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1978-03-15 第84回国会 衆議院 商工委員会 第8号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和五十三年三月十五日(水曜日)     午前十時三十八分開議  出席委員    委員長 野呂 恭一君    理事 藏内 修治君 理事 中島源太郎君    理事 武藤 嘉文君 理事 山下 徳夫君    理事 岡田 哲児君 理事 渡辺 三郎君    理事 松本 忠助君 理事 宮田 早苗君       鹿野 道彦君    佐々木義武君       島村 宜伸君    田中 正巳君       辻  英雄君    楢橋  進君       西銘 順治君    橋口  隆君       松永  光君    渡部 恒三君       渡辺 秀央君    板川 正吾君       加藤 清二君    後藤  茂君       上坂  昇君    中村 重光君       長田 武士君    玉城 栄一君       工藤  晃君    安田 純治君       大成 正雄君  出席国務大臣         通商産業大臣  河本 敏夫君  出席政府委員         公正取引委員会         委員長     橋口  収君         公正取引委員会         事務局経済部長 妹尾  明君         通商産業政務次         官       野中 英二君         通商産業大臣官         房長      宮本 四郎君         通商産業大臣官         房審議官    島田 春樹君         通商産業省通商         政策局次長   花岡 宗助君         通商産業省産業         政策局長    濃野  滋君         通商産業省基礎         産業局長    天谷 直弘君         通商産業省生活         産業局長    藤原 一郎君         中小企業庁長官 岸田 文武君         中小企業庁計画         部長      小松 国男君         中小企業庁指導         部長      豊永 恵哉君         運輸省船舶局長 謝敷 宗登君         労働省職業安定         局長      細野  正君  委員外出席者         大蔵省銀行局特         別金融課長   藤田 恒郎君         通商産業省基礎         産業局総務課長 堺   司君         商工委員会調査         室長      藤沼 六郎君     ――――――――――――― 委員の異動 三月六日  辞任         補欠選任   武部  文君     藤田 高敏君 同日  辞任         補欠選任   藤田 高敏君     武部  文君 同月七日  辞任         補欠選任   大成 正雄君     小林 正巳君 同日  辞任         補欠選任   小林 正巳君     大成 正雄君 同月八日  辞任         補欠選任   田中 六助君     田中 正巳君 同月九日  辞任         補欠選任   渋沢 利久君     川崎 寛治君 同日  辞任         補欠選任   川崎 寛治君     渋沢 利久君 同月十四日  辞任         補欠選任   萩原 幸雄君     渡部 恒三君 同月十五日  理事山崎拓君同日理事辞任につき、その補欠と  して藏内修治君が理事に当選した。     ――――――――――――― 三月三日  計量法の一部を改正する法律案内閣提出第四  九号)(予) 同月七日  地方自治法第百五十六条第六項の規定に基づき、  鶴岡繊維製品検査所の出張所の設置に関し承認  を求めるの件(内閣提出承認第四号) 同月六日  電気工事士法改正に関する請願加藤紘一君  紹介)(第一七五五号)  消費者のための流通政策実現に関する請願(加  藤紘一紹介)(第一七五六号) は本委員会に付託された。     ――――――――――――― 三月十三日  中小企業高度化資金制度改善等に関する陳情  書  (第一九二号)  円高騰による中小企業対策拡充強化に関する  陳情書外九件  (第一  九三号)  工業配置特別誘導地域指定に関する陳情書  (第一九四号)  大規模小売店舗の進出に伴う中小小売商業対策  に関する陳情書外一件  (第一九五号)  小売商業調整特別措置法改正に関する陳情書  (第一九六号)  発電用施設周辺地域整備法に基づく対象事業の  拡充強化に関する陳情書  (第一九七号)  金属鉱業緊急対策確立に関する陳情書外三件  (第一九八  号)  洋上石油備蓄システム安全基準制定等に関す  る陳情書  (第一九九号) は本委員会に参考送付された。     ――――――――――――― 本日の会議に付した案件  理事辞任及び補欠選任  特定不況産業安定臨時措置法案内閣提出第三  八号)      ――――◇―――――
  2. 野呂恭一

    野呂委員長 これより会議を開きます。  この際、理事辞任の件についてお諮りいたします。  理事山崎拓君から、理事辞任申し出があります。これを許可することに御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  3. 野呂恭一

    野呂委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決しました。  引き続き、理事補欠選任についてお諮りいたします。  ただいまの理事辞任に伴う補欠選任につきましては、先例により、委員長において指名することに御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  4. 野呂恭一

    野呂委員長 御異議なしと認めます。  それでは、委員長は、藏内修治君を理事に指名いたします。      ————◇—————
  5. 野呂恭一

    野呂委員長 内閣提出特定不況産業安定臨時措置法案を議題といたします。  提案理由説明を聴取いたします。河本通商産業大臣。     —————————————  特定不況産業安定臨時措置法案     〔本号末尾に掲載〕     —————————————
  6. 河本敏夫

    河本国務大臣 特定不況産業安定臨時措置法案につきまして、その提案理由及び要旨を御説明申し上げます。  わが国経済現状は、長期にわたる内需不振に加え、昨年後半以降の急激かつ大幅な円高により産業全体が深刻な打撃を受け、企業体力の低下と雇用不安の深刻化が危惧されております。  とりわけ、原燃料価格の上昇、安定成長への移行に伴う需要長期低迷等構造的要因によって著しい過剰設備を抱えるに至っているいわゆる構造不況業種は、その不況が一層長期化し、かつ、深刻化しております。  このような事態を放置すれば構造不況業種に属する企業の存続を困難にし、雇用不安を生じるなど重大な社会的経済的混乱を引き起こすおそれがあるのであります。  こうした事態を回避するためには、一般的な景気拡大策あるいは従来から講じてきた短期生産価格調整等対策のみでは不十分であります。構造不況業種については、その不況事態を招いている共通かつ基本的な原因である過剰設備についてその処理を促進し、構造改善を進めることが現下の急務となっているのであります。  本法案は、このような状況にかんがみ、構造不況業種について、その実態に即した基本計画を策定し、事業者の自主的な努力前提としつつ、過剰設備処理促進等のための措置を講ずることによって、構造不況業種不況克服経営の安定を図ることを目的として立案されたものであります。  次に、この法案概要を御説明申し上げます。  第一は、本法による措置対象となる業種指定についてであります。  本法においては、まず対象候補業種を、平電炉業、アルミニウム製錬業、合成繊維製造業船舶製造業及び著しい過剰設備に起因する長期不況過剰設備処理等によって克服することが国民経済の健全な発展を図るため必要な業種として、関係審議会意見を聞いて、この法律の施行の日から一年以内に政令指定する業種に限定しております。次いで、これらの対象候補業種の中から大部分の事業者申し出があったものを特定不況産業として政令指定し、この法律による措置対象とすることとしております。  第二は、安定基本計画の作成についてであります。  主務大臣は、特定不況産業ごとに、関係審議会意見を聞いて、不況克服と安定を図るための安定基本計画を作成することとしております。安定基本計画には、過剰設備処理目標設備の新増設制限事業転換等不況克服と安定を図るための基本的な事項を定めるものとしております。  第三は、過剰設備処理及び設備の新増設制限についてであります。  本法におきましては、安定基本計画に定める過剰設備処理その他の措置については、事業者が自主的に行うよう努めることを要請しております。  しかしながら、事業者の自主的な努力のみをもってしては、安定基本計画が円滑に実施されない場合で、特に必要と認められるときには、主務大臣は、関係審議会意見を聞いて、過剰設備処理及び設備の新増設制限についての共同行為実施指示できるものとし、その指示に従った共同行為独占禁止法の適用を除外することとしております。主務大臣がこの共同行為実施指示しようとするときは、公正取引委員会の同意を必要とすることとしており、また公正取引委員会は、その共同行為内容が一定の要件に適合しなくなったと認めるときは、主務大臣指示変更等を求めることができることとしております。  さらに、本法におきましては、最近の厳しい雇用情勢にかんがみ、安定基本計画に従って実施される過剰設備処理その他の措置に関し、事業者は、その雇用する労働者失業予防その他雇用の安定に配慮すべきこととするとともに、国等失業予防その他雇用安定等を図るため必要な措置を講ずるよう努めるべきこととしております。  第四は、特定不況産業信用基金についてであります。  特定不況産業信用基金は、本法に基づき、産業または金融に関し学識を有する者が発起人となり、大蔵大臣及び通商産業大臣の認可を受けて設立されるものであります。  この基金は、特定不況産業における計画的な過剰設備処理を促進するため、安定基本計画に従って実施される過剰設備処理のため必要となる資金等の借り入れに係る債務を保証して、その資金等の融通を円滑にするものであり、その債務保証の原資は、日本開発銀行の出資及び民間の出資または出損によるものとしております。  以上が本法案概要でありますが、本法は、構造不況業種不況克服と安定を図るため必要な期間を勘案し、昭和五十八年六月三十日までに廃止するものとしております。  本法に基づくこれら施策は、構造不況業種不況克服と安定に欠くべからざるものであり、構造不況業種をめぐる事態重大性及びその対策緊急性にかんがみ、ぜひとも早急に本法案制定を図ることが必要であると信ずる次第であります。  以上が、この法案提案理由及びその要旨であります。  何とぞ、慎重御審議の上、御賛同くださいますようお願い申し上げます。
  7. 野呂恭一

    野呂委員長 以上で提案理由説明は終わりました。     —————————————
  8. 野呂恭一

    野呂委員長 これより質疑に入ります。  質疑申し出がありますので、順次これを許します。渡辺三郎君。
  9. 渡辺三郎

    渡辺(三)委員 いま大臣から本法案趣旨について御説明があったわけでありますけれども、ずばりお聞きしますけれども、この法案によって何を通産省としてはねらっておるのか。要するに、この法案実施することによって、今後短期あるいは中期の法律による効用といいますか、今日の特定不況産業を立ち直らせる、そういう意味での効用を確信を持っておられるのかどうか、まず最初、基本的にお聞きしたいと思うのです。
  10. 河本敏夫

    河本国務大臣 いま政府がとっております景気対策あるいはまた産業政策は、一般的な景気浮揚による内需拡大、こういう政策基本でありますが、これによりまして、いわゆる構造不況業種はある程度経営内容改善されると思います。しかしながら、オイルショック以降の深刻な影響を考慮いたしますときに、この一般的な内需拡大策だけではやはり構造不況業種問題は解決できませんで、その抱えております非常に膨大な過剰設備処理ということを特別にこれを進めてまいりませんと、どうしても問題の根本的な解決にはなりません。  そこで、やはりこの際は、一般的な内需拡大策のほかに、この長期にわたって過剰設備に悩んでおりますいわゆる構造不況業種体質改善を図っていかなければならぬ、その体質改善とは何ぞやというと、それは過剰設備廃棄である、このことによりまして構造不況業種は立ち直ることが初めて可能になる、このような理解のもとにこの法律をお願いしておるところでございます。
  11. 渡辺三郎

    渡辺(三)委員 そこで、いま、この法律効用といいますか、過剰設備処理する、こういうことによって当面不況に悩んでいる構造不況業種と言われる産業を立ち直らせる、その一助にする、こういうふうなお話でございますけれども、この法律実施によるデメリットといいますか、そういうふうな反面の状況も生まれてくるのではないか、こういうふうに私どもは考えておるわけですけれども、その点についてはどのように御認識なさっておられますか。
  12. 河本敏夫

    河本国務大臣 多分、デメリットと言われました内容は、二割になるか五割になるかわからぬが、とにかくそれだけの過剰設備廃棄すれば雇用問題にも相当な影響が出てくるではないか、こういうことをお指しになっておるのではないかと思いますが、現在までにすでにある程度の合理化が進んでおりますから、雇用問題はある程度調整できておるわけであります。しかしながら、やはり何と申しましても、相当大規模設備廃棄をいたしますと、当然雇用問題も起こってくるものと私どもは考えます。  一面、それでは何もしないでいまのままほうっておいたならばどうなのかということになりますと、これはやはり業界全体が壊滅的な打撃を受ける、日本経済全体にも非常に悪影響を及ぼす、こういうことになりますので、やはりこの過剰設備という大きな病気というものはこの際手術をする必要があるのではないか、手術をしないと体全体が悪くなる、こういう判断のもとに、雇用問題には十分配慮しながら過剰設備廃棄というものを進めていかなければならぬと思います。
  13. 渡辺三郎

    渡辺(三)委員 よく構造不況というふうな言葉が使われますし、私どもも、ある意味では安易に、不用意にそういう表現をすることが多いのでありますけれども、一体この構造不況というものの定義を大臣はどのようにお考えになっておられますか。
  14. 河本敏夫

    河本国務大臣 これは先ほど法律案趣旨説明でも申し上げましたが、オイルショック以降長期にわたりまして相当の過剰設備を抱えておりまして、一般的な景気対策だけではどうしても立ち上がることがむずかしい、こういう業種を指しておるわけであります。
  15. 渡辺三郎

    渡辺(三)委員 本法案の第二条に「特定不況産業」というのがございます。この中で、大臣が先ほど趣旨説明されたような、あるいはただいまお答えをいただいたような趣旨といいますか、そういう形で定義づけておられると思うのです。一体、この場合の構造というのは、結局のところ資本主義経済構造、そういう意味での構造ということを指して言われるのか、あるいは単に、極端な言い方ですけれどもオイルショック以降ああいう状況の中で一時的に需給のアンバランスがひどくできてしまって、そして設備が非常に、やや中期的にといいますか、慢性的に過剰になっておる、こういうふうな狭義の範囲でこの構造という問題をあるいは構造不況という問題を考えておられるのか、あるいはもっと根本的にいわゆる資本主義経済構造そのものから来ておる構造不況という御認識をなさっておるのか、どちらでしょうか。
  16. 河本敏夫

    河本国務大臣 資本主義全体の構造問題、こういうことではございませんで、オイルショック以降の需要構造の変化、それに伴って当分の間設備の過剰問題が回復しない、長期にわたって設備の過剰というこの一番むずかしい問題をどうも処理できない、こういう業種を指しておるわけであります。
  17. 渡辺三郎

    渡辺(三)委員 大臣も先ほど言われましたように、特にここ数年来非常に過大な在庫を抱え、あるいは過剰な設備を持ち、需給バランスが非常に崩れてしまって、そのためにきわめて深刻な不安定な状態に特定業種が置かれておる、こういうふうなことでありますけれども、しかし、その原因あるいはそれぞれの不況産業と言われるものの現状実態、これが必ずしも同じではないと思うのですね。時間があればこの指定を予想されている業種について細かに質問を申し上げてまいりたいとは思いますけれども、したがって、これらの原因現状実態というものが必ずしも同じではありませんから、これから生まれてくる、あるいは生まれるべき有効な対策というものも、やはりそれぞれ違った味を持っておると思います。  現に、これまでも個別の対策措置というものがとられてまいったわけでありますし、これからもそれがどうしても必要だ、こういうふうに思います。強いて共通点を求めるとすれば、それは一般に設備が過剰だ、こういうことであるわけです。しかもその設備廃棄あるいは格納休止、こういった設備処理、こういうふうなものを進めていくためにはどうしても特定資金が必要だ、こういうふうになってきておる。この過剰設備処理するという点の共通点、それから処理するに当たってはどうしても特定資金が必要だ、この点が強いて言えばこの法案の中で盛られている二つの目玉ではないか、こういうふうに考えるのですが、その点の御認識はどうでしょうか。
  18. 河本敏夫

    河本国務大臣 いま御指摘の二点が、一番の中心課題でございます。
  19. 渡辺三郎

    渡辺(三)委員 そうだとしますと、この法案の中でも言われております信用基金制度、これを新たにつくる、結局のところはこれに尽きてしまうのではないかという気がするのですが、違いますか。
  20. 河本敏夫

    河本国務大臣 そこが一番大事な点であります。
  21. 渡辺三郎

    渡辺(三)委員 これは改めて少し後で詰めたいと思います。  この法律実施によって過剰設備処理、つまり格納休止廃棄、これが進められていって、結局生産を減らす、その結果は生産を減らすというかっこうになるわけです。そこで需給バランスをとる。そうしてその過程では、減少した設備に見合って人員の整理が出てくるだろう、そうした供給を減らして当該業種の安定を図ろう、こういうふうなことになっていくと思うわけですけれども、この場合、いまこの法案に示されております四業種、あるいはこれから対象にされるというふうに予測される特定不況産業、こういうものの製品の輸出あるいは輸入、この問題に関連して若干お聞きしておきたいと思うのです。  わかりやすく一つのたとえ話をしますけれども国内でつくっている特定不況産業業種指定された製品、これが国内供給が過剰だ、したがって設備処理をしてその生産量というものを減らす、ところが、その減らした分が、必ずしもそれと正確に数字は一致するわけではありませんけれども、国外からの輸入がその分だけどっとふえてくる、こういうふうなことであっては、いまのわが国経済現状の中で、この需要供給バランスというものが均衡しない、こういうふうな結果になるのではないか、非常に単純な一つの例でありますけれども、そういうふうに考えられるわけです。こういう問題に関連をして、一つ対外経済政策といいますか、あるいは日本貿易構造といいますか、それをどのようにされていくのか、御見解をお伺いしたいと思います。
  22. 河本敏夫

    河本国務大臣 一番の根本は、日本産業、特に工業製品外国に対して競争力を持つということが一番の根本でございまして、いま政府の進めております幾つかの産業政策も、国際競争力をどうすれば保持できるかということが中心でございます。     〔委員長退席中島(源)委員長代理着席〕 ある意味においては、今度の構造不況業種対策というものも、構造不況業種の抱えております当面の問題を解決しながら、その業界が、その業種がいかにすれば国際競争力を保持できるかということを考えておるわけでございますが、いまの御質問は、そういう構造改善事業のさなかにおいて、外国からの輸入というものが仮に無制限に入ってきたという場合には一体その関係はどうなるのか、こういうことでございます。  わが国は、御案内のように貿易立国でございまして、自由貿易原則としておるわけでありますし、自由貿易原則が崩れますとわが国経済というものは保てないことになります。でありますから、よほどの場合でない限り輸入制限をするということは避けなければならぬ、これは当然のことでございます。しかしながら、構造不況業種対策を進めておる間は、できるだけやはり大きな影響が出てこないように当然配慮しなければなりません。しかし、それは行き過ぎますとやはり自由貿易原則に反する、こういうことにもなりますので、そういう点を十分考えながら、いわゆる安定基本計画、どうすればその業種業界が立ち直ることができるかというその計画をつくることにはなるわけでありますが、その場合に、貿易のことも十分配慮しながら当然つくられる、また、つくっていかなければならぬ、このように私どもは考えております。
  23. 渡辺三郎

    渡辺(三)委員 いまの問題ですけれども、この法案だけでいま申し上げました貿易関係対外経済関係改善がなされていくとは、もちろん私も考えておりません。その他のいろいろな措置があると思うのです。しかし、結局現在の需給バランスが非常に崩れておるというふうな前提の上に立って共同行為として設備処理していくわけでありますから、それだけ事実上縮小するわけでありますから、その縮小された分だけ同じ製品外国から今度は輸入拡大されるというふうなことであれば、対外収支の面では改善されるかもしれませんけれども、しかし、実際問題として、そのことによって特定されるこの不況産業業種が非常に体質改善されたというふうなことには必ずしもいかないのじゃないか、こういうふうなことを考えます。  それで、この問題については、そういうわが国国内生産設備の縮小あるいは処理、これが即外国に依存をするというふうな形をそれこそ構造的に今後継続的に行われていくのだとすれば、非常に私は問題があるように考えるわけです。たとえば、卑近な例として繊維の問題を取り上げましても、この発展途上国からの追い上げ——繊維関係の中でのその製品によりますけれども追い上げが非常に激しいという状況の中で、繊維業界は非常にいま苦労している一面があるわけですけれども、こういった問題を考えてみましても、この問題は非常に大きな問題を含んでいるのではないかと思うのです。したがって、いま大臣が、安定基本計画をつくる際にその面については慎重にも慎重を期した配慮が必要だ、こういうふうにおっしゃられたわけですけれども安定基本計画を策定される場合に、この対外経済上の諸問題というものも十分に計画策定の中で入ってくるというように確認をしてよろしいですか。
  24. 河本敏夫

    河本国務大臣 私は、構造不況業種の問題は、過剰設備廃棄をいたしますと、当面の問題は大部分解決できると思います。  ただしかし、科学技術日進月歩でございますし、工業技術日進月歩で進んでおるわけでありますから、絶えず新しい、世界全体に対して競争力のある設備というものを次から次へやはり新陳代謝をしていかなければならぬ。ある程度の設備廃棄すればそれで事終われりということでは、これはまた別の意味においてその産業は当然疲弊をするわけでありますから、引き続いてやはり日進月歩科学技術に先んじて進んでいく、それぐらいな考え方がやはり当然必要だと思います。  その意味におきまして、繊維産業をいま具体的に例を挙げてお話がございましたが、御案内のような事情で近隣諸国からの追い上げというものが大変厳しゅうございます。そこで、この過剰設備廃棄をいたしましても、依然として近隣諸国からの追い上げという問題は残りますから、その場合には、やはりこれまでのつくっておりました業種をある程度高度なものに転換をするとか、あるいは生活の多様化に応じてそういう新しい対応をしていくとか、そういう工夫と努力がやはり引き続いて当然必要である、過剰設備廃棄だけでは問題は全部解決されるものではない、このように理解をしております。
  25. 渡辺三郎

    渡辺(三)委員 それからもう一つ、この制度の実施あるいは施策の推進によりまして、構造改善構造改革の確固たるビジョンが生まれてくるのか。いわゆるこの法律によって今後指定をされていくであろう特定不況産業構造改革といいますか、構造改善といいますか、そういう点がこの法律の施行、推進によって明確なビジョンが生まれてくるのかどうか、この点はぜひお伺いをしておきたいと思うのです。これは今後の業界のありよういかんというふうな問題でもあるというふうに考えるわけです。この法律の施行によって、共同行為によって積極的に設備処理される。その結果、一体どうなるのか、一体どれだけの生産量が必要かつ妥当なものなのか、こういうふうな点の尺度といいますか見通し、あるいは通産なりのいまの時点で考えておられる基準、こういうようなものはどのようなものかという点ともかかわり合って、いまの点について大臣基本的なお考え、見通しをひとつお聞かせいただきたいと思います。
  26. 河本敏夫

    河本国務大臣 これは、構造不況業種と現在想定されておりますものが十幾つかございますので、その業種ごとによりまして対応は違ってくると思います。ある業種は大体二割前後の設備の過剰ではないかと思われる業種もあれば、あるいは三、四割、中にはひどいのは六、七割も過剰ではないか、このように考えられる業種もございます。したがいまして、業種ごとに対応の仕方はずいぶん違うと思います。ただしかし、世の中は次から次へ変わっておりますから、やはりそういう将来の世の中の移り変わりということもある程度展望しながら、当然現在の過剰設備問題に対処しなければならぬと思います。
  27. 渡辺三郎

    渡辺(三)委員 業種ごとにその実態も違うし、あるいは対策、もっと具体的にこの設備処理規模、これが違うということは私ども認識しておりますし、先ほども私も申し上げました。しかし、設備処理していくという点では全く共通しておるわけですから、そのためのこの法案でありますから、そういう意味で、それぞれの業種ごとにいわゆる安定基本計画が樹立をされて、そしてそれが仮に実施の段階に進んでいく、その場合に、それぞれの業種ごとにお立てになる安定基本計画、あるいはそれを進めていくというそれぞれの業種ごとの確固たる一つの見通しというものがなければ、私は余り意味がない、こういうふうに考えるのです。たとえばいま時点だけで判断すれば六割の設備過剰だ、あるいは二割の設備過剰だ、だからそういうふうな過剰設備処理を進めていく、しかし、二年たってみたら、あるいは三年たってみたら、これは設備処理のし過ぎだった、したがって、改めて今度は二割、三割の新増設をやらなければならぬ、こういうふうな繰り返しであっては余り意味がないのじゃないか、私はこういう気がするわけです。  ですから、当然これに対しては、こういう法律をおつくりになってそしてそれを実施するからには、しっかりした見通しとビジョンというものがやはりなければならぬ、こういうふうに考えておるわけなんで、その点、重ねてお伺いをしたいと思います。
  28. 河本敏夫

