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1978-03-01 第84回国会 衆議院 大蔵委員会 第9号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和五十三年三月一日(水曜日)     午前十時三十二分開議  出席委員    委員長 大村 襄治君    理事 小泉純一郎君 理事 野田  毅君    理事 保岡 興治君 理事 綿貫 民輔君    理事 佐藤 観樹君 理事 塚田 庄平君    理事 坂口  力君 理事 永末 英一君       愛知 和男君    池田 行彦君       宇野 宗佑君    小渕 恵三君       大石 千八君    後藤田正晴君       佐野 嘉吉君    坂本三十次君       林  大幹君    原田  憲君       本名  武君    三原 朝雄君       村上 茂利君    山崎武三郎君       山中 貞則君    伊藤  茂君       大島  弘君    川口 大助君       沢田  広君    只松 祐治君       平林  剛君    山田 耻目君       宮地 正介君    高橋 高望君       荒木  宏君    永原  稔君  出席国務大臣         大 蔵 大 臣 村山 達雄君  出席政府委員         経済企画庁調整         局審議官    澤野  潤君         大蔵政務次官  稲村 利幸君         大蔵大臣官房審         議官      米里  恕君         大蔵省主計局次         長       山口 光秀君         大蔵省証券局長 山内  宏君         大蔵省銀行局長 徳田 博美君         国税庁次長   谷口  昇君         国税庁税部長 水口  昭君  委員外出席者         科学技術庁原子         力局核燃料課長 田中 久泰君         法務省民事局参         事官      元木  伸君         大蔵大臣官房調         査企画課長   大竹 宏繁君         通商産業省産業         政策局企業行動         課長      南学 政明君         資源エネルギー         庁公益事業部開         発課長     藤咲 浩二君         郵政省貯金局第         一業務     森本 哲夫君         労働省労働基準         局監督課長   小粥 義朗君         大蔵委員会調査         室長      葉林 勇樹君     ————————————— 委員の異動 三月一日  辞任         補欠選任   池端 清一君     岡田 利春君   小平  忠君     高橋 高望君 同日  辞任         補欠選任   岡田 利春君     池端 清一君   高橋 高望君     小平  忠君     ————————————— 本日の会議に付した案件  参考人出頭要求に関する件  有価証券取引税法の一部を改正する法律案(内  閣提出第四号)  租税特別措置法及び国税収納金整理資金に関す  る法律の一部を改正する法律案内閣提出第七  号)      ————◇—————
  2. 大村襄治

    大村委員長 これより会議を開きます。  内閣提出有価証券取引税法の一部を改正する法律案を議題といたします。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。荒木宏君。
  3. 荒木宏

    荒木委員 早速お尋ねをいたします。  公社債取引に係る取引税の問題でございますが、昭和三十一年以来税率据え置きになってきております。  先般来の同僚委員質疑で、公社債市場育成、それから個人の取得、取引増加を図る、こういったような理由据え置きだというふうに伺っておったのでありますが、日本証券業協会が昨年の六月から、それぞれ投資家別売買状況調査しております。これを見ますと、たとえば十二月を見ますと、個人は、売却が三・二%、それから買い入れが一・一%、これは現先を除いた数字ですから、これを入れますともっと比率は下がると思います。一方、金融機関事業法人証券会社、これを合計いたしますと、売りで約八〇%、買いで七二%。つまり、二十年来こうした万分の一あるいは万分の三という税率で据え置かれてきたにかかわらず、依然として、いま若干例を申し上げましたが、そういう状態が続いている。  私はむしろ個人のこういった取引を進めていく道、あるいはそれが十分進まない原因というのはもっとほかにあると思います。もっと基本的に申しますと、国債大量発行、そうした道が果たして望ましいかどうかという基本論議があると思いますけれども、それはさておいて、技術的な点に限りましても、市場整備の問題は多々論ぜられるべき点があろうと思います。むしろこの際は、やはり一種、二種、あるいは甲、乙を見まして、十八対一とかあるいは十五対一でございますか、こうした状態を保持することは、歳入の危機を解決していくという上からも好ましいことではないんじゃないか。したがって、今回の改正理由は伺ったのでありますが、この点について将来十分検討されるべしと思うのでありますが、御見解を伺いたいと思います。
  4. 米里恕

    米里政府委員 御承知のように、今回の改正案では、公社債税率は据え置くということにいたしたわけで、その結果、余りにこの格差が開き過ぎるのではないか、株式公社債税率が余りに違い過ぎるではないかという御指摘でございますが、この株式公社債税率のバランスが何対何がいいのかということは、確定的にはなかなかしかるべき比率で申し上げられないのではないかと思います。  ただ、今回の改正に当たりましては、先ほどもお話のございました、一つは、投資証券としての性格がかなり公社債株式と違うということ、あるいはさらにまた、御指摘のございました流通市場公社債市場育成という観点がいまや一層重要な時期に差しかかってまいっておるというふうに私ども考えております。特に、最近の国債地方債その他の公共債増加に伴いまして、公社債市場育成ということは、証取審議会初め当局においても多方面からの措置が講ぜられておるところでございますが、もちろん税制はそのわずかの一環ではございますけれども、そういった大きな政策の方向に沿って、公社債市場育成ということを現在の時点においてなお一層図ってまいらなければならない。こういう時期におきまして、公社債関係税率の引き上げということをいたすのは、どうにも適当ではないんじゃないかというふうに私ども考えたわけでございます。  もちろん、現在の公社債に対する税率かいつまでも絶対的にそのままでいいかどうかということは、これは今後におきまする証券市場あるいは公社債市場、あるいはそのときの財政事情税体系というようなもろもろの面から、その水準自体は絶えず適正なものであるように検討を続けていかなければならないと思いますけれども、少なくとも現在のところ、公社債関係税率を引き上げることは適当でないというふうに私ども判断いたしまして、特に御指摘ございましたように、二十八年にこの税ができましてから、株式公社債性格の相違ということを中心にいたしまして、こういった取引の背後に担税力を認めるというような流通税性格から見まして、絶えず格差を設けてまいったわけでございます。そういった観点から見まして、この公社債税率水準自体については、今後とも適正であるように、そのときそのとき検討してまいるということになろうかと思いますけれども株式公社債格差があってしかるべきであるというような基本的な考え方は、私どもは現在正しいのではないかというふうに考えておる次第でございます。
  5. 荒木宏

    荒木委員 ポイントをしぼって要点をお答えいただきたいと思うのですが、制度が始まって間もないのならまた別なんです。二十年やっているのでしょう。それで率が一・一%、これは審議官どう思いますか。個人の保有を少しふやしていこう、流通市場を活発にしていこう、こうおっしゃるのですが、二十年たって、現先を含めれば一%にもならない。三年か五年たてば、見直しとか整備とか再検討とか点検とかなさるのでしょう。もう少し結果を謙虚に見直して、そうして皆さんが二十年この方やってこられて、いまだに一%にもならないという事態について——これたけの格差をむしろ逆に広げているわけですね。縮小するのではなくて、逆に広げている。広げてなおかつ比率はこういう状態でいいかどうか、このことを言っているわけですよ。  ですから、一番もと論議はともあれ、こういった状態で、大体証券会社とかそれから金融機関とか、そこの取引上で、いまの段階ではかかるメリットを受けることが果たして国民の納得を得られるであろうかどうか。国民は一%もないのですからね。そういう点で、将来このままでいいかどうかという点は、若干の御答弁もあったように思いますので、ひとつ十分御検討いただきたいと思います。一言大臣から伺っておきたいと思います。
  6. 村山達雄

    村山国務大臣 いま荒木委員のおっしゃったこともわからぬわけではございませんが、一つは、やはり公社債というものは確定利付であるという点、これに取引税をかけるということはどんなインパクトを与えるであろうか、この点が一つ問題だと思うのでございます。  それから将来、これは私、多分に個人的な考え方かもしれませんが、日本企業自己資本が非常に少ないわけでございますが、とりわけ他人資本でも間接金融が非常に多い状況でございます。今後は恐らく、自己資本比率を高めるというよりも、まず直接金融の方の比重を高めていくというのが必然の傾向ではないであろうか。そうだとすると、長期安定的な資金という意味で、やはり公社債というものに投資が行われてくる。日本公社債市場がほかの国に比べまして非常に狭隘であるということは御承知のとおりでございます。  そういった両面から考えますと、やはりもう少し育成すべきではないであろうか。それと、確定利付だということがどんなインパクトを与えてくるか。実はその利回りでほとんど動いている状況でございますので、今度は慎重な態度をとったのではなかろうか、そんな気がするわけでございますが、しかし、荒木委員の御指摘の点もございますので、今後はやはり推移を見て、財政事情等を勘案して適当な負担を求める時期もあるのじゃなかろうか、こんな感じがしているわけでございます。
  7. 荒木宏

    荒木委員 大臣の御所見は私は、大臣の立場からしますとおっしゃる意味がよく理解ができるのであります。ただ、直接金融間接金融の問題は、全体の経済構造にかかると思いますし、直接金融に応ずる国民の気持ちあるいは関心の度合いといいますのも、本当に安心して投資の方に目を向けていくことができるかどうかという、これは福祉の面あるいは経済成長の面その他経済運営万般にかかわってくる大きな問題だと思います。ですからそうした点で、単に金融の部面だけで直接金融をふやしていくという方策がすべて首尾相整うわけのものでもなかろうと思うのです。  また一方、確かに確定利率取引されておるものには違いないのですけれどもこれだけ余資がふえてまいりますと、資金運用資産運用という点から、債券売買による利益というものもまた現実に発生をいたしております。また、現先というふうな運用もこれあり、そういう点から、登録制度でなくて、売買のときに課税するというふうに仕組みを変えられたのも、やはり公社債現実動きが、必ずしもその利率だけで、いわゆる堅実ということだけで動いているものでもなかろう、そろばん片手ということでありますから。そういう意味で、将来に向けての基本的なお考えを伺いましたので、あわせて申し添えて御要望しておきたいと思います。  なお、そのことに関連しまして、市場主体といいますか、証券会社営業姿勢といいますか、この点で一、二お尋ねをしておきたいと思いますが、一言で言いますと、過当競争ということが従来間々言われてまいりました。これは手数料収入目標設定して、そして銘柄を個別に割り当てをいたしまして、各部店別叱咤激励をして必ず到達をするようにという、こういう方式であります。私も従来からときどきこの委員会質疑をいたしておりまして、それぞれの資料は若干そろえてはございますけれども、時間の関係で割愛をさせていただきますが、こういうことがずっと重なってまいりますと、全体としてどういう問題が起こるか。  それぞれ一つずつ取り上げますと、これはそれなりに現段階では容認できる面がないではない。目標設定といい、あるいは割り当て努力目標といい、さらにはそのための経営努力といい、これはそれなりに納得できる面があるのですけれども、ただしかし、そのことが総合的に進められますと、一つは、証券会社外交員の人か脱税の片棒をかついでいるのではないかというふうな疑惑が生ずる。現に昨年も「税のしるべ」で取り上げられましたけれども、五十回、二十万株未満であればキャピタルゲインの課税にならないということで、その適用を受けるためにさまざまな名義の分散、こういったことが外交員指導で行われている事例があるということが報道されております。(「郵便局もあるよ」と呼ぶ者あり)いま郵便局事例があるというお話もありますけれども、ここは大蔵委員会でありますから証券会社の件を取り上げたのですけれども、こういう点が一つございまして、もちろん徴税当局の方の対策ということになりますけれども、しかし、証券市場にかかわる証券業営業姿勢ということも、ひとつ証券当局からそれに対する指導ということを伺っておきたい。  それから二つ目には、信用取引ということがあります。これは個人の扱っておるのが約四割から五割というふうに聞いておりまして、それの弁済状況は大体が反対売買で決済をされる、期間は三カ月ぐらいということに相なりますと、短期の利ざやかせぎというのを仮に投機だというふうに考えますと、信用取引投機目的で使われているといったことが全体の姿として言える側面があるのではなかろうか、全部がそうだとは決して言いませんよ。  そういうことに相なりますと、先ほどの目標設定、そして個別割り当て、それの必達というところから、片や脱税の幇助と見られるような事例インパクトとして起こってくる、片や投機的要素を持った信用取引の回数をふやしていく、手数料をずっと上げていく、そういうふうなことが懸念をされておるわけでありますが、これについての政府当局見解指導対策を伺いたいと思います。
  8. 山内宏

    山内政府委員 まず信用取引の方から申し上げますが、委員承知のとおり、終戦直後は株式取引現金取引のみから発足をいたしたわけでございますが、これだけでは必ずしも需給の円滑な統合が図れないというふうなことがございまして、価格形成を容易に行うという観点も含めまして、ある限度を置きました上での仮需給統合という形をとった信用取引というものが創設をされたわけでございます。御指摘にもございましたように、仮需給の導入といいますのは、その裏面にはいずれにいたしましても、やや投機的な性格のものを含んでくるというおそれがございます。制度としてそういう性格がございます。  したがいましてそれ以後、信用取引指導といたしましては、現実の利用の仕方の中に投機性の強いものが紛れ込みますことをできるだけ排除をするというふうな形で指導を続けてまいったわけでございまして、行政サイドといたしましては、従来から信用取引が過度に投機的に利用されることのないようにいろいろな措置を講じながら、いわゆる薄資投資家、つまり資本が比較的小さい投資家、こういったものに不測の損害を与えることのないように証券会社営業姿勢監督を続けてまいったわけでございます。  また他方取引所におきましても、個別のものにつきまして価格が乱高下するようなときには、これに対してしかるべき規制を行うとか、あるいは市場全般がある程度ヒートいたしましたときには、これに対してやはり全般的な規制をいたしますとか、そういった形を講じてまいっておるわけであります。そういった信用取引が過度に投機的に働かないようなことのための制御装置というのは、昭和二十六年以降かなりわれわれとしても意を払って努力してまいって充実をしておるものというふうに考えております。今後はこれか機を失せず適当な装置を働かせるということ、それからそれに対応いたしまして、引き続き証券会社営業姿勢適正化に、役所の方ももちろんでありますけれども主体でありますところの証券会社努力を期待をするというふうな形をやってまいるということに相なろうかと思います。  そういう意味合いからいたしまして、当然、たとえば信用取引特定のお客をつかまえて過度に回転をさせて、それによって当該顧客に迷惑をかけるというふうなことに関しましては、これは先ほど申しましたようなもろもろの従来の規制にかんがみまして、いろいろな意味での制約があるわけでございますが、その結果課税の対象になるかならないかということにつきましては、税務官署判断にお任せする、あるいは税務官署判断以前に当然その投資家としての納税義務に従って所定の手続をとるというふうなことであろうかと思います。
  9. 荒木宏

    荒木委員 いま信用取引関係で伺ったのですが、現実の問題として、あるいは個別のことになるかもしれませんが、こういう営業姿勢が、いま問題になっております永大株式証券市場における動き、こういうことにも決して無関係ではないのじゃないか。私がある証券会社資料を調べましたところ、五十年の九月、これは大手でありますが、株式部資料として、今後浮上する株式だとして建材関連永大産業、こういう経営方針がある。これから上昇していくのだという。ところが、足取り推移を見ますと、大体四十八年、四十九年それぞれ六十億余りの利益を上げております。その前には時価発行もやり、四十八年一月には当該証券会社幹事会社になりまして公募をいたしまして、それから外債調達もやり、五割配当までやっている。ところが、浮上する株だという指摘をし経営戦略を決めたときには、純損益は一年間一億のマイナスになっています。次の年は百九十億のマイナスになっておる。その次の年は百四十億のマイナスになっておる。ことしはとうとう会社更生法適用を受けているんですね。  私は、推奨株というようなことが問題になり、それが注目株というような扱いになり、もちろん大衆投資家保護のためにいろいろなことがされておりますけれども、本来が取引信用取引という投機に結びつくことを前提にした市場であり、株式時価市場価格といいますものは日々動いておるわけでございます。そういうのを投資家自身判断をしてそこに関与していくわけであります。こういうふうなことが一方であり、そして他方では、昨年の六月に生命保険会社が二百万株売り逃げた。様子がわかっている人は先に逃げるわけです。一方、もとのオーナーでありました人は、これまた自己の保有している株は先に処分して、危険はもうすでにほかに転嫁をした。ところが大衆の方は、大手証券と言われるところの経営戦略に、ある程度信用するというか依拠するというか、そのことをうのみにするといいますか、乗っていく。もう年間六十億の、五割配当の、外債を何とかかんとか言っておるときからさま変わりになりつつある、もう翌年からは百数十億もどんどん低下をしていく、これは後からそう言うのだという話になるかもしれませんが、客観的にそうなっておる時点で、これは浮上株だと言っている。一方、生保や機関投資家の方は、これは全部じゃないでしょうけれども売り逃げをしている。他方は紙切れを持たされる。ちょっと極端な申し上げようをしているのですけれども、これについてひとつどういう実態把握をされているか、どういう対策をお考えになるか、これは将来の証券市場大衆保護ということからも伺っておきたい。これが一点でございます。  それから、時間が余りございませんので兼ねてもう一問申し上げますが、同時に、こういう経営姿勢職場の中では残業、長時間労働、そして健康破壊という事態を招いておるということでございます。この点は、本年の一月に大和証券の従業員組合が出しました資料の中にございまして、命令を受けて日曜出勤したというのが、本部で八二%、営業で六八%。それから年休をどのように利用したか、病気のために使ったというのが六三%、年休を取りたいという場合に思うように取れないというのが営業で八二%あります。年休を一年間どのくらい取ったか、一日から三日というのが六四%であります。ほかにずいぶんいろいろな資料が出ております。  これは特定職場だけではなくて、五十一年のこれは日興証券でありますが、ここでも、主任以下の残業時間はある月七十三・三時間、たまたま二週間をとってみますと、午後九時十分に退社をして十時に帰宅というのが二週間続いた。これが平均だというのです。  つまり、一番大もとから出ておるそういう目標設定して、個別銘柄割り当てて、それをやらなければ処分をする、こういう体制ですね。これはある証券会社全国部店長会議の社長さんの訓示でありますが、絶対に目標に到達しないということは許されない、できてもできなくてもというかりそめにもそんな姿勢で臨む人があれば厳しい指弾を受けるだろう、こういうふうなことを言っておるわけです。  私が先ほど申し上げた永大事例とするそういう問題、それから職場にあらわれておるこういう点、これについての御意見を伺っておきたいと思います。  なお、そういうのは中小証券職場市場としては地方取引所に一番あらわれてくるわけであります。すでに地方取引所問題は当事者間で協議を重ねられております。また、京都では京都証券の問題が起こっておることは御承知のとおりです。また、先般大蔵省から担当の方がヨーロッパを視察されまして、そこで、オランダ型、イギリス型、集中して取引をやるやり方、フランスのように分散して地方も大事にしていくというやり方もあるということが報告されておりますけれども、そういったことも含めて、全体として資金調達を、企業経営か堅実になるように、同時に国民が納得できるように、大衆が被害を受けないように、職場従業員が安心して働けるように、こういう点についての問題を三点にわたって申し上げたわけでございます。時間があれでございますけれども要点をとらえて御答弁をいただきたいと思います。
  10. 山内宏

    山内政府委員 多方面にわたってお話がございましたが、まず最初に、五十年九月の永大株に関する問題でございます。  御指摘のように五十年九月と申しますのは、永大実態がもうすでにかなり悪くなっておる時期でございました。五十年の十二月期では、同期純利益マイナス百七十五億という状態でございますから、そのときにいま御趣旨のような話が出ておりますといたしますならば、これは状況判断としてむしろややおかしい。営業姿勢とかなんとか申します前に、当該証券会社経営分析についてかなり問題があるのじゃなかろうか、むしろその辺のところに私どもは心配を持つわけでございます。  それから、たとえば旧株主でありますとかあるいは保険会社が売り抜けたという問題でございますが、これは昨日の当委員会においても御説明を申し上げましたように、そういった意味インサイダートレーディングの疑いがあるかどうかということは、現に調査に着手いたしております。これは、まずは取引所にございます資料から調査の手がかりを得たいということで、目下計画を立てて進捗中でございます。  それから労働問題特にいまの残業の問題、あるいはこれに関連をしていわばノルマのようなものでしりをひっぱたいておるのではないかという御質問でございますが、この点につきましては、昨年の当委員会で私の前任の局長荒木委員から御質問を受け、いろいろその後事情調査をいたしました結果の御報告を一応差し上げておると思いますが、ああいう形で今後も引き続き、私どもといたしましてもそういった無理な営業姿勢によって顧客に迷惑を及ぼしてはならないという観点から、諸種の監督を行ってまいりたいと思います。  ただ、基本的には、やはり何らかの形で全般的な会社の経営方針なりあるいは経営の目的なりというのを設定をして、そちらに向かって努力をさせようという形で企業を引っ張っていくというのは、これは一つ経営者の経営姿勢の問題でございますので、そういう意味からいたしますならば、つまり外部に対して、あるいは投資家に対して迷惑を及ぼすという限度に達しない範囲内においてこれを行うということについては、私どもとしてはやむを得ないというふうに考えるわけでございます。  なお、最後に地方取引所の問題の御指摘がございました。これはいずれもそういった証券会社経営姿勢といいますよりは、すぐれて地方経済の基盤の変動に対して経営そのものが追いついていっておるのかどうかという問題としてわれわれは受け取っております。
  11. 小粥義朗

    ○小粥説明員 証券業労働時間は、全国的には全産業平均よりも少々短いくらいの時間になっておりますので、特に基準法の施行の面から問題業種というとらえ方は従来いたしておりませんけれども、それぞれの地域で、たとえば企業による自主点検方式といった形で基準法のいろんな点を洗いますと、やはり労働時間、特に残業時間、さらには女子の残業時間の制限違反といったような点が二割くらいの事業所で認められるという形がございますので、そういった点の是正については今後監督機関としてもさらに力を入れていきたいと思います。
  12. 荒木宏

    荒木委員 終わります。
  13. 大村襄治

    大村委員長 永原稔君。
  14. 永原稔

    ○永原委員 最初に、佐藤委員の最初に質問されたことと関連がございますけれども、利子配当課税の分離課税が総合課税に移行するということについて、大臣もこの前も確認なさいましたように、五十六年度以降何とか総合課税に持っていきたいというお気持ちを述べられました。大倉主税局長が、五十三年の夏ごろまでに態勢をつくるようなお考えを述べられましたけれども、この態勢というのは一体どういうことなのか。検討の陣容でも整えるという意味なのか、方法論を具体的に論議し合いながら税調にかけるという意味なのか、そこら辺についてお答えいただきたいと思います。
  15. 米里恕

    米里政府委員 過日、大倉局長が申し上げました、夏ごろまでに行いたいと申しました意味は、現在、この利子配当の総合課税につきまして各方面でいろいろ検討をいたしております。私どもといたしましては、部内におきましては国税庁も含めて勉強しておりますし、非公式ではございますけれども、全国銀行協会にも検討を依頼しておる次第でございます。そういったような部内における準備作業というもののある程度のめどがつきました段階で、金融機関、先ほど申し上げました全国銀行協会の部内での検討とあわせまして、両者をドッキングして意見交換をしたい、そこで両者の執行体制その他につきましての調整を行いたいというようなことを考えておりまして、その意見交換、検討というものを夏ごろまでに済ませたい、こういう意味で申し上げたかと思います。
  16. 永原稔

    ○永原委員 考え方の中にたとえば背番号制のようなことは考慮していらっしゃるでしょうか。
  17. 米里恕

    米里政府委員 執行体制、把握体制の整備という中には、大きな問題といたしまして、本人をどうやって確認するかという問題と名寄せの問題が主な柱のものになろうかと思います。そういったような観点から、お話のございました背番号制というような問題もこれに関連いたしますので、そういったようなことも含めまして検討いたしたいと考えておるわけでございます。
  18. 永原稔

    ○永原委員 それで問題は、所得税法の株式売買の非課税の問題に移るわけですけれども、この前のお話で、キャピタルゲインがよくつかめないから、かわるものとして流通税考えた、しかし、流通税とキャピタルゲインとは内容が違うので、総合課税になっても流通税は廃止しないのだということを大倉主税局長はおっしゃいました。理由はよくわかるのですけれども、キャピタルゲインを見逃しているというのは否定できないと思うのです。やはりロスが多いというような問題はあるでしょうけれども、こういうキャピタルゲインをつかまえるその方法として、利子配当の総合課税が方法論として確立するならば、これについても同じようにいくのではないかと思いますけれども、そういう点はどうでしょうか。
  19. 米里恕

    米里政府委員 お話の利子配当総合課税がなされた場合にキャピタルゲイン課税が可能になるのではないかというお話でございますが、これは両者は、オーバーラップしておる部分もございます。しかし、全く違う部門もございまして、有価証券譲渡益に対する課税ということは、あくまでも行われました売買の結果どれだけ譲渡益が発生したかということでございますから、これは流れをとらえまして、その場合に一体どれだけで買われてどれだけで売られたのかということを確定する必要がございます。そういったような観点から、両者必ずしも同一に、一方ができれば一方ができるというような性格のものとも考えておりません。ただ御指摘のように、どっちかができればどっちかがやりやすくなるという点はあろうかと思います。
  20. 永原稔

