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1978-05-12 第84回国会 衆議院 商工委員会 第29号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和五十三年五月十二日(金曜日)     午前十時三十二分開議  出席委員    委員長 野呂 恭一君    理事 島村 宜伸君 理事 中島源太郎君    理事 武藤 嘉文君 理事 山下 徳夫君    理事 岡田 哲児君 理事 渡辺 三郎君    理事 松本 忠助君 理事 宮田 早苗君       小川 平二君    鹿野 道彦君       楢橋  進君    橋口  隆君       松永  光君    山崎  拓君       渡辺 秀央君    板川 正吾君       後藤  茂君    上坂  昇君       清水  勇君    武部  文君       中村 重光君    長田 武士君       西中  清君    工藤  晃君       安田 純治君    大成 正雄君  出席国務大臣         通商産業大臣  河本 敏夫君         国 務 大 臣         (経済企画庁長         官)      宮澤 喜一君  出席政府委員         公正取引委員会         委員長     橋口  收君         公正取引委員会         事務局審査部長 野上 正人君         経済企画庁調整         局審議官    澤野  潤君         経済企画庁国民         生活局長    井川  博君         経済企画庁物価         局長      藤井 直樹君         通商産業大臣官         房審議官    島田 春樹君         通商産業大臣官         房審議官    山口 和男君         通商産業省通商         政策局次長   花岡 宗助君         通商産業省産業         政策局長    濃野  滋君         通商産業省基礎         産業局長    天谷 直弘君         資源エネルギー         庁長官     橋本 利一君         資源エネルギー         庁石油部長   古田 徳昌君         中小企業庁長官 岸田 文武君         運輸省船舶局長 謝敷 宗登君  委員外出席者         警察庁刑事局捜         査第二課長   宮脇 磊介君         法務省民事局参         事官      青山 正明君         外務省経済協力         局外務参事官  中村 泰三君         大蔵省主計局主         計官      岡崎  洋君         大蔵省銀行局総         務課長     石川  周君         通商産業省機械         情報産業局次長 水野上晃章君         建設省計画局建         設振興課長   杉本 康人君         消防庁危険物規         制課長     小池 次雄君         商工委員会調査         室長      藤沼 六郎君     ————————————— 委員の異動 五月十二日  辞任         補欠選任   佐々木義武君     小川 平二君     ————————————— 五月十日  消費者のための流通政策実現に関する請願(池  田克也紹介)(第四三三五号)  同(中井洽紹介)(第四三三六号)  同(西田八郎紹介)(第四三三七号)  同外二件(山下元利紹介)(第四三三八号)  同(米沢隆紹介)(第四三三九号)  同(池田克也紹介)(第四三八四号)  同外一件(戸井田三郎紹介)(第四三八五  号)  同(西村章三紹介)(第四四四三号)  流通関係法規規制緩和に関する請願藤本孝  雄君紹介)(第四三四〇号)  同(森喜朗紹介)(第四四四四号)  流通法規緩和に関する請願村田敬次郎君紹  介)(第四三四一号)  同(山下元利紹介)(第四三四二号) 同月十一日  消費者のための流通政策実現に関する請願外四  件(池田克也紹介)(第四七五六号)  同(宮田早苗紹介)(第四七五七号)  水素エネルギー実用化促進に関する請願(受  田新吉紹介)(第四七五八号)  同(野呂恭一紹介)(第四七五九号)  大規模小売店舗法等の改正、強化に関する請願  (工藤晃君(共)紹介)(第四七六〇号)  同(小林政子紹介)(第四七六一号)  同(不破哲三紹介)(第四七六二号)  下請中小企業の経営安定に関する請願不破哲  三君紹介)(第四七六三号)  メリヤス等中小繊維企業の経営安定に関する請  願(不破哲三紹介)(第四七六四号) は本委員会に付託された。     ————————————— 本日の会議に付した案件  通商産業基本施策に関する件  経済計画及び総合調整に関する件  私的独占禁止及び公正取引に関する件      ————◇—————
  2. 野呂恭一

    野呂委員長 これより会議を開きます。  通商産業基本施策に関する件、経済計画及び総合調整に関する件並びに私的独占禁止及び公正取引に関する件について調査を進めます。  この際、通商産業大臣より東南アジア諸国訪問について発言を求められておりますので、これを許します。河本通商産業大臣
  3. 河本敏夫

    河本国務大臣 私は、去る四月三十日から五月六日までインドネシアシンガポールマレーシアASEAN三カ国を訪問いたしました。  各国では、それぞれ大統領及び首相のほか、主要な経済閣僚会議を行いました。  今回の訪問は、昨年の八月、福田総理がマニラでいわゆる福田原則というものを明らかにされておりますが、現在わが国ASEANとの関係は、この福田原則基礎になっておるわけでございますが、この路線をさらに促進拡大をする、こういう目的を持っておったのでございます。  今次訪問におきましては、主としてこれら諸国との間の経済関係の広範な諸問題につきまして率直な意見の交換を行うことができました。これらの会談を通じまして、わが国ASEAN諸国及びASEANとの友好関係協力関係維持強化を重視するとの従来の姿勢に変更がないことにつきまして各国理解を得ました。また、昨年の八月、福田総理ASEAN諸国訪問の際の約束事項につきまして実施の状況をレビューをいたしますとともに、各国との間で従来から懸案となっておりました数多くの問題を整理し、それぞれの問題につきまして解決のための基本的な方向づけを行いました。さらに、現在のわが国経済状況及び経済政策の基本的な考え方につきまして先方説明をいたしまして理解を得ました。  ASEAN諸国は、わが国と長い交流の歴史を持っておりまして、政治的にも経済的にもきわめて緊密かつ重要な関係にあります。特に経済的な依存関係には大きなものがあります。これら諸国ASEANという地域協力機構を通じまして加盟国間の協力、特に経済面での協力を推進しようと努力していることに対しまして、わが国としては高く評価すべきものと考えております。  わが国は、以上の考え方にのっとりまして、今後ともASEAN諸国及びASEANとの協力関係の進展を図るべきであり、このため、これら諸国との間に間断のない対話の継続を図ることが重要であるということを痛感をいたしました。また、これらの諸国日本に対する経済依存度が大きいので、経済関係の各種問題の解決を図っていくためにも、わが国経済の回復を図ることが急務であると考えております。さらにまた、単に経済関係だけではなく、社会教育文化あらゆる分野での協力関係強化する必要があるということを今回の旅行を通じて痛感をいたしました。  以上でございます。
  4. 野呂恭一

    野呂委員長 以上で通商産業大臣発言は終わりました。     —————————————
  5. 野呂恭一

    野呂委員長 これより質疑を行います。  質疑申し出がありますので、順次これを許します。板川正吾君。
  6. 板川正吾

    板川委員 通産大臣ASEAN諸国訪問報告について、まず若干質問いたしたいと思いますが、今回のASEAN諸国訪問目的は、いまお話がありましたように、福田総理が昨年八月訪問した際の経済提携友好促進、こういう方向をさらに拡大しよう、こういう目的でおいでになったと思うのであります。私どもも、日本閣僚東南アジア諸国を訪れ、あるいは石油産出国を訪れるということについては積極的に支持をしたいと思いますが、訪問成果というのはどういうふうにお考えでありますか。行ってきてどういう成果があった、こういうふうにお考えでしょうか。この点を伺いたい。
  7. 河本敏夫

    河本国務大臣 まず一つは、福田総理ASEAN訪問されましたのは昨年の八月でありますから、私が今回訪問をいたしますまでの間、約九カ月間たっております。その間、わが国経済関係閣僚がほとんど毎月のようにアメリカとECには出かけておりますが、ASEANとの間には絶えて長い間、およそ九カ月間というものは閣僚クラス対話が中絶をいたしておりました。そういうことからASEAN諸国には若干の焦り等が出ておりまして、日本はいろいろなことを約束をしておるけれども、果たしてそのまま実行するのかどうか大変疑問である、こういう抗議すらやや見え始めておったのであります。  たとえばシンガポール最大中国系華字紙がございますが、これなどは、去る四月三十日に、「日本は口恵而して実至らず」、こういう表題などを掲げて、日本が果たして経済協力をやるのかどうか怪しいものだ、リップサービスばかりじゃないか、こういう記事すら見え始めるということで、駐在の大使、在留邦人等大変心配をしておられたわけでありますが、私が参りまして、日本としてはASEANとの関係を非常に重視しておるのである、約束したことは必ず守るのだ、こういうことにつきまして日本としての考え方を十二分に説明いたしました。その結果、日本ASEANに対する考え方については各国とも十分理解をしていただいたと思います。私は、国と国との関係というものは相互理解が何よりも必要である、このように考えておりますが、この空白が埋められたということは、双方関係にとりまして相当な前進であったと考えます。  それから、幾つかの懸案がございますが、この中には二国間で解決できるもの、あるいは二国間では解決できない、しかしASEANの場では解決できる、こういうものもございます。さらにまた、世界全体の場において解決できるという幾つかの懸案事項があるわけでございます。たとえばASEANプロジェクトなどはASEANの場でないと解決できませんし、ガットMTN交渉関係する事項につきましては世界全体の立場でないと解決できないわけでございますが、そういう幾つかの問題につきましてそれぞれ解決方向をお互いに相談をいたしまして、これからの進め方等につきまして具体的に詰めることができたのであります。さらにまた、先方から新しいプロジェクト申し出が出ましたし、日本としても新しい提案幾つかいたしましたが、それらにつきましても積極的に今後対談を通じて順次具体化していこうということで、新しい関係もさらに促進された、私はこのように考えておりますが、先ほども申し上げましたように、今後はASEANとの間断のない対話を続けることが、誤解を生じないためにも一番いいのではないかと思います。  それからもう一つは、経済の面だけではなく、社会文化教育と広範な分野協力提携関係を広げていくことが非常に大事である、このように痛感をいたしました。  ASEAN地域は、わが国との間には古い関係もありますし、非常に大切な地域でもありますので、かつまた日本との経済関係が非常に深い地域でもありますから、日本といたしましては、これらの地域との関係強化のためには一層の努力が必要である、こういうことを痛感して帰った次第でございます。
  8. 板川正吾

    板川委員 昨年福田総理が行ったときに、ASEAN諸国に対して十億ドルの経済援助約束しておる。その約束された案件進捗状況、これは簡単でいいですが、おおむねどういう状況でありますか。
  9. 河本敏夫

    河本国務大臣 昨年の八月に、福田総理はいわゆるASEANプロジェクトに対して協力約束されましたが、その内容は、各国ごとに約二億ドル前後のプロジェクト一つずつ、五カ国でありますから五つ、合わせて十億ドルの経済協力約束されたわけであります。そのプロジェクトの対象、規模完成時期、こういうものにつきましてはASEAN内部調整をする、こういうことになっております。したがいまして、ASEAN内部での調整が済み、かつそのプロジェクトがフィージブルである、フィージビリティースタディーが終わってこれなら大丈夫だということになった場合、日本としては一件についておよそ二億ドル前後の協力をするというのがその中身でございますが、この中で一番進んでおりますのはインドネシア肥料工場マレーシア肥料工場、この二つでございます。  インドネシア肥料工場につきましては、日本といたしましてもフィージビリティースタディーをいたしておりましたが、この五月には中間報告、九月には最終報告を出す予定になっておりまして、それが終わり次第、具体的に前進をすることになっております。  マレーシアの方も、日本協力によりましてフィージビリティースタディーが進んでおりまして、規模等についてASEAN内部での若干の調整が残っておりますが、それが終わり次第、これも順調に前進するものと思います。  その他の案件は、ASEAN内部との調整、またそれぞれの国における準備、こういうことから若干おくれておりまして、以上申し上げました二件がまず先行するものと考えております。
  10. 板川正吾

    板川委員 新聞報道によりますと、ロンボク島に大型石油備蓄基地CTSの建設をインドネシア側が非常に熱心に強調された、こう伝えられておるのでありますが、ロンボク島における石油備蓄基地についてはサウジアラビア反対意思表示をして日本では中止された、こう思っておったのですが、再び取り上げられたと言われますが、そうであるならば、サウジアラビア反対はその後どういうふうに処置されたのか。新聞報道でそう伝えられたものですから、この点、伺ってみたいと思います。
  11. 河本敏夫

    河本国務大臣 ロンボク島におけるCTS構想は、昭和四十九年、一九七四年に田中元総理インドネシア訪問されました際に、双方で進行させることについて意見を交換したプロジェクトでございますが、その後、両国だけではなくて、サウジアラビアの参加を得て三カ国でやったらどうであろうかということで、ずっと調査が続いておりました。しかしながら、サウジアラビアの方は、世界最大産油国としてインドネシアCTSをつくることがサウジアラビアの利益に直ちに結びつくものではない、こういう判断の上に立ちまして、サウジアラビアとしてはこの計画には参加しない、こういうことで昨年の秋意思表明がございました。  その後一時立ち消えになっておったのでありますが、私が今回お目にかかりましたときには、インドネシア大統領からこの構想につきましてさらに強い提案がございました。そして、ロンボク島のCTS構想というものは、単にCTSのみならず、できれば東インドネシアの開発の基地にしたい、そういうことも考えておられるようでありますが、日本側といたしましては、その構想をもう少し具体的に聞かせていただきたい、詳細な具体的プランを聞かないと日本としては何とも判断ができませんので、インドネシア側の具体的な構想プランが固まり次第、先方からその内容について詳しい説明があるはずでございます。その上で日本としては判断をいたしましょう、こういうことでいま懸案になっております。
  12. 板川正吾

    板川委員 それでは、サウジは参加しないが、日本インドネシア間でやるかどうか目下検討しているということで、やるということを決めてきたわけではないのですね。
  13. 河本敏夫

    河本国務大臣 先ほど申し上げましたように、サウジは手を引いたわけでありますが、インドネシア側としては計画を放棄していないのです。計画を練り直すということでありまして、その練り直した最終計画ができておりませんので、その計画ができますと、日本としてはそれを十分検討いたしました上で参加するかしないかということについて最終判断を下します。こういうことでございまして、今後の懸案事項ということになっております。
  14. 板川正吾

    板川委員 福田総理訪問の際に前向きの検討約束していたインドネシアLNG輸入問題は、今回、インドネシア希望どおり来年早々から増設工事完成をして、日本側の希望するように年間三百二十万トンの追加輸入をすることになった、こういう報道もございますが、インドネシアわが国との間には、すでに年間七百五十万トンのLNG輸入契約完成しているわけです。この三百二十万トンというのは既契約の七百五十万トンの内ですか、それとも外でしょうか。これはどうですか。
  15. 河本敏夫

    河本国務大臣 インドネシアとの間には、数年前にLNG七百五十万トンの二十年間取引契約がございまして、昨年の夏には、東カリマンタン、もとのボルネオ島でございますが、ここのバダクというところから三百万トンにつきましてはもう出荷が開始されております。それから残りの四百五十万トンにつきましては、これはスマトラ島アルンというところから出ることになっておりまして、これは工事が順調に進んでおりまして、この夏ごろから日本に向けまして輸送が開始されることになっております。だから、この七百五十万トンのプロジェクトは、若干の紆余曲折はありましたけれども、順調にスタートをしておる、こう見てもいいわけであります。  それで、いまお尋ねの三百二十万トンは、昨年来インドネシア側から、東カリマンタンバダク地区でなお三百二十万トンの増量が可能であるので、この分についても二十年間長期契約追加としてやってもらいたい、こういう話があったものでございます。いま日本側ユーザー会社がそれに対していろいろ検討を加えておりますが、近く大体前向きの結論が出るようでございます。最終の問題は、いつからこれを引き取るかということで、時期の調整は若干残っておるようでございますが、その調整が終わり次第、最終判断が出まして、三百二十万トンの追加はよろしい、こういうことになるはずでございます。この計画につきまして、日本側民間ユーザー前進しようという最終判断が出ました場合には、政府といたしましてもできるだけの支援はしていきたい、このように考えております。  なお、そのほか、スマトラ島アルン地区でも若干の増量が可能であるので、この分についても追加をしてもらいたいという要請がございましたが、この分につきましては、数量最終的にまだ確認をされておりませんので、数量確認され次第、日本側として検討することになっております。
  16. 板川正吾

    板川委員 そうすると、三百二十万トンは七百五十万トンの別枠ですね。LNG輸入がそういう別枠として増加されるわけですが、政府は六十年度にLNGは三千万トンという予定をしておるんです。ところが、いまのそういった増量分を加えたり、計画中のものを入れますと、四千五百万トンぐらいになる可能性がありますね。サラワクで六百万トン、オーストラリアから六百万トン、カタールから六百万トン、ヤクーチャから七百五十万トン、イランから二百五十万トンという計画中のものを計算していきますと、政府予定しておる三千万トンをはるかにオーバーする可能性がある。それで、そのLNGをどういうふうな形で消費するか、受け入れ体制という点でいろいろ問題があると思います。ですから、受け入れ体制の方も整備しなくちゃならぬのじゃないかという感じがします。  それからもう一つマレーシアの問題ですが、すず長期貿易協定が、日本側の不況を理由に対日輸出が激減したので、マレーシア側としては輸出所得変動補償制度、STABEXというのですか、この基金をつくって補償してほしいという要求があって、大臣は前向きに検討すると言ってきたそうであります。前向きに検討というのは日本の国会では非常に便利に使われているわけですが、国際的に前向きに検討と言うと、向こうは大きく期待をする、こう思いますが、期待を持たせてもいい、こう感じてそういう約束をしたのかどうか、その点ひとつ伺っておきます。
  17. 河本敏夫

    河本国務大臣 まず、LNGの問題でありますが、御案内のように、昭和五十年につくりました計画では四千二百万トンという数字になっておりましたが、その後いろいろ検討いたしました結果、たしか昨年でございましたか、三千万トンに減少をいたしております。しかし、全部を合わせましてもいまお述べになりましたような数字にはなりませんで、いまお述べになりました数字の中には、まだ交渉も始まってなくて、先方がどうだろうかという意向打診をしておる程度のものも入っておるように見受けます。  したがいまして、先方自身もまだ埋蔵量確認もしておりませんし、それからなお調査中であるという案件もいまお述べになりましたものの中には入っておるようでございまして、最終的にいま確定をいたしておりますものは、アラスカから約百万トン、それからブルネイから約五百万トン、それからいまお述べになりましたインドネシアの七百五十万トン、それとアブダビから約二百万トン余り入っております。それから、三月末にマレーシアとの間に契約ができましたが、これはサラワク地区でございますが約六百万トン、それからいま具体的に進行中の、いまお述べになりました三百二十万トン、それからイランのいわゆるカリンガスと称せられる二百五十万トン、この二つがいま交渉中でございます。その他カタールとかオーストラリアなどお述べになりましたが、そういうものは、私がいまちょっと申し上げましたように先方からの打診がある程度でございまして、先方自身もまだ具体的な埋蔵量等についても確認をしていない、こういうことでありまして、まだ海のものとも山のものともわからぬ、そういうことでございまして、全部確実なものを合わせましても、なお三千二百万トンには達していないというのが現状でございます。  もう一つ、申し忘れましたが、すずの問題につきましては、日本国際すず協定に調印をいたしておりまして、それに対するバッファーストックについての資金提供ということについて未定になっておりましたが、ようやく先月四日に成立をいたしました予算で、これに対する出資金約七十億円、三千万ドル強が認められております。私が前向きに検討すると言いましたのは、予算も正式に認められたので、これをどのように運用するかということについていま検討中である、こういうことを言ったのでございまして、これから予算をつけるとかそういうことではございませんで、予算面はすでについておりますので、最も有効な運用方法はどうすればいいのかということについて検討中である、こういうことでございます。
  18. 板川正吾

