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1978-02-21 第84回国会 衆議院 内閣委員会 第5号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和五十三年二月二十一日(火曜日)     午前十時三十五分開議  出席委員    委員長 始関 伊平君   理事 小宮山重四郎君 理事 高鳥  修君    理事 村田敬次郎君 理事 岩垂寿喜男君    理事 上原 康助君 理事 鈴切 康雄君    理事 受田 新吉君       逢沢 英雄君    宇野  亨君       小島 静馬君    関谷 勝嗣君       玉生 孝久君    塚原 俊平君       中村 弘海君    上田 卓三君       栂野 泰二君    山花 貞夫君       新井 彬之君    市川 雄一君       柴田 睦夫君    中川 秀直君  出席国務大臣         国 務 大 臣         (総理府総務長         官)     稻村左近四郎君         国 務 大 臣         (行政管理庁長         官)      荒舩清十郎君         国 務 大 臣         (環境庁長官) 山田 久就君  出席政府委員         総理府総務副長         官       越智 通雄君         総理府恩給局長 菅野 弘夫君         行政管理庁長官         官房審議官   加地 夏雄君         行政管理庁行政         管理局長    辻  敬一君         環境庁長官官房         長       金子 太郎君         環境庁長官官房         審議官     石渡 鷹雄君         環境庁企画調整         局長      信澤  清君         環境庁企画調整         局環境保健部長 山本 宜正君         環境庁自然保護         局長      出原 孝夫君         環境庁大気保全         局長      橋本 道夫君         環境庁水質保全         局長      二瓶  博君         自治大臣官房審         議官      石原 信雄君  委員外出席者         警察庁交通局交         通規制課長   福島 静雄君         沖繩開発庁総務         局調査金融課長 吉川 元信君         沖繩開発庁振興         局振興第一課長 河津 四郎君         大蔵省理財局地         方資金課長   鈴木 達郎君         厚生省環境衛生         局水道環境部環         境整備課長   森下 忠幸君         厚生省薬務局審         査課長     新田 進治君         通商産業省立地         公害局公害防止         企画課長    安楽 隆二君         通商産業省立地         公害局公害防止         指導課長    滝沢 宏夫君         通商産業省基礎         産業局基礎化学         品課長     児玉 幸治君         資源エネルギー         庁石油部精製課         長       清滝昌三郎君         運輸省航空局飛         行場部長    田代 雅也君         建設省都市局下         水道部流域下水         道課長     玉木  勉君         建設省河川局海         岸課長     富永 正照君         建設省道路局市         町村道室長   金子  晃君         自治省財政局財         政課長     関根 則之君         日本国有鉄道環         境保全部次長  從野 武邦君         参  考  人         (日本鉄道建設         公団工務第一部         長)      天野 禮二君         内閣委員会調査         室長      長倉 司郎君     ――――――――――――― 委員の異動 二月十七日  辞任         補欠選任   山花 貞夫君     藤田 高敏君   中川 秀直君     田川 誠一君 同日  辞任         補欠選任   藤田 高敏君     山花 貞夫君   田川 誠一君     中川 秀直君 同月十八日  辞任         補欠選任   宇野  亨君     坊  秀男君   小島 静馬君     松野 頼三君   玉生 孝久君     白浜 仁吉君   上田 卓三君     石橋 政嗣君   山花 貞夫君     藤田 高敏君 同日  辞任         補欠選任   白浜 仁吉君     玉生 孝久君   坊  秀男君     宇野  亨君   松野 頼三君     小島 静馬君   石橋 政嗣君     上田 卓三君   藤田 高敏君     山花 貞夫君 同月二十日  辞任         補欠選任   宇野  亨君     奥野 誠亮君   小島 静馬君     白浜 仁吉君   関谷 勝嗣君     正示啓次郎君   玉生 孝久君     藤田 義光君   柴田 睦夫君     不破 哲三君   中川 秀直君     大原 一三君 同日  辞任         補欠選任   奥野 誠亮君     宇野  亨君   正示啓次郎君     関谷 勝嗣君   白浜 仁吉君     小島 静馬君   藤田 義光君     玉生 孝久君   不破 哲三君     柴田 睦夫君   大原 一三君     田川 誠一君 同月二十一日  辞任         補欠選任   田川 誠一君     中川 秀直君 同日  辞任         補欠選任   中川 秀直君     田川 誠一君     ――――――――――――― 二月十七日  元上海工部局警察官恩給に関する請願(受  田新吉紹介)(第一一四一号)  横浜市における米軍機墜落事故に関する請願(  柴田睦夫紹介)(第一二四四号) は本委員会に付託された。     ――――――――――――― 本日の会議に付した案件  参考人出頭要求に関する件  恩給法等の一部を改正する法律案内閣提出第  二四号)  審議会等整理等に関する法律案内閣提出第  二五号)  行政管理庁設置法の一部を改正する法律案(内  閣提出第二六号)  地方自治法第百五十六条第六項の規定基づき、  北海道管区行政監察局分室設置に関し承認  を求めるの件(内閣提出承認第二号)  環境庁設置法の一部を改正する法律案内閣提  出第八号)      ――――◇―――――
  2. 始関伊平

    始関委員長 これより会議を開きます。  恩給法等の一部を改正する法律案審議会等整理等に関する法律案行政管理庁設置法の一部を改正する法律案及び地方自治法第百五十六条第六項の規定基づき、北海道管区行政監察局分室設置に関し承認を求めるの件の各案件議題といたします。  順次趣旨説明を求めます。稻村総理府総務長官。     ―――――――――――――  恩給法等の一部を改正する法律案     〔本号末尾掲載〕     ―――――――――――――
  3. 稻村佐近四郎

    ○稻村国務大臣 ただいま議題となりました恩給法等の一部を改正する法律案について、その提案理由及び内容概要を御説明申し上げます。  この法律案は、最近の経済情勢にかんがみ、恩給年額増額するとともに、戦没者等遺族傷病者及び老齢者処遇改善を図るほか、旧軍人等加算恩給に対する減算率緩和等措置を講じ、恩給受給者に対する処遇の一層の充実を図ろうとするものであります。  次に、この法律案概要について御説明申し上げます。  この法律案による措置の第一点は、恩給年額増額であります。  これは、昭和五十二年度における公務員給与改善基礎として、昭和五十三年四月から、恩給年額を約七%増額しようとするものであります。また、公務関係扶助料最低保障額傷病恩給基本年額等につき、同年六月からさらに特別の増額を行い、公務扶助料については遺族加算を含み年額八十五万二千円を保障することといたしております。  その第二点は、普通恩給等最低保障額増額であります。  これは、昭和五十三年四月から、長期在職老齢者普通恩給最低保障額を六十二万二千円に引き上げる等、普通恩給及び普通扶助料最低保障額を引き上げるほか、同年六月から、六十歳以上の者または寡婦加算対象となる子を有する妻に支給する普通扶助料最低保障額について特段の措置を講じようとするものであります。  その第三点は、寡婦加算及び遺族加算増額であります。  これは、普通扶助料を受ける妻に係る寡婦加算及び公務関係扶助料を受ける者に係る遺族加算の額を引き上げようとするものであります。  その第四点は、旧軍人等加算恩給減算率緩和であります。  これは、六十歳以上六十五歳未満の者に給する加算による普通恩給または普通扶助料年額を計算する場合には、減算を行わないこととしようとするものであります。  その第五点は、介護を要する重症者に対する特別加給増額であります。  これは、第二項症以上の増加恩給または特例傷病恩給受給者に給する特別加給年額を十五万円に引き上げようとするものであります。  その第六点は、長期在職老齢者等に対する算出率特例措置改善であります。  これは、七十歳以上の者、妻子及び傷病者に給する普通恩給または扶助料について、その算出率特例措置における三百分の二に係る年数の上限を十三年に改善しようとするものであります。  以上のほか、扶養加給額増額短期在職の旧軍人等に対する仮定俸給改善普通恩給と併給される傷病年金減額制廃止、断続実在職年三年以上の旧軍人に対する一時金の支給等所要改善を行うこととしております。  なお、以上の措置については、公務員給与改善に伴う恩給年額及び扶養加給額増額並びに普通恩給最低保障額増額昭和五十三年四月から、その他の改善措置は同年六月から、ただし、加算恩給に対する減産率緩和及び旧軍人等に対する一時金の支給については同年十月から、それぞれ実施することといたしております。  以上が、この法律案提案理由及びその内容概要であります。  何とぞ慎重御審議の上、速やかに御賛同あらんことをお願いいたします。
  4. 始関伊平

    始関委員長 次に、荒舩行政管理庁長官。     ―――――――――――――  審議会等整理等に関する法律案  行政管理庁設置法の一部を改正する法律案  地方自治法第百五十六条第六項の規定基づ   き、   北海道管区行政監察局分室設置に関し承   認を求めるの件     〔本号末尾掲載〕     ―――――――――――――
  5. 荒舩清十郎

    荒舩国務大臣 ただいま議題となりました審議会等整理等に関する法律案について、その提案理由及び概要を御説明申し上げます。  先般、政府は、行政合理化推進するため、行政機構及び運営の全般にわたる改革を行うことを決定し、その一環として各行政機関に置かれている審議会等整理及び委員構成等改善推進することといたしております。この方針に基づき、ここにこの法律案を提出した次第であります。  次に、法律案内容について御説明申し上げます。  第一に、審議会等整理につきましては、行政機構簡素化及び合理化推進するため、社会経済情勢の変化に伴い必要性の低下したもの、活動の不活発なもの等については、これを廃止することとし、また、設置目的審議事項等が類似しているもの等については、これを統合することとし、その他審議内容地域的に限られてきているものの地方支分部局への移管等を行うことといたしております。これにより、各行政機関を通じまして、六審議会等廃止することとし、また、三十九審議会等対象統合を行うことにより二十七審議会等整理することとするほか、二審議会地方支分部局への移管等を行うことといたしております。  第二に、審議会等委員構成等改善につきましては、審議会等組織簡素化及び合理化推進するため、各行政機関を通じまして、二十三審議会等について、行政機関職員のうちから委員を任命する制度及び大臣または行政機関職員を会長とする制度廃止並びに委員定数縮減を行うことといたしております。また、この法律案におきまして統合するものとされた三十九審議会等のうち十七審議会についても、統合に当たり、行政機関職員のうちから委員を任命する制度等廃止委員定数縮減等を行うこととしております。  なお、これらの審議会等整理及び委員構成等改善は、原則として公布の日から行うことといたしております。ただし、特別な事情のあるものにつきましては、公布の日から起算して六カ月を経過した日または昭和五十四年三月三十一日までの間において政令で定める日に行うことができることといたしております。  以上が、この法律案提案理由及びその内容概要であります。  何とぞ慎重御審議の上、速やかに御賛同あらんことをお願い申し上げます。  次に、行政管理庁設置法の一部を改正する法律案につきまして、その提案理由及び概要を御説明申し上げます。  政府は、かねてから、行政合理化を図るため、各般の努力を続けてきたところでありますが、その推進を一層図るため、昨年末、行政改革計画を決定しました。  この行政改革計画基づき、行政管理庁地方支分部局について必要な措置を講ずるため、今回この法律案を提出した次第であります。  次に、法律案内容について御説明申し上げます。  第一に、行政管理庁地方行政監察局のうち、函館行政監察局旭川行政監察局及び釧路行政監察局廃止するとともに、北海道における行政相談業務執行体制の確保を図るため、北海道管区行政監察局行政相談部を置くことといたしております。  第二に、この法律は、昭和五十三年七月一日から施行することといたしております。  以上が、この法律案提案理由及び概要であります。  何とぞ、慎重に御審議の上、速やかに御可決あらんことをお願い申し上げます。  次に、地方自治法第百五十六条第六項の規定基づき、北海道管区行政監察局分室設置に関し承認を求めるの件につきまして、提案理由及びその要旨を御説明申し上げます。  今国会提案中の行政管理庁設置法の一部を改正する法律案により、行政管理庁地方支分部局のうち、函館旭川及び釧路の三地方行政監察局廃止することとしておりますが、行政相談等地域住民に密着した事務現地において処理するため、函館市、旭川市及び釧路市にそれぞれ北海道管区行政監察局分室設置する必要があります。  本件は、これらの分室設置することについて、地方自治法第百五十六条第六項の規定基づき、国会承認を求めようとするものであります。  何とぞ慎重御審議の上、御賛同くださいますようお願い申し上げます。  以上でございます。
  6. 始関伊平

    始関委員長 これにて趣旨説明は終わりました。      ――――◇―――――
  7. 始関伊平

    始関委員長 この際、参考人出頭要求に関する件についてお諮りいたします。  環境庁設置法の一部を改正する法律案審査のため、本日、日本鉄道建設公団工務第一部長天野禮二君参考人として御出席を願い、御意見を聴取することにいたしたいと存じますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  8. 始関伊平

    始関委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決しました。  なお、参考人からの御意見質疑応答の形式でお聞きすることにいたしたいと存じますので、さよう御了承を願います。      ――――◇―――――
  9. 始関伊平

    始関委員長 次に、環境庁設置法の一部を改正する法律案議題といたします。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。柴田睦夫君。
  10. 柴田睦夫

    柴田(睦)委員 環境庁設置法の一部を改正して国立水俣病研究センターを置くということが審議されているわけですけれども、水俣病は発見されましてからすでに二十二年になろうとしております。そしてまた、厚生省公害認定をしてから十年がたっております。また、歴史的な水俣病裁判から数えまして満五年になろうとしております。そうでありますけれども、まだこの水俣病については根治の方法が発見されていないというのが現状であるわけです。  今回、国立水俣病研究センター現地に建てられるわけですけれども、これは患者立場に立った業務運営がなされなければならないと考えます。そうでなければ、治療研究も成功しないでありましょうし、また現地センターを建てた意味もなくなってしまうというように考えるのであります。患者立場に立って現地医療機関とも密接な協力をした、いわば開かれた研究センターにしていくことが必要であると考えますが、この研究センターの将来の理想像、どういうふうにやっていくかというような点について、まずお伺いしたいと思います。
  11. 山本宜正

    山本(宜)政府委員 お答えいたします。  水俣病研究センター設置につきましては、昭和五十年に地元県知事、市長あるいは熊本大学の学部長、そのほか関係先生方の御意見を伺う会を設けまして、基本的な構想につきまして報告を得たわけでございまして、その報告基づきまして設置計画を進めてまいったわけでございます。  なお、地域医療需要というような点につきましても調査を進めまして、その上で研究センター内容を決めたわけでございます。先生承知のように、地域には市立の病院あるいはリハビリテーションの施設等々、患者を収容する医療施設もございますので、これらの施設連携を図った上で、国のレベルでなければできないような水俣病の基本的な研究をするというような趣旨でこのセンター設置を図ったわけでございます。今後その内容充実に伴いまして、今後の計画につきましては、また患者並びに水俣病研究推進のためを図った計画推進を将来してまいりたい、かように考えておるわけでございます。
  12. 柴田睦夫

    柴田(睦)委員 水俣病が発見されてから二十二年たつ今日ですけれども、現地ではいまでも毎月百名を超す認定申請者がありまして、そういう中でさらに四千五百名の認定保留者がいるわけであります。その中には申請を出して十年たつのにまだ保留のままの人もいるというように聞いております。三十六年間メチル水銀をたれ流したチッソ水俣工場責任は言うまでもありませんが、患者がこの長い間事実上放置されていたということについての行政責任もまたこれはきわめて重大であると考えます。昨年の十月から毎月百五十人検診、そして百二十人審査体制、こういうことが始められたわけですけれども、それでもやはり保留者はふえる一方であります。  このことを考えてみますと、やはり小手先のやり方というようなことではなくて、抜本的な体制をとる必要があるというように考えるわけです。そのためには検診治療研究、これの一貫体制をとることが必要であると思います。検診県知事がやる、県の仕事研究は国の仕事と、こういう公式的に分けるというのではなくて、弾力的な運用、有機的な運用によって、いかに水俣病患者立場に立って検診認定治療研究、これを一貫して行うかという根本的な発想からの検討が必要ではないかというように考えております。そして一貫体制の方が効率的に、しかも直接に研究成果を生かすことができる、こういう専門家からの意見もあるわけです。こういう点について検討すべきではないかと思うのですが、御見解を承ります。
  13. 山本宜正

    山本(宜)政府委員 現在、公害に係る健康の被害の救済をする法律のたてまえといたしまして、地域を指定いたしまして、知事に機関委任事務として検診審査認定業務をお願いしているわけでございまして、水俣病につきましては、特に熊本県内患者申請者が急にふえてまいりまして、それに伴いまして昨年の十月からその促進体制をとったわけでございますけれども、なおまたさらにふえつつあるわけでございまして、私ども法趣旨を体しつつ、この検診の強化ということについてのさらにきめの細かい方策を県とともに相談しているわけでございますし、その方向で今後進めてまいりたいと思っているわけでございます。  なお、この水俣病研究センター設置された後に、ここにも臨床的な研究に携わる方々が勤務することとなるわけでございまして、この方々がこの検診あるいは治療についての基本的な研究をしていただくとともに、場合によりましては、検診についての御協力をいただくというような方向も考えてまいりたいと考えているわけでございます。
  14. 柴田睦夫

    柴田(睦)委員 私は、この研究センターは、当面、研究のほかにやはり治療を行うべきであるというように考えております。第一、治療のない研究というのは、これは研究として成り立たないし、特に現地に建てたということから考えても、この治療の必要がある。そうでなければ、現地に建てた意味がないというように見るわけです。  このセンター設置場所が駅からバスで十五分ぐらいかかるという山頂にあるということですが、水俣市の皆さんにとっては、これはずいぶん遠いところだという印象を持つわけです。現地患者の間からは、これは遠い上に治療検診もしないのでは行く気がしないというような声がすでに聞かれるわけであります。研究のためにも患者のためにも、また研究センターそのもの存在意義を果たすためにも、当然治療を行うべきだというように考えるのですが、この治療についての見解をお伺いします。
  15. 山本宜正

    山本(宜)政府委員 お尋ねの点でございますが、患者治療につきましては、患者個々の過去の診療の経過あるいは症状の推移というようなことを最もよく把握している主治医が行うことが適切だと考えておりまして、現在も御承知のように市民病院あるいはリハビリセンター等に収容されて治療を受けておられる方がおるわけでございます。したがいまして、本研究センター臨床研究部門におきましては、個々患者治療目的とするという医療行為は行わないで、民間の医療機関等と有機的な連携を保ちながら、どのような治療方法をすることによって水俣病治療成果が上がるかというような観点に立った、研究目的に沿う診療、投薬、こういったようなことを行うつもりで計画をしておるところでございます。
  16. 柴田睦夫

    柴田(睦)委員 研究センターは、研究成果を適切な形で公表する、特に地元医療機関との協力がこれは重要な問題であるわけで、具体的には、いまもうすでに求められているわけですけれども、剖検室のオープン化問題ということで、地元医療機関から要望があればこれにはこたえるべきだというように思うのですが、この点はいかがでしょうか。
  17. 山本宜正

    山本(宜)政府委員 お尋ね水俣病研究センターにおいて、医療機関から要請を受けました剖検をするかどうか、こういう問題でございますが、水俣病研究センターにおきましては、いま申し上げましたような治療方法に関する研究のほかに、水俣病の病気の原因を探る、いわゆる病理学的な研究をあわせ行おうとしているところでございまして、本センター目的といたしますところの水俣病の総合的、医学的研究の中で病理解剖組織検査、これは当然予定しているところであります。具体的にどの方にその内容を進めるかというふうな研究計画につきましては、内容整備等の状況を考えながら今後検討してまいりたいと思っておるわけでございます。
  18. 柴田睦夫

    柴田(睦)委員 この研究センターが、患者との協力を初め患者立場に立った運営を行うというためには、所長人選ということを考えてみましても、やはり患者に信頼される所長が必要になってくると思います。所長人選などはこれから決めるわけでしょうけれども、患者さんから反対の強い人は避けなくちゃならない。患者協力があっての研究所であって、それによって治療研究が成り立つわけですから、当然なことだと思うのですけれども、この所長人選などについての御見解を、この点の最後に伺っておきます。
  19. 山本宜正

    山本(宜)政府委員 国の研究所といたしまして位置づけ、かつ水俣病に関する多角的、総合的な研究を図っていこうという計画でございますので、当然のことながら学識経験の豊かな、かつまたこの研究所の内部並びに協力研究ということについての力量のある方をお願いしたいと思いまして、現在、各方面のこういった関係者にお話をかけておるところでございます。先生御指摘のように、水俣病につきましては、特に地元患者さんのいろいろなグループの方々から御期待を受けているわけでございますし、患者さんに期待の持たれるような方を人選してまいりたい、かように考えておるわけでございます。
  20. 柴田睦夫

    柴田(睦)委員 環境問題について次にお伺いしますが、アンモニアによる大気汚染の問題で、私のおります千葉市の事例を挙げながら質問したいと思います。  一昨年の十二月から現在まで、この千葉市内の二酸化硫黄の自動測定局が数百時間にわたってマイナス値を出す、すなわち欠測状態が出ております。その中でも福正寺の測定局では一カ月近くも測定不能になるという、測定網のいわば大混乱が起こっているわけです。まず環境庁は、こうなりますとこれはアンモニア公害と言えると思うわけですけれども、このアンモニア公害の実情についてどのように把握しておられるのか、この点をまずお伺いします。
  21. 橋本道夫

    ○橋本(道)政府委員 いま先生の御指摘いただきました問題につきましては、五十一年と五十二年にわたりまして、溶液導電率でいまはかっております測定器の中にマイナスの数値があらわれてきたということで問題にされたわけでございます。そして、これは妨害物質があってそうなるのだろうということで、アンモニアが注目されておりまして、そしてアンモニアの環境濃度における測定も県、市は行っております。  また、アンモニアの発生源調査ということで、県、市が、千葉市のみならず隣接の自治体にある工場等につきましても、アンモニアの発生源調査もいたしております。  またデータとして、発生源としてよく指摘される脱硝装置の排出口における濃度はどれぐらいであるかということもすべて調査をいたしておりまして、そしてその影響を除去するために蓚酸トラップというものをつけて対応しているというぐあいにわれわれは承知をいたしております。
  22. 柴田睦夫

    柴田(睦)委員 このアンモニア公害の発見者は地元の住民であるわけです。千葉市から公害をなくす会という住民団体がありまして、このマイナス値を発見いたしております。ここに資料があるわけですけれども、こういうふうにマイナスにずっと出るということです。これを発見いたしまして、県と市に調査を要求いたしました。県、市がやっと重い腰を上げまして調査に乗り出したというのが実態であるわけです。  この公害をなくす会の調査は、測定器のマイナス値が多く発見された川崎製鉄周辺を、県や市がやっている方法と違う天谷式ミニカプセル法というので測定いたしまして、川鉄の風上で平均〇・〇五ppm、風下で平均〇・一二ppm、最大のところでは〇・五三ppm、これは通常が〇・〇二ppmと言われておりますから、明らかに非常に高濃度が検出されているわけです。これは環境庁が一般的に把握している、発表しているデータと差があり過ぎるのではないかというように思うのですが、この点はどうですか。
  23. 橋本道夫

    ○橋本(道)政府委員 いま先生の御指摘の欠測値があったという点でございますが、これは測定データをすべて公表するということで、市民の目につくようにちゃんと出されているという点が一点、その根底にあるということでございます。  それからマイナスのデータが出るということは非常に異常な形でありまして、そういうことで欠測として明確にされており、それに対して市民運動の方が疑義を感じてその問題についての調査を開始されたというように感じております。  そこで、アンモニア公害という御指摘がございましたが、妨害物質としてアンモニアがあるということであって、アンモニア公害として大変な問題が起こっているという問題ではないということ、これはひとつ明確に御認識をいただきたいと思います。測定が狂うというところに、これは問題がございます。ただ、アンモニア公害として非常に高い濃度がその辺にあって大変であるというような事実は一切ございません。ひとつその点は誤解のないようにしていただきたいと思います。  それで、一般環境大気の調査は、環境庁もずっと全国あれこれ調べておりまして、大体工場周辺等でいろいろ見てみますと、〇・〇四とか〇・〇七というのがよく化学工場の周辺でありますし、また一般の場所で〇・〇二から〇・〇三という程度である、何にもないところを調べてみると〇・〇一程度というようなのがございまして、少し高い、それが障害を及ぼしておるというようなぐあいに私どもは認識をしておるわけでございます。
  24. 柴田睦夫

    柴田(睦)委員 アンモニアが多くても公害じゃない、こう言われますけれども、たとえば、いま例を挙げました〇・五三ppm、普通の何十倍となるわけですけれども、こういう事態が生じても何ら公害がないと言われるのか、人の健康には害がないと言われるのか、この点ちょっと確認しておきます。
  25. 橋本道夫

    ○橋本(道)政府委員 人の健康には全く害がないというように感じております。悪臭防止法の方では一ないし五ppmというのを出しておりまして、また労働衛生の方でもずっと高い濃度がございまして、労働衛生の濃度と同じ濃度にわれわれは考えておりませんが、そのような濃度があることによって干渉が起こるという事実はございますけれども、それを取り上げて人体影響のある公害とは全く考えておりません。
  26. 柴田睦夫

    柴田(睦)委員 環境庁の話の基礎は、これは県や市のデータというものに信頼を置いてのお話のようでありますけれども、千葉市当局のこのアンモニア公害に対する対応というのは、私の見たところでも非常に消極的であるというように考えます。たとえば硫黄酸化物の欠測データにいたしましても、百八十時間欠測があったところをゼロ時間と報告して全体の欠測時間を低く見積もったり、アンモニア汚染の調査では、ある中学校のトイレを調査いたしまして、アンモニア濃度を〇・一七ppmとして、そのほか問題はないというふうにしているわけです。こういう実態では住民の調査と食い違うのがあたりまえであるわけです。  アンモニアが出ますと、亜硫酸ガスなど硫黄酸化物の濃度を測定する、それに狂いが生じてくるわけで、実際の調査方法調査の実情をよく調査して、アンモニア汚染の実態について厳正な調査をしなくてはならぬ。環境庁としては、県や市に対して、厳正な調査の指導を行うべきであると思うわけですけれども、そういう調査の必要を考えておられるかどうか、長官の御意見を伺います。
  27. 橋本道夫

    ○橋本(道)政府委員 長官がお答えになる前に一言申し上げたいと思います。  環境庁は、この問題が起こりまして、県、市にいろいろ事情を聴取いたしまして、そしてどういう調査をしておるか、すべてを聞いております。  また、それに対する対応策として、蓚酸トラップという方法がございまして、これは五十二年の十二月、昨年の末に出ました新しいJISで、選択的にアンモニアを除去するというのを測定計器につけるとそういう狂いがなくなってくるということがございますので、自治体でもそれをつけ出しておりますし、また、それをつけて保守管理をやるということを私どもも指導しておりまして、今後こういう問題につきましての技術的な調査あるいは相談につきましては、環境庁も十分相談に乗ってまいりたいと思います。  なお、公害の判断といいますのは、県、市がどうもないと言っているからどうもないと言っているわけだけではございませんで、いろいろ国際的な文献もすべて調べて申し上げておりますので、妨害が起こるという点は確かに問題がある。しかしながら、その問題で住民に重大な問題があるというぐあいにとるのは正しくはないということを文献等も通じて申し上げておりますので、この点は御理解をお願いいたしたいと思います。
  28. 山田久就

    ○山田国務大臣 大気汚染の測定につきましては、極力科学的な知見に基づきまして、最新、最善の方法でわれわれとしては監視をしてまいる方針で臨んでおるわけでございまして、今回の問題につきましても、いろいろ関係方面に調査をよく指導してまいりましたが、今後においても、ひとつこの方針によって慎重に対処してまいる所存でございます。
  29. 柴田睦夫

    柴田(睦)委員 蓚酸トラップの問題が出ましたけれども、これはちょっと後にいたしまして、いま最大の問題は、この発生源がどこかという問題であります。  まず、アンモニアの影響によって二酸化硫黄の測定局がマイナスになる時間数が、川崎製鉄の焼結炉及びコークス炉の排煙脱硝装置が稼働してから著しく増大したという事実がありますし、第二に、欠測した測定局はすべて川鉄の風下に円心状に広がっていることがあります。さらに第三に、排煙脱硝装置はアンモニアを使用することがあるわけですから、こういうことから、考えれば、発生源は川鉄の脱硝装置ではないかという疑念が当然起こるわけです。市や県も調査をしたと言っておりますけれども、環境庁はこの点についてどういうお考えか、お伺いします。
  30. 橋本道夫

    ○橋本(道)政府委員 いまの先生の御指摘の中にありましたように、排煙脱硝装置の中にアンモニアを使うというのがございます。これはNOx対策としてきわめて重要なことでございまして、従来硫黄酸化物対策につきましてもアンモニアを使ってきた経験というのがございまして、それで中和をして取り除くということが公害対策としては進めるべきことであるというぐあいに私ども考えております。  ただ、周辺での測定に妨害を与えるということは、これはまた別の問題でございまして、それはそれでちゃんと対応策を打つということをしなければなりませんし、また、アンモニアを使っているところでは、非常に膨大に放出するとか、膨大に周りに出すということになりますと、労働者の問題もございますし、あるいは住民に迷惑をかけてもいけないということは当然でございますが、そこは測定結果から見ると、そのような事態はないということでございます。  そこで、一番よく使っているというものは確かに川鉄の脱硝装置でございますが、いま先生の御指摘になりました川鉄の脱硝装置の問題、一つは稼働でございまして、これはもう大幅に動く。それからその前にテストでございまして、これはある程度限定的に動くということでございますが、欠測が起こり出しているのは、実は試運転の手前のときから、五十一年の二月からぼつぼつ起こっておるということでございまして、川鉄の関係を否定するということは、これはむずかしいことだと思います。非常に近いところで欠測も多いということ、これはむずかしいことでありますが、それに対しては、先ほど申し上げましたような測定の体制方法で、蓚酸トラップをちゃんとつけて、そしてその保守管理をきっちり図るそれからそのときどきどういうような干渉物質があるかをよく調べてみる、あるいは脱硝装置の方の運転管理につきましても、十分な注意をして維持管理を図っていくということによって十分対応し得るものと考えております。
  31. 柴田睦夫

    柴田(睦)委員 現在の排煙脱硝装置は乾式脱硝法、すなわちアンモニア選択接触還元法というのが使われるわけですけれども、これは理論的には、排出する窒素酸化物と同量ないしはそれ以上のアンモニアを使用するということになるわけです。県や市当局は、川鉄が使用するアンモニアの量というものを公表しておりませんけれども、県会で答弁したのを見てみますと、濃度と排ガス量から見て一時間五立方メートル、こういう答弁が出ております。しかし、県と川鉄の六号高炉のときの協定書、「五十年三月五日に締結した第六溶鉱炉及び同関連施設の建設に関する協定に基づく五十年四月十二日公害の防止に関する細目協定書」、これによりますと、窒素酸化物の量は焼結炉十六立方メートル、コークス炉二十四立方メートル、計四十立方メートルということになっております。こういうことから見ますと、川鉄のアンモニア使用量は、理論的には二十立方メートルが最低、実際はそれ以上使用していると考えなくちゃならないわけであります。環境庁はこの川鉄のアンモニアの使用量というものなどについての調査をしたり、あるいは調査を指示したりしたことがあるかどうかお伺いします。
  32. 橋本道夫

    ○橋本(道)政府委員 いま先生から御指摘のあったような問題を環境庁が指示したことはございません。千葉県におきまして、千葉市と市原市と袖ケ浦の各工場の発生源の調査と排出量の調査はいたしておるということは存じておりますので、自治体において適切に対応されておるというぐあいに考えておるわけであります。
  33. 柴田睦夫

    柴田(睦)委員 昨年の十一月、福岡市で開かれました第十八回大気汚染研究全国協議会大会、ここで通産省の工業技術院の第四部長であります服部久雄という方が、排煙脱硝装置の二次公害について乾式還元、いわゆるアンモニア選択接触還元法は、必要なアンモニアを理論値より大目に加えるためアンモニアがリークする、こういうことをこの講演で述べていらっしゃるのです。通産省にお伺いしますが、この見解が正しいかどうか、その点をお伺いします。
  34. 滝沢宏夫

    ○滝沢説明員 お答え申し上げます。  先生からただいま御指摘がありましたアンモニアによります選択接触還元法によります方法は、NOをアンモニアで還元するという方法でございまして、一般的にガスの量が非常に変動いたしましたり、あるいはガスの中のNOの量が大きく変動いたします場合には、未反応アンモニアの排出が起こり得るというふうに私ども存じておる次第でございまして、先般、私どもの産業構造審議会のそういった専門の委員会の席でもそういった議論がなされておりまして、今後の私どもの技術的な開発課題の一つというふうに受けとめておる次第でございます。  ただ、本件、千葉の川鉄の場合は、幸い排ガスの量が非常に一定しておりますし、また排ガスの中のNOの量もそう変動してないというようなことから、県等の御調査、先ほど来環境庁から言っておられますけれども、そういったものから判断しましても、そう大きな量のアンモニアは出ておらないというふうに理解しております。
  35. 柴田睦夫

    柴田(睦)委員 第四部長のこの報告にあるところ、これは実は重要な問題であるわけです。排煙脱硝装置がアンモニアを大量に発生して、それで硫黄酸化物の測定網を混乱させる、こういうことになれば、脱硝装置を担保にして建設いたしました川鉄六号高炉の是非にも発展してくる問題があると思うわけですけれども、そういう前提に立った場合に、この川鉄六号高炉というのは窒素酸化物を制限するということでつくられているわけですけれども、それが反対にアンモニアを大量に発生するというような事態、そしてそのアンモニアのために硫黄酸化物の測定網が混乱する、こういう事態に現になっているわけですけれども、そのことから考えてみて、この川鉄六号高炉の是非という問題について通産省はどういうお考えか、お伺いします。
  36. 滝沢宏夫

