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1978-03-01 第84回国会 衆議院 地方行政委員会 第5号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和五十三年三月一日(水曜日)     午前十時四分開議  出席委員    委員長 木村武千代君    理事 大西 正男君 理事 高村 坂彦君    理事 中村 弘海君 理事 中山 利生君    理事 小川 省吾君 理事 佐藤 敬治君    理事 小川新一郎君       井上  裕君    谷  洋一君       地崎宇三郎君    中村喜四郎君       中村  直君    西田  司君       与謝野 馨君    加藤 万吉君       新村 勝雄君    細谷 治嘉君       水田  稔君    斎藤  実君       中井  洽君    三谷 秀治君       川合  武君  出席国務大臣         自 治 大 臣         国家公安委員会         委員長     加藤 武徳君  出席政府委員         警察庁長官官房         長       山田 英雄君         警察庁警備局長 三井  脩君         自治大臣官房審         議官      石原 信雄君         自治省行政局長 近藤 隆之君         自治省財政局長 山本  悟君         自治省税務局長 森岡  敞君         消防庁長官   林  忠雄君  委員外出席者         行政管理庁行政         管理局審議官  關  言行君         経済企画庁調整         局産業経済課長 田中  努君         経済企画庁調整         局財政金融課長 山田  實君         文部省管理局教         育施設部助成課         長       倉地 克次君         建設省都市局下         水道部長    井前 勝人君         参  考  人         (日本下水道事         業団理事長) 久保  赳君         地方行政委員会         調査室長    日原 正雄君     ————————————— 委員異動 三月一日  辞任         補欠選任   三谷 秀治君     寺前  巖君 同日  辞任         補欠選任   寺前  巖君     三谷 秀治君 同日  理事山本悌二郎君二月二十八日委員辞任につき、  その補欠として山本悌二郎君が理事に当選した。     ————————————— 本日の会議に付した案件  理事補欠選任  参考人出頭要求に関する件  地方税法の一部を改正する法律案内閣提出第  二九号)  地方交付税法等の一部を改正する法律案内閣  提出第三六号)  地方財政に関する件(昭和五十三年度地方財政  計画)  地方自治地方財政警察及び消防に関する件      ————◇—————
  2. 木村武千代

    木村委員長 これより会議を開きます。  まず、理事補欠選任についてお諮りいたします。  委員異動に伴い、現在理事が一名欠員になっておりますので、その補欠選任を行うのでありますが、先例によりまして、委員長において指名するに御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  3. 木村武千代

    木村委員長 御異議なしと認めます。  それでは、委員長山本悌二郎君を理事に指名いたします。      ————◇—————
  4. 木村武千代

    木村委員長 地方自治地方財政警察及び消防に関する件について調査を進めます。  この際、地方自治及び地方財政に関する件について、本日、参考人として日本下水道事業団理事長久保赳君の出席を求め、意見を聴取いたしたいと存じますが、御異議ございませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  5. 木村武千代

    木村委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決しました。     —————————————
  6. 木村武千代

    木村委員長 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。三谷秀治君。
  7. 三谷秀治

    三谷委員 本年度地方財政計画が発表されましたが、この特徴といいますのは景気対策公共事業拡大という問題とそのための予算規模の膨張、これが一つ特徴になっています。もう一方の特徴を申しますと、これは不況のために税収の伸びが低率でありまして、膨張した財政支出を賄うために地方債増発交付税特会資金運用部資金からの借り入れなど、急場しのぎ借金政策特徴になっております。  したがって、住民の後年度負担をますます増加せしめるという内容を持っておりますが、本年度末の起債残高、これはどの程度になるのか、そして交付税特会借り入れ残高幾らになるのか、それから起債の中の縁故債借り入れ金融機関別比率都市銀行地方銀行あるいは信用金庫、農協などの類別された借り入れ比率をお尋ねしたいと思います。
  8. 山本悟

    山本(悟)政府委員 五十三年度末の普通会計に属します地方債の現在高は、おおむねでございますが二十一兆七千億円程度になるものと推計をいたしております。それから五十三年度末の交付税特別会計におきます借入金残高は五兆四百三十六億四千万円となる見込みでございます。  また、ただいま御質問のございました縁故債金融機関別借り入れ状況、現在手元に数字がございませんので、調べまして御報告を申し上げたいと存じます。
  9. 三谷秀治

    三谷委員 そこで、五十年度から起債交付税特会借り入れが急増したわけでありますが、この償還は本年から始まるわけでありますから、本年度から償還費が急増しております。  そこで引き続いて起債交付税特会借り入れを行っていくわけでありますが、償還計画がどのようにセットされておりますのか、このことをお尋ねしたいと思います。
  10. 山本悟

    山本(悟)政府委員 地方債は、御案内のとおり三千有余の各地方団体がそれぞれ借り入れをいたしている借入金でございまして、そういった性格から申し上げまして、個々の団体を積み上げましてという意味での地方債償還計画というものを策定いたしますことはきわめて困難なわけでございます。ただ御案内のとおり、必要な償還公債費というものは地方財政計画策定上すべて歳出に立てまして、その歳出に立てたものをもとにいたしまして、各年度におきますところの地方財政といたしましての財政措置をいたすわけでございますから、総体といたしましては、その地方財政計画策定を通じまして、地方に対しましての必要なる財源措置が行われる、こういうシステムになっているわけでございます。
  11. 三谷秀治

    三谷委員 公共事業消化目的にして起債充当率を非常に引き上げてこられました。かつて二〇%、四〇%台のものが、今日では九五%にも達しておるわけであります。ですから、政府の押しつけます事業につきましては、金がなくても仕事ができる、こういう制度になってきている。したがって、異常な充当率がここしばらく続いておるわけでありますが、こういう安定性のない冒険的な財政運営というものが果たして妥当なものであろうかという疑問をだれしも持つわけであります。この点については、大臣、どのようにお考えでしょうか。
  12. 加藤武徳

    加藤国務大臣 御承知のとおり、石油ショック以来わが国経済は大変な乱気流とも言えますような状況下にあるのでありまして、ただ、そういう中におきましても国民生活の安定、向上を図っていかなければなりませんし、また、支出すべきものは支出をいたしていかなければならぬのであります。かてて加えて、昨今の失業者の数等は御承知のとおりでございまして、雇用の安定を図ってまいりまする観点からいたしましても、景気回復が当面の大きな課題であることは御承知のとおりでございます。そのためには、いま御指摘がございましたように、国の財政におきましても、また地方財政におきましても、いわば緊急の処置といいますか、さような処置をとらざるを得ない状況下でございます。したがって、従来のきわめて安定した時期におきます地方財政状況とは異なります姿があらわれておるのでありまして、当面いたしております目的を遂行いたしますためにはやむを得ない措置である、かような御理解をいただきたいと思うのであります。
  13. 三谷秀治

    三谷委員 そういう趣旨のもとに、本年度計画というものがつくられたわけでありますが、これは一口に申しますと、公共投資の洪水と借金の山という表現がそのままぴったりと当たる内容になっております。  そこで、そのようにしましてやられます公共事業費、これは六兆五千億ほどでありますし、投資的経費全般で見ますと、十二兆六千五百億に達しておりますが、これによりまして生み出されます景気対策としての有効需要をどのように分析されておりますのか、お尋ねしたいのであります。
  14. 山田實

    山田説明員 お答え申し上げます。  私ども経済見通し策定いたします場合には、いわゆる段階的接近法と申しまして、策定時点におきまする経済の諸情勢もとにいたしまして、予算あるいはその他のいろいろな施策あるいは国際経済情勢等々を勘案いたしまして、各需要項目ごとに積み上げの計算をやっております。これは、従来もこのような方法でやっているわけでございます。したがいまして、公共投資幾らふえたら有効需要が全体として幾らふえるかというような数字を出してございません。ただ、通常、公共投資によって幾ら需要がふえるかという需要創出効果は、マクロモデルによりまして検証することが可能でございます。その効果は、マクロモデルの構造その他によって変わってまいりますけれども、従来発表されておりますマクロモデルによりますると、大体用地費を除きました公共投資を一千億円やった場合に、その年度におきまして有効需要は大体千三百億円ないし千九百億円程度ふえるという結果が得られております。
  15. 三谷秀治

    三谷委員 大変大ざっぱな説明でありますが、私どもは、要するに七%成長といいますか、この命題というものは、内容的に申しますと、国民総生産の七%を増加せしめるというものだと思います。そうしますと、その七%の増加というものがどこでどのように有効性を発揮するのかという問題が重要になってくるわけでありまして、たとえば雇用増大にはどの程度効果があるのかあるいは産業別需要額ですね、これがどの程度の消長を示すのか、そういう点について経企庁の方で見込みなどがありますれば、お尋ねしたいと思うのです。
  16. 田中努

    田中説明員 お答えいたします。  七%成長下におきまして鉱工業生産伸び率は六・八%というふうに推定いたしております。  お尋ねの、細かい内訳でございますけれども、これにつきましては、先ほどの有効需要推計と同じくマクロ的な手法で行っておりまして、これの産業別内訳というものは計算いたしておりません。ただ、公共事業拡大に伴ってどういう産業効果が特に出るかという点につきましては、産業連関表等である程度の分析はできるわけでございまして、四十五年産業連関表によりますと、公共事業拡大に伴いまして、特に鉄鋼関係窯業土石関係金属製品関係等でかなりの波及的な需要増発が起こるということが推定されまして、これらの結果、鉱工業全体では公共事業が一単位ふえるといたしますと、およそ一・七単位ぐらいの増加が見込まれるのではないかというふうなことが産業連関表計算からは出てまいります。  なお、このほか第三次産業にも公共事業単位に対しまして〇・二五程度効果が出るというふうに、各産業に間接的に波及する効果が大きい、このように見ております。  さらに、雇用面に対する効果でございますが、これも先ほどと同様に、マクロ的な計算を行っておりまして、七%成長下におきまして就業者数は五十五万人増加する、五十三年度中におきまして五十五万人の増加になるということをマクロ的に推計いたしております。この間、労働力人口が五十万人ほど増加することも同時に見込まれておりますので、この労働力人口増加就業者増加により吸収すると同時に、五十二年度におきまして百十五万人程度あると推定されます完全失業者を五万人程度減少させる効果がある。これに伴いまして完全失業率も、五十二年度の二・一%から五十三年度には二・〇%程度まで低下するということを見込んでおります。
  17. 三谷秀治

    三谷委員 いま具体的に出ましたのは雇用増大数量でありますが、この面で申しますと取るに足りない数字しか出ておりません。後のところは全部マクロでおっしゃっておって、具体性はわからない。したがって、政府政策はしばしばそごしておりますから、この場合でも、万一景気対策とかなんとかいってこれだけの事業をやって残るのは借金だけということになってきたのでは大変であります。それですから、具体効果数量をお尋ねしたのであります。  しかし、それはないそうでありますが、この財政計画を見てみますと、依然としてこの公共投資重点は、国も地方もそうなっておりますが、道路空港港湾ですね。こういういわゆる産業基盤整備が依然として重点になっております。これに治山治水等国土保全関係の比重が若干ふえてきておるという状態でありますが、こういうもので私たち素人判断で見ました場合、この需要効果といいますか経済効果といいますか、これは非常に限定されてくる。たとえば道路なんかで申しますと、セメントバラス程度、この需要増大をする。港湾などを見ましても、鉄骨とセメントバラスが大体主軸になってくる。これは空港にしても同様でありますが、そういうところに膨大な予算をつぎ込んで、そうして経済成長をうたい景気対策をうたったところで、果たしてその景気対策の実際の効果が及ぶのはどこなのかという点になってきますと、これはいま申しました特殊の企業だけに限定されてしまう。そういうことで果たしていまの深刻な不況というものが解決するだろうかということはだれしもが感ずるところであります。特に道路などにつきましては、各自治体とももう道路緊急性が薄れたのだ、こう言っております。まさにそのとおりでありまして、道路普及率というものはアメリカと比べましても可住地域におきましては十七、八倍の道路量を持っておるわけでありますから、道路需要が薄れたという地方自治体の声は当然のことであろうと思いますが、依然としてそこを重点にして工事が進められておる。しかも道路工事によりまして仕事が実際に増加するのはごく限定された特殊な業者だけになってくる。そういう景気対策というもので、果たして効果的な景気対応策としての実績を上げることができるだろうかということを私は非常に懸念しますが、その点は、大臣いかがでしょうか。
  18. 加藤武徳

    加藤国務大臣 御承知のように、国や地方団体がもくろんでおります公共事業ないしは公共事業的なものは、もとより大規模なプロジェクトもございますし、また公共事業等直轄事業等の大きいものもございますけれども、しかし地方に参りますと、まだまだきめの細かい心配りをしなければならぬところがずいぶんございます。いま道路の例をお引きになりましたけれどももとより高速自動車道等の大規模なものもございますし、また国道あるいは主要県道等のものもございますけれども、まだまだ地方に参りますと生活密着をいたしました道路の建設なりあるいは舗装改良なり、かような仕事も多いのでございますから、ことにただいま御審議願っております地方財政計画の中におきましては、五兆六千億円といういわゆる単独事業を予定いたしておるのでありまして、この単独事業地方団体が工夫をこらしながら、どのようにその地域水準を高めていくか、あるいは環境をよくしていくか、あるいは福祉の増進を図っていくか、かようなことで努力をいたしながら、きめの細かい心配りがなし得ますような大幅な単独事業も予定をいたしておるのでございます。  そこで、いま御指摘の点でございますけれども、いろいろ事業種類等もございまして、その中には雇用面に大きく影響を持ちますものもございますし、またそうでない面もございます。また景気浮揚策にどの程度寄与するかということもその業態業態によって異なるのでございますけれども、これを総括いたしますと、やはり公共事業を大幅に実施をしてまいりますことが、わが国経済全体が景気回復を図ってまいりまして、雇用面にもいい影響を及ぼしますいわば牽引車になることだけは否めないのではないか、かように考えておるととろであります。
  19. 三谷秀治

    三谷委員 私は公共事業全般を否定するものではございません。ただ、財政計画を見ましても、国、地方を通じまして公共事業重点がどこかという点になってきますと、おっしゃいますように単独事業もございますが、単独事業消化率というものは非常に低下してきている。これは別としまして、単独事業費目も確かにございます。しかし何といいましても道路最大予算を食っております。  そこで道路普及率という問題をさっき申し上げましたが、道路がこれほど費用がつきますのは、一つ目的財源がある、これが一つ条件になっている。ですから自動車関係目的財源というものがあるために、公共事業下水道工事をやりたいと思っても、この方は金がつかない。道路の方は金がついてくる。こういう現象が各自治体に出ております。ここはやはり是正しなければなりません。それをやりませんと、依然として道路中心公共事業になってしまう。ですから、道路中心公共事業でいきますと、新しい有効需要というものはごく限定されてしまう。これでは全般景気——風が吹けばおけ屋がもうかる式の概念で見ていきますと別でありますけれども、そうでなしに全般的な需要を高めるという面から申しますと、これはよくない。ですから私は、一つの問題としましては、道路目的税というものは、自動車関係税というものは、道路というふうにきわめて狭く限定をしないで、公害とか災害とかそういう実際に自動車が生み出します種々の影響がありますが、その影響を是正するために使っていくという方向に改善する必要があると思う。道路という狭い範囲だけに限定してこの目的税を使っていく、目的税を設定するということは、もはや改める段階に来ているのではないかということを私は考えておるわけであります。これについてどうお考えになっておるのか聞いておきたいと思うのです。
  20. 加藤武徳

    加藤国務大臣 私が道路財源の主たるものをなしておりますガソリン税等について言及いたしますのは、私の立場上はいかがであろうか、かように思うのでございますけれども、今日までも目的税源のあり方についていろいろ議論がされておるのでございます。ただ、いま御指摘になられました中で、私が果たしてそうかなと思います点を若干申してみますならば、道路もとより伸びてはおりますけれども下水道等につきましても非常な伸びが期待できておるのでありまして、実に四三%、かような伸びを示しておるのでありますから、かつまた、道路につきましても先ほど申しましたように、単独事業を大幅に予定しておりますから、いわゆる生活道路、かような言い方がなされるものについて相当な資本投下が期待できる、かように考えておりますことを申し添えておきたいと思う次第であります。
  21. 三谷秀治

    三谷委員 道路目的税使途を広げるという問題について、どうお考えでしょうか。
  22. 森岡敞

    森岡政府委員 道路目的財源でございますガソリン税あるいは自動車関係税につきまして、いま御指摘のような道路オンリーの使途ではなくて、たとえば道路交通と同じような機能を発揮いたします鉄道でありますとか、その他の交通体系に使うとか、あるいはさらにもっと広げて公害対策にも使えという御意見もかなりございます。税制調査会でも御論議がいろいろございました。しかしこの点につきましてはまだ最終的なコンセンサスが得られておりません。できるだけ早い機会に調査会におきましても結論を出したいということで、引き続き検討することにされております。ただ問題は道路財源と申しましても地方道路財源は非常に手薄でございますので、その問題もあわせて考えてまいらなければならない、かように思っておる次第でございます。
  23. 三谷秀治

    三谷委員 先ほどの大臣の答弁ですけれども単独事業費もおっしゃっておりますし、下水道費増加率どもおっしゃいましたけれども、それはそれとしまして、実際の予算を拾い出してみまして、公共事業の一番重点はどこかといいますと、これは道路になっております。この費目が最も巨額を占めておるのであります。  そこで、道路につきましては、さっき申しましたように、景気対策上の有効需要というものは大して期待できませんが、私たち生活密着型の公共事業と言いますのは、たとえば住宅を建てますとこれはずいぶんの需要が生まれてきます。たとえばかわらがそうですし、畳にしてもあるいはサッシにしても、いろんな需要が付随して生まれてくるわけであります。ですから、そういう点から、道路のような非常に有効需要の期待できないものでなしに、生活関連型の多面的な需要が発生をする公共投資重点にやっていくべきだということを主張してまいりましたが、幾らか今回も拡大はされております。しかし全体のバランスから見ますとまだまだ足りません。これは一つの問題だと思っております。  もう一つ顕著なのは、一般行政費の圧縮であります。たとえば生活保護費だとか、児童保護費だとか、老人保護費あるいは老人医療費など、いずれも財政計画規模より低く抑えていらっしゃる。そこで、政治経済目的は何かといいますと、これは民生の安定であるということをわが党の委員長は参議院の代表質問で述べておりますが、このことは疑う余地がないわけであります。特に地方自治体はそのために存在しておる、民生安定こそが地方自治体最大課題であると私は考えておるのであります。  そこで、この財政計画を見ますと、このようにしまして一般行政費は非常に圧縮されておる。そして公共事業費は膨張しておる。その公共事業費中心産業基盤整備の、一般需要の期待できないところに大きな重点がいっておるというところが非常に問題になってくるのではないかと私は考えております。その点からしますと、国民生活が安定してこそ有効的な、恒久的な需要が期待できる、消費水準向上が期待されるということを考えておりますが、その点からしまして、こうしていわゆる社会的な弱者対策が低下する、そして税の面におきましても何らこれという処置がとられていない、一般国民生活に対する配慮というものが行われていない。その中で果たしてこの種の公共事業だけをもってしまして、政府が言われるような景気回復ということが可能であろうかということは、私だけじゃありません、これは経済企画庁自身も疑問を持っているんじゃないですか。あるいは証券会社銀行などの経済展望を見ましても、とてもじゃありませんが七%成長なんてものは考えられない、そういう意見が多いわけでありますが、そういう状態で、もしもこういうふうにして借金だけが残るような地方財政運営がなされていきますならば、財政危機はますます深化するだけであって、何一つ地方財政危機を打開する条件にはなってこない、そのことを懸念するものでありますが、その点はいかがですか。
  24. 加藤武徳

    加藤国務大臣 国の予算の場合もそうでございますが、地方財政計画におきましても私どもの根本の考え方は、経常的経費はできるだけ抑えることに努めざるを得なかったのでありまして、そして公共事業等公共投資重点を置いたのでございます。そこで相対的には、いま御指摘がございましたように、一般的な行政経費パーセンテージが低いのはやむを得なかったのでありまして、それは裏返して言いますと、公共事業等投資的経費が大きく伸びておる、したがって相対的には低い。パーセンテージにならざるを得なかった、かようなことでございます。  なお、七%経済成長が不可能ではないか、かような御指摘でございますけれども、私どもは国や地方団体公共事業等のみをもってして景気回復をもくろんでおるのではないのでありまして、これが誘引力となりまして民間投資等が活発に行われますような、そういう環境をつくる先導役を務めなければならぬ、かような基本の理念でございますから、私は、公共事業が十全に消化されますところ、景気回復は可能であり、七%成長も可能である、かように私なりの判断をいたしておるところであります。
  25. 三谷秀治

    三谷委員 七%成長を私どもパーセンテージの問題として言っているわけではありません。それが国民の暮らしに裨益する形の経済成長になるのか、あるいは大企業や特殊の企業の景気だけを重点にした成長になってくるのか、そこのところに重点があるわけでありますが、これは要するに議論になってきますから、結局はやってみなくちゃわからぬわけですが、多分にそういう危険性があることを私は指摘しておきたいと思うのです。  そこでもう一つは、大蔵省の発表によりますと、公共投資については国、地方自治体を合わせまして二十五兆六千億と言っておりますが、これを不況地域重点的に配分するとおっしゃっております。この不況地域とは一体どの地域なのか、つまり概念といいますか基準といいますか、これをお尋ねしたいと思う。
  26. 山本悟

    山本(悟)政府委員 不況業種の多発地帯ということになるわけでございますが、労働省の方におきましていろいろ御調査になり、どういう地域かというようなことが知らされるというように私ども承知いたしております。
  27. 三谷秀治

    三谷委員 労働省が不況地域調査するわけですか、それは少しおかしいじゃないですか。
  28. 山本悟

    山本(悟)政府委員 雇用の面からの問題でございましたので、労働省でいろいろお調べになってお知らせいただけるというように聞いております。
  29. 三谷秀治

    三谷委員 自治省としては、不況地域というものについてどうお考えでしょうか。具体的にこの配分の作業というのは自治省がおやりになるわけでありますから、自治省としても、不況地域とはどういうふうな基準で見ていくべきか、自治体を対象にした場合にはどのような自治体が対象になるのか、ここら辺のところを何らの展望もお持ちじゃないのですか。
  30. 山本悟

    山本(悟)政府委員 公共事業の配分は、各省庁、主管省庁において行われるわけでございまして、自治省は直接その配分の計画具体的にタッチはいたしません。ただし、配分されましたものにつきましての地方負担というものにつきましては、起債の充当その他の措置は、自治省といたしまして十分措置いたしたい、各省の配分された結果をこちらといたしましては財政措置をする対象にいたしたい、かように思っております。
  31. 三谷秀治

    三谷委員 そこで、不況地域というものを自治省としてつかむ場合には、何を基準にしてつかむべきかという判断がおありだろうと思うのです。たとえば地方財政の問題、自治体財政の問題だとか、あるいは起債比率の問題、公債費比率の問題だとか、いろいろ実際に地方自治体が当面しておりますさまざまな事情というもの、それは全然不況地域としての選考の基準にはなりませんか。
  32. 加藤武徳

    加藤国務大臣 ただいま財政局長が答弁をいたしましたように、不況地域とはいかなる地域なのか、このことに関しましては、まず第一に考えられます指標は、失業者がどの程度発生いたしておるか、このことが一つの物差しになろうかと思うのでございまして、御承知のとおり百万人を超えます失業者があるのでありますから、労働省云々と申しましたのは、さような雇用の面からとらえてまいりますのが労働省の所掌であろう、かような意味を申したのでありますけれども、しかし不況産業業種に対します国としての対応措置がとられつつあるのでございまして、構造不況業種として指定をいたします業態は私どもの所掌ではございませんで、通産省が労働省と相談をいたしながら指定いたしてまいるのでございますから、さような業種の指定を受けました企業が立地いたしております公共団体は、これまた二つの大きな原則といたしましていわゆる不況地域、かようなことが言えようかと思うのでございます。たとえば繊維の立地の多い地域でありますとか、造船所等のございますところとか、アルミ製錬でありますとか、合板でありますとかいろいろあるのでございますから、これはその地域その地域の姿によりましてずいぶん変わっておろうかと思うのでございます。かつまた、円高によります雑貨等の輸出業者で、今日非常に困っておる企業もあるのでありますから、これまたその地域といたしましては非常な関連を持っておるところでございます。  そこで、地方団体の責務といたしましては、その地域その地域の皆さん方の生活の安定を図っていき、さらに向上を目指していかなければならぬ、かような責務を持っておるのでございまして、自治省といたしましてはさような地方団体の実情を十分に把握をいたしまして、財政面その他で対処していかなければならぬ、かように考えておるところであります。
  33. 三谷秀治

