。またあるところの在外公館はまだ十二分に施設を備えていない、こういうこともございます。あるいは館員その他の待遇、処遇あるいはその御家族のいろいろな御心配等々考えてみましても、いろいろな問題があるわけであります。  いま日本の国はともかくも膨大な外貨を抱えておりまして、政府におかれましても、どうやって外貨を減らそうか、こういうことでいろいろ御苦心のようでございますけれども、こういった機会に、私は、外国に所在をいたしますそういった公館その他の不動産取得のためにこの余剰の黒字をひとつお使いになられるということも決してむだなことではない、かように思いまするし、また事実上いままでに古く開設をせられました在外公館の中にはきわめて粗悪なものも多いわけでありますから、まずもってここに法律案を提出をせられました外務大臣とせられまして、このようなところをどのようにお考えになっておられるか、ひとつお答えをいただきたい。
  352. 園田直

    園田国務大臣 いま御指摘のとおりでありまして、在外公館は毎月むだに借料を払っておる。その借料がだんだん上がるということもあるし、あるいは公館自体が、少なくとも日本国を代表して向こうの国と外交折衝をやるについてはふさわしくないようなところも非常に多いわけであります。また古いところもありますので、この際、いまの黒字の問題とも絡めて、できるだけ早目にこれは解決してもらいたいと私も考えておるところでございます。
  353. 藤尾正行

    ○藤尾委員 ここで委員長一つお願いがございます。  先ほど来、受田委員からもその種の御提案がありましたし、また、ただいま私が御質問を申し上げましたところが、外務大臣も大体私の趣旨に沿ってそのような方針で進みたい、こういう御意思のようでございます。私、先ほど来いろいろお話し合いを申し上げましたところ、各党とも大体御異論がないというように私は拝察をいたしております。  つきましては、この法律案が私どものこの委員会で通りました際に、私どもはこの法律案に対しまして附帯決議を考えるべきではないか、ひとつそのような委員会としての措置をこの際お考えをいただいたらどうだろうかという気がいたしておりますが、委員長、この点はいかがでございますか。
  354. 始関伊平

    始関委員長 ただいまの藤尾君の御意見は大変ごもっともだと思いますので、追って理事会で御相談申し上げまして、御趣旨に沿うような取り計らいをいたしたい、かように存じております。
  355. 藤尾正行

    ○藤尾委員 そこで、いよいよ本論に入ってまいるわけでございますけれども、私は、外務大臣外交演説等々もたびたび本会議でも伺っております。園田外務大臣の御報告も承りました。ところが、外務大臣外交演説といいまするものに一つの型がございまして、大概の場合、アメリカに対してはこのようなことを考えておるとか、あるいはソ連に対してはこのようなことを考えておるとか、ヨーロッパ、EC諸国に対してはこのようなことを考えておるとか、東南アジア各国に対してはこのようなことを考えておるとかいうことで、それぞれ言われる趣旨が相手国に対して細切れになっておりまして、ばらばらで統一を欠いておる、そういうきらいがある、私は、さように感じておるわけであります。ところが、一国との関係といいまするものは、その一国との関係だけで存在するはずはないわけでございまして、一国との関係で何か物を言おうというときには、その一国と関係のあるそれぞれの諸国との関係、そういったものが大きな背景になっておるということでございまして、私は、このことは地域的にも時間的にも、あるものを抜き出して考えていくという考え方に大きな欠陥がありはしないかということを従来感じておったわけであります。  そこで、このことにつきまして、これは一般論でございますから一般論としてお答えいただくわけでございますけれども、ただいまいろいろな問題をお考えになっておられる、それがそれぞれ非常に深い、またあるときには厳しいそれぞれの関係の中につながっておる。しかも、それぞれにはそれぞれの歴史があるということもお考えをいただいて、ひとつ現在の日本のこれからの外交方針に対しまして、その認識をなすワールドワイドな物の見方についてどのような御認識がおありになるか、ちょっとお聞かせを願いたい。
  356. 園田直

    園田国務大臣 わが日本外交基本方針は、外交演説で申し述べておきましたが、いま言われた二国間問題の場合に、当事者だけで話し合いをして何かやろうとすることは非常に困難であります。したがいまして、二国間あるいは当事国家問に問題があった場合には、それぞれの関係国ばかりでなく関係のない国にも通報し、連絡し、そしてこれに協力を頼み、世界的な世論をつくることはきわめて大事であるということは、実際問題で痛切に感じているところであります。  先般、日米通商問題の際に特に注意をして、在京のEC各国の大使にそれぞれ米国と同時に通報し、相談をし、ECの本部にもそれぞれ連絡をし、牛場大臣が帰りしなに、御苦労ではあったが、ヨーロッパへ回ってECの本部を訪問して日米通商問題についての理解を深めるということをやりましたのも、いま御指摘をされたようなことを私も痛切に考えるからでありまして、しかしそれはまだ端緒についたばかりでありまして、これからは特にそういう点を考えていかなければならぬと考えております。  なお、外交を実際進めるについての基本方針は、過去の経験から一つの方針を持ってそして事を進めていくのには今日の状態はなかなか困難でありますので、たとえば中東へ行ったら中東、モスクワへ行ったらモスクワ、その会議会談あるいは二国間の問題等さらに分析をし、理論づけ、そういう理論を積み重ねていって、なるべく早く日本外交の方針に従う方策を打ち立てたいと努力をしておるところでございます。
  357. 藤尾正行

    ○藤尾委員 ごくあたりまえのことでございまして、これからは特にそのようなお考え外交の方針をお決めをいただいて、そうしてお進めをいただきたい、かように思います。  そこで、お伺いをいたしますけれども、昨年、外務大臣は、そのころは官房長官であられたわけでございますけれども、総理大臣と御一緒に東南アジアにお出かけになられまして、そうして心と心のつながりというものが非常に大切なものであって、特に日本が置かれておるいまの位置というものから考えて、東南アジア各国との関係をよりお互いが喜び合えるような濃密なものにしていかなければならぬ、さようなお話し合いがあったわけでありますけれども、その後、一体この関係といいますものがどのように伸ばされておるのか、その努力は果たしてあったのかなかったのか、その点を、まだそういうことを私が価値づけるには時間が足りませんからそこまで私は申し上げませんけれども、これは外務大臣としてのお考えをこの際お述べになっておいていただきたい。
  358. 園田直

    園田国務大臣 この前の福田総理のASEAN訪問は非常な成果を上げたと思いますが、その成果とは、ASEANと日本関係日本の置かれた地位、そういうことに新しい方向を出したということに成果があるのであって、実際の成果は、その回った後の結果、各国の首脳者と会い、ASEAN全部を回って、いろいろ出ました問題をどのように実際に進めていくかということで成果が上がるかどうかということが決まるわけでありますから、総理が各国の首脳者と話し合いをされ、あるいは向こうから要請があり、あるいは約束したことは逐次いま一生懸命に実現の方向に向かって進めておるわけでありまして、具体的にはアジア局長からお答えをいたさせます。
  359. 藤尾正行

    ○藤尾委員 アジア局長の御説明を伺っておる暇がございませんから、あなたの御説明は結構でございます。  ただ、ここで申し上げたいと思いますのは、ただいま、成果が非常にあったと思うということでございましたけれども、これからの裏づけがもし与えられない、あるいは非常に不満足な事態がその間に生じてくるということになりますと、そのことがかえって逆に非常な不成果になってくるという考え方もあるわけであります。このことをひとつしかとお心にとめられて、今後の外交をお進めになっていただきたい、かように思いますが、その所信のほどだけをいま一回お答えを願いたい。
  360. 園田直

    園田国務大臣 この前の総理のASEAN訪問がある程度の成果があったとすればあるほど、御指摘のとおりに、これが実行に移されない、あるいは実行が忘れたころにでき上がる、あるいはこの前だけでASEANとの外交的な連絡が切れる、こういうことになれば逆に効果が出てくるわけでありますから、その点は十分深刻に考えまして、それぞれ検討し、かつまたASEAN諸国に対しても、期を失せず特使を派遣するとかあるいは私がもう一遍参るとか、そういうことも具体的に検討しておるところでございます。
  361. 藤尾正行

    ○藤尾委員 これは私が申し上げるまでもないわけでございますけれども、そのASEAN各国には非常に多数の華僑というものがおります。これは全部中国人でございます。この華僑というものの存在とその動向といいまするものは、このASEANとの関係考えていく上で非常に重大であろう、かように私は考えておりますが、恐らく今後において再開をされようとしておられる日中の平和友好関係の促進方、そういったことにつきましても、外務大臣は事前にこれら各国との間にそれぞれこういうことでやっていきたいと思うとか、それに対する反応はどうかとかいうようなことを一体おやりになられるつもりでございますか、あるいはそういう意思はないということでございますか、その点をひとつ明らかにしていただきたい。
  362. 園田直

    園田国務大臣 華僑の方々の動向というのはきわめて大事であって、これは日中問題ばかりではなくて、日本自体のためにも、アジアの将来の繁栄のためにも、華僑の方々の動きというのはきわめて大事であると考えております。中国に対しては、むしろ華僑の方々の力が中国に大なり小なり影響を与えるという状態でもございますので、華僑の方々の動向には十分注意をし、こうい方々の御意見もなるべく関係者から承り、あるいは直接承って日中問題も進めてまいりたいと考えております。
  363. 藤尾正行

    ○藤尾委員 そこで、このところ北京では全国人民代表大会というものが開かれておりまして、その詳細は私どもにもまだわかりませんけれども、その中の伝えられるところによれば、冒頭の華国鋒さんの首相としての施政方針のようなものそのものの中で、こういった問題にも触れられまして、そうして一つの方向を目指しておられるようであります。詳しい内容はまだ発表されておりませんから、私どもにもわかりませんけれども、このことはいま私ども国民間で一般に日中問題を考える際に、ソ連との間の覇権問題であるとかなんとかということが非常に大きくクローズアップされまして、そうしてその側面でありますアジア自体の中におきます各国の反応でありますとか、あるいはそれぞれの国に分散をしております華僑との間の関係でありますとかいうことが非常に軽視せられて、そんなことはないのでございましょうけれども、とにかく国民の目には映ってこない。こういうことは、これから先のいろいろな問題を考える際に国民全体が非常に誤解をするといけない、私はさように思いますので、この際外務大臣として、どのような着眼をもって日中の条約交渉というものを考えておられるのか、これを全世界的にどのような位置づけをあなたはしておられるのかということを明らかにして、何がゆえにその中で条約が急がれなければならぬかということについてひとつあなたの所信国民の皆様方に対しましてお伝えをいただきたい。
  364. 園田直

    園田国務大臣 大会における華国鋒主席の政治報告は私も新聞で見る程度でありますから、正式なものを検討したわけではありませんけれども、第一、ソ連に対する中国の方針というのは依然として厳しく、しかも国内に対する政治報告でありますから、これはきわめて厳格に報告してある。ただし中国ソ連とどう厳しかろうと、わが国ソ連との関係はまた別個、日中は日中、日ソは日ソ、この方向は貫かなければならぬ。華僑問題についてはあの報告には出ていないようでありますが、中国自体が華僑の方々に対する配慮は非常に気を使って、いろいろやっておられるというふうに判断をいたしております。
  365. 藤尾正行

    ○藤尾委員 私は、ただいまの外務大臣のお答えはいささか舌足らずであって、非常に足りないところがある、さように思っておるわけであります。  日中問題というものを考える際に、先ほどの話ではありませんけれども、ソ連との間は非常に厳しく考えておられる、それは事実でございます。しかしながら、同時に全国人民代表大会におきます華国鋒さんの演説の中にも恐らく、これはいままでのいろいろな演説を見ておりますと、そういうものは出てくるわけでありますけれども、二つの超大国ということで、いまはソ連の方が先に来ておるわけでありますけれども、ソ連とアメリカというものに対しまして、中国という立場から見た世界政策として、第三世界というものを糾合してこれに対抗していくのだ、そうしてソ連あるいはアメリカの超大国問の帝国主義的動向というものに対してどのように動いていくかという大きな一つの方針があって、その方針の中に各論がずっと並べられておって、その中に日中関係というものが含まれておる、私はそのように理解をいたしておるわけでありまするけれども、その点はいかがお考えでございましょう。
  366. 園田直

    園田国務大臣 中国はわれわれと違って社会主義の国家であり、社会主義社会の建設を目指しておるわけでありますから、基本的な方針はおっしゃるとおりだろうと思います。現実の問題として日中問題、中米問題が出てきている、そういう判断は同じ意見でございます。
  367. 藤尾正行

    ○藤尾委員 その際にこの問題が、先ほど申し上げましたASEANを代表する東南アジア各国に対しましても非常な影響を持っておる。これは歴史をひもといてみますれば明らかでございますけれども、中国というのは、自分は真ん中におって、そして北から来るやつは北秋で、西から来るやつは西戎で、東から来るやつは東夷で、南にいるやつは南蛮だ、だから中国という自分立場は鮮明にされるのだという民族的な歴史的な認識を持っておるわけであります。したがいまして、この中国中国として何かするというときには絶えずそのような考え方が基礎になって動いておるのではないかという疑いを私は持ち続けておるわけであります。たとえば南蛮という南の方の東南アジア各国につきましては、中国に対して脅威を与えるような国はいまのところございませんから南蛮ということはございますまいけれども、逆にその東南アジア各国といいまするものは、アジアの歴史に示しておりますように、常にこれまた北からの脅威、つまり中国の非常に大きな力になっていく姿を恐れておるわけであります。そうしてそういったことがあればこそ、ベトナムの問題の解決に当たりましても、ベトナムが中国というものを非常に意識して、そうして中国影響を受けないように受けないように立ち回ってきたのは歴史の示しておるところであります。こういうことはただ単にベトナムだけの問題ではないのでございまして、これは同じようにラオスもしかり、あるいは場合によればタイもしかり、ビルマもまたしかりというような感じを私は受けておりますし、現にこの間、いまのところの実質的な中国の政策指導者であります副首相の鄧小平氏がビルマやネパールを回りました際に、ビルマにおきましては、訪問をせられましたけれども、共同声明すらつくることはできなかったという事実もあるわけであります。これは、解釈のしようはいろいろあると思いますけれども、こういったことを考えてまいりましたときに、私どもは、東南アジアというものを頭に置いてこれからこれらの国々との間の関係を非常にうまくやっていかなければならぬ、こういうときに中国との関係を進められるに当たってもこれらとの関係を一切無視されて、ただ日本中国との間の当面の問題だけを片づければいいのだという視角からこの問題に取り組まれるということは、私は、考え方として大きな欠陥を持っておるのではないかという気がするのでございますけれども、外務大臣は一体どのような御認識に立っておられるか御披露をいただきたい。
  368. 園田直