    河本国務大臣 おっしゃるとおりでありまして、たとえばいま構造不況業種と目されまして設備が何割か余っておりますけれども、しかしながら、その業種は数年先には必ず設備が不足を来すであろう、そのように考えられておる業種もございます。そういう業種は、廃棄するよりもむしろ凍結しておいた方がいいのではないか、こういうことも研究しなければならぬと思っております。でありますから、業種ごとにそれぞれ対応の仕方は違ってくると思いますけれども、やはり少なくともここ数年の間は確固たる見通しというものを立てなければならぬ、そのためには各方面のお知恵を拝借しなければならぬと思っております。ただ、何しろ世の中はこういう激動の時代でありますから、数年先くらいまではおよその見当はつきますけれども、しかし、十年先とか十五年先になりますと、日本経済も大きくなりますし、世界経済も大きくなりますから、そのときにはまた当然需給関係も変わってくると思います。あるいはそういう場合には新しい設備が必要になる、こういう場合もあろうかと思いますが、少なくともここ数年の間の確固たる見通しは必要だと思います。
  29. 渡辺三郎

    渡辺(三)委員 そこで、これは業種ごとに細かく詰めていかなければ一般論に終わってしまいますけれども、いま大臣の御答弁の中にもありましたとおり、いま確かに非常に設備が過剰だ、これだけでもって設備処理内容が安易に廃棄処分というふうな形だけが先行していくということになれば、経済の激動期だけに非常に大きな問題を残す結果にもなりかねない。したがって、これは格納休止というような問題等について十分にその効用を考えていかなければならないのではないか。私どもの見解から言えば、むしろ格納休止を先行させるべきであって、設備廃棄というふうな問題は慎重の上にも慎重を期さないと誤りを招く結果になりはしないか、こういう点を一つ心配していることを申し上げておきたいと思うのであります。  少し中身に入りたいと思いますが、通産大臣それから公取委員長は、三月三日の本委員会で、この法案の中にあります安定基本計画、これは一種のガイドラインあるいは目安だ、このように言明されたと思うわけであります。つまり、業界自体の計画実施があくまでも基本だ、こういうことだろうと思うわけでありますけれども、それでは、なぜ現行独禁法の二十四条の三、いわゆる不況カルテル、ここでやれないのか、こういう点に私はまだ若干の疑問を感じておるわけであります。安定基本計画か一種の単なる——単なると言えば極端になるかもしれませんが、一種のガイドラインだ、目安だ、こういうふうに言われておることと関連をして、いまの点は一体どうでしょうか。
  30. 河本敏夫

    河本国務大臣 先ほども申し上げましたように、少なくとも数年間を展望いたしましてあるいはまたそれ以上を展望いたしまして設備廃棄をやっていこうということでありまして、そのための安定計画であります。安定計画は中身はどういう意味を持っておるかというお話でございましたから、それは一種のガイドラインである、こういう趣旨のことを申し上げたわけでございます。
  31. 渡辺三郎

    渡辺(三)委員 業界自体の計画実施基本になるということは、この法案の中身を見てわかるわけですけれども、しかし、結局は、業界の自主努力といいますか、それだけではこの深刻な不況の中で、あるいは指定を予定されております業界実態からして、だめだというふうに見ておられるんだと思うのです。そういう危険というか危惧を非常に強く感じておられるのだと思うのです。したがって、この法案の表現によれば指示カルテル、こういうふうになっていくんだと思うわけでありますけれども、ここでお聞きしたいのは、指示カルテル発動の条件をできるだけ具体的にお述べいただきたいと思います。これは局長で結構です。
  32. 濃野滋

    ○濃野政府委員 お答え申し上げます。  先ほどから大臣の御答弁にございますように、私ども、いわゆる構造不況業種のいわば一般的な全体を通じましての共通の問題でございます過剰設備処理、これを進めるのも事業者の自主的な努力前提にするという基本的な考え方をずっと持っておりますし、今回の法律をつくりますときも同じ考え方で、したがって、法律の第四条等に「事業者努力」というような規定をわざわざ設けたのもそういうわけでございますが、先生御指摘のように、それではこういう事業者の広い意味での自主的な努力、これでどうしてもだめなときにどうするか。やはり一つのガイドラインであるとはいえ、将来の姿を描きまして安定基本計画に沿った設備処理をすることが問題の基本的な解決であるという以上、最後にどうするかという問題が出てまいります。  それがいわば共同行為指示でございまして、その要件といたしましては、その第五条に書いてございますように、一つは、そういう自主的な努力だけではどうしてもできないという見通しがあるということ、それから第二は、国の立場から見まして、こういう安定基本計画をつくったにもかかわらずそれが進められない、ほうっておいては当該業種のみならずもっと広い意味国民経済全体にいろいろな影響を与え、経済発展に支障を及ぼす、そういう場合にこの指示カルテルを発動する、こういうことにしたわけでございまして、この設備処理実施することを確保するための最後の手段として指示カルテル制度を設置したい、こういうことにしたわけでございます。
  33. 渡辺三郎

    渡辺(三)委員 しかし、指示があっても、事業者間で具体的に決まらなければ、実際問題として共同行為による設備処理というものはできないわけですね。強制力はないわけでしょう。どうなさいますか。
  34. 濃野滋

    ○濃野政府委員 いわゆる指示カルテルと言われておりますものには、強制力はないことは御指摘のとおりでございます。ただ、現在のいろいろな経済体制、しかも設備処理という大変大事な各事業者にとっても非常に基本的な問題につきまして、これをスムーズに進めていきますためには、この指示カルテルという言葉は非常に強制的なにおいを与えますが、この設備処理については、私ども関係業界の方々とずっといろいろな説得や話し合いのもとに進めていくわけでございまして、業界全体がまとまって設備処理ができないという場合には、これは幾ら上から一方的な指示をしても進まないわけでございます。国と関係業界が一致して話し合いを詰めていきまして、そして一つの見通しをつくって、この指示カルテルによって共同行為を結成し、そして独禁法上との調整を図りながら設備処理を進める、これがこの規定の本旨でございます。
  35. 渡辺三郎

    渡辺(三)委員 いま御答弁になったような状況でありますから、当初の案にはアウトサイダーの規制、これが盛られたというのも通産のサイドに立って見れば理解できます。しかし、これは大変な問題を含みますから削除して指示カルテルを残したわけでしょうけれども、いま局長がおっしゃいましたいろいろな方法、手段、いわゆる強力な行政指導というふうなことになるのでしょうが、その点について、いまこういう方法がある、ああいうことを考えているというふうな具体的な中身があれば、できるだけ具体的におっしゃっていただきたいと思います。
  36. 濃野滋

    ○濃野政府委員 いわゆる設備処理につきまして、この法律が御審議の上、法律として成立をしたその後につきましては、法文に定めるところによりまして、安定基本計画、そして自主的な設備処理、最後の仕組みとして指示カルテル、こういうことになるわけでございますが、現在、それではどの業種についてどういうことをやるかということを、具体的に私どもの中で詰めておるわけではございません。  ただ、構造不況問題は、すでに昨年以来、個々の業種につきまして、問題が非常に詰まっているところもございますし、なおこれから検討というところもございますが、たとえば、いま先生の御質問にお答えをするといたしますと、平電炉業界の問題等はいわば一番早く問題が詰まった業種でございます。これを見ますと、むしろ私ども通産省が、関係の平電炉業界の個々の業者の方と全体として見た設備処理の目安をつくりながら、個々の業界の方がその目安を前提にして、一体自分としてはどういう処理を自分の会社ないしは自分のグループの中でするかということを個々に詰める、そして御案内のとおり、全体として大体三百三十万トンを目標とした設備処理を進めていく体制をつくる、こういうことで、いわば行政指導を中心に進めてきたわけでございますが、今後この法律ができましたときにも、指示カルテル制度という最後の制度に行きます前には、同様に関係業界と私どもそれぞれ主務大臣との間のいろいろな調整、話し合い、これが進められるのではないか、こういうふうに私は考えております。
  37. 渡辺三郎

    渡辺(三)委員 次に、公取委員長にお伺いをしたいと思いますが、今次不況期における独禁法上の不況カルテル、これは何々がございますか。
  38. 橋口收

    橋口政府委員 今次不況昭和四十九年以降というふうに一応時間的に限定をいたしまして申し上げますと、昭和四十九年以降不況カルテルを実施いたしました商品の品目は、十品目でございます。そのうち、現在実施中のものは六品目でございます。それで、内容的に申しますと、生産供給数量等の制限をいたしましたのが四品目、それから設備制限をいたしましたのは三品目、それから設備制限と数量制限とを組み合わせましたものが三品目、合わせて十品目でございます。  なお、現在実施中の六品目の商品名を申し上げますと、短繊維紡績糸、梳毛糸、塩化ビニール樹脂、外装用ライナー、中しん原紙、石綿スレートでございます。
  39. 渡辺三郎

    渡辺(三)委員 現在実施中のもの六品目、そうすると、アルミニウム板、これは終わったのですか。
  40. 橋口收

    橋口政府委員 アルミ板はすでに終了いたしております。
  41. 渡辺三郎

    渡辺(三)委員 ちょっと細かい問題で恐縮ですが、いつ終了したのですか。
  42. 橋口收

    橋口政府委員 本年の二月末でございます。
  43. 渡辺三郎

    渡辺(三)委員 公正取引委員会として、この構造不況業種設備廃棄規模が適切なものであるかどうか、この判断の観点といいますか基準、これはあくまでも産業官庁、たとえば通産省なりあるいは運輸省なり農林省なり、これとは違った観点が公正取引委員会の性格上あるのではないかというふうに思うわけですね。もし全く同一のものであるとするならば、本法案の第十二条の「同意」の意義は余りない、こういうふうに私は考えるわけです。この判断の観点といいますか、基準といいますか、これはどこに置いておられるのでしょうか。
  44. 橋口收

    橋口政府委員 先ほど来通産省との間に御議論が展開されておったのでございますが、通産省からのお答えと私の考えとは全く同一でございますけれども、多少敷衍して申し上げますと、設備の保有、拡張、縮小、凍結あるいは廃棄というような行為は、個々の事業者に与えられた基本的な権利であると思います。したがいまして、個々の事業者の判断におきまして設備廃棄した方がいい、こういう決意があれば、それはそれで実行は可能でございます。ただ、個々の事業者として判断に苦しむ場合がございますから、仮にこの法律が成立いたしまして安定基本計画ができますと、それは確かに一つの目安になると思います。したがいまして、その目安に基づいて個々の業者なりあるいは業者が共同して設備廃棄の行為を行うという場合には、先ほど来御指摘がございましたような現行の独占禁止法の二十四条の三による過剰設備廃棄カルテルの認可ということも、方法としては可能であると思います。したがいまして、そういう公正取引委員会が独自に判断をいたします場合にも、もちろん主務省に協議をいたしましたり、いろいろ資料その他をちょうだいしたりあるいは調査を行うということになると思いますが、仮に安定基本計画ができまして、それに基づいて業者が共同して設備廃棄の申請をする、あるいは主務省において指示カルテルを発動される、その場合に公正取引委員会に同意を求めてくる、こういうケースが起こり得るわけでございまして、その際、どういう立場から判断をするか、こういうお尋ねであろうと思います。  もちろん、私どもの方といたしましても、安定基本計画というものは十分参照いたします。これは先ほど来議論がございましたように、長期の展望というものはなかなかむずかしいと思いますけれども、現在得られる最新のデータなりあるいは最善の調査結果に基づいて作成された基本計画でございますから、それはそれなりに人事の限りを尽くしたものという評価をしてよろしいと思いますから、まず、この基本計画というものを十分参照いたします。ただ、公正取引委員会産業政策の立場にのみ立つものではございませんで、独占禁止政策という立場を基本的に堅持するものでございますから、したがいまして、ユーザーの立場あるいは消費者の立場というものもやはり長期的に十分考えてまいる必要があると思います。したがいまして、私どもの判断といたしましては、原則的に申し上げますと、どう考えても過剰になるだろうと現在において確認される絶対的な過剰分について同意を与える、こういう基本的な考え方をとるべきではないかというふうに考えておるのでございます。
  45. 渡辺三郎

    渡辺(三)委員 時間が余りありませんので、きょうは少し先を急ぎますけれども、労働省はお見えになっておりますか。  次に、労働省にお伺いをしたいのですが、現在のいわゆる完全失業者の数はどのぐらいになっておりますか。
  46. 細野正

    ○細野政府委員 本年の一月におきます完全失業者の実数は、百二十六万でございます。ちなみに失業率で申し上げますと、季節調整済みでございますが、二・〇五でございます。
  47. 渡辺三郎

    渡辺(三)委員 それから、これは最近の一番近い数字を明らかにしていただきたいと思いますが、求人倍率はどのくらいになっておりますか。
  48. 細野正

    ○細野政府委員 有効求人倍率でございますが、手元にあるのは十二月で〇・五四、それから一月は、ちょっと記憶で恐縮でございますが、〇・五二であったように記憶しております。
  49. 渡辺三郎

    渡辺(三)委員 これも労働省でありますけれども本法が成立をして、仮に共同行為による設備処理が進んでいった場合の雇用動向、これをどのように見通しておられますか。
  50. 細野正

    ○細野政府委員 一般的に雇用失業情勢は非常に深刻な状況にございまして、そこへ御指摘のように構造不況業種等からの離職者が発生する、あるいは円高影響というふうなものがございますから、そういう意味で、いましばらく容易でない状況というものが続くのではないか、こういうふうに考えているわけでございます。
  51. 渡辺三郎

    渡辺(三)委員 ちょっとはっきりしないのですが、もっと簡潔に言いますと、この法律が成立をして設備処理共同行為として進んでいく、こういうふうになった場合に、いまおっしゃるように今日の雇用情勢というものはきわめて厳しいわけでありますけれども、それに一層拍車がかかる、失業者がもっとふえるだろう、こういうふうに見通しされておりますか。
  52. 細野正

    ○細野政府委員 失業全体の見通しにつきましては、すでに政府の見通しがございまして、五十二年度に比べて五十三年度の場合には年平均としては五万ほど減るのではないか、こういう見通しを立てているわけでございます。しかし、それはあくまでも七%成長ということで、景気全体がある程度持ち直してくるということを想定しているわけでありまして、その影響が出てくるまでの過程の前半等におきましては、先ほど申しましたように、円高影響とか、こういう構造不況業種等から離職者が出てくるというふうなことで、雇用失業情勢が容易でない状況がしばらく続くのではないか、こういうふうに見通しているわけでございます。
  53. 渡辺三郎

    渡辺(三)委員 現在の雇用情勢が非常に厳しい、そしてまた、いまもおっしゃいましたように、五万人程度の改善というものがなされるその前提としては、七%の経済成長というものが必要だ、このことは予算委員会なりその他の論議の過程も私ども知っておりますから、一般論としてわかります。ですから、七%が達成できるかどうか、こういうふうなことから私は問題提起しているのではなくて、本法案実施に移されて、そして設備の共同処理というものが進んでいく、そうすることによって、この事業の展開によって失業者がさらにふえるのではないか。全体的に昭和五十二年度と五十三年度の見通しがどうかというふうな年度間の比較、こういうことをお聞きしているわけではなくて、また、経済成長七%がどうなるかというふうな議論を土台にしてそのことをお聞きしているのではなくて、この法律の施行によって共同行為による設備廃棄が進む、あるいは格納休止が進む、このことによって失業者の増大ということがないのかどうか、それをどのように見通しておられるのか、こういう質問です。
  54. 細野正

    ○細野政府委員 構造不況業種関係につきましては、御存じのように、離職者臨時措置法がすでに昨年できておるわけでありまして、そういう意味で、この法律のあるなしにかかわらず相当数の離職者が発生するだろうということをある程度見込んで物を考えているわけでございますが、この法律ができることによって離職者の数がふえる、あるいは促進される、そういう側面があることば否定できないと思います。
  55. 渡辺三郎

    渡辺(三)委員 そこで、労働省の立場で言えば、いつの場合でもそうでありますけれども、とりわけ今日のような深刻な雇用情勢の中では、たとえばそれがどのくらいの数字になるかは別として、失業者の一層の増大、このことはきわめて遺憾な現象だ、好ましくない状況だ、当然そうなると思うのです。しかし、この法律実施をされていくことによって、特定不況産業経営が安定をする、あるいは立ち直る、こういうふうなことが明確に出てくれば、先ほど私が言った労働省サイドの、それだけの単純な観点からだけ物は見られないと思います。それは私も十分に理解しておるつもりです。しかし、また一方翻って、この法案の目的にもありますけれども、いわゆる特定不況産業過剰設備処理する、そして指定された業種経営の安定を図る、これだけではなくて、これと今日最大の政治課題になっておる雇用問題、これが全く密接不離の関係でとらえられなければ大変な問題が一面では起きるというふうに私は考えるわけです。ですから、この法律の目的としては経営の安定ということが強調されるわけでありますけれども、これと雇用問題というものを切り離して考えるわけにはいかないだろう、こういうふうに思うわけです。この点は、労働省はどのような御認識をなさっておるのですか。
  56. 細野正

    ○細野政府委員 ただいま先生おっしゃいました基本認識は、全く私どもも同じでございまして、そういう意味で、この御審議いただいております法案と、それから先般成立いたしました離職者臨時措置法とは一体的に運用していくべきものではないかというふうに考えておるわけでありまして、そういう意味で、全体としての雇用の安定というものについて事業所管官庁とも十分御相談をして、雇用の安定について遺憾なきを期してまいりたい、こういうふうに考えておるわけでございます。
  57. 渡辺三郎

    渡辺(三)委員 そこで、お伺いしますが、本法案に言う共同行為実施に関して主務大臣設備処理等に係る指示ないしは勧告などを行う場合、労働大臣としては当然雇用の安定について重大な関心を持たなければならないわけでありますし、それぞれの主務大臣と協議をしなければならぬ、こういうふうな考え方が当然出てくるのではないかというふうに思います。これは、この前の本会議趣旨説明に対する代表質問の際にも、大体似たような趣旨のことが言われたのではないかと思いますけれども、この主務大臣との協議の問題について労働省はどういう御見解ですか、改めてお伺いをしたい。
  58. 細野正

    ○細野政府委員 先ほど来先生お話しございましたように、雇用問題にも非常に密接な影響を持っておる法案でございますので、この法律の運用に当たりましては各事業所管大臣と労働大臣とが十分協議をして、その運用について雇用の安定という側面を十分配慮して進めていただく、こういう体制に現在なっているわけでございます。
  59. 渡辺三郎

    渡辺(三)委員 いまの問題について、通産大臣に一言だけお伺いをしたいと思います。  いま雇用問題を中心に若干労働省に質疑を行いましたけれども、いまの問題に限っての労働大臣との協議、この問題について通産大臣はどのような御見解をお持ちでしょうか。
  60. 河本敏夫

    河本国務大臣 一番当初に申し上げましたように、今度の法律に関連をいたしまして最大の課題の一つ雇用問題でございます。したがいまして、雇用問題に対しては十分な配慮を当然払っていかなければなりませんので、審議会等におきましても組合の意見も十分聞くことにしておりますし、あるいはまた、労働大臣ともどう対処すべきかということについて十二分の相談をいたしまして、万遺漏なきを期していこう、こういう考え方で協議、こういうことにしておるわけでございます。
  61. 渡辺三郎

    渡辺(三)委員 労働省からあと一、二点だけちょっとお伺いしたいと思います。  さきの国会において議員立法として成立をしました特定不況業種離職者臨時措置法、この第二条第一項の特定不況業種を定めている政令、これは去年の十二月二十六日に公布されたはずでありますが、その後さらに追加を含めて現在全部で何業種ですか。これは確認のためにお伺いしたいのですが、追加を含めて三十二業種かというふうに私は認識をしておりますけれども、これで間違いありませんか、その後さらに追加がありますか。
  62. 細野正

    ○細野政府委員 御指摘のように、対象業種は三十二業種で、関係労働者数で見ますと百四十四万ということでございます。
  63. 渡辺三郎

    渡辺(三)委員 いま申し上げました離職者臨時措置法と本法案のかかわりについて、若干御説明をいただきたいと思います。
  64. 細野正

    ○細野政府委員 ただいま先生がお読みになられました離職者臨時措置法の二条に、この臨時措置法の対象になる特定不況業種の定義としまして、法令に基づく行為または国の施策に基づいて事業規模の縮小等を行う、そういう業種なのだという定義があるわけでございまして、そういう意味から申しますと、まさに今回の法案というのはそこのところを明確にしたものであるというふうな形になるわけでございます。そういう意味で、先ほど申しましたように、御審議いただいております法案と離職者臨時措置法というのは表裏一体的なものでございまして、雇用の安定という観点から離職者対策の方が先行してできている、こういう形になるものではないかというふうに考えておるわけであります。
  65. 渡辺三郎

    渡辺(三)委員 もう一つだけ。雇用安定事業としての景気変動等雇用調整事業と事業転換等雇用調整事業、これとのかかわりも、いま局長が言われたような点で総括して理解してよろしいのですか。
  66. 細野正

    ○細野政府委員 お尋ねの雇用安定資金制度の中に二つございまして、事業転換の方のいわば中長期的に見て事業規模等を縮小していかなければならぬというものにつきましては、こちらの方は離職者臨時措置法そのもので、いわば同じ規模で適用するということが明記されているわけであります。景気変動の方は、実はその点性格が違いまして、本来の性格からいいますと、一時的に休業等によって耐えている間にその事業が立ち直るということを前提にしている制度でございますから、こちらの方は当然自動的に適用になるという性格のものではございませんけれども、運用に際しましては十分配慮してまいりたい、こういうふうに考えておるわけでございます。
  67. 渡辺三郎

    渡辺(三)委員 次は、通産省の産政局長にお答えをいただきたいと思っておりますが、従来、通産省は、産構審ないしは各局長の諮問機関に諮って政策や行政の基礎を固めてきたといいますか、つくってこられたと思うわけです。本法案を運用するに当たって審議会の果たす役割りは非常に大きい、このようにこの法案内容を検討させていただいて私は考えておるわけです。今度の安定基本計画は、従来の審議会や諮問機関とどういう関係になりますか。
  68. 濃野滋

    ○濃野政府委員 お答え申し上げます。  御指摘のとおり、この法案の運用に当たりまして、いわゆる産構審を初めといたします関係審議会の果たす役割りは大変重要だと考えております。  まず第一に産構審自身の運用につきましては、私ども、従来からもさようでございましたし、今後もそのつもりでございますが、たとえば特定不況産業業種ごとにそれぞれの部会なりあるいは小委員会を使いまして、そこに幅広く関係者の方の参加を願って審議をするという体制を今後とも続けていかなければならない、かように考えております。  第二に、この法案の第二条の第四項に書いてございますように、どの審議会を使うかということは、「その目的からみて適当と認められる審議会(これに該当する審議会がない場合にあつては、産業構造審議会。)」というかっこうになっております。したがって、産業構造審議会以外に、本来もっとこの問題を審議するのに適当な審議会があればそれを優先して使うというかっこうになっております。たとえば繊維関係につきましては、私ども繊維審議会を持っておりますし、あるいは特定不況産業の中には船舶製造業ということで船舶等も入っておりますが、これにつきましては運輸省所管の審議会をお使いになるというような運用の仕方になるのではないか、こういうふうに考えております。
  69. 渡辺三郎

