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1978-08-22 第84回国会 衆議院 大蔵委員会 第31号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和五十三年八月二十二日(火曜日)     午前十時三十分開議  出席委員    委員長 大村 襄治君    理事 小泉純一郎君 理事 野田  毅君    理事 保岡 興治君 理事 綿貫 民輔君    理事 佐藤 観樹君 理事 塚田 庄平君    理事 坂口  力君 理事 永末 英一君       愛知 和男君    池田 行彦君       大石 千八君    後藤田正晴君       佐野 嘉吉君    林  大幹君       本名  武君    村上 茂利君       森  美秀君    山中 貞則君       池端 清一君    大島  弘君       川口 大助君    沢田  広君       只松 祐治君    貝沼 次郎君       荒木  宏君    永原  稔君  出席国務大臣         大 蔵 大 臣 村山 達雄君  委員外出席者         経済企画庁調整         局審議官    廣江 運弘君         経済企画庁調整         局調整課長   赤羽 隆夫君         経済企画庁物価         局長      藤井 直樹君         法務省刑事局参         事官      飛田 清弘君         大蔵政務次官  稲村 利幸君         大蔵事務次官  大倉 真隆君         大蔵大臣官房長 松下 康雄君         大蔵省主計局次         長       加藤 隆司君         大蔵省主税局長 高橋  元君         大蔵省関税局長 副島 有年君         大蔵省銀行局長 徳田 博美君         大蔵省国際金融         局長      宮崎 知雄君         国税庁長官   磯邊 律男君         国税庁次長   米山 武政君         資源エネルギー         庁公益事業部長 豊島  格君         資源エネルギー         庁公益事業部業         務課長     上杉 一雄君         参  考  人         (税制調査会会         長)      小倉 武一君         参  考  人         (日本銀行総         裁)      森永貞一郎君         大蔵委員会調査         室長      葉林 勇樹君     ————————————— 委員異動 六月十五日  辞任         補欠選任   二見 伸明君     大久保直彦君   永原  稔君     菊池福治郎君 同日  辞任         補欠選任   菊池福治郎君     永原  稔君 七月十一日  辞任         補欠選任   荒木  宏君     安田 純治君 同日  辞任         補欠選任   安田 純治君     荒木  宏君     ————————————— 六月十六日  一、法人税法の一部を改正する法律案村山喜   一君外九名提出、第八十回国会衆法第一五   号)  二、土地増価税法案村山喜一君外九名提出、   第八十回国会衆法第一七号)  三、銀行法の一部を改正する法律案村山喜一   君外九名提出、第八十回国会衆法第四三号)  四、貸金業法案坂口力君外三名提出、第八十   回国会衆法第四九号)  五、租税特別措置法の一部を改正する法律案(   山田耻目君外九名提出衆法第五号)  六、所得税法の一部を改正する法律案山田耻   目君外九名提出衆法第一八号)  七、国税通則法の一部を改正する法律案山田   耻目君外九名提出衆法第一九号)  八、国の会計に関する件  九、税制に関する件  一〇、関税に関する件  一一、金融に関する件  一二、証券取引に関する件  一三、外国為替に関する件  一四、国有財産に関する件  一五、専売事業に関する件  一六、印刷事業に関する件  一七、造幣事業に関する件 の閉会中審査を本委員会に付託された。     ————————————— 本日の会議に付した案件  国の会計税制及び金融に関する件      ————◇—————
  2. 大村襄治

    大村委員長 これより会議を開きます。  この際、新たに就任されました大倉事務次官ほかより発言を求められておりますので、順次これを許します。大倉事務次官
  3. 大倉真隆

    大倉説明員 大倉でございます。  先般の異動事務次官に任じられました。ある機会に数えてみましたら、私質問をとりに伺いましたり、ふろしきを抱えてこの後ろに座っておりましたころから、実は当委員会に二十五年お世話になったことになります。特にこの数年主計局国際金融局主税局ということで大変いろいろと御指導いただきまして、まことにありがとうございました。今後とも何かにつけて引き続き御指導いただくこと多いと思います。どうぞよろしくお願いいたします。ありがとうございました。(拍手
  4. 大村襄治

  5. 松下康雄

    松下説明員 官房長を拝命いたしました松下でございます。今後よろしくお願いを申し上げます。(拍手
  6. 大村襄治

  7. 高橋元

    高橋説明員 主税局長を仰せつかりました高橋でございます。浅学非才でございますが、何とぞよろしくお願いをいたします。(拍手
  8. 大村襄治

  9. 副島有年

    副島説明員 関税局長を拝命いたしました副島でございます。銀行局の保険部長理財局次長の二年間大変お世話になりました。今後ともよろしくお願いをいたします。(拍手
  10. 大村襄治

  11. 宮崎知雄

    宮崎説明員 国際金融局長を拝命いたしました宮崎でございます。よろしくお願いをいたします。(拍手
  12. 大村襄治

  13. 米山武政

    米山説明員 国税庁次長を拝命いたしました米山でございます。よろしくお願いをいたします。(拍手)      ————◇—————
  14. 大村襄治

    大村委員長 国の会計税制及び金融に関する件について調査を進めます。  これより質疑に入ります。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。佐藤観樹君。
  15. 佐藤観樹

    佐藤(観)委員 きょうは久しぶりの大蔵委員会でございますので、少しく現状の経済情勢、そして円高に絡むところの問題を含めまして補正予算の編成の問題、それに若干デノミの問題がまた余分な議論をいろいろ呼んでおりますのでそれに触れさせていただき、それから新金融効率化行政なるものが行われるようでありますが、その問題に絡みまして銀行合併の問題、最後に、円高差益の還元の問題は他の同僚委員からいろいろお話ありますので、課税の徴収面における問題についてお伺いをしたい。持ち時間七十分しかありませんので、これぐらいで大体時間になるかと思いますけれども、ひとつ簡潔な御答弁をいただきたいと思うのであります。  まず大蔵大臣にお伺いいたしますけれども、一体いまの景気状況、これは実はきょう二十二日にやるというのは、ある意味では非常にむずかしい時期に来ていると思うのです。それは、後からお伺いしますように、一体円高はこれからどう進むんだろうかという問題と非常に不可分密接でありますのでむずかしい時期かと思いますけれども、とにかく自信を持って皆さんの方でお組みになった七%成長、六十億ドルの経常収支の黒、こういうことがこのまま行ってできるのだろうか、少なくもその辺に観点を当てながらどういうふうに概略見ていらっしゃるか、経済企画庁もお見えでございますので、概略で結構ですから、まずその辺の認識をお伺いをしたいと思います。
  16. 赤羽隆夫

    赤羽説明員 お答えいたします。  五十三年度経済でありますけれども、年初来生産活動活発化いたしまして、一−三月期におきましては二・五%、これが一年間続きますと一〇・四%という非常な経済活動活発化いたしました。ところが、四月に入りまして以降の動きを見てみますと、生産がややスローダウンをする、それから個人消費などにつきましてもやや弱いという感じが出てまいりました。ただし、その反面におきまして、物価鎮静化ということがございますので、実質動きとしては、ほぼ当初見通しの線に沿って国内経済活動というのは展開をしている、こういうふうに見ておるわけでございます。  ところが、非常に急速に異常な円高が進行する、こういうことがございましたので、輸出数量予想以上に鈍化をしてございます。この輸出数量鈍化というものを前提にいたしまして在庫調整、こういうものが若干先に進んでいると申しますか、当初予想された以上に在庫調整在庫に対する見方というのは厳しくなってきた、こういうことがございまして、生産活動が四−六月期やや鈍化をしている、こういうことに見ております。  国際収支の方でありますけれども輸出数量鈍化ということが見られておりますので、数量的に見ますと当初の予想よりも輸出鈍化しておるわけでございますけれども円高ということがありますので、ドルベースで見ました輸出というものは予想以上に拡大をしている、こういうふうな状況でございます。
  17. 佐藤観樹

    佐藤(観)委員 個々にはまた若干お伺いしたいのでありますけれども大臣、いまお話があったような状況で、全体的にこのまま行けば、とにかく今年度五十三年度経済目標は達成できるんだというお考えになっているのか、いやもう少し手直しが必要だというふうにお考えになっているのか、細かいことはまた後でお伺いしますので、その基本的な認識だけまずお伺いしておきたいと思います。
  18. 村山達雄

    村山国務大臣 円高の問題を除きますと、基本的にまずまず当初見通しの姿に近い線を走っていると見ているわけでございます。しかし、いま経済企画庁からも述べましたように、最近におきます円高傾向がございまして、四−六の輸出数量かなり減っております。今後こういう傾向が、これは円高がどうなるかにもよりますけれども、やはりある程度続くといたしますと、全体としてはデフレギャップが少し強まるんじゃなかろうか。その辺のことをいま心配しておりまして、それに対してどういう見通しを最終的に政府が決めるか、それに対応する追加措置をいかにしていかなるものを入れるべきか、こういったことを九月初旬までに決定しようということで、目下鋭意勉強中でございます。
  19. 佐藤観樹

    佐藤(観)委員 いまお答えいただいたところがきょうのポイントになるわけでありますけれども、もう少し細かく見て、公共事業の問題でありますけれども、いろいろ出てくる数字が、公共事業請負額が去年より非常に多い、額として非常に伸びたということが言われるわけでありますけれども、確かに額の伸びだけ言えば、予算でも昨年よりはるかに公共事業は組んでいるわけでありますから、その面では、額の面でもそうですし、契約率の面でも前倒しをされているということでありますから、その意味では、工事請負金額がふえるというのは私は当然だと思うのです。  ただ問題は、これは主計局になるのかもしれませんけれども、今日まで上期に七三%の契約率だということでありますけれども、一体それは少なくも支出ベースとしてこの七月なら七月までに全事業量つまり国ベースと地方自治体のベースを合わせた全事業量としてはどのくらいの支出ベースになっているのか。たとえば公共事業が二十兆といたしますと、工事請負金額がふえたふえたといっても、それがすでに十兆、十五兆を超えているということになりますと、これは後で息切れということになってくると思うのですね。単なる対前年比の請負金額だけの比較ではいかぬので、一体本年度組んだ全事業量事業額のうちのどのくらいを、たとえば一番わかる近いところ、六月いっぱいなり七月いっぱいで公共事業というのは使ったのかどうか、その点はいかがでございますか。
  20. 加藤隆司

    加藤説明員 ただいま支出金額、ちょっと持っておりませんので、すぐ取り寄せますが、契約金額で申しますと、施行促進対象経費が十一兆八千億ございます。それで、六月末で五二・七%の進捗状況にございます。昨年はこれが五〇・二でございました。かなり順調に進んでおります。御質問支出金額でございますが、大体この契約金額の半分くらいが通常でございますが、正確な数字をすぐ取り寄せて、後ほど申し上げます。
  21. 佐藤観樹

    佐藤(観)委員 そうしますと、主計局次長を二回やられた加藤さんのお話でありますから、大体契約率の半分が支出ベースだということならば、支出ベースにおいても公共事業というのは、四半期にとれば大体四分の一くらいずつならして支出されているというふうに見てよろしゅうございますか。
  22. 加藤隆司

    加藤説明員 正確な数字、ただいますぐ取り寄せますが、私の記憶では大体そんな調子で出ていると思います。
  23. 佐藤観樹

    佐藤(観)委員 それで、先ほど申しましたように、本年度かなり額も多いですし、いつものように下期息切れということが、果たして従来の去年、おととしのようなそのままを当てはめることも私はいかがかとも思いますけれども、本年度は額が多いだけに、また環境的にも民間の収支状況が三月決算等見ても多分にいいところが多いわけでありますので、そういう状況から見ると、公共事業に関連をしてそれゆえに下期息切れ、こういうことはない、こう見てよろしいのですか。
  24. 加藤隆司

    加藤説明員 二、三の点を申し上げてみたいと思います。  先ほどの四−六くらいまでの景気情勢は、十五カ月予算ということで編成されました昨年の公共事業が効いておるという点が第一点でございます。  いよいよ六月以降にこの五十三年度臨時異例拡大予算効果が出てくるという点が考えられるわけでございます。  それから第三点は、下期の問題でございますが、十一兆八千億に七三%お掛けいただきますと、下期が三兆二、三千億になります。これは前年の下期に比べましてこれを上回っております。  第四点は、先ほど経済見通しの問題いろいろございましたが、円レートの問題を除きまして考えますと、かなりいい線に行っておるわけでございます。  こういうようなことから考えて、先ほど大臣からお話がございましたが、九月初旬にかけて目下いろいろ細かく検討をしつつあるわけでございますが、そういうようなことで、大体五十一年、五十二年を通じて春高く秋冷えるというような傾向は、五十三年度に関する限りいままでのところそういうことのないように認識しております。ただ、五月の下旬以降起こりました円高の問題もございますので、鋭意全般的な経済状況検討をいたしておるというようなことが現段階で申し上げられることでございます。
  25. 佐藤観樹

    佐藤(観)委員 公共事業の問題は、大体いま加藤次長からお話があったとおりに一応認識をしておきます。  今度は個人消費先行きの問題なんでありますけれども、確かにこの半年間というものは堅調で来たわけでありますけれども先行きこれがこのままの調子伸びるだろうかということについては、私は非常に疑問があるわけであります。それは言うまでもなく、春闘でのベースアップ率が昨年に比べて約二%から三%低いということ、それから時間外収入ボーナス、一時金、こういったものを考えてみますと、これからの個人消費というのは、五十三年度経済見通しの改定の際には下方修正をせざるを得ないのではないかと思うのでありますが、この点について経済企画庁はどう見ていらっしゃいますか。
  26. 赤羽隆夫

    赤羽説明員 お答え申し上げます。  今年度に入りましてからの個人消費名目ではやや当初の見通しを下回るということを先ほど申し上げました。これは先生御指摘のように、春季の賃上げ率が五・九%、ことしは近年になく低い数字でございました。それから、夏季ボーナスもまた昨年よりもかなり低いところにある。二%台というふうに報ぜられておりますけれども、こういうことで、名目所得が低いということがございます。これに対しまして物価の方は非常に落ちついているということで、実質的にはこれはかなり伸びになっている、こういうふうに見ているわけでございます。現に耐久消費財、エアコンでありますとか扇風機でありますとかあるいは自動車でありますとか、こういったものが快調に伸びている。それからまた、夏物衣料につきましても一部のものが非常に売れている、こういうふうなことがございます。こういうふうな状況というものを前にして、最近は個人消費動きも、名目ではやや当初の見通しを下回っているけれども実質ではいいところまで行っている、こういうふうに見ているわけであります。  ところが、一部御指摘がありますのは、消費性向が去年のいまごろよりも下がっているではないかということがございます。この消費性向が下がっているということが、消費者心理が慎重になっている、こういうふうに見ておられる方が、こういうものの証拠であるというふうにごらんになる方が多いわけでありますけれども、私どもの研究と申しますか調査で申しますと、これは主として食料費価格が安定をしているということであります。食料価格が安定をいたしますと、食料に振り向ける支出が少なくて済む、こういうことで消費性向が若干下がるということが見られているというふうに思います。すなわち物価が安定をしているということ、特に食い物の値段が安くなっているということが消費の堅調な動きをもたらしながら、しかも名目伸びは若干に低い、こういうふうな現象をもたらしているというふうに思います。  これから先の動きでありますけれども、今後在庫調整というものが一巡をする、さらに臨時異例措置として大型化いたしました公共事業需要効果が下期についてあらわれてくる、こういうふうになりますと、生産活動活発化してまいります。この生産活動活発化というものが所得の増加をもたらす、すなわち残業がふえるあるいは冬のボーナスもまたそれによってふえてくるのであろう、こういうふうに期待をしておりまして、下期についてこの個人消費というものが特に鈍化をする、こういうふうな予想は立てなくていいのではないか、こういうふうに考えている次第でございます。  繰り返しになりますけれども物価が安定をしているということが名目所得の若干の落ち込みを相殺をして、実質で見ますとほぼ当初見通しかそれに近い線に個人消費というものはいけるのではないか、こういうふうに私どもは現在のところ期待しているわけでございます。
  27. 佐藤観樹

    佐藤(観)委員 しかし、実はこの問題、御存じのように大変大きな問題で、個人消費GNPの中で約五七、八%、ざっと六割と見て、皆さん方予想でも、経済見通しでも百十九兆というものを見ているわけですね。百二十兆といたしましても、一%これが下がるだけでも一兆二千億消費が下がる、GNPマイナス要因になるということでありますから、個人消費の行方というのは、その意味では非常に重要なファクターになってくると思うのであります。  そこで、いろいろどの段階でお聞きしてもいいのですけれども大臣にお伺いしたいのでありますけれども、いまの経済企画庁お話では、物価が安定をしているから、同じものを買ったって名目伸びというのは確かに下がることは私は当然だと思うのであります。確かに物価が安定していることは私も認めるわけであります。しかしいま言ったように、これから大きく個人消費伸び要因というのは余りない。そしていまのお話では、下期は個人消費息切れをしないというお話だけれども、しかし予定どおり百十九兆の個人消費が達成できるかということになると、これはいま申しましたように必ずしも明るい要因ばかりではないと思うのです。いま申しましたように、個人所得名目で余り伸びてないという状況がありますので、そういうことからいいますと、いつ臨時国会が開かれるかわかりませんけれども、やはり所得税減税という話がまた出てくるわけですね。恐らく大臣の頭の中では、いまの財政事情の中でとてもじゃないという話でありますけれども、新聞の報ずるところによれば、いまや中曽根さんまで減税が必要だというふうに自民党内でも言われるようになった。この問題について大臣は、それは財政を預かる者として、各所でとてもそんな余裕はないと言っていらっしゃるのでありますけれども、これからの経済運営の中を見渡した場合に、減税というのはそう頭からはねつけてしまっていいものかどんなものか、その点について再度お伺いをしておきたいと思います。
  28. 村山達雄

    村山国務大臣 減税の問題につきましては、私はことしだけの問題でなくて、やはり中長期的に考えるべき筋合いの問題ではないかと思っておるのでございます。かねがね申し上げておりますように、実質三七%という公債依存率、これはもう世界でもまれな例でございまして、財政健全化という問題が急がれておるのでございます。そのときに、その効果の点は別にいたしまして、所得税減税をやるということになりますと、むずかしい問題をさらに将来に繰り越すという問題が第一に指摘されねばならぬと思うわけでございます。第二番目に、日本の所得税負担考えてみますと、大体先進国の二分の一程度でございます。夫婦子二人で三百万と申しますと、大体サラリーマンの八割を占めておるわけでございますけれども、それらのところの階層は、特にほかの国に比べて安くなっておるということ、こういったことも考えねばならぬと思うわけでございます。ちょうどそのうらはらになるわけでございます。したがって、もし仮に減税をやったといたしましても、やはり消費効果というものはそんなに望めない。やはり貯蓄の方に回るあれが多いのじゃないか。かたがた、SP17で計算いたしましてもSP18で計算いたしましても、消費に及ぼす減税効果というものは初年度において少ないということ、公共投資等に比べますと初年度効果が少ないということを考えねばなりません。また財政的に考えますと、そのほかに単に一般会計だけの負担ではなくて、そのことは当然のことでございますが、交付税の減を三二%伴うわけでございまして、それの手当てもしなければならぬ。こういうことを考えますと、やはり所得税減税というものはよほど慎重でなければならぬというふうに考えております。  それからなお、先ほど経済企画庁からお話がありまして、佐藤委員個人消費の問題を非常に御心配なさっておるわけでございます。われわれもこれのウエートの大きさから考えまして、その行く末については、非常にプラス、マイナスいろいろな要因があるわけでございまして、確たる見通しがなかなかむずかしいわけでございます。日銀券の発行というのが普通先行指標と言われておりますが、先般非公式にお聞きしますと八月の数字かなり伸びておりまして、一〇・八ぐらいに伸びておるやに聞いておるのでございます。そういたしますと、これが当たるといたしましての話でございますが、先ほど経済企画庁が言っております物価の安定あるいは最近の生産の盛り上がり、それから所定外時間労働延長等、そういった要素が働いてきて消費が少し伸びていくんじゃなかろうか、こういうことも考えられるわけでございまして、その辺をいま慎重に検討しておるところでございます。
  29. 佐藤観樹

    佐藤(観)委員 減税問題は大臣と何時間やっても、これは恐らく平行線になると思いますので、それ以上もうお伺いいたしません。  次に、雇用の問題であります。これは五十三年度予算を審議するときにも私たちはずいぶんお伺いしたのでありますけれども皆さん方論理立てとしては、とにかく景気がよくなれば雇用は吸収されるんだというのが原則的な考え方だったわけですね。しかし、いまの企業が抱えている潜在的な過剰労働等状況、あるいはこれから企業が、やるとしても人減らし合理化をやって切り抜けていこうという状況から言ったら、いまのような公共事業を中心としたような景気回復策では雇用の吸収ということはないんだということは、三月時点の五十三年度予算の論議のときにもかなりあったわけですね。いろいろな指標の中でただ一つ動いてないのは、全くの完全失業者数百二、三十万人という数字がほぼ横ばいになっているということ、このことは動かしがたい事実でありますし、皆さん方が言うところの景気が上昇気流に乗ってくればこれらの人々も吸収をされるんだという論理立て自体、つまりそれによるところの政策のとり方自体に無理があったんではないか。これから後でお伺いしますけれども、恐らく補正を組んでみたとしたって、この百二、三十万人の失業者に職を与える、就職口をつくるというのは無理なんじゃないか。それがこの半年間、ほぼ百二、三十万人の完全失業者を抱えているということになっているのではないか。つまり皆さん方論理立て自体あるいは政策のとり方自体が、公共事業を中心としての景気回復策というのでは雇用の安定はできないということをいまの数字は示しているのではないか、私はこう思うのでありますけれども、いかがでございますか。
  30. 村山達雄

    村山国務大臣 おっしゃるとおりに、雇用の問題が一番むずかしい問題だと思います。日本に限らず、景気回復過程にありますところにおきましても一雇用の問題の回復度はなかなかはかばかしくございません。御案内のように、大体一年間通じて見ますと、新規雇用と申しますか、求職者の数が六十万から七十万ぐらいだと思います。そのうち五、六十万人はやはり雇用で吸収するわけでございますが、残念ながら完全失業者の数は、年間で十万程度吸収し切れないでふえているというのが現状のようでございます。  それでこの問題は、単にいま景気をよくするというようなことで解決できるのかどうか。企業の態度が非常に慎重であるわけでございます。したがいまして、できるだけ吸収を図るべく、公共事業のつけ方にいたしましても、地域別の配分等にいろいろな気を配っておるところでございますが、実数として結果にあらわれたところを見ますと、佐藤委員指摘のとおり、なかなかはかばかしくならない、これが今後の大きな問題でございます。  私見で申し上げますと、やや熟しない考え方でございますが、これは景気だけではなかなかむずかしい問題ではなかろうか。この問題はやはり全体の仕事をいかに分け合うかという問題と深くかかわり合っておる問題のような気がするわけでございまして、そういう意味で、いま労働省が検討しておりますいろいろな時間と雇用増の問題、同じパイを仕事の面でどういうふうに分け合うか、そういう角度からの切り込みがないと、この問題は単なる量的な景気対策だけではいい答えが出ないおそれがあるのではないか、こうういう気がいたしております。しかし政府部内におきましては、そういう問題意識を持ちまして、鋭意いま検討しておるところでございます。
  31. 佐藤観樹

    佐藤(観)委員 大臣が私見ですがと言われた部分のことをわれわれも今度の五十三年度予算の中で、いまのような公共事業中心だけではいかぬのではないか、一番肝心かなめの雇用の問題を解決できないのではないかということで、大臣がいみじくも、恐らく私見とは言いながらも公にされたのは初めてだと思うのでありますけれども、まあ言われたわけで、今度の補正予算をたとえば組むにいたしましても、その辺の観点の発想を変えないと、旧来の高度成長の上に乗ったような発想での雇用問題の解決というのは、いままさに言われたように量的な解決だけではできないところに来ているのではないかと私は思うのです。  その次に、輸出のかげりの問題でありますけれども、余り細かにやっていると時間がありませんが、この二、三カ月ぐらいに輸出が減少しているわけでありますけれども、一体これはGNPの中でギャップとしてどのくらいにあらわれてくるのか、結局何%くらいマイナス要因になると経済企画庁は見ていらっしゃるのか、その点はいかがでございますか。
  32. 赤羽隆夫

    赤羽説明員 お答え申し上げます。  輸出数量の減少は、本年の四−六月期は去年の四−六月期に比べまして二・五%でございます。また七月は八%で、私どもが当初考えましたよりは若干余分に数量が落ち込んでいるということは事実でございます。ただ、最近の数量の落ち込みにつきましては若干特殊要因があるというように考えます。と申しますのは、昨年の秋口以降急速に円高が進みました。円高が進んでいる過程で輸出の前倒しということがこの一−三月に非常に起こったわけでございます。この円高進行に伴いますところの輸出の前倒しにさらに加えまして、四月から対米運賃が七%上がるという問題がございましたし、実際には起こりませんでしたけれども、七月にはアメリカの西海岸の沖仲仕組合のストライキがあるだろう、こういうふうな報道も伝えられました。さらには、輸出数量の抑制をする、こういうふうなことが行われるのではないかという報道も行われました。これらすべてが輸出のいわば一種の駆け込みということをもたらしたわけでございます。その結果として一−三月は非常にふくらんだ。前にふくらみますと当然後ろはへこむということでございまして、最近の輸出の落ち込みには、こういったような一−三月のふくらんだ分がかなり影響しているというふうに思います。この二百円を突破いたしまして百八十円台に突っ込むというような異常な円高というものが輸出を抑制していることは事実でありますけれども、これまでの実績の数字は実勢よりは少し落ち過ぎである、こういうふうに見ているわけでございます。  ただいまの御質問は、こういったような輸出数量の落ち込みというものがGNPをどれぐらい足を引っ張るのか、こういうような御質問だろうと思いますが、数量の落ち込みというものが直ちに実質GNPのそのままの落ち込みにならない。輸出は大体一割以上のウエートを占めておりますので、一割のものがたとえば三%へこみますと、それは〇・三%実質GNPがへこむのではないだろうか、こういうふうに考えられるわけでありますけれども、実はここでもう一つの要因がある。少し技術的な話になりますけれども、それは最近の輸出というものが非常に付加価値の高い商品にシフトしているということでございます。たとえば同じ自動車をとりましても、したがって数量ベースで見ましては同じ一台ということでありましても、カローラからマークIIへ移りますとそれだけ付加価値が高い。国民所得統計、GNPは付加価値の統計でございますので、こういったような高級化、高付加価値化というものが数量的な減少の一部をキャンセルすると申しますか、相殺をいたします。  そういうことで現在のところ、確かに輸出が当初見通しよりはGNPの成長に対してむしろ反対の方向の作用をする、若干足を引っ張るというふうに見てはおるわけでありますけれども、その足を引っ張る度合いというものは非常に少なくて済む。高付加価値化商品への輸出構造の高度化というものを考慮すれば、それほど大きなマイナスにはならない、こういうふうに見ておるわけでございます。
  33. 佐藤観樹

