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1978-03-31 第84回国会 衆議院 商工委員会社会労働委員会農林水産委員会運輸委員会連合審査会 第1号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和五十三年三月三十一日(金曜日)     午前十時四分開議  出席委員   商工委員会    委員長 野呂 恭一君    理事 中島源太郎君 理事 武藤 嘉文君    理事 山崎  拓君 理事 山下 徳夫君    理事 岡田 哲児君 理事 渡辺 三郎君    理事 松本 忠助君 理事 宮田 早苗君       鹿野 道彦君    粕谷  茂君       藏内 修治君    島村 宜伸君       辻  英雄君    中西 啓介君       西銘 順治君    橋口  隆君       松永  光君    渡部 恒三君       渡辺 秀央君    後藤  茂君       上坂  昇君    清水  勇君       中村 重光君    長田 武士君       玉城 栄一君    安田 純治君       大成 正雄君   社会労働委員会    委員長 木野 晴夫君    理事 越智 伊平君 理事 住  栄作君    理事 竹内 黎一君 理事 森井 忠良君    理事 和田 耕作君       相沢 英之君    井上  裕君       石橋 一弥君    大野  明君       川田 正則君    戸沢 政方君       葉梨 信行君    橋本龍太郎君       安島 友義君    枝村 要作君       川本 敏美君    田口 一男君       矢山 有作君    草川 昭三君      平石磨作太郎君    西田 八郎君       浦井  洋君   農林水産委員会    委員長 中尾 栄一君    理事 片岡 清一君 理事 羽田  孜君    理事 林  義郎君 理事 竹内  猛君    理事 瀬野栄次郎君       加藤 紘一君    倉成  正君       佐藤  隆君    玉沢徳一郎君       福島 譲二君    堀之内久男君       森   清君    森田 欽二君       新盛 辰雄君    野坂 浩賢君       芳賀  貢君  運輸委員会   理事 石井  一君 理事 小此木彦三郎君    理事 佐藤 守良君 理事 浜田 幸一君    理事 坂本 恭一君 理事 渡辺 芳男君       加藤 六月君    北川 石松君       西村 英一君    原田昇左右君       藤本 孝雄君    古屋  亨君       堀内 光雄君    太田 一夫君       久保 三郎君    佐野  進君       宮井 泰良君    薮仲 義彦君       米沢  隆君    小林 政子君       中馬 弘毅君  出席国務大臣         通商産業大臣  河本 敏夫君         運 輸 大 臣 福永 健司君         労 働 大 臣 藤井 勝志君  出席政府委員         公正取引委員会         事務局長    戸田 嘉徳君         防衛庁装備局長 間淵 直三君         大蔵大臣官房審         議官      渡辺 喜一君         林野庁長官   藍原 義邦君         水産庁次長   恩田 幸雄君         通商産業政務次         官       野中 英二君         通商産業大臣官         房長      宮本 四郎君         通商産業大臣官         房審議官    島田 春樹君         通商産業省産業         政策局長    濃野  滋君         通商産業省基礎         産業局長    天谷 直弘君         資源エネルギー         庁長官     橋本 利一君         中小企業庁長官 岸田 文武君         中小企業庁次長 児玉 清隆君         運輸省海運局長 後藤 茂也君         運輸省船舶局長 謝敷 宗登君         海上保安庁長官 薗村 泰彦君         労働大臣官房審         議官      関  英夫君         労働省労政局長 北川 俊夫君         労働省労働基準         局長      桑原 敬一君         労働省職業安定         局長      細野  正君         労働省職業訓練         局長      岩崎 隆造君  委員外出席者         行政管理庁行政         管理局管理官  坂本 佶三君         法務省民事局第         四課長     稲葉 威雄君         大蔵省銀行局特         別金融課長   藤田 恒郎君         通商産業大臣官         房審議官    坂井 清志君         建設省道路局日         本道路公団・本         州四国連絡橋公         団監理官    加藤  優君         社会労働委員会         調査室長    河村 次郎君         農林水産委員会         調査室長    尾崎  毅君         商工委員会調査         室長      藤沼 六郎君         運輸委員会調査         室長      鎌瀬 正己君     ――――――――――――― 本日の会議に付した案件  特定不況産業安定臨時措置法案内閣提出第三  八号)      ――――◇―――――
  2. 野呂恭一

    野呂委員長 これより商工委員会社会労働委員会農林水産委員会運輸委員会連合審査会を開会いたします。  先例によりまして、私が委員長の職務を行います。  内閣提出特定不況産業安定臨時措置法案を議題といたします。  本案についての提案理由説明は、お手元に配付してあります資料によって御了承願います。  この際、質疑に先立ち、委員各位に申し上げます。  質疑は、申し合わせの時間内で行われるよう御協力をお願いいたします。また、政府当局におかれましても、その答弁は簡潔にお願いいたします。
  3. 野呂恭一

    野呂委員長 これより質疑に入ります。  質疑申し出がありますので、順次これを許します。佐野進君。
  4. 佐野進

    佐野(進)委員 私は、ただいま上程になりました特定不況産業安定臨時措置法案について、若干の質問をしてみたいと思います。  主として運輸大臣質問をするわけでありまするが、私は、この法律が今日の経済情勢の中で非常に大きな意味を持つものであるということについては、その評価をするにやぶさかではございませんが、しかし、その内容について大変いろいろな問題点があることも事実であろうと思うのであります。  特に私は、造船関係の問題につきましては、この法律内容をつぶさに検討いたしました結果、その本来のあるべき姿に対してきわめて不十分であるという印象をぬぐい去ることができ得ないわけであります。特にこの法律が、それぞれ指定されておる業種の中におきまして、造船業の持つウエートというものがきわめて高いにもかかわらず、いわゆる相乗り的な形で一括上程されているということについて、大変不満足の意を表せざるを得ないわけでありまするが、その事情がいかなる経過によってこのようになったのか、その点をまずお聞きしたいこと。さらにまた、その経過の中で結果的に一連対象の中でその措置が不十分であると認識せられる個所が多々あるわけでありますが、特に信用基金の問題については、当初予算の中にその対象として造船が入っていない、そういうような点等が見受けられるわけでありまするし、そういう面からいたしますると、この法律が通りましても、結果的に十分なる対応がなされないのではないか、そういうような気がいたすわけであります。  したがって、まず大臣にお伺いいたしたいことは、単独立法として十分なる対策を立てるにふさわしい条件をつくり得なく、このような形の中でなぜ提案されたのか、さらにまた、信用基金の問題を初めとして一連のこれらに対する対策の裏づけとなるべき措置について十分配慮がなされ得なかったその経過は、拙速にこの法案相乗りをしようとする考え方に基づいてそうなったのではないかと判断するわけでございまするが、その点がどうであるのかという点についてひとつ明らかにしていただきたい。
  5. 福永健司

    福永国務大臣 いろいろ御心配をいただいて御鞭撻的な御所見を拝聴いたしましたが、御指摘のごとく、私どもはこの問題非常に大事であるということは十分承知をいたしておりまして、確かに単独立法でいくべきか、よく似た問題で通産省等とともに解決していかなければならぬものもあるという事情等にかんがみまして、いろいろ関係方面と協議をいたしました結果、いまお話しのような姿において提出されたのであります。相乗りを考えたとか、あるいは付随的、二の次ということでは断じてありません。ただ、この業種の中に名前が並んでいるうちでは、一番初めに出てこないで終わりの方にありますが、これは通産省の方のが幾つかあるものですから、その方が先に書いてあって、後でございますが、この書いている順序のように重要性がわれわれの方の分野のものが低位にあるということは全然ございません。  なお、具体的にお話のありました点につきましては、ちょっと局長から答えさせることにいたします。
  6. 佐野進

    佐野(進)委員 時間がありませんから、船舶局長からは後で答弁を一括してもらいます。  私は、いま運輸大臣の御答弁にありましたような経過であるということを踏まえながら、通産大臣に若干お伺いしておきたいと思うのでありまするが、この法案が施行される段階の中で、あるいは現時点の中においても当然でございまするけれども、いますでにいわゆる倒産、破産前の状況の中で再建途上にある企業等に対してはどのように対応していかれるのか、新法の対象としてはもうそのような企業は切り捨てられるのか、あるいは一応対象として判断する条件があるならばこれを取り入れるのか、いずれなのか、この際、通産大臣所見を承っておきたいと思います。
  7. 河本敏夫

    河本国務大臣 再建途上にある企業という意味は、たとえば会社更生法適用を受けましてそして再スタートした、こういう企業を指しておられるのではないかと思いますが、この業界、どの業界にいたしましても、この法律適用を受けようとする業界は、大部分の企業、つまり三分の二以上の企業申し出によって、そして条件が合っているかどうかということを政府判断をして決める、こういうことになっておるわけです。全部が入らなくてもいいわけでございます。だから、その三分の二の中に再建企業が入っておるかおらないかということは、その時点でありませんと判断できない、こういうことだと思います。
  8. 佐野進

    佐野(進)委員 私は、大臣の御説明のように、企業そのものがその対象になり得るような条件をつくっていただくことが必要ではないか、そうでないとすると、法律が施行される前の段階再建途上にある企業が結局対象にならないということでは、その時点時点における不備、あるいはそのことによって受ける下請あるいは労働者等々の被害は一層増大していくのではないか、そういうような懸念もありますので、いまの点を質問してみたわけであります。  そこで、この法律を施行せられるに当たり配慮していただかなければならぬ点として、いま運輸大臣ないし通産大臣にその前提条件として私は質問をいたしたわけでありますが、特定不況産業と称せられるこれら産業界の中において、この状態の中で特定意図に基づいて特定の利益を追求するような行為が行われ、そのことによって産業界あるいは雇用問題、さらにはその他いろいろな問題に不測の損害を与えるようなことが起きてはならないと思うわけであります。  したがって、運輸大臣質問をしてみたいと思うわけでありますが、今次不況状況の中で、造船業界倒産として、あるいはそれに関係する運輸関係の中における倒産として、特に今年度に入って大きく報道されておるのは、新山本造船倒産、それに基づく旭交易倒産、さらにそれに波及されて大和海運倒産一連倒産が二月の上旬にありました。この負債総額は、当時の新聞報道によれば合計七百億ないし八百億に及ぶ大型倒産であり、造船業界を取り巻く事態がいかに深刻であるかということが報道せられておったわけであります。  私もこの問題については多大の関心を抱き、不況を脱却するためにどのような措置をとるべきかということについて検討をいたしておった段階でございますので、いささかこの内容について調査をいたしました。結果的に私は、この一連倒産が超一流企業によってもたらされた計画的倒産ないしはそれに類するような倒産ではないかという判断をせざるを得ない心境に至ったわけであります。  時間がありませんので、以下若干の時間申し上げてみたいと思います。  この倒産の直接的な原動力になりましたのは新山本造船であります。新山本造船倒産につきましては、当時通産省中小企業庁ないし大蔵省銀行局等はきわめて熱心なる対応をいたしました。その対応指導により、商工中金を初め銀行相互銀行等におきましては、積極的にこれが倒産防止のために動いたことは事実であります。したがって、当時新山本造船倒産しなくても済むような金融情勢であったにもかかわらず、直接的にこれら三社を支配し、これら三社に対してきわめて密接な影響力を持つ日本郵船が、新山本造船に対して、新山本造船債権を持つ大和海運支援を打ち切るというような形の中で、ついに企業継続の熱意を喪失せしめ、関連してこれら三企業倒産していったという事実が明らかになりつつあるわけであります。  私は、運輸大臣並びに船舶局長、さらには海運局長にこの際質問をしておきたいと思うことは、これからも当然発生されるであろうと思うのでありまするけれども特定の大企業がその傘下にある企業に対して、それの死命を制するがごとき措置によって、たとえ政府がこのような特定不況産業法律に基づく措置をとろうといたしましても、結果的に、支配する一企業の力によってはそのような行為は何ら意味をなさない結果になってしまうという事例が、この新山本造船旭交易大和海運一連倒産劇の中において明らかにされておると思うのであります。  したがって、このような事態に対して、時間がございませんから簡単に答弁していただきたいと思うのでありますが、この事実がそのようにもし私の質問したような事態として発生し、かつ終末を迎えつつあるとするならば、運輸大臣としてはどのような措置をおとりになることが適切だと御判断なのか、お聞きしたい。  さらに、海運局長に対しては、大和海運倒産に対してその事情を聴取し、適切なる指導をした、このように新聞は報道しておりますが、そのような指導をしたのかどうか。船舶局長は、波止浜造船に引き続く大型倒産として新山本造船倒産しようとしたとき、どのような対応措置を講じられたか、この点について、時間がありませんから、簡潔に答弁をしていただきたい。
  9. 福永健司

    福永国務大臣 新山本造船の点について、それを中心としてのお話でございますが、あたかも私、運輸大臣に就任いたしましたのは、その直後のようなタイミングになりまして、必ずしも詳しくは存じませんが、いまお話しのとおりであるかどうか、そこらの点はいろいろな話を伺っておるのでありますが、いずれにいたしましても、そうしたお話が出るような事態ははなはだ遺憾に思うわけでございまして、簡潔にということでございますが、これはこれとして対処するといたしまして、今後同様のことによって、いまお話しのようなまずい結果が出るということはどうしても防がなければならぬ、全力を尽くしてそういうことに努めたいと考えます。
  10. 謝敷宗登

    謝敷政府委員 二月の新山本倒産につきましては、私どもは、新山本の社長から倒産の前に種々の相談を受けておりまして、金融についていろいろあっせん等努力をしたつもりでございます。ただ、新山本造船は、前期までは決算内容がきわめてよくて、仕事量もかなり持っておったわけです。問題は、一連船主倒産が重なったことでございまして、その前に出ました相模工業とかその他の若干の日本の国内の船主倒産引き金になりまして、資金繰りが落ちておりました。そこで、倒産しました船主船のりセールにつきまして、私どもは私どもなりにやったわけでございますが、たまたま先生指摘大和海運あるいは旭交易との関係の、言うならば船をつくるための相互信用補完、それが裏目に出たという形でございまして、確かに先生指摘新山本資金繰り自体はそう大きな欠損ではなかったわけですが、非常に大きな相互債務保証という形が倒産引き金になりまして、私どもとしては、造船所債権保全の観点から、この時点におきましては、雇用その他を考えますと、財産の管理に入った方がよろしいという考えでございました。
  11. 後藤茂也

    後藤(茂)政府委員 お答え申し上げます。  大和海運倒産に関連いたしましていかなる措置をとったかということでございますが、通常その他に見られますような海運会社倒産ケース大和海運ケースとは若干問題が異なる点があるかと存じます。と申しますのは、大和海運南太平洋諸島諸地域に対して定期航路を営業しているという特殊性がございます。で、この倒産事件の処理を誤りますと、この定期航路配船がとまるとか、そのことによって大小無数日本及び関係国荷主及び債権債務者、大変広範囲な派生的な問題を生ずるおそれがございます。大和海運和議申請に関連いたしましては、そのことによってただいま動いております南太平洋航路定期航路の運営にとりあえず支障がないように、ほかの船を差し立てて、大和海運アンダーウイングという形で荷主との間の信用の保持に努めるというような措置をとってまいっております。  また、これに関連いたしまして、この南太平洋航路航権というもの、これは商売上の問題として相当大きな意味を持つものでございまして、その航権をめぐって日本船会社の間に醜い争いがあるというようなことのないように、いわゆる航路調整につきましては、今後とも慎重に対処してまいりたいと思っております。
  12. 佐野進

    佐野(進)委員 私の質問する意味は、先ほど来一貫して申し上げておりますように、この法律がたとえ実施されたとしても、特定意図を持つ大企業のその業界に対する支配を強化しようとする意図に基づいて行動が行われたとするならば、もはやこの法律意味はなくなってしまう実例をいま申し上げている中で政府はよく認識して対処していただきたいと私は思うからであります。  そこで、いま船舶局長海運局長、お二方から答弁がございましたけれども、私は、運輸当局は、この一連倒産に対して大蔵省ないし通産省のこれを防がんとしてとった措置に比べてきわめて緩慢であったと指摘せざるを得ないわけであります。その緩慢であった最大理由はどこにあるかというと、この倒産劇の直接的な引き金になったのは日本郵船であり、いわゆる運輸省当局は、特に海運局は、日本郵船に対するところのおもんばかりから、結果的にこのような大型倒産を、永大産業を除いては本年度最大の、特に造船海運関係商社関係においては最大倒産を起こさせたのではないかということを、この際明らかにしなければならないと思うわけであります。  特に、いま海運局長からお話のございました南太平洋定期航路は、結果的に、大和海運倒産してしまえば日本郵船がこの航路を所有することになる。旭交易倒産してその存立の基盤を失えば、日本郵船旭交易に対してその出資会社であるし、重役を派遣しておる会社である、結果的に旭交易支配権日本郵船が掌握することになる。新山本造船は、相互扶助の精神に基づいて、いま船舶局長からお話がございましたとおり、旭交易ないし大和海運に対して相互保証をしておる。結果的に大和海運行き詰まりは、企業として赤字化し不渡りを出していない、そしてまた、企業を運営することに何ら支障のない新山本造船をして倒産に追い込ませた。それは、いわゆる日本郵船重役会決定大和海運に対する支援を打ち切るということが導火線になってそのような倒産に追い込まれた。  こういう一連行為と結果とを見るならば、大和海運行き詰まり状況が、結果的に相互保証をしておる旭交易新山本造船をして倒産に追い込んだ、その直接的な導火線日本郵船重役会決定にある、こういうように判断をし、しかもその航路とさらに会社における支配権とを掌握せんとする意図に基づくところ倒産であり、その結果、関連する下請中小企業、そこに働く労働者に塗炭の苦しみを味わわせているとするならば、日本郵船のとった今回のこの倒産に対するところ措置は、社会的にもまた道義的にもきわめて遺憾な行為であったと言わざるを得ず、私どもとしては憤激にたえない気持ちであります。  そういうような気持ちであるにもかかわらず、いま海運局長の言うような表面的な事情のみしか調査をしない。船舶局長の言うように、なぜ新山本造船倒産をしなければならないのか、造船の直接的な担当である船舶局長ならば――倒産をしなくても済む措置は、金融面においても他の業務指導においても行われておったにもかかわらず、船舶局ないし海運局は、あえて日本郵船に対するところのおもんばかりから、この倒産を容認し、これを促進せしめたと言わんがごとき状況にあったと判断せざるを得ないということは、私どもはきわめて遺憾であると思うのであります。  したがって、この事情につきまして、私がるる申し上げておる経過を踏まえながら、運輸大臣は、今後これらの措置、いわゆる南太平洋航路ないし旭交易に対する経営権の奪取ないしはまた新山本造船に対するところ特定支配、このような行為を未然に防ぎながら、下請関連企業ないし働いている人たちの権利を守るために一定の措置を講ぜられることが必要であると考えるのでありますが、運輸大臣の御見解を承りたい。
  13. 福永健司

    福永国務大臣 いろいろ御指摘がございましたが、全面的にお話のとおりばかりでもなかろうと思うのでございますが、しかし、私どもは、御指摘のような点につきまして鋭く実質的な面を、その実態をよく見きわめまして、今後に対処しなければならぬと思うわけでございますし、今後ばかりではございません、この一連倒産ということの善後策につきまして、御注意のありました点を重々頭に置いて対処いたしたいと考えます。
  14. 佐野進

    佐野(進)委員 いまの大臣答弁を踏まえて、船舶局長海運局長からいま一度行政当局としての見解を承っておきたいと思います。
  15. 謝敷宗登

    謝敷政府委員 新山本造船につきましては、御案内のように、内容それから和議に対する債権者の態様もきわめて同情的であり、再建の方向でございますので、これらの結論を見ながら再建努力をしたい、こう考えております。
  16. 後藤茂也

    後藤(茂)政府委員 さきにもお答え申し上げたとおりでございますが、一小規模の定期船会社倒産ということに関連して、大企業がその航権をめぐってごたごたするといったようなことは絶対にしないように、今後ともその航路調整についての強力なる行政指導をしていく考え方でございます。
  17. 佐野進

    佐野(進)委員 そこで、いまの点については、この法律が可決せられ、施行せられるに至りましても、このような措置が大企業特定の方針に基づいて行われ得るとするならば、結果的にますますそのような企業に対するところ支援となり、弱小企業を窮地に陥らせるという抜け道は幾らでもあるのだという点について、これを指摘し、その誤りのないようにしていただきたいということで質問をいたしてきておるわけでありますが、そういう点については、いま申し上げたような状況で御答弁をいただいたわけでございますので、その御答弁の趣旨に基づいて運輸当局がさらに一層本問題に対して的確なる対応をしていただくことを強く希望しておきたいと思うのであります。  そこで、先ほど船舶局長答弁を求めておったわけでございますが、答弁をいただかなかったいわゆる信用基金の問題については、どのような措置をなされようとしておるのかということについて、この際答弁をいただきたいと思います。  さらに労働大臣にお伺いをいたしたいと思うのでございまするが、御承知のとおり、今日の雇用問題の深刻さは、これからもいろいろ御質問があろうと思うのでございますが、現段階におけるところ最大の課題の一つになりつつあるわけであります。いま三企業倒産に基づくところ一連措置について質問を続けておるわけでございますが、法律が施行せられる前の段階の中において、これは三企業に働く従業員の人たちは、それぞれ先ほど申し上げましたとおり、倒産をしなければならない情勢の中で倒産したのではなく、倒産をしなければならないように追い込まれた形の中で倒産をした、しかし、倒産をしたという事実においては全く変わりがない、したがって、この人たちは、いま失業の対象人たちとしてきわめて深刻な中で人員整理の対象に挙がりつつあるわけであります。こういう三企業を含むこれら倒産企業の実態の中において、いま私が申し上げましたような意味において、犠牲者を増大させるということはきわめて遺憾であると思うわけでございまするが、仄聞するところによりますれば、これら三企業の従業員の方々は、何らそれらの配慮に基づいて措置されず、ただ会社再建の名のもとに失業のちまたに追い出されようとしておることを聞いておるわけでありますが、労働大臣としては、これらの人たちに対してどのような措置をとることが必要であると御判断なされておるか、この点、ひとつ答弁を聞いておきたいと思います。
  18. 謝敷宗登

    謝敷政府委員 第一点の本法案によります造船業の問題でございますが、基本的に造船業の過剰設備はいろいろな見方がございますが、いずれにしてもはっきりしております。  そこで、いろいろな方策の一番基本的な施策として設備過剰の問題に取り組まなければいかぬということで、本法案の中で特掲をしておる次第でございますが、その中で信用基金の運用につきましては、本法案の検討の過程で、指定された産業全般を一体的に運用するということで、私ども造船業についての措置を盛り込んでいただいたわけでございます。  実際の規模につきましては、できる限り海運造船合理化審議会で規模、内容について詰めてまいりますが、その内容をできるだけ早く出して、早く信用基金適用に持ち込みたい、こう考えております。その後、これに加えていろいろな措置が必要かと思いますが、それについても時期を問わず検討いたしまして、できるものから順次具体化していきたい、こう考えております。
  19. 藤井勝志

    ○藤井国務大臣 労働省といたしましては、まことに受け身の立場でありますけれども、いま御指摘の具体的な事実、これは雇用安定資金制度というものを積極的に活用する、同時に、先般実施されました特定不況業種離職者臨時措置法、この効果的な活用によりまして、まず失業の予防、生活の安定、やむを得ず失業した方、離職される方々に対しては職業転換といった面、それから地域によりましては雇用率、失業者の吸収率制度、こういった万般の処置を講じて、生活の不安のないように、そして再就職の道を積極的に応援する、こういう考えでおります。
  20. 佐野進

    佐野(進)委員 時間が参りましたので、通産大臣並びに運輸大臣、さらに労働大臣に要望だけ申し上げてみたいと思います。  通産大臣、先ほど来私は一つの具体的な例を申し上げて質問をいたしましたが、通産省当局は、引き金になった新山本造船に対しては、商工中金その他を初め積極的に対応していただきまして、結果的に倒産する必要のない状態をつくり出してもらったわけです。しかるにもかかわらず倒産したということは、先ほど申し上げましたとおり、運輸行政、通産行政等の関連がまだ不十分であった、大蔵省銀行局も非常に積極的にやっていただいたということの中でそういうことを感じますので、今後これらの法案がもし成立施行されるに際しましては、積極的に他の省庁との連絡を図りながら、そういうことのないような対策を立てていただきたいということを強く要望したいと思います。もし御所見があれば承りたい。  運輸大臣につきましては、後でどうせまたそれぞれの場所において質問を続けたいと思いまするが、一つの具体例として申し上げましたけれども、この法律の持つ意味は、冒頭申し上げましたとおり、造船業並びにそれらに関連する業界としては最大対応を求めておる法律でございますので、万遺憾なきよう部下を監督し対処していただきたい。もし御所見があれば承って、私の質問を終わりたいと思います。
  21. 河本敏夫

    河本国務大臣 御注意がございました方向で法律の精神を尊重いたしまして、できるだけのことはしてまいりたいと存じます。
  22. 福永健司

    福永国務大臣 御注意をいただきました点を念頭に置いて、せいぜい努力をいたす所存でございます。
  23. 佐野進

    佐野(進)委員 終わります。
  24. 野呂恭一

    野呂委員長 次に、渡辺芳男君。
  25. 渡辺芳男

    渡辺(芳)委員 この法案を審議することは、非常に私ども気が重いわけであります。産業界の特に不況業種について撤退作戦をやろうというのでありますから、大変な影響が出るわけであります。考えてみれば、かつての高度経済成長時代に設備投資をどんどんやれ、政府も積極的にこれを推進する、ところが、石油ショック以来こういう状態になってしまった。いまさらいままでやってきた責任を追及しても、事態の改善にならぬことは私も承知をいたしておりますが、特にこの法案の中で四業種が指定をされています。  通産省にお伺いをいたしますが、その中でアルミは大企業、平電炉や合成繊維というのは大企業もあり、中小企業もある。そこで、基本計画を立てて業界で申請をしてスクラップ・アンド・ビルドをやるということになっても、実際問題として、平電炉などは専業も兼業もありまして、これは造船業と同じで中小いじめになるのではないだろうか。実際問題として公平にこれがSBができるのか、なかなか大変だと思うのです。法案を提出している限りにおいては、その対応策などについても考えておると思うのですが、この点はきわめて抽象的でございますが、基本的にどういう考えを持ってやろうとしているのですか、お伺いをいたしたいのです。
  26. 河本敏夫

    河本国務大臣 この法律が成立をいたしましても、決して強制するものではないわけでございまして、私どもの考えております業界再編の一番いい方法は、こういう法律適用を受けないで、業界自身が工夫と努力をせられまして、自力で再建されることが一番望ましいと考えておるわけでございます。しかしながら、場合によりましてはとてもそういうことはむずかしい、こういう業界におきましては、大部分の方々がこの法律適用を受けたい、こういう御希望があれば、条件に合っておるかどうかということをよく調べまして、そしてその適否を決めていこう、こういうことでございまして、決して強制するものではないわけであります。  そこで、その安定基本計画をつくりまして、業界が自主的にその安定基本計画の路線でやりましょうということが決まれば大変結構でございますが、どうしても業界の足並みがそろわないという場合には指示カルテルを決めまして、そしてそれによってやっていただこう、こう考えております。
  27. 渡辺芳男

    渡辺(芳)委員 造船業も入りまして、また、先ほど申し上げました平電炉なりアルミなり合成繊維の製造業と違いまして、造船業は大変な数ありまして、大手が八社、中手が大体百余社と言われております。あとは中小、砂浜造船所などと言われるような小規模のものまである。特に最近タンカーが船腹過剰で七、八千万トン遊んでいるとか、貨物船も遊んでいるとか、こういうふうなことも言われておりますが、一昨年の六月、海造審で一九八〇年までの造船需要の見通しについていろいろ出しております。その中に、きわめてショック的なものですが、十万人の人員削減と言われておる。これは四割ぐらい削減をするということになりますね。しかし、今日の不況の状態で、下請をそれぞれ切りまして五万人ぐらい失業しているというか、人員削減している。今日まで中小の造船所が四十九年以来三十六社も倒産をしておる。ことしに入っても新山本造船を初めとして五社倒産しておる。こういう中で中手、中小の造船所というのは事業メーカーですから、専業メーカーがスクラップ・アンド・ビルドになるということになれば、メーカー自体もそうでありますが、労働者も失業する、いわば死活問題です。  先ほど通産大臣にお伺いをいたしたのですが、運輸大臣造船業の問題はなお大変深刻だと思うのです。カルテルを発動するようなこともお答えがありましたが、ともかく基本計画で過剰設備の破棄だ、こう言われて、大体五〇%ぐらいをやろうかなどというようなことを巷間伝えられていますが、いま海造審でいろいろ審議をされているようでありますが、ともかく必要以上に不況に悪乗りをしてどんどんやってしまえというふうな風潮になることを私は非常に懸念をしているのです。だから、実際問題として、通産大臣に先ほどお伺いをいたしましたが、運輸大臣、どのように対応策を考えているか。この間それぞれ業界の五社の方々に御出席をいただいていろいろ意見を聞きましたが、その中で、それぞれの業界がいま過当競争でなりふり構わずやっている、そういう状態であるから、たとえばこの法案が成立しても業界としてはどうにもできないというふうなことを言っているんですね。運輸大臣、この基本計画に基づいてやろうとする場合の運輸省の対応策というのは非常にむずかしいと思うのですが、いかがですか。
  28. 福永健司

    福永国務大臣 中手等は、おっしゃるように専門メーカーであり、船台等にしても一台か二台というふうなことでございますから、構造改善をする過程等において一台のところが整理するということは、何もかもなくなってしまうというふうなことでございます。でございますから、こういうふうな問題と取り組む場合においては、ある程度グループ化なども考えていかなければならないかと思いますが、これまた、そういうことをするについては、なかなか話し合いということが簡単にはまいらないわけでございまして、したがって、業者間で多少の話はもう進んでいるところではありますけれども、これを具体化していくについてはなかなか問題があろうかと思います。こういうふうな点については、運輸省は大いに相談に乗っていろいろ進めるようにしていかなければならぬと思います。  また、お話の海造審の方でいま検討してくれておりますことにつきましては、私どもは、その結論を急いでもらうようにしなければならぬと思いますが、私は、やや長期的に見ますと、不況対策からさらに進んで何とか仕事があるようにしてやらなければいけない、そうでないと、いまのようなことだけしていてつぶれたらどうするということじゃいけないので、さらに積極的な対策を必要とする、この点を強く感じております。  そこで、中手等は専門メーカーであるから、船以外にいろいろと言ったって、そうは言ってもなかなか容易じゃないと思います。大手の方はやや情勢も違うと思いますから、いずれにしても、全体として造船企業が、単に船だけということでなくて、船ももちろんやって盛んにさせることではあるが、新需要の開拓等を進んで行って、これは国が最も力を入れなければならぬことでございましょうが、新分野の開拓等によって、それをどこがどうやるかというようなことは、全体として合理的な分業形態に誘導する必要はございましょうが、いずれにいたしましても、業界全体を何とかする、その中で特に中手等は、いま御指摘のように従来も重要な使命を帯びてやってきておるのでありますから、それなりの施策を進めるよう私どもは大いに努力をいたしたいと考えておるところでございます。
  29. 渡辺芳男

    渡辺(芳)委員 そういうふうに積極策に出るということがいま一番大事なんですね。私が最近調べ北のによりますと、言うまでもございませんが、わが国の造船能力というのは大体年間二千万トンぐらいだと言われていますが、かつてはタンカーを中心にして、この造船能力のうち七〇%ぐらいを大手が建造しておった。大手七、八社が、兼業メーカーでありますが、ともかく七〇%ぐらいを建造しておった。いま三分の一ぐらいしか造船需要がないと言われていますね。  昨年の七月から本年の三月までに、かつて大手は大型、中手は中型、中小は小型船舶をつくっておって、いままでは造船分野がおのずからあったわけですが、造船需要がないために、もうなりふり構わず、しかもダンピングをする。はっきり調べたわけではありませんが、巷間伝えられるところによりますと、三〇%から四〇%ぐらい値引きをしてとる。出血受注をやっている。先ほど申し上げました昨年の七月から本年三月までに、小さいのは百トンの引き船、大きいのは貨物船で一万トンぐらい、これは中手から以下の中小造船所でできるものですが、これらがほとんど大手にみんなとられている。合計十八隻。これでは中手、中小というのは、全く仕事にありつけないということになります。何とかしてくれというのがこの業界人たちの願いなんですね。  私は、出血受注もけしからぬと思うのです。どうして船価を守らせるか。五百総トン以上は運輸省の許可建造でございましょう。実際に書面を出す、船価は幾らです。こういうわけで許可をする、許可をしたが、実際はどうも裏金が戻ってくるというふうなやり方がやられておったのではどうにもならぬ。船価を守らせること、それぞれ造船分野大中小はとにかく譲り合ってやったらどうだろうか、こういうふうなことで運輸省として積極的に指導をしないとまずいと思うのです。兼業メーカーですから、大手は大手なりの仕事があるのです。この点はいかがですか。
  30. 福永健司

    福永国務大臣 造船全体が苦し紛れでいろいろなことがあることは、ある程度わかるのでございますが、苦しさをともにする中にあっても、大手は大手らしく、また中手は中手らしくあらしめたいという気持ちは、私としては十分ございますが、お話のとおりであるかどうかは別といたしまして、大体そういうような傾向があることは私も否定するわけではございません。そういう意味で、いまもこうあるべきだというお話がございました。昔なら、いまお話があった運輸省が入ってそういうことについて何かさせたらどうかというようなことも、ある程度企業の自由を妨害するような感じがなきにしもあらずでございましたが、こういう際はうまくいっていたときと同じにはいかぬと思います。そういう意味で、いまこそいまに適した方策をというように運輸省も大いに努めていくべきであると考えております。
  31. 謝敷宗登

    謝敷政府委員 造船業界の中におきます大企業、中企業、中小企業についての基本的な考え方につきましては、先生のおっしゃる点も十分踏まえてやっているわけでございますが、基本的に最近の不況は国際的な航海に従事する外航船が中心だと考えております。したがいまして、先生指摘のうちで、約千四百ほど造船所がありますが、その中で内航船あるいは小型のその他の雑船をつくっている分野につきましては、そこそこの仕事があって、これからそれに対する資金繰りその他の援助ができれば、不況の中にありましてもいけるのではないかと思っております。したがいまして、そこに大手、中手が入ってこないという点につきましては、たとえば船舶整備公団の船なりその他の官公庁船の内航船等については、極力そういうところに出していくということを関係ところと相談をしているわけです。  それから、大手、中手につきましては、海造審の前の答申を受けまして、基本的に操業調整のときに差をつけておりまして、その結果、大手がトン数では大体七五%ぐらい仕事量を持っていたものが、五〇%近くに落ちてきております。そういう意味で、従来もそれなりの効果はあったかと思いますが、今後非常に不況が深刻化し、設備の処理等の問題が出てまいりますときには、もちろんその点が論議の一つの焦点になるかと思いますので、論議の中でその問題についての検討を十分進めたい、こう考えております。
  32. 渡辺芳男

    渡辺(芳)委員 抽象的な回答でございますが、これは中型造船所、小型造船所、強い要望がありますが、私は、大手の系列下に入っている中型造船所などがあることも知っていますが、やはり従来のようにやらせるような指導がまず第一だ。大手は大手なりに、三〇%ぐらいの兼業ですから陸上部門に転換をする、また、大きなプロジェクトなんかがあればやれるのですから、運輸大臣が先ほど言われたように、積極的に需要の創出をやるということは賛成なんです。これをやらなければいけないと思うのです。  そこで、仕事がないから受注競争が激化しているということになってきていますが、この際、国際的にもよく言われているように、タンカー事故の際、油が流出して大変な被害を及ぼすということがときどきありますので、どうしてもタンカーの二重底をやろうじゃないかというふうなことがよく出ています。船会社にすれば金がかかってメリットがない、やりたくないという気持ちはわかるけれども、この際、油流出事故防止のために積極的に業界に対して慫慂するということが大事だと私は思うのです。このことはやがてはやらなければならぬという時期に来ると思うのです。  それから、よく言われている船舶整備公団の内航船舶の改造あるいは新造、スクラップ・アンド・ビルドですか、ことしの予算は二百四十八億ですが、これはどんどん消化できると思うのです。内航船あるいは外航船を含めて、それぞれ老朽船と言われているものが八百万トンぐらいあるだろうと言われています。こういうものの代替建造なども積極的に進めていく。ただやれやれと言っても、こういう不況時代でありますから、なかなかそうはいかないでしょう。だから、対策として利子補給をするとかいろいろなことがあると思いますが、この点は積極的にその対策を考えていただいたらどうだろうか、こんなふうに思うのですが、いかがですか。
  33. 福永健司

    福永国務大臣 日本も悩んでおりますが、国際的な悩みでもあるわけでございますので、まずお触れになりました二重底構造にするというふうなこと等と関連いたしましては、世界じゅうで大分問題になっておりましたが、最近の会議である種の結論に到達いたしまして、分離バラストタンクや洗浄装置等についてこういうふうにすべきである、新造船についてはどう、すでにある船についてはどうという取り決めがやっとできるようになりましたが、わが日本では、この内容をもって条約を速やかに批准して、その結果による効果を実現せしめるようにいたさなければならぬ、こういうふうに考えております。これによりましてどういうことになりますか、まだ先のことではございますけれども、このこと自体でもある程度仕事はふえることでもございますので、できるだけ効果あらしめるようにしなければならぬと考えております。  スクラップ・アンド・ビルドの考え方は、こういうときにそういうことをうまく進めるということがタイミングの合った措置だろうと思います。いま一、二のことについて、具体的に利子補給その他について御見解を拝聴したのでございますが、私どもとしては、予算的な措置もありますが、それだけではなかなかと思いますので、御説の点等について、急ぎなお一層の検討をさせていただきたいと存じます。
  34. 渡辺芳男

    渡辺(芳)委員 通産大臣に伺いますが、最近よくマスコミで、五島列島に石油の備蓄などをやりたいとか、あるいはタンカーが余っているからこれも石油備蓄に使いたいとか、いろいろなことが報ぜられていますが、タンクをつくるということも、これは造船業あたりでもやられることでありますし、大手の需要創出にもなるわけですが、そういうことを具体的に進めておりますか。
  35. 河本敏夫

    河本国務大臣 五島列島に洋上備蓄形式で大備蓄基地をつくる準備をいましております。予算も計上しておりまして、いま運輸省と自治省の間で安全基準をつくっておられますが、その安全基準ができますと、それに基づいて地元との話し合いが進行いたします。それが終われば直ちに着工できるという体制でございますが、大体六百万トンの量でございまして、これによりまして備蓄も可能になりますし、同時に、相当大規模な仕事の量が確保できると考えております。  タンカー備蓄につきましては、いま準備中でございます。
  36. 渡辺芳男