    渡辺(三)委員 いま局長からお答え願った点は、さらに詰めて御質問申し上げようと思っておったわけでありますけれども、二条の「適当と認められる審議会」あるいは三条の「関係審議会」、それから「共同行為実施に関する指示」の条項の中で言われておる「関係審議会」、これはいま資料を持っておればここで具体的に明らかにしていただきたいと思います。資料がなければ、あるいは記憶が定かでなければ、細かい問題でありますから、いずれかの機会を見て明らかにしていただきたいと思うのですが、その点はどうでしょう。
  70. 濃野滋

    ○濃野政府委員 今後の運用でございますので、法案審議の上、成立後、具体的にどこを使うかということはそのときの問題なのかもしれませんが、私どもがただいまのところで予定をしておりますのは、先ほども申し上げましたように、繊維関係につきましては繊維工業審議会、これがこういう問題の審議の場になるのではないか、たとえば合繊関係、綿紡、毛紡というような繊維関係繊維工業審議会ではないかと思います。その他の通産省所管の業界で、私どもがただいまこの法律施行後対象業種の候補として法定しております平電炉等を除きまして、たとえばフェロアロイ業界あるいは肥料、段ボール原紙等々幾つかの業界がございますが、これは大体、産構審にそれぞれ専門の部会をつくりまして、その部会で審議をしていくというかっこうを予定しております。  なお、この法律案にございます造船等につきましては、運輸省船舶局長が来ておりますので、船舶局長から御答弁を願いたい、かように考えております。
  71. 謝敷宗登

    ○謝敷政府委員 この法律案特定されております船舶製造業につきましては、運輸省に設置されております海運造船合理化審議会の関係部会に審議をしていただく予定にしております。
  72. 渡辺三郎

    渡辺(三)委員 これはさらに後の機会にもう少し正確にあるいは細かに具体的にお尋ねをしたいと思いますが、いま産政局長が言われた繊維工業審議会、それから産構審のそれぞれの部会ないしは小委員会、たとえば鉄鋼部会平電炉小委員会であるとか、あるいはアルミ部会であるとか、さらに、いま運輸省の船舶局長が言われました海運造船合理化審議会、いま名前の出ましたこれらの審議会は、当該産業の、たとえば従業員の代表といいますか労働者の代表といいますか、こういう方も入っておるところでしょうか。
  73. 濃野滋

    ○濃野政府委員 現在までの私ども長期の見通しをつくりましたりその他の審議をお願いした部会におきましては、アルミを除きまして、各部会あるいは小委員会関係の労働組合の代表の方の委員としての御参加を得て運用してまいりました。なお、アルミにつきましても、今後労働組合の代表の方の委員としての参加を願う予定にいたしております。
  74. 渡辺三郎

    渡辺(三)委員 運輸省もついでに。
  75. 謝敷宗登

    ○謝敷政府委員 海運造船合理化審議会には労働側の代表も入っておりますし、今後審議の予定といたしましては、必要があれば専門委員等の追加等も検討しております。
  76. 渡辺三郎

    渡辺(三)委員 時間がほとんど残っておりませんから、きょうの段階は、あと基本的な問題について一、二お伺いをして、残った点は後日に譲ります。  私は、この法案実施による特定不況産業経営安定への一つの誘導政策といいますか、あるいはその効果、これはある一定の限度内では認められると思うのです。しかし同時に、一面大きな危惧も感じております。その最も大きな点は、まず第一には、今日の重要な政治課題の一つであります雇用安定という観点が、本法案の十条には触れられておりますけれども、この法案の目的からは欠落している、この点が第一点であります。あるいは、特定不況産業における不況克服経営の安定を図ることが根本において雇用の安定にもつながる、こういうふうな認識があるかもしれません。また、この法案の性格は、当面特定不況産業をとにもかくにも立ち直らせるといいますか、それが直接の目的であって、雇用安定は他の法律にゆだねるべきだ、こういうふうな言い分もあるかもしれません。しかし、それはきわめて一面的な片手落ちの政策であって、法案第一条の目的をかみしめればかみしめるほど、雇用の安定というものは不可欠だ、したがって、これは明確に目的の中にも明らかにしておかなければならないことではないか、こういうふうに考えるわけです。  しかも、この法律の発動に伴って雇用不安の深度が一層深まるということは否定できない面がありますから、なおさらのこと、雇用の安定に対する確たる姿勢と細心の手だてが必要なのではないか、こういうふうに考えておるわけです。同時に、関連する中小企業者の経営の安定についても同様のことが言える、このように思います。さらにはまた、この法律による共同行為をスムーズに進めようとすればするほど、そこに働く労働者の意思も反映された全体のコンセンサスというものが前提にならなければ、いたずらに混乱を招くだけのことになるのではないか、こういうふうに考えるわけでありまして、ひとつこの点についての大臣の御見解をただしたいと思います。
  77. 河本敏夫

    河本国務大臣 先ほど労働省からも御答弁がございまして、昨年末に成立をいたしました離職者対策法とこの法律は表裏一体の関係になるというお話がございましたが、私ども認識も全くそのとおりでございます。しかしながら、こうして計画的に設備廃棄をするということになりますと、当然雇用問題が発生をしてまいりますので、この問題に対してはあらゆる角度から慎重に対処していかなければならぬと考えております。それにつきまして、先ほども申し上げましたように、審議会を通じて労働側の意見を聞き、あるいはまた、労働大臣とも相談をしながら万全を期していこう、こういう構えで雇用問題に対しては格段の配慮を払っていく所存でございます。
  78. 渡辺三郎

    渡辺(三)委員 さらにもう一つ危惧を感ずる点としましては、指定を予定されております特定産業の中には、本法による設備処理内容いかんによっては地域経済に著しい悪影響を及ぼす場合もあり得る、こういうふうに考えます。そうした場合、地域経済の動向に責任を持っております関係都道府県知事やあるいは関係市町村長、この意向をどうくみ上げるかというふうな配慮が非常に重要なことではないか。残念ながら、提示されましたこの法案の原案には、必ずしもそのことが十分に規定されておりません。これはきわめて大事なことでありますから、何らかの形で法案の補強をすべきだ、こういうふうに考えるわけです。きょうは最初の質問でありますから、今後の審議を通してそれらについてはさらに質疑を行い、意見を交わし合っていきたい、こういうふうには思いますけれども、この都道府県知事なり市町村長の意向の問題についても、大臣からひとつ見解を承りたいと思います。
  79. 河本敏夫

    河本国務大臣 いま御指摘がございましたが、地域経済に非常に大きな影響もございます。あるいは中小企業、下請にも非常に大きな影響がございます。したがいまして、そういう方面からのいろんな意見安定基本計画等をつくる段階におきまして何らかの形で反映するように、たとえば審議会等に臨時の委員で入っていただくとか、何かそういう工夫をいたしまして適切な対策を考えていきたいと思っております。
  80. 渡辺三郎

    渡辺(三)委員 約束の時間も参りましたので、実はきょうは、先ほどきわめて事務的なことをお伺いしたかっこうで終わりましたが、せっかく運輸省の船舶局長もお見えになっておりますし、それから大蔵省の特別金融課長も御出席をいただいたわけでありますが、残念ながら時間がございません。大蔵省関係は、特に信用基金の運用にかかわって技術的な細かい問題も質問を準備しておりましたが、限られた時間で各野党の質問一巡というふうな理事会の申し合わせもありますから、以上をもってきょうの段階では終わらしていただいて、残した分については、いずれ時間が許せば機会を見てやらせていただきたい、こういうことで私の質問を終わりたいと思います。
  81. 中島源太郎

    中島(源)委員長代理 後藤茂君。
  82. 後藤茂

    ○後藤委員 私は、本会議の代表質問をさせていただいたわけでございますが、どうも本会議場における御答弁はすれ違っておったところが大分あるかと思うわけでございまして、きょうはそれをもう少し掘り下げて御質問を申し上げたいと思います。     〔中島(源)委員長代理退席、山下(徳)委員長代理着席〕  先ほど渡辺委員の方から全般にわたって御質問がございまして、若干重複する点があるかと思いますが、審議を掘り下げるという意味で、ひとつ詳細な御答弁をいただきたいと思います。  まず最初に、通産大臣にお伺いをしたいわけですけれども、この法律の性格が、読んでみればみるほど、どうもはっきりいたしてまいりません。臨時措置法ということになっているわけですから、臨時緊急避難的な法律としてどうしても急がなければならない、こういう中身かとも思いますし、安定基本計画というようなところに入ってまいりますと、どうも中長期的な見通しなり展望を持った法律、かように考えられるわけですけれども大臣、この法律の性格でございますが、どのように理解をしておけばいいのか、お伺いをしたいと思います。
  83. 河本敏夫

    河本国務大臣 構造不況業種と称せられます業界の緊急最大の課題は何かといいますと、とにかくそれぞれ二、三割から六、七割も設備が余って非常に苦しい経営状態にある、このまま放置しておけば業界全体が致命的な打撃を受ける、ひいては国民経済に非常に大きな影響が出てくる、こういう緊急の課題がございます。それでありますから、とにかくいま余っておる設備をある程度廃棄をして、業界全体を立ち直らせるということが緊急の課題であります。しかしながら、緊急の課題でありますけれども、現時点で余っておるものを全部廃棄してしまうというのは、これはいかにも考えが浅いわけでございますから、やはりそこは安定基本計画というものをつくりまして数年間の見通しを立てまして、そういう中期的展望の上に立ってとにかくいま余っておる設備廃棄していく。廃棄そのものは緊急の課題でありますが、この計画を立てる場合には、現時点だけではなく数年間の見通しを立ててやっていこう、こういう考え方でありますから、その意味では、計画そのものは中期的な計画廃棄そのものは緊急性を要する、こういうことではなかろうかと思います。
  84. 後藤茂

    ○後藤委員 廃棄そのものが緊急的で、安定基本計画が中期的な内容。私も、今日の需給関係から見て過剰であるからただ設備廃棄を急ぐということは、どうも政策的には大変まずいのではないかと考えるわけです。ただ、私の質問に、総理が勘違いをされているのかどうか、五十三年度予算案を中心とする施策等が、これは公共事業に対して予算を大幅につけていくとかあるいは内需を喚起していく、こういうことが実は「緊急避難というか臨時的な施策でございます。今日御提案申し上げておりますところの施策、これは恒久的」な対策でありますと、総理は、この法律を恒久的な法案であるというように理解をしておるのではないか。どうもこの法律の中身、内容等について総理は御理解をされていないのではないかと思うわけですが、大臣、いかがでしょうか。
  85. 河本敏夫

    河本国務大臣 総理の言われました意味は、私は、多分、設備廃棄をする場合に、やはりある程度の見通しを持って、中期的な観点に立って需給関係を考えながら廃棄をしていくんだ、そういう意味で、計画的にやるといいますか、そのことをそういう表現をされたのではないかと思いますが、本会議説明でもありますので、十分意を尽くさなかった点があろうかと思います。  ただ、ここで申し上げておきたいのは、構造不況業種対策構造改善のための設備の緊急廃棄ということと、いま政府が進めております一般的な内需拡大策、これはもう当然関係がございます。たとえばことしの経済政策中心は七%経済成長でありますし、来年、再来年も七%弱の成長を目指して経済政策を進めていくわけでございますが、その過程におきまして当然産業全体の操業率がある程度高められるものと思います。そうすれば、構造不況業種の抱えております幾つかの問題もその過程である程度は解決できる、しかしながら、やはり相当の設備は依然として余る、そういう見通しを立てながら設備廃棄計画をつくっていく、こういうことではなかろうかと思います。
  86. 後藤茂

    ○後藤委員 この問題とも関連いたしまして、また後で御質問申し上げたいと思うのですが、通産省といたしましては、産業構造ビジョンというものを、過去三回でしょうか、お出しになられて、そしてまた、昭和六十年度を目標年次といたしましてこれから作成に着手する、こういうように新聞でも報道されておりましたけれども、この前のビジョン、昨年の産構審の報告書でも、これも私は本会議でも申し上げましたが、「多くの分野で、実態がどのように展開していくか予断を許さない。いわば不確実性に満ちた状況にある」と、こういう指摘があるわけです。私はそのとおりだろうと思うのです。これだけむずかしい状況の中で、そういった大変不確実な情勢の中で、これから長期ビジョンを作成をされる。大変お急ぎになられるのだと思うのですが、では、一体構造不況業種をこの中にどのように位置づけられていくのか。  ということは、この法律が五年の法律になっているわけですし、これからいろいろな審議会で安定基本計画等にかかわる論議もされていくでしょうし、それよりも早く構造不況業種長期ビジョンの中に位置づけられてくるのか、それとも、それはいろいろな論議をしていくがまだ非常にむずかしいものがある、それをそれぞれの部会で論議をしているのができ上がってくるまでこの長期ビジョンというものは待たれるのか、この辺がもう一つどうもよくわかりませんので、一体構造不況業種をこの長期ビジョンの中でどのように位置づけをされようとしているのか、お伺いをしたい。
  87. 濃野滋

    ○濃野政府委員 私からお答え申し上げます。  ただいま御指摘のございましたように、私どもは、昭和四十九年から五十年、五十一年と三年間、いわゆる業種別のビジョンを含めました長期ビジョンというものを産構審の場において御検討を願い、御答申を得ました。ただ、昨年は、昨年の私どもの置かれました環境の中で、個々具体的な業種についてのビジョンの取り組みをやめまして、ただいま御指摘のございましたような不確実性の時代の中で、これからの産業構造を考える上での問題点は何かという問題点の指摘をいたしたわけでございますが、本年度は、ただいま各方面から、これからの産業構造のあり方についての一つの指針と申しますか、行く先をはっきりさしてもらいたいという非常に大きな要請がございますので、大変むずかしいことではございますが、御指摘のございましたように、何とか五十三年度、本年度の半ばを目標にいたしまして、長期ビジョンへの取り組みをしてみたいと考えております。  ところで、その中で現在問題になっておりますいわゆる構造不況業種、この法律によりますと特定不況産業がどう組み込まれていくかという問題でございますが、私ども基本的には、いわゆる特定不況産業と言われておるものも、先ほどの大臣からの御答弁にございましたように、やはり今後国際競争力という観点から見て、国際経済の中であるいは国内経済の中で一体どういう位置を占めるべきか、特に、構造不況と言われておる産業は、一つは基礎資材産業一つ繊維産業のようにいわば国民の衣料供給という非常に重要な生活の基盤をなす産業でございますし、あるいは造船業のように従来日本の非常に有力な輸出産業の中核であった産業でございまして、これらの産業がそれぞれこれからの中長期の将来の構造の中でどういう姿にあるべきかということは、やはり私どもがその方向を見定めていかなければならぬ問題だと思いますし、その見定めの上に立って特定不況産業設備処理の問題等も考えられていく、こういうことで、産業構造ビジョンとできるだけ絡めた問題として検討していきたい、かように考えておるわけでございます。
  88. 後藤茂

    ○後藤委員 ここでは、さらに詰めての議論は、時間がございませんので省きたいと思いますけれども、どうもこの法律によって動き出す審議会の作業というものは、大変急がなければならぬとは思います。思いますけれども、先ほど大臣も御答弁になりましたように、特に設備廃棄等が絡んでくるというのは、火の粉を振り払っていかなければならない非常に緊急性を要する部分だけになってくるだろうと思うのですね。ところが、長期ビジョンというものは、もう少し長期展望をしていくということがその中身になるわけです。そこの関連性というのは非常にむずかしいだろうと私は思うのです。この議論は、もう少しまた後刻時間をいただければ御質問をしてみたいと思いますけれども、その絡みというものをぜひひとつお考えいただきたいと思うわけです。  そこで、大臣にお伺いをしたいのですが、大臣は、いつも民間経済の活力というものを大変高く評価されておられると思うのですね、潜在的なポテンシャルというものについて。現在もそういうようにお考えでございましょうか。
  89. 河本敏夫

    河本国務大臣 やはりいまは自由主義経済という仕組みで進めておりますから、民間の経済に対する考え方というものがあくまで中心でなければならぬ、こう思っております。
  90. 後藤茂

    ○後藤委員 民間経済の活力、それがあるのは、先ほど大臣も御指摘のように、自由主義経済、市場競争原理に任せたことによってつくられた活力だ、恐らく大臣はこういうようにお考えだと思います。そして、政府はその活力をなるべく抑えないで、その活力が十分に発揮できるような有効な政策的誘導、こういうものを今日までとってきたからその活力というものがあるんだ、このように大臣はお考えでございましょうか。
  91. 河本敏夫

    河本国務大臣 そのように考えております。
  92. 後藤茂

    ○後藤委員 そうだといたしますと、本法律案はこの誘導の枠から出ていくのではないだろうか。つまり、経済の活力に対して実は何らかの制約を加えていくことになりはしないかという心配をするわけでございます。大臣が先ほど御答弁になりました点とどうも矛盾しはしないか。自由企業体制のもとで行政がなぜそこまで入っていかなければならなくなってきているのか、ここのところを簡潔にひとつお答えをいただきたいと私は思います。
  93. 河本敏夫

    河本国務大臣 私は、いかに構造不況業種とはいえ、その構造改善事業業界自身が自力でやるべきが本筋である、こう思っております。しかしながら、現事態は余りにもひどい状態でございまして、たとえば、先ほど来たくさんの過剰設備が余っておるということを申し上げましたが、仮に過剰設備廃棄しようとする場合には、過剰になっている設備そのものが全部それぞれの金融機関の担保に入って、もうにっちもさっちもいかない、こういう状態であります。でありますから、ある程度深刻な業種に対しては政府が援助をしませんと、なかなか過剰設備廃棄ということが行われない。しかし、私は、たとまえから言いますと、あくまで業界自身が政府の手をかりないで、あるいは法律の手をかりないでやるというのが本筋であると考えておりますので、こういう法律ができましても、やはり民間企業の中には、お世話になりません、私たちの方の業界は私たちだけでやります。こういう業界も幾つか出てくるのではないかと私は思っております。  現に一、二の業界は、やはり通産省に対して、自分たちは非常に深刻な状態にあるけれども、しかしながら、構造不況業種指定を受けないで自力で何とかやるようにひとつやってみたいと思っております。こういう申し出業界もございます。それは比較的傷が浅いということもあるのですけれども、それが本筋だと思います。ただしかしながら、現状はいかにも深刻でございまして、やはりある程度の手をかしませんとどうにもいかない、こういう業界が多いものですから、そこで今回のような法律をお願いいたしておるわけでございます。
  94. 後藤茂

    ○後藤委員 濃野産業政策局長にお伺いをしたいのですけれども、やむを得なくて入るということを大臣が言われました。しかし、私は、通産省の産業政策なり行政というのは、寝転んでひじまくらでのんびりとテレビでも見ておったということではないと思うのです。あの石油ショック以来、大変御苦労をなさったと思います。そして、長期ビジョンの需給想定の誤りということに対する大変な責任も政府にあるわけですから、一生懸命この不況対策というものには乗り出してこられたと思うのです。今度特記されております。法定化されております平電炉にいたしましても、アルミにいたしましても、あるいは合繊等にいたしましても、それぞれ一生懸命、きのうきょうじゃなしにその対策を講じてこられた。中身についてはここで申し上げる必要もないと思うのですけれども、これらの行政の誘導なり指導なり、こういうものをやられる過程で、私は、単に短期的な問題ではなくて、長期的な内容を含んでいると思うのです。  たとえば平電炉の場合には、昨年の二月に、三百三十万トンの設備廃棄、これをグループ別あるいは系列別に廃棄していくのだ、しかも私がかつて質問をいたしましたときには、これは各業界が積み上げた申し出に基づいてやるわけだから、したがって、実施が十分に可能であるというような御答弁があったと思うのです。しかも平電炉に限ってみますと、五十三年度中に廃棄ということは、実はまだ一年残っているわけですね。この三月末でいろいろ手当てをしてみたけれどもどうにもならないのだということではなくて、実はまだあと一年あるわけです。しかも恐らく出てまいります安定基本計画というものは、基本問題研究会が出した中身とそんなに違わないと思うのです。  こういったそれぞれ法定化されております各業種に対して、造船も含めて対応策を持つ審議会なりあるいは計画なりというものがあった。ここにきてなぜ実は新しい法律が必要になってきたのか、お答えをいただきたいと思います。
  95. 濃野滋

    ○濃野政府委員 いわゆる構造不況業種問題に対する行政の取り組み方の問題は、先ほど大臣の御答弁にございましたように、私ども通産省といたしましては、あくまでも、設備処理問題を含めまして、これは業界の自主的な判断、自主的な努力というものを前提にすべきであるというのが、昨年以来一貫してとってきた考え方でございます。個々の業種によりまして、抱えておる問題もあるいは解決の方向もそれぞれ違うわけでございますが、業界にそういう意思が固まり、ぜひ一緒にやろうという空気が出てきましたときには、通産省の産業行政といたしましては、一緒に物事を考えて解決をしよう、そういうことで進んできたわけでございますが、先ほど大臣の御答弁にございましたように、その設備処理の過程の中で幾つか問題が出てまいりました。  一つは、いわゆる設備処理についての金融的な政府の支援でございまして、特に担保抜きというような問題が出てまいりました。これは、いま先生御指摘の平電炉業界が、いわば積み上げの上に問題を進めてまいりましたところ、昨年秋にそういう問題が出てまいりました。私ども、昨年の補正予算におきまして、ちょうど今回の法律でお願いをしておりますようないわゆる基金を設けまして、いわば保証機能を持たせて、これによって設備処理を進める、こういう問題が一つ出てまいりました。  もう一つは、短期の循環的な需給調整の過程におきましても、たとえば合繊業界に見られましたように、公正取引委員会不況カルテルの弾力的運用のみによっては、業界自身が、いろいろな関係からなかなかカルテル結成という機運が生まれない、しかし、どうしても国の立場から見れば、繊維産業全体の問題として、これに何らかのいわばガイダンスを与える必要があるというような問題が出てまいりました。  そういうことを考えてみますと、いろいろな業種によってもちろん抱えておる問題は違いますが、これからの過剰設備処理に当たりまして、一つ金融的な補完機能を持たせる一つのシステム、仕組みをつくるということ、第二は、過剰設備処理業界の自主的な努力とはいえ進めていく上で、やはり現行の独禁法の運用というようなことでは、業界のそれぞれの実情に応じてどうしてもそれだけではできない問題というのが予見されますので、一つのスキーム、仕組みをつくりまして、過剰設備処理が円滑に行われるようなバックグラウンドを固める、こういうことから急遽今回の法案の作成にかかった、以上のような次第でございます。
  96. 後藤茂

    ○後藤委員 債務保証金融的な措置というのは、緊急的な課題として何らかの対策をとっていかなければならぬだろうと私は思うのです。しかし、いま局長が言われましたような、それぞれのやり得ないようなことが予見されるとかいう、そこのところが大変抽象的なんですね。これはやはり行政が入るわけです。しかも開銀等を通じて基金を確保していくわけですし、こうなりますと、それぞれの抽象的な言葉ではなくて、いままで産構審のそれぞれの部会なりあるいは委員会なりというものを活用して行政をやってきた、しかもたとえば平電炉等につきましては、中小企業団体法に基づいてアウトサイダー規制までできるところへいっている、なぜ指示カルテルも入ってくるようなものをかぶせていかなければ債務保証も機能しないのか。  いままでの行政をさらに強めていかれることは、緊急対策として当然だと私は思うのです。ところが、そこでさらに申し上げてみたいと思いますけれども、ただ自主努力、そしてアウトサイダー規制もできない、こういうものをなぜ仰々しく大上段に振りかざしてやらなければならないのか、いままでの行政でやっていたものをなぜ法律に特記をしなければならないのかということを、重ねてお伺いをしたいわけです。
  97. 濃野滋