    板川委員 そうしますと、マレーシアの方では大いにこれを期待していい、こういうふうに考えてよろしいと思います。  それはわかりましたが、LNGの問題は、いますでに契約済みのものが千五百六十六万トンあるわけです。それは先ほど大臣が言ったとおりなんです。それにインドネシアの三百二十万トン、マレーシアの三百万トンがふえ、さらに業界として計画中のもの、これがサラワクの六百万トン、オーストラリアの六百万トン、カタール、それからヤクーチャの七百五十万トンというのは日、ソ、米三国の問題にひっかかっておりまして、こいつは正直なところまだ海のものとも山のものともわからぬ、しかし、それを計算してみますと、四千万トンをはるかに超す四千三百万トンくらいになりましょうか、というふうになるが、そうすると国内の受け入れ体制というのが問題だ、こう言われているものですから、この点についての考慮を払わなくちゃなるまい、こういう気持ちを申し上げただけであります。  時間の関係がありますから、以上で通産大臣に対する私の質問は終わります。
  19. 橋本利一

    ○橋本(利)政府委員 六十年度につきましては、先ほど来お話が出ておりますように、三千万トンに対していままでの契約済みのもの、それからサラワクインドネシア増量分合わせましてなお五百万トンほど必要とするわけでございますので、先ほどの計画中のプロジェクトとしてお話があった件から、少なくとも六十年度までに五百万トン程度輸入できるようにする必要があろうかと思います。それから、六十五年度におきましては四千四百万トンを目標数値といたしておりますので、この計画中のものからさらに千五百万と申しますか、トータルで二千万トンの輸入が必要になってくる、こういう計算になるかと思います。  それから、受け入れ体制、まさに御指摘のとおりでございまして、わが国で余りパイプ網が完備しておりませんので、電力、ガス、鉄鋼といった大口需要者でこれを活用するということになりますので、LNGを長期的に導入していくためには、開発体制を整備すると同時に、あわせて国内での受け入れということも検討していく必要があろうか、まさに御指摘のとおりだと思っているわけでございます。
  20. 板川正吾

    板川委員 わかりました。  次に、最近新聞で取り上げられております日本アイ・ビー・エム社の不公正取引問題について、通産省と公取委に伺っておきたいと思いますが、まず通産省に伺います。  日本アイ・ビー・エム社が、フューチャー・システム、FSと言われる未開発のコンピューターを、独禁法上きわめて問題の多いやり方で販売しようとしたことが明らかにされたと伝えられておるわけですが、問題の発端と事件の重要性というものについて、まず通産省から伺っておきたいと思います。
  21. 水野上晃章

    ○水野上説明員 日本アイ・ビー・エムが、昨年の暮れごろから、未発表になっておりますコンピューターの新しいシリーズにつきまして商談を行っておるのではないかという情報が、いろいろと通産省に入ってまいりまして、二月の中旬、同社を呼びまして、厳重注意いたしますとともに、その実態の解明を求めたわけでございます。  アイ・ビー・エム社といたしましては、社内の査察機構を通じましていろいろと調査をいたしました結果、四月の中旬通産省に報告があったわけでございます。それによりますと、大阪地区で八件、名古屋地区で七件、合計十五件の商談が確認をされたというふうに伝えてまいっております。そして同時に、社内関係者三十六名の処分を行いましたという報告があったわけでございます。  ただ、当省では、その名古屋、大阪地区以外でも、東京あるいは九州地方におきましても、かなりのそういった行為が行われたというふうな情報も入っておりますし、アイ・ビー・エム社といたしましても、内部調査が完全なものであるというふうには確信を持っておりませんので、さらに多数のそういった商談が行われたのではないかというふうに考えられるわけでございます。  コンピューターの商売におきましては、発表というのは、通常、機器が出ます一年ぐらい前に正式の発表が行われるわけでございますが、発表前の商談ということは厳に行われないといいますか、非常に確立された慣習としてそういうことが行われてまいったわけでございまして、世界のリーディング企業でございますIBM社がそういった行為を行いますことは、市場秩序あるいは顧客、競争関係会社等に対しまして尽大な影響のある問題でございまして、私どもはこれを重大な問題としてとらえているわけでございます。
  22. 板川正吾

    板川委員 コンピューターのような非常に近代的でしかも進歩の激しい装置を新しく開発をされたというときには、いまちょっとお話がありましたように、産業秩序といいますか、商売上の基準として、きちんと製品が完成するという見込みが立ち、公表した上でないと販売をしない、見込みでは販売をしない、こういうことのようでありますが、このアイ・ビー・エム社が今度の場合にどういう趣旨で不公正と思われる販売方式をとったのでありますか、ちょっとその内容を具体的に話してみてください。
  23. 水野上晃章

    ○水野上説明員 通常、電子計算機の商談に関しましては、先ほど申し上げましたように、出荷をいたします約一年前に、新製品の性能でございますとか仕様でございますとか、あるいは価格、取引条件等につきまして、詳細なデータを発表いたしましてから商談に入ることになっております。これは御承知のように、電子割算機といいますのは、それを単体で見ましてからすぐ使えるものでございませんで、それに周辺装置を加え、さらにソフトウエアをユーザーの必要とする仕事ができますような形でシステムに組む必要がございまして、コンピューターという中身の見えないものをあらかじめ一年ほどかかりましてそういったシステムに組むためには、たとえば通常の自動車でございますと実物を見て買うというわけにまいりますけれども、こういったソフトを含めましたシステムづくりに非常に長い期間がかかるものでございますから、あらかじめはっきりしたそういう仕様、価格、能力を発表いたしまして、それに基づいて売り込むということになっておるわけでございます。
  24. 板川正吾

    板川委員 公取に伺いますが、アメリカのIBM社が、司法省から未発表の製品の開示などの方法で市場を独占しているとして訴訟になっている、こういうことが伝えられておりますが、これは事実でしょうか。これと日本アイ・ビー・エム社の問題と関連して、共通性がありますか。
  25. 橋口收

    橋口政府委員 IBMに対するシャーマン法違反に関する訴訟事件がいま係属中でございまして、これは一九六九年に司法省が提訴したものでございまして、約十年近くかかってまだ結審に至っておらないようでございます。公判前の手続が一応終わりまして、現在は証人喚問の段階であるように承知いたしております。  事件の内容といたしまして、司法省が問擬をいたしております被疑事実でございますが、これは大ざっぱに申しまして四点ございますけれども、その中に一ついまお示しがございましたような問題、つまり予告期間内に生産し得ないと思われる新モデルの将来の生産を予告することにより競争者を排除する、こういう事実がございまして、司法省が求めた排除措置といたしましては、通常のテストを終了するまで新製品の開発を予告しないこと、こういう排除措置の内容がございます。この点、その他の問題をめぐって現在訴訟が係属中でございます。したがいまして、今回伝えられる問題も、このアメリカの司法省が取り上げておりますものとかなり類似した内容のものではないかというように考えられます。
  26. 板川正吾

    板川委員 通産省に伺いますが、日本アイ・ビー・エム社の今度の行動は、フューチャー・システムの中のEシリーズ六種だそうですが、これが近く発表される、そして来年春ごろには完成され、出荷される、そういう体制ができた、二として、新シリーズは、現行のものに比べて同じ価格で二倍以上の性能を持っておる、また経費が大幅に削減される、三として、コンピューターを使う技術、ソフトウエアの性能も従来より五〇%以上よくなる、こういうことを日本アイ・ビー・エム社の営業担当者が言っておったと伝えられておるわけでありますが、IBM社のように世界の六〇%の市場を支配している巨大な企業が、かねて世界でも注目をされ、夢のコンピューターとして考えられておるフューチャー・システムというものを開発したと宣伝すれば、だれも信用するだろう、こう思います。また、公表してないとしても、問題は本当に開発したのかどうかという点が問題だと私は思うのですが、お伺いをしたいのは、IBM社が来年の春ごろ確かにこれが完成を可能とする状況にあるかどうか、伺っておきたいと思います。
  27. 水野上晃章

    ○水野上説明員 先生御承知のように、電子計算機の技術に関しましては、昭和二十年代の終わりに真空管を使いました電子計算機、第一世代の電子計算機と言っておりますけれども、それからトランジスタが開発され、ICが開発され、ただいま世に出回っております電子計算機は、LSIを使いました第三・五世代の電子計算機と言われておるわけでございますが、それの後に出るものといたしまして、通常FSと言われておりますフューチャー・システムとしていろいろうわさが出ておりますのが、ただいま先生のおっしゃいました新しい超しSIを使いましたソフト面でも格段の相違のあるソフトを使いまして、あるいはメモリーその他の周辺装置につきましても格段に能力の違ったものが近い将来出るのではないかということが言われてまいっておるわけでございます。  ただ、先ほど御指摘ございましたような来年春に商品が納入されるという可能性につきましては、私どもがIBM社から聞いておるところによりますと、本年中には発表があり得ないということを言っておりますので、来年春の納入はあり得ないということだろうと思います。ただ、近い将来、いつの時点かFSが出るだろうということは考えられておりまして、そのため、私どもも国産企業とともに新機種の開発に努力している次第でございます。
  28. 板川正吾

    板川委員 公取委員長に伺いますが、いまお話しのように、今年じゅう発表がないということになりますと、早くとも来年の末か再来年でもなければ製品が出荷できる状態ではない、こういうふうにいま状況を伝えられておるわけですが、そうしますと、あたかもこのIBM社のような世界の市場を大半支配しておるような巨大な企業が、来年はうちからできるんだ、こういうことになりますと、買おうと思った、あるいはリースしようと思った業者も、じゃ、新しい性能のいいもの、価格が安くて二倍以上の性能があるものなら、そっちにしようということになるだろうと思うのです。これは独禁法の不公正取引、告示十一号の六に該当する事項ではないかと思うのですが、公取の見解を伺いたいと思います。
  29. 橋口收

    橋口政府委員 日本アイ・ビー・エム社による未発表機種の販売活動に関しましては、現在事務当局におきましてその具体的な事実関係等につきまして予備的な調査をいたしておるところでございますので、事実関係等が明らかになりませんと、適用法条について明確なことを申し上げることはむずかしいと思います。  ただ、予備的な調査をいたしておる段階ではございますが、独占禁止法に触れる疑いが全くなければ予備的な調査もしないわけでございますから、これは事実関係内容等によりましてはあるいは法律違反の問題が生ずるおそれがあるということで予備的な調査に入っておるのでございまして、したがいまして、いまお話がございました独占禁止法第十九条の不公正取引内容に当たるかどうか、その場合に一般指定をいたしておりますから、その一般指定の条項に該当することが必要になってまいりますので、これはいまおっしゃいました六号等の関係も出てくるとは思いますが、ただ、やはり事実関係等をはっきり確認いたしませんと、これははっきり申し上げにくいと思います。  ただ、まだ完成してない機器あるいは一般に公表されてない機器について販売活動を行う、販売活動のいわば話法の問題であろうと思います。そういう話法を使ったということだけで独占禁止法違反として問擬した事件というものは、いままでのところはございません。
  30. 板川正吾

    板川委員 コンピューター関係では、先ほど言いましたように、製品が完成され、そしてそれが公表されて、それから販売に入るというのが商慣習になっている、こういうことなんですね。そうしますと、不公正な取引方法の告示第十一号の六によりますと、「正常な商慣習に照して不当な利益または不利益をもつて、直接または間接に、競争者の顧客を自己と取引するように誘引し、または強制すること。」という誘引することになるから、この告示十一号の六に該当する疑いが十分あるのだろう、私はこう思います。いま調査中ということでありますから、ひとつ厳密な調査をして、こういう国際的な大企業の独占的な行為を許さぬように十分な対処をしてもらいたい、こう要望しておきます。  それから、公取委員長、最後ですが、新聞報道によりますと、近くアメリカの独禁法担当者が来日をして、独禁法行政についてお互いに意見を交換し合う、こういう機会があるそうでありますが、その際に日本アイ・ビー・エム社の今回の措置が当然議題になるんじゃないか、こう思いますが、この点、議題とする意思があるかどうか、伺っておきたいと思います。
  31. 橋口收

    橋口政府委員 アメリカの独禁当局が来日いたしまして、来週公正取引委員会と協議をいたすことになっておりますが、事前に議題の交換をいたしておりまして、その議題には本件は掲上されておりません。ただ、来週の月曜日に外務省、通産省と協議をされるようでございますから、恐らくその席でIBMの問題が取り上げられるのではないかと思います。それから、昨晩参りました公電によりましても、先方も関心を持っているということが明らかにされておるようでございますから、恐らくは、十六日、十七日の両日、公正取引委員会との協議がありますが、その席上でも話が出るのではないかと思います。ただ、先ほどもお答え申し上げましたように、まだ予備的な調査の段階でございますから、この問題についての独占禁止法上の問題点につきまして、わが方から積極的に発言をするという用意はいたしておりませんが、恐らくは話が出るのではないかと思います。  ただ、今回参りますのが、アメリカの司法次官補であり反トラスト局長のシェネフィールドという人でありまして、これは独禁当局の最高責任者でございますので、私も会議に出ることにいたしておりますが、たてまえは両国の独禁事務当局間の情報交換ということでございますから、私はある意味ではオブザーバーということになると思います。事柄の重要性から申しまして、本件につきましての議論が出ますときは、私も在席する用意をいたしておるところでございます。
  32. 板川正吾

    板川委員 わかりました。  次に、会員制レジャークラブのメンバーの保護という問題について質問いたしたい〜思います。  最近、週休二日制、日曜日、休日の振りかえ制あるいは労働時間の短縮、こういうことによって余暇を有効に利用することが、従来ぜいたくと言われておったのでありますが、余暇を有効に利用することはあすの生活の一部であるという認識が高まってまいりまして、レジャーが非常に盛んになり、したがって、レジャー産業が社会の要望に応じて急速に発展してきているわけであります。  その利用の方法の一つとして、会員制レジャークラブが普及をしておりますが、反面、会員制レジャークラブとメンバー間のトラブルも非常に続発しておりまして、これを放置しておきますと社会問題化するおそれがあると思われます。そのことは最近の新聞等でも取り上げられておるわけですが、私が質問しようという趣旨は、これらに対して何らかの法的秩序を与えて善意のメンバーを保護する必要があるのではないか、こういう観点から質問してみたいと思います。  そこでお伺いいたしますが、一番問題が多発しておるのはゴルフ会員権の問題のようでございます。その中でも特に預託金会員制のメンバーが大部分のようでありますから、念のために通産省から、預託金会員制という制度についてどういう認識を持っておられるか、説明していただきたいと思います。
  33. 山口和男

    ○山口(和)政府委員 ゴルフ場事業の組織につきましては、戦後、ある程度経緯におきまして三つの形態ができ上がってきております。第一は、社団法人会員制でございます。第二は、株主会員制でございまして、第三番目が、預託会員制度でございます。前二者は、戦後三十五年ごろまででそういう制度は非常に少なくなりまして、それ以後は、預託会員制度というのが一般的な形になっております。  この制度は、会社に対しまして一定の入会金を預けることによって会員資格を得るということで、ゴルフ場の経営と会員組織のクラブとが二本立てになるということでございます。したがいまして、会員と会社との関係というのは、債権関係によって位置づけられるということになっておるわけでございます。  そこで、預託会員制度の会員に対する地位の安全確保と申しますか、そういう問題は確かに最近いろいろと問題になってきておるわけでございますが、この経営自体は、経営者としては一応利用する会員との間で経営関係が別になるという点、結局会員にとりましてはプレーを快適にしていくということが主たる目的でございますので、そういった関係でこういう制度が盛んになってきたものと思われますが、いずれにいたしましても、会員の地位保全という問題は、御指摘のとおりいろいろと問題が重要な問題になってきておりますので、私どもといたしましても、こういう預託会員制度について十分指導監督をしてまいりたいと考えておるところでございます。
  34. 板川正吾

    板川委員 こういうことでしょう。預託金会員制度というのは、仮に五十万か百万か会社に預託をいたします。会社はそれを無利子でお預かりをいたします。そして利子は払わないかわりに、メンバーは優先的にその施設を利用する権利を持ちます。期日が来たならば当然その金は返す、こういうことになっておるわけですね。そういう制度でしょう。  これが一番問題が多いのですが、実はこういう投書があるのです。問題点が共通性を持っておると思いますから、申し上げますが、「全国のゴルフ会員ならびにマスコミに訴える」として、「全国ゴルフ会員のための立法措置を促進する会 代表者鈴木桂こという投書の中で、   私が訴えを提起した動機については、昭和四十七年茨城県の筑波町につくる「つくばねカントリークラブ」に第一次会員として入会し、九十万円を預け入れ、会員券を受領しています。その預り証の第一項には「この預り金は、預り証発行の日から満五カ年間据置、その後、ご請求があった場合は直ちにご返金いたします。利息はつきません」と記載してあります。この約束にもとづいて、私は昭和五十二年九月に満五カ年が経過したので、前記預託金の還金を請求したところ、近くその件につきクラブから「通知する」というので待っていると、九月十八日に「つくばねカントリークラブ」の封書が届きました。   どこにもある会報です。読んでみると、そこには昭和五十二年六月十六日の理事会で「預託金の返還の期間を五カ年延長」を決議したので、了承されたき旨記載してありました。私はふたたび東京事務所を訪れ、預託金の返還を求めました。すると、こんどは理事会の決議で延期されたので、お返しはできませんとの返事でした。   他人の財産を預りながら、本人の承諾も得ずに返済期限を五カ年延長し、しかも事後承諾の形で、返済期限である昭和五十二年八月三十一日より二カ月半も前に江戸英雄氏(三井不動産会長)を理事長とする「つくばねカントリークラブ」理事会で決議したのであります。これは明らかに違法行為であり、他人の財産を勝手に流用する横暴な行為といはざるを得ません。   そこで規約を読んでみました。規約によれば、預託金の返還を延長する場合の要件として、「天災地変など不可抗力の事態」を規定してあります。ところが六月十六日の理事会では、預託金の返還をさらに五カ年延長する理由として、資金事情をあげております。これは完全に規約を無視したものであります。   私は内容証明により再度「預り金」の返還を請求しましたところ、つくばね開発株式会社社長・赤城正武氏の名前で、内容証明により資金事情を理由に、返還はできないとの返事がもどってきました。ここに至って、私は自分の財産を守るとともに、このような措置によって、泣き寝入りしている全国のサラリーマンゴルファーのために、遂に訴訟をおこす決意をし、その手続をとりました。   江戸英雄氏は現在、三井不動産会長の要職にあるばかりでなく、三井グループ、三井財閥の指導者として財界に君臨しております。しかも、同氏は日本ゴルフ場事業協会理事長として、健全なゴルフ場経営の指導的立場にあります。さらに、不動産協会会長として、わが国の不動産業界を牛耳る実力者であります。   このような無責任なゴルフ経営者が、いつまでも野放図な経営を続けられないように、しかるべき立法措置を講じ、当局の監督の眼が届くような方策を立てることを訴えるものであります。     〔委員長退席、島村委員長代理着席〕 こういう投書が来たのです。  実は、この投書のことが果たして事実かどうかを調べてみましたならば、その投書の電話は使われていないということで、その投書の住所にもその人はいないようであります。この真偽のほどはわかりません。ですが、このような事件というのは非常に幾つも発生しておるのですね。この調査をした結果は、何か本人は、恐らくゴルフ場の方で会員権を買い戻して、実際はこの問題は当事者間では決着を見たようですが、しかし、こういう決着を見ないメンバーがずいぶんおるのでありますが、この会員制カントリークラブのうち預託金会員というのはどのくらいおりますか。そちらの通産省の調査によりますと、五十一年度に会員制のメンバーは百二十三万三千人というふうになっておりますが、いま約百三、四十万人おると思うのですが、この中で預託金会員というのはどのくらいの割合を占めておりますか。簡単でいいです。時間がありませんから。
  35. 山口和男