    渡辺(芳)委員 この法案が成立をして不況業種が指定をされる、また政令指定の分もありますが、そういうことになれば、金融機関というのは一般的に融資を手控えていくから、信用基金というものを設立すると考えたかどうかわかりませんが、いずれにしても、いままで借り入れているお金を金融機関に返すという当面の対策になると思うのです。ただ、私は、先ほど来申し上げておりますが、これらの業種というのは、中小には大体専業メーカーが多いので、こういう専業メーカーの場合は、返済が五年の時限立法である、また、信用基金の方は延ばすかどうかわかりませんが、五年間でどういうふうに返済条件をつけるかはわかりませんが、とても返すという力はない。こういうふうになってくると、これまたせっかく基金制度をつくってもうまくいかないのではないか。  それで、伝えられるところによりますと、開発銀行が百億とか、あるいは民間の金融機関や産業界が二十億ぐらい出してくれたらどうだろうか、こんなふうなことも言われていますが、この信用基金構想と返済条件、運用といいますか、こういうことについていまどういうふうに考えられているか。私が申し上げるように、返済が非常に無理ではないだろうかということになれば、具体的にどういう対策を立ててやられるか、このことについてひとつお伺いします。
  37. 河本敏夫

    河本国務大臣 この法律案の一番大事な点は、信用基金の問題でございます。それで、まず信用基金の枠についての考え方でありますけれども、当初はいまお述べになりましたような大体の規模を考えておりますが、しかしながら、適用業種がふえますと、とてもそれでは足らぬ場合が出てくると思います。そこで、法律案では、大蔵大臣通産大臣が相談をして適宜決めていくということになっておりますので、場合によりますと必要な分は増額をしていく、臨機応変に増額できる、こういう体制でございます。だから、必要な資金は、政府としては関係閣僚が相談をいたしまして十分確保するつもりでございます。それから、返済の条件等につきましては、なおその他の問題もございますので、いま詰めておる最中でございます。  それから、中小企業中心の場合は、御案内のように中小企業振興事業団で非常だ手厚い設備廃棄の制度がございまして、たとえば繊維などは十六年で無利子、こういう借入制度がございます。それから繊維以外は十六年で二分七厘という制度がございまして、中小企業関係の場合はこちらの方を使われる方がよろしかろうと思います。
  38. 渡辺芳男

    渡辺(芳)委員 大臣、私が中心になって言っているのは造船業関係で、船台などはこれは全く担保にもならぬわけですよ。確かに繊維産業などはそういう意味では恵まれていますがね。でありますから、造船の場合はなかなか大変だと思っているわけです。ですから、今後のいろいろな対策を練る場合において、これらの返済条件ども考えていただかなければならぬと思っているのです。  それで運輸大臣造船不況と言っても、どうも八〇年を越すとまた需要がふえてくるのじゃないか、上向きになっていく、そして一定のところまで行って落ちつくだろうというふうに言われていますから、先ほど私も申し落としましたが、いまの危機的な状態から何とか抜け出すために、特に需要の造出について積極策に出ていただくことを要望いたしておきます。  時間になりましたが、もう一つ。この法案の中に政令指定の分がありますが、離職者対策法による不況業種というのは、国で二十六業種指定しています。この間清水市へ行きましたが、あそこは港町でありますから、これに関係する業種が非常に多い。全くいろいろな業種がありますが、大変な状況でありまして、倒産している会社もたくさんあるわけです。それで、これは業界の要望もありましょうからなんですが、実際問題として政令指定の業種はどのくらいになるか。そういう見込みがおありだと思いますので、こういう法案を出していると思うのです。  それで、その中に段ボール、板紙の関係がございますが、これは過去十年ぐらい設備過剰だと言われておりまして、生産カルテルなども指導されておったようでありますが、最近どうもこれら段ボールなどは、アメリカからどんどん輸入をする、ますますこちらはだめになる、こういう傾向もあります。これはどのくらいの設備廃棄を考えておられるか。この段ボール業界というのは、アウトサイダーもありまして、いろいろ複雑な状況でございます。でありますから、国内の生産、輸入量、需給のバランス調整などもとりながらこれをやらないと、なかなか大変だと思うのです。これは大手と中企業が多いわけですから、いままでも段ボールの業界関係についての対策というものをやってこられましたが、これで指定になるとどういうふうになるか、この点をひとつお伺いいたします。
  39. 河本敏夫

    河本国務大臣 いま考えております対象候補業種は、およそ十五、六ございます。段ボールもその中に入っております。それで、もし段ボール業界が候補業種になりましてこの法律適用を希望される場合には、安定基本計画をつくるわけでございますが、安定基本計画をつくります場合に、いまいろいろ御指摘がございました内需の動向、それから貿易の動向、こういうものを一応全部勘案いたしまして、専門家の意見等を聞きまして安定基本計画をつくる、こういうことになっております。
  40. 濃野滋

    ○濃野政府委員 ただいま大臣の御答弁のとおりでございまして、段ボール原紙につきましては、私どもこの法案のいわば政令指定の候補業種の一つとして、この法案作成の段階で議論の対象になった業種でございます。ただ、先生御案内のように、政令に指定いたしましても、この法律にのっとりましてこの法律に定める措置に乗っていくかどうかは、その業界の大部分の方の申し出で動くというかっこうになっております。そこがまず一つございます。それから、乗りました場合は、ただいま大臣が御答弁のとおりに、やはり長期の需給見通しを前提に、その業界全体のまとまりということで結論を出していくわけでございまして、ただいま御指摘のような将来の輸入をどう見るか、それに対してどういう態度をとるかというようなことも、この安定基本計画をつくる際に関係者で十分検討する大事な問題である、かように考えております。
  41. 渡辺芳男

    渡辺(芳)委員 ありがとうございました。
  42. 野呂恭一

    野呂委員長 次に、田口一男君。
  43. 田口一男

    ○田口委員 まず、通商産業大臣にこの点だけ初めにお伺いをいたしますが、この法案意図するところは何であれ、仮に成立をしてしばらくたてば、労働者の雇用という面から考えて、何人までという数字を私は求めませんけれども、相当数の離職者がこの政令で指定されるいわゆる特定不況産業から出るに間違いない、こういうふうに私は見ておるのですけれども、その辺の御認識のほどをひとつ伺いたいと思います。
  44. 河本敏夫

    河本国務大臣 いまこの法律適用を受けようとしております候補業種でありますが、大体どの程度設備が余っておるかといいますと、少ないところで一割ないし二割、多いところは五、六割あるいはそれ以上余っておる、こういう状態でございます。したがって、安定基本計画の内容いかんにもよりますけれども、ある程度のやはり雇用問題が発生をするであろうと考えております。ただしかし、巷間伝えられるような大きなものではないと思いますのは、これはもうすでに数年間の長い間不況が続いておりまして、この間雇用調整が相当進んでおります。でありますから、今回の設備が廃棄されましても、それほどの大きな数字にはならぬと私どもは期待をしておるわけでございますが、やはり設備廃棄ということになりますと、ある程度のものは表面化せざるを得ない、このように理解をいたしております。
  45. 田口一男

    ○田口委員 いまのお答えですと、今日までそれぞれの企業が相当雇用調整をやっておる、だから、仮に成立をした後でも、絶無とは言えないけれども、ある程度出るがそれほどのことじゃないというふうな御見解ですね。  そこで、労働大臣にお考えを聞きたいのですけれども、去年労働省が、たとえば昭和五十二年の二月、五月、昭和五十二年の八月、十一月に労働経済動向調査ということやって、相当細かい数字を出しております。私は数字をだめ押ししようということじゃないのですけれども、たとえば昭和五十二年二月の動向調査によりますと、こういう質問を労働省がやっているわけですね。今後一年間に生産または販売数量が一〇%増加したら雇用をどうするか、こういう設問に対して答えとして、従業員千名以上の大企業のうち八一%が、人はふやしません、こういう答えを出しておる。それから一九%は若干ふやす。ふやすけれども、ふやすと答えておる一九%のうちで、常用雇用者をふやすというのはわずか五%しかないわけですパートであるとか季節工なんかによってその分を埋めていこう、こういう答えをまず出しております。  引き続いて、昨年暮れの十一月の同じような調査によりますと、いま通産大臣が言われた雇用調整ということがいみじくも出ておると思うのですが、製造業のうち四五%が労働者が減っておる。特に大企業について見ますと、千人以上の大企業労働者が五八%も減になっておる。数字は別であります。割合でいいますと、こういった傾向です。さらに、若干の生産増ということも景気の波であるのですから、それらにどう対応しておるかといいますと、いま申し上げた製造業四五%労働者減になっておりますが、このうち二〇%は残業時間をふやしておるわけであります。  三月二十九日付の官報資料版の、通産省が出した「主要業種の動向」なんかを見ましても、そういったことに触れられておりますが、ここで大臣にお聞きしたいのは、この傾向は、言うならば生産は増大をしておるけれども、いま言った人はふやさないということから、結局また雇用調整という今後の面からも、どんどん人減らしをやっていこうとする企業気持ちというものがここに出ておるし、それから、そういった生産の増強は見られるけれども、それに対応する労働力という面からいけば、できるだけ人を減らして、やむを得ない場合にはパートであるとか臨時であるとか、しかも残業時間をふやすことによって乗り切っていこうとすることが言えるのじゃないか、こう思うのですが、そういった傾向にあると断言してもいいのか、その辺のところの労働大臣の御見解を……。
  46. 藤井勝志

    ○藤井国務大臣 たまたまけさの閣議で、これは総理府がまとめられた数字でございますけれども、就業者総数五千二百十二万人と、これは前年同月比と比較いたしまして七十九万人がふえておる、一・五%の増、ただし、その中の男女別は、女子が五十六万人でございまして、そのような動きになっております。  その内容的な問題について、経営者がいわゆる不況の波を乗り切るための姿勢として、いわゆる減量経営という面から御指摘のような動きというのは現実に残念ながら起こっておる。こういう面は、雇用面からは非常に心配すべき傾向でございますけれども、そのような困難な状態を踏まえながら、労働省としては、この雇用の安定のために、いわゆる労働の条件の低下を来さないようにできるだけの努力をしていく、そして失業の予防と生活の安定、就職の道、こういったことで、雇用安定資金制度の活用なり、あるいはまた不幸にして特定不況業種としての離職者というようなことになればいろんなきめの細かい配慮をする、こういうことでありまして、全体的な趨勢としては、御指摘の点は事実に基づいた御主張でございますが、詳細の点につきましては政府委員から、具体的な事実の問題でありすから答弁をさせます。
  47. 細野正

    ○細野政府委員 ただいまお話のございましたように、生産がふえてもなかなか人をふやさない、ふやす場合にも臨時、パートというかっこうでやるものが多いというのは御指摘のとおりの状況であります。ただ、不況からやや回復の方向へ向かう場合に、やはりどうしてもまず残業時間をふやし、それから臨時、パートで対処し、先行きの見通しがある程度ついてから常用雇用というふうにいくというのが一般的な形でございまして、そういう意味で、現在景気がまだ回復テンポが非常におくれているということで、常用労働者の雇用の拡大がおくれているというふうに考えているわけでございまして、そういう意味で、政府が公共投資を主軸にしまして大幅な景気の拡大をねらおう、こういう政策をとっておりますのも、結局そういうことによりまして経済の先行きに対する見通しをつけて、今後常用雇用をふくらます意味での雇用の拡大というものにつなげていこう、こういう考え方に立っているわけでございます。
  48. 田口一男

    ○田口委員 そうなってくると、いま大臣は、残念ながら傾向としてはそういうことを認めざるを得ない、それで労働省のサイドでいろいろな手を打ってはおるのだというお答えですけれども、私は、ここでこういうたとえになると思うのです。ちょっとたとえが不謹慎なら後で取り消しますけれども、通産のサイドでは、さんざんいままで放蕩をした結果なんだから、身軽にしなければならぬといってぽんぽん切り捨てる、その切り捨てたものを労働省の方でせっせと受けざらでとめる。そうして一生懸命拾っておるけれども通産省はまだ身軽になれぬといってぽんぽん切り捨てる、こういうのが今日の状態だと思うのです。たとえがわかりにくければ、通産省はぽんぽん勝手に切り捨てる、労働省の方ではそれをせっせと拾う、労働者を落ち穂にたとえて失礼なんですけれども、際限なく落ちてくる落ち穂を労働省が拾ったって拾い切れぬ。それを通産省の方では、もっと落ち穂を落とせということで幹を揺すっておる、こういう状態にいまあると思うのです。  しかもそれは今日に始まったことじゃなくて、通産省が出しておる「産業構造審議会の産業構造の長期ビジョン」の昭和五十一年度版を見ましても、昭和六十年を見越してそれぞれの業種ごとに具体的な数字を挙げておりますが、時間の関係で特徴的な問題だけ言いますと、昭和六十年の産業別就業構造を昭和四十五年と比べてみますと、第一次産業、八百八十六万人が昭和六十年には四百九十五万人、これは第一次産業ですからさておきまして、問題の第二次産業については、総数で昭和四十五年千七百九十一万人、昭和六十年が二千百五万人で三百十四万ふえております。ところが、中身を見ると、この法案に盛られておるいわゆる特定不況産業と言われておるような繊維であるとか、パルプであるとか、化学であるとか、そういったところは軒並み減、そして一般機械、電気、輸送、こういう部門については五十四万人増、建設業については百三十二万人増であります。  それから同じ資料に主要産業の長期見通しとして各産業ごとに細かい数字を出しておりますが、これなんかを見ますと、一九七四年の実績から一九八五年を見通した場合に軒並みに労働者を減らして、鉄鋼でいいますと、四十三万一千人が四十二万七千人に減るであろう、紙パルプについては三百二十九万が三百十万に減るであろう、こういう数字をビジョンの中に挙げておるのです。  これは一言にして言うならば、通産省の姿勢としては、首切り、人減らしによって徹底的に減量、合理化を図る。生産は全体としてふやすが、今後伸びる余地の少ない産業についてはやや生産のふやし方を抑えて、一方、機械工業なんかについては全力を挙げて育成する。しかもこの数字にはっきり載っておるのですが、海外生産費というふうなことで海外投資残、こういう数字を見ますと、どの産業も飛躍的なテンポで海外投資、海外進出を推進しようとしておる。こういう数字を見て私、要約をしますと、国内ではどんどん労働者を減らす、そして海外にどんどん進出をする、投資をする。今日の円高という問題、どっかで円高を招くようなところにつながっておるのじゃないかという気がするのです。  それはさておくといたしまして、一番大事な問題の、企業から吐き出される労働者について、この法案は何ら歯どめをかけていない。雇用の安定云々という言葉がありますけれども、この雇用安定の歯どめというのは具体的にどういうふうにしようとしておるのか、そこのところをひとつ的確にお答えいただきたいと思います。
  49. 濃野滋

    ○濃野政府委員 私からお答え申し上げます。  この法律は、いわゆる構造不況業種、この法律では「特定不況産業」という定義になっておりますが、特定不況産業が持っておりますいろいろな問題の中で、いわば共通の問題でございます過剰設備の処理を進めていこう、そのために必要な手続と申しますか、措置を決めるということが、この法律の直接のねらいになっております。  ただ、御指摘のように、現下の最大の問題は、やはり一つが雇用の安定ということでございますから、過剰設備の処理を進めるに当たりましても、雇用の安定ということと非常に有機的な関連、別な言葉で申し上げますれば、雇用の安定を非常に大きな一つの目的といいますか、これに置いて進めていくべきであることは当然でございます。  ただ、いま申し上げましたように、この法律は設備の処理をどうやって進めるか、こういう観点の手続、措置を決めるということでございまして、法案の最後の目的に雇用の安定ということはございますけれども、雇用安定に関する直接の具体的なたとえば計画とか、こういうものがこの法案の中身になるものではない、私どもはこういう考え方でおりまして、何が歯どめになるかということでございますが、一つは、やはりこういう設備の処理を進めていきますための安定基本計画をつくりますが、この安定基本計画の中で設備の処理のテンポをどうやって進めていくか、あるいは設備の処理の全体の量をどうするかというのは、長期の需給の見通し等のもう一つの非常に大きな前提になることは当然でございますが、そのほかに、やはり雇用の安定をうまく図ってやっていくためには、その設備の処理のテンポをどう考えるか、こういう点も当然のことながら議論されるべきではないかと私は考えております。  また、この法案は、そういうことで直接雇用の安定に関する歯どめということではございませんけれども、第十条に事業者の配慮規定あるいは国、都道府県知事のいわば努力規定というものを設けておりますし、先ほど御答弁ございましたように、私どもは、この法案は設備の処理の措置で、雇用の安定に関しましては、現在労働当局の用意しておりますいろいろな仕組みを使いまして、両方が相まって設備の処理を円滑に進める、こういうふうに考えておるわけでございます。
  50. 藤井勝志

    ○藤井国務大臣 お答えを申し上げます前に御参考までに、これはことしの一月の数字でございますけれども、全産業全体として就業者は五十一万人ふえておる、ところが製造業の関係は四十三万人減っておる、そうして一番目立ってふえているのが第三次産業のサービス業七十八万人、この数字は何を物語るかということでありますが、現在日本の産業構造が質的に変化を遂げておる、一口に申しますと、そういうことでありまして、その具体的なあらわれが特定不況業種の問題でありまして、それを一層具体的に申しますと、企業によっては大変な設備過剰に悩んでおる、こういう実態でございます。  そのようなことで非常に経営が苦しくなっておる、しかも最近の急激な円高でなおさら拍車をかけている、こういう状態でありまして、これをそのままに放置せんか、その後もたなくなって企業が手を上げざるを得ないということになれば、大変な今度は大量の失業に不幸ながら見舞われる、こういうことになるわけでございます。病の重くなる前にある程度改善すべきところは改善する、そういうことによって経営が健全化してくれば、雇用が最終的に、結果的にはかえって安定してくる、こういうことで、私は、今度の特定不況産業安定臨時措置法というのは、いまの産業構造の変化に対応してとられるべき措置であり、それに対応して労働省としては、雇用安定資金であるとか特定不況業種離職者臨時措置法に表裏一体と申しますか、一体的な運営によってこの難局を切り抜けて、質的転換を遂げる日本の産業構造に対してひとつできるだけの努力をしていく、こういう配慮である、このように考えるわけでございます。
  51. 田口一男

    ○田口委員 雇用の動きを見れば、いま労働大臣がおっしゃったように第二次産業が減っていく、その割りに第三次産業がふえる。いま言った七十八万人ですか、そういう数字は確かに労働省の各種の資料にも出ております。ただしかし、中身を見た場合に、今度この特定不況産業法案によって若干離職者が出る。それはいわゆる中高年齢者ですね。その中高年齢者が第三次産業に産業構造の変換ということで移っていくとしたって、移っていく先は不安定雇用にすぎぬのじゃないか。職はあるけれども不安定だ、こういう状態。第三次産業はすべて不安定とは言いませんけれども、いまの私どもが目にし、耳にする状態というものは、ほとんどが不安定、こういうところに押し流されてしまう。それを離職軒対策法なり雇用安定資金なりという制度で仮に支えたにしても、単に当面を糊塗するにすぎぬのじゃないか、こういう気がするわけです。  したがって、いまも通産省局長が答えたように、この法案は雇用の安定そのものを目的とするのじゃなくて、企業の安定を目的とするのだ、それは法案はそうでしょうけれども、今日の日本の一番の問題は、私は雇用の問題だと思う。その雇用ということを、双方が大事だ大事だと言いながら、一方でこの法案では安易に切り捨てようとする、そういうふうに思う。だから、この法案の中にも、離職者を極力避ける、そういった強い線が貫かれておらなければ、ここから出た者は労働省で何とかするでしょうということでは、お役所のセクトだけでは解決せぬ。  だから、こちらの法案でも極力離職者を出さないように歯どめをかける、そしてやむを得ず出た場合には、当面労働省の離職者対策法で糊塗しながらも職業転換なりなんなりということを考えていく、そうしなければ、働いておる労働者はたまったものじゃない。だから、法案になじむなじまぬという問題でなしに、その辺のところを一本ここに入れる必要があるのじゃないかと思うのですが、通産大臣、どうでしょう。
  52. 河本敏夫

    河本国務大臣 政府といたしましては、いわゆる構造不況業種に対する対策といたしましては、抜本的には景気浮揚による内需の拡大だと心得ております。内需が拡大されまして産業全体の操業率が上がる、こういうことになりますと、いわゆる構造不況業種問題の大半の問題は解決できると思っておるのです。  ただしかし、やはりこの構造不況業種には、それぞれ長年にわたるむずかしい問題が山積をしておりますので、やはり同時に特別の対策というものを並行して進めていかなければならぬ、これが今回お願いしておりますこの法律でございますが、先ほども申し上げましたように、こういう法律ができましても、私どもの期待するところは、それぞれの業種は、こういう法律に依存しないで、自力で工夫しながら、努力しながらそれぞれの業界の問題を解決していただく、これが一番望ましいわけでございますが、不幸にしてそういうことができない、それだけの実力がいまはなくなっておる、万やむを得ずこの法律によってやっていこうという場合には、政府の方もそれなりの応分の御支援をしていこうというのがこの法律の趣旨でございます。  しかしながら、いまもたびたび御指摘がございましたように、一番大きな問題は雇用問題でございます。だから、雇用問題には十分な配慮を払っていかなければならぬわけでございまして、第十条にはそれについての基本的な考え方が述べられておりまして、また、この法律の執行に際しましては、それぞれ担当大臣と労働大臣が十分な協議をするということにも運用上なっております。  それから、いま雇用についてもっときちんとしたことを決めろというお話でございますが、先ほど政府委員から答弁をいたしましたように、この法律は余っておる設備をどう廃棄するかということを決めるためにつくる法律でございますので、雇用問題には細かくは触れておりませんが、しかしながら、おっしゃるように雇用問題が大事でございますから、いま申し述べましたような精神に沿って万遺漏のないような対策を考えていかなければならぬと思います。
  53. 田口一男

    ○田口委員 この法案の性質、性格が、一方は設備の廃棄だ、それから労働省の離職者対策法はそこから出てきたものの受けざらだ、こういう割り切り方だけでは、そこで働いておる労働者として文字どおり不安定である。したがって、やはりいま大臣が最後に言われましたけれども、単に設備廃棄、格納ということを目的にする法案ではなくて、当然そこから生身の人間がほうり出されるのですから、ほうり出されないように極力抑えるようなことをはっきりやるべきである。同時に、これに関連する中小企業の問題、ここで言っておる特定不況産業が規模を縮小すれば相関連する中小企業は当然つぶれます。  これは北九州の資料なんですけれども、もうすでに雇用調整が始まっておって、今後特定不況業種法案が成立した場合の関連する企業の数だけ、労働者は除いておりますけれども、数だけ挙げておりますが、たとえば北九州だけで段ボールの企業は七つある。そのうち大企業が二で中小が五、それから肥料の場合には大企業が六で中小が逆に一つなんですが、海運なんかは中小は三百二十もある。これは北九州だけ取り上げてみたのですけれども日本全体から見ると、これによって規模が縮小すれば相関連する中小企業がそれ以上につぶれていく。ということは、そこで働いておる中小企業労働者、主に中高年齢者ですけれども、これが路頭にほうり出される、こういう実態があるわけであります。  そこで、お聞きしたいのですが、通産の法案の場合に相関連する中小企業対策をどのように見ておるのか。それから労働省の方には、昨年末、離職者対策法が成立いたしましたが、えてして関連する中小企業労働者対象になりがたい、こういう実態があるわけでございます。これをどうするのか。  それから、この法案といまできておる離職者対策法とを見ると、即離職者対策法に結びつかぬのですね。通産の法案が成立した、それによって遺憾ながら首切りが出た、すぐに特定不況業種離職者臨時措置法ということに結びつかない。結びつかぬでしょう。そこは事務的にどうなっておるか。
  54. 細野正

    ○細野政府委員 御存じのように、昨年成立させていただきました特定不況業種離職者臨時措置法は、その適用要件に二つの大きな要素がございまして、一つは、法令または国の施策によって政策的に行われる合理化に伴う直接の離職者であること、もう一つは、生産その他の経営的な要件あるいは雇用関係の指標、そういうものが一定の割合でダウンしておること、こういう数字的な側面、こういう二点がその要素になっております。不況業種というのは、数字的なものはダウンするのが一般でございますから、そういう観点から言えば、この法律によって国の施策として設備の共同廃棄等を行い、それに伴う離職者であるということになりますと、確かにおっしゃるように、法律が違いますからそれぞれの要件はあるわけで、形からいうと独立だという御議論も一応私どももよくわかるのですが、実体的に中身を見ると、いま申し上げましたように、この法律によって指定されたものというのは、まずほとんど離職者法の対象になるというふうに私どもは物の考え方として考えておるわけでございます。また、現にこの法案で例示されている業種等は、私ども特定不況業種離職者臨時措置法の対象にすでになっておるものであるということでございます。  中小企業のお尋ねもございましたが、私ども、たとえば鉄鋼、造船その他すそ野の広いものにつきましては、確かに先生指摘のような問題が生ずる可能性があるものですから、したがいまして、そういう場合には、所管の官庁はもちろん、関係の労使の団体等の御意見もよく伺いまして、指定をする際に業種の指定にかなり工夫をこらしまして、すそ野の広い場合には下請関係が拾えるようにいたしておるということが第一点でございます。  それからもう一つの問題は、御存じのように、その対象業種に属さないものについては対象にしないということが原則でございますけれども、しかし、いわゆる下請系列関係に入っておられるものについては、これはもとの方が構造不況的な要因によって経営が非常に苦しいという状況であれば、下請系列関係についてその影響をもろに受けるという実態があれば、これを受けまして、そういうものを適用対象にしようということで、いわゆる下請としての認定のできるものについては拾っていくというやり方、こういうやり方によりまして、実体的に強い影響を受け、しかも、それがもとの業種との間に密接な関係があるというものにつきましては、極力救うというかっこうをとって現在までやってきておるわけでございます。
  55. 濃野滋

    ○濃野政府委員 この法律によります安定基本計画の作成あるいはその実行ということでの設備の処理が進むに当たりまして、関連の中小企業、あるいはただいま先生指摘の点は当該業界の中の中小企業の問題もあるのではなかろうかと思いますが、いずれにいたしましても、中小企業問題というのは頭に入れておかなければならない一つの大きな問題であろうと思います。  そこで、一つは、特定不況産業業種別にこの安定基本計画をつくるわけでございますけれども、いわゆる関係審議会でこれは全部議論することになっておりますが、この審議会も業種別に部会なり小委員会をつくりまして、それぞれの関係業界のほかに、ただいま御指摘のような特にその業界業種の特性から見まして中小企業との関係が非常に強い、あるいは下請関係でも特別の業界の仕組みになっておるという場合は当然のことでございますが、その他の場合におきましても、一般的にいいまして中小企業の代表の方々も当然のことながら御参加を願う、そのほかに労働関係の代表の方々等々にも御参加願いまして、御心配のような点につきましても十分な議論をしてもらわなければならないと考えております。  また、中小企業問題は通産省中小企業庁で担当しておりますので、中小企業に関連をいたします問題には、当然のことながら、それぞれの業種の審議に当たりまして、そういう観点からも十分の議論を尽くし、御懸念のような点がないように配慮をしていきたい、こういうふうに考えております。  それからなお、いま労働省の局長から御答弁ございましたが、特定不況業種の離職者法とこの法律関係でございますが、現実的な現在の姿を申し上げますと、先ほど局長から御説明ございましたように、業種の指定要件が若干違っておりますが、私ども、この法律対象たり得るということで、五号の政令指定は候補業種を含めまして幾つかのものを考えております。たとえば法定されております平電炉業界、あるいは繊維の合成繊維、アルミ製錬、圧延、法定ではございませんが紡績業、それから段ボール原紙等につきましてはすでに特定不況業種の離職者法の対象になっております。  問題は、われわれが一応念頭に考えまして離職者法の対象になっておりません業種、肥料業界、塩ビ樹脂、それからフェロアロイ等の業界でございまして、これはこの法律が御審議の結果成立いたしまして五号の対象になった場合には、先ほど御説明のございましたように、離職者法の指定の要件も満たし得る状態になるのではないか、こういうふうに私どもは考えております。
  56. 謝敷宗登

    謝敷政府委員 船舶製造業につきましては、この法案の政令指定になりました場合は、この法案に従って処理をしていくわけでございますが、すでに下請それから関連工業を含めて特定不況業種離職者臨時措置法の対象としております。
  57. 田口一男

    ○田口委員 通産のサイドも労働のサイドも、私は、はっきり言って中小企業については冷淡だと思うのです。この通産の方の法案によって設備の処理、廃棄をすれば、常識的にいって性能の低い設備というものを先につぶしますね。大企業の場合、能率の悪い機械を先につぶす。残るのは高性能の機械ばかりなんです。それで、後でも言いたいのですけれども、国際競争力がうんと強まる。身軽になって最新鋭の性能の高い機械ばっかりで生産するのですから、この特定産業というものがどんどん力を増す。そのことによって、国内市場だけを見ても、関連の中小企業というものは二重、三重におもしがかかる。これはわかるでしょう。生き残る大企業は高性能のものばかりを残す。中小企業は高性能な機械なんて持っていない。従来のおくれた機械、それで四苦八苦やっておった。それが今度高性能のものが残ってどんどん生産性を高める、競争力が強まる、身軽になった、そういった面からも中小企業がより以上の痛手をこうむる、こういったことについてこの法案は、いまそれぞれの関係審議会がどうとかいうお答えがありましたけれども、どうも間に合わない。  さらに、離職者対策という面からいった場合に、大体大手の場合には曲がりなりにも労働組合の組織がございます。中小企業はまずないと見ていい。組織率は低い。そういったこともあって、この離職者対策法、去年の暮れからまだ間はないのですけれども、その適用状況を見た場合に、職安局長の御答弁ではありませんけれども、中小の場合は、その関連度合いというものに一〇%か八〇%かの差があるにしたって、親ガメがこけたのですから大きな痛手をこうむる。ところが、関連度合いが少ないですよといって離職者対策法にひっかからぬ、こういう状態が多いわけですね。親ガメがこけたことには違いはないのだ。だから、そういう中小企業、子ガメの問題については、むしろ大企業よりも手厚く離職者対策をやるということの方が、今日の雇用条件から見て必要なんじゃないか。それが逆になっておる。  正直に申し上げて、私も社労委員でこの議員立法をまとめた一人でありますけれども、後でさんざんやられました。結局大企業労働者だけを優遇する離職業対策だ、中小の労働者はこれでは一向に救われない。全く相済まなかったと私は頭をかいたのですが、こういう法案が出てきた際にもう一遍見直す必要があるのではないか。もちろん前提は極力離職者を出さないということが大事ですけれども、出た以上は、親ガメがこければ、その度合いが少なかれ多かれ中小には深刻な影響を与えるのだから、その労働者について全面適用するくらいの構えを労働のサイドでは持つべきではないか。通産の法案の場合には、結局高性能が残って、悪い性能を持った中小はより二重、三重に押しつけられる。したがって、この法案については、その辺のところを丁寧過ぎるくらい、くどいくらい中小の保護対策というものを打ち出していく必要があるのではないかと思いますが、どうでしょうか。
  58. 細野正

    ○細野政府委員 先ほど申しましたように、その業種に属するものについては大も中も小もない、これは全部適用になるわけでございます。中小については系列関係というものがありますから、その業種に属さないものについても、一定の関係の強いものについては救っていこうということが一つと、それからもう一つは、それでも救えない場合があるので、すそ野を広く救わなければならない業種については、そういう関連の業種自体を下請というふうに見るのではなくて、根っこの方の業種指定でもって救うようにしております。そういう形で、本来なら業種に属さないものについてまで中小企業に限ってそれを救済するようにしているのだということを申し上げたわけでございまして、そういう考え方で今後も関係官庁との相談もよくし、労使団体の御意見もよく伺って、そういう考え方を今後とも弾力的に維持してまいりたいということを申し上げておるわけでございます。
  59. 濃野滋

    ○濃野政府委員 ただいま御指摘の点は、業種によりまして、つまり大企業、中小企業いろいろ混在した業種がございまして、この設備処理が進められることによってむしろ大企業の競争力が非常に強くなる、中小企業がそういう意味での非常な圧迫を受けるという御懸念の御質問と受けとめてお答え申し上げます。  この法律は、設備処理を進める、この規定に乗ります前提といたしまして、二条の五号で一応候補業種は指定になりますが、それでは一体業界ぐるみで設備処理を進めるかどうかということのためには、もう一つ二条の第三項で、その業種申し出ということがございます場合、この申し出はまず数で三分の二の人、生産量で三分の二の人が申し出なければならないわけでございまして、ある業界が非常に中小企業あるいは小さな方のウエートが大きくて、しかも大企業の考えと中小企業の考えとの間でなかなか結びつかないというような場合には、指定要件の上で、特に数の上で業界ぐるみひとつ設備処理を進めていこうではないかという意思がなかなか固まらない場合があるのではないか、したがって、非常に中小企業性の強い業界で大企業との間で非常な考え方の違いがある場合には、この法律対象になり得ないという問題になるのではないかということが一つでございます。  それから第二に、仮に三分の二の方がまとまりまして、ひとつ一緒に進めていこうということになった場合にも、大企業、中小企業でそれぞれ設備処理のやり方等についてはいろいろ御意見があるかと思いますが、その点につきましては、先ほど申し上げましたように、個々の業種別に、どうやって幾らの設備処理をどういうかっこうでやっていくかということは十分議論をするつもりでございますので、そこで業界の中のいろいろな御意見あるいは規模別に持っておられる御意見等も十分調整して、その出たラインで設備処理が進められていく、こういうふうに私どもは了解いたしております。
  60. 田口一男

    ○田口委員 職安局長にいまの問題に関連して聞くのですけれども、仮にこの特定不況産業法案が成立をした場合に、離職者対策法の第七条との関係はどうなるのか。第七条の中身は御存じでしょうが、一定規模の離職者を出す場合、そうして配置転換というものもこの第七条の中には当然入るのかどうか、その辺の関係だけ……。
  61. 細野正

    ○細野政府委員 お尋ねの第七条の再就職援助等に関する計画でございますが、これはいま御審議いただいております法案関係なく、一定の規模以上の、もちろん解雇も含みますけれども、出向その他の異動を生ずる場合についての義務規定でございます。したがいまして、そういう状態がこの御審議いただいておる法案関係業界で起きれば、もちろんこの適用を受ける、こういうことになるわけでございます。(田口委員「あるんですね」と呼ぶ)この七条は、現在の法案関係なく、こういう条件に該当すれば再就職援助計画をつくったり、それからその届け出をしたりというようなことになります。したがって、法案ができても、それによって起きてくる雇用量の変動なんかは当然すべてかぶるということになるわけでございます。
  62. 田口一男

    ○田口委員 時間が参りましたから、最後に通産大臣に伺います。  設備処理をすることによって、結局高性能の設備ばかりが残る、こう見てもいいわけですね。そうなってくると、この中で生き残った一群の企業というものがきわめて強い国際競争力を持つようになる。そして自動車であるとか電気であるとか、いま輸出産業の中軸になっておるもの、それらと相まって国際競争力というものをどんどん強めていけば、結局、さっきもちょっと言ったのですが、今日二百二十二円というふうな状態になっておる円高をさらに促進することになりはしないだろうか、そのことによってまた国内企業不況に陥る、こういう悪循環を繰り返すのじゃないかというような危惧を持つのですが、その辺のお考えはどうでしょう。
  63. 河本敏夫

    河本国務大臣 構造改善事業をいたしますと、確かに競争力は強くなると思います。ただしかし、そのことで非常に輸出が伸びるであろうということはいかがでしょうか。と申しますのは、構造不況業種と考えております業種の全生産量は、全産業のおよそ一五%くらいといまのところ想定しておりますので、さほど大きな影響は出ない。もっとも、この中で一番大きなシェアを占めておりますのは造船でありますが、造船のことにつきましては運輸省からお聞きいただきたいと思います。
  64. 謝敷宗登

    謝敷政府委員 造船業につきましてのこの法案による設備処理の考え方でございますが、現在の造船の構造不況と言われるものは国際的なものでありまして、したがいまして、欧州その他第三国を含め基本的には軒並み需要の減少に悩まされているわけでございます。したがいまして、設備処理に当たりまして、確かに先生指摘のような新鋭設備という議論と、また逆の立場で中堅企業あるいは中小企業の安定ということとの調整は、安定基本計画の中あるいは政令指定に至る前の業界内での話し合いの中で十分行われると考えております。したがいまして、残った形が、長期的に安定するためには国際的な配慮も十分しなければならないわけでございまして、現在まで日本造船業は世界の五〇%というシェアを持ってきておりましたが、これは開発途上国等の自然発生的な発展を考えますと、現在すでに五〇%を割ってきております。そういう中で、安定基本計画をつくります際にも、国際的にどういう立場でなければいかぬという点については、十分審議し、検討した上で対応してまいりたいと考えております。
  65. 田口一男

    ○田口委員 もう終わりますが、重ねて関係大臣、特に通産大臣に要望申し上げますが、これは設備の処理を目的とする法案には違いありませんけれども、今日、日本の一番の政治課題と言ってもいいぐらい雇用の問題が深刻でありますから、この法案が成立すれば、大なり小なり離職者が出るであろうということが見込まれるわけでありますから、現にある離職者対策法の第七条を入れるとかどうとかという細かいことは私は言いませんけれども、そういった趣旨のものをきっちり盛り込んで、関係労働者が不安のないように、失業者を出さないように、それによって所期の目的が達せられるということをこの法案に盛り込んでいただきますように、それがなければ、この法案は単なる労働者切り捨て御免の法案にすぎぬということになりかねませんから、ぜひともそういう趣旨を盛り込んでいただきますようにくどく要望いたしまして、質問を終わります。
  66. 野呂恭一

    野呂委員長 次に、越智伊平君。
  67. 越智伊平

    ○越智(伊)委員 私は、当特定不況産業安定臨時措置法案につきまして、社会労働委員会に所属をいたしておりますので、主として雇用の問題についてお伺いをいたしたいと思います。  まず第一点は、御案内のように最近二百二十二円前後という円高、さらに構造不況業種の問題を抱えて本年の雇用情勢は至って厳しいと存じます。五十二年度を見ましても、各月とも百万人を超えるような趨勢にありまして、本年の一月末は百二十六万人と失業者がふえているのでございます。  そこで、こういう状態の中で当面の雇用失業情勢がどのようになっておるか、どういう見通しであるか、このことについて、まず労働大臣にお伺いをいたしたいと思います。
  68. 藤井勝志

    ○藤井国務大臣 現在の厳しい雇用情勢の実情でございますが、けさの閣議で二月の情勢の発表がございました。一月が百二十六万人の完全失業者でございましたけれども、二月現在において百三十六万人と完全失業者がふえまして、そして完全失業率が季節調整をいたしまして二・〇%、有効求人倍率が〇・五四、一月現在では〇・五二でございましたから、この点はやや改善されておりますけれども、依然として厳しい雇用情勢が続いておりまして、さらに現在円高が一層激しくなっておりますから、これから先大変な状態だと思います。  したがって、政府としては、しばしば申し上げておりますように、何といっても早く不況脱出、大型積極財政運営によって公共事業を中心に景気の回復を図ることが大前提でございますが、このような努力をいたしまして、五十三年度において五十五万人の雇用増、そして失業者を百十五万人から百十万人と五万人減らそう、これを努力目標としてやっておるわけでございます。
  69. 越智伊平

