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1978-04-26 第84回国会 衆議院 大蔵委員会 第27号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和五十三年四月二十六日(水曜日)     午前十時三十四分開議  出席委員    委員長 大村 襄治君    理事 小泉純一郎君 理事 野田  毅君    理事 綿貫 民輔君 理事 佐藤 観樹君    理事 坂口  力君 理事 永末 英一君       愛知 和男君    池田 行彦君       宇野 宗佑君    小渕 恵三君       大石 千八君    後藤田正晴君       佐野 嘉吉君    坂本三十次君       高鳥  修君    林  大幹君       原田  憲君    本名  武君       村上 茂利君    森  美秀君       山崎武三郎君    山中 貞則君       伊藤  茂君    池端 清一君       大島  弘君    川口 大助君       沢田  広君    山田 耻目君       貝沼 次郎君    二見 伸明君       宮地 正介君    高橋 高望君       浦井  洋君    永原  稔君  出席国務大臣         大 蔵 大 臣 村山 達雄君         運 輸 大 臣 福永 健司君  出席政府委員         大蔵省主計局次         長       禿河 徹映君         大蔵省銀行局長 徳田 博美君         大蔵省国際金融         局長      旦  弘昌君         運輸政務次官  三塚  博君         運輸省鉄道監督         局国有鉄道部長 山地  進君  委員外出席者         議     員 山田 耻目君         外務省経済協力         局外務参事官  中村 泰三君         厚生省年金局年         金課長     長尾 立子君         日本国有鉄道共         済事務局長   濱田 卓實君         大蔵委員会調査         室長      葉林 勇樹君     ————————————— 委員の異動 四月二十六日  辞任         補欠選任   高橋 高望君     佐々木良作君   荒木  宏君     浦井  洋君 同日  辞任         補欠選任   佐々木良作君     高橋 高望君   浦井  洋君     荒木  宏君     ————————————— 四月二十一日  所得税法の一部を改正する法律案山田耻目君  外九名提出衆法第一八号)  国税通則法の一部を改正する法律案山田耻目  君外九名提出衆法第一九号) 同月二十五日  石油税新設に関する請願北川石松紹介)(  第三三七二号)  同(左藤恵紹介)(第三三七三号)  同(三原朝雄紹介)(第三三七四号)  舞台芸術入場税撤廃に関する請願藤本孝雄  君紹介)(第三三七五号)  不公平税制是正等に関する請願稲葉誠一君  紹介)(第三四四八号) 同月二十六日  ハイヤー・タクシーの物品税免除等に関する請  願(大橋敏雄紹介)(第三五八六号) は本委員会に付託された。     ————————————— 本日の会議に付した案件  所得税法の一部を改正する法律案山田耻目君  外九名提出衆法第一八号)  国税通則法の一部を改正する法律案山田耻目  君外九名提出衆法第一九号)  国際通貨基金及び国際復興開発銀行への加盟に  伴う措置に関する法律及び国際金融公社への加  盟に伴う措置に関する法律の一部を改正する法  律案内閣提出第三二号)  昭和四十二年度以後における国家公務員共済組  合等からの年金の額の改定に関する法律等の一  部を改正する法律案内閣提出第三一号)  昭和四十二年度以後における公共企業体職員等  共済組合法に規定する共済組合が支給する年金  の額の改定に関する法律及び公共企業体職員等  共済組合法の一部を改正する法律案内閣提出  第六六号)      ————◇—————
  2. 大村襄治

    大村委員長 これより会議を開きます。  山田耻目君外九名提出所得税法の一部を改正する法律案及び国税通則法の一部を改正する法律案の両案を一括議題とし、提出者より提案理由説明を求めます。山田耻目君。     —————————————  所得税法の一部を改正する法律案  国税通則法の一部を改正する法律案     〔本号末尾掲載〕     —————————————
  3. 山田耻目

    山田(耻)議員 私は、提案者を代表いたしまして、ただいま提案されました所得税法の一部を改正する法律案につき提案理由及びその概要を御説明いたします。  わが党は、すでに去る三月十五日、現在の不公平税制の典型と言われている利子配当課税特例社会保険診療報酬課税特例、大企業に係る特定設備等特別償却制度及び価格変動準備金等準備金制度廃止するとともに、大企業中小企業税負担に大きな差をつけている支払配当軽課制度廃止する等の内容を含んだ、租税特別措置法の一部を改正する法律案を本大蔵委員会提出いたしました。これは、政府の一九七八年度税制改正案内容が、相も変わらず、勤労国民に対する重い税負担をそのまま放置し、資産所得者を優越し、法人税負担強化はきわめて不十分であり、それどころか、土地税制の骨抜きや投資減税により、企業に対して、またまた理不尽な減税救済という、きわめて大きな問題点を含んでいるからであります。  とりわけ、政府が一九七八年度税制改正として所得税法改正案提出してこなかったことは、本来、税の不公平を是正し、税の適正な執行の責任を持つ政府として、きわめて怠慢であると言わねばなりません。  現在の所得税法の持つさまざまな欠陥や税の不公平を生じているもののうち、主なものについて、その是正を行い、勤労国民のための税制改革をさらに前進させなければなりません。これが本法案提出理由であります。  それでは、所得税法の一部を改正する法律案概要について御説明申し上げます。  この法律案は、現行税法では給与所得者は、事業所得者に認められているような必要経費制度が認められていないことや所得捕捉率も飛び抜けて高いことなどを中心として、きわめて不公平・差別的な状態に置かれており、それゆえ税負担も他の所得者と比べて重くなっているので、このような状態を改善するために給与所得者に、確定申告選択制度及び必要経費の実額控除制度創設し、鰥夫控除労働組合費控除等所得控除及び夜勤手当等に対する非課税措置新設または拡充により税負担軽減を図るとともに、配当控除制度廃止等課税強化を図ろうとするものであります。  まず第一に、給与所得者確定申告選択制度創設であります。わが国現行税制においては給与所得者については大多数が年末調整税金を確定させられ事実上、確定申告権が奪われているのであります。  しかし憲法的観点から言えば、申告納税制度は、国民主権主義税法的表現と見ることができるのであり、それは主権者である納税者をしてまさに主体的に自己の納税金額を確定せしめることを容認する制度であります。その意味納税者確定申告を行うということは、民主主義的権利の行使と見ることができるのであります。この理念を実現するため、給与所得者確定申告選択制度創設することといたしました。この制度概要は、給与所得者所得税については、年末調整確定申告のいずれかを選択し得る制度創設し、給与所得者が、その年最後給与支払い日の前日までに、給与等支払い者を経由して税務署長に対して年末調整を受けない旨の申し出をした場合には、年末調整を行わず、事業所得者と同様に確定申告を行うことができるようにしたものであります。  第二は、給与所得者必要経費の実額控除制度創設であります。わが国現行税制においては、給与所得者は、事業所得者等と比べてきわめて差別的、不平等にできております。事業所得者の場合は、諸経費必要経費として認められておりますが、給与所得者は、どのような職業・勤務状態にあろうともこのような必要経費は認められず、給与所得控除という一律の控除を適用されるにすぎません。  したがって給与所得者について、給与所得控除制度のほかに、実際に要した必要経費を認める実額経費控除制度創設することといたしました。  この制度は、必要経費の額が、  1 年収が百五十万円以下である場合は、収入金額の十分の二に相当する金額  2 年収が百五十万円を超え三百万円以下である場合は、三十万円と収入金額から百五十万円を控除した金額の十分の一に相当する金額との合計額  3 年収が三百万円を超え六百万円以下である場合は、四十五万円と収入金額から三百万円を控除した金額の十分の〇・五に相当する金額との合計額  4 年収が六百万円を超える場合は、六十万円をそれぞれ超えるときは、収入金額から給与所得控除額とその超える額との合計額控除した額を給与所得金額とするものであります。  この場合の必要経費とは、別段の定めがあるものを除き、旅費、通勤費衣服費調査研究費労働組合費その他の給与等収入金額を得るために直接に要した費用と規定いたしております。  第三は、給与所得控除控除限度額の設定であります。現行制度では給与所得控除額はいわゆる青天井で高額所得者優遇制度となっておりますので、この不合理を正すため控除限度額を百九十万円とし、いわゆる控除頭打ち制度を設けることとしております。この結果、年収八百五十万円以上の給与所得控除額は百九十万円の一定額となります。  第四は、鰥夫控除創設であります。現在のわが国税制では、夫と死別または離婚した女性で、扶養親族がある場合等において、一定の条件のもとに、所得控除としての寡婦控除が認められておりますが、鰥夫となった男性にはこれが認められていないのであります。憲法第十四条には男女平等が規定されております。しかも昭和五十年の国勢調査からの推計によれば、鰥夫は、死別百六万九千人、離別三十八万四千人の多数に達し、この数字は増大こそすれ減少することは見込まれません。これらの鰥夫は、寡婦と同様に税の負担能力も低く、余分な経費も必要とするのであります。そこで男性にも現行寡婦控除と同様に鰥夫控除制度創設することといたしました。  第五は、雑損控除適用最低限度額引き下げであります。現行所得税法では、災害等によって生じた損失が、合計所得金額の十分の一相当金額を超えるときは、その超える部分金額雑損控除として控除することが認められておりますが、納税者負担軽減を図る政策意図をさらに拡大することが求められております。したがって、適用最低限度額合計所得金額の百分の五相当金額引き下げることといたしております。  第六は、医療費控除適用最低限度額引き下げであります。現行制度では、医療費合計額がその者の合計所得金額の百分の五または五万円のいずれか低い方の金額を超えるときは、その超える部分金額医療費控除として控除することが認められておりますが、最近の医療費の高騰と家計に及ぼす影響の大きいことにかんがみ、幾分なりともその負担軽減する措置として、適用最低限度額を、合計所得金額の百分の二相当金額または二万円に引き下げることといたしております。  第七は、通勤費非課税であります。現行制度では、実際に支給した通勤手当のうち一定限度までの金額について非課税としておりますが、通勤費は明らかに必要な経費でありますから、その制限を外し、通勤費実費相当額は全額これを非課税とすることにいたしております。  第八は、夜勤手当非課税であります。警察官、看護婦等のように夜間勤務をする者の場合は、心身の消耗が激しく、その回復のためにはかなりの経費が必要でありますが、この点を考慮して、一定額夜勤手当については非課税とすることにいたしております。  第九は、キャピタルゲイン課税として有価証券の譲渡による所得に対する課税強化であります。現行制度では年間取引五十回二十万株未満については非課税になっておりますが、これを改めて、年間取引二十回十万株以上に対して課税をするものといたしております。  第十は、退職金退職所得控除額大幅引き上げであります。退職所得控除額現行勤続年数一年につき現行の二十五万円から五十万円に引き上げ、二十年勤続で一千万円まで非課税とするものであります。なおあわせて、退職所得控除額最低保障額障害退職の場合の加算額をそれぞれ引き上げることといたしております。  第十一は、労働組合費控除創設でありますが、労働組合労働者経済的地位の向上、福利増進を図るものであることは明らかであり、組合費はそのための費用でありますから、今日の社会通念から見て当然給与所得者必要経費と考えられるのであります。したがって、組合の経常的な費用に充てられる組合費につきましては、所得控除を認めることといたしております。  第十二は、寒冷地控除創設であります。寒冷地域におきましては、暖房費等生計費が他の地域に比べて多額にかかることは言うまでもありません。これに対し、公務員等の場合は寒冷地手当等が支給されておりますが、これは課税所得の中に含まれており、また、それ以外の所得者の場合は所得の中からその経費を賄わなければならず、いずれにいたしましても、他の地域居住者とのバランスを欠くものと言えるのであります。そこで、本改正案におきまして、その経費相当分を総所得金額等から控除する制度を新たに設けることといたしております。  最後に、配当控除制度廃止であります。現行制度は、いわゆる法人擬制説に立って、所得税の前払いである法人税を清算する意味配当控除が行われておりますが、この制度によれば、配当のみの所得者夫婦子二人の場合、課税最低額が四百四十万円となり、給与所得者と比較して著しく不均衡を生ずる資産所得優遇制度となっております。したがって、法人擬制説を維持するという考え方をやめて、税負担の公平を図るため、配当控除制度廃止することといたしております。  以上が税制による所得再配分と社会的不公正の是正目的とした本法律案内容であります。  何とぞ御審議の上、御賛成賜りますようお願い申し上げます。  次は、国税通則法の一部を改正する法律案について申し上げます。  私は、提案者を代表いたしまして、国税通則法の一部を改正する法律案につき提案理由及びその内容概要を御説明申し上げます。  日本経済が、未曽有の不況を迎え、勤労国民の生活が厳しい状況に追い込まれてきている今日、納税者税金への関心の高まり不公平税制是正を求める声の高まり、そして税金に対する不平不満は、かつてないほど大きな動きとなってあらわれてきております。  ところが、このような納税者不平不満に対処すべき現行権利救済制度は、租税事案を正当に解決するには余りにも不備であり、かつ、欠陥の多いものであります。  一九六八年に社会党は、当時あった協議団制度廃止し、内閣総理大臣の所轄のもとに国税審判庁を設置するという趣旨国税審判法の制定を提案いたしました。  当時の政府は、党の提案に刺激を受け、協議団廃止し、国税庁に所属する国税不服審判所を設置するという趣旨国税通則法の一部を改正する法律案提案し、それが成立し、今日に至っているのであります。長年にわたる協議団制度廃止し、準司法的運用を企図した審判制度を取り入れたことは、わが国における租税救済制度一定前進であったと言えます。  その結果、民間人の起用を含めた人事の刷新が行われ、審判制度は新しい意欲に基づいた運営が始められるかに見えたのでありますが、八年の年月が経過した今日、この審判所とその運営状態を根本的に見直す必要が生じてきております。それは設置当時危惧された弊害が生じてきているからであります。  たとえば審判所事務運営現状を見てみますと、まず、最も重要な事項である審査請求事務処理、すなわち審査裁決独立性保持あるいは審判所独立性が、果たして確保されているかという問題があるのであります。  最近では、国税審判官の多くは国税庁国税局税務署職員から直接任用され、数年で再び国税庁国税局税務署へ戻る傾向が強く、また、人事権も予算も国税庁が掌握しておりますので、どうしても国税庁の方を向いて仕事をするようになり、結果的に処分庁と同じ結論を出すという傾向が強いのであります。このような現状においては、裁決独立性保持なり審判所独立性が、基本的に確保されるはずがないのであります。  また現行法では、国税不服審判所長国税庁長官通達と異なる解釈により裁決しようとするときは、国税庁長官国税審査会の議決に基づいて国税不服審判所長に対し指示することができると規定されておりますが、国税不服審判所創設されて八年もたっているにもかかわらず、いままで長官通達と異なる裁決がなされた事案は一件もありません。このことは、現実の運用において、この制度が空洞化していることをあらわすものであります。  一方、租税事案についての裁断の公正の確保という見地から申しますと、裁判所による救済が最もその目的に合致するものではありますが、裁判所による救済、すなわち訴訟は、費用や時間を要する点に問題がありますので、裁断の公正を保持しつつ、比較的簡素な手続により事案が処理されるような制度が現在強く要望されているのであります。  そこで、第三者機関の公正な裁断による救済要求行政段階での比較的簡素な手続による救済要求という両者の要請を満たすような新しい租税救済制度を確立することが、必要不可欠であると言わなければなりません。  以上のような考え方によりまして、第一に、現行国税不服審判所廃止し、行政段階の新しい租税救済機関として、執行機関から完全に分離独立した裁決機関としての国税審判庁を設けることとし、この国税審判庁が純粋な第三者機関として租税事案につき比較的簡素な手続で公正な審判を行うこととし、第二に、審理手続の一層の民主化により審判の公正を図ることとし、もって、納税者権利利益救済を促進することとする必要があることを強く認識し、ここにこの国税通則法の一部を改正する法律案提案した次第であります。  以下、この国税通則法の一部を改正する法律案内容についてその概要を御説明申し上げます。  まず第一に、この改正案による制度の基本的な仕組みは、国税不服審判所にかわる審判機関として、総理府の外局として国税審判庁を設置することといたしております。これは、納税者権利利益救済を図り、適正公平な裁決を担保し得る第三者的税務裁判機構をつくるためには、何よりも国税執行機関から分離させ、独立性強化することが必要であるからであります。  第二は、国税審判庁の長は、国税審判庁長官とし、内閣総理大臣が任命することといたしております。  第三は、国税審判庁所掌事務といたしましては、国税に係る行政庁処分についての不服に対する審査に関する事務をつかさどるものといたしております。  第四は、国税審判庁地方支分部局として、各都道府県に地方国税審判局を置き、さらに、地方国税審判局事務の一部を取り扱わせるため、その地方国税審判局管轄区域内に、地方国税審判局支部を設けることができることといたしております。現行国税不服審判所には、全国に十二の支部しか置かれておりませんが、本改正案では、地方国税審判局は、現行支部の約四倍に増加し、納税者の便に寄与することといたしております。  第五は、国税審判庁には、国税審判官及び国税審判官を置くこととし、審査請求に基づく審理及び裁決は、三人の国税審判官合議により行うものとし、この合議体合議は過半数により決するものといたしております。現行制度では、合議の結果が最終的結果でないため、審判所合議の価値が大いに問われているので、本改正案では、合議を本来あるべき重要なものとして位置づけているのであります。  第六は、審査手続は、口頭審理により行うことを原則といたしております。ただし、当事者申し出により、書面審理によることもできるようにいたしております。  第七は、口頭審理は、公開して行うことを原則といたしております。現在は不服申し立て審理は非公開で行っておりますが、国税審判庁審理を公正に行うためには、その審理納税者に公開する必要があろうと考えます。  第八といたしまして、審査の公正を確保するため、審判官除斥及び忌避制度を設け、審判官が事件や当事者と特殊な関係がある場合におきましてはその職務の執行から除斥されることとし、また、審判官について審査の公正を妨げるべき事情があるときは審判請求人処分庁または参加人はその審判官を忌避することができることといたしております。  第九は、審理及び裁決総額主義でなく争点主義に基づいて行うべき旨の規定を新設することといたしております。この点については、一九六九年に政府国税通則法改正案が国会で可決された際、参議院大蔵委員会において争点主義の精神を生かすべき旨の附帯決議がなされ、また、国税不服審判所審査事務提要の中でもその旨が規定されてはおりますが、いまだにその趣旨が十分に生かされておりませんので、本改正案におきまして明確に規定することといたしたのであります。  第十は、審理迅速化を図るために、担当の国税審判官の指定は、現行法処分庁による答弁書提出時点ではなく、審査請求書の受理の時点で行うべきことといたしております。  第十一に、不服が国税庁長官通達が法令に適合しないことを理由とする等一定の場合には、不服申し立てを経ずに直ちに裁判所に出訴する道を開くことといたしております。  以上が、国税通則法の一部を改正する法律案提案理由とその内容概要でありますが、納税者権利利益救済制度根本的改革という問題は、かねてからの国民的課題とも言うべきものであり、処分庁から完全に独立した純粋の第三者機関による権利救済制度の実現及びこの機関における審査手続民主化は、真に納税者権利利益救済を万全ならしめるものとしてこの国民的な課題の解決への大きな前進意味するものであることは明らかであります。  国民の待望するこの国税通則法の一部を改正する法律案につきまして、何とぞ御審議の上、御賛成賜りますようお願い申し上げます。(拍手)
  4. 大村襄治

    大村委員長 これにて提案理由説明は終わりました。      ————◇—————
  5. 大村襄治

    大村委員長 次に、国際通貨基金及び国際復興開発銀行への加盟に伴う措置に関する法律及び国際金融公社への加盟に伴う措置に関する法律の一部を改正する法律案議題といたします。  まず、政府より提案理由説明を求めます。村山大蔵大臣。     —————————————  国際通貨基金及び国際復興開発銀行への加盟に伴う措置に関する法律及び国際金融公社への加盟に伴う措置に関する法律の一部を改正する法律案     〔本号末尾掲載〕     —————————————
  6. 村山達雄

    村山国務大臣 ただいま議題となりました国際通貨基金及び国際復興開発銀行への加盟に伴う措置に関する法律及び国際金融公社への加盟に伴う措置に関する法律の一部を改正する法律案につきまして、その提案理由及びその内容を御説明申し上げます。  国際復興開発銀行通称世界銀行は、開発途上国の社会的、経済的開発の促進を目的とする金融機関であります。また、国際金融公社は、世界銀行活動を補足して開発途上国民間企業に投融資を行う金融機関であります。  わが国は、従来から、開発途上国の社会的、経済的開発の分野における世銀グループ役割り重要性にかんがみ、その活動を積極的に支援してきたところであります。  今般、IMF第六次増資に合わせて、世界銀行増資が検討され、昨年五月十三日に総務会において総額七十億協定ドルの増資決議が採択されました。また、国際金融公社につきましても、今後とも同公社がその事業活動を円滑に継続し得るよう、昨年十一月二日に総務会において総額五億四千万合衆国ドルの増資決議が採択されました。  わが国といたしましては、その国際社会における立場に照らし、今回の増資につきまして、荷決議の定めるところに従い、世界銀行に対しては三億三千九十万協定ドル、現在の合衆国ドルで約四億ドルの追加出資を、また、国際金融公社に対しては二千二百七十七万七千合衆国ドルの追加出資をそれぞれ行いたいと考えております。このため、本法律案により、新たな出資についての規定を設けることとし、この法律の成立後、増資に応募する旨の通告を行いたいと考えております。  以上が、この法律案提案理由及び内容であります。  何とぞ、御審議の上、速やかに御賛同くださいますようお願い申し上げます。
  7. 大村襄治

    大村委員長 これにて提案理由説明は終わりました。     —————————————
  8. 大村襄治

    大村委員長 これより質疑に入ります。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。伊藤茂君。
  9. 伊藤茂

    ○伊藤(茂)委員 ただいま提案されました法案につきまして、幾つかの点で御質問したいと思います。  いずれにしましても、国際経済における日本の比重は非常に高まっているわけであります。また国際経済の状況は、御案内のとおりにまことに多事多難な激動の状態です。こういうような中で、今回提案された内容を含め、どうしていくのか。また大臣、明日はIMF暫定委員会に出席のため出発されるということですし、その後にはまた総理がアメリカを訪問される、ボンの首脳会議もあるというようなわけでありまして、いろんな意味国民の関心も高まっているときだろうと思います。そういう意味で御質問したいと思いますが、まず提案内容について若干お伺いしたいと思います。  まず第一に、今回の世銀への増資に関連をいたしまして、これから日本が中期的な展望を持ってどういうふうに取り組んでいくのかということです。いま世銀での日本の増資、発言のシェアというものは、十分高いもの、また日本の経済力にふさわしく高いものというふうにはお考えになっていないんじゃないかというふうに思うわけでありますけれども、たとえばGNP対比あるいは国連への分担金対比のシェアということから、どうしても今後いろいろ努力しなければならない問題があるのではないかと思いますが、今後の姿勢として、そういうものを次第に高めていくということなのか、また高めていく場合にどういうことを基本にしてやっていこうとしているのかということが一つです。  ついでにもう一つ伺いたいのですが、いま御提案になりましたIFCの増資に関連をしてなんです。最近だんだん内容も拡大をしているというふうに伺っているわけですが、たとえば七七年度の融資承諾額を見ますと、七六年に比べて約三千八百万ドル、一五・七%減っているという現象なんかがあります。どうしてそういう現象が起きたのか。それから、今後の展望を考えてみますと、世銀グループ全体の問題でもあろうと思いますが、昨年のIMF・世銀三十二回総会、あるいはまたその中でのマクナマラ世銀グループ総裁などの報告を読んでみますと、一定の限度発展進歩はしているけれども、また新たな問題も起きている。それは、途上国の中に新たな二極化現象といいますか、後発発展途上国とその他の国という新たな二極化構造も生まれているし、また、発展途上国の社会における巨大な貧困、それを軽減、撲滅することについてもできなかったというふうな問題指摘も出てきます。  いろいろこういう増資に兼ね合って今後の運営とか努力とか、今後研究しなければならない課題も多いのではないかというふうに思いますが、一つは、世銀の増資に関連をした日本の今後の姿勢、もう一つは、IFCに関連いたしまして今後の努力の方向というものを伺いたい。
  10. 旦弘昌

    ○旦政府委員 第一点でございますが、わが国といたしましては従来とも、これらの開発援助の協力を国際機関に対しまして十分してまいったのでございますが、おっしゃいますように、わが国の経済力が非常に高まってまいりまして、それに比べまして、その他の国にそういう点が若干おくれている国もございまして、たとえばいままでのわが国の世銀におきますシェアにつきましては、必ずしも現在の日本の国力を反映したものということは言えないのではないか、かように考えております。しかし、わが国といたしましては、今後ともこれらの機関に対します日本のシェアにつきまして、その拡大を図っていくように各国と協調のもとでその努力を続けてまいりたい、かように考えております。  一つの問題は、世銀のシェアにつきましては、従来IMFの増資のシェアにならいましてこれを順次調整を図っていくという慣行がございますので、当面の問題といたしましては、次の第七次IMF増資の問題がございまして、現在その点につきましてせっかく努力をいたしておるところでございます。  それから第二点の、IFCの投融資が七七年度に、前年度に比べまして減少した理由はどうかという御質問でございますけれども、御指摘のように、七七年度のコミットベースの投融資額は前年よりも一五・七%減少いたしております。しかし、理事会で承認をしましたベースで見ますと、七七年度は前年度よりも九・八%増加となっておりまして、この差は、トルコの開発金融会社への五千万ドルの投融資が理事会で承認されましたけれども、その後のトルコの経済事情のために七七年度内に契約締結までに至らなかったというのが大きな原因でございまして、こういうような特殊な事情があったものと考えております。
  11. 伊藤茂

    ○伊藤(茂)委員 そうすると、長期的には日本の経済力に見合うような努力をしていきたい。——経済力に見合うといいましても、GNPシェアというメルクマールもあるわけですし、また国連分担金比率とかいうものもあるわけですが、いまの四%程度に比べてそれぞれ大きいのだと思います。それくらいの長期的な目標を持ってお考えになるということなのかどうか。  それからもう一つは、いま御答弁いただけなかったのですが、マクナマラ総裁も指摘をしているような途上国における問題意識もある。そういうものに対して、これから先さまざまの国際会議で話題にもなるのだろうと思います。その辺をどうお考えになっているか、この二つを追加して……。
  12. 旦弘昌

    ○旦政府委員 第一点につきましては、御指摘のように、現在の日本のシェアというものがまだ国力相応のものでないという点もありますし、昨年の第二世銀の法案をお願いいたしました際に、当委員会におきまして附帯決議がございましてその点の御指摘もあったところでございまして、その線に沿いまして今後とも長期的に努力を重ねてまいりたい。と申しますのは、日本のシェアがふえますことは、一部の先進国のシェアが減ることを意味するわけでございまして、その辺は国の威信にもかかわる問題といたしまして、その減らされる方はこれに抵抗をするという事情もございます。したがいまして、その辺は機会あるごとにその努力を続けていって、将来は日本の経済の力に相当したシェアを確保していくという方向で努力をしてまいりたいと、かように考えております。  それから第二点の、発展途上国の中におきまして二つのグループがあらわれてきているという点につきましては、御指摘のとおりでございます。と申しますのは、この世界銀行は戦争直後の一九四五年に発足したわけでございますが、その当時のメンバーは連合国側の国々が比較的多かったわけでございまして、それらの国々が世銀の支援を得まして経済の発展にかなり成功をいたし、現在では中進国となっている、後発の、後から参加しました国々につきましては、これがまだそこまで及んでいないというところは、御指摘のとおりでございます。  したがいまして、世銀のグループといたしましては、第一のグループに対しましては通常の資金による貸し出し、それから第二のグループにつきましては第二世銀、いわゆる非常にソフトな条件をもって融資をされます第二世銀の資金をもって、これを強力にバックアップしていくという動きをしておるところでございまして、世銀におきましても、そういうようなことで二つのグループの間のギャップを埋めていくような努力をしておるところでございまして、わが国といたしましても、第二のソフトな資金に対する拠出につきましては極力努力をいたしておりまして、今後ともそういう方向で努力をしてまいりたい、かように考えておる次第でございます。
  13. 伊藤茂