    佐藤(観)委員 もう一つは、補正予算の性格に入る前に材料を整理していかなければいかぬのでありますけれども、これは国金局長でも結構でございますけれども、きょうというよりか、正式にはきのうでありますが、円相場が百九十三円と戻しているわけですね。これは詰める時間が余りありませんけれども、アメリカが日本にスワップを要求してきているという話、あるいはアメリカが本格的にドル防衛に入るという報道もあります。私の周りにいる貿易の専門家の中には、これは二百十円まで戻す時期がそう遠くないのではないかと言う人もいる。これは私なんかよりむしろ貿易そのものに携わっている人でありますけれども、こう見てきますと、いま円高の不況だということで補正予算をと全体的になっている中で、その前に、とにかく一体円高というものはどうなっていくのだろうか、ドル安は一体どのぐらいでとまって反転するのだろうかというところのある程度先の見通しがなければ、私は補正予算もできないだろうと思うのでございます。  これは為替問題でありますから、局長の発言、大臣の発言が相場に響くこともありますから、その辺は避けていただくことは大蔵委員会の見識として結構でございますけれども、少なくもある程度の長期的な見通しがないと、百八十二円、三円になったということであわてふためいて補正予算を組んではみたが、ドル安が反転をして円が安くなった、したがってまた輸出がどんどん出ていって、七%経済は達成したけれども国際収支経常収支の黒が二百億ドルにもなったというようなことでは、七%成長自体が国際的公約としては何ら意味がなくなってしまうわけですね。そのあたりで大変むずかしい質問かとは思いますけれども、一体これからアメリカが本格的にドル安に対しててこ入れをして円が安くなるのか、その辺の見通しはいかがでございますか。
  34. 宮崎知雄

    宮崎説明員 最近の為替市場の状況を申し上げますと、御承知のように八月に入りまして、ドルが円だけではなくてマルク、それからスイスフラン、そういう通貨に対して全面安というような状況になりました。特に八月十五日には一ドルが一・九マルク、円に対しましては百八十二円台になるというような状況でございまして、こういうふうな状況をアメリカの大統領が非常に憂慮いたしまして、先般財務省、それから連銀に対しましてドル防衛策を検討するようにという要請をしたわけでございます。その第一段といたしまして、先週の末に公定歩合が〇・五%引き上げられるということになりました。この結果が為替市場に非常にいい影響を及ぼしまして、ドルが全通貨に対しまして全般的な持ち直しをしております。本日は御承知のように、東京市場では大体百九十円台に戻っておりますし、昨日のヨーロッパ市場でも、マルクは一ドルが二マルク台に戻ってきております。  今後の為替市場の先行き動きでございますが、先般のアメリカ側からの発表によりますと、ここ二、三週間のうちに一連の措置を決定するということを言っておりますので、その内容が効果的なものであれば、これは為替市場の安定にとつて望ましいということになると思います。  それからまた、円が今後どこまでどういう動きをするのかということにつきましては、これは為替市場に与える影響もございますので、ここでは差し控えさせていただきたいと思いますが、ただ一つ言えますことは、先ほどからもお話に出ておりますように、日本の国際収支動きに変化があらわれてきておりまして、数量ベースで見ますと輸出数量は減ってきている、それから逆に輸入の数量はふえてきているというような頃向があらわれておりますので、こういう傾向は円の安定化にとって望ましいことではないかというふうに考えております。
  35. 佐藤観樹

    佐藤(観)委員 そうしますと大臣、いまずっとお伺いをしてきましたように、公共事業は当初予定をしたようにある程度の経済の波及効果をもたらして、それなりの役目は果たしているということですね。個人消費も、物価がある程度安定をしているから、これも後半期も大体思ったとおりの数字に行くであろうということですね。それから、在庫調整は若干おくれている。それから輸出のかげりについても、経済企画庁からお話があったように、これはかなり特殊要因も加わっておりますし、それから付加価値性の強いものに変わっているので、輸出のかげりという問題もそう大きく心配をする必要はないのではないか。それからいま国金局長からお話があったように、これからのドルの行方ですね、円の行方というよりもドルの行方自体も、ある程度アメリカも本格的に手を打つことが予想されるわけです。そうなってくると、必ずしも全面的なドル安ということではなくて円が若干弱含みになってくる。それがある意味では先行きまた輸出を伸ばす要因になってくるわけですね。  こうなってきますと、冒頭お伺いをしたように、大臣円高の問題を見て勉強中だというふうに言われたわけでありますけれども、少なくもいまの皆さん方の御説明なさるいろいろな要素を勘案してみますと、まだ補正予算という話は少し早いのではないか。勉強なさるのはもちろんいいですけれども、いまのように問題は輸出のかげりがどのくらい落ち込むかという話が一番問題だというのならば、しかもいま国金局長からお話があったように、話どおり国際為替の問題はなかなかいかないところがまたむずかしいところで国金局長の頭の痛いところでありますけれども、少なくもアメリカも今度はかなり本格的に力を入れつつあるということになりますと、ちょっとこれは先行き補正予算を組んで、やれ需給ギャップが一兆円だ三兆円だと、豆腐のたたき売りみたいな話が新聞に載るような、そんな簡単な見きわめはいまできないのではないか、こういうふうに私は思いますけれども、その点についてはいかがでございますか。
  36. 村山達雄

    村山国務大臣 そこのところは非常にむずかしい問題だと思うのでございます。  私見を申し上げさせていただきますと、いまの為替相場というのはどっちかというと、心理作用で動いているのじゃないかという気がしてならぬのでございます。本来為替市場は、需給でもし決まるとすれば、それは基礎収支なり総合収支で決まるべき筋合いの問題だと思っているわけでございます。四−六の経常収支の黒字幅は御案内のように五十億ドルでありますが、基礎収支で見ますと、季節調整済みで十五億ドルぐらいでございまして、昨年に比べまして長期資本の流出が非常によく出ているわけでございます。そういったこと、あるいは購買力平価、これはどこまでいけるかわかりませんけれども、ある時点をとりまして、たとえば変動為替相場から今日までの輸出入それぞれの加重平均でもって為替レートの実効レートの上がり方とそれからそれぞれの国の卸売物価、これを比べてみますと、やはり少し割高だという感じが出てくるわけでございます。やはり何といっても経常収支という問題がその国の企業の競争力と申しますか、そういったものをあらわしますので、どうしても経常収支の黒字、赤字ということが大きく心理に影響を及ぼしまして、為替の需給実勢よりもその方が大きくいま作用しておるのではなかろうかと思っておるのでございます。  それから第二点は、先ほど経済企画庁から申し上げましたように、確かに上位シフトが行われているわけでございます。数量は下がっておりますが、円ベース考えたバランスで見ます限り、いまのところ貿易の円ベースでのバランスの数字が下がっているということはございません。  問題はこれからの話なんでございますが、御案内のように、昨年がずっとしり上がりに貿易収支が堅調になっているわけでございます。対前年との比較でありますので、今後為替レートは確かにいまアメリカがいろいろな調整過程にあるわけでございまして、どちらかといえば私は先ほど言った心理的な要因、それからアメリカがいま対策を講ずることから言いまして、円は少し戻すんじゃなかろうかと思っておりますが、それにいたしましても、昨年の状況との四半期別の上昇カーブを考えてみますと、ことしはなかなかそうはいかぬのではなかろうか。そこが大局的に見まして、やはり対前年との比較においてはデフレギャップになるのではなかろうかという大数観察をしているわけでございまして、それが一体どれぐらいになるか、そこのところの詰めをやっておるということでございます。  少し問題を詰めるには早過ぎるんじゃないか、御指摘のその面から見れば、確かにおっしゃるように為替相場が影響するわけでございますので、そういった面は確かに言えるわけでございます。しかしまた他方において、もし時期を失するとまた取り返しのつかぬことになるという問題もあるわけでございますので、その両面考えまして、まあまあという一つの見込みを立てまして、早目早目にやはり手を打っていく必要性から申しますと、それもまた心しなくちゃならぬ点であろう。そういう非常にむずかしい見通しという問題と、早目にやらなくちゃならぬという問題と、そういった両面から鋭意詰めて、できるだけわれわれの作業で実勢に近い見通しを立てて早目に手を打ちたい、かように考えているところでございます。
  37. 佐藤観樹

    佐藤(観)委員 じゃ具体的にお伺いしますが、九月の二日に経済対策閣僚会議補正予算のある程度骨格を決めたい、福田総理も中近東へ行かれるわけですので決めたいというお話ですけれども、きょうは八月の二十二日なわけですね。それまでにいま大臣が言われたような、それなりの輸出に関するデータ、あるいはこれはなかなか決めにくいわけでありますが、アメリカの対策等も含めての為替の動向、国際収支の動向等々は、少なくも九月の二日の経済対策閣僚会議にそれなりに他の閣僚にも討議してもらうようなデータというのは出せるのですか。
  38. 村山達雄

    村山国務大臣 第一・四半期のQEが九月の上旬に大体わかるわけでございます。そこに焦点を合わせて、少なくともそのときまでにできるだけ勉強いたしまして、まあこれくらいかなという数字を各省持ち合わせましてすり合わせを行い、やはり一つの見通しを立てて決断する時期はそのころではなかろうか。そういうことでいま鋭意各省間で作業を詰めている、こういう段階でございます。
  39. 佐藤観樹

    佐藤(観)委員 まあ私は常識的だと思うのでありますが、まさに大臣が言われますように、少なくも補正予算を組むからには、その第一・四半期のQEが出た段階、いま大臣は九月の中旬と言われましたけれども、それがある程度見きわめがつかないと補正予算を組めないんじゃないか。ひいては、九月の二十五日に臨時国会の開催だというようなこともちまたで言われているんだけれども、これも果たしていまの大臣の、九月の中旬にある程度見きわめをということになりますと、九月の二十五日臨時国会開催というのも私はちと予算の作成作業から言って無理なんではないか。  私は、大蔵大臣の言われているいろいろな作業の手はずの考え方というのは、きわめて常識的なやり方だと思います。何を私が心配するかといいますと、先ほど言いましたように、いま円高になった円高になった、輸出にかげりが出た、補正予算をすぐ組まなければいかぬというので、何兆円という話にすぐなっていくのでありますが、片や輸出だけの問題なら、為替の先行きの話をある程度頭に入れておきませんと、組んではみたが片方では今度は円安になって、また輸出が後半ぐっと伸びてくる。そうでなくても第一・四半期で貿易収支の黒が六十億ドルを超えるというような状況の中にあるときに、やれ来年の三月になってみたら、実は国際収支は百五十億ドルも二百億ドルも経常が黒になっていまして、七%はできたけれども、何だ、これは要するに輸出だけで補ったではないかということでは、七%成長はできても、国際公約の重点というのは六十億ドルの達成、つまり内需の拡大、日本ばかり輸出してもうけるのではなくて、国際的には六十億ドルの黒字の方が大きなウエートがあると私は思うのです。ですから、その見きわめがないと、私も過去何度か景気の問題をやってきたけれども、またアクセルの踏み過ぎということをやりかねない。しかも今度問題なのは、踏み過ぎた場合に残るのは何かというと、後でお伺いしますけれども、一体財源がどうなったか。結局は、赤字国債のツケだけがふえていたということになりかねないわけでありますから、その意味で、こういうむずかしい時期になればなるほど、はっきりした見きわめというものは非常に重要になってくると私は思うのであります。どうもその点、いまの財界なり新聞なりというものは少し先走り過ぎていはしないだろうかという感じがしてならぬのであります。  そこで、ついでにお伺いしておきますけれども、いま大臣のお言葉では、補正予算は組まないとは言われていないわけです。しかしそれでは、その規模とか性格というものは大体どういうものを頭に描いていらっしゃるのか。その際に財源というものは、公共事業の予備費もありますし、給与の改善費の残りもあるでしょうし、一般予備費もある。しかし、この前の三千億の減税の財源手当てをしていませんから、事実上千七、八百億しか財源としてはないわけですね。恐らくそれでは足りぬでしょう。財投でできるかというと、財投もなかなかできぬでしょう。ということになりますと、また赤字国債の追加かという結論になってしまうわけです。一体いまの頭の中で大臣は、規模はなかなかむずかしいわけでありますが、性格とそれから財源についてはどういうふうに考えていらっしゃるのか。簡単で結構でございます。説明は大体わかりますので、結論だけお答え願いたいと思います。
  40. 村山達雄

    村山国務大臣 ちょっと私のさっきの答弁で、間違っておったかあるいはお聞き違いか知りませんが、QEの発表は九月の初旬、大体一日ごろをいま予定しておるわけでございます。したがって、関係閣僚会議も九月二日ということでございまして、そのQEの発表の数字の確定とあわせて補正を含む追加措置を決めたい、こういうことでございますので、ちょっと申し上げておきます。  それから、いまの御質問の点でございますが、二つの点から作業をすべきものであろう。一つは、円がどうなるかという問題が中心問題でございますが、それが一体どれくらいに落ちつくかということをどうしてもある程度見きわめざるを得ないわけでございまして、ある想定を立てまして、それがどれくらいのデフレギャップにつながってくるのか、そういうマクロ的な作業を一方においてやらざるを得ませんでしょう。他方におきまして、さればといって国力に限界が現実的にはあるわけでございますので、それぞれ積み上げ計算でどういう施策が効果的であるか、そしてその裏づけの財源としてはどういうものがあるのか、こういったものも他方においてやらなければならぬと思います。  その積み上げ計算の方も二つございまして、一つは、実体の方で果たして事業の消化能力があるのかどうか、それが単なる値上げにとどまるとかあるいは労賃の引き上げに伴って実質GNPには響かないというようなことでは困るわけでございまして、どのような事業をこれから採択していくのかという問題、それから財源の問題といたしましては、公共事業予備費、あるいは現在既定予算の中でなお節約が一体どれだけできるのか、こういったものを考えていかなければなりませんし、それから財投方面でどれくらい一体動員ができるのか、原資にはおのずから配分比率があるわけでございますので、その辺も当たっていかなければならぬと思います。また、これは仮定の話でございますけれども、もし公債の増発を必要とするようなことがあるとすれば、現在の起債市場の状況から考えてそれは一体いかがなものであろうか。  そういった各方面から積み上げ計算は考えていって、それでマクロにおけるデフレギャップとその辺をどのように詰め合わせていくか、こういった作業が今後の中心問題になるのじゃなかろうか、このように思っておるところでございます。
  41. 佐藤観樹

    佐藤(観)委員 何だかよくわからぬお話でして、その辺のことを踏まえてどういうふうに頭で描いていらっしゃるかということをお伺いしたのでありますけれども、そういうお答えでございますので、ただ補正予算の問題についてお伺いしておきたいのであります。  時間もそうありませんので、若干景気の問題に絡んで、たびたびデノミの問題が報道されるわけであります。福田総理が一月四日に記者会見の中で、三つの条件と申しますか前提と申しますか、景気の回復、物価の安定、そして国際収支の安定、少なくも赤字じゃないという国際収支状況等を踏まえて、前提というか条件をつけて発言をされたわけであります。  一月の時点と現在の時点とを比べてみますと、景気の回復というのはどこまでが景気の回復かということは非常にむずかしいのでありますけれども、一月の段階といまの八月の段階では、少なくも前進をしたこと自体は短期的に見るならば事実ですね。それから物価の安定は、先ほど経済企画庁からお話があったとおりだし、これは私も否定しません。ただ先行き、複雑な流通機構の中で果たしてこれが長期的に安定かどうかということは若干疑問を持ちますが、少なくも短期的に見るならばそうでしょう。国際収支が赤字ではないという観点から言えばそういうことになりますね。そういうことになりますと、総理の言われた条件といいますか前提といいますか環境というのは、一月の時点よりは幾らか前へ進んでいるわけですね。私は、デノミがいいか悪いかの論議は時間がありませんからいまいたしませんけれども、総理の言われた前提、環境というのは、少なくも一月の時点といまの時点を比べればかなりいまが進んだことは事実ですね。  そうなると、一体これどうするのだねという話になってくるわけですね。その点について、いま申しました前提というか条件というか環境というか、総理の言われたこの三つの条件について整ったと見るのか、もし整わないというならば、一体景気の回復というのはどういう状況になったら、たとえばそのとき村山さんが大蔵大臣かどうかわかりませんけれども、やられるのかどうか、その点について簡単にお答えを願いたいと思います。
  42. 村山達雄

    村山国務大臣 確かに一月時点と今日では若干の進展も見られておりますが、しかし、内閣の統一見解で申し上げておりますような、佐藤委員が言われました物価国際収支、成長、こういったものの安定というのとはほど遠いのではなかろうか。確かに進展は見られておりましても、まだ非常に流動的だと思うわけでございます。かたがた、デノミというのは単位呼称の変更にすぎない、経済にとっては中立的だということが広く国民に理解されるということも、一つの前提として考えねばならぬわけでございまして、これは私見でございますけれども、内閣声明を出した当時と今日とそれほど変わっていない、したがって、デノミをやるべきときではない、かように考えているのでございます。
  43. 佐藤観樹

    佐藤(観)委員 その際に、私が景気の回復の話を言ったのではなくて、福田総理が言ったのでありますけれども、これは大蔵大臣が言うとまたいろいろと問題になろうかと思いますが、まあ景気の回復というのは私たちは長期的にはなかなかむずかしいぞと思っているわけですね。少なくも高度成長期のようなああいう状況景気の回復と言うならば、それはなかなかむずかしいぞと見ているのでありますけれども、それじゃ、国際的な問題もこれあるわけでありますから、どういう状況になったらこれをやるということなんですか。内容についてもう少し、なかなかむずかしいかと思いますけれども、こういう状況になったら——これは総理大臣が一月にああいうことを発言するからいかぬので、それは事実上大蔵大臣がやらなければいかぬわけでありますけれども、どういう状況になったらやるということなんですか。
  44. 村山達雄

    村山国務大臣 少なくともやはり安定しなければいけないのではないであろうか。その安定という意味は、考えてみますと、過去の事跡におきまして四十年から四十五年、あれは高度成長期でございましたが、今後はああいう高度成長ということはあり得ないと私は思っているのです。それは減速経済にしろ何にしろそれなりの安定が保たれたときということではなかろうかと私は思っているのでございまして、年々大きく変わっていくというようなことでなくて、大体コンスタントの日本の経済の実力に応じたことが大事であろう。そのことは同時に考えてみますと、いまオイルショック後の世界経済が調整過程に全部あるわけでございますので、やはり調整過程が済まないと日本経済だけが安定するということはあり得ないのではないか、私はそのような感じがいたしているのでございます。
  45. 佐藤観樹

    佐藤(観)委員 これも話をしていても堂々めぐりになってしまいますので、次の問題に移りたいと思います。  金融情勢が非常に厳しい、金融環境が厳しい、銀行の置かれている立場がさま変わりしているということはもう私から言うまでもないことでありますけれども、銀行局で考えているいわゆる新金融効率化行政の中で、合併あるいは転換、こういう問題が大きくなってきているわけですね。これは若干誤解があるやに私も思いますし、このことだけが何も効率化行政ではないわけでありまして、その点については別の機会に十分討議をしたいと思うのでありますけれども、とりあえずいま言われているだけでも住友銀行と関西相銀の合併、それから近畿相銀と兵庫相銀の話、尼崎浪速信金と兵庫信金と神戸信金の合併の話、多治見信金、岐陶信金、土岐津信金の合併の話と、少なくも活字になってそれなりの雑誌に出てきたのはこういうのが言われているわけですね。  過去に澄田銀行局長時代に金融機関の合併、転換というのはかなりあったわけでありますけれども、あのときの合併、転換というのは、恐らく規模のメリットの方がウエートが大きかったと思うのであります。ところが、いまは規模のメリットだけの問題でないところがいわゆる新金融効率化の行政になってくると思うのでありますけれども、確かに合転法にも四つばかりの条件が書いてあります。しかし第一に、第六条の第一項目に書いてある「金融の効率化に資する」、これは一体たとえば経費率でどのくらいのものを——たとえば相銀なんかだと大分散らばっているわけですね。機械的にこれは言えないことは私もわかっておりますけれども、どの辺のことを考えていらっしゃるのか。あるいは「中小企業金融に支障を生じないこと。」というのが二項目目にありますけれども、これは具体的にどういうことを銀行局長としては考えていらっしゃるのか。それから第三項目に、適正な競争関係を阻害する等金融秩序を乱すおそれがある場合、そういうことがないようにということでありますけれども、これもなかなか内容的には抽象的でありますし、四番目は、合併、転換後の業務が的確に遂行される見込みが確実であるということでありますから、これはある意味では大前提になると思うのでありますけれども、いずれにせよ、これは新金融効率化行政の中である程度具体的な肉づけをする、これを銀行局の中ではっきり関係金融機関に指し示すことが、いま住友銀行と関西相銀の間で起こっているような、関西相銀側の組合は絶対反対だ、白紙に戻せというような混乱を起こさないことになるのではないかという気がするわけであります。その肉づけについて若干御意見をお伺いしておきたいと思います。
  46. 徳田博美

    ○徳田説明員 先生御指摘のとおり、現在金融機関は非常に厳しい環境に置かれているわけでございまして、預貸し金利ざやが逆ざやの金融機関も出ているわけでございますけれども、これは単に一時的な現象では必ずしもないわけでございまして、安定成長経済への移行の過程において金融構造自体が大きく変わっているわけでございます。金融機関自体、公共部門への資金供給あるいは個人部門への資金の貸し出しというような、金融機関の経営面から言えば必ずしも、収益性の面では一般の貸し出しについてよりどちらかというと劣るようなものにも融資をしなければならないわけでございます。こういう意味で、金融機関自体の経営の効率性というのは非常に強く要求されているわけでございますが、これと同時に、オイルショック等を契機といたしまして企業批判がいろいろ出たわけでございますけれども、やはり金融機関自体、経済社会が金融機関に何を求めているかといういわば社会的公共性からの効率性を求めていくことが今後の経営にとって必要なわけでございます。こういう意味金融機関は、金融機関自体の経営の効率性と同時に、経済社会全体の論理からする経営の効率性というものを追求しなければならないという二重の非常に厳しい情勢に置かれているわけでございます。  こういう状態に対しまして大蔵省といたしましても、適正な競争原理を導入いたしまして、大いに厳しい自主的な企業努力をしてもらうことを考えておるわけでございます。その過程においてはやはり経営効率の劣る金融機関も出てくるわけでございまして、もちろんこれに対しては厳しい自己努力が必要になるわけでございますけれども、置かれた融資基盤等において限界のある場合には、そういうものを抱いていくようないわゆる護送船団的な行政はもはや社会的に許されないと考えられますので、場合によっては提携であるとか合併であるとか、そういうことも必要になるということを考えておるわけでございます。ただしかし、合併の問題は、合併される金融機関の従業員なりあるいは取引先にとっては非常に重要な問題でございますから、どこまでも金融機関相互の自主的な合意が必要である、このように考えておるわけでございます。  そのように自主的に合意が行われた場合の大蔵省としての対処の仕方でございますが、先生御指摘のとおり、金融機関の合併及び転換に関する法律第六条に審査の項目が並べてあるわけでございまして、その第一は、合併が「金融の効率化に資するものであること。」つまり合併することによって金融機関が、規模の利益等もございますので、経費率、人件費率、物件費率等がだんだん低下いたしまして資金コストが安くなる、したがって、取引先に対して低利の良質な安定的な資金を供給できるようになるということが見渡されることが第一の条件でございます。  第二の条件は、合併により「当該地域の中小企業金融に支障を生じないこと。」ということでございまして、これは非常に重要な項目でございます。要するに、従来の取引先であった中小企業に対して合併後むしろより円滑な貸し出し、金融ができるようになることということが一つの大きな条件でございます。この場合、仮にでございますが、都市銀行と相互銀行との資金コスト、貸出利回りを比べますと、都市銀行の場合には現在、五十三年六月現在で五・七五%でございますし、相互銀行は七・二六%でございます。もちろん中小企業貸し出しがこのとおりの金利とは限らないわけでございますけれども、一般的に考えられれば金利の低下が期待できるわけでございまして、取引先に対する金利の低下が期待されるわけでございます。あとは、量的な面におきましては、これは従来以上に円滑に確保することができるかどうかということ、これが一つの大きな審査の要点になるかと思います。  それから三番目の「合併又は転換が金融機関相互間の適正な競争関係を阻害する等金融秩序を乱すおそれがないこと。」という点でございますが、合併によって仮にその地域の金融機関に寡占化が行われることになりますと、これは適正な競争を阻害するわけでございますので、そのようなことがないようにということが第三番目の着眼点でございます。  それから第四番目は、その金融機関が合併後に行おうとする「業務を的確に遂行する見込みが確実であること。」これはある意味では当然のことでございますが、なおこれに関連しまして、合併後の従業員、役職員の処遇の問題につきましても、これは審査についての大きな基準になるわけでございまして、従来のこのような合併の場合には、合併前に組合との間で合併に関する協約書がつくられるのが通例でございます。その項目といたしまして通例挙げられておりますのは、合併の前後を問わず合併を理由とする退職勧告、人員整理及びその他の不利益行為を行わないということであるとか、あるいは新しくできた金融機関の人事上の処遇については公平かつ適正に行い、出身金融機関による差別を将来にわたり行わないということであるとか、あるいは合併後の人事配置の基本方針については事前に組合と協議するとともに、店舗の統廃合に伴う人事異動については本人の事情を十分に配慮するということであるとか、さらには合併に伴う従業員の不安解消、労働強化の排除等について十分に対処する、このような協定については合併後の組合にこれを継承するというような協定書がつくられるのが通例でございます。  そのほか法律に規定しております基準といたしましては、同種の金融機関相互間の合併を妨げないというような事項もございます。それからそのほか、公益上必要ある場合にはその必要な限度においていろいろな条件を付するということがあるわけでございます。たとえば必要な場合には中小企業金融に対する比率について条件をつけるとか、そのようなことも考えられるわけでございます。  いずれにいたしましても、合併の認可に当たりましては、従前の取引先、特に中小企業に対して従来以上に取引を円滑にするということ、それから従業員の処遇の問題、このようなことが認可に当たっての審査の大きな事項になるのではないか、このように考えております。
  47. 佐藤観樹

    佐藤(観)委員 ということは、大蔵省としても新金融効率化行政を進めるためにより合併、転換を促進をさせるような行政介入と申しますか、それはしない。そして、いま局長から御説明あったようなことを踏まえて、本来はこれは当事者間の問題でありますので、たとえば住友と関西相銀の場合には、関西相銀の労使と申しますか、この間で円滑にいかなければその次に合併しても円滑にいくわけがないのでありますから、それがまず基本である、こういうふうに認識しておいてよろしいわけですね。
  48. 徳田博美