    ○山口(和)政府委員 私どもが調べましたところでは、昭和五十一年十一月一日現在で会員制のゴルフ場は七百五十二ございまして、その中で預託会員制度のものが五百五十五ございます。まあ七〇%以上が預託会員制度になっておるわけでございます。  会員数につきましては、全体は、正会員、平日会員を含めまして、ゴルフ場の会員数は百五十七万九千五百二十八名ということになっております。ただ、その中の預託会員制のメンバーにつきましては、私ども、ただいまのところ内容は判明いたしておりません。
  36. 板川正吾

    板川委員 預託会員制のゴルフ場が全体で大体七四%、それから推察をしますと、預託会員制というのはメンバーを非常によけいにとりますから、ですから、頭数にしますと私は全体の八〇%か九〇%じゃないかと思うのですね。そうすると、相当な百万以上、現在なら百三、四十万おるのじゃないかと思うのです。  高度経済成長時代に雨後のタケノコのごとくできたゴルフ場が、実はこれは五年間ですが、大体十年間の預託期限、こういうふうになっておりますから、あと五、六年たちますと皆返済期を迎えるわけですね。それで、会員権が預託金額よりも高い、こういうところは問題はないのです。金を返してくれと言う人はおりませんから。しかし、預託金よりも会員権が非常に安いところは、あと五、六年たつと、ほとんどが返してくれという要求が会員の中から起こってくると思います。その場合には、ほとんどこれが返せないという実態になるのじゃないだろうか。そうした場合に、会員の権利というのが非常に無視されてしまう。こういうあり方というのは、やはり社会正義といいますか、幾ら契約の自由だといっても、こういう制度をそのまま放置しておくことはやはり問題であろうと思うのですね。  ですから、お伺いしたいのは、会員権の方が預託金よりも非常に安いというようなクラブはどのくらいあるか、調査をしたことがございますか。
  37. 山口和男

    ○山口(和)政府委員 会員権の金額、時価につきましての調査は、ただいままでのところいたしておりません。
  38. 板川正吾

    板川委員 これは確かに近い将来問題になりますから、ひとついまのうちから十分調査をして対策を講ずるように考えてほしい、こう思います。  この投書の例ですと、理事会の決定だから返済は延期するという手でごまかしているわけですが、これは先ほどの話のように、会社対会員の関係に対して理事会という何らの関係ない第三者が、人の財産についてそういうことを決定する権限はないのですね。大体この理事会というのは、そのゴルフ場ならゴルフ場、施設をつくるときに参加した企業なんですよ。企業の代表者なり関係者が理事になっておるのですから、これはメンバーの利益を代表するものじゃないですね。ですから、私は、理事会の決定で延期するなんということは、これは全く法律を無視した考え方であって、裁判になればそんなことは理由にはならない、こう思いますが、こういう点も私は秩序を与える必要があるのじゃないだろうか、こう思います。  それから、最近ゴルフ場の倒産が非常に多いですね。年間三十件、五十件、こういうふうにあり、さらにふえてくると思います。この倒産したゴルフ場がどういう形でその後推移しているかといいますと、不渡りを出して倒産をする、破産をして債権債務を清算をする、そして債権が残れば株数あるいは出資金に応じて返済するという措置がとられているようなんです。  これはあるクラブの例でありますが、百万円預託をした、清算したら二〇%残ったから、あなたに返済分は二十万円であります。こういう通知が来る。しかし、倒産するようなゴルフ場ですと、余り手入れがよくないからそこへ行かない。年会費も払わない。非常に高い年会費で、仮に二万五千円としますと、年会費を差し引いてしまって、結局、あなたには二十万行くけれども、年会費を納めてなかったからそれを差し引きますと残りは五万円です。あるいは十万円ですと、さらに納めなければそれがゼロになります。こういう措置で、結局棒引きしてしまっておるのですね。こういうようなことも一つの秩序というものがないために起こる紛争だろう、私はこう思いますから、こういうレジャークラブ会員制の問題について何らかの秩序を与える必要がある、こう思います。  きょう、時間の関係でゴルフ場問題だけにしぼったわけですが、会員制クラブは、ゴルフばかりじゃなくて、そのほかリゾートホテルの利用権あるいは別荘、乗馬クラブ、テニスクラブと多種多様になっておって、特に別荘などの宣伝を見ますとよいことずくめで、誇大宣伝の向きもあります。そして善意の利用者がばかを見るような形になる可能性が非常に多い。こういうことを考えて、通産省としては何らかの法的規制なりあるいは秩序なりを立てる必要があるだろう、こう思いますが、いかがですか。
  39. 山口和男

    ○山口(和)政府委員 先生御指摘のとおり、預託会員制度におきます会員の地位の保全の問題等につきまして、特にまた預託金の据え置き期間の問題あるいは理事会の運営等につきましていろいろ問題があるということにつきましては、非常に遺憾な問題だと存じます。私どもといたしましては、こういった問題に対応するために、たとえばできるだけ返還請求に応ずるように努めるとか、あるいはその据え置き期間をやむを得ず延長するというような場合には会員の理解協力を得た上で行うとかというようなこと等によりまして、会員の権利の保護を図るようなことを各事業者に対しまして、業界団体等を通じて指導してまいりたいと考えておるところでございます。  いわゆる会員制レジャークラブにつきましては、先生のお話にもございましたように、いろいろと種類も多岐にわたっておりますし、また歴史も新しいものでございますから、実態把握というのはなかなかむずかしい実情にございますが、やはり会員保護の面から種々の問題点があることは御指摘のとおりでございます。当面、業界の自主的な規制を通じて指導を進めていくということを進めてまいりたいと存じます。  法的規制の問題につきましては、基本的には、会員制事業というのが会員と企業とで問題を解決していくという原則に立脚しておる点もございますので、できるだけ自主的にいろいろな問題を解決を図らしていくことがやはり本来の行き方であろうかと思いますが、なおいろいろな問題がございますので、十分検討して対処してまいりたいと考えておるところでございます。
  40. 板川正吾

    板川委員 自主的ではなかなか解決できない問題になりつつあるから、要請しておくわけであります。  終わります。
  41. 島村宜伸

    ○島村委員長代理 中村重光君。
  42. 中村重光

    中村(重)委員 宮澤長官に、実は在庫調整の問題と現状における経済の動向についてお尋ねをしたかったのですが、十二時に叙勲のために退席ですね。ですから、また適当な機会にお尋ねしなければ時間的に無理であろうと思います。そこで、簡単な問題で二、三お尋ねをしてみたいと思うのです。  外貨貸しの問題ですが、宮澤長官は、外貨貸しの問題について、この制度の運用は上期に集中させる、そこでこの制度の運用によって年間四十億ドル程度の黒字減らしができるんだということであったわけですが、現状はどうなっているのだろうかということです。河本通産大臣は、この点もっと積極的というのか、見通しの点について、やり方次第では年間百億ドルを超える黒字減らしは可能なんだ、そこで臨機応変に対処するということを述べていらっしゃるわけですが、いかがですか。
  43. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 緊急輸入目的にいたしまして、従来から幾つかの制度を決定してまいったわけでございますが、その一つが外貨貸し制度でございます。これは御承知のように、当初短期の外貨貸し制度を実施いたしまして、すでにあれこれで、成約しましたものあるいは商談中のもの、検討中のもの等々二十億ドル近いものがあるように存じますが、その後、長期にこの外貨を利用することも必要であると考えまして、四月二十日過ぎに新しく長期の制度を設けましたわけでございます。しかし、この方はまだ受け付けを開始いたしておりません。私といたしまして、あれこれの施策、外貨貸しばかりじゃございませんけれども、合わせまして四十億ドル程度のいわゆる予定されておりません種類の輸入を実現したいと考えておるわけでございますが、この長短期の外貨貸し制度等々が利用されますと、河本大臣が言われますように、もう少し予測より大きな利用があるかもしれないと存じますし、またそのことは至極歓迎をいたしたいと考えておるところでございます。
  44. 中村重光

    中村(重)委員 長期の不況、円高という深刻な状態に追い込まれている産業界としては、閣議における経済政策の決定、それからいまの外貨貸しの問題その他政府の施策に非常に注目しているわけですね。特に経企庁長官あるいは通産大臣発言というものには強い関心と期待を実は持っていると思うのです。ところが、考え方には適切な点がある、共鳴できる点が非常に多いわけですが、どうも行動が伴っていかないということですね。思いつきみたいで言っているのではないかという点。特に宮澤長官は経済閣僚会議の議長をしていらっしゃるので、イニシアチブを発揮して行動できる立場にある、それがどうしてこういうことでやりたいといったようなことが現実の問題として動いていかないかという点。それから、先日の本会議において、造船不況対策としての解撤事業——この解撤事業は閣僚会議の柱に入ったと私は思うのですよ。だから、具体的な構想というか、そういうものが確立をしているのだろう、あるいは動いていっているのだろう、こう思うのです。だからわが党の武藤政審会長がこの点について質問をしたわけです。ところが、あなたは動いてないんだと、きわめて消極的な答弁をされたのです。  どうも不可解なんです。今日のこの造船不況というものをどの程度長官は深刻に受けとめていらっしゃるのか。どうしたらこの造船不況というものが克服できるとお考えになっていらっしゃるのですか。造船業というものは、船をつくるだけが造船業ではなくて、解体事業といったようなものもきわめて積極的な造船事業と言えるのだということを、河本通産大臣は述べられたことがある。私もそうだと思っている。ともかく官公庁船あるいは民間船のスクラップ・アンド・ビルドの問題、それから老朽船を外国から買ってくる、三隻老朽船を買うと一隻ぐらいは新しい船を受注することだって可能だろうと私は思う。なぜもっと積極的にこういった点について取り組んでいこうとなさらないのですか、いかがですか。
  45. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 造船業につきましては、私は、いま概して一般的には政府経済政策が軌道に乗っておると思いますけれども、その中で、構造不況業種の中でも実は最も心配をしておる業種でございます。そのことは、私いろいろな機会に公にも申しておりますし、ことにまた、これは地域的に偏りがございますので、地域経済にも大きな影響を与えるということで、一番心配をいたしておる問題でございます。  そこで、解撤事業につきましてせんだって本会議におきましてあのように御答弁をいたしましたのは、これはそういうふうに聞こえましたら私の申し上げ方が悪かったのかもしれませんが、消極的にお答えをいたしましたつもりではございませんでしたので、幾たびかの経済対策閣僚会議でこの解撤の問題は実は早くから議題に上っておりました。しかるに、行政面ではなかなかそういうことがうまく具体化してこないのだというお話がございまして、それは一つにはやはりスクラップの価格いかんにもよりますけれども、なかなかペイしないというような当局の説明でございました。しかるに、その後になりまして、造船工業会の代表の方々が運輸大臣訪問されまして、ここまでくれば、多少ペイするしないということは別にして、やはり解撤事業でもしなければ日本の造船業及び関連下請というものは非常な苦境に立つ、したがって、運輸当局においてもひとつ積極的に支援をしてもらいたいというお申し出がございました由でありまして、それを機にいたしまして、そういうことであれば、もともと解撤事業というのは何とか不況対策及び緊急輸入の一環としてやりたいと考えておりましたときでございましたから、おっしゃいますように、四月二十一日の決定の一つ事項として決めたわけでございます。  それで、せんだって答弁を申し上げましたのは、このようにして制度としての道は開かれましたので、運輸省と造船工業会との間でこれをどのような方法でやっていくかということについていろいろ協議が進められておる由でございます。その協議が調いますと、すでにこれは受けて立つということが四月二十一日に決定をされておりますので、造船業界の希望に従ってこれが進められていく、こういう手はずは制度の上では整っておる。したがいまして、私といたしましては、いま具体的に業界がどのような案で進められるかということの進展を注目をしておるというところでございます。
  46. 中村重光

    中村(重)委員 私も、いい制度だから、もう秩序も何も問題にしないでやるべきだなんというような、そういうことまでは言いません。いろいろ行政的な扱いという点についてむずかしい点もあるだろう。しかし、やり方の問題ですね。  たとえば佐世保重工の問題について、いままでの大型造船所等の倒産なんということもありましたよ。しかし、総理大臣が陣頭に立ってということではないでしょうけれども、総理大臣までこの問題について直接中に入って、永野日商会頭等とも積極的な話し合い等もされているわけですが、そういったことはかってなかったことなんですね。今日置かれているところの造船不況というものは、これは全く放置できない、大変重要な問題点であるということで、私は、いい意味で総理のそのような取り組みというものは評価をしてよろしいと思うのです。  そうした積極的なことが内閣全体としてなければいけない。大臣諸公としては、そうでなければならぬということは考えながらも、事務当局のいろいろな行政的な問題によって左右されてうまく進んでいかないということですね。私は、やはりそういった点については問題があると思う。今日の異常な日本経済状態における取り組みというものは、きわめて積極的な対処の仕方でなければならぬ。  たとえば福永運輸大臣が、いまの解撤事業の問題について、五十二年度に解撤事業の助成のための予算が一億四千六百万円組まれた、消化できなかった、そして今度は五十三年度には予算要求すら行わなかった。私は、今日の置かれておる造船不況の実態から考えるならば、政府の取り組みというものがいかにおざなりかということを指摘する一つの問題点であるというように考える。しかし、それはそれとして、現在置かれておるこの状況を何としても回避していかなければならないという考え方の上に立って、福永運輸大臣も、なるほど予算はありません、ついていません、いないけれども、予備費から支出をするといったようなことだってやらなければ、今日の造船不況というものを克服することはできないのだという積極的な姿勢を示されましたし、河本通産大臣も、先ほど私が申し上げましたような発言をされたわけです。そういう方向で、この解撤事業の問題についても、いま長官お答えになりましたような経済閣僚会議一つの柱になったと思う。  そうならば、そのとおりの行政推進というものがなされなければならない。あなたは議長としてそれだけの指導性を発揮していかれる当然の責任をお持ちになっていらっしゃる、またそれでなければならぬと考えるわけです。端的に総理まで乗り出してやっているわけでございますから、佐世保の造船不況の問題についての現在の動向というものは大体御承知になっていらっしゃるんじゃなかろうかと思うのですが、この解撤事業の問題等も含めていかがでありますか。
  47. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 先ほども申し上げましたように、造船業に対する対策は、これが注文生産であるということもございまして、一層むずかしい問題になってきておりますことは、私も恐らく認識しております点では人後に落ちないつもりでございまして、実は昨日も、公の席ではございませんでしたが、海造審の委員長であります永野日商会頭、それから造船工業会の会長と御一緒になりまして、ただいまお話のような問題を私からも実は申し上げて、海運造船審議会も一日でも早く開いていただきたいと思いますし、また、ただいまのような問題も促進していただきたいということを申し上げたようなことでございました。  それで、この解撤の問題は、確かに仰せられますように、五十二年度には、わずかではございますが、予算がついておりました。五十三年度にはそれがないわけでございますが、経済対策閣僚会議では、そうすれば五十三年度は予備費が要るであろうかどうであろうかという議論もいたしましたし、他方で、今回の場合には造船工業会が中心になって、場合によって会社を設立して、そうしてその責任において解撤をやろうかと思うのだというようなお考えのようでもございましたので、とにかく政府としてはこれに対応する準備は四月二十一日をもっていたしてございますので、なるべくそれを業界の側においてあるいは運輸省とも御相談の上で急いでいただければ、私どもが制度を設けました趣旨も達成できますし、また当面心配されますあちこちの造船業あるいは下請関連にもいい影響があるのではないだろうか。私自身実は気がせいておりまして、なるべく早くこの制度の利用をしていただきたいと考えておるところでございます。
  48. 中村重光

    中村(重)委員 長官、時間ですからお引き取りいただいて結構です。  通産大臣、私は、この外貨貸しの問題についてあなたがお述べになったことに触れたのですが、やり方次第では年間百億ドルの黒字減らしは可能である、臨機応変に対処する。臨機応変に対処できないような何かが横たわっているわけなんですが、その臨機応変というのは、そういう横たわっているような問題を克服して外貨貸しを行っていく、こういうことではないかと思うのですが、率直に現在の状況を、見通しを含めてお聞かせください。
  49. 河本敏夫

    河本国務大臣 この外貨貸し制度は、先月二十一日の経済対策閣僚会議で正式に決まりました制度でございまして、先ほど宮澤長官もお述べになっておられましたが、少なくとも四十億ドルは当然いけるわけでございますが、運用次第では百億ドルも可能である、私はこのように考えておるわけでございまして、その可能性またその期待についてもいま宮澤長官もお述べになりましたが、やはり私といたしましては、緊急輸入の拡大ということを早くいたしまして、現在の経常収支、貿易収支の流れを早く調整したい。そして現在、御案内のように輸出に対しましては制限貿易をいたしておりまして、これがややもいたしますと世界に保護貿易を台頭させる引き金にもなりかねない、こういうおそれもございますし、それだけではございませんで、やはり日本の国内の景気にも貿易制限ということが相当大きな影響が出ております。そういうこともございまして、できるだけ早く実効のある方向にぜひ持っていきたいと考えております。  ただ、新しい制度でございますし、それから、かつまたこの外貨貸し制度を利用しようとする場合には、それぞれ担当大臣の推薦を得て外貨貸しをやる、こういうことになっております。そういうこともありましてややおくれておる、こういうことが全般に言えると思います。そういうことでは当初の目的と反しますので、やはり政府挙げて協力いたしまして、所期の目的が達成できますように一層の努力を図ることが必要であると考えております。
  50. 中村重光

    中村(重)委員 この外貨貸しというのは、おっしゃるようなむずかしい問題、それから新聞にも報道されているわけですけれども、大変汚職というようなものを伴ってくるといったようないろんな様相を帯びる可能性というものを持っておる、そういった点は十分慎重に対処していかなければならぬということはわかるわけですが、この解撤事業の問題については、私は通産大臣とも数回にわたって委員会の場で、あるいはそれ以外の機会において御意見も伺い、私の意見も申し上げてきたと思うのです。いまの解撤事業の助成ということでは、いろいろ金額の問題についても制約がありましょうし、手続の問題についてもいろいろ行政的に、福永運輸大臣がお答えになったような簡単にいきにくいといったような面もあるということは否定できないというように思うのです。それらを考えてみると、この外貨貸し制度というものが手っ取り早くやれるし、問題点というものを十分注意しながら対処していくならば、今日の造船不況に対処するにはきわめて大きな措置として評価できるのでなないかというふうに考えるのです。ひとつこの点は積極的に大臣も対処していただきたいというように思うのであります。  その場合に、いま宮澤長官からもちょっと触れられたペイしないというようなこともありましたが、解撤事業をやりまして、これは当然スクラップがあるわけですから、いま日本輸入しているスクラップあるいはその他国内におけるところのスクラップ、それらもそれなりにまたこれを使っていかなければならないということになります。そうすると、これは解撤する量の問題にもなりましょうけれども、スクラップの処理をどうするかということも対応策として考えておかなければいけないのではないか、そのためには社団法人の日本鉄屑備蓄協会というのもあるわけですから、これはきわめて微々たる備蓄だということでありますけれども、これらは通産省の所管事項でもあるわけですから、これらについてもそれこそ臨機応変に対応していくというようなことが必要ではないかと思いますが、それらの点は、大臣、いかがですか。
  51. 河本敏夫