    ○永原委員 所得の算定方法については、それは差があるかもしれませんけれども、確定する方法については同じようなものだと思いますが、どうでしょうか。
  21. 米里恕

    米里政府委員 何分にも非常に大量の取引が行われておりまして、その取引に対して正確な把握をしなければならない、単に利子配当がどなたに帰属するかという問題とはまた違った面がおのずからあろうかと思います。御承知のように、現在申告納税制度ということでございますので、キャピタルゲイン課税につきましては、特に総合課税になりました場合に申告が一体どういうことになるだろうかというような問題がございまして、そういったような意味合いから、皆さんが正しい申告をしていただける、また、税務当局でもそれが正しいものだという確認をするシステムをつくっていくということは、なかなか一挙にはむずかしいのじゃないかというようなことから、利子配当総合課税の問題とは一応切り離しまして、現在のキャピタルゲイン課税に対しまして、さらにこれにより広い対象を取り入れることはできないものだろうかという線で検討しておるわけでございます。
  22. 永原稔

    ○永原委員 二種と比べて一種が低いということについていろいろ御説明がありました。しかし、証券会社の有する有価証券が商品的な性格を持っているというような場合と、一般の法人あるいは個人が財産とか投資の目的で保持している、または譲渡する場合とは相違するから差があるのだとは思いますけれども、これはきのうでしたかおとといでしたか、米里審議官お話にもありましたように、株式については経営参加、利潤追求という意識があるのだというようなことからして、二種の方にはある程度の所得概念といいますか、担税力の評価というものがなされているような気がしますけれども、その点はどうでしょうか。
  23. 米里恕

    米里政府委員 御承知のように、一種、二種の問題と甲、乙、公社債株式の問題と両方あるわけでございますが、公社債株式の問題につきましては、昨日、本日といろいろ御質問がございましたところで、私ども考え方もいろいろ御説明したわけでございます。これはあくまでも投資する側の考え方株式売買によって利益を得ようというふうに考えられるのか、あるいはまた、公社債確定利付というものに着目して公社債の消化をなされるのか、その辺の相対的な違いということがその裏にひそむ担税力の差となって出てまいるというふうに考えております。  それから、一種、二種の問題でございますか、御承知のように、一種は、証券会社が持っておられる有価証券を売買によって譲渡した場合、二種は、一般の方が譲渡した場合ということでございますが、第一種の方は、商品的な性格を持つもので、流通過程における一段階にすぎないのだ、第二種の方が財産または投資として持っておられる有価証券を譲渡する場合とはおのずから性格が違うのじゃないかというようなことで、差を設けているわけでございます。
  24. 永原稔

    ○永原委員 差があるのは理解できるのですけれども、これは定率法ですから、取り扱い額が大きくなれば税額もふえるという理屈もわかります。しかし、裏にある担税力ということを考えた場合には、一般大衆投資と大きな投資との間に差があるわけです。そういうものを考えた場合に、一律の定率法だけではなくて、段階を設けていってもいいのではないかという気がするのですけれども段階税率については何かお考えはないでしょうか。
  25. 米里恕

    米里政府委員 この有価証券取引税は、流通税として非常に大量のものを対象にいたします。そういった意味で、有価証券の流通をできるだけ阻害しないような形で、広く浅く機械的に課税しようという流通税性格だというふうに私ども考えております。そういったような意味合いから、制度はなるべく単純、機械的なものの方が望ましいのだという考え方から、個別にその担税力というものの差その他に着目しまして、税の仕組みあるいは手続というものを余り複雑にすることは、どうも流通税性格にそぐわないのじゃないかというふうに私ども考えておるところでございます。
  26. 永原稔

    ○永原委員 細分しますと確かにそうなるのですけれども、いろいろな検討の中で、一千万円以上の者は高額所得者じゃないかという論議がよくなされます。そういう中で、中小企業の法人税の関係でよく言われるのですけれども、七百万の限度額に対して二八%、これを一千万ないし一千五百万ぐらいに上げたらどうかというようなお話をしますと、一千万とか一千五百万というのは、中小企業者にとっても大きな所得ではないかというようなお話が出てきて、高額所得の一分類のようにお考えになっている気持ちが伝えられるわけですけれども、こういう一千万ぐらいの大きな金を動かすという人と、わずか五万、十万という金を動かす人とが本当に同一の定率でいいのだろうかと、若干疑問を持つわけです。段階をたくさん細かく分けますと、いま審議官お話しのように、流通を非常に阻害するということもありましょうけれども段階を区切って、もっと簡素化して段階を設けていけば可能ではないかという気かするのですが、そういう点についてはどうでしょうか。
  27. 米里恕

    米里政府委員 一つは、御指摘のございました定率課税ということで、おのずから金額が大きくなればその分だけ納めていただく税も多くなるという問題もございます。この制度自体、その担税力と申す意味でございますが、これは非常に細かく申しますと、売り手それぞれによって、同じ金額あるいは違った量売った場合にそれぞれ担税力が違うということになりますが、本来は、その方の所得なり、法人であれば収益なり、そういったようなものに対して直接税で考えるべき考え方でございまして、流通税としては、ただ単に有価証券が流れておるということについての機械的な税である、こういう性格のものではなかろうかと私は考えております。
  28. 永原稔

    ○永原委員 直接税と間接税、流通税関係については承知しておりますけれども、概念としてとらえた場合に、直接税のときには一千万ぐらいが非常に高額所得だというように言われ、一方、流通過程においては、一千万ぐらいは大して大きくない額だというような印象で扱われるとすれば、何か統一されてない見解だという気がしてしょうがないのです。それでお聞きしたのですが、そういう点はどうでしょうか。
  29. 米里恕

    米里政府委員 担税力という意味から理屈だけで申しますと、すべてなるべく直接税中心の総合課税方式というものが負担の公平という意味からは一番望ましいのではなかろうか。しかし、直接税一本ということになりますと、これは把握の問題もございますし、その他の補完しなければならない面も出てまいります。そういったようなことから、いろいろな税が組み合わされて税体系全体ができ上がっておるという中での流通税というものにつきましては、くどいようでございますが、私どもは、こういう形で機械的にやらせていただくというのが一番いいのじゃないかと考えておるわけでございます。
  30. 永原稔

    ○永原委員 キャピタルゲイン課税が確立したときには、第二種の流通税というのは税率に変更は来されるでしょうか。
  31. 米里恕

    米里政府委員 キャピタルゲイン課税を今後段階的に強化してまいりました場合に、やはりそこは性格が違いますので、依然として有価証券取引税は存在するだろうということを、過日主税局長が申し上げたわけですが、キャピタルゲイン課税と有価証券取引税税率につきましては、考え方としては直接関係がない、別のものである。有価証券取引税は、ロスがあっても機械的にかけられるのだということがございますし、現在法人につきましては、有価証券取引税もかかりますし、結果的にキャピタルゲイン課税もされておるという形になっておりますので、現在の段階では、キャピタルゲイン課税ができたために有価証券取引税税率が下がるだろうという考え方は私ども持っておりません。
  32. 永原稔

    ○永原委員 税率変更はないということで理解してよろしょうございますね。  公社債市場のことについて、先ほど荒木委員からお話が出ましたので、ダブらないようにしたいと思いますが、先ほど大臣はお答えの中で、まだ日本公社債市場は非常に狭隘である、こういうようにおっしゃいましたけれども日本国民経済規模からして、どのくらいの規模だったならば適当な、狭隘でないという取り扱い量になるのでしょうか。いま公社債市場の流通は百十数兆になっているのじゃないかというように記憶しますけれども、そういうのでもまだ実際は狭隘と言えるのでしょうか。
  33. 村山達雄

    村山国務大臣 年間の売買取引量ではかるというのはどんなものだろうかという感じがするわけでございます。むしろ直接金融間接金融比率かどの程度いくか。いろいろな功罪がありましょうけれども経営基盤が長期にわたって安定するという面から申しますと、どちらかと言えば直接金融の方が経営基盤あるいは資金繰りが安定するのじゃなかろうか。しかし、これは貯蓄者の方の選択によって結果的に出てくる問題であることは当然でございまして、いま家計部門がほとんど金融機関に預ける、こういうことでございます。しかし、その点は徐々に動いていくのじゃなかろうか。日本は特殊の事情がございますけれども、特に戦争中の影響が今日まで大きく影響してきているわけでございますけれども、行く末を考えますと、直接投資、したがって調達する側から言うと直接金融という方向に徐々に向かいつつあるのではないか。そういう芽を摘まないという意味で申し上げているわけでございまして、どれだけになったら適正かというような問題はまさにそちらの方の、逆の側の推移によるのではなかろうか、少なくともその芽を伸ばしてやる、そういう意味で申し上げているわけでございます。
  34. 永原稔

    ○永原委員 公社債市場において金利が問題だということも承知しております。〇・〇何%の争いになるだろうということも言っていますけれども、諸外国の公社債に対する流通税はどのくらいの税率になっているのでしょうか。
  35. 米里恕

    米里政府委員 諸外国の有価証券取引税に相当いたします税の税率でございますが、まずアメリカは州の取引税でございます。一例を挙げましてニューヨーク州の場合を申し上げさせていただきますと、売買によります場合に、金額によって波を打っておりますが、最低〇・二%強から最高〇・六%強ぐらいのところで波を打っております。それから、イギリスは原則二%という税率になっております。西ドイツは原則として〇・二五%、これも種類によりまして多少違いますが、原則として〇・二五%ぐらい。フランスは売却額に対しまして〇・一五%ないし〇・三%ぐらい、こういうことでございます。  ちなみに、OECD租税委員会で各国の有価証券取引税の問題が検討されたことがございまして、一九七二年六月に中間報告が出ておりますが、これは諸外国が、資本の自由移動というような情勢になりまして、この際、ある程度国際的に有価証券取引税税率を議論しょうというようなことでなされた議論であったかと思いますが、その際は〇・五%程度とすることが適当ではないかというような中間的な報告が出ております。
  36. 永原稔

    ○永原委員 それは株式ですか、公社債ですか。
  37. 米里恕

    米里政府委員 株式と債券でいろいろございますが、いま申し上げましたのは主として株式の場合でございます。
  38. 永原稔

    ○永原委員 公社債については、やはり日本よりははるかに税率が高いのじゃないでしょうか。
  39. 米里恕

    米里政府委員 公社債につきましては、国によっていろいろのパターンがございます。たとえばアメリカのように、債券類は一切課税しないというような国もございます。それから、たとえば公共債は特別の低率にするというような国もございます。株式と社債の税率にかなりの差を設けている国もございます。一方、株式公社債も全く同じ税率だというような国もございます。国によりましていろいろなパターンがございます。
  40. 永原稔

    ○永原委員 所得税はほかの国と比べて非常に低い。よく諸国の例をおとりになりますけれども、こういう流通を阻害しないようにというお気持ちはわかりますけれども、こういう点についてはなお検討を要するのではないかと思いますけれども大臣、どうですか。
  41. 村山達雄

    村山国務大臣 恐らく租税体系全般に通ずる問題としてこの取引税をどの辺に位置づけるか、租税体系全体の問題じゃなかろうかと思っているわけでございます。  御承知のように、直間比率で言いますと、日本は直接税比率が二番目に高い。いま七〇%ぐらいだろうと思いますが、そういう体系がいいのかどうか、大体それぐらい。われわれが言っておりますのは、租税負担が余りにも軽過ぎるじゃないかということを申し上げているのであって、直間比率なり税体系から申しまして、日本が特に直接税が高いということを言っているわけではないのでございます。そういう意味で、いま永原委員のおっしゃったことも頭に置きますけれども、やはり全体の租税体系としてどう位置づけるか、そういう問題として検討してまいりたいと思っております。
  42. 永原稔

    ○永原委員 円建て外債が大分ふえてきておりますけれども、こういうものに対する流通税もやはり国債と同じだと思いますが、ほかの国が、利率の点で日本が有利であるという見方から円建て外債をしているのでしょうか、一般的に言ってどのくらいの差があるのか、このことを教えていただきたいと思います。
  43. 米里恕

    米里政府委員 ちょっと所管が違いまして、すぐにはわかりかねますので、申しわけございません。
  44. 永原稔

    ○永原委員 それから、相対取引というのですか、直取引というのですか、このことも佐藤委員お話しになられました。有価証券取引税法十二条によって有価証券取引書をつくらなければならない、こういうことが規定されており、また罰則も、これは五十万とか三年以下というような厳しい罰則が科されているように思われましたけれども、こういうものについて本当に、これは納税者の納税証明書みたいなものだということであればそれまでですけれども、こういうものまでおつくりになり、つくらなければ罰則を科すというような非常に厳しい態度で臨んでいらっしゃりながら、この前のお話のように実効は上がっていない、実態はつかめない、こういうようにお答えがあったのですが、こういうようなものでは本当に空文として意味がないのじゃないかという気がしますけれども、何か届け出制にするというようなお考えはありませんでしょうか。
  45. 米里恕

    米里政府委員 相対取引、直取引の場合の課税方法についての問題でございますが、現在御承知のように、相対売買について印紙納付の方法で自主的に納税していただく、その際に取引書をつくっていただく、一年間保管していただく、こういうことになっておるわけでありますが、これはひとえにできるだけ納税者の方の手数を省きたい、取引の障害にならないようにしたい、日々数多く取引されておりますので、そういったことで自主的に納税していただくというようなことを考えておるわけでございます。本来、自由な流通が最も必要である取引でございますので、そういったような意味での現行制度ができておるわけでございまして、これを一々、もしおっしゃるようにことし届け出制というようなことにいたしますと、非常に手数がかかるというようなことではないかと思います。
  46. 永原稔

    ○永原委員 この前の佐藤委員質問に対しては、あのときは、結局市場を通さない取引が多くなれば市場価格を乱すのじゃないかというような意味お話もあったと思いますけれども、いまのお答えでかなり多くのものがこの相対取引でなされているような印象を受けましたけれども、実際はどうなんでしょうか。
  47. 谷口昇

    ○谷口(昇)政府委員 相対取引課税実態でございますけれども証券会社を通さないいわゆる相対取引では、有価証券を譲渡した場合には、譲渡者は有価証券取引書を作成をいたしまして、これに有価証券取引税相当額の印紙を張って消印をして納付するという、御承知のとおりの印紙納付の方法によることとなっております。したがいまして、印紙収入として国庫に入ってまいりますので、その件数とかあるいは納付額が幾らであるかは私どもでは不明でございます。  なお、有価証券の取引に関しまして、昨日も貝沼委員から御質問がありましたけれども、私ども有価証券の譲渡については、それぞれその態様によりまして、譲渡所得あるいは事業所得あるいは雑所得と分類はしておりまして、それぞれ所得別の統計は持っておりますが、その中で有価証券の譲渡あるいは相対取引の譲渡というものについて統計は現在持っておりません。  以上です。
  48. 永原稔

    ○永原委員 所得税法における五十回とかあるいは二十万というようなああいう数字、これが実際に本当に守られていないとか、それから実態がつかめない、あるいはこういう印紙による納税、こういうものも非常に実態がつかめないで、有名無実のような感じがしてしょうがないのです。特に罰則まで設けて厳しくやっていますけれども、実効の上がらないもののような気がしますが、これは何か改善の方法はないんでしょうか。
  49. 谷口昇

    ○谷口(昇)政府委員 ただいまの御質問でございますが、私どもは、統計的な数字はもちろん把握をしていないと先ほど申したとおりでございますが、実際には有価証券の相対取引につきましては、法人税だとかあるいは所得税の調査の際に、その課税がどういうふうになっておるか、あるいは課税を更正をするなら更正をするということがありますれば、それは更正をするということで実態現実には調査を通じまして承知はしておりますが、統計として全国でどういう数字があるかということを持っておらない、こういうことでございます。
  50. 永原稔

    ○永原委員 違反の件数というのは現実にあるんですか。
  51. 谷口昇

    ○谷口(昇)政府委員 私どもの手元には数字はございません。
  52. 永原稔

    ○永原委員 これで終わります。
  53. 大村襄治

    大村委員長 只松祐治君。
  54. 只松祐治

    ○只松委員 きょうはしんがりを承りまして、時間がありませんので、問題点だけを述べます。また、時間の足りないところは資料要求だけにとどめますので、後日また本格的な討議を行いたいと思います。  証券問題というのは、資本主義社会における中心課題、証券市場というのはメッカと言ってもいいわけでございます。昨年度取引所なんかを調査見学に参りました。あの内容を見ましても、これが一事が万事、旧態依然たるものがあることは御承知のとおりでございます。したがって、これが売買形態あるいは外務員を使っての販売形態、こういうものまで全部ひっくるめますと、まだ非常に封建的といいますか、昔のままのしきたりがたくさん残っております。こういう面では私は、証券行政というものは、近代社会に対応してもっと近代化をするし、民主化をしてまいらなければならない、こういうふうに存じますが、大臣なり当該局長あたりはいかなる努力をなさっておるし、今後なさる予定であるか、お聞かせをいただきたい。
  55. 山内宏

    山内政府委員 その点につきましては、当委員会においても再三にわたりまして御指摘をいただいておりますし、それに応じまして行政のサイドにおきましても、各種の手段を講じてまいったところでございます。  けさの御質問にもお答えいたしましたように、その問題は主として現物取引よりも信用取引の問題において集約をされて世の中にあらわれてまいる事柄でございますので、そういった意味合いで、過去三十年ほどにわたりまして相当いろいろな信用取引に対する過剰な投機の抑制策というものを講じてまいりました。水準といたしましては、現在のそういった諸手段というのはかなり充実をしたものだと私どもは思っておりますので、今後の問題といたしましては、そういったかなり充実をいたしました諸手段をタイミングよく必要な時期に発動するということ、それからそれの裏づけといたしまして、証券会社がいま御指摘のような形で、公共的な使命に応じた経営形態を今後とも進めてまいるというふうなことが肝要であろうかと思います。
  56. 只松祐治

    ○只松委員 そういうものの一つの手当てとして、四月からですか、上場のいろいろな新規基準というものがつくられるわけでございますが、この結果、一部で三社、二部で十九社ぐらいあるというように言われておりますが、いわゆる新規基準に適合しないで洗われておる会社、ここで即座にわかればお答えをいただきたいし、まだ推測の段階だ、いろいろな問題がある——新聞等にはすでに固有の会社の名前が発表されております。わかればひとつ、わからなければ後日資料を提出していただきたい、こういうふうに思います。
  57. 山内宏

    山内政府委員 御指摘のとおり、現在の証券取引所に対する上場基準がやや強化をされまして、その関係でこの三月以降、基準の改正に伴う上場廃止という会社が出てまいる可能性がございます。  いろいろ基準を強化をいたしておりますが、たとえば資本金基準でございますと、四月一日現在の資本金で判定をするということになっております。それからまた、無配ないし債務超過基準につきましては、これは本年の六月以降出てまいります有価証券報告書に基づいて判断をするということになっております。  そういうふうな関係で、現在の時点ではまだそういった期限が参っておりませんので、確定的に云々ということは明確ではないわけでございますけれども、ただ、会社によりましては、すでに現在の段階で先を見通して上場廃止を決意をしたという表明をしておる会社がございます。そういった会社につきましては、現在二十二社ございます。会社みずからがそういう申し出をなさったところが二十二社ございます。この二十二社につきましては、そういう申し出がありました都度、あるいは公表のありました都度証券会社に通知をするとともに、取引所の日報に掲載をするというふうな手段を講じてございます。今後もそういった申し出がございます場合には、その都度そういう形で公にしていきたいというふうに思います。
  58. 只松祐治

    ○只松委員 こういう会社は恐らく店頭売買か何かになろうかと思いますけれども、多かれ少なかれ被害が出てくる可能性がある。こういうことに関して、これはずっと前から質問がありました永大の場合なんか顕著に出てきておりますね。永大が四十四年、四十六年、四十八年、三千四百万株の時価発行をやって約二百億円、百九十六億二千万円の利益を得ておるわけです。これがポスト入りしてしまう、こういうことになってしまいますと、私たちもこれは民主化と言っておりますように、必ずしも大会社やあるいは大金持ちだけが株を持っておるのではなくて、一勤労者も株を所有している人かおる。こういうことに関しては何らの対策がなされておらない。会社の更生だとかあるいは関連会社の救済というようなことはいろいろなされておりますけれども、いまの基準取り消しになる会社、あるいは具体的に出てきておるたとえば永大とか、こういう問題の株主に対するいろいろな施策というものは、余り論じられたことも聞かないし、金持ちがどうせ買っているんだから大したことはないだろうと言えばそれまでだけれども、必ずしも私は金持ちだけが買っておるとは思わない。こういうことに対して何らか具体策をとられたりお考えになったことがありますかどうか。
  59. 山内宏

    山内政府委員 まず、上場廃止基準に該当いたしまして上場廃止になりますものの扱いにつきましては、これは原則といたしまして、上場廃止を決定いたしました後三カ月間、整理ポストと言っておりますが、取引所の中で引き続き取引をいたします。この三カ月経過後、これまた原則といたしまして、いま委員指摘のとおり、店頭証券の扱いになります。それがこれまた原則として三カ月程度店頭で取引をいたしました後、本当に公認された取引がなくなる、相場がなくなるということでございます。  それから第二番目の、株主に対する対策いかんという御質問でございますが、非常に基本的に申しますならば、やはりわれわれとしては、いわゆるディスクロージャーの制度企業内容開示制度によりまして、投資をしようとする人に対して企業の内容を十分公示をして、その判断もとに株を買っていただく、あるいは株を売るというふうなことをやっていただくのが最もメーンのルートであろうかと思います。  ただ、わが国の場合、これは只松委員も非常に御熱心でございまして、現在、企業内容開示制度は諸外国に比べて非常に進んでいると思いますけれども、しかしながら、いかんせん、その制度そのものが、いわば事後的に世の中にあらわれてくる、つまり決算が終わった後、あるいは半期決算の後、半年前なり一年前なりの経営状態が世の中にあらわれるという、やや時期のずれがございます。  それから先、つまりむしろもっとそれよりも早いタイミングでのディスクロージャーをどうするかというのが御指摘の重点だろうと思うのでありますけれども、その辺になりますと、実はそこまで法律をもって強制するのが適当かどうか。特に、今般の場合を考えて申し上げますと、たとえば何らかの形でてこ入れを受けて生き延びるのか、あるいはあっさり倒産をするのかというふうなことを判断を下しますのは、恐らく企業の最高機密に属するだろうと思いますし、そういったものについてまで、罰則をもって、あるいは法律をもって強制をするというのは、これはむしろ逆に、うまくいけば生き延びられたものが、かえって世の中に公にするという意味で足を引っ張られるという可能性もなしといたしませんというようなこともございまして、かなり慎重を要する。諸外国でもそこまでやっておるところはないということでございますので、ディスクロージャーについてはおのずから限度がある。やはりそれから先は、株という上がる可能性もあれば下がる可能性も強いそういう商品を投資の対象として選ぶ株主の責任事項、判断の責任ということを考えざるを得ないというふうに考える次第でございます。
  60. 只松祐治

    ○只松委員 そういうことで被害を受けますと——たとえば売買としては二十万株、五十回とか、あるいは税制上は一種類で五万円以上のときですか、何かこれは通告かなんかになっておりますね。いずれにしても一定限度以上もうけますと課税もされます。ところが、これをやって赤字になりますと、損失が出ましても、法人の場合、欠損で落としたりいろいろなことができるでしょうが、個人の場合は何ら救済措置というものはないわけです。こういうふうに今後いろいろ——というのは、今後まだ倒産する会社が出る。不況がよくなるはずはない。あんな公共投資をちょこっとやったくらいでよくなりゃしませんよ。それで、倒産する会社が続出するとまでは言いませんけれども、またぼつぼつ出てくる。その場合は非常に被害者が、単に何千人とかでなくて、何万、何十万人と多くなっていく。こういうことに対して、私はきょうは国税庁の方を呼んでおりません、主税局を呼んでおりませんでしたけれども、これは検討する必要があると思う。大衆に影響を及ぼしてくる。関係局長を呼んでおりませんでしたから、大臣、どうですか、こういう問題について、——審議官でもいいし、今後こういうものを検討するということをお考えになりますかどうか。
  61. 米里恕