    ○越智(伊)委員 いま大臣から、これからの見通しについてお話があり、百十万人まで失業者を減らしていこうというように御説明がございました。しかし、当法案からいいましても、新しく失業者がさらにふえていくのではなかろうか。もちろん景気の動向にもよりますけれども、離職者がおいおい増加していくのではなかろうかと私は考えます。これには、もちろん第一番には失業者の予防、できるだけ離職者を出さない方向で進まなければならない。これについては労働省としても努力をしていただいておる、あるいは通産、運輸もそのとおりであろうと思いますけれども、やはりいまのような景気の横ばい、さらにお話にもございましたような円高ということになれば、自然離職者もふえてくるのではなかろうか。しかし、また一方では、再就職といってもなかなか大変なことであると思いますが、労働大臣のいまのお話、百十万人に失業者を減らそうということについて、具体的にどういうところに重点を置かれるか、この点についてお伺いをいたしたいと思います。
  70. 藤井勝志

    ○藤井国務大臣 まず、何よりも失業者を未然に防ぐということが大切でございまして、そのためには御承知の雇用安定資金制度を積極的に活用する。余儀なく失業者が出た場合、これは議員立法で制定をされまして現在実施しております特定不況業種離職者臨時措置法を効果的に活用いたしまして、まず雇用保険、四十歳以上は九十日延長ということによってある程度つなぎを増していくといったこと、それから、その間において職業訓練をやって職種の転換の方向にいく、あるいは職業訓練手当をやるといったこと、それから、このような不況業種から離職された方を雇い入れる側に対してもこれが助成をしていくといったこと、同時に、公共事業を積極的にやりますが、特定不況業種の地区の指定を受けたところは、いわゆる失業者の吸収率制度によって、これは緊急対策としてその方向へも向けていく、それともう一つ、五十三年度に新しい雇用政策として、中高年齢者の雇用を開発していくという面において、このような人たちを受け入れる事業主に対して助成をしていく、中小企業者である事業主が受け入れた場合には賃金の三分の二、大企業の場合は二分の一、こういうことによって民間の活力を活用して雇用の開発をしていこう、こういったもろもろの施策をきめ細かくやりまして、厳しい雇用情勢に対処していきたい、こういうことでありますが、やはり一刻も早く景気がよくなるということが何としても願わしいわけでございますから、そういう背景のもとにいまのような事態に備えているというのが現状でございます。
  71. 越智伊平

    ○越智(伊)委員 ただいま大臣からいろいろお話がございまして、非常に積極的にやっておられる、このことはよくわかりますし、また御努力をいただきたい、かように思います。  さて、いまもお話がございましたように、先日この特定地域を指定なさいましたが、指定をされた五地区、すなわち室蘭、尾道、今治、長崎、佐世保ですか、こういうところの指定をいたしまして、いまも大臣が公共事業等にある程度の率を吸収させる、こういうことでございますが、これの受け入れ側についてひとつお尋ねをいたしたい、かように思います。  いまの中で、尾道、今治というのは、ちょうど道路公団が架橋をやっているのでございます。また、御承知のように、この地区は非常に造船不況な地域でございます。でございますから、造船工等が失業をしておる、倒産企業も非常に多い、こういうことでございます。  そこで、まず第一番に、この非技能者についてどの程度受け入れられるのか、あるいはまた有技能者、たとえば溶接工であるとか塗装工であるとか、こういうものにつきましては、橋と直接関係があるというふうに言われておりますが、地元ではこれの受け入れが少しよくない、協力をしてくれてないというような意向があるのでございます。  そこで、建設省の方からお答えをいただきたいと思いますが、この架橋公団の指導という点についてどのように考えておられるか、お伺いをいたしたいと思います。
  72. 加藤優

    加藤説明員 お答えします。  技能労務者をどの程度受け入れられるかというお話ですが、現段階では尾道-今治ルートは、主として大きな橋、大三島橋とか因島とか、そういう橋をやっておる段階でございまして、これは大規模工事だとか長大橋だとか海中工事で、通常の他の公共事業と同一に律し切れない面がございます。工事の難易度あるいは規模等からして、特殊構造物が先行しておるというような段階でございますので、現時点では、おっしゃるような造船の技能労務者を直ちに受け入れるという形になってございません。しかし、私どもとしましては、将来、特に因島大橋の関連陸上部、つまり橋から外のところ、陸上部になりますと、やはり工事の発注規模、難易度からして相当地元の方々の労働力を期待しております。  ちなみに、大三島大橋ですと、現在進捗率は、陸上部合わせまして六七%程度ですが、これも陸上部では、それなりに中小業者の方々をお願いして、地元の資材、労務なり、そういうものを受け入れているつもりです。  いま概括申し上げましたようなことですが、Eルートに限らず、本四公団全体、Dルート、Aルートその他相当大規模に仕事が出る段階では、十分その辺は公団を指導してまいりたいと思っております。
  73. 福永健司

    福永国務大臣 別に私に要求はございませんでしたが、伺っておりながら、私からもお答えしておく必要があろうと思いますので……。  いま越智さんがお挙げになりましたような仕事の分野では、不況にあえいでいる造船関係のものを助けることができるような措置政府全体としてはとるべきが当然だ。そこで、建設大臣と私の間の話で、そういうことでできるだけ造船関係の人を吸収できるような仕事を公共企業等で促進してもらう、全体としてもそうでございますが、ことにいま先生がお挙げになったような地帯は特にあえいでいるようなところでございますので、そういうところへ公共事業等も持っていって、しかも仕事としてはなるたけそういうものが役に立つような仕事をということで、大臣間ではその点につきましてはかなりよく打ち合わせをしてございます。いま公団の話では、なかなかうまく行ってないが、これからやるような話で、これはそれをうんとやってもらわなければいかぬと思っております。いずれにいたしましても、そのもとともなるべき最高責任者間では強く申し合わせがしてある、このことを申し上げておきたいと思います。
  74. 藤井勝志

    ○藤井国務大臣 五地区を指定いたしました中に今治も入っておるわけでございますが、今治には、現地に政務次官も派遣いたしまして、失業多発地帯としてわれわれも非常に注目をいたしております。  いま運輸大臣からもお話がございましたが、先般、経済対策閣僚会議並びに雇用問題閣僚懇談会の合同会議におきまして、運輸大臣からもいろいろお話がございましたが、私も、雇用の造出という面においていろいろ発言をいたしまして、この公共事業へ失業者を吸収するというものも、やはり造船関係であればその技術を生かされるように雇用の吸収ということを配慮してもらわなければならぬ、同時に、地区において市町村並びに県の出先といったところが、職業安定所が中心になりまして積極的に求人の開拓をやっていく、こういったことで全力を尽くしたいと思います。
  75. 越智伊平

    ○越智(伊)委員 ただいま建設省並びに運輸大臣、労働大臣から御答弁があったわけなんですが、運輸大臣、労働大臣の御答弁のとおりだと思っております。ただ、建設省の考え方が、いま聞いておりますように大型プロジェクトでなかなかそういうものになじまないというような言い方、こういう考え方を率直に現地で持っておるから私は質問を申し上げたのでございます。でございますから、確かに長大橋でございますから専門の業者がやられることも結構でございますし、また、でき得れば下請等を、尾道も今治も非常に不況な地帯ですから、地元の鉄工所なり造船所にやらすというようなことの配慮、あるいはやらせないにしても未技能者の吸収は陸上部ではできると私は思います。また、有技能者にいたしましても、先ほど私が指摘いたしましたように、塗装工であるとか溶接工であるとか、こういうものは現地で使うものは使えると思うのです。ところが、いまそれはなかなかそういうふうになっていない。でございますから、これはぜひひとつ三大臣の方でよく御協議をいただいて、そういうものもできるだけ吸収をするようにお願いをいたしておきたいと思います。  さて、労働大臣に一点お伺いいたしたいのでございますが、会社更生法なりあるいは和議を申請いたしました場合に、何人か再建をしようということで技術者を中心に残しております。これが雇調金の対象になるかならないかの問題で、いろいろそのときそのときのケース判断をされておるようでございますけれども、まじめに再建を考えておる場合には、この法の精神からいっても、はっきりとこれは対象にしてやるということで再建を図った方が失業者を出さない、予防をする、こういう点からいうといいと考えるのですが、労働大臣、いかがでございましょうか。
  76. 藤井勝志

    ○藤井国務大臣 最近の大変厳しい経済情勢、また円高追い打ちというこの激しい移り変わりの経済社会において、事業家がいろいろ苦労されておるわけでございますから、当然いろいろな対策をしなければなりませんが、労働省の立場においては、いわゆる雇用安定調整制度という点において、いま御指摘会社更生法の指定を受けて再建をやろうとしているところに働いておる人たちに対する雇用の安定のためには、休業手当に対して国が応援をするという制度がありますから、そういった線に沿うていま御指摘の問題は対処していける、私はこのように考えております。
  77. 越智伊平

    ○越智(伊)委員 いまのとは角度がちょっと違う、逆なことなんですけれども、いま会社更生法並びに和議、こういうことが少し安易に行われ過ぎるのでなかろうか。言いかえますと、本当に苦しくて倒産をした、そういう会社が多いと思いますけれども、中には計画倒産でなかろうかということを言われております。これはもちろん裁判所が決定をすることでございますから、このことについて私はとやかくは言わないのでございますけれども会社更生法の法そのものを少し見直しする必要があるのでなかろうか。少し苦しくなると会社更生法なり和議の申請をして、認可になれば負債の切り捨てが行われる、あるいはそういう状態になると労働者も、非常に極端に言いますと首切りがやりやすいということから、あそこは計画倒産でなかろうかといううわさが流れたりいたしております。これは事実でございます。  そこで、法務省にお伺いしますが、いまの法の見直し、こういう点について法務省の御意見はいかがでございましょうか、ちょっとお伺いをいたしたいと思います。
  78. 稲葉威雄

    ○稲葉説明員 会社更生法とかあるいは和議法という法律自体は、財産的に破綻に瀕した企業に対しまして更生の機会あるいは再建の機会というものを与えるという制度でございまして、ある程度広く門戸を開いておく必要があろうと思うわけでございます。ただ、それが先生指摘のように計画的になされる、あるいはこういう法律を隠れみのにして自分の失態を覆い隠すというようなことになりますと、非常に問題でございまして、それには法律上はそれなりの手当てをしております。たとえば会社更生法でございますと、破産回避、誠実に再建する意思もないのに破産宣告を受けることを回避するというだけの目的でなされた場合とか、あるいは申し立てが誠実にされたものでないというような場合には、その更生の申し立てを棄却することができるということになっております。     〔野呂委員長退席、山下(徳)委員長代理着席〕 また、和議の方でも、そういう債権者の一般の利益に適合しないというような和議の申し立てば棄却され、あるいは和議が認可に付されないというようなことになっているわけでございまして、それ相応の手続、法律上の手当てはされているわけでございます。  また、もちろん計画倒産というようなことでございますと、詐欺更生罪というような罰則もかかるというようなことになっているわけでございまして、法律としてはそれ相応の手当てをしているのではないかと一応考えております。  ただ問題は、それぞれの運用の問題でございまして、裁判所も最近はかなりその辺に留意をされて運用されておられるように伺っております。また、会社更生法の手続上では、たとえば行政庁へ通知をいたしまして、行政庁からはその事件につきまして、これは開始決定をする場合と更生計画を認可する場合と両方ございますわけですけれども、それぞれ意見を述べることができる、あるいは裁判所からも意見を聞くことができるというような手当てもしておりますので、その辺は法律上はかなりいろいろなところに配慮をしておるのではないか、現行法の運用でも十分賄えるのではないかというふうに考えております。
  79. 越智伊平

    ○越智(伊)委員 ただいま御説明がございましたが、そこに少し問題がありますのは、意見を聞くことができる、意見を述べることができる、こういうことなんですが、私はこれを、意見を積極的に述べなければならない、また、聞かなければならない、こういうことが必要なのでなかろうかと思うわけなんです。率直に言って、何社か倒産いたしますと、中にこれは計画倒産だというようなうわさをされる企業も確かにあるわけなんですが、ちょうど通産大臣、参議院の方へ行かれましたが、政務次官見えておりますが、政務次官、御見解いかがでございましょうか。
  80. 野中英二

    ○野中政府委員 先生質問の問題でございますけれども、御承知のとおり、更生法の三十五条の一項に、更生手続開始申し立ての場合には所管の行政庁に通知しなければならないというふうに書いてございますし、また、更生開始決定の場合も四十八条に規定してあります。御存じのとおり、三十五条の第二項によりますと、裁判所は必要に応じて所管行政庁の意見を求めることができるとありますので、われわれは、意見を求められました場合に、次の二点について留意しながら意見を述べてまいりたいと思っておるわけでございます。  その第一点は、御存じのとおり金利コストが安くなるものでございますから、同業他社に及ぼす影響というものがございます。第二点は、またいま先生も御指摘がありました雇用の問題に及ぼす影響がございますので、この辺を十分勘案して意見を述べてまいりたいというふうに考えております。
  81. 越智伊平

    ○越智(伊)委員 時間が参りましたので、最後に運輸大臣にひとつお願いをいたしたい、こう思います。  実は昨年の十二月二十三日の閣議決定で、海運局の出先の出張所、現在八カ所あるそうでございますが、これの全廃ということが出ております。実は私の出身地でございます今治でございますが、造船所が約三十社、あるいは海運業者が非常に多い、したがって海員も非常に多いところでございます。しかも島嶼部を控えておりますので、これが松山へ行くとなりますと、一晩泊まらなければならない。特に最近は、造船にいたしましても、新造よりは修繕船が多い、でございますから、手続をたびたび行わなければならない、こういう実情でございます。でございますから、閣議決定でございますけれども、こういう不況のときでもございますから、何かの方法でひとつ考えていただきたい、かように思います。一定の方法で、地域の実情を考えないでただ廃止ということだけになりますと、地域のこうした企業なりあるいは船員なりあるいは船主なり、これは大変な迷惑をいたそうと心配をいたしております。これは運輸大臣に、特に行管にもお尋ねいたしたいのですが、時間が参りましたので、議論よりはお願いをしておきたい、かように思います。
  82. 福永健司

    福永国務大臣 ちょっとお答えしておきます。  お願いという言葉で表現されましたが、ずいぶん御心配でございましょう。お話しのように、確かに年末に出張所は廃止する、こういうことに決めました。この経緯をいろいろ申し上げることはこの際遠慮いたしますが、まあいろんな次第で、行政改革というような観点からああいうことになったわけでございますが、今治等の実情は、私もある程度認識しております。だから、出張所が廃止したから皆なくなってしまうのだということにするつもりはございません。分室等の設置、もっともこういう出張所をやめて分室ではどうなんだという意見がまた別途出てくると思いますが、これはこれでまたなにでございますが、今治の実情等からしますと、本当に関係者の皆さん気の毒ですから、そういう地元へのサービス等に関しましては、従来と変わらないように大いに考えていきたいと、こう思っておりますので、具体的にどうするかは、ひとつ私、篤と考えさせていただいて、必ず善処をいたします。
  83. 越智伊平

    ○越智(伊)委員 終わります。
  84. 山下徳夫

    ○山下(徳)委員長代理 原田昇左右君。
  85. 原田昇左右

    ○原田(昇)委員 まず、運輸大臣にお伺いしたいのでございますが、造船をこの法律に乗せて設備の処理をおやりになるということでございますが、かねて運輸委員会関係業界並びに金融機関等から造船不況の現状等についてお伺いしてまいったわけでございますが、状況は大変深刻のようでございます。  そこで、大臣として、今後の造船の操業度の見通しといいますか、ことしが約五、六百万トンと承っておりますが、さらにどういうふうになっていく見通しを考えておられるのか、お伺いしたい。
  86. 福永健司

    福永国務大臣 造船は非常に苦しい状況でございます。現在苦しいが、将来どうかということにつきましては、これもやや長期的に見た場合と短期的に見た場合と若干違うのでございますが、長期的に見ますと、日本造船技術等が原田さんもよく御承知のようなことでございまして、船がかなり古くなってくると、やはり日本にということもかなりあるわけでございますし、また、いろいろの新しい船にいたしましても、従来のものばかりでなくて、さらに進歩したもの等も考えられますので、かなり長期的に見れば、これはもう望みは大いにあると思います。当面なかなか容易でないので、ここしばらくの間は依然として苦しい、こういうことを覚悟せざるを得ないと思います。  数字が必要でございましたら局長等から答えさせますが、いずれにしましても、大勢そういうことでございます。したがって、それなりの対策が必要であることを強く感じ、かつ実行しているところでございます。
  87. 原田昇左右

    ○原田(昇)委員 そこで、この法律によりますと、事業者の申し出によって安定基本計画を立て、そしてさらに業界努力が十分でない場合に共同行為の指示をするということになっておりますけれども、この申し出というのは、具体的にいまのような状況ですといつごろある見込みでございますか。
  88. 謝敷宗登

    謝敷政府委員 設備の処理を含みます構造改善について法律案を審議していただいているわけでございますが、これと並行いたしまして、造船業界で自主的にどういう構造改善を進めるかという点を業界それぞれ現在検討しております。なお、それらを受けまして、海運造船合理化審議会で現在あらかじめ基本的な議論を煮詰めるための準備作業をしております。一つは需給の見通しの確定と、それからどういう方法で設備の処理あるいは構造改善、いわゆる企業の問題も含めました構造改善について取り組んでいるわけでございます。したがいまして、本法律案が成立をいたしました暁から、具体的には海運造船合理化審議会の部会を拡充強化いたしまして、再建のための基本的な方向の審議に入っていただいて、それらを見ながら、業界の大多数が申し出をして、申し立てがあった場合に政令指定の運びにする、こういう基本的な考え方で、その後に安定基本計画ということでございますが、できるだけその基礎作業の時間を短くするように今後とも努力をしてまいりたい、こう考えております。
  89. 原田昇左右

    ○原田(昇)委員 いまの私の質問は、夏ぐらいには受注がほとんど見通しがなくなってしまう、造船所によっては仕事が切れるところがたくさん出てくるだろう、こういうような状況において、これによると、大部分が申し出たとき初めて発動することになっていますが、業界として大部分がぜひやってほしいということが恐らく意思決定されるだろうと思いますが、その見通しはいつごろだということを聞いているのです。
  90. 謝敷宗登

    謝敷政府委員 ただいまそれぞれの業界団体、基本的には内航船を主体といたします中小造船業はこの対象の外であろうかと考えておりますが、中型造船工業会以上の事業所がこれの対象となることを希望しておることは確認をしておりますが、具体的にどういう詰め方をするかという点で、現在それぞれの機関で検討中でございます。したがいまして、先生いま御指摘の夏という点におきましては、基本的には安定基本計画も含めてその姿が明らかになるということを期待しておるわけでございます。  それから、仕事のなくなる問題とこれとは直接関係がございませんので、その間、仕事量の創出ということについては全力を挙げて取り組んでまいりたい、こう考えております。
  91. 原田昇左右

    ○原田(昇)委員 安定基本計画は、そうするといつごろ具体的な案ができる見通しですか。
  92. 謝敷宗登

    謝敷政府委員 先生からお話のありました夏を目標にして、いま考えておるところでございます。
  93. 原田昇左右

    ○原田(昇)委員 造船の場合、一般に見込み生産をやっている業種と違いまして、注文生産でございますから、注文がなければこれはどうしようもないわけですね。そこで、この設備の処理を考える場合に、具体的にたとえば官庁の船がどの程度出るとかあるいは輸出がどうだとか、こういう需要の方の推計ができないと、具体的な安定基本計画というものは定まってこないのじゃないかと思うのですが、その辺はどういうふうに考えておりますか。
  94. 謝敷宗登

    謝敷政府委員 需要の中心は外航船でございまして、対象はおのずから外航船建造という造船業の規模に限定して考えたいと思っております。したがいまして、その中でもやはり大部分は一般商船であろうかと思います。これの見通しを立てまして、その上で、これは中期的な見通しからさらには八五年ぐらいまでの見通しの確定をしたいと思っておりますが、これはいろいろ長期的には問題があるといたしましても、少なくとも設備の処理のための基本は一般商船の見通しでございます。これをまず立てまして、その上で、新分野も含めまして一体どのぐらいプラス需要を創出できるかという点を検討して、それも入れて需給のバランスを考えていくということになろうかと思っております。
  95. 原田昇左右

    ○原田(昇)委員 大体いまお見込みで、設備廃棄というか休止というか、あるいは譲渡というか、どの程度のものをすればいいと考えておるわけですか。
  96. 謝敷宗登

    謝敷政府委員 五十三年度、五十四年度のいままでの見通しでは、これは五十一年六月の海運造船合理化審議会の答申のラインに沿いまして、外航船六百万トンという見通しをしていたわけでございます。ただ、それが現実には非常にむずかしくなってきているということで、どの程度の規模を基準として考えるかという量の点につきましては、現在需要の見通しと、それから供給能力の細部の検討とをやっておる最中でございまして、具体的にどうという点につきましては、それの上に立ってというふうに考えておりまして、具体的な数字については、現在まだ詰めているところでございます。
  97. 原田昇左右

    ○原田(昇)委員 それから、公取委員会の同意が必要だということになっておりますが、指示カルテルの場合ですね、公取委員会はどういう立場でどういう観点から同意をされるか、お伺いしたいと思います。
  98. 戸田嘉徳

    ○戸田政府委員 お答えいたします。  私どもの方で、主務大臣からお話がございましたときには、まずその業界の実情等もよく調べさせていただきまして、そうしてその法律の要件を踏まえまして、その上で、特に独禁政策の立場から支障がないかどうかというような点を十分勘案いたしまして、そして同意を申し上げる、かようなことに相なると思います。
  99. 原田昇左右

    ○原田(昇)委員 いまの御説明の十分業界の実情を、同意を求められてから調べられたのじゃ、これはもう相当時間がかかっちゃうですね。火がついているとき、もっと早く処理してもらわぬといかぬと思うのですが、いかがですか。
  100. 戸田嘉徳

    ○戸田政府委員 業界の実情等につきましては、たとえば主務官庁においても十分調べておられることと思いますので、そういう点からも伺いますし、事態は、おっしゃるようになるべく速やかに処理する必要があるわけでございますので、私どもといたしましても、できるだけ速やかに同意をいたしたい、かように思っております。
  101. 原田昇左右

    ○原田(昇)委員 アウトサイダー規制がなくなりましたけれども、果たしてアウトサイダーの規制がなくてうまくいくのかという点、疑問に思う向きもあると思うのですが、いかがですか。
  102. 濃野滋

    ○濃野政府委員 アウトサイダー規制の問題は、この法律案の制定の準備の段階におきましても、いろいろ議論になったところでございます。いろいろな御議論がございましたが、ただ私ども、現在の法案にはアウトサイダー規制の規定は全くございませんが、第一に、この法律案で過剰設備の処理に入ります大前提といたしまして、やはり業界の自主的な団結と申しますか、解決への業界ぐるみの努力ということを全体の法案の基本的な考え方にいたしておりますので、数の上であるいは事業活動の上で三分の二の多数の方の申し出ということを前提にこの法案のいわば措置に乗っていくわけでございますから、したがって、非常に多くのアウトサイダーの方がいて、そもそも業界全体の意思がまとまらないということは、ある意味では残念ながらこの法案対象にはならないということでございます。したがって、この法案対象になりまして指定業種として設備処理の段階に入っていく場合には、一応業界としてはまとまった形になっておるということが前提ではないか、かように考えております。  第二に、そうは申しましても、過剰設備の処理を具体的に進めるということになりますと、これは企業家、事業家にとっては非常に基本的な問題でございますので、なかなか全体の意思がまとまらずに、アウトサイダーの存在ということが当然予想されると思いますが、指示カルテルとは申しましても、言葉は若干不適当かもしれませんが、やみくもに指示をしたから最後の段階業界として全部共同行為に入るというふうには考えておりません。やはりその前提といたしまして、それぞれの業界と私どもいろいろな点で十分に御相談をし、必要があれば説得に努めるというような行政的な努力も、いままでよりもさらに一段とやらなければならぬと思います。そういうことによりまして、事実上基本計画ができた業界につきましては、そういう努力も含めて何とか設備処理というものがうまく実施されるということに努めなければならぬ、こういうふうに考えているわけでございます。
  103. 原田昇左右

    ○原田(昇)委員 この点はいまの御答弁でわかりますけれども、要するに、正直者は一生懸命設備の規制をやっておるのに、アウトサイダーでのほほんとしておって、できた果実は均等に得るわけですから、正直者がばかを見ないようにひとつこれは十分行政指導をしていただきたいと存じます。  それから、基金についてお伺いしたいのですが、開銀出資が財投計画では百億までだと聞いておりますが、これは基金に関する資金需要をどの程度と予想し、何か造船とか合板を入れないで考えられたということも伺っておるのですが、その辺はいかがになっておるのか。  さらにもう一つ申し上げますと、造船、合板が入ればさらに追加しなければならぬと思うのですが、どう考えておられるか。それから民間出資はどの程度考えておられて、それはどういうように出資されるのか、こういった面について伺いたい。
  104. 濃野滋

    ○濃野政府委員 お答え申し上げます。  第一の開銀からの出資の額でございますが、ただいま御指摘のございましたように、経緯を申し上げますと、昨年末、五十三年度の財投計画の作成に当たりまして、私ども通産省が中心でこの構想のまとめにかかりましたために、その段階では私ども通産省所管のいわゆる構造不況業種と言われておる主要業種を頭に置きまして、この信用基金の資本金が幾らぐらいあればいいかというような計算をしたことは事実でございます。しかし、その後この法案作成の段階で、運輸省あるいは農林省所管業種等も対象業種として当然のことながら入ってまいりました。ただ、財投計画で百億を限度に開銀が出資をできる、こういうかっこうになっておりまして、私どもは、とにかくこの百億と、それから第三の御質問に絡みますが、民間からはただいま二十億を一応の目安として集める。ただ、先ほど私が申し上げました百億の開銀出資は、当面そのうち八十億出しまして民間から二十億、百億でスタートをし、民間の出資が二十億を超える見込みがはっきりしましたときに残りの二十億も出す、こういう了解のもとにこの法案の作成にかかったわけでございます。  いずれにいたしましても、この法案が御審議の上成立をいたしまして、私どもいろいろ目安あるいは念頭に対象候補業種を入れておりますが、先ほどもちょっと申し上げましたように、この法律の規定によって設備処理を進めようということは、結局はその候補業種業界がこれに乗ろうかどうかという判断がまず第一にございますし、それから第二に、それで設備処理の内容が固まりました場合に、具体的に設備処理に伴ってこの信用基金に一体幾ら来るかという額の問題は、そういう段階でだんだん固まってくるわけでございまして、そういうことで、まずただいままで決まった額でひとつ発足をして、今後のそういう具体的な方向の中でその次の段階は考えていきたい、かように私どもは考えております。  それから、二十億につきましては、何分ともまだ法案が衆議院の段階で御審議の途中でございますが、ただ私ども、この二十億の民間出資につきましては、非公式な打診といたしまして、産業界を中心に金融界等も含めましたいわゆる財界にただいま協力方の打診を進めておるところでございます。したがって、どこの業界から幾ら出るというようなことにつきましては、何らまだ決定はされておりません。
  105. 原田昇左右

    ○原田(昇)委員 そうすると、開銀出資の百億というのは、もっと需要が出てくれば随時追加できると考えていいわけですね。
  106. 渡辺喜一

    渡辺(喜)政府委員 開銀出資は、一応財投計画には百億、ただいまの産政局長の御答弁のとおり組み込まれているわけでございます。ただ、これらの計画につきましては、弾力条項がございますので、実際の需要が出てきてそういう必要性があるという判断になりますれば、これをさらに年度途中で増額するということは可能でございます。
  107. 原田昇左右

    ○原田(昇)委員 それから、この債務保証をやるのにさらに裏保証を要求するということを聞いておりますが、そもそも造船等の例で見ましても、ほとんど担保余力がない。そのないのを設備を半分近くも凍結しちゃおう、こういうときに裏保証を三分の二もとろうというのはいかがかと思うのです。これではせっかく基金をつくっていただいても、基金が動かないのじゃないか、こういうように思うのですが、いかがですか。
  108. 渡辺喜一

    渡辺(喜)政府委員 この基金を設けました趣旨というのは、まず第一に、当該企業並びに関連の業界あるいは関係金融機関、それに政府も加えまして全体が一体となって再建を図っていく、こういうところにあるわけでございます。全く基金だけで全部保証して全部リスクを負担する、こういうことでございますと、これは当該企業あるいは関連の金融機関等のリスクを全部基金にかぶせるという話になるわけでございまして、本来の趣旨でございます全体が一致協力して再建を図っていく、こういう趣旨にはそぐわない結果ともなりかねないわけでございます。全体が協力してやっていくという意味からも、それぞれがやはりある程度最終のリスクを負担する、こういう体制が望ましいのではないかと考えておるわけでございます。  ただ、具体的にどこがどれだけの裏保証をするかというふうなことについては、これから検討をしてまいりたい、かように考えております。
  109. 原田昇左右

    ○原田(昇)委員 これから御検討になるということでございますので、私は、要望としてぜひ両大臣に申し上げておきたいのですが、債務保証については、やはりこの実態からいって、実際にこの保証基金が動くようにしていただかないといけない。もちろん業界自身の責任という問題もございますから、何も裏保証をゼロにしろと申し上げているわけじゃないのですが、伝えられるところによりますと、三分の二を裏保証してこい、この基金で三分の一の保証をしてやろう、これじゃ全く造船業のいまの実態からいうと動かないのではないかと心配されるわけでございます。ぜひともこの比率は逆転ぐらいにしてもらわなければいかぬのではないか、こういうように思いますが、大臣から、その点責任を持って実行可能な基金にしていただきたいと思いますので、所信をいただきたい。
  110. 河本敏夫

    河本国務大臣 いま大蔵省から答弁がありましたが、実はこれから決めるのです。しかし、せっかくこういう制度をつくりましても、動かないということでは困りますから、現状をよく調べまして、この程度ならばやれるであろうという線を関係各省でよく相談をいたしまして、動くようにいたします。
  111. 福永健司

    福永国務大臣 ただいまいろいろ伺いましたが、しかと承っておいて善処したいと存じます。
  112. 原田昇左右

    ○原田(昇)委員 運輸大臣にお伺いしますが、造船の場合、設備の問題ももちろん重要な問題でございますが、一番大事なのは、何といっても需要を創出していくということが必要ではないかと思うのです。これは官庁の船を代替する問題とかいろいろございます。さらに石油の備蓄基地をつくろうという計画も伺っておるのでございますが、こういう問題について、これから相当運輸省でがんばっていただき、また、備蓄基地については通産省で相当配慮をしていただかなければならないと思うのです。運輸大臣は、関西空港で積極的な御提案をされておられることを高く評価しておるのでございますが、これからのその辺についての御決意を承っておきたいと存じます。
  113. 福永健司

    福永国務大臣 どうも困ったから後始末をどうするかということの問題もかなり多いのでございますが、政治のあるべき姿としては、そういうことが起こらないように新しい分野を開拓する、いろいろの対策を講じていくことが大変必要だと思うわけでございます。現実に困っておると、そのことにばかり頭がいくものでございますが、それはもとよりその対処は必要でございますが、同時に、新しくいろいろな対策を講じていく、そういう意味で、需要の創出等に当たりましては、私ももともと代議士なんかになる前にやっていたことは事業家でもございますので、私なりの考え方等もございますが、いまお触れになりました点については、うんと積極的に臨まなければならぬ、これはひとり運輸省のみではございません、政治全体がそうあるべきものだ、こういうふうに強く感じ、したがって、感じるだけでなくて実行に移してまいりたいと考えます。
  114. 河本敏夫

    河本国務大臣 政府は、去る二十五日に関係閣僚が集まりまして、内需拡大のための対策会議をやりましたが、その中に流れております精神は、新しい仕事をつくり出していこう、こういう考え方が流れておるわけでございます。いまの御意見は、この趣旨にも合っておりますので、私どももその方向で努力をいたします。
  115. 原田昇左右

    ○原田(昇)委員 では時間でございますので、質問を終わります。
  116. 山下徳夫

    ○山下(徳)委員長代理 長田武士君。
  117. 長田武士

    ○長田委員 まず、運輸大臣にお尋ねをしたいのであります。  船舶業界における不況の原因は、大臣もよく御存じのとおり、石油危機後の世界的な不況によりましての貿易の不振、それから石油危機前におきましてのタンカーへの投機的発注が重なりまして、タンカーを中心といたしまして世界的規模で莫大な船腹過剰が発生したためだ、そのように言われておるわけであります。こうした状況から、船主の建造意欲が極度に減退をいたしておる中で、さらにそれに追い打ちをかけたのは、御存じのとおり円高の問題でございます。そういう意味で、昨年の秋からの円高によりますところの受注減は非常に大きいのではないか、このように言われておるのですけれども「そこらの点について大臣のお考えをお伺いしたいと思います。
  118. 福永健司

    福永国務大臣 いま御指摘になりましたようなことがいろいろ重なり合って深刻な状況に立ち至っておるわけでございます。必要でございますれば、数字的には局長等からお答えさせますが、いずれにいたしましても、いま大変な状況でございます。しかもこれが船舶関係等については日本は特にひどいのでございますが、世界的にもそういう傾向があるということでございます。したがって、船なんかも大部分は外国船舶をつくるということ等もございますので、単に日本だけの事情のみでは解決はできませんけれども、しかし、その中でも日本日本なりの対策をここで強力に講じていかなければならぬという状況でございますので、せいぜい努力したいと考えます。
  119. 長田武士

    ○長田委員 造船業界不況は深刻の度合いを強めておるわけでありますが、造船下請業界からは、これまでのような金融対策などの後ろ向きの政策では中小企業のために一つも役に立たない、こういう意見もありますし、造船の親会社は、ことしの秋から仕事がなくなってしまう、中堅業者はさらに厳しく、四月か五月ごろには完全に仕事がなくなってしまう、こういう実情を訴えておるわけであります。  そこで、政府として早急にやるべきことは、三月二十五日の経済対策閣僚会議で決定いたしましたところの七項目の中で、構造不況業種対策といたしまして、特に個別業種対策の中で、一つには官公庁船その他につき早期発注に努める、二つ目には浮体構造物等の需要促進を図るということをうたっておるわけであります。これに対して官公庁船の建造拡大とタービンからディーゼルへのエンジン転換を図るなど船舶構造の改良等による前向きの需要喚起策をとるべきではないか、そのように私は考えるわけでありますが、運輸省としては具体的にどのようにお考えであるか。
  120. 福永健司

    福永国務大臣 いまお話しのように、過般関係閣僚会議等でも諸般の対策を話し合ったわけでございますが、あの全体の中に、いまもお挙げになりましたが、わりあいに運輸省に関係する項目が多く盛り込まれている、多く盛り込まれているというよりも、むしろその必要があるほど深刻な状態にある、関係業界等がそういうことである、こういうことでもあるわけでございますが、政府関係のいろいろのものをできるだけ早く発注等をし、また、現在予定しているものよりもさらにその後どうするか等のことにつきましては、たとえば海上保安庁は、二百海里漁業水域の設定、領海の拡張に伴う対応体制を整備するために、五十二年度予算以降巡視船艇の大幅な整備、増強を図っております。この中に耐用年数経過分の代替としてヘリコプター搭載型巡視船一隻、一千トン型巡視船五隻、三百五十トン型巡視船六隻等、二十一隻の巡視船艇が含まれており、こういうような処置済みのもの以外にも年数経過船については引き続き代替建造を進めてまいりたい、こういうふうに考えておりますが、業界全体としますと、率直に申しましてこれだけではまだ話にならない。  そこで、ここで思い切った新しい需要の喚起等を考えなければならない。そういうことで、ただいま浮体構造物について例をお挙げになりましたが、船も大いにつくっていかなければならぬが、同時に、必ずしも船ばかりでなくて、日本の船の技術なり技能なりを生かしていくという意味におきまして、浮体構造物というようなものを具体化していくように、そう考えておるわけでございますが、具体的に若干のプロジェクトについて触れているのでございますから、そういうものばかりでなくて、世界の中で外国が余りそこまでいっていない、手をつけてないというようなものでうんと開拓していくことが必要なんじゃないか。そういう例から申しますと、いま途中におりまして、やがてブラジルにも着きますが、たとえばアマゾンの奥の方へ日本でつくったそれを持っていって、そしていろいろの技能的な対策もその船の中に、船といいますか浮体構造物の中にすべて設備されて、人間がある程度少しそれに乗れば工場が動くというような、この種のことでは世界的に見て日本が最も進歩している、こういう点をどんどん生かして、世界各国から日本に頼もうというようなことになるようにというようなことを、ほんの一例でございますけれども積極的に進めさしていきたい、こういうように考えております。
  121. 長田武士

    ○長田委員 政府が三月二十五日の当面の経済政策で掲げておりますところのいま申し上げました官公庁船の早期発注、これについてちょっとお尋ねしたいのでありますが、まず、海上保安庁の巡視船艇の耐用年数は鋼船で二十五年、そして木船では十五年と定められておるわけですね。海上保安庁の巡視船艇のうち、耐用年数を過ぎたものは一体どのくらいあるのか、また、五十二年度補正予算及び五十三年度予算で何隻つくり直そうとしていらっしゃるのか、さらにその予算額を示していただきたいと思います。
  122. 福永健司

    福永国務大臣 具体的な数字等は局長等からお答えさせますが、ぜひこの種のことをもっともっと進めたい、現実に予算化されているものもありますが、その後は強く、こういう二百海里時代になったようなときにそれなりの施策を進めなければならない、ましていわんや、この関係業界等が不況に沈淪しておるのでございますから、そういう面からも考えまして強力な対策を講じていきたいと思います。  数字的なことは、また別途御報告申し上げます。
  123. 薗村泰彦