    三谷委員 行政の側面で不況を捕捉しようと思えば、税収を見ればまず一つ明らかになってくるわけであります。それからそれに伴う公債費比率状況、これも一つの目安になってくると思います。  そこで、失業対策の一面だけでなしに、実際に事業をやっていく地方自治体を主体にして考えていきますと、そのことを抜きにしては判定はできなかろうと思うのでございます。そこで、この不況地域における自治体財政が極端に行き詰まってきておる、これも明らかな事実であります。そして公債費比率が非常に高くなってきている。たとえば産業構造等の関係で非常な不況状態にあります大阪などでは、五十一年度決算で見ますと、公債費比率二〇%を超しますのがすでに十団体に達しております。一八%以上が七団体に達しておるわけであります。もはや起債制限団体ないしはその寸前にある団体が十七団体にも及んでおるわけであります。そこで、ここに重点的に公共事業費を配分するといいましても、これでは公共事業消化ができっこないではないか。それから単独事業の遂行も容易にはできない、そういう状況になるわけでありますが、これについての施策をお持ちなのかどうかお尋ねしたいと思うのです。
  34. 山本悟

    山本(悟)政府委員 大阪府下におきます衛星都市等におきまして公債費が非常に膨大になっている団体のあることは承知をいたしているわけでございますが、御案内のとおり公債費比率の算定方式を五十二年度から改正をいたしまして、普通交付税の算定において事業費補正によりまして財政需要額に算入されるようなものにつきましては控除するというような措置をとっておるわけでございます。  また、御案内のとおり、財政対策として増額発行されます地方債というようなものにつきましては、相当部分が交付税算入される、こういうことになってまいるわけでございますので、そういう意味から申しますと、それほど急激に、現在のように地方債増発するからといって公債費比率の悪化に直接結びついてくるのかどうか、これはもう少し待って見ないとはっきりはいたさないわけでございますが、そう心配するほどでもないのじゃなかろうか、こういうようにも思っているわけでございまして、またそういうものにそれぞれのところにおいて必要とする公共事業というものはできるような方向におきまして考えていかなければならぬことは御指摘のとおりでございますけれども、直ちにどうこうということにはなってこないのじゃないかと思っております。
  35. 三谷秀治

    三谷委員 御説明がよくわかりませんが、大阪の資料を見ますと、五十一年度で見ますと——もっとも公債費比率、これは起債制限ですから三年間の平均が要るわけですか、そうしますと、四十九年から五十一年度で見ますと、高槻市などは二二・七%になっている、枚方市にしても二一・一%になっている、摂津市にしても二一・三%、交野市でも二〇%という状態で、これは明らかに起債制限団体になってしまっている。したがって、単独事業消化なんて言ったってできっこない。しかも三年平均でなしに五十一年度の決算で見ますと、二八%の公債費比率を持つ市町村まで生まれてきている。こういう状態の中で、公債費比率の中から除外する起債があったとしましても、借金の量には変化がないわけであります。もっともこれは将来におきまして基準財政需要に算定して交付税処置をするとおっしゃっておるわけでありますが、しかし実際の借金がそれほどの水準に達しておるという状況の中で、一体公共事業消化が期待できるか。特にこういうところほど不況的な要素を持っておりますから財政需要を必要とするわけでありますが、こういう状態に対しては特殊な対策が必要ではないかと私は考えるものであります。それにつきましては、いま御説明のあった程度のことしかお考えになっていないわけでしょうか。
  36. 山本悟

    山本(悟)政府委員 個々具体団体の問題になってまいるわけでございまして、全体といたしましては、ただいま申し上げましたように、公債費比率におきましてそういった算入しない公債費起債償還の費用を計算することによりまして、実質的にその率を、制限するための率というものは下げるわけでございますから、そういうことによって地方財政全体としては対処できていくのではないかと思っているわけでございまして、個別の団体のものにつきましては、なお研究をさせていただきたいと思います。
  37. 三谷秀治

    三谷委員 一般的にもう二〇%前後というところに達してしまっているという状態、これはこれまでの都市的な需要に対する対策が弱かったことに一因するわけでありまして、この状態を打開するための特殊な処置といいますか、特別な対策が私は必要であると思います。そうでなければ、公債費比率がもう三〇%に近いものが現実に出てきつつあるわけでありますから、これは大変な状態にある。  大臣、どうですか、こういう点につきまして、この公債費というものは単に自治体の責任というのじゃなしに、一般的にこの地域における財政需要を満たすために必要な経費として必要としたわけでありますから、要するに今日までの過密的な要素に対する対策の弱さからこういう事態になってきている。これをこのままほっておきますと、公債費比率がだんだん膨張しまして、大阪周辺の都市などはもはや起債制限団体から財政再建団体へ転落するという条件が非常に強くなってきておりますが、いまのうちに対策を立てる必要があるのじゃないかと思っております。いかがでしょうか。
  38. 加藤武徳

    加藤国務大臣 大阪あるいは名古屋を中心とします地域、あるいは関東南部の地域、かような地域は、その周辺の市町村が人口急増都市、かような姿になっておりまして、人口が急増いたしますために、それに対応いたしますたとえば学校でありますとか、公共事業の整備等に相当の金を使わざるを得ない状況下に置かれております。  そこで、文部省といたしましても、人口急増地域に対しましては、たとえば一般には義務教育学校の二分の一の補助でありますのを三分の二に高めてまいりましたり、また土地の取得は対象外になっておりますものを二分の一補助にいたしましたり、いろいろの処置はとっておるのでありますけれども、しかしなかなかそれでは対応し切れず、いわゆる地元負担が相当の額に達しておることは御承知のとおりでございます。ことに、人口急増に対応いたしますために、いわゆる起債によって処置をせざるを得なかった面が多いのでありますから、したがって公債費比率が相当高い町村がございます。国全体を平均いたしますと一〇%にもなっておらないのでありますけれども、しかし大阪周辺の都市におきましては、ただいま御指摘がございましたように、公債費比率が相当高い市がありますことは承知をいたしておるのでございます。ただ、かような団体につきましてはさらに大幅な公共事業がなし得るかどうか、この点でございますけれども、これは市みずからが判断をなさりながら、この事業はぜひやっていこう、かようにお考えのものはもとよりやってもらわなければならぬのでございまして、自治省といたしましては公債費比率の高い市町村に対しましては、個々に御相談をいたしながらその指導よろしきを得ていかなければならぬ、かように考えておるところであります。
  39. 三谷秀治

    三谷委員 これは、こういう過密地域対策というものを充実していただいて何らかの対策を立てなければ、大都市周辺におきましてはますます財政的な困窮度が深化する、これを放任するということはすべきではないと考えております。この点を要望しておきます。  もう一つ今度の交付税の処置の問題でありますが、交付税特会借入金償還分の半額を国が負担する、これをいわゆる制度改善だとおっしゃっております。本来、収入額と需要額の差額というものは交付税で補てんをするというたてまえ。その交付税が足りなければ、税率を引き上げるかあるいはそれに代置される制度改正をやっていくという性質のものであります。ところが、今度の場合はそうはなっていない。それやる以外に地方財政を恒久的に維持する手段はないわけでありますが、それをおやりになっておりません。ですから、交付税が足りなければ借金をする、それを返すときに国が半額持ってやる、こうなっておる。国が交付すべき交付税を地方借金で賄っている、半分だけ国が持ってやる、こういう制度になっておるのであります。これは制度というものじゃありません。制度というものは少なくとも首尾が完結していなくちゃいけません。ところが、これは完結していないのです。借金をした分の半分を国が持つ、あとの半分はどうするかという、ここの首尾が完結していない。借金が残ったままになっている。その借金をどうするかといいますと、それは全然対策がないわけなんだ。ですから、これは制度改正とは言えません。処置なんです。これは。したがって、こういうびぼう的な処置というものをもってしましては交付税法第六条の三でありますかに規定しております制度改正をおやりになったということは言えるものではないのであります。ですから、問題は、制度とおっしゃいます。制度というものは完結的なものです。これでこうやっていけば後に矛盾も、あるいはその他の後遺症も残らない、それが制度でありますが、今度の場合はそうじゃありません。借金は依然として残ってくる、その借金をどうするかというのがないわけです。半分だけ国が持ってやる、あとの半分どうするか、地方自治体の独自の税金がありませんから、どうしようもないわけです。それがどうなるかという点が示されなければ、交付税法第六条の三に言う制度改正とは言えないわけなんです。この点について大臣の所見を承りたい。
  40. 加藤武徳

    加藤国務大臣 御指摘がございましたように、地方交付税法第六条の三の二は、五十二年度並びに五十三年度のような地方財政状況の際には、交付税率の引き上げを行うかあるいは行財政制度の改正を行いなさい、かように明定いたしておりますことは御指摘のとおりでございます。そこで、ことしに引き続き来年もまた相当の財源不足が生じ、その金額が三兆円を超えますことも、これまた御承知のとおりでございます。そこで、経済が安定した状況下におきますならば、オーソドックスな交付税の引き上げを行いますのが私も筋だと思うのでございますし、また地方の立場からいたしましてもそうあってほしい、かように強く望むのでございますけれども、残念ながら流動的な昨今の経済情勢もとにおきましては、恒久的な国と地方との財源配分の交付税率の引き上げが不可能な状況でございました。そこで、後段のいわゆる制度改正、かような処置をとらざるを得なかったのでありまして、今回のいわゆるルール化は、私は完璧な制度改正とは思わないのでございまして、当分の間の暫定措置と思わざるを得ないのでございますから、したがって、今回のルール化は当分の間、かようにいたさざるを得なかったのでございまして、当分の間が一日も早く解消をいたしまして、正常な姿になりますことをこいねがってはおるのでありますけれども、しかし、今回の処置が制度改正でなかったとは考えておらないのでありまして、不十分ではございますけれども制度改正には間違いがない、かように判断をいたしておるところであります。
  41. 三谷秀治

    三谷委員 大臣のお答えを聞いておりますと、制度改正ではない、当分の間の処置であるとおっしゃるかと思うと、不十分であるけれども制度改正である、こうおっしゃっておりますが、これは自治省自身としても確信がないことを示しております。これが正直なところだと思います。新聞などの表現をかりましても、制度改正まがいと書いてある。制度改正ではない、まがっている、こうなっておる。これが客観的な評価になっておるわけでありますが、しかしそういう、どちらかといいますと言い逃れ的な処置によりまして、交付税法第六条の三の規定に反するという断定を避けようとする、そういう大変苦しい態度が大臣のお答えの中からも出てきております。  しかし、何といいましても、行政というものが法によって運用されますことは言うまでもありませんから、いかなる大臣といえども、いかなる省庁といえども、法を厳格に守っていくという、これは民主的な行政の原則でありますから、その点からしますと、この処置は決して私どもは首肯できるものではありません。いま申しましたように、処置といいますか、このとります処置が完結していないわけなんです。借金が残っていく、その借金がいつまで続くかわからない、いつになってこれがとどまるかわからない、それまでは借金をやっていくのだ。要するに借金をするという制度になっておるわけでありますから、そういう地方財政制度の改正なんというものがあるわけがないのだから。借金制度なんです。これは。ですから、これはあなた方がいろいろ強弁なさいますが、決して妥当なものではない。ですから、交付税率の改正をするなり、税率の改正がむずかしければ、原資になります国税三税を四税にするなり五税にするなりして、当然交付税率の引き上げに匹敵する処置をとるべきである、これが正当な私は対策であろうと思います。  これについて大臣のお答えをさらに聞いておきたいと思いますが、時間の関係がありますからもう一つ重ねて聞いておきますが、今度の処置で交付税の振りかえ地方債一兆三千五百億円が示されておりますが、この負担割合を見ますと、一般の基準税率分については将来基準財政需要に算入する、それからいわゆる留保財源分については地方負担というたてまえと聞いておりますが、これは間違いがないでしょうか。
  42. 山本悟

    山本(悟)政府委員 後の点でございますが、御指摘のとおりに財源対策債としての一兆三千五百億円、そのうちの交付税の計算で基準財政収入として上がる部分に相当いたしますもの、したがって、基準税率によりまして府県は八〇%、市町村は七五%の算入を維持するというたてまえで従来からいたしておるところでございます。
  43. 加藤武徳

    加藤国務大臣 ただいま前段で御質問のあった点でございますけれども、先ほど申しましたような今回のルール化は当分の間の措置でございまして、これが恒久的に固定さるべきものではないと思っておるのでございます。そこで、交付税特会借り入れをいたしましたものはその二分の一を国が負担をいたす、かようなことでございますけれども、何回も申しますように、私どもの本来的な姿ではないのでありますから、できるだけ早い機会に制度の抜本的な改正を行わなければならぬ、行財政の基本的な改正が必要である、かような認識に立っておるのであります。そして、その方法といたしましては、中期的に判断をいたしましてもどうしても地方税収の確保を図っていかなければならぬことが次第に明らかになり、そして審議会の答申などにもやはり先に寄れば寄るほどその解決がむずかしくなるぞ、かような御指摘でございます。地方税源の強化の場合には地方税の既存のものそれ自体の強化もございましょうけれども、さらに国と地方との税源の再配分等を積極的に行わなければならぬことがもう目の前に来ておると思うのでございまして、さらにまた、国税におきまして新しい税等が考えられまする場合には、国税三税の交付税率計算ではございませんで、これを拡大すること等につきましても当然積極的に取り組んでいかなければならぬ、かように思っておるのでありまして、かような措置をとることによりましてできるだけ早い機会に制度の基本的な改正を行ってまいりたい、かように考えておるところであります。
  44. 三谷秀治

    三谷委員 要するに今般の措置は制度改正ではない、早い時期に本当の制度改正をしなくちゃいけない、こうおっしゃつておるわけでありますから、今次の措置というものは交付税法第六条の三に定められました制度改正とは言えないということをお述べになっておると思います。私はこういう法律を無視する措置に対しては絶対に了承できませんが、これはさらに自治省の反省を求めておきたいと思います。  もう一つ、前段の方の地方債の振りかえ——厳密な振りかえかどうか、まあ振りかえですね、地方債一兆三千五百億でありますが、これを基準財政需要に算入をすべきものを国が持つ、基準税率分を国が持つ、それから留保財源分を地方が持つ、こういう取り扱いをされておりますが、これは私は少し合点がいかないのです。なぜかといいますと、留保財源といいますのは、それが地方自治体の自由な財源である。自主的な財源である。要するに、自治体の首長が随時自分の方針に基づいて消化できるというところに留保財源の特質があるのであって、今度の地方債というものは全部が特定財源になっている。その特定財源までも、留保財源分は、これは国は知らない、地方が持て、こうおっしゃっている。ここはおかしいのです。基準税率という問題、留保財源という問題は、要するに地方自治体の裁量権をそこで確保するという性質のものでありますから、そこに留保財源の意義があるのであって、今度のような特定財源化したものを、それもまた二〇%ないし二五%は地方が持てというふうな論理は、これは論理上成り立つものではありません。これは特定的な財源でありますから、要するに交付税を振りかえたものでありますから、当然国が持つべきものであって、それを自主的な財源の留保という、そういう財政上の措置を逆用してこういう措置をおとりになることは、私は合点がいきませんが、どういう論理に立つものでしょうか。
  45. 山本悟

    山本(悟)政府委員 財源不足額を措置いたしますために一方では交付税の増額を計らい、一方では建設地方債増発によっているということでございますから、その一兆三千五百億円という建設地方債増発分というのは財源不足を埋めるものである、ここのところは御指摘のとおりでございます。ただ、それが全部交付税によりましてあるいは地方税によりまして、ことに地方税によりまして財源不足が生じないという状況、従来の激変いたします以前のベースについて考えましても、やはり交付税上の基準財政需要額として計算されます額というのは満度じゃないわけでございまして、そこが、やはり公共事業につきましても税金を充てていただくという制度は従来からあるわけでございまして、従来の平年度のベースから変化をいたしました今日の姿までの経過というものからいたしまして、やはり一定の額というのは地方税源を充てていただく、そういうようなことで従来のやり方というものと平準化されるのではないかというようなことから、ただいまのような措置をいたしておるわけでございまして、交付税の中に投資的経費として計算いたしておりました金額、これは公共事業地方負担等でございますが、それらのものの各賞日ごとにいろいろ違いがございます。その違いを総平均いたしますと、府県分で言えば八〇%ということになるわけでございまして、そういうものをめどに置きましてただいまのような措置をいたしているということでございます。
  46. 三谷秀治

    三谷委員 時間ですからこれ以上の質問はできませんが、いまおっしゃいました点は納得できるものではありません。要するに今度の地方債は、国が求める事業地方にやらすために起債を認めていこうというものでありますから、その中に留保財源的なものがあるわけがない。全部特定財源として使われてしまう。それを類別して、地方税収の場合の地方の裁量権に属する二〇%ないし二五%、府県と市町村で違いますけれども、その分はこの特定財源化したものの中でも地方が持て、こうおっしゃっておる。これは論理に合うものではありません。これは今後交付税等の審議があるわけでありますから、その席でさらに明らかにすることにしまして、きょうは時間でございますから、これで終わらせていただきます。
  47. 木村武千代

    木村委員長 加藤万吉君。
  48. 加藤万吉

    加藤(万)委員 私は、昨日、本会議で総理並びに大臣に基本的な所信をお伺いいたしましたから、きょうはできる限り具体的に、私どもが本会議で述べました課題が実際問題として可能であるかどうか、この辺に問題点をしぼって御質問をしてみたいというふうに思います。  最初に、今度の地方財政計画の中で投資的経費を十二兆六千五百九十四億円見ていらっしゃいますが、それぞれ地方議会が開会されてそれぞれの地方団体投資的経費が計上されているわけですが、政府計画をされました地方財政計画投資的経費十二兆六千億におおむね相当しているでしょうか。もし現段階で各地方団体の累積額がわかりましたら、ひとつお答えをいただきたいと思います。
  49. 加藤武徳

    加藤国務大臣 地方議会におきましては、議会を開いたところもございますし、まだ開いておらないところもあるのでありまして、そのすべてをつかんでおるわけではありませんけれども、電話連絡等でほとんどの都道府県分につきましてはその集計をいたしておるところでございますが、ただ県の中では近く首長の選挙を行いますところ等もございまして、骨格予算しか組んでおらないところもございます。また、二月定例都道府県議会では計上いたさずして補正の段階で計上いたす、かようなもの等もあるのでありますから、必ずしも正確ではございませんけれども、大部分の都道府県の集計をいたしたものがございますから、それを政府委員から報告させます。
  50. 山本悟

    山本(悟)政府委員 二月二十七日現在でとりました調べでございますが、先ほど大臣が御答弁申し上げましたように、まだ計数的には変動することを前提でお許しいただきたいと思いますが、県分の一般会計で普通建設事業は、五十二年度の当初予算額に対しまして五十三年度の当初予算額の伸びは約三六%、そのうち補助事業は三四%、単独事業は四三%の伸び、こういうことになっております。
  51. 加藤万吉

    加藤(万)委員 恐らく地方団体の場合にはそれぞれ超過負担がこれに重なってきたりなんかしますから、財政規模としては恐らく国が策定された十二兆六千億以上の額になる。すでに当委員会でもしばしば問題になっておりますが、地方財政計画と決算額との乖離が非常にあるわけですね。一次補正、二次補正等組めばまた別ですが、仮に当初費だけを比較いたしましても決算段階では大体一七%ないしは一九%前後の乖離があるわけです。今度の場合にこれほど公共事業重点的に張りつけいたしますと、いまのお話で補助事業で三四%あるいは単独で四三%の伸び、こういうことでありますから、恐らく二〇%前後の投資的経費部分について決算の段階で乖離が起きてくるのではないか、こういうふうに推定されますが、いかがでしょうか。
  52. 山本悟

    山本(悟)政府委員 決算と財政計画との乖離、相当の金額のものがあることは御指摘のとおりでございますが、投資的経費といったような部分にあるのか、その他の部分にあるのか、やはりそれぞれの年度におきますところの財政状況等によっても違ってまいると存じます。  また、いままで非常に大きな乖離のありました一つの大きな原因というのが税の年度間の自然増収が非常にあったというところにも支えられていたわけでございますけれども、現状はそういうようなものが非常に期待しにくいという状況になりますと、比較的似通ったものになってくる、そういったようないろいろな事情があろうと思います。  したがいまして、五十三年度の分につきましてどれだけかということは私どもとしていま判断しかねるわけでございますが、やはり各種の財源対策というようなことによりまして、公共事業あるいは単独事業というものにつきましても、昨年五十二年度に比べて五十三年度、大幅の伸びになるという事実は恐らく決算上も出てくるのではないかと思っております。
  53. 加藤万吉

    加藤(万)委員 私が心配をいたしますのは、張りつけがどういう段階でどういうものに、対象にもよるでしょうけれども、総体としてやはり相当乖離が起きる。といたしますと、これの穴埋めが、しばしば論議がありますように、ほとんど地方債計画によって財源を補うという状態になっています。今度の場合でも地方債発行高六兆二千百九十七億円ですね。恐らく私は、この部分がさらに拡大をしていく。いわば財政計画で見ております六兆二千百九十七億、どうでしょう、地方財政計画によりますと、五十三年度末の現債高は二十兆円と見ていらっしゃいますが、この部分の拡大によってさらにこの部分が拡大をするのではないでしょうか。現債高はどのくらいになるというふうな見込みでしょうか。
  54. 山本悟

    山本(悟)政府委員 五十三年度末におきます普通会計に属します地方債の現在高は、おおむね二十一兆七千億というぐあいに想定をいたしているところでございまして、年度途中におきますたとえば五十二年度の例で申し上げますと、年度途中におきまして補正予算が組まれた、そういうような際には、それに対します公共事業等地方負担は全額地方債をもって措置するということが行われておりますので、五十三年度のことはわかりませんけれども年度の当初よりも年度末の現在の方が地方債がふえるというような事態は起こる可能性はないわけではございません。
  55. 加藤万吉

    加藤(万)委員 私が総体としてお聞きをしたいことは、地方財政計画で相当厳しい地方借金財政に頼って公共事業拡大するわけですが、結果としては地方財政はさらに借金財政が強められていく。しかも今度の財政計画によりますと、一般公共事業事業債が三三・六%、これに対して単独事業債が七九・七%ですから、いわば公共事業債よりも逆に今度は単独債がそれで締めつけられて、地方単独事業が全体として進行しない。これから御質問申し上げます下水道事業にいたしましても、本管の埋設はできたけれども、実は家庭の汚物排水までにはとても至らない、そういうことがこの財政計画から推定をされていくわけです。いわば住民の求めている要求とは違ったところで公共事業が行われ、それは何年か何十年か後には結果的にはつながるでございましょうけれども、いま必要とする住民のニーズと違った次元の中で公共事業が行われる、こういう危険性が多分に財政計画上生ずるという可能性があるわけです。私はこういう面から見て、今度の公共事業の特に対象になる事業については住民のニーズとどう密着をさせるか、これが非常に重要だと思うのですが、大臣の所見をまずお聞きしたいと思うのです。
  56. 加藤武徳

    加藤国務大臣 地域の皆さん方は、いま御指摘がございました例で申しますと、いよいよ下水管工事の埋設が始まった、いま直ちにでも水洗便所が使え、生活環境が一挙に改善できる、かような期待をお持ちになるでございましょうし、またその他の事業にいたしましても、事業が始まりましたら直ちにその効果があらわれることを期待なさる、これが当然のことであろうかと思います。かつまた、もろもろの事業にいたしましても、できるだけ直ちにニーズに応じ得ますようなそういう体制をとっていかなければならぬのでございますけれども、しかし実際問題といたしましては、たとえば都市計画の場合にいたしましても相当の年数を要しますし、下水道の工事にいたしましてもまずは本管を埋めなければならぬ、かようなことで相当の日数がかかっておりますのは事実でございます。が、しかし、地方団体仕事地域の皆さん方の御要望に応じますような身近なものを中心に、それも早急にそれに応じていかなければならぬ、これがたてまえでありますことはただいま加藤議員が御指摘のとおりでございまして、私もまた同様に思うのでございますから、したがって、できるだけ工期等を早めてまいりまして、地域の皆さん方の期待に沿うように努めていかなければならぬ、かように思います。  そこで、私どもが五十三年度地方財政計画策定するに当たりまして、できるだけ単独事業をふやしていかなければならぬ、たとえばりっぱな道路ができましても、それと集落を結びます生活道路の整備ができませんことには全く意味がない、かような感じをお持ちになりがちでございますから、そういうきめの細かい心配りをしてもらわなければならぬ。そのためには公共事業の補助ベースに乗らないものの単独事業を大幅にやっていかなければならぬ、かように考えたのでございます。ですから、公共事業単独事業をその地域の特性に応じましてうまく組み合わせまして、いま御指摘がございましたように早くニーズにこたえる、こういう体制をとってまいりますように今後も指導を強めていきたい、かように考えているところであります。
  57. 加藤万吉