    河本国務大臣 日本鉄屑備蓄協会という組織が前からできておりまして、これは通産省の管轄でございます。これによりましてある程度スクラップ価格の大幅な変動をコントロールしていこう、また需給関係調整していこう、こういうことを目標に設立された協会であります。でありますから、この協会をいまお述べになりました問題との関連において有効に活用するというのも、もちろん一つの方法であるとは思いますが、先ほども宮澤長官もお述べになっておりましたが、この解体事業を大規模にある程度やっていこうという発想は、造船工業会が現在でもダンピング受注、赤字受注でないと仕事がとれない、こういう状態であるならば、解体事業をやっても若干の赤字になっても仕事が確保できるわけだから、とにかく雇用問題を一歩も二歩も前進させることになるから、採算はある程度度外視してとにかくやっていこう、こういう決断を下して、そして運輸大臣及び経済企画庁長官の方に申し出があって、仕組みとして今回の外貨貸し制度が採用された、こういういきさつもございますから、だから、鉄屑備蓄協会というのもできるだけ協力はいたしますけれども、しかし、造船工業会の方もそういう当初のお考えでこの制度をひとつやってみようということで決意をされてスタートされたわけでありますから、やはり関係者が皆相談をして、協力して現在の深刻な雇用問題を何とか解決していく、こういう対応策が必要かと思います。  いずれにいたしましても、御指摘になりましたことは確かに問題でございますので、関係者の間で十分協議をいたしまして前進をするようにいたします。
  52. 中村重光

    中村(重)委員 謝敷船舶局長お見えですね。いまお尋ねをしましたことをあなたにもお尋ねをしたいわけですが、あなたが直接佐世保重工の再建策の問題についても取り組んでいらっしゃるわけです。それから、いまの解撤事業の問題点ということですね。それから、解撤事業はそれはそれなりにやるといたしましても、五十二年度の予算に計上されておりましたが、それは御承知のようなことで消化はできなかった。五十三年は要求しなかった。その点もどうしたらよろしいのか。問題点は問題点としてひとつお述べいただいて、これからどう対処していこうとお考えになっていらっしゃるのか、ひとつお聞かせをいただきたい。
  53. 謝敷宗登

    ○謝敷政府委員 お答え申し上げます。  造船業が非常に深刻な不況に直面をしておりまして、全体の構造改善を含む対応策をとると同時に、少しでもプラスアルファの需要を喚起するということで、いろいろ具体案について検討をしているところでございますが、解撤事業につきましては、両大臣からもお述べになられましたとおりでございまして、私どもとしては、五十二年度の解撤事業につきましては、これは主として中小下請事業者を対象にしまして協同組合方式でやるということでスタートしてみたわけでございます。この際にも、それの親でございます造船各社に対しても強く協力を要請をいたしまして、その指導のもとに協同組合方式でやってみたわけでございますが、結果といたしましては先生御指摘のようなことでございまして、やはり外国のマーケットからある程度以上の量の老朽船を購入するということにつきましては、なかなか中小企業の協同組合だけでは力が足りなかった。したがって、実際には国内でのスクラップ船あるいは漁業関係から出てまいりました捕鯨船のスクラップ等で約五千万円、最初の予定の約三分の一強の実績を上げたわけでございます。  私どもの運輸大臣が、三月の中旬ごろでございましたか、申し上げました点につきましては、制度の弾力化によりまして何とか七井万トン、五千万円までこぎつけたわけですが、基本的には、どうもこの問題については、現状を考えますと、雇用の安定ということを柱に親企業であります造船会社が中心になってやらない限りは進展がない、こういう考え方でいろいろ造船工業会と話をしておりましたところ、先ほど通産大臣からもお話がございましたように、造船工業会としては先生も御指摘のような新造船の下取りというようなこともあわせ考えて、この際は積極的に共同して当たろうということになっております。  そこで、現在四月二十一日以降、早速造船工業会では特別委員会をつくりまして、御指摘になった採算の問題とかあるいは購入の具体的方法とかあるいは発生いたしましたスクラップの処理、備蓄の問題についていま鋭意詰めつつあるところでございます。私としましても、運輸大臣からのお話もありまして、きょうも造船工業会の会長に来ていただきまして具体的に話を聞いて、さらに早急に案をまとめるようにきょうお会いして双方で詰めることにしております。  ただ、問題といたしましては、量の問題が非常に大きな問題でございまして、これは国際的に老朽船はかなりございますが、買船価格をどうやって上げないでおくかということと、大量に出てきますスクラップ価格が市場価格に影響して急速に落ちないというような点も含めて具体的な案ができることを期待して、これからも御趣旨に沿って鋭意検討してまいりたい、こう考えております。
  54. 中村重光

    中村(重)委員 そうすると、そうした大手が動き出した。これは組織をつくらなければいけない。解撤事業というのは、買船からドックから装備、それからまたスクラップの処理の問題、大手が相当な役割りを果たさなければいけない。また最近は、大手が単に下請に協力をするということでなく、大手自身がやりたいという意向が非常に強まってきているわけですね。そのことは、今度は、解撤事業というものは即下請がそっくりもらえるというような期待を持っておった日造協等は、大手に全部さらわれてしまって、下請にはどの程度回ってくるんだろうかというような不安感も出てきているというような実情であるようですから、そこらの調整というものはあなたの方では十分おやりにならなければいけないのですが、そうした実際の買船、解体という業務に取り組みが具体的にできる見通し、時期的な問題ですが、その点はいかがですか。
  55. 謝敷宗登

    ○謝敷政府委員 造船工業会が中心になりまして、現在のところは共同出資の会社をつくるということでございますが、当然いま先生が御指摘になりました下請事業者あるいは中小の造船所、これとの協力も造船工業会の委員会の中では考えております。具体的な時期という点になりますと、これはきょう私、先ほど申しました造工との詰めをやってみたいと思いますので、具体的にいつからというのは、きょう詰めて、これからまた造工自身も検討しなければいけない事項があるようにも思われますので、具体的にいつからということはいま直ちに申し上げかねますが、できるだけ急いで検討を終わりたい、こう考えております。
  56. 中村重光

    中村(重)委員 ともかくいまお答えになったように、先ほど通産大臣もきわめて積極的な考え方を明らかにされたわけであります。条件は整ってきているということが言えると私は思います。それで、第二ロッキード事件というようなことが警戒されるといったような指摘等があるわけですが、確かにそういったようないわゆる汚職というようなものが伴ってくる危険性がありますから、それはそれなりに十分警戒されながら、積極的に対処してほしいということを強く望んでおきたいと思います。  それから、佐世保重工の問題、これは非常に高度な政治的な判断とか動きがなされて、いわゆる「むつ」の問題とまで関連させておる。「むつ」の問題との関連というものは、全くあってはならないし、私はないと思う。与党の地元選出の佐世保に最も関係の深い国会議員ですら、「むつ」の問題と絡ませることは、野党が佐世保重工の再建について、造船不況について積極的な取り組みをしているのに足を引っ張るような形になる、特にこれとの関連があるかのようなことを言われるのは困るのだということを私に漏らしております。私も、「むつ」との関係なんというのはないのだという確信を持って私どもなりに積極的に進言もし、また考え方を明らかにして取り組みをしているわけですが、どうですか、総理まで出てこの問題に関心を示して対処していると申しながら、何といったって船舶局長であるあなたが中心的な役割りを果たさなければならぬことになるわけですが、見通し等を含めて、それから問題点がどこにあるのかということもあわせて、ひとつ考え方をお聞かせいただきたい。
  57. 謝敷宗登

    ○謝敷政府委員 佐世保重工の問題につきまして、私どもの基本的な立場から説明をさせていただきます。  造船業全体につきまして、特定不況産業安定臨時措置法によりまして、これから構造改善に至急に取り組む決意でございますが、そういう際に準大手と言われます佐世保重工が最悪の事態を迎えるということになりますと、これはそれから下の、あるいはそのクラスに属する中堅造船所、あるいは中小造船所がせっかく自分で受注なり資金繰りのめどをつけつつある状況の中で、きわめて全体的に心理的な不安感を助長して悪い影響を与えるという意味と、地域に与える影響がきわめて大きい、こういう二点から、佐世保重工から協力の要請を受けましたときに、内容検討してみたわけでございます。  佐世保重工といたしましては、五十二年度までは——五十二年度は若干赤字が出ていますが、それなりに健全にやってきた。問題は五十三年度の見通しでございまして、これがドルベースで取りました受注船が円高によって赤字が出るという問題と、それから新規受注の量が全体の需要減に伴って落ちてくる、こういう二点から何らかの対応策を立てる必要があるわけですが、基本的に佐世保重工の場合には、修繕あるいは陸上部門が比較的中堅企業としては大きいということで、大株主あるいは金融団が協力すれば安定化の道は開けるという見解でございまして、それに従って佐世保の計画を洗い直してみて、その上で大株主の協力をベースにいたしました金融団の協力を仰ぐというのが私どもの基本的な態度でございます。  したがいまして、先月の二十八日に大株主の各社にお集まりいただいて、安定のための協力をするという点までいきましたわけでございますから、目下その具体的な案につきまして、海運造船合理化審議会の会長である永野会長も煩わし、あるいは関係各省との話し合いを進めながら、その具体的な詰めをいまやっておるところでございます。
  58. 中村重光

    中村(重)委員 船舶局長、お引き取りになって結構です。  通産大臣、実は経済の動向について大臣と宮澤大臣とにお尋ねをしたかったのですが、一時からの本会議の時間の関係がありますので、個別的な問題についてお尋ねをしたいこともありますが、状況だけをお尋ねしてみます。  在庫調整状況です。最近、鉱工業生産は非常に高まってきている。明るい見通しが出てはいるようです。確かにマクロ的には明るい空気が出てきた。しかし、ミクロ的にはまだ企業収益の形に結びつくには至らないのではないかという考え方を私は持っているわけです。同時に、そのことは景気を押し上げる力にはまだなり得ない。設備投資であるとか個人消費も依然として上向かない。同時に、警戒をしなければならないことは、最近マネーサプライが非常にふえてきている。これが過剰流動性という形になって、そのことがインフレ、物価高のような好ましからざる方向に発展をしていくこともないのかどうか、それらの点についての考え方なり見通しはいかがですか。
  59. 河本敏夫

    河本国務大臣 本日、経済対策閣僚会議がありまして、いわゆる月例報告会でございますが、経済企画庁及び日本銀行から当面の経済動向及び金融情勢について報告がございました。詳細は企画庁及び日本銀行等から発表があろうかと思いますので、私からは大略のことだけを申し上げます。  まず、最近の経済指標はおおむね順調に上向いております。これは私もそのとおりだと思うのです。ただ、在庫調整の場合は、一部の商品にはなお不十分な点が残っております。たとえば銅とか非鉄金属、こういうようなものは不十分だと思います。大勢としてはいい方向には行っていると思います。その他の経済指標もおおむね順調に上向いておりますが、何分にも産業全体の平均の操業率が非常に低い水準にございまして、七十数%という状態でございますから、この点が一番の問題点ではないかと思います。  それからもう一つは、やはり構造不況業種の状態が依然として深刻な状態にあるということ、特に先ほど来お話しの造船業その他数種類の構造不況業種がきわめて深刻な状態にあること、それから雇用問題がなお依然として深刻であること、それから中小企業関係が、政府の方も積極的な対策を立てておりますけれども、なお油断できないような情勢が続いております。そういうことを考えますと、なるほど経済指標はある程度上向いておりますけれども、私は、にわかに楽観的な判断はできないのではないか、このように実は考えておるのです。  なぜかといいますと、ことしの公共事業は、中央、地方、それから財投、つまり公社、公団等でありますが、これらを全部入れると二十五兆くらいになると思うのですが、中央のものはもちろんでありますが、地方のものもできるだけ中央にフォローいたしまして上半期に集中させる、上半期も特に四月ないし六月に集中させるということで、強力な公共事業の早期執行を指導をしておりますので、当然この影響は出てくるはずでございます。いわば現在の経済運営は公共事業主導型の経済でございまして、しかしながら、民間の方の活力がいまなお不十分である、こういうことを考えますと、今後、私は、やはりこれでいいのか、あるいはなお追加政策が必要なのかどうか、そういうことについてできるだけ早い機会に関係者の間で至急に相談をする必要があろうか、こういうことも考えていかなければならぬと思います。  それから、マネーサプライのことについてのお話でございますが、いわゆるM2につきましては、つい先般まで一〇・七という数字でございましたが、最近は一一という数字になっております。そこを御指摘になったのだと思いますが、きょうも日本銀行の総裁からは、この程度のことは心配は要らない、こういうことでございますので、現状ではさほど気にすることはないと思いますけれども、しかしながら、今後の経済運営の一番警戒すべき点といたしましては、一部の商品が公共事業の集中によりまして値段が急激に上がってくる、こういうことになれば、これは経済全体に支障になりますから、この点について十分留意しなければならぬということと、それからマネーサプライの模様をよほど監視しなければならぬ。御指摘になった点は、今後とも十分気をつけていく必要があろうかと思います。
  60. 中村重光

    中村(重)委員 おっしゃるように、構造不況業種というのはなかなか立ち直りができない。したがって、中小企業も非常な深刻な状態から脱出ができない。雇用も、先日発表されたのは、完全失業者が百四十一万ということなのです。そうした構造不況業種が依然として深刻であるといったようなこと等々とあわせてみて、これからの企業倒産をどう見るか、それから完全失業者というのはまだ増加するというような見通しをお持ちになりますか、いかがですか。
  61. 河本敏夫

    河本国務大臣 完全失業者の数は、これは毎年のことでありますが、三月には例年ふえております。ことしもそういうことがございまして、いまお話しの百四十一万人、かつてない高い数字になっておりますが、私は、四月以降はだんだん減る方向にいくであろう、またそのように期待をいたしております。  それから、最近の企業倒産の動向、本日もその数字が発表されておりますが、最近の数字につきましては政府委員の方から答弁をさせます。
  62. 岸田文武

    ○岸田政府委員 企業倒産の動向につきましては、御承知のとおり昨年は大変高い水準でございまして、負債総額一千万円以上の倒産が、年間合計で一万八千件を超すという状況でございました。ただ、昨今の情勢を見ておりますと、昨年の十二月以降、件数で前年同月比を下回るという状況がここ数カ月続いておるようでございます。金額の面ではでこぼこございますが、それでもやはり一時に比べますとやや落ちつきが出てきたということが言えるかと思います。  今後の見通しにつきましては、景気回復のテンポがいかように進んでいくか、それまで企業の体力がどのようにもっていくかということにかかってくるわけでございますが、私どもとしては、特に構造不況業種を中心としまして大型倒産が出ていかないかということについて、絶えず注意を払っておく必要があるだろうと思っておるところでございます。
  63. 中村重光

    中村(重)委員 時間がありませんから、また各省からお越しいただいておりますから、個別的な問題についてお尋ねをしますが、先ほど通産大臣から構造不況業種の問題についてお触れになったのですが、特定不況産業安定臨時措置法、これも参議院で成立をしたわけです。いよいよこれから動き出すということになる。その成立を前にして、たとえば造船業にいたしましても、すでに基本計画、設備廃棄がどの程度であるかといったような、そうした基本計画を策定することに必要な業界サイドにおける取り組みをしているようであります。それは造船不況だけではなくて、平電炉であるとかその他の業種にも同様なことが行われているであろうと私は思うのです。ところが、この成立を前にして財界から、アルミ製錬であるとかあるいは非鉄であるとか造船産業界、この特定不況法でもってはとても十分な対策は期待されない、したがって、個別立法というものをつくってもらいたいというような動きがもうすでに開始されているように伝えられているわけです。  造船業の場合におきましても、私どもは真藤会長を参考人として御出席をいただき、その他関係業界の方々の御出席をいただきましたが、大いにその特定不況産業の立法に期待をしている、ぜひこの成立を図ってほしいということで、化繊協会の宮崎参考人のみが、この千億の保証だなんというようなことではとうてい間に合わないからという、この増額をきわめて積極的に述べるという意見がなされた以外は、その内容に対しても不十分だというような意見を聞かなかった。もう早く成立させてほしいのだ、こういったようなこと、それらのことを考えてみると、参議院において成立をする前に、これでは不十分だから個別立法をつくれなんというような言い方は、きわめて不見識であると私どもは考える。  通産大臣は、それらの財界の動きというものを直接何か陳情の形ででも受けていらっしゃるのかどうか。それらの財界の動きに対しては、大臣はどのようにお考えになっていらっしゃるのか、伺ってみたいと思います。
  64. 河本敏夫

    河本国務大臣 そういう動きが新聞報道されたということは私も承知しておりますが、正式に私のところへはまだ何も申し出がありません。  ただ、今回のいわゆる構造不況法案でございますが、これは製造業が中心でございます。したがいまして、この法律に該当いたします業種につきましては、不況業種に共通の大きな課題であります過剰設備の廃棄をするということが、これはもう最大の私は課題だと思うのです。業界の希望があるならば、また業界の大多数の意見がまとまるならば、この最大の課題である過剰設備の廃棄、これが政府の支援によりましてできることになったわけであります。特にこの基金の問題等につきましても、法案御審議のときに申し上げましたが、必要とあらばこれは増額をすることになっておりますし、規模は幾らでも増額するつもりでございます。そういうこともありますので、私は、まずこの制度によりまして製造業の一部は、希望される分野に対してはこれでぜひやってみたい、こう思います。  しかし、これに該当しない業種もあろうと思うのです。製造業以外の業種もあろうと思うのですが、そういうものに対してはやはり若干の対策を考えていかなければならぬのではないか、このように考えております。
  65. 中村重光

    中村(重)委員 テレビのダンピング課税の問題ですが、アメリカは二年分の支払いを猶予したというように報道されているのですが、経過と評価というのをどう通産省としてはしていらっしゃるのかということなんです。  それから、アメリカの財務省は、日本で売られている価格というものより不当に安くアメリカにダンピングをしているということなのですが、国内価格とアメリカの市場で売られている価格というものはどの程度違うのかということですね。国内価格よりも安くアメリカに売っているのではないか。そのことは同時に、日本の国民からいたしますと、日本の国民には高く売りつけて、そして外国に安く売っているのだ、その犠牲にされているのだといったような感情でもってこれを受け取っているのではないか。私自身もそう思う。外国には安く売って、そして外国の産業あるいはその労働者に対して大きな痛手を与えている、そしてその犠牲を日本の国民が受けるというのはとんでもない話ですから、これらの点を、時間の関係もありますから、簡潔にお答えをいただきたいということです。
  66. 水野上晃章

    ○水野上説明員 テレビのダンピング問題に関しましては、事の始まりは一九六八年でございまして、アメリカの電子工業会からの提訴に基づきまして七一年に財務省の裁定が下りております。この際の評価作業につきましては、各企業ごと一品ごとに実際の取引価格を資料によりまして査定いたしまして、これは納得のいくような裁定が行われたわけでございます。その後六年間、アメリカの事情で放置されておりまして、昨年の十一月、アメリカの国会におきましてその作業の遅延が追及されたせいもございまして、本年三月、突如、六年前にさかのぼりました査定作業が、全く別の算定方式に基づきまして一方的に決められたわけでございます。この査定方式は、先生御指摘のように物品税、日本国で用いられております一定率を掛けました一律の物品税方式というので推定をいたしまして、日本とアメリカにおきます販売事情の相違、あるいはモデルにとりました物品の原価、コストの相違、そういったものを全く無視した査定、評価の基準をつくったわけでございます。  ただいま先生のおっしゃいました日本とアメリカにおきます価格、特に取引形態に基づきます価格差でございますけれども、これはたとえば広告費のようなものにつきましては、日本ではメーカーが負担をいたしまして全部の広告をやりまして、それぞれのディーラーあるいは小売店では、その商品についての宣伝は特にやっていないということでございますけれども、アメリカにおきましては、日本で輸出をした商品につきまして向こう側のディーラーが広告費を負担をしてやっておる、あるいは修理費その他につきましてもいろいろそういった取引形態の相違がございます。そういった相違につきまして何%になるかという点につきましては、各企業にもよりますし、詳細の数字はただいま持っておりませんけれども、かなりの相違があるのではないかと思います。  以上でございます。
  67. 中村重光