    園田国務大臣 ビルマを含むASEANの諸国を訪問した際に、国際情勢分析ということで中国に対する各国の判断なり考え方についても十分意見の交換をいたしております。藤尾委員がいま言われていたようなほどには考えておりませんが、ASEANの各国とも影響力のある中国の今後の動向あるいは影響力等については重大な関心を持っているところでございます。そこで、フィリピン、タイその他の国々を見られてもおわかりになるように、まずみずからがちゃんとした足場をつくり、そしてASEANが連携をして中国には善隣友好の道を進めようというのが大体ASEANの国々の考え方でございます。そういうこともよく考慮し、配慮しながら日中問題は進めていかなければならぬことは当然でございます。
  369. 藤尾正行

    ○藤尾委員 先ほど受田委員から最後に御質問がございまして、これは何か言いっ放しのようなことになりまして、結論は出なかったわけでありますけれども、中華民国、台湾の存在といいますものは厳としたアジアの現実に立った存在でございます。そうして中華民国、台湾との間に東南アジア各国もまた濃密な関係を持っておられますし、それぞれが抱えておられます華僑といいますものもそれぞれ関係を持っておられるわけであります。したがいまして、先ほど木で鼻をくくったようなことをお役人さんが言っておられましたけれども、そのようなものではない。これの取り扱いは大変なことであって、アジア全体を律する問題、そういったものと非常に重大な関係を持っておる。ただ形式的にこの前わが国が北京との間の共同声明を出した、そのことによって外交関係が切れたということだけでございまして、その際の日本一つの動向というものに対しても、それはそれなりに東南アジア各国は非常に重大な関心を払って日本という国を観察をしておったと私は考えますし、これはこれから先の問題の処理に当たってもこの問題をまるっきり度外視をして進められるということにつきましては政策としても妥当を欠く、私はそのような気がいたすわけであります。もう時間もありませんから、あえてこの問題について私は大臣を相手にしてとやかく言いません。言いませんけれども、しかしながらあなたが北京との間の条約再開に非常に意欲を持っておられて、その意欲というものが何か友好平和条約ですか平和友好条約ですか知りませんけれども、そういった条約をつくり上げるというところに非常に重心がかかっておって、その間の交渉というプロセスがもし軽視をされるということでありましたならば、将来にわたって非常に重大な歴史的な関係を残していくだろう、そう思います。  したがいまして、どのようなことで早く北京の政府との間に友好平和条約を結ばなければならないのか私にはよくわかっておりませんけれども、外務大臣はそれに非常に意欲的であり熱心であるということでございますから、そこのところをひとつ、このようなわけでいま日本の国の立場としてはこれを早く結ばなければ非常に困ったことが起こるのだ、あるいは困ったことが起きなくても、これを結ぶことが世界の平和に対して貢献をしていくのだ、それに対する責任は持てるとか持てないとかいうようなことに対してどのような自信をお持ちになっておられるかにさらに言及をされてお答えをいただきたい。
  370. 園田直

    園田国務大臣 藤尾委員のお言葉でありますけれども、先ほど言われましたとおり、共同声明をやると同時に台湾との外交関係は切れたわけでありますから、公開の席上で事務当局なり外務省にお聞きになれば、日中友好条約について台湾関係ございませんと答弁する以外にないわけであります。しかし、アジアの地域において韓国と台湾の経済成長は相当なものでありまして、経済的な影響等もこれあり、いろいろあるわけでありますが、日本は民間の関係関係が進んでおるわけでありますから、これを無視するというわけにはまいりません。無視するわけにはまいりませんが、日中友好条約が進むについては、これは関係はありませんとお答えする以外にないわけであります。  なお、日中友好条約を急ぐということでありますけれども、これは日中共同声明で仮の証書を取り交わしておるわけでありまして、日中関係は一定の方向が決められておるわけであります。その仮証書を本証書にしたいというのが今度の友好条約交渉でございます。  そこで、もちろん二国間の問題で、長きにわたる両民族の行動を規律することでありますから、これは交渉を早く始めたい、妥結をしたいという熱意は持っておりますが、これを交渉するについてはいろいろな点を考慮しながら、慎重に将来のことも考えながら進めていかなければならぬと思うわけであります。少なくとも日本中国は政治形態は全く違うわけで、先ほど藤尾委員の言われたような議論も出てくるわけでありますけれども、政治形態、遠近、大小にかかわらずどこの国とも交渉を深めていくというのが日本外交でありまして、日本中国友好条約を結ぶことがアジア並びに世界の平和につながるかどうか、これは日本人自体の考え方でありまして、日本国家がしっかりしなければどのような条約を結んでもこれは不利になるし、日本国家自体がしゃんとして、世論が固まっておるならば、政治形態が違おうとも、どのような関係にありましょうとも、日本の進路を進みつつ、政治形態の違う国と友好関係が結べるわけであって、日中友好条約を急ぐ、あるいはもっと延ばしてもいいという意見がありますけれども、延ばした場合のデメリットというものはいろいろ出てくるわけでありまして、その点から私は、日中友好条約締結再開を時期が来ればお願いしようと考えておるわけでございます。
  371. 藤尾正行

    ○藤尾委員 あなたのお考えは半分ぐらいはわかったわけでありますけれども、これはあなただけでありませんで、総理大臣も同じことを言われておられるわけでありますが、日中平和友好条約締結問題については、双方にとって満足のいく形でという表現をしておられるわけであります。こうした発言、表現といいますものは、私どもが考えれば、双方相手方の御満足はさることでございますけれども、ただいま外務大臣所信を述べられましたとおり、日本国自体がしっかりしなければいかぬわけで、それの方が先行しておるわけであります。つまり、私どもの立場といたしましては、日本として満足し得る形でなければこの問題は無理に急いで進めるわけにはいかない、むしろそのようなところに重点があるようにこういった表現を私は見ておるわけでありますけれども、そういった決意の御表明でございますか。
  372. 園田直

    園田国務大臣 実は、しばしば公開の席上でも発言し、また党でも御相談をしておりまして、交渉が始まればなるべく早目に行きたいと私が考えておりますのも、いま藤尾委員からおっしゃったようなことであって、日中友好条約締結しなければならぬからといって、中国の言い分どおりにこちらが屈服するということはないわけであります。日本国家の国民の方々が、なるほどそれならよかろう、それなら中国と手を結んでやっていってもよかろうとおっしゃるような、日本国民の方が納得されるような条約締結したいという決意は一歩も下がっておりません。  以上、申し上げておきます。
  373. 藤尾正行

    ○藤尾委員 もう六時三十分でございまして、私はまだ多少いてもいいという御表示がございましたけれども、余裕を持ってお出かけになった方がよろしいと思いますから、これ一言でお出かけになっていただいて結構だと思いますが、先ほど来、前の田中内閣当時の共同声明というものをいよいよ本当の証文にしたいのだということで、その締結をできるだけ急ぎたいということでございましたけれども、それだけでは私は、国民全体に、なぜ急がなければならないのか、なぜ今日あえて踏み切らなければいけないのかということに対しまして、きわめて説明が不足であろうと思います。  一つの例を申し上げます。  過日私は台湾、中華民国に行ってまいりました。ちょうど、時あたかも北京におきまして全国人民代表大会といいますものを開いておられる、その同じ時期に、中華民国では国民大会を持ちまして新しい総統を選ぶということを決められるわけであります。三月二十日には、現在の行政院長の蒋経国さんが新たな中華民国の総統として正式に指名を受けられるわけであります。そういった際に私は、こういった時期、そういったことがわかっておるその同じ時期に、私どもが北京との間の条約締結外務大臣を派遣をいたしまして、そうしてそれを積極的に進めていくということを世界全体に表示をせられる、そのことは私は大変な、いろいろな皮肉を含んでおる、さように思います。たとえば蒋経国さんとは関係は非常に浅かったかもしれませんけれども、私ども日本の国が今日あるということにつきまして、亡くなられましたお父様の蒋介石総統という方には非常に御厄介になっておる。私どもが中国との間の戦争の終結をした、そうしてあらゆる戦争終結に必要な条件といいますものを、中華民国、台湾の蒋介石政権との間に決めていただいたということは今日厳然として残っておる事実であって、そういった中華民国に対しまして、新しい総統ができるというそのときに、非常にいやがっております北京との関係を急速に進めていくということが、果たして日本全国におられます国民全体に対しまして、よくやってくれたということで理解してもらえ、喜んでもらえるであろうかどうかということも、これは考えてみなければならない問題の一つであろう、私はかように考えます。  この点について外務大臣は、言いにくい立場かもしれませんけれども、どのようなお考えを持っておられるか、ひとつお述べになっていただいて、そして外交案件におかかりをいただきたい、さように思います。
  374. 園田直

    園田国務大臣 藤尾委員のお考えなり御発言は、十分私もあなたのお気持ちはわかるところでありますけれども、決してそういうときを選んでやったわけではなくて、二国間の関係でありますから、だんだん流れが出てきていよいよこういう時期になったわけであります。  私は、この台湾中国の問題をここでお聞きになれば、これは中国の問題でありますから両方で話し合っていかれることである、こう言う以外にないわけでありますけれども、しかし民間同士は貿易その他で密接な関係があり、もろもろの関係もあるわけであります。私はむしろ中国日本関係が、ちゃんと本証書を取り交わしてきちんとした姿になってこそ、初めて民間のいろいろな関係もやりやすいこともあるのではなかろうか、この点は見解が食い違っておりますが、これ以上は私の方からは申し上げられません。
  375. 藤尾正行

    ○藤尾委員 外務大臣のお立場でございますから、いろいろ意のあるところはわかります。即刻お引き取りをいただいて結構でございます。  そこで、お留守の間にいろいろ話をいたしたいのでございますけれども、お役人の皆様方もそれぞれ人間でいらっしゃいますから、お食事もお召しになりませんと、私が飯も食わさずに引っ張ったなんということを言われますと困りますので、ここで委員長にお願いを申し上げますから、お食事の時間をお与えをいただいて、暫定的にひとつ休憩を願いたいと思います。
  376. 始関伊平

    始関委員長 午後七時十分から委員会再開することとし、この際、暫時休憩いたします。     午後六時三十七分休憩      ――――◇―――――     午後七時十一分開議
  377. 始関伊平

    始関委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  質疑を続行いたします。藤尾正行君。
  378. 藤尾正行

    ○藤尾委員 通産省の皆様方おいでになっておられるわけでありますが、平和友好条約と並びまして両国の問に非常に重大な関心が持たれておりますものに日中問の長期貿易取り決めというものがございまして、民間取り決めでございますけれども、この間、日本側の稲山代表と相手側の責任者との間で調印が行われたということが非常に大きく報ぜられておるわけであります。  まず外務当局にお伺いいたしますが、この条約内容について御説明があれば伺いたいと思います。
  379. 中江要介

    ○中江政府委員 私の方からという御質問でございますので、外務省として概略説明いたしたいと思います。  二月十六日に北京におきまして日本側の稲山委員長中国側の中日長期貿易協議委員会劉希文主任との問で調印されましたのがこの取り決めでございます。  取り決めの概要といたしまして、まず基本原則は、日中共同声明並びに貿易協定の精神に基づきまして、平等互恵、有無相通じ、及び輸出入均衡の基礎に立って貿易を進めるということをうたっておりまして、かつ双方の政府の支持を受けるということがうたわれております。取り決め期間は一九七八年から八五年までの八年間、延長のことも考えられておる、こういうことでございます。  輸出総金額といたしまして、取り決め期間中、先ほど申し上げました八年間に日中双方の輸出総金額は百億米ドル前後、これは支払いベースでございますが、そういうふうに見込まれております。輸出品目といたしまして、七八年から八二年までの問に日本から中国に対する輸出は技術プラントが約七十ないし八十億米ドル、建設用資材、機材が約二十ないし三十億米ドルとなっております。他方同じ期間に中国から日本に対する輸出は原油四千七百十万トン、原料炭五百十五ないし五百三十万トン、一般炭三百三十ないし三百九十万トン、五年目の一九八二年におきます数量は、原油で千五百万トン、原料炭二百万トン、一般炭百五十ないし百七十万トン、こういうふうになっております。  なお支払い方法は、日本側の輸出に対する支払いは原則として延べ払い方式、他方技術協力、これは取り決め実行のために必要な科学技術分野における技術協力も行うということになっております。その他事務局を設置する、あるいは定期協議を行う、そういうことが規定されておる。これが取り決めの概要と承知しておるところでございます。
  380. 藤尾正行

    ○藤尾委員 ただいまお述べになられましたような内容の取り決めでございますけれども、専門的な立場からお考えになられて、通産省ではこれをどのように御評価になっておられますか。それをちょっとお伺いいたしたい。
  381. 広海正光

    ○広海説明員 二月十三日の衆議院の予算委員会におきまして、総理が本取り決めに関しまして非常に結構なことだ、「政府といたしましても、この長期貿易協定が円滑に実施されるということにつきまして協力をいたしていきたい、」という旨の御答弁をなさっておりますが、私どもといたしましても、以上申し上げましたような方針に従ってこの取り決めの円滑な実施を図っていく必要があろう、かように考えております。
  382. 藤尾正行

    ○藤尾委員 非常に結構なことだということのようでございますけれども、結構なことにはあるいは違いないのかもしれません。がしかし、先ほどアジア局長から言われましたとおり、輸出百億ドル、輸入これまた百億ドル、合わせて二百億ドルを八年間で達成をしようというのがこの協定の内容でございます。これを八年間で割ってみますと、年平均いたしまして、そういう計算にはならぬのかもしれませんけれども、大体二十五億ドルということになります。そこで五十一年ないし五十二年度の日本と北京との問の貿易の実績、これは八億の中華人民共和国との実績でございましょうけれども、あわせて、千六百万しかいない中華民国、台湾との間の貿易実績、そういったものとお比べになられて、この年間二十五億ドル、八年間という数字はきわめて結構で御満足のいただけるものだ、本当にあなた方はさように思っておられますか。いかがですか。
  383. 広海正光