    ○薗村政府委員 いまお話にございました海上保安庁の船艇でございます。全体もう先生御承知のとおりでございますけれども、五十二年度末で巡視船が九十六隻、それから巡視艇が二百十六隻、合わせて三百十二隻という勢力になっております。  そこで、いまお話ございましたように、二百海里のことで領海警備、取り締まり監視、いろいろな仕事がふえましたので、ぜひこれを増強もしていきたいし、代替もしていきたいということでございまして、五十二年度の当初予算と補正予算と、それから現に御審議をいただいておる五十三年度の予算案の中で、整備、増強合わせました隻数で申しますと、ヘリコプター搭載型の巡視船が三隻、それから千トン型の巡視船が十隻、それから三百五十トン型の巡視船が六隻、それから三十メートル三十ノットの高速巡視艇が八隻というようなのが主なものでございますが、全体で代替を二十一隻、それから新しく増強しましたもの十八隻、合わせて三十九隻でございます。  その予算額を申しますと、五十二年度の当初予算案で八十五億五千六百万円、それから補正予算で四十八億七千九百万円、それから御審議をいただいておる五十三年度の予算案の中で百八十四億一千七百万円というのが、先ほど申し上げました代替二十一隻、増強十八隻、合わせて三十九隻分の予算でございますので、合計額で三百十八億五千二百万円になるかと存じます。  そこで、代替分だけで二十一隻ほど代替を現に行っており、また五十三年度の予算案で代替建造をやらせていただきたいということでございますが、それらの計画を措置済みと考えまして、まだこの三月三十一日現在で耐用年数が尽きたいわゆる老朽の船と申しますものは、巡視船で十三隻、それから巡視艇で十二隻、計二十五隻ございます。それらの計画を、代替建造を今後よく進めていきたいということをただいま大臣から申し上げた次第でございます。
  124. 長田武士

    ○長田委員 ただいま御答弁がございましたとおり、耐用年数が過ぎておりますのは二十数隻実はあるわけですね。私は、この五十三年度中にこの耐用年数を過ぎたものを全部つくり変えたならばかなりな発注になるのではないか、このように考えるわけでありますが、補正予算でこれを措置されるかどうか、お考えはどうでしょうか。
  125. 福永健司

    福永国務大臣 ただいま予算案を参議院の方ではまだ御審議をいただいておる、そのさなかに補正予算の話もちょっとまだ何なんでございますが、御質問の御趣旨は、そういうことをできるだけ早くやれという意味でお尋ねかと思います。  補正予算案をどうしますということは、私限りでいまちょっと申し上げる限りではございませんが、そういうような気持ちで急いで対策を講じていきたいというのが私の所存でございます。
  126. 長田武士

    ○長田委員 さらに、新しい国際法によりまして海域が拡大されたわけであります。そうなりますと、当然海のトラブルが発生してくると容易に予想されるわけであります。この際、私は、巡視艇を大幅にふやすべきである、こう考えておるわけでありますが、官公庁船は現金で支払われるものでありますから、不況にあえぐ造船業界にとっては非常に明るいニュースであるわけですね。そういう意味で、私は、政府としてこの際大幅に巡視船艇をふやしていくべきだ、こう考えておるのですが、大臣、御所見を伺いたいと思います。
  127. 福永健司

    福永国務大臣 現実に予算には御承知のような措置をとっておるのでございますが、考え方といたしまして、いまお話しのように、巡視船艇等はぜひふやしたいものだ、こういうように思います。また、実は今度の予算を編成いたしますときにも、もっと思い切ってやろうじゃないかということはずいぶん言ったのでございますが、しかし、今回の措置としては御承知のようなことでございますが、ぜひこれを速やかに追っかけさせるように、その対策を増強していくように、こういうように考えてまいりたいと存じます。
  128. 長田武士

    ○長田委員 前向きの御答弁をいただきましたけれども、この場合、国庫債務負担行為で行えば、当然造船業界にしてみれば仕事が確保でき、安心できるわけですね。したがって、五十三年度において発注すべきものと私は考えておるのですけれども、この点について再度御質問いたします。
  129. 福永健司

    福永国務大臣 いま直ちにどうしますということも、いまのお話の点ではいかがかと思いますが、お話点等も念頭に置いて検討させていただくことにいたします。
  130. 長田武士

    ○長田委員 次に、農林省にお尋ねをいたしたいのでありますけれども、合板製造業においては、過剰生産設備の計画的な処理を行うために、構造改善対策が五十二年の十二月十六日に閣議決定をされましてスタートしているわけでありますが、現在、保証基準、利子負担、返済方法などにつきまして具体的にどのようにやっていらっしゃるか、お尋ねをいたします。
  131. 藍原義邦

    ○藍原政府委員 合板業界につきましては、ただいま先生指摘になりましたように、昨年の十二月に構造改善の基金を一応設定いたしまして、これに対応する準備を現在いたしております。御存じのように、合板業界は昭和四十九年以来非常に不況になりまして、大体三〇%ぐらい需要が停滞しておるというかっこうになっております。したがいまして、私どもといたしましては、現在ございます合板業界全体を、工業会組合が中心になりまして設定いたしましたこの基金に基づきまして、一応大体一二%ぐらいの廃棄をしようというふうに考えておりますので、それに相当いたします廃棄設備の選定、それから実施基準、また資金の返済方法、こういうものにつきまして現在具体的な方法を日合連の中で鋭意検討を進めておる段階でございます。具体的にはまだ確定いたしておりません。
  132. 長田武士

    ○長田委員 次に、新聞報道によりますと、会社更生法適用について反対という趣旨で、日本合板工業組合連合会加盟の全国の合板メーカー百五十六社は、事実上永大産業の再建に反対する要望書を、法務省を初め関係中央官庁に対して近く会社の連名で提出する予定であると報道されております。これについては日合連の理事会ですでに提出することを決めたようでありますが、現在、会社の同意を得るために取りまとめを急いでおるという報道も流れております。こうした中にありまして、合板業界では、五十三年度中に業界全体で一二%の設備を廃棄する、これを決めております。実質的には倒産した永大産業の設備をそのまま業界の廃棄計画に組み込もうという意向が非常に強いとも言われておるわけであります。また、産業界には、会社更生法適用は構造改善をいたずらにおくらせるだけである、そういう批判も急速に高まっているようであります。合板業界のように、実際に業界ぐるみで公的機関に要望書を提出するのは初めてのケースではないかと思われるわけでありますが、こうした業界の反応について農林省はどのようにお考えであるか、お尋ねをしたいと思います。
  133. 藍原義邦

    ○藍原政府委員 いま先生が御指摘になりましたことにつきましては、合板工業会組合の方で、現在合板業界がやっております生産設備の調整あるいは構造改善事業、こういうものにつきまして、その認識をしていただくために関係方面に現在の合板業界状況というものを陳情しようというような動きがあるやに私ども聞いております。私ども林野庁といたしましては、一企業の問題ではなくて、合板全体の問題を関係方面に一応御理解をいただくという形で行うのであれば、これは私どもとしても理解できますけれども、いま先生指摘のような形で、一企業という問題ではなくて、全般の問題という形で合板業界関係方面にいろいろと御理解をいただくということに、そういう行動ができるような形で私ども指導はしてまいりたいというふうに考えておりますが、まだ具体的にはわれわれも聞いておりませんし、もし万一そういうことがあれば、いま申し上げましたように、業界全体の状況というものを御認識いただくような動きをするように指導をしてまいりたいというふうに考えております。
  134. 長田武士

    ○長田委員 次に、農林省及び通産大臣にお尋ねしたいのでありますが、もし会社更生法適用された場合、この企業はいろいろな面で経営が身軽になるわけですね。一方、残存業者でありますところ企業においては、過剰設備の処理及び雇用問題等で、いままで以上にさらに一層経営が悪化するという矛盾をはらんでおるわけであります。こうした矛盾をどう解決するのか、この点、通産大臣それから農林省にもお尋ねしたいと思います。
  135. 河本敏夫

    河本国務大臣 この問題は、単に合板業界だけではなく、倒産会社が更生計画を決定いたしまして再スタートを切るという場合には、一応どの業界にも起こる課題だと私は思います。ある条件では更生会社は身軽になるには違いないとは思いますが、しかし、更生会社としての幾多のハンディキャップというものをやはり背負っておるわけですから、更生計画がスタートしたからといって、それだけで競争力が非常に強くなる、このように直ちに判断できないのではないかと私は思いますが、しかしながら、確かに御指摘のような面もございます。そこで、こういう問題につきましては、いずれ裁判所から意見も求められると思います。その場合には、総合的な判断をいたしまして適当な意見を申し述べたいと考えております。
  136. 藍原義邦

    ○藍原政府委員 いま通産大臣からお答えになりましたのと同じでございますが、林野庁といたしましても、関係方面からそういう会社更生法適用についての御意見を求められれば、その辺につきましては適正な判断をし、御意見を申し上げることにいたしておりますけれども、ただ、先ほども申し上げましたが、合板業界の一部には、やはり残った業界が非常に苦しくなるではないかというような意見もございます。これはございますけれども、やはり全般の合板業界が適正な発展、また的確な発展ができるように私どもしてまいりたいというふうに考えておりますし、更生法適用会社についての御意見を求められれば、その時点では広域な判断をしてわれわれとしても対応してまいりたいと考えております。
  137. 長田武士

    ○長田委員 次に、通産省にまたお尋ねをしたいのでありますが、この債務保証制度の充実についてのお尋ねでありますが、本法案の一つの目玉となっておりますところ特定不況産業信用基金、これにつきまして、事業者が安定基本計画に従って過剰設備を処理する場合、それに必要な資金の借り入れについて債務保証を行うわけでありますけれども、その基金は、先ほども答弁ありましたとおり、日本開発銀行からの出資が当初八十億円、そして民間からの出資または出捐金といいますか、これは二十億円を考えておるようであります。     〔山下(徳)委員長代理退席、野呂委員長着席〕 この百億円を原資として一千億以上の債務保証を行う、こういうお考えのようでありますけれども、まず、基金の一部でありますところの民間からの出資あるいは出捐金と申しますか、このめどについてはどうでありましょうか、お尋ねをいたします。
  138. 河本敏夫

    河本国務大臣 一応スタートに当たりましては開銀から百億、民間から二十億、その十倍の保証ということを考えておりますが、実際やってみまして、たとえば資金がもっと要るという場合には、これは大蔵大臣通産大臣が相談をして弾力条項を発動いたしまして増額をする、こういうことになっておりますから、必要な資金は全部出していこう、こういう考え方でございます。  なお、民間の負担分につきましては、まだ最終的には決まっておりませんが、これは関係者とよく相談をいたしまして調達をするようにしたいと考えております。
  139. 長田武士

    ○長田委員 最後に、時間も参ったようでありますから……。  信用基金による債務保証は、政策効果を期待する上からも重要な柱と実はなっておるわけであります。昭和五十三年度の財政投融資計画におけるところ日本開発銀行の出資額決定段階においては、先ほどもちょっと同僚委員が触れておりましたけれども、保証額といたしましてはもっと実際は膨大になるのではないか、こういう点が非常に危惧されておるわけですね。一千億ではとても足らない、そういう点についてすぐさま拡大の検討をしなくてはならないのではないか、このように考えるわけですが、その点、いかがでしょうか。
  140. 河本敏夫

    河本国務大臣 この点につきましては、先ほども大蔵省からも御答弁がございましたが、政府の弾力条項、財投の弾力条項によりまして、必要な資金は大蔵大臣通産大臣が相談をして決めるということになっておりますから、必要な資金がどの程度になるかわかりませんけれども、構造不況業種の構造改善事業が円滑に進められますように、これはもう十分配慮していくつもりでございます。
  141. 長田武士

    ○長田委員 終わります。
  142. 野呂恭一

    野呂委員長 次に、草川昭三君。
  143. 草川昭三

    ○草川委員 私は、去る三月二十三日の商工委員会で、社会労働委員の立場ではございましたが、お許しを得て質問をさせていただいたわけでございますが、そのときの印象は、結論的にこの法案というのは五年の間に景気がよくなるという前提でつくられておる、こういう感じがしたわけでありますし、また、事実その前提でつくられたと思うのです。ところが、私はどう考えても五年間でいまの景気回復というのは達成し得ないのではないかと思いますし、現実にこれだけの円の急騰、ドルの急落という条件があるわけでございますから、私は、今日の構造不況対策というものは、かなり一段とピッチを上げて対策を立てないと手おくれになるという気がしてなりません。  そういう意味で、通産大臣に、まず今日ただいまの状況で過剰雇用人員というものは一体どの程度の人数を予定されているのか、あるいは円高不況によってさらにこの過剰雇用というものは増大をするのではないかという前提でお伺いをしたいと思います。
  144. 河本敏夫

    河本国務大臣 この構造不況業種再建の期間でありますが、実は五年という期間を決めますときに、もう少し長くしたらどうか、しかし一方で、五年は長過ぎるではないか、三年ぐらいでやらなければいかぬのじゃないかという説等もありまして、諸説を最終的に判断をいたしまして、結局五年ということに決めたわけでございます。  それから、構造不況業種のいま抱えております全部の雇用者数等につきましては、調査がございますから、労働省または通産省政府委員から答弁があろうかと思います。
  145. 草川昭三

    ○草川委員 それでは、時間がございませんので、労働大臣からその数は一体どの程度か、まずお伺いをしたいと思います。  同時に、御存じのとおり、労働省は雇用安定事業としての業種指定を昨年来からやられておるわけでございますが、この業種指定について、かなりさらに深刻になりまして、期限の切れた業種がたくさんあるわけでございまして、けさの新聞でも再指定が約二十業種指定をされております。ところが、来月になってまいりますと、いま問題になっております造船だとか北洋漁業だとか繊維なども来ているわけでございますが、その再指定を来月かかる重要な、重要というよりも構造的な不況業種に対してやられるかどうか、答弁をお願いしたいと思います。
  146. 藤井勝志

    ○藤井国務大臣 雇用の情勢、失業者の数、特に潜在失業者という意味のいわゆる過剰雇用、この数字は労働省でも定かな実態はつかみ得ない。われわれの方では、職業安定所の方へ届け出られる失業者の数というものは、先ほどもお話を申し上げましたけれども、この二月現在において百三十六万人、こういう数字でございますが、企業が抱えているいわゆる過剰雇用というのがどの程度あるかということは、これは厳しい雇用情勢で、感じとしてはこの百三十六万人以上、相当無理をしておるということは考えられますけれども、そういう状況でございます。  それから、雇用安定資金制度の指定の期日が切れる、今後どうするかという問題でありまして、確かに最近特に厳しい円高の追い打ちということで不況がずっと続いておりまして、一年間の指定期間が切れる、こういう場合は、当然雇用の安定という見地から関係省庁とも連絡をして、また関係労使の意見も十分聞いて、雇用の安定に万全を期したい、このように考えております。
  147. 草川昭三

    ○草川委員 いまの答弁は、造船だとか北洋漁業だとか繊維の業界の場合は、連絡をすれば再指定を行うというような御発言だと思います。  ただ、前段の潜在失業者と過剰雇用というものを同一にして考えていただいては、私はこれからのこの構造不況対策は成り立たぬと思うのです。やはり違うものがあると思うのです。特に最近では急速な円高がきておるわけでございますから、ある日突然に企業自身も膨大な過剰雇用というものを吐き出すという前提があると思うわけでございますから、特に私は通産と労働の緊密な連携ということをお願いをしなければいけない、こう思うわけであります。  次に、私はこの安定計画の内容に入るわけでございますが、安定計画というのは、やはり中心は結局過剰設備の廃棄ということになると思うのです。そこで、過日来から労働界からもいろいろと意見が出ておるわけでございますが、この審議会で労組の意見を聞きながら安定計画を所轄の大臣決定をするというわけでございますが、ここで通産大臣にお聞きをしますが、では、この産別の代表ですね、何々産業労働組合の代表が反対と言った場合どうするのか。それを押し切って安定計画を決定されるのかどうか。続いて、労働界というものは総評系、同盟系、中立系、いろいろな団体がございますから、複数の代表が入る場合があると思うのです。特に造船の場合でも入ると思うのですね。Aという組合は賛成、Bという組合は反対と言った場合に、所轄の大臣はどういうような判断で計画を決定されるか、お伺いしたいと思います。
  148. 濃野滋

    ○濃野政府委員 私からお答え申し上げます。  安定基本計画の審議に当たりまして、それぞれ関連の審議会に私ども業種別に部会――たとえば産業構造審議会でございますれば業種別に部会なりあるいは小委員会をつくりまして、その業種についての非常に詳細な議論をして進めていきたい、こういうふうに考えているわけでございますが、その際、労働界の代表をどう選ぶかということでございます。これはやはりただいま御指摘のように、その業種業種によっていろいろな特徴と申しますか、これがあり得るわけでございまして、その業種の実態に応じた選び方をする。現に私ども、この法律ではございませんが、従来産業構造審議会の場におきまして議論をする場合におきましても、そういう対処方針で臨んできております。  第二に、その場合、その労働界の代表が反対と言われたときに、一体この基本計画をつくるのかどうかということでございます。法律的に申し上げますれば、これは審議会でございますから、ここで意見を述べ、議論をし、そしてこれの諮問を受けるということでございまして、法律的に審議会の意見に縛られるということはないわけでございますが、しかし、従来もしばしば申し上げておりますように、この安定基本計画というものは設備の処理というその業界の非常に重要な事項を決める、この計画でございまして、雇用の安定という観点がこの設備処理を進める上にも非常に重要なわけでございますから、やはりこの審議会の場で全部の意見がこの設備の処理を進めていくという大まかな方向というものが出ない場合には、この安定基本計画で設備処理を幾らやるということはなかなか決まらぬというのが現実の姿ではないかと私は考えております。
  149. 草川昭三

    ○草川委員 だから、そういう御答弁は最初からわかっておるわけでありまして、そういう席上での労働界の発言をどの程度認めるか認めないか、あるいは受け入れるか受け入れないかが問題だと思うのです。  そこで、労働大臣、そういう場合があったら労働省としてはどういう態度をとられますか。
  150. 藤井勝志

    ○藤井国務大臣 企業が生き延びるたためには共同行為が必要であるかどうか、あるいはまたどの程度の共同行為が適当であるかという最終的判断は、政府部内においては主管大臣通産大臣が決められる、ぎりぎり突き詰めていけばそういうことにならざるを得ない。ただ、労働省としては、労働者の雇用の安定、生活の確保という面において実情をよく反映し、審議会においても労働組合の代表から意見が出るということでありまして、でき得る限りみんなの理解の上に結論がつけられることを期待するわけでございます。それというのも、やはりそのことによって結果的には企業が改善をされ、再建され、そして雇用の確保につながる、こういうことを期待してこれに対応したい、このように思うわけであります。
  151. 草川昭三

    ○草川委員 労働大臣にもう一回お伺いしますけれども、労働大臣は非常にのんびりしたことを言っておみえになりますが、大体この構想は余剰設備を抜くわけですよね。同時に、退職金をこの基金から払うということになるわけですよね。だから、最初に申し上げましたように、明らかにかなりの過剰雇用というものが出てくるわけですから、いまのような労働大臣の御発言では、何回か労働界からもこの法案について注文がついておる、あるいは当初の通産原案からわざわざ労働界の意見を聞こうということでプラスして入れられておる、何らそういうものにこたえられないことになると思うのですね。そういう態度ではなく、この安定計画についてもっと積極的に労働省が文句をつけていくというぐらいの姿勢がないと、しょせんはこの安定計画というものはうまくいかない、私はこう思うのですね。これは特に私の意見でもあります。  同時に、これはもう一回通産大臣に聞きますけれども、たとえばベニヤあるいは造船、平電炉、特に地域的に非常にかたまっておる産業があります。たとえば北海道の函館、あるいは瀬戸内、京浜地区、こういうところがありますが、その地域の県知事が、この郷土産業というのはいまのままだったらつぶれるからとてもだめだといって何か意見反映をしようと思ったら、それはこの安定計画の中に受け入れられるかどうか、地域の声をどのように反映するのか、受け入れる余地があるのかどうか、お伺いしたいと思います。
  152. 河本敏夫

    河本国務大臣 安定計画をつくります場合に大事なことは、労働界の意見も聞かなければなりませんし、それから中小企業下請企業、この代表の意見も聞かなければなりません。それから、いまお話しのその産業が一地域に集中しておる、その地域に非常に大きな影響があるという場合には、当然知事とか市長、こういう方々の意見も聞かなければならぬ、こう思っております。
  153. 藤井勝志

    ○藤井国務大臣 私の言葉足らずといいますか、私の真意が十分御質問の方に通じてないのではないか、こういう心配をいたしますが、実は、無理して元も子もなくなってしまうということは果たして雇用のためにもいいか悪いか、私はそこまで思い詰めた上の答弁を申し上げたわけでございまして、労働省としては労働者の失業を防止するということ、それから生活の安定を確保するということは当然のことでございます。
  154. 草川昭三

    ○草川委員 それは労働大臣としては、前段の言葉は私は言うべきじゃないと思うのです。それは通産、運輸、農林の所管大臣が言うことです。角をためて牛を殺すことのないように母体を大切にするぎりぎりの線はあると思うのです。労使関係でいったって労働協約というものがあり、最終的には経営権というものがあると思うのです。それはお互いに認識をし合っての論議をしておるわけでございますから、雇用を守る立場からこれに対して一体どうブレーキをかけるか、あるいは職業再訓練をして引き受けていく、あるいは地域的に新しい公共投資を投入していくという前向きの姿勢がないと、しょせんこの構造不況法案というのは、私も何回か言っておりますが、後ろ向きの対策なんですよ。だから、前向きの対策と、もう一つ切られた人間の後の処理というものを労働省がやっていくという、三つのものが一体になって稼働しないと、これは非常にあわただしいところでは過剰設備がどんどん廃棄されて、余剰設備が外国に売られていくという場合もあるだろうし、日本の産業そのものが非常に活力をなくしていくという問題があるわけですから、特にきょうは連合審査でございますから、そこを強く皆さん方に私は申し上げておる、こういうわけであります。  そこで、今度は信用基金の方に移っていきたいと思いますけれども、この信用基金はいままで何回か論議になっておりますが、一体信用基金信用保証料というのは何ほどだろうかということは、私まだ余り聞いてないのです。ほかのいろいろな相場からいうと、多分〇・一%ぐらいが信用保証料になるんじゃないだろうか、こう想像するわけでございますが、それで間違いございませんかどうか。まず、通産ですか、お伺いしたいと思います。
  155. 濃野滋

    ○濃野政府委員 信用基金によります保証に関する幾つかの問題がございますが、ただいま御指摘の保証料の問題等も含めまして、この点につきましては保証の仕組み等非常に技術的な問題もございますし、この基金の主務官庁でございます大蔵省当局、それから私ども、そして銀行の方たち等々、専門家のいわばワーキンググループをつくりまして、現在問題点の整理をしながら検討をやっておりまして、保証料につきましては幾らにするというのはまだ決まっておりませんが、この基金の趣旨からしてできるだけ安くやっていくべきであるということは考えております。
  156. 草川昭三

    ○草川委員 いま具体的にはこれからだというお話がございましたが、これだけ重要な問題がこれから論議をされること自身も私はおかしいと思うのですけれども、一般的には私が言ったように〇・一%以下ぐらいにしてもらわなければだめだと思うのです。ただ、いま市中銀行から最低のプライムレートというのですか、七・一%ぐらいの金利で金を借りますね。そしていま言うように過剰設備の廃棄をするか、退職金を借りて再建をするかということになるわけですが、先ほどの御質問にもございましたように、裏保証がどうしても要るということになります。その裏保証は商社だとか親会社にしてもらわなければならぬ。本人はできませんから頼む。商社だとか親会社は裏判だけ押して、保証料は取りませんよ、そちらはそちらで再建してくれよ、こういうことになります。だけれども、残りの銀行が、やはりそれは私の方は困るというので、銀行が〇・三とか〇・四というものを取るというふうになると思うのです。合わせて七・三とか七・四%の金利で過剰設備の廃棄なり退職金を借りるということになっていくわけですが、これでは非常に利子が高くて構造不況業界再建にはつながらぬと私は思うのです。  そこで、利子補給という問題については、だめだということを盛んに言っておみえになりますけれども、もし利子補給をしないとするならば、結局合板のような中小零細なものは、現在ある中小企業振興事業団の方に駆けていくと思うのです。中小企業振興事業団の方は、設備廃棄だけでも実際上は九割近いものが基金から、一割近いものは都道府県から、まるっきりそれでやれるわけですから。ということになると、結局これは今度の特定構造不況法案の基金からは借りる人がいないのじゃないかという問題になってくる。そういうことを予測はしないと思うのですけれども、このような金利の裏負担が高いということについて、いろいろな答弁がありますけれども、もう一度通産省の方から、そういう意見に対して今後一体どうこたえるのか、お答え願いたいと思います。
  157. 濃野滋

    ○濃野政府委員 この信用基金の保証機能が現実問題として動かないということになれば、これはこの法律案が目的といたしておりますねらいが達成されないわけでございますから、目的どおりこの信用基金が活用されるにはどうあるべきかというのが、私ども細かい問題を詰める基本的な立場でございまして、そういう立場で具体的な問題を詰めたい、第一にそう思います。  それから第二に、ただいま御指摘の中小企業の分野、これは中小企業が共同廃棄事業その他で非常に有利な構造改善、設備廃棄というものが進められるという仕組みがございまして、そういう分野につきましては、ただいま御指摘のように中小企業性の強い業種等はそちらで進んでいく、こういうふうに私どもは考えておりまして、この業種は、どちらかといいますと、業種として考えた場合にむしろ大企業のウエートが高いとかあるいは少なくとも中堅企業を中心とするとか、こういう業種がこの基金を現実に利用することになるのじゃないか、こう考えておるわけでございます。  なお、利子補給をすべきである、あるいは利子補給がなければ動かぬといういろいろな御意見もございましたし、私どももこの法案の準備の段階ではいろいろなことを考えましたが、基本的にはこの法律は、その業界ぐるみの努力の中で、業界の自主的な努力、しかも、業界と申しますのは当該業界のみならず、ただいま御指摘金融界あるいは商社等の関連業界の全面的な協力のもとで、民間のそういう自主性のもとにそれをバックアップをするという趣旨でいたしましたので、こういう一般的な各業界を通じた法律というかっこうでございますので、利子補給という段階までは考えなかった、こういうことでございます。
  158. 草川昭三

    ○草川委員 もう時間がないので、私ははしょりますけれども、結局この基金もいままで借りていたものの借りかえにすぎないのではないだろうか、こう思うのです。それ以上に前に出るものがない、しかもそれを一応は五年間で返さなければいかぬ、非常に短期ということになります。五年先の状況は一体どうなのかということを想定しますと、残った分についてはまた別の近い機関にそれは移管をするというような御答弁を、この前通産の方からいただいておるわけでございますけれども、そうだとしても、結局これを使うということになりますと、退職金を必要とするところの合理化資金、こういうものに次第になっていくのではないだろうかと思います。  今日、通説でございますけれども、一人の労働者を解雇するのに約一千万円の用意をしなければいけないということになりますと、百億で約一千人ということになりますか、というぐらいの金額に、これがしょせんは利用をされるのではないだろうか、こんな感じがしますけれども、労働大臣のこの信用基金に対する見解を賜りたいと思います。
  159. 藤井勝志

    ○藤井国務大臣 御指摘のように、果たしてこの基金が企業再建に十分であるかという点については、私はいろいろ検討すべき点もあろうと思いますけれども、労働省の立場でございますから、この問題についてそう深く検討をしておりません。いまいろいろ御質問を聞きながら考えておりますけれども、従来のものにこれだけの制度が新しく加わるわけでありますから、一応制度の発足した状況を見て、足りない点があれば補っていくということにやったらどうか、このように思うわけでございます。
  160. 草川昭三

    ○草川委員 これは最後の発言になりますけれども、私はなぜそういうことを申し上げたかというと、きのうも参考人が、合成繊維の場合は破棄ではなくて凍結をしたいということを言っているわけでしょう、いまの諸情勢なり経済展望を考えたら。とりあえず自分の腹で凍結をしようということで、この不況法案については非常に不信感が出ておるというふうにいま言われておるわけですけれども、そういうような状況でなおかつこの信用基金というものがもし動くとすれば、退職金用の引当金にこれが使われる、私はこういうふうに思うわけであります。そういう意味で、一千億に近い構造不況業界に対して設備破棄以上に退職金のウエートが高くなると、これは労働省は非常に責任重大だと思うのですね。だから、労働行政も、解雇された人間だけの手当てではなくて、信用基金が本当にどういうふうに使われていくのか、日本の本当の再建のために、余剰設備を切るには切るけれども、ほかにどういうふうにわれわれが受け入れてやるかという、そういう趣旨を十分踏まえてこの構造不況法案について協力すべき点は協力をし、注文をつけるべきは注文をつけて対策を立てていただきたいということを強く申し上げまして、ちょうど時間になりましたので、これで終わりたいと思います。  どうもありがとうございました。
  161. 野呂恭一

    野呂委員長 午後三時から連合審査会を再開することとし、この際、暫時休憩いたします。     午後一時五十六分休憩      ――――◇―――――     午後三時五分開議
  162. 野呂恭一

    野呂委員長 休憩前に引き続き連合審査会を開きます。  質疑を続行いたします。野坂浩賢君。
  163. 野坂浩賢

    ○野坂委員 特定不況産業安定臨時措置法、これはいま提案をされておるわけでありますが、この特定不況産業業種、指定される業種は、第二条に五号にわたって述べられております。私は、この際、中小企業庁の長官にもおいでをいただいておるはずでありますが、この措置法は、大企業、中小企業、そういう相関関係において、中小企業側に大企業に比べてどの程度のメリットであろうか、大企業中心ではないだろうか、こういうふうな疑問がございます。そういう点についてどのように長官はお考えでしょうか。
  164. 児玉清隆

    ○児玉政府委員 お答えを申し上げます。  御存じのように、構造不況の問題で中小企業は集中的な影響を受けておりますけれども、これに対応する不況対策あるいは円高対策、その他一般の中小企業の構造改善対策等全般を通じまして、この法案で議論されておりますような保証基金等に比べますと、中小企業は総合的な政策の手段をたくさん持っておるものですから、一例を申し上げますと、信用保険の特例、あるいは税制上の特例等々がございます。特に近促法に基づきますところの構造改善等も、本筋の構造改善措置として従来からこれをやっておりまして、知識集約化対策等を中心に新しい施策を次から次に積み重ねてきておりますので、この政策のメリットの点だけからいいますと、ここに盛られておりますようなことに比べますと、特に大企業と比較いたしますと格段の差がある、このように考えております。
  165. 野坂浩賢

    ○野坂委員 先ほど来の質疑の中でも、通産大臣は、この法律適用するまでに、あらゆる法律なり行政指導を行って企業の体質を改善をし、健全なものに仕上げたい、こういうふうにおっしゃいました。いま中小企業庁の次長は、お話があったように、中小企業の近代化促進法、税制なり融資の面、そういうものも一つ一つ強化をされて、構造改善事業を進め、ある程度のものができ得たというふうな印象のあるお話でありますけれども、現実の問題としては、この不況の中で中小企業が続々と倒産をしておる、こういうのが実態であります。しかも中小企業の近代化促進法そのものをながめてみても、これはたしか昭和三十八年に施行されたものでありますし、それはこれからのより新しい商品の開発あるいは構造改善事業、こういうものを進めて体質を強化するということでありますが、現在その実効がないじゃないか。  たとえば、この間われわれが法律で通した円相場高騰関連中小企業対策臨時措置法、こういうものもありますね。ところが、金を借りに行くと、県庁の承認をもらって持っていっても、将来健全になり得ないと銀行側が判断をすれば、君のところには担保がなければ出せない、枠がこれしかない、こういうかっこうで、こういう法律があり、施行が十分にやられなければならないにもかかわらず、担保その他のために実質的には選別融資になって、法律そのものが生かされていない。こういうのが現実ですから中小企業倒産が今日非常に多い、こういうふうに言われなければならぬ。  この法案をつくる前に、通産大臣がおっしゃったようにより体質を強化するためには、この中小企業の近代化促進法というものをもっと強めて、あるいは高成長のときではなしに低成長になった今日どうこれを直していくか。これは高成長時代のものです。だから、それをこの不況産業に至る前に直すということであれば、その体力の強化の方法としてはどのように考えられるわけですか。円相場のいまの問題にしても、具体的に倒産寸前の諸君たちには何らのメリットもない。これでは中小企業にどういう行政指導をしておるかということがはっきりしない。
  166. 児玉清隆

    ○児玉政府委員 お答え申し上げます。  施策のメニューに対しまして実効が上がっていないという御指摘でございますけれども、たとえば担保の問題等につきましても、昨今非常に担保が枯渇しておりますので、これに対する行政指導をやっておりまして、一例で申し上げますと、信用保証協会で担保を徴求されて非常に困っているというような事例等もございまして、昨今の改善で見ますと、件数で大体八割方が無担保で保証をいたしております。金額にいたしますと六割以上のものが無担保ということで、逐次改善を見ているわけでございますが、そのほか実際の政府系の三機関の金融につきましても、金利を公定歩合の引き下げに伴いまして敏感にこれも引き下げておりますが、そのほか構造改善等に伴いますところの近代化促進法とリンクいたしますところの特利についても現在検討中でございまして、これも早急に引き下げの方向に持っていく。それから担保の徴求の点も、三機関の例は保証協会の例に準じまして相当弾力的に運用するということをいたしております。  それによりましても、御指摘のように、現在倒産の件数は対前年で言いますとやはり減っておりませんで、対前月で申しますと千五百件を割っておりますけれども、これは季節的なものでございますので、決して警戒を緩めているわけではございません。特に問題になりますのは、倒産本体の千五百企業前後の問題よりも、それのあおりを受けますところの関連倒産でございますので、これにつきましては、四月一日から開業いたしますところの中小企業共済事業団の関連保証制度というものを十分生かしまして今後手当てをする。この点につきましても、十分法律上の措置、予算上の措置を講じておりますし、それから特に円高等に関しましては、さらにつけ加えた措置をとっておるということでございます。  御指摘のように、近促法自身は高度成長時代にでき上がりまして、その後逐次改善をいたしておりますが、中身につきましても、やはり低成長時代に移行するにふさわしいようないろいろな政策の項目をつけ足しております。そういったことは、御存じのようにいま設備投資の需要がそう活発でございませんので、むしろそういった面から実績と申しますかそういうものが非常に低調であるということは事実ございます。ただ、資金需要が何せ非常に大企業も衰えておりますが、特に中小企業におきましても非常に停滞しておりまして、そういう面からはせっかくの施策を十分活用し切ってないという面はあろうかと思います。
  167. 野坂浩賢

    ○野坂委員 それでは、具体的に円相場高騰関連中小企業対策臨時措置法に基づく緊急融資制度は、担保は弾力的に運営されておるから、現在担保なしで六割貸しておるから、国の三金融機関については担保なしで貸せるようにそういう行政指導をしていただきたい、このことをお願いをしておきます。後で答弁してください。  それから、時間がなくなりますから、この法案の十条について労働大臣にお尋ねをします。  この法律適用すると、その工場の中ですべての機械、施設が担保に入っておりますから、日本開発銀行等の出資により信用基金協会ができて、そうしてこの担保を外して廃棄あるいは凍結あるいは封印、こういうことになれば銀行はそれだけ楽になりますから、それで銀行もメリットがありますね。それから企業側も、やりたいと思っても全部担保に入っておりますからこれはなかなかでき得ない。だからこれも相当メリットがある。これをやった結果、一番利益のない、一番生活に影響があるというのは労働者ですね。  この労働者がそういう立場に立つであろうということが十分考えられて十条が生きている、こう思うのです。この十条には失業の予防と雇用の安定に配慮しなければならない、こういうことになっております。それから、雇用の安定を図るために必要な措置を講ずると二項にはなっております。三項は、もしものときには就職のあっせんその他生活の安定云々と、こういうことが書いてあります。  現在、労働大臣お話しになりましたように、失業者というのは百三十万人を超えておる。そして、これまたこういうふうにやれば労働者の犠牲が強いられるということが予測される。だからあなたは、雇用の安定の資金とかあるいは議員立法でできた離職者対策法とか、そういうものを駆使しながらそれを受けざらとしていく、こういうふうにお考えでしょうけれども、なるべく雇用安定資金とかこの離職者対策法を適用しないで済むように就職ができなければならぬ、これが生活の安定の基本ですから。  そういう意味で、いまの失業の状態とこれからの労働者の失業の予防というのは具体的にどうやるのか。雇用の安定を図る、失業はしないで済む措置通産大臣ともお話しになったと思いますが、万全の対策を整えられるか、努力いたしますということではなしに。その辺は労働者が一番心配しておるところですから、その点はどうかということが一点です。  それから、通産大臣にお尋ねをしておきたいのは、もしこういう法律適用して廃棄あるいは封印、凍結等をやられる場合は、当該の労働者、労働組合の代表、そして事業側と十分合意をしてでなければ実施はできない、こういうふうに考えてよろしいか。そしてそういうふうな指導をされるのかということだけを先に聞いておきたいと思います。
  168. 藤井勝志

    ○藤井国務大臣 特定不況産業として指定されました場合に、御指摘のごとく一番しわ寄せを受けるといいますか、は、そこに働く労働者であるということは、まさにそのとおりであります。労働省は、労働者のいわゆる生活の安定、否、むしろ福祉の向上という、ここら辺にわれわれの使命があるわけでございますから、このような事態に直面をいたしますということはまことに残念でございますけれども日本の産業の質的な転換というやむを得ない事態対応して何よりも失業者を未然に防止する、そして生活の安定を図るということが一番大切でございますから、雇用安定資金制度を活用いたしまして、事業転換雇用調整のための給付金制度あるいは景気変動雇用調整給付金制度、こういったものを積極的に活用いたしまして、そして結局人が余ってくるわけですから、そういった方々に対して、あるいは職業訓練、よそに出向していく、そういったこと、あるいはまた事業転換、こういったことに対してこれが援助措置をいたすと同時に、これを受け入れる事業主に対しても助成をしていく、こういったこと、並びに今度新しく雇用政策として打ち出しましたのが、中高年齢者の人たちを受け入れる事業主に対してはこれまた別途助成していく、こういったことをやっていく、これは最後いよいよ訓練をして出ていくという場合でありますけれども、とりあえず職業転換とかそういったことで当面の対策を進めていくというのがわれわれの考えであります。
  169. 河本敏夫

    河本国務大臣 業界の大部分の希望によりましてこの法律適用を受けたい、こういう申し入れがありました場合には、それぞれの業界関係する審議会等の意見を当該大臣は聞きましていわゆる安定計画をつくるわけでございますが、安定計画の基本は、どの程度設備を廃棄すればその業界が立ち直るかということが中心になろうかと思います。その場合には、もちろん審議会に労働界の代表、それから地域代表、中小企業下請代表が入りまして、いろんな意見を言っていただこうと思っております。  それから、安定計画ができますと、その安定計画に従って個々の企業が今度は企業ごとに設備の廃棄を進めるわけでございますが、その段階では当然労働組合と協議をする、こういうことになろうと思います。
  170. 野坂浩賢

    ○野坂委員 労働大臣、さらにお尋ねしますが、労働省の関係の各種委員会がありますね、審議会その他。それは中立――中立というのは学識経験者、労使双方それぞれ同数、こういうことになっております。たとえば産業構造審議会とか、ここにありますが中小企業安定審議会の委員というのは三十二名とあります。いま労働省が見られて労働者が一番問題がある、こうあなたもお認めになったわけですから、これは審議会にかけられるわけですから、こういう審議会の委員、これはやはり労働者も相当数でなければならぬだろう、こういうふうに思います。時間がありませんから言いますと、たとえば中小企業安定審議会委員名簿をもらってみると、三十二名ですね。労働者の代表というのは一人、あとはみんな経営者と学者ですね、銀行ですね。それについてはどういう御感想でしょうか、労働大臣として。
  171. 藤井勝志