    ○徳田説明員 先生御指摘のとおりでございまして、行政当局といたしましては、個別の金融機関の合併について、全くそれに手を触れることはないわけでございまして、どこまでも当事者間の自主的な合意に基づいて行われるべきものと考えております。ただ、ただいま申し上げましたように、金融機関の置かれております環境は非常に厳しいわけでございますので、五年、十年先を考えまして経営者なりあるいはその金融機関が戦略的な見地から判断をするのであれば、これは前向きに考え検討したい、このように考えておるわけでございます。
  49. 佐藤観樹

    佐藤(観)委員 最後になりますけれども、国税庁にちょっとお伺いをしておきますけれども円高差益を国民に還元するという問題ですね、これは還元の仕方にはいろいろ論議があるところで、同僚委員から後であると思いますけれども、その差益の還元の問題と同時に、還元できるというものは、たとえば電力、ガス、こういったかなり額が大きなものでなければ具体的にできないと思うわけです。しかし片方では、前半に討議をしたように、円高のためにつぶれていく業界あるいは会社、企業があるということで、円高メリットだけをぬくぬくと享受をしている企業もあるわけですね。これはあの狂乱物価のときのように、輸入価格は下がったけれども小売価格は下がっていないというものについてはかなり厳しく調査に入ってもらってやるということは、私は非常に重要なことだと思いますし、早くも国税庁の方でその態勢をとられたことを大変よかったと思うのでありますけれども、いまのそうでなくてもなかなか人員的にも苦しい中で、いろいろ考えてみますと、業種が大変多きに上るのですね。したがいまして、調査が非常に複雑になると思うのであります。これは日々の為替の問題とも関連をしてきますので、大変複雑な調査になると思うのでありますけれども、いま言ったように国民も、もし円高差益が国民に還元をされないならそれはひとつ税の方に還元をしてもらいましょうということは、まさに国税庁の出番だというふうに私は思うのでありますけれども、果たしてそれだけの態勢が十分整うかどうか、その点についてだけお伺いをして、私の質問を終わりたいと思います。
  50. 磯邊律男

    磯邊説明員 確かに先生おっしゃいましたように、これはかなり膨大な、また複雑な調査になることは事実でございます。このために、去る八月一日の国税局長会議で、円高差益を享受している課税の充実につきまして指示したところでありますけれども、その後の八月八日に国税局の調査査察部、直税部の担当の課長を招集いたしまして、綿密な打ち合わせをいたしました。  この内容によりますと、まず第一に、最優先業種として私たちが取り上げたいと考えておりますのが、石油精製卸売業、それから電気供給業、ガス供給業、この業種でございます。これにつきましては、九月から早急に全国の国税局におきまして調査にかかります。もちろん東京局あるいは大阪局等ではすでに年度当初から調査にかかっておりまして、それなりの課税の実績を上げているところもございますけれども、いま申しました業種につきましては、九月以降十二月までに優先的にこれの調査に取りかかるということにしております。  それから、その次に優先的に取り上げます企業といたしましては、外為業務の特に取り扱い高の多い銀行業、証券業、さらにまた貿易業、この三業種につきまして次に重点的に取り上げるということで、これはそれぞれ各国税局管内におきまして一業種以上事業年度中に調査を完了するということにしております。  その次のカテゴリーに属します企業といたしましては、たとえばコーヒー豆あるいは輸入化粧品、それから高級輸入品、そういったものを取り扱っておる業種につきましては、これを追跡調査をしていく。それによって、円高の利益というものがどういったところで享受されているかということを追跡いたしまして、その課税面に反映していきたいということを考えておるわけでございます。  いずれにいたしましても、その調査もなかなかむずかしい調査をいたさなければなりませんし、事務量もかなり食うと思いますので、各国税局間相互の連絡、それから中間検討会等を適宜開催いたしていきたい。それから国税局と税務署との間の連携調査、こういったことも組み合わせまして、いわゆる円高の利益を享受している企業につきましては、課税の充実を図ることによって、これを税収として国庫に収納さしていただきたいというのがわれわれの基本的な考え方であります。
  51. 大村襄治

    大村委員長 次に、只松祐治君。
  52. 只松祐治

    ○只松委員 時間がございませんので、ひとつ簡単明瞭にお答えをいただきたいと思います。  当面する経済の問題で大事な問題は、国際的には円高、いわゆるドル過剰の問題であります。国内的には不況克服の問題であろうかと思います。そういう中で臨時国会を迎えようとしておるわけでございます。  先ほど同僚の佐藤君も補正予算の問題について触れたわけでございますけれども、どうもさっきの大臣の答弁ではあいまいもこといいますか、はっきりしないわけです。当初福田さんは、いや九月初旬だ、中旬だということで、いまでも下旬ということをおっしゃっておらないわけでございます。そういたしますと、二十日前後しか日程がない。大蔵当局としては当然もう詰めの段階に入っておらなければならない。あいまいもこたる答弁で済まされる時期ではない。仮に二十五日といたしましてもすでにもう具体案ができ上がっておらなければならない、こういうことだと思いますが、臨時国会との関係でいかなる作業を進めておられるか、具体的な御答弁をいただきたいと思います。
  53. 村山達雄

    村山国務大臣 簡潔に申しますと、九月二日の経済閣僚会議までに大綱を決めたいと思っております。第一・四半期のQEが確定する日でございます。  詰め方は二つやっておるわけでございまして、円の為替レートは動いておりますけれども、今年度一体平均的にどれぐらいになるのか、そこが一つのポイントであろうと思います。そのことによってどれぐらいの新しいデフレギャップが今年度生ずるのか、これが一つの作業であろうと思います。  それから片方は、積み上げ計算でございまして、一体いかなる施策があり得るか。これは公共事業のみならず、いわゆる総理の言っている「第三の道」と言われるような文教とかあるいは社会厚生関係その他もろもろのものでございますけれども、そういったもので景気回復に役立つものが一体どれぐらいあるのか。それからその財源。こういう両方から作業を進めてまいりまして、最後に九月二日のあたりでおおよそのところのアウトラインを決め、それから細かい作業に入って、もし臨時国会が開かれるとすればそれに間に合わせるようにやっていきたい、かように準備を進めておるところでございます。
  54. 只松祐治

    ○只松委員 急いでやれば何日までにできますか。
  55. 村山達雄

    村山国務大臣 なかなかむずかしいわけでございまして、九月二日は恐らく大綱が決まるだろうと思いますが、それから作業をいたしまして九月二十日過ぎ、月末二十日から三十日の間ぐらいじゃなかろうかという感じがしております。
  56. 只松祐治

    ○只松委員 そういたしますと、本当は官房長官でも呼んできて臨時国会論議をやればこれはおもしろいと思いますが、臨時国会も十五日や二十日ごろには開かれない、少なくとも月末にならなければ、とにかく補正予算を伴わない臨時国会なんてナンセンスでございますから開けないということが、一つは明らかになると思います。  その内容について本当は論議したいのですが、私はその内容よりも、当面問題になります内容の前提をなす問題を一、二論議したいと思います。  主として為替差益の問題を論じたいと思いますが、私は、こういう問題を論議する場合に、経済全般を見渡してもそうでございますが、大胆にといいますか、あるいは発想の転換を必要とするのではないか。いままでの大蔵省なりあるいは自民党の経済政策、これをいまのままで推し進めていっても、景気の浮揚あるいはドル減らしということはそう簡単にできない。これはもう二年も三年もやるやると言ってきてドルはたまる一方で、こういう状態になってきていることは私が申し上げる必要もないわけです。あるいは景気浮揚させると言いながら景気は一向によくなっていかない、進むのは増税とインフレーションである、こういうことも私が指摘してきておるとおりでございます。  そういう中で、私がいま述べました両方に共通する問題として、いわゆる国内消費の増大、内需の拡大ということが私は一番大事だと思うのです。いままで公共投資優先におやりになりました、あるいは私たちと違う意見でおやりになりましたけれども、いまはもう皆さん方いろいろ抗弁されますが、皆さん方がいままでやってこられた政策というのは行き詰まってしまっておる、こう言っても過言ではない。そういう中で、一番具体的にそれを拡大していくのは、円高差益の還元の問題と減税の問題だと私は思います。いろいろ抽象的に言われます。あるいは理論的に言われますが、円高差益をどう国民に還元してくるか、それから減税をどうしてくるか、これは私が申し上げるまでもなく、国際会議にいつも出ておられる大蔵大臣は御承知だと思います。諸外国においてとっておる手段は、一番具体的な緊急な手段はそうです。国民が要望しておるのもそういうことだと思います。  そこで、まず円高差益についてお尋ねいたしますけれども、いまこの二、三日ちょっと安くなってまいりました。あるいは午後の日銀総裁にお尋ねしようと思っておりますが、スワップの発動その他によりまして多少円安になるかもしれませんが、そういう一時的な現象は別といたしまして、このままで進んでいけば円高は幾らまで一番上がるだろうか、ひとつお答えをいただきたいと思います。
  57. 村山達雄

    村山国務大臣 率直に申しますと、どれぐらいになるかというのは実はよくわからないのでございます。しかし、さきにも申し上げましたように、私はもうすでに実勢から申しますと、割高に来ているのじゃないであろうか、いま動いているのはもっぱら心理的な要素で動いているように私には見受けられます。したがって、ちょっとしたニュースが入りますとすぐ下がってみたり上がってみたりということで、そういう心理的な要素が大きく動いておるのでございます。しかし、底値感が来ておりますので、もう平均いたしましてこれ以上上がるというようなことはちょっと考えづらいところではなかろうか。的確に幾らになるかということは、為替市場の話でございますのでわかりませんし、また言うべきではなかろう、かように考えているところでございます。
  58. 只松祐治

    ○只松委員 この前私が論議したときは、大体二百二、三十円のところでございました。そのとき、恐らく二百円を下がることはあるまい、百五十円台になることはないだろう、こういう話でございました。いま百八十円から百九十円になっておる。いまはわからないということでございますし、大蔵大臣の答弁はいろいろ影響を及ぼすわけでございますけれども、一説には、極論は百二十円、そうでなくても百五、六十円ぐらいまで行きはしないか、こういうことを言われておりますが、これは絶対的に否定をされますか、あるいは場合によってはそういうこともあり得る、こういうふうにお考えになりますか。
  59. 村山達雄

    村山国務大臣 やはりいまは割高感が来ておりますし、それから、アメリカ自体がいまのような政策態度に移りつつありますので、おっしゃるようなことにはならぬのではなかろうか、これだけは言えるのではないかと思っております。
  60. 只松祐治

    ○只松委員 時間がありませんから論争はそのくらいにいたしまして、たとえば百九十円に終始したといたしますと、去年の平均が二百五十八円でございます。したがって、去年より六十八円の差があります。本年度の通関予定八百十億ドルというものをこれに掛けますと、五兆四千四百八十億円。前回も私はこういう数字を示したわけでございますが、大体五兆円を突破するということになります。  ここに通産省、見えておりますか。それから経済企画庁でもいいですが、そのことをお認めになるかどうかということと、石油、電力、ガス、こういうところの実績はすでに出ておりますが、主な差益の予測というものをお知らせいただきたいと思います。
  61. 藤井直樹

    ○藤井説明員 先ほど御質問になりました円高差益全体の額でございますが、五十二年度につきましては、前回のこの委員会でお答えいたしました数字、二兆四千億というのがございますが、大体その辺だろうと思います。それから五十三年度につきましては、前提としてことしの通関輸入の見通しを根拠にいたしまして、レートの方は、ただいま先生、百九十円とおっしゃいましたけれども、私どもとして四−六は実績、それから七月以降は二百円程度のレートで推移するというふうに見ました場合に、約四兆三千億円になります。  それから個別の物資で申し上げますと、電力につきましては、五十二年度九百二十五億円、それからガス、三社でございますが百六十億円、五十三年度につきましては、電力が二千六百五十億円、ガスが四百億円ということになります。石油につきましては、私どもいま五十二年度数字を持っておりますが、八千百億円程度ではないかと思います。
  62. 只松祐治

    ○只松委員 実際上出てくる各企業の利益、これをどう還元していくかということの一つのポイントに、時間がありませんからあれですが、皆さん方は公益企業ですから企業会計調査なさっておるわけですね。かつて私が原価計算をただしたときに、古い話ですから言いますが、とにかくそれ以上やめてくれ、私のこれがある。これは何か。いや、普通の首じゃなくて生首が危ない、こう言って公益企業局長に泣きつかれたことがあります。今日は大分民主化をいたしたりいろいろしておりますから、そういうこともないと思いますが、大体電力とかガスは一年間に一日だけ抽出をして、その企業実績、本当の原価というものを出しておる、こう聞いておりますけれども、現在でもそういうことでございますか。いかなる原価計算をなさっておるか、お聞きをしておきたいと思います。
  63. 豊島格

    ○豊島説明員 電気及びガスの料金査定につきましては、過去の実績とか将来の見通しあるいは為替の問題を含めまして、たとえば何カ月前までとかあるいは実際に取引される原価の見通しをつくりまして料金をはじいておるわけでございまして、一時点のものですべてやっておるというふうには申されないのではないかと思います。御質問の趣旨を私が十分に理解できていないとすれば、もう一度伺いたいと思いますが……。
  64. 只松祐治

    ○只松委員 いま円高差益をやっているわけですが、円高差益とちょっと離れて、企業の原価計算を出すときに、その企業が本当に幾ら使っているかということで全部のものを詳細に調査するわけにはいかない、これは膨大なものですから。したがって、三百六十五日のある一日のものを抜いて、その日に支出したものを調査する、こういうことがかつてとられておったわけですね。いいですか、現在もそういう調査方法でありますか。たまたまその日に使っておるものがあったり使ってないものがあったりいろいろあるわけですから、いわばきわめて不完全な調査によって企業の原価計算が、したがって皆さん方からすれば監査が行われておる、こういうことを私はかつて指摘したことがあるわけなんですが、現在もそういうきわめて不徹底なものでありますかどうかということだけをここで聞いておきたい。
  65. 豊島格

    ○豊島説明員 そのように、たまたまある一時点のものだけをとってやっておるわけではございません。
  66. 只松祐治

    ○只松委員 また別な機会にこの原価計算の問題は聞きたいと思いますが、とにかくこういうふうに為替差益というものがいろいろ出てきております。この利益をどう処分していくかということが当然問題になって、国民的な一つの世論になってきておることは御承知のとおりでございます。  これは差益の会計を明らかにすること。いま通関実績なりそういう面から一つの為替差益をはじき出したわけでございますが、たとえば石油等で見ますと、今度は売り値が幾ら安くなっているからとかなんとかいろいろなことで、膨大な帳簿でございますから、これを捕捉することは国税庁といえどもなかなか容易ではないわけでございます。まして他の大蔵省や通産省というところで調査をするということは困難である。一説には、円高差益をいかに隠すかという隠し、あるいはそのための臨時ボーナスというようなものが支出されておる。いわばきわめて恣意的に企業が使っておるし隠しておる、こういうことも言われておるわけでございます。そういうことを考慮いたしますと、とにかくいかに円高差益があるかということを確実に捕捉する、把握することが一番大事だと思います。この捕捉の上に立ってその円高差益をどう処理するかということが、次に問題になってくるわけでございます。  その一つとして還元の方法があるわけでございます。あるいはまた、会社臨時特別税を復活いたしまして、オイルショックのときにやったように特別の税制をとる、あるいは電力労組等が言っておりますように、金額を明確にした上に社会資本の充実、地下埋設等にする、あるいはさっき国税庁からもお話しになりましたけれども、税として補足していく、いろいろな方法があるわけでございますけれども、いま一番国民が望んでおるのは、少なくとも電力、ガスに関する差益の還元でございます。  このことにつきまして、まず私は本来ならば、諸外国に見られるように、たとえばフランスあたりはきのう石油の引き下げ等を政府みずからやっておるわけでございますが、小麦の輸入によりまして昨年度百七十億、本年度約二百七十億円の円高差益が見込まれておるわけでございますが、政府といたしましては、この小麦の問題に手をつける意思があるかないかということを前提といたしまして、他の差益還元にいかに対処するか、大蔵大臣から概要を御説明いただき、続いて、物価局ですか調整局ですか経済企画庁の方針なり、あるいは通産省の公益事業部の一つの考え方をお聞かせいただきたいと思います。
  67. 村山達雄

    村山国務大臣 ごく抽象的に申しまして、いわゆる円高差益というものが市場原理を通じて還元されることが望ましいと考えております。そして、現に卸売物価あるいは消費物価等が低下しておるあるいは上がらないという中に円高差益が還元されているということが、われわれは如実にわかるわけでございます。  なお、円高差益の還元の問題につきましては、従来経済企画庁を中心にしまして三回調査をいたしまして、そして四分類に分かちまして発表いたしたところでございますが、今後は監視制度をつくりまして、そして円高差益状況がどのようになっているかということを毎月公表し、側面的に円高差益の還元について市場原理を働かせるように心がけておるところでございます。  個々の物資につきましては、それぞれ所管省がございまして、円高差益の還元の方法にはいろいろなやり方があるわけでございます。直接ストレートにやるのか、あるいは原価計算の中で値上げを抑えていくのか、それぞれの市場原理の具体的な働かせ方につきましては、それぞれの所管省が持っております。一般的に申しまして、いずれにしても、市場原理を通じて何らかの形で還元されることが望ましい、このように思っているところでございます。
  68. 只松祐治

    ○只松委員 ほかの省が答える前に……。  市場原理とおっしゃいますけれども、ガス、電気料金では公共料金ですから、市場原理が動かないことは百も御承知のはずでございます。したがってどうするのだという、そのガス、電気について聞いておるわけでございます。どういうふうにするか、具体案をまだお持ちでなければ、方向なり感想だけでも、ひとつ大蔵省の感想としてお述べをいただきたい。
  69. 村山達雄

    村山国務大臣 公共料金と申しましても、やはり大きな目では市場原理が働いていると私は思うのでございます。長期的に。  二つの考え方が言われておりまして、それは、原価計算というものは大体二年ぐらいの長期間を見越してやるのであるから、むしろ将来上がるべき公共料金を二年間ないしそれ以上抑制するという形で還元すべきであるという議論と、いやそうでなくていま直接還元した方がいいのだ、こういう二つの議論があると思っております。通産省の方では、私の承知する限り現在までのところは、電力料金の持つ影響からいいまして、原価を据え置いた方がより還元の仕方として効率的ではないかという見解を持っておられると承知しております。最近までのところはそのように思っておるところでございます。私は、いずれの方法もそれぞれ一つの見識のある考え方であろう、やはりこの問題は今後詰めていくべき問題であろうと、かように思っております。
  70. 只松祐治

    ○只松委員 いずれの方法もといまおっしゃいましたけれども、差益還元、国民に直接還元するということも一つの方法である、こういうふうにお考えであると確認してよろしゅうございますか。
  71. 村山達雄

    村山国務大臣 直接直ちに民需電力なりあるいは事業電力なりに還元するという方法もありましょうし、あるいはそれをやりましてもわずかな金額にしかならないとすれば、むしろ将来上昇過程にあるところのコストを抑えることによりまして、そして還元するという方法、この両方があり得ると思うのでございます。私は、どちらも一つの見識であろう、その問題は所管省でよく詰めるべき問題であろう、かように考えておるのでございます。
  72. 只松祐治

    ○只松委員 いずれにしても還元というふうに理解してよろしゅうございますか。
  73. 村山達雄

    村山国務大臣 そのとおりだろうと思います。
  74. 只松祐治

    ○只松委員 それではほかの省ひとつ……。
  75. 藤井直樹

    ○藤井説明員 円高によりまして輸入品価格が下がる、それによってコストも下がってまいりまして、企業に利益が出るという場合、やはり予期せざる理由によって出てきたものであるという点から見まして、これは基本的に還元すべきものだと思います。  ただ、輸入物資の中でも生産財のようなものは、非常に売り手と買い手の力関係から見ますと買い手も強いわけでございまして、十分情報を持ったままで価格の取り決め交渉ができるということもございますので、市場の取引、市場メカニズムの中でその価格に反映していくということが期待されるわけでございますが、輸入消費財の場合につきましては、これは消費者が非常に情報に乏しいということもございます。そういうこともございますので、昨年から三回にわたりまして輸入品価格の動向を調べまして、輸入品価格の下がったものが末端の小売価格にどう反映しているかということを調査してまいったわけでございます。この点につきましては、さらにその深度を深めまして、八月以降全国的な調査、監視をするということで、現在その準備を進めておるところでございます。  また、政府が関与するものにつきましては、政府が関与するにはそれだけの背景があるわけでございますが、そういうことで、各それぞれの料金、価格の特殊性を考えましてそれに対応していくということでございまして、その中の一つとして、電力、ガスの場合は長期据え置きという方法をとっておりますし、御指摘になりました小麦の問題につきましては、五十二年の麦価の取り扱いにおきまして、昨年の十二月の米審におきまして据え置きということになったわけですが、その段階では円高がいまおっしゃったように百七十億ほど差益として見込まれたわけでございます。他方、非常に米の過剰な状況でございまして、麦価の問題というのは消費者米価と非常に大きく関係いたします。そういうことで、米価との関係も考えますとむしろ値上げすべきではないかというような意見もかなりあったわけでございますが、その両方の観点を総合的に検討いたしまして、五十二年の麦価につきましてはこれは据え置きということにしたわけでございます。五十三年につきましては、現在進行中でございますが、消費者米価との関連、それから最近の円高でまた差益がふえているという状況考えまして、これから政府部内で検討していきたいと考えておるわけでございます。
  76. 豊島格

    ○豊島説明員 ただいま大蔵大臣一それから企画庁の物価局長から、電力についても触れていただきましたので特につけ加えることはないかと思いますが、若干説明さしていただきますと、電力につきましては、五十二年度九百二十五億、五十三年度二千六百五十億という差益が一応出るわけでございます。ただ電力につきましては、電源開発の促進ということで、大体いまつくっております発電所というのは石油ショック以前の三倍ぐらいになるわけでございまして、これが年々入って稼働いたしますとコストがふえるということでございまして、現在の料金は大体五十一年度、五十二年度二年間の原価を前提としてやっておりますので、五十三、五十四年度になりますとそういう原価増高は現在の料金ではカバーできない。したがいまして、四月の閣議決定ございましたように、為替差益の還元ということは、当然国民に還元されるべきものであるということについては全くそのとおりでございますが、その方法として、五十三、五十四年度本来上げられる料金を据え置くということによって基本的に還元するということにいたしたわけでございます。  もちろんその後の為替の値下がりでさらにいろいろなことが考えられるわけでございますが、現在日本の置かれておる経済というものを考えますと、民間投資が促進されないで景気がなかなか浮揚しない、あるいは黒字があるということで、そういう方面で国民全体に還元したいということでございます。  なお現在、五十二年度で出ました差益につきましては、別途積み立てということをさせまして、結局料金の安定化に充てるということでございますので、いずれにしても、それがむだ遣いされるのではなくて消費者に還元されるということにおいては全く変わりがないし、厳格に還元させるようにさせたいと思っています。
  77. 只松祐治

    ○只松委員 時間がありませんので残念でございますが、国民、消費者に還元するという原則はお認めをいただきましたので、ぜひひとつその趣旨に基づきまして、わが党、各方面からいろいろ具体案が出ておりますので、検討して還元をしていただきたいと思います。  なお、補正予算を組まれるとどうしてもその財源として公債の問題が出てまいります。この公債の問題も本当は少し突っ込んで聞きたいのですが、減税の問題、それから公債の問題というのは、補正予算と関連してきわめて重要になってくる。減税をどうしてもやっぱりしなければならぬでしょうね。これは幾ら大蔵大臣ががんばっても何らかしなければならない。これをする、しないにかかわらず、公債というものは補正予算を組むと発行せざるを得ない。ところが現状は、公債は若干下落をし始めておりまして、この公債の発行の仕方いかんによっては、暴落までいかなくても相当下がってくるということが見込まれるわけでございます。こういう問題等を考えた場合に、私は先ほど大きな政策の転換、発想の転換をしていかなければならないのではないか、こういうことを申し上げたのですが、残念ながら時間がございません。  そこでこの公債について、午後から日銀総裁がお見えになりますので、これはそっちに譲るといたしまして、最後に大臣に一つ、消費税は、これも午後から税調会長からお答えをいただきますが、恐らく前向きといいますか、したいという御意向で討議を進められておるし、ほぼ煮詰まってきておるわけでございます。その場合、来年度から実施されるかどうか、こういういわゆるいまの進行状況とあわせて大蔵省のお考え、実施時期等についてお聞かせをいただきたいと思います。  それから銀行局長に、いま一番社会をにぎわしておる一つの問題としてサラ金問題がございます。これにつきましても、本当は時間があれば論議しなければならないところでございますが、時間がございません。ただ大蔵省としては、金融全般としては関係してくるけれども、直接の所管事項ではない。しかしこのごろは、きょうあたりの新聞を見ると、相互銀行あたりもサラ金に手を出す、こういうことになっておりまして、これは金融一般問題の中に、大蔵省所管事項にも本格的に関連してくる問題になるだろう。そういう段階においていかなる指導をされておるか、あるいは今後指導をしようとしておるか、規制通達その他を出すというふうなうわさもありますが、そういう点はどういうふうであるかということをお聞きしておきたいと思います。
  78. 村山達雄

    村山国務大臣 一般消費税につきましては、いま二段構えで進んでいるわけでございます。  一つは、一般消費税をおこすとして、それはどういう税制上の構造を持つものであるかということをいま特別部会で鋭意検討しておりまして、九月中旬までに総会に報告していただく。総会の方がいずれその点を発表いたしまして、国民各層における御批判を賜りまして、そして一般消費税の構造そのものについて国民的な合意の得られるものにしたい、これが第一段の作業でございます。  いつ導入するかという問題につきましては、五十四年度税制改正の答申を別に予定しておるわけでございます。その際に、来年度以降の経済情勢あるいは財政状況、こういったものを見まして、来年度導入するかどうか、それは来年度税制改正の答申をいただいて、実施に移すかどうかを決めてまいりたい、かように考えております。  全般の見通しといたしましては、もうしばしば申し上げておりますように、一般的な負担の増加というものは、やはりサービスの向上が望まれる。しかも公債がこれだけ出ておる国はございません。したがって、財政健全化、そのことはすなわち将来の経済の健全性につながる問題でございますので、私は避けられない問題だと思っております。しかし、そのタイミングその他につきましては、やはり慎重な考慮を要しますので、先ほど申しましたように、来年度予算編成の際に、来年度の改正という形で答申をいただいた上で決めたいと思っておるのでございます。
  79. 徳田博美

