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1978-04-05 第84回国会 衆議院 商工委員会 第15号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和五十三年四月五日(水曜日)     午前十時三十七分開議  出席委員    委員長 野呂 恭一君    理事 中島源太郎君 理事 武藤 嘉文君    理事 山崎  拓君 理事 山下 徳夫君    理事 岡田 哲児君 理事 渡辺 三郎君    理事 松本 忠助君 理事 宮田 早苗君       鹿野 道彦君    島村 宜伸君       田中 正巳君    中西 啓介君       楢橋  進君    橋口  隆君       渡辺 秀央君    板川 正吾君       加藤 清二君    後藤  茂君       上坂  昇君    渋沢 利久君       清水  勇君    武部  文君       中村 重光君    長田 武士君       玉城 栄一君    工藤  晃君       安田 純治君    大成 正雄君  出席国務大臣         通商産業大臣  河本 敏夫君  出席政府委員         内閣法制局第四         部長      別府 正夫君         通商産業政務次         官       野中 英二君         通商産業大臣官         房審議官    島田 春樹君         特許庁長官   熊谷 善二君         特許庁特許技監 城下 武文君         特許庁総務部長 勝谷  保君         特許庁審査第一         部長      小林 慶基君         中小企業庁長官 岸田 文武君  委員外出席者         特許庁審判部長 松家 健一君         商工委員会調査         室長      藤沼 六郎君     ————————————— 委員の異動 四月五日  辞任         補欠選任   清水  勇君     美濃 政市君 同日  辞任         補欠選任   美濃 政市君     清水  勇君     ————————————— 四月四日  特定機械情報産業振興臨時措置法案内閣提出  第七一号) は本委員会に付託された。     ————————————— 本日の会議に付した案件  特許協力条約に基づく国際出願等に関する法律  案(内閣提出第六四号)      ————◇—————
  2. 野呂恭一

    野呂委員長 これより会議を開きます。  内閣提出特許協力条約に基づく国際出願等に関する法律案を議題といたします。  これより質疑に入ります。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。上坂昇君。
  3. 上坂昇

    上坂委員 PCT加盟による国際出願の問題について、質問いたします。  まず初めに、きのう法案提案説明がありまして、PCT加盟することの意義とそれに伴う国内手続法の制定の必要性については理解するところであります。ただ、本法律案特許法等改正によらなかった理由について、初めに伺っておきたいと思います。
  4. 熊谷善二

    熊谷政府委員 今回のPCT加盟に伴いまして新しく国際出願に関する制度が創設されることになります。これは条約に基づきます新しい制度でございます。したがいまして、本法は、国際特許条約に伴います国際出願に関する法律と本則にこれを書いておるわけでございます。新しく国際段階におきます諸手続が加わったわけでございます。附則におきまして、この国際条約に基づきます海外からの日本指定国とする出願につきまして、従来の特許法現行法国内特許法との関連づけをいたす必要がございますので、これは附則において、特許法等の一部を改正をいたしておる次第でございます。
  5. 上坂昇

    上坂委員 このPCTへの加盟によって日本が今後負っていくところの国際的な義務あるいは責任についてどのように考えておられますか。
  6. 熊谷善二

    熊谷政府委員 まず第一は、日本世界特許大国中、いわゆる出願件数で申し上げますと、特許数字でございますが、国内出願外国出願を合わせまして、日本人によるものが年間約十六万件ございます。これは世界第一の出願国でございます。アメリカもほぼこれに近うございますが、ややこれより少ない。EC全部でこれを見ましても、年間約二十万件。日本はこの自由諸国の中でいわゆる三極の一をなしておるわけでございまして、そもそも工業所有権というものが国際的な性格を持っており、国際的な協調のもとで過去百年の歴史を持っておるわけでございますが、この中で日本の担うべき責任というものは大変大きな意義があると考えておるわけでございます。このPCT条約は、日本加盟なくして効果は半減するということをしばしば言われておるわけでございまして、そういう意味で、今回の加盟国際的見地からもぜひとも必要であり、国際事務局からもしばしば強い要請が参っておる次第でございます。  日本といたしましては、本条約に入ることによりましてその第一の協調の実を上げるとともに、この条約に基づきますいろいろな諸手続、たとえば日本特許庁が受理をいたします国際出願につきまして、国際事務局あるいは指定国、つまり相手国に参りましての処理が円滑にまいるというような手続円滑化正確化を期す国際的な責任の一端を担うということになるわけでございます。
  7. 上坂昇

    上坂委員 わが国の工業所有権全般にわたる出願件数ですが、いまお話がございましたように、欧米各国に比して非常に多いわけでありまして、したがって、その審査体制消化能力については、従来しばしば問題視されてきたところであります。最近、特許庁内の処理体制整備促進審査官等努力によりまして、未処理件数処理かなり進んでいると考えます。しかしながら、五十三年の二月末で特許実用新案の未処理件数は四十六万件を数えているというふうに言われております。したがって、この処理に要する期間ですね、二年数カ月あるいは短くいっても二年二、三カ月はかかるだろう、こう言われておるわけでありますが、こういう中でPCT加盟をし、かつ国際調査機関及び国際予備審査機関になることによって、当然業務量増大を来すと考えられるわけであります。  そこで、予想される国際出願件数、これは日本からのでありますが、これと、それから外国から日本に対する出願件数をどの程度に予想されておるか、お答えをいただきたいのです。
  8. 熊谷善二

    熊谷政府委員 日本からのPCT出願は、五十三年度——これは私ども五十三年、今年の十月を目途に業務を開始いたしたいと考えております。そういう意味では半年度分になるわけでございますが、五十三年度中の処理件数というのは約千五百件を想定いたしております。その後逐次出願増加をいたしまして、六十一年には約一万件程度になるのではないかと考えております。  なお、日本への出願につきましては、五十三年度中の処理はないものと考えております。六十一年にはこれが約一万七千件程度になるのではないかと想定をいたしております。
  9. 上坂昇

    上坂委員 六十一年になると一万件、指定国として出願されるものとして六十一年では一万七千件でありまして、非常に多くなって、毎年かなりのふえ方をしておると思いますが、この場合、国内出願の未処理件数がさらに増大をして、処理期間についても延長されるようなことになると、この加盟するということが日本国民の権利を逆に阻害することにもなりかねないと思います。そうなりますと、PCT加盟意義が半減してしまうだろう、こう考えられるわけであります。したがって、この国内処理件数消化促進国際出願業務量事務量増大についても同時に対処できるものであることがいま非常に必要ではないか、こういうふうに思います。このいわゆる審査迅速化あるいは充実というものについて現在どのような対策を持っておられるか、お聞かせいただきたいのであります。
  10. 熊谷善二

    熊谷政府委員 ただいまの御質問の前に、お述べになりましたことにつきましてちょっと触れておきたいと思います。  先ほど先生も御指摘になりましたように、本年の二月現在ではいわゆる特許実用新案に関します平均の要処理期間というのはほぼ二年三カ月程度まで短縮をしてまいっております。昭和四十五年にはこれが五年となっていたものでございまして、最近におきましてはそういう状況にまでこぎつけてまいっております。なお、関連して申し上げたいのは、各国平均の要処理期間はどの程度かということでございますが、アメリカ各国の中でも速い方でございまして、これが平均一年七カ月と言われております。ドイツが一年九カ月、イギリスが一年十一カ月と言われておるわけでございます。おおむね私どもは二年弱程度までこれを短縮することを目標にして今日進んでおるわけでございます。一ころの状況から見ますと大変改善されまして、おおむね国際水準に近いところまでの処理期間になってきておるという実態になっておるわけでございます。  なお、先ほど申し上げました外国から国内への出願あるいは日本から外国への出願、今回PCTによりまして増加が予想されますが、全体の国内処理がそれによっておくれることがあっては絶対にならない。これは私ども引き続き大原則として今後考えてまいりたいというふうに思っておるわけでございます。  私どもの判断といたしましては、現在出願件数特許実用新案でここ三年ほど約三十四万件程度で推移いたしておるわけでございます。実際の審査請求数字でまいりますと、大体いま十六万件から七万件というところに推移いたしております。この中で今日まで約二十万件から二十二万件くらいの年間処理をやっているわけでございます。その結果、いわゆる滞貨が減りまして、昭和四十五年には五十数万件ありましたものが現在四十数万件までに減ってまいっておるわけでございます。年間ベースで見ますと大体二十万件以上超えて処理する能力がございます。  外国出願は確かに国内出願の場合と比べまして、外国語関係もこれあり、負担は同一ではない、やはりやや重いということは事実でございますが、処理し切れないほどの案件ではない。私どもは、今後ともこの処理に障害がないよう、第一には審査要員の増員に引き続き努力をいたしてまいりたいと考えております。それから第二には、この審査処理促進のために、たとえば審査資料の的確有効な検索あるいはアプローチができるような、そういったいわゆる特許情報の管理に関します体制強化を図ってまいりたいと思っておるわけでございます。  また、民間に対しましては、従来の国内出願の急増に対処いたしまして、すでに五十一年から出願適正化事業というのを行っておりまして、今日国内出願されておりますものの約五割が拒絶をされるという実態にかんがみまして、むだな出願かなりあるわけでございます。民間企業の方で出願に当たって事前に調査あるいは評価をされて出願されるならば、このようなむだな出願はなくなるのではないかということで、その点の指導を行ってまいっております。この事業につきましても引き続き強化をいたしてまいりたい、こういうように考えております。  最後に、私どもは、このPCT条約加盟することによりまして、日本特許行政のもろもろのシステムを国際的なレベルまで引き上げる契機といたしたいと考え、これからの対策の一層の強化を図ってまいりたいというふうに思っております。
  11. 上坂昇

    上坂委員 いまお答えになった点ですが、これは財政が伴うわけでありまして、なかなかむずかしい問題があるだろうと思うのです。  私は、十一月に質問書を提出いたしまして、スペースの問題を取り上げたわけでありますが、そのときの回答で、職員一人当たりスペースアメリカでは二十二・三平方メートル、日本の場合には十三・八平方メートルでありまして、大分狭いわけであります。それから資料室についても、アメリカは一万三千四十六平方メートル、ドイツが六千四百五十平方メートル、日本は四千四百九十五平方メートルでアメリカの三分の一弱というかっこうになってます。  前から特許庁の庁内のいわゆる資料室整備やら、それから二つに分かれている問題の解消やら、非常に大きく問題になってきたところでありますが、国際条約加盟に基づいて、これのなお一層の充実整備を図らなければならないということになりますと、こうした庁舎、それから資料室、あるいは審査官に要するところのいわゆるスペースなり一人当たり事務量なり、そうしたものが非常に充実されていかなければならないと思いますが、それにはかなり財政負担もかかってくると思うので、かなり思い切った措置をとらなければならないのではないか、こう思うわけであります。  その点について、これは通産大臣にお伺いをいたしたいのでありますが、いわゆる知識集約型の時代に入りました今日、この特許庁の持っている役割りというものは非常に大きなものがあるというふうに思うのであります。そういう点で、いまの特許庁のいわゆる不備あるいはいろいろな問題点を解決するために、今後かなり思い切った施策をしていただかなければならないというふうに思うわけでありますが、このことについて、通産大臣のお考えをいただきたいと思います。
  12. 河本敏夫

    河本国務大臣 能率を上げるためには事務所の整備が必要でございますが、ことしは御案内のように通産省の建物を取り壊す予算がつきまして、来年、再来年で新しい建物が全部完成することになっております。そういたしますと、全部相当なスペースをもって収容できると考えておりまして、特許関係、いま非常に狭いところにおるわけでありますが、相当能率的に仕事ができるようになると期待をしております。  ただ、狭い場所でも相当な工夫も必要じゃないかと私は思うのです。私は、一昨年、松下の本社にあります特許関係整理室を見せてもらいましたが、狭い場所に非常に能率的に数十万件の書類その他参考資料が整理されておりまして、もう直ちにどこにあるか容易にこれを取り出すことができる。非常に能率的にこの運営をしておりますので、役所の方からも一回見学に行ったらどうかということも言ったわけでございますが、狭ければ狭いなりに、雑然と仕事をしないで、もっと工夫して能率的にやる方法もあろうかと思いますが、抜本的にはやはり新しい建物、それによって解決をしたいと考えております。
  13. 上坂昇

    上坂委員 次に、一つ出願で多数国指定ができ、各国手続開始前の先行技術調査の実施や方式の統一で、多数国出願及び各国別審査労働重複の軽減を図ることを目的としていると思うのでありますが、なお、PCT加盟発展途上国援助を行うこともその目的一つになる、こう言われております。これは具体的にどのような形で行うものであるか。この具体的なメリットは何であるか。技術情報提供とか特許制度発展のための技術援助というふうに言われておりますが、ひとつ具体的に説明をいただきたいと思います。
  14. 熊谷善二

    熊谷政府委員 本条約は、先生指摘のとおり、発展途上国援助を大きな一つの柱にいたしておるわけでございます。具体的には、この同盟の中に発展途上国に対します技術協力委員会が設置されまして、そこで国際的な技術協力計画が策定され、各国がそれに向かって協力をするということが今後具体化してまいると存じます。具体的には、一つ特許情報提供でございます。二つには、発展途上国に対しまして特許関係専門家を派遣いたしまして発展途上国におきます特許行政に携わる審査官等に対する研修を行うとかそういったこと、並びに発展途上国において新しく特許法制を確立したいという場合の法制あり方等に対する指導といったことがその内容になるものと考えております。
  15. 上坂昇

    上坂委員 このPCT加盟意義というのは非常に強調されておりますからこれは理解できますが、これは日本語にとってみますと、従来、日本語というのは非常に特殊な言語でむずかしいために、日本に対するいわゆる指定出願というのは自然に抑えられる傾向にあったのではないか、こんなふうにも考えられます。それがPCT加盟によって日本に対する出願が容易になってきまして、日本のいわゆる先端技術というものが国際的に抑えられてしまうという危険性をはらんでいるのではないか、こういう考え方もあるわけですが、その点についてのお考えをいただきたいと思います。
  16. 熊谷善二

    熊谷政府委員 日本外国出願の過去十年の趨勢を見てみますと、日本外国向け出願が非常に多くなっておるわけでございますが、出願のみならず、相手国におきまして、とりわけ先進諸国におきまして、日本出願特許になる比率がこの十年間に非常に高まってまいっております。  一例を申し上げますと、たとえば昭和四十年におきましては、アメリカ日本を比較いたしますと、アメリカから日本に参りました出願というのが約一万件程度だったと思います。日本からアメリカへ出ておりますものは二千数百件程度であったかと思います。しかし、五十年になりますと、アメリカから日本へ参っておりますのは約一万件と変わりませんが、日本からアメリカに行っておりますのはすでに一万件近い件数になっておるわけでございます。この傾向ドイツとの関係におきましても、フランス、イギリスとの関係におきましてもほぼ同様でございまして、いずれも昭和四十年ごろには日本出願の方が外国から日本へ来る出願よりも少ないという状況が、現在はほぼイコールフッティングという状況になっております。これは四十年から五十年にかけましての日本産業技術水準向上というものがその裏づけになっておるというふうに私は理解をいたしておるわけでございます。  それで、ただいま、日本語は特殊な言語である、このPCTを通じまして日本向けに今後出願が激増するのではないか、それによって日本産業が受ける影響は無視できないのではないか、こういう御指摘の点につきましては、私は、やはり出願の質を決めるのは技術レベルであると考えております。その意味におきまして、外国からの日本出願がふえると同時に、日本からの外国向け出願もふえるわけでございますが、日本の市場がそれによって大きな影響をこうむるかどうか、日本技術はそれほど弱くはないと私は考えております。その点は御懸念は要らないのではないかというふうに考えておる次第でございます。
  17. 上坂昇

    上坂委員 次に、発展途上国にとってPCTは果たしてメリットになるか、こういう問題でありますが、先ほど長官も言われたように、日本世界特許大国である、こういうふうに言われておるわけでありますが、この難解な発展途上国の翻訳が、いままでの十二カ月より二十カ月に八カ月優先権が延びることになるわけでありまして、このことについては発展途上国指定国にして、その発展途上国技術を今度は逆に抑えてしまうということが可能になってくるのではないかというふうにも考えられます。  そこで、その技術協力情報提供といったような発展途上国協力ということに名をかりて技術支配を図っていくという結果になって、むしろそのことがその国の技術発展の芽を摘み取ってしまうことになりはしないか、この点も非常に懸念されるところでありまして、このことについて日本としてはやはりきちんとした考え方を示しておく必要があると思いますので、これについてお答えをいただきたいのであります。
  18. 熊谷善二

    熊谷政府委員 先生が御指摘になりましたような問題に対してすでに条約で手当てをいたしておりまして、先生承知のように国際予備審査制度というのがございます。これは主として発展途上国に寄与する制度として創案をされたものでございます。したがいまして、発展途上国が自分の国を指定国とする国際出願予備審査レポートを添付してもらいたいということを出願人に義務づけますと、出願人は、たとえば日本特許庁に対しまして予備審査請求をするわけでございます。そうしますと、その出願につきましていわゆる新規性があるかどうか、あるいは進歩性があるかどうか、あるいは産業上の利用性があるかどうかという条約に決められました要件を審査いたしまして、そのレポートのついたものが発展途上国に参ることになります。  従来、発展途上国におきましては、資料情報の不足のために、ややもいたしますと、特許性を持たないようなものについても特許を与えるというようなことがありがちでございましたが、これは発展途上国にとりましては大変マイナスなことでございまして、条約ではそのことに対する、LDC諸国に対する協力といたしまして、この予備審査レポートを活用することになるならば、発展途上国は非常にいい発明特許として自国に導入することができるということになるわけでございます。このPCT条約は、その意味におきましても発展途上国にとってプラスであるというふうに考えられるかと存じます。  なお、これと関連いたしまして、先生承知のとおり、現在工業所有権に関しますパリ同盟条約というのがあるわけでございますが、発展途上国に関しまして、この条約を一部改正する必要があるのではないかという別の国際会議がいま進行中でございます。  この発展途上国問題につきましては、私ども発展途上国に対する協力が非常に重要なことであるということで、今後引き続き国際的な会議協力をしてまいる考えでございまして、そういった世界的な枠組みの中で特許庁としての最大の努力をいたしたい、こういうふうに考えておる次第でございます。
  19. 上坂昇

    上坂委員 この発展途上国に対する技術援助は、現在非常に重要な課題になっているというふうに思うわけでありますが、先ほど長官お答えにもありましたように、数年前はアメリカ特許日本かなり多く出願をされまして、そのことによって日本のいわゆる発明工業所有権の問題が抑えられてきたような傾向もあったのじゃないか、こういうように考えざるを得ません。しかし、日本技術水準向上によって、現在はそれが同等のところまできている、これもまた認められるところでありますが、発展途上国の場合にはもっともっと大きく技術水準発展をしていかなければならないのが本当でありますけれども、それまでの間に、実はアメリカ日本に進出してきたような形で、もし日本特許大国の権限を利用してそちらを抑えてしまうという形のものが出るようなことになると、せっかく東南アジアを中心とした各国への日本技術協力なり経済援助なりをする上において、非常に国際的な支障を来すおそれがあるのではないか、こういうことが懸念されるわけでありまして、そのことについて私は心配をしているわけであります。  いまの点については、大臣からも、そういうことは絶対にしないということになるだろうと思いますが、御所見を承りたいと思うのです。
  20. 熊谷善二

    熊谷政府委員 まず大臣お答えの前に、ちょっと先ほどのお話の関連で先にお答えさせていただきたいと思います。  まさに先生指摘のようなことが懸念されますので、工業所有権に関しますパリ同盟条約におきましてその問題も議論されておるわけでございます。たとえば発展途上国において認められました特許が、発展途上国において工業生産につながってそこの生産力としてそれが活用されるというようなことがなくて、単なる輸入独占というふうになっていることはけしからぬ、こういうことが指摘されておるわけでございます。もとより発展途上国におきましては、工業生産の基盤が整備されているところ、されていないところ、さまざまでございますから、一様には論ぜられませんが、しかし、このパリ同盟条約改正問題の第一は、輸入独占だけに使われている特許といったものに対しまして、一定の期間内にそれが国内に実施されない場合に、それを国が強制使用するか、あるいは何らかの法的な措置で強制的に実施させる、どの限度にすべきかということがまさに議論が行われているところでございます。先進諸国発展途上国にとって技術移転がスムーズに行われることが必要であるという認識においては、皆その点には変わりございません。その面で合理的な範囲での法制ということをどういうふうにすべきかということを、国際会議を通じていま検討している段階でございます。
  21. 上坂昇

    上坂委員 法案内容について質問をいたしますが、初めに、第二章の「国際出願」のところでありますが、第三条の一項の「日本語又は通商産業省令で定める外国語で作成した願書」云々と、こうなっておるわけでありますが、これは日本出願をする場合には、日本語でなくて外国語でもよいと、こういう意味かどうか、お答えをいただきたい。  それからもう一つは、通産省令で定める外国語はどの国の言語なのか、お答えをいただきたい。
  22. 熊谷善二

    熊谷政府委員 国際出願をするものにつきましては、当面日本語だけを考えておるわけでございます。したがいまして、通商産業省令で定める外国語は、当面これを定める考えはございません。これはたとえば日本におります外国人が英語で出願をする場合等、将来そういったことがあるかもしれないということで、一つの姿勢をここに示しておるわけでございまして、具体的に予想される時期までにこの省令を制定するというような具体的な計画は持っておりません。
  23. 上坂昇

    上坂委員 いまの三条の三項の問題でありますが、「明細書、請求の範囲、図面及び要約書に記載すべき事項その他これらの書類に関し必要な事項は、通商産業省令で定める。」こうなっておりますが、この「必要な事項」というのは何か、お答えをいただきたいのです。
  24. 熊谷善二

    熊谷政府委員 三条の三項の通産省令でございますが、条約に規則というのがございます。この規則に定めております記載事項あるいは様式あるいは方式といったものでございます。具体的には明細書の記載の仕方をどういう記載の仕方をするかとか、あるいは請求の範囲の記載の仕方をどうするか、あるいは図面の記載方法をどうするか、あるいは要約の記載方法をどうするか等々、そういったことをこの省令で書くことにいたしております。
  25. 上坂昇

    上坂委員 次に、五条の一項でありますが、「その国際出願に含まれていない図面についての記載がされているとき」と、こう書いているわけでありますが、どうもなかなか理解に苦しむわけでありまして、この説明をしていただきたいと思います。
  26. 熊谷善二

    熊谷政府委員 たとえば国際出願の明細書の中に文章が書いてありまして、図面の引用がある場合がございます。ところが、その図面がついてない、こういった場合でございまして、これは図面がついていないではないか、こういうような通知をするわけでございます。
  27. 上坂昇

    上坂委員 この「含まれていない図面」というのは、国際出願の要件といいますかあるいは内容といいますか、そういうものを満たしていない図面なのか、あるいは当然その当該出願に含まれていなければならない図面ではあるが、記載だけがあって図面はないと、こういうことを言っているのか、この辺を説明をしていただきたいのです。
  28. 熊谷善二

    熊谷政府委員 平たく申し上げますと、この図面をつけるかどうかというのは出願者の自己責任ということになるわけでございますが、この第一項で書いてございます特に長官出願人にそれを通知するということは、いわば特許庁側のサービスでございます。もしここが書類がついてないまま国際出願がされましても、この全体の効果には関係ございませんで、ただ、相手指定国におきましてそれが補充され、認められればそれが認められるということになるわけでございます。ただ、その図面が非常に重要な図面であって、それがなければサーチレポートが書けない、こういう内容のものでございますと、特許庁としましては、そのことにつきまして記載をしましてサーチレポートを書いて送るということになるわけでございます。基本的な欠陥部分ということになるわけではございません。
  29. 上坂昇

    上坂委員 そうしますと、特に載せる必要のない図面というものもある、それからどうしてもその要件としてその図面がなければ適正を欠く、こういう図面もある、こういうことになるのではないかと私は思うのですが、この「出願に含まれていない」という意味がどうも明確でないわけでありまして、これは必要な図面で含まれていないものを指すのか、     〔委員長退席、山崎(拓)委員長代理着席〕 たまたま明細のいろいろな要件の中になくてもいい図面なんだけれども、記載だけはあった、そこでその図面の提出を要求した、通知をした、こういうことになるのか、その辺がどうものみ込めないわけです。もう一度御説明願いたい。
  30. 熊谷善二

    熊谷政府委員 出願されましたもののいわゆる方式審査段階になるわけですが、形式上要件が整っているかどうかという点をこの段階ではチェックをいたすものでございます。したがいまして、図面というものが記載されておりながら図面それ自身は添付されてないというものにつきましてチェックをいたしまして、そのものを通知するというだけでございまして、いわゆるその図面がなければこの出願書自身の効力が云々されるということにはならないわけでございます。あくまでも基本は出願者の自己責任ということで、もしこの通知がなされなかった場合でも、出願人は三十日以内でありますればそれを自発的に提出をすることもできるようになっておるわけでございます。そういう意味で、これは出願書類の中での基本的な必要事項というわけではございません。
  31. 上坂昇