    米里政府委員 事態推移に応じまして、また、客観的な情勢に即するように今後とも検討してまいりたいと思います。
  62. 只松祐治

    ○只松委員 今後ともという簡単なあれじゃなくて、いま申しましたようにごたごた——「きょう第一部に上場」と、こうやって新しく出てきて、飛びついて買う人もまたいるわけですね。といって、いま私が一例を出しましたように、こうやって不況になってきて倒産して損失をしてくる、こういう人も、私が知っている限りでは一国鉄職員の方の中にも、これは何とかならないのだろうかといって実は御相談に見えた方もあるわけです。一般の庶民の中にも結構株を持っている人があるということがあるわけですよ。だから、今後ただ単に検討するという程度ではなくて——もうけたときはなかなか税務署は厳しいわけですからね。ところが損したときは、法人は救済の措置があるが個人は救済の措置がいまのところない。ぜひひとつこの問題は十分に税調に諮って検討していただきたい。時間がありませんから討論を避けますが、お願いをいたしておきます。  こういうことに関しまして、前回も私は——まあ次に申しますが、株主総会の問題その他で参考人を要請いたしましたが、無礼といいますか不遜といいますか、大蔵委員会がなめられておるのか大蔵省がなめられておるのか、とにかく参考人は遂に何回もあらわれず。民間会社の場合はまたおくといたしまして、私は、東証の理事長あるいは証券会社の主要な会社の社長さんを参考人としてひとつお呼びをいただきたいと思いますが、委員長、ひとつよろしくお取り計らいをいただきたいと思います。
  63. 大村襄治

    大村委員長 理事会で協議いたします。
  64. 只松祐治

    ○只松委員 そういうことに関連いたしまして、一例だけ申し上げておきますが、ことしもやはり王子製紙の株主総会が十一月三十日、日本工業ビルで、同じ日に三菱重工がやはり乱闘騒ぎを起こしておりますね。私は一番最初に申しましたように、これは資本主義の一つのメッカです。株主総会というのは資本主義形態の一つの象徴的なあり方でありますから、何としてもやはりこれを民主化し、そういう暴力的なものを排除していかなければならない。たとえば一株株主の運動に対しては、きわめて過敏であったり排除の措置がとられております。また、今後立法化されようとしておる商法の改正等におきましても、一株株主の排除は相当考慮されておりますけれども、こういう株主総会それ自体のあり方、発言を阻止して五分や十分で終わらせる、これをもっていい会社なり腕のある総務部長なり社長とされておる。そうではなくて、私はやはり一日でも二日でも三日でも、民主的な組合ならは——そう言ってはなんだけれども、私たち社会党もそうですが、自民党も総裁公選、開かれた、公開の大会をやろう、こういうふうになってきておるのに、株主総会だけは三分や五分や十分で、何十万人、何百万人の株主をやらない。これはきわめて時代離れがしているし、不謹慎といいますか、少なくともほめられたことじゃない。こういう問題について聞きますと、常に、いや法務省じゃありません、いや警察庁じゃありません、いや証券局じゃありませんとみんな、監督はどこでやっているかわからない。逃げ散らかして、私は何回も聞くのだけれども答弁するところがまずないのですね。総合して大蔵大臣、これはどういうふうにされますか。  それから、法務省お見えになっていると思いますが、商法改正がどのように進んでいるか、ひとつお答えいただきたい。
  65. 村山達雄

    村山国務大臣 株主総会のあり方につきましては、大蔵省が直接所管しておるわけではございませんけれども、やはり全体の経済なり信用に関連する問題でございますので、十分関心は持っているわけでございます。  現在株主総会のあり方というものが、十分な審議が行われないという風評も十分聞いておるのでございます。しかし一方においてまた、株主総会を機会にいたしまして、総会屋さんだとかあるいは一株株主だとかいろいろの問題があることも聞いているわけでございまして、両方が排除されなければならぬと思うのでございます。そして真剣な、まじめな議論が株主総会において展開される、それがまたやがて健全な経営指針として事後の経営を動かす、こういうことが望ましいわけでございますけれども、いまのところそういう基盤が実はできていないのではなかろうか、そのことを心配いたすわけでございます。われわれといたしましては、そういうことがないように、これは最後はもう国民の良識にかかる問題であろう、それが一番強いのではなかろうか。もちろん、法に触れる場合におきましては、政府はそれぞれの対応をとるでございましょうけれども、そういう意味で、今後わが国がだんだん成長していくことを心からこいねがうものでございます。
  66. 元木伸

    ○元木説明員 お答えいたします。  御指摘のように、確かに株主総会は必ずしも円滑には運営されていないということでございまして、これは会社の運営上非常に重大な問題であるということでございます。  御案内のとおり、法制審議会では、会社法の全面改正の審議を進めておりまして、去年の七月から株主総会制度の審議に入っております。それで、ただいまのところ商法部会の下部組織といたしまして、小委員会あるいは準備会等におきまして株主総会の制度改善についての具体案といいますか、意見を練っているところでございます。これはいずれ近いうちに部会に上げられると思いますけれども、この中で、もちろん当然のことといたしまして、いわゆる総会屋、あるいは株主総会の円滑な運営というような問題につきましても対象にされるわけでございますけれども、さらに私どもの方からも特に商法部会にお願いいたしまして、これを取り入れていただきまして、ただいまのところ審議中でございます。  この問題といたしましては、要するにいわゆる特殊株主と申しますか、総会屋もこれは株主であるということでございまして、株主の権利をいわば拡張するということになりますと、同時に総会屋も権利といいますか力を得てしまうということがございますので、総会屋を抑えながらしかも株主の力を強めていくにはどうしたらいいかというのは、非常に技術的な問題でございまして、これが今後検討の中心になろうかと思います。
  67. 只松祐治

    ○只松委員 時間がありませんので、銀行局に資料要求だけをきょうはいたしておきたいと思います。  私の手元にもこのくらいいろいろな資料が来ております。西日本相互銀行の問題についてでございます。労働基準局が何回か立ち入り検査をし、あるいは残業の未払い金を支払わされたような問題がある。公取も多分調査に入ったと思います。それから、不良債権が永大建材に十億円、永大産業に二億円、新日本造船に五億円、佐世保造船に五億円、ほかに瀬戸内海の来島ドックに百八十億というように、二百億を超す不良債権があるとも聞いております。また、この合併に関しまして、いろいろ汚職問題等があるというふうにすでに取りざたをされております。私のところへ内部告発の文書もたくさん来ております。  したがってそういう問題について、本当はどのくらい銀行法違反があるか、論議をしたいのですが、きょうはもう時間がありませんから、西日本相互の問題に関連して討議する機会等を得たいと思いますので、資料を銀行当局に要求をいたしまして、私の質問を終わります。
  68. 徳田博美

    ○徳田政府委員 何分金融機関の個別の問題でございますので、どの程度御要望に添えるかどうか、検討いたしたいと思います。
  69. 只松祐治

    ○只松委員 検討の度合いは別でございます。それから、公表して、委員会の席上で発表するかどうかは別でございますが、以上要求したことは具体的な問題でございますから、私のところにどういうふうに告知するかは別にして、報告だけはしてもらいたい、こういうことを要求しておきます。
  70. 徳田博美

    ○徳田政府委員 いま申し上げましたように、個別の問題でございますので、どの程度のことを申し上げられるか検討いたしたいと思いますが、いずれにしても、結果につきましては御報告いたしたいと思います。
  71. 大村襄治

    大村委員長 これにて本案に対する質疑は終了いたしました。  午後一時に再開することとし、この際休憩いたします。     午前十一時五十六分休憩      ————◇—————     午後一時十三分開議
  72. 大村襄治

    大村委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  租税特別措置法及び国税収納金整理資金に関する法律の一部を改正する法律案を議題といたします。  まず、政府より提案理由の説明を求めます。村山大蔵大臣
  73. 村山達雄

    村山国務大臣 ただいま議題となりました租税特別措置法及び国税収納金整理資金に関する法律の一部を改正する法律案につきまして、提案の理由及びその内容を御説明申し上げます。  政府は、最近における財政事情と社会経済情勢の推移に顧み、今次の税制改正の一環として、税負担の公平確保の見地から引き続き租税特別措置の整理合理化を推進する一方、住宅建設及び民間設備投資の促進に資するための諸措置及び中小企業対策のため必要な措置を講ずるほか、外国子会社等を通じる租税回避に対処するための税制を導入する等租税特別措置について所要の改正を行うとともに、歳入に組み入れるべき国税収納金等の受け入れ期間の末日を一カ月間延長して翌年度の五月末日とすることとし、ここにこの法律案を提出した次第であります。  以下、この法律案につきまして、その大要を申し上げます。  まず、租税特別措置法の一部改正について申し上げます。  第一は、既存の特別措置の整理合理化であります。  すなわち、企業関係の特例制度について、公害防止準備金、違約損失補償準備金等十一の項目を廃止することといたしております。  また、技術等海外取引に係る所得の特別控除制度について工業所有権等の控除率を収入金額の五五%から三五%に引き下げることとし、特別償却制度について航空機の特別償却割合を五分の一から六分の一に引き下げる等の措置を講ずるほか、準備金制度について価格変動準備金の通常のたな卸し資産に係る積立率を二・四%から二%に引き下げ、海外投資等損失準備金の新開発地域投資に係る積立率を三〇%から一五%に引き下げる等の縮減合理化を行うことといたしております。さらに、登録免許税の減免措置につきましても、電源開発株式会社等の増資登記に対する軽減税率を引き上げる等の縮減合理化を行うことといたしております。  第二は、住宅、土地対策に資するための措置であります。  すなわち、住宅取得控除について民間の金融機関等から償還期間十年以上の融資等を受けて新築住宅を取得した場合には、年間償還額のうち三十万円を超える部分の五%相当額を三万円を限度として現行の控除額に加えて控除することを認めることといたしております。また、土地譲渡益重課制度について優良宅地を供給する場合の適用除外要件のうち適正利益要件を適正価格要件に改める等所要の措置を講ずることといたしております。  第三は、民間設備投資の促進に資するための措置であります。  すなわち、昭和五十三年四月一日以後一年以内に取得する省エネルギー、公害防止関連設備等及び中小企業者等の取得する機械を取得後一年以内に事業の用に供する場合には、特別償却の適用にかえてその取得価額の一〇%相当額を当期の税額の二〇%相当額を限度として、税額控除することを認めることといたしております。  第四は、中小企業対策のための措置であります。  すなわち、円相場高騰関連中小企業対策臨時措置法に基づく認定を受けた中小企業者に対して欠損金の繰り戻しによる還付について特例措置を講ずるとともに、中小企業倒産防止共済法に基づき納付した共済掛金の損金算入を認めることとするほか、みなし法人課税を選択した場合の課税の特例、中小企業の貸倒引当金の特例等の適用期限を延長する等所要の措置を講ずることといたしております。  第五は、外国子会社等を通じる租税回避に対処するための税制の導入であります。  すなわち、租税負担の著しく低い国または地域に所在し、かつ、内国法人等によりその発行済み株式の総数または出資金額の五〇%超を直接及び間接に保有されている特定の外国子会社等の留保所得のうち、その外国子会社等の一〇%以上の株式または出資を直接及び間接に保有する内国法人等の当該持ち分に対応する部分を、その内国法人等の所得に合算して課税する制度を創設することといたしております。  以上のほか、揮発油税、地方道路税及び自動車重量税の税率の特例等期限の到来する租税特別措置について実情に応じ適用期限を延長する等所要の改正を行うことといたしております。  次に、国税収納金整理資金に関する法律の一部改正について申し上げます。  昭和五十三年度の税収の伸び悩みを補い、財源の確保を図るとともに、地方財政対策等にも資するため、毎年度の歳入に組み入れるべき国税収納金等の受け入れ期間の末日を一カ月間延長して翌年度の五月末日に改めることとし、これにより同月中に収納される国税収納金等のうち当該年度内に納税義務が成立しているものを当該年度の歳入として組み入れることといたしております。  以上、租税特別措置法及び国税収納金整理資金に関する法律の一部を改正する法律案につきまして、その提案の理由と内容の大要を申し上げました。  何とぞ御審議の上、速やかに御賛同くださいますようお願い申し上げます。
  74. 大村襄治

    大村委員長 これにて提案理由の説明は終わりました。
  75. 大村襄治

    大村委員長 これより質疑に入ります。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。川口大助君。
  76. 川口大助

    ○川口委員 私は、主に既存の特別措置の整理統合、この点についてお尋ねをするわけでありますが、その前に、一応常識論として大臣に二、三お伺いをいたしたいと思うのであります。  私は、経済成長というのは、短期的には日本のGNP、つまりパイの大きさをどういうふうにするということだというふうに考えておるのですが、いかがですか。
  77. 村山達雄

    村山国務大臣 需要項目をごらんになりますと大体おわかりになるわけでございますが、一年間のその国の経済の活動の規模を大体あらわしておるものでございますから、その限りにおきましては大体一年間のものである、こういうふうに御理解いただきたいと思います。
  78. 川口大助

    ○川口委員 私の質問にちょっと合っておりませんが、そのGNPの大きさ、それは日本の経済でありますから、仮に経済成長七%にするということしのような場合は、そのパイの大きさを七%大きくする、こういうことだというふうに思うのですが、そういう見解は間違いじゃありませんか。
  79. 村山達雄

    村山国務大臣 そういうことでございます。
  80. 川口大助

    ○川口委員 と言いますと、いま大臣からお話がありましたとおり、いろいろ構成要素、これは細かく決めますとあるわけでありますが、国の方では相当細かな主要経済指数というものを出しておるわけですが、私ども常識的には大体構成要素というのは、つまり個人消費、輸出、民間投資、それに財政投資、こう四つぐらいに大別するというふうに思っておるのですが、大体それで間違いでないでしょうか。
  81. 村山達雄

    村山国務大臣 何といっても一番大きい要素は個人消費、ウエートで言いますとそれが一番大きゅうございますし、続いて政府消費がその次ぐらいだと思います。これは政府資本、それから財貨サービス入れまして、普通はそんなものでございます。それから設備投資、住宅投資。それから在庫投資はかなり小さいと思います。それからいわゆる経常余剰の関係、輸出入あるいは貿易外収支の関係でございますが、それは年によって非常に変動のあるものである、このような理解をしているわけでございます。
  82. 川口大助

    ○川口委員 と申しますことは、全体を七%大きくするということは、いま大臣がおっしゃったそれぞれの項目に対して、それぞれの刺激的なものを与えるというふうなことになるのですが、この点についてはどうですか。
  83. 村山達雄

    村山国務大臣 一定の政策を遂行することによりましてそれぞれが変化することによりまして、前年に対してどれぐらい伸びるかということ、それを総合デフレーターで換算いたしまして実質どれぐらい伸びるか、こういう計算をするわけでございます。
  84. 川口大助

    ○川口委員 そこで、今回の予算では、その構成があるわけですが、どの部門にどれほどの刺激を与えたかということを簡単に答えてください。
  85. 大竹宏繁

    ○大竹説明員 先生御指摘のとおり、国民総支出の構成要素はいろいろあるわけでございますけれども、五十三年度の政府の経済運営の基本といたしましては、公共事業を中心といたします政府の公共投資を中心に積極的な予算の拡大を図っております。これによりまして、国民総支出の項目の中では、政府の固定資本形成の伸びが非常に高まる、それが波及効果を伴いまして、各需要項目に需要刺激の効果を与えるという過程を経まして、経済全体が拡大をするということになるわけでございます。もちろん政府支出以外の民間の需要につきましても、たとえば民間住宅につきましては、住宅ローンを拡大するとか、あるいは税からの住宅取得控除の拡大をするといったようなことを講ずるとか、あるいは民間設備投資につきましても、電源立地の促進であるとか投資税額控除といったような施策を講ずるといったように、さまざまな民間刺激のための措置も同時に講ずることにしておるわけでございます。
  86. 川口大助

    ○川口委員 一応きのうの本会議における総理のお話を聞いておりましても、輸出はさっぱり期待ができないんだ、民間投資も期待できないんだ、個人消費も余り期待できないんだ、であるから、公共事業にたくさんの金をかけておるんだというふうなお話だと承っておるわけです。確かにことしの主要経済指数から見ますると、その構成比率といいますかそういうものは、個人消費におきまして私どもの計算では五六・八八%、民間投資二一・〇一%、輸出が六・八%、これは大変少なく見ておるんですが、それに財政投資が一六・二〇%ぐらいじゃないかという計算をしておるわけです。ところが、私ども常識的には、GNPにおける構成比率というのは、簡単に言って個人消費は大体五五%だ、それから民間投資一五%、輸出一五%、それに財政投資一五%、これが常識だというふうに承知をしておるわけであります。  そういうふうに考えますと、算術計算をしますと、結局百分の百七になるためには、財政投資の一五%を仮に公共投資三四%、あるいは一般で言いますと二〇・何%か掛けましても、百分の百七にはならぬのですよ。ですから、どうも説明を聞きますと、公共投資の波及効果があるんだ、こう言いましても、結局今回で見ますと、全体の構成比における一六・二〇%のある財政投資をやっても、二百十兆円という——こういう総額に結果的になっているわけですから。そうでしょう、波及効果からいって、すでにこの二百十兆円の中にはその波及効果を見ての二百十兆円になっているわけですから。私がそれをいろいろつまびらかに逆算的に数字を見ますと、どうしてもこの七%という数は算術計算では出てこないのです。この点はどうですか。
  87. 大竹宏繁

    ○大竹説明員 ただいまお述べになりました数字でございますが、おっしゃいますように、GNPの構成比で見ますと、たとえば個人消費支出は五六・九%というようなふうに計算をされます。その他民間設備投資は一二・何%ちょっととか、政府支出が二一・二%といったような構成比が計算をされるわけでございます。  それから、七%といいますのはGNPの前年に対する伸び率でございますので、その伸び率のうち何%がそれでは消費であり、何%が政府支出であるかというのは、いわゆる寄与度の計算は、政府の経済見通しによって計算をいたしますと、名目が一二%でございますので、まず個人消費から申しますと、個人消費が六・八%程度でございます。それから民間住宅投資が一%程度、それから民間の設備投資が一・二%程度、それから在庫投資が〇・四%程度、政府支出が三・二%程度、経常余剰がマイナスの〇・六%で、これらを合計いたしますと一二%と、こうなるわけでございます。  七%と申しますと実質の方の計算でございますので、それにつきましては、経済企画庁の方からお答えを申し上げることにさせていただきたいと思います。
  88. 川口大助

    ○川口委員 私は、いまここで経済論争をするつもりはないのですよ。ただ、財政運営をする大臣考え方として、この計算をどう思っておるかということを実はお聞きしたかったわけであります。ただいまの答弁、ちょっと先走っておるような感じでありますが、私は経済論争じゃなく、つまり先ほど言ったとおり、もう一回申し上げますと、常識的には個人消費というのは五五%だ。あとは一五%ずつよりないのだ。特に今回は財政主導というのですか、財政誘導で手をかけたのは予算的には一五%の分をふやしただけじゃないかということなんです。ですから、百分の十五のところを仮に公共事業を三四%ふやしたとしても、百分の百以上にはならぬじゃないかということを言っているわけですよ。その点を大蔵大臣としてはどういうふうにお考えなのかということを聞いているわけです。
  89. 村山達雄

    村山国務大臣 成長率というのは、前年の総支出に対しまして今年度総支出が幾ら伸びる予定ですか、その差額が前年度に対してどれくらいになっているかというもの、名目で計算した場合と、それを総合デフレーターで割った場合の話であるわけでございます。したがいたして、直接には構成比とは関係がないわけでございます。ただ何か、もちろん今度はいまの状況考えまして、財政で最も効率的に手を打つとすれば公共投資以外にはない。したがって公共投資を伸ばしているわけでございます。表を分析しましても、その公共投資の実額の伸びそれ自身ですね。しかし、それは成長率から申しますと、構成比とは違って寄与率としては、それ自身かなり高いものになるわけでございます。そのほかにいろいろな波及効果がございまして、それが個人消費にもある程度波及効果をもたらすでしょうし、それから設備投資にも波及をもたらす。そこは何をやったら一番波及効果が多いか、そういう見込みの違いになるわけでございます。したがって、いま川口さんがおっしゃったように構成比とは直接関係がないのでございます。
  90. 川口大助

    ○川口委員 ですから、私は先にパイの大きさを、いわゆる短期的にはパイの大きさが経済の伸びじゃないかということを前提にお尋ねしたわけですよ。パイだと言うから、パイだとそのパイの構成は何かというと、いま言ったように大別して四つに分けられるわけです。ですから、GNPの総体を大きくするためには、この要素であるそれぞれの構成のものに刺激を与えていかないと、パイ全体が大きくならぬじゃないかという話をいま大臣とやったわけですよ。その限りにおいて、その構成に対する刺激の与え方が単に財政投資だけでは、百分の百以上にならぬじゃないかということを言っているわけですよ。——私の言っている意味がわからぬですか。つまり、もう一回申し上げますと、GNPそのものを一〇〇とするわけですよ。パイを大きくするということは、その一〇〇をどれほど大きくするのですかというお尋ねを先にしているわけですよ。一〇〇を大きくするためには、その一〇〇が何によってできておるかというと、個人消費が五五、その他は一五%ずつで一〇〇になっておる、こういうことを言っているわけです。ですから、その一〇〇を七%ふくらます、名目にするならば一一二%にふくらますということになれば、それぞれの構成に対してそれぞれ刺激、逆に言うと何%かずつ掛けないと、一一二%の名目成長も出てこないじゃないかということを聞いているわけです。大臣はどうですかと言っているわけです。
  91. 村山達雄

    村山国務大臣 的確にお答えできるのかどうかあれでございますが、パイの大きさという問題と——それはその限りにおいてパイの大きさなんです。問題は、成長率という問題を言うときには、パイの大きさがどのように前年に比べて大きくなりましたか、こういう話であるわけでございます。名目で申しますと、五十二年度の見通しが大体百八十八兆だ、こういうわけですね。今度二百十兆六千億でございます。その差をとってみますと、一二%大きくなっております、これがいわゆる名目成長率であるわけでございます。それを総合デフレーターで割りますと七%になります。つまり七%大きくなった、こういうことですね。  しかし、それはいま川口委員がおっしゃいましたように、一体その部分七%に対して何が、その各需要項目別にどれがどれほど寄与しているかという問題と、それから構成比がどうなっているかという問題は、もちろん因果関係はありますけれども、直接には別な概念であるわけでございます。だから、構成比で申し上げますと、政府の見ているところでは、大きい項目を申しますと、五十三年度個人消費支出は五六・九でございます。しかし寄与度で見ますと、いまの一二%伸ばしているところで——百分率の方か私はわかりやすいと思うのですが、五六・九でありますが、一二%伸ばすのにどれくらいの寄与をしているか、一〇〇で計算しますと、これは五六・二でございます。つまり構成比よりはちょっと落ちている、こういう計算になるわけですね。それから最も典型的な例を挙げますと、政府の資本支出でございますが、伸び率が二〇%で構成比は一〇・三です。しかし寄与率は一六・六%、こういうことになっているわけですね。しかしそのほかに、いま申し上げたいことは、それぞれみんな寄与率は出ておりますけれども、この資本支出をやることによりまして、実は各需要項目に波及効果を与えている結果がここにずっと出ているわけでございます。波及効果が一体どのくらいそれぞれの需要項目にあるかということは、経済企画庁の方でずっと計算しているわけでございまして、過去の例もやり、いろいろなことから積み上げ計算をいたしまして、そして波及効果が出たところで全部答えを出しているわけでございます。  そういう意味で申しますと、おっしゃるようにGNPというものは、それは単年度の経済の大きさをあらわし、成長率はパイがどのくらい大きくなったかということをあらわし、それからその成長の原因となっているものは何であるかと言えば、結果的にはそれぞれ寄与率であらわされるわけでございますけれども、実はその中に波及効果を見ておる、こういうことなのでございます。
  92. 川口大助

    ○川口委員 そのとおりなんですよ。構成比は確かに結果なんです。二百十兆円の内訳を見ると、どういう構成になっておるかという結果なんです。しかし、その結果が生まれた原因はどこから来ているかというと、どの項目にどれほどの刺激を与えたかということによって結果が出るわけですよ。その刺激の与え方は、大蔵大臣、予算的には公共投資以外にないのでしょう。それを私は聞いているのですよ。
  93. 村山達雄

    村山国務大臣 いや、わかりました。実は公共投資が主導であることは間違いございません。しかしおっしゃるように、設備投資につきましても、ここで設備投資減税をやるとかあるいは電源立地交付金をやるとか、さらにまた通産大臣の話を聞きますれば、いわば電力等について繰り上げ建設をお願いしておるとか、そういったもろもろのことがあるわけでございましょうし、また住宅の伸びに対しましても、住宅減税、土地税制もやっておりますし、そのほか予算的には住宅金融公庫の大幅な拡大をやっておるわけでございますし、また、民間金融機関に対してもそのような金融措置をお願いして、新しい住宅ローンの形をお願いしているとか、いろいろなことがあるわけです。そのほかに、たとえば構造不況業種、これが足を引っ張るわけでございましょうから、それに対しましては、不況業種の法律を出すとともに、それの財源手当てもいたしておるわけでございますし、あるいは中小企業、円高によって困っている人、これも社会問題であり、経済問題であると同時に、そのいかんは国民経済の伸び率に大きく影響するわけでございますから、それぞれ特殊な立法を持ち、それの財政的の手当てあるいは金融的手当て、それぞれいたしているわけでございまして、公共投資一本やりと言ったのは言葉が少し、ここに一番重点があるのだということを言う意味でございまして、実は細かいいろいろなことをやっていることはもう御案内のとおり、それらの総合的な結果として一二%あるいは七%が達成できるのではないか、こう申し上げておるわけであります。
  94. 川口大助