    中村(重)委員 的確なお答えがないのですが、同様な問題が赤澤さんが重工業局長のときにもあった。同じようなケースをいつも繰り返すといったようなことでは、これは問題がある。十分業界も指導していくし、またアメリカに対しても、間違っている点は積極的にその考え方を改めるように対処していかれる必要があるだろうということを申し上げておきます。  建設省にお尋ねするのですが、最近特に目立ってきているようでございますけれども、共同企業体方式というのがあるのですね。できるだけ中小企業に対して受注の機会を与えるという、中小企業に対する官公需の受注ということを推進していく一つの方策としてそういうことが推進されていると私は評価をしているわけなんですが、どうも最近は、能力のない、まあ建設業としての免許は持っているでしょうから資格がないということにはならないでしょうが、完全に工事施工能力のないそうした企業と大手とがジョイントベンチャーを組んで、そしてその能力のないような企業はもちろん仕事はやらないから、大手の方から手数料みたいなものをもらって、そして実質的に大手のみが施工をやるのです。これは共同企業体方式を逆用している不正、不当なやり方であるというように私は思うわけです。  同時に、このようなことがまかり通っていくということになってまいりますと、肝心かなめの施工能力を持っている、これは大手と比べれば弱いでしょうけれども、中小建設業者に対する受注機会を失わせることにつながってくるというように考える。当然このようなことは地方自治体が多いのでしょうけれども、建設省としてはそのようなことがないように指導していかれる必要があるのであろう、そのように思うのでありますが、この点はどのように把握をしていらっしゃるか、それから今後の指導方針をひとつ伺ってみたいと思います。
  68. 杉本康人

    ○杉本説明員 ジョイントベンチャーによります工事の施工につきましては、昭和三十七年以来、中小建設業の振興策の一環といたしまして、施工能力を高めるためにその推進に努めてきておるところでございます。その結果、先生もおっしゃいましたように、近年ジョイントベンチャーによります工事の施工の実績が増加する傾向でございます。  しかしながら、先生いま御指摘ございましたように、いわゆるペーパージョイントと言われるような事態、そういったものがあるという議論があちらこちらからございまして、従来からの事務次官通達の趣旨にのっとりましてさらにジョイントベンチャーの適正な活用を図るために、昨年の十一月十日付をもちまして、主要発注者に対しまして、建設省計画局長名でもって通達を発したわけでございます。  その通達におきまして、発注者において活用されますジョイントベンチャーによる工事の施工につきましては、ジョイントベンチャーの趣旨を十分理解していただきまして、ジョイントベンチャーの自主性を尊重しつつ、ジョイントベンチャーが共同で円滑かつ適切に施工できますように、その構成員、出資の割合等につきまして、発注者において的確な指導を行っていただくように指示をしたところでございます。  こうした発注者によります的確な指導によりまして、いま申しましたような、あるいは先生御指摘のようなぺ−パージョイントの発生の防止といったような、ジョイントベンチャーの適正な活用が図られるように期待をしておるところでございます。     〔島村委員長代理退席、委員長着席〕
  69. 中村重光

    中村(重)委員 この点うんと突っ込んでお尋ねもし、具体的な問題として私は指摘をしたい点もたくさん材料として持っています。しかし、時間がありませんから、また別の機会にお尋ねをしたいと思います。  同時に、中小企業、まあ建設業、この建設業と申し上げるのは、電気工事であるとか官公需を含めてのことなんですけれども、依然として分離発注ではなくて、一括発注というのがやはり多い。全く分離発注というものがないとは申し上げません。若干最近は分離発注というものがなされつつあるようでありますけれども、いまの時代ですから、電気工事とか官公需というものはもっと分離発注をする。実は電気工事業法を制定をいたします際に、これは私どもは議員立法でやったわけでありますけれども、通産省はこの分離発注というものの必要性は強く認めている、ところが、建設省は反対の意向が非常に強いというので、私どもが電気工事業法を議員立法という形で提案をし、いろいろこの問題について政府側の見解をただしてまいります際も、どうも建設省の方が分離発注に対してしり込みをするというような態度があったわけですが、最近もその考え方は改めてはいないわけですか。分離発注を原則的に確立をする、こういうことでおやりになる必要があるんだろうと思うのでありますけれども、いかがですか。
  70. 杉本康人

    ○杉本説明員 中小建設業者の受注機会の確保につきましては、発注標準の遵守、分割発注の推進等、各般にわたりまして配慮するように指導、要請しているところでございますが、先生いま御指摘ございました分離発注につきましても、建設省におきましては、建築設備工事に限ってでございますけれども、その推進を図っておるところでございます。そのための通達も出されておるわけでございます。ちなみに、建設省直轄工事の発注に当たりましても、「建設工事の入札合理化対策について」という答申がございますが、それの趣旨にのっとりまして、建築設備工事につきまして工事種別を幾つか設けまして、その工事種別ごとに資格審査を行い、相応の規模について相応の専門業者を充てるというような形で分離発注に努力をしております。  前払いの保証会社の資料によって見てまいりますと、建設省、そういった国等の機関によります建築設備工事の発注に当たりましては、いま先生もおっしゃいましたように、最近分離発注がかなり進んできておるという数字が出ております。
  71. 中村重光

    中村(重)委員 もう時間がありませんから、通産省からお答えをいただきません。十分留意をして、建設省ともその他主務省とも話をしてほしい。交渉してほしい。いまの前払いの問題もありましたね。前払いというのは親企業がとって、その下請なんかにはやらない、分離発注ということをしないということは、そういうことにつながっていくのですよ。だから、電気工事業等においては分離発注というものを確立をさせとるいうことで関係省と十分折衝する、それを確立をする、こういうことで対処してほしいということを強く要請をいたしておきます。  それから、消防庁もお見えでございますし、通産省も関係あるわけですが、ガソリンスタンドでタイヤの修理ということが依然として改められていない。これは危険物の規制に関する政令二十四条二号、「みだりに火気を使用しないこと。」というのがあるはずなんであります。私は、この委員会においてもう何回この問題を取り上げたか記憶しないほどであります。  危ないですよ、ガソリンスタンドの中で。部屋の外じゃないのだから。外はほとんど道路だから。その中でタイヤの修理をやるということは、火花が散るわけでしょう。そうするとガソリンに引火したりするのです。  橋本長官、あなたは私が何回も質問したということは御承知になっておる。そういうことはやってはいけないということで通達されたのだろう、消防庁とも十分この点については話をされたのだろうと思うのですけれども、改まっていないのですよ。私が質問通告をいたしますと、ただいま申し上げましたような政令二十四条二号というのがあるから、そんなことはやっていないと言う。やっていないなら私は尋ねない。具体的にやっておるから、そんなことをやらしてはいけない、こう言うわけです。  いまごろの時代だから、もちはもち屋で、ガソリンスタンドはガソリンを売ったらいいじゃないですか。タイヤの修理はタイヤの修理屋さんにやらせることです。卸屋さんは卸屋だけをやって、余り小売りの場に進出しないこと。高度成長時代から安定成長の時代に入ってきた、そういう時代にはそういう時代に対応して、お互いに共存共栄でいけるような、そういうような行政指導というものを政府は強力に推進していく必要がある。それはまことに怠慢であるとさえ私は申し上げたい。  この点に対してお答えをいただきますが、大店舗法の問題についてもお答えをいただきたかったのでございますけれども、これは私は意見だけ申し上げますが、早く結論をお出しになって提案されること。会期末に至りましてもなお提案をしていないということでは、話になりません。省エネルギーの法案は、何かきょうようやく閣議決定ということで提案をされるようでありますけれども、大店法につきましても、非常にむずかしい、それぞれの側の意見というものがあって頭を悩ましていらっしゃるということはそれなりにわかりますけれども、あらゆる角度から検討してこられたわけですから、決断をして提案をする、そういうことをしてほしい、この点は要望にとどめておきますが、いまのタイヤ修理の問題は、それぞれお答えください。
  72. 橋本利一

    ○橋本(利)政府委員 一部のガソリンスタンドで、自動車用タイヤの修理をやっておることは事実でございますが、この場合、消防庁の通達で、火気を使用しないこと、使用する場合には可燃性ガスの流入しないような建物の中でやることといったような方向で、制限と申しますか、指導されておるわけでございます。私たちの承知しておる限りにおきまして、ガソリンスタンドで火気を使用する場合には、消防署の完成検査を受けた建物の中で火気あるいは火気を発するおそれのある金づち等を使用しておるというふうに聞いておるわけでございます。  いずれにいたしましても、危険物取扱所の中での火気の取り扱いということになるわけであります。安全性には十分注意する必要があろうと思います。また、消防庁とよく連絡しながら安全性の確保を図ってまいりたい、かように考えております。
  73. 小池次雄

    ○小池説明員 ただいまエネルギー庁長官からお話がありましたとおりでございます。このことにつきましては、先生御指摘のとおり、政令二十四条二号でもって、みだりに火を使ってはいかぬという規定がございます。したがいまして、このような点につきましては再度府県を通じまして厳重な通達を出し、関係各市町村に対する指導に万全を期してまいりたい、このように思いますので、よろしくお願いします。
  74. 野呂恭一

    野呂委員長 午後二時から委員会を再開することとし、この際、暫時休憩いたします。     午後零時五十八分休憩      ————◇—————     午後二時二分開議
  75. 島村宜伸

    ○島村委員長代理 休憩前に引き続き会議を開きます。  質疑を続行いたします。安田純治君。
  76. 安田純治

    ○安田委員 私は、大型店問題で若干質問してみたいと思うわけです。  現行法のもとで、商調協が道路事情や交通混雑を理由にして店舗面積を削減すべきである、このような結論を出すことは可能とお考えかどうかをまず伺いたいと思います。
  77. 山口和男

    ○山口(和)政府委員 現在の大規模小売店舗法におきましては、小売業者の届け出の審査に当たりましては、その届け出にかかわります大規模小売店舗の周辺の人口の規模及びその推移、それから中小小売業の近代化の見通し、ほかの大規模小売店舗の配置の状況、それからそのほかの大規模小売店舗における小売業の現状等の事情を考慮して行うということになっておりますし、また法の目的をも勘案いたしますと、もっぱら道路交通事情等の観点だけから判断するということは、この法律の中からは若干外にはみ出ると申しますか、そういうように言わざるを得ないと思われるわけでございます。  審査の主たる観点は、周辺の中小小売業の事業機会に対する影響についての判断ということになりますので、道路交通事情等の問題、これを著しく悪化させるとかあるいは周辺住民に過大な被害を与えるおそれがあるというような問題につきましては、一般的な行政指導の中でそういった指導を含めてやっていくということになるわけでございまして、たてまえとしては、直接商協調の対象に取り上げていくということにはなっていないわけでございます。
  78. 安田純治

    ○安田委員 ところが、当該地域の商業活動の健全な発展とか、あるいは消費者にとっては買い物が安心してできる、そういう意味での消費者利益といいますか、こういうことを考えましてそういう状況を望むときには、狭過ぎる道路と大き過ぎる店舗、こういう組み合わせなどは問題があると判断することはあり得ると思うのです。法の目的にも書いてありますように、消費者の利益もまた考えなければならぬ。消費者の利益に直接的に道路の狭いということ自体が当たるかどうかわかりませんけれども、やはり安心して買い物ができるというのも大きな意味では入ると思うので、いろいろ考えますと、狭過ぎる道路と大き過ぎる店舗という組み合わせ、こういうことで適当ではないと判断する場合もあり得ることだと思うのです。  ところで、いま新しく法律が、新法と呼んでおきますけれども、これが提出されるというような話を聞いておりますが、こうした新法において、もっと明確にこのような場合に調整できるというようなことをお考えなのかどうか、その辺お答えをいただきたいと思います。
  79. 山口和男

    ○山口(和)政府委員 大規模小売店舗法の改正問題を検討してきておるわけでございますが、この検討の過程におきまして、できるだけ知事の関与を高めていくということによりまして地方行政上の観点をできるだけ取り入れられるような方向で何か改善する方法はないか、こういうことで検討いたしてきております。しかし、これは法律上はあくまでも商業調整上の問題に関しての知事の関与ということになってくるわけでございますが、ただ、知事をできるだけ関与させることによりまして、実際面におきまして道路交通事情等の観点からのいろいろな意見、問題点、そういったものを意見として出していくというような手段として、ある程度機能を果たすことができるのじゃないかというように考えるわけでございまして、こういった方向地域経済社会に対する影響の問題について改善を図っていくということを考えておるところでございます。
  80. 安田純治

    ○安田委員 実は、私の出身地である福島県安達郡本宮町というところに、本宮ショッピング・プラザ成田屋という店舗が進出を予定して、三条申請を行っておるわけなんですけれども、地元商工会は、通産局に対して、影響のおそれありと答申を出しているわけです。  この問題で一つ注目すべき点を申し上げますと、流域下水道の工事や橋のかけかえ工事がちょうど昭和五十四年から五十七年に相次いで行われまして、既存の商店街における道路の使用が半分に制限されるということが予想されて、もうほとんど確定しているわけであります。そういう特殊な時期には出店を延期すべきだという声が強いわけです。消費者や住民の利便の面からも考慮すべきだと思うわけです。つまり都市計画といいますか、地域の商業以外の整備、こうした工事計画との整合性といいますか、均衡をとるといいますか、時間的な調整をするというか、そういうことも十分考えなければいけないだろう。  少なくともこの本宮町の場合は、そういう問題が起きてきますと、ただ既存の商店街が近代化したり何かして進出する大店舗に対していろいろ競争力をつけるということであっても、実際に今度は都市計画や何かで道路工事が四年間にもわたって行われるという予定があって、それだけでももうお客さんが一時的にその商店街を避けるかもしらぬ、たとえば大店舗が来ても来なくても避けるかもしらぬ。そこへ全然離れたところに大店舗が、これは成田屋ともう一つ出る予定なんですね、二つ出るという予定なんですけれども、そうなりますと、三年の工事をしている間に客の流れが完全に変わってしまうということが予想されるわけでして、そういうことを考えますと、こういう都市計画とか地域の開発のためにいろいろ土木工事などをやる、そういう時期との絡みをどうしても十分考えるべきだというふうに思うわけです。これは消費者や住民の利便にも当然つながるというふうに思います。  新法が準備されている時期でもございますので、この問題についてはその立場で処理するようにぜひ指導されたいと思うわけです。もし新法が制定されれば法に基づいて規制される可能性が濃いものだ、少なくともこの本宮の場合にはこう考えます。  そこで伺いたいのは、いわゆる駆け込み出店についてであります。  三月十六日に、通産省が、駆け込み出店は厳に自粛するようにという自粛通達を行ったようでございますけれども、この場合の駆け込みというのはどの範囲を言うのか、この辺を明らかにしていただきたいと思うわけです。
  81. 山口和男

    ○山口(和)政府委員 お答え申し上げます。  駆け込みがどの範囲かという御質問でございますが、結論的には個々の案件について個別に判断せざるを得ない、こういうことになるわけでございまして、これを一義的に定義するのはなかなかむずかしい問題でございます。  ただ、ごく一般的に申し上げるならば、計画内容等も十分煮詰まっていない、あるいは地元との話し合いもほとんどされていないままで届け出が強行されて出てくる場合には、これは駆け込みの疑いがあるのではないかということで、十分その事情を説明を受けて判断していくことが必要ということで、地元の通産局等にも指導しているところでございます。
  82. 安田純治

    ○安田委員 ケース・バイ・ケースといいますか、具体的な場合について判断せざるを得ない。それはもちろん、駆け込みの限界を余り厳しくきちっと決めることの方が、実情に沿わない場合もございますでしょう。しかし、一定の基準というものがなければならないのではないか。いまの御答弁ですと、地元での話し合いがほとんど行われていない——このほとんどということがちょっとひっかかるわけでございますが、一回でもすればいいのかという問題が出てくるわけです。そこで、少なくとも自粛の通達を文書で出した以上は、この駆け込みの概念についての基準をきちっとしておかなければならないだろう。弾力的運用はもちろん望むところでありますけれども、その弾力的運用の前提としても、一つの概念としてはきちっとしておかなければならないと思います。  何か聞くところによりますと、非公式かもしれませんが、業界に対して通産当局の方が、この通達が出る以前に何らかの形で紛争が起こったりあるいは計画の概要を知らされている、つまりもう出るぞということがわかっておる、こういうものは駆け込みとは考えないというような趣旨のことを発言されたと聞くのですが、これはいかがでしょうか。
  83. 山口和男

    ○山口(和)政府委員 従来から、第三条の届け出について事前の問い合わせ等がございました際に、まず地元との話し合いを十分行って、見通しをある程度つけて届け出の手続に入るようにという指導をやってきておるわけでございまして、そういう意味で、そういう問い合わせ、相談等を受けた案件というのは、かなり前からいろいろと計画が出されて、また地元ともある程度話し合いが行われておるというように一応理解をいたしまして、この通達が出る前にそういった形で何らかの接触があったものは、特にこの際法律の改正問題等を踏まえて駆け込み的に出してきたわけではないという判断を一応できるのではないかということが言えようかと思いますが、その辺は、最終的にはケース・バイ・ケースの問題になってこようかと思います。
  84. 安田純治

    ○安田委員 この駆け込み自粛の通達を出したこと自体、どうも駆け込みがあったので出したのじゃないか。つまり駆け込みという概念が先にあって、これは許しておけないというか、自粛してもらいたいということで通達が出されたと言わざるを得ないと思うのです。  この自粛の要請、「最近、大規模小売店舗の出店計画が全国的に増加の傾向にあり、」「御承知のように現在、政府においては、小売商業関係法規の基本的な検討を行っておりますが、このような状況下でいわゆる駆け込み的な店舗新増設が増加し、」云々という文書を見ますと、昨年特別決議を当委員会でしたわけですけれども、あれ以後、法が改正されるらしい、しかも単なる推察ではなくて、現実に国会の委員会で決議もあって、きわめて具体的な予想が出た段階以降に申請が出されるといいますか、計画が出されるということがあったので通達を出したのではないかと思うのです。そうじゃなくて、そういうことが将来あり得るから出したのか、通達から法改正までの間にあり得るから出したのか。そうではなくて、特別決議以後どうもそういう心配が現実化したので、つまり現状を踏まえて通達を出したのか、どっちなんですか。
  85. 山口和男

    ○山口(和)政府委員 先生御指摘のとおり、昨年の国会の特別決議以後、私ども基本的な立場からの小売商業規制法のあり方について検討を進めてきたわけでございますが、当初の小売問題懇談会の結論が本年に入りまして二月早々に出てまいりまして、そのころからある程度内容的に具体的な問題に立ち入ってきたわけでございます。そういうことで、法改正の作業が具体化してくるというような意味を持って、そういう時期にあえて出店計画を早めることになって、余り大きな混乱が起きないようにという趣旨で通達を出した次第でございます。  過去一年間の三条の届け出状況を見てまいりますと、大体四半期に六十件くらいになっておったわけでございますが、最近それがややふえまして、十件程度ふえてきておる、余り大きな変化を生じておるわけではございませんが、ただいま申し上げましたような法改正の作業等もにらみ合わせまして、今後の混乱を防ぐという趣旨で通達を出したわけでございます。
  86. 安田純治

