運営者 Bitlet 姉妹サービス
使い方 FAQ このサイトについて | login

1978-04-11 第84回国会 衆議院 商工委員会 第17号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和五十三年四月十一日(火曜日)     午前十時四十分開議  出席委員    委員長代理 理事 武藤 嘉文君    理事 中島源太郎君 理事 山崎  拓君    理事 山下 徳夫君 理事 岡田 哲児君    理事 渡辺 三郎君 理事 松本 忠助君    理事 宮田 早苗君       小川 平二君    鹿野 道彦君       粕谷  茂君    藏内 修治君       中西 啓介君    楢橋  進君       渡部 恒三君    渡辺 秀央君       板川 正吾君    後藤  茂君       清水  勇君    武部  文君       中村 重光君    長田 武士君       玉城 栄一君    安田 純治君       大成 正雄君  出席国務大臣         通商産業大臣  河本 敏夫君         国 務 大 臣         (経済企画庁長         官)      宮澤 喜一君  出席政府委員         公正取引委員会         事務局経済部長 妹尾  明君         公正取引委員会         事務局取引部長 長谷川 古君         経済企画庁物価         局長      藤井 直樹君         通商産業政務次         官       野中 英二君         通商産業大臣官         房審議官    島田 春樹君         通商産業大臣官         房審議官    山口 和男君         通商産業省貿易         局長      西山敬次郎君         通商産業省生活         産業局長    藤原 一郎君         資源エネルギー         庁長官     橋本 利一君         資源エネルギー         庁公益事業部長 服部 典徳君         中小企業庁計画         部長      小松 国男君  委員外出席者         経済企画庁調整         局審議官    田中誠一郎君         科学技術庁長官         官房参事官   児玉 勝臣君         農林省畜産局食         肉鶏卵課長   甕   滋君         通商産業省産業         政策局商政課長 野々内 隆君         運輸省船舶局造         船課長     間野  忠君         商工委員会調査         室長      藤沼 六郎君     ————————————— 委員の異動 四月七日  辞任         補欠選任   米沢  隆君     玉置 一徳君 同月十一日  辞任         補欠選任   二見 伸明君     西中  清君   大成 正雄君     山口 敏夫君 同日  辞任         補欠選任   山口 敏夫君     大成 正雄君     ————————————— 四月七日  小売商業調整特別措置法の一部を改正する法律  案(森下昭司提出参法第七号)(予) 同月十日  中小企業経営安定等に関する請願矢野絢也  君紹介)(第二八〇二号)  同外三件(浅井美幸紹介)(第二八八〇号)  同(沖本泰幸紹介)(第二八八一号)  同外四件(正木良明紹介)(第二九〇二号)  大規模小売店舗における小売業事業活動の調  整に関する法律の改正に関する請願安田純治  君紹介)(第二八八二号) は本委員会に付託された。     ————————————— 本日の会議に付した案件  通商産業基本施策に関する件  経済計画及び総合調整に関する件  私的独占禁止及び公正取引に関する件      ————◇—————
  2. 武藤嘉文

    武藤(嘉)委員長代理 これより会議を開きます。  本日は、委員長が所用のため出席できませんので、委員長の指定により、私が委員長の職務を行います。  通商産業基本施策に関する件、経済計画及び総合調整に関する件並びに私的独占禁止及び公正取引に関する件について調査を進めます。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。安田純治君。
  3. 安田純治

    安田委員 私は、まず最初に、この異常な円高について宮澤経企庁長官にお伺いしたいと思います。  政府は、円高対策として政策目標を持っておるのかどうかという点です。黒字減らしとか内需拡大とか輸入促進とかの対策を強調されておるようでありますが、円レートを幾らにするという目標を持って、その目標を達成するためにいろいろな施策をとろうとしておるのか、それともそういう目標はないのか、まず、それをお伺いしたいと思います。
  4. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 基本的に申しまして、政府は、先進工業国間の合意でありますところのフローティングシステムを採用いたしております。乱高下がございますときには介入をいたすこともございますけれども、基本的には市場実勢に任せるということでありますので、したがいまして、政策といたしましてはフロート基本にいたしておるわけであります。そういう意味から申しますと、どの程度の円が妥当である、あるいはそれを目標にするといったような考え方はとっておりません。
  5. 安田純治

    安田委員 円レートわが国経済実態にふさわしい水準に引き下げたい、こういう御意思はあるのかどうか。
  6. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 もしわが国経済の力にふさわしいレートというようなものが考えられるといたしますならば、それは固定相場的な制度が可能であるということになるわけでございますけれども、わが国を初めとして米国その他の諸外国の情勢を考えてみますと、そういう固定的な制度は可能でないというのが現状であるというふうに認識をいたしておるわけでございます。
  7. 安田純治

    安田委員 そうしますと、実際いま市場で形成されておる円レート現実にあらわれる円レートが、すなわちわが国経済実態にふさわしいとお考えなのかどうか。
  8. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 何が実勢かということは、実はわかったようで非常にむずかしい問題であると存じますけれども、少なくとも二月の中旬ごろからの非常に急激でありました円高、一日に何円も動くというようなことは、相場という要因相当入っておるというふうに私は考えております。
  9. 安田純治

    安田委員 大臣は、前に外務大臣をやられて、その後一時閣内から去られて、その後経済企画庁長官おなりになったわけですけれども、企画庁長官おなりになる前と現在とで、円高問題についてのお考えはお変わりになったのか、同じなのか、その辺をお伺いしたいと思うのです。
  10. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 基本的にわが国先進工業国間の合意であるクリーンフロートをとるしかないということにつきましては、私は、政府に入ります前とただいまとで変わっておりません。しかし、余り急激な変動というものは好ましくないので、日本銀行乱高下を防ぐために介入をするということも、時によって必要であるということも従来から考えておりますし、ただいまもそのように考えております。
  11. 安田純治

    安田委員 自民党機関誌の「自由民主」という冊子の七八年一月号に、「一ドル二百四十円時代への対応」という特集がなされておるようでございまして、そこに掲載されておるところで、大臣は次のように述べておられるわけであります。読んでみますと、「私自身は率直にいって、政府日銀はどんなにドルを買ってもいいから、二五〇円を防衛すべきだと思いました。」「一〇日間に一二円も上がったりするようなことは、明らかにスペキュレーターを相手にしていることで、これに立ち向かわなければ、政府というのは何のためにあるのかということにすらなる」、ここまでおっしゃっておるようであります。  そこで、改めてお伺いしたいのですが、二百五十円を防衛ラインとするかどうかはともかくといたしまして、わが国経済を守るためにきちんと目標を持って手を打つ、対処するということは、全く当然のことだと思うのです。この自民党機関誌自由民主」に掲載されておる座談会での大臣の御発言を見ますと、「二五〇円を防衛すべきだ」——二百五十円はその当時の話でしょうけれども、そのためには「政府日銀はどんなにドルを買ってもいいから」というお言葉もございますし、それから「これに立ち向かわなければ、政府というのは何のためにあるのかということにすらなる」というところまで強くおっしゃっているわけですから、もし経企庁長官おなりになる前と後とであなた自身のお考えにお変わりがないとすれば、この発言はそのまま現在の大臣のお考え、こういうふうに受け取ってもいいと思うのですが、いかがでしょうか。
  12. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 ただいまお示しになりました対談でございますか、あるいは意見でございますか、私の申しましたこと、一月にと言われました。したがいまして、そのようなことを申しましたのはそれからしばらく前の時期であったと思いますが、振り返ってみますと、円が二百五十円台になりましたのは十月六日でございます。このときに二百五十九円という相場が生まれまして、二百六十円を割ったわけであります。そこらあたり段階で私が考え方を申しましたのは、その五十円という線を未来永劫に守れという意味ではありませんで、まさにいまお読みくださいましたように、十日で十何円も上がるというようなことは好ましいことではない、したがって、そのような動きに対しては日銀はその都度相当金を使っても介入すべきであって、長い間にそれが二百四十円になり、さらに上がるというのなら別でありますけれども、そういうふうにすべきであるということを確かに思っておりましたし、おっしゃいましたようなことを私は申したと思います。  それは円が二百六十円を割り込みました十月の初めから終わりごろにかけてのことであったろうと考えております。その考えは、つまり一週間に十円も動く、一日に三円も動くというようなことはいかなるときにも適当なことではないので、その都度その都度それをならしていくということはある程度必要なことだというふうにいまでも考えております。
  13. 安田純治

    安田委員 確かにおっしゃるように、この座談会はこの機関誌によりますと十一月八日に収録した、こういうことになっておりますので、大体その時期だろうと思いますけれども、そうしますと、昨年の十一月八日から今日まで、また物すごく円が上がっているわけでございます。確かに大臣のおっしゃるように、経済実勢というのは非常にはかりにくい。しかし、乱高下は必ずしも実勢を反映しているわけではないとおっしゃる。そうしますと、スペキュレーションが行われたと思われる乱高下が始まる以前の状態が、果たして日本経済実勢を反映した円レートと言えるのか。そのことと絡んで、しからば昨年の十一月八日以後、この座談会が行われてから以後のこの円の急騰ということ、これはどうしても実勢を反映しているとは思えないわけです。それほどわずか数カ月日本経済実勢がこの円レートにふさわしいものになったとはとうてい思えないわけですから、したがって、いまもスペキュレーションが行われたための円高であるという面が長官のおっしゃるようなことだと言えるのではないか。  してみれば、やはり十一月八日の座談会でおっしゃったように、どんなにドルを買ってもいいから立ち向かうべきである。二百五十円ライン防衛するかどうかということは、それは確かに十一月八日の段階でしたけれども、しかし、その後の円の急騰をずっと考えますと、やはり事態は同じことで、その後の円の急騰がまさに日本経済実勢が急激に上がったわけだとはとうてい考えられませんから、してみれば、この御発言のような政府日銀がどんなにドルを買ってもいいから一定の線を防衛すべきだ、少なくともスペキュレーションが行われたために、それによってその反映として行われる円高、これについてはいかなることがあっても防衛すべきだ、そういうことをしなければ政府というのは何のためにあるのかということになると思うのですよ。その点、お考えをお聞かせいただきたいと思う。
  14. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 おっしゃいますように、非常に乱高下があるというときにはやはり防衛すべきだと考えておるわけでございますし、昨年またそれをいたしたわけでございますが、それはその防衛線というものが未来永劫変わらない、これがもう最後ざんごうであるというような考え方で私は申しておるわけではございませんので、したがいまして、昨年の十月ころにはそういう防衛が一度ございまして、二百三十円台に一遍なりましたのは一月の初めでございますが、その後ちょっと落ちつきまして、次の波は二月の中旬ころから来たわけで、その辺でまた防衛をいたしております。相当の金を使ったと思うのでございますが、そうしつついまのところに来た。そのような乱高下をとにかくならしますために、あるいは上がっていく——結果としてはずっと上がってきたわけでございますから、それを少しずつでも滑らかにするための介入というものは私は意味があったと、この二月以来のことを振り返って考えておるわけでございます。  そこで、いまのが実勢であるのかあるいは昨年の十月ころが実勢であるのか、そんなに急に実勢が変わるはずがないではないかと言われることは、私もそう思います。その点は、ある意味では株式相場と多分似ておるのでありまして、相場ですから、この会社株価はどこが実勢か、現在の株価と半月前の株価と大変違いますが、そんなに実勢が動くわけではないということと、私は相場という要因では似ておると思います。つまりある意味でいろんな短期——円ドルの場合には短期の需給というものがかなり反映いたしますし、その上に投機的な動きが入ってくる。全く実勢と無関係だということは申せないわけでございましょうけれども、この半年間に実勢がこれだけ日本経済の実力が変わったというようなことは申せないことでございますから、それはやはり輸入予約でありますとか、輸出予約でありますとか、あるいはかなり一月から輸出が年度末にかかってふえましたので、そういうこととの、輸出手形というようなこととの関係があったろうと思うわけでございます。     〔武藤(嘉)委員長代理退席中島(源)委員長代理着席
  15. 安田純治

    安田委員 とにかく、昨年十月の末の段階で、二百五十円はどんなことをしてでも防衛すべきだとおっしゃった。それから以後ずっと急騰しておって、おっしゃるように、株式相場の場合に、ある程度短期的に上がったから、その会社実勢が一体どれだけ反映しているのかという測定は、数字的にきっちりするのはむずかしいかもしれませんけれども、少なくとも不自然であるということは言えるのではないか。  つまり去年の十月の末段階で二百五十円をぜひ防衛をしなければならないとおっしゃった長官が、現在のわずか数カ月の間のこの円の急騰を見た場合に、どうしてもこれは二百五十円が経済実勢であるとすれば、まさに数カ月でそんなに変わるはずはないし、したがって、この座談会でおっしゃった二百五十円というのは、何のために二百五十円という線を出されたのかよくわかりませんけれども、二百五十円が当時相当であるとお考えになったでしょうし、いまだってそれは何も特に変更する必要はないのじゃないか。当時二百五十円という数字を出された理由は何なのか。これを日本経済実勢に合うというふうにお考えになって二百五十円というラインを出されたのかどうか、改めてその辺はいかがでしょうか。
  16. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 それは先ほども申し上げましたが、二百六十円を初めて割りましたのが十月の六日でございます。そして七日からずうっと五十九円から十月十四日には二百五十四円になっておるわけでございますから、かなりここで急に動いております。私の申したかったことは、二百五十円というのが何もわが国の円の水準として適当である、したがってというふうに申し上げたのではなくて、このときには七日間で五円ほど動いておりますけれども、ずうっと毎日毎日上がっていくというようなことは、これは国民生活に無用の不安と摩擦を与える、したがって、そのようなことをただ傍観すべきではない、少なくともここではやはりそのような趨勢を緩和するための努力を政府相当の金を使ってもすべきであるということを私は申したかったわけでありまして、二百五十円そのものが、これがいわば妥当な相場であるからこれを守れと言ったわけではないわけでございます。
  17. 安田純治

    安田委員 そうおっしゃいますけれども、その後の御発言を見ますと、こういうこともおっしゃっていますよ。「今年は二九二円で始まった。ある程度、時間をかけてある相場が生まれていくというのなら介入しないほうがいいという気持ちがありますのでね。しかし今度のは全くデタラメな話だから、そういうものには買い向かうべきだと思うわけですよ。」つまり、ことしは二百九十二円で始まった、それが約十カ月ですか、十月の末ころになると、これはおっしゃるように二百六十円を割った、これを全くでたらめな話だ、こうおっしゃっていますね、その後で。しからば、去年の十月末の二百五十円近くなってきた相場が、現在わずか数カ月でずっと上がっておる。これもまたでたらめな話だというふうになりませんですかね。その辺どうですか。
  18. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 二月の中旬以降、政府は、日本銀行は、相当介入をいたしたと私は見ておりますけれども、これはまたいかにも上がり方がいわば急であった。でたらめという言葉を使いますかどうか、いかにも乱暴な上げ一方でございましたから、このようなことをそのまま放置しておってはよくなくて、やはりそれを幾らかでも緩和するために日本銀行として介入をしたということは、私は正しかったと見ております。  それで、ただいまの水準になって、この二月中旬からの動きというものを考えてみますと、私はかなり相場的な要素が入っておったというふうに考えているわけでございます。少し長期のこと、たとえば秋ごろのことまで考えますと、現在の円というのは、これはかなり過大に評価されている結果になるのではないだろうかというぐらいには私は思っておるわけでございますが、いかにも二月中旬以降の動きというものは、政府がある程度介入をしなければならないような動きであったというふうに考えております。
  19. 安田純治

    安田委員 この問題だけで時間をとるわけにいきませんけれども、その後の座談会発言をずっとお伺いしても、「米国の赤字は石油の買いすぎ」であるとか、いろいろ書いてございます。どう考えても、当時長官は二百五十円ラインは絶対防衛すべきだという前提に立ってお話しになっておるし、それから、先ほど申し上げましたように、ことしは二百九十二円で始まった、そして十カ月かかって二百六十円台を割ろうとしている、これは全くでたらめな動きであるということ、そういう発想から考えますと、その後このままでいけば、ことしの現在の円高というのは全くでたらめな動きになるわけですね。そうなりますと、二月以降ある程度介入したことは意味があったようなことをおっしゃいますけれども、しかし、長官発言ですと、「政府日銀はどんなにドルを買ってもいいから、」こういう御発言を「自由民主」の座談会でされているわけです。  これを一般国民が見れば、こういう発言をされた宮澤さんが今度経企庁長官になられたということで、これは円高を防ぐためにどんなにドルを買ってもいいから立ち向かうべきだ、そうでなければ政府というものは何のためにあるのかわからぬとおっしゃる方が経企庁長官になったわけですから、円高対策に非常に強力な手を打ち出されるものと期待するのは当然でございますので、ぜひそういう点で、こういう座談会であなた自身がされた発言責任を持って、どう考えても去年の初めの二百九十二円、十月の二百六十円を割る、今度、現在でしょう。それで考えますと、あなたのおっしゃることから見れば、どんなにドルを買っても立ち向かうべきだという事態がまさに現在あるのだろう。それを多少といいますか、その評価には違いはありましょうけれども、多少介入したからといって、滑らかになったというような表現をされておりますけれども、この座談会でなされた発言から見ると大分後退したといいますか、意味が違ってくるようにも承るので、その点最後にちょっと確かめてみたいので、このお考えについてもう一遍聞かせていただきたい。  現在の円高に対してどういう対策でどういう防衛ライン考えるのか。全くそれを考えない、先ほどのお答えのように、基本的にはそういう目標は持っていない、言いっ放しなのか。その点もう一遍念のために確かめて、次の質問に移ります。
  20. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 非常な乱高下がありますときには、政府あるいは日本銀行は、ちょっとやそっとの金を惜しまずに、それをスムーズアウトするために介入することは入り用だということは、いまでも考えております。現実に二月の中旬から三月にかけまして日本銀行介入いたしました金額は、恐らく相当な額に上っておると思います。これは事の性質上、日本銀行も大蔵省も発表いたしておりません。しないのが正しいと思いますが、ただ、外貨準備急騰を見ておりますとある程度の見当はつくわけでありまして、二百九十七億ドル外貨準備になっておるということは、この間に相当大きな介入が行われたことは間違いないであろうと私は思います。また、それはまさに先ほど御紹介がございましたように、国民生活全体を考えて有意義なことであったというふうに判断をいたすわけでございます。
  21. 安田純治

    安田委員 とにかく「どんなにドルを買っても」という強い表現をされているわけですから、この円高問題について、これを放置するといいますか、結果としてこういうことになっておる状態については非常に遺憾でございまして、こうしたことを放置しておる姿勢はとうてい認められないというふうに思うわけで、ぜひ長官もこの座談会での発言責任を持っていただきたいということをお願い申し上げまして、次の質問に移りたいと思います。  私は、昨年当委員会で問題にいたしました西武百貨店伊藤忠商事、それに館林ドレスという中小企業の間で行われた架空売買回し手形取引の問題について再び質問をしてみたいと思うわけです。  この三社間の取引とは、第一に、架空売買であるということ、第二に、手形が回されるけれども、必ず中小企業に損がいくという仕組みになっているというものであったわけです。昨年六月八日、当委員会で問題にしたときに、当時の田中通産大臣は、まことに不都合な気がする、取引上の商行為として逸脱した一つのケースということもあり得る、こう答弁されたわけであります。  そこでまず、その後どういう調査などをされたのか、通産省にお伺いしたいと思います。
  22. 山口和男

