○
及川参考人 電信電話公社に働く
労働者でつくっております
組合の
及川でございます。本日は、
参考人としてお呼びいただきまして感謝申し上げます。
御
承知のように、私
どもは、
データ通信として
情報産業の
分野の
情報処理業務に携わっておりますので、その
立場から
意見を申し述べたいと存じます。
今回上程されております
法案では、
情報処理業は
対象外とされておるわけでありますが、当初の考え方では、
公社の
データ通信も適用されることになっておりましたため、私
たちとしてはそれ
自体に反対の
立場をとったという経緯がございます。そして結果としては
情報処理業が外されたわけでありますから、問題は解決をしたとお考えになる方も一おられるかと思いますけれ
ども、私
たちは、
情報処理業を含めまして、
情報産業の問題をそのように実は単純に考えておらないのであります。
情報化社会ということが言われております今日、
情報産業は、
ソフト、ハード含めまして、
未来産業あるいは
知識産業として
中心的な
立場に立つだけでなくて、あらゆる
産業、そして
政治、
経済あるいは教育や医療と、私
たちの
生活に重大なかかわりを持ちつつあることは御
承知のとおりでございます。つまりコンピュータリゼーションという言葉が示しておりますように、
経済社会のあらゆる
分野で
コンピューターが使われまして
情報処理が行われるようになってまいっております。したがいまして、
情報産業は、単に
情報産業それ
自体の
産業としての問題にとどまらずに、
情報産業を通じて他の
産業や
政治経済、そして
国民生活をコントロールし得るものだというふうに理解をいたしております。
たとえば、私
どもが携わっております
データ通信サービスの
一つに、
全国銀行データ通信システムというのがあります。これは
コンピューターによるオンライン
システムによって、
日本銀行を初め
全国八十八の
銀行をつなぎまして、
為替交換などの
サービスを提供しているわけでありますが、これは
効率化や
能率化ということと別の
側面から見てみますと、わが国の
金融市場を、
ユーザーを預っているものの
意思一つによってコントロールすることができるというようなことが考えられるわけであります。これは
一つの例でございますが、こうしたことになったら大変な事態ではなかろうかという問題が含まれているように私
どもは思っているわけであります。
また、このような中で、私
たち個々人のデータも、行政や
企業等の
幾つかの
コンピューターの中に記録され、処理され、使われております。しかし、その実態を私
たち自身は全く知らされてもいないし、知らないところにプライバシー問題も発生すると思っております。
コンピューター利用の進行が
管理社会化や
プライバシー侵害の危険をはらんでいることは国際的に見ても明らかでありまして、
アメリカを初め
ヨーロッパ各国が
プライバシー保護のための
法制化を進めておりますことは御存じのとおりでございます。
しかも、ここにもう
一つの
側面といたしまして、
IBMやGEを初めとする
外国資本の圧力の問題がございます。
IBMの力につきましては、
先ほども
富士通の副
社長さんが御指摘になりましたが、私がここでいまさら申し上げるまでもないと思いますけれ
ども、先日通産省からいただきました資料あるいは
コンピュータ白書等によりましても、わが国の
国内メーカーと
IBMとの格差というのはかなりの差があるというふうに考えております。具体的に申しますと、
IBMの一九七六年度の
売上高を見ましても、四兆四千億から六千億というような
状況でありまして、わが国主要
コンピューターメーカー六社の
売上高の合計六千三百五十一億円のざっと七倍ということになっているわけでありまして、わが国最大の
コンピューターメーカーと言われる
富士通の
売上高を見ましても、二千三百九十六億円ということですから、約二十倍ということになっている実態だと思っています。その上、外資系
企業の
日本アイ・ビー・エムの売り上げが二千七百五十四億円で
富士通を上回っていることもちょっと私
どもとしては気にかかるわけであります。
情報処理業の場合を見ましても、
アメリカの場合は一社当たりの平均
売上高は三百十四億円で、わが国の平均三十三億円の十倍に近く、従業員数も、
アメリカの平均三千二百人に対して、わが国は四百二十人と八分の一にすぎない
状況に実はなっているわけであります。電電
公社の
データ通信業務における
情報処理部門の年間売り上げは約四百八十億円ですから、どうやら
アメリカの平均を上回り、肩を並べられるというような
現状にあるわけであります。
特に最近では、
コンピューターネットワークの時代と言われ、それは国境を越え、海や空を越えまして全地球上に張りめぐらされる勢いにあります。たとえば、すでにわが国でも提供されておりますGEのタイム
シェアリング
サービスのネットワークは二十一カ国五百都市に及んでおり、タイムネット社のデータ伝送
サービス網では、イギリス、フランス、西ドイツ等ヨーロッパを