    ○安田委員 ケースによって個々に判断されるわけでしょうけれども、昨年の商調法改正の特別決議が行われた以降計画が出されてきたものあるいは紛争が起こったものは駆け込みではないかと考えた方がいいのではないかと思うのです。具体的な懇談会の答申やその他のことで立法作業が進み始めたところから駆け込みだという線を引くのは、どうもわれわれとしては納得できない。つまり、当委員会がそういうふうにすべきだと決議をした重みは十分にあるはずであります。  その国会の委員会の特別決議のときには、大した線引きといいますか、ここから以後駆け込みだという線引きの重視はせぬで、当局の方の立案の作業が進んでくる時点、その時点というのはどの辺からか、答申が出てからか、あるいは原案なるものがちらちら出てからか、いろいろな線引きの仕方があってあいまいだと思うのですが、そのときからが線引きだと考えるのは、非常に強い言葉で言えば立法府の軽視といいますか、商工委員会で特別決議をして法改正をするのだということになったときに、やはり法改正は確定的に予想される、また行政府としてはそれを受けての立案をするのが当然だと思うのですね、その時点で。あとは行政府内部の都合でその具体的作業がどうおくれようが進もうが、とにかく国会が、立法府が一応そういう法改正をすべきであるという特別決議をしたわけですから、その時点以降は、やはりこれは一般の国民としても、当然その法改正の方向にいくはずだと受け取るのが当然だし、それ以後のやつはやはり駆け込みだというふうに考えるべきだと思うのですが、その点ひとつお答えいただきたいというのが一つです。  それからもう一つは、商調法に対する特別決議があった昨年のあのとき以降新たな申請を出した事例について、具体的な資料を提出していただきたいと思うのです。特別決議があってから以降新たな申請が出された、そういう事例の資料を提出していただきたいのですが、これはきょうここですぐ出せというわけではございませんので、それを要求しておきますので、それに対する御返事と、二つを承っておきたいと思います。
  87. 山口和男

    ○山口(和)政府委員 先ほども申し上げましたように、昨年の決議以降検討を進めてきておるわけでございますが、第三条の届け出の状況を見てまいりますと、あえてそういった問題を意識して特にこの際ふえてきておるという状況も、本年当初までの段階では特になかったわけでございまして、そういう意味で、一応法の施行という通常の施行をしてきたわけでございますが、かなり具体的な法律改正の検討に入ったものでございますから、そういう時点で駆け込み通達を出した次第でございます。  ただいま先生から御要求のございました昨年の特別決議以降に第三条の届け出が行われた状況につきましては、資料を提出させていただきます。
  88. 安田純治

    ○安田委員 いまの御答弁ですと、ことしの一月具体的な立法作業に入る前までは、特に駆け込みらしいものはなかったとおっしゃいますけれども、そのらしいものはなかったという御判断の基準について、どういうわけでそれはそういう駆け込みでないのか、つまり、法律が改正されるので駆け込みしようという気持ちがなかったのかどうかは、まさに出店者の方の主観的な内容ですから、何らかの客観的な資料でこれを認定しなければならないと思うので、そういう点で、線の引き方というのは、ここから以後は駆け込みだという線の引き方については、どうもいまの御答弁ではわれわれとしては納得しにくいと思うのです。  ここは議論していると時間がございませんので、それ以前は駆け込みらしいものがないと言っても、われわれは、特別決議以後これは立法されるものというふうに国民も理解すべきだし、行政府も当然国会の決議を受けて努力をするのが当然だし、それを行政府内部の都合でどうおくれようが、そのことで線を引くというのはおかしいのではないかという考えを強く申し上げておきたいと思うのです。いずれにしろ、具体的なケース・バイ・ケースでお考えくださるようですので、そういうことを強く申し上げて次に進みたいと思うわけです。  資料はいただけるということですから、後でいただきたいと思います。  そこで、大阪の枚方市というところの問題ですが、香里丘トップセンターというのがございまして、これは申請した当時は一千四百九十八平米で申請して、開店してみると、いやべらぼうに広い、二千平米を超えているのじゃないか、実際にはかってみたら二千七百八十二平米、つまり倍近くあったということなのです。とんでもない話なのですが、それで問題にされて、何か形の上で自主的に営業を五十日間停止した。三月十日から四月二十八日まで自主的に営業停止をして、四月二十八日から再度開店をした。ところが、その後店舗面積を削減することもなく営業を続けておる。このデベロッパーは、富士興業という大変いろいろ問題のあるいわば悪質なところであるということを聞いておりますけれども、この点、御存じでしょうか。
  89. 山口和男

    ○山口(和)政府委員 枚方市におきまして、ただいま先生御指摘のございました香里丘トップセンターの開店の問題が、昨年の八月ごろからいろいろと問題になってきておりまして、デベロッパーが富士興業ということで、大阪通産局におきまして当事者を招致しましていろいろな措置を講じてきておるという状況は、報告を受けております。
  90. 安田純治

    ○安田委員 この問題を見ますと、これは周辺の業者も、中に入っているお店屋さんは大分あるらしいのですが、これも自分のところの売り場面積だけでは、全体で千五百平米超えるかどうかなんということはわかりませんので、この中に出店した人たちも全く被害者だ。要するに悪いのはデベロッパーだと言わざるを得ないと思うのです。しかもこれが十や二十平米の間違いじゃなくて、倍もあるわけです。これはもうデベロッパーとしてはきわめて悪質だ、こういうように言わざるを得ないので、この点について自主営業停止をしたようですが、その損害、これは中に入っている人にしてみれば大変大きなものだと思います。  それから、この面積を削減しないでそのままやっていくということになりますと、全くこういううそを言って倍もの面積に実際はやる、それが何も手を触れずにまかり通ってしまう。確かにそれは、通産当局としては、もうすでに中に入ってしまった零細業者の方々の営業も考えますと、一刀両断に、何人かが出ていけ、出ていかなければ売り場面積は縮小できないでしょうから、ということをしにくいような気持ちのあることはもっともですし、私どももそうは思います。しかし、かといって、デベロッパーがこういうインチキをやった場合に、デベロッパーは何ら不利益をこうむらずにまかり通ってしまうということになると、これは大変なことになると思うのです。  そういう意味では両方被害者、つまり周辺業者も店を出している方々も被害者で、悪いのはデベロッパーですから、この点ひとつデベロッパーの方に厳しく、たとえば自主営業停止の損害をきちっと払わせる。民法上でいけば、中に入った人にしてみればだまして入れられたようなものでしょうから、いまさら、千五百平米を超えておったから、じゃおまえの売り場面積減らそうと言われたって、それはとんでもない話だということになりますので、損害賠償の問題なんか強く言えば起きるかもしれませんが、とにかく行政当局として、こういうデベロッパーに対して厳しく、ひとつ被害者双方が満足いくような解決策を講じていただきたいというふうに思うわけです。これは中に出店されている人たちの生活もありますから、直ちにその人たちを追い出せとかなんとかという意味じゃないことは御了承をいただいて、厳しくやっていただきたいということで、もしその点についての所見があったら承りたいということが一つです。  時間がございませんので、もう一つ伺いますが、同じ大阪府の枚方市で、長崎屋が地下一階、地上は駐車場にした店舗の進出を計画しておるわけです。小売業を営むのは地下の一階だけであって、その面積は約六百平米であると伝えられております。これに対して、これは大店法上の届け出をするように通産局が指導したというような話も聞くし、これは話ですけれども、長崎屋が枚方市に対して大店法による申請をする、こう言っておる、これは事実らしいのですが、これはあなたの方で把握しておられるかどうかを伺いたいと思います。
  91. 山口和男

    ○山口(和)政府委員 第一の問題の富士興業デベロッパーの問題につきましては、先生御指摘のとおり、デベロッパーが法律の手続を踏まえずに進めてきておるという問題がございますので、これに対しては厳しい措置をとるという考え方で対処してまいりたいと思っておるところでございまして、すでに昨年の十二月十六日に、大阪地方検察庁に富士興業を大規模小売店舗法三条七項の違反ということで告発しておるところでございます。  それから、長崎屋の件につきましては、ただいまのところまだ報告を受けておりませんので、至急調査してみたいと存じます。
  92. 安田純治

    ○安田委員 私どもの調べによると、いまの枚方市の長崎屋の件は私が申し上げたとおりであると思うのです。この店は食料品だけであるという話で、関係者の話では、十店舗以上の小売店が入居したいわゆる小売市場に去る可能性が強いと言われておるわけです。近くに小売市場がありまして、もし商調法で処理するとすれば、いわゆる基準距離内にあって府知事の許可がおりない可能性が強いものである。したがって、この店舗を大店法上で処理することになると、これは長崎屋の方で商調法を潜脱するといいますか、その適用を免れるというメリットがあるのですね。届け出ということで、例の商調法と大店法の谷間なんですが、そっちの方、大店法の方へ行ってしまう。こういうことが許されるかどうかということなんですね。  これは現地を見ますと、実は長崎屋の本館みたいなのがあって、そして約五メートル幅くらいの公共用の水路があって、それを隔てて駐車場を地上につくり、その地下を六百平米ばかりのお店にする、こういうことなんだそうで、もし小売市場に当たらないとすれば、これは六百平米では、いまの大店法でいうと千五百平米ですから、関係ないですね。届けなくてもいい。小売市場に当たるとすれば、これは府知事の許可の問題が出てくる。  ですから、私どもの調査したところによると、この場合に大店法の届け出ということにするという話ですけれども、長崎屋の本館がこうあって、公共用の水路を隔てて別なところにといいますか、幾らか離れたところに駐車場をつくる、しかしながらそれ自体は六百平米だ、大店法にもかからず、しかも商調法の小売市場にもならぬというと、大きなお店が、いわゆる大資本が小さな面積のスーパーを乱立させるのと同じ結果になってしまうのじゃないか。しかも、それは機能的に見ると、本館と結びつけて駐車場にして、お客さんとしては何分かは歩かなくちゃならないでしょうけれども、実際は巨大な面積で、いわば増床と同じような効果を生ずるのじゃないか、こういう問題があるので、時間が来ましたから詳しいことは申し上げられませんけれども、やはりこれは新法を考える場合に、売場面積だけではなくて資本の大きさによる規制ということも当然考えないと、いまの枚方市の長崎屋のような問題が起きてくるのじゃないかというふうに思うわけで、その点はどうお考えかということをお伺いしたいと思います。
  93. 山口和男

    ○山口(和)政府委員 ただいまの枚方市の長崎屋の件につきましては、実情を調査いたしまして、法律的にどういう解釈、適用になってくるかという問題点を十分検討する必要があるかと存じます。  新しく法律改正を進めるに当たって、そういった問題を踏まえて企業主義ということも考える必要があるのじゃないかという御意見でございますが、企業の大きさに着目するという考え方一つの有力な考え方ではございますが、やはり周辺中小小売商業等への影響という点に着目をいたしますと、面積の大きさというものによって規制を考えていく方がベターではないかという考え方を持って検討を進めてきておるところでございまして、この点につきまして、さらに企業主義の問題ということになりますと、いろいろダミー等の問題もございまして、なかなかむずかしい問題も出てくるわけでございますので、ただいまのところ、店舗面積の大きさによって規制を考えていくということで進めてまいりたいと思っておるところでございます。
  94. 安田純治

    ○安田委員 最後に、中小企業庁に伺いたいのですが、時間が来ましたので続けて伺いますけれども、中小企業庁が助成をした中小企業の共同店舗などが、大資本の大型店出店で大きな影響を受けたという例が幾つかあるはずだと思います。もしあれば一、二の例を挙げていただきたい。  私の方で調べたところ、たとえば大阪の松原市で四十店舗が大改造をした。この資金に国家資金が使われたかどうか、私はわかりません。個々の業者が金を借りたのかもしれませんけれども、その金を借りたとすれば国民金融公庫とかいろいろなところからも出ていると思います。そこで、こうして大改造をしたところが、昨年ダイエーが七百メートルくらい離れたところに出店の予定地ができた、まだ開店はしておりませんけれども、そういうことが起こった。そこで、地元の中小業者としては、近代化せよという国の基本方針に従って、ひどい工面をしてやっと近代化をした、そうしたらば大店舗が七百メートルくらい離れたところにぽかっとできる、これでは国の基本方針にのっとって近代化するというのは一体どういう意味があるのかということで、非常に不満に思っているようであります。  そこで、こうしたことで影響を受けた例が幾つかあるならばそれを伺いたいということと、そういう松原市の具体的な例がありますので、大手の進出を有効に規制できる方法が必要だと中小企業庁としてはお考えになると私は思うのですが、この点のお考えを聞かせていただきたいということを最後に伺っておきます。
  95. 岸田文武

    ○岸田政府委員 私どもが高度化資金で応援をしております共同店舗二百三十五について、先般サンプル調査をいたしてみました。競合店舗があるかどうかという質問に対しまして、七七%が競合店舗ありという答えでございます。その内容としまして、競合店舗の種類はどうかということを聞いてみますと、全国的スーパーという答えが一八%、地方のスーパーというのが四八%、この辺が主なところでございます。したがって、やはりいろいろ影響を受けているのではないかと思っておるところでございます。  ただ、私どもは、大型店の進出に対して、中小企業は力を合わせてこれに対抗していくことが必要だという基本的な考え方のもとにこういう共同店舗を進めておるわけでございますから、少々のことではびくともしないしっかりしたものをつくるということは、何よりも大切なことではないかというふうに思っておるところでございます。見ておりますと、とかく最初は団結しておりましても、途中でそれが崩れてしまったり、多少わがままが出たりというようなことがございます。また、資金の制約の面から思うだけの設備が用意できないという問題もございます。これらの点を思い切って改善するということが第一の道であろうと思っております。そうは申しましても、やはり現実に大型店が出てまいりますといろいろ影響を受けているということも事実でございますから、これは大規模店舗法等の活用に際しましても、そういう点の配慮もあわせて行うことが必要ではないかと考えておるところでございます。     〔島村委員長代理退席、委員長着席〕
  96. 安田純治

    ○安田委員 時間が来ましたのでこれで終わりますけれども、先ほどの山口審議官の御答弁で、企業主義で規制するのは、周辺商店街のいわば影響ということを考えて規制するとすればやはり面積で規制するほかないようなお話ですけれども、長崎屋のように、五メートルの公共用地を間にはさんで機能的には本館と一体になる、しかし、「附属建物」というあの大店法の概念には入らない微妙なところに小さな面積のものを広げれば、これはそれ自体独立の建物として考えれば面積は狭い、しかし、周辺地域における影響は同じことですから、そういうあなたの御解釈というか答弁によると、そういうこともあるのでただ売場面積だけにこだわるということは非常に不適当ではないかと私ども考えます。  時間がありませんので、その点もまた十分検討していただきたいということをお願い申し上げまして、私の質問を終わります。
  97. 野呂恭一

    野呂委員長 西中清君。
  98. 西中清

    ○西中委員 最初に、河本通産大臣にお伺いをいたしたいと思います。  せんだっての日米首脳会談で、日本のODAを五年で倍増するということを今度は三カ年で倍増するというような、言うならば首脳会談の一つの目玉として提案をされて、双方の合意を得たというようなことがあったわけでございますが、通産大臣も、その前日ですか、東南アジアを訪問されているときに、その旨を御発言になっておりました。  九日の当委員会におきまして、私がこの問題について御質問をいたしました。そうしますと、この倍増の基準年次は五十一年実績である、十一億五百万ドルである、そしてドルベースである、こういうお話でございました。それから、おとといですか、外務委員会では、外務大臣は五十二年を基準年次とする、こういったお話があったわけでございます。  一国の総理が対外的な国際交渉の場でこういうお話をされたことでございますから、私は、それなりにはっきりした根拠があるもの、同時にまた、各省庁間における合意が取りつけられた上で、その結果として総理がお話しになったものだ、このように受けとめるわけでございます。ところが、いま申し上げましたようにいろいろと変わる。さらには大蔵省ではまた違った意見がある。要するによくわからないというのが私の率直な感じでございます。したがいまして、この三年で倍増というのは、一体どういう会議でだれがどういう経過をもって結論が出たのかということを、もう一遍たださなければならない。それとも、総理大臣がアメリカに行かれる途中か、行ってからふっと思いついて物を言ったのか。  要するに、今日日本政府開発援助は非常に信頼感が薄い。しかもその金額も、GNP比からいきましても先進工業国の間で非常に低い、DACの加盟国の中では最低だ、こういうふうなこともございますし、ひもつき援助が非常に多い、いろいろと非難を受ける、そういう内容を含んでおるわけでございますから、なおさら、この三年で倍増という内容についてこうして国会で議論されて政府の答弁が変わるということは、非常にまずいのではないかと私は思いますし、この発言自体がまた一つの不信感を生むように思うわけでございます。  大臣、どうでしょう、これはいつどこでだれが決めたのか、まず御答弁をいただきたいと思います。
  99. 河本敏夫

    河本国務大臣 政府の方では、かねて国際収支を改善するために幾つかの方策を相談してまいりましたが、先月二十一日、経済対策閣僚会議を開きまして、幾つかの具体的な対策が決定をされました。そのときに、この開発援助については三年間にほぼ倍増しよう、こういう基本的な大体の合意ができたと思います。ただしかし、事務的に相当詰めなければならぬ点がございますので、また計算方法によっては相当変わりますので、これを整理して、そして総理大臣がアメリカに行かれるまでの間に大体まとめ上げようということで、大体の方向は先月の下旬に出たわけでございますが、その後いろいろ各省間で打ち合わせが続いておった、こういうことであったと思います。
  100. 西中清

    ○西中委員 そうすると、いまこういうようないろいろな意見が出ておるということは、総理がアメリカへ行かれるまでに結論が出なかったということでございますか。
  101. 河本敏夫

    河本国務大臣 その後、私の聞きましたところでは、事務的には五十一年度を一応基準にしよう、こういうことになったそうであります。  ただ、重ねて申し上げますが、なぜこういう議論が出たかといいますと、つまり、開発援助を五年間で倍にすると言っておったものを三年に縮めようということになったかといいますと、これには背景がございます。  その一つは、わが国は憲法上の制約等もございまして、防衛の面では自由世界全体のために大きく貢献することができませんので、経済分野で、世界全体の経済の発展のためにできるだけ大きく、特に発展途上国の経済の発展のためにもっともっと貢献すべきではないか。そして発展途上国の経済がよくなる、それらの国々において国民生活の水準が上がるということ、これはすなわち社会の安定にもつながるゆえんであるから、社会が安定をすれば戦争の危険、不安というものもなくなるわけだから、軍備を整えて自由世界防衛の分野で直接貢献するというのも一つの方法であるけれども、経済分野を通じて生活の安定を図っていく、こういうことも間接的には広い意味での防衛にもなるわけであります。そういう意味から、最近のわが国の大幅な黒字等を考えますと、日本としては、開発援助のみならず、経済協力全体に対してもっともっと大きく寄与しなければいかぬ、こういうことが一つの大きな流れとして背景にあったわけであります。  したがいまして、これまでの日本のODA実績は御案内のような状態でございまして、先進工業国の中ではGNP比較をいたしますと非常に低い水準にあったわけであります。一番低い程度であったのではないかと思います。そういうことでありますから、これを三年間にとにかく倍増しようではないかというその考え方は、私はそれなりに結構であったと思います。  いまお述べになっておりますのは、細かい点に至るまで最終の詰めができていないのではないか、こういうお話でございますけれども、若干まだ詰めが残っておるところがあったかもわかりませんが、趣旨がそういうことでございますから、三年間にできるだけふやしていく、そしておおよその目標は二倍である、こういうことなんです。したがいまして、ドルベースで計算するという方法も一つの計算方法としてはあり得ると思います。しかし、円ベースで計算するというのも一つの計算方法としてあると思いますし、それから倍というのは金額的に倍ということも一つの計算方法だと思います。しかし、GNP対比が倍だ、こういう計算方法もあろうかと思います。それから実績ベースで倍だということもありましょうし、予算ベースで倍だ、こういうこともあると思うのです。  いろんな計算方法がありますけれども、しかし、日本の現状から推して最大限にふやしていこうという、そういう背景のもとに三年間に二倍にする、そういう結論が出たわけでありますから、計算方法もいろいろありますけれども、一番多い方法を取り上げるべきである、これが背景としての趣旨から当然のことである、このように私は理解しておりますが、その細かい点はまだ最終段階として詰まってはおらぬと思いますけれども、以上が大体の経過でございます。
  102. 西中清