    ○伊藤(茂)委員 重ねて伺いましたのは、国際的に見て、日本の経済協力、あるいは後でお伺いしますがODAの問題にしても、御承知のとおりに評判はよくないということになっているわけですし、これからの会議でも国際的な批判が相当強いだろうということですのでお伺いしました。具体的にはまた後ほどお伺いしたいと思います。  次に伺いたいのは、IMFあるいは世銀グループの中における産油国のウエートの問題、それからわが国としての対応の問題です。  昨年、新しい融資制度をつくるといういわゆるウィッテフェーン構想がありまして、百億ドルの新融資制度がつくられました。日本も分担をしたということになるわけですが、その中でも御承知のとおりに、アメリカがまだ決まってないようですが、産油国が約半分というウエートを持っております。特別枠の問題ということで、こういうことも可能であったし、また、現実に産油国の持っているドルの活用という面から見ても、そういう問題意識が生かされたということであろうと思いますが、これから先を考えますと、産油国にしましても、国際金融機関におけるウエートなりあるいは発言権のシェアも高めていきたいということが出てくるのだと思います。逐次そういう方向も具体化されているということだと思いますが、そういう方向づけについて、これは政治の兼ね合いもあるでしょうし、また国際金融面の問題もあるわけですが、一般的な考え方としてどう対応されますか。
  14. 旦弘昌

    ○旦政府委員 ただいま御指摘のありましたように、IMFのクォータの中に占めます産油国のシェアは、本年の四月一日に発効いたしました第六次増資におきましては、従来五%でございましたのが九・九%、約倍にふえておるところでございます。それからまた、御指摘のありましたウィッテフェーン・ファシリティーにつきましては、一つは、その構想はオイルマネーの還流ということも意図されたためもございまして、産油国のシェアは全体の四八・三一%ときわめて高いシェアを占めておるところでございます。  産油国は、石油の値上げ以来非常に金ができておりますので、そういう意味で、こういうような国際金融機関におけるシェアを高めるという動きは当然のことであろうと思います。その点につきましては、日本と同じような立場にあるのではなかろうかということでございまして、将来の方向といたしましては、これらの国々も含めまして、経済の実態に即したシェアを占めていく方向に行くべきであろう、そのように私どもは考えております。
  15. 伊藤茂

    ○伊藤(茂)委員 次にもう一つ、世銀の今後の運営などに関連をして、ベトナムのことでお伺いしておきたいと思います。  アメリカの議会の中で、世銀グループ運用などに関連をして、ベトナム、ラオス、カンボジアなどについて、行方不明軍人その他のこともあって、ベトナムに対する援助は国際金融機関においても極力制限すべきであるという声が強くあるようです。また、カーター政権の方でも、抑制的な姿勢はとっているようですが、私は、そういう問題がある中で、特にアジアの一員として、また、いろいろの関係、また不幸な関係もありましたベトナムとの関係について、特段の考慮を払わなければならないということじゃないかと思います。  昨年の福田総理のASEAN訪問の際にも私も当委員会で申し上げたのでありますけれども、何かASEAN中心主義みたいな傾向で今後のアジアを考えるということは間違いなんで、それから、ベトナムの方も非常に柔軟な姿勢をもって国際諸機関に対応するという姿勢をとっているわけですから、復興援助その他について特段の認識を日本は持つべきではないかということを申し上げたわけですが、何か聞きますと、旧南政権への政府の借款問題などの処理についても決着がついて、今年は無償援助四十億円あるいは今後四年間に百六十億、円借款百億円とか、今度輸銀資金の利用とかいうことで話も進んでいるようですし、経団連の代表団も近くベトナムを訪問するというふうな動きもあるようです。私の地元の横浜なんかでも、ハイフォンの港の建設その他、いろいろな意味で友好的な立場から協力をしていこうとさまざまな動きがあるわけであります。アメリカの中でそういう声もあるわけですが、日本の姿勢の問題と、やや具体的にいま申し上げましたような方向ですね、これから円滑かつ前向きに対応していかれるのかどうか、それを伺いたいと思います。
  16. 中村泰三

    ○中村説明員 私どもといたしましては、ベトナムを含めましたインドシナが平和で安定した地域として発展するということが、ひいてはアジアの平和と安定に非常に好ましいことだというふうな基本的な認識を持っております。したがいまして、ASEAN諸国に対する協力と並びまして、インドシナとの間にも相互理解に基づきまして友好と協力の関係を築き、そしてアジアの平和と安定に寄与してまいりたい、こういうふうな考えでおります。したがいまして、わが国といたしましても、ベトナムに対して応分の協力ができるということであれば、これは非常に意義のあることと考えております。  また、先生先ほど御指摘のように、ベトナムとの間には債権債務の問題がございますが、これはようやく最終段階に至っておりまして、近く正式合意を見るものと思いますが、この債権債務問題が片づきました後には、民間ベースの協力を含めて、わが国のベトナムに対する協力が次第に活発化するものというふうに私どもは考えています。
  17. 伊藤茂

    ○伊藤(茂)委員 法案に直接関係した問題はそのぐらいにいたしまして、これから後、大臣が出席をされるIMF暫定委員会で論じられるであろう課題、すでにテーマは設定をされているわけですが、その内容、それから、先般、二十一日でございましたか、国際収支その他の問題について経済対策閣僚会議がございました。結論も発表されております。それらに関連をしたことを御質問を申し上げたいと思いますが、まず、今度の暫定委員会でも大きなテーマの一つは、国際通貨の問題、それから通貨体制の改革の問題ということであろうと思います。  特にその中で、今度おやめになるようですが、ウィッテフェーン専務理事最後の仕事というようなことで言われておりますが、ドル安定策の一つとして、過剰ドルをSDRの発行で吸収をするという案が検討される、また話では、今回の会議でいきなり決まるという問題ではなくて、研究課題、検討課題、継続審議ということになるのではないかということも言われているわけでありますが、いずれにしても、これらのことは、特に円ドル関係が非常にむずかしい局面の中で、日本も積極的な研究、検討をしなければならないという問題ではないだろうかと思います。聞くところによりますと、同じくメキシコの会議に出席される日銀総裁も、一つの考えであって前向きに検討したいというふうな姿勢を表明されているというようなことも伺うわけでありますけれども、それらについて、会議に臨まれてどうお考えになりますか。
  18. 村山達雄

    村山国務大臣 SDRの問題が今度の議題の一つになると思われます。この問題は、ドルとの代替関係の問題でございますし、そしてSDRを将来は中心的な準備資産にするという問題。しかし現在のところ、非常に過剰流動性が世界的に多いという問題、それからドルとの関係、いろいろありますので、なかなか微妙な問題であろうと思っておるところでございまして、ただいま通貨当局間でそれぞれ検討中の微妙な問題でございますので、具体的な提案につきましては、この席ではひとつ差し控えさせていただきたい、かように思っておるところでございます。
  19. 伊藤茂

    ○伊藤(茂)委員 大臣はしばらくおいでにならないのですが、幾つか御質問を続けさせていただきたいと思います。  この間ほかの御質問のときに、いわゆるターゲットゾーンの問題でお話を伺いました。いまの変動相場制のもとにおけるさまざまな困難な事態ということについて、御承知のとおりに、いろいろなところからいろいろな提案も生まれているというわけでありますし、ローザ構想から始まって、ヨーロッパそれからまたEC圏内でのいろいろな検討課題というのも報道をされているわけです。そしてまた、アメリカの方では依然としてクリーンフロート論が強いということも言われているわけでありますが、現状のもとで、ローザ構想とかあるいは宮澤構想とかいろいろ言われました、そういうことの困難性ということは、現実問題としてたしかにそのとおりだと私は思います。  ただ、長期的に考えますと、基軸通貨としてのドルが果たして安定性があるのかどうか、また安定した長期展望が持てるのかどうか。非常に不安定な構造が強まるという長期的な傾向ではないだろうか。また、非常に権威を持ったかたいドルが再び実現するということも、短期的の現在のカーター政権の弱いさまざまの対策ということだけではなくて、長期的な構造としてもあまり期待できない、そういうことが言えるのではないだろうか。ですから、いま目の前で話題となっているいろいろな問題がありますけれども、やはり長期的には何か日本の国益、国民生活を守る、日本経済を守るということを基底にしながら、いろいろな研究はやはりしておく必要があるのじゃないかというふうに思います。具体的にいますぐどうこうとは言いにくいでしょうけれども、そういう問題意識はどうお考えになりますか。
  20. 旦弘昌

    ○旦政府委員 まず、お触れになりました第一のローザ構想に代表されます考え方でございますけれども、これにつきましては、ローザ氏自身もその取り上げられ方が、日本におきましては彼の構想の一部だけが非常に強調されて伝えられているのに驚いているそうでございます。彼が申しますのは、現在のような各国間の経済の実勢に格差がある場合には、そのようなターゲットゾーンを設けることは非常に困難である、まず前提となります基礎的な経済条件の問題を解決した後において初めて、この構想が実現されるという考えを述べておるところでございまして、日本の国内におきまして、為替の変動を何とか安定させたいという願望がこの構想に飛びつく一つの大きな要因であった、かように考えられるわけでございます。したがいまして、現在のところでは、各国の通貨当局を通じまして、このようなターゲットゾーン構想がいま実現できると考えておるところはないわけでございます。  そういたしますと、それに対しまして、しかし現在の通貨不安をどう解決していくのかという点につきましては、先ほどちょっと申し上げましたように、一方におきましては、たとえばアメリカの膨大な赤字、それから日本及びドイツに見られますような黒字という問題がある、また、石油産出国の黒字の問題があるということでございまして、先進国の間におきましては、赤字国、黒字国がそれぞれの国際収支を調整をしていくという努力をじみちに積み重ねていく以外にはないのではないかということが当面の問題でございます。  それから、基軸通貨としましてのアメリカのドルの将来の問題でございますけれども、御指摘のように、現在確かにアメリカのドルは下がりつつあるわけでございますが、しかし振り返りまして、その他の通貨でアメリカドルにかわるべきものがあるのかということになりますと、残念ながらそれは見当たらないというのが現状でございます。したがいまして、当面の問題といたしましては、アメリカの経済の立て直しによってアメリカドルの強化を図ってもらう必要がある。それから一方、黒字国におきましては、これを支持する意味におきまして、国際収支の調整をさらに推進していく必要があるのではないかということが、基本的な考えであろうかと思います。  その間におきまして、通貨制度のいかなる点をどういうふうにしたらいいのかということにつきましては、今後とも各国の通貨当局がいろいろな機会を通じまして協議を重ねてまいりたい、かように考えております。
  21. 伊藤茂

    ○伊藤(茂)委員 私が申し上げたいのは、今日の状態のもとで、いままでも当委員会でも再三指摘をされてまいったところでありますが、やはり対米姿勢における主体性というものを毅然として持つということが必要ではないか。  私は、カーター政権、アメリカの方もいろいろと困ってしまったという側面が大分生まれているのだと思うのです。たとえば今度の金の売却の問題にしても、その額からしても量からしても大きな効果はないということがありますけれども、そういうこともやらざるを得ない、あるいは過剰ドル吸収のために中期債の発行という国際世論もございます。そういう中で、大臣は答弁を差し控えたいと言われましたが、今度のSDRの特別勘定をつくるということについても、何か前向きに検討せざるを得ないということになっているということだと思います。また、この五月の初旬にはOPECの閣僚会議も開かれる。ドル離れあるいはアメリカの現在の国際収支、経済に対する批判も相当根強いわけですから、いきなりまた大幅な値上げということはないかもしれませんが、やはりそういう側面をアメリカも考慮しなければならぬ。いろいろな要素が当然のことながら、国際的にも出ているということだろうと思います。またそういう中で、ほかの先進国なりEC諸国の方からも、特にドイツ、アメリカに対していろいろ発言あるいは話し合いもなされている。  そういう面から考えますと、日本の姿勢、これは五十二年度百四十一億ドルとか、非常に黒字幅が大きいというハンディキャップもあるわけですけれども、やはり対米姿勢において弱いのではないかという面があるのではないかと思います。ですから私はそういう意味で、いま申し上げたような問題、それから今度の暫定委員会で話題となる通貨改革の問題、SDRの特別勘定の設定の問題などについても、主体性を持った立場からの対応をすべきではないかということを申し上げたいわけですが、いかがでしょう。
  22. 旦弘昌

    ○旦政府委員 御指摘のとおり、ドルの安定のためにはアメリカ経済の安定が不可欠でございまして、この見地からわが国といたしましても、アメリカに対しましてエネルギー法案の早期成立、それからそれを着実に実行してもらう、あるいはインフレ対策等を推進してもらうということにつきましては、機会あるごとにこれを強調しているところでございます。  御指摘のSDRの代替の問題も、今回の暫定委員会で議論されるところでございますが、これに対しましては、各国間におきまして意見が大幅に食い違っておりまして、御指摘のように、今回の暫定委員会で直ちに結論を得るということにはなりがたいのではないかと思います。その後IMFの理事会におきましてその検討をさらに進めていくことになるんではなかろうか、かように考えておりますが、そういうような理事会における討議等を通じまして、わが国といたしましても、わが国の国益にのっとった考えのもとに、要求すべきものは要求するということで進めてまいりたい、かように考えておるところでございまして、米国に対しましても、十分現在までも言っておりますし、今後も言うべきことは主張してまいるという姿勢でまいりたい、かように考えております。
  23. 伊藤茂

    ○伊藤(茂)委員 それはまた大臣がお帰りになってから最後に姿勢を伺いたいと思います。  二十一日の経済閣僚会議で話題となりました中で、国際収支の問題、全体につきましては話題とする時間はございませんが、特に資本収支の面についてお伺いしたいと思うのです。  資本収支の見通し、たとえば長期資本収支の見通しの面でも、改定見通しとも、当然のことながら五十二年度当初見通しとも相当大きく違った結果になってしまったというわけであります。その中で一つ、問題として円建て債の発行にずいぶん力を入れられたということで、その部面では昨年度三十件、五千二百九十億円ですか、相当大きな伸びがあった。ところが、特に二月、三月、非居住者の投機的な債券買いという過程の中に帳消しにされたという事実経過がいろいろ報道されております。これは円の当面の安定度合い、今後の見通しとも関連をすることだと思いますが、その辺の長期資本収支の五十二年度の経過について、振り返ってどうお考えになるか、あるいはまた、そういう投機的な資金流入によって効果は上がらないというふうなことが五十三年度中にも想定をされるのかどうか、その辺どうお考えになっておりますか。
  24. 旦弘昌

    ○旦政府委員 御指摘のとおり、本年の二月から三月にかけまして、海外からの短期資金の流入が相当の多額に上りまして、これが円相場の上昇を加速したと考えております。このような為替相場に対します攪乱的な影響を避けるために、去る三月十五日に発表いたしました非居住者の債券取得の制限、あるいは非居住者自由円債務の増加額に対する準備率を一〇〇%に引き上げるという措置をとったわけでございます。それで、これらの効果につきましては顕著にあらわれてきたのではないか、かように考えておりまして、最近の為替相場もやや円安ぎみに推移しておるところでございます。  その数字を若干申し述べさせていただきますと、三月におきましては、公社債及び受益証券に対する資金の流入が、ネットベースで申し上げますと三千五百億円を上回ったわけでございます。しかしこの面につきましては、四月に入りまして規制の効果も非常に上がりまして、現在ではかなりダウンをしておるところでございます。四月はまだ月が終わっておりませんので、その数字を申し上げる段階ではございませんけれども、激減をしておるのが実情でございます。また、非居住者の自由円勘定につきましても、三月には五千六百三十億円という金が入ってきたわけでございますが、四月に入りましてはこれが大幅に流出をしておりまして、絶対額として激減をしておるのが現状でございます。  御指摘の五十二年度の長期資本収支の見込みは、改定見通しでは五十億ドルのネット流出と見ておったのでございますが、二月、三月のそういう短資の動きもございまして、これが実績としましては約半分にとどまりまして、二十四億ドルの流出にとどまったわけでございます。しかしながら、先ほども申し上げましたような規制の効果と相まちまして、現在相場がかなり安定しておりますので、五十三年度におきましては、われわれの予期しますような数字になるのではないかというふうな希望を持っておるところでございまして、お触れになりました円建て債につきましても、現在われわれが見ておりますところでは、月平均で毎月一千億円ぐらいのものが出ていくんではないかということでございまして、この月の平均額は五十二年度の額よりもさらに上回るという情勢でございますので、このような情勢がさらに続くことを願っているところでございます。
  25. 伊藤茂

    ○伊藤(茂)委員 そういうお話は、今後の円ドル関係の見通しがベースになると思いますが、お話がありましたように、一時二百十八円、このところでは二百二十七円、八円ということになっておるようです。長期的に、五十三年度の見通しも含めてこういう点をどう判断するのか。それぞれの考えがあると思います。安定したと見るのか、それとも決してベースは、構造はそうではないという見方をするのか。私どもは、五十三年度、これからの展望を見ましても、結局日本の産業構造が変わってこなければ円高という基本的なペースは変わらないのではないかという考え方を持っているわけです。また、そういう気持ちも含めて、円高基調は変わったということよりも、何か基本的には円高基調の中での一時的な安定修正局面というのが現状でないだろうかという気持ちを持つわけですが、その辺、どうお考えになりますか。
  26. 旦弘昌

    ○旦政府委員 先ほど申し上げました円建て債につきましては、現在の日本の金利が特に三月にまた下がりましたものでございますから、国際的な金利の比較におきましてもかなり魅力ある市場になっておりますので、この情勢が続く限りはわりあいに楽観していいんではないか、私どもはかように考えます。  それから、御指摘のありました、現在の為替相場がどういう方向で推移していくであろうかということにつきましては、私どもとしていま申し上げる立場にはございませんけれども、しかし、これは今年度におきますわが国の国際収支の動向がどうなるであろうかということに大きくかかっておるわけでございまして、わが国の黒字を減らすことに全力を尽くすことによって為替相場を安定することができるのではないか、かように考えておるところでございます。  長期的には、産業構造の改革が必要ではないかという伊藤委員の御指摘につきましては、私どもも全く同感でございまして、その方向で進まざるを得ないのではないか、かように考えております。
  27. 伊藤茂

    ○伊藤(茂)委員 次に、資本収支にも関連をいたしまして、国際機関への出資の拡大が最近いろいろと報道されております。これは大蔵省、外務省両方にまたがるかもしれませんが、全体的な構図をどうお考えになっておるのか。たとえば話題となっているものでも、日銀総裁も出席されておりましたウィーンでのアジア開銀の問題とか、それから、今度話題となるでありましょうIMFの第七次増資についての考えだとか、米州開発銀行、アフリカ開発基金、その他いろいろと話題が出ております。また、国連の諸機関に九千万ドルか一億ドルか新しく拠出をするようにしたいという構想も言われております。黒字減らしのためにどかどかお金を出すということは当然正当な考え方ではありませんから、むしろ最初にも答弁のございました、日本の経済力に見合った協力関係を高めていくという視点の中で、安定的にこういうものを発展させていく必要があると私は思いますが、それらの国際金融機関に対する出資の拡大の問題についての、具体的に金額まで含めてずいぶん報道されておりますから、それら全体の構想、それから国連諸機関への拠出の拡大の問題、これは国連分担金シェアに見合う努力をしようということは私は当然の貢献であろうと思いますが、それらはどうなっておりますか。
  28. 旦弘昌

    ○旦政府委員 国連に対します日本の貢献につきましては、外務省からお答えいただくことになろうかと存じますけれども、世銀等の国際機関への出資、拠出につきましては、これまでも日本としては積極的に応じてきたところでございますが、今後ともこれらの増資等がございますれば積極的に対処してまいりたい、かように考えております。  一つの例といたしまして、去る四月二十三日に、アジア開発銀行の開発基金というのがございますが、それの第二次の財源補充の交渉がウィーンでございました。それに対しましてわが国は積極的に貢献をしてきたところでございます。数字を申し上げますと、アジア開発銀行は、二十一億五千万ドルの規模の財源補充をしたいという提案でございまして、一部の国はそれが大き過ぎるという意見もあったところでございますが、わが国はこれを積極的に支持いたしまして、昨年の本委員会附帯決議の御趣旨にもかんがみまして、積極的に貢献をしてきたところでございます。その会議を日本側がリードいたしまして、最終的な結論としましては、参加国は二十億ドルで合意を見ることになったわけでございます。しかし、その差額の一億五千万ドルにつきましては、わが国を初めといたしまして、西ドイツ、イギリス、オーストラリア、スウェーデン、スイス、オーストリアの七カ国が追加拠出をするということで、実質的には二十一億五千万ドル、希望どおりの額を充足するということにいたしたわけでございます。このような姿勢は今後とも、国際機関に対します出資、拠出についてわが国としてとってまいりたい、かように考えております。  次の問題は、IMFの第七次増資の問題がございます。この問題につきましても、先ほど来たびたび申し上げておりますように、国力に沿っただけの応分のシェアを増加してまいりたいというスタンスで努力してまいるつもりでございます。と申しますのは、先ほども申し上げましたように、今回お願いしておりますその次の世銀の増資の場合には、このIMFのクォータに従って増資をするというパターンになっておりますので、単にIMFだけの問題ではございませんで、世銀の増資につきましても重大な関係がございますので、前向きに対処してまいりたい、かように考えております。
  29. 中村泰三

    ○中村説明員 国連等諸機関に対する分担金、拠出金の額でございますが、昭和五十三年度政府開発援助としてカウントされる分は二百十五億ございます。外務省といたしましても、こうした国連諸機関に対する拠出金を今後計画的にふやしてまいりたいというふうに考えております。
  30. 伊藤茂

    ○伊藤(茂)委員 それは国連機関に対する出資、拠出というものは、分担金のシェア並みの八・六六ですか、それぐらいには早急に持っていくという外務省の考えですか。
  31. 中村泰三

    ○中村説明員 国連の分担金は八・六四でございますが、分担金につきましては、それぞれの機関の決議等で決められておりますのでなかなか動かさないと思いますが、それ以外の日本の任意の拠出によるいわゆる拠出金をできるだけそういうふうに引き上げてまいるという考えでございます。
  32. 伊藤茂

    ○伊藤(茂)委員 次に、ODAについて伺いたいと思います。  これは国際的にも非常に評判の悪い日本の現状ですし、また通産省から出されている「経済協力の現状問題点」などの資料を見ましても、はっきりとそれぞれ書かれております。私は一つは、量の問題もあるし、質の問題もあるし、それから協力の姿勢、中身の問題もあると思います。  よくわからぬのは、たとえば量の問題についても、昨年の福田総理のアジア訪問、それからそのほかいろいろの国際経済会議などの場で、五年間に二倍以上というラインが約束されております。しばらく前には、黒字減らしに関連したんだと思いますが、三年間で倍増ということが一斉に報道されました。そして二十一日の経済閣僚会議では、華々しく報道された三年間で倍増とかそういうことは、あの結果の中には一言も出ておりません。私は、いろいろなことを打ち上げては現実に物にならぬというふうな繰り返しが、何か日本に対する信頼度を低める、そしてまた不評が広がってくるということになるのではないかと思います。総理の昨年のアジア訪問の後、今日の時代において大変評判が悪いということもずいぶんいろいろと読むわけであります。ですから、それは外務省かどうか知りませんけれども、昨年、五年間で二倍以上という国際的な約束をされて、そして一斉に報道が出て、また今回こういう形になっている、そういう経過があるわけですが、確実なといいますか、具体的な見通しはどちらの方にお考えになっているのでしょうか。
  33. 旦弘昌

    ○旦政府委員 政府の開発援助の実態につきましてお尋ねがございましたので、まずその点から申し上げさせていただきます。  一九七六年のわが国のODA、いわゆる政府開発援助の量でございますが、これはGNP比で〇・二%でございました。先進国のグループでありますOECDのDAC各国の平均は、日本も含めまして〇・三三%でございますので、この点で日本のODAの水準というものは低いわけでございます。また、その条件におきましても、そのソフト度と申しますか、それを示す目安としましてグラントエレメントという要素がございます。これは数字が高いほどソフトであるということになるわけでございますけれども、日本は同じ年に七四・九%ということで、DAC平均は八八・五%でございますので、その点で下回っておることは御指摘のとおりでございます。  しかし、われわれといたしましては、先進国並みの水準に日本のODAを持っていきたいということを考えておりまして、ただいまお触れになりましたように、五年間でODAを倍増以上にしたいということで現在努力をしておるところでございます。この線に沿いまして、五十三年度の政府開発援助の予算は前年度比一五・八%でございます。五年間で倍増といいますと一年平均一五%でございますが、それを若干上回るところで予算を組んだわけでございます。  またGNPに対する比率も、予算ベースで〇・三%ということで努力をいたしました。  それから、条件につきましても、グラントエレメントを国際目標であります八六%を目指していこうということで、五十三年度の予算におきましても、無償援助を増額する、あるいは借款条件を緩和するというような努力を積み重ねてまいりたいと思っております。二国間の無償援助は、五十三年度予算におきまして約九〇%前年よりも増額したわけでございます。  なお、五年間倍増の問題につきましては、新聞で三年間倍増というようなことが報道されたやの御指摘がございましたけれども、政府部内におきましては、現在のところ五年間倍増という方針がスタートしたばかりでございまして、その線で積極的に努力をしてまいりたいというところでございます。
  34. 伊藤茂

    ○伊藤(茂)委員 量と質と両方を含めてお話がありましたが、政府のいろいろな出されている資料にも明らかなように、幾つかの面でDAC平均に及ばないだけではなくて、特に条件の面では、十七カ国中十四位とか、あるいは最下位とかいう問題、そういう状況が続いてきたということだと思います。ただいまお話があったように、グラントエレメントの面でも、それから贈与割合、借款の条件、それからアンタイド化の比率の問題にしてもそれぞれ指摘をされているところですし、国際的にも注文がついていたということだと思います。  私は、現状認識はそういうことだと思いますが、現実にそれではどう改善できるのかという問題ですね。確かに量の問題にしても、財政事情が非常に厳しい、これから先も非常にむずかしい状態ですが、こういう問題は、ある意味では義務教育費みたいなもので、やはり日本が国際経済の中で健全に発展するためには、どうしても必要な経費という考え方に立って対応しなければならぬということだと思います。  現実にそれではどう改善できるのかという面で、たとえば日本が非常におくれているさまざまの援助の条件、これも怠けていたからこうなったというものではなくて、やはり構造的な面があったと思うのですね。それは、援助に伴って民間企業、民間商社の進出ということと兼ね合ったという面もあったでしょうし、いろいろ構造的にそういう面があったと思うのです。ですから簡単に、はい、それでは五十三年度、新年度からは完全に直りますというものではないのではないか。物によっては一年間で解決がつくものもあり、それから、具体的な中身によっては二、三年かけてじっくりやらなければならぬというようなものもあるのではないかとぼくは思います。ですから、努力したいという気持ちは表明をされましたが、現実にそれをやっていくさまざまな努力の面、これはこの実施機関の問題、それからいろいろ契約その他のあり方の問題その他というようなことを含めて、現実の努力をどうしていくのかという面での、制度的なというよりもこの取り組みが非常に大事ではないか、その辺はどうお考えになっているかということが一つです。  それから、こういうことと兼ね合って、金額でどうふやすかということと同時に、やはり日本の対外援助のベースに、もっと対象となる国々との対話、情報、コミュニケーション、それから、私は非常に大事だと思いますが、特に重点となるアジア諸国への実態調査、分析、それらについて、国際的な共同研究とか学術交流とか、そういうものが堅実に取り組まれていく、そういう基礎になる勉強が積もって、そして国家間におけるそういう関係もうまく発展をするということではないだろうかと思うわけです。その辺はどうお考えになっておりましょうか。
  35. 旦弘昌

    ○旦政府委員 第一の、その意図だけでなくて、どうやって援助を今後とも増大していくかという問題でございますが、一つには、予算に関連のあることでございますので、本年度予算編成に当たりまして努力しましたような努力を今後とも続けていく必要がある、それが第一でございます。第二には、その予算を計上されましたものを十分消化をしていく必要があるわけでございまして、残念ながら過去の実績によりますと、円借款等の場合には、そのディスバースがおくれる。これは必然的に、その円借款の対象となりますものがインフラストラクチュアあるいはプロジェクトというようなものでございますと、何年かにわたってその支出がされるということでございますので、その間でずれが起きてくるということはやむを得ない点でございますけれども、その辺のディスバースを早くするような方法を現在鋭意検討しております。それから、現実に新しい円借款を提供する場合には、その条件を交渉します際に、金利を引き下げていく、あるいはその他の条件を緩和していくという方向で現在努力をしておるところでございます。  それから、国際的な協力の第二点の御指摘でございますが、この点につきましては、わが国としましては、アジア諸国との間の交流というのはわりあいに最近発展いたしておりますので、その辺の経験はかなり積んでおると考えておりますけれども、しかし、世界銀行あるいはアジア開発銀行のような国際的な開発援助機関はそれなりのスタッフを持っておりまして、かなりの高い能力でございますので、わが国の今後の一つのあり方といたしましては、それらの国際機関が融資いたしますプロジェクトに対して日本も協調融資と申しますか、コファイナンスをしていくという方向で検討いたしております。この点につきましては、世銀等からも、日本の地位にかんがみまして、ひとつコファイナンスで協力してやってもらいたいという要望がきておりまして、私どもも全く同感でございまして、その具体的な方途について現在検討を進めておるところでございます。従来ともそのコファイナンスをした例はないわけではございませんけれども、コファィナンスは時間的にも、援助のディスバースを促進する効果があると思われますので、その点をさらに進めてまいりたい、かように考えております。
  36. 伊藤茂

