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1978-03-03 第84回国会 衆議院 商工委員会 第7号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和五十三年三月三日(金曜日)     午前十時三十五分開議  出席委員    委員長 野呂 恭一君    理事 武藤 嘉文君 理事 山崎  拓君    理事 山下 徳夫君 理事 岡田 哲児君    理事 渡辺 三郎君 理事 松本 忠助君       小川 平二君    佐々木義武君       島村 宜伸君    中西 啓介君       楢橋  進君    橋口  隆君       松永  光君    渡辺 秀央君       板川 正吾君    加藤 清二君       後藤  茂君    上坂  昇君       清水  勇君    武部  文君       中村 重光君    長田 武士君       玉城 栄一君    安田 純治君       大成 正雄君  出席国務大臣         通商産業大臣  河本 敏夫君         国 務 大 臣         (経済企画庁長         官)      宮澤 喜一君  出席政府委員         公正取引委員会         委員長     橋口  收君         公正取引委員会         事務局経済部長 妹尾  明君         経済企画庁調整         局長      宮崎  勇君         経済企画庁物価         局長      藤井 直樹君         経済企画庁総合         計画局長    喜多村治雄君         経済企画庁調査         局長      岩田 幸基君         通商産業大臣官         房長      宮本 四郎君         通商産業大臣官         房審議官    島田 春樹君         通商産業大臣官         房審議官    山口 和男君         通商産業省貿易         局長      西山敬次郎君         通商産業省機械         情報産業局長  森山 信吾君         通商産業省生活         産業局長    藤原 一郎君         資源エネルギー         庁長官     橋本 利一君         資源エネルギー         庁公益事業部長 服部 典徳君         中小企業庁長官 岸田 文武君         中小企業庁指導         部長      豊永 恵哉君  委員外出席者         大蔵省証券局企         業財務課長   冨尾 一郎君         大蔵省銀行局銀         行課長     吉田 正輝君         大蔵省銀行局中         小金融課長   吉君 時哉君         林野庁林政部林         産課長     輪湖 元彦君         労働省職業安定         局業務指導課長 田淵 孝輔君         建設省計画局建         設業課長    広瀬  優君         建設省住宅局住         宅生産課長   松谷蒼一郎君         商工委員会調査         室長      藤沼 六郎君     ————————————— 委員の異動 三月二日  辞任         補欠選任   清水  勇君     藤田 高敏君   中村 重光君     石野 久男君   玉城 栄一君     林  孝矩君   安田 純治君     寺前  巖君 同日  辞任         補欠選任   石野 久男君     中村 重光君   藤田 高敏君     清水  勇君   林  孝矩君     玉城 栄一君   寺前  巖君     安田 純治君 同月三日  辞任         補欠選任   大成 正雄君     西岡 武夫君 同日  辞任         補欠選任   西岡 武夫君     大原 一三君 同日  辞任         補欠選任   大原 一三君     大成 正雄君     ————————————— 三月二日  特定不況産業安定臨時措置法案内閣提出第三  八号) は本委員会に付託された。     ————————————— 本日の会議に付した案件  小委員会における参考人出頭要求に関する件  通商産業基本施策に関する件  経済計画及び総合調整に関する件  私的独占禁止及び公正取引に関する件      ————◇—————
  2. 野呂恭一

    野呂委員長 これより会議を開きます。  この際、参考人出頭要求に関する件についてお諮りいたします。  流通問題小委員会において、参考人出席を求め、意見を聴取する必要が生じました場合には、参考人出席を求めることとし、その人選及び出席日時等につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  3. 野呂恭一

    野呂委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決しました。      ————◇—————
  4. 野呂恭一

    野呂委員長 通商産業基本施策に関する件、経済計画及び総合調整に関する件並びに私的独占禁止及び公正取引に関する件について調査を進めます。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。中村重光君。
  5. 中村重光

    中村(重)委員 福田内閣エース登場ということになると両大臣ということになるので、経済界産業界期待も非常に大きいわけです。両大臣がそうした期待を意識をしてということではないのでしょうが、そうした職責ですから当然発言が多くなるのはあたりまえなんですが、発言が、ある場合は両大臣意見が必ずしも一致しない、食い違うといったようなことが見通しの点において実はあるわけです。  そこで、両大臣経済見通し景気回復という点について伺うのですが、いろいろな委員会における答弁あるいは団体等出席しての発言あるいは記者会見といったようなことを通じて感じることは、これは楽観的な考え方を述べているときもあるし、必ずしもそうではない、非常に厳しいという見通しの上に立って御発言になっていらっしゃることもあるわけです。  そこで、端的にお伺いをいたしますが、公共事業は、用地難であるとかあるいは技術の職員が特に地方自治体等においてはより不足をする、技能者もそうなんですが、そうした点から考えると、閣議では何か前段七三%かを消化をするという方針を決定をされたようですが、そうした公共事業をこれから進めていくことについて、順調よくいくという確信をお持ちになっていらっしゃるのかどうかという点、時間の関係がありますから両大臣お尋ねをしたいのですが、まず、この点の所管は宮澤長官であろうと思いますから、お答えをいただきましょう。
  6. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 何分にも前例の少ないほどの大きな公共投資でございますので、国も地方自治体もよほどこれに備えて対処しなければならないことは事実と思います。  順調にいくかというお話でございますが、まず、用地の問題は、ほぼかなりのものがすでに過去において取得ができておると見ておりますが、むしろその上に立って具体的に住民の納得が得られるかというような問題は、年とともにむずかしくなっておりますので、これに大きな努力を注がなければならないかと存じます。  資材について多少の値上がりのものがすでに出ておりますけれども、いずれも大きな生産余力を持っておるものでございますので、そんなに心配すべき状態ではないと思います。  それから、いわゆる鉄筋工であるとか型枠工、これは重労働でございますので、ちょっと減っておるようでございますが、しかし、関係業者は何とか処置ができるだろうと言っております。  それからもう一つ、国、地方の発注の側の技能者でございますが、御承知のように、責任施工でありますとか標準設計でありますとか、できるだけそういう簡便な方法を交えましていたすべく、中央と地方との打ち合わせがきめ細かく行われておるようでございます。  最後に、地方財政の問題でございますが、これも御承知のように、地方債の発行あるいは交付税等措置であらかた措置がついておるというふうに考えております。  そのようなことを踏まえまして先般公共事業施行対策本部会議を開きまして、上半期において七〇%程度消化目標にして、ひとつ準備体制を各省庁、地方あわせまして整えるようにという決定をいたしました。予算が成立いたしまして準備が十分であるようでございましたら、やがてそういう目標を設定いたすことになろうかと存じますが、ただいまのところはそういう目標を頭に置いて準備を整えるようにという決定を先般いたしたところでございます。
  7. 中村重光

    中村(重)委員 宮澤大臣、ちょっと私は甘いように思うのですよ。地方財政の問題にもう手当てがついているんだ——テレビなんかは特に関心を持ってそういうことについて見ているのですが、もう大変なようですね。資金的な問題もそうですか、特に技術者技能者不足でなかなか消化はできない。だがしかし、至上命題みたいでこれはやらなければいけないんだと、非常に大幅な伸びを公共事業に投入して無理をしている。これは実際、運営の上に深刻な問題が生じてくるのではないかという感じがいたします。  それから、用地なんかについてはすでに手当て済みだからそう心配はないと、これもおっしゃった。そんなものじゃないのですよ。  きょうは建設省からもお見えですが、たとえば道路一本にいたしましても、路線建設省自分決定しちゃうのですね。それで、住民意見というものを聞いて決める場合も皆無とは言わないのですが、私も、問題が出ていろいろと陳情し、あっせんに乗り出していることも幾つかあるのですが、本当に一方的に決めている。そして、その路線を変えるということになってくると今度は変わったところからまた文句を言われるというので、強引にそれをする。  価格なんかにしましても、これまた一方的に決めて、特定の人を説得これ努めて幾らということで用地を買うのですね。それが二年たち、三年たっても、貨幣価値は下がっておるにもかかわらず、仮にAの人からたとえば十万なら十万で買ったら、Bの人から三年たってもやはり十万で買わないと前の人が十万なんだからだめだと言う。そんな非現実的なことはないじゃないか。売る権利というものは相手が持っているわけなんです。それから、もう前に買った人はその坪当たり十万なら十万を有効に使ったと判断をいたします。今度は貨幣価値は下がっているのです。売っていない人は金をもらってないのだから、その金というものは自分が有効に使っていることにはならない。だから、そこらあたりは、何年もたった場合は当然相当な価格で買い上げてやるということは、何も問題は起きないのじゃないかと私は思う。そういったことについて非常にかたくなです。  そういう現実もありますから、宮澤大臣、そうあなたがお考えになるほど甘いものではないということを頭に置いてこれから先対処していくのでないと、お役人さんのおっしゃることをあなたがまともにそのままお聞きになって、そうしてまあ心配要らないんだというお考え方では楽観に過ぎるということだけは、ひとつ申し上げておきたいというふうに思います。  それから、セメントはもうじゃんじゃん値上がりしておるのです。それから、通産大臣特定不況産業にお決めになろうとしていらっしゃる平電炉の場合も、小棒の値上がりがいまもうどんどん進んでいるのです。くず鉄の価格というものが上がってくる、そういったようなことその他あるわけですが、心理的な関係も手伝って、資材値上がりというものは非常に大幅なものになるおそれがある。いつか建設大臣が別のどこかの委員会答弁をしておりましたが、先般来私ども不眠不休で成立をさせた法律を適用して抑えなければならぬということだって起こるだろうということを考えると、私は、政府経済見通しの中における公共事業波及効果というものは相当減殺されてくるというように思いますが、その点、いかがですか。これも楽観的でしょうか。
  8. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 全体の問題を決して安易に楽観をしておるわけではございませんで、中村委員の言われますように、まさしくこのような大きな公共事業は初めてのことでございますので、よほど一生懸命やらなければならないことは、もうそのとおりでございます。十分ベストを尽くしまして達成を図りたいと考えておるわけでございます。  それで、ただいま資材の問題について若干お尋ねがございました。  セメントは、すでに不況カルテルを解除いたしまして、あれこれ動員いたしますれば、恐らく一億トン以上の生産能力がある業界でありますので、多少の時間をかければ、私は需給について大きな問題はなかろうと思いますし、小棒の場合、丸棒の場合、確かにやや仮需要もありまして値上がりをいたしましたが、非常な操業短縮をやっておりますことはもう御承知のとおりでございます。他方でスクラップが御指摘のように上がっておりますから、丸棒価格そのものは上がっておりますけれども、いわゆる企業収益が非常に向上してきたというふうには申しにくいのではないかと思いますので、その辺の生産体制をどうするかは、これは主務大臣がきっとしかるべくお考えをいただくことだと思いますが、いずれにしても、これにつきまして相当な供給余力がございますことはもう間違いございませんので、その辺のところをタイミングを間違いなく処置をしていく必要があるというふうに考えます。
  9. 中村重光

    中村(重)委員 大臣もある程度お認めになった障害要因というものがある。かてて加えて永大産業の倒産ということからくる影響といったようなこと、これが合板関係だけではなくて、ハウス部門というものも非常に不振であるということ、それはいろいろあると思うのですよ。     〔委員長退席山下(徳)委員長代理着席プレハブ住宅というものは非常に欠陥住宅が多いですね。消費者のこれに対する不信というものは非常に大きいわけです。そうしたこととの関連もあって、大型団地建設というものは非常に後退をしている。そうなってくると、住宅建設の規模というものも勢い小規模、小型化するということになってくるわけですから、大型プロジェクトでないと乗数効果はないということを政府はつとに言ってきて、特に産業界はそういうことを主張しているわけですが、そうなってくると乗数効果というものは非常に低下をしてくるということが考えられなければなりません。そのことも見通しに影響してくると思いますが、織り込み済みだということでしょうか。
  10. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 本年度の経済見通しでは、いわゆる乗数効果モデルによりますものは参考程度にいたしておるわけでございますけれども、かつてのような乗数効果がないということは私どもも気がついております。したがいまして、最近は比較的新しい石油危機以後の情勢を多少織り込みましたモデルを使いまして、乗数効果参考として測定をいたしております。御指摘のように、十年前に比べますと、公共投資乗数効果というものはかなり下がってきております。
  11. 中村重光

    中村(重)委員 きょうは、非常に大切な問題ですし、その点についても議論をしたいと思うのですが、理事会で時間の制約を決めているようでございますから、残念ながら、またそうした問題にしぼって御意見を伺ってみたい、また私の見解を申し上げたいと思うのですが、宮澤長官がたしか記者クラブかどこかで講演をなさった。そのとき、稼働率指数を来年三月に九二%に持ち上げるのは困難でない、それから、円高の悪影響が本当に出るのは三、四月だ、大型倒産が起こる不安は全くないと言い切っていらっしゃる。それから、七%成長目標もきっと達成できると、ここらあたりには福田さん以上にずいぶん力を入れておられるのですが、正直に言って、あなたはむしろ批判的じゃないかと思っているのです。福田内閣で七%成長ということをはっきり打ち出しているわけですから、目標達成できないといったようなことを言えないのかもしれませんけれども、言葉のあやかどうか知りませんが、きっと達成できる、ここに非常に力を入れていらっしゃる。ここらあたり本当にこのように思っていらっしゃいますか。これはたしか二月二十四日か五日の講演であるというように思うのですが、私はこうは思わないのです。こんな甘いものではない。七%成長なんてとんでもない、四・九%程度以上のものは出ない、私はこう見ているわけです。その根拠を言えと言われれば私なりの根拠は持っていますが、きょうは議論もできませんから、一度あなたの確信のある発言に対する考え方をお示しいただきたい。これにこだわらないで、本当にあなたがお考えになっておられることでお示しいただきたいと思います。
  12. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 七%程度成長目標を達成できると思っておるかというお尋ねでございますが、私は思っております。五十二年度の五・三というものがまずその基礎になって問題になるわけでございますけれども、私は、大体五・三程度の五十二年度の経済運営は可能であるといまの時点まで見て考えておりまして、その延長としての七%というものは、これだけの財政主導がございますと可能ではないか、できるというふうに考えております。ただいまのところ、指標としては消費関連指標が悪うございます。が、これは消費者経済の動きをもう少し自分の目で見て変わってきたなと思ってくれませんと、消費が動いてまいらないかもしれません。が、全体としてそういう感じ上半期には出てまいろうと思っておりますので、七%は私はできると考えております。
  13. 中村重光

    中村(重)委員 後で触れますが、需給ギャップがなかなか埋まる状態でない今日ですよ。そういう状態であると、新しい技術の導入だってできない。それらのことを考えると、来年三月に稼働率指数が九二%になるということは、私は夢想だにしておりません。しかし、これはきょうは議論はいたしません。  次に、河本通産大臣お尋ねをいたしますが、在庫調整について大臣は非常に厳しい見方をとっていらっしゃる。宮澤長官は、これに対しては五十三年度初めには調整が終了すると言っていらっしゃる。この食い違いということから政府統一見解をお出しになったようでございますが、統一見解に加わっていらっしゃる通産大臣として否定はできないのでしょうけれども、私は厳しいと思っているのです。具体的な考え方を申し上げてもよろしいのですが、在庫調整が順調にいくといったような、そんな甘いものではないのじゃないでしょうか。この点はどうお考えになっていらっしゃいますか。
  14. 河本敏夫

