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1978-03-03 第84回国会 衆議院 大蔵委員会 第10号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和五十三年三月三日(金曜日)     午前十時三十四分開議  出席委員    委員長 大村 襄治君    理事 小泉純一郎君 理事 野田  毅君    理事 保岡 興治君 理事 綿貫 民輔君    理事 佐藤 観樹君 理事 塚田 庄平君    理事 坂口  力君       愛知 和男君    池田 行彦君       石橋 一弥君    小渕 恵三君       大石 千八君    後藤田正晴君       佐野 嘉吉君    坂本三十次君       原田  憲君    本名  武君       村上 茂利君    森  美秀君       森田 欽二君    山崎武三郎君       山中 貞則君    伊藤  茂君       池端 清一君    大島  弘君       川口 大助君    沢田  広君       平林  剛君    貝沼 次郎君       宮地 正介君    高橋 高望君       荒木  宏君  出席国務大臣         大 蔵 大 臣 村山 達雄君  出席政府委員         大蔵政務次官  稲村 利幸君         大蔵大臣官房審         議官      米里  恕君         大蔵省主計局次         長       山口 光秀君         大蔵省主税局長 大倉 眞隆君         国税庁次長   谷口  昇君         国税庁税部長 水口  昭君  委員外出席者         国土庁土地局土         地政策課長   佐藤 和男君         大蔵大臣官房調         査企画課長   大竹 宏繁君         林野庁林政部林         政課長     後藤 康夫君         林野庁指導部計         画課長     下川 英雄君         中小企業庁計画         部振興課長   深沢  亘君         建設省計画局宅         地開発課長   渡辺  尚君         建設省都市局都         市計画課長   海谷 基治君         建設省住宅局民         間住宅対策室長 伊藤 茂史君         自治省税務局市         町村税課長   渡辺  功君         会計検査院事務         総局第一局長  前田 泰男君         大蔵委員会調査         室長      葉林 勇樹君     ————————————— 委員の異動 三月二日  辞任         補欠選任   伊藤  茂君     藤田 高敏君   沢田  広君     石橋 政嗣君   宮地 正介君     林  孝矩君   荒木  宏君     寺前  巖君   永原  稔君     大原 一三君 同日  辞任         補欠選任   石橋 政嗣君     沢田  広君   藤田 高敏君     伊藤  茂君   林  孝矩君     宮地 正介君   寺前  巖君     荒木  宏君   大原 一三君     永原  稔君 同月三日  辞任         補欠選任   小渕 恵三君     森田 欽二君   林  大幹君     石橋 一弥君   広沢 直樹君     貝沼 次郎君   小平  忠君     高橋 高望君 同日  辞任         補欠選任   石橋 一弥君     林  大幹君   森田 欽二君     小渕 恵三君   貝沼 次郎君     広沢 直樹君   高橋 高望君     小平  忠君     ————————————— 本日の会議に付した案件  租税特別措置法及び国税収納金整理資金に関す  る法律の一部を改正する法律案内閣提出第七  号)      ————◇—————
  2. 大村襄治

    大村委員長 これより会議を開きます。  租税特別措置法及び国税収納金整理資金に関する法律の一部を改正する法律案を議題といたします。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。荒木宏君。
  3. 荒木宏

    荒木委員 投資促進税制についてお尋ねしたいと思います。  これは一年に限って、特定機械設備等を事業の用に供するときは、特別償却適用にかえて税額控除を認める、こういうふうなことと伺っておりますが、御承知のとおり、構造不況業種というのがございまして、需給ギャップが大変なものでございます。  そこでまずお伺いしたいのは、構造不況業種にもこの投資促進税制適用されるのか、そういったところの中小企業に対する適用の有無について初めにお尋ねをしたいと思います。
  4. 大倉眞隆

    大倉政府委員 今回御審議を願っております案は、ただいまおっしゃいましたように、一つ公害防止でございますとか省エネルギーというような特定設備の取得に係るものでございまして、その場合には、取得した企業がどのような業種に属するかという限定はございませんので、理屈で申しまして、構造不況業種でございましても、たとえば公害防止設備を取得いたしますれば税額控除適用になる。しかし、その期に欠損で税額控除現実に動かない場合には繰り越せるということになります。  それから中小企業につきましては、機種限定がございませんで、とにかく機械であればすべて適用になります。その中小企業がたまたま構造不況業種に関連しておられて、現実機械は買っても税額控除が受けられないという場合には、繰り越しを認めるというような仕組みでございまして、簡単に申しますと、その機械を取得された企業の所属の業種いかんによって適用されたり適用されなかったりという仕組みではございません。
  5. 荒木宏

    荒木委員 御案内のとおりいま構造不況業種では、需給ギャップを解消する手だてといたしまして、いろんな方法がありますが、現実業者皆さんが寄り寄り相談をいたしまして、あるいは設備の凍結でありますとか、また販路についての協定でありますとか——もちろん独禁法の関係はあります。その適用除外を受けて、需給調整のためにそれなりの真剣な努力を傾けている。つまりその対策の中には、供給が過剰になってきている——もちろんこれは原因はいろいろありますし、私そのことをいま申しておるのじゃありませんが、そういったときに、皆さんの御説明ですと、投資を誘導するのだ、投資を誘発、促進する税制だ、こうおっしゃる。そういたしますと、まず構造不況業種関係人たちは、いろんな苦労を重ねて調整をやっておるのに、現実適用になるならないは別といたしまして、さあ投資をこれで進めなさい、新しい機械設備をつくりなさい、供給をふやそうじゃないかということについて、いささか納得できないものがある。これをどうお考えになりますか。  また、政策的に申しまして、片や特定産業構造不況業種対策の法案なども用意をされておりますが、それとの整合性はいかがなものであろうか。もちろん全面的に端から端まで重なるものではありませんが、いまの目指す方向、とられておる世間の努力の道筋からしましていかがなものであろうか、こう思いますが、御所見を伺いたいと思います。
  6. 大倉眞隆

    大倉政府委員 御指摘のような御意見もございまして、政府税制調査会では、投資促進税制の採用の可否につきましてずいぶん時間をかけた御論議がございました。ただ結論的に、税制調査会なり、それを受けまして政府が御提案しております考え方は、一般的に設備投資が出てくれれば、それがかなりの波及効果を持って経済の拡大に役立ってくれることはだれしも疑いがないであろう。ただ問題はいま御指摘のような、一般的に見て設備過剰という状態のときに、投資促進についてあえて税を政策手段として用いることが有効であるのか、適当であるのかという点であるということでございまして、そこでやはり問題は、業種別あるいはまた業種の中でも個々企業ごとに非常にいわゆる跛行現象が見られるといういまの局面で、どう対応したらよろしいかということであろう。したがって、この機会に税額控除という一年限りの措置で、少なくともいま予定している投資を当面繰り延べようとしている場合には、五十三年度に実施してもらえばフェーバーがあるということを宣言する、あるいは五十四年度以降に予定しているものでも、税額控除があるならば一部繰り上げて投資しようかということもあり得るので、それに対して促進効果をねらおう。しかし同時に、構造不況業種と言われるものについては、現実設備共同廃棄なりあるいは設備調整をしなくてはならぬことも事実であって、それはそれでまた別途の政策手段で対応していこう。要するにきめ細かく現状のでこぼこ状態に即応しながら、しかし、行おうと思っている部分の投資については促進効果をつけて、何とか投資をしてもらうということで対応しようじゃないかというのが、結論になっているわけでございます。
  7. 荒木宏

    荒木委員 ちょっといまの御説明では、私はそのまま素直に、そうですがと申し上げかねる気持ちがあるのですが、投資促進効果については、これは全般の問題に触れていま御説明を伺ったと思うのです。そのお考え自体について、私どもはまた別の考えがありますけれども、いまそのことを特に申しておるのじゃございませんで、一番最後に局長がおっしゃった、構造不況業種についてはそれはそれで別途考えてみようというお話、これは確かにそういう手だてもとられております。そのことと本件とが矛盾をしなければ、私は両立はあり得ると思います。その立場に立つ限りにおいても両立はあり得ると思います。  しかし、端的に申しますと、設備共同廃棄をやっておるような業種、これは長年手塩にかけて育てた機械を、まるでわが子のように思いながら、身を削られる思いでハンマーを振り上げて破砕をしておるわけです。そこにもなおかつ投資を進めなさいという税制適用されるというのは、私はうなずけない。いろんな理屈はありましょうけれども業者立場国民立場に立って見たときに、一体政府——もちろん投資促進税制というのは、ここにはまっておる要件の限りにおいて限定されておりましょうし、同時に、この要件の限りにおいては普遍的なものなんですよ。その中には、中小業種共同廃棄をやっておるところも包含されるというお話です。投資をせよと言うのか、廃棄をせよと言うのか。たとえば私の日ごろ接しておりますところでは、綿、スフ織物業者。たとえばいま綿、スフは、もう一つ必ずしもよくない。いやむしろ悪い。しかし、しゅすは比較的出ている。少し投資をすれば、そっちの方へ行けるということもありますが、しかし、おのずから代替性のあるものでして、底が浅い、天井も低いというので、投資を促進すればたちまちそのことが再び需給ギャップを招くということは容易に知られておるわけです。あるいはまた、同じような産地タオル産地がございますが、綿、スフの方がもう一つよくないというので、タオルの方に進出をされるということが、また問題になっておるわけです。ですから、そういったことについて、ひとつお尋ねをしておるところに焦点をしぼって、得心のいく御説明をいただきたいと思います。
  8. 大倉眞隆

    大倉政府委員 荒木委員のお考え方を突き詰めてまいりますと、繊維業と申しましても非常に多岐にわたると私は思いますけれども、その中の非常に細分類した項目についてこの種の業種サブ業種と申しますか、そういうところに属する企業には、今回の投資促進のための税額控除適用しないんだということにまで行くのかと思います。  実態的にそういう状況にあるケースがかなり多いであろうということを否定するつもりはございませんけれども、物の考え方といたしましては、たとえば繊維製造業あるいは染色加工業でございましても、その中で企業ごとには、将来に向かって、自分のいま持っている機械を新しい機械にかえたいという希望がないとは言い切れないであろう。それを制度的に排除してしまうということが一体いかがであろうかということに尽きるような気がいたします。  それは多分に観念的であるという御批判を受けるかもしれませんが、やはり制度としましては、個々企業考え方を尊重して、投資をするという決意を持つ場合には、ほかの業種、ほかの企業と同じ立場に置いておくということの方がむしろフェアではなかろうか。特定業種を細分化して指定してしまって、この一年間はいかなる理由があれ、またいかなる目的設備であり機械であれ、それはほかの業種ならば税額控除があるけれども、あなたにはありませんよと言い切れるほど、現実の業態の中での過剰の状態、あるいは過剰になっている機械の種類というものが画然と分け切れるものではないんではないか、私どもとしてはそのように考えて、制度としては両方とも適用し得るようにしておく。制度が併用しておりましても、お言葉にございましたように、片方で廃棄考えなくてはいけないというその同じ機種を、その業種の中で、いま税額控除があるからぜひつくりなさいということで誘導していることには必ずしもならないだろうと思います。いかがでございましょうか。
  9. 荒木宏

    荒木委員 私がお尋ねしておることを少し先に引き伸ばしてお答えの前提にされたんですが、私はそういうことを申しておるのではないのです。結論と申しますか、私ども主張は後で一言触れますけれども、この投資促進税制には、たとえて言えば、そういったところをとらえてもそれほどの矛盾があるではないかという一つの例として申し上げておるのです。いま投資が進められると支障が生ずる業種、あるいはその中での経営形態といいますか、しかく截然と分けにくいような趣旨答弁がありましたが、私は実態はそんなものではないと思う。  一例を繊維にとりますけれどもアウトサイダー規制というのをずいぶん協調してやっております。業者が自主的に話し合って安定法適用を受けて、そうしてインサイダーだけ何とか相談し合って助け合っていこう、こういうのですけれどもアウトサイダーにはまたアウトサイダーの言い分がありまして、いろいろな農業その他からの転換に伴う生活権主張があります。そのときに、業者の間でも相当激しい問題になってきておる。たとえばアウトサイダー投資がこれで適用になることになりますと、感情的に見たって、とうていそれは支持をされる論理ではないと思う。幾ら局長がおっしゃったって、大変な論議を経て、そうして大変な手順を経て一定のインサイダーに限った登録制を実施しておるときに、なおかつ、いい悪いは別としまして、その犠牲において需給バランスが保たれて、そしてそこにアウトサイダーが入っているという現実があります。ひとしく適用されるということの矛盾が、当事者にとってどういうふうに受けとめられるか。  私は、先ほど来の局長の御答弁は、あるいは税のサイドに立った御意見かもしれませんけれども、税を適用する実態と総合しての適切な意見ではないということを、私の経験から申し上げることができると思うのです。いまの御説明では、仮にそうした産地で、何党支持の方であろうとも、業者の人が寄りまして御説明になれば、恐らく絶対納得がいかないと私は思う。  御意見は伺いましたから、全体としまして、これはなるほど皆さんが計算されておりますように、千二百億から八百億引きまして、そうして落ち込みの歯どめ分も含めて四百億の投資促進プラス効果があるかもしれぬと思うのです。だがしかし、それはたとえば電力で見られますように、投資意欲がそれだけにある、大型の、しかも恵まれたそうした業界に主として適用される。冷え切った構造不況の、いま身を削っていこうかというところは、なるほどミクロで見ますと、多少のでこぼこで、新規投資はあるかもしれませんけれども、しかし、そこのところは恩恵を受けることはないであろう、業界全体として身を削るというのですから。  そういう意味で、局長跛行性ということをおっしゃったのですけれども、従来の階層間の不公正の上に業種間の不公正をさらに結果として乗せていく税制ではなかろうか、こういうふうに私は考えておるわけです。この点は、恐らく見解の相違になると思いますので、あえて御意見を求めませんけれども、私どものこの点についての意見をひとつ十分に御留意をいただきたいと思います。第二にお尋ねをしたいと思いますが、省エネルギー特定項目というのが掲げてございます。私は、この省エネルギーエネルギー節約というのは、国民的課題であると思いますが、しかし、税制面からこれを取り上げる場合に、もっと大きな網を打つ手はないのか。たとえば輸送機関で、鉄道輸送とそれからトラック輸送というのがあります。これは、エネルギー消費という点から申しまして、省エネルギーを進めるには、どちらの輸送機関が望ましいというふうに考えていらっしゃるか。これは主税局長にお伺いするのは必ずしも適切な質問とは思いませんけれども、しかし、省エネルギー税制という誘導機能を通してエネルギー問題をごらんになっていらっしゃる限りにおいてお伺いをしておきたいと思います。
  10. 大倉眞隆

    大倉政府委員 おっしゃいましたように、私その問題の専門家でも何でもございませんが、燃料課税議論をいたしますこととの関連で、輸送手段ごとエネルギー効率についての議論税制調査会でも行われることがございまして、その場合には、貨物あるいは人の人当たりあるいはトン当たり輸送エネルギー効率としては、それは率直に申し上げて自動車よりも鉄道鉄道よりも船というような計数的な議論はなされたことがございます。もちろん輸送距離によりまして、またいろいろとバリエーションを考えることになるでありましょうが、一般論を申しまして、そのような議論が出ておるということはおっしゃるとおりでございます。
  11. 荒木宏

    荒木委員 全体のエネルギー消費量につきまして、トラック自動車輸送を仮に一四とすれば鉄道輸送が一だというふうな数字が提示されたことがありますけれども、そうしたエネルギーを多消費する自動車輸送が、たとえばトラックはたしか物品税がかかっていなかったですかね。それから自動車関係諸税は、目的税ということでその輸送基盤である道路整備に使われる。こういうことでありますから、私はむしろ全体として、こうしたマクロ的な省エネルギー方向に向けての誘導税制、もちろん個々機械がどうであるとか、個々企業がどうであるとかという論議もありましょうけれども、そうしたことについてこの際検討を進められるべきではないか、こう思いますが、これは局長に御意見を伺って、あわせて大臣に政治的な立場から御見解を伺っておきたいと思います。
  12. 大倉眞隆

    大倉政府委員 おっしゃいますとおり、政策税制全体は、できるだけ縮減合理化をしたいということで、私どもここ二、三年鋭意努力をいたしております。しかし、その中でも新しい角度から政策的な重点に向かって税制を誘導的に用いるということは、やはり許されてしかるべきであろう。そのときに、省エネルギーという観点に立ちましたときに、特定省エネルギー設備特別償却を認めれば、万事それで片づくというほど問題は簡単ではないということは、私どもも重々承知しているつもりでございます。  ただし、エネルギー使用効率としての輸送手段の問題、これは大げさに申しますと、実は総合交通体系の問題でございまして、ここ数年来議論が重ねられておりますが、少なくとも私どもの理解では、はっきりとした全体的なシステムとしての合意ができ上がるというところまでまだ来ていないのではなかろうか。今後ともその議論を重ねる過程で、私どもがたとえば燃料課税なり車体課税なりという手段の中で、総合交通体系整備のために何かやるべきことがあるのかどうかを引き続き議論してまいりたいというのが、ただいまの私ども立場でございます。
  13. 村山達雄

    村山国務大臣 いまのお話総合交通体系の問題でございまして、これは古くから議論されているわけでございますけれども、その実態論において、どちらがどういう場合にいいというような一般的なことは出ていないのが非常に残念でございます。  大づかみに申しますと、燃料効率とかそういった点から見まして、あるキロ数のあれを前提にいたしますと、大量輸送にはトラックよりはやはり鉄道の方がよろしいというようなことが一般には言われるわけでございまして、だから、いま言っておりますのは、大量輸送、それから近距離、それから定時性、こういったことが一般に言われております。しかし、今度三全総でも言われておりますように、またそれに対して、いや、あれはうかつにやると、需要が伴わないときには大変な赤字が出てしまう、だから、効率だけでもって事を論じては、経営立場から言うと非常に赤字が出るということがございまして、いまの国鉄の再建問題につながるような話になるわけでございます。したがって三全総では、この前のときのような鉄道というものよりも道路の方に少しウエートがかかった答申が出ている。それだけわれわれ見ておりまして、この問題はまだまだ実態論として確立してない問題じゃなかろうかというふうに考えているわけでございます。  この問題がもしはっきりいたしまして、そうして特定輸送機関について、税制の面でも許される限りの何らかの措置を講ずべきであるというようなことがありますれば、そのときには税制考えてみたいと思いますけれども、現在の段階ではまだそこまで税制の面が先走っていける段階ではないのではなかろうかというのが、率直な私の感想でございます。
  14. 荒木宏

    荒木委員 税制は自助であるといいますか、誘導手段であるといいますか、そういった趣旨で、本体の論議が煮詰まっていないという趣旨の御答弁をいただいたのでありますけれども、そうしたことなど積み重なって、かつて私ども指摘をいたしました、企業資本金階級別の逆累進と申しますか、ああしたアンバランスの姿なども出ておると思います。一番大きなところでのそうした論議が実は中心課題であろうと思います。その点は、時間の関係もございますので、問題提起にとどめておきたいと思います。  このたびの特別措置整理合理化ということで、先般も同僚委員質疑に対して、整理件数、それから新しく加わった件数などの御紹介がありました。私はその中で、ここに海外投資等損失準備金海投損の中に、使用済み核燃料の再処理海外委託に係る特定債権追加掲記がありますので、これを一言伺っておきたいと思うのです。  これは委託先がイギリスとかフランスとか、先進資本主義国でありまして、しかもそこの民間企業ではなくて公社であるというふうに聞いております。そうだとしますと、技術的にはいろいろな見方がありましょうけれども、社会的にまた国際関係において、法律的に投資のいわゆる危険度あるいは損失度というものは、後進国の政情不安な、しかも相手の経営基盤法的性格の不明確なところに比べると格段に様相が違うのではなかろうか。かつて海外関係準備金関係先進国後進国と分けて処理をされた事例もありますし、そうした点から、新しく追加をされたということは納得をすることはできませんけれども、ひとつ御説明をいただきたいと思います。
  15. 大倉眞隆

    大倉政府委員 今回の追加いたしました分の債権性格につきましては、荒木委員おっしゃいましたとおりでございますが、今回追加いたしました理由は、事のよしあしを別にいたしまして、現実に結ばれております契約が、一方的に委託側でございますこちら側の電力会社リスクになってしまっておる。つまり、俗っぽく申しますと、再処理が何かうまくいかない場合にはこの委託金を返してくれますというならばよろしいのでございますが、そういう場合にもう返ってこないということでございまして、その意味で、通常の資源開発のための海外投資と同程度のリスク税制上認めることも妥当ではないかという判断をしたわけでございます。
  16. 荒木宏

    荒木委員 その場合に、それは電力企業が自己の危険負担、責任において契約をしたということは一つ言えると思うのです。同時に、そうした海外委託をする、かまどの灰の処理をよそさんに任せるといったようなことを、国として援助をして奨励をするのか、あるいは自前で行こうという方向に誘導していくのか、政策選択の問題もあると思う。  もちろんこの問題については、かねてから日米の交渉もこれあり、原子力開発における技術上の問題も多々絡んでおりますけれども、しかし少なくとも税制のサイドから見る限り、資本の上でもかつ経済力の上でも、日本で指折りと言われる電力企業がみずからの責任、危険負担においてやったことについて、しかも政策的によそに任しておきなさい、委託をしなさい、お任せをしていくんですということが、果たして税制誘導という形で国家がこれを援助し、しかもその減税における他の犠牲がありますから、そういったことの上で容認されるのかどうか。その点、先ほどの御説明では私は納得ができぬと思うのです。
  17. 大倉眞隆

    大倉政府委員 大変むずかしい問題であると思いますけれども、これまた私、専門家でございませんが、私どもの理解しております限りでは、やはりこの再処理は、国内で処理し得る限度を超えている部分であり、それは英仏の燃料公社に委託して再処理する方法しかない、しかも再処理そのものはどうしても必要であるという前提に立って物を考えているわけでございますが、その場合に、その委託金に関するリスクが、いい悪いを別にしまして、一方的に委託側が負わないと契約ができないという実態があることも事実のようでございまして、仮にいまこれを海外投資等損失準備金という形で準備金積み立てという処理を認めておきませんと、観念的に申しますと、将来うまくいかなくて全部それが戻ってこないときには、これはいわば当然損金になってしまいますが、一時に損金になってしまいますと、その期の収益に大きく影響して、ひいては電力料金がごたごたするとかという性質の問題でございますので、考え方としては、御批判のような角度も私わからないわけではございませんけれども、やはりその再処理のめどをちゃんとつけておくということが必要であり、そのためにいま考えられる知恵としては、英仏の燃料公社に不利な条件を忍んででも委託せざるを得ないという状態前提にしておると私どもとしては理解しておるわけでございます。
  18. 荒木宏

    荒木委員 私も、電力問題あるいは再処理委託問題は決して専門家であると考えておるわけではありませんで、そういう点から言いますと、その問題についての税制サイドでの議論にしかすぎないわけなんですけれども、しかし、電力企業がいま為替差益で大変なもうけをしているということは公知の事実じゃないでしょうか。しかもそれによって電力料金を下げるのじゃなくて、今後の値上げをできるだけ延ばすようにしますということで中へ抱え込んでいるわけです。世界一高い電力料金を認可をされて、そしていかなる状態にあろうとも、適正利潤率ということで原価計算上利潤を保証されている仕組みにある。そういった力もあり、いまや為替差益でうんとため込んでおり、もうけておるところが、そうしたリスクを伴う契約をするからといってこういう制度の優遇を与えることが、との財政危機のときにおいて国民的な納得を得ることができるだろうか、私が提起しているのはそういう点なんです。  特に、いま料金との関係でちょっと触れましたけれども、原価計算の仕組みは料金認可の中できちんと決まっています。そこには御承知のように、税法でいろいろ決まっておるようなこういった特別措置はほとんどその中には入っておりません。もちろん企業会計上、対株主の関係であるいは対債権者の関係で、公正妥当な企業会計原則に基づく会計処理がなされるのは、これは一面妥当する面があると思うのです。だがしかし、国が関与する面において、料金についてはこういう原価計算で、これで利潤が保たれてきちっといけるということで中身も調べて、アッパーリミットも決めて、なおかつそれで再投資も利潤も保証し、配当もできるというふうになっておるときに、それ以上に同じく国が関与する税金の面で、これは電力会社ですが、従来のさまざまな準備金や特別の措置の上にまだ加えてこういうものを設ける必要があるだろうか。国民のコンセンサスといいますか、財政危機だからといって物価調整減税すら拒否されておるときに、そういうことが理解と支持を得られるだろうか。これは技術的な問題も絡みますが、私はそういう社会常識的な意味で、また政治的な意味で、そういう問題提起をする国民に財政当局の責任者として大臣に御答弁、御説明をいただきたい。
  19. 村山達雄

    村山国務大臣 なかなかむずかしい問題とは思いますし、また、これが人によりましていろんな考え方があると思うのでございます。  現在好況あるいは不況、そういったところに焦点を当てて個々税制について、たとえば好況のものについては部分的には合理的ではあってもそれはやめるとか、そういう税制の組み方をするのかどうか、どうもそこの基本的な考え方の違いじゃないかと思うのでございます。為替差益があることはもうよくわかっておるわけでございますが、その部分は当然法人税でもらっているわけでございます。業種によりあるいは個々の事業によりまして、あるときはよくなりあるときは悪くなる、こう私は思っておるのでございますけれども、やはり税制としての現在の考え方は、そういうものをグローバルにとらえて、そうして、それだからどこどこの会社あるいはどこどこの業種には適用しないというような日本の税制仕組みではございません。恐らく各国でも、やはり税制は同じようにそれ自身の政策効果、そういったものを考えているのではなかろうか。当然全体の仕組みの中で税の公平が保たれる、あるいは全体の仕組みの中で政策効果が出ていく、こういう考え方ではないだろうかと思うのでございます。  したがいまして、この問題についてはこれ自身の問題として、いま言ったようなリスクのあるものはそれを見ることがいいことかどうかというふうに現行税制では判断すべき問題ではないかとか、私の感じでございますが、私はそのように思っておるわけでございます。
  20. 荒木宏

    荒木委員 立場、物の見方の違いということも大いに絡んできますので、私はエンドレスな議論ということは、国会質疑関係もありますから、お考えがはっきりすればそれはそれで、また別途政治的なそれぞれの評価の場があるわけですから、おきたいと思いますけれども、ただ、投資促進税制といい、あるいはいま申しております海投損といい、財界と言いましょうか、あるいは大企業関係人たちと言いましょうか、そういったところから提起された税制については、今回いろいろと財政危機の中でも採用されている。もちろん景気浮揚とか、当面のそれなりの政策目的、選択の基準ということは示されておりますけれども、しかし、その基準そのものが国民の要求には非常に厳しいということを、私は今回の提案を見て痛感をしておるのです。  そういう関連でもう一つお尋ねをしておきます。  土地重課税の緩和の問題であります。これはいろいろ御説明も伺ったところでありますが、適正利益率を適正価格にまで緩和することによって、土地の供給を促進するといったようなこともあるようであります。ほかにも理由はあるようでありますけれども、私はこういうように思うのです。土地の売却価格、それからその売却による利益に対する課税、それからコスト、不動産業者の土地供給に向かうかどうかという動機といいますか要素は、値段がどうであるか、税金がどのくらいだろうか、コストがどのくらいかかっておるか、こうしたことが判断の対象になろうかと思うのです。しかしながらその場合に、たとえば不動産業者のいまの経営実態を見てみますと、売上高に対する借入金比率は、三井不動産が二七三、三菱地所が三八〇、東急不動産が一九六、住友不動産が二九九、ほかのいろいろな業種に比べてみても非常に高いといいますか、これは御承知のとおりと思います。三菱商事は一四でありますし、松下電器は三、日立は三〇。したがって、売り上げに占める支払い利息と割引料の比率もまた、先ほど挙げました他業種に比べて十倍から数十倍ということに上っております。  そういう点から見ますと、金融コストというものが不動産業者にとっては一番大きな圧迫要因になっているんじゃないか。これは数字を挙げるまでもなく、平たい言葉で借り入れが十兆円とか七兆円とか言われまして、今度の土地税制緩和が不動産企業の金融コスト、金利負担の圧迫を軽くしてやるものじゃないか、結局はその肩の荷を軽くするところが一番のポイントになるんじゃないかと世間からも指摘されているところでありますけれども、そういうふうなことで、この点も、土地供給の増加に結びつく、あるいはまたこれによって土地問題の解決に大いに寄与するということは必ずしも確証がない。むしろはっきりしているのが、大手不動産業者が金利負担の点で助かるということだけがはっきりしているという指摘がありますが、主税当局の見解を伺っておきたいと思います。
  21. 大倉眞隆