    山口(和)政府委員 館林ドレス伊藤忠西武百貨店のいわゆる架空取引問題につきましては、昨年六月に、それぞれの伊藤忠西武百貨店関係者を当省に呼びまして、事情を聴取いたしました。一応その段階では、先般御答弁申し上げましたような考え方をそれぞれ述べておったわけでございますが、その後、私ども、それぞれの伊藤忠西武百貨店から報告書提出を受けまして、これの内容調査に入ったわけでございますが、何分いろいろ詳細な点もございまして、さらに裏づけをとるということになってまいりますと、立入検査その他が必要になるというようなこともございまして、そういったことで進めていこうという段階で、昨年七月二十五日に西武百貨店館林ドレスに対しまして売買代金請求の訴訟を提起いたしまして、現在その裁判が進行中でございます。この裁判によってその事実関係というものがより明らかにされるものと、私どもただいまのところこの裁判の状況を注視しているところでございます。
  23. 安田純治

    安田委員 そうしますと、裁判が起きた後、裁判の上で西武がどのような主張をしておるのかということを、訴状などに当たって調べられたことがございますか。
  24. 山口和男

    山口(和)政府委員 訴状を調べて、内容を読んでおります。
  25. 安田純治

    安田委員 御承知のように、西武百貨店は、中小企業を倒産に追いやった上に、なお架空売り上げの代金を支払えという裁判を起こした。いまおっしゃったとおりです。いまや社会的にますますその醜い本性をむき出しにしているわけですが、西武百貨店裁判に訴えたその訴状と、通産省に提出した資料を、私はつぶさに比較検討してみたわけです。そうしますと、その結果さらに新しい事実が明らかになったのであります。  その一つは、何と架空売買のパターンが、少なくとも四種類あるということが明らかになりました。お手元に差し上げてあると思いますが、第一のパターンは、前回取り上げましたが、西武百貨店伊藤忠館林ドレスの三社間の回しであります。第二のパターンは、四社間の回し、これもお手元に図表といいますか絵にかいて、わかりやすいようにパターンを示しておるわけです。第三のパターンは、西武を中心にした三社の往復売買、いわばキャッチボール型とでも言いますか、こういうパターンであります。第四のパターンは、もう一社加わった四社間のキャッチボール、こういうふうに、回される企業数が多くなるほど、中小企業へのツケは高くなるという仕組みになっているわけであります。第一、第二、第三のパターンまでは、西武提出の資料で裏づけられているのでありますけれども、第四のパターンは、ほぼ確実視される推定です。  この四つのパターン、いずれも商品の動きがない、手形と伝票だけが回される、西武みずからそう認めておるわけであります。これは訴状にもちゃんとそういうふうに書いてあります。  一見、架空売買とは見えないような小細工もしております。たとえば伊藤忠は、一応社の規則で、同一の相手との同一商品の売りと買いは紛争のもとになるということで戒められている。そこで、伝票では商品名だけを変えているわけです。たとえば「制服、男子用(帽子付)六二〇六着」を売りとすると、買いは、「東レ六二〇〇生地五三二二〇メートル」、こうなっているわけです。要するに、この商法では、商品名などそもそもどうでもいいわけなんです。  また、この回し商法は、売り買いの最終決済までの期間は平均して二百二十日となっているようであります。したがって、いわゆる月末から月初めまでの短期間のよくある融通とは、全く質的に違うものであります。この点も西武は認めておるわけです。  こういう商取引、商行為が、昭和四十八年から五十一年六月末まで三年間にわたって、二百を超える商品名を詐称して展開されたのであります。総金額は約十九億円に達しております。  この事実について当局はどういう感じを持たれるか。いま私が申し上げましたことは当事者も認めておりまして、当事者の作成した資料、伝票で記帳されていることですから、もうこれから改めて調査してという必要はないと思う。率直な感想的意見、見解をまず伺いたいと思います。
  26. 山口和男

    山口(和)政府委員 詳細な取引の事実につきまして、ただいま裁判も進行中でございますので、最終的にはその結果を待つ必要があろうかと思いますが、いわゆる架空取引が一種の信用供与形態として行われるというようなことになりますと、これは一応私企業間の問題でございますので、関係法規に照らしまして適法に行われるという限りには、そういうことについて特に行政機関として関与するというわけにもまいりませんが、しかし、いずれにいたしましても、大企業が相手企業の立場を考慮しながら公正な取引が行われるということが重要でございます。いまのような形で非常に金額が大きくなっていくということについては、いろいろと問題もあろうかと思いますが、詳細は、さらに裁判の進行によって事実を裏づけるということの上で判断されるべきものと考えます。
  27. 安田純治

    安田委員 いわゆる融資といいますか、こういうために使われる場合もあるわけですけれども、そういう場合、大体月末から月初めまでの短期間、ちょっとした資金繰りのためにそういうことをやるというならわかりますけれども、先ほど申し上げましたように、平均して二百二十日の決済になっているわけですね。ですから、短期の臨時のつなぎの融資的な意味はないのじゃないかというふうに言わざるを得ないと思うのです。  で、西武百貨店を中心とするこの架空取引手形回し商法で明らかになった重大な問題の第一は、少なくとも四つのパターンがあるということに示されるように、この商法に参加した企業がこのケースだけでも十社に達する、こういうこと、その規模の大きさにまず御注目をいただきたいわけです。具体的に社名を挙げますと、西武百貨店伊藤忠商事、それに三越百貨店、高島、伊藤萬、以上はいずれも名の通った有力企業でありまして、西武を除いては証券取引所の上場会社であります。この五つの企業に加えて、ダイケンセンイ、本金、ボンマックス、西清商事、それに館林ドレスということであります。  この事実から推察されることは、架空売買手形回し商法というのが特殊なケースということではなくて、わが国の産業界で広く普遍的に存在しているというふうに見るべきではないか。特殊事例ではない、こういうふうに思うわけです。私ども国税庁にも若干聞いてみましたけれども、同じような見解を持っておるようであります。脱税とかいろいろなことに絡んで、わりかし普遍的に存在するというように言っておるようであります。  このように判断できるもう一つの根拠は、NBLという法律の雑誌がございますけれども、このNBLという雑誌で、経営者、企業の管理者に向かって、この種の商法で被害をこうむらないように注意を呼びかけた論文、解説がたくさん掲載されておるわけであります。こういうところを見ても、このNBLというのは、経営者なんかの法律相談といいますか、経営方法に関する法律の専門雑誌でございますが、こういうところに論文として載っておるわけであります。ですから、単に館林ドレスと西武の特殊事例、したがって、裁判で結論がつけばそれでいいという問題ではなくて、むしろこれは氷山の一角であって、わが国の産業界に普遍的に存在し、そのことがまた脱税とかいろいろな腐敗の温床にもなっているというふうに思わざるを得ないのです。  そこで、国の政治にとって重要なことは、より根本的に、そもそも架空の取引において手形をうまく回すというだけで莫大な利潤を上げる、こういうもうけ方もあるということを認めるのかどうか、こういう問題と考えるわけです。したがって、たまたま館林ドレス西武百貨店の問題に起きたたった一回きりの特殊な例ということは言えない。  西武百貨店は、御存じのように、いま倒産した中小企業館林ドレスに対して、この商法での代金を支払えという裁判を起こしている。消費者、一般国民が描く百貨店へのイメージが根底からひっくり返るほどの暴挙に出ているというふうに言わざるを得ないと思います。この具体的なケースの是非については裁判所が判断を下すことでしょう。しかし、裁判の結論がどうであれ、政府と国会の役割り、立場から見て、いま申し上げましたように、産業界にどうも普遍的に存在しておるようだ、これはそういう経営法律研究の雑誌にも載っておる、そういうことから考えますと、この種の商法に政府と国会は一体どういう判断を下すのか、どういう態度をとるのか、これはこれで独自の見解をわれわれは示す必要と責任があるというふうに思うわけです。  物が売れなくても物が売れる、こんな商取引をこの不況期に通産省が承認するとすると、事は重大であると私は考えるわけであります。この点、大臣にお伺いしたいところですが、きょうは大臣いらっしゃいませんので、政務次官、ひとつ明快な答弁をお願いしたいと思います。
  28. 野中英二

    ○野中政府委員 お答え申し上げます。  特定の西武並びに館林ドレスの問題につきましては、山口審議官の方から答えたとおりでございますが、抽象的に考えてみますと、安田先生のおっしゃるとおり、かようなことが行われているのではないかというふうに推定ができるのでございます。と申しますのは、日銀券の発行が十何兆円かになっているわけでございますが、手形の発行高は六十兆円を超しているという現況から見て、あるいはいま先生のおっしゃられたようなことがあるのではないだろうかというふうに推定をいたしております。したがいまして、これから流通面等につきましても、慎重にその対策を前向きで検討してまいりたいというふうに考えております。
  29. 安田純治

    安田委員 ぜひそういうふうにお願いしたいというふうに思います。  参考までに、このNBLという雑誌に書かれている論文を、たくさんありますけれども、題目だけ読んでみますと、「架空の物品受領書が“つけ商売”に悪用された場合の損害賠償責任」、これは「判例に学ぶ」という論文でございますが、野口さんという弁護士さんが書かれておる。昭和四十七年の大阪地裁の判決を土台にして研究をされた論文です。  それから、「商社における介入取引の分析」、これはもう何回にもわたって連載されておりますが、「つけ商売による紛争予防のために」、これは日綿実業の大阪審査部副部長の森井さんという方が論文を書かれております。  この中身を見ますと、こういうケースがまことにたくさん行われておる。しかもこの法律論文の中で警告を発しておることは、品物の実在性というものを確かめなければいかぬということを、口をきわめて、この論文を書かれた方、お二方ともおっしゃっておるようです。  この西武と館林ドレスのケースで見ますと、もう品物の存在なんかどうでもいいわけですから、こうなるともう不当もきわまれりと言わざるを得ないので、ぜひいまの次官のお答え、前向きでひとつがっちりと取り組んでいただきたいというふうに思います。  第二の重大な問題は、通産省に対する西武百貨店の不誠実な態度であります。わかりやすく表現しますと、本当のこと、真実を正直に通産省に報告していないということであります。  西武百貨店裁判所への訴状と通産省に提出した資料とを丁寧に分析、対比してみますと、明らかに食い違いがあるのであります。これは先ほど山口審議官も訴状等十分読んでいらっしゃるということですから、改めて読まれる必要はないと思うのですが、分析、対比してみると明らかに食い違いがある。細かい違いは別にしまして、重要な違いだと判断せざるを得ないものが二つあります。  その一つは、通産省に提出した文書では、館林ドレスに対して金利相当額を加算して館林ドレスに売却した、西武はこう言っているわけです。ところが、裁判所への訴状では、通常の売買利潤を付加した金額を売買代金とした、こういうふうにしておるわけであります。この違いは重要な違いであります。  まず伺いますけれども、本当はどちらなのか。裁判所にうそを言っておるのか、通産省にうそを言っているのか、これはどちらかであります。こういう西武の態度について当局はどう考えられるか、伺いたいと思います。裁判の結果、事実の判定がどうなるかは別として、明らかに現段階で食い違っているわけですよ。これについてどうお考えになるか、お伺いしたい。
  30. 野々内隆

    ○野々内説明員 私ども西武から事情を聴取いたしましたのは、特に法律に基づく権限ということではなしに、任意の提出を求めたものでございますので、特に法律上どうこうという問題はないかと思っておりますが、ただ、いま御指摘のとおり、裁判所に出したものと私どもに言ったものが違うということであれば、当然、私どもとして、西武に対しまして、なぜ通産省と裁判所との間で説明が違うのかという点について、改めて説明を求める必要があるかというふうに考えております。
  31. 安田純治

    安田委員 訴状をお調べになったというからお伺いするのですよ。明らかに違うじゃありませんか。訴状を見ると、これは訴状の表紙から見て三枚目の裏ですけれども、「通常の売買利潤を付加した金額を売買代金として右商品を被告会社に売却し、被告会社はこれを買受ける。」こういう行為であったということです。ところが、通産省に出された文書を見ると、そうではないでしょう。ですから、その段階で西武の主張自体が客観的に食い違っていることは明らかなんです。  ですから、最後に債権があると裁判所に認定されて、館林ドレスが支払えという命令が出されるかどうか、そういう権利の存在は別として、これは行政当局の介入することじゃないかもしれませんけれども、少なくとも西武が通産省に出された資料と訴状とが違う。これは訴状をいま読んだのではなくて、すでに前に見ていられるというわけですから、気がつかれているはずですよ。いまの御答弁のようなこれから事情を聞くというのは、いささか迂遠な感じがするのです。その段階で、どっちが本当か、それは裁判所が判断を下すわけであって、何も通産省で判決を下すわけじゃありませんが、通産省に対して不誠実な態度じゃないか。訴状が出されたのは去年の八月ですね。おたくの手元に行ったのはいつであるかわかりませんが、そういう態度では困ると思うのですが、どうですか。
  32. 野々内隆

    ○野々内説明員 実は、本件につきまして非常にむずかしい問題は、西武自体が、西武の中において社員に非常に不適当な行為があったという形での説明をいたしておりますので、その辺につきましては、私どもとしては今後裁判の過程で明らかになる以外にないだろうと思っております。と申しますのは、もし西武が責任を持って行った行為であり、かつ、責任を持って説明ができるという形になりますと、私どもも一つ一つについての追及が可能なわけですが、どうも西武も社員の中に不適当な行為があったという感じでおりますので、私どもとしましては、いまその中身を追及いたしておきましても、実際問題として最終的な追及はむずかしいのではないかという感じでおりますので、結局訴訟の過程を見るしかないというふうに考えております。
  33. 安田純治

    安田委員 だから西武になめられるのですよ。真実がどっちにあるかは裁判所が認定して判断するのです。これはあたりまえのことです。問題は、西武が通産省に出した資料では、この取引における追加したお金、これは金利相当分と言っておる。訴状では、通常の売買利潤を付加した、こう言っておる。この食い違いだけを聞けばいいのですから、これはどっちなんだ。もしそれは社員が適当にやったのでよくわからぬのだと言えば、よくわからぬまま通産省にいかにもわかったような答えをしていること自体、法律に違反するかどうかは別として、これはきわめて不誠実な態度だろうと言わざるを得ないと思うのですよ。  その辺を追及すべきであって、その結果館林ドレスに対して実際の債権があるかどうかということになれば、これは裁判所の判断でしょうが、そういう不誠実な態度があった。もし、いや実は通産省に言ったことが本当なんだと言えば訴状がうそになるのですが、それがうそであるかどうか判断するのは裁判所でしょう。通産省に言ったことが本当なのかどうかということは、客観的に食い違いが出たわけですから、お調べにならないというのはどうも納得がいかぬですね。これは裁判所の結論を待つと言っているだけでは話にならぬのではないか。  食い違い自体を調査せよと言っているのですよ。どちらが正しい、そしてその正しい方に軍配を上げてどうとか、判決を下せとか、判断をせよと言っているのではない。食い違いがあるから、食い違いがどういうわけで生じたのかを聞くぐらいは、聞くべきではないか。そうでなかったら、役所の方からいろいろな調査を頼んだ場合、確かにこういう調査の場合には法的に罰則の裏づけはないかもしれませんけれども、国民は適当な答えをしてもいいということになりますよ。その辺はどうですか。
  34. 野々内隆

    ○野々内説明員 通常の場合、私ども責任を持って通産省調査という形で公表いたしますときには、当然詳細にわたっての内容質問し、相違点を追及するという形でやるわけでございますが、本件につきましては、中が非常に技術的な問題でもございますし、また、通産省として一体どこまで介入するかという点にもいろいろ問題がございますので、とりあえず、先生の方からぜひ資料をとるようにというお話もございまして、そういう事情を先方に伝えてとってきたという段階でございます。  私ども、一体どこまでこれに介入していくかということについては、まだ疑問な点もございます。したがいまして、今後裁判の過程でわれわれの方に提出され、それを先生の方に提出いたしましたが、それが正しいのかどうかということにつきましては、訴訟の過程で明らかになってくるというふうに考えざるを得ないというふうに思っております。
  35. 安田純治

    安田委員 売買利潤を追加したか、金利相当分であるのか、どっちが客観的に実在する真実と合うかどうかは裁判所が判断するのでしょうが、少なくとも通産省に言ってきたことと裁判所に言ってきたことが違うというこの点だけは、いわば電話一本でも聞けるわけですよ。どっちなんだ。何も介入してこの問題を解決しろとか、どっちが支払い義務があるかを通産省が判断しろとか言っているわけじゃない。そういう報告の食い違いを、どうなっているんだと聞くだけでいいのでしょう。それさえもできないのですか。
  36. 野々内隆

    ○野々内説明員 売買利潤と申しました場合に、その中に金利相当分が入っているかどうかという問題になるかと思いますが、通常売買利潤といった場合には、その中にもし延べ払いの金利が別にとられていない場合には、金利相当分も当然入っていることになるだろうと思います。したがいまして、売買利潤、金利といった場合は、売買利潤には金利プラスそのほかの経費が入るわけでございますので、売買利潤の中で金利がどの程度の地位を占めたかということになるのではないかと考えております。
  37. 安田純治

    安田委員 あなたの解釈を聞いているのじゃないのですよ。西武の解釈をあなたの方で聞くべきじゃないかと言っているのであって、あなたの解釈を聞いたってしようがないのですよ。そんなことはわれわれだっていろいろ解釈しますよ。西武が文書として違うものを出しているから、西武の解釈を聞くべきではないのかと言っているのですよ。そういうかたくなな態度をとらずに、それはぜひ調査してみてください。答弁はいいですよ。あなたの解釈を幾ら聞いたって同じことです。  なぜかといいますと、西武が出した書類は、裁判所とあれと違いますけれども、同じ官庁に出しているのに矛盾した言葉が出てきているわけですから、その点で聞くべきだろうと思います。後でほかの食い違いも出てきますので、役所に出してきた書類の中に明らかに客観的に矛盾する表現があった場合に、後は裁判所がどっちが正しいのか判断するのだでは、通産行政をやるのに大変な支障を来すだろう、悪例を残すと思いますよ。この点は御注意申し上げておきたいと思います。  さて、この取引は通常の売買取引と言えるのか、それとも金融取引であるのか。西武百貨店では、訴状では金融取引であると言っているようです。当局はどうお考えになるか、お伺いしたいと思います。
  38. 野々内隆

    ○野々内説明員 お答え申し上げます。  取引の中身を、単純に金融であるのか通常であるのか、あるいは保管という行為であるのかを完全に分けることは非常にむずかしいかと思いますが、私ども、当初この動きを見ましたときに、現実に物が動いていないということで、一種の企業間信用ということで金融を与えているのではないかと考えておったわけでございます。
  39. 安田純治

    安田委員 金融取引ならば金利相当分を付加するのが正しい、こういうことになると思うのです。このような形の取引において、通常の売買利潤を取り立てるということは正当であろうかという疑問が起きるわけです。もしそうだとしたら、架空売買によって売買益をどうにでもつくり出していいということになります。このことは、粉飾決算の疑い、あるいは仕入れを多くして脱税の疑いというようなことが生じてくると思う。そういう意味で、架空取引というのはいろいろな腐敗の温床になるものだと思います。通常の売買利潤を取り立てることが一体適切なのかどうか、これは通産当局としてのお考えを伺いたいと思うわけです。
  40. 山口和男

    山口(和)政府委員 企業が架空の取引をもとにいたしまして利益を計上するということになりますと、粉飾決算というようなことになるわけでございまして、企業行動の適正化あるいは企業経理の健全性の確保というような点から見ますと、申すまでもなく、これは非常に問題があるということになろうかと思います。特に商法等関連法規との関連で、違反があるかないかというようなことになろうかと思います。そういう点については、十分法律等の関係において明らかにされるべきであろうと思います。
  41. 安田純治