    ○広海説明員 昨年の中国との往復の貿易額は約三十五億ドルでございましたが、いま先生おっしゃいましたように、この長期取り決めで挙げております数字が往復で二百億ドル、割りますと一年間二十五億ドルということになるわけでございます。しかし、われわれといたしましても、この二百億ドルというのはあくまでも当面の数字でございまして、実はこれよりふやすという取り決めの文言も入っておりまして、こうした取り決めが締結されることによりまして、今後とも日中の貿易関係がますますふえる、そういう引き金になるものだというふうに了解している次第でございます。
  384. 藤尾正行

    ○藤尾委員 あなたのいまの御答弁はどのような見地からなされたのか。将来はもっとふえるし、あるいは隠されたものもある、だから昨年の貿易実績である三十五億ドルというようなものに比べて十億ドルも少ないものではあるけれども、将来これがあるいは伸びていくかもしれないからこれは歓迎すべきことだ、こういう論旨のようでございます。私はあなたがどのような認識を持っておられるか知りませんけれども、相手国の中華人民共和国という国はこれは共産国家であって、そうして中華人民共和国の一つの方針としてまず経済の発展を図っていくためにどういう方針で貿易というものを位置づけておるか、こういうことがいままでも、これは亡くなられた毛沢東主席の言明を初めとして数々の言明がなされております。  まず、中国の物の考え方は自給体制を向上させるということが主軸でありまして、それを達成するための補完措置として貿易がある、こういうことでございますから、八億の人口を抱えておって二十五億ドルというようなものを八年間続けるということ、これは相当の意味を持っておる、こういうことになるのではないか。あなた方が甘い期待をお持ちになられて、将来中国の経済発展の過程でどんどんこれから要る物がふえていくだろうから、八億の人間がいるのだろうから一枚ずつのあるいは一足ずつのくつ下なりシャツなりを買ってくれてもこれは八億足であり八億着だというような物の考え方でこれから先の日中貿易というものを考えておられると、これは非常に大きな失望が伴うであろう、その期待は裏切られるであろう、かように私は思っておるわけでありますが、あなた方はその衝に当たっておられるお役人さんとされて、一体どのようにこれを認識しておられるか、その御認識をそれではまず伺ってみましょう。いかがですか。
  385. 広海正光

    ○広海説明員 御承知のことと思いますけれども、この長期貿易取り決めの対象品目はごく限定されておりまして、日本から中国に出すのは技術及びプラント並びに建設用資機材ということでございます。それから中国から日本に入れてくるのは原油と石炭というふうに限定しておりまして、先ほど申し上げました三十五億ドルの中にはこれ以外にいろいろな輸出入されている品目が入っているわけでございます。したがいまして、平均いたしました先ほどの二十五億ドルという数字は、これは三十五億ドルの中に若干こういうものも入っておりますので、ダブリがあるかと思いますけれども、通常貿易の上にこうした関係の貿易が乗っかるというふうにわれわれとしては理解しているわけでございまして、この取り決めの本文の中にもこの取り決めは「日中両国間の貿易の一部として以下のとおり締結する。」こういうことでございます。したがいまして三十五億ドルが二十五億ドルということではなくて、三十五億ドルに何十億ドルかがあるいは加算されるという関係で、両国間の貿易が今後こういう取り決めが締結されたことによって非常にふえていくのであろう、こういうふうに理解している次第でございます。
  386. 藤尾正行

    ○藤尾委員 あなたは通産省の一課長でございますから、あなたにそれだけの責任を負わせるということは過重かもしれませんけれども、いまの三十五億ドルに二十五億ドルが乗っかっていくのだ、これから将来にそれは乗っかっていく、合わせて六十億ドルになる、それだけの自信があなたおありになりますか、自信を持ってあなたそんなことを言っておられるのですか。ここは国会ですよ。いかがです。
  387. 広海正光

    ○広海説明員 昨年の輸出入合計の数字が三十五億ドル。その中でもちろんダブリがございます。三十五億ドルの中には石油、石炭の輸入量も入っておりますし、あるいはプラント類等も入っておりましてダブリがございますので単純に加算はできませんけれども、しかし考え方としてはほかの貿易もある、その上にこの長期取り決めができることによってプラント類と建設用資機材、それから原油と石炭の貿易が増加するのだ、こういうふうに考えているわけでございます。  それから先ほど往復約二百億ドルという数字が一応出ているわけでございますが、この二百億ドルといいますのはこの協定上あくまでも五年間だけ原油、石炭の引き取り量が明示されておりまして、後の三年間についてはこれは協議して後で決めるということになっております。この二百億ドルというのは、後の三年間は一応横ばいという考えで二百億ドルという数字が出ているというふうにわれわれは了解しているわけでございますが、後の三年間は最初の五年目の数字よりもっとふやすのだというふうな取り決めにもなっておりますので、この二百億ドルというのもあくまでも当面のめどでございまして、これよりもっと増加するであろうというふうに期待できるのではないかと思います。
  388. 藤尾正行

    ○藤尾委員 あなたは、たとえば日本に入れてくる原油でありますとか石炭でありますとかいうものが、これは五年間の話で、将来はもっとふえるのだ、こういう立場をとっておられるわけでありますけれども、石炭は一体どこから出てきます。あなた御承知ですか。
  389. 広海正光

    ○広海説明員 詳しくは存じませんけれども、主として入れる石炭は当面開演炭あるいはなつめそう炭といったようなところだというふうに聞いております。
  390. 藤尾正行

    ○藤尾委員 そんな無責任なことを言われちゃ困るので、石炭というものはどこから出てきたものをどこの港へ出してきて、それからどこの船に積んでどこの港に着けて、そうしてそれを揚げてどこまで持ってくるということが加わらなければ、これは日本の国に揚がったときの石炭にはならぬのです。よろしゅうございますか。そうしていま現実に石炭を運ぶというのに中国というのは非常に広いですから、まず陸上輸送だけでも相当な長さの輸送をしなければならぬ、その費用だけ考えてもそんな気楽なものじゃない。これは油にしてもまた同じであります。油はばかばか入ってくるなんと思っておられたら大間違いでございまして、将来の中国石油輸出量、こういったものが一体どのようになるか、これはだれが知っているのですか。中国の国内だって経済は発展していく、石油の消費量はどんどんふえていきましょう、そういった先になって油をどんどん日本のために出してくれるという保証が一体あるでしょうか。そのようなことすらお考えがなくて、こういった問題についての評価をされるということは、あなた方はどんどんその間に偉くなったりいなくなったりしてしまうから、それはそれなりにここで言いっ放しにしてよろしいのかもしれませんが、その責任をしょっていかなければならぬ国民立場からすれば、あなたのような考え方でこれを評価しておったのでは、その基礎が揺らいでいく、まるで地震が進行している上に乗っかっていなければならぬというようなことになりはしないか、そういうことを私は考えておるわけであります。私は、余り知識がなくて、ただ単にこういったことを申し上げているわけじゃない。  ここに慶応の教授であられる加藤寛さんの所説がございます。この説におきましても、日中貿易に甘い期待は禁物である、こういうたてまえで、もともと共産圏の貿易関係というものにはいまでもココム、チンコムといった一つの枠がはめられておる。これは日本側からの輸出の問題であります。また、相手が消費財生産の停滞とか技術革新の立ちおくれというようなことが拡大をしていくということであれば、計画経済の本質からいって計画みずからが混乱していく、そのような対外貿易依存という関係をつくることはないではないかということが述べられております。  またこれに対しまして、毛沢東は――もし今日でも中国の経済指導者たちが毛沢東の指示を尊重しておるということでありましたならば、自力更生を主とし外国の援助を獲得することを補助とする、貿易は先進的技術を学び先進的設備を導入するためだ、そのほかに目的はない、こう規定しておる。  李強という中国の対外貿易部長、この男の言葉をかりれば、対外貿易活動の中で平等互恵の原則を堅持するには、まず政治面と経済面から全面的に考慮し、政治と経済を切り離してはならない、政治を優先させ、わが国の対外政策を断固として貫徹実行しなければならぬ、こういうことを言っておりまして、両国間の政治の上に暗い映像がもし仮にかけられるということになれば、経済はおのずから揺らぐのだということを言っておる。  あといろいろございますけれども、こういう物の考え方がかなり有力な日本の経済評論家、専門家の中にあるということをあなたは御存じでそのようなことを言っておられるのですか、あるいはあなただけのお考えを言っておられるのですか、いかがです。
  391. 広海正光

    ○広海説明員 私が承知いたしておりますことは、まずこの取り決めのベースになるのは原油、石炭を幾ら入れるか、それの見返りで幾ら日本からプラント類を出すかということでございますが、その際、原油、石炭の引き取り量を決めるに当たりまして、日中双方の関係者の間で、まず日本側としては幾ら受け入れが可能か、それから中国側としてはこの期間にわたって日本に対して幾ら供給が可能かということを十分に詰めた上でこういう協定がつくられたというふうに了解しておるわけでございまして、従来の原油、石炭あるいはプラント類等の貿易の数字と比較いたしまして、やはりこういう取り決めができることによって日中問の貿易は一層拡大するものだというふうに理解しているわけでございます。
  392. 藤尾正行

    ○藤尾委員 私はあなたとつまらぬ議論をしている暇はありませんから、それはそれなりに聞いておきますけれども、いまあなたは油のことを言われた。いま日本の国は中東からどれだけの油を入れておりますか。これから先五年目、八年目、どれくらいの油を入れられるのですか。これは石油の専門家から伺いましょう。
  393. 箕輪哲

    ○箕輪説明員 お答えいたします。  五十一年度の実績で申し上げますと、五十一年度の総輸入量は二億七千六百万キロリットル足らずでございます。そのうち中東地域から入っておるのは二億一千九百万キロリットルでございまして、大体八〇%弱という比率で現在中東から輸入しております。  それから、今後どのくらい入れられる見込みであるかということにつきましては、率直に申し上げまして確固たる定説と申しますか、産油国側がどのような意向を持っておるかということについては、まだその定説というものは残念ながら聞いたことはございませんので、はっきりしたことは申し上げられませんけれども、現在OPEC諸国あるいは世界石油の専門家の間で、今後十年間あるいは二十年間を見渡しまして増産可能な余裕のある油田を持っているのはサウジであるということが言われております。ただ、そのサウジアラビアの供給限界がどのくらいであるかということにつきましては、これまた率直に申しましていろいろな数字があるところでございまして、これはエネルギーの専門家たる藤尾先生よく御存じのことであると思います。したがいまして、今後本当にどれだけ入れられるのかということにつきましては、私はいま的確なお答えをする準備はございません。
  394. 藤尾正行

    ○藤尾委員 いま石油の担当の御専門家からそのようなお話がございましたが、これから先、もちろんこれは日本の国内経済との関連でございますから何とも言えませんけれども、いま特に八〇%余りを中東に依存をしておる、そこに中国のものも加わっていく。そのことはあるいはプラスかもしれぬということでございますけれども、大体年間に入ってまいっております外国産油の総量と比較対照してごらんになれば、中国原油の日本における立場、ステータスというものがおわかりだと思います。私は大して大きな評価を与えられるべきほどのものではないと思います。加えて、中国からの輸入原油に対しましては、現在いまだにこれを処理するプラントもできていない。ようやく一億円をかけまして試験的にこれをどのように処理することができるかという研究をいま始められたばかりであります。そうしてこれを処理する処理施設をつくるということになりましたならば、その処理施設だけでかなりの金がかかります。特に非常に重いこれらの原油を分離をしていくという過程で、これから先大変な金をかけてあえてそれをつくって、それを入れてやらなければ、相手側が期待するものをこちらから出してやるほどのものにならぬ。つまり、この貿易の取り決めといいまするものは、中国側がのどから手が出るほど欲しい、こう思っておられるプラント技術、こういったものをとにかくこちらから協力して差し上げよう、その代金は、その見返りはあなたのところでできるもので結構でございます。そうしてそのできたものの国際価格あるいはそのものの価値というものについては第二義的に考えてもよろしゅうございます。こういうのが日中の今度の貿易取り決めの一つのしんをなしておるのじゃないか、これは私自身が非常にひがんでおるのかもしれませんけれども、このように評価をいたしておるわけでございますが、あなたはさように思われませんか、いかがですか。
  395. 広海正光

    ○広海説明員 あるいはそういう見方をされる面があるかもしれません。しかし私どもとしては、こういう取り決めができることによりまして日中間の貿易関係がますます発展し、かつ両国関係が一層緊密になるという面もございますし、またエネルギー源の供給先の多様化という国策にも合致するということでやはり評価すべきであろうと考えております。
  396. 藤尾正行

    ○藤尾委員 あなたはあなたのお立場を変えようとされない、ですから私がここであなたと議論をしてあなたをねじ伏せてみたところで、別に私のメリットになるわけではありませんから大概のところでやめておきます。  そこで、今度は見返り、私どもが相手に与える方、その与える方の主体は一体何になっているのでしょうか。
  397. 広海正光

    ○広海説明員 御質問の趣旨がよくわからなかったのでございますけれども、われわれとしましては、原油、石炭を引き取りまして、そのかわりにプラント類、建設用資機材等を輸出するという関係でございます。
  398. 藤尾正行

    ○藤尾委員 そのプラント類というのは一体何なんですか。
  399. 広海正光

    ○広海説明員 具体的にどういうものがプラント類あるいは建設用資機材ということで入ってくるかにつきましては、個別の関係者の問で具体的に商談を進める過程で決まってくるというふうに聞いております。
  400. 藤尾正行

    ○藤尾委員 いろいろな説があるから、私の申し上げることはあるいは間違っておるのかもしれませんけれども、主として上海における製鉄プラントが欲しい、そしてそれをつくることが非常に日本側にも都合がよろしいということで、主としてその製鉄用プラントといいますものが上海や、あるいはほかに鞍山でありますとか本渓でありますとかということが言われておりますけれども、そういったことがとにかく構想されておるということをあなたは御存じなんですか。
  401. 岩崎八男

    ○岩崎説明員 この取り決めのプラント類の主たる部分であるかどうかそこはよくわかりませんが、御指摘のとおり上海に近代的な製鉄所をつくりたいという意向が、経緯的に申しますと昨年十一月、中国大使館を通じて新日鉄首脳に申し入れがあり、それから本年に入り稲山会長が訪中されたときに同様の要請があったというふうに聞いております。で、現在、新日鉄を中心とする専門家グループが訪中しておりまして、フィージビリティー調査といいますか、そういう面を始めているというふうに聞いております。もちろん中身については、まだ具体的には詰まってないのでございましょうが、一応向こう側の要望としては、年間粗鋼生産規模六百万トン程度のものをつくりたいという希望のようでございます。
  402. 藤尾正行