    ○西中委員 大蔵省は、基準年次、それから円でお考えかドルでお考えか、その辺はどうなっておるでしょう。
  103. 岡崎洋

    ○岡崎説明員 経済援助につきましての基本的な考え方は、ただいま通産大臣がおっしゃったとおりだと思っております。  ただ、先ほど御質問がございました具体的に総理がアメリカに行かれまして三年間倍増ということをおっしゃられたそれの背景の基準年、あるいはそれがドルベースか円ベースかというお話でございますと、私ども経済協力担当の共通の理解といたしましては、基準年次は五十一年でございまして、実績で見る。それで基本的には、国際的にいろいろ援助額を云々されますのはドル基準で言われておりますので、ドル基準で言われたものをまず最小限考えなければならない。それ以上の努力につきましては、いま河本大臣がおっしゃいましたような背景を踏まえて考えなくてはいけないけれども、総理がおっしゃったことをそのまま私どもの受けとめ方といたしましては、ドルベースで考えるというのが最小限の話であるというふうに理解しております。
  104. 西中清

    ○西中委員 そうすると、総理が行かれるときは、その線で各省の合意は取りつけたということでございますか。
  105. 岡崎洋

    ○岡崎説明員 経済協力担当者といたしましては、それが責任を持った共通の理解であるというふうに考えております。
  106. 西中清

    ○西中委員 それは大蔵省だけがお考えなのですか。
  107. 岡崎洋

    ○岡崎説明員 大蔵省といたしましては、経済協力関係者はそのとおりに理解していただいておるというふうに思っております。
  108. 西中清

    ○西中委員 そう理解しておらない省庁は間違いだというお考えですね。おかしいんじゃないかという立場ですね。
  109. 岡崎洋

    ○岡崎説明員 そのようには思っておりませんで、通産省、外務省等もそのような基本線で理解をしていただいておるというふうに考えております。
  110. 西中清

    ○西中委員 外務省は、外務大臣が外務委員会で御発言になっておりますが、もう一度その内容をお知らせいただきたいと思います。
  111. 中村泰三

    中村説明員 五月十日、衆議院外務委員会におきまして、園田外務大臣は、三年間倍増の基準年次については五十一年を基準とするとの各省の打ち合わせがある。しかし、外務省としては、五十二年を基準にしても三年間で倍増になるよう最大限の努力をする所存であるという趣旨の発言をいたしております。
  112. 西中清

    ○西中委員 そうすると、大蔵省のおっしゃる同じ立場をとりつつ、外務委員会では変更といいますか、されたというように認識してよろしいんでしょうか。
  113. 中村泰三

    中村説明員 三年間倍増の具体的内容につきましては、五十一暦年をベースにして五十四暦年で倍増を図る。それから、ディスバースについての国際比較の基準でございますドルベースでもって倍増するが、同時に円ベースでもできるだけの拡大を図るという趣旨の関係省庁の了解がございまして、去る九日の本委員会におきます西中委員からの質問に対する私の答弁も、この関係省庁の了解を踏まえたものでございまして、五月十日の外務大臣発言の趣旨は、いま申し上げました関係省庁間の了解を踏まえつつ、外務省としてはなお一層今後経済協力の拡大のために努力してまいりたいという意図表明を行ったものでございまして、かよう御理解いただきたいと思います。
  114. 西中清

    ○西中委員 その際、円かドルかは明確になさいましたでしょうか。
  115. 中村泰三

    中村説明員 明確にいたしておりません。
  116. 西中清

    ○西中委員 若干、その辺に食い違いがまず出ていると思います。  それから通産省、きょうはおいでになってないかと思いますが、矢野通商政策局長は、これは十一日の日経新聞だったと思いますが、「円ベースで倍増ということがはっきりしている。ODAは国民総生産比何パーセントというように、GNPとの比較で議論されるわけでGNPを円ベースで表示している以上、ODAも問題なく円ベースで議論すべき性格のもの。いまさらドルベースでという話が出てくるのは理解に苦しむ。」こういうお話でございます。  大蔵省は、当然ドルでするのがあたりまえだというお話でございましたけれども、通産省、この新聞が間違ってないのかどうなのか、まずこれをお聞きをしておきたい。  それから、考えとしてはこれに変わりはないのかどうか、御答弁いただきたいと思います。
  117. 花岡宗助

    ○花岡政府委員 お答えいたします。  矢野局長は、そうあるべきであるというふうに考えておられます。
  118. 西中清

    ○西中委員 ということは、三年で倍増という時点においても、そうお考えであったということですか。
  119. 花岡宗助

    ○花岡政府委員 もともと五年で倍増というのが三年で倍増というふうに修正をしておられるわけですから、三年で倍増は円ベースで考えるべきであるというお考えでございました。
  120. 西中清

    ○西中委員 五年で倍増の時点でも円を基準にすることをお考えになっておったということですね、いまの御発言では。
  121. 花岡宗助

    ○花岡政府委員 五年で倍増の場合は、円というふうに考えておったと思います。
  122. 西中清

    ○西中委員 それから、次に予算の問題でございますが、外務大臣は補正予算も組むというお話をされたように聞いておりますが、その点はいかがでしょうか。
  123. 中村泰三

    中村説明員 私たちの了解といたしましては、外務大臣の方から進んで補正の問題について触れられたというふうには承知しておりません。
  124. 西中清

    ○西中委員 大蔵省はどうお考えでしょうか。
  125. 岡崎洋

    ○岡崎説明員 総理がアメリカでおっしゃられた三年間で倍増ということを達成するために、本年度そのために経済協力について補正が必要かどうかということでございますれば、私どもは特に考えていないと申し上げます。
  126. 西中清

    ○西中委員 そうすると、四月二十一日の政府決定で政府開発援助の拡大ということは精神論であって、予算的な拡大ではないという意味になるわけですか、大蔵省。
  127. 岡崎洋

    ○岡崎説明員 経済協力につきまして、いまの三年倍増という話は別にいたしまして、冒頭通産大臣もおっしゃいましたように、許される限りにおいてできるだけ努めてやっていくのが、現在の日本において必要であろうということでございます。したがいまして、その基本を踏まえまして一般論で申し上げますならば、五十三年度に補正が必要かどうかということは、補正の具体的な内容、それではそのためにどういう緊要性なりあるいは財源的な裏づけが必要かというようなことを総合勘案して考えなければいけないことでございまして、いまの時点で私どもがそういうことを考えているということではございません。
  128. 西中清

    ○西中委員 私が聞いているのは、それではないのです。予算が成立をして、四月二十一日の時点で政府開発援助を拡大しなければならないということは、来年度の予算の話なのか、いま時点の話なのかという問題を問題点にしておる。すなわち、円高対策としてこれを打ち出しておるのですから、私は、円高対策について政府決定をされるのに、来年の予算の問題としてこれを決定されるはずはないと認識をしておる。そういう悠長な内容だということですか。
  129. 岡崎洋

    ○岡崎説明員 経済協力費をできるだけ拡大していかなければいけないということは、おっしゃるとおりでございまして、その拡大の具体的な内容につきましては、それは予算を、先生御承知のとおり、五十二年度におきましては非常に大きな数字を組んでおりまして、それの完全消化を努めるということも非常に大きな問題でございます。そういった執行面のこともあわせ考えてやっていかなければならないしということも含まれておりまして、その時点で具体的にどういうものについてどう補正をしなければいけないかということを、私どもは考えておりません。
  130. 西中清

    ○西中委員 外務省にもう一度確認をいたしますが、この間の外務委員会で、補年予算の問題について大臣発言がなかったのですか。
  131. 中村泰三

    中村説明員 外務大臣からは、積極的な言及はございませんでした。ただ、外務委員の方から、三年間倍増という場合には補正も考えるのかという質問がありまして、大臣の方から、そのとおりだと思いますというふうな趣旨の答弁をされておるというふうに了解しております。
  132. 西中清

    ○西中委員 通産大臣はどうお考えでしょうか。
  133. 河本敏夫

    河本国務大臣 先ほども申し上げましたように、日本の置かれております現状から、できるだけ開発援助をふやしていこう、こういう趣旨でありますから、私どもは、総理が国際的にも日米首脳会談を通じてこの方針を明らかにされました以上は、現実にそれが実効ある方向に進んでおる、こういうことを世界に示す必要があろうかと思っております。  しかし、実はここ二、三年間、開発援助は非常に使い残しが多いのです。毎年相当予算が余っておる。そこで、私も予算ベースか実績ベースか、そういう計算方法もあるということを言ったわけでありますが、実は昨年も、どういうわけか相当予算が残っております。そういうこともございますので、先月四日に予算が通ったばかりでございますから、現時点ではたっぷり予算があるわけであります。  しかしながら、そういう基本方針が確認されまして、そしてこれを積極的に進めていくということであれば、あるいは年度の途中で足らなくなる、こういうこともあり得るかと思いますが、足りなくなれば、当然何らかの形で補てんしなければいかぬと思います。しかし、それはこれからのことでございますから、まだ未確定な要素もたくさんあります。だから、基本方針は踏み外さないようにしながら、今後情勢の変化に応じて適当な対策をとっていけばいいのではないか、こう思っております。
  134. 西中清

    ○西中委員 私も、基準年次であるとか、円かドルかなどということについてこだわっているわけではないのです。問題は、一国の総理がアメリカの大統領とトップ会談でそういうお話をなさる、そしてその理解が各省間で非常にばらばらである、ないしはおのおのの思いで走っておられることなんです。むしろこういう問題の論議としては、先ほど通産省の局長が談話でおっしゃっているように、GNPで先進諸国の平均、DACの加盟国の〇・三三%、こうした援助、またグラントエレメントの上でも最下位、こういう点をどう改善するかということの論議の方がやはり筋道であろう、私はそう思うわけでございます。だから、五年で倍増、三年で倍増、まことに結構だと思うのですけれども、こういうことが中途半端なままで議論をされるということ自体がむしろお粗末な話であって、真剣に政府開発援助を行う上においては、きちっとした責任のある発言として、裏づけのある発言として総理の口から出てほしかった、こういう思いでおるわけでございます。  そしていま、基準年次についても依然として食い違い、ないしは食い違いと言わないまでも、考え方は一緒だと言いながら若干のニュアンスの違いがある。円かドルかも若干のニュアンスの違いがある。先ほどからの論議で、三省の間でのお話を聞いておられてよくおわかりだと思うのです。大臣、どうでしょうか。私がこの問題について、一つは五年で倍増という問題についてこの前も御質問すると、各省の中でおのおのがプランを立ててやっておる。要するに政府として一本化したものはない。したがって、三年で倍増ということを含めて、対外援助については中期的な展望なり計画が必要ではないか、この点について大臣はどうお考えか。これがはっきりしたものが出ておったならば、どこを基準とかどこを基準にしないかということも非常に簡単に事が済んだし、円かドルかもはっきりしたと思うのです。  それから、もう一つ続けて御質問いたしますけれども、いまの補正という問題についても、すでに若干の食い違いが出ておる。私は、大臣期待をいたしております。総裁にでも出ようかとおっしゃっているくらいですから、実力大臣だ。何とかこの辺のところを早急にお話し合いをされて、政府としての統一した見解をお出しになる。補正予算はむずかしいにしても、いま議論になっていることについて一応の統一見解をお出しになるということ、これを期待しておるのですが、お考えはどうでしょうか。
  135. 河本敏夫

    河本国務大臣 若干、事務的に細目については詰まってない点が私もあるように思います。しかし、総理がわざわざ大統領との会談においてこの趣旨を述べられたということは、私が当初に申し上げましたような背景があるからでございまして、その趣旨が生かされないようであれば、やはり批判を受けることになろうかと思います。でありますから、わが国の現在国際的に置かれております経済的な立場、総理大統領との会談における発言、こういうことを十分考慮いたしまして、残っております未調整の分につきましては、関係各省でできるだけ早く調整をしてもらうように努めたいと思います。
  136. 西中清

    ○西中委員 以上で質問を終わりますが、いまもお話があったように、五十一年のドルベースなどということになれば、五十三年度予算ですでに二十五億円程度というように、予算面でいけば、実績はどうなるかわかりませんけれども、倍増しておるわけでございますから、こういうことにならないようにひとつ御努力をいただきたいと思います。  この関係で来ていただきました皆さん方は、退場していただいて結構でございます。  次に私が質問いたしますのは、消費者の信用、消費者の保護という点でクレジットカード、こういう問題についてきょうはお伺いをしておきたいと思います。  カード販売がわが国で実施をされて、すでに十八年ほど経過しておるわけでございます。その間、質的にも量的にも非常に大きな発展を遂げました。しかし、非常に急な発展でございますから、それなりにいろいろと問題を生じておるというように私は認識をいたしております。しかもこのクレジットカード、カード販売という点については、非常に種類が多い。そして一つ一つその仕組みが違う。条件が違う。そして業種が違う。ともかく今日、キャッシュレス時代といって、カードは持っておるわけでございますけれども、その内容には非常に問題が多い。これは当局としても十分御認識のことだと思います。  これは一つの例でございますけれども、いま最近の例として、たとえて言いますと、事故、不正使用、そういった問題でいろいろな手口があるようでございます。基本的には、たとえば自分が支払い能力がないのにこれを使う、こういつたこともありましょう。また、加盟店が会員に無断で不正使用することも不可能ではない、その例もあります。さらには、新しく会社を設立して、銀行に若干の信用をつけた上で会社ぐるみで不正使用をする、そして行方不明になってしまう。グループでこういった不正使用をするケースも最近では出てまいりました。もちろん、一番多いケースとしては、窃盗やまたは拾得をして不正に使用するというケースもございます。さらにはまた、いわゆるサラ金業者が、返済のできなくなった会員をおどして、返済のかわりに商品を購入させる。こういう例も出ておるわけでございます。  私は、京都府における不正使用の事件につきまして、府警調べとしてお伺いをしたわけでございますけれども、表に出ておるのは、五十年一月以降八件、十二名の検挙、被害件数三百三十四件、被害金額一千百三十九万八百十六円、こういったことで、たとえば一つの例として言えることは、人のカードを十六回使った、そしてカセットテープ、くつ、時計、ライター、指輪、その他被害総額七十万一千二百円、こういったような例も聞いておるわけでございます。過去のたしか業界ですか協会ですかの調査でも、一つのカードで一千万を超えるような被害も出ておった。要するに大変な状況になってきつつあるのではないかと私は認識をしておるし、このカードの仕組みを研究すればするほど、また悪用の道も広がるのではないか。これはアメリカの例を見ても明らかなところでございます。  ですから、こういった点について、そのカード保有者、加盟店、それからカード発行者、さらには銀行というように、いろいろとこれに関係する人たちが、いろいろと事故ないしは不正の防止のために努力をされておるのは、私たちも十分理解をいたしております。しかし、現在その不正使用の防止が果たして実効性があるのかどうか、これはまことに疑問でございます。そういった点で、消費者の保護を考え、同時にまた業界の健全な発展を考えていく、これが政府としての立場でなければならないと思います。  そこでお伺いをしたいのでございますけれども、現在わが国のクレジットカードの実態はどうなのか。発行枚数、そして取り扱いの企業、団体、年間取扱高、こういったものについて、まず御説明をいただきたいと思います。
  137. 山口和男

    ○山口(和)政府委員 いわゆるクレジットカードの制度につきましては、先生御指摘のように、いろいろな種類があるわけでございますが、大きく言えば、銀行系のクレジットカード、それから信販系のクレジットカード、その他ガソリンスタンドが行っておりますもの、あるいは百貨店等のものがございます。  銀行系クレジットカードにつきましては、これは会員がクレジットカードで加盟店で買い物をした場合に、カード会社が加盟店に会員にかわって代金を支払って、その後二十五日から五十五日までの期間内で会員の口座から自動的に引き落としていく、決済をしていくという方式でございますが、現在いわゆる銀行系クレジットカードと称されますのは、日本クレジットビューロー、ユニオン・クレジット、住友クレジット・サービス、ダイヤモンド・クレジット、ミリオンカード・サースビ、日本ダイナース・クラブ、この六社でございまして、古いものは創立以来十数年を経過しておる状況でございます。これらのカード会社の五十一年度の売上高は五千四十三億円ということになっておりますが、このうちカードの業務によります売上高が三千八百四十億円、会員数が約七百三十万人、加盟店が約五十六万店ということで、提携金融機関は延べで見ますと八百二十社ということで、かなり大きな規模になっておるわけでございます。  それから、信販系のクレジットカード業務につきましては、システムは銀行系カードとほぼ同じでございますけれども、支払い決済が分割払いで行われる、二カ月以上三回以上の分割によって決済がされるということでございますが、この事業につきましては、御案内のとおり、割賦販売法に基づきまして同法三十一条の登録制度がございます。現在登録いたしておりますのは百四社でございまして、この取扱高が、ちょっと古うございますが、五十年度で六千七百六十六億円、このうちカードによるものが千九十八億円ということで、カードの比率は比較的小さいわけでございますが、いずれにいたしましても、こういったカードシステムはキャッシュレス時代に入りまして今後もだんだん伸びていくということが言えるわけでございまして、それに対応しましていろいろと事故の案件もふえてまいるわけでございます。  事故につきましては、一応銀行系クレジットカードにつきましては月に千件くらいの届け出がございますが、そのうちの不正利用というのが一%程度と聞いております。また、信販系クレジットカードにつきましては、大手五社で年間六十件、事故金額一千万円程度というような報告を受けておるところでございます。
  138. 西中清

    ○西中委員 そうしますと、専門店、商店会、デパート、月販店、石油サービス、ホテル、レジャーその他についても相当の枚数が出ておるわけでございますけれども、その実態はどうなっておるでしょうか。
  139. 山口和男

    ○山口(和)政府委員 専門店等あるいはガソリンスタンド等につきましては、ただいまちょっと資料の持ち合わせがございませんので、後ほど調査をいたしまして御報告申し上げたいと存じます。
  140. 西中清

    ○西中委員 そうしますと、通産省では、こういった点について常時把握をされているというわけではないわけですね。
  141. 山口和男

    ○山口(和)政府委員 信販クレジットカードにつきましては、割賦販売法の登録手続がございますので、かなり実態の把握ができるわけでございますが、その他につきましては、特に法律の関係はございませんので、詳細はなかなかつかみがたい点がございますが、クレジットカードの発行枚数で見ますと、銀行系が七百万枚、信販カードが三百万枚、百貨店が四百万枚、石油が四百万枚、それから専門店、日専連とか日商連のカードが二百万枚というように、一応数字が出ております。
  142. 西中清

    ○西中委員 割賦販売法でカバーされておる信販会社の点は、監督官庁でございますからもちろん掌握をしておられると思います。ただ、いまこういう問題について法律的にカバーされる部分が少ないということで、ほとんど掌握されていないのも無理ないかと思いますけれども、私の方が各業界に問い合わせました結果によりますと、銀行系その他全部含めまして恐らく二千六百五十万枚ぐらいではないか、こういうように認識をしておるわけでございます。そういう点で、これだけ大衆化し、一般化し、そして量的に膨大なものになってきたカードについて、現在これに関する法律がほとんど整備をされておらないということは問題が多いのではないか、こういうように考えるわけでございます。  そこで、警察庁にお伺いをしたいのですけれども、この種カードによる犯罪実態はどうなっておるのか、お教えをいただきたいと思います。
  143. 宮脇磊介

    ○宮脇説明員 最近におきますクレジットカードの悪用事案の発生状況並びに検挙状況でございますけれども、クレジットカードの普及とともに増加をしているものと推定されるのではございますけれども、当庁といたしましては、統計的に集計をいたしておりません。したがいまして、数字につきましては不明ではございますが、先ほど御指摘のように、さまざまな形で事件が発生をいたしております。  最近検挙された具体的な事案で大きなものといたしましては、たとえば宮城県居住の元ナイトレストランのホストが、かねて交際しておりました仙台市内の女店員から窃取したクレジットカードを妻のものだと称しまして、仙台市内のキャバレー、ホテル、デパート等から六十一件、六百十万七千円余に及ぶ飲食、宿泊、商品詐欺を敢行した事案、また、住居不定、無職の男が、大阪市内のデパートで買い物客の背広のポケットから抜き取って窃取しましたクレジットカードを使用いたしまして、ほかのデパート等六十八店から三百一万五千余円に及ぶ商品詐欺を敢行した事案、また、窃盗の前科を持つ住居不定、無職の男が、同じく大阪市内の会社役員宅から窃取いたしましたクレジットカードを使用して、大阪市内の宝飾店等から二百九件、六百六十万円余に及ぶ商品詐欺を敢行した事案などがございます。
  144. 西中清