    ○滝沢説明員 お答えいたします。  いまの未反応なアンモニアが空中に出ます問題につきましては、先ほど環境庁からもお話がございましたように、現段階で把握している数値は数ppmというオーダーのもので、煙突の出口でその程度の濃度だというふうに私どもは理解しておりますし、たまたま両方の煙突の高さが百五十メートルないし二百メートルという状況にございまして、そういった関連から判断いたしますと、環境あるいは測定に影響を与える範囲も非常に小さいというふうに理解しております。  さらに、測定方法につきましても、昨年の暮れにJISによって示されました蓚酸トラップをつけることによりましてアンモニアの妨害を防除することができるというふうに考えておりますので、そういった観点に立ちますと、六号高炉自体の稼働とは別に、この脱硝施設の運転というのは特に問題ではないというふうに私どもは理解いたしております。
  37. 柴田睦夫

    柴田(睦)委員 この川鉄の問題について否定はできないという答弁が先ほどありましたが、私は以前に予算委員会でこの脱硝装置の実用化に疑義がある以上六号高炉は建設すべきではない、六号高炉の建設の認可の段階で質問したことがありました。これに対して、通産省の方は大丈夫だという見解をとってこの六号高炉の建設を認めるということになったわけですけれども、今度はこれがアンモニアという問題で現実の問題になっているということはもう否定できない事実だと思うわけです。環境庁は、先ほど言いましたようなアンモニア汚染の原因がどこにあるのか、容疑者が脱硝装置であるのかどうか、これはやはり厳正に調査をして、環境庁として結果を公表すべきであるというふうに考えるのですが、この点についてのお考えを伺います。
  38. 橋本道夫

    ○橋本(道)政府委員 いま先生から御質問のございました川鉄の脱硝装置は、世界で初めてのものを川鉄が最大の努力を払ってつくったものであるという点は私はやはり評価すべきことであろうと思います。これから脱硝対策というのが世界的に非常に問題になるときに、その技術開発を必死になってやって、それを実用化に移しつつあるというものまで否定するという方向は、環境庁としては一切とり得ないということが一点でございます。  それから次は、このアンモニアの問題でございますが、これは県が現在対応いたしておりまして、発生源の濃度等につきましても、あるいは発生源の状況等につきましてもやっておりますし、また昨年末にJISで示されました蓚酸トラップによって十分これは対応できるということでございまして、そういうことで問題の比較考量をしてみますときに、現在やられていることは、決して私は間違っているとは思わないということでございまして、今後とも測定計器の維持管理に十分万全を期するということには力を注ぎたいと思いますし、また脱硝施設の運転につきましても、これの維持管理あるいはその計測把握には十分な注意をしてやってもらうということをもって進むことが環境庁の方針として正しいというぐあいに思っております。
  39. 柴田睦夫

    柴田(睦)委員 先ほど言いました研究大会でこの服部氏は、脱硝装置が運転されるとアンモニアの大気汚染の発生のおそれがあり、少なくとも現在の環境濃度モニター用の二酸化硫黄計などの指示値の信頼性を著しく阻害する、こういうことを述べておられます。「日本の大気汚染状況」という報告によりますと、全国的には二酸化硫黄の値は減っているということを述べておられるわけですけれども、ほとんどの工場地帯ではアンモニアを使用しておって、これが妨害物質になって、二酸化硫黄の値が下がったり欠測したりするということになればこれは大変なことであります。そういう意味で、やはりこのアンモニア対策というものに本腰を入れて取り組まなくちゃならぬと思うのですけれども、もう一度環境庁にその点の見解をお伺いします。
  40. 橋本道夫

    ○橋本(道)政府委員 いま先生の御指摘のございました点で、計測値を狂わせる、そういう点でこれに対しては十分な対応をすべきであるという点につきましては、全く私ども同じ考えでございます。そういうことで計測値に狂いが来た場合に一体どうして狂いが来ているのかということをチェックをするようにわれわれは指導しております。  妨害物質はアンモニアのほかにもいろいろございます。いまマイナスの点だけ御指摘がございましたが、非常に普通よりも高く出ることがあるわけでございます。そういう問題もございまして、非常に低く出たり、非常に高く出たりするという場合には、何がそのような影響を及ぼしているのかということを十分点検して、そしてそれを回避できるような対応を打つということを環境庁としては考えているわけでございまして、全体の測定網のデータの正確性を期する上でのアンモニア公害であるという先生のお考えでございましたら、それは私どもも頭に置いて対応すべきであるというふうに思っておりますし、新しいJISの中の蓚酸トラップもその問題を念頭に置いてやっております。
  41. 柴田睦夫

    柴田(睦)委員 昭和五十年度に環境庁が大気汚染の監視網研究会に委託いたしました「大気汚染常時測定網の管理方法に関する研究」というものを見てみますと、「チャートが0以下部分を記録した時の原因の一つは、アンモニア等の妨害物質があげられるが、これらは全て欠測扱いとする」、こうしておりまして、さらに「いおう酸化物に対するアンモニア等の影響」というところでは、「マイナスは欠測、またプラス域でもアンモニア等の影響が表われた時でも欠測」、こう述べております。これは現在ほとんどの自動測定局で使われております溶液導電率法についての研究でありまして、欠測ということでまともな調査をしないというのは、これは重大な問題であります。環境庁は、この研究のようにすべて欠測抜いにして何もしないというのでなくて、この欠測が出た場合は厳正に調査するようこれは全国的に徹底すべきであると思うわけですが、そういうお考えがありますか。
  42. 橋本道夫

    ○橋本(道)政府委員 いま先生の御指摘がございましたように、大気の質を正確に把握するということは環境庁としてきわめて基本的に大事なことであると思っております。また、そこで使われている測定器あるいはその維持管理、あるいはそれに対して妨害を及ぼす物質に対して注意を十分払うということは、環境庁も全くそのように考えておりまして、欠測等が異常にあらわれるという場合にはその究明をして対応策を打つという点では、環境庁もこれはきっちり対応していくという考えでございます。
  43. 柴田睦夫

    柴田(睦)委員 蓚酸トラップの問題がありますけれども、現在千葉市がこれをやっております。ところが、蓚酸トラップを取りつけても正確な二酸化硫黄の数値はとれないということが専門家の間では指摘されているわけです。事実、千葉県や千葉市も環境庁の指導で高感度型の測定器を取りつけたりいろいろ工夫しておられるようですけれども、これも余りうまくいっていないというのが現状であります。こういう事態では正確な二酸化硫黄の測定ということにはならないわけです。現在の溶液導電率法は、アンモニアなどの妨害物質の影響をもろに受けたり瞬間濃度が正確にはかれなかったり、いろいろな弱点を持っているわけです。また千葉で実際に起こったことですけれども、測定局の過酸化水素水の濃度を薄めたり流量調整などをすることで幾らでも二酸化硫黄の値が変わってくる。環境庁は、昭和四十八年五月八日の閣議決定以来すでに五年経過しておって、欠点もよく承知しておられると思うのですけれども、この測定方法自体も新しく開発する必要があると思うのですが、この点についてはいかがですか。
  44. 橋本道夫

    ○橋本(道)政府委員 いまの先生の御指摘の中にございました測定法の問題というのがございますが、正確に申しますと大気中にあるような薄い濃度をはかる測定法には、どの測定法にも全部問題がございます。そういうことで、ヨーロッパの各国は学問議論ばかりをして対策の方になかなか伸びなかったわけです。日本は問題かあることを知って、問題はどういう程度のものであるかを評価しながら実際の実行をしたわけでございまして、そういう観点でいきまして、実は硫黄酸化物対策というのは成功いたしましたが、まだまだ未解決の問題があるということは私どもも十分頭に置いております。そういう点で、昨年の末に新しく出たJISというものは、現在の段階で一番進んだ知見でございますし、またそれに対する学問意見はやはり学会ベースで議論をして、そして何年かたてばまた新しい技術があらわれてくるというようなことであろうと思います。  またこの溶液導電率法以外にもっと方法があるだろうという御指摘、いろいろございます。ただ実際にフィールドで現在それを扱っている人々の教育水準あるいは技能水準、そういう行政の現場で使える器械ということでいろいろ調査研究をやった結果を見ますと、どうもやはり欠陥もあるが現在の方法が一番実情に適していい、それを補整するのはJISの十二月の方法であるということでございますので、完全でなければだめだということになれば、JISは大気汚染の測定などはなかなかできないという問題のあることも御承知願いたいと思います。
  45. 柴田睦夫

    柴田(睦)委員 だからそれは今後の研究として、さらに完全なものを開発していく、こういう態度が必要であると思うわけです。  いずれにしろ、そういう現在の時点での欠陥のある測定器による調査、そういう中で可能な限り厳正な調査をしていく、そしてまた住民に対して、国民に対して資料も公開する。さらに行政だけではなくて、やはり専門家などからも意見を十分聞く、そしてそれらの調査の現状、これについて、あるいは調査した内容についての資料を広く公開して全体の知恵を集める、こういう態度が必要であると思いますが、その点についてのお考えを伺います。
  46. 橋本道夫

    ○橋本(道)政府委員 いま先生の御指摘のございました点は、先ほど大臣の御答弁の中にもございましたが、やはりできるだけ最善のものを使うという方向と、また環境庁としましても、いろいろ毎年出される研究報告等を見て、これは注意しなければいけないということはできるだけ早く行政の中に生かしていくべきことだと思いますし、またデータの公開ということにつきましても、例のピンク本と申しておりますが、データは非常に正直に全部出しております。  そういうことで、調査研究報告につきましても、これはやはり一番いいことは、学会誌あるいは大気汚染研究協議会での発表の中にはっきり出してもらって、そこで専門家同士で議論をするということでございまして、私どもはデータを押さえるということはいたしません。そういう形で、測定につきましては最善の科学と公正なやり方をもって対応いたしていく所存でございます。
  47. 柴田睦夫

    柴田(睦)委員 環境庁の方ではアンモニアの大気汚染というものが人体への影響がないというような見解を述べられましたけれども、実際アンモニアによる大気汚染があって、アンモニアが化合して肺がんを起こす物質になったり中毒症状なども起こすということが学会などから指摘されているところです。そういう意味では人体に影響がないという断定的な見解、これは非常に問題だと思うわけです。学会の指摘ということにもちゃんと耳を傾けてこれを研究しなければならない。それから測定局だけを守るのではなくて人間を守るということが必要でありますし、環境庁は定期計測ということではなくて常時監視をやらせる、これを指示する、そういう意味で、再度厳正な指示をすべきであるというように私は思っております。  先ほどの六号高炉の排煙脱硝装置の問題にいたしましても、アンモニアというものが多く出て、排煙脱硝装置が犯人だということになれば、公害防止協定に基づいて、六号高炉の運転を中止させるということも含めて検討しなければならない問題であると思うわけです。いろいろな確定的な問題でないにしても、学者の間からの指摘、そしてまた、現実にアンモニアが測定網を狂わせるということだけでなくて、人体への影響という問題も指摘されている中で、常時監視を指示するというような考え方がなくちゃならぬと思うのですけれども、環境庁の見解を最後にお伺いします。
  48. 橋本道夫

    ○橋本(道)政府委員 現在の段階で、実用に供するレベルでアンモニアの自動記録測定装置で大気中の濃度の常時監視をやるということはございません。これは、研究報告の中にそういうものの試作という報告もありますが、まだ実際のものになっておりません。  それからもう一つは、それでは今度は、アンモニアの常時監視をするかという御指摘でございますが、アンモニアの持っている意味から見まして、これはあるサイトで問題のあるときに、やはり一定の時間を限って、現在のエアサンプラーをもってチェックをすることができるわけでございまして、自動記録測定器というものは、一台数百万円するわけでございます。そういう形のものをどんどん置いて、アンモニア対策を打つという考え方をとるということは、私どもはいま持っておりません。  ただ、何度も申し上げますが、アンモニアがたくさんあって、それによって測定値が狂わされるということにつきましては、これは十分注意を持って対応いたしたいという気持ちには全く変わりはございません。
  49. 柴田睦夫

    柴田(睦)委員 大気汚染の中で、アンモニアが化合して、先ほど言いましたように肺がんなどの原因になる物質になったり、あるいは中毒症状を起こすというようなことが、学者の間で言われている部分もあるわけです。そういう意味で、やはりこれは人間の体を守るということで、環境庁の姿勢が、単に計測器の問題だということになってしまうということであれば、これは非常に狭いものであるし、本当の国民の健康を守るという上において、禍根を残すおそれがあるという問題がありますし、私は最後に、そうした指摘されている問題について積極的に、徹底的な研究、そしてまた厳正な指導ということを要求して、終わります。
  50. 始関伊平

  51. 中川秀直

    中川(秀)委員 私は、いま提案をされております環境庁設置法の一部改正案に関連をいたしまして、当面の問題として大きな社会問題となっており、かつまた、これからの公害補償問題に大きな関連を持つと思われますチッソ水俣病の補償問題を中心に、若干のお尋ねをさせていただきたいと思います。  その前に、この法案に関連をいたしまして、国立水俣病研究センターの性格、目的について、若干のお尋ねをいたします。  先ほどもお尋ねがありましたが、当センターは、水俣病に関する臨床研究、病理学的研究や疫学的研究を行う機関とする、こうなっておりますが、患者認定審査のための症例研究並びにそういう研究を行った上でのデータというようなものが、今後の認定審査に使われていくのか、この点ちょっとお尋ねをしておきたいと思います。
  52. 山本宜正

    山本(宜)政府委員 現在、症例研究班という一つの研究組織をもちまして、水俣病認定審査につきましての学問的な部分の一つの手助けといたしているわけでございますけれども、これは水俣病認定審査の問題は、きわめて医学的な知見によって判断するというようなことでございますので、現在、熊本大学、鹿児島大学、新潟大学におきまして、水俣病の臨床的な面におきます専門の先生方にお集まりいただきまして、非常に判断のむずかしいようなケースにつきまして、それを類型的に整理いたしまして、その判断の方法等につきまして研究を進め、それが認定審査会にフィードバックされまして、その審査が促進されるということに利用されることを期待して、研究が続けられておるわけでございます。
  53. 中川秀直

    中川(秀)委員 お答えは簡単に、聞いたことについてだけお答えください。症例研究班のことを聞いているのじゃありません。国立水俣病センター研究目的はかくかくしかじかになっているか、この患者認定審査のための症例研究センターでやるのかどうか、あるいはセンター研究した成果、データその他というものが今後の認定審査に使われるのかどうか。症例研究班だけの仕事で十分だと言うなら、それだけのお答えで結構なわけです。
  54. 山本宜正

    山本(宜)政府委員 認定審査につきましては、症例研究班の研究をもって十分にやっていけると考えております。
  55. 中川秀直

    中川(秀)委員 わかりました。  その症例研究班ですが、つい最近の新聞報道でございますけれども、チッソ救済県債発行に道を開くために、政府が、問題になっております水俣病認定を肩がわりしようという方針を固めたのだ、その具体的な内容は、環境庁委託の「「症例研究班」の機能を強化、県段階で判定困難な症例について、実質的に認否の判断が下せるようにする。」こういう報道がなされているわけでありますが、この経過並びに今後の方針について御説明をいただきたいと思います。
  56. 信澤清

    信澤政府委員 確かに御指摘のような新聞報道は、私どもは拝見しておりますが、環境庁の考え方ということではございません。私ども、そのこと自身を検討したことはございません。
  57. 中川秀直

    中川(秀)委員 環境庁の考え方でなければ、どこの考え方ですか。
  58. 信澤清

    信澤政府委員 新聞の報道でございますから、とかく申すことはいかがかと思いますが、一つ考えられますのは、県のお考えの中にそういうお考えが従来からございますので、あるいは出所はそういうところではなかろうかという想像もいたしておるわけでございます。
  59. 中川秀直

    中川(秀)委員 わかりました。  それでは本題の、チッソの水俣病補償の問題についてお尋ねをいたします。  先日の関係閣僚会議では、結局これについての結論は得られなかったということでございます。きょうは、官房長官がお越しでございませんので、環境庁長官に、その会議のメンバーのお一人として、政府の御方針をお伺いしたいのですが、まさに問題はきわめて緊急を要する時点に来ている、私どもはそう理解をいたしておりますが、当面するこの問題の解決をどうなさるのか、その方向といったものについてお聞かせを願いたいのであります。あるいは、近々またこの関係閣僚会議をお開きになるのかどうか、その辺もあわせて御答弁をお願いします。
  60. 山田久就

    ○山田国務大臣 先般の関係閣僚会議におきましては、現地の知事のお話を伺ったということでございまして、知事からは、いまの認定状況やいろいろな実情にかんがみまして、この際、救済について何か政府の方としてチッソの支援も含めてのことでひとつ考えられないか、その点についての御要望がございました。この問題は、現在チッソ自身の実情というもの、そういう点についてもまだ的確な情報は得られておりませんし、その要望について一応これを聞いた、これを今後の指針としてひとつ関係方面で検討してみようというところにとどまっておりますし、今日の状況では、以上の点にかんがみて、新しく閣僚会議を開こうというような段階にはまだ立ち至っておりません。
  61. 中川秀直

    中川(秀)委員 環境庁長官、そうおっしゃるのでありますが、お話の御趣旨もわかりますけれども、もうすでに福田総理のところにも何回も関係業界の方々からの御陳情もあれば、チッソの実情についての話もチッソの方からもあれば、もうすでにどのような段階に、どのような現況になっているかということは環境庁長官もよく御理解をなさっておられるのではないかと思います。累積赤字が資本金の四倍になって三百億を突破した、いままでの補償額が三百三十九億、患者補償金を含めてでございますが、その補償を受けた人は千二百九十九人であって、なお未処理の方々の数が四千四百七十七人いらっしゃる。これは全部が全部ということではありませんけれども、仮に半数としても、いまの補償協定による支払いというものを考えていくと、今後だけでも軽く数百億という補償金を払わなければならないという、いわば大変な段階に来ているわけですね。企業の不況の中で、特に塩ビ関係は構造不況のものでございますから、早晩行き詰まるであろうということは会社側からも何回も出ておる状況でもございますし、また県もそれなりに心配をし、あるいは環境庁も、この場では言えないかもしれないけれども、大変御心配になっていることではないかと思うわけであります。  そういう中で、どうもこの解決策がいろいろな問題にひっかかってしまってなかなか見つからない、ただただ頭を痛めて月日ばかり経過をしていくという、そんな状況もあるような気がするわけであります。  まず第一は、このチッソという会社に何とか立ち直ってもらって、患者に補償金を支払えるような体力にしていくということが非常に大事だと思うのでありますが、環境庁長官、この方向としては、そういった問題も含めましてどういう方向があり、かつまた最も現実的な方法は何であるのか。本当に頭を痛められておる中で、ただ痛い痛いと言っているだけではどうにもならない。場合によっては、この二月分の補償金の支払いも約十九億からある、それが何とか手当てがついても、また三月にもある、四月にもある、また新認定もふえてくるという中で、どういった方法があり、そしてたちまち切り抜けるとしても、どういう方策を考えるべきなのか、いろいろお考えになっておると思うのであります。いかがでございましょうか。
  62. 山田久就

    ○山田国務大臣 確かに検診認定の状況、実際問題としては、なかなか将来の見通しもいまの段階ではちょっと立ちにくいような状況でございますけれども、しかし、いままでの事情から見まして今後これが仮に進展するというようなことになってくるならば、このチッソの補償という点での経済的な要請ということは、これはなかなか大変だろうということは、いま御指摘のようにわれわれもそういう点についてはいろいろ懸念を持っているわけであります。  しかしながら御承知のように、基本的には、やはりいまの被害者救済の関係は、いわばチッソとの私契約という形で進んでおりますし、そしてまた、無論そういう意味においての、会社がこの支払い能力を維持していけるような意味での地位が強化されるということは好ましいことでありますが、この点については主要金融機関も心配していろいろバックアップしておる。まず出発点としてはここら辺のところが中心になってこの問題を取り上げ、また実際問題として患者そのものが地元に集中しておるというような事情、また会社の今後については、雇用というような点から一番大きな利害関係をやはり地元が持っておるというようなことになってまいりますと、会社及びバックアップの金融機関、そもそもの、いわば第一の支払い責任者というものが中心になって県とも相談し、そういうところからいろいろな解決案というものについての要請が生まれてくるのじゃないとなかなか動かないのじゃないか。われわれとしても、実際問題としてチッソの現状とか立場というようなことについては、万一のことがないようにいろいろバックアップするというような意味では、関係閣僚申し合わせとしては通産が中心になってこれを考えようということでございますけれども、まだ確たる話も出てきてないというような段階でございますので、問題の急迫度その他の点については、会社、金融機関というものが中心になり、現地とも相談した、そこら辺のところで動き出してもらわないとやはり困るのじゃないかというふうに私も考えております。  全般としてのことは私も一つの懸念を持っておりますけれども、具体的にはそこら辺の動きがやはり中心にならざるを得ないのじゃないかということを考えております。
  63. 中川秀直

    中川(秀)委員 御答弁で環境庁としての御懸念並びに将来を心配する苦衷ということもよくわかるのであります。しかし、主力銀行とか金融機関とかいうものさえ何ともならぬようになるから、何とか政府で知恵をしぼってくれという陳情が総理のところにあったりしている現況であります。大変深刻な事態であると私は考えておりますが、通産省がお越しになっておられますので、いまの大臣の御答弁にもありましたけれども、たちまちのこの問題をどのように行政指導や何やらでおやりになっているのか、あるいはこれからどうしようとなさっているのか、ちょっとお考えをお聞かせ願いたいと思います。
  64. 児玉幸治

    ○児玉説明員 チッソの問題につきましては、関係閣僚会議におきまして、通産省はチッソの経営の健全化という問題につきまして任務を負っているわけでございます。日々の経営を何とか収支を合わせていくようにしていくことという趣旨でございます。先ほど先生御質問の中でもすでに御指摘のように、チッソがただいまつくっております製品は、塩ビ樹脂あるいはポリプロピレン樹脂ないしは各種の肥料、薬品、いずれをとりましてもなかなかむずかしい問題を抱えている品物ばかりでございます。その中で少しでも市況を何とか維持いたしまして、日々のチッソの経営を支えようというような見地から、たとえば塩ビの場合には、御承知のように昨年の五月から不況カルテルをやっておりますけれども、このカルテルの中で市況の維持を図っておりますし、ポリプロピレン等につきましても、新規参入につきまして、できるだけこういう時期に入らないように協力を要請するということをやっております。  それからこれから先の問題といたしましては、何と申しましても、収益性のある新しい商品というものにチッソはだんだん目を向けていかなければならないわけでございまして、もしそういうような申し出がございました場合には、私どもといたしましては積極的にこれを支援していきたいというふうに思っております。
  65. 中川秀直

    中川(秀)委員 どうもそれだけでも、私個人の主観でございますが、当面大きくぶつかっている壁を切り開いて問題の解決に役立つ施策とはなかなか思えない。そこで、ちょっと基本問題をお尋ねしたいと思います。  環境庁長官または事務当局でも結構ですが、いわゆるポリューター・ペイズ・プリンシプル、公害が発生したその諸要因について費用がかかる、そういったものについては汚染者が負担をする、汚染者負担の原則、こういうことでございますけれども、このPPPの原則についての見解というものを私はひとつこの際ただしておきたいと思うのであります。  もともとこのPPPの原則はOECDの考え方の中から出てきたものでありますけれども、そのOECDの一九七二年のガイディングプリンシプルを読みますと、このPPPの原則は、「受容可能な状態に環境を保つために公的当局により決められた上記の措置に対し、」つまり汚染防止、制御措置、そういったものに対し、「汚染者が資金上の責任を負うべきであるということを意味する。換言すれば、それらの措置に対する所要の費用は、その生産と消費の過程において汚染をひき起こす財およびサービスのコストに反映されるべきであるということになる。」これがPPPの原則である、こうなっておるわけであります。過去にたれ流した公害の原状回復、補償についてPPPが出てきたというよりも、本来環境を一定の水準に保つための防止あるいは制御、コントロール、そういう措置に伴う費用は、これはもう汚染者あるいはその生産と消費の過程において汚染を引き起こす財及びサービスのコストに反映をされるべきだ、こんな考え方から出てきているのであります。  また、つい最近、これは環境庁の国際課が監修をされたというので私もちょうだいをしたのでありますが、「OECDレポート 日本の経験」という本がございます。これはいわゆるカントリーレビューというのでしょうか、一昨年ですか、五十一年にOECDが行った日本についてのレポートを翻訳し、監修されたものだと理解をいたしておりますけれども、日本について調査をしたこの中で、特に経済的な問題についてレポートを書いているのは、ノルウェーの環境省課長のミスター・エンショーという人のようであります。彼によりますと、「汚染者負担の原則は、汚染防除費用が政府ではなく、汚染者によって負担されるべきことを述べている。」したがって、この汚染者負担の原則はOECDの考え方としては、「汚染者はたいていの場合に防除費用を製品価格に転嫁するであろう。したがって、この原則は、「納税者負担の原則」に対するものとして、「消費者負担の原則」である。」こういう考え方であるわけなんだけれども、「この原則は、日本においてすぐに有名になり、しばしば引用されている。しかしながら、この原則の経済的な目的と、それを達成するメカニズムは必ずしもよく理解されていない。多くの人々にとって、この原則は、単に汚染者が有罪であり、したがって処罰されなければならないという意味しかもっていない。要するに、この原則は「汚染者処罰の原則」として理解されているのである。」こう書いてあります。汚染者負担の原則、ポリューター・ペイズ・プリンシプルは日本においては汚染者処罰の原則、パニッシュ・ポリューターズ・プリンシプルとして理解されているのである、この指摘を環境庁はどのように考えておられるのか、大臣もしくは事務当局、お答えを願いたいと思います。
  66. 信澤清

    信澤政府委員 OECDの理事会勧告によりますPPPの意味するところは、前段いまいろいろお話のあったとおりでございます。いわゆる公害防除費用について、これを市場価格に反映させる、それによって汚染の拡大を間接的に防いでいくと同時に国際貿易にゆがみを生じないようにする、こういう趣旨のものでございます。  後段、OECDのカントリーレビューの結果の報告書につきまして、日本では公害処罰原則というふうに理解されておるという点は、これは一つの物の見方でございまして、そのこと自身、環境庁として正式にその見方が適切であるというふうには必ずしも考えていないということでございます。
  67. 中川秀直

    中川(秀)委員 必ずしも考えていないということでありますが、このPPPの原則のもともとの発祥といいますか、この原則ができたOECDの会議あるいはOECDの機関が、日本におけるPPPというものについて処罰だけにすぎないというような指摘をしていることは、われわれはやはり重要な指摘として考えておく必要があると思うのであります。もちろん、補償費を責任企業が負担するというルールは、とにもかくにも日本には定着をしておるわけでありますし、またこれをなくせば資本主義経済の自己責任原則というのは変質をしてしまうでありましょう。したがって、私どもも原則的に、環境費用として公害防除費用あるいは被害者救済費用というものは一義的に当の公害発生企業が負うべき性質のものであるとは思っております。あるいは環境復元費用、汚染回避費用、公害行政費用というようなものについては、公害対策基本法でも国や地方公共団体といったような公が関与をするあるいは資金を投入するということについては、排除はしていないわけでありますけれども、環境費用についての区分けというものは、確かに原則的には、そういう防除費用や被害者救済費用というものは一義的に公害発生の責任企業が負担をするということは当然であろうと私どもも思うわけであります。しかしそれだけがPPPの原則の本旨ではないのではないか。OECDの趣旨からいっても、PPPを余りに狭く解釈し過ぎていくということにも問題はありはしないかと私どもは思うわけであります。とりわけ現在の経済社会というものは非常に複雑な相互依存関係にあるわけでありまして、水俣病については汚染のたれ流しを続けたチッソは当然相当部分の責任を負わなければならないことは論を待たないわけでありますけれども、それを放置した国や県の行政あるいはそのチッソと取引関係があった金融、産業界にも責任はある。さらに言うならば、水俣病が発生していた時点で、その商品を買っていたり、あるいはそのサービスを購入していたというような消費者、社会全体にも間接的にはやはり何らかの道義的責任はある。そのぐらいの厳しい気持ちで受けとめなければならないと私どもは思っているのであります。  今回のチッソの問題の根源には、そのようにPPPの原則で一義的に責任企業が負担をする、被害者救済費用も負担をする、そういうものを発生企業が受け持つのだということは当然としましても、その発生企業、責任企業が補償金を支払えなくなった際に、社会全体の責任としてどうするかという問題がその根底にあるわけであります。四十五年以降につくられた公害関係法やあるいは四十八年にできました現行の公害健康被害補償法には、この点が全く空白になっている。この際、こうしたケースの場合には、もちろん厳しい、細かいいろいろな適用除外や発動条件もつけなければならないことはもちろんでありますが、国や公共団体もしくは産業界全体の協力で、被害者の方々に決して御迷惑をかけないような、社会全体の責任だという考え方で、この補償問題が解決あるいは進んでいくというような補完措置を設けるべきだと私は思っているのであります。その点について、この制度公害健康被害補償法の所管は環境庁と通産省のようでございますけれども、御両省の見解を、この際根本的にお伺いしておきたいと思うのであります。
  68. 信澤清

    信澤政府委員 ただいまのお尋ねにお答えする前に、前の御答弁を若干補足させていただきたいと思います。  先ほどお話し申し上げましたように、OECDのPPPというのは、主として公害防除費用ということで私ども理解いたしております。ただ、わが国におきましては、それ以外のたとえば環境復元費用あるいはいまお話しの患者救済費用、こういうものについても、それぞれいわばPPPと同じような考え方に基づく立法措置もできておるわけでございます。したがって、いままで日本国内でPPPあるいは汚染者負担の原則と言われた形で理解されておりましたものは、必ずしもOECDが言っているような範囲にとどまるものではない、こういうことを申したかったわけでございます。  なお、このことにつきましては、カントリーレビューの終わりました後、OECDの理事会のいわば結論というのは別でございますが、その中でもいまお話にございましたような公害健康被害補償制度というものに触れておりまして、これはOECDの言うPPPの範囲を超えたものである、ただしこれに反するものではない、こういうことを申しておるわけでございまして、後段の御答弁はそういう事情を踏まえて申し上げたわけでござ  います。  それからお話しの、公害健康被害補償法の所管の立場から、いまみたいな状態をどう考えるかということでございますが、公害健康被害補償法は、御承知のように第一種の地域と第二種の地域とがございます。水俣病はまさに第二種の地域でございまして、汚染物質との因果関係が一般的に明らかである、こういうことでございますので、仮に私どもの補償法で給付をいたします場合におきましても、その財源は特定賦課金という形で、またチッソから出してもらう、こういう形になるわけでございます。したがって、補償法の給付をする場合でも、チッソの存在といいますか存続というものが、いわば当然の前提になる。したがって、いまは、先ほど大臣が申し上げたように、補償協定という補償法から外れた損害賠償制度が適用されているわけでございますけれども、仮に補償法で参りました場合でも、いま御指摘のような問題は当然起こってくるわけで、この問題の先行きについては、やはり私どもとしては重大な関心を持って、かつまた当面解決しなければならぬ問題として研究する、またそういう研究をしつつもある、こういう状況でございます。
  69. 安楽隆二

    ○安楽説明員 通産省といたしましても、その公害に係る被害補償の問題につきましては、最近、先生からも御指摘のありましたような資源配分論の見地からするPPPとか、あるいは現行の経済社会体制における自己責任の原則という観点から、汚染者負担の原則というものに沿って行われているわけでございまして、そういった原則を崩して、たとえば原因者とならないような企業等々も含めた連帯責任、あるいは社会全体の責任というような方法が果たして適当であるかどうかというようなことについては、非常にむずかしい問題をはらんでいるというふうに思われるわけでございます。  ただ現実問題といたしまして、原因者が無資力となったり、あるいは存在しなくなったといったような場合におきまして、どういうふうに考えていくべきかという問題は当然あるわけでございまして、そうした場合に、必要に応じて被害者の救済といった問題を社会政策的な観点からどういうふうに考えていくべきかといったことがこの場合の問題点になるのではないか、そういうふうに考えておる次第でございます。
  70. 中川秀直

    中川(秀)委員 どうも被害者が聞いたら何を言っているかわけがわからない御答弁のような気がするのですが、端的にお伺いをいたします。  環境庁の政府委員の御答弁、私はちょっと重要な点があるような気がしてならないのであります。いわゆる発生企業が補償金を支払えない、無資力あるいは倒産したという場合には、社会的な責任として、それを放置した国や行政責任もあるわけですが、そういうものの責任として公害健康被害補償制度の補完措置を、いろいろ関心を持ち研究をしている、検討している、こう理解してよろしいですか。
  71. 信澤清

    信澤政府委員 私の申し方が不十分だったと思いますが、そのような意味で負担をすべきチッソがなくなってしまうということが重大な問題でございますから、当面はチッソの存続のためどういう手だてがあるかということを第一義的に検討する必要がある、そういうことを申したかったわけでございます。
  72. 中川秀直

    中川(秀)委員 それは違う。ちょっと速記録を後で確認させていただきますが、いまおっしゃったようなことを先ほど御答弁になったのではない。私がお尋ねをした、無資力もしくは倒産をした場合に、社会的な責任として行政も放置した責任があるのですから、何らかの補完措置を考える必要があるのではないかということに対して、重大な関心を持ち、研究をする、こうおっしゃった。いまの御答弁と食い違っているじゃありませんか。
  73. 信澤清