    大倉政府委員 今回の土地譲渡益重課制度の部分的な緩和は、おっしゃいますとおり、優良な宅地供給の場合に限られておるわけでございまして、優良な宅地供給の場合にいわゆる二〇%の特別の課税を行わない、その条件の一つが、従来は適正利益率要件であった。しかし、この制度をつくりました後で国土利用計画法ができ、動き始め、適正価格要件による指導というものが定着し始めておるので、いわば二重規制になっておるから、優良宅地の供給に関して二〇%の特別の課税を行わない条件としては、現時点においてはもはや適正価格要件に置きかえることで十分ではないかという問題でございまして、このことによってデベロッパーの金利負担が軽減されるというような効果は、直接にはないわけでございます。  もちろんこのことによりまして、従来適正価格以下であるけれども、適正利益を超えるので売り渋っていたという部分が、現実にマーケットに出てくることを期待しておるわけでございまして、そのようにしてマーケットに出てまいりますれば、売れた分に対する金利の負担はそこで終わる、結果的にそうなることは事実でございますけれども、金利負担を軽減するためにやったということではない、その点はひとつ御理解いただきたいと思います。
  22. 荒木宏

    荒木委員 適正価格が一定の法律上の要件に基づいたものとして決められておりますけれども、しかしさりとて、適正価格に合致していないということで発動された事例は一度もないわけです。中止事例はない。そういうふうな点から見ましても、その適正価格なるものが果たしてどういうふうな水準のものであるかということはまたいろいろな点から論議のあるところでありますから、私はこの点についても、先ほど申しましたような一連の今回の特別措置法にとられた諸措置とともに、この内容には納得できないということをはっきり申し上げておきたいと思うのです。  時間が大分迫ってきましたので、特に法案の内容に直接関係するわけではないのですが、ちょうど三月十五日が確定申告の締め切りでございまして、それまでに本委員会で行政面一般質疑の機会がありませんので、この機会をおかりして、税務行政の面で一、二追加してお尋ねしておきたいと思います。  税務相談についてお尋ねいたしたいと思います。  これは私の方に連絡があったのですが、岸和田の税務署から、相談についてのお知らせという御案内の文書が参りました。あなたの相談については、相談担当者を某税理士と決めましたので、後日御連絡が参りますから相談してくださいという通知が参りました。続いて何がし税理士さんから、記帳相談日を何月何日何時と決めましたので御相談にお見えください、こういう案内が来たわけです。この通知を受けた人は、納税相談については日ごろから親しくいろいろと相談しておる向きもあり、どうして面識のない、こういう担当者と称される方から、日時、場所を決めて御案内があったのか不審に思いまして聞いてみましたところが、実は税務署の方から通知した相談に出席の悪い人、それの一覧カードをもらったのだ、そのカードに基づいて御連絡をしたのだ、こういう説明でございました。そこで納税者としましては、税務署の方で納税相談をなさる、あるいは苦情の受け付けをなさるというのは、これは所掌の事務でありますからもっともだと思いますけれども、それぞれが自分の信頼関係に基づいて相談をする専門家なりあるいは担当者がいるわけでありますし、また、そういう筋合いのものだと思うのですが、一方的に出席が悪いからといって氏名を通告されて、そして民間の団体あるいはそういった事務所から通知をもらうというのは、どうも釈然としないという話でございました。  この案件については、御連絡もしてありますので、事実関係を含めてひとつ得心のいくように説明をいただきたいと思います。
  23. 水口昭

    ○水口政府委員 ただいま岸和田税務署の件がお話に出たわけでございますが、先生御承知のように、現在われわれ税務行政の方におきましては、申告納税制度ということで、記帳指導に非常に力を入れておるわけでございます。  そこで、この記帳指導につきましては、税務署もみずから記帳指導を行いますが、最近では、むしろ税務署がやるよりも各種の民間の団体にお願いをしてやっていただくという件数が非常にふえているわけでございます。ただいまお話しの日本税務協会でもやっておりますし、それから商工会議所、商工会、そういったところでもいろいろ行っているところでございます。  そこで、日本税務協会の記帳指導でございますが、税務署といろいろ相談もいたしまして、それで日本税務協会の方から税理士さんに対して記帳指導の依頼をする、対象者に対して通知をする、こういうことをやっておるわけでございます。したがって、まだ岸和田税務署の件につきましては詳細は聞いておりませんけれども、そういったことの一環で納税者の方に御連絡を差し上げたのではないかというふうに考えております。
  24. 荒木宏

    荒木委員 それは部長さんだめです、税理士事務所の担当者の方がちゃんと税務署からもらったと言っているのだから。税務署からカードを持ってきました、こう言っているのですよ。それで納税者としては、そうか、税務署はそんなカードを民間の税理士さんの事務所に回すのか、それじゃカードを回したらそこに私の申告額や何か書いてあるのか、一体何が書いてあるのか、こういう疑惑を生じているというのですね。  ぼくはいまそのなさったことがいいとか悪いとか言っているのじゃないのです。納税者の間に卒然と生まれて広がっておるこの疑惑に税務当局はどうお答えになるかと聞いているのです。はっきり本人がここに判が押してあります、この人が税務署からカードをもらったのです、こう言っているのですよ。これはきのう改めてまたもう一度申しておるはずですから、ここに判を押している人に聞いてもらえればすぐわかると思うのです。  一般的な、協会に頼んでおりますと、それは協会が相談をやりますから来てくださいと看板を出すのはいいでしょう、あるいはチラシを配るのも場合によってはこれはいいかもしれません。だがしかし、個人の名前を、この人は出席が悪いのだ、こう言って事務所に渡して、そして呼び出して相談してください、これはもうひとつすっきりしない、国民はこう言っているのです。
  25. 水口昭

    ○水口政府委員 まだその詳細を聞いておりませんので、出席が悪かったから日税協にお願いしたかどうかははっきりいたしませんが、先ほど申しましたように、日本税務協会において記帳指導をやっていただく場合に、いろいろ税務署とも連絡があるわけでございます。そこで税務署といたしましては、たとえばこういう方について日本税務協会の方で記帳指導をやっていただきたいという希望がございます場合には、その氏名であるとか住所であるとか、そういったことは連絡をいたしておるわけでございます。
  26. 荒木宏

    荒木委員 これをうやむやにしますか、それとも調べて報告していただけますか。
  27. 水口昭

    ○水口政府委員 なお詳細をよく調べてみたいと思います。
  28. 荒木宏

    荒木委員 報告をしていただけますか。
  29. 水口昭

    ○水口政府委員 調べた上で報告をいたします。
  30. 荒木宏

    荒木委員 部長のお話ですと、納税者の氏名、住所その他、当該管内の納税者を全部知らせるのか、あるいはそのうちピックアップして知らせるのか、いろいろあるかと思うのです。知らせる内容もいろいろあるかと思うのです。しかし、公務員が全く関係のない民間の人にそういうのを知らせて、当然だというふうな趣旨答弁だったと思うのです。全然疑念がない。守秘義務とか、公務員の行動についてはいろいろな制約があることは御承知のとおりですけれどもね。ですから、報告をいただいた上で、私は改めてその点も含めて質疑をしたいと思いますので、これはもちろん本日ではありませんが、ひとつ委員長にもこれは御留意を願っておきたいと思います。  関連いたしまして、いま相談という御説明がありました。税務署の機能は、相談だけでなくて、苦情の受け付けというのもあるように聞いております。大蔵省の組織法ですか、設置法によりますと、税務相談とそれから苦情の処理ということがあるようでございますが、この「国税庁二十年史」というのを見ますと、昭和二十八年ごろには、苦情相談の趣旨を徹底させるために、ラジオ、新聞等を通じて積極的に広報宣伝、大いに努められて、商工会議所、それから役場、学校の協力も得て積極的な施策を講じた、二十九年七月には苦情相談所事務規程を制定をした、こういう記載がございまして、昭和二十八年の記録を見ますと、税務相談は七十二件で一%、苦情の処理は七千九十七件で九九%、つまり、外部から税務署の方にひとつ話を聞いてくれと言ってこられたうちの、相談は一%で、苦情が九九%です。これは物の見方によりますと、その後事務処理が改善をされて苦情は減ったんだ、こういう見方も恐らく私は成り立つかもしれぬと思う。しかし同時に、いま苦情の受け付けもやりますよということはほとんど世間に知られてなくて、もっぱら、先ほどはがきでも申しましたですが、大体相談一本やりであります。したがって、この苦情がオープンな公正なルールで処理をされないで、だんだん沈潜するといいますか、それがいろいろなインパクトを生じてくる。  私は、やはりこの相談と苦情処理というのは、法律のたてまえからしましても二本立て、車の両輪という面があろうと思いますので、そういう点でひとつ相談とあわせて苦情処理仕組み、それから取り組みを充実をするように進めていただきたい。そうすべきではないか、こう思いますが、見解を伺いたいと思います。
  31. 谷口昇

    ○谷口(昇)政府委員 ただいま先生の御指摘がありましたように、私ども税務行政では、申告納税制度でございますので、一方では納税者の方々に対しまして、その申告が確実に行われますように、適正に行われますようにいろいろとお願いをしております。同時に、その場合に私どもも、出てきました申告に対して、たとえば調査という形で更正をさせていただく場合もありますが、基本的には、指導でやるとかあるいは広報でやるとか、そういう機能を通じまして、できるだけ適正な申告が出るようにお願いをいたしております。同時に、国税庁立場といたしましては、ただいま先生から御質問がありましたように、一方において広報し、指導する、他方、納税者の方から相談がありましたりあるいは苦情がありましたときには、積極的にその相談及び苦情をお聞きしてそれに対処していく、こういう姿勢をとっております。  御案内のとおりに現在、各国税局には税務相談官を置いております。さらにこの税務相談官は、主要税務署にも国税局の分室という形で配置をさせております。そういうところで、税務相談あるいは苦情というものの処理に専念させております。なお、その相談官以外にも、五万の職員がすべて、苦情とかあるいは相談がありましたときには、親切にいろいろお答えするようにという趣旨で指導をしておるつもりでございます。
  32. 荒木宏

    荒木委員 いまお話しのように、大蔵省の組織規程でも、税務相談官は相談に応ずること、それから苦情を処理することとなっております。ところが、文書の宣伝にしても、あるいは最近はのぼりだとか旗なども立てておやりのようですけれども、相談はあるのですが、苦情を言ってくださいというのは見当たらぬようですね。私もちょっと気をつけて見ていますが、苦情の申し立てを言ってくださいということもひとつPRをしなければならぬじゃないか。これをはっきり答弁をいただきたいと思います、苦情の処理を税務署として責任を持って進めますと。
  33. 谷口昇

    ○谷口(昇)政府委員 荒木先生の御指摘を待つまでもなく私どもは、税務に関する相談がありますとか、あるいは税務に関する苦情がありますことについては、積極的に対処をしていくという姿勢をとっておりますので、御案内と思いますが、たとえば封筒であるとか、あるいはテレビで私どもが出演しました場合にも必ず、税務について何か苦情ないし相談がございますならば、税務署あるいは相談官の方に申し出てくださいということをお話をし、必ず電話番号などもお知らせしておる、そういう体制をとっております。
  34. 荒木宏

    荒木委員 最後に、職員の人の健康問題について一言お尋ねをしておきたいと思います。  東京国税局で、本年に入ってから死亡された職員の方は何名でしょうか。
  35. 谷口昇

    ○谷口(昇)政府委員 五十三年一月一日から三月三日までと言われるとちょっとわかりませんけれども、五十二年四月一日から三月三日現在で三十名の死亡になっております。
  36. 荒木宏

    荒木委員 私は、国税職員の皆さんの組合の方で調査をされた資料をもらったのですが、局報によりますと、五十一年は十二名であります。五十二年は二十二名、五十三年になりまして一月から二月二十八日までで十名であります。六日に一人の人が亡くなっております。特に本年に入りまして、いろいろ徴税体制での残業、時間外、それから体の調子が必ずしもよくない、しかしなかなか休めない、こういった事態が続いておるようであります。ここのビラを見ますと、「一人の死者も出すな」というふうな見出しになっておるのです。私は非常に悲しいことだと思うのです。労働条件の向上だとかいうことを言う以前の、人間としてせめて生命が保たれるようにしてくれ、こういった要望が機関紙に出てくるというようなことについては、私は当局の皆さんに十分対策を講じていただきたいと思うのです。健康診断などもやられておるようでありますが、その診断方法の改善や拡充、それから、国税庁職員健康管理規程の文書が従来は職場に回覧をされておったようでありますが、いまは一部の管理職の人たちの間の回覧にとどめられておる、こういった指摘もあります。  時間の関係で個別事例の内容までは申しませんけれども、また引き続き質疑を続けるといたしまして、いまの事例について、今後の職員の健康管理改善についての決意とそれから方途についてお尋ねをして、質問を終わります。
  37. 谷口昇

    ○谷口(昇)政府委員 ただいま御質問があったわけでございますが、税務職員の病気の状況を見ますと、五十二年三月末におきまして、病気療養のため休養している者は二百十人であります。また、勤務を制限している者は七百二十四人、計九百三十四人となっております。ただ、これは全職員に対する割合は一・八%であります。この比率は、四十六年度以降連年低下の傾向をたどってきております。また主な疾患は、肝臓病、高血圧症、胃腸病でありまして、成人病のウエートが高くございます。  また、最近の各年度別の死亡状況を見ますと、若干の増減はありますけれども、四十六年度以降の五年間を通して見ました場合に、その死亡率は十万人につき百六十四人で、国家公務員全体の百八十人に比して低いという数字になっております。また、それを死因別に見ますと、やはり悪性新生物、それから心疾患、中枢神経系血管損傷等のいわゆる成人病によるものが多く、しかもその多くが四十歳以上の職員で占められておりまして、職員の高齢化が原因をしている、このようにも考えております。  そこで、当庁といたしましては、こうした状況を踏まえ、病気の早期発見でありますとか早期治療だとか、こういう職員の健康の維持増進には従来から力を注いでおりますが、人事院規則に定められました健康診断の基準以上、これはたとえば尿検査で申しますと、人事院規則では三十五歳以上の年齢の人には年一回となっておりますが、私どもの場合には全職員に対して年二回であるとか、あるいは血圧測定で申しますと、人事院規則では三十五歳以上に年一回でございますが、私どもは三十歳以上に年三回、三十歳未満は年一回、こんなふうに尿検査、血圧測定の対象年齢の引き下げだとか回数の増加、こういった基準以上の検診を行うとともに、特に成人病対策として、人間ドックを初め、肝機能検査、心電図検査、中性脂肪、総コレステロール検査等の成人病検診を計画的に実施するほか、幹部職員に対して、部下職員の健康状態を常時把握し適時適切に配意するよう指示するなど、職員の健康維持に鋭意努力しているところでありまして、今後とも努力をしてまいりたい。また、税務の繁忙期にちょうどいま入っておりますが、税務の繁忙期においては、その前後に血圧、尿の検査及び問診などの健康診断を実施いたしまして、また、期中にも嘱託医による健康相談とか血圧測定を行うなど配意をいたしておる、こういう状況でございます。
  38. 荒木宏

    荒木委員 私が指摘をしましたのは、ことしになって一月、二月で十名の死者があった。もちろんいろいろな原因はありましょう。また、当局がいままで全く何もしていなかったというような指摘はしておりません。  従来から、年齢が高いということもあり、この委員会でも特に労働条件、健康の配慮については論議を重ねられてきたところであります。そうしたことを前提にして私は、にもかかわらず、こうした財政危機の折から徴税事務が増高して、職場ではいろいろな声が上がっておるし、死者がまたこの二カ月で十名になっておるという事実を指摘したわけです。私は、いまの答弁に立たれた方の答弁内容を聞きまして、これだけのことをやっておると得々とおっしゃるその心根が——私は人の命の重要さということについてもう少し真剣に考えていただきたい。私は、皆さんが何もしていなかったとか、していることが間違った方向だとかいうことを決してこの分野では指摘しているのではないのです。にもかかわらず、幾らされても、ここにありますような一家の働き手を失った人たちの悲しみというものは、皆さん方のように責任のある立場にあられる方々ほど身にしみて十分得心をしていただきたいと思います。  私は、この十人の方々の遺族が、もしこの席で先ほどの答弁を聞いておられたなら、それでは一体どうしてうちの主人は亡くなったのだろう、そんなにしてもらっていたのにどうしてこんな結果になったのだろうという気持ちを、必ず悲しみの中で持たれると思うのですよ。私はそうしたことで、一度物の考え方といいますか、この問題についての受けとめ方をひとつ深刻に考え直していただくことを強く要望して、質問を終わりたいと思います。
  39. 大村襄治

    大村委員長 午後零時三十分再開することとし、この際、休憩いたします。     午前十一時四十二分休憩      ————◇—————     午後零時三十五分開議
  40. 大村襄治

    大村委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  午前に引き続き質疑を続行いたします。沢田広君。
  41. 沢田広

    沢田委員 租税特別措置法と同時に、同一に提案されました法案につきまして、数点について質問をしていきたいと思います。  いままで同僚の議員等から質問をされた点もあるのでありますが、いつも政府は、税制調査会の意向、答申を尊重する、そういう立場で来ておられたと思うのであります。今回の提案の中で、直截に言うならば医師優遇税制問題、さらに課題として先日も答弁をされました総合課税の問題、同時に土地税制の問題、この三つについてのうちの総合課税については、若干の検討の余地がある、しかし、医師優遇税制については少なくとももう時期は来ているんだ、きわめて遺憾である、こういう主張をなさっておられるわけであります。税制調査会として考えてみた場合に、やはり国民の税に対する信頼感、あるいは不公正是正、いわゆる公正を期すという立場でそれぞれ考えてきておられたと思うのであります。それを、政治の舞台で正当な理由なくして排除をしていくということは、言うならば邪道になるのではないかとも思うのであります。  特に土地の重課制度の改正につきましても、これはまだ検討の余地がある、こうわざわざ言っているわけであります。これをいま直ちに外すということは土地の暴騰を招くおそれもある、それを抑制するためにこれができたのであって、いま直ちに解除するべき段階になっていない、こういう見解が述べられていたと思うのであります。そういう条件の中でなぜあえてこれを提起をするに至ったか、その点明らかにしていただきたいと思うわけであります。
  42. 大倉眞隆

    大倉政府委員 五十三年度の税制改正に関しまして、住宅、土地税制というのは一つの重要事項として慎重な御審議がございました。お手元に答申そのものをお持ちかと思いますが、土地税制につきましては、主として宅地供給の観点、つまり住宅建設を促進するというのが重要な政策課題であるということは、これは税制調査会委員の皆様全く異論なしであったわけでございますが、さて、住宅を建てるためには土地が要る、宅地供給の促進のために土地税制を手直しすべきかどうかということが、非常な問題になったわけでございます。  これに対しまして、時間の関係結論を申し上げますと、慎重な配慮が必要だというのが多数意見でございます。したがって、土地税制については、以下そのとおり読みますと、「その基本的な枠組みを現行のまま維持すべきであり、宅地供給の促進あるいは土地利用の効率化という角度からの手直しが必要であるとしても、それは必要最少限にとどめるべきである。」という答申をいただいたわけでございます。  今回御審議をお願いしております土地重課制度の改正も、まさしくこの答申の線に即して御提案をしておるつもりでございます。と申しますのは、基本的枠組みというものは全く変えていないわけでございまして、ただ宅地供給の促進という角度からの必要最小限の手直しをお願いしたいという趣旨ででき上がっているわけでございます。
  43. 沢田広

    沢田委員 医師優遇税制については答弁がありませんでしたが、これもあわせて聞いているわけでありまして、これもまことに遺憾であるとわざわざ指摘をされているわけであります。自民党の方の党内事情によってこれを五十三年度中に結論を出す、こう言われていると聞き及んでおります。しかし、この五十三年度という言葉は、三月末という意味だと思うのですね。と仮定しますと、来年の一月からの税制の暦上の年からいきますと、来年度に何らかの改正をするとすれば、一月一日以前にそれぞれ必要な準備ができる必要性があるのだと思うのですね。言うならば帳簿の問題であるとか、領収書の問題であるとか、あるいは備品の台帳の問題であるとか、そういうものが当然伴ってこなければならないだろうと思うのであります。ですから、五十三年度中ということば、言うならば今年度でなければならないとも思うのでありますが、その点もあわせてひとつお答えをいただきたいと思います。
  44. 大倉眞隆

    大倉政府委員 社会保険診療報酬課税の特例につきましては、税制調査会は累年にわたってその是正方を強く答申しておられます。私ども税制を担当しておる立場の者といたしましては、何とかこの改正をできるだけ早くお願いしたいということで関係方面に終始要請を続けてまいっておりますが、五十三年度の税制改正に関しましては、自由民主党の方で、現在の特例は五十三年度限り存続させる、それ以後については適正な措置を別途検討するのだということをお決めになりまして、現在の特例を五十三年度限りの存続ということにするために必要な議員立法を出そうということで、いま検討が進められておるというふうに承知しておりますので、政府といたしましても、自由民主党のそのような検討の推移を待ちながら、政府側としての適切な措置の研究を進めてまいりたいというふうに考えておるわけでございますが、五十三年度まで存続させるということが法律的にどういうことになりますか、それは現在、自由民主党の中で研究しておられる問題でございますので、私から余り先走っていろいろ申し上げることは差し控えたいと思いますけれども、ただいまの御質問の御趣旨に即して申し上げますと、この特例は個人、法人両方に適用がございます。  恐らく自民党がお決めになりましたのも、五十三年度というのをそう法律的に厳密な意味で使っておられるのではないだろうと思います。したがって、法人については五十三年度——法人の五十三年度というのも、実は詰めていくと非常にむずかしいのでございますけれども、大体常識的に五十二年度と思われる事業年度ということでございましょうし、個人の場合には、それに対応して五十三年分所得税というふうに考えられるというのが、つまりあの公式に自由民主党の税制改正大綱で決めておられる文章を法律的に翻訳いたします場合には、一番素直な考え方ではなかろうかと思います。  その意味では、五十三年分までの所得税はいままでどおりである、五十四年分以降の所得税については別途の措置が講ぜられるというように私どもとしては理解しておるわけでございますが、さて、この五十四年分についての別途講ぜらるべき措置の内容というのは、まだ詰められておらないわけでございますけれども、その内容を五十四年分以降に適用するための所要の法案というのは、五十四年度税制改正を審議していただきますことしの暮れに召集される通常国会に提案されるということで法律技術としては間に合う。つまり、いまの通常国会でなければ間に合わないということではなくて、ことしの暮れに召集される通常国会に何らかの改正案が提案されれば、それで五十四年分以降の所得税に適用されるという法律関係には問題がないというふうに考えます。
  45. 沢田広

    沢田委員 これは自民党の党籍を持つ大臣に聞かなければ、事務当局から聞いてもある意味においては話にならないのでありまして、大臣としては、党内の意思の決定としてこの五十三年度に打ち切るということは、いま言ったように一月一日から新しい制度に変わるとすれば、帳簿書類その他は事前にある程度の予告期間を置いて、それぞれ制度の内容を告示をしたり、通達で出したり指導したりしなければならぬだろうと思うのです。いま十二月で間に合うなんて言っておりますけれども、それこそ家族でやっている人なんかでは、果たして帳簿をやる人をそれから採用して間に合うのかと言えば、これは間に合うわけはないのですから、せめて半年ぐらい前に事前に予告するということは、当然の行政指導の一環だと思うのですね。ですから、いま十二月と言われているのは若干無理のある話であって、当然その前の段階で、これは五十四年一月一日からはこう変わりますというものが指導されなければならぬだろうと思うのであります。中身の問題は別といたしましても、そういうことに対して、ただ五十三年度中は、五十三年度中はといううたい文句だけで国民納得するわけはないだろうと思うのであります。その点ひとつ、これは自民党の閣僚の一人としてお答えをいただきたいと思います。
  46. 村山達雄

    村山国務大臣 いまの話も、非常に事務的な間に合うかどうかという話になりますと、一方は年分課税でございますし、一方は事業年度課税でございます、ある期間でございますから。ですから、帳簿その他は十分間に合うと思っているわけでございます。  具体的に申しますと、恐らく予算編成の段階で案は出てまいりますから、個人について言いますと来年の一月一日から、法人で言いますと、場合によりますと来年の四月一日以降終了する事業年度あるいは開始する事業年度、こういうことになろうと思いますので、間に合うのではないかと思っております。
  47. 沢田広

    沢田委員 ただ、お医者さんの中にも、お医者さんというものが世の中の一番悪いものの標本である、言うならば悪税の最たるものはお医者さんである、こういう汚名を着ながら商売をしているということもきわめてつらいだろうと思う。これを称してひいきの引き倒しと言うのですよ。結果的にはお医者さんの中でも、一般の青色であろうと法人団体の申告であろうと、十分それでいいという意見の人も多いわけです。ですから、ひいきの引き倒しみたいに、救ってやるようなつもりになっていて、かえってそのことが、その他の税あるいは税全体に対する信頼感あるいは政治に対する不信感というものを助長するマイナス面というものを考慮に入れないで、この問題を考えないわけにはいかないだろうと思うのです。  その点からもこれは要望として、大蔵大臣から、今回提案しなかったことははなはだ私は遺憾——私も含めて遺憾だと思うのでありますけれども、その優柔不断さが今日の景気の後退を招いたということにもなるのだと思うのでありまして、苦言を呈しておきまして、次の問題に参りたいと思います。  租税特別措置法というのは、言うならば今日的課題で言えば、内需の拡大の要請というものに対する政策手段であると私は位置づけるわけでありますが、その点についての見解を簡単にお聞かせをいただきたいと思います。
  48. 大倉眞隆

    大倉政府委員 一般論といたしましておっしゃるとおりでございまして、租税特別措置というのは、各税法の本法にきめております原則の特例を設けまして、場合によりましては減税によって誘導効果を持ち、場合によっては増税によって抑制効果を持たせて政策目的に役立たせる、それが景気拡大である場合もあり、そのほかの個別の政策目的である場合もある、そういう性格のものであると理解いたしております。
  49. 沢田広

    沢田委員 そうして、政策の手段であるということになれば、いわゆるその租税で行うことが有効なのか、あるいは補助金等によって賄うことが有効であるのか、あるいはほかの行政指導というようなものによって行うことがいいのか、こういう判断にやはり求める基礎が一つあるだろうと思うのであります。必ずしも租税特別措置法がすべてではないというふうにも受けとめます。また、租税特別措置法全体に向けて政策の目的が現在の段階において合理的なのかどうかということも、これは問われている一つだと思うのであります。  そういう意味において、きょうは主として土地の税制の問題をとらえていきますけれども、そういう意味においての政策目的というようなものから非常に不合理的である。それから、手段としてこれを租税の方で優遇措置をとるということは有効でない。そして、公平を害してもメリットがあるという分野があるかといえば、公平を害してデメリットが出てくる、こういうことだと思うのです。そしてまた、もう一つの税の基本であります大企業に偏しないかというと、これが大企業に偏する、こういう一つ結論が出てくるわけでありまして、その政策目的が合理的なのか不合理なのか、手段として租税が有効なのかどうか、あるいは公平を害してでもそのメリットというものが出てくるというのはどこにあるのか、あるいは大企業に偏しないか、こういう一つ意見に対して、今日の租税特別措置法があるわけでありますが、特にこの土地の税制について、以上四点についてのうちの第三点と第四点、公平を害してでもメリットがあるという点はどこにあるのか、それから、大企業に偏しないかということについてはどう答えられるのか、その点ひとつお答えをいただきたいと思います。
  50. 大倉眞隆

    大倉政府委員 御質問は、今回の土地重課制度の部分的な改正に関してだと思いますが、そうであるといたしますと、おっしゃいました表現の中での第三点は、現在の土地重課制度というのは優遇ではなくて抑制でございます。その抑制を部分的に解除しようというものでございます。したがいまして、部分的に解除することによって何を政策目的としてねらっておるかと申しますと、これは優良宅地の供給がそれなりにふえてくれるということを期待しているというのが政策目的でございます。  おっしゃいました第四点、大企業に偏するのではないかという点は、私どもは必ずしもそう考えておりません。全体が抑制的ないまの制度でございますが、今回これを部分的に解除いたしますその実質は、むしろ俗な言葉で申しますと、中小規模のデベロッパーがこれによってある程度宅地供給に出てきてくれるかということでございまして、大規模のデベロッパーは、今回の改正があるから土地がふえるとか、今回の改正がなければ土地が売れないとかいう状態ではいまはございません。
  51. 沢田広

