運営者 Bitlet 姉妹サービス
使い方 FAQ このサイトについて | login

1978-04-18 第84回国会 衆議院 大蔵委員会 第25号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和五十三年四月十八日(火曜日)     午前十時三十三分開議  出席委員    委員長 大村 襄治君    理事 小泉純一郎君 理事 野田  毅君    理事 保岡 興治君 理事 綿貫 民輔君    理事 佐藤 観樹君 理事 塚田 庄平君    理事 坂口  力君 理事 永末 英一君       愛知 和男君    池田 行彦君       宇野 宗佑君    小渕 恵三君       後藤田正晴君    佐野 嘉吉君       坂本三十次君    高鳥  修君       林  大幹君    原田  憲君       本名  武君    村上 茂利君       森  美秀君    山崎武三郎君       山中 貞則君    伊藤  茂君       池端 清一君    大島  弘君       川口 大助君    沢田  広君       平林  剛君    山田 耻目君       貝沼 次郎君    二見 伸明君       宮地 正介君    高橋 高望君       荒木  宏君    永原  稔君  出席国務大臣         大 蔵 大 臣 村山 達雄君  出席政府委員         大蔵大臣官房日         本専売公社監理         官       大槻 章雄君         大蔵大臣官房審         議官      米里  恕君         大蔵省主計局次         長       松下 康雄君         大蔵省主計局次         長       山口 光秀君         大蔵省理財局長 田中  敬君         大蔵省証券局長 山内  宏君         大蔵省銀行局長 徳田 博美君         大蔵省国際金融         局長      旦  弘昌君         建設大臣官房会         計課長     加瀬 正蔵君  委員外出席者         経済企画庁総合         計画局計画官  御巫 清泰君         大蔵大臣官房調         査企画課長   大竹 宏繁君         資源エネルギー         庁公益事業部業         務課長     上杉 一雄君         労働省職業安定         局失業対策部企         画課長     小野 進一君         建設大臣官房技         術調査室長   萩原  浩君         参  考  人         (社団法人公社         債引受協会会         長)      植谷 久三君         参  考  人         (社団法人全国         地方銀行協会副         会長)     馬瀬 清亮君         参  考  人         (日本銀行副総         裁)      前川 春雄君         大蔵委員会調査         室長      葉林 勇樹君     ————————————— 委員の異動 四月十八日  辞任         補欠選任   大久保直彦君     二見 伸明君   高橋 高望君     春日 一幸君 同日  辞任         補欠選任   春日 一幸君     高橋 高望君     ————————————— 四月十七日  舞台芸術入場税撤廃に関する請願麻生良方  君紹介)(第三一七六号)  同(野坂浩賢紹介)(第三一七七号)  同(安井吉典紹介)(第三二四五号)  税制財政金融民主化等に関する請願(伊  藤茂紹介)(第三一七八号)  同(大島弘紹介)(第三一七九号)  同(池端清一紹介)(第三二〇六号)  同(沢田広紹介)(第三二〇七号)  同(貝沼次郎紹介)(第三二四四号)  同(沢田広紹介)(第三二八九号)  不公平税制是正等に関する請願野坂浩賢君  紹介)(第三一八〇号)  同(稲葉誠一紹介)(第三二〇八号) は本委員会に付託された。     ————————————— 本日の会議に付した案件  昭和五十三年度における財政処理のための公債  の発行及び専売納付金納付特例に関する法  律案内閣提出第三号)      ————◇—————
  2. 大村襄治

    大村委員長 これより会議を開きます。  昭和五十三年度における財政処理のための公債発行及び専売納付金納付特例に関する法律案を議題といたします。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。高橋高望君。
  3. 高橋高望

    高橋委員 大蔵大臣に冒頭お尋ねしたいのでございます。  特に昨年でございましたが、私たちの国の財政節度ということで、公債発行三〇%という枠を非常に厳しくと申しましょうか、しっかりと歯どめをかけられてスタートされたかと思います。ところが、御承知のような経済環境で、補正予算並びに十五カ月予算等々で、この三〇%の枠がやはりどうしても守り切れなくなって、御承知のような数字の展開になってきた。ただ、この枠を超えたからといって、今度はその節度というものをやはり新しく考え直さなければいけないのに、ただそのままずるずるこれが伸びていくというようなことでは、私はまた大変な問題になろうかと思います。  そこで、まずお伺い申し上げたいことは、この新しい指標等を用意された上で、公債発行等のこういう財政の枠、財政節度というものをどのように今後私たちに説明していかれますか、その辺のお考え方をまずお伺いいたしたいと思います。
  4. 村山達雄

    村山国務大臣 ことしの予算の組み方の形でお示ししていますように、経常経費資本経費と両方分けているわけでございまして、同じ公債と申しましてもそれぞれ特例債建設公債を分けているのは、その経費性質が違うというところにあるわけでございまして、最近特例債が非常に大きくなっているところに最大の問題があると考えているわけでございます。  投資的経費の問題は、どちらかと申しますと、そのときどきの景気の状況に応じてやはり弾力的に運営すべき性質のものでございます。したがいまして私たちは、当面の節度といたしましては、少なくとも経常経費に対するところの特例債依存度というものを中心考えていきたい、長い目で見まして考えるときにはこれが一番大きな問題であろう。ことしは二四%くらいだと思いますけれども、これを極力圧縮する方向で今後財政節度を維持してまいりたい、これが第一点でございます。そして、試算にお示ししてありますように早くこれを脱却したい、これが第二の目標であるわけでございます。  建設国債につきましては、これは特例公債との相関関係はありますけれども、民間資金需要がどの程度起きてくるか、やはり財政でてこ入れをする必要があるのかどうか、こういう観点から考えてまいります。したがって、全体としての公債依存度を、もちろんこれは第三番目のメルクマールとして考えているわけでございますけれども、主としては特例債の圧縮あるいは脱却、長い目で見ましてこういう問題で考えていきたい、そういうことでございます。
  5. 高橋高望

    高橋委員 五十三年度、とりあえず特例債依存度を二四%にしたい、こうおっしゃるのですが、やはり経済見通しでございますから、少なくとも五十四年度、来年度くらいに対してのお見通しはいかがでございましょうか。
  6. 村山達雄

    村山国務大臣 ことしが経常経費に対する特例債依存度が二四%でございますので、来年度はぜひそれから圧縮いたしたい、こういう念願でおるわけでございますが、どの程度になるかということにつきましては、また来年のいろいろな事情がございますので、その段階で具体的に決めてまいりたい、かように思っているわけでございます。
  7. 高橋高望

    高橋委員 私が申すまでもなく、特例債依存度ということは、いろいろな意味で私たちの国の財政の体質を根本的に悪くする筋合いのことでございますから、どうぞ大臣、ひとつこの辺はお考えをいただいて、適時適切というよりも早目野党側にもその協力の要請等々をおやりいただきまして、それこそ一日も早く脱却をするということに私たちの務めとして取り組みたいと思いますので、ひとつ早目の御指示あるいは展開方向等をお示しいただきたいとお願い申し上げておきます。  それでは、少々話題を変えさせていただきます。  きょう私、主税局の方をお呼びすることをちょっと失念したのでございますけれども、つい最近、郵政大臣が、例の退職金千五百万までは無税にするという構想をどこかの席でぶち上げられた。私たち立場にすると、そういうことを郵政大臣がおっしゃるということに対して、何か非常に違和感があるわけですね。これは単にいわゆるアドバルーンを上げるという割り切り方で済ませられない非常に敏感な問題だけに、こういうことに対しての大蔵当局の御判断をまず伺ってみたいと思いますが、いかがでございますか。
  8. 村山達雄

    村山国務大臣 その件につきましては、実はわれわれは、郵政省から正式には連絡を受けておりません。ただこの前、衆議院の本会議でしたか参議院でしたか、やはり新聞でそういう構想が伝えられまして、郵政大臣並びに私に見解を求められたのでございますが、郵政大臣は、これはまあいろいろな法律改正を要する問題であることは百も承知だけれども、一つ考えとして事務当局検討を命じた段階であるという御答弁でございました。私は、そのときこういうことを申し上げたわけでございます。連絡は受けておりません。それから、現在退職金については、御承知のように退職所得最高一千万円までの控除があって、あとは二分の一にして分離課税制度がございます。一方、少額貯蓄非課税制度は、郵便貯金の方で三百万という限度がございます。それから普通の金融機関で三百万ございます。国債で三百万ございます。少額貯蓄の方は、財形でやりますと五百万までいきますから、九百万ないし一千四百万ぐらい非課税限度がございます。現在の日本の世帯の金融資産実情からいって、いまの非課税限度が幅が少ないとは思いませんという答弁をいたしたわけでございます。  したがいまして、まだ何にもアプローチがないもので、まあ実情をありのままに申し上げますとそういう状況でございますので、まだこちらは検討しているということでもございません。
  9. 高橋高望

    高橋委員 これはとかく私たち大蔵委員会でいろいろとお話を聞いている段階で、郵政省の方の郵便貯金の問題がいろいろと話題に出てくることがございます。特に金利も含めてですね。実際に三月十六日に公定歩合の引き下げが行われて、昨日、十七日でございますか、預金金利が下がったかと思いますが、これに伴っての郵便貯金金利をどうするかということを、私はまことに勉強が足りないのですが、なぜか郵政審議会の方でだけこの郵便貯金金利検討される。こういう仕組みというものは、政府という一つ協議機関の中で、郵便貯金金利問題だけは郵政審議会が取り扱うというのに何か私、割り切れないものを感じるのですが、この辺は銀行局長の御答弁になりましょうか、ちょっと私、伺わさせていただきたいと思うのです。
  10. 徳田博美

    徳田政府委員 確かに先生指摘のとおり、現在、預貯金金利の変更につきましては、民間金融機関預金金利は、金利調整審議会の議を経て日銀政策委員会がこれを決定する、一方、郵便貯金金利は、郵政審議会の議を経て政令決定する、このように二元化しているわけでございます。金利政策の機動的、弾力的な運営の面から考えますと、この金利決定機構二元化されているということは非常に問題が大きいと考えております。  ただしかしながら、当面この問題の解決の方法といたしましては、郵政大蔵当局が各方面立場に十分配意いたしまして、両方で話し合いをうまくやることによりまして、制度の円滑な運営によりまして金利政策の適切な運用を確保していきたい、このように考えております。
  11. 高橋高望

    高橋委員 いや局長、実はその辺がよくわからないのですけれどもね。逆にお伺いするのですが、そうでしたら、これを郵政審議会でやってもらう利点というのはどこにあるんでございますか。
  12. 徳田博美

    徳田政府委員 郵便貯金金利につきましては、郵便貯金法十二条によりまして、「政令利率を定め、又はこれを変更する場合には、郵便貯金簡易で確実な少額貯蓄手段としてその経済生活の安定と福祉の増進のためにあまねく国民大衆の利用に供される制度であることに留意し、その利益を増進し、貯蓄の増強に資するよう十分な考慮を払うとともに、あわせて一般の金融機関預金利率についても配意しなければならない。」このように定められておるわけでございまして、このような点について郵政審議会において十分御審議いただく、このような仕組みになっておるわけでございます。
  13. 高橋高望

    高橋委員 私のお尋ねの仕方が少し的外れなのかもしれませんけれども、郵便貯金の額が多くなっているがために、こちらの方でいろいろと考える。私は、郵便貯金は必ずしも最近は零細な方の貯金とは思えないのですけれども、そういうことを仮に考えた場合でも、何か預かっているお金全体がもう多くなってきているから、その多い分の発言というものは尊重しなければいけない、こういう配慮が銀行局におありになるのですか。
  14. 徳田博美

    徳田政府委員 確かに現在、郵便貯金の残高は個人預貯金の四分の一近くに上がっているわけでございまして、量的な面からも非常に大きな影響力を持つに至っているわけでございますが、ただ、金利決定につきましては、預金金利決定金利政策のたてまえから、先ほど申し上げましたように金利調整審議会議論されるわけでございますけれども、ただ、郵便貯金の場合には、先ほど申し上げました郵便貯金の本来の目的から申しまして、少額貯蓄者のための簡易、確実な貯蓄手段であるという点から、法律上も金利決定について配意するような仕組みになっているわけでございますので、現在の法制上のたてまえではそのような観点からいまのような二元化の形になっているのではないか、そういう点に配慮して二元化されているんではないか、このように考えております。
  15. 高橋高望

    高橋委員 銀行局長に重ねて伺いますけれども、それでは、郵政審議会大蔵側の意向を盛り込むためにはどのような接触をなさいますか。逆に伺うならば、大蔵省当局でどういう肩書きでどういう立場の方が郵政審議会のメンバーになっていて、少なくとも常識考えたら一元化しなければならないものに対しての歩み寄りと申しましょうか、意見具申というか、そういうものはどのような方がどのようになさっておられるのですか。
  16. 徳田博美

    徳田政府委員 郵政審議会に諮問する前段階におきましては、大蔵当局郵政当局との間でいろいろな話し合いも行われますし、各方面に対するいろいろな配意が行われるわけでございます。  それから、郵政審議会委員には、現在のところ大蔵省の事務次官が委員として出席しております。必要な意見はそこで述べる形になっております。
  17. 高橋高望

    高橋委員 政府金利決定の姿勢として、どう考えても、近い将来に一元化するというのが筋のように私は思うのでございます。なぜかと申しますと、もう皆様苦々しく御体験のように、最近預貯金、特に郵便貯金金利考えると、それに伴って必ず何か新しい制度が出てくるわけです。私は、そのこと自体はありがたいことでもあると思うのです。けれども、それを取り上げる部署がどこかということになりますと、私は、郵政省が取り上げられることには、御説明聞いても何かどうもいまだに割り切れないのですがね。これは実情を知らない者の意見としてひとつ御説明いただきたいのですが、何かどうもこの辺については私、納得できない。ですから、制度としてはありがたいので、そのこと自体は、くどいようですけれども、歓迎すべき制度もたくさん出てまいりますけれども、これを郵政省がぶち上げて、しかも郵政省がそれを何かいかにも手柄顔でやるということは、ちょっとわれわれが常識考えて納得できないところがあるんですけれども、局長、この辺は御意見、どんなふうにお考えになられますか。
  18. 徳田博美

    徳田政府委員 先ほど申し上げましたとおり、金利政策の機動的、弾力的な運営という観点からは、本来金利というのは、一物一価でございますから、預貯金金利を一元化して運用されることが望ましいわけでございます。したがいましてその点から、預貯金金利決定機構のあり方については、今後重要な問題として検討が行われるべきものと考えておりますし、また、先生指摘のとおり、預貯金金利引き下げに当たりましては、やはり一国の金利政策としての立場からいろいろな検討が行われることが望ましい、このように考えております。
  19. 高橋高望

    高橋委員 さらに局長にお尋ねしたいのは、郵便貯金財投の有力な財源だと思いますけれども、郵政省の方が財投計画に対して少し口出しをしたいというような気持ちを持っているのですか。
  20. 田中敬

    田中(敬)政府委員 郵政省運用部関係のあります資金といたしましては、郵便貯金簡保資金と両方ございます。郵便貯金につきましては、全額統一的に運用部に預託されて、運用につきましては財政当局に一任をされた形になっておりますので、その限りにおきましては問題はございません。  問題は簡保の方にございまして、運用部に預託する金利では運用利回りが低いので、民間の保険との競合上競争力がないというようなことから、これを分離運用したいあるいは余裕金についての有利運用をしたいというような御要望が毎年出ておりますが、それにつきましては本年度、簡保余裕金預託金利を弾力的に引き上げるという措置をとることによりまして、郵政省と統一的に了解ができまして、いまの段階ではその問題は両省間では解消したというふうに考えております。
  21. 高橋高望

    高橋委員 大臣に私はこのことで最後にちょっと御意見を伺っておきたいのですけれども、こういうのは世間では、何か仕事の分捕り合いじゃないかとかそういうふうな評価をするのが、決して皮肉な見方じゃなく行われて、これが逆に言えば、努力なさっているわりに正当な御評価を受けないという、お役所の仕事に対する世間の声になってしまっているのじゃないかなと私は思うのですね。ですから、これはある時期にやはりすっきりさせなければいけませんし、それからまた、現実にいまのように郵便貯金の方がどんどんふえていっているときにはむずかしい問題かと思いますけれども、大蔵大臣のお立場でこの辺について抜本的な考え方をもしお持ちでございましたら、私たちにひとつお聞かせをいただきたいと思うのでございます。
  22. 村山達雄

    村山国務大臣 実は非常にむずかしい問題だと思っているわけでございます。  御案内のように、郵便貯金制度は非常に古い制度でございまして、長年の経緯があるわけでございます。恐らくは一種の零細貯蓄を預かる、それの安全的な運用を図る、こういうことで古くからできたものでございまして、しかも、それは限度は決められておりますけれども、その預金の利子に対しては非課税、こういう制度は恐らく余り世界でもないのじゃないか、こう思うわけでございますが、それは歴史的なそれだけの意味があってできたわけだろうと思うのでございます。現在では財政の原資として有力な働きをなしておるということは御承知のとおりでございます。しかしまた、往々にして限度を超えて預入しているというような事実もときどきございまして、郵政当局の方ではその点をできるだけ自粛していただいておる、いろいろなチェックの方式でやっておるわけでございます。  一方、金利の問題から申しますと、そのような、歴史的経過のために、その預金金利につきましては、郵政審議会の議を経て、諮問を経なければ決められない、こういうことになっているわけでございます。いまこれらの制度をにらみ合わせまして、抜本的に何か改正するかと申しましても、何しろ非課税の問題あり、いろいろな問題があるわけでございますので、ちょっとすぐ抜本的なものというのは少し実際的でない、こう思っておりまして、いま実際やっておりますことは、乱用がないようにお互いに協力し合うということが第一点、それから第二番目には、金利はそれぞれ別の機関が決めることになっておりますけれども、近代国家におきましてもしそんなことがあったら大変なことでございますから、お互い制度制度として、運用は近代的にしていこうということで、預金金利を上げるときも下げるときも連絡をとりまして大体同一幅で動かしておる、こういうやり方でやっているわけでございまして、いますぐ抜本的な改正ということは実は考えていない、こんな状況でございます。
  23. 高橋高望

    高橋委員 わかりました。ただ、くどいようでございますけれども、何か御努力わりに、こういった仕事を続けていらっしゃいますと、下世話ないろいろの話題の種になるというようなこともございますので、何かひとつお考えになっておいていただきたいなと思います。  少し深入りし過ぎましたが、話を変えさせていただきまして、私は、国債整理基金特別会計の問題をちょっと伺ってみたいと思います。特に、時間のあれもございますが、繰り入れ定率の問題ですね。この辺について、今度の新しい償還計画と申しましょうか、償還試算等でお出しいただいているのは、ずいぶんと前までに比べればお考えいただいたかと思いますけれども、依然として四条公債分特例公債分を同じ率でお取り扱いになっておられる。これはどう考えても、特例公債分はもっとたくさんの率で繰り入れなければいけないのじゃないか。四条分について言えば、それだけの見返りの資産も確かにあるのですからそれでいいとしても、特例公債分定率はもう少し——基本的にまずはっきり二つに分けて処理すべきものであるというふうに考えますけれども、この辺いかがでございますか。
  24. 山口光秀

    山口(光)政府委員 特例公債につきましては、借りかえをしないということを申しております点も考えますと、ただいまおっしゃいましたように、一六%の定率繰り入れでなくてもっと率の高い、たとえばただいま十年債を中心に出しておりますから、十分の一を繰り入れたらどうかという御議論はかねてからあるわけでございます。しかし現在特例公債発行しているわけでございますから、仮にそういうふうに償還費をふやすということになりますと、それもまた特例公債依存するというような堂々めぐりの話になるわけでございまして、現在何が一番大切かと申しますれば、特例公債依存財政から脱却するということでございますので、まずそれを中心考えさせていただきたい。  特例公債償還財源につきましては、これもいろいろ御議論をいただいておりますが、私どもといたしましては、一・六の定率繰り入れ、それから、剰余金が出ましたらその剰余金繰り入れさせていただく、それから、もちろん特例公債依存段階では考えられませんが、依存から脱却いたしまして後といたしましては予算繰り入れ、この三本柱で総合的に減債制度運用して対処してまいりたいということでございまして、特例公債依存から脱却しました後につきましては、特に予算繰り入れについていろいろ工夫をいたしまして、財政負担が平準化するように努力してまいりたいと思っております。
  25. 高橋高望

    高橋委員 そこで、企業経営とはいささか質を異にするとは思いますけれども、やはり赤字を抱えている企業の再建のような場合には、思い切って赤字は出してもためるものはためる。要するに、こそくに、その瞬間、瞬間だけ間に合わさないで、ある時期には、やはり蓄積するものは蓄積しておくという手段をとらないと、企業的には本当の意味経営にならない場合もあるんですね。これは個人の家と違って、個人は、貯金があるのに借金してくることはないじゃないかという理論もあろうかと思いますけれども、国の場合はどちらかというと、思い切って赤字のときでもためるものは歯を食いしばってでも残して、そしてその努力を全体の国民の方にわかってもらって、そしてある時期にそれが実を結んでくる、こういう形をとる方が、何か結果的に早い手段のように思われるのですけれども、いかがでございますか。
  26. 山口光秀

    山口(光)政府委員 赤字公債を出しながら、一・六%という定率繰り入れを行うのはどうであろうかという議論も実はあるわけであろうかと思うわけでございます。それに対しましては、いまおっしゃいましたような考え方、一・六%という制度を守っていくということによりまして、財政節度維持を図っていく、あるいは負担をならしていくということを図っていく、考えていくという配慮が必要かと思いますが、しかし、赤字公債について制度を強化して、たとえば一・六でなくて十分の一繰り入れをするというようなやり方をとるところまでやる必要があるかどうか、ここは議論のあるところだと思いますが、私どもは、先ほど申し上げましたように、まず赤字公債脱却を図るのが先決であり、その後においては負担の平準化を配慮しなければならぬ、こういう順序で物を考えていっていいのじゃないかと思っておる次第でございます。
  27. 高橋高望

    高橋委員 一・六をはじき出されました根拠が、現在の財政の立て直しというものを考えた場合の根拠としても、私はいささか適さないのじゃないかという気がするんですね。ですから、これはあくまでも決断でおやりになることであって、一・六の妥当性はいまは私はないと思うんですね。それであるだけに、要するに経営感覚と申しましょうか、立て直す感覚というものから言って、この際決断が必要なんじゃないか、そう思って再度お尋ねをしたいのですけれども、一・六の根拠は、私はもういまには余り関係のない根拠のように思われてしようがないのですが、いかがでございますか。
  28. 山口光秀

    山口(光)政府委員 一・六を決めましたその根拠は、建設公債考え方が基本になっているわけでございまして、その点ではおっしゃる意味はよくわかるわけでございます。建設公債の見合い資産の平均効用発揮期間と申しますか、これが平均いたしまして、土地なども含めまして六十年ということは、現在でもほぼ変わっていないと思いますので、この一・六という制度自身について考え直す段階ではないと思いますが、おっしゃいましたように、これは建設公債を前提にいたしました制度でございますから、特例公債については違う考え方があってもいいじゃないかという御議論はあるわけでございます。その点については、くどくなりますので省略させていただきますが、先ほど来お答え申し上げているとおりでございます。
  29. 高橋高望

    高橋委員 いずれにいたしましても、大変な課題を抱えた私たちだと思いますので、大蔵大臣一つお願いがございますけれども、先ほども申し上げましたとおり、来年度いろいろの予算の編成も、夏ごろからのお考えの中で出てこようかと思いますが、いままで以上にひとつ早目にいろいろな形でわれわれに情勢をお示しいただいて、たまたま私たちの党は、中期経済計画もこの間きちんとまとめ上げましたものですから、その辺との兼ね合いも兼ねて、ひとつ御一緒に協力させていただきたいと思いますので、よろしくひとつその辺を、早目にいろいろな情勢の御提供を願いたいとお願い申し上げまして、私の質疑を終わらせていただきます。
  30. 大村襄治

    大村委員長 荒木宏君。
  31. 荒木宏

    ○荒木委員 少し全体的なことについてお尋ねを申し上げたいと思いますが、かねて指摘されておりますように、国債依存度が非常に高い。数字は申し上げるまでもないと思いますが、日本が二九・九%、これは昨年でございますけれども。アメリカが一三・九、これは見込みであります。それから西ドイツが一三・五、これは予算でございます。フランスがゼロ。これは昨年に限りませんで、ここ数年来、事あるたびに指摘されてきた傾向でございますけれども、先進資本主義国の中でも、なぜ日本はこのように異常に公債依存率が高いのか。すでに首脳国会議も両三度を数えまして、ことしまた七月にあるということでございますけれども、先進六カ国、その中で、通貨面でもあるいは経済力でも両極分化ということも言われておりますけれども、しかし、いずれにしてもテーブルを同じくする、そういった国の中で、財政面でこういった際立った特徴といいますか、問題点といいますか、出ておるという点につきましては、従来からもいろいろな論議があったところでありますが、改めて大臣から、その原因と申しますか、そのよって来るゆえんのところをお考えを少しお聞かせいただきたいと思うのです。
  32. 村山達雄