    安田委員 通産当局への提出資料でもう一つの問題があります。それは西武百貨店伊藤忠商事との食い違いであります。  西武百貨店の言い分が正しいとすると、このケースで最も大きな利益を得ているのは伊藤忠だということになるのであります。しかし、伊藤忠提出した資料によれば、必ずしもそうはならない。伊藤忠館林ドレスと西武との取引に介在した分の取引額は、調べてみますと西武の資料の十分の一くらいでしかない。この両者の言い分は大きく食い違っているわけでして、どちらかがうそをついているか、あるいは両方ともうそを報告しているということもあり得るわけです。改めて調査を要求したい。これは伊藤忠との関係ですね。伊藤忠と西武の出している資料を突き合わせますとそういうことになりますので、改めて調査を要求したいわけです。当局としても、でたらめな報告の疑いがあるのに、そのまま見逃すことはできないというふうに、先ほどから私言っていますけれども、そうではありませんか。それで、いままで放置していること自体も、重大な問題であると私は思っております。その点についての御答弁を伺いたいと思います。
  42. 山口和男

    山口(和)政府委員 企業がそれぞれの立場で物を言うことがございますので、そういう意味で、それぞれの事情によって主張が違ってくるということは確かにあると思います。ただ、そういった事実関係を私どもとして調査するということにいたしましても、先ほどちょっと申し上げましたように、裏づけをとってまでというのは非常にむずかしい面もございますので、私どもとしては、ただいま、昨年七月以来進行しております訴訟の過程でそういった事実関係が明らかにされていくということに期待いたしておりまして、その経緯を十分注視してまいりたいと考えるわけでございます。
  43. 安田純治

    安田委員 確かに非常に細かい取引でもございますし、非常に複雑な取引でもありますから、すべての資料を当たって、通産省が独自の力ですべての真実を確かめるということは困難な面もあるとは思いますけれども、私が問題にするのは、全然努力をしてないのじゃないか、客観的な食い違いが明らかであるにもかかわらず、裁判の成り行き見だというようなことでは——前から言っているように、裁判の成り行きと通産省に出した資料に食い違いがあるということとは、これは別ですからね。そうでしょう。伊藤忠の出した資料と西武の資料とが違う。裁判所に出した西武の資料とも違う。ここをちょっと聞くぐらいの努力——真実がどうなるかは、非常に複雑な裏づけ資料を探さなくてはなりませんので、非常に困難かもしれませんけれども、多少の努力もしないことは非常に問題だと思います。これで押し問答をしていると時間がなくなりますので、いまからでも遅くないのですから、その食い違いの点はどうなっているのかということを、伊藤忠、西武に改めて聞くぐらいの努力はぜひしていただきたい。  不況の長引く中で、こういう不法、不当な悪徳商法がまかり通る可能性が多いのが、残念ながら実情であると思います。合法的商法として容認できるものでないことは、西武百貨店自身でさえ、訴状において不当な取引だというようなことを言っておるわけであります。  そこで、政府として、こうしたことを未然に防止するための何らかの措置を講ずべきであると思います。これは西武と館林だけの問題を言っているのじゃないですよ。どうも産業界にびまんしているように思えるので、そういう立場からこれは措置を講ずべきであると思います。関係省庁とも協議して検討されるように厳重に要求するものですが、政務次官、この点いかがでしょうか。
  44. 野中英二

    ○野中政府委員 御指摘のような取引につきまして、行政省庁であります通産省が介入できるかどうか、これは大変疑問が残るわけでございますが、今後、正当な商取引ができますように、われわれもできるだけ行政指導をしてまいりたいと考えております。
  45. 安田純治

    安田委員 望ましくないやり方であることは事実だと思うので、ぜひそういう点での行政指導をしていただきたいし、関係省庁とも協議して何らかの措置ができるかどうか、これも検討していただきたいと思います。  また、こういうことが明らかになった以上、国会としても未然防止のために徹底した究明を行うよう提案したいと思います。さしあたって、西武百貨店伊藤忠、三越百貨店、館林ドレスの四社の代表を当委員会に参考人として招致することを要求いたします。理事会での検討をお願いしたいと思います。委員長、いかがでしょうか、理事会でひとつ検討してみてください。  いよいよ時間が来ましたが、いままでの通産当局のお答え聞きますと、どうもこの西武百貨店などになめられっぱなしになってしまうのではないかということを非常に危惧するわけですよ。ぜひそういう意味で通産省に出した資料の食い違いくらいは何とか究明してもらいたい。事実それ自体すべての全貌を通産省の手だけで明らかにしろなんて言っているわけではないのですから、おたくの手元に届いた書類自体の中での矛盾を聞いてもらえばいいのですから、調査してもらえばいいのですから、その点は厳重に要求して、質問を終わりたいと思います。
  46. 中島源太郎

    中島(源)委員長代理 後藤茂君。
  47. 後藤茂

    ○後藤委員 私は、金属鉱業政策につきまして、きょうは長官にひとつ具体的な対策をお伺いをしたいと考えております。  考えてみますと、昨年の四月の八日ですから、ちょうど一年たつわけですが、そのときも、危機的な状況に入っておりますわが国の鉱山、金属鉱業に一体どのような対策を講じていくのか、こういうことを中心にいたしまして関税に至るまで、あるいは国際会議の動向、それに対する政府の態度等についても私はお伺いをしたわけでございます。  その当時の私の認識も、実は今日のような危機に入るとは想像できなかったわけですが、さて、一年経過をしてまいりますと、指摘したところより厳しい状況に入っているばかりじゃなしに、さらに円高が大変な追い打ちをかけまして、考えておった以上に急速度で悪化してきている、こういうように私たちは考えるわけでございます。こうした基礎原材料というのは、わが国では大消費国でございますし、その基礎原材料の最も安定した供給源であります国内資源の活用ということと、開発輸入を含む総合的な資源の安定的な確保というものが、この金属鉱業に対しては必要だ。一年間振り返ってみましても、大変危機が進化してまいっておりますが、長官はこの危機の実態をどのように理解されているか、まず、冒頭にお伺いをしておきたいと思います。
  48. 橋本利一

    ○橋本(利)政府委員 非鉄の製錬あるいは鉱山通じて申し上げられますことは、いわゆる石油危機の後、世界的に産業活動が停滞して需要が低迷しておる、それに対して世界の関係国における減産体制が必ずしも順調に進展いたさなかったというようなことを反映いたしまして、鉱物資源価格が非常に下落をしておる、大半の企業につきましては大幅なコスト割れを来しておるというのが現状かと思います。  先ほど御指摘のありましたように、ちょうど一年ほど前に鉱山問題についていろいろと御質問いただいたわけでございますが、その後の情勢といたしましては、備蓄の積み増し等によって各企業が持っておる在庫水準自体はかなり適正な水準に戻りつつあるわけでございますが、一方、世界的に在庫が減少しておらないという反映もございます。特に亜鉛につきましては、昨年の四、五月時点ではまだトン当たり七百九十五ドルであったものが、本年に入りまして五百五十ドルと、予想もできないような大幅な価格の低落を来しておるわけでございまして、さようなところから、国内の非鉄製錬所あるいは鉱山の経営というものが急速にかつ極度に悪化してきておる、この時点において何らかの対策を講ずる必要がある、そうでなければ国内の貴重な地下資源の維持もできなくなるといったような事態に立ち入っておる、かように見ておるわけでございます。
  49. 後藤茂

    ○後藤委員 昨年の私の質問に対しましても、長官は、新しい鉱山行政、鉱業行政を展開する時期に来ているのではないか、その認識を持っている、鉱業審議会の場で十分検討した上で政策の新しい展開を図っていきたい、このように御答弁をいただきました。そしてそれから大分たってからでございますけれども、鉱業審議会の中に鉱業政策懇談会を設置をされまして、今日まで何回か鉱業政策のあり方について真剣な御討議がなされたというように承知をしているわけでございますが、これまでにどういう内容を、どういうような方向づけを持ちながら検討をなさってこられたか、お伺いをしたいと思います。
  50. 橋本利一

    ○橋本(利)政府委員 ただいまお話ございましたように、鉱業審議会の中に鉱業政策懇談会を設置いたしたのは昨年の七月でございます。それ以降、本年の二月まで数回にわたりまして会合を行い、鉱業にかかわる現状及び問題点に対する審議を続けてまいったわけでございますが、鉱政懇における審議は一応終了した、現在取りまとめの段階にあるということでございます。この懇談会では、各種の事項につきましていろいろの御意見が出てまいったわけでございますが、この各種の意見を踏まえて報告書の原案作成に入っておる、こういう段階でございます。  先ほど御指摘の国内鉱山をどのようにして維持していくか、いわゆる国内鉱山の維持策につきましても、この鉱政懇の中での重要な事項として検討が加えられてきたわけでございます。そういったところから、われわれといたしましては、早急に問題点の整理を行いまして、鉱政懇の結論を一日も早くいただきたい、かように考えております。
  51. 後藤茂

    ○後藤委員 私は、先ほど申し上げましたように、問題の指摘はそれぞれの角度からなされていくわけですけれども、その鉱政懇の答申を待っている間に事態はますます悪化してきているわけですから、したがって、通産当局としてもっと指導性を持ってこの鉱政懇の答申を早く出さしていくという手だてが必要ではないかと思うわけです。お待ちになっているようですけれども、一体いつごろこの答申は出してもらうように進めておられるのか。  それから、これはもうどの審議会なり委員会でもそうでございますけれども、その主管官庁の当事者が方針をつくっていかなければならぬわけですから、どこにその柱を置いて、この危機に瀕しております鉱山対策、金属鉱業政策を進めようとお考えになっているのか。いろいろユーザー側との関係もございましょうし、それぞれ労働者あるいは業界、いろいろな団体との折衝というものがむずかしい問題としてあると思いますけれども、長官として、こういうように持っていきたい、いままでの鉱政懇の論議を聞いて大体この方向に持っていきたいというものがおありだと思うのですが、お聞かせをいただきたいと思います。
  52. 橋本利一

    ○橋本(利)政府委員 御指摘のように、こういう段階におきましても問題は進んでいっておるといいますか、放置できない状況になってきておるわけでございます。そういった意味合いから、私たちといたしましては、答申をできるだけ早くいただきたいということで努力をいたしておるわけでございますが、ただいま御指摘のように、鉱山サイド、ユーザーあるいは学識経験者と、いろいろ必ずしも意見のコンセンサスを得ていないといったような問題もございますので、最終的に答申を得るためには、さような面において十分理解と協力を得られるように手を打つ必要があろうかと思います。できれば五月中にもと思うわけでございますが、あるいは六月にかからざるを得ないのじゃなかろうかという気もいたしております。ただ、その間、各鉱山会社から経理事情等を聴取いたしまして、特に資金繰り等について手当てを必要とするもの、さもなければ閉山に追い込まれるというものにつきましては、ケースごとに具体的に金融のあっせん等によりまして経過的につないでいきたい、かように考えております。  それから、答申のポイントはどういったところになるだろうという御指摘でございますが、まず、その大前提として、国内の非鉄鉱山を存続させるかさせないかという問題が当然出てくるわけでございます。世界の大勢を見まして、あるいは国内におけるコストの現状というのを見ますと、かなりの合理化努力というものは必要であろうと思います。必要であろうと思いますが、半面、雇用の問題、あるいは地下資源の確保の問題、あるいは地域経済に与える影響というようなことも勘案いたしまして、産業として存続する以上、コストというものが大きな要因になってくることは当然でございますが、そういった両面を勘案しながら存続の方途というものを考えていく必要があるのじゃなかろうか、かように思うわけでございます。  すでに関係業界からいわゆる基金構想というものが出ております。先ほど申し上げました鉱政懇談会におきましても、この基金の問題が大きなテーマの一つとして議論されておるわけでございます。こういったものが新しい鉱山政策を展開していくための一つの大きな事項になってくるのではなかろうかと思うわけでございます。今後なお、鉱政懇での審議を勘案いたしまして最終的に態度を決めてまいりたい、かように考えております。
  53. 後藤茂

    ○後藤委員 本来、三月末ぐらいにこの答申が出されるのではないかというように期待をしておったわけでございますけれども、いまの長官の御答弁によりますと、五月、六月にずれ込むのではないかという御答弁でございました。そうなりますと、実は今国会が終わってしまうわけでございまして、やはり国会の開会中に答申がなされ、そしてこの委員会の中でまた新しい知恵を出し合いながら鉱業政策考えていく、こういうことが必要だろうと思うのです。そうでないと、もう時期おくれになってしまいまして、いままでの一年間の危機の深化にさらに加速度が加わりまして、気がついて政策ができたときには鉱山がないということになる危険性が大変強いと私は思うのです。  長官、いま私が申し上げましたようなのは、それはちょっと極端で、業界も大変だ大変だと言っているけれども、まあ実態はそれほどでもないんだというふうに見るべきなのか、表面にあらわれている以上に大変深刻な状況で、このままの状態で推移していくと、日本の鉱山というものはほとんどすべて消えてなくなるという厳しい情勢にいまあるのかどうか、この点を、簡単でいいですから、お答えをいただきたい。
  54. 橋本利一

    ○橋本(利)政府委員 先ほど申し上げましたように、わが国の鉱山業界が当面している事情というのは、決してなまやさしいものではございません。対策がおくれればそれだけ傷が重くなるといったような現状ではなかろうかと思います。ただ、それに対しましては、私たちとしましては、直接的には各社の資金繰りというものを十分注意しながら、新しい政策が展開できるまでの間何とか維持できるようにというところに、当面としてはそういう問題意識を持っております。これだけの極度の不振にあるわけでございますから、これが直ちに改善されていくということはなかなか考えられない。特に日本のみならず、国際商品でございますから、世界的な動向との関連ということも考えますと、私はなかなかなまやさしいものではないという認識に立ちながら、反面、資金繰り等についても十分にわれわれとしても対応していきたい、こう思っておるわけでございます。
  55. 後藤茂

    ○後藤委員 その答申の中には、当面いたしております緊急の課題というものも入ってこなければならぬし、また、中長期的な展望を持った金属鉱業政策のあり方というものも、当然この答申に入ってこないと、こう薬張りをいたしましても、依然として鉱山が抱えておりますあるいは製錬所が抱えておりますこの先行き不安というものは解消しない、このように考えるわけですが、答申の中には、中長期的な展望、また当面の緊急政策がどのように織り込まれていくのか、あるいは当面の問題だけに入ってしまうのか、どのようにお考えになっていらっしゃるか、お伺いをしたいと思います。
  56. 橋本利一

    ○橋本(利)政府委員 先ほどもお答えいたしましたように、現在まだ作業中でございますので、確たることは申し上げかねるわけでございますが、私は、答申の中には、当然中長期的な展望、あるいは日本の製錬あるいは鉱山のあり方といったことが前提になってくるかと思います。そういった中長期的な見通しに立って、初めてそこに緊急的な対応あるいは本格的な対応というものが織り込まれてくるのではないか、かように考えておるわけでございます。  そういったところから、日本の鉱山業の将来をどう展望するかということでございますが、一言で申し上げますと、非常に困難な状態にあるわけでございますが、内外の生産コストを考えますと、わが国の鉱山におきましても、生産コスト低減のための積極的な合理化努力が必要だろうと思います。これは自然条件が悪いこともあるわけでございますが、国際商品である限り、できるだけの合理化努力、生産コスト引き下げの努力というものが必要だろうと思うわけでございます。特に、従来と違いまして、高度成長下におけるような高い需要の伸びというものは期待できませんし、代替品も出てきましょうし、あるいは省資源といったような対応も迫られてくるわけでございます。そういった意味からの合理化努力、近代化努力というものは必要だろうと思います。  ただ、また一面で申し上げられますことは、現在国際価格が非常に低迷いたしておるというようなところからいたしまして、世界的にも新規鉱山の開発が停滞してきておるという事情もございます。あるいは開発コストも年々上昇してきておる、こういう現状もございますので、一時的に市況が低迷しておるからということだけで比較的コストの低い鉱山まで閉山するということは必ずしも適切なことではない、こういうような認識を持っておるわけでございまして、そういったことを前提といたしまして、中長期的な展望を前提に本格的な対策と緊急的な対策といったようなものが答申の中に織り込まれてくるのではなかろうか、かように見ておるわけでございます。
  57. 後藤茂

    ○後藤委員 その中長期の展望に立った当面の緊急対策の中でやはり大変重要な課題になっておりますのは、先ほど長官の答弁の中にもちょっと出ておりましたが、鉱業協会からも国内鉱山維持のための調整基金構想が出てきております。年間三百億、三年間で一千億という大変巨額の資金になるわけでございますけれども、その資金の総額はともかくといたしまして、この調整基金というものは緊急対策としてどうしても必要な措置だと私は考えるわけです。     〔中島(源)委員長代理退席、山下(徳)委員長代理着席〕 しかも、これは鉱業界に言わせれば、当然一般会計からの出資だ、こういうようになってまいりますと予算措置を講じていかなければならぬ。五十三年度予算は先般成立をしたわけですが、さらに、円高対策あるいは深化する不況対策等を一応踏まえまして補正予算等の話も出てまいってきております。私は、国内鉱山をつぶしてはならないのだ、しかも今日の経済状況の中でどうしても確保していくためには、やはり予算措置を講じていかなければならない、緊急対策としてやっていかなければならない問題があるだろう。そういたしますと、この調整基金構想に対して長官は一体どういうようにお考えになっているのか、それからまた、答申を早く出して、そして予算措置を早急に講じていかなければならないと私は考えるわけですけれども、長官、どうお考えになっているか、お聞かせいただきたいと思います。
  58. 橋本利一

    ○橋本(利)政府委員 現在関係業界から出されておりますいわゆる基金構想というのは、価格が下落したときに基金から資金を貸し付け、価格があるレベルに戻ったときに返済するということを構想の仕組みとして考えておるようでございます。私自身、そのことの是非よりも、基金というものができた場合のことを考えますと、ある場合多目的に使えるのじゃなかろうか、いまのような価格、特に国際商品でございますので価格の上下動というのは非常に大きい、特に実勢価格以上に鋭角的に上下するというのが過去におけるLME相場動きであったわけでございますので、そういった価格の極端な上下動に対して対応する、あるいは現在五十一年度から進めております備蓄等につきましてもこれが活用できるのじゃないか、ときにはなかなか市中金融に乗りがたいような資金についての貸付財源にもなるのじゃなかろうか、基金というものができた場合にいろいろな使い方もあるのではなかろうか、かように考えておるわけでございまして、私個人といたしましては、基金といったものも十分検討に値するものではなかろうか、かように思っておるわけでございます。  先ほど来申し上げておりますように、なお鉱政懇で検討いただいておる過程である、また、鉱山サイドとユーザーサイドあるいは財政当局と、いろいろと意見が必ずしも一致いたしておらないというような段階でもございます。したがいまして、私といたしましては、必要性なりその趣旨なりについては肯定的な立場にあるわけでございますが、関係者の意見調整を図り、かつは鉱政懇の答申としてのまとまりを期待いたしたい、かように考えるわけでございます。  それから、仮にそういったものを実行に移す場合、できるだけ早く結論を出して、来年度といわず補正段階においても予算的措置を講ずべきではないかという御指摘でございますが、これにつきましても、いま申し上げたように、どのような形で基金を発足させるかという点について必ずしもまだ意見の一致を見ておらないわけでございますが、幸い関係者の意見がまとまれば、できるだけ早く実行に移したいという気持ちにおいては変わりがないということでございます。
  59. 後藤茂