    河本国務大臣 私は、大勢としましては、在庫調整はほぼ順調に進んでおると思うのです。ただ、各業種とも非常に低い水準にそれぞれ生産を抑えておりますから、こういう低い水準生産を続ければ、在庫調整が進みましても、その評価をどの程度にするかということはなかなかむずかしい問題だと思います。すなわち、在庫調整が即経済の上昇につながるかどうか、にわかに判断はできませんが、大勢としてはいい方向に行っておると思うのです。そして、先般も政府統一見解が出ましたが、在庫調整は大体五十三年度の初めには終わるであろう、こういう見通しを出したわけでありますが、その見通しは、私も賛成でございます。
  15. 中村重光

    中村(重)委員 在庫調整は、確かに業種間のばらつきはあるのですね。あるのですが、通産大臣お答えのように、全般的というのか大勢的には進んでいるように思います。ですけれども企業先行き不安感というのは消えないのですよ。それを考えると、前向きの在庫調整積み増しというものに転ずるかどうかということについては、私は問題があると思う。それは甘くない、なかなか転じ得ない、こう考えます。第一、いま企業在庫調整が一応できた、しかし、それはあくまで大勢だ、個人消費は冷え切っている、資材値上がり等インフレ傾向も出ますから、その点における不安感はある、そうなってくると、企業設備投資は伸びないのです。  宮澤大臣は、先ほども稼働率の点については確信をお持ちになっていらっしゃったようでございますが、企業過剰労働力をいま相当抱えている。後で数字をお示しいただきたいのですが、そうなってまいりますと、失業者というものは減るのではなくて、むしろさらに増大していくであろうということが考えられる。今年卒業する新卒の就職率も、例年より低いと私は考える。  卸売物価がいま少し上がりかけてきた。それは在庫調整といったようなものができると勢い——景気が冷え切っていましたから卸売物価は下がる。卸売物価が下がるということは結構なことだと言うのだけれども経済全体が不況の中にあると需要が伸びないわけですから、勢い下がらざるを得ないから下がるので、卸売物価が下がっていくということを必ずしも歓迎できるものではない。いまは若干上がりぎみであることは私も認めるのです。  いろいろな要因考えてまいりますと、在庫調整というものが大勢的に進んでいるから景気回復方向へ進むのだ、政府経済見通しに誤りは生じないのだという見通しは甘いように私は考える。その点に対して宮澤長官、いかがでございますか。
  16. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 中村委員河本大臣も私も、現実に見ている景色というのは余り変わっていないのではないかと思います。すなわち、在庫調整は進んでいる、しかし、それは考えようによっては、これだけ長い減量経営をいたしまして、他方でこれだけの公共投資が出れば、在庫調整が進まない方がむしろおかしいかもしれない。進んだからといって、そこで急に大きな在庫積み増しが出るかと言えば、いまの経済情勢からいってそうは思いにくうございます。いわんや、大きな設備投資が出るとも思いにくい。したがって、稼働率指数を九二ぐらいに五十四年三月にいたしたいと申しましたのは、稼働率で申しますと八三、四でございますから、決して設備投資を大きく生むような情勢ではございません。雇用にいたしましても、完全失業者がせいぜい五万ほど減るであろうかということを申し上げておりますとおり、すべてのことが五十三年度という一年度で片づくはずのものではない、経済情勢というのはそんなに甘くはないということは私も考えております。  ただ、在庫調整云々と申しましたのは、過去において政府公共投資を何度もやったけれども、その波及効果がなかったではないか、したがって今回もという議論が一部にございますから、これだけ在庫が減ってまいりますといままで波及を妨げておりました壁というものは取れてくるのではないか、こういうことを申し上げておるわけでございます。
  17. 中村重光

    中村(重)委員 企業収益は下期には上昇するのかどうか、あるいは上期に続いて低下をするというお見通しでございましょうか。
  18. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 九月期には、三月期よりは少しはよくなるのではないかと思っております。
  19. 中村重光

    中村(重)委員 在庫調整の進みぐあいに関連をするのでございますけれども、現在の需給ギャップというのをどのくらいに見ていますか。
  20. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 これは、何ともきちんとした計算がございませんので、申し上げにくうございます。一〇%といたせば二十兆ということになりますし、一五%でございましたら三十兆ということでございますが、何ともしっかりした計算をいたしておりませんので、また、いたしようもございませんので、はっきり申し上げられません。
  21. 中村重光

    中村(重)委員 率直にお答えになって、無理に何か数字を言わなければならぬということではないのですから、私は、それはそれでよろしい、わからない点はわからないということでよろしいと思うのですが、需給ギャップがどの程度かということをつかむということは、これはやはり大切なことじゃないでしょうか。これは稼働率の問題につながってまいります。雇用問題にもつながってまいりましょうし、それから七%成長の問題にも関連をしてくるわけですから、いま数字お答えになりませんでしたが、需給ギャップというのは解消するというようにお考えでございましょうか。高度成長から低成長に変わって、大きな転換がなされたわけでございますが、解消するということになってくると何年ぐらいで解消するというようにお考えでしょうか。この点は両大臣からひとつそれぞれお答えをいただきます。
  22. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 仮に五十四年の三月の稼働率指数を九二ぐらいといたしますと、その限りで需給ギャップは解消していないということに申し上げざるを得ません。したがいまして、五十三年度単年度でそこまでいくと考えるわけにはまいりませんで、ただ、私どもねらっておりますのは、そういう五十三年度の経済の動きが始動になりまして、五十四年以降いわゆる拡大均衡の基調に入っていく、政府がこれほど逆立ちをするような財政までいたしませんでも、やや自律的に拡大均衡に入っていって、やがてと申し上げるしかございませんが、設備投資にやがてつながっていくであろう。しかし、それはマクロに申して、五十三年度中にはそこまでいくことは無理でございましょうし、したがいまして、完全失業者も相当の数が残る、こう考えております。
  23. 河本敏夫

    河本国務大臣 私は、大体景気がよくなったな、こういう感じが出てくるのは、産業全体の操業率が八五%前後になったときじゃないかと思います。もし九〇%になれば非常によくなった、こういう感じは出てくると思います。八五%を超えますと、大分よくなったから将来の展望も開けてきた、この際ある程度の新しい技術を取り入れた設備投資もやってみよう、こういう感じが出てくるのではないかと思います。現在は操業率は七七、八見当じゃないかと思います。少し上がっておりますから七七、八と思います。いま宮澤大臣もお述べになりましたように、五十三年度末の操業率を八三と想定をしておるわけでありますが、場合によればそれ以上になるかもわかりませんけれども、とにかく一応八三と想定をしております。でありますから、現在の目標からいいますと、五十三年度では積極的に設備をやってみようか、こういう感じはまだ出てこない。やはり相当の需給ギャップというものは現在も残っておりますし、五十三年度いっぱいは解消されたという感じは出てこなくて、若干まだ残るのではないか、こういう感じでございます。
  24. 中村重光

    中村(重)委員 私は、両大臣よりも非常に厳しい見方をします。宮澤大臣よりも河本大臣の方がこの辺は厳しい見方をしていらっしゃるわけですが、私はもっと厳しい。恐らく三年ないし五年、これは経済成長率にも関連をいたしますが、需給ギャップというものは埋まらない。高度成長という方向にはもう進みませんからね、進む条件というのはないわけですから。そうなってまいりますと、いま通産大臣お答えになりました新しい技術というものですね。需給ギャップが埋まらない、こうなってまいりますと設備投資というものはなかなか伸びない、控え目になる、新しい技術を導入をするということに踏み切ることもできないということにつながってくるであろうというように考えますが、通産大臣、この新技術の導入というような動きがいま相当ございましょうか。
  25. 河本敏夫

    河本国務大臣 ことしの製造業の設備投資の動向を見ますと、大部分がやはり昨年来の継続事業、省エネルギー投資、公害対策の投資で、設備の増強につながるものは比較的少ないわけでございますが、しかし、それじゃ完全に需給ギャップが解消しなければ新しい投資意欲というものは生まれてこないかというと、私はそうではないと思うのです。なぜかと言いますと、先ほどもちょっと触れましたが、新しい技術というものは、世界全体をながめました場合に、次から次へ開発されておるわけでありまして、設備のリプレース、更新を怠りますと、これはもう世界全体で競争力というものが失われますから、若干の需給ギャップというものが残っておりましても、経済に活力というものがある程度生まれてまいりますと、それじゃひとつ新しい技術、最新式の設備というものをつくってみよう、こういう傾向は当然出てくると思います。しかしながら、現在は、その傾向は好況業種である一部には見られますけれども、まだ大勢としてはそういう動きにはなっていない、こういうことでございます。
  26. 中村重光

    中村(重)委員 そのとおりだと思います。これは新しい技術を導入することが皆無だなんて、そうはやはり考えない。企業間の格差もありますし、そういった能力のある企業設備投資を、新しい技術を導入していこうとする、そういう意欲というものが出てくるということは事実でしょうが、大勢的に傾向的にはなかなかそう甘くはないという見方、余り違わないんじゃないかというようにそこは思うのです。  そこで、三月危機説というのは常識みたいになってきた。こういう声が非常に大きい、また、状況もそういうことだ。公共事業上期七三%といったようなものは、昨年の前倒しの経験等から見ても、企業は非常に警戒的であるわけですが、ちょうどいまは前に無理な借り入れをしておったものの支払い期にも直面するという問題、それから永大産業の倒産ということの及ぼす影響といったものから考えると、三月危機よりも二月危機が噴き出したというように見ることが私は正しいのではないかというように考えますが、この点、両大臣は、三月危機というものを回避できるというように判断をしていらっしゃいましょうか。
  27. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 いわゆる倒産というものが信用不安から起こることが多うございますので、私どもも言動を慎重にいたさなければならないところでございますけれども、いわゆる円高というものが本当に効いてくるのはこれからのはずでございますから、決して安易に物を考えるわけにはまいらないと存じます。しかし、他方で、非常に大きな倒産というものは、そのよって来るところがやはり何カ月か前からあるわけでございますから、ある日突然大きな地震が起こったというようなことは一般にない、大型倒産というものはそういうものではないと存じておりますので、いろいろ注意をしなければなりませんけれども、そう大きなことが起こって世の中が一様に非常に大きなショックを受けるというようなことはなしに済むのではないかというふうに考えておるわけでございます。
  28. 河本敏夫

    河本国務大臣 五十二年度の経済を大観いたしますと、私は五十一年度より相当悪いと思います。したがいまして、昨年のいまごろに比べますと事態は相当深刻だ、このように認識をしております。であればこそ、積極的な財政経済運営によりまして何とかこの事態を抜け出さなければならないという考え方が一つと、もう一つは、ミクロの対策としての構造不況業種対策、これが非常に深刻な状態になっておりますので、一刻も早くこの構造不況業種に対しては立ち上がりのチャンスというものをつくり出していかなければならないということで、今度も緊急対策としての法律案をお願いしておるわけでございますが、私は、大勢として政府の積極財政経済政策というものが認められ、そして構造不況業種対策というものがある程度緒につくということになりますと、いま御質問のような、そういう大きな危機、こういうものは来ないと思いますし、また、来ないようにいろいろ具体的な政府としての配慮も必要かと思います。
  29. 中村重光

    中村(重)委員 通産大臣は、ドル減らしは緊急課題であるということを強調する発言をどこかでしておられたというように思うのです。それから、宮澤長官は、百億ドル内達成は無理だというように発言をしておられるのですね。ところが、外貨準備高は二月も八億ドルふえて、準備高の二月の数字ですが、二百四十一億ドルと記録を更新している。外貨準備高がふえたことが、問題は経常収支が幾らになるかということの影響はありますが、この外貨準備高がふえたことが経常収支の数字とそのままの数字だということにはならない。ところが、福田内閣は、御承知のとおりに、六十億ドルにこれを減らすということがアメリカを初め世界に対する公約みたいな形になっているのですが、両大臣のそうした発言からいたしましても、緊急課題ではあるけれどもなかなかむずかしい。比較的楽観的に見ていらっしゃる宮澤大臣も、百億ドル達成は無理だということを言っておられるわけでございますから、これがどの程度になるか。いわゆる輸入は余りふえないのですね。輸出は依然として強いんですよ。そうなってまいりますと、経常収支というものは、これは百億ドルをはるかに突破するというように私は考えるわけでございますが、この点に対して両大臣から、同じような問題ばかりで答弁をしていただくのは恐縮なんですけれども、またお答えをいただきたい。
  30. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 五十二年度の経常収支百億ドルということは、すでに一月末に九十九億ドルということになっておりますので、大勢としては百億ドルでなかなかおさまりにくいという感触は、私、確かに持っております。他方で、どのくらいになるかということ、これがまた不用意な発言をいたしますと、為替相場がかなり神経質である点もございますので、いま申し上げるのは御遠慮いたしますが、中村委員も御指摘のようなトレンドもございます。百億ドルでおさまりにくいということは認めなければならないと思います。  それから、六十億ドル、五十三年度のことでございますが、もともと私ども見通しを立てましたときに、公共投資の効果が内需に出てくるというのには相当の時間がかかることでもあり、かつ大きな設備投資は想定ができないということでもございますから、なかなか急に原材料の輸入がふえない、製品の輸入というのはわが国の場合限られておりますものですから、そういたしますと、やはり下半期を中心にそういうトレンドが出てくる、上半期は徐々にそのようなトレンドに入っていくというふうに考えるべきではないかと思っております。
  31. 河本敏夫

    河本国務大臣 一月までの経常収支、年度初めから十カ月間で約百億ドルという数字はもうすでに発表されております。したがいまして、年度末には百億ドルを相当超えるであろう、これはもう明らかだと思いますが、ただ、これだけ大幅な経常収支の黒字が出てまいりますと、アメリカ、ECからも当然文句が出てまいりますし、それだけではございませんで、やはり日本経済が世界経済に少なからざる影響を与える、むしろいろんな面で足を引っ張る、こういうことにすらなりかねない、こういう傾向がございます。そして、私どもが心配しておりますのは、これが引き金になりまして世界で保護貿易的な傾向が出てくるということであります。自由貿易の原則が守られませんと、日本としては大変やりにくいわけでございますが、自由貿易の原則が崩れるおそれが多分にある、そういう引き金を日本がつくってはいけない、何としても黒字減らしをしなければいかぬというのが現在の日本の最大の課題だと思います。  でありますから、五十三年度は六十億ドルという経常収支の目標を掲げておるわけでございますが、これには、現在の国際収支の動向から判断をいたしますと、やはり相当な工夫と努力が必要である、私は、相当な工夫と努力を加えていくならば達成は可能である、このように思っております。
  32. 中村重光