    上坂委員 どうも私が聞いているのと少し違っておりますが、時間が迫ってきますから、先へ進みます。  第三章の「国際調査」の問題でありますが、第八条二項の一号、国際出願の使用言語国際出願について国際調査を行う機関によって定められる、こういうことになるわけでありますが、この調査内容でありますが、国際調査機関が行う調査内容と、それから国際調査機関の機構について、これを簡略にひとつ説明をいただきたいと思います。  それから、特許庁がもし国際調査機関に選定をされた場合、この事務局に職員を派遣する必要があるのかどうか、この点についてもお伺いをいたしたいと思います。  それから、現在世界知的所有権機関に何名の職員を配置しておるか、そしてまた、その職員の身分といいますか、どの程度の身分の人を派遣をしているのか、お答えをいただきたいと思います。
  32. 熊谷善二

    熊谷政府委員 まず、国際調査報告では、出願がありましたものについて先行する文献があるかどうかという、文献をリストアップするわけでございます。それが国際調査報告となるわけでございます。この点、国際予備審査機関とは違うわけでございまして、国際調査報告では文献のリストアップであるということでございます。なお、特許庁におきましては、この調査報告は審査官が作成するということにいたしております。  なお、関連いたしまして、本年四月にこのPCT加盟に備えまして特許協力条約の実施に関します準備室を設置をいたしまして、十月一日にはこれを正式の省令室に格上げをする考えでございますが、ここがPCT出願の一元的な窓口になりまして、そこを通じまして各部の審査官にそれが配付され、判断されて、一定の期間内にそれを収集して国際報告として報告する、こういう仕組みになるわけでございます。  なお、国際機関に特許庁の職員が何名出ているかという問題でございますが、これは今日まで累計約八名をコンサルタントという形におきまして、国際調査機関にほぼ一年交代という感じでございますが派遣をいたしてまいりましたが、昨年から初めて正式のパーマネント職員といたしまして一名派遣をいたしておるわけでございます。今年、このPCT条約加盟をいたしました暁にはさらに一名増員をするということを計画しておりまして、国連の事務局と打ち合わせをいたしておりますが、私は実現ができるものと信じております。  なお、今後日本国際出願国際事務局に提出されるわけでございますので、日本出願、つまり日本語出願国際事務局かなり参るわけでございます。そういったこととの関連で、今後さらに増員をするということが予定されるというふうに私は理解いたしております。
  33. 上坂昇

    上坂委員 次に、第四章の「国際予備審査」についてお伺いしますが、前章の国際調査機関についても同様でありますが、国際条約加盟をすることに基づいて提出された法律案ではありますが、本当のところは、いわゆる国際条約の重要な構成機関の一つである国際調査機関あるいは予備審査機関に選ばれるということがすでに前提になっている、あるいは当然のこととされている、こういう形で国内法が制定をされた例があるのかどうか、この点についてお伺いをしたいと思うのです。
  34. 熊谷善二

    熊谷政府委員 他の例につきましては、私、ただいまのところ具体的な例を承知いたしておりませんが、このPCT条約加盟するということのメリットは、先ほども先生指摘のように、日本語国際出願が多数国に向けてできるということでございまして、このためには日本みずからが国際調査機関でなければ、母国語の言語による受理はできないことになるわけでございます。そういう意味におきまして、この条約加盟いたしますのに関連した国内法におきまして、国際調査機関日本特許庁がなることを前提として初めてこの法律意味があるというふうに理解をいたしておりますので、そのようにこの法律案では書いてあるわけでございます。  ただ、先生指摘のように、国際調査機関になるかどうかは総会の選定事項ということになっておりますので、このPCT同盟総会において日本国際調査機関として選定された暁に初めてこの条約並びに国内法の施行を行うことができる状況になる、それができない場合には実施できない、こういうことになろうかと考えておるわけでございます。
  35. 上坂昇

    上坂委員 いま言ったように、いわゆる国際機関に入れないという場合にはこの法律の効果がない、そういう予測されたようにいかないこともあるので、そういう法律をいま出してつくっていくということについてこれは法制的に一体どうなのか、私は非常に疑問に思うわけであります。こういう法律の制定の仕方が従来あったのかどうか、この点がやはり問題ではないかと思うのです。この点については一番後でいいですから、それまでに調べておいてお答えをいただくことにして、先に進みたいと思うのです。  それから、昨年七月の工業所有権審議会の中間報告では、国際調査機関になることは必要だと思うけれども、当面留保することもやむを得ない、こういう報告が出ていますね。ここに事務負担という問題と、それから国際的動向等を考慮してというふうに二つ出ているわけです。これを考慮して当分留保するんだということ。この二つについての認識を簡単にひとつ説明をいただきたいのと、この報告が五十三年二月の答申では、発展途上国に対しての点を考慮してメリットがあるからこれは入るべきだ、こういうふうになっているわけでありますが、半年間にこういうふうに変化をしてきたことをどういうふうに受けとめておられるか、このことをひとつ説明をいただきたいと思います。
  36. 熊谷善二

    熊谷政府委員 昨年七月の中間報告では先生指摘のとおりの中間報告になっていたわけでございますが、その時点では、いわゆる特許大国の中でこの条約を批准している国はアメリカドイツだけでございまして、各国がこの予備審査機関となる第二章について留保するかどうなるか、その辺の動向がまだ明らかになっていない状況でございました。そういうことを踏まえまして、国際的な動向をまず検討する必要があるというのが一つのポイントでございます。  それからもう一つは、事務負担の問題でございますが、事務負担の問題は、その段階におきまして、私どもの判断としましては、若干負担がふえることは事実でございますが、全体としてこれが大きな支障になるというようなことにはならないというふうに考えてはいたのですが、負担はあることはあるという観点で負担のことについても触れておるわけでございますけれども、その後、九月の国際機関におきます年次総会におきまして各国の動向がはっきりいたしてきました。各国ともこの第二章については非常に前向きに対処することが確認をされましたので、その段階で、この工業所有権審議会のPCT委員会におきまして七月の答申に対する再検討をお願いいたしたわけでございます。  なお、それとあわせまして、私どものそれに伴う事務負担はどうかということも検討いたしました。先ほど申しましたように、この予備審査という制度発展途上国に対する援助であるという観点から考えますと、日本だけが各国の動向と孤立して、これを留保して協力に応じないという姿勢をとることは望ましくない、こういう判断から、最終的には少々の負担はあるにいたしましても、この第二章は留保すべきではないというふうに考えられたものでございます。
  37. 上坂昇

    上坂委員 次に、特許法改正案についてお伺いします。  条約第三条(2)の規定でありますが、「国際出願は、この条約及び規則の定めるところにより、願書、明細書、請求の範囲、必要な図面及び要約身含むものとする。」こういうふうになっているわけであります。これらのすべてを含む翻訳文を提出することになるのが出願であろうと私は思うのでありますが、この翻訳文の中から落ちているもの、記載されていないものがあるとき、外国語特許出願に記載されていなかったものとみなす、こうなっておるわけであります。原文では記載されているのでありますし、また、記載されているから国際出願として認められるのではないか、私はこう思いますが、その国際出願の中に記載されていないものがあった場合には、内容はおのずから違ってくると見なければならないと思うのです。したがって、そうなりますと、これは別な願書を新たに日本では受け付けることになるのではないか、私はこういうふうに考えざるを得ないのでありますが、この点についてひとつ説明をいただきたいと思うのです。  それから、時間がありませんからもう一つ申し上げますが、記載されていないものの中に発明とされるものがあった場合はどうなるのか、これについても御説明をいただきたい。
  38. 熊谷善二

    熊谷政府委員 今回の条約加盟に伴います特許法改正に対する基本的な考え方でございますが、日本指定国といたしまして出されました出願の本体は、まず第一に原文で確定をされますが、あわせまして翻訳の提出が条約で義務づけられて、それが出されなかった場合には当初の原文の出願がなかったものとみなされるということになっておるわけでございまして、その原文と翻訳文が日本国内に入ってまいります。で、翻訳文によりまして原文の範囲が遡及して限定される、こういう性格になるものと考えております。もう少し平たく申しますと、原文とそれからその翻訳文双方に重なっておる部分が日本におきます特許法上での取り扱いの本体になるものでございます。  したがいまして、いま先生がおっしゃいました翻訳をいたしました際に原文にないものがそれに加わっておるというような場合には、これは仮の姿でございます。したがいまして、二つのケースがございます。原文にあって翻訳文にない場合には、その部分は放棄とみなしておるわけでございます。原文の範囲が限定をされるという解釈をとっております。それから、翻訳文の方が原文を上回るというものにつきましては、これらは実体と違います仮の出願という取り扱いでございまして、この出願につきましては、この瑕疵の部分を取り除くための異議申し立てもしくは無効その他の手続によって是正されるということになるわけでございます。
  39. 上坂昇

    上坂委員 質問と違う。私が言っているのは、百八十四条の四項の問題なんです。足りなかった分のことを言っているのですよ。記載されていないもの、翻訳文から落ちているものはそのものは認めない、こうみなしているわけですね。ところが、原文には実際には載っかっているわけなんですよ。日本ではそれはとっちゃってそのまま認めてしまうわけですね。そうしますと、本来は原文にないものを認めたということになるのではないか、それじゃ新しいものとして認めることになるのじゃないか、こういうことを質問している。百八十四条の十四はその次に質問しますから、お答えいただきたい。
  40. 松家健一

    松家説明員 お答え申し上げます。先生ただいま御指摘のございました百八十四条の四の四項でございますが、「国際出願日における外国語特許出願の明細書、請求の範囲又は図面に記載されていなかったものとみなす。」こういう措置をしているわけでございまして、この条約上の根拠といたしましては、二十二条、すなわち出願人指定国に翻訳文を提出しなければならないという規定及び条約二十四条(1)(iii)によりまして、翻訳文を提出しないときは出願は取り下げの効果をもって消滅するという規定から条約上も認められているわけでございます。このような取り扱いにいたしました理由は次のとおりでございます。  まず第一点といたしましては、わが国における権利の設定は日本語で行われ、したがって出願人の提出した翻訳文を基礎にして手続を進める必要があること。それから第二といたしまして、原文まで戻れるようにしておく、そうしますと、第三者がすべての出願について常に原文と照合することが必要になってくるわけでございまして、翻訳文を国内で公表いたしますけれども、その公報を見ただけでその外国からの出願内容はこういうものだというふうに理解するのでは足りず、常に原文に戻る可能性があるということでそれを照合することを強いられる第三者にとって非常に不都合であるということ。それから、原文にまで戻れるようにしておきますと、特許庁のあらゆる審査は原文で行うことになりまして、審査の面でも先後願の審査とか補正の際の判断ということに当たりまして必要が生じるわけでございます。このような理由で百八十四条の四の四項を設けたわけでございます。  それから、先生の御指摘のありました原文にあって翻訳文にないものは別の出願として認めるべきだという御指摘でございますが、PCT条約におきましては、その十一条(3)において「国際出願日の認められた国際出願は、国際出願日から各指定国における正規の国内出願の効果」を持つということになっておりまして、PCT条約出願日というものはあくまで国際出願日であり、その指定国における手続は翻訳文を所定の期間内に提出することによって発生するわけでございますので、翻訳文を出さなかった部分について別に出願を認めるということは条約上予定しているものではございませんし、また別に出願を認めるといたしますと、その出願日を一体いつにするかということ等いろいろ制度上むずかしい問題も出てまいりますので、ただいま申しました第一ないし第三の理由によりましてこのような措置をするということに考えておる次第でございます。
  41. 上坂昇

    上坂委員 何を言っているのかちっともわからないのですけれども、もう一つ聞きますが、記載されていないものの中に発明とされるものがあって、それが原文のいわゆる請求の範囲に入っていた、こういう場合にはどうなりますか。
  42. 松家健一

    松家説明員 お答え申し上げます。  その場合は記載されていなかったものとみなす、すなわち指定国である日本については何も効果を発生しないというふうに考えております。
  43. 上坂昇

    上坂委員 いまお答えがあったようにこれは日本においてはその権利が発生しない、効果、効力がなくなってしまう、こういうことでありますから、出願人の権利というものが結局なくなってしまうということだろうと思うのです。そうなりますと、せっかく国際出願してもこれは非常に問題になるわけです。したがって、これについては何らかの救済措置が必要ではないか、こういうふうに私は思うわけであります。その件についてひとつお答えをいただきたいと思います。
  44. 熊谷善二

    熊谷政府委員 国際出願日と認定されましてから翻訳を提出するまでに二十カ月の期間がございます。その間の差しかえは自由でございます。その間に十分点検をいたしまして翻訳文を出す、翻訳文を出した場合に、先ほど審判部長から申しましたように、日本特許庁がこの期間内に受け付けましたものはその期間が過ぎますと差しかえができないということになるわけでございますが、この二十カ月の間に十分検討する時間的な余裕がある、こういうふうに考えております。
  45. 上坂昇

    上坂委員 百八十四条の十四についてお伺いします。  この百八十四条の十四に言う「拒絶」というのは、出願が却下されるということなのかどうか、拒絶しても先願権は残るのか、このことについで質問をしたい。  それから、「発明以外の発明」ということについて、これはどういうふうに説明をするのか、お答えをいただきたい。  それからもう一つ、「発明以外の発明」でないということもあるんじゃないかというふうに思いますが、そういうものは余分につけ加わっている場合もあると思うのですが、これについてはどういう取り扱いをするのか、お答えをいただきたい。
  46. 松家健一

    松家説明員 お答え申し上げます。  まず、第一の御質問でございますが、拒絶は却下とどう違うかということでございます。拒絶は、特許法上の規定によりまして審査官審査の結果行う行政処分でございます。却下の方は、たとえば出願について出願として受け付けない、あるいは審判請求を審判請求として受け付けないという、本案前の審理に関する問題でございます。  それから、拒絶されたときに先願権は残るのではないかという御指摘でございます。これにつきましては、拒絶査定が確定したものについて先願権は残るわけでございます。ただし、この百八十四条の十四が適用されます結果といたしまして、拒絶査定が確定した場合に先願権が残る範囲は、原文及び翻訳文、その双方に記載されている事項、これについて先願権が残るわけでございます。  それから、「発明以外の発明についてされているとき」、このことの意味でございますが、これは原文及び翻訳文の双方に記載されている発明以外の発明という意味でございまして、実務上の取り扱いとして具体的に申しますと、原文に記載されていても翻訳文に記載されてない場合、その裏返しで翻訳文に記載されていても原文に記載されていない場合、これは発明以外の発明というふうにここでは読んでおります。
  47. 上坂昇

    上坂委員 「翻訳文に記載されている発明以外の発明」と、こうなっているのですよ。翻訳文に記載されていない発明以外の発明ということは書いてないのですよ。  それから、拒絶の場合、いま先願権が残るということでありますが、これは残るのは重複している場合、いわゆる別につけ加わった部分だけが拒絶をされて、その他についての先願権は残る、こういうことを言っているわけですね。
  48. 松家健一

    松家説明員 百八十四条の十四の規定は、国際出願の明細書、請求の範囲または図面及びこれらの書類の出願翻訳文に記載されている発明という意味でございまして、国際出願の明細書、すなわち原文とそれから翻訳文、その両方に記載されている発明、それ以外の発明についてされているときは拒絶されるという意味でございます。それから両方に書いてあるものは拒絶されないけれども、一方にしか書いてないものは拒絶されるという意味でございます。  それから、先願権として残るのは、やはり当初の国際出願日における国際出願の明細書にも記載されて、かつ翻訳文にも記載されている、その両方に記載されている範囲でございます。
  49. 上坂昇

    上坂委員 どうもよくわからないのだけれども、両方に書いてあるということなんですが、両方に書いてあるということはどこでわかるのですか。
  50. 松家健一

    松家説明員 百八十四条の十四の規定の三行目の真ん中よりちょっと上に「及び」がございます。この「及び」の意味が、この前に書いてある原文、それからこの後に書いてある翻訳文、原文及び翻訳文と、ここに書いてありますのはその双方という意味でございます。
  51. 上坂昇

    上坂委員 そうしますと、原文を見ることになるわけですね。原文を見なければ、両方に書いてあるということはわからないわけでしょう、翻訳文だけ見ている分には。その辺はどうですか。
  52. 松家健一

    松家説明員 御指摘のとおりでございますが、百八十四条の十四には最後に括弧書きで、「これを理由とする特許異議の申立てがあった場合に限る。」としてございますので、特許異議申し立てがあった場合には、異議申し立ての指摘するところに従い、原文を審査するということになります。
  53. 上坂昇

    上坂委員 そうしますと、両方に書いてあっても、異議申し立てがなければ両方に書いてあるということが全くわからない、こういうことになりますね。したがって、これはそのまま先願権が全部残る、こういうふうな形になってしまうと私は思うのです。そうなりますと、問題が非常にたくさん出てくるのじゃないかというふうに思います。  というのは、翻訳文に発明以外の発明が故意に記載されて、そのことによって第三者の権利が侵害されることになる場合、一体どうするのか。異議申し立てをすればいいということを言われておりますが、異議申し立てをしてもなかなか大変だと思うのです。異議申し立てをすれば審判、その次には、争いが起きれば東京高裁、それから最高裁、そして決定というかっこうになってくると思うのですが、これには数年かかることになる。そうすると、その間この二つのものは審査中でありますから、書いてあったからといって、両方にあるからといって直ちに拒絶ができないということになれば、これはずっとその間生きてくる。もしそれが数年かかるとすれば、数年間このふくれた部分、故意につけ加えられた発明の部分というのは生きてきてしまう、そういうことによって第三者の権利というものは数年間阻害されてしまう、こういう結果になるのではないかと思うのです。したがって、申し立てをしなければならないということは、ここに非常に大きな問題がある、私はこう考えますが、どうですか。
  54. 熊谷善二

    熊谷政府委員 まず、故意にやるケースがあるかどうか、これは私どもは非常にレアケースだと考えております。もともとこういった翻訳の間違ったままで、つまり原文にないものが翻訳に書かれて、それがそのまま特許になる、異議の申し立てがなければそのまま特許になるケースというのは、私はレアケースだと考えております。  なぜかと申しますと、本人にそういったことは非常に不利になるわけでございます。第一に、先ほど来話しておりますが、いわゆる原文にない部分につきましては第三者の後願を排除する力はございません。それはできないということでございます。第二に、出願公告がありました後は、間違ったままでございますと、それを正しいものに直すことは非常にむずかしゅうございます。認められないケースが多うございます。もともと正しいものも含めて拒絶になってしまう、こういう危険性かなり持った出願でございます。また、出願公告後におきましては、仮保護の権利行使ということになるわけでございますが、その場合に、瑕疵を持っているからということで異議申し立てによって拒絶になった場合には、出願者は無過失賠償責任を負うことになっております。また、そのまま特許になっているではないかという御指摘ですが、これは特許無効の審判でいつでも請求で取り消すことができる、こういうことになるわけでございます。  もとより私どもは、レアケースだといいましてもそれに対する手当ては十分にしなければなりません。そういう意味におきまして、情報提供、とりわけ中小企業者、その他諸団体を通じまして、そういったものが審査の過程で判明した場合につきましては、運用上そういった中小企業者等に対します情報提供につきましては十分対策を講じてまいりたい、そういうふうに考えておるわけでございます。
  55. 上坂昇

    上坂委員 百八十四条の四、それから十四、これについてはどうも納得がいかないわけでありますが、時間が参りましたから、終わります。
  56. 山崎拓

    ○山崎(拓)委員長代理 渋沢利久君。
  57. 渋沢利久

    ○渋沢委員 最初に、中小企業庁長官を煩わしましたので、長官に関連して一点だけお尋ねしたいことがありますので、最初に伺ってお引き取りを願いたいというふうに思うわけです。  それは、とりわけ中小企業関係は、技術や新しいアイデアで勝負をしなければならないという状況の中ですから、この特許制度を大いに活用して、発明奨励的なことで地方自治体なども非常に応援をしていると思うのですけれども国際出願というようなものには、零細企業にとってわりあい金がかかる部分があるわけです。地方自治体によりましては、中小企業の融資政策の中にこういうものも対象として取り入れているところ、がある。特許出願等に要する費用について融資をする、援助をするというようなこと、あるいはさらに、発明奨励的な中小企業対策の融資援助、補助というようなものがとられているところがありますが、これはぜひこの機会に中小企業庁として本格的にこの対応を検討していただきたい。いまここで具体的に何か出せというふうには言いません。時間がありませんので、いままでの取り組みについて説明は要りませんけれども、ぜひこれを機会に本腰を入れた検討を願いたいということを申し上げたい。
  58. 岸田文武

    ○岸田政府委員 中小企業がこれからのむずかしい経済環境の中で生きていくためには、やはり独特の技術を備えるということが大変有力な武器になるかと思います。特に外国出願までしてというような意欲のある企業については、中小企業対策としても力を入れて激励をしていく必要があろうと考えておるところでございます。  外国出願につきましては、特許庁の方で補助金制度も用意をしておられるようでごいざますが、それでカバーできない分野につきましては、政府系三機関の金融を通じまして大いにこれを活用していただきたいと思っておるところでございます。特許庁であるとかあるいは発明協会の窓口等でも、もし御相談があれば、そういう資金の面については政府系三機関に御相談くださいというようなことをおっしゃっていただいて結構ではないかと思っておるところでございます。  なお、中小企業対策の中で、技術の問題につきましてはすでに新技術の企業化のためのいろいろな補助金もございますし、また、金融の面でも特利を用意して応援をしておるところでございます。新技術の開発のための補助金につきましては、毎年予算額をかなり大幅にふやしておるところでございます。
  59. 渋沢利久

    ○渋沢委員 そこで、特許庁に、特許関係というのは大変むずかしいので、ぜひわかりやすく、時間がありませんので、簡潔な御答弁を願いたいと思うのです。  まず、特許庁審査官出願審査をする場合に最初にやることは、出願に係る発明が何であるかということを要旨認定するということから始まると思うのですが、どうでしょうか。
  60. 城下武文

    ○城下政府委員 お答えをいたします。  そのとおりでございます。まず、一番初めに明細書をよく読みまして、それから要旨認定をいたします。
  61. 渋沢利久

    ○渋沢委員 その出願に係る発明というのは、外国国際出願をされたものの場合で言うならば、本来これはどういう内容のものとなるわけでしょう。簡潔で結構です。こういう理解でいいでしょうか。原文の国際出願とその出願翻訳文の双方に記載された部分、これがいわゆる本来の内容というふうに受けとめてよろしいかどうか。
  62. 城下武文

    ○城下政府委員 お答えいたします。  外国からの国際出願につきましては、翻訳文によりまして審査をいたしまして、その発明の何であるかを判断いたします。
  63. 渋沢利久

    ○渋沢委員 本来の内容について聞いておるわけですが、これはあなたの方で出しておる資料に基づいて聞いておるのですが、本来の内容は原文と翻訳文と重複して記載されたもの、つまり共通部分、先ほどの長官の答弁にもありましたが、念のために聞いておるのですが、つまり共通部分を国際出願については出願に係る発明というものの内容としているということでしょう。
  64. 城下武文

    ○城下政府委員 失礼いたしました。  審査官がまず初めに明細書を対象として審査に入りますのは翻訳についてでございます。ただ、本出願が、その発明の実体がどこにあるかという点につきましては、共通部分でございます。
  65. 渋沢利久

    ○渋沢委員 つまり、出願に係る発明が何であるか、これは原文と翻訳文の共通部分、これは間違いないですね。そこをお尋ねしたわけであります。それで、この内容を認定するのは、長官ですか、審査官ですか。
  66. 熊谷善二

    熊谷政府委員 審査官でございます。
  67. 渋沢利久

    ○渋沢委員 そうすると、審査官は、特許出願を見て、出願に係る発明が本来何であるかということを考えて、そして原文と翻訳文の共通部分としてこれを認定をする、こういうことになると思うのです。  ところで、お尋ねすることは、そういたしますと、審査官がこの発明の要旨認定をやる場合に、先ほどの説明によると、これは翻訳文によってやる、こういう説明になっているわけですが、これはそういうことなんですか。
  68. 熊谷善二

    熊谷政府委員 先ほども出ましたが、百八十四条の六の第二項でございますが、翻訳文につきましてみなし明細書等に対する規定がございます。これが現行法三十六条に基づきます出願書類になるわけでございます。審査はその出願書類において行うわけでございまして、翻訳文によって審査は行うということが明らかでございます。
  69. 渋沢利久

    ○渋沢委員 この共通部分、これが問題なわけであります。発明内容というのは。結局これを審査する上では、原文と翻訳文との対比というものは、重なった部分と重ならない部分の区分けをするということでありますから、当然不可欠です。これはだれが考えても、素人の考えでもそういうことになるわけですから、当然原文と翻訳文との対比を前提として共通部分が認定される、こういうことになる。異議の申し立てとかなんとかいいますと、それは派生的な問題でありまして、本来の審査のありようとして、一番大事な発明の認定という部分で言うならば、これは共通部分があるわけですから、当然原文と翻訳文との対比ということがなければならないということでしょうね。いかがですか。
  70. 熊谷善二