    信澤政府委員 私の言いたかったのは、先ほどのことを申し上げたかったわけでございますが、いま改めて先生からお尋ねがあったという形で申し上げますれば、そもそもこの制度はそういう事態を想定しないままにできている、こういうことでございます。したがって、立法当時想定しなかった新しい事態でございますから、そういう事態が起きないことを実は私ども願っておるわけでございますが、起きた場合のことを全く放置して研究しないでいるというわけにもいきませんので、その点については研究しているということでございます。これについては一つのいわば目安といたしまして、五十一年に中央公害対策審議会から、今後の汚染者負担のあり方について一応御研究をいただいたものの御答申等もいただいておりますので、そういうものを一つのよりどころとしながら研究をしている、こういうことでございます。
  74. 中川秀直

    中川(秀)委員 よくわかりました。その御答弁ならよくわかりました。  永大産業という会社が会社更生法の申請をいたしました。この問題も、すでにその永大産業から住宅を購入する契約をし、そしてまた建築途中でお金も払った、あるいはもうすでに建ててもらってその後のアフターサービスの問題もあるということでございまして、これも一企業の会社更生法適用という問題にとどまらない社会的な問題として、いま政府部内でもいろいろな御研究が行われている。実はこのチッソの問題は、それ以上に健康の問題でありますから、治療費をどうするか、医療費をどうするか、今後の生活設計をどうするかという問題でありますから、無資力になった場合にどうするかということは、永大産業の問題以上に重大な問題であると私は認識をいたします。これには御異論はないと思うのであります。無資力になる、補償金が支払えないということにならないことを願っておりましても、この構造不況、大きな会社が二千億円も負債を抱えて倒産をするという現在の経済情勢の中で、大変残念な不幸なことでございますけれどもそういうことが起こらないとは言い切れない。ましてチッソの現況がどうであるかということは先ほどお話ししたとおりであります。ということになりますと、そういうことにならないことを祈る、だからそうならないような手だてを講ずる、これはもちろん当然のことであり、最も急がれなければならないことでありますが、そうなった場合にどうするかという研究は気の長い問題として、将来の問題として考えておこうなんという程度にすぎないと思う。現行の制度にもそういう穴があるわけでありますから、そういうことについてどうするかという研究は相当急いでやらなければいけないと思うのであります。  環境庁長官、いまのやりとりの中で長官としてどうお考えになるのか、相当急がなければならない問題だと私は思うのでありますが、いかがお考えか、ちょっと大臣のお考えをお伺いしたいと思います。
  75. 山田久就

    ○山田国務大臣 先ほど政府委員から話がございましたように、実際問題として法律上のたてまえでは、汚染者がいずれの場合にしてもこれを負担していく。しかしながら汚染者に支払い能力というものがなくなったというときには一体どうするのだということについては、正直に言ってこれはいわば法律のブランクといいますか、予想し得ない事態で、それについては今後の研究課題というような状況になっているわけでございます。  そこで、いまチッソが払えなくなるということがむしろイミネントの問題じゃないかというような御指摘でございます。われわれも漠然とはそういう一つの懸念というものを実は持っております。しかしながら本当にそうだという点について、当面の人から本当に責任を持って具体的ないろいろなことが出てきていないというのが、私も奇異にも感じますけれども、これはいろいろな事情があるのかもしれませんけれども、そういう形になって出てきておりませんし、当面通産の方に対しても、私の承知している限りではそういうような形でまだ出てきていないというのがいまの現況じゃないか、こう思っております。  いま永大産業のお話もございました。これは影響が非常に大きいということで政府としても大きな関心を持って臨んでいるわけですけれども、しかしながら、これとても関連の金融機関ができるだけのことをやるべきだという意味で、いわばそういう方面の鞭撻を行っているというような段階でございますし、政府自身がどうということには至っていないというごとはもうすでに御案内のとおりかと思います。  そこでいまのチッソということになるのですけれども、チッソの場合にはいま申し上げたように、ちょっと繰り返しになって恐縮ですけれども、もし支払えなくなったらという漠然としたようなことを頭に入れて、そしていまの法律の欠陥からどうするかということは、さてどうしたらいいのかということで、これは確かにそういう状況のもとにおける一つのわれわれの研究、検討課題になっているけれども、まだこれもいろいろな角度からの分析が必要なので、まだ結論というところにはとうてい行っていない、これが現在の実情でございます。
  76. 中川秀直

    中川(秀)委員 検討するということと結論が出ていないということは同じようであって意味はまた違うわけで、大いに検討して結論を出してもらいたい、御要望申し上げておきます。  現実にいま公害健康被害補償制度がありますけれども、この補償の仕方についてチッソの場合、現在患者さんは民法上、民事上の補償協定で補償金の支払いやその他給付を受けているわけです。これは民事裁判の判決によるそれを受けての補償協定でありますけれども、しかし、一方で公害健康被害補償法という法律による補償給付というものは潜在的に制度として存在をするのでありますから保障されているわけですね。そういうものがいざ補償協定でだめになった場合は補償制度があるのですよということは、制度としてはあるのですから潜在的に保障されているわけですね、これは法理論として当然であります。私はそう思う。認定が少なくともこの法律で行われている。その一方として、この補償法の給付の種類として、たとえば遺族補償一時金五百六万千六百円というようなものもある。これは制度として、いざ補償協定が破綻をした場合はこういう補償制度があるのですよということを制度として保障されている。その原資が特定賦課金として六十二条ですかチッソから徴収をするのだという法制度になっているわけですが、その原資が入らなくなったという場合でもこの制度法律として存在する限り、この補償給付について国としての、行政としての責任は当然残るでしょう。きょうは法制局の方いらっしゃっていますか。――いらっしゃっていなくても御主管の環境庁にお伺いをいたしますが、制度として国の責任がそういうことになった場合は発生するでしょう。この点はいかがですか。
  77. 信澤清

    信澤政府委員 御指摘の点はそういう御理解もあろうかと思います。ただこの法律目的が、そもそも民事上の損害賠償をこの制度によって俗な言い方で恐縮でございますが肩がわりする、こういうたてまえの制度であるわけであります。つまり民事責任があるということが前提になっておるわけです。したがって、民事責任があり、かつ民事責任を果たす者が存在するということが前提になっているわけでございますから、そこで法律の文言から申しますと、いま先生お話しのような法律解釈もあるいは可能かと思います。しかし制度のたてまえ全体としてながめました場合には、先ほど申し上げたようにそもそも損害賠償をすべき者が存在しないという事態を想定しないままこの制度ができたのではないか、こういうふうに私どもは考えているわけでございまして、そこでいまの制度があるから即国の責任ですべて給付が行われるべきだというふうにつながるかどうか、ここに私どもとしては問題がある、こういうふうに考えておるわけでございます。
  78. 中川秀直

    中川(秀)委員 私がお伺いしているのは、制度としてのありようの問題ではありません。法理論としてそういう補償制度があって、補償給付はこうだとあって、原資はどうするということは一方の規定である。しかし制度として残る以上、その責任企業が倒産、存在がなくなってしまったという事態になった場合は、制度としてこの行政制度はどうなるのですか。法理論としてこれは国の責任行政責任としてこの制度は残るのではありませんか。これをちょっとはっきりしないと先の審議が進められない。
  79. 信澤清

    信澤政府委員 これは四十八年に国会に御提案し、御審議をいただいたわけでございます。その際、仮に負担をすべき者が倒産等によってなくなった場合は一体どうなるのだ、こういうお尋ねに対して、当時政府委員の答弁は、そもそもいま私が最初申し上げたように、民事責任を負うべき者があり、かつそれを負担する者があるということを前提にしているので、そういう事態を想定して法律制度をつくること自身がそもそも困難なんです。したがって、仮にそういう事態が起きた場合には、その段階で改めて法律的あるいは予算的にどうするかということを考えるべき筋合いのものと考えております。こういう答弁をいたしておるわけでございます。したがって、いまの先生のお話に逆らったような御答弁で恐縮でございますが、私ども、そういう法律解釈と申しますか、そういう前提で従来この法律を扱ってまいっておりますので、先ほど来のことを繰り返し申し上げているわけでございます。
  80. 中川秀直

    中川(秀)委員 ちょっとくどいのですが、この点は大変重要なポイントであると思うのですね。特定賦課金の問題は、何も水俣病だけではありません。イタイイタイ病もございましょうし、あるいは阿賀野川の水銀中毒に関する問題もありましょう。あるいはこれからも発生してくるかもしれない。まして、先ほどの大臣の御答弁にまた反論をするわけではありませんが、永大の場合でも、銀行がそれほどの力を入れても結局更生法適用ということになってしまった。すでにこのチッソについて主力銀行の興業銀行の頭取が総理のところに、何とかしてくれと言って陳情に行ったということが新聞で報道されている事態ですよ。いま政府委員信澤さんから御答弁がありましたけれども、そうなったときにそれは考えるのだということなんですが、もうそうなっているのではありませんか。あるいはその直前まで来ているのではありませんか。これについて当然真剣な検討をしないと、一チッソの問題だけじゃない、あるいは特定賦課金だけの問題ではないかもしれません。汚染負荷量賦課金の問題になってくるかもしれませんよ。昨年の倒産件数一万三千件ですよ。そんな大変な経済不況の中で、公害の補償制度がいまあって、そういう賦課金が払えなくなった場合に果たしてどうするのかという議論は、そうなったときに考えますと言って、旬日ただ日を過ごしているだけでいいという問題ではないでしょう。もう来るところに来ているのではありませんか。その検討を早急にするかしないか、御答弁願います。
  81. 信澤清

    信澤政府委員 検討はいたします。ただし、これは私の方もくどいかもしれませんが、当面は、お話のような事態にならないようにどうするかということを考える方がやはり問題としては先ではなかろうか。したがって、緩急、順序と言っては失礼でございますが、問題意識としては十分持っておりますので、その点はおっしゃるように検討いたします。
  82. 中川秀直

    中川(秀)委員 わかりました。それで結構でございます。  私は、いま考えられておりますところのチッソ救済策あるいはこの問題の解決策は四つあるのじゃないかと思うのですね。  一つは、チッソに対して政府機関あるいはその他国庫資金による特別融資。開発銀行その他から融資をする。これについては、予算委員会で、開発銀行法によってそういった運転資金は貸せないのだ、こういう御答弁があって、むずかしいという結論が出ていますね。  もう一つの方法は、関係閣僚会議でもこの議論は出なかったようでありますけれども、県債による肩がわり。熊本県が県債を発行し、これを資金運用部が引き受ける。県はこの資金を補償原資としてチッソに転貸をし、また県債の償還は、政府が実質的に保障する。こういうことであります。  第三番目は、公害健康被害補償法へ患者さんの請求を切りかえてもらって、チッソが特定賦課金を払い、あるいは汚染負荷量賦課金の中からも、それに足らない場合は分担をしてやる、これも法改正が私は必要なんじゃないかと思いますが、そういう方法もある。  あるいは第四の方法として、特別立法による救済という方法がある。  こんな四つではないかと言われているのであります。私も、そうかなと思うのでありますが、どうなんでしょう。これ以外にいま方法はありますか、いかがでしょう。
  83. 信澤清

    信澤政府委員 全体的な責任を負う立場ではございませんが、患者補償というのがやはり当面の最大の急務でございますから、その意味で便宜私から申し上げたいと思いますが、いろいろな選択肢があると思います。御指摘の四つの方法というものですべて網羅されているような感じもいたしますけれども、あるいはまた、ほかの方法もあり得るかと思いますので、それに尽きるということをここで明確に申し上げることはいかがかと思いますが、大体お考えのようなことではなかろうか、私自身はそう考えております。
  84. 中川秀直

    中川(秀)委員 先ほど、第一の、国や政府機関による特別融資の方法は、法律的にいろいろむずかしい点があるということを私申し上げました。それは予算委員会質疑でも出ております。  第二の、県債による肩がわり方式、これは最も現実的な方法ではないか、そんなことも種々報道がされているのでありますが、これについての大蔵省と自治省の御見解はいかがですか。
  85. 石原信雄

    ○石原(信)政府委員 県債による肩がわりとよく言われておりますが、具体的にこの件について県債を発行したい、あるいは発行すべきであるという話を私ども受けたことはございませんが、法律論といいましょうか、法的な性格としては、地方財政法第五条に書いております転貸債、貸付金の原資として地方債を発行するという問題に該当するのではないかと思います。  従来、この転貸債の運用におきましては、その対象とする事業について発行団体が行政的な責任を有する場合で、かつこの貸付金が確実に償還されるという場合、それから多くの場合は貸付対象事業が建設事業である。以上、三つの要件が具備される場合に、貸付金について地方債の発行を認めてきております。したがいまして、御指摘のチッソの補償金の支払いの財源として熊本県が地方債を発行するというケースはきわめて困難ではないか、このように考えております。
  86. 鈴木達郎

    ○鈴木説明員 地方債そのものの適否の判断につきましては、自治省と同様でございます。
  87. 中川秀直

    中川(秀)委員 いずれも現実的にむずかしいのじゃないかと、自治省、大蔵省ともに非常に消極的な御見解であります。他の委員会質疑でも同じような御答弁があったやに私は伺っておりますけれどもこれもなかなかむずかしい方法だ、安易にそういうことをして、返せないときにはどうするのだ、その場合に国が見る、これについての問題はあるのではないか、この方法も種々検討をしなければならない点がたくさんあると思うのです。  それから、三番目も、これを切りかえたところで、患者さんの補償給付の内容が大分違いますから、補償協定でやっているもの、たとえば慰謝料一時金一千八百万から千六百万という水準、公害健康被害補償法の給付は、一時金は五百六万であるというような内容、大分違う。なかなか切りかえろと言ったって、患者さんの方はそう簡単に切りかえないでしょう。かつまた、切りかえて、現行の制度で、たとえば特定賦課金が払えなくなったからといって、汚染負荷量賦課金、いわゆる大気汚染の企業七千七百工場から集めている汚染負荷量に応じての負担金からこれを払うということは、いまの法制度ではできませんね。これまた問題はきわめて多い。  四番目の、特別立法というのもきわめて安易な方法だと私は思うのです。次から次に同じ問題が出てきたらどうするのかという問題になってしまう。いずれも非常にむずかしい方法だと思うのです。いかがですか。  環境庁の全般的な御答弁、全部の責任を負っておられるわけではない、それがこの問題のむずかしいところなんです。だから官房長官に来てくれと言ったのですが、お忙しいから来れない、こう言う。
  88. 信澤清

    信澤政府委員 先ほど申し上げましたように、他の省庁にいろいろ御意見あるかもしれませんが、患者の救済というのは私どもの役所でございますから、そういう意味でやや私見になるかもしれませんが、申し上げたいと思います。  補償法の給付に移ってまいりますについては、いま御指摘の問題のほか補償協定そのものの問題があるわけでございます。と申しますのは、あの補償協定というのは、その当時患者として認められた方々とチッソとの間の補償協定であるわけでございますから、その協定の中に、今後認定を受けた患者が希望すればこの補償協定の適用が受けられるということになっているわけでございます。したがって、その補償協定が生きている以上、患者が希望されれば補償協定の方へ行く、それを無理無理に補償法の方へ来なきゃだめだとか、いらっしゃいということはできない、そういう仕組みになっているという点がもう一つございます。  特別立法の問題、これはいろいろの考え方があると思いますので、どういう特別立法を念頭に置いて先生お尋ねになっておられますか、その点がよくわかりませんので、その点についてのお答えは、この際は差し控えさせていただきたいと思います。
  89. 中川秀直

    中川(秀)委員 私は、いまのその御説明で結構なんですが、特別立法というものを、どんな形にしろこの問題に限って、じゃあつくりましょう、そんな安易なものではないと思うのですね。やはり一チッソだけの問題じゃない、次から次に出てきたときに一々そんな特別立法をつくるということには非常に問題が多いと思う、それを申し上げたかっただけであります。  そこで、一つの御提案をきょうは最後にさせていただきたいと思うのであります。  これは一つの方法で、パーフェクトな案なんか政府でもまだ考えられていないのでありますから、一議員の私がそんなパーフェクトなものを考えられるはずがない、それをあらかじめお断りしての御提案でありますけれども、私はもういずれの方法にしても問題が多いし、県債方式もいよいよぎりぎりまで考えてみると当面の糊塗策にしかすぎないと思うのですね。そこで、やはり冒頭、中間で何回もお尋ねをいたしましたが、現在の公害健康被害補償法を改正する必要があると思うのです。その改正する内容方向というものはこういうことではないかと思うのです。  チッソの補償金支払い、これはもう補償協定がある限りできるだけ民事上の問題でがんばってもらう、民事上のこの補償協定でがんばってもらう、これは当然です。しかし、無資力もしくは倒産あるいは会社更生法適用などという状態で行き詰まってしまった場合、その場合としての御提案でありますけれども、なってしまってからなんて言わずに、それまでに現行公害健康被害補償法を改正して一項を設けまして、そういった無資力あるいは会社更生法適用あるいは倒産という事態になった場合、そこまでいかないとしても、たとえば経営不振などで会社更生法適用あるいは無資力、こういったケースの場合、特定賦課金あるいはチッソのみならず大気汚染発生企業、発生工場、この払います汚染負荷量賦課金、こういうものが更生法の適用やあるいは無資力で支払えなくなった場合には、その企業に対して、この制度として国の責任はあるわけでありますから、国庫から融資をすることができるように法改正をしたらいかがですか。賦課金を融資する。制度の中に一項を設けて融資をする。たとえばチッソの問題で言うならば、六十二条によるチッソの特定賦課金、それは補償協定でいこうと言ったって、会社更生法の適用あるいは倒産ということになれば民事協定もどこかへ行ってしまうわけですから、その場合には患者の皆さん方にもこの公害健康被害補償法による請求に請求がえをしていただいて、一方で無資力になったその企業に対しては特定賦課金、汚染負荷量賦課金を国庫から融資をする。  もう一つ、倒産によって支払えなくなった場合を想定をいたしまして、この制度の一つの部分として、特定賦課金にいたしましても汚染負荷量賦課金にいたしましても、その全対象業種企業に対して強制の共済保険を発足させて、これに強制で加入をさせる。保険料をそこで徴収をする。もし倒産をした場合には、その特定賦課金あるいは汚染負荷量賦課金の国から融通を受けた分の国への債務はこの共済保険制度の保険金で賄う、補てんをする。万一その発生企業が完全に倒産をしてしまって、その後の補償金支払いは、国の責任があるわけですから、制度として残るわけですから、この健康被害補償制度制度としての給付を国、公共団体の責任で行う。  もう一回申し上げますけれども、制度の改正点でありますが、第一は、会社更生法適用のような状態、経営不振で無資力になって、特定賦課金、汚染負荷量賦課金が払えないという段階になった場合には、その企業の賦課金を国庫から融資ができるような制度改正を行う。第二は、倒産した場合のケースを想定して、賦課金を払わなければならないという責任企業、大気汚染の場合であれ、特定公害の場合であれ、そういう企業に対して強制の共済保険に加入をさせ、保険料を徴収する。それを制度として行う。そして倒産した場合には、それまでの賦課金の国への債務は共済保険制度の保険金で賄う。万一倒産してしまった場合のその後の支払いについては、制度として責任が残るわけでありますから、国、公共団体の責任で給付をする。その後の給付は国、公共団体でやる。この四点でありますか、そういう制度改正を考えてみたらどうかと私は思うのです。  共済保険でその制度のいままでの賦課金、もし国が融資をしたとして、それをどうするかというものは、共済保険でそういった全発生企業から保険料を徴収し、その中から、その保険で保険金を担保して、そこからまた返済をするわけですから、一応この段階までは、会社が存続する限りまでは被害者補償に関しての汚染者負担原則は貫かれております。そこまでは貫かれておる。しかし、その存在がなくなってしまった、倒産してしまったということになったら、そこから先はやはり国の責任、社会全体の責任として、行政責任もあるわけですから、国、公共団体の責任、こういうふうに考えていったらどうでしょうか。私の小さい頭で考えた提案でありますけれども、いかがでございましょうか。最後に御提案を申し上げて、御見解を伺いたいのであります。
  90. 山田久就

    ○山田国務大臣 先ほどもお話し申し上げましたように、いわば法の予想していなかった問題については、これはいろいろな状況を考えると、われわれもいろいろ心配をしている点で、そういう点どうするかと検討しているところですが、いまの御提案、われわれの検討の中の一つとして、ひとつ検討させていただきたいと思います。
  91. 中川秀直

    中川(秀)委員 どうも長時間ありがとうございました。  以上で終わります。
  92. 始関伊平

    始関委員長 午後一時三十分から委員会を再開することとし、この際、暫時休憩いたします。     午後零時四十九分休憩      ――――◇―――――     午後一時三十六分開議
  93. 始関伊平

    始関委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  環境庁設置法の一部を改正する法律案議題とし、質疑を続行いたします。岩垂寿喜男君。
  94. 岩垂寿喜男

    ○岩垂委員 今回の設置法は、水俣病の位置づけというのを、水俣病はいわば公害の原点だということで提案理由説明されております。水俣センターというのは、言ってしまえばアフターケアだろうと私は思うのであります。すでに起きてしまった環境汚染について、その汚染物質を効果的に駆逐することは困難だと言わざるを得ません。もしわれわれにできることがあるとすれば、これ以上に汚染度を高めないように最大限の努力をするということと、改善への精いっぱいの可能性を追求するということ以外にないと思いますし、同じ過失を繰り返さないようにこの事件から教訓を学び取ることではないだろうかと考えています。その意味で、今後このような忌まわしい事件を繰り返さないためにも、どんな対策が必要かという問題に関連して、若干の質問を試みたいと思います。  第三水俣病の発見を契機にして政府がその対応を進めてきたことは承知をいたしておりますが、どうもその後の経過を見ると納得のいかない面がある。  それからさかのぼってちょっと考えてみますと、たとえば水俣病が有機メチル水銀が原因だという報告昭和三十四年に厚生省に上がっている。その後四十二年に厚生省が都道府県に対して調査を依頼して、その結果六〇%が水銀のたれ流し、所によっては五、〇〇〇ppmの塩水マッド、つまりスラッジが無造作に処理されているということが確かめられたはずであります。そうしたさまざまな事実がありながら水銀対策の問題が昭和四十五年の九月までおくれていた、私はこの現実を振り返って考えざるを得ません。  こうした対策のいわば立ちおくれといいましょうか、行政的な立場から言えば創造力の欠落という問題について、その責任をたださなければならない気持ちでいっぱいであります。とりわけ、いまなお苦しんでいる患者の気持ちに即して言えば、そのことを指摘できるだろうと思うのですが、こうした対策の立ちおくれについて、厚生省の当時の業務を引き継いできた環境庁長官がどのような反省と、どのような政治責任をお感じになっていらっしゃるか、まず第一にそのことをお尋ねしておきたいと思う次第です。
  95. 山田久就

    ○山田国務大臣 水銀問題は非常に重要な問題であります。われわれとしては、そういう点は十分認識いたしているわけでございまして、これから派生してきたいろいろな問題については、できるだけのことを政府としても今日まで努力は払ってまいってきておるつもりでございます。将来の問題としては、いろいろな意味においての関係筋とも連絡をとりながら万全を期していくということについては、われわれとしてもせいぜい努力はしてやっていきたい、こういう基本的な態度で臨むつもりでございます。
  96. 岩垂寿喜男

    ○岩垂委員 将来のことはこれから聞くのです。  問題は、いま私がタイムテーブルを追って話をしましたように、政府の対応の不十分さというのは指摘されても仕方がないだろうと思うのです。そういう点での政府の反省の弁といいましょうか、行政的な対応のおくれに対する責任という問題について、大臣の御答弁を再度煩わしたいと思います。
  97. 山田久就

    ○山田国務大臣 いろいろわれわれの中にそういう足りなかった点、その点については、十分その点での責任を感じ、そういう立場に立ってひとつ遺憾のないように対処していきたい、こう考えている次第です。
  98. 岩垂寿喜男

    ○岩垂委員 水俣病は有機メチル水銀が原因だということが明らかにされたのが三十四年、そして水銀対策が進められたのが四十五年九月、実は十三年間もこの間に時間の経過があるわけです。つまり汚染の蓄積があるわけであります。健康被害が重なってきているわけであります。そういう点をどのように考えるかというところからこれからの対策が、いわば責任の重さというものをどのように感じているかというところから対策が進むのではないだろうかと私は思うのです。  ですから、その点はこれから一生懸命でやりますから御勘弁いただきますということだけでは済まないのではないか。率直に言って、私はこのことで時間をとるつもりはないのです。ただ、前長官の石原君などのやりとりを聞いてみても、ここのところをきちんとしておかないと、また同じベースで環境行政があるということを想像せざるを得ない。これは大変残念であります。特定の人のことを言うつもりはございませんが。そういう点で、入り口の議論でございますけれども、きちんと政治的な責任、対応のおくれに対する責任患者やすでに亡くなってしまった人々に対するいわば行政上の反省というものがやはり必要ではないだろうか、こう思って、くどいようですけれども、そのことを確かめておきたいと思うのです。
  99. 山田久就

    ○山田国務大臣 これまでの非常に時間を要した過去の点についての責任は、われわれも非常にそういう点を痛感していることは、さっきもお話し申し上げたとおりでございます。そういう反省に立って今後のことを考えていきたい、そういうことでございまして、責任の点は、いま申し上げたように、これまでのおくれ等は痛感いたしておる  つもりでございます。
  100. 岩垂寿喜男

    ○岩垂委員 そのことを前提にして、昭和四十八年十一月に水銀等汚染対策推進会議設置をされました。苛性ソーダ水銀電解法の全面的な転換を進めることになったわけです。御理解のとおりに、隔膜法への転換を五十年九月までに三分の二、五十二年度末、つまりことしの三月三十一日までに全面転換をするというものでありました。  昨年の五十二年三月現在で製造能力の六一・三%が水銀法から転換を終ったという指摘がございますが、しかし昨年の五月二十五日の推進会議で、五十三年三月三十一日までに完了できないという結論を導き出されました。  その後、ソーダ工業製法転換推進対策委員会あるいはイオン交換膜技術評価専門委員会、クローズドシステム調査専門委員会等々、下部機構を含めて作業を続けてこられました。  そして、最終的には、やっぱりことしの三月三十一日までは無理だ、こう結論が導き出されているわけですが、一たん目標を決めながら、業界の要望を入れて延期したという感じを持たざるを得ない。これは自動車排ガスの際もそうでございましたけれども、技術的に困難である、不可能であるということを口実として、せっかく決めたタイムテーブルが崩されるということは、大変遺憾なことだと私は言わざるを得ないわけですが、推進会議の議長役である環境庁長官は、この責任、この経過についてどのようにお感じになっていらっしゃるか、伺っておきたいと思います。
  101. 信澤清

    信澤政府委員 ちょっと大臣の御答弁の前に経過だけ申し上げさせていただきたいと思いますが、いま御指摘のような事情で転換がおくれる、こういうお話が昨年の五月の推進会議で、あったわけでございます。その内容先生承知でございますから、あえてくどくどしく申しません。  その際の推進会議としての考え方は、事が水銀に関する問題であるので非常に遺憾である、しかし通産省のおっしゃる言い分と申しますか、御主張にもそれなりの意味があるので、なおしばらく転換を急いでいただこう、こういうことで一応散会をしたといいますか、会議を閉じた、こういう経緯でございます。
  102. 山田久就

    ○山田国務大臣 いま御指摘のイオン交換膜法技術がまだ工業的に実用が可能になっていないということ、またアスベスト隔膜法製品ではわが国の需要をまだ十分に満たし得ないというような事情によりまして、昨年の五月の第四回の水銀等汚染対策推進会議で、全面転換の遅延ということもいまの実情ではどうもやむを得ないという結論に至っておることは、御承知のとおりでございます。もちろん、技術の見通しがつき次第、できるだけ早く全面転換の計画を策定するといたしまして、また、未転換工場においてクローズドシステムが完備していることを今後ともチェックするというような方法によることにして、遺憾ながら若干の遅延も現状においてはやむを得ないのじゃないか、こういうような立場でございます。
  103. 岩垂寿喜男

    ○岩垂委員 推進会議報告を拝見いたしますと、要点を言いますと、イオン交換膜法技術の「工業化可能と言うためには、イオン交換膜をはじめとして電解槽その他各種構成材料の耐久性及びプラントの運転性能について十分実証されていることが是非とも必要である。しかしながら、現在のところ、我が国においてはこれらについて十分な実証データが得られていないため、コマーシャルプラントの運転開始後、少なくとも二年間程度の実証データが得られるまでの間はさらに観察を続けていくことが必要である。」という文章になっています。  これでは、率直なところ、事実上無期延期と同じじゃないかという見方も成り立つわけでございます。一体、このコマーシャルプラントというものはいつごろ運転できるのか、運転してきたのか、そうしてこの見通しというのは一体いつごろ、この答申に盛られているように、実用化と言いましょうか、実現ができるのか、そのいわばめどを、この機会ですから明らかにしていただきたいと思います。これは通産ですか。
  104. 児玉幸治

    ○児玉説明員 ただいま先生がお読み上げになりましたのは、昨年の十月にイオン交換膜法の技術につきまして、専門家の手によって行われました報告の結論の部分でございます。  イオン交換膜によりますプラントにつきましては、現在国内においても数社、あるいは海外においても二、三の社がこの技術開発を手がけているところでございます。わが国におきましては、この技術につきましてはかねてできるだけ最大限に急いで開発を進めるようにということで、いろいろ指導をいたしておりまして、この技術評価の結果がまとまりました段階では、すでに一部の企業がコマーシャルプラントと言えます規模で運転を継続いたしております。  それではいつかというお尋ねでございますので、一応の現時点における私どもの予想を申し上げますと、二年間とにかく実際にプラントを動かしてみるということでございますけれども、この専門家による観察の対象になりましたコマーシャルプラントは、一昨年の十一月からコマーシャルプラントと言える規模で運転を始めているわけでございまして、したがいまして、もしことしの十一月末までコマーシャルプラントとしての一定の性能を維持しながら運転が行われますならば、その時点での評価が可能になる、こういうふうに考えております。
  105. 岩垂寿喜男

    ○岩垂委員 それはあれですか、イオン交換膜法技術評価専門委員会の判断というものもその辺は共通していますか。
  106. 児玉幸治

    ○児玉説明員 ただいまお答え申し上げましたのはそういう専門家意見でございまして、私どももこの件につきましては、専門家意見によりまして処理すべきものというふうに考えております。
  107. 岩垂寿喜男

    ○岩垂委員 専門委員会現地調査をなさった記録もございます。ただ率直に言うと、これは業界といいましょうか、そこを歩いてどうだろうかと見てきたわけですから、業界任せにならぬようにひとつそれを促進させるための努力を、通産としてもしていただきたいし、しなければならぬだろう、こんなふうに思いますので、その点は付言をしておきたいと思います。  続いて、通産省の指導によってアスベスト隔膜法に転換した企業、これはさっき申し上げたように、製造能力の六割以上を今日では占めているそうですか、それがその製品が品質が悪くてコストの面で大きな差がある。使用、販売が困難だということを伺っております。一方で、実は転換をおくらせるということになりますと、これ実はサボってきたという言い方はちょっといい言葉遣いではないかもしれませんが、対応をおくらせてきたところが現在なお水銀法で製造して、いわばその利益を上げているという現象があるわけでございます。この上さらにその延期を認めていくということになると、まあ言葉をかえて言えば不平等、不公平が拡大をしやしないだろうかという点がこれはあるわけでございますので、その点で具体的に二、三質問をしてみたいと思うのですが、最初通産省は隔膜法を指導したかどうかは別として、その問題をリードして途中で実は水銀法に行政指導をして、そして事態が第三水俣病などを含めて問題が明らかになってあわててアスベスト隔膜法に転換をして、どうもこれも調子が悪いからやはりイオン交換膜の方向へ転換をしなければならぬと、正直なところ昭和三十年ごろから水銀電解法に行政指導を転換したというふうに私ども承知をいたしておりますけれども、何としてもこれちょっと朝令暮改ではないだろうか、行政指導のあり方に一貫性がないのではないかという点を指摘をせざるを得ないのですが、その点についてはどのようにお考えになっていらっしゃいますか。
  108. 児玉幸治

    ○児玉説明員 わが国のソーダ産業というのは非常に歴史の古い産業でございますけれども、戦前は隔膜法の電解というものが主力でございます。戦後になりましてから、水銀法の電解というものが次第に普及をしてきたわけでございますけれども、これは水銀法によります製造技術というものが、公害の問題は別といたしますと、そのでき上がってまいります苛性ソーダにしても、あるいは塩素にいたしましても、非常に品質が優秀である。かつ、製造コストが隔膜法等に比べて割り安であるというようなことから普及したものでございます。  ただいま水銀法を採用することについて、通産省が行政指導をした、ここでまた改めて隔膜法に戻したというふうなお話がございましたのですが、これは考え方の問題ではないかと思うわけでございます。私ども通産省が戦後二十年なり三十年代の時期に、わが国産業の国際競争力を高めるためにいろいろ指導してきたことはそのとおりでございまして、そういう一般的な指導の一環の中で、あるいは水銀法というものを通産省が指導しているというふうにお考えになれば、またそれはそうかもしれないと思うわけでございますが、たとえば隔膜法への転換というふうなものの指導とは、実はこれまるきり性格の違うものでございまして、やはりそのときのいろんな経済性とか国際競争力とか、そういうふうなものから水銀法に移っていったというふうに考えるわけでございます。その後、大変重大な問題が発生をいたしまして、隔膜法への転換というものを進めてきたわけでございます。朝令暮改というおしかりをこうむっているわけでございますけれども、ただいまのようないきさつで始まったことでございます。  それから、じゃ隔膜法をやめてまたイオン交換膜法に全部かえるというのかということでございますけれども、イオン交換膜法につきましては、これは先生も御承知のとおりでございますけれども、隔膜法では使えない品質の重要な分野があることによりまして、この部分に何とか対応したいということで現在努力をしているものでございます。したがって、隔膜法にすでに転換した人たちをこの機会にまた改めてイオン交換膜法に転換させようという指導をする、そういうような気持ちでやっているわけではございませんので、御了承いただきたいと思います。
  109. 岩垂寿喜男