    中村(重)委員 この点、通産大臣は比較的楽観をしていらっしゃるが、私は、それは国際公約みたいになっているわけですから、相当の努力をしなければならぬ、だが、六十億ドルに来年黒字を減らすということはむずかしいという見方をいたします。  ところが、この六十億ドルの問題あるいは経済成長七%の問題、日本は主権国家ですから、主権国家である日本が、アメリカであろうとあるいはどこの国であろうと、七%にしろとか六十億ドルに黒字を減らせとか、そういうことを言われる理由は何といってもあってはならない。これはどうなんですか。非常に国際的に袋だたきに遭って、日本は孤立する状態になった。そこで、また自由貿易が保護貿易ということになるという点を配慮して、みずから進んで、七%成長にいたします。あるいは黒字は六十億ドルにいたしますということになったんでしょうか、あるいは、アメリカからこうしろ、こう言われる、いわゆる主権侵害みたいな形になったんでしょうか、これはどちらなんですか。これもひとつ両大臣からお答えください。
  33. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 まさに、それらのことをアメリカから注文をつけられる筋合いのものではございません。米国側も、昨年の九月、十月ごろには、事態にややヒステリックになりまして、そういうことを非公式には言ってきた段階があったようでございますけれども、これははっきりわれわれの考え方を申し述べまして、そのようなことは終局的にはもとよりなくなりました。ただ、われわれ自身の問題として考えまして、やはり七%程度成長はいたしませんと、雇用問題が深刻でございます。他方でまた、非常に大きな経常収支の黒字を重ねてまいりますことは、世界全体を保護貿易に導くおそれがある。そのことはわが国自身の国益に沿わないと考えましたので、われわれの考え方でこのような目標を定めたわけでございます。
  34. 河本敏夫

    河本国務大臣 ただいまの御説明のとおりであります。
  35. 中村重光

    中村(重)委員 そこで、宮澤大臣から雇用の問題についてお触れになったわけですが、通産、経企両省の景気指標によりますと、この問題は先ほど出ましたからカットいたしますが、景気は上向かない。若干上向いているけれども、そう甘くはない。企業収益も下期は若干上昇するが、大した上昇にはならない。そうなってまいりますと、企業は、先ほど私が触れましたように、過剰労働力を抱えているわけでございますから、私の調べたところによりますと、企業過剰労働力を抱える構造不況業種外の問題企業の雇用の調整を行うということになってくると、五十万程度の離職が出るというように考えるわけでございます。そういうことを言われているわけでございます。  そうすると、今度は特定不況業種の法律案が出てまいりますが、この構造不況業種を中心とする調整ということから出てまいりますと、これもまた相当な首切りにつながるようなものでありますと容認できないということで、法律案の審議を通じいろいろと私ども考え方を申し上げ、また、歯どめをしなきゃならぬと考えているわけでございますが、それはまずおくといたしまして、製造業の中の残りの五割、五割のその半ば、全体の四分の一、これを順調企業ということになってまいりますと、この企業もパートタイマーを主体としている。これはいわゆる雇用政策ということにはならないというふうに考えるわけでございますが、現在の失業者の数、それから過剰労働力というものをどの程度企業は抱えているのか。これは現在のような指標でまいりまして、この企業が抱えている過剰労働力というものを町へほうり出す、そういうことにはならないのか、この点に対する見通しをひとつ宮澤長官からお答えをいただきたい。
  36. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 一月末の完全失業者数は、季節調整でなく、原数値で百二十六万と承知をいたしております。これは一、二、三月、御承知のように、常にかなり原数値では完全失業者の数がふえまして、四月には正常に戻るという傾向がございます。昨年もさようでございました。したがって、一月の数字がかなり高くなっております。  五十三年度全体といたしましては、私ども、まず新規雇用が五十五万ぐらい、それに対して労働力人口が五十万ぐらいの増加がございますと思いますので、完全失業者としては五万ぐらいが減るのではなかろうか、五十三年度末においてでございますが、そう考えておりまして、その中で製造業は結局差し引き雇用の増加はないのではないだろうかと考えます。そういたしますと、一部は建設業で雇用の増があり、多くは第三次産業の雇用増になっていくのではないか、これはマクロでございますが、大まかにそんなふうに考えております。
  37. 中村重光

    中村(重)委員 具体的な問題については、労働省お見えでございますが、お尋ねをする時間がないのじゃないかと思いますが、後で永大産業の関係をちょっと触れたいと思います。その際に労働省にはお答えをいただきたいというふうに思います。  政府は、先ほども触れましたように、公共事業推進に意欲を示し、そこで総合政策を決定されたようでございますが、七項目をお決めになったようでございますね。その中に、工事代金が下請業者に早めに行き渡るよう元請を指導するというようにあるわけです。  建設省お見えでございますからお尋ねをいたしますが、前渡し金というのを相当お出しになっていらっしゃる。この前渡し金というのは、これは全部一律四〇%なら四〇%ということではないのでございましょうが、事業の種別によって違うのでございましょうけれども、どの程度の前渡し金というのをお出しになっておられるのか。その前渡し金は、一次下請、二次下請とあるわけでございますが、それが下請の方に回っているとお考えになっていらっしゃいますか。そうなってないから、政府が立てた公共事業推進の総合政策の決定の中に、下請の方へこれが回るように元請を指導するという形の決定になったのか、ここらあたりはいかがでございましょう。
  38. 広瀬優

    ○広瀬説明員 公共工事の前払い金でございますが、国、地方公共団体でございますと四割以内、公団、事業団関係では三ないし五割以内というふうに定められてございます。実績で申し上げますと、五十一年度総額では、正確な数字は私ちょっと手元にございませんが、三〇・数%であったと存じております。  これが下請へ流れておるかどうかという御質問でございましたが、建設業法にもそのような前払い金が下へ流れるようにという規定がございますが、それを受けて、私どもかねてから通達等により指導しておるところでございます。実態で申し上げますと、私ども昨年度実態調査いたしました結果では、公共工事で出てまいりました前払い金のうち、材料費に使われておりますのが五一%、外注費と申しますか、下請業者へ流れておりますのが三八%という結果でございます。
  39. 中村重光

    中村(重)委員 私は、若干こうした業種関係を持っておる。それは関係を持つと言うと、いかにも結びつきがあるように誤解をしないでください、私の身内がこういう業種をやっているという意味の関係でございますから。ところが、これは下請というものはやっておりませんから、小さくとも親企業の立場にほとんど立っているわけですが、私の身内の者からの情報という意味ではありません。そういった特定のものとの関係があると団体なんかのこともわりとつかむことができるといったところから、ある程度承知しているのですが、いま建設省お答えになったようなことじゃないのですよ。親企業に前渡し金を出しますと、いまあなたが数字をお挙げになりましたが、ほとんど下請に回らないんですよ。親企業のところで押さえている。これじゃ金が回らないですね。  景気回復、景気浮揚ということになってまいりますと、早くこの金を回すということなんです。政府の場合におきましても、これは地方自治体も同じなんですけれども、財貨サービスということでいろいろ物件の購入なんかをする。予算が決定いたしますとそういうことになるのですね。そういったような場合も、できるだけ早く購入する。そして在庫も減らすし、金もできるだけ回すようにする。そういう努力というものがないと、政府期待をしておるような、また国民が期待をしておるような景気回復、景気浮揚ということにつながってこないということを、私は強く提言をしておきたいというように思います。  こういうことが必要だなというようなことで七項目をお決めになっている。その七項目をお決めになっていらっしゃることは、これは間違いではない、そのとおりなんですけれども、わりと実態をおつかみにならないで、いま建設省からお答えになりましたような程度のことで、こういうことが好ましいということでお決めになったんではないか。そうではなくて、ただいま私が申し上げましたような実態というものを踏まえて、決めたならばこれを積極推進する、実行に移す、成果を上げる、こういう取り組みをされることを強く要求をいたしておきたいというように思います。  それから、河本通産大臣に特に申し上げたいのですが、建設関係の下請中小企業関係は、中小企業政策でありながら、残念ながら、これは中小企業庁の所管外ということになっている。私は、これは一貫性がないというように思うのでございます。中小土建業者、建設業者ということになりますか、これに対してできるだけ官公需を高めるために、受注をするための配慮をしていかなければならぬ、そういう考え方でおられることは私は認めることにやぶさかではございません。ですけれども現実がどうか。現実はその逆の方向を進んでいる。地方に国が事業をやります場合、あるいは県に委託する場合でも、国の事業をあるいは国の関係の団体の事業を県に委託をするということは、地元業者を活用するであろうという期待があるのではないでしょうか。にもかかわらず、地元業者に対する発注はやらない。大企業のみにジョイントベンチャーでやらせるという傾向が非常に多いということです。そういうことであってはなりません。どうしても大企業を一つ入れなければならないならば入れる、そうして中小企業とベンチャーを組ませる、そういうきめ細かい配慮というものがなければならないと私は考える。ところが、現実にはそうなっていないということを申し上げるわけでございます。皆無であるということまでは私は極言はいたしません。だから、そういうことに対する転換も、頭の切りかえもやらなければならぬ、そういうことを強く望むわけでございますが、この点、通産大臣、どのようにお考えになりますか。
  40. 河本敏夫

    河本国務大臣 ここ数年間、内閣の大きな方針の一つといたしまして、官公需の発注を中小企業にできるだけ増額していこうということをずっと努力をしてきております。通産省からも関係各省にそのことを繰り返しお願いをしておるわけでございますが、いま御注意の点は十分気をつけまして、さらに重ねて、官公需の発注が中小企業に拡大されるように、一段の工夫をしてみたいと思います。
  41. 中村重光

    中村(重)委員 時間の関係がありますから、先に進みますが、この問経企庁は、輸入物資の価格がどうなっているかという二回目の動向調査をなさった。詳しく聞きたいのですけれども、ただ一点、輸入マグロの問題がずいぶん反響を呼んだようでございます。この輸入マグロが、輸入価格が下がっておるのに小売価格が上がっている、確かにそのとおりだと思うのです。ところが、この資料を見ると、「小売価格は、国産品を中心とした平均価格である。」というただし書きがついている。ところが、一般に報道されたのは、輸入価格が下がっておるのに小売価格が上がっているのはけしからぬ。これは確かにけしからぬことでございますが、実際はこの数字は、輸入のマグロだけではなくて、国内マグロというものも一緒になった数字という形で出されているのではないかという点でございます。  流通問題は非常に重要であります。私はこの委員会で倉成長官のときにも申し上げたのですが、円高で当然輸入価格はぐっと下がらなければならぬ、輸入価格は下がっているのだろうが、それが一向小売にははね返らない、こういうけしからぬ話はない、どこで吸収されているのか、これをしさいに調査をして、円高のいわゆるメリット、そういうものを国民の利益に変えていかなければならぬということを実は申し上げたことがあるわけでございます。しかし、これは流通小委員会でそれぞれの関係者にお出ましいただきまして、詳しく伺ってみたいというように思いますから、いまは、これは国内価格も入っての数字なのかどうかということ一点だけをお答えいただきます。
  42. 藤井直樹

    ○藤井(直)政府委員 小売段階の価格につきましては、国産それから輸入の識別が非常に困難でございますので、店頭で売っております一定の規格のマグロの価格を調べて掲載したものでございます。
  43. 中村重光

    中村(重)委員 これから永大産業の問題に若干触れてみたいと思うのでございますが、史上最高の大型倒産、先ほどそう大きな倒産はないであろうということでございましたが、景気の回復ということはそう甘いものではない、これはまさに深刻な状態、下手をやったら、福田内閣がすっ飛ぶということだけの問題で済めばよろしいのですが、そうではなくて日本経済全体がパンクをする、大きな社会不安を来さしめる、そういうことに私はなりかねないというように思います。  こうしたときに、最近自民党の中でもずいぶんもとの派閥が復活をいたしまして、暮れの総裁選挙を前にした動きの関連もあるのでございましょうが、福田内閣は解散をしたいのだ、いや、いま解散をする時期じゃないという、大変いろんな動きがあるようであり、また、考え方があるようでございますが、両大臣は、現在の経済情勢の中で解散ができるような情勢であると判断をしていらっしゃるのかどうか。この点に対して、現在の情勢ということはいわゆることしという意味でございますが、そういう情勢であるのかどうか、率直にひとつ考え方をお聞かせいただけませんか。これは福田内閣の閣僚というような、内閣を代表する意味でお尋ねをしているのではございません。率直な両大臣の気持ちをひとつお尋ねをするわけでございます。
  44. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 こればかりは総理にかわりましてお答えを申し上げることができません。私といたしましては、こういう雇用状況でございますので、一日も早く失業者が減っていきまして、日本経済が順調な拡大均衡の上に入るために全力を尽くしていきたいと考えております。
  45. 河本敏夫

    河本国務大臣 ことしの最大の政治課題は何ぞやといいますと、福田内閣再出発に当たりまして一連の経済問題を解決することである、これは総理自身がお述べになっておるとおりであります。一連の経済問題とは何ぞやというと、やはり景気の回復、それによる雇用の安定、対外的には国際収支の改善、これが当面の日本の最大の経済問題であると同時に、最大の政治課題であると存じますが、解散問題は、ほかのいろいろな要素を含めて総理が判断されるわけでありますから、私からそれ以上のことは申し上げにくいわけでございます。
  46. 中村重光

    中村(重)委員 委員会だからそうおっしゃるのでしょうが、外で話すくらいの気軽な気持ちでお話しになってよかったんですよ。私は、福田内閣を代表しての発言ではなくて、両大臣の気持ちをひとつ述べてほしいと言ったのですから、まあ外でぱんぱんとやっておられるくらいのことでおっしゃってもよかったんじゃないでしょうかね。まあ、派閥ではもちろんやっているのでしょうが……。  永大産業の経営危機というものを、銀行はもとより政府も知っておったのじゃないだろうか。もう少し先に会社更生法の申請をしようとしたんだけれども、株価が下がる、これはもう大変なことになるというようなことで、予定より早く繰り上げて会社更生法の申請をしたという説があるわけです。そう考えてまいりますと、会社も銀行も、大蔵省はもちろん銀行の監督官庁でございますから、なかなか大きな貸出先であるわけでございますから承知しておられた。そういう意味では、広い意味の計画倒産の範疇にすら入るのではないかというように私は考えるわけでございます。銀行を初め大口債権者があらかじめ債権を確保した上で倒産をさしたという説がある。そうなってまいりますと、先ほど申し上げたような広い意味の計画倒産ということになると申し上げても過言ではないというように私は考える。そうなると、下請や関連中小企業だけが、そして労働者だけが被害を受ける、こういうことになろうと思うのでございますが、ここらあたりの経緯を、結論だけで結構でございますから、通産大臣からお答えをいただきます。
  47. 河本敏夫

    河本国務大臣 永大産業の問題は大変遺憾なことでございましたが、これによる影響を最小限度に食いとめたい、こういうことであらゆる対策をいま立てております。特にユーザーなどに対する対策は、何とか御迷惑をかけないようにしなきゃならぬということで、関係者を指導しておるところでございます。
  48. 中村重光