    ○伊藤(茂)委員 ぜひいままでできなかった、あるいはやらなかったいろいろな新しい努力をこの際やっていただきたいと思うのです。やはり相互の友好とか交流あるいは共同の学術交流、共同研究とかいうようなものがベースにあって、そういう中で初めて成果のある経済協力なり援助なりが進んでいくということだと思うわけです。  さっきちょっと申し上げたのですが、たとえばベトナムの関係についても、国家的事業としてハイフォンの港を近代的なものに改造しなければならぬ、特に日本は、技術上もそれから資金的にも非常に可能性があり得る問題だと思います。そういう環境の中で、たとえば日本の造船業界も非常な不況で大変だ、それが、そういう援助をする中で友好が高まれば、そこでベトナム側が使っていく、そう大型船はないでしょうけれども中型船の優秀なものを日本の技術をもってつくっていく、それを買ってもらうとか、そうすれば日本の造船業界にも一定の寄与をなし得るとか、いろいろなそういう問題がぼくは友好、交流の中で広がっていくと思うのです。ですから、お役人仕事と言っては大変失礼ですが、いわゆる昔のお役所仕事ではなくて、そういう面での努力を、いろいろ民間の学識経験者も含めて活発にされていくということをお願いしたいと思います。  大臣がお戻りになりましたので、このODAに関連をして、要望を含めてお伺いしたいのですが、さっきも申し上げたのですが、五年間に二倍以上ということが出されて、また新聞には、三年だとかいうニュースが大分大きく各紙に報道されまして、二十一日の閣僚会議では相当新しい内容が出るかと思ったら、全然消えているということであります。それから、昨年の総理のASEAN訪問が今日どういう関係諸国の世論になっているかということも、報道されているとおりです。  私は、それぞれそれについての批判をするというのではなくて、前向きに考えたときに、やはりその都度、その都度いろいろなものが打ち上げられたり何かするわけですけれども、日本に対する国際信頼度を大きくしかも安定して高めていくためには、何か確実にこういうことをやっていこうという意味での中期計画といいますか、これは中期計画といっても、領域も拡大しなければならぬし、中身もいろいろあるし複雑なので、ガイドライン程度でいいと思うのですけれども、何か中期的なガイドラインをつくって、それから、各国との関係もいろいろ動くという面もあるわけですし、先ほどIFCに関連してトルコの話もございましたが、そういう突発事故もありますし、私はローリングプランでいいと思うのですけれども、このローリングプランという面も入れながら、何か中期的なガイドラインをつくって、そういう中期的なプランというものを持って日本は取り組んでいくのだ、そういう中で、単におくれていた条件を改善をする、あるいは資金量をふやすというだけじゃなくて、やはり中身をよくして信頼度を持たせていくという努力が必要なんじゃないだろうかと思います。その辺が、これから大臣がメキシコにいらっしゃっても、それから、将来ボン会議その他があっても、そういう発想を持ってやられれば、国際的な信頼度も高まる、それから諸外国との友好提携関係も深まってくるということじゃないだろうか。ぜひそういうことをやっていただきたいと思いますが、いかがでしょう。
  37. 村山達雄

    村山国務大臣 伊藤委員のおっしゃるように、今後ODAの関係は、日本としてもよほど中長期的な考えを持って、そして着実に進めていく必要があろうという点については、全く同感でございます。  見ておりますと、一つは資金量でございますけれども、日本は各国より低い、グラントエレメントの割合も低いというようなことでございます。したがいまして、資金量については五年間で倍にするとか言っておりますけれども、やはり中身が一番大事じゃないかと思っておるところでございます。その中身につきまして今後どのようにやっていくのか。贈与部分をふやしていくか、あるいは借款部分をふやしていくのか、これはどちらでもいいわけでございますけれども、両方につきまして、それぞれ中期的な見通しを持ち、借款についてはどれぐらいの条件でやっていくかということでございます。そして、これは押しつけではないわけでございますので、適当な援助プランというものを着実に見て、本当に相手国のためになるというものを着実に実行していくことは必要であろうと思うのでございます。  それからもう一つ感じられますのは、ディスバースベースで計算しておるわけでございますので、実際の執行率は七割ぐらいでございます。どこで詰まっているかというと、どうしてもプロジェクトとかインフラストラクチュアということになりますと、執行率は悪いわけでございまして、商品援助とかそういった方が早いわけでございます。  それからまた地域につきましても、日本といたしましては、もちろんアジアの国でございますからここに勢い重点がいくということは、これはやむを得ないところと思いますけれども、ほかの国に対しても考えていく必要がある。とかく日本は、どちらかと申しますと、援助の形というのが輸出とかあるいは海外資源の開発というところにすぐ目が向いてしまうわけでございますので、今後はそういった観点だけではなくて、広い意味の日本の友好国をつくる、それが結局日本の世界における安定につながるという観点をもう少し強く出していったらいかがなものであろうか。そういったことをあれやこれや考えまして、従来の実績を踏まえまして、量、質ともに改善の方途を考えていきたい、かように思っておるわけでございます。
  38. 伊藤茂

    ○伊藤(茂)委員 気持ちとしては大変前向きの大臣のお話がございました。私はできれば、そういう努力の方向を早く具体化をしていくということが、これだけ激動している国際情勢のもとで、日本の努力に対する信頼感を高めるという意味で非常に大事なんじゃないか。ですから、何も完全な中期計画はすぐできるわけではありませんから、それも現実、私わかりますから、何かガイドラインを基本にしたようなもので、あるいはローリングプランとしてということを申し上げましたが、たとえば年度別の対外コミットメントの大枠とか、それから対象分野の問題についての考え方とか、また地域別の物の考え方、これは、アジア中心ですけれども、たとえばLLDCにしてもアフリカに非常に集中している、これも非常に政治的にも複雑なところですから、注意深くやらなければならないという面があると思いますが、そういう努力方向も含め出されていく。そういうものができればおのずから、これも一つ問題となっておりました執行率の問題なども、順調に進んでいくということではないだろうかと思います。  要するに、そういうガイドラインと申しますか、中期プランといいますか、そういう大枠を、これは大蔵省だけでなくて、外務省とか経企庁とかが兼ね合うのだと思いますけれどもおつくりになって、そういう中で、いま執行率あるいは消化率がスムーズに上がらない、その原因となっているこの執行体制、執行機関、それから二国間、多国間、さまざまの具体的な諸問題なども、消化しやすいように改善をしていくということではないだろうか。大臣、できればそういうことを、これからメキシコの会議にしろ、それから総理が訪米される、それからボンの会議がある。このボンの会議にしても、先進国の行方を世界じゅうのいろんな国が、特に途上国が見守っておるわけですから、そういう発想を、具体的に連休明けに当委員会が開かれる前にでもひとつ検討されて、国際機関の場に、物の考え方としてこういう努力を日本はやっていくのだということをひとつ表明されると、非常に私は意味があると思うのですが、ぜひやっていただきたいという意味を含めて、いかがでしょう。
  39. 村山達雄

    村山国務大臣 この問題は、これから日本が、その国力に比べまして、また日本の広い意味の安全という意味で、まさに非常に大事なポイントではないかと思っておるところでございます。そういう意味で、今後やはり国際的な目標でございますグラントエレメントは八六ぐらいまではぜひ上げたい、また、現在の予算ベースでGNP対比で〇・三%というわけでございますけれども、これはもう少し上げるように努力したい。それから中身につきましても、さっき言ったような方向で、直接輸出とか資源の開発につながるものではなくて、相手国側に喜ばれるようなものをやっていきたい。  それから執行体制につきましては、コミットメントから交換公文まで、交換公文からまた具体的な実施計画まで、実施計画からいよいよディスバースまでと、みんなそれぞれその間滞留があるわけでございますので、この執行をできるだけ早めていく方向で考えていきたい。  いずれにいたしましても、今後の日本が国際社会に生きていく上におきまして、重要なポイントであることは間違いございませんから、われわれもせっかく勉強いたしまして御期待に沿うように努力いたしたい、かように考えているところでございます。
  40. 伊藤茂

    ○伊藤(茂)委員 いま要望しましたような方向をぜひお願いしたいと思います。そうしてまた、諸外国との文化、学術を含むさまざまの交流の面でこういうものを発展していく、何かそういう構造をぜひこういう機会につくっていただきたい。五十二年度の国際収支の数字を見てあわを食って何かやっているという印象じゃなくて、そういう安定的な基礎をどうつくっていくのかということを今日の段階でぜひお考えになっていただきたいというふうに思います。  それから、二十一日の経済対策閣僚会議の中で、いわゆる緊急輸入のための外貨貸し制度の問題が一つ目玉になっております。大蔵省の方からも大分御議論があったようですし、結論としてはこういうことになったようですが、その執行とかやり方というのはずいぶんいろんな問題をはらんでいるだろう、やり方によっては、財政あるいは国民に結局負担をいろいろとかけてしまったということにもなりかねない面があると思います。それから、非常に条件を緩和したから、何かどかどかといろいろな注文が舞い込んでくる、そういうものをどう査定をしてやっていくのかという問題もあると思いますし、それから、その効果について、何か報道で見ますと、国際収支の改善に二十億ドル程度貢献するであろうとか、いや今回のさまざまな対策について四十億ドル程度は改善できようとか、何かいろいろなものが出ております。大まかにこれらの問題についてどうお考えになっておりますでしょうか。
  41. 徳田博美

    ○徳田政府委員 先生御指摘のとおり、四月二十一日の経済対策閣僚会議で、輸出入銀行によります緊急輸入外貨貸付制度について改正が行われたわけでございますが、これは緊急に輸入をしようとするものに対しまして為替リスクを負わない形での外貨貸付制度を設けるのが趣旨でございます。ただ、その運用に当たりましては、先生御指摘のとおり、適正な運用が必要でございます。  この貸付対象といたしましては、事業所管大臣が幾つかの要件を考慮した上、緊急輸入として日本輸出入銀行に対して推薦したものということになっておりまして、この場合の要件といたしましては、五十三年度中に輸入増加となるような緊急輸入であって、経常収支の黒字幅縮小の効果が認められるものであること、また、単にわが国の経常収支の黒字幅縮小に寄与するのみならず、輸入される物資が国民経済上重要であること、それからさらに、今回の改正によりまして長期の貸し付けが行われるようになったわけでございますが、これにつきましては、外貨による長期固定金利でなければ当該物資の輸入が困難と認められること、このような条件がつけられているわけでございまして、このような条件のもとで所管各省から適正な案件が輸出入銀行に推薦されまして、輸出入銀行におきましては、これを金融面から審査をいたしまして実施をする、このようなことになるわけでございます。  この制度の効果でございますが、いままですでにコミット済みの案件につきましては、ウラン鉱石、ヘリコプター等八千百万ドルでございます。それから、現在いろいろ交渉が始められている案件は七件ほどございまして、この金額が五億五千万ドル程度になっているわけでございます。なお今後は、一部に報道されておりますように、仕組み船の再輸入であるとか中古船のスクラップ用の輸入であるとか、そのような話もいろいろ進んでいるようでございまして、これが適正に運用されることをわれわれとしても期待しておるわけでございます。
  42. 伊藤茂

    ○伊藤(茂)委員 お答えございましたが、いずれにしても、この執行のやり方によっては損失の出る可能性が強い。そしてまた、その為替リスクその他そういうものは、国家、国民が負うということになるわけですから、私は、こういうもの自体いいのか悪いのか、若干意見もあるところですが、慎重にこういう問題については対応する、またこれに関連をして、大騒ぎの中でまた新しい問題がじきに起きちゃったということのないような運用をぜひ要望したいと思います。  それから、最後になりましたが、一、二大臣に伺いたいのですが、さっきも旦さんに伺っていたのですけれども、いま円が小康状態に入って、一時二百十八円という段階から二百二十七円、八円というところに戻っております。こういうものをどう見るのかということ。  それから、五十三年度の経済運営をする中で、こういう段階でほっとするんじゃなくて、やっぱりこの際考えて、さまざまなことをいろいろな英知を吸収してやっていくということが必要なんじゃないか。私はさっきも申し上げたんですが、日本の産業構造の改革その他雇用問題も兼ね合うわけですが、いろいろな努力を総合的にもう一度やはり考えて、深める努力をしていくということでないと、円高基調という構造自身はなかなか変わっていない、これは単なる相場の問題でなくて、そういう構造的に変わっていない、そして、そういう構造のもとでの一時的な修正、安定という段階でないだろうかという気がするわけでありまして、ですから、ほっとしても困りますし、それから、二十一日の閣僚会議、これは応急手当ですね、ある意味では。応急手当というのか、当面何カ月か半年かという段階での効果を考えていく。国際機関への出資その他の拡大ということはやや長期的になりますけれども、何か当面の対策的な、さまざまな国際経済を前にした当面の対策的な印象が非常に強いわけです。ですから、いまの段階でこういう円の状況をどう見るのか、それから、こういう段階のもとでどういう新しい努力を、二十一日の経済閣僚会議の結果だけじゃなくて考えていくのかということが、必要なときではないだろうかというふうに思うわけでありまして、円の見通しも含めて、さようなことをひとつ伺いたいと思います。  それから、最後ですから一つ。盛んに表現として機関車から護送船団という話がいろいろ評論されております。スリーエンジンという考え方自体、現在の国際経済構造のもとで可能であったのかどうか、これは問題だと思いますし、西ドイツなんかは、あれも非常にクールに対応してという経過をとっていたわけですし、今回護送船団とか船団方式とかいう考え方が出ているわけですけれども、私は、今日の資本主義経済の各関係のもとで、不均等発展は当然です。これはもう法則的なものですからね。そういう不均等発展の中で、しかもフロートですからいろいろな問題が起きる。そういう中で、やはり国際関係におけるいろいろな対応努力も現実しなければならない。それと同時に、何か起こってくるさまざまな問題や外国から指摘されることについて、あわてて対応しているというのではなくて、やはり基本的には、国際友好と同時に、日本の国民経済、国民生活をどう守り向上させるのか、この春闘なんかでもそうはなっていない傾向が強いわけですけれども、そういうことを基礎に置きながら物事を考えていく。ですから、いわゆるスリーエンジンか護送船団かというマスコミ的表現ではなくて、ひとつ突っ込んだやはり大臣としての、経済閣僚の中心になる大臣とされての一つの基本的な構えを持って、国際的な対応をされるということが必要ではないかというふうに考えるわけですが、そのことと、さっき申し上げた円の小康状態に関連をするお考えと、この二つを最後にお伺いしたい。
  43. 村山達雄

    村山国務大臣 基本的な考えは、私は伊藤委員と全く同じ考えを持っているわけでございまして、日本の内需拡大あるいは黒字幅の縮小という問題は、何も外国から言われているからやるという話ではないのでございまして、基本的に考えてみますと、日本の民需あるいは企業の活力、これが非常に衰えたところに今日の日本経済としての最大の問題があるわけでございます。とりわけ、いわゆる構造不況業種というものが、この時代の趨勢に応じまして転換がおくれておるというところからこの問題が起きているわけでございます。国際収支の均衡と申しましても、むしろやはりその基本を改める、各国がそれぞれの立場においてやはり自分の国は何をなすべきであるかということを本当に考えていけば、おのずからその辺の需給の均衡というものは得られるのであろうと思っているわけでございます。その意味におきまして、日本で申しますれば、何よりもいまは内需を拡大していく、その結果として国際収支の経常収支の黒字幅が少なくなっていくという問題、あるいはさっきちょっとお触れになりましたように、資本収支の観点でODAをふやしていく、こういう態度でなければならぬと思うわけでございます。  また、アメリカで言いますれば、当然のことでございますけれども、現在石油をあのようにたくさん輸入しているわけでございますし、そしてまた輸出努力も、われわれから見ますとまだ足りないというようなことがございまして、何よりもインフレを早く防止してもらわないとこれは大変でございまして、円高傾向がどんどん出てまいりますれば、世界的にデフレギャップになることは当然でございまして、アメリカがわれわれに要求しております日本の対外関係の均衡という問題も、やはりアメリカ側のインフレ防止の努力ということと深くかかわり合っているわけでございます。その意味でアメリカは、最近におきましてカーターがインフレ防止の決意を表明し、そのあらわれとして、ドイツとの間でスワップの拡大を行う、あるいはさらに最近では、金の売却を始めておる、あるいは声明されておりますように今後公務員の給与を少し抑制ぎみに抑えていく、これらの施策をやることによりまして、これはアメリカの例でございますが、アメリカがインフレを抑制する努力をすること、これは基軸通貨としてもう当然のことであろうと思うわけでございます。しかし、われわれはそれを高く評価しているわけでございまして、今後ともその線で努力をしていただきたいと思うのでございます。  幸いにいたしまして、為替相場はここのところ小康状態になりまして、いま二百二十七、八円まで戻したわけでございます。今後の為替相場の見通しはなかなかむずかしい問題でございますけれども、世界的に一つの小康感が出てきたのではなかろうかと思っているわけでございます。したがって、日本の場合を考えてみますと、二月、三月は特殊の事情からして、いわば輸出の積み急ぎ、これはいろいろな原因で起きたわけでございますが、五十三年度に向かいましては、そういう特殊事情もなくなりますし、予算の着実な執行、金利の低下によりまして、輸出圧力も内に向かっていきましょうし、また、言うところの円高による数量効果が今後期待されるものと思っておるわけでございますが、そういうことを通じまして、結果的に国際協調を図っていきたい。  一ころ言われました為替の介入に対する協調あるいは協力という問題ももちろんあるわけでございますが、基本は何といっても、実体経済の方の歩調をそれぞれがそろえるというところが最大の問題だと思うのでございます。固定為替相場といってみても、いまとれるわけでもございませんし、ターゲットゾーンといっても、なかなかとれるわけでないだろうと思うのでございます。むしろわれわれが絶えず情報を交換しつつ、乱高下に対しては共通の目的のもとにそれぞれイニシアをとって協力していく、これが一番大事であろう。技術的な問題ではなくて、基本的な問題に特に力点を置きまして、特にアメリカは基軸通貨という立場でございますので、これの信認が揺らいだら世界経済の安定あるいは調整はおくれることは当然でございます。そういったことを大いに強調し、また、アメリカ側のさらに一層の自覚を促すようにわれわれも努めたいと思っておるところでございます。
  44. 伊藤茂

    ○伊藤(茂)委員 大臣、あしたメキシコへ出発をされるということで御苦労さまですが、大変な時期ですから、ベトナムとか幾つかの前向きの御答弁をいただきましたが、特にさっき申し上げました、何か中期のガイドライン、ローリングプランでも結構ですから、そういう姿勢をもって、こういう時期の中で新しい努力をしていくということでないと、額とか何かの打ち上げだけでは結局、約束破りの日本というような印象を与えかねないと思われますから、一層努力をしていただくように要望いたしまして、質問を終わりたいと思います。
  45. 大村襄治

    大村委員長 二見伸明君。
  46. 二見伸明

    ○二見委員 ただいまの伊藤委員の質問に関連して冒頭に大蔵大臣にお尋ねします。  最近、為替相場が安定といいますか円安、二百二十七、八円になってきております。これに対しては、アメリカが金の売却をすることを決めたからだとか、いろいろとその理由、原因が述べられております。  そこで、私は端的に大臣の見解を伺いたいわけでありますが、実は牛場対外経済相が、今後急激な円高はないだろうというようなことを語ったという報道を、きのうだかおとといだか私は目にいたしましたけれども、大臣としては、今後急激な円高はもうないだろうというような御判断を持っているのか、それとも、これはうっかりしたことはなかなか言いにくいのは私はわかりますけれども、まだまだ安心してはいけないというふうな気持ちでいらっしゃるのか、まずその点について伺いたいと思います。
  47. 村山達雄

    村山国務大臣 通貨当局が将来の為替相場に対する見通しを言うことはタブーでございますが、世間一般で言われているところによりますと、去年年初から九月二十六日まで二十六円くらい下がりました。それから十二月までにさらに二十何円下がりました。それから二月十日ぐらいまでは大体二百四十円台で、そしてまた二百四十円からずっと下がって、一ころは二百十八円まで行ったわけでございます。ですから考えてみますと、去年年初来三三%の切り上げであったわけでございます。  最近アメリカのインフレ対策等で、私はむしろ心理的影響が大きいと思うのでございますが、投機筋が円攻勢とかそういったものに対して反動的に動いていった、こういう過程を見ておりますと、世間一般では、一種の小康状態が来ているのでこれ以上去年のようなことはないのではないかという期待感を持っているのではなかろうか、また、投機筋あるいはその他の人たちもそういった見方をしているというところが一般的な観測ではないか、こんなふうに思っているわけでございます。
  48. 二見伸明

    ○二見委員 ところで、四月二十一日に政府は経済対策閣僚会議で、「国際収支対策及び円高に伴う物価対策について」といういわば円高総合対策をお決めになりました。これを決めるに際して、特にこの中には「経済協力等の推進」という項目があるわけでありますが、大蔵大臣はこれに関連してこの会議で、経済援助の実行率を高める必要性を強調し、経済協力の進展次第では補正予算の編成が日程に上ってくるとの考えを明らかにした、こう報道されておりますし、また、この円高対策というのは補正予算を念頭に置いて決めたという報道もあります。この点についていかがでしょうか。
  49. 村山達雄

    村山国務大臣 やや不正確じゃないかと思うのでございます。今度のODAの関係については、すでに予算で決められておるところでございますし、そして従来の〇・二八%から〇・三〇%に上げたばかりでございます。執行率で見ますと、残念ながらディスバースベースでは大体予算の七割ぐらいでございますので、何よりも完全な消化ということが一番大事だ、こう思うのでございます。したがって、すぐ補正予算につながるという性質のものではなかろうと思うのでございますけれども、気持ちとしては、やはり援助というものは非常に大事な問題だということを言ったのでございまして、そのために補正予算を組まねばならぬというような問題意識はいまのところ持っていないのでございます。
  50. 二見伸明

    ○二見委員 そういたしますと、細かい内容は後ほど触れたいと思いますけれども、たとえば「二国間経済協力」の中で「アンタイドを基本原則として、相手国の要請に応じ、プロジェクト援助・商品援助を対象にその、実行を図る。とくに、貧困発展途上国に対するアンタイドの無償援助を拡大する。」とある。さらにもう一つは、いわゆる債務問題ですね。「(1)貧困発展途上国の直面する債務問題の解決に資するため、当該国の実情に応じ、アンタイド商品援助を供与し、またできる限りソフトな条件による資金協力を行う。(2)国際開発金融機関への資金協力に積極的に対応するとともに、国連機関、国際的研究プロジェクト等への任意きょ出を増大する。」これは「増大」です。  この四月二十一日というのは、すでに五十三年度予算は成立をしております。もし予算の範囲内であるならば、拡大だとか増大だとかという表現は要らないわけであります。これは予算外でやるというなら別でありますけれども、予算で決められたことをやるならば、別にここで取り上げることはない。五十三年度予算に決められたとおりやりますと表現すればいい。しかしここでは、たとえば「アンタイドの無償援助を拡大する。」「国際的研究プロジェクト等への任意きょ出を増大する。」この増大する、拡大するというのは、予算で一〇〇まで決められていたけれども、さらに五なり一〇なり余分に出すから増大であり拡大なわけです。これはやはり補正予算も頭に置かなければできないのじゃないでしょうか。
  51. 村山達雄

    村山国務大臣 アンタイド条件を拡大するというのは、別に資金量とは直接関係ございません。ただ日本の場合は、どっちかというとタイドのものが多いと言われているわけでございます。これはもうすでにやっているわけでございます。  それから「拡大する。」とか、全体として規模を拡大するような前向きのあれが出ておりますが、これは別に今年度の予算の話ではなくて、将来に向かってそういう姿勢でいきましょうということでございます。     〔委員長退席、綿貫委員長代理着席〕 それは先ほど伊藤委員にお答えいたしましたように、わが国の援助のODAの資金量というものは、やはりプロジェクトと申しますか、具体的な計画がなければ、ふやそうと思ってもふえないのでございます。そういう意味で、必要なものがあったら将来ふやしていくことにやぶさかではない、こういう意味をあらわしたわけでございまして、直接今年度の予算が不足になるかどうかは今後の問題、何よりも今年度の予算を一〇〇%消化するということが先決問題である、かように考えての表現でございます。
  52. 二見伸明

    ○二見委員 確かにこれはプロジェクトにしろ何にしろ、相手国の希望がなければ、幾らこちらで出す気でも出せない、それは私もよくわかります。今年度予算を十二分に完全消化することが前提だということも私もよくわかります。しかし、政府の心構えとしては、五十三年度予算を完全に消化すると同時に、積極的にたとえば開発途上国に働きかけるなり話し合うなりして、それ以上のものもできれば今年度中からもやりたいということがこの中に入っているわけでしょうか、その場合には、そういう条件が出てくれば補正予算を組むにやぶさかではないのだ、こういうふうに理解してよろしいですか。
  53. 村山達雄

    村山国務大臣 そこでの問題は、将来に対する姿勢を示した、そしてその気持ちを持っていることはもう間違いございません。ただ、実際に今年度の予算で足りないことになるかどうか、これは今後の問題であろうと思っておるのでございます。
  54. 二見伸明

    ○二見委員 この問題は、余り押し問答しても、言いっぱなし、聞きっぱなしになる感じがありますので、切り上げます。  外務省にお尋ねいたしますが、外務省は、政府開発援助に対して中期的な計画を持つべきだというお考えを持っているというふうに私は理解いたしております。というのは、外務省からいただいた資料の中に、一つの試案として「必要ODA事業予算のプロジェクション」という、一九八二年を見通した一つの試案を私は持っております。確かに政府は、政府開発援助を倍増以上にしたいという表明をいたしております。もしその倍増以上にしたいという意思表明を確実にするためには、それに対する何らかのガイドライン、それは、私はきちっとしたものでなくてもいい、毎年毎年自由に当然変更されざるを得ないだろうと思いますけれども、ひとつ五年なら五年、七年なら七年というきちんとした計画というものはやはり策定する必要性はあると思います。先進国でもすでにそうした試みが行われているというふうに聞いておりますが、まず経済援助の窓口である外務省としては、こういう計画に対してはどういうふうに取り組んでおられますか。
  55. 中村泰三

    ○中村説明員 わが国政府開発援助を五年間に倍増以上にする、そのために努力をするという意図を表明しておりますので、外務省といたしましては、基本的にはこの倍増以上を実現するためには、中期的展望に立って計画的に政府開発援助を増大する、そのための努力をすることは必要だというふうに考えております。  いま御指摘のプロジェクションでございますが、これは恐らく「経済協力の現況と展望」という中に示された一つのプロジェクションのことだと思います。ただ、この「現況と展望」につきましては、外務省の中で直接経済協力を担当しております者が研究グループをつくりまして、そのグループの研究の成果を一つの試論として刊行することを考えているものでございまして、そういう意味におきまして、このプロジェクションはあくまでも非公式なものでございます。その点御理解いただきたいと思います。
  56. 二見伸明

    ○二見委員 それで、もしこういう中期の計画を策定するとする場合、恐らく外務省だけではちょっとむずかしいだろう。メインとなるのは外務省であっても、各省庁の協力を得なければできないですね。その場合、どんな省庁が必要ですか。
  57. 中村泰三

    ○中村説明員 経済協力に広く技術協力を含めますと、関係する省庁は非常に多くなるわけでございますが、借款に関しましては、外務省のほか大蔵省、経済企画庁、通産省、この四省庁が借款についての協議官庁というふうになっております。しかしそれ以外にも随時、技術協力あるいは無償協力につきまして、関係省庁と協議して経済協力を実施するという体制をとっております。
  58. 二見伸明

    ○二見委員 大蔵大臣にお尋ねいたしますけれども、私も国際的公約を実現するためには、そうした中長期のガイドラインというものは必要だと思います。いま外務省の経済協力局では、一つの勉強の成果としての試案をつくっているわけでございまして、これが完璧なものだとかというわけじゃありません。私もこれを一つの試案として理解いたしておきます。ただ、こうした一つの試案を試案にしておくのではなくて、やはり政府としては本気になって取り組む必要があるだろう。たとえば先ほどの二十一日の経済閣僚会議でも、経済援助について増大とか拡大とか、これはいまじゃなくて将来を見通したものだという大臣のお話がございましたけれども、そうした方向を考えれば考えるほど、財政当局としてもこの問題については真剣に取り組んでもいいのじゃないか。しかも、こういう計画をつくる場合には、外務省のほか経済企画庁、通産省、大蔵省、この四つの省庁の協力が絶対必要だというのがいまの外務省の御答弁でございますので、大蔵大臣としてもこのことについては、財布を握っている省として積極的的に取り組んでもいいのじゃないか、むしろ経済閣僚会議でやろうじゃないかという発言をなさってもいいのじゃないかというふうに思いますけれども、いかがですか。     〔綿貫委員長代理退席、委員長着席〕
  59. 村山達雄