    ○岩垂委員 まあ、時間がございませんから、次に移りますが、水銀法と隔膜法のコストの差というのは、二万円とか二万五千円とかいろいろ言われておりますけれども、どのくらいの差になっているのかということが一点と、それから未転換組が転換組に対してトン当たり五千円程度の差額を支払うというようなことになっているのですが、これで問題は解決しているのですか、どうですか。その点、伺っておきたいと思うのです。
  110. 児玉幸治

    ○児玉説明員 先ほどもちょっと触れましたように、隔膜法によってできます苛性ソーダと在来の水銀法によります製品につきましては、確かにコストの差が存在いたすわけでございます。ただ、隔膜法と水銀法とでこれを一括いたしまして幾らというふうに申し上げるのは、これは非常にむずかしいわけでございまして、御承知のように、そのそれぞれの企業の生産技術、工程管理の上手下手、その他原単位の引き下げ、いろいろな形の企業努力によりまして――水銀法といいましてもコストがいろいろございます。あるいは隔膜法と申してもいろいろコストがございます。ですから、具体的に幾らというふうに申し上げるのは非常にむずかしいのでございまして、一般的に言いまして隔膜法の方が高くなっておるというのは事実でございまして、そういうことがございましたものですから、近年隔膜法製品と水銀法製品の融通制度というものを実施して、できるだけ不公平を是正すると同時に、その融通制度運用に際しまして、負担の調整を図るために、いわゆるコスト差決済と言われるものを実施いたしております。トン当たり五千円というのは先生おっしゃったとおりでございまして、これは実は昨年の秋に五千五百円に引き上げにはなっておりますが、これで実は十分かどうかということになりますと非常に議論がございます。隔膜法に転換している人たちから見ますとこんなものでは足りないということでございますし、水銀法で残っている人たちから見ますともうこれで十分ではないかというふうな議論でございます。  そういうことでございますので、私どもといたしましても、現在いろいろな実態調査などもいたしております。できるだけそういう調査を通じまして、適正妥当なところでこの制度を使ってまいりたい、こういうふうに思っております。
  111. 岩垂寿喜男

    ○岩垂委員 平均してトン当たり二万五千円ぐらいというふうに開きを見ていいかどうかということを後でお答えいただきたいと思います。  それから未転換の企業名が実は昭和五十年の十二月十日、環境庁から公表になっております。未達成なお二十一工場、会社で十七社、これが今日もそのとおりだというふうに考えてようございますか、これは実は新聞の切り抜きでございますが。
  112. 児玉幸治

    ○児玉説明員 未転換という意味は、一部は転換しておりますけれどもまだ残っておるものがあるというのと、全く転換してないのと両方あるわけでございますが、私ども現在時点で把握しておりますところでは、この両方含めまして二十二社、二十九工場でございます。
  113. 岩垂寿喜男

    ○岩垂委員 企業名は公表できますか。
  114. 児玉幸治

    ○児玉説明員 もちろん公表可能でございます。
  115. 岩垂寿喜男

    ○岩垂委員 後ほど私に下さい。  水銀法による苛性ソーダが台湾、韓国などから、特に台湾から輸入されているという実態があるわけです。実は、国内で転換を迫られた企業が台湾などに水銀法のプラントを輸出しているという話も聞いたわけですが、これはそういう実態があるのかないのか。そして率直に言うと、日本のプラントが台湾に輸出されて、そこでつくられた苛性ソーダが逆に日本に輸入されているという実態があるとすれば、これはゆゆしい問題でございます。通産省ではこういう規制が決まってからはそういうことはないと言っているのですが、どうも必ずしもそこのところがあいまいでございますので、その点をはっきり答えていただきたいと思います。  その意味は、われわれ日本人の経験から見て、国民の大変痛ましいと言いましょうか、この提案理由説明の中にもあるように「水俣病公害の原点」というとらえ方を含めて大きな反省を迫られているわけでありますが、もし外国へそのプラントを輸出して、その苛性ソーダを日本へ輸入して、ということをやっていると、水俣病を外国へ輸出するという結果を招くおそれが実はあると思うのです。この点について実態がどうなっているのか、この際、明らかにしておいていただきたい。イランなどの問題も含めて問題になったこともございますが、それらの点についても触れていただきたいと思います。
  116. 児玉幸治

    ○児玉説明員 水銀法電解ソーダ設備の輸出の問題につきましては、四十八年十一月の決定以後、国会におきましてもいろいろ議論がございました。私どもの方は、昭和四十九年の六月でございますけれども、基礎産業局から通達を出しまして、自今、水銀法電解ソーダの設備の輸出につきましては原則としてこれを認めないという方針をとっております。かつ、今後もし水銀法の電解ソーダ設備の輸入を希望する国があった場合にも、わが国における状況を説明いたしまして、相手国政府の慎重な検討を要請する、こういうことになっております。  それでは実績はどうかということでございますが、この通達が出て以後問題になりましたのは、先ほど先生おっしゃいましたイランに対する案件が一件でございまして、実はこれはこの通達が出る前からイランと日本との間で話が進んでいたものでございます。進んでいましても、実はこういうことになったからということで相当相手国ともいろいろやったわけでございますけれども、どうしても欲しいということで、経過措置として一件だけ出たわけでございまして、その後は水銀法の電解ソーダ設備の輸出というものは一切行われていないわけでございます。  ただ、設備はともかくとして技術はどうかということもございますと思いますが、技術につきましては、これも同様でございますので、これまでに水銀法電解ソーダに関係する技術輸出がもしあったといたしますと、それはこの水銀の公害を防止するためのいわゆるクローズドシステム、これを指導するための技術だけというふうに承知いたしております。
  117. 岩垂寿喜男

    ○岩垂委員 その辺は、一体本当にクローズドシステムなのかどうなのか、まだ私自身もあいまいな点を持っておりますから、これからただしたいと思いますが、諸外国からたとえば水銀電解法のプラントの引き合いみたいなものは日本に対してあるのですか。
  118. 児玉幸治

    ○児玉説明員 具体的にどこがどうというふうには申し上げかねますけれども、引き合いはございまして、そういう引き合いにつきましては、私どもの日本の立場というものを説明いたしまして、これまでのところは了解をいただいております。
  119. 岩垂寿喜男

    ○岩垂委員 水銀電解法に関連をしまして、水銀は蒸発性が非常に強い、大気汚染の心配もある、それからもう一つは土壌汚染の問題、さらにはこれから問題になっていくであろうスクラップの処分の対策などなどについて、実は対策がほとんどないと言っていいのです。それらの問題について一体これからどのような形で対応していくのかということについての対応を、これは環境庁だろうと思いますが、お聞かせ願いたいと思います。
  120. 二瓶博

    ○二瓶政府委員 水質と土壌の関係につきまして、私よりお答えを申し上げます。  最初に土壌の方の関係でございます。土壌の面につきましては、環境庁におきまして四十八年度に全国環境調査というのをやったわけでございますが、その一環として苛性ソーダ製造工場九工場の周辺の水田土壌、これにつきまして実態調査を行ったわけでございます。その結果によりますと、調査対象四十地点、これのトータル水銀の濃度でございますけれども、平均で〇・四五ppmでございます。その際に、同時に比較対照しようということで一般の水田土壌のトータル水銀もはかりました。それは平均で〇・三三ppmでございます。したがいまして、両者の間にはほとんど差異が認められなかったということでございます。  それから、これは水質の方でございますが、五十一年度の水質調査結果がまとまっております。これによりますと、これは五十一年度でございますから、先ほど通産省の課長からお答えいたしましたように未転換工場が現在二十九ございます。その工場の排出水、それからその工場の周りの公共用水、これの水質、この両方について調べたわけでございますけれども、それぞれ排水基準、環境基準というものを下回っておるということになっております。  そういうことでございますので、ただいま土壌の方のお話がありましたけれども、結局土壌の方から雨水その他によりまして水銀も流れ出るということがあるわけでございますが、その流れ出ている工場周辺の水域の調査では環境基準は下回っておるということでございますので、その土壌の汚染に起因する周辺への環境汚染というものは特に問題がないというふうに見られるわけでございます。  以上、水質と土壌の関係をお答えいたしました。
  121. 岩垂寿喜男

    ○岩垂委員 クローズドシステムになったから安心だ、こういう見解があるわけですね。ところが、いま私が指摘したような水銀の持っている性格などを含めて見るとやはり心配があるわけであります。いま保全局長がおっしゃったように、全国の公共水域で測定をしたわけですが、私もそれを拝見してみると、アルキル水銀というのは環境基準はゼロですからゼロだったとか、総水銀は環境基準値を超えた検体はなかったとか、したがって安心なんだ、こう言っていますけれども、その測定データというのは、各調査地点のデータは公表できますか。
  122. 二瓶博

    ○二瓶政府委員 苛性ソーダ工場の排水水質についての水銀濃度、この面の調査結果の資料は、公表といいますか提出いたします。
  123. 岩垂寿喜男

    ○岩垂委員 さっき私が申し上げた報告書を拝見すると、クローズドシステム調査専門委員会調査結果に関連をいたしまして、「本調査結果を十分勘案のうえ、なお一層クローズド・システムの維持、徹底を図るよう指示する所存である。」とか、未転換の工場の「クローズド・システムの管理体制について報告させるとともに、各種管理項目についての測定結果を定期的に報告させることとする所存である。」とか述べているわけです。これは法律事項でもないわけですね。結果的に企業任せという感じを否めないと私は思うのです。これで実効が期待できるかどうか。また監視体制というものをどのように保障していくのかということについての見解をお述べいただきたいと思うのです。これは通産ですね。
  124. 児玉幸治

    ○児玉説明員 ただいまの先生の仰せになりましたコメントは、イオン交換膜法技術評価と一緒に昨年の十月末にクローズドシステム調査専門委員会報告に際しまして私どものいたしましたコメントでございまして、これを受けまして、昭和五十二年十月三十一日に通産省から、苛性ソーダの水銀電解法を持っております各企業に対しまして通達を出しております。その中で、クローズドシステムの管理体制、これは管理組織はどういうようにするとか、責任者はどう、具体的な管理方法はどう、あるいは管理項目とか測定項目につきまして細かく指示をいたしておりまして、これによりまして、クローズドシステムの維持、運営に遺憾なきようにいたしたいというふうに考えておるわけであります。  工場の外に出ます点につきましては、先ほど環境庁から御説明がございましたように、法律によります強制でいろいろな措置が講じてあるわけでございますが、その措置を一段と完全なものにするためには、やはり企業の中におきましてもそれに伴う体制が十分にできていることが必要だと私ども考えておるわけでございます。その点につきましては行政指導をもってやってまいりたいというふうに思いまして、昨年の十月末に基礎産業局としての通達を各企業に出したわけでございます。
  125. 岩垂寿喜男

    ○岩垂委員 監視体制がそれで十分かどうかということが一点と、それから引き続いて伺いますが、未転換工場の水銀含有産業廃棄物の最終処分方法というのはまとまっているのですか、それともまとまっていないのですか。どんな方法が指摘をされているのですか。これも含めて、これは環境庁になるのかな。
  126. 二瓶博

    ○二瓶政府委員 水銀を含みます産業廃棄物、これにつきましては、廃棄物処理法という法律がございまして、この法律におきましてその最終の処分につきまして一定の基準に適合すればいいわけですが、適合しない汚泥につきましては、コンクリート固型化をいたしまして遮断埋め立てをするというようなことにいたしておりまして、環境汚染が生じないように基準を設けておるところでございます。水銀電解法によって生じます微量の水銀を含む廃棄物、俗称塩水マッドというふうに言われておりますが、これについての処分につきましては、環境庁といたしましては、ただいま申し上げました廃棄物処理法の基準に従いまして適正に処分され、これに伴う環境汚染が生じないように今後とも通産省、厚生省関係省とも密接な連絡をとってやっていきたい、こういうような考えでございます。
  127. 岩垂寿喜男

    ○岩垂委員 まだ決まっていないのですね。
  128. 二瓶博

    ○二瓶政府委員 いえ、決まっております。捨て方の基準は、ただいま申し上げましたように一定の基準でございますが、これは決まっております。もう少し具体的に申し上げますと、水銀を含みます汚泥、これは塩水マッドということですから一種の汚泥でございますので、これの処分基準というのが決まっておりまして、一つは埋め立て処分をする場合と、もう一つは海洋投入処分をする場合と二色処分方法としては規定をいたしております。二つのやり方がございます。  そこで、まず埋め立て処分の方でございますが、これは判定基準というものがございまして、この判定基準は溶出試験値によりまして〇・〇〇五ppmでございます。それ以下というのが判定基準の物差しのラインでございまして、その判定基準以下に適合するものは、これは一般の埋め立て処分基準、有害ではないということで管理型と言っていますが、一般的な埋め立て処分基準に従って埋め立てをやる、こういう形になるわけでございます。ところが、先ほども申し上げましたように、この〇・〇〇五ミリグラム・パー・リットル、ppmと見てもらっていいのですが、これに適合しないものにつきましては、さらにこれを適合するように処理をしていただいて、その上でただいま申し上げましたような一般埋め立て処分基準に従って埋め立て処分をやっていただく。ところがこれがなかなか適合するように処理できない、そういうものはコンクリートで固型化をして今度は有害の埋め立て処分基準、これは先ほど申し上げましたように、コンクリートで固型化した上で遮断埋め立てということで、雨が降って水が入りましても外部に出ないようなかっこうの遮断埋め立てをやるということにしておるわけでございます。  それからもう一つは、海洋投入処分というやり方があるわけですが、これも先ほど言った判定基準に適合するもの、これは集中型排出方式ということで、集中的に捨てるわけですが、これはB海域でございます。そういうB海域というのが太平洋その他に特定してございますけれども、そこに捨ててもらうということです。それから、判定基準に適合しないものは、先ほど申し上げましたように、さらに無害化処理というものをやっていただいてB海域へと。それからもう一つは、焼きまして、そして判定基準に合うような燃えがら、ばいじんにしてこれはB海域に捨てる。それから焙焼しまして、また基準に合ったものはこれもまたB海域。要するに基準に合えばB海域。ところがどうしてもそういうことができなければ、コンクリート固型化いたしまして、これを今度はA海域ということで、相当深い海、海溝のようなところですが、そういうところに沈めるというやり方が具体的な処分方法でございます。
  129. 岩垂寿喜男

    ○岩垂委員 いまおっしゃったような形で処理をするということにはなったわけですが、昭和四十六年にたしか海洋汚染防止法ができて、その際、水銀化合物というのは二百マイル沖合いですか、A海域ですか、しかも固型化して投棄、こういうことになったわけですね。実は、海洋投棄の強度基準というものも決めたわけですけれども、どうも実態を聞いてみると、深海で強度がもたない、コンクリートがばらばらになる可能性というものもあるという懸念さえ指摘されている。つまり強度基準というものが果たしてまともであるかどうか。あるいはこれもちょっと変な話ですけれども、四十六年にA海域を決めておいて、その次の年の四十七年の二月には環境庁告示で指定水域を定めて、実は主なところを外してしまっているわけですね。この辺にもちょっと不明朗な感じがする。さらにそれに加えて、今度はその次の年ですか、総理府告示で有害物のいわば判定基準をつくって、事実上二重の手抜きをやっているのじゃないだろうか、業界はそういう対応をしているのですよ。たとえば四十六年に海洋汚染防止法ができて大変だなというような議論をしていたら、いや来年は指定水域ができるのだというような話がわかっている。こういう話を私は細かくやっている時間がないけれども、とにかくちょっとやり方が特定の企業におもねるというか、癒着というか、そういう行政の感じもなきにしもあらずと感じるわけです。こういう点はもう一遍そういう経過について明らかにしていただく機会を得るつもりですが、私どもそういう感じを持っているわけでございますので、これは私の発言にとどめておきますが、そのことに関連して、廃棄物その他の物の投棄による海洋汚染防止に関する条約が現に発効しています。日本はいつ批准なさるおつもりかどうか、この点について、これは外交畑出身の環境庁長官でございますので、見解を承っておきたいと思います。
  130. 二瓶博

    ○二瓶政府委員 ちょっと大臣の答弁の前に、私からやや事務的に申し上げます。  先生のおっしゃっておりますのは、例の俗称ダンピング条約と言われている条約かと思います。すでにこの海洋投棄規制の条約、これは発効されております。わが国はこれはまだ、署名はしましたが批准をいたしておらない、こういう段階に現在ございます。そこで、現在運輸省が中心に、もちろんこれは条約でございますから、外務省が大きな関係を持つわけでございますが、一応今国会に、できたらその条約を批准案件として出したい。ただ問題は、これを出す際には条約の批准に伴います国内法の整備ということが伴うわけでございます。したがいまして、同時に海洋汚染防止法等の一部改正、これも出そうかということで、現在外務省、運輸省、環境庁、厚生省、通産省、それから科学技術庁等々がいろいろその法案につきまして協議中、こういう段階でございます。
  131. 岩垂寿喜男

    ○岩垂委員 この条約というのは、水銀あるいは水銀化合物あるいは有機ハロゲン化合物あるいは一定条件のついた高レベルの放射性廃棄物のすべての海洋水域での投棄を無条件、全面的に禁止する、こういう条約でございます。残念なことに五年前、ロンドンでの海洋法会議で、日本はこの全面禁止に大変どうも抵抗なすっている。そして例外を設けてくれ、暫定的にしてくれというようなことを発言しているのです。カドミウムや水銀の日本における深刻な事態というものを政府当局、これは外務省かもしれませんけれども、知らないはずはないわけでありまして、そういう例外規定というものを求めてきた日本政府の態度というのは、水俣の教訓の中から一体何を学ぼうとしているのか、一体どこに政治のウエートを求めようとしているのかということを危惧していたわけですが、きょう初めて今国会に批准の決意を述べられました。その点では、私はぜひそういう点を環境庁として、これは外務省との関連がございますので、実は外務省呼んでいないので、あなたにお伺いするのは大変恐縮でございますけれども、そうした決意を長官からも承っておきたいと思うのです。
  132. 山田久就

    ○山田国務大臣 原則として環境問題における国際的な協力と連帯、これは非常に必要とされている基本的な点であろうと思っております。いま御指摘のものは、わが国における水銀等に関連しての過去の歴史等にかんがみて、一日も早くこれを国際化して、われわれがその責任を分担するということは当然必要なことであるし、目下われわれが今度はひとつそういうことでいきたいということで考えているということで、どうか御了承いただきたいと思います。
  133. 岩垂寿喜男

    ○岩垂委員 それじゃ水銀の問題はこのくらいにして、次に、総量規制の制度化のためのいわゆる水質汚濁防止法の一部改正について伺っておきたいと思います。  これは今国会で必ず御成立なさるのかどうか。特に三月十四日という期限が目前に来ていますが、今国会に提出をなさるおつもりかどうかという決意のほどを、そして準備はできているかどうかということを承っておきたいと思います。これは環境庁長官
  134. 山田久就

    ○山田国務大臣 この水質の総量規制につきましては、五十二年十二月九日の中公審の「水質の総量規制制度のあり方について」の御答申は御承知のとおりでございまして、現在は水質の総量規制制度のこの法案というものについてなるべく早く成案を得てということで、今国会に提出を目途にして目下努力中でございます。
  135. 岩垂寿喜男

    ○岩垂委員 アセスメントと同じように、目途は何回か発言をなさってさっぱり出てこないというようなことでは困りますので、この点はしかともう一遍確かめておきたいのです。やや技術的な問題がございますが、大体中公審の答申の筋で出すおつもりになっていらっしゃるのかどうか。環境庁として大体まとまっている段階を調整中だということに聞きますけれども、大綱をこの機会に明らかにしていただけますか。非常に大ざっぱで結構です。
  136. 二瓶博

    ○二瓶政府委員 ただいま長官からもお答え申し上げましたように、昨年の十二月九日に中央公害対策審議会から答申をちょうだいをいたしております。答申は当然尊重すべきものであるということでございますので、現在これを基礎にいたしまして、これに基づきまして法制化の作業を進めておるということでございます。したがいまして、細部は別といたしまして大筋のやり方は、この答申にあります物の考え方、骨子、こういうものに立脚して法案作業に取り組んでおる、こういうことでございます。
  137. 岩垂寿喜男

    ○岩垂委員 これは当然生活排水の削減を含む総量規制ですね。答申に書いてあります。もし生活排水を取り込むということになれば、下水道整備計画を含めた法律にしないと意味がないと思うのですが、つまり水質汚濁防止法第一条の問題との兼ね合いというのはどんな調整の過程にあるのか、この際承っておきたいと思います。
  138. 二瓶博

    ○二瓶政府委員 総量規制の物の考え方としては、答申にもございますように特定の閉鎖性水域、これに流入をいたします汚濁源のすべて、一次汚濁と言われますが、流入をいたします汚濁源すべてを対象にして、トータルシステムとして削減をやっていこう、一定量以下に抑えていこう、こういう物の考え方でございます。したがいまして、ただいま先生からお話がございましたように、単に工場排水のみならず生活系の排水というものは当然対象にしていくということでございます。その際に、いまお尋ねの生活排水の対策ということになりますと、これは下水道の整備とかあるいは屎尿処理施設の整備とか、こういうものが関連を持ってくることはそのとおりでございます。  ただ問題は、その総量規制といいますか、これで考えます際には、たとえば東京湾であれば一日当たりCODの流入負荷量が四百トンなら四百トンというかっこうのもので考えるわけでございます。したがいまして、その下水道の整備という形の計画というのは、当然これは建設省の方で所要予算もとりまして、下水道の整備をやっておられるわけでございます。したがいまして、そういう下水道の整備によって生活系排水のCOD、これが流入する面がどの程度減るかというCODをこちらでもってとらえていく、こういう姿でございます。したがいまして、下水道整備計画そのものが、総量削減の計画だとかいうものの中にストレートに全部入ってくるというわけではないわけでございます。  それからまた、いやそれはそうだが、それに関連して、CODがこう減るのであれば、それは下水道がどのぐらい伸びるからそうなるのかね、という問題も出てくるのですが、それは建設省の方でいろいろ現在も第四次下水道整備計画なりということで下水道整備を進めておりますので、その辺のデータ等もちょうだいをして、それではめ込んでいくということではなかろうかということでございます。したがいまして、そういう下水道の整備という、物の整備計画は別にございますが、それとともに総量規制の場合には、ある目標年度までにCODが東京湾に流入するのをどの辺ぐらいまでにしたらいいかという、CODというものに着目したかっこうでの削減のめどというものを立てていきたいということでございます。  それから、ただいま水濁法の第一条の「目的」、この辺の段階でどうなるのかというお尋ねでございますが、あの「目的」の面では、工場、事業場のほかに「等」という言葉も入っております。したがいまして、現段階において、まだ検討過程でございますけれども、第一条の「目的」そのものも直すというところまでやる必要はないではないか。目下まだ作業中でございますから、直にまともに、いまの水濁法の「目的」以下を全面的に直す必要はないのではないかという感触で現在作業中ということでございます。
  139. 岩垂寿喜男

    ○岩垂委員 また後でそれは伺いますが、水域あるいは上流県という問題、当然瀬戸内海の経験から見てもあるわけですけれども、東京湾について言えば上流県の埼玉を含めるのか含めないのか、瀬戸内海について言えば京都や奈良を含めるのか含めないのか、伊勢湾について言えば岐阜県を含めるのか含めないのか、そういう問題も含めて地方自治体と調整が進んでいるかどうか、これが一点。  それから、琵琶湖や諏訪湖という問題がありますが、これらの問題はどのようにお考えになっていらっしゃるのか。  それからついでと言っては恐縮ですが、東京湾の場合は、公害防止計画にある、あれはたしか館山市洲崎ですか、それから三浦市の剣崎までを引いた線及び陸岸に囲まれた海域プラス埼玉ということになるのですか。そういう水域及び上流県という押さえ方、これは一つの例ですが、そのように理解してよろしいかどうか、承っておきたいと思います。
  140. 二瓶博

    ○二瓶政府委員 東京湾なら東京湾へ流入するCODの汚濁負荷量を、ある目標年度に一定量以下にしたいということですが、その際に、臨海からではなしに河川を通じて流入するものがあるわけでございます。そこで、どうしても東京湾なら東京湾の水質をよくするためには、上流県等内陸部から河川を通じて流入しますもの、これも対象にいたしませんと総量規制という仕組みが成り立たないのではないか、こういう物の考え方でございます。その際に、東京湾であれば埼玉県、伊勢湾であれば岐阜県、それから瀬戸内海であれば京都、奈良というのが一応上流県として考えられるわけでございます。  問題は、現時点においてそういう埼玉県なり岐阜県なりとその辺の話はついておるのかというお尋ねでございますが、まだつけてございません。むしろそういう制度というものを仕組みたいということでございますので、その辺も固めた上で、具体的に入るか入らぬか、うちの方としては、総量規制の物の考え方からすれば、極力これは入れていきたいと思っておりますが、いろいろ県民感情、県の物の考え方もございましょうし、そこは一方的に対象地域としてここだというわけには簡単にはいかぬと思います。そこはやはりそういう物の考え方の制度国会でもお認めをいただきまして、そしてそういう考え方に立脚してひとつ御協力を願うということで具体的に話を詰めていくことになるのではないか、こう思っております。  それから第二点は、琵琶湖とか諏訪湖とかはどうか。当面考えておりますのは瀬戸内海、東京湾、伊勢湾という海域でありますが、琵琶湖とか諏訪湖とかあるいは霞ケ浦とかいう湖沼関係がどうなるかという問題が当然あるわけでございます。これにつきましては、今後一体そういう湖沼関係を閉鎖性水域ということでとらまえていくのかどうか、これは削減計画その他についても国が相当強く関与する姿になります。したがいまして、この総量規制のやり方について、一体どこまで地方公共団体にだけお任せしていいものか、国がある程度関与して総量規制制度ということでやっていくべきものなのか、その辺の線の引き方といいますか、物の考え方との兼ね合いもございますので、さらに検討させていただきたい。当面考えているのは東京湾、伊勢湾、瀬戸内海でございます。  それから第三点は、その公防計画との関連で、たとえば東京湾といった場合の水域は、館山の洲崎から等という範囲なのか、埼玉などを入れた線かということになりますが、これは東京湾が指定水域になります際に、東京湾というのはどこまでかというのは、いまの考えでは政令か何かで決めることになると思います。したがって、そのときに東京湾はどの広がりになるかというのを決めますし、また、東京湾に汚濁を流し込むということで総量規制の網をかぶせるべき地域、こうなってくると、埼玉県や何やらが問題になるわけでありますが、そういうものはどこからどこまでかということは、これまた政令か何かでやってはどうかと思っているわけですが、具体的にはその政令のときに決める、こういうことになろうかと思います。そんな方向でいま検討中ということでございます。
  141. 岩垂寿喜男

    ○岩垂委員 埼玉を入れるときには法律を変えなければいけませんね。関係ございませんか。
  142. 二瓶博

    ○二瓶政府委員 法律を変えるといいますか、要するに、水質汚濁防止法の改正は当然にやろうかと思っておるのであります。それは、総量規制というのがいまの濃度規制と全く変わったものでございますから、その際にそういう仕組み方も全部織り込むという方向で現在検討中でございます。
  143. 岩垂寿喜男

    ○岩垂委員 目標年次というのは大体どのくらいになっているのか。何か承るところによると五年後、五十九年。ことし法律が通った場合の想定ですが、その目標は、中間目標総量というのを答申の中で指摘をされているのですけれども、これはちょっと問題があるのじゃないだろうか。なぜ環境基準達成を目指す総量という目標にしないのかということについて疑問を提起せざるを得ないのです。環境庁は環境基準というのは行政上の目標であるという考え方あるいは立場を貫く御決意があるのかどうか、ここのところはしっかりひとつ答えておいていただきたいと思います。
  144. 二瓶博

    ○二瓶政府委員 環境基準は、公害対策基本法第九条にも書いてございますように、これの達成維持というのが行政目標でございます。したがいまして、環境庁といたしましては、水質の環境基準につきましては、これは達成維持すべきものということで、今後ともあらゆる努力、施策等を集中しまして達成に努めていきたいという考えでございます。  その際に、従来環境基準の維持達成ということで一律の排出基準のほかに、条例によります上乗せ基準をかけるとか、あるいは公防計画によりましていろいろやるとか、いろいろなことをやってまいっておるわけでございますが、閉鎖性水域などは環境基準の維持達成がなかなか右から左にまいらぬ、そこで総量規制という新方式もさらに加えていきたい、そして環境基準の維持達成というものに向かって着実に現実的なアプローチをやっていきたいという物の考え方でございます。したがいまして、総量規制をやります際に、ただいまお話がございましたように、審議会でもいろいろ御検討いただいた際、五年後くらいに目標を考えてみたらどうかとか、いきなり五年後と言われても無理だからその中間に中間目標を置いたらどうかというような話が当然ございます。  ただ問題は、いずれにいたしましても、環境基準の達成維持というのが究極的な目標、これはあくまでもその考え方でございますので、それに向かって当面の目標なり中間目標なりを置きながらアプローチ、接近していく、こういう考え方でございます。
  145. 岩垂寿喜男

    ○岩垂委員 いままでの政府の対応というのは、環境基準というのは昭和五十六年に達成すると書いてございます。それに基づいて各県に対していわば割り当てをしたり、その措置を公防計画という形の中で決めてきたわけです。また去年の五月十六日ですか、環境保全長期計画を読んでみましても、「水質汚濁対策」の中には「産業排水及び生活排水をあわせたCODの潜在発生量は増加していくが、五十五年においておおむね環境基準を達成し、更に」こう書いてある。環境基準の達成は昭和五十六年に確信を持って実現できるかどうか、環境庁の見解を承りたいと思います。
  146. 二瓶博

    ○二瓶政府委員 環境基準の達成維持、これが目標であるということでございまして、これに対して上乗せ排出基準なりあるいは公防計画での措置なりをやってまいっておるわけですが、ただ、非常に広域的な閉鎖的な水域につきましては、確かに現実がなかなか厳しゅうございまして、いろいろ努力しておりますが、全面的な達成維持は非常に困難である。したがいまして、困難であるからといって手をこまねくわけにはまいりませんので、さらに新兵器といたしまして総量規制というものを新しい行政手法として戦列に加えたい、こういう物の考え方でございます。  したがいまして、五十六年に達成するかどうかという問題につきましては、非常に現実が厳しいということからすると、達成すると胸張るわけにはまいらぬと思います。したいとは思いますが、むずかしいという情勢でございます。したがいまして、総量規制という新兵器を投入いたしまして、極力そういう面でさらに維持達成に向かって邁進したいということでございます。
  147. 岩垂寿喜男

    ○岩垂委員 いまの総量規則という新兵器を導入してみても、この法律が目指している目標が五年後くらいという判断ですね、そうすると、環境基準の達成は、当初目指してまいりました五十六年というテンポでは事実上間に合わないということを指摘をせざるを得ない、そのように理解をしていいですか、気持ちは別として。
  148. 二瓶博

    ○二瓶政府委員 五十六年の達成維持ということは非常に困難でございます。
  149. 岩垂寿喜男

    ○岩垂委員 それに関連して、環境基準の策定と、これは実は万能薬ではないにしても下水道計画というものが整合してないですね。ここに一つの基本があるのです。たとえば、幾ら負荷量を数字で示して、それを自治体に押しつけてみたところで、自治体としてはそれの整合性がなければどうにもならぬのが現実ではないだろうかという感じがするわけです。だから、下水道計画あるいは下水道の整備についてもっと環境庁は強くならなければいかぬ、こういうことを私どもは感ずるわけでございますけれども、現実はそうなっていない。とすると、どうも環境庁の方が環境基準の旗をおろすわけにいかないから、自治体側で旗をおろすのを待っているみたいな感じに受け取らざるを得ない面がある。その上に総量規制が自治体任せみたいな形になっていくとすれば、いままでやってきた道、いつか来た道でございまして、そういう点について、下水道計画との整合性という問題を環境庁はどのようにお考えになっていらっしゃるか、この機会にきちんと示していただきたいと思います。
  150. 二瓶博

    ○二瓶政府委員 下水道整備につきましては、これは建設省の方で所管をしてやっておられるわけでございますが、この下水道というものが生活排水対策の根幹的な事業でございます。したがいまして、水質の改善という面での効果が非常に大きいわけでございます。それで流総計画等につきましても、これは環境基準というものの達成維持ということを目標にして建設省の方で計画等を立てておられるわけでございます。したがいまして、環境基準の維持達成という面につきましては、先ほども申し上げましたように、それを目指して排水規制の強化なり、今度は新たに総量規制という新兵器も入れる、下水道整備の方もやっていくということで、いろいろな対策、負荷量の削減の措置というものを総合的に講じて、環境基準の達成維持に向かっていくということであろうかと思っております。したがいまして、下水道整備計画といいますか、そういう物の考え方、これは建設省の方から公式にお話があろうかとも思いますが、それも、そういう環境基準の維持達成の一つの、特に生活系排水面での有力な手だてとして推進をされておる。全体的には、いま言いましたように、下水道整備なりあるいは工場排水の規制なりあるいは今回総量規制なり公防計画なり、総合的にいろいろな施策をやっていく、こういう姿でございます。
  151. 岩垂寿喜男

    ○岩垂委員 建設省にこれだけ聞くのはあれですが、御出席を煩わしておりますから……。  いまの答弁に関連をいたしまして中公審の答申を見ると、総量規制を導入するに際して留意すべき条件ということで、「総量規制の及ぶ地域については、下水道の緊急かつ重点的な整備を促進する必要がある。」このように書いてございます。率直に伺いますが、指定地域への下水道予算の傾斜配分というような問題は、今年度予算編成の過程、あるいはこれから以降もどのようにお考えになっていらっしゃるのか、またどのように配慮なさってこられたのか承っておきたいと思います。
  152. 玉木勉