    ○川口委員 しかし、私どもがいろいろ検討しますと、そうは言いますものの、公共投資は確かにそういうかっこうでありますが、民間投資に至っては、総理も本会議場で、やはり先々不安で余り伸びない、輸出も伸びない、こう言っているわけですよ。個人消費も特にこれに対する刺激は何もないのですよ。減税もやっていない結果、昨年度と同じ所得の人はことしは税金が高いのですよ。それだけ消費は詰まるわけです。  ですから、確かに算術的には、主要経済指数の中にも出ておりますが、よく内容を見ると、民間設備投資であっても、たとえば電力なんかの投資も三兆円が本当なのか五兆円が本当なのかこれもはっきりしない。住宅にしても、永大産業は倒れてしまっておるわけですよ。ちょうどいま国が昨年の暮れから、九月の補正予算の際にも一番力を入れた住宅が倒れてしまっておるわけですよ。ある人は魚が水の中におぼれた、こう言っているわけです。そういう状態で果たして民間設備投資もあるいは個人消費も伸びないだろう、こういうことで、わが党では今回、予算の修正を求めて減税、あるいはまた貯蓄が多いというのも、低所得者に対する将来の不安をなくするために年金額を高めたらどうだ、こういうふうな要求を出しておるわけですが、この野党の要求に対しては大臣、いかがお考えですか。
  95. 村山達雄

    村山国務大臣 政府の方で経済見通しを立てておりますように、一二%あるいは七%という、公共投資以外について決して無理な見積もりをやっているわけではございませんということは、もうすでに数字にあらわれているわけでございまして、いろいろな施策を講じておりますけれども、結果としてそんなに大きく期待してないということは、しばしば経済企画庁から述べたとおりでございます。  減税の問題にお触れになりましたけれども、同じ財源を使って一体どっちが効果があるだろうかという問題に最後は帰着するわけでございまして、私たちが言っておりますように、いろいろの数字があることはよく存じております。かつてのSP、高度成長時代のように波及効果が高くないようだということもよく存じているわけでございますが、それにしても、新しく開発されたSP18というので計算いたしましても、初年度クォータはかなり開いておるということを考えますと、同じ財源を使ったときには、やはり景気浮揚というのが主要な命題である限り、一番効率的な使い方ではなかろうか。それにかたがた考えてみますと、一方、それは国民の共通資産としてのおくれておる社会資本の充実に資するという半面がございます。  一方、減税の方で申しますと、確かに個人の負担は楽になるわけでございますけれども考えてみますと、国際的に見て日本の租税負担率は極端に低い。財政収支試算でお示ししましたように、来年度以降一般的な租税負担の増加は避けられないというときにいかがなものであろうか。こういう相対的の関係として私たちは公共投資の方を選んだ、こういうことをしばしば申し上げておるわけでございます。
  96. 川口大助

    ○川口委員 いや、私の言っているのは、選択を言っているのじゃないですよ。つまり公共投資もこの際必要であろう、しかし、それだけでは経済の成長はむずかしいじゃないか、だからプラス減税も考えたらどうか、プラス年金も考えたらどうか、こういうことを言っているわけですよ。時間の関係もありますから、端的な説明をしていただかないと困りますから、どうかひとつ端的に、私ども考え方はどうだと……。
  97. 村山達雄

    村山国務大臣 財源がありまして、後で後始末をやらなくても大丈夫だというんなら多々ますます弁ずでございまして、あらゆることをやりたいわけでございます。
  98. 川口大助

    ○川口委員 そこでお尋ねをしますが、財源がないということは一体どういうことなんですか。
  99. 村山達雄

    村山国務大臣 これはもちろん国全体を考えるものでございまして、もしこれ以上公債を増発するということになりますれば、恐らく資金需給が非常に窮屈になりまして、必要とする民間資金にも事によればひびがいくかもしれない。そのためにまた金融操作をやるということになれば、実勢に反し、やはり過剰流動性の問題を起こすであろうというわけでございまして、印刷機械を回せばいいというわけではないのでございまして、全体の貯蓄の資金をどのように使うかということになるだろうと思うのでございます。
  100. 川口大助

    ○川口委員 いかにもごもっとものような説明でありますが、納得できないのです。というのは、昨年度何と言ったか。公債は三〇%以上は発行いたしません、それ以上発行すると国は大変なことになる、こう言ったのじゃありませんか。ことしはどうですか。三二%、実質三七%もふやしている。これは一体どういうことなんですか。いまのお話とこの関係をひとつ説明していただきたいと思います。
  101. 村山達雄

    村山国務大臣 これもしばしば御説明申し上げましたけれども、三〇%というのは経験的に申しまして、大体昭和の時代、あの不況時期が三〇%、あれが危機ラインである、それで三〇%ということをこの前申し上げたわけでございますが、いまの状態を見ておりますと、このままでいけば、ちびちびやっておったのでは民間経済の盛り上がりがついにだめになってしまうのじゃないか。だから、確かに三〇%は超えたくないのでございますけれども、そんな対症療法だけやっておったのではいかぬから、思い切って切開手術をやらざるを得ないという認識に立っておるわけでございます。そのことによりまして民間経済を早く回復の緒につけまして、やがてその経済の高まりの中から自然に財政の回復の道を選んでいく、こういうことでございまして、願いとするところは、最後は財政の健全化も同時にねらっておるわけでございますが、まず経済の正常化を先決させようということであえて三〇%ということをことしは断念して思い切ってやってきた、こういうことでございます。
  102. 川口大助

    ○川口委員 いまの説明は政策の説明ですよ。財源がないという説明ではないでしょう。だから、私は財源とは何ぞやということを聞いているわけです。政策の説明でしょう。ですから、必要な政策があれば、必要な事業があれば国の場合は財源が出るということじゃないですか。
  103. 村山達雄

    村山国務大臣 そうでございませんので、全体の資金計画を立てまして、そしてぎりぎりいっぱい、民間ではおおよそこれくらい、公共債の発行はこれくらいいっても大丈夫であるという、ぎりぎりいっぱいの財政計画を組んだわけでございます。したがって、そこにはおのずから限度がある、その結果において実質三七%になった、こういうことでございます。
  104. 川口大助

    ○川口委員 自治体の場合は歳入というのは非常に厳格なんですよ。税金と、あと財政収入額と需要額との差の交付税、こういうものを一つの基礎にして予算を組むのです。足りなくともこれで組まなければいけないのです。場合によってうっかり多く組みますと、再建団体の指定を受ける。そして鉛筆一本買うにも、賃金一つやるにも、自治省の御承諾がなければ動けないというかっこうになって財政運営をやっているのですよ。しかし国の場合は、いまもっともらしく言っているけれども、権力があるのです。勝手に法律もつくれば政令もできるのです。ですから今回も、たとえば来年の分をことしに回してみたりいろいろやっているでしょう。それによって財政を生み出してやっているじゃないですか。  それはなぜかというと、必要な政策を遂行するためにやっているわけでしょう。その限りにおいては、財源がないという表現は私は当たらないのじゃないかと思うのです。つまり、ことしの枠はどれほどにするか、枠の中で事業の選択なり緊急度なりによって予算の編成をするのだ。ですから本来的には、三十四兆円であればそれは三十四兆円の枠でやる、昨年二十八兆円であれば二十八兆円の枠でやる。そしてもしも緊急な問題があれば、従来の組んだ予算の中で洗い直しをするかあるいは見直しをするか、つまりそれによって予算の組み替えをするか、もしもどうしても組み替えができなければ、そこで一体何を考えるかというと、国の場合は法律でも政令でも何でもできるわけですよ。そういうふうに常識的にわれわれは思うのですが、こう私ども考えていることは、いままでのやり方から見て無理ですか。
  105. 村山達雄

    村山国務大臣 国の財政といえども、やはりおのずから限度があるわけでございまして、いまちょうど地方財政のお話を出しましたからそれに即して申し上げますと、普通歳入があるわけでございます。それから建設公債があるわけでございます。しかし、建設公債といえどもおのずから貯蓄の限度に縛られるわけでございます。特例債を出すということは財政法としては異例の措置でございます。残念ながら五十年以来出しているわけでございます。今度異例の措置を講じてやった目的はもう申し上げました。しかし、おのずから限度があるわけでございまして、やはり国民の貯蓄の中でそれを賄うということでございます。  それは財政的には非常に悪化することはもう十分わかるわけでございますけれども、しかし、そのためにいまの資金需要からいい、あるいは貯蓄の状況からいって、これだけ出すと大変なことになるというようなことではなくて、いま仕事がなくて弱っておる、そして資金が余っているわけでございますから、それを有効に一〇〇%使いたい。その意味で総理が施政方針演説で「国家資金を総動員し」という少し激しい言葉でおっしゃられましたけれども、気持ちはそこにあるわけでございます。
  106. 川口大助

    ○川口委員 私の質問の趣旨は、どんどん勝手に金を使えという意味で言っているのじゃないのです。私は、一刻も早く国の財政も健全化しなければならぬと思います。健全化するということはどういうことかというと、弾力財源をいかに多く持てるかということになるわけです。そうして見ると、ただ新しい事業がふえたからといってどんどん——私は、先ほど財源かないとはどういうことかとお聞きしましたけれども、いまのところでは極端に言うと、既存の事業には全然手をかけないで、新しい事業だけ新たな歳入を見出してきて財政をふくらませていっている、そして弾力財源をなくして窮屈な全く硬直した財政にしておるというのが、いまの国家財政の現状ではないかと私は思うのです。  でありますから、財源がないということは逆に言うと、財源があればやるのかということになるのです。そうすると、われわれは生きている限り仕事はあるのです。その限りにおいて、財源がないから財源がないからということは、あれば全部やるのかというと、そういうことは常識で考えられないでしょう。ことしの枠はどこまでやるかというわけですから、ことしの枠でやるためには事業の選択をより的確にしなければならぬ、こういうように思うのです。これから私、項目的な租税特別関係の問題に入ってまいりますが、どうも財政の扱い方が安易過ぎると私は思うのです。大臣、そういうことじゃありませんか。
  107. 村山達雄

    村山国務大臣 公共事業を拡大する反面におきまして、いわゆる経常経費につきましては極力圧縮したことはすでにしばしば申し述べておるとおりでございます。  たとえて一、二例を申し上げますと、庁費等につきましては前年横ばいであるとか、行政改革の線に従いまして新増設は一切認めないとか、特殊法人の新設は認めないとか、定員は予定どおり——膨張しそうでございますけれども、国家公務員に関する限りは着実に計画的に縮減をしておるとか、あるいは補助金整理でことしは千四百億縮減しておるとか、いろいろなところで経費を圧縮に圧縮を重ねまして、しかし他面において、至上命令であります景気の回復、それに最も大きな波及効果があると思われる公共投資を中心とする施設費に最重点を置いたということでございまして、財政を安易に扱っているわけではないつもりでございます。その意味で、財政収支試算をお示ししたということは、ことしはこんなことをやらざるを得ないのだが、来年から大変なことになりますよということをお示ししておりますのは、実は財政はいまみんなかぶっているわけでございます。  地方財政の問題にいたしましても、地方から申しますなればなお不足だと申し上げるかもしれませんけれども、少なくとも地方は去年に引き続き特例債を出さないで済む、いろいろな財源手当てをいたしているわけでございますから、国が挙げていわば臨時異例の赤字国債をかぶっておる。これもいまの時点としてやむを得ない。しかし、やがて財政問題としては非常に苦しいときが来ることはわかっておるわけでございます。いわばいま民間企業を中心として、そこが伸びない限り、今後ベースアップの問題にいたしましても何の問題にしても、やはり現行の経済制度でございますから、民間企業がまず体力を回復するということ、それから、それによっていろいろな設備投資意欲は、急には出てこないにいたしましても、減速経済なりに正常な形で出てくることをわれわれは期待しているわけでございます。ことしはそのきっかけをつくるための異例の財政措置である、そして、しかしそれはやはり全部の貯蓄の中で賄っていかなければならぬ、こういう考えでやっているわけでございます。
  108. 川口大助

    ○川口委員 この問題だけでやっておっても時間が来ますから申し上げますが、経常経費の節約と言っても、旅費を節約したとか事務費を節約したなんて言っても、これは経常経費の節約にならぬですよ。本当に経常経費を節約するというのであるならば、やはり制度や仕組みにメスを入れないと経常経費の節約にならぬです。でありますから、当然現在の支出の経費を洗い直すべきである。そうして場合によっては、行政組織の簡素化なり補助金の整理というものを断行すべきである。そうしていまおっしゃっるとおり、中期の経済方針をはっきり策定する。公債等によっては、公債発行のルールあるいはまた歯どめというものを明確に示して、それを厳守するという姿勢がなければならぬじゃないか。  どんどん法律や政令をつくりますが、法律はいわば大きな約束事なんです。この約束事を、窮屈になれば破る。その破るために新しい法律をつくる。窮屈になれば——窮屈にしておくのか法律なんですよ。その窮屈なものを、新しい法律をもって窮屈でなくして、財政を放漫にするような形が、この赤字公債発行をどんどん多くしたということにもなると思いますので、きょうはここでやめますが、大臣、この前、ちょうど赤字会社の管財人になったようなものだ、そのつもりでお願いするというお話をしてあるわけでありますから、いずれまた機会を改めて意見を闘わせたいと思います。  そこで、ただいま提案になりました租税特別措置についてお伺いするわけでありますが、これは言葉じりをとらえるわけじゃないのですが、今回の説明によると「財政事情と社会経済情勢の推移に顧み、」こうあるわけです。私どもは、いまの租税特別措置法は大変不公平であると言っているわけです。ですから、これは社会情勢がどうあろうとも、あるいは経済事情がどうあろうとも正しき姿に直せ、こう言っているわけですよ。言葉じりをとらえるわけではないけれども財政事情や社会経済情勢の推移がなかったならば、これには手をつける意思がなかったのかどうかということを聞きたいわけです。
  109. 米里恕

    米里政府委員 租税特別措置につきましては、御案内のとおり本来の考え方は、国の一定の政策目的がある、その政策目的に即した方向で税の面から刺激効果を与えていこう、いわば誘引的機能を利用しよう、こういったようなことから設けられておるものでございます。したがいまして、一般の税の原則、たとえば負担の公平というような原則から考えますと、やや異なった次元でつくられておるものだということが申せるかと思います。  そこで、この政策目的とそれから課税の負担公平という二つの問題でございますが、その調和をどう図ってまいるかという問題であろうかと思います。  五十一年度以降におきまして、五十三年度、いまお願いしております改正案に至りますまで、現在の国民的な御要請、あるいは今後、いまお話しのように財政が非常に苦しい、場合によっては、将来一般的な増税もお願いしなければならぬという情勢だというふうに私ども考えておるわけでございますが、そういった情勢のもとにおきまして、いままでのこの調和の中で、どちらかというと政策目的よりは課税の負担の公平という方により重点をかけて考えるべきではないかというのが基本的な現在の考え方でございます。  具体的に申し上げますと、特に五十三年度、いまお願いしております改正案におきましては、まず考え方は、企業関係の特別措置を中心に考えまして、期限が到来いたしますものを中心に整理合理化を図っていく。しかし、期限が到来しないものであっても、必要大であると認められるものにつきましては、経過的な時期ではございますけれども、縮減合理化を図っていくという考え方もとに、かなり大幅な縮減合理化を今回の案ではお諮りしたいというふうに私ども考えております。
  110. 川口大助

    ○川口委員 ですから私は、これも言葉じりをとらえるわけではないけれども、合理化を図るということは、いままで不合理なことをやっておったのかということなんです。
  111. 米里恕

    米里政府委員 政策目的はその時期によりまして、次第に変化してまいるというようなことがあろうかと思います。かつては輸出振興ということが非常に重要な政策目的であったという時代もあったかと思いますが、その今日的な意味はかつてのものとはかなり変わってまいったというようなことがあろうと思います。そういった時代の要請、先ほど社会情勢というお言葉がございましたが、そういったもろもろのものを踏まえましての政策目的の変転というものに現時点的に合わせてまいるというようなことでの合理化という意味になろうかと思います。
  112. 川口大助

    ○川口委員 それでは具体的に入りまして、価格変動準備金についてお伺いするわけであります。  これは何年から実施しておったのですか。
  113. 米里恕

    米里政府委員 二十七年からでございます。
  114. 川口大助

    ○川口委員 二十七年からいままでやってまいりまして、これによる企業に対する恩恵、あるいはこれによる経済の推移に対する貢献度、この効果の測定というものをどのようにとらまえておりますか。
  115. 米里恕

    米里政府委員 御指摘価格変動準備金でございますが、御承知のように、たな卸し資産の価格の変動による損失に備えるというための準備金でございます。したがいまして、企業に対する影響と申しますと、価格の激変によります企業経理への悪影響を緩和する、企業経営自体が安定的かつ計画的に遂行できるようにというための制度でございますので、従来までの企業経営、わが国経済の発展の過程においての企業活動というものに対して、それなりの効果を与えてまいったというふうに申せるかと思います。
  116. 川口大助

    ○川口委員 そのそれなりの効果を伺っているわけですよ。前段の説明なんか要らぬです。時間がないから的確に答えてください。それなりの効果というのはどういう効果があったのですか。
  117. 米里恕

    米里政府委員 これは複合的に出てまいりますので、どの数字でどれだけの効果があったと申し上げることはなかなか困難かと思いますが、企業経営が申し上げましたように安定的に遂行できるという意味での効果ということだと思います。数字的に申し上げることはちょっとむずかしいかと思います。
  118. 川口大助

    ○川口委員 しかし、自分たちのやっている政策、事業がどういう効果を及ぼしたかもわからないで、財政に影響あるようなものを大蔵省はおめおめとやっているのですか。貴重な財源でしょう。その貴重な財源の効果測定もできないような事業を二十七年からだらだらやっておって、聞かれてみると、そんなことはいまさらややこしくて述べられないという態度で大蔵省の財政運営が務まるかということを私は言いたいのです。
  119. 米里恕

    米里政府委員 この価格変動準備金につきましては、そのあり方についていろいろ御意見、御議論がございます。一つは、価格変動準備金の対象になっております価格の動向というものでございますが、これはなかなか予測しがたい、したがって、必ずしも常に低落するという必然性がないということは申せるかと思います。そういったような意味で、結果的に性格利益留保の面があるのじゃないかというような御指摘もあるわけでございます。そういったような価格変動準備金の制度につきまして、従来しばしば見直し、改正を行ってまいりまして、逐次積み立て率の縮減を図ってまいったわけですが、何分にも企業に対する影響ということもございますので、余り一度にドラスチックなことはできない。一方、景気情勢の影響も考えなければなりません。そういったような意味合いもございまして、漸進的にいままで積み立て率の縮減を図ってまいったわけでございます。五十三年度においても私どもとしてはかなりの縮減をしたというふうに考えております。
  120. 川口大助

    ○川口委員 大体、たな卸しの在庫なんというものは経営者の責任ですよ。特に、高度成長時代のようにどんどんインフレが重なるような場合は、ストックを多くして利益を多くしようとするのですよ。買いだめをするようなことがあるのですよ。そういう場合であってもこれを適用しながら保護を与えてきたわけでしょう、結局たな卸しの現在に対してかけるわけですから。こういうものは、問題があったら直ちに全部やめちゃったらどうですか。問題があるということを御承知なんでしょう。また、そういうふうに理解をしておるのでしょう。何もちびりちびりとやる必要はないんじゃないですか。だんとやめちゃったらどうですか。これはどうですか。
  121. 米里恕

    米里政府委員 先ほど申し上げましたように、性格的にやや利益留保的な面があるということは私ども考えておるわけでございます。したがいまして、その積み立て率につきまして相当の縮減を図ってまいっております。たとえて申しますと、たな卸し資産の普通一般のものでございますが、昭和二十七年創設のときには一〇%という積み立て率でございましたが、今度の五十三年度改正案では二・〇%というふうに一〇から二に下げておる、この二十六年の間にそこまで下げてきておるということでございますが、激変緩和という考え方、しかも現在企業経営が非常に景気情勢によってむずかしいという事態になっておりますので、ここで一気に全廃するということは私どもは適当でないと考えた次第でございます。
  122. 川口大助

    ○川口委員 何かいまの話を聞くと、いままでは必要なかったけれども、これから必要になったというような説明に聞こえるわけですが、そういうことじゃないのでしょう。いままでは物の値下がりというものは余りなかったのですよ。不況になってこれから物の値下がりが起きるから、むしろたな卸しの危険負担はこれから起きるのじゃないかというふうなことさえ言う人も実際はおるのですよ。その点についてはどうなんですか。
  123. 米里恕

    米里政府委員 ちょっと御説明が悪かったかもしれませんが、縮減していくという方向は私ども考えておるわけです。したがいまして、五十三年度改正においても縮減の案でお願いしておるわけでございます。その縮減の度合いが、余りにドラスチックに、たとえば一挙にゼロにしてしまうということは、現下の経済情勢あるいは企業経営の現状から見ていかがなものかと思われましたので、お出ししておるような案の改正案を出したということを申し上げたわけでございます。
  124. 川口大助

    ○川口委員 まあいろいろ言っておりますが、この説明書にもありますが、法人税の税率引き上げに見合ってこれは恩恵を与えたわけでしょう。ですから、もう二十七年のころ法人税が上がったその見返りにたな卸しのところでひとつ税の免除を考えてやろうなんという考え方は、とっくに私は捨てていいと思うのです。ひとつぜひ考慮いただきたいと思います。  次に、海外投資等の損失準備金についてお尋ねをするわけですが、海外投資と言ってもいろいろあると思うのです。特に(イ)の新開発、つまり発展途上国における投資の積み立て、こう言いましても、極端に言うとキャバレーもありますしトルコぶろもあるわけです。こういうものまで税によって保護していくなんという考え方はどうも私には理解ができないわけです。  そこで、ここに書いてありますが、「対象業種の縮減を行う。」というふうになっておりますが、発展途上国と言いましても、その後、当時からは世界の情勢も大分変わってまいりましたので、これは若干の変更が必要だと思いますので、対象業種だけでなしに、対象地域の検討もする必要があるのではないかと思いますが、いかがでしょうか。
  125. 米里恕

    米里政府委員 海外投資等損失準備金につきましては、海外投資、特に発展途上国向けの投資のリスクを避けるというような意味合いで認められておる、その他にも目的がございますが、それが一つの目的になりまして認められておる準備金でございます。  御案内のとおり、わが国の海外投資というのも急速に進んでまいりまして、この辺で租税特別措置の整理合理化の一環として見直してみようということで今回検討いたしました結果、業種及び対象地域について何がしかの縛りを行いたいというふうに考えております。これは政令の段階で縛りを行いたいと考えておるわけでございます。
  126. 川口大助

    ○川口委員 次に、積み立ての対象に使用済み核燃料の再処理の海外委託の債権ですか、この問題がありますが、ちょっと時間がないのでここで余り聞かれませんが、使用済み核燃料の再処理についてどういうふうな現況か、また将来の方向をどう考えておられるか、これは科学技術庁ですか、御答弁を願います。
  127. 田中久泰

    ○田中説明員 お答え申し上げます。  先生御案内のとおり、使用済み燃料の再処理につきましては、わが国で原子力発電を今後進めていく上に必要不可欠なものと考えておるわけでございます。そのために国の金を導入いたしまして、動力炉・核燃料開発事業団が東海村に再処理施設を建設いたしまして種々の試験を重ねた末、昨年いよいよ実際の使用済み燃料を使って再処理を始めたわけでございますが、その再処理を始めるに当たりまして、アメリカとの間でいろいろ交渉があった経過は御案内のとおりでございます。  この交渉の結果は、基本的には日本の主張が貫かれまして、ほぼ当初の計画どおり、今後二年間にわたって運転をするということが日米双方で合意されまして、現在余り大きなトラブルもなく試運転が行われております。しかしながら、この施設は何と言っても小規模なものでございますので、将来の日本の再処理の需要はとうてい満たせないので、本格的な再処理工場、いわゆる第二工場と言っておりますが、これを民間の手で建設する、こういう基本的な方針が決まっておりまして、この方針に沿いまして、電力事業者において種々の準備を進めております。政府としましても、この再処理を民営化するためには、その前提としまして原子炉等規制法の改正をする必要がございますので、民営に道を開くと同時に、規制の強化も図るために、今国会にその一部改正案を提出して審議をお願いしているところでございます。  しかしながら、第二再処理工場が運転を開始するのは相当先になる見通しでございまして、いまから準備を始めても、恐らく昭和六十五年ころにならないと運転開始できない、こういう見通しでございまして、それまでのつなぎの措置として、一部の使用済み燃料は海外に持っていきまして、これは主として英仏でございますが、再処理業者に委託して再処理する、こういう計画でございまして、すでに契約もできております。一部これからまた契約を結ぼうとしておるのもございまして、それらができますと、運転を開始する昭和六十五年ころまでの再処理需要はほぼ満たせる、このように考えております。
  128. 川口大助