    村山国務大臣 一番関係の深い省庁が先ほど述べた四省庁であるわけでございます。どちらかというと、やはり窓口は外務省になっておるわけでございます。だから外務省で、非公式ながらこういう研究機関をつくっていくということは、非常に結構なことであろうと思うのでございます。また、通産は通産で勉強する、大蔵は大蔵で勉強する、経企庁は経企庁で勉強する、それをときどき持ち寄りまして、事務的にだんだん整理して、そして中長期的な考え方を固めていくということはきわめて意義の深いことであろう、かようにわれわれも考えているところでございまして、私たちも積極的な協力を惜しまないのでございます。
  60. 二見伸明

    ○二見委員 外務省どうですか、大蔵大臣も協力を惜しまないというお話ですけれども、外務省で少し音頭をとってやる気はありませんか。
  61. 中村泰三

    ○中村説明員 いま御指摘のプロジェクション、これはいま申し上げたような試論でございまして、そういう意味におきまして、関係省庁の協議を行ったものではございませんが、できますれば関係省庁の協力を得て、そういうプロジェクションができるということになれば非常にいいことではないかと思います。
  62. 二見伸明

    ○二見委員 いや、これは中村さんとしては言いにくいのかもしれませんけれども、いいことではないかじゃなくて、むしろ帰られたら外務大臣に、少し外務省で音頭をとってまとめようじゃないか、こういうふうに大蔵委員会で言われたけれども、やりませんかと積極的に進言して、外務省で先頭切ってやったらどうですか。やはり各省庁の出方を見て、出方を見てといったら、こういうものはまとまりやしませんよ。外務省が窓口ならば、やると決めて各省庁に働きかけなければ、これはできませんよ。どうですか。もっとも通産省の方でこういうものを出していますね。これのなわ張り争いみたいなものがあってやりにくいならまた話は別ですけれども、いかがですか。
  63. 中村泰三

    ○中村説明員 私どもといたしましても、各省庁となわ張り争いをするというようなことは毛頭考えておりません。また外務大臣も、現場で日々経済協力に従事しておる者が、こういう経済協力の問題点につきまして広く国民の皆さんに呼びかけて、その理解を得る場を持つことはいいことだというふうなことも国会で表明しております。ただいまの御発言につきましては、帰りまして早速外務大臣に報告いたします。
  64. 二見伸明

    ○二見委員 細かい点についてお尋ねしたいと思います。  一つは、いわゆる発展途上国の債務累積問題、これは、第四回国連貿易開発会議から国際経済協力会議で債務累積問題が論議されております。これは外務省の方がよろしいのか大蔵省の方がよろしいのかわかりませんけれども、日本が開発途上国に持っている債権というのはどのくらいあるのか、そのうち、どうも焦げついている、あるいは焦げつきそうなものがどのぐらいあるのか、それがもしおわかりになったら、数字的に教えていただきたいということです。  それから、国際経済協力会議で先進国側が貧困発展途上国のための特別行動計画を実施することになった、日本は一億一千四百万ドルの分担を約束したと言われております。これは七七年といいますから、去年から実行しているというふうに聞いておりますけれども、これは具体的にどうなっていくのか、この二点をまず最初にお尋ねをいたします。
  65. 旦弘昌

    ○旦政府委員 第一の債務累積の問題でございますが、わが国が発展途上国に対して有しております政府ベースの直接借款の残高は、本年の二月末で約一兆四千億円でございます。これに関しまして、焦げつきそうな額はどのくらいかというお尋ねでございますが、これについては、どこの国が焦げつきそうかということは私ども存じておりませんので、その辺につきましては数字を持っておりません。ただ、この問題は非常に大きな問題でございまして、従来もそうでございますが、債務返済で困難に陥ったような国から要請がございますれば、ケース・バイ・ケースで適切な救済措置をとってまいりたいというふうに考えております。  それから、第二点のお尋ねでございます特別行動計画の点でございますが、これはCIECの会議におきまして、参加しました先進諸国が貧困国に対して総額十億ドルの特別緊急援助措置をとることを決定いたしました。この中で、いま数字を申されましたとおり、日本としましては一億一千四百万ドルのコミットをしたわけでございまして、この実施方法につきましては、各国に任されておりますが、わが国はこのうち、有償、無償をあわせまして、できるだけディスバースの早い二国間援助をもってこれをやっていこうという考えでございまして、五十二年度におきましては、すでに円で五十億円の援助をこのスペシャルアクションの計画の中で実行いたしておりまして、それを開発委員会に対して報告をいたしておるところでございます。
  66. 二見伸明

    ○二見委員 発展途上国の債務の累積というのは、石油ショック前と石油ショック後では質が違うというふうに聞いております。性格的に大分違ってきている。私も詳しいことはよくわかりませんけれども、要するに石油ショック後は、世界全体が景気が悪くなる、そのために発展途上国からの輸出がとだえる、そのための借金の穴埋めといいますか、借金を何とかするための借金というような形で累積しているというふうに私は聞いております。もし認識が間違っていたならば御訂正いただきたいと思いますけれども、いずれにいたしましても、この債務の累積というのは、発展途上国にとってみれば、自助精神というか、自分の国は自分で何とかするのだという精神を阻む問題だし、といってほっておくわけにはいかないしという厄介な問題だろうと私は思います。今度の二十一日の会議でも、「できる限りソフトな条件による資金協力を行う。」ということで、簡単に言えば、安い利息でもって何とかつないでいこうという考えだろうと思いますけれども、わが国としてはこの債務問題は、ケース・バイ・ケースで処置されるということですけれども、基本的にはどういうふうな方向でいくのでしょうか。  たとえばスウェーデンは、三十二回国連総会で、最貧国に対する政府開発援助債権を全額キャンセルすることとし、議会の承認を取りつけるという演説をされたそうでありますけれども、わが国としても、ケース・バイ・ケースで処置するというのはわかるようでわからない話であります。確かに債権というのは、ある面では日本の国民の財産ですから、それをキャンセルするということになればいろいろ問題も出てくるかもしれない。しかし、こういった発展途上国の現状を見た場合に、たとえば安い利息で資金を出して肩がわりしてやるとか、何とか軽くしてやるということだけでもって処置できるのかどうか。もっとも発展途上国の中でもランクがあるから何とも言い切れないでしょうけれども、この問題はわが国ではどういうふうに考えていきますか。
  67. 中村泰三

    ○中村説明員 先般三月、ジュネーブにおきましてTDBの会議が開かれまして、御指摘の債務問題が討論されました。その場におきまして、スウェーデンその他の国は、開発途上国の債務キャンセレーションということをやりましたが、会議の結論といたしましては、債務のキャンセレーションもしくはそれに見合う同等の措置を各国の適当と思う方法でとるというふうなことが決められております。わが国といたしましては、すでに貸した債権をキャンセルするということは法律のたてまえ上できませんので、むしろこういう開発途上国政府開発援助、しかも条件の緩いあるいは無償の資金協力をふやすべきだ、むしろ政府開発援助を増大するという過程においてこういう債務問題を解決すべきだという立場をとっておりまして、今後とも、特に後発の開発途上国、こういう国に対しましては、緩い借款及び主として無償資金協力を中心といたしまして援助の増大を図ってまいりたい、こういうふうに考えております。
  68. 二見伸明

    ○二見委員 それから、南の開発途上国の債務増大についてこういう意見がありますけれども、この点についてはどうですか。南の債務増大は、単に国際貿易、経済発展のせいばかりではない、いますさまじい勢いで進行している第三世界の武器買い付けも大きな原因の一つである、こういう説もありますけれども、これは一つの原因として認識してよろしいですか。これがすべてじゃなくて、債務増大の一つの原因にもなっているというふうにこういうことは認識してもよろしいですか。もし第三世界の武器買い付けも大きな原因の一つだということが事実だとするならば、債務問題というのは、ただ単にキャンセルしてやれば済むとかいう単純なものじゃなくて、別の要素が出てきますよね。その点についてはいかがですか。これはある学者がこういうことを言っておりましたので、外務省ではどういうふうに理解なさっていますか。
  69. 中村泰三

    ○中村説明員 債務増大の原因はいろいろあると思いますが、国によって違うと思いますが、武器買い付けが債務増大の主な原因であるというふうに私たちは理解しておりません。
  70. 二見伸明

    ○二見委員 もう一つ、閣僚会議で、「政府開発援助を拡大し、援助条件についてはグラント・エレメント八六%を目指し無償援助の拡大および借款条件の緩和等に努力する。」ということは二十一日に決められたわけでありますね。それで、わが国の目標をまずお尋ねしたいのですが、わが国政府開発援助の割合というのは、七二年から七六年平均で二七・二%、DAC加盟国の平均が三六・八%ですね。今後わが国としては、大体政府開発援助の割合をどの程度にまで持っていきたいというふうに考えておられるのでしょうか。また、ことしの予算措置でいくと大体どのくらいになるのでしょうか。
  71. 旦弘昌

    ○旦政府委員 ただいまお示しになりました数字、ちょっと理解が足りないのでございますけれども、今年度の予算におきましては、政府開発援助は予算ベースでGNP比〇・三%に高めるということにいたしております。これは先ほども申し上げましたように、DAC諸国の平均が〇・三三でございますので、それにかなり近づくということになるわけでございますが、問題は、大臣も御指摘になりましたように、予算ベースでこうでありますけれども、全部ディスバースできれば〇・三になるということでございますので、その辺を促進する必要があるのではないかということでございまして、私どものODAの目標としましては、少なくともDAC平均まではいきたいものだというのが当面の目標でございます。
  72. 二見伸明

    ○二見委員 政府開発援助に占める技術協力についてなんですけれども、まず割合が日本の場合は九・八%だと言われていますね。DACは二一%ですね。特にわが国の技術協力というのはこう言われていますね。「わが国の派遣専門家の中では、人材養成専門家は皆無に近く、また、技術アドバイス、経営アドバイスを行う短期的アドバイザーの比重が多いため、長期的に工場の運転に携わる技師や現地の教育機関で教育を担当する教育が全くといっていいほど少ないのが、わが国の実情である。」これは通産省の方のこれに書いてあるわけです。  そうすると、まず技術協力については、九・八%というのはやはりこれを高める必要があると私は思います。DACは二一%ですから、いきなり二一にはならないだろうと思いますけれども、これはやはり年次的に高めていく必要があるだろう。外務省としては、大体どこら辺まで高めていける目算があるのか、どの程度まで高めていけばいいのか、おおよその目安を教えていただきたいのと、現地にがっちり腰を据えてやろうというのはいないわけですね。これは私、前に調べたとき、日本の国内の職場でもいろいろな問題があるようですね。長期に派遣されている間に自分のポストがなくなってしまうとか、帰ってきたときに座る場所がないというような非常に国内的な問題もあるやに聞いております。そこら辺については、これはどういうふうに改善されていくのか。これは外務省だけではとうていできない問題だろうと思います。またある面では、日本人の意識の問題もあると思います。やはりふるさとがいいやというので、そういう意識の問題もあると思いますけれども、その点についてはどういうふうにお考えになりますか。
  73. 中村泰三

    ○中村説明員 御指摘のとおり、わが国の技術協力、これは国際的に見て非常に比重が低うございます。この技術協力というのは、人の派遣あるいは専門家の派遣、あるいは研修員の受け入れ等々非常に手間暇のかかるものでございますけれども、人と人の交流を通じて相互の理解を深めるという意味におきまして、単に技術の移転ではなくて相互の理解の増進という意味から非常に大きな意味があると思いまして、われわれといたしましても、今後これを徐々に計画的に拡大していきたい。ただ、どの程度まで拡大すべきかということにつきましては、いま直ちにこの数字を申し上げるのはなかなかむずかしいと思いますが、できますれば、DAC平均というところまで持っていければいいのじゃないかというふうな考えを持っております。  ただ御指摘のように、技術協力の中心は人が中心になります。受け入れる場合には受け入れ施設の問題がございますし、専門家を派遣する場合にはやはり専門家の養成確保ということが非常に大きな問題になります。したがいまして、ただいま技術協力を中心に主として取り扱っております国際協力事業団におきまして、そういった専門家の養成確保という点に非常に重点を置きまして、専門家に対するいろいろな教育、養成あるいは登録制度をつくりまして確保するというような措置も講じております。  それから同時に、この国際協力には、特にコンサルタント等におきましては民間の協力を得ることが非常に多い。そういう場合には、たとえば民間から専門家を派遣していただく場合には、民間の所属していた会社に所属先の補てんという措置をとりまして、国際技術協力に協力していただける民間会社に経済的な負担をかけないように、そういう措置をとってきております。
  74. 二見伸明

    ○二見委員 時間がありませんので、最後に簡単にお尋ねしたいと思いますけれども、今後の経済協力の対象といいますか、対象という言葉が適切かどうかわかりませんけれども、お尋ねしたい一つは、開発途上国と言ってもいろいろの分類ができますね。特に最近は、ただ単にプラントとかそういうことだけではなくて、人間の生きるべき条件というのですか、ベーシック・ヒューマン・ニーズとかという立場からやるべきではないかという開発の理念がありますね、考え方が出ておりますが、そうするとわが国としては、今後開発援助、協力、その対象を、生活条件というか、かなり厳しい、この言葉で言うと、絶対的貧困層の分布状態というのがこの通産省のデータにありますけれども、貧困開発途上国といいますか極貧といいますか、そういうところに対して、これをどういうふうに人間として生きるべき条件を満たせるような開発をするかということが一つの考え方だろうと思うのですが、そういう点についてはどういうふうにお考えなのか、まずその点ですね。  それから、いまわが国では世銀だとか第二世銀だとかいろいろ出資しておりますですね。そうした出資の中で、極端に出資の低いのがアフリカと中南米ですね。これについても、やはりそうした貧困開発途上国に対するわが国のやるべきこと、でき得べきことということになれば、そういうところに対する出資額もふやしていってもいいのじゃないか、ただ単にわが国の国益という点だけではなくて、ふやしていってもいいのじゃないかと考えます。その点についてのお考えも承りたい。  同時に、これはまとめて伺って申しわけないのですが、三月の外務委員会で社会党の美濃先生が、古米を援助に使ったらどうだという議論をされたのです。そのときに武藤経済協力局長が、古米の援助についてこう答弁しているわけですね。「相手国の希望がございますれば、それからまた所要の財政資金を講ずる余地がございますれば、日本のお米を援助に使うということも考えてまいりたいと思っているわけでございます。」お米を援助として出すということについては、たとえばタイ米がほしいとか、お米を輸出するたとえばタイだとかいう国の問題がありますから、日本の独断的な判断で米を援助に回すというのは危険ではありますけれども、もし相手国が希望するならば、そして所要の財政資金を講ずる余地があれば外務省としてはやりたいという意見であります。このお米の輸出というか援助に使うということに関して、私は大蔵大臣の御答弁をいただきたいわけでありますけれども、日本のお米を希望する国がある、それが外交的な摩擦を起こさないという条件があった場合に、所要の財政資金を講ずる意図はございますか、以上三つです。
  75. 旦弘昌

    ○旦政府委員 第一点でございますが、ベーシック・ヒューマン・ニーズの関係で申し上げますと、基本的には、プラント等の円借ベースでやりまして、その受けた国の経済力がつくというのが基本的に一番正道ではなかろうかというふうに私ども考えておりますが、しかし一方で、緊急的に非常に困っておるところにはそれなりの援助をすべきではないかという御指摘はごもっともでございまして、その一番いい例といたしましては、食糧が足りないというようなところに対しては、食糧を直接贈与するあるいは食糧増産の手助けをして差し上げるということではなかろうかと思います。こういう見地から、今年度の予算におきまして、食糧増産のための援助といたしまして百三十億円、これは前年が六十億円でございますから倍以上増額したということで、私どもはこの面で大きく一歩を踏み出したというふうに考えておるところでございます。なお、個別に今後そういう要請がございますれば、それに即してまた拡大を図ってまいりたい、かように考えております。  それから第二点の、アジア中心でありまして中南米あるいはアフリカに対する日本の参加が少ないんではないかという御指摘でございますが、アフリカ開発銀行には、アフリカの国だけしかメンバーにしてもらえませんので、日本は入れないわけでございますが、この開発基金の面におきましては、日本のシェアは一一・三%でございまして、非常に大きなシェアを占めておるわけでございますので、その点はかなりの貢献をしておると考えております。  それから、米州開銀、これは中南米を対象としておるものでございますが、これは従来、日本を含めます域外国の参加を断ってきたわけでございまして、二年前に、これが域外国にも戸が開かれましたので、日本もECの諸国と同じく参加をいたしました。その出資のシェアは〇・七六%でございますのでかなり低いわけでございますが、これは域外国のシェアを余りふやしたくないという域内国の意見がございますので、日本の意向だけではいかない。ただ将来、もしもう少し日本の参加も広げてもいいということであれば日本としては前向きに対処をしてまいりたい、かように考えております。  それから、第三点の米の問題でございますが、これにつきましては、いま二見委員の御指摘もありましたように、日本の古米の問題ございますが、一方、タイとかビルマのような伝統的な米の輸出国に対する配慮も十分しなければならないというところで非常に苦しいところでございます。ただ、昨年の十一月にインドネシア政府から、昨年の米作が非常に悪かったので相当量の米の輸入が必要であるということで、タイ等の伝統的な輸出国ではこの緊急輸入の需要に対処することができないという状態から、日本に対しまして日本米の緊急輸出について要請がございました。これにつきましては、その強い要請もございますので、日本もその要請に応ずることにいたしたわけでございます。
  76. 二見伸明

    ○二見委員 終わります。
  77. 大村襄治

    大村委員長 永末英一君。
  78. 永末英一

    ○永末委員 大蔵大臣に伺いたいのでありますが、発展途上国に対する経済協力、この世界経済的意義をどのように大蔵大臣としては把握しておられましょうか。すなわち、われわれの原料国だとか、つまり機械工業国に対する原料資源国であるというようなことではなくて、共産圏というものがある意味で封鎖経済をやっている場合には、自由圏の経済全体として発展途上国の経済をどう位置づけるかがわれわれは重要な問題と考えております。そういう観点から、途上国に対する経済協力の世界経済的意義、これをひとつ伺っておきたいと思います。
  79. 村山達雄

    村山国務大臣 私は二つあると思うのでございます。  一つは、さっき言った債務累積になったような場合にどういうふうにやっていくかという問題と、それから基本的には、やはり発展途上国がやがて中進国になりいわば飛しょうラインに乗っていくということは、先進国にとりましても長い目で見ますれば、相互の経済発展をお互いに促進し合う結果になるわけでございますので、そういう意味で、発展途上国がどんどん伸びていくということは、これは何といっても世界の経済の上でも、あるいは政治的不安を解消する意味でも、あるいは軍事的緊張を解消する意味でもきわめて重要なことだと考えているわけでございます。そういう意味で、われわれは相手国の必要とするプラン、それがそういうものにつながるかどうか、そういったところを十分見きわめながら実は援助をやってきたところでございます。今後ともやはりそういう視点で考えるべきではなかろうか。ひとり日本の輸出にすぐ結びつくとか、いわばそれはタイドにもなるわけでございますし、あるいは資源開発というような狭い立場で考えるよりもより広く考えていった方がいいんではないか、このように考えております。
  80. 永末英一

    ○永末委員 国内の問題としていわゆる福祉国家論というものが言われまして、歴史は浅いのでございますが、つまり福祉国家には福祉国家の経済循環があるわけであります。その意味合いで世界経済という角度からながめました場合に、発展途上国の問題は言うならばワールドワイドな福祉と申しますか、そういう角度から、その経済性についてわれわれ機械工業国もまたしっかりその経済効果を見きわめてやるべきだ、私どもはそう思っております。  そこで、発展途上国と申しましても地球上いろいろあるのでございますが、私どもは、特に日本周辺の発展途上国に対して意を用いて、これに対する協力に万全を期さなければならない。われわれは一足飛びにアフリカ等へ出かけていく前に、やはり太平洋周辺諸国についてその意を用いなければならぬと考えます。その意味合いできょうは、われわれの国から真っすぐに南におりましたパプアニューギニアについて御質問しておきたいのでございますが、パプアニューギニアは、オーストラリアの施政権下から独立をいたしましてまだ日が浅いのでございます。したがって、発展途上国として外国の経済とつき合いをいたした歴史はそう長くはございません。しかし、この地域はわれわれといたしましては、三十数年前にわれわれの軍隊がそこにおり、戦闘に従事し、あるいはその地域の人々に多大の迷惑をかけたところ、また、われわれの同胞がたくさんその地で戦死をして葬られておるところでございまして、そういう意味合いでも、このパプアニューギニアに対する経済協力については一段の配慮をしつつやっていただきたいと思います。  その角度から、いま大蔵省では、今回の世銀に対する融資等が問題になっておりますが、世銀、第二世銀、もう一つアジア開銀、これはパプアニューギニア地域にそれぞれ経済的な手を差し伸べておるのでございまして、これをどの程度整合性のあるものとして大蔵省はつかんでおられるか、その援助の実態とその整合性について御説明を願いたいと思います。
  81. 旦弘昌

    ○旦政府委員 永末委員ただいまお尋ねの、パプアニューギニアに対します世銀、第二世銀及びアジア開発銀行からの融資の実績につきまして、まず簡単に申し上げますと、世銀は、現在までのところ七千百万ドル融資をいたしております。第二世銀が約四千八百万ドル、それからアジア開発銀行が約五千三百万ドル、合計一億七千二百万ドルの融資をいたしております。この中身につきましては、主として道路それから農業関係のプロジェクトが多いようでございます。  それから第二点の、これらの三機関の整合性につきましてでございますけれども、これらは、それぞれの専門家がおりますので、それらの三機関の中で協議が緊密に行われておると聞いておる次第でございます。
  82. 永末英一

    ○永末委員 三機関の中で相談が緊密に行われておると聞いておるということでございますが、昨年、わが大蔵委員会でアジア開銀の視察がございました。アジア開銀がこの地域に対する援助の実態についてもいろいろと調査をいたす機会がございましたが、何分にもいま申されました世銀七千百万ドル、第二世銀四千八百万ドル、アジア開銀五千三百万ドル、それをこの地域にそれぞれの項目別に仕分けると、一つのプロジェクトは必ずしも大きくない。つまり、一つのプロジェクトを三つの金融機関がねらっておるのか、それぞればらばらでやっておるのか。しかし、資料を見ますと、たとえばラエからゴロカに至るハイランドハイウエーと称せられるものについては、道そのものが壊れるものでございますから、数次にわたってこれに対しての融資が行われておる。こうなりますと、その経済効果等を見つつ整合性というものは必ずしも緊密にいっていないのじゃないかと思いますが、いかがでしょう。
  83. 旦弘昌

    ○旦政府委員 私どもが持っております資料によりますと、ラエーハーゲン間のハイランドハイウエーにつきましては、世銀及び第二世銀がそれぞれ共同しまして融資を行っております。それから、そのプロジェクトの一部につきまして、その補修、橋のかけ直し等につきましては、アジア開銀がそれを担当しておるというようなことでございまして、その間におきまして、それぞれの機関の連絡協調が行われたものというふうに了解をいたしております。
  84. 永末英一

    ○永末委員 この地域は、オーストラリアが施政権を持っておりましたときは、オーストラリアの人間が来ていろいろな指導をやっておりましたが、独立いたしましてからオーストラリアの人々はどんどんと引き揚げる傾向にある。中級管理者としてフィリピンの人々が少し入っております。わが日本国の人々は余り入っていないのでございますが、もしわれわれが積極的にこの地域に経済協力を行おうといたします場合には、何ほどかやはり日本の技術に通暁している者、日本のいろいろなやり方に通暁している者、こういう者のアドバイスが必要だと私は思いますが、この点についてはどう考えますか。
  85. 中村泰三

    ○中村説明員 経済協力の基本的な考えでございますが、これは発展途上国の経済社会の発展及び住民の福祉、こういうものに対します途上国自身の自助努力を側面から御協力申し上げるということでございますが、そういう場合に、やはり現地の経験というものは十分生かされれば、より効果が発揮できるというふうに考えております。
  86. 永末英一

    ○永末委員 この地域は、先ほど道路を一例として出したのでございますが、ともかく脊梁山脈が東西に走っておって、南北の交通路は全くない、こういうところでございまして、道路は重要な問題でございますが、同時にまた、通信施設も問題でございましょうし、電力、これもまたこの地域の経済水準、生活水準を上げる問題でも非常に問題がある。第一、また安定した食糧を供給するためには、農業に対するいろいろな融資も必要である。いろいろございまして、それらについて、先ほど申し上げましたそれぞれの国際金融機関が融資をいたしておるのでございますが、そういうものに対しておまとめになっておりますか。
  87. 旦弘昌

    ○旦政府委員 私どもといたしましては、先ほど申し上げました三機関の、部門別にどういう融資が行われているかという数字は把握いたしております。それからまた、たとえばこの三機関の個別の案件につきまして、若干の資料を持っております。
  88. 永末英一

    ○永末委員 本来ならば、それを一つ一つこの場で御報告願いたいのでございますが、与えられた時間が非常に少のうございますので、委員長にお願いしたいのでございますが、後でひとつ文書で本員に資料を手渡すことをお願いしたいと思います。よろしゅうございましょうか。
  89. 旦弘昌

    ○旦政府委員 提出させていただきます。
  90. 永末英一

    ○永末委員 ありがとうございます。それではよろしくお願いいたします。  昨年十二月八日、パプアニューギニア首相ソマレ氏が訪日をされました。そして、わが国の福田総理大臣との間に会談を行い、共同コミュニケが発表されました。このコミュニケによっていろいろな経済協力が日本とパプアニューギニアとの間の二国間経済協力としてやられてきたはずでございますが、その概要について御説明を願いたい。
  91. 中村泰三

    ○中村説明員 昨年十二月八日、ソマレ首相来日の際に、日本・パプアニューギニア共同コミュニケが発表されまして、その際、福田総理は先方の要請に基づき、フィージビリティー確認を条件といたしまして、千三百万ないし千五百万米ドルに相当する金額の資金協力に応ずる用意がある、そのほか、技術協力についてもお手伝い申し上げたい、こういうふうな内容の合意ができました。本年三月、この共同コミュニケのフォローアップといたしまして、政府の代表団を現地に派遣いたしまして、わが国の約束いたしました資金協力の内容につき先方政府と意見を交換し、資料の提出等も受け、現在この借款の中身につきまして鋭意検討中でございます。  技術協力その他につきましては、パプアニューギニアは一九七五年に独立いたしましてまだ日が浅いわけで、経済協力等の実績は少のうございますが、無償案件としましては、漁業訓練大学、これに六億六千万の無償資金協力をいたしまして、漁業の訓練大学を現地につくった。それ以外には、研修員の受け入れであるとか、あるいは専門家の派遣、さらには先方の要請に基づきまして、先方の経済開発計画に対する調査団の派遣、こういうような技術協力を実施いたしております。
  92. 永末英一

    ○永末委員 この福田総理大臣とソマレ首相との共同コミュニケによる経済協力は、まだ調査中であって、それがまだ実施されていないかのような御答弁でございますが、その中で、たとえば電力、道路、上下水道等あるいは漁港等に対する経済協力は話し合われたと聞いておりますが、それらは具体的に検討されつつあるのですが、金額だけ約束されて、中身についてはこれからやるのですか、いかがですか。
  93. 中村泰三

    ○中村説明員 ソマレ首相からは、電力、上下水道、道路、漁港等のプロジェクトに対する借款の要請がございました。先ほど申し上げましたとおり、調査団を派遣いたしまして、先方政府との間に案件の詰めを行いました。わが方といたしましては、このプロジェクトの成熟度の高いもの、あるいはフィージビリティーのあるもの、それから直接住民が利益を受けるというような観点からプロジェクトの詰めを行っておりまして、そう遠くない将来にわが国として具体的な案件の決定が行える、そういうふうに考えております。
  94. 永末英一

    ○永末委員 先ほど国際金融局長の方から、すでに国際金融機関からいろいろな資金の融資があって、いろいろなプロジェクトが進行しておる。わが国のみならず、ほかの国もこの国にはいろいろなプロジェクトが進行しておる。オーストラリアは、年間オーストラリアドル一億ドルをもう三年ほど、合計五年間財政援助をしていく、こういうことでいろいろやっておるのでございます。わが国は、いま政府の調査団が行ったようでございますが、それぞれ進行しているそれらの企画を全部把握をして、そしてむだのないように、また、この地域国民たちが一番喜ぶように計画は立てられると思いますが、少なくともわが国の資金が出ている国際三金融機関のやっているものとわれわれとの整合性はとっておられるでしょうね、いかがですか。
  95. 中村泰三