    ○藤尾委員 上海一つに六百万トン規模の製鉄所をつくりたい、そういう意思の表明があって、それを受けて稲山さんはおいでになられた。そしてその結果になって出てきたこの日中貿易取り決めの中で日本側が相手側に出すもの、それはプラント類である、建設資材であるということになっておる。どれくらい金がかかりますか、六百万トン程度の製鉄所をつくるのに。
  403. 岩崎八男

    ○岩崎説明員 その六百万トン程度の下部の部分がどういう圧延施設等が計画されておるか、そこまでまだつまびらかでございませんのでよくわかりませんけれども、多分数千億円オーダーにはなるであろうというふうに考えております。
  404. 藤尾正行

    ○藤尾委員 数千億円のオーダーということになりますと、大体それを二百四十で割ればいい。そうするとそこに大体ドルで出てくる。そういったものを二つ三つつくれば大体八年間の百億ドルというものが全部なくなってしまう計算になると思われませんか、いかがです。
  405. 岩崎八男

    ○岩崎説明員 中国がどういう意図を持っておりますか、それ以外の点について私ども承知しませんけれども、ただ期間的に申しまして、やはりそういう大規模な近代製鉄プラントをつくるということは相当な期間がかかるのではないかと思います。したがいまして、数年間に四つもそういう大規模な製鉄所をつくるということは、多分物理的になかなか困難ではないかというふうに考えますが、真意のほどについては私どもつまびらかにしておりません。
  406. 藤尾正行

    ○藤尾委員 中国ではいろんな機会に四つの近代化ということが言われておる。農業と近代工業と科学技術、そして国防というものであります。そのうちのほとんどが基礎を鉄というものに置かなければ伸びていかないということは、だれが考えてもこれはわかる。そこに六百万トンの新しい近代製鉄施設というもの一式がまず必要となって、そしてそれが何の目的でどのように使われていくのか、それは無論その後の処理施設を見てみなければわからぬ。それはあなたの言われるとおりだと私は思います。しかし、そこにこの貿易協定の一つの目標として相手側が鉄というものを考えておるということが言えると私は思う。あなたはいかがお考えです。
  407. 岩崎八男

    ○岩崎説明員 どうも、中国の経済政策全般がどういう方向、具体的に鉄を中心にして持っておりますか私全く存じませんので、いまの先生の御意見に私としての考え方を申し述べる余地はないのでございますけれども、ただ、確かに現在中国は四つの近代的な製鉄所で千万トンの製鋼能力を持っておると言われております。そのほかに従来の伝統的な設備によります千万トン程度の製鋼能力、合わせて二千万トン程度という製鋼能力では、あの広大な中国の、いまから経済建設しようとするときにまず鉄鋼が不足するという認識を持っても不思議ではなかろうと思っております。
  408. 藤尾正行

    ○藤尾委員 あなたが想像しておられるように、その鉄というものに非常に重心を置いておるだろう、私はそう思います。  そこでいよいよあなたにお伺いをしなければならぬのですが、いま日本の国は鉄を輸出いたしておる。いままでのところ鉄といいますものが日本の産業の一つ中心をなしておった。鉄の運命というものが日本の産業の運命を決めるかもしれないというように、あるときには思われておったかもしれない。その鉄がいま非常に悪い状態に入りつつある、また入っておる、もうのめり込んでしまっておる、私はそう思っておりますが、私のその認識に誤りがありますか、どうですか。
  409. 岩崎八男

    ○岩崎説明員 御承知のとおり鉄鋼業は、いま、特に石油ショック以来成長率の屈折によって、鉄鋼需要というのが従来の傾向では伸びなくなったということもございまして、かなりの需給の不均衡に悩んでおりまして、その結果、昨年あるいは一昨年相当な困難な状況にあるということだと思います。これはまた世界的にも共通な事情にあるというふうに認識しております。
  410. 藤尾正行

    ○藤尾委員 世界的な共通の傾向である、これは事実でございましょう。しかしながら、われわれがこれから先の二十一世紀に向かって考えてまいりますときに、私どもいま現に五十六持っております高炉、そのうちの相当部分をとめておる、火を消しちゃったわけですね。その生産能力は七〇%になっておる、三〇%ダウンしておる、こういう状況です。さて、これから先、この状況が、いま言われているように七%の経済成長でござるとかなんとかということに乗っかって再び夢よもう一度ということに一体なりましょうか。どのようにお考えです。
  411. 岩崎八男

    ○岩崎説明員 現状においては非常に先行きの見通しが困難な状況にあると思います。現在OECD等でも世界の鉄鋼需給の長期見通しという議論をしておりますけれども、やはり両論あるようでございまして、一九八五年ぐらいになると需給均衡はむしろ回復して供給不足になるというような説もかなり有力なようにも思えますけれども、ただ、いずれにしろここ数年はかなり世界的に不均衡が回復しないまま行くのであろうということについては、おおよその見解は一致しておるのだろうと思います。
  412. 藤尾正行

    ○藤尾委員 いまあなたのお述べになられましたバラのような夢、そういったものが実現してくれればありがたいですけれども、先ほどあなたは、特に石油ショック以来という言葉を述べられたわけでございます。     〔委員長退席、村田委員長代理着席〕 一体、これから先二十一世紀に向かって石油ショックというような傾向のものは再び起こらぬという保障はありますか。これは石油の専門家であられる石油計画課長にお伺いいたしたい。
  413. 箕輪哲

    ○箕輪説明員 大変むずかしい御質問でございまして、四十八年に起きましたような形でのオイルショックという形が起こるかどうかということは多分に政治的な動きというのも絡んでくるはずであると考えております。したがって、国際政治の上で四十八年当時と同じような事態が起こらないのか、こう言われましたら、それはわかりませんとしか申し上げられないと思います。ただ、長い期間で考えましたときに、オイルショックは御存じのとおり、非常に短期間に油の供給が危なくなったということでございますけれども、長い間にじくじくと供給限界が世界に来ないかということにつきましては、ある程度世界じゅうのコンセンサスが得られつつある状態であろうと思います。  その中身は二つございまして、一つは、現在はなるほど原油の供給はだぶだぶでありますけれども、確定埋蔵量のあり方とかあるいはまだ未確認である、今後開発されるであろう油田の存在のあり方等から考えまして、原油事情が窮屈になってくるだろうという見方については一致しております。  それからさらには、現在発見されつつあります油田の量と需要の伸びというのを比べますと、発見されつつある油田の量というのが相対的に減ってきているということも事実でございまして、これはまた長期的に言えば、いま申し上げましたような原油需給というのは逼迫するだろうという見方につながるかと思います。  それからもう一つは、長期的に需給は逼迫するにいたしましても、今度供給をされます原油の質と申しますのは重くなってくるだろうということについてもやはり意見の一致が見られつつあるということであろうと思います。これは、いま言われました短期的なオイルショックということから言えば、きわめて長期にわたっていろいろな国際的な影響を与えることではないかと考えております。
  414. 藤尾正行

    ○藤尾委員 いまお述べになられましたとおりだろうと私は思います。それは諸条件みんな動きますから何とも言いようがない。言いようがありませんけれども、これから先、長期的な視野に立ってみれば窮屈になっていくだろう。窮屈になっていくということは上がっていくということです。そのこと自体はまた鉄にはね返っていくということなんですね。そして、その鉄のポジションというものを考えていかなければならぬと思いますが、これから先を鉄鋼の専門家としてあなたどう思っておられますか。
  415. 岩崎八男

    ○岩崎説明員 確かに全体として非常に不安定な中でございますので、そう大きな発展というものを前提としての考え方はとるべきではないであろう、少なくとも中期的には非常に慎重な運営が必要であろうと考えます。
  416. 藤尾正行

    ○藤尾委員 いまお述べになられましたことでも大体おわかりをいただけると思うのでございますけれども、ここに一つの例を韓国にとってみます。  発展途上の国はすべて重要な基礎的資源というものを自分で持ちたい、資材を持ちたい、持ちたいから、今日この長期の貿易協定の中でも中国は上海に六百万トン単位の製鉄所をつくりたいということを言っておる。韓国はもうすでに浦項に大きなものをつくりました。そうして、その結果がどのようなことになってはね返ってきたか、これについてあなたはどのように考えておられますか。
  417. 岩崎八男

    ○岩崎説明員 確かにいま韓国には多分年間二百五十万トンぐらいの近代製鉄所があると思います。今年末には五百万トン弱に供給能力はふえるだろうと思います。そういう事態は台湾にもございますし、それからより遠くにはアフリカ、南米等にございます。御指摘のとおり、そういう発展途上国が基礎資材産業としての鉄鋼業を持ちたいという傾向というのは特に最近顕著でございます。これについてどうするか、これはなかなかむずかしい問題を含んでおると思います。ただ、日本国がやらなければ他がやるという面もございますし、世界全体として鉄鋼需給をどうするかというコンセンサスづくりは今後とも非常にむずかしいのではないかという気がいたします。私どもとしては、そういう案件ごとに、それの市場、マーケット、それからそこでの技術、生産性等も含めまして、その計画、がフィージブルであるかどうか、実現可能性があるかどうか、そこを十分検討してからそういう問題への対処を行う、少なくともそういう姿勢は必要であろうと考えております。
  418. 藤尾正行

    ○藤尾委員 ちょうどアメリカが日本の近代的鉄鋼施設に押されまして、いま日本の鉄がどんどんアメリカに流入をしておる。そうして日本の鉄鋼の品質がよくて価格が安い、競争にならぬ。そこで、アメリカのいまの鉄鋼業界には大きな失業の危機というものが出てきておりまして、もうすでに一部レイオフなんかはどんどん進行をしておる、こういう状態であります。このことは鉄鋼だけには限らぬ、私はそう思います。いままで私どもは、繊維におきましても、あるいは石油化学におきましても、同じようなことをどんどん経験してきておる。戦後三十年、たったこの三十年の間に産業の中における鉄の位置というものが非常に大きく変わってきた。これから先二十年たてば、これは二十一世紀になる。一体そのときの状況というものはどのように変わっていくかということを絶えず頭に置いておいて、そうしてそれに対処するにいかなる道があるか、方途いかんということを絶えずお考えの中に入れておいていただかなければ、産業政策といたしまして非常に欠けるものがある。きょうあすの問題ばかり追いかけても仕方がない。そのくらいの指向性というものを持っていただかなければいかぬ、そう思っておるわけですよ。  先ほどちょっと浦項の問題に触れたわけでございますけれども、何も浦項に製鉄所ができたからというわけではありませんが、浦項に製鉄所ができたということと並行いたしまして日本の製鉄業者の鉄輸出といいまするものにおける韓国の立場がどんどん上がってきている。そういったものの結果といたしまして、蔚山に大きな造船所ができた。そうして、その造船所でできる船といいますものはきわめて価格が安い。そのおかげで、日本の国内の造船はいま非常な苦悩の中に陥っておるということがあります。こういったものとの間に関連はないのでしょうか、どのように考えておられますか。     〔村田委員長代理退席、委員長着席〕
  419. 岩崎八男

    ○岩崎説明員 日本の造船業が現在苦境に陥っております主因が韓国の造船業であるかどうか、そこは私所管外でつまびらかでありませんけれども、やはり韓国とか台湾とか一つの経済発展の自律的な循環の軌道に乗った国では、どこから始まろうとそれは次第にほかの産業へも広がっていって、確かに非常に近代的な産業国家になっていくのだろうと思います。したがいまして、日本としても常にそういう国から追われる立場になるという側面がだんだん多くなっていくということはやむを得ない一つの傾向だろうと思います。したがって、そういう中で、先生がおっしゃいますとおりに、では長期的な視野に立ってどういう対応をすべきかということを私どもとしても全力を尽くして検討していかぬといかぬだろうというふうに考えております。
  420. 藤尾正行

    ○藤尾委員 私は、その間の関係が、いままでと違いましてさらにスピードアップされておるということを考えないと、非常に大きな計算違いが出てくるであろう、さように心配をいたしておるわけであります。そこに新たに、この貿易協定の中に上海の六百万トン容量の製鉄所の建設というものが出てきた。これがそう簡単にできるものではない、おっしゃるとおりであります。しかし、十年先になってもできないというものではありません。もっと前にできるということになっていくと、その影響がどのようなものになってはね返っていくだろうかということも、当然これは日本の産業政策を考えられる方々の考慮の中に入っていなければならぬ、さように私は考えます。大体そういった考慮を入れて、なおかつこういった方向がよろしい、このようにあなた方はお考えでございますか。
  421. 岩崎八男

    ○岩崎説明員 御指摘のとおりに、規模とそれの実現の時期いかんにもよろうかと存じますけれども、先ほど申し上げましたように、中国のいまの粗鋼生産能力は、従来の土法的な生産物も入れまして二千万トン程度と言われております。したがいまして、中国の現在の経済活動規模あるいは今後志向しております経済活動規模からいたしますと、その二千万トンが二千六百万トンにいずれの日か近々になっていくということが、直ちに中国の国内需要を超えて、たとえば日本の輸出競争相手になっていくというふうに考える必要は当面ないのではないか。むしろ、やはりそういう国内建設のための鉄鋼需要のできるだけ早急な充足というところにまず主眼があるのではないか。しかも、そういう充足の努力をしても、もちろんそれはまた経済活動全般の今後のスピードにもよりますけれども、依然として相当な鉄鋼輸入需要も存続するのではないかというふうな、最後のところは若干全体の変化いかんにもよりますので不確定でございますけれども、大筋としてはそういう内需用であるというふうに私どもとしては考えている次第でございます。
  422. 藤尾正行

    ○藤尾委員 中国考えておられるそういった鉄鋼プラントの整備ということが内需用であって輸出用ではない、私もそのように思うのですよ。しかしながら、その内需が拡大していく、上海に一つの大きなプラントをつくっていくということになれば、それがやはり毛沢東が言っておりますように、先進国の技術を学んでそいつを自分のものにしていくのだということにやがてこれはつながっていきましょう。現在でも鞍山に日本の残したものを発展さした製鉄所があります。こういったものは近代化されていくに違いない。そういうことになっていけば、その内需だけを考えていっても、これから先の中国の内需の拡大分だけ、少なくとも両国間の関係の中に占める鉄鋼の対中国輸出というものとの関連において非常に大きな影響を持ってくる、私はかように考えますが、この考え方は間違いでしょうか。
  423. 岩崎八男