    熊谷政府委員 本体は重なった部分でございますが、審査段階でどういうプラクティスを行うかということにつきましては、これは各国の自主的な判断に任されておるわけございますが、私どもとしましては、条約四十六条の注解並びに四十六条等によりまして、翻訳文のみによって審査をするということにいたしております。もし、先生の御指摘のように、それ以外の方法というもの、たとえば全件につきまして全部原文と翻訳文を照合しなければ審査それ自体がいけない、つまり照合を法的に義務づけるということにいたしました場合は、これは多種の言語でございますので、現実的に審査事務としてはきわめて困難である、こういうふうに考えておるわけでございます。とりわけ、この原文と翻訳の照合という問題は、これは従来のプラクティスにはなかった分野でございまして、実務上はいろいろな法体系上の問題も出てまいろうかと、かように考えております。
  71. 渋沢利久

    ○渋沢委員 実務上困難であるかないかという実務の問題は別にいたしまして、法律のありようの問題として、あるいは審査のありようの問題としてお尋ねしていかなければならないわけですけれども、問題は、翻訳文ではなしに共通部分が問題であるということで考えました場合に、みなしによって条約の中にあるからというお話ですけれども条約の中の規定は、それぞれの加盟国が翻訳文によってのみ審査することを義務づけていますか。いるかいないか、端的に答えてください。翻訳文によってのみ審査することを各国に義務づけていますか、いませんか。
  72. 熊谷善二

    熊谷政府委員 各国の自主的な判断に任されておりますので、各国すべて条約で義務づけられるということはございません。
  73. 渋沢利久

    ○渋沢委員 だから、条約に基づいてみなし条項をつくったから、したがってやらなければならないというのは、それは国内法をつくる上での、百八十四条の六の二項ですか、そのみなし条項をつくったというあなた方の発想の問題であって、どこからも拘束されるものではないのですね。そう思います。  それは明らかにしておきますが、法律上、先ほども上坂委員からも質疑がありましたように、原文と翻訳文との対比の中で問題になる部分は、原文にあって翻訳で落ちている部分ですね。これは取り下げとみなして、いわば拒絶に等しい、無効の処理をされる。これはお出しになった法律上大変明快ですね。しかし、そういうことがあり得るかどうかという議論を、先ほど拡大解釈したものを載っけるようなことは本人にとって不利益だからというような推論がありましたけれども法律の議論で長官がそういう推論を展開するのは大変私は驚いて聞いておったのだが、つまりこの法律上で明確にしてある一つの部分、原文にはあるが翻訳文で落ちている部分というものがあり得るように、原文になくて翻訳文でこぶがつく、原文にない新たな構想がつく、それは一つつく場合もあれば、三つも四つも連鎖的に載せられる場合もあり得るし、それを故意にやられる場合もあり得れば、錯誤において行われる場合もあれば、技術的なミスでも行われる。いろいろなことがあり得るわけだ。  特許というのは、釈迦に説法だけれども、大変な権利を与えるものでありますから、それだけに、この審査に当たってはいささかの落ち度もない、厳正な審査にたえられるものとして法定されなければならぬ。まして、おっしゃるとおりこれから国際的な水準にまで特許庁の全体の機能を高めようという意気込みで今回の条約法律が出ているわけですから、あらゆるものにたえていくという体制と決意と、それに備えられる法律が必要であるというふうに考える。ところが、原文にあって翻訳文で欠けている部分については大変明確な条項があるんだけれども、拡大解釈部分についての、これを拒絶する説明もなければ、法律上も明文化されておらない。これはいかなる理由に基づきますか。
  74. 熊谷善二

    熊谷政府委員 審査は翻訳文によって行いまして、したがって、たまたま審査の過程でその翻訳文が原文と違っておる個所を発見した場合であっても、公告後の異議の申し立てがない場合はそれが特許につながっていくということはおかしいではないか、なぜわかった場合に是正措置をとらないかと、こういう御質問かと存じますが、私どもは、たまたま審査の過程で発見をしたもの、それに対して一つの処分を行うということになりますと、審査の裁量の範囲が余りにも大きくなりますのと同時に、その審査が恣意にわたる、その結果特許制度審査の公平性が担保できないという点からとり得ないというふうに考えておるものでございます。それならば、全件について原文と翻訳文と常に照合して、原文中心主義で審査段階もやるべきだということにつきましては、先ほど申しましたように現実的に不可能である、こういうことでございます。  先ほど私は、四十六条注解で翻訳文のみによって審査をすることができる、こういう注解がございますが、確かに国際的な義務ではございません。できるということでございますが、私どもとしましては、今回、翻訳文のみでありまして、あと異議の申し立て等の措置を待って措置をすることが最善の方法である、こういう判断で提案をしておるわけでございます。
  75. 渋沢利久

    ○渋沢委員 術語の問題は後で聞きましょう。そんなことと無関係に、原文と異なった拡大解釈、拡大翻訳文の出願があり得る、これは否定されないと思うのです。それは本人に不利益だろうが何であろうが、あり得ることなんです。そうでない場合もあり得る。そういうことの中で、原文から見て翻訳文において欠けている部分の処置については明文化されているけれども、拡大解釈された部分の取り扱いについて明文化されておらないのはいかがかということのお尋ねが一つ。  それから問題は、そうすると、こういうことになりましょうか。そういう原文にない拡大解釈をしたものがどういう理由と動機であれ載ったものが、そのまま異議の申し立てもなければ、向こうの審判の申し立てもなければ、あるいはあったにしてもそれが成立するまでの長い期間審査官は不当と気がついてもそれを特許するということをせざるを得ない、永久にないしは一定の時期にわたって。そういうことが起こり得るということは、当然起こり得る事態としてはあり得ます。審査官が気がついたから一々職権主義で手を出し、口を出すというようなことはできない、こうおっしゃるならば当然そういうことが起こり得る、こういうことになります。起こり得るかどうか、わかりやすく答えてください。あなたの答弁は何を言っているかわからぬ。
  76. 松家健一

    松家説明員 第一点についてお答え申し上げます。  翻訳で拡大された部分を排除するの根拠はどうかという御質問でございますが、これは条約十一条(3)によりまして、「国際出願日の認められた国際出願は、国際出願日から各指定国における正規の国内出願の効果を有する」という規定がございます。翻訳で初めて出てきた部分は、もともと国際出願の中に含まれていない部分でございます。したがいまして、これは国際出願としてたとえ指定官庁段階に入っても、国際出願内容としては認められないものでございます。
  77. 渋沢利久

    ○渋沢委員 答弁漏れはないですか。
  78. 熊谷善二

    熊谷政府委員 先ほども、たまたま見つかったという形のものはそういう方法はとれないということは申し上げました。さらに、これは法律で義務づけるということをすべきかどうかという問題につきましては、先ほど来申し上げておりますように、現実的に不可能なことを法律で定めることになりますので、これも私どもはとり得ないと考えております。  ただ、制度的にはとり得ないわけでございますが、運用の問題といたしましては、たまたまわかったものにつきまして情報を、先ほど申しました中小機関等々関係の向きにそれを連絡をする、こういうことによって、そういった瑕疵のある出願がなされておる、やがてそれが公告されるということに対して警告並びに情報提供して速やかな排除措置がとれるように行政の運用としては対処してまいりたいというように考えております。
  79. 渋沢利久

    ○渋沢委員 どうもやはりまともに答えていただけないのです。  現在、特許出願審査は、言うところの職権主義ということで私はやられておると理解をするわけです。このPCT出願の原文に記載されてない事項、本来出願としての効力を持っておらない拒絶すべきものであるけれども、異議の申し立てがあった場合に限ってその拒絶ができる、こういう形にすることは、いわば職権審査主義というもののこれは放棄につながる、こういう理解をせざるを得ない、これが一点。     〔山崎(拓)委員長代理退席、委員長着席〕  それから、異議の申し立てということをしばしばおっしゃるのだけれども、つまり異議の申し立てと向こうの審査請求にだけ公正な審査目的を果たす、そこに依拠する、頼る、こういう構造なんですね、いまの説明によりますと。改正案によればそういうことになるわけですね。これは非常に問題だと私は思うわけです。みすみすいわば原文にない拡大解釈された翻訳部分が審査官の目の前を通っていくことに対して、審査官が進んで手を出すことはできない、これを拒絶することができない、しかし、関係者がその情報収集をして異議の申し立てをやった、あるいはその機会を失したけれども無効だということをやった場合にはちゃんと道が開かれています。それはつぶせますよ、こういうお話でしょう。通産大臣もお聞きになってどういうふうにお考えになっておるか伺いたいところだが、特許庁、そういうことでしょう。  異議申し立て、これは大変費用がかかる。それからそれを的確にやるためには、すべての国際出願に対して常に的確にこれを掌握しているということが必要だ。そんなもの、発明に企業の再生をかけようなんというような町の中小企業にとってはできる話ではない。お金もかかるのです。異議の申し立てをすればいいじゃないかというような、こんな開き直った、これは審査権限の放棄ですよ。何のために目の前にこんな不当な出願が通っていくことを——審査官は公告しなければならぬでしょう。公告すれば一定の権限を法律的にも持つでしょう。これは納得ができない。
  80. 熊谷善二

    熊谷政府委員 まず御理解いただきたいのでございますが、今回の国際出願に基づきます審査というものは、従来の審査になかったものでございます。そういう意味で、新しいプラクティスではございますが、私どもの今度提案いたしております審査は、先ほど来言っておりますように、翻訳文ですべて審査をするわけでございます。これは従来の審査と変わりません。いま、たまたま原文との不一致がわかった場合の措置につきましてお尋ねでございますが、私どもは、そういうプラクティスが導入されていないからといって、無審査主義を導入したのだというふうにはまず考えていないわけでございます。  それから第二点に、異議の申し立てというのは大変金がかかるではないかという御指摘でございますが、異議の申し立ては、これは資格を問いません。だれでもやれるわけでございます。また、一たん異議の申し立てをしますと、それが取り下げられましてもそれについて審査をしなければなりません。その場合に、翻訳と原文との照合が行われて、内容がわかればそれを拒絶をするわけでございます。そういう意味で、私どもが先ほども申し上げておりますような今回の措置並びに関係業界への情報提供ということを通じまして、予想されるような問題は十分カバーできるものであると確信をいたしております。
  81. 渋沢利久

    ○渋沢委員 先ほど言いましたように、実際にこれを義務づけて原文との対比審査をやった場合には、これはいまの特許庁の機能じゃできないということをおっしゃった。それが本当の理由なんでしょう、実際は。それならそれで、その部分を言えばいい。だから翻訳文を審査するという形に整えたのでしょう。そういうことなら、ある意味では大変素直だ。あるいは異議の申し立ての部分についてそういう一定の限定において審査をするということにしないと、これは審査官が一々チェックしておったのでは大変だという、その体制の問題としてこれは無理があるから、異議の申し立てに限るという限定を括弧つきで入れた、原文との対比を避けて翻訳文主義でいく、こういうベースでいくことにしたということなら一つの論理ですね。そういうことでしょう。それならそれで、はっきりおっしゃった方がいいと思うのです。
  82. 熊谷善二

    熊谷政府委員 私ども、この結論を出すにつきましては審議会等で十分議論したのですが、ただいま先生がおっしゃいましたように、全件を義務として審査する体系をとりました場合には、これはきわめて非現実的である、それから、たまたまわかった場合だけやった場合には、これは恣意に流れるからとり得ない、そうなりますと、翻訳文によって審査するという考え方にならざるを得ないわけでございますが、これは条約上も認められているということでとっているわけでございます。
  83. 渋沢利久

    ○渋沢委員 大変に正直でよろしい。その最初の説明では、条約があるからこういう形で翻訳文に限ってやる、その審査をするということにしたとおっしゃったのだが、そうすることを条約も妨げていない。実際のところは、私が先ほど言いましたように、体制がないんだ、そこでやはり翻訳文でやる、原文との対比は避けたい、やりたくても体制がないんだ、こういうことですね。異議の申し立てに限定しないとこれも問題がある、こういう説明をいま長官にしていただいたので、それは庁の立場はよくわかった。しかし、そうすると、まさにそのためにこのみなし条項をつくり、そのために体制がないという理由でそういう仕組みにした、異議の申し立てに限定するという括弧書きをつけた、こういうお話なんです。しかし、これは先ほど私が指摘いたしました、上坂さんもおっしゃったような、拡大翻訳した部分のチェックというものについては特許庁審査責任を果たさないという批判、そしりは免れないということは明らかだと思う。  体制がないとおっしゃるのだけれども、時間がないのですけれども、もう少し聞いてみましょう。私がちょっと聞いた範囲で言いますと、いま外国から日本へ来たり、それから日本から外国出願される件数は大体同じだというふうに聞きましたが、二万件から三万件でしょう。この五〇%がPCT出願になったということであっても、一万か一万ちょっとということですね。審査官の数からいって一人当たり、私の計算に間違いがなければ、大ざっぱな話かもしれませんが、年間十件程度のことじゃないですか。PCT加盟しようというのですから、その体制強化というのはあたりまえのことで、しかし、こんなにみなし条項までつくって翻訳文に限定をして審査するというような無理なことまでしなければならない状況じゃないでしょう。いままでもおやりになっておったのでしょう。現在でもある程度のことはおやりになってきたんじゃないですか。どうしてもできない、体制の上で無理がある、その具体的な理由を、どこにどう無理があって、大蔵省にいろいろ具体的な人員の増強その他人の配置等について折衝したけれどもだめだったというなら、そういう具体的な理由を簡潔に説明していただきたい。
  84. 熊谷善二

    熊谷政府委員 この原文と翻訳文との不一致の問題につきましていま問題になっておりますのは、審査請求がありましてからの措置審査段階での問題でございますが、翻訳されますものが審査請求がない形で公報に載せられて、七年間審査請求がなければそのまま残っておるわけでございますが、国際出願の中に二つの種類があって、それで審査請求されたものだけにつきましていま議論が行われているわけでございますが、これは出願がありましたもののうちの五〇%は審査請求がございまして、残り約五〇%が審査請求のないままに、いわゆる翻訳文が公報にそのまま残っておるわけでございます。私どもは、この審査段階でこの五〇%につきまして具体的に全件をチェックするというふうにいたしました場合に、英語、ドイツ語、フランス語その他、たとえばスウェーデン語であるとか、なかなかむずかしい言語も全部全件にわたって調べなければならない、こういうことになるわけで、私どもの計算で検討いたしますと、恐らく人数的には三けたを超える人員がさらに必要になってくるのではないだろうか。これは現実問題として人数さえふやせばいいということではございませんで、その語学に精通し、かつ技術がわかる方々が十年、二十年という形において養成されていかなければならないわけでございます。これを義務づけることは、この条約に入るということが困難な状況にならざるを得ないと私ども考えておるわけでございます。  なお、簡単に触れますが、現在は見ておるじゃないかという御質問でございますが、この国際出願は今回初めてですから、現在見ておりませんが、外国語の文献としてはチェックするということは当然やっておるわけでございます。それからまた、優先権主張を伴いまして日本出願されてくるものにつきましては、その部分につきましてチェックはいたしておるわけでございますが、本件のように明細書全体にわたって翻訳する、そして照合する、こういうようなことはいままでもやっていないわけで、私どもも、今後もこの措置はとれないと考えているのでございます。
  85. 渋沢利久

    ○渋沢委員 現在も、いまお話があったパリ条約による優先権主張を伴う外国出願については、その主張が認められるかどうかということで、日本出願内容と原文と比較してやっておるわけですね。先ほど何かスウェーデン語云々というような話があったけれども、現行の審査の中でそういう特殊な言語による不公平な扱いが出ているのですか。やっているじゃないですか。問題は、こういう国際条約加盟するという特許庁にとっては大変大きなこの取り組みの中で国内法を出すに当たって、私どもは、いま尋ねているようなことについてはきちっとあらゆる角度で可能性が検討され、そして対応も準備されておらなければならないはずだと思うのですよ。ろくな答弁ができないじゃないですか。今後どういう形でふえていくのか、それにこたえるために、いままでもたとえば語学研修なんということはちゃんとやっているじゃないですか。そういうことだって、何のためにやっているのですか。こういう国際条約加盟しようというなら、それに対応した準備、説明がなければ、いままでの答弁で見ると、こんな法律を国会に出す機が熟しているというふうには言えないですね。  零時半までの時間で、委員長が大きな目でにらんでいますから締めくくりますけれども、きょうは締めくくらなければいかぬと思いますが、最後に一点だけつけ加えて聞かしていただきましょう。  長官特許庁の労働組合が、審査官に今度の法案についてアンケートをやったんですね。私もその資料を見せてもらいました。それによると、特にその中の指摘いたしました百八十四条の十四ですが、これについての審査官のアンケートによると、八三%の者がそれぞれ異議を唱えておる、賛成は三・二%、こういうことになっている。これだけの仕事です。しかも審査長官がおやりになるのではなくて審査官がおやりになる、その審査官の圧倒的多数がこの取り組みを理解していない、長官のお出しになったこの法案について、私どもがいま議論しているような問題も重なっていると思うけれども、ほかにもあるかもしらぬ。そんなことでは、これが国会を通ったって仕事にならぬじゃないですか。  審査官自身が挙げて問題を理解し、納得し、そして長官がおっしゃるとおりに、まさに国際レベルに対応するわが特許庁が、日本の国民のための技術開発のとりでとして特許庁の機能を果たそうということで燃えているわけなんですよ。ところが、いまの数字で言えば、多少の違いはあったにしましても、あなたは審査官や組合と話をしているのですか。納得を得ているのですか。大事なことでしょう。わずかな職員で大変な仕事をしょっていかなければならない、またこれで多くの仕事をしょうことになるという中で、組合の合意も理解も得ていないような状態でこんな法案を出す。先ほど来の私の質疑に対する答弁のずさんさに加えて、大変ひどい状態だと思う。どのようにお考えか。一体組合の諸君と話をされたのか、納得をとったのか、そういうことは全然お考えになっておらないのか、必要ないと考えておられるのか、最後にそこを聞いて、きょうの私の質問は時間が切れたからやめます。
  86. 熊谷善二

    熊谷政府委員 私どもは、このPCT加盟に備えまして、すでに四十七年から庁内の検討プロジェクトチームをつくりまして、作業に着手をいたしまして、五十年に庁内のPCT委員会を設けまして、自来九十数回にわたりましていろいろ検討いたしました。その作業はその都度末端の現場の審査官等についてもお知らせをし、意見をそれぞれ職制を通じまして吸い上げて、それを審議会等々にも反映をし、審議会の答申を待って今回出したわけでございます。今日まで私どもは、本条約加盟に伴います諸問題につきましては、庁内の周知方、また意見の吸い上げについては十分努力したつもりでございます。  ただ、先生指摘のように、最近組合におきましてアンケートが一般組合員になされまして、その集計結果が出たということで、私、この間長官交渉の際に組合の皆さんから話を聞いたわけでございます。それは私もここに手元に持っておりますが、翻訳文の不一致に関して異議申し立てがあった場合に限るとしているという点について、いま先生が八三%という数字を御指摘になったのでございますが、この記録では、この条文に反対するというのが三六・七%となっております。それからもう一つ、実務上やむを得ないが法定化は望ましくないというのが四六・八%、約五〇%ございます。それから、この条文に賛成するというのが三・五%ございまして、わからないというのが八・六%等々でございます。これが事実でございます。  実務上やむを得ないという四六・八%の方がおられるということでございますが、私どもとしましては、いま出しておりますこの法案の趣旨に沿って、今日まで組合とは私自身誠意を持って交渉してまいったつもりでございますが、今後も組合の皆さんとは交渉の際に誠意を持ってこういった問題についての理解を深め、努力もまたお願いいたしたいというふうに考えておるわけでございます。
  87. 渋沢利久

    ○渋沢委員 いまの長官の答弁のとおりで、わずか三%しか理解を示してない、あとはそれぞれ内容的に、実務的に半分からの人がそれはまずい、こう指摘しておられるというのは、大変大きなことだと思います。私も全くきょうの説明では納得しない。大臣もきょう途中で退席されるというから、私は大臣にお尋ねしなかったのだが、お聞きのとおり大変問題があるように思うのです。  時間が切れましたので、私の質問はきょうは終わります。
  88. 野呂恭一

    野呂委員長 午後一時から委員会を再開することとし、この際、暫時休憩いたします。     午後零時三十五分休憩      ————◇—————     午後一時四十一分開議
  89. 中島源太郎

    ○中島(源)委員長代理 休憩前に引き続き会議を開きます。  質疑を続行いたします。中村重光君。
  90. 中村重光

    ○中村(重)委員 一時からの再開予定に対してもうすでに一時四十分、与党の理事が、いま山崎理事が見えられたけれども、一人だにいままで三、四十分出席をしない。このような不見識な態度というものは許されないと思う。この委員会が終了した後で委員長理事会を開いて、なぜに与党の理事がこのように委員会をボイコットする態度をとったのか、そのことの釈明を求めて、釈明をされて、そして今後の措置について理事会において協議をされることを要求いたします。お答えをいただきます。
  91. 中島源太郎

    ○中島(源)委員長代理 後刻理事会を開いて協議いたすことにいたします。
  92. 中村重光

    ○中村(重)委員 特許庁長官質問をいたしますが、この法律案に対しては、PCTによる新しい国際的な条約に基づく関連の国内法であるわけでありますから、私どももきわめて重視いたしまして、数回にわたってヒヤリングを行ってまいりましたし、また長官から個別の説明を伺ってきたわけであります。したがいまして、端的に問題点をお尋ねをするわけであります。  先ほど同僚諸君から疑問点がただされておりましたが、公告になった出願は翻訳を含んだままになっているわけでございますから、現在の制度とは大変違ってくるということになるわけであります。ここで国内出願人との権利関係が生じてくるということは避けられないと私は考えます。     〔中島(源)委員長代理退席、委員長着席〕 なぜにこの翻訳審査という形をとらなければならないのか。間違いのない、紛争の起こる余地のない原文審査ということが常識でなければならない、そのことが特許法の精神を生かすことにもなるし、憲法の趣旨に沿うことにもなるわけでありますから、特にそれを避けて、あえて私は便宜主義と言うわけでありますが、そのような簡易なやり方というものをとらなければならなかったのか、説得力のある、私どもが理解し得るお答えをちょうだいをしたいと思います。
  93. 熊谷善二

    熊谷政府委員 お答えいたします。  この翻訳文というのは、国際出願がなされまして引き続く国際公開、一年半後に行われるわけでございますが、それに続きまして一年八カ月までに出されることになるわけでございます。ただいま先生がおっしゃいましたように、翻訳文と原文の不一致という問題は、実はこの翻訳文の提出の時点で起きるわけでございます。御承知のように、この出された翻訳文は国内公表が遅滞なく行われますが、その取り扱いは、約五割がそのまま、審査請求なく七年間継続のまま残るという形になるわけでございます。また、残りの五〇%程度審査請求がございまして、翻訳文によります審査が行われ、いま先生の御指摘のように仮の実体のない部分につきましても異議の申し立てがなければそのまま公告される、またやがて権利になる、こういう形になるわけでございます。  そこで、結論から申し上げますと、審査請求にあって審査をするもの、それから審査請求が行われないままになっておるもの、この審査請求の行われないままになっているものにつきましても、場合によりますとこの誤った国内公報を見まして、たとえば後願の方で企業化を考えていた場合に、もうすでにそれがあたかも真実であるかのごとく誤解をいたしまして企業化をやめる、こういうような弊害もあるわけでございまして、権利保護という立場に立ちますと確かにその点は問題でございます。したがいまして、審査段階に入りましただけの分野のみならず、それ以外の問題もやはり放置されるべきではない、本来の問題点として先生指摘をいただいいるものと私理解をいたしております。したがいまして、国内公表します段階に全件について翻訳文と原文とのチェックを行って真正な翻訳文だけが出されるという事態になれば、これは先生のおっしゃるような懸念はなくなるのかもしれません。しかしながら、このチェックというのは、たとえば新しい翻訳センターといったような機関でもつくらない限り、なかなかこういった真正な翻訳について処理をすることができませんし、また、翻訳しましたものが、他人の権利の翻訳が正しくなされているかどうかにつきまして本人の承諾を得る必要もございます。あるいは本人がその翻訳に承知しない場合にはその裁定であるとか、新しい制度も必要になるかもしれません。私どもがこういった国内公表の段階で全件をチェックするというようなことは、これは実際上不可能でございます。まずそれが第一でございます。  それから第二には、この多国間の取り決めに基づきます多種の言語出願処理するものとしまして、この翻訳文と原文の不一致というものが本来ないというたてまえでプラクティスが組み込まれるというものでなければ、これはワークしないという考え方が流れていると私は考えております。先ほど午前中の御質問にもございましたように、大体こういった見せかけの出願を意図的に出願いたしましても、後で瑕疵が発見された場合に拒絶されるという非常に不安定な本人に不利な結果もございますので、それほど多くの分野においてこういった不一致が起こるとは考えておりません。いわばレアケースであると考えておりますが、しかし、理論上はあり得るわけですから、法的に措置をしなければなりません。  その場合に、ただいま申し上げましたような全件についての原文と翻訳文とのチェックを常に照合すべきということを法的に義務づけることの妥当性ということを考えました場合に、私どもは現実問題としましてその処理がきわめて困難であるということと、また、そこまでしての法的な強制は制度として妥当ではないのではないかという考え方に立ちまして、公告後の異議待ち並びに無効審判請求、訂正審判とのリンクによります措置をとっておるわけでございます。これは制度としての問題としてそういうふうに取り運んだ次第でございます。
  94. 中村重光