    ○後藤委員 長官らしくなくて、どうも答弁が歯切れが悪くて困るのですけれども、そういう両てんびんかけておる限りは、私は、鉱山というのはどんどんつぶれていきはせぬかという心配を実はするのです。答申待ち答申待ちと言われている。答申が出てきてから補正予算の対策に入っていって、大蔵省折衝に入っていっているうちに、もうことしいっぱいぐらい終わってしまいはせぬか。  私も調べてみますと、現にことしに入ってからでも閉山した鉱山が松木鉱山とか新宮鉱山、さらには、閉山の提案がなされておりますのが尾去沢、鰐渕、紀州、もっとも尾去沢とか紀州というのは鉱量枯渇という問題が一方にもありますけれども、しかし、経済可採鉱量というものが相対的に決まってくることを考えてみますと、必ずしも鉱量枯渇ということで言ってしまえない面もあると思うのですが、ことしに入ってまだ三カ月足らずの間にこういう事態が起こっているわけです。さらに、人員整理、縮小というようなところが八茎鉱山ですとかあるいは相内、大泉、中竜、こういうようなところがあるわけですね。世界屈指と言われております神岡鉱山におきましてもレイオフ、岩手鉱山、古遠部、下川、こういうところもレイオフが出てきておるわけです。  長官、こうやっていろいろ頭を痛めて一生懸命考えているうちに、答申ができた、さあ予算措置ができそうになったときに、見てみたら肝心の鉱山がなくなってしまいはしないかという心配を実は私はしているわけですけれども、歴史的にいままでの鉱業政策を見てみますと、地質構造の調査だとかあるいは探鉱融資だとか、さらには新鉱床探査補助金とか減耗控除制度とか関税とか、さらに鉱害防止基金の融資、この程度なんですよ。国内鉱山自給率あるいはセキュリティーから考えてみましても大変大切だという国内鉱山対策にしてみれば、どうもこの程度の支えというものでは、私は今日抱えております鉱山の危機というものは救えないと思うのですね。  これは大臣も、これまでの鉱業政策に対する同僚議員等の質問につきましても、いままでやっております対策では抜本的に鉱山も守り鉱業政策を確立していくその担保にはならないというように答弁をされているように思うのです。私は、やはり基本的な鉱業政策に対する法律、あるいはこれが基本法ということになりますか、安定法ということになりますか、そういう別の支えというものが、こういう断片的なものではなくて、総合的な基本法的なもの、安定法的なものがどうも必要だと思うわけですけれども、長官、鉱政懇の論議の中におきましてもこういった問題が出てまいっておりましょうか。あるいは長官としては、どうももういろいろな手だては考えつくことはやってきた、しかし、抜本的な対策が講じられないので、ひとつやはり法律というものを別につくり上げて、そういう制度のもとに国内鉱山の保護、安定策を考えていきたい、こういうようにお考えでしょうか。簡単で結構でございますので、その基本的な考えをお聞かせをいただきたいと思います。
  60. 橋本利一

    ○橋本(利)政府委員 ただいまお話ございましたように、従来の鉱山対策といたしましては、当然のことでございますが、鉱量をいかに確保するかという点と、それからコスト高に対しましてスライド関税を活用して一部のコスト補てんを行うといったようなところに対策のポイントがあったのではなかろうかと思うわけでございますが、いわゆる石油危機以降、内外の経済体制、経済体質というものが非常に変わってまいった。特に日本の場合は、従来の高度成長から安定成長に移っていくというような過程にあるわけでございます。それに対して国際的な景況の不振、国際商品である各種非鉄金属の価格の下落というものが一段と日本の鉱業に対して大きな打撃を与えてきておる、かように現状を認識いたしておるわけでございます。したがいまして、そういう認識に立つ場合、従来の対策だけでは不十分であるというふうに考えておるわけでございまして、鉱政懇の中でも基本法あるいは安定法といったような議論もなされております。  それで、私は、法律をあらかじめ想定する、あらかじめ考えるということよりも、まず何をなすべきか、そのためには法律が要るのか要らないのかという順序で考えるべきだろうと思いますが、必要とあれば基本法なり安定法を制定すればいいわけでございまして、その中身になるべき問題点をまず詰めるべきではないか。その場合に、従来の対応策だけでは不十分である、そこに新しい政策の展開というものが要請されてきておるわけでございますので、先ほど来お話がございました基金構想なども踏まえまして、具体的に何をなすかということをまず固めていきたい、かように考えております。
  61. 後藤茂

    ○後藤委員 この前も私は、紹介と言ったらおかしいのですけれども、申し上げたわけですが、あの自由化を前にいたしまして金属鉱業等安定臨時措置法というものをつくったわけです。私も、金属鉱業が抱えている構造的体質から見て、どうしても安定法というようなものが必要であると考えた一人でございますけれども、それがあの当時は、幸か不幸か銅価格等が暴騰をいたしまして、そして五年の時限立法が簡単に廃止提案がなされて、その法律が廃止されてしまっているわけです。しかし、あの議事録をもう一度読んでみますと、福田一通産大臣がそのときにこういうような提案理由の説明をしているわけです。「金属鉱業等の早期安定のためには、今後、この体質改善策を一そう積極的かつ計画的に推進する必要がありますが、また同時に、鉱産物は、国際的に需給、価格の変動が激しい商品でありますので、体質改善過程中の過渡的措置として、関連業界の協調による引き取り体制を中心とした生産及び価格の安定対策を講ずることがぜひとも必要であり、そのための臨時措置として」云々、こういう提案理由の説明がある。  私は、この中で言い尽くしていると思うのですね。つまり国内鉱山に対しましては、やはり基本計画を策定をいたしまして、安定して活動ができる保障をしていかなければならぬだろう。私は、先ほど申し上げましたが、探鉱の融資だとかあるいは調査だとかあるいは関税とかというような対策ももちろん大変大切ですけれども、もっと国内鉱山というものを安定してやるという制度的保障というものがどうしても必要だろうと思うのです。むしろ、鉱政懇でいろいろな意見が出ました、その中身をまず詰めていってから法律が必要ならばということではないんですね、歴史的に見ましても。そこのところにやはり一歩踏み出していくという長官基本的姿勢が必要な段階に来ておると思うのです。  この委員会におきましても、特定不況産業安定臨時措置法が約一カ月余にわたりまして論議をされました。あの中に特記されました業種には、平電炉だとか造船とかあるいは合繊とか、こういうようなものが入っているわけですね。これと比較をいたしまして、いま置かれております金属鉱業はもっと深刻の度が強いと思うわけです。あの特定不況産業安定臨時措置法でも安定基本計画というものを策定するわけです。そういう法律が臨時措置としてであれ必要だというのに、金属鉱業に対しまして基本法なり安定法なりというものが、いまだにその中身を詰めなければ法律が果たして必要になるかどうかという段階でしょうか。もう私はそうじゃないと思うのです。並行してつくられていかなければならない、そして安定基本計画といいますか、需給の基本計画を策定していくという段階にいま来ていると思いますので、長官、どうもそこのところは歯切れの悪い答弁になりますが、私は積極的に答弁をしていただきたいと考えるわけです。重ねてお伺いをいたします。
  62. 橋本利一

    ○橋本(利)政府委員 かつての需給の安定臨時措置法が五年の限時時点で廃止された。その廃止された時点における状況というものは、私つぶさに承知しないわけでございますが、直接的には自由化を契機としてという制定の趣旨、それからいま一つは、当時やはりLMEの相場がかなり高いレベルにあったのではなかろうかというようにも考えるわけでございますが、そういった過去の経緯は別といたしまして、私自身、非鉄金属鉱業というものは地下資源産業であるということはもちろんでございまして、その限りにおきまして人力ではいかんともいたしがたい自然的条件の制約のもとにあるということは十分認識すべきだと思います。また、それだけに需給の調整もなかなかむずかしい産業であるというふうにも考えておるわけでございます。さらには、いずれもが国際商品でございますので、国際的な影響をもろに受けてくるということもございます。  そういった意味におきまして、需給の安定というものは他の産業においても当然必要でございますが、特に地下資源産業である非鉄金属において需給安定措置というものの必要性は、私自身否定するものではございません。一方また、国際商品でございますから、国際的協調の場で問題の解決を図っていかなければいけないということも大切かと思います。現に、わが国内におきましては、減産体制あるいは備蓄制度の創設といったようなことでいろいろ手を打っておりますが、銅については、御承知のような一部の国におきまして増産体制をなお維持しているといったようなところがあって、需給がなかなか改善しない、したがって相場の回復もおくれておるといったようなこともございますので、あわせて国際商品としての性格から国際的な対応ということも必要かと思います。  いずれにいたしましても、私は立法措置を否定するものではございませんので、必要とあらばむしろ立法措置をお願いすることも大切か、かように考えております。
  63. 後藤茂

    ○後藤委員 法律の裏づけがないと、財政措置を講じていくのにも大変だろうと思いますし、また、長官は国際商品ということを盛んに言われます。国際協調の問題もございます。こういった一次産品国というのは、一次産品のみを生産し、輸出しておる国にしてみれば、安定的に市場が確保されていなければならないということがあるわけですけれども、先ほど長官が国際商品のことを盛んに言われましたのでお聞きいたしますが、国際的な動向を現在どのように見ていらっしゃいますか。  国際商品であるということは、同時に大変乱高下の激しい商品の背景にいろいろな要素が絡んでいるわけです。現にCIPECの減産動向等も言われたりするわけですし、あるいはまた、長官も御存じのように大変政治的なリスクの高い商品なんですね。たとえばザンビア等の政情不安を見ましても、仮に一次産品国で政変なり政情不安が起こってきたときには、LMEを中心といたしまして、銅を見てみますと、現在百万トンぐらいの過剰在庫を抱えていると言いますけれども、すぐにこういうものがなくなっていくと言うとちょっと極端ですけれども、在庫が減ってくるということもあるわけです。  そういたしますと、もう一度もとに返りますが、国内の鉱山から出てまいりますたとえば銅の場合は百万トンぐらいの中でわずか十万トン程度じゃないかと言われるかもわかりませんけれども、その十万トン程度すらも現在は落ち込んで、七、八万トンの確保すら危なっかしいという状況に入ってきているわけです。国際商品であればあるほど、国内鉱山から出てまいります重要な資源というものは安定的に確保していかなければならない。国際的な動向について長官は一体どのようにごらんになっていらっしゃいますか。国際協調さえうまくやっていけば安定的に安い商品が確保できるのだ、こういうようにごらんになっているのでしょうか、お伺いをしたいと思います。
  64. 橋本利一

    ○橋本(利)政府委員 まず、銅の国際的動向でございますが、LMEの価格は若干ながら回復傾向を出してきている。ただ、御承知のように、まだトン当たり七百ポンド程度ということで、必ずしも十分な回復には至っていない。この裏には、世界における地金の在庫は二百万トンと言われておりますが、このうち百五十万トン程度が過剰ではないか、こういう状況を反映いたしまして、回復基調にあるものまだ必ずしも十分な回復を見せておらない、こういうことでございます。その後、先進産出国におきまして非能率鉱山を閉山するとか、あるいは最近CIPECにおきまして、一部の国を除きまして減産体制を固めつつある、こういう状況でございますので、私といたしましては、現在を底値として次第に回復過程に戻るのではなかろうかというような期待もいたしておるわけでございます。一方、UNCTADの銅の会議におきまして国際的措置を検討中でございますが、いままでの段階で産消国機構をつくろうというところまでは決まっているようでございます。  それから、亜鉛につきましても、世界的な需要の減退で供給過剰ぎみであるということは銅と変わりございません。地金在庫は約百四十万トン、このうち百万トン程度が過剰在庫というふうに見られておるわけでございますが、特に亜鉛につきましては、昨年の五月時点で七百九十五ドルから一挙に七百ドルに下がった、さらに昨年の十一月にはそれが六百ドルに下がり、ことしの二月には五百五十ドルまで生産者価格、PP価格が急落したということが、また銅と違った意味での大きなインパクトを与えているのじゃなかろうかというふうに見るわけでございますが、現在、国際鉛亜鉛研究会におきまして、需給調整等国際的にいかに対応するかという対応策について検討に入っているということでございます。この場合、鉄鋼の減産と申しますか亜鉛鉄板に対する需要の減少ということが一段と亜鉛の価格を押し下げた直接的な原因ではなかろうか、かように思っておるわけでございます。  それから、鉛につきましては、ただいま申し上げた銅、亜鉛と違って、バッテリーの好調に支えられて一応堅調に推移してまいったわけでございまして、価格もトン当たり三百ポンド程度で推移しておりまして、在庫も低い水準にある、こういうことでございますが、最近、国内では円高を反映いたしまして若干低落ぎみにある、かような状況であろうかと思いますが、いずれにいたしましても、国際商品であり、したがって産出国と消費国との関係ということもございますが、どういたしましても世界の不況と申しますか産業活動の停滞というものをできるだけ早く回復過程に乗せるということ、また、その面からの国際的対応の必要性を要請しているものじゃないか、かように見ておるわけでございます。
  65. 後藤茂

    ○後藤委員 それと関連をいたしまして、円高わが国の金属鉱業を大変大きく圧迫しているわけでございますけれども、昨年の初めに二百九十二円ぐらいだった。それが現在は二百二十円を割ろうとしているわけですが、昨年一年間を見てみましても、五十円から七十円ぐらいの円高圧迫を来しているわけです。この為替相場変動により、製錬所、鉱山を含めて一体どのくらいの損失をこうむっているのか、もし資料がございましたらお伺いをしたいわけです。もしいまなければ後でも結構でございますけれども、おおよそどのくらい損失をこうむっているか。  つまり、どの大臣だったでしょうか、勘違いをされておりまして、円高になると外国から安いものが入ってくるわけだから、その分はもうけているのだろうというような答弁をなさっておった大臣がいたかと思うのですけれども、そうじゃないわけですね。大変むずかしい条件、製錬費等々の方式がありましてドル建てでやられておりますので、円高というものはもろに為替差益じゃなしに差損として影響してくると言われているわけですけれども、その仕組み、また五十円から六十円ぐらい円高になっているわけですが、そのことによる国内鉱山、製錬所に対する影響がどの程度になっているか、お伺いをしたいと思います。
  66. 橋本利一

    ○橋本(利)政府委員 円高基調が鉱山におきましてはむしろ差損を発生させているということも事実でございます。ただ、それによってどの程度差損が発生したかということにつきましては、円高の推移あるいは各種鉱石の契約条件等によりまして異なってくるかと思いますので、いまの段階でどの程度と申し上げるほどの数字を持ち合わせておりませんので、今後作業をやってみたいということでお許しいただきたいと思います。
  67. 後藤茂

    ○後藤委員 いま私がそのことについて申し上げましたのは、これは特定不況産業安定臨時措置法の場合も私は質問の中で触れたわけですが、どうも円高対策法だとかあるいは離職者対策法だとか、こういうものでお茶を濁されてしまっているわけですね。こういった問題では国内鉱山あるいは製錬が抱えておる課題というものは解決しない、そういう構造を持っているわけですから、私は、国内鉱山の安定供給というものを確保していくためにはぜひ法律的裏づけを必要としているのではないか、それがなければ財政措置も講じられないのではないかということを繰り返し御指摘をしているわけです。  一次産業ですけれども、国際競争力の非常に弱いと言われております畜産なり繭糸なりあるいは糖価なり乳価等についてもそうですけれども、それぞれに価格安定のための制度が設けられているわけですね。大きなものについては、もちろん米が生産者価格、消費者価格で食管会計というものがありますけれども、こういう制度が設けられている。畜産なり繭糸なり糖価なり乳価なりというものと、私は、重要度において日本の鉱山、金属鉱業というものはまさるとも劣らないと思うのですね。それに何らの安定保障の対策が講じられていないということについて大変疑問を持つわけです。  ですから、この問題は私はこれ以上触れることは今回はやめますけれども、やはり基本法なり安定法というものを必要としておる産業ではないか。ですから、鉱政懇の中でいろいろ議論が出ているということだけにとどめないで、むしろ通産省としては、積極的に、法律的、制度的裏づけがなければ日本の金属鉱山というものは、もうその制度ができたときには対象となる鉱山がなくなってしまう危険性がある、早急にひとつこういったものを織り込んで答申を出してもらうようにリードをしていただきたい、こういうように要望をしておきたいと思います。  そこで、長官にお伺いをしたいわけですけれども、実は電力料金の問題なんです。アルミもそうですけれども、亜鉛等を見てみますと、やはりこの電力料金というものが大変大きな影を落としているわけですね。構造不況と言われております業種の中には、今度の特定不況産業安定臨時措置法の対象にされましたそれぞれの業種、それは設備過剰という内容を深刻に含んでいるわけですけれども、しかし、亜鉛やアルミ製錬を見てみますと、明らかに従来の電力コストが四倍にも五倍にもはね上がっている、そのことがもうもろにその存立基盤を脅かしているという問題が実はあるわけです。しかも先ほども長官が触れられましたけれども、円高によってドル建ての製錬収入というものが激減をしてまいる、そしてほとんど電力代金に使われてしまう。製錬収入の中で、亜鉛で結構でございますけれども、石油ショック以前とそれから現在、新しい数字で、製錬費の中に占めます電力コストが、パーセンテージで結構でございますが、大体どのぐらいを占めているか、お答えをいただきたいと思います。
  68. 橋本利一

    ○橋本(利)政府委員 ただいま五十二年度の見込み数字しか持ち合わせておりませんので、その数字で申し上げますと、亜鉛につきましては、直接費に対しまして約三五%、総コストに対しまして二三%、価格に対しまして約一五%という数字でございます。
  69. 後藤茂

    ○後藤委員 実は私は、電力料金の問題についてお伺いをしたいというように考えたのは、この間、神岡鉱山に行ってまいりました。あそこは、鉛、亜鉛で、鉛はまあまあそこそこの状況に置かれているわけですけれども、亜鉛が大変深刻です。しかも電力のかん詰めと言われるように、電気を大変食う産業なんですね。  そこで、あすこに行ってみますと、自家発電所を、製錬所を建設する過程で併設構想を持っていたわけです。これが戦前日本発送電に接収をされて、そして今日に至っております。すぐ製錬所のそばにあるわけです。もしそのコストだけを考えていて自家発電としてこれが使用できるとすれば、これは恐らく一円数十銭、諸経費を加えても二、三円で済むのではないだろうかということを神岡鉱山の皆さん方はいつも考えるというわけですね。一方、電力会社は、この為替差益で一千億から一千五百億の利益を上げている。これは企業努力で上げた利益ではないわけですから、しかも地域独占であり、価格は、タイムラグはありますけれども、総合原価主義で一応保証をされている。片一方、その電力を使用する鉱山側、製錬所側が、その高騰する電力料金のためにいまや瀕死の状況に置かれている。大変好対照だと思うのです。このことに対して、長官、何かいい知恵がございませんでしょうか、お伺いをしたいのです。
  70. 橋本利一