    ○岩崎説明員 それは確かに中国の経済活動あるいは今後の発展のテンポ、そういうものいかんによるのであろうと思います。現在の需要を一定として、そこの中で国内生産分がふえますと当然にそれは輸入需要の減少になる、これは当然でございますけれども、そういう経済の活動全体がどういうスピードで今後拡大していくかにもかかってくるのだろうと思います。御承知のとおり、現在確かに中国市場は、一九七七年で申しますとアメリカに次ぐ日本の鉄鋼業の大きな輸出市場になってきております。したがいまして、そういう鉄鋼の素材の輸出市場としての中国というものも当然に考えていかなければいかぬことは、われわれとしても十分今後当然に配慮していかなければいかぬことだというふうに考えております。
  424. 藤尾正行

    ○藤尾委員 これは中国の評価とつながっていく問題でございますから、現在の中国の経済の発展段階、その背景をなしておる中国の技術力、そういったものが、私の言い分があるいはきわめて妥当を欠くかもしれませんけれども、まだまだきわめて低い。だから新しいものを学ぶ必要があるし、新しいプラントを入れなければならぬ理由もそこに出てくるわけです。そうして、これをもってこれからの近代化の引き金にしよう、恐らくかように考えておられるのだろうと私は思う。  そこで、もう八時十五分になりましたから同じようなことを議論しておってもしようがありませんから、同じようなことでございますけれども、次に移ります。  今度は、私は鉄鋼輸出といいまするものの姿勢、これについて若干申し上げなければならぬと思うのであります。  いまあなたが言われたとおり、中国というものが日本の鉄鋼市場といたしましてアメリカと並ぶ大きな市場になってきた。日本の鉄鋼業界としてはこれは大変大事なお客さんである。ミスター・アイアン稲山君がそのように考えられるのも無理はない。そう思います。しかし、片一方の足であるアメリカというものの輸出の関係において、いま日本の価格が余りにも安いということでその価格体系を変えてこいということでトリガー価格というものが一応決められ、さらにそれでも安いということで、いまそれの再検討がこれから行われるという報道もけさあたり散見をいたしておるわけであります。日本の鉄鋼業の輸出の姿勢、それはあなたがお考えになられて正しい姿勢である、かようにお考えでございますか。
  425. 岩崎八男

    ○岩崎説明員 日本の鉄鋼輸出がダンピングであったかどうか、これはなかなかむずかしいところでありまして、私どもとしてはダンピングでなかったと確信しておるわけでございますけれども、いずれにしろ昨年は、むしろ日本だけの責任というよりは、世界的なそういう需給不均衡の中でECの鉄鋼業は日本より、より苦しかったかと思いますが、EC等を含め鉄鋼貿易、世界貿易全体がある意味での異常な混乱に陥ったことは事実であったと思います。特に日本につきましては、そのことが円高と絡まりましたので、一層そういう面での国内産業への影響は強かったと思っております。そういう中で内外需の新しい状況、新しい環境に対処するための国内産業の努力というものが昨年じゅうなされてきたわけでございますが、全体の感覚としましては、ようやくことしに入りまして内需、外需ともにある程度の新しい秩序づくりのめどができてきたのではないかというふうに全体としては判断いたしております。米国のトリガープライスは、御指摘のとおり昨年の世界の鉄鋼貿易の若干の混乱の中で米国側から出された一つのシステムでございますけれども、私どもとしましても、そういう世界の鉄鋼貿易の不必要な混乱の防止という意味で、これに積極的に協力をいたしまして、むしろ現在は、日米間の非常な意思疎通のもとに、これがそういう鉄鋼貿易の秩序回復の一つの大きな手段として活用されつつあるというふうに考えております。  それからなお、今回参ります調査団というのは、米国のトリガープライスが三カ月ごとに改定されることになっております。したがいまして、今年七月-九月期のトリガープライスをどうしたらいいか、そのためには日本の産業のコスト要因に新たに変化があったかどうか、それを調べに来るわけでございまして、現在のトリガープライスが全体として低過ぎるからもっと上げろといったような考え方で来るものではないと考えております。
  426. 藤尾正行

    ○藤尾委員 あるいはそうなのかもしれません。私は別に深く勉強しておるわけではありませんから、お説のとおりだとしておきましょう。  そこで、そうなってまいりますと、それはダンピングであるか否かということはきわめてむずかしい問題でございますから、私もここでそれを決めつけるわけにはまいりませんけれども、少なくとも日本の鉄鋼、その中で一番主力をなす鋼材の建て値といいまするものと輸出価格との間にかなり大きな開きがある。この事実をあなたはお認めになりますか、いかがです。
  427. 岩崎八男

    ○岩崎説明員 そのとおりだと思います。
  428. 藤尾正行

    ○藤尾委員 そのとおりであるということでございますから、まさにそのとおりでございまして、これではこの建て値に従って、その建て値を目当てにしております日本の国内産業といいまするものが対外競争力を失っていく、あたりまえのことであります。これはその違いが余りにもひどい。そうですね。  たとえばここにあなたからもらった資料があります。この資料があるいは間違っておると言えばそれまでの話でありますけれども、間違っておれば、これはあなたの方が間違いでございますから、そのところをよく御承知おき願ってお考えを願わなければなりませんけれども、厚板の価格一つをとってみましても、トン当たり四十九年五万二千五百円、五十年五万九千三百円、五十一年六万二千三百円、五十一年七月七万一千五百円、五十二年六月七万六千五百円、こういうふうに上がってきておる。これだけの価格をしておる。その同じときに輸出価格というものを見てみますと、厚板中国向け、五十一年百九十二ドル、五十二年百九十六ドルあるいは百八十三ドル、百八十二ドル、二百ドル、百九十五ドル、百九十ドル、百八十九ドル、百八十九ドル、こういうふうに出ている。これとその当時のドル価格を掛け合わせてみて、そしてこの建て値と比べてごらんなさい。まともにやれば、日本の造船業者が立っていくわけがない。つまり鉄鋼業者が自分の高炉をずっと燃し続けていかなければならぬ、生産を続けていかなければならぬ、そのために輸出をどんどんとしていかなければならぬ、多少の値段の切り下げはやむを得ぬということで狂奔しておる姿が、この鉄鋼の輸出単価の推移、これ一つ見てみたってすぐわかる。そうだと思われませんか。
  429. 岩崎八男

    ○岩崎説明員 いまのお示しになりました建て値及び輸出価格の数字は、まさにそのとおりだと思います。ただ、先生御承知のとおり、建て値というのがそのまま個別取引の価格水準になっておるということはございませんで、特に造船につきましては、輸出用船材に対する特別の割引制度とかそういうこともあるやに聞いております。具体的に造船業にどの値段でどういうふうに売られているか、私どももつまびらかにしておりませんけれども、少なくとも特にこの一、二年間は建て値からの現実の値段の乖離というのが非常に激しゅうございまして、たとえばそういう大口需要家ではございませんが、市中取引向けの値段、これはほぼ毎日情報がございますけれども、それで見ましても、たとえば五十二年六月、昨年の六月で建て値は七万六千五百円のときにそういう市中価格は七万円でございました。それ以後国内価格は一層一回低下したはずでございます。今年になりまして、ようやくこの一月から再び上昇機運になりまして、現在は七万一千円から二千円ぐらいまでに回復しているのだろうと思います。いずれにしましても、しかし造船業というそういう大手継続需要家にはまたこういう市中価格とは別途の価格が個別に適用されておるのだろうというふうに推測いたしております。もちろんしかしその程度の建て値との乖離はございましても、いま先生がお示しになりましたような韓国向けなり中国向けなりの厚板輸出のFOB価格が昨年において、手取りで申しますと、そういうものをかなり下回っておったということもまた事実かと思います。これはそういうドル表示の低落もさることながら、その間に二割円が切り上がりましたので、その円表示で申しますと、ますますその差が大きくなる、こういった事情もございます。しかしいずれにしろ、そういう全体の需給の不均衡の中で輸出価格というのが相当昨年韓国向け、中国向け等に見られたことは事実だと思います。
  430. 藤尾正行

    ○藤尾委員 あなたが表現がいろいろございますから、いやなことを申し上げなければなりませんけれども、そのことは何も厚板だけに限った話じゃありません。現にあなたは七万二千円とか七万円とかというような数字を挙げられましたけれども、そのときに韓国から日本に入ってきておる厚板というのは、輸送費を入れて五万五千円ですよ。ですから、それあるいはそれ以下でなければ、日本の鋼材といいまするものは韓国に入らないのです。そうすると、国内に向けての価格と輸出価格との間に非常な大きな落差がある。そして国内の業者がそれの落差というもののある大きな部分をしょわされておる。何もこれは厚板だけの話じゃありません。大阪のネジ屋、いま全滅です。なぜか、これは日本の業界から出る棒鋼というものの値段と、韓国や中国やあなたが言われたとおり台湾の棒鋼の価格との間にこんな違いがある。あんなものは機械にこうかけておけば簡単にネジが飛び出してくる。技術も何も要りやしません。そこで、とてもじゃないけれども競争にならないということで、いま総倒れに倒れようとしておるわけです。そのもとは鉄鋼業者の姿勢にある。私は極論を申し上げておるわけじゃありません。事実ですから。そういう認識を私は持っておるわけです。そうして日本の鉄鋼業者もそれはあえてしたくない。どうしてもやらなければならぬ、それだけの苦しさがあるからそういうことをやるのです。その苦しさのはけ口が中国向けの輸出の急増という形になってあらわれてきている。しゃにむに鉄が生き延びなければならぬというからには、どこかへとにかくこれを売っていかなければならぬ。相手が何であろうと、何に使おうと、とにかく売るということが現実の鉄鋼業者の頭の中心に座っておる物の考え方である、私はこのように考えておりますが、そこまで私が極論するのは間違いかもしれませんけれども、あなたは一体どのように考えておられますか。
  431. 岩崎八男

    ○岩崎説明員 確かに、昨年は四半期ごとの需要見通しをつくりましたのですけれども、それが毎四半期ごとに終わってみますと、それよりさらに下回っておりまして、結果的に五期連続減産をしたわけでございます。そういう中でそういう新しい需要に対応し切れなかった生産分、これをどういうふうにさばくかというのはやはり非常に大きな問題であったろうと思います。ただ、最近ようやく、これも私どもの一つの観測でございますので当たるかどうかわかりませんけれども、一億トンという生産体制で一つの底固めができたのではないか、新しい需要に対応する生産体制になったのではないか、そういうのを前提にして、そういう一昨年の建て値も守られてなかったような市況がようやく均衡回復過程に内外ともに入ってきたのではないかというふうに考えております。したがいまして、今後、ただ生産を維持するための安値での販売というようなものは漸次影をひそめていくのではないかというふうに期待しております。
  432. 藤尾正行

    ○藤尾委員 あなたが言っておられるのは、日本の経済政策が非常に大きく変わりまして、とにかく公債を三八%出しても公共事業を三四%ふやさなければならぬのだといういまの物の考え方がはね返って、鉄鋼というものが息をついておる、つき出したということをあなたは言っておられるだけなんですよ。公共事業が一応循環し終わって、終わったときの鉄鋼の姿というのはしからばどうなると思われます。どのような想定です。それをお聞かせ願いたい。
  433. 岩崎八男

    ○岩崎説明員 確かにそれもあろうかと存じます。特に今後の期待ということで、そういう公共事業の拡大というのが非常に大きな明るい材料であることは間違いないと思います。  ただ、私が申し上げたのは、むしろ生産体制が――公共事業そのものの鉄鋼上へのはね返りというのは、量的にはそう大きなものではまだないと思いますけれども、もちろん、今後はそれは期待しているわけでございますが、ただ、生産そのものが、ピーク時の生産は一億一千八百万トンありましたのを一億トンあるいはこの四半期という瞬間風速で考えますと、九千四百万トンぐらいまでに縮小いたしております。そういう縮小、まあそれが二十三本の高炉休止ということになっておるわけでございますが、そういう縮小は縮小なりに一つの秩序ができたということで、もちろんそれなりの価格水準でなければなりませんけれども、いまはそれを急速に拡大しなければ鉄鋼業としてどうしても成り立っていかないというよりは、そういう量的な環境の中で輸出なり内需なりあるいは生産の合理化なりによって一つの均衡を図ろうという努力をしているのではないか、そっちの方に重点を置いているのではないかというふうに考える次第でございます。
  434. 藤尾正行

    ○藤尾委員 いずれにいたしましても、これから先、将来というものを展望されて、そうしてそこにある時間をかけたならば、その時間のうちに、ある一定数量の限界の中でわが国の鉄鋼というものをその枠の中へ流し込んでいかなければ、鉄鋼業界は自滅するのです。そういう状態になる。そういうときの輸出というものの意義がその間の時間をかせぐ大きな要素にもなり、また公共事業といいますものが非常に大きな救いあるいは光明になっていくであろう、さように私は考えます。しかしながら、それにしても、そういついつまでも続くものではないということはお認めをいただかないと、鉄鋼業界の方々は非常に日本を代表されるような財界の指導者でございますから、それぐらいのことは考えておられるに違いない、そう思います。しかし、その考え方が、いまの韓国というもので起こっておるような現象が次々に世界的に出てくる、そういったことも考慮に入れておかれないと、日本の基礎産業として将来取り返しのつかない大事を来すかもしれない、そういうことを私は恐れておるわけです。鉄鋼の時代といいますものは、もう拡大基調にこれが乗っていくということは再びない、これだけははっきり言えると私は思う。あなた、どのように思われます。
  435. 岩崎八男

    ○岩崎説明員 長期的に、量的にどうなりますか、確かに非常にむずかしいところだと思いますけれども、確かに、御指摘のとおり、中期的に考えました場合には、鉄鋼業が、特に日本の鉄鋼業がいま当面拡大すべき余地はないのではないか、能力的にもすでに一億四千万トン保有しておりますので、そのように考えます。
  436. 藤尾正行

    ○藤尾委員 私は、もうすでに八時四十分になっておりますし、この問題ばかり論議しているわけにはいきませんからいいかげんにやめますけれども、ともかく、いまの日本の鉄鋼業界の置かれておるスタンドポイントというものと、この日中の長期貿易取り決めというものとの間に関連ありというように私は考えてしかるべきだと思いますが、これは外務省、あなたどう思います。
  437. 中江要介