    ○中村説明員 現在パプアニューギニア側がわが国に要請中の案件の中には、アジア開発銀行との協調融資を期待している案件もございます。したがいまして、わが方の借款供与に当たりましては、パプアニューギニア政府及びアジア開発銀行と協議を行い、これら国際機関の援助との整合性に十分配意しつつ検討してまいりたいというふうに考えております。
  96. 永末英一

    ○永末委員 協調融資ということがございまして、わが国の一・三倍の地域でございますが、人間の住んでいるところがぼつぼつある程度でございますから、まさしく協調融資ということが起こり得ると思うのです。したがって、二国間協力でございましょうとも、その地域における経済効率を高めるためには、やはり十分協調融資ということを考えてやるべきだと思います。国際金融局の方には、そういう意向を世銀なり第二世銀に、わが国の意向として伝えて協力の整合性を保つという御用意はございますか。
  97. 旦弘昌

    ○旦政府委員 アジア開発銀行だけでございませんで、たとえば世銀などにつきましても、先方からも日本との協調融資をやってもらいたいという要望もございます。私どもの態度といたしましては、それは積極的に前向きにそういう要請にこたえてまいりたい。そうすることによりまして、それらの機関の専門的知識等も利用することができますししますので、そういう方向で今後対処してまいりたい、かように考えております。
  98. 永末英一

    ○永末委員 先ほど円借款の話がございましたが、これはこの共同コミュニケによって千三百万ないし千五百万ドルに相当する資金協力、こういうことでございます。いろいろ相手方から注文のございました単項目につきましては、これは技術協力で処置をするのであって円借款のものは別というのですが、それもオーバーラップしているのですか、どういう計画になっているのですか。技術協力をやるものについては別途またわが国の予算を立ててやるのですか、円借款の中でやるのですか、オーバーラップしているのですか。
  99. 中村泰三

    ○中村説明員 技術協力につきましては、別途技術協力予算の中で実施する考えでございます。
  100. 永末英一

    ○永末委員 円借款と別ですね。
  101. 中村泰三

    ○中村説明員 そうでございます。
  102. 永末英一

    ○永末委員 大体どれくらいの予算を見込んでおられますか。
  103. 中村泰三

    ○中村説明員 具体的にパプアニューギニアに対する技術協力の予算というのは別に立てておりませんが、国際協力事業団が持っております技術関係予算、これは全部で本年は二百九十七億持っておりますが、その全体の枠の中で各国の要望を照らしつつ実施してまいりたいというように考えております。
  104. 永末英一

    ○永末委員 これは双方の首相が約束をし、特にわが国に縁のある地域でございますので、全体の技術協力からまとまったらちょびちょびやろうというのじゃなくて、やはりある程度まで調査が進めば、積極的にパプアニューギニアに対する技術協力の予算というものをめどをつけて実施をしていただきたい。そういう御用意ございますな。
  105. 中村泰三

    ○中村説明員 私たちとしては、積極的に協力してまいりたいと考えておりまして、現在先方政府も、わが国の技術協力の実施の制度あるいは手続等についていろいろ細かく質問してまいっておりまして、わが方としてもこれに前向きに対処する考えでございます。
  106. 永末英一

    ○永末委員 この技術協力等につきまして、海外青年協力隊の派遣方を一部要望している現地の人もおります。これがもともとオーストラリアの施政権下であった時代には、直接の外交交渉権がないのでそのままになって、独立後もそのままでございますが、私はこの地域は、われわれが持っております海外青年協力隊の隊員がやはり体を運んでやるべき地域の一つだと思います。  もう一つは、これはあなたの直接の関係でございませんが、通産省ではジェトロの開設をこの地域で内定をし、そして昨年から予算まで組んでおるわけですね、なかなかそれができない。ジェトロというのは、いまや発展途上国に対しては、発展途上国の経済開発、経済協力というところに重点を置く仕事が多くなっているわけでございまして、それらについてこの二つについて、あなたの方はどういうお考えですか。
  107. 中村泰三

    ○中村説明員 まず青年協力隊につきましては、発展途上国の間で非常な好評を博しておりまして、われわれといたしましても、こういう途上国との経済協力に熱心に取り組む青年を派遣いたしまして、途上国の要望にこたえたいと考えております。青年協力隊の派遣につきましては、まず事前に受け入れ国政府との間で、専門家の特権免除その他につきまして基本的な約束をつくるというのが前提になっておりまして、まだパプアニューギニア政府との間にはそういう協定ができておりませんが、もし先方政府がそういうことを希望いたしますなれば、私たちとしても、基本協定を結び、青年協力隊を派遣するという方向で検討してまいりたいというように考えております。  それから、第二点のジェトロにつきましては、所管の外の問題でございますし、事務所を開くということも私、承知しておりませんので、この場においてコメントを差し控えさしていただきたいと思います。
  108. 永末英一

    ○永末委員 青年協力隊はその線でお進めいただきますよう、また、ジェトロは通産省の所管だけれども、あなたの方の大使館がすでに開設をされており、外交問題、開設されるまでは外務省が窓口なんだから、やはり積極的に相手方に要望があればこれを開設する方向で、日本とパプアニューギニアとのつながりは太ければ太い方がいいと思いますので、ひとつせっかく関係部局と御相談をしてお進め願いたい。  大蔵大臣、というような事情でございまして、パプアニューギニアというものをひとつよく御認識いただいて、これからわが国の経済協力について、大蔵大臣といたしましても関心を払っていただけると思いますが、お答えを願いたい。
  109. 村山達雄

    村山国務大臣 先年パプアニューギニアの首相がおいでになって、晩さんをともにしたのでございます。非常に和気あいあいたる中に両国の協調を誓い合ったわけでございます。いま外務省の説明を聞きますと、すでに着々実行の緒についておるようでありまして、まことに喜ばしいことと思うわけでございます。われわれといたしましてもできるだけ協力してまいりたい、かように考えておるところでございます。
  110. 永末英一

    ○永末委員 よろしく。  質問を終わります。
  111. 大村襄治

    大村委員長 永原稔君。
  112. 永原稔

    ○永原委員 質問が大分重複しますので、簡単にお願いしたいと思います。  大臣の提案理由説明で、IMF第六次増資に合わせて、世界銀行増資が決議されたというように書かれておりますけれども、この世銀の前提にある国際通貨基金の現在の活動状況は一体どうでしょうか。国際経済が非常に混乱している、世界的な同時不況、こういうような状況の中で貿易の不均衡が起こっている、わが国の黒字が非常にたまっているという中で赤字に悩む国もある、そういうものに対応しながら国際通貨基金がどういうような活動をしているのか、その辺お聞きしたいと思います。
  113. 旦弘昌

    ○旦政府委員 簡単に申し上げますと、IMFは世銀と並びまして、世界経済の安定のためにつくられたものでございますが、その活動範囲は国際収支の対策が主眼でございまして、基本的に規定されておりますIMFの活動のほかに最近では、昨年八月に国際収支調整の支援を目的といたしましたいわゆるウィッテフェーン・ファシリティーという制度をつくりまして、これに主要国、石油産出国を含めました国が参加して、国際収支の困難に直面している国々に支援の手を差し伸べるということをまず決定をいたしました。  それから第二には、IMF自体の資金基盤を強化するために、現在第七次増資について検討を行っておるところでございます。第六次増資につきましては、この四月一日に協定改正が発効をしますと同時に第六次の増資につきましてその手続を現在踏んでおるところでございますが、その次の第七次増資についていま議論が進んでおるところでございます。  それから一方、通貨面につきましては、この四月一日に第二次のIMFの協定改正が発効いたしましたので、ここでフロート制が正式に協定上認知されるということになりまして、その新しい協定のもとにおきまして、各国は今後IMFと年次協議を行うということで、各国の為替相場政策に関しましてIMFが監視と申しますか、サーベーランスを行っていくということで、為替面における安定に努力をしてまいるというのが現在の状況でございます。
  114. 永原稔

    ○永原委員 所期している成果が上がっていると御判断になっていますか。
  115. 旦弘昌

    ○旦政府委員 IMFの従来の活動は、やはりかなりの成果があったものと私どもは認識いたしております。もちろんこれで完璧であるということではないわけでございまして、国際経済の波乱が現在あることはそのことを示しておるわけでございますが、それを何とか乗り越えていこうという努力は、あらゆるIMFの機会を通じまして努力がなされておるというふうに評価をいたしております。
  116. 永原稔

    ○永原委員 先ほど世銀のシェアなどについても、IMFとの関連でいろいろお話がございましたけれども、IMFのシェアの拡大ということになりますと、設立の原点から考えていった場合に、日本の立場が非常にこれを拡大するのにはなかなか不利なような状況にあるのではないかという気がするのですけれども、それは一体どうでしょうか。
  117. 旦弘昌

    ○旦政府委員 IMFのシェアの拡大につきましては、日本のような後でIMFに参加した国、しかもその後目覚ましい経済発展をした国と、それから、たとえばイギリスのように当初からこれに参加しておって、その経済成長が日本などに比べますとおくれた国との間には、現状におきましてもこのシェアに格差があることは事実でございます。その国々の経済力を基準にいたしましてシェアを計算いたしますと、日本のシェアはなお低い、その点はドイツなどと同じ実情でございます。  この点につきましては、累次にわたりまして御説明いたしておりますように、第六次の増資の際にもわれわれは努力して若干ながらそのシェアの向上を得たわけでございますが、現在話をいたしております第七次増資におきましても、基本的にはそのシェアの調整をすべきであるということで対処しておるところでございます。
  118. 永原稔

    ○永原委員 ちょっと話が飛躍しますけれども、任命理事国になったメリットはどういうところにありましょうか。
  119. 旦弘昌

    ○旦政府委員 任命理事国になりますと、日本の場合、任命理事国でない場合のことを考えてみますと、日本もかつてそうであったわけでございますけれども、アジアの数カ国と共同いたしまして日本の理事が、日本だけでございませんでそのほかのメンバーの国の意見もあわせて発言をするということにならざるを得ないわけでございますが、任命理事国になりますと、日本だけで任命できる。そうでない場合には、その関係国の間の選挙で任命をするということになるわけでございますが、任命理事国でありますと、日本の政府理事を任命する。したがいましてその理事は、純粋に日本の立場を強く主張することができるというころで立場が強くなるのではないか、かように考えております。もちろんその間におきまして、日本の利益だけということを考えるべきではございませんけれども、立場が強くなることは明らかであろう、かように考えております。
  120. 永原稔

    ○永原委員 今度の世銀の出資、イギリスは増資に応じておりませんですね、公社の方は応じておりますけれども。経済情勢もいろいろあろうと思いますが、いま任命理事国になって発言力が強大になってきた場合に、IMFのいろいろな関係もあるかもしれませんけれども、こういう世銀やあるいは公社に対する出資のシェアを拡大する、こういうようなことについては、努力して成果を上げることができるでしょうか。
  121. 旦弘昌

    ○旦政府委員 今般の世銀の増資につきましては、第六次のIMFの増資の数字をにらみながら各国のシェアを決めたのでございまして、これが従来からの世銀の慣行でございます。したがいまして、その結果わが国のシェアが若干ふえるということになるわけでございますが、今後のIMFの第七次増資は、この次に参ります世銀の増資の際に、そのシェアを配慮しつつ世銀のシェアも決められるということでございますので、そういう過去の経験にかんがみまして、今後とも日本の増資のシェアをふやす方向で努力してまいりたい、かように考えております。
  122. 永原稔

    ○永原委員 第七次のIMFの増資については、いま第七次の検討とおっしゃいましたけれども、こういうのはどのくらいの期間がかかって結論が出るものですか。それに伴ってまた、世銀の増資というのが引き続いて行われると思いますが、お見込みはいかがしょうか。
  123. 旦弘昌

    ○旦政府委員 第七次のIMFの増資につきましては、今月末メキシコにおいて開かれます暫定委員会におきましても協議をすることになろうかと思います。ただ、参加国の間のシェアの調整につきまして、全体の増資をどのくらいにするか、また、その枠の中におきまして各国のシェアの調整をどういうふうにするのか、現在のまま据え置くのか、それとも過去のように選択的増資をするのか、そこのところの意見が非常に食い違っておるわけでございますので、この暫定委員会では恐らく結論は得られないのではないか。そうしますと、その後を受けまして、IMFの理事会でこの審議を続けていくことになろうと思います。ただいまの段階でいっその結論を得るかということをちょっと申し上げられないのでございますけれども、なるべく早く結論を得たいものだ、かように考えております。
  124. 永原稔

    ○永原委員 非常に国際経済協力について先ほどからお話が出ていて、まだ低いという批判を受けているわけですが、ぜひこういうような面について、経済の実態に即応したシェアを獲得できるようにしていただかないと、こういうのがもう上の方から決まってしまって、そして結局シェアが小さい、経済協力が非協力だ、こういうような批判を受けるのは耐えられないことですから、大蔵大臣もせっかく御努力をいただきたいと思います。  今度の予算に計上されている十一億四千万というのは、これは払込資本金に対して一〇・九%になるのでしょうか。こういう率がどこで決められたのか、世界の各出資国は共通なのか、前回はどうだったのか、そういう点ひとつ。
  125. 旦弘昌

    ○旦政府委員 この総務会の決議によりまして、応募額全体の一〇%を払い込むということになっております。その払い込みにつきまして、世銀が規定を設けておりまして、その一〇%の一部は国債で払い込むことができるというふうな規定になっております。このルールは過去も同じルールでございますが、その現金と国債の払い込みの比率は、全体の一・〇九%、これが現金、これが日本の場合には十一億四千万円ということでございまして、あと残りの八・九一%は国債で払い込む、合わせて一〇%ということでございます。
  126. 永原稔

    ○永原委員 いまの八・九一%の国債、通貨代用証券は、普通の国債と性格が違うと思いますけれども、こういうものの現金化がどういうように行われていくのか。それによって減債措置というのは変わってくるんではないかと思いますが、いまの減債制度の中でこれについて償還をおやりになっているのかどうか、そういう点はいかがでしょうか。
  127. 旦弘昌

    ○旦政府委員 この世銀の出資払い込みに用います出資国債は、交付公債の一種でございまして、金銭にかえて交付するために発行をされるものでございます。それで、過去の例を見ますと、世銀につきましては、この国債は一年以内に現金化の要請があるのが通例でございますので、五十三年度予算につきましてこの全額に相当します金額の償還財源を国債整理基金特別会計で手当てをしております。
  128. 永原稔

    ○永原委員 大蔵大臣、円高でいま苦しんでいますけれども、円安という状況があらわれるでしょうか。
  129. 村山達雄

    村山国務大臣 これは投資勘定の方の支払い勘定になるわけでございますから、やはり全体としては、どちらかといえばそちらに働く理屈でございます。
  130. 永原稔

    ○永原委員 この十一億四千万、それから公社に対する十一億九千四百万、この執行の時期、これを考えて申し上げたわけです。いま二百二十何円というようなそういう円高の状況が円安になっていけば、いつ納めるのか、そういう点についてお考えになっていらっしゃるのかどうか、伺ったわけです。
  131. 村山達雄

    村山国務大臣 これは現金の方はすぐ払い込むわけでございますが、交付公債の方は請求があり次第出すわけでございます。通常は年内にあるはずでございます。請求のあったときに出すということになります。
  132. 永原稔

    ○永原委員 九月までにお出しにならなければいけないわけでしょう、現金の分については。
  133. 旦弘昌

    ○旦政府委員 現金につきましては直ちに払い込みたいと思っております。それから国債につきましても、私どもといたしましては八月の末くらいまでには払い込みを済ませたい、かように考えております。
  134. 永原稔

    ○永原委員 いろいろ聞きたいことがあるのですけれども、時間も余りありません。  世銀の貸付原資は一体どういうものでしょうか。借入金が中心ではないかと思いますけれども、その借入金の発行先、一番多いところはどこなのか、日本の引き受けがどのくらいになっているのか、そういう点、たとえば世銀債などについてうまく日本で消化されているのかどうか、そういう点などを最後にあわせてお聞きして質問を終わります。
  135. 旦弘昌

    ○旦政府委員 世銀の貸付原資は、大まかに申しまして三つございまして、一つがいま御質問のございました払い込みの資本金でございます。これが約三十億ドルでございます。それからあと借入金、これが一番多うございまして、約百八十四億ドルの借入金でございます。そのほかに利益及び準備金が約十九億ドルございまして、全部で二百三十四億ドルの原資を持っておるわけでございます。  それから、いまの借入金の内訳でございますが、その全体のうち、日本からの借り入れが二十三億八千二百万ドルでございまして、約一一%でございます。日本からの借り入れの大きなものは円建ての世銀債でございますが、これの発行実績を見ますと、飛ぶように売れておるということでございます。
  136. 永原稔

    ○永原委員 最後と言いながら立つのは恐縮ですけれども、二十三億八千二百万ドル、こういうようなものが海外経済協力の中ではどういうように評価されるのか、その点だけ聞かしてください。
  137. 旦弘昌

    ○旦政府委員 円建て債につきましては、これは民間の投資家がなさるものですから、ODAにはカウントされないわけでございます。日銀が貸しておる金につきましては、これもODAではございません。その他の政府資金という整理をいたしております。ODAにはカウントされません。
  138. 永原稔

    ○永原委員 終わります。
  139. 大村襄治

    大村委員長 これにて本案に対する質疑は終了いたしました。     —————————————
  140. 大村襄治

    大村委員長 これより討論に入るのでありますが、討論の申し出もありませんので、直ちに採決に入ります。  国際通貨基金及び国際復興開発銀行への加盟に伴う措置に関する法律及び国際金融公社への加盟に伴う措置に関する法律の一部を改正する法律案について採決いたします。  本案に賛成の諸君の起立を求めます。     〔賛成者起立〕
  141. 大村襄治

    大村委員長 起立多数。よって、本案は原案のとおり可決いたしました。     —————————————
  142. 大村襄治

    大村委員長 ただいま議決いたしました本案に対し、自由民主党、日本社会党、公明党・国民会議、民社党及び新自由クラブを代表して野田毅君外四名より、附帯決議を付すべしとの動議が提出されております。  この際、提出者より趣旨説明を求めます。野田毅君。
  143. 野田毅

    ○野田(毅)委員 ただいま議題となりました附帯決議案につきまして、提出者を代表してその趣旨を簡単に御説明申し上げます。  案文はお手元に配付いたしてありますので、朗読は省略させていただきます。  御承知のように、国際復興開発銀行国際金融公社とは、加盟開発途上国の経済開発等に多大の貢献を果たしてまいったのでありますが、この両機関に対しまして、わが国は、出資あるいは融資等を通じその活動を支援し、また機関内にあっては理事国としてその運営に重要な役割りを果たしてまいりました。  今回、追加出資を行うに当たり、開発途上国の社会的、経済的開発を促進するため、世銀グループの使命がさらに重要となっている現状にかんがみ、わが国としては、その運営に対しましてより積極的に協力を行うべきであり、また、加盟国の出資シェア等については、その国の経済力をさらに十分反映したものとなるように努めることが必要であります。  本決議案は、このような見地から、政府に対しなお一層の努力を要請しようとするものであります。  何とぞ御賛成くださるよう、お願い申し上げます。     —————————————    国際通貨基金及び国際復興開発銀行への加盟に伴う措置に関する法律及び国際金融公社への加盟に伴う措置に関する法律の一部を改正する法律案に対する附帯決議(案)  政府は、国際復興開発銀行等の増資に当たつては、その機関の任務の重大性にかんがみ、最近における加盟国の経済の実態を十分反映したものとなるように努め、その運営についても、より積極的に協力するよう努力すべきである。     —————————————
  144. 大村襄治

    大村委員長 これにて趣旨説明は終わりました。  お諮りいたします。  本動議のごとく附帯決議を付するに賛成の諸君の起立を求めます。     〔賛成者起立〕
  145. 大村襄治

    大村委員長 起立多数。よって、本動議のごとく附帯決議を付するに決しました。  本附帯決議に対し、政府より発言を求められておりますので、これを許します。村山大蔵大臣
  146. 村山達雄

    村山国務大臣 ただいま御決議のありました事項につきましては、政府といたしましては、御趣旨に沿って十分努力いたしたいと存じます。     —————————————
  147. 大村襄治

    大村委員長 お諮りいたします。  ただいま議決いたしました法律案に関する委員会報告書の作成につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、これに御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  148. 大村襄治

    大村委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決しました。     —————————————     〔報告書は附録に掲載〕     —————————————
  149. 大村襄治

    大村委員長 午後二時三十分に再開することとし、この際、休憩いたします。     午後一時四十九分休憩      ————◇—————     午後二時三十七分開議
  150. 大村襄治

    大村委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  昭和四十二年度以後における国家公務員共済組合等からの年金の額の改定に関する法律等の一部を改正する法律案及び昭和四十二年度以後における公共企業体職員等共済組合法に規定する共済組合が支給する年金の額の改定に関する法律及び公共企業体職員等共済組合法の一部を改正する法律案の両案を一括して議題といたします。  これら両案について政府より提案理由説明を求めます。村山大蔵大臣。     —————————————  昭和四十二年度以後における国家公務員共済組合等からの年金の額の改定に関する法律等の一部を改正する法律案     〔本号末尾掲載〕     —————————————
  151. 村山達雄

    村山国務大臣 ただいま議題となりました昭和四十二年度以後における国家公務員共済組合等からの年金の額の改定に関する法律等の一部を改正する法律案につきまして、その提案理由及びその内容を御説明申し上げます。  この法律案は、国家公務員共済組合法等の規定により支給されている年金につきまして、その額を引き上げることとするほか、最低保障額の引き上げ、老齢者等に対する年金額の算出率の特例の改善、寡婦加算額の引き上げ等、所要の措置を講じようとするものであります。  次に、この法律案内容につきまして御説明申し上げます。  第一は、国家公務員共済組合等からの年金の額を改定することであります。すなわち、旧令による共済組合等からの年金受給者のための特別措置法、旧国家公務員共済組合法及び国家公務員共済組合法に基づく年金のうち、昭和五十二年三月三十一日以前に給付事由が生じたものにつきまして、このたび別途、本国会で成立いたしました恩給法等の一部を改正する法律による恩給の額の改定措置にならい、昭和五十二年度の国家公務員の給与の改善内容に準じ、年金額の算定の基礎となっている俸給を増額することにより、本年四月分以後、年金額を引き上げることといたしております。  第二に、公務関係年金及び長期在職者等の受ける退職年金等の最低保障額を、恩給における措置にならい改善することといたしております。  第三に、恩給公務員期間等を有する者に対する特例措置の改善といたしまして、長期在職した七十歳以上の老齢者等に対する年金額の割り増し措置の改善を図ることといたしておりますが、これも恩給における措置にならうものであります。  第四に、遺族年金に加算される寡婦加算及び遺族加算の額をそれぞれ年額一万二千円引き上げることといたしております。  以上のほか、掛金及び給付額の算定の基礎となる俸給の最高限度額を、公務員給与の改定状況等を考慮して、現行の三十六万円から三十八万円に引き上げることとする等、所要の措置を講ずることといたしております。  以上が、この法律案提案理由及びその内容であります。  何とぞ、御審議の上、速やかに御賛同くださいますようお願い申し上げます。
  152. 大村襄治

    大村委員長 福永運輸大臣。     —————————————  昭和四十二年度以後における公共企業体職員等共済組合法に規定する共済組合が支給する年金の額の改定に関する法律及び公共企業体職員等共済組合法の一部を改正する法律案     〔本号末尾掲載〕     —————————————
  153. 福永健司

    ○福永国務大臣 ただいま議題となりました昭和四十二年度以後における公共企業体職員等共済組合法に規定する共済組合が支給する年金の額の改定に関する法律及び公共企業体職員等共済組合法の一部を改正する法律案提案理由につきまして御説明申し上げます。  この法律案は、公共企業体の共済組合が支給しております退職年金等につきまして、このたび別途、本国会で御審議いただいております恩給法等の一部を改正する法律による恩給の額の改定措置に準じて年金額を引き上げるとともに、寡婦加算の額の引き上げ等の措置を講ずるため、所要の改正を行おうとするものであります。  次に、この法律案概要につきまして御説明申し上げます。  第一に、公共企業体の共済組合が支給しております退職年金等のうち、昭和五十二年三月三十一日以前に給付事由が生じたものにつきまして、恩給等の改善措置に準じ、その年金額の算定の基礎となっている俸給を昭和五十二年度の国家公務員の給与の改善内容に準じて引き上げることにより、昭和五十三年四月分から年金額を引き上げることといたしております。  第二に、旧国家公務員共済組合法等に基づく退職年金等の最低保障額につきまして、恩給等の改善措置に準じ、昭和五十三年四月分から引き上げるほか、六十歳以上の者等に支給する遺族年金最低保障額につきまして、昭和五十三年六月分から、その額をさらに引き上げることといたしております。  また、旧国家公務員共済組合法に基づく殉職年金等につきまして、恩給等の改善措置に準じ、その扶養加給の年額及び最低保障額昭和五十三年四月分から引き上げるほか、最低保障額につきまして、昭和五十三年六月分から、その額をさらに引き上げることといたしております。  第三に、長期在職した七十歳以上の老齢者等に対する年金額の割り増し措置を改善することとし、恩給等の改善措置に準じ、昭和五十二年六月分から、その年金の額を引き上げることといたしております。  このほか、遺族年金等に加算される寡婦加算及び遺族加算の額につきまして、昭和五十三年六月分から、その額を年額一万二千円引き上げることとする等所要の措置を講ずることといたしております。  以上が、この法律案提出する理由であります。  何とぞ、慎重御審議の上、速やかに御賛成いただきますようお願い申し上げます。
  154. 大村襄治

    大村委員長 これにて両案の提案理由説明は終わりました。     —————————————
  155. 大村襄治

    大村委員長 これより、質疑に入ります。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。山田耻目君
  156. 山田耻目

    山田(耻)委員 共済年金審議にきょうから入るわけですが、今回は恩給法の引き上げを受けて共済に絡めておるものですから、本質的改正要点というのは別に見当たりません。この共済年金は、私たちは一応賛成という立場で進めてきておりますので、後ほど同僚議員から細部にわたって詳しく審議を進めてまいる予定でございますが、私は、当面しておる共済年金というのが非常に不安定な要素を強めつつある、これが気になってなりません。  最近の国民の側から見る年金というのは、経済の不況もありますし、生活不安というものもあるのだと思いますが、非常に年金に対して関心が強まっているのです。昨年は御存じのように、官民格差論がぐっと表面に出てくるし、ことしは基礎年金構想問題が出てきております。それぞれが、将来に向かってあるべき年金制度、こういうことが模索されておる、国民の意見も出ておるということだと思います。  最初に申しましたように、私たちは、年金全体について審査するわけではございませんけれども、厚年など他の年金との横並びというものも無視できない、そういう立場から、いま共済年金は各単位共済ごとどういう現状に立ち至っておるのか、やはりこの点をひとつ把握をしておきませんと、将来の共済年金構想というものも出てこないような気がしますので、そこらあたりについて本日はお尋ねをしておきたいと思います。  まず第一点は、単位共済ごとに歴史が違いますし、そういう経過年数も違っておりますので、成熟度がそれぞれ異なっています。それぞれ異なった成熟度というものを、ある一定の段階がくれば、何とかしてひとつ可能な限りの共通の条件をつくりながら統合してまいりたい、こういう発想というのは、ここ数年来本法案の審議を続けてきました中でも幾たびか繰り返されてきたのだと思いますが、ようやくそういう時期が本当に迫ってきた、私はそういう感じがしみじみいたしておるわけです。単位共済の可能な限りの条件をそろえながら統合への足がかりをつくり上げていく、こういう段階に近づきつつある、この判断を一体大蔵省はどう見ておられるか、これらについて御答弁をいただきたいと思います。
  157. 禿河徹映

    禿河政府委員 ただいま先生からお話がございましたとおり、共済組合制度の中で、各単位共済の成熟度等の差によりまして、制度としては同じでも負担とかいうふうな面でいろいろ差異が出てきておることは事実でございます。またあわせまして、公的年金制度全体の中で国家公務員共済制度というものをどう位置づけしていくのかというふうなことは、長期的な観点に立ちまして私どもも十分検討を進めていかなくちゃならない、こういう問題であろうと思っております。  第一段の、共済組合制度の中で各単位共済によりまして成熟度が違う、これが今後さらに社会全体の老齢化が進んでいく、あるいは制度の成熟化が進んでいくということによりまして、その間におきます差と申しますか、負担の格差等の問題がさらに一段と強くなってくる、そういう面は当面否定できない事柄であろうと思っております。そういう問題を私ども踏まえまして、長期的に各共済制度の横の連絡調整と申しますか、財政調整等の問題、これはなかなか一朝一夕でできる問題とは考えておりませんけれども、そういう問題意識を十分頭に置きながら、これから十分真剣に検討に入ってまいりたいと考えております。
  158. 山田耻目