    ○藤井国務大臣 いよいよこの法案が実施される、こういうことになりますと、やはり一番生活に影響のあるのは労働者でございますから、労働者ないしその団体の代表の意見がそれぞれの産業別に十分反映できるように審議会の構成並びに運営をやっていただく、私はこういうふうに期待いたしており、また、そういうふうに努力をいたしたい、通産省とも密接な連絡をとりたい、このように思っております。
  172. 野坂浩賢

    ○野坂委員 従来あります経企庁とか通産省とかの審議会というのは事業が中心だということですけれど、やはり必ず労働者というものが存在をするわけですから、いま労働大臣お話しになったように、今後通産省等の審議会等においては、業界労働者が構成メンバーの中に十分その意向というものが伝わるように、三十一対一というようなかっこうでは、入れておるじゃないかというのは話としてはできますが、全体的には非常に弱くなるわけですから、たとえば三分の一方式とかそういうところに進めていただいて、みんなが納得づくで進められるようなそういう審議会の構成にしていただきたい、こういうふうに思うのですが、通産大臣、いかがでしょうか。
  173. 河本敏夫

    河本国務大臣 それぞれの関係する審議会には、さっきも申し上げましたように、労働界の代表、それから中小企業下請の代表、それから地域の代表に入っていただきまして、十分意見を言っていただこう、こう思っております。
  174. 野坂浩賢

    ○野坂委員 入れるということですが、私は数の問題を言っておるのですけれども、時間がもうありませんので、本論に入れなくて序の口でまだやっておるところなんですけれども、ぜひ当該の業界はもちろん、その中にいらっしゃる労働者の代表を入れて、十分徹底した議論、そしてその構成も公平に進めていただくようにお願いを申し上げておきたいと思うのです。  私は、合板の問題についてお尋ねをしたいのですけれども、合板の健全な状況というのは、在庫量は大体何日分あればいいのか、月間の生産量というのはどの程度なのかということをまず明らかにしていただきたいことと、昭和四十五年を基準にしてどの程度企業の数というものは減ってきておるのか。何分の一減っておるのか。その減った段階で、あなたはいま、去年の十二月に構造改善資金等で相当やった、やった上でもなお一二%の設備の凍結あるいは廃棄というものを業界として考えておるのだ、こういうふうにおっしゃっておるわけですが、行政指導の責任者としてはどの辺が一番重要なのか、どの点を基準にするのか、将来の展望はそれで大丈夫なのか、一二%廃棄の大体の方向といいますか、決定をされようとしておる中身についてお尋ねをしたい。
  175. 藍原義邦

    ○藍原政府委員 合板業界につきましては、先生御存じだと思いますけれども、五十一年末におきます普通合板の現有の生産能力でございますけれども、年間約二十四億平方メートルの生産能力を持っております。それに対しまして、生産量は十八億四千万平方メートルが現在大体五十二年には生産量として出ておりまして、稼働率が約七六%でございます。  こういう合板全体の現状でございまして、私どもといたしましては、こういう合板の現状、それから、現在合板業界が、需給関係が、住宅関係の着工量の伸び悩みという関連もございまして、非常に緩和基調にあるということで、今後どういう形で合板業界を構造改善するかということを考えたわけでございますが、現在在庫量を見ますと、経常在庫量は私どもは大体月産の四〇%ぐらい、日にちにして大体十二日分ぐらいであろうと考えておりますけれども、やはりこれを上回った在庫量を持っておりますし、そういう観点から、私どもといたしましてはやはりこういうような適正な在庫量になるような形で今後の構造改善をしていかなければいけないというふうに考えております。  それから四十九年以降現在まで約六十工場が倒産しておりますし、四十五年から現在まで見ますと、二百三十八工場が現在の百八十八というふうな形になっております。
  176. 野坂浩賢

    ○野坂委員 おっしゃるように、二百三十八あった工場が現在では百八十八になっておるのですね。しかも六十工場も倒産しておる――二百八十八あったんじゃないですか、二百八十八ですよ。  それから、在庫量というのは大体その四〇%、十二日分というのは、これは普通ですか。それと、去年は九月を除いてほとんどカルテルをやっておるわけですね。このカルテルでも操業率は大体ことしの二月を見て七六・二%ですよ。相当操業率は高いわけですね。これらの行政指導から見て、七六・二をやって、しかも在庫量は十二日分、この程度はなければならぬだろう。そして労働者の賃金の占める率というのは一体どうなっておるかというと、あなたもよく知っておられるように、昭和四十九年には一枚当たり七十一円が労賃だったんですね。合板一枚に対する労働賃金の占める率というのは二四・五%なんですが、いまは一七・三ですよ。そして金額にして五十五円しか入っていない。だから、労賃というものは技術の進歩といいますか、そういうもので非常に圧縮されたかっこうが合板でぎりぎりのところまで来ておるという状態でありますね。  これよりもまだ一二%必要だというのがよくわからぬわけであります。それだけやれば需給の安定というものができるのか。月産一億三千万平米ができる、そして在庫量が六千万平米ということになれば四〇%ですから、これだけは健全だということになると、一二%減らすと、いままでは百分の幾らになりますか、百分の七十六ですね、操業率をこういうふうに下げておりますから。今度一二%を引くと、八十八分の七十六ということになれば、その後は操業率九〇%ということにする、こういうことでございますか。
  177. 藍原義邦

    ○藍原政府委員 先ほど申し上げましたように、現在約十八億平方メートルの生産をやっておりまして、これが七六%の稼働率になっておりますけれども、私ども、これを一二%構造改善設備調整をいたしまして、その約一二%というのが大体三億平方メートルぐらいに該当するというふうに考えておりますけれども、二十一億六千万平方メートルぐらいの生産力があれば一応需給関係が安定していくのではなかろうかというふうに考えておりまして、こういう構造改善をやってまいりますと、いまわれわれ検討いたしました結果では、昭和五十五年には大体稼働率九〇%という形で生産コストの低減なり需給の均衡というものが図られまして、合板業界が改善されていくというふうにわれわれは考えております。
  178. 野坂浩賢

    ○野坂委員 もう時間がございませんが、最後に一つだけ、信用基金の問題、債務保証の問題を尋ねておきたいと思うのです。  非常に不況で担保力が弱いということが言えます。問題は裏保証でありますが、裏保証ができないままにこれが実効が上がらない、こういうことが起きてくるんじゃなかろうかと思うのです。それらの際には裏保証というものはできるだけ軽減するといいますか、ない場合は指定をされてもそれができ得ない、法律の運用はでき得ないという結果になるのではなかろうかと思うのですが、その点はどのようにお考えになっておるのかということをお尋ねして、時間が参りましたから終わりますが、あと中小企業庁の次長に、先ほどの答弁漏れがありますからやっていただきます。
  179. 河本敏夫

    河本国務大臣 債務保証基金による債務保証の問題は、この法律の一番の中心でございますから、いまお述べになりましたようなことでもしもこの法律が進まないということになりますと大変でございますから、その点は関係各省で十分相談をいたしまして、法律が円滑に執行できますように十分打ち合わせをいたします。
  180. 児玉清隆

    ○児玉政府委員 先ほどお話のございました特に担保の供給面で行政指導を十分にということでございますので、従来も政府三機関につきまして担保の供給評価等について物件の対象範囲をできるだけ弾力的に考慮する等々、適正評価の面も含めまして個々の企業の実情に応じ運用するように指導いたしておりますので、その面を引き続き十分三機関に指導してまいりたい、このように考えております。
  181. 野呂恭一

    野呂委員長 次に、後藤茂君。
  182. 後藤茂

    後藤委員 労働大臣にまずお伺いしたいと思いますが、私は本会議で代表質問をさせていただきまして、雇用の問題について一応の基本的な考え方を御質問申し上げたわけでございますけれども、どうも大臣答弁と私の質問とがかみ合わなかった面があるようなので、ここでせっかくの機会でございますので、二、三点ただしておいてみたいと考えております。  まず第一の問題は、安定基本計画が策定をされるわけです。その際には設備が凍結なり格納なり廃棄をされてくるわけですけれども、一体この廃棄と関連をいたしまして失業者が出てくるということについてどのようにお考えになっているのか。商工委員会での質問の中でも職業安定局長が相当数出るということを答弁をなさっております。  私は、きょうはお聞きをしたいのは、実は出てくる方の問題ではなくて、一体この安定基本計画の中にどれだけ雇用を吸収していくか、どのように労働省として、労働大臣として雇用を吸収をしていくための措置をとられようとするのか、その基本的な姿勢をまずお伺いしておきたい。
  183. 藤井勝志

    ○藤井国務大臣 雇用の確保、雇用の安定ということを解決する大前提は、私は、やはり一刻も早く不況脱出をしていくということ、そのためには御承知のごとく積極的な財政運営によって公共投資を大いにやって景気の回復を図ろうという、これがまず前提でございますが、そういったことをやってもなかなか厳しい現在の情勢でございますから、労働省としての雇用政策は失業を未然に防止するということで、雇用安定資金制度、これによっていろいろな施策をいたしておりますことは先ほど申し上げたとおりでありますが、そういったことだけでは、私は、率直に申しまして後ろ向きといいますか消極的な雇用政策だというふうに御指摘があると思うのであります。  雇用を新しくつくり出すという工夫をしなければならぬというので、実は去る三月の二十五日、雇用対策閣僚懇談会の場において、昨今の不況多発地帯が造船企業地帯あたりが特に激しい状況でございますから、そういう面に対していろいろ運輸大臣に御努力願って、大型プロジェクトの推進ということ、それには従来の発想からやや思い切った洋上の工法によって、石油の備蓄を初めとしてあるいはいろいろな施設を海の上につくる、こういったことは造船等の技術者の活用という面がございますから、そういうことで何とかして積極的に雇用開拓、雇用創出をやっていく。これは労働省としては、従来はむしろそこまで出しゃばる必要はないかと思いますけれども、やはりこの際、そういったところまで積極的な推進をしていって当面の最大課題である雇用の安定を図るべきである、このように考え、今後もそういう姿勢で努力をいたしたい、このように思うわけでございます。
  184. 後藤茂

    後藤委員 この構造不況に陥っております企業が安定基本計画を策定いたしまして設備を廃棄していく、そこから出てまいりますものについて雇用創出あるいは雇用を開拓していく、そのために労働省が努力をなさっている、また努力をしていただかなければならないということは当然でございますが、私がここでちょっと申し上げておきたいのは、設備を廃棄いたしますその際に、十なら十の廃棄で十の首切りといいますか失業者が出てくる、過剰雇用を外に出さなければならない。法律で設備廃棄なり格納なり休止が行われていくわけですから、これじゃ労働省として、労働大臣としての責任はないだろうと私は思う。十の設備廃棄に対して十の失業を出させるということではなくて、六なり五なり四なりにしていく、その構えがなければ、何も政治的に解雇を合法化していくというような法律はつくるべきじゃない。  私は、ここで短絡的に、設備廃棄をしていっても現在の雇用は企業内で完全に守れということを短兵急に申し上げているのではなくて、あくまでもこの安定基本計画の中にそういう姿勢がないと、十の設備廃棄をすれば十の労働者が外に出されていく。しかもこの法律が出る前からもうすでにこの法律の施行を一応前提として首切りが行われてきている。平電炉等においては、もうすでに過剰雇用は整理を終わったというような状況になってきているわけです。これでは労働大臣の責任というものが果たされていかないんじゃないだろうか、そういう意味で重ねて、時間がございませんので、簡潔にお答えをいただきたい。
  185. 藤井勝志

    ○藤井国務大臣 雇用安定のため、私は、当然労働者の一番生活を脅すものは失業であり、また離職でございますから、この安定基本計画を主務大臣通産大臣が立てられるに当たっては、積極的に労働者の立場を反映して事前にいろいろ協議をする、こういうことになっておりますから、その点は十二分に配慮していきたい、このように考えます。
  186. 後藤茂

    後藤委員 労働大臣は、法律で行われるわけですから、ぜひ先ほど私が申し上げましたような姿勢をもって対処していただきたいと思います。  そこで、法案の第十条でございますけれども、この十条では、「雇用する労働者について、失業の予防その他雇用の安定に配慮しなければならない。」この規定があるわけです。しかし、この規定は、これは大臣も御存じのように、事業者の任務規定といいますか、ということになっているわけです。つまり政府の行政責任というものがこの中には出てきてないわけです。  だから私は、先ほどの質問の中で基本的な考え方を申し上げた。つまり事業者は当然やっていかなければならぬ問題ですけれども、しかし、これまでの例を見ましても、先ほど言いましたように、十の設備廃棄の場合には十以上の解雇というものが出てまいるわけですから、ここで一応訓示的にこういうものがあったとしても、労働大臣、歯どめはなかなかきかないだろう。雇用に責任を持つ労働省ですから、労働省は失業対策省じゃないわけです。また、労働者が職場で労働することによって、初めて労働省という行政庁の存立の意義があると思います。  そういう意味で、事業者の訓示規定的な責任が書かれておりますけれども、労働大臣がもっとこの問題に対して首を突っ込むといいますか、発言をしていくというものがなければいけないだろう。受けざらはつくってあります。だから、ぎりぎり出してもらいたくないが、出てくる者については受けざらでいただきましょうという姿勢では困りますので、この点はぜひ念を押しておきたいと思う。これは答弁はよろしゅうございます。  そこで、一つお伺いしておきたいと思うのですけれども、この法律を実施する過程で主務大臣と労働大臣は協議をするというような約束が何か行われているようでございますが、法律からはこのことは読み取れないわけですけれども、主務大臣と労働大臣が雇用の問題についてどのような段階で一体協議をなさるのか、また、どういう目的で協議をなさるのか、お答えをいただきたいと思います。
  187. 藤井勝志

    ○藤井国務大臣 これは申し上げるまでもなく、雇用の安定に今度の共同行為の指示というものがすぐ影響するわけでございますから、安定基本計画を立てるとき事前に通産大臣と協議をする、これは私は当然だと思います。  ただ、一つ申し添えておきたいのですけれども、これは私から言いますと、いかにもしり込みしたような誤解を受けてはいけませんけれども、結局企業が生き延びるということ、これが終局的には雇用を結果的に守るゆえんである、ほうっておけば元も子もなくなってくるというのではいけない、こういう配慮は忘れてはならない。そのためには別途、いま日本の産業構造が御承知のごとく質的な転換をしておる、いわば産業革命のようなそれ以上の大きな変革だと思うのです。それに正しく対応していくという配慮をしながら、労働者の失業予防、生活の安定に全力を尽くす、これが労働大臣の務めである、こう心得ております。
  188. 後藤茂

    後藤委員 私がどういう段階で協議をしていくのか、また、その協議の目的というものは一体何かということを申し上げているのは、繰り返し繰り返し申し上げて恐縮でございますけれども、つまり離職者対策は引き受けたということではなくて、この構造不況産業の安定に主務大臣は、通産大臣なり運輸大臣なりあるいは農林大臣はそのために努力をするわけですから、雇用の立場から、離職者対策いただきますということではなくて、雇用をその中で確保していくということについて協議がなされなければならないだろうと私は思うのです。この法文からは協議するということについては読めないのですけれども、約束をなさっているようなので、そのことを抽象的な言葉ではなくて、ひとつ実質的な姿勢を示していかなければ、これまでの例と同じように、やはり安易に法律を盾にとって首が切られていくだろう。  つまり私が申し上げておりますのは、これまでのいろいろな景気変動の過程で確かにつぶれていったりあるいは過剰雇用が外に出されたりしております。それを一つ一つ全部労働大臣の責任ということを申し上げるのじゃなく、今度の場合には法律でつくられるわけですね。しかも職業安定局長も御答弁なさっておりますように、恐らく相当な過剰雇用が外に出るであろうということも指摘をされておられます。また、いろいろな資料を見ますと、その数字等もおおよそ見当がつけられているわけです。これがこのままでは協議の意味は全くないだろうと私は思うのです。主務大臣と協議をなさるという以上は、こういった問題に対して雇用確保のためにやはり積極的に努力されなければいけない、かように考えるわけでございますので、重ねてお聞きをしておきたいと思います。
  189. 福永健司

    福永国務大臣 ちょっと委員長……。  大変有益な御論議を交わしておられる中で私が発言を求めましたゆえんのものは、いま後藤さんがいろいろお話しになっておられるような観点から、労働大臣はみずからは申しませんでしたけれども、まさにあなたの御指摘全部とまではいきますまいが、ある程度その気持ちと同じ考え方で、過般の不況対策あるいは円高対策についての関係閣僚会議のときにも、いまあなたが言われたような意味のことで、雇用等を中心といたしまして労働大臣がぜひこのことを一緒に協議しようということを強調され、私どもも賛成をいたしまして、関係閣僚十数名の協議のときにかなりそうした相談もいたしたわけでございまして、その際につくりました具体的ないろいろな施策の中にも、まさにあなたがいま御指摘のようなことが幾つかございます。ただし、私どもも、拝聴しながら、そういうことについて労働大臣やわれわれがともに協議して、さらに一層御趣旨に沿うようにしなければならぬという感じを強くいたしました。  労働大臣がそういうことに大いに努力しておられることにつきまして、そばからで大変恐縮でございますが、大事なことでございますので、ちょっと申し上げさせていただきました。
  190. 藤井勝志

    ○藤井国務大臣 御指摘の点、ごもっともでございまして、私としては職責に全力を尽くしたい、このように考えます。
  191. 後藤茂

    後藤委員 大変くどいように私申し上げましたのは、これから安定基本計画を策定する過程でそれぞれの審議会等がつくられて、そこで論議がされるわけです。その際は、各大臣答弁をなさっておられるわけですけれども、ぜひ労働代表をそこに参加させて、そして十分に労働者の意見を聞いて安定基本計画をつくっていきたいという姿勢を明らかにされているわけです。しかし、私がいまくどいように申し上げておりますのは、この姿勢がないと、結局労働者がその安定基本計画に参加、発言をいたしましても、どこにも歯どめがない。だから、そういった労働者がきちっとその産業を守り雇用を確保していくために発言をするよりどころに対して、労働省、労働大臣がしっかりと受けとめてやっていただきたいということを私は申し上げたかったわけです。  なお、それとの関連で申し上げますと、私は、この法案というのは、目的にも書いてありますように――恐らくこれからの論議の中で第一条にも雇用の確保というものがやはり修正として明確に入っていかなければならぬと思いますが、しかし、この法律では企業経営の安定ということがやはり主務大臣の大きな行政責任になっているのだろうと思うのですね。しかし、私が言いたいのは、雇用の安定は労働大臣、そして企業の安定と雇用の安定というものは全く同質のものでなければならぬだろうと思うのです。これがこれからの産業政策なり労働政策のあり方の基本的な考え方だ。そういう意味では、これまでは、パイを大きくすれば、あるいは企業が何とか生き残れば、あるいは設備廃棄をしていま苦境に陥っているのが安定をすればまた雇用も確保できるのだ、したがってひとつそれまで労働者がまんをしてくれ、これがいままでのあり方であったと思う。そうではなくて、企業の安定というものと雇用の安定というものは同質同等に行政としては扱っていかれなければならない、そういう立場から私は申し上げたわけでございまして、ぜひひとつこの辺で雇用の問題、労働の問題に対する発想を転換をしていただきたい、このことを、答弁は結構でございますので、申し上げておきたいと思います。  そこで、運輸大臣にお伺いをしたいわけですけれども、私は河本通産大臣にもお伺いをしたのです。と申しますのは、今度の法案というのは、これは単なるといいますか、いわゆる循環不況、その強弱はもちろんございますけれども、いわゆる単なる循環不況としてとらえておられないだろう。もし単なる循環不況であるとするならば、これは造船にいたしましてもそうですし、あるいは合繊、アルミ、平電炉等にいたしましても、それぞれの審議会なり研究会なりが知恵をしぼってあり方というものを検討しておるわけですし、それぞれの主務官庁が行政指導をなさっているわけですから、それをさらに強めていかれればいいじゃないか。しかし、この法律ができるというのは、これはいわゆる循環不況ではなくて、大変構造的な問題を持っている、そこからこの法律というものは出てきていると思う。  そこで、お伺いをしたいのは、私は、造船はその最も構造的なものを抱えた典型であろうと思うのですね。いろいろとその実情を報道しております資料なり文書等を見てみますと、世界的にも三千五百万総トンですか、そのうちの三分の一ぐらいより需要がない。これから二、三年後ボトルネックを過ぎたといたしましても、建造能力から見て半分の需要よりないんじゃないか、こういうように言われているとすれば、これはまさしく大変構造的な不況だ。構造的な問題だ。そういたしますと、この法律のわずか十二条ぐらい――私は、信用基金の問題はこの際別にいたします。これはやはりそれぞれに必要なものがあるだろうと思いますけれども、その前段の、つまり安定基本計画なり設備廃棄、格納、休止、こういった問題を進めようとする前段のこの法律で、果たして造船業というものが安定基本計画に乗って安定するとお考えでございましょうか、運輸大臣、お願いします。
  192. 福永健司

    福永国務大臣 きわめて基本的な問題であり、大切な問題であると思います。私は、性格上率直に答えさせていただきますが、確かにわれわれはこの法案を出しましたが、いまあなたが御指摘になるような意味においては、これをもってすべて覆い尽くすということはできないと思います。  造船業につきましては、いろいろ申し上げるまでもなく、これこそが構造不況業種であるというような一面もございます。かつてはそういうのでなくて、ばかに景気のいい世界に雄飛する産業というようにとられておりましたが、まさにいまはそういう感じでございます。そこで、現今の状況としてとらえますと、これは私は構造不況業種であり、その構造不況業種が循環不況状況にもある、これダブっているような感じがいたします。  そこで、そのより深刻な面を持つ構造不況に対しての対策というものは、これがすべてではなくて、もっと徹底した、もっと長期的に物をながめて対策を講じなきゃならないと思います。そういうことで、確かに船は船として何とかするという意味における施策ももちろん必要でございますが、わが日本が持つ造船業の技術なり技能なりというもの、こういうものを生かすには必ずしも船でなくてもいい、よそが追随できないようなことをどんどんやらなきゃいかぬという面から、思い切った新しい需要の開拓という面から、私はたとえば浮体構造のもの――いま私は成田の飛行場で頭を痛くしておりますけれども、飛行場なんというものも何も陸にばかりつくらなくてもいい。海洋に浮かべる飛行場をつくるのもよかろうし、また、現にそういう仕事が大分できてくるようになりました。  世界から注目されるようになり、注文も受けておりますが、浮かぶ工場のようなもの、アマゾンへいま送っている、いまケープタウンの付近を動いており、やがてあちらを経てブラジルに着きますが、あれにいたしましても丸ビルの六倍ぐらいな大きさのものでありいたしますけれども、そういうようなもの、まだまだその他さらにうんと進みますと、いまの飛行機や鉄道とは少し違ったもの、これもある程度私ども関係で開拓しつつありますが、極端に騒音の低いもの、極端に振動の少ないもの、そういったようなものを開発していくことが必要であろう。  そういう意味で、ただいま高遠な理論で裏づけながらいろいろ御説がございましたが、私は、まさにそういうような考え方のもとに、構造不況業種としていま御審議をいただいております造船等につきましては、大きな観点から、すなわちただいま御指摘のこの法案のみでなくて、もっと大きな施策を政府等でも大いにやって進めていかなければならぬ、切にそう思う次第でございます。
  193. 後藤茂

    後藤委員 大変うんちくのあるお話は、お聞きをしたいわけですけれども、時間がございませんので、基本的な点だけただしておきたいと思いますので、簡潔にお願いをしたいと思うのです。  私が申し上げておりますのは、この法律と同時に、造船法がせっかくあるわけですから、何なら造船法の改正等が一緒に出てきてしかるべきじゃないだろうかというように私は実は考える。と申しますのは、その下敷きとしてアルミ産業だとかあるいは合繊だとかあるいは造船というものは――確かにいまおっしゃいますように、造船は船をつくらなければならぬということはないんで、エンジニアリング部門だとか大型プロジェクトがたくさんあるわけですから、そういうものをつくっていかれてしかるべきだと思いますけれども、せっかく造船法で新増設等が許認可事項になっているわけです。そういったところを、つまり個別法でなければ私はこれからの構造改善ができないだろうと思う。西欧諸国におきましても、いろんな保護政策というものがとられております。私は、セキュリティーから考えてみましても、やはり造船というものは全部おかに上がってしまって、そしてもう造船は太刀打ちできないんだからつくらないんだということではないだろうと思う。  そういたしますと、こういった包括的、一律的に押さえていく法律ではなくて、もっと積極的に、造船法があるんなら造船法の改正、あるいはそれでだめなら造船事業法的なものが出てこなければならない。そして緊急避難の部分は緊急避難にしていくし、長期の展望を持っていくなら持っていく。その間に、雇用をどのように企業内で確保していくか、あるいは企業外に出していくかということが、国の行政として行われていくべきであろう。  そのことが全く裏づけなくて、ただ設備が過剰である、したがってこれは休止する、格納する、廃棄するということだけでは、どうも先ほど運輸大臣が言われたような高邁な行政の姿勢がこの法律の中からは全く読み取れないではないかという意味で申し上げているところでございますが、この法律と別に、やはり造船に対しましては、主務大臣といたしまして別の対策をいずれ講じていかなければどうにもならなくなるんではないか。しかも、第三国等の追い上げというものもあるわけですから、そういうお考えをお持ちかどうか、お伺いしたい。
  194. 福永健司

    福永国務大臣 実はこの法案を提出するに先立ちまして、私どもとしては、こういうような一緒の形で出すか、あるいはいまいろいろお話がありますように運輸省で造船に関するものとして単独のものとして出すか、大いに研究をいたしました。私も、まだこの種の大臣になってほやほやでございますし、いまお話しのような点を深く考え、あまねく対処して法案を出すということになりますと、率直に申しましてやや時間がかかると思いました。ですから、いろいろ検討はいたしておりましたが、先ほど緊急避難というお言葉をお使いになりましたが、必ずしも緊急避難ということでいいかどうか、私の方としては言葉遣いもむずかしいんでございますけれども、ややそれに似た考えで今度出すんだから、せっかく御審議をいただくんなら一緒になにして、とりあえずのことはこれでやっておいて、そしていまお話しのようなことについてはなお考えよう、こういうことが正直申しますとあるのでございます。  そんなんなら、いっそのこと、そういうのをまとめ上げて出せばよかったじゃないかということでございますが、そこがなかなか役所の仕事というものはそうすらすらっといかない場合もございます。率直に申しまして、私は赤裸々に申しますが、そういう検討を相当時間やったのでありますが、結論といたしまして、一緒に今度は出して、この場しのぎとはあえて申しませんけれども、緊急な事態に対処し、それからやや時間をかけていま御指摘のようなことにも思いを向けつつ対処したい、こういう考えでございます。
  195. 後藤茂

    後藤委員 もう時間が参りましたので、一点だけ、これはもし答弁いただければ答弁いただきたいと思うのですが、私は、やはりこういった構造不況に本当に深刻になっておる、しかも国民経済から見て大変な財産ですね、私的資本の所有ではあったといたしましても。こういうものをそう簡単に廃棄をしていくべきじゃないという基本的な考え方を実は持っておるわけです。  そういたしますと、特に今度の法律でもそうですけれども、やはり市場原理あるいは自由競争という枠が一方にある。そうして片一方、そうは言ってもなかなか保護政策もとりにくい。いろいろなむずかしい問題がいままさに絡まってまいってきております。率直に御答弁をいただきたいんですけれども、こういった構造不況で本当に深刻な事態になっているものは、そういったものから外して考えていかなきゃならぬ、そこに私は知恵があるだろうと思う。ヨーロッパなんかにおきまして、何も社会主義だとかいう意味じゃなしに、教条的に物を申し上げるんではなくて、場合によるとやはり公的所有というものがあるでしょうし、あるいは場合によれば独禁法から外していって、そして別の法律でしばらくこの回復のために、あるいは安定のために行政が努力していかなきゃならぬ、こういうこともあるだろうと思いますので、そういう立場から実は申し上げたわけでございます。もし御答弁をいただければ、一言で結構です。
  196. 福永健司

    福永国務大臣 よくお説を拝聴いたしました。念頭に置きつつ今後に対処したいと思います。  そこで、この法案をもって対処すべきことはこれによってやる。しかし、これをもって足れりとせずして、政府施策において、先ほど申し上げたように新しい法律については検討するといたしまして、それをやる前に、どのくらいの期間になりますか、いずれにしても幾らかの間は行政施策においてできるだけそれをカバーするように努力したいと存じます。
  197. 後藤茂

    後藤委員 ありがとうございました。終わります。
  198. 野呂恭一

    野呂委員長 清水勇君。
  199. 清水勇

    ○清水委員 私は、商工委員会でこれまで本法案の審議に参加をしてまいりましたが、この法案には幾多の欠陥や問題点を実は感じております。一々指摘をする時間がありませんから割愛をせざるを得ませんが、特にきょうは雇用問題を中心にお尋ねをいたしたいと思いますので、簡明にお答えをいただきたいというふうに希望をいたします。  さて、本法案の一つの問題点特定不況産業、つまり業界企業の安定を図ることにのみどうも目が奪われておりはしないか、関連の下請中小企業のことや雇用の安定というものをいささか軽視をしておりはしないか、こういうことを感ずるのであります。  そこで、最初に労働大臣にただしておきたいと思うのでありますが、今日の深刻な雇用情勢というものを反映をして、この法案の策定に当たって、法案といいましょうか、法律の目的の一つになぜ雇用の安定を図るということを具体的かつ国と事業者の責任において行うという旨の規定をされるように努力をしなかったのか、この点を初めに承りたいと思います。
  200. 藤井勝志

    ○藤井国務大臣 当面の最大課題が景気回復と雇用の安定ということは申し上げるまでもございません。したがって、このたび御審議願っている法案の作成に当たりましても、雇用安定については事前に主務大臣である通産大臣に申し入れをして、いろいろ打ち合わせをしまして、第十条の雇用安定の条文への明記と同時に、そのほか安定基本計画あるいは共同行為の指示、こういう問題については事前に協議、こういったことで話を詰めた上で法案の作成に当たっていただいたわけでございます。  ただこの法律は、私はこう思うのです。すでに雇用安定資金制度というものが去年の十月発足し、また、議員立法によって特定不況業種離職者臨時措置法、こういうものが事前に先行しておる。そしてこの特定不況産業安定法、こういうものがそろってワンセットになって現在の危機を乗り切る、そして産業構造の変化に対応していく、こういうふうに理解したらどうか、私はこのように考えているわけでございますから、これはこれで一つの問題点があるわけですから、ワンセットにしてお考えいただきたい、このように思うわけでございます。
  201. 清水勇

    ○清水委員 大臣はそういうふうにおっしゃられるわけでありますが、この法案の第一条に「目的」というのがございます。これによると、「安定基本計画を策定し、計画的な設備の処理の促進等のための措置を講ずることにより、特定不況産業における不況の克服と経営の安定を図り、もって国民経済の健全な発展に資する」云々、こういうふうに書かれております。  そこで、いまの御答弁ではございますけれども、現実の問題として、たとえばここに一つの数字がございますけれども、第二条に特定をしている四業種、そのほかに政令で指定をされるであろうと予想される十業種、これを合わせると、今日六十万八千九百人余りの従業員が雇用されておる。しかも問題なことは、そのうち約二三%に近い十三万八千五百人くらいの過剰人員を抱えている、こういう数字がございます。  そこで問題は、この法律の成立施行というものを通して、労働大臣は離職者対策特別措置法等でワンセットでカバーをしようというふうに言われるわけでありますけれども、現に新たに雇用不安に陥る、あるいは失業に陥るであろうと想定される者がそれだけ大量にあるという場合、あの法案は離職者、つまり失業者をどう救済するか、手当をくれるとか職訓をやるとか、そういう性質のものであって、現に働く労働者の雇用の安定を図ろうというような性質のものではございませんから、そういうこともあわせて考えると、やはりこの「目的」の中に、当然のこととして雇用の安定なりあるいは関連下請中小企業の経営の安定、こういったようなことがうたい込まれて当然ではないのか、また、私はそういうふうに感じておるわけです。  通産大臣も、いまお帰りになりましたが、通産大臣はしばしば商工委員会の中で言われておる。確かにこの法律で一定のカバーはできるだろうけれども、基本的には今日の不況を打開し、景気を回復させるそのことが重要だ、こういうふうに指摘をされているんだが、新たにこの法律の成立を通してたとえば失業者が増大をするなどということが予想されるとすれば、それに歯どめをかけるという意味も含めて、当然この「目的」の中にいま申し上げました雇用の安定を図るといったようなことをうたい込む、こういう対応を少なくとも雇用問題の担当大臣として努力をされるのがしかるべきじゃないか、こういうふうに思うのです。  言われるようにいずれかの段階で主務大臣とも合議をする、こういうふうに言われるけれども、そのことが残念ながらこの法律の中では読み取れないわけなんです。法律ができれば一人歩きをするというようなこともあり得るわけです。そういうことを恐れるがゆえに、私は、いま申し上げた字句というものをきちっと規定する、そのことを通して不安を除去する、こういうことがどうしても必要ではないかと思うのですが、再答弁を願いたいと思います。
  202. 藤井勝志

    ○藤井国務大臣 雇用の安定という観点から再度御質問がございまして、お気持ちは当然のことでありますが、労働大臣として私はよく理解できます。ただ、第一条の条文に雇用安定という言葉が出てないということは不十分ではないか、私はそういう受けとめ方も一理あると思うのです。ただ、十条において指摘し、この法律の持ち味というかねらいというものが、結局企業の経営の安定あって雇用の安定もあり得るわけで、表裏一体だと思うのですね。だから、この法律には第一条に雇用安定が書かれていなくても、実質的に十二分に雇用安定を確保するということ、これが確保できれば、そういう点が認識できれば御心配になるような点はないのではないか。ただ、要は今後の運営である、この法律を運用するに当たって御指摘の点も十分踏まえて労働大臣としてがんばる、こういうことではないか、私はこのように思うわけでございます。
  203. 清水勇

    ○清水委員 大臣は重ねて、第十条で雇用のことについて規定をしている、だからそれほど心配は要らないのじゃないか、こういうふうにおっしゃられるわけでありますが、しかし、なぜ心配をするかというと、もともと通産省の原案には雇用のコの字も規定をしていなかったのですよ。たとえば野党から文句が出る、労働団体から注文がつく、下手をすればこれは解雇促進法になりはせぬか、こういう批判等もあってあの十条なるものが挿入をされた。しかし、一項、二項、三項をよく読んでみると、非常に抽象的であり、申しわけ的であり、訓示規定の域を一歩も出ていない。これでは雇用安定を確保するという、そういう意味での実効はとても望めない、こういう心配があるのですよ。だから、第十条があるから御心配は要らないというけれども、だから心配なんですよ。  特に労働大臣に私は所信を尋ねたいと思いますけれども、現実の問題として、たとえば過剰設備の廃棄なり処理なりをするということは、イコール過剰人員の整理というような問題につながってくるのじゃないでしょうか。違いますか。そこが問題なんですよ。  たとえば安定基本計画というお話もございました。第三条で「安定基本計画」というのがあるわけですけれども、あの安定基本計画の中を見たって、雇用の安定に関する事項だとか関連下請中小企業の経営の安定に関する事項だとかということは何一つ書いてありませんよ。これはそういう御趣旨も含めて運用をもって十分考えているんですと言ってみたって、法律が成立をし、一人歩きをしていくという場面になれば、法律に規定のないものが法律に規定があるものと同じように力を持つというようには考えられない。ですから、第一条なりあるいは安定基本計画というものの中に雇用の安定に関するそういう規定をするということが、たとえば労働大臣のその職責を全うする立場からいっても必要不可欠なことじゃないですか。  そういう意味で、私は、大臣の言いわけではなしに、決意のある所信を承りたい、でき得れば、まだ時間があるのですから、その気になれば幾らだって修正をして欠陥を補完できるわけですから、そういう意のあるところを承りたい、こういうふうに思います。
  204. 藤井勝志

    ○藤井国務大臣 雇用確保という面において大変御心配をいただき、御熱心な再度の御発言でございまして、私もありがたく御意見として承ります。  ただ、先ほども申し上げましたように、法律にはそれぞれ一つの持ち味といいますか、あって、先ほど申しましたような一連の制度、法律というものがこれから施行されるわけでございますから、やはり今度の特定不況産業の安定法というのは、経営の安定があって初めて雇用の確保がある、こういう点に一つのアクセントをつけたというか、表現がなっておるけれども、この法律内容は、これはもうやむを得ない必要最小限度の経営の安定のための措置である、これを解雇促進のよりどころにするなどということは、企業家の経営マインドあるいはまた終身雇用制度の日本の労働慣行からいっても――特殊な人は別でありますけれども、世の中にはいろいろありますから、人によってこういうものを首切りに利用をするというような点において、私は断じて労働大臣として労働者の生活の安定を守るということによって十二分に主務大臣に話をする、事前に協議をする、こういうことを重ねてお約束いたします。
  205. 清水勇

    ○清水委員 断じてという強い言葉も使われているわけですが、それほどの御決意がありとするならば、大臣がそういうふうにおっしゃられても、これを受け取る側には現に大変な不安や心配があるのですから、そういうものを払拭し得るように、たとえば法案をめぐって長い時間をかけて審議をし、きょうはわざわざ連合審査というような場面にもなって、それやこれやを通して、たとえば言葉じりをとらえて私どもは言っているんじゃなくて、現実に法文を通してそこに弱点なり欠陥なりが指摘をされるとすれば、これは潔く受けとめて、その補強のためにあるいは補完のためにみずから修正をしてでもそういう不安を除去する、こういうくらいな決意を引き続き大臣がとっていただくように、特に期待をしたいと思います。  また同時に、離職者対策特別措置法ですか、この話がいまも出されておる。これは商工委員会の審議の中にも出ておるのです。たとえば過剰設備の処理、そして過剰人員の整理、こういうような場合に何をもって雇用の安定を図るのか、こういう質問に対して、たとえばいま申し上げた離職者法によって、これを受けざらにしてやるんだ、こういう発想が披瀝をされている。しかし、これはやはり考え方としては正しくない。  さっき私は申し上げたけれども、いま十四業種で六十万八千人余りが働いておる、過剰人員は十三万八千人余りと言われている。たとえば本法が成立をし、安定基本計画等を通してこういうものがはじき出されるというようなことになった場合、大臣は離職者法で雇用の安定を確保できるようにするとおっしゃるけれども、たとえばいま一たん失業した場合どうなるか。単に中高年齢層だけでなしに、なかなか再就職なんというのは不可能なんじゃないか。  とすれば、事前の段階、たとえば安定基本計画策定等の段階でできるだけこれをチェックして、外へはじき出すことのないような、そういう対応をするということが先決なんであって、はじき出された者を離職者法をもってカバーするなんというようなことは、ぼくは前向きな姿勢じゃないというふうに言わざるを得ないものですから、やかましいように申し上げますけれども、この点は主務大臣と相談をしてうまくやりますなんというようなことをおっしゃるんじゃなくて、法改正を通じてちゃんと基本計画の中に雇用の安定に関する事項というものを入れるべきですよ。そうでなければ、これは納得できないと思いますね。どうですか。
  206. 藤井勝志