    ○徳田説明員 お答えいたします。  貸金業者に関する問題は、先生御指摘のとおり、非常に大きな社会的問題でございますので、現在貸金業の実態につきましての実態調査を各都道府県を通じて行っているところでございまして、これは恐らく九月中に発表ができることになると思いますけれども、こういうものを踏まえまして、現在各省庁連絡会議において検討中でございます。これは法律改正を含めまして、基本的な問題の処理方針について現在検討が行われているわけでございます。  もちろんこれに関しまして大蔵省といたしましても、大蔵省としてできる範囲のことにつきましては、法律改正を待たずにいろいろな手を打っていきたいと考えておるわけでございまして、庶民金融業協会の連合会は大蔵省の監督下に属しておりますので、これを通じまして通達その他によって指導を行っていきたいと思っております。  それからより根本的には、一般の民間金融機関において消費者に対する金融をもっと促進することが大事でございますので、この点につきましては御承知のとおり、都市銀行においてカードローンの方式か開発されまして、積極的な融資に乗り出しておりますけれども、さらにほかの一般の相互銀行、信用金庫についても、信用保証機構その他の整備充実を通じまして、一般の消費金融を積極的に進めるよう指導してまいりたい、このように考えております。  なお、先ほど御指摘のございました相互銀行の間におけるそういう貸金業者と申しますか、消費金融を行う会社の設立問題につきましては、現在相互銀行協会において検討を始めたところと聞いておりますが、その場合には、当然利息制限法の範囲内で貸し出しを行わせることになると思いますので、そのいうことを踏まえまして、正式に案が固まりましたら検討してまいりたい、このように考えております。
  80. 大村襄治

    大村委員長 午後零時四十五分に再開することとし、この際、休憩いたします。     午後零時二十六分休憩      ————◇—————     午後零時五十一分開議
  81. 大村襄治

    大村委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  国の会計税制及び金融に関する件について調査を続けます。  ただいま税制に関する件について、参考人として税制調査会会長小倉武一君が御出席になられております。  小倉参考人には、御多用中のところ本委員会に御出席を賜り、まことにありがとうございます。  質疑を続行いたします。只松祐治君。
  82. 只松祐治

    ○只松委員 どうもたびたび御苦労さまでございます。  いまの税調は、日本の財政はもとより経済全体が大変になっておるわけですから、当然と言えば当然でございますが、かつてなく重大な役目を担っておられるわけでございます。  そういうものの最も具体的な例といたしまして、いま直接税が七〇%ぐらいになっておりますが、直接税、間接税の多い少ないの是非は別といたしましても、間接税移行への税制が論議されておる、いわばこれはシャウプ税制以来の大きな税制の転換、変動でもあろうかと思います。そのときに会長をお務めになっておる小倉さん、きわめて重責であります。以下、限られた時間でございますが、御質問をいたしますので、ひとつぜひ明確なお答えを賜りたいと思います。  まず、現在の税調の進捗状況ともいいますか、どこまで来たかというようなこと、それから、大体九月十二日ということが言われておりますけれども、それまでに成案ができるのかどうかということにつきまして、ひとつ簡潔にお答えを賜りたいと思います。
  83. 小倉武一

    ○小倉参考人 一般消費税につきましての審議の状況でございますが、六月あるいは七月から一般消費税の問題を取り上げまして、八月八日に総会でもちまして特別部会を設けて、この部会で一応の素案をつくるということにいたしておりまして、先週の火曜日、第一回の会合があったわけであります。  八月八日の総会でのおおよその見当といたしましては、この部会でもちまして素案ができますれば、また総会にそれを御披露し、総会の御意見も聞き、また特別部会で審議を重ねるというようなことで、きょうからは毎週二回、九月十二日まで特別部会あるいは総会を開くという予定にいたしております。まだ序の口でございますが、今後数回ございますので、一応の目途としまする九月十二日には特別部会の素案を総会に披露できるのではないか、こう考えております。
  84. 只松祐治

    ○只松委員 その内容は、端的に言えば、答案を出すということだけですか、それとももっと具体的に言えば、来年度、五十四年度から実施してもらいたい、こういう内容を含むものでありますか。個々の内容はまた順次お尋ねをいたしますけれども、これはきわめて大きな国民の関心を呼ぶ問題でございますから、実施の時期についてまでお触れになりますか。いかがでございましょうか。
  85. 小倉武一

    ○小倉参考人 九月十二日に予定しております特別部会の報告、これを受けて総会でどう処理するかということはまだ予断を許しませんが、いまのところの見込みといたしましては、特別部会の報告を受けて、特別部会の一般消費税に関する案として世の中に問うというようなことになるのではなかろうかと存じております。総会でどういうように処理されるか、まだいまから申し上げるわけにもまいりませんけれども、おおよそそういうようなことでいくのではないかというふうに考えております。したがいまして、税制調査会として一般消費税の大綱なり原案というものはこういうものであるというようなことを政府に答申するというようなことにはなるまいというふうに考えております。一遍特別部会の案を総会として世の中に問うて、よろしいという段階を経まして、さらにまた次の段階としまして、来年度税制をどうするかということは追って審議しなければならぬのだろうと思いますが、その際、一般消費税の取り扱いをどうするかということはまた、そのときの財政なり経済なりの状況あるいはその来年度見通し等を踏まえて、政府・与党あるいは国会での御議論等を参考にしながら、決定をするというようなことになるのではなかろうかという気がいたします。決定と申しましても、その際、来年度一般消費税を導入すべしという決定が当然あるものとは必ずしも考えておりません。あるいはそういうことになるかもしれませんし、少し先に見送るというようなことになるかもしれませんし、その辺はまだ何とも申し上げかねるわけであります。
  86. 只松祐治

    ○只松委員 課税水準と申しますか、幾らからかけるかということは、これもまた大変な問題でございます。外国も百万だ、三百万だといろいろありますが、日本の場合一つの目安として五百万、一千万あるいは二千万というようなことを言われております。大体いまの論議の中からどういうところに落ちつきそうでございましょうか。
  87. 小倉武一

    ○小倉参考人 いまの免税点をどうするかということは、議題にはなっておりまするし、若干の論議を進めておりますが、まだ具体的に何百万円、何千万円というふうに申し上げる段階ではございません。ただ、趣旨といたしましては、もうすでに御承知だと思いますが、一方において、中小企業というそういう日本の特殊な事情が若干ございますものは除いたらどうかというふうな御意見もございまするし、他方、一般消費税というものの性格上、中小あるいは零細と言われるような業態まで一般消費税の納税義務者にお願いをするということの方がむしろ筋ではないか、こういう御議論・もございます。これは一般の世の中にあるようでございますが、税調の中にもございまして、その間にどういう線を引くか。ただいまのところは、中小というよりは小規模零細の事業者は除くということにしたらどうだろうかというようなことでございますが、さて、小規模零細というのを金額あるいは売上高というようなことであらわせばそこがどれくらいになるのかというようなことは、これからもう少し具体的に討議を重ねた上である程度のめどがつくかと思いますが、これはむしろ一般消費税を導入すべしというふうに税調である程度の心構えをするとき、あるいはそういう答申をするようなときでないと、なかなかはっきりしたことは申し上げられないのではないか。と申しますのは、これからの経済状況がどうなるか、あるいは財政事情がどうなるかというようなことを踏まえませんといけませんので、ただいまのところ、来年度以降についてどうこうするというそういった見通しといいますか、見込み、状況の判断ができませんので、そこは少しなお後のことになろうかと存じます。
  88. 只松祐治

    ○只松委員 確かに全体が固まってこないとそういう具体的な答えはなかなか出てこないだろうと思います。しかし、税調に出されたこの資料を見ましても、二人以内の、いわば夫婦でやっているようなところで八百五十万、こういうあれになっていますね。一人当たり五百三十万。こういう数字一つを見ましても、これはもう一千万以下にかけられますと、いわば全部かかわるということも言われるわけでございます。したがいまして、一千万円以下零細はという、いま除くだろうというような話ちょっとありましたけれども、零細と言えば、駄菓子屋と言ってはなんでございますか、そういうちょっとしたようなところ、月に百万売り上げれば、粗利益二割、本当の利益が一割といたしまして、こういう本当の零細でも一千万超してしまうわけですね。百万円でも一千二百万円になる。こういうことを考えると、当然に一千万円以下というものは金額としては除いていく。後で品目をお尋ねいたしますけれども、そこいらの合意といいますか、あれば国会にお示しをいただきたいものだと思いますが、いかがでしょう。
  89. 小倉武一

    ○小倉参考人 確かにお話しのような金額は一つの有力なめどになろうかと思います。ただ、ECの付加価値税などを見ますと、日本の金にすれば百万円とかあるいは数百万円という程度でございまして、そこをどの程度日本の特殊事情を考えるか、あるいは事務負担といったようなことも考えるか、そこが一つの問題点だろうと思います。ECの付加価値税そのものを余り強調するのもこれはどうかと思います。普通の個人企業といいましても、どちらかというと家族経営的な個人企業、こういうものを頭に置いて、そういうものの中庸といいますか、世の中一般の企業規模から言えば小規模零細、こういうようなところを除くという趣旨で、それを金額であらわせばどういうことになるかということを目下検討いたしておる次第であります。
  90. 只松祐治

    ○只松委員 次に、非課税品目についてお尋ねをいたしますけれども、大体食料品は除く。ところが、食料品といいましても非常にむずかしい。主食一つとりましても、米だけを主食とするか、パンをするか。パンを入れたら菓子パンはどうするか。あるいは病人にとって主食は果物であるという場合もありますね。したがって、主食というものを何に限定するか。また、食料品全般に及ぶ場合にはどうするか。あるいは主食といたしましても、外食や何かするという場合に、外食は米を使うかパンを使うかありますが、それにはどうやって非課税にするかといういろいろな問題が出てくると私は思います。そういう中で、大体主食は非課税になるだろうと思いますが、されるかどうか、その範囲がわかればお知らせをいただきたい。  そのほかに、教育用品、医療用品、あるいは経済政策としての住宅関係、住宅用品、あるいは電気、ガスに関する税金、あるいは印刷、特に新聞に対してやはりするのかどうか。どこの段階でするかはきょうは結構でございますけれども、するか。身体障害者、生活保護者等の扱う用品、こういうものはどういうふうに考えるか。ここまでまだ検討されてないかと思いますが、そういうものに対する概要についてひとつお知らせをいただきたい。
  91. 小倉武一

    ○小倉参考人 非課税の項目あるいは品目でございますけれども、ただいま御列挙になりましたような多くの物については問題が確かにございます。そういうものについてただいま検討しておるわけでございますが、まず食料品でございますけれども、これについては、米だけに限ったらどうか、あるいは米麦に限ったらどうか、そういった意見から、大部分の食料品は除いたらどうか、こういうような意見がございます。その辺をどう処理するかということが今後のことになるかと思いますが、私ども考え方としましては、食料全般に一般消費税をお願いするというと、巷間批判の高いいわゆる逆進性というものが非常によく出てくる。したがいまして、そういう点も考慮してその範囲を決めたらいいんではないかという気がいたしております。  それから教育、医療等につきましては、EC諸国でも多くの国では非課税ということになっておりますようですし、いわば教育というのは基本的な、必要な経費でもございますし、また医療は生命維持のために必要であるというようなことを考えれば、これもどちらかというと課税外にするということが適当ではないかと思います。教育と申しましてもあるいは医療と申しましても、またこれは種々さまざまございまして、そこをどう処理するかということは、もう少し具体的な審議を重ねてからでないと申し上げにくいと思います。  新聞等々となりますと、これはなかなかむずかしゅうございまして、ECの例などを見ましても、若干例が違っておるようであります。  私ども考え方といたしましては、先ほど冒頭に申し上げたかもしれませんけれども、単に物品の生産なり売買のみならず、いわゆるサービス業というものを広く課税の対象にお願いしたらどうか、こういうような考え方でおりますので、非課税の業種ないし品目というのはできるだけ制限的にいたしたい、こういうのが基本的な考え方でございます。
  92. 只松祐治

    ○只松委員 まあ理論闘争と言ってはなんですが、たまたまおっしゃいましたからあれですが、この一般消費税は逆進性が強いと言われております。私たちそう思っておりますが、食料を除くとその点は大分緩和といいますか、低所得者層ほど食料費が高いわけですから、これを相当大幅に除くと一般消費税の逆進性というのは多少薄められると思うのですね。だから、ぜひひとつこの点についてはもう少し突っ込んだ討論をしていただきたいと思います。と言って、決して賛成するというわけではないのです。皆さん方が討論をされておるその内容から見て、この食料というものはもっと突っ込んで討論すべきだ。  それから、私が若干挙げました身体障害者ですが、教育はお答えになりましたけれども、そういう面についてもひとつ御論議を賜りたいと思います。  それから税率は、諸外国でかけておるところは一〇%が多いわけですが、大倉事務次官だったですか、いや一〇%はなくて五%程度でしょうということをどこか財界の会合か何かで述べられたことがあるわけでございますが、税率についてすでに御論議をなさっておられますか、あるいは論議しておらなくても、大体どういうところになりそうであるか、お答えをいただきたいと思います。
  93. 小倉武一

    ○小倉参考人 税率につきましても、まだ深く論議はいたしておりません。と申しますのは、どちらかというと、導入するというある程度の心構えができるような状況になりませんと、具体的に幾らだというわけにはなかなかまいらぬのではないかというふうに考えます。しかしいずれにしましても、一般消費税を導入するという仮定というふうなことで考えます場合も、これはやはり相当の税収にならなければならないということも他方考えなければならぬ。しかし逆に、いまお話のありましたような税率では、物価にどういうような影響を及ぼすかということも考えなければならぬ。こういう両方をにらみまして、そのときに予想されるその後の経済状況あるいは財政事情等を考慮して決定されるべきものであろう、こう存じます。  ECの税率は国によってずいぶん違うようでございますが、低いところで八%、高いところでは二〇%というようなことになっておりますが、どちらかというと、ECの中での低い方というようなことがわれわれの参考になる水準ではないかというような、これは私、私見でございますが、そういう感じがいたしております。  大倉次官が申された五%云々というのは、私も新聞記事で拝見いたしておるわけですが、聞くところによりますというと、これは物価に及ぼす影響が五%というようなことになるような税率は困るじゃないか、こういうような御趣旨のようだったようであります。要するに、税率と物価とは必ずしも直に結びつかないようでございまして、先ほどお話しの食料品等どういうものを除くか、あるいは免税点をどうするか等々ございますので、必ずしも大倉次官が申されたことがじかに税率をそのまま示唆しておるというふうにはちょっと受け取りにくいような気がいたします。
  94. 只松祐治

    ○只松委員 それから、まあこれは関連する事業は膨大ですし、関係する人も非常に多いわけでございます。それで問題になるのは、事務負担の増大といいますか、記帳義務その他当然に起きる。当然それに伴って国税庁も人をふやしたり何かしていかなければならないわけです。国税庁のことはさておきまして、この事務負担の増大をどうやって防ぐか、これはやはり当初から皆さん方考えていただかなければ、こういう方向だけは出したけれども、国民にとってはこれは大変なことになる、こういうことになるわけでございます。  そういう点について、たとえばフランスにおきましては、一種の契約みたいなフォルフェというようなものを採用しておりますね、そういうこともお考えになっていますか。どうやって事務負担の軽減を図ろうとなさっておりますか、ひとつお知らせをいただきたい。
  95. 小倉武一

    ○小倉参考人 ただいまの問題は、確かに非常に重要な検討項目でございまして、税制調査会におきましては、そういう観点も踏まえまして、たとえば免税点をどこに置くか、あるいは累積課税方式ではなくて非累積型の一般消費税を考えます場合に、そこから生ずる事務の繁雑をどういうふうに防止するかといったふうなことも含めまして、実は検討いたしておるわけであります。できるだけ簡便な方法をとる、税法の構成自体できるだけ簡便な方法をとるということとともに、いまお話のございましたようなフランスの方式等も、これは中小の事業者にとっての一つの方法かと思いますが、そういうこともあわせて検討してまいりたい、こう存じております。
  96. 只松祐治

    ○只松委員 官庁用語もそうでございます。社会党の使う言葉もむずかしいとこう言われるのですが、税務署の使う言葉というのは、所得税の申告に行きましてもなかなかむずかしくて、私たちもよくわからないようなこともあるわけです。これだけ大衆的な側面を持つものでございますから、皆さん方としては、言葉そのものを含んだやさしさなり、あるいは同じ文章等にいたしましても、そういう点に関しては十分ひとつ配慮をしていただきたい。これは何も消費税だけでなくて、私はときどき言っているのですが、税法全体ももう少し簡便化というか、簡素化というものを、別な機会にまた申しますが、御考慮いただきたいと思っております。  それから、この税金を目的税にするかどうか。国民の反対が非常に強いことは当然でございます。したがって、その切り抜け策のために福祉目的にしたらどうだというようなことも一部に言われておるわけでございますが、そういう方向に行くのかどうか、いやそんなことはだめで一般的なものだけだ、こういうことでありましょうか、どうでしょうか。
  97. 小倉武一

    ○小倉参考人 一般消費税を目的税にしたらどうか、こういう御意見は、実は特別部会の委員の中にもございます。と同時に、それと反対の意見も内部にもございます。その辺をどういうふうにするかは、これは今後の検討事項でありますが、頭から目的税はいかない、一般的な税源に充てるんだということだけに決めてしまっておるわけではございません。その辺はなお今後の重要な検討事項かと思います。
  98. 只松祐治

    ○只松委員 かつて日本でも取引高税というものが行われたことがありますね、非常な反感を買っていました。それからいまでも物品税というものがありまして、いろいろ税率があります。そういうことを考え合わせまして、いままでの物品税をどういうふうにするか、それからかっての取引高税とどういうふうに違うのか、あるいはいつも引き合いに出されますECの消費税と大体近似したものであるか、相当違うものであるか、一つのあれとしてECというものがありますから、そういう点をひとつアウトラインとしてでも結構でありますから、お知らせをいただければと思います。
  99. 小倉武一

    ○小倉参考人 まだ細目といいますか、具体的に中身を決めているわけでもございませんので、終戦直後日本の経験しました取引高税、あるいは現在EC諸国で行っておりまする付加価値税と、ただいま検討され今後素案ができると見込まれている一般消費税とどこが違うのかということを、細目について申し上げるわけにまいりませんが、ごく大まかに申しますと、まず取引高税との違いでございますが、私これは聞き覚えるところによりますと、取引高税は各段階にかかる、いわば累積型となるわけなんでしょう。しかも取引ごとにかかる。少なくとも取引高税のかかった最初のころは印紙を張ってということでございまするので、取引の都度税金を納めなければならぬということだったかと思います。したがって累積型になっておる。また、ECの付加価値税との関係、違いといいますか異同につきましては、どちらかと言えば、いま考えられておる一般消費税は、取引高税よりはECの付加価値税に近いのだろうと思いますが、どこが違うかと申しますれば、ECの付加価値税では、付加価値税を納める業者の方は前段階の業者の納められた付加価値税を差し引くということになるわけであります。したがいまして、前段階の業者は次の段階の業者にインボイスを出さなければいかぬ。それに自分の納めた税額が書いてある。その税額をその個々の物ごとに差し引いていくというようなことになるわけでございますが、その点は、ただいまこの方がよかろうというふうに考えられておる一般消費税におきましては、売上高から仕入れ額を控除する、したがいましてインボイスは必ずしも必要としないというのが、先ほど事務負担お話もございましたが、その点から考えましても相当の違いで、納税義務者の事務負担は付加価値税そのものよりは相当に軽減されるというふうに考えております。  それから納税の時期について、ECではたしか一月ごとに納税をする。取引高税の場合は取引ごとであったようですが、その後一月ごとですか、直したようでございまするけれども、ただいま考えておる一般消費税ではこういうふうにしたらどうか。まだ結論を得ているわけではありませんが、個人でありますれば所得税、法人でありますれば法人税を納めるときに納めるというようなことにしたらどうか。むろんその場合も、なおかつ予納といいますか、そういう方法もあわせて講ずるということも考えられるでしょうが、そういうふうなことになりますと、付加価値税ともあるいは取引高税とも相当な違いがある、こういうことかと思います。
  100. 只松祐治

    ○只松委員 最後に、重ねてお伺いしますが、本当は行政当局のお答えかもしれませんが、当然にこれは反対が強い、そういう予測が当然されます。そういうときでも、こうやって一遍出してみる。出して、その反響を見た上で、十二月の来年度税制の問題のときに、来年度から実施するかどうかを考えてみる、こういう最初のお話でございましたが、そういうことがあるなしにかかわらず、いまの財政状態、それからいまの税制の問題からして、付加価値税は絶対に必要だ、こういうふうにお考えでございますか。場合によってはとりやめてと言っちゃなんでございますが、そんなに無理しなくてもいい、こういうふうにお考えですか、いや絶対にこれは何としてもしなければならない、こういうふうにお考えですか、会長の御所見をひとつ最後にお承りしたいと思います。
  101. 小倉武一

    ○小倉参考人 税制調査会なり政府としてどういうふうに一般消費税の問題を処理されるか、私まだここでのこの方がよろしいというふうに申し上げるわけにもまいりませんけれども、私、会長というよりは個人として考えますると、一般消費税はできるだけ早い機会に導入した方がよろしいのではないか。むろん多くの方面から反対がございまするけれども、これは何としても一般消費税のおおよその考え方を明らかにして御理解を深めつつ、できるだけ早い機会に導入するということがよくはないか。じんぜん日を過ぎるということになりますと、財政上なかなかゆゆしい問題が生じてまいるということはどうも避けられないというような、まあ私その方面の専門家でも何でもございませんけれども、そういう感じが実はいたすのであります。
  102. 大村襄治

  103. 坂口力

    坂口委員 小倉参考人には、大変お忙しいところをありがとうございます。  いまいろいろ議論をしていただきますのを聞いておりますときに、まず最初明らかにしてもらわなければならないと思うことが一つございます。それは、現在税調の特別部会で議論されております一般消費税の問題は、一般消費税というものが必要なのかどうかということを論点に据えての具体的な話し合いなのか、それともいろいろ議論はあるけれども、一応これは必要だという仮定の上に立って、その上での細かな操作なのか、これはいずれかということによって大分この議論の進め方にも違いが生じてくると思うわけであります。そのいずれかということをまず会長からお聞きをしたい、こういうふうに思います。よろしくお願いします。
  104. 小倉武一

    ○小倉参考人 一般消費税につきましては、昨年の十月に今後の税制のあり方という題でもって税制調査会が政府に答申をしておる、その中に実はただいまのような問題に対する答えがたしかしてある。それは、税制についてのいろいろの考え方があるし、また歳出についてのいろいろな注文も、税制の中にも税調の外にもあるけれども、いずれにしましても、ここで何らかの増税の措置をとらなければならないだろう。その際考えられるのは、法人税もありますけれども所得税あるいは一般消費税だろう。しかし所得税と申しますのは、これは理想的かもしれないけれども物価が年々ある程度上がっていくということであれば当然実質的な増税になるような仕組みになっておりますので、それをさらに増税ということで所得税の税率を引き上げる、あるいは税収が多くなるように累進構造を変えていくということはどうも無理がある。そこで、相当の税収を予定するということであれば一般消費税の導入はやむを得ないだろう。もっともこの一般消費税を導入するについては、政府の方でもいろいろお考えになっていただく点があるということも申し上げておるわけでありますが、そういう意味においては、一般消費税の導入は必要であるという立場に税調としては立っておるというふうに申し上げていいかと思います。むろん税調のおおよその方向を申し上げておるわけで、全員が一人残らずそういう考え方であるというわけではないかと思います。したがいまして、今回特別部会で審議いたします場合も、いま申しました中期答申を踏まえていたしておるわけであります。そういう意味では、一般消費税の導入は必要であるという前提に立っておるわけであります。  ただし、それがすぐ、たとえば来年度からスタートするんだということを決めてかかって作業を始めておる、勉強しておるということではございません。一般の国民あるいは関係業界、関係官庁の意見ももう少しよくよく聞かなければならぬ。ついては、中期答申だけでは余りにも大まかな、基本的な考え方とおおよその仕組みを示しておるだけで、これでは意見が言いにくいという、てんから反対の方はあるいはそれでいいのかもしれませんが、ひとつもう少し中身を聞いて判断したいという向きには、あの答申では不親切であるということもございますので、それをさらに少し具体的な仕組みまで及んで全貌を明らかにするというのが、どうも税調に課せられた、一般から寄せられている責務じゃないか、こういうふうな感じでいま作業をいたしておる次第であります。
  105. 坂口力

    坂口委員 そういたしますと、他の税制度との関連ということにつきましては、これはかなり議論もしていただいているものと思うわけであります。特にこの一般消費税の場合に、先ほど御指摘がありましたように、細かな面で食料品をどうするとか、いろいろな面での配慮によっては違ってはまいりますけれども、しかし一般的に申しますれば、低所得層により厳しい税制になる、これは避けがたいというふうに私ども考えているわけであります。そういった意味で、所得税の累進性といったようなものとの関連もよく指摘をされるわけでございますが、税調においてこの一般消費税を、一応これは必要なものなり、そういう立場で議論が進められているとするならば、この細かなことの検討の以前の問題として、いままでの税制のあり方との関連性、このことについては、かなり先立って議論がなされてしかるべきものである、こう思うわけでございますが、その辺のところがどうなっているかということをひとつお話しいただきたいと思います。
  106. 小倉武一

    ○小倉参考人 いまお話しになりました点は、はなはだごもっとものことでございまして、実は一般消費税の導入しかるべしという趣旨で昨年政府に答申をいたしました今後の税制のあり方の中に、まさに先生のおっしゃったようなことが触れられておるわけであります。したがいまして、いま一般消費税について作業を進めておりますことは、やはりそれらを踏まえての話でございまして、たとえば租税特別措置税制調査会では政策税制と言っておりますけれども、この政策税制につきましても随時見直しをして、税制が不公平であるというようなことがないようにしたいということも中期答申の税制のあり方で触れておりますが、これなどは、いわば大方針はもう決まっておりますので、年々進めていく。年々と申しますのは、政治、経済状況によりまして、ここで一刀両断的に整理して、これでおしまいだというふうには整理ができませんので、特別措置の期限が来るというようなとき、あるいは状況が変わったというようなときをつかまえて整理を進めていく。したがって、これは毎年毎年進めていくというようなことになるかと思います。  さらにまた、もっと大きな問題といたしましては、利子配当についての課税につきましても、これもずいぶん前から総合課税に移行すべしというふうに、また世論もそうなっているかと思いますが、税調でもそういうふうに答申をいたしておりますが、実際問題としてこれを実行するということはなかなか容易でないということであったわけですが、ことしの秋から総合課税移行についての実際問題を税制調査会でも討議するというふうなことをいたしておりまして、他の一般消費税以外の問題につきましても、逐次そういったような改善を進めてまいる必要があるというふうに感じております。
  107. 坂口力