    村山国務大臣 日本だけが一体公債依存度がなぜ高いのか。ついこの間まではそんなに高くなかったわけでございますが、石油ショック以来、赤字国債を出すことによりまして、また、ある程度財政主導型な予算を組まざるを得ない、そのために四条債もある程度出さざるを得ない。その積み重ねが結果的にこのようになったのではないかと思っているわけでございます。  ただ、実体経済の方から申しますと、やはりいつも言っておりますように、成長率という面では、確かに五十二年度五・三%行くかどうかまだわかりませんけれども、仮に五%台に乗せれば、私はやはり成長率は先進国では一番ではないかと思います。ことし七%を目指しているわけでございますが、これもまた、恐らく先進国中最大だと思うのです。しかし、中身をよく見てみますと、民間経済の活動によるところの成長率というよりもむしろ逆でございまして、公共投資による政府支出、特に公共支出による分であるとかあるいは経常収支の黒字の分、こういったことで成長率を支えておる。つまり裏から申しますと、民間経済は非常に不況である。この実態の中で、やはり負担の増加を求め得ない。しかも、歳出の方はどうかと申しますと、言いかえればいろいろな要求があるわけでございまして、そういった要求をなかなか一挙に整理し切れない。こういう形の中で、日本の公債依存度が結果的に非常にふえているのではなかろうかということを、これは私見でございますけれども、そのように感じ取っておるところでございます。
  33. 荒木宏

    ○荒木委員 経過も含めていろいろなお話があったわけですけれども、私は端的に言いますと、確かに大臣がおっしゃったように、石油ショック以前の依存率は、これも指摘はありますけれども、しかし今日ほど異常な姿ではない。としますと、日本の経済あるいは財政の体質、ひいては政策と申しますか、これがそうしたショック、インパクトに財政面から見ると異常な結果を生ずるきわめてもろい体質であったのではないか。いま実体経済の面に触れての御答弁があったわけですけれども、いま法案審議が財政でございますので、そういう点で財政面からいいますと、こうしたショックがあったときに歳入が非常に落ち込むといいますか、それでいて歳出はなかなか削減できないという、そうした体質を持っておったところに、他の諸外国、先進諸国に比して非常に結果としては依存率が高くなった、体質に原因があるのではないかと思いますが、いかがですか。
  34. 村山達雄

    村山国務大臣 直接のお答えになるかどうかわかりませんが、毎々申し上げておりますように、四十九年から今日までずっと見ておりますと、歳入は実際の低成長、しかも不況ということを反映いたしまして、租税弾性値はもう一ぐらいでございます。あるときは一を切っているわけでございます。にもかかわらず歳出の方は、相変わらず石油ショック前と同じ程度の伸びを示しておりまして、大体平均で二割伸びているわけでございます。歳入は大体一ぐらいでございますから、一〇%切るぐらいでございまして、その差が結局赤字公債であれ建設国債であれ、いま実質三七%になったということだろうと思うのです。やはりそこには実体経済の問題は私はあると思うのでございまして、一つは、企業成績が悪いということのほかに、日本にはいわゆる構造変化の問題、構造不況業種というものが石油ショックを機にいたしましてずっと引き続き問題が残っているんじゃないか、その問題がやはり整理されないというもう一つの私は特色があるような気がいたしておるのでございます。  今度の予算におきましてねらっておりますのも、実は財政主導型、財政から申しますとさらに非常に国債をふやすことになりますけれども、結局経済を早く回復させることによって財政再建の道をもしとることができるとすれば、財政の再建という見地からも結果的には近道になるんじゃなかろうかということを一つねらっておるわけでございますし、また同時に、構造不況業種に対しまして、今度は法案も出し、またそれに必要な財政措置も講じておるわけでございますので、願わくはこのいわゆる構造不況業種の問題が民間の自助と政府の協力によって一刻も早く解消する、こういう事態になりますれば、財政収支試算でお示ししておるような一つの再建方策は財政としてもとれるのではなかろうか、このようなことを実は望んでいるわけでございます。  直接荒木委員の御質問に対してお答えになったかどうかわかりませんが、感じだけおくみ取りいただきたいと思います。
  35. 荒木宏

    ○荒木委員 おっしゃる感じはわかるわけですけれども、私がお尋ねしておりますのは、実体経済全体の論議、これは予算の各項目に関連しますから、また歳入の面から見ましても非常に大事なことではありますけれども、しかし歳入委員会としまして、特にこの公債依存度がこんなに高い理由、原因と申しますか、それは、やはりその歳入の仕組みに大きな原因があったのではなかろうか。もちろん歳入で国庫に収納して、その後予算で実体経済にどういうふうに反映をさせていくか、これは政策手法がいろいろあるところですけれども、しかし私は、従来の歳入の仕組みというものを、公債依存度が異常に高いということと関連をさせて大臣にお尋ねをしておるわけでございまして、この実体経済全体ということに問題を拡散いたしますと、これはもういろんな要素が入ってまいりますので、なかなか限られた時間では結論が見出しにくい、こういうふうに思っておるのです。  そこで、前提をそういうふうに御理解をいただいて、従来の高度成長期にとられておりました歳入の仕組みといいますか、これはいろいろな点がありまして、一口に法人税制について言いますと、特権的減免税とかあるいは企業優遇税制とか、こういう言い方で表現をされてきたと思うのですけれども、私はその一つの例としまして償却費、企業の内部留保といいますか、この問題をお尋ねしてみたいと思うのでございます。  大臣は、いまの税制がとっております償却税制と申しますか、あるいは内部留保税制と申しますか、これが十年来続けられてまいりまして、高度成長期とそれから低成長期と二つの時代をくぐっておるわけですけれども、いまの国債依存度が異常に高いということは、この償却税制、内部留保税制がその原因の一つになっておるというふうにはお考えにならぬでしょうか。
  36. 村山達雄

    村山国務大臣 これも感じの問題でございますけれども、私はいまの償却に関する日本の税制が、そのことによって大きく歳入が減り、それが結果として公債依存度を高くしている、そのようなものではないと思っているわけでございます。だから、それほど大きな影響はない、このように思っております。
  37. 荒木宏

    ○荒木委員 若干の国際比較を申し上げておきたいと思うのでございますけれども、全体については前に大蔵省の方からも部分的に資料はいただいたことがありますけれども、しかし、OECDの調査とそれから経企庁の国富調査とを照合いたしますと、たとえば建物、構築物につきましては、アメリカ、西ドイツはいずれも五十年という数字が出ております。ところが日本の場合には、建物が三十六・二年、構築物が三十四・三年。なお設備機械につきましても、アメリカが十五年から二十二年、西ドイツは十九年から三十四年に対して、日本は十一・七年。こうした建物、構築物の例を見ましても、大体アメリカ、西ドイツの六割方に圧縮されている。機械設備は大体ほぼ二分の一というふうなことでございますが、こうした点から見ますと、償却税制は他の諸外国に比してかなり低い、つまりその限りでは税収の歳入減になっているという側面があると思いますが、いかがですか。
  38. 村山達雄

    村山国務大臣 私も最近の資料を見ておりませんが、恐らくそんなに違わないと思います。総合耐用年数で考えますと、日本とドイツがほぼいいところへ行っているんじゃなかろうか、それに対して、アメリカあるいはその他の先進国の耐用年数はやや長い、大体そういう形ではなかったかと思っているのでございます。これは少し旧聞に属するかもしれませんが、恐らくそんなには違っていないのではないだろうかと思っているのでございます。そして、この問題は言うまでもなく、実際の物理的、経済的な耐用年数で計算するわけでございまして、日本のように非常に新しい技術をどんどん導入した国、ドイツも同様でございますけれども、技術革新の非常に激しい時代でございましたから、当然耐用年数が一般的に短くなったのだろうと思うのでございます。  ただ、日本の企業の蓄積という問題からいいますと、経常利益が非常に悪いことはもう御承知のとおりでございますが、蓄積の方からいっても非常に少ないこともまた御承知のとおりでございます。また、資金調達の面からいいまして、内部資金で賄う部分と外部資金で賄う部分と比較いたしますと、これは償却の関係と留保の関係で出るわけでございますけれども、全体としては日本は内部資金でもって調達する部分が少ない。こういうことを考えますと、耐用年数について単に税収の問題からだけ考えることはどんなものであろうかという感じがいたしておるのでございます。  結論的に申しますと、特に不当に耐用年数が短いというふうにはいま考えていないのでございます。
  39. 荒木宏

    ○荒木委員 償却問題を税制の面だけから考えるのはいかがなものか、これは御指摘のとおりだと思うのです。いろいろな面が絡んでまいりますから。ただ、これは質疑でございますから、いろいろな問題を一どきにお尋ねするわけにもいきませず、またお答えも、一つのことをお聞きして、他の幾つかのことを付加してお答えがありますと、いささか論議の筋がそれてもまいりますので、その意味で、いまの御答弁を踏まえて、先ほど来お尋ねしていることで引き続き質疑をしていきたいと思うのです。  事実認識としてそう大きな違いはない、やや旧聞に属するけれども大体同じくらいのラインではないかとおっしゃいますので、これは前提が違いますと後の論議がしづらいのですけれども、ただ、旧聞に属するという御答弁がございましたので、経過を若干申し上げますと、昭和三十九年に機械設備中心に平均一五%の短縮がありました。それから四十一年には、建物、大体工場用、倉庫用に重点を置いて平均一五%の短縮がありました。これは算術加算をいたしますとそれだけで三〇%であります。  三十九年から四十一年といいますのは、ちょうどあのIMF八条国移行問題で開放体制に移ったときであります。現総理が大蔵大臣御就任のときでございまして、当時の財政演説を拝見いたしますと、償却をうんと進めて、そういう意味での資源消費を促進していく、その奨励を政策として進める、こういう演説がございました。四十三年にはホテル、旅館等についてかなり大幅な短縮がありました。あと四十四年からちょうど石油ショックの時期に至るまでは、毎年短縮が税制改正として進められてきました。ごくごく大ざっぱに見積もりますと、この十年で大体半分ぐらいになったのではないか。これは非常にアバウトな話でありますけれども。  先ほど大臣がおっしゃった旧聞がどの時点の旧聞か、これはいささか定かではございませんけれども、しかし、先ほどの経企庁とOECDの調査の比較といい、こういう点から、これは特別償却その他を除いての年数だけの話でございますが、償却税制、内部留保税制については諸外国に比較して相当短縮をされていると見ることができるのではないかと思うのです。これは事実関係が先ほどの御答弁と若干違いますので、事務当局にひとつこの時点で経過を踏まえて資料を出していただきたい、このことをお願いをしておいて、御答弁をいただきたいと思います。  それはそれといたしまして、こうした経過と先ほどの資料比較を見ますと、民間資金を留保しておいて、そしていわば民間でそれぞれの自主的な資金運用、投資計画、その償却の使用についての自主的な取り扱いを進めていく、あるいは、それを国庫に収納して、そして国の方で財政運用を進めていく、私はかなり違った側面があるのではないかと思うのです。いまお話しの構造不況業種の操業率の問題も、これは平たくいえば、現象面では需給ギャップと言われておるわけですけれども、ちょうど石油ショックの前ごろに、たとえば構造不況業種の一つと言われます化学工業分野では、数万トンというか十万トンプラントというのが次々とつくられたわけでございますけれども、そういういわば市場問題を捨象したような形での投資が進む。その内部留保が税制上も保証されていた。もちろんこれだけでそれだけの金が賄えるわけがありませんから、どんどん他人資本も導入をして、先ほど大臣がおっしゃったように自己資本比率が非常に低い、これは別の金融面で需給関係を無視した、市場法則を破壊するような供給設備体制をつくり上げていった。結局、税制面でも金融面でもいわゆる民間主導、結果として高度成長というか、そういう個別資本の利潤追求の形に税制上も金融上も放置していたということが、一つは今日の景気の落ち込み、構造問題ということになり、税制面では異常な公債依存率の一つの原因になり、そして金融面、資本面では自己資本比率が非常に低いということに総合的になっているのではないか。大臣が幾つかの点を交えての御答弁でありましたので、若干それに照応して各面を指摘をいたしますと、私はそういうことになると思っておるのです。  さて、税制面、財政面に話を戻しますが、そういう点から見ますと、この内部留保税制が、いま民間の自主的な償却資金運用に任せておったのではうまくいかないということになっておる。財政対策という面から見ましても、これを企業の手元から吸い上げるということは、財政収支の改善ということからも考えねばならぬのじゃないか、こういうふうに思っておるのです。  いささか質疑が長くなりましたけれども、答弁をいただいたのに照応して申し上げましたので、ひとつ償却税制財政収支にしぼって御答弁をいただきたい。その後で事務当局の資料についての答弁をいただきたいと思います。
  40. 村山達雄

    村山国務大臣 いまたまたま資料がありましたので、ここに機械設備の耐用年数の国際比較がございますが、五十年三月大蔵省で調べたものでございます。これで見ますと、紡績業で、日本が十年、アメリカが十一年、西ドイツが十年ないし十三年。織物業で、日本が十年、アメリカが十一年、それから西ドイツが十年から十五年。鉄鋼業で言いますと、日本が十四年、アメリカが十四・五年、それから西ドイツが五年ないし十年、これは極端に短い数字です。工作機械製造業で、日本十年、アメリカ九・五年、それから西ドイツが五年ないし十年。それから自動車製造業で言いますと、日本十年、アメリカ九・五年、西ドイツが五年ないし十二年、こういうふうに出ておるわけでございます。これはもちろん特殊な代表的な機械を挙げたわけでございまして、実際は総合償却率で見ないとわからないと思いますが、代表的な機械でございますから、あるいは大体の感じが出るかとも思うのでございます。  これで見ますと、大体重工業の方はむしろ西ドイツが非常に短いというところが顕著に出ているわけでございます。私が先ほど旧聞に属すると申しましたのは、総合償却率で見たのでございまして、かなり古いものかもしれません。しかし私は、ドイツとの比較におきましてほぼ同じぐらいだなというふうな感じを持っておりますので、そういう意味でお話し申し上げたわけでございます。  もとよりこの耐用年数というものは、特に利益を留保させるという目的でつくるものでないことは当然でございます。ただ、経済的な新陳代謝も入れまして、それが妥当のものであるかどうかということによって決まるわけであろうと思うのでございます。償却につきましては、もし必要があれば後で事務当局から補足説明があるかと思いますが、そんなことでございます。  ただ、日本の自己資本が非常に少ないという問題は、もう言うまでもございませんで、貯蓄の形態がほとんど間接金融金融機関預金の形でいくのでございますので、諸外国のように株式市場、資本市場というものが発達しておりません。結果として資金調達の場はどうしても他人資本になってしまう。ここにやはり大きな問題があるだろうと思うのでございます。  それから、金融問題として内部資金によるか、外部資金によるか、これは株式市場から調達いたしましてももちろん外部資金でございますけれども、内部資金ということになりますと、この償却の分とそれから積み立ての分、これが内部資金になるわけでございますが、償却につきましては、この耐用年数が短いかどうかということで御判断願うよりしようがないと思います。一方、積立金の方で申しますと、御案内のとおりに経常利益が非常に少ないわけでございます。経常利益が少のうございますから、一般的に申しまして日本の企業は、やはり内部留保がほかに比べてかなり低い、低位にある。そこが金融面で申しますとかなりのネックになっているのではなかろうか。したがいまして、それを少なくとも資金的に安定させる意味で、公社債市場と申しますか、こういったものを育成することによりまして、少しでも間接金融から直接金融の方に移るという道を開いておく必要があるんじゃないかということで、公社債市場の育成にせっかく努力しているわけでございまして、日本もちょうどその段階にやや近づいてきておるんじゃないか、このように考えておるところでございます。  耐用年数につきまして、もっと新しい資料がありましたら、事務当局から説明させます。
  41. 米里恕

    ○米里政府委員 減価償却率につきまして手元に数字がございますので、国際比較を申し上げます。  全産業ベースの実績で見まして、日本は一一・八六%、これはいずれも一九七四年度分の主要企業の有価証券報告書などから作成されたものでございます。これに対しまして、アメリカが一〇・三六%、イギリスが九・〇八%、西ドイツが一六・四二%、フランスが一四・二二%、これは全産業の平均でございます。これで見ますと、ごらんのように西ドイツ、フランスは償却率がわが国よりもやや高くなっておる。アメリカは、大体わが国と同じぐらいでございますが、ちょっと低くなっておる。イギリスは若干わが国よりも低いというようなことで、国際的に見まして、わが国の償却率というのは、主要国の間ではまあまあ真ん中ぐらいじゃないかというように考えております。  先生よく御承知のように、耐用年数あるいは償却率を決めるに当たりましては、一方では物理的な陳腐化、一方では経済的にどのぐらい実際に用いられておるかといったようなことを勘案して、個別に実態に合わせて決めるわけでございますので、当然のことでございますが、国際比較をいたします際には、その国の経済情勢、あるいはまた建物でありますと、どういった種類の建物かというようなことで、全体の実効償却率はかなり違ってまいりまして、必ずしも一概に比較できないかと思いますけれども、この数字で見ます限りは大体そんな状態でございます。
  42. 荒木宏

    ○荒木委員 一例としてこの年数問題を取り上げておりますけれども、いま総合的な償却率の説明が事務当局からありましたけれども、中小零細企業なども含めての全体の率がどうであるかということ、これは一つの指標かと思うのです。  しかし同時に、いま跛行性ということが非常に言われておりまして、そういう跛行性をもたらした償却税制のひずみといいますか、つまり特別償却その他も含めての、現在のたとえば国際競争力が強いといわれる、そして異常な円高をもたらした大きな原因といわれる輸出大企業についての償却の問題、こうした点が、全体の単なる平均だけでは解消できない問題があると思います。  たとえばこれは設備の方じゃありませんが、消費について申しますと、自動車はアメリカでは十一年ということですが、日本では六・五年ということになっております。そういった投資促進税制といいますか、私は、そのためにいろいろな仕組みが織り込まれてきた、そのことをいま指摘をしておるわけでありまして、現在の不況脱出のためにむしろ逆に投資促進税制をという声があることも承知はしておりますけれども、しかし、私どもは基本的に考え方が違うわけであります。むしろ安定した、落ちついた末の長い成長発展のためには、従来繰り返してきたような当座の景気浮揚のための税制面でのてこ入れということが、結局は金融面でも他人資本をうんと導入をして、そして今日の構造不況、外に向けては円高を招くそういったいびつな不況の原因になったということを指摘しておるわけであります。  なお先ほど大臣から、金融市場、資本調達の姿が、貯蓄性向が高いためにどうしても間接金融に頼らざるを得ないというお話がありましたけれども、これも、質疑の主題ではありませんけれども、答弁がありましたので触れておきたいと思うのですが、私どもはかねがね論議もありましたように、むしろ社会保障あるいは福祉関係仕組みが、振替支出比率一つをとってみましても諸外国より非常に低い。仕組みとしては将来肩を並べるまでに行くんだというお話が間々出るわけですけれども、しかし、そうしたいまの社会保障比率の低さ、振替支出比率の低さ、そのことが、老後の不安その他に備えての異常な貯蓄率の高さということになっておるということですから、もちろん税制だけではなくて経済も総合的なものですから、全体の仕組みを変えていかなければ方向転換の整合性はとれないわけですけれども、そうしたことを従来から指摘もしてまいりましたし、この法案審議の機会に改めて申し上げておきたいというふうに思うわけです。  なお、大分時間もたちましたが、関連して一言伺っておきたいと思いますのは、私どもは逆累進ということを従来言ってまいりました。法人税制で言いますと、資本金規模の小さいところが資本金規模の大きいところよりも実際の税負担率が高いという現象を指しておるわけですけれども、この論議は従来、政策税制はその都度見直しをしてきている、整理合理化を進めてきているということにとどまっておるわけです。しかし、こうした財政面からの基本的な見直しが必要なときに、逆累進の結果そのものは、個々の税制目的、政策目的はそれぞれ論議がされるとしても、総合的にそういう結果は是正されるべきではないかというふうに考えておるわけですし、従来からも主張してきたわけですが、大臣御就任以来、この点についてはまだお考えは伺っていないように思いますので、その逆累進の結果そのものについての御意見をひとつ伺っておきたいと思うのです。
  43. 村山達雄

    村山国務大臣 先ほどの事務当局から説明いたしました総合償却率、あれは各国とも特別償却を全部含めたところだそうでございますので、そのように御理解いただきたいと思います。したがいまして、特別償却あるいは割増償却、それぞれの国にございましょうけれども、そういったものを全部含めた実効的な償却率で日本が大体中位にあるということを御理解いただきたいのでございます。  それから、いまお話しになりました大企業と中小企業とが実効税率において逆ではないかというお話でございます。これはいろいろな計算の仕方がございまして、いわゆる何が一体租税特別措置であるかという問題がございますので、大蔵省として考えております租税特別措置によって計算したものでございますが、五十一年度で見ますと、大体資本金一億円以下のところでは三六・六%、資本金一億から百億円未満の間で四〇・五%、資本金百億以上のところで三八・四%、こういうふうに最終的にはできております。これは五十一年度の数字でございます。  これで直ちに逆累進であるかどうかという問題は、私はすぐには出てこないんじゃないかという感じがいたすのでございまして、御案内のように、これは最後の実効税率でございます。  一つには、一番大きな要素といたしましては、配当軽課という問題があるわけでございます。したがって、配当をよけいやっておる配当性向の高いところは、当然算出税額が低くなってくるわけでございます。この問題が一つ。それからもう一つは、いわば租税特別措置というものの内容がどこに及んでおるかという問題でございます。準備金、特別償却、技術等海外所得の特別控除、それから試験研究費の税額控除、それから交際費の損金不算入、こういうところでございます。傾向で見てみますと算出税額、つまり租税特別措置法を働かさないところでは、一億円以下のところは三五・五、それから一億円から百億円未満のところは三八・八、それから資本金百億円以上が三八・四、こう出ておるわけでございます。この辺の算出税額が、一億から百億のところは恐らく配当の関係じゃないか、こう読んでいるわけでございます。実効税率はさっきお読みしたとおりでございます。その意味で、現在の租税特別措置というものが、一億円から百億円までよりも、百億円以上の方によけい働いているという事実は、やはりこれは否定できないだろうと思います。大体そういう内容になっておると思うわけでございます。
  44. 荒木宏

    ○荒木委員 これも前提の認識が必ずしも同じじゃありませんから、そういう意味では論議がなかなか詰まらぬと思いますけれども、しかし、昭和四十六年でございましたか、いま大臣が読み上げられた表が提出をされるようになりまして、それ以来これで五年余りになるわけですが、傾向として資本金規模の大きいところの方が税負担率が低い、あるいは資本金規模に比例しては負担率が出てこないという傾向はずっと続いているように思うのです。もちろんその中にはいまの配当軽課の問題その他が入っておる点はありましょうけれども。たまたまそうした単年度の配当傾向によって税負担率の結果が左右される、つまり逆累進の結果が大臣が言われたところからも生じ得るというふうな仕組み、それがいかがなものであろうかということを一つは言っておるわけであります。もちろんそれは、そういう仕組みになっておるから、配当軽課を認める以上は、それの大小によって結果が違ってくるのは当然だと言えばそれまででありますけれども、しかし今後の税負担率、それから歳入欠陥の問題、財政改善ということを考えますときに、この数年来のこうした傾向、経過を、たまさか単年度の数字を見るだけでそのまま放置してよいであろうかどうか、こういうことを言っておるわけであります。税調でも論議は重ねられてきたところでありますが、また委員会では、私ども年来主張してきたところでありまして、改めてこの機会にそのことを強く指摘しておきたいと思うのです。  なお、先ほど答弁の中で、償却の問題について、総合償却率で諸外国と比較して中ぐらいだというお話があったのですけれども、しかしこれは自由償却制もかなり入っておるわけでありますから、実際のその償却実施額がどのようであったかという点は、私は国際比較の点でも従来まだ十分な説明を聞いたことはないと思うのであります。これはまた次の論議に譲りたいと思いますので、その点での先ほど読まれた総合償却率の数字の根拠と申しますか、それをまた改めて事務当局から説明を求めておきたいと思います。  時間が大分迫ってきましたけれども、歳出面でひとつ国債費の関係をお尋ねしておきたいと思います。  国債費比率が五十二年度で当初八・二%ということになっておりますが、この国債費比率を将来どういうふうな姿に持っていく見通しであるのか。財政収支試算が発表されておりますし、そこから数字をはじきますと当然出てくるわけでございますが、昭和六十年からの赤字国債の十年限りの一括償還という事態にもなりますし、その比率の推移の見通しについて伺っておきたいと思います。
  45. 山口光秀

