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1978-03-29 第84回国会 衆議院 大蔵委員会 第18号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和五十三年三月二十九日(水曜日)     午前十時一分開議  出席委員    委員長 大村 襄治君    理事 小泉純一郎君 理事 野田  毅君    理事 保岡 興治君 理事 綿貫 民輔君    理事 佐藤 観樹君 理事 塚田 庄平君    理事 坂口  力君 理事 永末 英一君       愛知 和男君    池田 行彦君       宇野 宗佑君    小渕 恵三君       大石 千八君    後藤田正晴君       佐野 嘉吉君    林  大幹君       原田  憲君    本名  武君       森  美秀君    山崎武三郎君       山中 貞則君    伊藤  茂君       池端 清一君    大島  弘君       川口 大助君    沢田  広君       只松 祐治君    平林  剛君       貝沼 次郎君    春田 重昭君       宮地 正介君    高橋 高望君       荒木  宏君    永原  稔君  出席国務大臣         大 蔵 大 臣 村山 達雄君  出席政府委員         公正取引委員会         事務局経済部長 妹尾  明君         公正取引委員会         事務局取引部長 長谷川 古君         大蔵政務次官  稲村 利幸君         大蔵大臣官房審         議官      福田 幸弘君         大蔵省主計局次         長       山口 光秀君         大蔵省主税局長 大倉 眞隆君         国税庁長官   磯邊 律男君         国税庁間税部長 矢島錦一郎君  委員外出席者         警察庁交通局交         通指導課長   広谷 干城君         法務省刑事局刑         事課長     佐藤 道夫君         厚生省公衆衛生         局精神衛生課長 目黒 克己君         食糧庁総務部長 小野 重和君         日本国有鉄道旅         客局サービス課         長       猪俣 爲久君         大蔵委員会調査         室長      葉林 勇樹君     ————————————— 委員の異動 三月二十九日  辞任         補欠選任   大久保直彦君     森田 重昭君 同日  辞任         補欠選任   春田 重昭君     大久保直彦君     ————————————— 本日の会議に付した案件  参考人出頭要求に関する件  石油税法案内閣提出第一八号)  酒税法及び清酒製造業の安定に関する特別措置  法の一部を改正する法律案内閣提出第五号)      ————◇—————
  2. 大村襄治

    大村委員長 これより会議を開きます。  石油税法案議題といたします。  本案につきましては、昨二十八日質疑を終了いたしております。  これより討論に入るのでありますが、討論申し出がありませんので、直ちに採決に入ります。  石油税法案について採決いたします。  本案賛成の諸君の起立を求めます。     〔賛成者起立
  3. 大村襄治

    大村委員長 起立多数。よって、本案は原案のとおり可決いたしました。     —————————————
  4. 大村襄治

    大村委員長 ただいま議決いたしました本案に対し、自由民主党、日本社会党、公明党・国民会議、民社党及び新自由クラブを代表して野田毅君外四名より、附帯決議を付すべしとの動議が提出されております。  この際、提出者より趣旨説明を求めます。塚田庄平君。
  5. 塚田庄平

    塚田(庄)委員 石油税法案に対する附帯決議案につきまして、提出者を代表して、その趣旨内容を簡単に御説明申し上げます。  御承知のとおり、総合エネルギー調査会は、昨年八月末、長期エネルギー需給暫定見通し資金規模等について中間報告を行いましたが、同調査会は引き続きさらに検討を進め、本年夏ころまでに財源対策を含めた本格答申をまとめる予定とされております。  多額な資金を要するとはいえ、エネルギー問題は、今日、避けて通れない重要な政策課題一つであり、その財源をどう調達し、これをエネルギー政策推進に向けてどう効率的に配分するかについては、現在の複雑な石油税制の見直し、その使途是非等税財政を通じての総合的な検討が必要であります。  本附帯決議案は、このような見地から、石油に対する課税及びその使途あり方等三点にわたり、政府検討をこの際、特に要請しようとするものであります。  なお、案文はお手元に配付してありますので、便宜朗読は省略させていただきます。  以上であります。  何とぞ御賛成をいただきますようお願い申し上げます。     —————————————    石油税法案に対する附帯決議(案)  政府は、石油税新設に伴い、左記事項について、留意すべきである。 一 石油に対する課税については、関税、石油税既存内国消費税などその制度が複雑になっているので、その合理的なあり方について十分検討すること。 一 石油税の収入の使途については、代替エネルギーの研究・開発省エネルギー対策等今後におけるエネルギー対策との関連において、十分検討すること。 一 為替差益が大幅に生じている現在の経済情勢にかんがみ、石油税新設に関連して、製品価格上昇が生じないよう努力すること。     —————————————
  6. 大村襄治

    大村委員長 これにて趣旨説明は終わりました。  お諮りいたします。  本動議のごとく附帯決議を付するに御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  7. 大村襄治

    大村委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決しました。  本附帯決議に対し、政府より発言を求められておりますので、これを許します。村山大蔵大臣
  8. 村山達雄

    村山国務大臣 ただいま御決議のありました事項につきましては、政府といたしましても、御趣旨に沿って配意いたしたいと存じます。     —————————————
  9. 大村襄治

    大村委員長 お諮りいたします。  ただいま議決いたしました法律案に関する委員会報告書の作成につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、これに御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  10. 大村襄治

    大村委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決しました。     —————————————     〔報告書は附録に掲載〕      ————◇—————
  11. 大村襄治

    大村委員長 次に、酒税法及び清酒製造業の安定に関する特別措置法の一部を改正する法律案議題といたします。  まず、政府より提案理由説明を求めます。村山大蔵大臣。     —————————————  酒税法及び清酒製造業の安定に関する特別措置   法の一部を改正する法律案     〔本号末尾掲載〕     —————————————
  12. 村山達雄

    村山国務大臣 ただいま議題となりました酒税法及び清酒製造業の安定に関する特別措置法の一部を改正する法律案につきまして、提案理由及びその内容を御説明申し上げます。  わが国の財政は、大量の公債、特に特例公債への依存から脱却し、財政健全化を図りつつ、同時に、速やかに景気を回復させるというきわめて困難な問題に直面しております。このため、昭和五十三年度税制改正においては、当面の経済運営の方向と背馳しない範囲でできる限りの増収措置を講ずることとし、その一環として酒税について税負担の増加を求めることといたしたものであります。  また、清酒製造業経営基盤の安定に資するため、日本酒造組合中央会事業範囲の拡大を図る必要があります。  以上のような観点から、ここに酒税法及び清酒製造業の安定に関する特別措置法の一部を改正する法律案を提出した次第であります。  初めに、酒税法の一部改正につきましてその大要を申し上げます。  第一に、酒税従量税率引き上げを図ることといたしております。  すなわち、ビール果実酒類ウイスキー類スピリッツ類リキュール類及び雑酒について二四・三%程度清酒特級について一七・五%、清酒一級について六・九%、しょうちゅう甲類について九・九%、みりん本直しについて四・九%、その税率引き上げることとしております。これを通常の容器一本当たりに換算いたしますと、たとえば清酒特級は百十円程度清酒一級は二十五円程度ビールは二十円程度ウイスキー特級は二百十円程度増税となります。  他方、清酒二級、合成清酒、しょうちゅう乙類及び本みりんについては、消費態様等を考慮して税率を据え置くこととしております。  なお、酒類販売業者等が、税率引き上げが実施される際に対象酒類一定数量以上所持する場合には、従来と同様の手持ち品課税を行うこととしております。  第二に、こうじの製造または販売業開発等に係る申告制度を廃止する等酒税制度整備合理化を行うこととしております。  次に、清酒製造業の安定に関する特別措置法の一部改正につきまして、その大要を申し上げます。  清酒製造業におきましては、現在、昭和五十六年度目標年度とする第三次近代化計画を実施し、経営基盤の一層の安定に努めているところでありますが、今回、このような清酒製造業自助努力を実効あらしめるため日本酒造組合中央会事業範囲を拡大することといたしております。  第一に、この法律の施行の日から昭和五十六年十一月三十日までの間に清酒製造業を廃止する者に対し、給付金給付するとともに、これに係る納付金清酒製造業者から徴収することができるよう措置することとしております。  第二に、経営改善その他清酒製造業近代化を図るための事業を行うことができるよう措置することとしております。  以上、酒税法及び清酒製造業の安定に関する特別措置法の一部を改正する法律案につきまして、その提案理由内容大要を申し上げました。  何とぞ御審議の上、速やかに御賛同下さいますようお願い申し上げます。
  13. 大村襄治

    大村委員長 これにて提案理由説明は終わりました。     —————————————
  14. 大村襄治

    大村委員長 これより質疑に入ります。  質疑申し出がありますので、順次これを許します。只松祐治君。
  15. 只松祐治

    只松委員 質疑をいたしますが、前回私が質疑をいたしましたときに大蔵大臣は、後ろ向き横向きか何かわからないがというようなお話がありました。本来ならば、その席上私はこれを問題にいたしまして、当然にこれは議事中断等を行って、問題を明らかにするというのが公平なる議事の進行であると思います。後ろ向きということは、これは改悪するということですから、いまでも審議をしてくれ、こういうことで前向きの審議をいたしておるときに、後ろ向きに改悪するか、また、横向きというのはそのままだとということで、これは審議する必要はないということです。答弁としては、近来にないでたらめな、ある意味では恥ずべき答弁である。したがって、この問題だけを本委員会の問題として論議してもしかるべき問題であります。そういうことならば、前回委員会においてあの法案は成立させないで、引き続きその問題を論議すべきだ、私はこういうふうに存じます。  しかし、諸般の事情を考慮して私はその場合一応引き下がったわけでございますが、きょうこういう問題を審議しろと言っても、後ろ向きにするというような答弁をいただいたのでは審議するわけにはいかない。前言を明確に取り消して、そういうでたらめな答弁は二度といたさない、国民の代表として出てきているわれわれに対してまともな答弁をいたす、国民のために前向きに法案審議をする、こういうことを約束してもらいたい。
  16. 村山達雄

    村山国務大臣 重ねておわび申し上げます。非常にむずかしい問題であるということが頭にあったものですから、つい申しわけない答弁をいたしましたが、真剣にこの問題は検討するつもりでございます。
  17. 只松祐治

    只松委員 そのときに、時間を若干縮めてくれないかということでございましたので、国税庁長官答弁に立とうとされておりましたが、私はそれをやめていただきまして、いま申し上げた大臣一括答弁を要求したわけであります。ところが、そういう答弁になりました。したがって、長官がそのときに、私が質問したことに対して前向きの答弁をされました。国民に対するPRの仕方、そういう問題を若干お尋ねしようといたしておりましたし、そういうことのお答えをいただこうと思っておったわけでございますが、そのときに省略をいたしておりましたので、通達に対して、国民にできるだけ周知せしめ徹底させるための前向きの方法等をひとつお知らせいただければ幸いだと思います。
  18. 磯邊律男

    磯邊政府委員 去る大蔵委員会におきまして、先生の御指摘になりました離婚に伴う財産分与に関する税制の問題でありますけれども、これは特殊なケースであるだけに必ずしも当事者同士ではっきり御理解なさっていないケースも多いように私たちも存じております。したがいまして、こういった離婚に伴う財産分与に関する税制の問題につきましては、ただいま国税庁パンフレットを用意しております。これはこの問題に限らず、かねがね国税庁では、いろいろな税制についてPRする必要のある事項につきましてはパンフレットをつくって、必要な方面にそれを配布し、また一般にPRしておるわけでございます。この問題に関しましては、ただいまパンフレットを用意しておりまして、でき上がり次第、離婚問題等を取り扱います市町村役場、それからまた場合によりましては、家庭裁判所の待合室といったところにこれを配布いたしまして、周知徹底させていきたい、かように考えておる次第でございます。
  19. 只松祐治

    只松委員 本問題に入りますが、私は、今回の酒税法改正は、昨年企図されておりました一般消費税新設をされる、こういうことであれば、恐らく本年の酒税法改正はなかっただろう、あってもこういう大幅なものではなかっただろうと思うのです。いわば消費税肩がわりとまでいきませんが、穴埋め程度ですか、こういうことから今度の酒税法改正になってきたのだろうと私は推測をいたします。  そこでまず、酒税法に入る前に、一般消費税が忘れ去られたような形になっておりますが、大蔵省当局としては、一体この一般消費税についてどういうふうに取り組んでおられるか、明年度から実施する準備等を進めておられるのか、あるいは当分見送りだというようにお考えになっているか、その後の状況、それからお考えをお聞かせいただきたいと思います。
  20. 大倉眞隆

    大倉政府委員 ちょっと時間をいただいて恐縮でございますが、まず五十三年度改正に際しましては、只松委員よく御承知のように、景気対策を主眼にして財政で引っ張ろうということに焦点を当てました結果、実質三七%の国債依存度という財政としては非常なむずかしい状況に陥っているわけでございます。そのために私どもとしましては、当面の景気政策に矛盾しないと思われる範囲内でできる限りの増収措置はお願いをいたしたいと考えたわけでございまして、本日御審議を願っております酒税法改正基本的考え方はそれに即したものでございます。したがって、そういう状況でございますので、一般消費税と言われておるような非常に広い範囲負担を求めるというものは、五十三年度財政運営全体を考えますと、その導入を具体的に考えるのは適当な時期でないであろうという判断税制調査会でもなされたわけでございます。  ただ、只松委員よく御承知中期答申では、いわゆる不公平の是正はぜひやるべきであり、歳出合理化も極力政府でやるべきであるけれども、それにしても既存税制の中で考え得る増収措置を講じたとして、やはりそれではいまの財政の再建はおぼつかない、結局は所得税一般的な増税一般消費税かという問題に突き当たらざるを得ないであろうということが言われ、かつ税制調査会としては、一般消費税導入政府として具体的に検討すべき時期に入っていることをかなりはっきりと示しておられます。  それを受けまして、五十三年度税制改正では、答申の中で、従来の年度答申から申しますとやや異例ではございますが、と申しますのは、年度答申というのは具体的に何か措置すべきことを書くのが通例でございますけれども、特に五十三年度答申では、一般消費税問題にも触れておられまして、中期答申を受けて一般消費税を今後どうするかということの考え方がある程度示されております。  そこに言われておりますことは、将来の問題として、一般消費税をもっと具体的に検討せざるを得ない状況にあるという御判断がありまして、ただ、中期答申で示されました一般消費税は、非常に基本的な骨組みが大ざっぱに示されているだけで、具体的なものになっていない。また仕組みの中でも、ある程度今後勉強して、どちらかを選択しようというふうに必ずしも一つに決め切っていない部分もある。それから、中期答申が出まして以後、税制調査会の外で、いろいろの機会に私ども中期答申趣旨を御説明する機会を持ったわけでございますが、そのときに集まられた方々からの反響は、基本的には、一般消費税というのは物価に対してどんな影響があるかとか、そういうものを考える前に歳出をもっと切れとか、あるいはいわゆる不公平を直せという御意見はもちろん多かったわけでございますが、一般消費税というものの考え方は、説明を聞いて、いい悪いは別にしてわかったような気はするけれども、もう少し具体的なものになっていないと、これ以上突っ込んだ議論はなかなかしにくいという反響もまたかなりあったわけでございます。  それを受けまして、今度の答申では、なるべく早い機会税制調査会としてもう少し具体的な案を詰めてみようではないか、それを基礎にしてもう一度国民各層に理解を求めるためのいろいろな行為を政府にやってもらって、その上で最終的な結論を出そうではないかということが書かれておりますので、私ども事務当局といたしましても、国会の御審議でいまのところ物理的にちょっと余裕がございませんけれども、なるべく早い機会税制調査会審議を再開していただきまして、一般消費税につきまして、残されておりますいろいろな問題をもう少し議論を深めていただきまして、一般の御論議にたえ得るようなもう少し具体的なものを、試案と申しますか素案と申しますか、そういうものとして一度中間的に公表していただくことを考えている、現在のところそういう状況でございます。
  21. 只松祐治

    只松委員 それで、いつごろまでにそういう具体案をつくられるかという時間と、それから本題でありませんから論議しませんが、中期財政試算等を見ましても、これは公債を増発してインフレ政策をとっていくか、増税をするか、二者択一か真ん中をとっていくか、いずれにしてもほかに方法はないわけでございます。その大幅増税の場合は一般消費税以外の方法はないこと、これまた明らかであります。したがって、いわば腹づもりといいますか、そういうことになろうかと思います。したがって腹づもりを、主税局長でなになら大蔵大臣で結構ですが、ひとつお聞かせをいただきたい。時期と腹づもりでございます。
  22. 大倉眞隆

    大倉政府委員 二つの側面がございます。一つは、ただいま御説明いたしましたような税制調査会で御論議を深めていただく手順、日程の問題でございます。これはまだ税制調査会会長会長代理の方に御相談をいたしておりません。まだその暇はございませんのですが、私の希望といたしましては、なるべく早い機会税制調査会審議を再開していただきたい。その第一回は、毎年のことで只松委員よく御承知のように、国会での税法に関するあるいは税制に関するいろいろな御論議を詳しく御報告するわけでございます。その後で、その日になりますかその次になりますか、いわば自由討議の形で一般消費税問題、それから今国会で大変御論議が多かった総合課税問題につきましての今後の税制調査会としての審議の運び方について、委員の御意見を伺うという機会を持ちたい。その上で、事務当局ひとつ素案を出してみろということにしていただければ、私どもの方から日程案をお出しするというような運びを考えておりますので、いまのところまだいつごろを目途にというところまで申し上げる自信はございません。しかし、拙速でやるわけにまいりませんので、そういう意味での税制調査会審議が始まりましてからやはり少なくとも三カ月ぐらいはかけて、いろいろな審議方法もまた工夫して、その上で一種の試案なり素案というものを中間的に発表していただくというのが一番早いタイミングではなかろうか。ですから、端的に申しますと、ことしの夏あるいは秋の早々というぐらいになるのではないかという感じがいたします。  ただ、そういう素案なり試案を発表いたしまして、それにつきましてまた各方面の御意見を十分伺わなくてはなりませんし、またもし機会がありますれば、もちろんこれは公表するわけでございますけれども国会にも資料としてお出しして国会での各党の御意見も十分承って、その上で政府の案というもの、あるいは税制調査会最終答申案が先になりますが、そういうものに煮詰めてまいるということを私としては考えておりますので、それはもっと先になる。  さらに、五十四年度に一体どういうことを考えるのかということになりますと、これは税制調査会中期答申でも年度答申でも常に言われることでございますが、基本的な考え方は示した上で、さて五十四年度という各年度改正でどのような税目で、どれくらいの幅で税制改正を行うのかということは、やはりその年度についての経済情勢の見きわめ、それに対応すべき財政の姿勢、それと合わせて税制財政政策一環として整合性を持って決定されなくてはならない、常に言われているわけでございますし、私どももそう考えておりますので、やはり五十四年度に具体的に何がテーマになるかということにつきましては、ことしの秋が非常に深くなりました段階でございませんと経済見通しができませんので、その段階まで私どもとして確たる見通しを申し上げるという用意がないと申し上げるべきかと思います。
  23. 只松祐治

