○植谷参考人 ただいま
委員長から御指名をいただきました公社債引受協会の植谷でございます。
本日は、
昭和五十三年度の
公債の
発行の
特例に関する
法律案につきまして、
意見を述べるようにとのことでございますので、証券界の
立場から所見を申し上げて、御参考に供したいと思います。
さて、私から改めて申し上げるまでもなく、わが国経済の現状は、長期にわたる景気低迷によりまして、国内では失業、倒産などの摩擦現象を生み、外との
関係では国際収支黒字を増幅しまして、円高に拍車をかけているということではないかと思います。
先般成立を見ました新
予算は、公共事業費の大幅増加を
中心に内需の拡大を図ることによりまして、いま申し上げましたわが国経済が直面しております難局に対処しようとするものであり、適切かつ妥当な政策選択として高く
評価するものでございます。
ただいま申し上げましたような内需の拡大のための牽引車としての役割りを
財政に期待せざるを得ないという絶対的な要請があり、その反面、長期にわたる不況から税収が伸び悩んでいるという厳しい現実がございます。したがいまして、五十三年度
予算と表裏一体の
関係になっております
財政特例公債法による四兆九千三百五十億円の
国債を
発行することも、やむを得ないのではないかと
考えております。
特例公債の継続的
発行につきましては、私どもが申し上げるまでもなく、健全
財政という見地から見て問題なしとするわけではございません。それだけに現下の不況から早期に脱出し、
財政再建を図ることが強く望まれるわけでございます。そのために、
政府におかれましては、先般
昭和五十三年度
予算に盛り込まれました各種公共事業の早期円滑な執行を図ることを
決定されたわけでありますが、その裏づけとして、
国債も年度を通じての計画的
発行が可能となるように、本
財政特例公債法案の早期成立を特にお願い申し上げる次第でございます。
いずれにいたしましても、私ども証券界は、
建設公債とあわせまして、
特例公債につきましても全力を挙げてその消化に取り組み、
財政の円滑な
運営にいささかなりともお役に立ちたいと
考えておる次第でございます。
次に、私ども証券界が担当しております
国債の
個人消化につきまして、近況を御報告申し上げるとともに若干のお願いを申し上げて、
委員各位の御理解を賜りたいと存じます。
昭和五十二年度におきます
国債の市中公募額は、利付
国債によるものが八兆五千七百億円であり、割引
国債によるものが二千九百億円強でございましたが、私ども証券界は、そのうち、利付
国債では前年度比倍増に当たります二兆六百六十億円を、割引
国債ではその全額を引き受けまして、
個人を
中心とする一般消化を行ったのであります。市中公募額に占めるシェアで申し上げますと、利付
国債の二四・一%を、また割引
国債を合わせますと二六・六%を達成いたしたわけでございます。
五十二年度は、総じて良好な消化環境が続いたことに加えまして、
当局におかれましても
発行条件について市場実勢に対して十分配慮なされたこと、また、私どもも業界を挙げて
国債の消化に取り組みましたこともあって、おかげをもちまして、先ほど申し上げましたような結果をもたらすことができたわけでございます。
私ども証券界としましては、このような実績を踏まえまして、五十三年度におきましても、前年度を上回る
国債の消化ができるように懸命の
努力をいたしたいと
考えている次第でございます。
しかしながら、私どもの
努力はもちろんでございますが、そのためには、前年度に引き続きまして、
委員御各位並びに
発行御
当局の温かい御理解、配慮が何よりも必要でございまして、ここに重ねて何分の御協力をお願い申し上げる次第でございます。
以下、幸い発言の機会をいただきましたので、この機会をおかりいたしまして、
個人など一般投資家との接点に立っております私ども証券界の
立場から、
国債について若干のお願いを申し上げ、
委員各位の御理解をいただきたいと存じます。
その第一は、
国債の
発行条件を流通市場の実勢に基づいて弾力化し、投資対象として常に魅力あるものとしておくことでございます。
今回の息の長い
金融緩和の過程におきまして、
国債の
発行条件は七回にわたりまして改定が行われたものでありますが、その
引き下げ幅はおおむね市場実勢を尊重した妥当なものであり、その結果として、
金融緩和にも支援されまして
個人消化の急拡大を達成することが可能であったのでございます。
最近のわが国経済の
状況から推測いたしますと、
国債を含めまして債券の需給
関係は、当面は比較的平穏に推移するものと
考えております。しかしながら、今日のわが国の公社債市場は、基本的にはかつてない公共債の大量
発行下にあります。今後の景気回復の動向、
資金需要の盛り上がりいかんによりましては、流通利回りが上昇するという事態も十分想定しておく必要があろうかと思います。そのような環境変化に対応いたしまして、
貯蓄手段としての
国債の魅力を維持し、消化を常に円滑に進めてまいりますためにも、また
国債発行の健全性を維持するためにも、
発行条件を市場実勢に即して設定されていくという慣行が継続されることがことに肝要と存じます。
その第二といたしましては、
発行種類の多様化、
税制面の配慮等による投資対象としての魅力の向上でございます。
国債が魅力ある
金融資産といたしまして、広く
国民各層に保有されてまいりますためには、いま申し上げました
発行条件の適切な設定が基本となるわけでございますが、これに加えまして、
国民の多様なニーズに応じられるよう、
個人消化を主眼とした
発行形態の多様化が望まれる次第でございます。この点に関しましては、従来から
国債の
個人消化拡大等の
観点から、大変建設的な御論議をちょうだいしておりますが、今後とも引き続き積極的な施策をお願い申し上げる次第でございます。
また、
国債の魅力づくりという点に関連いたしまして、
税制上の諸般の施策についても御配慮を賜りたいと存じます。
なお、最後に
国債の流通市場につきまして若干触れさせていただきたいと存じます。
御高承のとおり、公社債の流通市場は、近年急速に拡大を見せておりまして、
昭和五十二年度の店頭売買高は全体で百三十三兆円という大きな規模に達しております。この中にありまして、
国債の売買高は同じく五十二年度の場合、前年度に比べまして七倍弱の大幅な増加となり、約二十二兆円に達しておりますが、これは公社債全体に占めます比率では一六・三%と利付
金融債、縁故地方債に次いで三番目の地位を占めるに至っておるわけでございます。ことに本年三月におきましては、公社債全売買高の二四%を占めるに至っておるのでございます。今後
発行残高の累増に伴いまして、
国債の売買高はなお一段と増大し、名実ともに公社債市場の中核となることはさほどの時日を要しないところと存じておる次第でございます。
そうした中におきまして、
国債に対します
国民の信頼を高めますとともに、
国債を
個人金融資産の中核として定着させてまいりますためには、
国債流通市場の整備が大変重要かと存じております。
私ども証券界といたしましては、従来にも増してこの点に真剣に取り組んでまいる所存でございますが、いずれにいたしましても、市場整備の基本的
方向としては、なるべく幅広い需給の投合を図ることにあると確信いたしております。また、これがひいては安定的な価格形成に連なるものであると確信しておる次第でございます。こうした見地から、
発行面の改善とあわせまして、流通
金融の一層の拡充等流通円滑化のための諸施策を推進していただくことが肝要かと存じます。
委員各位並びに
関係御
当局の御理解、御配慮をお願いしたい次第でございます。
以上をもちまして私の陳述を終わらせていただきます。ありがとうございました。