    ○川口委員 そうすると、六十五年ころになりますと、海外への委託といいますか、海外への依存はやめるということですか。
  129. 田中久泰

    ○田中説明員 そのとおりでございます。
  130. 川口大助

    ○川口委員 次に、電子計算機買戻損失準備金のことについてお伺いするわけでありますが、どうもこの扱い方が私は理解できないのです。というのは、いま自由主義経済の中で、買い戻しするものに対し減免措置があるというそのシステムがどうしても理解できないのです。電子計算機に限ってこういう措置があるというのはどういうわけなんですか。
  131. 米里恕

    米里政府委員 電子計算機買戻損失準備金でございますが、これは、電子計算機の普及を図りますために、電子計算機がわが国に入ってまいりました初期の段階におきまして、メーカーに対しまして販売金額を基準といたしまして一定の準備金、買い戻し損失に備えましての準備金を認めるというような考え方でございます。  今回、二〇%を五%に法定積立率を引き下げるということをお願いしておるわけでございますが、これは、電子計算機自体もかなりわが国に普及してまいりましたし、また、電子計算機を使うことによって企業経営というものが非常に合理化されるということで、それ自体でメリットもあるということで、現段階においては逐次この優遇措置を縮減してまいろうという考え方でございます。
  132. 川口大助

    ○川口委員 電子計算機を普及するというわけでしょう。その場合に、使い捨てになったのか使い捨てにならぬのかわからぬけれども、とにかく返されたものを買い取るためのものに対して減免措置をやるというわけでしょう。それをなぜ電子計算機だけにやったかということなんです。そういうものはたくさんあると思うのです。たとえば家具屋さんにもあるだろうし、いろいろなところにある。そうすると、住宅建設を進めておるわけですから、家具屋さんに対しても優遇措置があってもいいし、いろいろこれに類似したような品物があると思うのです。電子計算機に限ってそれをやった理由がいまの説明ではちょっと理解ができませんので、いま一度お願いします。
  133. 米里恕

    米里政府委員 電子計算機の普及に伴いまして、電子計算機の場合には、メーカーが販売いたしまして、ユーザーの方でチェックしました結果、もしそれがユーザーの需要に十分こたえたものでないということになりますと、メーカーは簿価で引き取らなければならないという特殊なシステムがございますので、買い戻しの可能性がかなり多いということであります。そういう特殊な事情もございますので、電子計算機の普及ということと関連いたしまして、こういった特別の優遇措置を当時考えた、こういうことでございます。
  134. 川口大助

    ○川口委員 そのシステムというのはだれが決めたのですか。業界限りでしょう。政府が決めたんじゃないでしょう。
  135. 米里恕

    米里政府委員 電子計算機がまだわが国に定着しておりませんでしたので、そういった段階で、メーカーが特に使用者との間で、普及させるためにとりあえず売って、チェックした結果適当でなければ、ユーザーの需要に合わなければ簿価で引き取るという契約を結んだということでございます。
  136. 川口大助

    ○川口委員 ですから、その契約に対してどうして政府が減免の措置をやらなければならなかったかということを聞いているのです。
  137. 米里恕

    米里政府委員 繰り返しになりまして恐縮でございますが、そういった新たな電子計算機というものをわが国で普及させるために、そういった業界の慣行もございますので、そういった買い戻しのための特別の準備金を認めた、こういうことでございます。
  138. 川口大助

    ○川口委員 時間がないのでやりませんが、ともかくいまや電子計算機は町にはんらんしておりますよ。こういうふうなものを、ちびりちびりじゃなしに、全廃をするというふうなかっこうになっていいのじゃないかと思いますので、要望だけ申し上げまして、若干時間をオーバーしたのでやめます。また機会を改めていろいろお伺いしたいと思います。
  139. 大村襄治

    大村委員長 池田行彦君。
  140. 池田行彦

    ○池田(行)委員 今回の租税特別措置法改正案を見てまいりますと、五十二年度あるいはその前の五十一年度の改正に比しまして、きわめて特徴的な点があると思うのでございます。つまり、昨年、一昨年の改正におきましては、いわゆる政策目的を達しましたいろいろな特別措置というものを徹底的に洗い出しまして、縮減合理化を図っていく、こういう面が非常に強く出ておったと思うのでございます。この五十三年度の改正案におきまして、もとより縮減合理化という努力もなされているわけでございますが、それと同時に、一方において、あるいは土地、住宅税制の手直し、あるいはいわゆる投資促進税制というものが盛り込まれております。  これは現下のわが国の経済運営と申しましょうか、政治運営の至上命題というのが、何といっても景気の浮揚にあるという情勢にかんがみまして、妥当な措置であると私は思うのでございます。  この景気浮揚のために御承知のとおり、五十三年度において極力高い成長率を実現しなくてはならぬ。それが七%になり得るかどうか、あるいは七%成長を実現するために現在政府で提案しておるいろいろな政策というものが十分であるかどうか、そういった点については、当委員会においてもいろいろ論議がございましたし、また、いわゆる予算修正の問題をめぐりまして非常に活発な与野党間の論議があったところでございます。しかしながら、ともかく不況の脱却、雇用の安定ということが至上の命題という点においては、国内に本当にコンセンサスがあると思います。またこの問題は、国内だけでなくて、国際経済の関連においても至上の命題であると言っていいかと思うのであります。  実は私、一月ほど前に、院のお許しも得まして、各党の同僚議員の皆様方と御一緒に米国を訪問しました。その際、議会筋、あるいは行政府はもとよりでございますが、言論界、労働界、経済界と非常に多方面にわたりまして、いろいろ意見の交換をする場を持たしていただいたのでございますが、もとより米国側においても、見解あるいは意見にバラエティーがございました。しかし、その中で一致しておりました点、まず第一点は、先般の牛場国務大臣とストラウス大使との間の取り決め、共同声明でございますか、これを非常に評価している。七%の成長に向かって最大の努力を払うと強調した点、そして国際収支の面では経常収支の黒字幅を六十億ドルに縮減していこうという努力の意図表明、これは非常に高く評価されておったと思うのでございます。  しかし第二に、その意図表明はありがたいのだが、果たしてこれが達成されるのであろうか、実現するのであろうか、この点について疑念と申しましょうか、危惧の念と申しましょうか、そういうものがあちらこちらから表明されました。さらに申せば、仮にこれが達成されない場合には、日米間の摩擦、あつれきといったものが再びエスカレートするのではないか、こういった危惧の念があちこちで表明されたわけでございます。  こういったことは、ひとり米国との間だけではなくて、EC諸国あるいはアジア諸国、あちらこちらの関係で今後問題になり得るかと思うのでございます。また、そういったいわばプレッシャーといいましょうか、外圧だけではなくて、わが国独自の立場からしましても、今日の国際経済におけるわが国の地位、そしてあのオイルショック後まだ新しい秩序と安定的な路線というものを見出し得ないこの国際経済社会のためにも、わが国として本当に積極的な役割りを担っていかなくてはならぬと思いますので、どうしてもこの景気浮揚策というのは何とか実効あるものにしていかなくてはいけない。もうこの政策の成否に内外の期待と関心が集中しておると言っていいと思うのでございます。そういった観点から、今回の特別措置法の改正の中で投資促進税制あるいは住宅税制の手直しがなされるということは、妥当な措置だと私は考えております。  その中で、特に投資促進税制について若干お伺いいたしたいのでございます。  まず、五十三年度の経済見通しでは、先ほど来の論議にもございましたが、民間設備投資九・九%の伸びを期待しておられます。ところが、果たしてこれが可能なのかどうか。現在需給ギャップは二十数兆円に上ると言われておりますし、稼働率も極端に低い数字になっておる。さらに、将来に向かって日本の経済がどう動くのかという見通しが非常に不透明なものでございますから、企業経営者の中にも非常な不安感がある。こういう情勢の中で本当に九・九%の設備投資が可能かなという疑問があちらこちらから出されております。けさあたりは、若干設備投資にも動意が見えてきたぞといったような報道もなされておるようでございますが、しかし、まだまだ基調は変わったとは言えないと思うのでございます。  今回の予算における大型の公共投資、あるいはこの投資促進税制というものをもってしましても、企業の重い腰を上げさせるのは容易ならざるものがあると思います。たとえば好況業種と言われておる自動車にしてもあるいはカメラにしても、円高、そしてまた諸外国において輸入制限とまでは言わないまでも、輸入を抑制していこう、チェックしていこうという動きは、今後だんだんふえてくるのじゃないかと思うのでございます。そういった情勢下では、輸出の先行き不安から、好況業種でも必ずしもそんなに設備投資意欲が盛り上がってくるとは思えない、こういうふうに考えるのでございますが、一体政府とされましては、こういった経済情勢の中で、設備投資の現状と将来の見通しをどういうふうにお考えになっておられるのだろうか、とりわけどういった部門でその設備投資増加を期待しておられるのだろうか、その点についてまずお伺いしたいと思います。
  141. 大竹宏繁

    ○大竹説明員 現在、いろいろなアンケート調査、あるいは企業の設備投資についての見方等、新聞紙上などでもときどき出ておるわけでございますけれども、確かに製造業の中で特に構造的な不況業種と言われておるようなところは、設備投資についてかなり慎重であり、いわゆる設備投資マインドがまだ冷えておるという状況はあると思います。しかし、五十三年度の景気の速やかな回復に向かって現在努力を傾注しておるところでございますので、全体としての企業の稼働率も向上が見込まれますし、需要の拡大に伴って企業収益にも明るい面が期待できるわけでございます。したがいまして、投資環境はそれなりの改善を見ると考えております。その結果として投資意欲も次第に出てくるというふうに期待をしておるわけでございます。  それから、業種的に見ましても、確かに製造業の伸びというものはそれほど大きなものは期待はむずかしいかとは思いますが、非製造業、特に電力に対する設備投資の期待というものは相当大きいわけでございますし、それなり努力を電力業界もしておるところでございます。政策的にも電源立地のための促進措置も講じておるわけでございます。そのほか、先ほど来の投資促進税制といったようなものもございますし、非製造業を中心といたしまして、かなりの伸びが見込まれると思うわけでございます。それから、個人あるいは中小企業といった面では、大企業よりもむしろ景気の回復に伴って設備投資の回復が早目に出てくるということが、過去の経験から言えるわけでございますので、その面からも、大企業の設備投資の意欲だけで全体をはかるのは、必ずしも実態を的確に判断するものではないというふうに考えておりますので、全体としてこの政府見通しの九・九%は達成できるものと考えておるわけでございます。
  142. 池田行彦

    ○池田(行)委員 確かに非製造業の中でも、特に電力あたりについて相当大きな期待を持っておられる、これは相応の理由もあるかと思われるのでございますが、しかし全般的には、特に長期的な見通しなんという点から、企業者心理というものは設備投資に向かうというふうになかなかいきにくいのではないかという感じもいたします。  そういった観点から、今回の投資促進税制につきましても、規模がこれでいいのかどうかという話、あるいは今回は五十三年度限りの制度とされておるわけでございますが、こうなりますと、いわゆる長期の投資を要します大規模なものはなかなかこれがインセンティブとして働かないというような声もいろいろあるようでございます。そういった観点から見まして、今回の投資減税というものも、規模の点においても、あるいは仕組みの面におきましても、もう少し思い切ったものにすべきではなかったのではないか、こういった声も経済界にいろいろ聞かれるわけでございますが、その点についての御所見をひとつお伺いしたい。  それともう一点。先ほど川口委員の御質問の中にもあったのでございますが、こういったいろんな税制に対して、その効果、そういったものをフォローアップしなければいかぬのじゃないかというお話がございました。確かに、いろいろな政策の組み合わせの中からいろんな投資をなされるということでございますから、定量的な分析なり評価というものはなかなか困難かと思うのでございます。しかし、将来とも経済情勢の推移いかんによっては、こういった投資促進税制というものはまたふたたび必要になることも十分予想されるわけでございますから、今回の税制につきましても、あとう限りその辺のフォローアップをやっていただきたい、こういうふうに思うわけでございます。  それから、さらにもう一点、あわせてお伺いしておきますけれども投資の促進という税制が今回のものでございますけれども、促進だけでなくて、また景気の動向によっては逆にこれをチェックをしていかなければならぬような場合もあり得るだろう。そういった意味で、景気が過熱ぎみのときには、一方においてそれを抑制していくような税制、こういうことも考えられるのではないか。いますぐの話ではございません、これは長期の話でございますが、そういった意味において、いわゆる投資調整税制というようなものが将来の課題として考えられるかどうか。これは租税法律主義との関係もあっていろいろむずかしい点もあろうかと思いますけれども、そのあたりにつきまして、主税当局の御見解もお伺いさせていただきたいと思います。
  143. 米里恕

    米里政府委員 投資促進税制の問題でございますが、今回、税制面から補完的な措置という意味投資促進税制を御提案しているわけでございます。これはあくまでも税制面からの補完措置という意味でございますから、これだけの措置によって民間設備投資が著しく盛り上がるというほどの大きな効果をそもそも持つものではないということは、私どもも認識しておりますが、政策手段の多様化というような意味もございまして今回御提案申し上げているわけでございます。  ただ、御承知のように、一般的に申しまして財源事情が非常に厳しい状況にございますし、また先ほど来御論議がございますように、租税特別措置につきましては全体としてはできるだけ縮減の方向に持っていく、こういう基調がございますので、その中において新たなこういった促進税制を採用することにつきましては、限られた財源の中で最も効率的な制度、仕組みを考えなければならないということで制度、仕組みを考えたわけでございます。  そこでまず、この制度を一年限りということでお願いしておりますが、これは五十三年度に集中してこの措置の効果を期待しておるということからまいりましたものでございます。御承知のように、通常の設備投資計画、毎年度の設備投資計画でございますと、その何%かが次年度に繰り延べになるというようなことがございますが、そういったものも、一年で限ってしまうと、恐らく五十三年度中に出てくるだろう。これは私どもは歯どめ効果と申しております。それから、本来ならば五十四年度に計画されるというようなものが、五十三年度限りのこういった税制が行われますならば、恐らく繰り上げられることもあるだろう、そういった前倒し効果というようなものも期待できる。そういったようなもろもろの効果を考えまして、五十三年度に集中的に効果を発揮していただくというような意味ではぜひこれは時限でなければならないということで、一年限りということを考えたわけでございます。  それから、対象も相当狭いじゃないかというお感じをお持ちになるかもしれませんが、現在租税特別措置の中で特別償却が認められております設備の中で、省エネルギーとか公害防止とか中小企業とか、特に政策的に重要であるというようなものだけにしぼりまして、しかもそういったものは、特別償却との代替関係、選択関係だということでお願いしております。これは、一般的に設備投資ならば何でもいいということにいたしますと、どうしても設備投資を現在やり得るというものは比較的好況の業種ではないか、したがって、いわば租税特別措置で好況の業種に対してボーナスを与えるものじゃないかというような議論もございますので、そういうことから勘案しまして、好不況にかかわらず、真に必要な設備投資というような意味でしぼらせていただいたということでございます。  効果の点はあるいは後ほど通産省の方から御説明があるかと思いますが、これを一年限りでなしに恒久的な制度にしたらどうかという点につきましては、実はこういった種類の景気調整税制というものを今後どういうふうに考えるべきであろうかということで、政府の税制調査会でかなり時間をかけて議論をしたわけでございます。昨年の十月に出ました中期税制の答申におきましても、この景気調整税制の項目が出ておりますが、政府税制調査会で議論しまして、これは両論ございます。  御指摘のように、こういった恒久制度をわが国としてもつくるべきではないかというような御意見がある。その議論としては、主として、税制面からも経済政策、景気調整機能というもののための手段が必要なんじゃないか、こういったようなお考えがある。  ところが一方では、それに対する反対の御意見の学者先生方もかなりある。いろいろ論拠はございますが、その一、二を申し上げますと、一つは、税制の主要な機能というものはやはり本来的には、公共部門への資源配分ということにあるので、余りその他の政策目的というものを税制に組み込んでいくのは問題ではないかという御意見もございます。あるいはまた、減税をやるときは容易であるとしても、わが国の現状におきましては増税はなかなかむずかしいかもしれない、そうなりますと、制度として景気のアップ、ダウンに見合った上下の対称性が確保できる見通しはなかなかないのじゃないかという御意見もある。  いろいろ御意見がございますが、どちらかといいますと、政府の税制調査会の委員の多数の方は、現在のような財政事情もとではやはりまず最初に、財政の均衡を税制で回復することを考えることが基本ではないだろうか、中期的に財政がバランスがとれるような形を回復する、その土壌ができ上がった上で、景気調整機能なり何なりを議論すべきではないか、こういうような御議論もある。そういうようなことで、政府の税制調査会でより長期的な税制のあり方の一環として引き続き検討しようということになっております。私どももその議論を参考にしながら今後考えてまいりたいと思っております。
  144. 池田行彦

    ○池田(行)委員 時間が限られておるようでございますのでまとめて申しますが、先ほど設備投資増加をどの部門に期待しているかという御質問に対しまして、電力という例があったのでございます。この電力関係につきましては、当面の景気回復のために大いに期待されなければならないことは当然でございますが、それだけではなくて、わが国の将来のエネルギー確保という観点からかんがみましても、これは最大限の努力を払って推進すべきではないかと私は考えるわけでございます。  御承知のとおり、これまでの成長を支えた基本的な条件は、本当に豊富でしかも低廉なエネルギーが安定的に確保されたことでありますし、また、将来のわが国の経済や国民生活の設計をいたします際に一番問題になるのがエネルギーの問題だと思うのでございます。ここのところ若干、世界的な不況もございまして、エネルギー需給が緩んでおる。一時の資源有限時代とか油断といった言葉がもてはやされるというムードは若干冷めたような感じがいたしますが、基本的な条件は変わってないと思います。とりわけ電力につきましては、リードタイムが非常に長いという事情もございますので、本当に最善の努力を払わなくてはならないと思うのでございます。  そこで、二、三お伺いをしたいのでございますが、今回の措置法の中で、原子力発電につきまして、原子力発電設備の特別償却制度を廃止することにしておられる。一方において発電工事償却準備金の制度がございますので、これは特に電源立地に支障をもたらすものではないと思うのでございますけれども、その点ちょっと御確認いただきたいと思います。これは簡単に御確認だけ願いたいことでございます。  それからあと、通産省にお伺いしたいのでございますが、時間も限られておりますので、先ほど私が申しましたようなエネルギー事情についての認識をどういうようにお考えになっているか、通産省の御所見をお伺いしたいのと、それから、当面の電源立地について、通産省でも重要電源立地の地点を二十二カ所でございますか、今度ふやして指定されるという努力をしておられるようでございますけれども、なかなか立地がうまく進まない原因の一つとして、非常に煩瑣な許認可の手続というのが指摘されております。一説によりますと、百近いあるいは百を超えるような許認可手続を要するのだと言われておりますけれども、このあたりの合理化についてどのような努力をされる御所存かという点。  それからもう一つは、電源立地の促進対策交付金、今回の予算で単価を倍増することにされておりますけれども、いろいろ聞いてみますと、交付金の使い道についていろいろ制約があるようでございます。対象の所在市町村から言えば、これは一般財源として使わせてほしい、こういう希望が強いのでございますけれども地方自治のたてまえ、あるいは財政当局あたりいろいろ御異論もおありかと思います。それにしても、もう少し対象設備を弾力的に考えてもらえないかという点。  それから、いま補助事業に係る地元負担分として使う場合にも、たしか法律補助の場合にはだめだとか、あるいは予算補助であっても二分の一以上の国費が投入される場合にはだめだとか制約があるようでございます。その辺についてもう少し緩和することができないかという点。  さらに三つ目には、地方交付税との関連でたしか頭打ち措置がとられておると思うのでございます。基準財政需要額の二・二倍かを掛けて、それから基準財政収入の何倍かを差し引くという算式があったと思いますけれども、いわゆる頭打ち措置でございますね。これについても、電源立地を促進するという観点からもう少し考えていただくことはできないか、その点についてお伺いしたいと思います。
  145. 米里恕

    米里政府委員 まず、今回原子力発電設備の特別償却の廃止をしたわけでございますが、これは簡単に申しまして、一つ理由は、電力業界関連につきましてはかなりの特別措置が認められております。渇水準備金がございますし、先ほど御指摘の原子力発電工事償却準備金がある。あわせまして特別償却ということがございましたので、整理縮減という全体の傾向、方針に照らしまして、同一業種に認められる税制上の恩典を縮減するということが一つでございます。  第二点は、先ほどお話のございました原子力準備金でございますが、この準備金を今回、積み立て期間を五年から七年に延長しておりますので、こちらの方でかなり吸収できるということで特別償却を廃止することにいたしましたので、特に立地促進に弊害があるというふうには考えておりません。
  146. 藤咲浩二

    藤咲説明員 三点ばかりお尋ねがあったと思いますが、まず最初に、電力の需給は今後どのような見通しを持っておるかというお話につきましては、御承知のように昨年の八月に総合エネルギー調査会の場で、わが国のエネルギー政策の見直しということをやったわけでございますが、電力につきましても、総合エネルギー調査会及び電気事業審議会の中で、昭和六十年度あるいは六十五年度の長期の見通しを検討したわけでございます。  その検討結果によりますと、わが国として今後、省エネルギー政策、あるいは電力固有の問題といたしましてはピークシフト対策といったものを最大限努力した場合におきましても、今後経済成長に伴いまして年率五・八%程度の電力需要の伸びが見込まれるのではないかというふうに結論づけておるわけでございます。そういたしますと、現在のわが国の発電設備、約一億キロワットの設備がございますが、昭和六十年度には一億七千万キロワット余の発電設備が必要になるという状況でございます。  ただいま現在、電力需要は、不況による大口電力需要の伸び悩み等もございまして、若干伸びが鈍化しておりますけれども、私どもといたしましては、電力需要というのは今後、特に家庭用、業務用等の民生需用が非常に高い伸びを示すだろう、あるいは今後、景気回復に伴いまして需要の回復が見られるだろうと考えております。そういたしますと、昨年八月の長期見通しというのは、基本的に今後われわれ考えなければならない長期見通しだろうと考えております。したがいまして、先生おっしゃいましたとおり、今後われわれとしては、単に五十三年度の設備投資の問題との関連だけでなくて、やはり数年後あるいは十年後のわが国のエネルギーの安定供給のために、最大限の電源立地の促進ということを努力しなければならないと考えておるわけでございます。  それから第二点の、電源立地に関する手続は非常に煩瑣で、これを簡素化すべきではないかというお話でございますが、これもおっしゃるとおりでございまして、一説には、電源立地に関係する法律が三十三、さらに個々の許認可のレベルまで数えますと六十六ぐらいの許認可があると言われている実情でございまして、確かにこれが、地元におけるいろいろ安全問題、環境問題に対する住民の不安から立地が遅延する問題とともに、電源立地がなかなか進まない一つの大きな要因になっていることは否めないのではないかと考えております。そのため私どもといたしましては、昨年来何度か総合エネルギー対策推進閣僚会議の場におきまして、この手続の円滑化ということを議論していただいておりまして、こういった議論を背景にいたしまして、いま関係各省庁といろいろ手続の運用の円滑化について話し合い、かつ御協力をいただいているという状況でございます。この努力は今後ともさらに進めてまいりたいというふうに考えております。  それから第三点の、電源立地促進交付金の使い方がなかなか窮屈であるというお話でございますが、これにつきましても従来、昭和四十九年度から発足した制度で、まだ経験もそれほど豊富ではございませんが、これまでの実施の過程で各地から、特に交付金の対象になっております各地方自治体から、いろいろな運用の弾力化について御要望をいただいておりまして、その御要望にこたえるという意味で毎年のように運用の改善をやってきておるわけでございます。昨年の九月にもこの問題を総合エネルギー対策推進閣僚会議で御議論いただきまして、その結果、たとえばおっしゃっておりました交付対象施設が限定されているという問題につきましても、電源立地が地元の産業振興に結びつくようにしてほしいという要望にこたえまして、従来どちらかと言えば生活関連の公共施設のみを対象にしていたものを、今後は商工業その他の産業にかかわる共同利用施設も交付対象として含めるということをいたしましたし、さらに補助裏使用につきましても、おっしゃるように法律補助の補助裏についてはなかなかむずかしい問題があるわけでございますが、予算補助の場合につきましては、補助率、従来は三分の一以下のものについてだけ補助裏使用を認めるという状況でございましたが、これを二分の一まで引き上げるということで対象を拡大したということでございます。  それから頭打ち制度につきましては、交付金を受け取る側の自治体の財政事情を余り不安定にしてはいかぬという配慮から設けられておるわけでございますが、御承知のように、五十三年度の電源特会政府案におきまして交付金の単価も大幅に引き上げることにいたしましたので、それとの関連で、この引き上げの効果が頭打ち制度で吸収されてしまって意味がなくなるということのないように、いま関係方面と相談しておりまして、この運用の改善を図りたいと考えておるところでございます。
  147. 池田行彦