    山口(光)政府委員 国債費の一般会計の規模に対します比率は、いまおっしゃいましたように、五十二年度は八・二でございまして、五十三年度は九・四になっております。財政収支試算ケースCで申し上げますと、五十四年が一〇・六、五十五年が一一・六、五十六年が一二・四、五十七年が一二・七でございます。これは試算の性格上一定の仮定を置きました数字でございます。  私どもは、国債依存する財政というものが、国債費の増高等を通じまして財政の硬直化を招くという側面からも、国債依存を早く脱却したい、特に特例公債依存を早く脱却したいということをかねがね申し上げておるわけでございますが、国債費の一般会計に対します比率が何ぼでなければならないかというようなことでなしに、いま申し上げましたようなことで できるだけ早く赤字公債依存から脱却したいという態度でございます。
  46. 荒木宏

    ○荒木委員 何ぼでなければならないかというのは、これはいろいろな見方があると思いますけれども、しかし、たとえば見通しとして、従来収支試算は間々変えられてきましたけれども、しかし当初、五十五年赤字国債ゼロというお話がありました。その次は今度、五十七年赤字国債ゼロという話があった。もちろん赤字国債脱却する、これはひとしく指摘をされておるところでありますから、その年度の早い遅いはありましょうけれども、しかし同時に、それは一般会計の予算規模にも絡まることでありまして、国債費比率が、いまのお話ですともうすでに、これから一〇%を突破してその上に行こうかというお話をいま伺ったのですが、これを一体どういう姿に持っていくのか。これは先のことと言えばそれまでかもしれませんが、しかし、めどもなしにあるいは目標もなしに財政の論議を進めることはいかがなものであろうかと思うのです。ですから、いま言われた推移を踏まえて、一体どういうところへ持っていくつもりなのか、これをひとつはっきりおっしゃっていただきたいと思います。
  47. 村山達雄

    村山国務大臣 私たちはやはり基本的には、早く特例公債から脱却するということが一番の大きな問題であろうと思うわけでございます。  国債費の方は御承知のように、その年の償還費あるいは利払い費、さらにはいまの定率繰り入れのものがみんな国債費へ入っているわけでございます。したがいまして、特に一番大きい問題は定率繰り入れの一・六でございますが、これは前年度期首の四条国債、それから赤字国債の合計額に対して一・六でございます。したがいまして、特例公債脱却いたしましても、いまの総合減債基金の関係で、なお当分は国債費の累増ということは避けられない、技術的な理由によりまして私は避けられないと思うのでございます。しかし、それはやがては低減することはわかっておるわけでございますので、その問題はそう心配することはないので、むしろその中身は、国債費あるいは減債基金というものをどのように仕組んでいくかという内容によるのではなかろうか、原因をきわめますとそこがポイントではないか、こう思っておるわけでございます。
  48. 荒木宏

    ○荒木委員 時間が来ましたからこれでおきますけれども、従来、先ほども論議がありましたが、特例公債の減債基金の繰り入れの率ですね。六十年からは償還が来る。五十七年の姿までしか示されていない。その間に租税負担率を高めていく計画だけは出されておりまして、その中身がまだこれからということで、ある意味での、六十年までの二年といいますか三年といいますか、そこの姿がなかなか明確にならぬということが、予算委員会以来論議になってきておるわけでありますが、私は、先ほどの国債費の問題が、整理基金特会の資金のやりくりだけでいくという考えには非常に問題があるというふうに思っております。それは、六十年以降の返済の利払いも含めての数字というものは一応はっきり出ているわけでありまして、そういう点から、増税の姿がはっきりしないという段階で、六十年以降の整理基金特会の運用だけでいま説明されるということについては、なお別の機会に引き続き論議を進めていきたいというふうに思います。  資源エネルギー庁と建設省とお呼びして、見えていただいておりまして、ちょっと論議が途中でなにしましたので、質疑の機会を得ませんでしたが、大変御苦労をかけたことをおわびしておいて、質疑を終わりたいと思います。
  49. 大村襄治

    大村委員長 永原稔君。
  50. 永原稔

    ○永原委員 この法律論議の問題は毎回毎回同じ議論が繰り返されていますので、背景にあるものを中心にしながらお聞きしてみたいと思います。  過日の閣議において当面の経済対策というものが決定され、公表されておりますけれども、その内容について一、二伺います。  まず第一番目に、公共事業ですけれども、やはり公共事業主体の予算編成が行われ、財政主導型という中で、公共事業の占めるウエートが非常に高い、こういうようなことですが、五十二年度の実績というのは、一体どういうように行われていったのか、進捗状況などもお聞きし、特に今度の経済対策でも、やはりことしの予算は七〇%前後前倒し施行をするというようにお決めになっていらっしゃいますが、昨年の七三%施行の効果といいますか成果、そういうものが一体経済にどういうようにはね返ってきているのか、その辺をまず最初に伺いたいと思います。
  51. 大竹宏繁

    ○大竹説明員 五十二年度の経済、まだ年度としてのGNPの速報が出ておらない段階でございますが、十−十二月期までのGNPの伸び率の中で政府支出が寄与したウエートというか、寄与度を申し上げますと、四−六月期が、GNPの伸びが一・七に対して政府支出が〇・九でございました。七−九月期が、GNPが〇・四に対しまして政府支出が〇・八、十−十二月期は、GNPが一・〇に対しまして政府支出が〇・二、こういう動きになっておるわけでございます。したがいまして、年度全体を通じましてどの程度になるかはまだわからない段階でございますけれども、現在のところマクロ的に見ましても、GNPの半分、あるいはかなりのウエートを押し上げ要因としては公共事業は持っておったということは言えるのではないかと思います。  それからもう一つ、もう少しミクロ的に見ました場合に、公共事業関連の資材の動きあるいは受注の動向、それから労働力に対する需要といったような側面から見ましても、やはり公共事業による需要の拡大の効果というものが徐々に実体経済の中に浸透しているということは、申して間違いではないと考えておるわけでございまして、この五十二年度の施行の促進の効果というものはかなりあったというふうに思っておる次第でございます。
  52. 永原稔

    ○永原委員 五十一年度の公共事業の月別の契約状況などを見ていきますと、総額八兆八千三百三十一億中、この上半期に約六五%ぐらいでしょうか、五兆七千億からの契約がなされております。今度七三%というように七、八%前倒し施行がなされていますけれども、五十一年度の六五%では余り意味がなくて、七三%ならば成果が上がるのだというような決定的なそういう数字が出るでしょうか。
  53. 山口光秀

    山口(光)政府委員 公共事業を景気回復のために役立てようということで五十三年度予算は編成されたわけでございますが、当然のことながら、執行面につきましてもまずできるだけ繰り上げて執行していくのがいいんじゃないか、それが経済にいい影響を持つのじゃないかということでやっているわけでございまして、七三%と申しますのは、各事業を実施いたします役所の見積もり、これが大きな予算でございますから、いろいろ労務面あるいは資材面にも問題がございますので、そういう点にも配慮しながらやれる限りの努力目標を出してほしいということで出してもらった数字でございます。  六五%と七三%とどう違うかというお尋ねでございますが、まさにその数字が違うように経済に対するインパクトが違ってくると思います。
  54. 永原稔

    ○永原委員 五十一年五月に閣議決定なさった経済計画ですけれども、ここの計画期間中、累積おおむね百兆円程度の公共投資を実施するというように決められておりますが、五十一、五十二、五十三年度、この五十二年度、五十三年度は予算になりましょうが、それを含めて、一体進捗率は五十年度価格にデフレートした場合にどのくらいになっているのか。あと五十四年、五十五年を余すばかりですけれども、この百兆円にははるかに達しないのではないかという気がするわけです。そういう場合に、経済計画に果たす公共事業の役割りはおっしゃるほど高いのかどうか疑問がありますので、進捗率とあわせてお聞かせいただきたいと思います。
  55. 御巫清泰

    ○御巫説明員 ただいまの御質問でございますが、前期経済計画におきましては百兆円を予定しております。そして五十一年度、これは政府固定資本形成でございますが、十四・九兆円、これが実施されております。そして五十二年、五十三年につきましては、あくまで見通しでございますが、政府経済見通しによりますとそれぞれ十八兆及び二十一兆八千億、こういうものがIGベースで考えられております。これを五十一年、五十二年、五十三年と累計いたしますと、名目ではございますが約五十五兆になりまして、これは政府固定資本形成ベースですので公共投資に換算いたしますと、名目ではございますが約六十二兆円程度ということになります。
  56. 永原稔

    ○永原委員 もう公共投資が六十二兆円、あと二カ年で計画どおり実施できるかどうか、これは名目ですからちょっと疑問ですけれども、さて今度は、ミクロの立場で伺ってみますが、建設業の上場会社の税引き後の損益、こういうものを見ていきますと、非常に低いですね。一・七、一・六、そういうような数値が出ていますけれども、アメリカのようなああいう国は企業利潤率が非常に高い。日本の全産業の利潤率というのは三%前後でしょうか、こういうようなアメリカの資料についてのデータが詳しいものが手に入りませんけれども、非常に利潤率が低い、こういうふうに思います。  そういう中で、経済閣僚会議では、山口次長がお話しになりましたように、資材、労務の面で支障を生じないように十分配慮しつつやるのだということをお決めになっていますが、現実の建設省事務次官の通達を見ましても「建設資材等の設計単価については、施工地域の実態に即した実勢単価の把握に努め、適正な単価とすること。」こういうふうに決められております。そういう中で、設計単価と実勢単価の相違が非常に大きいので、そういうのが利潤率にもはね返ってきているのじゃないか、こういう気がしますけれども、建設省の方は、この設計単価についてどういうようなお考えで直そうとなさっているのか、承りたいと思います。
  57. 萩原浩

    ○萩原説明員 お答えいたします。  建設工事の積算価格につきましては、発注時の実例価格をできるだけ適正に反映させるということを原則といたしております。  具体的には、資材の単価につきましては、公益法人の建設物価調査会あるいは経済調査会などが毎月資料として発表されております値段がございます。それをできるだけ取り入れた形で積算を行う。しかし、たとえば骨材であるとか生コンクリートというようなものにつきましては、非常に地域性が強うございます。このような地域性の強い資材については、このような資料だけではなくて、さらに発注者独自でいろいろ調査をいたしまして、資材の値段を決めるということにいたしてございます。  また、労務単価につきましては、建設、農林、運輸三省が共同で実施いたしております公共事業労務費調査という調査がございます。これを現在では年間二回行いまして実勢の把握に努めまして、それを積算に反映するということを考えておる次第でございます。  このようにできるだけ積算価格を実勢に近づけるようにできる限りの努力を続けておるところでございますけれども、何といたしましても、公共事業を円滑に執行するためには、このような資材が価格を含めまして安定的に供給されるということが必須の条件であろうというふうに考えております。したがいまして、財政当局において実施されております。あるいは内閣に置かれました公共事業等施行推進本部の地方のいろいろな会議とは別に、発注者サイドで公共事業施行対策地方協議会というものを、地方建設局が一つの幹事役になりましてすでに実施をいたしております。ここにおきまして、発注者同士でどのような発注計画を立てるかということをいろいろ協議いたしまして、その発注調整をやることによりまして、たとえば非常にかたまった発注をして価格が暴騰するというようなことのないように努めたい、それが大前提でございます。その後は、できる限り実勢価格に近い価格で発注いたしたいと努力しているところでございます。
  58. 永原稔

    ○永原委員 いまおっしゃるように地域性があるかもしれません。しかし、現実の姿を見ていきますと、特に小零細企業に属するような建設業の実態はかなり苦しいような状況にある資料が手に入っております。去年の十二月まで、たとえばいまお話のありました生コンなどは、公共事業の設計単価立米七千五百円、実際の価格は約九千円ぐらいしておるわけです。建築については、これは土木よりはさらに高いわけですけれども、九千三百円ぐらい。いまそれぞれの建設業界と生コン業界の話し合いの中で話が詰まっている価格を見ても、生コン業者が売っている価格が九千七百円から一万二千百円ぐらい、建築用のものが一万円から一万二千九百円ぐらい、こういう単価になっております。しかし、設計単価はこのようには恐らく上げられないだろう。そういう中で、特に砂防とか海岸堤防とか、ああいうセメントに依存する工事の割合が多いものについては、やはりどうしても業者の赤字負担というのが出てまいっております。  こういう中で公共事業を推進していっても、現実に利潤率が低い。そういうのが、本当に公共投資によって乗数効果、波及効果が一・八とか、そういう成果を上げてくるだろうかという疑問を持ちますけれども、大蔵大臣、こういうものについてはどのようにお考えでしょうか。
  59. 山口光秀

    山口(光)政府委員 先ほど建設省の方からお話し申し上げましたように、建設資材の需給見通しでございますけれども、建設省、通産省からお伺いしておるところによりますと、一年を通じましたマクロ的な見込みでは需給の逼迫はないだろうということでございまして、その点では心配がないのじゃないかと思います。問題は、地域的あるいは時期的な摩擦現象というのはあり得るわけでございまして、それで価格が上がるということも予想されますので、先ほどいろいろ御答弁申し上げましたように、その地方地方で対策を講じていくという配慮をしているわけでございます。
  60. 永原稔

    ○永原委員 中央官庁ではそういうふうにお答えになると思うのです。実際に会計検査院が工事の状況をいろいろ検査していく場合に、はみ出しているものについてははねられます。  たとえば非常に細かくなって恐縮ですけれども、大工の手間賃など、積算では坪当たり三人から三・五人ということになっているけれども、実勢は五人ぐらいの人夫が必要になる。また土工などについても、一人当たり立米処理量が約四立米というふうに言われていますけれども、最近の人が働かないせいでしょうか、実際は二立米ぐらいしか処理ができないということで、かなり食い違いが出てくるわけです。そういうものについて、地方の実情に沿って考えると建設省でおっしゃっても、それぞれのものについて会計検査院の方は、必ずしもそのとおり認めてはくれないのが実態ではないかという気がしますので、こういう点についても、ぜひ指導していただかなければならないし、どういうお考えで進まれるか、その気持ちを伺いたいと思います。
  61. 萩原浩

    ○萩原説明員 お答えいたします。  ただいま先生指摘のとおり、われわれ専門語でこれを歩掛かりと称しておりますが、この歩掛かりの改定という問題は非常にむずかしい問題を含んでおります。それは、一つには建設労働者といいますか、特に技能労働工に多いのでございますけれども、そういう方々の老齢化ということがよく言われております。そのために、いま御指摘がございましたように、かつては一日四立米動せた労働力が、いまではだんだんと減ってくるということもあり得ることであろうと存じます。そのために建設省では、この歩掛かり調査というものを計画的に行っておりまして、できるだけ実態に即したような形にこの歩掛かりを改めていくということで、年々その改定を行っているところでございます。  ただし、これはどうしてもその一つの平均的な物の見方ということになろうと存じますので、非常に山の奥であるとか、あるいは非常に小規模な工事であるとかいうことになってまいりますと、機械が使えないとか、いろいろな条件がございまして、特殊な場合には標準的な歩掛かりから外れるということもあろうかと思います。その点につきましては、特殊な要素をいろいろ加味した形で積算をするということにいたしておりますので、御指摘のようないろいろな実態との開差というものにつきましては、今後とも研究を進めてまいりたいと考えておるところでございます。
  62. 永原稔

    ○永原委員 その点はぜひよろしくお願いいたします。  次に、公共事業への失業者の吸収について、これは労働省に伺いますが、「特定不況業種からの離職者や中高年齢失業者等が著しく多い地域について、」とありますけれども、特に失業者の多い地域はどこでしょうか。それから、「公共事業失業者吸収率制度の適用地域を拡大する。」とおっしゃっていますが、どのように拡大なさるのか、その点を伺いたいと思います。
  63. 小野進一

    ○小野説明員 お答え申し上げます。  労働省では、失業者が多数おり、かつその就職が困難な地域というものを、特定不況業種離職者臨時措置法では指定地域、中高年齢者等の雇用の促進に関する特別措置法では特定地域、その他職業安定法の広域職業紹介命令地域としてとらえております。すなわち、その地域でございますが、指定地域については、造船業を中心とする構造不況業種の集中しております五地域、室蘭、尾道、今治、長崎、佐世保の五地域でございますし、中高年齢者等の特別措置法に基づきます特定地域は十二道県の六十四地域でございます。職業安定法に基づきます広域職業紹介命令地域は二十二道県の百十九地域、これは特定地域を含んでおりますので、実数は五十五地域になるわけでございますが、いずれも公共職業安定所の管轄区域を単位として決めておるわけでございます。  そこで、失業者吸収率の適用地域の拡大の問題でございますが、公共事業にかかわる失業者吸収率の制度が適用されておりますのは、いま申し上げました地域のうち指定地域、特定地域、それから、さっき申し上げませんでしたが、沖繩振興開発特別措置法に基づきますところの沖繩県ということになっております。  具体的な地域の指定の基準は、指定地域につきましては、特定不況業種の離職者で手帳を持っている人と中高年齢者が多数いるということ、特定地域につきましては、中高年の失業者が多数いてそれぞれ就職が困難なところでございますが、具体的には求職者の数が多いということ、それから求職倍率と申しまして、求職者に対する求人の比率が低いということ、その地域の就職率が低いということでもって労働大臣が地域を指定してまいります。  この四月一日に、さっき申し上げました指定地域として五地域、特定地域として六十四地域を指定したわけでございますが、今後の問題につきましては、それぞれの地域の雇用情勢を見ながら、さらに、その地域を管轄する都道府県の御意見も伺いながら弾力的に指定をして、公共事業にかかわる失業者吸収率制度の適確な運用に努めてまいりたいと思っております。
  64. 永原稔

    ○永原委員 建設省に伺いますけれども、いまのように、指定地域、特定地域、いろいろ地域指定を行っているようですが、「公共事業の地域配分については、地方公共団体との緊密な連携のもとに、地域の雇用情勢を十分配慮するものとし、」云々と書いてありますけれども、もうすでに公共事業の配分は全般に終わっているのではないかと思いますが、こういうような情勢を本当に配慮してどんな基準でお配りになったのか、公共事業というのは、大体長期計画に沿ってそれぞれの県でやっておりますので、そういう雇用情勢に特に配慮ができただろうかどうか、そういう点に非常に疑問を持ちます。十分配慮されたかどうかということと、先ほどお話しのありましたように技能労働者が非常に少ない。そういう中で、雇用拡大を図ろうとしても、実際にブルーカラー的な離職者がそちらの方に吸収されていくだろうか、こういうことにも疑問を感じますけれども、その二点についていかがでしょうか。
  65. 加瀬正蔵

    ○加瀬政府委員 おっしゃいますように、公共事業の配分はすでに終わっておる段階でございますが、公共事業に課せられました当面の課題が、景気の回復に合わせまして雇用の安定にあるということにかんがみまして、地域配分に当たりましては、地方公共団体の要望を踏まえまして、従来からあります地域ごとの社会資本の整備状況、あるいは事業の消化能力、あるいは関連事業間のバランス等のほかに、ことしは特に構造不況業種を多く抱えている地域に上乗せした配分が行われるような配慮を行っております。現実には、いま申し上げましたような地域から御要望がございましたのが、すでに従来の事務的な配分案ができ上がった後の段階でございましたが、そういうところにつきましては、地元の知事さんと十分御相談をしまして、上乗せをする等の方法によりまして、地元の要望を十分踏まえた配分が行われておる、かように考えております。  なおもう一つ、たとえば造船不況の地域がことしは特に公共事業の上乗せの御要望が多かったところでございますが、こういったところにつきましては、私どもの抱えております公共事業のうちで、現在技能労働者は特に鉄筋工、型工等の不足が言われておりますが、鉄筋工につきましては、造船工からの転用が相当可能ではないかというような話もございます。ただ問題といたしましては、造船工というのはいわば一定の場所に定着をしておるというようなこと、あるいは労働環境、労働条件が建設業に比べてよろしいというようなこともございまして、にわかに問題が解決するかどうかわかりませんが、主要な検討課題としてとらえまして現在勉強している段階でございます。
  66. 永原稔

    ○永原委員 せっかく御努力をいただきたいと思います。  それから、構造不況業種対策ですけれども、ここに「既往貸出金利の引下げ」ということがあります。何回も質問していますのではばかられますけれども、たとえばソーダ工業、これは大臣も構造不況業種ではないからというようなお話がございました。しかし現実には、構造不況の実態を持っているわけです。しかもその原因が、もちろんこういう経済的な影響もありましょうけれども、行政措置によって大きな影響を受けている、こういうものについてもお考えいただいてしかるべきではないかと思います。  たとえば四十八年に、社会的な背景をもとにして水銀法から隔膜法に行政的に転換命令を下して転換をさせた。それに従ったのがおおむね三分の二でしょうか、六〇%強のものがそれに従った。しかしあと三分の一のものは、従来の水銀法でクローズドシステムを確立しながら、公害を出さないようにして継続して生産を行っている。そういう中で、隔膜法に転換した方の製品品質が非常に悪い、そしてコスト高になっている。その資金は、命令によってやっていますので開銀から出ていますけれども、四十九年、五十年ころの集中的な借り入れですから平均しますと七・九%、もしも指示に従わないで現在までずっとやってきていますと——本来、この五十三年の三月三十一日に切りかえなければならなかったはずですが、その期限も繰り延べられております。そういう指示に従わないで今後転換しようとするものが借りるとすると大体六・六%。開銀資金金利が安くなる、新規と既往のものとの間にこういう差があるわけです。  こういうものについても、今度の既往貸出金利引き下げというようなお考えで、既往のものについて引き下げるお考えはないかどうか。政治的な判断が必要だということをこの前も訴えたわけですけれども、構造不況業種でないからということで大臣からお答えがありました。本来開銀は政府機関、そういう中で、政府の指示によって転換していった工場が四苦八苦であえいでいるときに、第一次補正予算では、貸倒準備金も大分たまったので、それを一般会計の補正の財源繰り入れさせるような措置をとっていらっしゃいますが、銀行経営立場からすると、そういうものについて、貸倒準備金を積み立てる以前に、もっと低金利のもので救ってやるというような姿勢が必要ではないか、こういう気がしますが、こういう点について大臣はどうお考えでしょうか。
  67. 徳田博美

    徳田政府委員 お答えします。  苛性ソーダの製法転換に関連いたしましては、先生指摘のように、金融面においてもまた実体面においてもいろいろな問題があるわけでございます。ただ、この問題につきましては、事業所管省がまず業界の実情を十分に把握いたしまして、それに対して総合的な施策を立てることが先決ではないかと考えておりまして、そういうものができた段階で、開銀の融資についてもまたいろいろな方策を検討してまいりたいと考えております。  一般的に申し上げますと、この苛性ソーダの業界だけについて既往金利引き下げるということは、他の業種にも波及する問題もございますので、これは非常にむずかしいのではないかと考えております。ただ、先生承知のとおり、いま個別の企業につきましては、実情に応じて返済の猶予その他条件の改定の措置をとっておりますので、この問題はこういう個別の問題として当面処理をしていきたい、このように考えております。
  68. 永原稔

    ○永原委員 この前のお答えと何も変わっていないようですけれども、やはり「既往貸出金利の引下げ」というようなのを打ち出した中でお考えいただければと思ったのですが……。  政府系の中小企業金融機関、これは「新規貸出金利の引下げを行うとともに、不況業種に係る既往貸出金利軽減措置の引下げ幅の拡大を図る。」というように示されておりますけれども、一般の不況業種以外の既往の貸出金利については、どういうようなお考えで臨まれようとするのでしょうか。
  69. 徳田博美

    徳田政府委員 政府関係中小金融機関の既往金利引き下げについては、先生指摘のとおり、不況業種のうち赤字企業に対して行っているわけでございますが、ただこの不況業種の指定の対象が最近非常に広がっておりまして、現在百二十八業種ございます。中小製造業に占めるウエートは四七%に上っているわけでございますので、問題になる業種はほとんどこの制度によってカバーすることができるのではないかと考えております。したがいまして、中小金融機関の既往金利引き下げを全般的に行うということは現在考えていないわけでございます。ただしかし、これは先ほど開銀のことにつきまして申し上げましたように、中小金融機関につきましては、特に個々の企業の実態に応じて条件改定等を行うように再三にわたって指導をしておりますので、問題のある企業については、個別についてこの制度をさらに活用するよう指導してまいりたい、このように考えております。
  70. 永原稔

    ○永原委員 農林漁業資金などについても、やはり同じようなお考えで指導なさいますか。
  71. 徳田博美

    徳田政府委員 ただいまの措置は、一応政府関係機関のうちの中小金融機関と開銀等を主体にして行っておりますので、いまのところまだそこまでは考えておりません。
  72. 永原稔

    ○永原委員 ちょっと異質でしたので、失礼しました。  この対策の中で、外国為替及び外国貿易管理法、外資に関する法律、この全面的な見直しを行うとありますけれども、一体どういう点を見直そうとなさるのか、どういう問題点を含んでいるのか、まず教えていただきたいと思います。
  73. 旦弘昌