    只松委員 今度の法案の中に清酒製造業界の安定に関する問題があるわけでございます。三十九年から四十九年に二回同じようなことが行われてまいりました。その間に具体的にどういう効果が上がったか。業界は三千からありまして、これも大中小あってなかなか大変でございます。後でお聞きいたしますけれども、洋酒やビールに追われまして、清酒業界というものは大変に苦労なさっておるわけでございます。そういうことで、今回も基金の追加等が行われるわけでございますが、時間がありませんからほんの一、二で結構でございますが、具体的にこういう効果が上がった、こういうものがありましたらひとつお知らせをいただきたい。
  24. 矢島錦一郎

    矢島政府委員 お答えいたします。  御案内のように、清酒製造業は、昭和四十四年の自主流通米制度の発足に伴いまして環境が非常に激変したということでございまして、信用保証事業転廃業者に対する給付金給付事業というものを中心といたしまして事業を行ってきたわけでございます。  この結果、酒造資金調達のためには、担保としての基準指数にかわりましてそういうものをつくるということで多大の成果をおさめておりますし、酒造資金調達円滑化に非常に寄与しておるというふうに考えております。  それから、転廃給付金制度でございますが、昭和四十五年度から四十八年度までに転廃する者を対象といたしまして給付を行いましたわけでございますが、給付金受給者二百二十一名ということでございます。  それから、構造改善事業集約化率というものにつきましても、相当計画を上回っておるということでございまして、安定法制定構造改善事業推進に非常に成果があったというふうに評価しておるわけでございます。
  25. 只松祐治

    只松委員 きょうは時間がありませんから、具体的な問題は聞かない。もしそういうもののこういうふうに上がったという事例等がありましたら、後で資料で結構でございますから、御参考までにいただければ結構です。資料でいいですから。  それから農林省の方、お見えになっておりますか。——いま申しましたように三千も業者がおられまして、洋酒や何かに追われる、こういうことで非常に苦しんでおられる。円高とは別に関係ないわけでございますが、ビールやウイスキーは円高によっていわばいま救われている、こういうぐあいに思います。ところが、酒造米は年々御存じのように上がっております。そういうことで、酒も引き上げざるを得ないが、洋酒やビールとの競争上なかなか引き上げることはできない、こういういろいろな問題があります。その上に加えて、払い下げの米が古米である、そういうことで、昔はそれほどじゃなかったのが、一級、特級をつくるのに大体五〇%からどうかすると六〇%まで米を削っていかないと、一級や特級の酒が出てこない。私、実地見学まで行ったわけですが、半分くらいになってしまっているわけです。どうせ新米は一年たてば古米になるわけですから、それで余っておる米でございますから、新米を何とか払い下げてもらいたいという声が非常に強いわけです。  御承知だと思いますが、古米の払い下げというものは、全部受け取らないで自分で新米を買うというような状態が出てきております。こういうことは、役人の机上計算とまでは言いませんけれども、やはり業界の要望に対応して新米を与えたり、あるいは食管法上なかなか困難だと思いますが、いまの近代化資金等をどう活用していくかということに関連しますけれども、安く払い下げるというか、少なくとも余り年々上げていかないという方式をとらないと、他の酒造業界と太刀打ちができない。あえて民族産業とまでは申しませんけれども、日本古来の清酒業界というのは非常に苦境に立っておる。こういう事態を踏まえて、ひとつ何かいい方法はないかと思いますが、農林省として、少なくとも新米を出すぐらいの答えはいただきたい、こういうふうに思います。
  26. 小野重和

    ○小野説明員 私ども酒造用米の取り扱いを考えます場合にいつも問題になりますのは、主食用との関係でございます。  御案内のように、酒造用米につきましては、昭和四十四年に自主流通米制度が発足してから、自主流通米をもってこれに充てるということにいたしておるわけでございますが、その場合に、主食用の自主流通米には一定の自主流通米助成をいたしておるわけでございますが、酒造用の自主流通米につきましては、当初は主食用並みの助成水準ではなかったのでございますが、やはり経営の実態あるいは米の消費拡大というような観点から、その助成につきましては、現在は主食用並みの水準ということになっております。  そういう中にありまして、さらに清酒の品質改善を図る、同時に米の消費拡大を図るという観点から、アルコール添加の量を少なくしてもらうために、五十一年からでございますが、特にアルコールを米に切りかえるという場合に、一般的には自主流通米でございますが、特に政府米を主食用価格で売るということをこれは五十一年からやっております。そういう措置をとっておるわけでございます。  その場合に、いま先生から御質問のございました、ではどういう米を売るのかということでございますが、五十一年では、これは古米と申しましても低温米と常温米と二種類ございまして、五十一年の場合には、低温米が大部分でございますが、常温米も買ってもらうということにしたのでございますが、やはり常温米では余りうまくないということがございまして、去年は全部低温米、私どもその低温米につきましては、新米と実質的に味が変わらないということで、低温古米と言いませんで、低温米、低温米と言っておりますが、その低温米を売るということにいたしておるわけでございます。これは一つは、やはり主食用につきましても、新米のほかに低温米につきまして相当量売り渡しておりまして、それとのバランスもございますし、また、実質的に低温米につきましては、新米と品質を比べて劣らないということがございますので、そういう措置を特にとっておるというのが現状でございます。
  27. 只松祐治

    只松委員 言い回しはいろいろ要らないのですよ。こういうところはするかしないかということで、新米を要望しておるから、新米ができるか。どうせ一年置けば古くなって、順ぐりにやって、なかなか操作はむずかしいと思うけれども、そういうことよりも、新米を配給するように努力するか、あるいはできないならできないという答えは、簡単ですから、私は新米を出してくれという要望を代表して言っているわけですから、ひとつできるかできないかということだけを答えてください。
  28. 小野重和

    ○小野説明員 先ほども申し上げましたように、主食用とのバランスの問題もありますが、要は清酒の品質に本当に影響するかしないかということだと思います。そういう問題を含めまして今後極力検討いたしたい、かように存じます。
  29. 只松祐治

    只松委員 ここのところ酒の問題でにぎわしている問題に、東駒事件というのがあるわけでございます。二十四日ですか、最高裁の判決がありました。中身は特級酒なんだけれども二級酒のラベルを張らないで特級酒、こういうふうにやった、それは審議会の特級認定を受けていなかったからけしからぬ、こういうことでございます。そこで罰金とともに、執行猶予つきでございますが、実刑を科せられております。  これは後で私が質問してまいりますウイスキーやなんかの中身の問題と大変に関連をいたしてまいりますので、若干お聞きをしておきたいと思いますが、大臣、これについてどういうふうに所感をお持ちでございますか。
  30. 村山達雄

    村山国務大臣 去る五十三年の三月二十二日の最高裁におきまして、いわゆる東駒の二重ラベル事件について判決が下されました。その理由のところで「級別の審査・認定を受けなかったため酒税法清酒二級とされた商品であるびん詰の清酒清酒特級の表示証を貼付する行為は、たとえその清酒の品質が実質的に清酒特級に劣らない優良のものであっても、不正競争防止法五条一号違反の罪を構成すると解すべきであって、これと同趣旨の原判断は正当である。」こういうことを明白に述べているのでございます。このことは、考えてみますと、現在わが国の酒税法がとっておりますところの級別制度というものを正面から是認していただいたわけでございまして、きわめて力強い判決である、このように評価いたしておるところでございます。
  31. 只松祐治

    只松委員 この最高裁の判決の視点も、級別の審査認定を受けなかったというのが非常な大きなウエートをなしております。したがって、大臣のお答えはその限りにおいては私は正鵠を得ていると思うのです。判決に関する限りは。しかし、さらば級別審査というものは一体そんなに権威があるものか、そんな中身のあるものかということが当然に問題になってくる。私がここで弁護人を引き受けておれば、私はこの裁判には必ずしも負けなかったと思う。この級別の審査認定ということは非常に問題がある。  それからいま一つ、不正競争防止法の五条一号という問題が適用になっておる。これも時間があれば後で聞きますが、おけ買いという問題。これを逆用すれば、おけ買いをしておるところは全部五条一号に該当をいたします。これは後で読んでもいいけれども、産地その他を虚偽にあれするということは全部該当をいたしてくるわけであります。ウイスキーの場合も当然これは問題になってまいります。したがって、この東駒だけがこういうふうに、あえて弱いとまで申しませんが、実刑を食らったり罰金を科される、こういうことになれば、単に清酒だけでなくてほかの問題もですが、特に清酒の場合は、おけ買いという問題は、不正競争防止法の五条の一号だけでなくて、一条の三号や五号、こういうものにも当然に引っかかってまいります。きょうは法廷ではありませんから、私は弁護人に立って論争する、そこまでの予定はありませんけれども、おけ買い問題一つをとりましても、この不正競争防止法、ここに六法全書がありますが、ごらんになりますと当然に問題になってくる、大変な問題を生じておる、私はこういうふうに考えるわけでございます。  したがって、この判決の文章で見る限り大臣の答えは私は当然だと思いますが、しかし、酒造業界全体、あるいはそれから一兆円に及ぶ酒税を得ておる大蔵当局としては、私は軽々しくこの判決を見逃してはならない問題だ、こういうふうに考えるわけでございますが、大臣、そうお思いになりませんか。
  32. 村山達雄

    村山国務大臣 いずれにせよ、いま酒税法上は特級酒については、いわゆる官能審査を中心にした審査制度をとっているわけでございます。したがって、そういう官能審査によるところの特級というもの、それがやはり一つ制度として認められておるということ、あるいは一級、二級につきましてはアルコール度数とかその他の区分によって決められておるわけでございますので、現行の級別制度、それが是認をされたということで私は評価しておるわけでございます。  自余の細かいいろいろな問題につきましては、また専門家がたくさんおりますから、専門家の方から答弁させていただきます。
  33. 只松祐治

    只松委員 いや専門家ではなくて、不正競争防止法の一条三号「商品若ハ其ノ広告ニ若ハ公衆ノ知り得ベキ方法ヲ以テ取引上ノ書類若ハ通信ニ虚偽ノ原産地ノ表示ヲ為シ文ハ之ヲ表示シタル商品ヲ販売、拡布若ハ輸出シテ原産地ノ誤認ヲ生ゼシムル行為」、ほかにもありますが、こういう一項だけを見ましても、灘で生まれて灘で育ったうまい酒、灘の生一本あるいは灘の水でつくったうまい酒、これは御承知だと思いますが、月桂冠はその約八割がおけ買いで、灘でできたのはわずか二割にすぎない。半分じゃないのですよ、いいですか、八割がおけ買い。灘の原産地でとれた酒が何本ありますか、十本に二本しかない。これは東駒がひっかかるとするならば当然に不正競争防止法に灘の酒も全部ひっかかります。  これには酒税法上の級別の審査と不正競争防止法の罪を構成するのと二つあるわけです。そして不正競争防止法が主となって罰金とともに懲役が科せられているわけです。そういうことになると、日本の清酒というのはほとんどひっかかってきます。特に一番売れておる月桂冠というのは著しく虚偽の原産地の広告をしておるのです。法務省、お見えになっておりますか。——それでは大臣にお答えいただいて、それから……。
  34. 村山達雄

    村山国務大臣 私も法律の専門家ではございませんのであれでございますが、由来日本酒は、特に清酒、醸造酒類のものは、やはりブレンドの関係が非常に大きな問題をなす。したがって、原産地という法律意味でございますが、おけ買いの事実はございます。それは原料というのかあるいはブレンドの材料というのか、商標はまさしく月桂冠なら月桂冠でやっておりますから、製品は月桂冠がつくっていることには間違いございません。しかし、その中で七割か八割かは知りませんが、おけ買いをやっておる。恐らく技術指導はみんなやっておると思いますが、自分のところの銘柄にふさわしいいわば原料酒と申しますか、そのおけ買いをやって、そしてブレンドをやって、そして月桂冠という商標でやることが果たして原産地について虚偽というのか。(只松委員「実証を示そうか」と呼ぶ)ですから、そこは法律論の話であろうと思うのでございます。もし只松委員のようなことが言われれば、おけ買いによって商標を張るということはすべて法律違反ということになるわけでございますから、そこはいかがなものであろうか。いまの東駒の問題は、特級の審査を経ない。つまり、いまの酒税法上明らかに特級でないものに、自分だけの評価で中身は特級に値するというので特級のラベルを張った、ここが問題なのでございます。ですから、後段の問題については、これは果たして只松委員の言うように不正競争防止に該当するかどうか。もしそういうことになれば、すべておけ買いはおかしいということになるわけでございますが、これは法律論争の問題でございます。常識から考えてそういうことにならぬのじゃないかとは思いますが、私は法律家ではございませんので、専門家からお答え願いたいと思います。
  35. 只松祐治

    只松委員 法務省がお答えになる前に、もう一つ言っておきますが、これは二級と書いてなかったから級別のあれでけしからぬということになっておりますね。だから、二級と小さく書いておれば、最上級酒とかあるいは最優良酒とか最高級酒とか酒税法にないことを書いても、二級酒と小さく書いておれば逆に問題にならないと私は思うのです。二級酒と書いてないところに一つの問題点があるわけですから。その点はどう思われますか。
  36. 矢島錦一郎

    矢島政府委員 お答えいたします。  先生の御質問は、表示につきましての問題であろうかと思うのでございますが、景表法、不当景品類及び不当表示防止法の趣旨にかんがみまして、酒造組合中央会は自主的に清酒の表示に関する表示の基準というのをつくりまして、これに基づきましていろいろな取り決めをやっておるわけでございます。その結果、灘の生一本というのはこういうものだとか、本醸造というのはこういうものだとかいうことについてやっておるわけでございまして、いずれにいたしましても、先生のおっしゃるように不正競争防止法そのものにひっかるというようなことは私どもはないと考えておるわけでございます。
  37. 佐藤道夫

    佐藤説明員 お答え申し上げます。  ある事件につきまして犯罪が成立するかどうかということは、文字どおり具体的な事実関係のいかんによるわけでございますので、ただいまここで問題になっております清酒製造方法あるいは販売方法、特におけ買いの事実が一体いかなる実態を持っておるのか、私全くつまびらかにしておりませんので、明確なことを申し上げることはできませんが、いずれにいたしましても、不正競争防止法の一条の第三号にただいま先生御指摘のような、虚偽の原産地の表示をなしあるいはまた原産地の誤認を生ぜしめる行為をなしたる者ということが構成要件として摘示してございますので、これに該当する限りにおきましては犯罪が成立するということでございます。
  38. 只松祐治

    只松委員 私は、月桂冠という例は引きましたけれども、月桂冠というのはただ一引例でございまして、これがなるとは断定はいたしておらないわけでございます。こういうふうに特定のものを指しておるわけではありませんが、法律解釈としては、いま法務省からお答えいただきましたことが、私も法律を多少かじっておりますから当然だろうと思う。そういうことになれば、先ほどから申し上げておりますように、あえて月桂冠と申しません、月桂冠だけではなくて、大関とかいろいろな酒がありますが、おけ買いが多くなされておるものは原産地のものでないものが多い。したがって、一級、特級、そういうことは書いていいけれども、灘でとれたなどそういうことはやめるとか——私は、おけ買いそのものを全部一挙にやめろと言っておるのではない。そうすると、中小零細企業の酒屋さんはつぶれてしまいます。困ります。そこまで言っておるのじゃないのですが、こういうふうに東駒のような厳しい判決が出るならば、後で私はウイスキーを主として聞きますが、とにかくそういうものは国税庁なりあるいはどこかである程度指導して、これだけ厳しい判決が出たならば、そういうものを他山の石としなければならないわけです。そしてでたらめな、茨城やら栃木やらあるいは青森あたりで買ってきた酒を、極端に言えばその辺でびん詰めしておいて、どうして灘に持って返りますか、いまの輸送困難なときに。そして、ラベルだけ張っておいて、それがあたかも灘でとれた酒、こういうふうに誤認を生ぜしめておる。私はこの事実幾らだって知っておりますよ。ただ、そういうことを余り明確にいたしてまいりますと、酒造業界に混乱を生ぜしめたりいたずらに罪人を生ぜしめますから、きょうは私はこれ以上問題にいたしませんが、判決が出た機会に——私は前にも一遍、泉さんが国税庁長官でございましたけれども、この問題を取り上げたことがあるのです。少しは正すと言われておりましたが、ますますこれも寡占化が進んできて正されておらない。いまの法務省の見解どおりといたしますならば、ぜひひとつこれを正すことを要望をいたしたいと思いますが、そういう意味の指導をするというお答えをいただければ幸いだと思います。
  39. 磯邊律男

    磯邊政府委員 先生が御指摘になりましたように、確かにおけ買い等ございますといろいろと誤解を招くようなこともございますので、その清酒の表示に関しましては、国税庁の方で指導いたしまして、業界の方でも基準をつくったわけでございます。例を申しますと、たとえば灘の生一本というふうな言葉を使ったことは、実際にその内容としては、米及び米こうじのみを原料として、自造酒であって、かつ原酒であるものに限る、こういうふうにしまして、おけ買いをしたものとかそういったものは灘の生一本というふうな表示をしてはならないというふうにしておりまして、業界の方でもこれも自粛しておるわけでございますけれども、さらに一層この趣旨を各方面にわたって徹底させていきたい、かように考えております。
  40. 只松祐治