    ○西中委員 いまおっしゃいましたように、犯罪、検挙等についてはっきりしたものはわからない実情でございます。こういった点を考えてみますと、新しい手口といいますか、冒頭に申し上げましたように、サラ金業者におどかされて、ついていって、あれ買え、これ買えと換金しやすいものを買わされて、なお深みにはまるというようなケースも聞いておるわけでございます。ですから、サラ金の問題がどろ沼のようになったと同じように、こういうカードの悪用という点もこれからだんだんと組織的になり、かつまた悪質になるのではないかという危惧を深くしておるわけでございます。ですから、事が重大になって一般的になる前に、問題点をきちっと押さえるような立法措置が必要だと思います。  これはあるカード会社でございますが、紛失した場合は届け出をすることにほとんどのカードがなっておるわけですが、その件数の例といいますか、その会社のあれを見ますと、紛失したうちのおよそ一・五%が不正使用されておるわけでございます。何十万、何百万というようなカード会社の会員といいますか、加入者といいますか、カード保有者の数から見ますと、一・五%というのは絶対数においてかなり大きな数字になる。それから、その紛失したうちの不正使用を金額的に申しますと、取扱高の〇・〇八%。これはある会社でございますけれども、紛失届け件数年間二万、そのうち不正使用が三百件、金額一億七千万円。一つの会社の扱っておる業務の中で、不正使用がこういった数と金額を示しておるということは、非常に重大な問題だと思うのです。  この会社は、割賦販売法によるものでありませんので、法的に一々通産省なり大蔵省に報告することはないのでしょうけれども、また、皆さん方がこういう会社にいろいろと御質問をなさっても、実態はなかなか言わないと思うのです。信用にかかわる問題にもつながってきますから、できるだけ小さな数字で報告されるのが普通だと私は思いますし、実態はどうやらそのようでございます。ですから、きょうは、こういう事故が現実に毎日大変な数で起こっておるということをまず御認識いただきたい。  それは一体どこからくるのかというのが問題だろうと私は思います。これは消費者、すなわちカード保有者が、先ほど言ったように、法的に保護をされるような規制が実際問題としてないと私は思っておりますけれども、何かあるのかないのか、確認いたしたいと思います。
  145. 青山正明

    ○青山説明員 クレジットカードの取引関係は、先生も御指摘のようにいろいろな仕組みのものがございますが、いずれも民法には規定されていない当事者間の特殊な契約と申しますか、無名契約に基づいて行われている取引関係でございまして、特にこれを規制する私法上の規定はないわけでございます。
  146. 西中清

    ○西中委員 それで、加盟店がカード利用を求められた場合には、これはいろいろと形は違うわけですが、大きく分けますと、一つは、カード面上の署名と売上票の署名を照合する。それから、カード発行者から配付された無効カード通知表と照合する。要するにこのカードは無効であるかないかという通知表、これと照合する。それから、一回当たり利用限度額を超えた場合、カード発行者への電話連絡と承認。四番目、写真入りカードの場合は本人と写真との照合、こういったようなことが不正使用防止の方法として挙げられておるわけでございますけれども、私は、このいずれも非常に問題がある、このように思うわけでございまして、これだけでは本当の意味において不正使用は防げないというように認識をいたしておるのですけれども、どうお考えになるでしょうか。
  147. 山口和男

    ○山口(和)政府委員 クレジットカードの会員規約によりまして、加盟店が種々確認の義務を持っておるという点につきましては、ただいま先生から御指摘のございましたとおりでございまして、ただいまのところ、こういった会員規約によって不正使用を排除していくという方法しかない状況でございます。  ただ、消費者側から見ますと、もう一つ任意保険制度がございまして、任意保険制度によりまして、事故が起こった場合の消費者への損失補償といいますか、そういったことがある程度可能になっておるというのが現状でございまして、一応ただいまのところ、消費者保護上こういった形で何とかやっておるというように理解いたしております。
  148. 西中清

    ○西中委員 署名の照合は、まず見る方が素人ですから、練習していかれるとほとんどわからない。ある利用者に聞いた話でございますけれども、一回一回署名を変えていったけれども何も言わなかった、こういう答えも出ておるわけであります。お店が忙しいと、そんなものを一々見てない、これが一つ。  それから、無効カードの通知表、これも何点か問題がございますが、大きなところは、お客さんが来たときに、このカードは無効かどうかは、失礼で一々点検はできないというようなこともある。それから、この通知表は大体一定地域だけしか行かないという例が多い。全国的に全部出しているというわけではない。そういうケースもあります。それから、月に二回程度まとめて出すものですから、この紛失届なり無効という通知表は、相当日にちがたってから伝えられる、こういう問題もあります。  それから、一回当たりの限度額を超える、これは一つの抑止力にはなっておるわけですけれども、不正使用する側がそれを心得ておれば、小口でどんどんいく、こういうケースがほとんどでございます。  写真照合にはお金がかかる、だからいやがる。  そういういろいろな問題がある。  ここに一つ売上票を持ってきておりますけれども、カードの番号も、インプリンターという機械でやる場合は間違いが起こらない。しかし、これは人間の手で書いておるわけです。カードを見せてもらって、店員が売上票に番号を書いておるケースでございます。読み違えればよそへ請求が行ってしまう。同時に、こういう方式でやっておりますと、加盟店自身が破産に瀕したというような場合には、この売上票を自分でどんどんつくれば、まあまあ何ぼかのものを持って逃げていける、こういうケースも実際に事件としてあったわけでございますけれども、こういう点で不備な点も指摘ができるわけであります。  私は、カード所有者、保有者にことさら一つの恐怖感を与えるわけではございませんけれども、要するに、悪用しようとすれば非常にやりやすいような現行の状態というものを、いつまでも放置しておっていいのかどうなのか。大臣、どうでしょう。いままで論議をいたしてまいりましたけれども、かなりの数の複雑な形の多様な犯罪といいますか、問題が起こっておる。しかも、いまその十分な防ぎようがない、こういう姿でございます。これについて何らかの立法措置なり施策が必要だというように私は考えておるわけでございますけれども、どうお考えになるでしょうか。
  149. 河本敏夫

    河本国務大臣 私も、むずかしい問題があるということをいま初めてお聞きいたしましたが、何分十分研究しておりませんので、関係者とよく研究してみたいと思います。
  150. 西中清

    ○西中委員 そこで、四十七年四月衆議院商工委員会、また参議院商工委員会等でも割賦販売法の一部を改正する法律案の附帯決議が行われまして、これはクレジットカードだけではございませんけれども、その中には、消費者信用保護に関する基本立法について検討を進めるべきだ、こういうことがございました。  それから、四十七年十月には、関係各省大臣から成る消費者保護会議でなされました第五回決定には、消費者行政推進のために、「消費者信用に関し、消費者保護を図るための総合的立法措置について調査研究すること」とございます。  この点について通産省としてはどういうことをなさってきたのか、まずお伺いをしたいと思います。
  151. 山口和男

    ○山口(和)政府委員 消費者信用保護問題につきましては、ただいま先生からお話がございました四十七年の附帯決議等ございまして、私どもも種々な角度から検討をして進めておるところでございますが、消費者保護会議状況その他総合的な措置等につきましては、主として経済企画庁を中心に検討を進めてきていただいておりますので、企画庁の方からお話ししていただくのが適当かと思います。
  152. 西中清

    ○西中委員 四十八年二月、国民生活審議会の「サービスに関する消費者保護について」と題する総理大臣への答申の中で、「消費者信用保護のための統一的な立法措置の検討を進める」必要があると述べられておりますが、これについて何か具体的な動きをなさいましたでしょうか。
  153. 井川博

    ○井川政府委員 サービス関係では、消費者保護の関係が商品に比べましてどちらかといえばむずかしい、そのために問題がある、残されているというふうな意識から、四十八年に国民生活審議会の答申といたしまして、サービス全般にわたっていろいろな答申をいたしました。この中にはすぐ実行できるものもございますが、きわめてむずかしいものもございます。いま先生おっしゃいましたように、消費者信用に関して統一的な立法ということも提言いたしてございます。しかし、そのためには、ただいまクレジットの問題について先生がおっしゃいましたように、事業者を一体どういうかっこうでとらえるか、クレジットだけではなしに、サラ金等もこれは全部消費者信用の問題でございます。それで、そのとらえたものについてどうやって消費者保護のための体制を組んでいくか、大変むずかしい問題がございます。それで、実はその後、各省とも寄り寄りそういう方向での検討はいたしておりますけれども、基本的にまだ前進いたしておりません。  しかし、このまま推移してはいけないじゃないかというようなことで、実は昨年から、再び国民生活審議会の消費生活部会の中に第二分科会というのを設けまして、消費者信用の問題につきまして、これは立法を統一的にできるかどうかというのを含めて、できない場合には、じゃどういうふうな体制をとるのかというふうなことを現在検討いたしている段階でございます。関係各省とも相談をしながらそこらを進めてまいりたいと思っております。
  154. 西中清

    ○西中委員 大蔵省、金融制度調査会は、銀行制度の全面的な見直し、特に銀行の取引、サービス面における諸問題の一環として、信用取引の面における消費者保護のためにどのような立法措置が必要かについて検討を進められておるというように聞いておりますが、その点はどうでしょうか。
  155. 石川周

    ○石川説明員 五十年の五月に、銀行法を中心とした銀行制度を基本的に見直すための大蔵大臣諮問が金融制度調査会に行われまして、以来、銀行制度を中心としまして七つの項目にわたりまして審議を進めております。その中に、「銀行の取引、サービス面における諸問題について」という項目の中で、銀行の個人取引に関する審議を進めております。また、その審議の中で出ましたいろいろな議論を踏まえまして、行政でできるものはできるだけ早く実施をいたしたいという方向で、行政的にも勉強させていただいております。
  156. 西中清

    ○西中委員 これはカード販売だけに限らず、全般的な消費者信用保護という立場になるわけでございますけれども、いま各省で、附帯決議だとかいろいろ問題があって、審議会などでも検討はされているようでございます。  大臣にここでお伺いしたいのですけれども、アメリカでは、一九六八年、連邦法としての消費者信用保護法、さらには、六九年には統一消費者信用法典、イギリスは消費者信用法、フランスは消費者保護に関する法律、その他カナダ、ドイツも立法化し、七七年にはOECDが各加盟国に提言をしておるわけでございます。要するに、先進諸国では、消費者保護について、これはいろいろと内容的には差があるのでしょうけれども、少なくともこういった形で消費者を保護しよう、そういう立場で立法した経緯がございます。そこから見れば、少なくとも日本においてはそういう点では非常におくれているのではないかと思います。  大臣、どうでしょう。こういう問題について、早急にやはり一つ消費者を守るという立場で、すべて完璧というわけにはなかなかいかぬでしょうけれども、できるところからでもやっていこう、こういう御決意があるかどうか、お伺いしたいと思います。
  157. 河本敏夫

    河本国務大臣 関係者の間で、至急検討いたします。
  158. 西中清

    ○西中委員 附帯決議は四十七年ですから、もう出ましてから六年にも七年にもなるわけですから、いつまでも検討では困ると思います。  大臣、お急ぎでしたら、質問は大臣には以上で終わりますので、御退席いただいても結構です。  そこで、もう少し質問をさしていただきたいと思いますが、銀行系のカード会社があるし、また銀行とタイアップしたり、銀行が関与しながらカード会社ができておったり、いろいろな形があるわけです。少なくともカード会社は、カードの運営をするについて一定の責任を持っておる。そしてカード保有者は、その損害について無関係ではおれないし、保険も自分が掛けなければならない。掛けなければ大変なことになる。ところが、不思議なことに、この事業の多くが銀行がかんでおりながら、こういった問題についてはほとんど責任がないという関係でございます。これは考えてみますと非常に問題が多いんじゃないかというように私は考えておるわけでございます。  銀行系のカード会社六社、年間取扱高は五十二年で五千五百億円と聞いておりますが、このうち代金取り立て事故と言われるものはどの程度あるか、さらにはその不正使用はどの程度あるか、御説明をいただきたいと思います。
  159. 山口和男

    ○山口(和)政府委員 銀行系のクレジットカードの各社から聴取いたしましたところによりますと、事件の件数は毎月千件ぐらいの届け出がございますが、このうち大部分はカードの紛失でございまして、そういった事故の中で不正利用をしておる比率は一%程度というように聞いております。したがいまして、各社大体月に十件程度、年間で七百件程度ということになるわけでございます。
  160. 西中清

    ○西中委員 業界の常識では、大体代金取り立て事故は〇・四%、ですから、これが取扱高からいきますと、およそ二十億円程度になるわけですね。そのうちの不正使用は、いまのお話と若干違って二〇%ぐらい、こう言われております。そうしますと、年間四億四千万円ぐらいは不正使用が発生をしておるということになろうかと思います。ですから、こういう点について大蔵省としては何らかの監督の必要をお感じになっておらないかどうか。  さらにまた、これは多くの会社が銀行の出資比率が非常に高い。私に言わせれば、銀行は生みの親で、育ての親だ。そしてこういった問題についてなお問題なことは、預金なりお客さんをふやすためには、このカードの保有者をどんどんとふやしていく、そして銀行取引をして預金をしてもらう。こういう銀行側の事情と相まって、やはり事故、不正使用等につながる問題も実は出ておる。銀行が持ってきたといいますか募集したカードは、全部カード会社が信用があるのだという前提で受け入れておる。しかし、実は業者自身も、こういう形でどんどん進められると、いつか大きな穴があくのではないかという危惧もいま持っているということは事実だろうと思います。こういった点について大蔵省の所感をお伺いしたいと思います。
  161. 石川周

    ○石川説明員 カード取引は、先生御承知のように、消費者とカード会社と物を売る業者との三角関係の取引関係かと存じます。その場合、銀行系というようなものが出てまいりますのは、その三角関係の信用取引がいろいろな金融機関の口座を通じて行われますと、その三者が非常にやりにくいことになる、その決済あるいは振りかえといったようなものがある特定の口座に集中しておった方がやりやすいという三者間の事情から、ある金融機関に口座を特定していくという傾向が、どうしても取引の便宜上出てくるのではないかと思います。そこで、ある口座を使うということになりますと、金融機関がおのずから特定される。そこで、ある金融系というようなものが自然に出てくる。また銀行の方も、御指摘のように、そういうような取引の傾向を多といたしまして預金者獲得に走るということはあり得ることかと存じます。  しかし、そのような取引の特殊性から出てきた銀行系というような問題でございますので、金融行政の立場からいたしますと、その三者取引のクレジットカードの取引と、その取引によって生まれる信用の金融を補完するために業者に対する金融をする問題と、あるいはその振りかえの問題と、これは峻別しなければいけない、こう考えております。したがいまして、銀行系というクレジット会社が出てくるのはこれは自然の流れと思いますけれども、関連会社として業務が混在しないように峻別するという方向で、むしろ銀行を指導しているわけでございます。  そこで、先生の御指摘のその三者のクレジットの消費者信用の問題は、金融という問題よりももう一つ大きな次元から考えられ、規制されていかなければいけないんではないかということで、先ほどから御指摘のような問題を踏まえながら、経済企画庁を中心にして私どもも議論に参加させていただいているところでございます。
  162. 西中清

    ○西中委員 時間もなくなってまいりましたけれども、カード盗難の際に保有者を守るということで、保険制度がございます。ただ、この保険制度は問題が多いのではないか。カードの発行者が一方的に決めた約款といいますか規約といいますか、それによってこの保険に入らすということは、カードが他人によって不正使用されながら、保有者が責任を負う。何の気なしに、みんな一つ社会通念のようなことで保険に入っておるわけですけれども、他人が勝手に保有者のような顔をして、詐称して取引した、これは法の原則からいうと、カード保有者は代金の支払い義務がない、そうすると、損害賠償義務もない、こういう形だと思うのですね。ですから、保有者に保険を掛けさせること自体は、特別な責任を保有者に課しておるという非常におかしなものだと思います。  要するに、不正使用の結果についてはカード保有者に全責任があるということを前提にした制度、保険料をすべてカード保有者が負担している事実、これを見ればこの点は明らかだと思います。こういう点について、法のたてまえからいっておかしいというふうに私たちは思いますけれども、御見解をお伺いしたいと思うのです。
  163. 山口和男

    ○山口(和)政府委員 先生御指摘のように、クレジットカードの利用者に事前に約款が示されまして、その損失負担を一応カードの保有者が負うということがこの約款に規定されておるということでございまして、その損失負担をするというために保険制度に入るという形になっておるわけでございます。こういった約款の効力につきましては、確かにいろいろ問題はあろうかと思います。それがあるいは違法な面を持っているんじゃないか、あるいは著しく妥当性を欠いているんじゃないかというような問題もあろうかと思います。  しかし、一方では、先ほどお話がございましたように、加盟店に本人確認の義務等が課せられておるということによりまして、加盟店の責任が追及されるという面もございますので、こういった点を考え、また一応契約自由の原則というようなものを考えますと、直ちにこういった条項を含む約款が違法とかあるいは妥当性を欠くということも言いがたいんじゃないかと思われるわけでございますが、私どもといたしましては、こういった消費者保護の問題は非常に重要な問題でございますので、法的な措置が必要なのかどうか、そういった点も含めまして今後検討を進めてまいりたいと考えておるところでございます。
  164. 西中清

    ○西中委員 最後に質問をいたしたいと思います。  いま御説明あったけれども、どこから考えても、たとえば自分が家に置いてあったカードをどろぼうが入って持っていった。最終的に保険に入っているからそれによって補てんされて、だれも、カード会社も損をしなければ、銀行も損をしなければ、加盟店も損をしない、結局保有者が掛けた保険でこの事件は終わりになる。ですから、あくまでも前提が保有者の方に責任があるということになっているのですから、これは奇妙な問題ではないかと思うのです。私は、原則論から言えば民法上からも問題があるのではないか、こう思っております。  それから、最後の質問ですけれども、売買契約上の抗弁の確保という問題でございます。  商品についての抗弁をカード発行者に対しても主張できるかどうか。これは大体規約ではできないというのが大半の業者の約款になっております。この点についてはどういうようにお考えになっているか、この問題について御答弁をいただいて質問を終わりたいと思います。  要するに、品物を買ったけれども、それがたとえば欠陥品だということがわかった。普通ですと、これは支払いを少しとめて、商品の問題について話し合いをするとか取りかえをするとかいうことはできます。しかし、このカード会社の場合は、自動的にもう支払いがなされてしまうわけですから、消費者としては非常に弱い立場です。お金を取られてしまってから文句をつけても、なかなか向こうは言うことを聞かない、抗弁ができない。この問題についてどうお考えなのかとお聞きをしているわけです。
  165. 山口和男

    ○山口(和)政府委員 販売された商品の瑕疵につきましての抗弁力が、カード使用の場合に非常に行使ができなくなってくるという御指摘かと存じます。  確かに、物品を購入する場合の一つのこういった形態によって、実際面で抗弁力が制約されてくるという点があるかと存じます。ただ、法的にこのカードの決済との関係等をどういうようにそれを理解し、どういうように対策を講じていくか、そういった点につきましては、今後十分検討してみたいと存ずるところでございます。
  166. 西中清

    ○西中委員 終わります。
  167. 野呂恭一

    野呂委員長 次回は、来たる十六日火曜日午前十時理事会、午前十時三十分から委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。     午後三時五十九分散会