    ○旦政府委員 ただいま為替管理の自由化に関しましては、現在のいわゆる外為管理法及び外資法という両方の法律がございますけれども、その枠内で従来でき得る限りの自由化を進めてきたところでございます。本年に入りましてからも、三月一日それから四月一日にかなり大幅な自由化を行ってきたところでございます。  しかし、永原委員御案内のとおり、現在の法律のたてまえは、原則禁止、例外自由、許可というかっこうになっておりまして、日本のような世界経済に占める地位が非常に大きくなった国、たとえばドイツなどに比べましても、かなりその体系自体が根本的に違うという点がございます。したがいまして、現在の法律上のたてまえをそのままにしまして、その枠内で自由化を進めてくるのには、そろそろ限度が見えてきたということでございまして、私どもといたしましては、この原則禁止というたてまえを原則自由、例外禁止という方向で、方向転換をしなければならないのではないかというふうに考えておるところでございます。そういう考えのもとに、個別の事案につきましては、今後検討をさしていただきたい、そしてその成案を得ますれば、でき得れば次の通常国会に法案の御審議をお願いいたしたい、かように考えております。
  74. 永原稔

    ○永原委員 国債発行について伺います。  五十二年の建設国債五兆二百八十億、特例国債が四兆九千五百七十億、そのうちで、発行残はどのぐらい残っているでしょうか。
  75. 田中敬

    田中(敬)政府委員 四条公債五兆二百八十億はすでに全額発行済みでございまして、四兆九千五百七十億の特例債のうち、現在未発行で残っておりますのは四千二百五十九億円でございます。
  76. 永原稔

    ○永原委員 五十二年度の税収については、二月分しかまだ手元にありませんのでわかりませんけれども、収納率は昨年よりは一・三%ぐらい全体で上がっているようです。まだ発行残があるようですけれども、三月の税収見込みというのはまだわかりませんでしょうか。
  77. 村山達雄

    村山国務大臣 まだはっきりしたところはわかりません。ただ、二月段階で推定いたしますと、ほぼ大体予算どおりいけるんじゃないか、場合によりますと少しよけい入るかもしれぬというような感じでございます。
  78. 永原稔

    ○永原委員 五十三年の発行計画というのは一体どういうふうになっているのか。この前大臣から、民間資金需要も勘案しながら考えたいというお話がございましたけれども、もうすでに四月も半ばを過ぎておりますので、ある程度の計画は持っていらっしゃって、月別にお立てになっているのではないかと思いますが、いかがでしょうか。
  79. 田中敬

    田中(敬)政府委員 すでに五十三年度の国債につきましては、四月に一兆三千億程度発行するということをシ団と先月末契約をいたしまして、目下それは進んでおります。  五月以降どうするかという問題でございますけれども、本年度国債発行額は御承知のとおり、十兆九千八百五十億でございます。従来、過去の例からいたしますと、大体上期にその年間予定額の六〇%近く、下期に四〇%程度というものを発行した実績がございます。本年度、五十三年度の発行計画につきましては、いま御審議いただいております特例債法案がまだ成立いたしておりませんので、この成立をまちまして、引受シ団と財政当局との間で相談をいたしまして、年間上下どれくらいにするかという大まかな方針を決定させていただく、来月のいわゆる頭取クラス世話人会と申しますシ団と財政当局との協議の場において決めていきたいと思っております。また、それに基づきまして、月々の発行をどうするかということは、上下の大枠が決まりましてから決めたいというふうに考えております。
  80. 永原稔

    ○永原委員 この公債発行計画と公共事業の契約、これとは何か関連がありますか。
  81. 田中敬

    田中(敬)政府委員 特に関連性は持たせておりません。
  82. 永原稔

    ○永原委員 昨年の月別の契約状況を見ていきますと、前期、公共事業は七兆四千八百九十億、建設公債発行額が四兆四千九百六十一億。これは契約状況が即国費ではないと思いますので、半分程度いっているでしょうか、そういうことになると、現実に建設公債であるか特例債であるか、これは資金繰り上は差別はつかないだろうと思いますけれども、こういうものについて、公共事業と均衡をとりながら発行をしていくというお考えはないでしょうか。
  83. 田中敬

    田中(敬)政府委員 私どもが四条公債発行をいたしますときに一番問題になりますのは、たとえば公共事業が、現在のような経済情勢ではそういうことはございませんが、繰り延べをされるというような事態がございますと、公債発行対象経費を超えて建設公債発行されるというような事態が起こりかねない経済情勢の年もあるわけでございます。そういう意味におきましては、公債発行対象経費を超えないように四条債を発行していくという点には留意をいたしますけれども、いま特例債並びに四条債が一緒に発行されております現状におきましては、これはすべて資金繰りの問題でございますので、公共事業の上期施行促進というようなことにあわせて四条債の発行をどうするかということは、発行計画上は考慮に入れないで現在までもやっておりますし、今後もそれでいいのではないかというふうに考えております。
  84. 永原稔

    ○永原委員 一般財源的なものを特例債として考えていくと、経常部門と投資部門とを分けて、経常部門については特例債依存度をなるべく少なくする、こういうようなお考えで進んでいらっしゃる。そういう中で、建設公債は公共事業財源ですから幾ら出してもいいのだということでどんどん出していきますと、問題が起こってくるという気がするのです。特に特例債について非常に神経質になっていらしゃいますけれども、買い手の方では、特例債であろうと建設公債であろうと区別して買うわけではございません。こういうものについて、本当に建設公債あるいは特例債をお分けになる理由というのが何だかそこで混乱してくるような気がするのですが、いかがでしょうか。
  85. 村山達雄

    村山国務大臣 いま理財局長が答えましたのは、資金繰りの関係でございまして、予算の効率という問題から申しますれば、やはり分けて考えることは当然だろうと思うのでございます。人件費であるとかあるいは普通の経常経費、それを借金で賄っておるという状況、それはやがては将来の租税負担につながる問題でございますから、これは消化ができようができまいが、本来早くなくすのが当然だと思うのでございます。したがって、分ける意味もありますし、もう一つ考えてみますと、経常経費というものはやはり計画的にたとえば歳出を決めていかなければ、景気の情勢で急に変えるということはできないものでございます。これに反しまして、社会資本に充てます四条国債というものは、景気等幾らでも調整できるわけでございまして、それは地元の人は、いや、おくれて大変だということになりますけれども、日本経済全体として考えてみますれば、その問題は、資金需要民間で起きてきたときには、当然そいつもやるのだということになりますれば、これは大変な話でございまして、需要超過の状況が出るわけでございますので、その両面から言いまして、やはり区別して考えることは必要ではありましょうし、今後もまたそのように考えてまいりたいと思っているところでございます。
  86. 永原稔

    ○永原委員 いまお話ししましたように、買い手側は少しも差別して買っておりませんので、確かに財政支出の面からすると節度を持ってやるということは必要だと思います。これは理解できます。ただ、こういう面で三月の予算委員会に御提出になった資料、できるだけ早く特例公債依存財政から脱却することが先決だというように書いてもありますし、毎々大蔵大臣もおっしゃっていることですけれども、財政収支試算のケースCによって、いろいろ特例債の返還について苦慮している姿が打ち出されておりますが、六十三年三兆一千八百億、六十四年五兆九百億、六十五年三兆八千五百億、六十六年一兆九千億、こういうのが予算繰り入れをなされなければ償還が十分いかないというようなかっこうになりますけれども、一体こういうものが、六%経済の成長があったにしても、予算規模が拡大するにしても、将来財政運営上のネックになりはしないか、こういう気がしてしようがないのですが、本当にこういうものが予算繰り入れ可能でしょうか。そういう点についての御意見と、それから、こういうものも平準化していく必要があるということで、資料の二の方では、五十分の一、四十分の一、三十分の一とずっと数値を変えて繰り入れをなさっておりますけれども、ああいうことをなさる以前に、借りかえをしたならば一挙に繰り入れというのは消えるのじゃないか、六十年で返していけば消えるのではないかという気がしますけれども、どうしてこういうものにおこだわりになるのか、その辺の気持ちを伺いたいと思います。
  87. 山口光秀

    山口(光)政府委員 予算委員会にお出しいたしました資料に基づいてのお尋ねでございますが、予算委員会にお出しいたしました資料そのものは、はなはだ大胆な仮定を置いた試算でございますので、このとおりになるという話ではございません。  ただ、考え方といたしましては、ただいまお話がございましたように、六十三年以降償還のために予算繰り入れが必要になる時期がこの試算では出てくるということでございまして、そこで、財政負担が短期間に集中してくるということに対して何らかの備えが必要ではないかという御議論があったわけでございます。  そこで、試算、二つお出しいたしておりまして、その二の方は、これもはなはだ大胆な仮定でございますけれども、その負担を平準化するために、五十七年、特例債依存から脱却するといたしまして、五十八年度以降前広に繰り入れを行っていくという姿を描いているわけでございまして、何らかの財政負担の平準化のための工夫をしていかなければならないのではないかということを考えておるわけでございます。  そんなことならば、特例債についても借りかえをしたらいいじゃないかという御議論、これは永原委員、前にも御指摘いただいた点でございますけれども、この委員会でもかねてよりいろいろ御議論がありました。従来から私どもは、特例債依存からなるべく早く脱却し、財政節度を維持したいという、いわば悲願を込めましてそういう決意をあらわすものとして、借りかえはしないんだという態度をとっていきたいということを申し上げておりますし、法律にもその趣旨を規定するということまでさせていただいておるわけでございますので、その点は御了解いただきたいと思うわけでございます。
  88. 永原稔

    ○永原委員 終わります。
  89. 大村襄治

    大村委員長 本会議散会後に再開することとし、この際、休憩いたします。     午後零時四十六分休憩      ————◇—————     午後三時四十四分開議
  90. 大村襄治

    大村委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  午前に引き続き、昭和五十三年度における財政処理のための公債発行及び専売納付金納付特例に関する法律案を議題とし、参考人から意見を聴取することにいたします。  本日御出席いただきました参考人は、社団法人公社債引受協会会長植谷久三君、社団法人全国地方銀行協会副会長馬瀬清亮君、日本銀行副総裁前川春雄君の各位であります。  この際、参考人各位に一言申し上げます。  本日は、御多用のところ本委員会に御出席をいただきまして、まことにありがとうございます。  本委員会におきましては、目下、昭和五十三年度における財政処理のための公債発行及び専売納付金納付特例に関する法律案を審査いたしておりますが、本案につきまして、参考人各位のそれぞれのお立場から忌憚のない御意見をお述べいただきますようお願いいたします。  なお、御意見は十分程度にお取りまとめいただき、その後、委員からの質疑にお答え願うことにいたしたいと存じます。何とぞよろしくお願いいたします。  それでは、まず最初に、植谷参考人からお願い申し上げます。
  91. 植谷久三

    ○植谷参考人 ただいま委員長から御指名をいただきました公社債引受協会の植谷でございます。  本日は、昭和五十三年度の公債発行特例に関する法律案につきまして、意見を述べるようにとのことでございますので、証券界の立場から所見を申し上げて、御参考に供したいと思います。  さて、私から改めて申し上げるまでもなく、わが国経済の現状は、長期にわたる景気低迷によりまして、国内では失業、倒産などの摩擦現象を生み、外との関係では国際収支黒字を増幅しまして、円高に拍車をかけているということではないかと思います。  先般成立を見ました新予算は、公共事業費の大幅増加を中心に内需の拡大を図ることによりまして、いま申し上げましたわが国経済が直面しております難局に対処しようとするものであり、適切かつ妥当な政策選択として高く評価するものでございます。  ただいま申し上げましたような内需の拡大のための牽引車としての役割りを財政に期待せざるを得ないという絶対的な要請があり、その反面、長期にわたる不況から税収が伸び悩んでいるという厳しい現実がございます。したがいまして、五十三年度予算と表裏一体の関係になっております財政特例公債法による四兆九千三百五十億円の国債発行することも、やむを得ないのではないかと考えております。  特例公債の継続的発行につきましては、私どもが申し上げるまでもなく、健全財政という見地から見て問題なしとするわけではございません。それだけに現下の不況から早期に脱出し、財政再建を図ることが強く望まれるわけでございます。そのために、政府におかれましては、先般昭和五十三年度予算に盛り込まれました各種公共事業の早期円滑な執行を図ることを決定されたわけでありますが、その裏づけとして、国債も年度を通じての計画的発行が可能となるように、本財政特例公債法案の早期成立を特にお願い申し上げる次第でございます。  いずれにいたしましても、私ども証券界は、建設公債とあわせまして、特例公債につきましても全力を挙げてその消化に取り組み、財政の円滑な運営にいささかなりともお役に立ちたいと考えておる次第でございます。  次に、私ども証券界が担当しております国債個人消化につきまして、近況を御報告申し上げるとともに若干のお願いを申し上げて、委員各位の御理解を賜りたいと存じます。  昭和五十二年度におきます国債の市中公募額は、利付国債によるものが八兆五千七百億円であり、割引国債によるものが二千九百億円強でございましたが、私ども証券界は、そのうち、利付国債では前年度比倍増に当たります二兆六百六十億円を、割引国債ではその全額を引き受けまして、個人中心とする一般消化を行ったのであります。市中公募額に占めるシェアで申し上げますと、利付国債の二四・一%を、また割引国債を合わせますと二六・六%を達成いたしたわけでございます。  五十二年度は、総じて良好な消化環境が続いたことに加えまして、当局におかれましても発行条件について市場実勢に対して十分配慮なされたこと、また、私どもも業界を挙げて国債の消化に取り組みましたこともあって、おかげをもちまして、先ほど申し上げましたような結果をもたらすことができたわけでございます。  私ども証券界としましては、このような実績を踏まえまして、五十三年度におきましても、前年度を上回る国債の消化ができるように懸命の努力をいたしたいと考えている次第でございます。  しかしながら、私どもの努力はもちろんでございますが、そのためには、前年度に引き続きまして、委員御各位並びに発行当局の温かい御理解、配慮が何よりも必要でございまして、ここに重ねて何分の御協力をお願い申し上げる次第でございます。  以下、幸い発言の機会をいただきましたので、この機会をおかりいたしまして、個人など一般投資家との接点に立っております私ども証券界の立場から、国債について若干のお願いを申し上げ、委員各位の御理解をいただきたいと存じます。  その第一は、国債発行条件を流通市場の実勢に基づいて弾力化し、投資対象として常に魅力あるものとしておくことでございます。  今回の息の長い金融緩和の過程におきまして、国債発行条件は七回にわたりまして改定が行われたものでありますが、その引き下げ幅はおおむね市場実勢を尊重した妥当なものであり、その結果として、金融緩和にも支援されまして個人消化の急拡大を達成することが可能であったのでございます。  最近のわが国経済の状況から推測いたしますと、国債を含めまして債券の需給関係は、当面は比較的平穏に推移するものと考えております。しかしながら、今日のわが国の公社債市場は、基本的にはかつてない公共債の大量発行下にあります。今後の景気回復の動向、資金需要の盛り上がりいかんによりましては、流通利回りが上昇するという事態も十分想定しておく必要があろうかと思います。そのような環境変化に対応いたしまして、貯蓄手段としての国債の魅力を維持し、消化を常に円滑に進めてまいりますためにも、また国債発行の健全性を維持するためにも、発行条件を市場実勢に即して設定されていくという慣行が継続されることがことに肝要と存じます。  その第二といたしましては、発行種類の多様化、税制面の配慮等による投資対象としての魅力の向上でございます。  国債が魅力ある金融資産といたしまして、広く国民各層に保有されてまいりますためには、いま申し上げました発行条件の適切な設定が基本となるわけでございますが、これに加えまして、国民の多様なニーズに応じられるよう、個人消化を主眼とした発行形態の多様化が望まれる次第でございます。この点に関しましては、従来から国債個人消化拡大等の観点から、大変建設的な御論議をちょうだいしておりますが、今後とも引き続き積極的な施策をお願い申し上げる次第でございます。  また、国債の魅力づくりという点に関連いたしまして、税制上の諸般の施策についても御配慮を賜りたいと存じます。  なお、最後に国債の流通市場につきまして若干触れさせていただきたいと存じます。  御高承のとおり、公社債の流通市場は、近年急速に拡大を見せておりまして、昭和五十二年度の店頭売買高は全体で百三十三兆円という大きな規模に達しております。この中にありまして、国債の売買高は同じく五十二年度の場合、前年度に比べまして七倍弱の大幅な増加となり、約二十二兆円に達しておりますが、これは公社債全体に占めます比率では一六・三%と利付金融債、縁故地方債に次いで三番目の地位を占めるに至っておるわけでございます。ことに本年三月におきましては、公社債全売買高の二四%を占めるに至っておるのでございます。今後発行残高の累増に伴いまして、国債の売買高はなお一段と増大し、名実ともに公社債市場の中核となることはさほどの時日を要しないところと存じておる次第でございます。  そうした中におきまして、国債に対します国民の信頼を高めますとともに、国債個人金融資産の中核として定着させてまいりますためには、国債流通市場の整備が大変重要かと存じております。  私ども証券界といたしましては、従来にも増してこの点に真剣に取り組んでまいる所存でございますが、いずれにいたしましても、市場整備の基本的方向としては、なるべく幅広い需給の投合を図ることにあると確信いたしております。また、これがひいては安定的な価格形成に連なるものであると確信しておる次第でございます。こうした見地から、発行面の改善とあわせまして、流通金融の一層の拡充等流通円滑化のための諸施策を推進していただくことが肝要かと存じます。委員各位並びに関係当局の御理解、御配慮をお願いしたい次第でございます。  以上をもちまして私の陳述を終わらせていただきます。ありがとうございました。
  92. 大村襄治

    大村委員長 次に、馬瀬参考人にお願いいたします。
  93. 馬瀬清亮

    ○馬瀬参考人 御指名をいただきました全国地方銀行協会副会長の馬瀬でございます。  諸先生方には、私ども地方銀行六十三行の会員が日ごろ各地で何かとお世話になっておりますことを、この席をおかりいたしまして厚く御礼を申し上げます。  また本日は、財政特例法案につきまして私どもの考えを述べる機会をお与えいただきまして、まことに光栄に存じております。  さて、本問題に触れます前に、私どもの営業基盤であります地方経済の状況につきまして、若干述べさせていただきたいと存じます。  私どもは、毎月半ばごろに六十三行の頭取の集まりを持ちまして、その際に、全国各地の経済、金融等の状況につき意見交換をしておるわけでありますが、今月も先週水曜日の月例会におきまして意見交換を行いました。  それによりますと、最近の地方経済は、公共事業が年度末の集中発注等から高い伸びを示しており、建設、同関連資材等公共事業関連の動きがかなり活発化しております。また、一般の民間企業におきましても、長期にわたる減産体制等の効果が見え始め、在庫調整が進展し、市況に持ち直しの気配がうかがわれる品種が増加するなど、ぼつぼつ明るさが見え始めております。  しかしながら、個人消費、設備投資等の国内民間需要が依然として伸び悩んでおり、加えて、地場産業、地方中小企業の輸出の伸びも円相場の急騰などから鈍化しておりますため、大方の企業ではいまだに減産体制を続けており、一部には減産強化の動きさえも見られるなど、業種、品種、企業間の明暗が一段と拡大しており、景況は総体として依然として盛り上がりに欠け、企業の採算、収益面、雇用、企業倒産等の局面に厳しさが続いております。  一方、こうした中で、三月から四月にかけ、公定歩合に続く長短金利引き下げが実施されたこと、経済対策閣僚会議で七項目から成る経済政策が打ち出されたこと、公共事業等に重点を置いた昭和五十三年度政府予算が成立したことなどから、企業マインドにはここにきてやや明るさを見せる動きも出始めております。  しかしながら、こうしたやさきに円相場が二百十円台に急騰しましたため、輸出関連の地場産業、地方中小企業では、生産工程の見直しによるコストダウンに努めるなど、変化する情勢に真剣に対応しようとしておりますが、円高の先行き不透明による成約不振等から、当面は採算より円相場の安定が先であるとの声が一段と高まりを見せております。また、総じて国内民間需要の先行きが不透明で、いま一つ盛り上がりに欠ける状況が続いておりますため、政策御当局の一段の景気浮揚策が期待されているのでございます。  このような観点から、さきに成立いたしました昭和五十三年度予算を拝見させていただきますと、厳しい財政事情の中で、景気浮揚に格段の配慮が加えられているものと存じます。特に財政支出の内容を見ますと、公共事業等関係費に重点的に財源が配分され、前年度当初予算比三四・五%増となっておりまして、十分に景気刺激効果を指向されたものと存じます。  先ほど地方経済の現況の中でも申し上げましたとおり、公共事業関連を中心にやや明るさが出てきておりますので、昭和五十三年度予算成立に伴い、適切な財政運営によりまして、切れ目なく景気浮揚策を推進されますようお願い申し上げたいと存じます。  同時に、財源の乏しい財政環境のため、総額十兆九千八百五十億円、うち四兆九千三百五十億円の特例国債発行が予定されておりますが、景気浮揚とそれによります内外不均衡の是正という当面の重要課題を達成いたしますため、やむを得ないものと存じ、その消化には十分御協力申し上げる所存でございます。  また、御高承のとおり、地方財政におきましても、大幅な財源不足が続いておりますため、私ども地方銀行といたしましては、地域の中枢的金融機関として、国債のほかに大量の地方債をお引き受けしなければならないという大きな役割りがございます。長年の歴史を通じ、地方財政のお手伝いをしてまいりました地方銀行といたしましては、国債と地方債とは重要度におきましては不可分一体のものと考えざるを得ないわけでございますので、地方債のお引き受けにつきましても、この意味におきまして従来同様御協力申し上げることをこの際つけ加えさせていただきたいと存じます。  しかしながら、近年における国債、地方債の発行量並びに財政依存度はきわめて高く、公共債の大量発行に伴う問題点につきましては、十分な御配慮がいただきたいと存じます。  その一つは、財政の硬直化の問題でございます。次には、インフレーションとの関係でございます。さらに第三には、クラウディングアウトの問題でございます。以上は、いずれも諸先生方がすでに十分審議を尽くされた問題であろうかと思いますので、時間の節約上、私は内容の陳述を省略させていただきたいと存じます。  以上、財政特例法案の問題などにつきまして、私どもの考えを述べさせていただきましたが、せっかくの機会でございますので、最後に、最近の地方銀行の経営姿勢等につきまして、若干御報告を申し上げ、諸先生方の温かい御理解を賜りたいと存じます。  地方銀行は、それぞれの歴史と特徴を持つそれぞれの地域に生まれまして、そこを主たる営業地盤とする銀行でございます。つまり、こういう意味で地域に密着し、また拘束されてもいる銀行でございまして、地場産業、地域の方々を含む地域社会とは運命共同体的関係にあるのでございます。そのため、地域社会の盛衰には、他のいかなる金融機関よりも真剣に対処せざるを得ず、それが地方銀行の使命と考えている次第でございます。  と同時に、運用資金は、地元の方々からお預かりいたしました大切な御預金でございますので、経営内容は常に健全でなければならないという使命が一方にございます。すなわち、地域密着とサウンドバンキングを両立させていくことが、地方銀行の最大の使命なのでございます。  長期低迷のもとにおきまして、私どもは、資金量が伸び悩み、利ざやが急速に縮小する中で、既融資分の金利引き下げをも含む個人住宅ローンへの積極的な取り組み、数次にわたる長短金利引き下げによる地場産業、地方中小企業金利負担の軽減、大量の地方債のお引き受けなどに努めてまいっているのでございます。また、昨今の目まぐるしく変化する内外の情勢の中で、金融機関には、経済秩序の支え役としての重責が課せられておりますので、このようなときにこそみずからの足腰を強いものにしておかなければならないと考え、事務の合理化、経費節減に努めるなど、極力体質の強化、経営の健全化に意を配っております。  今後、定住圏構想に描かれておりますように、国民生活を一層豊かに向上させるためにも、地域の役割りは従来以上に重要性を強めてくるものと考えますので、それに伴い、地方銀行に対する公共性、社会性発揮の期待が一段と高まるものと考えられるのでございます。私ども地方銀行といたしましては、地域の方々及び地場産業、地方中小企業並びに地方公共団体などの地域特有のニーズにこたえ、きめ細かな金融サービスを御提供申し上げることにより、地方銀行に期待される機能を十分に発揮してまいりたいと考えておりますので、諸先生方におかれましては、引き続き深い御理解と御指導を賜りますよう切にお願い申し上げます。  御清聴まことにありがとうございました。
  94. 大村襄治