    沢田委員 わざわざほかの国土庁、建設省も呼んでいるわけでありますから、そちらへも質問しておきますが、いまの言われた点で二、三反論をして明らかにしておきたいと思うのであります。  昭和二十年から、これは読み上げていきますと大変なんでありますが、昭和二十年当時が十三万戸程度です。それから昭和二十九年度あたりが十八万程度であります。それから昭和三十五、六年が三十七万戸程度であります。昭和四十年で六十万戸程度の建設です。それからピークになりました昭和四十五年度で百十万戸、四十八年が一応山に来て百五十万戸、四十九年は九十一万戸、五十年度が九十四万九千戸こういうふうに、一番最初は十三万一千戸、二十年の場合。三十六年の四十万、これも余り変わりがないのであります。そしてこの五十年、合計二千百八十四万四千戸が二十年から今日までできてきているわけであります。  もちろん増築とかそういうものはあるだろうと思いますけれども、現在の国民の勤労所得者数大体三千万、二千五百万とか三千万とか言われておりますけれども、大方三百万戸いま不足をしていると言われているわけであります。木造家屋で三十五年の耐用年数があると仮定をいたしますると、いま言ったような住宅というものの受けざらといいますか、受け入れる態勢というものは、核家族化によって生まれ出る人口数というものは、いま言われた三百万と言われている数字だと思うのでありますけれども、そういうことで考えてみるならば、何もこの土地税制をここであえて変えなくとも、現在のところ九十四万九千、異常に景気が悪いとか言いながらもそれだけの民間住宅が自力で建設されている、あるいは年度から見れば逐次これは上昇している、そういうことから見て、これをあえて税制の中に含める必要性はないのではないか、こういうことが一つ言えるわけであります。  でありますから、もう一つ言ってしまいますが、具体的に言いますと、三井不動産は鴻巣に坪五千円で土地を買っております。西武は滑川村にやはり五千円で買っているわけであります。京浜急行も、横浜でありますが、八千九百円、それから横須賀でも三千三百円、三浦で八千九百円。東急かこれまた千八百円で、高麗川が六千九百円。京成は、市原で三千八百円。龍ヶ崎で二千七百円、こういうふうに買ってあるものが眠っているわけですね。ここで適正価格というものに変えることによって、今日の価格、国土利用計画法の価格に変わることによって、少なくとも十倍から近い金額に変わっていくことは間違いない。  東武が持っている土地が千百十七万平米、二百五十六億で持っている。三井は千二十三万平米で百九十八億を投資してきている。東急は千七万平米で三百四十三億をかけてある。西武は七百五十三万平米で百十六億、京浜、これは京急興業でありますが、六百五十九万平米で百七十五億、京成電鉄は八百六十九万平米で二百五十億、三菱地所が百二十万平米で五十九億、合計五千五百四十八万平米で千三百九十七億がこの当時に買い占められた土地として存在しているわけです。  これが変わったならば、当然この価格というものは適正価格。適正利潤は六%、あるいは四%の一般事務費、それを加えて一〇%、こういうことになって、適正利益率で二七%を限度とする、こういうことになっているわけでありましょうけれども、しかしながらこれが適正価格になれば、必然的にいまの土地公示価格に比例していくことは間違いない。たとえば年利六分と計算をしていったとしても、あるいは八分と計算をしていったってその金額にはならないだろう。これをどう解明されるのか。また、私が言った、そのメリットはあるのかどうかということと、大企業に偏しないのかという、こういう質問に対する回答として、ひとつお答えをいただきたいと思います。
  52. 大倉眞隆

    大倉政府委員 幾つかの点を御指摘になったわけでございますが、まず、住宅戸数としてはもう大体充足できているのではないかというような御趣旨の点もございましたけれども、これにつきましては、やはり新規の住宅需要というのは依然として強いわけで、しかも五十三年度は、景気対策というのを含めて民間の住宅建設をできるだけ促進してほしいということを政府としては期待し、そのために、主としてそれは財政資金の活用であり、あるいは民間資金の利用になるわけでございますが、税制としても、そのための措置で講じ得べきものがあれば講じたいというのが基本的な考え方でございます。  ところで、新規の住宅を建設するために金をつけてみても、土地がなければ家は建たないではないか、したがって、土地をどうやって供給したらいいのだということとの関連で、土地税制議論が出てきたということでございます。  そこで、土地譲渡益に重課するという、先ほどの言葉で申しますと抑制的な税制の中で、抑制を緩和というか解除するという仕組みがもともとあったわけでございまして、それは、優良宅地を供給する場合には二〇%の特別の課税をしないという形をとっておった。その二〇%課税をしない場合の条件が幾つかあり、その中の一つに適正利益率というものがあった。しかしそれは、その税制をつくった後で国土利用計画法が成立し、国土利用計画法に基づく届け出制度が運用され、適正価格による行政指導が成熟してまいりましたので、優良宅地の供給を順便にさせるという意味で言えば、適正価格による指導と適正利益による抑制との双方で二重に規制する必要はないではないかというので、今回の改正に至っているわけでございます。  そこで、そのことが大手デベロッパーを不当に優遇するものになるかといいますと、そうは考えておらないということを私は先ほど申し上げたわけでございます。  御指摘になりましたいろいろな数字は、むしろ関係省庁からお答えをすべき問題であろうと思いますけれども、これは釈迦に説法でございますが、御指摘の数字は、素地の買い入れ値段であるように思いますので、当然のことながら、それにいろいろな造成をしまして初めて宅地になるわけでございまして、造成費用と投下資本に対する金利をすべて合わせたものがコストになるわけでございますから、素地の購入費用と売価の差額が全部利益になるという性格のものではないわけでございます。
  53. 伊藤茂史

    伊藤説明員 住宅の戸数の話が出ておりましたので、お答え申し上げます。  四十八年の住宅統計調査に基づきまして、現行五カ年計画が立てられておるわけでございますが、その時点でいわゆる住宅問題を抱えておる世帯が一千万世帯くらいある。これは主観的な要素も入っているわけでございますが、そういうことを基礎にし、老朽住宅あるいは狭小な住宅等を建てかえるというようなものを含めまして、五十一年から五十五年の五カ年間に八百六十万戸の住宅を建てる必要があるということで、御案内のとおり閣議決定をいたし、鋭意努力しているところでございます。したがいまして、これを年間に割り戻しますと、大体百七十万戸くらいになるわけでございまして、その中の六割ないし七割が民間自力ということになりますと、計画上はまだまだ住宅が必要であるということになろうかと思います。
  54. 沢田広

    沢田委員 方角違いなことしか言ってないのですが、国土計画法に基づく白書によって見てみますと、市街化区域で二千平米以上のものが四万一千二百十三件で四万六千ヘクタール、それ以外の都市計画区域で五千平米以上のものが五万九千百十八件で二十万四千ヘクタール、それ以外の区域に買ってあるものが一万平米以上のものが九万三千三百六十五件で六十三万二千ヘクタール、こういうことで合計十九万三千六百九十六件、八十八万二千ヘクタール、これはあなたの方の資料で出ている数字なんです。市街化区域、その他都市計画区域以外の区域、いわゆる白地と言われているところに大多数が集中していることだけは明らかだと思うのです。  ですから、そういう形において、先ほど局長は造成費と言われたが、確かに造成費結構ですよ、それから一般の事務費結構、セールスマンの経費も結構ですけれども、それを掛けてみたっていまの公示価格とは雲泥の差があることだけは間違いない。たとえば三井不動産が持っている鴻巣の箕田を例にとっても、坪五千円で、いま十万円以上、平米で言って大体そんな見当になるでしょう。いま造成していますが、恐らくお売りになるときには十五万くらいになってしまう。そういう状況から見て、どう計算してみても、坪五千円で買ったものが十五万円になるという比例計算というものは成り立つわけがないですよ。そういうことをいまあなたがおっしゃってみたとしても、これは不当利益を生む以外の何物でもないということだと私は思うのです。  それからもう一つついでに言いますけれども、これも国土白書で見たのですが、現在資本金一億円以上の企業が所有をしているものが、不動産関係で四三%、建設業関係で持っているものが一七%、そしてこういうような関係で全体の八割を占めており、これらの合計が七十七万ヘクタールと言われている。こういう資料から見ても、いかに大企業を優遇するということにつながるか、同時にまた、異常なほろもうけを生み出す根拠に今度の改正がなるということにつながるかということは歴然としていると思うのです。  さらにもう一つ加えて付加価値の面からいきますと、これも後でお聞きしたいのですけれども、不動産の自己資本というものはないのですよ。いわゆる手弁当です。自分で資本を投ずるものはない。口車に乗せるという言葉がありますけれども、とにかく一生懸命そうやって歩くだけなんです。あとは宣伝の広告費だけなんです。付加価値は卸売の十倍、小売の三倍。これは原価回転率は卸売、小売は二・五倍です。ところが不動産は資本の回転率は〇・二一です。それでいて利益率は物すごく三四%、四十四年、五年あたりは三六%という売上利益率を上げているわけです。小売業者などは卸の三倍も回転している。十倍も回転している卸の方でもそんなにはもうかっていかない。いかに不動産業者が利益率が高いか、しかも資本の回転が少なくて利益が物すごく多いかということを、この数字が示しているのじゃないかと思うのであります。  そういう意味において、以上の諸点についてひとつ解明をしていただきたいと思います。
  55. 佐藤和男

    佐藤説明員 まず未利用地の状態でございますが、いまほど御指摘にございしたように、昭和四十四年一月から四十九年十二月、まさに国土利用計画法が施行になりますまでの間において企業が取得いたしまして、現状を都道府県等で把握した状態で未利用の状態にあると判定したものは、三十万ヘクタールでございます。そのうち市街化区域内で二千平米以上のものは一万二千ヘクタールでございます。したがって、未利用の状態から察すれば、その他の市街化調整区域ないしは白地区域に多くが布存することは御指摘のとおりでございますが、今回の税制改正で非常に短期に宅地供給の促進を期待しますものは、いま御説明しましたうちの主として市街化区域内の一万二千ヘクタールが、周囲の都市環境がおおむね整備されているということから、非常に短い期間で当面の宅地供給に十分資するのではないかということで、当庁としても御要望した次第でございます。  それから第二の素地価格と周辺の公示価格との関係でございますが、先ほど御指摘の素地価格がたとえば平米五千円等具体の事例について調査してございませんので、にわかにお答えしかねますが、後ほど建設省等から御説明があろうかと思いますが、一般的には、現在の宅地造成の実態からすれば、平米五千円というような素地をベースに、現行の非常に過重な関連公共施設整備費負担、それから、立地等の関係では造成費も相当かかりますものでございますから、御指摘のような、現在の状態においてそういう素地を使って過大な利益が発生するという事実はないものと考えます。  それからもう一つ一般不動産の転売利益云々のお話がございましたが、今回の法人重課制への改正は、いわゆる造成をしてこれを優良宅地として売る場合におけるものでございまして、素地を通常の不動産の仲介ないしは転売という形で転がす場合のことについては全く従前のとおりでございまして、そういうものが宅地供給に資さないという点では認識は一致しているのではないかというふうに考えております。
  56. 沢田広

    沢田委員 続いて、若干具体的な問題については解明されませんけれども、これは追って別の機会にするとして、さっき言ったような大企業に奉仕。いままで買ってきた分については、適正利益率というのはどんな計算をしても、坪五千円で買ったものが、どう造成費をかけても十五万の値にはならないと私は見ています。  私の方の沿線ですからすぐわかりますが、近く箕田駅ができるという話もあるくらいですから、恐らく三十万くらいに上がってしまいますよ、そのためにいろいろ政治家の方がお骨折りをいただいている人もいるくらいでありますから。また、地元の住民も要望しているわけですね。恐らく箕田のところに駅でもできれば、たちまちこの値段は三十万や四十万という値段になっていくわけです。適正利益率ならばそういうことは起きてこない。だから、土地の値段というのは、これからまた別の問題に入っていきますが、いまおっしゃられたように、たとえば三井不動産が鴻巣の箕田でつくっている坪五千円の十万坪くらいの土地、そのくらいの土地が調整区域が使われて埋め立てがされているのですけれども、その限りにおいて、恐らくあそこに箕田駅ができるというような条件が生まれれば、いま言ったような値段になってくることは必至だと思うのです。それが適正価格だということになれば、それは駅の前なんだから、公示価格によって高くなるんですよ。それはどうですか。
  57. 佐藤和男

    佐藤説明員 確かに先生御指摘のように、駅等が付設されまして周辺の土地に対する効用が増加するという場合には、当然地価公示価格といたしましては、取引事例なり当該土地の効用に着目して判断いたしますので、上昇することはあり得ることだと思います。ただ当然のことながら、駅等の付設がございます場合に、関連しますいろいろな土地施設の整備が行われるわけでございまして、そういうものが当該団地との関連がございます場合には、現在の実態からしますと、相当重い関連公共公益施設負担がなされていまして、現下の実態からすればそういうものによってほとんどが占められているということが事実だろうと思います。
  58. 沢田広

    沢田委員 そういう答弁を期待しているのではないのです。開発規制とか関連投資ということはこれからまた聞きますけれども、具体的にいま言ったような条件になった場合に、従来の法律適用することが公平なのか、今度の法律適用することが公平なのか、どちらなんですかという質問なんです。適正利益率を適用する方が正しいのじゃないですか、いわゆる公示価格にすることは、そこにべらぼうなもうけというものを生み出すことになりはしませんか、こういう性格論争をやっているわけですから、開発規制があるかどうかの問題はまた別途やりますから、その点だけ答えてください。
  59. 佐藤和男

    佐藤説明員 御指摘のように、今回の税制改正におきまして、従来の適正利益率要件を国土利用計画法の実勢価格要件に置きかえて提案されているわけでございますが、いわゆる土地政策の立場からいたしますれば、当該優良宅地が適正な価格で消費者に渡ることがまず第一義であろうかと思います。その場合に、今回の税制改正の理由になりました、その間に個別のケースプロジェクトにおいて従来の利益率を超えた利益が発生するということは事実あろうかと思いますが、そういうことを含めて、企業の宅地供給意欲を促進するということが今回の税制改正の趣旨であるかと思います。
  60. 沢田広

    沢田委員 いみじくも語るに落ちるというか、そういうところで現在の制度に変えれば、その会社としてはべらぼうなもうけが生まれてくる。しかし、それでもいわゆる供給することの方でメリットがあるかないか、これは別問題として、そういう解釈に立ったんだ。だから、従来の安く取得をした土地を環境の差によって、公示価格によって今度は売ることができれば、その差額というものはべらぼうなもうけになる、適正利益率でやったのではそんなにもうかってこないかもしれぬ、そういうさやをこの法律改正によって生み出そう、こういうことだといまの答弁ではなっているわけですから、そのとおりで、私もこの法律案がそういう性格なんだというふうに受けとめて、次の問題に入りたいと思います。  続いて、これは大蔵大臣に聞きたいと思うのですけれども、土地の値段というものは、今日の消費者物価あるいは一般のわれわれの消費物価と比較をいたしまして、非常な高騰といいますか、もうべらぼうな暴騰といいますか、価格がいま横ばいになっているとは言いながら、そういう価格構成になっているわけですね。だから、われわれが勤め出したころには、昔の退職者の方は、土地を買って家を建てて、そして退職金で賄ったというのが当時の相場でしたね、わかりやすく言えば。長屋の二軒ぐらいまではできたのが当時の状況だと思うのであります。今日そんな条件はないですね。それだけ土地が相当暴騰していて一般庶民の手には届かなくなってきている。三十年勤めてみた結果生まれてくるものはそういう条件はない、実質的な価値として。そのことはどうお考えになるか。
  61. 村山達雄

    村山国務大臣 おっしゃるように、土地というものは、われわれが若い昔のころで言いますと、それほど高いものではなかった。特に高くなりましたのは、高度成長時代に方々に工場が建ちあるいはビルが建つ。やはり日本は土地面積は非常に狭いわけでございますし、かたがた土地利用の形が全く違ってしまった。昔で言いますと、大体平屋・二階建て木造、こういう形でずっと来ているわけでございますが、いまは三十何階というようなものが建つわけでございますから、したがって、単位面積当たりの収益が全く違ってきた。この両方から土地が暴騰し、しかも供給可能の面積というものはおのずから限定されているわけでございますから、非常に暴騰を来した。しかし、オイルショック以降、日本の経済は大きく変化いたしておりますから、御案内のように、いま土地の需要がだんだん鎮静いたしまして、消費者物価よりも上がり率はずっと少なくなり、不動産会社は、大きいところは軒並み大体赤字、こういう状況になってきた、かように思っておるわけでございます。
  62. 沢田広

    沢田委員 昔の値段から見れば、日本橋が一銭六厘であったとか、あるいは都電が十銭の時分の値段から比べましても、これはもうどこの数字を基点においても、土地の価格というものが異常な価格であるということだけは間違いないですね。ですから、やはりこれを抑えていくということは政治の一つの道筋だと思うのです。それを抑えていくというためにどうしたらいいか。いかにも供給が欲しい、欲しいけれども、それはやはり国民の共有財産である限り一定の限界というものはあるだろうと思う。これはダイヤモンドを買うとかなんとかいう問題じゃないだろうと思うのですね。ですからそういう意味においては、やはり国民の共通の理念に一致できる限界というものがなければならぬのじゃないかと思うのであります。  たとえば四十五年を一〇〇といたしましても、いまあなたおっしゃったけれども、違うのですね。昭和四十五年にいたしましても、現在二二〇ですよ。二倍になっている。一般消費者物価は一九〇から一八〇ですよ、昭和四十五年からを基準にいたしましても。ですから、それでもなおかつ土地は上がっていっている。さらにこれによって上げていくという体制をとるということは、やはり政治の方向として誤りじゃないんですか。
  63. 村山達雄

    村山国務大臣 土地の価格が上がったのは、常識で言いますと、昭和四十七年、八年、このときに恐らく暴騰しておると思うのでございます。今日二〇〇幾らとなったというのは、恐らくその二年度の高騰がその指数に大きく響いておると思います。  それから、土地の価格をできるだけ安い値段に、適正な価格にしていくということは全く賛成でございます。そのためにこそ国土利用計画法ができまして、そこで適正価格ということが引かれたわけでございます。しかし、この適正価格というものを一体どういうふうにこれから、いわゆる公示価格を基準にしてやっていくか、ここには大きな問題があるだろうと思うのでございます。需給のまにまに市場で形成されるものを適正価格と見ていくのか、あるいはそうではなくてコスト主義で見ていくのか、これはこれからの適正価格の運用の問題であろうと私は思っておるわけでございます。そういった意味で、しかしこれだけの狭隘な土地、そして国民の共通の利害につながっておる土地、こういったものの円滑な供給、しかも需要者側の問題というものを考えますと、これからの適正価格をどういうふうに内容的に考えていくか、これはきわめて重要な問題であろうと私個人は思っておるわけでございます。
  64. 沢田広

    沢田委員 とっぴなことでお伺いしますけれども、現在も地代家賃統制令は生きているわけでありますね。
  65. 伊藤茂史

    伊藤説明員 先生御指摘のとおり、現行有効でございます。
  66. 沢田広

    沢田委員 これは現在の家賃、地代の状況から見て、改正といいますか、もう撤廃の段階に来たと判断をされているのか、存続をすることによって不公正が増大されないのかどうか、その辺の見解をあわせてお答えをいただきたいと思います。
  67. 伊藤茂史

    伊藤説明員 お答えします。  実は、統制令の問題につきましては、現行の五カ年計画をつくります際の住宅宅地審議会におきまして、今後の住宅政策のあり方につきまして答申をいただいておりますが、その中では、都市の再開発の問題、あるいは、非常に老朽化が進んでまいりますので家賃も高く取れないわけでございます、統制がかかっておりますので。家賃の格差の問題等々でいろいろな問題がありますから、できるだけこれは早く廃止したい。しかし、家賃の水準等非常に格差がございまして、急にこれを廃止するといろいろな摩擦を生じますので、段階的に解消をしていくという御答申をいただいております。  したがいまして、その後建設省としましては、五十一年の四月、五十二年の五月と二度にわたりまして告示の改正を行いまして、段階的に値上げをいたしております。過去の経緯を振り返ってみますと、三十年代の後半におきまして四回ほど統制令の廃止につきまして、国会に提案申し上げ、あるいは議員提案という形で出たことはございますが、いずれも成立せずに終わった経緯がございます。
  68. 沢田広

    沢田委員 そこで、土地の価格というものと地上権というものとの関係で今度はお伺いするわけですが、いままでの判例その他を例にとりますると、たとえば駅の前であるとかいわゆる繁華街であるところは、二、八といいますか、地主が二割、いわゆる地上権八割、一般の住宅関係で、これは新幹線その他の場合の条件もそうですけれども、おおむね五割、五割あるいは四割、六割、地主が四割、地上が六割。いまや今日の法体系の中で土地の問題を論ずる場合に、地上権と土地の価格というものは分離して物を考えていかなければならない段階に来たのじゃないのか、法律自体としてもそういう条件をつくってきているのじゃないか、こういうふうに思いますが、その点は税の問題とあわせてお答えをひとついただきたいと思うのであります。
  69. 佐藤和男

    佐藤説明員 国土利用計画法におきましては、土地の売買について一定の面積以上で届け出義務を課しておるわけであります。その際、いわゆる借地権ないしは地上権の譲渡についても、価格の適正化を図るという意味から届け出義務を課しておるわけであります。現状においては、先生先ほどおっしゃいましたように、市街地においては、大体底地が二で借地権割合が八、一般住宅地では、借地、底地の関係が大体半々ぐらいというのが事実でございます。  土地政策一般の問題として、今後基本的に土地所有権を制限し、利用権の拡大をするという御主張は、一般でも行われております。この問題は非常にわが国の法律制度全体にも及ぶ問題でございますので、今後私どもも真剣に研究してまいりたいと思います。
  70. 沢田広

    沢田委員 あなたの方で取り扱う場合は、たとえば土地と地上権は別々に交渉されるわけですか、それともやはり所有者と交渉して、配分は土地と地上権とに分類するのですか、あなたの方の考え方だけひとつお聞きをしておきたいと思います。
  71. 佐藤和男

    佐藤説明員 具体のお尋ねが国土利用計画法の運用の問題でございますれば、借地権価格を譲渡する場合には、借地権者と譲り受け人が、底地を譲渡する場合には、底地権者と譲り受け人が届け出をするというのが実際の運用でございます。
  72. 沢田広

    沢田委員 ちょっと違うけれども、わかりました。時間がありませんから……。  土地というものは、大蔵大臣にさっき聞きましたけれども、私は全国どこへ行っても土地の値段にそれほどの差はないと思うのであります。問題は、それは環境によって土地の価格が変わってきたということだと思うのですね。東京駅の前にある土地の一坪と秩父の山の中にある一坪と、土地そのものに価格の変更はないんだと思うのです。ただ、東京駅があって、偶然東京駅の前にあるから高くなる。いやだったら持っていけばいいんですよ、持っていけるなら。持っていくわけにいかないんだ。また、その土地が金になったとか銀になったとかいうのじゃない。石油でも出れば別ですが、そうなったわけでもない。ですから、土地そのものの価格というものはある一定限度固定化されているものじゃないか。  あるいは農地であるとすれば、十アール当たり現在の粗収入としては五万六千六百円だというのですね、農業の所得。たとえば反当収入二十万に見ても、毎年二十万ずつ所得を得るためには、五分の利息と計算してみても二百万ですか、二百万か三百万の金があれば、五分の利息で年収二十万の収入は入ってくるわけですよね。そうすれば、たとえば三百万と計算をしてみたって、坪当たりの価格というものは大体二十万の所得を得るという必要性、必要な価格としてはその程度がその土地の価格である。それに造成費その他が加われば、その土地の価格を構成するものだ。だからそれは、あとは環境によって生まれた利益であり、価値である、こう判断することは間違いですか。それともあなた方はどうお考えになっているのか、お伺いをいたしたいと思うのです。
  73. 佐藤和男

    佐藤説明員 先ほど先生が引かれました国土利用白書でも、住宅地の価格についていろいろな要因からアプローチしてございますが、たとえば住宅地の価格を形成します一番大きなものは、通勤の利便性と申しますか、交通機関の発達の度合いなり通勤所要時間でございます。それから当然のことながら、日照とかその住宅地の周囲の環境というものが作用いたします。それからもう一つは、先ほど来お話がありましたように、土地が高度利用できるに値するかどうかということによって価格が決まるということになっております。
  74. 沢田広

    沢田委員 きわめて不満足な答弁で、土地そのものに対する国民納得のいくような解説というものをやはりしてもらいたかったわけです。これはいわゆるバナナのたたき売りみたいなものじゃなくて、やはり国民の固有の財産である、その固有の財産をどう公正に世の中の需要を満たしていくか、そういうルールが必要だと思うのです。  そこで、また建設省の方にお伺いしたいのですが、これだけ住宅、住宅と騒ぎ立てておりますけれども、その受けざらはあるのですか。受けざらという内容は、下水道はどうなっているのか、あるいはバスの通勤はどうなっているのか、保育園や幼稚園、あるいはごみやその他の施設はどうなっているのか。住宅だ、住宅だと言われるけれども、その受けざらになる地域環境、地域整備というものはどういうバランスにあるのか、ひとつお伺いをしたいわけです。
  75. 海谷基治

    ○海谷説明員 お答えいたします。  都市施設の整備の状況ということで、ちょっと余り詳しい資料を持ってきませんでしたけれども、一応お答え申し上げますと、市街化区域内におきましての整備の状況でございますが、当面、市街化区域内としまして整備されるべき目標というものを一応事務的に持っておるわけでございますけれども、そういう目標……(沢田委員「あるかないかだけ」と呼ぶ)街路ですと四三%ぐらい、公園ですと三三%、下水道は三一%程度、こんなような状況に現在なっておるわけでございます。
  76. 沢田広

    沢田委員 いま私が言ったようなことについて、都市計画法ができるときはあなた方鼻高々と、都市計画税を取る以上、今度また上げていますが、都市計画税を取るときには十年以内で市街化区域全部社会資本は充実いたします、こういう約束で出発したでしょう。間違いないですか。
  77. 海谷基治

    ○海谷説明員 お答えいたします。  市街化区域というものにつきましては、先生おっしゃいましたように、すでにもう市街化されておるところと、それからその周辺で十年程度で市街地として必要な都市施設の整備を行うべきところ、こういうことで出発した——出発したといいますか、そういうことでわれわれも整備の目標を立てておるということは事実でございます。
  78. 沢田広

    沢田委員 結局、十年たってみたけれども、十年たとうが二十年たとうが現実的にちっとも進んでいないということですね。ただ、線引き、またきょうの新聞で見ると、さらに加えて今度は「総合土地戦略」、どうやってもうけさせようかという戦略だと思うのですが、「C農地の宅地化促す」、こういうことが大見出しで出ているわけであります。受けざらがこんな不十分な状態で住宅建設が実現できると思いますか。これは都市計画の立場からひとつお伺いをしたいと思います。  それともう一つは、いわゆる受けざらになる市町村、都道府県の被害は莫大なものですね。これに対する対応の仕方、こういうものについてはどう措置されるように考えておられるのか、お伺いしたいと思います。
  79. 海谷基治

    ○海谷説明員 先ほどお答えしましたように、確かに都市施設の整備の状況は必ずしも十分でないということは、われわれもそういうふうに考えておるわけでございまして、鋭意整備努力しているというのが状況でございます。  具体的に申し上げますと、たとえば三大都市圏の人口急増都市等につきましては、五十二年度から市街地整備基本計画というようなものも立てるようにいたしまして、そういう計画がぴしっと立ったところには、都市施設の整備について重点的に事業もやっていくというようなこともまた考えておるわけでございます。それから御承知のように、五十三年度には関連公共施設の整備のために、河川、道路その他のいままでの予算のほかに三百億というそういう手当ても計上されておりますので、そういうものも十分使いながら、重点的に都市施設の整備を行っていきたいというふうに考えております。
  80. 沢田広

    沢田委員 時間のようでありますから、最後に二つだけお伺いをして質問を終わりたいと思います。  結局、あなたの方で考えております優良宅地基準あるいは優良住宅基準、こういうものの基準のいわゆる環境整備というものを完全にしない限り、今日の地方自治体の負担増ばかりじゃなくて、そこに住まわれる人も非常な迷惑を受ける。住んでみたら、駅から五分という広告で行ってみたら、飛行機で行かなければ五分で届かなかったというような五分が今日出ていることも間違いない。ですから、そういう誇大広告の中で、だまされて住む人が悪いという論もあるのでしょうけれども、しかし、だます方がより悪いだろうと思うのでありまして、そういう意味において、この優良宅地、優良の住宅を供給する場合には、受けざらというものを整備した上に立ってこの優良宅地の基準を設定する、こういうふうに私の方では理解をしますけれども、それでよろしいのかどうかというのが一つ。  それから、土地公示価格と鑑定士による評価価格との間に相違が生じた場合、どちらが法的には優先をするのか、その点の見解を承りたいと思います。
  81. 渡辺尚