    只松委員 次に、ウイスキーの問題をお尋ねをいたしますが、近ごろウイスキーは非常に伸びてまいりました。かつて私が果実酒の解禁を要望いたしましたときにウイスキー業界は猛烈に反対をいたしました。私は果実酒を、甘い酒を飲むと必ず辛く口が移っていくから洋酒業界が発展をいたしますよ、こう言って、国会の速記録にもあると思いますが論戦をいたしました。しかし、いやそういうことではないということで猛烈な反対をした。結果的には、私のときにレモンを解禁いたしまして、それから二年たってブドウ酒を除いて全部私の要望どおり解禁になりました。逆にいまはウイスキー業界が非常に伸びておりまして、先ほどから申しますように清酒業界なんか押されてきておるわけでございます。  そのウイスキーの材料、原料とは一体何か、それからその原料の素材の値段は幾らしておるか、国民には皆目不明でございます。ひとつ国税当局で御説明をいただければ率いだと思います。
  41. 矢島錦一郎

    矢島政府委員 お答えいたします。  ウイスキーにつきましては、モルトウイスキーにつきましては発芽させた穀類、麦芽でございますが、それと水、それから、グレーンウイスキーにつきましては麦芽、穀類、これはトウモロコシが多いと思いますが、そういうものと水、その他にでん粉を入れているものもございます。それから、グレーンスピリッツといたしましては麦芽、穀類、その他水ということで、その麦芽の使用量をある程度制限してございます。そのほかにグレーンアルコール、それから原料用アルコールというものがございます。
  42. 只松祐治

    只松委員 材料の値段。——ではぼくの方から時間がありませんからお教えをいたします。  麦芽は大体十万円から十五万円、一番よりによった高いのは二十万円、大体十五万円くらいですね。トウモロコシが安ければ二万円ですが、大体三万円から四万円。これを製造いたしてまいりますと、大体一トンの麦芽から四十度のアルコールを含んだものが約一トンとれる、こういうことでございます。  そういう状態でございますが、それならば一リットル、モルトあるいはグレーンの原料費は幾らかかるかお答えをいただきたいと思います。
  43. 矢島錦一郎

    矢島政府委員 お答えいたします。  先生の御質問の原価の問題でございますが、原価につきましては、国税庁も全般の問題につきましては把握しておるわけでございますが、特定の企業については、企業秘密ということで申し上げられないわけでございますけれども、仮に特級のウイスキーにつきまして七百六十ミリリットル、四三%というものにつきまして、輸入モルトのウイスキー原酒を四五%まぜたということになりますと百九十八円、それからグレーンウイスキー、これも四五%まぜたと仮定いたしますと三十二円、原料用アルコールを仮に一〇%混和いたしたといたしますと五円ということで、原料代だけでございますが、合計で二百三十五円ということになろうかと思います。
  44. 只松祐治

    只松委員 いまのはいわば純粋といいますか、モルト、グレーン、それから大麦、ライ麦からとれるものもある、こういう全くのいわゆる原料、生の材料といいますか、それが二百三十五円、こういうことでございます。しかし、いま私が申しましたように、仮に麦芽が十万円で一トンということになると、一リッター百円ということになる。それからグレーンの場合は、三万円といたしますれば一リッター三十円、こういうことになるのです。これは水、アルコールあるいはそういうものをまぜない場合ですね、これでそうなるのです。  これがいわゆる最高、最良の原材料が幾らにつくだろうか。いまのは平均だと思いますが、一番いい、たとえば二十万円の麦芽、四万円のトウモロコシという最良のものを使って、そして高級酒、特級酒としてラベルが張られる、大体七、八年もの以上、仮にこれを十年といたしまして幾らになりますか。
  45. 矢島錦一郎

    矢島政府委員 先生御質問のように、最高のものがどのくらいかということにつきましては、私ども実は把握しておりません。しかし、平均的な数字について申し上げますと、輸入モルトウイスキーの原酒はキロリットル当たり六〇%換算で八十万前後、グレーンウイスキー原酒におきましてはキロリットル当たり一〇〇%換算で二十二万程度、それから原料用アルコールにつきましてはキロリットル当たり一〇〇%換算で十五万円前後になろうかというふうに思います。  それから第二の御質問でございますが、十年で仮にどうなるかということでございます。これは前提を置いて計算いたさないといかぬと思うのでございますが、仮にモルトウイスキーの原酒六十度、一キロリットル当たり輸入麦芽を二六トン使用すると仮定いたしますと、その価格はトン当たり約九万二千円程度、それからグレーンウイスキー原酒百度換算で一キロリットル当たり輸入麦芽を約三百九十キログラム、輸入トウモロコシを約二千百五十キログラム仮にそれぞれ使用するものといたしましてその価格を見ますと、トン当たり輸入麦芽約九万二千円、それから輸入トウモロコシを約三万八千円というふうに仮定いたします。こういう前提で実際に貯蔵を行っていって、しかも金利を年六%と見ます。それから欠減を約二%——この辺はいろいろ議論があろうかと思いますが、一応欠減を二%というふうに見ますと十年間——最初の輸入麦芽と輸入トウモロコシの原料費で、六〇%換算でトン当たり十四万七千円という数字が試算されます。これをさっき申し上げました条件で貯蔵いたしますと、十年にいたしまして、十四万七千円のものが約三十二万九千円程度になろうかというふうに思います。
  46. 只松祐治

    只松委員 いまのは大体、国税庁の主として標準的な値段でございます。仮にそれをそのまま認めましても、一リッター当たり十年ものの最高で三千二百円。私があるところから入手いたしましたあれによりまして、トリスエキストラ、これが一応二百四十円、サントリーレッドが三百二十七円、こういうものが出ております。これは私は高いと思っております。いまの国税庁の試算によりましても、これが高いということが明らかになってまいります。  私が自分で試算をいたしましても、仮に五年として——普通五年以下です。六%の金利、欠減が二%、こういうふうにいたしましても、モルトで六%の金利ならば百三十四円、それから欠減では百十円になる。まあ合わせれば百四十四円、こういうことです。グレーンが一リッター四十五円。しかしこれは原酒でございますから、これは国税庁の醸造試験所の図解によりましても、モルトウイスキー、グレーンウイスキーのいまの値段に、カラメル、水、アルコール、こういうもの、それから後にしますが香味料その他をまぜ合わせましてウイスキーというものができてくるということが、国立醸造試験所でされています。こういうふうにまぜ合わせますと、まだ値段というものはずっと下がります。しかもこれは大体〇・七二か〇・七六リッターでございますから、いまの値段は一リッターでございます。そうすると、大体グレーンウイスキーの値段というのは、四、五十円、モルトウイスキーでありましても、百円から百五十円の間、最高に見ましても、二十万円の麦芽を使い、それから、それに十年間として金利六%、欠減二%、こういうふうに計算いたしましても、一リッター四百三十二円というのが私が試算いたしました数字でございます。  ところが、日本のウイスキーにはいろいろございますが、小売価格で幾らから幾らまでのウイスキーがあるのか、ひとつお教えをいただきたいと思います。
  47. 矢島錦一郎

    矢島政府委員 先ほどの御質問、ちょっと不十分だったので申し上げますが、最初に原料費の問題でございますが、モルトウイスキーの場合で、十年貯蔵いたしますと三十二万九千円前後ということで、一リットル三百二十九円前後ということになろうかと思います。それからグレーンウイスキー原酒につきましては、一〇〇%のグレーンウイスキー原酒を使うという前提を置きますと、トン当たりで十一万八千円ということになるわけでございます。この点ちょっと説明が不十分でございましたので、おわび申し上げます。  それから、ウイスキーの小売価格でございますが、たとえばサントリーのオールドの場合について申し上げますと、標準的な小売価格で二千二百円、スペシャルリザーブで三千円、インペリアルで一万五千円、ザ・ウイスキーで五万円、角びんで千八百円、こういうことになろうかと思います。
  48. 只松祐治

    只松委員 まあサントリーが一番売れておりますから、全国のシェアの七〇%を超しているサントリーに例をとりますと、四百三十円から五万円まであります。しかし、材料費は最高にいたしまして、十年もののモルトにいたしても大体三百二十九円。どうして五万円という値段がここに出てくるのですか。その内容をひとつ、今度税金を上げようということでございますから、いろいろその内容も御存じだと思いますから、お教えをいただきたいと思います。三百二十九円がどうして五万円に化けるか。
  49. 矢島錦一郎

    矢島政府委員 お答えいたします。  先ほど申し上げましたように、原価につきましては、この原料費だけを仮に平均的なものとして計算した場合ということでございまして、実際には原料費だけではございませんで、人件費とか減価償却とか広告宣伝費とか、いろいろなものが入るわけでございますが、そのほかにやはり非常に品質のいいものをまぜる、これは取っときのものをまぜるというようなもの、それから高度の技術というものもやはり加味された値段であろうかと思うわけでございます。
  50. 只松祐治

    只松委員 幾らいいものをとりましても、もとが三百幾らですからね、どうして五万円になるかというその手品は国民にはわからぬですよ。  それから、たとえばホワイトホースとかジョニのレッドとか、こういう普通の一応特級酒ですが、円建てで輸入される。それが五十一年十二月で三百八十円、五十二年の十二月の時点では四百円ですよ。だから、ジョニのレッドやホワイトホース、こういうもので、横浜に着いて、びん代から全部含めて四百円ですからね。広告や加工賃や何か、日本に引き渡す価格が四百円です。私が言っているのは、これは一リッターの値段であるし、生のものを言っているわけです。これに、さっきから言うようにいろんな水や何かを薄めて、しかも〇・七か〇・七六リッターだ。こういうことになると、最高のものであっても三百円の原価を割るということになるわけです。それが何千円であったり最高は五万円になるということは、いかに広告費を使おうと、いかに何を使おうと、どういうことになるか。  余り時間がありませんから、私が逆にお教えいたしますと、ぴんというものが使われております。びん代は、五万円のザ・ウイスキーだと約一万円だと言われております。仮にびん代が一万円とするならば、三百円のこれが、人件費や何かいろいろしましても三千円になったと仮定いたします。三千円の原料代に対して一万円のびんをして、そして五万円に売るということは、これは明らかに私がさっきから引用しております法律違反になります。これは例を引くまでもなく、時計のインチキをけいちゃん売りといって、こういうことをやっておる。あるいはいま非常な国民の関心が住宅ということで、駅から十分ですというのが一時間であったり二時間である、こういうことになれば、当然にこれは犯罪を構成するとされております。  こういう嗜好品、あるいは人間が酒を飲んでいい気持ちになる、こういう弱点を利用して、三百円足らずのものが五万円に化けていく。あるいはその下のものは、インペリアルですか、一万五千円になるし、スペシャルリザーブは三千円になる。これはどうしても、私が今度勉強しても理解ができない。おわかりであったらお教えをいただきたいと思います。  それから刑事局の方で、こういうふうに中身がきわめて安価である、それが非常に高価に売られておるという場合には、不正競争防止法第一条第一項第五号にあります「商品若ハ其ノ広告ニ其ノ商品ノ品質、内容製造方法、用途若ハ数量ニ付誤認ヲ生ゼシムル表示ヲ為シ又ハ之ヲ表示シタル商品ヲ販売、拡布若ハ輸出スル行為」ということで、これも違反行為に当たると書いてあります。私はそういうふうに判断をいたします。これに該当するかどうか、お答えをいただきたい。
  51. 矢島錦一郎

    矢島政府委員 お答えいたします。  五万円ウイスキーの中で原価がどの程度になるかということは、私ども実は調べておりませんので、確たるお答えをできませんで申しわけないのでございますが、この中には酒税が二万七千五百六十四円八十銭入っておるわけでございます。そういうことも含めまして生産者価格というのが決まりまして、卸マージンも入りまして、さらに小売マージンも入りまして五万円という価格が設定されるわけでございます。  それから、五万円ウイスキーがその価値がないのではないかというようなお話でございますが、一般的に申し上げまして、もう先生には釈迦に説法だと思いますが、致酔飲料とか嗜好飲料という機能に着目した価値観が中心となってお酒というのは決まってくるわけでございます。同時に、価格決定あるいは消費者の選択がそういうものを中心にして行われているわけでございますが、一部の商品につきましては、やはりプレスティージと申しますか、豪華さとか格調とか装飾品的なもの、あるいは所有自体に満足感を充足させるというものがやはり嗜好飲料としての宿命でございまして、こういうような点から言いまして、限られた数量ではございますが、相当高価なものが流通しているということも事実でございます。  小売価格が妥当かどうかということについては、いろいろな見方があろうかと思うわけでございまして、一概に適否を判断するというのはなかなかむずかしいと思いますが、これを出した会社といたしましては、選び抜いた最良の原酒を最良の技術をもってブレンドしたものだということで、いわばウイスキーの芸術品だ、価格相当の価値があるということを主張しておるわけでございます。  酒につきましては、元来自由価格でございまして、価格設定というものは、やはり自己の責任におきまして企業が設定すべきものであろうかと思うわけでございますが、やはり御指摘のようなウイスキーにつきましては、高級品でもございますし、非常に限定品でもございますということでございまして、価格自体に関しては問題がないのではないだろうかというふうに思うわけでございます。
  52. 佐藤道夫

    佐藤説明員 お答え申し上げます。  ただいま五万円というウイスキーのことが話題と申しますか、議題になっておりますが、私、かような高級酒はまだ玩味した機会がございませんので、果たして価格どおりの内容を保持しておる品物であるかどうか一概に申し上げることはできませんが、いずれにいたしましても、数万円という価格に相なりますれば、ある意味では一種のぜいたく品ということにもなるわけでありまして、宝石とか絵画、彫刻その他、いわゆる嗜好品、ぜいたく品のたぐいと同様に一種の自由な価格が形成される。その背景には、やはり消費者側の一種の虚栄心もありましょうし、趣味、嗜好の問題もございましょうし、あるいはまた、需要供給のバランスの問題もございましょうし、そういう価格で取引されたものが刑事上の犯罪を形成するかどうかということは、きわめて困難な問題ではなかろうかというふうに考えます。
  53. 只松祐治

    只松委員 私が言うように、仮に中身が最高で三百幾らだ、こういう形になってくるわけでございます。それをいろいろな角度から見て、香辛料や何かを入れて千円だ、あるいはまあ譲っても三千円、そんなことはないわけですが、したりします。にかかわらず、私はここにお見せしてもいいのですが、余り見せない方がいいと思って出さないのですが、あるところから手に入れた価格では、生産者原価が一万九千幾ら、こうなっているわけです。その一万九千幾らの中でびん代が一万円だということですね。ところが、これは私がさっきから言っておりますように、そういうことじゃなくて大体三百円前後だ。中身が三百円で外のびんが一万円だということになると、これはウイスキーと言えますかね。そんなのはぴんとして売ったらいいじゃないですか。  私が虚偽の広告だと不正競争防止法を引用しているのは、中身が三百円で、びんが一万円で、それで五万円。酒税は確かに一万七千五百六十四円八十銭、まあ税金は別にいたしまして、とにかくびんが一万円で、中身が三百円で、これはウイスキーだ、高級だ。これが酒だから、あなたは嗜好品だとかぜいたくだとかなんとかおっしゃっているけれども、これが住宅であったりあるいは時計であったり何であったり、こういうものが、中身が三百円ぐらいでそのように——五万円というから、今度は非常にぜいたく品だ何とかと言う。一万五千円のインペリアルあるいは三千円のスペシャル、こういうことになっている。ただ、これはびんはそんなに高くないのですが、この五万円のザ・ウイスキーの場合は一万円ということになっているわけです。  かつてニッカウヰスキーが、五百本を限定として売り出したことがある。これは陶工柿右衛門のところの焼き物を使って、これはやはりびんを中心に宣伝をしたのですね。それから、賀茂鶴がやはりわりと高いのがあります。これもびんを中心に宣伝をしておる。酒ではなくて陶工柿右衛門の有田焼ということを中心に宣伝をしておるわけです。これはそれなりの一つの理屈があると思う。ところが、ザ・ウイスキーというのは、びんは一つもなくて、とにかくウイスキーが高い。ところがウイスキーの中身は三百円だ、こういうことです。これは虚偽の不正競争のこれに該当しませんか。
  54. 佐藤道夫

    佐藤説明員 お答え申し上げます。  大変恐縮でございますが、そのびん自体も私まだお目にかかる機会がございませんので、大変失礼でございますけれども、いずれにいたしましても商品というものは、ある場合には包装品を含んでの取引価格ということが形成されておるわけでございまして、五万円のウイスキーにつきまして、果たして客観的な意味での値段があるのかどうなのか、それのところも問題だろうと思いますが、当事者間におきまして需要供給のバランスを背景として一つの価格が形成されて、それで取引されておるという場合におきましては、不正競争防止法等の関係規定によって擬律するということは困難ではなかろうかというふうに考える次第であります。
  55. 只松祐治

    只松委員 ちょっと私の質問とピントが外れているのですが、中身がそうで、びんが高い。これはほかの例を引く方がいいんですが、時間がありませんから引かないのですが、そういうウイスキーを売っておいてびんを売るというのは、けしからぬじゃないか、誤りでないかということを言っているわけです。これは虚偽の広告、宣伝に該当する、こういうことを言っているわけであります。こういうことが構わないと言うならば、土地の売買あるいは住宅の売買、駅から十分だと言ってぐるぐる回して三十分なり一時間なりする、こういうことなり、あるいは時計のいろいろなインチキ売り、ピンレバーウォッチというのですか、こういうものだって、犯罪はなかなか構成しないと思うのですよ。いいですか。酒だけこういうことが許されるというなら——しかも私が言うのは、国民に非常に密着した問題ですからね。単にピンレバーウォッチだとか、住宅もあれですけれども、住宅も万人のもの、しかし、国民の七割からが酒を飲む、しかも洋酒がふえてきたという時点における問題として私はこれを取り上げておるわけですから。確かに私もよく見たことはないのですけれども、刑事課長もごらんになったかどうか知らないけれども、論理的に言ってこれは法令違反ということは明らかではないですか。
  56. 佐藤道夫

    佐藤説明員 お答え申し上げます。  一般的な話でございますけれども、洋酒等の場合につきましては、ある場合には、またある程度において、びんを含めた一つの価格が形成されておるように私、考えております。ただ中身だけを玩味するという場合もございましょうけれども、そういう高級なウイスキーにつきましては、やはり包装品もそれ相応の価格を持つものでありまして、それを含めて商品というふうに不正競争防止法では表示しておるのではないかというふうに考えます。
  57. 只松祐治