    ○中江政府委員 私冒頭にその概要を御説明いたしました長期取り決めというのは、申すまでもなく民間の問でお話が進められてきたものでございまして、民間の間の話がどういう思慮、思惑に基づいて行われているかということはそんたくするほかはございませんが、それを政府なり国の立場からどう評価するかという点は先ほど来主管官庁たる通産省の方で御説明がございまして、先生の御質問あるいは御疑問についていろいろ御説明がございましたが、外務省立場からいたしますと、日中間に長期的な安定した経済発展、貿易発展が確保されるということ自身は望ましいことでありますけれども、そのことが長期的な展望を欠いたために将来に災いになるということは、外務省としても気をつけなければならない点だというふうに思いますので、これはやがて長期取り決めが一つ一つ具体的な契約なり取引として上がってまいりますときに、十分留意してまいる必要があるというふうに受けとめております。
  438. 藤尾正行

    ○藤尾委員 私は非常に疑い深い性格であるからそのようなことを申し上げるのかもしれませんけれども、中国が非常に鉄が欲しい、鉄のプラントが要る。それと国防の近代化をやらなければならぬという要請との間に関連があるとお思いですか、あるいはあると思われませんか。
  439. 中江要介

    ○中江政府委員 これは中国側のお考えになることでありますので、断定的には申せないわけですけれども、四つの近代化というものが鉄を必要とするということは、通常の常識で言えば理解のできることだ、こういうふうに思います。
  440. 藤尾正行

    ○藤尾委員 せっかくおいでをいただいておりますから、今度は防衛局長にお伺いをいたしますけれども、防衛装備の近代化をやらなければならぬ、国防の近代化をやらなければならぬというときに、船をつくるにいたしましても、あるいは戦車をつくるにいたしましても、あるいは砲をつくるにいたしましても、それが鉄と非常に大きな結びつきを持っておるというように思われませんか、思われますか。
  441. 伊藤圭一

    伊藤(圭)政府委員 いま先生がおっしゃいましたように、船をつくるにいたしましても戦車、砲をつくるにいたしましても、鉄は重要な要素であると考えております。
  442. 藤尾正行

    ○藤尾委員 最近実はいままでチンコムで、あるいはココムでも禁ぜられておったのかもしれませんけれども、禁ぜられておりました中国への輸出の中に大型電算機というものが入っております。これは日立から出るもののようでございます。この大型電算機というものは、これまた国防の近代化というものと結びつく可能性はきわめて大きい、かように私は考えておりますが、防衛局長、あなたはどのようにお考えになりますか。
  443. 伊藤圭一

    伊藤(圭)政府委員 私はその大型電算機が直接どういう形で結びつくかというところまではつまびらかに知りませんけれども、御承知のように、軍事技術の近代化の中で電子計算機というものがきわめて大きな役割りを果たしてまいりましたというのは事実でございます。
  444. 藤尾正行

    ○藤尾委員 私は、これ以上この問題で時間をとってとやかく言ってみたってしようがありませんから、これで大概のところやめにしておきますけれども、中国が非常に鉄が欲しい。そしてそれが国防の近代化というもの、四つの近代化、むろん四つとも大事でしょうけれども、その四つの近代化の中の一つの骨になっておりますものは、いまの置かれておる中国立場、その防衛的立場、そういうものから考えて、私は防衛装備というものの近代化と結びついておる、その優先度はきわめて高い、かように考えておるわけであります。私の考えが間違っておれば、これは私のひがみかもしれません。そういうことになってくると、この日中長期貿易取り決めというものは、あるいははいさようでございますかでは済まない、そういうことになってくるかもしれない。アジアにおける防衛的あるいは国防的ステータスというものを変えていくかもしれない。そしていま問題の焦点になっております中ソの一つ関係、こういったものが永遠にこれから続いていくということであればまた別でございますけれども、この中ソ関係の将来、一、二年のことでなくてもっと先の将来というものを考えてみて、それがどのように変わるかもしれないということになってまいりましたときに、近代化されていく国防的装備、そういったものがどのような力になってアジアに対する働きをしていくかということも、私は考え方として考慮の中に入れておかなければならぬ問題の一つである、さように考えておりますが、アジア局長さん、あなたどのようにお考えでございます。
  445. 中江要介

    ○中江政府委員 中国に限りませず、わが国は発展を遂げました経済、技術の力をもって開発途上国に協力してまいるということは、特にアジア地域では多くのケースがあるわけでございまして、先ほど例に挙げられました韓国との関係もその一つであったわけでございます。いずれにいたしましても開発途上国が近代化されまして、そして日本との間に平和と繁栄を分かち合うような友国となっていくこと自身は非常に好ましいことだと思いますが、それがそうでないようになるということは、これは事志と異なるわけでございます。したがいまして、日本としてこれからアジアの中でいろいろの主義主張の違った国あるいはともにする国、多くの国とつき合っていきますに当たりましては、いま先生の御指摘になりましたような長期的な見通しといいますか、目的意識というものを見失わないでやっていきたい。中国の四つの近代化の中に、これが周辺諸国にとって脅威になる、あるいは力でもって拡大していく、そういうような危険はないという判断のもとで目下のところは対処しておるわけでございます。それは先ほど申し上げましたように、中国に限らずいずれの国でありましても、日本としては友好協力関係を保っていくという基本政策に沿う限りにおいては日本としての応分の寄与は続けますけれども、それがそうでないということにならないように絶えず細心の注意を払っていきたい、こういうふうに思います。
  446. 藤尾正行

    ○藤尾委員 園田外務大臣から伝言がございまして、デンマークの外務大臣との問で日本とECとの経済問題の会談が長引いているので、どうか御勘弁願いたい、そちらの方に行く時間がない、こういうふうに書いてございますから、これから本論に入ります。通産省の方々はお引き取り願って結構でございます。  覇権という問題があるわけであります。これは、いろいろこの問題について十二分の御検討をされておられると思いますけれども、この覇権というものについて、私どもがかつて北京で結びました共同声明、これでは、第三国お互いに意識するものではない、このように第一段で書いてございまして、その後、この地域において覇権をねらうと申しますか、そういった国家あるいは国家集団というものがあれば、これに対して反対をしていく、反覇権的行動というものをとっていく必要があるのだということが書いてございます。大体においてそのような認識で間違いございませんか。
  447. 中江要介

    ○中江政府委員 いま御説明になりました前段の第三国に対するものではないという点は、直接覇権あるいは覇権に反対ということを引用した形ではなくて、日中間国交正常化第三国に対するものではないというふうな書き方になっておるということを除きましては、いま先生がおっしゃいましたような筋書きになっております。
  448. 藤尾正行

    ○藤尾委員 この考え方といいまするものは、一体、それから五年半たっておるわけでありますけれども、その間大きく変わってきた兆しはございますか、ございませんか。
  449. 中江要介

    ○中江政府委員 共同声明の第七項に掲げられております考えそのものには変わりはないばかりではなくて、その後十カ国近くとの間の共同声明でも何度も繰り返して使われている一つ考え方である、こういうふうに認識しております。
  450. 藤尾正行

    ○藤尾委員 その考え方は、あなたがおっしゃられたとおり、全部共同声明に書かれておるということでございまして、共同声明と申しますのは、これは私が申し上げるまでもなく、そのときの政府政府が、そのような認識を持っておるということで、共通の認識を表明しただけでございまして、国家といたしましての責任あるいは今後の行為というものを規定しておるものではないはずであります。つまり、今日この段階におきましても、中国の他国と結んでおられます。友好平和条約ですか、平和友好条約ですか知りませんけれども、この種のものにそのような表現はないと私は心得ておりますが、その点はいかがでございましょう。
  451. 中江要介

    ○中江政府委員 条約と名のつく国際文書に取り入れられた例はないという点では、私どももそう思っております。
  452. 藤尾正行

    ○藤尾委員 そうすると、非常に熱心に先ほど外務大臣は、これが締結交渉をお始めになられ、そしてできれば――もっとも私はその場におったわけではありませんから、その内容がどうであったか知りませんけれども、あの人の考え方としては、始めたら、できるだけ締結に持っていきたいのだ、こういうことでございますが、もしその中に、この種の共同声明のような文言が文章の中に入っていくということであれば、これは世界で初めてのことですな。
  453. 中江要介

    ○中江政府委員 言葉として入る例としては、初めてのものになろうかと思います。
  454. 藤尾正行

    ○藤尾委員 それが初めてであればこそ、共同声明で第八項におきましてこれを平和友好条約化していくということに努めましょうと言って両国共同声明で述べ合われた。正確に言えば、ここに文書がございますから、これを読めばわかるわけでございますけれども、そういう関係にある。それを初めて今度これを条約化しようと日本国がやろうとしておる。非常に危険を伴っておる、その内容を非常に吟味しなければならぬ、そういうことであればこそ、以来五年半という日月がたっておる、私はそのように考えておりますが、一体、この間の五年半という年月といいますものは何を意味しているのでしょう。
  455. 中江要介

    ○中江政府委員 五年半は、日中共同声明に基づいて日中関係が発展してきた期間でございまして、主として、まず共同声明で約束されておりました四つの実務協定を次々と締結するということに相当な部分が割かれましたし、他方、平和友好条約につきましては、七四年の暮れあたりから、これの締結のための交渉を開始するという共同声明の条項に従いまして交渉が開始されたと、こういう期間であったと思います。
  456. 藤尾正行

    ○藤尾委員 あなたのいまのお言葉は、私はきわめていろんな意味を含んでおると思われますが、一体あなたのいまのお言葉の中で、他のいろいろな協定、そういったものができるのに時間がかかったのだということも、あなたのおっしゃられた中の重要な部分だと思いますが、その諸協定が結ばれなければ、しからば一体第八項に規定されておる平和友好条約というものの交渉はやってはいけない、このような考え方で進められたわけでございますか。
  457. 中江要介

    ○中江政府委員 そういう考え方ではございませんでした。つまり実務協定は、早速正常化いたしました日中間で解決を要する実務上の関係のものでございますので、これはできるものから締結していく。他方、日中平和友好条約の方は、これは将来にわたる平和友好関係を規律するものでございますので、そういう観点から慎重に交渉していこう、こういうことであったわけで、その時間的な後先については、日中共同声明から来る拘束というものは別段なかったわけでございます。
  458. 藤尾正行

    ○藤尾委員 いまあなたが言われたとおり、両方の間には関連はないのです。実務協定は実務協定、時間がかかろうが時間がかかるまいが、できるものからやっていく、そうして平和友好条約平和友好条約、できるだけ早くこれを締結したいという願望が込められて、それ相当な努力がされた。しかし、その間、五年半の努力の中で、先ほど大臣にも申し上げましたけれども、双方が満足すべき条件というものが整ってこなかった、そこで五年半たってしまったのだ、こういうことじゃないのですか。
  459. 中江要介

    ○中江政府委員 この五年半がどういうふうに日中平和友好条約交渉との関連で経過したかという点は、これはいろいろの要素があると思いますが、いずれにいたしましても、当初から日中双方とも満足し得るものでなければ締結できないというのは自明の理であったわけでございまして、最近交渉の機が熟しつつあるというふうに政府首脳の方で判断されましたことの中には、日中双方で満足し得るものを締結するための具体的な交渉をする機が熟してきているという意味では、いままでとは状況が変化してきている、私どもはこういうふうに受けとめて、取り組んでおるわけでございます。
  460. 藤尾正行

    ○藤尾委員 持って回ったようなことを言われますから、あえてわかっておるようなことでもお聞きしなければなりませんけれども、そうすると、最近その機が熟してきた、問題はだんだんほどけて、そして両国間で満足すべき状態がいまやできつつある、熟柿が落ちてくる、そういう状態にいまなっておりますか。
  461. 中江要介

    ○中江政府委員 これは、総理が予算委員会その他でもおっしゃっておりますように、満足し得るものができるという機が熟してきて、熟した柿が落ちるような状況まで来ているかというと、そうではない、つまり交渉に入るそういう手順、段取り詰めるような時期になってきている、こういう意味だというふうにおっしゃっておりますが、そのとおりであろうと思いますし、したがいまして、内容についてどうこうということは、まだまだ交渉の中身の問題で、いまどういう状況かということは申し上げかねるということを総理外務大臣もおっしゃっておるとおりでございます。
  462. 藤尾正行

    ○藤尾委員 その申し上げかねる中身の中で、これはいろいろありましょう。先ほど来問題になっておりました、中ソ同盟条約ですか、同盟防衛条約ですか、それの中の敵国条項というものの処理というような問題もありましょう。その問題については、先ほどあなたがお答えになられたお答えと、大臣が答えられたお答えとの間には相当な距離があったというように私は拝聴いたしました。事実上、大臣は、この問題はあなたが言っておられるような形式的なもの、つまり日本は国連に加盟した、その時期から平和国家になっておるのだから、その問題はなくなっておるのだというようなことではない。もしあなたが言われるようなことを国民全部がそうだと思って言ってごらんなさい。国民の大部分は怒りますよ。そんな甘っちょろいものじゃない。いやしくも、国家と国家が一つ条約の中において、これから何年先までか知りませんけれども、平和友好関係を続けようと言っておるときに、おまえの国の帝国主義は敵であるというものが前からあって、依然としてそれが生きているというような状態の中で、これが双方矛盾しないで国民の耳にすっと入っていきますか。そういうことではないから、先ほど大臣は、もし自分が行くというようなことになったら、自分が責任を持ってこの条項というものをどのように解決するのだという話をしたい、こういうことを言っておられたじゃないですか。この問題一つ取り上げてみましても、私は相当な問題だと思いますよ。しかし、その時期が来年の二月ですから、恐らくいまの状態から考えてみて、それほど大したことになるまい。一番両国間に存在をしておった、五年半にわたって未解決であった、その問題の一つとしては非常に解きやすい問題になってきておるように思う。だから、私が行って話をして、その結果をはっきりさせたいのだ、これはきっと外務大臣の意向でしょう。そうじゃないですか。
  463. 中江要介

    ○中江政府委員 いま、中ソ同盟条約について先ほど御説明しましたことと、大臣がその後に御答弁になりましたこととの間に隔たりがあるというふうにおっしゃいましたけれども、私が申し上げましたのは、もうすでに国会で何度も総理外務大臣もおっしゃっておりますが、中ソ同盟条約というのは、形式的にはいまおっしゃいますように存続はしておりますけれども、実質的な意義は失われているということと、それから、この条約の存在が日中平和友好条約締結交渉を進めるに当たって重大な障害にはなっていないという御説明をしておられる部分を私が申し上げましたわけで、外務大臣がおっしゃいましたのは、にもかかわらず、いま藤尾先生が御指摘のように、日本国民の目から見ると、そう簡単にもういいのだと言うわけにまいらない面があるが、その点については、中国との交渉過程を通じて国民に納得のいくような方法を講ずることについて何らかの措置をとるということをおっしゃいましたわけで、私はその後段のところを言わなかったということでございまして、そのことが必要であるとかないとかということではない面を申し上げたので、その間に隔たりがあるということではないという点は御認識いただきたいと思うわけです。  いま外務大臣が、この締結交渉再開するに当たって、みずから中国に赴いてどうこうしたいということをいろいろ御説明になっております部分は、これは外務大臣の御説明どおりにお受けとめいただくほかはないかと、こういうふうに思います。
  464. 藤尾正行