    大村委員長 次に、前川参考人にお願いいたします。
  95. 前川春雄

    ○前川参考人 御指名がございましたので、財政特例法に関しまして、日本銀行の立場から一言申し上げさせていただきます。  まず、最近のわが国の経済情勢でございますが、御承知のように、日本銀行は先月の十五日に公定歩合の〇・七五%引き下げを行いまして、現在三・五%のレートまで下げたわけでございます。  最近の国内の景気動向でございまするが、生産、出荷の水準は徐々に高まっておりまするほか、在庫調整も順調な進展を見せつつございますけれども、昨年暮れごろから見られ始めました部分的な明るさというものは、その後も少しずつ広がりつつあるというのが現状でございます。円高にもかかわりませず、商品市況が底がたい動きを示している点も、昨年の秋とは違った状況でございます。  ただ、これらはいずれも公共投資促進の効果が漸次浸透してきたということが大きな背景となっております。一方、国内の民間需要の大宗をなします個人消費でありまするとか設備投資の動向につきましては、いまなお目覚ましい変化は認められない現状でございます。  日本銀行におきましても、昨日来支店長会議を開いておりまして、各地の報告を聞いておる段階でございまするが、現在の状況は大体以上申し上げましたとおりでございまして、企業マインドもなおかなり慎重であるという状況でございます。  円高につきましては、各地の企業の中でも次第にこれに対応する態勢を整えつつあるところがふえてきておるという話でございまして、その点はやや心強く感ずる次第でございまするが、一方では、ますます苦しさを増してくる企業も少なくない状態でございまして、私どもといたしましても、景気全体への影響についてもこの先注目を怠るわけにはいかないというふうに考えております。  一方、国際収支の動向でございますが、輸出は円高の価格引き上げ効果がございまして、依然高水準を保っております一方、輸入は国内経済の停滞を映しまして、不振を続けております。この結果、昨年度の経常収支の黒字は、昨日発表がございましたが、百四十一億ドルという多額に達しております。私どもといたしましても、黒字の縮小傾向が一刻も早く出てくることを期待しておるわけでございまするが、現在までのところまだその気配は感ぜられない状態でございます。  公定歩合の引き下げは、以上のような情勢を背景に、今後における景気の回復、国際収支の均衡化ということに一層寄与することをねらいといたしまして、決定したものでございます。もとより、現在のような情勢のもとにおきましては、景気浮揚の主導的な役割りは今後とも財政政策に託すべきものと思われまするが、私どもが今回こうした措置に踏み切ることといたしましたのは、金融面からもさらにできる限りの努力を続けていくことが適当と判断したことによるものでございます。  折しも新年度の大型予算が執行に移されたばかりでございますが、公定歩合の引き下げは、これまで進められてまいりました金融緩和政策の累積的な効果をさらに強めるものでございますので、財政面からの措置と相まちまして、この先経済の各部門に少なからずいい結果を及ぼすものと期待しておるわけでございます。  次に、いわゆる財政特例法に関連することでございますが、ただいま本委員会で御審議が進んでおりまする昭和五十三年度における財政処理のための公債発行及び専売納付金納付特例に関する法律案は、新年度予算資金的な裏づけをなすものでございますので、当面財政政策が果たすべき役割りにかんがみまして、私どもの立場から見ましても、これが速やかに成立することが必要であるというふうに考えております。  もちろん、この法律の成立によりまして国債の増発が一段と加速されることになる点につきましては、将来にいろいろな問題を及ぼすことも考えられまするので、私どもといたしましてはこの際、あえて幾つかの点について申し上げさしていただきたいと思います。  その第一は、現在国債の増発が必要であるわけでございますが、これを契機に国債発行に対する考え方が安易に流れ、財政の歯どめが失われるようなことになりますると、これは将来物価への悪影響等が避けられないようになる心配がございます。その意味におきまして、長い目で見ました財政の健全性回復の方向だけは、ぜひともはっきりと見定めておいていただきたいというふうに思います。  第二は、国債の大量増発は、将来いわゆるマネーサプライのコントロールをむずかしくするおそれがございます。現在は民間資金需要が停滞を続けておりますので、マネーサプライも落ちついた推移を示しておりまするが、先行き民間資金需要が回復してくる局面におきましては、公共並びに民間両部門の資金需要が競合する事態が予想されるわけでございます。そうした際に、これら両部門の資金需要を円滑に調整し、マネーサプライの総量を適切にコントロールしていくためには、市中貸し出しを適度に調整するとともに、何といたしましても国債発行自体がそのときの情勢に応じて妥当な範囲に調整されることが必要であるというふうに思います。こうした観点から特に重要な点は、私どもといたしましては、国債発行条件が市場実勢に即して一層弾力的に定められるようになることであると思いますし、また、自然増収等がありました場合には、発行量を速やかに減額するというような慣行をぜひ確立していただきたいというふうに考えております。  以上申し上げましたとおり、今後とも厳しい情勢が続くことが予想されるわけでございまするが、政策運営には一段と困難な状況が加わってきておりますので、私どもといたしましても、引き続き金融政策の適切な運営には今後とも全力を挙げてまいることを念願といたしております。  これをもちまして、私の申し上げることを終わらせていただきます。どうもありがとうございました。
  96. 大村襄治

    大村委員長 以上で参考人からの御意見の開陳は一応終わりました。     —————————————
  97. 大村襄治

    大村委員長 これより参考人に対する質疑に入ります。佐藤観樹君。
  98. 佐藤観樹

    ○佐藤(観)委員 参考人の皆さん方には、大変お忙しいところを当委員会のために御出席をいただきまして、ありがとうございました。  早速でございますけれども、いま前川副総裁からもお話がありましたけれども、これから五年くらい十兆円規模の国債というものをある程度われわれは頭に置いていかなければならぬと思うのであります。そういうことを考えますと、いまお話がありましたように、発行条件の弾力化、それには、市場の実勢に合ったものをということがやはり一番基本になるだろうと思うのであります。これだけの額になりますと、どんなに国が御用金申し受けでやってみても、これはいまの経済システムの中では十分いかないだろうと思うのでありますが、その発行条件は当然、流通市場の状態によるわけであります。  そこで、植谷参考人にまずお伺いをしたいのでございますけれども、陳述の中でも最後の方で、国債流通市場の整備が大変重要かと思われるということを述べていらっしゃいます。それに関して少しお伺いしたいのでありますけれども、いま国債の売買に当たりまして、取引所を通すもの、それから店頭で売られるものがあって、この取引所で売買されるものの比率が、すでに一%を割って〇・五%ぐらいにまで落ちているのではないかと思うのです。そういうことを考えますと、売買されるけれども、その値の基本になるところの取引所価格というものは、わずかにたしか〇・五%ぐらいのものが代表選手で取引所で値づけがされる。本当にこれが国債の売買価格だろうかということについて非常に疑問を持つわけであります。  ただ、国債に限ってで結構でございますが、国債の売買については、非常にロットが大きいものですから、なかなか市場が形成しにくいというような問題があろうかと思いますけれども、この辺のところが、ある意味では四大証券に少し偏り過ぎないかという問題とも少し絡んでくる問題だと思うのです。  しかしいずれにしろ、これからなおかつ公社債市場の育成を言い、あるいは発行条件の弾力化、その背後にはなるべく実勢価格に近いものをと言うときに、わずか取引所では売買される額の一%を切るようなものしか取引をされない、それが値段ですというのが、本当に熟したというか練れたというのですか、実勢価格と言えるだろうかということについて私は非常に疑問を持つのであります。この点について、いろいろシステム等もあるようでございますので、いまの実情と、それから店頭に回るものあるいは取引所を通すもの、これがどういう仕分けになっていくか、その辺のシステムをちょっと御説明いただいて、植谷参考人におかれましては、いまのこの売買市場というものはこれのままでいいのだろうかということについてはどういうふうにお考えになっているか、まずその点からお伺いしておきたいと思います。
  99. 植谷久三

    ○植谷参考人 お答え申し上げます。  ただいまの佐藤先生の御質問、私まことにごもっともだという気がするわけでございます。確かにいわゆる取引所取引が店頭取引に比べて非常に少ないということは事実でございます。  ただ、このことをちょっと御理解をちょうだいしたいと思いますのは、これは株式取引と多少違いまして、いまも先生御自身でおっしゃっていただきました、大きな機関投資家の取引になりますとロットが大きくなる。そのために、そのときにちょうどたまたま大きな買い手があれば、これは価格の問題はありますけれどもすぐつなげるわけですけれども、実際はそうタイミングよくいつもというわけにはいかないのでございます。これは私ども戦前にも、本当の自由取引時代にもずいぶん経験いたしてまいりましたし、それから、ただいま外国の一番自由に行われていると言われるアメリカ市場においても、やはり似たり寄ったりという言葉になりますけれども、そういう状態でございます。それは多少、債券の性質から来るものだというふうに御理解をちょうだいしたいのですが、しかし、それだからといって、少なくていいということではない、できるだけ多く取引所取引が行われることが好ましいと思います。  が同時に、店頭取引と申しますと、何となく取引所とは全然別個な、離れたように普通御理解になるのはあたりまえだと私も思うのです。ところが、取引所取引の値つけというか、そこにおける仮に金額は小さいかもしれませんけれども売買は、店頭というかその背景になる経済の中で、たとえば最近は金融機関からどうもかなりの売りものの希望があるようだなとかいったような、実際のそれを含めて私は市場と言っていいと思うのですけれども、そういうことを常にみんなが頭に置いて、その中で実際適切な程度の、それは小さいと言われるかもしれませんけれども、場で取引が行われるというのが実情でございまして、したがって、本当のことを言いますと、実際の大きな機関投資家の売りものなら売りものがぼかんと出て、仮に無理にそこで何か値をつくり上げるということの方が、場合によっては、きわめてゆがんだという言葉は適切かどうかわかりませんけれども、実情に合わない値段が成り立ち得るのでございます。むしろそういう背景を考えながら適正な取引が行われる、そういう意味で、比較的適正な値つけ市場というふうにむしろ御理解願った方が、私ば正しいのではないかという気がするわけでございます。  したがって私どもは、そういう場合に、取引所取引もできるだけ多くするように、われわれ現に取引所並びに証券業協会等におきましても、特別委員会までつくって、できるだけ改善をして、できるだけ多く無理のない形で集中できるように検討中でございます。したがって、そのことは今後できるだけのことはしたいと思っておりますけれども、しかし、先ほど御説明申し上げたように、店頭取引と切り離されたものではない、非常につながったものであるというふうに御理解をちょうだいいたしますと、両方合わせて全体の量ができるだけ多くなりますように、そういうことによって、本当の経済の実態が債券を通じて反映されるということに結びついてくるわけでございます。  私どもとしましては、そうすることによって初めて、その取引が多くなればなるほど、両市場を合わせまして、店頭も含めての話でございますけれども、債券市場に多く集まれば集まるほど、その値段が練れた値段と言いましょうか、信憑性の高いという言葉になりましょうか、とにかく御理解いただけると思いますが、つまり本当の経済の実情を反映した市場機能がそこに生まれて、十分機能するようになるということになろうかと思います。したがって私どもは、市場を通さない、金融機関とかあるいは大きな法人などの動きにおいてバイパスのように市場を抜け通っていくような形がなるべく少ないようにしていただきたい。そうすることによって、本当に日本の経済をしょっていく、あるいはプライスメカニズムが十分機能するようなものになり得るのではなかろうかというふうに考えておるわけでございます。
  100. 佐藤観樹

    ○佐藤(観)委員 確かに債券の場合には、株と若干性格が違うことは私もある程度理解できるのであります。しかし、われわれはどうしても頭で考える。社長の場合には、その世界で生きていらっしゃるわけですから、若干感覚が違うかと思うのですけれども、いずれにしろ、いろいろ条件はあるけれども、一%ぐらいで値がつけられているというのが今後このまま続いていいということにはどうもならぬと私は思うのであります。  もちろん店頭価格については、これは大蔵省がというのか、正式には取引所が指導しているということになると思うのですが、二%の枠がついておりますから、その意味では全く独自の価格がついているわけじゃないと思うのですが、いずれにしろ、私も実は委員会のときに、株の直取引についてもいかがなるものかという疑問を呈したのでありますけれども、国債についても、銀行が保有国債を売れるようになった、それが直取引をするということにどんどんなってきますと、別のところで価格形成の要因が動いてくるんじゃないだろうか。やはりこれは原則、書生っぽい議論かもしれませんが、やはりロットが多くても一度取引所に入れて、そして中小の証券会社も、そこから必要な債券については買おうと思えばお客の要望で買えるというような市場をつくることの方が、長い目で見ては本当のいわゆる練れた価格、実勢価格というものができるのじゃないだろうかという気がしてならぬわけであります。  しかも、これはどこまで本当だかわかりませんが、取引所の規定ですか、あるいはこれは証券業協会の規定にもあると聞いておりますけれども、現在二%の店頭価格の値幅制限を撤廃しようという動きも聞いておるわけであります。もちろんこの問題自体については両面がありまして、大蔵省がなるべく安い利回りで国債を減らそうという意図でこういうものがあるという意味もありましょうから、その意味では、外すこと自体は実勢に合うということにもなりましょうけれども、片面ではまた、別の要因で店頭価格が取引所を通した価格と違うというのも、これから国債時代に入っていく財政の中で決していいことではないと思うのです。  その意味で、証券界の中にも、取引所を中心にした委員会と証券業協会と二つ、この問題についての研究機関があって、どうも目玉焼きの目が二つあるみたいに、両方議論があるやに聞いているわけでありますけれども、これは店頭価格を自由化することがいいかどうかとも絡んできますけれども、いずれにしろ、一%未満の取引所取引がなされているのを、その価格を横目に見ながら上下二%の幅で価格が決められるというシステムは果たしていかがなものか、どうにも疑問が消えないわけであります。その点について再度お伺いをして、次の問題に移りたいと思うのです。
  101. 植谷久三

    ○植谷参考人 お答えいたします。  御趣旨には、私も全く同様の考え方を持っております。したがって、先ほども申し上げましたように、できるだけ取引所取引に集中し得るように努力をしたいということで、いまも先生が御指摘になりましたように、取引所の方でも、それからメンバーがかなり重なっているのですから、別々といいましてもそう別のあれではないのですけれども、業界の方でも、公社債特別委員会を持ちまして、現に私それの委員長をやっているわけでございますが、そういうことで鋭意検討しているわけでございます。  しかし、くれぐれも申し上げるというか、御理解をちょうだいしたいのは、取引所取引と余り別個ではないということであります。それだからといって、もうこれでいいのだということではございません。先生と同じような考え方のもとにできるだけ取引所に集中したい、こういうふうに考えております。
  102. 佐藤観樹

    ○佐藤(観)委員 次に、いま金融が非常に緩んでいるものですから、債券に余った資金が非常に集中をして、ある程度値が高くなりましたので、今度は株に集中しているという状況ではないかと思います。それに関連をして私が非常に心配をしているのは、前川副総裁も言われましたし、政府自身も言っておるのでありますが、ある程度これで六月ぐらいで在庫調整ができて、これから企業が動き出そうあるいは設備投資をしようというふうになったときに、いままでは確かに資金的に若干余りがあってそれで国債を買っていたが、どうしても資金が必要になってくると当然国債を売るということになるわけですね。そうなってきますと国債の価格が下がってくる。それが一つのはずみになって、簡単に言えば暴落というのですか、そういう危険なしとばしないと思うのであります。その辺のところは日銀として、ショックをやわらげるのに一体どういう手だてを考えられるのか。  日銀がかなり買い支えに入るのか、あるいは大蔵省国債整理基金特会を使って買いに入るのか。日銀の指導で銀行が入るということも、やり方としてはできないこともなかろうと思いますが、暴落をし続けるようなものについて銀行が、そうでなくても苦しいときに手を出すわけはないと思うのです。等々考えますと、いずれにしろ万が一、暴落などということで個人金融資産に、国債を持っていたことによって大きな穴があいたということになりますと、先を見通したときに大変な問題になってくると私は思うのであります。  その意味で、確かにいまは高価格を維持しておりますけれども、経済が本格的に動き出したときに、やはりそれに備えておくだけの必要がある。金融政策としても、それを担当する証券側にも、あるいはそれを持っていらっしゃる地銀の方におかれましても、これは大変な問題だと思うのです。その辺のことについてどういうふうにお考えになっているか、順序はどなたからでも結構でございますけれども、そのお考えについてお伺いしておきたいと思います。
  103. 前川春雄

    ○前川参考人 公社債の市場価格が金融の繁閑に応じて変わるということは、ある意味で当然なことであろうと思います。また将来、そういう単なる資金需要の増高ということだけでなしに、政策的に金融をだんだん引き締めていくという場合も必要であろうかと思います。そういう場合には、保有されておる公社債が売られるという事態は当然予想されるところでございます。ただ、金融の繁閑に応じ、あるいは政策に応じて公社債の価格が変動するということ自体は、むしろ公社債市場の特色であろうと思うわけであります。そういう価格の変動を通じて公社債市場全体の需給が調節されていくということであろうと思いますので、そういう効果が出ますこと自体、私ども決して不健全な状態であろうというふうには思っておりません。そういう市場のメカニズムを通じてこれから経済が運営されていくということは、むしろ望ましいことではないかと考えておるわけでございます。  そういうふうに申しましても、ただいま佐藤先生から御指摘がございましたように、過度に値段が下がる、市場が混乱するということはもちろん望ましくない事態でございます。ただ、そういう事態を想像いたしますと、そういう事態は恐らく経済活動が非常に盛んになってきたということであろうと思います。そういう事態におきましては、そういう経済活動の活発になりましたことがむしろ過度にならないように、私ども金融政策なり何なりを講じなければならないであろうと思います。企業あるいは金融機関が持っておる公社債を売るという事態は、それ以外の資金需要が非常に強いときでございまして、その資金需要が強い状態を健全な範囲にとどめる、あるいはそのときの経済状況に応じて妥当だと判断をされる範囲にとどめるということが私どもの役目でございますので、そういう場合には、金融機関の融資なり何なりにつきまして金融政策の面から十分配慮してまいりたいと思います。  いま申し上げました過度に市場が混乱するほど価格が暴落するという事態はもちろん避けなければならないわけでございますが、そういう事態に対処するには事前に、いまから市場全体の消化について十分配慮しておらなければならないというふうに思います。そういう意味で、あるいは機関投資家の育成であるとか、それ以外の公社債市場全体の整備を図りまして、市場全体の厚みをつけておくということが必要ではないかというふうに考えております。  そういう意味におきまして、相場の変動が大きいからという理由で、私どもが相場支持のために買い支えに出る、私どもと申しまするか、政府も含めてであろうというふうに思いますが、そういうことは、むしろそれに対応いたしまする通貨の増発になりまするので、そういうふうな経済状況が非常に活発になりまするようなときに、さらに通貨の増発を図るというようなことは、あるいは不適当なのではないかというふうにも想像しております。そういう意味におきまして、過度の変動ということに対してはもちろん事前にいろいろ考えなければならないことでございまするが、それに対しまして、価格の変動があったからといって、安易にこれの価格支持を行うということにつきましては、私ども非常に消極的に考えておるわけでございます。
  104. 植谷久三

    ○植谷参考人 お答え申し上げます。  ただいま前川副総裁がおっしゃったことに基本的には、基本的にはというよりも全く同様の考え方でございますが、私は別な角度から多少お答え申し上げたいと思います。  先生の御指摘のように、仮に異常な下落がありました場合には、もちろん国債整理基金の活用だとか、あるいは日銀による買いオペといったようなことも、場合によっては必要なこともあろうかと思いますが、やはりその前に基本的に重要なことは、前川副総裁も触れられましたが、消化をどういうふうにするかといったようなことが一番重要なことだと思っております。その中で、消化ということ、ことに個人に広く消化しておくということは、むしろきわめて安定的なものだ、経験的に言ってもこれまたそういうことが言えると思います。  その場合に、なお前提としてどういうことが必要かといいますと、ことに今日のような国債市場、公社債市場にとっては恵まれた環境の中で、十分信頼のおける国債価格であるということを国民大衆に広く浸透さしておくことが一番重要なことで、それに関連しまして、先ほど申し上げました市場の幅を大きくする、厚みを大きくするということは、国債というものの価格といいましょうか、信頼性をきわめて高めることでございまして、どういうときにおいても自由に売買ができるのだ、しかもその値段は大量の売買によって練れているのだということをいまのうちに基礎づけていくことが一番必要なことで、そういうことによって初めて国債に対する信頼ができる。  多少の値の動きは、これはもう当然のことでございまして、そのときの金融政策その他によって動くことでございますので、むしろこれを固定的にというか、らしくしてしまうことこそ、非常に危険なことであろうかというふうに私は考えておるわけでございます。したがって、それに付随しまして、たとえば証券会社のディーラー機能というようなことも、いざというときにもちろん何らかのお役に立つことだと思うのですけれども、したがって、そういうことの流通金融等にも御配慮をちょうだいしたいような気がしておるわけでございます。  いずれにいたしましても、国債に対するそういう信頼を積み重ねることによって、非常時にどういうことがあるか予測はつきませんけれども、通常の意味でしたら、国債の利回りというものがありまして、それに対する信頼から、そう大きな暴落は、特殊な暴落は避けられるのではなかろうかというふうに私は理解している次第でございます。
  105. 馬瀬清亮

    ○馬瀬参考人 お答えを申し上げます。  ただいまの佐藤先生の御発言は、私どもも非常に身近に感じておるわけでございますが、経済の情勢が今後変わってまいりましたときにどうすべきかということも、銀行としてもやはり考えておかなければならぬということを、私どもは日ごろいろいろ相談をしておるわけであります。  御質問のございました企業が保有する国債の点で申し上げますと、現在企業が保有しておりますものは、比率から言いますとわりあいに低いことであろうかと思いますが、しかし額は非常にふえてきておるわけでございます。そういうことでありまして、経済活動が活発になりまして、これを資金化しなければならぬという場合がありますと、そういう御心配も一挙に表面化しないとも言えないのではないかと思いまして、そういうことで銀行といたしましても、いまからその対策については十分考えておく必要があろうかと思うわけであります。  先ほどからもお話がありましたように、基本的な問題といたしましては、そういったような観点から、市場の実情に見合ったような発行をするということが一番いいわけでありますけれども、先ほどからも申し上げておりますように、こういう異常な情勢でございますので、なかなかそうもまいりません。  もう一つは、流通市場の整備という問題も先ほどから何遍か出ておりますが、これを相当急いでやらなくてはならないというふうな感じを私は持っておるわけであります。そして広く安定した、国民各層に消化をしていただく、そういうような方式というものが、今後必要になってくるのではないかというふうにも考えるわけであります。  なお、民間資金需要が今後急速に高まってきた段階におきましては、機動的に財政金融政策の運営が私どもといたしましては望まれるところでございまして、御当局の御対処をひとつお願いしておきたいと思います。  なおまた、金融機関立場として申し上げましても、金融機関も相当多額の国債を持っております。国債だけじゃなくして地方債も持っておるわけでありますが、その値下がりが出てまいりますと、これは金融機関経営にとって大変大きな問題になるわけでございます。そういうことで、今後経理上の措置といたしましては、現在統一経理基準によって指導され、そういう経理をいたしておるわけでございますが、この見直しも今後必要になるのではなかろうか。いろいろそういう点も関係行政当局にもお願いしたいというふうに考えておるところでございます。要するにそのときそのときによって大きく変動するのではなくして、ある程度長期的に見まして、一時的な市況の動きというものと切り離した、取得価格方式といいますか、原価方式といいますか、そういうことによって処理していただくことが、金融機関としては非常に都合がよろしいわけでございますので、そういう点もあわせまして、諸先生方の御理解も得ておきたいというふうに考えるわけでございます。  以上、簡単でございますが、お答えを申し上げます。
  106. 佐藤観樹

    ○佐藤(観)委員 これは大蔵省が推計した資料ということでありますが、五十一年度の国債の売買実績が七千百六十三億、そのうち事業会社が九百四十三億なんですね。ところが、五十二年になると、これは現先を除いているわけでありますけれども、一般売買で売買高が四兆八千億になっているうちの事業会社が一兆八千八百億余ということで、非常に事業会社が伸びているわけですね。  いま厚みのある市場と言われたのは、恐らく事業会社等のように、新しい資金需要でそれを売るということではなくて、たとえば官公庁の共済組合とか個人とか学校法人とか、こういった手がたい顧客というのですか、所有者をなるべく多くつくっていこうということが、安定的な市場をつくるということになるのじゃないかということだと私は思うのでありますが、それに関連をして、もう少し国債の種類をふやしたらどうか。たとえばそういった安定国債保有者をなるべくふやすためには、まあインフレの率もかつてに比べれば少なくなったんでありますから、日本人の感覚で言えば十年でも長いと言えばそうかもしれませんが、もう少し十五年あるいは二十年の超長期の、しかも若干利回りのいい国債をつくったらどうか。あるいは逆に三年ぐらいの短期の国債をつくったらどうか。これは当然郵便局の貯金とかあるいはその他銀行の定期とかこういったものと競合いたしますから、なるほどむずかしい点はあろうかと思いますし、償還の問題は一体どうするかという問題もありますので、いろいろ議論はあろうかと思います。しかしいずれにしろ、五年と十年、しかも五年は三千億足らずのものしか出てないということですから、事実上は十年ものしかないに等しいわけですね。これで果たしていま言われたような厚みのある市場、あるいは安定的な所有者をなるべく多くつくっていくということに耐え得るだろうかどうだろうかということは、非常に問題があろうかと思うのであります。その点について、三者の御意見はいかがでございましょうか。
  107. 前川春雄

