○
渡辺(三)
委員 私は、
日本社会党を代表して、ただいま議題となりました
日韓大陸棚共同開発に関する
協定の
実施に伴う
石油及び
可燃性天然ガス資源の
開発に関する
特別措置法案に対し、本
委員会において再び反対の討論を行うものであります。
これまでの審議の過程で指摘をされました
協定及び本
法案の多くの問題点は、今回の審議を通じてもいささかも解明されないばかりか、
協定の不当性は一層浮き彫りにされ、疑惑はさらに深まるばかりと言わなければなりません。
以下、私は、その問題の主だった点を指摘しながら、簡潔に反対の
理由を申し述べます。
まず、その第一は、この
協定は
わが国の
主権的権利を放棄したという点であります。
もともとこの
区域については、
日本と
韓国が共同して
開発しなければならない何らの
理由も存在しないのであります。つまりこの
協定は、
両国大陸棚の分界線として
日本側が
主張した
中間線と、
韓国側が
主張した
韓国の
大陸棚の自然の
延長の
外縁とされるものに囲まれた、
中間線の
日本側であって
両国の
主張の重なる
部分を、
両国の法的
主張をたな上げしたまま
共同開発区域としているわけであります。
ところで、この
共同開発区域とされる
部分は、第三次
海洋法会議で圧倒的な
大勢となりつつある排他的
経済水域の
制度が実定法化されれば、
海底資源の探査、
開発について
日本が当然
主権的権利を有することになる
部分であります。
韓国政府が、その近海に次々と
開発鉱区を設定して、その
開発権をメジャーの手にゆだね、本来は当然
わが国主権の及ぶ範囲の
区域にまで勝手に
鉱区を設定してきたことがそもそもの問題の発端とされておりますが、このような
わが国の
主権的権利下にある
区域の一方的侵犯とも言える行為に対して何ら毅然たる態度を貫くことができず、仕方なく
両国の
共同開発区域としたなどという他に類例のない愚かな行為をどうしてわれわれが承認できましょうか。ここに疑惑に満ちた
日韓癒着の深さを見るのであります。
共同開発の名のもとに
日本の資源に対する主権をあらかじめ半世紀にわたって放棄することを約束する驚くべき反国民的条約であり、それにかかわる
特別措置法案と言わなければなりません。
第二に、本
協定は一部に
中国と
日本の
中間線の
日本側を
共同開発区域とする
部分を含んでおり、
中国の厳重な抗議を受けてまいりました。
大陸棚の
境界画定については、
国際法上も関係諸国の
合意を
前提とする以上、それは当然であります。もし
韓国の言う自然の
延長論に相当の
根拠があるとして、妥協のために
共同開発方式か選ばれたのなら、同じ自然の
延長論に立つ
中国に対して
中間線より
日本側にはいかなる
権利も
主張できないとする政府の
説明は、少なくとも
中国に対しては全く説得力を欠くものであり、しかも言うまでもなく、
協定は第三国たる
中国に対してはいかなる拘束力も持ち得ないのでありますから、本
協定によって
中国との間に重大な紛争が生じるであろうことは明らかであります。
政府は
中国の
理解を得るべく
説明の機会を求め続けてきたと釈明してまいりました。なぜ初めから
中国との協議をしなかったの象初めから全く除外しておって、
韓国との間に隠密裏の協議を進め、
協定の諸準備のすべて終了した
段階で一方的に
内容を
説明するという仕打ちを受けた場合、だれが一体そのことを快く了解するでありましょうか。まさに拙劣にして思い上がった外交的態度と言わなければなりません。
第三は、この
共同開発区域内の
石油及び天然ガスの
埋蔵量推定は、必ずしも明確ではありません。
政府は、事あるごとに、この
共同開発区域の
石油資源を中東並みと宣伝し、しゃにむに
協定と本
法案の成立を急いできたのであります。そして一方においては、
わが国の資源不足を逆に大義名分として、何が何でも掘りさえすればよいという姿勢を打ち出し、すべてをそこから出発させる態度をとってまいりました。
共同開発区域における
石油埋蔵量の推定について、これまでの政府の答弁や、
協定及び本
措置法案に賛成の
立場をとる参考人の意見は、それぞれ食い違い、また、
質疑の過程で三転四転したことは周知の事実であり、最近になってようやく無理につじつまを合わせるという苦しい態度をとっていることも見逃すわけにはまいりません。
すでにこれまでの審議を通じて明らかなように、むしろ本
協定による
共同開発区域よりも南西寄りの東シナ海
大陸棚にこそ有力な
石油資源の賦存が各種の
調査から確信されていることを考えれば、いま多くの疑惑と
中国との紛争状態を残したまま
日韓共同開発を進めることは、百害あって一利なしと言わなければなりません。
この事実を無視して強引に事を運ぶならば、東シナ海全域にわたる
経済水域または
大陸棚の分界に関し、将来
日中間の交渉を著しく困難にするだろうことを強く警告するものであります。
第四は、本
協定に基づく操業が現実に行われる場合の海洋汚染防止、除去についての対策を見ましても、二国間の
共同開発という特殊事情の中で全く多くの欠陥があります。
とりわけ、私
どもが早くから具体的に指摘しておいた
韓国側のこの問題にかかわる態勢の不備は、いまに至るも依然そのままではありませんか。たとえば、海洋汚染や海上災害の防止にかかわる
国内法の整備も全くおくれており、油による海水の汚濁防止のための
国際条約の一九六二年改正条約への加盟もいまだになされておりません。
もちろん、
わが国の場合においても、この
区域の条件に照らして、深海操業技術の現状を冷静に検討するとき、まだ多くの危惧を残していることは否定できないのであります。
ましてや、この
区域は黒潮の分岐点でありますから、万一油事故が生じた場合の被害は大変なものにならざるを得ません。
海底油田の
開発が重大な事故を招く危険のあることは、サンタバーバラの事故や北海油田の事故に照らしても明らかであります。
本
協定の場合、
韓国側が認可した
開発権者が操業管理者となれば、その
開発行為には
韓国の法令が適用されるのであります。
共同開発の
対象とされたこの海域は、
わが国漁業者がみずから
開発し、着実な成績を上げている
わが国でも最も優良とされている漁場であります。しかも政府の提出した資料で明らかなように、
共同開発区域と設定された中でも、
開発可能な
水深二百メートル以浅に有力魚礁が集中しているのであります。
このような事実、また、本
法案の第二十一条にある調整の具体的な
内容、さらに政府がこれまで関係漁業者との間に行ってきた
説明や了解の取りつけ方などを総合勘案するとき、とても十分とは言い得ないのであります。
以上、私は幾つかの点にしぼって申し上げてまいりましたが、冒頭にも触れましたように、今日二百海里
経済水域という海洋新秩序の時代を迎えた中で、この
共同開発区域はそのまますっぽり
わが国の
主権的権利下に置かれるべき
区域であります。しかもその広さは九州の二倍にも及ぶ広大なものであり、この
わが国の主権的
区域を事実上
韓国に譲り渡すような
協定、そして
国際法上のあるべきやり方を無視し、みずから求めて
中国との紛争を引き起こすような
協定及び本
特別措置法案を断じて承認するわけにはまいりません。
協定批准書の交換はまだなされておりません。多くの良識ある国民の声に耳を傾け、政府は、速やかに本
法案を撤回するとともに、批准書交換は行わないという態度を明確に表明し、悔いを将来に残さない
措置をとるよう強く要求して、反対討論を終わります。(拍手)