    渡辺(尚)説明員 優良宅地認定制度の基準の問題の御質問でございますけれども、まず、先ほど先生御指摘になりましたように、宅地開発というものが行われますと、非常に一時に財政需要が生ずるということで、地方公共団体が財政的に困る。それに対しては、先ほどうちの都市計画課長からもお答え申し上げましたけれども、立てかえ施行でありますとか補助金の採択等をやるわけでございます。  優良宅地の基準につきましては、御存じのように千平米以上のものと以下のものとを分けてございまして、千平米以上のものにつきましては、大体都市計画法の開発許可の基準と同様でございます。以下のものにつきましては、必要最小限ということで幾つかの基準を定めておるわけでございますが、先生御指摘の点につきましては、やはり住宅あるいは宅地需要というものがある、そういった面と、それから都市整備の進捗といいますか、そういったものとで具体的な調整を図っていく必要がもちろんあるわけでございます。
  82. 佐藤和男

    佐藤説明員 先生御承知のとおり、いわゆる地価公示価格は、法律の二条におきまして、二人以上の不動産鑑定士の評価を求めて、これを基礎に土地鑑定委員会が価格を判定するということにしております。したがいまして、地価公示は当然のことながら、現在一万五千余ございますが、一定の標準宅地について価格を示すものでございまして、不動産鑑定士がその余の土地について鑑定依頼を受け、これを評価するという場合におきましても、法律の八条で、不動産鑑定士が実施区域内において鑑定評価をいたします場合には、公示価格を規準としなければならないということを定めてございまして、その間において一般的にはその乖離が生ずる、そごが出るということはないものと考えております。
  83. 大村襄治

    大村委員長 大島弘君。
  84. 大島弘

    ○大島委員 きょうの質問は、財政の基本原則についての一点と、それからその次に減税か公共投資かという問題についての質疑と、それから最後に租税特別措置法について二点ばかりお伺いいたしたいと思っております。  私は、五十三年度一般会計予算、特別会計予算、政府関係機関予算、実は微に入り細にわたって読ましていただきました。その感じを率直に申しますと、近年まれに見る珍しい予算であるという感じがいたします。七%成長と、何もかも七%成長ということで、まずその基本原則はどういう基本原則に立っておられるのか。  私たちの考えを申し上げますと、まず第一に、私たちの基本的経済認識は、現在の資本主義は終わった、もう終えんに近づいているということです。資本主義は終えんに近づいているというのじゃなくて、現在資本主義は終えんに近づきつつある。ということは、現在資本主義は何かと言いますと、御存じのとおりケインズは、仕事が不況になれば公共事業で穴を掘れ、そして景気が過熱すれば引き締めろ、また不況になればその穴を埋めてしまえ、こういうことで、有効需要喚起、管理通貨制度のこういうケインズの理論はもはや通用しない。その証拠に、日本のみならず、当初はイギリスからですけれども、このスタグフレーションという妙なものが生じてきたということ、これは資本主義始まって以来の現象でございます。こういうことはいままでの資本主義にはなかったわけです。一九三〇年代、四〇代、ともかくもう相対的安定期を迎えて曲がりなりにも来た。しかし現在においては、もうすでに現在資本主義は終えんに近づいておる、こういう基本的認識と、それからかてて加えて、総理が昨年のいまごろ盛んに言って最近さっぱり言わなくなった資源有限ということ、石油はあと三十年もたないということはもう常識である。石油のみならず鉄、ニッケル、マンガン、すべて有限である。いま日本では食糧は余っていますけれども、いまただもし全世界の人間がアメリカ並みの飯を食えば、食糧は二、三年にしてなくなるということもこれは常識でございましょう。ということは、裏から申せば、世界人口の三分の二というのは餓死寸前の生活をしているということ、そういうことで資源が有限になってきている。  それからもう一つは、今度はこれは日本特有の現象でしょうけれども、いわゆる社会構造、貧富の差が激しい。底辺層におる多数の人々、劣悪な労働条件、中小企業と大企業の格差、それから依然として近代化しない農民、漁民、こういう日本特有のこの社会構造をどう変えていくか。さらには、日本特有の産業構造、いわゆる重化学工業、耐久消費財工業に見られるように、要するにカラーテレビ、自動車を中心にしたいままでのような産業構造、これを基本的にこのままでいいのか、産業構造の基本的転換を迫るのか。  われわれは、そういう基本的経済的認識に立って予算を組む。そうしてその結果が七%であれば、これは何も無理を言わない。私たちは七%をむやみに下げろというのじゃ決してないんです。そういう哲学と論理に基づいた予算を組まなければ、これは大変なことになる、そういうふうなことで私たちは考えているわけですが、その点につきまして、どういう基本的認識でこの予算をお組みになられたかということを、簡単明瞭にひとつお答えをいただきたいと思います。
  85. 村山達雄

    村山国務大臣 まあなかなかむずかしい問題でございますが、若干所見を異にするものでございます。  いまの自由主義経済の終えんであるというようなことは考えておりません。いまのような状況は、一九二九年のあのパニックはもっとひどかったと思うのでございます。確かに石油ショック以後、世界経済は固定為替相場から変動為替相場、そうしてまた時に、資源エネルギーが高騰いたしまして、特に石油の価格が一挙に四倍になった。いろんな批判ございますが、そういう意味で、相対価格の変化が完全に行われたのかどうか、なかなか疑問のあるところでございます。そういう意味で、まだ私は全体として調整過程にあるのではないかと思うわけでございます。  特に、国際収支の状況を見てみますと、OPECにほとんど外貨がずっと集まりつつある。ほかは、国際収支は大体先進国どこでも赤字である。そういう中で、しかも国内的には価格の問題、あるいはそれを通じまして産業構造の変革が多くの国に求められておる。まだその変革の状況にあると思うのでございます。  日本も御案内のように、石油ショック以後、四十九年には初めて成長率がマイナスを記録し、五十年は三・何%、それから五十一年度が五・七ですか、こういうふうにやってまいりましたが、昨年は年初以来、かなり輸出を中心にしまして好況が見込まれたわけでございますけれども、その後ずうっといま停滞をしておるということでございます。  特にわれわれが見ておりますと、企業採算がもうきわめて悪い状況にあるということでございます。同じような成長をしておりますアメリカ、ドイツに比べまして、日本の場合は、家計と企業とそれから財政のバランスが、英国、アメリカに比べて極端に悪い。そこに私などは最大の問題点があると思うわけでございまして、そのためには、やはりいつまでも財政主導型などということを続けることはできないと思うのでございます。早く現在の体制に即した、いわば民間の設備投資なりあるいは家計消費が中心になる、その手段方法としては、やはりミクロ経済が健全になっていかなくちゃいけない、こういうことで、それはできるだけ早ければ早いほどいいのだ、少しずつちびってやっておるのでは危ない、こういうことで、思い切った措置をやはりとった方が現段階では政策としてベターであろう、こういう考えで、御案内のように、いままで公債依存率三〇%と言っておりましたけれども、実質三七まで踏み切った。一時的に財政は非常にしわ寄せが来ますけれども、やがてそれによって経済の回復を来し、それをまたてこにして、長期かかりますけれども財政も健全化を図っていく。やはり経済が基礎でございますから、私はそのように考えているわけでございます。家計消費が上がるといっても、あるいは家計の所得が上がるといっても、民間設備投資がなにするといっても、現在の経済組織では何といっても、所得発生の場であるミクロ経済そのものが回復していかなければいかぬ、そのように考えているわけでございます。
  86. 大島弘

    ○大島委員 いま大臣が最初に言われましたが、私は、自由主義が終わったとか、資本主義が終わったということを言っているのじゃないので、現在資本主義が終わった、終えんに近づきつつあるということを申し上げているので、その点はひとつ誤解のないようにお願いしたいと思う。  それから、先ほどの質問で肝心のところにお答えいただいてないのだが、そういうふうな、たとえ経済観は異なるにしろ、何かの論理なり哲学なり——哲学と言えばやや表現はおかしいですが、何なりそういういろいろの考えを詰めて七%というのが出てきたのか、それとも最初から七%という旗を掲げて、すべての三十四兆というのがそれに続いていけというふうにお考えになったか、その点をもう一遍明らかにしていただきたいと思います。
  87. 村山達雄

    村山国務大臣 これは同時決定と言っても私はいいんだろうと思うのでございますが、対内均衡と対外均衡をやるために、一体政策手段は何があるかということを詰めていくその両方の過程で、やはり七%という数字、あるいは経常収支六十億ドルのプラスというあたりをねらわないとなかなか所期の目的は達成できない、私は同時決定だろうと思うのでございます。
  88. 大島弘

    ○大島委員 この問題は、非常に大きな問題で、また余りにも何回も論議されておりますので、次の話題に移ります。もちろん関連しておりますけれども……。  そういうことが、私の感じを率直に申していきますと、この予算というのはまさに無味乾燥という感じがしてしょうがない。まるで砂漠を行くような感じだ。しかし、どこの砂漠にもやはりオアシスというものがある。ところが、そのオアシスというものが全然見当たらない、一つも見当たらないというような感じがいたします。  オアシスの一つは何かといいますと、たとえば減税、これはどこを読んでも見当たらない。それはもう御存じのとおり、公共投資の方が減税よりも経済波及効果が強いという基本的考えになっておるのですが、そこで、大蔵省でつくられた「所得税減税に対する考え方」という冊子が当委員会にも配られておりますので、これにつきまして私の疑問を若干指摘したいと思うのです。  まず八、九ぺ−ジでございますが、これは実は私たち、この前新聞に発表しました中期経済計画をつくるときに、各大学の教授が集まりまして、その中の大内教授がたしか指摘して、ぜひこれを聞いてくれということなんで、私も聞きたいと思っておったのでございますけれども、「仮に一兆円の所得税減税を行いますと、第一年目において創出される有効需要は八千億円程度ですが、」貯蓄が二割ですから八千億程度ですが、「他方、公共投資を一兆円追加すれば、その二割が用地費としても、一兆四千億円以上の有効需要(減税の一・八倍)を生むことになります。」これはどういう根拠で出てきたわけですか。
  89. 大竹宏繁

    ○大竹説明員 これはマクロ的な乗数計算をここでやっておるわけでございまして、その根拠になりました乗数は、企画庁でつくっておりますモデルのSP17というものを使っておるわけでございます。このSP17によります公共投資の乗数は、初年度で一・八五、こういうふうに出ておるわけでございます。これに対しまして減税が〇・七八、こう出ておるわけでございます。したがいまして、減税の場合は、たとえば一兆円の所得減税を行いますと、初年度の国民総生産の増加が約八千億、乗数が〇・八に近いわけでございますから約八千億、こういうふうになるわけでございます。一方公共投資は、予算で一兆円増加をするという場合、用地費を含んでおるわけでございますので、大体二割と言われております用地費を除きまして、一兆円の公共投資追加の場合八千億が需要として追加になるというふうに想定いたしますと、その約一・八倍がGNPの増加になる、したがいまして、約一兆四千億円が需要の増加になるということでございます。したがいまして、先ほどの八千億と一兆四千億の比較で約一・八倍、こういう計算をしておるわけでございます。
  90. 大島弘

    ○大島委員 本来言えば、これはもう少し詳しく聞かしてもらいたいのですが、資料要求しますから、いまの説明をもう一度私のところへ資料を送付してくれるようにお願いします。  第一、そんなことが言えるでしょうか。減税の一・八倍の効果があるというようなことが果たして、実際問題としてですよ、私たち学者じゃないんだから、象牙の塔に入っておれば別だけれども、実際、実務家としてそういうことが言えますか。
  91. 大竹宏繁

    ○大竹説明員 こうした乗数計算につきまして言われておりますことの一つは、乗数の大きさがそんなにあるんだろうか、いまお話ございましたように、もう少し低いんではないかといったような指摘、これはあるわけでございまして、最近の経済の状況、いわゆる過剰在庫がいろいろな段階に存在をしておるという状況におきましては、そんなに効かないんじゃないかという御指摘はあるわけでございます。  一つは、そういう在庫があります関係上、公共事業が追加になりました場合に、それがたとえば過剰在庫としてたまっておりますセメントなり棒鋼なりが使われてそれでおしまいになってしまう、さらに鉄鋼メーカーの方へ波及していくというところまで行かないという状況、これは一部そういうこともあるかとは思います。  それともう一つ、乗数の大きさが一・八というのはたとえば大きいのではないかというような御指摘もございますが、この辺は、企画庁でも最近のGNPの実績等から新しいモデルをつくりまして計算をやっております。それによりますと、先ほど約一・八と申し上げました公共投資の乗数は、一・三四とやや低下をするような結果に出ております。減税も〇・七二とやや小さくなっておるということでございます。ただ、こうした乗数は、若干SP18という新しいモデルでは低く出てはおりますけれども、減税と公共投資の比較ということになりますと、それは依然として公共投資の方が初年度の効果としては減税よりも大きいという事実は、これは否定できないのではないかと思うわけでございます。
  92. 大島弘

    ○大島委員 仮に百歩譲って公共投資の方が大きいということを考えてみても、減税ということがなぜ必要であるかということ、その必要性ということを別の意味考える必要があるんではなかろうか。大臣は就任早々盛んに言われておった、日本人はほかの外国と比べて二割が貯蓄に終わるから減税の効果は少ない。その場合に、なぜ日本人は貯蓄が大きいのだろうかというこの基本的認識。外国のようにストックがない、フローだけの生活、老後の保障もない、貯蓄せざるを得ないということ。大体ヨーロッパの十分の一かといわれるこの貧弱な社会資本、そういうふうに、なぜ貯蓄せざるを得ないかというその必要論ということについてお考えになられたことがありますか。仮にたとえば去年は三千億、ことしは何千億の減税か知りませんけれども、あるいは来年は何千億、その次は何千億と減税に減税を重ねていけば、こういうふうなフローで割り切った見方というものは私はできないと思います。その点について、大臣のお考えを……。
  93. 村山達雄

    村山国務大臣 なかなかむずかしい問題だと思います。  一つは、貯蓄の動機という問題がどこから来ているかというのは、世論調査があります。しかし、その動機がすなわち今度は外国と比べてなぜ高いかという理由とはすぐには私は結びつかぬと思っておるのでございます。問題は、外国に比べてなぜ高いかというところに恐らくあるんだろうと思います。  いつの貯蓄の動機をとりましても、大体病気とか不時に備えるというのがトップに来まして、その次は子供さんの教育、その次はマイホームを持ちたい、その次は老後に備えたい、こういう順番は大体変わってないのでございます。国際比較を見てみますと、いま年金の関係は、御承知のように制度としては私はもう西欧並みに来ておると思っております。大体十万五千円くらいでございますし、いま実際払っておる平均値で見ましても九万円台でございますから、大体外国と比べて制度としては来ておる。ただ、老齢化が進んでおりませんから、支払い金額といたしましては、まだ積み立てがふえておると思うのでございます。医療の問題にいたしましても、まあまあいいところに来ているんではないだろうか。むしろいろいろな統計を見ておりますと、一人の通院の日数とかあるいは入院の日数を見ますと、外国よりもはるかに多いという統計が見られるわけでございますから、日本人というのは非常に健康を大事にするといいますか、非常に高齢化社会というか、非常に寿命が延びましたからそういうことがあるのだろうな、こう思うわけでございます。ただ、医療費について言いますと、国庫補助の割合が外国に比べて非常に多い、これだけは非常に特徴的なようでございます。  そういったことを考えていきますと、一体何が貯蓄を高くしているのか。それなら一体家計のストック、資産はどうなのか、こう考えますと、金融資産につきましては、もう発表になっておりますように、一世帯大体三百六十万ぐらいということで、いま西独の水準まで来たということが言われるわけでございます。しかし、一番大きな原因は、資産で言いますとやはり家屋じゃないか。これは外国と比べてみまして、われわれが周辺を見て、どうも非常に国際的に劣っているんではないだろうか、これは確かに言えます。  それからもう一つ言われますのは、やはり日本の給与の支払い方が、ボーナス制度というのはほかの国にはないわけでございますから、一、二臨時収入が入る。これが金融界では貯蓄率を高めている一つの原因になっていやしないか。それから、ずっと年功序列型賃金という形で、これはこれからだんだん修正されていくかもしれませんが、そうしますと子弟の教育を終えたあたりから、家計費の支出がなくなったあたりから、貯蓄はかなり出てくる、こういうことが言われるだろうと思います。  それから、貯蓄の高さは可処分所得に比例する、こういう説が昔からあるわけでございます。同時にまた、それは消費の高さも可処分所得に比例するという論理から押さえると、あるいは租税負担あるいは保険料、要するに強制徴収される部分がどれくらいかということも貯蓄率にことによると関係しておるかもしれぬ、こういう説もあるわけでございます。  いずれにいたしましても、非常にむずかしい問題だとは思いますが、われわれは、そういうものが重なり合って、そしてまた日本の国民性といいますか、健全な国民性というものが、全体として下支えて貯蓄率が高いのであろう、一義的にはなかなか言えないのじゃないか、かように思っております。
  94. 大島弘

    ○大島委員 いわゆるフローで見た場合、また金融資産というような面のストックで見た場合に、いま大臣が言われたことかもしれませんけれども、本当に日本の勤労者の状況がヨーロッパ並みだと実は実感されますか。ここにその資料があるわけです。  これは社会資本ですけれども、水洗便所つき住宅というのは、イギリスの九八・九%に対して日本は二八・九%でございます。下水道の普及率というのは、やはりイギリスの九四%に対して日本は二四%しかない。こういう貧弱な社会資本で、そういうフローの、あるいはせいぜい金融資産のストックをとってみても、私は絶対、また実感として、ヨーロッパ並みだなんて言えたことはないのじゃないですか。
  95. 村山達雄

    村山国務大臣 いまちょっと忘れましたが、社会資本の点については全くおっしゃるとおりだろうと思います。いま貯蓄の動機という方にちょっと重点を置いてお話し申し上げたのでございますが、社会資本が立ちおくれておることは全く大島さんと同感でございまして、今度公共投資をやるというものの半面は、その辺を十分考えたということでございます。
  96. 大島弘

    ○大島委員 歳出予算を見ましても、むしろ喜ぶのは大手建設業者とセメント業者だけだと言われておりますが、とにかく同じような問題がここにもあると私は思うのです。  これは主税局がよく使う例ですが、諸外国と比べて税負担率が低いからこれ以上減税の余地はないと言うのですが、これは私は同じ意味のことだと思うのです。諸外国と比べて、しかもその諸外国というのはイギリス、フランス、西ドイツ、一流先進国と比べて、税負担が低いからこれ以上減税の余地はないということはここにも書いてあるわけです。「我が国の現在の所得税負担は、諸外国に比べ遙かに低い水準にあり、この際、税負担を軽減しなければならないような状況にあるとは考えられません。」と書いてますけれども、これなんかも、いわゆる個人資産、個人ストック、社会ストックという点から考えて、この理論は私はまさに非常におかしいと思うのです。しかも先進国、アメリカ、イギリス、西ドイツ、フランス、こういうふうな、いわゆる個人であれ社会であれストックの豊かな国と比べて、しかもこれは所得税、個人所得ですから。そういうことで果たしてこれだけで言えるのかどうかということについて大臣の所見を承りたい。
  97. 大倉眞隆

    大倉政府委員 十七ページの比較表に即しての御質問だと思うのでございますが、社会資本の立ちおくれについては大臣が申し上げたとおりで、これを充足するためには、やはり財政という手段を通じて社会資本を充実する。その場合に、国民の負担をゼロにして社会資本を充実していくということは、長続きはしないという点は御理解をいただけると思います。  個人の保有している資産がまだ貧弱ではないか、これは決め手になる国際的な統計が整備されておりませんが、実感として大臣申し上げたように、特に個人住宅に関して言えばかなり見劣りがするのではないか、これはある程度皆様の共通の認識であろうかと思います。ただその場合でも、実際に国土が非常に狭くて、人間一人当たりの住んでいる地域が狭くて、したがって一つの自分の持っている家の敷地で比較すること自身は無理ではないかという点もあろうかと思いますが、一戸当たりの居住面積で言うと、いまやさほど見劣りはしないという統計もあるようではございます。  しかしいずれにしても、私どもがいまここでこの小冊子で御理解を得たかったのは、外国と同じ程度の負担である場合に大島委員のような御指摘があるいは出てくるかもしれないけれども、とにかく西独に比べて三分の二なんです。アメリカに比べれば半分の負担なんですが、それをさらに下げないと生活が破壊されるというような言い方は、ちょっと御勘弁願えないかということを申し上げているだけでございます。
  98. 大島弘

    ○大島委員 個人ストックであれ社会ストックであれ、パリのエトワールは十九世紀のフランスのGNP、ローマの水道は二千年前のローマのGNPに入っている。ゼロから出発した日本がここ二、三十年間でヨーロッパ並み。ヨーロッパよりも税負担率が低いから減税の余地がないとか、あるいは減税の方よりも公共投資効果があるから減税がゼロだというのは、私は考え方自体が非常におかしいと思うのです、極端から極端に走る。公共投資が大きいから、一・八倍だから減税ゼロだ、あるいは諸外国と比べて日本の税負担が低いからこれ以上所得税の軽減の余地はないというのは、私は極論だと思うのですが、どう考えられますか。
  99. 大倉眞隆

    大倉政府委員 負担水準から申し上げての御説明をいまこの表では申し上げておるわけで、私どもも、減税が全く景気刺激効果がないということを申し上げたことは一度もないわけです。公共投資と減税とどちらがより大きいであろうかということを申し上げておる。しかもそれを選択せざるを得ないというのは財政事情があるからでございます。財政に余裕があれば、効果があるものを両方ともやることも可能でございましょう。しかし、三七%という実質依存率のもとで限られた財源で財政が精いっぱいのことをやるとすれば、それはやはりより効率のいい手段を選ぶというのは、私どもの責任であると考えます。
  100. 大島弘

    ○大島委員 要するにこの問題は、また水かけ論になりますからこれ以上言いませんけれども、いずれにしても、こういう資料を出して、公共投資は減税の一・八倍だというようなこと、あるいは諸外国と比べて個人所得税の負担率が低いなんということは、これは国民にPRするにしても私は非常に大きな問題だと思うのです。その一面だけをとらえる、いわゆる結論を言えば、フローだけをとらえるというような見方、そういう見方で書かれたこういう資料を公表するということは、私は非常に危険じゃないかと思いますので、最後にそれを申し上げておきます。  次に、租税特別措置法に入りますが、私がきょう取り上げたいのは二点だけでございます。あとのことはもう大体いろいろ議論が出ておりますので、私は今度改正になりました二十五条の二、このみなし法人課税を選択した場合の課税の特例の適用期限を五年延長するということです。  これはできたときは非常に政治問題化したことは私もよく存じております。これは特に中小企業を潤す制度で、その趣旨自体は結構だし、また青色申告を進めるという意味においても結構だと私は思うのでございますけれども、みなし法人課税というのは、もちろん個人の中で、事業主の所得を控除し、さらに配当があれば配当を控除して、残額に個人所得税を課税するというまことに妙な、法人税の体系自体を崩すような考え方なんですが、一体この制度を利用している者は全体の中小企業の中のどのくらいございますですか。
  101. 水口昭

    ○水口政府委員 みなし法人課税制度の利用者でございますが、この制度は昭和四十八年に創設されました。その当時は非常に少なかったわけでございます。その後年々ふえてまいりまして、昭和五十三年分で見ますと、この制度の利用人員が十三万五千八百七十余名。それで、これは御承知のように、事業所得、不動産所得関係のものが認められるわけでございまして、そういった事業所得、不動産所得の青色申告者のうちに占める割合、つまり利用割合でございますが、これを見ますと、昭和五十三年分で四・九%、こういう数字になっております。
  102. 大島弘

    ○大島委員 非常に少ない数字なんですけれども、私はここで問題にしたいのは、まず一つは、こういう青色申告も書けないような零細法人、これが何百万とあるわけです。こういうみなし法人課税を選択したような方々を助けるということも、われわれも趣旨において決して反対ではないのだけれども、まず第一に、所得税の体系を全く無視したこういうふうな、まさに法人擬制説といいますか、こうまでして認めるのであるならば、なぜ七百万以下の所得の税率を引き下げないのですか。そうした方がはるかに——実際に青色申告と申しましても、記帳どころじゃない、帳簿どころじゃないという零細工業が日本には非常に多いのですよ。典型的な中小法人だけをつかまえて、これが標準だというよりも、むしろ記帳どころじゃない、税務署どころじゃないというのが圧倒的多数なんですよ、いわゆる日本の法人にしても個人にしても。それほど言うなら、税体系を乱してまでこれを今後五年間延長するなら、なぜ七百万以下の法人税率を軽減しないのですか。大した金額じゃないと思うのです。
  103. 大倉眞隆

    大倉政府委員 大島委員、この制度自身に必ずしも反対ではないという御趣旨のようでございますが、しかし、この制度自身が非常に複雑であり、しかも異例なものであるということは、これは私ども否定できないわけでございまして、それなるがゆえに特別措置という特殊な形をとらしていただいておるわけでございます。  しかし、これがあるから、それならば中小法人の軽減税率を引き下げるべきかというと、そういうふうには事柄はつながらないのだろうと私は考えております。中小法人で青色申告でなくて帳簿もないというのは、それは困ったことでありまして、やはり法人である以上はきちっと帳簿をつけていただかないと困りますけれども、いずれにいたしましても、法人の所得というのは、同族従事者の報酬その他をすべて損金として処理いたしました後の残りでございまして、いわば同族報酬その他の人的な所得の上積みの部分でございますから、それを一律に軽減の対象に持っていくというふうには事柄はつながらないと思います。
  104. 大島弘

    ○大島委員 私たちは、法人に超過累進課税をなぜ適用しないかというときのあなた方の返事としては、二本の手、二本の足を持っておる自然人こそ超過累進税率に適するのであって、法人には超過累進税率は適さないということを、何回かここでそういうお教えを受けた。いわゆる二本の手、二本の足を持っておる自然人、これを、こういうみなし法人課税を選択して全く奇形児を生ますということは、税法体系としてどうですか。これはまさに二本の足、二本の手どころではなくて、珍しい奇形児の出現だと思うのです。
  105. 大倉眞隆

    大倉政府委員 先ほど申し上げましたように、御反対ではないようなのでございますが、しかし、異例な制度であるということは否定できないと私は申し上げておるわけで、これが本法的に認められるべき制度であるとは私ども正直に申し上げて考えておりません。特殊な事情のもとにおける青色申告を育成するための特殊な制度考えておりますが、しかしさればといって、それが法人税に累進税率を導入するという論拠にはなり得ないと考えるわけでございまして、法人につきましては、やはり自然人と違う体系をもって応ぜざるを得ない。ただ、非常にむずかしい問題でございますけれども、いわゆる物的法人と人的法人というものが組織法的に区別できますならば、それは人的法人につきましては、その法人の所有者に所得を分解して累進課税をするという考え方は成り立ち得ると思います。しかし、物的法人に物的法人のままの留保所得を対象にして累進税率を適用するということは、論理的な整合性はないと思います。
  106. 大島弘

    ○大島委員 法人に累進課税を適用すべきだというのがわが党のかねてからの主張ですし、またできないことはないということですが、きょうはこの問題が主題でないので、それはまあ省略しますが、このみなし法人課税は、さらにもう一つの点は、いま言いましたように、所得税の体系を根本から覆すことであるとともに、他方、給与所得者と事業所得者と比べた場合に、俗にクロヨンとかあるいはトーゴサンと言われる給与所得の捕捉率が高いことは認めます。そういう意味で、給与所得者に対しても事業所得者優先という制度を与えるものではないのですか。二重の意味でおかしい。所得税の根本体系を乱し、さらに給与所得との権衡上事業所得を優遇するということにならないですか。
  107. 大倉眞隆

    大倉政府委員 一部にそういう御批判があることは私どもも承知いたしております。この制度が本則的なものでなくて、異例の変則的なものであるということも申し上げたとおりでございます。ただ、把握度の問題というのは、これは別の問題でございまして、みなし法人課税を選択しておられる方々は、青色の帳簿をきちっと持っておられる方々でございますから、これが把握度に影響をするという問題ではないと考えております。
  108. 大島弘

    ○大島委員 最後に、この問題の締めくくりとしまして、なるほどそれは帳簿をつけることは必要でもありましょう。しかし、それどころではないという人が多いのだということの認識を、生きることに精いっぱいなんだ、帳簿どころじゃないという人が、個人なり法人なりが多数あるということをひとつ認識していただきたい。  最後に、措置法の関係の山林所得について私はお伺いしたいと思います。  まず、私の方の事情を申し上げますと、私の和歌山は山林王国ですから、山林所有者が非常に多い。彼らは概して資産家である。その山林の評価というのは何百億、何千億という資産家が多い。和歌山のみならず、四国、九州、木曽まで山林の手を広げられている方がある。紀ノ国屋文左衛門は一代で身上をなくしましたけれども、彼らは原始的蓄積に加えて太りに太っておる。しかも彼らは、大体それに専念している者もありますけれども、また医者なんかがサイドビジネスとして山を持っている。そういう意味では彼らは、非常に担税力があり、高額所得者、非常に富裕者であり、また不労所得である、ある意味においては不労所得に近いような山林所得である。  ところが、これに対して御承知のように、所得税法八十九条は、五分五乗の方式をとって、山林所得については超過累進税率を薄めている。それからこの租税特別措置法では、山林を現物出資した場合の所得税の納期限の特例を今回二年延長するという案を出されている。なぜ山林所得にそれほどの優遇措置を与えなくてはならないのか。所得税法のみならず、さらに措置法において、さらに後ほど質問します地方税において、なぜそれほど優遇措置を与えなくてはならないのか。税の原則から言えば、担税力のあるところへは担税力のないところよりも重く、勤労所得は不労所得よりも軽くというのが、私は税の原則だと思うのです。山林所得に対して基本的原則を伺いたいと思うのです。
  109. 大倉眞隆