    ○玉木説明員 総量規制の適用が予定されております地域の下水道事業につきましては、水質環境基準の達成という上からも特に緊急に実施すべきものであると考えております。したがいまして、従来からも重点的に実施をしているところでございますが、今後とも必要な事業費の確保について十分に配慮してまいりたいと考えております。
  153. 岩垂寿喜男

    ○岩垂委員 結局、第四次下水道整備計画を見ても、つまるところ、いま全国平均で見ると普及率四〇ですか、これじゃとてもじゃないけれども、特に閉鎖性水域の環境基準の達成は困難だと言わざるを得ません。だから、そういうスケジュールとは違ってというのは言い方がちょっと変ですけれども、やはりそういうところへ重点的に配慮していかないと、ますます汚染の度合いがひどくなっていく。むしろきれいになっていくよりも汚くなってしまう、こうなってくるわけでございますから、ぜひこの点にこれからも建設省は力を入れていかなければならぬ、このように思っています。  それに関連をして、もうすでに第四次下水道計画の後の問題についても議論が深まっていると思いますが、その点についての討論の経過なり、方向なりというものをお示し願えれば、示していただきたいと思います。
  154. 玉木勉

    ○玉木説明員 ただいま下水道整備は第四次五カ年計画によって進められておるわけでございますが、先生御指摘のように、この五カ年計画では水質環境基準が目標どおり達成できない水域もあるわけでございます。今後、下水道水質環境基準を達成するために、次の計画におきましては、こういった水質環境基準の達成等を配慮いたしまして、事業費の拡大に努めてまいりたいと考えております。
  155. 岩垂寿喜男

    ○岩垂委員 もう時間がかなりたって、あと十二分ぐらいですから、できるだけしぼります。  総量規制の導入に関連して、関連してということよりも前提だと私は思うのですけれども、水質汚濁について、排水というか出てくる水と、いわゆる環境といいましょうか、それとの因果関係、これはたとえば拡散とか希釈とか自浄作用その他いろいろあるわけですが、そういう因果関係を明らかにして水質保全のメカニズムというものを解明しないと、汚染と環境というものがどうもすっきりかみ合ってこない、こんな感じがしてなりません。  そこで、結局、昭和三十年ころに戻せばいいのだ、こういうような議論になってしまう。必ずしも科学的でない。そういう意味では水質汚濁と、自然といいましょうか環境といいましょうか、それとの因果関係というものをもう少しただしていくために、中公審などでそれこそ予算をかけて専門家を結集してやっていかないと前提条件が完備されないのではないか、こんな感じを持ちます。これについてどのように思うか。  まとめて質問をしてしまいますが、今度の場合はCODですけれども、BODで規制をしている枠もあるわけです。それから問題になっているTODとかTOCというような問題についても、一体どのようにとらえられているのか。これらの問題についても、いままでの研究の過程について少し聞いておきたいと思うのです。  それから、CODとかSSとか、そういうとらえ方はあるのですが、たとえば言葉として生物指標とでも言いましょうかね、これは同志社の小林先生などが言っているのですけれども、水質汚濁によって影響を受ける動物、何かウニの卵らしいのですが、それを決めて全体としての汚染という問題をとらえていく、そういうとらえ方をしなければならないときが来ているのじゃないか。たとえば昨年瀬戸内海で、石原環境庁長官が船の上で、目標のとおりにCODが半分になったと言って演説しているその直後に赤潮が発生して、どうなっているのだというような議論になった経過があるわけですけれども、そういう問題点を含めて、この際、その対応を環境庁はどのようにお考えになっていらっしゃるか。  それから、総量規制に関連をして、燐や窒素の問題について、一体その枠組みをどのように思っていらっしゃるかということを含めて、これはちょっとまとめて答弁を煩わしたいと思います。
  156. 二瓶博

    ○二瓶政府委員 まず、総量規制でございますので、一応東京湾なら東京湾のCODの流入総量がどうなっておるか、あるいは目標をたとえば五年後なら五年後というふうに見た場合に、その時点において目標とする一日当たりのCODの総量をどう見るかということがあるわけでございます。  そういうことで、現状は五百トン、ほうっておけば将来は六百トンになる、それをさらに減らして三百五十トンにするとかいうような一応の数字を出して、それに向かって削減努力をしていくということでございます。ただいま先生からお話がございましたように、上流県と内陸部の河川を通じて流入するものがあるわけでございます。したがいまして、上流でどのぐらい発生して、それが河川の浄化作用等によって東京湾にたどり着くときにはどのぐらい減るか一流達率と言いますが、こういう流達率をどう見るかという問題は、確かに御指摘のようにあるわけでございます。これらの面につきましては、この総量規制制度が法制化されて、さらに具体的に行政として実施をしていく過程におきまして、中公審等の先生方にも十分御相談をしながら適正なものにして、そういうCODの負荷量というものを出す際にも適正妥当な数字をはじきたい、こう思っておるわけでございます。  第二点は、現在有機汚濁の指標といたしまして、海域と湖沼につきましてはCOD、河川につきましてはBOD、こういうものを採用いたしておるわけでございます。そこで、今回総量規制を実施いたします際は、ただいま申し上げましたように、東京湾に流入するCODが一日当たり幾らということでございますから、河川から流れ込むものもCODではからなければならぬわけでございます。したがいまして、現在河川に排水をしております工場につきましては濃度基準が適用されておりますし、環境基準もBODで当てはめられておりますから、当然BODでまずはかるということがございます。それにさらに加えましてCODもはかっていただく、オンするわけでございます。臨海の方はもうCOD一つでいい、そういうことになろうかと思っております。そういう方向で検討いたしております。その際に、ただいま先生から、いや、COD、BODというのがあるが、そのほかに有機汚濁なりの指標として、最近はTOCとかTODとかというようなものが非常にその後の化学的知見なりその他で進んできておる、こういうものを一体どうする気かということがあるのでございますが、私たちの方としては、いま有機汚濁の指標として河川がBOD、海域、湖沼がCODとやっておりますので、さらに、これにTOCとTODを加えて有機汚濁の指標を四つにするのは複雑怪奇になりますので、四つまでつくる必要はない。相変わらずいまのBODとCODでよろしいのではないか。  ただ問題は、今度CODでもってはかっていただくわけでございますが、CODというのは自動連続で測定できないのでございます。ところが、先生がただいま御指摘のTOC、TODは、これは自動連続の測定が可能でございます。しかも、同じ有機汚濁の指標でございますから、それは多少の差はございますが、CODとの相関関係が非常に高うございます。したがいまして、ある工場でCODを直にはかるよりは、むしろこのTOC、TODをはかって、それで換算してCODを出すということができないかということについては、そういう代替措置といいますか、CODを直にはからずに、自動連続測定のできるTOC、TOD、これを使うということも認めたらよろしいのではないかということで、目下そういう方向で一応検討いたしております。きわめて専門的な話でもございますので、この辺はさらに中公審の先生方の御意見も伺って最後的に決めたいと思いますが、そういう方向で検討いたしております。  それから第三点は、生物指標の関係でございます。水質の汚濁という角度でCODだとかSSだとかいう項目ではかっておるわけでございますけれども、現実の水質というのは、いろいろな複合汚濁といいますか、そういう姿に現になっておる。その際に、そういう理化学的といいますか、そういう指標だけでなしに、むしろ生物的指標、ただいま先生のお話で、同志社大学の小林先生が、ウニの卵というようなもので判断するというようなこともどうかということなんで、これは非常に注目すべき問題でございますので、環境庁の方もいろいろな調査費等もとりまして、瀬戸内海においてやはりウニを使ってやったり、フジツボを使ってやったり、いろいろなことをやっております。  ただ問題は、これをいろいろな水質汚濁の指標ということで行政的に採用をするということにつきましては、まだまだこれは詰めなければならぬ問題もあろうかと思っております。したがいまして、やはりCODとかSSとかいう理化学的な面でやっておりますが、他面ただいま先生おっしゃるように、この生物的指標は、確かにそういう面もございますから、これは研究といいますか、調査はしていきたい、こう思っております。  最後に、第四点といたしましてN、Pの問題でございます。先ほどもお話ございましたように、瀬戸内海がきれいになったということで、この前、去年の八月二十二日に船上会議をやったわけでございますが、それから一週間後の八月の二十八日未明に引田沖で大規模赤潮が発生いたしまして、ハマチが白い腹を浮かして斃死をしたという現実が確かにございます。したがいまして、CODの面できれいになった、だから海はきれいになったと簡単に言えるかと言えば、それほど簡単なものではない。したがいまして、CODも総量規制等を投入しましてよくしたいと思っておりますが、さらに燐、窒素の問題、これには取り組んでいく必要があるという認識に立っております。  そこで、一つは、この燐と窒素が、それだったらどうやって削減できるかということですが、技術的な問題といたしまして、窒素の方は大気固定とかいろんな問題がございまして、率直に申しまして、まだ実用化のめどが立っておりません。ただ、燐の方につきましては、削減技術の面につきましては相当実用化のめどが立っております。したがいまして、五十三年度の予算におきましては、特に燐の方に焦点を置きまして、環境ガイドラインなりあるいは排水処理技術のガイドライン、こういうものの策定の調査に五十三年度から取り組んでいきたいということで、現在御審議いただいております予算案にも所要予算を一応計上してございます。  それからもう一つは、瀬戸内海で赤潮が出た、跡継ぎ法をこれから出すのだと言っていて、一体跡継ぎ法では、富栄養化対策といいますか、これは何も考えないのかということになろうかと思いますが、いままだ検討中でございますから断定的なことは何も申し上げかねますけれども、ただ、いまいろいろ検討している環境庁の担当局といたしましては、富栄養化の防止対策ということで、燐の削減につきまして、現実的には行政指導でやらざるを得ないと思いますが、何かその足がかりの規定を後継法に盛り込みたいということで、そういう方向で現在鋭意検討を進めているということでございます。
  157. 岩垂寿喜男

    ○岩垂委員 これはちょっと予算で見たのですが、かけ離れて恐縮ですが、横須賀港で、ミッドウェーを初めとするアメリカの艦船のたれ流し、ごみなど、社会問題になりましたね。いま環境庁の予算を拝見すると、在日米軍施設区域周辺環境保全対策費というのが組まれていますが、横須賀に対して、実はきょうもミッドウェーが入ったのですが、ミッドウェーだけじゃないのですけれども、アメリカの艦船、これが水質汚濁させたりあるいはごみを捨てたりという状態があるわけです。これは御存じのとおりです。これに対してどんな予算措置をとられたのか、このことをちょっと伺っておきたいと思うのです。
  158. 二瓶博

    ○二瓶政府委員 ただいま先生からお話ございますように、米軍の横須賀基地、これから汚水が出たり、空母ミッドウェーが入りますと、これは四千人の乗員がおりまして、この屎尿等がたれ流しになるわけでございます。したがいまして、これはわが国の法令の基準に照らしますと、まさに適合しておらないわけでございます。したがいまして、かねてから日本国の法令は適用になりませんけれども、日本国の法令は尊重してもらいたいということで、強く米軍側に申し入れもしており、また、現に日米合同委員会の下部機構といたしまして、環境分科委員会というのも最近つくりました。最近といいますか、去年になりますが、つくりまして、そこでも、開催しながら、その辺の要請等も行っておるわけでございます。  なお、ただいま、来年度予算にあるようだがというお話でございますが、五十三年度に新規予算といたしまして、こういう横須賀、それから沖縄は当然入りますが、この面につきましても、米軍施設区域周辺の環境保全対策費ということで五百九十万ほどのささやかな金ではございますが、一応予算を計上してございます。したがいまして、これは一応予算でございますから、この中で、ただいまの横須賀の関係にどのぐらい一体振り分けるかということは、これはまた外務省なりその他の関係もございます。沖繩であれば沖繩開発庁の関係もございますから、今後その辺ともよく打ち合わせて、余すことのないように、大した金ではございませんから使いたい、こう思っております。
  159. 岩垂寿喜男

    ○岩垂委員 市民に非常に大きな迷惑をかけている。もちろんそれはアメリカが負担すべき問題だろうと思うのですけれども、現実に被害を受けている市民にしてみれば何とかしてほしい、こうなるわけですから、この金額ではどうにもならぬが、ぜひその点についての積極的な対応を急いでやっていただくよう期待をしたいと思います。  これで質問を終わりますけれども、三、四年前でしょうか、瀬戸内海に関連いたしまして、東京湾の環境保全特別措置法を議員立法でやろうじゃないかということを、私、各党の先生方にも多少お話をしながら、作業をしようと思ったことがございます。そうしたら、途中で田中覚先生が、当時は自民党だったのですが、いや、東京湾だけじゃなくて伊勢湾も加えようじゃないかという話になって、瀬戸内海の経験に徴して東京湾なりあるいは伊勢湾なりというものの特別立法を考えようと、超党派で話をしてきた経過があるのです。そうしたら、当時の水質保全局長をやっていた大場さんから、それは結構だけれども、環境庁としては水質汚濁防止法を改正して地域指定という形で網をかぶせていくつもりでいるのだという話を聞いたものだから、それじゃ、途中だけれどもということでそっちの方にその努力を期待してきた、これがいきさつでございます。もちろん、環境庁が独自にそのようにおやりになってきたことはそうだろうと思うのですけれども、そういう意味から言うと、ちょっと時間が遅過ぎる。今度の国会でまた出さぬというようなことになると――この法律内容については、まだ私は幾つか問題点を持っています。本当に水質をよくしていく方向ではなくて、要するに監視だけじゃないかというような感じもするわけですけれども、それはそれとしていま承ったわけでございますから、どうかその点で今度の国会に出していく、そしてできるだけ早い機会に法律の網をかぶせていく、こういうことをこの際ぜひお願いしたいと思うのです。  最初、五月に成立をしてなんというような目標を環境庁はお立てになっていたようなことも聞いています。どうか知りませんけれども、アセスメントみたいにならぬように、いつもいつも環境庁はそのつもりでいたのだけれども、どうにも調整がつかなくてまた見送りというようなことのないようにしてほしいと思うのですが、環境庁長官、もう時間も迫っておりますので、逃げるのじゃなくて、どうなさるおつもりか、決意をもう一遍確かめて、私の質問を終わりたいと思います。
  160. 山田久就

    ○山田国務大臣 水というものが生活環境の上から言って重要な役割りをなしていることは、御承知のとおりでございます。したがって、水質の汚濁を防いできれいな水の保持に努める、この基本的目標のためにどうしてもこれにみんなが努力を払っていくという体制をとにかく整えたい、ここに非常に重点があることを御理解いただきたいと思うのです。  先ほど御指摘がございましたように、実際の問題としては、実は汚濁負荷の重要な要因をなしております家庭排水というものがいわば野放しと言ってはあれですけれども、下水道が整備されない限りはそういうような状況になっておる。にもかかわらず、これを単に低めるということになりますと、この方面を所管しております行政をこの方向に向かっての体制でどの範囲で共同歩調の中に入れ得るかというような点、これは別に右顧左べんというのじゃなくて、実際問題として、いまのような重点が野放しになっているというようなことから見てむずかしい点があるということは御理解いただきたいと思うのです。私が申し上げましたように、全般の汚濁負荷というものを少なくしていくということに向かっての体制をここでできるだけ整えていくということのために、とにかく何とかして足並みをそろえ得る点ではそろえて、この全般の体制を整える上で、今度の総量規制ということでこの機会に何とか出したいということで努力をしているわけでございまして、実際のむずかしさと方向についての決意、どうか御理解いただきたいと思います。
  161. 岩垂寿喜男

    ○岩垂委員 ありがとうございました。
  162. 始関伊平

    始関委員長 上原康助君。
  163. 上原康助

    ○上原委員 私は、最初に法案について若干お尋ねをさせていただいて、さらに二点目にCTS関係と沖繩県金武湾一帯の汚染問題についていろいろ関係御当局の対策なり御見解を賜ってみたいと思うのです。そして、最後に、環境庁がいまお骨折りをいただいておるやに聞いております西表の環境保全の問題とイリオモテヤマネコの保護の問題等についてもお尋ねしますので、環境庁長官を初め、関係者の誠意ある御答弁を求めたいと存じます。  そこで、最初に、提出されました法案について若干お尋ねをいたします。  すでに各先生方からいろいろとお尋ねもありましたし、中には繰り返しになって恐縮な面もあるかと思うのですが、まずこの法案の内容を見てみますと、確かに公害の原点とも言われております水俣病患者の皆さんの長い間の苦悩のお立場を理解して、治療面を初め、できるだけ健康回復をさせていく立場でこの種の研究センターが必要であるということは、どなたも否定はしないと思うのですね。ある面ではむしろ遅きに失したと言っても言い過ぎではないと思うのです。そこで、提案理由などを引用するまでもないのでありますが、要するに「国において水俣病に関する医学的調査及び研究を総合的、積極的に実施することが必要であると考え、今回、この法律案を提出した次第であります。」ごもっともだと思うのです。しかし、いろいろ承るところによりますと、当初環境庁がお考えになっておった構想より大分後退をしたというのが一般的な見方であり、その面では患者の皆さんを初め水俣市や関係者に対して非常な不満といいますかショックを与えているということもすでに指摘がありました。  そこで、どうしてこのように当初計画より大幅に後退せざるを得ない研究センターになったのか、そこいらのいきさつについていま少し環境庁というお立場でぜひ明確にしておいていただきたいと思います。
  164. 山本宜正

    山本(宜)政府委員 先生承知のように、当初四十八年に、当時の三木長官が現地に行かれまして、患者さんからのいろいろの訴えをもとにいたしまして総合的な研究センターをつくりたいというような非常に大きい構想を持っておられたわけでございますけれども、それを具体化するために四十九年から五十年度にかけまして、現地の事情をよく御存じの県知事あるいは水俣市長さらには熊本大学の医学部長水俣市民病院の院長あるいは学識経験者としての大学の教授というような方々の御検討をいただき、かつまた水俣地域医療需要、要するにどの程度患者さんあるいはそのほかの医療の需要があるか、こういったような調査を踏まえまして実は計画を立てたわけでございます。したがいまして、現在予算等で御審議いただいております五十三年度の予算といたしましては、定員八名の六カ月ということで発足するわけでございますけれども、敷地といたしましては約二万二千七百平米、本館の建物としては三千五百五十平米というような規模を持っておりますし、こういった研究につきましては一挙にということよりも、むしろじみちに着々と内容を拡大していこうというような構想でおるわけでございまして、五十三年度の様子につきましては、当初の考えよりも一見貧弱な形に見えますが、将来計画としてはいま少し内容充実したものへと努力をしてまいりたい、かように思っておるわけでございます。
  165. 上原康助

    ○上原委員 もちろんこの種の研究機関というものは、特に医学的にもあるいはまたその他の面においても、事業を整える面でも大変むずかしい関係、関連もいろいろとあると思いますので、当初から充実をするということは理想ではあってもなかなか容易でないということは、お述べになったとおりかと思うのです。しかし指摘をしておかなければいかないことは、ややもすると、この種の研究機関なりセンターというものが単に学問上の研究機関になったり、あるいは患者さんたちの健康回復とか治療とか療養とか、そういう面にはウエートが置かれないことになってもいかないと思うのですね。最も肝心なことは、長い間水俣病で苦しんでおられる方々治療、療養やあるいは健康回復というものをどうやっていくかということに重点を置いていかねばいかないと思いますし、そういう面では厚生省との関係、また特にリハビリテーションとか治療、療養という面はこの研究センターには残念ながら加味されていない、これが大きな欠陥だと思うのですね。ここいらの点は一体将来計画とじてどのようにお考えになっておられるのか、この件についてもせんだってわが党の馬場昇先生からいろいろと実情を踏まえながら御指摘等もありましたが、改めて御見解を承っておきたいと思います。
  166. 山本宜正

    山本(宜)政府委員 先生先ほどのお尋ねにもございましたように、確かに遅きに失したかと思いますが、国のレベルにおきましてこういった機関を設け、それもまた現地にこれを置いたというところに問題の焦点である水俣研究に大変役立つものと考えております。と申しますのは、水俣病というのは御承知のように熊本県の水俣、芦北、鹿児島県の出水地方あるいは新潟県の阿賀野川下流という二つの地域でのみ現存しておりますし、そういう意味で、この水俣に置きました意味では、患者さんに近いところでの研究の役立ち方ということに期待をしているわけでございます。  お尋ね厚生省との関係あるいは医療についての入院等の施設を設けないかという点でございますが、これは先生現地の事情をよく御存じのことと思いますけれども、今度の研究センターができておりますのが水俣市から湯ノ児の温泉の方へ行く山の上でございますが、その温泉側の方の中腹にはリハビリテーションの大きな施設がございまして、その中には御承知のように、現在もかなりの数の水俣病患者さんが入院しておりますし、また検診等につきましては、水俣の市内にございます市立病院の敷地内に県の検診センターができております。また、この施設へ通うためのマイクロバスというようなことも予定として考えておるわけでございます。  また、厚生省あるいは医科大学との関係でございますが、この研究センター研究に従事していただく方々は、現に熊本大学あるいは新潟大学、鹿児島大学等水俣病についての研究専門家方々から来ていただくなりあるいは応援をいただくなりということももちろん考えておるわけでございますが、さらには全国的な視野に立ちまして、もっとできるならば大きい構想といたしましては、世界的視野に立ちましてのこの方面への学問研究の人たちにいわゆる流動研究員というような形で研究協力をしていただこう、かような考え方を持っておりまして、そういった方法をとることによっての将来の研究の発展を期待しているわけでございます。
  167. 上原康助

    ○上原委員 それでこれは長官からちょっとお答えいただきたいのですが、いま事務当局からいろいろございましたように、将来計画といいますか、今後厚生省との関係なども深めながらやっていきたい、さらにまた、医療部門についてもできるだけ充実をさせていく一つのステップと考えておられるという趣旨の御答弁だと思うのですが、実際問題として、これからこれだけではとても不十分だというのはどなたも否定なさらないと思うのですね、この程度の研究センターでは。  そこで、当初四十名とかあるいは三十名規模の陣容を持ちたいという御計画のようだったと思うのですが、少なくともそういう規模に到達をさせていくには、今後一体どの程度のことをお考えになっておられるかということ。いま一つは、今度のこの研究機関、研究センター設置をすることによって、患者認定問題あるいはその他いろいろあると思うのですが、そういう面も促進をされるという確約ができるのかどうか。具体的に言って、水俣病患者の皆さんにどれだけのメリットというものがこの対策という面を含めて出てくるとお考えなのか、そういう面もぜひこの際明らかにしておいていただきたいと思います。
  168. 山本宜正

    山本(宜)政府委員 将来何年ぐらいでこの規模の拡大を図るかということにつきまして、いま即答が私いたしかねますけれども、私自身といたしましては、数年以内に十分な機能が果たせるような陣容にしたいという方向で努力を進めてみたいと思っております。  また、せっかくそういう施設水俣につくりますので、地元患者さん方に、あるいはまた現在問題となっておりますところの認定業務の促進にどのように役に立つかというお尋ねでございますが、基本的には、いわゆる水俣病の原因の追求あるいは治療方法の発見、さらには疫学的な、あるいは社会学的な研究というようなことを考えているわけでございますが、当然のことながらこの施設には、臨床的あるいは基礎医学的な専門の先生方にも従事していただくわけでございますので、そういう意味からの認定業務への応援ということは今後期待してまいりたい。また、しかしながら認定業務につきましては、本来的な現在のシステムを拡大していく、充実していくという方向でも、当然のことながら方策を考えていこうと思っているわけでございます。
  169. 上原康助

    ○上原委員 いま御答弁がありました、あるいは少しだけですが私が指摘をしましたようなこと等についても、特段の御配慮を強く求めておきたいと思います。  それと、これはもうお尋ねがあったかと思いますが、最近の報道によりますと、水俣病に新薬が発見をされて、これを普及させることによって非常な効果が生まれるのではないのか、水俣病患者の皆さんにとっては非常に明るいニュースだということが報道されておるわけです。具体的には井形鹿児島大教授の発表のようですが、この件については環境庁としてはどういうお考えを持っておられるのか。また、まだ実験段階で、この薬を普及さしていく、あるいは患者さんに適用をしていくにはかなりの期間もかかるのではないのかというようなことも言われているわけです。今後の研究促進によっては、不治の公害病だと言われたこれが大いに回復される方向に行くのではないかという期待が持てる、その成果が非常に注目をされているというようなことですが、この件についてどのようなお考えと、そうであるとするならば、政府としても積極的にこれを取り入れてその効果を上げるということが、この研究センターを設立すると同時に、水俣病患者の皆さんにとってやるべき仕事だと私は思うのですね。この件についてぜひ御見解を承っておきたいと思います。
  170. 山本宜正

    山本(宜)政府委員 確かに、従来適切な治療方法がないと考えられておりました水俣病の主な症状であるところの体のふらつき、あるいは眼球振盪というようなものにつきまして効果があるというような新聞報道を読んだわけでございまして、治療効果があるということが事実であるならば、患者方々にとっても大変朗報だと思うわけでございます。私ども井形先生とはしばしば意見交流等をいたしておりまして、近日中にお会いいたしまして、ぜひお話を聞きたいと思っているわけでございます。  なお必要でありますならば、今後その治療研究という面についていろいろと研究費的な援助ということもいたしたいと思うわけでございますが、この薬品につきましては、現時点におきまして一、二の問題点があるようでございますし、その辺は厚生省にもお尋ねいただければ幸いと思いますが、今後の期待は私ども大変大きく持っておりますし、また援助もできるならばいたしたい、かように思っているわけでございます。
  171. 上原康助

    ○上原委員 厚生省はこの新薬についてどういう御見解をお持ちか、承っておきたいと思います。
  172. 新田進治

    ○新田説明員 ただいま御指摘の水俣病の主症状でございます体のふらつきとか、それから眼球の揺れ動いたりする症状につきまして、甲状腺のホルモンの一種でございますが、これが非常に有効であるという新聞報道は私どもも存じておりまして、大変気の毒な患者さんにとりまして明るいニュースだと喜んでいるわけでございます。  厚生省といたしましても、こういう患者の救済にできるだけ積極的に取り組みたいということで、この水俣病の対策につきましては、環境庁の方で鋭意強力に推進されておるところでございますので、この研究が順調に進みまして、さらにこの薬剤の治療薬としての有効性が十分確かめられますれば、所要の手続を経まして、厚生大臣の諮問機関でございます中央薬事審議会というのがございますが、そこに諮りまして、承認を得ましたら早急に患者の救済の援助に当たりたい、かように考えているわけでございます。  特に、先ほど環境庁からもお答えがございましたように、これはホルモンの一種でございますが、そのメカニズムがまだ十分に解明されていない点もあろうかと思いますので、今後の研究次第によりまして厚生省もこれについて積極的に協力してまいりたい、かように考えております。
  173. 上原康助

    ○上原委員 まだ発表された段階で、この薬の実際の効果面、あるいはこの薬を適用する場合のいろいろな点については、もちろんいま少し研究を重ねていかなければいけないと思うのですが、また私なんか素人で全然わかりませんが、長官、これはやはり政治の問題だと思うのですね。この新薬というものが水俣病患者の皆さんにとって、特に難病中の難病と言われていることについて、体のふらつきとか、あるいは眼球の揺れですか、そういう面の治療にとって本当に有効かつ適切であるとするならば、政府全体としてこの新薬の製造といいますか、そういう面には全力を挙げて促進をして、患者の御期待に沿うべきだと私は思うのですね。そういう面で、長官の所見と決意のほどを伺っておきたいと思います。
  174. 山田久就

    ○山田国務大臣 ただいま上原委員の御指摘のとおりでございまして、何しろ非常に象徴的な難病と言われているものでございまするから、したがって、これについては厚生省の方ともよく連絡をとりまして、一日も早くその実体を確かめて、使用できるものについては全力を挙げて有効にその道を開くように力をいたしたい、こう思っております。
  175. 上原康助

    ○上原委員 法案関係については、大体以上のことにとどめておきたいのですが、ぜひ、研究センター設置をされたことによって一歩でも二歩でも水俣病問題が患者方々の御期待に沿うような方向改善、解決されていくように一層の御努力をお願いをしておきたいと思うのです。  そこで次に、環境庁は公害対策、環境保全の役所でありますので、先ほど申し上げましたように、地域の問題等と関連をさせてお尋ねしたいわけです。  公害問題、自然環境保全ということは、最近ではございませんで、かなり以前からの問題であるし、開発と環境保全をどう調和をしていくかというのは大変むずかしい、経済、政治の話でもあるわけですが、どうも少し不況絡みになってきたことと経済が落ち込んでいるというようなこともあって、一時環境保全、公害問題に非常にシビアに当たってきた行政なり国民の受けとめ方が、この段階で手綱を少し緩めかげんな感じも、行政を含めてないでもないわけですね。そういうことがあってはならないと思うのです。そういう立場を踏まえて、先ほど申し上げました沖繩県の金武湾一帯の環境汚染といいますか、公害の実態等について、少しお尋ねをしてまいりたいと思うのです。  御承知のように、金武湾一帯の地域に石油備蓄基地がいま造成をされ、また今後も計画がなされております。これとの関連などもあって、金武湾一帯の海が相当汚染をされている。もちろん一〇〇%そういうことによって汚染されているということではないかもしれませんが、CTS立地との関係においてその一帯の海洋汚染がなされているというふうにわれわれは受けとめているわけです。ここいらの実情について、環境庁としてどの程度掌握されておられるのか、まずそこいらの点から御見解を承りたいと思います。
  176. 二瓶博

    ○二瓶政府委員 金武湾の水質の関係、これの現状等につきましては、県の方の報告等もございまして、一応把握をしてございます。  水質の汚濁の現状がどうなっているかという点を申し上げますと、金武湾の水質環境基準、これは五十年の三月に当てはめをやったわけでございますけれども、海域はAということになっております。五十一年度に、沖繩県におきまして、公共用水域の水質調査を行ったわけですが、この結果によりますと、CODにつきましては、実は環境基準点が三カ所ございますが、この三カ所のうち一カ所が環境基準を達成しておらないということに相なっておりますので、総合的に見ますと、本地域、金武湾水域におきます環境基準は達成されていない、かように判断せざるを得ないわけでございます。  なぜそういうふうな水質汚濁の状況になっておるかという点につきましては、周辺の陸域がどうも赤土の地帯に相なっております。したがいまして、赤土が金武湾に大分流れ込むということがございます。それから生活排水、工場排水、畜産排水等の汚濁源が周りに相当ございまして、これに対しまする下水道の整備が余り進んでおらない。それから畜産排水でございますが、こちらにつきましても、その対策が、畜産農家がきわめて零細といいますか、飼養規模が零細ということもございまして、おくれかちであるというような自然的、社会的な原因も考えられるわけでございます。  私たちが県の方から聞いております金武湾の水質環境、そういう面につきましては、ただいま申し上げたとおりでございます。  なお、CTSとの関連、ちょっとCTSの関係の方がどういうあれなのか、私たち具体的な問題として聞いておりませんので、それとの絡みは承知いたしておりません。
  177. 上原康助

    ○上原委員 私がCTSとの関係お尋ねをしているのは、与那城村の屋慶名から離島であった平安座島に海中道路ができていますね。その道路とは関係ないのか、これを聞いているわけです。
  178. 二瓶博

    ○二瓶政府委員 ただいまお話がございました海中道路でございますが、約四キロにわたりまして海中道路が建設されておるということでございます。それで、この海中道路ができます前は、外海の水がこの金武湾に流れ込んでおるということで、そういうことからすれば、この海中道路ができて水の交換が悪くなったことは否めないと思います。ただ問題は、金武湾の水質の汚濁の状況といいますものが、先ほど申し上げましたような周辺の畜産排水の対策のおくれとか下水道の整備のおくれ、そういうものと、この海中道路の建設によりまして水の交換が悪くなったということとの寄与度といいますか、その辺の具体的な計数がどうということは言えないと思います。ただ、定性的に申しますと、その海中道路ができて交換が悪くなったのは、水質の悪くなる要因の一つであることは間違いがありません。
  179. 上原康助

    ○上原委員 要するに、因果関係は大いにあるということですね。
  180. 二瓶博

    ○二瓶政府委員 因果関係はあることはありますが、どの程度あるのかということについては、科学的にどうというそこまでのデータは持っておりません。
  181. 上原康助

    ○上原委員 それをいまから解明をしていかなければいかぬと思うのですね。  そこで、私も冒頭申し上げましたように、この海中道路の建設とかCTS立地によって一〇〇%汚染されている、あるいは水質汚濁の基準に達していないということを言っているわけじゃないのです。確かに、生活排水、その他米軍の演習場、あるいはその周辺の農地から赤土がいろいろ流れ込んでいるということも聞かされておりますので、その点は否定はいたしませんが、問題はこの海中道路がどういう形でつくられたかということを含めて、この際明らかにしていかなければいかないと思うのですね。この点については、まず、いま環境庁としては、因果関係ないとは言えぬ、ただどの程度影響を与えているかは調査をしてみなければいかぬというお答えでしたが、通産省は一体どういうふうに受けとめておられるのか、少し見解を聞いておきたいし、同時に、建設省も来ていただきましたので、この海中道路の構造、そういう面については欠陥はないのかどうか、そこいらの点はどういうふうにお考えなのか、お聞かせをいただきたいと思います。
  182. 清滝昌三郎

    ○清滝説明員 通産省といたしまして、金武湾の汚染状況につきましては、地元からもいろいろ事情を伺っております。問題は環境問題でございますので、仮にこれがいろんな形で調査されるというふうな場合、たとえば県が実態的には調査され、または他の方法により調査されることもあろうかと思いますので、そういった面で必要な協力はいたしたいというふうに思っております。
  183. 上原康助