    中村(重)委員 大蔵省はどの程度これを知っておったのですか。
  49. 吉田正輝

    ○吉田説明員 お答え申し上げます。  永大産業につきましては、銀行がかねてから何とかしてこれを立て直そうといたしまして、人材投入とか金利の減免とか返済の猶予とか、あらゆる支援を行ってまいりましたのですが、現状では再建不可能という会社の判断もございましたので、その点については大蔵省にも連絡がございました。大蔵省といたしましては、なるべく再建に努力してほしいということで努力を続けさせるように要請しておりましたけれども、環境の悪化がますます激しくなりましたこともあり、会社の判断及び金融機関の判断はやむを得ないものというふうに考えた次第でございます。
  50. 中村重光

    中村(重)委員 通産大臣は、お客には迷惑をかけない、下請とか関連中小企業の連鎖倒産というものもないように万全の措置を講ずるという決意のほどをお示しになっていらっしゃるわけでございます。あなたがとは申し上げませんが、倒産の場合は河本通産大臣の御発言のようなことをいつも言ってきたわけです。現実にはなかなかそうはいかなかった。申し上げたように、関連中小企業と下請労働者、そういったもののみの犠牲という形で幕が閉ざされた、こういうことでございますが、従来と違った対策ということはどういう対策があるのでございましょうか。これは労働省もお見えでございますから、お答え願いたい。
  51. 河本敏夫

    河本国務大臣 具体的な対策につきましては、中小企業庁の長官から答弁をさせます。
  52. 田淵孝輔

    ○田淵説明員 お答えいたします。  永大産業の倒産に関しましては、労働省としましては、去る二十日に同社の責任者を招きまして、雇用面への影響について事情聴取いたしましたが、永大産業につきましては、本社につきましては現時点ではすでに希望退職等の募集等を行って減量経営に入っておるので、現在残っておる二千四百名については雇用不安はないという説明を聞いております。しかしながら、関連企業等につきましては影響も出ることと思われますので、雇用面への事態の推移の把握に現地機関を督励して努めておりますし、本日も、午後には大阪本社から責任者を呼びまして、関連企業等の詳細な状況についても実情を把握したいと考えております。  なお、三月一日から永大産業を、雇用安定資金制度に基づく大型倒産事業主という制度がございますが、その制度を関係企業の労働者の雇用の安定を図るために特に指定をいたしております。
  53. 岸田文武

    ○岸田政府委員 まず必要なことは実態の把握でございまして、その意味におきまして、各通産局に本部を置きまして、そこで、下請の実情はどうなっているのか、ユーザーの実情はどうなっているのかという状況を把握いたしております。製造業関係の下請百十七社につきましてはおおむね実態を把握したというところでございます。  次に、金融の問題でございます。金融の問題につきましては、御承知のとおり、倒産企業の指定をしまして保険法の特例を活用するとかあるいは倒産緊急融資を活用するとか、さまざまな手段が用意をされておりますが、これらの制度を関係者の方が有効に利用していただくことに特に力を入れておりまして、お知らせを配布いたしましたり、テレビ、新聞、週刊誌等へのPRも用意をいたしておるところでございます。  さらにまた、下請の方々は仕事の確保ということについて非常に心配をしておられますので、実は数日前でございますが、大阪通産局に近畿各府県の下請振興協会の方を集めまして、広域的に下請の方々の仕事のあっせんをする、こういう体制に入ったところでございます。
  54. 中村重光

    中村(重)委員 通産大臣、この合板製造業を特定不況業種に指定をするお考え方ですか。
  55. 河本敏夫

    河本国務大臣 これは農林省の御意見もよく聞いて判断をしたいと思っております。
  56. 中村重光

    中村(重)委員 農林省はお見えですね。——どうぞ。
  57. 輪湖元彦

    輪湖説明員 普通合板製造業につきましては、現在、国の助成のもとに日本合板工業組合連合会におきまして構造改善の事業を計画中でございますが、特定不況産業法案が成立いたしますれば、合板製造業もこの適用を受けて、さらに円滑な設備削減の調整をしたいというふうに考えております。
  58. 中村重光

    中村(重)委員 合板の需給ギャップというのはどの程度ですか、三〇%ぐらいじゃないかとも言われているんだけれども
  59. 輪湖元彦

    輪湖説明員 現在の生産能力及び生産量のギャップは、三〇%強でございます。
  60. 中村重光

    中村(重)委員 この永大の倒産というのは、合板の部門だけではなくて、ハウス部門の不振といったようなことも主たる要因であるということなんです。それは先ほども触れたんですけれどもプレハブ住宅というのが非常に欠陥住宅が多くて、問題ばかり起こしている。それは少なくとも政府の企図したような方向に進まなかった。これに反省を促すというようなことも手伝っておると思うのでございますけれども、ハウス55ということを建設、通産両省でお考えになったわけなんですね。  ところが、工業住宅というものは、私はやめなさいというようなことを言おうとは考えておりませんが、それはそれとして、在来工法の木造住宅ということにもっと力点を置く、それはやはりできるだけ安くやらせるためには近代化を図る必要がある。これは、工業住宅に力を入れるためお義理のようなかっこうで、若干その近代化のための振興費を計上しているわけですが、五十三年度の伸び率も工業住宅と比較にならない。今後この在来工法の住宅に対して、住宅振興に対し、近代化に対してどのような力を入れていこうとするお考え方でしょうか。
  61. 松谷蒼一郎

    ○松谷説明員 お答え申し上げます。  先生からただいま御指摘がございましたように、在来工法の住宅は、戸建て住宅の大部分がこの工法によってつくられております。工業化住宅は全体の一〇%でございまして、やはり在来工法の特に木造住宅については、今後ともその技術の開発あるいは品質の向上あるいは価格の低廉化のために努力をしていきたいというように思っております。  そのために、木造住宅在来工法の合理化促進のために、今年度四千万円の予算を計上いたしまして、ただいま技術開発を進めておるところであります。また、大工、工務店等の技術及び経営研修の実施等をしておるところでございます。また、明年度はさらに飛躍的に予算を大幅に計上すべく要求をしておるところでありますが、現在のところは、政府原案の中で七千万円の予算が原案として認められているところであります。
  62. 中村重光

    中村(重)委員 大島つむぎの問題で、これも流通小委員会参考人に来ていただいてやりますので、その機会に譲りますが、ただ二、三点簡単にお尋ねをしておくのですが、韓国における生産量を非常に少なく見ているんですね。私どももいろんな形で調査をいたしました。また、韓国の織物輸出組合専務理事の尹英鐘という人の発言によりますと、手織機一万四千台、そのうち稼動が一万二千台、月平均織り上げ反数二・五反とすると、月産三万反、年産は三十六万反、その六〇%が大島つむぎと見ると二十一万六千反、こういう数字になっているんですね。ほとんどは大島つむぎである。大島つむぎは、韓国ではぞうきんにもなりませんから、日本以外にはこれを使わない。そうなってくると、伝統工芸品産業ということで、私どもは、大島つむぎあるいは西陣等を強力に推進、振興を図っていかなきゃならぬ、そういうことで取り組んでいるわけなんですが、どうも通産省の見方はこの点甘いですね。もっと真剣に調査もし、振興策も講ずるということでないといけないというように思うんです。  詳しくは、申し上げたように流通小委員会を九日に開きますから、その際に伺うことにいたしますが、きょうは時間の関係がございますからお答えは結構でございます。九日の流通小委員会の中で、その際は形式にとらわれないで自由に発言をするような、そういうような運営の仕方をいたしたい、そのように考えているわけでございますから、どうかひとつ調査もしておいていただく、そして納得のいくような形で今後の取り組みができるように十分考えてほしいということを申し上げておきたいと思います。通産大臣も、特に事情をお聞きいただきまして、指導もしていただくということに要請をいたしたいと思います。  最後に、御了承いただいた時間が数分ございますので、大蔵省もお見えでございますから、信用補完の問題について意見を申し上げ、一言だけお答えをいただくわけでございます。改めてこれもお尋ねをいたします。  今度の信用保険公庫に対する融資基金は五十億、準備基金は四百億でございましたか、この伸びは大きいわけですが、なぜかこの融資基金というのは五十億だ。信用保証協会の保証能力というのは融資基金である。ただ、評価をしなければならないことは、五億の出資をされたということです。これは融資基金に引き直しますと、百億以上、二百億近い価値になるのではないか、有効に働くのではないかというように考えますから、これは私はいいことだ、今後そういうことに力点を置いてほしいということを申し上げておきますが、何しろ七〇から八〇%のてん補率ということになりましても、保証協会が代弁をいたしますのは、利子をプラスいたしますと三〇%を超えるというぐらいの数字になります。これだけは保証協会の持ち出し、銀行は基金負担で焦げつきがあっても全く損害なし、そういうことに実はなるわけでございます。  そうなりますと、保証協会はピークがありますから、それから政府や県が制度融資というのをおやりになるわけです。これはいいことなんです。制度融資をやるときは、別に保証協会の意見を聞くのではなくて、一方的にお決めになる。そして中小企業庁長官や銀行局長が通達をお出しになって、担保は弾力的に、これもいいことです。ところが、代弁が出ると、けしからぬ、なぜこんな代弁を出すんだ、基本財産の三十から六十倍がこれはいわゆる保証枠でございますから、そういうことにも影響するじゃないかということで、ずいぶんきつくしかるわけでございます。そういうことでは保証協会の果たす役割りを果たし得ない、本当に保証してもらわなければならない零細な人たちに対する保証ではなくて、信用力のある、代弁の危険がないというような企業に保証するという形になってまいります。そういうことは厳に大蔵省としては反省もし、検討もしていかなければならない問題であるというように私は考えるわけでございます。  これをどうするかということになってまいりますと、保証協会が持ち出しますその三〇%、少なくともその八割ぐらいは補償するか、あるいは無利子の融資をするか、そういうことをおやりにならないといけないというように思います。ただしかし、保証協会は銀行が受益者になるわけでございますから、出損金も出してもらわなければなりません。地方自治体も可能な限り出損金を出してもらって、そして保証協会の保証能力を高めていくという一体的なそういうことでなければならないというようには考えますけれども、大蔵省は非常に厳しい、そういうことだけはひとつ強く申し上げておきたいというように思います。  時間でございますから、ひとつこの点、考え方を一点お答えをいただきまして、私の質問を終わりたいと思います。
  63. 吉田正輝

    ○吉田説明員 ただいま先生からお話がございましたように、現下の経済情勢におきまして信用補完制度の重要性は非常に高いということにかんがみまして、五十三年度の予算におきましても、中小企業信用保険公庫に関する予算につきましては、いわば最重点として十分配慮をしているところでございます。  信用保証協会は、御承知のように、公的援助を受けながら信用力の小さい中小企業者の信用を補完する、こういうような使命があるわけでございまして、実際の保証審査に当たりましては、中小企業者の信用力の判断あるいは担保物件の選択あるいは分割等々につきまして、弾力的な配慮を行うというふうにしております。また、担保の評価につきましても、通常の金融機関の場合よりも緩やかに評価をする、また、担保の掛け目につきましても有利に取り扱う、さらに、担保のない場合につきましても信用で保証することもあるというように、中小企業者の利便をできる限り図って運用していく、こういうような運用の仕方をしているところでございます。先生のお話にございましたように、今後ともこういう点によく留意しまして運用したい、こう考えております。
  64. 山下徳夫

    山下(徳)委員長代理 午後一時から委員会を再開することといたしまして、この際、暫時休憩いたします。     午後零時二分休憩      ————◇—————     午後一時四分開議
  65. 山下徳夫

    山下(徳)委員長代理 休憩前に引き続き会議を開きます。  質疑を続行いたします。上坂昇君。
  66. 上坂昇

    ○上坂委員 先般予算委員会の集中審議で質問をいたしましたので、そのときに明らかにできなかった点を中心にしてお伺いをいたしたいと思います。  初めに一つだけお伺いをいたしておきますが、きょうの新聞を見ましても、二百三十円台に入りまして、円レートがほとんど二百三十円台にコンスタントになっているような気がします。そこで、このまま続くとこれは大変なことになりますが、実態から見て、この二百三十円というのは一体国際的に見ても高過ぎるのかどうか、その辺の判断をひとつお示しをいただきたいと思います。
  67. 河本敏夫

    河本国務大臣 ここ数日問、ドイツマルクもスイスフランも日本の円も相当高い水準に行っておりますが、その背景は、もちろんアメリカの財政経済運営との関係にあると思います。  そこで、現在の水準はどうかということでございますが、これはなかなか微妙な問題でございますから、端的な表現はむずかしいわけでありますけれども、最近通産省の調査いたしましたところによると、ほとんど全産業、あらゆる業種が非常に大きな影響を受けております。この水準でなお輸出をいたしまして若干の収益でも上がるという業種はきわめて少ない。大部分の業種が出血になっております。それから、中小企業もやはり非常に大きな影響を受けておりまして、産地産業ほとんど全部調べてみましたが、やはり現在の水準でやっていけるという地域はきわめて少ない、こういうことでございます。でありますから、昨年秋以降の円の上がり方が余りにも急激であったということ等のために、現時点では私はやはり日本の経済の実力以上の評価になっておるのではないか、このように判断をいたしますが、さて、しからば妥当な水準とはいかなるものかということになりますと、これはにわかに判断できない、こういう感じでございます。
  68. 上坂昇

    ○上坂委員 いまお話を承って、いまの経済状況の中では日本の経済の実力と見合っている、こういうお話ですか。
  69. 河本敏夫

    河本国務大臣 大部分の産業、中小企業がやっていけない状態でございますから、日本の経済の実力以上の評価になっておる、こういうことを言ったわけです。
  70. 上坂昇

    ○上坂委員 実力評価をしますと、いま通産大臣お答えになったような状況で、輸出関連産業は大変なことになってしまうと思いますが、実勢から見て日本の円が少し過大評価をされているのか、それとも、言ってみれば外国からの攻撃のような形でこういうふうになっているのか。きょう、アメリカのカーター大統領の談話といいますか政策が発表されたようでありますが、ドルは実際にはもっと強いんだ、こういうことを言っておるわけでありますが、その強いドルがいまの状況の中では弱くなっている。これは一体こちら側の責任だけで済ませるものかどうか。アメリカに対しても、ドル安の状態を回復させるために、日本としても大きな提案といいますか提言をしていくことが必要ではないか、こういうふうに思うわけでありますが、このことについて御意見をいただければありがたいと思います。
  71. 河本敏夫

    河本国務大臣 アメリカが、ドルは強いんだ、こういうことを言うその背景は、私はよくわかるように思います。事実、ある意味ではドルは決して弱くない。巷間よくドルは弱いという説がありますけれども、私は必ずしもそうとは思っておりません。  なぜならば、アメリカの現在の大幅な赤字の原因は何かといいますと、それは、景気が回復をいたしまして、そのためにエネルギーの消費がふえております。したがって、エネルギーの輸入がふえておる。エネルギーの輸入がふえたということは、景気が回復しておる、アメリカの経済が活力を取り返しておるということでございます。しかも、なるほど貿易収支では赤字でありますけれども、エネルギー代金はそのままアメリカに大部分が滞留をいたしまして、結局国際収支全体ではアメリカは何らの影響も受けていない、こういう状態であります。だから、そういう意味で私は、アメリカがドルは決して心配すべき状態ではない、こういう発言をしておるということは、これは理解できます。  ただしかし、赤字の幅が余りにも大きいということと、日本の黒字の幅が余りにも大きいということ、この二つが背景となりまして、しかもこれが急激な動きでこういうことになったものですから、そこにやはり若干の投機的な要素も加わっているのではないか、このように判断をしております。
  72. 上坂昇