    只松委員 どうも中身との関係を一向おっしゃらないので、また別な機会にでもやることにいたしまして、時間もあれですから次の問題に移りたいと思いますが、そういう中身でありながら、一万五千円になったり五万円になったりいろいろしている。一つは、ビールの場合は麦、それから酒の場合は米、大体明らかになっておりますね。ところが、ウイスキーの場合は、いろんなものが混入されておって明らかになっておらない。これは公取に対して、中身の表示をしろというようなことで、消費者連盟等が陳情したりなんかされておるようでございますが、公取もそうでございますが、大蔵当局としても、何らかの形で中身を明示をしていくということが必要でないかと思うのです。  それから、アメリカでは二年ですか、イギリスでは三年、一級、二級、特級という特級酒は、少なくともモルトなりグレーンが三年以上ということが法制化をされております。日本もかつてはされておったわけでございますが、洋酒がどんどん売れ出してからそれが取り外されてしまった。これもこの段階に来たら法制化を考慮すべきではないか、こういうふうに私は思いますが、公取と大蔵当局のお答えをいただきたい。
  58. 矢島錦一郎

    矢島政府委員 お答えいたします。  最初にウイスキーの表示の問題でございますが、ウイスキーの内容の表示につきましては、私どもで所管いたします酒団法、酒税の保全及び酒類業組合等に関する法律上の表示義務ではございませんので、業界が景表法、いわゆる不当景品類及び不当表示防止法というのの趣旨にかんがみまして、消費者の商品選択に役立ち、公正競争の秩序を維持するという必要上から、同法第十条の規定に基づいて公正競争規約を締結して表示するという方法と、全く任意に表示するということかあるいは全く任意に表示すべき事項というふうに考えるわけでございます。  それから、ウイスキー業界につきましては現在、公正競争規約を締結しようということで、規約の試案公正取引委員会に提出をして指導を受けておるわけでございまして、鋭意検討を進めておると聞いております。私どもといたしましても、消費者の商品選択にも資することでもございますし、公正取引秩序を維持するためにも、公正競争規約がなるべく早く実現するということが望ましいということで、早期の実現方につきまして同委員会の方にもお願いしておりますし、業界に対してもそういうような指導をしておるわけでございますが、どういうような表示をさせるかということにつきましては、やはり公正取引委員会判断するところでございますので、私どもとしては答弁は差し控えさしていただきたいというふうに思うわけでございます。  それから、貯蔵年数の問題でございますが、ウイスキーは、釈迦に説法でございますが、やはりたるに貯蔵しないと本来の香味が出てこないというふうに言われておりまして、貯蔵によりまして丸みと濃潤さが出てくるわけでございます。  その原酒の中には、香味成分の含有量の多いタイプのものと香味成分の少ないあっさりしたタイプのものと二種類ございまして、ウイスキーの品質の保持には、この二つを非常にうまい比率でブレンドするということが必要であるわけでございます。したがいまして、貯蔵期間というのは両者のタイプによって異なってくるわけでございまして、香気成分が多いものは長期間の貯蔵が必要であるということで、六、七年とかあるいは三年といったような貯蔵期間をやっているわけでございますが、あるいは場合によってはこれより長いものもあるわけでございます。(只松委員「最低を聞いている」と呼ぶ)最低につきましては、特に法律上の規定というのはございませんが、モルトにつきまして、出てすぐ実際に市場に出すということはあり得ないのではないかと考えております。香気成分の少ないものにつきましては、さっき申し上げましたように、これよりは短かい年限でございまして、通常は二、三年の貯蔵期間が適当というふうにされておるわけでございます。余り長く置きますと味がぼけるといったような問題もいろいろ出て、品質上の問題が出てくるというふうに言われております。  それから、イギリス、カナダでは三年以上といったような規制がございますし、アメリカにおきましては、コーンウイスキーは別でございますが、普通の場合には二年以上樫だるに貯蔵しなければならないということになっておるわけでございますが、貯蔵期間の条件、温度、湿度、それからたるの状況といったようなさまざまな要素が熟成に大きな影響を持つというふうに言われております。したがいまして、わが国のような気象条件では、二年以内のきわめて短期間のものでもウイスキー原酒としての品質を有することが可能でございます。また、米国のコーンウイスキーのように貯蔵を義務づけていないウイスキーもあるわけでございます。このような点から見まして、わが国におきましてウイスキー原酒の貯蔵期間を法定するということにつきましては、今後長期間かけてやはり業界状況も勘案しながら研究していくべき問題であろうかと思うわけでございまして、いま直ちにそれが必要であるとも思っていないわけでございます。
  59. 只松祐治

    只松委員 そうじゃないのですよ。きのう私が聞いた話では、きょうしぼりたてでも色づけたり何かして特級や何かにすることができるとウイスキー会社の人が言っているのですよ。ところが、さっきちょっと東駒の問題でやりましたけれども、特級のラベルを張っているだけで体刑を食うのですよ。時間がなくなってきましたが、ウイスキーの審査なんかだってほとんどしてないでしょう、酒の審査はやっているけれども。したがって、国民にこれだけ大衆性を持ってきたウイスキーについては、最低諸外国が行っているように二年なり三年なりにしなさい。いまは足りないから、しぼりたてにカラメルか何かで色をつけたり香辛料つけたりして特級に化けているのですよ。いいですか、そんな製造能力ないでしょう、後で寡占の問題を聞きますけれども。したがって国民のためには、そのラベルの張り方いかんによっては罰金や体刑を食うだけのシビアなものですから、ウイスキーの場合はそれが申告制度でほとんどなされておらない。したがって、せめて特級の場合は二年なり三年なりにしなさい、こういうことを言っているわけだから、それじゃ前向きに検討いたしますというくらいの答弁はちゃんとしておきなさい。
  60. 矢島錦一郎

    矢島政府委員 お答えいたします。  先生に反対の意見になりまして大変申しわけないのでございますが、先ほど来申し上げておりますように、やはり日本におきましては、そういうモルトとして長い間貯蔵するものとそうでないものと実際に混和してつくっておるわけでございまして、いま直ちにそういう方向で法制化するということについては、まだちょっと検討の余地があろうかと思うわけでございます。
  61. 只松祐治

    只松委員 それならば、私が言うようにこういうことを逆にしていけば、東駒や何かの事件というのは大変過酷であるというあれにもなってくるのですよ。等級が恣意的にやられている。  それはそれとしておきまして、公取に一緒にしますが、それからもう一つは、特級はモルトや何かが二三%以上、一級が一三%から二三%、二級が〇%から七%、こういうことになっているわけです。これもいま業界と話が進んでおるということであります。かつては特級が三〇%以上というようなことがありました。私は、やはりここで特級は三〇%、一級は二〇%、二級はゼロということじゃなくて少なくとも五%以上というようなものを目標にいたしましてするということで、このモルトなりあるいはグレーンなりの含有率を高めて、うまい酒といいますかいい酒をつくる、こういうふうに話し合いが進んでおるとも聞きますが、もう少し高めるように早く努力をしていただきたい、こういうように要望いたしておきますが、いかがですか。
  62. 長谷川古

    ○長谷川政府委員 お答えいたします。  私どもは、独禁法の立場から、消費者がなるべく正しい商品の選択をしていただくということから、不当表示の排除に努めておりますが、手段としまして、一つは、不当表示は取り締まる、もう一方では、それだけでは十分でないので、積極的に正しい表示をしていただくということで、公正競争規約をつくっていただきたいという意味の指導をしております。特に食品に関しましては、これは購入頻度の非常に多いものでございまして、国民生活に非常に関係のあるものでございますので、食品にはかなり重点を置いて公正競争規約をつくるように指導をしております。  残念なことながら、酒類につきましては若干おくれておりまして、ようやく清酒につきまして自主基準、まだ公正競争規約まで至っておりません自主基準ができた段階でございます。非常に中小企業の多い清酒につきまして自主基準ができておるのでございますので、比較的大メーカーの多いウイスキーについても、ぜひ早くつくっていただきたいということでかねてから指導してございます。  先ほど先生から御指摘ございましたように、昭和四十九年十二月に消費者連盟から要望が提出されまして、その後私どもからも、五十一年八月に正式に洋酒協会及び洋酒輸入協会に対しまして、ウイスキーの表示の適正化について公正競争規約をつくるようにという申し入れをいたしました。さらに五十二年十二月には、具体的な検討事項を示しまして、たとえばウイスキーの定義あるいは呼び方、原材料の表示、それから成熟年数等の表示基準、製造時期あるいは特定の用語の使い方につきまして検討するように申し入れをいたしまして、現在極力早くつくるように指導しております。  ただ御案内のように、これは業者のつくるものでございますので、われわれの方からこうしろと余り絶対的に強く強制するということはできませんで、その後業界からいろいろな仮試案が出てまいりました。私どもとしてもいろいろ検討しております。さらに今後もし確定的な試案が出てまいりましたら、消費者及び学識経験者の意見を聞きまして、なるべく公正な基準をつくりたいと思っております。  なお、モルトの表示につきましても、その際にどういうふうにやるべきか、一般消費者及び関連学識経験者の意見を伺って適正なる基準をつくりたいと思っております。
  63. 矢島錦一郎

    矢島政府委員 先生御質問の原油の混和率の問題でございますが、現在の油税法の施行令によりますと、現行規定では、ウイスキーの特級は、アルコール分総量のうちウイスキー原油のアルコール分は二三%以上、いわばウイスキー原酒の混和率が二三%ちょっとということになっております。ウイスキー一級につきましては、ウイスキー原酒の混和率が一三%以上二三%未満、二級につきましては、ウイスキー特級、一級に該当しないものということでございますが、実際上は国税庁の運用によりまして、二級につきましても混和率が七%未満のものは製造を承認しないということでやっておるわけでございます。  ところで、ウイスキーにつきましては、国際競争力との関係もございまして、品質の向上と多様化を図るということも必要であろうということで、現在酒税法の施行令で定めますウイスキー原酒の混和率をどうするかということについて検討をしているところでございまして、今回御提案申し上げております酒税法改正機会にそこを改正できればというふうに考えておるわけでございます。
  64. 只松祐治

    只松委員 抽象的なことばかり言わないで、大体何%を目標にしているぐらいのお答えをしてください。
  65. 矢島錦一郎

    矢島政府委員 先生先ほど三〇%というお話がございましたのですが、いろいろ業界とも折衝しておりまして、まだ結論が出ておりませんので、確たる数字については御容赦いただきたいと思うのでございますが、一挙に特級の混和率を三〇%に引き上げるというところまでは、あるいは先生の御期待どおりいかないかもしれませんが、そういう先生の御質問の趣旨も踏まえまして、業界意見も参考にいたしまして、ますます品質の向上を図っていきたいというふうに考えておるわけでございます。
  66. 只松祐治

    只松委員 どうも歯切れが悪いから私の方からお教えしますが、業界ではすでに持ち回りというか、話が進んでおりまして、特級で二六、七%、一級で一五、六%、それ以上やろうということでほぼ——だから私は、もう少しハッパをかけて三〇%という目標にしなさい、こういうことを言っておるわけなんです。だから、一定の話はあなたたちの耳にも入っているわけですから、いまこういうときですから、国民はみんな飲んでいるわけですから、明らかにして、こういうふうにしますということを明確に言っていく。それで大体間違いないですか。間違いなければほかの質問に移りますから、答弁いいですよ。
  67. 矢島錦一郎

    矢島政府委員 いま先生のおっしゃいましたような線で業界の話し合いが進んでいるところでございます。
  68. 只松祐治

    只松委員 それから、これは後先になって、本当はこれを論じてから東駒の問題を論ずるところだったのですが、時間がないからですが、酒の場合はわりと厳しい検査が行われております。ウイスキーの場合はほとんどない。いわば見込み申告制度というものがとられておりまして、業界が申告したらそのまま大体特級、一級、二級というものが認められる、こういうことになっている。しかも先ほど申しますように、特級の中に千円ぐらいから五万円ぐらいまである、こういうことになっている。この決め方がいわば非常にずさんである。洋酒の輸入に至っては、これもまたどういうふうに判定するか、検査するかということも実際上はほとんど行われておらない、これが業界の実態であるわけでございます。酒だけがそういうふうに特級や一級、二級の表示の仕方によって罰金や体刑を食う、もっと大衆化をしてまいりました洋酒業界においてはそういうものがほとんどなされておらないというのも、これまた大変な手落ちであるわけでございます。したがって、この審査制度につきましても私はひとつ再検討するというお答えをいただいておきたいと思います。  それから、公取も関係いたしますが、サントリーは御承知のように、ウイスキーの七〇%以上を寡占をいたしておりまして、特級はさらにその七〇%、オールドは九〇%を占有をいたしておるわけでございます。こういうのは、一社で二分の一、三社で七〇%あるいは高利潤——高利潤ということになりますと、サントリーは経常利益で昨年度二百八十億、税引き利益でも九十四億円、こういう非常に高い利益を出しております。これは完全に独禁法に違反をしておるわけでございます。これの指導をなさったことがあるか、あるいは今後どういうふうにこれに対処するつもりであるか、ひとつあわせてお答えをいただきたいと思います。
  69. 矢島錦一郎

    矢島政府委員 輸入酒の問題でございますが、輸入酒につきましては、いろいろ級別の問題もございますが、特に外国からの証明といいますか、そういうものがない限りは特級ということに認定しております。  級別の問題につきましては、先生のような御高説もあろうかと思いますが、清酒と違いまして、ウイスキーの場合には、やはり原酒がどの程度入っているかということが品質上非常にメルクマールとして大きい要素を占めておるわけでございます。そういうことによりまして、単なる官能ということではなくて、むしろ度数とかそれから原酒の混和率ということによって級別を決めておるわけでございます。
  70. 妹尾明

    ○妹尾(明)政府委員 お答えいたします。  高度の寡占によりまして競争状態に問題がある業界に対する対策といたしまして、昨年独占禁止法の改正が行われまして、第八条の四といたしまして、第一位の事業者の占拠率が五〇%を超える、あるいは上位の二社の占拠率があわせまして七五%を超える、こういうふうな高い寡占状態にある業界におきまして、価格が、たとえば需給関係の変動であるとかあるいはコストの変動であるとか、こういった関係に対して非常に硬直的である、あるいは利益が、製造業の場合でございますと、標準的な利益に比べまして特に高い、こういうふうな、これだけではございませんけれども、弊害があるような業種におきましては、公正取引委員会が競争状態を改善するための措置を命ずることができる、こういう規定が設けられたわけでございます。  ウイスキーにつきましては、実は昨年十一月にこの規定の運用のためのガイドラインということで発表したわけでございますが、その中に、その時点におきましての資料に基づきまして、特に占拠率が高いという品目を二十六ばかり、このすべてが該当するというわけではございませんけれども、挙げまして、これらを中心に今後調査を進めていくということになっておりまして、現在正確な市場占拠率を調査しておるところでございますけれども、先生の御指摘のように、仮に七〇%、上位のものが超えるという状態でございますと、市場占拠率におきましてはこれに当たるということでございまして、こういうふうな高度の寡占の状態の業種につきましては、私どもとしましては、先ほど申し上げました市場の弊害の要件につきまして今後十分調査し、監視していく、こういうことにいたしております。
  71. 只松祐治

    只松委員 時間が来ましたからやめますが、私は値段だけに限定して、このウイスキーの虚偽の実態というものを国民の前に若干明らかにいたしました。もっと調べておるのですが、余りこれを全部出しますと、せっかく国民が飲んでおる酒もまずくなるだろうと思って、知っておること全部は言わないし、オブラートに包んで言ったわけでございます。きょうウイスキーの中でモルトなりグレーンの混和率を引き上げるということですから、速やかにしてもらえば、これは若干国民はうまいウイスキーが飲める、こういうことになりますから、私も多少は控えて物を言ったわけですから、皆さん方もそういう点は十分心得て努力をしてもらいたい。国民が、税金のことはほとんど触れませんでしたが、非常に高くなってきた、税金と水とアルコールに色をつけたウイスキーだ、こういうものを飲まされたのではかなわないわけでございまして、ぜひひとつ努力をされますよう要望をいたしまして、私の質問を終わります。
  72. 大村襄治

  73. 野田毅

    野田(毅)委員 時間の関係もございますので、一つだけ大臣にお答えを願いたいと思うわけですが、その前提として、御承知のとおり前回大変な大騒ぎの中で酒税増税をやったわけでございます。その後、第二次近代化計画清酒製造業業界において並行的に進める中で、すでに御承知のとおり二百二十を超える業者がやはり転廃業のやむなきに至っておる。さらにまた、最近御承知のとおりの大変な急激な円高の状況により、いわば競争相手であるビール、ウイスキーなどはその原料において、先ほど来も若干御指摘があったようでございますが、いわば円高メリットを受ける立場にある。それに反して清酒製造業の方は、もちろんわれわれの進めております農政との関係もございまして、円高メリットというものは一切ない、逆に非常に厳しい原料状況にあるということは、百も承知のとおりだと思います。そうした中で、今回の酒税増税を企画されましたときよりもさらに、そういった環境から考えれば悪い環境に立ち至っておるわけであります。  そこで今回、この酒税増税と同時に、清酒製造業の安定に関する特別措置法改正をお考えになり、中央会に対して五億円の補助金を交付して、そして中央会を通じて第三次の近代化計画を推し進めよう、こういうお考えでありますが、これはまことに結構なことだと思います。  ただ、心配なのは、まず第一にその中央会の事業がその原資といたしております信用保証基金の運用益、これが今回の金利の低下によって果たして当初期待された額どおりのものが出てくるのかどうか、あるいはまた当初考えておった以上に転廃業というような事態が発生をして予定額をオーバーしてしまう、あるいは運用する原資そのものが焦げついてしまう可能性も予想できないではない、こういう状態になっておるわけでございます。そうした中で、一方でそういう給付金の原資を運用益と同時に残存業者、存続する業者から同額を負担させる、こういう形になっておるのでありますが、いまのような状況あるいは今後予想される状況から考えて、とても従来どおりのフィフティー・フィフティーで補てんするということは期待できないのではないか。まだ現実にそういう状態が発生しておるわけではありませんけれども、今後において十分予想される事態である。  そうした事態において大蔵省は、業界の監督といいますか育成というものは国税庁で片一方やり、そしてまた予算は主計局がつけるわけであります。また主税局の方は酒税を企画立案されて、まさに清酒はすべて大蔵大臣が握っておられるわけであります。決して増税ということだけでなくて、やはりそういった民族産業の育成ということもあわせて考えていただかなければならぬわけでございます。そういった意味で、今後そういった私が申し上げた厳しい事態が発生したような場合には、大蔵大臣としてはぜひとも予算措置をしっかりと前向きで善処したい、こういう御答弁をいただきたいわけでございます。
  74. 村山達雄