    ○藤尾委員 あなたの議論をこれからずっと詰めていくわけでございますけれども、後ろに伊藤防衛局長がお気の毒にまだ待っておられますから、あなたの方から先に片づけます。  けさ新聞を拝見をいたしますと、防衛庁見解とされまして、これから先、日本と中華人民共和国との間に平和友好の状態ができたと仮定して、そのときに起こってくるであろう諸条件というものを入れて、日本の防衛的見地からはさしたる問題はないというような、私は発表を聞いたわけではありませんからわかりませんけれども、そこにソ連はどうだとか台湾がどうだとかというようなことが書いてありましたが、大体新聞紙上で言われておるようなことでございますか。
  465. 伊藤圭一

    伊藤(圭)政府委員 けさほどの新聞に出ておりましたのは、私どもの方でこれは発表したわけではございません。前にも一度御説明申し上げましたが、御承知のように防衛庁におきましては、統合幕僚会議の事務局、それから陸海空の幕僚監部にそれぞれ調査部というのがございまして、いろいろな情報を集め、その資料を分析いたしております。  その中で、最近の極東におきますソ連軍の強化の状況というもの、あるいは極東におきますソ連軍の活動が活発になっているというような事実を調査し、分析しているわけでございますが、日中平和友好条約ができたときにそれではソ連がどのような動きをするであろうかというようなこともそれぞれの部局で分析はいたしております。しかし幹部会議等におきましていろいろフリートーキングをする過程におきまして、現在のような軍事環境というものがこの日中の平和友好条約によって大きく変化し、緊張状態が起きるというようなことはないのではないかというようなことを議論し合っているということを申し上げているわけでございます。
  466. 藤尾正行

    ○藤尾委員 一斉に各新聞に同じようなことが出ているのですから、あなたの方で発表なすったものでないにいたしましても、その内容というものは大同小異でございますから、大体あのようなことである、さように思ってよろしゅうございますか。
  467. 伊藤圭一

    伊藤(圭)政府委員 いわゆる日中平和友好条約締結によって極東軍事情勢に大きな変化が起きないというような意味におきましては、いま申されたとおりだと私どもも考えているわけでございます。
  468. 藤尾正行

    ○藤尾委員 私は、あなたに一つだけお伺いいたしたいと思います。  日本の防衛あるいは北東アジアの防衛というもの全般を考えてみましてもさようでございますけれども、台湾海峡のステータスが変わるというようなことがもし起こりましたときに大きな変化が起こらない、あなたはそのように言われますか。
  469. 伊藤圭一

    伊藤(圭)政府委員 台湾海峡あるいは台湾地域というものが日本の安全保障にとってかかわりを持っているというのは事実でございますので、ステータスが非常に変わるということがあり得るとすれば、それは日本の安全保障に関連があるものというふうに考えております。
  470. 藤尾正行

    ○藤尾委員 しからばあなたはそのようなことは絶対これから将来起こり得ない、かように甘く見ておられる、こういうことでございますか。
  471. 伊藤圭一

    伊藤(圭)政府委員 情勢判断というものは、いま先生がおっしゃったように、将来にわたって絶対にこういうことになろうというふうに断定できるものではないと思います。したがいまして、台湾海峡のステータスが絶対に変わらないということを申し上げているわけでは決してございませんけれども、日中平和友好条約が結ばれたその時点において、大きく変化することはないであろうという一応の判断をしているわけでございます。
  472. 藤尾正行

    ○藤尾委員 あなたの言っておられることと私の聞いていることの間に大きな差異がありますか。あなたはないとおっしゃる。私はそういうものが起こったらどうなんだと聞いているのです。そういうことは考慮の中に入ってないのかと言ったら、あなたは入っているとおっしゃる。そうしてそれは日中間平和友好条約ができて、台湾は何もしないで、中華民国はこれに何も反応しないで、黙ってひざをそろえてお行儀よく座っておる、このような認識で、もしその認識が覆っていくということになると、これは往々いままでの日本のいろいろな戦史の中にもたくさんあります。状況判断の誤り、そういうことのために取り返しのつかない状態が起こってきておる。あなたは防衛専門家でございます。防衛局長なんですから。そのあなたがこの国会という場でそのようなことを言われて、それが裏目に出てきたら一体どう責任をおとりになります。あなたが責任をとったってどうにもなりゃしませんけれども、どう思われますか。
  473. 伊藤圭一

    伊藤(圭)政府委員 いま先生がおっしゃいましたように、大きな変化があるとすれば、それは日本の安全保障に影響があるということは申し上げたとおりでございます。しかしながら、現在の軍事的な枠組みと申しますか、米国の西太平洋におけるプレゼンスあるいは日米安全保障条約等々から見まして、直ちに大きな変化が起きないだろうという判断をしているわけでございます。
  474. 藤尾正行

    ○藤尾委員 アメリカのプレゼンスというものがそれをとめるであろうというのがあなたの期待でございます。しかしながら、それはアメリカの意思が変わらないという筋が先にそこに一本通っておって言えることでございまして、これから、皆さんも先にも十二分に御検討のことかもしれませんけれども、ソ連も社会主義、覇権主義の国であるということで、これに対抗していくということがいまの中華人民共和国の大きな目的の一つであります。そのためにやれることは何でもやろうということで、対米、対日、対東南アジア、対西欧、いろいろな外交的政治的措置をとっておられる。これはこれなりにわかります。しかしその社会主義ソ連というものとの関連と並行して、アメリカ帝国主義というものにもおれは反対をしていくのだというものがそこにある。それがどんどん力をつけていくということになって、果たしてあなたの言れるようなアメリカのプレゼンスというものがいつでもそのような役割を果たしていくでしょうか。私はきわめて疑問だと思いますよ。いかがです。
  475. 伊藤圭一

    伊藤(圭)政府委員 長期的判断ということになりますと、いろいろな判断があるかと思いますが、当分の間というものは、やはりアメリカの軍事力というものはきわめて強力でございます。そしてまたことしの国防報告にもございますように、ソ連に対する対抗勢力としての強力な軍事力を維持していくことを申しておりますので、当分の間というものは、現状が大きく崩れるというふうには考えていないわけでございます。
  476. 藤尾正行

    ○藤尾委員 あなたの申しようがわからぬわけでもありませんけれども、余り甘く見ていると、しかもそういった非常に甘い観察というものを内外に表明されますと、それが当たっているうちはよろしゅうございますけれども、外れたときには大変なことになりますから、今後その種のことは余り大口をおたたきにならぬ方がよろしい、私はさように思いますが、念のために申し上げておきます。おわかりになられたら、お帰りになって結構でございます。  そこで、外務省だけがお残りになったわけでございますので、これから覇権問題についてひとつ御意見を承りたいと思います。  先ほども私は大臣に申し上げたわけでございますけれども、中国、北京が考えております物の考え方の底にマルクス・レーニン主義的な物の考え方、つまり帝国主義というものはその帝国主義的な要求を持ち続けていく限り、そこに終末的な戦争に入っていくのだ、そういったことがいかぬということで覇権ということを許しては相ならぬ、だから第三政治世界というものをつくり上げてもそいつをつぶしていかなければならぬのだというのが、毛沢東以来共産主義中国に一貫して流れておる国防理論であり、安全保障理論であり、そうしてそれが外交理論になり、政治理論になって、その線に従ってあらゆる手が打たれておる、さように私は考えておるわけですが、私の考え方に大きな問違いがあるとあなたは思われましょうか。
  477. 中江要介

    ○中江政府委員 中国がどう考えているかということについての御所見でございますので、それを私が間違っているかどうかということを言う資格もないし、またそれは日本政府の職員の一員としては、隣国あるいは他国の政策についてどう評価するのが正しいか正しくないかということは、こういう席ではなかなか言えないことでございますが、いまおっしゃいましたようなことが中国の発表しております文書の中に出ているという事実は私どもも承知しております。
  478. 藤尾正行

    ○藤尾委員 これは何も文書の中で出てきておるだけじゃございません。昨年の九月二十九日、国連で黄華という外務大臣は、幾つかの大国が覇権を争奪しようとしておる、これが帝国主義の重要な特徴である、特点である、こう言っておるわけであります。この言葉は、恐らくレーニンが言っております帝国主義論の一節をそのまま引用したものであると私は思います。そういうことであれば、これを年表別に見ましても、中国といいまするものが、彼らが恐れておる帝国主義、覇権主義というものは、一番初めは、少なくとも一九六〇年までは、あるいはもっと長く考えれば一九六九年、七〇年まではアメリカであった。その一九七〇年という年を境にしてそれが急転いたしまして、ソ連社会帝国主義ということで、帝国主義、反覇権の対象がアメリカからソ連に変わっていくわけですね、両方並列はしておりますけれども。その歴史といいますものが別に変わったわけじゃないと私は思うのです。当面、一九六八年ですかに起こりました珍宝島事件だとかなんとかが目の前で起こってきたから、そこで転回せざるを得なくなってきた。そうしてそれがひしひしとこたえてきたから、北京を初め穴をいっぱい掘ってそうして第三次大戦に備えるがごとき措置をとりつつ、戦争の脅威というものを国内にも訴え、かつまた国際的にも訴え続けてきた、こういうことだろうと私は見ておるわけでありますけれども、私の見方が非常に大きく間違っておりましょうか。
  479. 中江要介

    ○中江政府委員 先ほども申し上げましたように、間違っているか間違ってないかということは横に置きまして、中国の言い方が米ソ超大国からソ米超大国に変わったということは、私どもも認識しておるところでございます。
  480. 藤尾正行

    ○藤尾委員 あなたは外務省の役人ですから、こういう公の場でございますし、私がまともに話をお聞きいたしましてもなかなかまともにお答えをされない。まことに隔靴掻痒というような印象しか私は受けない。また国民の皆さん方も、そういう点は非常に不満だろうと思います。  その政策といいまするものの基礎に物の考え方がある。中華人民共和国には中華人民共和国の世界政策というものがまずあって、そういうものの路線の上で対米関係をどうしましょうかということで、それはなかなか簡単にいかないでつまずいたようでございますけれども、それに手を出してみる。そして日中のことは一体どうなるだろうか、対ヨーロッパはどうなるだろうか、いろいろ手を出してみるということの中の一環にこの日中平和友好条約問題というものが位置づけられておる、私はかように思っておりますが、この点はいかがです。
  481. 中江要介

    ○中江政府委員 これはいずれの国でも、自国の政策のもとでそれぞれ二国間の関係を処理していっておるわけでございますから、日本が日中関係をどういうふうに位置づけているかということがありますのと同じように、中国には中国立場からする中日関係位置づけというものがあろうかと思います。ただ違いますのは、先ほど外務大臣もおっしゃいましたが、中国世界政策と申しましても主義主張、体制の異なる国でありますから、すべてがすべて日本と同じであるはずがないということは、これは当然の前提だというふうに認識しております。
  482. 藤尾正行

    ○藤尾委員 その違った世界観に立って違った物の考え方をしておる二つの国が、双方に満足すべき状態をつくり出そう、そこに調和点をつくり出そうという試みが今回の日中平和友好条約覇権問題の処理であろう、かように私は考えておるわけでありますけれども、この考え方はいかがです。
  483. 中江要介

    ○中江政府委員 外交交渉をいたします以上は、大なり小なり立場の違いがあることが前提になって交渉が行われて、その違いにかかわらず何らかの妥協点といいますか合意点を探るということになろうかと思います。  特にいま覇権の問題を御提起になりましたが、覇権につきましては、先ほど申し上げましたように、共同コミュニケにはいろいろ出ておるけれども条約というものにはまだない。しかし国連では、御承知のように一九七四年十二月十二日に第二十九回国連総会で採択されました諸国家の経済権利義務憲章というものの中に「覇権及び勢力圏追求を試みないこと」、これはヘゲモニーという英語も同じでございますが、そういうものがすでに使われておりますので、これにはソ連は賛成投票しておるわけですが、こういうものが足がかり、よりどころになりましてだんだんと交渉を煮詰めていくということになろうか、こう思っておる次第でございます。
  484. 藤尾正行

    ○藤尾委員 これは詳しいことを言っていると、まだ何時間もかかりますけれども、いままでの共同声明、その中のいろいろな文言を一つ一つ考えてまいりましても、いろいろなあいまいな言葉がいっぱい使われておりますから、非常にむずかしいことが多々出てくるわけです。私は、国連のそういった場で使われておる覇権あるいはこういう中で使われておる覇権というその言葉の中身が、全部同じものであるとは思えない。たとえばこの中に書いてありますけれども、この地域においてという前提がされておって、その覇権主義というものが行われるとすれば、その覇権主義の行使者に対してわれわれは対抗していくのだ、覇権を許していかないのだ、こういう考え方がこの中に貫かれた一つ考え方だろうと思います。そう考えていって、この地域というのは、これは恐らくアジアでしょう。そうすると、アジアに入ってくるやつはみんな追い出してしまう、覇権は一切いかぬ、みんな追い出してしまう。残ったものは何か。どう思われますか。
  485. 中江要介

    ○中江政府委員 アジア太平洋地域アジア太平洋地域の外の国なり機関が何らかのかかわり合いを持つことがすなわちすべて覇権であるという考え方ではなくて、覇権については、かつて宮澤外務大臣国会委員会の討議の場でお述べになっておりますように、力でもって自分の意思を相手に押しつける、言いかえますと、主権を尊重するとか内政には干渉しないとかそういった国連憲章などに掲げられております原則に反するような行為、それを覇権というふうに認識している点については、日中間に大きな違いはないと思うということを、喬冠華前外交部長とのニューヨークにおける会談の後でお述べになっておりますが、いずれの国であれ、アジア太平洋地域でそういうふうに主権尊重に背いたり内政に干渉したりして自分の意思を力で押しつける、こういうものは反対であるということが、共同声明第七項に言われている。みずから求めず、またいかなる国または国の集団であれそういうものを求める試みにも反対するということの意味は、そういうふうに私どもは受けとめておるわけでございます。
  486. 藤尾正行