    ○上坂委員 この前予算委員会でも円高の問題についてお伺いをしたわけでありますが、為替変動緊急対策にしましても、それから中小企業の事業転換にしましても、つまるところは金融が大きな柱になる。事業転換するにしても、なかなか通産当局の指導というものがそう適切に行えるような社会条件ではないと思うのです。したがって、業者みずからが転換をする、あるいはいろいろな自分の体質に合わないところを切り捨てていくというような条件の中でも、やはり柱としては金融対策になる、こういうふうに思うわけでありますが、この金融政策のことで、中小企業の事業転換法とそれから為替変動緊急対策の中で通常融資のほかにそれぞれ別枠の金融措置を設けたと思いますが、これは両方に指定を受けた場合には、その受けた業種あるいは企業、それは重複して融資を受けることができるのかどうか、この点について中小企業庁長官お答えをいただきたいのであります。
  73. 岸田文武

    ○岸田政府委員 いまお示しの制度は、それぞれの目的に応じて創設されたものでございますから、別枠を考えますときには、それぞれごとに考えるということで処理をいたしております。したがって、両方の適用を受けるというような場合には、中小企業金融公庫であれば別枠合計しまして四千万円になろうかと思うわけでございます。
  74. 上坂昇

    ○上坂委員 もう一点ですが、為替変動緊急対策に基づく中小企業の指定に伴う認定業務の問題ですが、これは地方自治体がやることになっておるわけであります。ただ、問題は、この認定に非常に長い期間を要したり、それから認定をされて業種なりあるいは企業が融資の希望を述べる、その場合その希望どおりの融資が受けられないということになりますと、これは倒産に追い込まれる可能性が非常に強くなってくる。その辺の指導というのは非常に重要ではないかと私は思っておりますが、この認定業務の問題について通産省としてはどういうふうに対処をし、どういうふうな指導をしていかれるのか、お伺いをいたします。
  75. 岸田文武

    ○岸田政府委員 お示しのように、事業転換に際しましては、認定という手続を経て各種の助成措置が発動されるという仕掛けになっておるわけでございます。  この際の認定といいますのは、一方では政令で指定する業種等所要の形式的要件を備えているということを判断するわけですが、同時に、その前提としては、事業者の考えております転換計画が本当に有効適切であるかというような内容も話を聞き、そしてその間におけるいろいろの指導も頭に置いた上で認定が行われる、かような形で運用するようにいたしておるところでございます。
  76. 上坂昇

    ○上坂委員 この認定については、地元だからそんなに長くはかからないだろうという感じもしますけれども、実際問題としては業務が長引くようなことのないように、ひとつこれは緊急に対処できるような体制をつくっていただくようにお願いをしておきたいと思います。  それから、金融という形で中小企業のいまの倒産なり何なりを防いでいくということでありますが、実際問題としてはやはりなかなか借りられない条件が出てきております。この前の予算委員会でも、大臣答弁で、政府三金融機関に対して四兆円のお金を準備した、こういうようなお話がありまして、それらがそれぞれ中金、国金、商工金庫に配分をされているわけでありますが、実際私が取り扱った企業で具体的にこういうのがあります。  これは家庭用の電源のトランスであるとか螢光灯の安定器、そういうものをつくっている会社でありまして、従業員が七十名くらいであります。これは私の地元にある町でありますが、その町にたった一つしかない本当に唯一の工場であります。したがって、ここに働いている人たちは全部地元の人たちなんです。ところが、昨年の夏から暮れにかけて企業の物が余りさばけない、売れないという形のしわ寄せ、それから一月に入ってやはり契約が落ちる、そういうところからどうしてもしわ寄せが二月に来てしまうということで、暮れの段階に中小企業金融公庫の方に話をして、そして二月ごろに二千万円程度融資をしてくれ、こういう話をしたわけであります。     〔山下(徳)委員長代理退席、山崎(拓)委員長代理着席〕  これは現地まで行って交渉したわけでありますが、私が行って交渉しているときには大変調子のいいことを言うわけでありますが、私がいなくなってしまって、今度は実際に業者と貸し借りをするという段階になりますと、いろいろな条件をつけてくるわけであります。十年前からの営業状態を持ってこいとか、要するにいまもうネコの手も借りたいような忙しい状況の中で、社長も資金繰りでぐるぐるはね回っているというようなときに、あの資料を持ってこい、この資料を持ってこいというようなことになりまして、結局のところはそういう資料がなかなか整えられないというような条件も出てくる。  あるいはまた、信用金庫の方にこの会社が借り入れをしておりまして、第一根抵当権が四千万円設定をしているわけであります。この四千万円のうち二千五百万円の根抵当を外して、それを中小企業金融公庫の方につけろ、こういうような条件を出してきたわけであります。  そこで、信用金庫の方にかけ合いましたところ、四千万円の根抵当権が半分以下になってしまったのではこれはもう大変だということで、仕方がないから私の方で当座二千万円だけは融通しましょうということになって、実際のところは間に合ったのです。しかし、これが本当に間に合わないというようなことになると、六十名、七十名という従業員を含めて、地方に唯一の工場がつぶれてしまう、そういう条件が出てきたわけです。  もう一つ申し上げますと、この工場は住宅建設が軌道に乗りますと注文は殺到する、そういう企業です。それからもう一つは、この業界はほとんど在庫がない業界なんです。ですから、在庫調整をする必要がないのであって、需要が出てくれば直ちに生産開始のできる業種である。こういうすぐにでも対応できる条件があって、私は、中小企業庁の金融課長に会って判断をしてもらって、それから本社の方に行って、出先の信用金庫まで行ったわけです。ところが、行くと、いま言ったような条件が出てきて実際には借りられない。末端に行きますとこれが実態なんですね。  ですから、こういうことでは、せっかく景気回復をしようと思っても、あるいは金融措置をしたとしても、政府の政策そのものが三金融機関の方に徹底をしていない。取らなければならない第一主義、返してもらうこと第一主義です。貸したものですから返してもらうことは必要でありましょうけれども、実態から見て、その企業見通しあるいはいまの生産の条件、そういうものから判断して、冒険かもしれませんけれども、ある程度は英断を下す、そして融資をして救っていくというものがなければ、どんなにお金を用意したとか何か言っても、私はむだになってしまうと思うのです。  この前申し上げましたように、いま中小企業は、従来の借りたお金の金利あるいはそれの返済、そういうものに追われて実際には借りたくないのです。しかし、やむを得ず借りなければならない。また、借りることによって企業の存続ができるということになれば、政策としてもぜひそういう形のもので進めるように指導していかなければならないと思うのですが、どうもそれがそういっていないというところに問題があると思うのです。この辺について今後どういうふうな形で指導されていくのか、御意見をいただきたいと思います。
  77. 岸田文武

    ○岸田政府委員 私どもは、かねがね中小企業三機関に対しましては、業者の立場になって物を考え、貸し付けを行うようにということで指導いたしておるところでございます。処理日数も極力早くということで指導いたしておりまして、たとえば運転資金の場合でございますと、国民金融公庫の場合には大体申し込みから二十日ないし二十五日で処理をする、それから中小企業金融公庫の場合ですと約三十八日ぐらいで処理をするというような実績になっております。いまお話しの件は設備資金でございますから、審査の内容も相当かかりますし、担保の設定等時間がかかる場合もあろうかと思いますが、それでも極力早くということで今後とも指導してまいりたいと思っております。  審査の内容につきまして二、三お触れになりました。十年前の営業成績を出せ、これはどういう事情があったのか知りませんが、普通から考えますと少し長きにわたるという感じがいたします。  それから、担保の順位の問題はよく私どものところにもいろいろ話が持ち込まれますが、私どもは、かねてから、政府系三機関は一番抵当にこだわる必要はないということを指導いたしております。実績を見ましても、これはサンプル調査でございますが、一番抵当に取っておりますのが二〇%か二五%程度でございまして、二番、三番、四番、五番というものも担保価値があれば取るようになっておると理解をいたしております。     〔山崎(拓)委員長代理退席、委員長着席〕 ただ、いまお話しのケースで、第一順位の債権者が相当多額の根抵当を取っておる、それが遊んでおるというようなときには、それと差しかえて三機関が抵当権を設定しました方が実質的にはたくさんの金が借りられるという場合もあろうかと思います。この辺は少し実情に応じて考えていかなければならない問題ではないかと思います。  いずれにいたしましても、冒頭申し上げましたように、制度の趣旨を生かして運用することが大切でございます。問題があるようであれば私どものところにもどしどし持ち込んでいただきまして、解決のお役に立つようにお手伝いをさせていただきたいと思いますし、また、三機関に対しても、そういうことのないように、問題が起こらないように極力指導してまいりたいと思います。
  78. 上坂昇

    ○上坂委員 長官、いまのは運転資金ですからね。中金からはいまのところ九百九十万借りている。隔月で百万円ずつ払って、三分の一はもう返してしまったのです。そういう企業でありますから、これは後で具体的に名前を申し上げますから、調査をしていただきたいと思います。  それから、もう一つ金融のことでお伺いします。  中小企業信用保険法による特別小口保険でありますが、自治体で無担保、無保証人の制度を採用しているところがあります。しかし、自治体財政が苦しいものですから、やはり信用保証協会と契約を結ぶわけであります。保証協会の方の保証をつけて貸しているわけであります。ところが、信用保険法三条の三によりますと、併用禁止の項があるわけです。そこで、こういう事態が出てきました。たとえば市が二百五十万貸すわけです。ずっと返していって、百五十万返すわけです。百万残っている。そこで、普通は百五十万返せばあとまた百万借りられるような制度になるわけです。ところが、この場合はこの条項に抵触するものですから、残りの百万円について貸すことができない、市の方がこう言っているわけです。そこのところを法律上も改正する必要があるのじゃないか、こういう問題が提起されておるわけであります。このことについて、この三条の三をどういうふうに解釈するのか、お答えをいただきたいと思います。
  79. 岸田文武

    ○岸田政府委員 いまのお尋ねお答えをする前に、先ほどの答弁で一カ所訂正させていただきたいと思います。  先ほど、政府融資が別枠を用意しておる、その場合に併用できるかというお尋ねに対しまして、具体的には四千万円の別枠が適用できるということをお答えいたしました。これは実は私、円高対策の対象となっている場合であって、なおかつ倒産対策と重なる場合というものを念頭に置きまして四千万円とお答えしたわけでございますが、御質問は、たしか事業転換の融資と円高対策という形でお示しになったかと思います。その場合でございますと、事業転換の場合は別枠が六千万円ございます。それと円高対策の二千万を合わせますと八千万円の別枠を用意し得る、こういう形になるわけでございます。制度の趣旨は冒頭お答えいたしましたとおりでございます。  それから、いまのお尋ねで信用保険における各制度の併用の問題でございますが、御承知のとおり、普通保険とそれから無担保保険、これは併用を認めておりますが、特別小口だけは併用を禁止いたしております。それは、特別小口というものが零細な中小企業を対象として、無担保、無保証という普通の金融ルールからしますと異例の措置を講ずるということから、一定の枠を設けたということがその背景にあるわけでございます。  ただ、その二百五十万円の特別小口の範囲内で、いまお尋ねによりますと、さらに余裕があるにもかかわらず受けられないというケースがある、これは私、もう一度帰って解釈を確かめてみたいと思いますが、記憶しております範囲内では、そのようなことはない、限度の二百五十万円の範囲内であれば可能である、ただ、ほかの保険と併用するという場合はこれはできませんが、特別小口だけで処理するという場合であるならば、二百五十万円の範囲内でのさらに借り増しということは可能ではないかというふうに考えております。借り増しと申しましたけれども、保証増しと言うのが正確な言い方かもしれません。
  80. 上坂昇

    ○上坂委員 いまのところですが、私もなかなかのみ込みにくいわけでありますが、市が無担保、無保証でやっている場合、それから普通無担保、無保証で国金から借りる場合——国金から無担保、無保証で借りる場合には、保証協会の問題はありません。そのままストレートに借りられると思うのです。市の場合でもストレートに借りられればいいのですけれども、やはり財政困難でありますから、信用保険法に基づくところの手続をとっているわけなんです。そこで、無担保、無保証とはいいながら、実は信用保証協会が保証するというようなかっこうになっていると思うのですね。そういうかっこうになっているものですから、ここにこの第三条の三に抵触をして、先ほど申し上げたように、余分を返して残り少なくなったのだけれども、その残っている分についてもう一度融資を申し込んでも借りられない、こういうふうになっている、こう言っているわけですね。そこで、法を改正してくなれいか、こういう要求がある。そのところでありますから、もう一度わかったら説明していただきたい。
  81. 岸田文武

    ○岸田政府委員 いま私の理解しておりますところでは、先ほどお答え申し上げましたようなことでございますが、なお具体的なケースをお聞かせいただきまして、できるだけ実情に沿ったような解決を図りたいと思います。
  82. 上坂昇

    ○上坂委員 そこで、質問を変えますが、国の商工あるいは中小企業施策ですね。これがたとえば分野調整法とかあるいは商調法の改正、それから事業転換法、こうした法律がつくられるわけでありますが、これが情報伝達が不備なんです。この情報伝達についてはどういう経路をとられているのか、お答えをいただきたいと思います。
  83. 岸田文武

    ○岸田政府委員 私どもも、せっかくつくり上げた制度でございますので、それがいかにうまく使われるかということについては、特に注意を払っていく必要があろうと思っておるところでございます。  具体的な例でございますと、ごく最近にできました円高対策の法律につきましては、まず、各県の代表を中央に集めまして制度の内容を細かく説明をし、そしてその結果を持ち帰って各府県ごとに説明会を行う、こういうやり方で制度の徹底を図りましたのに加えまして、新聞、雑誌、テレビ等を活用しまして、こういう制度ができましたということを広く知っていただくような措置を講じつつあるところでございます。すでに新しい法律に基づく認定申請もかなりの数出てきておるようでございます。  もう一つさかのぼりまして、昨年の秋に御審議をいただきました倒産共済法の場合でございますと、私ども、四月一日から発足をするという前提で諸般の準備を進めておるところでございますが、これまた中央における説明会のほかに、全国八ブロックに二都市ずつ選びまして現地説明会を行うという措置を講じておりますし、そのほかに、振興事業団が各地において補足説明会を行うというような措置を講じております。かなり倒産共済制度についての認識が広まっておりまして、私どもが当初考えていた程度の申し込みというものは十分可能になってきているのではないかという印象を受けておるところでございます。  そのほか、いま御指摘の点、御趣旨はまことにごもっともでございまして、私どもも今後とも十分気をつけてまいりたいと思います。
  84. 上坂昇