    ○藤井国務大臣 特定不況業種離職者臨時措置法の前に、雇用安定資金制度というのが去年の十月から発足しております。これはいわゆる失業の予防、そして労働者の生活の安定、こういうことでありますから、その間に休業手当を出して、そしてその間には職業訓練であるとかいろいろなことをやっていく。設備の廃棄をしても、その会社がまた新しい一つの伸びる仕事に対しての設備をやるとかいろいろなことによって企業内部でやりくりする、どうしてもいけない場合、今度は離職者法によってこれがまた別途対策をやる、こういうことでありますから、私は、そのような安定資金制度と離職者臨時措置法とこの法律とワンセットになるというか、うまく運用されることによって、これがそのままにいくことによって、最後に生き残れるものがすっきり元も子もなくなるということを防ぐ、こういう意味においては結果的に雇用安定につながるのではないか、雇用安定に通ずる道である、このようにも理解するわけでございますが、これはやはり必要最小限度やってもらわなければいかぬ。雇用不安を不必要に巻き起こすような足がかり、あるいはまた解雇促進の法律案のごとく運用されることは断じて避けなければならぬ、このように思います。
  207. 清水勇

    ○清水委員 労働大臣が断じてというふうに言われたので、その辺に一面では期待をしつつ、それから一面では、先ほど来私が申し上げるように、いまからでも間に合うわけですから、必要と思われる私が申し上げているような部分はぜひ修正をし、補強するように、労働大臣としても重要なポストを持っておられるわけですから、御努力をいただきたい。  さてそこで、重ねて労働大臣にお尋ねをいたしますが、たとえば話が進んで設備の処理が企業によって行われようとする場合、私は、当然のこととして当該労働組合との協議を行う、こういうことが貫かれなければならないと思うのです。どうもこの法案ではその辺の明確な規定がない。そこにもやはり雇用をめぐる不安という問題が出てくるわけですね。元来、設備の処理ということは労働者の雇用や労働条件に重大な影響を及ぼすわけですから、言うまでもなく団体交渉の対象事項になることははっきりしている。しかしながら、これまでの歴史的な経過等を踏まえてみますと、とかく経営者というものは、たとえば経営権であるとかあるいは企業管理運営事項などと主張されて、たとえば団体交渉を粘り強く行って労働者の合意を得る、こういう努力を回避をする、忌避をするという傾向がございます。今回のこの法律に基づくたとえば設備廃棄という問題をめぐっても、そういうことの起こることを残念ながら予想をせざるを得ない。  ですから、私は、そういう点に思いをいたせばなおのこと、労働組合との協議、少なくとも合意を前提とするような協議を行うという旨の規定がきちっとなされてしかるべきではないか、こういうふうに考えるわけでありますが、大臣所見を承りたいと思います。
  208. 藤井勝志

    ○藤井国務大臣 この法案の表現の仕方、こういった技術的な面におきましては政府委員から答弁をさせますが、私は、やはりこの法案の趣旨というものは、過剰設備――なるほど設備を廃棄しますと、これが雇用に影響され、人員整理につながる、こういったことがあることも十分考えなければなりません。ただしかし、過剰設備をそのまま抱えておって事業が倒産してしまう、こういうことになれば元も子もなくなる。そうすると、結局そこに働いている労働者の雇用が台なしになってしまう。そこら辺の兼ね合いですね、これはなかなかむずかしい問題だと思いますね。それがいわゆる雇用解雇をする後ろ盾の法律になるというような運営は、これは私、絶対避けてもらわなければいけない、このように思うわけでございまして、この法律をつくり上げる過程においていろいろ直接衝に当たりました政府委員から、ひとつ補足的な説明をさせます。
  209. 北川俊夫

    北川政府委員 いま大臣からお答えしたとおりでございますけれども先生指摘のように、企業再建、共同行為を行うというような場合に、組合側の全面的な協力がなければその再建は成功を期し得ない、そう考えております。ただ一部に、先生指摘のように、間々管理運営事項であるとかあるいは形だけ団体交渉に応じて中身の詰めを怠るというような経営者があることも事実でございますので、この法案の作成の際に関係事業官庁とも十分話をいたしまして、共同行為の実施の指示に当たりましては、業界に、関係労働組合と十分話し合う、できれば合意に達するまで団体交渉を行うというような指導を十分行うことを申し合わせております。
  210. 清水勇

    ○清水委員 時間もありませんから、ぼつぼつ終わりにいたしますが、いまの点については、いま労政局長からお話がございましたが、その点はしかと徹底を期していただきたい、こういうことを重ねて要望をいたしておきます。  それから、せっかく通産大臣がおられますから、二つだけ簡潔にお尋ねをいたしておきます。  一つは、設備の処理が地域経済に著しい影響を及ぼす、こういうことは当然あり得るわけですが、この法案を見ると、その場合にどうするかということがどうもなかなか読みがたい。ですから、都道府県なり関係市町村なりの首長の意見といいましょうか、これを積極的にくみ取っていく、吸収をしていく、あるいは反映をさせる、こういうことが非常に重要だと私は思うわけでありますが、法案中どうもあいまいに流れているものですから、この辺をどのように対応なさろうと考えているのか、お聞かせをいただきたいと思うわけであります。  また同時に、商工委員会等の場で関連中小企業あるいは零細規模の企業等の経営の安定については十分留意をしていきたい、こういうふうに言われるわけでありますが、現実に親企業が設備の廃棄というような方向になる場合に、しわ寄せを受け、時にはつぶれてしまうなどというような下請中小企業も起こり得る、こういうことを考えて、私は、単に既往の法律や制度だけで今度の法律に基づく設備処理をめぐる中小企業への対応が全きを期し得るかどうか、どうしても一抹の不安を感ぜざるを得ないものですから、この二点について通産大臣のしかとした所見をお聞かせいただきたいと思います。
  211. 河本敏夫

    河本国務大臣 業種によっては地域経済に非常に大きな影響があると思います。また、業種によっては下請企業それから中小企業にも非常に大きな影響があろうと思いますので、安定基本計画をつくります場合に、関係の審議会の意見を聞きまして作成をすることになっておりますので、その審議会にそれぞれの代表の方々の出席を求めまして、そこでしっかりと意見を言っていただこう、こう思っております。
  212. 清水勇

    ○清水委員 終わります。
  213. 野呂恭一

    野呂委員長 次に、宮井泰良君。
  214. 宮井泰良

    ○宮井委員 私は、主といたしましてこの法律特定不況産業に指定されております船舶製造業、このことを念頭に置きまして若干の質疑を行いたいと思います。  この特定不況産業安定臨時措置法案は、設備の処理が大きな柱となっておるわけでございます。そうして主務大臣が安定基本計画を策定する、こういうふうになっております。この計画に基づきまして業界が自主的に設備処理の実施を行うことになるわけでございますけれども、まず、この基本計画に対する政府の責任について通産大臣にお伺いしたいわけでございます。また、この計画に当たっては当然需給見通しというものも明確に示される、このように思うわけでございますが、これについての見解もお伺いしたい。そして、この安定計画は何年先の需給見通しを目標として定めていくのか、そういった点もお伺いいたしたいと思います。
  215. 河本敏夫

    河本国務大臣 この法律の一番大事な点は安定基本計画、それから安定基本計画が業界の自主努力でやれない場合の対応策、それから信用保証基金、こういうところだと思います。  安定基本計画につきましては、第三条に明らかになっておりますが、詳細につきましては政府委員から説明させますけれども、要するに、どの程度の設備を廃棄すればこの業界は立ち直るか、こういうことを各権威者の意見を聞いて、そして国内の需給関係、貿易関係、そういうものを見通しながら決めていこう、こういうことでございます。
  216. 濃野滋

    ○濃野政府委員 安定基本計画、ただいま大臣から御答弁ございましたように、この安定基本計画をつくります前に、つまり特定不況産業というのは、いわば候補業種の中から大部分の人の申し出で、ぜひこの法律による設備処理を進めたい、そういう業種について安定基本計画が定められるわけでございます。この安定基本計画が定められますと、さらにこの法律でも四条で、たてまえといたしましては事業者の自主的な努力ということを第一に考えておりまして、そういう意味で安定基本計画は、通産大臣ないしはそれぞれの業種の所管大臣が、業界としてそこまでまとまって設備処理を行うという業界につきまして、審議会の場で衆知を結集して将来の設備処理の目標になる計画をつくる、そういう性格のものだと思います。  そこで、ただいまの御質問の最後の、何年ぐらい先を目標にしてつくるかということでございますが、業種によりましていろいろな差があると思いますが、私ども通産省所管業種で従来議論してまいりましたところでは、大体五年先ぐらいの需給を目安に安定基本計画と申しますか、設備処理の背景になる長期需給見通しをつくるというのが多くの業界の一般的な傾向ではないか、こういうふうに考えております。
  217. 福永健司

    福永国務大臣 私の所管のことについてお答えいたします。  もとより今後の需要見通しをなるたけ的確につけていかなければならぬわけでございますが、五十一年六月の海造審の答申では、五十五年におけるわが国造船業の建造需要量は六百五十万総トン程度と予想されておりますが、最近の情勢ではこの見通しよりさらに悪化することが懸念されております。いろいろ理由はございますが、世界的な船腹過剰による需要の極端な冷え込み、それから最近の円高傾向も手伝いまして一層悪化している情勢でございます。これから後の、五十五年後の六十年、六十五年における需要見通し等に関しましては、ただいま海造審等において審議をしてもらっているところでございますが、いずれにいたしましても、造船に関する限りにおいては、ここしばらく後を考えますと現在よりもさらに悪化する、こういう情勢でございますので、それなりの対策を講じていかなければならない、そういうように考えております。
  218. 宮井泰良

    ○宮井委員 運輸大臣にはこれから聞こうと思っていたのですが、積極的に答弁いただいたわけでございますが、いま通産省からの御答弁で基本計画の内容等はよくわかるわけですが、この責任ということは単なるそういう指針的なものであるのか、どの程度までそれを責任持つのか、この辺の答弁をもう一度お尋ねいたします。  それと、需給見通しは五年先ということでございますが、五年ということになりますと、たとえば造船業などの場合は受注から引き渡しまで大体二年ぐらいかかるわけでございます。こういう点におきまして、もちろんむずかしい問題ですけれども、需給見通しを五年というふうなことでいいものかどうか、この辺もあわせて通産大臣にお伺いいたします。
  219. 濃野滋

    ○濃野政府委員 この安定基本計画の性格でございますが、先ほど御説明申し上げましたように、この法律考え方の一つの基礎に、当該業界の自主的な努力と申しますか、これを非常に大きな前提として考えております。ただ単なる一つの目安ではございませんで、やはりそこまでまとまった業界の将来の姿というものを役所の審議会でつくり上げるわけでございますから、この法律におきましては、そういう業界の自主的な努力を期待しながらも、最後のいわば実行の担保といたしまして、いわゆる指示カルテルと言われております五条の「共同行為の実施に関する指示」という規定を設けておりまして、やはりこの計画というのは単なる目安ではなくて、国といたしましても、カルテルの指示でございますから、そこには業界の相互の協力、努力ということがあくまでも前提にはなっておりますが、やはり最後はこういう指示カルテル制度というものを設けまして、ぜひ実行を期待するという性格のものではないかと思います。  それから、先ほど私申し上げましたのは、通産省関係ではほぼ五年ぐらい先の需給を一つの目標といたしましていろいろ議論しているのが業種としては非常に多うございますが、あるいは私、造船事情はよくわかりませんが、五年では足りない、もっと先の需給というものを前提にしていろいろ計画を組まなければならぬ業種も、当然のことながらあり得ると考えております。
  220. 宮井泰良

    ○宮井委員 そこで、運輸大臣にもお伺いいたしますが、先ほどお答えいただきましたので、これからの過剰設備、これは何%ぐらいの過剰というようなことやら、需給の見通し、あるいはまたこの設備の処理方法、いろんなことを言われておりますが、この造船業の場合は大変むずかしい。どういう方法でやっていくかというようなこともございますし、この設備の処理につきましては、先ほどからもございますように、業界の自主的措置で行うということでございますが、大手企業の場合、他の業種への転換は可能である、しかし、中小造船会社の場合、設備処理は死活問題となってくるわけでございまして、午前中来こういった議論も多々あるわけでございますが、処理の配分についてはどのようにお考えになっておるか。私は、中小企業への配慮が十分必要ではないか、こう考えるわけですが、御見解をお伺いします。
  221. 福永健司

    福永国務大臣 具体的なことにつきましては局長から答えさせますが、御説のごとく、中小企業には大いに配意をしなければなりませんし、これの実際的な処理については諸般のことを気をつけてやらなければなりません。ただいま関係の者がこれについて鋭意対策を進めておる次第でございます。ちょっとそのあたりをお聞きいただきたいと思います。
  222. 謝敷宗登

    謝敷政府委員 お答えいたします。  今回の特定不況産業に対します安定臨時措置法の骨子は設備の処理ということでございます。したがいまして、従来私どもがやってまいりました操業度に関します勧告に比べますと、中期的にはかなりしっかりした見通しのもとにやらなければいけない。それから、言うなれば設備の適正稼働率というような議論もあわせて行っていくわけでございますが、先ほど大臣から御答弁がありました中長期の需給見通しに立ちまして、設備の削減率あるいは処理の方法――この処理の方法につきましては、法律にも書いてございますように、廃棄あるいは格納、休止ということがございますが、造船の場合には、安定基本計画の中には、先ほど来御議論いただいております積極的な新分野への転換というようなことも内容として入ってくるかと思います。     〔野呂委員長退席、中島(源)委員長代理着席〕 それらについては、いま鋭意やっております需給見通しを根幹にいたしまして、削減率それから処理の具体的な方法についてこれからできるだけ速やかに進めてまいりたいと考えております。  業界におきまして、先生が御指摘のような大手と中手中堅クラスとの間には考え方の相違あるいは具体的に対応すべき対応の仕方についても相違が出てくると考えておりますが、従来の操業度勧告におきましても、これら相互の関係については十分配慮してきたつもりでございますし、海運造船合理化審議会におきまして安定基本計画を御審議いただく際の大きな審議事項と考えておりますので、御指摘の点を十分頭に入れまして、私どもとしては海運造船合理化審議会の審議資料の作成なりあるいはお手伝いに当たって配慮をしてまいりたい、こう考えております。
  223. 宮井泰良

    ○宮井委員 細々と御答弁いただいたのですが、結論的にはこれから検討する、現時点ではまだはっきりしておらないようでございますので、早急にこれを立てていただきたい、このように要望いたします。  次に、運輸大臣にお尋ねしますが、石油のタンカー備蓄についてでございます。  この構想は、一千万キロリットルを目標とするエネルギーの国家備蓄構想とともに、タンカーの過剰対策として浮上してきたのでございますが、政府も黒字対策として五百万キロリットルのタンカー備蓄を決定いたしておるようでございますが、初めに、この構想に対する見解と過剰タンカーの隻数及びトン数はどの程度か、このことをお伺いします。
  224. 福永健司

    福永国務大臣 タンカー備蓄ということは、これがうまくいきますと、いま非常にタンカーが余っておりますので、海運界関係にも非常にありがたい話でございます。しかし、これにつきましてはなお若干問題がございまして、必ずしもたんたんたる道ばかりではないと思います。しかし、それらを克服してぜひ成功せしめたいものと思うわけでございます。  現在、タンカーはかなり余剰のものがございますが、タンカー備蓄に使おうというのは、とりあえずの話は二十万トン級を二十隻くらい、こういうわけでございます。ほかの海洋構築物等によってもやろうかという企画等もございますので、それらとの関係において、場合によってはタンカー備蓄をもう少しふやすことができるし、余った船はもっとある、こういうわけでございますが、私どもといたしましては、若干の難点はございますが、それらについて解決の方途を見出してぜひ成功せしめたい、こういうふうに考えております。
  225. 宮井泰良

    ○宮井委員 そこで、農林省にお伺いしたいのですが、この備蓄構想に対して漁業保全という点からどういうようにお考えになっておるか、また、漁業者の生活を守るという点からこの構想についてどういう考えを持っておられるか、さらに、この候補地については通産当局が決定すると言われておりますが、これに対して農林省は漁業者の意向をどう反映していこうとされておるのか、候補地の選定は通産省に任せる、こういう方向でいかれるのか、その点をお伺いします。
  226. 恩田幸雄

    ○恩田政府委員 私ども水産庁といたしましても、石油の備蓄そのものが国民経済及び国民生活の安定向上を図る上から必要なものであることは、十分認識しております。ただ、私どもは、あくまでも漁業の振興を図り、漁業者の保護を図る立場にございますので、今回のタンカー備蓄の実施の仕方につきましては、漁業の操業にできるだけ被害を及ぼさないよう、また、事故等が発生しないよう、また、事故が発生しました場合には膨大な漁業被害をこうむるわけでございますので、それに対する補償等も十分考慮していただくこと等、漁業への悪影響が極力少なくなるようにいたしたいと考えております。  なお、候補地につきましても、このような観点から関係各省に対して十分御意見を申し上げてまいりたいと考えております。
  227. 宮井泰良

    ○宮井委員 そこで、通産省にお伺いするわけですが、いまございました農林省等の意見を十分取り入れていくお気持ちであるかどうか、また、このタンカー備蓄については通産省が主管官庁として取り組んでおられるようでございますが、具体的にその停泊地はどこを予定されておるか、備蓄量、また、タンカー備蓄というものは恒久的に行う予定であるのか、それとも一時的なものであるのか、安全対策等について心配はないかどうか、さらに、備蓄原油につきましても石油業界と通産当局との見解が違うように聞いておるわけですが、その点の見解をお伺いいたします。
  228. 橋本利一

    橋本(利)政府委員 お尋ねの順を変えることになるかもしれませんが、私たちがいま考えておりますタンカー備蓄は、当面五百万キロリッターでございます。石油開発公団が実施することになりますいわゆる国家備蓄の一環として、公団による恒久的な備蓄設備ができるまでのつなぎの措置、かように考えております。  それから、錨泊候補地につきましては、昨年の秋以降、運輸省あるいは水産庁の協力を得まして、いわゆる気象、海象といった自然条件のほかに、先ほども指摘になりました漁業活動あるいは海上交通量といった社会的な条件につきましても、既存資料をもとにして審査いたしたわけでございます。現在は、去る二月の十日に設立されました日本タンカー石油備蓄協会に委託いたしまして、具体的な地点につきましてさらに調査を進めておる、したがって、いまの段階でどの地点というところまでは決まっておりません。  それから、安全の問題につきましては、タンカーの安全、防災につきましては、当然他の船舶と同じように、海上交通安全法、港則法、船舶安全法あるいは海洋汚染及び海上災害の防止に関する法律、こういった幾つかの関係法規がございますが、こういった現行法規の適用で十分確保できるというふうには考えておりますが、何せタンカー備蓄は初めてのことでございますので、さらに安全を確保するために、具体的な立地点ごとにどのような安全対策を講ずるか、いわゆる安全基準あるいはそれに基づくマニュアルを策定いたしたいということで、現在、日本海難防止協会等に作業の一部を委託いたしまして準備を進めておる、こういうことでございます。  それから、石油業界との間に意見の食い違いがあるような御指摘でございましたが、私たちといたしましてはさようなことがないというふうに考えておりまして、現在、石油業界と備蓄の対象とする油の種類あるいは原油の購入の方法あるいは引き取りの方法といったような諸点について話し合いを進めておる、こういう段階でございます。
  229. 宮井泰良

    ○宮井委員 いま、候補地が停泊地の具体的なことが決まっていないというお話でございましたが、新聞報道によりますと、通産大臣から、これは橘湾ですか、長崎県知事に対してタンカー停泊地にとの要請をした、これは二十五万トン級のタンカー十隻程度停泊させたい、こういうことも報道されておりますが、この点についてのお伺いと、さらに、万が一海上が汚染された場合の補償はどうなるか。漁業権の補償について通産当局のお考えでは、大体二十五万トンタンカー十隻で水面使用料として二十五億円を予定しておる。しかし、同湾においては年間五十五億円の水揚げがある、水揚げの量とそういった補償の金額というものが食い違っておる、こういうことが報道されておるわけですが、その点をお伺いします。
  230. 橋本利一

    橋本(利)政府委員 御指摘の橘湾につきましては、大臣から要請をしたという事実はございますが、まだ決まったという段階ではございませんので、先ほどあのようなお答えをした、こういうことでございます。  それから、ただいまのお話の漁業補償の問題でございますが、現在御審議を賜っております予算案の中に、キロリッター当たり四百円の水面使用料というものを掲げておりまして、これはあくまでも予算単価でもあるわけでございます。あるいは実情に即してさらに検討を必要とするかとも思いますが、とりあえずいまの御指摘の数字は予算単価である、こういうことでございます。  それから、別途保険といたしましては、御承知のPI保険あるいはそれを補てんするためのCRISTAL協定に基づくところの保険等もございます。石油開発公団も近くこのCRISTAL協定に参加する準備をいたしておる、こういう段階でございまして、万が一さような事態が発生しても十分に補償し得るように準備を進めておるわけでございます。
  231. 宮井泰良

    ○宮井委員 終わります。
  232. 中島源太郎

    ○中島(源)委員長代理 次に、瀬野栄次郎君。
  233. 瀬野栄次郎

    ○瀬野委員 特定不況産業安定臨時措置法案に対する連合審査に当たり、通産、労働、農林、運輸各大臣質問いたします。  農林省当局に最初にお伺いいたしますが、合板業界は特に昭和四十九年以降在庫を抱え、価格は低迷し、操業休止、工場閉鎖が多く、四十九年以降六十三社が倒産をしております。すなわち、四十九年二百六十五工場あったのが五十二年十二月末は二百二十二工場になり、現在は百八十八工場になっておりまして厳しい状況下にございます。一方、不況カルテルも日合連はすでに十回行い、今回五十三年四月から九月にかけて十一回目を行う予定になっております。この中には四月ないし六月はアウトサイダーも含まっておるわけでございますが、農林省は合板業界の実態をどのようにとらえ、今後の見通しについてどう考えておるか、冒頭、見解を承りたいのであります。
  234. 藍原義邦

    ○藍原政府委員 合板業界につきましては、ただいま先生指摘になりましたように、昭和四十九年以降住宅着工が減少いたしましたに伴いまして需要の減退が生じ、そのために長期にわたりまして深刻な不況状況に陥っております。  こういう関係もございまして断続的にカルテルをやってまいったわけでございますけれども、特に五十二年の十一月からは、カルテルに加えまして事業活動規制命令によります生産調整を開始いたしました。しかしながら、いまの状況でも必ずしも好転しておらないということでございまして、価格の水準も改善が見られておりません。そういうような観点から、日本合板工業組合連合会は、国の助成のもとに構造改善基金を設けまして過剰設備の買い上げを行うということにいたしておりまして、ただいまその具体的な方法について鋭意検討中でございます。
  235. 瀬野栄次郎

    ○瀬野委員 五十二年十二月十六日の閣議で合板製造業構造改善基金を創設し、本法とは関係なく、五十三年度中に一二%、五十ラインの設備廃棄をすることを決定しております。すなわち、合板の生産能力は四ミリ換算で五十一年末二十四億六千万平方メートル、掛ける一二%カットとなりますと約三億平方メートルということになりますが、一工場平均が一・六ラインでございますので、五十ラインだと三十五工場に当たるわけでございます。いま申し上げましたように、一二%には業界の一部はほど遠い、こういうような批判もありますし、三〇%にしないと効果が出ないんじゃないかという意見もあります。  そこで、業界の立ち直りが、果たして本法とは関係ないこの改善基金によって一二%、五十ラインを救わんとしておりますけれども、農林省当局はその立ち直りのめどがあるのか、その点はどういうふうに検討しておられるか、お答えいただきたい。
  236. 藍原義邦

    ○藍原政府委員 いま先生指摘になりましたけれども、合板業界の総生産量の能力は二十四億六千万平方ございまして、ところが、五十二年実際に生産量は十八億四千万平方でございます。したがいまして、この稼働率は七六%ということに相なるわけでございますけれども、これからの合板需要というものの伸びその他を勘案いたしますと、年間に大体二十一億六千万平方メートル程度の生産量があれば十分対応できるのではないかというふうにわれわれは考えております。そういう観点から現有生産能力の一二%を削減しようということを考えたわけでございまして、こういう生産をやってまいりますと、その結果といたしましては、昭和五十五年には稼働率が大体九〇%にまでなりまして、需給の均衡が図られるであろうというふうにわれわれは考えております。
  237. 瀬野栄次郎

    ○瀬野委員 林野庁長官は、昭和五十五年には九〇%の操業度が考えられる、また、そのように持っていこうという御答弁でございますが、合板製造業構造改善基金の原資を見ますと六億五千万円。すなわち、この中の二分の一である三億二千五百万が国の負担である。すでに政府は二月払い込みを終わっております。残り三億二千五百万が県の負担、こういうことになっておりまして、これを元手にして十倍、すなわち六十五億借り入れて先ほど申しました一二%の設備廃棄の資金に充てる、こういうことでございますが、設備廃棄をするということになれば、当然退職者も出てまいりますし、また解雇という問題が起きてくるわけでございます。そういうものを含めますと、こういった資金ではとても足らないと思います。  ちょっと、先ほど三億二千五百万が県と言いましたのは業界です。訂正をしておきます。  そこで、業界の方も、退職金その他を入れると六十五億以上に資金が増大してくるとなりますと、将来残存企業、いわゆる残った企業がやめた企業に対して漁業で言えば共補償みたいなことをするわけですから、その残存企業に相当負担がのしかかっていく。現在不況で大変困っているときに、しかも銀行から金を借りるだけ借りて、目いっぱい借りておるところへこういった負担を受けるということになりますと、残存企業も大変な負担になってくるということで、将来がおもんばかられるわけでございます。果たして六十五億の資金で足りるのかどうか、やっていけるかどうか大変むずかしい、こういうふうに思うのですが、本法提案に当たり、関連のあるこの合板製造業構造改善基金について当局はどういうふうに見通しておられるか、これもこの機会に明らかにしていただきたい。
  238. 藍原義邦

    ○藍原政府委員 現在、日合連で検討を進めております構造改善基金でございますが、これは先生もう十分御存じだと思いますけれども、設備処理に必要な資金の借り入れに関係いたします債務保証という形で、六十五億という金を借り入れて設備の処理に当たろうということでございまして、私どもといたしますれば、これで合板業界が自主的に設備の調整を図っていくというふうに考えておりますけれども、当然こういうことをやります過程におきましては、いろいろそれに伴って必要な資金も要るかと思います。そういう問題も全般的に検討いたしまして、ただいま御審議いただいております法案が成立いたしますれば、特定不況産業として指定をいたしまして対応もしてまいりたいというふうに考えておる次第でございます。
  239. 瀬野栄次郎

    ○瀬野委員 藍原林野庁長官は、今回の法案が成立すればそれと相まってとおっしゃるが、そこで私はその件に触れてまいりますけれども、本法はその提案の理由の中に、「特定不況産業の設備の処理のため必要な資金等の借入れに係る債務の保証に関する業務を行わせるため特定不況産業信用基金の設立等について定める必要がある。」こういうふうに理由が述べられております。したがって、本法により特定不況産業信用基金を新しく創設するわけですが、日本開発銀行の出資が百億円と、民間出資を原資として一千億の債務保証をすることになる計画でございますけれども特定不況産業候補業種に挙げられているものには、御承知のように平電炉業、アルミニウム製錬業、合成繊維製造業、船舶製造業等があり、通産大臣所管に基金の枠がとられて、主務大臣である農林大臣が合板に果たして幾ら枠がとれるか、合板の方に幾ら回ってくるか、はなはだ問題でございます。  なぜ私がこれを指摘するかといいますと、政府考え方を従来からわれわれはずっと見てまいりましたが、基金による債務保証は本法律案の重要な柱でありますが、昭和五十三年度財政投融資計画における日本開発銀行の出資額決定段階においては、通商産業省所管の構造不況業種対象として考えられたいきさつがあるわけです。その後、本法律案の特定不況産業の例示に造船業が掲げられ、さらに合板製造業等が指定対象となる可能性が生じている現在、資本金の増額による保証規模の増大を検討することが必要となった、こういうふうな過去の経緯があるわけでございます。  こういったことから、農林省サイドの合板業界に果たしてどれほどの枠がとれるか、こういうことでわれわれは大変疑問に思う。本日の連合審査に当たって、こういった点についてまず農林省当局からお伺いし、さらに、通産大臣はこういった合板業界に対してどのような配慮をされるか、あわせてお答えいただきたい。
  240. 河本敏夫

    河本国務大臣 保証の枠でございますが、これは当初、保証枠を千億ぐらいでスタートさせるつもりでおりますが、しかし、御承知のように業種もふえると思います。そこで、法律にございますように、大蔵大臣通産大臣が相談をいたしましてこれを増額することができる、こうなっておりますので、財政投融資についての政府の弾力条項を発動いたしまして、必要な金額は増額するつもりでございます。     〔中島(源)委員長代理退席、野呂委員長着席〕 したがいまして、構造不況業種の構造改善事業、つまり設備廃棄に必要な保証額の基金につきましては、不足しないように十分手配をするつもりでございます。
  241. 瀬野栄次郎

    ○瀬野委員 通産大臣にいま御答弁いただきましたが、その他の製造業として、合板業界を主務大臣が政令で定めるということになるわけですが、そうなった場合には要望には十分こたえられる、こういうふうに理解していいですか。
  242. 河本敏夫

    河本国務大臣 そのとおりでございます。
  243. 瀬野栄次郎

    ○瀬野委員 農林省当局にお伺いしますが、先ほど私が質問をいたしました合板製造業構造改善基金というのが本法とは関係なくあって、一二%カットの問題を取り上げたわけですが、それと本法提案による特定不況産業信用基金とのいわゆる調整はどういうふうに考えておられますか。時間がないので詳しい説明はしませんが、その点、ひとつ賢明な理解によってお答えをいただきたいと思います。
  244. 藍原義邦

    ○藍原政府委員 ただいま農林省で助成いたしております基金につきましては、設備の処理のために必要な資金の借り入れのための債務保証でございますし、ただいま御検討いただいております法案によりますと、そういうもののほかに「設備の処理に伴って必要となる資金」、こういうものも入っております。したがいまして、私どもとしては、いま農林省でやっておりますのは設備廃棄そのもの、機械の買い上げ等々に必要な資金の借り入れの保証のための基金でございますし、今回御審議いただいております法案の中には、それ以外に、それに伴って必要な資金のための保証も入っておりますので、合板業界のこれからの構造改善なり設備調整に必要な場合に、もしそういう事態が出た場合には、そういう新しい法案適用を受けまして対応してまいりたいと考えておる次第でございます。
  245. 瀬野栄次郎

    ○瀬野委員 特定不況産業信用基金が債務保証を行う場合に、事業者と親事業者、金融機関に裏保証を求めることになるわけでございますが、これも先ほど若干触れましたように、果たしてこれが実際にできるかどうかがまた大変問題でございます。すなわち事業者は不況産業として金を借りられるだけ借りている。よって、相手の金融機関に裏保証をせよと言っても、金融機関も金を貸せるだけ貸しておるのですから、もし倒産した場合は大変心配であるということでなかなか前向きな金融をしようとはしないことは一応うなづける。そういう企業だからこそ金融機関も大いに資金を出してもらいたいわけですけれども、言ってみれば今回の手当ては後ろ向きの資金であります。設備をしていまから大いに企業を発展的に拡大をしようというのじゃなくて、後ろ向きの資金であるがゆえに、なかなか厳しいものがあると私は思う。無理からぬことだと思うのでございます。  そういった点で、見通しが立たぬところに果たして金の裏打ちはできるかどうかといったことについて、篤と当局が行政指導をしていただきたいのですが、その辺の腹構えというか考え方はどういうふうに考えて本法提案に及んでおりますか、お答えいただきたい。
  246. 濃野滋

    ○濃野政府委員 この信用基金の保証のやり方、仕組み等につきましては、非常に技術的な問題もございますので、現在金融機関の専門家等も含めて関係者でいろいろ検討が進められております。ただいま御指摘のように、要はこの信用基金が目的どおり動くことが大事でございます。したがって、機能するようにすることが第一でございます。  ただ、もう一つの問題といたしまして、いま裏保証問題でいろいろ御質問がございます。この点につきましても、非常にむずかしい点がいろいろございますが、一方、ある見方からいたしますと、ある業種の構造改善と申しますか、設備の処理をやっていく上には、従来からの関係金融機関、それからたとえば商社等の関係事業者、これはお金の関係業界といろいろ持っておりますが、このしりが全部政府に来ることもこれまたいかがかという意見もございまして、結局そういう商社、金融機関との協力体制をとりながら、しかもこの信用基金が一番うまく動くやり方は何か、保証料の問題あるいはいまの裏保証と申しますか、最後のいざ事があった場合にどういう分担をするか、この辺は非常にむずかしい問題がございますが、信用基金が十分活用することを最大の目的にいたしまして詰めていきたいと考えております。
  247. 瀬野栄次郎

    ○瀬野委員 時間がなかなか厳しいので、通告した予定を質問できないのは残念ですけれども、労働大臣に通告しておりました問題をお尋ねします。  すなわち雇用問題でございます。先ほども申しましたように、法律関係なく合板業界は三十五工場すなわち五十ライン、これは現在の工場の一二%に当たるわけですけれども、設備廃棄もしくは工場閉鎖をするということでいろいろ検討されておりますが、離職者問題、雇用問題が深刻な問題となって浮かび上がってきております。労働大臣はこれらに対してはどう考えておられるか、端的にお答えください。
  248. 藤井勝志

    ○藤井国務大臣 御指摘のごとく、合板業界は大変厳しい不況業種でございまして、労働省ではすでに雇用安定資金の指定業種にいたしております。同時に、特定不況業種離職者臨時措置法の業種指定もいたしまして、雇用保険の給付の九十日延長、そして職業訓練あるいは職業訓練待期の手当の支給、それにこの業種から出てきた離職者の雇い入れの促進のために雇い入れる事業主に対して助成をするというようなこと、それから広く中高年齢者の雇用を受け入れる事業主に対してはこれまた助成をしていく、こういった各般の施策をやりながら再就職の促進に全力を尽くして対処しておるわけでございます。
  249. 瀬野栄次郎

    ○瀬野委員 端的に申して、すでにある施策によってやるのか、雇用のための新しい施策を講じられるのか、もし講じられるとすればどんなことを考えるか、こういったことを私はお伺いしたいわけですけれども、その点、余り目新しい考えはないようですが、特に目新しい対策はあるのですか、再度お伺いします。
  250. 藤井勝志

    ○藤井国務大臣 ことしの一月二十日、新しい雇用政策として、先ほどもちょっと触れましたけれども、中高年齢者を雇い入れる事業主に対して助成をしていく、そして民間の企業の活力を大いに活用して雇用の開発をしていく。それから、途中から離職するわけでございますから主として中高年齢者でありますが、こういった方々が再就職できるための職業訓練についていろいろ工夫をこらして、従来の職業訓練のあり方に対して、離職者側もあるいは社会側も希望するようないわばニーズにこたえた訓練のあり方について改正をしていこうというので、職業訓練法の改正も雇用政策の背景において積極的に考えたい、このように思っておるわけでございます。
  251. 瀬野栄次郎

    ○瀬野委員 その程度ではなかなか雇用の確保はできませんけれども、時間も迫っておりますので、別の機会にまたいろいろお伺いします。  最後に、農林省当局に需要拡大の問題で一点お伺いをしておきたいと思います。  合板の需要の八割は住宅や建設用であることは御承知のとおりです。建設省と日本住宅公団は昨三十日、五十二年度の公団住宅建設戸数を当初計画した六万戸から三万五千戸へとほぼ半減させるとともに、五十一年度からの繰り越しとなっていた約四千戸も未着工のまま削減することを決めたわけであります。これに伴い不要となった五十二年度分財投資金約二千二百十四億円を国庫に返上するということです。国民から高い、遠い、狭いという不評を浴びてきまして、全国で四万戸を超える新築空き家を抱えるほどの経営危機に陥っているために建設計画を根本的に見直した結果こうした荒治療に踏み切ったわけでございますが、まさに公団住宅空前の積み残し、二万五千戸返上は景気浮揚に暗い影をもたらしたということで大変憂慮しております。  先ほどからいろいろ申してきましたように、合板はその八割が住宅や建設用でございます。よって、中小企業は成り立たないということで大いに需要を喚起すべきときに、こういったことが将来に大きな影響を及ぼすと思います。よって、需要拡大策はどう考えるのか、これらの公団住宅の空前の積み残しに対してどう考えておられるのか、最後に当局の見解を承りたい。
  252. 藍原義邦

    ○藍原政府委員 御指摘のように、合板の最大の需要先は住宅建設でございますし、私ども関係方面と十分連絡をとりながら今後住宅政策が積極的に進むように努力をし、また、お願いをしてまいりたいと思います。  さらに、合板自身といたしましても、従来のような普通合板とあわせまして、さらに知識的な技術開発を加えました新しい技術開発等々をしながら、合板のこれからの高度利用という面からも合板の業界自身も取り組まなければいけないということで、ただいま知識産業に関連いたします構造改善もやっております。そういうもろもろのことを考えながら、私どもも合板の業界の発展には努力してまいりたいと考えております。
  253. 瀬野栄次郎

    ○瀬野委員 時間が参りましたので、以上で終わります。
  254. 野呂恭一

    野呂委員長 次に、米沢隆君。
  255. 米沢隆

    ○米沢委員 私は、本法案に言います信用基金の問題、それから政策金融のそれに対する対応の問題、それからナフサの問題について、時間の許す限り御質問させていただきたいと思います。  この問題につきましては、私も再三再四にわたりまして御質問いたしておりますので、大変恐縮なんでありますけれども、いまも御答弁がありましたように、信用基金の造成あるいは裏保証の問題についてはいまだにまだ調整中である、こういう御答弁が再三再四にわたりましてなされておるわけでありますが、この法案はもうすでに四月の上旬には衆議院を通過させようというめどでいま動いておるのでありまして、そういう段階になっても、造成する民間の協力の中身が余りわからないとか、裏保証のあり方がまだ専門的な知識が要るので調整中であるということは、私は非常に無責任ではないかという気がしてならぬのでございます。そういう意味で、一体どういうところがいま難航いたしておるのか、その点、もう一回誠意ある御答弁をいただきたいと思うのであります。
  256. 濃野滋