    ○橋本(利)政府委員 かつて日本発送電に供出したと申しますか売却した設備を買い戻して、自家発として活用したいというお気持ちは、私もわからないわけではございませんが、ただ、当時正当な対価でもって売買なされた設備でございますし、あるいはそれぞれの電力会社といたしましては、その供給地域に対する供給力として位置づけ、それを前提として諸般の施設計画を準備しておる、一言で申し上げますと各電力会社の供給力としてビルトインされておるといったような事情もございますので、現実論としてはなかなかむずかしいのではないか。  ただいま電力会社が差益が出ているから云々とおっしゃったのは、むしろそれはコスト的な面での御指摘であろうかと思いますが、いわゆる供給力の確保という点からいたしまして、必ずしも現実的に解決の容易な問題ではないのじゃなかろうかというふうに見ておるわけでございます。ただ、電力料金のコストの中に占めるウエートは一段と他の産業に比べて高いわけでございますから、いわゆる特約料金制度を最大限に活用いたしまして、その限りにおいて電力料金の低減を図っていくというのがむしろ現実的な対応ではなかろうか、かように考えるわけでございます。
  71. 後藤茂

    ○後藤委員 むずかしい問題はたくさんあると思います。私もせっかちに、その接収された自家発電所をもう一度戻して、大変安いコストでそれを使うということがいま直ちにできるというようには考えていないわけです。ただ実は例示的に私は申し上げた。つまり、電力コストが、金属鉱山に対しましては、製錬を含めて大変なコストアップになってきているわけです。しかもここの部分をもし何らかの形で緊急措置として対応策がとられるとすれば、瀕死の重症からある程度回復するということが明らかだとするならば、まあ政策料金はなかなかとりにくいと思いますけれども、それに見合う何らかの方法というものは考えられないのかどうか。  アルミニウムについてもそうですし、亜鉛についてもそうなんです。つまり、電力コストがもっと安く、少なくとも国際的にキロワットアワー当たり五円くらいになるならば、現在の約半分くらいだと思いますけれども、そうなればもっと息をつくことができるということが現実課題としてあるとすれば、そこに行政の手が差し伸べられてしかるべきだと私は思うのです。ただじっと、そうはなかなかむずかしい、総合原価主義だ、あるいは政策料金をもしとればいろいろなものに波及していく、だからできないと見送ってしまっているうちに、これまた息を引き取るということになる危険性がやはりあるわけですね。この問題に対して、大変むずかしいのだがということではなくて、何かいい方法がないかということをお伺いしているわけです。
  72. 橋本利一

    ○橋本(利)政府委員 製錬コストの中に占める電力費のウエートが高いというところから御指摘のようなことができ得るならば、製錬業界、鉱山業界に対して直接的に大きな効果があるということも重々わかるわけでございますが、まさに御指摘のとおり、電力料金の体系の中でそれに対応するということは困難である。実は先日も、母子家庭その他のいわゆる要保護世帯に対して福祉料金制度を創設したらどうかという御指摘もあったわけでございます。これも趣旨としては私よく理解し得るわけでございますが、先生が御指摘になりましたように、現在の電気料金体系というものが原価主義と公平主義の柱の上に立って組み立てられているというところから、電力料金の面からはさような対応ができないというところに問題があるわけでございます。強いて申し上げるならば、電力料金体系の別のサイドでそういう対応が可能であるかどうかというディメンションで考えるべき問題じゃなかろうかというふうに思うわけでございます。
  73. 後藤茂

    ○後藤委員 私も、そういう別の面でそれに見合うような形でぜひお考えをいただきたいと思います。  そこで、もう一点それとの関連でお伺いしてみたいと思うのですが、一つは、通産省の審議会でしたか委員会の中に電源多様化委員会というのがあるのでしょうか、その電源多様化委員会がどういう仕事といいますか問題を処理されているのか。  それからもう一つは、それと関連をして実は申し上げたいのですけれども、やはり神岡へ行ってみましてお聞きをしたわけですが、跡津というのですかの水力発電所が現在持っております水力の増強計画が実はあるわけです。     〔山下(徳)委員長代理退席、山崎(拓)委員長代理着席〕 その予定工事費というものが十八億五千万円だ、こういうように言われておるのですが、ところが、開銀の金利が三年間は七%、その後七・五%、こういうようになってまいりますと、その資金を借りて水力の増強をしていく、こういうことになりますと、むしろ現在の買電、北陸電力から買った方がメリットがある、こういうことに実はなるわけです。  そこで、この金利を安くする方法はないか。いま通産大臣お見えになりましたので、電源開発については大変御努力をされているわけですが、その電源開発のために、たとえば交付金をこれまで以上に交付をしていくとか、あるいは用地取得のために大変な金がかかっている、しかし将来を考えてみましても電力というものはもっと開発していかなければならない、単に不況対策ということだけではなしに開発をしていかなければならないという一つの命題があるわけですね。そういたしますと、この水力、現在の自家発の水力を増強をしていくためにぜひひとつ努力をしていきたいと考えておりますが、その金利が高いために二の足を踏んでおる。ここでは用地取得のための苦労というものもないわけです。そういたしますと、日本の電力需給の観点から見ましても、電力会社にいたしましても、またこの鉱山、製錬所にいたしましても、ここでもし安い金利で五%なり三%なりというようなその措置が講じられるとすれば日本の電力事情に対しても大変有益ではないか、したがって、長官、この自家発電の水力増強に対しての資金手当てということについて、いまの開銀の金利以下に下げる方法というものはないか、そういう対策が講じられないかどうか、お伺いしたいと思います。
  74. 橋本利一

    ○橋本(利)政府委員 まず、電源多様化の問題でございますが、先ほど来お話が出ておりますいわゆる電力料金が製錬コストの中で非常に高いウエートを占めるということも、裏を返しますと、わが国における発電電力量の構成を見ますと、石油に依存している部分が六五、六%にもなっておるというところに大きな原因があろうかと思います。そういったコスト的な面のほかに、石油は将来その供給が不足ぎみになってくる、あるいは価格も上昇してくるであろうといったような問題意識からいたしまして、石油にかわるべき原子力のほかに水力あるいは石炭火力あるいは地熱発電といったようなものにつきまして現在検討を進めておるわけでございまして、いわゆる石油に対する依存度を低減する、その大きな方向として電源多様化の方策を詰めておる、こういうことでございます。  二つ目の水力開発でございますが、ただいま申し上げましたような石油に代替するエネルギー、特に貴重な国産エネルギーの活用という観点から水力の開発に努力いたしておるわけでございます。現在わが国に残されておる未開発の包蔵水力は約千数百万キロワットと言われておるわけでございますが、小規模のものといえども開発していきたい、かような考え方から、五十三年度から開発銀行におきまして特別枠を設定いたしたというのがその経緯でございますが、御指摘のとおり金利が必ずしも安くない、しかも水力開発をやるためには他の電源開発よりもキロワット当たりの開発費が非常に高い、物によっては三十万から五十万もかかるというふうにも言われておるわけでございます。したがいまして、かような水力開発を積極的に進めていくためには良質の資金を準備する必要があるという点におきましてはまさに御指摘のとおりかと思いますので、本年度におきましては制度を創設したということにポイントを置きまして、今後この金利をできるだけ安くし得るように財政当局とも折衝を続けていきたい、かように考えます。
  75. 後藤茂

    ○後藤委員 ぜひいまの御答弁を実現するために努力していただきたいことを要望しておきたいと思います。  長官最後簡単にお答えをいただきたいのですが、先ほど、業界団体から調整基金構想というものが出されている、そのことについては御質問いたしましたが、一方、いまの行政の立ちおくれ、対策の立ちおくれをもう見ておれない、こういうことで、日本でも最大の鉱業県であります秋田県におきましては、県内の中小非鉄金属鉱山の救済を目的といたしまして中小鉱山緊急融資制度、県が六億預託をいたしまして十二億の融資枠を持ってこの四月一日から救済対策を講じていこう、こういうように小畑知事のところで決められたようでございます。そして、お聞きするところによりますと、すでにその枠を超えての申し込みがある、それほど大変差し迫っているわけでございます。  こうした自治体が積極的に取り組んでいるのに対して、どうも政府の方が立ちおくれていはしないかというように考えるわけでございますけれども、こういった制度をさらに充実強化をさせていくためにも、調整基金構想というものに対しまして、これは鉱政懇の答申を待つまでもなく、政府としても具体的な考えを明らかにしていただきたい。これは一言で結構でございますので、ひとつ長官の積極的なお答えをちょうだいしたいと思います。
  76. 橋本利一

    ○橋本(利)政府委員 私たちもかねがね、秋田県知事なりあるいは県当局者が非常に積極的に鉱山行政、地元における対応をなさっていることを高く評価しておるわけでございます。ただいま御指摘のような問題も鉱政懇の検討の場に反映していくと同時に、私たちもそれに劣らないような努力を傾けていきたい、かように思います。
  77. 後藤茂

    ○後藤委員 時間が参りましたので、大臣にお伺いをしたいのでございますが、先ほどから長官に、今日の金属鉱業、国内鉱山が抱えております問題点についての行政の立場からの積極的な施策についてお伺いをいたしました。  大臣にお伺いをしたいのは、私も実は昨年の四月に、前の大臣であります田中通産大臣に対しまして、金属鉱業政策、これは何としても安定的に確保してやらなければならない産業ではないか、セキュリティーの観点から考えてみましても、あるいはまた大変乱高下の激しい国際価格に影響されましてその都度鉱山に働く労働者が首を切られる、あるいはまだ開発可能であるのに、操業可能であるのにそのときの経済情勢によって経済可採鉱量というものを狭められる、こういうような事態の中で、つぶさなくてもいい鉱山をつぶしていかなければならない、政策の立ちおくれによってそういう事態が起こる危険性がある。しかも昨年の四月に私御質問申し上げたときから一年間経過をして振り返ってみますと、大変深刻の度を増しているわけです。昨年考えておったよりももっと深刻ですし、さらに円高問題が拍車をかけているわけです。先ほども長官に申し上げましたが、長官も大変深刻にこの問題は受けとめているというように御答弁をいただきました。  大臣は、予算委員会なりあるいは商工委員会における同僚議員の質問の中でも、いろいろな対策を講じているが、しかし、この対策では今日日本の金属鉱業が抱えておる問題を抜本的に解決できるとは考えられないというような趣旨の御答弁もあったかと思うわけです。私は、金属鉱業に対しましては、やはり基本的な法律なりあるいは安定法なりというもので支えていくべき性格のものではないか、かように考えておりますので、大臣から、今日抱えております金属鉱業を一体どのように対策を講ずることによってその安定的な確保、重要な資源でございますから、その重要な資源の安定的な確保をどういう制度的支えによってやっていくかということを、ひとつお伺いをしたいと思います。
  78. 河本敏夫

    ○河本国務大臣 この問題につきましては、本委員会でもしばしば答弁をいたしましたが、要するに、日本の非鉄鉱業は、現在の情勢のもとにおきましては完全に国際競争力を失ってしまっておるわけであります。そこで、完全に国際競争力を失ったこの業界を一体どういう形に持っていくか、やはり資源の安全確保という意味からもある程度の生産は国内で続けたい、続けさせるのには、いまのむずかしい条件のもとでは一通りの対策ではなかなか困難である、そういうことがございますので、鉱業政策懇談会で先般来いろいろ専門的な立場から検討をしていただいておりまして、もう結論が出るころでございます。その結論を待ちまして、通産省といたしましても対策を最終的に決定したいと考えております。さらに、その間関係業界の代表の方々からも非常に熱心な陳情等もございますので、近く何らかの方向を明らかにしたい、こう思っております。
  79. 後藤茂

    ○後藤委員 大臣、鉱政懇の答申を待って対策をというように御答弁なされたわけでございますけれども、あの特定不況産業安定臨時措置法、これはむしろ政府が積極的に、今日過剰設備を抱えております構造不況産業に対しまして、一つは設備廃棄のための共同行為、一つは信用基金の制度を講じていくというように、むしろ行政が積極的に取り上げようとされたわけです。それ以上に深刻な課題を持っております金属鉱業に対して、今度は、答申を待って、そしてそこでひとつ詰めていきたいということでは、手おくれになりはしないかということを私は心配をいたしております。特に、国会が終わる、あるいは補正予算等の論議も出始めてまいっておりますけれども、それにも間に合わないということになりますと、せっかく確保していかなければならない鉱山がその過程でつぶれてしまうということになる危険性がございますので、鉱政懇の答申を早めていただくということは、もちろん積極的に取り組んでいただきたいわけでございますけれども、制度的、法律的な支えというものを、この際、あの特定不況産業安定臨時措置法に取り組まれた行政当局としては、金属鉱業に対しましても、この救済策といいますか、保護策といいますか、安定確保のための対策の立法措置、制度というものを確立する必要が差し迫っているどころじゃなしに、もうまさに火がついていると私は考えるわけです。  時間が参りましたので、最後大臣からその積極的なお考えをお伺いをいたしまして、私の質問を終わりたいと思います。
  80. 河本敏夫

    ○河本国務大臣 これから対策を諮問するということではありませんで、前から検討をお願いしておりまして、もう結論の出るころでございます。さらに督促をいたしまして、できるだけ早く対策を決めたいと思います。
  81. 山崎拓

    ○山崎(拓)委員長代理 午後二時から委員会を再開することとし、この際暫時休憩いたします。     午後一時一分休憩      ————◇—————     午後二時七分開議
  82. 中島源太郎

    中島(源)委員長代理 休憩前に引き続き会議を開きます。  質疑を続行いたします。中村重光君。
  83. 中村重光

    ○中村(重)委員 きわめて初歩的なことを長官にお尋ねするのですが、経済危機という認識の問題ですね。御承知のとおりに輸出は大幅に伸びている。輸入は政府のせっかくの努力にもかかわらず余り伸びない。黒字は百億ドル以上というような数字を示している。そうしたことがマイナス面あるいはプラス面といろいろ出て、また混乱があることもよくわかっているわけですが、さて、経済危機とは何か、そのことに対して宮澤長官の認識を伺ってみたいと思います。
  84. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 ただいまの状態が昭和四十八年以来の石油危機から発生したこと、及びこれはわが国に限らないことはよく中村委員が御承知のとおりでございますが、私は、いまのわが国経済で一番心配すべきことは雇用の問題であるというふうに考えております。かつては完全雇用を達成したわが国でありましたけれども、現在の有効求人倍率が〇・五程度であるということは、いかにも雇用情勢が心配な状態であることを示しておりますし、完全失業者の数も、一、二、三は例年高い月ではございますけれども、百三十何万というようなことになっております。この問題が私が一番心を痛めておる問題でございます。その他の面につきましては、一般に経済活動が沈滞して企業の経営状況が極端に悪いといったようなことも、その次に心配なことだと私は考えておるわけでございます。それらはいわゆるわれわれの国内の問題でございます。  対外的には、われわれは高くなりました石油を十分買えるだけの輸出をしておりますので、その点、かつて心配されましたようなことはございませんが、逆にそのことが、わが国が世界の中で、ことに先進工業国の中でいわば失業を外国に輸出しておるというような批判を時として外国から受ける、そのことがひょっとして世界的な保護主義に転換をするようなことになれば、これは憂慮すべきことである、そのようなことがないように対処しなければなりませんが、先ほども御質問の中でお述べになりましたように、これだけ円が上がってまいりましたけれども、かえってそのことがいわゆるJカーブというようなことで、逆に輸出をふやし輸入を減らす、短期的にはちょうど原則と反対のようなことがただいまのところ起こっておりますので、これに対してとりあえず緊急輸入をするなりいたしまして、本来円が高くなったことから来る輸出の鈍化、輸入の増加ということに恐らく今年度の後半にはなってまいると思いますが、それまでの事態の処置をしなければならない、このようなことであろうかと思います。
  85. 中村重光

    ○中村(重)委員 経済危機とはということになってくると、私なりに、まず円高、為替不安ということを挙げることができるのでしょうし、国際的な保護主義というものが台頭してくるのではないかという不安、その結果がどうなるかということはもう明らかであるわけです。  それから、日本輸出環境の不安定ということが言えるんでしょうね。輸出は非常に伸びているんだけれども、その輸出が伸びているというのは自動車であるとか弱電であるとか家電であるとか、そういった特定の突出した製品の輸出ですから、地域的とかいろいろな面においては必ずしも安定した輸出であるということは言えないと思うのです。  それから、いま大臣お述べになったように、一番大きな問題は何といっても雇用問題ということで、これは私は大臣と同じ考え方を持つのです。  それから、エネルギーの問題ということですね。そうしたことから来る世界経済の不安定ということも挙げることができるんだろうと思うわけです。  それから、物価の問題にしても、いま消費者物価が下がっているんだということですけれども、これは政府施策よろしきを得て卸売物価や消費者物価が下がったというような評価は、どんなにひいき目に見ても言えないのです。卸売物価が下がるということは、円高によって輸入価格が下がってきたということと全く関係がないということは言えないんでしょうけれども、要するに受けざら、国内の不況ということ、個人消費も伸びない、設備投資もなかなか生産に結びついてこないといったような、そうした深刻な不況という問題が消費者物価の値下がりという形になってきているのであって、物価が下がってきていることが、申し上げたように、健全な姿ということで評価はできないのではないかと考えております。  それから、いま政府が公共投資を積極的に進めてきている、それが建設資材の値上がり、しかもインフレ傾向というものが出ているように私は感じるのです。需給ギャップが二〇%程度であるんだからそういう心配はないというように、そう甘くは考えられない。してみると、建設資材の値上がりが吸引力となってやはり物価の上昇ということに発展していくのではないか、そういったようなことですね。  経済危機というものは先ほど大臣のおっしゃったことが一番重要な問題といたしましても、以上挙げたようなことはやはり経済危機ということになるのであろうと私は思っているわけですが、その点、具体的に私申し上げたわけですけれども、大臣、いかがでしょうか。
  86. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 ただいま物価のこともお話しになりました。確かに卸売物価がマイナスであることは、どうも喜んでいいのかどうか。円高の影響の限りは差し支えございませんけれども、企業活動の沈滞ということの反映でもございます。また、消費者物価につきましても、仰せのとおりの要因もございますし、さらには比較的暖冬等いろいろ気候の関係で、生鮮食料品、季節商品の供給が安定して価格が安定しておったということも寄与しておりますから、これも政府が別に自分の手柄にできる要素でもございませんで、おしなべて、いまのわが国経済が正常な姿で少しでも拡大均衡を自律的にやっていけるという状態にまだなっていない。私どもとしては、公共投資を主導させることによりまして五十四年度あたりにはそういう状態に徐々につないでまいりたいと思っておりますけれども、おしなべて自律的に着実な拡大均衡になっていないというところが、一言で申しまして問題であろうと思うのであります。
  87. 中村重光

    ○中村(重)委員 大臣と私とでは、これから各論に入ってくると大分認識が変わってくるのでしょうけれども、基本的な点については認識はそう変わらない。そうしたいろいろな不安要因というものが基本的にあるわけですけれども、現在の特徴として挙げるとどういうことが言えるのでしょうか。
  88. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 主だった点の幾つかを申し上げますと、やはり雇用の問題を私は第一に挙げたいと思います。次に、企業の稼働率が低い、しかも採算も非常によくないというようなこと、したがいまして、設備投資意欲が製造業にはきわめて乏しいというようなことを申し上げることができると思います。  それから、対外的には経常収支の黒字が大変に大きい、そういう中で円の価値が不安定と申しますか、非常な勢いで過去半年間二度にわたって大きな上昇をしておって、しかもそれがどこで安定するかということが一般に見通しがつきませんために、国内すべてに一種の不安要因として感じられておる、そのようなことを特色として申し上げられると思います。
  89. 中村重光