    加藤(万)委員 公共事業地方債充当率は九五%です。私は地方財政が中央の公共事業不況対策の側面から拡大をして、それが地方財政を圧迫しない一つのコントロールの方向として、やはり充足率といいますか、充当率といいましょうか、これが一つのコントロール条件になっていたような気がするのです。もちろんそれが高ければ高いほどいいのでしょう、地域にとっては需要は無限大に近いほどあるわけですから。しかし、無限大である限り、それをどこかでコントロールしなければ実際問題としての財政のローテーションが組めない。そこで自治省でも、従来五十年度前後までは、この地方債充当率に対して、たとえば四〇、五〇前後で抑えていたわけですね。私ども各先生方の御意見を聞いてみましても、これほどの充当率を高めていくと、結果的には地方財政はまさに混乱状態に陥るのではないか。長期の財政計画の中で公共事業を、単独事業を起こすかということよりも、この際充当率は高まってきたし、起債もついたことだし、やってしまえということで将来の償還計画などということは配慮せずに行政が行われていくのではなかろうか、そういう意味では、これは平均的な問題ですけれども地方債充当率は六〇%ないしは六五%前後が正しいのではなかろうか、こういう識者の意見が非常に強くあるわけです。今度の場合には国の景気対策として、一方では地方債充当率を高め、一方では補助事業拡大をする、そういう方向にあるわけですが、地方財政の長期的な計画、 コントロール、そういう面から見て、今度の充当率の引き上げないしは今度の公共事業全般予算裏負担等についてどのようにお考えになりましょうか。
  58. 加藤武徳

    加藤国務大臣 オーソドックスな地方財政の姿といたしましては、できるだけ起債充当率を低からしめるといいますか、低くてもやっていける財政状況でなければなりませんし、それは地方税収や交付税交付金等で賄っていけまして、そして起債は最小限にとどめ得る、その姿が私は理想であろうと思うのでございます。しかし一方、地域の皆さん方からいたしますと、あの道路も早くやれ、この河川改修もやっていかなければならぬ、また学校の改築等もぜひ早くやろうじゃないか、かようなことで、おっしゃるニーズが非常に高まってまいっておるのでありますから、どうしてもそれなら借金でと、かような考え方になりがちでございまして、しかしこれは決して健全な姿ではないと私は思のでございます。ところへ、さらに五十三年度におきましては、御承知のように国でも大量の特例公債を発行いたしまして景気回復を図っていかなければならぬし、また、そのことが立ちおくれておる社会資本を充実していくゆえんだ、かような基本の理念に立ち、そのことがまた雇用の安定にもつながってくる、かような国としての大きな目標があることは御承知のとおりでございます。  そこで、地方におきましても国のそういう考え方に対応いたしまして、ことに公共事業の七〇%は地方消化をいたさなければならぬのでございますから、勢い起債に頼らざるを得ない、かようなことで起債に頼ります率が高まっておりますことは事実でございまして、決して健全な姿とは言いがたいと私も思わざるを得ないのでございますけれども、しかし、諸般の情勢上やむを得ない措置でございます。したがって、さような起債につきましては、後年度もとより負担が残るわけでございますから、それは地方財政計画に計上いたしましておのおの措置をとってまいることによりまして、いまの緊急の体制に対処していかなければならぬ、かように考えておるところであります。
  59. 加藤万吉

    加藤(万)委員 大臣がいみじくもおっしゃられましたように、国の政策上なんですよね。自治大臣として一番お考えにならなければならないのは、国が求めているそういう政策地方自治権との関係です。地方自治という問題は、申し上げるまでもなく住民みずからが地域社会を管理をしていく、その発想ですね。  さて、今度の予算を見て、あるいはいままでの起債充当率等を見て、その限界を超えているのではないかと私は思うのです。地域住民がみずから自主的に管理をしていく地域社会の限界を超えておるとするならば、今度の地方財政計画は、あるいは地方自治体が、先ほど御質問いたしました県あるいは地方都市の予算伸び率から見て、国の予算地方予算化、本社が中央にあって地方に末端工場があるという、そういう系列的な予算化ではないか、この懸念を私は強く持つのです。すなわち、地方自治体の持っている自主的な管理機能というものがあらゆる面で阻害をされてくる。問題は、大臣がおっしゃるように、それでも国の景気回復し、雇用拡大をし、税収が高められていけばいつかは回復する、その望みがあればいいですよ。大蔵省でも、地方財政計画、国の計画を含めて国債発行の限界を五十五年度、しかしこれは見通しが狂いまして延期されましたですね。昨日の本会議でも、一体そういう見通しの持たれる年次というものはいつごろなんだろうか、いまの大蔵省の、国の財政計画あるいは地方自治体が、先ほども大臣が述べられておりましたけれども、抜本的な改正等その他を行って大体このくらいには本来のあるべき地方自治体の自主的な管理機能というものに復元できる、地方交付税が、借入金に頼らずとも自主財源としてそれぞれが使用できる、その時期はいつになるのだろうか、これが一番聞きたいところだと私は思うのです。いま地方自治体をつかさどっている首長さんも、その見通しがあれば歯を食いしばってでもがんばっていくと私は思うのですよ。どうでしょうか大臣、いま一度、どういう条件が整えばおおむね地方の自主的な管理機能がそのまま健全化をする、そういう時期がいつごろと判断されていらっしゃるでしょうか。
  60. 加藤武徳

    加藤国務大臣 お答えいたします前に、ちょっと先ほど言い足らなかったのでございますけれども地方の実情は、もとよりその地方団体団体によって違いますけれども、私は、ほとんどの地方団体が今回の大型公共事業が組まれたことで、あの道路を直したいけれども、しかしことしは少々無理で、来年か再来年でなければならぬなとか、あるいは学校の改築にいたしましても、河川の改修にいたしましてもそういう気持ちを持っておりましたものが、意想外に早くやれるようになったからということで、非常に喜んでいらっしゃる。ことに学校の建築につきましては、従来の点数を引き上げて五千五百点、かようなことでありますから、二、三年先かなと思っておりましたものが早くできるようになりまして、非常に喜んでいる面があろうかと思うのでございます。ですから、加藤議員のおっしゃいました背景には、地方団体が必ずしもこいねがってはおらない面が多いような印象を私は受けましたけれども、その点、地方団体は意想外に喜んでくれておる、かような見方を私はいたしておりますようなことでございますから、気持ちをつけ加えておきたいと思うのでございます。  そこで、御質問の点でございますが、いつ地方団体の自主性が取り戻せて、地方団体みずからの考え方や判断で諸施策が推進できるか、このことは非常にむずかしい問題でございまして、三十年間地方自治の発展をこいねがってまいったのでありますけれども、結果といたしましては、必ずしも新憲法のもとに新しい発足をいたしました地方団体がこいねがったような姿にはまいっておらないのであります。これは、日本では地域的に財源等に非常な偏りがあり、かつまた、地方団体が完全な自主性を持ち得ますような客観情勢の不足が大きな原因だ、かように見ておるのでございます。  そこで、いつその時期が来るかでございますが、地方団体みずからの自主性を高めますことと、そして地域住民皆さん方が自治意識をさらに強く持っていただきますことと、国の施策と、かようなものが相まってのことでなければならぬ、こういうぐあいに思うのでございます。短絡的な言い方をいたしますならば、まず、地方団体みずからが身近な仕事をし得ますためには、みずからがその負担をしていく、かような考え方をもっと強く持っていただきまして、地方税源の充実強化を図っていかなければならぬ、これが一つの道であろうと思うのでございます。それから、一般財源としてカウントされますものは、いま申します地方税収やあるいは使用料、手数料等のほかに交付税交付金がございますけれども、交付税交付金がいまのままでいいとは私どもは思っておらないのでありますから、国ができるだけ地方に固有の税源を付与いたしますと同時に、また交付税交付金等の飛躍的な拡大を図ってまいりまして、地方が自由に使えますような体制をとってまいらなければならぬ、かように思っております。ストレートなお答えにはならなかったのでありますけれども、これからの相当期間の努力が必要だ、かような考え方を持っております。
  61. 加藤万吉

    加藤(万)委員 前段の補足の部分は、大臣が知事をやられておられたから、私はあえて反論はいたしませんけれども地方住民が喜ぶこと——私は先般も神奈川県の長洲さんとお話をしたのですが、住民の要求は正しいと言うのです。しかし、要求が正しいこととそれをいま実施をするということとは別次元の問題だ。大臣は知事の経験が多年豊富でございますから、その辺はおわかりだと思うのです。やはり喜ばしいだけではないのですね。確かに要求が満たされれば住民は喜びますよ。しかし、為政者としてはそこを何らかのコントロールをし、長期的な財政計画というもの、あるいは健全化というものがなければ、本来あるべき為政者の態度ではないのではないでしょうか。大臣が、住民の要求が起債の充当で公共事業拡大して喜ばしいとだけストレートに受けとめておられるとするならば、きわめて甘い判断であろう。もちろん長い間の地方自治の経験のおありの大臣ですから、まさかそれだけとは思いませんけれども、そういうようにぜひ判断をして地方自治体のめんどうを見ていただきたいと思うのです。  それから、大臣が抽象的に、こういう条件等々を整えていけばと、こういうお話ですが、それでは、地方税財源を充実すると言うけれども、今度の地方税法の改正でそのことが可能でしょうか。地方税法の改正によっての財源過不足、御案内のようにとてもこの財源を満たす額ではございませんね。結果的には地方税法の抜本的な改正が必要だ。それがなければ、これまたその財源の確保はできないのではないですか。お言葉を返すようですけれども、今度の地方税法の改正とは合っていません。
  62. 加藤武徳

    加藤国務大臣 地方税制を見直すに当たりましては、私の根本の気持ちといたしましては、減税要求が地域住民の皆さん方からは非常に強うはございますけれども、しかし、今日の地方財政を思いますときに、地域の皆さん方が願望しておられますような減税措置はとり得る客観情勢ではない、かような判断に立ちました。そこで、何がしかの減税をいたしている面もございますけれども、また増税をいたした面もありますことは御承知のとおりでございまして、結果といたしましては、平年度ベースにおきましても七百億円を超える程度のことにしかなっておりませんし、また、五十三年度におきましては五百億円ベースの増税しかなし得なかったのでありまして、今回御審議をいただきますもので事足れりとなしているものではございませんで、私の気持ちといたしましては、かような景気の落ち込んだ時期でございますから、景気回復に支障がありますような税制改正は極力避けなければならぬ、かような気持ちもございまして十分ではなかった、かような考え方を持っております。
  63. 加藤万吉

    加藤(万)委員 抽象論のやりとりはこの辺にしますが、良薬もある限界を超えますと致死量になります。今度の場合の公共事業、しかも国主導型の公共事業地方予算化というものは、良薬を超えて致死量の限界に至っているのではないか。すなわち、地方自治体がみずから健全化への自浄作用をしていくそういう範疇を超えてしまっているのではないか。とするならば、地方団体が自浄化できる、みずから財政の健全化のために還流する力を持ち得るその基礎的条件をこの際やっぱり与える必要があるだろう、それにはいま背負っている地方団体借金を身軽くしていく、このことが第一の条件ではないかというように実は思うのです。もちろん今日七%の経済成長を国がそういう計画もとに立てているわけですから、もしこれが昨年度のように五・三%まで落ち込んでしまいますと、御承知のように三千数百億円という財政不足を招くわけです。七%がもし達成できなければ、これは大変ですよ。恐らく来年度は、大臣がおっしゃられておるようにまた三兆円以上の財源不足でしょう。加えて、七%のもし落ち込みがあるとするならば、これまた税収不足で加算されていくわけですね。したがって、この際地方自治体が自浄作用ができるような方法を考えるべきではなかろうか。たとえば地方団体公債費、これを、どうでしょう、財政基準の枠外に置いて、そして一般財政需要に見合う財源を確保する。いわば民間産業にたとえてみれば、地方団体は破産の一歩前まで来ている。破産になれば、民間会社の場合には、今度の事件じゃございませんが、管財人を置いて債務たな上げですね。もし、債務たな上げが今度の交付税の二分の一の措置だ、こうされるのならば、もっとそれを拡大して、当然のことですが交付税率の問題もあります。あるいは地方財政計画の中の公債費の部分を基準財政収入の枠外に置いて、これをたな上げして国がめんどうを見ていく、これも一つの方法ではないでしょうか。そういう方法をとらなければ自浄作用というものは生まれてこない、いわゆる健全化をする基礎的な力が生まれてこない、こういうように思うのですが、いかがでしょう。
  64. 加藤武徳

    加藤国務大臣 加藤委員が御指摘の点は、一面の理はあろうかと思うのでありますけれども、私どもの見方といたしましては、なるほど昭和五十三年度末の現債高は二十一兆七千億円という相当の量になるのであります。しかしこの程度起債、と言っては言い過ぎかもしれませんけれども、私はやむを得ざる量であろうと思うのでございまして、したがって自浄作用を失うような地方財政の今日の姿ではないと思うのでございます。ただ加藤委員がおっしゃっておられまする点は、健全な地方財政の姿でなければならぬ、かような趣旨であろうかと思うのでございまして、今日公債費をたな上げいたさなければならぬような状況とは考えておらないのでありまして、おのおの地方財政計画にはめ込んで財政処置ができておるのでございます。しかし御指摘のように、健全な地方財政の姿を描いてまいりまするためには、今後絶えざる努力が必要だ、かように痛感をいたしておるところであります。
  65. 加藤万吉

    加藤(万)委員 今度の交付税の借り入れ一兆五千五百億円。一兆七千億円のうち千五百億円引きますから、一兆五千五百億円ですね。一方公債費は二兆二千億ですね。借金をして公債費を賄い切れないんですよ。大臣案内のとおりです。それから公営、準公営のそれぞれの起債借金等を入れれば、世上言われておりますように三十六兆円ないしは四十兆円ですね。大変な金ですよ。これでも自浄作用がまだそこに残っている、こう見るのは少し甘過ぎるのではないでしょうか。この議論は、やがて交付税法なり税法の課題のときにいま一遍御論議をしてみたいというように思います。  問題は、七%成長消化です。経済成長がかかって公共事業にあるわけです。私は、これだけの公共事業が実際地方団体で可能だろうか、こういうことを各所に行って聞いているわけです。先般大手の建設会社、道路関係をやっているところの重役の方ですが、どうでしょう、今度国の公共事業のうち道路関係にこれだけの張りつけ予算があるのですが、可能でしょうか、こう言いましたら、即座にこう答えました。とても土盛り工事はできない、こう言うのです。土を運んでどろを盛って道路をつくることはできない。どうしてやるんですか、こう聞きましたら、東京のオリンピックのときと同じように全部鉄材道路だ、こう言うのです。鋼材によって道路を敷設しない限りこれだけの消化はできません、こう言うのですよ。土と鋼材とで道路を仮に十メートルつくった場合、どれぐらいの単価差があるか私はわかりませんけれども。したがって、結果的には、最近不況の元凶とも言われておった平電炉が御承知のように操業度が高まってまいりましたね。鉄材が相当大量に必要だということで、見越しのストックとして各企業がため込み始めているのです。セメントについてはもうフル操業です。御案内のように生コンは二割から三割高ですね。そういう形で、金額的には消化ができても、総体の工事量として消化ができるかというと、残念ながらそうはいかないだろう。すなわち、成長率というのは単にお金を使うだけじゃございません。それによって国民に何がもたらされているかという問題が残るわけです。こういう予算を組みますと、結果的には工事量は縮小、金額は物価高を含めて第一次補正、第二次補正の予算を組まざるを得ないのではないか、こんな感を実はいま強くしているのです。  そこで、一つ事業に当てはめてみてここで私は多少検証してみました。下水道事業です。ことしの総事業費は一兆三千億円です。補助対象事業が八千七百六十六億円、そのうち国費が四千八百十八億円出る。この総事業は昨年度当初比でいきますと、四三%の伸びです。一次補正、二次補正がありましたから、補正後では一八%の伸びですけれども、当初から見れば四割三分の工事量の拡大なんです。しかもいま申し上げましたように、総事業費と補助対象事業費の差が四千二百三十六億円ありますけれども、これは地方単独事業です。さらに補助対象事業と国費の持ち出しとの差は三千九百四十八億円。ざっと見まして八千百八十四億円が総事業費一兆三千億円のうちの地方団体の負担分なんです。もちろんこのうちで受益者の負担もございましょう、一般財源の持ち出しもありましょう。下水道の予算でいきますと六千九百五十億円が地方債消化、こういうことになっています。約六千八百億円ですね。ですからいまの八千百億円との差、約千二百億円ぐらいでしょうか、これは一般財源の持ち出しと受益者負担によって賄うということになるわけですが、その大半である約七千億は地方債によって消化なんですよ。  そこで第一に問題になりますのは、一体去年の工事に比べて四三%増という下水道の事業消化が可能だろうか。しかも大臣承知のように、第一次補正、第二次補正、約二千六百億円ですが、これは先般決まったばかりです。私ども地方団体からの意見を徴してみますと、二次消化の、契約は三月にできても、実際に発注するのは六月段階だろう、こう言われているわけです。五十二年度の二次補正ですよ。加えていま言ったように一兆三千億の契約、執行。同時に少なくとも来年の五月末までには完成しなければならぬわけです。どうでしょう、これは下水道事業に限って申し上げましたが、これだけの工事消化が可能と推定をされるでしょうか。
  66. 井前勝人

    ○井前説明員 下水道事業消化の問題でございますが、基本的には公共団体の要望するストックが非常に少ないということで、実は私ども、現在でも五十三年の予算につきましてもっと何とか欲しいというような陳情を毎日受けているわけでございます。確かに前年度から見ますれば四三%増でございますが、ストックのなさ、あるいは都市の要求する熱意等から申しますと、この事業量の消化は十分支障ないというふうに私は考えておるわけでございます。
  67. 加藤万吉

    加藤(万)委員 下水道の第四次五カ年計画の初年度、五十一年度が進捗率が一〇・六%ですよ。補正を入れて五十二年度が二七%になるわけです。五十三年度は国の公共事業投資を優先するという計画から、進捗率をこの予算でいって四五・三%に組んでいらっしゃるのですか。五十一年度から五十三年度までの間に下水道関係の職員、技術者含めて約五割の消化ができる体制になっていますか。どうでしょう。
  68. 井前勝人

    ○井前説明員 事業を執行する場合は、御指摘のようにその執行体制が大変問題になるわけでございます。やはり事業の必要性というものが出てまいりますれば、各公共団体でもそれに応じた体制を整えてきておるわけでございます。たとえば府県におきましても、従来府県の下水道行政は必ずしも充実しておらなかったわけでございますが、毎年県の中に下水道を専属に所管する下水道課が逐次できつつありますし、それから市町村におきましても下水道を所管する下水道課あるいは下水道部等の新設に非常に力を入れておりまして、年々その執行体制は充実しておるわけでございます。現在、全国で建設関係で約一万二千人の技術者がおります。維持管理を含めますと約一万五千人ほどございますが、現在の事業程度消化、執行には私は十分対応できると考えております。ただ、まだ下水道のストックの充実は今後続ける必要がありますので、毎年の事業量はふえてまいります。こういうことを考えますと、やはりこの人の養成なり強化というものは息の長い仕事でございますので、並行して、今後ふえていく事業量に対応するようないろいろの努力は必要だと考えております。
  69. 加藤万吉

    加藤(万)委員 この事業消化の問題は後で具体的な例を二、三挙げて、可能かどうかをお聞きをします。ただ、五十一年度から二年度に、これほどの無理な工事をやっている結果、下水道工事に絡む汚職が大変起きているでしょう。あるいは下水道関係をめぐる元請と下請との関係、支払い代金の問題、これは物特の委員会でも問題になっていますね。私はここでそのことを申し上げる意図はありませんけれども、そういう形で無理が来ているのですよ。結局、工事契約者が、技術者が足りませんから、どこに手抜きがあるかということを知っているのですね。そこにつけ込まれる汚職とか元請と下請との代金支払いの問題とか、こういう課題が出ているのです。私は技術者の問題も後で少し述べて、これで可能だろうかという御指摘をしたいと思っているのです。  問題は、これだけの総事業をこなすお金が、先ほど申し上げましたように地方で約七千億の起債であります。私は本会議でも、国債が約十一兆円、地方債がこれだけの発行額、結果的には縁故債が今度の場合でも過半数近く占めるわけですが、市中銀行でこれだけの金額が消化が可能かということをお聞きをいたしました。大変むずかしい。たとえばこれは昭和五十二年度のことですが、仙台が地方債消化をやったところが、大変金利負担が高いんですね。金融市場が詰まっていますから、当時金利負担で八・六%、県の地方債は、これは県段階縁故債で七・九%、その金利差が〇・七%あったというのですね。仙台市と言えば、財政きわめて豊かなところですよ。どうしても市中銀行が余裕が出てまいりませんから、結果的に金利の高い縁故債を求めざるを得ないという状況になるわけですね。これは先ほどお話をいたしました公債費にはね返ってくるわけです。もう申し上げるまでもございませんが、今年度公債費は元利償還のうちで利子の方が多いんですね。元金の返済額の方が少ないわけです。加えて縁故債は御承知のように利息先取りですね。百円で九十八円ぐらいでしょうか。そういうことを考えてまいりますと、まず市場での消化がどうだろうか、市場消化が仮にできたとしても、その金利差はどのように一般財源にはね返っていくのだろうか。私はいまここに東京都の下水道財政調査会の答申を持っています。この答申によりますと、下水道事業は本来下水道企業の会計で処理をすべきであるけれども一般財源に公債費償還金を入れるのはけしからぬ、金利負担を入れるのは、持ち出しをするのはけしからぬ、こう答申がされています。いわゆる単独ないしは地方債の負担額が七千億円前後になってまいりますと、どうしても一般財源から金利の負担をせざるを得ない。そして結果的には公債費が交付税交付金の借入額よりも多くなる、こういう決算状況になってくるわけです。一体この下水道事業に対する地方債償還について、特に金利の負担等から一般財源からの持ち出しについてどのようにお考えでしょうか。
  70. 山本悟

    山本(悟)政府委員 下水道関係の地方債の額は相当なものに達する、御指摘のとおりの数字になってまいると思います。交付税の方におきまして、やはりそういった事情でございますので、元利償還の五〇%相当というのは見ていく、こういうようなことによって一般会計との間のコネクションをつけているわけでございまして、そういう措置によって十分に下水道会計としての対処ができるのじゃないかと思っているところでございます。  なお、先ほど仙台市の縁故債のお話が出ましたが、確かに一時そういうような状況がございまして、非常に他に比べても高い金利であるというような事情がございましたので、この点はよく調べまして、再度折衝をさせて通常ベースまで下げさせる、こういうような措置もとった次第でございます。  その後御案内のとおり、市中金融関係非常に緩んでまいりまして、公定歩合も非常に下がるというようなことで、昨年中には約四遍の市場公募関係の利率の引き下げというようなものも行われまして、現在では相当に縁故関係の利率も下がっているし、また縁故債なるがゆえに非常に借りにくいというような状況は現在は非常に少なくなっている、かように思っているところでございます。しかしながら、縁故債の額が非常に大きいということは問題でございますので、なるべく政府資金なり公庫資金なりが増強できるように、そういったかっこうで地方債計画を組ましていただいているような次第でございます。
  71. 加藤万吉