    大倉政府委員 御質問の中の所得税課税の問題でございますが、山林所得につきまして年分で課税いたしますときに、五分五乗というシステムになっていることは御指摘のとおりでございます。これは本法にございます制度でございまして、私どもは政策的な優遇というふうには考えておりません。特に大島委員、和歌山でございますからよく御承知のように、毎年毎年山林所得が出てくるというのは、それは施業計画を持って経営しておられる場合に初めて可能なわけでございまして、一般的に申しますと、山林所得というのは何年かに一度木を切ったときに生ずるわけでございます。それを、木を切った年に全部まとめて、全部累進税率を適用してしまうということは、やはり累進税率の適用の方式として適当でない。長期間にわたって発生しているわけでございますから、これを五分五乗ということで超過累進率を緩和して課税する方が適当である。むしろその方が課税の公平に適するという考え方をとっているわけでございまして、五分五乗というのはそういう考え方からするとむしろきつい方でございます。杉、ヒノキで申しますと、四十分四十乗という方が本当ではないかという考え方すらあるわけでございまして、また、過去に十分十乗を考えた時代もございます。現在の五分五乗というものが不当な優遇であるという考え方は私どもとしてはとっておりません。  それから、特別措置法によります現物出資の課税延期でございますが、これは政策税制でございまして、本来は所有権移転の際に山林所得を全部発生させて課税する方が本法の考え方でございますけれども、やはり林業経営というものが合理的に行われるためには、森林施業計画の認定を受けて法人経営をした方が、長い目で見ての国土保全という見地からは望ましいということが政策の基本にあるというわけでございます。したがいまして、条件としまして、法人設立後一年以内に施業計画の認定を受けるということが要件になっておりまして、そのように林業経営を法人経営に移し、施業計画としての認定を受けて合理的な経営を行うということを促進するための促進税制として、現物出資に対する課税の延期を行うという趣旨政策税制でございます。
  110. 大島弘

    ○大島委員 山林所得の問題は余り当委員会でも取り上げられていないので、私はきょうの質問だけでこの問題を終わるのじゃなくて、今後ともこの問題についてまた意見も開陳したいと思いますが、さしあたって、これは法人まで含めては無理でしょうけれども、個人だけで結構ですから、現在の山林所得者の件数と平均金額、それから今度措置法で二年延長になるこれの適用件数、こういうことはわかりますか。
  111. 水口昭

    ○水口政府委員 過去三年間の山林所得の人員、所得金額につきまして、国税庁の統計年報書の数字を申し上げますと、まず人員でございますが、昭和四十九年分は約二万二千人、それから五十年分が一万二千人、それから五十一年分も約一万二千人、こういったところでございます。  それから、一人当たりの山林所得の所得金額でございますが、昭和四十九年分が二百九十九万円、五十年分が三百二十一万円、五十一年分は二百五十八万円、こういうふうな数字になっております。なお、これはサンプル調査でございますので、お含み置きいただきたいと思います。
  112. 大島弘

    ○大島委員 ほかの土地でもそうでございましょうが、私たちの方へ行きますと、一本百万円というようなヒノキがどんどん生えているわけです。そういうものに比べて、いまおっしゃいましたね、平均三百何万、ヒノキ一、二本にすぎないです。何万本、何十万本というヒノキを持っているのです。その一、二本だけの金額、そういうばかなことがありますか。  私はこの問題は、時間がないので、さらに山林の地方税は一体どうなっているのか。たとえば土地を持っている、これは固定資産税がかかる。家屋を持っている、固定資産税がかかる。自動車を持っている、自動車税がかかる。犬を持っておったら、犬まで税金がかかってくるのです。山林というのは御存じのとおり、もちろん不動産ではありませんけれども、登記上は、立木登記法で登記も認められておるし、それから抵当権の対象にもなるというのが現状ですが、地方税はどういうふうになっているか、自治省の方、お答えいただきたい。山林の山については固定資産税がかかっていると思うのですが、山林についてどうですか。
  113. 渡辺功

    渡辺(功)説明員 地方税でございますが、地方税につきましても、ただいま国税で御説明がありましたように、これは伐採されまして山林所得が生じた段階におきまして、市町村民税を課税する、こういうことになっております。  それから、山林所在の市町村の財政という見地からでございますが、木材引取税という税金がかかるわけでございます。
  114. 大島弘

    ○大島委員 そうしますと、先ほど言いましたように、いまや一本百万円もするようなヒノキを何十万本持っておっても、現行では固定資産税がかかるのはその山だけであって、果実にはかからない。もしかかるとすれば、伐採するとか所得に変形したときにかかる、こういうことですね。そういうことが果たして地方税としていいことですか、このまま放置しておくということが。犬を持っても税金がかかるのですよ。
  115. 渡辺功

    渡辺(功)説明員 非常に価格の高い立木というものであるから、これに課税するのはどうかというお考えだと思いますけれども、法定外普通税で一部犬税などもあるいはありますが、これは固定資産税と対比して考えますと非常にまた違った性質があります。  御承知のとおり、シャウプ勧告があって、その後地方税制を組み立てましたその当初からも、立木、これを外すということになった経緯、その点の基本論が一つあると思います。もう一つは、いいとか悪いとかということは別にいたしまして、仮にそういう基本論を別にいたしまして、立木に対する課税につきましては非常にむずかしい問題がたくさんございます。たとえば立木を把握することは非常にむずかしいとか、あるいは立木の性質から樹種、樹齢はいろいろ違いますので、これを評価するのは非常にむずかしいとか、いろいろな問題がございます。  やはり基本は、これが所得として実現したときにその税負担を求めるというような制度でありまして、したがいまして、その基本は何に基づいているかということでございます。同時に、山林所在市町村の財政事情からは木材引取税を、これはいろいろ御議論ありますが、私どもといたしましては、これを存置するということで長年お願いしてきた、こういう経緯がございます。
  116. 大島弘

    ○大島委員 そういう木材引取税とか、そんな小さなことを私は言っているのじゃないのです。私が申し上げているのは、もう一つ理由があるのです。  山林所有者は、山を置いておけば価値が出てくるわけです。そうしますと、なかなか切らない、切らないと、山林労働者はその日の飢えに泣く、そういう社会政策的要請があると私は思うのです。山林労働者は、ことしは山持ちが山を切ってくれるだろうか、恐らく切ってくれまい、ならば、山林労働者の飯の食い上げになるわけです。それを延ばせば延ばすほど、百年ヒノキ、百年杉といって、延ばせば延ばすほど価値が出てくる。これをいま財源のない地方税において、それで果たしていいのか。繰り返して言いますが、犬まで税金をかけているのですよ。
  117. 渡辺功

    渡辺(功)説明員 山林を伐採する方がいいのかどうかということは、税制の面からだけではちょっと判断できかねると思います。  それからまた、犬税というのは別の観点で……
  118. 大島弘

    ○大島委員 最初の答弁、もう一遍言ってください。
  119. 渡辺功

    渡辺(功)説明員 はい。  立木に対する課税につきましては、これはやはり基本的には、その立木が伐採されて所得が実現したときに課税するということで、その途中には所得は生じないわけでございまして、生じた段階の課税が基本だと思います。  それから、地方財政の観点から、立木に課税することはどうかということにつきましては、先ほど申し上げましたように、やはりこれは所得が生じた段階において課税するというのが基本である、こういうふうに考えているところでございます。
  120. 大島弘

    ○大島委員 それは非常におかしなことを言われるのです。  所得が生じたときに課税するのが地方税でも原則だというならば、それでは固定資産税はどうですか、自動車税はどうですか。
  121. 渡辺功

    渡辺(功)説明員 これはシャウプ勧告のときに、当初勧告の中にはっきりしているわけではありませんが、その最初の案にも外れているゆえんのものは、固定資産税につきましては、それを利用し、活用しあるいは使用して収益を図るということが財産価値のほかにあると思います。立木につきましては、そういう性質はないのであって、これはまさに立木そのものを伐採して、それによって長年かけた経費がそこで回収され、かつ利益も生ずる、こういう性質があると思います。そういう基本論のところでは違いがある。また技術的な面でも若干違いがございます。そういったことでございまして、明らかにそこには差異があるというふうに私ども考えております。
  122. 大島弘

    ○大島委員 そうすると、地方税はやはり収益を生ずるものに対して課税しているんだということになると、個人の住宅なんかは収益とどうつながりますか。また、法定外の動物に対する課税なんかは収益とどうつながるんですか。
  123. 渡辺功

    渡辺(功)説明員 ただいま固定資産税の課税との関係で申し上げました。したがいまして、別の観点からまたこれは御議論があることだろうと思います。しかしながら、立木に対する課税は、そういう意味で別の観点から議論をいたしますと、これは先ほども申し上げましたことを繰り返すことになりますけれども、固定資産税とは非常に違う。たとえば技術的な面でも、年々生育していくという点でも違いますし、非常な相違がございますので、固定資産税の課税とは違うんだということで外された経緯があったと思いますが、これは現在でもやはり考え方としては変わっていない、こういうふうに考えております。
  124. 大島弘

    ○大島委員 あなたの答弁が非常にわかりにくいんだが、もうちょっと大きな声で言ってもらいたいんだが、課税から外された経緯というのは、いま二十何年前のシャウプのことを聞いているんじゃないですよ。明確に……。
  125. 渡辺功

    渡辺(功)説明員 固定資産税との関係お話ありましたので、その点に重点を置いてお答え申し上げました。  固定資産税の対象と立木との間には非常に類似した点があります。これは御指摘のとおりでありまして、私どもとしては多々検討、研究しなければならない課題だと思います。しかしながら、基本的に違うところもございまして、それを申し上げたわけでございます。同時に、ここを一つ譲りまして、課税技術の面で考えましても、それは非常にむずかしい問題があって、私どもとしては、立木に対する課税を行うという考え方を持っていないところでございます。
  126. 大島弘

    ○大島委員 それでは、いまあなたの答弁は、一応課税技術の問題は別としても、やはり山林につきましては、何らかの地方税的なものを考えていくという答弁ですか。考慮に値するという答弁ですか。
  127. 渡辺功

    渡辺(功)説明員 立木の問題あるいは山林所在市町村の財政の問題の御指摘をちょうだいいたしました。  山林所在市町村の財政状況については、私ども全く同様の考えを持っております。しかし、それをどういうふうに持っていくかということにつきましては、もっと幅広く、最終的にはやはり財政調整という観点から対処するべきだと考えます。同時に、山林に対する負担につきましては、これはやはりそれが所得として発生した段階における公平、どういう課税をすれば公平かということに帰するわけでありまして、現在行われております所得税及び住民税の課税ということがやはり基本であろう、こういうふうに考えているところでございます。
  128. 大島弘

    ○大島委員 片山内閣のときに、農地は解放されたけれども山林は解放されなかった。この結果、農民という言葉はあるけれども林民というような言葉はないというのが現在ですが、そういうことで、要するに山林所得は、国税の面においても地方税の面においても、非常に優遇されておるということは事実だと思うのです。しかも所有権の絶対のもとに、首一つ横へ振れば、ことしは切らない、そのために何百人の山林労働者が飢えに泣くということ、それほどの所有権の絶対を許していいものかどうか。これは社会政策の問題なんですが、あるいは税制面において、国税面、地方税の面において、これほど優遇しなくちゃならぬのかどうか。私は次回、また機会あればこの問題をもう少し徹底的に取り上げたい。  特に自治省にお願いしたいんだが、この固定資産税はかかるけれども、家屋までかかるのに、なぜ山林にかからないかということば、もう一度私は改めて、場合によっては自治大臣にも質問しますから、よく準備しておいてください。  それから、最後に林野庁に聞きたいのですが、いま言ったように、一体民有林と国有林との総合調整というようなことはやっておられるんですか、林務行政として。あくまでも、これも先ほど言いましたように、資源は有限であるという時代になるときに、全くの無計画で、山持ちがきげん悪ければ切らない、きげんよければ切る、あるいは景気がよければ切る、悪いときは全然切らないというふうなこと、あるいは税金がかからぬから百年も二百年も置いておけというようなこと、そういうようなことで果たして一体どういう行政をやっているわけですか。
  129. 下川英雄

    ○下川説明員 この森林の経営につきましては、林業基本法あるいは森林法に基づきましていろいろな施策を講じ、指導いたしておるわけでございますけれども、もともとこの林業基本法に基づきました森林資源の基本計画というものを実は持っております。その基本計画に基づきまして全国森林計画をつくり、さらに地域ごとの地域森林計画をつくりまして、それでもって指導をやっておるわけでございますけれども、民有林につきましては必ずしも強制力はございません。国有林につきましては計画的に施業をやっておりますが、民有林の場合には、必ずしもこれに絶対的に拘束されるというものではございませんけれども、私ども森林法の中で認められました施業計画制度を推進することによりまして、この計画の実行をやらせておるということでございます。  現在この施業計画制度につきましては、森林所有者が個別的につくりますところの施業計画と、それからもう一つは、零細な森林所有者が大部分でございますが、これらの零細な所有者が共同してつくりますところの施業計画、この二通りの施業計画制度を進めておりますけれども、この施業計画制度に乗っかっておりますのが、全体としてみますと、五十一年度末現在で三八%程度でございます。これらにつきましては、すべて計画的にやっておるということでございます。  特に個別施業計画におきましては、比較的大規模な所有者につきましてはこの施業計画制度に乗っかっておるものが多いわけでございまして、先ほど申し上げましたように、全体としましては三八%の認定率でございますが、五百ヘクタール以上といったようないわゆる大規模等についてみますと、八三%ほどがもうすでに計画をつくりまして、この計画に従って実行しておるという状況でございます。
  130. 大島弘

    ○大島委員 時間が参りましたので最後に一点だけですが、いまの答弁でほとんどが民有林に統制が及んでないということです。また、現に及んでないのです。そこはよくわかるのです。もう自由自在です。資源有限という観点から見ても、それほど山林に対して所有権の絶対を認めるべきかどうか。そういうことで、場合によっては私はこの際森林法を改正して、ある程度強化するということがむしろ必要ではないかと思うのです。林野関係で、そういう大事な法律を抜きにして、いま農林省設置法の一部改正法と、それから改善特別措置法案という、いわゆる山荒らし、人減らしの政策を講じている。私のところには、郷里の林野庁の職員から、これに反対するはがきがこのくらい来ている。これに対して私は、ここの大蔵委員会で聞くことはいささか口はばったいのですが、関連がありますから最後にこれだけ答えていただきたい。  今度の農林省設置法の一部改正法やあるいは改善特別措置法案によって林野庁職員の人員削減を考えているのか。あるいは第二点に、配置転換をどういうふうに考えているのか。それから三番目に、事業の縮小は本当に考えているのかどうか、ちょっとその三点について簡単明瞭にお伺いして、私の質問を終わります。
  131. 後藤康夫

    ○後藤説明員 お尋ねのございました北海道の五つの営林局の機構の再編整備の問題につきましては、札幌営林局以外の四局につきまして、五十三年度に機構を若干縮小いたしまして、他方、札幌営林局の機能を拡充いたしまして、北海道全地域的な問題として対応すべき事務につきましては、札幌営林局がこれを全道的にまとめて対応するような体制をつくりまして北海道営林局とする、そして他の四営林局につきましてはこれを支局とするということで考えておるわけでございますが、これに関連をいたしまして、当然ほかの四局から札幌へのある程度の人員の配置転換という問題は起きてまいりますが、これに伴いまして、たとえば整理退職というような措置をとることによる要員削減ということは考えておらないところでございます。  また、事業量につきましては、国有林野の資源の構成の問題、あるいは特に近年自然保護等の公益的な森林の機能の重視というようなことがございまして、伐採量等はむしろ世論の方向も、できるだけ切り過ぎないようにというふうな方向に向かってまいってきておるわけでございまして、そういったことから事業量は減少しておりますけれども、それに対しまして、要員の規模の方は必ずしもそれに見合って調整されていないという現状がございます。これにつきましては、長期的な観点に立ちまして、高齢者の退職促進等の措置を図ってまいりたいというふうに考えておるわけでございます。
  132. 大島弘

    ○大島委員 北海道につきましてはこれは大問題ですから、わが党の池端君あたりからまた質問が出るかと思いますが、内地の営林局に関しては現状と大差ない、こう考えていいですね。
  133. 後藤康夫

    ○後藤説明員 先ほど申しましたように、国有林全体で申しますと、四十年代の初めごろは約二千三百万立方メーターぐらい伐採をいたしておりましたが、現在は、先ほど申し上げましたような事情によりまして、伐採量も千五百万立米というぐらいのところまで減少いたしておりますので、長期的な観点に立って要員規模の調整を図る考えでございます。  五十三年度につきましては、内地に九つの営林局がございますが、これにつきまして一局一署程度署の統廃合を考えておるところでございます。
  134. 大島弘

    ○大島委員 それはまた大変な問題ですが、これはちょっとここの大蔵委員会の問題ではないのでひとまずこれで終わりますけれども、要するに局長が支局長になるという場合と、現地で採用された職員が配置転換になるという意味の大きな違い、これをひとつ十分考えてもらいたい。  それから、先ほど言いましたように、民有林の調整ということがもし林野庁の使命に加われば、何も事務量を少なくする必要なんてないので、場合によっては拡充してもいいとまで思っているわけです。したがって、これはいずれ他の委員会で論議を呼ぶと思いますけれども、そういうふうにひとつこの問題は慎重に考えていただきたいということを申し添えて、私の質問を終わります。
  135. 大村襄治

  136. 貝沼次郎

    貝沼委員 租税特別措置法及び国税収納金整理資金に関する法律の一部を改正する法律案について質問をいたします。  順序はちょっと不同になりますけれども中小企業庁に入っていただいておりますので、初めに租税特別措置法中小企業関係の部分を先にさせていただきます。それからその後、国税収納金整理資金について質問をいたします。その後もう一度租税特別措置法の方に戻りまして、タックスヘーブンの部分について確認なりをしておきたい。それで大体時間がなくなると思うのですが、時間があれば今度は税制一般について。  そこで、初めにこの中小企業対策でございますが、先般の税制委員会におきまして、私はこのことを主税局長に対して一生懸命お願いをしたわけでございますが、その立法化が現在こうして出てきておるということは非常に好ましいと思います。     〔委員長退席、綿貫委員長代理着席〕 私は、この法律案につきましては、当局としてもかなりよくやったんじゃないかというふうに評価をいたしております。ただ、やらなければならぬものが大分抜けておるなという感じはするわけでありますけれども、ここに出ておる範囲だけでも、それでも相当やったんじゃないかというふうに実はひそかに評価をしておるわけでございます。  そこで、この中小企業の問題でございますが、実はこの委員会の質疑をもとにして、どういうふうにしたらいいかということで待ち構えておる人も中小企業の方にはたくさんおるわけであります。そこで、一々説明して歩くわけにはいかないものですから、できればそういう議事録を読んでわかるようにひとつ答弁をお願いしたいと思うのです。  そこで、このイの中小企業倒産防止共済法に基づき納付した共済掛金の損金算入を認めるという二十八条の三、六十六条の十二、それから、ロの円相場高騰関連中小企業対策臨時措置法に基づく認定を受けた中小企業者について、欠損金の繰り戻しによる還付の特例措置を講ずるという二十八条の五あるいは六十八条の二関係、これについてまず大蔵省の方からその趣旨説明していただきたいと思います。  なお、その後、これに関連して、中小企業庁の方からそのやり方について説明をしていただきたいと思います。
  137. 谷口昇

    ○谷口(昇)政府委員 ただいまの御質問の、国税庁としてこの税制改正法案が通りました場合にどのようにPRをするか、こういう御質問かと思いましてお答えを申し上げます。  私どもは、税務行政を円滑に運営するためには、国税庁では従来から、税法等に関する知識の普及向上を図ることを広報目的一つとして積極的な広報活動を行っております。特に税制改正に際しましては、その都度印刷物の作成配布、あるいは説明会の開催など、改正内容に適した方法によりましてその趣旨の徹底を図ってきたところであります。  昭和五十三年度の税制改正につきましても、法案を成立させていただいたならば、この考え方に従い、速やかに充実した広報活動の展開を図らなくてはならない、このように考えております。特に御質問の新制度につきましては、中小企業向けのものでございますので、その周知方の徹底を期するため、次のような方法によりまして広範囲に効果的な広報活動を行いたいと考えております。たとえば市町村広報紙等への掲載依頼、あるいは説明会の開催、また青色申告会、法人会、税理士会、商工会議所、商工会等の関係民間団体の協力による広報、こういうことを考えております。
  138. 貝沼次郎

    貝沼委員 話がとんちんかんになっているのですけれども、私は、この議事録を読んだ人がわかるようにまず説明をしてもらいたいと言っているわけです。ところが、PRの話が出てきましてちょっと面食らっておるわけですが、もう一回大蔵省の方からこの趣旨説明してもらいたい。それから次に中小企業庁から、どういうふうにこれから進めるのかということを具体的に、どの辺が大事なのかということをよく説明してもらいたい、これは少々時間がかかってもよろしいですから、読んだ人がわからないと何にもなりませんから。その後でPRの話をしていただきたい。
  139. 大倉眞隆

    大倉政府委員 失礼いたしました。  今回の改正で、二つの中小企業関連の特別措置が新たに設けられております。  その第一は、中小企業倒産防止共済法が前国会ですでに成立いたしまして、中小企業倒産防止共済制度というものができ上がりました。この制度は御承知のように、中小企業者の方々が、毎月一定金額を中小企業共済事業団に共済掛金としてお出しになりまして、万一その取引先の倒産などによりまして売掛金がうまく回収できないという場合に、事業団の方から、すでにお掛けになった掛金の合計の十倍の範囲内で、無利子で、担保なしで、保証も要らないという貸し付けを受けることができる、こういう新しい制度でございますが、今回税法上で特別措置を設けようとしておりますのは、この事業団に対して払い込まれます掛金を、払い込まれたつど損金にいたしますということを御提案しておるわけでございます。  それから第二の項目は、俗称円高特別措置法と申しております法律がございます。この法律は、すでに今国会で早期に成立をいただきまして、すでに公布されております。税制面では、この法律で認定を受けました中小企業の方々の欠損金につきまして、特別の措置を設けるわけでございまして、通常欠損金というのは、過去一年にしかさかのぼって還付できない、それ以外は青色申告の場合でも繰り越すということしかできないわけでございますが、今回特に認定をお受けになった中小企業の方々につきましては、過去三年にさかのぼって欠損の繰り戻しができるということになっておりますので、法律が通りましたならば、そのような手続について所轄の税務署の方へ所要の手続をおとりいただければ、三年にさかのぼって還付ができるということを御提案しておるわけでございます。  以上が、両特別措置の内容の趣旨でございます。
  140. 深沢亘

    ○深沢説明員 御説明申し上げます。  先生すでに御案内のとおり、円相場の高騰によりまして、輸出が減少する等の影響を受けて、それで、中小企業者に対して各種の措置を講じて安定を図っていくということを目的に、ちょっと長くなって恐縮でありますが、円相場高騰関連中小企業対策臨時措置法、以後円高法と言わせていただきますけれども、それが先般一月三十一日に成立いたしまして、二月十四日に施行されておるわけでございます。  その法律体系は、非常に詳しく申し上げますと時間がかかりますのでポイントだけ申し上げますと、この法律で、都道府県知事等、つまり市町村長に認定がおろされているケースがございますけれども、そういう認定を受けていただいた中小企業者の方、これに対しまして、金融制度上の低利資金の融資なり、それから近代化資金の償還期間の延長等、それから、ここで先生の御指摘になっております課税の特別措置等が受けられることになっておるわけでございます。  それで、国税の関係措置の内容につきましては、いま大蔵省の方から御説明がございましたので省略させていただいて、地方税の方へまいりますと、この国税の特例措置適用を受けました中小企業者の方を対象にいたしまして、これは住民税、それから事業税でございますけれども、これは国税で特例の措置適用を受けました純損失相当額、または欠損金相当額につきまして繰り越し控除期間、現在、個人の場合が三年、法人の場合が五年になっているわけでございますが、それを二年間それぞれ延ばしまして、個人で五年、法人で七年というふうにさせていただく、これはまた、別途地方税法の改正で御提案申し上げさせていただくということでございます。  措置の内容につきましては以上のとおりでございます。
  141. 貝沼次郎

    貝沼委員 いま説明をいただきましたが、大事なところが説明で抜けておると思うんですね。それはどこかというと、今回、昭和五十二年度分の確定申告は三月十五日までですね。そうすると、この法律はいつ通るかわかりませんが、要するにたてまえからいけば、施行は四月一日になっておるわけでありますから、確定申告の日はもう過ぎているころだと思うのでございます。したがって、五十二年度のための還付というものは、そこに当然手が差し伸べられなければなりません。そこで、五十二年分については七月三十一日まで還付請求をすればよろしい、こうなっているわけですね。この辺の説明がちょっとなかったので、もう一度……。
  142. 深沢亘

    ○深沢説明員 お答えさせていただきます。  たとえば個人の場合を取り上げて御説明すればよろしいのではないかと思いますが、確定申告は、先生が先ほどおっしゃいましたように、五十三年の三月十五日で済んでしまうわけでございます。その段階では、確かに特別措置法が現在審議中でございますが、そこで、租特が通りまして以降、便宜上七月三十一日までというふうに解釈をとってきた経緯がございますが、法律が通って四カ月以内の間、特例部分について、たとえば個人の場合ですと二年でございますけれども、それについて特別にその期間に特例部分についての還付請求をしてくださいというような手当てが、租税特別措置法上もとれるということになっております。  それから、たとえば五十三年度の分につきましては、これはまさに確定申告のときに申告していただけばよろしいかと思います。
  143. 貝沼次郎

    貝沼委員 ここは非常に大事なところだと私は思っておるわけであります。これを過ぎてしまいますと、せっかくの法律ができておっても適用されないわけでありますから、したがって、四月一日から一応考えまして七月三十一日まで四カ月、この期間にいろいろと手続をやらなければならないわけですね。たとえば認定業種については、もういろいろ進んでおるところもあるでしょうけれども、あるいはこれからやる人もおるかもしれません。また、そういう制度が新しくできた場合には、それがゆえに新しく出発しなければならない仕事というものはたくさんあるわけでありますから、その辺のところが相当徹底されないと、せっかくの制度が生きないのではないか。  そこで、PRの話に行くのですけれども、さっきずいぶん出ましたから、そういうようなところから、要するに中小企業庁は中小企業庁で徹底方を一生懸命やる。どういうやり方をするかわかりませんが、説明会なりいろいろなことを恐らくやられるでしょう。大体どういうふうにやるのですか。
  144. 深沢亘

    ○深沢説明員 先ほど申し上げましたように、法律が二月十四日から施行されたわけでございます。これは税の特例の措置だけではなくて、ほかにいろいろな対策がございます。そういったものを含めまして、現在PRに努めているわけでございますが、まず、行政担当サイドでこれは十分理解していただかなければいかぬ。具体的に事務を進めるに当たりまして、この二月八日に都道府県の担当の方にお集まりをいただきまして、この詳細な手続等を含めまして、本制度の内容等につきまして十分御説明を申し上げ、そしてまた、そういう都道府県の担当の方から市町村等の担当の方へ制度の内容等の説明が行われているはずでございます。  そして、これ以外のところで、私ども、国会の附帯決議等もございますので、周知徹底方につきましては考えておるわけでございますが、たとえば二月からもうすでに始めておりますけれども、三月にかけまして新聞、たとえば全国紙、地方紙、それから週刊誌、それからまたテレビ、ラジオにおきまして、この円高対策、円高法に伴います中身のいろいろな対策、手続等の点などを含めてPRをさせていただいておる次第でございますし、これからも力を注いでまいりたい、かように思います。
  145. 貝沼次郎