    坂口委員 昨年の税調の答申につきましては、私も読ませていただきましたが、なるほどその辺のところはある程度触れられてはおりますけれども、しかし、その辺がはっきりとした形で明確になっているというところまではまだ書かれていないものですから、いま御質問を申し上げたわけでございます。  時間がございませんので、もう一つだけお聞きをしたいと思いますが、「一般消費税の主要検討事項について」というメモをちょうだいをいたしまして、これを見せていただきますと、その中に「事業税の外形標準課税との関連」という項目がございます。このことについてどういう議論が進められているのかということを、もうすでにある程度議論が煮詰まっておりましたらお聞かせをいただきたいと思いますし、それから、その中に黒い傍線が引っ張ってある部分がございます。「国、地方を通ずる適正な税・財源配分のあり方」、ここにアンダーラインがしてあるわけでございますが、確かにこういった点が非常に大事なところであって、この辺の議論もかなり詰めてからでないと、一般消費税の内容については無理ではないかという気がするわけであります。そこで、この辺につきましてのお考えを、現在の時点で結構でございますが、わかっております限りにおいてお答えをいただきたいと思います。
  108. 小倉武一

    ○小倉参考人 いまお尋ねのように、事業税の外形標準によって処理するというかねてからの府県の要望がございます。特に一般消費税を導入するということになります場合に、それとの関係がまた生じてまいるということは御指摘のとおりでございます。これをどうするかということは実はまだ深く論議しておりません。  まあ基本的な考え方としましては二通りあるということは、もう御承知のとおりかと思います。一般消費税ということでお願いした部分を、徴収して地方にそれを分けるという考え方もございましょうし、他方において、国は国で一般消費税を徴収して、一部は自治体に分けるけれども、同時に、地方税の外形標準化はそれとして、一般消費税との関係も考えて実行したい、こういう考え方もございます。その辺をどうするか、どう調整をするかというのは、これからできるだけ調和を図れるような形で討議を進めたい、こう存じております。
  109. 坂口力

    坂口委員 もう二分間ありますので、もう一問だけお聞きをしたいと思います。  先ほど只松議員も聞かれましたが、目的税として福祉税としてはどうかという意見もあるわけでありまして、このパンフレットの中にもそのことが一つの項目として触れられているわけでございます。これは先ほど会長がお答えになりまして、両方の意見があるということを言われたわけでございますけれども、これは傾向としてはどちらの意見の方が強いのですか、それをお聞きして終わりにしたいと思います。
  110. 小倉武一

    ○小倉参考人 どちらが強いというわけにもまだまいりませんです。両方とも有力であるというふうに申し上げた方が実はよろしいかと思います。  何しろ普通の法律でありますれば、たとえば法律の第一条に、この税金は国民の福祉に主として充てるものであるというふうに書けないことはないでしょうけれども、税金のことなり財政の問題になりますと、ほかの一般の産業経済の法律みたいにふわっとしたことを余り書くわけにもいかぬのじゃないかという気もいたします。したがいまして、ぎりぎり目的税にするかしないかということは、これは趣旨だけではなくて、税制という特別の、まあ税金は法律で決めなければならぬという趣旨のことを踏まえてのやかましい法律ということを考えてみますと、そこをどう表現するか。目的税とおっしゃっている方も、どの程度のことを目的税とお考えになっておるのかですね。たとえば道路財源としてのガソリン税みたいなことをお考えになっているのか、もう少しふわっとした、たとえば本年ですか御審議願ったあの石油税、あれも一半は目的税みたいな感じもしないこともないのですが、しかし法律的には目的税ではないとたしか思いますが、そういうこともございまして、今後なお検討をしてまいりたい、こう思います。
  111. 坂口力

    坂口委員 ありがとうございました。
  112. 大村襄治

    大村委員長 永末英一君。
  113. 永末英一

    ○永末委員 税制調査会長にお伺いしますが、先ほどからの御答弁聞いておりますと、来年度と定めたわけではないが、一般消費税を早く導入したいというので検討をしている、こういうお話でございました。なるほど例年の例によりますと、最終的に予算案がつくられるときに税制調査会が、ことしはこれやれという次年度税制に対する答申を出される、それでスタートとこうなるのですが、納税者の方からいいますと、いつかわからないという問題は、何か遠い先の未来のことのようで、余りに被害感を感じないような気がする。しかし、実際は来年度からやるんだ、いまごろやっていると、いまからかあっとなりますから、それをそらして、そうして実際やることを腹で決めておるがいまはごまかしておる、これではいかぬと思うのですね。われわれの方は、いまみたいな不景気で、政府は景気が回復しつつあるなんというようなことを言っておりますけれども、一般庶民生活周辺は不景気なんだ。そのときに新税が加わってくる。しかも一般消費税、みんなかぶるんだというようなことになると大変な問題ですね。実際どう考えておられるのですか。
  114. 小倉武一

    ○小倉参考人 来年から導入するつもりだけれども、いまのところふわっとしておくというようなテクニックを弄しておるわけではございませんです。真からいつから導入したらよろしいかという具体的なことについてはまだ全然、こうだというふうに申し上げるわけにはまいりません。いまお話しのような経済状況でもございまするし、今後特に来年度以降、来年度以降のみならず今年自体だって問題なんでしょうけれども、今年度を含めて来年度以降どういうふうに経済、したがってまた財政がなるだろうかということのおよその見通しを立てないと、一般消費税をどうするというわけにはまいらぬだろうと思います。政府では無論そうでしょうが、税制調査会でもそうでございまして、できるだけ早い機会と申しましたのは、私個人的な見解として申し上げましたので、それは来年からだという意味ではございませんです。来年からやってはいけないというふうに申しているわけでもございませんけれども、当然に来年から導入するという前提でいまの研究を進めているわけではございませんです。
  115. 永末英一

    ○永末委員 予算をつくるのは大蔵省の主計局でございまして、主計局の頭脳構造というのは、その年のつじつまを合わせるということを一生懸命考えるわけですね。しかし税制の方は、一たん決まりますと、これは近い将来長きにわたってくくるわけでしょう。大変な問題ですね、制度をつくるわけですから。だから、いま調査会長の頭の中で、来年度でやるのではないというような思いが非常にあるわけでございますから、それはいまの経済状況はあなたの頭の中にあるわけでございまして、私どもはこれから半年くらいで一般消費税を導入するような条件は整っていないと判断しておりますから、あなたの方もそういう角度から十分慎重にお考えを願いたいと思います。  さて、この一般消費税というのは、あらゆる取引みたいなものを対象にしておるようでございまして、サービスも含まれる。たとえば理髪業にしましてもあるいはクリーニング業、理髪業というのは人間の体をさわるわけでございまして、クリーニングというのは物を扱いますが、そういうものも含まれる、一応課税の対象にするということになると、大変な問題になります。全部やるのですか。
  116. 小倉武一

    ○小倉参考人 業種といたしましては、いま御例示になりましたようなサービス産業も当然に入るというふうに考えております。
  117. 永末英一

    ○永末委員 税率によりけりでございますが、たとえば一%としますと、クリーニング業で二百円のものだと二円ですな。取れやしませんね。つまり、後で伺いたいと思いますが、年度で締めて、その年の売り上げを対象にしながら、その中で課税標準をつかまえてやるというと、つかまらぬものがあるわけです。つまりクリーニングのような場合には、過ぎ去ってしまいますね。あと一年たってから、実はあなたのところ税金払ってください、払う者一人もおりやしません。そのものについて、払うべきものなら払わざるを得ない。実際は取れないでしょう、そのときに取らなければ。したがって、そういう零細なサービス業などは課税の対象にならぬというのが本当じゃないですか。
  118. 小倉武一

    ○小倉参考人 一般消費税を税務署に納める業界の方々は、たとえば年に一回というようなことを考えておるわけでありますけれども、その需要者、洗たくを頼む方、理髪をしてもらう方々は、それはその都度、税金に当たる部分も含めた理髪料なり洗たく料を請求されてそれを納めるというのが、これはたてまえだろうと思います。ただ、洗たく屋あるいは散髪屋の規模、これは必ずしも、大きなものもあるようでございますが、零細なあるいは小規模の業種、業態が多数を占める業界ではないかという気がいたしますが、そういたしますれば、洗たくあるいは理髪というようなことでなくて、小規模零細業者ということで、課税対象から、納税義務者から非納税義務者になるというようなことは、これは十分あり得る、こう思います。
  119. 永末英一

    ○永末委員 もちろん現在の日本で、クリーニングを家庭から出した場合に、小さな品目、ハンカチ一枚でも税金がつくということになれておらない。つまりなれておらぬような税金をかけたら、これは悪税ですね。昔から苛斂誅求といいますね。したがって、そういうことはできない相談だ。そこをお考えだから、小規模零細の企業にはかけない。やはり小規模とかなんとか、標準がありましょうね。年間の売り上げとかそういうもので小規模を判定する。  あなたの方に大蔵省から大体の検討項目みたいなメモが出されておるようでございますが、このメモの中に、「諸外国の立法例では、免税点を年間売上高百万円−五百万円程度とかなり低い水準に定めているが、」云々とこうですが、年間百万円と言うたら一月十万円にならない。これは企業じゃないですね。そんなものをやっているところはありやしませんです。  私は京都ですが、京都の非常に不況産業と言われる西陣のネクタイ企業がございますが、六十七店ございまして、その中で一千万円以下の年間売り上げというのは四店しかない。みんなこれは赤字でございますけれどもね。非常に苦しんでおりますが、ともかく仕事としてやれば、当然数千万円のものを出してもうまくいかぬというのが現状でございます。  ところが、その事例として出されるのは、諸外国という断りはございますが、百万円とか五百万円と、こんなもので小規模を判定されたら皆かかりますよ。小規模といったって、もっと大きいのでしょう。どうですか。
  120. 小倉武一

    ○小倉参考人 お話しのECの例、これはたてまえとして、あらゆる小規模零細の業種からも付加価値税は納めていただくのだ、そういう前提で、非常に例外的に、本当にやむを得ない小さいものは除く、こういうことになっておるようでございます。日本の場合にそれをどういうふうに考えるかというと、ECのように徹底的に小さなところまで付加価値税をあるいは一般消費税を納めていただくのだというふうに徹底するわけには、これはまいらぬと思います。ECの免税点のつけ方も一つの参考にはなりましょうけれども、私どもは小規模零細というのは、そこまで考えておるわけでは必ずしもないのでありまして、今後その辺を具体的にどうするかは、なおひとつ今後の検討をお待ち願いたい、こう存じます。
  121. 永末英一

    ○永末委員 小規模零細というのは、企業規模にもよりますが、先ほど挙げましたクリーニング業のごとく、扱う商品がきわめて低い価格のもの、それにもしかけるといたしますと、一つ一つ計算をしなければ出てこない、こういうことになりまして、実際上その事務量たるや大変なことになるわけでございます。税務署の方は、年間で一遍締めていくのだから事務はほとんど変わらないと思うかもしれぬけれども、それを扱う納税者の方は、とんでもない、一体そんなことを一般消費税だから全部にかけるのだといって納税義務を負わせ得るかどうか。しかも最終的納税者である消費者の方が、二百円で一%なら二円、二百三十円なら二円三十銭というようなことが一体できるのかどうか。できないでしょう。その点の御判定はどうなのですか。
  122. 小倉武一

    ○小倉参考人 一般消費税だけ取り上げられて先生のようにお話しになると、確かにそれは問題であるというようにもなるわけでありますけれども、小規模零細なサービスあるいは物品の取り扱いにいたしましても、やはりコストには種々雑多ございます。その一つ一つのコスト、税金も一つのコストと考えますればですけれども、一つ一つとればなかなか零細で、そういう一つ一つのコストが一体消費者にうまく負担お願いできるのだろうかどうかということは、確かにこれは問題が多々あるかと思います。したがいまして、除く小規模というものをどの辺に置くかということも、その辺も無論考えて処理すべきじゃないか、そういうふうに考えますけれども、税金だけ別にしまして、一つ一つとればごくわずかで、とても転嫁できないというようなことになりますと、これは消費税全般の問題でございまして、その辺がどう転嫁できるかできないかということをむしろ全体の問題として考えて、転嫁できやすいような形はどうしたらよろしいのかということも別途また考えなければならぬ、かようなことをいま先生のお尋ねで感じたわけであります。
  123. 永末英一

    ○永末委員 いまは、最終的な価格はわかっておるものでもそういう問題がある。今度は、たとえば織物のように、一反十万円というとこれは明らかに高い値段でございますが、京都の西陣の実例を申し上げますと、白生地が来ましてから着尺なら着尺の反物になるまでに、染めたり外したり十三工程ぐらいあるわけですね。つまり、その間の工程というのは数百円の工程があるわけです。それが一々対象になるというようなことになりますと、数百円の一%あるいは二%という税率の場合にまた計算ができない。つまり、最終的には高価格のように見えるけれども、いまちょうどお話にございました、生産工程の一つ一つをとればきわめて小規模零細である。それが一体それならば、最終価格まで転嫁できるように積み重ねられるか。いまの状況では積み重ね得る客観的条件は存しない。こういうところにかけたのじゃ悪税ですね。どう思われますか。
  124. 小倉武一

    ○小倉参考人 ただいまのような実態の例につきましても、十分踏まえてなお今後検討したい、こう存じます。
  125. 永末英一

    ○永末委員 それから、先ほどちょっと触れたのでございますが、最終的な取引行為があった場合、それを年間で締めてそうしてやるといたしますと、まあ俗語で言いますと粗利益にかける、こうなりますが、払う方は、法人であれば法人税、個人でありましてもそれぞれの所得税を払うわけでございまして、それにつけ加えて払うというとまさに二重、三重課税の趣がある、そう思われますね。あなたはどうお考えですか。
  126. 小倉武一

    ○小倉参考人 先ほど申しましたような納税の時期等を考えますというと、一応二重課税的なふうに見られるかもしれませんけれども、法人税、所得税と違いまして、一般消費税の方は順次消費者に転嫁していく、転嫁させていただくというようなことでございまするので、そこは非常に違うというふうに考えます。
  127. 永末英一

    ○永末委員 西欧諸国のように契約観念が発達し、また自分の個人主義というものがきわめて発達しておりますから、自己責任の概念もきわめて強い。契約の観念が発達しておるところでは、零細な税金もまた納められてきた経過がありますね。ところが、わが国の商慣習は、江戸時代以来よくわからない商慣習がある。たとえば一つの物が生産工程で動くにしましても、リベートだとか返品だとか歩戻しだとか値引きだとか、最終決済がわからぬような状態で物が動き流れておる。したがって、一つ一つの商品が取引で動いていくことを想定しながら考えられておる一般消費税の観念とは違う取引状態である。しかもそういうきわめて非近代的な取引関係のあるところでは、これまたきわめて零細な業者がそこに蝟集しておるというような状況でございまして、したがって、一般消費税なるものはそのような零細小規模なものを対象にしたって、これは先ほどあなたがおっしゃったように、最終的に消費者に転嫁できるという前提で考えておられるのだけれども、最終的な消費者への転嫁ができ得ない、こうなりますと、それはどうやって一体税金をかけるのかわからない、最終的だけではできませんからね。だといたしますと、いまの取引慣行がきわめて合理的にならない限りこれはできない。たとえば織物だけをとりましても、正面に上がって税務署が応対し得るものもあれば、持ち回り屋と称して担いでうろうろしておる者もたくさんあるわけでありまして、そうなりますと、こっちはつかまえられて、こっちがつかまえられない。税目が設定をされ、税法ができ上がれば、やはり公平に課税されなければならぬが、不公平なまま流れておったなら、かくのごとく一般消費税にはきわめて大きな問題がありますので、ひとつそのことを勘案してあなたの委員会でも御検討を願いたい。よろしいですね。
  128. 小倉武一

    ○小倉参考人 ただいまのような取引の形態、これは日本の特殊事情とも申せましょうが、そういうことはあることは薄々承知しております。したがいまして、消費税につきまして具体的な枠組みを考えます場合には、その辺についての配慮も十分いたしてまいりたい、こう存じております。
  129. 永末英一

    ○永末委員 終わります。
  130. 大村襄治

    大村委員長 これにて小倉参考人に対する質疑は終了いたしました。  小倉参考人には、御多用中のところ本委員会に御出席いただき、まことにありがとうございました。厚く御礼を申し上げます。
  131. 大村襄治

    大村委員長 次に、金融に関する件について、参考人として日本銀行総裁森永貞一郎君が御出席になられております。  森永参考人には、御多用中のところ本委員会に御出席を賜り、まことにありがとうございます。  質疑を続行いたします。只松祐治君。
  132. 只松祐治

    ○只松委員 どうも御苦労さまです。  いまの経済問題は大変重大であることは、あえて私が申し上げる必要もないかと思います。日銀総裁も九日の定例記者会見でそういうことにいろいろ触れられまして、その一つに、公定歩合は時によっては考えるというようないわば柔軟な御発言をなさいました。その意図がどういうところにあるか、経済情勢と絡めてひとつお話を承りたいと思います。  二つ目には、その際、やはり為替差益は還元した方がいい、まあ私たちはこれは強く主張しておるわけでございますけれども、そういう趣旨の御発言をなさっておるわけでございます。これも短い新聞の記事だけでなかなかわかりません。当面の金融を預かる責任者として、その発言はきわめて重く私たちは見ております。どういうお考えであるか、ひとつお聞かせをいただきたい。
  133. 森永貞一郎

    ○森永参考人 御承知のごとく現在の経済情勢は、内需につきましては大体レールに乗った感じで、底がたい回復の過程をたどりつつあるように見受けられるのでございますが、そこへ急激な円高の問題が起こってまいりまして、輸出数量減ないしは収益減等のデフレ的な現象が起こってくることによって、せっかくの回復過程にブレーキがかかることも心配される事態であると存じます。  つきましては、やはり財政面から何とかもう一段と景気を刺激する施策を講ぜられることが必要な段階に参っておるかと存ずるわけでございまして、政府におきましても、その方針で御検討中であられることはきわめて適切な措置であると存じております。  その間、金融につきましてどうするか。金融はもちろん、そのときどきの経済情勢に応じまして機動的に、弾力的に誤りなきを期していかなければならないわけでございますけれども、現在、やはり景気刺激の主役は財政が担うべきものであると考えておる次第でございまして、その理由としては、昨年来数回に及ぶ公定歩合引き下げの効果としての市中金融機関の貸出金利の低下が、その後もずっと続いておるわけでございまして、毎月既往最低記録を更新しつつあるのが現状でありまして、今後とももう少し金利低下が続くかと思うわけでございまして、企業の金利負担かなり低下してきておる。また、量的にもかなり緩和が進みまして、企業の手元も楽になっておるのが現状でございまして、金融面からは景気回復を軌道に乗せるための支援体制は十分できておるのではないかというのが、私どもの現状についての判断でございます。  もう一つ、マネーサプライの動向を見ましても、昨今、まだ心配をするほどのことはないと思いますが、若干微増の気配にあるのが現状でございまして、かたがた、景気刺激策につきましては、やはり財政に依存するのがこの際としては適当ではないか。もちろん金融につきましても、そのときどきの情勢に応じて遺憾なきを期するつもりではございますが、目下のところは公定歩合を改定する、引き下げるつもりは持っていないというのが、現在の心境でございます。
  134. 只松祐治

    ○只松委員 わが国の財政金融に大きなかかわり合いを国債というものは持っていますが、残念といいますか、ますますそのかかわりを深めております。この国債が八月に入りまして低落を始めました。いわば十年ものの長期債の金利の方が高くなって、新しく出す新規債の方が低くなる、こういうことから始まっていろいろな問題を提起しております。そういう状況に対して、金融の責任者としてどういう対策をお考えになっているのか、お聞かせいただきたいと思います。
  135. 森永貞一郎

    ○森永参考人 御指摘がございましたように、昨今、債券市場におきましては、国債の市価の低落、したがいまして利回りの上昇が目立っているわけでございます。これが一時的な現象なのか、それとも基調的な現象なのか、その辺の見きわめをつけますのには、まだ少し時期が早いような感じもいたします。  一時的な現象と申し上げましたのは、たとえば九月に銀行の決算期が参ります。それに備えて新しく設けられまする国債についての準備金等の捻出のために、国債の市中売却が増加しておるという一時的な現象、それがどのくらいのウエートを持っておるかという問題なのでございますが、そればかりでもなく、やはりいまは金利がボトムであるというような感じから、このボトムの金利で十年も投資をくぎづけされるのはどうであろうかといったようなちゅうちょもあるといったようなこともないじゃないわけでございまして、その辺が一体どうなるか、私ども非常に慎重に事態の推移を見守っておるわけでございます。  今後巨額の公共債の発行が続行されるわけでございますので、やはり債券市場の動向のいかん、推移いかんが今後の問題として非常に大きくわれわれの心配事としてのしかかってきておるわけでございまして、目下のところはこの事態の推移を慎重に見守っておるところでございます。
  136. 只松祐治

    ○只松委員 前の国会で、債券市場の育成その他から始まって多少論議をしたわけでございます。いま慎重に見守る、こういうことではどうも私たちの納得のいかないところでございます。もう少し具体的にお聞かせをいただきたい。  特にたとえば赤字公債を最初発行したときに私は本会議で反対討論をいたしたわけでございます。この委員会でも質疑をいたしました。そのときに日銀は、議事録を全部ひっくり返してみないと確たるものはあれですが、中央銀行の買い入れというのはきわめて慎重にしなければならない、こういうお答えがあったと思います。こういう状態が続き、売れなくなるということ、それから市中銀行、金融機関等を見ましても、これだけどんどん発行していきますから、たくさん抱えてしまう。そうすると、これは貸し出しなどと違いまして固定した面が非常に多くなってくる、いわば資金繰りが苦しくなってきておるわけですね。そういう状況等の中から勢い中央銀行に買い上げてくれ、こういうことになりますと、これは私たちが一番最初指摘しましたように、悪性インフレというのが一挙に進むわけでございます。  こういうことに対してどういう歯どめをしていくかということもいろいろ論議をしてまいりましたが、当面のこういういままで余りなかった下落したという状況を踏まえて、改めて中央銀行総裁として、この低落傾向、それから中央銀行がどうこれに対処するか、もう少し具体的に——特に中央銀行はそういう買い支えといいますか、買い込むのに慎重であらねばならないと私は思います。そういう点についていわば明確なお答えをいただいておきたいと思います。
  137. 森永貞一郎

    ○森永参考人 財政法によりまして、国債の日銀引き受けは厳に禁止されておるわけでございますので、今後とも直接あるいは間接に日銀引き受けと同様の結果に陥るようなオペレーション等の実施は厳に避けていかなければならないと思っております。従来も金融調節のためにいわゆる成長通貨として必要やむを得ざる程度のものはオペレーションによって買い入れておりましたけれども、今後とも成長通貨として必要な範囲以上のものを日本銀行が買い入れて、事実上日銀引き愛け国債発行と同じような弊に陥るようなことは絶対に避けたいと思っておる次第でございます。  したがいまして、今後の国債政策上考えなければなりませんことは、やはり市中消化の原則を守り抜くということでございまして、それにつきましては、発行条件を実勢に即応して動かしていくということも必要でございましょうし、また、金融政策の技術的な面といたしましては、十年一本の国債一種類ということだけでなくて、極力多様化を図っていくというようなことも場合によっては必要ではないか、大蔵省にもその辺のところをお願い申し上げている次第でございます。
  138. 只松祐治

    ○只松委員 理財局長がいませんから銀行局長、ひとついまの点に関して、確約と言ってはなんですが、その方針に間違いはないかどうか、お答えをいただきたい。
  139. 徳田博美

    ○徳田説明員 お答えいたします。  本来理財局長がお答え申し上げべきことかとも思いますが、国債管理政策の件でございますけれども、従来から日本銀行によるオペレーションは、通貨の供給という面から行っているわけでございまして、財政法その他の関連から申しましても、国債の市中引き受けということがどこまでも原則でございます。現実に最近の都市銀行そのほか各金融機関の国債の引き受け、消化状況を見ましても、預金増加額の四分の一以上が国債に向かっているわけでございまして、そういう意味で、民間金融機関としてもその公共性の見地から、公共的な部門への資金供給を適正に行っているわけでございます。
  140. 只松祐治

    ○只松委員 円高問題はこれもまた大変な問題でございますが、この一つの原因はアメリカのドルたれ流しにあることは明らかで、日本は日本でアメリカに要請をいたしておる。そういう状況の中で、いま伝えられておるニュースに、アメリカが対日スワップを発動しやしないかということが言われておるわけですが、日銀にそういう情報が入ったかどうか、それから、いま入ってないといたしましても、アメリカにそういう動向が見られるかどうか、いかがでしょうか、ひとつわかる範囲で結構ですからお答えいただきたい。
  141. 森永貞一郎

    ○森永参考人 現在アメリカを中心に世界じゅうの国が合計二百二十億のスワップ協定を結んでおるわけでございます。現に活用されておりますのはアメリカと西ドイツとの関係のものだけでございますが、その二百二十億のほかに、アメリカの財務省とドイツの連銀との間にも、金額はわかりませんがスワップ協定がございまして、これは活用されております。要するに西ドイツとの関係、それからスイスとの関係が若干活用されておるやに承っております。私ども円との関係においても、このスワップ協定をぜひひとつ活用しようじゃないかということで、昨年の暮れごろから呼びかけておるわけでございますが、アメリカの中におけるいろいろな事情がございまして、まだ実現に至っておりませんことは御承知のとおりでございます。  昨今新聞紙上等において、スワップの対象の拡大等が実現するのではないかということが伝えられておりますが、その点については私どもいろいろアプローチはいたしておりますけれども、アメリカ政府あるいは連銀当局は大変口がかたいのでございまして、その点につきましては何らの言明あるいは見通し等についての情報を得られないでおるのが現状でございます。数週間後に総括的な対策が発表されるということでございますが、私どもとしては、その中にぜひとも入れてほしいと思っておりますけれども、その成否につきましては、目下のところ何ら情報を得ておりませんことをお答え申し上げます。  なお、先ほど円高についての御質問がございまして、答弁を失念いたしましたので、お答え申し上げます。  私ども非常に急激な円高であり、やや行き過ぎとも思われる現状でございますけれども、やはりこの円高に耐えていかなければならぬわけでございまして、現に多くの輸出産業におきましては、これに耐えて値上げに成功しておるということでございますが、同時に、やはりそのメリット面を極力活用しなくちゃならぬわけでございます。そのメリットの最大のものは国内物価にこれを反映干る、国民全部に均てんさせるということにほかならないわけでございまして、その意味で一般的に申し上げまして、この円高のメリットをできるだけ活用する。そのためには、やはり差益の現状を明らかにし、それをできるだけ国民に還元する。もし還元ができないような場合には、これこれしかじかの事情でできない、たとえば留保するなら留保するという、その辺のところを国民に納得がいきますように明らかにしていただく必要があるのではないかと思っておる次第でございます。  なお、特定の業種の問題になりますと、私ども専門家でもございませんし、何業についてはどうしたらいいというような意味の発言は差し控えた方がよろしいかと存じますが、一般論といたしましては、極力還元を図ってほしいということを希望しておる次第でございます。
  142. 只松祐治