    ○中村(重)委員 おっしゃることだろうと思うのですが、また私なりに考えてみると、いま大臣が言われたことと、それから、石油ショック以来、石油の値上がりによって結局生産コストが上がってきたということですね。いままでは価格に転嫁することができた。ところが、いまはなかなかそうはまいらないということですね。そうなってくると、結局利潤が低下をしてくる形になるだろう。それは減量経営となり、大臣がお挙げになりましたように、雇用と需要の低下という形が不況の最大の原因として挙げることができるのではないかと思うのですが、そこらの認識はいかがでしょうか。
  90. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 そのことは確かに一つ大きな問題である、ことにこれは将来に向かっての一つの問題をはらんでおると私は考えております。すなわち石油価格そのものが何倍かになっておるということが基本になりまして、昭和四十八年以降、すべての生産財、資本財の価格が踏み上げたわけでございます。したがいまして、恐らく企業の立場から申しますと、現在持っております設備をフルに償却いたしましても、それでもって新しい設備に更新することはできない。企業によって違うと思いますけれども、リプレースメントをしますためには、現在の設備の取得価格の二倍ないし三倍のものをかけなければ新しい設備ができないということであろうと思いますので、それを逆に申しますれば、現在は償却不足の状態あるいは超過償却すべきものを利潤とか配当とかいうものでやっておる。厳密な企業会計から申しますれば、したがってタコ配とでも言うような状況に実際はなっております。ただ、これは御承知のように、会計のやり方を新しい価格水準に従っていつどのような形でやるかという大変むずかしい問題を含んでおるわけでございますけれども、そういう長期にわたっての石油危機以後の対応という問題がひとつ残っておりますことは、私は御指摘のとおりであろうと思います。
  91. 中村重光

    ○中村(重)委員 これから各論に入っていろいろ御意見を伺いたいと思っているのですが、大分時間を要しますので、ぜひ大臣にきょうお尋ねをしておかなければならぬ点がありますからそれに移りたいと思いますけれども、ただ、私が考えて非常に不安に思っている点として二、三挙げますと、不況と貿易をそのままにして円高対策としてドルの買い支えをやっているということは、問題の解決にならない。非常にマネーサプライの拡大ということになって、そのこと自体がやはりインフレを引き起こす大きな要因になっていくのではないかという不安感というものがあるわけです。それから、ドルの買い支え、公定歩合の引き下げ、公共事業の波及的効果というものは、そういうことでは発揮できないというように考えている。それら雇用の問題等々、いろいろきょうはじっくり大臣の見解も伺い、私の考え方も申し上げたいと思っていましたが、このことはひとつ他日時間をとっていただいて、じっくり御意見を伺いたいということにいたしたいと思います。  そこで、この為替差益の還元の問題ですけれども、これは大きな世論というようになっていると私は思うのです。これだけ円高で、そしてその円高がいかにも悪いことだというので、これが悪魔みたいな形に批判されている。円高は確かにデメリットというものもあるけれども、メリットというものもあるわけですね。ですから、円高というものがマイナス要因として循環をする。これを今度は、メリットはプラス要因として循環させるということを政府施策として強力に推進をしていかなければいけない。そのことが経済の安定、ひいてはやはり七%成長というような方向を実現する道にもつながっていくであろう。  ところが、どうも政府のいまやっている施策を見ますと、場当たり的で、本当に日本経済というものを、一つの将来の方向も見定めながら、当面の短期政策短期政策としてこう結びつけてやっているようには感じられない。それは宮澤長官に期待が非常に大きいと思うのですけれども、まだ御就任になって前の失敗と申しましょうか、あちこちと穴ばかりもうあいているところ、これをつくろうというようなことが大変大きな仕事になっているように実は思うのですが、たとえば円高差益ということで公共料金——原油はこれだけ下がっているのだから、電灯料金にしてもあるいはガス料金にしてもこれを下げるべきではないか。  それに対して、これは五十三年あるいは五十四年度据え置きにして、そしていまこれを下げるというようなことよりも、それの方がいいんではないかという確信の上に立っておられるのであろうとは思うのでありますけれども、国民感情としては納得いかないですね。やはり原価主義ですから、認可のときは原価主義によって、たしかあのときは円が二百九十九円かで試算をしてきていると思うんです。まあ二百二十円台を割るということの中で据え置きだというようなことでは納得できないんじゃないか。  これは実際は、津々浦々の電力というよりも電灯だけの世帯もあるわけですから、そういうものを平均をいたしますと、たしか二千円ぐらいと言われているわけです。それに円高差益というものを還元をするということになりましても大した額にはならない、むしろそれを返すという手数なんというものがかかって、逆にマイナス要因になるというようなことにでもなる点もあるかもしれないと思うんですね。  そこは具体的に御説明願わないとわからないんですけれども、しかし、国民はそこらを十分理解できるようにしてもらわないと、これだけ円高だということになって、輸入は非常に安いものが入ってきているんだ、どうしてメリットというものをフルに活用して国民にこれを還元しないのか。いまの円高というもの、これは企業の何といいましょうか努力によってそのメリットというものは実現をしたのではない。これは国民の共有財産なんだから、当然国民にこれを還元をしなさいということは、私はそれなりに理解をしなければならないし、できるだけそういった方向に沿って国民の納得を得られるような施策を講じていく必要があるのであろう、こういうように思うのですが、そこらの大臣の御見解はいかがなんですか。
  92. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 まず、わが国の場合、西ドイツと際立って一つ違います点は、いわゆる生鮮食料品、野菜でありますとか肉でありますとか卵でありますとか果物でありますとかが、西ドイツの場合、ECの域内からあるいはアフリカから入ってまいりますので、マルクが上がりますとそのメリットを消費者がすぐに毎日感じることができる。わが国の場合には、御承知のようないろいろの事情からそういうふうになっておりませんので、これはそれなりに事情のあることだと思いますが、この点がやはり非常にわが国の場合、国民が円高の利益を直接に、じかに、すぐに感じないという一つの理由であろうと思います。  しかしながら、その他の分野におきましては、卸売物価の下落、原燃料の価格の下落ということを通じて、かなり迂回し、かなり時間をかけながら、消費者にそれが少しずつ還元をされる、こういう仕組みであることは御承知のとおりでございます。  それで、私ども、日本は原則として市場経済でございますから、市場経済の中で従来円高の差益がどの程度還元されておるかということは、二度にわたりまして調査をいたしました。そして消費者にも知ってもらう、また不合理だと思われるところは行政上の指導もしてもらうということで、二度の調査をいたしました。また、二月以降円高がございますので、もう一度これはやってみたいと考えておるわけでございます。  総じて私の見ておりますところ、自由化されておる分野におきまして比較的円高の還元ができており、その中でも自由競争が十分に行われている分野において還元がよくできておるようでございます。     〔中島(源)委員長代理退席、山崎(拓)委員長代理着席〕 そうでない場合に非常に還元というものがおくれておる、あるいは実現していない。その一つはやはり政府自身になるわけでございます。つまり政府が関与しておるということは自由化でない、あるいは自由競争が行われていないということになるわけでございますので、これはそれなりに理由がございますけれども、形としてはそうでございますから、その分野で政府として何か考えられることがあるかないかということは大事な点であると思います。  中村委員の言われますように、これはきわめて大事な点であると私は思っていまして、先ほど電力等のお話をなさいました。私は、仮に東京都の一世帯当たりの電力、電灯消費量が月に二千円であって、還元される金額が三十円であるといたしますならば、それはむしろ将来の電力の発電コストなどを考え、また、この際電力設備投資の前倒しなどもやってもらいたいと思っておりますので、据え置きということで内部に留保することの方が好ましいのではないかと従来から考えてまいっておりますけれども、しかし、それらのことを含めまして、この際、政府あるいは政府機関が関与しておりますサービスなり物資について、果たして還元というものができないのであるか、できないとすれば、それはなぜであるのかということは十分国民に知っていただく必要があると私は思います。  私は、この点は御説のとおりだと考えまして、近いうちに関係各省と協議をいたしまして、関係しておりますサービス、物資等について円高が還元できるものはしてもらう、それが好ましいのでありますが、そうでなければそれがなぜであるか、それにかわってどのようなことが考えられるかというようなことをひとつ政府として取りまとめまして、国民にも知っていただきたい、こういうことを近いうちにいたしたいと考えまして、各閣僚の協力をただいまお願いをいたしたところでございます。
  93. 中村重光

    ○中村(重)委員 一キロワットアワー二十八銭になるから、これを還元をするということにしても、むしろ大変な費用、手数の方がたくさんになってしまうというような一面もあるのかもしれないのです。しかし、原油を例にとると、円が一円上がれば二百五十億円ぐらいという膨大な差益が石油業界に転げ込んでいる形であるが、しかし、それは石油業界だけが押さえているということではなく、電力あるいはガスその他需要面に対して、十分ではないのかもしれぬけれども安くなっているだろうと私は思う。しかし、消費者までは届いていないので、消費者は納得できないでしょう。  それから、私、小売の段階で調べてみると、LPGの場合などでもそうなんですけれども、三分の一くらいしか小売段階には還元されていないのですよ。やはりメーカーというのですか、そこらで三分の二は押さえているということで、そんなに小売段階に還元されていないものだから、消費者の方にも還元されないという形になっていく。だから、いま大臣がおっしゃったように、国民に理解をさせることだというふうに思うのです。大豆なんかにしても三・八%くらい輸入価格が下がっているけれども、豆腐の値段は七・二%上がっている。それから、パンなどにしても同じようなことが言えるのです。輸入価格は下がっているが、パンの値段は上がっているというようなこと、これは消費者が毎日生きていくために必要なものですからぴんぴん響く。  それをわかるように、国民が納得のいくような説明をする必要がある。ましてや公共事業の場合におきましては、公共事業なるがゆえに経営の保証がなされている。原価主義で申請が出れば認めなければならない、そういうふうに保護されているものでしょう。それなら国民にそれだけ責任がある。いわゆる競争場裏の中にないわけですから、それなら各世帯に、こういうことなんですということを事業者は十分わかりやすいようなパンフレットを発行したり何かしておやりになる必要がある。政府にいたしましても、原価主義ですけれども、いま還元するよりもできるだけ長期に据え置きの方がいいのですということを勇気を持っておっしゃらなければいけない。何か言いますと、企業のお先棒を担いでいる、癒着しているのだ、代弁者になっているんだと批判されるからというのでこれを避けてはいけないと思います。それだけに原価主義に基づいて認可をしたという責任政府にもあるわけですから、そこらも十分納得いくような説明を勇気を持ってやる。そうしないと、国民の不信感ほど政治にとって恐ろしいものはないと私は思うわけですから、そういった点はいま大臣から考え方を明らかにしていただきましたけれども、勇気と責任を持って対処していただくことを強く要請をしておきたいと思います。  それから、大臣が議長をしていらっしゃる経済閣僚会議で、内需拡大黒字減らしの七項目の対策というものをお決めになったようでございます。目玉となっているのは、新幹線の整備の具体的な実施計画を九月末までに作成をする。これは事実上のゴーサインが出たというように受け取られるわけです。それから、長崎県の上五島青方湾の洋上備蓄プロジェクトを早期着工させる、五月末までに安全基準を決める。金利等の引き下げを推進する。消費者ローンの金利等の引き下げを拡大する。求人開拓等による雇用機会の拡大、円滑な職業転換、地域雇用対策の推進、既往貸出金利の引き下げ幅の拡大といったようなことで、私は非常に関心を持ってこの決定を読ましていただいたわけでございます。  大臣の所管事項ではありませんが、大臣が議長でいらっしゃるので、大きい問題については十分議論をされたことだろうと思うのでございますが、新幹線の整備の具体的な実施計画、これはいま計画に上がっている全線を早期着工するという方針をお決めになったわけですか。
  94. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 ただいまお尋ねの整備新幹線の問題につきましては、いわゆる整備五線というものが、従来政府あるいは与党との間でいろいろ議論がございまして、一体今後どういうことになるのかということが関係者の間できわめてあいまいな状態に置かれてございました。そこで、その点を少なくとも明確にすべきではないか、そしてその時期を九月までに日限を限ろうということをせんだって決定をいたしたわけでございますが、恐らくそうなりますと一つの問題は、国鉄の再建問題とそれをどのように調整をいたすかということでございます。もう一つの問題は、五線を一時に着工することは恐らく現実的でございませんから、どのような優先順位にするかといったようなこと等々、これは御推察のように非常にむずかしい政治問題がたくさん絡んでまいりますけれども、しかし、少なくともそれを明確にいたさなければ関係者にはいたずらな期待と不安を与えるばかりでございますから、前向きの姿勢で、この整備新幹線全体一つ一つをどう扱うかということについての具体的な実施計画を九月末までに作成をいたしたい、こういう合意でございます。
  95. 中村重光

    ○中村(重)委員 実施計画を九月末までに出すのであって、必ずしも計画に上っている新幹線全線に対していわゆる工事線としてのゴーサインを出したというわけではないわけですね。
  96. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 私、ちょっと厳密な言葉遣いの定義を存じませんので、間違ってお答えいたすといけませんと思います。この合意考えられておりますことは、これらの整備五線を、恐らくこれは黒字線というわけにはまいりませんと思いますので、おのおのの線についての採算でございますとか、したがってその生じるであろうところの赤字を国鉄財政再建問題とどういうふうに関係づけるか、つまりどのように負担するかというようなことになるわけでございますが、そういったようなことの検討、その上で整備五線をどういう順序でやがて着工していくか、御承知のようにただいま建設中の二線がございますので、それに先んじて、あるいはそれと並行してということはむずかしいのではないかと存じますけれども、しかし、その後に起こるべき問題としては、この五線について具体的に準備をしておかなければならないわけでございますので、そのようなことについての大綱を九月末までにつくる、こういうことというふうに私理解をいたしております。
  97. 中村重光

    ○中村(重)委員 このいまの計画線の中に長崎線というのもあるわけですけれども、博多−長崎間、この問題に対して私の方の県の知事も大変熱心なんですが、熱心の余り「むつ」と結びつけて、「むつ」を佐世保に入港させるということは新幹線の工事に着工してもらうことになるんだ、それをやらない限り、「むつ」を入れない限りこれはだめなんだということで、三、四日前も、「むつ」と新幹線と結びつけるなんていうことは政府考えているはずはない、そんなことをしおったら、ほかの線も、五線なら五線あるわけだから、いろいろな条件で結びつきを要求をしてくるということになるだろう、だから、それはそれ、これはこれということでないと、新幹線なんというようなものをそれと何か取引みたいな形で考えることは間違いではないのか、政府要路の人たちの意見というものも私も聞いているんだけれども、それは別ですということを聞いている、だからそう取引みたいなことで考えるということは県民を冒涜することにもつながるだろうというように言っているわけなんですが、そういった取引なんてことは考えられるものでしょうか。いかがですか。
  98. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 これらのことは、両方とも政府の行政の問題でございますけれども、恐らくおのおのがむずかしい政治問題であることも確かであろうと思います。行政は行政としてそのメリットに従って考えてまいるべきことであろうと存じますが、両方の問題とも地元との関係あるいは所管大臣の政治的な判断というものも、全体が政治でございますから、それは私はございますことであろうと思いますけれども、それによって行政の筋が曲げられるというようなことは、これはあってはならないことと思います。
  99. 中村重光

    ○中村(重)委員 先ほど申し上げましたように、円高のメリット、これは国民の共有財産として国民の利益に還元をしていくということについて最大限の努力をしていただきたい。どうしても還元をさせることが無理であるということについては、なかんずく公益事業の関係等においては、十分責任を持って国民に、消費者に理解をさせるように対処してほしいということを強く申し上げておきたいというように思います。  それから、大型予算を組んだ。公共事業というものを三四・数%といったように景気浮揚策ということでおやりになった。だがしかし、あっちこっちと問題点が出てきて、波及効果というものも余りない。国際的に公約をした七%の成長であるとか、あるいは六十億ドルドルを減らすといったような問題、これもなかなかうまくいかないということになってくると、調整インフレなんというような、そういうことに政府は踏み切っていくのではないか、もうどうにも動きがとれないということからどうもそういうことをやるのじゃないかなというような不安感というようなものを私は持っているわけですが、調整インフレという手段には出ないということを長官として明言ができますか。
  100. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 ただいま私どもが施行いたそうとしております公共投資は非常に大きなものでございますので、住宅投資もさようでございますが、これらが支障なく行われるための一つの非常に基本的な条件は、物価情勢が安定をしておらなければならないということでございます。それから他方で、七%の成長の一番大きなかぎになります個人消費でございますが、これも物価情勢が安定しておりませんと消費の増加を期待することができませんので、その両様の意味から考えましても、いわゆる調整インフレといったようなことはどうしても避けなければならないと私は考えております。
  101. 中村重光

    ○中村(重)委員 橋本エネルギー庁長官に再度見解をただしておきたいのですが、いま経済閣僚会議の中で決められたものの中に、上五島青方湾の洋上備蓄プロジェクトの早期着工とあるわけです。そして五月末までに安全基準を決めるということです。これは本委員会において、私が、住民であるとかあるいは漁民の合意の上でなければこれを強行するなんということはやってはいけないということに対して、長官は、そうです。合意の上でなければやりませんと明確にお答えになったわけですが、その点はいまも変わりはないかという点、それから、安全基準というような問題は非常に大切であるわけですから、法的措置をしなければならないことは法的措置をやる、洋上備蓄を合意の上に実施されるという段階においてはその点は大事なことでありますし、それから交付金の問題にいたしましても、これは当該町村だけではなくて、周辺の町村にも交付をしていくということでないといけないということも申し上げましたが、それもそのとおりであるというように明確にお答えになった。その方針を、明らかにしている点もございますけれども、ただいま私が申し上げたような点についてどのようにお考えになっていらっしゃるか、お聞かせをいただきたいと思います。
  102. 橋本利一

    ○橋本(利)政府委員 上五島の洋上備蓄問題につきましては、昨年の十二月に地元の上五島町議会では誘致決議をいたしておりますが、周辺の市町村あるいは関係の漁協等についてはまだ最終的な了解を得ておりません。したがいまして、これらの了解を得るべく現在関係企業で努力しておるというのが現状ではなかろうかと思います。  二つ目に御指摘になりました安全基準は、海上保安庁と消防庁でいろいろ煮詰めておりまして、近く最終的なものに仕上がると思っております。この安全基準が決定されることによりまして、地元との折衡も一段と進んでいくのじゃないか。地元の理解を得るためには、かような安全基準に従って、かような設計であるということをよく御説明申し上げる必要があるわけでございますので、安全基準の仕上がりと同時に、一段と地元折衝も進むのではなかろうかと考えております。  それから、交付金の問題でございますが、上五島の洋上備蓄を共同備蓄でやるのか国家備蓄でやるのかで若干の差が出てまいりますが、いずれにいたしましても、立地促進交付金の場合には、共同備蓄であれ国家備蓄であれ、キロリットル当たり百円交付することにいたしておりますので、現在私たちは県を通じて配分を考えていただいたらどうだろうかという一応の考えを持っております。いずれにいたしましても、立地交付金の配分等につきましては、地元の実情に合うように配分されるようにいたしたい、かように考えております。
  103. 中村重光

    ○中村(重)委員 いま長官お答えになったように、共同備蓄にするのか国家備蓄にするのかという点はいまの交付金の問題にも関係をしてくる、そのとおり私も理解しているわけです。長官としては、共同備蓄、国家備蓄、そのいずれが望ましいとお考えになっていらっしゃるのですか。
  104. 橋本利一

    ○橋本(利)政府委員 これは地元の実情あるいは地元民がどのようにお考えになるかということもよくしんしゃくする必要があろうかと思いますが、原則的に申し上げますと、いわゆる備蓄法に基づきまして、民間備蓄につきましては義務づけがされておるわけでございます。そういった意味では、地元の御了解が得られるならば、むしろ民間備蓄と申しますか共同備蓄を優先すべきではなかろうかと思うわけでございますが、いずれにいたしましても、地元がどちらを好むかということも判断材料として大きく考える必要があろうかと思っております。
  105. 中村重光