    村山国務大臣 野田委員清酒業界の実情にはよく通暁されておるのでごいますが、われわれも基本的認識において全く同様でございます。  第一に、日本の清酒業界は三千以上ございまして、嗜好の変化とそれから原料高という両方のことから言いまして、非常に一種の過当競争が行われておるわけでございます。私の承知しておる限りでは、利益が年間五十万以下、欠損を含めましてそれがほとんど業者数の半分に及んでおる。毎年、毎年、やはり米の価格は、助成があるにもかかわらず高くなっておるのもまた事実でございます。そういう意味で、同じ酒税という増税機会が今度ありましても、本当の意味の実質的な負担の公平という意味から、今回日本酒とその他について差を設けたのもそこの理由にあるわけでございます。そしてまた、これは食管制度あるいは米の消費拡大と大きなかかわり合いのある問題であるわけでございます。大蔵省におきましてもそういう意味で、できるだけ日本酒が多くの人に好まれるように米をよけい使った個性のある酒をつくったらどうかというようなことでいろいろ指導しているのでございます。  こういった全体的背景を控えまして、今度第三次の構造改善計画を実施いたしまして、とりあえず政府の方から五億の補助金を出したのでございます。これはまだことしだけの話ではなくて、今後何年間にわたる問題でございまして、この補助金でさしあたりは間に合うのではないかと思いますが、仰せのごとく金利低下している状況でもございますので、今後情勢を見まして必要と見られた場合には十分な助成措置を講じてまいりたい、かように考えておるところでございます。
  75. 大村襄治

  76. 小泉純一郎

    ○小泉委員 私は、今回の酒税法案に対して、財政事情というよりも、人間社会に非常にいま液というものが深く入り込んでいる、そういう面から、質問なりまた意見を申し上げたいと思います。  まず最初に、大臣、酒はお好きですか、そして毎日どのぐらいを召し上がるか教えていただきたい。
  77. 村山達雄

    村山国務大臣 どうも酒の方は幸か不幸か好きな方でございます。このごろは大分酒量が落ちました。
  78. 小泉純一郎

    ○小泉委員 古来から酒というものに対して、人によってすごい見方が違っております。ある人は酒は百薬の長である、またある人は気違い水だと、非常に極端に分かれておりますが、酒というものに対して大臣はどういう感じを持っておられるか、率直に個人的な感想をお聞かせいただきたいと思います。
  79. 村山達雄

    村山国務大臣 私は、気分転換、それからストレス解消だろうと思っております。しかし、若いときに余り飲み過ぎるとよくないんじゃないか、やはりほどほどにした方がいいと、わが身に引き比べていま思い出しておるところでございます。
  80. 小泉純一郎

    ○小泉委員 それでは、財政当局として常に税金をかけているわけでありますが、イギリスなどでは毎年税率を上げている、日本もつい五十年ですか上げて、今回また上げなければならない。財政当局として酒というものをどういうふうにとらえているか、お聞かせいただきたいと思います。
  81. 大倉眞隆

    大倉政府委員 私も個人的には非常なヘビースモーカーであり、非常な酒飲みでございますが、やはりこういう時期には、特殊な嗜好品でございます酒あるいはたばこというものには、それなりの負担国民の会費として負担していただきたいというふうに、いわば私の立場からは財政物資という角度で酒をながめております。
  82. 小泉純一郎

    ○小泉委員 財政当局としては当然予想される答えでありますが、私はやっぱり最近の酒の消費量の増加、またこれの及ぼす影響というものは無視できないと思うのであります。  そこで、欧米では非常にアル中が多い、日本もますますふえつつあるということでありますが、きょうは厚生省に来ていただいておりますが、アル中という定義はわかりやすく言うとどういうことなんでしょうか。
  83. 目黒克己

    ○目黒説明員 お答えいたします。  ただいまのアルコール中毒の定義は大変むずかしゅうございまして、学者の間等ではこのように考えておるわけでございます。  すなわち、多量の飲酒を長期間にわたって、たとえば日本酒でございますれば、毎日四、五合以上飲んで十年間以上飲む、そういうふうなことのために起こってくるというふうに言われているわけでございます。その結果、酒を飲むのをやめますと、飲まずにはいられないわけでございますが、それをやめますと幻覚が出たりけいれん発作あるいは意識がなくなる、あるいは手がふるえるといったような精神身体症状を含んだいわゆる禁断症状といったようなものを伴ってくるものというふうに言われておるわけでございます。  したがいまして、単なる常習の、常に晩酌程度の酒を飲んでおられる普通の飲酒をされておる人と区別をしているわけでございます。
  84. 小泉純一郎

    ○小泉委員 いま大体日本酒にして毎日四、五合を十年間飲むとアル中になると言いますが、酒というのは人によって、わずか飲んだだけでも酔っぱらう人もいるし、ちょっとしか飲まないという人でも一升ぐらい飲む人もいるし、すぐ顔に出る人と全然出ない人と、人によって非常に違うと思うのですね。そこでいま言った、だれでも毎日日本酒にして四、五合ぐらいのアルコール量を飲めば、しかも十年続ければアル中になるというのは定説なんですか。
  85. 目黒克己

    ○目黒説明員 もちろん個人差がございますので、最近特にウイスキー等非常に強い酒を飲用いたします場合には、あるいはそれ以前の、十年という年月を経ずしていわゆるアルコール中毒の症状になる者もある、これは御指摘のとおり個人差があると言われておるわけでございます。
  86. 小泉純一郎

    ○小泉委員 いまアル中の一応の定義を伺ったわけですが、それじゃ日本では、いまどのぐらいの飲酒人口があって、さらに、俗に言うアルコール症の人、まあアル中予備軍といいますか、危険大量飲酒者というのですか、そういう数はどういうふうに把握しておられるでしょうか。
  87. 目黒克己

    ○目黒説明員 各種の調査研究等によりますれば、二十歳以上の飲酒人口は約五千百六十万人とされておるわけでございます。性別で申し上げますと、男子が成年男子の約九〇%、約三千三百六十万人、女子は一千八百万人、女子の約四五%、これが飲酒人口というふうにされているわけでございます。  その中で、大量のお酒を飲むいわゆるアル中の予備軍と称せられるような者については、百五十四万人というふうにされているわけでございます。また、肝硬変等肝臓障害を起こす者については八万四千七百人ばかり、それからいわゆるアルコール中毒症、アルコール症、アルコール中毒とされております者は現在一万六千七百人という数字が出ているわけでございます。
  88. 小泉純一郎

    ○小泉委員 酒というのは、われわれもそうでありますが、私も個人的に言えば、酔っぱらいはきらいですけれども酒は大好きです。それでだれでも、ここにおられる議員の方々は選挙区ではもう必ず酒席で、みずから好まない人に対してもいろいろな相手をしなければならない。また、酔っぱらいに対して大変いやな気持ちを持たれた経験と同時に、自分も酒の上で何らかの失敗を犯した経験がだれでもあると思うのです。ああ酒飲んで二日酔い、次はやめるぞと思っていながらまたすぐ二日酔いしてしまう。そして、自分も相手に対して迷惑をかけたかもしれない、そういう経験がある。同時に他人からも、いやな思いをした経験はだれでもあると思うのでありますが、そういう面において、酒の税というものに対しては、これからは取るということだけでなくて、その及ぼす影響というものに対して十分な対策を考えるべき時期に来ていると思うのでありますが、参考までに、いま非常に車でも飲酒運転の事故が多いと思うのであります。それで、飲酒運転による検挙数とその飲酒運転の事故数、大体交通事犯でどのような位置に属しているんでしょうか、警察庁からお聞かせいただきたいと思います。
  89. 広谷干城

    ○広谷説明員 お答えいたします。  最近の三年間ばかりの統計を申し上げますと、まず飲酒運転の検挙状況でございますけれども昭和五十年は二十九万二百五十件、全体の違反の中で占めるパーセンテージは二・九%でございます。昭和五十一年は二十九万四千九百八十二件で、二・五%の率でございます。昨年、昭和五十二年中は三十六万四千五百九十八件検挙いたしておりまして、全体の違反の中で二・九%占めております。  なお、交通事故の問題でございますけれども、飲酒運転の結果事故を起こしたものといたしましては、昭和五十年中一万七千四百九十二件ございまして、全体の中で占める比率は三・八%でございます。同様に、五十一年は一万七千二百九十九件、三・七%、五十二年は一万五千二十四件、三・四%となっております。  なお、ただいま申し上げましたのは人身事故全体でございますけれども、死亡事故について見てみますと、昭和五十年中千九件発生しておりまして、全体の死亡事故の中に占める比率は九・九%、五十一年は千五十三件で一一・五%、昨年、五十二年中は八百六十五件で一〇・二%、かようになっております。
  90. 小泉純一郎

    ○小泉委員 そうすると、飲酒運転による事故というのは、スピード違反とかいろいろあると思いますけれども、原因では何位くらいなんですか。
  91. 広谷干城

    ○広谷説明員 死亡事故について見ますと、第三位の原因となっております。
  92. 小泉純一郎

    ○小泉委員 こういうふうに見ても、これは酒を飲んで人に迷惑を及ぼす典型的な例でありますが、死亡事故に至らしめてしまう。     〔委員長退席、綿貫委員長代理着席〕  われわれも経験がありますが、国鉄などで車内で酔っぱらってわめく程度ならまだいいのですけれども、そばに寄ってきていろいろ絡まれる、あるいはへどを吐かれたり非常な迷惑を受ける人たちがたくさんおりますし、つい最近、酒を飲んで危うく政治生命までなくなってしまうようなこともなきにしもあらず、非常に注意しなければならないのですが、ホームとか車内のそういう酔っぱらいを非常に迷惑だと思っている方がたくさんおるわけです。  それで、そういう人に対して、これはもう明らかに泥酔している、これは人に迷惑をかけると改札口などでわかっていても、いまの法律では改札を拒否するとか乗車を拒否するというような権限は国鉄当局に与えられていないのでしょうか。
  93. 猪俣爲久

    ○猪俣説明員 お答えいたします。  鉄道営業法及びそれを受けました鉄道運輸規程によりますと、明らかに他人に危害を加える所作に及ぶ行為が予見され、あるいはある場合には乗車を拒否できるという解釈ができるとわれわれとしては理解しておるわけでございますが、御承知のように、大ぜいのお客様をお相手いたしておりますので、お酒を召したお客様でございましても、明らかにかつ差し迫った状況で他人に危害を及ぼすというふうなことが認められませんと、改札をお通ししないということがなかなかできない状態でございまして、鉄道公安官あるいは駅職員等によりまして、非常に泥酔されましたお客様に対しては御注意申し上げるとかいう形で対処しておる状況でございます。
  94. 小泉純一郎

    ○小泉委員 他人に迷惑をかけないということは、だれでも心に銘記しなければならないことだと思うのであります。自由についても責任が伴う、自分の好んだことをやるについても、それが相手に迷惑をかけないというのは市民としての当然の義務であると思うのであります。  最近よく嫌煙権というのが話題になっております。たばこが人に迷惑を及ぼすから禁煙車をつくれとか、あるいは嫌煙権を確立する会というものができまして、これはかなりの共鳴者を得ている。そういうことから考えますと、当然嫌酔権というのでしょうか、酔っぱらうのをきらう権利があってもいいというようなことが最近の新聞に出ておりました。嫌煙権というものがあるのだったら、酔っぱらいで迷惑を受ける人のことも考えてくれという人が出るのはあたりまえだと私は思います。同時に、嫌酔権というのがあれば酔うのを好む権利もあっていいと私は思います。しかし、先ほど申しましたように、あくまでも他人に迷惑をかけないという前提で何事も処理されなければいけない。事実、忘年会、新年会の時期を問わず、車内で酔っぱらいで迷惑を受けて何とかしてくれないかという人が実に多くいます。それに対してきちんと国鉄の職員なりが、乗ってはいけないとか、さめるまで待てとか、いま何らかの権限は与えられていないのでしょうか。警察官ならばそれができるのでしょうが、もし国鉄職員にできないのだったら、何らかのそういう措置を考える必要があると思うのでありますが、現実はどうなんでしょうか。
  95. 猪俣爲久

    ○猪俣説明員 お答えいたします。  先ほど申し上げましたように、現行の法規の解釈からは、鉄道職員にはそういう権限が与えられておるというふうに理解しておりますけれども、それも運用と申しましょうか、実際面におきましては、やはりたくさんのお客様に御利用いただいておるわけでございまして、その場で明らかに非常に危険な事態が生じておるというふうなことがわかりませんと、乗車をお断りすることがなかなかできかねるというのが実態でございます。
  96. 小泉純一郎

    ○小泉委員 いまの答弁を伺っても、まあいろいろ専門家に言わせても、日本人というのは酒に対して非常に寛容な民族だと言っております。酒を飲んだ上の過ちというのは罪一等が減ぜられるということでありましょうが、特に取り締まる側についても、酒を飲んでいる人に対して厳しくやると、あいつ人情がないじゃないかというようなことで、非常にむずかしい面があると思うのであります。  しかし、そういうことで酔っぱらって人に迷惑をかけている人と迷惑を受けている人を同列に扱うというのも、これまたどうかと思うのでありますが、常識的に、大臣はこの問題をどういうふうに感じられるでしょうか。
  97. 村山達雄

    村山国務大臣 酔っぱらって余り人に迷惑をかけることは慎まねばならぬと思うのでございます。だんだん見ておりますと、私たちが若いときから見ますと、いまの青年はその辺はずいぶん心得てきているのじゃないかなと、何か時代の進歩が感じられるような気がするわけでございます。そういう意味で、ずいぶん世の中は変わってきておる、こんな感じがしております。
  98. 小泉純一郎

    ○小泉委員 私がどうしてきょうこういう問題を論議するかと言いますと、実を言いますと、昭和五十一年の予算編成の際に、断酒会の幹部の方々や実際アル中患者を扱っている国立久里浜病院の河野博士等からいろいろ陳情を受けました。何とかアル中対策をいまから真剣に考えないと日本も大変なことになるということで、五十一年度予算編成の際に、当時の松野頼三自民党政調会長ともども国立アルコール症センターとして久里浜病院を整備するための予算化に努力した一人であります。それ以来、私のところにも予算編成のたびに、何とかもっとアルコール対策の充実を図ってくれという陳情が来るわけであります。そして、特に最近ではその数もますますふえつつある。  そこで、今回は酒税法審議でありますが、酒に関して酒税法のほかにどういう法があるか、ちょっと教えていただきたいと思うのであります。
  99. 大倉眞隆

    大倉政府委員 私どもの調べました限りでお答えいたします。  まず、未成年者飲酒禁止法がございます。これは、未成年者は酒を飲んではいけない、また、未成年者に酒を売ってはいけないという規定でございます。  それから、酒に酔って公衆に迷惑をかける行為の防止等に関する法律というのがございます。これはただいまの小泉委員の御主張を法制化したような法律でございまして、一条では、云々と書きまして、「過度の飲酒が個人的及び社会的に及ぼす害悪を防止し、もって公共の福祉に寄与することを目的とする。」ということで、現行法制では、過度の飲酒は個人的及び社会的に害悪を及ぼすことがあるということをはっきりうたっている法律でございます。第二条では、「すべて国民は、飲酒を強要する等の悪習を排除し、飲酒についての節度を保つように努めなければならない。」という精神規定も置かれております。これは酩酊者の行為を規制し、あるいは救護を要する酩酊者を保護するということで、過度の飲酒による害悪を防止しようという法律でございます。  それから、先ほど御質問の中にございました道路交通法では、酒気を帯びての運転を禁止する規定、あるいは運転者に対する酒類の提供の禁止という規定があります。  それから、営業取り締まりの関係では風俗営業等取締法がございます。  それから、警察官が泥酔者を保護しなければならないという義務規定が、警察官職務執行法の中に盛られております。  それから、精神衛生法では、精神障害者、これに中毒性精神病者を含むということで、先ほどの厚生省の答弁で厚生省が所管しておられるのだと思いますが、これの医療、保護を行い、かつ発生予防に努めるという規定がございます。
  100. 小泉純一郎

    ○小泉委員 いまの答弁でもわかりますように、わが国では酒の個々の問題を取り締まる法律はかなりありますが、総合的なアルコール問題対策としての対処は非常に不十分であると私は思うのであります。  最近ますます余暇がふえてきます。また、週休二日制という問題もある。休みがふえて、さらに酒を飲んでいたんじゃどうにもならぬわけでありますが、現在ますますアルコール消費量がふえてくる。しかもそれが未成年者にも広がり、女性にも広がる。女性の飲酒というのは胎児に非常な悪影響を与えるということは明らかでありますし、いままでだったら、アル中イコールろくでなしという感じがあったのでありますが、最近はそうではない、かなりのエリート、中堅管理職、社会的にはりっぱな地位を得ている方でもアル中が徐々に出始めているというか、現にある。こういう事態に対して厚生省としては、このようなアルコール対策として現在はどのような対策をなされているか、また今後どういうような展望を持っておられるのでしょうか。
  101. 目黒克己

    ○目黒説明員 お答えいたします。  アルコール中毒の増加というものに対処するために、従来から私どもの方といたしましては、酒害予防に関する啓蒙普及といったような思想普及の努力をいたしてきたわけでございますが、また、先生御指摘のとおり五十一年度以来各種の対策をしたわけでございますが、五十三年度におきましては、さらに、アルコール中毒の治療の専門の臨床医の研修、それから、アルコール中毒者の社会復帰を促進するために断酒会等の民間団体への助成、あるいはアルコール中毒に関する研究費等を総計約二千万ばかり計上いたしているわけでございます。  また、今後さらにこの対策を進めてまいるわけでございますが、一般的に申し上げまして、飲酒というもの自体は、先ほど来御論議いただいておりますように、国民の嗜好、風俗、習慣、文化あるいは社会といったようなものと密接な関係がございますし、また常識の問題であるというふうにも考えているわけでございます。  また従来、欧米での経験で、禁酒あるいは非常に制限をするといったような経験を考えてみましても、アルコール中毒の防止ということについてはかなり積極的に取り組まなければいけないと同時に、この飲酒ということについては相当慎重に行っていく必要があるということで、酒を飲むということに対する対策と、それから酒害防止という対策とを分けて慎重に考えてまいりたいというふうに考えておるわけでございます。  なお、ただいま申し上げました予防については、特に民間団体の育成とか、あるいは地域精神衛生活動の増強といったようなことを総合的に推進してまいりたいというふうに考えておるわけでございます。
  102. 小泉純一郎