    貝沼委員 しっかりやっていただきたいと思います。いままでいろいろな対策が、たとえばドルショックのときであるとかいろいろありましたが、常に私たちに来る話というのは、お役所の説明は通り一遍でよくわからない、その後もう一度税理士なりあるいはそういう専門家に聞いて研究しなければわからないというようなことがよく言われるわけでありますから、ひとつ懇切丁寧に指導してやっていただきたいと思います。  それから、国税庁の方ですね、何といったって、いま法人並びに個人ということになっておりますが、税金を納めに行くところは税務署であります。そこへ行って——大体私は、最近税務署というのは非常に親切になったと自分では思っているのだけれども、やはり行きにくいところなんですね。そこへ行って、あからさまに尋ねるということはなかなかやらないようでありますから、税務署の方でも、先ほどいろいろPRするというお話がありましたが、窓口で、あなたの場合はこういう方法があるのですよということを教えてあげるということ、あるいは見えるところにそういう制度が、ことしはたった四カ月ですから、短い期間でありますから、徹底できるようにPRの方法を考えるということ、あるいはそういう——まあ税務署の方は、私は国税庁からいろいろやっていることを実際知っております。たとえば、一、二例を挙げますと、こういうパンフレットをつくってやっておる、これは非常に好評でございます。ですから、こういったものもわかるような——「相続と税金」とか「サラリーマンと税金」、これは果たして喜ばれるかどうか知りませんが、「租税教室」とかいろいろ出ております。こういったものもやらなければいけません。  それからテレビですね、何といったっていま一番よく頭に入るのは、最近はテレビなんですね。ですから、「中村メイコと暮らしと税金」、こういったことを、これは民放でやっておるようでありますが、NHKではないようですね。NHKの方はいろいろ事情があるということも聞いておりますけれども、要するにそういう報道機関を通じて極力ひとつやっていただきたい。     〔綿貫委員長代理退席、委員長着席〕 特に税務署の中においては、あるいはその係までといったらむずかしいかもしれませんが、相談できる窓口、こういったものをきちっとそろえてやっていただくわけにはいかないか、こういうふうに私は要求したいわけでありますが、いかがでございましょうか。
  146. 谷口昇

    ○谷口(昇)政府委員 先ほど答弁をいたしたわけでございますけれども、私どもとしては、できるだけ中小企業者の方に有利な制度でございますので、その広報につきましては万全を期していきたい、このように考えております。繰り返すようで恐縮でございますけれども、市町村広報紙等への掲載依頼であるとか、説明会の開催であるとか、関係民間団体の協力によりますそれぞれの広報でありますとか、あるいはその趣旨によりましては、そのやり方が適当でありますれば、先生の御指摘のようなテレビとかそういうものも考えてみたい、このように考えております。
  147. 貝沼次郎

    貝沼委員 いま税務署の中の話だけ抜けておりましたけれども、その辺はいかがでしょう。
  148. 谷口昇

    ○谷口(昇)政府委員 税務署の中では、御承知のとおりに現在税務相談官というものを置いておりまして、税務署に対しますいろいろな相談、こういうものを匿名で受けるというシステムがございます。私ども、これは大変各所から好評でございましていろいろ御相談をいただいているわけでありますが、こういった相談室あるいは相談官といった制度を納税者の方が御利用いただければ大変ありがたい、このように考えております。もちろん相談官のみならず、税務署の窓口でもいろいろとお尋ねがあればそれにお答えをするような体制をしこう、このように考えております。
  149. 貝沼次郎

    貝沼委員 税務署に対する意見だけではなしに、こういう制度についての説明なりそういうことをお願いしておるわけです。  それから、こういうことはしょっちゅうあってはならないことですが、こういう変動した経済状態では私は起こり得ると思うわけであります。したがって、ただ制度をつくって、その後、まあやったんでしょうということではまずいので、果たしてどれだけの人がその制度を利用し、そしてどういうふうなことが問題であったという、やはりこれからの一つの資料になると思いますので、たとえば国税庁においてはどういうようなやり方をして、そして実際相談に乗ったのはどれぐらいであったというような結果の集計はされますか。もしされるようであったら、その結果を後で報告していただきたいと思います。
  150. 谷口昇

    ○谷口(昇)政府委員 国税庁といたしましては、諸報告とか統計等のいわゆる内部事務は従来から極力圧縮をいたしまして、できるだけ指導だとかあるいは調査だとかそういう方の事務に向けるべくいろいろ努力をしてきているわけであります。したがいまして、御指摘の件につきましては、特別にこれを把握するためには相当の事務量を必要とすること、及び集計上の技術的な問題もありますので、なかなかむずかしいかなとは思っておりますが、なお、御趣旨のほどを検討させていただきたい、このように考えております。
  151. 貝沼次郎

    貝沼委員 では、よろしくお願いいたします。それから二番目の問題は、国税収納金整理資金に関する法律の問題でございます。  これは大臣に初め非常にぼやっとしたことをお尋ねしたいわけですが、ことしの予算委員会から、あるいは本会議等でずっと見てまいりますと、非常に予見しがたいことが起こる、見通しが非常にむずかしい、歳入の見通しを立てるというのは非常にむずかしいというようなことが何回も出てきておると思うのですね。それで、こういう歳入の見通しがむずかしいということと、それから予算を組むということは、非常に密接な関係があり、ひいては日本経済に大きな影響を及ぼすのではないか。したがって、財政当局から考えるなら、できるだけその経済の見通しであるとかあるいは歳入の見通しなどは、やりやすいような材料を整えていくのが賢明ではないか。先般の委員会では主税局長が、ある程度勘に頼るところがあるみたいな話でございましたが、そういうことではいけないと私は思うのでありまして、少しでも歳入見込みを阻害するような要因というものは退けていかなければならない、こういうふうに考えるものでありますが、大臣はいかがでございましょうか。
  152. 村山達雄

    村山国務大臣 できるだけ歳入見積もりが確実になるような資料を整えるとともに、必要のないものについてはそういう要素は排除してまいるということは、全く同感であります。
  153. 貝沼次郎

    貝沼委員 いま大臣は同感をしていただいたわけでありますが、この整理資金は実は逆の方向なんですね。これから申し上げますけれども、これが逆の方向になりますので、大蔵当局としてはえらいことをやっちゃったものだな、これは将来の大汚点であろう、私はこう思っておるわけであります。目先に二兆円というものがぶら下がったから、すぐ欲しかったのでしょうけれども、それをとったばかりにこれから先大変なことになるだろう、こういうふうに考えるわけであります。  そこでまず、この整理資金に入ってくる国税、これにはどういうものがあるのか。また、この改正が行われない、従来、現行のまま、これでいけばその金額は大体どれぐらいになるでしょうか。これは大体で結構です。
  154. 大倉眞隆

    大倉政府委員 今回の改正によりまして、新たに旧年度の歳入として区分整理されますものは、税目的には所得税、法人税、それから相続税、酒税、砂糖消費税、揮発油税、石油ガス税、物品税、以上でございます。それで、今回の改正によりまして五十三年度の収入見積もりに追加されるであろうと推定いたしております金額は、二兆百億強でございます。
  155. 貝沼次郎

    貝沼委員 私の言ったのは、前半はそれでよろしいんですが、この改正が行われないとすれば、現行のままであれば、どれぐらいの規模になりますかということ、そこまでで結構です。
  156. 大倉眞隆

    大倉政府委員 ちょっとこれはややこしいのでございますが、五十三年度の一般会計分の租税収入見積もり総額は二十一兆四千五百億でございますが、今回の国税収納金整理資金に関する法律の一部改正と、それから酒税その他の増税をいたしません前で申し上げますと、十九兆八百八十億という計算、つまり現行法ベースの十二カ月分は十九兆八百八十億というふうに推定いたしております。
  157. 貝沼次郎

    貝沼委員 それから、この整理資金から今度は一般会計あるいは特別会計に組み入れをするわけですね。この場合に一般会計分、それから特別会計分、たとえば電源開発特会とか交付税譲与税特会とか石油石炭特会とかあるようですが、これはどれぐらいになりますか。
  158. 大倉眞隆

    大倉政府委員 特別会計分としてはさほど大きな金額ではございませんで、地方道路税の百七十億と石油ガス税の十億、合計百八十億が交付税及び譲与税配付金特別会計の方に新たに追加して繰り入れられると推計しております。
  159. 貝沼次郎

    貝沼委員 そうすると、やっぱり法人税、所得税、その中でも法人税が圧倒的に多い、こういうことですね。この法人税が目につくのでしょうけれども、この改正によって一体何が変わったのかということなんですね。要するにこの改正をやらなければならなかった理由、これは一体何なのか。いままで長い間昭和二十九年からやってきて、そしてこの時点に至ってどうしてもこれを改めなければならないという、そういう理由は一体どこにあるのか、これを聞きたいと思います。
  160. 山口光秀

    ○山口(光)政府委員 五十三年度におきましてこういう改正をただいま御審議をお願いしておりますゆえんは、結局五十三年度の財政運営のつらさにあったと思うわけでございます。  昭和五十三年度におきましては、いわば国、地方の総力を挙げて景気対策を講ずるということでございまして、そのためのやむを得ない措置であったと思うわけでございますが、もう少し詳しく申し上げますと、まず五十三年度の税収の伸び悩みを補いまして、いまのお話のように二兆余りの財源の確保を図るということが一般会計にとって可能となったわけでございますが、その結果、同時に地方団体に対しましても、地方交付税交付金が五千八百億円余り増加することができ、地方財政対策にも資することになったわけでございます。  それから、実は財源的に苦しいのは、一般会計だけではございませんで、財投面もそうでございます。非常に厳しい原資事情のもとにおきまして、景気対策、地方財政対策のために財政資金を活用しなければならないという事情にございまして、五十三年度におきましては、従来資金運用部が国債を引き受けておりましたのを、ことしは引き受けないようにするというようなつらい措置も講じまして、財投の原資を景気対策、それから地方財政対策のために投入しているわけでございます。したがって、そちらにもそう多くを求め得ないということでございます。  それから、以上申しましたような財政措置を講じました結果、五十三年度のいわゆる公共債の発行予定額というものは二十兆を超えるというぐあいに見込まれているわけでございまして、これは国債、政保債、地方債を含めた数字でございますが、これ以上多額の国債をさらに上乗せするということになりますと、消化がなかなかむずかしくなるのじゃないかというような点がございまして、最初に申しましたように、国、地方を通じて総力を挙げて景気対策に取り組むというために、このようないわば臨時異例の措置を講じてそれに対応するということの必要があったわけでございます。  ただいま財政効果としては五十三年度のものであり、それが臨時異例のものであるということを申し上げたわけでございますが、制度自身はどうかということになりますと、制度としては一これは恒久的な制度改正をお願いしているわけでございます。国税収納整理資金の経理の仕方につきましては、従前から発生主義と申しますか、納税義務が成立いたしましたその年度で物を考えていこうじゃないか、年度所属区分の考え方をそういうところに求めていこうじゃないかという方向で参っておりまして、それが一番はっきりあらわれましたのが実は四十九年度の改正でございます。四十九年度の改正によりまして、原則的にそういう方向が打ち出されたわけでございますが、今度の受け入れ期限を一カ月延長して五月末にするという改正も、その考え方の延長線上にある。そういうことをやりますことによって、五十三年度としては二兆円余りの財源ができるわけでございますけれども、五月分について整理をいたしますと、ほとんどそういう考え方で整理がついてしまう。つまり六月以降は、発生はあるいは成立は旧年度だけれども入るのが新年度だというような金は、そう多くないわけでございます。したがいまして、制度といたしましても、これですっきりしたと申しますか、従来の考え方方向に即した制度政正であるというふうに言えると思います。
  161. 貝沼次郎

    貝沼委員 いま地方交付税交付金の話も出ましたし、それから、納税義務発生の年度という話も出ました。昭和四十九年から変わったということですね。たとえば同法の施行令の第三条ですか、「当該国税の納税義務が成立した日の属する年度」というふうに書いてありますから、そのことだろうと思いますが、それも実は一つ問題がありまして、なぜそういうふうに変わったのかということ、この条項と、それから財政法の「会計区分」、「国の会計年度は、毎年四月一日に始まり、翌年三月三十一日に終るものとする。」十一条ですね、十二条では「各会計年度における経費は、その年度の歳入を以て、これを支弁しなければならない。」という、この二つの関係ですね、これを考えたときに私は、四月が五月になっただけだ、要するにその納税義務が発生した年度だから、それは一つの色がついた金が四月になっても五月になっても続いておる、本当は全部つかまえるべきなんだけれども、一応いままでは四月のところでぶった切りました、五月からの分はそれはそのまま離してあります、ところが、よくよく考えてみたらあと二兆円ばかり泳いでおるから、あれが欲しいということで、今度は五月まで持ってきた、そういうことなんですね。そんなことをどんどんやってまいりますと、いまのお話ですと、さらに延ばしたってせいぜい二千億くらいのもので大したことはないんだ、だから延びる心配はないということのようですが、私は、多い少ないにかかわらず、そういうふうに延ばしていくというやり方、これは財政法の会計区分というものを骨抜きにしていくんじゃないか、形骸化していくんじゃないか、こういうふうに実は心配をいたしているわけであります。したがって、そういうことから考えると、こういう一つの事例をつくるということははなはだうまくない、こういうふうに私は考えるわけでございます。  それからもう一点は、先ほどから二兆円、二兆円というのを非常に魅力的な発言で言っておりますけれども、二兆円を取るために実は大きく変わったことがある。それはどういうことかというと、いままでは四月まででしたから、二兆円はいわば予算を組むときに頭になっておったわけですね、まくらになっておったわけですね。これはもう絶対動かないものだ。一年間の推計を立てて予算を組むわけでありますから、少なくともその部分は動かない。ところが、今度はそれがしっぽの方に来るわけですね。足の方に来るわけでありますから、全部推定をしなければならない。しかもこの法人税は言うまでもなく、景気の変動にものすごく左右されるものであります。そういうものが、いままで頭にあったのをわざわざ足の方へ持っていって、そうして見通しを立てるのがむずかしいように条件を持ってくるということは、これは先ほど大蔵大臣がおっしゃった方向と全く逆の方向ではありませんかと、こういうことなんです。  したがって、そういう面から考えると、予見しがたいことが起こるという現在に、なぜ大蔵省ともあろうものが、わざわざむずかしい方向に改正したのですか、そう考えると、これは二兆円というお金が欲しいばっかりにやった、ただそれしかもう理屈はない、こういうふうに考えられるわけであります。もしそうであるならば、これは大蔵省として非常に大きな汚点である、こういうことは今後あってはならない、こういうふうに私は思いますので、いま意見を申し上げておるわけでありますが、この点についての御感想をお願いします。
  162. 山口光秀

    ○山口(光)政府委員 まず、財政法の単年度主義の原則との関係でございますが、財政法は、その年度の収入をもってその年度の支出を賄わなければならないということを規定しているわけでございまして、一種の財政節度を規定しているわけでございますが、どの年度の歳入になるか、あるいはどの年度の歳出になるかということは、恣意的に決まるべきではなくて、ルールをもって決めるべきである、つまり、一義的に決められなければならないということではなかろうかと考えられるわけでございます。しかし、そのルールは、それでは永久に変わらないかと申しますと、それは変わっても差し支えないんじゃないか。今回の改正は、そのルールを変えさせていただきたい、それは一年限りの問題ではなくて、今後ずっとそのルールでやらしていただきます、こういう趣旨で御提案申し上げておるわけでありまして、財政法の趣旨には反しないと思うわけでございます。
  163. 貝沼次郎

    貝沼委員 私はいま時限立法とか、そんなことを言っているのじゃないのです。要するに、やってしまったことは可逆性がありません、一カ月延ばしたことは今度また四月に戻しますというわけにいかないのですから。できないことはないでしょうけれども、まずだめですね。したがって、こういうことは可逆性がないと私は考えますのでこれはまずかったと、こういう意見を述べておきたいと思います。そういう解釈や何かは、これは皆さん何ぼでもおっしゃるわけですから、私は一々求めません。  次に、タックスヘーブンのことであります。タックスヘーブン対策税制の導入というのがありまして、かねてから懸案になっておりましたのが、これも勇断をもってなされたことには、私は率直に言って敬意を表したい、こう思うわけであります。  ところが、このタックスヘーブンの部分の法律を読んでみまして、もう非常にむずかしいのですね。技術的な書き方が非常にあるものですから、なかなか理解がむずかしい。それで、一番聞きたいところが大体政令で定めることになっておる。こういうことでは、これはなかなか理解ができません。そこで二、三確認をしておきたいと思います。  「特定の所得に対して課される税の負担が著しく低い国又は地域」これは場所を指定しておるわけですが、これは大体どういう条件でこれを決めますか、また、具体的に考えられる国はどういうところがありますか。
  164. 大倉眞隆

    大倉政府委員 所得税、法人税双方に分かれて規定をいたしておりますが、法人関係の六十六条の六の方で御説明いたしたいと思います。  六十六条の六第一項の冒頭のところに「本邦における法人の所得に対して課される税の負担に比して法人のすべての所得又は特定の所得」、まずそう書いてございますが、「すべての所得」というのは特に説明を要しないと思いますけれども、「特定の所得」と申しますのは、たとえば国外所得は課税しないとか、そういう法制の国がございますので、たとえばそういうことを予定してこの表現になっております。  「著しく低い国又は地域としてすべての所得又は特定の所得の区分ごとに政令で定める」とこれを政令にゆだねましたのは、法律で国名ないし地域名を特定いたしてしまいますと、先方の税制がいろいろ動くものでございますから、そのつど当方で法律改正の手続をお願いしないと対応できないということもあり得るので、この基本的考え方法律に表現した上で政令に委任していただくということは、現在の租税法定主義の枠内で十分許されるということで、法制局で審議をしていただいてこういうスタイルになっております。  それから、具体的な国、地域名を公式の場所でいろいろ申し上げるのには若干の相手国との間での差しさわりもないではないわけでございますが、しかし、たとえば全く税がない国、全く法人税に相当する税がない国というようなものがここに入ってくるのは当然でございまして、私どもの理解では、英連邦の一部でございますが、バハマのようなところが政令で指定されることになろう。それからまた、先ほどの例示で申し上げました、国外所得には取りません、その国に本店のある会社の所得でも、その国から見て国外所得となっている心のには法人税を取りません、こういうような税制のもとでは、やはり本件で対応しなくてはならない事情が生じますので、これも指定いたしたい。それはたとえばパナマのような国になろうと思います。  それから「税の負担が著しく低い」という、「著しく低い」という表現も、法制局で御審議願ったわけですが、ほかの法律用語の用例からしますと、大体日本に比べて半分というのが、「著しく低い」という法律用語の解釈として許されるであろう。と申しますと、結局いまの日本の法人の所得に対する税負担が御承知の四九・四七でございますから、実効税率でおおむね二五%以下の国で、しかもこの立法で予定しておるような事情が生じ得る国を政令で定めていくことになろう。具体的には香港を政令で指定することをただいまのところ予定いたしております。  そういう三グループを、それぞれの相手国の税制なり負担の実情に応じまして政令で指定いたしたい、そのように考えております。
  165. 貝沼次郎

    貝沼委員 政令の部分はまだありますが、要綱でお尋ねします。  「保有する株式等に対応する部分」というのがあります。「直接及び間接に保有する居住者又は内国法人の当該保有する株式等に対応する部分」、これでありますが、これは私の感じでは持ち株比率によって合算課税しようとする考え、こういうふうに考えておるものですが、この理解でよろしいでしょうか。
  166. 大倉眞隆

    大倉政府委員 おっしゃるとおりでございます。親が二〇%持っております場合に、子会社がこの法律に規定してございますいろいろな要件に該当しますと、子会社の留保所得のうち二割相当分を親会社の所得に加算していく、こういう意味でございます。
  167. 貝沼次郎

    貝沼委員 この考え方で、海外子会社などが正常な事業活動によって正常な所得を稼得している場合であっても、それをみなし課税の対象としているように理解できるわけでありますが、アメリカでは、たとえばパッシブインカム、アクチブインカムというふうに区別をしてやっているようでありますが、日本の場合はどういうふうになりますか。
  168. 大倉眞隆

    大倉政府委員 これはちょっとお時間をいただかないと、なかなか簡潔な説明というのはむずかしいのでございますが、まず、今回お願いしております日本での税制考え方は、タックスヘーブンと称される地域に子会社を設けることによって、そこでのもうけをこちらへ配当してこないで、全く税負担がないか、あるいは非常に低い負担のままでその地域に留保しておいて再投資をする、そうして租税負担を免れるということに対して歯どめをかけたいという思想でございますけれども、しかし同時に、そのような制度をつくったがゆえに、結果として正常な海外投資活動あるいは経済協力による事業活動を阻害する結果になってはならないであろう、したがいまして、要綱の十ページでございますが、「ただし、当該外国法人が独立企業としての実体を備え、かつ、その地で事業活動を行うことにつき十分な経済合理性があると認められる等一定の要件に該当する場合には、この措置適用しない。」という仕組みを御提案いたしております。  それは具体的にどういうことかと申しますと、一つの例としましては、先ほど例示いたしましたバハマというところがある。それは法人税は全くない。したがって、バハマに看板を置いて会社を持っていても、実際にやっている仕事がカリブ海全域にわたっておるとか、あるいは実はヨーロッパの仕事をしておるというのならば、それはこの対象に持ってこなくてはならない。しかし、本来バハマにいなくてはできない仕事というものもあるわけでございます、観念的ではございますが。たとえばホテル業というものを、バハマの島に現にホテルを建ててやっている場合には、それは税金が安いという問題もありましょうけれども、ホテルというのはそこにいなくてはできないわけでございまして、バハマにいるのはけしからぬということにはならない。ですから、そういうものはこの網にかける必要はない、そういう思想をとって御提案しているわけでございます。  そこで、御質問の第三にございましたアクチブインカム、パッシブインカムという考え方も、私どもとしては十分理解できるということで、この一年ぐらい勉強いたしてみましたのですが、これは執行上非常にむずかしい。恐らくは膨大な資料を提供してもらわないと、所得を厳密にパッシブ、アクチブといって分けていくということは、ちょっと執行面で荷が重いと同時に、納税者との間にかなりのトラブルを起こすのではないかということで、あえてそういうたてまえをとりませんでした。ただ、適用除外基準の中に関連者基準というものが入っているという点で、アメリカの立法例の知恵を借りてきておるということになっております。  なお、すでに御承知と思いますが、アメリカも、今回の税制改正の大統領のメッセージでは、どうもパッシブ、アクチブというやり方はうまくいかないと判断したようでございまして、ちょうどいま日本で御提案しているような姿にむしろ切りかえてしまうという提案が出ているようでございます。
  169. 貝沼次郎

    貝沼委員 だんだん時間がなくなってきましたので、まとめてお伺いいたします。  第一点は、合算課税ということでありますが、私の認識では、これは一種の連結納税制度の変形ではないかというふうに認識できるわけでありますが、この合算課税制度にこういう連結納税制度というものは、現在の国内税法にはないわけでございますが、これがどういう位置づけになるのかということですね、これが第一点。  それから第二点目は、外国との、その国との関係になるわけでありますが、先進諸国以外の国では、たとえばインカムタックス以外の税を法人に課している場合もありますし、また一部の国では、法人税率に累進税方式をとっておるところがあります。あるいは雇用の促進とか産業振興とかそういうために誘致した製造業に税制上優遇措置を与えている場合もあります。一々私申し上げられませんので申し上げませんけれども、いろいろあるようでございます。この場合心配になるのは、要するにその国もいろいろな産業政策がありまして、たとえばそういう企業などを誘致している場合があります。本当に税金逃れのために行く悪質なものもあるかもしれませんし、また、本当にその国から望まれているものもあるかもしれません。こういうようなことを考えると、少なくとも相手国の産業政策を否定するような方向へのものはまたいかがなものであろうかということがちょっと気になるわけでありますので、その辺の配慮はどういうふうにされるのか、これが二点目でございます。  それから第三点目は、この要綱でも、「その地で事業活動を行うことにつき十分な経済合理性があると認められる等一定の要件に該当する場合」という言葉がありますけれども、これは具体的にどういうことをお考えになっておるのか、この点について答弁を承って終わりといたします。
  170. 大倉眞隆

    大倉政府委員 第一点は、これは連結財務諸表制度税制上も受け入れていって、親子会社を連結的に税負担を求めるという制度との関連をどう考えているのかという御趣旨だと思いますが、両者は別のものであるというふうに考えて構成をし、お願いをいたしております。国内的に連結財務諸表のような考え方に基づく連結納税申告というものを認めるかどうかということにつきましては、なお研究すべき問題がたくさん残っておりまして、にわかにこれを採用するつもりはございません。  それから、第二点でございますが、相手国の産業政策ないし経済政策との関係は、おっしゃいますようにまことにデリケートな問題でございます。その意味で、先ほど国名、地域名を具体的に申し上げるときにも、若干差しさわりがあろうかと申し上げたのもそういう意味を含めてでございますが、しかし、やはり現実に租税回避の目的でその地に子会社がつくられることが多いというのも、またある程度国際的に常識が働いているという面もございまして、先ほど申し上げたような例の国ないし地域を指定してこの制度を動かし始めるということ自身には、余りそういう意味での抵抗をあらかじめ予想しておく必要はないであろうというふうにいまのところ割り切っておりますけれども、それは相手国からいろいろな要請なり希望がございますれば、もちろんそれに応じて協議をするという姿勢も必要でございましょう。さらにより望みたい状態は、これらすべての国に対して、やはり二国間の租税条約というものができますれば、お互いに不当な租税回避を避けるという手段も一層講じやすくなりますし、また二重課税の調整もできやすくなりますし、相手国の産業政策上の特別措置に対する対応もやりやすくなるわけでございまして、将来の方向としましては、やはり租税条約のネットワークを広げていくという構えを持ちながら、個別の国の実態に応じてこの制度を試行錯誤的にうまく運用してみたいというふうにただいまのところ考えているわけでございます。  第三点の適用除外要件は、要綱では非常に抽象的に書いているのでございますが、法律ではある程度の規定を設けさせていただいてございます。条文は非常に複雑でややこしい条文でございますけれども、六十六条の六の第三項がそれを規定する条文でございます。この第三項に書いてあるような条件になりますと、適用除外になる。要綱に比べますとかなり具体化してございます。それでもなお冒頭におっしゃったように、まだ政令が多いという点はございますけれども、物の考え方の基本はこの三項でお読み取りいただけるのではないか、そのように考えております。
  171. 貝沼次郎

    貝沼委員 終わります。
  172. 大村襄治

    大村委員長 佐藤観樹君。
  173. 佐藤観樹

    佐藤(観)委員 私はきょうは、租税特別措置法の問題に関連をして、去る五十二年の十二月十四日に会計検査院が五十一年度の歳入歳出決算を内閣に検査報告をし、そしてその中で大蔵省に対して「特に掲記を要すると認めた事項」として「社会保険診療報酬の所得計算の特例について」という項目があるわけであります。  前もって私は一応前提お話をしておきますけれども、このいわゆる医師の税制についていろいろな議論があることは、もう私が言う必要もないところであります。また、その歴史的な経過についても言う必要がないほどでありますけれども、いまのその租税特別措置法二十六条がいいか悪いか、その論議は、私はまた別の機会にしたいと思うのであります。さまざまな議論があり、しかもこれは税制だけの問題ではない、大変大きなバックグラウンドを持った、あすの日本の医療と非常に関係をした問題でありますので、その問題はきょうは別にさしていただきまして、それを論ずるときに基礎となりますデータが、果たして正確に国民の側なりあるいはわれわれの側に伝わっているかどうか、この問題について私はきょうは少し詰めていきたいと思うのであります。  大臣にもお伺いしますけれども、それは特別予備知識が要ることではなくて、大臣は大変な勉強家でございます。当委員会で、私の席の後ろでよく書類を見ていらしゃった、ずいぶん長い長いおつき合いでもございますし、よく勉強なさっていらっしゃったのを私も目の当たりにしておりますから、非常に勉強家であることは私も存じておるわけでありますけれども、きょう大臣に質問することは、格別予備知識があったり何かする必要のないことで、きわめて物の常識だけお伺いしますので、したがって、私は大臣に質問通告もしてなければ、あらかじめこういうことというふうに言っておりません。従来、私が九年間大蔵委員会にいて、大蔵省から資料を出してもらって、そういった立場で物を見た場合に、ここで出された会計検査院の「社会保険診療報酬の所得計算の特例について」というこの分析の仕方が本当に正しいかどうかということについては、私は非常に疑問があるわけであります。  そこで、まず第一にお伺いしたいのでありますけれども大臣もお忙しいから、そんな細かいことまで読んでいることを私は請求をしませんし、また、これは決算委員会でも討議もすることでありますから、その折でもいいわけでありますが、一応初めにお伺いしたいのは、新聞にも大きく出ましたけれども、この五十一年度決算検査報告、特にこのいま非常に問題になっております社会保険診療報酬の所得計算の特例の部分について読まれて、そしてこれはいまの簡単に言えば開業医の方々の実態、こういったものを非常に正しく指摘をして、そして実際経費についても非常にすぐれた分析である、そういうふうに読まれたのかどうなのか。大変お忙しい中でありますから、細かいことはきょうこれから私自体が論議をさしていただいて、大臣も聞いておいていただければわかることであります。そんな細かいことまで読んでないのはけしからぬとか、それは甘いとかなんとかということは私は言わずに、非常に分析力のある、数字についても詳しい大臣でありますので、一応読まれてどういう感想を持たれたか、その点からまずちょっとお伺いしておきたいと思います。
  174. 村山達雄