    ○只松委員 ひとつ円高差益の問題につきましては、経済界に大きな発言力を持っておられる日銀総裁ですから、個々のことまでは差しおきましても、還元するようにぜひ声を大きくして、ひとつお願いをいたしたいと思います。  なお、先ほど申しましたスワップの問題は、国内にも集中的な自動車の輸出等、私たちが指摘しておりますように反省すべき点はあります。しかし同時に、やはりアメリカ側にも、ベトナム戦争以来のドルのたれ流しという基本的なドル低落の原因があるわけですから、したがって、スワップだけではありませんけれども、アメリカにもやはりそういう対応策を迫るというのは、日本の中央銀行総裁として一つの見識でもあろうかと思います。ぜひひとつ今後、スワップを初めそういう問題についても、対アメリカに働きかけていただき、一方円高については、そのメリットを国民に還元していく、同時に、デメリットの出る面については防いでいく、こういうことも、経済全般のかなめにある日銀総裁として大事なことですから、引き続いて要請されますようお願いをいたしまして、ひとつ最後にその言葉をいただきまして、質問を終わりたいと思います。
  143. 森永貞一郎

    ○森永参考人 昨年来のドル価値の低落に際しまして、実は世界じゅうの主要国がもう何百億というドルを買い支えておるわけでございます。それにもかかわらず、ドル価値は今日のように低落してまいったわけでございますが、私どもかねがねアメリカ政府、アメリカという国がもう少しドル価値の維持について真剣になってほしいということを切望しておりましたわけでございますけれども、先週以来そのような動きがはっきり出てまいりましたことは、大変喜ぶべきことだ、大いにその施策がいいものでございますようにと期待をいたしておる次第でございます。  スワップの問題は、私ども直接の問題でございますので、昨年末以来アメリカの通貨当局に対しましては、私ども考え方を機会あるごとに話をいたしてまいっておるわけでございますが、なお今後とも同じような方針で要請をし続けてまいりたいと思っております。
  144. 大村襄治

  145. 坂口力

    坂口委員 森永参考人には、大変お忙しい中をありがとうございます。  きょう午前中にもいろいろ議論がされたわけでございますが、四月から六月期の経済統計が発表されまして、輸出の面を見ました場合に、前年同月比で二・八%減というふうになっているわけであります。まして対ドルレートが、この二、三日若干円安にはなっておりますけれども、一時百八十円台を行き来するという状態がございまして、今後の輸出ということに対しましては期待できないような状態が続いているわけであります。当然国内需要ということが問題になるわけでありまして、福田総理も第三の道というようなことを言っておみえになりますけれども、いずれにいたしましても、公共事業というものをやはり中心にしての進め方ではないかというふうに私ども感じているわけであります。ところが現状ではこの公共事業も、その技術とかあるいは管理とかそういった面でボトルネックに直面をいたしておりますし、この際新しい道というものをどうしても取り入れていかなければならないのではないかというふうに考えているところでございます。  総裁も先日、景気対策について発言をされまして、減税検討に値するという御発言をなすっているわけであります。私どももこの減税につきましては、いままでも何度か主張し続けてきたところでございますが、総裁が減税について触れられましたその真意というものを、もう一度改めてここでお聞かせをいただきたいと思うわけであります。
  146. 森永貞一郎

    ○森永参考人 大変困難な局面でございまして、何とかして内需の拡大を図っていかなければならないわけでございますが、それにつきましてはいろいろの手段があるわけでございまして、私ども常にいろいろな手段の政策効果につきまして、原点に立ち返って見直していく必要があるのではないかと考えておる次第でございます。  たまたま質問がございましたので、減税もそうかというお話でございましたから、減税を含めてあらゆる政策手段について原点に立ち返って常に見直していく必要があるのではないかという意見を述べたことがございました。  そこで、いまの御質問、それでは具体的に減税をやらなくちゃならぬと考えておるかどうかという問題になろうかと思いますが、その点につきましてはいろいろむずかしい問題があるわけでございます。たとえば財政事情、これからの中期的あるいは長期的に見た財政事情がどうなるかという問題もございましょうし、また、租税負担の現状がどうなっておるのか、諸外国に比べれば日本は低い方だということも言われておるわけでございますが、その辺についての判断。それから、諸外国におきましては、公共事業と申しますか、社会資本がもう非常に普及してしまっておるわけでございますので、内需の拡大と申しましても、財政面で実行する場合に、公共事業ということがなかなか対象にならないという事情もあるわけでございます。日本はその点少し事情が違うわけでございますが、その日本の場合でも、それでは公共事業減税と比べて効果はどう違うか。恐らく減税の場合には即効性は乏しくて、先に行って効果が出る、公共事業の方はすぐにでも効果が出てくる、そういう違いがあるのだと思いますが、その辺のいろいろな問題を慎重に検討して結論を出していただく必要があるわけでございますので、目下税制調査会あるいは大蔵省等においてその辺のところを鋭意研究されておられるところと存じますので、私からは具体的に減税の要否等につきまして申し上げることは、差し控えた方がよろしいのではないかと存じますので、御理解をいただきたいと存じます。
  147. 坂口力

    坂口委員 参考人ははっきり言明されることを避けられたわけでございますが、税制調査会の会長さん、先ほど、入れかわりでございましたけれども、参考人としてお越しをいただいておりまして、いろいろここで一般消費税を中心とする議論をいただいたところでございます。そこでは、来年度導入するかどうかは別にいたしまして、一応一般消費税なるものをひとつ研究するということで、現在検討を進められているわけでありますが、むしろ総裁のいままでの新聞紙上等で見せていただく発言とは逆に、ややもすると増税の方に向かう傾向もなきにしもあらずであります。  そこで、これはまた申し上げると総裁は、私がここで申し上げるのは控えるべきだということを言われるかもしれませんけれども、あえてもう一つお聞きをしたいと思いますが、減税とは逆に、一般消費税とかあるいは所得税とかいう個々の問題は別にいたしまして、増税の方向に持っていくということについての総裁としてのお気持ちが何かございましたら、ひとつお聞かせいただきたいと思います。
  148. 森永貞一郎

    ○森永参考人 私は、いまはただただ経済を安定経済のレールに乗せる、つまり景気の回復を着実なものにするということに全力を挙げるべき時期だと存じます。もし景気がよくなりました暁にどうするかということになりますと、やはりいまの財政の現状から考えますと、早晩増税が必要な問題として迫ってくることは疑いを入れないのではないかと思っております。その時期がいつになりますか、景気が早く回復すればするほど、できるだけ早くその問題を取り上げなければならないと思いますけれども、その辺の見込みは現在ではまだなかなかつけにくいのが私の率直な心境でございます。
  149. 坂口力

    坂口委員 これも先ほど只松議員に若干お答えになりましたが、金融政策上公定歩合の引き下げ問題がございまして、どうかという声があるわけでございます。また、不況が非常に長期化いたしておりますので、長期金利の引き下げ等につきましてもいろいろと議論が出ているところでございます。  先ほど参考人は、そういうことはいま考えていないというふうにお答えになったわけでございますが、これは今後の円の行方と申しますか、円レートの行方、今後の傾向にもよってこの総裁のお気持ちというのもまた変わってくるのではないかと思いますが、この円レートとの関連において公定歩合のことについてもし触れていただければ、もう一遍触れていただきたいと思います。
  150. 森永貞一郎

    ○森永参考人 昔、私どもの先輩がよく言われた言葉でございますが、経済は生き物と、全くそのとおりだと思います。為替市場の動向一つとりましても、本当に逆賭しかたい動きをしているわけでございます。いまは幸いにしてこの数日、アメリカ政府の決意の表明によりましてやや安定の方向に向かっておりますが、将来どうなりますか、その辺のところはいまから想像はできません。為替レートだけではございません。経済全般にわたりましていろいろなことが、予期せざることが起こり得る可能性もあるわけでございますので、金融政策につきましても、絶対に公定歩合を下げられないというような言い方はすべきではないと私も思っております。  結局、先ほども申し上げましたが、そのときどきの情勢に応じて機動的、弾力的に処理していかなければならないわけでございまして、現在のところは、市中金利も下がっておるし、金融も緩和しつつございますので、公定歩合をさらに下げるつもりはございませんということを申し上げた次第でございます。  なお、長期金利につきましては、これもいま既往最低の水準まで下がっておるわけでございまして、外国と比較いたしましても決してひけをとらないぐらいの低さにおさまっておるのでございますが、企業側におきましては、この円高騰の情勢もあってでございましょうか、採算をよくするために長期金利を云々というような要請も出てきておることは承知いたしておりますけれども、長期金利も、やはり資金の需給によって金利が決まる、その需給を端的にあらわしておりますのが、市場における市価の推移でございまして、いま御承知のように、国債その他少し値下がりしておるというようなことから考えましても、緩和の中にも限界がある、長期金利の引き下げにも限界があるということはやはりわきまえていかなければならないと思っておるわけでございまして、そういうようなことでいろいろ考えて、いまのところ公定歩合を引き下げる必要もなし、また引き下げることは適当でもないというふうに考えておる次第でございます。
  151. 坂口力

    坂口委員 関連しての質問でございますか、仮定の問題で恐縮でございますけれども、百八十円を円レートが割るようなことになってきますと、これは私は非常事態だという気がするのですが、いかがでございますか。
  152. 森永貞一郎

    ○森永参考人 為替政策の一端を担っておると申しますか、お手伝いしておる直接の責任者といたしまして、将来の為替市場の動向につきまして、仮定にしろ予測がましきことを申し上げることはいろいろな意味で問題でございますので、直接いまの御質問にはお答えできないことを御理解いただきたいと思いますが、しかし、ただ申し上げられることは、テンポといい水準といい、もうすでに行き過ぎておる円の相場でございますので、いまおっしゃいましたようなことが願わくは起こらないようにということを、ただひたすらこいねがっておるということだけ申し上げて、お許しを得たいと存じます。
  153. 坂口力

    坂口委員 時間が参りましたので、それでは、森永参考人に対する質問はこれで終わらせていただきます。
  154. 大村襄治

    大村委員長 これにて森永参考人に対する質疑は終了いたしました。  森永参考人には、御多用中のところ本委員会に御出席いただき、まことにありがとうございました。厚く御礼申し上げます。
  155. 大村襄治

    大村委員長 質疑を続行いたします。坂口力君。
  156. 坂口力

    坂口委員 きょうの午前中の議論をいろいろお聞きをいたしておりますと、経済企画庁の方の御意見は、個人消費の面も、それから輸出の面も心配は要らないというような発言でありまして、また大臣の発言も、円高以外は順調に進んでいる、  こういう発言であったと思います。  もう一度企画庁にお聞きをしたいと思いますが、企画庁お見えですね。——けさ御答弁いただいた方とあるいは違っているかもしれませんが、けさ御答弁になりました方のお話によりますと、たとえば個人消費の面におきましても、これは名目では若干落ちましても、実質では物価が安定しておりますから心配要らない、こういうお話でございましたし、それから輸出面におきましても、これは確かに円高によりまして輸出数量的には低下をするけれども、しかし、それは付加価値の高いものを出しているから、実質的にはそれは低下にならないんだ、こういうお話でございましたが、それで間違いございませんね、もう一遍念を押させていただきます。
  157. 廣江運弘

    廣江説明員 先ほど御質問のありましたように、経済全体として見ましたときには景気回復の軌道に乗っていると思いますけれども、それは消費につきましても、政府需要につきましてもまた設備投資につきましても、それぞれ言えるかと思いますが、輸出は、けさほど調整課長が御答弁いたしましたように、数量的には減少の傾向を示しております。これは背景には、円レートが急激に上昇したというようなことを控えていると思います。  ただ、これが今後の経済にどういう影響を及ぼすかということにつきましては、けさほど御答弁いたしました品質の問題あるいは駆け込み輸出の反動の問題といったような問題もありましょうし、その辺を踏まえまして、それか経済にどういう影響を及ぼすかということは、今後慎重に検討してまいらないといけないことだと思っております。
  158. 坂口力

    坂口委員 けさお聞きした御答弁とは若干ニュアンスが違いますけれども、けさの御答弁を聞いておりますと、企画庁のお話は何かこう、さらさら補正予算みたいなものは必要がないというような、まことに順調に進んでいるというように受け取れたわけでございます。あえて私もう一度聞き直しをさせていただいたわけでございますが、いまの御答弁でありますと、順調は順調だけれども、しかし一面で、今後様子を見ていかなければならない面もあるというような発言でございますので、了としておきたいと思います。  大臣の方は、これは円高以外については順調である、こういう発言をなすったわけでありますが、けさのこれも企画庁のお話で、国内消費の方もこれは実質的にはそう心配がなくて、また輸出の方も、付加価値の方が高くなっていくので、これもそう心配がないということになれば、大臣のおっしゃるような円高による御心配というのはないわけでありまして、その辺のところが大臣の答弁と企画庁の答弁と、けさ佐藤議員に対する答弁が若干、私、聞かせてもらっておりまして、食い違っているという感じを受けたわけであります。そのことをまず申し上げて、質問に入らせていただきたいと思うわけであります。     〔委員長退席、綿貫委員長代理着席〕  けさの大臣の答弁におきましても、それほどはっきりとというか、補正予算のことについての御発言が存外控え目な御発言であったというふうに私、感じたわけでありますけれども、事実問題といたしましては、すでに補正予算のスケジュールの過程に入っているという気が私はするわけであります。  二十日の日でありましたか、総理が補正予算案について発言をなすったのが新聞に伝えられております。それを拝見いたしますと、五十四年度予算と連動させた十八カ月経済展望の一環として編成したい、こういうはっきりとした発言をしておみえになるわけでありますから、補正予算というのはもうすでにスタートして、その後のある段階にあると言った方がいいのではないかと思うわけであります。この総理の発言に対する大臣のお考えはいかがでございますか、十八カ月予算
  159. 村山達雄

    村山国務大臣 補正予算を含む追加措置についての考え方並びに作業過程につきましては、きょう佐藤委員にお答えしたとおりでございます。  私も、新聞紙上で十八カ月予算というのを拝見いたしたのでございますが、総理からは私、直接伺っておりません。ただ、昨年の二次補正を組むときに、いわゆる十五カ月予算ということを言ったのでございますが、これは、五十三年度経済見通しが大体できまして、それに対しての当初予算の案も決まっておりまして、あわせて第二次補正を決めたわけでございますので、そういう意味で言いますと、十五カ月予算というものがしっくりいくと申しますか、成長率との関係におきましても、また、切れ目のない公共事業をやるという意味においてもよく理解できるのでございますけれども、今度言われた十八カ月予算というのがどういう意味なのか、総理によくお聞きしたいと思っているのでございます。  何と申しましても、まだ今年度の補正を含む追加措置が問題になっておりまして、来年度経済見通しその他それに対応する財政措置は決まっておりません。かたがた今度、中期経済計画についても見直しをやるやに聞いておるわけでございます。そういった三つばかりの関連から言いまして、十八カ月予算というものをどういうふうに組み合わしていったらいいのか、総理はああいう多年の経験を持っていられる方でありますから、ひらめきがあっておっしゃっているのかもしれませんが、その辺のことは総理によくお伺いしたい、かように思っておるところでございます。
  160. 坂口力

    坂口委員 真意のほどは後でゆっくりとお聞きいただくとしまして、十八カ月予算ということになりますと、これは当然補正予算と連動することを意味するわけでありますから、この補正予算景気面で刺激型のものであるとするならば、来年度予算にもそのことが反映してくるというふうに考えるのが常識ではないかと思うわけであります。そういった意味で、その真意は真意としてまたお聞きをするとして、現在の段階では、来年度の昭和五十四年度まで云々するところまでまだいろいろの状態がわからない、こういう意味に理解させていただいてよろしゅうございますか。
  161. 村山達雄

    村山国務大臣 少なくとも大蔵省でやっております作業は、今年度経済見通しを達成するためにさらに追加措置がどれぐらい必要であるのか、それからどんな適切な方法があるのか、そういうところでいま勉強中だと申し上げて差し支えないと思います。
  162. 坂口力

    坂口委員 それからもう一つ、このときに総理は、公共事業一本やりでも減税でもない、「第三の道」として、国民生活に直結した教育、体育、福祉など生活基盤整備に施策の方向を向けたい、こういう発言をしておみえになるわけであります。これは新聞で見せてもらった記事であります。こういう「第三の道」という総理のお考え方がここに示されたわけでありますが、私どもも、教育でありますとか福祉でありますとか、その辺のところに公共事業の内容を向けていくということは大事だということを、かねてから主張してきたところでありまして、その辺につきましては、私どもも賛意を示すわけでありますが、一方減税の方は、これは減税でもないというのがいささか気に入らないわけでございます。この総理の発言については大臣は、補正予算なりあるいは来年度予算をにらんでどのようにお考えになりますか。
  163. 村山達雄

    村山国務大臣 公共事業という場合通常、一般公共事業意味しているのだろうと思いますが、それは御案内のとおり、ことしは三五・四%という大変な史上最高の伸びを示しているわけでございます。したがいまして、その完全消化という問題がむしろ問題になりまして、これは事業の消化状況にもよりますけれども、追加の余地が非常に少ないんじゃないかという点を総理は懸念され、もうちょっと広い意味で「第三の道」とおっしゃったのではなかろうかと、私はさように心得ておるわけでございまして、文教であるとかあるいは厚生省関係の問題であるとか、こういったところに広く目を配って、そして景気刺激に役立つものはやはり有効なものをどんどん拾い上げるようにと、こういう御注意だ、かように受け取っておりまして、この方面もいま鋭意検討を進めておるところでございます。
  164. 坂口力

    坂口委員 それでは、きょうはこの問題はそんなに深追いしないことにいたしますが、減税問題についてでございますけれども、けさ大臣は答弁の中で、将来にむずかしい問題を繰り越すことになる、消費効果も薄いし、慎重でなければならない、こういう発言をなさったわけであります。もう少し補足して御説明をいただきたいわけでございますが、大臣のこのお考え方は、将来の増税のスケジュールがはっきりしていれば、景気回復のために減税することもやぶさかでない、こういう意味でございますか。
  165. 村山達雄

    村山国務大臣 三つか四つの理由を挙げたわけでございまして、一つは、即効性から申しますと、先ほど日銀総裁からもお答えになりましたように、余裕があるものであれば、公共事業といいますか、あるいは「第三の道」の方が即効性があるであろうということ。それから、同じ財源を使った場合にそうでございますが、特に財源の点で考えますと、所得税ということになりますと、当然のことでございますけれども交付税の穴埋めの問題が同時に出てくる、それだけに、単なる一般会計の直接の所要経費だけではその判断ができないということを、つけ加えて申し上げなければならぬと思います。  それから第二番目に申しまして、日本の所得税がほかの先進国に比べまして、住民税を含めましてほぼ二分の一であるということは御承知のとおりでございます。特に消費性向の高いと思われる低所得者層、減税をやって消費性向が高まるというところの低所得者層のところは、日本は御案内のようにもう最高の課税最低限でございまして、最近円が上がったものでございますから、その格差はいよいよついているわけであろうと思うのでございます。  同時にまた今日、そのうらはらのことでございますけれども、日本はいま実質三七%でございます。先般私、ボンのサミットに参りまして、各国が自分の国の財政に対していかに神経質であるかということを如実に感じたわけでございます。かつて一六%ぐらいまで公債依存をやっておった国もいまや一二%ぐらいに下げておりますし、フランスは御案内のように二%でございます。  今度ボンのサミットでいろいろ数字を挙げて言明しております。しかしどこの国も、これだけの景気刺激効果を講ずる、それによってGNPの約一%程度を上げたいと思う、こう言いますけれども、一方、二つの点が私、非常に注目されたのでございますが、その結果として一体今年度幾らの成長率にするのかというのは一国も述べていない、日本だけでございます。それから第二番目には、いずれも財政の問題を考え、それから資本市場の消化能力の問題を考えまして、非常に胸を張って言っておりましたフランスは、いわく、今年度GNPに対して〇・五%程度一般会計でもって借金をするつもりでございますと。どれぐらいの幅になるのか、それによりまして景気を刺激しようというのですが、われわれが目の子で計算しますと、一般会計に対して二%借金をするということ、それくらい国の将来に対しまして各国の財政当局は真剣に考えているということを私は痛感いたしているのでございます。  そういうことは別にいたしまして、私は経済財政というものは深く深くかかわり合っている問題であろう、こういうふうに考えますと、現在の負担状況から申し、それからまた即効性から申し、それからまたいかにいざというときの負担増がむずかしいかという問題を考えますときに、やはり所得税減税というようなものはこの補正予算段階でもとるべきではないじゃないか、かように私自身は思っておるところでございます。
  166. 坂口力

    坂口委員 私どもも将来に対して心配をしていることは同じでございまして、大蔵省だけが将来を心配しておりまして、われわれ野党の方は心配をしてないというようなふうにもとれる御発言でございましたけれども、決してそんなことはないわけで、われわれも心配しておるから言っておるわけでございます。  これは現在のように非常に厳しい情勢でございますから、減税ということが現在の時点においてどういう影響を与えるかということは、私どもよく存じているわけでありますけれども、しかしただ、高度成長のときの減税とは違って、そして将来のよりよい健全な姿を取り戻すためにどうしても一時減税をしなければならないことがあるんじゃないか、こういう意見は当然過ぎるほど当然な意見ではないかと思います。あすの健全な胃のためにきょうは絶食をするというのと同じであって、一時減税によって活を入れて、そしてまたそれによってよりよい状態をつくり出す、こういう議論も当然成り立つわけでありまして、大臣が幾つか挙げられましたその理由、私どももわからないではございません。ただ、即効性の問題にいたしましても、確かに公共事業は即効性があるかもしれません。しかしこの三年間、普通のいままでの予算から比べますと、公共投資、かなりがんばった状態が続いているわけでありまして、それでもなおかつ景気がぱっと五月晴れのような調子にはなってこない。ここに公共事業一本やりではいかんともしがたい、こういう姿が醸し出されているのではないかと思うわけであります。総理もやはりその辺のところを踏まえて、減税と言うこともできず、「第三の道」ということで表現になったのではないか、こういうふうに察するわけでありますけれども減税というような、即効性に欠けるとしても、しかしじんわりと効いてくるような、こういった方法もあわせて検討すべきではないかということを私どもは申し上げているわけでありまして、減税一本やりで、公共事業はうんと減らしてしまえとかというようなことを申し上げているわけではさらさらないわけでありまして、そういう総合的な施策というものに対するお考えがあるかどうか。そしてそのことに対しては、恐らく大臣は、今後の増税路線というものも踏まえて、考えに入れて、こういうふうなスケジュールの上ならばこういうふうに減税をしてもあるいは差し支えないのだというような御意見があればお聞かせをいただきたい、こういうことを申し上げたわけでありまして、つけ加えることがあったら後でつけ加えていただきたいと思います。  それに加えて、投資減税のことが、これは所得減税とは若干違うんだというような意味で言われているわけでありますが、このことについてもひとつ触れていただきたいと思います。
  167. 村山達雄

    村山国務大臣 頭から減税を考慮の対象外にするというような、そういう意味で申し上げているわけではないということを、ひとつ御理解いただきたいと思うのでございます。  それから、ちょっと訂正させていただきますが、一般公共事業、先ほど三五・四と申しましたが、三四・五でございますので、数字でございますので訂正させていただいておきます。  いまのお話でございますが、いろいろ考えてまいりますと、現在でもなお限られた財源でやるときには、減税よりも「第三の道」と申しますか、そういったものの方、あるいはまた公共投資にいたしましても、なお消化力を持っておるところに持っていった方がよりいいのではなかろうかと私は思っておるわけでございます。したがいまして、減税というものを頭から、全然もう減税と聞いただけで毛ぎらいしてやっているということではございませんので、あくまでも費用対効果の問題、それから、とりあえずことしのこの苦しい財政事情あるいは資本市場、こういったものを考えますときに、私はそれは一つの国力の限界だとも考えているわけでございます。その国力の限界の中で最も有効にやるにはどうしたらいいかという問題として、減税をも含めていろいろ検討いたしましても、所得税減税という答えにはなかなか結びつかないということを御理解賜りたいのでございます。  次の投資減税の問題でございますが、これはもうごく一般的に申しますと、企業の投資に対する態度はきわめて慎重であろうと思うのでございまして、かつては稼働率が旧指数で九三まで上がれば自然に設備投資に結びつくというようなことが言われておりましたが、いまはなかなかそうはまいらぬ。石油ショック以来の過剰投資というものが自後どれくらい企業の減量を強いてきたか、苦い経験の上に成り立っているわけでございますので、投資に対しては非常に慎重であろうと思うのでございます。現在でも私はその傾向があると思いまして、政府見通しに対しまして各種の調査機関が若干上回る数字を挙げておりますけれども、それは、間違いなく将来の消費伸びるという電力であってみたり、あるいは明らかに伸びているところの第三次産業であってみたりいたしまして、第二次産業の方はきわめて慎重な態度をとっていると思うのでございます。  一般的に投資減税をやるときは、当然でございますけれども、もう盛り上がって黙っておっても設備投資があるときに投資減税をいたしますと、これはインセンティブにはならず、結果的に減税になりますし、また何にも盛り上がらないときに、インセンティブがないときにやりましても同じ結果になるわけでございまして、まさにタイミングは非常にむずかしいということが一般的に言えるのではないかと思います。  それから、投資減税効果がいつあらわれるかということを考えますと、補正予算のときにそんなうまいものがなかなかあるかどうか。いま捨てたわけではございません、検討は進めておりますけれども、今年度デフレギャップを埋めるという意味で即効のあるものは一体何であろうかということを考えますと、やはりこれまたそう早急に減税をやればすぐ目的を達するというものではなくて、やはり一つ一つ十分なる理由づけの上に取捨選択を決めなければならない、かような心境に現在あることだけを申し上げておきたいと思います。
  168. 坂口力

    坂口委員 それから、税金関係でもう一つお聞きしておきたいと思います。  円高によります差益還元の問題が大きな議論を呼んでいるわけであります。そういった輸入等で、電気、ガスだけではございません、ほかのいろいろなものがございますが、円高差益を生んでいるような企業に対する会社臨時特別税のような、前回のようなああいうふうな税制を取り入れてはどうかという提案もあるわけでございますが、これに対するお考えをひとつお聞かせいただきたい。——ちょっとお待ちください。  それから、通産省お見えでございますか。通産省の方にも差益還元の問題でお聞きをしておきたいと思います。  通産省の方は、電気にいたしましてもガスにいたしましても、差益還元に対しましてはどちらかと言えば、かたい姿勢をおとりになってきたわけでありますが、最近若干通産省の方もお考え方をやわらかくしておみえになるやに聞いておるわけでございますけれども、きょうの新聞なんかにも、戻し税方式も検討しているというような記事が出たりもしているわけでございますが、最新の通産省の態度というものについて、もしも言っていただければここで発言をしていただきたいと思います。
  169. 村山達雄