    ○中村(重)委員 私の指摘に対して、あなたはやはり問題はある、こう言われたわけであります。問題はあるけれども全件審査ということは不可能である、なぜに不可能なのかということをあわせてお答えにならなければ、ただ不可能でありますと言ったって、人間の社会で人間がやることが不可能だということは何があるのだろうか。やる気があるのかないのかということが問題なんだ。あなたが不可能というのは、やる気がありませんと言っている。あなたは特許庁長官なんだ。特許というものは、出願人すなわち国民の権利というものを発生をする、あるいはそのやり方によっては権利を抑圧をするという形になってくる。財産権の侵害、憲法にもとるというような事態を引き起こすわけだから、便宜主義的なやり方をもってこれを処理しようということは間違いであるということを私は指摘をするわけであります。そのことについて明確にお答えをいただかなければなりません。  さらにあなたは、原文と翻訳はそう違うものではないと言っている。しかし、AプラスBということで出っ張りをつくることをあえて容認をしておるということは、原文と翻訳文というのが違うということは明らかであるわけです。その程度がどうなのかというだけの問題であります。数が少ないからいいではないか、そのようなことは許されません。間違いのないというやり方、公正な特許が行われ、権利を与えるという観点に立って特許庁長官としては特許行政を行っていくということでなければ、あなたの責任は果たされないし、そのような無責任な態度、怠慢と申しますか、そういうものは必ずや糾弾をされることになるわけでありますから、もっと質問者が納得のいくような、理解できるようなお答えをいただきたい。
  95. 熊谷善二

    熊谷政府委員 お答えいたします。  法的に全面的に原文と照合する制度を設けました場合に、私どもの試算によりますと、現在の審査官の要員のほかに恐らく三けた以上の要員を審査官として配置しなければならないかと考えます。これも単に人数だけではもとよりございませんで、経験豊かな、また語学力の豊かな審査官を各部にそれぞれ配置をし、場合によりますと、特殊語学につきましては特別の専門的な知識を持った者をそれも各部に必要に応じて配置するということを考えなければなりません。私ども、全件チェックを法的に義務づける、そして審査官審査に当たって全部の明細書に書かれておりますものについて原文との照合をいたす制度にいたしますと、現状においてはそれは不可能であることを申し上げたいと思うのでございます。  ただ、たとえば一つ考え方としまして、法律では全面的にチェックをすべきであるという形になっているわけですが、実際は、やれる範囲と申しますか、あるいは気がついた場合だけにそれをやるというようなプラクティスがあり得るかどうか、これは理論的な問題としてあり得るかということで私ども検討いたしました。しかし、これはそうなりますと、制度のたてまえと運用が非常に乖離することになるわけでございます。まずは法律の義務に対して違反ということになるわけでございますので、それを制度として認めるということは妥当ではないというふうに考えておるわけでございます。また同時に、結局全部はできないわけでございますので、できる範囲ということになりますと、審査するものとしないものが出てまいります。そうなりますと、審査官の裁量の範囲が広くなり過ぎまして、公平性の担保に欠ける、こういうことになるわけで、私ども法的にこれを全面的に義務づけるということはとり得ないものと考えたわけでございます。  もとより、先生指摘のように、私どもこういった不一致がしばしばあってはならないとは思っておるわけでございまして、また、その影響につきまして異議制度を設けてそれが活用されないようでございますとやはり問題があるということでございますので、運用面におきまして、これは制度とは別に、現行法のもとででき得る範囲の可能な手段を用いまして対処いたしたい、こういうように考え、弊害除去については努力するつもりでございます。
  96. 中村重光

    ○中村(重)委員 私の指摘に対してあなたの方から、「翻訳文が拡張されている場合の措置について」という資料をお出しになっている。ここで「考えられる弊害」として「A+Bの国内公表を見た見かけ上の後願者が企業化、権利取得を断念」をするという問題点をお認めになって資料をお出しになっていらっしゃる。  それから、運用の面において審査官が気づいた場合に原文と照合する旨を何か決定するようなことができないかどうかということですが、どういう運用をしようとするのか。そして法律上明定されていないものをだれがやるのか。審査官というのは独立した権限を持っている。あなたは審査官に対して、これはこうしなさい、これは疑わしいからこうやりなさいといって指示をするのですか。法に明定されていないものを審査官がどうして自主的にそれをできるのです。明らかにしてください。
  97. 熊谷善二

    熊谷政府委員 いま審査官が原文との不一致に気がついたときの運用上の措置と申しますのは、第一は、関係者の注意を喚起するために、本体の出願にプラスしていわば見せかけの出願がなされ、翻訳文が出ておるその本人に対しまして、百九十四条によりまして必要な資料の提出を求めまして、その資料を確認いたしまして、もしその中に不一致があると確認した場合には、その出願が公告されます際に、この公告には不一致な部分があるということについての何らかの表示を公報に掲載することを考えたいと考えておるわけでございます。  第二は、この見せかけの出願によりまして影響をこうむるであろう他の国内出願、本願でございますが、これに対しましては、本人あての公告の送達書の中に、あなたの出願にかかわる他のかくかくの案件があるということについての注意を書き込む、そういうことが可能であろう。これはその案件処理に当たって審査官審査をした際の資料をそこに掲げるということは今日までもやっておるわけでございまして、その一環としてやることは可能であると考えているものでございます。同時に、そのことにつきまして公報に掲載することも考えてみたいと思っております。  第三番目に、できるだけ可能な範囲、中小企業の方々あるいは中小企業の団体、これはそれぞれ個別の業種ごとにこういった特許実用新案の動向については常にウォッチをされておるわけでございますが、そういったところに、国際公開され、それが日本にパンフレットとして参ります時期、これは大体二十カ月過ぎになるかと思います。国内で翻訳文が公表される前後ということになると思いますが、その入りましたものをJAPATIC等にその要約等を翻訳させまして、これをできるだけ早く関係のそれぞれの業界にセレクトいたしまして情報として流し、ウォッチをすることが可能であろうというふうに考えるわけでございます。そういった形で、中小企業関係、とりわけ中小企業団体に対し、情報提供努力いたしたいと思っておるわけでございます。  そのほか、本件との絡みにおいて、とりわけ中小企業関係に対する配慮が、それ以外にも必要だと考えております。  その一つは、特許庁発明協会等におきまして、相談体制強化、拡充をいたしたい。御承知のごとく、特許庁にはPCT相談所というのがございます。また、発明協会には全国各府県に支部がございまして、そこでそれぞれ相談業務にあずかっておるわけでございます。場合によりますと、今回の措置との関連で、私は、中小企業の方々のために、特別にPCT相談といったようなものに応ずる体制を築き上げてまいりたいというふうに考えておるわけでございます。また、紛争処理の問題が起きた場合に備えまして、現に発明協会にございます紛争処理機関の拡充、強化をいたしたいと考えております。最後に、中小企業振興事業団あるいは中小企業の事業者等との連携を強化いたしまして、こういったPCT出願に関しますいろんな不利な影響を受けかねない場合に対処いたしまして、十分な手当てをするよう最大限の努力をいたしたいと考えております。
  98. 中村重光

    ○中村(重)委員 いろいろサービスをおやりになることはいいことだから、精いっぱいおやりになる必要がある。しかし、それが問題の解決になるのかということになってくるとなかなかむずかしい。大きな組織の上にあるものは、あなたが考えているようにできるかもしれない。しかし、中小企業等、組織のないもの、組織力の弱い人々というものは、あなたが考えているようにうまくいくものじゃないということです。  なるほど国際機関から十八カ月目に出版物が来る。ところが、翻訳は二十カ月までにやらなければならぬということになってくる。その間、事態はどんどん手続的に進んでくるのですね。今度は公告というものがなされてくる。その公告がなされたことによって、出願人というものは権利の行使をする道が開かれているということです。いわゆる差しとめ請求という事態だって起こるでしょう。そうすると、現在個人の一つの権利として事業を進めている者が、この公告がなされたということによって、差しとめ請求権というものによってこれを押さえられるということになってくる。その及ぼす影響というものがいかに大きいものか、いかに大きな損害等を与えるかということ等を考えてみると、この手続そのものが一番根本でなければならない。そのような問題が起こることを未然に防止するためには、全件審査ができないとかなんとかいったようなことではなくて、そういう紛争が、そういう事態が、そういう大きな影響が与えられないような、未然にそれを防止するような措置を行うことが、一番正しい特許行政ではありませんか。  現在の制度は、審査請求があれば特許庁責任で十分な審査を行うということなんだ。そこで滑らかにいっている。それを翻訳審査といったようなこと、AプラスBといったような出っ張りをつくる、そういう不正が起こる余地をわざわざつくらなければならぬという理由はないではありませんか。それをすることによって、なるほど審査件数を減らすということにはなるでしょう。しかし、それは特定の人の利益につながるが、大多数の人の大きな犠牲の上に特定の人の利益を図ってくるという道につながってくる。それはとるべきではありません。公平の原則に立つ、弱い人の権利を守っていく、それが真髄でなければならぬと私は考える。私が指摘をいたしましたようなことについて、あなたはそうあらねばならないとはお考えになりませんか。
  99. 熊谷善二

    熊谷政府委員 ただいまのお話の中で、これは先生すでに御承知のことでございますけれども、一言触れさせていただきたいのは、見せかけの権利という形で公告がされる。確かに仮保護の段階になりますので、権利行使ということがあり得るわけでございます。これにつきましては異議の申し立てはだれでもできるわけでございますし、また、二カ月以内ということになっておるわけでございますが、その間で異議が出てきたものに対して直ちに措置をとります。起きた損害等につきましては、無過失賠償責任を問うということになるわけでございます。しかしながら、そういったことはいささかでも起きてはならないのではないか、本来、理想的に全件についてのきちんとしたチェックを法的に義務づけるべきではないか、こういうお話につきましては、お考えの御趣旨は私としても理解できるわけでございますが、ただ、冒頭申し上げましたように、一方におきまして、審査請求のないものが翻訳文の中にもし間違ったものが同様にあるとしますと、それがそのままずっと生かされ、それについては何らの措置がとられないという一つの問題もございます。また、他方におきまして、こういった全件チェックを法律でやるべきだという形で規定している国もございませんし、また、この条約自身は、先ほど申しましたように、翻訳文が原文と違っておるということを前提として、事前に一々全件をチェックしなければならないという形でこの条約が組み立てられますと、これは恐らく成り立たないことになったのではなかろうかと思うわけでございます。  権利の保護が万全でなければならないということは、もとより私どもよく理解できるわけでございますが、私の申し上げたいことは、先ほど来申し上げておりますように、いろいろな方法につきまして検討をし、条約との関連について矛盾がないかということを検討いたしまして、国内関係者の方々、審議会等にもお諮りをして、これが一番いいと私ども信じて実は出してきているわけでございまして、もちろん国政の段階で御審議いただき、いろいろ御意見を賜ります。私どもも、その御意見につきましては今後ともいろいろ真剣に考えていかなければならぬと思いますが、今日までの私どもの検討結果では、ただいま御提出しております法案が最も現実的な措置であるというふうに考えている次第でございます。
  100. 中村重光

    ○中村(重)委員 長官、便宜主義でやることが最も適当である、そんなでたらめな話はありませんよ。いまあなたが提案しているこの改正案は、便宜主義でやろうとしている。そのために先ほど申し上げたような大きな弊害が生まれてくる。あなたも弊害そのものを資料でお認めになっていらっしゃる。端的に申し上げて、誤訳を含んでおる公告存して、その公告に基づいて権利の行使をやって、そうして多くの人に迷惑をかけて、そこで今度は無過失損害賠償責任があるんだ、そんなでたらめなことは、あなた、本当に常識で考えられないような言い方じゃありませんか。無過失損害賠償責任請求するまでには、そう簡単なものではありません。それでいやされるものではありません。及ぼす影響というものはそんな簡単なものではないのです。だから、誤訳公告をしてそれによって権利の行使をさせるといった弊害をあえてあなたはなぜにやらなければならないのですか。だれの利益のためにそれをやるのですか。どうですか。
  101. 熊谷善二

    熊谷政府委員 私どもは、今回の措置、この異議の申し立てと無効審判手続で本件のいわゆる見せかけの問題に対する矯正措置として十分であると考えておるわけでございます。ただいま先生の御指摘はございますが、しからばこれを全くなくしようとした場合にはどういう手段があるであろうかということを考えた場合に、先ほど来申し上げておりますように、原文と翻訳文を常にチェックし、あるいは場合によれば認証するというような新しい制度でも創設しなければ、そういった事態は防げないのではないかというふうに思っているわけでございまして、そもそもこういったケースというのは、先ほど来るる申しておりますようにレアケースであるというふうに考えているわけでございます。意図的なものをやりましても、そのことによって意図した本人が大変不利をこうむるというようなケースが事実上は多いわけでございまして、理論的にはあり得るといたしましても、実際の面ではそれほど多くはないんじゃないかと私は考えておるわけでございます。  今後この内容につきまして実際にどういう障害が起こるかにつきまして、先生と私との問で見解なり見通しがちょっとそごをいたしておるわけでございますが、それほど多いケースにはならないし、またこの程度措置条約上も認められ、また実際の措置としても妥当である、全件チェックというのはできない状態であるというふうに私どもは理解をいたしております。
  102. 中村重光

    ○中村(重)委員 どうも理解ができないんだな。なぜに全件審査ができないのですか。なぜにAプラスBというので、出っ張りをつくる道をわざわざ開かなければならないのですか。いかがですか。
  103. 熊谷善二

    熊谷政府委員 これは国際出願でございますから、各国とも多くの原語でそれぞれの国に出願されるわけでございますが、国内でそれを審査し、権利を与えるのはやはりその国の国語でなされるわけでございます。その当初に出された、外国において受理された外国の原語ではございません。いま間違った翻訳が出る根源を断てということになりますと、原文だけによって審査をするということになり、また、原文だけを公表して公報として掲載をする、すべて原文をベースにやっていくということにならないとこの問題はいけないことになろうかとも思いますが、実際上それでは審査もできませんし、また、国内への公報といいますか、公開の効果を外国言語で行うといったようなことも実際問題としては考えられないわけでございます。そういう意味で、どうしても翻訳文というものはこの条約のもとでは各国とも当面をしている問題でございます。先ほど来るる申し上げておりますように、国内に公開されます二十カ月後速やかにその公開された翻訳文がそもそもの根源ということになるわけでございますが、それを断てということになりますと原文に返らざるを得ないということになろうかと思うわけでございます。これは現実的なプラクティスになり得ないものと承知をいたしております。
  104. 中村重光

    ○中村(重)委員 いろいろ公開される、こうおっしゃるのだけれども、公告された公報というのは、特許の範囲がどこまでかということは明らかではないですね。あなたがおっしゃるように簡単ではない。  それから、原語だからとおっしゃるのだけれどもPCT加盟をするという場合、この条約によってちゃんと何カ国語と決まっておるでしょう。世界全部の言語ということじゃないのだから、特許庁審査官というのは、いままで、このPCT加盟をするということで、あなたの方はもうあらかじめ教育をしているのでしょう。英語は全部できるでしょう。その他のたとえばドイツ語にしてもあるいはロシア語その他の言語にしても、相当教育をして今日に備えて、消化できるだけのことはもうでき上がっているのじゃありませんか。可能なんでしょう。なぜにそれができないとおっしゃるのですか。世界全部の言語を知らなければならないということはないんだから、そういう無限にすべての国の言語という形であってはいけないから、可能な範囲がこの条約では決められている。その教育をやればいいじゃありませんか。やっているんでしょう。
  105. 城下武文

    ○城下政府委員 お答えいたします。  いま先生が、日本特許庁審査官はすでにそういった意味の語学の勉強をしているのではないか、こういうお尋ねでございますが、実は私ども特許庁内で仰せのとおり語学の研修を鋭意進めております。これは私どもPCTに加入をいたしました際に、いわゆるミニマムドキュメンテーションと申しまして、国際的に共通の、世界的に共通に使うべき文献を読むための言葉の研修でございます。具体的的に申しますと、英語とドイツ語とフランス語とそれからロシア語でございます。  ただ、いま先生指摘の、もし翻訳文と照合を行うということになりました場合に入ってくる言葉と申しますのは、実はそれ以外にたくさんございます。と申しますのはどういうことかと申しますと、国際出願いたします場合に出願できる外国と申しますのは、いわゆる国際サーチ機関がサーチの対象にできる言葉がつまり国際出願言語として出願できますので、たとえばスウェーデンが現在のところ国際調査機関になる予定でございますけれども、そうした際に、スウェーデンの特許庁がサーチできる言葉、サーチしようとしている言葉、たとえばスウェーデン語であるとかあるいはノルウェー語であるとか、そういった言葉が今度の翻訳文の言語として入ってまいります。そうした言葉は、実は特許庁の私ども審査官といたしましては、いわゆる特許文献のサーチのための語学研修としては現在そういった研修は行っておりません。以上でございます。
  106. 中村重光

    ○中村(重)委員 それだけのことじゃないでしょう。これは百八十四条の十四ということによって、異議の申し立てがあったらば今度は原文の審査をしなければならないんだから、それだけの能力がないとやれないでしょう、そういう異議の申し立てがあれば。そのための教育はしてないのですか。ただ単に文献を見るだけのことですか。そんな無責任な答弁をしてはいけませんよ。  それと、言語がもう決まっているのだから——大体幾つになっているのです。何カ国語ということに条約はなっているのですか。五カ国語ぐらいでしょう。
  107. 熊谷善二

    熊谷政府委員 五カ国語でございます。日本語、英語、ドイツ語、フランス語、ソ連語でございます。
  108. 中村重光

    ○中村(重)委員 だから、それだけの教育は、PCT加盟をするということによって実際は教育をしているのじゃありませんか。先ほども申し上げたように、異議の申し立てによって原文を審査をするという場合にはやらなければならないのですよ。だから、翻訳によって審査請求があった、そして今度はその翻訳が出るわけだから、その翻訳によってやるという場合と異議の申し立てによって原文を見なければならぬという量的の違いだけなんだから、だからそれだけの教育はしておかなければならないんだから、やっているはずなんだ。現在の特許庁は、審査官は千人程度いるんでしょう。どの程度出願があるというふうに見ているのですか。なぜにできないのかということを、むずかしいです。困難でございますと言うだけではなくて、こういうことだからだめなんだと言って、あなた、余りだくさん答弁を長々となさるものだから、その答弁を頭の悪い私はのみ込むことができない。端的に質問しているのだから、わかりやすいように端的に答える。いかがですか。
  109. 勝谷保

    ○勝谷政府委員 先ほど私どもが公開と申しました言葉は、先生のおっしゃる公告とちょっとあれでございますので、恐縮でございますが、補足説明をさせていただきますと、実はAという国際出願がございまして、そのAという国際出願が、先生おっしゃるようにBというこぶをつけて翻訳してきた、その翻訳してきたものは、実は国内で公表されます。これを公開と申しますが、国内で公開いたしましたものはAではなくて、AプラスBで公開をされるわけでございます。その公開をされたもののうちの半数は、そのままで国内にぶら下がって七年間続くわけでございますので、これは先ほど先生のおっしゃった、審査官がやれとおっしゃっても、全然別の組織が必要であるとさっきから答えているわけでございます。その残りの五割についてどうするかという議論でございますが、これを法律で必ず見ろという規制をするか、法律で必ず見るなということにするか、見れるときだけ見るような法律をつくるかということになるわけでございます。このうちに、先ほどから私どもは見れるものだけ見る体制をとろうではないか、その見れるものだけ見る体制は、一つは異議があったら必ず法的に見出す、そうではなくてたまたま気がついたものは運用としてやる、こういうことでございますので、御了承賜りたいと思います。
  110. 中村重光

    ○中村(重)委員 公開をされたといっても、私が指摘したように、結局それは特許の範囲というものがどこまでかということを明らかにしていくためには、原文を見る以外にはないということだけは変わりはないわけだ。  そこでまた。いまあなたは見れる範囲だと言う。長官の答弁と少しニュアンスは違うのだけれども意味するところは同じなんだな。だから、結局異議の申し立てがあったときだけだ。異議の申し立てということがそう簡単に考えられてはだめですよ。異議の申し立てをするまでにはどういう事態が起こるかという弊害を私は先ほど申し上げたのだから、その私の指摘がなくても、あなた自身はもうおわかりになっていらっしゃるのだ、特別に聡明だから。なおわかっておられる。わかっておって無理を押そうとしている。いわゆる便宜主義を押し通していこうとしている。われわれは、立法府としてそうはいかないのだ。あなた方は、特許庁ということで、経済的な関係とかいろいろなことがあるだろう。だから、できるだけ便宜主義をとった方がいい、簡単にした方がよろしい、異議の申し立てをしないものだったら大した抵抗は持っていないのだろう、そう都合のいいように解釈してはいけないのだな。  異議の申し立てをする人は、異議の申し立てをするだけの力、能力、資金、自信、そういうものがある。異議の申し立てをし得ない人というものは弱い人なんだ。そういった人たちが今度は犠牲にされてくるのです。いろいろとサービスをいたしますと長々と特許庁長官お答えになったのだけれども、そういうことがなかなかまた消化ができないところに問題があるのですよ。だから、やろうとすればできるのだから、また、やることが一番正しいのだから、権利を保護する、公平の原則、憲法の財産権、そういったようないろいろな点から、特定のものに限って審査をするというあり方というものは正しくない。いままでどおりおやりなさい。AプラスBなんて特別のものをつけ加えるのはおやめなさい。括弧書きで制約することもおやめなさい。これが憲法を守り、特許法の精神に沿うことである。権利を守ることにつながるのだから、そうしなさい。  ほかの問題は、若干人が必要であるならばふやしなさい。これが一番正しい公平な特許行政でなければならぬと私は考える。私が指摘しているようなことは、むしろ権利の侵害になる、公平の原則に反する、そうしてはいけないのだという、私が納得するような答弁をされる必要がある。便宜主義を一歩も出ないようなそういうことで、私に引き下がれと言ってもそれは無理なんです。そうして、さっきから申し上げているように、あなたの方自身でお出しになった資料問題点指摘していらっしゃるのだから、気づいていらっしゃるのだから、それをひとつ適当なところでやろう、こうしているのだから、それで私に納得しろったって無理じゃありませんか。知らせなければそれは文句の言いようがないのだけれども、わざわざサービスをしていただいて、こんないい資料をお出しになっているものだから、これを目をつぶって見過ごすわけにはまいりませんよ。
  111. 勝谷保

    ○勝谷政府委員 資料をつくって長官に御進講した立場から、資料の趣旨についてあわせて説明させていただきます。  先ほどからくどくどと申し上げて恐縮でございますけれども、Aが本願であるにもかかわらず、AプラスBという、Bのこぶをつけて翻訳をして出してきたものが国内に出てくるときに、先生のおっしゃるように全部Bをつぶしてしまえという御意見を貫くためには、ここにございますように、こういう弊害がございまして、長官が先ほど申し上げましたように、AプラスBは間違いであるということを一斉にチェックする機関をつくる必要がある。これは審査じゃない、審査段階でやるのではなくて、何か翻訳センターのようなものをつくりまして、翻訳文と原本とをすり合わせまして、公表されるものはすべてAに等しくこぶがないものにしなければ、先生の御趣旨が貫けないということでございまして、そのような方法は、先ほどからくどくど申しておりますように、PCTの本来の趣旨に反してこのようなことをしてまで入るのならば、むしろいままでのパリルートの方がいいのではないかということを申しておるわけでございます。
  112. 中村重光

    ○中村(重)委員 そんなことはありませんよ。PCT加盟をするというのはそれなりに便利なんですよ。だから、あたりまえな、公平な、公正な審査をするということが、誤訳なんというものをないようにするということがPCT加盟する意義を失うのだ、そんなばかな話があっていいですか。PCT加盟をするということはそういうものであってはならないと私は思う。人の権利を侵害して紛争を引き起こして、強い者だけを守るためにPCT条約というものはできたのですか。そうじゃないのでしょう。あなたは、悪いことだけを、自分の都合のいいようにならなければPCT加盟をする必要はないのだ、そんなばかげたことを考えてはいけない。  それは、あなたはこれから出世をしていかなければならないのだから、みんながなるほどなというふうに納得するようなお答えをなさらぬと、無理やりに原案を押し通そうというようなことで、何を言っても耳に入れない、ただ言いわけだけをして逃げていって、原案を通すのだ、そういう考え方ではなくて、やはり立法機関というものがあるわけだから、私の言うことも耳に入れたらどうなんですか。それが不可能なら、さっきから私は何回も言っているわけなんだけれども、これだけの出願があります。件数まではまだはっきりおっしゃらないのだが、あります。特許庁審査官はこれだけおります。そして外国語にはこれだけ通じておりますが、こういうことでどうしてもだめなんであります。何らかの制約、制限をしなければならない、こういうことなのでございます。こういうような納得のいくような説明をちっともなさらないで、不可能です。できないのです。そういうめんどうくさいことをするのだったら、全件審査なんかやるのだったら、PCT加盟をする必要はないのです。そういうことでは、立法機関にオーケーをさせようというのは無理じゃありませんか。
  113. 熊谷善二