    ○濃野政府委員 先ほど御指摘ございましたように、たとえば平電炉業界の過剰設備処理に関する取り組み方等は、昨年一年間の経験を見ましても、いわゆる行政的な取り組み、それから業界の自主的なそれへの協力ということで、大部分の目的を達成し得るという考え方は、率直に言って私ども持っております。なお、詳細につきましては、担当局長もおりますので、必要ならば御答弁申し上げますが、私はそういう感じを持っております。  ただ、先ほど御指摘ございましたように、それではその行政的な取り組みだけでなくて、なぜここで新しくこういう法律をつくったのかということでございますが、それでは指示カルテルを行うことがこの業種に必要だという具体的な必要性からこの指示カルテル制を、別の言葉で申し上げますれば、現在こういう業種につきましては指示カルテル制の運用でやっていきますということを私ども法案の作成の過程において具体的に持っていたかと申しますと、率直に申し上げて、私どもはそういう考え方は持っておりません。行政的な取り組みのみではできない、今後自主的な業界努力——自主的と申しますのは、行政の介入なしに、いわゆる現在の不況カルテルの運用なり、あるいは全く個々の判断でできる場合、これはなるべくそれで進めていく。しかし、今後過剰設備処理等を行うに当たりまして、業界が本当に自主的な判断だけでできないというようなケースのほかに、過剰設備処理を共同で行います場合に当たりまして、どうしても独禁法との調整の問題というのが出てくるケースが幾つか考えられると思います。その場合に、私どもはその安定基本計画までつくりまして、そしてその最後の実行を担保する、そういう一つの仕組みといたしまして、過去の繊維関係の諸立法その他幾つかの前例がございますが、そういう計画の実行を最終的に担保する仕組みとしての指示カルテル制度、これを今度の法律の中に入れまして、法律としての最終的な担保をそこでする、こういうことにしたわけでございます。
  98. 後藤茂

    ○後藤委員 そこのところがよくわからないのです。いままでも、各不況カルテル等につきましても行政指導をなさっているわけですね。今度の法律の場合に、仮に指示カルテルを出した、そしてそれに従わない者は規制をしていくのだ、罰則があるのだ、こういうことなら一応わかるわけです。ところが、もちろん公取の同意がございますけれども指示カルテルをいたしまして、そして公取の同意は得た、しかし、やるのはその業界が自主的にやるわけですね。それではいままでの行政と全く変わらないじゃないか。何か力があるようなものが欲しいのだというようなことなのかどうか。私は、通産省というのは、そういう竹光のような力を背景にしなければ産業政策ができないとは実は思わないのです。  重ねてその点をお伺いしたいのですが、なぜ指示カルテルが、しかもアウトサイダー規制のない指示カルテルが必要なのか。いままでの行政指導をさらに強めていくことで、ねじりはち巻きでひとつ強めていくことでなぜだめなのか。どこにその原因があるのか。しかも、そんなにむずかしい場合でしたら、もっと力かなければ——業界で自主的にやりなさいといま大臣がおっしゃられました。指示カルテルをやろうとこれでは共倒れになるよ、みんなでひとつ協力してやりなさい、幸い公正取引委員会不況カルテルの弾力的運用を図ろうとしている、設備廃棄までも読もうとしている、だからぜひやりなさい、こういうことにもう一つの力が要るという、つまりその背景をお聞かせを願いたいわけです。
  99. 濃野滋

    ○濃野政府委員 まず、設備処理ということ、これは先ほど大臣からの御答弁にございますように、何か強制的な、罰則的な裏づけのある一つの仕組みで設備処理をやるということはいかがか、大変な問題だろうと思います。私どもは、設備処理は、あくまでも業界の自主的な判断と業界の自主的な努力で行うべきである、その意味で、政府が強権によりまして直接的に設備処理を進めるというのは、非常に異例な特殊な事態、特殊な業界に今後そういう問題があるかどうかは別といたしまして、こういう一般的な設備処理を進めていく上では大変大きな問題でございまして、あくまでも業界の自主的な努力、判断を前提にすべきだと考えます。そのためには、やはり業界同士の話し合いということが第一に前提であるべきだと思います。  第二に、それではいわゆる現在の独禁法の運用あるいは全く自主的な判断というものによって進むかと申しますと、先ほどから申し上げておりますように、私ども、個々の業種の問題をいろいろ議論をいたしてまいりますと、それだけでは済まない問題というのが出てまいりまして、国がある程度通産省の産業行政の一環といたしまして業界と一緒に考える、あるいはいわゆる業界の必要な指導をしていくという必要があると思います。  それで、このいわば指導と業界の自主的な努力、自主的な判断のもとに行うという二つの仕組みを結び合わせまして、しかも国の意思として、将来、中長期で見て安定計画に沿った最後の姿というものを達成したい、そういう目標に到達したいということをあわせますと、従来、先ほども申し上げましたように、繊維構造改善のための立法その他各種の法律におきまして、計画達成の最後の手段としての指示カルテル制度——指示カルテル制度の持っております意義は、独禁法のその指示に従って行う共同行為につきましては、カルテルについては独禁法の適用が一定の条件のもとで除外をされるというところの法律的な効果があるわけでございまして、まさに私ども過剰設備処理について考えておる実態法律的にいわば裏打ちをする非常に適切な方法ではないか、こういうことで、私ども今度の法律にこういう一つの仕組みを盛り込んだわけでございます。
  100. 後藤茂

    ○後藤委員 この問題に入っておりますと時間がございませんので、変えていきたいと思いますが、特定不況産業というのは、一般に構造不況産業、こういう言葉で言われているわけですけれども政府としては、この構造不況産業というのと循環不況産業というのとどういうように違いがあるとお考えになっているのか、大臣にお聞きをしたいと思います。
  101. 河本敏夫

    河本国務大臣 オイルショック以前は、大体すべての産業需給バランスがとれておったと思います。オイルショックが四年半前に起こりまして、それ以降産業界全体の需給関係が非常に大きく流れが変わってきたわけであります。中には、むしろ需要がふえてくるような業種も一部にはございますが、中には、先ほど来申し上げておりますように、需給関係が非常に変わりまして、先ほど申し上げますような構造不況業種に転落してしまう、構造的にどうにもならぬ、設備が著しく余る、こういう業種、二つに分かれたと思います。だから、これまでの景気の流れ、戦後何回か景気の流れがございまして、好況それから不況を繰り返してきたわけでありますが、その場合は、大抵幾ら長い場合でも大体一年半ぐらいで不況克服されてだんだんよくなってきた、こういうことでございますが、今回の場合は従前のそういう流れとは根本的に違いまして、構造自体そのものが変わってきた、こういう点で違いがあろうと思います。
  102. 後藤茂

    ○後藤委員 大臣が四十分に退席されるということでございますので、ちょっとはしょって二、三お聞きしておきたいと思うのです。  私は、先ほど産業政策の問題と市場原理、自由経済とのかかわり合いについて御質問をいたしました。今度の法律一つの目玉といいますか、大きな問題点になっておりますのは、あの指示カルテルだと思うのです。構造不況打開ということでこの指示カルテルが出されようとする立法政策というのは、私は、やはり自由競争秩序を維持していくという資本主義経済基本理念にかかわってくる問題だと思うのです。先ほど何回も私が申し上げておりますように、産業政策として行政指導をなさる、こういうことを超えて法律指示カルテルということが出されるということは、やはり私は、経済運営に対して政府が介入していくといいますか、こういうことになってくるだろう、そのことは自由経済あるいは自由社会の一つの旗を半分ぐらいおろしてきたことになりはしないか、こう思うのですが、大臣、いかがでしょうか。
  103. 河本敏夫

    河本国務大臣 私どもの考え方といたしましては、やはりこういう仕組み、法律に頼らないで業界自身が自主的な努力、工夫でやっていただくということが一番望ましいわけであります。しかし、どうしてもそれがむずかしいという場合には、今回の仕組みによって改善がされるわけでありますが、その場合といえども安定基本計画業界みずからの協力とそれから努力によって実現できるということが望ましいわけであります。しかしながら、どうしてもできない業種も例外的には出てくるのではないかと思います。そういう場合には、万やむを得ず指示カルテルによってこれを達成していこう、こういう考え方であります。しかしながら、あくまでこういう考え方は、経済が一応正常に復せばできるだけ早く廃止していく、こういう考え方でなければならぬと思っております。したがって、時限立法でお願いしているわけでございます。
  104. 後藤茂

    ○後藤委員 私は、大臣そういうようにお答えになりますけれども、たとえばアルミ産業にいたしましても、合繊等にいたしましても、ただ設備廃棄していく、安定基本計画を策定していく、これだけでは構造的な課題というものは解決しないと思うのです。どうしてももっと、たとえば関税の問題にいたしましてもあるいは輸入規制の問題にいたしましても、あるいは特にアルミの場合には電気料金が大変高いわけですから、こういう電気料金等に対して一体国民経済的な観点に立って政策料金というものが必要であるのかないのか、いろんな角度から取り上げていかなければならないということになってまいりますと、後で運輸省の方にもお聞きをしてみたいと思うのですけれども、やはり個別の法律に入っていかなければならないと思うのです。包括的な法律ではこういった問題というものは解決できないんじゃないだろうか、実はそれほど深刻になってきていると思います。  そうすると、当然これは国民的な合意というものを得るような対策をとっていかなければ、もっと言えば、民主的な一つの規制が行われてこなければならぬでしょうし、そこまで入っていかなければ——もちろんアウトサイダー規制もあるいは合併等に対しても、公取のつまり独禁法の適用除外というものも考えていかなければならぬ。そして、場合によれば利潤制限なり配当制限なりということにもしていかなければならぬだろう。衰退産業である、あるいは海外からの追い上げでもうどうにも太刀打ちできないという産業もあるかもわからないし、その場合に、それじゃ安い海外製品を入れて、そうしてつぶしてしまっていいかどうかということも大変むずかしい問題で、セキュリティーを考えていきますと、二割なり三割なり五割なりというものは、やはりその産業を維持していかなければならぬということになりますと、このような法律で、しかも業界の自主努力でということでは、これから非常にむずかしい国際経済国内需給問題を考えてみましても、大臣がお考えになっているような安定基本計画のもとに構造的な改善が可能であるということは、私は大変むずかしいと思う。そうすると、これは独禁法の枠を外れた別の枠組みの中に入れていかなければならない産業がすでに出てきているのではないか、かように考えるわけですが、大臣、いかがでございましょう。
  105. 河本敏夫

    河本国務大臣 その業界ごとの実情をいろいろ考えてみますと、大変複雑であります。したがいまして、過剰設備廃棄をするだけで業界が簡単に立ち直って将来繁栄する、決してそういう簡単なものではもうないと思います。そういう簡単なものであれば大変やりやすいわけでありますが、いまお述べになりましたように、幾つかの大変複雑な要素が絡み合っておるわけであります。でありますから、安定基本計画をつくるときには、いまお述べになりましたような幾つかの問題を総合的に判断をしながらつくる必要があろうかと思います。  それからもう一つ、仮に安定基本計画が緒につきまして、計画どおりの設備廃棄されたといたしましても、いまお述べになりましたような幾つかの工夫と努力をその業界が引き続いて絶えず続けていかなければ、これはとても世界全体との競争に打ちかてるものではございません。ただしかし、繰り返して申し上げますけれども、いま最大緊急の問題は、構造不況業種の抱えております過剰設備の問題、この問題を解決すれば当面の課題は大部分一応解決できる、問題はそれで全部済んだわけではありませんが、とにかく最大の課題は一応取り除かれる、最大の障害は一応除去される、こういう考え方でございまして、いまお述べになりましたようなこともあわせて十分配慮していかなければならぬと考えます。
  106. 後藤茂

    ○後藤委員 大臣に対する御質問は大分用意をいたしておりましたが、都合がおありのようでございますので、後日に残したいと思います。  そこで、局長にお伺いをしたいわけですけれども、今度の法律を見てみますと、第二条で四業種が一応指定をされているわけです。その四業種につきましても、これまた政令で、たとえばこの中の合繊の場合でしたら、合繊全部ということもあるでしょうし、あるいはナイロンならナイロンということも出てくるのではないかと考えるわけですね。それからもう一つ、今度は第二条の第五号で、三点ばかり挙がっておりますけれども、こうこうこういう要件でこれまた政令で定められるわけです。政令で定めてきましても、今度第五項で、第一項の一号から四号まで、つまり平電炉とかアルミとか合繊とか船舶とかいうものについて、要件に該当しなくなった場合は一応指定を取り消すわけですね。ところが、さて今度指定を取り消しても、また内外の経済情勢か悪くなった——五年間ですから、やはり短いようで実は大変長い期間です。設備生産余力がまた見通しよりも著しく過剰になったとか、こういう要件が出てきた場合には、この法律で書かれた四業種につきましてはもう一度指定がなされる、こう読めるわけでしょうか、
  107. 濃野滋

    ○濃野政府委員 お答えを申し上げます。  第二条の一号から四号までは、特定不況産業の候補業種としてのいわば典型的な業種として掲げたわけでございまして、五号は、ここにただいま御指摘のように幾つかの要件が挙がっておりますが、この要件に該当する場合に候補業種として政令指定をする。その中で第二項の申し出があったときに、その申し出の要件に合致したときにこの法律に言う特定不況産業特定不況業種になるわけでございます。そういう仕組みになっております。  そこで、問題は、御指摘のように第五項に、一号から四号までに掲げる業種につきましては、その後の情勢の変化によっていわゆる申し出に応じた指定ができない、あるいは指定した場合には取り消すという規定がございますが、この裏の規定としまして、その後の変化があった場合どうするか。実はこれは法律には書いてございませんが、この法文の解釈からしまして、またそこで事態が変わった場合には改めて指定が可能ではないか、こういうふうに考えます。  ただ問題は、この法律自身が限時法でありますし、いわゆる特定不況産業前提としての長期の不安定、具体的には設備の過剰という情勢がこの限時法の期間の中でそれほど大きく変わるかどうか、現実の問題としては、一遍指定の取り消しのような事態が来て、再びまた指定をするような事態が来るということはあり得ないのではないか、私どもはこういうふうに考えておるわけでございます。
  108. 後藤茂

    ○後藤委員 現実問題をここで申し上げているのではなくて、いま局長が言われましたように、恐らく新たな事態が起こればまた再指定ができるとこの法律は読めると思うのですね。ところが、今度は、特記されていないもので政令で定めるもの、たとえば段ボールだとかあるいは肥料だとか幾つかあると思いますが、そういうものの場合は、この六項で、一年を経過した後は行わないわけでしょう。そうすると、構造不況に対して、一つは四業種がある、もう一つ幾つかの業種が想定される、これとの扱い方かこの法律においては私は差別されているように思うのですが、いかがでしょうか。この法文を読む限りにおいては、つまり第二条の五号に書かれております政令指定された業種というものは、包括的業種であれ、その中から先ほど言いましたように仮にナイロンならナイロンというようなものであれ、一年を経過してしまうと、どういう事態になりましても、この法律を変えない限りは再指定ができないわけですね。一年というのはすぐたってしまいますし、また先ほど局長は、五年というのが大変短い期間だからそういうことはないだろうとおっしゃいますけれども、石油ショックから不況に入って五年目ですね。この大変短い五年の間にも大変な変わり方というものがあるわけですから、ここのところはどのように理解していいのか、お伺いしたいと思います。
  109. 濃野滋

    ○濃野政府委員 第二条の第一項五号と、それからそれに関連しました指定の期間が一年というかっこうになっております第六項との関係、それと一号から四号までの法定をされております業種との関係の問題についての御質問でございますが、御指摘のとおり、この法律での取り扱いというのは若干変わっております。  この趣旨は、実はこの法律案の作成の過程におきまして、本来、特定不況産業というような産業は、全部法定すべきではないかという御意見もございました。特定不況産業として一つの安定計画をつくり、それに対して金融的ないわゆる基金による保証業務を行うという一つ対象にするのは、全部法定をすべきではないかという御意見等もございました。ただ、私どもは、何が特定産業として対象とすべきかというのを個々業種ごとに議論をしていきます場合には、率直に申し上げまして、法律案の作成が完成いたしますまでに非常な時間がかかるわけでございまして、そういう意味で、いわば典型的な特定不況産業としてこの法律対象にし得るもののみを掲げまして、そのほかはこういう政令指定という体制にいたしましたそういたしますと、そういう趣旨からいたしましても、このいわば候補業種指定する政令はそう長いこと時間をかけているのはおかしい、したがって、第六項で、一年以内に何が候補かということの判断はすべきであるということでつくったわけでございまして、そういう意味でこの一号から四号までの取り扱いと、それから五号の取り扱いは、その後の取り扱いについて法文上違っております。  ただ、問題は、それじゃ一年経過した後にこれと全く同じような事態が出たときにどうするかという問題でございますが、私どもは、そういう事態は万々ないと考えております。もし仮にそういうことが出ましたときには、それは法律上の新しい問題になる、こういうふうに私は理解をいたします。
  110. 後藤茂

    ○後藤委員 だから、私が冒頭申し上げましたように、つまり産業政策にかかわる問題なんです。私は、いまの局長の答弁では大変不満なんですね。法律は、万々ないだろうとかということでは困るわけです。私は解釈をお聞きいたしているわけです。つまり、この一号から五号までは、法律に明記されていようとされてなかろうと、同じこの法律の扱いを受けるのでしょう。ところが、ここで、この法律をつくる過程で時間を急いだということもおありかと思いますけれども、差別になるわけですね。ここのところは、いま局長の答弁からいきますと、私は、だからその事態で——どんな事態が起こるかわかりませんよ、その事態で行政指導を真剣に取り組んでやっていく、いままでやってきたことをさらにやっていくということでいいのじゃないか。何でこういうように包括的に、何でもこういう要件にさえ合えば——しかもこれは大変現象的な規定だと思うのです。必ずしも構造ということが当てはまるかどうかわからないというような第二条の第五号の規定だろうと私は思うのですね。こういうような条件になってくる業種というものはこれからもたくさん想定できるだろう、それに対して、重ねて申し上げておきますけれども、どうもこれは前の方の四、法定で決めたこれだけを念頭に置いて、あとのことが法律的には全く考えられていないということでございますので、これはまた後で私は御質問なり、また修正等がもしあるとすれば、されておいた方がいいのではないかと思うわけです。  そこで、公正取引委員長、もう時間がございませんので、前の方で取られてしまって申しわけなかったのですが、やはり不況カルテルと指示カルテルとの関係です。で、公正取引委員会といたしましては、独禁法体系のもとにおいてこうした判断をされると思うのですね。ところが、今度の法律においては同意ということになってくるわけです。なぜ同意、つまり法律の中にこう入っていかなければならなくなったのかをお答えいただきたいと思います。
  111. 橋口收

    橋口政府委員 お尋ねの趣旨は、一口に申しますと、公正取引委員会がなぜ指示カルテルに賛成したか、そういう趣旨も含んでおると思いますので、その点からお答えを申し上げたいと思いますが、日本経済認識なり、あるいはいわゆる構造不況業種における設備過剰の問題についての認識につきましては、これは通産当局、その他主務省当局、全く同じ考え方でございます。したがいまして、実体論から申しまして、個々の事業者処理によって問題が解決できればよろしいんでございますが、そうでない場合にはやはり業界としての共同行為が必要ではないか、こういう実体的認識を持っているわけでございまして、したがいまして、昨年の秋に、公正取引委員会としましては二十四条の三の運用につきまして新しい方針を打ち出したのでございます。  実体的な必要性についての認識は以上申し上げたようなことで、それに対する法律的な運用の方針についてもいま申し上げたとおりでございますけれども、それでは業者なり業界の方が任意性を持って自発的に共同行為の申請をすればよろしいわけでございますけれども、仮にそういう行為がない場合に、一体日本経済における構造不況業種実態認識との関係をどうするかという問題になりますと、業者が共同行為について合意をいたします場合に、やはり政府が何らかの形で後押しをするということが必要ではないか。先ほど来先生が、行政指導として従来やっておる慣行を通産省が十分活用すればいいじゃないかという趣旨の御発言があったように承っておりますが、これは実はもろ刃のやいばだと私は思います。つまり、行政指導をおやりになりまして共同行為を行うことを勧奨される、いわば競争制限的な行為について行政が十分な法律的根拠なくして関与されるという問題は、実は独占禁止上余り好ましくない事態でございます。業界が自発的に申請もしない、しかし、設備廃棄なり凍結の必要性はある、で、主務省当局が十分な法律的な根拠もなく行政指導に乗り出されるということは、これは必ずしも好ましくないわけでございますから、したがって、そういう場合に、それぞれ主務省当局が実質的に後押しをされる法律的と申しますか、形式的と申しますか、そういう根拠を与えることが望ましいのではないか、そういうことがこの指示カルテルにつきまして公正取引委員会が賛成をしました基本的な理由でございます。  それから先の同意の問題でございますが、これは産業政策の立場と独占禁止政策の立場と同等でなければならない、つまり対等な関係でなければならないという基本的な考え方に基づきまして、同意という制度を打ち出したのでございます。  そこで、同意をする場合の態度はどうかという問題でございますが、先ほどお答えも申し上げましたように、基本的な考え方としては、絶対的過剰と目される部分、つまり将来の需給に問題を起こさないような部分についての御相談であれば、これは同意をしても差し支えないのじゃないか、そういう態度で臨みたいというふうに考えております。
  112. 後藤茂

    ○後藤委員 ちょっと理解がしがたいわけですけれども、つまり、通産省が行政指導で何でもかんでも勧告カルテル的なものをやられたんでは公正取引委員会としてはたまらぬ、このことはわかります。さてそこで、法的根拠を与えてそのことでやられるなら、もちろんいろんな要件があるでしょうけれども、その判断の基準に適合するならば、それに対して同意を与えましょう。そういたしますと、ここでは独禁法制と産業政策というものとがその判断の基準で混乱をしてきはしないだろうか。昨年、これだけ深刻な構造不況ですから、公正取引委員会としては不況カルテルで設備廃棄までも読めるように弾力的運用を図りたい、こういうように言っておられた趣旨が、今度は、指示カルテルを出すということは産業政策上出されてくるわけですから、そこに公正取引委員会としては共同の責任を負っていくということになるだろうと思うのです。指示カルテルを出されても、業界が自主的に公正取引委員会に対して認可の申請をなさるわけでしょう。通産省がやるわけじゃないですね。それでは、同意のところまでに入っていくということは一体どういう理由に基づくのか。  つまり私が申し上げておりますのは、指示カルテルというのは独禁法にどうも違反するけれども、新しい法律で、別の政策目的で、別の基準に基づいて公正取引委員会としては同意を与えているんだ、不況カルテルで読もうとしているけれども、それよりもどうも別の政策目的というのがあるだろう、そこに入っていかなければ事は動かないんだ、こういうようにお考えでしょうか。
  113. 橋口收

    橋口政府委員 独占禁止法不況カルテルは、先生御承知のように、業界の自発性、任意性に基づくものでございまして、それに対して政府が受けて立つという、こういう性格のものでございます。ただ、その場合に、公正取引委員会だけで判断をするわけではございませんで、これは主務省に協議をして、その協議の結果を尊重して判断をいたす性格のものでございますから、つまり指示カルテルの場合と裏と表の関係になるわけでございまして、それぞれ主務省の御判断は、これは主として産業政策の立場からのお考えであると思いますし、それから公正取引委員会の判断は、そういうことも含めてさらに一般ユーザーとか消費者の立場を考えた上の判断でございますから、私は、先生の御意見でございますけれども、この法律の規定が生まれることによって、現在の独占禁止法不況カルテルにおける判断の基準と、指示カルテルに対して同意をする場合の判断の基準と基本的に違いはないというふうに考えております。  要は、産業政策と独占禁止政策との調和をどういうふうに図るか、あるいは経済政策の中における産業政策と独占禁止政策との位置づけの問題でございまして、もちろん物の考え方というものは、時代の変遷なりあるいは事態の変化に応じて変わってまいりますけれども基本的には独占禁止政策の立場というものを堅持するということで、先ほど来申し上げておりますように、対等の、同等の関係に立つということで同意という制度を打ち出したのでございまして、実体的な判断の基準というものは、私は、独占禁止法上の不況カルテルと指示カルテルと基本的に違いはないというふうに考えております。
  114. 後藤茂