    ○池田(行)委員 時間が参ったようでございますが、お許しをちょうだいしまして、最後に一つだけ大臣にお伺いしたいのでありますけれども、財政当局では今後いよいよ財政再建に本格的に取り組まなければいかぬ、こういう覚悟を固めておられるようでございますけれども、五十三年度はもとより、五十四年度におきましても経済の動向というものはなかなか厳しいものがあろうかと存じます。また、この措置法とあわせて出しておられます国税収納金整理資金法の一部改正なんか見ますと、ことしは十三カ月分の税収というものを歳入に見込んでおる。五十四年度はまた十二カ月に戻るということもございますので、またまた五十四年度も、あれこれ考えますと、かなり大幅な赤字国債に依存せざるを得ないような状況にあるのじゃないか。本当に財政再建の道は厳しいものがあると言わざるを得ないと思います。そういった意味におきまして、中期的にはいろいろ議論がございましょうが、国民の理解を得まして、一般的な負担の増加をどうしてもお願いしなければいかぬと思うのでございます。  その際に問題になりますのは、租税特別措置法、いろいろな縮減合理化が進められてきたとはいえ、まだ正されるべきものがあると思うのでございます。その中で一番大きな問題がいわゆる社会保険診療報酬の特例であろうと思います。この点につきましては、むしろ財政当局というよりも私ども政治の方の課題かもしれません。そういった意味で、わが党もことしは本当に真剣に検討いたしまして、五十四年度からはというふうなことで進めておるわけでございます。  一方におきましてこれは本当に進めなければならないわけでございますが、他方において、お医者様方にもいろいろな言い分があるのも事実である。その診療報酬がどうかということ、ほかに救急体制の問題であるとかあるいは看護婦養成の問題とかいろいろあるのでございます。そういった面については、税制の方で正すべきものは正しながら、一方、予算面、財政面で見るべきものは見ていくという態度が必要かと思うのでございます。  と申しますのは、そもそもこのいわゆる医師の優遇税制と言われるものができました経緯、スタートが、診療報酬の単価を予算で見るべきものが見れないから税金の方で見る、何かその当時たしか非常に税金の好きな大蔵大臣がおりまして、そういう裁断をしたようでございます。それが四半世紀にわたってこういう問題を残しておる。村山大蔵大臣はまた非常に税制にはお詳しい大臣でいらっしゃいますので、どうか前車の轍と言ってはなんでございますが、こういうことのないように御高配を賜りたいと思いますので、大臣の御所見をお伺いいたしまして、私の質問を終わりたいと思います。
  148. 村山達雄

    村山国務大臣 二つ問題がありまして、財政再建の道をどうするかという問題、それから、とりわけ租税特別措置、その中でも社会保険診療報酬の問題だと思うのでございます。  財政収支試算にもお示ししましたように、財政は非常に苦しいわけでございまして、こんな苦しい財政を組んでいる国は私は知らぬのでございます。だから、本格的に負担の増を求めるときに、それと景気との関係は一体どうなるのか。それは結局負担の増を求めましても全部歳出に出るわけでございますから、論理として考えますと、それ自身不況になるという論理はないと思うのでございます。どのようなところに負担を求め、どのようなところに歳出を持っていくか。確かに不人気には違いはございませんし、特に負担が重くなるのはだれでもいやなことなのでございます。しかし、その議論を詰めない限り、そうしてまた、その点についての国民的のコンセンサスができない限りなかなかむずかしい。やはり国民的のコンセンサスのもとに国会において真剣な御論議を賜って、そうしてやっていくということがこれから望まれるのじゃないかと思って、われわれ財政を預かる者といたしまして、この問題をこれから真剣に取り組んでまいりたい、かように思っておるわけでございます。  それから、社会保険診療報酬の問題は、いま池田委員が御指摘のように非常に長い問題でございまして、そうして税制調査会等から過度の優遇であるということをしばしば指摘されているわけでございますし、またそのことは一般的に言われているところでもございます。したがって今度わが党において、この問題はもう五十三年度限りにする、その間それに対応するいろんな施策もあわせ考える、こういう決断をしていただいたことを、私は非常に現実的な解決策であると思って高く評価しているのでございます。  しかし考えてみますと、そのかわりに診療側にもいろんな御希望があると思うのでございます。私たちもくにでしょっちゅう聞くわけでございますが、あれがあるために、たとえばほかの企業では日進月歩の機械でございまして、特に医療機械は非常に激しい、そういった点に何にも考慮が払われない、またそういう要望も出せないというような話を聞くわけでございまして、やはり合理的なものはどんどん進めていく。雇用状況から申しましても、恐らく民間と言わず公務員関係もそうでございますけれども、医療関係の方面が一番足りないということはもう御指摘のとおりなのでございます。それはお医者さんに限らず、看護婦にいたしましても何にいたしましても、一番足りないと言われておるところでございます。そういう将来の合理的な国民のニーズに対しましても、税制は、あるいは国の財政は、弾力的に的確に対処してまいるという心がけが当然必要であろうと思って、それらの問題を考えながらこの問題に対処してまいりたい、かように思っておるところでございます。
  149. 池田行彦

    ○池田(行)委員 終わります。
  150. 大村襄治

    大村委員長 伊藤茂君。
  151. 伊藤茂

    ○伊藤(茂)委員 朝からの審議で、大臣も政府委員もどうも御苦労さまでございます。  私は、先ほど大臣が提案されました中で、特に租税特別措置の整理合理化の問題を中心にして御質問をしたいと思います。  先ほど来の議論にもございましたが、この租税特別措置の問題は、不公平是正の重要な焦点の一つとして数えられてまいってきておると思います。そしてこれからの財政事情考えますと、やはり税の不公平是正ということは、まさに国民的課題としてこれに取り組んでいかなければならないという今日の状態ではないかと思います。     〔委員長退席、綿貫委員長代理着席〕  そういう意味でお伺いしたいと思いますが、まず最初に、今回幾つか廃止、縮減されるものがございます。ずいぶん前から租税特別措置の整理合理化ということで税調の答申もなされてまいりました。もう十年以上も前になりますか、たとえば三十九年末の政府税調答申でも、特別措置の問題について重要な前提条件の指摘をしている。政策目的の合理性と緊急性があるのかどうか、また先ほど来の指摘もございましたが、政策手段としての有効性があるのかどうか、また付随して起こってくる弊害、政策効果のバランスはどうなのか、他の政策との整合性を検討すべきであるというふうな指摘がなされてまいりました。この数年来、逐次その取り組みも進んでいると言われているわけでありますけれども、こういう状態でございますから、大胆に整理、縮減を進めていくということが必要だと思います。  手続のことで最初に伺いたいのですが、大蔵省当局として毎年度新たな税制を組む場合に、合計で百九十一項目とか、また企業関係でも九十何項目とか言われておりますけれども、年度ごとにそれら全体を洗い直してみて、あるいはまた関係の省庁とも検討してみて、どうすべきか、そういう作業は当然のことだと思いますが、毎年おやりになって、それから政府税調にも審議をお願いするということでやっておりますか。
  152. 米里恕

    米里政府委員 仰せのとおりでございまして、租税特別措置、現存のすべてのものにわたりまして、期限到来分を中心といたしまして、各項目、全項目にわたりまして洗い直しをいたし、関係省庁とも御相談をし、一応の成案を受けた上で、政府税制調査会にもお諮りするということにいたしております。
  153. 伊藤茂

    ○伊藤(茂)委員 大変しっかりした検討を毎年やられているということですから、以下、安心して御質問申し上げたいと思いますが、まず第一に、ことし整理、縮減をする側の問題を伺いたいと思います。その後、なおかつ残っている方の問題について、両面からお伺いしたいと思います。  最初に、ことし廃止される方ですが、たとえば大きなもので公害防止準備金があります。五年間ぐらいこの制度があったと思いますが、予算委員会から出されました期末残高の数字を見ますと、千八百六億、それから今期の積み増しが六十一億というようなことが言われておりますが、先ほど申し上げましたような三点か四点の税調の指摘ということから考えまして、総括と申しますか、振り返ってみてどういう意味があったのか、あるいはまた二、三年前やめちゃった方がよかったと思うのか、そもそもつくらなかった方がいいというお考えがあるのか、振り返ってみての感想を聞かしてください。
  154. 米里恕

    米里政府委員 公害防止準備金につきましては、昭和四十七年度からでございますが、石油危機以後の厳しい経済環境のもとで、公害規制が国家的な政策として非常に強化されてまいったわけですが、その公害規制の強化に即応いたしまして、企業が好況、不況にかかわらず、公害対策の万全の措置を講ずるということのために、その費用を円滑に支出できるようにということでつくられたものでございます。そのために多大の効果を上げてまいって、一応の目的はほぼ達したのではないかというふうに考えておるわけでございます。
  155. 伊藤茂

    ○伊藤(茂)委員 大変模範的な答弁をいただきましたが、利用状況の中身を調べてみますと、特に利用の中心となっているのは、当然かもしれませんが、鉄鋼金属工業、化学工業などでその利用がなされているということに数字上なっております。  それでは、大変効果があったと考えるということですから、合理的な税制としてどういう効果があったのか。たとえば幾つかの分野について具体的な調査をなさるとか、サンプリング的な調査をなさるとか、そういうふうな税制の効果を確かめる作業もおやりになったのでしょうか。
  156. 南学政明

    南学説明員 公害防止準備金についての御指摘でございますが、私どもとしては、いま米里審議官からお話がありましたように、石油危機以降、非常に厳しい経済環境の中で公害規制が強化されてきたわけでございますが、その間、その不況下にもかかわらず、企業が公害防止のための費用を支出するという面で効果があったと考えておりますが、具体的にその調査を実施したということはございません。
  157. 伊藤茂

    ○伊藤(茂)委員 先ほど来の同僚議員の質問にもございましたが、この問題についても、具体的な効果の測定あるいは科学的な見通しが行われていないというのが実態ではないかと思います。  さらに、これはつくるときからの問題だと思いますが、この制度としては、そもそも売上高を基準とする準備金ということになっております。本来、住民の健康と生活を守っていくという意味で促進をするということならば、現実に公害防止のためのいろいろな設備投資がなされるということについての問題ならまだわかるのですが、そういうことでもない。ですから、そもそもから大きな問題があったんではないかといふうに考えるわけでありますが、振り返ってみて、その点どう思いますか。
  158. 米里恕

    米里政府委員 つくりましたときに、おっしゃいますような収入金額基準ということでつくりまして、最初は、とりあえず支出を容易にするための一つのめどとして基準を収入金額にとったということでございましたが、収入金額基準というのはどうもおかしいじゃないかという御議論がかねがねございまして、そういったようなことで逐次縮減してまいりまして、今回改正によりまして廃止するということにいたした次第でございます。基準が何がよかったかということは、いろいろ御議論がございますが、当時は一応の基準として収入をとったということでございます。
  159. 伊藤茂

    ○伊藤(茂)委員 昭和四十七年以来公害防止の設備を増強して、特にコンビナート地帯などの住民の生活と健康を守っていくという観点からすれば、そもそもこのようなあり方は問題だったんじゃないだろうか。また、積み立て利用の状況から見ましても、内部留保あるいは税逃がれという傾向が強かったのではないだろうかということを思うわけであります。何もやめるものについて特別けちをつけておるわけではありません。死んだ子の年を数えるようなことではなくて、こんなことが起きないようにという意味で総括を申し上げておるわけでありますから、そのつもりでお願いしたいと思います。  あと二つ、三つお伺いしたいと思いますが、同じように今回挙げられているものとして違約損失補償準備金というものがあります。これは、商品取引所は別にしまして、証券取引所の場合について伺いたいのですが、これも予算委員会へ出されました数字を見てみますと、残高累計百五十七億、また今年度は積み増しも取り崩しもなかったような感じの数字になっております。取り崩しの事例も一効果があったのかなかったのかということよりも、そもそも機能していないというふうな例ではないだろうかと思うわけでありますが、具体的にたとえば全国的な規模で、あるいは東京証券取引所などでどの程度の利用なり機能があったのか。いかがでしょう。
  160. 米里恕

    米里政府委員 これは御承知の、取引所の特別会費として徴収したものを積んだわけでございます。仲間内のトラブルということに備えてつくったものでございますが、おっしゃるように余り実績はございません。たしか昭和四十年以降はそういった実績がなかったということかと思いますが、そういったようなことで検討いたしまして、今度廃止に踏み切ったということでございます。
  161. 伊藤茂

    ○伊藤(茂)委員 実績がなかったということで、おつくりになった方としては喜ぶべきことなのか、悲しむべきことなのかわかりませんが、いずれにしても、スタートのときからもっと科学的な見通しを持つべきものではなかっただろうかというふうに思います。  また、公害防止事業者負担金の特別償却という問題があります。これも同じように、該当事例がほとんどないというので廃止になるというふうに聞いておりますが、そうですか。
  162. 南学政明

    南学説明員 御指摘のとおり、公害防止事業者負担金の特別償却については、ほとんど利用実績はございません。
  163. 伊藤茂

    ○伊藤(茂)委員 特別償却でもう一つ伺いたいと思います。  航空機の問題ですが、五分の一から六分の一に引き下げをする内容のものが提案されております。先般、ときどき話題になります東京都の新財源構想研究会の方から第六次報告が出されておりますが、その中でこの問題を取り上げております。その関連でお伺いしたいのですが、これは全日空のことなのですが、ちょっと数字が古いので済みません、四十九年度なのです。ボーイングと有名なロッキードを買った。「合計で約三百億円と考えられる。これについては普通償却(耐用年数六年ないし七年)のほかに特別償却として、」ロッキードの四分の一、ボーイングの五分の一が利用できるということになりまして、「有価証券報告書によれば、合計で五十八億円の特別償却準備金の積増しが行われた。」その他の問題も含めまして「特別償却が申告所得を上回っている」、すなわち、「特別償却を計上するだけで税負担が半分以下になるのである。」ということが書いてあります。またB社ということで、その後に日航のことも指摘をされているようです。  何年か前のことですから、その後飛行機を買った年と買わない年と確かに相当大きな違いがあると思います。ただ、今日の航空会社の経営状態などから見ますれば、このような経過から振り返った問題、あるいはまたこれから先の経営状態を含めた問題を考えますと、五分の一から六分の一というのも非常な優遇措置ではないだろうかというふうに感じますが、いかがでしょう。
  164. 米里恕

    米里政府委員 航空機の特別償却でございますが、御承知のように、空港周辺の騒音問題が非常に生じておるということから、この騒音問題に対処する一つの方策として、騒音の低い、便数削減効果の大きい大型機の導入をできるだけ積極的に図ってまいろうということが本来の制度自体の目的でございます。  こういった騒音問題についての政策的な必要性というものは、私どもはまだ完全になくなったというふうには考えておりません。おりませんけれども、全体の縮減の方針のもとに再検討いたしました結果、償却割合はやはり少し引き下げさせていただこうという意味で、五分の一から六分の一に下げさせていただいております。従来から船舶の特別償却がございまして、これと相並んでずっとまいったわけですが、五十二年度税制改正で、整理合理化の一環として船舶の縮減を行いましたので、一年おくれということでございますが、航空機についても五分の一から六分の一に下げさせていただいたわけで、制度そのものの目的はまだなくなったわけではないというふうに考えております。
  165. 伊藤茂

    ○伊藤(茂)委員 これは、最近の航空会社の経営状態、あるいはいま答弁もありましたが、そういう視点も含めて、新しい飛行機を買う年、買わない年、いろいろな問題があると思います。しかし、総合して考えまして、やはり世間から指摘をされている不公平税制の枠に入るような扱いではないだろうかというふうに感ずるわけであります。  三、四点だけ挙げましたが、いずれにしろ、それなりの効果の実態を見ましても、また経過の現実を見ましても、今回やめるあるいは縮減するそれぞれの問題について、振り返ってみてたくさん問題が指摘をされるということではないだろうかと思うわけであります。  振り返ってみた観点からちょっと大臣にお考えをお聞きしたいのですが、こういう問題もありますから、しかも毎年厳しく全項目にわたって検討されているということですから、大いに検討されるのでしたら、この際、これら問題になりそうなやつは思い切って整理、縮減をしていく、税調の基本姿勢にも合うわけだと思いますし、そういうことが必要だと思いますが、いかがでしょうか。それが一つ。  もう一つは、いま大変深刻な不況であり、いろいろな経済分野から何か救済、優遇措置をとってもらいたいということもいろいろと出てまいることが多い季節ではないだろうかと思います。しかし、税制面からその要望に従っててこ入れをしていくのは極力避けていくというのが、不況の中でも今日の経済状態ではとるべき態度ではないだろうか。それは、ベースになる国民的なコンセンサスを税制についてぜひ形成しなければならぬということがあるわけだと思いますが、どうお考えになりますか。
  166. 村山達雄

    村山国務大臣 おっしゃるように、非常に財政状況の厳しい中で一般的な負担増を求めなければならぬわけでございますので、政策効果という問題と租税の公平という観点と、どちらを従来に比べて重く見るかという点では、やはり縮減の方向、つまり租税負担の公平という見地を重くして考えるべきであろうと思います。できるだけ思い切った措置をとるべきである、これも全く同感でございます。ただ、税制調査会には専門の方々がたくさんおられますから、思い切った措置はとりますけれども、経過措置はあるいは必要であるかもしれぬ、こういう考えを持っておるわけでございます。  それから、景気対策に租税政策はできるだけ避けて、他の政策をとった方がいいのじゃないか、こういうお考えのようでございますが、私は、一般的に言えば恐らくそうなるのであろうと思うのでございます。しかし、これは費用対効果の問題もあるのでございまして、税制が、政策的な問題は全部やめるというわけにもいきかねるかもしれません。一般論としては、私は大体伊藤委員と同じような見解を持っております。
  167. 伊藤茂

    ○伊藤(茂)委員 税の公正という立場はぜひ実現をしなければならない、あるいはまた一般論としては、税で刺激をしていくということはなくというような趣旨のお話がございました。私は取り上げませんが、今回の投資促進税制などについてもぜひそういう一般論を適用していただくようにお願いしたいと思います。  次に、二つ目の面として、今回整理、縮減に取り上げられなかった問題を幾つか指摘をしたいと思います。むしろ残っている方が問題なんじゃないかという気がするわけであります。  最初に、技術的なことですが、特に企業関係の特別措置、今回の取り扱いも含めましてどのくらいの数になりますか。
  168. 米里恕

    米里政府委員 企業関係の特別措置は全体で九十一項目でございます。今回の改正でお願いしておりますのは、廃止が十一項目、これから縮減が二十六項目、合わせて三十七項目でございます。
  169. 伊藤茂

    ○伊藤(茂)委員 これもちょっと計算してほしいのですが、それでは、今回租税特別措置の廃止、縮減、タックスヘーブンなどなどの提案がございますが、それによって増税をされるトータルの分と、今回新しく投資促進税制あるいは土地、住宅、いろいろございます、その中には中小企業関係する問題もございますが、一応ひっくるめて減税措置のトータル、差し引きどっちが多いですか、大体で結構です。
  170. 米里恕

    米里政府委員 件数で申しますと、先ほど申し上げました十一件と二十六件の合わせて三十七件が増税になります。それから減税の方は三件でございます。  金額で申し上げますと、企業関係で、トータルいたしまして初年度十億、平年度四百九十億の増税になります。
  171. 伊藤茂

    ○伊藤(茂)委員 結構です。また自分でもそろばんをはじいてみたいと思いますから。私がちょっと調べたところでは、増税措置よりもことし新たに加えられた特別措置による減税の方が三十億ほど多いと聞いているわけであります。いずれにしましても細かい数字は結構ですが、今後ともスクラップ・アンド・ビルドという従来の傾向を延長しないようにお願いしたいという意味です。  先ほど整理、縮減の方について四つ申し上げましたので、残っている方も四つほど簡単に指摘をさせていただきたいと思います。  第一番目は、社会保険診療報酬課税の問題です。これは当委員会でも各委員からいろいろな議論がなされておりますから、その基本的な問題をここで言うつもりはございません。一、二だけお考え方を伺いたいのです。  まず大臣に、予算委員会や本会議答弁を伺いますと、福田総理も、今年度限り、それから議員立法で措置をしていくなどの自民党のお決めになったことは、大変いいところをついているのではないかというような趣旨の答弁が行われております。私は、全体を見る総理大臣としてはそういうことを言われているということでございますが、やはり税を担当する大蔵大臣としては、さらに強い決意か気持ちがあって当然のことだろうと思いますが、総理の御答弁と全くイコールでございましょうか、一味違うということでございましょうか、ちょっと……。
  172. 村山達雄

    村山国務大臣 この特例が昭和二十九年、議員立法でもって行われたわけでございます。その後いろいろな批判を受けながら、また別の意味の問題と絡んでこの問題が議論されたわけでございます。そういう意味で、このたびわが党が議員立法でもってこの問題に解決をつけるということ、そしてそれの対応策もあわせ検討するということは、この制度の発足から言いまして、またその背景から言いまして、最も現実的な方法であろうということで、総理がどこまで考えているかわかりませんが、言葉の上で申しますと、全く総理と同じような考えでいるわけでございます。
  173. 伊藤茂

    ○伊藤(茂)委員 私は、ここで医師税制に関する諸問題を、時間もありませんし取り上げるつもりはありません。そしてまた、当委員会だけではなくて、医療制度全体についてのことも当然絡んでいろいろな議論がなされなければならないことだと思います。ただ、伺っておきたいと思いますのは、総理と全く同じようなお考えということになりますと、大蔵省あるいは税務当局としましては、新年度早々から、五十四年度に何らかの改革から新しい制度がスタートする、それについての税調その他のお考え段階制とかいろいろなことがあるわけでありますが、それらに向けての準備と言いますか、具体的な施策が始まっていないと、五十三年度末になってさてこうだぞということでは、またいろいろな問題が起きるということではないだろうか。総理と同じお考えならば、そういうことをこの五十三年度から具体的にやっていく、準備をしていく、あるいは対策を講じていく、お医者さん方にもよくお知らせをするということが必要ではないだろうかと感ずるわけですが、いかがでしょう。
  174. 村山達雄

    村山国務大臣 この問題は、やはり党とも十分打ち合わせをやりながら、それに対応していくということだろうと思うのでございます。だから、同時検討を始めていく、このように考えているわけでございます。
  175. 伊藤茂

    ○伊藤(茂)委員 社会的にも大きく指摘をされている問題ですから、お医者さんも含めて国民的な合意が得られるような努力を具体的に早急にお願いしたいと思います。  次は、従来からも当委員会でも、不公平税制に関連をして議論になりました貸倒引当金のことを話題にしたいと思います。  一般論として最初に伺いたいのですが、いままでとは違って大変深刻な不況であります。先般の永大産業などを含めまして倒産件数が非常に多い。そして、銀行の管理倒産ではないかとか選別倒産ではないかという、マスコミではそういう言葉も使われているような状態になっております。そういう状態もとでは、やはりこれをもっと抑えていくということを考えるのか、あるいはいまの所定の率でいいとお考えなのか、最近の状況に照らし合わせてどうお考えになりますか。
  176. 米里恕

    米里政府委員 貸倒引当金でございますが、御承知のように、実績との乖離が繰入率との間に相当あるのではないかという御指摘がございました。四十七年以来、千分の十五から千分の五まで引き下げてまいったところでございます。  現在の情勢を見ますと、御指摘の経済情勢、企業状況などから見まして、どちらかと言いますと、金融機関の不良債権はむしろ増加の方の傾向にあるというような事情でございますが、そういったようなこともあり、かつまた、五十二年度改正でこの率を引き下げましたということもございましたので、今回は見送ったわけでございますが、この率につきましては、今後とも引き続き検討してまいりたいというふうに考えております。
  177. 伊藤茂

    ○伊藤(茂)委員 千分の八から千分の五というお話が出ましたので、ついでに伺いたいのです     〔線貫委員長代理退席、委員長着席〕  千分の八から千分の五にしていくことについての経過措置がとられておりまして、その実態を若干伺いますと、率が変わったからいきなり減らすんではない、だんだん貸出資金量が増加をすることによって次第に減らしていく。一般には何年か知りませんが、最近の景気動向がありますから正確には言えぬと思いますけれども、たとえば四年、五年、六年たつうちに千分の五になっていくというふうな取り扱いになっておるようですが、その実態はいかがでしょう。
  178. 米里恕