    ○上原委員 何か余り中身のわからぬ御答弁ですが、私が聞いているのは、海中道路の建設によって金武湾一帯の水質が汚濁をされている、水質基準に達していないということは、いま環境庁の局長御答弁のあったとおりなんですね。そのことは、通産省としても、海中道路が設置をされたこととも無関係でないというふうにお考えなのかどうかということを聞いているのです。
  184. 清滝昌三郎

    ○清滝説明員 海中道路との関係におきましては、先ほども環境庁から御説明ございましたような因果関係調査というものがやはり必要であろうかと思います。断定的なことはそういうことで申し上げられないと思いますけれども、いずれにいたしましても、そういった調査が行われるということによって、必要な協力は行っていきたいということでございます。
  185. 上原康助

    ○上原委員 建設省どうですか。
  186. 金子晃

    金子説明員 金武湾の海洋汚染につきましては、先ほどいろいろお話がございましたように、現在調査が進められておりまして、その結果を待ちまして私ども判断をしてまいらぬといかぬと思っている次第でございますが、築造当時やはりこの辺の心配がございまして、現在通水口といいますか三カ所ございます。真ん中に大きい橋梁で三十三メートル、両側にボックスが一つずつ、箱型のコンクリートの穴が一つずつ、計三カ所あいとおるというふうに調査しております。これがどの程度役に立つか、あるいはこれが少ないのか、この辺につきましては、今後の調査を待ちまして、私ども、必要あれば関係機関とよく相談いたしまして対処していきたい、こういうふうに思っております。
  187. 上原康助

    ○上原委員 大体わかりましたので、時間の都合もありますから、私の方から、もう少し内容を明らかにしながらお尋ねを進めていきたいのですが、なぜこの海中道路のことを私が例に出して取り上げているかといいますと、これはいま建設省から御答弁があったように、この海中道路をつくる当初から非常に懸念されたことなんですね。実際問題として、いま距離は四千七百メートルのようですね。四千七百メートルを、本来海だったわけですから、海だったものを、確かに平安座島寄りに三十三メートルの流水口は設けてある。あとはほとんどないのですね。パイプを二カ所に、両端につくっただけです。四千七百メートルの海水を埋めて道路をつくった。水かさの深いところだと思うのですが、そこに三十三メートルだけあけて潮の自然の浄化能力というものが十分発揮できるとは、素人で考えてもこれは無理がある話だと思うのですね。このことを解明をして――私はこの道路を何も取り払えと言うわけではありません。これは離島の皆さんにとってみれば、陸地続きになったわけ、道路で結ばれたわけですから、その面ではそれは離島解消という面でわからぬわけでもありませんが、しかし、この金武湾一帯の海を蘇生させていく、あるいはこれ以上汚さないで、汚濁を解消しながら、浄化しながらやっていくという面では、どうしてもこの道路の実態というものを解明していかなければならない大きな課題だと思うのですね。  そこで、当初からこれが懸念をされておったと思うのですが、この道路は、どこが建設をして、どこが管理をして、工事監督といいますか、そういう面はあったのか。その点は、復帰前のことのようでありますが、どうなんですか。おわかりですか。
  188. 河津四郎

    ○河津説明員 お答え申し上げます。  手元の資料に詳しいものがございませんので、概略のところを、ただいま把握しておるものを御説明申し上げたいと思いますが、この道路につきましては、昭和四十六年の一月に与那城村が公有水面の埋め立ての免許を琉球政府から受けて、これで築造をしたというふうに聞いております。  村道といたしましては、その一年前の四十五年の十二月に、村道四十五号線ということで、延長五キロメートル、幅員約十メートルという形で認定がなされているというふうに聞いております。  現実の工事につきましては、ガルフ石油の方で四十六年の四月から四十七年の四月まで約一年間実施いたしまして、埋立法による竣功認可は四十九年の十二月になっておりておるというふうに聞いております。  以上でございます。
  189. 上原康助

    ○上原委員 この道路建設に当たって、いま少しお答えがあったのですが、与那城村と当時のガルフ石油精製株式会社の間で、両者で覚書が結ばれているのを御存じですか。
  190. 河津四郎

    ○河津説明員 現在のところそこまで把握しておりません。
  191. 上原康助

    ○上原委員 覚書が交わされております。なぜ私がこれを取り上げているかといいますと、やはり当初から相当その潮の流れが自然の状態でなくなるという懸念があったのじゃないかという感じがするわけです。  といいますのは、この五項にいろいろ述べられているのですが、ぜひこのことも含めて皆さんも取り寄せていただいて、検討をしていただきたいと思うのです。これは時間の都合もありますので、そういう覚書があるということを指摘をしておきたいと思うのです。  そこで、いま指摘をしましたように約五キロ、四千七百メートル、陸地の部分も若干入っておりますが、四千七百メートルの海に道路をつくって流水口は一カ所しかない、三十三メートルしかない。ですから、自然の潮の流れというのがほとんど自浄能力を失ってしまっているわけですね。そこに大きな水質汚濁の原因もあるということをわれわれは指摘せざるを得ないわけですよ。  そこで、実際問題として、ではどういう被害があるかといいますと、金武湾の漁業資源等の面では、この金武湾の魚介類というのは数多く、海草類にはモズク、アオサ、カイジンソウなど、魚介類にはカツオ、ミズン、アジ類、タイ類、アイゴ類、ベラ類、カマス、コノシロ、サヨリ、シロイカ、コウイカ、トビイカ、タコ、カニ類、エビ類、カメ類など多種多様の生態系の宝庫として昔から県民の生存を支えてきた源泉となっておったわけです。沖繩本島では、ここは夏あるいは冬と年間を通して漁業ができ、沿岸漁民の唯一の漁場の宝庫としてその存在価値が高く評価されておったのです。しかし、最近の実態というのは、こういう海草類や近海魚というものがほとんど姿を消してしまっているのですね。ヘドロが一メートルないし、浅いところで四、五十センチ、二メートル近くたまってしまっている。     〔委員長退席、村田委員長代理着席〕 もちろんそのことは先ほどのいろいろな要因もあるわけですが、やはり四キロ余にわたってせきとめられたがゆえに自然浄化というものができなくなって、ますます汚染をひどくしているというのがこの実態だと思うのですね。  これは、せんだって石川市の市議団が直訴をするということで、環境庁を初め通産省、沖繩関発庁等々に御要望しておられると思うのです。ですから、この際、こういう実態を踏まえて、これを放置することはできないと思うのです。そして、この海中道路の問題等とも関連をさせて、ぜひ政府関係省庁が一体となって金武湾一帯の汚染の実態というものあるいは道路構造そのほか関係する問題等を十分掌握をして、県当局なりあるいは地域の地方自治体とも御相談をしていただいて、この金武湾の浄化の問題、汚染防止対策というものを抜本的に講じてしかるべきだと私は思うのですね。この点について、せんだっての市議団の上京に当たっても前向きの姿勢で取っ組んでいきたいということを各省庁ともお約束をしたという報道もなされておりますが、改めて環境庁なり建設省、そして沖繩開発庁等々の御見解を求めておきたいと思います。
  192. 二瓶博

    ○二瓶政府委員 先ほどお答え申し上げましたように、金武湾の水質汚濁という問題につきましては、環境基準点三つのうち一つが超えていないということで達成されているとは認めがたいという現況にあるわけでございます。  したがいまして、この金武湾の浄化対策、これについて海中道路の問題もございましょうし、畜産排水対策もございましょうし、下水道の整備等もございましょう、いろいろ措置があろうかと思います。現在、県の方で、この汚染機構の解明を図るという観点から調査を実施することを計画しておるというふうに聞いております。そういうことでもございますので、関係の省庁の方とも連絡をとりながら県の方がいろいろ調査をやられるそうでございますから、その面についての指導といいますか、そういう面については環境庁としても十分意を用いていきたい、こう思っております。
  193. 金子晃

    金子説明員 先ほど申し上げましたように、ただいま調査が進められているわけでございますので、その結果を待ちまして、関係省とよく相談いたしまして対処してまいりたいと思います。
  194. 上原康助

    ○上原委員 さっきから、調査を進められているという、この調査を進めているのはどこなんですか。
  195. 二瓶博

    ○二瓶政府委員 ただいま申し上げましたように、まず県が実施主体になりまして、この金武湾水域四十地点におきます泥土の堆積状況等の調査をやる。これは先ほど先生からもお話ございましたように、赤土その他の流入等もあって、相当のヘドロの堆積があるという話がございましたが、その面についての堆積状況等の調査もやろうというようなことを言っておるようでございます。そのほか、沖繩県なりあるいは沖繩石油精製あるいは沖繩ターミナルあるいは沖繩石油基地、与那城村等の五者共同で環境調査というようなことも何かやるというように県の方から聞いておりますので、その面について何か特に技術的な面でお手伝いすることがあれば、環境庁としては十分その面のお手伝いなり指導等も、関係省とも連絡をとりながらやっていきたいということを申し上げたわけでございます。
  196. 上原康助

    ○上原委員 そうしますと、このように理解をしてよろしいですか。政府としても、金武湾一帯の汚染状況については十分な関心を持っておられて、今後その浄化対策というものを進めていきたいというお考えはあるわけですね、各省庁とも。ただ、その前提として、現在沖繩県が実態調査を進めておるので、その結果を見てから国としての対策を進めていくということになるわけですか。
  197. 二瓶博

    ○二瓶政府委員 水質の浄化の問題につきましては、これは全国的に、それぞれ各水域につきまして、県が中心になりまして浄化対策をいろいろ進めておられるわけでございます。したがいまして、この金武湾につきましても、むしろ沖繩県が中心になってこの浄化対策を進めていただくべきものである、かように考えております。ただ問題は、県がそういうようなことでいろいろな対策をやります際に、国としていろいろの技術的な面なりその他指導する分野、これにつきましては、この水質の汚濁というのが一つのあるものからだけの汚濁ではなくて、いろいろな汚濁があり、また、先ほどお話のあったように、海中道路というのは水の交換を悪くするという面での問題もあるわけでございますから、関係省とも連絡をとりながら県が中心になって調査もやり、また対策もやっていかれると思いますが、その面の指導なりあるいはお手伝いなり、そういう面はやっていきたい、こういうことを申し上げたわけでございます。
  198. 上原康助

    ○上原委員 あれだけの地域を県だけの立場では実際問題としてとうてい不可能な面が多いと思うのです。それは県は県なりにやらなければいかないと思うのです。また近隣の市町村は市町村なりに努力しなければいかないというのは当然の前提でありまして、そのことを踏まえてお尋ねもし、申し上げておるわけですが、やはりこの際、政府におかれましても、いま指摘したような問題等がある、特に国策としてのCTS立地というものとも無関係でないということなどを考えた場合には、私は、積極的にその水質の浄化あるいは汚染防止、また現に汚染されているヘドロ、泥土、堆積しているもの等の除去についてはやるべきだと思うのです。したがって、そのやる前提として県がもう少し詳しいデータをいろいろ集めて、それも踏まえて国としてもやるということでなければいかないと思うのです。そういうお考えは環境庁としても、また建設省なり科技庁としてもおありですね。
  199. 二瓶博

    ○二瓶政府委員 先ほども申し上げましたように、この金武湾につきましては五十年の三月に水域類型の当てはめを県がやったわけであります。したがいまして、県が一応こういう水域類型というものの当てはめ、これは先ほども申し上げましたように、全国的にも大体県がやっておられるわけでございます。直轄的にやるといいますか、国がやるという場面は相当のものについてやる場面がございますけれども、金武湾は県の方でやられているものでございます。したがいまして、これの浄化対策の面等につきましてもいろいろ県が中心でやはりやっていただくべきものだと思っております。  ただ問題は、先ほど言いましたように、いろいろ県の方で調査をやるなり対策をやるなり、これについての助成その他は、いろいろな制度がもうできておりますから、そういうものの面で活用してやっていけばよろしいのではないかというふうに考えております。  なお、CTSの関係等ということもあるわけでございますが、その辺の面につきましては、具体的にCTSの構想というものがどうなっておりますのか、十分まだ環境庁としては承知しておらないということがございます。考え方としては、いずれにしても、やはり県が中心で調査なり対策というものを進めていくというのが軸ではなかろうか、かように考えます。
  200. 上原康助

    ○上原委員 十分国としても協力をしていくということかと思うのですが、そのように理解していいですか。
  201. 二瓶博

    ○二瓶政府委員 ですから、汚染の実態調査なり、またそれに基づいて浄化対策等を講じていく、これの中心がもちろん、当然県でございますけれども、その際に、いろんな調査をやるにしても、技術的な問題その他知恵をかしてくれという問題は多々あろうかと思いますし、そういう面についてのお手伝いもできますし、さらに、対策をやるという場合にも、下水道を整備するというのであれば、建設省の方で下水道の整備の予算というものは持っておるわけでございますし、畜産排水対策というのは農林省の方が持っております。ですから、いろんなそういうものを活用しながらやっていけばいいではないか。ただ、汚染源というのはたくさんあるものですから、やはりそれは関係省である程度県の方のそういう、主体的に県がやっているものを聞かしてもらったり、その際に総合的にこれをやっていくということで連携をとりながら県を指導していく、こういうことではないかということでお答えを申し上げたわけです。
  202. 上原康助

    ○上原委員 そうしますと、県側から具体的に、県としてはこうこういう調査をし、こういう対策をやる、あるいはこういう問題については国の方に要請が出たという段階においては、環境庁なりが中心になってそれに対応していく、関係省庁のお話し合いを持つような姿勢にはあるわけですね。
  203. 二瓶博

    ○二瓶政府委員 県の方で具体的な総合対策のようなものができますれば、十分お聞かせもいただきたいと思います。さらにまた、その対策を実際にやっていくという際に、その対策は各省にわたる問題もあろうと思いますから、その面については環境庁の方でまた関連の省とも連絡をとりながら、その総合的な対策というものが県を軸にしながら展開されていくということについていろいろ環境庁も世話をやくということは、それは考えております。
  204. 上原康助

    ○上原委員 建設省に改めてお尋ねしておきますが、海中道路の構造問題、いまさっき言いました、どう考えても私は流水口というのが不足だと思うのです。ですから、いま現地はぜひ専門的に、技術的に実態を調査といいますか、掌握をした上で、相当部門については橋をかけるとかあるいはもっと流水口をあけてその部分は橋にするとか、いろいろな手を加えぬといかないのじゃないか。そういうふうに自然浄化作用というものをつくっていかないとどうにもならないというのが大方の見方なんです。  そういう意味で、これはもちろん先ほどからありますように、県としてもやるでしょうが、国としても、この際この道路の問題については私は実態を調査していただいて、欠陥があるのかないのか、また仮につくり直すなりあるいは橋をかけるとすると、これは県なり市町村段階ではできませんね。そういうことについては当然この調査をしていかない、また県側から来るまで待つというようなものでもないと思うのですが、そういうことでやっていただけますね、これは。
  205. 金子晃

    金子説明員 何度も同じようなことを申し上げますけれども、先生のおっしゃることもわからぬわけではございませんけれども、一応調査の結果を待ちまして、先ほど環境庁のお話がございましたけれども、私どもといたしましても、そのために必要な調査といいますか、特に私どもがいま実施するような計画は持っておりませんけれども、いろいろな県の方の計画に対しまして助言を申し上げまして、それで出てきた結果につきましては、いろいろ関係省庁と相談いたしまして対応してまいりたい、こういうふうに思っております。
  206. 上原康助

    ○上原委員 ぜひ早目にこの実情、実態を把握をする御努力をやっていただきたいし、われわれも県の方にもそれを促進をさせながら――これは多額の財政問題が出てくるわけですね、あれだけの地域を浄化をするということになると、あるいは堆積した泥土、ヘドロを除去するということになりますと。そういう面では県の能力だけではこれは不可能に近いことは間違いありませんので、そこらを含めて御検討のできる準備を進めていただくことを要望しておきたいと思うのです。  そこで、これと関係があるかどうかということもありましたが、次に石油備蓄の問題についてお尋ねをしていきたいと思います。そこで、いま申し上げるまでもなく、エネルギー問題、石油の備蓄問題は、大変国民的な課題になって、備蓄をふやさなければいかないということについては否定はいたしません。これは国民の生活あるいはエネルギー確保という面で六十日から九十日に拡大をしていくということについては否定をするものではありませんが、ただ沖繩のような場合ですと、現状でさえいろいろな公害問題、基地公害あるいはいま言いましたようなこういう汚染問題等が出ているわけですね。そういう状況でありますので、これ以上沖繩に石油基地を拡大していく、ふやしていくということには県民大多数が反対であるということは御理解いただけると思うのです。  そういう立場から若干お尋ねをしますが、石油基地の立地については一体政府が強要できるものなのか、その点、通産省の見解を率直に賜っておきたいと思うのです。
  207. 清滝昌三郎

    ○清滝説明員 お答えいたします。  現在進められております備蓄計画は、石油備蓄法に基づきまして民間ベースで進められておるものでございます。したがいまして、国がどこそこに備蓄をしろというふうなことになっておりませんで、民間ベースとして個々に土地の手当てをし、タンクを建設していくというふうなたてまえをとっております。
  208. 上原康助

    ○上原委員 そういたしますと、もちろん私もその程度は理解をしてのお尋ねですが、民間企業がいろいろ石油備蓄法に基づいてやっている、ですから、政府の方が立地場所を選定したり、あるいはどれくらいの備蓄をどの地域にやれと、そういうふうに決めて、それを県なり市町村自治体なりに強制というか、強制まではいかないまでも指示をすることはできないということですね。
  209. 清滝昌三郎

    ○清滝説明員 指示をすることはできませんし、また実態的にも指示をしておりません。
  210. 上原康助

    ○上原委員 そうであれば、具体的にお尋ねをいたしますが、これはもちろん若干の経緯と内容等もありますが、昨年の十一月十二日付で沖繩県知事から、沖繩における石油備蓄についてという要請書が内閣総理大臣を初め、通産大臣、自治大臣、経済企画庁長官あるいは環境庁長官に出されておると思うのですね。この要請書について、環境庁、通産省、きょうは沖繩開発庁も来ておられると思うのですが、どのように御検討をなさったのか、またこの内容をどうお考えなのか、ぜひつまびらかにしておいていただきたいと思います。
  211. 二瓶博

    ○二瓶政府委員 環境庁長官といいますか、環境庁の方にその要請書が来ているというお話でございますが、私は見ておりません。したがいまして、検討もいたしておりません。
  212. 清滝昌三郎

    ○清滝説明員 通産省の方に要請をいただいておりましたが、特に私どもの方からは現在の石油備蓄の重要なことを御説明申し上げました。なおかつ、そういったタンク規模そのものが地域別にどれくらいというふうなことで進めているわけでございませんが、できるだけそういったタンク建設につきましては、関係業界には安全防災問題、環境問題等を含めて十分地元協力と理解を得ることが前提であるというふうなことを御説明申し上げてきたわけでございます。
  213. 吉川元信

    ○吉川説明員 私どもの所管の課の問題そのものではないためかと存じますけれども、私どもとしてはその要望書を拝見しておりませんので、何ともお答えしかねます。     〔村田委員長代理退席、委員長着席〕
  214. 上原康助

    ○上原委員 それはおかしいですよ。ちゃんと行っていますよ、それは。環境庁長官も、石原さんが長官のころのあれなので、山田長官はまだ見なかったと言えば見なかったでしょうが、これはちゃんと環境庁に行っていますよ。これはかなり長文なんで全部読みませんが、こういう一県の県知事がわざわざ要請書をしたためて各関係大臣に、通産大臣にはたしかお会いしていると思うのですね。環境庁長官にもお会いしたのじゃないですかね、政務次官かどなたかに。こういう重要な文書を何か課長どまりか、あるいはどこかの担当係長くらいがもみ消すということなら、これは事は重大ですよ。  そこで、なぜ私がそういうことを言いますかというと、政府は強制できないわけでしょう、先ほどの御答弁にあったように。民間ルートでしかできない。沖繩県知事は屋良さんが主席をしてなされたころからのいろいろないきさつがありますが、屋良前知事から平良知事に引き継がれた段階においても、沖繩全体のCTS、いわゆる精製品を含めて原油の備蓄というものは五百万キロリッター以内におさめたいというのが沖繩の立場なんですね。これは、ある意味では県民的コンセンサスなんですよ。しかし、現在はどうなっているかといいますと、現在計画されているものを含めると、あるいは認可、許可を受けているものを含めて、すでにその五百万キロリッターはオーバーしているわけですね。したがって、これ以上はこうこういう理由で沖繩県としては、国の備蓄政策もわからぬわけではないが、基地公害とかそういった面で余りにもしわ寄せが大き過ぎるので、ぜひ御考慮をいただきたいということが、県知事のこの重要な文章なんですね。これについて長官の改めての御見解を賜っておきたいと思うのです。
  215. 山田久就

    ○山田国務大臣 そういうものが来ておること私はちょっと存じ上げなかったけれども、まあ庁としては何らかのそのことを受けての措置があろうかと思います。いま至急調べておりますので、ちょっと調べて、それからお答えしたいと思います。
  216. 上原康助

    ○上原委員 これはちょっと、環境庁あるいは開発庁にも来ていないのですか、そういうことじゃいかぬですよ。通産省も十分検討はしなかったわけですか、備蓄が必要であるということを言ったたけですか。――そこで、具体的な問題に入っていきたいのですが、まず沖繩には五つの石油会社がありますね、沖繩石油精製、日本石油精製、南西石油、沖繩ターミナル、沖繩石油基地、この五つの石油会社の原油備蓄高、既存の量ですね。それからタンク数、その他の製品の備蓄量、それぞれ幾らですか。
  217. 清滝昌三郎

    ○清滝説明員 ただいまお尋ねの沖繩所在の五社につきましてのタンクの規模でございますけれども、原油タンクにつきましては現在百八十九万二千キロリッターの容量のものかございます。それから製品、半製品につきまして百十四万九千キロリッター、合わせまして容量といたしましては三百四万一千キロリッターの能力のものがございます。なお貯蔵する油につきましては、タンクそれぞれ貯油率がございまして、そういったことで現在の貯油量は、製品ベースに換算いたしますと約百二十万キロリッターというふうに承知しております。
  218. 上原康助

    ○上原委員 私がお尋ねしていることをよく聞いてお答えくださいよ、時間の都合もありますので。  私が聞いているのは、沖繩に五つの石油会社があります――きのうあなたか資料を持ってきた、  こんなごまかしではだめなんだ。五つの石油会社があります。既存の備蓄量はそれぞれ幾らですか、タンクの数は幾らですか、その他の製品の備蓄量は幾らですかと聞いているのですよ。さらに、工事中のものはそれぞれの会社どれくらいありますか。タンクはどれだけ工事をしようとしているのか。それから原油の分のタンク、その他の製品の分の備蓄計画、工事中のもの、タンク数、さらに新規計画、それぞれどれくらいの新規計画をやっているのか。これを五つの会社に分けてタンク数、備蓄量、その他の備蓄量、タンク数の明確な資料を提示していただきたい。いいですね。
  219. 清滝昌三郎

    ○清滝説明員 現在私の持っております資料の中で、タンクの数はちょっと手元にございませんので、これは追って先生のお手元にお届けしたいと思います。  なお、そのほかの事項でございますけれども、五社ございますものについて申し上げますと、沖繩石油基地につきましては、現在まだ既存のものはございません。それから沖繩ターミナルにつきましては、原油タンクといたしまして百十四万五千キロリッターの能力のものがございます。沖繩石油精製でございますが、原油タンク四万八千キロリッター、製品、半製品が六十六万一千キロリッター。南西石油につきましては、原油タンク五十五万五千キロリッター、製品、半製品が三十四万五千キロリッター。日本石油精製につきましては、原油タンク十四万四千キロリッター、製品、半製品につきましては十四万三千キロリッター。これが既存のものでございます。  なお、新増設計画といたしましては、沖繩石油基地につきましては二百九万キロリッターの計画がございまして、消防法に基づきます許可がすでにおりておるわけでございます。沖繩ターミナルにつきましては、新規計画といたしまして三十九万八千キロリッター、これも消防法の許可済みでございます。  残りのものでございますが、まだ許可はおりておりませんが、沖繩石油精製は新増設計画といたしまして原油タンク三十九万八千キロリッター。南西石油は、新増設計画原油タンク三十九万六千キロリッターでございます。  そういたしますと、トータルで新増設計画というものは、原油タンクといたしまして三百二十八万二千キロリッターでございまして、現在のところ、それ以上の計画につきましては、具体的な計画は聞いておりません。  備蓄量でございますけれども、手元の資料では原油、製品それぞれを製品ベースに直しておりますのでそれぞれの数字はちょっと手元にございませんが、備蓄の義務量としてのベースで考えますと、現在の製品ベースに換算いたしますと百二十一万キロリッターの備蓄量があるということでございます。
  220. 上原康助

    ○上原委員 先ほど私が言ったような順序の資料は出しますね。
  221. 清滝昌三郎

    ○清滝説明員 追って先生のお手元にお届けいたします。
  222. 上原康助

    ○上原委員 それで工事中のもの、いわゆる計画許可がおりたものということかと思うのですが、三百八万キロリッターということでしたね。――そうしますと、製品を含めての既存の備蓄量といま言う三百八万を入れますと幾らになるのですか。
  223. 清滝昌三郎

    ○清滝説明員 既存のものと新規のものを足しますと原油タンクで五百十七万四千キロリッター、製品、半製品タンクで百十四万九千キロリッターでございます。タンク容量というトータルだけをいたしますと六百三十二万三千キロリッターでございます。
  224. 上原康助

    ○上原委員 すでに六百万余りになっているわけですね。これは新規計画はいま抜いているのですか。現在工事中のものと既存の量を私いまお尋ねしておるわけです。
  225. 清滝昌三郎

    ○清滝説明員 既存のものにつきましては原油、半製品入れまして三百四万一千キロでございます。  現在工事中という趣旨でございますが、工事中のものは許可済みの一部でございます沖繩石油基地が基礎工事ということで着工届が出ているというふうに聞いております。これは二百九万でございますので、両方足しますと、五百十三万一千キロリッターであろうかと思います。
  226. 上原康助

    ○上原委員 すでにオーバーしているわけですね。その数字若干おかしい、おかしいというよりは数字ですから幾らか狂いもあると思うのですが、要するにいまの民間企業、この五社が備蓄をしておるものあるいは工事をしているもの、また、まだ許可がされてないけれども、計画した、ぜひこれだけは備蓄をしてみたいという申請を出しているものを含めて六百七十二万三千五百五十四キロリッターぐらいになりますか、私の数字では。しかしこの量よりもかなり上回るという言い分もあるわけです。したがって七百万キロリッターぐらいの備蓄計画を持っている。しかもその六百万余りはすでに工事を発注して実施をしている段階なんです。そうしますと、県が言っておる五百万キロリッターというものをはるかに上回る。ここに問題があるということをわれわれは指摘をしているわけですが、通産省の立場ではこの新規計画まで含めて許可するつもりなのか、あるいは会社側との関係というものはどうなっておるのか。この点も明らかにしていただきたいと思います。
  227. 清滝昌三郎

    ○清滝説明員 既存計画を含めまして私どもが承知しております規模は、原油、半製品タンク、トータルいたしまして六百三十二万三千キロリッターというふうに承知しております。  なお、それ以上のタンクは恐らく、これは想像でございますが、原油なり半製品を入れるタンクではございませんで、たとえば水用のタンクとか、スラッジ処理用のタンクとか、そういう直接油とは関係のないタンクが通常精製工場なりそういった基地に設けられますので、それも含まれておるのではないかというふうに想像しております。
  228. 上原康助

    ○上原委員 あなたそんな想像で物を言ってはいけませんよ。じゃ石油タンクでないタンクがあるなら、それも含めて資料を提出してください。いずれにしても計画中のものを入れて六百三十二万三千キロリッターはすでにもう立地するようになるわけですね。
  229. 清滝昌三郎

    ○清滝説明員 現在の民間の石油備蓄は、石油備蓄法に基づきます備蓄義務者というものが五十四年度末、九十日備蓄という計画のもとに進められておるわけでございます。そういったことで私どもの承知しておりますこのタンクの計画というものは、そういった備蓄の義務者がそれぞれ必要とするタンクの量であろうというふうに承知しております。
  230. 上原康助

    ○上原委員 そうしますと、義務者の方でいろいろやるということですが、これは非常に大きな政治問題に現在発展しておりまして、最初言いましたように、沖繩県としては、二社はこの金武湾一帯だけでなくして、西原村、中城村あたりにもあるわけですね。それを含めて沖繩に備蓄するものは五百万キロリッターに抑えたいというのが沖繩県の一貫した姿勢なんですよ。そこは皆さんはどう受けとめておられるの。五百万キロリッターというのは金武湾一帯と沖繩県は見ていると見るのか、あるいは中城、西原にある沖繩石油なり日本石油を含めて五百万キロリッターと沖繩は踏まえているとお考えなのか、その点も皆さんの見解というものをこの際明らかにしておいていただきたい。
  231. 清滝昌三郎

    ○清滝説明員 地元での五百万キロリッターの論議につきましては、復帰以前の話として承っておりまして、その後、たとえば四十七年度では、CTSの可能性調査といったことで調査も行われた経緯もございます。そういったことで、私どもの現在の立場では、その五百万がどういうふうに限定されるのかといったことではちょっとお答えしかねる面がございますので、できるだけ地元の理解なり協力なりを得られるような、そういった手順を踏んで、建設なり備蓄の推進に努力してもらいたいという趣旨で指導しておるわけでございます。
  232. 上原康助

    ○上原委員 ですから、冒頭お答えがあったように、政府という立場で強要できない、また指示することもできないという前提に立つならば、当然沖繩県の県民的コンセンサスであるこの五百万キロリッターを一つの基準にしたい、すでにそれより上回っていますがね。そういうことが大前提となっていることは否定できませんよ。  そこで、時間もありませんし、これが明らかになりましたので、いまあなたがお答えになった六百三十二万三千キロリッター、それ以上に現在政府として、この全国的な備蓄増ということと関連をさせて、企業にやってもらいたいとか、ああいうようなお考えはいまのところないということですね。
  233. 清滝昌三郎

    ○清滝説明員 現段階で私どもが承知しておりますのは、ただいまの数値でございます。
  234. 上原康助

    ○上原委員 それともう一点、埋め立ての問題ですが、これは大分古い資料で、皆さんが四十八年の三月に日本工業立地センターに委託をして、沖繩CTS調査報告書というのがかなり膨大なものですが、できているのです。これをちょっと読んでみたのですが、この中に、二千万キロリッターとかそういういろいろなことも書いて、CTSを評価するようなことですが、あの時点とこの時点とは国内経済もいろんな面で変化がありますよ。また水島事故以降あるいは消防法の改正、コンビナート規制法等の関連においても、当初の時点よりは、石油を備蓄をする施設をつくるという面では大きな規制がある。したがって、この基礎資料というのは私は全然適用できないと思うのです。私はそう思うのですが、その点は通産省の御見解どうですか。
  235. 清滝昌三郎

    ○清滝説明員 その調査は確かに四十七年度当時の調査でございまして、その後の大きな変化と申しますと、消防法によります防災消防関係の規制は非常に厳しくなりまして、たとえて申し上げますと、タンクに必要とする敷地などは約二倍ぐらい必要とするというふうな変化がございます。そういったことを前提に考えますと、物理的な面では従来とは違った環境にあるというふうなことだと理解しております。
  236. 上原康助

    ○上原委員 それともう一つは、この報告書によりますと金武湾一帯をA地区、B地区、C地区、D地区、E地区と分けていろいろ埋め立て計画をやって二千万キロリッターくらいの石油備蓄基地にしたいという広大な構想を描いているわけです。だがこのC地区、D地区、Cは宮城島ですから、これも実際問題としてまだ造地がされていないと思う。D地区、E地区の埋め立て計画も現在のところありませんね。
  237. 清滝昌三郎

    ○清滝説明員 具体的に私どもは聞いておりません。
  238. 上原康助

    ○上原委員 そこいらはぜひ十分現地関係者の意向なども踏まえていただいて、この問題に対処していただきたいと思うのです。  そこで環境庁長官、もう時間が参りましたので、私は備蓄計画というものの全体像を真っ向から否定するものじゃありませんが、これは背景、要因というものがあるのですね。ですから、県知事がこれだけの意見書を出している、要請書を出しているわけですから、それを踏まえて、ぜひこの石油備蓄の問題については対処をしていただきたい、そして埋め立て計画もいまないということが明らかになったし、四十八年当時の調査報告基礎数値は大いに変化があるわけですから、そういう前提を踏まえて沖繩側の要求に十分この点はこたえていただきたいというふうに考えるわけですが、御見解を賜っておきたいと思います。特に自然環境保全という立場も含めて。
  239. 山田久就

    ○山田国務大臣 環境庁への知事からの要請がいろいろなことで下の方にとどまっていたようなことで、はなはだその点は――つまり、備蓄についてのこれ以上の拡張をしないでほしいということは環境庁としてはなし得ないところのことであるというので、そこら辺でとめておいたようでございます。ただ沖繩のそういう希望というものについては、私も国務大臣という立場で十分そのことを頭に入れて、必要な場面においてひとつ善処するようにいたしたい、こう存じます。
  240. 上原康助