    加藤(万)委員 先ほど下水道で申し上げましたように、単独事業が四千二百三十六億円でしょう。この中で、全額起債とは私は思いませんけれども、この場合は地方縁故債に頼る面が相当部分ですよ。  これまた東京都の同じ調査ですが、昭和五十年−五十二年の起債の発行条件の変遷というところを見ますと、政府債が七・五、交付公債が七・九、縁故債が七・八。五十年前後といいますと、これはオイルショックの後で、大変金としてはだぶついていたときではないかと推定されるのですが、このときが縁故債の利率が八・六、政府債が七・五ですね。金融事情が緩和して云々と言ってもこれだけの差が出てくるのですよ。もちろん〇・何分という、数字としては細かいですけれども、対象金額が大きいですからね。結果的には先ほど言いましたように、一般財源で縁故債の金利負担をしてはならないという一方での制約、しかしそれでもなお一般財源から持ち出さない限り公営下水道の財源がもたないという悪循環を続けているわけですね。そこでこの結果が、私は先ほどから何回もお話をするようですが、今年度公債費の元金の償還が九千八百六十四億円、金利が一兆二千五百十八億円ですね。私は、そういう状態を避けるためにはたな上げ論というのがあるわけですが、これがむずかしいとするならば、縁故債に頼らなくても下水道事業が負担にならない、そういう処置をとるべきだと思うのです。  そこで一つお尋ねしますが、いま下水道事業の負担が公共の場合に管渠で十分の六、流域では三分の二ですね。処理場では公共の場合に三分の二、流域下水道の処理場では四分の三ですね。どうでしょう大臣、私は流域下水道に対する補助率が高いというのはわかるのです。河川そのものの水質を確保するためには、どうしても流域下水道については補助率を高めて、設備能力をよくしていくということはよくわかるのです。今日、都市下水道の処理場で、あるいは下水道で川に流し込まないもの、たとえばそれは湖沼にいたしましてもあるいは瀬戸内海のような海にいたしましても、汚濁の激しさというものは市民の側から見れば同じじゃないでしょうか。とするならば、流域下水道と公共下水道に補助金の差をつけるのはおかしい。これは設定された当時の状況ならわかりますよ。たとえば第二次五カ年計画段階でこういう処置をおとりになったのならわかりますけれども、今日の段階では、これだけ公共事業を発展をさせて、全国民の二九%前後まで対象人口を広げようという段階ですから、そうなってきた場合の下水道の排水が、流域下水道と同じ条件でないということは言われるでしょうか、私は同じだと思う。とするならば、補助率を高めて、そして地方単独事業起債ないしは持ち出し分を低めていく、そういう方向が必要ではないでしょうか。率直に言って、これが地方団体にかぶっておりますがゆえに財政硬直化をもたらしている。百歩譲って政府の言う公共事業をやって景気回復するというならば、国が十一兆が十二兆に仮になったにしても、地方団体の自主権の限界ということからいけば、この補助率を高めて、地方団体の財源を、少しゆとりのある財源処置をすべきじゃないか、こう思うのですが、この補助率の問題についてどういう見解をお持ちでしょうか。
  72. 井前勝人

    ○井前説明員 下水道の補助率は歴史的ないろいろの経過を持っておりますが、下水道が始まった当時は非常に低い補助率、せいぜい三分の一程度の補助率でございましたけれども、年を追いましてその改善方に努力いたしまして、現在、先生の御指摘のような補助体系になっておるわけでございます。  ところで、流域下水道と公共下水道の補助率に差があるということでございますが、その施設の果たす機能から申しまして、流域下水道は御承知のように二市以上にわたる下水道を対象にした処理施設でございますし、公共下水道は一市だけを対象にした施設でございますので、基本的にその公益性において違いますので、補助率が流域が高くて、公共は低いということになっておりますので、この問題は今後とも同じような扱いをすることは、その機能の差から申しまして困難なことであろうと私は考えておるわけでございます。  ただ、今後下水道全体の補助率をどのように持っていくかということは、決して現在の補助率で満足ということではございませんので、なお逐次補助率の改善につきましては今後の課題として検討はいたしますけれども、少なくとも現在の第四次の五カ年計画の間は、この補助率でセットになっておりますので、その間は現在の補助率でいきたいというふうに考えておるわけでございます。
  73. 加藤万吉

    加藤(万)委員 補助率が、二市にまたがるとかということは、広域行政的な要素ですからそれは認めますけれども、しかし補助率を高めたという一番の原因は、二市にまたがるからではなくて、流し込むだろう一級河川ないしは二級河川を含めて、その広域部分に対する汚染の問題が中心だったのでしょう。したがって広域下水道については特別な補助率を高めて、その河川の汚濁を防ぐという点が中心ではなかったのですか。私は、そういう面からいけば、現在の人口増加といい、その対象人口といい、もうほとんど同じじゃないか、したがってこの際、補助率を高めて、同様な処置によって地方財政を楽にさしていく、身軽にしていく、こういう方向も、ぜひともひとつ大臣、これは建設大臣とのいろいろな折衝もこれからございましょうけれども、配慮しておいていただきたいと思うのです。  次に、三次処理問題についてお伺いをしてみたいと思う。これまた財政問題と非常にかかわり合いが深いのです。  今度の建設省の予算概要説明の中の第四項に「三次処理施設の建設を推進する。」と書いてあります。時間がありませんから私の方から問題点を出してみますが、三次処理のための建設省の予算は、今年度ここにあります八億七千万円ですね。ところが、三次処理機能についてはいろいろ問題があります。技術上の解決をしなければならぬ問題等がありますけれども、たとえば東京における多摩、森ケ崎、先般いろいろ問題になっております旭電化の跡地の第三次処理敷地確保だけで百二十億ですね。この第三次処理機能について建設を推進しと書いてありますけれども、四次計画にないからということで八億七千万円程度予算調査費しか載せてない。東京都だけで、旭電化だけで百二十億の先行投資をせざるを得ないのですよ。この先行投資は全部地方単独、東京都の単独起債でしょう。しかもこれを縁故債に頼るとすれば、先ほど言いましたように、利息先取りですよ。多摩、森ケ崎、合計でどのくらいの三次処理機能の予算投下を東京都がしたか私は知りませんけれども、こういう先行投資予算がどれほど東京都の財政を圧迫しているでしょう。どうでしょうか、私は少なくとも建設省が掲げられておる方針があるならば、たとえばそれに見合うだけの国庫あるいは補助事業を含めてそれぞれの予算化をされて、地方自治体の財源を身軽にすべきだ、こう思うのですが、いかがでしょう。
  74. 井前勝人

    ○井前説明員 三次処理の問題は、御承知のようにまだ全国で二次処理そのものが普及していない段階でございますので、これを大々的に全国にやることは考えておりません。ただし、公共用水域の状況によりまして、特定の水域につきましては、やはり二次処理の促進とあわせて三次処理を必要とする地域もございます。そういう地域につきましては、ただいまの御指摘の中に三次処理用地として単独で手当てしているというお話でございましたけれども、私どもの方は、用地につきましても公共下水道の場合ですと、十分の六の補助で見ていくわけでございますので、それは単独ということでは考えておりません。当然補助対象にしております。それから建設費につきましては、流域下水道あるいは公共下水道のそれぞれの処理場の建設の場合の補助率を適用しておりますので、それほど大きな負担をかけるような急テンポの建設はいまのところ考えていないわけでございます。
  75. 加藤万吉

    加藤(万)委員 現実には多摩川にしても隅田川にしても、あるいは瀬戸内海にしても、もう単に住民側のニーズの問題ではなくして、人口増加その他から見て、三次処理機能というものの設備投資をせざるを得ないまでに地方自治体は追い込まれているわけですね。その六割なりそれぞれの補助率はつきますけれども、学校問題でもそうですか、人口増加地域に対して単年度予算しか予算がつかない、しかし、三階建ての学校を建てるのに一階だけでとめるわけにいかないから、二階、三階は先行投資をする、その金利負担が地方財政をその時期時期において大変圧迫していることを象徴いたしておりますがゆえに、特にこのような大型のプロジェクトの公共事業投資については、単年度予算よりも、債務負担行為を含めて、少なくとも方針に掲げられる以上は、そういうものまで見て予算化をしなければ、まさに地方自治体はその赤字がどうにもならない、こう思うのです。  最後に、時間がありませんから参考人に対して一つお聞きをしますが、処理場については下水道事業団についてそれぞれ委託をされているわけですね。お聞きするところでは、下水道事業団は、これだけの処理場への委託を消化するには人が足りないということで、いま東京、関西含めて四十人の技術者の増加を求められている、こう聞いているのです。しかし七都市は、いまの公共事業を行うのに先ほど人員が一万何千人かと言いましたが、その技術者がとても出し切れない、したがって下水道事業団のこれだけの人員確保の要請には応じ切れないという態度を聞いているのですが、いかがでしょう。
  76. 久保赳

    ○久保参考人 下水道事業団の職員の問題でございますが、現状では下水道事業団の職員の構成は、国からの派遣職員がほぼ三分の一、それから地方公共団体からの職員が三分の一、それから下水道事業団いわゆるプロパーの職員が三分の一、こういう職員構成になっているわけでございます。五十三年度事業計画の認可がまだ未了でございますので、五十三年度の職員についてはまだ確定をしておらないわけでございまして、ただいま先生四十人というようなお話がございましたけれども、まだそのようなことで確定数字で御相談申し上げていることはございません。  従来、下水道事業団はただいま御説明いたしましたように、総職員の三分の一を地方公共団体から出向という形でお願いをしておるわけでございますが、下水道事業の重要性であるとか、さらにはまた下水道事業団の設立は、国と公共団体が半分ずつお金を出し合って協力をして現在の下水道のいろいろな需要にこたえていこう、こういう趣旨で設立をされた団体でもあり、そういう趣旨が理解をされて、従来から公共団体事業の執行に支障のない範囲内で御協力をいただいておるわけでございまして、五十三年度につきましても、まだ数字は確定をいたしておりませんけれども、従来の経験からいってお願いをできるのではないだろうかというふうに判断をしておりますが、いずれにしましても、これはそれぞれの公共団体事業の実施に影響がない範囲内で両者の協議によってお願いをするつもりでございますので、公共団体が自分の仕事の実施ができないのに下水道事業団に人を強制的に派遣をしていただく、こういうことではございません。  以上でございます。
  77. 加藤万吉

    加藤(万)委員 時間がありませんから話を詰めることができません。大臣、処理場につきましては、先ほど言いましたように地方債一般財源、それから受益者負担によって下水道事業をやっていくのですが、処理場については下水道事業団から借入金をもって一般財源の振りかえができるのですね、いずれ償還はしなければなりませんけれども。そうしますと、地方団体は極端な例が一銭もなしに処理場の公共事業ができるのですよ。こうなってきますと、当初私が申し上げましたように、金がなくても公共事業ができるんだから要求があれば全部満たすという、そういうやや放漫な地方財政になる危険性を非常に持っているわけなんです。  さらに加えて、今度下水道事業、処理場を含めてそれぞれができてまいりますと、当然のことですが、維持管理が拡大をします。今度の場合は公共事業予算としてとってはありますけれども、さあそれでは一般財源に入ってきます維持管理費はどうするんだ、これは後でお聞きしようと思ったのですが、きょうは時間がありませんからできません。維持管理は下水道事業団に任せましょう、もうそれ以上はお手上げですよというところもあるんですね。あるいは下水道事業団が処理場の建設だけではなくして、維持管理までしましょう、事業団がさらに下請化するという方向も最近検討されているやに聞いている。いずれにしましても、維持管理を含めて一般財源にまたこれ食い込むこと間違いない。公共事業拡大が即、実は一般財源の人件費を含めてその負担の増加になることも間違いはない。金利負担、償還財源の返還、さらに維持管理のための将来の財源の負担、これらを見た今度の地方財政計画があるのか、公共投資計画予算が組まれているのか、私はきわめて疑念を持つわけです。大臣としてはぜひこの辺を長期的に見て、地方財政計画の、あるいは地方団体の指導と健全化の方向に向かわれることを期待をするわけです。大臣の決意をお聞きして終わりたいと思います。
  78. 加藤武徳

    加藤国務大臣 るるお話を承りました。ことに下水道問題につきましては国庫補助事業の対象が狭うございまして、単独事業も多く、それだけにまた地方負担も多いのでありますし、かつまた、いま申されましたように、維持管理のためにも相当の経費を必要といたすのでございます。私どもが都市計画税の増税を決意いたしまして、各市町村におきまして条例によって千分の二から千分の三に引き上げようと考えられるところは引き上げて結構だ、かような制限税率を緩和いたしましたのも、やはりその地域の皆さん方が下水道等の普及によりまして生活環境が改善されるのでありますから、応分の負担を願わなければならぬ、かようなことでございましたけれども、長期的に見ますと、やはり非常なその団体の負担になってまいるのでありますから、今後指導よろしきを得まして、できるだけ負担が軽くなりますように配意をしていかなければならぬ、かように思う次第であります。
  79. 木村武千代

    木村委員長 この際、午後一時より再開することとし、暫時休憩いたします。     午後零時十七分休憩      ————◇—————     午後一時六分開議
  80. 木村武千代

    木村委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  地方自治地方財政警察及び消防に関する件について質疑を続行いたします。新村勝雄君。
  81. 新村勝雄

    ○新村委員 私は、地方行政委員会における自治大臣国家公安委員会委員長の所信表明をお伺いいたしましたが、それに基づきまして若干の御質問をいたしたいと思います。  まず、大臣警察行政につきまして「当面の治安情勢は、内外の厳しい諸情勢を反映して昨年にも増して多事多難の様相を呈しております。特に極左暴力集団は、当面、新東京国際空港の開港阻止を最大の闘争課題としながら」云々とおっしゃっておりますが、特に私は、東京国際空港の近所に住むものでありまして、この事態の推移については深い関心を持っておるわけであります。そして、この地に建設をすることを国で決定をいたしましてからすでに十一年を経過をいたしておるわけであります。しかも、これをめぐる多くの状況が発生をしてまいりましたが、この事態に対して、大臣は基本的にはどういうお考えであるか。これは大臣御就任以前からずっと続いておる問題ではありますけれども、この一連の空港問題についての大臣の基本的な認識をまずお伺いをいたしたいと思います。
  82. 加藤武徳

    加藤国務大臣 御承知のように、羽田国際空港はきわめて狭隘でありますだけではございませんで、場合によっては大変な事故が発生する心配さえある、かように言われてきておるのでございます。そして、新しい空港をということで、御指摘のように、十一年前成田ということに決まりまして今日を迎えておるのでございます。成田の飛行場を中心にします周辺の皆さん方には大変な御迷惑であったかと思うのでございますけれども、しかし、協力をしていただける方には積極的に協力が願えている面もございまして、したがって、今後は環境整備等に格段の心を配りますと同時に、また自治省が所掌しております交付金等につきましても特別の配意をいたしますと同時に、かつまた、特別立法によって処置がされておることにつきましても、できるだけ五十三年度でその処置を図っていかなければならぬのでございまして、かような体制をとることによりまして、いろいろ御迷惑なことはわかっておりますけれども、国の方針として成田新空港の開港、かような取り運びをいたしており、開港も目前に迫っておるようなことでございます。しかし、反対をされます一部の方が、御承知のような激烈な闘争を繰り返しておるのでございますけれども警察といたしましては、違法行為がありました場合にはこれを見逃してはならぬ、かようなことで暴力集団等のテロなんかにも対処してまいらなければならぬし、また、事故が起こらないように警備につきましても万全を期してまいりたい、かように考えているところであります。
  83. 新村勝雄

    ○新村委員 大臣のお言葉の中に「特に極左暴力集団は、当面、新東京国際空港の開港阻止を」とございますけれども、これはこの反対運動にはいろいろな要因があることは否定できませんけれども、ここにおっしゃっておるようなことがこの問題の本質ではないというふうに私は考えるわけでありますけれども、まずこのように十一年にわたって紛争を続けてきた、そしてまたその間において多くの事態を招来をいたしておりますけれども、その本質はここに書かれておるような極左暴力集団の跳梁といいますか、指導といいますかというふうに書かれておりますけれども、そうではない。本質は別なものでございますけれども、その本質についてどうお考えであるかということでございます。
  84. 加藤武徳

    加藤国務大臣 新しい空港を建設いたしますには、大変な面積を必要といたすのでありますから、先祖伝来の土地を持っていらっしゃいました方々がその土地に愛着を持たれ、手放したくないという気持ちはよく私どもも理解ができるのでございますけれども、しかし一たん決まって進めてまいりまする上では、ぜひ御協力を願いたいのでありますが、私は極左暴力集団のみの反対であるとか、あるいはこの方々だけの表面的な暴力テロ活動ということだけではございませんで、その背後には地域の皆さん方、ことに農地を持っていらっしゃる皆さん方が手放したくないんだ、成田空港には反対なんだ、かような強い考え方、強い願いが背後にありまして、そしてさような純粋といいますか、純真といいますか、そういう考え方の上に立った反対をなすっていらっしゃる方々に極左暴力集団と言われます方々が便乗をいたしまして、その反対の先頭に立っておる、かように思うのでございますから、私は単なる極左暴力集団だけの現象とは見ておらないのであります。
  85. 新村勝雄

    ○新村委員 新しい空港を必要とすることはこれは時代の趨勢でありますから、これは国民われわれひとしく円満な形で、なるべく摩擦の少ない形で空港を建設をすべきであるということは、これは国民的なある意味では願望であると思います。しかし、この十一年間の経過を考えてみますと、まず第一にこの問題の核心は、いま大臣がおっしゃったように農民の土地に対する愛情、これが基本であります。あそこは数十年にわたって荒蕪地を現在の農民あるいは先代、先々代が辛苦を込めて開拓をしたところでありまして、これに対する農民の愛情、愛着、これがやはり基本になっておる、大きくこの十一年間のある闘争を支えておる力である。これの認識がなければ、これは本当の解決はできないわけです。ところが、歴代の政府というと大変失礼でありますけれども、ことごとに地元と相反する、あるいはまた行政的にも多くのミスを犯し、警備の面でも残念ながら必ずしも望ましいものではなかった、こういうことの累積が今日の困難な事態を招来したというふうに考えるわけであります。  農民に対する施策にいたしましても、一町歩持っている農民にどこかの土地を一町歩あっせんをすればそれで済むというものではないわけであります。農村の生活というのは、個々の経営と同時に、お互いの連帯あるいは地域との関係において成り立っておるものでありますから、単に買収される予定地をほかにあっせんをするというだけでは、これは全く施策にはならないわけであります。そういう面で基本的に政府のお考えは甘かった、また県の施策も甘かったというふうにわれわれは考えるわけであります。  そこで、すでに事態ここに至っておりますけれども、まだ空港問題は終わったわけでありません。むしろこれからであります。これにつきましてやはり自治大臣といたしましては、あるいはまた国務大臣といたしまして、この農民の心情をひとつよく御理解をなさって、それを基本にしてひとつこれから問題に対処をしていただきたい、取り組んでいただきたいということをまずお願いを申し上げるわけでございますけれども、いかがでしょうか。
  86. 加藤武徳

    加藤国務大臣 おっしゃるとおりでございまして、飛行場の場合だけではございませんで、道路でありますとか河川の改修でありますとか、さような公共事業を進めてまいります際に、その土地を持っていらっしゃる方々が非常な執着を持たれ、端的な言い方をいたしますと、銭金ではないのだ、かような気持ちを強く持っていらっしゃるのでございまして、成田空港の場合はいま御指摘がございましたように、先祖が精魂込めて開拓をしたものでありますだけに、それだけに愛情の深いことがよくわかるのでございまして、政府といたしましてもさような人情の機微を十分心得た上で対処をいたすべきであったと思うのでございますけれども、今日反省をいたしますと、さような面で足らざる面があったのではないか、かように私自身は思っておりますようなことでございます。  そこで、これから対処してまいります上で、成田空港のかような教訓等も踏まえながら、公共事業の推進等に当たりまして先祖伝来の土地を御提供願います場合には、土地を持っていらっしゃる方々の人情の機微に触れた十分な基本の理念が必要である、かように思う次第であります。
  87. 新村勝雄

    ○新村委員 大臣のお言葉を伺いまして、本当に頼もしく感ずるわけでありますが、これをひとつ今後の事態の収拾に事実をもってお示しをいただきたいというふうに、特にお願いを申し上げるわけでございます。  そこで次に、警察御当局にお伺いをいたしますが、去る二月六日未明から行動を起こされまして、成田空港に関して一連の御処置をなさったわけでありますけれども、、その中には多くの問題を包含をしておるというふうにわれわれは見ておるわけであります。この問題について幾つかの点をお伺いをいたしたいと思うわけであります。  二月六日未明に行動を起こしました千葉県警、警視庁の機動隊は、朝六時ごろに千葉県芝山町横堀地先の新東京国際空港B滑走路予定地付近に到着をいたしまして、航空法第四十九条一項の違反についての告発により、妨害物の捜査差し押さえ令状に基づいて妨害部分の捜査、そしてまた同時に妨害部分の全部を除去をしたわけであります。  この執行に当たって、農地の中でありますから、農地に令状なしに侵入をいたしまして、侵入といいますか、これは公務上なさったわけでありますから、言葉は不適当かもしれませんけれども、種ショウガの貯蔵をしてある畑約一・二ヘクタールに、これは壊滅的な、農民の側からすれば損害を与えた。そうして執行開始に当たって、反対同盟からはその代表から、正式な申し入れとして自主的に航空法違反部分については撤去するからしばらく待ってもらいたいという申し入れがあったにもかかわらず、これが拒否をされて引き続き執行されたということであります。  そして作業の開始さらにその執行の過程において、全く非武装、無抵抗の婦人を初め、そこに居合わせた多くの反対同盟の人たちに重軽傷を負わした。そして妨害物件と言われる塔の上に登っておりました四人に対しては、二十七、八時間にわたって連続冷水を放水をいたしまして、これは危うく死の直前に至らしむるという状況にまで追い込んだということでありますけれども、これらの事実についてお答えを願いたいと思います。
  88. 三井脩

    ○三井政府委員 初めに申し上げておきますが、いまお話しがございましたように、警察としては航空法違反の違法行為の捜査、取り締まりのために行動したのであるということが大前提でございます。それに対する抵抗がありましたので、これを排除したということでありまして、いわば違法に対する適法な警察力の行使というのが事の本質でございます。  ただいまお挙げになりました四点の最後の点でございますが、第一の農地に立ち入りショウガに被害を与えたという点につきましては、なるほどこの捜査、捜索、そして抵抗排除のための警察活動により損害を与えたことは事実だと思います。損害の程度その他につきましては調査をいたしておりますけれども、まだ被害者から返事がございません。  二番目に、あそこにおった反対側の人たち警察の手を煩わさないで自主的に違法部分を撤去するという申し入れをしたということでございますが、それらしきことの申し入れといいますか、言動が現地であったということは聞いておりますけれども、それはその場の一時的なことでありまして、もうこれは昨年から建て始めたわけでありますが、昨年十二月二十四日から建て始めまして、これに対してしばしば警察からも警告を発し、公団からも警告を発し、私が覚えているだけでも十三回警告を発しております。それを聞かずに、いざ警察が捜索を開始するというときになっていろいろ言うのは、警察活動に対する牽制にすぎないというようにわれわれは感ずるわけでございます。  第三は、無抵抗の人に対して重軽傷を負わしたという点でございますが、さような事実はございません。  それから第四に、鉄塔上に、いわゆる要塞の建物の上にさらに二十メートル余りの鉄塔を載せておったわけでございますが、これに最後まで四人が登っておりなかったということがございます。これに対しては、放水等によりましておりることを促したわけでありますけれども、なかなかおりずに、最後におりてきたということでありまして、本人の自主的な退去といいますか、自主的におりてくることをしばしば促しておるわけでございますが、本人が好きこのんで最後までがんばったということであろうと考えております。
  89. 新村勝雄

    ○新村委員 それで、告発に基づいて妨害物の捜査、差し押さえをしたということでありますけれども、捜査、差し押さえということであれば、これは捜査をし、あるいは場合によっては証拠の保全をするということだけで足りるはずであります。それをはるかに超えて強制的にその部分を撤去したということについては、これは明らかに不当な手続であるというふうに考えますけれども、その点はいかがでしょう。
  90. 三井脩