    米里政府委員 御指摘のとおり、千分の八から千分の五に引き下げましたときに、負担の激変緩和ということで、五十二年の三月期の残高を保証するという、いわゆる積み増し停止措置を経過措置で講じたわけでございます。この経過措置というのがどのくらいの効果を持っておるかということは、金融機関の貸し金の伸びがどのくらいかということによって見方が違うわけでございますが、最近の仲び率から計算してみますと、大体半期〇・五ポイントずつ引き下げるという経過措置とほとんど変わらないというようなことになります。したがいまして、三年間で千分の五に下がるというような経過措置でございます。
  179. 伊藤茂

    ○伊藤(茂)委員 この率につきましては、さらに検討していきたいという御答弁でございますが、いままでこれは非常に過大な内部留保として取り扱われていたということだと私は思いますし、そういう指摘が強かったと思います。最近の経済状態の中で何となくそういう色が薄まったような声も上がってくるということもありますが、たとえば前の安宅産業と住友銀行、あのときにも、一千億ですか一千百億ですかの負債が起こる。ところが、引当金の住友銀行の扱いを見てみますと、その年度内にいろいろな意味で取り崩しもあり、それから債券の売却などによってこれを穴埋めするという措置があったようですが、翌年の期初めにはちゃんと前と同じ限度いっぱい五百何億ですか、積まれているという行動になっておるようです。関係者の皆さん方からお話を伺いますと、洗いがえ方式というのですか、というような形で言われているようでありますけれども、いろいろ説明は伺いますが、全体としてやはりこれは問題ではないだろうかというふうに感ずるわけであります。やはり結果的に見ては何も手をつけていないということになるのではないだろうか、減るのが当然で、結果的には同じではないだろうかということを感ずるわけでありますが、いかがでしょう。
  180. 米里恕

    米里政府委員 いまお話のございましたように、毎期洗いがえという考え方で、しかもこの貸倒引当金は、一方に上がっております貸し金に対するいわば評価性の反対勘定ということになりますので、期末に貸し金がございますと、それに見合う、計算しました結果の貸倒引当金はやはり積まなければならない。それで、損金が出ました場合には、それは損金として落としまして、それでも期末には、やはり評価性でございますから、バランス上は引当金として所定のものを積まなければならない、こういうことでございます。
  181. 伊藤茂

    ○伊藤(茂)委員 皆さん方が当然なことながらプロで、こちらがアマチュアのせいか知りませんが、貸倒引当金という性格から見て、何か大きな貸し倒れがあったという場合に当然それが減ってくるし、後々また改めて積まなければならないということになるんだろうと思いますし、いずれにしましても、そういうことも含めまして、貸倒引当金の現状がなお過大ではないだろうかという問題が世間で言われていることだと思います。昨年、一昨年あたりといいますか、二年前ぐらいあたりはこの利用実績と積立残高の間に百倍ぐらい差があったのではないだろうか、最近の状況でも十数倍とか二十倍とかという差があるのではないだろうかということも、ちょっと聞きますとあるようでありますが、それはどういう現状でしょう。
  182. 米里恕

    米里政府委員 貸出金総額と貸出金のそのものの償却額との比率をとってみますと、これは期によってかなりばらつきがございます。低いときは千分の〇・一にならないくらいの数字がございます。高いときで、金融機関の種類によってもいろいろございますが、千分の〇・三とか、あるいはまた信用金庫あたりは千分の〇・五ぐらいであるとか、そういうような数字になっておりますので、おっしゃるように実績と現在の積立率は若干差がございます。
  183. 伊藤茂

    ○伊藤(茂)委員 幾つか細かいことをお聞きいたしましたが、いずれにしても、社会的不公正と見られるような部面につきましては、先ほど審議官答弁にもございましたが、さらに検討をしていきたいということでございますから、ぜひ検討を加えていただきたいと思います。  それから三つ目に、退職給与引当金の問題があります。これもさっき申し上げました東京都調査によりますと、積立額が支給額の十二倍という実態が挙げられております。それから、予算委員会で出されました数字を見ますと、残高トータル五兆円ですか、ということになっておりますが、これは昨年でしたか論議があったところだと思いますが、その後の経過から見て、昨年私どもがいろいろと指摘をした、もっと厳しくていいんじゃないかというような問題意識は現在でも同じではないかと思いますが、いまの時点でどうお考えですか。
  184. 米里恕

    米里政府委員 退職給与引当金は、企業会計上も当然反対勘定に立てるべき引当金だという性格のものになっておりまして、御承知のように、期末の要支給額があるわけでございますが、それに対しまして、利子率その他で計算いたしまして、その現在価値というものを出しましたものを計上しておるということでございますので、これは企業会計原則上にのっとった引当金であるというふうに考えております。
  185. 伊藤茂

    ○伊藤(茂)委員 しかし、額と実際の使用状況から見て、年来私ども指摘をしてまいりましたような過大な内部留保のためと言えるような状況は、変わっていないということではないだろうかと思います。特に好況、不況、産業分野、いろいろあるわけでありますけれども、全体としてそういう点がいまでも指摘をされるというふうな気がいたします。  それから四番目に、これは昨年の税調の審議の中でも話題に上らなかったようですが、交際費課税の問題があります。不況の中でも減っていないという現象が取り上げられ、話題となっているわけですが、四十九年度一兆九千億、五十年度二兆ちょっと、五十一年度もほぼ同じような状況というふうな状態が続いていると思います。また昨年の当委員会の審議のときに附帯決議、課税の強化措置についてはさらに検討すべきであるという趣旨の附帯決議もつけられていたということだと思います。  これは通産省と大蔵省と両方伺いたいのですが、一つは、不況の中で仕事をとるためにさらに営業マンが努力をしなければならぬ、交際費が一向に減らないという状況があるのだろうと思うのですね。そういう問題意識を企業に対する行政指導としてどうお考えになるか。  もう一つは、昨年来の経過として、これらの税制について大蔵省の方でどうお考えになるか、伺いたいと思います。
  186. 米里恕

    米里政府委員 先に税の方から申し上げさせていただきます。  まず、先ほど御指摘のございました支出額が最近減っているかどうかというお話でございますが、おっしゃいましたように、絶対額自体は四十九年、五十年、五十一年とふえてまいっておるわけですが、売り上げ千円当たりで見てまいりますと、一ころのようなパーセンテージからかなり下がってきておる。やはり不況の影響は交際費にはかなり出ておるというふうに私ども考えております。  交際費課税でございますが、こういったような交際費支出のトレンドの問題もございますし、それから、この特例措置自体を来年度改正のときにどうするかというようなタイミングもございます。現在は期限未到来ということでございます。かつまた加えまして、御承知のように現在交際費課税は非常に強化されてまいりまして、現状では限度超過額に対しまして八五%損金不算入というところまできておるわけでございます。これをさらに損金不算入率を高めてまいりますと、そもそも交際費というのはやはり会社経理上は損金性があるものだ、その損金性を否定するようなことにもなるのではないかというような考え方もございます。そういったようなことを考えまして、今回は改正を見送ったということでございます。
  187. 南学政明

    南学説明員 営業企業が行うに当たりまして、交際費の支出というのもその営業の手段として必要な程度、必要な部面があろうかと考えますが、やはり世の批判を受けるような多額な交際費の支出というものは認められるべきものじゃない、このように考えておりまして、そうした方向に沿ってこれまでも逐次交際費課税の強化が行われてきたものと理解しております。
  188. 伊藤茂

    ○伊藤(茂)委員 通産省の方、結構ですから。ありがとうございました。  租税特別措置関連することについて、今回廃止、縮減される中での四つの問題と、それから、なお残っている中での三、四点を指摘をさせていただきましたが、何かこういう点を考えますと、先ほど御答弁もございましたが、やはりできるだけ早い機会に抜本的な整理合理化を進めていくということが求められているのではないだろうかと思います。  それに関連をして、これは一つ気にかかることなんですが、いわゆる不公平税制あるいは不公平是正ということについての考え方のことなんですが、昨年秋の中期税制についての政府税調の答申などでも、えらく何か息張った物の考え方が書いてございます。それを読みますと、昭和五十一年度答申以来大いに議論をしてきた結果としてというふうなことでもございます。また、先ほどちょっと引用させていただきました東京都の新財源構想研究会のような考え方はとらないというようなことをわざわざお書きになっているということですが、そこでも言っているように、実質的な意味での特別措置、いわゆる政策税制としての措置というものと、それから、それ以外のいろんな制度ですね、その答申にも挙げられておりますように、たとえば法人受取配当の益金不算入制度などなどの問題、確かにこれは法的なあるいは制度上の問題としては、システムとしては違うんだと思うのです。ただ、その両面にわたって社会的に公正でないあるいは公平でないというふうな現実があるというのも、現実ではないだろうかというふうに思うわけでありまして、何かえらくそこを区別して、前者の方を整理統合していくんだ、しかし、その額は非常に小さいので、全部廃止をしても四千四百億ですか、というようなことにしかならないのだ、したがって、一般的な増収が必要であって、一般消費税の創設に及んでいくという論理立てになるわけであります。  私は、確かにこの制度と法的な関係では違うと思いますが、社会的に見てより公平なものにしなくちゃならぬという問題意識としては、共通なものが両面にまたがってあるのではないだろうかというふうに思うわけです。税調の答申なんかを見ますとちょっと気にかかるところですし、また、そういうことを皆さん方が大いにPRをなさったのではないだろうかというふうに思うわけでありまして、そのお考えを伺いたいと思います。
  189. 村山達雄

    村山国務大臣 二つ問題があるのじゃないかと思うのでございます。  一つは、企業会計原則上認められておること、それについてどう考えるか。もちろんその幅という問題はあると思うのでございますが、それはその限度で議論されるのではなかろうかなというのが一つ考え方でございます。  それから、企業会計原則とは別の角度でございまして、今度は税制の仕組みとして、基本税制の考え方としてとられておる、いまお挙げになった、個人とそれから法人との二重課税をいかにして調整するか、各国いろいろの制度を持っておるわけでございます。それは不公平税制と言うのかあるいは仕組みの問題なのか、そこはその問題としてやはりそれなりに区分して、調整の仕方にしてもどちらで調整するのか、いや、あれは調整の必要がないというのか、それはまた別の問題じゃなかろうか。恐らく税制調査会はそういう指摘をしているのではなかろうかと思うわけでございます。  ですから、あの不公平税制と言うときに、基礎が違ったら議論がかみ合わぬわけでございますから、まあいろんな物の考え方はございましょうけれども企業会計原則でこうやっているけれども、税制はこういう見地でもってこうすべきじゃないかというのなら、それはそれの一つの議論であろうと思うのでございます。しかし、企業会計原則は一切認められぬというようなことでは、これはとてもあれでございますから、だから、税制と企業会計原則のかかわり合いの問題、あるいは税制自体の仕組みの問題、これはまたそれなりに議論の角度が少し多様になるんじゃないだろうか。そういうものを別にいたしまして、基本税制に対しまして特に政策的見地から一種の優遇措置を講じておるもの、それを狭義の意味で不公平税制と言ってみたり政策税制と言ってみたり、まあ両面から言えるわけでございますから、それはその問題として取り扱ってもらいたいというのが、私、去年の税制調査会の答申を詳しくは見ておりませんが、大体そういうことではなかろうかと思うのでございます。
  190. 伊藤茂

    ○伊藤(茂)委員 中期税制の答申を読みますと、わざわざ東京都の新財源構想研究会の考え方はとらないとか書いてございますので、これは、これから今後の税制について国民的合意をどう得ていくのか、あるいはこれから予想される税負担についてのいろいろ厳しい条件、そういうものを前提条件としてぜひ積極的に形成をしなければならないという観点から見て、何か気にかかることなのでお伺いをいたしました。私は、こういう問題は余り理屈でややこし慕い方がいいのだろうと思うのです。そうではなくて、今後の厳しい税環境の前提として、国民の目から見て、企業もあるいは個人もそれぞれ公平な負担をし、公平な分担のもとに国の財政を考えていくというコンセンサスを形成することが大事だということなんで、そういう意味では、こそくな理屈ではなくて率直大胆に現実国民世論にこたえていくという努力を今後お願いをいたしたいと思います。  あと一つ、二つだけお伺いしたいのですが、一つは、去る二月の半ばに東京都企業税制調査プロジェクトチームが、皆さん方も御研究になっていると思いますが、企業税制についての調査を発表いたしております。細かいことを聞く時間はございませんから、ここでは伺いません。  一点だけ伺いたいと思いますが、この調査の中心的な主張は、資本金階級別の税負担が著しい逆進制になっているということを指摘をいたしております。それは、政府の調査と東京都調査の言うならばデータのとり方といいますか、考え方の基礎が違うという面があるようです。法人三税の実効税率ではほとんど変わりがないが、先ほど来議論になっております各種の準備金、特別償却あるいは租税特別措置、それらを含めました軽減措置を計算をいたしますと、実質税負担率では大企業ほど低くなっている。さらに受取配当の益金不算入の特例ということも含めて考えますと、一億未満の企業では四七・六%、これがピークで、百億以上では三二・二%と著しい逆進となっているという指摘がございます。  これは数字のとり方と物の考え方でこういうことになってくるわけでしょうけれども、先ほども申し上げましたように、税が公平か不公平かということに対する社会的な尺度の一つとして、こういう計算、東京都のような考え方もあるのではないだろうかというふうに考えるわけであります。皆さんそれをどうお考えになっておりますか。
  191. 米里恕

    米里政府委員 御指摘の東京都企業税制調査報告、私どももいろいろ検討させていただいておりますが、まさに御指摘のとおり、先ほど来御議論になっております各種の引当金の問題、企業会計原則に伴う諸問題、それから法人、個人課税の仕組みに関する問題、この辺の前提の違いがございまして、これをどう見るかということによって大企業の実質的な税負担がどうだという問題になってまいります。なお厳密に申しますと、大法人、中小法人の実質的な法人税負担がどうだということを正確に比較いたしますのは、相当推計も入らざるを得ないという部面もございまして、いかなる場合でも完全には比較できないわけです。東京都で出されましたものとたとえば私どもが調べておりますものとは、そういった前提の相違から違いがあるということでございまして、私どもの方の前提に立ちます計算では、決して大法人が特に実質的な法人税負担が低いというような結果にはなっておりません。
  192. 伊藤茂

    ○伊藤(茂)委員 前提と言われましたが、確かに数字のとり方、それから前提として各種の準備金や特別償却、租税特別措置などを含めた計算をするのかしないのかということだと思うのです。ただ、先ほど来私が申し上げているように、税調の答申のような考え方で区分をすれば、政策税制とその他の税制、それで、不公平税制と指摘をされる租税特別措置についてはこれだけの額でございます、完全にやっても四千億余りの額でございますということになるわけでありますけれども、やはり今後厳しく税の公平のための努力ということが求められている、そういう中で、東京都の方でも計算の前提としている幾つかの問題は、それぞれ税の公平の観点から見て問題があるのではないだろうか、そういう意味でこういう計算もあっただろうと思います。ですから、理論的な論争をここでするわけではありませんが、私が申し上げたいのは、そういうふうに考え国民世論が相当広く現実にあるのだ、また、そういう角度から物を考え対策を講じていかなくちゃならぬのではないだろうか、そういう意味でとらえていただきたいという意味で申し上げました。  最後に、大臣にお伺いしたいのですが、この不公平是正の問題も含めまして、今後の税環境を考えますと、この時点で抜本的によく考えてみるということが必要になっていると思います。大臣もそういうお考え姿勢はしばしば言われているわけであります。私は一般的に、税金を払う国民が、自分の身の回りで、あるいは自分の老後にとって、あるいは自分の子供たちにとって必要な税金を払わなければならない、そういう実感を持つときには国民的な合意は当然得られて、必要ならば増税という措置もあり得るということだろうと思います。現実はやはりそういう世論あるいは国民の受け取り方が形成されていないということが一番大きな問題なんではないだろうか。  私は、三つほどいまやるべき問題があるのだろうと思うのです。一つは、言うまでもなく社会的不公平と言われている問題をなくするため強力に取り組んでいくということ、二つ目には、国民の納めた税金がどう使われているのかということについて、何か国民的な参加と合意が得られるようなシステムという面も含めて新しい改革の努力をしていく、それから三つ目には、これは特例公債との関連で詳しく議論したいと思っているのですが、やはり自分たちの国の経済、自分たちの生活がいまの税制のもとでどうなっていくのか。総理はよく、トンネルを早く越したいと言われますが、トンネルを越した先はどうなるのかという具体的プランは残念ながらございません。五十年代前期経済計画も手直しをすると言われておりますが、その作業をどこまで抜本的におやりになるのか、これもはっきりしない。言うならばあしたという日がどうなるのかわからぬという中で、環境の厳しさが強まっている。したがってこの国会でも、与野党、政府も含めて、そういう中期のプランといいますか見通しといいますか、自分の生活、国の経済がどうなっていくのかということの真剣な議論を開始する。今日の時点でよく考えて、そういうふうな三つぐらいの新しい努力をしなくちゃならぬ問題があるのではないだろうかと感ずるわけでありますが、最後に大臣の感想を聞かしてください。
  193. 村山達雄

    村山国務大臣 おっしゃった点は全く同感でございます。やはり個人を中心にしまして、別の言葉で言いますれば、自分と家庭あるいは周囲の他人とのかかわり合い、あるいは国とのかかわり合い、それが将来どういうふうにつながっていくのであろうか、こういう問題について、たとえば税制なり財政なり経済なりそういう問題について、少しでも国民みんなが共同の意識あるいは共同の見通しができることが何よりも大事だと思うわけでございます。いずれもむずかしい問題でございますけれども、いま伊藤委員は別の言葉でおっしゃいましたけれども、同感でございます。
  194. 伊藤茂

    ○伊藤(茂)委員 これで終わります。
  195. 大村襄治

    大村委員長 佐藤委員より関連質疑の申し出がありますので、これを許します。
  196. 佐藤観樹

    ○佐藤(観)委員 ちょっと一問だけ、いまの伊藤委員質問関連をしてお伺いというか、要望しておきたいと思います。  いま米里審議官は退職給与引当金について、これは企業会計原則にあるからいいんだと御答弁になった。伊藤委員の方も時間がありませんでしたので先に行かれましたけれども、この問題は御存じのように、期末の支払い額の二分の一になっているというのは、企業会計原則だけでいけばこれは二分の一にする必要はないわけですね。本来ならば全額引いてもいい。そのぐらいまあ非常に負債性の高い引当金だと思うのです。その意味で、これは本来労働者のものでありますから、私はこれ自体をすべて否定する必要はないであろう。ただ、企業会計原則にあるからいまの退職給与引当金の制度がそのままいいということには私はならないんじゃないか。二分の一がいいというなら、これは私は、企業資本金別あるいは従業員別に、七万人もいるところと七千人しかいないところと、それはやはりこれだけ経済も非常に厳しくなればなるほど安定性が違うわけでありますから、そういった意味では、七万人の会社と七千人の会社と同じ二分の一でいいかという議論も当然出てくるだろうと思うのです。ですから、これは単なる企業会計原則だけの問題ではなくて、現に二分の一にしていることは、私は、企業会計原則は本来なら全額だけれども、税の方では二分の一にしましょうということですかち、二分の一を四分の一にしても悪いということにはならぬと思うのです。このことについて、恐らく審議官はお読みになっていると思いますけれども、「エコノミスト」で皆さん方の大先輩である泉美之松、これはいま専売公社の総裁、それから高木文雄現国鉄総裁、それから横浜銀行頭取の吉国二郎、いま地銀の会長をやっていらしゃいますけれども、いずれも皆さん方の大先輩、つまり主税局の局長をやっていらした方であるわけですね、この方も「エコノミスト」の座談会の中で、確かにこれは考え直すべきであって、むしろいまのままの制度を続けるならば外部積み立てにすべきではないか、これなら確保できますからね、外部積み立てにすべきではないかという提案もされているので、これは私たちと全く考えが一緒で、退職給与引当金そのものがすべて悪いということじゃないけれども、いまのように企業の規模に関係なく一律二分の一というのが、本当に税の公平性という観点からいって妥当かどうかというのは、伊藤委員指摘のように私は問題があるだろうし、もしするならば、義務規定にするなりあるいは外部積み立てにするなりということにすべきではないか。ただし、ここで問題なのは、退職金というものは社会的にどう位置づけられるか、これはいわゆる年金と退職金というものとの関係を、一体そこまで義務規定にした場合にどうすべきかというような問題があろうかと思います。あろうかと思いますが、それは別に検討するとして、少くも皆さん方の大先輩の三人が公の場で言っていることでありますから、もう少しこれはやはり合理性を求めて具体的に検討すべきではないかと思うわけでございますけれども大臣でも審議官でもどちらでも結構でございますが、その点についてお伺いをしておきたいと思います。
  197. 米里恕

    米里政府委員 御指摘の点、ごもっともでございまして、先ほどちょっと言葉が足りませんでしたが、企業会計原則に認められておる負債性のものであると言う方が正確であるかと思います。  御指摘のように企業会計原則では、本来なら一〇〇%ということになっておりますが、全員が現在やめられるというわけでもございませんので、要支給額に対しまして一定の利率を見まして、その現在価値を見た。平均在職年数を見まして、その時期に実際に支払われればいいんだということで計算しました結果が、二分の一ということになっておるわけでございます。  実は私どもも、この二分の一というのが一番合理的であるかどうかということについてはいろいろ検討をしております。検討をしておりますが、現在のところこれにまさる合理的な計算はいまだに見出せないというような検討段階でございます。  それから、外部拠出制の問題でございますが、これは中小企業なんかが現在やっておられるところでございまして、一つのお考えかと思います。今後ともに検討してまいりたいと思います。
  198. 大村襄治

    大村委員長 坂口力君。
  199. 坂口力

    ○坂口委員 大分時間も遅くなってまいりましたので、できるだけ短縮をしまして質問をさせていただきますが、ひとつよろしくお願いをしたいと思います。  今回のこの租税特別措置、いろいろな問題、改正案を含んでおりますが、きょうは総論的なことだけをお聞きをいたしまして、各論的なことはまた同僚議員からお聞きをするという形にできるだけしたいというふうに考えておりますので、お願いを申し上げます。  まず最初に、大臣にお聞きをしておきたいと思いますが、昨年の昭和五十二年度の減税議論のときに幹事長、書記長会談で、不公平税制の改廃というのが一つの約束になりました。この法案は、それにのっとったと申しますか、そのことも含めた一つの法案である、あるいはそのことも含んだ内容というふうに理解をしていいかどうか、このことをまずひとつ伺っておきたいと思います。
  200. 村山達雄

    村山国務大臣 私が理解している限りでは、この前の幹事長、書記長会談で不公平税制の是正と言われたことも十分税調で検討の上で、そうして当面できること、そうして適当と認めることをやった、かように聞いているわけでございます。
  201. 坂口力

    ○坂口委員 今回の改正案でかなりな数に上りまして改廃されておりますことにつきましては、一応評価のできるものも中には含まれていると思います。ただ、全体的に見ました場合に、非常に数は多いんですけれども、非常に細かなものを先に整理をされて、大物が残っているという感も実はなきにしもあらずでございます。大臣としては、今回出されたものが、これで大体現時点においては租税特別措置としてはもうこれ以上は無理なんだ、これが大体もう最終なんだ、こういうふうにお考えでございますか。
  202. 村山達雄

    村山国務大臣 そういうふうには考えていないのでございまして、大きな問題が残っていることはよく承知しているわけでございます。診療報酬の問題あるいは利子配当の総合の問題、こういう一番大きな問題が残っているわけでございます。それ以外では大体企業税制関係では、まあ実は三年連続やっているわけでございまして、ことしは本当にしぼり出したところをずいぶんやったわけでございますが、この程度になったということだろうと思うのでございます。なお、残りました企業税制につきましても、先ほど事務当局から話がありましたように、今後の推移を見ましてやはり検討を続けるということは間違いないのでございますが、大きな問題は別の方にあるという大体考え方でございます。しかし、なかなかそれは一挙には片づかない問題であろう、こう思っているわけでございます。
  203. 坂口力