    熊谷政府委員 翻訳文を原文と正確にチェックする、法的にこれを義務づけるという前提で考えました場合に、双方につきまして内容を完全に把握した上でこれを照合するということになるわけでございますが、私どものプラクティスの中で最もポピュラーな英語につきまして具体的に検討いたしました結果でございますが、同量の、また同じ内容日本語に比べまして、少なくとも三倍程度負担になるのではないかと考えております。ドイツ語、フランス語さらにはロシア語、あるいは将来スウェーデン語が出てまいりました場合には、一層この負担が大きいのではないかと考えております。したがいまして、これらのための要員を計算いたしますと、先ほども私申し上げておりますように、恐らく百人を超える審査官が新たに増員されなければいけないような状況になるのではないか、これが私どもの検討した作業の一つの結論でございます。  だからといって、本件につきまして先生がおっしゃっておられますように、私どもの今度提案しております措置がいわゆる便宜的な措置であるとは考えていないわけでございまして、これはいま先生がおっしゃったような完全な法、これが理想的なあり方として私はもとより否定するものではございませんけれども、しかし、私どものとっております措置も、PCT加盟に伴う工業所有権の取り扱いに関します措置といたしましては、決して単なる便宜主義といったことで措置しているわけではございませんで、こういった方向で十分公平な形での保護ができると考えておるわけでございます。ただ、冒頭先生がおっしゃいましたように、公告になるまでの間にたまたまわかったものについて、私ども運用の面でかくかくのことが下さるということを申し上げました。これは新しい制度とは一応別でございますが、現行法の範囲内におきまして許す範囲での運用上の配慮ができる、これは十分行うということを申し上げているわけでございまして、その点、何とぞ御理解を賜りたいと思っております。
  114. 中村重光

    ○中村(重)委員 端的に聞きますが、公告というのは公に正確にその内容を明らかにするということにあるんじゃありませんか。いかがです。
  115. 熊谷善二

    熊谷政府委員 そのとおりでございます。
  116. 中村重光

    ○中村(重)委員 そうすると、誤訳を含むということは本来の趣旨に反することになりませんか。
  117. 熊谷善二

    熊谷政府委員 これは望ましい形ではないわけでございます。
  118. 中村重光

    ○中村(重)委員 望ましい形でないものをなぜに押し通さなければならないのですか。そういうような原文不一致の部分がそのまま残るようなことでは、特許庁審査そのものの信頼を失うことになりませんか。大臣、これはあなたは理解されていると思うけれども、いま議論を聞いておってどうお考えになりますか。
  119. 河本敏夫

    河本国務大臣 いま議論しておられるところが今度の法律の一番大事な点でございます。繰り返して長官と納得いくまで議論していただきたいと思います。
  120. 熊谷善二

    熊谷政府委員 もともとこういった見せかけのものが権利という形で出てくるということが望ましいはずがないわけでございますが、そういった原文と翻訳の不一致というものはもともとあるべきじゃないし、ないという考え方が基本にあるわけでございまして、仮にそういうものが出てまいりましてもこれはレアケースであり、また、それは直ちに異議申し立てによりまして職権による取り消しということになるわけでございます。もし、先ほど申しましたように、これを法的に義務づける対象として、異議申し立てを待つということに限らずに審査の中で気がついたときにやる、あるいはさらにさかのぼって当初に全件を照合するというようなことを法的に義務づけるということは、現在の私どものプラクティスとしてはできかねる、こういうふうに考えておるものでございます。
  121. 中村重光

    ○中村(重)委員 できかねる、やりたくないということです。正直にあなたの腹を割ればね。  それから、そういう原文と翻訳、それが公告の段階で誤訳というものがあってはならない、あるべきではない、あるから問題なんですね。あることを予想するから、百八十四条の十四で異議の申し立てという道を開いていらっしゃる。あなたは、あるからこういう資料をお出しになった。だから、こういうようなサービスをいろいろやって、全部法律で全件審査をするということではなくて、いろんなことをしてやろうと思います。こう言う。しかし、いろんなことをしてやろうとするが、法律に明定がないから、問題はそのまま問題として出てくるということですよ。異議の申し立てというのは、先ほど申し上げたように、簡単にできるものじゃない。また、異議の申し立てをやろうとすると、大企業はいろんな手段を通じてこれを押しつぶそうという態度をとってくる。  それと、異議の申し立てをするのにどのくらい金がかかると思っていらっしゃいますか。計算しているでしょう。その分も答えてください。莫大な金を人から権利を侵害されてなぜに使わなければならないのですか。
  122. 熊谷善二

    熊谷政府委員 異議の申し立てには、五万円の資金が必要でございます。
  123. 中村重光

    ○中村(重)委員 冗談じゃないよ。それは印紙代か何か要るんだったらその程度だろうけれども、私の調査によると、五十万から百万程度の費用がかかると言われている。いろんな調査をやらなければならない。そんな簡単なものじゃない。だから、あなたのも不正確、私のも不正確で、何かそこいらでだれかに書いてもらう金は五万円か幾らかあるかもしれないけれども、それをやるまでにどれほどの手数がかかると思いますか。  それと、あなたの方では、異議の申し立てとかなんとかという形になる前にいろいろサービスをやって、また審査官審査をさせて、未然にそれを防止するようにすると言うんだけれども、そういったようなことを審査官に求めるということは無理なんで、先ほど最も早い時間のときに質問したように、そういうことをどういう方法でやるのですか、それに対しても明確なお答えになっていない。ともかく審査官というのは、私は独立した権限を持っていると思う。このようなでたらめなことを、いまあなたが考えているようなことを審査官に求めて、しかも不見識なやり方を審査官に期待するということは、審査制度審査官そのものに対する冒涜だと私は思う。もっと法律の上にのっとって、本当に公正に自信を持って審査官審査に当たる、そういうようなことをおやりになるということが当然ではありませんか。
  124. 熊谷善二

    熊谷政府委員 お答えいたします。  私どもは、今回の措置が、審査官の独立性はもとよりでございますが、りっぱな審査を行うということを否定するとはいささかも考えておりません。私どもは、審査官が従来も大変努力をしてもらっておりますし、また国際的にも評価をされておりますことに誇りを持っておるわけでございますが、今後もこの審査の質の向上については大いに努力をすべきものと考えておるわけでございます。  先ほど来るる申し上げておりますように、今回の異議申し立てを待って処理するということは、従来のいわゆる審査主義というものを否定するものとは考えていないわけでございまして、従来の審査は、従来どおり、国内どおりに日本語審査をするということになるわけでございます。原文との不一致の問題に限りましては、これは異議申し立てを待つということでございまして、それについては、審査官は、その異議の申し立てがあった部分について原文と本文とのチェックを行うということになるわけでございます。だからといって、これが審査官の従来の地位をいささかなりとも低下をさせるものとは私は全く考えていないわけでございます。その点、御了承賜りたいと思います。
  125. 中村重光

    ○中村(重)委員 長官審査というのは原文審査が原則なんですよ。それを、あなたが言われた経費がかかるからとか、あるいはこれ以上審査官を入れたくないとか、あの審査官はきらいであるとか、いろいろなことだろうと思う、そういうことで制限をしていこうとしている。これは審査制度というものをいささかも抑圧するものではないと言っているが、しているのだ。制限をしようとすることは、原文審査というものが大原則なんだから、その大原則をいろいろな理由づけをやって抑えていこうとしていることは、やはりそれは審査制度そのものの否定につながります。そして私が申し上げたもろもろの問題が起こってくる。その問題が起こらないということについて、起こらないでありましょう、起こってはなりませんということを言葉ではお出しになったけれども、先ほど来私が何回もあなたに申し上げたように、お認めになっている。そういう資料もお出しになっていらっしゃる。あなた自身も問題が起こるということはおわかりになっておられる。だから、そういうことは改めなければならない。  審査官が一千名いる。そしてやはり各国語に、少なくともPCT加盟をした場合にいその決まっておるところの言語というものを消化し得るぐらいの能力というものは持っていらっしゃる。また教育をしていらっしゃる。そして出願件数は、私の調査によると約一万件と言われている。現在審査官が年に三十件ぐらい審査をしておられる。千人の審査官、一万件の新たなPCT加盟をすることによって出願があったからとて、これを消化し得るだけの能力はあるではありませんか。それをあなたの方では制限を加えていこうとすることは絶対に納得できるものではありません。通産大臣から、一番問題点なんだから実はそこは十分やってくれ、これは大臣として正しい態度であると私は考えるのであります。  ところが、私に与えられた時間は一時四十一分から二時四十一分まで、こういうことで、もうすでに四分超過をいたしましたから、本日はこれで質問を一応終わらなければほかの同僚諸君に迷惑をかけますから、これで終わります。納得のいくようなお答えでありませんでしたから、十分ひとつさらに勉強をしていただいてお答えもいただきましょうし、こだわらないで、改めるところは改める、院の意思に応じてそれに対応していくというような態度をおとりになることを私は期待をいたしたいと思いますが、最後に、通産大臣からひとつ御見解をいただきたいと思います。
  126. 河本敏夫

    河本国務大臣 私も質疑応答を聞いておりましたのですが、やはり長官が言っておることが一番現実的じゃないかと思います。でありますから、私は長官の言い分を支持をいたします。
  127. 中村重光

    ○中村(重)委員 大臣、あなたは通産大臣として、それは自分の所管で、実はあなた自身がこれをお出しになっていらっしゃる、特許庁長官責任を持って答弁をしてはいらっしゃるのだけれども、だからあなたがこれを否定するというようなお答えをいまいただくということは私も考えてはいなかったが、それにしても、いまの質疑応答を聞いておって特許庁長官の答弁がどうも一番現実的だ、あなたからそこまでの答弁をいただこうとは思いませんでした、私はあなたを高く評価をしているから。これは大臣、そういう答弁ではあなたの見識にかかわりますよ。今後も十分御意見を伺いましょうし、また長官からもさらに説明を受けることにします。十分ひとつ国会の中で議論を尽くしていただきたい、先ほどの答弁はりっぱだったけれども、いまの答弁はちょっといただけないですね。もう一遍やり直してくれませんか。
  128. 河本敏夫

    河本国務大臣 まあ繰り返すようですけれども、いま議論されておりました点がやはりこの法律の一番の中心点だと私も思います。しかし、私どもはよく打ち合わせをいたしまして原案を提出したわけでございますから、何とぞ御理解を賜りたいと思います。
  129. 野呂恭一

    野呂委員長 玉城栄一君。
  130. 玉城栄一

    ○玉城委員 特許協力条約に基づく国際出願等に関する法律案について質疑を行いたいわけでありますが、その前に、ちょうどいい機会でありますので、最初に特許行政に関連をいたしまして、沖繩県の問題について一、二点お伺いしておきたいと思います。  御承知のとおり、沖繩県が本土復帰をいたしまして、来月五月でちょうど満六年目になるわけであります。しかしながら、沖繩の場合は、戦後復帰までの間二十七年、本土との行政分離がされておりましたために、特にこういう特許制度あるいは商標、意匠あるいは実用新案と申しますか、こういうことについてきわめてなじみが薄いわけであります。したがいまして、現在の時点でもこういう問題に関連をいたしましてトラブルが起きております。したがいまして、まず最初にお伺いしておきたいのでありますけれども特許庁とされまして、これまで六年間沖繩に対して特許行政の面でどういう行政指導をなされてこられたのか、そしてまた、今後どういう指導を、あるいは制度等の周知徹底と申しますか、そういうこと等につきましてされようとするのか、まず最初にその点をお伺いしたいと思います。
  131. 小林慶基

    ○小林(慶)政府委員 お答え申し上げます。  先生ただいま御指摘のとおり、特許行政はますます複雑になっておりまして、それに対する特許情報の要望がきわめて強いものがございまして、特に、先生指摘のとおり、沖繩県につきましては復帰後日も浅いわけでございますから、その重要性も一段と高いということであろうかと存じます。  そこで、これまでその点に関してどういう施策を講じてきたかということを申し上げますと、まず第一に、沖繩の本土復帰に伴いまして各種の特別措置法がつくられたわけでございますけれども、そこの中に工業所有権に関する暫定的と申しますか、移行に伴う手続を決めた。それに先立ちまして、沖繩の方に調査団を出しまして各種の調査を行ったわけでございます。それから、復帰後につきましては、工業所有権説明会、これは一日特許庁と申しておりますけれども、これを本土復帰に伴い、四十七年から四十九年の間に毎年開催をいたしております。それから、その他昭和五十一年には審査基準の説明会等を開いておりますし、御案内のとおり、沖繩の総合事務局に通商産業部というのがございますが、そこで沖繩県の職員に対しまして、いろいろの工業所有権行政の指導をやっていただくために必要な研修を四十八年以降毎年実施しておりまして、一、二名参加をいただいておるわけでございます。それから、これは各通産局でやっておりますのと同様でございますけれども、通商産業部に公報を置いておりまして、その閲覧体制をとっております。以上が役所関係で実施しておる事業でございます。  その他発明協会という団体がございます。これは東京に本部がございますが、各県に支部を置いておりまして、工業所有権に関する普及活動あるいは相談業務、紛争のあっせん業務というようなものをやっておりますが、沖繩県につきましても復帰後四十八年五月に支部を設けまして、以来各種の啓蒙普及活動をやっております。たとえば発明相談、これは支部の事務局で常時無料で実施しております。それから、いろいろな説明会とか発明展の開催のほか、情報提供といたしまして、たとえば沖繩県の工業連合会発行の「沖工連ニュース」というのがあるそうでございますが、それから琉球新報という新聞に工業所有権関係のニュースを適宜あるいは適時に掲載しておるというような仕事を実施しております。  なお、今後とも私どもといたしましては地元の御要望をよく伺いまして、沖繩の特殊性を十分勘案して、これら現在やっております普及啓蒙活動をさらに強化したいと考えております。  以上でございます。
  132. 玉城栄一

    ○玉城委員 ただいまの問題に関連をいたしまして、もう一点お伺いしておきます。  最近の例でありますが、沖繩の伝統産業一つであります泡盛の代表的な銘柄がこちらの業者によって登録をされてしまった。あわてまして、地元の方では現在異議申し立てをしている最中であるわけですけれども、その状況につきまして特許庁の方から御説明をいただきたいと思います。
  133. 小林慶基

    ○小林(慶)政府委員 お答え申し上げます。  ただいま先生指摘の「瑞泉」でございますが、最初にまず経過から申し上げますと、これは非常に長い歴史があるわけでございまして、まず、商標法の方からまいりますと、大正八年の六月に奈良県の河合さんという方が酒類ということで「瑞泉」という商標を出願されまして、これが大正九年の一月に登録になっております。それから、その後この奈良県の「瑞泉」という商標は逐次更新を受けまして、戦後まで存続しておったわけでございます。  それから、昭和四十一年になりまして、これとは別途に、やはり本土の鳥取県の高田という方でございますけれども、同じ「瑞泉」という商標左やはり酒類で申請されたわけでございます。これは商標法のたてまえといたしまして、同じ商品分類、商品区分につきまして二つの商標があるということは法律上あり得ないことでございまして、したがいまして、このままでは鳥取県の高田さんの商標は登録を受けることができないわけでございますけれども出願と同時に、奈良県の方の「瑞泉」という商標の取り消し審判を請求されたわけでございます。この取り消し審判というのはどういうものか、簡単に御説明いたしておきますと、商標権者が商標を持っているにもかかわらず権利の上に眠ると申しますか、使用しなかった場合はこれの取り消しの審判を請求できるという規定が商標法にございまして、奈良県のこの「瑞泉」という商標は、その後調査した結果使用していないということがわかりました。そこで結局、最近でございますけれども、去年の、五十二年の一月二十日に奈良県の「瑞泉」という商標の登録が取り消しになりました。  それで、それを待ちまして、今度は鳥取県かと昭和四十一年に出願された「瑞泉」という商標も審査官が公告決定をしたわけでございます。公告決定と申しますのは、審査官審査した結果特に異議がなければこれを権利にしてもいいということでございますが、この段階になりまして、五十二年の十二月に沖繩県の瑞泉酒造から異議の申し立てがございました。そこで、これはただいま特許庁といたしましては担当の審査官がこの異議を審査している段階でございます。したがいまして、この両者の意見を十分に聞きまして、関係調査をいたしまして、この異議についての結論を出すということになるのじゃないかと思います。  経過は以上でございます。
  134. 玉城栄一

    ○玉城委員 ただいまの問題は一つの例でありますけれども、冒頭にも申し上げましたとおり、いわゆるこちらの法律あるいは制度についてのなじみが薄いという点から、御承知のとおり沖繩はいろいろな伝統、特殊なそういう物が多いところでありますけれども、最近こちらの業者がどんどん出願をしまして、結果として、あわてて地元の方ではしても間に合わない。そして高い使用料をこちらの業者に払って、実際自分らが従来使っていたものがそういう形になっているというケースがすでにあるわけであります。こういうことはやはり長年の行政分離に伴う一つの問題であるわけです。したがいまして、この点については長官とされまして非常に重要な関心を持たれて、制度とかけ離れて、なじみが薄いという点から力を入れて、いろいろな関係業者に対する指導、啓蒙、そういうものもされなくてはならないと思いますけれども長官考え方をお聞きしたいと思います。
  135. 熊谷善二

    熊谷政府委員 商標法等の工業所有権に関する問題でございます。私ども、それが不正に使われ、あるいは乱用されるというような弊は極力防止しなければなりません。関係情報の周知方について、先ほど来先生指摘の問題について今後とも一層努力をする考えでございますが、また権利の乱用といいますか、地元の名前が使われるとか、そういった問題等につきましても、この六月から開始いたします使用義務のチェックの実施等によりまして、かなりの防止ができるのではないかと思いますが、なお十全の努力をいたしたいと考えております。
  136. 玉城栄一

    ○玉城委員 法案質疑を行いたいわけでありますが、この特許協力条約に基づく国際出願等に関する法律案、いわゆる今回のPCT特許協力条約へのわが国の加盟に伴う国内体制整備についての新しい立法要請になっておるわけでありますが、現在、国内法としましては特許法もあるわけです。したがいまして、この特許法以外にこういう新しい法律を独自につくらなければならないという理由を、もう一回明確に、基本的な問題として御説明をいただきたいと思います。
  137. 熊谷善二

    熊谷政府委員 お答えをいたします。  この国際特許協力条約によりまして、従来なかった制度、つまり国際出願という制度が設けられたわけでございます。従来、外国への出願は、日本の人が出願する場合には、それぞれ直接相手国出願をするということでございまして、逆に言いますと、日本特許法日本国内に関する部分だけでございます。今度の条約では、外国へ出す出願について新しく国際出願という制度を創設することになりますので、国内だけをやっております特許法とは別に、条約に基づく実施法といたしまして、本則でこの国際出願に関します諸規定を設けまして、附則におきましては、これに関連しまして国内特許法等あるいは実用新案等々に修正を要する点が出てまいりますので、それは関連しての修正として、附則でそういう規定を設けておるわけでございます。やはり国際出願をする方々の便利という点を考え合わせますと、これが最もいい形ではないか、こういう判断で出したものでございます。
  138. 玉城栄一

    ○玉城委員 従来のパリ条約ルート、それから今回のPCT加盟による新しいそういう国際出願という形が出てくるわけでありますけれども、今回のこういう新しい体制になりまして、有利な点は午前中からも多々御説明もありましたけれども、やはり今度は逆の面から申しまして、不利な面もあると思うわけでありますけれども、その点、皆さん方としてはどのように考えておられるのか。新しいPCT加盟に伴いましてこういう新しい国内法を整備をされる、しかし、そのことによってわが国の出願人あるいは産業界にとりまして不利と思われるような点はどういう点であるのか、お伺いをしたいと思います。
  139. 熊谷善二

    熊谷政府委員 先生承知のように、このPCTルートが新しく創設されるわけでございますが、従来のパリ・ルートを排除するものではございませんで、出願人の選択によりまして、従来のパリ・ルートを利用した方がいいと考えればそれはそれでいいわけでございます。したがいまして、たとえば外国出願を一国だけについておやりになるというような方は、あるいはその方が有利であるかもしれないと思います。私どもの計算では、大体三カ国以上の国に出願をしようとする方々は、このPCTの方が、たとえば出願手続当たりまして一本化いたしますので、諸費用が安くなるという点がございますし、また、国際サーチレポートが作成されまして、それによって先行文献が発見されますと出願を取り下げるといったようなことによりまして、従来ならむだに投資した費用がなくなるということもございます。これはやはり多数の国に出願する場合にPCTが有利であって、一カ国というような場合には従来ルートがいい、大まかに申し上げますとそういうことかと思います。  なお、PCT条約に入りますと何かデメリットはあるかというお話でございますが、私どもは、デメリットは何も考えられないのじゃないかというふうに考えておるわけでございまして、国際的な協調としても、またプラクティスの面におきましても、これは望ましい制度であって、デメリットはないのじゃないかというふうに考えております。
  140. 玉城栄一

    ○玉城委員 午前中から質疑が集中しております附則の百八十四条の十四、原文そして翻訳文の不一致の問題は、これは後ほどまたお伺いしたいわけでありますけれども、こういう特許制度の国際化と申しますかに伴いまして、どんどん外国のいわゆる多国籍企業と申しますか、そういうところのわが国への進出に対して、こういう制度ができることによって非常に無防備の状態になってくる可能性があるという懸念があるわけでありますけれども、その点についてはいかがですか。
  141. 熊谷善二

    熊谷政府委員 先生指摘でございますが、無防備になって弊害が発生するのではないかというふうには私ども考えていないのでございまして、先ほども申し上げたかと思いますが、日本産業技術がこの十年ぐらいの間に大変な実力と申しますか、進歩を遂げております。海外から出願が容易化されて、それによって国内影響をこうむるというのは、以前におきましてはそういうことも懸念はされて、たとえば自由化問題等に対する対策等が講じられたわけでございますが、技術を主といたしますこの特許の分野におきましては、そのような点はないかと思います。  やや具体的に申し上げますと、いま日本技術輸出と技術輸入の実態を調べてみますと、十年ほど前におきましては、これは明らかに技術導入の、つまり対外支払いが圧倒的に多うございまして、今日においても過去のロイアルティー支払いという形で残っておるわけで、約七億ドルぐらいの支払いになっておるわけでございます。収入は二億ドル程度、つまり輸出に該当する分でございます。なおギャップがあるわけでございますけれども昭和四十八年ごろからこれは逆転いたしまして、日本技術輸出、この方が技術輸入よりも受け取りが多くなっておる実態がございます。従来の継続分、つまり過去の高度成長期において導入した技術に対するロイアルティー支払いがなお今日続いてはおりますが、新しく技術を輸出していくというものだけを取り上げますと、昭和四十八年から毎年技術輸出の方が技術輸入を上回って出ておるわけでございまして、これは日本の国際競争力がその辺あたりから確実に強くなっているということを物語っているのではないかと実は私は考えておるわけでございます。  工業所有権は国際的な性格を持っておるわけで、それぞれの国において、その工業所有権の保護を通じ技術の進歩を図るという国際的な取り決めでそれぞれの国が寄与を受けておるものと私は考えておりまして、一方的に、たとえば今回のケースで日本関係業界に、このPCTルートを活用しました出願によりまして混乱が起きるような事態というのは、私は懸念する必要がないのではないか、こういうふうに考えております。
  142. 玉城栄一

    ○玉城委員 新しい制度でありますので、今後いろいろと問題もあろうかと思いますが、これは午前中の質疑の中にもありましたけれども、特に中小企業関係に対しましては、やはりこういう制度の発足に伴って十分な手当てがされていかなくてはならないのではないかという感じが非常にするわけであります。     〔委員長退席、山下(徳)委員長代理着席〕  これはまた後ほどお伺いいたしますけれども、今回のPCT加盟に伴って、わが国の特許行政もあらゆる面で国際的水準に達する必要に迫られてまいると思うわけであります。こういう国際化を控えて、日本外国出願件数を比較をいたしますと、わが国の場合、その出願件数がきわめて多い。その理由と、なぜわが国の場合はそういう出願件数が非常に多いのかをどのように分析しておられるのか、その点をわかりやすく御説明をいただきたいと思います。
  143. 熊谷善二

    熊谷政府委員 お答えいたします。  確かにわが国の出願件数が、他国に比べまして、絶対件数、伸び率とも非常に高水準でございます。この原因としましては、まず第一に、戦後の高度成長を進めてきたその背景には技術革新があったわけでございまして、その結果出願が伸びる、こういうことであったと思います。各企業におきましても、経営戦略として、この技術革新にのっとった優秀な技術思想の保護という観点で発明努力が行われてきた、そのバイタリティーが、日本が特に多いということが一つの原因であろうと思っております。一般的な日本人の知的水準、応用力の高さということがその裏づけになっておると思うわけでございますが、他面におきまして、企業間のいわゆる競争的な体質という問題もかなりあるのではないか。この出願の中にいわゆる防衛出願と言われるようなものもかなり入っておることは事実でございますので、そういった面もあろうかと存じております。
  144. 玉城栄一