    ○中村(重)委員 そうすると、いずれにするかということは、地元の選択にゆだねるのですか。
  106. 橋本利一

    ○橋本(利)政府委員 私の言葉が足りなかったわけでございまして、地元の選択にゆだねるというよりも、第一義的には、現在私が承知いたしておりますのは、上五島につきましては共同備蓄になるのではなかろうかというふうに聞いております。したがって、共同備蓄会社ができ上がった段階におきまして、いまどちらかといいますと、三菱重工を中心にいたしまして地元交渉のための会社組織と申しますか受けざら段階で交渉しておるようでございますが、この話がある程度めどが立ってきた段階においては、共同備蓄会社を発足させるというふうに聞いておるわけでございます。したがいまして、その場合には共同備蓄会社が地元と交渉する、それで地元の了解を得ることを前提として共同備蓄として発足する、こういうことになろうかと思います。私が先ほど申し上げましたのは、一般論としての考え方ということでございます。
  107. 中村重光

    ○中村(重)委員 長官、私は長崎県だものだから、特に新聞やテレビが長崎のこととして目に映るのかどうかわからないのですけれども、いま洋上備蓄も長崎県だ、橘湾も長崎県だ。火力発電所も、いま松島をやっている、それから今度は松浦、これもピケを張るだ何だ、大変なことなのであります。それから、将来崎戸もコールセンターにするのか火力発電所にするのか。また、「むつ」の問題でがたがたしている。長崎は水産県である、それから被爆県だ。どうしてこう長崎ばかりねらい撃ちするようにしているのだろうか。長崎人というのはよほどくみしやすしというようなことで、何か長崎をなめてかかっている。おやりになるのだったら、できるだけそういう弊害が起こるようなところは避けていく。また、どうしてもやってもらわなければならぬこともあるのですよ。たくさん炭鉱がありまして、炭鉱閉山によって産炭地なんか疲弊し切っているところもある。そういったところは、地元住民の要請によって政府としても十分配慮していかなければならぬところがあることは言うまでもない。  ですけれども、それにしても漁民が反対するのを、ともかく強引に——あなたが抑えつけておるとは言わないんだけれども、長崎県知事も非常に多情多感なものだから、情熱を燃やしてやっている。ところが、私が申し上げるように、不信感というものもそれに反して高まってきておる。混乱している。そう長崎ばかり混乱させなくてもいいじゃないか、私は長崎県選出の議員として率直にそういう感じを受けるんだけれども、あっちこっちたくさんやってやる中の長崎なんですか。いまのところ、長崎が一番中心にいまのような事業が推進されておるような気がするんだけれども、いかがですか。
  108. 橋本利一

    ○橋本(利)政府委員 いまいろいろ挙げられましたサイトの問題について、国がみずからお願いいたしておりますのは橘湾のケースでございますが、その他洋上備蓄にいたしましても火力発電所にいたしましても、釈迦に説法で恐縮でございますが、当然立地条件というものが大きくその前提になってくるわけでございまして、地質構造だとか海象条件、気象条件、そういったものを全国各地について検討いたした結果、それぞれの企業としてはその地に立地いたしたい、こういうことで結果として長崎県下に集中してきておるのじゃなかろうかと思いますが、それにいたしましても、御指摘のように長崎県というのは非常に大きな漁業地帯、水産県でもございますので、地元の利益調整、その中でも漁業との利益の調整ということにつきましては最大限注意深く対応する必要があろうかと思います。したがいまして、現在長崎県下に立地を考えておる各企業に対しましては、御指摘のような点も重々配慮いたしまして指導いたしたい、かように考えております。
  109. 中村重光

    ○中村(重)委員 いま特に長官が力を入れて、声を大きくして十分配慮していく、そのとおりやってほしいと思うのです。それは住民が合意をする、漁民が合意をする、そういう場合は、それはそれなりにいいと思う。ともかく、反対の勢力というものは小さいんだとか、特定の労働組合なんかがいつも反対をするんだというような考え方をお持ちにならない。反対をする人はまたそれなりの理由から反対をしているのであって、イデオロギーではないわけです。だから、誠心誠意対処する、強権を持って強引にやることは避けるようにおやりになるであろうということは、いまの長官の御発言で理解いたしましたから、そのとおりにやってもらいたいということを強く要請しておきます。  そこで、先ほど私も読み上げました金利等の引き下げの推進であるとか、それから求人開拓等による雇用機会の拡大であるとか、非常にわかりにくいところもあるのですけれども、これはどなたか答弁をしてくれる人はいませんかな。
  110. 田中誠一郎

    ○田中説明員 ただいま先生から御指摘のございました第一点の金利の引き下げでございますけれども、本対策が出ました三月二十五日にはすでに公定歩合を〇・七五%引き下げておりまして、それに連動いたしまして長期金利を含めて速やかな引き下げを推進するということで、現在関係省庁で実施しているところでございます。なお、消費者ローンの金利の引き下げ等々につきましては一部都市銀行がすでに実施しておりますが、その範囲を拡大するということで推進中でございます。  なお、雇用面等につきましても各般の措置がとられることになっておりますが、労働省におきましてこれらの措置を推進するということで現在進めておるところでございます。
  111. 中村重光

    ○中村(重)委員 次に、運輸省からもお見えになっていらっしゃると思うのですが、佐世保重工が大変な経営困難に陥って、そして希望退職を求めたところ、七百七十名の募集に対して千六百八十一名、昨日の締め切りに対してそういう数字も出てきているわけですが、これは大手であるだけに、政府も異常な関心というものを持って対処しておられる。従来の救済策と異なる政府主導による救済に乗り出していらっしゃるのですが、これは特別の意味があるのかということについてお聞かせをいただきたい。
  112. 間野忠

    ○間野説明員 御指摘のように、佐世保重工の問題が新聞等で報道されております。佐世保重工自体につきましては、従来倒産がありましたような、たとえば今月何日とか来月何日の支手決済ができるとかできないとか、そういう問題ではございませんで、将来の工事量の減少に対応すベく、減量体制を敷くべく会社側で努力をしてまいりましたその一環として、ただいま御指摘のような希望退職の募集というようなことがございました。ただ一つ、佐世保重工の特色といたしまして、株主の関係が他よりも若干複雑であるというようなこともございまして、そういった新しい減量体制を確立する上に大株主からの協力が必要である。その大株主間の意見の調整と申しますか、そういうことについて当省の口添えといいますか協力を依頼されまして、大株主間の意見の調整について協力しておるというのが現在の状態でございます。
  113. 中村重光

    ○中村(重)委員 管理職を含めて千六百八十一名の希望退職に対して、二次募集もあり得るのだという見方がある。ところが、私は新聞で読んだのですが、運輸省はもう二次募集はあり得ないという、再建に自信を示しておられるように感じているわけですが、その点はどのような理解なんですか。
  114. 間野忠

    ○間野説明員 最初に佐世保の経営者側が計画いたしましたのが千六百名を若干上回るようなものでございました。その後関係方面とも接触の上、とりあえず七百七十名程度の希望退職を募るということで始めたわけですが、予想外に多く出てまいったということで、先生御指摘のような数字になっておる現状でございます。それで、今後の仕事の見通しでございますとか、それから急激に人を減らすということのマイナス面、そういったものを考えますと、千六百名の人員減というのは妥当なところでございまして、今後これに基づいて経営の強化と申しますか、体質の改善は進められるというふうに考えております。
  115. 中村重光

    ○中村(重)委員 具体的な救済措置として、海上保安庁の艦船などを佐世保重工に優先配分をやるとか、石油備蓄基地の貯蔵タンクを優先発注をするとか、いろいろの救済策を明らかにしているようでございますが、これは新聞報道のとおりに具体的に進んでいるわけですか。
  116. 間野忠

    ○間野説明員 最初に申し上げましたように、現在一般的に不況でございますので、佐世保の経営も楽でないことは事実でございますけれども、たとえば倒産の危機に瀕しておるとか、支手決済がうまくいかないとかいうような問題ではございません。そういうことで、現在私どもに要請されておりますのは、大株主四社の間の調整を依頼されております。それで、いずれもかなりの企業でございますので、仕事のあっせんとかそういった面でいろいろ再建に協力できる面を持っております。それから、佐世保自体もかなりの規模でございますので、たとえば海上保安庁の船を一隻回したからどうのこうのということでもございませんし、現に五十二年度の補正でつきました千トン型の巡視船を一隻三月末に契約いたしまして、すでに建造中でございます。そのほかに普通のコマーシャルベースで進んでおる商談もございまして、五十三年度、五十四年度の工事量についてはできるだけの協力はいたしますが、必ずしも新聞等に報道されておるようなことではございません。
  117. 中村重光

    ○中村(重)委員 科学技術庁から児玉参事官もお見えですが、「むつ」を佐世保に入港させて修理をするということと佐世保重工の救済の問題と結びつけてお考えになっていらっしゃるのかどうかという点であります。これは運輸省も、そのとおりであるならそのとおりだということをお答えいただけばいいのですが、まず科学技術庁から……。
  118. 児玉勝臣

    ○児玉説明員 お答えいたします。  「むつ」の修理と佐世保重工のいわゆる再建問題とは、これは別の次元の問題だと了解しております。
  119. 中村重光

    ○中村(重)委員 福田総理と佐世保の辻市長が、この十二、三日ごろという報道でございましたが、「むつ」の問題を含めて、この佐世保重工の救済の問題について話し合いをするということが新聞に報道されていましたが、「むつ」の問題について、地元の長崎県は核抜き、それから佐世保市は核つき、この調整を科学技術庁がやるようになっていたわけですが、そういったことについての調整という形にまだ乗り出していない。伝えられるところによると、核抜きではなくて、核つきでなければならないということに科学技術庁は固まっているようでございますが、そうなってくると、核抜きでもって態度を決定した長崎県に対して再要請をしなければならないというふうに思うのですが、その要請をしていない段階で、総理が「むつ」の問題を佐世保市長と具体的に話をするということはあり得ないことだというように私なりに受けとめているわけです。不況対策はわかるのです。わかるのですけれども、この「むつ」の問題についての話し合いというものが総理の段階に出るようなことなのかどうか、そういうことを科学技術庁は具体的に承知していらっしゃるのか。
  120. 児玉勝臣

    ○児玉説明員 お答えします。  ただいまの辻市長と福田総理との会談が近々あるという新聞報道がございますが、その機会に「むつ」の問題を特に取り上げてお話しになるというふうにわれわれは聞いておりません。
  121. 中村重光

    ○中村(重)委員 この「むつ」の問題について、長崎県の久保知事は原子炉の封印案を政府に提案をしたということが伝えられているわけですが、そういう事実がありますか。
  122. 児玉勝臣

    ○児玉説明員 最近の新聞報道によりますと、長崎県が核封印をして修理をするということを提案されたというふうに私たちも見ておるわけでございますが、長崎県から具体的にその核封印の内容についてまだ説明もいただいておりませんし、新聞の報道の範囲を超えておらないわけでございます。
  123. 中村重光

    ○中村(重)委員 科学技術庁は、長崎県に対しては、遮蔽の修理と原子炉圧力容器内部の点検という計画をお立てになって要請をされたと思うのでありますが、伝えられておるように、この原子炉に封印をして、ただ遮蔽だけを修理をして、そして圧力容器の内部を点検をさせないように知事が封印をしてキーを預っておく、そういったことになってまいりますと、改修の変更につながってくると思うのでございますが、そのようなことが考えられましょうか。
  124. 児玉勝臣

    ○児玉説明員 先ほど申し上げましたように、核封印の内容については具体的に県から説明を受けておりませんし、それに対する対応も私たちとしてはいまのところ何も検討しておりませんので、御説明を申し上げる段階でないと思います。
  125. 中村重光

    ○中村(重)委員 児玉さん、ここへ私は切り抜きを持っているんだけれども、あなたは当然なことを言っていらっしゃるので、あなたが報道陣にお話しになったということは、私はこれをいろいろ言おうと思いません。正しいことを言っていらっしゃる。そんなことは考えられないということを言っているのですね。新聞、どこからあなた尋ねられてそういうことをおっしゃったのか。あなたは、これは改修計画の変更につながる、だからそういうことは考えられないということを言って、封印ということについて否定的な発言をしていらっしゃるのでございますが、私は、委員会ですからあなたはそう言っておられるのだろう、こう思っておるのです。  私は、知事と昨日も会って話しているのです。きょうも長崎県の漁連の理事会がいま開かれている時間でございます。この漁業団体との話し合いもしてきたのです。知事とも数回にわたって話し合いをしてきました。副知事とも話しました。ですから、知事の考え方もわかっているのです。私の言ったことを知事は頭に置きながら言っているのです。はっきり言っていることは、もう封印をして点検をさせないというのです。科学技術庁は、制御棒を一本ずつ抜いて点検をしようということであった。私は、科学技術特別委員会委員長でございましたから、委員長席から、質問、答弁、絶えず耳がたこになるように聞いていますから、要請した内容をよく承知しているのです。だから、久保知事ともあるいは漁業団体とも十分話ができるのです。間違わないように。知事は、封印をする、周りの遮蔽だけを改修させる、中は一切いらわせないのだ、そういう点検をさせないのだ、こう言っています。それが知事としてのぎりぎりの線である、それを超えるようなことであれば断わると言っているのです。あなたは、新聞記者からの質問に対しても、こういう考え方を明らかにしていらっしゃるわけでございますから、私が申し上げたことに対してどうあらねばならないのかについてのお答えが私はできるだろうと思うのですが、いかがですか。
  126. 児玉勝臣

    ○児玉説明員 核封印については、県から具体的にどういうふうにするか、それから知事がどういうふうに漁協との間で核封印というのをお話しになったのかということについては、はっきりした説明を受けていないわけでございます。それで、核封印ということから、内容としては、新聞情報では、恐らく圧力容器のふたをあけないということではないか、こう類推いたしまして、そういうことでは現在お願いしておる点検の内容に若干の変更をしなきゃいけません。しかし、それについてはまだ長崎県からそういうことでぜひお願いしたいというお話もございませんので、科学技術庁としてはどういうふうに対応すべきかということについての検討もしておりませんし、現在は、制御棒の駆動試験もやらせていただきたい、こういうふうに思っております。
  127. 中村重光

    ○中村(重)委員 科学技術庁で長崎県に要請をされた場合、科学技術庁だけの意思ではなくて、関係の審議会等の意見を聞いて、それに基づいて要請をしましたね。遮蔽の改修、それから制御棒を一本ずつ抜いて——全部抜けば始動しますから、一本ずつ抜いて点検をする。それが審議会の意向である。その線に沿って要請をされたわけですから、それがそのとおりならないということは改修計画の変更ということになるわけでございますから、科学技術庁の意思によってこれが変更できるということではないですね。いかがですか。
  128. 児玉勝臣

    ○児玉説明員 四十九年の秋の放射線漏れの問題以降、いわゆる大山委員会で「むつ」をどのように改修すべきか、さらにその改修の仕方として安藤委員会において学識経験者の方々にいろいろと御検討いただいておりますので、その線に沿って改修、それから総点検いたしたいと思っております。
  129. 中村重光

    ○中村(重)委員 それから、再要請の時期は三月末というように熊谷長官は私の質問に対して答えられたのですが、いつごろになるのですか。
  130. 児玉勝臣

    ○児玉説明員 再要請の時期につきましては、長崎県知事がただいま御案内のとおり漁連との話をしていらっしゃるようでございますし、また、県のいろいろな事情もこれあると思いますので、県知事からのお話がありました上で、その再要請の時期を決めたい、こう思っております。いまのところいつという定かなる見通しはございません。
  131. 中村重光

    ○中村(重)委員 いまあなたがお答えになったように、大山委員会、安藤委員会、その委員会の意向に沿って科学技術庁としては要請をしたのです。これは不動のものです。これを変更することは、これはいまの委員会の決定によって改修計画を立て、それによって要請をしたことを変更することになるわけですから、簡単にいかない。ならば、長崎県知事の選挙があるからそれまで待ちましょう。それからまた、長崎県がいろいろといまあなたがお答えになったように漁協と話をしているから、そういう様子を見てから要請をしましょう。さっぱりわからない。  あなたの方には既定方針というものがあるのだ。知事の選挙の都合であるとか、漁協の問題はすでに漁協と核抜きという形で長崎県は、知事は決定をし、それから県議会もこれを認めて決議になっている。だから、あなたの方としては、そうした知事のどうだとかあるいは漁協のどうだとかいうこととは別に、要請をしなければならないのだったら要請をする。ところが、してみても科学技術庁の考え方に沿わないようなことであれば、また別の方法を講じなければならないということになるわけなんです。だから、科学技術庁のやり方というものは何を考えているのか、非常に右顧左べんしている。科学技術庁だけで事が済めばいいんだけれども、大混乱に陥らせるじゃありませんか、漁業団体を、あるいは被爆者団体を、あるいは長崎県民を。  そういう混乱をさせるようなことはおよしにならなければいけない。熊谷長官に私は何回もお会いをして長官と話をしておりますが、そういう摩擦を起こすような、混乱を起こさせるようなことはおやりになるべきではない。決定をしているその方針に従って要請をするなら要請をする、それが科学技術庁が考えていることと違うならばまた別の方法を講ずるというように、もっと政治をスムーズに進めていくということでなければならない、何かしら個人感情によって物議を醸し出すようなことはおやりになるべきではないということをひとつあなたから長官に伝えてほしいということを申し上げて、この問題は終わります。  それから、私は、特定不況産業安定臨時措置法の審議の際にも、福永運輸大臣、それから河本通産大臣、藤井労働大臣等に対しても質疑をしました中で、解撤事業を速やかに、しかも積極的に推進する必要があるということを指摘をいたしまして、中小造船のために、下請関連の中小企業のためにぜひこれを推進することを強調いたしましたが、河本通産大臣は、造船業というのは船をつくることだけが造船業ではなくて、船を解体することも造船業であると、非常に三大臣とも積極的にこれらの問題に対処することを明らかにされたわけでございますが、運輸省は今後具体的にどう進めようとお考えになっているのか、伺ってみたいと思うのであります。
  132. 間野忠

    ○間野説明員 昭和五十二年度に、造船下請企業が船舶解体業の方へ転換する場合の技術改善補助金ということで若干の補助金を認めていただきまして、昨年度、五十二年度いっぱいこれを使いまして試験的な解体を実施いたしました。たまたま時期が平電炉関係の不況もございまして、スクラップ製品の値段が非常に下がるという悪い時期でございましたので、必ずしも予定どおりにいかない面がございましたけれども、全国で一応九組合設立されましてそれぞれそれなりの試験解体を実施いたしました。ほぼ三月末で事業を一応終わりまして、その報告書提出されつつある段階でございます。  今後のことにつきましては、これらの報告書もよく検討した上で方向を定めたいと思っておりますが、当初の計画でございましたように、必ずしも下請の自立という面に余り重点を置き過ぎますと、下請というのは設備もございませんし、それから、できることならやはり新造船関係の仕事も並行してやりたいという現実的な強い希望を持っておりますので、必ずしも当初考えたように下請が解体専業で自立するんだというようなことではなくて、元請も含めまして仕事の配分も考え、また、元請の設備を使いますので、元請の設備の利用率等も考えながらもう少し新しい方法を考えてまいりたいというふうに考えております。
  133. 中村重光