    山田(耻)委員 気持ちは私と同じだと思うし、問題意識も同じような立場であります。  そこで、もっとこの問題を具体化してみたいと思うのですが、五十四年十月、こうした共済年金の財源再計算時期に入るわけです。ここでどういう展望を立てるかということはきわめて重要な事柄でありますが、まずその前に、運輸省の山地鉄道部長にお伺いしたいのですが、たとえばいま一番問題が明確になってきておる状態の中で三公社ございます。中にはなかなかりっぱなのもございますけれども、三公社の成熟度比率、これをお話しいただきたい。二番目には各公社ごとの財源率、三番目には各公社ごとの掛金率をお聞きしたい。この三つについて御説明をいただきたいと思います。
  159. 山地進

    ○山地政府委員 まず最初に、成熟度でございますけれども、専売公社の場合には、組合員と受給者との比率でございますが、五十一年で三五・九、年金者一人当たりの組合員数にいたしますと二・七八人でございます。国鉄の場合は、同様な比率で五十一年に五七・三、年金者一人当たりの組合員数は一・七四でございます。電電の場合には、一三・五でございまして、年金者一人当たりの組合員数は七・四三でございます。  長期の財源率でございますけれども、専売の場合には、掛金は千分の四十八・五でございます。公社の負担金の方は千分の六十六・五、合計いたしまして千分の百十五でございます。国鉄の場合は、同じような比率で五十三年から、長期の掛金率は千分の六十二でございます。負担金の方は千分の八十五、合計いたしまして千分の百四十七でございます。電電は、同じような順で申し上げますと、掛金率が千分の四十八でございまして、負担金の方は千分の六十六、合計いたしまして千分の百十四でございます。
  160. 山田耻目

    山田(耻)委員 私の聞く時間がありませんから進んでまいりますが、いまの財源率、掛金率を見ますと、浜田さん、国鉄は異常に高いですね。ちょっと計算しかけておったのですが、恐らくそれぞれ三割近く高い。保険数理に基づいた年金財源ですから、一体この状態で将来不安なく進めていけるとお考えでしょうか。来年十月の再計算期に向かってどう判断をされておられるでしょうか。その点、国鉄の事情をお話しいただきたいと思います。
  161. 濱田卓實

    ○濱田説明員 ただいま先生御指摘のとおり、国鉄共済年金の財源率、したがって職員の掛金率は、他に比べて高くなっておるということでございますが、これは昨年の九月の収支計画策定審議会の答申に基づきまして、この四月からこういうふうにアップしたものでございます。これと同時に、追加費用の方も実額を全額ことしから繰り入れる、こういう措置を五十三年度から講ずるということで、現在、これは五十五年度までこのままで推移できる、毎年度百億前後の黒字をもって推移できる、こういう見通しであります。  五十六年度以降につきましては、今後の経済情勢、国鉄内部の退職条件、要員需給状態、あるいはまた国全体の公的年金制度のあり方、そういうものの動向をよく見つつ、財源率、ひいては職員の掛金率が非常に過大なものにならないようにできるだけの方策を講じていきたい、かように考えております。
  162. 山田耻目

    山田(耻)委員 禿河さん、いかがでしょうか、いま聞いておりますと、五十五年までは一応切り抜けられていくようですが、これ以上掛金を高めて掛金率が上昇していくということになると必ず問題が出てくるような気もします。短期の場合は去年、それとは明文化しておりませんけれども、千分の五十を一応のめどにして、全林野の関係で一億八千万円救済したことがあるのですね。ことしも何がしかの措置をするわけですけれども、短期、疾病に関する問題というのは人間にとっては一番大事なことだという意味から、比較的早く上限を設定して救済する、あるいは他の関連する法案の横並びで取り扱っていくということが早くからできているわけです。長期もいずれかの日に、成熟度の度合いの中で上限設定をしなければならぬのじゃないかという気がしますが、そういう点については御検討なさる意思はないのでしょうか。
  163. 禿河徹映

    禿河政府委員 おっしゃいますとおり、組合員の掛金率が非常に過大と申しますか、負担に耐えにくいような急激な上昇を来すということは、共済制度運営の根本にかかわってくる問題でございますので、その辺、私どもといたしましては十分頭に置いてまいらないといかぬと思っております。  ただ、一般論で大変恐縮でございますけれども、もう私から申し上げるまでもなく、わが国国民全体から見ました場合は、租税並びに社会保険料の負担というものは諸外国に比べてまだかなり低い水準に実はあるわけでございます。年金等につきまして、組合員あるいは事業主等の負担にその財源を求めるのかあるいは租税に求めるのか、なかなかむずかしい問題であろうと思っております。  そういう問題をいろいろ考えてまいりまして、組合員の負担というものの急激な増高を来さない方策ということを考えてみます場合に、私どもは、何とか知恵を出して関係の方面ともいろいろ相談しながら今後十分検討はしてまいりたいと思いますけれども、いまお話がございました共済につきまして最高限度を、その負担に限度額を設けるということも、現在考えておりませんけれども、将来の問題といたしまして、そういう方策もあり得るのか、その場合どうするのか、こういうふうな問題もひっくるめて検討させていただきたい、かように思っております。
  164. 山田耻目

    山田(耻)委員 これから十年も二十年も後のことをお互いに想定して言っているわけじゃないのです。もっと早い、そういうことを想定すれば、今度あなた方が大蔵省の中につくられた共済年金懇談会あるいは運輸省にできておる共済審議会、こういうところは何をするのか。こんなものをつくりさえすればいいというしろものじゃないのです。ここで何を審議するのか。だからここでは、いまの日本の年金行政というものは保険数理ですから、保険数理に成熟度がずっと強まってきて部分的に破綻をし始める、そういう事態に直面したとき、どこから手を入れるのかということがきわめて大事なんです。  いまの日本の九種類の年金関係でも、たとえば厚生年金は国庫負担二〇%、私学、農林は一八%、国家公務員共済、三公社共済は一五%、この開きが生まれた根拠は一体何なのか、それを現在の価値比準の中で明確に説明できますかということになりますと、横並び一本にすべきだという議論の方が早く出るのですよ。だから、そういうことを私は短時間できょうここで議論しようとは思わないが、こういうものを含めながら、冒頭私が申し上げましたように、可能な限り共通の条件を一つにしながら統合へ踏み切ってほしいなということを前提で申し上げておる。  こういう問題を含めて、大蔵省内にできた共済懇談会、運輸省内にできた共済審議会などで、本当は将来に備えて詰めておいてほしいということを申し上げているわけなんです。だから、その点をもっと進めてまいりますと、やはりこれは財源調整に返ってまいります。だからこの財源調整も、国公、三公社の共済一本の財源調整、その結論を得るためにプロセスはいろいろあります。いろいろ調整しなければならぬところもあります。一本の財源調整をして共済制度が安心をしてみんなも掛け金を掛けてくれるところは掛けてくれる、こういう条件をつくっていくのが私はこの大蔵委員会であったり、あるいは各省行政体の役割りであると思いますから、そういうことを含めて、いまの懇談会なり運輸省の共済審議会なりで、将来展望を立てながらひとつ検討していただくということについて異議はございませんでしょうか、この返事を聞いて終わります。
  165. 禿河徹映

    禿河政府委員 私どもも、将来の問題として非常に重大な事項と考えておる次第でございます。いまお話がございました公企体関係の三共済、これの審議会という機関をつくり、あるいは本年に入りましてから国家公務員共済のほかに公企体、それから地方共済ひっくるめまして、私ども懇談の場を設け、これから検討を進めてまいりたいというのも、その趣旨に出たものでございます。  ただ、いろいろ考えてまいりますと、そういう方向に向かっていくといたしましても、種々の問題がございます。私どもそういう懇談会あるいは審議会の場を通じまして、調整すべき事項をできるだけ調整を図って、そして各共済が財政的にも確立し得るような方向を見出していきたいと考えております。
  166. 山田耻目

    山田(耻)委員 私の気持ちとは若干違っている点がございますが、きょうはこれで終わります。  ただ、非常に重大な事態にきておる、それをそれぞれの懇談会なり審議会で詰めてほしい。それは一本化にする財源調整が軸になるのですよ。こういうことをお願いして、あなたの御返事があったものと私は理解しておきます。私は、非常に地獄耳ですから、聞いたら絶対忘れませんから、そういうことでひとつよろしく。どうもありがとうございました。
  167. 大村襄治

    大村委員長 沢田広君。
  168. 沢田広

    ○沢田委員 ただいま先輩の山田委員から若干質問がありましたから、先にそれに関連してお伺いをしてまいりたいと思います。順序が不同になりますが、お許しをいただきたいと思います。  いま国で国庫負担をいたしておりまする点に触れました。厚生年金が給付の二〇%、坑内夫については二五%、船員保険については給付の二五%、それから国民年金は、拠出の場合で給付の三分の一、同じく福祉関係で給付費の全額、それから、農林関係がいま言われたように一八、私立学校が一八、国家公務員、地方公務員はそれぞれ国及び地方公共団体負担。それと関連して国鉄の場合は、赤字財政であるということでもありますけれども、いずれにしても国鉄負担、国庫の負担がゼロである、こういう状況についてはどう御認識をなさっておられるのか。私たちから見ると、事業者負担というふうにしか理解できないのでありますけれども、他の年金制度の国の負担との関係についての考えについてお伺いをしておきたいと思います。
  169. 禿河徹映

    禿河政府委員 各種公的年金制度の間におきまして国庫負担の割合が、先ほどお話がありましたとおり、差があるのは事実でございますが、これはもう御存じのとおり、いろいろな沿革的な事情がございます。さらに、各制度におきますところのたとえば給付開始年齢であるとかあるいは保険者なり被保険者の財政負担力の差とかいうふうないろいろな事情を考慮いたしまして、私どもといたしましては、何とか全体としてできるだけバランスがとれたような形に持っていきたい、こういうところから出たものでございます。  こういう公的年金制度につきまして、国庫負担がいかにあるべきかという問題につきましては、いろいろ御議論のあるところではございますけれども、基本的にまず、保険料だけでは適当な給付水準を確保することができないような場合とか、あるいは被保険者の範囲が低所得者層にかなり広がっておるという場合とか、あるいは保険事故の性格上、被保険者とか事業主だけでその費用負担させるということが必ずしも適当でないというふうな場合に国庫負担をつけていく、こういうふうな基本的な方向があるわけでございます。したがいまして、そういうふうな低所得者層に重点を置きながら国庫負担を配慮していくということが、やはり財源の効率的な配分という見地からも重要なことであろう、かように考えているような次第でございます。その辺から見まして、現在そういうふうに国庫負担に差がありますのは、いろいろ御議論は私ども十分存じておりますけれども、以上のような考え方から出たものであることを御了承願いたいと思います。
  170. 沢田広

    ○沢田委員 いまお話しになられましたが、差があると言っても、一方の私が質問していることは、事業者負担という形になっていて、もとの日本国有鉄道という一つの形が存在をして、そのまま横すべり的に事業者負担という形式をとらざるを得なくなった。ところが、いま言われた分は、明確に国で予算を編成をしてそれで支出をしている。そのこととの対比に対する認識はどうなのか。差は、片一方の解釈によれば、その意味においてはゼロ、こういうことになるわけです。それはあなたの方としてはどういう位置づけで考えているのかということでお伺いをしているわけです。
  171. 禿河徹映

    禿河政府委員 ただいまお話がございました点につきましては、かねてから御議論もあるところでございますが、やはり国鉄その他の公企体あるいは五現業の特別会計、それがいわゆる狭義の国庫負担分も負担しておられるという問題につきましては、私どもといたしましては、やはりこういう公企体等は公経済の主体として国と同様の負担をお願いしておるわけでございます。その考え方といたしましては、この公企体等は、たとえば土地収用等におきます場合の一種の特権とか、あるいは企業の独占権と申しますか、そういうふうなものの保障、さらには免税とかというふうな、いわゆる経済上のいろいろな諸活動につきまして国に準じた取り扱いがなされておりますので、やはりこういう負担の点につきましても、民間企業と同じように取り扱うということはいかがであろうか、こういうこともございます。  さらに、その狭義の国庫負担の問題につきましては、これは実はもう長い沿革的な経緯もあるわけでございまして、現時点でこれを方向転換をするというのは大変むずかしい問題でございます。それで私どもといたしましては、こういう公企体にそういう負担をお願いしております点を十分頭に置きながら、その公共企業体の経営全体というふうな問題でこの問題もあわせて考えてまいりたい。したがいまして、もしその公企体の経営上、今後いろいろ問題が起きるような場合には、その経営につきまして国としていかように対処しあるいはこれを是正をするべきか、こういうことの検討の中でこの負担問題もおのずから解消されるような方向で私ども考えていくべきではないか、かように考えておる次第でございます。
  172. 沢田広

    ○沢田委員 関連をいたしまして、恩給公務員でありました期間、あるいは軍人であった期間、あるいは満鉄等にいた当時の期間、並びに旧法の期間によって増加をした分、こういうものは、審議会の答申でも、ある意味においてこれは国鉄の事業体が負担する性格のものではない、ある意味においては国が担当するべきものである。これ以外にもいろいろありますけれども、一、二の例を挙げて申し上げますと、それらがいま言われた、国が今後、追加費用という言葉になりますか、過去債務という言葉も新たに出てきているわけですが、いわゆる過去債務の整理資金としての役割りも担いながら対処をする。同時に、いま言われた国庫の補助が出ているものと出ていないものとの格差というものについては、それはそういう形で、そういう考えを入れてといいますか、ストレートではないにしてもそういう考慮を入れて考えていかなければなるまい、こういうふうに考えているんだというふうに理解してよろしいですか。
  173. 禿河徹映

    禿河政府委員 私が先ほど申し上げましたのは、いわゆる狭義の国庫負担、公企体あるいは国家公務員共済等で一五%の負担がございまして、それがほかに比べて低いとかというふうなこともありますけれども、そういうものは公企体当局が国にかわって負担しているということについての考え方を申し上げたわけでございます。  その関係で申しますと、いまお話がございました旧満鉄の職員に係ります国鉄共済のいわゆる過去勤務債務、この取り扱いにつきましても、やはり公経済の主体としての国鉄当局が負担していただくということが、現在考えられます仕組みと申しますかやり方の中で、その線を踏襲していくのが適当であろうかと思っております。これにつきましても、いろいろ御指摘のあることは存じておりますけれども、やはり旧満鉄職員等が引き揚げてきて国鉄等に入られたその時点、そういうふうな戦後の事情を踏まえまして、現在の国鉄共済等ができましたときに、その過去勤務債務を国鉄共済の中で引き継ぐ、こういう仕組みで今日まで至っているわけでございますので、従来どおり国鉄当局においてその分についても負担していただくということがやはり適当であろうかと考えております。
  174. 沢田広

    ○沢田委員 適当であろうが、それがもし足らなくなれば、その分はやはりめんどう見ていかなければならない立場に国はあるんじゃなかろうかという設問ですから、それは国鉄でめんどう見て、組合員の掛金でこれをカバーしていいということにはなるまいということなんです。これは国家的な政策としてやっているわけですからね。  これは簡単でいいですから、お答えをいただくのは、その性格を——まあ事業体でめんどう見ていかなければならぬということは、それはそれでいいと思いますよ。しかしその分は、国の政策の一部であるから、当然国の政策の分として考慮していかなければならぬ。これは二度言っちゃったのですが、これらについては、いわゆる考慮していかなければならないという条件に当てはまるものであろう。そうでないと、それは組合員が掛金で支払い対象にすべき性格のものではないんじゃないか、一方では国庫負担もないんですから。こういう解釈についてはどうですか。
  175. 禿河徹映

    禿河政府委員 その点につきましては、現在の組合員に負担させるわけではございませんで、事業主といたしましての国鉄が負担すべきそういう性格のものであると考えております。その負担の場合、国との関係におきましては、事業主としての国鉄がそういうものを負担し、それから、国鉄がその経営全体につきましていろいろ経営の努力を払われる、これはもちろんでございますけれども、そういうことをいろいろやりながら、しかも国鉄の経営全体について国が何らかの助成と申しますか措置を講じますような場合に、そういうものの中でそういう負担の問題も解消していけるような、そういうふうな方向で本問題に対処すべきであろう、かように考えている次第でございます。
  176. 沢田広

    ○沢田委員 ちょっと広範な問題になりますけれども、あるいは事務当局だけでないかもわかりませんが、恩給法では、「公務員及其ノ遺族ハ本法ノ定ムル所ニ依リ恩給ヲ受クルノ権利ヲ有ス」ということで出発をいたしました。これがいわゆる恩給法ができたときの当初の恩給法の目的であります。次に、旧国家公務員共済組合法ができた本旨は、「国に使用される者で国庫から報酬を受けるものは、この法律の定めるところにより、相互救済目的とする共済組合を組織する。」こういうことで旧国家公務員共済組合法が成立をいたしました。その後、新国家公務員共済法に引き継いだわけでありますが、「相互救済目的とする共済組合制度を設け、その行うこれらの給付及び福祉事業に関して必要な事項を定め、もって国家公務員及びその遺族の生活の安定と福祉の向上に寄与する」、そして「公務の能率的運営に資することを目的とする。」そしてその次に、「国は、前項の共済組合の健全な運営と発達が図られるように、必要な配慮を加えるものとする。」こういう条項をつけて国家公務員共済法はできているわけです。  続いて国民年金は、「憲法第二十五条第二項に規定する理念に基き、老齢、廃疾又は死亡によって国民生活の安定がそこなわれることを国民の共同連帯によって防止し、もって健全な国民生活の維持及び向上に寄与することを目的とする。」これは完全なる憲法の中からの年金制度として規定づけをしているわけであります。加えて厚生年金の方では、「この法律は、労働者の老齢、廃疾、死亡又は脱退について保険給付を行い、労働者及びその遺族の生活の安定と福祉の向上に寄与することを目的」とする。そして年金は、国民の生活の水準その他の諸情勢に著しい変動があるときには速やかに改定する、これはどの法律にも入っております。  こういう法律体系の経緯の中で、国鉄の分は同じように、これはまたきわめて簡単なんです。相互救済によって行うとなっているだけなんであります。国は、前項の健全な運営と発達に必要な配慮を行うという条項は入っていないのです。この点はどういうふうに解釈したらいいのか。  それから、厚生年金の方の法律目的国民年金法律目的、このいま言った恩給法から発生した新国家公務員共済法の法律と公共企業体の法律、これらの相関関係についてはどのように理解をされているのか、この機会に承りたいと思います。
  177. 禿河徹映

    禿河政府委員 日本の現在の公的年金制度というものが、いろいろ分立いたしておりますことは事実でございます。これは、それぞれの制度目的あるいはその沿革ということの差によるものだと私どもは考えておりますが、国鉄の関係につきましては、運輸省当局の方から御答弁があろうかと思います。
  178. 沢田広

    ○沢田委員 答弁は後でいいです。ついでに後でお答えください。  続いて、これは一般の厚生年金その他との格差の際に、前回も若干触れましたが、現在の公務員法また公務員の共済組合法で、禁錮、懲戒処分、停職を受けた場合については、減額あるいは全額減額ということに規定づけられているわけであります。これはどういう立場で、こういう禁錮であるとか、懲戒処分を受けたとか、それから停職の取り扱いを受けたとかいう場合に減給をするのか。  なお、減給の割合も、ここで細かくは私は言いませんけれども、公務員、国鉄、専売、電電、皆違うのでありますね。それの違うということのゆえんもどこにあるのか。  それから厚生年金の方は、こういう処罰があっても別に減額ということは規定されていない、この辺の差について解明していただきたいと思います。
  179. 禿河徹映

    禿河政府委員 ただいまのたとえば禁錮、懲戒処分あるいは停職ということに該当いたしました場合の取り扱いといたしまして、いわゆる減額措置があることは御指摘のとおりでございますが、この仕組みと申しますか、そういう方法をとっておりますゆえんは、共済組合、特に国家公務員共済組合と申しますと、これは一般の社会保険制度、社会保障制度的なそういう保険制度ということにプラス、やはり公務員という特別な職域保険と申しますか、公務員の特殊性、そういう要素を加味した職員のいわば保険制度ということに基づくものでございます。したがいまして、全く純粋の社会保障制度であります厚生年金等に比べましてそこに違いがあるのは、ある意味で私どもは当然であろうと思っております。  ただ、こういう制度ができましたのは、たしか昭和三十四年の国家公務員共済組審議会の答申に基づくものでございまして、現在のような仕組みをとっておるわけでございますが、その当時におきましても、いろいろ減額の幅あるいは期間等につきましても御議論はあったやに聞いております。それぞれの共済組合の性格、目的、そういうものに応じましてその取り扱いに差があるのは当然と思いますけれども、この問題につきましても、私ども今後の検討課題といたしましていろいろ検討は続けてまいりたい、かように考えております。
  180. 沢田広

    ○沢田委員 それに関達して御検討いただくことでぜひひとつ、いままでのようなことのないように願ってやまないのですが、次に、公団等にいわゆる公務員をやめて配置がえしていった職員がいるわけであります。その職員は、厚生年金と国家公務員共済の掛金と両方掛けている。同時に国家公務員の共済年金をもらえる資格も継続するし、また厚生年金の受給資格も得る、こういうこと。いまの日本の法律体系においては、一人について一年金の加入であるということになっているわけであります。それが、国家公務員でいる者が住宅公団であるとか道路公団の方に配置がえですか、した場合については、厚生年金はそこで掛けて、二十年いればそこで年金もつく、そしてここの公務員の共済年金も同時に掛けていっている。その人の公務員法の義務というものはどうなのだろうか。国家公務員法によれば、国に使用されている者でなければならぬことになっているわけですから、そうなると、公務員法のいわゆる職務義務というものをあわせて持っていくのか。たとえば政治活動はできるのかできないのか。あるいは、自動車事故だとか贈収賄であるとかというようなことで起訴されても、一方は減額されるけれども、片方の公団にいる人は減額がされない、こういう問題が起きてくると思うのでありますが、この取り扱いについてどういうお考えを持っておられるか、お伺いをいたします。
  181. 禿河徹映

    禿河政府委員 公務員共済の共済年金の受給資格を持ちながら、たとえば厚生年金のグループに新しく組合員として入っていくとなりました場合に、いまお話がありましたようなそういういろいろ刑罰に処せられたというふうなことがありました場合には、公務員共済の支給金額についての制限がかぶるわけでございますが、厚生年金の面におきましてはそういうふうな制限等の措置がございませんので、この厚生年金の方の受給については何も影響がない、そういう二つの仕組みに基づく差ということで措置されるわけでございます。
  182. 沢田広

    ○沢田委員 私は別に、こういうプラスな面を剥奪しろと言おうとは思っておりません。大いにそれはプラスの面はプラスの面でいいと思うのであります。しかし、そのことによって不平等が起きてはいかぬということが言えるわけなんであります。  もう一つは、公務員が恩給官吏であった時代には、無定量の業務ということで規定づけをされてまいりました。だから、一般国民の市民としての権利を主張する場合に、ときたま警察当局と争う場合も多く出てくると思うのであります。私が若干検討してみましたら、建築基準法の場合、違反建築あるいは増築なんかの場合も出てくると思うのであります。あるいは道路法の六十七条、これは土地の立ち入りを拒否する場合であります。それから道路法の四十七条でありますが、重量制限の橋を渡った、こういう場合でも禁錮以上の刑に処せられる。あるいは道路に自分の家の木を切って置いておいた、土石竹木等を積載しておいた、これも法律の権限としては懲役なんであります。あるいは日照権の反対運動をやった、土地の立ち入りを拒んだ、これも土地区画整理事業の関係ではあります。それから都市計画法の八十一条では監督処分、都市公園法の監督処分、これらの命令に反したという場合、これは各法律にずっと見ていきますと無限ぐらいに、いわゆる公務員が市民生活をやっていく場合に、土地区画整理事業反対とか日照の反対とか道路拡張の反対であるとか、自分の生活を守るために行動を起こした場合に禁錮、あるいは、この前は自動車事故の場合を質問したわけでありますが、自動車事故が起きた場合にも、自分が正しいと思っても正当な訴訟行為が行えない。万が一判決が、自分が正しいと思っても裁判はわかりませんから、結果が禁錮以上の刑に処せられるということになれば、これは依願免職しないと退職金も棒に振ってしまう、こういうことになってくるので、正常な公務員としての活動といいますか、自分の権限というものを持ち得なくなってしまうのじゃないか。  その点で、禁錮、懲戒処分、いわゆる解職、失職、これらも関連して不平等ではないか。いわゆる正常な市民活動として生活をしていく場合の権限というものは、これと関連性ないということにしなければならないのじゃないか。いわゆる公務に準じたような並びに公務に類似をした行為を行った場合にこれが適用するのではないか。完全なる市民生活をやっている場合に、法に触れたからといって、これがいわゆる無定量の業務という官吏の概念というものはなくして考えるべきではないか、こう思うのですが、退職金は総理府所管でありますから、これは総理府においては答弁として、検討しますということになりました。しかし、検討だけじゃ意味ないのであります。年金の問題にも関係してきますので、この点をお伺いいたしたいと思います。
  183. 禿河徹映

    禿河政府委員 ただいまの各種のケースの場合に、公務員としての身分がどういうふうに取り扱われるのか、それに関連いたしまして、退職金あるいは年金がどういうふうに取り扱われるかということは、ある意味で公務員制度全般にまたがる非常に大きな問題であろうかと思います。したがいまして、いまこの席で共済の年金の面だけをとらえて私ども云々するのは、あるいは適当ではないのではないかという感じがいたしますが、そういう公務員制度全般の中で私どももこれから検討すべき事項ではあろうと考えております。  ただ、お話がありました昔の恩給時代には、懲戒処分によって退職、いわゆる免職になったような場合には恩給が全く支給されなかった。それが新しい共済制度に相なりまして、本人の掛金あるいは事業主の負担というような面を考慮いたしまして、年金のカットされますのは大体二〇%以内ということになっておりますのも、新しい共済制度考え方に立脚したものでございます。その中でさらに私ども、そういう懲戒処分等によりましてカットされるべき年金額が、現行の二割がいいのかどうかという問題につきましては、国家公務員共済組審議会等の場におきましてもこれから検討はいたしたい、かように考えております。
  184. 沢田広

    ○沢田委員 念のため申し上げておきますが、最高は専売ですが、五割というところもありますから、そういう特殊なものも調整していく必要があるのじゃないかと思います。  続いて遺族年金の問題。  遺族とはそもそも何ぞやということ、これは法律で規定されておりますが、遺族年金を支給されるということは、たとえば夫婦生活を二十年やっていて年金をもらえるようになった、そして死亡した場合もあるでしょう、あるいは三年なり五年で死亡した場合もあるだろうと思う。日本の法律体系というものは、遺族を、昔の徳川幕府時代と同じに二夫にまみえずという発想があるのだと思うのですね。それで結局、再婚すればだめです。こういうことになっているわけです。  たとえば連れっ子という言葉はいけないでしょうけれども、平常用語で言えば連れっ子をして嫁に行った場合に、旧姓を名のっておったとしても、その子供が新しいだんなさんのところに行くことによって遺族年金の支給が停止をされる。これは女性の権利を年金で縛りつけて、二夫にまみえずという思想を今日においても残存させていくということになるのじゃないか。だから私は、全額支給していくというと不公正だという議論も起こるかもわかりません。けれども、その奥さんに与えられた権利であると解釈できないかどうか。あるいは、ある程度次の生活の基盤ができるまでの間、五年なり六年なりはそのまま継続する、お嫁に行くのにやはり支度は要るのですから、そういう意味においての考え方は持てないかどうか、その点お伺いをしたいと思うのです。
  185. 禿河徹映

    禿河政府委員 現在のわが国の公的年金制度全般を通じて見まして、いまお話がございましたような遺族年金を受給しておりました妻、未亡人が再婚した場合には、その年金の受給権がすべて失われるというたてまえをとってきておるわけでございます。  これについての、それで十分かといいますか、それでは問題があるのではないかという御指摘でございますけれども、これは共済制度のみならず、日本の公的年金制度全般を通ずるいわば原則でございます。やはり再婚によりまして従前の婚姻関係は消滅いたしまして、その時点から新しい生活共同体をつくられるわけでございますので、そういう年金の関係もやはり消滅させるのは私どもは当然ではないかと考えております。諸外国の例を見ましても、大体そのようになっておるようでございます。中には一部、再婚等した場合には、年金権は消滅はしない、その間停止するというふうなところもあるようでございますけれども、婚姻して後もその年金権が、制限された形といえども継続するというのを持っておる国はないようでございます。
  186. 沢田広