    ○小泉委員 考えてみれば、酒というのは非常に不思議なものですし、私は、このような論議というものを、酒を禁止しろなんということは考えてもいませんし、禁止すべきものではないと思っています。私自身も酒が好きですし、酒は飲んでものまれるな、そういう観点から質問しているわけでありますが、考えてみますと、断酒会の人たちというのは、ある面では非常に弱い人でありますが、同時にまた、すごく強い人でもあると思うのであります。一度酒におぼれてアルコール中毒みたいになった、それをみずからの克己心といいますか、自制心によって酒を断って再び社会に復帰している、弱さと強さ、両方兼ね備えている。人間、当然両面あるわけでありますが、一たび地獄のような苦しみから立ち直って、さらに今度は、そういうような危険に、あるいは病気に陥る人をみずから助けようと努力している。私はそういう意味から、断酒会の活動に対して政府はもっと温かい手を差し伸べてしかるべきだと思うのでありますが、今回の酒税法案で、財政当局として酒に対してどういう基準で税率をかけているのでしょうか、その背景なりを教えていただきたいと思うのであります。
  103. 大倉眞隆

    大倉政府委員 御質問の御趣旨から推測いたしますと、御質問の流れからして、やはりアルコール度の高い種類については高い税率をかけるという思想が出てくる、今回の改正がぴたりとそういう思想になっておるかということであろうかと思います。  現在の酒税税率構造を吟味いたしてみますと、同じ種類——酒数という言葉とちょっとごちゃごちゃしますが、同じ種類の酒の中ではアルコール度が高ければ負担が高いという考え方がかなり貫かれておると思います。ただ違う種類の相互間につきましては、アルコール度だけで判断をしていないで、やはりどういう場合に飲まれておるかとか、いままでの長年の経緯、百年以上の歴史の中で洋酒、ビールそれからワイン、日本酒というものがそれぞれ相対的にどういう価格で動いてきたかとかというようなことを反映させた構造になっているように思います。したがいまして、繰り返しになりますが、同じ種類の中ではアルコール度が高いものが負担が高いという観念はかなりうかがい取れるのではないかと思います。
  104. 小泉純一郎

    ○小泉委員 私がこういうふうな質問をしたのは、主税局長答弁されたように、今後この酒の税率考えていく場合に、できるだけアルコールの度数の高いものに低いものよりもより高率の税をかけるような方法検討されてしかるべきだと思うのでありますが、今回そういう観点から当てはめてみますと、しょうちゅうが不当に安く——不当といいますか、しょうちゅうの方がかなり安くて、ビールの方がかなり高いということになっております。そういうことを考えますと、これからいま言ったようなアルコール度数の高いものにより高率の税をかけるという考え方は、どういうふうに評価されておりますでしょうか。
  105. 大倉眞隆

    大倉政府委員 先ほど申し上げましたように、一つのアングルとしていまの酒税法の中に取り入れられておるというふうに私考えますが、同時に、その違う種類間の負担のバランスを考えますときには、それ以外の要素がかなり大きく作用しておると申し上げざるを得ないかと思います。  それは、時間の関係でごく簡略に申し上げますが、たとえばビールというものに対してどの程度負担を求めるかという場合に、やはり日本でのビールの飲まれ方と、それからヨーロッパ、たとえばフランス、ベルギーでのビールの飲まれ方というのとはおのずから違うというふうに判断されておりますし、長年日本でのビールというのは、かなり高級な場所で消費されるという実態をも踏まえる。同時にまた、これはその決め手ではございませんけれども、メーカーに清酒のように中小企業が圧倒的に多い種類の酒と、大企業が現実に全部つくっておるという酒というような観点もある。いろいろな情勢を考えながら、しかも多年の経緯を踏まえた構造になっておりますので、一挙に全部の種類についてアルコール度数だけで割り切って物を考えるというような抜本的改革というのは、これは言うべくしてむずかしいと思います。ただ、先ほど申し上げましたように、同じ種類の酒の中では、やはりアルコール度の高いものはそれなりに負担が高いという角度は今後も尊重してまいりたいと思います。
  106. 小泉純一郎

    ○小泉委員 最近ある地区で、酒の小売店同士で非常に安売り競争が出てきている。酒の販売は免許制度でありますけれども、免許基準に合えば何でも許可をしちゃうというのでは、酒の小売店をしている人の生活も大変な影響を受けるし、酒税保全の観点からもいろいろ問題が出てくると思うのでありますが、現在の酒の免許制度、その運用について、いまいろいろな安売り競争も考える、いろいろな配慮を考えて、何らかの再検討が必要であるかどうか、その辺は国税庁、どういうふうに判断しておられますか。
  107. 矢島錦一郎

    矢島政府委員 まず、お酒について安売りが行われているという点でございますが、お酒につきましては自由価格でございますので、個々の自主的な判断でお酒屋さんが自由に価格を設定できるということになっておるわけでございますが、しかし、私どもといたしましては原則的には、その決定される小売価格というのは、実質的な仕入れ価格に販売経費と適正なマージンを加えたものとすべきであるというような考え方に立ちまして、その範囲で各小売業者が自主的な判断によってその販売価格を決定するように、業界会議等の機会を通じて啓蒙的な指導を行っておるわけでございまして、こういうような価格の下がるような極端なものにつきましては、やはり採算を考慮いたしました合理的な価格に改定するように指導するということにしておるわけでございます。  それから免許の問題でございますが、御案内のように免許につきましては、かなり古いときにできました酒瓶の小売業の免許基準というのがございまして、これに基づきまして、距離的な基準、人的な基準、需給調整上の基準ということによりまして、税務署の方におきまして申請を受けました場合に個々に判断して決めるということをやっておるわけでございます。
  108. 小泉純一郎

    ○小泉委員 酒はやはり普通の物品とは少しく区別して考えてもいいと思うのであります。ただ自由競争で安ければ安いほどいいということでもないですし、また、そういう免許の許可をする際にも、十分な地元との協議等、運用面で正しい指導をぜひともしていただきたいと思うのであります。  それと、ことしの税収でも酒というのは、法人税、所得税に次いで一番高い税収を見込んでいる項目だと思うのであります。大体五十年が一兆円を超えておる、一兆三千百億円ですか、五十一年が一兆七千百億円、五十二年が一兆五千八百億円。五十三年度は値上げ分も見込んで全体としてどのぐらいを期待しているんでしょうか。
  109. 大倉眞隆

    大倉政府委員 五十三年度酒税の収入見込み額は一兆四千百六十億でございますが、この中に、いま御審議をお願いしております増収分と、さらに、先般当委員会で御審議を願いました国税収納金整理資金法の一部改正によります五月取り込み分が約八百七十億円含まれております。
  110. 小泉純一郎

    ○小泉委員 いずれにしても、いまの答弁でもわかるように、一兆円を超える大変な税収を期待しているわけであります。しかし、アルコール中毒対策としてどのぐらいの金が使われておるか。これには五十三年度予算でもわずか二千万円しか使われてないのです。大蔵省として、税金を取ることばかり考えるんじゃなくて、当然酒を飲むことによって及ぼす影響というものをやはり考えなければいけないと思うのであります。一兆円の二万分の一にもなってない。五万分の一以下ですか、二千万円だというと。現にアルコールというのは、アルコール中毒、アルコール症と言いますが、アルコール症というのは、単に患者自身が精神的、肉体的障害をこうむるだけではなくて、離婚やら、あるいは交通事故、労働災害、犯罪、はかり知れない深刻な影響を広範な社会的な広がりをもって与えているわけであります。  そういうことから考えると、いま日本のアルコール中毒対策、あるいはアルコール乱用予防対策というのはきわめて不十分だと言わざるを得ないと思うのであります。現に一九七三年にアメリカの上院で出されましたヒューズ法案というものを見ますと、いわゆる問題飲酒というのは、国民経済に対し、労働時間の損失、医療及び公共扶助に関する支出、並びに警察、裁判所経費に最小限度一カ年百五十億ドルの負担を課していると言っておるわけです。一九七三年で百五十億ドルであります。日本円に直すと三兆円を越える莫大な費用を課しておる。しかも年々の状況を見ますと、日本もアメリカやフランス、イギリス並みにだんだんアル中患者はふえている。しかも各世代、男女の差別なくそれが広がっておるというわけです。この不幸にしてアル中になってしまった人に対して救済策はもちろんでありますが、また、それを未然に防ぐ策というものをいまからわれわれは考えていかなければいけないと思うわけであります。国民の健康づくりも含めてです。  そういう面において私は、もっとアルコール症対策というものに対していまから——いずれなるということはわかっておるのです。社会的損失というものを未然に防ぐためにも十分な措置をとるべきだと思うのでありますが、この場合私は、なおも酒の目的税をやれというのではないのです。酒でこれだけの莫大な収入を上げている。しかも政府は、税金を上げるためにも飲んでくださいと奨励している。そういう事情があるわけですから、もっとアルコール対策に対して広範な総合的な対策が必要だと思うのでありますが、大臣はどういうふうに考えておられるでしょうか。
  111. 村山達雄

    村山国務大臣 酒を飲む側でも、またその及ぼす影響もきわめて広範な問題で、人類始まって以来酒の問題はつきまとっているわけでございますが、ただいま小泉委員は、広範な角度からその予防の措置の必要性を強調されたところでございまして、考え方におきましては全く同じ考え方でございます。したがいまして、今後それぞれの所管省とも十分協議をいたしまして、必要とする予算措置は十分に講じてまいりたい、かように考えておるわけでございます。
  112. 小泉純一郎

    ○小泉委員 大臣に非常に前向きの答弁をしていただいたわけでありますが、いまいろいろな答弁でもわかりますように、酒の及ぼす影響というのは、単に一省庁にとどまらない、非常に各省庁にまたがっているわけであります。これは教育問題にも影響していくと思います。未成年でもいずれは酒を飲むとようになる。そういう面から、医学の研究、また社会的な影響、保健、教育、訓練、そういう総合的なアルコールセンターみたいな研究対策機関というものをできるだけ早急に設立すべきだと思うのでありますが、そういう実態的なものに対して大臣は配慮していただきたいと思うのでありますが、どのようにお考えでしょうか。
  113. 村山達雄

    村山国務大臣 いまおっしゃったことも一つの構想ではないかと思うわけでございまして、その辺のことも関係省庁と十分打ち合わせてみたい、かように考えておるわけでございます。
  114. 小泉純一郎

    ○小泉委員 もう時間でありますからやめにしますが、私は最初に申しましたように、お酒に対して相当のプラスも認めるものであります。お酒は豊かな対話と笑いをもたらすものだ、本当だと思います。また、精神的なプラスだけではなくて、お医者さんが行うのにしても、低血圧とか心臓病は少量ならば肉体的にも大変プラスをもたらすものであります。たばことは私は違うと思うのであります。たばこも、当然害もあるし、ある面においては心理的なプラスはあると思います。しかし、酒は実際に肉体的にもプラスは明らかであります。そういう面において、酒は正しく飲んでもらいたい、そういう気持ちで私は今回話しておるわけでありますが、どうか政府当局におかれましては、単に酒の税金を取るということばかり考えるというんじゃなくて、また財政事情というだけでなくて、酒の及ぼす広範な影響というものを考えて、十分な対策をいまからしでいただきたい。そして、アルコール乱用者及び中毒者の予防、更生を目的とする総合的な研究対策機関を一日も早く確立するよう格段の御努力を要望して、質問を終わりたいと思います。どうもありがとうございました。
  115. 綿貫民輔

    ○綿貫委員長代理 午後二時三十分に再開することとし、これにて休憩いたします。     午後零時三十六分休憩      ————◇—————     午後四時二十五分開議
  116. 大村襄治

    大村委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  午前に引き続き質疑を続行いたします。伊藤茂君。
  117. 伊藤茂

    ○伊藤(茂)委員 最初に伺いますが、酒は文字どおりお飲み物でございまして食品のはずですが、農林省でも厚生省でもなくて、明治の時代から大蔵省になっております。なぜ大蔵省でやっているのか、そうでなければならないのかということは、どういうことですか。
  118. 矢島錦一郎

    矢島政府委員 お答えいたします。  ちょっと正しいお答えができるかどうかわかりませんが、所管物資が昔から酒というものを中心といたしましてやはり財政物資であるということで、国家財政へも昔から明治時代から寄与してきましたので、お米の問題から製造の問題を含めまして一応大蔵省の所管ということになっているんだと思います。
  119. 伊藤茂

    ○伊藤(茂)委員 財政物資と言えばむずかしい感じですが、要するに税の対象として大事であるという意味だと思います。ただ、だんだん時代が変わってきますから、これからお液に対する税制もどうあるべきかということを多面的に考えなければならぬ時代じゃないかということで、順次お伺いしたいと思います。  今度の増税の税調の答申などを見ますと、先ほど大臣提案理由にもございましたが、「当面の経済運針の方向に背馳しない範囲で増収を図るため、」ということになっております。考え方ですが、「当面の経済運営の方向に背馳しない範囲で」、これは常識で考えますと、一つは、国民生活を圧迫しないように、そしてまた、今日以上に市民の不況感を深めるということをしないようにということもあると思いますし、また、消費が非常にダウンをしてかえって税収が上がらないということでもまずいわけでありますし、メーカーについても、種類とか企業によって非常にアンバランスもあるわけでありますが、経営状態も圧迫しないようにという、いろんな要因がその中には含まれるということだと思いますが、その辺を「当面の経済運営の方向に背馳しない範囲で」、中身としてどうお考えになったのか。あわせて、二四%増税ということの判断との関連をお伺いいたします。
  120. 大倉眞隆

    大倉政府委員 当面の景気対策と背馳しないぎりぎりのところでという趣旨の御議論税制調査会がおまとめになったわけでございますが、確かに酒の税負担をふやしていただきたいと言ってお願いをしますと、それが酒類消費に全く影響しないというわけにはまいらない。しかし、それが景気全体の足を引っ張るというところまで考える必要はないのではないかという意味での御議論でございました。  伊藤委員よく御承知のように、各国ともオイルショック以後臨時にかなりの公債を出して対応したが、しかし、それぞれ公債発行をできるだけ圧縮するという努力は続けておるわけでございまして、当面する経済環境というのはそれぞれ似ておりますけれども、やはりたとえばイギリスでは、七四年以来毎年アルコール税を増税してきておりますし、フランスも同様でございますし、ドイツも七六年、七七年と二年連続して蒸留酒税増税をしておるというようなわけで、こういう局面でぎりぎり財政収入の確保を図るとすれば、やはり特殊な嗜好品と考えられる酒について負担を求めるということは許されてもいいんではなかろうか、一切の増税はいけないんだというところまで考えなくてもいいんではないだろうかというのが、税制調査会なり私ども考え方であるということを申し上げたいと思います。  引き上げの幅でございますが、これはやはり各種類間の競争条件を余り大きく撹乱するということは決して望ましくないと思いまして、おおむね一律ということを考えまして、そのときに、たとえばビールで申しまして、大体大びん六百三十三ミリリットルでございますが、大びん一本当たり二十円程度負担増はお願いできるのではなかろうかということで、逆にそういう計算をしますと二四%前後になるわけでございますが、それで一律にお願いしたらどうか。ただ、清酒はやはり原料米が年々上がるという特殊な事情もございますし、また、メーカーに中小企業が非常に多いという面もございますので、これについては上げ率に特別な配慮を加える。また二級は据え置く。清酒の二級据え置きとの関連で、しょうちゅう乙類も据え置くというような、私どもの立場からすればきめの細かい配慮をしながら、しかし考え方としては、ひとつこの際お酒を召し上がる方々に苦しい財政を少し助けていただきたいというお願いをしたいということでございます。
  121. 伊藤茂

    ○伊藤(茂)委員 市民生活との関連については後ほどまた伺いたいと思います。  今度は従量税部分のアップということになっているわけですが、関連して三つ伺いたいのです。  一つは、昨年来の税調の答申を見てみますと、税調の議論としては、従価税の方向に行くべきではないかという議論があったようでございます。それから、そういう方向に向けてまず可能なウイスキーとかビールとかそういう部面から改革を図ったらどうかという議論があったようです。その辺をこれからどうお考えになっているのかということが一つ。  それから二つ目には、今回は従量税部分の増税ということになるわけですが、より高級、値段の高い方は従価税となるわけでありまして、先ほど主税局長がきめ細かい配慮と言われましたが、市民生活に対する配慮というものから言えば、より大衆的なあるいは値段のそう高くない方に税のアップがあるという構造になります。それをどうお考えになっているか。  それからもう一つは、一般的な考え方として、お酒に対する税金というのは、午前中の質疑の中でも五万円ウイスキーの話がございましたが、高いものでもお買いになるという方には、現在でも二二〇%ですが、高い税率をお願いする、それから、一般庶民にとって日常生活と切っても切れないような関係のあるものには低い税率の方でお願いをするというのが、国民に理解される考え方ではないかというふうに思いますが、その辺を含めていかがですか。
  122. 大倉眞隆