    ○後藤委員 二点お伺いしたい。一つは、こういう同意ということになった同意の例がどこかにあるかどうか。かつて特振法が出されたことがありますけれども、あのときも協議であったと思うのですが、この同意。それからもう一点は、いま委員長お答えになりましたように、指示カルテルに対する同意と不況カルテルのときの判断は基本的に変わらないというのでしたら、なぜ独禁法制の土俵をさらに踏み越えて産業政策のところまで入っていく必要があるのか、重ねてお伺いしたい。簡潔で結構でございます。
  115. 橋口收

    橋口政府委員 同意という条項がございますのは、中小企業団体法におきます価格カルテルの場合には、それぞれ主務省が認可権をお持ちでございますけれども、価格カルテルを結成いたします場合に、公取に対しては同意を求めるという形になっております。そのほか真珠養殖等調整暫定措置法、酒団法等ございますけれども、要は、事案の重いものにつきましては同意、比較的軽いものにつきましては協議、こういう形になっております。したがいまして、法律的に申しますと、同意の場合は、同意がなければ認可権が行使できないという絶対的な制約があるのでございますが、協議の場合は、これは法律論でございますけれども、協議が成立しなくても認可権を行使し得る、こういう違いがございます。  それからもう一つ第二点は——済みません、ちょっとお尋ねの趣旨、最後の方聞き落としましたので……。
  116. 後藤茂

    ○後藤委員 一つは、公正取引委員会が同意をどうしてもしなければならないということの理由と、それからもう一つは、不況カルテルとそれから指示カルテルとは違いがないんだと言うならば、重ねてお伺いしておきますけれども、何もそこへ入り込んで同意に行かなくても、通産省、主務官庁が指示カルテルをいたしますと、業界がそれに基づいてこういたしたいということを公正取引委員会に出してまいります。そこで判断をなさったらいかがですかという……。
  117. 橋口收

    橋口政府委員 それは、指示という言葉の意味なりあるいは行為の性格の問題であろうと思います。恐らく先生がおっしゃいますのは、法律的に申しますと、指示ではなくて勧告というような趣旨ではないかと思います。したがいまして、仮に業界がそれぞれ主務省の勧告を受けて自発的にカルテルを結成するという場合には、十分内容を検討して認可をする用意がございますが、何か同意という形で産業政策の中に巻き込まれたというような、そういう印象をお持ちの上での御質問のように拝聴いたしましたけれども、これは先ほど来申し上げておりますように、事案の重要なものにつきましては、現在でも協議に対して応ずるという形ではなくて、同意という形をとっておりますので、これは格別事態の変化を招来するものではないというふうに私は考えております。  それから、多少余談でございますが、先ほど来先生がおっしゃっておられました中に、何か独禁法制と別体系をつくらなければ本当の意味構造改善なりあるいは構造改革ができないのじゃないか、こういう御趣旨であったように拝聴いたしましたが、これは戦後の事態の推移を考えてみますと、たとえば海運の集約化につきましても、あるいは合成繊維によって駆逐された天然繊維につきましても、あるいは石油によってとってかわられた石炭産業におきましても、これは独占禁止法の例外措置なしで今日まで対応してきたのでございまして、私見でございますけれども、この程度と言ってはあれなんでございますが、この程度の構造不況業種に対する対応策として特に独占法制の例外規定をつくる必要はないというふうに私は考えております。
  118. 後藤茂

    ○後藤委員 時間が参りましたので、いま委員長が最後に言われたこと、この程度の形なら別に別の独禁法適用除外の法律をつくる必要がない、いままでの独禁法制の中で弾力的運用ですべて可能だ、私もこのように考えるわけですけれども、どうもその同意のところの答弁がもう一つかみ合っていないので、これはまた後日お伺いをさせていただきたいと思います。  時間が参りましたので、あと、基金等に対してや、それからせっかくお見えになっております運輸省にもお伺いしたいことがあったわけですけれども、大変失礼をいたしました。次回にさせていただきたいと思いますので、これで私の質問を留保して、終わらせていただきます。
  119. 山下徳夫

    ○山下(徳)委員長代理 この際、暫時休憩いたします。    午後一時八分休憩      ————◇—————    午後六時二十三分開議
  120. 山下徳夫

    ○山下(徳)委員長代理 休憩前に引き続き会議を開きます。  質疑を続行いたします。玉城栄一君。
  121. 玉城栄一

    ○玉城委員 特定不況産業安定臨時措置法案につきましてお伺いをいたしたいと思います。  構造不況対策も、景気の回復が実現して初めてその有効性も確保できると思います。この特定不況産業安定臨時措置法案安定基本計画の策定に当たっても、当然景気動向と密接な関連があるのはもちろんのことであると思います。そこで、二、三景気動向と不可分の関係にある現在の円高について伺いまして、そして法律案の中に入ってまいりたいと思います。  まず第一点として、私が懸念しておりますのは、今後さらに円高が続くとすれば、景気回復がおくれ、経常収支がますます大幅黒字になりますし、さらに円高という悪循環に陥るという危険があると思うわけです。もしもこうした悪循環に陥るようなことがあれば、本法律が成立したとしても効果はないと言っても過言ではないと私は思うわけです。そこで、大臣にお伺いをいたしたいわけでありますが、こうした懸念が起こりつつある今日の円高について、大臣はどのようにお考えになっておられるのか、まず最初にお伺いをいたしたいと思います。
  122. 河本敏夫

    河本国務大臣 まず、円高わが国産業、なかんずく中小企業に与えておる影響でありますが、昨年の末、二百四十円のときに全国を対象といたしまして調査をいたしました。非常に大きな影響を受けておりますが、特に中小企業関係では致命的な影響を受けておるところが大部分であります。そこで、この円高によりまして著しく影響を受けました中小企業に対しては、緊急の救済対策も必要だということで、一月には特別に御審議をお願いいたしまして、緊急立法を成立をさしていただいたわけでございます。  今回の円高は、さらにそれに続きまして相当大規模でございますので、昨年十二月においてすら以上申し上げましたような影響が出ておるわけでございますから、ようやくひとつやってみようか、こういう気になったそのやさきにこういうショックがまた再び出てきたわけでありますから、私は、相当これは打撃になっておるであろうと考えております。  そこで、この背景でございますが、一つにはアメリカの政策等ももちろん大きな理由ではありましょうけれども、しかし、何と申しましても、わが国の経常収支というものが非常に大きな規模になっておる、そしてそれも日を追うて当初の見通しの数字を上回ってくる、こういうことがやはり最大の背景でなかろうかと考えております。そこで、とにかく内需拡大いたしまして、それによりまして輸入する力をふやしていきますと同時に、緊急の輸入対策というものを先般来準備を進めておりますが、そのことによりまして現在の大幅な黒字を少しでも減る方向に流れを変えていかなければならぬ、このように考えておるところでございます。
  123. 玉城栄一

    ○玉城委員 そこで、五十三年度の実質成長七%ということを政府はおっしゃっておるわけでありますが、これは円レート二百四十五円で計算をされたものであると思うわけです。現在のレートと七%成長との関連について、ぜひお伺いをしておきたいと思います。
  124. 河本敏夫

    河本国務大臣 そこのところは、政府の方でもまだ正確には計算はしておりません。また、事実非常にむずかしい計算でございますし、かつ、円の水準というものは絶えず動いておるわけでございますから、計算ができるかどうかわかりませんけれども、概して申し上げますと、やはり相当マイナスの効果になるであろうということは考えられます。  今回の予算審議を通じまして政府の方もたびたび申しておりますように、国際情勢の変化あるいはまた国内情勢の変化によりまして事情が少し変わってくるということになれば、それはじっと見ておるということではなくして、必要な緊急対策を臨機応変に打ち出していくということ、これがぜひ必要である、しかも早目早目にその対策が必要である、こういうことを繰り返し政府の責任としてお約束をしておるわけでございますから、こういう情勢の変化等も踏まえまして、必要とあらば臨機応変の何らかの対策が当然とらるべきであると考えております。  本日決定をいたしました公定歩合の引き下げ、あるいはまた一連の短資の規制、こういう措置もやはり一つにはこれの対応策、こういうことになっておると思いますが、もちろんこれだけでは不十分でございまして、今後の情勢を見きわめながら必要な対策は機敏に決定をしていくということが何よりも大事だと考えております。そして、七%前後の成長を達成することによりまして経常収支の流れを変えるということが、現在の日本経済にとって何よりも大切なことである、こういう認識でございます。
  125. 玉城栄一

    ○玉城委員 いろいろな対策をとりながら七%成長を実現していきたいということでありますけれども、昨日が二百三十三円台、本日が二百三十五円台ですか、円高は一服しているとはいえ、特に中小企業の方々は深刻に政府対策を見守っておるわけであります。政府が今後この円高問題についてどういう具体的な手を打たれるのかということは、非常に深刻な関心を持って見守っておるところであります。したがって、七%成長を達成していくために、やはりこの円高問題というものは非常に重要な関連があるわけでありまして、これ以上の円高は防ぎたい、あるいは防ぐべきであるというお考えがあろうかと思うわけでありますけれども大臣のお考え方をお伺いしたいと思います。
  126. 河本敏夫

    河本国務大臣 現在の為替制度はいわゆる変動相場制でございまして、市中の実勢に任せるというのが国際的なたてまえでございます。ただ、非常に乱高下をいたしましたり、あるいはまた、ときには投機等が介入をする、こういう場合にはその国の中央政府はそれに対して必要な対応策をとってよろしい、こういう国際的な取り決めの中でこの制度というものは運営をされておるわけでございます。したがいまして、幾らが妥当か、あるいは幾らにするんだ、こういうことは政府としては考えておりませんし、また、言うべき筋合いではないとは思います。ただ、当初に申し上げましたように、現在の水準では、日本産業、特に中小企業が致命的な影響を受けておるということを考えますと、私は、日本経済の実力以上の評価になっておるのではないか、このように思います。そして、それに対応する唯一の方法は何と申しましても、内需拡大にあると思います。もちろん緊急の輸入拡大策もある程度の力はあるとは思いますが、やはり抜本的な対策というものは内需拡大にあると考えております。  そこで、近く予算も成立をいたしますので、これを機会に、それでは政府として内需拡大策として現在の時点にとり得る対策は何ぞやということについて一回総ざらいをしてみようということで、近く経済対策閣僚会議を開きまして、その方針を決定することにいたしております。だから、内需拡大ということが抜本策であると考えますが、あわせて、先般の日米共同声明にも見られますように、アメリカもやはりドルという基軸通貨を持っておる国でありますから、当然国際的に大きな役割りを果たしてもらわなければならないわけであります。したがいまして、共同声明には、アメリカの今後とるべき方針についてもアメリカ側が言及をしたということが記載をされております。でありますから、いろいろな政策を進めることによりまして、先ほど申し上げましたように、わが国の円の水準がわが国産業の実力にふさわしい水準に定着することを私どもは期待をいたしておるものでございます。
  127. 玉城栄一

    ○玉城委員 そこで、もう一点お伺いしておきたいわけでありますが、先ほど大臣もおっしゃいましたとおり、本日、公定歩合の引き下げが発表になっておるわけです。この円高が続いている原因は、申し上げるまでもなく、一向に経常収支の黒字が縮小しない、また、ドル安がずっと続いているということにもあるわけであります。政府は五十二年度の改定経済見通しで経常収支の見通しを百億ドルとしたわけでありますが、私は、これは不可能であり、百三十億ドルは必至と見ておりますし、また、経済研究機関でもそういう指摘があるわけであります。大臣とされまして百億ドル達成は可能と見ておるのか、重ねてお伺いしておきたいと思います。
  128. 河本敏夫

    河本国務大臣 一月時点の水準で経常収支はほぼ百億ドルになっておりますので、年度末の三月末では百億ドルを相当大幅に超える数字になるであろうと考えております。あるいはいまお述べになりましたような数字に近くなるのではないかと懸念をしておるところでございます。
  129. 玉城栄一

    ○玉城委員 政府に対しましては、円高を食いとめるその具体策並びに円高によって特に影響を受けます中小輸出関連業者に対する救済策の実施を強く要望しておきたいと思うわけであります。  ちょっと、法案に入ります前に、これは沖繩の問題でございますが、一点だけお伺いさせていただきたいと思います。  昨年の十一月に、中小企業連鎖倒産防止共済法の審議の際に、沖繩県の特免業者について御質問を申し上げたわけでありますが、その後通産省とされましてその実態を調査されたと思います。その救済策についてどのようにおとりになったのか、中小企業庁長官の方にお伺いしたいと思います。
  130. 岸田文武

    ○岸田政府委員 ただいまのお尋ねは、たしか円高緊急融資の対象となり得るかどうかという点についてのお尋ねであったかと思いますが、その際にもお答えをいたしましたように、従来のドル対法のときには輸出関連だけを対象としておりましたが、今回の円高対策法においてはある程度弾力化していこう、その場合においていわゆる特免業者をも対象とし得るような工夫を研究したいという御答弁を申し上げました。  実はその後、政令で議論をいたしまして、特免業者をも対象とし得るという形で処理をいたしておりますので、もし問題がございますようであれば、現地の県庁なり何なりにお問い合わせをいただければと思っておるところでございます。
  131. 玉城栄一

    ○玉城委員 それでは、法案についてお伺いをいたしたいと思います。  特定不況産業として指定を受ける要件は、法案の二条にございます設備生産能力の著しい過剰が長期に続く二とが見込まれ、また、その業種事業者の相当部分の経営長期に不安定状態が続くと認められ、また、その業種設備処理を行うことによって事態克服することのできるということが必要であるわけでありますが、特定不況業種として法律対象はどういうものを考えているのか、どういうものを予想しておられるのか、お伺いをいたしたいと思います。
  132. 濃野滋

    ○濃野政府委員 私からお答え申し上げます。  今回の法律によりまして特定不況産業といういわば法律対象業種になりますのは、最終的には、法案の第二条の第二項、第三項によりまして申し出前提となっておりますが、ただいま先生の御質問の第二条の一項の関係、つまり一号から四号まではこれは法定をしてございますが、このほか五号で特定不況産業のいわば候補業種として政令指定になりますものは、今後この法律ができました後で、私ども、ただいまお述べになりましたような五号の要件に何が該当するかということにつきましての検討を進めたいと思っております。  ただ、この法案成立の過程におきまして私ども事務当局として念頭に置きました業種といたしましては、いわゆる化学肥料関係業界、それから綿・スフ・合繊紡というような紡績業界、それから毛紡績の業界、それからフェロアロイ、フェロシリコン等のフェロアロイ業界、それから段ボール原紙、それから塩化ビニール樹脂の業界等が通産省の所管として一応念頭に置いた業種でございます。  そのほか、他省の所管業種、たとえば農林省の関係では合板あるいは精糖というようなものが考えられるのではないか、また、運輸省所管の業種といたしまして、船舶製造業は法定しておりますが、そのほかに船舶用の機関でございますとか船舶用品、いわゆる船用品等が候補として考えられるのではないか、こういうことを私ども一応念頭に置いて法案の作成に当たったわけでございます。
  133. 玉城栄一

    ○玉城委員 ただいま予想される特定不況業種をお挙げになっていらっしゃったわけでありますが、この業界ごとにどの程度の設備廃棄が必要かということを、予想数字があったらついでに教えていただきたいと思います。
  134. 濃野滋

    ○濃野政府委員 業種ごとの設備処理量がどのくらいになるかということは、先ほども申し上げましたように、この法律が成立をしましたならば、私どもといたしましては、いわば対象業種の候補業種、これを至急に決めなければなりませんが、さらに、これが決まりましても、その業種に属します大部分の事業者の方の申し出に基づきまして初めて特定不況産業として特定するわけでございまして、しかもその後、安定基本計画をつくる審議会の諮問等々の具体的な手続を経て検討されることになります。したがって、現段階で業種ごとに幾らかということを申し上げることは大変むずかしゅうございますが、私ども、昨年から、ただいま申し上げましたような念頭に置いている業種につきまして、産構審の部会あるいは非公式な研究会の場等におきまして、通産省所管につきましてはいろいろな検討をしておりまして、大体どの程度を一つの目安として私ども考えているかということをここに申し上げますと、まず、平電炉につきましては、三百三十万トンを一応設備処理対象の数量にしたい、それからアルミ製錬につきましては、現在約百六十万トンの能力がございますが、そのうちの四十万トン程度をいわゆる広い意味での設備処理対象として考えたらどうか、それから合繊につきましては、現在約百五十万トン程度の生産能力がございますが、この大体二割五分から三割に当たる三十五万ないし四十五万トン程度が設備処理対象として検討の対象になるのではないかということでございます。綿紡につきましては、現在約一千百万錘ございますが、この約二割程度、二百二十万錘程度が検討対象になるのではないか、毛紡績につきましては、現在約二百二十万錘のうちのこれまた二割前後、四十五万錘程度を検討の対象といたしておる。以上でございます。  なお、そのほかに、化学肥料でございますとかあるいは先ほど申し上げましたフェロアロイ等につきましては、それぞれ基本問題研究会等の場を使いまして現在いろいろな検討をしておるという次第になっております。
  135. 玉城栄一

    ○玉城委員 この法律案は、特定不況業種に対して安定基本計画を策定して、それに基づき設備廃棄実施させるのが骨格となっておるわけであります。そこで、この安定基本計画の策定についていろいろ問題点が予想されるわけであります。その点についてお伺いしてまいりたいと思いますが、安定基本計画の作成はこの法律が有効に機能するかどうかのかなめであり、非常に大事であると思います。この安定計画はどのように作成されるのか、お伺いをしたいと思います。
  136. 濃野滋

    ○濃野政府委員 ただいま御指摘のとおり、安定基本計画は、特定不況産業設備処理のいわば前提になる一つの目安でございますし、計画でございますので、非常にこれの作成は重要な問題でございます。法案におきましては、第三条に「安定基本計画」という規定が設けられておりますが、安定基本計画の作成は、三条にございますように、特定不況産業指定になりますと、それぞれの主務大臣関係審議会意見をまず聞いて定めるというのが一つの要件でございます。関係審議会と申しますのは、第二条に出ておりますが、一番それに関連のある関係の深い審議会、そういう特別の審議会がないときには通産省にございます産業構造審議会の意見を聞くというかっこうになっております。なお、私どもといたしましては、この審議会、産業構造審議会を使います場合には、業種ごとに部会ないしは小委員会等をつくりまして、そこに関係者の方々の委員としての御参加を仰いで審議を進めていきたい、かように考えております。  次に、安定基本計画内容は、第三条の二項に挙がっておりますように、主として三つの点が中心になります。  第一は、いわば設備処理対象としてどういう機械をとるか、それからどれだけの設備処理をするか、どういう方法によってやるかという設備処理に関する事項でございます。  それから二番目は、設備処理をいたしますので、少なくとも設備の新設なりあるいは増設というのは制限をする必要があると思いまして、そういう新設、増設制限に関する事項が第二の問題でございます。  それからさらに、過剰設備処理等を進めるに当たりまして、単に設備の数量、処理量だけにとどまらず、あるいは将来の方向として企業の販売提携をいたしますとか、さらに進んでは合併をいたしますとか等々、設備処理に関連いたしまして将来の事業のあり方等に絡んでのいろいろな考え方、基本原則等を定める必要があるのではないか、そういうものが第三番目の問題でございまして、その三つの点を安定基本計画内容として定める、かようになっております。
  137. 玉城栄一

    ○玉城委員 この安定基本計画がこの法案の非常に大事な部面であることは、もう先ほど申し上げましたし、また、そのとおりお考えになっていらっしゃると思いますが、この安定基本計画需給見通しが大前提にならなくてはならないと思うわけです。需給見通しは、需給ギャップのほか、為替レート、輸入状況国際競争力、景気動向等々、内外の環境変化で刻々と変わってくると思われるわけであります。これらに耐え得る正確な見通しを本当につくることが可能かどうか、その点をお伺いいたしたいと思います。
  138. 濃野滋

    ○濃野政府委員 御指摘のように、この安定基本計画の作成の大前提は、五年先あるいは数年先、いずれにいたしましても中長期の将来の一定の目標年次を定めまして、そのときのこの業種としてのあるべき姿を描く、具体的には先生の御指摘のようなそのときにおける需給状況がどうなるかという見通し、長期見通しを前提にする必要があることは申すまでもございません。御指摘のように、それは今後の日本経済成長率をどう考えるか、あるいは国際経済の中で一体どういう地位を占めるべきであるか、競争国の関係はどうか等々、大変むずかしい問題がありますことも御指摘のとおりでございます。ただ、私どもは、やはり通産省の産業行政の仕事といたしまして、大変むずかしいことではございますけれども、すでに現在までにも関係業界ないしは広く学識経験者の方等も集めまして、現在見通し得るあらゆる最大の情報をつかみまして、むずかしいことではございますが、そういう中長期需給見通し、基本計画をつくる前提としての計画をつくらなければなりませんし、また、つくり得るものと私ども考えております。
  139. 玉城栄一

    ○玉城委員 実は私たちは、今月の去る六日から七日にわたりまして、構造不況業種の典型的な工場の幾つかを訪れて、ひざ詰めでその苦しい状況の訴えも聞いてまいったわけであります。この問題について、具体的にはまた次の機会に譲ってお伺いしてまいりたいと思います。  そこで、平電炉業の四十八年度の生産能力は千五百九十万トン、生産は千百六十六万トン、稼働率八七。九%、これが五十一年度になりますと、生産能力は千九百九十五万トン、生産は千四万トン、稼働率は五・一%と生産能力のみが急激に拡大し、生産、稼働率は落ち込んでいるわけであります。この平電炉の場合でありますが、四十八年、四十九年当時から平電炉業界においては過剰設備が言われ、構造不況業界という見方ももうすでにあったわけで、当時通産省の見通しはどのようなものであったのか、お伺いをしておきたいと思います。
  140. 堺司

    ○堺説明員 お答え申し上げます。  四十八年当時、御指摘のような数字の見通しを通産省として掲げましたけれども、御承知のように、石油ショックという事態を想定しておらなかったわけでございまして、当時の成長率を前提にして策定したものでございます。
  141. 玉城栄一

    ○玉城委員 そこで、東京製鉄の社長が朝日新聞に述べているところによりますと、通産省は鉄の需要はさらに拡大する、鉄不足時代が来るという見通しだったと言っておるわけです。通産省は業界をミスリードしたのではないかという厳しい指摘ができるのではないかと思いますが、その点、いかがでしょうか。
  142. 堺司

    ○堺説明員 御承知のように、鉄鋼につきましては通産省がある程度のガイドラインを発表いたしておりますけれども、それに基づきまして設備をする、しないといいますのは、企業の自主的な判断によるわけでございます。したがいまして、その数字に各社それぞれ自社の判断を前提にして、その結果の集計が最終的には相当上回ったというふうに考えられます。
  143. 玉城栄一