    ○中村(重)委員 おっしゃるとおりだと思います。この買船というのは親企業でないとやれません。解体施工というのは、これは中小下請等でやれる。それから、解体のための機械器具、ドック、それから岸壁、その他接岸とか入渠とかあるいは離岸、それから処置、統括、こういったことは、これは大手、親企業じゃないとできないことなんです。あなたがおっしゃったとおりに、これは親企業である、これは下請である、これは中小造船であるというように当然区分されなければならない。そのとおりだと思います。  それから、解体をしてスクラップの処理をどうするのだ。これを下請だとか中小造船所が抱いておったら大変なことになりますから、この処理をどうするかという点。それから、これは採算がとれないので、五十二年度に一億四千六百万円予算を計上したが、スクラップの値下がりのために採算がとれないというので予算を消化できなかった。また、あなたが言われた大手が必ずしも協力体制を示さなかったということになって、五十三年度は予算要求もしてないということが現状ですが、福永運輸大臣の私に対する答えは、委員会においてあるいは直接話し合いする機会も何回かありましたが、ともかく財政的な措置の問題は別の方法でこれはいま予算に計上してなくても考えなければいけないということだった。また、河本通産大臣も、非常に積極的に、トン当たりの助成金はどの程度で大体いけるのではなかろうかといったようなこと等も非公式に話もあったぐらいに、私は非常に積極的な姿勢をもって対処していこうとする考え方があると思うのです。  これは一番大事なことは雇用創出ということです。雇用調整金を出しますということよりも、雇用創出のための解体事業等をおやりになるということの方が社会的摩擦もないわけですし、私は、造船不況対策という面からも非常に必要であるというように思うのですが、何といったって仕事をなさるのは事務当局なんだから、あなたがそういう面においては中心にならなければいけない。政府がせっかくそういう意欲的な考え方を持つといたしましても、事務当局がより以上に積極的な姿勢を示して対処していくということでないといけない。あっちもこれがある、こっちもこういう問題にひっかかる、これはむずかしい、むずかしい、さあ困難だと言ったって、これはうまくいくものじゃありませんから、いまいろいろな点を私は挙げましたが、またあなたがお考えになっていらっしゃる点とあわせて、具体的にひとつどう進められるのかということについてお聞かせをいただきたい。
  134. 間野忠

    ○間野説明員 五十二年度にいたしました試験的解体におきまして、比較的大手の下請、それから非常に小さい造船所の下請あるいは小さい造船所そのもの、それから大手の下請であります場合にも、大手から設備を借りた場合、あるいは自前の設備を使った場合等、いろいろなケースが出てまいりましたので、これらからそれぞれ報告書が出ますので、それをよく勉強いたしまして今後の方向を考えてみたいと思っております。  ただ、基本的な問題といたしましては、最初にも申し上げましたように、そのやり方そのものをもう一度考え直してみる必要もあるいはあるかと思っております。たとえばスクラップ・アンド・ビルドということで若干のビルドの方の需要もつくりたいという御提案がありますけれども、この解体の事業もそれと組み合わせるということも一つあるかと思います。そういたしますと、建造に比べますと、やはり解体は仕事量の創出ということで非常に劣りますので、やはり新造と結びついた解体ということであるとより効果があるのではなかろうか、また、経済的にもそれだけのまたメリットがあるいは出てくるかもしれないというようなこともございまして、それらの点をあわせていろいろ研究してみたいというふうに考えております。
  135. 中村重光

    ○中村(重)委員 私は、ここで解体事業について具体的に数字を挙げて、仮に三百万トン解体をいたします際に買船というものが約七百三十億であるとか、解体の費用が二百億であるとか、スクラップの売却代が四百五十五億、これに対して赤字がどの程度出る、だから補助金がこの程度出たらこうなる、それから雇用調整金を仮に一年に千六百人に出した場合の数字はこうだということで試算してみたのですが、これはもう雇用調整金を出すという後ろ向きの政策よりも、先ほど申し上げたように雇用創出という面から解体事業を、いまあなたがおっしゃったスクラップ・アンド・ビルド、そういうものと結びつけてやるような場合もあるわけです。スクラップだけをやるという場合もあるわけですから、精力的に対処してほしい、すべきであるということを強く要請をして、また改めて具体的なことについて私の意見を申し上げることにいたしたいと思います。そういうことで、きょうはあなたに対するお尋ねはこれで終わりたいと思います。  次に、生コンの問題についてお尋ねをするのですが、建設省と通産省が、東京地区の生コンクリート協同組合と大手の建設業者、いわゆる需要家との間に立ってずいぶん苦労されて、新しい契約として一万一千五百円ということでお決めになったようでございます。私の県の長崎県で大体どの程度かといいますと九千三百円、こういったようなことで、協定された、仲介をして落ちつかせた一万一千五百円よりも低いわけですが、長崎県と東京ということになってまいりますと、物価が高い、資材も高いということにはなりますが、輸送の経費という面においては遠隔地の方が高い、こういうことになるわけです。  その数字のことはまずおくといたしまして、何かしら割り切れないものを私は感じるのです。中小企業団体法でやりますと、共販会社と共販体制でやりますことは独禁法の適用除外ということになる。だからといって、独禁法除外だというようなことで無制限にこういう体制の中に価格の引き上げという形になってくるということは、これはどうも大変なことになっていくであろう。かといって、この生コン業者というのは比較的中小の企業が多いわけですから、需要家が大手の建設業者といたしますと、力関係というものからいたしますと非常に弱い、それで大手から押しまくられることもあるということは私も認めるわけでございますが、公取もこれらの点に対してどうお考えになっていらっしゃるのだろうか。この中小企業団体法の適用もいまは切れていると思うのでございますが、これらの動きに対して無関心ではないのだろうと思うわけでございますけれども、この点についての考え方というものをお聞かせをいただきたいと思います。
  136. 妹尾明

    ○妹尾政府委員 生コンの安定事業といいますか、中小企業団体法に基づきます調整事業につきましては、本年の二月まで関東地区につきましては関東中央生コンクリート業組合におきまして調整事業が行われておりまして、数量の協定をやっておったわけでございますが、これは、生コンの市況が回復してきた、こういう事情もございまして、当初の予定は四月だったのでございますが、私どもは認可要件との関係で検討を要する時期に来たのじゃないか、国会でも問題になりまして期限前に打ち切られた、こういう経緯もございます。  それから、東海地区あるいは近畿地区におきまして、三つの組合から、事前の御相談でございますけれども、どうだろうかというお話がございまして、いろいろ実情等を調べましたところ、どうも、要件との関係で問題があるんじゃないかということで、そのままさたやみになったという経緯もございます。  最近におきましては、全国いろいろ状況は違うかと思いますけれども、全般的に生コン関係についてはかなり市況が改善されておるということで、具体的な案件が出ました場合には、その要件を満たしておるかどうかという点につきまして慎重な検討が必要ではなかろうか、こういうふうに考えております。
  137. 藤原一郎

    ○藤原政府委員 生コンクリートの関係でございますが、いま先生からるる御指摘ございましたように、生コンクリート業界、非常に中小零細でございまして、従来非常に乱売と申しますか、乱戦の模様が多うございまして、価格的にも非常に困難な事態に陥っておったわけでございます。それが次第に組織化されまして、中小企業協同組合あるいは工業組合等ができまして、共販体制を組むようになってまいったという実態でございます。したがいまして、従来、いま先生お示しのように建設業者との力関係におきましては非常に不利な立場にありましたものが、ようやく対等に近い状態にまで戻ってきたというのが現状であろうかと思います。  したがいまして、取引秩序というものはわりあい秩序立ってきたということが言えるかと思うのでございますが、価格面につきましても、従来のようなたたかれっ放しということはなくなったわけでございます。ちょうどセメントの市況も若干回復してきたのに伴いましていまお示しのような価格を大体とっておるように思います。セメントの値段のほかに、砂利の値段あるいは運搬費等によりまして、地区別にいろいろ値段は違うわけでございますが、大体妥当な線ではなかろうか、ようやく採算ラインではなかろうかという感じでございます。  これが公共事業の進展に妨げになる、あるいは物価問題を起こすような行動は来しませんように私どもも注意をいたしておりますし、中小企業団体法の調整に基づきます共同販売体制をとっておるわけでございますが、これが競争の実質的制限になるということから不当な価格をとるということになりますと、これは独禁法の違反になるかと思いますので、その点は私どもも十分行政指導してまいりたい、このように思っておるわけであります。
  138. 中村重光

    ○中村(重)委員 それで結構です。やはり弱い者は守らなければならないが、かといって余りごり押しをすると、せっかく中小企業なるがゆえに独禁法の適用除外等によって保護されておるというのが、世論の支持を受け得られないという形に発展する。だから、余りごり押しをする大手に対しては、建設省とも十分連絡をとりながら再考を促す点は促すということ、それから、中小企業の団体に対しても、常識的な節度ある態度は態度として強く臨むということで適切な行政指導をしていただくように望みたいと思います。  それから、甕課長にお尋ねをいたしますが、昭和四十九年五月から農林省三局長通達で鶏卵の生産調整の行政指導を実施しているわけですが、それにもかかわらず、一部巨大商社養鶏ですね、大規模なやみ増羽を行って、それが行儀が悪いために零細な生産者が苦しんでいる。また、そのことは販売を担当する小売業者にも影響を及ぼしているという具体的な事実を承知いたしているわけですが、このような行儀の悪い大手、その寡占化の推進、そうして零細な養鶏農民の生存権を奪うようなやり方というものは厳しく取り締まっていく必要があるだろうというように私は思うのですが、御見解はいかがですか。
  139. 甕滋

    ○甕説明員 鶏卵の需給事情につきましては、需要に対して生産が過剰基調ということで、ただいま先生御指摘のような、鶏卵の秩序ある生産並びに消費の安定を図りますために生産調整を行っておるわけでございます。その中におきまして、一部の特に大手の養鶏業者が生産調整をなかなか守らないということで、価格を乱すのではないかという御指摘が最近聞かれるところでございます。これにつきましては、従来から私どもも国、県、市町村の各段階に需給調整協議会というものを設けまして、地域の実態に応じて生産者が相互の理解のもとに計画生産を推進するということで、調査の結果、もし基準時点の羽数を上回っているとか、生産調整が守られていないといった事態がわかりました場合には、個別に指導を加えるということをやってきております。これは相互理解と協力というものが基本になってございますので、限界はありますけれども、それなりに強力な指導を加えることによりまして幾つかの事例を是正させるというような事柄もございます。  五十三年度におきましては、その調査のやり方を従来の二回から四回にふやしますとか、従来のはがきによる調査にとどまらず、現地の確認調査も行うといったことも取り入れまして調査の強化を図りますと同時に、従来から行っております個別指導につきましても、さらに徹底を図ってまいりたいと考えておる次第でございます。
  140. 中村重光

    ○中村(重)委員 商社というのが、手当たり次第というのか、どの部門にも進出をして零細企業というものを駆逐してしまうのですね。このやり方というものに強く反省を求め、節度ある行動というものを要求していかなければならぬというように思うのです。あなたの方もその点については異論がないところだろうと思うのですが、この商社養鶏のインチグレーションの進出というものを抑えることはできないですか。
  141. 甕滋

    ○甕説明員 ただいま進めております生産調整につきましては、千羽以上約二万戸の生産者の台帳をつくりまして、三千羽以上の約一万戸の生産者の飼養羽数については凍結をするということを内容とする指導でございます。したがいまして、先生のおっしゃる商社養鶏といったようなものも、当然この対象に含まれておるわけでございまして、四十九年の時点におきます羽数に凍結といった事柄を通じまして、秩序ある生産を図ってまいりたいと考えておるわけでございます。
  142. 中村重光

    ○中村(重)委員 特に私の調査によると、イセとかタケクマといった巨大な商社養鶏というのが目に余るものがあるのですね。行儀が悪いという程度のものじゃない。ですから、あなたの方も調査をしているのでしょうけれども、徹底した調査をして、そうしたやみ増羽をやっておるとこれを復元させるとか、それからなお、制度融資といったようなものをしておるとこれを繰り上げ償還をやらせるとか、その他懲罰的なことをおやりにならぬと、私は、もっと零細な業者というのはもたないだろうと思うのです。物価がこんなにじゃんじゃん上がっている中で、卵だけは値上がりが抑えられて、もうここ何十年来余り変わらない。それはあなたの方の行政指導のよさというものも手伝っているというように評価をしたいわけなんですが、ともかくこんなに貢献をしている零細な養鶏農民あるいは業者、そういった者を保護するということにやはり力を入れていく必要があるだろうというように考えます。いま私が申し上げたような点について、同じような言葉、お答えが返るのかどうかわかりませんけれども、具体的に申し上げましたから、お答えをいただきます。
  143. 甕滋

    ○甕説明員 先生のおっしゃるとおりでございまして、生産調整を守っております方々の経営の安定を図る必要があるということで、卵価安定基金制度、御案内のようなものがございます。これは五十三年度におきまして、従来よりも基準価格に応じた補てんの単価を増額するといったような予算措置も充実をさせておるところでございます。契約数量の増加その他制度の強化を図っております。また、いわゆるインテグレーション養鶏の中にもいろいろな姿がございまして、直営の分もございますけれども、農家との契約生産を行っているという姿のものもございます。そこで、農家との契約のあり方等についても、対等であり、かつ妥当な契約内容といったことでこれを進める必要があるように思っておりまして、御指摘のような点も十分踏まえて今後の指導を展開してまいりたいと思います。
  144. 中村重光

    ○中村(重)委員 結構です。  山口審議官、大店法の問題ですけれども、審議会への諮問の時期、法案として提案の目標、それから休日とか閉店時間というのは法制化する必要があるのだろうと思っているのですが、これらの点、それから、従来の商調協を都道府県が組織する審議会に切りかえるといったようなこと、それから、地方自治体がいま条例をつくって、御承知のとおり三百平米以上ですか、罰則でもって強制立法をやっているのですが、今度大店法の改正とあわせてこれらの問題にどう対処しようとしているのか、まず、これらの点をひとつお答えいただけますか。
  145. 山口和男

    山口(和)政府委員 先生御案内のとおり、この二月中旬から産業構造審議会の流通部会と中小企業政策審議会の合同小委員会を開催していただきまして、去る土曜日、八日に一応最終審議をしていただきまして、一応の結論が出されておるわけでございます。今後の段取りといたしましては、十三日にそれぞれ中小企業政策審議会及び産業構造審議会流通部会を開催していただきまして、両審議会でこの意見具申案が承認されますと、正式に審議会の意見として大臣の方にちょうだいすることになるわけでございまして、この意見具申案に沿いまして、早急に改正案の取りまとめに入りたいと考えておるわけでございます。  この合同小委員会の答申案の概要でございますが、ただいま先生お触れになりましたような点も含めまして、一応答申案の中に盛り込まれている点を概要申し上げますと、枠組みといたしましては、大店法、商調法を一本化いたしまして、届け出制あるいは公示を加味した申し出制というようなことを採用していく、あるいは基準面積を五百平米ぐらいまで引き下げていくというようなことが中心でございます。  ただいま先生からお話のございました都道府県知事への権限付与でございますが、ただいまのところ、この答申案では、千五百平米未満のいわゆる準大型店というか中型規模の小売店舗につきましては、公示制度を加味した申し出制度を採用いたしまして、調整は都道府県知事が行う、その際、都道府県知事がそれぞれの審議機関をもって調整に入ることになろうかと思いますが、その具体的な方式につきましては最終的には都道府県知事の決定によることになるわけでございますが、大枠につきましてはさらに今後関係方面ともお話を進めてまいりたいと思っておりますが、最終的には都道府県知事の決定する機関になってくるかと存じます。  また、千五百平米以上の大型店につきましても、都道府県知事が届け出書を受理するというようなことにいたしまして、都道府県知事の関与を実際面で期待していくというようなことも、この答申案に盛り込まれております。  それから、閉店時刻、休業日数でございますが、これにつきましては、この答申案におきましては、地域の実情等に応じて調整するということが必要であろうというように言われております。具体的に法律でどういう対処をするかということは、これから法案作成の段階でいろいろ検討することになろうかと思いますが、ただいまのようにできるだけ地域の実情に即して対処を考える必要があるのではないかということが言われております。  それから最後に、従来都道府県あるいは市町村等で千五百平米未満の店舗について実施いたしておりますが、これにつきましては、この答申案では、この調整対象が中規模店舗まで拡大されるということになるとこういった条例、要綱は必要性がなくなるのではないかと思われるので、廃止の方向で検討されるべきであるというように述べられております。  いずれにいたしましても、今後の審議会の正式答申を待ちまして、法案化をできるだけ早急に進めたいと考えておるところでございます。
  146. 中村重光

    ○中村(重)委員 私の方の案もまとまっているわけですし、与党の方も考え方を明らかにしているわけですから、十分お話し合いをしたいというように思っていますが、いずれにいたしましても、商調法と一本化するにいたしましても、市場などは許可制ですからね。現在の許可制ということは既得権ですから、これをまた百貨店法のときに許可制から届け出制にかえたというように後退させると大変不信感を招く、簡単にはいかないということになりますから、既得権を守りながらどうするかということを考えていく。  それから、建物主義ということだけでは、商調法と一本化の場合になかなかうまくいかないのではないか。企業主義との併用ということを考えてみる必要があるということ等々、改めて御意見を伺って、私どもの意見を申し上げたいというように思います。  ともあれ、企業主義の併用が必要であるというように考えられる一つの例としては、寿屋などというのは大変強い大型スーパーでして、二九・四%も利益を上げている。これが目に余るのです。千五百とかなんとかいうのではなくて、小型のものをあっちにもこっちにも進出させる。これを何とか抑えなければ、面積主義ということになってまいりますと、なかなかそこらがうまくいかないという点もあります。ですから、こだわらないで、いいものをつくり上げるというような方向で十分対処してほしいというように思います。  なお、特定固有名詞を挙げて私は申し上げましたが、目に余るようなやり方、利益をある程度上げておるにもかかわらず、零細な中小小売商を圧迫するようなやり方については、改正法案の成立を待たずとも、十分な行政指導をして対処してもらいたいということを強く要請しておきたいと思います。  これで終わりますが、児玉参事官、きのうでしたかの辻市長の談話で、「「むつ」が入港するかどうかは佐世保重工業(SSK)の再建とも密接な関係がある。五月末までに「むつ」の佐世保入港のメドが立たなければSSK再建に役立つメリットがなくなるので佐世保市だけの判断で強行入港させる考えだ、」云々、こういったようなでたらめなことを発言しているのです。これに対するあなたの反論にも近いような談話も出ているわけです。私はあなたがおっしゃることが正しいと思う。入港とか出港などというものは佐世保市長の権限外なので、これは科学技術庁が権限を持っている。あなたの方が先ほど申し上げるようにもたもたするものだから、あっちもこっちも八方破れみたいなかっこうになってしまっている。こういうようなことが出てくるのも混乱の一つなんです。ですから、この点もひとつ長官に申し上げてほしい。  それから、何回も前長官、現長官が言明してきたことは、いかなることがあろうとも強行入港はいたしません、こう明言をしておりますから、科学技術庁の中でもその点は意思統一がなされていることだろうと思いますから、この点をひとつあなたからはっきりここで改めて確認をしていただきたい。
  147. 児玉勝臣

    ○児玉説明員 先生のただいまの御発言をよく体しまして、「むつ」問題に対処したいと思います。
  148. 中村重光

    ○中村(重)委員 これで終わります。
  149. 山崎拓

    ○山崎(拓)委員長代理 次回は、明十二日水曜日午前十時理事会、午前十時三十分から委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。     午後三時五十七分散会