    ○藤尾委員 あなたは物を非常に平板に考えておられる。世界は停止をし静止をしておるものではありません。絶えず移り変わっておる。移り変わっておるということの背景に何があるか、これは力が動いておるから移り変わっていくわけです。そうでなければ世界の歴史というものは進んでいかない。力が変わっておる、毎日毎日変わっておる。その力はあなたの言っておられるような帝国主義というもので規定された。要するにあなたの言っている力というのはどういうことか私はわかりませんけれども、武力であるとかあるいはなにであるということを言っておられるのでしょう。そして相手の主権を干犯し内政に干渉をしと、こういうことなんでしょう。そういったものを排除していく。その後に残るものはやはりこれは力関係なんです。大きな力、それをみんな取り除いてごらんなさい。後に残ったもの、第三番目のものが力になる。その力が周り全体に力の作用を及ぼしていくわけです。そうしてそれが四つの近代化というものに結びついて、いわゆる超大国にはならぬということは言っておりますけれども、超大国にならなくても、力が内部に充満していけば、その充満していった力がやがて自然自然に外に出ていく。それが覇権という言葉内容においてどう違いますか。条約局長おられますから、あなたどのように考えておられます。
  487. 大森誠一

    ○大森政府委員 私も、先ほどアジア局長が答えましたように、覇権というものについては、一国が自分の意思をいわゆる力を背景にして相手の国に押しつけようとする種類の行為というふうに理解しているということしか申し上げようがないというふうに考えるわけでございます。
  488. 藤尾正行

    ○藤尾委員 私のお聞きをいたしましたことにお答えを願いたいと思います。
  489. 中江要介

    ○中江政府委員 いずれの国もいろいろ努力をいたしまして国力というものをつけていくわけでございますが、それがいま藤尾先生が言われますように、外に出ていくというものがすべて覇権であるかという点は、これは少し私どものとらえ方は、たとえば日本の国力というものが戦後大いに涵養されまして、日本の特に経済、技術の力というものがアジアに限らず世界じゅうに世界の繁栄に貢献すべきであるという立場から出ておりますけれども、それがすべて覇権であるかというと、それはそうではないというふうに思っております。  したがいまして問題は、いずれの国でありましても、力を蓄えまして、その力で平和と安定と繁栄のために出ていくのか、そうでない、それを乱すために出ていくのかというところが違うわけで、覇権を求めずあるいは覇権に反対であるというときの覇権というのは、そういう力を利用して相手の国の主権を侵したり内政に干渉したり、そういう形で出ていくことは、これは日本としてもなすべきではないし、またいずれの国であれそういうことは日本として許容するわけに臓まいらないということが共同声明の第七項の覇権反対条項の趣旨である。したがいまして、その考え方そのものは日本の憲法にもあるいは国連憲章にもうたわれている考え方と共通のものである、こういう認識で、そういうものでないものであるならばそれは日本としてはそう簡単には応ずるわけにまいらない。そこのところははっきりしてまいるということが、先ほどの、外務大臣のおっしゃったことだと私は思います。
  490. 藤尾正行

    ○藤尾委員 あなたの言っておられることは、いみじくも非常に微妙な問題を提起しておられるわけでございます。と申しますのは、日本の科学技術といいますものがある程度に進んでまいっている。そしていまや原子力発電という平和目的の原子力利用というものを進めるに当たって、核燃料というものを再処理しよう、それの方が効率的である、こういうことでこれを始めようとして進めてきた。そこに横やりが入ってきた。そういうことをやられるとプルトニウムができる、それは爆弾につながっていくことであるからそういうことは許せないということで、二年間を限って厳重な監視のもとに日本の東海村の核再処理工場といいまするものが実験段階にとどめられておる。これは日本の国の意思というものに対する力による圧力じゃありませんか。これは覇権行為なんですか、覇権行為でありませんか、いかがです。
  491. 中江要介

    ○中江政府委員 残念ながら私、その核の再処理についての科学的な知識を持ち合わせておりませんので、そのことの持つ意味というものはいかんともコメントをし得る資格も能力もないということを残念に思いますが、いずれにいたしましても、日本日本独自の立場から本件を取り上げて判断して行動しておる、つまりそれをせざるを得ないような力に屈して何かをやっているということではないというふうに私は聞き及んでおります。
  492. 藤尾正行

    ○藤尾委員 条約局長にお伺いいたしますが、いまアジア局長は、決して力に屈してやったわけじゃないのだ、こういうことでございますが、日本は好んで、みずから、みずからの研究を縮小することに利益ありというように思っておられますか。
  493. 大森誠一

    ○大森政府委員 先ほどの再処理の問題でございますけれども、私の理解しておりますところでは、アメリカの方の核不拡散ということの政策に関連しまして、日米原子力協定に基づいてアメリカと話し合いました結果、この条項の規定に基づいてそれぞれの政府が決定を行うということで、共同の決定という形をとって決着した問題でございまして、これはあくまで話し合いの結果納得ずくでやったというふうに理解いたしておるわけでございます。
  494. 藤尾正行

    ○藤尾委員 あなたの言っておられるのは、どこまでもこれは形式的な話でございまして、日本国民はそんなことを思ってはいないのです。アメリカの大きな核に対する核政策、世界政策というものがあって、どうもこれはほうっておけば抵触しそうだ、だからやめさせよう、こういう力が加わったからやりたくてもできないというのが今日の実情じゃないですか。国民はみんなそんなことぐらい承知しておる。これは力によって相手の政策をねじ曲げた一つの代表的な例です。明らかにこれはあなた方の言われるようなことであればアメリカの覇権主義であると言って差し支えない。いかん。
  495. 大森誠一

    ○大森政府委員 私の理解しておりますところは、先ほど申し上げましたようにアメリカの核不拡散の政策ということもございますけれども、またその後この問題に共通の関心を有する国が集まりましてINFCEという計画についても一般的な話し合いが行われるという事態を背景といたしまして、わが国わが国なりにアメリカと話し合いました結果、その独自の立場から決定を下した、こういうふうに私は理解いたしております。
  496. 藤尾正行

    ○藤尾委員 そんなことを、同じことを何回もあなたと議論していたって、何の意味も実りもありませんからこれでやめますけれども、国民はだれもそんなことを考えていないということを申し上げておきます。  そこで今度はさらに発展をさせまして、ソ連は入ってきてはいかぬ、ソビエトの覇権主義には反対である、ここに入ってきてはいかぬということでこの条約がもし仮に貫かれていく、ソ連がどのように対抗してくるか、そんなことは別の問題といたしまして、そうしてアメリカも、その次にはこいつがアジアの中に干犯してくる、これも覇権主義である、これもいかぬと言ってこれも除いていくということになって――そういうことになるかならぬかわかりませんけれども、残ったアジアにおける大国中国が、同じような条件を東南アジア各国にずっと進めていく。おまえも日本と同じように、この地域に力によって入ってくる、一つの政策を曲げさせようというような勢力、これは覇権主義なんだから、反覇権主義でやろうじゃないか、日本ともこうやって条約を結んだ、おまえのところも結べと言って、次々にずっとやっていったら、これは力でアジアというものに覇権を及ぼしていくということに結果はなりやしませんか。どうですか。
  497. 中江要介

    ○中江政府委員 それはアジア諸国がどういう状況でいまおっしゃるような条約を結んでいくかによると思います。したがいまして、そういうことになるのかならぬのか、なったとしてもどういう形でそうなっていくかということによると思いますが、中国ソ連やアメリカに対して仮に覇権であると言って、いまおっしゃるように排除したといたしまして、それと同じことを中国がやれるかというとそれはやれない。これはみずから覇権を求めないということを言って、私どもとの間にも共同声明でそういうふうに言っておるわけですから、そこのところは域外国であれ域内であれ、日本中国覇権を求めないということで一致しておるわけでございます。ほかのアジアの国との間でどういうふうに今後発展するかは、そのときの状況によりまして、覇権のようなものになれば、これには反対しなければいけないという一般的な立場が貫かれるということ以上にはちょっと申し上げられないのじゃないか、こういうふうに思います。
  498. 藤尾正行

    ○藤尾委員 あなたは歴史というものをよくお考えになっていただかなければ困る。要するにおれは戦争するのだ、おまえのところは大体おれの言うことを聞かないのが悪いのだ、こういうことが、いままでずっと歴史の一つの流れの中に力が動いていくわけであります。いま、今後、アジアにおいても同じでございます。大きなやっと小さいやつがある、片一方は八億、片一方は千五百万とか二千万とかいうような国だ、一つ一つこれがずっと対抗していくというときに、覇権は求めません、影響力、何もありません、そんなことで世の中通りますか。歴史はとまってしまうのですか。いかがです。
  499. 中江要介

    ○中江政府委員 歴史がどうであるとか、あるいは現在その国が大きい小さい、あるいは人口が多い少ないということと、国と国とが一つの原則について約束し合うということとは、これはやはり次元の違った問題で、あとはその原則の適用の問題として、いま御指摘のように歴史はいろいろ動いてまいりましたし、今後も現実の外交は動くと思います。  いま問題になっておりますのは、原則的なたとえば国連憲章に掲げられているような内政不干渉とか主権尊重とか領土不拡大とか紛争の平和的解決とか、そういった原則について合意をする、そのこと自身は決して意味のないことではなかろう、それを、国連憲章もその一つの例でございますが、その後の事態が世界各地でいろいろな形で発展しますときに、その原則について合意したものをどう適用するか、あるいはどう反しているかということが改めて議論になる、そういう性質のものだと思いますので、いま、将来こういうことが起こり得ると思うか思わないか、またそのときにいま議論になっております一般的な国際的な通念がどういうふうに認識されるかということは、これはやはりケース・バイ・ケースということにならざるを得ないか、こういうふうに思います。
  500. 藤尾正行

    ○藤尾委員 ケース・バイ・ケースになるとかならぬとか、それはそうかもしれません。しかし、物事を判断する場合に、歴史的視野というものも必要ですし、それでまた、先ほど外務大臣もそのようなことを私に言われたと思います。その原理、原則は結構でございますけれども、あるいはどのようなことになるか知りませんけれども、日本の国さえしっかりしていればいいのだということを言われました。いかなることが起こってこようとそれに対する姿勢というもの、あるいは対策というもの、それに対する国内の一つの力、そういったものができれば別にあわてることはないではないか、こういう意味だと私は思いますよ。だから、あなたが言っておられるような形式的な、論理的な、そういったものの羅列ではないのです。これは物の見方。あなたは立場立場でございますから、そんなことは百も二百も承知でございましょうけれども、あえてこの場であるからそのようなことを言われる。しかし、私はある場合には国民に対してはっきり物を言わなければならぬ場合がある、こう思います。今日この時点であなた方が何か言われれば、たちまちそれは向こうに響くのですから、そういったコミットメントをあなた方があえてなさるわけがない、あなた方は利口だから。それは私も承知している。しかし、そういうことと一つの歴史の流れの中に一つずっと底流として存在しておる真理、事実というものとの間のはっきりした判断の分かれ目、そういったところをはっきりしておかなければいかぬ、そういう意味で私はこのようなことを申し上げておるわけです。まあ、これ以上あなたに何を申し上げても、あなた方が責任を持って物を言える立場にはいないのですから、仕方がありませんからこれはやめておきます。  そこで、今度は反覇権というものを現実に展開をしていった場合に、当面ジャーナリズムでいろいろ問題になっておるソ連との間、ソ連の反応というものがどのようなものになっていくかということは十二分に御検討済みであろうと思います。先ほどの外務大臣の御所信によれば、ソ連もたとえば日本との平和条約に至る前に、これは条約であろうかなかろうかということはいろいろ問題があるようですけれども、物の考え方の中に、お互い覇権というものに反対しましょう、こう言っているのだから、それを逆用すればいいではないか、こういうことを言っておられる。なるほど理屈の上ではそうかもしれぬ。しかし、現実にそれにソ連といういわゆる彼らの言う覇権国家がどのように反応してくるか、これは反応が起こってこなければわからぬ。わかりませんけれども、私は、たとえばそのことは日本の北洋漁業というものに必ずはねっ返りがあるだろう、かように考えておりますけれども、あなた方はどのように考えておられますか。
  501. 中江要介

    ○中江政府委員 また理屈を言うといっておしかりを受けるかもしれませんけれども、日中平和友好条約というのはまだ締結されておりませんし、どんなものになるかということも、まだ交渉再開されておらない段階でございますので、どういうものを前提にしてソ連がどんな反応を示すかというようなことを考えることもできない。私どもにいま課せられている任務は、いかなる国とも友好関係をできる限り維持していくという平和憲法下の日本外交基本政策にもとらないようなものでなければ、いずれの国ともいかなる約束もすべきでない。そういうものが仮にできまして、それに対して何らかの異なった意見を述べる国なり政府なりがありましても、それにまではわれわれとしてはいかんともいたし方がないではないか、そういう考え方であるということを申し上げるだけだ、こういうふうに思います。
  502. 藤尾正行

    ○藤尾委員 まああなた方の立場立場でございますから、これ以上議論しても仕方がありませんから、これもこの辺でおいておきましょう。  しかしながら、こういったことを全部ずらずらと並べてみて、そうして得るところが何であって失うものは何であるか、こういう判断は、少なくとも日本の国際政治、そのあらわれである外交というものの中にきわめて厳粛にお考えおきを願わないと、これは民族と国家の運命に関することでございますから、私はこのことだけは頭の中にしかとたたき込んでおいていただきたい、かように思います。いかがでしょう。
  503. 中江要介

    ○中江政府委員 最後にまとめとしておっしゃいました点は、私どもも非常に重みを持ってかねがね考えている問題でございますし、その問題点につきましては、後ほど外務大臣にもそのまま御報告いたしまして、慎重に検討して対処してまいりたい、こういうふうに思います。
  504. 藤尾正行

    ○藤尾委員 もう十時でございますから、これ以上は御迷惑でございますからやめますけれども、私は決してこの問題についての議論をこれで放棄するものではございませんで、改めて場ができましたならば、その場において十二分に、まだまだ尽きざるものがございますから、やりますから、そのおつもりでおっていただきたい。最後に申し上げましたことだけは、しかと頭の中へたたき込んでおいていただいて、今後に対処していただきたいということを申し上げまして、私の質問を終わります。  ありがとうございました。
  505. 始関伊平

    始関委員長 次回は、来る三月二日木曜日午前十時理事会、十時三十分から委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。     午後九時五十八分散会