    ○濃野政府委員 まず、この基金の資金がどういうかっこうでたとえば民間から集まるようなかっこうになっておるか、あるいは裏保証の問題等を中心としてこの保証業務を実際にどうやっていくかという点は、繰り返し御答弁申し上げておりますが、まず最初の民間の協力体制をどうとるか。なるほど、私ども、この法律は構造不況問題の解決ということで一日も早く御審議、御成立を願いたいということは考えておりますが、何分にも国会、衆議院の審議中でございますし――ただ、この法案成立のめどがつきました場合に、おっしゃるとおりなるべく早くこの基金の設立を進めるということは必要でございますので、非公式ながら、いわゆる財界首脳部等に対しまして、法案成立の暁に、その後の段どり、業界の協力体制ができるように、不十分と思われるかもしれませんが、非公式な接触は努めているつもりでございまして、もし法案成立の暁にはなるべく早く基金設立ができるように努力をしていくつもりでございます。  それから、保証のやり方の問題、これもごく非公式ではございますけれども、私どもあるいは大蔵省、財政当局、それから金融機関、専門家の間ですでにいろいろ問題点の整理等をやっております。ただ、この審議の過程におきましてもいろいろ御質疑あるいは御懸念等も出ておりますが、この法律ができまして、まず各業界から申し出があっていわゆる対象業種が確定をし、それから安定基本計画がそれぞれの審議会の場でできるわけでございまして、もちろん私どもはそれぞれの業種別にいろいろ準備は進めてきておりますが、その間にはある程度の時間がかかりまして、私ども、この保証の仕組み等についてもそれに合わせて、実際の設備処理の手のつくまでの間にはいろいろな業界の実態を入れた保証の仕組み等についての詰めも十分できると思っておりまして、そういうことで準備は着々と進めておるつもりでございますが、現段階は、ただいままでに御答弁申し上げているように、まだ具体的にどうだということは決まっていない、これが現状でございます。
  257. 米沢隆

    ○米沢委員 さきの予算委員会で御質問させていただいたときにも、大臣は、いま調整中である、ここ数日中にはおよその方向を明らかにしたい、こういう御答弁をいただいているわけです。いまのそういう御答弁なんでありますけれども、非公式とはいえ現にかなりの交渉がなされておるのではないか、そう思うのですね。にもかかわらず発表するに至らないということは、金融筋あるいは商社筋等がかなり抵抗しておるのではなかろうか、こういう憶測をするのでございます。  そこで、まずその民間の内訳についても、銀行とか商社というだけであって、その中身はそうわかりません。だから、その中身についても、ぼくはどういうところに大体要請をされるのかということをもう少し具体的に聞かしてほしいと思うのでありますが、同時に、銀行筋あるいは商社筋と申しましても、出すことについてはまあオーケーだ、しかしながら、その民間同士の中での負担の割合がどうもうまくいかない、あるいはまた裏保証する場合の負担の割合がうまくいかない、そういう段階に来ておるのじゃないかと私は思うのですね。実際はどうなんでしょうか。
  258. 濃野滋

    ○濃野政府委員 まず、基金への資金的な協力、いわば出資または出捐につきましては、金融界あるいは商社ということではございません。むしろ金融界や商社にも御協力を願いたいというのが私どもの感じでございまして、もっと広く産業界の御協力を得るということで、いわゆる財界、幾つかの団体等がございますが、私どもそこの首脳部に対しまして非公式の接触を続ける、こういうことでございます。
  259. 米沢隆

    ○米沢委員 そうなれば、民間とは一体何かということと、それから、いまから折衝されるその民間の窓口は一体どこですか。
  260. 濃野滋

    ○濃野政府委員 この基金の性格をどう考えるかということでございますが、この利益を受ける業界が基金を出すということならば、これは業界特定ができるわけでございますが、しかし、御案内のように、今回の基金の出資または出捐、民間分一応二十億をめどにしておりますが、これは非常に大きな金額でございまして、いわゆる構造不況業種として設備の処理を進めていくというような環境にあります業界に、直接出資、出捐を求めることは非常に不可能なことだと私は思っております。したがって、もっと広く産業界の協力を得るという体制を私どもとしてはとらざるを得ないと考えておりますので、たとえば経団連等を一つの場といたしまして広く産業界の協力を願う、こういう体制をとらざるを得ないと考えております。
  261. 米沢隆

    ○米沢委員 ここではもう詰めてもそれ以上の答えは出ないと思いますのでやめたいと思いますが、なぜこの問題にしこるかと申しますと、この法案のまさしくこれは柱でありまして、そしてまた、この資金の造成そのものがスムーズにいくかどうかに、この産業構造がうまく進んでいくかどうかはもうすべてかかっておるのじゃないかという気がしてなりません。  同時にまた、今後単なる百億前後の金じゃなくて、先ほどの御答弁でもありましたように、いまからかなり大きくなっていくものでありますから、そのあたりをはかりながら実際はそれぞれの業種ごとにいろいろな話が進められていくと思うのですね。幾ら話が進んでも、実際基金の方は一向進まぬではないか、やろうと思っても実際はそうふえないそうだぞ、こんなことになったら、いま意図されておるこの産業構造の改善なんというのは本当に絵にかいたもちになるわけですね。そういう意味で、かなりいろいろと失礼なことを申し上げておるわけでありまして、ぜひそのあたり御理解いただいて、調整を早急に決着をつけてほしい、そういうふうに思っております。  それからもう一つは、政府金融あるいはまた政策金融の対処の仕方でありますが、これもこの前御質問いたしましたように、銀行そのものも十三番目か十四番目かの構造不況業種だということで、大変厳しい環境に冒されつつありますし、商社金融も大変厳しい環境の中にありますから、造成資金も出せ、裏保証もしろ、そして金も貸せ、こういう議論がもう従来とは違って非常にスムーズにいかない、そういう状況にあるわけです。そうなりますと、この基金についてはまあ何となくスムーズにいったといたしましても、これはただ保証をしてやるだけでありますから、実際はこの保証をてこにして金をどこからか借り出さなければいかぬ。そうなったときに、先ほどもありましたように後ろ向きの議論ですから、そう簡単に銀行なり商社等がさあ出しましょうということにならないであろう。  そうなった場合に、ぎりぎりの協力は、皆さんの力添えで一生懸命やってもらうように努力をしていただかなければなりませんが、同時に、政府自体としても、通産自体としてもあるいは大蔵自体としても、この構造改善を進めていく場合に、単に民間だけに頼るのではなくして、実際はもう少し産業構造改善を進めていくに当たり、われわれもこういうことをやるのだからという、そういう政策金融がもう少し前向きに出てこなければならない。同時にまた、政府金融等もかなりの配慮をしなければならない。それがこの第九条にある「資金の確保」という意味ではないかと思うのであります。  特に、これも申し上げましたが、産地を形成しておる造船とか繊維なんかは、集中して倒産なりあるいはほとんど不良企業ができておるわけですから、実際は、倒産してすべてがパアになったり、あるいはまた実質的には焦げついている資金をその周辺の銀行も貸しておるわけですね。商社そのものも大体その周辺のやつは貸しておるわけです。その上に、構造改善をするから金を貸してくれ、こうなったときは、もうそこからは借りられないという状況なんです。そういうときに、やはりお国の金融機関が何らかの対応をしてあげなければ、実際は言うばかりで何も効果はない、再三再四申し上げて恐縮でありますが、こういうことになると思っておるのです。  そういう意味で、この産業構造改善を進めるに当たり、特に政府金融としてどんなことを考えておられるのか、同時に、政策金融として何か方針があるのか、その点について通産あるいは大蔵に御説明をいただきたいと思います。
  262. 濃野滋

    ○濃野政府委員 ただいまのこれからの政策金融のあり方等をいわゆる産業の構造改善と絡んでどう考えているのか、こういう御質問でございます。  私どもも同じような問題意識を時っておりまして、ただいまここで御議論、御審議をいただいております設備処理問題というのは、いわば後ろ向きの対策であるかもしれませんが、むしろ前向きの対策として政策金融のあり方はどうだというのは、私ども非常に大な問題意識を持っております。現実には、御案内のように現在の開銀の中でそういう前向き資金の一部の枠がございまして、五十二年度は、これは繊維に限られておりましたが、五十三年度からは、たとえば今度のこの法案対象になるような業種が前向きの取り組みの形で構造改善の方向をとる場合にはこの資金枠の対象にするというようなことも五十三年度には実現をしたいと考えておるわけでございますが、さらに進みまして、私ども昨年以来、今後の政策金融のあり方はどうあるべきかということの問題意識から、産業構造審議会の中の資金部会というのがございまして、ここで問題点の取り組みにかかっておりまして、早ければことしのしかるべき時期までに、私どもの立場から見ました産業政策の推進という立場から見ました政策金融のあり方という問題についての方向を出してみたい、取り組んでみたいと考えております。  もちろんこの政策金融のあり方というのは、大蔵省当局が別の観点からも御議論になっていると承っておりますし、金融政策あるいは銀行政策、そういう観点から見たいろいろなお立場もあると思います。いずれ私ども考え方がまとまりましたならば、なるべくそういう立場の方面とも十分議論をいたしまして、これからの産業政策の進め方、それの柱としての政策金融のあり方ということについて具体化を進めていきたい、こういうふうに考えております。
  263. 藤田恒郎

    ○藤田説明員 ただいま産政局長の方からもお話がありましたので、特に私の方から補完することもないわけでございますけれども大蔵省といたしましても、こういう情勢のもとで政策金融がいかにあるべきかということについては非常に関心を持っておりまして、特に先生御承知のように、現在開発銀行は設備資金しか融資できないことになっておりますけれども、これに一体どういう機能を持たせるべきか、今後の新しい開銀のあり方あるいは開銀の占める金融の分野というのはどういうふうにあらねばならないか、問題を検討する必要があるということは痛感いたしておる次第でございます。したがいまして、現在、開銀に特別な準備室と申しますか、検討する部を設けまして、われわれと密接な連絡を保ちながら検討を進めておる段階でございます。
  264. 米沢隆

    ○米沢委員 いま政策金融のあり方についていろいろ御検討いただいておるという御答弁でありますが、これは、本法が成立をして具体的に動き出したときに間に合うように結論が出るということでしょうか。  同時に、大蔵省の方にお尋ねしたいのですが、開銀法の改正も含めて検討しておるというふうに理解してよろしいですか。
  265. 濃野滋

    ○濃野政府委員 先ほど申し上げましたように、私ども昨年の秋から検討に取り組んでおりますが、当初は、ことしの半ばごろまでに一つの方向、問題点の整理をしてみたいと考えておりました。ただ、当初の予定どおりその時期程度までに出ますか、あるいは若干の時期的なずれがありましてことしのもう少しおそくまでかかりますか、この辺は現段階ではまだはっきりいたしませんが、しかし、いずれにせよ早い機会にそういった方向を出してみたい。したがって、この法案が成立をいたしまして、構造不況業種対策としてのこの法案のいろいろな手続が進むのにタイミングを合わして、これからの少し長い目で見た政策金融のあり方の方向というのも出し得るのではないか、こういうふうに考えております。
  266. 藤田恒郎

    ○藤田説明員 今後の政策金融のあり方という問題で検討しておる立場でございますから、もちろん必要があれば開銀法改正も考えざるを得ない。そういう改正をするとかしないという前提じゃなくて、今後政策金融はいかにあるべきかという観点から検討しておるわけでございます。したがいまして、その結論が開銀法改正の方向に向かいますならば、当然そういったものも考えざるを得ないと思っております。
  267. 米沢隆

    ○米沢委員 次は例のナフサの問題です。  構造不況に陥った原因についてはもろもろの要因が重なってそうなっておるのでございまして、現にそういういろいろな要因が重なった上で、その業種は設備そのものが過剰である、だからある程度の設備の廃棄をしなければならぬ、これが現状であると理解するわけでありますが、しかしながら、その構造不況に陥った原因そのものに対してもう少し有効な対策があったならば、あるいはいまからその要因を除去する努力をしたならば、実際は三〇%切るものも二〇%で済むかもしれない。その議論は、これから先、特に計画をつくられて、過剰設備がどれだけだという議論をされる場合には常につきまとってくる問題ではないかという気がしてなりません。  たとえばこのごろまた急激に円が高くなっておりますけれども、本当ならば現時点までは約二割くらいでよかっただろうと思うものが、こんな調子でずっと円高が続いていきますと三割を切らなければいかぬかもしらぬ、そういう議論になりますと、すべて外的な要因によって常にその設備過剰の状況が違ってくるというのがあるわけですね。そういう意味では、でき得るならば、いままでやっとお金を出してつくった設備ですから、そう簡単に切りたくないというのも人情でしょうし、そんな不経済なことも実際は穏当ではない。そういう意味で、この構造不況に陥らしめたそれぞれの要因というものに対しても徹底的なメスが加えられて、徹底的にその対応策が急がれねばならぬ、これが共通の理解ではないかという感じがするわけであります。  そういうときに、いわゆるナフサの問題もその一つでありますけれども、この問題も私は先般質問をさせていただきましたし、目下のところ、ナフサの価格交渉については二月にはひとまず決着をしたというような報道に接しておるわけでありますが、今後もこのナフサの問題は常にまた続いていく問題だ、そう思うのです。そういう意味で、今後のナフサ価格の交渉というものも、単に業界にげたを預ける方式、それで難航したときに通産省が出ていく、そういうかっこうではなく、一つのルールをつくるべきではないかという気が私はしてならないのです。そうでない限り、ナフサ価格そのものが将来的にどういうふうに推移していくであろうかということを織り込んで企業計画、産業計画を安心して立てられない。少なくともナフサ価格については円がこれだけになったらこうなっていくんだというものを一つルール化しない限り、構造改善の過剰設備をどう廃棄するかという議論の際に常に不安定要素、不確定要素としてナフサ問題が足を引っ張っていくんじゃないかという感じがするのですが、今後のナフサ交渉のあり方について新しいルールをつくられる御決意はないのかどうか。  同時に、これと関連して、ナフサを下げろという要求に対して特に一番問題になるのは、民族系の石油会社、コンビナートリファイナリーあたりが常に足を引っ張る。そういう意味では、コンビナートリファイナリーについてもことしから百億くらいの何か御配慮がなされたと聞いておりますけれども、実際は今後こういうものの経営体質をどう強くしていくのかということも並行して考えていかねばならない問題でありましょうし、同時にまた、石油ショック後一つの石油の価格体系ができ上がったわけでありますが、御案内のとおり完全にいびつな姿であります。そのあたりにも何らかの形でメスを入れなければならぬというのは、従来から叫ばれながらも一向に手がつけられない。そういうものは、常に構造改善を進めていく場合の足を引っ張る要因にこそなれ、進める要因にはならない。  お尋ねしたいのは、そういう意味で、今後のナフサ交渉のあり方に新ルールをつくるべきではないか。もう一つは、石油製品の価格体系を早急に見直して、もう少し適正な納得性のあるものにすべきではないか。この二点について御質問をさせていただき、質問を終わりたいと思います。
  268. 橋本利一

    橋本(利)政府委員 石油化学用のナフサ価格について、昨年の十-十二月期分は、御承知のように、キロリッター当たり実質二千円の引き下げで落着いたしたわけでございますが、その際、私たちとしても御指摘のように行政介入するかどうかという問題がございますが、御承知のように、企業間格差が非常に広がってきておる、あるいは石油化学企業と石油精製の間に資本関係がある、さまざまな形態もございます。そういったところから、やはり本来的には両当事者で話し合いをし、政府としてはこれを側面からバックアップするという姿勢できたわけでございます。  今後は、やはり第一次的には両当事者の話し合いを優先して考えていくべきだと私は思いますが、石油製品の価格体系の問題につきましては、価格でございますから、他の製品と同じように、需給関係を反映してその過程において価格形成されていくというのが本来望ましいわけでございますが、御指摘のように、コンビナートリファイナリーといったような石油産業の構造問題自体にも密接な関係を持っておりますし、また、これを消費するユーザーサイドにも多大の影響を与えるといったような観点からいたしまして、昨年の暮れ以来、研究会を設置して検討いたしておるわけでございます。いまなお検討中でございまして、結論を得るに至っておりませんが、できるだけ早く結論を得るように努めたいと思っております。
  269. 米沢隆

    ○米沢委員 これもむずかしい問題ですから、また他の機会をおかりして詰めてみたいと思いますが、石油ショック後通産省が中に入って誘導政策をされた、その結果ひずんだ体系ができておるのですから、もう少し責任を持って早急に価格体系の是正を実施していただくように御努力いただきたい、このことを申し上げまして、終わりたいと思います。
  270. 野呂恭一

    野呂委員長 次に、西田八郎君。
  271. 西田八郎

    ○西田(八)委員 私は、最初に法案第二条第一項第五号の解釈について若干伺いたいわけです。  第五号で、「内外の経済的事情の著しい変化により、その業種に属する事業の目的物たる物品を製造する設備の生産能力が著しく過剰となり、」こうなっておるわけです。これは関連産業のことを言われておるのだと思いますが、そのほかに、たとえば第二条第一項第二号に「アルミニウム製錬業」とあるわけですが、アルミニウム製錬業のもとには、その製錬をした後それを素材として圧延あるいは押し出し等があるわけですし、さらにまた、それを使って製品をつくっているサッシ等の場合は一体この条文に該当するのかどうか。あるいはまた、これは直接関係があるわけで、この条文そのものでありますが、「船舶製造業」とあります。船というのはバルブがほとんど中心になっておるわけですが、この船舶製造業の中では、そうしたバルブの製造業なんかについても同様のことが言えるのかどうか、お伺いをしたいと思います。
  272. 濃野滋

    ○濃野政府委員 この特定不況産業は、第二条一項の一号から四号までに特掲したもののほか、五号にその要件が書いてございまして政令で指定するとなっております。したがって、この五号の要件に当てはまる業種でございますれば、つまり簡単に申し上げまして、著しい過剰設備を抱えてしかも長期の不況、要するに過剰設備の状況が非常に長く続く、そして業界全体の経営が著しく不安定である、こういう条件に合致すれば、法律上は政令で定めることによって指定業種になるわけでございます。  ただ、私ども、この法案を審議をしておりました段階で、いわゆる構造不況業種ということが昨年から言われてまいりましたので、たとえば通産省の所管で申し上げますと、ここに挙がっております一号から四号――四号は運輸省所管事業でございますが、このほかには化学肥料関係あるいは紡績等々幾つかの業種を頭に入れております。いま御指摘のたとえばアルミ製錬業の下にアルミの圧延業がございますが、このアルミの圧延業等も一つの候補たり得るのではないかと考えております。  また、法律適用し得るかどうかという問題は別といたしまして、この法律のほかにいわゆる構造不況対策、特に設備の処理ということを考えますと、たとえば中小企業が非常に多い業界は、御案内のとおり中小企業の分野でのいろいろな仕組みができておりますから、それを利用していけるような業種、業態は、この法律というよりはむしをそちらの仕組みで設備の処理を進める、こういうことになりまして、必ずしも直ちにここに乗ってくるということは言えないのではないかと思います。  なお、船舶製造業に絡みまして、たとえば船舶用の機関あるいは船舶用品等の製造業についてもこの対象になるのではないかという感じがいたしますが、この点は、なんでございましたら船舶局長から御答弁願います。
  273. 謝敷宗登

    謝敷政府委員 ただいま法律案に特掲されておりますのは船舶製造業ということで、船舶の製造そのものだと思っております。それで五に関連しまして、造船業はこういった事態でございますので、特に造船に非常に密着している専業の業種の多いもの、たとえばメーンエンジンとかプロペラ、アンカーチェーン、要するに他の機械工業一般に転換できにくいようなものについては業界の中では検討をしておりますが、まだ具体的に結論を得ている段階ではありません。  先生指摘のバルブにつきましては、いろいろ見方がございますが、これは船型が非常に小さくなってきまして、数そのものはまだ減っておりません。これから減るかと思いますが。ただ、この場合に、陸舶共通の事業者もかなりございまして、まだ意見が入れるという方向でまとまっているようには聞いておりません。
  274. 西田八郎

    ○西田(八)委員 そうした中小企業は該当しないけれども別の角度から考えて構造不況業種に属する、ただし、それは中小企業だからこの法律適用しないけれども他の中小企業法律でといった場合に、それは現在幾つかの特定業種の中で行われておる構造改善事業としてそういう処置をするということなのかどうか。
  275. 濃野滋

    ○濃野政府委員 この法律は、いわゆる構造不況対策の中の設備の処理という観点からの問題の取り上げ方をした法律でございまして、そういう観点からいたしますと、御案内のとおり、中小企業の分野におきましては、主として繊維産業等が非常に多く対象になっておりますが、事業団による共同廃棄事業ということが中核に動いておりまして、私先ほどそういうことを申し上げたわけでございます。
  276. 西田八郎

    ○西田(八)委員 これは質問よりもちょっと要望しておきたいのですが、アルミの製錬業あるいは船舶というような親企業と目されるものがこの法案で設備廃棄をして、そしてその生産計画をある程度ダウンさせよう、そういう中から次の発展を考えようということであるわけですね、この法律の趣旨は。そうだとすれば、それに関連する業種というのは、当然これは設備廃棄もしなければならぬわけですよ。ところが、業界の力が弱いと、通産省にもまたその他のところへも、要するに陳情だとかそういうような申し出というようなことをやらない場合があるわけですね。たとえばアルミなんかもそうですか、サッシ部門、そういう部門については適切な指導をされるようにこの機会に要望しておきたいと思います。  時間がありませんから、これは議論しておるとなにがありませんので、次の質問に入りますが、次に、第二条第四項によりますと、「主務大臣は、一の業種を第一項第五号の業種として同号の政令で定める手続をとるには、その目的からみて適当と認められる審議会」、こうなっていますね。「これに該当する審議会がない場合にあっては、産業構造審議会。」いわゆる産構審の意見を聞くということになっておりますが、産構審が幾つも幾つも業界の意見を聞いておったら、ガンもハトも立ってしまってからというようなことになっては話にならない。特にこの法案の成立そのものがもうおくれているわけですよ。一年ぐらいおくれているのです。構造不況の状態からながめると。それになおかつ産構審でというようなことになっておると大変なんですが、その場合に、大臣、そういう特定の審議会をつくる意思はあるのですか。
  277. 濃野滋

    ○濃野政府委員 この審議会は、法律の四項に書いてございますように、「その目的からみて適当と認められる審議会」、それがない場合に私どもの付属機関でございます産業構造審議会を使うというかっこうになっております。  まず第一に、通産省の所管で申し上げますと、たとえば繊維の関係等は繊維工業審議会というのがございますから、むしろその前半の「適当と認められる審議会」ということでこの審議会を使うことになると思いますが、その他のものは産構審を使うつもりでおります。  ただ、これは審議会全体の場でやりますと大変なことでございますし、かつまたその業種、業態に応じた非常にきめの細かい議論をしなければならぬ、委員もそういう関係で御選任を願い、御議論を願わなければいかぬということですから、全部従来からもそうしておりますが、部会とかあるいは必要ならまたその下にワーキンググループでもつくりまして、非常に早い期間にいろんな問題を議論ができる、そういう体制で進めていきたい、こういうふうに考えております。
  278. 西田八郎

    ○西田(八)委員 それはひとつ間に合うようにやってくださいよ。とにかく委員会開くのには、一月前くらいから日程の調整だなんだということをやらなければ開けないんですから、いままでから。私らも中央の審議会の委員をしてきましたけれども、なかなかその日程をとるのはむずかしいのですから。だから、そんなことをやっておると二カ月も三カ月も後になってしまいますから、そういうことのないように十分注意をしてもらいたいということを申し上げておきたいと思います。  次に、安定基本計画策定について、同じような法案でありながら、片一方、さきに制定された特定不況業種の離職者臨時措置法の第二条第二項では、こうした基本計画を策定する場合には事業団体または労働団体の意見を聞くということ、聴取義務が明確に決められておるわけです。  この場合も、私は、絶対に離職者は出さないというなら話は別ですけれども、離職が出るということをこれは前提に考えなければならぬのだ。これは設備廃棄をするわけでしょう。生産減少するのに、それだけの労働者を抱える能力があるのなら、設備廃棄をせずに抱えていきますよ。ですから、それは当然ここには解雇というものが伴ってくるというふうに考えなければならぬのです。そうした場合に、その労働組合の意見をやはり当然聞くべきではないか。  事業団体は、申し出があって、そしてそれをその主務大臣が決めるわけですから、これは意見を聞かなくてもいいにしても、労働団体――解雇というのは、これは第六条第四号に、「従業員の地位を不当に害する」とあるわけですよ。「従業員の地位を不当に害する」、解雇ほど不当なものはないわけですからね。それは希望退職であろうと何であろうと、それは労働者にとっては重大な問題なんです。そういうことが全然聞かれないというような形になっておるのはどういうことなのか、一体それをどう考えておられるのか、ひとつ聞きたい。
  279. 濃野滋

    ○濃野政府委員 お答え申し上げます。  この法律の安定基本計画の作成に当たりまして、いわゆる雇用の安定ということが非常に重要な目的であるということは、私どもも全くそのとおりと思っておりますが、先ほど申し上げましたように、この法律は、この構造不況対策の中で設備処理を円滑に進めていく、これがこの法律の第一の目的でございます。そういう観点からの規定を設けたのがこの法律でございますので、したがって、この安定基本計画の内容としては、まさに設備の処理あるいはそのために新増設の制限をやるとか、こういうことを中身にしたということでございまして、雇用の安定という目的を含んではおりますけれども、ただいま御指摘のような雇用の安定自身を直接の対象とした法律ではございませんので、あのような規定が入っていない、こういうことでございます。  ただ、私ども、先ほどの審議会の御質問ではございませんが、審議会の運用の中身といたしまして、その場で関係労働組合、労働側の代表の御参加を願って、そこで十分に御意見を聞く場をつくる、こういうことで運用をしていきたい、こういうふうに考えておるわけでございます。
  280. 西田八郎

    ○西田(八)委員 そういう物の考え方がそもそも誤りなんだ。設備の廃棄だから労働組合の意見なんて聞かなくていいという物の考え方が間違っているよ。今日企業が存在するのは、合理的な労使関係が相協力することによって存在しておる。どこの法律経営権という固有の権利があると書かれておるか。資本家にあるのは、財産の管理権と処分権だけしかない。それを運用する経営権というのは、労使が合体した有機的な中にできてくるわけですよ。それを労働者の意見を聞かずに、経営者だけの意見を聞いて設備廃棄ができるなんて思っておったら、とんでもない間違いだ。だからこういう法律が、その対策がおくれるのですよ。これは大きな誤りだと私は思う。まああなたの考え方とは違うかもわからぬが……。  そこで、ひとつこれは大臣にお伺いしておきたいが、いま言われたようなことで、局長はその運用面で労働組合の意見を聴取していくということを言われたのですが、それは守っていただけますか。
  281. 河本敏夫

    河本国務大臣 守っていきます。
  282. 西田八郎

    ○西田(八)委員 次に、雇用安定について労働大臣にお伺いしたいわけですが、第十条、この中にも労働組合の意見というものは全然載ってないのだし、何や努力しなければならぬとか努力するとかというようなことだけで、全くこれは人員整理も何もせぬで済むのかいな、それで設備廃棄をしてこの不況産業が構造改善が図れるのかいなという疑問を持つわけです。  したがって、これは第一項では、「特定不況産業に属する事業者は、当該特定不況産業に関する安定基本計画に定めるところに従って設備の処理その他の措置を行うに当たっては、その雇用する労働者について、失業の予防その他雇用の安定に配慮しなければならない。」こうなっておることは、これもまたさきの離職者臨時措置法との関係において連動し得るのかどうか。連動し得るとすれば、当然これは労働組合の意見を聞かなければならぬということになってくるわけだが、それはどうなるのですか。
  283. 細野正

    ○細野政府委員 いま御審議いただいております法案の例示として挙げられているのは、御存じのように、すでに特定不況業種離職者臨時措置法の対象業種として指定されているものでございます。そのほかにも政令等によって指定されるということになっておるわけでございますが、その場合におきましても、両法案の趣旨からいいまして、このいま御審議いただいている法案対象業種になったものにつきましては、離職者臨時措置法の対象に、もちろん離職者臨時措置法の基準に照らして検討しなければなりませんけれども、結果的にはなるものであるというふうに私どもは考えておるわけでございます。
  284. 西田八郎

    ○西田(八)委員 ということは、連動するということですか。
  285. 細野正

    ○細野政府委員 連動いたしまして、たとえば、先ほども御議論ございましたけれども、離職者臨時措置法に定められております再就職援助計画等の作成義務等は当然発生する、こういうふうに考えておるわけでございます。
  286. 西田八郎

    ○西田(八)委員 そこで、次の項に、国は雇用安定に対する必要な措置をとるというふうに書かれておるわけですが、その「必要な措置」というのは一体どういう措置なのか、ひとつ……。
  287. 細野正

    ○細野政府委員 いまお尋ねの十条二項の「必要な措置」でございますが、これは当然、たとえば雇用保険法に定められております雇用安定資金制度等によりまして、当該関係労働者の失業の予防、円滑なる再就職の促進というふうなことを図っていくことを一生懸命やっていく、こういう趣旨でございます。
  288. 西田八郎

    ○西田(八)委員 問題は、その再雇用なんですよ。現在、求人倍率が全体で〇・五前後ですね。〇・五二でしたか。しかし、それは若い人は〇・七、八までいっておるから、中高年齢者にとっては〇・二、三。十人に二人か三人しか雇ってもらえないという状況の中で、再就職が果たしてできるのかどうか。これは労働省も現地からの報告を聞いて知っておられると思うのですね。しかも雇用安定資金を利用して新しい業種転換といってみたところで、いま新しい転換をできるような業種が一体何があるのです。いま好況と言われる自動車だって電器産業だって、円高でしかも政府の輸出規制というような措置がとられるようになりましたならば、ここにも当然不況といいますか、減産体制というものは生じてくるわけです。というようなことを考えていくと、新しい雇用の機会というものを何か政府みずからが創出していく意欲がなければ、再就職そのものも困難じゃないですか。したがって、そこらの新しい雇用を抱えられる、そういう雇用の機会というものが果たしてあるのかどうか、ひと?労働大臣、答えてください。
  289. 藤井勝志

    ○藤井国務大臣 御指摘のとおり、特に厳しい雇用情勢のもとに、中高年齢者の雇用対策というのは非常にむずかしい局面に立たせられておると思うのです。しかし、これは私は雇用政策の非常に大切な柱であるといろいろいま工夫をいたしておるわけでございまして、何とかして職業訓練、再就職の場合訓練手当なり訓練待期手当、こういったものを背景として、そしてたとえば中高年齢者にふさわしいような、一例でございますけれどもビル管理の仕事であるとかあるいは造園であるとか、こういうふうな職種というものをひとつ考える。現にそれをもうすでに訓練校のところによっては、亀戸でありますけれども、やってなかなか就職率がいい。こういうふうなやはりこれから伸びていく産業、こういったものに雇用の道を拡大をする、そういうことをやる目的のために中高年齢者を雇い入れる事業主に対して助成をしていく。これは今度新しい五十三年度の雇用政策としてやっておりますけれども、これだけではなかなか厳しい情勢に対応することはむずかしいといろいろ工夫をいたしておりまして、その工夫の背景には職業練訓法の改正、こういったものを私は考えておるわけでございまして、これからの雇用政策というのは、端的に申しますと、職業訓練と職業安定というものを行政が一体となって進めていく。そして模索的な努力でありますけれども、ともかく前へ向かっていろいろ工夫をしてみる、衆知を集めて努力する。そのためには、雇用政策調査研究会という専門の人たちで構成した労働大臣の諮問機関がありますが、そういったところともよく相談をして対応していきたい、このように考えております。
  290. 西田八郎

    ○西田(八)委員 これは非常に重要な問題であろうと思うのです。この一月で失業者は百十三万人、これは統計上数字としてあらわれてきたものでありますが、そのほかに潜在失業者、わが国の場合は大学進学率も非常に高いし、駅弁大学等と呼ばれ、大学の数も外国に比べて非常に多い。そういうところで大学等へ在学中の十八歳から二十二、三歳までの人たち、あるいは十八歳から二十歳、二十一歳までの大学浪人と言われる人たち、これが全国で二百万以上の人口がある。したがって、それは失業という計算には入ってない、これは学生として扱われる。しかし、諸外国の実態から見たら、これも当然失業者ということになると思う。そうすれば、これは優に三百万を超える失業者を抱えているのと同じことなんですね。  しかもこれから経済がこういうような形で円も高くなるし、ある程度外国にも顔を立てなければならぬ、そうしなければ日本の経済は立ち行かぬというときには、当然これを均衡縮小生産の方向へ向けなければならない。その場合に新しい産業を興すというのは、これは製造その他の産業ではなかなかふえないと思うのです。したがって、一体どこにその雇用の機会を求めるのか。これはいま労働大臣はおっしゃったけれども、ひとつ通産の衝に当たられる大臣から、一体そういう方向について何か新しい希望の持てるようなものがあるのか、ひとつお答えをいただきたいと思う。
  291. 河本敏夫

    河本国務大臣 先般の会議でもこのことが非常に大きな議題になりまして、とにかく積極的に新しい仕事というものをつくり出すことが必要じゃないか、こういうことで去る二十五日の決定になったわけでございますが、あの中にはやはり幾つかの新しい雇用の創出という項目が入っております。ああいう方向に私は内閣全体として一層の努力をすべきだと考えております。
  292. 西田八郎

    ○西田(八)委員 これはもう本当に重要な問題であります。もちろんそれについては時間外労働の全廃であるとかあるいは時間短縮という問題もあるでしょうが、こういう時代に、あした自分の首が飛ぶかわからぬというときに、休日をふやしたり時間を短縮したりというようなことは、とうていこれは環境的にむずかしい問題だと思うのです。したがって、こういう新しいところに雇用の機会がありますよということが政府の責任において行われることによって、安心して労働者も働けるし、国全体も落ちついてくるんじゃないか。そうすれば、当然現在の消費の停滞というものにもある程度その拍車をかけることになるのではないか。これは通産、労働両大臣に、とにかく早急にひとつ英知をしぼって新しい雇用創出についての具体的な対策をお示しいただくことをお願いをいたしまして、私の質問を終わります。
  293. 野呂恭一

    野呂委員長 次に、浦井洋君。
  294. 浦井洋

    ○浦井委員 まず、私は、この法案については基本的に二つの大きな問題点があると思うわけであります。  一つは、これはわが党の工藤議員も先般の商工委員会でそういう意見開陳をやったわけでありますけれども、この法案を見ると、法定が予定されておる四業種その他となっておるわけでありますが、その法定予定の四業種に典型的に見られるように、現在設備過剰になっている業種は、いずれもオイルショック後に設備投資を強行したものばかりである、しかもその設備投資のやり方のパターンというのは、現在は非常に批判をされておるいわゆる列島改造型のものであった。ということは、要するにそういう業種の親企業であるとか、あるいは関係した金融機関、あるいは商社が一体になってこれを進めてきたということを示しておると思うわけであります。そして今日になって設備過剰になってきた、こういう経過であります。そういう事情であるのに、この法案を読んだりあるいは政府見解を聞たりいたしますと、この過剰になった設備の処理についてはそれぞれの業界の自主的努力に任されておる。これは肝心の設備投資をあおり立てて資金をつぎ込んできたところの親企業であるとか、大商社であるとか、あるいは金融機関、こういうようなところの責任には何ら触れておらないというところがやはり一つ基本的な問題であろうと思うわけであります。  それから第二点としては、この過剰設備の処理について、開銀などを通じて政府の資金がかなりこれに充てられるということになっておるわけであります。ということは、結局は、そういう設備投資をあおり立ててきたところの大企業であるとか、あるいは大商社、あるいは銀行、こういうものの負担を軽くしてやるというような役目を果たすものだという点であります。  この二つの基本的な問題がある。  さらに言うならば、いまも同僚委員から指摘がありましたように、こういう過剰設備を処理するのだということについてこの法案で法的な根拠を与えて、結果的には労働者の解雇であるとかあるいは下請の中小企業の淘汰を促進するものであるというふうに言わざるを得ないわけであります。  私、この閥、長崎県の佐世保へ行ってまいりました。そこでSSK、佐世保重工の経営者であるとか下請業者、あるいは本工の組合、下請業の労働組合、あるいは自治体の意見などを聞いて調査も進めてきたわけでありますけれども、そこで造船不況対策、かなり真剣に論議をされておりますけれども、いままさに成立するかどうかというような時点に来ておるところ特定不況産業安定臨時措置法に対する期待の声というのは、幸か不幸か一つも聞かなかった。きょうここに持ってきておりますけれども、長崎県が出しました造船不況対策というパンフレットあるいは資料を見てみましても、何にもそこにこの特安法に対する期待のことは書かれておらないというような状態であります。  そこで、ひとつ通産大臣にお聞きをしたいわけでありますけれども、こういうような不況産業の業種、これの設備廃棄などによって当然生じてくると思われるいわゆる過剰になった労働者、この労働者が失業しないように、またたとえ失業しても再就職できるように、先ほど私が申し上げたように、設備投資をあふり立てたところの親企業であるとか、あるいは銀行、あるいは大商社、こういうようなところにもっと責任を持たせるようなかっこうにこの法案がならないものか、あるいはそれを運用で何とかできないものか、この点について通産大臣の御意見をお伺いしておきたい。
  295. 河本敏夫

    河本国務大臣 この法律適用されまして構造改善事業をやっていこうという業種はどの程度出てくるかわかりませんが、現在のところ、その業種の中で過剰設備の非常に多いものは大体五、六割、あるいは六、七割もあるのじゃないかと思います。少ないところでも二、三割あろうと思います。したがいまして、現在までにある程度雇用問題は調整は進んでおりますけれども、やはりこの際思い切ってまとまった設備廃棄をいたしますと、当然雇用問題がさらに表面化してくると思います。  そこで、いまのお話は、この設備投資の背景になった銀行、それからあるいは親企業、商社等が責任を持ってこれを解決するようにすべきではないかというお話でございますが、その前に、設備廃棄をするにつきまして信用基金による保証制度というのがこの法律の骨子でございますが、それによって設備廃棄ができるわけでございます。その保証の裏保証を関係の商社あるいは銀行等にある程度やっていただこうと思っておるわけでございますが、つまり商社、銀行はそういうことである程度の責任をとってもらって、そしてこの構造改善事業が円滑に進むように協力をしていただこう、こういう考え方でございます。
  296. 浦井洋

    ○浦井委員 協力をしてもらうというようなだけでなしに、やはりこういうような状態に陥れて、しかもその結果として、いま大臣も認められたように労働者が失業するかもわからぬということでありますから、もっと積極的な指導をひとつ要望しておきたいと思うわけであります。  そこで、労働大臣にお聞きをしたいわけでありますけれども、先ほどからも論議が交わされておりますように、この特定不況産業安定臨時措置法案による不況業種の指定あるいは安定基本計画の作成に当たって、事前に主務大臣通産大臣と協議をするというようなことが言われておるし、このことについてはすでに覚書が交わされておるというふうに聞いておるわけでありますけれども、失業防止あるいは失業者の再就職促進についてどういう対策を考えておられるのか、簡単にお聞きをしておきたいと思うわけです。
  297. 藤井勝志