    ○玉城委員 それを採用する、しないは企業の自主的な判断である、まさにそのとおりであると思いますが、これはやはり通産省として大きな責任のある問題であることは間違いないと思うわけです。その点はまた次の機会にお伺いしてまいりたいと思います。  平電炉業界の生産能力は、四十八年の千五百九十万トンから五十一年には千九百九十五万トンに設備拡大しているわけです。これが今日の事態を招いていると思います。この間、毎年設備拡大がなされ、一方生産、稼働率は停滞、下降を示しているわけであります。通産省はこの生産能力の拡大に対しどのような考えを持ってきたのか、また、どういう指導をしてきたのか、お伺いをしたいと思います。
  144. 堺司

    ○堺説明員 御承知のように、四十八年の石油ショック以来、わが国経済は安定期といいますか、相当リプレースしたような状況になっております。したがいまして、千九百九十五万トンの生産設備、現在はそれを若干超えまして二千万トン、二千百万トン近くになっておりますが、明らかに生産能力としては過剰という状況でございます。したがいまして、基礎産業局といたしましては、基礎産業局長の私的研究機関といたしまして、平電炉基本問題研究会というものを設置いたしまして、そこで鋭意検討いたしました結果、二千百万トンの能力は昭和五十五年度におきましても三百九十万トンないし五百九十万トン程度の過剰設備になる、したがいまして、それを前提にいたしまして、三百三十万トン程度は廃棄すべきではないかという御意見が出ておる次第でございます。
  145. 玉城栄一

    ○玉城委員 これも繊維業界の日清紡は見解を発表して、通産省の需給見通しが正しかったことはないという趣旨のことを言い切っているわけであります。このように、需給見通しは非常にむずかしく、正確なものを作成することはほとんど不可能に近いのではないかとすら考えられるわけです。そこで、不正確な需給見通しを前提にして適切な安定基本計画などをつくることは非常にむずかしい、私はこう思うわけです。果たして本当に確実な計画をどういうふうにおつくりになるおつもりであるのか、お伺いをしたいと思います。
  146. 濃野滋

    ○濃野政府委員 御指摘のように、長期需給見通し、需給計画をつくるということには、いろいろな非常にむずかしい問題があることは事実だろうと思います。特に、ただいま御指摘のようなオイルショック後のいわば日本産業経済需給構造が非常に大きな屈折をいたしました時期だけに、ここ数年の間の需要供給関係が、大分前に見ておりました長期計画のラインからあらゆる面で下方にシフトしてしまったというのは事実として私ども認めなければならぬところだと思います。  ただ、この需給の屈折が終わりまして、新しい一つ経済発展と申しますか成長の経路をいまたどろうとしておるところでございまして、経済がそういう一つの屈折を過ぎました後、もちろん長期にわたりましてはいろいろな要因はあるかもしれませんが、一定の経済の成長を前提として、先ほど申し上げましたようなそれぞれの関係者あるいは専門家の方々の御意見を入れながら一つ長期需給計画をつくることに努力をいたしますれば、むずかしいことではございますが、この設備処理等についての目安としての数字を求めることは十分可能ではないか、また、具体的に設備処理の数量を決めるに当たりましては、そういう需給計画にはそうは申しましてもいろいろな変動があるんだということを前提に置きまして、設備処理量についての具体的な数字を決めるときの一つの判断の材料にするというようなことも当然考えなければならぬではないか、こういうふうに考えております。
  147. 玉城栄一

    ○玉城委員 関連してお伺いしておきたいわけですが、通産省は昭和六十年度を目標年次とする産業構造長期ビジョンの作成を検討中であると承っておりますが、今度の産業構造長期ビジョンはいかなる点に重点を置いて作成されるのか、お伺いしたいと思います。
  148. 濃野滋

    ○濃野政府委員 私ども、いわゆる産業構造ビジョン、昭和四十九年に第一回の構造ビジョンというのを産業構造審議会の答申という形で御検討願いまして、以来四十九、五十、五十一年と三年間にわたり作成いたしました。昨年、昭和五十二年は、私ども、具体的な業種別の長期の見通しをつくるにつきましては、なお経済が非常に不確定な要素が多いということから、今後の産業構造の転換、変革の中での大きな問題点を指摘をいたしまして、具体的なビジョンの作成を一年間休んだわけでございます。しかし、最近に至りまして、やはり長期産業構造のビジョン、しかも業種別にある程度のガイドラインを示してもらいたいという空気があらゆる部門で非常に多うございまして、先ほどから先生の御指摘のように、現在の情勢の中で長期のビジョンを示すということにはいろいろむずかしい問題がございますけれども、石油ショック後の経済の非常に大きな屈折も一応一つの安定の方向が出てきておりますし、こういう情勢の中で、各方面からの要請に従いまして、できれば五十三年度は従来のような構造ビジョンの作成に取り組んでみたいと考えております。  なお、その構造ビジョンの中で何を中心にやるかということは、現在事務的にいろいろ問題点の整理をやっているところでございまして、大体ことしの半ばをめどに、でき得れば従来のような構造ビジョンをつくってみたい、こういうふうに考えているわけでございます。
  149. 玉城栄一

    ○玉城委員 そのおっしゃいました長期ビジョンと本法案安定基本計画との関係はどのように理解すればいいのか、お伺いしたいと思います。
  150. 濃野滋

    ○濃野政府委員 長期ビジョンで示します非常にマクロの経済のあるべき姿、あるいはさらに一歩踏み込みまして主要業種別の姿というものが長期ビジョンの中で取り上げようと考えられるものでございますが、これはどちらかと申しますと、業種別にいたしましてももっと大きな分類でございます。そういう意味で、今回の法案対象業種として予定されておる業種すべてが、個々の業種につきまして、六十年度を目標とした長期ビジョンの対象になるとは私ども考えておりません。もっとも、業種によりましては産業構造ビジョンで取り上げる対象業種になるものもあり得るのではないかと考えております。そうは申しましても、長期ビジョンをつくるに当たりましての基本的な考え方、今後の経済成長率をどう見るか、日本貿易構造をどう見るか等々、基本的なフレームを私ども決めなければいかぬと思いますが、そのフレームの中で今回の特定不況業種構造不況業種がどういうかっこうになるかという、そのフレームの中での位置づけというのは、この安定計画を作成する場合に基本的な方向としてやはり考えていかなければならないものではないか、こういうふうに考えておるわけでございます。
  151. 玉城栄一

    ○玉城委員 先ほどから、この法案安定基本計画は正確を期するということが非常に困難性が伴う、正確な数字をはじき出していくことが非常にむずかしい要素が多々あるという点を申し述べて、また、局長のお答えもそういうふうなこともおっしゃっておるわけですが、だからといって、この安定基本計画を立案しなくていいという意味ではないわけです。問題は、この安定基本計画に基づいてどのようにして設備廃棄実施するかということだと思うわけです。  そこで、本法律案によれば、まず業界の自助努力によって行うということであります。この点は、午前中の質疑においても、通産大臣はこの点を強調されておられたわけでありますが、指示カルテルを通産大臣が行う場合はどういう場合が考えられるのか、お伺いをしたいと思います。
  152. 濃野滋

    ○濃野政府委員 いわゆる過剰設備処理をどうやって進めるかということは、私ども、この法律案の作成に当たります前から、いわゆる構造不況問題が出ましたときから、基本的な考え方といたしまして、ただいま御指摘のありましたように、その前提はあくまでも関係業界事業者の自主的な解決への努力前提とするという基本的な考え方をとってまいりました。今回の法案でも、ただいま御指摘のございましたように、基本的には、第四条に挙げてございますように、事業者の自主的な努力で解決をすべきものと考えております。  ただ、従来のように国がと申しますか、各行政官庁といたしまして、いわゆる行政指導等を通じまして設備処理の問題に取り組んできたのと違いまして、今回こういう法律によりまして構造不況問題の解決のいわば一般的な共通の問題でございます過剰設備処理の促進を図るという場合には、先ほどから御指摘のございました将来の一つ計画をつくる、そして計画をつくった以上、最終的にはその計画の達成が担保をされる仕組みが必要でございまして、そのために、ただいまのような自主的な努力前提にしながらも、その担保の仕組みといたしまして、いわゆる指示カルテル制度を第五条に設けたいということにしたわけでございます。  いかなる場合に指示カルテルが発動するかと申しますと、第五条に挙がってございますように、第一の条件は、自主的な努力だけでは設備処理が円滑に進まないということが一つ、それから第二は、進まないでも、これが日本経済全体の今後の運営、発展に著しい支障を及ぼさなければ、あえてカルテルの指示をする必要はございませんが、ほっておけば、単にその業界の個々の事業者がどうなるかということではなしに、国民経済全体に悪い影響を与えるというようなときに、審議会の意見を聞いて設備処理に関するカルテルを結べという指示をする、こういうことになっておるわけでございます。
  153. 玉城栄一

    ○玉城委員 先ほどから何回も申し上げましたとおり、この安定基本計画の正確を期することは、いろいろと不確定要素を前提としなくてはならないという立場から、非常に困難性があるわけですね。ですから、その安定基本計画はきわめて正確性から遠いということが十分予想されるわけですね。そういう中で指示カルテルを行うということは、ちょっと行き過ぎのような感じがするわけですね。せめてガイドラインを示すという程度に、いわゆる本体の方が正確でないものに基づいて指示カルテルを出すわけでありますので、そういうことが考えられるわけです。  それで、一応それはおくとしましても、業界がまとまらない、あるいは放置しておくと国の経済上問題が起こってくるといっても、指示カルテルの場合、この実施にはむずかしい問題が起こってくるわけです。指示カルテルは強制力がないという見解のようでもありますけれども、本法律案指示カルテルは相当きついものだと思います。  そこで、指示カルテルに従わない場合は債務保証を受けることができないことになるのかどうか、一応お伺いしておきたいと思います。
  154. 濃野滋

    ○濃野政府委員 まず、ただいま御質問のございました指示カルテル、つまり共同行為実施すべきことを指示した場合に、これは当該業種に属する全事業者に対して指示をするわけでございますが、その場合に、その共同行為に参加をしなかった、その人をどう取り扱うかという問題でございます。  これは、法律上別に何の規定もございませんが、ただいま御指摘のように、この法律の第三章以下にございます基金による保証の対象にするかどうかということにつきましては、この指示に従わないで共同行為のいわばアウトサイダーになった方に対しては、その保証を行うということは基金の運用としてできないのではないか、こういうふうに私どもいま考えております。
  155. 玉城栄一

    ○玉城委員 おっしゃるところのアウトサイダーは債務保証が受けられないということがあれば、これは強制力が相当あるというふうに考えられるおけです。  それと私は、共同行為実施するといっても、相当むずかしい問題がつきまとうと言わざるを得ない。たとえば合板のような場合、一工場一ラインという中小企業などは、指示カルテルによって廃業に追い込まれるおそれも出てくると考えられるわけですけれども、その点はいかがでしょうか。
  156. 濃野滋

    ○濃野政府委員 ただいま合板の例をお挙げになりました。私、まことに不勉強で、合板の実態をよく存じませんので、合板という例としてのお答えはむずかしゅうございますが、通産省の所管業種の中でも、単純に設備を一定の比率で処理をするということができない業種もございます。それとちょうど一緒のケースではないかと思います。  もちろんそういう場合には、単なる一律の設備廃棄はできない。そこに、たとえば各事業者の間での、非常に進みますれば合併の問題とか、合併までいきませんでも事業の提携、生産の提携あるいは販売の提携というようないわゆる提携によってその業界としての再編成が行われないと、設備処理が行われないという業界もあると思います。そういう場合に指示カルテルの対象になるかどうかという問題、これは別の問題としてあると思いますが、いずれにいたしましても、指示によって強制的にある事業がその事業者の意思に反してなくなるような、そういう指示カルテルは私どもとしてはできないのではないか、こういうふうに考えております。
  157. 玉城栄一

    ○玉城委員 それで、ちょっとお伺いしておきたいのですが、この法案の五十五条の「報告の徴収」ですが、この五十五条の報告を徴収する事業者の範囲は、すべての業者なのかどうか、確認をしておきたいと思います。
  158. 濃野滋

    ○濃野政府委員 五十五条の「報告の徴収」は、「特定不況産業に属する事業者に対し、」となっておりますので、一応その産業に属するすべての事業者、こういうふうに私ども解釈をしております。
  159. 玉城栄一

    ○玉城委員 指示カルテルに従わないアウトサイダーを認めるということになるわけですが、実際アウトサイダーの存在を、この法案、特にいまの五十五条の点から考えましたときには、その存在は認められないようになるのではないかという懸念があるわけです。それはまた、この五十五条の「報告の徴収」は、アウトサイダーであるとないとにかかわらず、いまおっしゃいましたように全事業者になるわけですから、「業務又は経理の状況に関し報告をさせることができる。」ようになっていること、もう一点は五十八条の罰則規定、この五十五条との関連で、業者は、罰則規定もあるわけですから、通産省ににらまれるのではないかということで、結局実際的には従わざるを得なくなるのではないかという感じがするわけです。この点、いかがでしょうか。
  160. 濃野滋

    ○濃野政府委員 まず、五十五条「報告の徴収」の規定でございますが、「第一章又は第二章の規定の施行に必要な限度」、この「施行に必要な限度」というのは何であるかという点が、この報告徴収の対象をどこまでにするかという問題でございますが、具体的には政令で定めるところによってどういうものをとるかということを決めることになると思います。  私ども、先ほど御答弁申し上げましたように、ここにおける事業者はすべてを含んでおりますが、現在、この報告徴収で何をとろうかということを考えておりますのは、一つは、安定基本計画の策定それから共同行為指示等に関連をいたしまして、特定不況産業がこの五号の要件に該当するかしないかというような場合の特定不況産業指定の取り消しを行うときに、一体生産設備状況がどうか、経営状況についてはどうかというような報告徴収をとる必要があるのではないか、それから、安定基本計画をつくる場合、この場合も安定基本計画内容といたしまして、生産設備状況でございますとか、生産数量がどうなっているかとか、あるいは設備の新設の計画はどうなっているかというようなことについての報告もとる必要があるのではないか、あるいは安定基本計画実施状況がどうなっておるかというようなことにつきましてもとる必要があるのではないか等々のことを考えております。  先生の御質問の御趣旨のお答えになったかどうかわかりませんが、現在のところは、私ども、そういうことで五十五条の運用をしていきたいと考えておるわけでございます。
  161. 玉城栄一

    ○玉城委員 この点はまた次の機会に詳しくお伺いしてまいりたいと思いますが、この設備廃棄に関連をいたしまして、中小下請企業への影響が相当出てくると思うわけであります。この点は、ぜひ大臣の方から、この設備廃棄に伴いまして下請のそういう関連中小企業への影響をどのように考えておられるのか、その点をお伺いしたいと思います。
  162. 河本敏夫

    河本国務大臣 下請の企業、それから関係の中小企業、今回の設備廃棄に伴いまして相当大きな影響が当然出てまいります。つきましては、そういう方々の御意見等も今回の廃棄計画にできるだけ反映をさせたいということをいま考えておるところでございまして、いま考えておりますことは、こういう下請あるいはまた中小企業の方々のみならず、地域全体にとっても大きな影響が出る場合も当然あろうかと思います。でありますから、地域の代表の方々の意見も反映をしなければならぬ。いま工夫をしておるところでございますが、一つの考え方といたしましては、審議会等に臨時の委員として入っていただく、こういうことで積極的に意見を述べていただく、こういうことも一案でなかろうかと考えております。
  163. 玉城栄一

    ○玉城委員 この法律は製造業だけが対象になっておるわけです。安定基本計画によって供給のパイプが細くなりますと、川下である販売業者はもろに影響を受けることは当然であります。川上の製造は債務保証を受けられるが、川下の業界はカルテルでもしなければ対応できなくなると思われるわけであります。カルテルをやると課徴金を取られることになり、川下産業影響は無視できない。これは当然、政府としては強力にこの関係の業者に対する救済策は用意されなくてはならない、このように思うわけでありますが、その点についてお伺いをいたしたいと思います。
  164. 濃野滋

    ○濃野政府委員 この法律によります特定不況産業過剰設備処理が進んでいくという場合に、御指摘のような関連中小企業、下請関係その他広く関連事業者にいろいろな影響を与えることが予想されるわけでございます。もっともこの法律は、むしろ特定不況産業、ただでさえいろいろな不安定な要素を抱えておりまして、それを放置したときにはそれの影響が、さらに別の意味で悪い影響を与えることも予想されますので、むしろこういう特定不況産業を安定させることによって、予想される悪影響を防止をするという面もあると思います。ただ、そうは申しましても、関連事業者、中小企業等への影響につきましては、設備処理実施に当たりましていろいろ考えていかなければならぬ問題でございまして、中小企業関係につきましては、現在いろいろな政策の仕組みがたくさんございまして、こういうものとの有機的な連関を考えながら、中小企業問題の円満な解決に対処をしていくという方向で設備処理問題に取り組んでいきたい、こういうふうに考えております。
  165. 玉城栄一

    ○玉城委員 時間も迫ってまいりましたので、最後に二点ほどお伺いして、質問を終わりたいと思いますが、設備廃棄がされますと、当然雇用問題、雇用対策、この法案の中にもそれに関係する条文がうたわれているわけであります。そういう雇用対策と、もう一点は、この基金が一千億程度で果たしておさまるのかどうか、以上、二点を最後にお伺いしたいと思います。
  166. 濃野滋

    ○濃野政府委員 第一点の雇用問題でございますが、これはもう御指摘までもなく、構造不況問題の解決に関連をいたしまして一番大きな問題であろうと考えます。そういう意味で、私ども、この法律の中におきましても、ただいま御指摘のございましたように、第十条のところに「雇用安定等」という一章を設けまして、特定不況産業に属する事業者のいわば配慮規定、あるいは国ないしは都道府県の努力規定を設けまして、雇用の安定に対する取り組みの姿勢をはっきりさせたわけでございますが、ただ、この法律は、構造不況問題、そういうことで、雇用問題は非常に重要でございますが、この法律の直接の手段ないしは直接の目的は、計画的な設備処理を円滑に進めていくということがこの法律の最大のねらいでございまして、いわばその根っこに雇用の安定という非常に大きな目的がある、こういうふうに私どもは了解をしておるわけでございます。  なお、雇用の安定という観点から、大臣からも先ほど御答弁がございましたように、たとえば安定基本計画の策定に当たりましても、関係労働界の御意見を聞くようなそういう仕組みをつくり上げる、審議会の委員等に御参加を願うというようなことで雇用安定問題に対する取り組み方をしていきたいと考えております。  それから第二に、債務保証基金のいわば債務保証限度の問題でございます。この問題につきましては、御指摘のとおり法律上は何ら金額の明示はございませんが、五十三年度の予算編成に当たりまして、開発銀行からの出資ということで現在百億を限度として出資が行われる、なお、これにあわせまして民間の出資、出捐を期待するということになっておりまして、保証限度を十倍といたしましたときの金額は、御指摘のとおり千億プラスアルファというのが限度になると思います。  この保証限度で足りるかどうかという問題につきましては、これは今後この法律ができまして、業界申し出によりまして一体幾らの設備処理対象金額が出てくるかということにかかるわけでございますが、私ども、この制度の発足に当たりまして、一応千億ということで発足をすることにいたしました。今後のこの設備処理の進展状況等に合わせまして、その点は今後検討していかなければいかぬ、こういうふうに私どもは考えております。
  167. 玉城栄一

    ○玉城委員 以上で終わります。
  168. 山下徳夫

    ○山下(徳)委員長代理 宮田早苗君。
  169. 宮田早苗

    ○宮田委員 安定基本計画の策定に当たって労働組合の意見を取り入れるべきだという私どもの主張に対しまして、通産大臣あるいは労働大臣から、これまでに前向きで積極的なお答えをいただいているところでございますが、この際、もう一歩進めまして、当該業種におきます雇用計画基本計画の中に明文化すべきではないかということであります。第十条に雇用の安定を起こしておるわけでございますが、この内容では精神規定という域を出ていないのじゃないか、こう思うのですが、きょうは労働省お見えになっておりませんので、通産大臣、その点のお考えをまずお聞かせ願いたいと思います。
  170. 河本敏夫

    河本国務大臣 この法律は、先ほど来質疑応答を通じまして明らかになっておりますように、構造不況業種設備廃棄というところにこの法律の目的があるわけでございます。しかしながら、設備廃棄いたしますと、当然雇用問題が表面化してまいります。もうすでに構造不況業種は長い間の不況に苦しんでおりまして、ある程度の雇用の調整は進めておりますし、あるいはまた、設備廃棄されましてもある一部の者は他の職業に転換をしていく、こういうことも当然考えられますので、全部が全部職を失うということではありませんけれども、いずれにいたしましても、背景には雇用問題という大きな課題が存在しておることば、私どももよく認識をしております。  そこで、その受けざらといたしまして、昨年の年末に各党共同でつくっていただきました離職者対策法というものができておるわけでございまして、私どもは、今回の法律と昨年末のこの離職者緊急対策法、これは表裏一体の関係である、このように理解をいたしております。  しかしながら、いずれにいたしましても雇用問題は大事でございますから、今回のいろんな計画を進めていきます場合に、各種の審議会に労働界の方々の御意見を十分聞いてやっていこう、こういうことを決めておるわけでございますし、また、労働大臣とも十分協議をしていかなければならぬと考えておりますし、いま精神訓示規定のようなものだとおっしゃいましたが、国、県または事業者雇用問題に対して特別な配慮を払っていかなければならぬということも明記をしてありますので、昨年できました法律とあわせまして雇用問題には万遺漏ないように考えていかなければならぬ、このように考えておるのでございます。  ただ、繰り返して恐縮でありますけれども、この法律自身は設備廃棄ということを目的とする法律でございますから、雇用問題につきましては、先ほど申し上げましたような取り扱いにさせていただきたいと考えております。
  171. 宮田早苗

    ○宮田委員 大臣の御意向を承ってあれしておるわけですけれども、特にこの種の関係については、これは要望になるわけですが、設備廃棄、これはもちろんそれが目的ではございますけれども廃棄即そこに従事しておる者としては死活の問題にかかわるわけでございますので、特に通産省、労働省十分な連携をしていただいて、いま通産大臣おっしゃいましたように労働大臣と十分連携をとる、こういうことでございますので、それに期待をするわけですが、各省庁間の連携というものにつきましても、特に格段の配慮をお願いしておきます。  それから、特定不況産業指定手続について、疑問な点を少しばかりただしておきたいと思います。  第二条三項は企業数とシェアを問題にしておるわけでありますが、二つの要件を満たさなければ手続の開始ができない。条文を読んでみますと、「かつ、」という言葉がございますが、すでに通産省の方に、業界とか労働組合から、この「かつ、」という言葉を「または」というふうに修正すべきだという意見が寄せられておると思います。  こういう例があるわけです。アルミ加工分野、これは御多分に漏れず過当競争と不況にあえいでいる分野でございますが、この業界は上位三社でシェアが五〇%を超えております。残り百社以上がしのぎを削っているわけですが、強いところが設備廃棄や凍結に同意しないようなケースも考えられるわけです。数の上で大半が業種指定を申請する意図がありましても、業界の足並みがそろわない場合のことでございますが、この字句は考え直す必要があるじゃないかと思いますが、この点、どうですか。
  172. 濃野滋

    ○濃野政府委員 特定不況産業のいわば指定の要件といたしまして、御指摘のように、第二条の三項に、その前の項の第二項の申し出がまず前提でございますが、申し出をした者の数がその業種に属するすべての人のいわば大部分であって、かつ、事業活動——事業活動と申しますのは、たとえば売上高あるいは生産量等々でございますが、これも大部分という数でつないでありますから、両方がかかっておるというわけでございまして、これは非常にシビアな条件ではないか、こういう御指摘ではないかと思います。  なるほど確かにシビアな条件でございますが、私ども、ただいままでいろいろ御答弁申し上げましたように、過剰設備処理中心としたこの法律案につきまして、あくまでも前提は、その関係業界が一致して設備処理に取り組もうという自主的な努力あるいは自主的な解決への姿勢というものを大前提にして考えたい、こういうことでございますので、やはりそこまで業界の意思が固まっておるのだということの一つ基本的な表現といたしまして、数の上でさらに事業活動の上で大部分——大部分というのは、大体従来の法令の例から見まして、約三分の二以上のものという解釈が慣例でございますが、そういう業界全体のまとまりがある場合に初めてこの法律対象にしたらどうかということで決めたわけでございます。
  173. 宮田早苗