    ○前川参考人 国債の円滑な消化を図ります観点から、先ほど来いろいろお話が出ておりました、私も冒頭に申し上げましたけれども、発行条件がそのときどきの市場実勢を反映するように、これは基本的な点であろうというふうに思いますが、それと同時に、いま先生お話がございましたように、投資家の需要にマッチした種類、期間その他の条件でいろいろな種類のものが出てくる、そういうふうな多様化というわけでございますか、そういうことは非常に必要なことではないかというふうに思います。そういうことが結果的には公社債市場全体をむしろ広げることになるのだというふうに思います。  そういう意味におきまして、現在のように国債には十年ものの利付と五年ものの割引債だけしかないという状態は、必ずしもそういうふうな事態にマッチしたものであるとは言えないというふうに思います。海外でも、いま先生指摘がございましたように、いろいろバラエティーがあるのが実情でございまして、期間につきましても、非常に長いものもあり、また短いもの、中期のもの、いろいろ多様な種類が発行されておるわけでございます。そういう意味におきまして私も、そういうふうな投資家の需要にマッチした種類を、いろいろバラエティーを持たせるということは必要なことではないかというふうに考えます。  ただ、先生もお触れになりましたように、そういう金融資産につきましては、従来すでに出ておりまする債券と競合するわけでございまするので、その辺の問題も、やはり両方とも債券でございますので、どの債券の消化が悪くなってもぐあいが悪いわけでございますので、そういう債券との間の調和をどうやって図っていくかということは、なかなかむずかしい問題であろうかと思いますが、基本的に種類をふやすということにつきましては望ましい方向であろうというふうに考えております。
  108. 馬瀬清亮

    ○馬瀬参考人 お答え申し上げます。  大量に国債発行されます折にこれを円滑に消化するためには、国債に魅力を持たせるということが非常に大事であろうかと思うのでありますが、そのためには、もう一つは市場の整備育成が肝要であるということも先ほど申し上げたとおりであります。  そういう意味から言いまして、国債の種類の多様化という問題につきましては、引受者のニーズの多様性にこたえられるものとして、引受層の拡大につながる方策であろうかと思うわけでありますが、ただ問題は、期間をどの程度にするか、条件をどうするか、その辺のところが一つ問題であろうかと思います。  現在国債の大部分が民間金融機関によって消化されている実情もございますし、これが急速に個人消化に切りかわるということもなかなかむずかしいわけであります。そこで、その種類の多様化に当たりましては、金融秩序を乱さないというような配慮をしながら、逐次進めていただきたいというふうに私ども考えておるわけでございまして、副総裁おっしゃいましたように、基本的には、そういうふうな多様化をいたしまして魅力を持たせ、そして消化を容易にするということにつきましては異存はございません。いろいろ各金融機関、銀行なら銀行としての、先ほど先生みずからおっしゃいましたが、定期預金あたり、二年ものとの関係をどう考えるか、そういう微妙な問題が実はございますので、ほかの業態の金融機関につきましても同じことが言えるんじゃないかと思いますが、そういう点を十分御配慮いただきたい、かように思うわけでございます。よろしくお願いいたします。
  109. 植谷久三

    ○植谷参考人 お答え申し上げます。  先ほども先生が御指摘になりましたように、非常に安定的ないわば長い資金も十分にございます。そしてまた国民の中には、比較的短い金もございます。そういう意味で、とにかく金融機関あるいは機関投資家も含めまして、投資家のニーズというものは非常に多様でございます。それだけに、それにマッチする、たとえば期限で言うならば、十年以上に長いものも、だんだんそれに対応していくようなかっこうになるんだろうと私思いますし、それからまた短い資金にも対応するものをお出しいただくことによって、うまくそれがつながっていくということになろうかと思います。したがって、それは私はなれと市場の発展の次第によってそういうことがだんだん豊富になってくると思う。市場がそういう意味で信頼されるようなものになるという意味は、先ほどもお二人からお触れになりましたけれども、やはり何と言っても市場の実勢に応じて、その応じたかっこうで、そのつど、そのつどに条件を決定されて発行されるという慣行が国民の中にしっかりと定着いたしますと、本当に信頼を持って、それぞれ長い資金には長いものが、短い資金には短いものがというふうに対応できていくだろうと思います。  そういう意味で、私ども証券界といたしましては、できるだけ多くの投資家のニーズにこたえられるようなものを出していただきたいということを、基本的にお願いしているような次第です。ただその場合に、たとえば長いもので、これが市場的にはやや制限されるというか、むずかしいものであるというようなことになると、これはかえってやりにくくなると思いますので、市場性が十分ついているという条件の中で、いま言ったような多様化が望ましいというふうに考えております。
  110. 佐藤観樹

    ○佐藤(観)委員 次のテーマとして、いわゆる国債の銀行窓販の問題について、御両者から見解をお伺いしたいと思うのでありますが、どうも窓販と言うと、何か露店で売っているという感じがして、私は一番最初のときから非常に不正確な印象を与える言葉だと思うのでありますけれども、そこで私は「いわゆる」と言ったのであります。  その話の前提として、銀行も国債を売らせろという話が出た中では、もう証券界も個人消化もある程度限界に来たのではないかというのが、銀行側の一つの言い分であったと思うのであります。今度はどのくらいやれるぞ、銀行さん心配するなということなのかどうなのか。  それともう一つ、馬瀬参考人にお伺いしたいのでありますけれども、地銀の場合には、特に陳述にもございましたように、国債ばかりではない、地方債のめんどうを見なければいかぬ。しかも先ほど大蔵省から数字をつくってもらったのでありますけれども、五十三年の一月末で地銀が保有している公共債が、国債が二兆八千二百六十四億、地方債が一兆七千四百八十七億、もう国債の方がはるかに多くなって、総資金量の一一・三%が公共債を持たなければいかぬということで、都銀その他も大変でしょうけれども、地銀も地方債があるだけに何かと窮屈だと思うのであります。ただ、いま金融がこういう状況であり、また景気がまだ本格的に上に上がらないということで、何となく息をついているというところが実情じゃないかと思うのでありますけれども、その点について、たしか地銀の割り当てが一六・七%ぐらいだったかと思うのでありますけれども、これは資金量から言って地銀の方にしてみればもう精いっぱい、とても従来どおりにはいかぬという状況なのか、その辺はいかがでございましょうか。
  111. 馬瀬清亮

    ○馬瀬参考人 お答えをいたします。  窓口販売につきましての地銀の考え方をまず御質問いただいたわけでありますが……(佐藤(観)委員「それをまた後でまとめて。後段の方を」と呼ぶ)そうでございますか。  地方銀行としての引き受けの限界にきておるのではなかろうかというようなお話でございますが、現時点におきましては、民間資金需要というものが非常に低調でございますし、そういうこともありまして、現時点においてはさほどの問題はございませんけれども、ただ、私どもといたしましては、地方に本拠を持っておりますからには、何といいましてもまず地方債、非公募債、縁故債と申しますか、これだけは歯を食いしばってでも引き受けなければならない。そういうことで、私の方の例を申し上げて恐縮でございますが、当行の場合は一〇〇%一行でもって地方債は引き受けておるわけでございます。国債にいたしましても、先ほど申し上げましたように、これは地方債以上にさらに大きな、次元の高い問題であります。しかし、われわれから見ますと、全く不可分一体のものであるということを申し上げたのでありまして、同じような意味におきまして、国債につきましても努力をして、今後ともその責めを果たしていきたいということでございます。  それにつきましては、前々からも御要望申し上げておるのでありますが、非公募債、いわゆる縁故債でございますね、これの流動化の問題を数年前からお願いをしておったわけでございますが、いろいろと事情もございましてそのままになっておりますけれども、地方銀行としては、決してこれはあきらめておるわけではございませんので、今後民間資金需要も活発になってまいりました場合においては、そういった地方債の流動化というものを考え、日銀の担保の適格にもしていただき、あるいはコールの担保にもとっていただけるとか、そういうようなことでもって流動性を保ちながら、一般民間資金需要にもこたえていきたい、かように思っておるわけでございます。引き続き努力をして、両方とも引き受けるつもりでございますから、ひとつよろしくお願いいたします。
  112. 植谷久三

    ○植谷参考人 初めに、御承知になっておられると思いますけれども、私ども証券界の個人消化の方は、五十二年度一つをながめてみますと、利付国債で二兆六百六十億円、それから割引国債で二千九百億円、合わせまして二兆三千五百六十億円を消化したわけでございます。これをたとえば四十九年度千七百八十億円、五十年度三千五十七億円、五十一年度一兆五百十八億円、それからいま申しました五十二年度が二兆三千五百六十億円というふうに、この推移をごらんいただきましても、倍々ゲームじゃないのですけれども、いままでのところきわめて順調に伸びているわけでございます。これを最近の傾向で申し上げますと、昨年の十月の千三百億円を最低にいたしまして、毎月記録的な伸び方をいたしまして、今年の三月には一カ月で二千五百三十億円を消化したわけでございます。いずれにいたしましても、もうすでに市中消化額は、五十二年度で申し上げますと、割引の方の国債も入れまして二六・六%という消化をいたしたわけでございます。  ところで、今日の環境あるいは今後の環境、見通しは大変むずかしいですけれども、一応見通される感じでいきますと、御承知のように、最近の個人金融資産の伸びも著しいことでございまして、もうすでに最近では二百四十兆というようなことが言われているわけでございます。最近のことで申しますと、たとえば五十三年度は大体四十兆円くらいは伸びるのではなかろうか。その中で債券がどのぐらいだろうか。過去においてはもちろん数字は小そうございます。しかし、最近ぐんぐんと伸びてまいりました。これは国債個人消化等を通じて、いろいろな意味で債券というものが国民の中に投資物件として浸透したことだと理解するわけでございます。  そういうことで、ことしは伸びのうちのほぼ一五%ぐらいは少なくともいけるのではなかろうかという推定をするわけでございますが、仮にほぼ四十兆の一五%というと六兆円になるわけでございます。そういたしますと、たとえば国債の三兆とか、まあわれわれそのぐらいは目標にしてやろうじゃないかといっていろいろ努力目標にしておりますけれども、そこら辺の程度のものは無理なことであるというふうにはどうしても考えられない。ことに、日本の場合は比較的まだ少なかったわけですから、今後も、みんなの理解によりましてだんだんふえつつあるときでございますので、国債個人消化はかなり伸ばしていけるというふうに証券界では考えているわけでございます。
  113. 佐藤観樹

    ○佐藤(観)委員 次に、馬瀬参考人にお伺いしますが、例の国債の銀行窓販というものについての考え方でございますが、ちょっとこういう御質問をしたいのでありますけれども、もちろん窓販と言っている場合には、単なる新規債の販売だけではなくて、当然顧客が持ってきたときには銀行の窓口で引き受ける、既発債は法人にも売れる、事実上のディーラー業務がやれると都銀が言っている概念にお伺いをしたわけでありますけれども、確かに力の強い銀行はある程度預金も減らさずに、国債を売る、あるいは関係の法人に割り当てるということができるかと思うのであります。ところが、いままでは事実上、預金国債でいわゆる銀行の経理上肩がわりをしていたわけですね。それが今度は窓口で肩がわりをするだけで、事実上預金をおたくの方に、たとえば北陸銀行なら北陸銀行に預金をしに来るのに、この際はどうも短期的に見ると国債の方が利回りがいいから国債にしていこうかということで、預金国債にかわるだけではないか。あるいは皆さん方の方でも、逆にその国債を販売するために非常なコストが必要になってくるのじゃないか。預金も減らさずになおかつ国債も売ろうということになりますと、これはやはり都銀の方が力がすぐれているのではないか。そういった意味では、地銀なり相銀なり信金なりになると、非常に苦しい結果になるのではないだろうか。  その意味で、単なる銀行で国債を売るとか売らないとか、あるいは既発債を扱えるか扱えないかという問題も重要な問題でありますが、それと同時に、これはかなり銀行間における強弱の問題、つまり、弱小の金融機関がますます苦しくなってくるという側面を一つ持つのではないだろうか。この問題はそういった意味で、銀行の力によるところの再編成の問題を呼び起こしてくるのではないかということを私は思うわけであります。その点について、都銀の中にも若干、そういう結局預金国債にかわるだけではないかという心配があるやに聞いているのでありますけれども、また若干お立場の違う地銀としては、この点についてはどういうふうに考えていらっしゃるのですか。
  114. 馬瀬清亮

    ○馬瀬参考人 お答えをいたします。  まさに地銀がいま一番問題にして論議をしておるところでございまして、都銀がおやりになるようなものをいますぐ私どもが同じ時期にやれるかどうかということについては、御指摘のとおり大変問題があると思います。  そういうことで私どもといたしましては、地方銀行六十三行と申しましても、上位の相当都市銀行にも匹敵するような銀行から小さな銀行もございますので、そういう全員のコンセンサスを得られなければなかなかこの問題については踏み切りにくいわけであります。時間をかけまして以前から論議をしておるところでありまして、その間にいま御指摘の問題はもうほとんど出ておりまして、まさにおっしゃるとおりであろうかと思います。  そういうことで、わりあいに規模の大きな力のある銀行はやろうと思いますれば、そういう要員も速やかに養成をし、そして店舗も生かしてやれることがあるかもしれませんけれども、これにつきましても、なかなか一朝一夕にできる問題じゃございませんので、タイミングの問題が一つあろうかと思います。できるところからやるということになりますと地銀全体の足並みが乱れる、そういう問題も一つございます。そういうことで、今後はこの問題は、地方銀行として慎重に対処をしていかなくてはならないというふうに考えているわけであります。  ただ現在までのところ、方向といたしましては、やはり国債の大量発行が今後も続くことでありましょうし、その安定消化というものが国のためにどうしても必要であるということであれば、そういう大勢に対して地方銀行としてもそれなりの協力をすべきじゃなかろうかという前向きの考え方は出ておるわけであります。  さようなことで、そのためには、いろいろの条件をまず整備をしてもらわなくてはならぬということが、一つ要望として地方銀行からも関係当局に今後とも出されるかと思うわけであります。まあ実施するに当たりましては、国債の管理政策、いわば発行、流通市場の整備など、先ほど言いましたような一連の環境づくりが十分に進められなければならないというふうにも考えますし、それから、内部的な問題といたしましても、事務の負担というものは相当なものであろうかと思います。そういうことで、銀行自体経営上、もう少し詰めていろいろ検討していくべき問題があろうかと思います。  そういうことで、仮に地方銀行協会意見が一致いたしまして、それでは六十三行でこれをやろうじゃないかという結論が出たにいたしましても、都市銀行さんのように一律同じようなことではなくして、やはり店舗数の多いところ、それから山間僻地あるいは離島に店を持っておるところもありますし、すべての店がそれを扱えるという問題でもございませんし、地域的に地元の大きな店を中心にしてやりますとか、そういういろいろの違いが当然出てきていいのじゃないか。そういう前提のもとで徐々に踏み切っていくということに相なるかと思うわけであります。若干私どもの方といたしましては、基本的にはその方向に対して御協力をすべきであろうというふうに考えておりますが、そういう問題の整備を待って進めたい。  いまもう一つお尋ねがございました、たとえば預金のシフトの問題も論議がされましたが、現在でもマル優制度というものを手いっぱいお使いになっているお方あたりにつきましては、最近きっちりやっておりますので、それ以上のことはおできにならない。そうしますと、いろいろそういった御相談を受けることがありまして、債券を求めたいとか、あるいは株式を求めたいとかいうようなこともあります。現実にそういう方はそちらの方を御利用をされる、そういうふうな選考をされる、いろいろの条件、お好み等によってお選びになるという傾向がございますので、銀行の窓口で仮に国債を販売いたしたにいたしましても、預金が全部シフトするというようなことまで考えなくてもいいのじゃないか。余裕のある方あたりにそういうものをお勧めして、そして消化にお手伝いするということも一つの方法じゃないか、そういう議論もなされておるということをひとつ御紹介申し上げておきたいと思います。  以上でございます。
  115. 佐藤観樹

    ○佐藤(観)委員 銀行がもし国債を扱った場合に、たとえば拘束預金の問題についても、ずいぶん当大蔵委員会でも歴史的にやっているけれども、なかなか解消されない。そういうものにかわって、じゃその国債を割り当てて融資をしましょうとか、事実上そういうようなことが起こるのではないかというのが、北陸銀行さんはそうじゃないかもしれませんけれども、正直言って従来の銀行の状態を見ていますと、どうも起こり得るのじゃないかとかいろいろ疑問があるのです。  その疑問の起こる中で、もう一つ一番経済的な問題は、銀行というのはある程度公定歩合の引き下げあるいは引き上げに伴って金利を決めてくるというところだけれども、それは確かに物価上昇に伴っていわゆる預金の目減りという問題はありましたけれども、キャピタルロスという問題は銀行というのはやってないわけですね。だから、国民が銀行へ行って、いや実はおたくで買った国債は、もう一回売り戻そうと思ったときに、これだけ実はロスが出ていますということが、銀行の窓口として、同じ銀行でやれるだろうか、またそういうのがなじみになるだろうか。まあなじみというのは変な言い方かもしれませんが、銀行というものの持っている信頼、そうなると何か証券会社は信頼ないように聞こえるかもしれませんが、そういう意味じゃなくて、扱っている商品が、預金の場合には物価上昇に伴うところの目減りはあるけれども、キャピタルロスというのと若干性格が違うと思うのであります。ところが、議論をしたように、債券の場合にはそういったことは当然予想しなければいかぬ。そうすると、果たしてそういうことが国民としてなじめるかどうか。もしなじめない、非常に抵抗が強いと、ある程度銀行としても理論価格でもう一回買い戻さなければならぬということになると思うのです。そうなりますと、証券会社で売買している価格と、銀行に持っていったときに理論価格で買い戻すというのと、恐らく理論価格で買い戻す方がその場合には高い価格になっているでしょうから、そうなってきますと、経営上も大変な問題になるだろうし、それはまた証券の経営にもはね返ってくるという問題が起こると思うのであります。  この辺は、時間がありませんので申しわけございませんが、キャピタルロスを回避した理論価格で買い入れるということにならぬだろうかどうだろうか、これがひいては同じ国債でも、証券会社のある程度実勢に沿った価格と、理論価格というものでできた価格という、二重価格というものが生じないだろうかということについては、おたくの地銀協としては内部的に少し討議があったのでしょうか、その辺、簡単にちょっとお願いしたいと思います。
  116. 馬瀬清亮

    ○馬瀬参考人 簡単にお答えいたします。  御指摘の点は、一部の銀行からそういう声が大変強く出ておりました。やはりいままで銀行というところは、金利の上がり下がりはありましても、元本が減るということはまずなかったわけであります。今後、国債なりその他の債券を扱うことになりますと、当然それが出てまいるわけでありますので、それが銀行のイメージを非常に悪くしないかということを懸念される頭取方も相当数おいでになります。それにつきましては、やはりやりますからには、そういうものを十分理解していただける方でございませんと、だれにでも勧めるというべき筋合いのものではなくして、むしろ先方からそれを指定されておいでになります方にお買い上げいただく、そういうことが必要かと思います。銀行は、値下がりをしましたものをもとの値で買い戻すということは、現実の問題としてできませんので、そういうような配慮は今後当然やっていかなければならないかと思います。  それから、いま一つの拘束ということもございましたが、私の方は、地方銀行は特に当局からの御資料をごらんくださいますように、非常に自粛をしておりまして、その実は上がっておるのではないかと私は思います。個別の問題がありましたら、いつでもひとつ御指摘をくださいまして、私どもといたしましても、十分に注意をしていきたいと思います。どうぞよろしくお願いいたします。
  117. 佐藤観樹

    ○佐藤(観)委員 最後に、植谷参考人にお伺いしたいのでありますけれども、一番重要なことは、冒頭にも言いましたように、まだまだこれから国債発行が続くわけでありますから、公社債市場の育成ということが一番重要なことだと思うのであります。そのときに非常に疑問なのは、公社債市場にディーラー業務まで銀行がやってきて、法律論でできる、できないは別として、公社債市場の健全な育成発展ということを考えたときに、銀行自体が大変な公社債の保有者であり、それが売り手あるいは買い手として入ってくるということで、しかも御存じのように、銀行は企業の財務内容をほとんど御存じだ、トランプで相手の手を全部知っているみたいなもので、そういう方が公社債市場に入ってきて、そして本当に価格形成というものが正しくできるだろうか。こう言っては失礼かもしれませんが、たとえば都銀の力、その情報量なりあるいは資金量を証券会社と比べた場合には、はるかに大きな力を持っているということになりますと、これは別のことでありますけれども、いまこれだけ不況の中で一番問題になっているのは、借入金が非常に大きいことで、これは戦後ずっと間接金融に頼ってきたことが私は非常に問題だと思うのでありますけれども、その意味では、直間の金融のバランスをとるという面を私自身考え方の中にあるわけでありますが、それは別としても、市場の公正な価格形成というときに、片方では与信、受信の力を持っていて国債売買を事業法人にするというような力を持って、そうして大量の公社債を持って市場に出てきてみずから売買をやるということで、果たして公正な価格形成という非常に重要なテーマを大きく阻害をすることにならぬかということが、法律論でできるできないということの問題よりも、その公社債市場の育成発展にこれがプラスになるかマイナスになるかという問題が、最大の問題ではないかと私は実は思っているわけであります。この点について、いかがお考えでございましょうか。
  118. 植谷久三

    ○植谷参考人 先生のただいまの疑問点として御指摘いただきましたこと、実は私が全く同様な疑問というか、懸念を持っている問題でございます。  簡単に申し上げさしていただきますと、いわゆる窓販と言われていることも、実はむしろバンクディーラーを考えておられるというふうに新聞、雑誌等で拝見しておりますので、むしろそちらに焦点を合わしてお答えしたいと思います。  御指摘のございましたように、銀行は与信業務、受信業務両方の業務を中心として御経営をなさる、そのことは、体質的にも金利体系のバランスをこそ大切にしなければならない業務だと思うのです。したがって、そういう銀行さんが一方で、国債は先ほど来も話の出ましたように、あくまでも有価証券でございまして、これは金融情勢を背景にしながら、そのときそのときの資金の需給関係によって価格が決められるという、いわゆる市場の自由なプライスメカニズムの作用する商品でございます。したがって、先ほど申し上げたような銀行の体質の中で、こういう動く国債をお扱いになることが果たして体質的に合うのかどうか、あるいは預金者保護にどういうふうに影響を与えるのだろうかということから、私は必ずしも好ましいことではないなあというふうに感じておるわけでございます。  また、先生おっしゃるように、価格形成の問題について見ても、銀行は預金という大量の資金をお持ちになっております。したがって、その金融力を背景にしながら、たとえば国債の販売でも、あるいは平素のディーラー行為においても、その金融の力というものは、これは否定し得ない問題だと思うわけでございまして、そういう方が、あるいは新発債の販売の場合ですと、今度は仲介者としてお立ちになるというのも、力の関係でいかがであろうか。あるいはまた、市場価格の形成に照らし合わせて考えてみますと、大きな資金を持ってディーラー行為をなさる、あるいは自分のところにも大量にお持ちになっているから、それを頭に置いてのディーラー行為をされるということは、価格に介入なさるというような余地が全然ないというふうには、私はどうもそこら辺大いなる疑問を持つわけであって、そのことをあわせて考えてみますと、私ども証券市場といたしまして、公正なる不特定多数の方々によって、多くの方々によって価格形成される、その自由な価格メカニズムがとにかくこの機能が何らかの意味で影響を非常に受けるという懸念をいたすわけでございます。そしてまたそのことは、ただ単に国債についてのみにとどまらず、国債が市場の中核体ですから、国債の価格決定がほかの債券一切に影響してまいるわけであって、市場の実勢といささかでも違うようなかっこうになってきますと、これは証券市場の拡大育成は思いも寄らないことであって、非常に阻害されるということになろうかと思います。  繰り返して恐縮でございますけれども、いままでも申し上げましたように、価格機能が自由に発揮されることによって、発行市場もまたその上に乗っかることによって市場というものは拡大していって、国民の信頼し得る拡大された市場になっていくんだ、それに対する阻害要因というのは、その逆であるというふうに私は考えておるわけでございます。ことに、これからなおなお国債が大量に何年も続いて発行されるということになれば、債券としての信頼ということがきわめて重要だ。そういう中で、間接金融に非常にウエートの高いこの国の経済を、どうしても直接金融をもう少し伸ばさないとバランスがとれないという現下におきましては、こういったようなことに対して十分な御配慮をちょうだいいたしたい。国民経済的に将来のことも考えて、私は常にこの問題を考えている次第でございます。  これでよろしゅうごさいましょうか。——どうもありがとうございました。
  119. 佐藤観樹

    ○佐藤(観)委員 どうもありがとうございました。
  120. 大村襄治

    大村委員長 宮地正介君。
  121. 宮地正介

    ○宮地委員 参考人の方々には、大変御多忙のところ当大蔵委員会にお越しいただきまして、心から敬意を表する次第でございます。  先ほど来るる公社債市場の問題などにつきましてお話もございましたので、私も少し角度を変えまして、初めに日銀副総裁並びに公社債引受協会の会長さんから御説明を伺いたいわけでございますが、現在の東京資本市場を海外からの資金需要を充足すると同時に、海外の投資家の円資産投資需要というものを満たすために、そろそろ本格的に国際資本市場としてもう一歩発展をさしていく必要の時期に来ているのではないか、このように思うわけでございますが、その点についてまず御見解を伺いたいと思います。
  122. 前川春雄