    ○藤井国務大臣 この法律の施行に当たりましては、十条によって雇用安定が明記されております以外、安定基本計画あるいは共同行為の指示、これは事前に協議する覚書を交わしております。それで十二分に事前に労働省、通産省と話し合う、労働者側の立場を十二分に反映して労働省は通産省に交渉する、こういうことであります。  ところで、このような法律によって共同行為が行われる場合には、過剰設備の廃棄、これはこれに伴う雇用問題が起こるわけでございまして、そのような特殊性にかんがみまして、特定不況業種の離職者臨時措置法、これを効果的に活用いたしまして、そして雇用保険の給付を九十日延長、これは四十歳以上給付を九十日延長、そしていわゆる訓練手当あるいは訓練待期手当、こういったものによって再就職の道を積極的に開拓していく。また、すでに御案内だと思いますけれども、失業者の吸収率制度、こういったものをこれまた活用していく、で、緊急対策もやっていこう。それにもう一つ、新しい制度といたしまして、中高年齢者を雇い入れる事業主に対しては特別に助成をしていくという政策を五十三年度から実施する。こういうことでスムーズな転換ができるような労働対策、雇用政策を用意しておるわけでございます。
  298. 浦井洋

    ○浦井委員 労働大臣、首切りがスムーズにできて、それを離職者法などでスムーズに救済をしていくというようなことではだめであって、やはり失業を防止し、予防するということが私は抜けておると思うわけであります。  それはそれといたしまして、いま言われたように略して離職者法が一つの救済措置の武器として昨年末に議員立法で成立をしたわけでありますが、その離職者法についてひとつ労働省にお伺いをしたいわけでありますけれども、ことしの一月二日から施行されておるが、現在までの実施状況を簡単に発表願いたいと思います。
  299. 細野正

    ○細野政府委員 お尋ねのございました離職者臨時措置法の実施状況でございますが、これは二月末現在でございますが、再就職援助計画の認定件数が千四百十六件でございます。それから、手帳の発給件数が三千三百三十三件という状況でございます。  なお、これに関連しまして、その措置対象になる人員数というのが全部で二万六千八百二十九名、このうち配置転換とか出向等を除きまして、希望退職を含む退職者というのが約二万三千という状況でございます。
  300. 浦井洋

    ○浦井委員 もう一つ、そうすると給付金あるいはこの離職者を雇用した事業主に対する助成金の支給状況はどうですか。
  301. 細野正

    ○細野政府委員 現在まだ雇用保険の受給中でございまして、したがいまして、手帳の発給件数は先ほど申し上げたとおりでございますが、給付金の支給件数は、二月末現在ではまだゼロでございます。
  302. 浦井洋

    ○浦井委員 助成金は……。
  303. 細野正

    ○細野政府委員 助成金につきましても、就職者の件数は二百五十四人おりますが、いずれも助成金を利用せずに就職しておるような状況でございます。
  304. 浦井洋

    ○浦井委員 いま大臣お聞きになったように、昨年暮れの国会であれほど議員立法として論議され、マスコミでも取り上げられた離職者法でありますが、その求職手帳の発給状況というのは、まだまだいやに少ないわけです。私は、もっとこの法律が活用されて、離職者にせめても喜んでもらえるものになっておるのではないかというふうに考えたわけですが、いやに少ないわけです。これはまだ一月の二日実施でありますから、給付金あるいは助成金の支給がゼロであるということもある程度はうなずけないことはないのでありますけれども、悪く勘ぐれば何か法令の不備であるとか、あるいは執行状況にどこか欠陥があるのではないかというふうにさえ思えるわけであります。  そこで、ひとつ具体的にお聞きをしたいのですが、造船の場合に、この間、先ほど申し上げたように私は佐世保へ行ってきたわけでありますけれども、そこで一番佐世保の方々から要望をされたのは、この離職者法の指定基準がきついという問題であります。労働省職安局編の離職者法の解説の書物によりますと、過去一年間における下請依存率が五〇%以上となっておる、でなければ適用されないということでありますが、この点、ちょっと技術的に聞いておきたいのです。  元請造船が二つである。二つの元請、二つ以上、複数ですね。複数の元請造船業で仕事をしておって、その合計が依存率五〇%以上になれば、これは指定をされるわけでありますか、どうですか。
  305. 細野正

    ○細野政府委員 ただいまお尋ねの件でございますが、それが造船業とそれからその修理を含めまして船舶製造業、修理業、それからその部品の製造、修理業、全部含めまして指定しておりますから、したがって、それに該当をしていないものについてのお話になるわけですね。そういう意味での下請関係というものは、あくまでもその対象になっている企業との間にいわば密接な関係があって、こちらがいかれた場合にはその企業についてももう莫大な影響が出ることが必然的だ、こういう密接な関係があるもののみ、その指定業種以外のものについても救済をしようというのが下請事業の制度でございます。したがいまして、そういう意味で、ある特定の社との関係が五〇%以上という、そういう要件で判断をしておるわけでございます。
  306. 浦井洋

    ○浦井委員 私が言っているのは、職安局長、一次下請造船関連業として業種指定をしておるわけでしょう。その場合に、それが二つの、たとえば長崎で言えば三菱長崎、SSK両方からの仕事をもらっておる、こういう場合にはもちろん指定されるんだなということなんです。で、五〇%以上ということなんです。
  307. 細野正

    ○細野政府委員 先ほど申しましたように、その当該業種に属するものであれば、当然それはその大小にかかわらず指定になりますが、指定されている業種以外の事業を行っておる方ですから、その造船関係のある特定の社との関係が密接で、こちらが非常に状況が悪くなった場合には、当然こちらも状況が悪くなったと見ざるを得ないという、その一種の密接な関連ということで見ておりますので、したがいまして、先ほど申しましたように一つの特定会社との関係が五〇%以上、こういう見方をしているわけでございます。したがいまして、二つ合わせるという見方をとっておらないということでございます。
  308. 浦井洋

    ○浦井委員 もう一つの問題は、今度はたとえば具体的に固有名詞を挙げてみますと、これも一次下請でありますけれども、SSKの下請の電気工事関係をやっている富士商工というところがある。ここは、従業員が九十八人のうち十五人がSSKの構内の支所で働いておる。この従業員の人たちは、採用されてから一度も他の職場には行ったことがない。このSSKの構内で、構内下請として長期間勤務をしておる。就業規則もSSKと同様なもので規制をされておる。ところが、この五〇%という基準に引っかかって業種指定されない、離職者法の指定基準に満たないということで外されておるという実情があるわけなんです。  それからもう一つ申し上げますと、運送業でありますけれども溝口運送という名前であります。そこで働いておる人は依存率五〇%以下であるけれども、しかし、他の職、SSKの外での溝口運送の職場との人事交流もなしに十数年間も働いておる人がかなりおられるわけであります。  こういうような例を私、申し上げたわけでありますけれども経過をよく聞いてみますと、仕事がSSKで非常に少なくなってきた、本工が構内下請下請工がやっておった分野にどんどん入ってきて、そしてはみ出てくるというようなかっこうになって、やむなく下請企業は外部の仕事をやる、結果としてはやはりじりじりと下がってまいりまして、依存率が五〇%を切るというようなかっこうになるわけであります。だから、いま労働省が決めておる一年間の依存率が五〇%というのは、やはり実情に見合って弾力的に取り扱わなければならぬのではないか。この離職者法が成立をしたときに、衆議院では特別決議がある、参議院でも附帯決議があって、そのときに、この法の運用に当たっては弾力的に行えというような決議がつけられておるわけでありますから、その辺のことについて、これは労働省の答えをひとつ聞いておきたいと思うのです。
  309. 細野正

    ○細野政府委員 いま二つお尋ねでございましたが、最初の方の問題は、事業所の単位のとり方の問題で、これは事業所を分解して個々人にまでばらすのは非常にむずかしいと思いますが、事業所のとり方の問題として検討のできるものもあると思います。  それから、後者の方のお話は、確かに親企業からの発注が少なくなってきたので、非常に努力をしてほかを開拓して、あげくの果て五割を割ったというような点につきましては、これは転換されてやっておる仕事自体が非常に状況のいい仕事であるとか、そういういろいろな特別な事情がない限り、やはり私どもとしても実情に応じた判断が必要じゃないかということで、目下検討しておるという状況でございます。
  310. 浦井洋

    ○浦井委員 かなり前向きの答えであって、やはり弾力的に運用すべきだと私は思うわけであります。  たとえば依存率のとり方を一年でなしに二年とか三年とか、あるいは特別な場合には思い切って五年くらいにするというように長く見ていくというのも一つの方法であろうし、いま局長の言われたように事業所のとり方という問題で、たとえば構内に営業所なり支所を持っておって、そこで人事交流のない労働者がある程度特定をされるというような場合には、それこそ弾力的に見て、積極的に指定をしていくべきではないかと思うわけでありますが、そういう考え方でよろしいですね。
  311. 細野正

    ○細野政府委員 現在、いま御指摘のようないろいろなケースについて勉強をいたしておりまして、いま先生からお話があったようなことも、一つの案としてその中で検討しているという状況でございます。
  312. 浦井洋

    ○浦井委員 そういうことで、特に大臣によく聞いておっていただきたいのですが、下請労働者の場合には、これは通産大臣もよく御承知だろうと思うのですが、日本特有の造船の構内下請という労働形態がある。そこでは賃金も非常に低いし、残業時間が多い。それで食っておる。しかも中高年齢者がほとんどであります。このSSKでも、比べてみますと本工より平均年齢が十歳以上高いというような状態であるわけであります。やはり万が一離職者が出た場合の下請企業に対する救済措置として、せっかく議員立法で成立をした離職者法がせめてほぼ完璧に適用される、このことのために大臣努力をしていただきたい、このことを要望しておきたいと思います。  それからもう一つの問題は、離職者法の就職促進手当の問題であります。  離職者法の十三条では、離職者手帳所持者には訓練待期手当または就職促進手当を支給するというふうに法文ではなっておるわけなんです。ところが、その後つくられた施行規則、省令では、その十六条に、就職促進手当を支給する離職者は労働大臣が指定する業種に係るもの、こういうようになっておるわけです。  ちょっとお尋ねしておきたいのですが、その特定不況業種として指定されておるのは、二十六プラス六で現在三十二業種である。そうすると、就職促進手当が支給されるというふうに指定されておる業種は現在のところ幾つあって、それは何々なのか、この点であります。
  313. 細野正

    ○細野政府委員 促進手当の支給対象業種はいま検討中でございまして、現段階においてはまだ指定はされておりません。
  314. 浦井洋

    ○浦井委員 大臣、ゼロなんですよ。離職者法、われわれは一生懸命昨年の暮れの国会でつくったわけなんです。それを見る限りでは、離職者手帳の三年間の有効期間であれば、雇用保険の失業給付が切れた、それからそれで定められたいろいろな給付が切れた、しかしまだ就職はできないという場合には就職促進手当が支給されるというふうに読めるわけです。  ところが、いまも私が申し上げたように、さらにもう一遍就職促進手当を支給する業種は労働大臣が指定される、こういうかっこうになっておるわけでありまして、これも何か悪く勘ぐれば、法文では非常に華やかに、訓練待期手当も上げますよ、就職促進手当も上げますよと言っておりながら、実際支給する段になると、今度は国会を通らない省令できつく縛りつけてしまっておるのではないかという感じがして仕方がないわけでありますが、不況業種全体についてこれを対象にしたような手当として就職促進手当を支給するようにすべきではないかと私は思うわけなんです。これは佐世保に行ったときに、県の要望書の中にも、就職促進手当を至急造船事業所にもぜひ適用してほしいという要望があったので、ひとつ大臣の前向きの御答弁を期待したいわけなんです。
  315. 細野正

    ○細野政府委員 就職促進手当は、先生も御存じのように従来から行われている制度でございまして、その基本的な考え方は、雇用保険の場合でございますと、これは労使の負担によって行われておる保険でございますから、その延長等につきましてかなり弾力的にやっておるわけでございますが、促進手当の方は一般会計による特別の助成でございまして、そういう意味で、従来、たとえば炭鉱の場合とかあるいは沖縄で復帰に伴いましてたばこの会社がつぶれてしまった、そういうような法律そのものずばりで離職者が発生するとか、あるいは国がみずから施設についての買い上げをやるとか、そういういわば国直接の施策そのもので離職が発生するという場合に限って出されていた制度でございます。  今回の特定不況産業安定臨時措置法におきましては、その議論の過程におきましても、今回の特定不況業種の中にそういう直接国が買い上げるというふうな形で出てくるものというのはなかなか想定がむずかしいわけでございまして、そうなると援助に欠けるところができないかということから、むしろその辺の要件を緩めて、国の勧告なり指導なりでもいい、国の政策でやった場合にはそれに関連するものについてはある程度の措置をとっていこうじゃないか、ただし、その場合には、買い上げ等によるものと違ってこれはあくまでも訓練を重視して、訓練を受ける場合の訓練手当とそれから訓練所に入るまでの間の待期手当について出すようにしていこう、こういうふうなことで、したがいまして、与野党共同一致でおつくりいただきました法案そのものも、訓練手当または就職促進手当というふうに区切りがついているわけでございます。  したがいまして、私どもとしては、先ほど申し上げましたような基本的な考え方に立ち、かつ、その点について公労使三者構成の安定審議会におきましてそれに関する基準についての御審議を経まして現在のようなやり方をしているわけでございますが、なお、先ほど促進手当の支給対象に対して検討中であるということを若干申し上げましたが、その安定審議会の御審議の中で、大筋は私ども考え方で御了承いただいたのですけれども、それにしてももう少し促進手当の支給の幅が広げられないかということで、その審議会の御意見を現在検討中という状況でございます。
  316. 浦井洋

    ○浦井委員 大臣、いま聞かれたと思うのですが、去年の十二月十四日にこの離職者法の政省令をつくる内容を審議をした職安審でも、いま局長の言われたように就職促進手当の支給対象については可能な限り拡大に努めるということになっておるわけでありますから、長崎県の要望もぜひひとつかなえてやってほしいというふうに私は思うわけです。  それから、いま局長が言われたことに反論をするわけですが、現在ここで審議をされておる特定不況産業安定臨時措置法は、やはり法律に基づいて安定基本計画を政府がつくるわけであります。そしてそれに基づいて設備廃棄をやったり、縮小をやったり、あるいはいまも話があったように離職者が発生をするわけでありますから、積極的に就職促進手当の支給対象も私は広げていくべきだというふうに思うわけでありますが、労働大臣の御答弁をお願いしたいと思います。
  317. 藤井勝志

    ○藤井国務大臣 ただいま職業安定局長からお答えをいたしましたような趣旨で、就職を奨励する給付金と、それから別途特定不況業種の離職者臨時措置法に基づくいわゆる訓練手当、訓練待期手当とは、おのずから考え方の前提が少し違っておると思います。せっかくのお話でございますから、よく事情を調べて検討をいたします。
  318. 浦井洋

    ○浦井委員 これで終わりますけれども、きょう総理府が発表した数字によりますと、二月の完全失業者は百三十六万人で、新聞の見出しによりますと、二十年来の最悪の記録だ、こういうふうに書いてある。有効求人倍率については〇・五二からやや持ち直して〇・五四、しかし、それにしても〇・五四というのは、一ころのことを思うときわめて低い水準であります。各紙とも、雇用情勢というのはますます深刻になっておる、改めて政府の雇用に対する対策が問われることになるだろうというふうに指摘をしておるわけでありますけれども、ひとつ通産大臣も労働大臣も、政府がこぞって労働者や労働組合のいろんな意見に謙虚に耳を傾けていただいて、たとえばいままでも出ておりますように、週休二日制を初めとした時間短縮、これを早急に実施することであるとか、あるいは解雇制限をきちんとやって失業予防の対策を打ち出すことであるとか、あるいはいま私が言いましたように離職者を初めとした失業を余儀なくされた人に対する生活防衛をきちんと保障をしてあげるとか、さらには、この間私は社労委員会で申し上げたのですけれども政府が責任を持って新しい就労事業を起こすというようなことを積極的に前向きに取り組んでいくべきだ、こういうことを私は要求をいたします。  時間が参りましたので、質問を終わりたいと思います。
  319. 野呂恭一

    野呂委員長 次に、大成正雄君。
  320. 大成正雄

    ○大成委員 大臣を初め政府委員の皆さんも、朝早くから大変お疲れのことと存じますが、しんがりでございますので、御協力をお願いを申し上げたいと存じます。  私は、商工委員会において本法に関してはそれぞれ必要な質問は繰り返してまいったわけでありますが、これが最後でございますので、締めくくりとしての質問にさせていただきたいと存じます。  私は、この法案が一日も早く適正に運用されることによって、わが国の構造不況産業の体質改善が進むことを期待をいたしておるわけでありますが、いままでの審議の過程におきまして、本法以前の問題として解決をしていかなければならない、政策の選択をしなければならない問題があるように考えております。手術を要する病人にたとえるならば、これから本法によって大手術をしていこう、その手術に耐えられる体質と体力を培養する、またその条件を与えていく、こういう意味で、本法以前の問題として、本法の法定業種である造船並びに合繊、この二業種の問題について御質問を申し上げたいと思うわけであります。  昨日、それぞれの参考人の意見聴取がなされたわけでありますが、化合繊関係の宮崎参考人の御意見によりましても、ともかく過剰設備と円高の問題は一般的な不況要因であるけれども、わが業界は、これに加えて、いわゆる石油業法の仕組みに問題のあるナフサ価格の問題と、それから台湾、韓国、朝鮮等からの輸入の問題、この二つの特異性があるのだ、このことを強調をされておられたわけであります。同時にまた、ナフサ価格の問題につきましては、従来繰り返し繰り返しむしろしつこいくらいに私も御意見を承ってまいったわけでありますが、所管庁の政策の発想からいたしますと、本法適用以前の問題として、まだ力不足である、もう少しやはり政治の力が及んでいいのじゃないか、このように考えるわけであります。  十-十二月期の自主調整がもうすでに二百二十円台といった円高で帳消しになっておる。それだけでは済まないという状態にもなっておる。さらに円高の基調も、実勢からしますとやや安定的ではありますが、基調においては変わらない、こういった情勢において、合繊業界は約五〇%輸出に依存をしておるといったこと等、あるいはその仕組みにおいて自主的にナフサの輸入ができないといったそういう立場からしても、ナフサ価格の調整が業界の浮沈にかかわるきわめて重大な問題である、こういうことであります。したがいまして、政府意図しておる二段階の調整あるいはこの一-三月期の価格の調整という問題については、従来の域を超えた政治力が発揮されなければならない、このように考えます。  第二の問題として、台湾、韓国等からの輸入の問題については、過般予算委員会の一般質問の中でも指摘をしたわけでありますけれども、何か政府対応は消極的である。業界は、積極的に関税定率法の第九条の提訴をしよう、こういう積極的な意見であることが昨日の参考人の意見の中からも出てきたわけでありますが、以上申し上げた諸点につきましての御意見を承りたいと思います。
  321. 橋本利一

    橋本(利)政府委員 昨年の十-十二月期の石油化学用ナフサ価格につきましては、御承知のように実質キロリットル当たり三千円の引き下げで話がついたわけでございますが、近く最近の需給事情あるいは為替レート等を勘案して一-三月期の価格の交渉に入るだろうというふうに見ておるわけでございます。私たちとしましては、諸般の事情から、需給の両当事者の話し合いをまず注視しまして、状況の推移によりまして両業界の実情を踏まえて側面からこれをバックアップしていきたい、かように考えでおります。  それから、石油価格体系につきましては、昨年の十二月以来研究会で検討を続けておるわけでございますが、御承知のようになかなかむずかしい問題でございまして、現段階でまだお答えをし得る段階まで来ておりません。できるだけ早く結論を得るように努めたいと思います。
  322. 坂井清志

    ○坂井説明員 合繊の輸入について御説明申し上げます。  確かに昨年台湾、韓国等を中心にしまして合繊関係の輸入がふえておりますけれども、その数量は、全体として問題にしなければならないというレベルまではまだ達しておりません。問題の合繊糸をとりましても、わが国の生産に対する割合はまだ一%に達していないという状況でございます。  次に、ダンピングの関係でございますが、これは確かに宮崎参考人も述べられましたように関税定率法に規定がございますが、そこには二つの条件がございます。一つは、価格がダンピング価格であるということ、つまり台湾、韓国等の国内価格よりも低い価格で輸入がされておるということ。それから第二に、そのことによってわが国の産業が実質的被害を受けておるということ。この二つの条件が必要でございます。現在、業界の方ではいろいろ実情を調査中ということでございまして、まだ提訴という段階には至っておりませんが、私ども考える限りでは、この実質的被害という点につきまして、そのような事態には立ち至っていないというふうに考えております。
  323. 大成正雄

    ○大成委員 これは答弁を必要といたしませんけれども、二百二十円台といった急激な円高基調でございまして、この精製業界の差益というものは、この三月期の決算あるいは九月期の決算予測からいたしましてもかなり大幅な差益が見込まれるわけでありますから、このナフサ価格の調整をする背後的な環境としては非常にやりやすい環境じゃないか。そういう意味において、ひとつ従来の発想を超えた勇気のある調整をすべきであるという意見を申し上げて、この問題については終わりたいと思います。  次に、造船不況関係について承りたいわけであります。  参考人の意見等を聞きましても、ともかく仕事が欲しいんだ、しかもこの夏ごろになればもう仕事がなくなってしまうんだ、将来は能力の五〇%を余してしまうんだ、こういった深刻な状態においていかにするかという対策がなされなければならない。すなわち本法適用以前の問題として、先ほど申し上げたような手術前の体力付与といった考え方で解決されていかなければならないと思うのでございます。  そういう意味で、スクラップとビルドと両面からの対応が必要かと思うわけであります。景気浮揚策として公共事業予算を大幅につけてその努力をなされ、その効果が着々あらわれつつあるわけでありますが、事造船に関してそういった思い切った政府みずからの努力がなされているかというと、必ずしもそのようには思えないというふうに考えます。と申しますことは、運輸省や防衛庁、水産庁等の船にかかわるその所管行政がスクラップとビルドをどこまで前向きに進めているか、すなわち不況にあえぐ造船業界政府みずからがその仕事をどれだけ与えているかといったことを考えたときに、りょうりょうたるものであると言わざるを得ないのでありまして、以下この点について御質問を申し上げていきたいわけであります。  先ほどの御答弁にもありましたが、わが海上保安庁の現有船舶は三百十二隻、四万九千三百八十五トンという状態でございまして、巡視船艇の建造予算の推移を見ますと、五十一年度が五十七億九千万、五十二年度が百三十四億、五十三年度予定しているのが十六隻で百八十四億余ということになっておるわけであります。しかしながら、資料によりますと、耐用年数をすでに過ぎた巡視船だけでも十三隻もまだある。耐用年数は鋼船において二十五年ということでありますが、そういう状態でありまして、もっと思い切ったスクラップがなされなければならないと考えます。  また、防衛庁の状態を見ましても、国産自衛艦の建造が昭和三十一年ごろから始まって、ちょうど護衛艦二十年といった耐用時限が来ておるという状態であります。それぞれの保有艦船の現況については時間がありませんので省略をいたしますが、ただ防衛庁の場合には、確かにこの造船不況といったアプローチでこの問題を考えるのではなく、防衛力整備といった発想で考えるということは私も理解できるわけでありますが、ともかく二百海里時代に対応した、また周辺の防衛環境の変化等からいたしまして、時代に対応できる能力を持った新鋭艦に積極的に対応していくということが必要であろうかと思うわけであります。そういった意味において、防衛庁それから海上保安庁等の御意見を聞きたい。  また、水産庁もあるのですが、水産庁はりょうりょうたるもので、いま三カ年計画でやっておるが、千九百五十トンの耕洋丸一隻だけで、予算も三十二億六千万余でありますが、水産庁においても現在の保有船舶の状況から見ますと、相当積極的にスクラップをしてもいいといった事情もあろうかと思うのです。  以上、それぞれの三省庁のスクラップについて御意見を承りたいと思います。
  324. 薗村泰彦

    ○薗村政府委員 私どもの現有勢力とそれからいままでやってきました増強と代替については、いま先生からお話があったとおりでございます。  私どもも、領海法とそれから漁業水域暫定措置法が昨年の七月一日から施行されまして、領海警備それから外国漁船の取り締まり、監視等の仕事がうんとふえましたので、できるだけ船艇を増強していきたいし、また老朽のものを新しくしていきたいという気持ちでございます。  御指摘のとおり、三月三十一日現在で耐用年数が過ぎておる船艇は、巡視船で十三隻、それから巡視艇で十二隻ございます。これらの代替につきましては、今後のいろんな動きを見ながら計画的に前向きに進めていきたい、こう思っております。
  325. 間淵直三

    間淵政府委員 防衛庁の所有艦艇につきましてはただいま先生指摘のような状況でございまして、護衛艦二十年、潜水艦十四年の耐用年数を一応過ぎておるというものが、護衛艦六隻、潜水艦二隻というような現状でございます。  私ども先生指摘のように、防衛力整備という観点からこれを代替建造などを進めておるわけでございまして、私どもの予算は、御承知のように当面GNPの一%以内にするというようないろいろの制約のある中で、航空機、艦船、その他重点的に毎年代替建造を進めておるわけでございます。こういう私どもの行き方と不況対策あるいは経済政策といったようなものの整合につきまして、世論のコンセンサス、そういうものが得られることが前提要件ではないか、こう考えておる次第でございますが、与えられた範囲におきましてその建造の発注を早めるとか、そういうことによって最大限の努力をしていきたい、こう思っておるところでございます。
  326. 大成正雄

    ○大成委員 装備局長にもう一回承りますが、防衛庁では、五十一年秋の閣議決定による防衛計画大綱によっていま艦船の建造を進めておるわけでありますが、この計画大綱によりますと、自衛艦が六十隻、潜水艦十六隻ということになっておりますけれども、この五十二、三両年度において、自衛艦五十二年度六隻、三年度五隻、わずか十一隻、こういったテンポであります。特に年度を区切っておらないという計画のようでございますけれども、確かに総合的な配慮が必要かと思うのです。せっかくこのすぐれた造船能力を持っておる、艦船建造能力を持っておるわが国でありますから、その能力を十分活用して、もっと積極的にやっていただいたらどうか。特に国庫債務負担によって艦船の建造には対応できるわけでありますから、この点はひとつ要望として申し上げておきます。  次に、耐用年数の問題でございますが、大蔵省考え方を聞きますというと、先ほどの海上保安庁のお話に、何か耐用年数が来ないとスクラップができないような意味の御答弁がなされているわけですが、大蔵省の方では、そうじゃないんだ、耐用年数とスクラップとは関係ないんだ、要するに国有財産法第八条及びその施行令の運用によって、たとえば海上保安庁で言うならば、運輸大臣が、所管大臣が耐用年数以前であってもスクラップしようと思えばスクラップできるんだ、防衛庁においても同じだと思うのです。水産庁においても同じ。ですから、そういう政治的な判断によっていかようにもできるということだと思うのであります。耐用年数というものに対する考え方をひとつお聞かせをいただきたいと思います。  時間がありませんから、次の質問も一緒にやらしていただきますが、かつて吉田内閣のときに、昭和二十五年の八月十日に施行になった低性能船舶買入法という時限立法をやりまして、当時二十七億ぐらいの予算でございましたが、そういった立法によって、あの敗戦後のまだ祖国の独立回復以前、まだわが国の経済力のないときにそういう立法をして、実際に船舶九十七隻を政府みずからが買い入れて、これをスクラップしているわけです。解体しているわけなんです。そういう先例があるわけでありますが、今日運輸省には、このような過剰船腹あるいは低性能船、老朽船、こういったものに対して、現在取り組んでいるような対応でなく、かつての吉田内閣の当時、政府みずからがそういった立法をして対応をしたといったそういう政策の選択なりはできないのかどうか、その点をひとつ承りたいと思います。
  327. 謝敷宗登

    謝敷政府委員 私の方からは、低性能船舶の買い入れの問題についてお答えをいたします。  先生指摘の昭和二十五年の低性能船舶買入法は、当時、内航海運におきます過剰船腹減少ということを目的にいたしまして、かつ、当時戦時標準船あるいは大正十年八月以前の船齢三十年という船舶の買い入れを行うことによりまして過剰船腹を解消させる目的を持っていたわけです。ただ、この実行は、先生指摘のように、当初予定四十万トンに対して三分の一程度、船腹需要が急増しましたから三分の一にとどまったかと思います。  最近、船腹のスクラップ・アンド・ビルドということが新しい造船需要の喚起の一環としまして議論されております。これはむしろ老朽船、低性能船というよりは、不経済船をスクラップして、かつ、近代的な合理化された船をつくるというように業界の間では検討されております。  先生御安内のように、外航船の問題になりますと、国際的に確かに船腹過剰でございますから、これをスクラップして過剰船腹を減少しながら一定の割合で低い率の新造船をやるというのは、基本的には考えられる望ましい方向かと思います。ただ、外航船でございますので、現在、外航海運、これまた非常に不況の中にあります。したがいまして、減船をすることに対する船主の経済上の問題、あるいは減船することによる余剰船員が多いと言われている日本海運におきます余剰船員の増加等もございまして、この辺が、造船需要の増加を願う造船業界と、それからいま言った問題点を抱えております海運業界とでどうやったら歩み寄れるか、具体的な案について業界で検討しておりまして、私どももそれを見ながら私どもなりに検討しているところでございます。
  328. 大成正雄

    ○大成委員 要するに、造船は地域密着型でいわば地場産業であり、同時に、雇用の創出といった問題が非常に大事なことであります。特に造船労働者の場合には中高年者が非常に多い、こういった問題でありまして、かつての炭鉱と同じような考え方でこの問題の解決をしていかなければならない。そういう意味では、以下御質問申し上げるような船舶の解体関係の事業の促進というものは非常に重要な意味を持っているというふうに考えるわけです。これは暫定的です。暫定的にこれは非常に大事だというふうに考えるわけであります。  今日、船舶解体のために八つの協同組合が発足を認可されておりまして、九十二隻、総トン数六万三千三百十一総トンの解体が進められておるやに承っておるわけでありますが、世界的にこれを見た場合に、わが日本のこの解体量というものはきわめて微々たるものでございます。そのシェアを見ましても、世界全体の七六年の解体実績で千七十八万トンが、日本の場合十八万トンで一・六六%、これに対して台湾あたりが五六%も解体実績を、世界のシェアを持っているということは、これはどういうことかということであります。特に、現年度一億四千六百二十五万円の船舶解体業の技術改善費の補助金が計上されておりますが、これすらも使い残りがある、こういったような状態であります。  なおかつ、十五年以上たっておるわが国の船腹を見ますと、これは七七年七月一日付のロイド統計でありますけれども、千八百五十隻、二百十万三千トンもある、こういう状態でありまして、この仕事に事は欠かないというふうに私は考えるわけであります。  問題は、いまの対応が採算がとれない。要するに採算確保ができていないということ、政府の助成措置が不十分であるということ、こういうことで、最も必要とされるそういった事業が政策的に実効をあらわしておらないというのが現実であります。  以上の状態に対してどのようにお考えでございましょうか、承りたいと思います。
  329. 謝敷宗登

    謝敷政府委員 船舶の解体業につきましては、先生指摘の予算をもちまして、五十二年度におきまして造船下請業の事業転換策として補助金を出したわけです。問題は、造船業あるいは造船下請業が解撤業に出るために、技術改善費ということでグロストン当たり六百五十円の補助金でやりまして、一番最近の年度末では二組合ふえまして九組合、約五千万円、いずれにしましても三分の一の実績で終わったわけです。  これには二つの問題がありまして、一つは、先生指摘の、言うなれば世界の中で解撤業として成り立っている国、台湾、韓国、スペイン等がその主なものではございますが、それとわが国の状況にいささか異なる状況があるということが第一点でございます。これらの国におきましては、かなり労働賃金が安いということと、それから解撤によってでき上がりました伸鉄を棒鋼なりそういったものに引っ張るわけですが、これの需要がかなり国内であるという二点で、この三国がきわめて生産が多いわけです。  日本の場合には、昨年来から解撤のための組合をつくってやっておりますが、解撤費用が約一万三千円かかる。それに対して、採算的に成り立つためには恐らく約七千円の補助をしなければいけない、こういう事態でございます。ようやく昨年実績として出ました組合におきます解体も、国内の船が約四十ドルとか五十ドル、これは船の重さトン当たりの値段でございますが、こういうものが手に入ったものがうまくいっている。国際的な買船価格は、先ほどの台湾とか韓国等がありまして九十ドル、約二倍になっている、こういった問題があるわけでございます。ただ、先ほど先生も御指摘になりましたように、スクラップ・アンド・ビルドの方策を進めるにいたしましても、この点につきましてはさらに研究して、コスト的に何とかもっと近づけるような努力をこれから研究しなければならぬ、こう考えております。
  330. 大成正雄

    ○大成委員 ともかく、いま運輸省が考えておるこの解撤の事業をさらに積極的に進めて造船不況対応するためには、いまのような発想ではだめだということだけは事実だと思うのです。買船費の問題、それからくず鉄の価格とのアンバランス、むしろ国自身がそのくず鉄を買い上げてやるというぐらいの思い切った発想でなければこの解撤事業というものは進まない、このように理解をいたすわけでありまして、どうかひとつ、政治力のある大臣がおられるのですから、もっと思い切ったこの解撤事業を進めるように、これはひとつ要望として大臣によくお伝えいただきたいと思います。  次に、造船関連企業下請も含めまして大変な苦しみでありますが、特に倒産した造船所の十七社、関連企業百社、これが不良債権が三十九億五千万余、倒産会社が、一切下請も含めますと三十九社で負債総額が二千八十三億、こう言っているわけですが、そのミクロの実態を見ますと、雇用だけでなく、いかに企業そのものが生きていくかという苦しみをいま味わっておるわけであります。すなわち、会社更生法その他によって押さえられておる債権が何とか活用できればと、こういう意見が非常に強いわけでありますが、この会社更生法の四十二年改正の、これは百十二条の二ですか、この運用が当該関係企業にも適用ができないものか、それらの点について承りたいと思います。
  331. 謝敷宗登

    謝敷政府委員 会社更生法なりあるいは和議申請に入っている造船所等に対して持っております中小企業下請事業者の債権の問題かと思いますが、これらに対しましては、基本的には更生法の申請あるいは和議申請をしている段階でございますので裁判所の判断が優先するかと考えております。したがいまして、それの債権を担保にして融資できるかどうか、こういう問題を私ども聞いております。この点につきましてはほかの方法で、たとえば私どもの監督しております船舶振興会等から低利融資をしておりますが、更生法申請の対象会社に持っております手形がいわゆる担保として認められるかどうかという点については、これは非常にむずかしい問題ではないか、したがいまして、何らか別の形でそういった倒産いたしました企業に関連する中小事業者に対する金融について対策を考えるべきであり、その方向に従って私どもあるいは中小企業庁にお願いしましてやっているところでございます。
  332. 大成正雄

    ○大成委員 ただいまの点につきましては、中小企業庁大蔵省等とも協議をされまして、ともかく関連する企業あるいは関係労働者が多いだけに、ひとつ前向きにこの債権が活用できる方途を講じていただきたいことを希望しておきます。  それから、先ほど耐用年数の答弁が漏れておりますから、これを要求すると同時に、最後に、労働省関係として造船関係の雇用現況とその対策の実態について承って、終わりたいと思います。
  333. 薗村泰彦

    ○薗村政府委員 海上保安庁の船艇の耐用年数は、巡視船が二十五年、それから巡視艇が原則として二十年、それから木造のものは十五年、それから改造を行いましたものは十年というふうにいろいろ小刻みになっております。それで、それは恐らく国有財産の観点からの基準でございましょう。私どもは、実は現実に船の傷み方というものから老朽度を考えて、その使用目的とあわせて今後つくりかえの優劣順位を考えていきたいと思っております。
  334. 間淵直三

    間淵政府委員 防衛庁の所有する護衛艦等につきましては、財政法上は耐用年数が明記されておらないわけでございますが、従来の使用の経験その他を踏まえまして、関係各省と相談いたしまして一応の基準を定めておるわけでございます。  それからまた、物理的耐用年数につきましては、この一応の基準たる、護衛艦でしたら二十年、潜水艦でしたら十四年の、護衛艦につきましてはその四年前十六年、それから潜水艦につきましては二年前十二年に老齢船舶調査というのを行いまして、その使用に耐えるかどうかを厳重に調査いたしまして、次の調査期間、十六年-二十年、十二年-十四年に至るまで使用しておりまして、その二十年、十四年になったときにおきましてまた調査を行いまして、その目的に耐えるかどうかを厳重にチェックいたしまして、耐えるものはそのまままた使用するという状況でございまして、使用に耐えられないというものは除籍しておる次第でございます。
  335. 恩田幸雄

    ○恩田政府委員 私どもの方では、原則といたしまして十六年目に代船が竣工できますようなかっこうで予算要求を行っておりますが、一部、非常に大改造いたしまして十分使える船については、さらに二十年ぐらいになっているものもございます。
  336. 細野正

    ○細野政府委員 造船の雇用の現状と雇用対策というお尋ねでございましたが、まず、現状の方から申し上げますと、運輸省のお調べによるわけでございますが、造船業の現在の従業員数でございますが、これが五十年の三月末で三十五万八千人あったわけでありますが、五十二年の三月末、二年たちまして三十二万五千人というふうに、この間約三万三千人減少しているというふうな状況でございます。  なお、造船不況に伴います雇用対策としましては、何といいましても造船の関連の需要の喚起ということが重要でございますので、先ほど来各大臣からお話ございましたように、造船の需要の喚起について閣僚会議等におきましていろいろと御相談をいただいているというふうな状況でございますが、同時に、労働省としましても、雇用安定資金制度を適用いたしまして、これによりまして各種の失業の予防措置に対する助成をやっているわけでございます。なお、不幸にして離職者というかっこうになった者につきましては、御存じの特定不況業種離職者臨時措置法を適用いたしまして、雇用保険の個別延長をするとか、あるいは各種の手当を支給しながら訓練の充実を図っていくというふうなことをやり、離職者の生活の安定とその再就職の促進を図っているところでございますが、なおさらに、これは造船だけに限った対策ではございませんけれども、中高年齢者を雇用する事業に対する助成金制度を新設いたしまして、これを活用して造船離職者についても民間の企業への雇い入れを促進をしていく、それからさらに、緊急に就労を必要とするというふうな方につきましては、これも地域を指定いたしまして、そこで実施される公共事業についての吸収率制度を厳格に実施して、そこへの就労の道を図っていくというふうないろいろな手段をあわせまして、総合的に全力を挙げて対策を講じてまいりたいというふうに考えておる次第でございます。
  337. 大成正雄

    ○大成委員 遅くまでありがとうございました。
  338. 野呂恭一

    野呂委員長 以上で本連合審査会は終了いたしました。  これにて散会いたします。     午後七時三十分散会      ――――◇―――――