    村山国務大臣 税制といたしまして、円高差益に対するかつてのような会社臨時特別税のようなものがおこせるか、あるいはおこすことが妥当であるかどうかという問題でございます。  どうも私は背景が非常に違うような気がいたしておるのでございまして、あの当時はいわば狂乱物価時代で、総需要を抑制しなければならない、それの一環として、利得を取り上げることによって特に換物運動を抑えていくというような見地からやったわけでございます。今日は情勢はまさにそうではなくて、需要を喚起したいというところがかなり環境が違っておる。  それから、前回の会社臨時特別税をやりましたときは、およそ企業であればすべてが物を持ってさえおればもうかる、つまり言いかえますならば、家計と企業との対比において、企業の側が非常に有利になり、家計の側が不利になる、こういう背景のもとでやったわけでございますが、今日においては円高によりまして、いわば円高差益の出るところもございますが、逆にまた大いにマイナスをこうむり、中には倒産するところも出てくる。いろいろな財政措置金融措置を必要とする事情、ずいぶんバックグラウンドが違うと思うのでございます。  それから第三番目に、仮にそれらの問題を除外して円高差益だけに課税できるのかと申しますと、この前の会社臨時特別税のときもそうでございまして、いわばインフレ利得に対して課税しろ、こういう議論でございましたが、これはもう技術的にとうていできないということで、最後は御承知のような案になりまして、一般的に申しますれば、物を持っていることによる債務者利益をある程度大きなラインを引いて課税すべきじゃないかということに落ちついたわけでございます。だから、円高差益というものだけを計算するということになりますと、当然のことでございますけれども、一体レートをどういうふうに、正常なレートはどれくらいであり、それでまたそれによって実際に実現したレートはどれくらいであり、その差がどうであるかという問題をしなければなりませんし、それから、ほかの物価高騰要因は一体どういうふうになるのか、これは技術的にはとうていできない問題であろうと思うのでございます。会計学でいうところのいわゆる為替差益という問題がございます。これは通常、長期のドル債務がありましたときに、それを決済したときには当然レートの差によって実現利益がありますが、これはすぐわかるわけでございます。     〔綿貫委員長代理退席、小泉委員長代理着席〕  それから、かたがた考えますと、そういうことをしなくても当然五〇%程度はおのずから総利益という形で、すべての円高差益あるいはその他の要因によるプラスマイナスが相殺されまして総利益にあらわれるわけでございますので、現在の法人税あるいは法人住民税、事業税の形態でも約五〇%は事実上ちょうだいしておる、こういう形になっておりますので、税制としておこすということは非常に困難なことではないか、かように思っているわけでございます。
  170. 上杉一雄

    ○上杉説明員 電力、ガスの為替差益につきましては、通産省としまして、現在の料金水準をできるだけ長く据え置くことによってこれを消費者に還元するという方針であることは御承知のとおりでございます。  この考え方のバックになっておりますポイントといたしましては、こういった電力、ガスの供給コストというのは、実は原価計算期間をすでに過ぎておりますけれども、年々増高傾向にございまして、会社の収支というのは基本的に悪化していくという構造になっておるというのが第一点でございます。  第二点としましては、為替レートの動向あるいは原燃料、油の価格の動向、こういったものがきわめて流動的でございまして、そういった状況を踏まえますれば、現在の為替差益は据え置きによって還元をすることが最も適切だ、こういうふうに考えたわけでございます。  最近円高傾向が、一進一退かと思いますが一段と進みつつありまして、非常に論議が行われていることは承知しておりますし、私どもとしても日夜いろいろ考えておるわけですが、いま申し上げましたような事情には本質的には変更がないというふうに考えておりまして、なお料金を据え置くことによって還元したい、こういうふうに考えております。
  171. 坂口力

    坂口委員 大臣、もうすでに時間を過ぎているものですから、税制の問題、余りお聞きする暇ないのですが、そうしますと、税制としてはなじまないと申しますかうまくいかないという御意見ですね。それならば、差益還元という意味ではぜひすべきだという御意見ですか、大臣。これで終わりにしますから簡単に答えてください。
  172. 村山達雄

    村山国務大臣 差益についてはまさに還元さるべきものだと思っております。そしてまた、市場原理を通じまして還元されつつあると思っております。  公共料金については、還元の仕方その他については、それぞれ所管省が考えておるところであろうと思っております。
  173. 小泉純一郎

    ○小泉委員長代理 永末英一君。
  174. 永末英一

    ○永末委員 大蔵省では新金融効率化ということを言っておりまして、具体的な項目を四点ほど挙げられておりますが、その中で合併、提携等には前向きに対処する、こういうことでありますけれども、その合併が前向きに対処せらるる条件というものはどういうものですか。
  175. 徳田博美

    ○徳田説明員 お答え申し上げます。  金融機関の合併の問題でございますが、大蔵省といたしましては、合併のための合併を推進するつもりは毛頭ないわけでございまして、現在置かれているような高度成長期から安定成長期への移行の過程におきまして、すべての企業が安定成長への軟着陸のために苦しんでいるわけでございます。その場合に、金融機関も例外ではあり得ないわけでございまして、金融機関をめぐる環境も非常に厳しくなっており、これは金融構造の変化に基づくものによるところが大きいわけでございまして、そういう意味で、金融機関経営の今後の一層の効率化を図る必要があるわけでございます。同時に、金融機関の社会的公共性と申しますか、国民経済の必要とする分野、たとえば公害防止であるとか社会福祉であるとか住宅であるとか、そういう方向に金を流すことも非常に大事でございまして、こういう意味で、経済社会全体の論理からの効率性も追求しなければならない、こういう意味で、二重の非常に厳しい状況に直面しているわけでございまして、こういう状況に対しまして、金融機関の与えられた使命を達成するためには、金融機関としてはいままで以上に企業努力が必要になるわけでございます。そして適正な競争原理を導入して自主的な企業努力をしてもらう過程において、経営効率の劣った金融機関については、もちろんこれは自己努力が必要でございますけれども、場合によっては今後の先行き見通して提携、合併もあり得る、こういうことで合併もあり得るということを言っているわけでございます。  その場合に、金融機関の合併の問題はどこまでも金融機関の自主的な経営判断に基づいて行われるべきものでございますが、両当事者の自主的な意思の合致がありまして、大蔵省に対しまして合併についての認可の申請がありました場合には、これは異種合併の場合であれば合併転換法に基づいて審査が行なわれますし、それ以外の合併であっても同じような精神で審議が行なわれることになるわけでございます。  その場合の一つの項目といたしましては、その合併が金融の効率化、つまり低利、良質な資金の供給に役立つものであるかどうかということ。それから二番目には、合併によって当該地域の中小企業金融に支障を生じないかどうか。つまり、合併することによっていままで以上に地域金融であるとか中小企業金融が円滑に行われるかどうかという問題点がございます。それから三番目には、合併することによって当該地域で金融機関が寡占状態になるようなことになりますと、これは適正な競争が行われないわけでございますから、そのような観点で、金融秩序を乱すおそれがないかということ、これが三番目の点でございます。それから四番目の点は、その金融機関が合併することによって業務を的確に遂行できるかどうかということでございます。これらに関連いたしまして、やはり合併した場合に、その金融機関の職員、従業員の処遇が適正に行われるかどうかということが問題になるわけでございまして、当然その場合には、合併前の処遇に比べましてそれに劣らないような処遇が行われることが条件でございまして、通例は、労働組合との間に合併前におきまして協定が結ばれまして、合併の前後を問わず合併を理由とする退職勧告、人員整理等を行わないとか、あるいは新しくできた金融機関の人事上の処遇については公平かつ適正に行って、出身の金融機関による差別は将来にわたって行わないとか、あるいは合併後の人事配置の基本方針については事前に組合と協議するとか、さらには合併に伴う従業員の不安解消、労働強化の排除等についても誠意を持って対処するというような協定が結ばれ、かっこの協定が合併後におきましてもそのまま引き継がれるのが通例でございます。このような観点から審査が行われます。  なおこのほかに、異種の合併でございますと、その合併が同種の金融機関同士の合併を阻害しないことであるという点も問題になります。それからさらに、公益上必要がある場合には、その必要な限度において条件を付することも条文にございまして、たとえば中小企業金融に対する比率を必要な場合には一定のものを維持するとか、そのような条件をつけられることもあるわけでございます。
  176. 永末英一

    ○永末委員 さて、最近関西相互銀行と住友銀行の合併が話題になり問題になっておりまして、関西相互銀行が六月二十九日の取締役会で住友銀行との合併を決議いたしましたが、それから二月近くたっていまなお問題が進展をしていない原因はどこにあると思われますか。
  177. 徳田博美

    ○徳田説明員 関西相互銀行と住友銀行の合併の問題につきましては、現在、関西相互銀行の内部でいろいろ議論が行われていると聞いております。  先ほど申し上げましたように、合併に当たりましては、当事者の自発的、自主的な意思決定が大事でございまして、そういう意味で、内部でのそのような意思決定が行われている、そのような過程にあるのではないか、そういう問題をめぐって内部で意見のいろいろな交換あるいは議論が行われている段階ではないか、このように考えております。
  178. 永末英一

    ○永末委員 先ほど合併というのは金融効率が劣った金融機関において合併の必要が認められるという場合に起こるだろうというお話でございましたが、相互銀行と都市銀行でございますから、金融効率が劣っている方は相互銀行のごとく思われますが、関西相互銀行に対して最近監査が行われておりますが、経営上合併の必要があると御判断なさいますか。
  179. 徳田博美

    ○徳田説明員 関西相互銀行の経営内容につきましては、金融機関のことでもございますし、信用保持のこともございますので、個別の問題としてはお答え申し上げかねるわけでございますが、先ほど御指摘のように、一般的に申しますと、たとえば経費率で申しますと、都市銀行の平均は二・一六%でございますが、相互銀行の平均は二・九三%でございます。また貸出金利が、都市銀行の平均は五・七五%でございますが、相互銀行の平均が、これは五十三年の六月でございますけれども、七・二六%、このような実情にあるわけでございます。
  180. 永末英一

    ○永末委員 去る八月八日の新聞によりますと、大倉事務次官が関西財界との懇談を八月七日にやりまして、記者会見をやりました。そのときに、この関西相互銀行と住友銀行との合併問題に触れ、合併によって効率化が進むのはよいが、大部分の取引先、従業員の納得を得なければ合併審査は受け付けない旨の発言があったのであります。     〔小泉委員長代理退席、委員長着席〕  さて、具体的には相互銀行の方は、労働組合は執行委員会、大会の決議をもって合併に反対をいたしておる。さらにまた、取引先約一万五百軒のうち八千軒の取引先が、関西相互銀行を守る会なるものを結成して合併反対を言っておる。また、従業員側の管理者クラスである支店長会も、支店長会の決議をもって合併反対を言うておる。こういう状況でございまして、なるほど関西相互銀行の取締役会は合併の決議をいたしましたが、そうしますと、そういう状況が進んでおりますと、事務次官の申しましたように申請を受け付けられない、こうなりますか。
  181. 徳田博美

    ○徳田説明員 先ほど申し上げましたように、両当事者の自主的な意思の合致がなければ合併ということはそもそもあり得ないわけでございまして、そのような段階があって初めて大蔵省に申請がございまして、大蔵省が審査を行うわけでございます。大蔵省が審査を行うに当たりましては、先ほど申し上げましたような諸点を中心に審査を行うわけでございまして、特に取引先の納得の得られるようなもの、また従業員の納得の得られるようなものでなければ、そういう場合に審査としてはいろいろ問題になるのではないか、このように考えております。
  182. 永末英一

    ○永末委員 さて、問題は六月二十九日にあからさまに具体化をして、それからいまのような状況に進んでいるわけでございます。そしていまのところ、にわかにその状態がどんどん変更していく様子があるかないか、どう判断しておられるかわかりませんが、このままでほっておきますか、何かしますか。
  183. 徳田博美

    ○徳田説明員 合併の問題は、先ほど申し上げましたように、当事者の自主的な意思の決定が中心になるわけでございますので、大蔵省といたしましては、個別の問題に介入するつもりはございません。
  184. 永末英一

    ○永末委員 合併に対して何らかの措置をするというのではなくて一関西相互銀行が一万五百軒のお客様を抱えて現在金融業務を行っておる。ところが、中が合併か否かでがたがたやっておって、その正常なる金融業務に差し支えがきてはならぬわけですね。そういう点はどう思われ、またどう対処されるおつもりか伺いたい。
  185. 徳田博美

    ○徳田説明員 先ほど申し上げましたように、合併の問題は個々の金融機関にかかわる問題でございますが、仮にその結果、内部でいろいろな議論が起こりまして、信用秩序の維持というような問題、あるいはその相互銀行としての業務の遂行上問題が出るようなことが将来万一ありますれば、その時点において検討したいと考えております。
  186. 永末英一

    ○永末委員 十分にこの方面におきます正常な金融業務に支障がないように注視をしていただきたい問題だと思います。  さて、時間の関係上次の問題に入りますが、最近サラ金問題が非常に憂慮すべき状態として取り上げられております。  昨年十一月に民事調停の申し立て件数の中でサラ金に対する調停申し立て件数が幾らあるかという調査を、全国の簡易裁判所の中で地方裁判所の本庁所在地の五十カ所について行われました。これによりますと、たとえば大分におきましては九三・七%がサラ金調停をやっておる。それから静岡では九一・三%がやっておる。大変な数字になっているのでございまして、これは最高裁からいただいた資料でございますが、この全部の平均をとりましても五四・三%がサラ金の調停である。まさに重大問題になっておると思うのです。  本大蔵委員会においても再三取り上げられましたが、これはたまたま五十二年の十一月にやったというのですが、調停にかかっている件数というのは、社会問題化されている現状をきわめて明確にわれわれに示しておると思いますので、大蔵委員長として最高裁判所に、大蔵大臣がこの前本委員会で答弁したところでは、九月の初めごろには何とかどうするかをちゃんと決めたい、こういう話でございました。九月と言えばもうすぐ手が届くところでございますので、最近に調査をひとつやるように最高裁の方に御連絡を願いたい。よろしいですか。
  187. 大村襄治

    大村委員長 御発言の趣旨を最高裁当局に連絡して、善処いたします。
  188. 永末英一

    ○永末委員 さて、私どもが思いますのに、このサラ金業者をいまの利息制限法や出資法、あるいは助成法ですか、そういうものだけで見ておって、かくのごとく調停事案もたくさんサラ金について起こり、あるいはまた、高金利事案というものが警察関係で立件される事案も起こっておる。こうなりますと、いまのままの法律体系ではいかぬのではないか、こうわれわれには思われます。  そこで私どもは、小口金融業者という位置づけをサラ金業者にいたしまして、やはり新しい法規をつくって、そうしていわゆるこのサラ金業者と言われるこれらの人々を、他の企業相手に貸し付けする貸金業者と区別して、法で規制することが必要な段階に来ておると判断しますが、大蔵大臣はどうですか。
  189. 徳田博美

    ○徳田説明員 先生御指摘のとおり、サラ金問題は社会的にも大きな問題になっているわけでございまして、このサラ金を含めまして貸金業者のあり方につきまして、現在、関係省庁において連絡会議を開いて検討を行っているわけでございます。また先般、貸金業者、もちろんサラ金業者も含めまして実態調査を行いまして、この結果が恐らく九月中にはまとまるのではないかと考えております。それで、このようなサラ金業者を含めました貸金業者の実態を把握した時点におきまして、これらを踏まえまして、法律の改正問題を含めて対策についてさらに検討を進めていきたいと考えております。
  190. 永末英一

    ○永末委員 二カ月ほど前でしたか、大蔵委員会理事懇談会で、各省庁のこの関係の方が来られて、何をやっているかという話は各党で伺ったわけでございまして、いまも実態調査の結果が九月中に来るだろう、こう言うのですが、すでにそれからだって二カ月たっているわけだし、それぞれの進行状況はその都度見ておられる。統計的に言いますと、最終的な数字がなくたって推測されるものは推測できるわけでございまして、臨時国会もすでにあろうとしておりますので、法律をつくるつもりならもう進行しておっていいころではないかと私は思います。  その点で一ついまの大蔵省の考え方を聞きたいのでありますけれども、私どもは、やはり現在届け出ということをやっておるものだから、きわめて無責任な人がこの業務をやっている可能性が非常に多いと思います。したがって、これを免許制にすべきではないか。そして、営業する者の資格要件を法定すること、それから公正な業務運営を具体的に義務づけること、こういうことが必要ではないか。それはすなわち、強力な指導監督を受けるようにする、報告書をちゃんとつくらしてそれを調査するとか、業務の検査をやるとか、あるいは立ち入り権をちゃんと行使できる官庁を指定するとか、こういうことが必要だと思います。こういうことはそう思われませんか。
  191. 徳田博美

    ○徳田説明員 いわゆるサラ金業者をめぐる問題につきましては、純粋の金融的な問題よりも、暴力問題であるとかあるいは高金利違反であるとか、そういうような社会秩序の維持に関連する事項がむしろ社会的には大きな問題になっているわけでございまして、したがいまして、これに対する対策といたしましても、各省庁が相協力して行う必要があるわけでございます。そういう意味で、関係省庁会議でいま鋭意検討を進めているわけでございますが、ただ、いま先生御指摘の、現在の届け出制を免許制に移行するということにつきましては、これは一つの方向かとも考えられますけれども、現実の問題といたしまして、現在十六万以上ある業者に対しまして、免許制をとりまして監督を行うためには、大変な事務量が必要になるわけでございますし、現実的には都道府県に相当な人員の増加が必要となるわけでございます。したがいまして、こういう事務処理能力の点も勘案する必要があるわけでございまして、その辺のいろいろな多くの問題を踏まえながら、しかし前向きに、何らかの点で指導監督を強化するということを考えたい、このように思っております。
  192. 永末英一

    ○永末委員 暴力事案とかが心配だというのは、要するに免許制にして、その営業する者が良質な営業者であればその点はなくなると思うのですね。そうでない者がいま届け出だけで営業しているものだから、そういうような不当取り立てを行うということになろうかと思います。  もう一つ、不当金利の問題が出ましたが、つまり問題が起こるのは金利が高過ぎるからであって、調停にかかっておるのは、結局利息制限法以上、出資法の処罰金利以下、この辺のところのことを知っている人が調停にかけて、そして利息制限法以内は払うが、あとはパーにしてくれ、無効ですからね、こういうことで調停が行われているとするならば、貸付金利というものを明確化して、この最高限度を下げてやる、こういうことを法定する必要があるのではないかと思いますが、どう思われますか。
  193. 飛田清弘

    ○飛田説明員 サラ金の問題といたしまして、最近各方面で取り上げられて社会問題化しておりますのは、ただいま御指摘のとおり、小口金融業者中の一部の悪質な者が、貨し付けに当たりまして法外な金利を取ったり、あるいは取り立てに当たって暴力的な言動に出たり、あるいは契約書や領収書、計算書などの必要書類を発行していないなどの点にございまして、その対策としても関係方面から、小口金融業について現行の届け出から免許ないし登録制に改めることを含めまして、業者に対する行政規制や行政指導をさらに徹底して行えるように法制度を整備してはどうかという提案がなされているところでございます。  私どももこれを十分承知しておりまして、政府といたしましても、先ほど御答弁がございましたように、その実態を踏まえて有効適切な対策の確立を推進しようとして鋭意検討を行ってきているところでございます。問題の緊急性にかんがみまして、これら小口金融業を所管する省庁を中心といたしまして、速やかにしかるべき対応策を講ずるように考えておりまして、法務省といたしましても、そのための御協力、すなわち必要な罰則規定については十分協議しようということで考えているところでございます。  ところで、いま御指摘の出資法五条の日歩〇・三%の制限につきましてどうするかということでございますけれども、私どもといたしましては、社会における実態に応じましてこれを改めることにはやぶさかではございませんけれども、その実態が必ずしも明らかでないということと、それから出資法五条は、一般の貸し付けにも適用がある原則規定でございまして、業者のみならず、国民一般がやった場合でも処罰できるという規定でございますので、その引き下げには慎重な検討が必要であり、また、悪質業者はおおむね〇・三%をはるかに超える貸し付けを行っておりまして、それによって検挙されている者も多数おるという現実でもありますので、その引き下げについては、それだけで悪質業者に対する措置としては必ずしも十分な効果があるとは考えられないという考えでございます。そういう点を含めまして、出資法の五条についてはさらに検討が必要かと思っております。
  194. 永末英一

    ○永末委員 いま申されましたように、業者が帳簿もなければ、そしてまた契約書もないし、借りた方がもう耐えかねて何とかしてくれと警察へ行きましても、調べてみたら口頭であって、何ら手がかりがない、こういうことでございますから、その意味でも、免許にしていまのような遵守義務をちゃんとやらせるということが私は必要ではないかと思います。  まあそれは必要だとお考えになっておるようでございますが、この出資法五条の改正におきましても、これは全部の金銭貸借にかかわるんだから何もこれだけではないというような態度では、いま出ておる問題の問題点がなぜ起こっておるかわからぬじゃないですか。結局日歩三十銭というものの上が科罰対象でありますから、それまではいいんだと言わんがばかりの態度で高利を貸しておる。それ以上のものは科罰対象ですから、ばっちりこれはやられますわね。調停にかかってくるのはその以内でやっておる。しかしそれが払えない。借りる方は、そんなことを考えてやっているのじゃない。年間、自分が借りた金の二倍以上になるんだということは余り頭にこない。なぜかならば、いやもう何十日かで返せる、何日かで返せるということで借りるのでありますが、それが借りかえ、借りかえさせられていまのようなことになってくるとするならば、この部分だけでも改正をしてやっていくという態度が必要ではないか。そのことがほかに影響があるならば、それはそれでまたそこの部分を考えたらいい。いまの一番の問題点は、利息制限法はあるけれども、出資法で日歩〇・三%までは罰さないということは、あたかも法律で合法性を与えられておるがごとく錯覚をまき散らしておるところがある。したがって、それを引き下げることはまさにその部分だけ利率が下がってくる、すなわち金銭を借りる方は負担が軽くなる、だからその部分に関する問題はなくなる、こう見ていいのではないか。どうお考えですか。
  195. 飛田清弘

    ○飛田説明員 お尋ねの趣旨は十分わかっておりますが、一般人に適用される出資法五条の規定を業者にも適用しているということから現実にそうなっていることでございまして、そうかといって、一般人に適用される利率を下げまして、それ以上の利息を取って金を貸したり、貸す契約をしたら処罰するということは、特定の悪質な業者を処罰するために一般人のいろいろな私的契約の自由を非常に制限する結果になりかねない。そこで、一般人にも適用される利率を下げるのが適当なのか、あるいは業者に特別な規制をするのが適当なのか、その辺のところを含めていま検討しているところでございます。
  196. 永末英一

    ○永末委員 この法律ができましたのは、わが国のインフレ時代なんです。したがって、身内で金を貸しても、一年間に二倍になったってしようがないな、こういう感覚が日歩三十銭を認めしめて、日歩三十銭以上のものがあったわけですね。しかし、いまや先ほどからお話で、新金融効率化も、経済がふらふらしまして軟着陸をしなければいかぬという渋い話になっているときに、金利だけ山ほど高いものを認めておることが大体おかしいのです。  それなら、一体これをやることによって、利息制限法を実質上おかしくしているということを考えれば、法務省としての法律の包括性に対する考慮からのいろいろな顧慮はわかりますけれども、まずやはりここまで起こっておるこの反社会的な様相を縮めるというためには、そこに焦点を置いた配慮があってしかるべきだと私どもは思いまして、それはそれなりにひとつ御検討を願いたい。  さらに、取り立てにおきましても、早朝、深夜訪問したり、威迫を用いたり、継続請求をしたり、返せ返せとあちこち宣伝したり、それから最も悪いのは、あなたは返せなかったら、この人から借りてあげますからこっちから借りなさい、そのかわり私どもへは返してくれと言うて転貸しを強要しておる、これなんかもけしからぬ話、一種の脅迫に類するものでございますが、そういうような不当取り立ての制限を法定しておく必要がある。このことをしておくならば、いまの調停事案もうんと減ると思うのですが、いかがでしょう。
  197. 徳田博美

    ○徳田説明員 いま取り立てで問題になっているのは、むしろ暴力的な行為によって取り立てを行うという面ではないかと思います。その点については、警察庁あるいはそちらの方面からお答えがあると思いますが、先ほど来先生も御指摘のように、現在取り立て以前の問題で、実際に資金を貸すときに金利その他が必ずしも表示が明白ではございませんし、計算書を出していない場合もございますし、それから借りかえ借りかえで複利になるというような問題もあるわけでございます。このような問題もございますので、もちろんこの中には法律の改正を必要とする部面もあるわけでございますけれども、当面行政面でできるものについても早急に手を打っていきたいと考えでいるわけでございまして、御承知のとおり、現在貸金業者の自主規制の助長に関する法律によりまして、庶民金融業協会が全国にできているわけでございます。この連合会が中央にあるわけでございまして、これが大蔵省の監督下に属しております。したがいまして、現在六省庁、各省庁の連絡会議において、法律改正を含めまして監督の方法について改善その他の検討を進めているわけでございますけれども、とりあえずできる措置といたしましては、一つの問題としては、現在貸出金利が日歩建て、日歩何銭ということになっているわけでございまして、これでございますと、たとえば一万円借りても一日三十円の金利で済むというような表現を使うことになりまして、かなり金利が安いのではないかという錯覚を招くもとにもなっているわけでございます。こういう意味で、金利につきまして年利建てを併用させまして、仮に日歩三十銭であれば一〇九%以上になるわけでございますから、そういう年利建てを併用させることであるとか、あるいは貸し出しを行う場合には必ず計算書を交付しまして金利を明確にする、十日借りれば幾ら金利を払う、一カ月借りれば幾ら金利を払わなければならないという計算書を交付させることであるとか、さらには、これはすでに庶民金融業協会の定款の中に明示されておりますけれども、店内にいま申し上げましたような貸付条件を明らかに掲示することであるとか、そのようなことについて、庶民金融業協会を通じて指導を早急に行ってまいりたいと考えております。
  198. 永末英一