    ○宮田委員 この法律に言います業種指定について、これは二条で規定されておるわけでございますけれども、総体的に言いますと製造業ということになるのじゃないかと思います。しかし、その製造業に付帯をいたします業種といいますか、会社といいますか、その指定の問題について、この法律の解釈では受けられないということになっておるわけでございます。さきの質問者の御答弁で通産大臣いろいろお答えになっておりまして、その点わかるわけでございますが、何しろ製造業に付随する業種ほど製造業より以上にこの種の指定を欲しておる、こういうことなんでございますが、その面についてはどういうお考えを持っておられますか、お聞きをいたします。
  174. 濃野滋

    ○濃野政府委員 いわゆる構造不況業種と昨年以来言われてきました業種は、主として製造業でございましたが、ただいま御指摘のように、必ずしも製造業のみならず、たとえば第一次産業に属します鉱業等も、大変な最近の経済情勢の中で非常に苦しんでおる業種ではないかと思いますし、その他にも不況の波をかぶりまして苦しんでおる業種はいろいろあると思います。そういう業種に対していわゆる不況対策をどうするか、あるいはこういう製造業を中心とした構造不況業種に対してどういう構造不況対策をとるかということは、これは業種別にいろいろな考え方があると思いますが、今回の法律は、その中でたとえば過剰設備処理という問題に焦点を合わせまして、いろいろな業種があっていろいろな問題を抱えておりますけれども、それに共通する問題として過剰設備処理ということを取り上げてこの法律をつくったわけでございます。  不況という観点からは、いろいろなむずかしい問題を抱えた業種というものが製造業以外にあることは私どもも存じておりますが、それは別途そういう事業に対する対策として手を打つべきであって、この法律は、そういう意味で製造業に限定をして過剰設備処理を促進するという観点からまとめ上げた、こういうかっこうになっております。
  175. 宮田早苗

    ○宮田委員 そういう性格とは思いますけれども、いまおっしゃいました別途ということに対して、早くという気持ちもまた非常に強いわけでございますので、もちろん通産省の方々、いろいろな指導なり配慮はしていただいておるというのは聞いておりますけれども、改めて別途ということになりますと、どういうお考えがあるものか、いまわかっておるならば、その範囲内でお答え願いたいと思います。
  176. 濃野滋

    ○濃野政府委員 この法案作成の過程におきまして具体的な問題として一つ提案になりましたのは、鉱業の関係の問題がございまして、私どもは、法案作成の過程におきまして、この鉱業を対象にするかどうかということも種々内部で検討いたしました。ただ、先ほど御説明申し上げましたように、やはり製造業の抱えておる過剰設備処理という問題と鉱業の抱えておる問題は若干問題の処理の方向も性質も違うということで、内部でいろいろ検討の結果、一応この法律は、先ほどから申し述べておるように、製造業に限定をするということにいたしました。  それでは、鉱業の抱えておる問題をどう処理するかということにつきましては、私、詳細にはここで存じませんが、すでに長い問題でございまして、私ども省内の担当部局におきまして鉱山業界といま具体的な問題の詰めをやっておる、こういうふうに私は了解をいたしております。
  177. 宮田早苗

    ○宮田委員 次に、アウトサイダーの規制の問題についてお伺いするわけですが、当初いろいろ考えられていたわけでございまして、この法案提出の段階に削除されたということでございます。問題は、アウトサイダーを削除されたということはこの法案が及ばないということになる、そうすると、せっかくの規制ということで目的を掲げてつくられたこの法案の意図するものが私は挫折するのじゃないかと思いますが、このアウトサイダーに対しましてどのような考え方を持って臨まれるのか、まずお聞きをいたします。
  178. 濃野滋

    ○濃野政府委員 この法律案の作成の段階におきまして、私ども一つの問題点といたしまして、アウトサイダーに対する規制の問題——ただ、アウトサイダーに対する規制の問題と申しましても、過剰設備処理を進めるという意味でのアウトサイダー規制の問題ではございませんで、過剰設備処理前提といたしまして、設備の新増設等の制限に関してアウトサイダーの規制をすべきかどうかという点は、一つの問題点として検討の対象にしたことは事実でございます。     〔山下(徳)委員長代理退席、委員長着席〕 しかし、今回の法律案作成の段階でいろいろな各方面の御意見等を伺ったわけでございますが、非常に広い範囲の御意見が出てまいりました。アウトサイダー命令をぜひ入れるべきであるという御意見もございましたが、一方、やはりこの法律の持つべき性格からして、そこまで国がこの段階で入るのは問題であるというような御意見まで、非常に幅広くございました。最終的には、私ども、いわゆるアウトサイダーの規制はこの法案対象から除外をいたしました。  ただ、この設備処理を進めていくということは、個々の事業者の方からするとやはり経営基本的な問題に絡む問題でございまして、アウトサイダー命令が法文上あるなしにかかわらず、単なる一片の命令、一片の指示で片づく問題ではございません。私どもは、今後とも設備処理に当たりましては、関係業界の方、アウトサイダーになられるような人に対しましても、いろいろ説得し、話し合い、業界としての協調というものを一緒になって進めて、アウトサイダー命令という法律上の規定はなくても、あると同様に、いわば行政的なそういう話し合いを通じまして円滑な設備処理が進むように対処していかなければならぬ、こういうふうに考えておるわけでございます。
  179. 宮田早苗

    ○宮田委員 本法案趣旨は、さっきもいろいろ言われておりますように、過剰設備廃棄を確実にして供給需要バランスをとるということにあるわけでありまして、これが結果として完成して初めて法律の目的が達成されるわけでございますが、アウトサイダーというものが存在する限り、せっかくのこの不況対策というのは将来展望も含めた形の非常に重要な法律というふうに思っておりますだけに、やはりそのことによって不安というのがつきまとうわけでございますから、通産省の行政指導に負うところが非常に大きいということなんです。行政指導そのものが、果たして業界が苦慮しておりますそのことを完全に除去することができるかどうか、もう一度、恐れ入りますけれども、行政指導のあり方についておっしゃっていただきたいと思います。
  180. 濃野滋

    ○濃野政府委員 過剰設備処理を進めるということに対しまして、行政の取り組み方の姿勢あるいは取り組む方法等はいろいろあると思います。ただ、今回の法案作成に当たりまして、先ほども申し上げましたように、緊急の必要性、つまり過剰設備処理を進めるための債務保証中心とした金融的なバックアップの仕組みをつくること、もう一つは、自主的な設備処理を進めていくにいたしましても、単なる自主的な努力だけではできない場合に、いわゆる指示カルテルというカルテルを認めることによりまして独禁法との調整を図るということ、いわばこの必要性、早く法案をつくるという観点等々から見まして、今回御審議をお願いしました法案が現在の段階で一つのコンセンサスを得られた内容であると私ども考えております。  そういう前提に立ちまして、過剰設備処理ということは財産権の基本にかかわること、事業者から見ましては経営基本にかかわる問題でございまして、単なる一片の命令等では基本的に片づかない問題であろうと思います。したがって、先ほども申し上げましたように、関係業界の方と一緒に考え、そうして話し合いをし、説得と納得の上で問題を進めていくという方向によって過剰設備処理を円滑に進めていくということが必要であり、かつ、そういう方向で進めなければならない、こういうふうに考えておるわけでございます。
  181. 宮田早苗

    ○宮田委員 私どもは、この法律案を、時限立法でございますから、言うならば緊急避難のための必要というふうに考えておりまして、そのためにやはり産業政策的な考え方に立っておるわけでございますが、問題は、独禁政策との関係というのが実行の過程の中で当然出てくるのじゃないかというふうに思いますけれども、その点については、この法律そのものは独禁政策との関係は問題なしとされておるものかどうか、お聞きいたします。
  182. 濃野滋

    ○濃野政府委員 この法律案を作成するに当たりまして一つの調整を要しました問題は、先ほども触れましたような指示カルテル制度を中心とするいわゆる独禁政策との調整の問題でございました。御案内のように、一月の半ば過ぎだったと記憶いたしておりますが、私どもの第一次的な考え方がまとまりました後、公正取引委員会とその点についての協議に入りました。二月の初めまで若干の時日は要しましたが、いろいろな意見を交換いたしまして、最終的に御審議を願う法案の形にまとまったわけでございまして、現在の段階におきまして公正取引委員会当局との間で完全に意見の一致を見て、独禁法と今回の設備処理に関するこの法案との調整は完全に終わっておる、こういうふうに私は了解をいたしております。
  183. 宮田早苗

    ○宮田委員 私は、さきの本会議での本法案質疑の際に、信用基金制度の樹立に関連をいたしまして、必要資金のすべてを民間金融機関に依存せずに開銀等政府系の金融機関が融資できる方法を講ずるべきだ、こう主張したわけでございます。あの際、政府の考えを求めたわけでございますが、答弁が欠落をしておりましたので、この席で通産大臣に改めてお伺いをしたいわけでございます。
  184. 濃野滋

    ○濃野政府委員 私から、まず事務的な点をお答え申し上げます。  資金の確保の問題、実は私ども、この法案の中にも盛り入れました債務保証、これは先ほどから申し上げておりますように、設備処理基本的には業界の自主的な努力ということが前提であることから、これを保証ということによってバックアップをするのが一番適切ではないかということで設けたわけでございますが、御指摘は、設備処理にはこういう保証行為のほかに資金の面でいろいろな政府の施策が必要ではないかということでございまして、法案の第九条にもそういうことで「資金の確保に努める」という規定を設けております。  具体的に私ども考えておりますのは、すでに昭和五十二年度から一部の業種について枠を設けておりました開銀の融資等につきまして、五十三年度からは、この安定基本計画に基づいて設備処理を行う事業者が、設備処理といういわば後向きのお金ではございませんで、設備処理に伴ってたとえば事業の転換等を行っていくという前向きの資金につきましては、そういう転換に必要な設備資金等につきまして開銀から低利の融資をする、そういう制度の道も開くような手配をいたしております。具体的に申し上げますれば、開銀のその他枠の内数といたしまして、そういう意味での前向き資金供給も考えております。こういうことで、ただいまの御質問のような方向で問題を取り上げていきたいと考えておるわけでございます。
  185. 宮田早苗

    ○宮田委員 構造改善での設備処理に際しまして、償却の終わった設備を残して新鋭設備廃棄するようなことにならないかという危惧の念もあるわけでございます。国民経済的に見てもマイナスということになるわけでございますが、設備の合理的な処理を考えるべきだと思うわけです。その指導についてお伺いいたします。
  186. 濃野滋

    ○濃野政府委員 設備処理の今後の具体的な進め方につきましては、業種によりましていろいろな問題を抱えておりますし、個々の業種の今後の具体的な検討にまたなければならないと思いますが、ただいま御指摘のように、企業としてあるいは業種としての今後の方向の中で不合理なものであってはならないと私は思います。したがって、どういう設備対象にするか、あるいは設備の中でどういうものから廃棄をしていくかということは、個々の具体的な安定基本計画の中での設備処理を決めるに当たりまして当然御指摘のような点を頭に入れて、それを前提として検討し、考えなければならぬ、こういうふうに私は考えております。
  187. 宮田早苗

    ○宮田委員 もう一つ設備処理の方法について、法案の中には「廃棄若しくは長期格納若しくは休止又は譲渡」というふうになっておりますが、この際、処理する設備を対外的に活用するというお考えはあるかどうかということです。
  188. 濃野滋

    ○濃野政府委員 ただいまの御質問内容は、いわゆる過剰設備につきまして、これをたとえば外に輸出をするということはどうかという御指摘ではないかと思います。今後、業種によりまして広い意味での設備処理の中でいろいろな考え方が出ると思いますが、この法案といたしましては、そういう場合にその輸出した設備をこの計画の中に入れるか、特に後に決まっております保証基金対象にするかどうかということを考えますと、輸出をいたしたものはもう大体お金が入ってくるのでございまして、いわゆる設備処理対象として保証基金の保証の対象にするかどうかということになりますと、ちょっと問題がある面がございます。いずれにいたしましても、今後具体的な問題点として検討しなければならぬと思いますが、いま申し上げましたように、保証基金対象にはちょっとならないのではないか、こういうふうに考えております。
  189. 宮田早苗

    ○宮田委員 これは通産省の所管ではありませんが、合板業界が永大産業の会社更生法の適用反対に動いておるというような報道もあったわけでございます。せっかく推進しております設備廃棄によります構造改善が、最も大きな大手の市場撹乱によって進まなくなるという主張のようでございますが、通産省所管の業界でこの種の動きが見聞されたことはございませんかどうか。また、こういう関係について、産業政策から見てどのような見解かということをお聞きしたいと思います。
  190. 濃野滋

    ○濃野政府委員 ただいま御指摘の、永大産業が会社更生法の適用を受けることにつきまして業界の中に反対があるということは、新聞等で私、拝見をいたしました。  なお、当省所管業種につきましてそういうことがあるかどうかという御質問でございますが、御案内のように、会社更生法におきましては、会社の更生手続開始の申し立て、あるいは更生手続の開始決定等の場合に、裁判所が監督行政庁に意見を求めるようになっておりまして、私ども関係の行政庁として意見を述べることになっておりますが、現在までのところ、通産省所管の業種につきまして、永大産業と同様に、業界の中で、どうも会社更生法で、言葉は大変悪うございますが、すぐに生き返ってくるのはいろいろ問題があるというような意見もあるやのことは、私も耳にしたことがございます。  ただ、会社更生法というのは、更生法に定められた手続によりましていわゆる失業問題等を出さないで会社が立ち直っていくという一つの仕組みでございまして、そういういろいろな御意見はあるかもしれませんが、やはり更生法は更生法として、摩擦のないような会社の更生ができることを望んでおるわけでございますから、それもひとつ考えていかなければならぬということでございまして、私どもは、業界の中の同業他社の御意見等も耳に入れ、あるいはその会社の具体的な雇用者の状況、その業界における地位等、個々具体的なケースに合わせまして適時適切な対応をしていかなければならぬ、こういうふうに考えております。
  191. 宮田早苗

    ○宮田委員 最後でございますが、中小企業庁長官にお伺いするわけでございますが、昨年からの公共事業主導型によります景気回復施策が中小企業の分野にどの程度浸透してきたのか、この種の指標がないものですからわからないわけですが、中小企業庁はどう分析しておりますか、その点を聞いて終わります。
  192. 岸田文武

    ○岸田政府委員 昨年以来、公共事業の推進については各方面から全力をふるって取り組んでまいったところでございますが、それが中小企業にどういう影響を及ぼしたか。  まず、建設業は、大部分が中小企業でございますが、この面ではいろいろな明るい面も見受けられるような感じがいたしますし、現に、倒産件数の推移など見てまいりますと、非常に多かった倒産がちょっと一服したような感じもいたします。  それから次に、製造業関係でございますが、私ども生産統計あるいは中小企業の景況調査をアンケート調査の形で毎四半期やっておりますが、それを見ておりますと、一般の生産活動と比べますと、建設に関係する分野の生産活動、これが一歩か二歩先に進んでいる、多少明るさが見えてきておるようなことがいまのような調査にもうかがえるような気がいたしておるところでございます。  なお私どもも、その間の動きについては十分今後とも注意して見てまいりたいと思います。
  193. 野呂恭一

    野呂委員長 工藤晃君。
  194. 工藤晃

    ○工藤(晃)委員(共) 私は、日本共産党・革新共同を代表しまして、特定不況産業安定臨時措置法案について質問いたします。  最初に、本法案の「特定不況産業」は、通産省がこれまで「構造不況業種」と呼んできたものと同じかどうか。これは特に「製造業」ということですが、たとえば通産省が七八年一月「構造不況産業実態について」というのを出して幾つかの例示がありますが、それから選び出すのかどうか、その点についてちょっと伺いたいと思います。
  195. 濃野滋

    ○濃野政府委員 お答え申し上げます。  今回のこの法律の具体的な対象を何にするかということにつきましては、法律の一号から四号まで特定されておる業種を除きましては、今後政令で候補業種指定になりますが、ただいま御指摘のように、昨年の大体春から構造不況業種という言葉が出てまいりました。そのときに、通産省のみならず他省所管を含めて十一業種であるとか十三業種であるとかいろいろ言われましたが、大体その業種は今回の候補業種対象たり得るものとして私ども考えております。なお、いままで言われておりましたもののほかの業種につきましても、幾つかの業種が候補業種として検討の対象になるのではないか、こういうふうに考えておるわけでございます。
  196. 工藤晃

    ○工藤(晃)委員(共) それではお尋ねしますが、ここに例示されました四業種につきまして、特にオイルショックに前後して需給の推移及び設備投資の推移はどうか。設備投資の推移につきましては、これは調査室で出されました「要点及び問題点」にもある程度ありますから、まとめて大体四十八年以後どのくらいふえたとか、需給はどうなっているか、その辺についてお答え願いたいと思います。
  197. 濃野滋

    ○濃野政府委員 法定四業種のうち、実は造船業につきましては私ども直接の所管でございませんので、船舶局長お見えでございますから、別途お答え願いたいと思います。  残りの三業種につきまして、四十八年から五十二年度にわたりまして大体の傾向をかいつまんで申し上げますと、まず、平電炉業でございますが、平電炉業につきましては、生産能力は、四十八年度が九百八十八万トンに対しまして、その後逐年増加をいたしまして、五十一年度には千五百八十万トンになっております。なお、五十二年度は、若干これが減少して、千五百五十万トン程度ではないかというふうに考えております。生産は、四十八年八百六十八万トンから逐年大変停滞をいたしまして、五十一年度は若干回復をしておりますが、八百二十三万トンというわけでございまして、五十二年度は、これがさらに七百七十万トン程度にまた落ちておるのではないかと考えます。以上のような生産能力と生産関係からいたしまして、いわゆる稼働率でございますが、四十八年度八七、八%でございましたのが、昨年は約五〇%というふうに稼働率が非常に落ちておるという関係になっております。  設備投資は、四十八年を一〇〇といたしまして、四十九年、五十年には八割以上の増加を示しておりましたが、五十一年度はほぼ四十八年並みに下がっておるということでございまして、つまり石油ショック以前に計画された設備投資がずれ込んで四十九年、五十年に出てきておる姿を示しております。  次に、アルミの製錬業でございますが、生産能力は、四十八年の百二十五万トンから若干ずつ増加をいたしまして、五十二年度、見通しでございますが、百六十万トン強になっております。生産は、四十八年の百八万トンから非常に停滞をいたしまして、五十一年には百万トンを切りました。五十二年度は、若干回復をいたしまして、百二十万トン弱まで回復をいたしております。稼働率は、八六%強から五十二年度は七二%強と、なお低迷をいたしております。  設備投資でございますが、四十八年を一〇〇といたしますと、平電炉と同様に、四十九年は四十八年の倍以上、五十年で七割強という伸びを示しておりますが、昨年は四十八年に比べてすでに割りまして、九四、五%という数字になっております。これも石油ショックの前の計画が四十九年、五十年とずれ込んで設備投資が行われていたという姿をあらわしております。  それから、合成繊維製造業でございますが、生産能力が四十八年約三千八百トン強から若干の増加を示しておりまして、昨年五十二年度は約四千八百五十トン程度になっておるのではないか。これは一日当たりの生産能力でございます。これに対しまして、生産は四十八年度の百三十二万トンから停滞を続けまして、五十二年度もほぼ百三十三万トン程度というふうに推定をしておりまして、稼働率も九四、五%から五十二年度は七五%程度というかっこうになっております。  設備投資につきましては、四十八年を一〇〇といたしまして、四十九年は約五割弱増、五十年度が二六%程度の増、五十一年度も同様に二〇%強の増加になっておりますが、五十二年度は四十八年度の水準を下回っておりまして、これも設備投資が計画がずれ込みまして、四十九年、五十年に生産の減退にもかかわらず設備投資が伸びた、こういう姿を示しております。
  198. 謝敷宗登

    ○謝敷政府委員 造船業についてお答えを申します。  まず、設備投資でございますが、四十八年をピークにいたしまして、このときに約千五百五億でございまして、これが五十一年には三百二十九億ということで約五分の一強になっているという状況でございます。  生産状況を申し上げますと、これは造船の場合には国際的な問題でございまして、世界全体が落ち込んでおりますが、四十九年がピークでございます。四十八年度が日本では千七百六十万トン起工をいたしまして、四十九年度ずれ込みまして、ピークが二千百七十万トンということになっております。それ以後落ち込んでまいりまして、特に五十三年度に至りましては六百五十万トンの見込みということで、これにつきましても問題がなしとしない状況でございます。  造船の場合にはいろいろな種類の船をつくりますので、操業度で申し上げますと、五十一年六月の海運造船合理化審議会で約六五%という操業見通しの目標が出されたわけでございますが、四十九年度を一〇〇にいたしますと、五十一年度で七九%、五十二年度で六七%、五十三年度の現在の見込みでは六三%ということでございます。
  199. 工藤晃

    ○工藤(晃)委員(共) いま私は需給ということで、需給についても伺いましたけれども、これは時間がありませんから私の方で数字を挙げていいわけですが、特に平電炉につきまして、これは「要点及び問題点」ですか、そこにも千五百九十万トンから二千九十五万トン、三二%増というふうにあります。そこで、この点が確認されると思うのですが、平電炉につきまして、先ほどのこの委員会における答弁でも、三百三十万トンぐらい減らさなければいけないと問題になっているわけですが、ちょうどその千五百九十万トンから二千九十五万トン、三二%増、つまりオイルショック以後生産能力の増強分がほぼいま削らなければいけないと問題になっておる、これはよろしいと思うのですね。  それからアルミの方も、先ほど四十万トンと言いましたが、これは百二十五万トンから百六十三万トンで三〇%増、これもほぼこの間のオイルショック以後の増加分がいま削らなければいけないと問題になっている。  それから合成繊維は、先ほど二五%から三〇%削らなければいけない、処理しなければいけない。これも私の計算では大体二八%増ということになると思います。  造船は、これは私の方では、五十一年度まで大体一二%ぐらい能力がふえた。これは興銀の調査などがございますが、ともかくもこのオイルショック以後にふえた生産能力の分をいま削らなければいけないということになっている。  少なくともこれらの業種について、造船は別として三業種についてはそう確認されると思いますが、それはどうでしょうか。
  200. 濃野滋

    ○濃野政府委員 私、先ほど平電炉業と申し上げました数字は、実は先生のは平電炉の粗鋼生産能力の数字を申されましたが、私は小形棒鋼の生産の数字を申し上げましたので、数字が食い違っておって申しわけございませんでしたが、いずれにいたしましても、ただいま御指摘のように、現在長期的に見ていわゆる過剰設備ではないかという目安をつけております数字は、ちょうどここ四、五年の間の能力の増加の数字と概数的に見て一致をしておるというか、そういう感じがいたしております。
  201. 工藤晃