    ○上原委員 下の方にとまっておったからと言って下をいじめてはいかぬですよ。下がとめてあるのは上の責任ですよ。  そこで、備蓄問題はそのように国務大臣としての立場で対処していきたいということですが、これは県がそういう意見を出しておりますし、強制できないということであれば結局協力は得られませんから、そこは篤と御理解をいただきたい。しかもこの基礎数値も変化があるということになると、ある程度将来展望というものは推測できると私は思いますので、沖繩はもう基地公害だけでも大変ですから、余り公害産業だけを――十分そこらについては政治の課題としてお考えになって御配慮を賜りたいと思います。  そこで、時間が参りましたので最後に、先ほど申し上げましたように、西表の自然林保護ということと、よく話題になりますイリオモテヤマネコの保護といいますかその関連なんですが、環境庁は、二月いっぱいに西表島を鳥獣保護指定地域としていきたいということでいろいろ御配慮をいただいたようですが、また地元からの意見なども若干出て延び延びになっているようです。要するに申し上げたいことは、ヤマネコだけが大事にされてもいかないし、かといって、人間を大事にするということで地域開発を優先をさせて、ヤマネコが生息できないようなことであってもいけないと思うのですね、世界的な天然記念動物ですからね。そういう意味で、この両面を調和させて、どっちも生かしていくということは大変むずかしい行政面があると思うのですが、私は、しかしこれはやらなければいけない課題だと思うのです。そういうことで私もお尋ねしておきたいのですが、今後どのようにこの問題に環境庁として、いま申し上げたような趣旨を生かしながらやっていくのか、御決意のほどを伺っておきたいと思います。
  241. 山田久就

    ○山田国務大臣 貴重なヤマネコがおりますので、これの生存というものを確保していくためには、保護地域の設定ということはぜひ必要だとは思うけれども、しかしながら、一方、何しろ島民の生存ということは当然考えていかなければならないことでございます。したがって、われわれとしては、その両方の必要性というものを十分調和するというようなところでこの問題については善処していきたい、こういう考えでございます。
  242. 上原康助

    ○上原委員 なかなか私の質問を、どっちだけを強調しているかわからないで、そういうわからない御答弁になるかと思うのですが、いつごろまでに結論をお出しになるお考えですか。
  243. 出原孝夫

    ○出原政府委員 実は、二月十五日の自然環境保全審議会の鳥獣部会におきましてその御決定をいただきたいということで準備を進めてきておったわけでございますが、その後の地元の状況等を勘案いたしまして、いま大臣がお答え申し上げましたように、地元方々の御理解を得ることが先決でございますので、御理解を得るように全力を尽くしまして努力をいたしまして、できるだけ早い機会に設定できるように努めてまいりたいというように考えております。
  244. 上原康助

    ○上原委員 終わります。
  245. 始関伊平

    始関委員長 市川雄一君。
  246. 市川雄一

    ○市川委員 環境庁の設置法に関連いたしまして、航空機のエンジンテストによる騒音公害の問題と、国鉄の在来線のうちの貨物線の振動、騒音の問題、それから自動車の排気ガスの窒素酸化物に伴う公害問題につきましてお伺いをしたいと思います。  最初に、東京国際空港のジェット機のエンジンテストの騒音公害の問題でございますが、環境庁は、昭和四十六年の十二月二十八日に、環境庁長官から運輸大臣あてに、「環境保全上緊急を要する航空機騒音対策について(勧告)」というものをすでにお出しになっているわけですが、その中の「第一 指針」という中で、「航空機騒音による空港周辺地域の住民の生活環境上の被害をできるだけ軽減するようにすることとし、とくに夜間・深夜においては睡眠等か妨げられることのないよう、静穏の保持を図ること。」と同時に、第三の項目におきまして、エンジンテストについては、「エンジンテスト等航空機の整備に伴う騒音の防止を図るため、必要な施設の整備、作業時間の制限等を行なうこと。」こういう、抜粋でございますが、環境庁長官から運輸大臣に勧告が行っているわけですが、こういう騒音を防止していこうという環境庁の行政姿勢は、評価するのにやぶさかでありません。  これは長官にお伺いしたいのですが、現在におきましても、この環境庁の騒音防止に関する行政姿勢はお変わりがないかどうかということを、まずお伺いしたいと思います。
  247. 山田久就

    ○山田国務大臣 その点は変わりがないというふうに御了解いただきたいと思います。
  248. 市川雄一

    ○市川委員 そこで、具体的な問題を提起したいと思います。  東京国際空港におけるジェット機のエンジンテストによって、東京の大田区あるいは神奈川県の川崎市の住民は深夜その騒音公害に非常に悩まされているわけでございますが、特に川崎市川崎区の殿町あるいは夜光、末広町、四谷上町、浜町、こういう住民から、深夜ものすごい音がする、あるいは毎晩騒音で目が覚めてしまう、この真夜中に全く非常識な企業があるものだとか、あるいは特に冬場がうるさくて安眠ができない、しかも二階にはもうとても寝ていられない、こういう苦情が非常に殺到しているわけでございます。  川崎市の公害局が最近測定いたしましたデータによりますと、これは昨年、五十二年十一月十二日の調べでございますが、測定場所が五カ所ございますが、それぞれ最大値で七十七ホン、測定をした時刻は午前一時五十七分、七十八ホンとか八十ホンとか、こういう午前一時あるいは午前二時に近い時刻で調べてみて、継続時間約百三十秒あるいは百五十秒、こういう時間、こういう深夜に八十ホンとか七十七ホンという騒音を出しているわけです。このデータは、四十七年の四月に運輸省航空局と川崎市が合同で調査したデータとそんなに変わっていないと思うのです。  こういう現状に対しまして、まず、環境庁としてどう御認識され、対処されようとしておられるのか、その点をお伺いしたいと思います。
  249. 橋本道夫

    ○橋本(道)政府委員 いま先生からお話のございました午前一時半ごろにそのような音を出すということは、これは運輸大臣から環境庁長官あての四十七年三月二十九日の文書では、まず飛ぶ時間の問題が入っておりますし、その時間からも非常にずれておる。それからエンジンテストの方は、東京国際空港では、ジェット機はU地区の試運転エリアに限る。そしてエンジンテストのところにはプロペラ機だけの時間の制約は入っていますが、ジェット機の方は入っておりません。これは国際便等の問題があるのだろうと思いますが、少なくとも一時過ぎのその時間にそういうテストをやるということについては、環境庁の勧告とそれに対する運輸大臣からのお答えから見ると、きわめてこれはまずいことではないかというように思っております。
  250. 市川雄一

    ○市川委員 そこで、先ほどの環境庁長官の運輸大臣に対する勧告に対して運輸大臣から回答が出ていますよね。その回答の中で、まあこの回答に問題があるのですけれども、「エンジンテストの時間及び場所は原則として次のとおり指定すること」と、こういうふうにいたしますというふうに運輸大臣から環境庁に答えが来ている。その答えの中に、大阪国際空港と東京国際空港の事情の違いはあると思うのですが、大阪国際空港については、運輸省としても午前六時三十分から午後十時までの間とする、エンジンテストの作業時間を制限します。それから遮音施設内といたしますと、こういうふうになっておるわけですね。これは環境庁長官が運輸大臣に申し入れた勧告の中のエンジンテストについては「必要な施設の整備、作業時間の制限等を行なうこと。」という、この「必要な施設の整備」すなわち遮音施設、それから作業時間を制限する、この二項目の勧告に対して一応具体的に答えが出ているわけですね、大阪国際空港は作業時間を午前六時三十分から午後十時までの間にしますということで。しかし東京国際空港は、環境庁の言う必要な施設を整備することと作業時間を制限すること、これは全然やってないわけですね。ただ地域を指定しているだけなんですね。同じ空港でありながら、しかも騒音を出していて、これを出した当時の大阪空港と東京国際空港の、国際便の多い少ないという事情の違いはあるにせよ、これをいつまでも放置しておいていいとは言えないと思うのです。そういう立場でもう一度、こうした事態に対して、東京国際空港のエンジンテストに対する条件が環境庁が勧告した条件に合致してない、この問題について環境庁は現時点でどういうふうにお考えになってこれからの対策をされようとしておられるのか、お伺いしたいと思います。
  251. 橋本道夫

    ○橋本(道)政府委員 いま先生の御指摘にございましたように、東京国際空港につきましては、運輸省からの答えの中には時間が入っておりません。しかし飛行場を使う時間は入っておるわけでございます。そういうことで飛行場を使う時間の中でテストをするなら、まだこれは余り物が言えないということでございますけれども、深夜の一時過ぎに消音装置もないところでやるということは、確かに国際便という事情はあるにもせよ、やはりこれは非常にまずいのではないか。ただし、成田空港に国際便が移るということでございますから、いずれ状況は非常に変わることと思いますが、環境庁としては運輸省に、新国際空港に移った以降の問題として、そういうことに対する善処を積極的に働きかけてまいりたいと思います。
  252. 市川雄一

    ○市川委員 環境庁としては運輸省にと言うのですが、きょうは運輸省の方にも来ていただいておりますので、運輸省として現状についてどういうふうにお考えになっておられるのか、その最新の時点での対策について、もしお考えがあればお聞かせをいただきたいと思います。
  253. 田代雅也

    ○田代説明員 ただいま環境庁からお答えがあったとおりでございます。確かに羽田の現在のU地区におきまして夜中にエンジンテストをいたしております。それが周辺の住民の方々に、夜中におきまして騒音を出しますものですから、いろいろ地元の方に御迷惑をかけていることも事実でございます。  私どもといたしましては四十七年に、それ以外のところで行っておりましたものをU地区というところで、少なくとも周辺の方々に一番影響の少ないと思われる場所にエンジンテストの場所を移しまして、そこに限るということでございましたが、その後、やはり騒音が非常に多いものでございますので、二度にわたりまして飛行機の軸の方向、機軸と申しますけれども、それをできるだけ陸の方に影響のないように移すということをいたしました。それによりまして、従来に比べますとかなり状況は好転したわけでございます。しかしながら依然として、いま先生の御指摘のように、夜中に音が出ていることも事実でございます。  私どもといたしましては、その当時川崎市の方々あるいは大田区の方々からいろいろ御要請がございました際に、成田ができます場合には、その後の羽田の状況を見まして、できるだけ効果のある方法をとりたいというお話をしておったわけでございます。具体的に申しますと、現在のU地区というのは滑走路にも近うございますし、また駐機場に近うございます。スペースが狭いものでございますので、そこに何かの施設をするということも不可能でございますし、また駐機場の関係がございますので、その機軸をさらに沖の方に振るということもなかなかむずかしい事情にございました。しかしながら幸いにこの三月末に成田新空港が開港する予定になっておりますので、その後の羽田の状況を見まして、できるだけ地元方々に御迷惑のかからないような適切な方策を講じたいと考えておるわけでございます。
  254. 市川雄一

    ○市川委員 大体そこまでは私たちも一応承知はしているのですが、ただ地元は一貫してテスト場所の移転をしてもらいたいという要求と、それから二つ目の要求は、エンジンテストについては防音設備をしっかりつけてもらいたいという、この二項目を要求してきたと思うのです。いま御答弁がございましたが、テスト場所の移転については敷地が狭いので無理です。最初にそういうお答えがあったわけですね。移転してU地区には行きましたけれども、U地区は動かせないわけでしょう。防音設備につきましては、エンジンカバー方式とハンガー方式、いろいろ方式があるけれども、ハンガー方式は技術的にちょっと困難である。エンジンカバー方式は、最初のころの申し入れの時点では、いま検討中ですというお話だったのですが、最近はU地区にもしこの設備をするとなると、いまの場所の範囲ではできないので、場所を拡張しなければならない、しかしいまの羽田の状況から考えて、場所の拡張はできそうもないから、これもちょっと無理です。代替対策として、いまお話しになった、機首を変えて噴射口を海の方に向ける。しかしこれも、夏は多少の効果があるのですが、冬場は全然効果がない。あるいは、いまもちょっとおっしゃっておりましたが、余り海の方に向けますと、近くにある無線アンテナ及び電源装置に支障を来すために、角度で言うと三十度ぐらいしか住居地域から海の方に向けられないという、三十度という角度の物理的な制限があるわけでしょう。したがって、そういう意味では機首変更ということが川崎地区の騒音には解決の決定的な対策にはなっていないということがはっきりしているわけです。  それから、成田開港後、こうおっしゃるのですけれども、そこでお伺いしたいのですが、成田に移るのは国際便だけだと思うのです。国際便というのは、羽田でもちろんエンジンテストはやっているにせよ回数は少ないと思うのです。国内線がもっぱらエンジンテストをやるわけです。問題は、国際線が成田に移った場合、いまの羽田の状況から考えてみて、国内線が非常に需要があるのだけれども、空港が混雑しているために離着陸ができないのだ、成田へ国際線が動いた、空港にスペースができた、したがって、国内線の増便ということも当然お考えになっておられると思うのです。そうなりますと技術的に非常に困難だとか、場所がないとかという話がまたそのまま延長されて、成田開港後も、皆さんの御答弁を仮に信じたとしても、国内線がまた増便されてエンジンテストが行われる、こういう繰り返しになるおそれが十分あるのじゃないか。その点について運輸省のお考えはどうですか。
  255. 田代雅也

    ○田代説明員 ただいま私の説明がちょっと不十分でございまして、あるいは誤解されたかもしれませんけれども、私どもといたしましては、成田に国際線が移転いたしますと、羽田に現在ございますいろいろの施設、たとえばハンガーでございますとか整備工場でございますとか、あるいは駐機場でございますとか、そういったものを含めましてかなり余裕があくことも考えられますし、また施設の配置につきましても再検討できると思っておるわけでございます。現在のU地区におきましてそこに施設をする、こういったことにつきましてはかなり問題があると思います。したがいましてU地区の場所の移転あるいはU地区の中におきます消音施設等の設置を含めまして総合的に効果のある方法地元方々に現在の騒音ができるだけ及ばない施策につきまして検討いたしたいと思っておるわけでございます。  それから国際線、国内線の問題でございますけれども、確かに現在の羽田空港から国際線が成田に移転いたしますと、国際線関係の整備の基地が成田に大部分移るわけでございます。したがいまして、残りますのは国内線の機種だけでございますが、増便等がございましても、やはり何と申しますか、機種が少なくなるとか、それからそういった回数が減るとか、そういったことを含めまして、総合的に、夜間のテストが陸上に対して与える影響が少なくなるような施策を十分講じ得ると考えておるわけでございます。
  256. 市川雄一

    ○市川委員 そこで環境庁にお伺いしたいのですが、環境庁は四十六年すでに運輸省にそういう勧告を出したわけですね。エンジンテストについては作業時間の制限、それから防音設備をつくりなさい、こういう勧告を出しているにもかかわらず、大阪には運輸省の方はそれにこたえた形で、作業時間も制限しました、遮音施設もつくりました、しかし、東京国際空港はずっと今日に至るまでU地区という地区の限定だけで、作業時間も制限しなければ、防音設備もつくらないままに来たわけですか、これは環境庁として今後こういう問題を運輸省に勧告を強くしていくべきだと思いますが、その点、環境庁としてのお考えはどうですか。
  257. 橋本道夫

    ○橋本(道)政府委員 いま御指摘のございましたように、環境庁としても運輸省に強く働きかけていきたいと思っております。
  258. 市川雄一

    ○市川委員 いままでは物理的な事情というものが大きな要因だったと思うのですよね。しかし、いまおっしゃるように、成田移転後は物理的な状況でスペースが生まれるから十分対策がとれるはずです。したがって、ここでもちろんいつまでにというようなことは要求はいたしませんけれども、エンジンテストについてとにかく作業時間の制限はやります。東京国際空港も環境庁の勧告に従ってエンジンテストは大阪空港並みにちゃんとやります。それから遮音施設もきちんとつけます。そういう条件が整わない限り、たとえ成田移転後も国内線をふやして、そしてさらにエンジンテストの騒音がふえるという事態にはいたしませんというかたい決意が環境庁にもあるのかないのか。また、運輸省にもそういう住民の要求にこたえていこうという御決意があるのかないのか、この点について運輸省の方から先にお伺いしたいと思うのです。
  259. 田代雅也

    ○田代説明員 一般論で失礼でございますけれども、現在の飛行場問題、その中で最も大きな問題はやはり環境問題、騒音対策でございます。私どもといたしましては、今後航空輸送を伸ばしていく上からも、環境面に鋭意努力いたしませんと航空の将来はないという認識でございます。したがいまして、羽田の現在のエンジンテストの問題も含めまして、根本的に周辺の方々にできるだけの環境対策を今後とも努力して続けていく覚悟でございます。  具体的に申しますと、いまのU地区のところに消音器を置くなり、あるいはフェンスを置くなり、そういったことがいいのか、あるいはさらに別のところに場所を求めまして、そこにエンジンテストの場所を移すとか、そういうことがいいのか、そういったことも含めまして、実は五十三年度に羽田空港の中の施設の再配置に関する調査のための予算がとってございます。そういったものを使いまして、住民の方々に御納得いただくような施策を今後とも続けていく覚悟でございます。  作業時間の問題でございますけれども、これにつきましてはちょっと説明が要るわけでございますが、実は現在、飛行機が昼間飛びまして夜基地に帰ってまいりましてそこで若干の整備を行う、若干の手直しをする、あるいは場合によっては若干のふぐあいがある場合にそこを点検するわけでございます。それを夜中に行いまして、翌日またその飛行機が航空輸送需要に応じまして飛んでいくわけでございます。したがいまして、若干の小修理ということはやはり運航時間外にやることが必要であるし、またそこでエンジンテストをある程度行うことが飛行機の安全を確保する道でございますので、現在羽田にかなりの国際線の整備基地がございます。そういったものとリンクしているわけでございますので、作業時間の問題につきましては今後の検討課題とさしていただきたいと思います。本日この場におきまして、作業時間を短縮するということにつきましては、もろもろの観点からちょっといろいろ検討させていただきたいと思います。
  260. 橋本道夫

    ○橋本(道)政府委員 四十六年の環境庁の勧告の中にもはっきり言っているわけでございまして、また運輸省の回答の中で時間を指定していないということは確かにございますか、どうしても夜テストしなければならないのであれば、やはり施設やそういうものをちゃんとしなければならぬじゃないかということを強く感ずるわけでございます。そういう点で、環境庁としてもこの問題については強く働きかけていく決意でございます。
  261. 市川雄一

    ○市川委員 十分な答弁ではありませんでしたが、とにかく技術的にはいろいろな問題があると思いますので、技術的な詰めとか、あるいはテスト場所の設定の詰めとか、もちろんそれを検討いただくのは結構なんですが、ぜひ住民に騒音公害が及ばないようにするために検討をいただきたいということと、作業時間も設定するという方向で御検討を要望しておきたいと思います。  もし消音装置とかそういう遮音施設を導入するということになりますとかなり巨額のお金がかかると思いますか、これは運輸省でおやりになるのかあるいは航空会社でおやりになるようになるのか、この設置責任はどこがお持ちになるのですか。
  262. 田代雅也

    ○田代説明員 周辺の方々公害が及ばないように努力するのは、これは国の責任であり、私ども運輸省の責任であると考えているわけでございます。しかしながら、消音器を置くということにつきましては、たとえば今回成田に新しく消音器が置かれるようでございます。テストはこれからでございますけれども、そういったものにつきましては、エアラインの責任において置いております。外国におきましても、ほぼ同様な事情であると思います。しかしながら、現時点におきましてその費用をどこが持つか、そういうことも含めまして、今後検討させていただきたいと思っております。
  263. 市川雄一

    ○市川委員 環境庁にお尋ねしたいのですが、四十八年十二月二十七日の航空機騒音に係る環境基準に、「地域の類型」としてI、IIに分かれて、WECPNLという基準値を出しておられるわけですが、これは御説明によりますと、あくまでも航空機の離着陸時に発する騒音を規制する指標であって、こういうエンジンテスト等により地上から発する、離着陸に関係なく発する音についての基準値ではない、こういう御見解のようですが、しかし、大阪でもそうでしたが、東京国際空港でもそういう住民の被害の訴えが多いわけでございまして、この前の委員会でもたしか鈴切委員から大田区で鼻血が出るとか出ないとかという問題の御提起があったわけですけれども、そういうことを考えますと、また国際線という、国際的な事情を考えますと、環境庁として何らかそういう離着陸に関係はないけれども地上から出てくる航空機の騒音について、やはり周辺住民の健康を守るという立場でこれを規制する指標というか基準というか、そういうものをお持ちになる必要があるのじゃないか。全然お持ちにならないで、ただ勧告をしていますというだけでは、これはやはり騒音防止の環境行政としては決め手を欠いておると思うのです。そういう意味で、これだけ空港周辺のいろんな問題が起きている中におきまして、単なる離着陸の航空機の発する騒音の規制だけでいいのかという疑問を私は強く持っているわけですが、この点についての環境庁としての今後のお考えというか、やる方向で考えておられるのか、全然いまお手上げの状態なのか、お伺いしたいと思います。
  264. 橋本道夫

    ○橋本(道)政府委員 いま先生から御指摘のございました問題は、航空機騒音に係る環境基準の中のWECPNLでやるということは適切でないということでございますが、環境庁の勧告の中にも施設とか時間、そういう規定で入っておりまして、また運輸省もそういうことについて、こたえ方についてはいろいろの問題があろうかと思いますが、やっておるわけであります。そういう点で、航空機騒音防止対策の中で、フライトによるものと地上のテストというのはやはり分けてちゃんとするということが基本ではないか。しかし、環境庁がそれではここで施設の基準や音の量を決めるかということになりますと、これは環境庁自身がそこまで具体的に決める立場にはないと思います。ただ、問題としては強く働きかけるということで、そういうことで今回、ことしの予算で交通公害対策室もできたわけでございますが、積極的な働きかけをしていくということは強い決意でございますが、環境庁自身が具体的に基準を設けてやるということまでは、現在のところは少し無理なのではないか。運輸省に強く働きかけていくということで対処したいと思います。
  265. 市川雄一

    ○市川委員 東京国際空港の沖合い移転の問題を最後にお聞きしておきたいのです。  運輸省と東京都、大田区・品川区との三者で協議会をつくって、すでに過去五回会合を行ってきた経緯があるというように聞いておりますが、いまどういう結論に達しているのか。特にしびれを切らした東京都側は、昨年十二月、運輸大臣に独自の移転計画を示したと聞いておりますが、この点について運輸省はいまどういう見解ですか。
  266. 田代雅也

    ○田代説明員 羽田空港が現在大田区、品川区を中心としました、あるいは川崎市の方々を含めました周辺の住民の方々に騒音公害を与えているということは事実でございます。したがいまして、地元方々あるいは東京都知事からの御要請もございまして、それを沖合いに移転する計画を国の方で考えてくれということでございまして、私どもも、その考え方につきましては、全く基本的に同感でございます。しかしながら、羽田空港を沖合いへ持っていくにしましても、やはり地域の住民の方々あるいは地方の公共団体の方々の御意見というものを踏まえませんと、なかなか皆さんの御満足いただける案が出ないということでございまして、昨年の秋うちから、先生いまお話しの四者協議会を発足させまして、いろいろ検討を続けておるわけでございます。  しかしながら、羽田空港の問題は、やはり東京湾の一部でございます。東京湾の全体計画、特に東京湾の中におきます海上航行の安全の問題、あるいは広く関東地方上空の空域の問題等々の関係もございまして、できるだけそういった各方面との調整を図る必要がある。それでないと、りっぱな空港というわけにいかないわけでございますので、私どもとしましては、いろいろ各方面と調整を図りながら、一刻も早く皆様の納得いただけるような案を出したいということで、ただいま申しました東京都、大田区、品川区の関係方々と協議を続けているわけでございます。ことしの二月一日に美濃部知事が大臣のところへお越しになりまして、東京都の試案というものもお出しになりました。その案も一つの検討材料としまして、いま私どもの間で、その問題をめぐりまして検討を続けているわけでございます。
  267. 市川雄一

    ○市川委員 運輸省としては、将来やはり移転をするのだ、した方がいいのだという判断をお持ちで検討するわけですか、どうですか。
  268. 田代雅也

    ○田代説明員 そのとおりでございます。
  269. 市川雄一

    ○市川委員 羽田の問題につきましてはそういうことでございましたが、私は、離着陸の騒音だけではない、これからのことを考えますと、そういう地上から出る航空機騒音についての住民の健康を守る立場での何らかの基準がやはり必要ではないかと思っておりますが、この問題は、また後で鉄道の問題と関連してお尋ねをしたいと思います。  次に、国鉄の武蔵野南線の振動、騒音のことについてお尋ねをしたいと思います。  御承知のように、首都圏の大動脈として、東京の外を回る環状線のルートとして国鉄の武蔵野南線が昭和五十一年三月一日に貨物専用線として開通をいたしましてまる二年になろうとしておるわけですが、このうち川崎市の中原区の小杉トンネル部分や高津区の梶ケ谷ターミナル周辺を初め、沿線で振動、騒音による住民の被害が起きていることは、もうすでに御承知のとおりだと思います。私も何回か現場に参っておりますが、ガラスの戸ががたがた鳴る、もう全くまるで地震のようだ、あるいは家屋に変状を生じた、一階は騒音で、二階は揺れがひどい、ノイローゼになりそうだ、列車が通過するたびたびにどんどんどんどん音がするとか、こういう苦情が後を絶たないわけでございます。夜中に子供がびっくりして泣き出した、それを見て驚いたとか、こういう実情にあるわけですが、関係各位の御努力によりまして、騒音の方は、開通時よりはやや前進したことは認めますが、振動問題に至っては、全然一向に改善されてないという実情にあると思います。  ちなみに、神奈川県の公害防止条例の立場からこの南線の振動というものを見ますと、はなはだしく県の公害防止条例の基準を上回っておるわけでございます。昭和五十一年四月から五月にかけての調査。県条例では、午後十一時から翌日の午前六時までについては、振動については〇・一ミリセコンドという基準値を持っております。また、騒音については四十ホン。ところが、この武蔵野南線は、高津区千年というトンネル部分では一・九四ミリセコンド、県条例の十九倍、それから高津区野川トンネル開口部分では一・一七ミリセコンド、県条例の十一・七倍、あるいは宮崎トンネル部分では〇・五四ミリセコンド、五・四倍、こういうデータが振動については出ているわけでございます。また、騒音につきましては、県条例と比べてみまして、中原区上小田中というところでは四十八ホンで県条例の一・二倍、新城地区では五十三ホンで一・三倍、野川地区では八十七ホンで二・二倍、こういう実情があるわけです。  環境庁には、この国鉄の在来線についての振動、騒音を規制する何物もないわけですが、こういう現状について、どういうふうに認識をされ、どうしようというふうにお考えであるのか、まずそれを伺いたいと思うのです。
  270. 橋本道夫

    ○橋本(道)政府委員 鉄道関係の振動と騒音につきましては、新幹線が最も激しい問題がございまして、訴訟にまで至ったものがございまして、環境庁としても告示を出し、またそれ以降、環境基準の設定ということで、新幹線の環境基準を五十年七月に設定をいたしました。また、振動規制法を五十一年に制定いたします折に、新幹線につきましての緊急に講ずべき措置をどういう場合にやるかという基準を示したところであります。正直に申しまして、騒音、振動と申しますのは、土地利用の形態あるいは土質に非常に関係をしておりまして、特に振動はむずかしい、余りいままでに経験のないものでございます。  そういうことで、余りに激しい新幹線についてまずやったということでございますが、それ以降のほかの在来線につきましては、確かに問題のあるのは承知をいたしております。ただ、この問題は全国非常に広範な問題でございまして、国鉄のみならず民間鉄道に至るまですべてこれは関連をしてくる、しかも、きわめていろいろな場所であるということでございまして、この問題につきまして将来環境基準を設定する必要があるということで、五十年度、五十一年度、五十二年度、三年度にわたりまして、この騒音、振動の実態調査とそれに対する住民の反応調査とをいたしまして、また今度は、五十三年度と五十四年度、二年かけまして、どのような防止技術があるか、またその防止技術の費用効果といいますか、どういう効果があるかということを専門家にチェックをしてもらうということで対応しようとしております。そういうことで、問題は非常にむずかしいということでございますが、何とかこれに対する環境基準の設定の努力をしたいということで、現在努力中のところでございます。
  271. 市川雄一

    ○市川委員 工場につきましては振動規制法、騒音規制法という形で規制されているわけですよ。私の企業に対しては規制する、しかし、国鉄のように公共性のあるものについては、非常にむずかしいからということで、いままで放置されてきた。ただ、新幹線は住民が非常に騒いだからやったというような感じもわれわれは受けるわけですが、確かに公共性があるということはわれわれも理解するのにやぶさかではないのです。非常に困難ないろいろな事情があるだろうということは理解はできますが、しかしこれからこういう環境行政を進めていく上に当たって、私の企業に対しては厳しく取り締まるけれども、公共性のものについてはむずかしいからちょっと待ってくれということでは、これは通らないと思うのです。むしろあべこべだと思うのですね。公共性の高いものほど厳しい自己規制というものをしっかりやって模範を示してこそ、初めてほかのものがその規制に従ってくるのではないかと思うのです。  そういう立場から、国鉄の在来線については非常に、鉄路二万キロですか、長い地域についてのいろいろな問題を抱えているとは思いますが、特にこういうひどいところについて、私はやはり何らかの環境庁としての考え方を持って勧告なり指導に行政的な措置をとっていくべきだと思うのですが、その点はどうですか。
  272. 橋本道夫

    ○橋本(道)政府委員 いまの先生の御指摘のような問題点が客観的に見てあるではないかということに対しまして、私ども何ともお答えのむずかしいわけでございますが、問題として、生活の質の問題に関連した公害問題にだんだん移り変わってきまして、そういう点が一つと、もう一つは公共性だから緩くていいというような考え方ではございませんが、公共としての特殊性があることも事実でございます。しかし、このごろは私どもの局の問題も、ほとんど実は公共性のものばかりになってきております。空港、新幹線、道路、ほとんどすべて公共性の方に向いてまいりまして、交通公害対策室を設けたといいますのも、従来の企業公害とは違う、そういう点をやらなければならないということでやっと取り組む段階に入ってきた、そういうことでございまして、決して甘くしょうという気ではございませんが、先ほど申し上げたような努力を積み重ねて対応していくという決意でございます。
  273. 市川雄一

    ○市川委員 やはり甘く見ていたのじゃないかと思うのですよね。そういう意味では、いまごろ腰を上げたというのはちょっと遅過ぎたと思うのですよ。もう新幹線をつくるときにすでにわかっているわけだし、あるいは武蔵野南線をつくるときにもう予想できたと思うのですよね。ここで水かけ論を繰り返しても意味がありませんので、そういう点をまず御要望しておきまして、もっと具体的な問題に入りたいと思います。  武蔵野南線の施行に当たって、昭和四十五年六月二十日に川崎市議会第四常任委員会と同鉄道の振動、騒音の規制値について、日本国有鉄道の宮下和夫東京第二工事局長及び日本鉄道建設公団の川崎敏視東京支社長、この三者か確認事項を三者合意でつくっております。それによりますと、騒音、振動については、県条例の基準以下に抑えるよう努力する。なお、県条例の基準は、速度方式の算出方法による振動〇・三ミリセコンド、騒音では昼五十五ホン、夜五十ホン、深夜四十五ホン以下、こういうふうになっておるわけですね。こういう三者の確認事項があることは環境庁は御承知かと思いますが、確認しておきたいと思いますが、どうですか。
  274. 橋本道夫

    ○橋本(道)政府委員 十分承知をいたしております。
  275. 市川雄一

    ○市川委員 そこでお尋ねしたいのですが、その後国鉄側というか、これは鉄建公団側だろうと思うのですが、工場についてできた振動規制法の算出方法、これは御承知のように振動レベル方式、いま申し上げた神奈川県条例の算出方式は速度方式、この算出方法が違うわけですね。鉄建公団側か国鉄側かからは、その後振動規制法ができたので振動レベル方式で規制値を考え検討していきたい、こういう御意向が川崎市議側に示されたようでございますが、川崎市議側としてはこれでは困るわけですね。せっかく県条例の基準値以下に抑えるよう努力しますという共通の土俵を設定した。三者がそれを合意して、署名捺印をしてスタートした。その後、この算出方法を速度方式から振動レベル方式に変えたいということは、これは単なる算出方法の問題ということよりも、非常に大きな問題なんですね。土俵を変えてしまうわけですからね。相撲で言えば、普通だれでも考える土俵で相撲をとろうと思っていたら、土俵に上がった途端に、もっと土俵を大きくしようじゃないかというような話と同じわけです。これは。そういう意味でこれは納得ができない。  環境庁としては、こういう特定工場について振動規制法をつくったその意図、趣旨から考えて――環境庁は在来線については基準を持ってない。持ってないからこそ自治体は苦労して、国鉄に対しては県条例で対応せざるを得なかった。県条例で自己防衛のために対応して、しかもこれは強制で押しつけたわけではない、国鉄も鉄建公団も自主的に話し合って合意して判こを押したわけです。こういうものに対して国の一応法律ができたのだから、その法律、方式に従えという立場に環境庁は立っておられるのか。それとも振動規制法ができて、振動レベル方式という算出方法はできたけれども、あくまでもそれ以前に決められた約束については、これは拘束をしないという立場に立っておられるのか、その点を確認しておきたいと思うのですが、どうですか。
  276. 橋本道夫

    ○橋本(道)政府委員 いまの御指摘のございました件は、振動規制法の審議のときにも問題になっておりますが、当事者同士が文書を交わして約束をしたことは、その条件に従ってやるのが当然であるという立場でございます。
  277. 市川雄一

    ○市川委員 これは非常に大事な問題なんです。それで、大変長官には申しわけないのですが、環境庁長官として環境行政の最高責任者として、いまの局長の御答弁を確認なさいますか。
  278. 山田久就

    ○山田国務大臣 この在来線というものの規制のむずかしさ、これは御承知のとおりでございまするが、にもかかわらずその三者の申し合わせというものがあり、わが方として特にこういう基準が守られるということについて、われわれは重要な関心を持ち、また守られることについて責任を感じているわけでございまするから、何とかしてこういうむずかしい状況においてもとにかく約束したことが守られる、こういうことについていろいろな、どうやったら現実問題としていくかということで、本当に研究を重ねてその結論を出そうということで、ちょっと時間がかかり過ぎているというようなことは、この実態から見て私も非常に遺憾だと思っております。にもかかわらず、それに基づいてこれが守られるように、われわれとしてもひとつ努力して果たしていきたいと思っております。
  279. 市川雄一