    ○永末委員 庶民金融業協会というのは、現在の届け出業者が自発的にやっているものでございまして、その分量もきわめて少ない。その意味では、免許が前提になったときに初めて業者の自発的な団体もより包括的になって行えるのではないか、私はこのように思います。なるほど、いま大蔵省所管だからと言われたが、それはそれで努力してよろしいが、ちっとも解決にならぬ原因がそこにあると私は思います。  さて大蔵大臣、いま法務省の人も関係省庁と相談すると言うし、銀行局長も六省庁でどうだという話、わが大蔵委員会理事懇談会にも話を聞こうというと六省庁が出てくるわけですね、これがおかしいと思うのです。これは内閣総理大臣か決めることかもしれませんが、世の中の金の動かし方に一番責任を持っている大蔵大臣は、あなたのやっているところに穴があいているわけだ。現実に穴があいているからこれほどの問題が起こっている。京都でも警官がサラ金を借り倒して、署内のピストルを盗むということがあり、関係の人が皆責任をとりました。大変な問題ですね。現実にそこに害があるわけだ。山があるから登る、害があるなら直す、これが大蔵大臣の責務ですが、あなたは積極的に関係省として、大蔵省として責任を持ってこれを埋めるという御決意はございますか。
  199. 村山達雄

    村山国務大臣 サラ金問題は、前国会から各委員会で熱心かつ長時間にわたりまして各方面から論議されたわけでございます。そしてまた、六省庁が関係しているものですから、六省庁でいままで何回にもわたりまして検討をいたしておりまして、その実態調査が九月中には取りまとめられるというところまでようやくこぎつけたわけでございます。それがどこの所管であれ、私はこの問題は、できるだけ早い機会に立法措置を含む諸制度を整備して解決しなければならぬ問題であると考えているわけでございます。  私自身は、この問題はかなり広範な問題でございますので、やや期間をいただきまして、通常国会までには何とか解決できるような法案を出したいものだと思って、関係閣僚とも寄り寄りいま話を進めているところでございます。何分にもこの実態調査の分析あるいは諸制度との関連、さらには金融を受けている側の実態、こういった広範な問題を含む一つの社会問題として考えまして、早急に解決したい、このような決意を持っているわけでございます。
  200. 永末英一

    ○永末委員 せっかく御努力を願います。  終わります。
  201. 大村襄治

    大村委員長 荒木宏君。
  202. 荒木宏

    荒木委員 早速お伺いをいたしますが、大蔵省の文書課編集の「ファイナンス」の最新号を拝見しますと、六月二十三日の経済対策閣僚会議後の大臣の記者会見でございますが、この中で、「雇用対策については、良い知恵が無い。統計では失業者が年十万位増えている。公共事業で配慮しているが、最終的解決になっていない。」こういう御発言が出ておるのですけれども大臣公共事業の本部長もなさっておるようでありますが、ここでおっしゃっておる「配慮」というのは具体的にどういうことをお指しになっておるのか、お伺いしたいと思います。
  203. 村山達雄

    村山国務大臣 これは、公共事業を地域別に張りつけるときに、やはり構造不況業種の多いところ、あるいは有効求人倍率等から見まして、主として労働省の方から御発言願いまして、そしてこういう地域については雇用対策上、公共事業の張りつけについても考慮してもらいたい、こういう意思を十分取り入れましてことしはやったところでございます。そういう意味で、公共事業の張りつけにつきましても、われわれとして気のつくところ、これは予算委員会においても御注意いただきましたし、大蔵委員会においても御注意いただいたその線に従いまして配分を行っておる、こういうことでございます。
  204. 荒木宏

    荒木委員 順番に優劣をつけるといいますか、確かにこれも一つの配慮の方法であろうと思います。しかし、それでは絶対量は同じで、その後先の順番が違うだけでありまして、最終解決にならないことは、これはまあ素人が考えてもわかると思うのですが、さればこそ大臣も「最終的解決になっていない。」こうおっしゃっているのだろうと思います。もちろんこの問題は、所管省としては労働大臣が直接の御所管でありますけれども、しかし、この公共事業の遂行に当たって雇用の絶対量をふやす手だては果たしてないのだろうか。  経済企画庁の報告によりますと、公共事業の中で生活関連基盤と産業基盤、この公共事業雇用効果が違う。百万円投資をしまして、生活基盤、病院ですとか学校ですとか、こういうことだろうと思うのですが、これは五十四人雇用する、ところが産業基盤の方は三十七人で、約五割方違う、こういう報告がありました。もちろん公共事業の産業基盤、生活基盤のウエートは、雇用だけの点からすべて律することは一面また問題があろうかと思いますが、しかし、雇用の問題がこれほど重大な問題であり、しかも円高でいま国際的にも大いに論議をされておりますが、同じ大臣のこの記者会見で、アメリカが黒字問題についてこれほど強く発言するのは自国の雇用問題ではないか、アメリカの最大の関心は雇用問題にあるのではないか、こういうことをみずからおっしゃっておるのですね。だとしますと、公共事業の二つの種類の中で、企画庁自身が五割増しでこんなに雇用効果が多いと言っておるその生活基盤を公共事業の当面の重点にしていく、もちろん物差しはそれだけじゃありませんけれども、くどいようですが、こういうことをこの際、雇用問題の解決、公共事業の推進に当たって、経済関係閣僚会議の重要なメンバーであり、また公共事業の本部長であられる大臣にひとつ明確に打ち出していただきたいと、こう思うのですが、御意見を伺いたいと思います。
  205. 加藤隆司

    加藤説明員 数字でちょっと申し上げてみますと、公共事業で生活関連と言っておりますのは、御承知のように住宅、下水道、環境衛生、公園、こういうようなものでございますが、五十三年の場合、一般公共の総額が五兆一千ございますが、そのうち四分の一の一兆三千億をこれに充てております。それで、十年ほど前におきましては、一般公共の中で大体一〇%切ったぐらい、最近時におきまして、五十二年と五十三年と比較してみますと、五十二年の場合には九千三百五十億でございました。五十三年にはただいまのような、御指摘のような問題を検討の上、四一%の増というような増加になっておるわけでございます。ウエートにおきましても伸び率におきましても、生活関連に重点を置いてまいっております。
  206. 荒木宏

    荒木委員 政府委員の御答弁あえてさえぎらなかったですけれども、私は数字はあらまし承知しておりますので結構なんです。そういう経過にかかわらず、よい知恵がない、いい結果が出ないということですから、私はそのいままでの経過の進みぐあいにまだ十分でなかった点があるのではないか、こういうことを申しておるのでありまして、いまおっしゃったのは恐らく一般会計のあれだろうと思いますが、財投の公共事業の割り増し、全体として大臣に一層この点の方針を明確にしていただきたいと思います。政治的な方針を伺いたい。
  207. 村山達雄

    村山国務大臣 アメリカにおきましてもどこにおきましても、雇用問題が大変な問題になっておるわけでございます。特にアメリカは、最近多少改善されたとは言いながら、なお六%台、こういうことでございますから、これは社会的にも政治的にも大問題であろうと思うのでございます。日本も二%台だと言いますけれども、やはり過剰雇用を抱えており、そしてまたその二%という数字はなかなか大変な数字であることは、よく承知しておるわけでございます。しかるがゆえに、公共事業の張りつけ方につきましても各委員会の御趣旨を体しまして、先ほど申しましたように、構造不況業種の多いところ、あるいは有効求人倍率の低いところ等を中心にして労働省の意見を十分取り入れてやっておるところでございます。  にもかかわらずやはり雇用状態は、就業人口は大体年間に五十万ぐらいふえるわけでございますが、同時に完全失業者が十万程度毎年ふえておるということでございまして、これについては、やはり単なる公共事業だけの問題でなくて、それ自身の問題として今後検討をしなければならぬのではなかろうか。経済白書でもうたっておりますようなあの方向が一つの方向であると思うのでございますけれども、今後第三次産業の方がやはり雇用効果が高いわけでございますから、民間におきましてもその方面の方に今後発展することが望ましいし、また、一定の仕事を多くの人間で分けるという工夫も今後また、こういう時代においては改めて考えていかなければならない、非常にむずかしい問題だと思っておるのでございます。しかし、この問題が重要な問題であることは御指摘のとおりでございます。経済閣僚の一人といたしまして、私も微力ではありますけれども、できるだけの力を尽くしてまいりたい、こういう心境におるわけでございます。
  208. 荒木宏

    荒木委員 大臣お願いでございますが、私が申し上げたのは、余のことを一応踏まえた上で、さらに生活基盤の公共事業における比重をふやすべきではないか、これをお尋ねしましたので、民間における第三次産業への就労の問題その他、いまお尋ねした以外の問題の事業と雇用の関係はいろいろあろうかと思うのです。しかしそれはおきまして、ことしの一月から六月まで平均で百二十九万人の完全失業者と言います。先ほど二%というお話がありましたけれども、しかし転職の希望者、追加就労の希望者は七百三十万人に及んでおります。これは政府の統計でも出ておるとおりなんですけれども、それほど深刻な問題になっておって、閣僚が十三人お寄りになって、しかも与党の幹部が三人参加をされまして、日銀総裁まで加わられた十七人の経済関係閣僚会議で知恵がない、こうおっしゃっている。私は、そのことを逆なでするようなつもりで申し上げているのじゃ毛頭ありませんけれども、お尋ねしておるのはこの一点でありますので、いま最後に、それを踏まえて事を進めていきたいというお話もありましたから、御答弁を了として、それを前提にしてもう一言お尋ねをしたいと思います。  御案内のとおり、生活基盤の中でもたとえば医療、学校、病院その他のところは、現状の運営にも大変な人不足であります。この点は大臣もよく御承知と思いますが、数字の上でも、五十二年の経済白書では、医療、保健、清掃、教育、そして公務、これらの分野について、全就業者とそれらの分野の就業者の比率を見ますと、アメリカは二二%、西ドイツは一五・三%、日本はわずかに九・三%とあります。つまり、これからひとつそういうことも心していきたい、主計局次長お話ではいままでずいぶん努力してきた、こうおっしゃるのですが、その肝心の人がなくては、比率がアメリカの半分以下、西ドイツの五割以下という状態では、入れ物をつくっても動きやしないと思うのですね。ですから、財政当局の責任者として、先ほどおっしゃった方向での公共事業を進めていくとなりますと、生活関連の基盤の公共事業設備を動かす人の面でも、財政面で十分配慮していただきたい。この点で御意見をはっきり伺いたいと思います。
  209. 村山達雄

    村山国務大臣 おっしゃるとおりだろうと思います。しかし、この問題は率直に申しますと、かなり時間のかかる問題ではないかと思うのでございます。そもそも病院というときに、入れ物をつくりましても、お医者さんの数から足りない、その辺に医療問題の実は基本問題があるのではないかと思うわけでございますが、一方において医科大学をつくりますと、言葉は語弊があるかもしれませんが、速成だというようなことを言われまして、またいろいろ別な問題を起こしているわけでございます。日本がこれだけ伸びてまいりましたけれども、そういう就業構造の変化という問題には、やはり人間が中心でございますだけにやや時間のかかる問題があると私は思っているのでございます。  しかし方向といたしましては、いま荒木委員が御指摘のとおりでございまして、今後その方面に、公共事業の問題でも、それからまた人員の配置にいたしましても、総定員法の枠があるとはいいながらも、やはりその辺に頭を使っておくことは大事なことではないであろうか、そのように考えているところでございます。
  210. 荒木宏

    荒木委員 大臣のおっしゃいました事情、私は余り詳しくはありませんけれども、あらましは承知しておるつもりです。そういった実務上の問題あるいは法律上の制約、また、そうした人材養成上のいろいろな時間の経過は確かにあるだろうと思うのです。しかし、一番重要な問題の一つである雇用問題を解決するためには、やはり決断が必要ではなかろうかと思うのです。せめてこのアメリカ、西ドイツ並みの比率を確保することを目指す方向でひとつ御努力を願いたい、方向については御答弁いただきましたから、御要望申し上げておきたいと思うのです。  時間の関係がありますから、次に国税庁の長官にお尋ねをいたします。  天下り税理士の問題であります。これは参議院でも決算委員会で論議になりました。すでに八月三日に長官通達が出されまして、私も拝見をいたしました。端的に申しますと、非常に簡単な通達で、コメントを若干拾ってみますと、これで果たして事態が改善されるであろうか、網の目が粗過ぎやしないか、少し抽象的に過ぎるのではないか、そういったコメントを見受けたように記憶しております。そこで一、二お尋ねをしたいと思います。  一つは、高級税務職員が在職中に天下り先あるいは顧問先の予約獲得をするということについてです。いろいろなケースがあると思うのですけれども、しかし私が言いたいのは、要するに税務行政の公正さについての疑惑、批判を招かないように、そしてまたその執行の信頼を得るためには、在職中に、自分がひとつ顧問になりたいと思うがどうだろうかというようなことで、いろいろ行動するのは好ましくないのではないかと思いますが、通達の中では、本人がなさる行為については明確に触れてないように思うのですけれども、この点はいかがでしょうか。
  211. 磯邊律男

    磯邊説明員 ただいま先生御指摘のように、八月三日の通達にはその問題には触れておりませんけれども、これは、本人が在職中に自分を売り込むような行為、これは当然好ましくないことはすでにわかっておるつもりでございまして、あえてこの問題を触れずに、むしろ国会あるいは新聞紙上等で問題とされましたあっせんのあり方、そういったことを中心に通達を書いたものでございます。  確かにこの通達というのは、三つの項目にすぎませんので、ごらんになりましたらきわめて簡単で、しかも抽象的に過ぎるというふうな御指摘があろうかと思いますけれども、この通達を出すまでには、国税局長会議でいろいろと議論いたしまして、議論いたしました集約があの三項目になってきておるわけでありまして、同時にまた、近く総務部長会議を招集いたしまして、あれをさらにまた内部で詰めまして具体的な指示をいたす、かように考えておるのでございます。
  212. 荒木宏

    荒木委員 当然それは織り込み済みだという趣旨の御答弁ですが、もちろん内部の論議はあったろうと思いますけれども、しかし、事はそれほど根の浅い問題ではないと思うのです。また世論の受けとめ方も、三下り半というと御無礼ですが、そう簡単に片づけられるような性質のものとはとっていないように思うのです。  現に元大阪国税局の間税部次長をお勤めの某氏が、退職されたその月の給与所得を数社から受けておられるということが通報されまして、それを聞いた事情を知らない者は、これはやめたとたんに雇用契約を締結するということは、必ず事前に瀬踏みがあったに違いないというふうにとっておりますから、これは当然わかっておる自明のことだというような扱いではなくて、ひとつ明確にしていただきたいと思います。  それについての御意見を伺いたいのが一つと、あわせて、退職後でありましても、たとえば税務署長が自分の税務署管内の企業数十社とすぐに雇用契約を結ぶあるいは顧問契約を結ぶ、そうしますと、ついきのうまでは自分の部下であった人たち、その税務署の職員は全部そうなんですから、そこへ折衝するなり、あるいはそこに対して自分が顧問であるということを表示するなりということになりまして、私もこれも税務行政の信頼、あるいは疑惑、批判を招くおそれがなしと言えないのではなかろうかという気がするわけです。大阪国税局の東成税務署の署長をされておった方が、退職後同じ東成区内の三十の企業から顧問先をとられたということで、やはり同じような意見が寄せられておるわけでございますから、こうした点についてあわせて長官の御意見を伺いたいと思うのです。
  213. 磯邊律男

    磯邊説明員 退職職員の再就職の問題は、退職しました本人のその後の人生にかかわる問題でもありますし、それからまた、私たちはいわゆる定年というものがございませんので、一定の慣行の退職年齢に達しましたときには後進に道を譲ってもらうべく本人に勇退を求めるわけでありまして、そういった関係で、そのためには、やはり今後の自分の人生設計というものがなければなかなかその勇退の勧告にも応じてもらえませんし、それからまた私どもとしましても、やはり第二の人生の生活ができるようなめどをつけさせてあげた上で退職を求める、それによって人事の刷新を図っていくということ、これはただいまいろいろと御批判を受けておりますけれども、基本的にはわれわれとしては、やはり第二の人生を歩めるめどをつけるような何らかの方法を講じてやらなければならないというふうに考えておるわけであります。ただその場合に、御指摘のように、税務署というものがいわゆる権力官庁であるだけに、その就職のあっせんあるいは第二の人生を歩むに当たって、税務の執行の公正さを疑われるような、あるいは誤解を招くようなことがあってはなりませんので、その点についてわれわれは十分に今後自粛していきたいというふうに考えておるわけであります。  ただいま先生が具体的に御指摘になりました、大阪国税局の間税部次長をやって退官いたしました某氏が、七月分からすでに月給をもらったということについての件でございますが、これについては、実は私たちも、御指摘を受けまして本人について調査をいたしましたところ、実際にそこの顧問になりましたのが八月に入ってからでございまして、そのときに八月になって、それでは退職後から引き続き顧問をするという形になって、さかのぼって報酬を受け取ったというふうなことであるということを聞いております。それからまた事実、たとえば退職いたしましてそれからすぐ第二の人生に入りますときに、やはり退職したらすぐ次の企業に入って、その月から月給なりあるいは顧問料をもらうということもこれはあるわけでありまして、それは、何も本人が在職中にそういった就職を自分で決めてきたというわけではございませんで、やはり先輩とかあるいは官側であるとかあるいは友人等から、やめたらすぐあの会社に就職してくれとかあるいは顧問になってくれというふうに頼まれることがあるわけでありまして、そういった場合には当然、やめたその月から月給をもらうあるいは報酬をもらうということもあり得ることであると考えております。  それから、大阪市内の東成税務署の署長をやめまして、その管内に三十カ所の顧問先を持っている、こういうことも御指摘でございます。もちろんこれにつきましては、税理士法違反の行為、つまり、退職前一年以内に関係のあった企業についての税理士業務をやってはならないということは、税理士法第四十二条に明示されてございます。したがいまして、その本人が税理士法四十二条違反をやっているようなことでありますと、これはもういいとか悪いとかを越えまして、法律違反でありますからまことにけしからぬ話でございます。しかし、ただその会社の相談役なりあるいはお目付役なり、あるいは広く言うところのいわゆる顧問になってくれということでその会社の顧問になる、しかし税理士業務はやらないといったような場合には、法律上の問題は起きないわけであります。  ただ、法律上の問題は起きないから、じゃ何をやってもいいかということになりますと、これはやはりケース・バイ・ケースで考えていかなければならない問題だと思っております。そういった行為が税務の執行というものに重大な支障を来すか、あるいは公正な税務行政というものに対して疑惑を持たれるような結果になるかということは、一つ一つのケースをつかまえて、それによってわれわれ判断していきたいと考えておるわけでありまして、東成税務署の署長のケースも、われわれ指摘を受けましたけれども、これは友人であるとかあるいは先輩であるとかあるいはきわめて個人的にその人柄を慕っている人、そういった人たちがそれぞれ持ち寄って、本人の顧問先が決められたというふうに聞いておるわけであります。  こういった顧問契約というのは、やはり何といっても企業とその顧問になる人との間の人的な信頼関係といいますか、そういったことが非常に物を言いますので、やはり全然知らない人に顧問になってもらうというよりは、かねがね尊敬しておる、そういった人に顧問になってもらうということもあろうかと思うので、一概に管内の会社あるいは企業の顧問になるということがすべて悪いということも言えないので、やはりわれわれは問題を一つ一つ判断していきたい、そういうふうに考えておるわけであります。したがいまして、そういったことを含めまして、この前の八月三日の長官通達の第三項目に、この実態を調査して改めるべきところは改めるようにということを書いておるわけでございまして、こういった中に、これは好ましくないというふうなケースがありましたら、やはり本人を説得してその顧問先を辞退させるというふうなこともあり得るかと考えております。
  214. 荒木宏

    荒木委員 ずいぶん長い御答弁いただいたのですけれども、私は、いわゆる老後の問題といいますか、それを全面否定しているわけじゃ決してないのです。いろいろ通達の説明も伺いましたし、また、財政危機の折から第一線で非常に苦労してみえる多くの職員の人たちが、こういう問題で全部色めがねで見られるということは、非常に問題だと思うのですね。その意味からなおのこと、えりを正すべき点はけじめをきちっとしなければならぬ。  ところが、長官通達の第二項では、「批判や疑惑を招くことのないよう」にというふうな一般文言です。具体的にいま私が指摘をしました。三十社ある。全部自分が署長をしておったその署の管内ですね。友人とか親戚とかおっしゃったですけれども、署長になると、その職務と離れた友人や知人がそんなにたくさんできるものでしょうか。大体その職務遂行を通しての友人や知人じゃないのでしょうか。それも、いつまでたってもいかぬと私は決して言ってないのですよ。  ただ、私はたまたま司法の関係の方の出身ですけれども、たとえば弁護士の場合は、判事や検事をやっておる、そうすると、そこをやめてすぐに弁護士を開業しますと、裁判所や検察庁へ行けば、きのうまで部下であった判事や検事に弁護人として接することになる。それは当事者同士では、そのことによって法が曲げられることはまずはなかろうけれども、しかし、世間の人が見て果たしてどう思うであろうか、ここのところをおもんぱかって、一年ですか二年ですか、一定の期間を置いて、自分が在職しておった裁判所や検察庁のところですぐに登録するということについては差し控えるということで、形式的な公正も担保する努力がなされておるように聞いております。  私は、税務行政の公正というものはそんなにいいかげんなものじゃないと思うのですよ。やはりだれが見てもそこのところに、これは情実という・か特別な関係があるというものではなかろうというふうなことが、形式的にも考えられなければならぬじゃないか、こういうふうに思うわけです。ですから、一般的にずいぶんいろいろ前提を聞かせていただきましたけれども、問題は、長官が出された通達の二項にいま私が申し上げたような、自分がやめてすぐに——いろいろな関係があるのでしょう。しかし、署の方には全部部下がおるのですから、そういう関係で二十も三十もできることについては疑惑を招くことになるのではなかろうか、こう言ったわけですね。しかし、時間もなんですから、そこの点は実態調査の結果もやがて出ることでしょうから、ひとつ世間がどう見るかということを重点に置いてさらに再度十分御検討いただきたい。その点だけひとつ答弁をいただいておきたいと思います。
  215. 磯邊律男

    磯邊説明員 かねがね私たち、いわゆる李下に冠を正さずというふうなことで身を処しておるつもりでありますが、まさにおっしゃいましたように、そういった世間から税務執行の公正さを疑われるような行為というのは好ましくございませんので、このたびの実態調査を通じまして、改むべきところかありました場合には、本人を説得して是正に努めたい、かように考えております。
  216. 荒木宏

    荒木委員 ぼつぼつ時間でございますが、最後に、先ほども論議になりましたサラ金の問題で一言伺っておきたいのでございますが、これは金利の規制とそれから免許制の改正といいますか、もう論議があったとおりでありまして、私どもも法案大綱を出しておりますが、ただ、臨時国会に向けて何らかの法的な処置をしたい、こういう御答弁をいただいたのですが、その間にも、自殺ですとかあるいは社会からの脱落でありますとか一家離散ですとか、被害が続いておるわけですね。現行法の枠内でもできる限りのことをするということは必要なことであると思いますし、銀行局長から指導、監督を前向きにという答弁も先ほど伺ったように思います。  ところが、昭和二十九年七月八日、銀行局の特殊金融課長発各都道府県経済部長あての事務連絡によりますと、これは当時の社会情勢がそうだったのでしょうけれども、貸金業者に対する報告及び調査については、「法における貸金業届け出制度の趣旨にかんがみ、必要最小限度に止めることが望ましい。」こういう通達になってございます。そこで私どもが都道府県に、こういった被害の話を聞きまして業者に対する報告要請とか調査を求めますと、都道府県側が持ち出すのはこの通達なんです。大蔵省から、必要最小限度にしておけ、ここでとめられているということで、なかなか事が進まない。もちろん強制権はありません、間接強制だけですけれども、しかし、それでも自治体の人たちの努力や熱意や行政指導によって解決が前進する事例も間々あるわけでして、私は、二十九年に出されたこの通達が現在も自治体側では生きたものとして受けとめられておるという点は、かなり問題だと思うのです。当時の「届け出制度の趣旨にかんがみ、」とありますこの届け出制度自体がいま改廃対象になっておるわけでありますから、その意味で、この通達については、その後の事態の推移に照らして是正をする措置をとられたいと思いますが、その答弁を伺っておきたいと思います。
  217. 徳田博美

    ○徳田説明員 お答えします。  先生御承知のとおり、二十九年から出資の受入等の取締に関する法律に改正になったわけでございまして、その場合に、第八条によりますと、貸金業の実態調査のために必要があるときに、その報告を徴しあるいは業務に対し調査をさせることができるというような条文が設けられたわけでございまして、したがいまして、実態調査のための立ち入り調査あるいは報告徴求の権利がここに規定されているわけでございます。したがいまして、事前届け出制の場合と違いますので、その点誤解のないようにそのような通達が出たわけでございまして、このことは、貸金業に対する何らかの規制を特に法律以上に弱めるとか、そのような意図では毛頭ないわけでございまして、法律の改正に伴う注意的な通達であったわけでございます。
  218. 荒木宏

    荒木委員 きちんと読まない方が悪いのだというふうなことに私、聞いたのですけれども、あるいはそれはそうかもしれません、自治体側でいま局長説明されたようにとってないのが悪いのかもしれません。しかし、これがあるからその指導は控えるようにというふうにとっているのが客観的な状態なんです。だから、あるいは出された通達の趣旨はそうかもしれませんが、現実がそのように受けとめていない節があるとすれば、それを取り除くような努力はこれはしていただくのが妥当なんじゃないでしょうか、形式、方法は特に問いませんけれども
  219. 徳田博美

    ○徳田説明員 貸金業問題の社会的重要性にかんがみまして、大蔵省ではもうかねてから都道府県に対しまして、この貸金業問題の適正な運営について指導するように事あるごとにいろいろ指示をしておるわけでございまして、一般的にはそのような誤解はないものと考えられますが、そのような古い通達をあるいはいま取り出して誤解されるようなことがありますと、これは好ましくないわけでございますので、この際、各都道府県に指示をする際に特に注意を喚起しておきたいと思います。  それから、先ほど現行法の範囲内で極力指導したいということを申し上げたわけでございまして、金利の年利建ての問題であるとか、あるいは条件の店内掲示の問題であるとか、あるいは計算書の交付の問題、これは直接監督しておりますのは庶民金融業協会の連合会でございますけれども、庶民金融業協会が各都道府県にございますので、各都道府県に通知を行いまして、各都道府県の庶民金融業協会に対しましても同じような指導をするように依頼したい、このように考えております。
  220. 荒木宏

    荒木委員 時間の都合でお聞きしませんでした政府委員、説明員の方いらっしゃるのですが、御無礼をひとつおわびして、質問を終わります。      ————◇—————
  221. 大村襄治

    大村委員長 この際、お諮りします。  先般、国の会計税制金融及び専売事業等の実情を調査するため、第一班北海道、第二班広島県、岡山県、兵庫県、大阪府、京都府に委員を派遣いたしました。  派遣委員からそれぞれの報告書が委員長の手元に提出されておりますので、これを本日の会議録に参照掲載いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  222. 大村襄治

    大村委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決しました。
  223. 大村襄治

    大村委員長 本日は、これにて散会いたします。     午後四時十七分散会      ————◇—————