    ○工藤(晃)委員(共) 実は中央公論の昨年の経営特集冬季号に、興業銀行の調査部の構造不況業種についての調査が出ておりますが、これは製造業について言うと十一業種出しております。このうち五業種というのは、この間に——この間と言いますとオイルショック以後、需要は減った、しかし、設備投資の方はどんどん行われてしまって、生産能力はふえてしまった。この五業種のうちに、三業種まではいま言った平電炉、アルミ、造船が入ってくる。なお、この興銀の調査は合繊を掲げておりませんから、合繊を入れるならばこれに当たるわけなんです。いろいろ構造不況業種と言われるけれども、特にここで例示されたもののタイプというのは、オイルショック後どんどん需要が減っているということがそれこそ顕在化しながらも、設備投資の方はどんどん伸びていってしまった、そういうタイプのものであるということが実はここに示されていると思います。  ところで、次の問題としまして、これもやはりこの構造不況業種実態を明らかにする上で大事だと思う点としまして、なるほど平電炉や造船には中小企業もかなり多いわけでありますが、しかし、平電炉について言いますと、高炉メーカー系列、それから商社系列、そして独立と分かれて、その最後のものよりも前の二つの方が大きな比重を占めている。それから、造船についても、主力であった大型タンカーなどの方は、大手造船によってもっぱらつくられている。それから、アルミや合成繊維について言えば、これも皆大企業あるいはまた大企業と非常に関係のある企業でやっている。そういうことで、これは実は六〇年代から問題にされてきたわけでありますが、ワンセット主義などと言われまして、大きな金融機関を持ったグループが競って新しい産業に参入していく。それで、それぞれがその成長産業を自分のものにしていくために、非常に激しい設備投資の競争が行われた。それが実は最近まで続いたのではなかろうかという問題なんです。  アルミで言いますと、日軽金など古いところ、あるいは昭和電工それから住友化学、そのほか三菱も三井も入ってきて、住友の方は、住友金属工業が同じ住友グループでありながら新たにまたアルミ製錬にごく最近乗り出してくるような状況をつくり出しましたし、合成繊維になりますと、いろいろな分析がありますし、私もいろいろ調査したことがありますが、これまで非常に系統的な調査で知られている経済調査協会の系列の研究によりますと、三井グループとしては東レや鐘紡が挙げられる。三菱グループとしては三菱レイヨンや東洋紡績が挙げられる。住友は旭化成工業、三和は帝人やユニチカ、こういうぐあいになります。造船は造船で、三井造船、三菱重工業、それから富士銀行グループで言えば函館ドック、第一勧銀グループで言えば川崎重工、石川島播磨重工、あるいは三和グループで言えば日立造船、こういう関係にあると思うわけですが、こういう特に四つばかりの業種についてのそういうグループの関係や、あるいは設備投資をやるに当たって背後に銀行や商社があってどういう役割りを果たしたのか、この実態の問題について伺いたいと思います。
  202. 謝敷宗登

    ○謝敷政府委員 造船についてお答え申し上げますが、造船の場合には、設備に対します需要の増加が非常に顕著になってまいりましたのは、四十五年くらいから以降だと思います。それで、四十五年の時点で超大型というような問題が出てまいりまして、一応目標を千二百万トンベースぐらいにいたしまして、その後四十六年に再度見直しをしておりますが、このときは需要の方がきわめて強い情勢でございまして、世界で言いましても、建造能力の約三倍ぐらいの新規受注が出ていたような状態でございます。したがいまして、オイルショック前は、少なくとも実需に見合う、それから非常に逼迫した造船船台についての合理化を伴う拡張を行うという対応をしてきたわけでございます。  先生御指摘の系列の点でございますが、これは確かに、大手造船所におきましては主とした融資銀行は先生お述べのとおりだと思います。ただ、設備投資につきましては、四十六年以降を見てみますと、社内留保が設備投資枠の四割から多いときには六割ということで、市銀からの借り入れは、少ない年ですと一四%、多い年で三四%ということで、設備資金投資額が建造資金に比べて余り大きくないものですから、設備資金からのそういった問題はないかと思います。  それからもう一点、運転資金の問題でございますが、輸出船については輸銀資金の活用、あるいは開銀資金については、これは船主が計画造船について開銀から借り入れるという形でございまして、制度金融に乗っている面が多いということで、いまお挙げになりました他業種と異なりまして、銀行系列が顕著である、あるいは商社系列が顕著であるというふうには必ずしも見ておらないわけでございます。
  203. 藤原一郎

    ○藤原政府委員 合成繊維産業につきまして、お答えになるかわかりませんが、若干お答え申し上げますと、合成繊維産業につきましては、石油ショック後の設備投資といいますものは、新規の設備投資というものは実は余りございませんで、合成繊維産業の特徴といたしまして、技術の内部的な革新によりますところの能力アップというものが相当程度ございまして、その分がふえた、こういう実態であろうかと思います。  それから、銀行系列その他につきましては、それぞれメインバンクというものがあるわけでございますが、たとえば先生お示しの東洋レーヨンと鐘紡というものは確かに三井銀行がメインバンクではございますが、これが同系列あるいは同グループということはちょっと言いかねる状態でございますし、それぞれメインバンクはございますが、お示しのような系列というものを断定するにはやや薄弱ではないか、このように考えております。
  204. 工藤晃

    ○工藤(晃)委員(共) これは幾つかの業界によって違いますけれども、しかし、いまの御答弁の中でも、メインバンクがある、もちろんこのメインバンクだけでなしに、その周りにいろいろな関連金融機関があり、また同時に、協調ということもやられると思います。しかし、いまはアルミなどの御答弁はなかったのですが、アルミにしろ、平電炉にしろ、造船にしろ、ともかくもそれで設備投資がやられるときに、その企業だけでなしに、とりわけ長期的に見る場合、もちろんオイルショック後に限って見る場合もありますが、ともかく六〇年代以降の長期的に見る場合に、先ほども私がワンセット主義と言ったようなそれぞれの大きな集団、目立ったものは六大集団でありますが、そこでそういう新しい産業への進出を目指してその設備投資がやられ、その延長線上でオイルショック後の設備投資がやられた、これははっきりしていると思います。  そこで、最後に一問、大変時間が短いので余り質問ができないのは残念なんですが、先ほど言ったように、特にこの数年の設備投資能力アップを事実上いま削らなければいけなくなったというときに、この間の政府需給見通し、行政指導はどうだったのか。たとえば産業構造長期ビジョンの七五年度版などを見ますと、いま問題になっている業種は相当強気に描かれているようでありますが、この点について説明していただきたいと思います。
  205. 濃野滋

    ○濃野政府委員 私どもオイルショック後の変動の中で、オイルショックを契機といたしまして日本経済を取り巻く内外の要因、国内におきましても需給構造が非常に変わる、それから国際的ないわば経済構造もいろいろな面で変わってくる、その中で、七〇年代の日本産業はどういう方向をとるべきかという大きなフレームワークと同時に、主要産業についての長期ビジョンというものを昭和四十九年から手をつけたことは事実でございまして、四十九年、五十年、五十一年と、三回にわたりまして長期ビジョンに取り組んでまいりました。  四十九年に取り組みましたビジョンは、オイルショック後の変動の中でなおひとつ将来の明るい方向を見出したい、そういう考え方からとったわけでございますが、私、詳細な中身は忘れましたけれども、こういう長期ビジョンというのは、この変動の時代の中でも毎年見直しをして、そのときどきの情勢に合わせて考えていくべきであるという前提をとっていたと確かに記憶しております。しかし、確かに先生の御指摘のように、最初につくりました四十九年のビジョンと現状の姿を見ますと、これは非常な食い違いがあることは事実であろうと私は思います。私ども、昨年も実はまたこれの見直しをしたいという感じを持っておりましたが、見直しをするにしてはまだ不確定要素があるということで、昨年は、今後の大きな問題点の指摘にとどめました。  先ほども御答弁いたしましたように、そろそろオイルショック後の屈折が終わって、一つの新しい方向へだんだん向かいつつあるということから、本年度は、また改めて少し将来の長期ビジョンというものに取り組んでみたいと考えておるわけでございます。いずれにいたしましても、長期ビジョンというのは、非常に大きな屈折の後では若干の食い違いが出てくるということはやむを得ないことだと私は思いますが、今後の先の明るい方向と申しますか、進むべき方向を見出すという意味で、そろそろ新しい長期ビジョンをつくってもいい時代になってきておるのではないか、こういう感じがいたしておるわけでございます。
  206. 謝敷宗登

    ○謝敷政府委員 造船につきましては、オイルショック後の五十一年六月に、海運造船合理化審議会で答申をいただきまして、当時約千九百万トンという能力に対して六百五十万トン、操業度ベースで言いますと六五%という数字をいただいて、これは昭和五十五年という目標であったわけですが、私どもとしましては、それを若干早くその線に持っていくべきではないかということを検討いたしまして、五十二年度から操業調整に入っておるわけでございます。五十二年度、五十三年度ともに大体私どもの想定しておりました操業調整、これは各企業の上限の和でございますので、それより落ちるわけですが、大体九割程度になってきている。  それからさらに、今後でございますが、最近の情勢から、世界的にも、欧州側も日本側も非常にそういう点については厳しい情勢になってきておりますので、五十五年あるいは六十年を見通した作業を進めておりますが、これをもとにいたしましてできるだけ早い機会に需給の見通しを立てる方針でございます。ただ、いずれにいたしましても、五十一年の答申のときでも若干の試算をしておりますが、五十五年を越え六十年に至る五年間におきましても、かつてのような大幅な需要の回復というのは見込めないのじゃないか、こういうことが出ておりますので、現状を踏まえて構造改善に取り組みたい、こう考えておるわけです。
  207. 工藤晃

    ○工藤(晃)委員(共) もう時間が参りましたので、きょうは後に回しますが、しかし、いまの造船の関係の答弁を聞きましても、たとえば運輸省で一昨年六月得ました答申で、昭和五十五年の見通しは六百五十万トンで、しかし工事量としては大体三分の二ぐらいが続くであろう、そういう見通しに立ったわけですね。だから、いまみたいに半分減らさなければいけないということにはならなかったわけです。これはもうおととしの段階で、そのほか政府の行政指導その他については大変重要な問題があります。もっと言えば、日本株式会社と言われるその心臓部の問題もここにいろいろあるわけなんで、今後この問題や先ほどのいろいろな独占グループの設備投資のあり方の問題なども追及しなければ、この法案のいろいろな意味が明らかにできないのではないか、こう思いまして、後の機会に質問を続けたいと思います。
  208. 野呂恭一

  209. 大成正雄

    大成委員 質問時間が二十分でございますので、通告した内容すべて消化できるかどうかわかりませんが、逐次御質問をさせていただきたいと思います。  業種指定の見込みについてでございますが、この点につきましては、先ほど局長から、第二条の業種を法定しておる四業種以外の業種、第五の業種につきましては、念頭に置いておるとして例示されましたので、一応これは省略をいたしますが、この申し出者数の大部分を占めるというこの解釈の問題ですが、この「大部分を占める」というのは、関係業界のどの程度の部分、比率を「大部分」と考えるか、その点を承りたいと思います。
  210. 濃野滋

    ○濃野政府委員 お答え申し上げます。  「大部分」と申しますのは、従来の立法例から申しますと、おおむね三分の二ということになっております。これが公定解釈でございまして、したがって、二条三項の「数の大部分」、これは数でございますからはっきりいたしますが、もう一つ「事業活動の大部分」というのは、売上高あるいは生産量等事業活動をあらわす指標のおおむね三分の二以上、こういうふうに私ども考えております。
  211. 大成正雄

    大成委員 ただいまの御答弁の三分の二というのは、関連中小企業も含めて一切を含めてか、主要企業のみでしょうか、どういうことでしょうか。
  212. 濃野滋

    ○濃野政府委員 当該業種に属する事業者でございまして、先生の御質問、関連企業というのがたとえば販売業者とかいうことでございますと、当該製造業Aという事業に属する事業者の数でございます。もちろんその場合には、大企業のみならず中小企業も全部含めての数でございます。
  213. 大成正雄

    大成委員 現在、中小企業団体の組織に関する法律第十八条によりまして、それぞれ商工組合等が通産大臣の認可を受けて調整規程の実施をしております。承るところによりますと、現在このような主務大臣が認可しておるカルテル規程が二十五業種ある、このうち大臣命令が十六件、自主調整が九件ある、こういうふうに承っておるわけであります。答弁の都合で、もしその業種を逐一説明されることが長くなるようでしたら、資料として次回の委員会までに要求いたしますが、どのような状態になっておるでしょうか。
  214. 岸田文武

    ○岸田政府委員 御指摘のとおり、中小企業団体法に基づくカルテルを実施している業種は二十五業種でございます。そのうち十六業種についてアウトサイダー規制命令を発動し、九業種については自主カルテルのみを行っております。  これらの二十五業種業種別の内訳としましては、繊維関係が十三業種、鉄鋼関係が二業種、非鉄金属関係が一業種、化学製品関係が一業種、紙製造業関係が二業種、雑貨関係が四業種、農林水産業関係が二業種というふうになっております。
  215. 大成正雄

    大成委員 ただいま長官が御説明になられましたそれぞれの業種の調整規程と本法による安定基本計画との整合性の問題についてでございますが、どのような関連があり、また、整合を図ろうとしているのかを承りたいと存じます。  なお、本法指定業種企業生産シェア、通産当局の資料によりますと、たとえば主要企業、大企業のシェアが五〇%以下というものとして、平電炉、合繊、綿・スフ・合繊紡、毛紡、段ボール原紙、こういったものがそれぞれ五〇%以下、二〇%程度のものもありますが、そういったことであります。本法の効果を期待するためには、そういったシェアの少ない部分に対しても、すなわち逆に言うならば、中小企業がその大部分を占めるといった分野に対する過剰設備の整理や構造改善というものを進めていかなければならないと思いますが、これに対しましてはどのように考えておられるのでしょうか。
  216. 濃野滋

    ○濃野政府委員 ただいまの御指摘の点、本法による対象指定業種、これと中小企業性の強い業種との関係をどう見るかということでございますが、この法律は、一応法律のたてまえといたしましては、構造不況業種に属する中小企業につきましても全部本法対象となるというのが法律のたてまえでございまして、すなわち、業種としてその業種特定不況産業指定になりますれば、その業種に属する中小企業、これもこの法律によります安定基本計画内容なり、あるいはもし最終的の実行担保として共同行為実施に関する指示あるいは債務保証等の対象になり得る、当然法律上はそうだと考えております。  ただ、先生ただいま御指摘の背景にある点でございますが、中小企業につきましては、まず法律上も、団体法のようなより整備したと申しますか、法律的にいろいろな手段を含んだ規定がございますし、また、設備処理ということを考えてみましても、組合を中心とした共同廃棄事業、そしてまた、金融的には中小企業振興事業団の長期無利子融資制度等のいろいろな措置がございますし、一方、事業転換をいたすにいたしましても、事業転換のための対策臨時措置法あるいは信用保険法等、各般の手厚い対策が中小企業にございますので、むしろ設備処理を行うに当たりましても、こういう中小企業に関するいろいろな仕組みを利用した方がいいということも考えられると思います。  いずれにいたしましても、こういう中小企業性が強い業種について、これを現実に本法を運用するときにどうするかということにつきましては、具体的にこういう中小企業に対する措置との絡み合いを見ながら一番いい方向で考える、こういうことで処理をしていきたいというふうに考えております。
  217. 大成正雄

    大成委員 ただいまの御答弁によりますと、相当弾力的に考えられるというふうに理解するわけです。たとえば綿・スフ・合繊紡等については、大手は自主廃棄、それから中小企業団体等については共同廃棄を現在進めておるわけであります。本法が施行になった場合に、現在この団体法によって調整規程によって共同廃棄事業をやっておるといったものをどうするかといったことが、具体的に現実の問題としてむずかしい問題が出てくると思います。それから、いまの永大産業関連の合板等については、たとえば本法による設備廃棄よりは、むしろ振興事業団の近促法による設備廃棄の方が金利の面からも何からいっても有利だ、むしろ本法を適用しないでいった方がいいといった意見も出ております。それらについての考え方をお聞かせいただきたい。
  218. 濃野滋

    ○濃野政府委員 ただいま御答弁申し上げましたとおり、この法律も、いわゆる構造不況業種対策としてのいろいろな対策がございますが、その中の過剰設備処理をいかにうまくやっていくか、特に法律では、金融的ないわゆる保証機能というものを使いましてこれをバックアップするということを目的につくったわけでございまして、業種によりましては、私ただいま御答弁申し上げましたように、また、先生いま御指摘のございましたように、中小企業性の強い業種、あるいは個々の単独立法等をもちましてより有利なよりスムーズな体制がとり得る業種もあると思います。その辺は、そういう既存の法の体系、仕組み等を十分有機的に検討しながら弾力的な運用が図り得る、また、そういうふうな弾力的な運用を図っていきたい、こういうふうに考えておるわけでございます。
  219. 大成正雄

    大成委員 団体法二十六条、二十七条では、調整規程の認可に当たって主務大臣は、従業員に対する配慮事項としてそれぞれ指摘しておるわけであります。これも本法と同じような訓示規定のようなものですが、現在の調整規程の運用に当たって、中小企業の従業員の問題に対してはどのような配慮をしておられますか、長官に承りたいと思います。
  220. 岸田文武

    ○岸田政府委員 調整規程の認可に際しましては、あらかじめ中小企業安定審議会の議を経ることになっております。審議会のメンバーの中に労働組合の代表の方も入っておられまして、私も審議会へ出ておりまして見ておりますと、やはりこの措置によって従業員がどういう影響を受けるのかというようなことについて、いろいろ活発な議論が出ておるようなことでございます。さらに、個々の調整規程を認可するに当たりましては、従業員についての配慮を行うようにということを、その都度指示をいたしておるところでございます。
  221. 大成正雄

    大成委員 さらに努力をお願いしたいと思います。  次に、指示カルテルと独禁法除外の問題についてでございますが、先ほど局長は、本法実施に当たって念頭に置いておるという業種をいろいろ挙げておられたのですが、この中で、現在通産当局として、共同行為指示がなければなかなか本法制定趣旨に沿わないのではないかと思われるような業種は、どのような業種をいま念頭に置いておられますか、承りたいと思います。
  222. 濃野滋

    ○濃野政府委員 今回の法案におきまして、いわゆる指示カルテル制度の創設を行おうとしておりますが、ただいま御質問のございました、それでは具体的にどの業種がこの指示カルテルの対象になるということを念頭に置いて考えたかということでございますが、どの業種はこの指示カルテルまで発動しなければできない、また、指示カルテルを発動してやる必要がある業種であるということは、具体的な対象業種については特にございません。
  223. 大成正雄

    大成委員 次に、これは大臣に承りたいと思いますが、去る三月二日の本会議質疑におきまして、大臣は、保証基金の枠は決めないこととし、大蔵、通産両大臣の認可によって増額する、こう宮田議員の質問に対して述べておられるわけであります。しかしながら、先ほどの御答弁の中で、開銀融資の枠が今年度の予算で決められておるから一千億プラスアルファだ、こういうことでございますが、第二条の第五号の業種指定については一年以内に決めるというふうになっております。そういうことになりますと、この基金の所要総額というものは一年以内に決まってくるというふうにわれわれは理解をするわけですが、実際問題としてそういう一千億プラスアルファ程度のもので足りるのかどうか、この点、大臣の本会議の御答弁と照らし合わせて、大臣から承りたいと存じます。  特に、開銀出資の限度額というものは、今年度途中で補正で考えるとか、何かそういうことも考えておるのかどうか、これもあわせて承りたいと存じます。
  224. 河本敏夫

    河本国務大臣 一番当初は、一千億プラスアルファということでいろいろ議論が進んでおったわけであります。しかし、最終的には、法律にも明記してありますように、通商産業大臣大蔵大臣が協議して決める、こういうことになりました。現時点ではとても一千億では足りない、相当増額する必要がある、このように理解をしております。  それから、開銀出資というのは財政投融資に属する資金でありますから、これは別に補正予算を組むとかそういうことをしなくても、政府の方で弾力条項を発動いたしまして、適宜増額できることになっておりますので、臨機応変、必要な資金は出すようにいたしまして、構造不況業種設備廃棄事業が円滑にいくように進めたいと考えております。
  225. 大成正雄

    大成委員 明日、公定歩合を〇・七五%引き下げて、三・五%ということになるわけであります。本委員会でもしばしば指摘しておるところでございますけれども、この保証基金によって貸し付ける金利の問題が非常に重大だと思います。たとえばアルミ産業なんか膨大な借金を抱えておる、合繊もそうでございますが、平均的に言うと大体八%くらいの金利だというふうに聞いておるわけでございますけれども、公定歩合の引き下げによって貸出金利というものはどのくらいに想定されるのか。  ついでに、中小企業庁長官ですか、政府金融機関並びに現在制度金融として実施しております業種転換資金、あるいは五・五%の円高対策金融、この金利も公定歩合の引き下げによって当然引き下げられるものと理解してよろしいかどうか、あわせて承りたいと思います。
  226. 濃野滋

    ○濃野政府委員 設備処理を進めるに当たりまして、今回新しく設立をされる基金が保証をすることになりますが、この保証料は極力安くするということで、今後大蔵省、財政当局及び金融機関側と関係者、専門家の間で問題を詰めていきたいと考えております。  なお、金利の問題につきましては、これはたてまえ上やはり民間の金利が中心になります。したがって、たとえばある業界について過剰設備処理を進める、そういたしますと、その業界に属する事業者について、現在設備資金あるいは短期の運転資金等でそれぞれの系列、それぞれの金融機関と事業者との間の関係がございますが、将来の業界としての設備処理の方向に合わせまして、それではこの金利を幾らにするかという問題が改めて議論になる場合もございましょうし、従来のお金の貸し借りの関係がそのまま続くものもございましょうが、そういう民間の金利を前提に私どもは考えていかざるを得ない、こういうふうに考えておるわけでございます。
  227. 岸田文武

    ○岸田政府委員 政府系三機関の貸出金利につきましては、かねがねこれについて引き下げの御要望がございましたし、中小企業業界からも強い声がございますので、私どもも、今回の引き下げを機会に、少しでも下げるということで努力していきたいと思っておるところでございます。  ただ、お話の中で円高対策の金利、それからそれに伴う事業転換の金利、これは住宅に対する貸出金利とのバランス等もあろうかと思いますが、御趣旨はよくわかっておるつもりでございますので、なおよく大蔵省と調整をいたしたいと思います。
  228. 大成正雄

    大成委員 最後に、もう時間が来ましたが、大臣に承りたいと思います。  大体、優良貸出先に対する金利は安い、構造不況のような業種ほど金利は高い、そういう民間金利の実勢からしまして、その民間金利の実勢によってこの設備廃棄資金を貸すのだということになりますと、大臣、私は非常に問題があるような気がするのです。円高対策において財政資金から五・五%の利子補給をするという口をあけているわけですから、やはりこれは国策的な政策金融ですし、この設備廃棄資金の金利については、保証もするのですから、民間の実勢金利で貸すという考え方は、ただいまの局長の答弁では私どもうなずけないのですが、大臣のお考えをお聞かせいただきたいと思います。
  229. 河本敏夫

    河本国務大臣 この金利につきましては、利子補給などということは一切考えておりませんけれども、しかし、保証するという背景もございますし、構造改善事業をやるための資金でありますから、これは当然安くないとやれないわけでございますので、大蔵省とも相談をいたしまして、極力低くするようにいたします。
  230. 大成正雄

    大成委員 上限をある程度大蔵省と協議して決めるという考え方はありましょうか、金利の上限を決めるという考え方は。
  231. 河本敏夫

    河本国務大臣 まだそこまでは具体的には考えておりませんが、とにかく、現実問題としてこの構造改善事業が円滑に進みますように、適当な条件を整えたいと考えます。
  232. 大成正雄

    大成委員 時間がありませんので、以下、具体的な業種ごとの質問もあるのですが、次回に譲らしていただきたいと思います。  終わります。
  233. 野呂恭一

    野呂委員長 次回は、来る十七日金曜日午前十時理事会、午前十時三十分から委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。    午後八時四十二分散会      ————◇—————