    村山国務大臣 会計検査院のこの検査報告、私も読みまして、この限りにおいては大体こういうことではなかろうかと思うのでございます。ただし、青色申告がかなり入っております。それで、青色申告をされている方は、恐らく自由診療がかなりの部分を占めている人じゃないかと思っているわけでございます。ですから、かなり正確なものである。しかし、恐らく経費配分はその場合は、自由診療とそれから社会保険診療報酬で収入案分によって出したのではないだろうか、そのように思っているわけでございます。
  175. 佐藤観樹

    佐藤(観)委員 さすが元主税局長でございますからよく御存じでございますけれども、もう一つだけつけ加えさせてちょっと聞かしていただきますと、一応今日の午前中の審議にもありましたけれども、この社会保険診療報酬の特別の問題というのは非常に大きな問題で、今後のこの問題を考えるときに、この会計検査院の指摘と申しますか、書いてある内容というのは非常に参考になって、今後の租税特別措置法二十六条の問題を考えるときに、これは基礎になる資料で、あるいは大変参考になる、こういう感想は持たれたですか。
  176. 村山達雄

    村山国務大臣 これはどういう改正をやるかということにつきましては、その改正の内容との関連でございますが、ここに会計検査院も指摘しているように、かなり個人差があるようにできているわけでございます。大体最後のところにずっと出ておるように、実際経費率三〇%未満から六〇から七二までと階層がずっと出ているわけです。ですから、これは非常にむずかしい問題で、恐らくは人をどれだけ雇っておるか、それから高い機械をどれだけ入れておるか、この差が大きく出てきておるのではなかろうか、こう思うのでございます。それから、収入金額によってそれほど違いがない、こういうことでございますけれども、これは何しろ一千万以上というところでやっておりますから、さあそれが一体以下になった場合にはどうなるか、この辺が非常に問題点であろうと思っておるわけでございます。
  177. 佐藤観樹

    佐藤(観)委員 細部にわたってはこれから少しお伺いしていきますけれども、端的に言って、大変会計検査院には悪いけれども、会計検査院が出されたものについて、この方法論というのはきわめてずさんだと私は思っておるのです。私は非常にこれは、世にこの問題を考えるに当たってきわめて俗説と申しますか、考える根底の資料としてはきわめて偏った、しかも新聞等に報道された形では、結果的にはお医者さんの経費というのは五二%が平均だということのみが伝わっているというのは、これは会計検査院に大変責任があると私は思っております。  私はこれからいかにこの報告というのが、おかしな選択でこの調査ができているかについて、逐一分析をしていきたいと思うのであります。  まず、会計検査院にお伺いしますが、「特に掲記を要すると認めた事項」、特に、「社会保険診療報酬の所得計算の特例について」というのは、どういう根拠法規に基づいて会計検査院は調査なさったのですか。
  178. 前田泰男

    ○前田会計検査院説明員 お答え申し上げます。  権限と申しますか、国の収入支出の決算、これは会計検査院の根本的な検査権限のあるところでございまして、それで収入の大宗でありますところの租税、これにつきましては、毎年不当事項はないかということを調べておるわけでございますが、その中で租税の証拠書類でございますところの申告書、これはわれわれの検査の対象として非常に重要なものでございます。したがいまして、これは毎年われわれ検査しておるわけでございます。  先生御指摘なのは、発表の方法ということだろうと思いますけれども、これはわれわれは違法、不当とあれば発表いたしますし、それから、是正や改善を要するとありますれば、それぞれの法規に基づいていたします。最近は国会方面の御要望もかなりございまして、違法、不当とは言わない、またはそれから、すぐれて政治的な問題であるということで、改善の方途もなかなかむずかしいというようなものについても報告すべきである、そういう御議論が特に決算委員会を通じて非常にございましたもので、去年からわれわれはこういうものも、世間的に大きいものは一応出して御批判を仰ぐ、こういうことにいたしております。この方針に従いまして検査報告に載せたものでございます。
  179. 佐藤観樹

    佐藤(観)委員 それは会計検査院ですから、国の収支をやるのは当然なことでありまして、その意味では、普通のいわゆる報告の中で、源泉所得税に関するものあるいは申告所得税に関するもの、たとえば譲渡所得とか配当所得とか法人税とか、要するに国税庁ないしは税務署が執行するに当たって、この執行は間違っていたのではないか、法律があってその執行が間違っていたのじゃないかというものについて指摘をするのは当然だと私は思うのですね。しかし、この租税特別措置法という法律がいいか悪いかは別として、二十六条のこの法律が一体日本の医療にとってどういう効果をもたらすか、政策的にどうかという問題は別として、とにかくこれは税法上認められている行為なんですよ。認められている行為、それをどういう権限に基づいて調査なさったのか。いまの御答弁ですと、国の収入ということになりますと全く単純な、第二章の「権限」にあるところの第二節「検査の範囲」、第二十二条第一項、こういう中のたぐいとしてこの調査というのはなさったということですか。
  180. 前田泰男

    ○前田会計検査院説明員 このお医者さんの申告書に対します検査は、国の収入支出の決算の検査の一環として行ったわけでございます。この申告書は全部会計検査院に、ある一定限度以上は提出されてまいるわけでございます。その検査の結果どういうものを発表するか、このことを先生が問題にしておられると思いますけれども、それはこういったような制度的なものにつきましても、会計検査院が検査した結果を公表すべきであるというのが、一般の決算委員会の御意見でもあり、われわれも従来からそれをやってきたところでありまして、それが権限外であるとは考えていないわけでございます。
  181. 佐藤観樹

    佐藤(観)委員 ですから、一体何条の権限に基づいてこれはやられたのですか。
  182. 前田泰男

    ○前田会計検査院説明員 何条の権限と申しますか、検査自体は、憲法上も国の収入支出の決算は毎年会計検査院がこれを検査してございます。お医者さんの申告書は収入にかかわります重大な証拠書類でございますので、これを検査するのは当然でございます。
  183. 佐藤観樹

    佐藤(観)委員 憲法に基づいて会計検査院がつくられ、その会計検査院の業務については会計検査院法でもってやるわけですね。しかし、会計検査院といっても、じゃ、だれでも民間の商店に入って検査できるかというと、できないわけでしょう。おたくは八百屋さんの検査というのはできますか、直接。これだって国の収入でしょう。それはできないわけでしょう。ですから、一体何条に基づく権限でこれは調査なさったのかということをお伺いしているのですよ。何条だけ言ってもらえればいい。
  184. 前田泰男

    ○前田会計検査院説明員 検査は、むろんお医者さんに直接赴きましたり、あるいは八百屋さんに直接赴きましたりして検査することはできません。しかし、皆さんが申告書を出しておられまして、それに対しまして税務署は課税処理をするわけでございますけれども、この申告書はわれわれの検査の重要な対象となっております。
  185. 佐藤観樹

    佐藤(観)委員 私の質問が悪いのかな。要するに、皆さん方の方には法律に基づいて権限というのが与えられているわけですね。この権限は、第二十二条に「必要的検査事項」、二十三条に「任意的検査事項」、そして見れば第六節の「雑則」にそれなりの権限が書いてあるわけですね。  そうすると、いまの御答弁ですと、その権限のうちの第二十二条の一項の「国の毎月の収入支出」というのがありますね、これの範囲の中で検査をなさっているということですか。
  186. 前田泰男

    ○前田会計検査院説明員 その範囲で検査をしておるわけでございます。そういたしまして会計検査院は、違法、不当という断定をいたしますほかに、こういう検査をした結果、法令または制度に改善を要すると認めたものがあります場合には、改善の意見を表示できる、こういう規定もあるわけでございます。  本件の場合に、いままでわれわれは、改善の意見が表示できる場合に限って載せてきたわけでございますが、今回のように、社会保険の診療報酬の適正化というものとも絡み合った相当大きな政治問題でもございますので、われわれは改善を要するという断定はできなかったわけでございます。ただ、こういうものにつきましても、国家的に意味の大きいものは公表するようにというのが従来の決算委員会の態度だった、こういうことでございます。
  187. 佐藤観樹

    佐藤(観)委員 私も決算委員会の経過をつまびらかに知っているわけではありませんけれども、しかしそれでも、たとえば皆さん方が「特に掲記を要すると認めた事項」というのは各省にわたってあるわけだけれども、いずれも、建設省についてもあるいは電信電話公社についても国鉄についても住宅公団についても、国の機関ですね、こういうものなら私はある程度わかるわけです。しかし、その法律がいい悪いはいま論議の外だということは私は冒頭に申し上げたわけでありますが、法律に基づいて申告されるものについて、果たして会計検査院がそこまで立ち入る権限があるんだろうか。  それでは、第六節「雑則」にあります三十六条「改善の意見表示又は要求」、「会計検査院は、検査の結果法令、制度又は行政に関し改善を必要とする事項があると認めるときは、主務官庁その他の責任者に意見を表示し又は改善の処置を要求することができる。」この権限に基づいて調査をされたのではないのですか。
  188. 前田泰男

    ○前田会計検査院説明員 それは「検査の結果」とございますので、当然検査権限に基づいて調査いたしました結果改善の意見を表示することができる、こういう規定でございます。  ただ、検査報告にどういうものを載せるか、これは一応会計検査院に任された権限である、このようにわれわれは考えておるわけでございます。
  189. 佐藤観樹

    佐藤(観)委員 私が冒頭にちょっと疑問に思ったのは、何度も言っているように、租税特別措置法二十六条がいい法律か悪い法律かということは別として、法律で認められている行為について果たして会計検査院が立ち入る要素というものがあるんだろうか、権限というものがあるんだろうか。他のものは、法律の執行面で、先ほどちょっと読み上げましたけれども、執行面でどうも不適当だということなんですよね。ところが、租税特別措置法二十六条の問題というのは、執行面の問題じゃないですね、法律で認められているわけですから。その権限まで会計検査院が入る根拠法規は一体何か。国の収入支出といったら、それはすべてになるわけですね、そうなると。ほとんどすべてのものが、直接に納税者以外は、つまり、国の機関が関与しているものを通してならば、会計検査院はその意味では、法律で認められている行為であろうとなかろうと検査の権限が、強いて言えば二十二条の第一項である、こういう見解ですか。
  190. 前田泰男

    ○前田会計検査院説明員 ともかく収入支出について検査ができる、お医者さんの申告書について検査ができるという点は、おわかりいただいたと思いますのですけれども、しかしただ、今度それについて会計検査院がどういうアクションをとるか。たとえばいま御指摘のとおり、ある一つ法律がございまして、これがいっぱいある法律でございますから、それに従って行われました行為は合法的でございます。しかし、もしその法律が若干合理性を欠くというようなことがございますれば、この法律は改正したらいかがかという意見は会計検査院は述べております。で、今回の場合はそのケースに当たるとわれわれは断定しておりません。ただ事実を淡々として書いて一応御議論を願う、それがねらいでございます。したがいまして、たとえ法律に規定してありましても、この法律自身が不合理であると考えました場合は、会計検査院は一応是正の意見を出しております。
  191. 佐藤観樹

    佐藤(観)委員 だから、そこまで話がいきますと、第二十二条の第一項「国の毎月の収入支出」ということを越えていますわね、それは。その意見を述べて、法律があって——先ほど私がちょっと読み上げましたように、たとえば各税務署の調査に入って、同族会社の留保金額、これはどうも少し問題があるんじゃないかとか、法律の執行面について問題があるという指摘は、これはわかるのですよ。国税庁が、あるいは各税務署が、正しく執行しなかったではないかという指摘が何点か出されております。土地の譲渡等に係る譲渡利益金額、二十六事項、退職給与引当金、二十一事項。これは要するに、法律があって、ところが実は執行面が悪かった。ですから、たとえば退職給与引当金なんかでも、「期末退職給与の要支給額の百分の五十相当額を超えるなど繰入れ額の計算を誤ったり、取り崩し額を過少に計算したりしていたものである。」というようなことで、法律があって、法律の執行面が間違っていたということはあるわけですよね。ところが、今度の調査というのは、いまの御説明じゃ二十二条の第一項にいうところの「国の毎月の収入支出」という中で、法律で認められているこの租税特別措置法二十六条そのものがどうかということを皆さん方の方は検査されているわけですよね。だから、一体その権限というのは何か、そこが私は納得がいかないわけですよ。
  192. 前田泰男

    ○前田会計検査院説明員 先ほども申しまして、先生もお読みくださいましたとおり、会計検査院法に三十六条という規定があるわけでございます。したがいましてその点では、執行面だけを批判するという形にはなっておらないわけでございまして、この立法は改正すべきであるというところまで会計検査院は物を言ってよろしい、こういうことになっておるのが三十六条でございます。それを受けまして……(「それならなぜそれを言わないのか」と呼ぶ者あり)いや、三十六条は、先ほど先生がお読みいただいたその規定の中でございますので……。
  193. 佐藤観樹

    佐藤(観)委員 それなら本当に、いま委員から御発言があったように、そう言ってもらえばまだ私はわかるので、ただ、これは「検査の結果」、そういったことですわな。だけれども、検査をできる権限というのはじゃ何にあるのですか。いま言ったように、実際法律の執行が正しいかどうかを検査した、そうしたらどうもこれはおかしいぞということがわかる。しかし、法律で認められている——私はあえて何度も言うけれども、この租税特別措置法がいい法律とか悪い法律とか、これはいろいろ議論があるでしょうけれども、これはとにかく歴史的に国会が認めていることですから、これはいろいろな議論があっても、何も納税者が、この場合事実上開業医の皆さん方が、その対象になるということはないと思うのですね。  いま三十六条と言われた。三十六条は、会計検査院が検査の結果、そういうふうにいろいろな法令とか制度の問題があるという場合であって、しかしそれじゃ、検査をできる権限というのは、いまの御説明だと、二十二条の「国の毎月の収入支出」だと言われるわけですな。そうなりますと、いま申しましたように、法の執行がおかしいというならわかるけれども法律で認められていること自体に検査する権限というのは、いま二十二条の第一項でいうところの国の収入支出というだけで皆さん方が、国会が認めている——あえて言うけれども、中身のいい悪いは別として、国会がとにかく認めている法律まで立ち入る権限というのは一体どこにあるのかというのが、私にはわからない。
  194. 前田泰男

    ○前田会計検査院説明員 どうも御説明が悪くて恐縮でございますけれども、先ほどから繰り返しておりますとおり、われわれは、収入支出についてはいかなる観点からも検査ができる、そして、もしこの法律が場合によっては改正を要するのではないかという場合には、改正を要求する権限も与えられている、こういうことを私は申し上げたわけでございます。したがって、制度的なもの、これを改正した方がよりベターではないかというような場合には、そういう意見も申し上げる、こういうことでございます。
  195. 佐藤観樹

    佐藤(観)委員 そうしましたら、こう整理します。  いまの御答弁は、検査する権限というのはあくまで第二十二条の一項の「国の毎月の収入支出」というものに基づいてアクションを起こせる、そしてその結果が出た場合には、三十六条の「検査の結果法令、制度又は行政に関し改善を必要とする事項があると認めるときは、主務官庁その他の責任者に意見を表示し又は改善の処置を要求することができる。」ということで、ここに皆さん方の検査報告に載せた、こういうことですね。そう理解していいですね。
  196. 前田泰男

    ○前田会計検査院説明員 改善意見でございましたら、そうでございます。ただこの場合には、われわれは改善を要するという結論を出さなかったわけでございますね。したがって、改善意見さえ出せる会計検査院であるから、改善がすぐできるとは思わないといいます場合には全然物を言わないかというと、それは改善の意見も表示もできる会計検査院でございますので、それなら客観的に事実を述べたらどうかというのが、国会の決算委員会方面の御意向であった、こういうことでございます。
  197. 佐藤観樹

    佐藤(観)委員 この権限の問題は、私の主題ではない、入り口なんで、時間がなくなってしまいますので、じゃ一歩前へ進めさせていただきます。  この「社会保険診療報酬の所得計算の特例について」というものですね。これ自体は皆さん方の中でも、ひとっこれをやろうじゃないか、検査してみようじゃないかというようなことは、下の方の会議あるいは上の方の会議で決められるのでありましょうけれども、一体いつごろこれは検査しようじゃないかということになったのですか。
  198. 前田泰男

    ○前田会計検査院説明員 一昨年の暮れごろでございますけれども、これも大体会計検査院はいつも不当事項、違法事項ばかり挙げていて、租税制度そのものに関する——租税の検査に限ってでございますけれども、租税の制度そのものを研究するという態度が足りぬではないかという相当の御指摘があったわけでございまして、われわれは従来からそれは考えてきたわけでございますが、それでは、大蔵省の計算によりましても減税額の一番多い医師の優遇所得、それから世間の批判も、いまほどではございませんが、あのころかなりございまして、そういうことで一昨年の十二月ごろ、ひとつ取り上げてみようかということを決めております。
  199. 佐藤観樹

    佐藤(観)委員 その意思はわかりましたけれども、これは後、内部的にはどういう手続をするのですか。これを調査して、事実上人員を配置をしたりどうしようという具体的な行動に移る決定と申しますか、これはいつなんですか。ある程度の雰囲気なり背景があったことは私もわからぬわけではないのですが、具体的にたとえば、会計検査院のこれはどこで決まるのだか知りませんが、検査官会議で決めるのかわかりませんけれども、要するにおたくの院議というのですかな、院議で決めたのはいつなんですか。
  200. 前田泰男

    ○前田会計検査院説明員 大体会計検査と申しますものは、決めてきちっといっても、そのとおりいくわけのものでもございませんので、したがいまして、まず試行錯誤の期間が続くわけでございます。ですから、検査が始まりましたのは十二月ごろから——申告書はずっと会計検査院に提出されておりまするから、その分析はもう十二月ごろからずっと続けております。
  201. 佐藤観樹

    佐藤(観)委員 それでは、改めてお伺いしますけれども皆さん方の中でもいろいろ討議をして、これだけの相当の人数を動かして仕事をやるわけでありましょうから、それなりのびちっとした目的といいますか、それがあるはずだと思うのですね。それはどういうことですか。
  202. 前田泰男

    ○前田会計検査院説明員 大体いままでばらばらと申し述べてきたわけでございますけれども、一応まず制度的なものを見るべきであるということ、それからこの中では、医師のいわゆる優遇税制というものが減税額がかなり大きいということ、それからもう一つは、証拠書類というものが会計検査院にありまして、在庁しながらも分析ができるということ、そういったようなことをあれいたしまして、検査を始めたわけでございます。
  203. 佐藤観樹

    佐藤(観)委員 皆さん方の説明書といいますか、「昭和五十一年度の決算と検査」という本によりますと、要するに簡単に言えば、ここで検査した結果が次の国政の中で何らかの形で生かされるという前提があってだというふうに理解していいですね。「特に掲記を要すると認めた事項」で、「今までに述べたような「不当事項」、「処置要求事項」、  「処置済み事項」の範囲に入らないものでも、予算執行の効果が上がっていなかったり、事業経営が非常に悪化していたりして問題がある事態については、五十年度から「特に掲記を要すると認めた事項」という標題で検査報告に掲記することになった。」と書いてあり、「これは、このようにして問題を提起することによって事態の進展を図り、今後の事業運営や会計経理執行の参考に資するためである。」こう書いてありますけれども、要するにこれは突き詰めて言えば、皆さん方が検査されたものが国政の中で生かされ、次の問題解決の大きな指針になる、あるいは重要な資料になる、こういう前提で検査されているわけですね。
  204. 前田泰男

    ○前田会計検査院説明員 お話しのとおりでございます。  本件の優遇税制に関して申し上げますれば、大分新聞あたりではちょっと間違って報道された面があると私は思いまするけれども、われわれ自身がこの調査をいたしました前後、お医者さんはすべて不公平税制の優遇を受けているんだというような意見一般でございました。われわれが一応調査してみましたところが、実際はそうではないというようなことがはっきりいたしまして、したがって、これではわれわれ自身の調査も、大体サンプル的に申しましてそんなに少ない数字とも考えませんので、それならこれを一般に公開いたしまして、きょうのような御議論をいただく、こういうチャンスをつくるほうが国のためではないか、こういう考え方でございます。
  205. 佐藤観樹

    佐藤(観)委員 その後半の話は私はまだ別に聞いているわけではないので、そう予防線を張らなくていいのですが、要するにそうしますと、大体私が要約したことを局長はお認めになったわけですから、そうなりますと、われわれは少なくも次の施策の大きな資料にしなければいかぬ。ひとつここに書いてあることが正しくて、これを土台にして、われわれも医師税制の問題については、これは各党とも非常に大きな課題でありますから、皆さん方が調査してくれたものを参考にして、この土台の上に次の結論を出すよすがにしなければいかぬというものだと私は思うのですね。そういうふうに理解してよろしいですね。
  206. 前田泰男

    ○前田会計検査院説明員 そのようにしていただければ、一番われわれとしてはありがたい話でございます。
  207. 佐藤観樹

    佐藤(観)委員 そういう前提に立つならば、当然ここで調査されたものというのは、たとえば簡単に言えば、ここでは個人開業医の方々、いまざっと七万人いらっしゃいますけれども、七万人の方々の全体像をあらわすものでなければ、私たちは、ここに出されたものが正しい資料ということにならないし、あすの政治のためにこれをもとにして次のステップに行くということにできませんね。そうじゃないですか。
  208. 前田泰男

    ○前田会計検査院説明員 理論的にはそうでございまするけれども、われわれが一千万円以上の所得、かなり金持ちのお医者さんだけ選びましたその理由は、一つは、世間の批判というのが所得の多いお医者さんに対してあるのであろうと考えた。それからもう一つは、先ほど大蔵大臣がちょっとおっしゃいましたとおり、これは青色申告をしている方でないと経営の分析ができないわけでございますが、所得一千万未満の方になりますと、青色申告をしていらっしゃる方は非常に少ないということがわれわれのネックでございまして、収支の明細書がついてございませんとわからないということでございます。したがいまして、われわれはどこまでも所得一千万という、日本では相当の最高所得の方に属する方々でございますが、この方についての分析をしたわけでございます。
  209. 佐藤観樹

    佐藤(観)委員 そう答弁——まだそこまで私は聞いてないので、要するに少なくも皆さん方が、会計検査院が調査をなさったものが国会に出されてくる——出されているわけですね。それをもとにしてわれわれは政治をするわけでしょう。この租税特別措置法二十六条を一体どうしようかという問題をするわけでしょう。そのためには、われわれが少なくも論議をする大きな資料にするためには、皆さん方の調査されたことが、少なくも七万人のお医者さんの全く平均的な、代表的な、そういう調査になっていなければ、つまり七万人のお医者さんの全体像がこれを読めばわかるということになっていなければ、われわれはこれを参考資料にできないじゃないですか。そうじゃないですか。
  210. 前田泰男

    ○前田会計検査院説明員 先生おっしゃいますとおり、お医者さんの中には、経費を一〇〇%超しますために申告書を提出されていないお医者さんも、一部ではございますけれどもあるわけでございまして、したがって、そういうお医者さんはかなりあるであろう、そのように私考えますし、それからもう一つは、われわれの調査によりましても、一千五百五十三人の方は七二%を超すという理由でこの優遇を受けていなかったということでございますので、確かにこれは所得一千万を超す方の、そのうちで特例の適用を受けておった方の一応平均である、こういうことでございまして、このほかに調べられればさらによかったと私たち思いますが、恐らく非常に困難であったろうと考えておるわけでございます。
  211. 佐藤観樹

    佐藤(観)委員 そうするといまの御答弁は、必ずしも約七万人の個人開業医の方々の全体像をあらわしているものではないと、こういう結論ですね。
  212. 前田泰男

    ○前田会計検査院説明員 恐らく下の方のお医者さんの場合、若干のサンプル調査をいたしておりますけれども、かなり所得率の高い方もおられますから、それか全体をあらわしているとは——五二%というのは、どこまでも所得一千万以上の方々のものである、こういうぐあいにお考え願いたいと思います。
  213. 佐藤観樹

    佐藤(観)委員 それも不正確ですね。七二%を超えている人は除いて、なおかつ一千万円でしょう、いま五二%というのは。それ自体が非常に問題なんですけれども、いまそういうことを私は聞いているのじゃなくて、要するに、サンプル調査も若干一千万以下の方もやられたと言われたけれども、いまとにかくそのことを聞いていない。要するに、皆さん方が責任を持って決算検査報告というのを出された。ここに書いてあることを前提として国会の審議をし、あるいはこの問題の解決といいますか、前進といいますか、日本の医療をどうしようかという、そういう重大な問題に非常に関係してくるわけですから、皆さん方の出されてくる資料というのは、少なくも七万人のお医者さんの全体像を——全体像といったって、全部七万人調査できるわけじゃないから、少なくも全体像をあらわすようなものでなければ、われわれは、これは三文の値打ちもないじゃないですか。全く一部の人だけの調査をして、これが七万人の方々の実像です、全体像ですと出されたって、われわれはこれは何の参考にもならないじゃないですか。そうでしょう。これが会計検査院として七万人の方々の全体像だと思って出されたのか、そうじゃないのか。そうじゃないということになりますと、先ほどの前提と大分話がごちゃごちゃになりますね。一体これは、七万人の方々のお医者さんの全体像と思われてここに報告書を出されたのか。細かいことはいろいろ私まだまだお伺いしますけれども、一体これが全体像なんですか、七万人のお医者さんの方々の。そのことをお伺いしているのですよ。
  214. 前田泰男

    ○前田会計検査院説明員 先ほども申し上げましたとおり、所得一千万円以上のお医者さんの方の平均でございます。
  215. 佐藤観樹

    佐藤(観)委員 そうしますと、後で一千万以上の問題もお伺いしますけれども、これは明らかに全体像じゃないわけですね。
  216. 前田泰男

    ○前田会計検査院説明員 ですから、全体像だとは申し上げておりません。所得一千万円以上のお医者さんのものです。
  217. 佐藤観樹

    佐藤(観)委員 そうしますと、またおかしなことになるのですね。いまはっきり全体像じゃないと言われた。一千万円以上の方々の、しかも後でお伺いしますけれども、七二%を超えている方については全然平均の中に入れないで、七二%以下の方だけ平均を出してみて五二%だ、五二%だと言っているわけでしょう。それはさらに詰めますけれども、全体像じゃないものを国会に出してもらって、われわれがこれを読んで、それでは租税特別措置法二十六条の問題はどうしようかという参考になるのですか。ならないじゃないですか、そんなことでは。国会で審議をし、この問題の解決を図る、前進させるためには、少なくも各業界なりおのおのの全体像が前提として出ていなければ、全く一部の、イソップの話じゃないけれども、象の鼻かしっぽか足かどこかだけをいじったような報告書を出されて、さあこれで国会で次の政策を考えてくださいといったって、そんなものは調査の重みがないじゃないですか。そうじゃないですか。
  218. 前田泰男

    ○前田会計検査院説明員 これも先生方よく御存じのとおりでございまして、日本の所得税法というのは累進税率をとっているわけでございます。したがいまして、所得が下になればなるほど税率は下がってくる。それで、国民皆さんの中で御批判があるのは、一応お金持ちのお医者さんであろう、われわれはそのように考えまして、所得一千万円以上のお医者さん、こういうぐあいに限ったわけでございます。
  219. 佐藤観樹

    佐藤(観)委員 そういうことを言うなら、では、所得一千万円以上のお医者さんというのは、七万人のお医者さんのうちの何%いるのですか。
  220. 前田泰男

    ○前田会計検査院説明員 これを一応われわれは別途サンプル調査をしたわけでございますが、昭和五十年度分に確定申告書を提出しました医業等事業所得者のうちに一万八千九百二十四人について調査いたしましたところが、一千万円以上の割合が約三七%、六千九百五十六人、こういうことでございます。したがいまして、九万人に当てはめてみますと、推定でございますが、約二万四千人ぐらいおられるんじゃないかと思います。
  221. 佐藤観樹

    佐藤(観)委員 それもおかしいのですよ。では、一万八千九百二十四人調査されたというのは、すべての七万人のお医者さんのうちのどういう所得階層を一万八千九百二十四人選ばれたのですか。これは一万八千九百二十四人というのは全部所得階層別になっているのですか。皆さん方が任意に調査された一万八千九百二十四人のうちの六千九百五十六人が一千万円以上だったからといって、三七%が一千万円以上だ、それを延長させて引き伸ばしてみたら二万四千になっている、そんなばかな数字がありますか。一万八千九百二十四人というのはどういうサンプリングなんですか。これは所得階層別に人数別に、たとえば収入が一億円以上の人が何割、それから一億から五千万の人が幾ら、それから一千万以下の人が、あるいは五百万以下の人が幾ら、人数別に比例して一万八千九百二十四人というものをつくって、そしてそういうふうに全く所得階層別にやってみたら、そのうち六千九百五十六人が一千万以上でしたというならば、三七%という数字は意味があるわけでしょう。一万八千九百二十四人というのは、そういうサンプル調査をしたのですか。所得階層別にちゃんとなっているのですか。
  222. 前田泰男