    ○玉城委員 一社で年に一万件ぐらい出願している大手の企業もあるやに聞いておるわけでありますけれども、そういう実態であるのかどうか、あるいはそういうことではないのかどうか、その辺をお聞かせいただきたいと思います。
  145. 熊谷善二

    熊谷政府委員 五十二年の統計でございますが、一社で一万件以上出願をいたしております社が四社ございます。一千件以上の社数で計算しますと三十四社ございます。
  146. 玉城栄一

    ○玉城委員 わが国がこのように出願件数が非常に他の外国に比べて多いということにつきましては、先ほどの長官の御説明があったわけでありますけれども、これは五十二年でたしか実用新案も含めて三十四万件のように聞いております。数字に間違いがあれば後で訂正しますが、そういう中でいま年間一万件以上出願する大手の企業が四社もある。そういうことで、午前中の御説明の中にもありましたけれども、現在滞貨、未処理件数が四十六万件ということでありますけれども、そういう点につきまして特許庁としてどういうふうに行政指導をなされてきておるのか、その点をお伺いいたします。
  147. 熊谷善二

    熊谷政府委員 私ども出願件数の多きがいけないということよりも、いわゆる質のいい出願ということの確保をお願いしたいと思っておるわけでございます。出願の抑制を図るということは、発明促進に水をかけることになるわけでございまして、そういう気持ちはいささかもございませんが、私ども出願審査しております状況を見ますと、拒絶の率が非常に高いわけでございます。各国と対比いたしますと、各国出願のおおむね七割から八割が特許なり実用新案なりになっておるわけでございますが、日本の場合にはこれがおおむね五割でございます。  そういったことから、出願当たりまして、その技術について先行文献があるかどうか、これは出してもむだなのではないか、そういった評価をやっていただく。とりわけいま先生指摘の、一社で多数お出しになっておる企業を中心に、一昨年から出願の適正化事業というのを実施いたしております。これは出願の数の多い企業約三十社程度取り上げまして、まずは個別にそれぞれの企業の特許管理あるいは出願体制がどうなっておるかということにつきまして、ヒヤリングをし、意見交換を行います。その中で企業側の方でも反省される点がございますが、他方、特許庁の方に対しましても審査の基準についてのいろいろな御意見をそこへ承っております。たとえば審査基準にばらつきがございますと、これは特許にはならないと思っていたものも場合によるとなる場合もある、そうなれば、このようなものが特許になるならわが社も出しておこうということになりがちでございます。従来出していなかった者も出すような風潮になるわけでございます。もっと審査基準を厳しくしてほしい、しかも統一してほしいというのが各社の御意見と承っております。  現在、私どもはそういったことも踏まえて内部の審査基準の見直しをやっておるわけでございますが、いずれにいたしましても、今後は個別企業に対するそういうコンタクトは引き続き実施していきたいと思いますが、同時に、やはり各社の業界における競争体質もございますので、一社だけが身を正しましても、他社との関係があって出さざるを得ないということがございますので、これからは業界ベースでこの適正化事業を広げてまいりたいというふうに考えておるわけでございます。冒頭申しましたように、私どもは、これは発明促進に水をかけるものではないことをよく御理解を賜って、この事業協力してもらいたいということで接触を今後とも続けてまいりたいと思っております。
  148. 玉城栄一

    ○玉城委員 外国の場合は出願しまして特許されるのが七〇%から八〇%、わが国の場合は五〇%程度である、そこにむだな出願が多い、したがってそういうものを整理して出してもらいたいというような立場から、いま長官のおっしゃいましたように、昨年から出願適正化事業ですかを行っておられるということでありますけれども、いまもちょっと御説明がありましたが、いわゆる出願する側はやはり事前に選択をする、これはむだであるのかむだでないのかということを選択する判断の基準ですね、そういうものはやはり特許庁としては用意をされ、それを関係者に知らせておられると思うわけですけれども、その点について御説明いただきたいと思います。
  149. 城下武文

    ○城下政府委員 お答えいたします。  いまの点は二つの点が考えられると思います。  一つは、まず特許庁で行っている判断の基準がどういう基準であるかということを、第三者である一般の発明者の方々と申しますかがよく理解していただくことが第一点でございます。そのためには、実は特許庁がかねてから、これは毎年の行事でございますけれども、そういった審査の基準が現在特許庁でどうなっているか、こういう点のいわゆる講習会と申しますか、研修会と申しますか、そういうのを必ず地方各地で行っております。  第二点は、そういった基準はよくわかったけれども、一体どういった公知の資料が毎年出てくるか、資料に基づいて発明新規性とか進歩性が判断されるわけでございますから、どういった資料が出てくるかということにつきましては、これはいわゆる資料の閲覧の問題になるわけでございますが、そういった問題につきましては、地方の主な公共な閲覧施設に対しまして特許庁から公報が送られておりまして、そういうことで一般の閲覧が行われております。  そういったことで、一般の発明者はそういった公報を見る機会もございますし、それに基づいてどういった判断で、要するに自分の考えたことが発明になるかどうかといった基準につきましては、先ほど来申し上げた基準の説明会を通して理解していただける、こういった仕組みになっております。
  150. 玉城栄一

    ○玉城委員 昨年から出願の適正化事業というのを行っておられる、先ほども申し上げましたとおり、年間一万件以上も出す大手の企業が四社もあるというようなことですが、そういう出願適正化という行政指導を行った結果、昨年からまだ一年になるかならないかわかりませんが、実態としましてどういうふうに効果が出てきているのか、その点を御説明いただきたいと思います。
  151. 熊谷善二

    熊谷政府委員 この事業は一昨年からやっているわけでございますが、現在、五十年、五十一年、五十二年と、出願件数は約三十三万件から四万件という水準を維持しているわけでございます。従来のように急激な伸びはとまっておりますが、もとよりこの原因の一つは、やはり最近の不況を反映いたしまして研究開発に対する投資が少なくなった結果というようなことも若干あるかもしれません。また、この出願適正化の効果があらわれてきたんじゃないかという見方、これは私ども最近の判断としましては効果がかなり出てきたんじゃないか、こういうふうに判断いたしておりますが、出願の伸びが、この適正化事業によってどの程度出願が適正化されたかという定量的な分析はなかなかできませんので、明確にはお答えができないわけでございます。
  152. 玉城栄一

    ○玉城委員 いま明確なお答えはできないということは、従来一昨年から行っております特許庁出願適正化行政指導というものの効果があらわれていない、実態的な数字の上からいいましても、急激な伸びはとまっているとはいっても、やはり三十四万件という出願件数が大量に出てきておるわけですね。それは現在の状態で、先ほども説明ありましたけれども、自分の方が出さなくたってほかの方が出しちゃえば、これでむしろ防衛的に、公告されない前に自分の方のをどんどん出さなくちゃならないという、そういう結果も中には要因としてあるわけですね。したがって、やはりそういう点についてのきちっとした行政指導と申しますか、関係者への適正化事業というのを行っておられるわけですから、その辺もう少しパンチのきいた形で、具体的に出願する側がこれはむだなのかむだでないのかという判断をする基準というものを設定し、それを公表するということはどうなんですか。
  153. 熊谷善二

    熊谷政府委員 私、先ほど定量的につかまえることがむずかしいということを申し上げましたのですが、私ども五十一年から今日までの努力によりましてコンタクトを続けてきております中で、各企業側の対応が非常にはっきりと変わってきております。これは企業側としましても、一つはみずからの技術を評価し直す、その上で出願をするという態度は、そのままさかのぼりますと、企業内におきましてせっかくやりました研究投資が出願してもむだになるということにつながるわけでございまして、企業側としてもこの評価をきちんと社内的に確立し、特許管理を強化しなければならない、それが企業の企業戦略としても非常に重要な問題であるという認識がこの接触の中で非常に明らかに変わってまいっておりまして、私ども、この事業の、定量的にはとらえられませんが、非常に効果が上がってまいっておるというふうに認識しております。  いま先生がおっしゃいましたこととの関連におきましては、一般に周知されておるいわゆる慣用技術というものがございます。その社においては知らなかったが、その他の分野ではもう公知されておる、あるいは慣用になっておるということを知らない企業がございます。こういったものを周知慣用技術集というものをまとめまして、特定のそれぞれの業界にそれを提供する。で、それを基礎に各社はこれはもう公知になっているから出願してもむだであるということがはっきり認識できるようなことをやっておるわけでございます。  それから、特許情報に関しますいろんなサービス、先行技術あるいは先願があったかどうかの調査につきましては、財団法人日本特許情報センターというのがございますが、ここを通じましていろんなサービスを受けることもできるわけでございます。そういうことを通じまして、先生指摘のような問題につきましては、私どもさらに心がけて努力をいたしたいというふうに考えております。
  154. 玉城栄一

    ○玉城委員 まあ繰り返すようでありますけれども出願されて特許されるのが五〇%というようなことで、適正な出願をさせようということで特許庁としては一昨年から努力をしておられる、こういうことであります。長官がおっしゃいましたとおり、その出願の適正化事業というものが正当な発明活動を抑圧する、そういうようなことではもちろんないわけでありますけれども、やはり整理できるものは整理する、そのためにやはり特許庁とされて明確にその基準をきちっと示していくということは、これは非常に大事なことであると思うわけでありますし、なおまた、今回のように新しく国際特許ということになりますと、やはりそういう国内体制整備ということも非常に重要になってくるのではないかと思うわけであります。  そこで、これは午前中にも質疑が出ておったわけでありますけれども出願人自身が事前調査できる審査資料の公開あるいは資料館あるいは公衆閲覧設備の充実ということにつきましては、これは大臣お答えもありまして、新庁舎の問題、あるいは小さいスペースであっても工夫して能率的に効果の上がるような体制にすべきではないかというようなお答えもあったわけでありますけれども、やはり出願適正化という行政指導を行う以上は、それに相伴ってこういう体制が十分裏打ちされていかなければ実効はないのではないかとも思うわけでありまして、改めて長官から、これは私も伺いましたけれども、現在のスペースというのは諸外国に比べまして小さいわけですね。これはこのままではよくはないわけでありますので、今後の考え方、計画をお伺いしておきたいと思います。
  155. 熊谷善二

    熊谷政府委員 これからこのPCT加盟を契機に、一段といろんな閲覧体制、庁舎問題等に対しまして、また資料の管理といった問題がますます重要になってまいるというふうに考えております。庁舎につきましては、先ほど大臣から今後の方針につきましてお話がございましたわけでございますが、私ども、やはりこの少ないスペースの中で工夫をいたしまして、資料管理のあり方等についても努力をいたしたいというふうに思っているわけでございます。  この問題とも絡みますのですが、現在の資料館の公衆閲覧サービスが、施設が狭いために、いろいろ民間からももっと広げてくれという声も現実に出ておるわけでございますが、こういった要望にこたえるために、庁内に、資料館政策と申しますか、こういうものを将来に向かってひとつ見直しをやり、検討しようというプロジェクトチームをつくって、現在取り組んでおるところでございまして、今後改善すべき政策を立て次第、逐次実行してまいりたいと思っているわけでございます。  また、情報管理、特に特許情報が今後ますます膨大化してまいります中で、先生の御指摘になった出願適正化の際にどれが先行文献があるかといったことが民間でわからないでは、みずから協力しようと思ってもできないという面があることは確かでございますので、これは日本特許情報センターを中心といたしまして、民間に対するそういった先行文献、先行技術に対する調査に関するサービスを強化、拡充をしてまいりたい。また、この特許情報センターは発明協会と業務提携をいたしておりますが、これは全国各府県に支部がございまして、そこの閲覧体制強化にもつながることになるわけでございます。また、もとより特許庁本体といたしましても、全国の図書館等に対しましていろんなサービスを今後とも努力をしてまいりたいと考えているわけでございます。御指摘の点は私どももかねがね重要な問題として自覚している問題でございまして、今後とも努力をいたしたいと思っております。
  156. 玉城栄一

    ○玉城委員 ただいまの問題は、先ほどから論議が集中しておりましたいわゆる百八十四条の十四の問題で、原文と翻訳文の不一致の問題で、あの法定化されたものがそのとおり実行されていくかされないかは、これからの委員会の審議にかかってくるわけでありますけれども、たとえそうでなかったにしましても、そういういまおっしゃるような点は本当に力を入れてやっていかないと、今後対応していけないのじゃないかという感じがするわけであります。  次に、この問題もちょっと午前中に出たわけでありますけれども、中小企業にとって特許制度の活用というものがその基盤強化発展の上で重要な要素の一つである。したがって、今回のPCT加盟に伴って中小企業の対外国出願の高まることが予想される。しかし、その出願費用の負担は、中小企業にとってはかなりの重荷となるわけであります。従来のパリ・ルートと今回のPCTルートとのこういう関係の費用の負担の違いというものはどういう違いがあるのか、御説明いただきたいと思います。
  157. 勝谷保

    ○勝谷政府委員 先生質問の在来ルート、いわゆるパリ・ルートとPCTルートによります経費の比較でございますが、WIPOといいます知的所有権機構、このたびのPCTを推進いたします中央の機構でございますが、この中央機構が出しました試算方式を採用して検討してみましたところ、先生おっしゃる在来ルートとPCTルートを比較いたしますと、三カ国に出します際は在来ルートとPCTルートとの差は少額でございますが、PCTルートの方が若干高うございます。四カ国以上になりますと、PCTルートの方が格安になるという計算が出ております。
  158. 玉城栄一

    ○玉城委員 四カ国以上になると費用の面では安くなる、そういういま御説明があったわけですけれども、そういうことから、従来ありますところの外国工業所有権出願費補助制度というのがございますね。これは新年度では約四百八十七万円の計上しかされておらないわけですけれども、いま御説明の立場に立って、この制度充実ということはこれ以上必要ないというお考えでの予算化であったのかどうか、この点をお伺いいたします。
  159. 勝谷保

    ○勝谷政府委員 特許をめぐります中小企業施策につきましては、先生指摘のように、権利というのは何人も公平に取得し、その取得後の中小企業対策は別途講ずるというような考えが一部ございますが、私どもといたしましても、中小企業対策特許庁も関心を持つべきであるという認識を持たしていただいております。いま御指摘の点につきましては、御指摘のとおり、まことに少額でございまして、大体最近のこの補助金は五百万程度で横ばいをいたしております。ただ、この中央の特許庁におきます補助金にある程度フォローアップいたしまして、地方の公共団体でもこれにならった補助金を採用しているところもあるわけでございます。  御指摘のとおり、私どもは、今後この補助金を含め、他の面で、現在もやっておりますいわゆる一日特許庁等を通じてのPRなり相談なり、さらには現在ございます相談所等々を通じましての指導相談業務、さらには発明協会を通じてのもろもろの中小企業対策充実してまいりたい。さらに、先ほど長官も申しましたように、JAPATICを中心にデータを十分に蓄積いたしまして、地方公共団体等、さらには地方の通産局の組織等を通じまして、中小企業の方にデータを十分流す体制整備してあげたい、かように考えておりまして、特許庁自体が補助金をどんどん取るという体制よりも、そういうデータを十分蓄積してお流しするという方向に重点を置いたらどうかと思っております。  御指摘の点の補助金についても、今後は十分検討さしていただきたい、かように考えておりますので、よろしく御了承いただきたいと思います。
  160. 玉城栄一

    ○玉城委員 ただいまの件につきましては、午前中の質疑でも、中小企業庁長官から、政府系三機関を活用してその手当てを十分やっていきたいという御発言もあったわけでありまして、特許庁とされまして、こういう特許制度の国際化ということからしまして、中小あるいは零細業者の方々が外国への出願ということによって伴う費用の問題等については心配のないような、あるいは現制度の見直し、あるいは補助の問題、助成の問題につきましても十分な体制をとってしかるべきではないか、そのように考えるわけであります。  次にお伺いいたしたいのは、先ほどから問題になっておりますいわゆる百八十四条の十四の原文と翻訳文の不一致が生じた場合の問題でありますけれども、これは私、率直にいままでの議論を伺って感じましたことは、特許庁審査官の方々、先ほどアンケートの問題もあったわけでありますけれども、その審査官の方々は当然原文の問題これもやるべきではないかという御意見が非常に多いようなアンケートの結果も出ておるわけですね。しかしながら、特許庁側とされては、それは必要ないというようなことで、理由とされましては、現在の体制の問題として、あるいは運用の問題で中小企業関係者への情報提供をするとか、あるいは条約上はそういうことが許されているのだというようなこともあったわけでありますけれども、その点で庁側と審査官の方々との認識の違いが相当大きくあるわけですね。その点について、私たち常識で議論を聞いておって理解しがたいわけですけれども、どうしてそういう大きな認識のずれが、実際に仕事をされる審査官の方々と、庁の当局の側と違いがあるのか、その辺をもう一回お伺いしたいと思います。
  161. 城下武文

    ○城下政府委員 お答えいたします。  本件につきまして、先ほど長官からも答弁があったところでございますけれども、実はいまお尋ねのアンケートの内容に関する私ども考え方でございますが、今回の法案につきまして、私ども庁内では、先ほどございましたように、以前から本件についての検討は十分重ねてまいりましたし、特に今回問題になっております百八十四条の十四の規定、つまり異議申し立てでもって審査を行うというこの問題につきましては、昨年来特に集中的に部内審査官を含めた意見は十分徴してきたつもりでございます。  それで、今回どうしてああいうことになったかという問題も含めてでございますけれども、実はこの問題につきましては、私どもの理解では、つまり私どもは、先ほど来申し上げておるように、この問題はもとを正せばいわゆる翻訳不一致の問題と申しますか、そういったことでございますので、従来のいわゆる審査と異質の、ちょっと質が違った審査と申しますか、業務と申しますか、今回の仕事と申しますのは、そういったものを異議の申し立てに任せる、こういうことでございます。したがいまして、そういったことでございますので私ども考え方は、要するにそれは審査主義の放棄ではないと考えておるわけでございます。ところが、そういった意味でやはり完全審査をやるべきだという審査官の相当数の考え方からすれば、いま言ったような私ども考え方に立てば、その辺の二、三のまだ理解が十分行き届かない節はあろうか、こう考えております。  ただ、私どもとしましては、先ほど来申し上げておりますように、今回の百八十四条の十四の問題と申しますのは、一つは、先ほど申しました行政、経済の問題、あるいは本来翻訳の問題に起因する問題でございますので、そういった問題は異議の申し立てに任せた方が全般からいってよろしいのではないか、こういう判断に立って判断したことでございますけれども、二、三そういった意味の食い違いがありましたことがそういった一つのアンケートの結果というものにあらわれたかと、かように考えております。しかしながら、私どもとしては、先ほど来申し上げておりますように、昨年来本件について十分内部でも議論は重ねてはまいりましたけれども、なお今後一層、本件についての内容の検討なり、さらにはそういった理解を深めるための努力は重ねていく、さように考えている次第でございます。
  162. 熊谷善二

    熊谷政府委員 いま技監からお答えいたしました従来の経緯でございますが、やはり何と申しましても、第一線で審査業務に携わります審査官に本件の措置内容については十分理解をしてもらわなければなりませんので、私としましては、各審査官の方々とも従来以上に接触の機会を持って理解を深めるということに努力をいたしたいと考えております。
  163. 玉城栄一

    ○玉城委員 いまのような状態であったなら、こういう新しい体制に備えて何か非常に問題があるという感じが率直にするわけですね。それで、実際に仕事に携わる審査官の方々と当局とが今後十分お話し合いをされなければならない、協力体制をとらなければならない、そのための努力を大いにされることは当然ですけれども、やはり基本的な考え方の違いがあるわけですね。先ほど技監の御説明の中に、審査権の放棄ではないということがあったわけですが、その点につきましても、いわゆる従来の審査主義というものに穴があく、これは常識的に考えてそうなるわけですね。原文と違った拡大された翻訳のものが出てきて、それがいわゆる審査官の権限の及ばない範囲で通るということになりますと、これはやはり審査主義というものが貫かれているのかどうかということに率直に疑問がありますし、同時に、そういうことで国内のそういう関係者の権利が保護できるのかどうか、その辺がまだ理解し得ないところなんですが、その点をもう一回説明していただけませんか。
  164. 熊谷善二

    熊谷政府委員 この問題がこの法案をつくります過程で一番討議の行われた問題でございまして、先ほど来私がるる申しておりますように、そもそもこの審査主義ということに対しまして、本件のような形の新しい制度に取り組むことが審査主義の導入だという意見を持っておる人もあるわけでございますが、私はそのように考えていないわけでございまして、今回の異議申し立てに限るという百八十四条の十四のあの規定につきましては、これは従来なかった新しい制度でございまして、それを受けとめるための措置として考えておるものでございます。これをもって審査主義の導入あるいは審査主義への転換、こういうことは毛頭考えておりませんので、そのように御理解を賜りたいと思っております。     〔山下(徳)委員長代理退席、委員長着席〕  なお、先ほど来出ておりますこれでどのような弊害が起きるか、これは私どもはレアケースである、こう申し上げておるわけですが、しかし、それが見方によっては実際そういう問題が出てくる可能性もあるという意見も御指摘のとおりあるわけですが、私どもは、今後の運用の面で、これによって重大な問題が起きるとは考えておりません。今後、本件を御承認賜りました場合は、もちろん状況につきましては十分配慮し、本日のいろいろな御意見につきまして、それを念頭に置いての注意と起きた場合に対する手当て、これは運用問題としてできるだけのことをいたしてまいりたいというふうに思っているわけでございます。
  165. 玉城栄一

    ○玉城委員 時間がございませんので、この点について議論はできませんけれども、実際に仕事をなさる審査官の方々は、そういう審査主義を貫く意味においても、あるいは発明権の保護と申しますか、それを完全なものにしていくためにも、当然やるべきであるということをおっしゃっておるわけですね。しかし、皆さん方はそういう必要はない。そこにいままでいろいろな議論がされてきたわけですけれども、まだまだちょっと私には理解できないところがあるわけです。  たとえばレアケースということをおっしゃいましたけれども、そういうケースがあって、運用の段階で中小企業とか関係団体の方々に情報提供するのだというようなことで、そういうものがないように万全の体制をとりたいという御説明がるるあったわけであります。これはやはり審査官の方々がそういう仕事をされていくことと思いますが、具体的にはどういうふうに情報提供とかそういうものはなされていくのか、その点をお伺いしたいと思います。また、そういう仕事をされるのであれば、審査官の方々がおっしゃっているそうう最初からの審査主義を貫くという仕事もできていくのではないかという感じもするわけですね。なぜそれをしいてやらないのだということを主張されるのか、その中小企業への情報提供の問題。  それともう一点は、もし情報提供がされなかったためにいわゆる不一致の翻訳文がそのまま権利が認められていったときに、当然従来の権利を持っていた方々は被害を受けると申しますか、そういう状態に置かれるわけです。ですから、皆さん方の情報提供がされないことによってそういう従来の権利者が本当に保護されないという状態が起きたとき、こういう場合はどうなるのか、その点もあわせてお伺いいたします。
  166. 熊谷善二

    熊谷政府委員 先ほど来申し上げていることでございますが重ねて申し上げますと、法律制度として、審査の過程において原文との不一致を発見した場合に拒絶処分をするといったようなことができるかどうか、こういう問題でございますが、私どもは、法律制度としてそういうことをすることは、特許法制の公平性が担保されないおそれがあるという点から制度としてはとり得ない。しかしながら、運用として現行法でもやっております範囲において情報提供はできますので、たとえば先ほどもちょっと触れたわけでございますが、その瑕疵を持った出願が公告をされるに当たりましては、その出願者に対しまして必要な資料の提出を求め、内容を確認し、その上でこの公告にはこのような瑕疵があるということを何らかの形で表示することをいま考えているわけでございます。また、影響を受ける可能性のあります他の出願の方の公告に当たりましても、おたくの出願にはこれに関連してかくかくの出願があるということの通知を、これは審査の過程を通知するわけでございますが、そういった中でそれを取り組むことは可能であろう、それを使って瑕疵ある出願が排除されるということをやることは運用上は可能であろう、こういうふうに思っておるわけでございます。  先ほど来申しておりますように、運用としてやる分においては許されるにいたしましても、法律制度として全件チェック、全件照合ということは、これは実際上現実との乖離がはなはだし過ぎるという観点、また、第二の気づいたときに行うということは、余りにも審査のばらつきが起きると申しますか、恣意に流れるおそれがございますので、制度としてこれを法律で設けることは妥当ではないと考えておるわけで、あくまでも情報提供という限度での措置ということにとどまらざるを得ないかと思います。せっかくこの案に設けられております異議申し立て制度あるいは無効審判と訂正審判のリンクの制度によりまして、この瑕疵ある部分は矯正されるべきものというように、またそれで実害は十分カバーできるのではないか、こういうふうに私ども考えておるわけでございます。
  167. 玉城栄一

    ○玉城委員 まだ疑問な点もございますけれども、時間が参りましたので、質問を終わります。
  168. 野呂恭一

    野呂委員長 宮田早苗君。
  169. 宮田早苗

    ○宮田委員 条約に基づいて新しい制度づくりということからこの法案が提出されたわけでございますので、まず最初に、特許にまつわります事情について若干お伺いしたいわけであります。  まず、国内での出願件数の最近の動向を聞いてみますと、若干鈍化傾向にあるように見えます。これを長期にわたる経済活動の停滞が原因だと見る向きもあるように考えますが、これを業種別に見た最近の特色といいますか、こういう問題についてまず御説明をお願いをいたします。
  170. 熊谷善二