    ○坂口委員 その辺の議論、また後でさせていただくといたしまして、その前に、五十三年度の予算審議に際しまして野党は一致して減税の要求をしたわけでございます。御承知のとおり、社会福祉関係も含めまして一兆二千百億円。これに対する回答として一応減税として三千億、そして福祉関係として四百億円、こういう数字が伝えられているわけでございますが、この幹事長、書記長会談のときの言葉にも、この減税の問題というのは大蔵委員会で、また福祉関係の問題は社会労働委員会でそれぞれ議論を深めて、改めるべきものは改めるという方向に持っていってほしいという意味の発言が、大平幹事長からあったように聞いているわけでございます。  そういたしますと、この委員会でその辺の議論を深めなければならないということになるわけでありますが、現在出ておりますこの租税特別措置法改正案、この議論の中においてもその減税議論、これを含めてやるかどうか、これは一つの大きな問題であると思うのです。今回は所得税法が出ておりませんから、今回大きなものはこれになってまいりますが、どうですか、今回出されたこの法案の中において、それらの議論も含めてこれからやっていくという御姿勢はございますか。
  204. 村山達雄

    村山国務大臣 われわれが与党であります自由民主党から伺っているところによりますと、伝えられるような公党間の問題がいま話し合われているように聞いております。政府といたしましては、出しました案が最善だと思って、党に対しましては、あの案に対しては賛成いたしかねるということを申し上げておるところでございます。ですから、公党間でどのような——国会審議の関係でございますので、今後どういうことになりますか、あれでございますか、恐らくそれぞれ——もし税の問題が出ますれば、当委員会で議論の対象になるのではないかと思うわけでございます。しかし、その幅なり対象範囲なりどの辺まで行われるのか、これは恐らく公党間の話でございますから、われわれの推測の限りではないわけでございます。
  205. 坂口力

    ○坂口委員 正式に新聞に出ております文句を読ませていただきますと、「五十三年度における経済情勢の推移を見守り、財政上の追加措置を講ずる必要が生じた場合には、関係委員会の審議結果をふまえ、必要な措置を講ずるものとする。」こういうことでございますが、いま大臣はいささか冷ややかに言われたわけであります。先ほどの社会診療報酬の問題につきましては、わが党との関係において密接な連絡をとってというお話でございましたけれども、この減税の問題につきましては、党とわれわれは一線を画しておりますというような御発言でございまして、いささか冷ややかに聞こえるわけでございます。  そういたしますと、この委員会で、いずれにいたしましてもこの議論をする場というのはこの委員会しかないわけでありますから、今後この租特の法案だけではなしに、他の法案も絡めてこの中で議論を尽くしていくという以外にないわけでありますので、私は大臣にもう一度申し上げておきたいと思いますが、かたくなな態度をとるということではなしに、この法案審議の中で改めるべきものは改めるというお気持ちを御披露いただいて、質問を進めていきたいと思いますが、いかがでございます。
  206. 村山達雄

    村山国務大臣 この公党間の話はどういうふうな決着になりますか、またそれを受けて当委員会でいかなる論議が行われるか、非常な注意を払って今後ともこの審議にわれわれは注目してまいりたい、かように思っておるところでございます。
  207. 坂口力

    ○坂口委員 それでは、話を進めさせていただきます。  五十三年度の自然増収額、これについてお伺いをしたいと思いますが、先日の予算委員会に提出されました資料を拝見をいたしますと、五十三年度の自然増収額、一般会計分として八千四百八十億円という数字が出ておりますが、大体このぐらいの見込みに間違いございませんか。
  208. 米里恕

    米里政府委員 おっしゃったとおりの数字で間違いございません。
  209. 坂口力

    ○坂口委員 それから、五十三年度の給与所得者だけとりました場合に、所得者数と、その中に納税者数というのがございますね、この所得者数と納税者数というのは大体どのくらいになりますか。給与所得者だけで結構でございます。
  210. 米里恕

    米里政府委員 給与所得者数は三千八百三十五万人と見込んでおります。それに対しまして納税者数は三千二十六万人、七八・九%という比率を見ております。
  211. 坂口力

    ○坂口委員 そうすると、五十二年度と比べてこれはどうなりますか。五十二年度のパーセントはわかりますか。
  212. 米里恕

    米里政府委員 五十二年度は所得者数が三千七百八十万人、納税者数が二千八百八十七万人、割合で申しますと七六・四%でございます。
  213. 坂口力

    ○坂口委員 確かにいまおっしゃるようなパーセントになると思います。昭和五十年度が所得者数の中の納税者数は七一・九%、五十一年度が七六・一%、五十二年度が七六・四%、五十三年度は七八・九%というふうに所得者数の中での納税者数というのはふえるわけですね。そのほかに、所得者の中には給与所得者だけじゃなしに、農業所得者や農業以外の事業所得者やいろいろあるわけでありますけれども、主に大きな分野を占めますのは給与所得者であるわけであります。  そこで、予算委員会でいただきましたこの資料によりますと、自然増収分が、五十二年度が二兆九千六十億円という数字になっておりますが、それに比べて五十三年度が八千四百八十億円というふうに非常に低いという感じを受けるのですが、いかがでございますか。
  214. 米里恕

    米里政府委員 おっしゃるとおりの数字でございますが、五十三年度が特に五十二年度に比べまして少ない数字になっておりますゆえんは、法人税をかなり低目に見積もっておるわけでございます。法人税を低目に見積もっておりますのは、御承知のように、法人税の場合には決算期からずれがございまして税収に入ってまいりますので、五十二年度後半からの経済情勢が非常に停滞しておるということの反映で、その分が五十三年度の法人税収にかなり大きく響いてまいります。
  215. 坂口力

    ○坂口委員 それでは、所得税だけで比較しました場合に、昭和五十二年度の所得税は一兆二千五百五十億円なんです。それが五十三年度には六千百六十億円と、大体半分ですね。ですから、いまおっしゃったような法人税の落ち込みがもしもあったとしましても、それをのけて所得税だけを比較いたしましたときにも、大体半分の見積もりになっているのですね。  先ほども申しましたように、所得者数で見ますと、これは五十一年よりも五十二年、五十二年よりも五十三年というふうに、全体の所得者数の中の納税者数というのはふえているわけなんですね。ですから、この辺を考えますと、ちょっと数字が合わないという感じがするのですが、いかがですか。納得できればいいのです。
  216. 米里恕

    米里政府委員 いま申し上げましたのは、当初、当初の比較でございまして、実は五十二年度中に経済情勢を反映しましてかなり下がってまいりました。したがいまして、下がった上で五十三年度をはじいておりますので、五十二年度当初と五十三年度当初を比べますとかなり下がったような形になっております。
  217. 坂口力

    ○坂口委員 余りよくわからぬですね。これはおっしゃるように、五十二年度の当初と五十三年度の当初の比較ですね。五十二年度の間の変化というものがかなりあるから五十三年度のこれが減ってきたのだとおっしゃるなら、五十二年度の変化した数字というものを落としておかなければならぬわけですけれども、そうしますと、五十二年度に出ております数字ほどには五十三年度はいかぬというのですか。それなら理解できます。
  218. 米里恕

    米里政府委員 五十二年度の当初予算額から見まして、御承知のように年度中に歳入が十分入ってまいりませんで、全体として八千億ばかり一度落ち込んだわけでございます。そこから回復しまして五十三年度を見るわけでございますので、五十三年度が五十二年度の当初に比べて、当初ベースではそれほど上がってないということになるわけでございます。
  219. 坂口力

    ○坂口委員 それは所得税についてですか。給与所得者についてもそうですか。いまのお話企業についてならばそのお話はわかるのです。しかしそうではなくて、給与所得者についていまのお話は当てはまりますかね。
  220. 米里恕

    米里政府委員 五十二年度の八千億の中には、法人税と相並びまして、非常に大きな要素として源泉徴収分が非常に落ち込んだということがあるわけでございます。したがいまして、源泉給与所得者分につきましても同様に、一度落ち込んだところから再び上がったということで、当初、当初ではそれほど伸びてないということが出てきたわけでございます。
  221. 坂口力

    ○坂口委員 これは一遍理解のできるようによく説明をしてほしいと実は思うのです。いまお話を聞いただけでは何となく理解できないところがございますので、この議論はこれまでにしておきますから、改めてお聞かせをいただきたいと思います。ただし、これは重要なことでございまして、いまのところが間違っておりますと、全体のバランスが崩れてくるわけですから、重要な部分でございますので、それでは別の機会にお聞かせをいただきたいと思います。  さて、こういうふうに大蔵省の方の計算によりますと、落ち込みが激しい、特に法人税の落ち込みが激しいということになるわけであります。そういたしますと、公共事業でこれを拡大をということになってまいりますが、公共事業一本やりでいいかどうかという議論を始めますと、これまた長い話でございまして、大臣お話は延々と続くであろうと思いますので、きょうはこれはやめておきたいと思います。  今回のこの中に投資促進税制が含まれております。いわゆる投資減税が含まれているわけでございます。これは先ほど池田委員の御議論もございましたので、簡単に触れさせていただくだけにしたいと思うわけでございますけれども、現在落ち込んでいる投資意欲というものにこれぐらいの投資減税で果たしてどれだけの効果があるのであろうかという、いささか懸念を持たざるを得ないわけであります。そういう意味で、きょうは通産省もお待ちをいただいておりますので、大体これぐらいの減税でどのぐらいの効果があるというふうに考えておみえになるのか。大蔵省の方でも結構でございます。いや、通産省としてはもっと大きなことを言ったのだけれども大蔵省が削ってこれだけになったので、余りないという話でも結構でございます。
  222. 南学政明

    南学説明員 投資促進税制の対象設備というのは、政策的にきわめて重要なものに限られておりますし、期間が一年という限時的なものでございます。また、特別償却に比べますとインセンティブがきわめて強いというようなことから考えますと、私どもは、民間設備投資の繰り上げ実施、あるいはほっておくならば繰り延べてしまうであろうそういうものに対する歯どめ効果、そういうものが確実に期待できるのではないか、このように考えております。  たとえば歯どめ効果について申し上げますと、今回の不況の局面を見ますと、企業は当初の計画を様子を見ながら繰り延べ繰り延べする傾向がございます。たとえば通産省所管の大企業の設備投資の当初計画と実績を見てみますと、四十九年度から五十年度にかけましておおむね一〇%から二〇%にかけて実績が落ち込んでおります。一年間こうしたインセンティブを与えますならば、そうした繰り延べ傾向への歯どめがかかると私ども考えておりますし、また、四十九年度以降この四年間民間設備投資は非常に低迷を続けておりますので、潜在的な投資需要、すなわち、省エネルギー投資であるとか、あるいは中小企業における合理化投資等潜在的な投資需要というのはかなりな程度あるのだろうと考えております。この投資税制が実現の運びとなりまして、やはり一年間ということになりますれば、将来やろうかと思っておった計画が繰り上げられてこの期に実施されるとか、あるいは採算性が向上して投資に踏み切るとか、そういうことで確実に投資増加は期待できるだろう、このように考えております。
  223. 米里恕

    米里政府委員 効果につきましては、通産省からお話があったとおりでございます。  この措置だけによってそれほど大きな民間設備投資が盛り上がるというようなものではないというふうに考えておりますけれども、限られた財源の中でそれなりの政府の姿勢を示すということは、心理的効果なども期待できるというふうに考えております。
  224. 坂口力

    ○坂口委員 一年限りのものでございますので、もう少し長い目で見れば、たとえば五十三年度なら五十三年度に投資をなされば、いまのお話しのように繰り延べになるのが五十三年度に入ってはまいりますけれども、今度はそうすると、五十四年度が落ち込むじゃないかという懸念も実は持つわけでございまして、何かせっかくやられるこの投資減税が中途半端なものになりはしないかという、そういう感じもなきにしもあらずでございますので、お聞きをしたわけでございます。この辺にしておきたいと思いますので、通産省の方、結構でございます。ありがとうございました。  それからその次に、一言だけ利子配当所得の課税の問題につきましてお聞きをしておきたいと思いますが、分離課税を総合課税にしろという話は、言われてから久しいわけでございまして、政府の方もこのことについてはいろいろ検討をしておみえになるようでございますが、期限が昭和五十五年の十二月三十一日でございましたか、ここが期限になっておりますので、この次の改正につきましては、抜本的にこの問題をやられるのか、その辺の現在の進行ぐあいというものを少しお聞きをしておきたいと思います。詳しくはまた同僚委員の方からこの問題もやると思いますので、大まかなお話で結構でございますので、お聞きをしておきたいと思います。  あわせて、この分離課税を総合課税に変えていった場合に、それは中には非常にむずかしいものもございますから、完全という調子にはいかないと思いますけれども、これでどれぐらいの増収を図れるものだというふうにお考えになるか、ひとつ御答弁をいただきたいと思います。
  225. 米里恕

    米里政府委員 利子配当総合課税の問題につきましては、先般来お話がありますように、また、政府の税制調査会の答申におきましても、本来ならば総合課税が望ましい、ただ、余りに一挙にこれに移るということは、現在の把握体制から見て問題がある、したがって、その把握体制を十分早急に検討するようにというような答申もいただいておるわけでございます。  私ども目標にしておりますのは五十五年ということで、それまでの間に詰めるべきところを十分詰めてまいりたいということで、けさほどもお答えいたしましたように、まず部内での検討、これは国税庁も含めまして、どういった方法が一番把握体制としてベターなものであろうかということを検討するとともに、全国銀行協会で内々御検討いただいておるということでもございますので、しかるべき時期までにこれをドッキングさせて、問題を進めさせていただきたいというふうに考えております。  その際、先日大倉主税局長が当委員会でも申し上げましたように、いろいろな問題への広がりということも考えられます。単に名寄せの問題あるいは本人の確認の問題ということだけにとどまりませんで、課税の公平ということを真に確保してまいるためには、あるいは少額貯蓄制度の問題、あるいは郵貯の問題、そういったようなもろもろの問題にも問題は波及してくるというようなこともございますので、その辺の検討もあわせ行わなければならないということかと思います。  いずれにいたしましても、五十五年までに何とか私どもとしては最終的な結論を得て、できるだけベターな方法でスタートしたいというつもりで準備を進めております。
  226. 坂口力

    ○坂口委員 では、この問題はそれくらいにしておきたいと思いますが、利子配当に絡みまして、最近話題になっておりますことの一つに、郵便貯金の脱税の問題がございます。  これは私も新聞情報だけしか手元にございませんので、詳しくを知ることはできませんが、特に、この日曜日に出ました新聞等を見せていただきますと、中には、一億五千万円ぐらいを幾つかに割ってそして貯金をしている、こういうことが発見をされた、この記事が出ているわけでございますが、国税庁の方にお越しをいただいておりますので、まずその概要をひとつ御説明をいただきたいと思います。
  227. 谷口昇

    ○谷口(昇)政府委員 ただいま坂口委員から御質問のありました新聞の記事の件でございますけれども、東京、大阪両国税局とも、その新聞記事について、公表した事実はございません。新聞記者の独自の取材に基づく記事だと私ども考えております。  しかしながら、たとえば二月二十日付の新聞記事について申し上げてみますと、東京国税局において査察調査を行った事案を指しているのではないかと思われますが、それに近い内容の事案であったと承知をいたしております。それから、二月二十六日付の新聞記事については、その詳細は現在まだ調査中でございますが、大阪国税局の管内におきまして、郵便局名、口座数、金額等から見て、おおむね新聞記事に該当するのではないかと思われる不正計算事例があったと聞いております。  なお、新聞記事の中で、おとり捜査あるいはおとり調査という部分がございましたが、これにつきましては、このような事実を行っていない、このように聞いております。
  228. 坂口力

    ○坂口委員 郵政省の方もお見えいただいておりますので、この件に関しまして一言お聞きしたいと思いますが、いま国税庁の方から発表した事実はないということでございますけれども、まあ発表した事実はないけれども、大体当たらずとも遠からずというような内容だという御答弁でございますが、いかがでございますか。
  229. 森本哲夫

    ○森本説明員 お答え申し上げます。  郵便貯金につきまして、ただいまお尋ねのようなことがございますが、実は私どもの仕事は貯蓄をお勧めするということになるわけでございまして、その所得が、源泉がどうなっておるか、これについては私どもが一々確認をして受け入れるということには相ならぬわけでございます。しかしながら、当然制限額の厳守については、いろいろな方法を講じて監査をしたりチェックをしたりしておるわけでございますが、ただ、このことに関しまして税務署が、たとえばある特定人の所得についていろいろお調べになる、そうした過程で金融機関に対してお尋ねがある、そのお尋ねに対してはお答えを申し上げておる、こういう事態がございますが、その結果がどういうふうになったのか、私どもには承知をすることもできないわけでございます。  したがいまして、ただいま国税庁お話もございましたように、そういった事実があるかどうか、いま確認ができるわけではございませんけれども、ただ、こういった形で郵便貯金の利用についていろいろ疑惑が持たれることについては、十分自戒をしなければならぬことでございます。そういった意味で、現在、全国にわたる名寄せのシステム、あるいは架空名義の防止についていろいろ窓口でお尋ねする、あるいはそれをトレースする、いろいろなシステムを講じて、郵便貯金が厳正に利用されるように努めておるところでございます。
  230. 坂口力

    ○坂口委員 国税庁の方、これからどうなさるかということをお聞きしておきたいのですが、いまも郵政省の方からお話がありましたように、名寄せの問題でございますとか架空名義の問題でございますとか、これは非常にむずかしい問題を含んでいるわけでありまして、これは以前から言われていた問題でございます。今回出ました事件を氷山の一角としてとらえるか、これはたまたまこういったことが不幸にしてあったのだというふうにしてとらえるか、皆さん方の姿勢によってもこれは決まってくると思いますし、その姿勢を決定する要因になるだろうとも思うわけでありますが、これから郵便貯金のこうした問題にどういうように取り組んでいかれるかどうかということを一言お聞きをしておきたいと思います。
  231. 谷口昇

    ○谷口(昇)政府委員 法人税または所得税等の調査関連をいたしまして、郵便局に反面調査を実施することにつきましては、現在、郵政省との間で話し合いを行っておりまして、相互信頼のもと調査が円滑に実施できるよう努力を重ねてきているところだと考えております。特定の納税者の不正所得が郵便貯金として預入されていると思われる場合など、所得調査に関し必要がある場合には、今後も郵政官署の協力を得まして、適切かつ円滑に調査を実施していきたい、このように考えております。  なお、預入限度額の総額制限を超過した貯金につきましては、郵政当局がチェックを行っているということを私どもも十分承知をいたしておりますので、その成果を期待しているところであります。  郵便貯金に対します税務調査の内容を通じて見られるところでは、不正所得の一部が郵便貯金になっておる事例を把握することは、従来からもあるわけでありますが、それがどの程度かということにつきましては、特に私どもは計数を持っておりません。
  232. 坂口力

    ○坂口委員 マル優制度という、小口の一般庶民の貯蓄について保護をするという意味のこの制度が、逆にこういうふうな結果になるということは非常に不幸なことでございまして、ぜひ明瞭にこの問題が片づくことを願ってやまないわけでございますが、大臣からも一言このことについて御感想がございましたら、お聞かせをいただきたいと思います。
  233. 村山達雄

    村山国務大臣 いま郵政当局国税庁から答えたわけでございますけれども、相なるべくはそのような相互信頼のもとに、この郵便貯金というものが適正に利用され、そしてまた、これは別に郵便貯金に限りませんけれども、納税の面でもそういう一つの脱漏資金のたまり場所にならないように、両方でこれは工夫していく必要があると思うわけでございます。今後とも両省の信頼関係、話し合いを通じまして、そのような目的に向かって円滑に処理してまいりたい、かように思っておるわけでございます。
  234. 坂口力

    ○坂口委員 最後に、租税特別措置による減収額の表を見せていただきますと、いわゆる異常危険準備金というのがかなり額が大きいわけであります。この異常危険準備金の積立率は今回わずかに引き下げされているわけでありますが、これが昭和五十二年度の減額で百八十億になっております。それから五十三年度はこれが十億というふうにうんと減らして書いてございますけれども、いままでの累積と申しますか、五十二年度末ぐらいな程度で、大体で結構でございますが、どれぐらいになるか、また、その額の中でいわゆる危険金としてもしいままでに使用されたものがあるとしましたら、それはどのぐらいかということをひとつお聞かせいただきたいと思います。
  235. 米里恕

    米里政府委員 損害保険会社の異常危険準備金の残高でございますが、五十二年三月末の数字が一番新しい数字でございますので、それで申し上げますと、期末残高五千八百七十五億円でございます。なお、取り崩しの額でございますが、これは年々多少のばらつきはございますが、大体三百億前後という状態でございます。
  236. 坂口力

    ○坂口委員 もう一度お尋ねいたしますが、いまの五千三百七十億というのは五十一年末でございますか。
  237. 米里恕

    米里政府委員 五十一年度末、五十二年三月末に五千八百七十五億でございます。
  238. 坂口力

    ○坂口委員 それで、三百億ぐらいずつということでございますと、これも率としてはかなり高いものの一つではないかと思うのです。これも異常危険でございますからどんなことが起こるかわかりませんし、また、最近のように地震等が非常に発生いたしますと、これぐらいは確保しておかないとぐあいが悪いのかもしれません。その辺のところは私も十分に計算をした上での話ではありませんのでお尋ねをしているわけでございますが、この辺の積み立て額とそれから年々の使用額とを比較いたしましたときに、今年度の改革ぐらいな程度でいいのか、まだもう少しぐらいは可能なのかと、いうところはいかがでございます。
  239. 米里恕

    米里政府委員 取り崩しの額でございますが、何分異常危険ということで、地震、火災などの非常に大きなものが起こった場合に備えてのものでございますので、年々の取り崩し額は必ずしも準備金の残高の基準にはならないかと思います。大きな災害が起これば一挙に取り崩されるというようなこともあろうかと思います。  ただ、こういったようなものにつきましても、従来の発生率と積み立てにつきましては、御指摘のような乖離があることは事実でございますので、できるだけ与えられた条件のもとで縮減を図っていこうという努力はいたしております。  四十九年度、五十一年度に引き続きまして五十三年度も、船舶保険につきましては八%を六%に、火災保険などにつきましては五%を四%に、それから自動車につきましては今回、いままで一%というものが認められておったわけですが、積み立てを認めないでゼロにするということにいたしました。そういう形で、実績との乖離は逐次、積立率の引き下げということで縮小を図ってまいっておりますが、何分にも発生するときは、非常に巨額が発生するというような点もございますので、その点も勘案しながら処理しているわけでございます。
  240. 坂口力

    ○坂口委員 最後に、社会保険診療報酬の所得計算の特例について一言だけお聞きしておきたいと思います。  予算委員会等でも総理は、五十四年度からということで、これはまた議員立法でというお話をなすってきたわけであります。きょうもこの委員会で何度かこの問題は提出されました。昭和二十九年に最初にこの法律ができましたときの経緯から見まして、そのときに議員立法だったのでということをけさからも言われるわけでありますが、この問題は非常にいろいろのむずかしい面を含んでおりますだけに、もしも改正をやるというのであるならば、これはやはり議員立法よりも政府立法でおやりになるのが筋ではないか、こう思うのですが、いかがでございます。
  241. 村山達雄

    村山国務大臣 これはどちらの考えもあろうと思いますが、私は議員立法の方が筋じゃないかと思っているのでございます。
  242. 坂口力

    ○坂口委員 何となく責任逃れのような感じもするわけでございます。  なぜ私がこういうことを申し上げるかと申しますと、先ほども申しましたが、この問題は大蔵省だけで片づかない非常にいろいろの問題を含んでおることは御承知のとおりであります。そのむずかしさというのは、何も医師会との問題云々ではなしに、医療というものをどうするかという大きな問題が絡んでいるからでございます。特に適正な医療水準というものをどう考えるかということと税制の公平ということとをどう両立させるかという問題があるわけでありまして、そういうふうな意味からは、大蔵省あるいは厚生省等が総合的に取り上げていかなければならない性格のものではないかと思うわけであります。そのことを考えますと、これは議員立法というよりも、政府の間で真剣に煮詰めなければならない問題ではないか、それを議員立法という形で逃げるというのは、これはいささか政府は逃げ腰の姿勢ではないか、こういう感じがしてならないわけであります。内容的に申しますと、これはぜひ私はやるなら政府立法でやるべき筋合いの問題である、こういうふうな感じがしてならないわけでございます。  診療報酬の適正化という問題は、言葉をかえて言えば、適正な医療とは何かということになりますし、このことは、言うはやすくしてなかなかこれを実現するということはむずかしい問題でございまして、そのこととこの税制との問題を片をつけていきますためには、私は真剣に取り組まなければならない問題であるということをつけ加えておきたいと思うわけであります。これは政府の方におかれましても一層御検討をいただきたいと思います。  そのほか申し上げたいことはございますが、きょうはこれだけにしておきまして、あとは同僚議員に譲らしていただきたいと思います。     —————————————
  243. 大村襄治

    大村委員長 この際、参考人出席要求に関する件についてお諮りいたします。  すなわち、ただいま議題となっております本案について、来る八日、参考人の出席を求め、その意見を聴取することとし、その人選につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、これに御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  244. 大村襄治

    大村委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決しました。  次回は、来る三日金曜日午前十時理事会、午前十時三十分委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。     午後四時五十分散会      ————◇—————