中心に九カ国にまたがり、あるいは共同利用ネットワークとしてのSITAは、
世界九十カ国の航空会社を結んで座席予約等の
サービスを行い、同じくSWIFTは十数カ国の
銀行をつないで国際
銀行業務を行っているような
状況にあります。これらの国際情報
サービスは、いずれもわが国への上陸を期し、あるいはすでに上陸をしているわけであります。さらに、
IBMは現在独禁法により
情報処理に進出できないことになっておりますが、通信衛星の利用が認可されておりますから、一九七九年からは別会社をつくって国際情報
サービスの提供を始めるとされているところであります。
このように巨大な
外国資本に対抗し得る
企業は、
先ほど申し上げましたように、残念ながらわが国にはないのではないかというふうに思っております。
公社といえ
ども技術の蓄積を含めて、決して十分だとは思っていません。データベースや
情報処理システムがこれらの
外国資本に席巻されるならば、それはわが国の
政治、
経済が支配されることを
意味しますし、ゆゆしき問題と言わなければならないと思っています。
データベースや
情報処理の国際化によりまして、
プライバシー保護も国際間のデータ流通のあり方の問題として論じられまして、昨年の秋にはOECDのシンポジウムも開かれているような
状況にあります。
以上、申し上げましたように、
情報産業は一国の
政治、
経済のあり方にもかかわるきわめて重大な
立場にありますから、その
意味では、
産業構造審議会の中間答申として出されております「今後の
機械情報産業の進むべき方向及びこれに対する施策のあり方」の中で指摘されている問題そして政策が必要であるとの提起はそのとおりであろうと思います。しかし、私
どもの
立場としては、どういう
立場に立ってそういった政策が策定されるかということが問題であります。
私
たちは、
情報産業の持つ
性格というか
意味するものを考えますとき、それは単に個別的な
産業の振興策では問題がきわめて矮小化され、基本的な政策になり得ないと実は考えているところであります。それは
産業の
立場や
経済的な視点からのみ問題を論ずるのではなくて、
管理社会化の進行やプライバシー問題、労働問題含めまして、国民的、社会的な
立場に立った国としての総合的な基本政策の確立というものがどうしても必要ではなかろうかというふうに思っております。その中で、ハード、
ソフトあるいは
情報処理など、それぞれの
産業をどう振興発展させるかが考えられるべきでありましょう。とりわけ
技術的にも資本的にも絶対的に優位に立っている
IBMやGEなどの巨大な
アメリカ資本にどう立ち向かうのかという点では、現在のように、無原則的とは申しませんが、自由
競争に任された形、そうして各省庁がそれぞれなわ張り争い的にばらばらな行政を進めているようでは、とうてい太刀打ちができないと私は思っているところであります。
アメリカの
情報産業が今日のように発展をいたしましたのは、NASA計画という国家的プロジェクトによって巨額の
政府資金を投じ、
政府、民間のそれぞれがそのプロジェクトに参加する中で、相互に協力し合い、総合的な力となって発揮されたところにあると私は思っています。
日本におきましても、このような
アメリカの例に学ぶべきではないだろうかと思っております。もちろん、国家的プロジェクトが軍事目的であってはならないと思っております。平和プロジェクト、すなわち国民福祉向上のためのプロジェクトを設置いたしまして、国の思い切った資本投下によって、民間も
公社もその中でその持っている力を出し合い、相乗的な効果を発揮することが必要であろうかと思っております。
私は、決して
公社の
データ通信だけが優位に立ちたいとか、民間
情報産業の振興に反対するものではありません。要は、それを総合的に総括、指導する機関が必要だということで、今回の
機情法の範疇ではまだまだ不十分だということを申し上げているわけであります。今年末にスタートすると言われておりますECの
コンピューターネットワーク、ユーロネットは、
アメリカの情報
サービス業の脅威に対抗したEC各国の共同
開発によるものでありまして、この例を見ましても、
情報産業政策はもはや高度な
政治的
課題であるということができましょう。私
ども全電通労働
組合は、一九六九年に
データ通信における三原則、すなわち
データ通信が、第一に平和と
国民生活の向上に資すること、第二に情報の社会性の維持拡大と民主的管理、第三にプライバシーの保護の三点を
中心にした政策を明らかにいたしました。自来、その
立場に立って国民的次元での基本政策の樹立を主張してまいりました、また
プライバシー保護の国民運動も提唱いたしまして、現在運動の
中心となって進めておりますが、現在のような情勢のもとにありましては、我田引水ということではありませんが、私
どもの提起に
誤りがなかったとの確信に立つことができるのであります。
本
機情法の国会審議に際しまして私の申し上げました
立場を御賢察いただきまして、商工
委員会の皆さんの
参考に資せればということで申し上げました。
大変ありがとうございました。