    ○三井政府委員 結論から申しますと、正当な手続で法的に一点の欠点もない措置であったと私たちは自信を持っておるわけでございます。  その理由でございますが、航空法四十九条違反の物件でありますので、違法行為を取り締まるという観点から捜査手続により捜索令状を得、かつ押収令状を得、さらに検証をするための検証令状も裁判官から発付を得てやっておるわけであります。  この捜査のやり方でありますが、航空法四十九条違反でありますので、違反をやった人を現行犯逮捕をするということはあり得るわけでございます。一般に現行犯逮捕するときには、その逮捕の現場におきましては令状なしに捜索をし、検証をし、かつ押収することができるというのが刑事訴訟法の規定でございますから、本件の場合でありましたら、裁判所の令状なしにやってもいいわけでございまして、通常はそういうやり方をしておるわけでございますけれども、どうせ注目され、いろいろ言われるということをも考慮いたしまして、第三者機関と言うとおかしいわけですけれども、裁判官に判断を求め、かつその令状をもらった、こういうことでありますから、単に警察だけの判断でなしに、司法機関もまたこれは正当なものであると判断したわけでございます。  次に、いまのは押収、捜索することの法的な問題点でありますが、今度は押収するのは犯罪の証拠として証拠を保全するためでありますから、押収すべき物件を現場に置いたままで押収する、差し押さえするということは可能でありますし、また現場でなくて持って帰ってくる、そして捜査機関、この場合は警察の支配下に置いて保管をするというように、差し押さえをして現場に置いておいて、だれもこれにさわってはいけないぞ、あるいは壊しちゃいかぬぞというふうにしておく行き方と、持ってきて警察の支配下に置いて、しかるべきところにおいて保管をするのと、押収としては二通りあるわけでございます。私たちは慎重な方法をとって、先ほど言いましたように、本来なら要らない令状を裁判所からもらうというような念のための手続を経たわけでございますが、次の持ってくるかどうか、現場に置いて保存するかあるいは持ってきて警察の管理下に置いて証拠保全をしていくかということは別に裁判官の判断をもらったわけじゃなく、警察が自分で判断すべきことでありまして、今回の場合は現場から持ってくるということで現に押収してこれを保管をしておるわけでございます。  ところで、証拠保全のためならば現場に置いておいて十分じゃないか、たとえば写真に撮っておけばいいじゃないか、検証すればそれで済むのじゃないかという議論もあるわけでございますけれども、われわれは当時の状況から見て、これは撤去して持ってきて証拠保全をすることが捜査上最も適切であるという判断をいたしました。そういうことは正しいと思っておるわけであります。  これについては、蛇足でありますけれども、反対側の人たちも逮捕された人の勾留を取り消してくれといういわゆる準抗告の手続をした中で、その理由としてそういうようなことを挙げておるわけでありますが、これにつきましては合議制の裁判所が二月十三日にそれを却下いたしております。その理由は、いま私が申し上げたところと同じようなことでありまして、法的に言えば、現場に置いて証拠保全をするという行き方もあり、持って帰って警察の支配下に置いて保管をするという行き方もあるが、そのどちらを選ぶかはそのときの状況によって捜査官が判断すべき問題である。しかしせっかく準抗告の申し立てがあったので、捜査官の判断が果たして適切であったかどうかというところまで判断をしてみると、当時のような状況もとにおいては警察官が持っていって保管をすることもまた適切なものである、こういう意味の準抗告却下決定が合議制の裁判所で下されておりますので、あえて捜査機関だけが言うわけではなくて、第三者機関的なものもやはりそれについての適法性を認めておるということでもあろうかと思うわけでありまして、われわれといたしましては、ああいう具体的な状況の中でああいうふうに措置することが最も適切な措置であると信じておるわけでございます。
  91. 新村勝雄

    ○新村委員 前にも大鉄塔の撤去という問題があったわけでありますけれども、あの場合には民事の手続によって仮処分の手続が行われたわけであります。ところが、あれよりもはるかに緊急性が少ない、大体、形としては同じでありますけれども緊急性がはるかに少ないと思われる事件に対して、これは全く別の手続によった、刑事の手続によって、しかも差し押さえで全部これを撤去してしまったということでありますけれども、その間には一貫性がないわけでありますね。なぜそういうことをされたか。これは逆であります。前の民事を今度に適用して、前の緊急性のあるものに刑事を適用するということであればまだ話はわかるのですが、そうじゃないわけであります。そして今回の事件はB滑走路の予定地の南端でありますから、これは現在開港が予定されておりますA滑走路の使用には全く関係ない、全く支障がない。そういう物件に対してそういう強行的な手段に出たという一その点をどうお考えであるか。
  92. 三井脩

    ○三井政府委員 岩山の第一、第二鉄塔のケースは民事手続で行い、今回のB滑走路延長上のいわゆる横堀要塞につきましては刑事手続で措置をしたことが大変形の上においては違っておるということからの御疑問だと思うわけでございますが、これは一つは事実関係によるわけでございます。  もう一つは、法律上の問題ということだと思いますけれども、岩山鉄塔の場合は、建てられたのがたしか大分前で四十六年ごろであったと思いますが、第一、第二、時期は違いますけれども、非常に早い時期に建てられました。その当時、これが航空法違反その他の犯罪になり得るという問題点もあったわけでございますけれども、端的に申しまして、当時はいつ飛行場ができるのか、またいつ飛行機が飛ぶようになるのかというような点が、つまり開港の見通しが明らかでないということが一つございました。それからもう一つは、犯罪を犯した人間、これは違法になりましても、だれが犯罪を犯したかという点について捜査をするわけでございますが、これが必ずしも明確でなかった、こういうような問題点がございます。  なお、公団としては、いまはああいうように建てておるけれども、飛行機が飛ぶようになっても終局的にあれを取り払わないで妨害する、こういう意思であるというように認定できないこともないけれども、それはむしろ相手方の良識に期待をして警告を発することによって、いよいよ飛行機が飛び立つときには自主的に撤去をしてくれるという方に願望をかけてそういう努力をしよう、こういうことでありましたので、公団といたしましても今回のように直ちにこれを告訴、告発するということではなく、話し合いを基調とし、話し合いが調わないときには、それの延長としての民事的な手続によって処理しよう、こういうことでありました。したがって、また私たちもそれを見守るということは基本的なことでございます。  今回の横堀要塞の関係で申しますと、四十九条違反であることがもう明確でありますし、そしてまた本人が、反対派の建てた人たちが自主的に撤去する可能性が全くない、こういう状況を私たちは認定をし、確信をしたわけでございます。  この点につきましては、あれに先立ちましてC滑走路の用地内に要塞をつくるということでつくり始めたわけですが、そのために基礎工事としての穴を掘った。これは、そういう要塞をつくるということでありましたので、私たちは厳重に警告を発しました。その結果、大きな穴を掘っただけで、鉄材も用意したわけでありますけれども、これは建てずにやめたということであります。ところが今回の場合は、それをやめた後、今度は横堀、B滑走路延長線にこれを建て、先ほど申しましたように、もう十三回にわたる警告に対してもこれを聞かない、そういうことでありますし、航空法四十九条違反であることはもう明確、全く疑いの余地がない、こういう状況であったわけでございます。そうすると、この違法行為を取り締まる、これを放置しないというのは警察の責務として当然のことでありますので、刑事手続によって措置をする、犯罪は明確である以上は刑事手続によって措置をするというのは、当然のことであります。  ただ、最後に御指摘になりました、A滑走路の方はすでに飛行機が飛んでおるわけでありますが、B滑走路はまだ滑走路もできておらない、したがって、実際に飛行機の飛ぶことについては支障はないではないか、支障がなければ、たとえ航空法違反になっても取り締まらないという方法もあるではないかというような御質問かと思うわけでございますが、実際に飛行機が飛んでそれに支障があるということになりますと、これは航空に危険を及ぼす罪という単独法がございますが、これの航空危険罪になって刑ももっと重くなるわけでありますし、かつ、飛行機が飛べなくするということは威力業務妨害罪になる、刑法の罪になるわけであります。つまり、そういうような航空危険罪、威力業務妨害罪、それから航空法四十九条違反という三つのこの種事案に対する法令の罰則の系列あるいは体系があるわけでございまして、四十九条は、そういう関係におきまして、むしろ飛行機が飛ばないときにこそ四十九条違反で取り締まるという趣旨であるというように私たち考えておりますし、違法行為を取り締まるのはもともと当然のことであるというように考えております。公団もまたそういう考え方に立って直ちに告発をされた、こういう事柄の筋であると承知しておるわけでございます。
  93. 新村勝雄

    ○新村委員 いまのお答えは、何か逆なような気がするわけでありまして、最初の大鉄塔の場合には、これは直接滑走路に危険を与える、不安を与えるけれども、良識に期待して民事の手続をとったということでありますけれども、それはむしろ今回にそういう配慮がなされるべきではないかと思うのですね。最初の場合には、これはA滑走路が完成をすればすぐに邪魔になるわけでありますから、これは緊急性があると思いますけれども、今回は全く緊急性がないのですね。飛行機が飛ぶには全く支障がない。支障がないからといって、これは航空法の違反でありますから、放置をしていいということではございません。ございませんけれども、現在の妨害物に対しては、これは航空法の四十九条によって「何人も、公共の用に供する飛行場について第四十条の告示があつた後においては、その告示で示された進入表面、転移表面又は水平表面の上に出る高さの建造物、植物その他の物件を設置し、植栽し、又は留置してはならない。」とありますけれども、これは明らかにおっしゃるように違法であることは違法である。であるけれども、違法だからといって直ちにこれを先刻行われたような手続をとっていいかというと、これはそうではない。たとえば東京の中にだってたくさんの違法建築があると思います。この辺にはないかもしれませんけれども、向こうの方に行ったらありますよ。この建築物は違法だからといって警察権力が直ちにその除却を強行したとしたらどうでしょうか。そういう警察権力の行使の方法があるかどうか。それは違法であれば、違法に対して告発がされ、裁判をされ、裁判の結果に基づいてしかるべき措置がとられるというのが法治国家の手続ではないかと思います。仮に、それが緊急性があれば仮処分というようなこともあるでしょうけれども、しかしとにかくどちらにしても、警察が直ちに違法の状況を除却をする、そういう形はいまの法体系の上では正当な手続ではないと思うのですけれども、その点を伺いたいと思います。
  94. 三井脩

    ○三井政府委員 岩山鉄塔、第一、第二鉄塔の場合は、犯罪が発生して、それからこれを撤去するまでに数年間を要しておるわけでございます。建てられてから撤去まで数年間を要しておる。つまり犯罪というのはホットな間に措置をすれば刑事手続になじむわけでありますが、違法な状態を仮に数年間ほっておく、こういうときになりますと、直ちに刑事手続には必ずしもなじまない。そこで民事手続である仮処分というようなものがそこで意味を持ってくる、こういう関係にあるわけでございます。  今回の四十九条違反の横堀の場合につきまして申しますと、これはいまの岩山鉄塔の場合の教訓もこれあり、経験もあり、警告を十三回もしてもなお撤去しないということから言いまして、われわれは何回も、そうだまされないということでもあろうかと思いますけれども、告発もきちっと行われた、こういうことでありますので、あれがやがてそのうちに自主的に撤去するであろうと観測を持つにはいかにも甘過ぎる、こういうことであります。  それからまた、飛行機が飛ばないのにあれを押収するのはいかぬと、こういうことでございますけれども、犯罪捜査手続として押収をしておるわけで、つまり犯罪を捜査しておる、取り締まっておるという観点でありますから、先ほどもちょっと触れましたけれども、飛行機が飛ばないときに四十九条というのは特に意味があるのだ、飛行機が飛ぶときになればもっとそれよりも程度の高い、重罪と言っていいかと思いますけれども、懲役刑もある航空危険罪あるいは威力業務妨害罪、こういうような罰条によって処理されるべきものでありまして、いまおっしゃるようなことでいきますと、四十九条は要らないということにもなりかねないわけでありまして、四十九条があるというのは、こういう事態の場合に取り締まるというところに四十九条の趣旨があるとも私たち考えるわけでございます。したがいまして、初めに申しました岩山鉄塔の場合と今度の場合との相違というのは、それが建設された事情、時期が違う。それからまた、岩山鉄塔での自主的撤去を期待をした、そちらの方にかけて、それで後でそれが失敗して、大騒動して仮処分やってというような轍を踏みたくないという前車の経験、教訓というものをも踏まえまして、今回の場合は刑事手続によって適確に措置をした。そのことは私たちだけがそう言っておるわけではありませんで、裁判所もそれを認め、またあえて裁判官の判断を求めて、裁判官の発する令状によって措置をしたという点については、御説のような批判もあり得るということをも予想いたしましたので、そういう点についても第三者的な立場である裁判官の判断も得てやったということでありまして、もし警察のやっていることが不適当であり、あるいは適法でないということであれば、裁判官も令状は大体出さないでしょうし、それからまたちょっと触れました準抗告を棄却するときにも、むしろ準抗告を入れる、あるいは棄却は棄却であってもいいわけですけれども、その理由の中で説明しておるように、あの措置でよかったのだ、こういうような裁判所としての判断も出てこないはずでありまして、私たちは裁判官、裁判所の判断によって措置したわけでありませんで、私たちの捜査機関としての法を執行する立場から判断をした。それが世間をも御納得いただくためにさらに裁判所、裁判官の判断もいただこう、こういう手続を念のためにとって二重に念を入れた。しかも、それが適法のものである、こういうふうに支持されておるわけでございまして、法的な観点から言えば、私たちは問題はなかったものというように考えておるわけでございます。
  95. 新村勝雄

    ○新村委員 ただいまのお話では、岩山の教訓もこれありということでありますけれども、そうなってまいりますと、純粋の法の運用というよりは、むしろ反対の運動を制圧する戦略的な判断からおやりになったということでございますか。その点を伺いたいと思います。  それから、裁判所のおやりになったことについてかれこれは申しませんけれども、これは捜査、差し押さえの令状でありますね。ですから、その令状で何でもやれるということではないわけであります。それで、それに基づいて捜査あるいは差し押さえということであれば、これは納得がいくわけでありますけれども、そうではなくて、それを越えて強権力をもって撤去してしまったということになりますと、これはもう警察御当局が裁判所の判断に基づいてやるべきことまでもずっとやってしまった、事実上の問題として。そういうことでありまして、これはある意味からすれば、裁判の領域あるいは裁判の結果に基づいてやるべきことまですでにもう事実の上ではやってしまったということになるわけであります。そういう点について、これは三権分立の観点からも疑問があるわけであります。  それから四十九条と百四十八条の二ですか、の関係でありますが、飛べば重罪だということでありますが、これは法の体系でありますから、四十九条では明らかに平面の上に出ているものを置いてはいけない、こういう禁止規定でありまして、この禁止規定については罰金五万円であります。ですから、罰金五万円の事態に対してああいうことが行われた、このことについてもわれわれ素人は大変な疑問を持つわけであります。罰金五万円という罪種は幾つぐらいありますか。罰金五万円というものはどういうものであるかということのほかの事例を、こういうものが罰金五万円だということを幾つかお挙げいただきたいのですが、この二点について伺います。
  96. 三井脩

    ○三井政府委員 第一点の岩山の場合の教訓をも踏まえたと申し上げた点でございますが、つまり違法な物件、航空法四十九条に違反する物件を設置したが、警告によって自主的に撤去します。現実に撤去いたしました。こういう実績があればまた今回の場合も撤去してくれるであろうというふうに期待をかけて、できるだけそれでいこうというのが私たち考え方でございますけれども、前回はそうはいかなかった。したがって、今回もそうはいくまいというように考えたわけであります。端的に言えばそうでありますが、それをはっきりさせるために、もう十三回も公団も警察も繰り返しやったが撤去しないということでございますので、これは放置できない、こういうことでございます。その点が第一と第二との違いということでございます。  それから司法権といいますか、裁判所との関係の問題でございますが、裁判所と本件の横堀の場合との関係は、二つの関係があるわけです。一つは事前、一つは事後でございまして、事前の関係は、先ほども触れましたが、あれを撤去するについては、捜査機関である警察の判断だけで撤去し押収できる、刑事訴訟法はそう規定しておるわけでございます。しかしながら、その警察のやった措置については、しばしば、準抗告その他のことで、反対勢力の側にも弁護士が大ぜいついておりますから、そういう角度で争われるであろう。そうすると、争われた場合に、いずれ警察の正しいことはわかっておりますから、正しいという結論はそのうちに出るわけでありますが、出るまでの間、反対派の声がでかくてそれが大いに書かれるというのも必ずしも好ましくない。こういうような点も考慮に入れまして、全然文句がないように、裁判官の令状を事前にもらった、その令状によって執行した。これで、これに文句を言うなら、法律がけしからぬと言っておるのと同じことでありまして、それは警察、捜査機関に向けられるべき非難でなくて、法律そのものに向けられるべき非難であろう、こういうふうに足元を固めた、防御を固めたわけでございます。  二番目は、行ってから、あれを押収した後の裁判所のかかわり方でありまして、なるほど御指摘のように、最初令状をもらったのは、差し押さえし押収していいという令状でございまして、現状で保管せいとか、よそへ持っていって警察の倉庫へ入れておけとかということは令状には書かないことになっております。したがいまして、それをどちらの方法をとるかは捜査機関の判断、こういうことになりますので、裁判所の事前の判断には、求めても裁判所はそんなことは言いません、言わないたてまえになっておりますから。  そこで、済んでから後に、今度は反対派がそのことを問題にし、裁判所にいわば実質的に異議を申し立てたわけでありますけれども、裁判所は、先ほど申しましたような理由で、警察のやった措置は正しい、こういうふうに合議制の裁判所で決定を——最初の令状は単独裁判官ですけれども、後の方は合議制の裁判所が決定を下しておるわけでありまして、これまたその適法であることについては一点の疑問もなかろう、こういうふうに思うわけでございますので、司法権への行政権の介入といったような問題は起こり得ない、こういうふうに思うわけでございます。  なお、さらに念のために、罰金五万円というようなものは軽いから、あるいは取り締まらぬでもいいという御趣旨かと思いますけれども、刑の重い、軽いというのは裁判所が量刑のときに考えることでありまして、私たちとしてはそれは関係はない。ただ、刑が重い、軽いによりまして、捜査手続が違ってくるのはあります。緊急逮捕ができるとかできないとか、あるいはまた、警察官が警職法による強制権限を発動するときに、懲役三年以上の刑とそうでない場合とは扱いが違うとかというような法に決められた差はおのずからあるわけでございますけれども、それ以上に、罰金だからどう、懲役だからどうというようなことではなかろうというように考えておるわけでございます。
  97. 新村勝雄

    ○新村委員 まず、今回おやりになったことについて、これは各方面に深刻な疑問を投げかけておることは事実であります。  たとえば、刑法の専門家がこういうことを言っておるわけであります。   この戦略的捜査は現代社会で必要とする場合もあるが、自由主義体制を脅かす危険と弊害をも内包している。起訴して、裁判する前に、捜査機関が「裁判」をして独自に制裁を加えてしまうという特徴をもつからである。   捜査段階で、相手の立場からの批判を受けずに、政府が裁判機関を排して、独自の「裁判」をすることは、つぎの自由社会の基本的前提に反する。その前提とは、「政府の側が公開の場で刑罰を科す理申と必要を示し、それに対する被告人側からの十分な反撃・防御・挑戦を保障しつつも、政府の示した刑罰を科す理由と必要が通常人の目からみて十分に納得できるときにはじめて、人は有罪とされる、そういう原則がなければならない。  ところが、先般おやりになった処置はそれをはるかに越えて、すでに事実は、裁判の結果やらなければならないことまでやってしまった。たとえば犯罪容疑者をつかまえてきて、こいつはけしからぬからということで処罰まで警察がおやりになったということと同じではないかとわれわれは見るわけであります。そういう点で、これは重大な行き過ぎではないかということであります。  それから、取り払うからちょっと待ってくれということに対して、これはもう、いままでそうだから今度もやらないだろうということで待たない。全然待たない。少なくとも半日なりあるいは一日なり待つことによって、ああいう事態を回避できたかもしれない。一日、半日待つことによってほかに損害が起こるのなら別ですけれども、ほかに損害の起こる心配はないわけでありますから。そういう判断をなぜそこでおやりになったかということも、これは疑問であります。これを伺いたいと思います。
  98. 三井脩

    ○三井政府委員 まず前段に、刑法学者の意見ということでございますが、どんな時代にも少数意見というのがあるわけでございまして、そういう意見があるということも報道で承知をいたしましたけれども、私たちは法にのっとって仕事をし、そして、その法的な私たち考え方が正しいかどうかということを直接的に判断を下すのは裁判官でありますから、裁判官の判断を求めた結果もそれでよろしいと、こういうことであったわけでございまして、先ほど挙げられた国民の納得する刑罰を科さなければいかぬというのは、公判手続と捜査手続との混同があるのではないかというような気もしないわけではないわけでございまして、いずれにいたしましても、実務的には、私たち措置につきましては裁判所、裁判官と、こういうようなフィルターがかかった後において、なおかつ支持されておるという点を重ねて申し上げたいと思うわけでございます。  それから第二点の、自主的に撤去するからということについては、もう十年もああいう反対同盟の人たちとつき合っておりますので、その辺のことはよくわかっておりますが、ことに昨年の岩山鉄塔の経験も十分にいたしましたので、彼らの言っておるのは口先だけか本心であるかというのはある程度見破ることができるわけでありまして、私たちはその判断をとったということでございます。  また、法的手続の問題に触れますと、民事手続によるか刑事手続かというのは、いずれによってもいいわけでありまして、どちらがより適切かというのは、その事態によるのが適切である。繰り返して恐縮でございますけれども、岩山鉄塔の場合には、建てられたときには、まだ被害者である公団もこれに対する被害意識が薄く、そのうちには撤去してくれるであろう、だんだん建設が進んでいけば話し合いにも応じてくれるだろうというようなことで、そちらに被害者側が期待をかけておる、告発もしない。したがって、それを尊重いたしました。今回の場合は、われわれ自身も撤去するはずがないという心証を、いま言いましたように、かねてからの経験、それからまた、具体的な場合の十数回に及ぶ警告の中で確信を持ったわけでありますし、当事者である、被害者である公団はもっとその点は感じたと思いますが、告発を直ちにされた、こういうような事態を踏まえて刑事手続をとった、こういうことでございます。それがまた、われわれの判断、独自の判断ではありますけれども、同時にまた、裁判官、裁判所からも支持されておるという、この辺の重みは十分にお考えをいただきたい、評価していただきたいというように考えるわけでありまして、私たちとしてはできる限りの慎重な——裁判官の令状を取らぬでもいいのをあえて取るとか、慎重な手続を踏んだというところはぜひ御理解をいただきたいと思うわけでございます。
  99. 新村勝雄

    ○新村委員 どうもその点、理解はできませんけれども、時間がありませんので先に進みまして、さらにその一連の行動の中で、令状なしに農地に入ったという問題がございます。これについてはどういう責任をおとりになるか、また適法性があるのかないのか、その点を伺います。
  100. 三井脩

    ○三井政府委員 刑事訴訟法で令状を執行する場合あるいは令状なく一定の場合に捜索等ができる、検証もできると規定されていることは先ほども申し上げたわけでございますが、その場合には令状も何もなしに立ち入っていいというように刑事訴訟法上規定がされております。それからまた警職法六条におきましても、一定の場合に警察官がそういうことなく強制立ち入りができる、これは行政的な警察権限の行使としての立ち入りが法的に認められておるわけでありまして、私たちとしてはそれに基づいてやったわけでありますから、警察側に違法の責任はない、適法な警察活動であると考えておるわけでございます。
  101. 新村勝雄

    ○新村委員 先ほどから何回もありますけれども、やはりそのときの状況緊急性があるかどうか、あるいは緊急避難的な要素があるかどうかによってこれは決まると思うのですね。たとえばさっきの鉄塔の除去につきましても、もう今月末からそこを飛行機が飛ぶのだ、こういう状況であればこれはやむを得ないと思うのですけれども、いつ飛ぶかわからない。また、そこのB滑走路は買収さえもできてないわけです。そういうところにああいう行動をとることが適切かどうかという問題が第一にある。それからまた、今度にしても、このいわゆる第二要塞は移動するものではありませんから、これはもう一カ所に設置をされておる構築物でありますから、その周辺がどういう状況であるかはよくわかっておるわけです。それから、皆さん方がそこでどういうことをおやりになるかということも前もって作戦を立て、計画をお立てになるわけでありますから、これはわかっておるわけですね。それにもかかわらず、正規の手続もとらない、令状もとらないということは、やはり法治国家の警察としてどうなんでしょうかね、手落ちじゃないでしょうかね。緊急性の問題、それから計画性の問題、それらについて多くの疑問があるわけですね。それらについてお答え願いたいと思います。
  102. 三井脩