    ○沢田委員 時間の関係がありますから、議論はこれ以上進められませんが、遺族年金というのは、二十年間だんなさんに尽くして、だんなさんが年金をもらえるために内助の功を尽くした、そのことによってその奥さんに与えられるものだと思うのですね。妻の座ということだけではないだろうと思う。いままでの二十年の足跡というものが年金に結びついているのだと思うのですね。だとすれば、奥さんが次の新しいだんなさんを迎える権利があって、その年金が喪失をするということは、理論的に若干——二分の一に減額されるかどうかは別として、全額ゼロということは、二十年間の功績というものを、内助の功をゼロにする、こういう論理になるわけですから、そのことは私たちには若干理解しがたいという気もしますし、あるいは、三十ぐらいで未亡人になる人もいるのですから、そうすると、新しいだんなさんがどんなだんなさんになるかわからぬけれども、少なくとも年金を二分の一なり減らされる、さらに二分の一で四分の一に減らされて持っていくにしても、これはその人の生涯を通じての一つの基本になるのではないか。そこですっきりと今度は二度目のお嫁に行ったのだからというか、必ずしもいいところへ行けるとは限らないと思うのですが、そういう条件を考えてみたときに、みすみすそれを失うというのは、二夫にまみえず、未亡人で置いておけ、尼寺へ置いておけという発想と同じような発想が遺族年金には残っておるのじゃないか、こういうふうな気がするので、この点は、ぜひひとつ前向きに——どういうふうになるかはいろいろ模索はすると思いますが、とにかく幾らかでも女性の権利としてのものとして私は存在するものである、ゼロになるということは論理上おかしいと思うのですが、いかがですか。
  187. 禿河徹映

    禿河政府委員 先生の御指摘は、私どもとして一面においてお気持ちはわからないわけではございません。ただ、これは日本の遺族年金という仕組みをお考えいただきますと、実は諸外国に例があるにもかかわらず日本でとっておりませんのは、たとえば遺族年金等につきましては婚姻期間、仮にそれがわずか半年でも、主人が亡くなった後は遺族年金が出るということで、婚姻期間についての制約というものは何らないわけでございます。あるいは年齢、諸外国では遺族たる妻の年齢が一定年齢以上の場合にのみ支給するとかいう制限があるわけでございますが、日本ではこれをとっておりません。したがいまして、先生のいまの御指摘の点は、確かにお気持ちは一面よくわかるのでございますけれども、そういう現在の遺族年金の受給資格と申しますか、そういう制度との絡みというものもあわせて考えながら検討していかなくちゃならない事項ではないかと思います。  さらに、日本の被用者保険、厚生年金あるいは共済組合組合員でございましても、任意の国民年金の加入資格はあるわけでございます。そういう全体の年金制度の中で妻の座というものをどう考えていくのか、総体的にこれは検討させていただきたい、かように考えます。
  188. 沢田広

    ○沢田委員 早急にということはいつのことかわかりませんが、文字どおり早急にひとつお願いします。  次に、障害年金、廃疾年金と言われておりますが、公務員も含めて問題になっておりまする四級三項症についてお伺いをしたいと思うのであります。  これはもう内容は御承知だと思いますから多くを申し上げませんが、いわゆる昭和三十一年の六月に、当時わが党の横山さんや自民党の黒金さん、堀木さんという方々が戦傷病者戦没者遺族等援護法との相互関連において、それぞれ修正をされたわけであります。そのときの修正は、一項症一級、二項症二級、三項症の三級、四級三項症、四項症の四級、五級四項症、それから五級とあって、六級五項症、六級、こういうふうに中間に一つずつ間があったわけであります。ところがそれを整理をいたしまして、いわゆる六級は五級に、五級は四級に統合をしたわけであります。ところが、四級三項症だけが取り残されたという結果が出てきているわけです。そこで、四級三項症というものの内容は何だろうかということになるわけなんであります。  これはあるお医者さんの見解をもらってきたわけでありますが、お医者さんの出された意見、日本リハビリテーション振興会理事、社会医学技術学院、名前は一応申し上げませんけれども、そういうところで、「五及び六級該当者については、恩給法に定める項症内容と比較し不均衡であったため、昭和三十一年六月の法律改正でこの喰い違いを調整するため恩給法に定める項症に相当する最低保障額の特別措置が講ぜられるようになったと聞いている。そのため五級、六級該当者で恩給法第四、第五項症に相当する障害者については、それぞれ一級繰り上げられた保障措置が講ぜられている。しかるに四級該当者で第三項症に相当する障害者については障害程度は全く同じであるにかかわらず同様の措置がされていない。」こう言っている。  このことは私の聞き及ぶところでは、当時の改正のときにある程度財政的な配慮をした結果である。国鉄だけで四百四十人だそうです。全林野その他にも若干名おられるのじゃないかと思います。そういうようなことで、金額的なこともあって取り残されたという経緯もあるようでありますが、当時、自民、社会その他の政党も含めて、これは委員会修正で成立をした経緯があるわけです。ですから、四級三項というものについて、ひとつこれは検討をして、その上位の三級に統合できないかどうか。  まあ内容的には、私たちの調査で見ますると、これは下肢が多いのですね。内容は長くなるから簡単にしますが、たとえば国鉄の職員、公務上の障害は国鉄が一番多いのです。操車で足を切ったり何かするのでどうしても率が一番高いわけです。これは昭和の元年あたりから当たってみましても、年度末の職員が十八万のところ傷病人員が三万三千二百四十、一七七・一という傷病割合になっていた。現在は非常に傷病割合は下がりまして四〇程度になりました。しかし、大正時代には二五八というような比率に傷病の割合というものがふえていたのが事実です。それが国鉄の年金制度、相互共済が発生するゆえんでもあったわけです。非常に危険な業務であったということです。これは明治四十年からの資料が出ていますから、後で必要ならばごらんになっていただいても結構ですが、明治四十年からどんな障害を起こしてきたか。  そこで、足だけを問題にしますと、労災と国公を考えてみますると、一級は両下肢、ひざ以下ということであります。そして文章的に見ますると、介護を要する状況ということなんです。それから二級では、両下肢の足関節以下、これは日常生活を行っていくのに若干の支障がある。それから三級は、ここの場合は両手だけで足はないのです。四級が両足以下。一下肢の用は五級になっている。こういうのが一応の経緯であります。しかし実際に見てまいりますと、ひざ以下、ひざが残ると一関節になります。ひざの上になると二関節になる。そこで四級三項と三項症と区分されちゃっているわけです。  ですから、その障害の程度からいったならば、医学的に私たちは議論をしていこうと思っていますが、区分する理由はなくなってきているというのが今日の状態であろうと思うのであります。これは、自民党さんもおられますけれども、そういう歴史的な背景もあって今日こうなったわけでありますから、その意味において、四級三項だけ三十一年から今日まで二十年間取り残されていたわけですから、ぜひ改善の措置を講ずるという意思があるかどうか、その点をお伺いいたしたいと思います。
  189. 禿河徹映

    禿河政府委員 ただいまお話がございました旧令共済の障害年金の四級該当者というものとそれから増加恩給の三項症相当者といいますか該当者、それの取り扱いにつきまして、昭和三十一年にいろいろ国会の方で御審議の結果、現在のような取り扱いになり、あるいは障害年金の五級、六級等の取り扱いも、その際あわせて変えられたという経緯はお話のとおりでございます。  ただ、それ以前のことを考えてまいりますと、もともと旧令共済のこういう障害年金の格づけと申しますか、それは、やはり仕事の性格もあったのでございましょうか、内臓疾患というものにいわば重点が置かれて考慮されておったようでございます。それが恩給の方では、いまお話のございました手足の切断等の外傷を中心に考えたということのようでございます。したがって、その障害の程度等に対する取り扱いが、どの程度でも両方でちょっと違ってきたという、ずっと前からの沿革も実はあったようでございますし、それはそれなりに意味はあったものと考えておりますが、いまお話がございました三十一年の取り扱い等もございますので、この点につきましては、関係の方面ともよく相談しながら今後研究させていただきたい、かように考えております。
  190. 沢田広

    ○沢田委員 じゃ、それは検討していただくことを心から要望いたしまして、次の問題に入らしていただきたいと思います。  国家公務員共済組合法では十七条に、共済組合として借り入れをしてはならない、しかし、大蔵大臣の承認があれば借り入れすることができる、こういう規定がございます。さらに三十九条には、責任準備金の移換もできるとあります。国鉄共済法では、借り入れをしてはならないともないし、大蔵大臣の承認が必要だとも書いてないし、結果的には運営審議会が決めるということなのかもわかりません。先ほど山田委員の方からもお話がありましたように、長期展望に立った場合に、たくさんの人員が突然のようにやめられて相当に給付が増額をするというような場合に、五年なり七年なり、あるいは住宅ローンのように二十年ぐらいの長期でこれを地ならしをするということは、財政運営の上で必要性が生じるのではなかろうかと私は思う。この借り入れをしてはならないというのは、一時借り入れという意味もあるんだと思うのであります。どういう意味に解釈をしたらいいのか。  突然のように行政改革が行われてうんとたくさんやめられるという場合も起こり得るかもしらぬ。そして、突然次年度から相当大幅に年金の給付額が増大をする、そういう場合を想定して、国家公務員の方では、借り入れはできないぞ、しかし大蔵大臣が承認した場合には借り入れができるぞ、こういうことを規定づけているのではないか。これは国鉄の場合はどうなのかということについてひとつ御答弁をいただきたいと思います。
  191. 禿河徹映

    禿河政府委員 国家公務員共済法の第十七条の借入金の規定でございますが、現実に運用いたしておりますのは、財形貯蓄等を行います場合に金融機関から借り入れて、それを組合員に融資するというので発動しておるのが現在の実例でございます。  私どもといたしましては、そういう共済組合の財政問題というものにつきましては、長期的に見まして健全な基本線を貫いていくということが基本であろうかと思います。いま例に挙げられましたような退職者の急激な、一時的な発生と申しますか、そういうふうなケースが現実に出てまいりますかどうですかわかりませんけれども、共済組合あるいは連合会といたしましても、そういうふうな長期保険数理に基づく計算を行っていきますような場合には、できるだけ借入金もなくて健全な安定性を保持しながらやっていくというのが基本であろうかと考えております。
  192. 山地進

    ○山地政府委員 国鉄共済組合につきましては、国鉄共済組合経理規則運輸省令第四十八号がございまして、その三条に「組合は、組合以外の者からの借入金以外の収入をもってその事業に必要な資金の財源としなければならない。ただし、組合目的を達成するため必要がある場合において、運輸大臣の承認を受けたときは、この限りでない。」と国家公務員の方と同じような趣旨のことが書いてございます。ただ、現在までにこの規定によりまして運輸大臣の承認を受けたことはございません。
  193. 沢田広

    ○沢田委員 後で運輸大臣が来たときに質問をしなければなりませんから、中途半端になるのでありますが、これで一応終わりたいと思いますけれども、ただ、先ほども言われておりますが、少しわかりやすくするために端的な金額でいきまして、国鉄の場合、今度の引き上げによって、二十万というのは国鉄では若干高給者になりますが、二十万の給与者で大体一万二千円の長期だけの負担をするという形になるわけですね。そうして国家公務員の方では八千七百円ぐらいの掛金ということになるわけです。これらの掛金の差が三公社五現業それぞれにつきまして明らかになりますと、これは賃金の部分についても当然考慮してもらわないとバランスがとれないんじゃないだろうか。その賃金との関係についてはどういうふうに連動して考えたらいいのか。ただ掛金だけこれから上げていけば、実質賃金が低下をしていくということにもなりかねない。  また、スウェーデンでは、いま若い者が掛金を掛けるのはいやだと言い出していると伝え聞いております。われわれもそういう時代を迎えざるを得ないわけですね。いま六十五歳以上の九百六十万の老人人口を抱えているわけです。そういうことを考えて、さっき山田委員に答えたように、これからの年金制度というものを大蔵省がリードする以外にないでしょう。厚生省に任しておいたからといってできるものでもないでしょう。また、大蔵省がリードをして、日本の年金制度をこれからどういうふうに上積みしつつバランスをとっていくかということを考えていかなければならない時期に来ているんではなかろうか。ところが、国民年金あたりで四百円、八百円という金額ですから、これは格段の差があるわけです。それで官民格差が議論されたって、これは同じ舞台で議論ができないのですね。その辺はどのように考えておられるのか、最後の財政運営と個人の掛金を含めてひとつお伺いをしたいと思います。
  194. 禿河徹映

    禿河政府委員 一番初めにお話がございました掛金と賃金との関係でございますが、こういう共済組合の掛金はその賃金を基準にしてやっておるものでございまして、掛金が高いからといって直ちにそれを賃金にはね返らせるというわけにはなかなかまいらないものであろうとは考えております。ただ、国鉄のような場合には、現時点でほかの共済組合と比べますと、組合員の負担が確かに高いのは事実でございますが、日本の公的年金制度の将来というものを考えてまいります場合に、いろいろ国民年金、厚生年金等もひっくるめて考えますと、大変な国庫負担の増大ということが必至になるという状況にございまして、私ども財政負担の面を考えてまいりますと、この支給と負担とのバランスを常に頭に置いて考えていかざるを得ないということであろうかと思っております。  ただ繰り返して恐縮ですが、国鉄につきましてほかの組合の場合よりも高いことは事実でございますが、昨年の秋に出ました国鉄共済の収支計画策定審議会の答申を受けまして、一応五十五年度までの長期の財政は何とか赤字にならずにやっていける、こういう仕組みをとったわけでございます。五十六年度以降、さらに厳しい情勢になろうかと思いますけれども、その時点に向けまして関係方面とよく相談をしながら、あるいは収支計画策定審議会の御意見もそれまでに十分伺いながら、今後どう持っていくのか十分検討してまいりたいと考えております。
  195. 沢田広

    ○沢田委員 いまの質問以外にきょうは非常に御丁寧な答弁をいただきまして、いつもこういうふうな答弁をしてもらいたいと期待を込めながら、大蔵大臣にもひとつよろしくとお願いしながら、途中なんでありますが、あと運輸大臣が来るまで休憩といいますか中断といいますか、一応やめたいと思います。
  196. 大村襄治

    大村委員長 坂口力君。
  197. 坂口力

    ○坂口委員 年金の問題につきましては、予算委員会でも私、何度かやらせていただきましたし、また、この委員会でも年金税制の問題等もやらせていただきましたし、正直言って年金の問題を新しくやらせてもらうことはないというような感じもするわけでございます。新しく何をか言わんやという心境でございますけれども、四十分時間をちょうだいいたしておりますので、その分だけまた同じことを繰り返しながらやらせていただきたいと思います。  先ほどからもいろいろ意見が出ておりましたが、共済年金の中で最も厳しいのが国鉄の方であります。国鉄の方は、ざっとした数字を見せていただきましても、昭和四十八年には四百十二億円の黒字であったのが、昭和五十年には百七十七億というふうに黒字の幅が減って、しかも昭和五十一年になりますと八十八億円の赤字というふうになってまいりまして、いままでの積立金を取り崩さなければならないというような状態になってきているようであります。  そこで、国鉄共済の方にお聞きをしたいのは、現在の制度がいろいろ変わればまた変わってきますし、いろいろな条件、ベースアップの問題もございましょうし、あるいはまた新しく入ってくる人の問題もあろうかと思いますが、大体すべてがいま並みに、昭和五十二年度並みと言ってもよろしいし五十三年度並みと言っても結構でございますが、大体その辺のベースでいきましたときに十年後にどうなると青写真を描いていらっしゃるか、まずお聞きをしたい。
  198. 濱田卓實

    ○濱田説明員 大変にむずかしい質問でございまして、共済年金の十年先ということにつきましては、実はただいま先生からもお話がございましたように、ベースアップがどうなるか、年金改定がどうなるか、あるいはまた国鉄の退職条件、現在五十五歳を一応たてまえにしておりますが、それが一部五十七歳になりあるいはまた五十八歳になるということで、退職条件というのも変わってきております。そしてまた要員減という要素もございまして、要は、国鉄の共済年金の十年先を想定する基礎要素と申しますものが、すべて非常な変動要素を持っておるということで、現在の時点では、ただいま御質問のようなかっこうでいまのままの想定ということは一応いたしておりません。
  199. 坂口力

    ○坂口委員 それではもう一つお聞きしますが、十年前に現在を予想して立てられたその姿と現実の現在とを比較して、どのぐらい違っていますか。
  200. 濱田卓實

    ○濱田説明員 国鉄の年金財政の収支計画につきましては、従来、昭和四十年、四十五年、五十年と五年置きに収支計画策定審議会にお諮りをして長期見通しを立ててまいっております。したがいまして、十年前にどういうかっこうであったかということでございますが、四十五年に立てましたのでは、所要財源率を対俸給千分の百十七とし、追加費用については、昭和四十五年度に対俸給千分の八十一として、それ以降毎年千分の五ずつアップしていく、こういうことで想定をいたしまして、四十六年度から五十年度まで五年間については各年度大体三百億から二百億の収支残を出す、こういうことで答申をいただき、そのとおり実施がなされたということでございます。
  201. 坂口力

    ○坂口委員 なぜ私がこういうことをお聞きするかと申しますと、御承知のように、年金は大きく分けて八種類に分類されておりますし、また同じ共済の中でもいろいろの格差がございます。いわゆる官民格差というような問題もいろいろと言われているわけでございます。そういう中で、国鉄が現在の立場におられるわけでありまして、そういうふうな意味からいくと、民間の普通の厚生年金等に比べるといろいろ有利な条件もあるじゃないか、その中でどうしてこういうふうになってきたのか、その辺にある程度のずさんさはなかったのかというような批判も中にはなきにしもあらずというのが現状であります。ですから私は、あえてそういうことをお聞きをしたわけであります。  それで、ずっと長い歴史のあることをあなたにすべて責任を負わせてお聞きするというのはまことに酷なことでございまして、あなたをいじめるつもりでは決してないわけでございますが、しかし、年金というのは非常に息の長いものですから、十年先、二十年先には一体どうなるかといういろいろの条件はありますけれども、大体の条件を考えながら青写真を描いていかなければならない。それが十年前と現在とは一体どれだけ違っているのか、そしてまたいまから十年先にはどういうふうな青写真を描いてどこへ持っていこうとしておられるのか、その辺のところがはっきりしなかったら、正直申し上げて年金についての何のお仕事をしておいでになるのですかと私はお聞きしたい。その辺のお考えをお持ちならば聞かせていただきたい、こういうことを私は申し上げているわけであります。  特にきょうは、厚生省もお越しになっておりますが、厚生年金等はその点かなり長期にわたっての計画を立てておいでになる。だから、それに合わせて——それはいろいろの条件はございましょう、ベースアップの問題もあるし、それから新しくお入りになる方もあるし、また定年でより多くやめられることもあるわけでありますけれども、その辺のところは大体の見当というのはつくわけでありまして、ある程度の予想は立つわけでありますから、やはりきちっとしていただきたいということを申し上げたいわけでございます。  厚生省の方、お越しいただいておりますので、きのうこのことは質問をとりにきていただきましたときに申しませんでしたけれども、もしもわかっておりましたら、いまお答えをいただきたいと思います。  それは、現在の国家公務員の共済程度の成熟度に厚生年金がなったといたしましたら、大ざっぱなことで結構でございますが、保険料は大体どれぐらいになりますか。
  202. 長尾立子

    ○長尾説明員 五十一年度に財政再計算をいたしましたその水準でお答えさせていただきたいと思うわけでございますが、現在男子の場合に千分の九十一という料率になっておるわけでございます。この料率は、ある意味で現在の水準を前提にいたしまして設けられておるわけでございますが、この現在の水準がそのままに維持されるという前提でまいりまして、昭和八十五年の段階でこれが千分の二百七になるという予定になっておるわけでございます。
  203. 坂口力

    ○坂口委員 そういたしますと、昭和八十五年で千分の二百七というふうに申しますと、成熟度で申しますと、大体現在の共済程度ということでございますか。
  204. 長尾立子

    ○長尾説明員 この千分の二百七でございますけれども、昭和八十五年の老齢年金受給者と被保険者数の比率、これがいわば一つの成熟度をあらわす指標ではないかと思いますので、申し上げさせていただきたいと思いますが、厚生年金の場合、この時点におきましては二七・六%になるわけでございます。現在国鉄共済がどれぐらいの比率になっておるか、ちょっと数字を持ち合わせないわけでございますが、共済全体といたしましては、現在大体二八・四ぐらいではないかと思いますが、これは相当上昇なさるというふうに推定をいたしております。
  205. 坂口力

    ○坂口委員 国鉄共済の方はいまどれだけでございますか。
  206. 濱田卓實

    ○濱田説明員 現在成熟度は五八でございます。
  207. 坂口力

    ○坂口委員 五八というのは、五八%という意味でございますか。
  208. 濱田卓實

    ○濱田説明員 はい、さようでございます。  詳しく申し上げますと、国鉄共済組合組合員数は、昭和五十一年度末で約四十三万六千人、これに対し年金受給者が約二十五万人、こういうことでございまして、その成熟度は五八%ということでございます。
  209. 坂口力

    ○坂口委員 現在の共済、それぞれ共済もいろいろございますので一概には申せませんが、平均した現在の共済の成熟度のところまで厚生年金の方が行こうと思いますと、千分の三百ぐらい保険料を掛けないとだめだろうという一つの推定があるわけでありまして、いまお聞きした数字、若干私わかりにくい点はありますけれども、そういう議論もあるわけでございます。  その辺のところからいわゆる官民格差の問題が出てまいります。この官民格差の問題につきまして、官の方が非常に得をして民の方が非常に低いから民に合わせろというようなことを決して私は申し上げておるわけではなくて、少なくともいま官の方が受けておみえになる程度のところに民の方をどうすれば早く近づけることができるか、こういう観点に私は立っているわけでございますが、しかし現実問題といたしまして、いろいろそうした差があることもまた事実でございます。  先ほど追加費用のことをちょっと言いかけておやめになりましたけれども、いわゆる整理資金の問題というものもいろいろございます。このことについては昨年いろいろ議論をされたところでございますので、あえて私ここで蒸し返そうとは思いません。しかしながら、こういう議論があることだけは事実でございまして、大蔵省の方はこれに対していろいろの反論もしておみえになりますけれども、ある程度納得できる面もあり、また納得できない面もありということでございまして、これは将来にゆだねられねばならない多くの問題を残しているというふうに考えているところであります。  そこで、この現在の国鉄の現状をどうして救っていったらいいか。私も昨日から、きょう質問させていただくのに、どうしたらこれは救えるだろうか。一番単純に、一番簡単に事を済まそうと思えば、国庫補助をつぎ込めばこれは一番いいわけでありますけれども、しかし、他の共済等との関係もあって、そういうふうな形でどんどんつぎ込むという形が果たしていいのか、それで事が足りるのであろうかという考え方もまた一方で成り立つわけです。そういうふうな意味で、どういうふうな解決方法をしようと思っておみえになるのか、まことにむずかしい話でございますけれども、お聞かせいただきたいと思います。
  210. 濱田卓實

    ○濱田説明員 確かにまことにむずかしい御質問でございまして、十分お答えできるかどうかと思いますが、現在、収支計画策定審議会、ここで御審議いただいて、昨年の九月に、とりあえず五十三、五十四、五十五年度まではこれでいける、しかしそこから先については非常にたくさんの問題がある、たとえば企業内部の問題、退職条件をどういうふうにしていくのか、要員需給の状態をどういうふうに考えていくのか、あるいはまた、年金制度そのものについても、公的年金制度全般がいまいろいろと議論されておる、その中で、給付の条件あるいは財源負担の問題、そういうものがどういうふうに考えられていくか、そういう企業内部の問題あるいはまた国全体の問題、そういうものをよく勘案しつつ、総合的に抜本的な対策を立てるように、こういう答申をいただいておるわけでございまして、いま私どもはそういう御趣旨に沿って鋭意努力しておるということでございます。
  211. 坂口力

    ○坂口委員 抜本的対策が立てられることを私も期待する一人でございますが、なかなかそれがむずかしかろうことも想像にかたくないわけであります。年金といったような問題は、行き詰まってしまってからあわてましてもどうにもならないことでありまして、ある程度以前から予測のつくことでございますので、少なくとも五年や十年前にはある程度の手を打たなければならない、こういう性格のものではないかと思うわけです。あるいはもっと前から手を打たなければならない問題ではないかとも思うわけです。  そこで、残された道は、国鉄が現在抱えておみえになる問題は、現在はただ国鉄の問題でございますけれども、このことが国家公務員にも当てはまるときがあり、あるいはまた厚生年金にも当てはまるときが来るかもしれませんし、ただこれは人ごとでは決してないわけでありまして、それぞれが心して考えなければならない問題だろうと思うわけですが、あと残されました問題は、先ほど山田先生等からも出ておりましたけれども、共済年金ならば共済年金をいかにして統合していくか、そしていままでのいろいろ掛金をした人たちのその差もあるわけでありますから、既得権は守りながらいかに統合していくかという一つに尽きると私は思うのです。私は、この計画なしに解決する方法はないと考える一人です。また、厚生省の方からも後で御答弁をいただきたいと思いますが、共済だけではなしに、全体の年金の統一の問題がございますけれども、そこまで早く行けばこれは結構でございますが、これもなかなかむずかしい話でありまして、だんだん段階を経なければ行きにくい問題であろうと思います。そういうふうな性質のものでありますから、とにもかくにも共済なら共済だけの間で、それが一本化がむずかしければ財政調整あるいは掛金の調整あるいは給付金の調整、そしていままでの既得権はいかにして守るか、この辺のところをいかに組み合わせていくかという問題に尽きてくるだろうというふうに思います。  共済の中には、先ほども国鉄と専売と電電ですか、三つお挙げになりましたけれども、その中でも電電の場合には、まだ若い人も多い、成熟度がまだ進んでいないという感じを受けたわけですが、そういういろいろの団体があるわけでありますから、同じにすることによってこの辺の危機を乗り切っていく以外にないだろう、そして、電電ならば電電の人たちにそのことをよく理解してもらう、そのかわりに、電電の方がいままで鋭意努力をしておみえになったことについてはその既得権を守るというようなことで、一本化をしていく道を歩む以外になかろうと私は考える一人ですが、その辺に対するプランと申しますか、そんなものがあるのかどうか。きのうもパンフレットを一ついただきましたが、国家公務員の共済組合と地方公務員の共済組合公共企業体職員等共済組合の三つの組合が寄って、今後のことを一つのテーブルに着いて話し合いを始めたということでございますけれども、これはなかなか遅々として進んでいないという感じを受けるわけです。  ところが、現実問題といたしまして、いま国鉄のお話をお伺いいたしますと、昭和五十五年とおっしゃいましたか、そうすると、もうことしは五十三年ですからあと二年ですね、もう二年後には破局が来る、こういう状態でありますから、悠長に話をしている段階ではないわけでありまして、ぜひこの問題は早く決着をつけなければならない問題だということを私はいままでからも声を大にしてきたわけであります。  これは大蔵省の方にお聞きをした方がいいのか、あるいは国鉄さんの方にお聞きをしたらいいのかちょっとよくわかりませんけれども、この三つの組合の話し合いというのは一体どの辺のところまでいっておりますか。
  212. 禿河徹映

    禿河政府委員 国家公務員共済、それから地方職員の共済、それに公企体関係の共済組合の三つの話し合いでございますが、この話し合いの場を最近設けまして、これから大いに意思の疎通を図り、改善すべき共通事項は一緒に相談していこうというふうにいたしましたのは、私どもの直接所管いたしております国家公務員共済組合の制度、その中にも、これからいろいろ検討していかなくちゃならない事項があると実は考えております。事によりましてなかなか簡単にまいらないという点もあるかと思いますけれども、すでに二年ほど前から国家公務員共済の審議会の場におきまして、今後の共済のあり方の検討を進めておるわけでございますが、その検討を進めていくに当たりまして、国家公務員共済だけでなくて、広い意味での共済制度全般にまたがるいろいろな事項があるわけでございまして、そういうものについて関係者のコンセンサスを得なければ制度の改善等も円滑にいかない、こういうふうなことが考えられましたものですから、その三者の共通の懇談の場というものを最近設けて、これから実はその問題等いろいろな問題に取り組もう、こういうふうにいたしておるわけでございます。  私ども、いろいろ個別に問題意識は持っておりますけれども、やはりほかの二者の方々の御意見も伺いながら、当面これから取り組むべき問題事項はどういう問題であろうか、あるいは長期的に考えるべき事項はどういう問題であろうか、そういう問題点をまた出していただきまして、そして三者共通の場におきましてこれを検討いたしていきたいということで、はなはだ恐縮でございます。まだその検討の緒についたばかりでございますので、具体的なことはここで申し上げるわけにはまいりません。まだそこの段階に至っておりませんけれども、前々からの問題を含めまして、鋭意これから検討していきたい、かように考えておるような次第でございます。その際に恐らく、それぞれの共済組合制度の基本にかかわる問題のほかに、いまお話がございましたような各共済制度間の財政の問題をどういうふうに取り扱っていったらいいのかとか、そういう問題も検討されていくであろう、かようには考えております。
  213. 坂口力