    ○上坂委員 お答えをいただいたのですが、分野法なんですが、去年の五月にこれが成立をして九月から発足をする。私がパンフレットをつくったら、私のパンフレットを百部くれなんという市町村があるわけですよ。それで、どうしたんだと言ったら、全くそれがわからないと言うのですよ。だから、本当にこれは実際には徹底していないのですね。ですから、いまお答えをいただいたのですが、これは十分その伝達方法をひとつ改めて徹底をしていただくようにお願いをいたしたいと思います。  そこで、先般もお伺いしました大型店舗の問題でありますが、鹿島建設が八重洲口に進出をすると言われているブックセンターの問題であります。これについては、大臣から、調査をする、こういうお答えがあったわけでありますが、この調査の結果をひとつお知らせいただきたいと思います。
  85. 河本敏夫

    河本国務大臣 調査をいたしまして詳細判明いたしておりますが、審議官から報告をさせます。
  86. 山口和男

    ○山口(和)政府委員 お答え申し上げます。  昨年の九月に新聞紙上で、鹿島出版会が八重洲にブックセンターを建設するという報道が行われたわけでございますが、その当時から東京都書店商組合等からいろいろな動きが出ておったわけでございます。  昨年の十月二十八日に鹿島建設株式会社から大店法第三条の届け出が行われまして、その内容は、建物の構造地下二階、地上八階、店舗面積四千九百五十七平方メートル、開店予定日は五十三年五月一日ということでございます。  自来、東京通産局あるいは東京商工会議所等におきまして話し合いのあっせんを進めてきておるわけでございますが、ただいまのところ、まだそのあっせんで話し合いを鋭意進めておる途中でございます。
  87. 上坂昇

    ○上坂委員 いまの問題は、大店舗法とそれから商調法の関係になって、それから分野法の関係にもなってくると思うのですが、三条の届け出をして、いわゆるこの届けを受ければ六カ月たったならば店舗を開業することができる、それから、五条で届け出しますと、四カ月たてば開業できる、こういうようになっておるものですから、いま大きな企業で大店舗で届け出をしでおる。鹿島の場合はそうですね。ところが、これは特定の商品の販売なんです。特定販売ですと、これは商調法に引っかかってくるわけです。そうなりますと、いわゆるスーパーとか何かの問題ではなくなるので、これは別な形での取り締まりをしなければならないのではないかというふうに私は思うのですが、その点について審議官の御意見をいただきたいのです。
  88. 山口和男

    ○山口(和)政府委員 小売店の開設に当たりまして、その小売店の店舗の基準面積が千五百平方メートル以上ある場合、また、十大都市にありましては三千平方メートル以上あります場合に、店舗を開設しようというときには、周辺の中小小売商業等への影響と消費者の利益等を勘案しながら調整を図れるように、大規模小売店舗法が昭和四十八年の成立によって現在あるわけでございます。  大規模小売店舗法によりますと、まず、建設の段階で第三条の届け出が行われ、さらに、店舗の出店者が店舗の開設につきまして第五条の届け出を行うということになっておりまして、第三条届け出以後六カ月を経過しない間に店舗の開店をしてはいけない、こういうことになっております。ただ、この点は、ただいま先生御指摘にございました六カ月すれば開店できるという規定の仕方ではございませんので、六カ月以前には開店できないという規定の仕方になっております。したがいまして、大規模小売店舗法では、その間実際上の調整を商調協等によりまして調整を進めて処理してきておるわけでございます。実際に第三条届け出以後開店されるまでの期間につきましては、相当長期間を要しておるという例もたくさんあるわけでございます。  次の、大店法と商調法との関係でございますが、商調法につきましては、従来、問題がある場合に都道府県知事が紛争についてあっせん、調停をするという規定が商調法十五条にございますが、これは一応あっせん、調停という段階で終わっております。御案内のとおり、昨年の八十通常国会で、議員提案によりまして新たに商調法の改正が行われまして、申し出により調査をし、また必要があれば調整をするという規定が設けられておりますが、これは大規模小売店舗に該当しない千五百平米あるいは三千平米よりも小さな店舗について、商調法による調整手続というのが進められるという形になっております。  したがいまして、店舗の大きさについて見ますと大規模小売店舗法の適用対象になる。これが専門商品、単一商品を売るという点につきましては、一般的には百貨店、デパートが大部分対象になりますが、店舗の規模で見ますと、単独店につきましても大規模小売店舗法の対象にして調整を図るという考え方で適用をいたしてきておるわけでございます。
  89. 上坂昇

    ○上坂委員 単一商品、いわゆる特定物品であっても単独店舗としての取り扱いを大店舗法でやる、こういうお話ですが、そのことについてはまた後で触れたいと思います。  もう一つでありますが、最近、福島県でありますが、非常に大型店舗の進出が激しいわけであります。この前は詳細申し上げられませんでしたが、きょうはちょっと聞いていただきたいと思うのです。  保原町というところがあります。これは二万三千の人口です。商店数が三百九十六店、年商約七十億円、売り場面積で一万二千七百平方メートルであります。進出予定の大型店というのは、第一店はエンドー・チェーンというところでありますが、これは店舗面積が五千二百八十六平方メートル、年商見込みが十五億円、従業員が七十名で地上三階、地下一階、五十三年の十月に開業したい、こういうことであります。もう一つは保原ショッピングプラザというのでございますが、実は米沢ファミリー丸井店とも言われております。これは店舗面積が七千九百二十平方メートル、鉄骨鉄筋コンクリートづくりで二階であります。年商見込みがまたこれも十五億円、従業員は八十名であります。系列はニチイであります。この両店舗を合わせますと、保原町の既成の三百九十六店の持っている売り場面積よりも広くなる。こういうスーパーが進出を図っております。これは大変なことだろうと思うのです。  それからもう一つ、本宮町というところがあります。これは人口が一万八千五百人、商店数が三百余であり、この店舗面積が延べ一万四千平方メートル、年商が九十二億円であります。そこへ本宮ショッピングセンターというのが進出を図っておりますが、これは売り場面積が八千二百八十四平方メートル、鉄筋コンクリートの三階建て、系列はイトーヨーカ堂、年商見込み二十六億円であります。それからもう一つ、成田屋というのが計画をしておるわけでありますが、これは系列はニチイであります。店舗面積は六千七百六十平方メートルであります。二階建ての鉄骨モルタル、年商十三億円、両方合わせますと、実に一万五千平方メートル、一万八千五百人の人口のところへ、たった二店で店舗面積では二万平米以上にもなるようなスーパーが進出したら一体どうなるかということでございまして、これではとても地元の商店はやっていくことができないと思うのです。  そこで、いろいろな問題が起きておるわけでありますが、最近のナショナルスーパーの進出の方法というのは、一千五百平米以下の店舗を設けていわゆる中小都市を席巻してしまうという戦略をいままでとっていたわけでありますが、最近は、商調法ができ、あるいは各市町村に条例などが制定されるような条件になりますと、非常に進出がむずかしくなる、そこで大店舗の方で届けを出しておく、こうなりますと、全部切られても大体三千平米のところでとまるだろう、あるいは一千五百平米のところでとまるだろう、こういう発想なんです。ですから、人口であるとかその辺の商圏なんというのは一切お構いなしに、物すごい規模の店舗を設ける傾向が出てきました。これはいまの商業、流通経済を混乱させる最大のものになるだろう、こういうふうに思うのです。  したがって、分野法ができ、あるいは商調法ができ、大店舗法ができた、そういう精神の中からこれを見るときには、こうした進出を許さないような条件をつくっていくということが重要であろう、こういうふうに私は思うのです。特に景気回復あるいは需要の喚起、そうした面でも、倒産を出さないように失業者を出さないようにするための施策としてもどうしても必要である、こう思うのです。そういうことについて、中小企業庁としてはどういうふうに把握をしておられるのか、お聞かせをいただきたいと思います。
  90. 岸田文武

    ○岸田政府委員 大規模店舗と地元の小売店との調整問題というのは古くからある問題でございますが、特に分野法ができましたことを一つの契機としまして、これからこの問題についてどう取り組んでいくか、中小企業対策としても考えていかなければならない時期に来ておるように思っておるところでございます。  見ておりまして、各地の紛争のために大規模店の方も相当なエネルギーをとられておるかもしれませんが、地元の小売商の方も日々商売が手につかないというような状況で、大変なロスが行われておるように思っております。この点につきましては、御承知のとおり、昨年の夏以来通産省の中に小売問題懇談会を設け、さらにその意見を一つのたたき台としながら、いま審議会で議論が進められておるところでございまして、何らかの新しい調整の道具づくりというものが着々と進められておるのではないかと思っておるところでございます。
  91. 上坂昇

    ○上坂委員 これは大店舗法と商調法の関係の整理をしていく、整合性を図っていくということに尽きると思うのですが、私は、この整合性を図る場合、なかなか法律を一本化したりなんかすることはむずかしいという場合には、これはどちらかに、大店舗の方に入れるのが本当だと思うのですが、各自治体が条例化をする場合、やはりそれが優先するというような形のものにしていく必要があるんじゃないか、こう思っているわけです。そのことについて一言お答えをいただきたい。
  92. 岸田文武

    ○岸田政府委員 各地で条例化が進められておりますことは御承知のとおりでございますが、これをどういうふうに位置づけていくかということは、いろいろ考えていかなければならない問題があろうと思います。一面では、地元の意向を尊重するという意味合いで積極的に評価できる面もございますが、他方で言いますと、各府県がばらばらの基準でやっておりますために無用の混乱を起こしておるという面もございますし、また、条例の中には、常識的に考えまして中小企業の出店するような、恐らく中小企業でなければ出店しないような規模のものまで抑えておる、この辺のところは本当にそういうことがいいんだろうかどうだろうか、私どもとしても考えなければならない問題を含んでいるような気がいたしておるところでございます。  先ほどお話し申し上げました小売問題懇談会の中でもいろいろの議論がございまして、その議論の一つとして調整の主体をどうするかということが議論をされております。恐らくこれから引き続いて行われる審議会のレベルでも、いまの問題は当然議論をされることになるのではないかと思っておるところでございます。
  93. 上坂昇

    ○上坂委員 この問題は、もう一つは大店舗の届け出制を許可制に直していくということが必要だと私は思っておるわけでありますが、こうした問題と関連をしているわけでありますが、山口審議官はこの許可制にするということについてはどういうお考えを持っておられるか、お聞かせをいただきたいと思うのです。
  94. 山口和男

    ○山口(和)政府委員 ただいまこの問題につきまして私の意見を申し上げられる段階でございませんので、差し控えさしていただきたいと存じますが、小売問題懇談会の中では、やはり許可制あるいは届け出制の問題につきましていろいろ議論がされまして、十分検討を慎重に行うようにというようなことが触れられております。
  95. 上坂昇

    ○上坂委員 そこで、結論的な質問に入ってまいりますが、先ほどの鹿島建設のブックセンターの場合は、いろいろ前社長が計画をされたという形はあっても、他業種に対する進出であるということは事実だと私は思います。そこで、この他業種に対して大型の店舗が進出をする場合、これをまず規制をしていく。それから、大型店舗で届けをすれば単品でも進出ができるということをこれは直していかなければならない、防止していかなければならないと私は思うわけです。そこで、単品で特定販売の場合にはこれは大店舗の適用から外す、そして商調法の段階でこれを取り締まるように指導する、こういう形に持っていくことがまず必要だというふうに私は思っておるわけです。  その点についての意見をお伺いをするのと、もう一つは、スーパーが進出をする場合、一万平米以下の場合には地方の通産局で地方審議になるわけであります。そうしますと、仙台通産局の例でありますが、審査員が五人しかいないんですね。その五人の人が、三人が大学の教授で、もう一人は報道関係で、もう一人の人は消費者代表、こういうふうになっております。したがって、消費者のサイドというかっこうになりますと、もう届け出でも出れば、これはやはりほとんど許可をせざるを得ないというような形になってしまっている。実際に、実態的に現地に行ってこれを調査をするというようなことはほとんど行われていない、全く書面だけの審査に終わってしまう。一万平米以上になりますと中央でやりますから、そういう点は大分違ってくると思いますが、地方ですと、いま言ったようなのが実態であります。そこで、大店舗の方が申請をすれば、スーパーなどが申請をすれば、これは大体許可になる、こういう見込みになっている。  それから、その場合に、地元の商工会議所あるいは商調協の意見を聞くわけでありますが、商調協の場合には、商工会議所の役員をしている者はこの商調協の委員になってはならないという指導を通産省がしているわけです。これは私はまことにおかしい話だと思うんです。したがって、そういう指導をなくして、そうした枠を外していくということも必要だろう、このことについてもひとつ意見をいただきたいと思うわけであります。  それから最後に、大店舗法それから商調法、これの整合性を図るために、一体いつごろを目途にしてこの審議をされていくのか。早急にやりませんとますます流通界が混乱をしてしまうと私は思いますので、これは早急にやらなければならないと考えております。そこで、いつごろまでに結論を出せるのか、その点についてもお伺いをいたします。     〔委員長退席、山崎(拓)委員長代理着席
  96. 山口和男

    ○山口(和)政府委員 三つの点につきまして御質問があったと存じますが、まず第一点の、単独商品の小売店の場合には、大規模小売店舗法の適用になる大きさの大型店舗であっても、商調法で運用していくべきではないかという御意見でございますが、ただいま一応法律の規定上は、改正されました商調法の場合には、大規模小売店舗法の適用対象になるものが一応店舗の大きさで除かれておりますものですから、そういう点が一点と、大規模小売店舗法の方も、従来からの運用といたしまして、書籍以外でも、たとえば家電とかその他の専門店につきましても調整を行ってきておる例もございまして、全体の約一割程度はそういう専門の大型店というケースもございます。したがいまして、ただいまのところは大規模小売店舗法の従来の運用によって処理してまいりたいと考えるわけでございます。  第二番目の、商調協の構成の問題でございますが、私ども、各商工会議所あるいは商工会に通達をいたしまして、商調協の構成につきましては、大型店の代表、中小小売商業の代表、消費者、学識経験者等によりまして、適正公平な配分によって編成をして運用するようにということにいたしておりますので、そういった意味では、必ず委員のメンバーにはそういった関係者が適正な配分で含まれておるものと考えておりますが、具体的に先生御指摘のございました保原町あるいは本宮町につきましてどういう状況になっておりますか、さらに詳細に連絡をとりましてチェックをしてみたいと存じます。  それから、最後に法律改正の段取りでございますが、ただいまは、一応小売問題懇談会の報告を得まして、さらに中小企業政策審議会と産業構造審議会の合同委員会をすでに二回開催を終わっております。後さらに精力的にただいま審議を進めていただいておるところでございますので、何とかできるだけ早い時期、今月のある時期には一応のめどがつけられるように御審議をお願いしたいと考えております。
  97. 上坂昇