    ○三井政府委員 第一点の差し押さえをして現場に置いておけばいいではないかという点については、先ほども申し上げましたように、私たちは二通りの方法がある中で、持ち去ってわれわれの管理下に置くのが一番証拠保全上適切であるという判断をしたわけでございます。この点については、先ほど申し上げました裁判所の準抗告棄却決定の中におきましても、あの具体的事態のもとにおいては、現場に置いておくと差し押さえを知らない人あるいは差し押さえの事実をあえて無視しようとする人、そういう人がここに立ち入ったり、その他によって証拠価値を減殺してしまうということが容易に察せられる、うかがい知れる状況であるから警察措置は正しい、こう言っておるわけでありまして、私たち考え方が正しいということは裁判所によっても裏づけられておる、こういうことでございます。  それから第二の、令状執行のために立ち入る場合にさらに令状をもらえ、あるいは制止するために畑に立ち入る場合に裁判所の立ち入り許可令状をもらえということでございますが、そういう制度は法律上ございません。なお、捜索、差し押さえ令状そのものに、捜索、差し押さえしていいあるいは検証していいという令状は、そのこと自体に強制立ち入りを認めておる、こういう意味の令状でございますから、ある意味で令状をもらっておるのと同様に法的には評価していただいていいわけでございます。それとは別に、捜索をするためにどこかの家へ立ち入りたい、したがって立ち入り許可の令状を裁判所に下さいという制度は法制上ございませんので、ないという意味では、いま言ったように、令状そのものにそれが含まれておる、こういうことであろうというように考えるわけでございます。
  103. 新村勝雄

    ○新村委員 全く私の知りたいことに御答弁がないわけでありまして、大変残念であります。  最後に大臣にお伺いしたいのですが、こういう状況がありまして、その過程におきましてそれを撤去するからちょっと待ってくれというような申し出があったわけです。これは決して外部の勢力ではなくて、反対同盟の農民であります。農民の代表からそういう申し出があったのですけれども警察御当局は、いままでないんだからとても信用できない、どうせそんなことは信用できないということで、そういう予断を持ってこれを拒否されたということでありますけれども、そういうことの累積が今日の事態を招来したという面もあるわけです。でありますから、あの場合、一刻を争う問題ではありませんので、そういう申し出があったらそれを検討いただく、また、もう少し事態を余裕を持って見守る、そういう態度が欲しいのでありますけれども大臣のお考えをその点について伺いたいと思います。
  104. 三井脩

    ○三井政府委員 大臣にお答えをいただく前にちょっと事実関係を申し上げますが、ただいまのお話は、反対同盟と支援の極左暴力学生とが一体になってあそこへこもっておったわけでございます。それについて、反対同盟の幹部が極左暴力学生についても十分な統制力を持っておる、そういう前提であれば、反対同盟の幹部からの申し入れに対して一考を払う余地がありますけれども、そういうものでないということは各種の事例から私たちは十分に知っておるわけでございます。極左学生からそういう申し出があったわけではありません。極左学生から申し出があったから、じゃ聞くかというと、これはまた別問題でありますけれども、そういう事実を前提にお考えをいただきたいということでございます。
  105. 加藤武徳

    加藤国務大臣 御承知のように、第一鉄塔は昭和四十六年に構築されたものでございまして、第二鉄塔は昭和四十七年でございました。そこで、A滑走路南端アプローチの第一鉄塔並びに第二鉄塔を撤去するに当たりましても大変な年数を要しまして、この間ずいぶん警告もいたしますし、かつまた公団側としても、警察といたしましても、自発的な撤去を期待したのでありますけれども、結果といたしましては、昨年の五月にあのような処置をとらざるを得なかったのでございます。そしてまた今回の横堀鉄塔といわれますあの鉄塔に当たりましても、先ほど十三回の警察側の警告、かような表現を三井局長がいたしましたが、公団側自身も何回も繰り返して警告をいたしてきているものでございまして、あの状況下におきましては、その場で、ちょっと待ってくれ、自発的に撤去するから、かようなことを申しましても、それは単に警察活動を遅延せしめるためだけの口先のこととしか判断できなかった警察の見方は正しかった、私はかように思うのでございまして、警察があの段階でちゅうちょせず撤去いたしましたことは正しい警察活動だ、かように判断をしているところであります。
  106. 新村勝雄

    ○新村委員 その点については、緊急性がないということは前から重ねて申し上げておりますけれども、警備当局の中にも、六日の夜から七日にかけて徹宵作業が行われたわけでありますが、これは七日を待ってやるべきであるという意見もあったのにそれを強行した、そういう情報もあるくらいでありまして、あの場合にああいう形をとらなければいけないという客観的な要請というか必要性は全くなかったわけですね。それにもかかわらず、強行することによってああいう事態を引き起こした。それからまた、せっかくの申し出を拒否することによって、お互いの不信をますます増加する一つの要因もつくったのではないかというふうに考えられるわけであります。そういう点で、目前の事態を制圧すればそれでいいということではないわけであります。空港問題には将来があるわけであります。この将来の解決の展望も持ちながら目前の事態を処理する必要があると思うのですが、それらについてはどうでしょうか。
  107. 三井脩

    ○三井政府委員 警察部内に六日か七日にかけてちょっと待った方がいいんじゃないかという意見があったということは、一部の報道にそういうことがあったようでありますが、私も現地に確かめてみました。そういうことを言った覚えはないということでありまして、待とうという考え方は特にあったわけではございません。  それから、緊急性云々とおっしゃるわけでありますが、法的に緊急性が意味を持つのは仮処分のことなんですね。刑事手続と緊急性とは法的には関係がないということでございます。  それからなお、撤去をしたために反対勢力と警察との関係が一層悪くなったじゃないか、こういうような御心配の点でございますが、私たちはだれとも関係は仲よくしていきたい、こう思いますが、私たちの職責上、違法行為を取り締まる、治安を維持するということでございまして、反対勢力も、空港反対について合法的な反対は幾らでもやっていただいて結構でありまして、これは私たちは別にタッチする筋合いのものではないわけでございますが、これが違法になれば、違法な手段、方法に訴えれば、これは取り締まらざるを得ない。ただ反対の気持ちに理解を示す余り、その反対行動としてとられる行為が法に触れるものまでも警察はこれを放置せい、こういうことになりますと、警察はこの職責を果たしておらないことになりますし、暴力がまかり通るということにもなりかねないわけでありますので、違法行為を取り締まるについては、違法行為があれば即刻取り締まる、違法行為は直ちに取り締まるというのが原則でありまして、直ちに取り締まることが困難である場合、それが必ずしも適切でないという特段の事情がない限り、直ちに取り締まるというのは取り締まりの常道であるというように考えるわけでございます。
  108. 新村勝雄

    ○新村委員 時間も参りましたので、いままでの問題について了解はできませんので保留をいたしますけれども、私は決して違法状態を放置をしろ、あるいはまた取り締まりをしなくてもいいということを一言も申し上げていないわけであります。ただ、先般警察のおやりになったことは、現在の法体系に照らして明らかに逸脱をしている部分があるということについて議論をしたわけでありまして、違法状態を放置をしろというようなことを一言も言ったことはないのでありますので、これは念のために申し上げておきます。  なおまた、大臣におかれましては、ひとつ現地の実情等を十分御理解をいただいて、解決に努力をされますようにお願いを申し上げる次第であります。  なおまた、これはお断りしておきますが、文部省からおいでになっていると思いますけれども、時間がありませんので大変失礼をいたしましたが、別の機会にお願いをいたしますので御了解願いたいと思います。  以上で終わります。
  109. 木村武千代

    木村委員長 川合武君。
  110. 川合武

    ○川合委員 去年の十月に政府の主催で地方自治三十周年式典がございまして、私も列席させていただきました。総理大臣もその祝辞で、地方自治は民主政治の基礎をなすものでありというような一節がございましたけれども、何だか私は総理大臣の祝辞もそらぞらしく聞こえたようなそういう感じを持ってこれを聞いたわけでございます。三十年の歳月を経ましたけれども、むしろ昨今は中央統制が強まってきているのではないか、こういう感じを持ちます。地方自治確立のためには、国、地方団体が、それぞれの行政責任の分野を明らかにしてその権限を整理して、これに伴って財源の再分配を確立することだ、こう思いますが、これにつきましては無論大臣も御異存ございませんですね。  そこで、そういう観点からお伺いいたしたいのでございますが、まず事務配分でございますけれども、私は、住民生活密着した行政事務はなるべく身近な役所、でございますから、地方自治体によって行われるべきである、こういう原則をはっきりすべきである、また、その行政事務というのは、また別の見方からいたしましても、総合調整機能を発揮されるところ、すなわち地方自治体に担わせることを原則とすべきだ、こういうふうに思いますが、これは当然のことで御異存はないと思いますが、ちょっと念のために大臣の御所見を承りたいと思います。
  111. 加藤武徳

    加藤国務大臣 新しい地方自治制度がスタートいたしまして御承知のように三十一年目に入っておるのであります。昨年秋その式典がありましたことは、私もよく承知をいたしておるのでございます。何せ地方自治の確立は長い間の歴史と伝統が積み重ねられていかなければならぬと思うのでございまして、諸外国の例と比較をいたしますと、まだまだけみしておる年数はそう多くではないのでございますから、絶えざる努力を積み重ねることによりまして、地方自治の確立を図っていかなければならぬ、かように私は思っておるのでございます。  そして、その地方自治の本旨なるものは、団体自治と住民自治とあろうと思うのでございますけれども団体の立場に立ちます場合には、御指摘のようにその地方地方に住まっていらっしゃいます方々が身近な仕事地方団体でこれをやっていくんだ、こういう基本の考えでなければなりませんし、同時にまた財政的にも中央のみに頼るという考え方ではございませんで、地方みずからがその財源をつくり上げていく、かような努力も必要であると思うのでございますし、また住民の皆さま方も自治意識を高めることに終始練摩をしておいきになる必要がある、かような考え方を持っておるのでありまして、ただいまの川合委員の御指摘の点は私は全く同様に考えておるところでございます。
  112. 川合武

    ○川合委員 大臣の見識ある御答弁を了承いたしまして、そこで、事務配分でございますけれども、私は、外交だとか防衛あるいは幣制と申しますか、貨幣でございますね、それから司法とか警察とか郵政、貿易、それから全国的スケールの運輸、通信とか気象、そういうものは、これは国の仕事だと思います。ですけれども、その他の行政については、国は企画事務あるいは調整事務だけを行って、実際の実施事務は一切すべて地方自治体に任せるべきではないか、こういう考えでございますが、大臣のお考えを承りたいと思います。
  113. 加藤武徳

    加藤国務大臣 基本的には御指摘のとおりでございまして、地方自治法にはおのおの国がやるべき仕事はかようかようなものが中心だ、また、都道府県はこうである、市町村はこうである、かような規定がございますが、地方自治法第二条の第十項にはただいま川合委員が御指摘になりましたように、八つの項目を挙げておりまして、これだけに限るということではございませんけれども、やはりあそこに列挙されてありますような仕事は当然国の仕事であって、そしてその他の仕事はできるだけ地方に任せるのが自治の本旨であろう、かように私は思う次第であります。
  114. 川合武

    ○川合委員 広域にわたる道路だとか河川のごときも、広域だからといって国の仕事にすべきじゃなくて、地方自治体仕事として、そして関連する地方自治体同士の共同処理にまつべきだという考えを持つわけでございますが、いかがでございましょうか。
  115. 加藤武徳

    加藤国務大臣 申すまでもなく、地方団体は都道府県と市町村、かような二重の地方行政の形でございます。そこで、身近な事務はその地方団体がやるとは申せ、広域的なものにつきましては数カ市町村が一緒になりましたり、あるいは市町村と県が一緒になりましたり、あるいは数県が一緒になって消化し、こなしていくべきだ、かように思います。
  116. 川合武

    ○川合委員 そこでお伺いいたしますけれども、国会においても、私の承知しておりますのでも、第七十七国会において、これは当委員会の「地方税法等の一部を改正する法律案に対する附帯決議」でございますが、五十一年三月に「昭和五十二年度を目途として、国・地方を通ずる税源配分を再検討し、地方の自主財源を充実強化するよう努めること。」こういう附帯決議がなされておりますし、また昭和五十年三月の七十五国会でも同じような決議が行われておりますけれども政府はこの決議を受けていかに努力をされてきたか、その努力のほどを御披露いただきたいと思います。これは大臣から御答弁いただければありがたいと思いますが、税務局長でも結構でございます。
  117. 加藤武徳

    加藤国務大臣 遠くはシャウプ勧告以来、何回も何回も繰り返しまして国と地方事務の配分のことについての決議や意見が出されておりますし、また当委員会におかれましてもさような決議をなさっていらっしゃることはよく承知いたしておるのでございます。  そこで、私どもは、法律の制定、改廃等のあらゆる機会に、できるだけ地方仕事を分散いたすようにということで各省庁にさような意見を出して、また自治省みずからも努力をいたしておるのでございますけれども、都道府県、市町村の事務の配分の例といたしましては、たとえば公害、衛生関係につきましては、大気汚染や水質汚濁の防止に関する規制の実施及び条例による規制強化等につきましては都道府県、またごみ処理や下水道等につきましては市町村、かような区分けができております。また交通関係につきましても、消費者行政等につきましても、おのおの法律を制定いたします際に、できるだけ地方にその権限と仕事を任せるようにと心を配ってまいっておるところであります。
  118. 川合武

    ○川合委員 大臣のお話でございますけれども、二十五年でございますか、神戸委員会の勧告以後、事務再配分と国庫補助金制度等の改正に関する勧告等、これは繰り返し言われております。また当委員会においても先輩諸委員が基本的な財源の再配分、地方自治体の税源の充実をしばしば言っておりますけれども、しかし、率直に言って進んでいないような気がいたしますが、税務局長、ひとつそこらにつきましての所感を答えていただきたいと思います。
  119. 森岡敞

    森岡政府委員 ただいま御指摘のシャウプ勧告に基づきまして現行税制が制定されました以降の国と地方の税源配分の主要なものを申し上げますと、まず、昭和二十九年にたばこ消費税をつくりまして、ただこ専売納付金の一部相当額を地方に移譲を行っております。さらに、三十六年であったと思いますが、所得税の減税をいたしまして、それを県民税に振りかえるということで個人所得課税の移譲を行っております。さらに、これは電気ガス税の減税との見合いでございますが、たばこ消費税の税率を引き上げまして、専売納付金から地方たばこ消費税への移譲を三十年代の後半に数回にわたって行っております。その前に、三十年代の初めに、ガソリン税の相当部分を地方道路譲与税ということで、これは目的財源でございますが、地方に移譲いたしております。また、四十年代に入りまして、新たに自動車重量税をつくりました際等にも、その一部は地方道路財源に移譲する、こういう形で逐年国と地方の税源配分については努力を重ねてきておると言えると思います。ただ、何と申しましても全体としての税源配分のシェアは、いま国、地方の割合が二対一でございます。そのことは、やはり地方としてはなお税源が十分ではないということを示しておると言わざるを得ないと思います。  いま御指摘の五十年及び五十一年の附帯決議以降の措置でございますが、五十二年度の税制改正におきましては、定額課税の見直しあるいは法人住民税の均等割の引き上げというような形で地方税源を増強するという措置を講じ、また今年度は同じく住民税均等割及び都市計画税の制限税率の引き上げを行いまして、地方税源の充実を図りたいということを御提案しておるわけでございますが、現在の状況もとでは国、地方ともに非常に財源不足に悩んでおりますので、この状態のままで国から地方に税源を移譲せよと申しましても、これはなかなか困難なことでございます。今後一般的な租税負担の増加をお願いするという時期になりました節には、その新たな財政収入の相当部分は地方税源としてぜひ確保してまいりたい、その際に国と地方の税源配分を改めて見直すという措置に真剣に取り組んでまいりたい、かように思う次第でございます。
  120. 川合武

    ○川合委員 税務局長の答弁でございますが、どうも自治省ともあろうものが少しスケールが小さいというか、一生懸命やってはおられるけれども、私らが期待する本格的な事務再配分をやって、それに伴う税源の充実をやるというのじゃなくて、ちょこちょこちょこちょこやっておられるという感じを免れない。いま国も地方財政が大変なのだからというような答弁も出ましたけれども、私をして言わせれば、いまこの大変なとき、要するに国、地方を通じて財政が大変なとき、だからこそ財政構造を変えて、国、地方の事務配分もここで思い切って改革して、それに伴う財源と申しますか税財源の再配分をやる、国、地方を通じてむだを省く、そして仕事を能率化する、合理的な事務配分をやって、財源の再配分をやる、財政構造を基本的に立て直すにはむしろいいときじゃないか、チャンスじゃないかと思うのでございますが、その点どうでございましょうか。聡明なる税務局長の所感をお尋ねしたいと思います。
  121. 森岡敞

    森岡政府委員 確かに国と地方とが行政事務をそれぞれ分担し合っておるわけでございますが、現在の行政の仕組みの中で、それでは完全に国と地方がお互いに重複しないで能率的な行政を行っておるかと申しますと、やや個人的な感触を加えて申し上げるわけでございますが、かなりの重複があるし、また中央の地方に対する必要以上の関与なりコントロールというものもあるということは否定できないと私は思うのでございます。そういう点をかなり吟味をいたしまして、中央、地方を通じまして行政の能率化、簡素化を図る、地方に任せるものはできるだけ任せてしまうという形でやりますならば、行政機構、組織なり、あるいは運営についての合理化というのはかなりできるのではないか、そういう前提に立って税源の再配分を行うということは、確かに一つ課題であろうと私は思います。  しかし、何と申しましても、先ほど申し上げたわけでございますが、仮にそういうふうな措置をとりましても、現在の財源の状態は、国、地方を通じまして、いかに能率的な行政を行っても足りない。国民が望んでいます社会資本の整備とか福祉とかいうことを考えていきます場合には、足りないということが明らかな事実でございますから、やはりそこのところに目を覆ってまいるわけにはまいらぬと思うのでございます。私が先ほど申し上げましたのは、そういう意味合いで、一般的に公共部門と民間部門の資源配分をある程度変えていかなければならない、公共部門に寄せていかなければならないということは当然でございますから、そういう際に、いま申し上げたようなことも含めて検討して、事務配分なり税源配分を抜本的に考えるということが現実的ではないか、かように思っておる次第であります。
  122. 川合武

    ○川合委員 足りないとおっしゃるけれども、やってみてどれだけ足りないのか、どういう姿になるのかということは、これはお聞きしたい点なんですが、しかしきょうは時間もございませんし、またいずれの日かということにして、具体的に一つの例を申し上げさしていただきたい。  恐らく税務局長は、それはそうだが、全体の財源の不足の中では九牛の一毛だと言われるかもしれませんが、しかし一つの例をとりまして尋ねてみたいと思います。本当の事務再配分をやってみて、そしてしかもどれだけ足りないのだという議論は、またいずれの日かやりたいと思います。  知事会が、昨年に調べまして発表しておりますが、国庫補助事業に関する都道府県の出張事務がいかに多いかということを調べたのがございます。私はここに現物を持ってきておりませんが、御存じですね。これは相当のスペースのものですが、その数字の中から抜き出してみますると、たとえば、昭和五十年度の公営住宅建設事業に、県の職員が上京して出張している人員が二十八人、県の職員で県内に出張している人員が二百十五人、従事延べ日数千六十九日。それから、国土改良事業が、同じく五十年度で上京しているのが三十八人、県内出張しているのが二百六人、従事延べ日数は千九百七十二日ですね。工業用水道事業は、これは数字を省略しますが、延べ日数三千七百五十六日。これは一部を抜き取って私が申し上げているわけですが、申し上げるまでもなく、国庫補助金の場合に、申請書を出すとか、交付指令を受けるとか、あるいは事務事業の執行を報告して精算書を提出するとか、また本庁の方でも、来年度の補助金を増額する資料をつくるために地方自治体の方へ出張する、そういうことが繰り返されておりますね。これは補助金の現行制度のもとでは、非常に嘆かわしいことだが現実でございますね。補助金を渡したり受け取ったりする、そういうことに関連して諸掛かりといいますか雑費といいますか、私どもから言うと、言うまでもなく、補助金なんかやめてしまって、初めから地方団体にそっくりその分だけは渡しておけばいいじゃないか、こういう観点ですが、それはこっちにしばらくおいて、現実の補助金のやりとりの間にかかっておる諸経費というものは一体どのぐらいか、補助金の金額に対して何割ぐらいかかっておるかというようなことは、お調べになったことはございませんでしょうか。
  123. 山本悟

    山本(悟)政府委員 知事会の資料におきまして、いろいろと具体の問題といたしまして、補助金の関係におきまして事務費がかかっておるというような調査が発表されましたことは、私どもも存じているところでございますが、補助金に伴いまして具体にどれだけかかっておるかということについての調べは、知事会の調べがむしろ一番詳しいのかもしれません。具体に私どもとしても全部を積み上げてみたことはございませんが、ただ公共事業といったようなものにつきましては、各主管省庁の方におきまして、工事事業分量に対しまして一定の事務雑費の率を決めている、七%とか六%とか、そういったような段階をつけて決めているようでございます。ただ、ただいま先生の指摘のございましたような補助金に伴います各種の事務費というようなものは、この工事雑費の問題とまた違った意味を持っておるものでございまして、要するに、補助金制度に伴いまして事務手続が非常に繁雑である、こういう御趣旨のことになろうかと思います。  自治省といたしましては、常に補助金につきましては見直しをやってもらいたい、ことに効果の少なくなったもの、あるいは少額な零細な補助金、あるいは比較的似通ったようなものはメニュー化する、あるいは統合してもらいたい、こういうことを常に各省庁に対し要望をいたしておるところでございまして、大蔵省の方の調べによりましても、ある程度ずつは補助金の整理なりあるいは統合なりというようなことを次第にしてくれているというような数字はございますが、ただいま直接の御質問でございました補助金のために事務費が幾らかかっているか、そのものの調べは、分析的にはちょっとむずかしくて、現在まではいたしておりません。
  124. 川合武

    ○川合委員 そんなに古い論文じゃないのですが、細郷道一さんが書いた論文には、細郷さんがどういう根拠で書かれたかはつまびらかじゃありませんが、補助金の一割か二割は諸経費に食われているというようなことが書いてございました。私もこれは勘でございますが、なるほどな、そのぐらいかかっているのだろうなというような感じをもって読んだこともございます。  そこで、補助金の弊害というのは、国と地方団体の間が二重行政になっている、責任体制がはっきりしない、よく地方団体財政が放漫だと言われますけれども、しかし私をして言わせれば、地方団体に責任体制をはっきりさせないから、二重行政、三重行政だから放漫になるのであって、まず先決は、国と地方団体との間の責任の分野をはっきりすることだ、こう思うのですが、それを妨げているのがまさに補助金だ、こう思います。ですから、補助金制度については私は基本的に全廃すべきだと思いますが、冗費といいますか、むだな費用を節約するという観点にしぼって言っても、この補助金制度というものはやめるか、あるいは一気にやめられなければ、さっき財政局長が言ったように整理統合するか、そういう前進を図って、そしてさっき税務局長が財源の全体が足りない足りないと言ったけれども、二割とすれば一兆六千億ですか、八兆円と見て。もっとになりますか。でございますから、こういう冗費の節約を、やはり事務の再配分といいますか、財源の再配分をすべきじゃないか、こう思います。  そこで、いま国と地方自治体間でございますが、今度は県と市町村との間の事務分担の問題をお尋ねしたいと思います。  県と市町村との間の事務分担ももっと明確にしないと、私どもが諸先輩とともに口を酸っぱくして言っております国と地方の事務配分の検討も迫力のないものになってしまうと思います。国と地方自治体との間の事務配分と同時に、県と市町村との間の事務の分担も明らかにすべきだと思います。この場合はなるべく市町村に事務を任せるべきだと思うのです。たとえば、さっき大臣がちょっと何かおっしゃりかけたような気がいたしましたが、最近の行政需要公害の問題、あるいは交通安全の問題、それから消費者行政の問題、こういう問題について県と市町村との間の事務分担、機能分担についての自治省の基本的な考え方を伺いたいと思います。
  125. 近藤隆之

    ○近藤(隆)政府委員 県と市町村との間の事務配分の基本方針は、御承知のように地方自治法第二条に詳細に規定しておるわけでございますが、第二条の六項で、都道府県は「広域にわたるもの、統一的な処理を必要とするもの、市町村に関する連絡調整に関するもの及び一般の市町村が処理することが不適当であると認められる程度規模のものを処理する」として具体的に例示しておるわけでございます。こういった基本線に従いまして、先ほど御指摘のありました公害行政その他いろいろな行政につきまして法律等ができる場合におきましては、その法律の中におきまして都道府県、市町村の事務を明記するという形になっておるわけでございます。そこで、その法律の立案に当たりましては、関係各省庁との調整の中におきまして私どもこの自治法の定めておりますような基本方針に沿ってやっていきたいと思っておりますし、これまでもやってきたわけでございます。  ただ一つ、市町村は御承知のように指定都市から町村に至るまで非常にバラエティーに富んでおります。したがいまして、自治法の規定におきましても、まず市町村を第一義としながらも、その市町村が財政力、行政力の規模の点で不適当な場合には都道府県がそれをカバーするという仕組みになっておりますので、国と地方団体との関係とは若干異なった要素もそこにあろうかと思います。
  126. 川合武