    ○市川委員 そういう御決意を伺ったわけですが、どうですか、環境庁として在来線の振動、騒音についてこれを規制する基準を持ってなかった、したがって、自治体が苦労して当事者同士で話し合って約束事をつくった。ところが、この大事な算出方法を変えたいとおっしゃってきた、困る。したがって、やはり県条例にせよ何にせよ、自主的に話し合って約束をしたのですから、算出方法を含めてその約束を守り、履行するように、環境庁から国鉄なり鉄建公団に勧告をする御用意はございますかどうですか。
  280. 橋本道夫

    ○橋本(道)政府委員 いまの先生の御指摘のあった件は、当事者同士で約束をしたことでございまして、環境庁自身として直接関与した問題ではございません。そういうことで、環境庁としての方針はいま申し述べましたとおりでございまして、いずれの側から聞かれたときもそのような言い方をいたしております。そういうことで、これはちょうど五十年の末から五十一年にかけまして、小沢環境庁長官のときにその問題がございまして、小沢長官もそのような約束をしておいて守れないと、どこに行ってアセスメントをしてもみんな不信用になってだめになる、そういうことでこれはちゃんとやれということを私は命を受けまして、川崎市の方とも話もいたし、また運輸省当局とも話をいたしましたが、あくまでも当事者同士の約束は当事者がやることで、環境庁が勧告をもってやるべきこととは考えておりません。
  281. 市川雄一

    ○市川委員 そこで、きょうは鉄道建設公団の方に参考人としてお忙しいところ御足労いただいたわけですが、お尋ねをしたいと思います。  いま質問のやりとりを伺っていて事情をよく御承知かと思いますが、今後、川崎市と交わしたこの三者合意、これをまず基本的にしっかり守っていくという御決意なのかどうか、これをまず確認をしたいと思います。
  282. 天野禮二

    天野参考人 お答えいたします。  ただいま先生の御指摘のように、確かに確認書がございまして、私ども工事をいたします前にもうその確認書を取り交わしておりまして、それらのことを配慮いたしまして、トンネルの構造につきましても地中壁をつくるというような努力は建設のときにいたしております。しかし残念ながら、これも先ほど先生の御指摘がございましたように、開業後いわゆる確認書の線よりもオーバーした数値が出ておる個所がございまして、私ども開業後もいろいろ調査いたしまして、いろいろその対策を講じておりますが、もちろん今後ともこれらについては達成すべく努力をしていく所存でございます。
  283. 市川雄一

    ○市川委員 三者合意事項は守るということですね。それで守るという守り方の問題なんですけれども、いま問題になっておりますのは御承知のように県条例の基準値以下に抑えるよう努力する。問題はその算出方法なんですよ。これは換算するというのですけれども、換算の方法がまたこれは異論があるわけですね。両者がそういう換算方法で理論的な論争になってしまうわけですよ。こんなことでは話にならないわけでして、あくまでも県条例は、振動については速度方式で算出した基準値でいく、こういうことを前提にしているわけですが、そういう速度方式による算出方法を含めてこの三者合意事項を守っていくというお考えなのか、それとも振動レベル方式でこだわっていくというお考えなのかという点をお伺いしたいと思います。
  284. 天野禮二

    天野参考人 ただいま御指摘の振動レベル方式でいくか速度方式でいくかということにつきましては、換算した数値自体についてはこれはどういう値をとるかというところに違いがあるわけでございまして、この値をとるのだということにつきましては同等と考えられると思いますので、私どもとしましては振動レベルで測定したもので、ただどの値をとるか、最高値をとるのか、あるいは平均値をとるのかということについては確認事項に基づいたもので対処していきたいと思っておりますけれども、数値自体につきましては同等と考えております。もちろんそれを速度で換算して速度で出せということであれば、これは私申し上げましたように同等でございますので、その線で今後努力していくということでございます。
  285. 市川雄一

    ○市川委員 そこが意見の分かれるところで、これは私は専門的な知識を持ち合わせているわけじゃありませんからあれですけれども、やはりこれは速度方式で数値を出そう、そういう速度方式で数値を出すのだという想定で測定するのと振動レベル方式の想定で測定するのでは測定の仕方にも違いがあるでしょうし、同一地点では違いがないのだということを鉄建公団側はおっしゃっているようですが、川崎市側は納得してない。これは約束なんですから、こんなことで理論闘争しても意味がないわけですよ。ですから、これは約束の原点にお戻りになって、速度方式で測定をし、速度方式の数値を出すという前提で測定をなさり、速度方式の数値を出して、そしてそれが約束の県条例に合っているのか合ってないのかという立場で約束を守っていくのだ、こういうお立場に立っていただきませんと、これは土俵を壊してしまっている。幾ら同一地点で測定をすれば、換算すれば数値は同じなんだというけれども、そこに何となくごまかしがあって市側の不信感、地元側の不信感を呼んでおるわけですから、トラブルを解決するという立場に立ちますと、最初の約束というのは大事なんです。守れない約束だったら最初からしなければいい。約束をした以上はやはりきちんと守らなければいけない、技術的に何も困難なわけじゃないのですから。いままでそういう測定方法をやってきたのじゃありませんか。それを何もいまになって振動レベルでやりますといって問題をわざわざこんがらかせて、地元の不信感を呼ぶことはないのだ。お約束なんだからお約束どおりの算出方法で県条例以下の基準値に抑えるよう努力していきます。こういう姿勢がまず欲しいと思うのです。その点についてどうですか。
  286. 天野禮二

    天野参考人 ただいま私の申し上げ方が少し舌足らずでございまして、最後に申し上げましたように速度方式、これは同等ということで、これは先ほどちょっと申しましたとり方が最高か平均かということは問題がございますけれども、方式につきましては速度ということで努力していくということでございます。  以上でございます。
  287. 市川雄一

    ○市川委員 環境庁もこういうことをよく御承知の上で今後お願いしたいと思うのですが、この振動問題は技術的に非常に対処がむずかしい。恐らくはいまの時点では技術的には対策がちょっとないのじゃないかと思うのです。そうしますと、技術的に対策がないとなると、これは物理的対策を講ずるしかないわけですね。物理的対策というのは結局貨物のダイヤそれからスピードダウンという問題になるのですが、この武蔵野南線の梶ケ谷駅地点の時刻表を拝見いたしますと、午後十時から十一時までの上り下りが合わせて通過車が十回、それから午後十一時から十二時までが七回、午前零時から午前一時までが十一回、午前一時から午前二時までが十一回、昼間は四、五回、こういうふうに圧倒的に休む時間、深夜に多いわけですね。したがって、振動、騒音について技術的な対策がないとしますと、これは住民に対しては県条例を守るように努力しますから――努力しますからということはやりますということですよ。それをいまになって、あれは単なる努力目標というのは、これは全く詭弁です。そういうことじゃいかぬと思うのです。努力すると約束した以上は守らなければいけない。それに対して技術的な対策がないなら、何らかの誠意を国鉄として示す必要があると思うのです。こういう真夜中に集中して多い。したがって、ダイヤ編成を変える、間引き運転をする、あるいは振動のひどい地域の通過についてはスピードをダウンさせる、当面国鉄としてはこういう努力をいたしましたという一歩前進の改善された姿勢が示されなければならないと私は思うのです。それを約束はしたけれども、二年も経過した。しかしこれは技術的に非常に困難だから、むずかしいからなんということでほったらかしにしておくことはいけないと思うのです。そういうことについて、こういう物理的な措置を講ずることによって、多少なりとも緩和することは可能なんですから、そういう誠意ある努力をなさるお考えが全くないのかどうか、国鉄の関係者にお答えをいただきたいと思います。
  288. 從野武邦

    ○從野説明員 お答えいたします。  先生当初にお話のございましたように、武蔵野線の性格については、私がここであえて申し上げる必要はないかと思いますが、武蔵野線をつくりました経緯といいますのは、首都圏におきます通勤通学輸送を主体といたしますそういった輸送に対応するために、どうしても貨物の対策をやらなければいけないということで建設をいたしました貨物で言えばメーンルート、首都圏でいきますとそういったことになると思います。  これも御承知かと思いますが、貨物の性格といいますものが、昼間に荷物を集め、あるいは昼間に配達をしなければいけないというような性格を持っております。したがいまして、どうしても夜間にある程度まとまってくるというのは、これは必然的な性格を持っておるということを申し上げたいと思います。またそのほかにも昼間に回すようにすることによりまして、旅客輸送との競合関係その他非常にむずかしい問題が起きておるわけでございます。私たちといたしましては、できる限り先生御指摘のように夜間に走るということはあくまでも避けたいということで努力はしておりますが、どうしても先ほど申し上げましたような事情のためにそういった状況に立ち至っているわけでございます。ちなみにあの地区の列車回数は現在どのくらい走っているかと申し上げますと、大体百三十本くらい走っているのではないかと思うのでございますが、そのうち夜間はどこの時点でとるかということはいろいろあると思いますが、一応十時から朝の六時くらいと考えますと、その約半数くらいのものが夜間に走っているということでございます。といいますのは、先ほど言いましたような事情のもとにありますので、私たちとしては、今後ともできるだけこの問題について、昼間に運行できるものについては昼間にするという努力は続けていきたいと思っておるわけでございます。  それから第二番目に先生から御指摘をいただきましたスピードを落としたらどうだというお話でございます。この問題につきましても、私たちとしては何も交通機関の使命というのは早く行くのが使命であるとは言われておりますものの、それだけに固執しているわけではございませんで、やはり全体の輸送事情に合わせて輸送力が落ちないように実施していかなければならないというふうに考えておるわけでございます。スピードを落とすことによりましての輸送量の減というようなことを考えますと、私たちとしてはどうもこの案も実際問題としてなかなか実現は困難かというふうに考えておるわけでございます。したがいまして、先生から非常に対策はむずかしいじゃないかという御指摘ありましたとおり、この問題は、振動の対策、原因、伝播等を含めました対策については非常にむずかしゅうございまして、われわれとしては、何としてもそういった線路における対策で努力をしてもらおうじゃないかということで公団にもいろいろ御相談を申し上げまして、いろいろな方法を現在やっていただいております。残念ながら、現段階でこれはという成果が上がっておりませんので非常に申しわけないとは思っておるのでございますが、先生御指摘のお約束もあることでもございますし、何としても少しでもいい方法を早く見つけて実現をしたい、このように考えておるわけでございます。  正確なお答えにならないかと思いますが、国鉄としての輸送という面から非常にむずかしいということで、ぜひとも御理解を賜りたい、このように存じ上げるわけであります。
  289. 市川雄一

    ○市川委員 非常に長い御答弁をいただいたのですが、そのわりに非常に抽象的で全然わからないわけです。私が伺ったのは、武蔵野南線については技術的にいま対処はできないわけでしょう。鉄建公団もいまできないと言ってお手上げなんですよ。技術的に今度は対処する方法をこれから開発して考えるわけです。この努力は当然やっていただかなければ困る。だけれども、当面はお手上げの状態です。ではどうしたらいいかというと、物理的に対処するしかないでしょうというのです。間引き運転するとか。もちろん国鉄の公共輸送の使命というものは、われわれも認識しております。いろいろ御苦労なさっておることも十分に理解はしておりますが、しかし最初に約束しておるわけですよ。それだったら、最初から後で問題が起きないようにちゃんと土地を全部買えばいいのです。地下鉄の上を全部買えばいい。地上権八割だなんて、二割予算でけちったために結局こういう問題が起きたわけでしょう。ちゃんと全部そっくり買って、上に人を住まわせないようにすれば、それはそれでいいのです。それを結局予算の関係で上に人は住まわせます。地上権八割で住まわせます。財源は節約はしました、振動のことは約束はしました、二年経過しました、できません、国鉄の公共性を御理解いただきたい、これでは公共性にあぐらをかいているようなものじゃありませんか。そうでしょう。やはり約束をしたのですから、私が質問しているのは、いまの時点では間引き運転をするか、スピードダウンをするという物理的な対策を講ずるしか対策はない。はっきりしている。それに対して、事情があるでしょうから、何も全部全く理想的にやれとは申し上げませんよ。何らかの住民に対する一歩前進の誠意ある姿勢というものがとれないのかということです。この御答弁をいまお願いしたわけでございます。どうぞ簡潔にお願いしたいと思います。
  290. 從野武邦

    ○從野説明員 先ほど私がお答え申し上げたとおりでございまして、私たちとしては、やはり構造物の対策で何とかやりたいということで従来もやってまいったわけでございますし、今後ともぜひともやりたいということでございます。
  291. 市川雄一

    ○市川委員 時間が迫ってきておりますので、問題を変えたいと思います。  次に自動車排気ガスのNOxの問題でお尋ねしたいのです。  一昨日の新聞ですか、これによりますと、環境庁の委託で、窒素酸化物と健康影響の関連について研究を進めていた大気汚染と呼吸器症状などに関する研究班がこのほど報告書をまとめたという報道がなされておりますが、その報告の中では、大気汚染の主役がNOxである。しかもこのNOxによる汚染濃度が住民の健康に大きな影響を与えている、こういうことが立証されたとされているようでございますが、まだ正式には環境庁に報告は届いているかどうか知りませんが、この点についてどうですか環境庁の見解を……。
  292. 山本宜正

    山本(宜)政府委員 お答えいたします。  昨年の二月に、複合大気汚染健康影響調査というものを、こういうレポートとしてまとめて発表したわけでございます。これは統計的ないわゆる標準的な解析を行った報告書でございますが、これをもとにいたしまして学者の先生方がさらにいろいろな文献あるいは統計的な一歩深まった解析研究をしたい、こういう申し出がございましたので、それにつきまして委託研究をいたしたわけでございます。現在私が聞いておるところによりますと、先週の末に原稿が大体でき上がったので、それを各委員の間で読み合わせてディスカッションを行ったということでございまして、最終的な報告書は近く私の方の手元に参ることと思っておりますが、そのディスカッションの上でいろいろ訂正すべき点は訂正したいというようなことも委員長から聞いておりまして、まだ私正確に最終報告書はちょうだいしておりません。
  293. 市川雄一

    ○市川委員 正式な報告書は受け取ってないということでございますのであれですが、NOxによる汚染濃度が住民の健康影響に強い関連性があるということは、この報道で明らかにされているわけですが、いままで一部には、環境庁の窒素酸化物の環境基準について、科学的根拠は乏しい、厳し過ぎるとかいう産業界あるいは通産省あたりからの御批判があったようです。この調査が正式にまとまった時点で、環境庁としては、恐らくいままでの環境庁の主張が裏づけされるような報告になっているのじゃないかと思うのですが、今後この窒素酸化物の規制について大気汚染防止のための行政姿勢にいささかも後退があっては困るのですが、この点は長官にぜひお伺いしたいのですが、今後の御決意いかんということをまず簡単に長官の所信をお伺いしたいと思います。
  294. 山田久就

    ○山田国務大臣 御承知のように、ただいま中公審で審議していただいているわけでございまして、われわれといたしましてはちょうどいま五年の見直しということになっておりますが、いままでの国内的な科学知見、動物、そしてまた海外のいろいろな知見というものを土台にして、ひとつきわめて冷静に、客観的にこの問題についての答申をしてもらいたいということになっております。したがって、その答申がありましたら、その答申を踏まえて今後の対策をそれにのっとってやっていきたい、こう考えております。
  295. 市川雄一

    ○市川委員 排気ガスの問題は全国的な問題になっておりますけれども、まあこれを全国的に漠然と取り上げても問題かはっきりいたしませんので、私の地元の鎌倉市の例で申し上げます。これは、環境庁が四十八年五月に告示した環境基準によりますと、窒素酸化物に対する規制値は一時間値の一日平均値〇・〇二ppmで、この目標値の達成年限は五年以内、こういうふうになっているわけですが、この達成の責任行政的な主体者はだれかということをお伺いしたいと思います。
  296. 橋本道夫

    ○橋本(道)政府委員 環境基準の達成につきましては、公害対策基本法の第九条にございまして、政府が総合的な施策を講ずることによってそれが達成されるように努めなければならないというようにされております。またもう一点御留意願いたいのは、環境基準についての九条第一項で「維持されることが望ましい」という形でございまして、維持することが望ましいという形になっておりません。といいますのは、いろいろな施策を組み合わせて維持されるかどうかということでございまして、一つの機関の恣意的な形によってはできない、それが総合施策の一つの特性でございますので、政府としては総合的な施策を、あらゆる努力をして講じてそれを達成する政策的な責務を持つというぐあいに御理解願いたいと思います。
  297. 市川雄一

    ○市川委員 そこで鎌倉市を例にお伺いしたいのですけれども、ここは御承知のように観光地でございまして、車が非常にたくさん押し寄せてくる。大体一日に六万一千六百四十七台、年間で約一千万台の車が、これは流入する車の台数ですけれども、入ってくる。市外の観光客が約二千二百万、人口の相当の倍数の観光客がどっと押し寄せてくるわけです。それで当然自動車の渋滞がひどいわけですね。自動車の渋滞から排気ガスの窒素酸化物の汚染が非常にひどい。住民が非常に苦しんでいるわけですけれども、鎌倉市の調査によりますと、環境庁の一時間値の一日平均値〇・〇二ppmを全部超えているわけです。たとえば五十年の調査で、平均値でいきますと鶴岡というところで〇・〇二七、浄明寺で〇・〇二九、長谷で〇・〇二六、山ノ内で〇・〇三七、手広で〇・〇三七、京浜女子大で〇・〇三六、こういうふうに平均値で見ましてオーバーしているわけですが、こういう問題を解決しようとしても自治体ではどうにもならないわけですね。財政的にまず自治体の解決能力をオーバーしている。交通規制をしなければならない。交通規制は警察庁なり県警で握っておるわけですから、自治体だけの一存ではどうにもならない。あるいは上高地であるとか、ああいう国立公園でやっているような規制法、私たちもそれは調べてみました。あるところまではマイカーを入れるけれども、そこから、駐車場で車からおろしてしまう、後は路線バスに乗りかえさせる、そういうことも考えてみましたが、しかしこれは駐車場の設置が必要だ、あるいは渋滞をなくすためには、バイパスをつくるとか道路の整備をしなければならぬ。しかしこれも用地とかあるいは今度は住民の問題とかいろいろな困難な問題がありまして、一自治体でこうした問題の解決が非常にできない。特にこういう鎌倉市のような観光地で流入の観光客が年間二千万もやってくる、一日六万台も車が入ってきちゃう、どうにもならないという実情にあるわけです。これはやはり先ほど御答弁にありましたように、このNOxの基準値の達成は国が総合的施策を講ずることによって達成するのだというお話でございましたが、環境庁としてこういう現状に対して、どういう総合的施策を講じてやろうとしておられるのか。恐らく抽象的な御答弁になるのだろうと思うのですが、時間がありませんので、ひとつ具体的に簡単にお伺いしたいと思います。
  298. 橋本道夫

    ○橋本(道)政府委員 まず第一の問題は、排出規制でございまして、五十三年規制は世界で最も厳しいもので九十何%のカットということでございます。それからトラック、バスにつきましては、鎌倉の場合は余り関係がないかもしれませんが、これは五十四年規制をいたしまして、それから五十年代の末までにもう一段厳しくしよう、それによって大体六十年ごろには昭和四十年ごろの程度、それから六十年代の中ごろには昭和三十年代の中ごろの程度まで下げようということであります。  ただそれはもうそこで限度がございまして、あとは交通の流れというものがございます。私もときどき警察庁の方に直接参って、鎌倉のことではございませんが、いろいろ全般のことをお願いしております。それからもう一つは道路構造とか町並みということがございまして、これは建設省の方と非常に関係のあることでございまして、これは騒音の方に関連して要請したわけでございますが、道路の構造や周辺の問題ということで、環境庁長官から建設大臣に要請を出しております。これは排出規制が限度に来るという前提に立ってやっておるわけであります。また運輸省の方にもいろいろトラックの業界指導ということで、トラックの業界に運輸省から直接指導をしていただいて、鎌倉の場合には影響が少ないかもしれませんが、かなりいろいろなことをトラック業界の中で申し合わせをしてやっておるという形でございます。また一方では通産省の方が電気自動車の開発ということをやっておりまして、電気自動車の開発は技術的にはいま日本が一番進んできたらしゅうございます。それを今度は実際実用化に五十年代後半までに乗せるということをやっておりまして、そういうものを全部合わせながら対応することをしなければどうにもならないのではないか。  しかしいまの鎌倉の件にすぐに役立つことではございませんが、環境庁としては、そういうもののほかあとエネルギーの軽質化とかそういう問題を、今度は中公審の答申をいただいてから通産省とよくお話をして、そして長期の視野で解決を図りたい、そのような努力をしている最中でございます。
  299. 市川雄一

    ○市川委員 自動車排ガスの窒素酸化物についても他のものについても、環境庁は基準を示すだけ、それで働きかけはします。しかし、基準を示す以上は、裏打ちするというか担保する行政措置というものが欲しいと思うのです。ただ基準を示すだけで、厳しくやっていますということでは、達成できないと思うのです。したがって、これからの行政として、基準は示した、それは示しただけなんであって、政府が総合的にやりますなんと言っても、それじゃどこの省がやるのだと言うと、みんな逃げ回ってしまってやらないわけです。したがって、そういう基準を達成する総合的な戦略というものが今度はどうしても必要じゃないかと思うのですね。そういうことをぜひ要望をしておきたいと思います。  時間が来ていますので次に進みまして、警察庁の方がお見えになっていると思いますが、こういう鎌倉市の場合、排気ガスの公害を解決しようとしますと、環境庁の言う基準値以下に抑えようとしますと、交通規制をしなければならない。あるいは先ほど申し上げたようないろいろな道路の整備だとか駐車場の整備だとかいうことをやらなければならない。これはとてもじゃないけれども自治体の負担能力を超えてしまっている。そういう立場から、ぜひとも警察庁の御協力もいただきたいわけですが、鎌倉市ではたとえば三が日の規制ということをやっているわけです。そういうことも含めまして、国立公園の上高地などでは先ほど申し上げたような交通規制をやっているようですが、何か鎌倉の条件に合ったようなものを考えて、それぞれの観光地の条件に合ったようなものを考えて、そうした自治体の状況に協力していく考えはないのかどうかということをお伺いしたいと思います。
  300. 福島静雄

    ○福島説明員 鎌倉市内の交通規制につきましてでございますが、先生御質問のように、例年正月三が日には約二百七十万人ぐらいの人出がございますので、あわせまして大層車が出てくる、こういう状況にかんがみまして、昭和四十九年から市内に通ずる主要幹線道路の上で三十カ所近い規制地点を設けまして、地元関係車両以外、これはあらかじめ許可証を出しているわけでございますが、その車両以外は市内への通行禁止をするという、大変大規模で強い措置をとっておるわけでございます。平常の場合でございますが、交通渋滞は平日はほとんどないわけでございますけれども、日曜、休日には観光車両も出てまいりますので、どうしても渋滞が出るという状況でございます。ただ、このために正月三が日に行っておりますような大規模な規制を行うということになりますと、市内に関係する業務車両、それから市内の方々を訪問する車両等にも非常に影響が出るわけでございますし、また地元民の中におきましても、商店経営者等の方々におかれましてはいろいろ御意見もあるところでありまして、こういった対策を直ちにふだんの日曜休日等についてもとるということは大変むずかしいのではないかというふうに考えておるわけでございます。  ただ御指摘のように、鎌倉はいわゆる古都でございまして、静かで清潔な環境をできるだけ保持していくという必要があるということは御指摘のとおりでございますので、警察といたしましても市内に車が入るのをできるだけ抑制するという観点から、昭和四十九年から都市総合交通規制で、できるだけ車の流入抑制を図るような交通規制を実施してきておるわけでございます。この辺につきましては、警察としてもなかなか苦心があるところでございますが、十二路線につきまして大型車の通行禁止、それから土曜、日曜、休日につきましては主要路線について車の通行禁止をして歩行者用道路にするというふうな対策、さらにまた旧市内ほとんど全域を駐車禁止にいたしまして、駐車スペースがあることによって市内に車が入ってくるというふうな事態を防止しようということで、いろいろな対策をとっているわけでございます。  こういう対策につきまして、今後とも道路状況、交通状況を勘案いたしまして、前向きに推進をするという考え方でまいりたいというふうに考えておるところでございます。
  301. 市川雄一

    ○市川委員 ぜひ御協力をいただきたいと思うのです。  次に、海岸のごみという問題なんですけれども、これは環境保全という立場で直接行政的には環境庁に関係ないかもしれませんが、しかしこれは関連が出てくるのです。  鎌倉市では、史跡の清掃費に年間二百三十万、海岸の清掃費に二千九十四万、公衆便所管理費に二千五百七十三万、その他観光ごみの処理に二千万、合わせて五十二年度で六千八百九十七万という支出をしているわけです。この海岸の清掃管理者が不明確なために、結局清掃費を市が負担しているという現状があるわけですが、これを調べてみますと、まず大蔵省に問い合わせてみたわけです。これは国有地ですから。大蔵省は恐らく建設省だろう、こう言うわけですね。建設省に問い合わせますと、運輸省と建設省と農林省と水産庁の三省一庁でやっているのだ、こういう話でございました。それでは話がややっこしくなるので、では地域を限定しましょう、この鎌倉市の材木座、由比が浜、七里が浜、この海岸の管理者は一体だれですか、こういうふうに聞きましたら、建設省だというお答えがあったのですが、間違いありませんか、建設省。
  302. 富永正照

    ○富永説明員 お答えいたします。  お尋ねの海岸でございますが、現在海岸保全区域に指定されておりまして、海岸管理者は神奈川県知事でございます。建設省の所管の海岸ということでございます。
  303. 市川雄一

    ○市川委員 後の方がよく聞こえなかったのですが、どういうのですか、建設省の何ですか。
  304. 富永正照

    ○富永説明員 建設省の所管の海岸でございまして、管理者は神奈川県知事でございます。
  305. 市川雄一

    ○市川委員 管理者と言うのですが、海岸法を読みますと県知事は保全管理者なんですよ。そうすると清掃の管理責任は建設省ですか。
  306. 富永正照

    ○富永説明員 現在の海岸法では、海岸の管理者と申しますのは、いわゆる海からの脅威を除くというのが海岸管理者ということになっておりますので、ごみの清掃の問題につきましては、海岸法のたてまえから申しますと一応範疇から外れているのじゃないかというふうに考えております。
  307. 市川雄一

    ○市川委員 ですから、海岸法のたてまえから言うと管理者は不在になるのですよ。結局たらい回しになっているのです。市の方はしょうがないからお金を出してやっているわけですけれども、保全管理というのは防潮とか防波とか、そういう安全上の管理責任者だと思うのです。清掃管理じゃないと思うのです。  ここで厚生省見解を伺っておきたいのですが、廃棄物の処理及び清掃に関する法律によりますと、この海岸の管理者が清掃の責任と費用の負担をすべきであるというふうにわれわれは理解するのですが、この点、厚生省見解はどうでしょうか。
  308. 森下忠幸

    ○森下説明員 お答えいたします。  廃棄物処理法では、廃棄物の収集から始まりまして、運搬、処分、これにつきましての責任体制と、それに関しましての技術的な問題を含めた基準を定めております。収集いたしますということになりますと、その前提といたしまして清掃とか集めるということが不可欠でございますが、そういうことで、土地、建物あるいは公共の場所、こういったものについての占有者あるいは管理者に対しまして、清掃したり集めるというふうなことの清潔の保持についての努力義務が廃棄物処理法で定められておるわけでございます。廃棄物処理法の第五条の規定によりまして、土地、建物の占有者、管理者及び公共の場所の管理者、こういった者は、その占有しあるいは管理する土地、建物または場所の清潔を保つように努めなければならない、こうされておりますので、海岸の清掃責任につきましては、その海岸の占有者または管理者ということになると考えられております。
  309. 市川雄一

    ○市川委員 その海岸の占有者、管理者というのはいないわけですね。海岸法の保全管理者というのは県知事だ、しかしそれは清掃の管理の概念にはなじまないと先ほど答弁なさったわけでしょう。そうなると、この清掃は建設省が所管しているのですから、建設省にも責任があると私は思うのですよ。  そういう意味で、何でこういうことを申し上げるかというと、先ほど申し上げたように観光地である、したがって車が一日に六万台も押し寄せてしまう、年間二千万の人が入ってくる、海岸にごみがまき散らされる、市街地はNOxで汚染される、環境庁が示した基準に合っていない。これを解決しようと思うと、交通規制は警察庁が握っちゃってできない、それからお金がなくて道路の整備もできなければ、渋滞対策も打てません。一方においては国の責任があいまいなためにこういうごみの清掃代までお金がないのにかぶせられて、持たされている。これではどうにもならないわけですよ。そういう意味で、建設省が所管なんですから、過去には建設省もその御自覚があって、予算要求をされた経緯もあるというように聞いておるわけですが、これからもどうですか、建設省の所管者としての自覚と責任のもとに、自治体に無責任に押しつけないで、こういう海岸の清掃管理について予算をとって自治体を助けてあげようというお考えはないかどうか。
  310. 富永正照

    ○富永説明員 先ほど海岸管理者の場合にはごみの清掃については海岸法のたてまえとしては範囲外であるということを申し上げましたけれども、海岸管理者がこれを全く無視しているということでは決してございません。たとえばお尋ねの鎌倉海岸の場合でございますが、神奈川県が海岸美化清掃費といたしまして約五百万ほど五十一年度に支出しておる状況でございます。それでただいま、今後どういうような措置をとるのだ、こういうお話でございますが、海岸法のたてまえでは、国の補助と申しますのは海岸保全施設の新設、改良というものに一応限られているわけでございます。しかしながら、建設省といたしましては、地方財政法の十六条によります補助事業といたしまして海域浄化事業制度というようなものを設けまして、海浜及び海底に堆積したヘドロを除去する、こういう事業を実施した経緯もございます。  そういうようなことでございますけれども、海岸のごみの処理に要する経費と申しますのは、原則的には、先ほどから申し上げておりますように、地方公共団体が単独費で実施するということになるわけでございますが、それではそれが現時点でどの程度地方財政を圧迫する要因になっているか、こういうようなことになりますと、現在の時点では必ずしもまだそこまでは行ってないのじゃなかろうか。したがいまして、そういうようなごみ処理に要する費用というものが今後非常に多くなってくるといったようなことが出てまいった場合には、国庫補助の必要性といったようなものも含めまして、今後検討してまいりたいというふうに考えております。
  311. 市川雄一

    ○市川委員 時間が参りましたのであと少しでやめますが、そういうことで、結局こういう観光地というのは、非常に不利な条件に置かれているわけですね。車は勝手に入ってくる、人は勝手に入ってくる、汚しっ放し、そしてそのお金は結局市で負担しなければならない。奈良や京都のような観光地の場合、国際性ということにかんがみて、国際観光文化都市ということで財源措置として特別の配慮がされるように議員立法されておる法律があるくらいなんですから、自治省におかれましても、いま言ったような状況をよく御理解の上、こういう観光地については十分なあるいは特段の御配慮をぜひお考えいただきたいというふうに思うのですが、どうでしょうか。
  312. 関根則之

    ○関根説明員 観光客が入ってまいりますと、地方公共団体に財政負担をもたらすわけでございますが、その財政需要につきましては、普通交付税及び特別交付税において措置をいたしているわけでございます。年々この額は拡充をいたしておりますので、今後とも必要に応じ強化拡充を図ってまいりたいと考えております。
  313. 市川雄一

    ○市川委員 最後に、環境庁長官に御要望申し上げたいのですが、そういうわけで、いまのたとえば行政需要の計算にしても、たとえばNOxを環境庁の基準の基準値以下に抑える施策を全部講じたとしたら幾らかかるかなんという計量はできないわけですよ。したがって、相当巨額なお金がかかるわけでして、そういうものは、交付金とか、そういうときの算定には全然加味されていないと思うのですよ。したがって、基準を示された以上、その基準が国のもろもろの総合的な施策によって達成されるような具体的な行政措置の伴う、裏打ちのある環境行政というものをひとつぜひ進めていただきたいということを御要望し、環境庁長官の、簡単で結構ですが御見解を伺って、質問を終わりたいと思います。
  314. 山田久就

    ○山田国務大臣 環境基準の達成ということは、政府にとっての重大な責任ですから、これについては関係方面とも連絡いたしまして、総合的にこれが達成するような努力、この点についてはこの上ともひとつ尽力いたしたいと思います。(拍手)
  315. 始関伊平

    始関委員長 これにて本案に対する質疑は終了いたしました。     ―――――――――――――
  316. 始関伊平

    始関委員長 これより本案を討論に付するのでありますが、討論の申し出もありませんので、直ちに採決に入ります。  環境庁設置法の一部を改正する法律案について採決いたします。  本案に賛成の諸君の起立を求めます。     〔賛成者起立〕
  317. 始関伊平

    始関委員長 起立総員。よって、本案は原案のとおり可決すべきものと決しました。  この際、環境庁長官から発言を求められておりますので、これを許します。山田環境庁長官
  318. 山田久就

    ○山田国務大臣 ただいまは環境庁設置法の一部を改正する法律案につきまして、慎重御審議の上御可決をいただきまして、まことにありがとうございました。  私といたしましても、本委員会における御審議内容を十分尊重いたしまして、一層の努力を重ねてまいる所存でございます。どうかよろしくお願いいたします。
  319. 始関伊平

    始関委員長 なお、ただいま議決いたしました法律案に関する委員会報告書の作成等につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  320. 始関伊平

    始関委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決しました。     ―――――――――――――     〔報告書は附録に掲載〕     ―――――――――――――
  321. 始関伊平

    始関委員長 次回は、来る二十三日木曜日午前十時理事会、十時三十分から委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。     午後六時二十九分散会      ――――◇―――――