    熊谷政府委員 御指摘のとおり、最近約三年間はほぼ横ばいの数字になっております。業種別の動向といたしましては、機械、とりわけいわゆる電子技術関係出願が今日までの出願で多い部類でございまして、それに反しまして、化学の分野は出願のウエートが徐々に減ってまいっておるのが現状でございます。  全体の横ばいになっておりますことの評価は、先ほどもちょっと申し上げましたが、やはり最近の景気状況というものの反映が一部あるのではないか。また、一部は私どもがいま進めております出願適正化事業の効果があらわれておるのではないか、こういうふうにも見ておりますが、定量的には確認がむずかしいかと思います。
  171. 宮田早苗

    ○宮田委員 おっしゃるように、出願自体は鈍化の傾向にあるということなんですが、にもかかわらず未処理件数が依然高水準にある。これはいままでの質問の中でいろいろお聞きしたわけですが、特許庁は以前に、出願の適正化ということで産業界に対して出願をセーブする指導をされたということでございますが、その効果と最近の行政指導方針、これをお聞かせ願いたいと思います。
  172. 熊谷善二

    熊谷政府委員 まず、五十年に件数の多い企業上位三十社に対しまして個別に指導を行ったわけでございますが、これは今後毎年継続をし、各社がそれぞれ一年ごとにどういう努力をなさったかということにつきましても、内容について調べて、将来に向かってさらに改善の努力を要請をしてまいりたいというふうに思っておるわけでございますが、さらにこの業界とのコンタクトの輪を広げまして、工業会ベースに各社の参加を求めまして、適正化事業に対して協力を要請したいと考えております。  と申しますのは、一社だけ出願を自粛いたしましても、他社との関係で、たとえば他社の発明が実施してもらえない、何か法律に触れる、触れない範囲で容易にはもらえないということになりますと、何がなんでも自社で他社の特許の網の目をくぐって開発をするということでいろいろ出てくるわけでございますが、これは研究投資の面で見ましてもお互いにむだがございますし、また出願件数が余り内容の違わないものについて多くなってくる原因にもなるわけでございまして、業界の中でのたとえばクロスライセンスというものが一般化するようになりますと、その点はもっと出願がセーブされるんではないであろうか、こういうこともございます。  また、本当は権利は取らなくてもいい、ただ、これを他社に取られては困るから出願をするといういわゆる防衛出願ということにつきましても、業界全体の中でその問題について議論をしていただいて、そのコンセンサスの上でこの適正化事業を進めていくならば、たとえば防衛出願は、いま発明協会の方で「公開技報」というものを発行いたしておりますが、この「公開技報」に掲上しましたものは、すでに先行文献として、これにつきましては自今出願をいたしましても他人の権利にはならないわけでございます。これは特許庁出願しなくても、単に権利は欲しくないが他人に取られるのは困るというだけであれば、この発明協会の「公開技報」にこれを掲上してもらったらどうかということにつきましても、これは業界ごとにいろいろ話し合いを通じて理解を深めていただくことならば、特許庁出願がさらに適正化になるんではないかというふうに考えているわけでございます。  そういう形で、いままでは個別に案件の多い上位の各社に小さい輪でやっておりましたが、これから少し輪を広げてまいりたいというふうに考えておるわけでございます。
  173. 宮田早苗

    ○宮田委員 出願の前段に対しまする行政指導、セーブするということについてはいまの説明でわかりましたけれども、一たん出願します。そうすると、それを審査されるということなんでしょうが、出願件数というのが、もちろんそれでセーブされて、何と言いますか、幾らか是正されるということなんでしょうが、たまっておるということは、すでに出されておるわけでございますから、出されたものがさらにたまるというネックは大体どこにあるのか。直接担当でございますのでその点はわかると思いますが、その点ひとつ説明していただきたいと思います。
  174. 熊谷善二

    熊谷政府委員 特許処理が遅いという批判があるわけでございますが、これは昭和四十五年のときには平均処理期間が五年ということでございまして、そういう状態では、たとえばPCT加盟に当たっても状況が非常に悪いということになりまして、特許庁といたしましても、いわゆる滞貨になっておる案件につきましては、できるだけこれを減縮していくように、今日まで処理促進を図ってまいったわけでございます。四十五年当時は約五十数万件ございましたのが、現在四十六万件から七万件程度まで特許実用新案のいわゆる未処理件数というものが減ってまいっておるわけでございまして、これは今後とも私どもの最も重要な政策の目標の一つにしてまいる考えでございますが、これを従来の線以上に努力をしてまいります中では、やはり審査官の増員であるとか、あるいは審査するに当たっていろいろ文献を調査する、その必要のデータ類の管理をよくいたしまして効率ある調査ができるような仕組みをやっていくとか、あるいはたとえばその資料自体につきまして検索しやすい形での整理が必要になってくるという問題があると思います。これは私ども特許情報の管理と申しておりますが、これを効率よい形でやっていく必要が今後あると思います。  また同時に、私どもは、この量の問題以外に、これからは質の問題でもこの国際化を契機にしていろいろレベルアップを図っていかなければならぬと思いますので、その中核になります情報管理のあり方につきましても、審査官の要員の確保という問題と並行いたしまして努力をいたしてまいりたいというふうに思っているわけでございます。
  175. 宮田早苗

    ○宮田委員 本題ということになるわけですが、この特許協力条約PCTですか、そのルートによりますメリットがあらゆる分野にあることは、いろいろ説明を受けておりますのでわかるわけであります。その一つに手数料、経費の節減があろうかと思うわけでございますが、出願人にとって経済効果はどのくらいと見ておいでになるか、ひとつお聞かせ願いたいと思います。
  176. 勝谷保

    ○勝谷政府委員 お答えいたします。  PCTの手数料は、一つ日本特許庁に対して支払われますものと、それから中央機構でございます国際事務局に払われる手数料がございます。前者につきましては、法律的には実費を勘案して政令で定めるということになっておりまして、私どもいま関係省庁と相談いたしまして適切な料金を定めたいと考えておるわけでございます。後者につきましては、国際事務局において検討されているところでございますが、基本手数料が百五十ドル、指定手数料が一国当たり四十ドルというように聞いております。  なお、従来のいわゆるパリ・ルートとこのたびのPCTルートで一体手数料はどういうふうになるのかという問題がございますが、先ほども説明を申したのでございますが、私どもWIPO、先ほどの中央機構の試算方式をもとにして調べましたところでは、大体PCTルートでやります方が四カ国以上を対象にしますときは従来のルートよりも割り安になるという計算がされております。しかし、先生もこの条約の骨子でおわかりいただきますように、国際調査報告が入手できますので、日本関係者は実際の指定国出願をする前にある程度情報が十分つかめますので、不必要な出願を事前に取り下げることが可能になること等に上りまして費用が軽減されます。いままでは一国一国すべてやらなくてはいけませんでしたが、このたびは事前に調査によって知ることができるというような点がございますので、従来よりは関係者にとっては非常に有利ではないかということが考えられます。  なお、経済的なメリットのほかに、先ほどから述べておりますように、PCT方式によりまするならば、日本語による出願で複数国に出願ができる、こういうメリットが経済的メリット以外にも考えられるわけでございます。  以上でございます。
  177. 宮田早苗

    ○宮田委員 国際出願の際、この特許出願する国を指定しますね。そして国際調査国際予備審査の過程でこの見通しが明るくなった時点で出願人指定国を追加する、こういうことはできるわけですか。どうですか。
  178. 熊谷善二

    熊谷政府委員 特許協力条約では、指定国の指定は国際出願の提出の際に行うこととされておりまして、その後は追加することは認められておりません。なぜかと申しますと、後で追加いたしました指定国につきまして、前の指定した時点、国際出願日でございますが、それにさかのぼって効果を新たに認めるということは、これは条約の趣旨になじまないという考え方でございます。そういう点で追加することは認めておりません。  ただ、こういったあり方もございますが、出願人といたしましては、国際出願の際に願書に一応特許を取得したい国をずっと書いておきまして、優先日から一年以内にそのうちの最終的に特許を取得したい指定国についてだけ指定料を払うというようなことは条約上は許されておるわけでございます。また、国際出願日から一年以内でございますと、在来のパリ条約のルートに基づきまして、この国際出願を基礎といたしまして、優先権を伴う国内出願を別の相手の国にすることが可能でございます。これは従来のパリ・ルートでいくことは可能である、しかし、PCT条約に基づいて追加をすることはできない、こういうことでございます。
  179. 宮田早苗

    ○宮田委員 この内容の変更について、現行法での国内特許では、本来の内容をゆがめない範囲での要旨の変更が可能ということなんでしょう。ところが、今度の国際出願の際の取り扱いは一体どうなるか。この点はどうですか。
  180. 城下武文

    ○城下政府委員 お答えいたします。  いま先生お尋ねの件は審査中のことについてだと思いますのですが、審査中のことにつきましては、現在の国内出願と申しますか普通の出願でございますと、初めに記載してある明細書の範囲内であればいかようにでも変えることは自由でございます。今回の国際出願の場合でございますと、初めに出された明細書と申しますか、要するに日本国に出された翻訳文の範囲内であれば、いかようにでも直すことが可能でございます。
  181. 宮田早苗

    ○宮田委員 といいますのは、調査段階での補正あるいは相手国での審査段階での補正というのは可能ということでございますね。
  182. 城下武文

    ○城下政府委員 私がいま細切れに申し上げるとあれですから、手続としてずっと系統立ててもう  一度御説明申し上げたいと思います。  国内段階ですることのできる補正といたしましては、条約第十九条の規定によりまして国際調査報告の受領後に国際事務局に対しまして一回でできる請求の範囲についての補正、これは国際段階についての補正でございますけれども、そういう補正ができます。もう一つは、国際予備審査段階国際予備審査機関に対しまして請求の範囲、明細書また図面についての補正ができるわけでございます。これらの補正につきましては、当初の国際出願の開示の範囲を超えてはならない、こういうことになっておるわけでございます。そしてこういった国際段階、これは国内に入ってくる前の段階でございますけれども国際段階でなされた補正につきましては、所定の期間内にその翻訳文がわが国に出されませんと、わが国に対してはそういった補正がなかったものとして扱えることに一応なっております。  さて、そのような国際出願につきましての問題でございますけれども国内段階における補正についての規定は、これは条約第二十八条、それから第四十一条でございますが、この補正が許される時期、内容等につきましては、現行特許法、これは現在でも使っておりますけれども、十七条第一項、十七条二項、十七条の二等の規定を適用してこれで行っております。そういうことで現在やることにしております。  それから、国際出願についてなされた補正でございますが、日本語でされた国際出願につきましては、国際出願日における明細書、それから請求の範囲、または図面に記載した事項の範囲内で、それから、外国語でされた国際出願につきましては、明細書、それから請求の範囲、または図面の翻訳文に記載した事項の範囲内で補正ができるわけでございまして、要旨を変更するもので、そういう範囲内をはみ出した場合には要旨を変更するものであるとして一律に却下されることになろうかと思うわけでございます。  それで問題は、特許後におきまして要旨を変更するものである旨が判明した場合についてでございますけれども、要旨を変更する補正が却下されずに特許となった後におきましては無効の審判の請求により、あるいは権利者が訂正審判によって訂正していない限りはそういった無効審判の請求によって特許は無効になる、かような手続になっておるわけでございます。
  183. 宮田早苗

    ○宮田委員 この特許協力条約のほかに、さっきちょっと出ましたが、ヨーロッパ特許条約も近く機能するようになるわけですが、PCTルートを使ってEPC加盟国の特許を取るわけです。この両者の手続やそのメリット、これはどのような点にあるかということについて御説明をお願いします。
  184. 松家健一

    松家説明員 お答えいたします。  PCTルートを使ってヨーロッパで広域特許を取る場合出願人はどういうふうにするか、またメリットはどうかという御質問でございます。  まず、手続の順序を追って説明いたします。  最初、出願人は所定の様式によって所定の言語日本人の場合なら日本語PCT国際出願の書類を作成いたします。その際、願書にヨーロッパ条約の締約国であり、しかもPCT条約の締約国である国のうちからヨーロッパ特許を取りたいという国を選んでその旨を表示することにより、それらのヨーロッパ特許を取得したいという意思表示を公式にしたことになります。次に、このように作成した書類を受理官庁たる日本特許庁に対して国際出願として提出するとともに所要の手数料を支払う、これで国際出願が受理されるわけでございます。  その後、その国際出願につきましては方式点検、さらに国際調査が行われます。国際調査報告を受け取ってから、出願人は、その報告の内容を検討の上で手続を進める必要があると判断した場合には、ヨーロッパ特許庁に対しまして、通常優先日から二十カ月経過するまでに、ヨーロッパ特許庁の方の公用語は英語、ドイツ語、フランス語、そのいずれかでございますので、そのいずれかの言語に翻訳した書類を提出する。以後はヨーロッパ特許条約の規定に従ってヨーロッパ特許庁審査が行われるわけでございます。  この場合に、ヨーロッパ条約加盟の多数の国を指定する場合には、多数の国についての審査が一カ所で行われ、しかも代理人の手数料も一カ国分で済むという点がございますので、その点では経費の面でPCT出願について余分な負担を払ってもなおプラスになるという点もございます。ただし、いずれが利益であるかということは、出願人の立場、それから出願しようとする発明内容、その経済的価値等に応じまして、PCTルートのみでやるか、EPC出願も、ヨーロッパ特許出願もあわせて行うかということはいろんな観点から決定すべきことであろうと考えます。
  185. 宮田早苗

    ○宮田委員 五十年の特許法改正の際に、当委員会の附帯決議として日本特許情報センターの強化拡充を取り上げたいきさつがあるわけでございますが、財政問題等もございまして実効が上がっていないのが現状のようでございますが、特許制度の新時代にふさわしいセンターの育成策はないものかどうか、その点、お考えがありましたら発売していただきたいと思います。
  186. 勝谷保

    ○勝谷政府委員 五十年の法改正のとき、さらに四十五年のときも当衆議院の商工委員会の附帯決議で、JAPATICを育成強化しろという附帯決議がついております。特に四十五年の附帯決議を受けまして以来、JAPATICを設立し、その後JAPATICに対しましては四十八年以降毎年四億数千万円、場合によっては五億円近い補助金等を国の方から投入しておりますし、その他新しい情報のシステムの開発のための委託費を最近におきましては年間三億ないし四億投入いたしておりまして、JAPATICが真に日本特許情報のセンターになるための努力を逐次進めております。  なお、JAPATICは、先ほど申しました中央機構でございますWIPOとの間に、WIPOがオーストリアとの間でつくっておりますインパドックという国際的な情報機関と提携しておりますので、今後国際化が進みますに当たりましては、このインパドックとJAPATICが連携を強め、さらに日本を中心とした一つ情報センターの中核にすることが必要と考えておりまして、先生指摘のとおり、今後は従来の助成をさらに強めていくという方向で努力をしなければならないと考えております。  ただ、補助金その他におきましては必ずしも従来の線でございませんで、最近におきましては収支初めてバランスをするという事態にも立ち至りましたので、今後はシステムの開発のための委託費、さらには自己努力による内部の充実というようなことを進めていただきたいと考えておるわけでございます。いずれにしましても、特許庁とJAPATICは一体となって今後も特許情報の中核体としての体制を整える必要がある、私どもはかように考えております。
  187. 宮田早苗

    ○宮田委員 念のためにちょっとお伺いしておくわけですが、特許庁には国際予備審査能力、主として事務量をどうさばくかということについてその能力を懸念する向きもあるわけですが、大丈夫かどうかということを一言でいいからお答え願いたいと思います。
  188. 勝谷保

    ○勝谷政府委員 国際予備審査制度は、単にわが国の出願人に事前に当該出願特許可能性についての目安を与えるということだけではございませんで、先ほどからも議論がございますように、特許分野における開発途上国援助という点で大きな意義を有しております。したがいまして、私どもは、国内出願人並びに国際協力の面から見ましてもぜひとも国際予備審査業務を受けなければならない、かように考えておりまして、機構、定員の充実を中心といたしまして、さらには審査資料整備、研修の強化等をしてまいったところでございますし、今後もその線で整備を続けてまいりたい、かように考えております。  なお、国際予備審査請求につきましては、これが不当に国内審査を害するようなことになってはいけませんので、一応請求の受理件数の制限を行うことを決めておりますが、現在私どもが目安として決めております数字は予測される予備審査請求を相当上回る数字を決めておりますので、さしあたっては問題はなかろう、かように考えております。
  189. 宮田早苗

    ○宮田委員 私ども民社党は、提案されております本法の成立を積極的に支持して審議の促進を図りたいと思っておりますが、要望も含めてお聞かせ願いたいのは、産業界の間には現在あります特許庁資料館の充実に対する要望が非常に強いと思います。その点は御承知と思いますが、企業内の資料保存が大変なことや、時間と金を使っても大阪まで出向いた方が能率が上がるといった話もちょいちょい聞くわけです。この不便を解消する手だて、これを考えておく時期じゃないかと思っておりますが、その点についてはどうですか。
  190. 熊谷善二

    熊谷政府委員 御指摘のとおり、PCT加盟を控えまして、出願人の行います出願あるいは審査請求あるいは特許庁におきます審査の質の向上、こういう観点から、特許情報の管理また有効利用ということはこれからはまことに必要不可決なことだと考えております。とりわけそのためには資料館の体制、特に閲覧サービス体制強化する必要があると考えておるわけでございます。最近、民間団体等から、狭い閲覧室をもう少し拡充できないかとかいろいろ御要望が出ておりまして、私ども、いまこの限られたスペースの中での有効なスペースの確保をどのようにするかという問題、またさらには、長期的には、先ほど大臣お答え申し上げましたように、五十三年度予算でお認めいただきました通産省の新規第三期の工事による庁舎の建設が完了しました暁には、特許庁が現在本館と別館の二つに分かれておりますものを統一化するということに方針が決まっておるわけでございますが、その際に、現在あります。人当たりスペースかなり上回るスペースを確保できるように努力をいたしたいと考えておるわけでございます。当面の問題といたしましては、現在できる限りにおきまして民間側の御要望にこたえるよう努力をするわけでございますが、長期の問題としましてやはり庁舎の問題にぶつかるわけでございまして、その機会に現在の閲覧室の拡大といったことを含めましてスペースの確保を行って、民間への御迷惑がかからないような方向で対処してまいりたいというふうに思っております。
  191. 宮田早苗

    ○宮田委員 最後にお聞きしますが、さきの質問者の中にもございましたように、日本から外国への特許出願件数年間二万件以上に上っておりますが、最近の中小企業によります出願の趨勢はどのようになっておるか、それと中小企業を対象にした外国工業所有権出願費補助制度の活用状況、この点についてお聞きをいたします。
  192. 熊谷善二

    熊谷政府委員 国内出願の中に占めます中小企業、町の発明家といった方々のウエートは、件数におきましては約五割でございます。それから、日本から外国へ向けた出願の中で町の発明家、中小企業といった方々の占めるウエートは、推定でございますが、約二割程度であろうと思っております。  なお、中小企業の方々に対します補助金は約五百万円計上してあるわけでございますが、消化状況は非常にようございまして、不足ぎみでございます。  先ほど来答弁申し上げておりますように、また、先ほど中小企業庁長官からもお話がございましたが、中小企業の方々に外国出願が容易になったこの機会に、補助金の活用といいますか、補助金をふやす努力はもとよりでございますが、出願しやすい中小企業政策を中小企業庁の方でもおとりいただくやに聞いておりますので、私どもも中小企業庁とよく連絡をとりながら出願促進につながるような政策の促進を図ってまいりたい、かように考えております。
  193. 宮田早苗

    ○宮田委員 終わります。
  194. 野呂恭一

    野呂委員長 安田純治君。
  195. 安田純治

    ○安田委員 午前中から同僚議員がいろいろと質疑を重ねておるわけですが、実は私は、この法案をいただいたときには、素直にといいますか、それなりの解釈及び問題点の理解をしておったつもりなんですけれども、どうも午前中からの同僚議員の質疑に対する答弁を聞いておりますと、ことに原文と翻訳文との違いですね、かえって何かわかりにくくなったような感じがしないでもございません。そこで、おさらいになるかもしれないので大変恐縮ですが、整理のつもりで若干お伺いをしたい点がございます。  まず最初に、特許協力条約の十一条(1)、(2)(b)、十四条(2)、これに基づく国際出願日本指定国にしたものは、この法案の百八十四条の三によってその国際出願日に日本特許出願したことになる、こういうわけですね。そのとおりでしょうか。
  196. 松家健一

    松家説明員 お答え申し上げます。  おっしゃるとおりでございます。
  197. 安田純治

    ○安田委員 ところで、本法案の百八十四条の六によれば、外国語特許出願の願書の翻訳文は特許法の三十六条第一項により提出した願書とみなす、こうされておりますし、同じ条文の二項によれば、明細書、特許請求の範囲、図面もそれぞれ翻訳文は三十六条二項の願書に添付された明細書などとみなすとされているということになりますが、そうしますと、翻訳文に記載されておる思想ないし観念が、外国特許の場合さかのぼって国際出願日に特許出願された内容となる、こういうふうに解してよろしいのでしょうか。
  198. 松家健一

    松家説明員 お答え申し上げます。  ただいま御指摘の百八十四条の六の規定は、出願翻訳文を特許法上の出願書類とみなす、また、それによって審査出願書類とみなされた翻訳文によって行うということを規定しているものでございまして、国際出願日にまでさかのぼって出願翻訳文の内容によって国際出願されたものとみなす、そういう規定ではないというふうに考えております。
  199. 安田純治

    ○安田委員 次に、この条約のことについて若干お伺いしたいのですが、特許協力条約の三条の(4)に「国際出願は、次の条件に従う。」(i)に「所定の言語で作成すること。」こうありますが、この所定の言語というのは何を意味しますか。
  200. 松家健一

    松家説明員 条約に基づく規則十一の規定によりまして、国際事務局と管轄国際調査機関との間の取り決めで特定いたしました言語を所定の言語といいます。
  201. 安田純治

    ○安田委員 第四十七規則の中で、「言語第二十条の規定に従って送達される国際出願言語は、当該国際出願の国際公開に用いられる言語とする。」この場合の言語というのは何を意味しますか。
  202. 松家健一

    松家説明員 規則の四八・三の規定によりまして、国際公開の言語は、英語、ドイツ語、日本語、フランス語またはロシア語でされた場合にはこれらの言語で国際公開され、それ以外の言語の場合には英語による翻訳文で国際公開が行われます。その言語を申します。
  203. 安田純治

    ○安田委員 そうしますと、たとえば外国日本国を指定国として特許出願がなされた場合に、送達されてくる願書の国際言語というのは、英、独、露、仏、日本語と五カ国語あるわけですけれども、この中の一カ国語ということになりますか。
  204. 松家健一

    松家説明員 お答え申し上げます。  規則の四七・三によりまして、「送達される国際出願言語は、当該国際出願の国際公開に用いられる言語」でございますが、「ただし、その言語が当該国際出願がされた言語以外の言語である場合には、指定官庁の要請に応じ、これらのいずれか又は双方の言語とする。」ということになっております。先ほど申しましたように、五カ国語以外だと英語に翻訳されますが、たとえばスウェーデン語を英語に翻訳して国際公開された場合には、指定官庁の要請に応じて、いずれか一方または両方を指定官庁としては要求することができます。
  205. 安田純治

    ○安田委員 この場合の指定官庁というのは、たとえば外国日本国を指定国として出願された場合には、当然日本特許庁ということになりますか。
  206. 松家健一

    松家説明員 日本国を指定せられた場合には、当然日本でございます。
  207. 安田純治

    ○安田委員 先ほどから同僚議員が原文と翻訳の食い違いをいろいろ問題にしておって、私も聞いておって、その原文というのは何を原文と考えておるのかなということで、おたくの答弁とのあれでちょっとわかりにくかったものですから、念のためお尋ねしたわけですが、先ほどどなたかの議員の質問に対して、スウェーデン語で調べなければならない場合もあるような御発言があったように伺いますけれども、いまの御説明によると、この国際公開に使用される言語五カ国語ですね、これ以外は、文献を調べる場合は別として、審査する場合にそれ以外と日本語の翻訳文と照合しなければならないということは起き得るわけでしょうか。
  208. 松家健一

    松家説明員 先生ただいま例として挙げられましたスウェーデン語の場合を例にとりますと、スウェーデン特許庁は恐らくPCT調査機関になるものと予想されておりますので、国際出願日における言語はスウェーデン語でございます。ただし、国際公開は英語で行われますけれども、原文と申しますとこの場合はやはりスウェーデン語になります。
  209. 安田純治

    ○安田委員 そうしますと、指定官庁がいずれか一方あるいは双方を要求することができるという場合には、何もスウェーデン語を要求しなくていいわけですね。
  210. 松家健一