    ○前田会計検査院説明員 これは昭和五十年に確定申告書を提出されましたお医者さん、これを行きました税務署ごとに全部出していただきまして、そのうちから所得一千万円以上の方は幾らあるかということを調べた数字でございます。
  223. 佐藤観樹

    佐藤(観)委員 それは逆に言えば、一万八千九百二十四人というのは、一体七万人のお医者さんのうちのどういう所得区分の人がそこに属しているかというのは何ら調査なさってない。全くアトランダムに一万八千九百二十四人を選ばれて、要するに、いま申しましたように、五十年分の確定申告があったものを全部持ってきてやってみたら、そのうち六千九百五十六人がおった。一万八千九百二十四人が一体七万人のお医者さんのうちのどういう所得階層に位置するかについては全然わからないということでしょう。(「全部一千万以上なんだ」と呼ぶ者あり)
  224. 前田泰男

    ○前田会計検査院説明員 いや、一千万円以上ではございません。これは確定申告書を税務署に提出されましたお医者さんでございます。それのうち一千万円以上の所得のあった方のパーセンテージでございます。
  225. 佐藤観樹

    佐藤(観)委員 ですから、私がお伺いしているのは、一千万円以上の方が三七%という数字を出されているけれども、これを一万八千九百二十四人を比例配分して七万人に合わせれば、では、三七%の人が年所得一千万円以上の方とあなた方は見ているわけですか。
  226. 前田泰男

    ○前田会計検査院説明員 そのとおりでございます。
  227. 佐藤観樹

    佐藤(観)委員 おかしいな。ましてや皆さん方のところは、その前の「注4」のところに「五十年度版国税庁統計年報書によれば、全申告所得者四百六十二万三千七百二十人のうち所得金額が一千万円以上の者の割合は四%(十八万九千八百六十七人)となっている」ということを言われていますね。これは私も確認しました。確かにそうです。これはいいです。全申告所得者のうち一千万円の方ですから、十八万九千八百六十七人というのは確かに四%になっている。これは全申告者ですからそのうちの一千万円を超える人、これは比べる比較の対象になりますね。  だけれども、七万人いるお医者さんのうち一万八千九百二十四人を、申告書が出てきたからというだけで集めて、そのうちの一千万以上の所得の方は六千九百五十六人だった、しかもその一万八千九百二十四人というのは七万人いるお医者さんの所得階層の中でどういうところなのかさっぱりわからないじゃないですか。これは比べること自体おかしいんじゃないですか。申告書が出たというだけで、一万八千何がしの人を申告書が出たからといって選んだ、そのうちの約七千人近くが一千万の人がいました、ですから三七%です、だからそれを延長しますと七万人のうちの三七%が一千万円以上の所得である、こうするのですか。ずいぶん会計検査院というのはずさんなところですね。七万人を調べてみて、そのうちの約七千人が一千万以上の所得の人というならばパーセンテージを出しても意味がある。勝手に、申告書が出てきた約一万八千人ぐらいのうち約七千人ぐらいの人が一千万円以上の所得であったから、三七%が一千万円以上の所得の方です、これは比べようがありますか。七万人と比べて比率を出すならわかる。勝手に選んで、どういう所得階層かわからない人と、その中にあった一千万円以上の所得の人とを比べて三七%だと出したって、これは私は小学校の数学ではお化けだと習った、比べるべき筋合いのものじゃないものを比べているのですから。しかもあなたの方では、先ほど読み上げた全申告者のうちの四%と三七%を比べられている。こんなでたらめはないでしょう。でたらめじゃないですか。
  228. 前田泰男

    ○前田会計検査院説明員 七万人全部当たりまして、この場合申告書が提出されていないとだめでございますから、七万人という数字がつかまえられるかどうかわかりませんけれども、しかし一応そのうちの一部を抽出いたしましてその割合を調べるというやり方は、統計学的に認められているやり方でございまして、私どもの調査では開業医の方九万と一応考えておりますけれども、九万の傾向を調べるのに決して少な過ぎるデータだとは私考えておりません。
  229. 佐藤観樹

    佐藤(観)委員 私は、七万人全部調べろ、九万人全部調べろと言っているのじゃない。一万八千九百二十四人が、全体の中の所得分布が均一になっていればある程度比べられるでしょう、約七千人の一千万以上の方というのは比べられるでしょう。だけれども皆さん方の出ているところは、一千万円以上の方を大体対象にして話をしているのに、そこのうちの約七千人というものを比べてみたって、これが全体像だとわかりますか。確かに一万八千九百二十四人という数字自体は大きいですよ、私は少ないとは言わない。少ないとは言わないけれども、サンプル調査というものは統計学的には、ある程度分布が均一になっているということが前提なんであって、七万人なり九万人なりのお医者さんのうちの一万八千九百二十四人というのが一体どんな分布になっているかわからない中でそれを比較してみたって、これは全くお化けとお化けを比べているみたいな話で、三七%なんというのは何の意味も持たないじゃないですか。
  230. 前田泰男

    ○前田会計検査院説明員 要するに、所得一千万以上のお医者さんというのは、お医者さんの中でどういうパーセンテージを占めるであろうかというだけの調査をしたのが、この「注4」に書いてあることでございます。したがって、本文の方に書いてありますのとは関係ございません。ただ何%ぐらいになるであろうかということをわれわれ見ただけでございます。
  231. 佐藤観樹

    佐藤(観)委員 私の言っていることがよくおわかりにならないのかな。ただと言うけれども、だから、一万八千九百二十四人というのは一体どういう所得階層の方々を抽出したのかわからなければ、これを七万人なり九万人なりに延長すること自体が意味がないのじゃないですか。  大臣、私はむずかしいことを言っているつもりはないんだけれども、どうですか。アトランダムに抽出すると言ったって、この一万八千九百二十四人という方々が七万人いるうちの下の方だったら、これはまた全然違いますわな。たとえば一千万以下の人全部一万八千九百二十四人調べて、可能性としてはそういうことがあり得るわけでしょう、それと一千万円以上超える人と比べてみても意味がないし、少なくもパーセンテージを出すということは、この一万八千人余の人が所得階層的に見てある程度比例配分されているという前提に立たなければ、三七%の人が一千万円以上だ、以上だと言ってみたって、七万人に引き伸ばせないじゃないですか。  われわれは新聞社の世論調査というのを非常に気にするわけだけれども、新聞社の世論調査だって、職業別、年齢別、地域別、もちろん男女の性別、こういったものをばらしてみて、これは計算の方法もいろいろあって、心理学的なあれもあり、三千とか五千とかいう数字をとり、ときには千ということもあるけれども、それはなるべく日本国民の質がある程度それであらわせるだろう。単位が少ないですから、必ずしも完全とは言えないから、またそれの計算の仕方があるようでありますけれども、言えないから、必ずしもそれが全体像、全部をあらわしているとは言わないけれども、少なくもいま言ったような分布をとってみて、大体これで日本国民はこう考えているのじゃないかという世論調査を新聞はやるわけですよね。  この一万八千九百二十四人が一体どういう階層の人だかさっぱりわからないで、たとえばいまの御答弁では、一万八千九百二十四人のうちの八千人だといたしましたら、一万八千九百二十四人選んだうちの八千人がたとえば一千万円以上だということにしたら、パーセンテージは全然違うわけですよね。大臣、どうですか。私は何もむずかしいことを聞いているつもりはないので、統計と申しますか数学と申しますか、少なくも比べるものが——前の方はいいわけですよ、全申告所得者四百六十万のうち一千万以上の方が約十九万人いるからこれは四%だ、これはいいわけでしょう。皆さん方は、四%と三七%を比べているわけだけれども、一万八千九百二十四人が七万人のうちの一体どういう所得階層、平均的に一万八千九百二十四人を選んだのじゃない限り、パーセンテージ三七%と言ったって、これを七万人なり九万人なりに引き伸ばしたって、そこに出てくる数字というのは全くお化けですよ。ぼくの言っていることが違うかな。でたらめだよ。
  232. 前田泰男

    ○前田会計検査院説明員 お答えがどうもまずかったようで恐縮でございまするけれども、われわれの場合には、行った税務署があるわけでございまするが、この税務署に行きまして、そこで申告されておられる方全部をとりまして、したがいまして、そこの中にはあらゆる階層の方がおられるわけでございます。特に低い階層の方ばかりとる、あるいは高い階層の方ばかりとるということではなしに、その一つの税務署に参りますと、その税務署において申告書を出しておられるお医者さん全部をとりまして、そのうちの所得一千万円以上の方のパーセンテージが幾らであるか、こういうことをずっと足してまいりまして、ある程度一万八千九百二十四人まで足してきたわけでございまするけれども、あらゆる場合に大体同じ数字が出てきた、したがって私たちは、この大体のパーセンテージである、このように考えたわけでございます。
  233. 佐藤観樹

    佐藤(観)委員 それはあくまで申告書を出している人の話で——では、こうしましょう。この問題だけを実はやっているわけにはいかないので、これは全く引っかかりでお伺いしただけで、こういうところにもどうも私はこの調査というのは納得ができないところが多々あるので、こうしましょう。一万八千九百二十四人のうちの、皆さん方全部証拠書類を持っていると言われたんだから、では、一体所得階層別に、たとえば一千万以下の方、五百万以下の方、三百万——三百万の方というのはほとんどいないでしょうけれども、何人、それから一千万から二千万の方が何人、二千万から三千万の方が何人、これをひとつ出してみてください。これは出せるでしょう。そして、その一千万以上の方というのが大体全体をあらわしているというなら、それならわかる。ただ、いまの局長お話ですと、一万八千九百二十四人というのは九万人ですか、その中でかなり、統計学的には検体と申しますか、数字が多いから、これで推しはかれるだろうというわけだけれども、一万八千九百二十四人が非常に所得的に偏っていたらこれは正確なものにならぬわけですね。だから、一万八千九百二十四人は一体所得階層的に幾らぐらいの方が何人、幾ら以下の方が何人、ひとつこれを出してみてください。これは出せますね。
  234. 前田泰男

    ○前田会計検査院説明員 ただいまの階層別のあれは、ちょっといまの段階では無理かと存じます。
  235. 佐藤観樹

    佐藤(観)委員 何で無理なんですか。
  236. 前田泰男

    ○前田会計検査院説明員 先ほどから申し上げておりますとおりに、われわれは全税務署につきましてのあらゆる階層、一つの税務署につきましてのあらゆる階層をしてそのうち一千万円以上が幾らかということを調べたものでございますので、そのためだけの調査をやったわけでございます。したがいまして、その間でその階層別に幾らかという調査はやっておりませんので、これをもう一回繰り返すとなると大変な作業になってまいります。
  237. 佐藤観樹

    佐藤(観)委員 それでは、四十九年末の——先ほど私は個人開業医七万人と言いましたけれども皆さん方は約九万人余ですね。皆さん方の調査だと、とにかく一千万円以上の方というのは六千九百五十六人いるわけですな。六千九百五十六人いるわけでしょう、一千万円以上の方々というのが。そうしたら、九万九百三十八人、四十九年末の皆さん方の資料に出てくるところの九万九百三十八人の歯科を含めてのお医者さんとの比率をとりますと五・九%ということになるわけですね。これは割ってみればすぐわかることです。これも正しいという可能性もありますね。
  238. 前田泰男

    ○前田会計検査院説明員 どれでおっしゃっておられますか、本文の方でございますか。
  239. 佐藤観樹

    佐藤(観)委員 皆さん方の検査報告の九十七ページにお医者さんの数が、四十九年末現在というのが書いてあるでしょう。下から三行目、九万九百三十八人というのが書いてある。そのうち、皆さん方が調べた一千万円以上の方というのは六千九百五十六人だというのだから、それを割ってみたら、一千万円以上の方というのは五・九%になる、その可能性というのはあるわけでしょう。
  240. 前田泰男

    ○前田会計検査院説明員 この六千九百五十六人と申しますのは、どこまでも一万八千九百二十四人の中の数字でございまして、これをまた九万九百三十八人となれば、われわれの予想ではもっともっとこれがふえていくだろう、そう考えざるを得ないわけでございます。
  241. 佐藤観樹

    佐藤(観)委員 では、要するにそれは申告書が出てない部分があるだろうということですね。
  242. 前田泰男

    ○前田会計検査院説明員 申告書が出てない場合があるだろうということではございませんで、一万八千九百二十四人のうちでもって、これはあらゆる階層を全部含めまして一万八千九百二十四人見たわけでございますけれども、そのうちの六千九百五十六人が一千万円以上の所得であった。そういたしますと、もし九万九百三十八人割り当てますれば、恐らく大体同じような三七%という数字が適用されて、この六千九百五十六人よりはずっとふえるであろう、こういうことでございます。
  243. 佐藤観樹

    佐藤(観)委員 もう時間が来ちゃったものですから、また改めてしますけれども、最大の問題を一つだけお伺いをしておきますけれども、九十六ページに、一体どういう人を調査したかということが書いてありますね。それで、皆さん方が調査して、そしてここで挙げた数字というのは、青色申告が三千百七十二名、白色申告が二千二百名、計五千三百七十二名を調査された。このうち特例を受けている方、つまり七二%以下の経費だったという方が、青色申告では千七百名、白色では二千百十九名。それで、特例を受けてない方が青色では千四百七十二名、白色申告では八十一名。皆さん方が出した結論というのは、この特例を受けている方の中で青色申告は千五百十五名、白色申告は百八十一名を抽出して、合計千六百九十六名を調査してみたのが、三〇%未満が七三人、三〇から四〇が百九十五人とか、四〇から五〇が四百十三人とか、六〇%から七二%までが五百十二人とか、それがこの千六百九十六名なわけですね。いいですね。そうすると、この千六百九十六名のすべて租税特別措置法二十六条を適用されている方、つまり七二%以下の方々だけ千六百九十六名を平均すれば、これは必ず七二%以下になりますね。
  244. 前田泰男

    ○前田会計検査院説明員 そのとおりでございます。
  245. 佐藤観樹

    佐藤(観)委員 こんな調査ってあるんですかね。七二%以下の方だけ全部集めて平均してみたら五二%でした。そしたら、五二%というのはどういう意味があるのですか。しかも皆さん方の言葉遣いは、「総平均」という言葉を使っているのですね。  青色申告の中でも経費の問題はそう簡単じゃない。私は、まだ青色申告に出ているようなあれですべてが挙がっていると思っていらっしゃることにまず間違いがある。社会保険診療報酬と自由診療との関係の問題がある。青色申告の数字自体にまずいろいろな問題があることも指摘をしたいわけでありますけれども、特例適用者だけ、七二%以下の方だけを全部集めて平均してみたら五二%になりました、こんなことはあたりまえなんですよ。七二よりふえるわけがない。  そして世間へは、医師の経費は五二%でした、五二%でしたと。そういう非難を逃れるために局長は冒頭に、いや、宣伝の新聞が悪いのだというようなことを言っているけれども皆さん方のこの報告書の約半分はそういうことが書いてあるでしょう。ぼくは行数を数えてみたよ。「しかして、」以下は全部五二%をもとにしている。まさに七二%以下の方々を全部平均して五二%以下になりました、そうすると一人当たり七百万円のあれになりましたと。これ、どういう意味があるのですか、五二%は。  七二%以下の方を全部足して平均してみて五二%。しかも七二%を超えた人は青色申告で千四百七十二名いるわけですね。四六%が皆さん方の調査では青色申告でも特例の非適用者、つまり七二%以上経費が超えているわけでしょう。経費が以下だという人が千七百名。千七百名と千四百七十二名との関係ですね。ですから「総平均」というなら、七二%を超えた人も入れなければ、失礼ながらこんなものは何にもならないんじゃないですか。そして医者の経費は五二%だ、五二%だなんて言われたって、こんな報告書は三文の値打ちもないどころか、世間に害毒を流すだけのものですよ。これはどういう意味ですか。
  246. 前田泰男

    ○前田会計検査院説明員 われわれが平均五二%というのを出しましたのは、一応七二%という一律的な数字が出されておったからでございます。それからもう一つは、われわれの基本的な観念にありましたのは、七二%という数字がどういう根拠に基づいて出されたか、これはわれわれ非常に調査したわけでございますが、この意味がどういうところにあるのか、われわれ全然わからなかったわけでございます。しかし、七二%というものが一応社会保険診療報酬の適正化までの暫定措置としてつくられたわけでございますから、したがいまして、その適正化までの間のお医者さんの所得の補完というものであろう、そういう趣旨で七二%というのがつくられたものであろう、そういうぐあいにわれわれは理解しておるわけでございます。したがいまして、そういうことでございますと、七二%を超しましたお医者さんはもう何らの利益を受けておられない。結局受けておられる方は一体どの程度なのかという調査をいたしまして、この中には非常にばらつく。このばらつくのは当然でございまして、大体診療科目が違いますれば、これはモデルをつくってみましても当然変わってくるというわけでございますが、一応七二%という数字が統一的に与えられておりましたために、これに対抗する数字として五二%を出したわけでございます。しかし、検査報告をお読みいただけばおわかりのとおり、これが医者全部の平均だとはわれわれ一つも言っていないわけでございます。
  247. 佐藤観樹

    佐藤(観)委員 確かに全部の平均だとは言っていない。しかし、皆さん方の報告書は半分以上が——行数を数えてごらんなさい。「しかして、」以下は全部そのことじゃないですか。五二%の話じゃないですか。それで新聞が大きな見出しで、「医師優遇税制の“カルテ” 一人(平均)七百万円 全体で千六百億円に 会計検査院報告」とか、「会計検査院の決算検査 医師税制是正を催促」とか、七二%を超える方の話は全然おいでおいで、全部それ以下の方々だけ集めて平均してみて——大体七二%というのは御存じのように、これは何も歴史的に根拠があって、経費がこうだからこうだといったわけではなくて、昭和二十九年のまさに歴史的な妥協でできたものなんであって、これは実際経費と離れていることはわれわれもわかっているわけですよ。経費の中身の問題についてもお伺いしたいけれども、これが実際経費であるとわれわれは言っているわけじゃない。経費というのは、青色申告のところに出てくるようなこういった物的経費だけではなくて、お医者さんにはいろいろな問題があるわけでもあり、真夜中の十二時、一時に起こされて診て、三百円、四百円払ってもらったって医者がこれで続くかというような問題もあれば、夜、手術をやったら必ず赤字が出る、看護婦さんの夜勤割り増しも払わなければいかぬ、そういった問題をどうするかという問題もあるのであって、経費というのは、ここに出てくるような、やれ公租公課だ、水道光熱費だ、旅費だというだけの問題ではないわけです。それは別の議論だ。それは別の議論ですが、何も全部がいっているとは私は決して言わない。言いませんけれども、この全体の流れを見たら、医者の経費率は五二%だ。これはたとえば新聞が誤解したと言ったって、これはあなた方の言い抜けであって、行数を数えてごらんなさいよ。半分以上がそのことを書いてあれば、ここがポイントだと思う。  しかも、よくわからないのは、七二%以上の人も加えて全部計算してみたならば、まだ私は「総平均」という言葉を使ってもいいと思う。ただし、前提があるのだ、問題は。ここへ出てくる五千三百七十二名というのは、一体科目別にはどうなつているのかというのがさっぱりわからぬ。歯医者さんとお医者さんとは一体どういう比率になっているかさっぱりわからぬ。それも実はお伺いしたいのですが、時間がありませんからきょうはやめますけれども、それを除いて、七二%以下の方だけ全部平均してみて五二%でしたと言う。その五二という数字は一体どういう意味があるのか。ではなぜ、お医者さんの経費ということを言うならば、七二%以上の、しかも皆さん方の資料でさっき数字を言ったように、七二%を超える方が青色申告では四六%、約半分近くは七二%を超えているわけですよ。その人を除いて、七二%以下の人だけ平均してみて五二%でしたと出して、いかにもそれが全体像のごとく報告をするということは、会計検査院の私は意識を疑いますね。「総平均」と言うからには、調べた人全部、七二%を超える経費の人も含めて割ってみて初めて「総平均」という数字が出るんじゃないですか。さっぱりわからぬ。
  248. 前田泰男

    ○前田会計検査院説明員 一応われわれの調査は、七二%という特例、これがどういう減税的効果を持っているのかということを調査したわけでございますので、したがいまして、その七二%というもので調査の結果をやってみますと、七二%との間に平均的にどれだけの開差があるのか、結局税金の減税と申しますか、これがどの程度になっておるかということをわれわれは一応調べたわけでございますので、こういう表現になっておるわけでございますけれども、「総平均」という言葉は、われわれは決して全部の平均という意味に使っているわけではございませんので、これはどこまでも特例を受けました方の平均だ、これははっきり明記してあるつもりでございます。
  249. 佐藤観樹

    佐藤(観)委員 そう書いてあることは私は否定しません。しかし、言ったように、これをずっと読んでみれば、その五二%問題が約半分について記述になっているということは、世間にはこれでは皆さん方の公表の仕方としてきわめて不適切、しかも七二%以上経費がかかる人は全部除いておいて、七二%以下の人だけ平均するという、その考え方が私はわからないのですね。それがわからない。結論は七二以下になるに決まっているんだから、こんなことは、どうやったって。  ぼくはだから冒頭にお伺いしたでしょう。ここに出てくる資料が次のわれわれの議論の土台になるようなものでなければいかぬ。会計検査院はそれだけ国の検査をやっているわけでありますから、会計検査をやっているわけだから、少なくもわれわれのそれだけの批判にたえ得るような資料を出してもらわなければならぬと私は思っている。ですから私は冒頭に、これが全体像かということをお伺いした。あなたは全体像じゃないと言われた。だから少し免罪になるけれども、しかしこの分析の仕方というのは、私は大蔵省とずいぶん長いつき合いをさしてもらっているけれども、こんな資料は大蔵省から出てこないですよ。七二%以下の人だけ全部やって、その方々の平均が五二%でした。それは確かに書いてあるように、「しかして、特例の適用を受けている者のうち」云々と、こう書いてありますね。あなたはそれで逃れられると言うのだけれども、では一体なぜわれわれは、五二%というものを出さなければいけないのか。本当に七二%問題というのが問題ならば、しかも経費というのは、先ほど言ったように単なる物的経費だけの問題じゃないわけですから、お医者さん全体のものを調べなければいかぬのに、七二%以下の方々を平均してみて五二%でしたなんというのは、われわれの資料には必要ない。こういう分析をする考え方がよくわからぬですよ。  大臣どうですか。確かに文章的に読めば、「しかして、」と書いてあって、「特例の適用を受けている者のうち」云々「収支の内容を分析すると」云々で「総平均は五二%」ですというから、間違ってはいないと言えばいないかもしれない。しかし、全体の中でその五二%に関することが半分もあって、しかも五二%というのがそういった意味でどんな意味も、私たちはその平均をした意味が見出せない数字を、こんな記載を持ってこられても、われわれが租税特別措置法二十六条の議論をここでするときの資料にこれはならぬ。大臣どうですか、むずかしいことは聞かぬと言ったのだ。
  250. 村山達雄

    村山国務大臣 私はこれをずっと見まして、どう受け取られているかわかりませんけれども、ちょっと見ますと、ここに一千万円以上で、結論として二九%ですか、三〇%ぐらいの人が特例の適用を受けておるというところがありますね。それ以上の人は受けていない。それはなぜ受けていないか。それはやはり実際の経費率が七二以上であるから受けない。いまの税法は選択ができるわけでございます。したがって七二以上になる人は、何も七二を受ける必要は毫もないわけでございますから、それは受けないのがあたりまえであろう、こう思うわけでございます。  私もさっきから、ちょっと細々した数字はわかりませんけれども適用を受けておる人の一千万円以上の人について調べたらかくかくしかじかであった、これだけの話であろうと思うのでございます。そしてまた、その平均という意味は、その特例を受けている人の平均の話をしているのであって、それが全開業医の平均ともし受け取れば、この報告をよく読んだならばそれは間違いであろう、こう思うわけでございます。
  251. 佐藤観樹

    佐藤(観)委員 確かに大臣言われるように、「しかして、特例の適用を受けている者のうち」云々と書いてあって、「収支の内容を分析すると」云々とあって、「総平均五二%」、こう書いてあるわけですから、どこにも確かに全体像だとは書いてない。これは私も認めましょう。認めますが、この記述のうちの半分以上が五二%の話であれば、これは普通に読んだ人は、全体像がそうなんだというふうに読まれても、またそれが新聞その他に伝わっても、これは私は会計検査院が全く責任がないとは言えないと思うのであります。  しかもここで問題になっているのは、七二%以上の方々だってお医者さんなんですよ。それでは、租税特別措置法二十六条を議論するときに、一体七二%以上の方については何も話をしなくていいのか。あくまで税法は一つですからね。七二%以上の経費のかかる方も、七二%以下の経費の方も全部、税法で新しいものを考えるなら、くくるわけでしょう。こういうところで分けて五二なんという数字を出してくる考え方が私はわからない。非常に世間に誤解を与える。すでに世間では、とにかく大体五二%が医者の経費だと思っている。大体聞いてごらんなさい、だれでもそう思っている。国会議員の中にもそういう人がおる。その源泉がここにあることが私はわかった。  私は、繰り返して言うけれども租税特別措置法二十六条がいいか悪いかの論議をいましているのじゃない。しているのじゃないのだけれども、少なくも七二%以下の人を全部寄せて、そうして総平均ですといって五二%というこういう資料は、私は九年間大蔵委員になっていて、大蔵省から出たのを見たことはない、こういう数字は。ただ、税制調査会の数字にも何か五二という数字が出ておりましたから、その関係はどうだか知りませんけれども、こういう計算でわれわれが、租税特別措置法二十六条について審議するわけにはいかないと私は思うのです。  時間が来てしまったのですが、実はこの中身はまだまだ非常に問題があるのであります。実はまだまだ非常に数字の問題はあるのでありますけれども、もう時間が来てしまったということでありますから、これは改めてまた議題にさせていただきたいと思いますけれども、とにかくいまの中ではっきりしたことは、ここに出ている報告書というのは、医師の九万人の全体像ではないということはお認めになった。それから五二%というのは、七二%以下の経費の方々を平均しての数字であって、少なくも全部のお医者さんを調べた数字ではないということも私は確認できると思うのです。さらに根底に言えば、この資料では、お医者さんと歯医者さんの比率が一体どうなっているのか。それから、きょうはできませんでしたけれども、社会保険診療報酬と自由診療との比率は、皆さん方は一体どういうふうにされてこの資料をつくられたのか。その他いろいろ問題がありますけれども、残念ながら時間が来てしまいましたので、きょうはこれぐらいにしたいと思いますが、いま申しました、とにかくこれは全体像ではないということ、そして五二%というのは七二%以下の——ただ問題があるんですよ。科目別にどうなっているか。私は非常に疑問に思うのは、ここで皆さん方は得々と科目別に「内科五二%、外科五五%、整形外科五七%、産婦人科六〇%、眼科四三%、耳鼻咽喉科四五%、歯科五〇%、その他五七%となっていて、」こう書いてあるのですが、私は、これはよくできたなあと思うのです。だって、内科と外科と一緒にやっているところは幾らでもありますからね。外科と整形外科をやっているところがありますよね。そういうふうに両方やっている方の経費の比率というのは一体どうやってやったのだろうか、そんなに判然とわかるのだろうか。眼科と耳鼻咽喉科の方も一緒にやっている人もいますよね。しかも皆さん方がとられた千六百九十六名というのは、医者全体のこういった科目別の比例に一体合っているのかどうなのかということがよくわからぬ。それはまた次のときに詰めますけれども……。  したがって、結論的には、いまの「社会保険診療報酬の所得計算の特例について」という部分に出たことは、九万人のお医者さん、歯医者さん、これの全体像をあらわしているものではない。ましてや五二%という数字は、当然のことでありますけれども、経費が七二%以下の方々の平均、これでもなおかつ実はいろいろ問題があることはいま申しましたけれども、そのことだけは確認できますね。
  252. 前田泰男

    ○前田会計検査院説明員 いまおっしゃいましたことは、そのとおりでございます。
  253. 佐藤観樹

    佐藤(観)委員 まだこの前提自体に非常に問題があるのでありますけれども、きょうは、時間が来ましたからこれぐらいにしておきたいと思います。  大変遅くまで皆さん、ありがとうございました。
  254. 大村襄治

    大村委員長 次回は、来る七日火曜日、午前十時委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。     午後五時三分散会