    ○前川参考人 お答え申し上げます。  日本の公社債市場、債券市場、だんだん発展してまいりまして、ことに、最近のように国際収支上経常勘定が非常に大きな黒字を出しておるという場合には、長期資本勘定で資本の流出を図ってまいらなければいけない面がかなりございます。これはドイツでも同様でございまするが、ドイツも、経常勘定の黒字に対応しまして、長期資本市場で資本を海外に流出させるという努力をしておるわけでございます。われわれもいまの国際収支の状況に対応いたしまして、資本の流出ということはかなり一生懸命努力しておるわけでございます。現在いわゆる円建て外債というのが、毎月ほぼ千億円見当発行されております。これのかわり金は海外に外貨で持っていってもらうことになっておりますので、資本の流出になるわけでございます。こういうふうに東京のマーケットがかなり国際的に大きなマーケットになりつつあるわけでございまするが、まだ世界的には、国際的に見ました面では不十分な点がございます。  いま私が申し上げましたのは発行市場の点でございまするが、発行市場が健全な発達をいたしまするには、流通市場がやはり同じように発展しておらなければならないわけでございます。そういう意味におきまして、最近いろいろ先ほどから御議論が出ておりますように、公社債の消化というものも、金額もふえてまいりましたし、それが投資家の所要に応じて取引量もふえてまいったわけでございまするけれども、まだまだ国際的には必ずしも十分な発展をしておると思っておりません。  これからもそういう面につきましては、政策的にもやれる面は十分努力していかなければならないと思いますが、要は、やはり資金の需給がそこで非常に市場メカニズムに応じまして健全な形でマッチするというような場ができることが大事でございます。そのためには、資金がそこへ流入し、それを需要する方々がそこで自由に——自由にと申しまするのは適当でございませんが、そのときどきの状況に応じてその需要を満たすことができるような市場ができるということが望ましいわけでございまして、そういう点につきましては、今後これからもわれわれといたしましては、努力しなければならない余地が多分にあるというふうに考えております。
  123. 植谷久三

    ○植谷参考人 お答えいたします。  御指摘いただきましたように、日本の資本市場、今日これだけの大きな経済になった日本の資本市場が、国際的に十分な機能を果たしていないということでは私はきわめて残念だと思いますが、最近その点については急速に成長しつつあると思います。まだ不十分ですけれども。たとえば御指摘のありました円建て債で推移を見ますと、五十年には三百五十億円の円建て外債、それから五十一年には六百二十億円だったものが、五十二年度に五千三百億円程度になっております。そして多分、これは予想でございますけれども、五十三年度は一兆円ぐらいになろうかというふうに推測しておるわけでございますが、なぜこれほど急速に変わってきたんだろうかという背景を一言で申しますと、やはり国債を初めといたしまして電力債その他債券が、市場実勢を尊重するような、条件改定などを通じてそういう態度がだんだんと強まってきたということ、このことが一番重要なことだと思います。したがって、なお申し上げますならば、今後いろいろな場面においていろいろなことに遭遇することがありましょうけれども、そういうことに恐れないで、やはりあくまでも債券というものは市場実勢を尊重することによって、そして条件の決定などもそういう態度を貫くことによって、国民の信頼を得るとともに全世界の信頼を得るということにつながることだと思います。
  124. 宮地正介

    ○宮地委員 ただいまもお話がございましたけれども、全世界に貢献が通じる、私も大変そういう意味で国際市場への発展というものに期待をしている一人なんでございます。  特に日本経済がGNPでは世界の一〇%を超える規模であるのに対しまして、現在五十三年度で円建て外債も一兆円ということで、伸びてはきておりますけれども、昨年度の残高で見てまいりますと、やはり西ドイツのマルク建て外債などに比べますとまだ十分の一にすぎない。国際資本市場に対しましては二%に満たないというのが現状でございます。  また、そういう量的な面のみならず、質的な面を見ましても、担保制度の問題あるいはディスクロージャーの問題など考えましても、海外からの民間債の起債が実際には私はおくれているのが実情ではないかと思うのですね。  そういう点、特に海外からの資産の流入あるいは海外への資産の流出といった双方を拡大していく。どっちかといいますと、従来は片道交通といったような感じがあるわけでございます。私は、いまわが国が世界経済の中で何をなすべきか、こういう一つの大きな課題また役割りというものを考えたときに、国際資本市場のメカニズムを生かしながら、世界経済への貢献、これをしていく必要があるのではないか、こういうふうに考えておるわけでございますが、この点もう少し具体的に皆様方の提言なり方法があれば、もう一度お伺いをしたいと思います。
  125. 植谷久三

    ○植谷参考人 お答え申し上げます。  先生の御指摘と全く同意見でございまして、これだけの国際資本市場にあるいは目指すというか、なってきつつあることですから、より以上に世界経済のために役立つためには、御指摘のように円建て債にしても、もっと発行できるようにならねばいけないと思います。それにつきましては、先ほども申し上げましたように、いわば五十二年度から始まったような、まだ本当の初歩だと思います。その観点から言いますと。それについて、ただいまのところでは、御承知のように円建て外債は、外国の国債、それから地方債、政府保証債といったようなもののみに限っているわけでございますけれども、これもなるべく早く外国の民間債も同様に発行できるようにわれわれはしたいという考え方を持っておるわけでございます。  もちろん一般的に税制面等についてもできるだけ御配慮をちょうだいいたしたいと思いますが、そのほかに、たとえば民間債でございますと、ディスクロージャーの問題、これも日本には日本のあれがありますけれども、しかし、できるだけ平均的な考え方で可能になるようにできればいいなというふうに考えております。あるいはまた、これも先生指摘いただきましたように、担保の問題、無担保債の問題、日本ではいままでのところ戦後全部有担保の形になっております。これについても、何とかもう少し緩和することによって世界の水準並みにしないと、やはりなかなかうまくおつき合いができないだろうと思う。世の中の交際というものは、資本ばかりでなく、いろいろなことは、大体ルールその他各国並みと、隣づき合いと同じようなものと思いますので、われわれとしてはできるだけこういったようなことについて検討して、早くできるように努力いたしたいと思っております。
  126. 宮地正介

    ○宮地委員 この問題につきましては、はからずも日銀の森永総裁がこういうことを提言していますね。国際的な資本市場機構の創設の必要ということをある対談の中でお話しになっております。この問題について、私も非常に感銘といいますか、なかなか一つの案だなということで読ましてもいただいたわけですが、その中で具体的に、資本市場にかかわる国際的なルールづくり、登録あるいはディスクロージャーあるいは監査基準の調整、あるいは発展途上国のデフォルトリスクに対する対応として起債国に対する情報の交換あるいは格付制度を導入する、また国際的ないわゆるSECと言われる証券取引委員会の創設などはどうだろうか。     〔委員長退席、綿貫委員長代理着席〕 こういう新しいいわゆる国際的な資本市場機構の創設に絡む問題を提言されているわけでございますが、ちょうどきょう副総裁お見えになっておりますので、その点、総裁の一つの試案ではないかと思いますけれども、日銀当局としても真剣に御検討されておるのか、また、もし御検討されておらなければ、現在この問題について副総裁としてはどういうふうにお考えになるか、ちょっとお答えいただければありがたいと思います。
  127. 前川春雄

    ○前川参考人 お答え申し上げます。  森永総裁が、いまお話しのございました構想をある場でお話しになりましたことは、承知しております。  いま円建て外債の問題で、先ほど来お話し申し上げておりますように、だんだんその規模がふえてきておりますし、また、そういうふうに東京のマーケットが拡大してまいりますにつれまして、東京の市場で発行したいという海外の政府あるいは政府機関でございまするが、そういうところがだんだんふえてきておるわけでございます。  そのときに一つの問題は、国内にも国債あるいは地方債、社債の発行の需要があるわけでございまして、日本の国の貯蓄をどういうふうに振り分けるかという問題もあるわけでございます。海外の需要だけに応じておるわけにもまいりません。国内の国債、地方債あるいは社債、そういうものの消化も十分に考え、そのバランスをとっていくという必要があるわけでございますが、そういう問題が一つ基本にございまして、そういう点につきましては、そういう発行条件というものが市場のメカニズムでだんだん決まっていくということが一つの解決方法であるわけでございます。  それと同時に、海外からの東京市場における債券の発行希望の場合に、いまもお触れになりました条件の格づけというのは、なかなかむずかしいわけでございます。それぞれの国は国としての誇りもございますので、なるたけいい条件で出したいというのは当然であろうというふうに思いますが、すでにそういうところが日本の市場で発行しておりますれば、その発行いたしました債券の価格が、自然にそれぞれの国の状況、そのスタンディングと申しますか、地位、力というものを反映するわけでございまするが、東京市場は御承知のように、海外のそういうふうな円建て外債の発行は昨年ぐらいから盛んになりましたものでございますから、まだまだ新顔がたくさんあるわけでございます。そういう先に対しまして、いまはそれぞれ個別の交渉でやっておりまするが、もう少し客観的なものができないかというようなこと。あるいはディスクロージャーの問題、アメリカで発行いたしますときには、いまも御指摘のございましたSECというのがございまして、非常に厳格な審査をいたします。日本にももちろんそれに類するものはあるわけでございますが、それを国際的に何とかもう少し統一した基準にすることができないかというのが、総裁の考えであったというふうに思います。  この問題を日本銀行で検討しているかというお話でございますが、具体的なその構想に基づいた検討はまだいたしておりません。しかし、東京市場が国際的にだんだん発展いたしまする過程におきましては、そういうふうな問題を一つ一つ、全体を一挙に解決することは困難ではあるかと思いますが、あるいは格づけの問題等につきましてもう少し合理的な基準というものができることが望ましいというふうに考えております。
  128. 宮地正介

    ○宮地委員 限られた時間でございますので、次に移りたいと思います。  先ほど来から、短期、中期の国債の問題についてるるお話がありましたが、特に新国債発行に当たりまして、従来の固定金利国債引受シンジケート団に加入する主要金融機関あるいは証券会社に限定したいわゆる割当発行方式にかわって、購入者側の自主性を尊重した公募入札方式、こういうものも最近そろそろ検討され始めておるという話を開いておるわけでございますが、この点について、まだ固まっているわけではないと思いますので、きょうは大臣もおりませんので、あえて私は大蔵省に伺いませんが、割当発行方式をいわゆる公募入札方式にかえるという問題について、現段階で証券担当の植谷参考人並びに銀行の馬瀬参考人に少し御意見が伺えればありがたいと思います。
  129. 植谷久三

    ○植谷参考人 ただいま御質問のございました入札方式といいましょうか、割当方式ではなくてそれぞれが申し出るというか、入札方式があるかと思うのです。ただ、この問題をとらえますためには、もちろん入札方式といったようなことになりますと、そのときそのときの市場の実勢といいましょうか、それを背景にして入札に応ずるということになる点は、弾力化という点からいきますときわめて進んだものになると思います。その点では高く評価できると思います。ただ、私どもといたしましては、全国の広い国民大衆の投資家の中に、いわば足でもって消化先にお願い申し上げるということでございますので、したがって、たとえば大きなロットで大きな機関投資家が、自分が投資するために、運用するために応募するということとはずいぶん違ったものになると思います。なると思いますというか、でなければならないと思います。やはり多くの営業の者が全国津々浦々でお客様にいろいろ説明をするということになると、値が不確定であるということではとうていできにくいことだと思います。したがって、たとえばもしそういうような方法がとられる場合にでも、これにもいろいろな方法があるようでございますから、国民個人消化の拡大に資するような方法といいましょうか、しやすいような値段の決め方等になるようにお願いしたいというふうに私は思っております。
  130. 馬瀬清亮

    ○馬瀬参考人 お答えをいたします。  実は中期国債の件は、地方銀行協会といたしましては、まだ正式に御相談を受けておるわけでもございませんし、実は内部的にまだ全然討議をしておりません。新聞で見ましたのが実は私らも初めてでございまして、今月末か来月ぐらいに、あるいはいろいろそういった構想が固まりました段階で、各機関に相談があるのではなかろうかというふうに考えております。  そういう意味で、いま新聞等で知っております範囲では、金額的な面でありますとか、期間の問題でありますとか、それから公募入札の問題でありますとか、そういう問題は承知しておりますけれども、これはあくまで私だけのことでございますので、協会といたしまして方向、方針が決まりますれば、また何らかの方法でお答えできるかと思います。
  131. 宮地正介

    ○宮地委員 さらに、最近国債投資信託の新設問題、この問題についても、やはり大蔵省検討をしている報道もされているわけです。この問題、特に証券業界としては大きな問題であろうかと思いますが、この問題が新設されるに当たって、具体的に大蔵省の見解が出ない段階でお話を伺うのは大変恐縮でございますけれども、やはり一つの流れとして動いているのではないか、こう私は考えるわけでございます。この問題をどういうふうにお考えになっておるか、御見解を聞かせていただければありがたいと思います。
  132. 植谷久三

    ○植谷参考人 私も実は新聞報道で初めて知ったような次第でございまして、まだ大蔵省から何も打診を受けておりません。しかし、あの新聞報道を拝見いたしまして、これはまだ相談したわけでもございませんで、私個人の見解ですけれども、これは証券界としても前向きに検討していい問題だなというふうに思っておる次第でございます。ただその場合でも、税法等についてある程度の優遇をしていただけないと、利回りの上から言っても見劣りすることになってまいりますから、そういうことも十分御配慮をちょうだいしますならば、私は前向きに検討するに値することだと思っております。
  133. 宮地正介

    ○宮地委員 理財局は来ておりますか。——では、いまお話ししました国債投資信託の問題などにつきましては、また大蔵委員会におきまして、大臣あるいは当該局から詰めてお伺いすることといたします。  さらにもう一つ、これは馬瀬参考人に当たると思いますが、この国債の大量発行で、債券の流通価格が銀行決算の内容を左右するということは、先ほども非常にお話に出たわけでございますが、特に金融機関にとりまして、債券の価格変動準備金、これを見直してほしい、あるいは見直すべきだ、こういう御意見もあるわけでございますが、この点の御見解といいますか、実情を少しお話しいただければありがたいと思います。
  134. 馬瀬清亮

    ○馬瀬参考人 御指摘のとおりでございまして、銀行の決算、今後のことを考えますと、債券、株式、そういったものの変動が大きく収益に影響いたしまして、銀行といたしましてはこれは大変大きな問題でございます。  金融機関がいろいろな意味で体質が弱化いたしました場合においては、やはり地元の中小企業あたりの支援体制につきましても、いろいろ支障を来すわけであります。先ほども申し上げましたように、金融機関みずから足腰を強くいたしまして、体質を改善強化してこの難局に対処していかなければならぬということを考えておるわけであります。その意味におきまして、内部蓄積等の面におきましても、みずからの合理化努力、いろいろの節約から始まりまして、効率化につきましては十分に努めていかなければならぬと思いますけれども、やはり制度的に御当局におきましても今後御考慮いただけないか、そういうのが少なくとも地方銀行といたしましては大体の全体的な空気であろうかと思います。価格変動準備金の問題にいたしましてもさようでございます。  それから、先ほど申し上げましたように、将来のことでございますが、国債の価格の変動等がありました場合のいろいろの経理処理の問題、統一経理基準というものも、大きな情勢の変化があります時期にひとつ見直していただくことができないものであろうか、そういうようなことで御理解を賜りたい、かように思っておるわけでございます。ひとつどうぞよろしくお願いいたします。
  135. 宮地正介

    ○宮地委員 時間が参りましたので、最後に一言御要望して終わりたいと思います。  いずれにいたしましても、大量国債発行の時代で、一つはやはり市場の国際化の問題、あるいは市場がいかに機能するかという公社債市場の拡充整備の問題、また、国民の底辺にもっと消化をして、国民ともっと密接した関係にいかに機能させるか、こういう問題が一つは重要であろうと思います。ただ、最近の円高などによりまして、特にマネーサプライの管理など、特に石油ショック時などに見られたいわゆる過剰流動資金の問題などにつきましても、十分配慮しなければならない、こういう経済環境も決して見逃せないと私は思うわけでございます。  そういう点、大変な御苦労をする現在の深刻な経済環境の中にありまして、新しい日本の生きる道、経済のあり方も当然模索をし、また生き抜いていかなければならないと思うわけでございます。関係当局の皆さんのなお一層の御努力を期待し、また本日、当委員会に御多忙の中お越しいただきましたことを感謝いたしまして、私の質問を終わります。ありがとうございました。
  136. 綿貫民輔

    ○綿貫委員長代理 高橋高望君。
  137. 高橋高望

    高橋委員 参考人には、大変遅くまでありがとうございます。時間も限られておりますので、直ちにお伺いさせていただきたいと思います。  植谷会長にまず最初にお伺いしたいのでございますが、いろいろどなたもおっしゃいますように、個人消化が今後の公債市場を左右する重大なポイントである。すでにいろいろと御努力なさっておられますし、特に五十二年度には、発行条件の引き下げ幅がまあまあ御希望に近い条件があって、さばけたと言いましょうか、個人消化の拡大が達成できた、先ほどそんなふうにお伺いいたしました。  そこで、さらにこの個人消化を助けるために、発行種類の多様化とか、税制面での配慮ということもさっきお伺いしたのでございますけれども、この国債がさばけるというか、魅力を持たせるという意味での税制上の諸般の施策というものを、具体的にどのようなことをお望みでいらっしゃいますか、税制上の問題について率直な御意見を承りたいと思います。
  138. 植谷久三

    ○植谷参考人 お答え申し上げます。  率直に申しまして、まず第一にマル優の枠、特別マル優を含めても結構でございますけれども、国債だけに当てて申しますと、特別マル優枠、ただいまは御承知のように三百万円まででございます。もう今日の段階になりますと、国債に投資しようという方々は、三百万円ではどうも率直に言って少し少ないなという感じがいたしております。ぜひこれは私、拡大していただきたい。ことに国債を安定消化するということでございますから、ぜひ御考慮をちょうだいしたい。  それからなおもう一つ申し上げますと、国債、債券、みんなにかかるのですけれども、有価証券取引税、これを国債についてはひとつ優遇していただけないものでしょうか。ことに国債などの投資、別に物を消費するわけでもございませんので、この点はぜひお願いいたしたい。     〔綿貫委員長代理退席、委員長着席〕 またこのことは、それだけ国債の流通が容易になるということであって、何か国債は売るのはいけないよという観念がとかく走りますけれども、先ほど来もたびたびお願い申し上げましたように、流通量が拡大するということは、それだけ国民の中に国債というものが根強く信頼感が強まるということに通ずることでございまして、消化は一層拡大するというふうに考えるわけでございます。
  139. 高橋高望

    高橋委員 大蔵省の方がいらっしゃる場所では、なかなか困った問題をおっしゃられたかと思いますけれども、ただ、私も正直に申し上げて、マル優枠三百万というのは、要するに個人資産という意味からいっても、もう時代に少しマッチしないのではないかという気はいたします。ですから、これはお立場からいって、具体的な数字をおっしゃるということも筋が違いましょうし、いろいろと御心配も出てこようかと思いますから、私もこの件についてはよく承りまして、いろいろの場所でこの問題についてはかわっての発言をさしていただきたいと思っております。  それでは、続いて馬瀬参考人にお願い申し上げたいのでございます。  地方銀行としてお考えになるサウンドバンキングの構想、これはやはり地域あるいは地場産業に対する配慮等々がありまして、都市銀行の方と若干どうしても違うようなところがあると思いますが、サウンドバンキングについての地銀のお立場で何か主要に挙げられる点がありましたら、ひとつお教えいただきたいと思います。
  140. 馬瀬清亮

    ○馬瀬参考人 お答えいたします。  地方銀行の言うサウンドバンキングとはどういうことかという御質問でございますが、御承知のとおり、一言でサウンドバンキングを表現いたしますれば、健全な銀行経営ということに尽きるかと思うわけであります。健全経営の確保を経営理念として銀行の経営を行っていくということが一番根幹であるわけでありますが、やはり地方銀行というものは地域に格別密接に接しておりまして、そしていろいろのいただきます御預金あたりも地元の非常に細かいものをお預かりいたしておりますので、それの運用等につきましても格段の意を用いなくちゃならぬということは一つあろうかと思うわけであります。その意味で、銀行はみずからの経営体質というものを強固にしていかなければならない、そうしなければ信用秩序の維持という大きな責務が果たせないのじゃないかというふうに考えておるわけであります。  それじゃ具体的にどういうようなものがあるかということでありますが、たとえば一つは、資産の流動性を維持するということであります。資産、負債の期間対応の配慮ということもやらなくちゃなりませんし、それから、支払い準備を充実していなくてはならない、これは当然のことであります。  それから、自己資本の充実を一段と図らなくてはならない。特にこういうように非常に不安定な時期に地元の小さな業者が大変苦しんでおりますし、ともすると倒産の波及を受けまして、みずからも苦しむというような時期でありますので、銀行自体がしっかりそれを支えてやるというようなことが非常に大事になってくるわけであります。その意味で、安定的な収益を図りまして、銀行自体がしっかり経営をいたしまして内部留保を厚くしていく、一層充実していくということが非常に重要な柱になるのではないかというふうに考えるわけであります。  そのほかの点で思いつきますのは、資金ポジションに常に留意をいたしまして、外部負債に依存しない経営を続けていかなくてはならないというふうに考えるわけでありまして、外部負債の負担に苦しみますと、良質の資金を取引先に提供することもできないということでありますので、そういうことで、資金ポジションに留意をしながら、外部負債というものに依存をしないような体質をつくっていかなくちゃならない。  それから、これは大変個別具体的な問題になりますが、資産運用の安全性の確保といいますか、要するに貸し出し関係でございますが、審査機能を充実いたしまして、そして適切な機能の発揮をさせますことによりまして、取引先の指導も十分にいたします。苦しんでおるのを助けられるものは助けていくというような体制が必要じゃなかろうかと思うわけであります。  それから、地方銀行でありますと特に特徴的なことかと思いますが、大口融資というのはきわめて少のうございます。私らの方もほとんどが中小企業、中堅企業でございまして、比率から言いましても非常に高いものに相なっておるわけでございますので、そういうことで、融資につきましては大口の大企業あたりだけにまとめて出すということじゃなくして、地元に広くそういった面の配慮をしていかなくちゃならぬ、そういうのが資産運用の安全性にもつながることに相なるかと思うわけであります。  それからそのほかに、私ども十分心がけなければならぬと思いますのは、銀行業務に専念をすべきである。役員、職員を問わず、他の業務をやるとか、銀行の周辺業務といいまして、当局の適切な御指導もございますけれども、あちこち手を広げるということでなくして、銀行業務に専念するということが一つ大事でありますし、さらに、役員等の他企業の兼職の制限がございます。こういったものもきっちりやって、そして、特にこういうむずかしい時期であればあるほど本来の業務に専念をする、こういうことが私どもの責務じゃないかと思います。  いろいろ私どもはそういうような心がけをもちまして、地元からの信頼をいただきまして、そして一緒に伸びていけるという、そういう性格の銀行でございます。  お答えになったかどうかわかりませんが、大体そういう感じでございますので、御了承いただきたいと思います。
  141. 高橋高望

    高橋委員 馬瀬参考人、大変恐縮なんですが、もしあれでありましたら、お供にお連れいただいた方からの御説明でも結構なんでございますけれども、地方銀行の姿勢として、預金と貸付金の比率、これが都市銀行と比べてどのような違いがございますか。もしあれでしたら、後ろの方でも結構でございますけれども。
  142. 馬瀬清亮

    ○馬瀬参考人 お答え申し上げます。  五十二年九月の数字がいまのところ一番新しいのでございますが、預金に対する貸し出しの割合が七六・六一%、これは地方銀行六十三行全体の数字でございます。よろしゅうございましょうか。
  143. 高橋高望

    高橋委員 私のいままで得ている知識の範囲内では、都市銀行のこういった比率よりも皆様方の方が内容がよいというふうに判断をしているのでございますけれども、私のこの見方は間違いございませんでしょうか。
  144. 馬瀬清亮

    ○馬瀬参考人 大変むずかしい御質問でございますけれども、やはり同じ業態の間にも格差がございますし、それから、長い間の相当内部蓄積を持っている銀行もございますし、いろいろそういうことによりまして、こういう時期になりますと、耐久力といいますか競争力といいますか、そういうものに大きな差が出てまいるわけでございます。  地方銀行に関して申しますと、経営姿勢としては先ほど申し上げましたように、非常にまじめに取り組んでおるというのが一つの特色ではないかと思うわけでありますけれども、しかし、終戦後に一県一行主義の一部修正というようなかっこうで新設された銀行も幾つかございますし、そういったところあたりは、蓄積の面においてもまだまだ、前からありました銀行と比べても差がありますし、そういうことで、一概にいいとか悪いとかはちょっと比較できないと思いますが、地方銀行でも、大変堅実におやりになっておりまして非常に効率のいい銀行もございます。ただ、業容の規模だけでもいかないと思いますので、ひとつよろしく御了承をいただきます。
  145. 高橋高望