    ○上坂委員 私がどうしても納得がいかないのは、単品の場合でも、とにかくずうたいさえ大きければそれは全部大店舗法だ、こういう形で運営をするということです。これについてはここで論争しても仕方がありませんからやめます。  もう一つ、いまのスーパーが進出するような場合、通産局で商業活動を審議するためのいろいろな資料を、商調協あるいは商工会等に求めるわけですね。ところが、その費用が莫大なものになるわけです。なかなかそういう資料というものが、県にもないし、市町村にもないのですね。したがって、商調協の人たちが独自でこれを調査しなければならない。これは大変な労力と時間と費用がかかる。ところが、現在国から助成金が最高八万円しか出ていないわけですね。とてもこれでは満足な調査ができるはずがない。ところが、出店側は膨大な資本を持っているわけでありますから、いろいろな調査ができる。したがって、出店側と競合してもとてもかなわないわけであります。こういう点についても非常に問題があると思いますので、こうした判断の資料を正確にしていくためにはかなりの助成金を出す必要があるんじゃないだろうか、あるいはその費用を問題の起きたところに対しては交付していくということが必要なんじゃないか、私はこう思っておるわけでありますが、その点について最後にお伺いをして、質問を終わります。
  98. 山口和男

    ○山口(和)政府委員 各商調協等で検討されます際の基準になるようなガイドラインと申しますか、そういったものがございますと、非常に検討がスムーズにできるわけでございまして、その点、先生の御指摘のとおりでございます。私ども、昨年来、そういった審査指標というようなものが何かうまくつくれないかということで、いろいろ研究会をつくりまして検討を進めておるところでございますが、実際に運用するという点につきましては、なおもう少し検討をする問題が残っております。  各商調協に対しましては、商工会議所あるいは商工会に委託しております関係で委託費を出しておりますが、それぞれ四十万あるいは三十万というような単位でございまして、確かに最近の調整は非常にむずかしい場合が多くなりまして、会議等の回数もふえますので、その点、確かにいろいろ費用がかかるという点は十分私どもも認識いたしておりますが、今後ともできるだけ充足に努めるようにいたしたいと存じます。
  99. 上坂昇

    ○上坂委員 終わります。
  100. 山崎拓

    ○山崎(拓)委員長代理 長田武士君。
  101. 長田武士

    ○長田委員 通産、企画両大臣の所信表明に対する質疑に入る前に、二、三お伺いしたいと思っております。  まず、福田内閣の有力閣僚でありますところの河本通産大臣宮澤経済企画庁長官に、予算の修正問題についてお尋ねをしたいと思っております。  自民党は、社会保障関係費について予算書の修正は行わない、予備費の流用をもって充てるという考え方のようでありますが、このやり方につきましては、私は大きな疑問を持っておるわけであります。言うまでもなく、予備費は、憲法に規定されておるように、「豫見し難い豫算の不足に充てるため、」このようになっております。予備費をあらかじめ特定財源とすることは、財政民主主義の上から言っても反するのではないか、私はこのように考えておるわけですが、財政に詳しい両大臣から、予備費を特定財源化することについてどういうお考えを持っておるか、まずお尋ねをいたします。
  102. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 実は、私ども政府の立場からいたしますと、自民党がその問題について最終的にどのような考え方をしておりますのか、聞いておりません。いずれにしても、最終的に党としての方針が決まりましたら、政府の意向をきっと求めるということになるのであろうと存じます。したがいまして、どのようなことになっておりますか、つまびらかでございませんし、予備費というものがいかなる場合に使い得るかということについて、たとえば社会保障等々についての増額なら、増額の内容というものが少なくともいまの時点では決まっていないのであろうかと思います。そうなりますと、そういう支出義務の内容が確定していないというがゆえに予備費が可能だという議論があり得るのでありますかどうでありますか、その辺のところも実はつまびらかにいたしておりません。
  103. 河本敏夫

    河本国務大臣 いまこの問題は各政党問で話し合いをしておる最中でございますから、その経過を見た上で判断をしたいと思います。
  104. 長田武士

    ○長田委員 私は、減税についても本来明確な財源措置をすべきであって、当初より歳入欠陥を見込むというようなことはあってはならないと考えるのです。こうした意見を申し上げるのは、財政の基本原則がなし崩し的に崩されておる、そういうことを私は憂慮しておるのです。本来、財政法から見れば例外規定である建設国債、これはもう本則化しております。また、いまや赤字国債までもあたりまえになってしまっておるような傾向が強いわけです。さらには、国税収納制度は会計年度と全く別のものになろうとしておるわけです。こういうことは厳に戒めていかなければならないと私は考えるのです。財政の原則が崩れておるということについて、あわせてもう一度御見解を両大臣に伺いたいと思います。
  105. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 一般にいわゆる四条国債は財政法でも考えておることでございますので、その対象が公共投資であるというようなことでございますれば、これは全く避けなければならない方策だというふうには私、考えておりません。しかしながら、特例国債と申しますのは文字どおり特例でございまして、国会のお許しを得て出すものでございますが、本来から申しましたら、これは歳入補てん公債でございますから、長いこと無限に続けてよろしい施策ではないと思います。  また、歳入の面で、前年度と申しますか、五月までの歳入をもって年度の歳入とするということは、言ってみれば制度をそのように今後永久に変えるということであろうかと思います。それはそれでいろいろ賛否両論があることだと存じますが、それよりもむしろ、ある特定の年度にそういうことによって十三カ月の歳入を組むということは、次の年度には十二カ月の歳入しか残らないということでありますから、予算が前年度に対比して何%増減と申しますようなときに、次の年度の編成は実は非常にむずかしくなるということはもう明らかでございますので、これらのこともしょっちゅう行っていいこととはとうてい思えません。  あれこれ考えまして、このたびの財政措置がいわゆる臨時異例の措置であると大蔵大臣が言われましたことは、私もそれでなければならないと思いますが、なおそういうことをしてまでもこの経済情勢財政主導で立て直さなければならないような雇用その他国民生活あるいは国際関係であったということで、こういう情勢であったがゆえに、こういうときにのみ許されるような措置ではなかったかというふうに考えております。     〔山崎(拓)委員長代理退席、委員長着席〕
  106. 河本敏夫

    河本国務大臣 この予算修正の問題は、いろいろな問題を含めましていま与野党の問で話し合いをしておる最中でございますから、先ほど申し上げましたように下すべてその話し合いの経過を見まして判断をしたいと思います。
  107. 長田武士

    ○長田委員 私どもは、広範囲な予算修正権が国会に存在するという立場で予算修正を迫っているのでありますが、予算修正の問題について両大臣からも見解を伺っておきたいと思います。
  108. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 その点につきましては、先ほど来申し上げましたとおりでございますが、いずれにいたしましても、政府といたしましては、御提案いたしました予算を最善だと今日まで考えてまいったわけでありますけれども、国民を代表される国会において、それについてはさらにこういう案の方が適当であるというふうな御意向であれば、政府としてもそれに従わざるを得ないものであるというふうに考えております。
  109. 河本敏夫

    河本国務大臣 私も同意見であります。
  110. 長田武士

    ○長田委員 関連してお尋ねしたいのでありますが、予算修正問題と相まって、福田首相周辺から解散説までささやかれているようであります。河本通産大臣から解散説についての見解をお伺いしたいと思います。
  111. 河本敏夫

    河本国務大臣 福田内閣は昨年の十一月の末に再出発をしたわけでありますが、そのときに、総理大臣は特に異例と思われる内閣としての所信声明を出しておられるわけでありますが、それは、現在の最大の課題は経済問題である、非常にむずかしい問題が日本を取り巻いておる、この幾つかの問題を解決するということが最大の当面の政治課題でもある、新しい内閣はこの問題に全力を傾けて取り組みたい、こういう趣旨のことを言っておられます。だから、いまや経済問題は単なる経済問題ではなく、最大の政治課題になっておる、こういうことだと思います。ところが、この最大の政治課題である経済問題がまだ軌道には乗っていない。完全に解決されたとは思いません。そういう情勢でありますから、それを背景として私は適当な判断がされるものと思います。
  112. 長田武士

    ○長田委員 次に、永大産業の倒産問題について触れておきたいと思っております。  経営危機を伝えられていた永大産業が、五十年八月の興人に並ぶ戦後最大級の倒産となったわけでありますが、会社更生法の適用を申請した二月二十日から一週間前、すなわち二月十三日、倒産に至る筋書きが完全にできていたという説が実は流れておるのであります。この日、大和銀行首脳が大蔵省の徳田銀行局長に会い、更生法申請しか道は残されていない、このように報告いたしましたところ、徳田局長は、国会は五十三年度の予算の審議中だから、衆議院で予算案が上がる三月まで延ばせないかと言われたが、大和銀行としてはどうにもならぬとこれを断り、去る二月十三日に実質的に永大産業の倒産決定したという話であります。  こうしたことから見てまいりますと、これからは銀行が見放す倒産、こういう傾向が強くなってくるのではないかと私は思うわけであります。大和銀行としては、他の問題企業救済に全力を挙げたい、そのためには永大をつぶしてもというようなことも発言をいたしたようでありますが、この倒産に至る過程で、大株主でありますところの生命保険大手各社が持ち株を相次いで処分していたなどとの風聞が伝えられております。そうなりますと、筋書き倒産的なニュアンスも非常に私はあるのではないかと思いますが、大臣、いかがでしょうか、通産大臣、お願いいたします。
  113. 河本敏夫

    河本国務大臣 これは私から答弁をするよりも、むしろ大蔵省の方から答弁をしていただいた方がいいと思いますが、私は、永大産業倒産直前のことについては、詳しく知りません。しかし、事態がこういうことになりました以上、やはり起こってまいりました事態に対処いたしまして最善の方法をとらなければいけないと思います。一つはやはり中小企業下請対策、一つはユーザーに対する対策、これらに対しては政府としても関係者を指導いたしまして、きめの細かい対策を十分とりまして、そして影響するところを最小限にとどめなければならぬと考えておりますが、現にそのような方向でいろいろ指導しております。
  114. 長田武士

    ○長田委員 関連してお伺いしたいのでありますが、たとえば永大産業が会社更生法の適用を受けたといたしましても、関連中小企業の債権も更生債権となって管財人の管轄下に入ってしまうのでありますが、この中小企業の債権は、従業員の給料等に充てられるものも含まれておるわけですね。したがって、中小企業の債権については優先的に弁済できるよう通産大臣に御努力願いたい、こう思うのですが、いかがでしょうか。
  115. 河本敏夫

    河本国務大臣 中小企業庁の長官から答弁いたします。
  116. 岸田文武

    ○岸田政府委員 永大産業及び関連会社の取引先は二千余に及んでおるわけでございます。その中で製造業関係で百十七が含まれておるようでございます。これらの債権につきましては、お話のとおり更生債権になるわけでございますが、会社更生法の中には中小企業に対する特別措置もございますし、また、少額債権の優先早期弁済制度も含まれておりますので、これらの制度をうまく活用して、特に零細な企業が大きな打撃を受けることのないように配慮していただきたいものである、こう考えておるところでございます。別途、下請企業の中には親会社からの支給物品を持っておる場合がございます。この場合には商事留置権が発生をいたしまして、この場合には更生担保権になるわけでございまして、弁済の可能性が高くなろうかと思っておるわけでございます。
  117. 長田武士

    ○長田委員 ただいま御答弁がありましたとおり、中小企業の対策を十分講ずるということでありますが、その中に中小企業倒産対策緊急融資制度を活用するということも含まれておりますか。
  118. 岸田文武

    ○岸田政府委員 関連事業者に対する金融策として、いまお示しの制度を活用したいと考えております。
  119. 長田武士

    ○長田委員 実はこの中小企業倒産対策緊急融資制度でありますが、御存じのとおり、この制度は三月末で期限が切れます。しかし、三月危機が叫ばれておる現在、この制度はぜひとも再延長させるべきではないか、私はこのように考えるわけでありますが、政府はこの制度の再延長について検討されておるかどうか、また、再延長の考えがあるのか、その点をお伺いいたします。
  120. 岸田文武

    ○岸田政府委員 お話にございました緊急融資制度は三月末日までを一応の期限として適用いたしておりますが、いまの経済情勢からしますと、三月末で打ち切れるような情勢ではないと判断をいたしておりますので、これを延長する方向関係方面と調整を図りたいと考えておるところでございます。
  121. 長田武士

    ○長田委員 次に、五十三年度経済運営にかかわる基本的な問題についてお尋ねをいたします。  私は、来年度七%成長の実現は是が非でも実現しなければならない、こう考えておる一人であります。しかし、昨日自民党の江崎政調会長は、日本記者クラブ記者会見で、五十三年度六%成長ができれば上できというような趣旨の発言をしたようであります。自民党の有力者の発言であるだけに見逃すわけにはいかないと私は思うのです。政府の本心もこういうようなところにあるのではないかと私は推察をするのでありますが、経企庁長官、それから通産大臣、いかがでしょうか。
  122. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 江崎政調会長の御発言については存じませんけれども、私は、七%程度成長というものをしなければなりませんし、できると思っております。ただいまなかなか世の中でそう思っておられる方が多くないようでありますけれども、少しずつ時間がたちますと、なるほどなというふうに皆さんが思われるように経済は展開するのではないかと考えております。
  123. 河本敏夫

    河本国務大臣 私も新聞を見ましたけれども、一つの新聞だけが六%ということを書いておりました。他の新聞は全部七%ということを言われたということを書いておりました。だから、それは何かの間違いではないでしょうか。七%成長というものは、もちろん財政を若干積極的に運営したからといって、それだけでは達成はできないと思いますが、やはり財政をてこといたしましてあらゆる政策手段を動員していくというのがいまの政府の基本方針でありますから、それを間違いなくやっていくということをやれば、必ず達成できると考えております。
  124. 長田武士

    ○長田委員 河本通産大臣は、過日の本委員会でもって、七%成長は何とか実現できそうだが、経常収支の見通し六十億ドルの達成については懸念を示されたわけであります。自民党の有力者は、七%は無理だということをいま江崎政調会長は言っておりますし、河本通産大臣は六十億ドルは困難だ、こういう話ですね。こうなりますと、両方とも達成できないということじゃございませんか。通産大臣、いかがでしょうか。
  125. 河本敏夫

    河本国務大臣 いまあなた、江崎政調会長が六%と言ったということを言われますけれども、それは私は間違いだと思いますよ。なぜかといいますと、江崎政調会長自身がずっと、七%成長は絶対やらなければいかぬということを昨年から言っておられる方ですからね。だから、私は、何らかの誤報ではないか、こう考えております。  それから、私が六十億ドル云々ということを先般申し上げましたのは、七%成長を達成したからといって即自動的に国際収支が六十億ドルになるものではありませんから、そこにはやはり相当の工夫と努力が必要だ、しかし、相当の工夫と努力をやれば達成は可能である、こういう趣旨のことを言ったわけであります。
  126. 長田武士

    ○長田委員 そうしますと、通産大臣、六十億ドルの黒字、この点は見通しとしてはどうなんでしょうか。
  127. 河本敏夫

    河本国務大臣 現時点の国際収支の動向から考えますと、いまのまま行けばもちろん相当大幅な黒字になるでしょう、六十億ドルをオーバーするような勢いでいま進んでおりますから。それではいけませんから、あらゆる政策手段を動員してできるだけ早くこの軌道を修正しなければいかぬ。先ほど申し上げましたように相当な工夫と努力が必要でありまして、それをやれば達成は可能であろう、こう思っております。
  128. 長田武士