    ○坂口委員 国鉄の方ばかり例に出して申しわけないのですが、先ほど山田先生が聞かれた数字を見せていただきましても、国鉄の方はほかの専売だとか電電に比べますと、掛金も非常に高いわけですね。ですから、年齢構成も非常に高くなってきておりますしいたしますから、この傾向を国鉄だけで維持していこうと思えば、さらにこれを高めていく以外にないわけですね。ところが、まあこれには限度がありますから、これ以上出せと言ってもこれはもう無理な面があると私は思うのです。  ところが、一方におけるこの話し合いは、いま話を聞きましたとおり、現在遅々として進んでいないと言うた方がいいのか、進むも進まぬも、まだできたばかりで、進むところにも下がるところにもいってないと言うのが適当なのか、よくわからぬような状態であります。一方においては、二年後に破産するかもしらぬというものを抱えておりながら、一方においては、これから検討しようと思いますということを言っておみえになるわけであります。  私が年金の問題を取り上げさせていただいてからでも五年たつわけでありまして、五年一日のごとく、検討いたします。検討いたしますという言葉を聞いてきたわけでありまして、もうそれから五年たっておるのです。五年前に、これは何とかしてもらわなければ危ないと厚生省の担当の方も声を大にして言っておみえになったわけでありまして、私も事情をよく勉強させてもらってきたわけでありますけれども、この問題はその場にならないとなかなか進まないのが実情でありまして、いま禿河次長さんのお話を伺いましても、どうやら出席者名簿はいただきましたけれども、中身はどうもこれに伴ったところまではいっていないと申し上げた方がはっきりするようでございますので、ひとつぜひこの会合を進めていただいて——一夜づけでやれと言ったってこれは無理な話でございまして、できるものではないことはよく存じておりますけれども、そういう国鉄さんのような非常にむずかしい団体を抱えておみえになります以上、一日も早く検討を進めていただきたいと思うわけです。  この問題と、それから年金懇やそのほかからいろいろ出ております意見等との絡みもございます。それで総理も、ことしの秋までに何とか形にしたいということを言っておみえになるわけでありますので、厚生省さんの方、長尾課長さんの方から、全体の年金改革の青写真がどう進んでいるか、このお話をひとつお聞きをしたいと思います。
  214. 長尾立子

    ○長尾説明員 お答え申し上げます。  先生いまお話がございましたように、年金制度基本構想懇談会の中間意見を昨年の十二月にいただいたわけでございますが、この基本懇の中間意見の中では、昭和五十年代を一つの目途といたしまして、年金制度全般にわたる体系的な手直しをしなくてはいけないという方向が出されているわけでございます。  この中間報告の中で御指摘をいただいております問題、これは非常に広い各分野にわたっておるわけでございますが、その問題の深さ、将来的な見通しというものを十分に詰めていかなくてはならないということから、中間意見の中でもまだ具体的に結論をいただいていない部分がございます。実は、この連休あけと申しますか、懇談会の方でも審議を再開していただけるということになっておるわけでございますし、また一方、私どもが所管いたしております年金制度の二大制度でございます国民年金、厚生年金につきましては、それぞれの専門審議会、国民年金審議会、社会保険審議会の厚生年金保険部会が検討を開始してくださるということも予定されておるわけでございます。  私どもといたしましては、本年度中いっぱいかけまして、年金制度の将来のあり方、一つの考え方というものはまとめていきたいということを大臣からお答え申し上げているわけでございまして、その方向で、いわば理念と申しますか、年金制度全般のあり方についての厚生省の考え方というものをまとめたいと思っておるわけでございます。  その中では、ただいまお話がございました日本の年金制度全般ということでございますと、実際受給者が相当なウエートを占めております共済組合等につきましても、どういうような考え方でしていただくかということについての私どもの考え方をまとめていく必要があると思いますし、それにつきましては、いまお話がございました関係審議会の御審議も並行していただくことが予定されておるわけでございますので、十分御相談を申し上げて進めていきたい、かように思っておるわけでございます。
  215. 坂口力

    ○坂口委員 あらあらの今後のスケジュールをお聞かせいただいたわけでございますが、こちらもさらにまたむずかしい問題を多く抱えておみえになるわけでありますから、これもそう急激にはいかないことはよくわかりますが、ぜひひとつ早く構想をまとめていただいて、前進をさせていただきたいと思います。  私の感じとしましては、これができ上がりますまで、たとえば国鉄さんのような場合に待っておれないケースがあると思うのですね。そういうふうなところに対しては、これは特別な手を打ってもらわなければならないと思いますし、できれば共済なら共済年金だけが何らかの形で一本化の方向に動いてもらって国鉄さんを救う、こういう気持ちでなければ年金というものは成り立たないわけでありまして、別に国鉄の職員の皆さん方が年齢構成をそうしてくれと言ってしたわけでもありませんし、日本の歴史の中でそうならざるを得なかったわけでありますから、いままでたくさん掛けておみえになったのに、ここで掛金は高く取りますけれども、今度は支給する方は減らしますということは、これはできっこない話、あってはならないことでありますから、これはそういうふうな年齢構成にした政治の責任でもあるわけでありますから、何とかしてこれを一本化の方向の中で検討しなければならない問題であると思いますので、全体の年金の問題もさることながら、その中で共済組合の中ででも、まずその辺の当面の問題をぜひひとつ早急に煮詰めていただきたい、こういうふうに思います。  それから、先ほど沢田先生からお話が出ましたので、もう私はつけ加えるまでもありませんが、私も妻の年金のことについて少し触れたいと思っておりましたが、重複いたしますので多くは申しません。ただ、御承知のようにアメリカあたりでは、夫婦の場合に夫だけが働いております場合には、本人分に奥さんの分の五〇%上乗せをした年金をしているわけでありまして、夫婦共かせぎのときには妻の年金、夫の年金というふうに分かれますけれども、御主人だけのときには、御主人の年金プラス妻の年金というのを五〇%上乗せをしているわけであります。これが離婚されるとかあるいはまた死別されるとかというような場合には、この五〇%分が夫の方もとれて、別れた場合には寡婦の方も一〇〇%ずつ、こういう形になるわけであります。  先ほど沢田先生が、日本の歴史的な背景から説き起こして、その裏に流れる思想をおっしゃいましたけれども、そういうふうな形がいつまでか続いているようなことでは、日本の年金は時間的には成熟していきますけれども、その思想はまことに未成熟のままと言わざるを得ないと思うわけであります。そういうふうな意味で、その辺のところの改革もある程度の望みがあるのかどうかということを、長尾課長さんからお聞きをしておきたいと思うのです。
  216. 長尾立子

    ○長尾説明員 お答え申し上げます。  婦人の年金の問題につきましては、基本懇の中でも、現在の年金体系の一つの大きな問題として御指摘をいただいておるわけでございます。先生いまお話がございましたように、婦人の年金という問題につきまして問題点として提起されておりますことは、一つは、無業の婦人につきましての老後の保障というものが現在の体系では不十分であるという問題、その中で、いまお話しのような離婚をした婦人につきましての老後保障の体系が備わっていないということであります。それから、婦人の老後という問題につきましては、夫の老齢年金が遺族年金に転化するという形が一般的であるわけでございますが、そういった遺族年金の水準自体が必ずしも十分とは言えないというような問題点を御指摘をいただいておるわけでございます。  婦人の年金の問題ということになりますと、たとえばいまお話がございましたような被用者の年金体系では、一応世帯単位ということで構成されておるわけでございますけれども、こういった被用者年金の体系における世帯単位という考え方をどういうふうに今後持っていくのか、世帯単位の保障というものを充実する方向で考えるのか、または、国民年金のように無業の妻も独立した形で一人一人が被保険者となって年金保障の体系を考えていくのかというような問題が基本的にはあるわけでございまして、いわばわが国年金体系全般にかかわってくる問題であろうと思います。  私どもも、特に遺族年金の水準というものを引き上げなければならないということ、これは一つの大きな課題だと思っておるわけでございますが、この問題の解決につきましては、全般を通じた検討はやはり前提とならざるを得ないと思っておるわけでございまして、そういった検討の中で一つの大きな課題として考えていきたい、こう思っておるわけでございます。
  217. 坂口力

    ○坂口委員 ぜひひとつその辺のお考えをおまとめをいただきたいと思います。  それから、時間がなくなっておりますが、せっかく運輸大臣に御出席をいただきましたので、一言だけ御答弁をいただいて最後にしたいと思います。  大臣お見えになります前に、国鉄の共済のことにつきましていろいろ関係者から御意見を聞いておりました。正直なところ、あと一、二年すれば破局を迎えるおそれすらあるという大変な内容でございまして、その間の事情もるるお聞きをしたわけであります。またそれに対して、なぜもう少し早くから対処できなかったかというような厳しい注文も実はいまつけていたわけでございますが、いずれにいたしましても、現在の状態を救うという手だてはただ一つ、共済年金ならば共済年金が一つに統合をされていって、むずかしいことでありますけれども、そして相互扶助の中で助け合いをしていくという以外にないのではないか。そのかわりに、お互いがいままでそれぞれの掛金なり、いろいろの長さで掛金をしてきたわけでありますから、いままでの既得権はお互いに守るという形での合併というものができないかというようなことを、私いま意見として申し上げてきたところでございます。  お話を伺いますと、国家公務員の共済組合、地方公務員の共済組合あるいは公共企業体職員等共済組合、この三つの共済組合の代表の方がお集まりになって、いよいよこれから話をしていこうという緒につかれたところであるということもいま実はお聞きをいたしました。せっぱ詰まった問題でございますので、こういったことに対しても、ひとつ大臣から叱咤激励していただいて、ぜひ早急にこういう共済の問題の結論を出していただくようにお願いを申し上げたいと思いますので、一言御決意をいただいて終わりにしたいと思います。
  218. 福永健司

    ○福永国務大臣 やむを得ざる所用のためにしばらく失礼いたしましたが、その間いま坂口さんからお話しのあったようなこと等についていろいろ御質疑もあり、また同時に御意見の御開陳等もあった模様でございますが、いまもお話が出ましたように、大変大事なことであり、しかも急いで対処しなければならないという事情は御指摘のとおりでございます。私どもも、そういう事情をよく念頭に置き、また、先刻来お話のありましたこと等を参考にいたしまして、できるだけ速やかに成果を上げ得られるような方策を講ずるよう、大いに努力をいたしたいと思います。
  219. 坂口力

    ○坂口委員 終わります。ありがとうございました。
  220. 大村襄治

    大村委員長 永原稔君。
  221. 永原稔

    ○永原委員 なるべく重複しないように、しりの時間が決まっておりますので簡単に質問します。  国家公務員共済組合と一言で申しましても、単位組合はたくさんあると思うのです。連合体として経理をなさっているのでしょうが、各省別に見ていった場合に、負担金率、それからそれぞれ各省の負担する分、そういうのに差があるのではないかと思いますが、長期、短期それぞれについて、最高と最低のところを、率、省を教えていただきたいと思います。
  222. 禿河徹映

    禿河政府委員 国家公務員の共済組合は現在二十五組合ございますが、その中で、短期につきましては、各組合ごとに収支がバランスいたしますように掛金を決めております。それから長期につきましては、この二十五のうち二十組合が連合会を結成いたしておりまして、全体としては、その二十組合が一つの連合会、残りの五つがそれぞれ独立、こういうことで長期の掛金率を算定しているようなわけでございます。  それで、その掛金の最高、最低でございますが、この四月現在で申し上げますと、短期の掛金率の最高は林野庁の千分の五十・五、それから最低は、これは防衛庁の自衛官とかあるいは外交官等在外勤務の職員等の特殊なものを除いて申し上げますと、衆議院共済の千分の三十二ということに相なっております。  それから、長期掛金率の最高は、造幣局と林野庁の共済の千分の四十七・五、最低が郵政省共済の千分の四十五ということに相なっております。
  223. 永原稔

    ○永原委員 給付については各省同じだと思いますけれども、こういうように負担率に差がある、こういうのが各省庁間でどうしてプール計算ができないだろうか、そのことを伺いたいのです。  短期給付については、今度小沢厚生大臣が社会保険審議会に一つの諮問をなさいました。その内容を細かくは触れませんけれども、一つ考え方が打ち出されております。組合健保といいますか、組合の経営する健康保険については、それぞれ財源調整をするために千分の二程度上乗せして、それを赤字組合の方に回すような調整をするというようなことが計画され、諮問されております。内容そのものは別として、そういうような考えで、この国家公務員共済組合の中でも、短期給付などについては財源調整を考える必要があるのではないかと思いますが、いかがでしょうか。
  224. 禿河徹映

    禿河政府委員 長期の掛金率につきましては、先ほど申し上げましたとおり大した差はございませんで、その将来の問題は別といたしまして、一応現行の率ということを前提でいけるのではないか、かように考えておりますが、確かに短期の掛金率につきましては、先ほど申しましたとおり、千分の三十二から五十・五と、実はかなりの開きがあるわけでございます。  したがいまして、この短期の掛金率について、御指摘のとおりその間の財源調整とかあるいは財源のプールとかいうふうなことを考えるべきではないかという御指摘があるわけでございますが、この短期につきましての財源プール等のことを行います場合に、その方法にもよるかと思いますけれども、やはり一緒にいたしますと、どうしても短期の収支の均衡ということになりますと、低い組合からは、プールすることによりましてどうしても高くなる、その辺をどうしてくれるのだというふうな問題も出てくるのではないかと予想もされます。それから、いろいろ組合員の年齢構成、あるいは短期の方につきましても扶養家族の数とかいうものの差がございますが、その差がありながらも、いろいろ組合の中で組合員の指導等に力を入れまして、いわば経営努力と申しますか、そういうふうなことをやってきております組合もあろうかと思います。そういうふうなものを財源プールというふうなときにどういうふうに考えていけばいいのかとかという問題もあろうかと思います。あるいは事務処理体制をどうするかとかというようないろいろな問題があろうかと思います。  そういうふうな問題をいろいろ考えながら、その解決を図りながら、いろいろ各組合員の同意がないとやはりできない、コンセンサスを得なくてはならない問題でもございますので、私ども今度、健康保険法の改正等におきましても、健保組合の財源調整の問題も出ております。そういうふうな問題も片一方にはございますので、できるだけ前向きにこの問題に取り組んでいきたいと思いますが、いま申しましたようないろいろな問題を踏まえ、組合員のコンセンサスを得ながらやっていく方向で審議会等にもお諮りをして結論を得たい、かように考えております。
  225. 永原稔

    ○永原委員 同じ問題がやはり健康保険組合にはあると思うのです。それをあえて厚生大臣が乗り切って、そして原案をつくって諮問をした、こういう態度を私はやはり評価すべきだと思うのです。国家公務員の共済の中でも、こういうように差があるだけに、大蔵大臣はこういうものについて、厚生大臣がおっしゃったような意見を簡単におとりになるということはできませんでしょうか。それが一点。  それと、時間がありませんので先に申しますが、大河内会長が提言していますように、基本年金構想、こういうものは、恩給法の発生からずっと考えていきますとなかなかなじまないかもしれませんけれども、そういうものが片や打ち出されております。これに対して大蔵大臣はどういうように対応しようと考えていらっしゃいますか、そういう点を伺いたいと思います。
  226. 村山達雄

    村山国務大臣 年金制度の問題は、御承知のように基本的なものは、やはり厚生年金あるいは国民年金でございます。やはりそちらの方がどういうふうになるかということを見定めないと、なかなかむずかしい問題があると思います。  いま国家公務員の年金の問題でございますが、二つ三つ問題がございまして、大きく分けますと、いわば民間の被用者との関係を一体どういうふうに考えたらいいのかという問題、それから全体として一体いまのような形でいつまで財源的に続くかという問題が一つございます。それから三番目の問題としまして、いま御指摘になりましたような個々の組合によりまして非常に財政状況が違う、それを統合するかどうか、こういう非常にむずかしい三つの問題を抱えておるわけでございます。  これらの問題につきまして、われわれも鋭意検討してまいりたいと思うわけでございますけれども、やはり基本をなします年金の姿勢というのは、私は厚生年金国民年金が中心であろうと思いますので、その辺と連絡をとりまして鋭意勉強してまいりたい、かように思っているところでございます。
  227. 永原稔

    ○永原委員 先ほどもちょっと問題が出ましたけれども、これは保険計数との関連で料率を決めなければならないとは思いますけれども、恩給法時代と比べて大分受給年限が長く伸びておるんじゃないか、そういう中で料率というのは、保険料として考えていった場合に一体どういうのが限界になるのか、おのずから出てくるのではないかという気がするのですけれども、いかがでしょうか。そして、それを個人負担あるいは国がどういうふうに負担するか、国家公務員についてはその負担率を検討すべきだと思いますけれども、その辺を伺いたいと思います。  後の方の質問がありますので、その辺にとどめておきます。
  228. 禿河徹映

    禿河政府委員 確かに最近平均余命と申しますか、老齢化の傾向等もございまして、これは共済年金のみならず各種の公的年金でも、そういう面から年金支払いのための総費用が増大していく傾向にはございます。この総費用は、年金の額と受給期間、その二つの要素が一番大きいわけでございます。確かに平均余命が伸びていくということによりまして費用が増大し、財源率の計算に当たっては、そういうものを用いていろいろ計算をしなくてはならない、こういうことになるわけでございますが、さてその限界ということに相なりますと、大変むずかしい問題でございまして、一般の保険料負担というものをどこまで求めるのが妥当であるのか、あるいは租税負担というものをどの辺まで求めていくのがいいのかというふうな問題とも非常に深く関連をいたすわけでございます。  先ほど厚生省の方からお話がございましたとおり、厚生年金一つとりましても、昭和八十五年度には、相当な保険料負担がないと現行の水準を維持できない、こういうことでございますので、そういう点も私ども頭に置きながら、将来の保険料負担等の問題は対処してまいりたいと考えております。
  229. 大村襄治

    大村委員長 沢田広君。
  230. 沢田広

    ○沢田委員 きわめて時間が短いようでありますから、簡単に行います。  今日行われている春闘に当たって、運輸大臣としても御努力はいただいているのだろうと思いますが、共済組合の方も受忍する組合費の限界を超えつつあります。そういう状況等に照らし合わせましても、共済組合の方はこれでともかく円満に協調しているわけでありますから、正常な労使慣行を挑発することなく、ひとつ円満に収拾していただくように御配慮を要望いたしまして、実は内容的には質問は時間の関係できょうはしません。しかし、そういう点は、ぜひ共済組合のこの要領のよさをひとつ労使の関係にも受け継いでいただいて、それぞれ善処していただくよう要望する次第です。  最後に、事務当局にでありますが、これは大臣が忙しければ、後で採決の場がありますから、これも簡単に終わります。  請求権の五年というのは、民法上から考えてみても非常に短過ぎるのではないか。いわゆる受給資格者が、法の改正がこうどんどんたくさん行われて、自分の適用される権利が単に五年で打ち切られてしまうということは、非常に短い。しまった、五年過ぎちゃったといっても、後で追いつかないという例がたくさんあるわけです。ですからもう少し——この共済組合法というのは、むずかし過ぎてだれも飛びつかないのですよ。私も、国会図書館から昭和二十二年以来のあれをもらってきて見てまいりましたが、とにかく附則、附則、附則、何条、何条で、前へ戻っていってまた何条という形で、これはとてもむずかしい。時間が過ぎましたから、この五年を若干緩和する考え方はないかどうか、あるいは特別条項について緩和することは考えられないかどうか。  それから、交通事故等がいま一年間に六十一万人いるのですが、それぞれ共済組合で立てかえ障害年金を行うことが法律上規定されているわけです。しかし、実際はどうも、私の調査の結果では、ないようであります。これも一家族四人で十六万八千百九十円ということになっているわけで、これも上がるでしょうけれども、そういうことになっているものを考えられないかどうか。これを御検討いただけるかどうか、それだけできょうの私の追加質問を終わりたいと思います。
  231. 禿河徹映

    禿河政府委員 第一番目の年金請求権の時効の五年の問題でございますが、この五年はたしか現在、公的年金制度全般を通じまして五年という仕組みでやっていると思いまして、私ども特に短いとも考えておりません。それに、年金額改定等があります場合には、職権改定で、年金受給者に対しましては、あなたの年金は今度こういうふうに改善に相なりましたという通知を出しておりますので、実際上五年で短過ぎて非常にぐあいが悪いということはないのではないかな、かように思っておりますが、なお、その辺のところを実態等をもう一回見ながら検討さしていただきたいと思います。  それから第二点の、交通事故がありました場合の組合の立てかえ払いの問題でございますが、この実態はちょっと私ども、急な御質問でもあり、とらえかねておりますので、調査いたしましてまた後ほど御報告さしていただきたいと思います。
  232. 福永健司

    ○福永国務大臣 沢田さんのいまの御質問を伺っておりますと、余り私から申し上げることはないわけでございます。よく伺っておきます。こう申し上げることでございましょう。もっとも、前に伺いました質問要旨からするといろいろあるので、いまおっしゃいませんでしたが、それをごもっともですと申し上げているわけじゃございません。この点につきましては、私は全体のなにがございますが、ただいま言葉で御表明になりましたことにつきましては、よく伺っておきたいと思います。
  233. 大村襄治

    大村委員長 これにて両案に対する質疑は終了いたしました。     —————————————
  234. 大村襄治

    大村委員長 この際、両案に対し、自由民主党を代表して綿貫民輔君外二名より、それぞれ修正案が提出されております。  この際、提出者より趣旨説明を求めます。小泉純一郎君。     —————————————  昭和四十二年度以後における国家公務員共済組合等からの年金の額の改定に関する法律等の一部を改正する法律案に対する修正案  昭和四十二年度以後における公共企業体職員等共済組合法に規定する共済組合が支給する年金の額の改定に関する法律及び公共企業体職員等共済組合法の一部を改正する法律案に対する修正案     〔本号末尾掲載〕     —————————————
  235. 小泉純一郎

    ○小泉委員 ただいま議題となりました両修正案につきまして、提案趣旨及びその内容を御説明申し上げます。  御承知のとおり、これら共済年金関係の二つの法律の施行期日は、原案では「昭和五十三年四月一日」と定められておりますが、申し上げるまでもなく、すでにその期日を経過いたしておりますので、両修正案は、それぞれ施行期日を「公布の日」に改めるとともに、これに伴いまして、所要の規定の整備を行うものであります。  何とぞ御賛成くださいますようお願い申し上げます。
  236. 大村襄治

    大村委員長 これにて趣旨説明は終わりました。     —————————————
  237. 大村襄治

    大村委員長 これより討論に入るのでありますが、討論の申し出がありませんので、直ちに採決に入ります。  初めに、昭和四十二年度以後における国家公務員共済組合等からの年金の額の改定に関する法律等の一部を改正する法律案について採決いたします。  まず、本案に対する修正案について採決いたします。  本修正案に賛成の諸君の起立を求めます。     〔賛成者起立〕
  238. 大村襄治

    大村委員長 起立総員。よって、本修正案は可決いたしました。  次に、ただいま可決されました修正部分を除いて、原案について採決いたします。  これに賛成の諸君の起立を求めます。     〔賛成者起立〕
  239. 大村襄治

    大村委員長 起立総員。よって、本案は修正議決いたしました。  次に、昭和四十二年度以後における公共企業体職員等共済組合法に規定する共済組合が支給する年金の額の改定に関する法律及び公共企業体職員等共済組合法の一部を改正する法律案について採決いたします。  まず、本案に対する修正案について採決いたします。  本修正案に賛成の諸君の起立を求めます。     〔賛成者起立〕
  240. 大村襄治

    大村委員長 起立総員。よって、本修正案は可決いたしました。  次に、ただいま可決されました修正部分を除いて、原案について採決いたします。  これに賛成の諸君の起立を求めます。     〔賛成者起立〕
  241. 大村襄治

    大村委員長 起立総員。よって、本案は修正議決いたしました。     —————————————
  242. 大村襄治

    大村委員長 ただいま議決いたしました両案に対し、自由民主党、日本社会党、公明党・国民会議、民社党、日本共産党・革新共同及び新自由クラブを代表して、野田毅君外五名より附帯決議を付すべしとの動議が提出されております。  この際、提出者より趣旨説明を求めます。佐藤観樹君。
  243. 佐藤観樹

    ○佐藤(観)委員 ただいま議題となりました附帯決議案につきまして、提出者を代表して、提案趣旨を簡単に御説明申し上げます。  本附帯決議案は、国家公務員及び公共企業職員関係の共済組合制度については、その給付水準等も逐年改善が行われてまいりましたが、さらに、生活の安定等に資するため、なお引き続き検討すべき諸点を取りまとめ、その実現が図られるよう政府の一層の努力を要請するものであります。  個々の事項の趣旨につきましては、先ほどの委員会審議において論議がなされ、また、案文でほぼ尽きておりますので、案文の朗読により趣旨説明にかえさせていただきます。     「昭和四十二年度以後における国家公務員共済組合等からの年金の額の改定に関する法律等の一部を改正する法律案」及び「昭和四十二年度以後における公共企業体職員等共済組合法に規定する共済組合が支給する年金の額の改定に関する法律及び公共企業体職員等共済組合法の一部を改正する法律案」に対する附帯決議(案)   政府は、国民相互間の信頼感を確保し、共済組合制度の充実を図るため、左記事項を実現するよう、なお一層努力すべきである。  一 共済組合の長期給付に要する費用の国庫負担分については、厚生年金等の負担と異なつている現状にかんがみ、公的年金制度間の均衡を考慮して、すみやかに適切な措置を講ずるよう検討すること。また、短期給付に要する費用負担についても、組合員の負担上限について配意しつつ、適切な措置を検討すること。  二 国家公務員共済組合等及び公共企業体職員等共済組合からの年金について、国民の生活水準、国家公務員及び公共企業職員の給与、物価の上昇等を考慮し、既裁定年金の実質的価値保全のための具体的な対策を早急に進めること。  三 公共企業体の共済組合の長期給付の財源方式については、他の公的年金制度との均衡を考慮して、負担区分を明確にして、健全な年金財政の実現に努めること。  四 遺族年金については、受給者の生活の安定に資するため、さらに、給付水準の引上げに努めること。  五 旧令、旧法による年金額の改善については、引き続き一層努力すること。  六 国家公務員共済組合及び公共企業体職員等共済組合制度間の差異について、早急に是正するよう検討するとともに、国家公務員等退職手当法第五条の二に規定する公共企業職員の退職手当について、すみやかに改善措置を講ずるよう検討すること。  七 家族療養費の給付については、他の医療保険制度との均衡を考慮しつつ、その改善に努めること。  八 共済組合運営が一層自主的、民主的に行われるため、運営審議会において組合員の意向が充分に反映されるよう努めること。  九 公共企業体職員等共済組合に関する制度について、学識経験者等により調査審議する機関の設置を早急に行うこと。 以上であります。  何とぞ御賛同を賜りますようお願い申し上げます。
  244. 大村襄治

    大村委員長 これにて趣旨説明は終わりました。  お諮りいたします。  本動議のごとく両案に対し附帯決議を付するに御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  245. 大村襄治

    大村委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決しました。  本附帯決議に対し、政府より発言を求められておりますので、これを許します。村山大蔵大臣
  246. 村山達雄

    村山国務大臣 ただいま御決議のありました事項につきましては、政府といたしましては、御趣旨を体しまして十分検討いたしたいと存じます。
  247. 大村襄治

    大村委員長 福永運輸大臣。
  248. 福永健司

    ○福永国務大臣 ただいま附帯決議のありました事項につきましては、政府といたしまして、御趣旨を体し十分検討いたしたいと存じます。     —————————————
  249. 大村襄治

    大村委員長 お諮りいたします。  ただいま議決いたしました両法律案に関する委員会報告書の作成につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  250. 大村襄治

    大村委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決しました。     —————————————     〔報告書は附録に掲載〕     —————————————
  251. 大村襄治

    大村委員長 次回は、来る五月九日火曜日午前九時五十分理事会、午前十時委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。     午後五時七分散会      ————◇—————