    高橋委員 ありがとうございました。  それで、前川参考人にお願い申し上げたいのですが、御承知の毎年公債発行がふえてまいりまして、ある節度というものは昨年まではあったのですけれども、最近この節度もちょっとまた指標も変わってくるかと思います。そういう中で、M2に絡めまして、伸び率に対して——ある程度の伸び率であれば、いまの日本の経済の力からいいまして、まあまあそうショッキングな影響がない。日銀の御見解として、ターゲットと言いましょうか、伸び率、この辺どんなふうに見ていらっしゃいますですか。
  146. 前川春雄

    ○前川参考人 お答え申し上げます。  マネーサプライ、特にM2の指標というのを私ども非常に注目して見ておるわけでございますが、どのくらいが適正か、あるいはそういう適正だと判断する率を目標値として考えたらどうかといういろいろな議論がございまして、私どもそういう問題につきましては、理論的にもまた実証的にもいろいろ検討しておるわけでございます。ただ、マネーサプライと物価あるいはマネーサプライと実体経済、そういうものとの間に必ずしも因果関係が数量的には検証されない状態でございます。私どもその問題につきましては、各国もそうでございまするけれども、鋭意検討は続けておりますが、現在までのところ、その間に数量的な因果関係というものをまだ実ははっきりつかんでおりません。実はそのマネーサプライというものを数量——あれは残高でございますが、それの回転率というのもそのときどきの状況によって変わるわけでございますね。そういうことから申しまして、どのくらいマネーサプライがあれば適正であるかということは、なかなか数量的には判断しかねるわけでございまするので、適正なM2の伸び率がどのくらいかということにつきましては、私どもいままだお答えしかねる状況でございます。  ただ、マネーサプライが非常に急激に増加するということは、私ども過去の四十六、七年のときの経験重々承知しております。したがいまして、定量的に幾らということはございませんけれども、そういう状況につきましては、急激な変動がある、それは、あるいは財政の支払いあるいは民間金融機関の信用膨張あるいは国際収支の黒字、そういうものから起こるわけでございまするので、そういう点につきましては、十分注目しておるところでございますけれども、適正な伸び率が幾らということにつきましては、まだ私どもの方として判断を持っておりません。
  147. 高橋高望

    高橋委員 ありがとうございました。お礼を申し上げて、お尋ねを終わらしていただきます。
  148. 大村襄治

    大村委員長 荒木宏君。
  149. 荒木宏

    ○荒木委員 参考人の皆さんには御苦労さまでございます。  早速お尋ねいたします。  前川参考人に御意見を伺いたいと思いますけれども、いまも同僚議員から御質疑があったのですけれども、先ほど参考人の御意見で、国債発行が安易に流れないように何らかの歯どめが必要だ、健全性を回復していく方向を期待をしたい、こういう御意見がございました。それとの対比で、金融政策の方も歯どめと申しますか、そうしたことを考える必要があるんではないか。  いま話がありましたマネーサプライの増加率の目標設定と申しますか、確かに参考人お話しのように、実体経済との関係が必ずしも明確でない点もありますし、あるいは季節の要因でございますとか、また各要素間の調整でありますとかいろいろな問題があると思うのですね。しかし、一方また考えてみますと、成長通貨の供給ということで民間資金需要が出てまいりましたときに、どうしても金融政策の中立性といいますか、そういう点で、経済が過熱化していく、はずみがついていく、資金の引っ張り合いになるといったときに、なかなかコントロールがきかない。先ほど石油ショックの時期の例なども引用されておりましたけれども、そういう意味で、この時期にこのポイントというターゲット設定は、いろいろ今後の検討課題といたしまして、安全圏といいますか、一つのゾーンといいますか、あるいはもっと広い意味でのシーリングの設定といいますか、そういった意味での何らかの歯どめといいますか、そういうものが示されるということが、一つは通貨価値の安定の上にも必要ではなかろうか。特にいま増加率がずっと低位に推移しておりますから、そういうときにこそ、少し長期的に見たそういう政策を打ち出されることが必要ではないかというふうに思っておるわけですけれども、従来そういう点についての御検討もいろいろ進んでおるやに聞いておるので、改めて御意見を伺っておきたいと思います。
  150. 前川春雄

    ○前川参考人 お答え申し上げます。  マネーサプライの実体経済との関係というものが、因果関係が数量的にはなかなかつかめないということを先ほど申し上げました。私どもそういう意味から、マネーサプライのターゲットを決めまして、機械的にそれに対応していくということは、いままでの私どものいたしました検討結果から言っても、どうも不適当ではないかというように考えておるわけでございます。  しかし、マネーサプライの状況というものが非常に重要な要素であることは、先生指摘のとおりでございます。私どももそのマネーサプライの傾向、動き方ということにつきましては慎重に検討し、その数字が出ました都度その要素、どういう状況のもとにそういうことになったかということの見当はそのときどきにつけておるつもりでございます。また、そういう状況につきまして私どもだけでなしに、これは財政の支払い等にも影響があることでございますので、政府当局にも私どもの方のマネーサプライに対するそのときどきの判断等は、十分連絡しておるつもりでございます。  ただ、何か歯どめになるような一つのターゲットを機械的に設定することはどうか、一つの警戒のゾーンとしてどうかというお話でございます。私どももちろん、いまM2で申しますと大体一一%前後のところを推移しておるわけでございますが、これが急激にふえる、四十六、七年当時は二〇%以上になったわけでございますが、そういう事態になれば、もう当然事態が異常であるというふうな判断をいたすわけでございますが、それならば一一が一二になったらどうだ、一三になったらどうだというような数字的な判断、それに対応する実体経済との関係、この辺につきましては、先生の御質問でございますけれども、私どもちょっといまのところ、こういうふうな関係でこうだというところまで申し上げる段階になっておりません。  ただ、繰り返すようでございますけれども、このマネーサプライの移動がありましたときに、それが財政かあるいは民間金融機関の信用膨張であるかあるいは国際収支の黒字からくるのか、この辺の分析を十分にいたしまして、あるいはそれが民間信用の急激な膨張によるということでございますれば、それぞれ手を打つ用意は十分にしております。また、財政面の支払いと引き揚げとの関係から、それがある時期に非常に偏って起こるということでございますれば、それはそれで政府にもそういう点は十分御配慮をしていただくという用意はしております。数字的な面のめどというのは、現在のところ私どもそういうものをつくるまでの検討あるいは用意ということがございませんので、御了承いただきたいと思います。
  151. 荒木宏

    ○荒木委員 引き続き検討されると思いますが、私が申し上げたのは、いろいろ指標をにらんで練達の専門家の皆さんの言うなれば芸術的な運用に期待するといいますか、そういうことだけで今後よろしいのかどうか。つまり、いま物価の上昇率は落ちついてきておりますけれども、しかし公共債は百兆円近いと言われ、今後またさらに二倍に近いような公共債が出回っていくということになりますと、一たびそれが動き出したときに、通貨価値の安定ということが前回の石油ショックのとき以上に破壊されるおそれ、危険なしとしないという点から、通貨価値の信用、通貨当局に対する信頼が破壊されますと、一国の経済秩序が土台にひびが入るという点から、いまの時期にそういった点での信頼を確保するということからも、一つは、単に政策手法だけではなくて、それを公表し、それについてのいろいろな討議を吸収することも必要ではないかという点から申しておるわけであります。これは要望しておきたいと思うのであります。  そこで、馬瀬参考人にお尋ねしたいと思うわけでありますが、いま伺っておりますところで、資金需要が出てまいりましたときに、それにこたえられる体制と申しますか、資金ポジションといいますか、資金調達のめどが、ことし下期から年度後半にかけましてどういうふうな対応がとれるとごらんになっているか。  それから、資金調達源泉として国債の処分という問題が起こりましたときに、行政当局のそれに対する対応がどうであるかということについて、簡潔に御意見を伺っておきたいと思います。
  152. 馬瀬清亮

    ○馬瀬参考人 お答えをいたします。  今後資金需要が出てまいりました場合の地方銀行の対応の仕方でございますが、これは公共債の大量の発行もございますし、問題はやはり資金の配分の仕方であろうかと思うわけであります。そういうことで、私どもの地方銀行といたしましては、それぞれの地域における中枢金融機関として地域の健全な発展をまず第一に考えていかなくちゃなりませんので、そういう本質的な性格を踏まえまして、運用資産の配分を心がけていきたいと思うわけでございます。  五十二年九月末におきます総貸し出しに占めます地元の中堅、中小企業向け貸出金の割合は五四・八%程度になっておりまして、常に貸し出しの半分以上は地元の中小、中堅企業へ地方銀行全体として供給をしておるということになるわけであります。またそのほかに、住宅ローンの割合、それから地方公共団体向け融資の割合も逐次上昇してきておりますので、私どもの運用資金の増加額のおよそ六割をこれら三者への資金として配分してきておるわけでございます。私どもといたしましては、こういうことで、地元の支援体制を引き続きとっていかなくちゃならぬということと、それから、公共債の大量発行に対しましても応分の協力をしていかなくちゃならぬということでございますので、その辺に非常に資金の配分の苦労があるわけでございます。そういうことで、今後につきましては、手持ちの縁故債、地方縁故債あたりの流動化を重ねてお願いをいたしまして、民間資金需要が活発になった場合にそういうものを活用いたしまして、その配分に均衡を保っていきたいと感じておるわけでございます。大体そういうことでございます。  それからいま一つは、手持ち国債の処分でございますが、手持ち国債につきましては、その金融機関資金事情によりまして処分も認めていただけるようには相なっておりますけれども、なおまた、必要によりましては日本銀行の買いオペという問題もございます。したがいまして、そのときそのときの資金ポジションに応じまして、各行個別に対処していくということに相なろうかと思いますが、現実に地方銀行でも、相当の手持ち国債を処分されておるところもありますし、比較的少なく済んでおいでの方もあります。しかし、これはいままでのように民間資金の需要がきわめて鎮静化しておったときのことでございますが、今後につきましては、そういった面の政策的な配慮とあわせまして、そういった面に回せます資金の捻出のために考慮していかなくちゃならないのじゃないか、このように思うわけでございます。
  153. 荒木宏

    ○荒木委員 ありがとうございました。  時間が来ましたので、一言申し上げておいて終わりたいと思います。  いま参考人から伺いますと、いまの時点では資金調達、運用は余り問題はないかのような御意見で伺ったのでございます。  実は私、これは時間の関係がありますので、質疑は御遠慮させていただいたらと思っておるのですが、参考人がお見えいただきますということで、地方銀行の職場からいろいろな要請がございました、実情の念達などもございました。一々申し上げる時間もないのですけれども、たまさか参考人が頭取をしていらっしゃる銀行について申しますと、ちょうど百周年になるそうでございまして、百周年記念ということで、記念預金あるいは記念品の贈呈、記念行事その他で全員外交で、職場では預金獲得の仕事が非常に厳しくなっている。これは参考人でお見えいただきまして、個別の職場のことを申し上げて私ちょっと恐縮しておるのでございますけれども、実は一例として申し上げているのですが、そういった話がいろいろございます。  なお、それに付随いたしまして、いろいろお願いを申し上げましたところが、大変長期の転勤になって、自宅と新潟に離れて、奥さんと娘さんとも長年別居を余儀なくされ、特に年寄りが病気で困っているという、何かかなりいろいろなお願いをされた方らしいのですけれども、個別事情はともあれ、そういったことがございますので、協会としてもお集まりが毎月一度あるようでございますので、十分御念達もいただきたいと思います。全体としては自粛通達その他でいろいろ御勉強もいただいておるように私も伺っておるのでありますが、なおこうした機会にそういう声が出ておるということを御披露申し上げて、もし御意見ございましたら、お伺いできたら結構かと思うのです。
  154. 馬瀬清亮

    ○馬瀬参考人 せっかく先生から御質疑がございましたので、私の方からちょっと御説明を申し上げておきます。  創業百周年というのは、実は昨年私どもの方が旧銀行からちょうど百周年を迎えるわけでありますが、私どもの百周年に取り組む基本姿勢ははっきりしてあるわけでして、いたずらな預金拡大運動をやらないというたてまえである。それでは何をやるかというと、私の方は、重点的に見直し運動をやりました。当時は、地方銀行の平均の伸び率から見ましても、北陸方面は、立地条件もあったかもしれませんが、二%ぐらい落ちておったという事実もあったようであります。それから、いろいろの制度、慣行といったもの等についても、この際百周年のあかを落として身軽な姿で出発するということに重点を置きまして、百周年運動につきましては、決して世間から批判をされるような行き過ぎはなかったように思っておりますが、何分たくさん支店もあることでございますから、中には、そういうものも私どもの目に入らなかったかもしれませんが、基本的にはそういうことであります。  それから、預金の伸び率は、お調べくださいましても、普通そういう周年運動で大きく伸ばすようなそういう伸び率はいたしません。非常に着実な、一時的なものではなくて堅実なものの積み重ねでやっておるわけでございます。その点を御了承いただきたいと思います。  それから、長期勤務者の転勤でありますが、私どもは、やはりいろいろな御当局の前からの指導もあったりいたしまして、五年以上の者につきましてはできるだけ動かすことにしておりますが、ただ、個別事情を申し上げて恐縮ですが、大変歴史的な問題で店舗の配置が広域にわたっております。現に北海道地区に二十二カ店もございますし、十三都道府県にわたっておりますので、そういうことで、私の方は、入社をするときにはまず転勤ができるということを絶対条件にしてやっておりますけれども、しかしその間、やはり家庭に何か問題があったとかそういう場合は、人事において優先的に考えてやっておるわけでございますけれども、あるいはその中にいまのような問題もあればまた調べまして、十分に検討してみたいと思います。  ただいま五年を限度にして転勤をさしておりますが、何分六千人を超える行員がおりますものですから、やはり五年を超える者もありますが、恐らくいまの新潟の行員であればそんなに長くはないのじゃなかろうかと思いますが、これもいずれ調べまして処置をいたしたいと思います。よろしゅうございますか。——どうもありがとうございました。
  155. 荒木宏

    ○荒木委員 これで終わります。
  156. 大村襄治

    大村委員長 永原稔君。
  157. 永原稔

    ○永原委員 参考人の方には、遅くまで御苦労さまでございます。なるべく簡単にお聞きしたいと思いますが、最初に公社債引受協会の会長さんに伺います。  シンジケート団のメンバーに入っていらっしゃるのでしょうか、どうでしょうか。その点と、それから引き受けシェアがどのくらいになっているのか。これは最近の証券業界の活況からして、シェアをふやす必要があるのではないかと思いますけれども、まずそういう点についてのお考えを伺わせていただきたいと思います。  それと、証券発行と登録債、この両者を比較して、公社債市場の流通を盛んにするためにはどちらが一体有益なのか。証券発行ですと、市場に現物が流通するというかっこうになりますけれども、登録債でいった場合にはどうかという点について、御意見があったら承りたいと思います。
  158. 植谷久三

    ○植谷参考人 ただいまの最初の引受団に入っておるかというお話でございますけれども、もちろん私ども証券界全部ではございませんけれども、入っておるわけでございます。  そして、そのシェアでございますけれども、これは御承知のように、引受契約の中では、発行当初の事情もございまして、私ども証券の方としては、大体全体の市中消化の中で一割を目標にするという考え方の中で引受契約ができておるということでございます。  ところで、御承知のように、その残りの金融機関の分のシェアは、それは私どもタッチする範囲外のことでございます。大体いろんなことを参考にしてお決めになっているのだろうと思います。  証券とその他の問題は、私どもの方は御承知のように、個人消化を中心にしてやっておるわけでございます。したがって、それぞれのお店が全国にまたがって消化運動をしております関係上、たとえば市況に恵まれたときには、一〇%くらいと言っておったのが一二%になったり一五%になったり、そのかわり、市況が不幸にして悪い場合には、一〇%の消化はむずかしいという、これは資本市場を相手にして、あるいは一般国民大衆を相手にして証券を売るという立場からいけば、やむを得ないことだと考えておるわけでございます。しかし、とにかくこの国債の消化については、私ども証券界としては言うまでもなく、全力を挙げて協力をするという考え方の中で、この十年間営々として努力してまいったわけでございます。  最近は、先ほど来もたびたびお話のありましたように、発行当局といたしましても、市場の実勢性を非常に尊重して条件を決めるという考え方を貫いていただいてきたわけで、その中で私ども、個人消化が非常に伸びてまいりました。先ほどもお話し申し上げましたように、五十二年度は二六・六%という消化が可能になったわけでございます。そういうわけで、一応形としての引受契約の基本的な考え方は、われわれ一〇%という一つのめどはございますけれども、皆さんのお力添えによりまして、簡単な言葉で言うと、売れただけはおまえたちにめんどうを見てやるよというかっこうで、今日こういう先ほど申し上げましたような数字になっておるわけでございます。
  159. 永原稔

    ○永原委員 御努力の結果でそういうことになっておると思いますけれども、たとえば今度建設国債が一兆三千八百億発行される。そのうち八百億はこれは割引債だろうと思いますけれども、一兆三千億について利付国債発行される場合に、これについてもやはり一割なら一割という目標でお申し込みになって割り当てを受けるのでしょうか。これは大蔵当局の方に聞かなければわからなくなるのですけれども、証券の準備状況などもいろいろあろうと思いますので、かなり余裕を持った印刷をしなければならなくなるのじゃないかと思いますが、こういう点について、お申し込みの量というのはどのくらいになっているのでしょうか。
  160. 植谷久三

    ○植谷参考人 全体といたしましては、先ほどお答え申し上げましたような関係で処理されておるという言葉はおかしいのですけれども、経過していくわけでございますけれども、御承知のように、売るということになりますと、市況と非常に関連してまいりますので、月々非常に違った場面が出てくるわけでございます。非常に緩慢な諸条件がそろってまいりますと、投資家の御希望も非常に多くなる。そうでない場合、少し市場がタイトらしいということになるとまた縮むというようなことで、変動がございますので、その月その月、私どもの方で大体見込みといいましょうか、それをつけまして、そうして関係の方々にお申し出をしておる、そして決めていただくというようなことをいたしております。
  161. 永原稔

    ○永原委員 個人で証券を持たないで登録制度をとるということについては、御意見はいかがでしょうか。
  162. 植谷久三

    ○植谷参考人 登録は非常に簡便なものでございますけれども、普通の個人といいましょうか大衆というか、どちらがいいか知りませんけれども、比較的そういう方々は、やはりどうしても証券を直接見たいといいましょうか、持ちたいという感情が先に立っているような状況でございます。
  163. 永原稔

    ○永原委員 次に移って、地銀協会の副会長さんにお伺いいたします。  国債発行条件、これは昨年も一度変わったと思いますけれども、資金コストから見てどういうようにお受け取りになっていらっしゃるか。  それと、五十三年度は二兆二千五百二十五億地方債の縁故債が発行されますけれども、大体平均してこの地方債の発行条件、利率などはどういうようになっているか、両者を比較してどういうようにお考えになるか、御意見を承りたいと思います。
  164. 馬瀬清亮

    ○馬瀬参考人 お答えをいたします。  国債発行条件と地方銀行のコストの比較でございますが、最近に至りましてずいぶん大きく変わってまいりましたので、結論的に申し上げますと、現状では五十二年七月の発行条件の改定から完全に逆ざや現象に転じたわけでございます。そういうことで、漸次これが拡大していくんじゃないかということを心配しておるわけであります。しかしながら、これは急激な金利の低下があったようなこと、それから一方には、十年という国債の期限と、銀行はせいぜい長くて預金が二年でございますから、その長期と二年間程度、そのバランス関係、いろいろこういうことも考慮していかなくちゃならないんじゃないか、さように実は考えておるのでございますが、ただそういうことで単純に比較することにも若干問題があろうかと思います。しかしながら、新発債につきましては、はっきりコスト割れになっておることだけは事実でございます。そういうことでよろしゅうございますか。  縁故地方債の条件につきましては、これは特に定まったルールがあるわけでございませんで、発行団体と引受機関決定をするという慣行になっておりますので、そういうことで、各県によりましても一律ではございませんし、それから県内でも、県とか市とかあるいは小さな町村あたりになりますとまた違ってくるということもございます。しかしながら、大体の傾向を申し上げますと、公募地方債が国債を現在〇・一%上回っておるというようなのが実勢じゃないかと思います。それだけ逆ざやが小さくなっておるというふうに考えるわけであります。  そういうことで、私どもといたしましては、将来条件改定をしていただく場合においては、金融機関資金コストというものを条件改定の一つの要素にしていただきますれば、大変ありがたいんじゃないかというふうに思っておるわけでございます。よろしくどうぞ……。
  165. 永原稔

    ○永原委員 非常に細かいことですけれども、地方債には登録手数料を銀行は請求しておるわけですね。国債についてはこういうものは全然ないのですけれども、それによって応募者利回りが大分変わってくると思いますが、そういうものについてのお声はないでしょうか、国債については。
  166. 馬瀬清亮

    ○馬瀬参考人 手数料につきましては、特に一律に決まっておるわけでございませんので、各地方によりまして、それからまた、出します銘柄等によりましても違う場合がございますので、全体的にこうだということはちょっと申し上げにくいわけでございますが、ただ、個別の例を挙げてなんですけれども、たとえば私どもの方の富山県、富山市あたりでありますと、現在こういうような姿に相なっておるわけでございます。それをひとつ御報告を申し上げまして、それによって御判断をいただきたいと思います。  富山県、富山市の場合は、債券引き受け方式の場合でございますが、表面金利が六・二%でございます。発行価格が九十九円五十銭、それから引受手数料が五十三銭になっております。そういたしますと、引受利回りが六・三六九%というように相なるわけでございます。そのほかは、発行の年度、銘柄によりましては、県の場合は引受手数料に差がありまして、これが支払いをしていただけない場合もございますので、一つの例として富山県と富山市のことを御報告を申し上げておきます。完全なお答えでございませんけれども、よろしゅうございますか。
  167. 永原稔

    ○永原委員 どうも時間が来てしまいましたけれども、一つだけお願いしたいのですが、特に地銀の方では、縁故債の日銀担保の問題、これが一つ問題だろうと思うのです。  時間がありませんので、日銀の副総裁にお尋ねしますけれども、現在都道府県あるいは特別市が発行する市場公募の銘柄が二十二にふえているかと思います。これも非常に昔と比べるとふえておりますので、一つの流通過程の発展の傾向として喜ぶべき現象だとは思いますけれども、地域性があるためにそんなに多くの流通が期待できないだろう。しかし、これが日銀の適格債になっているように聞いておりますが、普通の地方債について、縁故債が日銀担保にならないというようなのが地方銀行の一つの悩みでもあるわけです。少なくも市場公募のできるような都道府県について、そこで発行する縁故債を日銀適格債にするお考えはないかどうか、その点、副総裁に伺います。
  168. 前川春雄

    ○前川参考人 お答え申し上げます。  縁故債は、いま日本銀行の適格担保にしておりません。適格担保と申しまするのは、御承知のことでございますが、日本銀行券の裏づけになるものを切ったものでございますから、信用力と市場性というものが備わっておりませんと、適格担保にしにくいわけでございます。  いまお話しのように、公募債を出しているような地方公共団体ならば、信用力は十分あるからいいじゃないかというお話でございます。その点はおっしゃるとおりでございます。ただ、市場性と申しますのは、公募債でございますと、一遍公募いたしますときに市場としてこれが受け入れられるという条件、金利その他の条件ばかりでございません、償還方法その他、つまりその債券を持った人の利益がある程度債券を持つことによって保護されている形になっているわけでございますが、縁故債は、基本的には貸し付けの変形になっておりますので、ものによりまして非常に償還方法等がまちまちでございます。また価格もしたがって、公募のものでございますれば、直接あるいは間接に価格が決まるわけでございまするけれども、縁故債はそういうことがございませんので、価格がわからない。担保に取ろうにも担保価格を決められない、こういう問題がございます。そういうことから、私ども縁故債につきましては適格担保にしておりませんのは、そういう理由でございます。  ただ、おっしゃいましたように、信用力の点では公募債を出しているようなところは構わないじゃないかという点で、その点はいいのでございますが、市場性の問題につきまして、中にはかなり流通をしておるものもあるようでございますが、そういう点、あるいは、そういうものの中から償還方法等につきまして、普通の公募債と同じような、それを保持した人の利益が守られるというようなことであればまた考える余地もございますが、そういう面につきまして統一的な取り扱いがまだないわけでございます。現在、関係者の間でそういう問題を個々に解決するような検討がいろいろ進められております。私どももそういう検討の結果に対応して、私どもの方の態度も検討し直すことはもちろんやぶさかではないのでございますけれども、現在のところはそこまで行っておりませんので、そういうわけで、縁故債の方は適格担保にしておらないわけでございます。御了承願います。
  169. 永原稔

    ○永原委員 どうもありがとうございました。
  170. 大村襄治

    大村委員長 これにて参考人に対する質疑は終了いたしました。  参考人各位には、御多用のところ御出席の上、貴重な御意見をお述べいただきまして、まことにありがとうございました。厚く御礼を申し上げます。  次回は、明十九日水曜日午前十時理事会、午前十時三十分委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。     午後七時一分散会