    大倉政府委員 消費税としましては、できるならば従価税の体系の方が望ましいであろう、それはまさしく最後におっしゃいました、やはり価格の高いものはそれなりに高い負担をしていただくという考え方が貫ける限り、その方が望ましいのではないか、私どももそのように考えております。したがいまして、酒税につきましても、環境がこれを許すならば従価税に移行する方が望ましいであろうという御議論が、税制調査会の内部にもございますし、一時は非常に強くございまして、もう全面的に従価税に移行したらどうかという御議論が非常に強く出ていた時期がございます。ただそれ以後、最近になりましてのこの問題の税制調査会での御議論は、あれだけ強くそういうニュアンスが出たのになかなかうまく動かないのはなぜだろうかということをもう一遍いろいろ御議論がありまして、やはり現実的に実行可能なものから徐々にいくというふうに若干トーンダウンされてはいるわけでございます。  従価税に一気に移れない理由というのは、いろいろあるわけでございますが、一種の企業対策としましては、弱小企業と言うのは言い過ぎであるかもしれませんが、中小零細企業が納税義務者になる場合に、従価税制度であると、仮にコストが上がって値段を上げたいというときにそれにつれて税も上がっていく、そこまでなかなか転嫁し切れないというところに一番のむずかしさがあるというふうに私としては感じておりまして、その意味で、清酒の一、二級というところに従価税を取り込んでくるということのむずかしさがどうしてもつきまとうと申し上げてもいいのではないかと思うのです。したがいまして、考え方としては、先ほど伊藤委員が御指摘になりました税調答申の一番新しい答申考え方で、やはり現実的に移行可能なものから条件をよく見ながら従価税に移行するという考え方を基本にしていくということで、ここしばらくはやらしていただいたらいかがかと思います。  第二の点の、従量税、従価税両方が採用されておる種類については、今回の改正は従量税部分だけであって、従価税の一五〇%とか二二〇%というのは上げていない、それは、最初におっしゃった、あるいは最後にもまたおっしゃった、高いものには高い負担をという角度からすれば片手落ちになるのではないか、ある意味ではむしろ逆行してしまいはしないかという御指摘でございます。そういう考え方は私どもとしても十分わかるわけでございますが、今回あえて従価税率に手をつけませんでしたのは、率直に申し上げて国際的な関係でございます。  従来の経緯からも御存じのように、従価税制度というのは、正直に申し上げると、輸入ウイスキーに対する負担の問題としていろいろと考えられた時期があってスタートをしたという経緯はちょっと争えないわけでございまして、したがって諸外国、特にEC諸国からしますと、従価税率という日本の制度は、まあ国によってそれぞれ特産品がございますが、EC産のウイスキーあるいはブランデーを特に差別するために国内法という悪知恵を使ってやっておるので、これはNTB、非関税障壁なんだという意識がかなり強いわけでございます。私どもは、そうではない、それはやはり値段の高いものは高い負担をしていただくという消費税考え方から来ておるのであるし、そのような制度は別に輸入酒だけに適用されるわけではなくて、国産酒でも同一の条件で適用されるのだから、これが非関税障壁だと言うのは当たらないという議論をずっと繰り返しやってきておるわけでございますが、たまたま今回は関税率の前倒し引き下げと時期がダブってまいりまして、同じ時期にそれをやりますと、まあこういうことが記録に残っていいのかどうかわかりませんけれども、日本という国はどうもまたおかしい、関税率を下げたと言いながらその輸入品が大部分適用になる従価税の方を上げた、下げた下げたと言って非常にトリッキーなことをやるという批判が出てくる懸念が非常に強かったわけでございます。現実に私ども酒税負担増加をお願いしたいというような考え方を申し上げ、いろいろ記事になりましたときに、非常にしつこく詳しく問い合わせが特にEC諸国から来ておりました。私の立場でそういう生意気なことを申し上げるのはいかがかと思いますが、やはりいま置かれました国際的な環境からしますと、そもそも一五〇、二二〇というのはかなり高い率であるということもございますから、この際は従価税率は手をつけないということにさせていただいた方が全体としての判断としては妥当ではなかろうか。これは税制調査会でもそういう御説明をいたして御納得をいただいておりますが、答申にはあえてそういうことは詳しくは書かれておりません。
  123. 伊藤茂

    ○伊藤(茂)委員 ここに至った現実の経過は私も理解をいたしますが、結論として出てきた形は、大衆消費の部分の方に重い税率のアップという形になるわけでありまして、国民生活視点から見た問題意識としては、幾つか問題点が残るところではないかというふうに思います。  ちょっとまた物の考え方で伺いたいのですが、そもそも酒税に対する考え方で、種類も品目も多様にございます。そういうものに対する考え方としての公正な基準というものを一体どういう点に求めるのがいいのだろうか。一次方程式のように簡単にはいかない面が確かにあると思います。消費者の嗜好の問題もいろいろございますし、ただ、量に対して中心になるのかあるいはアルコール度についてなのか、価格についてなのか、いろいろな要素があるわけですね。ですから、後ほども指摘をしたいと思いますが、消費者の立場から見ると、一体お酒の税金というのは何が基準になって決まってくるんだろうか、ちょっと私ども聞かれましても説明できない現状だと思いますが、その辺をどう説明されますか。
  124. 大倉眞隆

    大倉政府委員 この点は大変むずかしい御質問でございますし、私も、率直に申し上げて、またお言葉をかりますと、一義的な基準というものはなかなか見出しがたいのではないだろうかと思います。  一つの角度としましては、午前中の御審議でも出ておりましたが、アルコール度の高いものは負担が高くてもいいではないかという角度がある、それはある程度制度の中に入っていると思います。酒の種類ごとに入っていると思います。もう一つの角度は、値段の高いものは高い負担でもいいではないか、それも従価税制度というもので部分的に入っておる。また、清酒の級別課税というのも、いわば非常に簡易な形で従価税的な性格を持つ従量税という見方もできるのかもしれないと考えます。しかし同時にまた、消費の態様ということも考えながら、構造がおのずから変化していく、改正のつどそういうものも考慮に入ってくる。たとえばその時点に至る期間において消費がほとんど伸びないというようなものについては、余り負担の増加を強く求めるのはいかがかというような感覚があり、また、消費が非常に現実に伸びているというものについては、やはり負担をもう少し求める余地があるのではないかという感覚で処理されたこともある。同時にまたしかし、ある改正をするときには、やはり酒の種類ごとの競争関係を余り極端にかき回してしまうことは妥当でないという感覚も入っておる。まあそれらいろいろのことがないまぜられて、そのつど一番妥当であると思われる改正が行われ、それが積み重ねられて現状になってきておる。したがって、その現状を白紙の状態でどれかの基準で見てどうなんだ、こう言われますと、ちょっとずつ何かむずかしくて説明ができないところがある。しかし全体としては、まあまあそれで市場も落ちつき、消費者も落ちついているという答えを探しながら、そのつどの改正が行われてきて現在に至っており、今回の改正も、いま申し上げた幾つかの角度を入れながら改正をお願いしておるということになろうかと思うわけでございます。
  125. 伊藤茂

    ○伊藤(茂)委員 素朴に市民から聞かれますと、ビールの税金のアップが二四・何%で、そのほかがどうこう、なぜそうなるのか。大倉さんの説明も、多元方程式ですから、ちょっと説明しにくい。  それから、私はちょっと一般論を最初にお聞きしましたが、全体としてやはり高い製品には高い負担をしていただく、それから国民生活、庶民の生活に密着しているものについてはなるべく低い負担で生活を守っていくようにしていくという面からすると、逆立ちしたシステムになっているのではないかということだけ指摘をしておきたいと思います。  次に、それに関連をして国民生活との関連ですが、前回五十一年の非常にもめました審議の過程でも、大分この点が指摘をされております。私は、それを振り返ってみまして、今回の増税についても、前回指摘されたのと同じ問題点を指摘しなければならない、また、あのときにいろいろ指摘された問題意識が生かされていないということではないだろうかという感じを非常に深くいたします。  お伺いいたしますが、今回の改正による増収分、千七百七十億といわれているわけですが、価格の問題としてこの増税分だけかさ上げをする、それ以上の値上げは、自由価格ですが、指導の問題として当分値上げしないように、少なくとも今年度値上げはないようにという考え方でもちろんいかれるのだと思いますが、それが一つ。  それから二つ目には、勤労者家計への影響の問題です。私ちょっと計算してみましたら、毎日一本ビールをうちへ帰って晩酌で飲む。一年三百六十五日、三百六十五本と計算してみますと、いままでですと七万一千百七十五円、今回二十円上がりますと七万八千四百七十五円、そのうち税金の値上がり分が七千三百円。それをずっと計算してみますと、奥さんがビール代をふやせる場合はいいのですけれども、今日の勤労者家計の状況でいくと、奥様の方からあなたのお酒代をふやせませんよ、そう言われる可能性が強いわけですね。計算しますと、三十三・九五日分お酒が飲めなくなる。要するに一年のうち三十四日はノービールデーであるというわけです。ですから、一月以上味気ない思いの晩飯を食わなくちゃならぬということになるわけなんですが、その辺へこれからの価格についての物の考え方と、それから勤労者家計に及ぼす影響の判断と伺いたいと思います。
  126. 矢島錦一郎

    矢島政府委員 お答えいたします。  今回の増税がどういうふうに価格に影響するかという問題でございますが、酒自体は自由価格でございますので、酒税増税分を価格に転嫁するかどうかということは、個々の企業の方々の自主的な判断によるということが基本かと思うのでございますけれども酒税はもともと転嫁を前提とする間接税でございますので、増税分を価格に転嫁いたしまして値上げとなるということは差し支えないものではなかろうかというふうに思っております。  ただ、国税庁といたしましては、今回の増税によります値上げにつきましても、値上げ額というのはやはり増税額の範囲にとどめる、便乗値上げはしないということで業界の方に強く要請しておるわけでございます。
  127. 大倉眞隆

    大倉政府委員 家計に及ぼす影響につきましては、私どもとしても、その点も十分考えるべきであるというふうに思います。ただ、酒は嗜好品でございますので、人ごとにえらく違う。もう一つ、家計から出ている酒類購入金額だけが酒の消費金額でない、社用消費的な酒の消費分とか、あるいは奥様に渡さないお金で飲んでおられる分とかいうのがあるようでございまして、家計調査だけで議論すると、平均で出てくるためのおかしさとか、あるいは実質負担から言いますと多少過小評価されてしまう面とかいろいろあるということは、一応条件はつけておかないといけないと思いますが、それにしましても、ちゃんとわかるのは家計調査しかないものでございますから、家計調査で見ますと、消費支出全体で酒に対する消費支出というのは、大体三%程度のようでございます。それから、一世帯当たりの年平均というのをとってみまして、毎月幾らぐらいになっているかというと、五十一年で二千三百六十五円という計算が出ております。これは実収入に対して大体〇・九%、それから消費支出金紙に対しましては一・三%くらいのウエートということになるかと思います。今回二千三百六十五円がどの程度上がるかということは、ただいまの価格がどうなるかということによりますし、またその銘柄、種類ごとに上げ幅は違いますけれども、それは酒税負担率の増加、酒税の増加率二四%というものに比べればうんと低い率で出てくるわけでございます。  いずれにしましても、私も非常な酒飲みでございますので、こういう平均的な姿に比べますと非常にたくさんお酒を飲んで多額納税者だと思うのでございますが、やはりこれは上がった場合には上がったなりにそのまま無理をして飲むかちょっと減らすかというのは、やはり個人ごとにかなり違うのであろう、全体としてはその消費に影響がないとは申しませんけれども、やはりそれなりに各種類ともある程度消費の増加は全体としてはあるのではないかというふうに考えております。余りはっきりしたお答えにならないのでございますけれども、非常に平均的な姿で大ざっぱにいま申し上げた諸要素を勘案していきますと、収入金額に対する負担増加率というのは大体〇・〇五とか〇・〇六とかその程度のものではなかろうか。したがって、先ほども申し上げましたが、この苦しい財政状態のもとでございますので、ひとつお酒を召し上がる方々は何とかもう少し会費をふやすことをがまんしていただけないだろうかということをお願いしたいと思います。
  128. 伊藤茂

    ○伊藤(茂)委員 私は、がまんできるかできないかと、それから平等にがまんするのかどうか、両面問題があると思うので、もう一つこの前の酒税のアップのときにも議論になりました、勤労者家計にとって所得階級別の状態ですね。これも御承知のとおりに、五十一年四月から五十二年三月の数字を見ましても、それからごく最近の勤労者家計調査を見ましても、所得の低い方、第一分位の方々と所得の高い方ですね、お答えになりました主税局長も高い方だろうと思いますけれども、第五分位と比べるとちょうど倍、逆に言えば半分というようなことになっているというわけです。ですから、今度の増税のときに各種類別の税率の案分の問題その他も含めて、前回のときにもずいぶんこの問題は強く指摘をされた問題ですが、今回の提案に関連をしてそういう配慮があったのかなかったのか伺いたい。
  129. 大倉眞隆

    大倉政府委員 提案内容でごらんいただけますように、清酒の二級、合成、しょうちゅうの乙類は据え置きになっておりまして、また、清酒の一級、しょうちゅう甲は上げ幅がほかの種類よりもかなり低くなっております。  各分位で家計調査にございます酒数消費支出というものが一体どういう種類の酒であるのかというところまでは、なかなかわからないわけでございますけれども、私どもなりにそういう角度からの配慮がある程度入っていると申し上げてもいいのではないかと思います。
  130. 伊藤茂

    ○伊藤(茂)委員 その問題なんですが、ある程度配慮が入っているということでしたが、そういたしますと、種類別の今回の税率引き上げの比較ですね、それについてちょっとお伺いをしたいのですが、たとえば清酒の二級は今回は税のアップなし、それから一級の場合も全体から見れば非常に低いとなっているわけです。それからその説明の中で、一つは原料米の値上がりということと、もう一つ消費の態様に配慮をしたということがありますが、この原料米値上がりの問題とそれから消費の態様と、大体同じくらいのウエートで評価をなさっているのか、圧倒的にどちらかの方を評価してこういうバランスを決められたのか、いかがですか。
  131. 大倉眞隆

    大倉政府委員 どちらがより強いかと申しますと、やはり原料米価格の特殊性の方が強いと申し上げるべきかと思います。ただ、二級酒据え置きというのは、原料米価格での据え置きというだけで完全に説明し切れるかどうか、それはやはり別の要因も入っていると申し上げてもいいと思います。
  132. 伊藤茂

    ○伊藤(茂)委員 私は、今回清酒特級、一級、二級、それからウイスキー、特にビールですね、この値上げ比率を見て、消費の態様というものと、それから、お酒に対する時代感覚がずいぶん変わってきているのだという認識が大変薄いのじゃないかという気が非常にするわけです。  たとえばこれから花が敬って新緑の季節が近づきますと、閥もなくビヤガーデンが一斉に開店をいたしますね。そのビヤガーデンでも大体、中年以上の男性が飲んでいるという風景じゃなくて、女性の方もそれから若い男女も大変楽しく飲んでいるというかっこうになりますですよね。ですから税の問題にしても、大衆酒として二級酒を上げない、また一級酒も非常に低くするという感覚で、何か消費の態様にも配慮をして、特に低所得者の生活に配意したのだという感覚じゃもうないのですね、時代は。むしろビールなり、ウイスキーもそうでしょうけれども、特に量としてはビールの方に非常にやはり消費の重点が移ってきている。しかもこれは文字どおり国民生活と密接な関係を持った形、しかもビールを飲むにしても、ビヤガーデンの風景じゃありませんけれども、若い女性も大いに飲んでいるかっこうの中で、酔っぱらうために、あるいは致酔度からいってビール考えるというよりも、やはり仕事帰りか何か楽しい飲み物として考えるというふうに変化してきているのだろうと思うのですね。そういう大衆消費の重点の変化というところから見ますと、二級酒を上げない、ビールの方は二四%以上上がるというのは、大変古い感覚じゃないかという気が非常にするのですが、いかがでしょう。
  133. 大倉眞隆

    大倉政府委員 消費の態様という表現が使われておりますのは、実はおっしゃった庶民が飲むかとかいうふうな感覚よりも、最近の消費の構造がどうなってきているか、冒頭に申し上げたかもしれませんが、つまり伸びがほとんどないもの、かなり伸びてきているものというような意味でむしろ態様というのは使われております。その意味では、伸びがほとんどないという種類について負担を求める場合には、やはりそれなりのある程度のしんしゃくもあり得ていいのではなかろうかということであろうかと思うわけでございます。  そうしますと、伊藤委員が具体的に御指摘になりましたように、清酒というのは残念ながら最近余り伸びないわけでございます。ビールは、天候に非常に左右されますので、五十二年度の五十一年度に対する伸びがそのままビールに対する消費需要の伸びだというふうに考えるのは、これは考え過ぎというか、ややオーバーエスティメイトであろうと思います。しかしそれにしても、どうも同じ現象をとらえて逆のことを申し上げて恐縮ですが、非常に若い人もビールを飲むようになってきたというので、ひとつこの際負担引き上げをお願いするときには、いまの競争条件等を考えて、やはりビールとウイスキーとを同じ率での引き上げをお願いしてもいいのではなかろうか。そこから先また余りよけいなことを言いますとおしかりを受けるかもしれませんが、やはりビールなりウイスキーをお飲みになる方々というのは、それなりに負担していただきたいし、俗に申せば、いま比較的ポケットが楽なのは若い独身の方、独身貴族と言われるような方、そこにまたビールが飲まれておるというようなこと、それらもろもろを消費の態様という言葉で実は表現したかったわけでございます。
  134. 伊藤茂

    ○伊藤(茂)委員 そういう説明を聞けば聞くほど、大衆課税の論理といいますか、一番親しまれているものに一番多くの税収を求め、また税負担が重くなるというような論理になるわけなんですね。さっきも申し上げたように、やはり高い所得の人が高いお酒を買ってお飲みになる。それから、一般庶民が気安く飲めるようなものについては、それなりにそれにふさわしいような税率考えるというのが、今日の経済条件から見ても公正なあり方だろうとぼくは思うのです。  ところが、ビールがどんどん伸びてくると、それはえらい人が飲む場合もあるでしょうけれども、伸びる大部分のところはより大衆的に広がっていくわけですね。そういうところに一番多く財源を求めるということになるわけで、今度でも増収見込み部分が千七百七十億円のうち、千二百億円くらいはビールでしょう、ということになるわけです。いろんな点から考えて、その辺の発想が問題になってくるんじゃないだろうか。さっき申し上げたように、庶民がより多く消費をするという部分に多くの税収を求めるという構造になる。  たとえばビールの場合、外国との対比にいたしましても、非常に大きな開きがあるということだと思います。ちょっと調べてみましたら、日本が一〇〇としたらアメリカの場合には一八・一とか、フランスでも二六・八とかいうふうな大きな開きがあるということですし、それから、アルコールの度が高い場合にはやや税率が高くなるようにという一つの基準も言われましたけれども、アルコール分一度当たりの税額というものを比較してみましても、ビールを一〇〇として清酒二級の場合には一七・七とか、ウイスキーが一級の場合には四〇・五とか、ウイスキー二級の場合には一二・三とかいうふうな構造になっているわけですね。そういう外国との対比で見ても、アルコール分当たりの税額に見ても、それから酒全体の売り上げの六〇%を占めるというふうに言われておりますし、さっきも申し上げたように千七百七十億の増収見込みという提案の中で、資料によれば千二百十億はビールということになっておるわけです。  これからの国民生活と消費態様から見て、こういう方向で税収を求めていくというのは適切かどうかという問題ですね。やはりさっきの二級酒を上げないからという理屈も含めて、消費の態様についても、非常に動きが変わっているのに対して認識が薄いんじゃないだろうか。あるいはまた消費動向についても、大体皆さん御主人がうちへ帰って、奥さんが晩酌のおかんをしておつまみをつくってお酌をしてくれるという構造とは、皆さん方の息子さん、嫁さんの時代はもう違ってきているということでしょうね。みんなで飲めるものをという時代ですよね。お酒のPRのポスターを見ても、中年の男性が飲んでいる写真じゃなくて、やはり若い男女が二人で飲んでいる、そういうポスターがたくさん張ってありますよね。そういう時代なわけです。ですから、やはりそういう年配者の論理じゃなくて、今日の時代に合ったような論理で酒税というものについて考えていく、あるいは種類別の税率の問題を考えていく、やはりそういう感覚のチェンジが必要なのじゃないかと思いますが、いかがですか。
  135. 大倉眞隆