    松家説明員 日本特許庁の取り扱いといたしましては、このような場合には両方の言語を要求するという運用をしてまいるつもりでございます。
  211. 安田純治

    ○安田委員 運用はともかくとして、この条約あるいは特許法それ自体から見れば、どうしても審査にスウェーデン語が必要である、文献の調査なんかは別としましてですよ、そういうことが起き得るということになるのですか。
  212. 松家健一

    松家説明員 条約十一条の(3)では、国際指定国における国際出願の効果は、国際出願日から発生する、国際出願日において指定国における国内出願の効果を持つということになっております。したがいまして、この趣旨からいたしますと、いま例として挙げました場合にはスウェーデン語が国際出願言語になります。したがって、いわゆる原文との関係というのはスウェーデン語との関係になります。
  213. 安田純治

    ○安田委員 先ほどちょっと確かめるのを忘れたのですが、内閣法制局に伺いますが、私の一番最初の質問、つまり百八十四条の六の願書とみなす、あるいは明細書、特許請求の範囲、提出した図面とみなすということの解釈ですけれども、先ほどのお答えでいいのかどうか。つまり、それは出願日までさかのぼってという意味じゃない、審査の対象として翻訳文をするだけであるという答弁でいいのかどうか。
  214. 別府正夫

    ○別府政府委員 お答えいたします。  ただいま御質問のございました百八十四条の六は、二項の関係で御質問があったと思うのでございますが、出願翻訳文を提出した特許請求の範囲等々とみなすということを書いてございますのは、先ほど審判部長から答弁のありましたこととほぼ同様でございますけれども、若干補足いたしますれば、特許法は御存じのとおり特許処理手続が大変精細に規定してございまして、それと今度のPCT関係国際出願、これはまた国際的な統一という趣旨からいろいろ国内法とは若干違う規定が設けられているわけです。そこで、その国際出願国内出願と同じような形で指定官庁たる日本特許庁国内法の手続に乗っけるためにという趣旨で、実は百八十四条の三に「国際出願日にされた特許出願とみなす。」ということでつなぐ規定を置いた。そのつなぐ規定を置きましても、なお先ほど申し上げましたように、いわば特許は権利法でございますので、慎重かつ公平を期する必要があるということのために手続関係の規定が非常に細かく規定してございまして、それに関する運用も安田委員御存じのように非常に運用の細かい点まできちんと決めてやっているという関係がございますので、国内法につないだ場合に、特許法の三十六条でいろいろ特許出願に関する書類の規定がございますので、その翻訳文をその書類とみなして特許手続に乗っけるということを明確にする必要があるだろうという趣旨で百八十四条の六の規定を置いたというふうにお考えいただければと存じます。
  215. 安田純治

    ○安田委員 しつこいようですが、午前中からずっと問題になっておる翻訳文と原文との範囲の食い違いということについて若干お伺いしたいと思うのです。  前の各議員も大分伺いましたけれども、この翻訳文が原文よりも広い内容を含んでいる場合、この法案に基づけば、これも審査官はオーバーに気がついても審査をずっとそのまま続けていかなければならぬということになることは事実ですね。
  216. 松家健一

    松家説明員 先ほども申しました百八十四条の六の規定からしまして、審査は翻訳文によって行います。ただし、異議の申し立てがあったら原文との不一致を審査いたします。
  217. 安田純治

    ○安田委員 先ほどからの議論を伺っていますと、異議の申し立てがあったときだけ原文の審査ということになるので、それ以外は原文の照らし合わせですか、翻訳文がペースでそのままずっといくということにならないと実務上体制がないというお答えのように伺っておったのですが、それでいいのですか。それだけが理由なのかどうか。
  218. 熊谷善二

    熊谷政府委員 先ほども申し上げましたが、この条約は多国間による多種類の言語を持った国々の取り決めでございます。したがいまして、各国との問において原語とそれから翻訳文という問題は常にあるわけでございますが、これは当然一致すべきものという前提に立ってこの多国間取り決めがつくられておる、思想はそういう思想があるというふうに考えておることが第一点でございます。  第二点は、国内におきます権利の付与は、それぞれの指定国、つまり日本の場合には日本語で権利が設定されねばならない、こういう観点で日本語を権利の際のまず大前提として考えなければならぬというのが第二点でございます。  第三点は、審査段階におきますベースを翻訳文に置くかあるいは原文とするか、その双方にするかという問題につきましては、これは各国それぞれの自主的な判断に任されているものと承知をいたしております。条約上は、条約四十六条にございますように、権利後の措置といたしまして、原文を上回る翻訳文の部分はその限りにおいて無効にすることができる規定があるだけでございます。四十六条の注解におきまして指定国におきます翻訳文のみによって審査することができるということがございますので、私どもとしましては、いま申し上げましたような理由を考えまして、日本語をベースとして審査をするのが望ましい、こういうふうに考えたわけでございます。  ただ、もしそれ以外の方法があるかという点になりますが、これは先ほど来申し上げておりますように、たまたま気がついたときに、その部分について拒絶査定を行うということは、これは審査内容につきまして恣意性が大きくなる、制度の公平性が担保できないということから、私どもとしてはこれはとることができない。また、審査の最初に原文と翻訳文を全部照合するという問題は、これは現実問題として私どもはほとんど不可能である、こういうように判断をいたしておるわけでございまして、以上の問題を総合判断いたしまして、現在お出しいたしておりますような形で整理をいたしたわけでございます。     〔委員長退席、山下(徳)委員長代理着席〕
  219. 安田純治

    ○安田委員 特許協力条約の前文を見ますと、当然のことながら、この締約国は発明の法的保護を完全なものにすることを希望しておる、まさに特許制度の根幹にはそこがあると思うのです。この発明の法的保護、つまり法的保護の対象になる発明は、外国の場合まさにその原語で表現された思想、観念、それ自体が発明内容だと思います。そうですね。ですから、できるだけそれに忠実なものを法的保護の対象にするのが理想ではないか。したがって、本来ならばそういう基本的な特許という制度はそもそも大体そうだろうと思うのですけれども発明者の発明内容をできるだけ法的に保護する。発明者の発明内容とは何か。外国で、たとえばスウェーデンで発明されたものはスウェーデン語で表現されるとすれば、まさにそのオリジナルランゲージで表現されたものが、その発明のつまり観念、思想の内容になる。それをそのまま保護するのが本当は望ましいんじゃないか。これが理想なんだけれども、しかし、いろいろな障害があってそうできない場合に、次善、三善の策としていろいろと翻訳文ということに返っていくこともあり得る、こういうように思うのですけれども、そういう考え方は間違いでしょうかね。
  220. 熊谷善二

    熊谷政府委員 権利の保護を万全にする考え方はもとより当然でございます。今回の特許協力条約におきましても、まずは指定国におきます段階におきましては、国際出願段階で原文が確定するわけでございますが、日本に入りました段階で翻訳文が提出されなければ、その国際出願は取り下げとみなされるわけでございまして、日本語によるつまり翻訳文と原文とが双方合わさった部分と申しますか、双方に記載されてある事項が日本特許法制の上で出願の本体であるというふうに私ども考えておるわけでございます。
  221. 安田純治

    ○安田委員 そこで、その出願の本体なるものなんですけれども、そうすると、翻訳文と原文と重なった部分が本体である、そこが重ならない部分は本体ではないということになると思うのです。しかし、一応審査の対象は翻訳文ベースでいく。そうすると、原文と重ならない部分の翻訳部分は発明の本体ですか、そうじゃないのですか。
  222. 松家健一

    松家説明員 お答えいたします。  先ほどの長官の答弁の本体と申しますのは、条約十一条(3)の規定によりまして、原語の国際出願としての効力をなお維持し、かつ翻訳文を提出したときに翻訳にも記載されている、簡単に言えば、原文と翻訳文との双方に記載されている部分でございまして、他の出願との関係、先後願の関係等を考える場合には、この部分が発明の実体だということになりますが、翻訳文で審査するということにいたしておりますので、第一次的には翻訳文で発明を把握し、審査を進めることになります。
  223. 安田純治

    ○安田委員 そこで、先ほど来の各委員のいろいろな問題点が出てくると思うのです。発明の本体は原文であり、日本特許という保護を求める発明の本体は重なり合う部分である。しかも審査の対象は翻訳文である。つまり本来の発明の本体は原文であると思うのです。それが翻訳文と原文との合わさったところが日本で保護を求める発明の本体である。それからはみ出した翻訳文があったとすれば、この部分は審査の対象としてはずっと拘束されるわけだけれども、これは一体何んですか。保護を求める発明の本体ではない、しかし審査をするということになるわけですか。
  224. 松家健一

    松家説明員 わが国における審査は、権利が日本語で設定されるわけでございますので、当然に外国からのPCT出願の場合には翻訳文であるところの日本文の明細書に従って審査が行われます。ただ、翻訳文と原文とに不一致があれば、それは拒絶理由あるいは無効理由になる。それから他の出願との関係では、原文、翻訳文双方に記載された部分が有効に働く、そういう構成になっております。
  225. 安田純治

    ○安田委員 そうしますと、翻訳文と原文の重なり合わない、つまりオーバーしている翻訳の部分、この部分は本来日本に法的な保護を求められていない、発明の本体ではない。その発明の本体でないものを審査の対象にせざるを得ない。審査した結果、後で取り消しなり異議の申し立てなりということの対象なら別として、そういうオーバーした部分も含めた特許が決定されるということは現実にあるわけですね。それはどうなりますか。
  226. 松家健一

    松家説明員 数は非常に少ないと思いますけれども、現実にあり得ます。
  227. 安田純治

    ○安田委員 発明の本体といっても二つあると思うのですが、原語で表示された思想、内容それ自体本来の本体ですね。それから、日本語で保護を求めているのは重複している部分だということになりますけれども、そうすると本体でないもの、つまり発明者が保護を求めていない部分に特許がおりるという論理矛盾が出ませんでしょうか。実務的に差し支えないかどうかは別として、どうでしょうか。
  228. 松家健一

    松家説明員 外国語による国際出願日本指定国としたものにつきましては、先ほど来申し上げているように翻訳文を提出するわけでございます。そしてさらに、現実に審査をし、権利が設定されるのは、出願人から審査請求があったときに、審査請求を待って初めて行うことに現行制度はなっております。したがいまして、その場合、出願人日本語の明細書で記載した発明について審査請求をして特許権の付与を請求しているわけでございますから、出願人特許権設定を求めているわけでございますので、出願人が何の権利を求めているかということについて言えば、御指摘のような場合もそれが出願人が権利を求めている部分でございますから、それに従って特許性の有無を審査し、判断することになると考えます。
  229. 安田純治

    ○安田委員 そこで、大変重大なことになるような感じがするのですね。発明の本体なるものよりオーバーしている部分は本来発明の本体ではないのだということになると、先ほど私が質問したように、発明の本体以外のものに権利を与えることになる。ところが、あなたのおっしゃるように、それは結局日本語によって、翻訳文で審査請求がなされるわけだから、その翻訳の中身が申請人が保護を求めている中身になるのだとなると、現在の取り扱いと同じに、日本外国の人が直接特許を持ってきたのと結果的に同じことになって、まあ翻訳というプロセスはありますけれども、要するに特許庁の手元に来た日本の翻訳文、これがまさに本人の請求している発明の本体だ、日本ではそう扱わざるを得ないし、そうなんだということになりますと、そうすると、今度は異議の申し立てや何かあってその部分を削るとか削らないとかいう話がさっきからありましたけれども、これは一体どういうことになるのですか。これも論理的に矛盾しませんか。すでに日本語で翻訳したもので審査請求をしているのだ、それが保護を求めている申請人の請求内容なんだとしてしまえば、なぜこの原文と照らして削るという理屈が起きてきますか。
  230. 松家健一

    松家説明員 先ほどお答え申し上げましたように、百八十四条の六の規定は翻訳文を出願書類とみなすというだけでございまして、この規定はその翻訳文に記載された内容でもって国際出願日にさかのぼって出願された、そうみなすという規定ではないというふうに考えております。したがって、その意味におきましては、まず外国の受理官庁に出願いたしましたときの原語の明細書に記載せられ、かつ翻訳文の明細書に記載せられた両者に記載された部分、これが他の出願との関係等においては有効に働く部分でございます。そのように考えております。
  231. 安田純治

    ○安田委員 どうもちょっとわかりにくいのですが、要するに私の理屈はこういうことなんですよ。つまり人の発明を保護しようというのが特許である、そうでしょう。その本来の発明者の発明の中身というものは、外国の場合、その外国語で表示された思想、観念、これが発明内容だ。さてそこで、それを日本に持ってきて、日本の場合にはしかしそれは翻訳と重なり合わない部分があった場合に、あなたが先ほどおっしゃることによると、重なっている部分だけが日本で保護を求める発明の本体なんだ。では、はみ出した部分はどうかと言うと、それは日本で権利を設定するんだし、日本語の翻訳を審査の対象とせざるを得ないものである。しかし、では発明の本体でないものに権利を与えるのかと聞いたならば、今度は、いや、翻訳した部分で審査請求をするんだからその請求に係るものが申請人の保護を求める発明の中身になる、こうおっしゃるのですね。そうなれば、いまのこのPCT加盟しない前の外国人が日本特許を求めてくる日本語の文書と全く同じことに論理的になるのではないか。そうなれば、後から今度は原文と照らし合わせて削るということは論理的に成り立たないのではないかと聞いているのですよ。どうしてもやはり原文という母体がどこかに出てこざるを得ないのじゃないですか。
  232. 松家健一

    松家説明員 国際出願の最初からの中身は、外国の受理官庁に提出いたしました英語なら英語の明細書に記載されている発明でございます。第一次的にはこれをもって現行特許法における特許出願とみなすというのが百八十四条の三第一項の規定でございます。この根拠規定としては、この条約上の根拠は十一条(3)に求めることができます。ただし、翻訳文の提出を要求しておりまして、百八十四条の四の四項におきまして、原文に記載されていても翻訳文に記載されていなかったものは原文に記載されていなかったものとみなすという規定がございます。そのような意味におきまして、本来まず第一次的には内容を決めるものは原文であり、翻訳文でその原文の一部を翻訳しなかった場合には、その原文に記載されかつ翻訳文に記載された部分である、そのような意味におきまして、たとえば請求権の範囲というのはこの部分で決まる。もちろん先ほど申しましたように、審査は翻訳文の明細書に従って行うわけでございますけれども、もともと原文にないものは最終的には権利主張ができない、権利にならないものでございますから、それに対しては百八十四条の十四で拒絶理由を設け、さらに百八十四条の十五で無効審判の対象にするということを規定しておるわけでございます。
  233. 安田純治

    ○安田委員 だから、この百八十四条の十五、こうした無効審判とかそういうことをなされない場合にはそのまま通ってしまうわけでしょう。だから、私が前に聞いたのは、そういうことがなければ、本来発明の本体でないものでも、翻訳文でオーバーした部分があればその部分もそのまま特許として通ってしまうのではないかと聞いたんですよ。そうしたら、あなたが、いや、日本語で翻訳したもので申請するんだから、それが日本で保護を求める発明内容だと言うから、そこでわかりにくくなってきちゃって、あれ、それじゃいまの日本語外国人が特許を申請するのと同じことになっちゃうんじゃないかという疑問が起きたわけなんです。
  234. 熊谷善二

    熊谷政府委員 先ほど来申し上げておりますように、今度の国際出願に基づきます日本におきます出願の本体というのは、原文と翻訳文の双方に重なっている部分でございます。御指摘のように、審査は翻訳文によって行うわけでございますので、公告後異議がない場合はそのまま特許になるということになるわけでございますが、これはいわば瑕疵ある部分があるわけでございまして、たとえば公告後異議の申し立てがあった場合に、その部分を、つまりオーバーしている部分を減縮して免れようと出願人がした場合であっても、それが要旨変更になる場合には全部が拒絶になってしまう、こういうようなことがあり得るわけでございます。つまりまた、特許になった後も期限にかかわらず無効審判の請求によって無効にされるおそれのある瑕疵を持った特許である、こういうことでございます。具体的に公告になった後、たとえば仮保護の段階に入りますので、いわゆる差しとめ請求権を行使しようというような段階に具体的に第三者に権利行使をしようとする場合は、これは相手方において当然それに対して対抗措置として原文との対比を行うわけでございまして、そこに間違った部分があった場合には、この異議申し立てをベースとしてこの仮の部分につきましては是正あるいは全体がアウトになる、こういうことになるわけでございます。  権利以後の問題につきましては、無効審判の請求によりまして、出願人がこれを無効審判に対抗して免れるために訂正審判請求をする。これは申請の本体と申しておりますが、重なった部分にこれを直すというような訂正をする審判を請求した場合は、その審決があるまでは無効審判を待つというのが今度の法案の中に書いてあるプラクティスでございます。それによりましていわゆる本体にその場合は是正されるということになるわけでございます。それに伴いますその仮の姿の状態にありました過程で、現実に第三者に被害を与えた場合には、あるいは無過失賠償責任あるいは相当の損害賠償責任を負うわけでございまして、それは民事の問題としてまた改められていくものと考えます。
  235. 安田純治

    ○安田委員 長官のおっしゃるように、もし日本語の翻訳文が原文より大きかった場合瑕疵あるものだというふうに説明されれば、なるほどそれでいいのですが、先ほどのように部長さんみたいに言われると、どうも理屈がわからなくなるのですね。瑕疵があるものとして、きずを持ったままつまり一たんは存在する。しかし、瑕疵があるから無効審判や何かでいわば本体に返っていく、こういう御説明ですね。それならそれで論理の上ではわかるわけです。  さて、そうした瑕疵のあることが、このまま特許を決定してしまえば瑕疵が出るということが明らかに審査官が認識しておっても、日本語の文書で審査するわけですから、これはどうしようもないというのも、先ほど来の議論の中で出ていると思いますけれども、与えられた時間があと数分しかございませんので……。  こういうときはどうなりますか。外国語出願者甲という人がまずAという発明内容出願をした。同じ日に日本語出願者が日本で、これを乙としますか、Bという内容出願をした。もちろん甲の出したAという出願はオリジナルランゲージになると思うのですね。Bの方は日本語である。そしてその後甲が翻訳文を出す。そのときにAプラスBの範囲のクレームを求める翻訳文を提出してきた。こうした場合に乙のBという出願と甲のAという出願、そしてしかも翻訳文はAプラスBという翻訳文の範囲でクレームの請求が来たという場合に、これは甲乙間の関係はどうなりますか。
  236. 松家健一

    松家説明員 ただいま御指摘の同日出願の場合でございます。こういったケースは現実問題としてはきわめてまれであろうというふうに考えられますけれども、このケースの場合に、恐らく御質問特許法三十九条七項の協議命令に関することではないかと察しいたしますが、このケースにつきましては、三十九条七項の協議命令は出せないという扱いをするというふうに考えております。
  237. 安田純治

    ○安田委員 その協議命令が出せないという根拠は、要するにAプラスBのBですね、甲の出した方のBは発明の本体ではない、いわば将来瑕疵になっていくものですね。だから、そのいわば何といいますか、ゴーストみたいなものですね、影みたいなもの、しかも実体を写していないわけですけれども、したがって、その人に協議しろということを言うことはできないわけで、いま言ったように協議の命令は出せない、こういう理屈だと思うのですね。そうしますと、そのままずっといきますとダブルパテントということも生ずる危険はございませんか、甲と乙に対して。
  238. 松家健一

    松家説明員 まず、仮にこの二つの同日出願につきまして他の拒絶理由がないとなりますと、出願公告されるわけでございます。その際に、特許異議の申し立てがあれば、先生指摘の甲出願については原文がAであったものを翻訳文でAプラスBに拡張変更したわけでございます。その点が百八十四条の十四の拒絶理由に該当いたしまして異議申し立てがあれば、それを審査し、拒絶されるということになります。さらに、特許になった後におきましても、百八十四条十五の無効審判の理由になります。
  239. 安田純治

    ○安田委員 もし乙が百八十四条の十四の特許異議の申し立てをしなかった場合はどうなりますか。
  240. 松家健一

    松家説明員 特許異議の申し立ては何人もなすことができますし、乙以外の第三者がすることもできますので、乙が気がつかなくても異議申し立てばあり得ます。
  241. 安田純治

    ○安田委員 それでも、必ずだれかがやらなければならない義務があるわけではないですから、利害関係のない人は知らぬ顔をしているかもしれない。かえって便利かもしれない。そうなりますと、そういう請求がなされないこともあり得ますね。発見した者は必ず請求しなければならない、公務員が違法行為を発見した場合には必ず告訴告発の手続をとらなければならないみたいな義務を日本国民に負わせるなら別だけれども、そうでなければだれも請求しないこともあり得ますね。その場合はダブルパテントでそのままいくのかどうか。
  242. 熊谷善二

    熊谷政府委員 公告後も異議申し立てがなかった場合に、原文のAにプラスしたいわば瑕疵ある架空のBがくっついたままの特許国内の別途のBという本願のダブルパテントという状態があるではないかということは、私は理論的にはあり得ると考えておりますが、ただいま来審判部長が申しておりますように、理論的な問題でございまして、具体的な実害はその間にはまだ発生していない状況であろうと思います。もし仮に、一方がその権利を行使する段階で具体的に相手方に対して差しとめ請求あるいは実施に対する対価の交渉に入った場合に、果たしてそれが原文との関係で重複されている部分であるかどうかということが当然問題になるわけでございまして、仮に両方あり得たとしても、必ずや実行段階においてはAプラスBというものについては瑕疵が発見されるということになって、是正されるということになるであろうと考えております。
  243. 安田純治

    ○安田委員 質疑時間が来たというお知らせがありましたので、まだたくさん聞きたいことがあるのですが、きょう採決ということではないでしょうから、一応この程度にしておきますけれども、ひとつ委員長に若干お許しをいただいて、最後の一問ですけれども、この翻訳文をベースにして審査官審査をして、異議申し立てがあって初めて原文に返るということはきわめておかしいのではないかということを午前中から各委員が言われていると思うのです。  それで、たとえば故意でなくても、翻訳文の場合に、仮に一番卑近な例をとれば、モーターなんという言葉は日本では電動機と普通は考えますけれども、英語の字引きを引けば内燃機関もやはりモーターというふうになっております。非常にたくさんございますね。こういうような技術用語については非常に多義的な解釈があるのでして、そういうプリミティブといいますか、そうしたことでも翻訳文がベースであるといって、審査官が気がつきながらみすみすやるということになるのは非常におかしいのじゃないか。  先ほど来能力があるとかないとか言われましたけれども、それならそれで、百八十四条の十四に「拒絶理由の特例」ということが書いてありますが、この中で括弧して、つまり翻訳文と合わない場合の話でしょうけれども、「これを理由とする特許異議の申立てがあった場合に限る。」というこの括弧書きを取ってしまえば、これは一発で解決する。ただ問題は、そうするとばらつきがあるとかなんとかおっしゃいますけれども、そういう場合に、別に異議の申し立てば異議の申し立てでやったっておかしくないし、官庁が職権審査主義で判断した一定の判断について異議の申し立てを許さないなどという法令は日本の法令でそんなにないわけですから、異議の申し立てば異議の申し立てで併存させて、ばらつきをその段階でチェックすることはできるはずですから、職権審査主義と異議申し立ての申請主義と二律背反ではないと思うのですね。だから、そういう点で私どもは午前中からの御答弁には納得できないところがございます。そういうダブルチェックといいますか、異議の申し立てば異議の申し立てでいいとして、審査段階で拒絶理由の特例の中でこの括弧を取ることと二つ並立させることはなぜできないのか、それでばらつきはなくなると思うのですが、どうですか。
  244. 熊谷善二

    熊谷政府委員 先ほど来るる申しておりますように、私どもとしましては、異議の申し立てに限る場合にのみ法的に拒絶理由といたしておるわけでございます。この部分を削って、審査段階で気がついたときには法的に直せる、行政処分をそこで行うことができる、こういうことにいたしまするにしては、どのような事情の場合にどのような事情で発見されたかにつきましては区々でございまして、気がつかない場合あるいは気がつく場合それぞれまちまちになるわけでございます。その点で私どもとしては、全件について審査をする必要がなくて、気がついたときにだけやるということはとうていとり得ないと考えておるわけでございます。  運用の問題といたしまして、先ほどもちょっと触れたわけでございますが、この間に発見した場合に、情報として関係者にこれを流して注意を喚起することまでは現行の範囲内でできることであろうと考えますので、その限度において私ども最大の手当てと申しますか、対策なり措置なりを講じてまいりたいと思いますが、制度として法的に、たまたま気がついた場合に拒絶をするということは私どもとしてはとうていとり得ない。先ほど来るる言っておりますように、非常に恣意にわたる可能性がございます。また、審査官の裁量の範囲が余りにも緩くなり過ぎる、また、特許制度の公平性を担保するという観点から見ていかにもとり得ない考えでございまして、制度としては、私どもとしては絶対に受けとめがたいと考えておるところでございます。その点、事情を御理解いただきたいと思います。
  245. 安田純治

    ○安田委員 時間が来ましたので、いまの答弁に納得したわけじゃございませんけれども、これで終わります。
  246. 山下徳夫

    ○山下(徳)委員長代理 次回は、明六日木曜日午前十時理事会、午前十時四十分から委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。     午後五時十九分散会