    ○川合委員 いま行政局長言われましたけれども、何か公害とか交通安全とか消費者行政については、やはり県と市町村の仕事が現実にダブっているような気がするのですが、それはこれ以上はきょうは触れませんで、いまお話に自治法の二条六項でしたかの広域行政のところが出ましたですね、何か行政局長の答えに。たとえば広域水道だとか流域下水道とかのこういうものについて——それとは限りませんで、要するに広域行政について、自治省の指導でも、市町村間で共同処理でやっていくという場面がありますね。広域行政でもありますね。またそういう指導もしておりますね。とれと、いまの二条六項の、県が簡単に言うと広域行政をやるんだ、こういう関係はどういうことになるのですか。行政局長なんかのお考えでは、だんだん市町村に広域行政を、市町村間の共同処理を進めていって、それでできれば県に御厄介にならないでも市町村でやっていける、こういう気持ちですか。
  127. 近藤隆之

    ○近藤(隆)政府委員 住民の身近な事務というものは、できるだけ基礎的な地方公共団体である市町村が行うのが望ましいということでございます。したがいまして、たとえば広域市町村圏の事業に見られるように、市町村が共同で処理できるものは、まず第一義的に市町村が共同で処理する方が適当であろうと私ども思っております。  ただ、広域行政の中には市町村の段階でどうしても手に負えないというようなものも、たとえば流域下水道等について、ないわけではございません。そういったものについて県がやることはやぶさかでない、そのように理解しております。
  128. 川合武

    ○川合委員 行政局長のお答え、私非常に気に入りました。こういうことでいいのですね。広域行政といえども市町村が共同処理でやるのが原則であり、望ましいのであって、足りない部分、もしそれでできない部分は府県が乗り出していくのだということでいいわけですね。あるいはまた、場合によっては市町村間の共同処理の中へ県も一メンバーとして加わっていく、こういう考え方でいいのですね。非常に気に入りました。  それならば、自治法の二条の六項一号の、さっき行政局長の読み上げられたところですね、広域行政を県の看板にしているところ、あの条文は少し再検討してもらったらどうかと私は思いますですね。これもちょっと衣がえしてもらって、そして、極端に言えば要らないのじゃないでしょうか。要らないで、むしろ市町村の連絡調整を県はやるのだとか、あるいは足らざるところを補うのだというようなことに県の役割りは規定して、広域行政というようなことの看板は掲げないでもいいのじゃないか、かえって掲げない方がいいのじゃないか、むしろ市町村間の共同処理というものを推進していく、これが原則だということにすべきじゃないか、その意味において二条六項一号はもう古いのじゃないか、こう思いますが、行政局長、どうでしょうか。
  129. 近藤隆之

    ○近藤(隆)政府委員 自治法の二条の規定がつくられたその時代を反映しておりまして、現在の新しい行政事務等が加わってないというようなことがございますけれども、ただ、二条全体を通じての考え方というのは、やはり地方公共団体の中でも特に住民の身近な行政は基礎的地方団体であるところの市町村にやらせるという思想があの条文全体からはにじみ出ておるわけでございます。したがいまして、この事務をどこでやるかということを考える場合に、その事務の内容によってどこでやらせるか、市町村でやらせることが適当なものであるならば、市町村が最近は共同処理という手法にもなれてきておりますし、四十九年でしたか、自治法の一部事務組合の制度というものも相当整備されましたので、その方式でやっていけばいいと思います。  ただしかしながら、広域行政の中には市町村の段階ではやはり処理し得ないものが具体的にはいろいろあると思いますので、そういったものについて県が行うことも妨げないということでございます。したがって、こういう大法典でございますので、現在の段階でこの条文をどうこうということは私ども考えておりません。この自治法の二条を流れる趣旨によりまして、事態に十分対処できるというふうに考えております。
  130. 川合武

    ○川合委員 考えていませんなんて、そんなすげない返事をしないで、ひとつ検討ぐらいしてもらたいと思うのですけれどもね。大臣、お世辞じゃなくて、確かに、経歴から言っても識見から言っても、これはもう非常に願ってもない自治大臣を得たわけでございますから、当初から申し上げます国と地方自治体との根本的な問題、あるいは県と市町村との事務配分の問題につきましても、ひとつここで目の覚めるような前進をやっていただきたいとお願いを申し上げます。これはお願いでございます。  それで今度は首都移転、首都移転というのは東京のような首都でございますが、この遷都と申しますか分都と申しますか、それを移す問題について伺いたいと思います。  人口とかあるいは機能が東京に集中し過ぎているというようなことで、その弊害はもう随所に言われているわけでございますので、この点についての論議は省略して、大変な事態になっている、こういう前提のもとに進めさせていただきますが、従来政府はこの首都移転の問題についてどういう取り組み方をされてきたか、どういう検討をなされてきたか。ごく簡単で結構でございますが、いままでどういう取り組み方をされてきたか、どなたからでも結構ですが、ひとつお答えいただきたいと思います。
  131. 加藤武徳

    加藤国務大臣 御承知のように、首都東京に中枢管理機能が大量に集積をする結果を招きまして、そのことが過密の現象を生じ、いろいろの弊害を生んでいることは御承知のとおりでございます。そこで、東京という首都を遷都したらどうであるか、また分都の考え方はないか、政治と経済を分離する方法はないか、かような議論が政府内部でもございますし、かつまた、有識者の方でいろいろ論議をされておりますことは御承知のとおりでございます。  今日まで政府内部におきましても、その論議は若干はございましても、これが具体的な形において表に出るようなことは比較的少なく、ただ筑波大学のように学校機関の一部の分散はなされたものの、分都とかあるいは遷都、かような大問題に取り組む姿勢はなかったのでありますけれども、昨年十一月に御承知のように三全総の閣議の決定がございました。そこで、三全総の中には、長期的展望に立ちまして二十一世紀に向かって進んでいく日本といたしましては、きわめて重要な課題として都市機能の分散もしくはそういう考え方を基本にした重要な課題を控えていることになった。そこで、そのためには二つの方式が考えられるので、その一つは、首都それ自体を遷都する、首都を移してしまう、かような遷都という方式と、いま一つは、機能を分散をしそして分都をつくる、かような考え方の二つの方式が考えられる、かような提案をいたしておるのでございまして、いま当面の問題ではないといたしましても、将来的構想を思いますときに、政府内部でもそういう論議を重ねていかなければならぬと思いますし、かつまた、国民のあるいは東京都民の意識の動きいかんによりまして真剣に取り組まなければならぬ段階が来るのではないであろうか、かような考え方を持っておる次第であります。
  132. 川合武

    ○川合委員 いまの大臣の御答弁、非常に明快な御答弁でございます。私は決して意地悪なことをお尋ねしているのではなくて、これは調べておいてくれと言っておいたのですけれども、私の言い方が早口で不十分だったものだからあれなんですが、大体要点は大臣のお話のとおりでございまして、私なりに調べたところでは、最近においては三全総の最後のあたり、それは確かにそれほど政府部内においてはっきりとした意思表示があったわけじゃございませんが、内部的な検討にしろあるいは閣議での発言にしろ、従来この問題を取り上げているのは国土庁だとか建設省なんですね。本当はそこを私はちょっと質問したかったわけなんです。  それで、これはその結論のいかんにかかわらず国土庁だとか建設省の問題だというところに私は不満があるのでして、遷都にしろ分都にしろ、物理的に首都をどこに移そうか、そういう観点からだけ物を考えるべきではないんじゃないか。人間らしい生き方のできる町づくりをするのが自治省の志すところであるなら、この首都移転の問題もむしろ自治省の仕事じゃないか、こう思うのです。ただ物理的に、少なくとも国土庁だとか建設省だけが取り扱っているべき問題じゃないんじゃないか、こう思います。  何か早稲田大学の「二十一世紀の日本」という研究会が言っている言葉の中に、この内容は私全部賛成じゃないのですけれども、いわゆる東北、北上遷都論なんですが、ですからそれはどうか吟味を要するなと思いますが、提言の前に二十一世紀の行政機構改革として、地方分権化の想定を行っているわけなんです。私はこういう考え方、地方分権の観点から首都の移転の問題を考えるべきじゃないか、こう思います。  首都の機能を分散といいますか、中央官庁を分けても、少なくとも物によってはそんなに不便じゃないと言えるのじゃないか。大臣も御存じでございますが、統計局なんというのは、これは戦争で疎開したままだったかもしれませんが、しばらくの間小田原にありましたですね。それで、そんなに不便じゃなかったような気がします。局長さんがときどき出てくるくらいで、一般の人にはそんなに不便じゃなかったような気がします。ですから、首都機能の分散、分割するということは可能であるし、またやるべきじゃないか、私、こう思います。  いま立川の基地、これはいろいろな用途は考えら航ているのでしょうけれども、立川の基地あるいは竜ケ崎ですか、あるいは水戸の射爆場だとか、横浜でも港北のニュータウンだとか千葉のニュータウンなんかあるわけですけれども、こういう政府といいますか国の息のかかったととろを早目に手を打って、そして首都機能の分散を検討すべきじゃないか、こう思うのです。これは自治省がひとつ大いにむきになってやっていただきたいと思うのです。検討していただきたいと思います。  私、外国のことを言うのはきざでございますけれども、オランダは首都というものが何かはっきりしないのだそうですね。私はアムステルダムが首都かと思っていたら、そうしたら必ずしもそうじゃないんだそうですね。俗にアムステルダムに地図なんかでは二重丸だか三重丸がついているけれども、御承知のようにハーグに政府機関、役所がありますね。それで、女王の即位するところはアムステルダムで、経済はアムステルダムが中心なんでしょう。何か聞いた話なんですけれども、首都を決めようとしたときに、国会でやったのだけれども、首都をアムステルダムにしようという賛成論者の方がむろん多かったのだけれども、全会一致じゃなかった。全会一致じゃないんなら、考えてみれば首都なんか決めたって決めなくたってどっちでもいいじゃないかということになって、そのまま決まってないというような話も聞いたのですけれども、私はこのオランダの考え方はいきな考えだと思います。  政府の機構でも、何も一かたまりのところにある必要もないので、それぞれやはり分散していくことが必要じゃないか。これはくどくなりますけれども、決して国土庁的な——国土庁の悪口を言うわけじゃありませんが、国土庁的なあるいは建設省的な物理的な考え方じゃなくて、いままでの遷都だって藤原京に移ったときでも大宝律令ですか、あれができてそれと一緒に移っているわけですね。だから私は、首都移転の問題はやはり哲学とか思想が伴うものだと思っているのです。そういう問題だろうと思っているのです。ただ物理的な問題だけじゃないと思うのです。ですから、地方分権の考え方の上に立って、行政機構の改革とあわせてこの首都移転の問題をひとつ考えていただきたいと思います。これは要望をいたしておきます。  時間が参りましたので、最後に消防庁といいますか、防災のことをお伺いして終わりたいと思います。  消防庁長官にお伺いしますけれども、災害対策基本法ができてからしばらくたっているわけですけれども、災害対策基本法では都道府県防災会議、県の防災会議において知事さんと指定地方行政機関とがいわば格が同等でございますね。国の出先機関は整理すべきだというようなことを一般的に——防災会議じゃなくて一般的に国の出先機関は整理すべきだというようなととも言われているときでもあり、ことに災害のようなときなんですから、この防災会議において知事さんが国の指定地方行政機関、国の出先機関に対して調整権限ぐらいは持てるようにすべきじゃないか、改正すべきじゃないかと思うのです。どうでしょうか。
  133. 林忠雄

    ○林政府委員 御指摘のように、ある地域で災害というものが起こりました場合に、政令二途に出るというようなことでは混乱を増すばかりでございますし、実際にはそこの府県で府県知事さんが中枢になってといいますか、あらゆる調整権限——権限という法律上はっきりしたものかどうかは存じませんけれども、実態上として知事を中心にその応急対策その他が動くというのは当然だと思うのでございます。ただいまの御指摘のように、あるいは条文上は指定地方行政機関と同等だと見えるかもしれませんけれども、実際には防災会議の座長は知事が務めますし、現実に知事が果たしている機能その他から考えて調整というのは十分に可能であるし、かつ実際に行われている、こういうふうに認識しておるわけでございます。  そこで、実際のいろいろな経験に徴して法の改正というのは常に考えておくべきことでございますから、私の方も御指摘に応じましてそのところは十分検討してまいりたいと思いますが、現在の段階では実際それぞれに地域に持っております県知事の立場の重みというものが十分にその間を調整し得る、そういう能力、機能を果たしているというふうに受け取っているわけでございます。
  134. 川合武

    ○川合委員 それでは、今度何か地震の予知に伴っての法律が出るのだそうですね。ですからその法律でも、大地震に関して予知があって、それで事前措置が行われるわけですか。その事前措置に関しては——これはいまの予定で災害対策基本法と別に法律ができるわけですね。この場合の都道府県段階は、これは地震でもありますから、この法律の場面は、ひとつどうでしょうか、知事に調整権、指示権を与えるようにすべく消防庁努力すべきじゃないでしょうか。このまま無言の圧力で知事がやっていけるからいいと、長官考えられるかどうか。
  135. 林忠雄

    ○林政府委員 現在、地震の予知の技術がある程度段階に達しておりますので、これを法制化して法律のルートに乗せようという作業は、いま御指摘がありましたように続けております。国土庁、私の方、気象庁あたりを中心にいたしましていま法の内容の作成中でございますが、この中におきましては、いまの災害対策基本法以上に、先生の御指摘になりました中心となるべき知事、それから市町村長というものに強い権限と申しますか、強い調整を行えるような機能を与えるべきだ、私、全く同感でございまして、そういう線で現在関係省庁の間の折衝を進めておる次第でございます。
  136. 川合武

    ○川合委員 わかりました。  もう時間が参りましたけれども、行管の方、わざわざ来ていただいたものですから、恐縮でございますが、ひとつはしょって質問をいたします。  私はすべての行政機構が改革されるべきだ、とう思いますけれども、ことに防災行政は一元化すべきだ、こう思います。災害復旧の方はしばらくこっちへ置きましても、応急対策、それから応急対策に対する、国の役所が地方自治体にいろいろ助言したりする場合の準備ですね、応急対策の準備、こういう段階、要するに応急対策、この問題についてはやはり防災行政を一元化した方がいい、一元化すべきだと思うのですが、行管の考えを承りたいと思います。
  137. 關言行

    ○關説明員 応急対策と申しましても、すでに御承知のように非常にたくさんの省庁の分担しておる分野にわたるわけでございます。その実際に災害が発生いたしました地域なりにおいて関係機関十分協力をして万全を尽くすということは、当然のことだと思いますけれども、それでは中央の機構を一本化すべきかという点につきましては、何分にも異常事態における対策をどうするかという問題でございまして、それのためだけに直接その仕事を分担する省庁を設けるというのはいかがかと思います。そういう直接の事務を分掌するような役所の形ではなくてもう少し調整機能を果たす役所という置き方も考えられるわけでございますけれども、現在御承知のように中央防災会議が置かれまして、その辺の調整が、昔に比べますと相当進んでおりますし、それを所管いたしますのも、かっては総理府でございましたけれども、現在では国土庁という一つの調整機関がその所掌事務の一部としてやっておりまして、それで事足りておるのではないかと思います。ただ応急対策の実際のやり方のところでの運営の改善というようなことは、やはり常々心がけるべき問題ではなかろうかと思っております。
  138. 川合武

    ○川合委員 二つあると思うのですね。一つは一元化という問題、たとえば災害応急対策に関するいろんな法律がダブっているのがあるわけですね。これは歴史的ないきさつもございますけれども、たとえば露骨に言えば水防法だとか災害救助法——災害救助法は費用、財政の項がありますけれども、それと活動法規の方は災対法とどこが条文が違うのか、一字一句見たって字句が違いませんね。こういう法律的なダブリがありますね。やはりそれは一元化するという方向でいかないとおかしいのじゃないですか。役所が違うから、同じことを、いわば活動している場面は同じ場面で、それを災害救助的な活動だと見たり、水防的な活動と見たり、災対法的な活動と見るのは、行為は一つなんだから、これはおかしいのじゃないかと私は思いますね。  それからもう一つの問題で、役所間の調整をやっている、こう言われますけれども、国土庁はきょう来ておられないので、行管の方にそう言うのも何かちょっと筋違いかもしれないけれども、あなたが言われたから言うのじゃないけれども、国土庁へどうしてあれを移してしまったのですか、防災会議の事務局。これはお答えにならなくても結構ですが、災害の調整の一番必要なところは、災害復旧なども調整は必要だけれども、これは後に日をかけてやることなのであって、まず最も調整が必要なのは応急対策であって、そして人命を守るという点だろうと私は思うのです。だから、国土庁というのは総合調整をやる役所としては私はなじまないと思うのです。しかし、それはむしろ国土庁にお聞きすることかもしれませんが……。それで、別の新しい防災庁のような役所をつくるということは、確かにいまどき考えものですが、ここに消防庁長官おられますけれども消防庁あたりを居抜きのまま防災庁に変えてもいいのではないか、私はこう思います。確かに、いま防災の法律を各省皆持っています。そして、管理者としてそれぞれ防災の意識を強く持つことはもちろん必要です。けれども、一本であるべきものが縦割り行政で複雑多岐になっていることも事実ですね。そういうものを調整するというか、一元化していく役所としては——考えてみれば、たとえばさっき言った災害救助法でも、民生の安定という役所の使命からくる限定があります。民生の安定からやる災害救助法です。それで、どの災害にも何らの制限なく、組織法上といいますか、設置法の上で対処しなければならないという任務を持っているのは消防庁、消防組織法ですね。だから、消防庁がもっとがんばってもらって、そしてそれに防災行政の調整をする役割りを担わせていくべきじゃないか、こう思うのです。  自治大臣、これで最後にしますが、いまのところをもっと私はやりたいのですけれども、時間があれでございましたのではしょってしまっておわかりにくかったと思います。一人でしゃべってしまったのですが、結局、災害対策を担っておるのは、そして苦心しておるのは現場の自治体だとぼくは思うのです。中央官庁は指導したり助言しなければならぬ。しかし、現場で本当に千変万化ともいうべき災害に対処し苦心しているのは地方自治体だと思うのです。そしてまた、災害というのは総合行政だと思うのです。ですから、防災というのは自治省の最もなじむ仕事ではないかと思うのです。災害対策、防災に対しての大臣の熱情ある御答弁を伺って終わりたいと思いますが、よろしくお願いいたします。
  139. 加藤武徳

    加藤国務大臣 川合委員がおっしゃいましたように、都道府県や市町村は災害がありますれば直ちに立ち向かって取り組まなければならない立場でございまして、そして現在防災関係を所掌しておりますのが国土庁であるのはおかしいではないか、かような議論でございます。が、しかし、国土庁が設置されて間もないことでございまして、いまにわかに権限を移すというようなことは困難かもしれませんけれども、防災庁をつくれ、かような御主張には私は基本的には賛成でございますから、できる限りの努力をしてまいりたい、かように考える次第であります。
  140. 川合武

    ○川合委員 終わります。      ————◇—————
  141. 木村武千代

    木村委員長 この際、昭和五十三年度地方財政計画について説明を聴取いたします。加藤自治大臣
  142. 加藤武徳

    加藤国務大臣 昭和五十三年度地方財政計画の概要について御説明申し上げます。  昭和五十三年度地方財政は、昭和五十二年度に引き続き厳しい状況にありますが、国と同一の基調により歳入面におきましては、地方税及び受益者負担の適正化等による増収措置を講ずるほか、昭和五十二年度に引き続き予想される財源不足に対しては、これを完全に補てんする等地方財源の確保を図るものとし、一方歳出面におきましては、一般行政経費の節減合理化に努めるとともに生活関連社会資本の整備と景気の着実な回復にするため、投資的経費の充実を図る等、財源の重点的配分と節度ある財政運営を行うことを基本といたしております。  昭和五十三年度地方財政計画は、このような考え方を基本として策定いたしておりますが、以下、その策定方針及び特徴について申し上げます。  まず、第一に、現下の厳しい地方財政状況にかんがみ、法人住民税均等割の税率及び都市計画税の制限税率の引き上げ、非課税等の特別措置の整理合理化等地方税源の充実強化と地方税負担の適正化に努める一方、料理飲食等消費税の基礎控除の引き上げ、ガス税の免税点の引き上げ等を行うとともに、特別土地保有税の合理化のための措置を講ずることといたしております。  第二に、最近の地方財源の不足等に対処し、地方財政運営に支障が生ずることのないようにするため  (一) 昭和五十三年度以降、当分の間、毎年度の交付税及び譲与税配付金特別会計における借入金については、当該年度以前の借入金償還金のうち地方負担とされた額を控除した額の二分の一に相当する額を国の負担とする旨を法定いたしますとともに、昭和五十年度及び昭和五十一年度における同特別会計の借入金につきましても、毎年度償還額の二分の一に相当する額を国が負担することといたしましたほか   (二) 昭和五十三年度地方財源不足見込み額三兆五百億円につきましては、地方財政の重要性にかんがみ、これを完全に補てんすることといたし、千五百億円の臨時地方特例交付金を交付税及び譲与税配付金特別会計へ繰り入れるとともに、同会計において資金運用部資金から一兆五千五百億円の借り入れを行うことによって、あわせて一兆七千億円の地方交付税の増額を図ったほか、一兆三千五百億円の建設地方債増発措置を講ずることといた   しております。  (三) また、地方債資金対策として政府資金の大幅増額を図るとともに、公営企業金融公庫の融資対象を拡大することにより同公庫の機能の拡充を図ることといたしております。  第三に、最近の経済情勢にかんがみ、景気の着実な回復を図ることに配慮いたしながら、地域住民の福祉の充実、住みよい生活環境の整備及び住民生活の安全の確保等を図るための諸施策を実施することといたしております。このため、公共事業及び地方単独事業を大幅に増額するとともに、社会福祉施策、教育振興対策等の一層の充実を図ることとし、また、人口急増地域及び過疎地域に対する所要の財政措置を講ずることといたしております。  第四に、地方財政運営の合理化を図るとともに、国庫補助負担基準の改善等財政秩序の確立を図り、あわせて年度途中における事情の変化に弾力的に対応するよう配慮するほか、地方財政計画を実体に即して策定するため、その算定内容について所要の是正措置を講ずることといたしております。  以上の方針のもと昭和五十三年度地方財政計画策定いたしました結果、歳入歳出規模は、三十四兆三千三百九十六億円となり、前年度に対し五兆五千三十一億円、一九・一%の増加となっております。  以上が昭和五十三年度地方財政計画の概要でございます。
  143. 木村武千代