    大倉政府委員 その点は、結局ビールは国ごとにかなりの違いがあるという一つの典型的な例であろうかと思うわけです。やはり日本の場合には、いい悪いは別にいたしまして、どうも経緯からして、ビールというのは舶来の酒というような感覚からスタートして、家庭用というふうなものにいくのにずいぶん時間がかかって、いまでもまだ業務用のシェアというのは恐らく三、四割はあるのではないかと思いますが、要するに非常に高級な場所でもビールがあるし、飲まれるし、それから、通常の小売値よりもかなり高くても飲まれるしという、まあちょっと水がわりに飲むというヨーロッパ諸国とは、消費の態様としてずいぶん違うということも申し上げたいわけですし、やはりそういう歴史をしょっていままでの構造ができておる。そこに冒頭に申し上げましたように、非常に画期的な競争条件の変化というものを持ち込むというのはいかがであろうか。  ちょっと話題が飛んでしまっておしかりを受けるかもしれませんが、たとえば清酒がなかなか伸びないというのは、若い人の需要を開拓する努力をもっとしてほしい。とにかくおかんをして飲むものだと決めてかからないで、コップで飲む、冷やして飲む、おつまみもいまのおさしみと違うものを工夫するというようなことで販路を開拓していかないと、まさしくおっしゃるような消費者の消費態様の変化に追いついていけないという面はあるように思います。しかしいずれにいたしましても、これまたおしかりを受けるかもしれませんが、いま伊藤委員がおっしゃっておられる、若い人が非常に気軽にどこででも飲めるようになったという事情をとらえて、なおかつその方々は、なかなか普通のいまの構造の所得税負担というものでは大きな負担はしていただけないわけでございますし、その意味で私は、ポケットが比較的温かいのではないかと申し上げたわけでございますけれども、やはり税全体の組み合わせとしましては、こういう状態の中でやはりビールが飲まれているという状態であれば、ビールを飲んでおられる方に今回程度負担の増加は何とかがまんしていただけないだろうか。それは角度を変えて申せば、大ぜい飲んでいるのだからやめなさいよとおっしゃられてしまえば、それはそうなると思いますけれども、やはりこの時期に、大ぜいが比較的いい伸びで飲んでおられるものなんだから、ひとつ何とか負担していただけないかというふうに私どもの方は考えるわけであります。
  136. 伊藤茂

    ○伊藤(茂)委員 何も世代論争をするつもりではありませんけれども、どうもお話を伺うほど、酒と税に対する感覚が、世の中変わってきているのに、皆さん方の方はなかなか変わらないのじゃないかという気がいたします。いままででも、ビール消費について、ヨーロッパの場合と日本の場合は違う、そういう説明がなされてきました。確かにいままでそういう面があったと思います。ただ、もうどんどん変わってきているということなんですよね。それは違うというのは、やはり皆さん方の感覚の方の問題じゃないかと思うわけです。今度の全体の各品目別、種類別の増税の構造を見てみましても、どうしてもやはりより大衆的な消費の分にウエートがかかってくるという感じが非常に強くします。  何もビールだけ特に言うわけではありませんけれども、五十一年の正月の値上げのときにも、小売価格に対するアップ率が、酒全体では六・七%、ビールは八・三%と、そのほかと比べたらビールが最高ということだったと思います。今回の場合も、税額部分だけ上乗せをする、それ以上は上げないように指導すると言うが、百九十五円が二十円上がって二百十五円、一〇%をちょっと超すアップ率になります。これはほかの方よりも高い比率になるのじゃないかという気がするところですし、余り細かいことは言いませんけれども、この前の値上げのときには、税率がだんだん下がってくるので適正な税率にしていきたいということで、それが最大の理由増税がなされたと思います。あのときにビールの面では、価格に占める税部分がたしか四二・一%になったということだと思いますが、今回の場合には四七・四%になる。そうするとこの前の説明からいっても、この前は適正にしたいということで四二・何%にしたわけですから、今度の場合には適正以上に上がっているのではないかということになります。  大臣、いかがですか、ここはたとえばビールということで、今回の増税考え方、それから種目別についてのことを伺ったのですが、やはり消費構造は変わってくる、それから、消費者の感覚もだんだんヨーロッパ並みといいますか、変化をしてくると思うのです。ですから、物の考え方も五年前、十年前と同じ発想で、二級酒を上げないように、あるいはしょうちゅう乙類を上げないようにという感覚とは違った対応が必要なのじゃないかと思いますが、若く見える大臣は、古い時代の感覚に立たれますか、それともこれからの時代の感覚に立ってお考えになりますか、いかがですか。
  137. 村山達雄

    村山国務大臣 ビールの問題に入る前に、やはり全体として酒類については致酔飲料だという考え方がどうしてもあるんだろうと思うわけでありまして、それで負担を求めたわけでございます。それから、影響の度合いも比較的読みやすいということもございます。それからいまおっしゃいました、この前は値段が上がっておったんだが、だから自然減税になるからそれを補正する、今度はその点が実は余りないので御負担をお願いするということで、非常にその点に気を使っておるということをまず申し上げたいのでございます。  それから種類でございますが、私もビールというものは日本では非常に不思議な種類だと思っておるのでございます。確かに西欧諸国とは違う。それから日本の中で、さっき主税局長もいろいろな角度から説明しておるのですけれども、なかなか一律的に割り切れない面があることもよく承知のことでございます。ただ、私たち見ておりますと、ビールというのは、非常に上の人からまた若い人まで広く使われておるということは間違いないのでございます。最高のレストランでもビールのないところは絶対にない、至るところでやっておるわけでございます。私たちもくにへ帰りましていなかを回りますと、ビールを出すところはございません。農村ではみんなワンカップの二級酒を出すわけでございます。われわれもよく農家へ行って、まあ飲んでいけというわけで飲みますが、やはりこれは日本酒でございます。それから市部へ参りますと、大体お酒を出さないでビールを出す。それだからということではございませんけれども、何といいますか、まだ比較的飲む人、飲まれる場所、層を見ますと、確かに若い人から婦人からずっと飲んでいるわけでございますけれども、その意味ビールというものは日本では特殊のものだ。幸いなことにこのビールが伸びていてくれるものですから、酒類の税収が上がるわけでございます。天候に左右されるわけでございますが、消費がどんどん伸びておるということは、一方において大衆的だということを意味しましょうし、もう一つは、そこにかなり負担力があるということまで言うのはどうかと思いますけれども、かなり伸びていることは事実なのでございます。そういったことをあれこれ踏まえまして、今度のようなことになったんじゃないかと思っておるわけでございます。  なかなか種類間のバランスをとるということはむずかしい感覚だと思っておるのでございますが、現時点でこの程度のことをやるのはやむを得なかったんじゃないか。しかし、ビールが非常に大衆化しておるという事実も、私は伊藤さんと同じように認めるのでございますが、何か日本においてビールというのはちょっと異質だなという感じがしているのでございます。
  138. 伊藤茂

    ○伊藤(茂)委員 大臣、いろいろややこしくお答えになりましたが、私はやはりお酒を飲むのに、赤坂の高級料亭あるいは同級レストランで飲むという感覚ではなくて、仕事帰りに庶民というか若い方々、サラリーマンがビヤガーデンにちょっと寄って飲む、そういう感覚の中で考えていただきたい。そうでないと、さっきおっしゃったように、伸びるからそこに税収を求めるという論理になりますね。その考え方でいけば、市民生活を楽しくして守っていこうということより、これは税金が取れそうだからもっと取ろうという感覚になっていくわけですから、その辺のことについてはぜひさらに勉強していただきたいと思います。  時間が過ぎますから次の問題に入りますが、小売屋さんの問題です。さっき言われましたように、税のアップ分だけ値上げを認めていくという考え方になりますから、当然のことですが、小売屋さんにしますと、より多くの資金繰りのお金が必要になるということになります。逆に言えば、資金に対するマージン率が下がってくるということになります。私も小売屋さんを幾つか歩いて聞いてきましたが、全部トータルしてみて一五%ぐらいのマージン率でしょうと言うところから、一七、八%ぐらいでしょうかとか、地域によって、それから売る品物の重点によってもいろいろと違いがあるようです。私は今回の経過からいって、さっき申し上げたように、税のアップの問題が、メーカーには関係なし、卸にも余り関係しないで、小売屋さんのマージンあるいは資金繰りの問題、それからお酒を飲む庶民、この二つのところに全部しわ寄せがいくということだと思うのですが、物の考え方として、そういう小売屋さんのところのマージン率の低下というような問題についてどうお考えになりますか。
  139. 矢島錦一郎

    矢島政府委員 お答えいたします。  いま先生のお話のように、小売店のマージンにどれほど響くかということでございます。先ほど申し上げましたように、値上げ額は増税額の範囲にとどめて、便乗的な値上げはしないようにというような方針で、私どもは指導といいますか要請をしていく考えでございますが、そうなりますと、増税程度の値上げということで、卸屋さんあるいは小売屋さんのマージン率というのは低下することになるわけでございます。その点は御説のとおりでございますが、マージン額につきましてはそう変わらないわけでございますし、増税値上げに伴います小売屋さんあるいは卸売屋さんの流通業者の負担というものは、言ってみれば金利負担が中心となるという問題でございまして、金額的に見ましてもそれほど大きな額ではないというふうに考えておりますので、この際やむを得ないのではないかと思っております。
  140. 伊藤茂

    ○伊藤(茂)委員 やむを得ないと言われますけれども、こういう面もあるのですね。この前の増税のときの直前でしたか、お酒の製品の値上げがあったときの、その値上げ部分のメーカーと卸と小売屋さんとの配分の問題です。その配分の中で、小売屋さんの立場が一番冷遇されるといいますか、そんな構造がこの前の値上げのときにも指摘されたということではないかと思います。  今回の場合、もうけの額は同じだと言いますが、やはり資金繰りの面でも金利負担の面でも、現実には出てくるわけですから、程度は大したことはないというふうなことを言われましたけれども、物の考え方として、午前中に話があったように、洋酒についてもビールについても、寡占体制の問題がどうしてもある、メーカーの力が非常に強いということになってきますと、いつも卸や小売の方がしわ寄せを食うという論理がだんだんいろんな場面で働いてくる危険性があるということではないかと思うのです。ですから、今回すぐどういう対策をとるのか、あるいはメーカーに対しても、マージン率に対しても配慮するということができるのかどうかということもありますけれども、物の考え方として、いつも末端部分にしわ寄せが行くということでない行政指導のあり方というものを考えるべきではないかと思いますが、重ねてお答えください。
  141. 矢島錦一郎

    矢島政府委員 お答えいたします。  先生から再々にわたり御質問があるわけでございますが、やはり増税の際におきましては、何と申しましても増税額の範囲にとどめるというのは、私どもいままで一貫してやってきた方針でございますし、それに便乗いたしましてマージンも上げようということになりますと、それはいささか行き過ぎではないだろうかというふうに思っておるわけでございます。  増税に伴います流通業界負担額も一応試算してございますが、その増税による増加額が平年度千九百七十億というふうに仮定いたしますと、商品回転率は約四十日足らずということになりますので、仮に年利六%というふうに回しますと、千九百七十億円に対しまして十三億前後というような負担増になろうかと思うのでございます。  しかし、種類によりましては、かなりマージンの高いものもございますし、あるいは低いものもあるわけでございますが、増税と絡めてマージンを上げるというのは、いささか筋が違うのではないかというふうに思っておるわけでございます。
  142. 伊藤茂

    ○伊藤(茂)委員 いや、税金を上げ、それにマージン率も上げて高くなってもいいという意味じゃないのです。要するに、程度の問題はいろいろ議論があるでしょうけれども、どっちにしても増税に伴って小売屋さんの方のマージン率が下がるという問題が起きて、それから、消費者の方はより税金の高いお酒を飲むということになるのですから、その二つにすべてしわ寄せが行くという構造になっている。ですから、これからのお酒に対する指導、農林省でも厚生省でもない、大蔵省所管だということですから、その中に、末端にしわ寄せが行くという形でない考え方は常にきちっと持って、大衆がより楽しくお酒が飲めるように、また飲み過ぎない程度にうまく飲むように、それから小売屋さんのところも、家庭に配達をするわけですから、そういう商売がうまくいくように、その面の十分な配慮をしていただきたいという意味ですから、さらに念頭に置いていただきたいと思います。  時間ですから、最後にもう一つだけ質問させていただきたいと思うのです。午前中も出ましたが、特に今回の値上げの場合には、関税引き下げと円高との関連の問題というのが、前とは違った新しい情勢だということが言えると思います。これはウイスキー、特にECとの関係ですからスコッチ等の場合、それからもう一つはワインですね。例はそう多くありませんけれども、ウイスキーよりももっと厳しい条件にあると思います。御承知のとおりに、原料ブドウがフランスなんかの四倍も五倍もするという国内の構造ですし、それから、この間の関税の引き下げのときにも、原酒を種で買う方は値下げがない、それから製品のボトルで入った方は引き下げになるという構造ですし、問題が起きると思うのです。確かに非常にもうかっている企業もあるし、それからそうでないお酒の方にも、消費から言っていろいろな影響が行くという複雑な面を持っているということだと私は思いますし、それから、いまの国際収支の状況からして、関税も引き下げなければならないということも当然私どもは理解できるわけです。  ただ、当面の状況の中でこうなっていくんだということだけじゃなくて、やや長期に見て物の考え方として一つお伺いしておきたいのは、輸入と国産との課税標準の置き方の問題です。ワインの販売とか競争力とか、小売屋さんのところを回っていろいろ話をする中で言われたんですが、輸入の場合には、CIF価格と関税をプラスしたものに税額がかかる。国内の製品の場合には、それに金利とか宣伝費とかいろいろなものにかかって、何か全体の原価で二〇%を占めるということですが、とにかくよけいかかる。結果的には輸入品に薄い税率になって、それから国産の方に重い税率になるということになって、それが、ウイスキーにもあるでしょうけれども、ワインなんかの場合には問題になるという話を聞きます。  私は、国際経済の関係から言って、関税についてはある場合には高く、ある場合には低くしなければならぬとか、それから、より自由な貿易関係になるようにしなければならぬということは当然だと思うのです。ただ関税と、もう一つ、国内の税金をかける方の課税標準についても、差があるというのは問題なんじゃないかという気がするところですが、いますぐどうこうという意味ではなく、当面余りにも急激な円高の状況もあるし、それから外国からの要望もありますし、むずかしいところですが、物の考え方として、この辺のところは筋が通るような措置を考えていくべきではないだろうかと思いますが、いかがでしょう。
  143. 大倉眞隆

    大倉政府委員 当面の問題と今後の研究すべき問題と、二つ御指摘がございました。  当面の問題は、関税前倒し引き下げと円高の双方で輸入ものの競争力が強くなるという面が一つある。しかしまた、メーカーによりましては、輸入原材料あるいは輸入原酒が下がって助かるという面もある。いろいろな影響が出てくるわけでございます。しかしそれらの点も、関税の前倒し引き下げの率なり何なりは関税局とよく相談しながら、私ども十分情報を持って今回の酒税引き上げの作業をいたしましたので、今回の改正としてはその影響というものを頭に入れながら、この引き上げをお願いしても、種類ごとに非常に深刻な事態が生じてくるということは避けられているんではないかと考えておりますが、今後の研究課題として、いま御指摘になりました、課税標準が輸入ものはCIFプラス関税である、国内物はメーカーの製造者蔵出し価格である、これが小売換算で考えた場合に、その負担率が輸入物に対して非常に有利になっておるのではないか、それを税制で調整すべきではないかという御意見をかねてから非常に強く主張しておられるところがございますが、率直に申し上げて、私はそれはかなりの疑問を持っておるわけです。従量税にはもともとそういう問題はないわけですが。私は、いまの考え方の方にむしろ軍配を上げたらいいのではないか。小売価格対比でそういうことが起こるというのは、輸入酒が、日本の特殊な事情もございましょうが、むしろ高い方がよく売れるというような状態が背景としてあり、非常に商いマージンで売られているので結果的にそうなる。それを税で調整するということを考えて、税制として果たして妥当かという問題が一つある。研究課題ではございますけれども、そういうことを主張しておられる方が、仮にそこを調整するよと言って、向こうがマージンを下げてしまったら、今度は競争関係については何を言い出されるのだろうかという点に私はかなり問題を含んでおると思いますので、研究課題であるということははっきり意識しておりますが、研究の方向がおっしゃるような方向であるかどうか、これはなお相当慎重に勉強しなくてはならぬと思います。
  144. 伊藤茂

    ○伊藤(茂)委員 時間ですから、終わります。      ————◇—————
  145. 大村襄治

    大村委員長 参考人出席要求に関する件についてお諮りいたします。  すなわち、証券取引に関する件、特に最近の証券取引の実情について、来る四月四日正午参考人の出席を求め、その意見を聴取することとし、その人選につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、これに御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  146. 大村襄治

    大村委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決しました。  次回は、来る三十一日金曜日午前十時委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。     午後五時三十一分散会      ————◇—————