    木村委員長 次に、補足説明を聴取いたします。山本財政局長。
  144. 山本悟

    山本(悟)政府委員 昭和五十三年度地方財政計画の概要につきましてはただいま自治大臣から御説明いたしましたとおりでありますが、なお、若干の点につきまして補足して御説明いたします。  明年度地方財政計画規模は、三十四兆三千三百九十六億円で、前年度に比較いたしまして五兆五千三十一億円、一九・一%の増加となっております。  次に歳入について御説明いたします。  まず、地方税の収入見込み額でありますが、道府県税五兆三千七百九十三億円、市町村税六兆二千六十二億円、合わせて十一兆五千八百五十五億円でございます。  前年度に比べて道府県税は三千四百九億円、六・八%の増加、市町村税は七千五百二十九億円、一三・八%の増加、合わせて一兆九百三十八億円、一〇・四%の増加となっております。  なお、地方税につきましては、料理飲食等消費税の基礎控除の引き上げ、ガス税の免税点の引き上げ等により百二億円の減税を行う一方、法人住民税均等割の税率及び都市計画税の制限税率の引き上げ等により六百四十七億円の増収を見込むことといたしております。  地方譲与税の収入見込み額は、三千七百七億円となっております。  次に地方交付税でありますが、国税三税の三二%に相当する額に昭和五十一年度分の精算額を控除した額五兆三千四百九十八億円に臨時地方特例交付金二千二百五十一億円及び資金運用部からの借り入れ一兆五千五百億円を加算、さらに五十年度借入金償還金八百五十億円等を控除いたしまして、総額七兆四百億円を確保いたしております。  国庫支出金につきましては、総額八兆八千百三十七億円で、前年度に対し一兆三千百七十九億円、一七・六%の増加となっております。これは、公共事業費補助負担金、社会福祉関係国庫補助負担金及び義務教育費国庫負担金の増などが主なものであります。  次に地方債でございますが、普通会計分の地方債発行予定額は、四兆百六億円でございまして、前年度に対しまして九千九百三十二億円、三二・九%の増加となっております。この中には、地方財源の不足に対処するための建設地方債一兆三千五百億円が含まれております。  地方債計画全体の規模は六兆二千百九十七億円で、前年度に対しまして一兆一千六百三十五億円、二三・〇%の増加となっております。  地方債計画の基本方針といたしましては、住民生活の安定を図りつつ、景気の着実な回復に資するため、生活環境施設等を中心とする社会資本の充実を積極的に推進するものとし、そのために必要な資金を確保するとともに、地方財源の不足に対処することといたしております。  次に使用料及び手数料等につきましては、最近の実績等を考慮して計上いたしておりますが、中でも雑収入中の貸付金の回収金につきましては、実態に即して所要の是正を行うことといたしております。  その結果、歳入構成におきましては、地方税が前年度の三六・四%に対し、二・七%減の三三・七%となり、これに地方交付税及び地方譲与税を加えた一般財源は前年度の五七・三%から五五・三%へと歳入構成比率が低下し、反面、地方債は前年度の一〇・五%が一一・七%と若干そのウエートを高めております。  次に歳出について御説明いたします。  まず、給与関係経費についてでありますが、総額は十兆六千八十六億円で、前年度に対しまして一兆八百四十二億円、一一・四%の増加となっております。これに関連いたしまして、職員数につきましては、教育、警察消防、社会福祉、清掃関係の職員を中心に約三万三千二百人の増員を図ると同時に、国家公務員の定員削減の方針に準じ、約五千八百人の定員合理化を行うこととしております。  なお、五十三年度におきましては、地方の実態を考慮し、職員数について二万五千人の規模是正を見込むことといたしております。  次に、一般行政経費につきましては、総額七兆五千三百六十五億円、前年度に対しまして一兆二千二百五十六億円、一九・四%の増加となっておりますが、このうち国庫補助負担金等を伴うものは三兆七千八百一億円で、前年度に対しまして四千七百五十三億円、一四・四%の増加となっており、この中には、生活扶助基準の引き上げ等を図っている生活保護費、児童福祉費、老人福祉費などが含まれております。  国庫補助負担金を伴わないものは三兆七千五百六十四億円で、前年度に対しまして七千五百三億円、二五・〇%の増加となっております。この中では、社会福祉関係経費を充実するほか、高等学校以下の私立学校に対する助成経費として一千五百三十八億円、年度内貸付金として八千八百四十九億円、災害等年度途中における追加財政需要等に対する財源留保として三千億円等を計上いたしております。  なお、内部管理的な一般行政経費は極力抑制するとともに、物件費等について経費の節減を行うことといたしております。  公債費は、総額二兆二千三百八十二億円で、前年度に対しまして、五千六十二億円、二九・二%の増加となっております。公債費伸びが高くなりましたのは、昭和五十年度発行の地方税減収補てん債の元金償還が始まったことなどによるものであります。  次に、維持補修費につきましては、補修単価の上昇等の事情を考慮するとともに、一般行政経費と同様、経費の節減を行うことといたしまして、前年度に対しまして三百三十億円の増額を見込み、四千七百十三億円を計上しております。  投資的経費につきましては、総額十二兆六千五百九十四億円であり、前年度に対しまして、二兆六千二百十億円、二六・一%の増加となっております。これは、立ちおくれている社会資本の整備の促進と景気の着実な回復を図るために投資的経費の充実を図った結果であります。直轄、公共、失業対策の各事業は国費とあわせて執行されるものでありますが、明年度におきましては、公共事業等を積極的に拡大することとした結果、二六三%の増加となっております。  一般事業費及び特別事業費のいわゆる地方単独事業費は、総額五兆六千四百七十六億円で、前年度に対しまして、一兆一千六百二十一億円、二五・九%の大幅増加となっております。地方単独事業につきましても、生活関連施設の整備充実を図るほか、本年度に引き続き地方債をもって措置する臨時地方道整備事業等を積極的に行うこととしております。  また、公営企業繰出金につきましては、地下鉄、上下水道、病院等国民生活に不可欠なサービスを供給している事業について総額六千二百五十六億円を計上いたしております。  その結果、歳出構成におきましては、給与関係経費は三〇・九%で、前年度に対し二・一%の減少となっておりますが、反面、投資的経費は前年度三四・八%から二・一%増加し、三六・九%となっております。  以上をもちまして、地方財政計画の補足説明を終わらせていただきます。
  145. 木村武千代

    木村委員長 以上で説明は終わりました。      ————◇—————
  146. 木村武千代

    木村委員長 次に、内閣提出に係る地方税法の一部を改正する法律案を議題とし、提案理由の説明を聴取いたします。加藤自治大臣。     —————————————  地方税法の一部を改正する法律案     〔本号末尾に掲載〕     —————————————
  147. 加藤武徳

    加藤国務大臣 ただいま議題となりました地方税法の一部を改正する法律案の提案理由とその要旨につきまして御説明申し上げます。  明年度地方税制につきましては、地方税負担の現状と地方財政の実情とにかんがみ、地方税負担の適正化及び地方税源の充実強化を図るため、法人の住民税均等割の税率及び都市計画税の制限税率の引き上げ並びに電気税の非課税等の特別措置の整理合理化を行うとともに、料理飲食等消費税の基礎控除額及びガス税の免税点を引き上げ、特別土地保有税の課税の合理化のための措置を講ずる等の必要があります。  以上が、この法律案を提案いたしました理由であります。  次に、この法律案の要旨につきまして御説明申し上げます。  その一は、道府県民税及び市町村民税についてであります。法人の道府県民税及び市町村民税の均等割のうち、資本の金額等が十億円を超える法人に係るものにつきまして、税率の区分を新たに設け、その税率の引き上げを図ることといたしております。  次に、個人の道府県民税及び市町村民税につきまして、肉用牛の売却による農業所得の免税措置等の特別措置について国税における取り扱いに準じてその適用期間を延長することといたしております。  また、円相場の高騰に伴う当面の緊急中小企業対策の一環として国税において繰り戻し還付の期間の特例が認められた個人または法人の純損失または欠損金につきまして、道府県民税及び市町村民税において繰越控除期間を延長することといたしております。  なお、この繰越控除期間の延長につきましては、事業税におきましても同様の措置を講ずることといたしております。  その二は、不動産取得税についてであります。海上災害防止センターがその業務の用に供する家屋に係る非課税措置を廃止する等の整理合理化を行う一方、日本住宅公団、宅地開発公団等が行う利便施設等の用に供するための土地の取得を非課税とする等の措置を講ずることといたしております。  その三は、料理飲食等消費税についてであります。負担の軽減を図る見地から、旅館における宿泊及びこれに伴う飲食に係る基礎控除の額を二千円に引き上げることといたしております。  その四は、自動車税及び軽自動車税についてであります。昭和五十一年度排出ガス規制適合車及び昭和五十三年度排出ガス規制適合車に係る税率の軽減措置をその適用期限の到来に伴って廃止する一方、電気自動車に係る税率の軽減措置の適用期間につきましては、これを昭和五十三年度まで延長することといたしております。  その五は、固定資産税及び都市計画税についてであります。  固定資産税につきましては、自動列車停止装置に係る課税標準の特例措置等の整理合理化を行う一方、窒素酸化物対策のための燃焼改善設備を非課税とする等の措置を講ずることといたしております。  次に、都市計画税につきましては、住宅環境の改善等都市施設の整備に充てる財源の充実を図るため、その制限税率を百分の〇・三に引き上げることといたしております。  その六は、電気税及びガス税についてであります。  ガス税につきましては、負担の軽減を図る見地から、免税点を六千円に引き上げることといたしております。  次に、電気税につきましては、純鉄等四品目に係る非課税措置を廃止する一方、繊維製品及び紙の製造用電気に係る軽減措置の適用期限を延長することといたしております。  その七は、特別土地保有税についてであります。課税の合理化を図るため、建物、構築物その他一定の施設で恒久的な利用に供するものとして定められた基準に適合するものの用に供する土地で、土地利用に関する計画に照らしその地域における計画的な土地利用に適合することについて、一定の手続を経て市町村長が認定したものにつきましては、納税義務を免除する等の措置を講ずることといたしております。  その八は、自動車取得税についてであります。地方道路財源の確保を図るため、自家用の自動車の取得に係る税率の特例措置等の適用期限につきまして、これを二年間延長することといたしております。  その九は、軽油引取税についてであります。自動車取得税の場合と同様の趣旨により、税率の特例措置の適用期限につきまして、これを二年間延長することといたしております。  その十は、事業所税についてであります。中小企業者が公害防止事業団から譲渡を受けた共同利用建物において行われる事業について、一定期間、事業に係る事業所税を非課税とする等の措置を講ずることといたしております。  その十一は、国民健康保険税についてであります。被保険者の所得水準の上昇等を勘案して、課税限度額を十九万円に引き上げることといたしております。  このほか、地方税制の合理化を図るための所要の規定の整備を行っております。  以上の改正により、昭和五十三年度におきましては、五百四十五億円、平年度におきましては、七百七十七億円の増収が見込まれることとなっております。  以上が、地方税法の一部を改正する法律案の提案理由及びその要旨であります。  なにとぞ慎重御審議の上、速やかに御可決あらんことをお願い申し上げます。
  148. 木村武千代

    木村委員長 以上で提案理由の説明は終わりました。  引き続き、本案について補足説明を聴取いたします。森岡税務局長。
  149. 森岡敞

    森岡政府委員 ただいま説明されました地方税法の一部を改正する法律案の主要な内容につきまして、お配りしております新旧対照表により補足して御説明申し上げます。  まず、総則の改正であります。  一ページの第十六条第一項の改正は、事務の簡素合理化を図る見地から、徴収猶予等の際に担保を徴収すべきか否かの基準となる金額を五万円から五十万円に引き上げようとするものであります。  次は、道府県民税の改正であります。  一ページの第五十二条の改正は、法人等の均等割のうち、資本の金額等が十億円を超え五十億円以下である法人及び資本の金額等が五十億円を超える法人について新たな税率区分を設け、その標準税率をそれぞれ十万円及び二十万円に引き上げようとするものであります。  次は、不動産取得税の改正であります。  四ページの第七十三条の二第十一項及び第十二項の改正は、土地区画整理事業等における仮換地等について、納税者の負担を合理的なものとするためみなし課税の規定を設けようとするものであります。  七ページの第七十三条の四第一項第八号の二の改正は、農業共済組合等が取得する損害認定の用に供する不動産について非課税としようとするものであります。  八ページの第七十三条の四第一項第九号から第九号の三までの改正は、日本住宅公団、宅地開発公団または地方住宅供給公社が利便施設等の用に供するために取得する土地を非課税としようとするものであります。  九ページの第七十三条の四第一項第二十九号の改正は、高圧ガス保安協会が取得する液化石油ガス消費者保安センター附属研究所の用に供する不動産について非課税としようとするものであります。  十ページの第七十三条の十四第六項及び第七十三条の二十七の二第一項の改正は、地域振興整備公団に公共事業の用に供されることが確実であると認められる不動産を譲渡した者が取得し、またはあらかじめ取得していた代替不動産について、課税標準の特例措置または税の減額措置を講じようとするものであります。  十二ページの第七十三条の二十七の六の改正は、農地保有合理化法人が農地保有合理化促進事業の実施により取得した土地について一定の土地改良事業が行われた場合における不動産取得税の納税義務の免除に係る期間をその取得の日から土地改良事業の完了の日後一年を経過する日までの間としようとするものであります。  次は、料理飲食等消費税の改正であります。  十四ページの第百十四条の三第一項の改正は、旅館における宿泊及びこれに伴う飲食に係る基礎控除額を二千円に引き上げようとするものであります。  次は、市町村民税の改正であります。  十四ページの第三百十二条の改正は、法人等の均等割のうち、資本の金額等が十億円を超え五十億円以下である法人及び資本の金額等が五十億円を超える法人について新たな税率区分を設け、事務所等の従業者数が百人を超えるものにつきましてはその標準税率をそれぞれ八十万円及び四十万円に、事務所等の従業者数が百人以下であるものにつきましては八万円に引き上げようとするものであります。  次は、固定資産税の改正であります。  十六ページの第三百四十三条第六項の改正は、住宅街区整備事業における仮換地等についてみなし課税の制度を設けようとするものであります。  十七ページの第三百四十八条第二項第二号の五及び第三十二号の改正は、一定の公共の用に供する飛行場の区域及びその周辺の区域における鉄軌道用トンネル並びに高圧ガス保安協会が液化石油ガス消費者保安センター附属研究所の用に供する一定の固定資産を非課税としようとするものであります。  二十一ページの第三百四十九条の三第七項の改正は、鉱工業技術研究組合法による承認を受けた機械及び装置に係る課税標準の特例措置を縮減しようとするものであります。  次は、電気税及びガス税の改正であります。  二十一ページの第四百八十九条第一項の改正は、純鉄、石油、ケトン及び無水マレイン酸に係る電気税の非課税措置を廃止しようとするものであります。  二十二ページの第四百九十条の二第二項の改正は、ガス税の免税点を六千円に引き上げようとするものであります。  次は、特別土地保有税の改正であります。  二十三ページの第五百八十六条第二項第五号の三、第二十号の二、第二十五号の二及び第二十七号の二の改正は、雇用促進事業団が設置し、運営する一定の福祉施設の用に供する土地、建築基準法により許可を受けた総合設計制度に係る建築物の敷地の用に供する土地、都市緑地保全法による緑地保全地区内の一定の土地及び日本国有鉄道の高架下貸付用地を非課税としようとするものであります。  二十七ページの第六百三条の二及び第六百三条の三の改正は、建物、構築物その他一定の施設で恒久的な利用に供するものとして定められた基準に適合するものの用に供する土地で、市町村に係る土地利用に関する計画に照らしその地域における計画的な土地利用に適合することについて、市町村長が特別土地保有税審議会の議を経て認定したものにつきましては、納税義務を免除することとしようとするものであります。  次は、事業所税の改正であります。  三十二ページの第七百一条の四十一第三項の改正は、従前の事業所用家屋の取り壊し等の日から二年以内に代替事業所用家屋の新増築が行われた場合における課税標準の特例措置について、二年以内という期間を、やむを得ない理由がある場合には指定都市等の長が定める相当の期間内にまで延長しようとするものであります。  次は、都市計画税の改正であります。  三十五ページの第七百二条の三の改正は、都市計画税の制限税率を百分の〇・三に引き上げようとするものであります。  次は、国民健康保険税の改正であります。  三十五ページの第七百三条の四第四項の改正は、課税限度額を十九万円に引き上げようとするものであります。  次は、附則の改正であります。  三十八ページの附則第四条第二項の改正は、円相場高騰関連中小企業対策臨時措置法の認定中小企業者に係る個人の道府県民税及び市町村民税について、昭和五十二年または昭和五十三年において生じた純損失のうち還付を受けた所得税の額の計算の基礎となった純損失についての繰越控除の期間を、三年から五年に延長しようとするものであります。  三十八ページの附則第六条の改正は、個人の道府県民税及び市町村民税について、肉用牛の売却による農業所得の免税措置の適用期間を昭和五十八年度まで延長しようとするものであります。  三十九ページの附則第八条第二項の改正は、円相場高騰関連中小企業対策臨時措置法の認定中小企業者に係る法人の道府県民税及び市町村民税について、昭和五十二年六月一日を含む事業年度開始の日から二年以内に終了する事業年度において生じた欠損金に係る法人税額の還付金についての繰越控除の期間を、五年から七年に延長しようとするものであります。  四十ページの附則第九条第三項の改正は、円相場高騰関連中小企業対策臨時措置法の認定中小企業者に係る事業税について、昭和五十二年度または昭和五十三年において生じた純損失のうち還付を受けた所得税の額の計算の基礎となった不動産所得及び事業所得に係る純損失についての繰越控除の期間を、三年から五年に延長しようとするものであります。  四十一ページの附則第十条第三項の改正は、海上災害防止センターがその業務の用に供する家屋に係る不動産取得税の非課税措置をその適用期限の到来に伴い廃止しようとするものであります。  四十一ページの附則第十一条第二項の改正は、農業委員会のあっせんに基づく一定の農地の交換分合により取得する土地に係る不動産取得税の課税標準の特例措置の適用期限を二年延長しようとするものであります。  四十二ページの附則第十一条第五項の改正は、日本専売公社の補助金を受けて農事組合法人等が取得する葉たばこの育苗等のための共同利用施設に係る不動産取得税の課税標準の特例措置に、新たにその適用期限を付そうとするものであります。  四十二ページの附則第十一条第七項の改正は、日本自動車ターミナル株式会社が直接その本来の事業の用に供する家屋に係る不動産取得税の課税標準の特例措置の適用期限を二年延長しようとするものであります。  四十三ページの附則第十一条第十項の改正は、都市計画に定められた路外駐車場の用に供する家屋に係る不動産取得税の課税標準の特例措置の適用期限を二年延長しようとするものであります。  四十三ページの附則第十一条第十一項の改正は、自動車航送船の係留に係る特定用途港湾施設の用に供する家屋に係る不動産取得税の課税標準の算定上控除する額を引き下げるとともに、その適用期限を二年延長しようとするものであります。  四十三ページの附則第十一条の三の改正は、農地保有合理化法人が水田買い入れ事業として農地を取得した場合における不動産取得税の納税義務の免除に係る期間をその取得の日から七年以内としようとするものであります。  四十四ページの附則第十二条の改正は、農地等に係る不動産取得税の徴収猶予の適用を受けた者が、農業者年金基金法の経営移譲年金の支給を受けるため、贈与を受けた農地等を推定相続人に使用させた場合について、徴収猶予の継続を認めようとするものであります。  四十五ページの附則第十二条の二の改正は、昭和五十一年度排出ガス規制適合車及び昭和五十三年度排出ガス規制適合車に係る自動車税の税率の軽減措置をその適用期限の到来に伴って廃止する一方、電気自動車に係る税率の軽減措置の適用期間を昭和五十三年度まで延長しようとするものであります。  四十五ページの附則第十四条第三号の改正は、窒素酸化物対策のための燃焼改善設備に係る固定資産税を非課税としようとするものであります。  四十六ページの附則第十五条第二項から第十五項までの改正は、固定資産税につきまして自動列車停止装置及びコンテナ埠頭の用に供する固定資産に係る課税標準の特例措置を廃止し、電子計算機に係る課税標準の特例措置を縮減するとともに、外国貿易用コンテナ、原油備蓄施設及びカーフェリー埠頭の用に供する家屋及び償却資産に係る課税標準の特例措置の適用期限をそれぞれ二年延長しようとするものであります。  四十六ページの附則第十五条第十六項の改正は、一定の地方路線に就航する航空機以外の国内航空機に係る固定資産税の課税標準の特例措置を縮減するとともに、その適用を昭和五十五年度までに新たに固定資産税が課されることとなるものに限ることとしようとするものであります。  五十一ページの附則第三十条の二の改正は、軽自動車税の税率の特例について、先ほど御説明いたしました自動車税に係る附則第十二条の二の改正と同趣旨の措置を講じようとするものであります。  五十一ページの附則第三十一条の改正は、繊維製品及び紙の製造の用に供する電気に対して課する電気税の軽減措置の適用期限を、三年延長しようとするものであります。  五十二ページの附則第三十二条第二項及び第四項の改正は、自家用の自動車の取得に対して課する自動車取得税の税率及び自動車の取得に係る免税点の特例措置の適用期限を二年延長しようとするものであります。  五十二ページの附則第三十二条の二の改正は、軽油引取税の税率の特例措置の適用期限を二年延長しようとするものであります。  五十二ページの附則第三十二条の三第一項の改正は、中小企業者が公害防止事業団から譲渡を受けた共同利用建物において行う事業について、法人の事業にあっては昭和五十七年四月一日以後に最初に終了する事業年度分まで、個人の事業にあっては昭和五十七年分までに限り、事業に係る事業所税を非課税としようとするものであります。  五十五ページの附則第三十五条の二第一項及び第三項の改正は、個人の市町村民税について、山林を現物出資した場合の山林所得に係る納期限の特例措置の適用期間を、昭和五十四年度まで延長しようとするものであります。  五十六ページの附則第三十五条の二の二第一項の改正は、個人の市町村民税について、農業生産法人に農地等を現物出資した場合の譲渡所得に係る納期限の特例措置の適用期間を昭和五十五年度まで延長しようとするものであります。  以上でございます。      ————◇—————
  150. 木村武千代

    木村委員長 次に、内閣提出に係る地方交付税法等の一部を改正する法律案を議題とし、提案理由の説明を聴取いたします。加藤自治大臣。     —————————————  地方交付税法等の一部を改正する法律案     〔本号末尾に掲載〕     —————————————
  151. 加藤武徳

    加藤国務大臣 ただいま議題となりました地方交付税法等の一部を改正する法律案の提案理由とその要旨について御説明申し上げます。  地方財政状況にかんがみ、地方交付税の総額の確保に資するため、当分の間、交付税及び譲与税配付金特別会計における借入金に係る借入純増加額の二分の一に相当する額を、後年度、臨時地方特例交付金として一般会計から交付税及び譲与税配付金特別会計に繰り入れることを法定するとともに、昭和五十三年度分の地方交付税の総額の特例を設けるほか、各種の制度改正等に伴って増加する地方公共団体財政需要に対処するため、地方交付税の単位費用等を改正する必要があります。また、建設事業の円滑な実施を図るために特に必要があるものとして許可された地方債に対し公営企業金融公庫の資金を融通することができることとし、あわせて地方公共団体の手数料についてその適正化を図る等の必要があります。  以上がこの法律案提出いたしました理由であります。  次に、この法律案内容につきまして御説明申し上げます。  第一は、地方交付税法の一部改正に関する事項であります。  まず、地方交付税の総額の確保に資するため、当分の間、交付税及び譲与税配付金特別会計における借入金に係る借入純増加額の二分の一に相当する額を、当該借入金をした年度後の年度において臨時地方特例交付金として一般会計から交付税及び譲与税配付金特別会計に繰り入れることとしております。  さらに、昭和五十三年度分の地方交付税の総額については、現行の法定額に、一般会計から交付税及び譲与税配付金特別会計に繰り入れる臨時地方特例交付金二千二百五十一億円及び同会計において借り入れる一兆五千五百億円を加算した額とするとともに、借入額一兆五千五百億円については、昭和五十九年度から昭和六十八年度までの各年度に分割して償還することとしております。  次に、昭和五十三年度の普通交付税の算定については、児童福祉、老人福祉対策等社会福祉施策の充実に要する経費の財源を措置するとともに、教職員定数の増加、教員給与の改善、教育施設の整備等教育水準向上に要する経費を増額し、また、市町村道、公園、下水道、清掃施設等の住民の生活に直結する公共施設の計画的な整備及び維持管理に要する経費の財源を措置するほか、過密対策、過疎対策、消防救急対策等に要する経費を充実することといたしております。さらに、昭和五十二年度において発行を許可された地方税減収補てん債及び財源対策債並びに昭和五十二年度の国の補正予算に伴い発行を許可された地方債の元利償還金を基準財政需要額に算入するとともに、特別とん譲与税に係る基準税額の算定につき、精算制度を導入することといたしております。  第二は、公営企業金融公庫法の一部改正に関する事項でございます。  地方財政の現状にかんがみ地方公共団体によって行われる建設事業の円滑な実施を図るために特に必要があるものとして許可された臨時地方道整備事業等に係る地方債に対し、公営企業金融公庫の資金を融通することができるよう所要の規定の整備を行うことといたしております。  第三は、地方財政法の一部改正に関する事項でございます。  公営競技を行う地方公共団体が公営企業金融公庫に納付する納付金を、今回公営企業金融公庫の融資対象に加えられた地方債の利子の軽減に資するための資金として充てることができるものといたしております。  第四は、風俗営業等取締法等の一部改正に関する事項でございます。  最近における経済情勢の変化等にかんがみ、風俗営業等取締法外十一法律に定める地方公共団体の手数料の額またはその上限について改定を行い、受益者負担の適正化を図ることといたしております。  以上が、地方交付税法等の一部を改正する法律案の提案理由及びその要旨でございます。  何とぞ慎重御審議の上、速やかに御可決あらんことをお願い申し上げる次第であります。
  152. 木村武千代

    木村委員長 以上で提案理由の説明は終わりました。  次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。     午後三時五十三分散会      ————◇—————