    ○長田委員 次に、七%成長あるいは経常収支の目標と深いかかわりがある円レートの動きの問題であります。  現在、海外為替市場では、アメリカの景気先行総合指標が大幅に下落したことや、週末に発表されるアメリカの本年一月における貿易収支はかなり大幅な赤字となりそうなことなどからドル安の傾向にあり、さらに、西ドイツのマルク、スイスのフランなどに比べて円の上昇が不十分という国際的な円の割り安感などが背景となって、円高再燃の動きが見られるわけであります。こうした状況について通産、企画両大臣はどのように判断されていらっしゃるのか、お答えをいただきたいと思います。
  129. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 ただいまのところ、アメリカに石炭のストライキがございましたり、エネルギー法案がなかなか通過いたしませんでしたり、あるいはフェデラル・リザーブ・ボードのチェアマンの任命がおくれましたり、短期的に幾つかのことがございますわけですが、しかし、アメリカの経済そのものはやはりなかなか底力があるということ自身は、アメリカの大統領以下人々が言っておりますように、私はそのとおりであろうと思っております。たとえ貿易収支に相当の赤字が出ましても、やはり比較的な競争力から言えば、アメリカの経済は、ベトナム戦争もやめましたし、強いということは私そのとおりだろうと思います。したがいまして、ただいま先ほど申しましたような幾つかの短期的な問題はございますけれども、それらも徐々に解決され、あるいは解決されつつあるということでありますので、長期的に見てドルはむしろ過小評価を受けているというアメリカの関係者の話も、あながち無理な話でもない、あながち誤りを語っておるのでもないというふうに私は思っております。マルクとかスイスフランとかにおのおの事情があるわけでございますけれども、ドルが基本的にそんなに弱い通貨ではないということは私は確かであろうと思っております。  これからのわが国における円ドルレートの動きについて、わが国はクリーンフロートの立場をとっておりますから、予断をすべきことではないわけで、相場は相場に任せるということでございますけれども、基本的にはドルというのは、短期的な問題が片づきますと、やはり相当強い通貨ではないかと私は思っております。
  130. 河本敏夫

    河本国務大臣 アメリカの経済は、御案内のように、貿易収支が大変大幅な赤字であります。したがって、経常収支も大変大幅な赤字が出ておりますが、この赤字が出ておるということだけでアメリカの経済が弱いと判断するのは、これはもう大変な間違いではないかと私は思います。  なぜかといいますと、なぜ赤字が出ておるかというその理由をよく調べてみますと、それはアメリカの経済というものが順調に回復いたしまして、相当な活力を取り返しておる。ところが、国内のエネルギー生産というものは、なかなか増産が思うようにいっておらぬわけです。したがって、どうしても需要の伸びる分は海外からエネルギーを買わなければならぬ。そこにアメリカの赤字の一番の、また唯一の原因があるわけであります。だから、むしろアメリカ経済が順調に拡大しておる、景気が回復しておる、そのためにエネルギーの需要が拡大しておる、こういうことでありますから、この赤字というものは、ある意味においてアメリカの経済の強さを示しておる数字ではないか、こう思います。  しかも、エネルギーを外国から買ってはおりますけれども、その代金というものは、ほとんど全部アメリカの国内にそのまま滞留をいたしまして、国際収支全体としてはびくともしていない、こういう状態でございますから、私は、赤字が一時的に大きいということだけで、アメリカの経済が弱いとか、ドルの力を過小評価するいまの傾向というものはいかがなものであろうかと判断をしております。
  131. 長田武士

    ○長田委員 では、経企庁長官お尋ねをしたいのでありますが、五十三年度における経済見通しの作成段階では、対ドル為替レートを二百四十五円と見込んでおられたようであります。先ほど申し上げましたような影響を受けて円レートが高くなった場合に、経済成長率七%の達成はさらに困難ではなかろうかという問題を私は危惧いたしております。この点、長官、どうでしょうか。
  132. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 五十三年度の見通しをいたしますときに二百四十五円を使いましたのは、もう御承知でいらっしゃいますけれども、過去にそういたしましたように、作業の一番近い月、今回で申しますと昨年の十一月でございますが、十一月の円レートの平均値二百四十四円八十銭を丸めまして二百四十五円として使ったものでありまして、五十三年度中におけるレートの予測に立つものではございません。  仮説の問題としまして、円レートが上か下へ非常に大きく動きましたときには、それは経済見通しに何かの影響を与えるはずではないかという理屈は、もうそのとおりでございますけれども、しかし、それにいたしましても、それがどのような対応でどのような時間のうちに起こるかというようなことも全く仮定の話になってしまいますので、私どもとしては、ただいまのような作業仮説のもとに見通しを立てておるということでございます。
  133. 長田武士

    ○長田委員 三月一日の新聞報道によりますと、英国のミーチャー貿易次官は、日英経済シンポジウムで、円の上昇はまだ不十分である、そういう趣旨の発言をしたようであります。私は、こうした諸外国の見方は根強いものがあるのではないかというふうに考えているわけです。しかし、われわれはこれ以上円の高騰は何としてでも回避しなくてはならない。こうした諸外国の円上昇はまだ不足しておるというような認識はずいぶんあるようであります。  重ねてお尋ねしますが、長官、この点いかがでしょうか。
  134. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 しばしば議論に使われますのは、スミソニアンレートに比べてマルクの切り上げが大きい、あるいはスイスフランの切り上げが大きい、それに対して円はという議論でございますけれども、これは実はあまり意味のない議論ではないかと私は思います。ドイツにはドイツの経済があり、スイスにはスイスの経済がありますので、スミソニアンレートから同じだけ切り上がらなければ切り上げ方が不十分であるというような議論は、どうも私は一向に納得をいたしません。
  135. 長田武士

    ○長田委員 それでは、通産大臣お尋ねいたしますが、景気動向と非常に関連が深い公定歩合の問題であります。この引き下げ問題について、金利の動向についてもこれは無視できないんではないかと思いますけれども、通産省といたしまして、公定歩合の引き下げについてのお考え方をお知らせ願いたいと思います。
  136. 河本敏夫

    河本国務大臣 私は、ことし七%成長、あるいは経常収支六十億ドル、あるいは稼働率指数九二、幾つかの経済目標というものを設定しておりますが、これを確実に実現をしていくためには、先ほどもちょっと申し上げましたように、財政だけではなく、すべての政策手段というものを動員しなければいかぬと思っております。すべての政策手段とは何ぞやといいますと、それは財政政策のほかに、金融、産業、貿易と幾つかの政策があろうかと思うのです。したがって、私は、金融政策も景気政策上当然非常に大きな役割りを果たさなければならぬと考えております。ただ、いついかなる方法で金融政策が大きな役割りを果たすかということは、これは日本銀行の総裁が判断されることでございます。
  137. 長田武士

    ○長田委員 次に、通産大臣にまたお伺いするわけでありますが、きのう、約二週間の予定で、官民合同の訪米輸入促進使節団が出発をいたしたわけであります。同使節団の主な役割りはどのようなものであるか、具体的にお聞かせを願いたいと思います。
  138. 河本敏夫

    河本国務大臣 昨日、池田団長の率いる大型経済使節団がアメリカに出発をいたしましたが、当初このミッションに課せられました使命というものは、アメリカの政界、財界、産業界、労働界、こういう各方面と忌憚のない意見を交換いたしまして、日米の経済関係をますます密接なものにしていこう、摩擦の起こらない形で双方が運営することに努力をしていこう、そのための広範な話し合いが必要である、こういうことから大型ミッションに行っていただくことにしたわけでありますが、その後、せっかく行くことでもあるから、そしてまた関係者もたくさん行っておることでもあるから、ある程度具体的な商談というものが、短期間ではあるけれども、もしその間にできるならば、これはまとめるようにしたらどうだろうか、こういう意見が後になって出てまいりました。したがいまして、幾つかの使命があるわけでありますけれども、一言で申しますと、日米間の経済関係というものをより密接なものにしたい、こういうことでございます。
  139. 長田武士

    ○長田委員 そのことで、私は日米双方の意見がちょっと食い違っているんではないかと思うのであります。アメリカ側としては、日米貿易不均衡是正の決め手として、買い付けを目的とした訪米団である、このように解釈しているようであります。これは、日米共同声明の中にも、日米通商円滑化委員会の支援による政府、業界の買い付け使節団を米国に派遣すると明記されておるから当然と私は思うのであります。また、このことは、ストラウスSTR代表が二月上旬アメリカ上院で行った証言でも、日米貿易関係の改善に果たす同使節団の役割りに対して大きな期待を表明したことからも明瞭であろうかと思います。こうした状況の中で、政府はアメリカに対し、同使節団の役割りについてどのような態度をとっておるのか、もう一度お尋ねいたします。
  140. 河本敏夫

    河本国務大臣 先ほども申し上げましたように、当初は、アメリカの各方面とできるだけ話し合いをして意見を交換しよう、そして日米間で今後一体どういう方向経済運営をしていったらいいのか、それを民間の立場で主として意見を交換してこよう、こういうことでこのミッションは組織されたのです。しかしながら、いま申し上げましたように、途中から、ある程度の具体的な商談もあわせてやったらどうかということが双方から出まして、もちろんそういう仕事もある程度することになろうと思います。だから、いわば二つの使命があるとお考えいただいていいのではないかと思います。
  141. 長田武士

    ○長田委員 私は、同使節団の成果いかんによっては、日米貿易関係に与える影響も非常に大きいと考えるわけであります。ひいては、五月上旬に行われますところの日米首脳会談に対して何らかの影響を与えるのではないかと考えておりますが、この点についてはいかがでしょうか。
  142. 河本敏夫

    河本国務大臣 それは、五月の初めに日米首脳会談が行われるわけでありますから、このミッションの果たす役割りというものは非常に大きいと思います。
  143. 長田武士

    ○長田委員 次に、構造不況法案が昨日の本会議で上程されたわけであります。これから当委員会におきまして審議されるわけでありますが、重要な法律案でありますから、基本的な部分について若干伺っておきたいと思います。  私も、構造不況産業対策は必要だと考えておりますが、この法律案の目的がどうもはっきりしない、そう私は思えてなりません。と申しますのは、この法律案は、特定不況業種を指定して、指定された業種は安定基本計画に基づいて設備廃棄等をするという、一時的、短期的な位置づけがなされているように思えてならないわけであります。本来、構造不況産業対策は、日本経済の体質の変革あるいは産業の構造の改革という中で論じられなければならないと私は思うのです。そこで、通産大臣から構造不況産業対策の基本的な考え方についてお尋ねをしたいと思います。
  144. 河本敏夫

    河本国務大臣 ことしの経済運営の基本的な方針でありますが、一つはマクロ対策、全般的に景気回復を図りまして、先ほど来御質問がございましたように、操業率を高める、七%成長をするということも結局操業率を高めるということが目標でありますが、そうして雇用問題を解決していこう、こういう全般的な考え方であります。しかし、経済が幸いにそのような方向にうまく動き始めましても、この構造不況業種というものはなかなかそれだけで問題が解決しない。もともとこの構造不況業種というのは、数年前にオイルショックが起こりまして、それまで日本経済は大体バランスをとって動いておったわけでありますが、その大ショック以降、ある業種はなお設備が不足をする、しかし、ある業種はこのショックを機会に大幅に設備が余る、こういう深刻な事態が発生したわけでありますが、この設備の余っておる一部のいわゆる構造不況業種というものは、状態が深刻になるばかりでございまして、なかなか改善の徴候が見られない。これまでも幾つかの対策を進めてきたわけなんです。しかし、どうも最近の模様を見ますとなかなか思うように改善が進まないので、この際、緊急立法をお願いいたしまして、それで政府がバックアップをして、現在余っておりますそれぞれの業種の過剰設備を凍結をするあるいはスクラップにする、これをやらないとどうも立ち上がりのきっかけ、チャンスというものが生まれてこないのじゃないだろうか。そこで、今度の法律で、過剰設備の廃棄ということを中心といたしまして構造不況業種の立ち上がりのチャンスというものをつくっていきたい、こういう考え方でございます。
  145. 長田武士

    ○長田委員 安定基本計画をつくって、それによって設備廃棄をする、そうなれば構造改善が実現するというのは、私は、こういうような発想は非常に短絡的であると考えざるを得ないわけであります。低成長時代における産業構造を展望して、それに基づく構造不況産業対策でなければ極端に言えば特定企業の救済策となってしまうことは避けられません。重ねて通産大臣、この点はどうでしょう。
  146. 河本敏夫

    河本国務大臣 産業構造はいかにあるべきかという構想につきましては、政府は一通りの考え方は持っておるのです。昭和五十年に産業構造審議会からそれに関する答申もいただいておりますし、毎年ローリングプランもちょうだいをいたしております。一通りの考え方はありますけれども、それはそれといたしまして、何分にもいまは、先ほど申し上げましたように、構造不況業種状態というものは深刻でございまして、深刻度の少ない業種でも大体一五%から二〇%ぐらい設備が余っておる状態であります。ひどい業種は五割、六割と設備が余っております。こういう状態を放置しておきますと、その業種がもう全部行き詰まってしまう、そういうことになりますので、何としても、この余った設備というものを廃棄するような努力をしなければいけない。ところが自分だけではできないわけですね。実際は自力でやってもらえば一番いいわけです。政府の援助なくして自力でやっていただく、それがもう一番理想的でありますけれども、どうしてもそれができないというものに対しては政府がある程度の援助をしなければならない、こういう考え方でございます。
  147. 長田武士

    ○長田委員 順次お伺いするわけでありますが、政府案の骨格をなしているものは、安定基本計画とそれに基づく指示カルテルであります。安定基本計画需給見通しを前提とするものでありますから、私は、見通しを立案することはきわめて困難ではなかろうかと考えます。かつて石油危機直後の物不足の折に、工務店等から小棒をよこせという要求がございました。その際、政府は、平電炉業界に設備の増設を求めた。その結果が現在の構造不況業種となってしまったといういきさつが実はあるわけですね。また、政府の供給計画の逆、逆と手を打った結果、現在不況業種の中でも比較的安定しておる、そういう話も私は聞いておるのです。こうしたことから、業界では、政府見通しを誤ったと言い、これに対して政府は、需給見通しを決めた席には業界も入っておったじゃないかと、こういう反論をいたしておるわけでありますが、こうしたお互いの不信感が大きく聞かれるわけでありますが、現実に構造不況と呼ばれる業種は、今日まで政府の供給計画に基づいて設備の新増設を行ってきたわけですね。こうした経験からも、需給見通しの立案は困難というほかはないのでありますが、需給見通しを前提として安定基本計画を立案することができるのかどうなのか、この点、いかがでしょうか。
  148. 山口和男

    ○山口(和)政府委員 安定基本計画につきましては、届け出後、主務大臣が指定をいたしました産業ごとに関係審議会の意見を聞いて定めるということになっております。各業種につきまして、従来からもいろいろな研究会等でそういった基本的な考え方について研究を進めてまいっておりますが、この審議会におきましては、学識経験者、関係事業者、その他万般の衆知を集めて、最もいい計画を作成するように努めたいと考えております。
  149. 長田武士

    ○長田委員 安定基本計画に基づいて設備廃棄をしたら簡単に修正できるとか、そういうことはなかなか私は困難だと思うのですね、いままで修正がずいぶん行われてまいったわけでありますが。そういうことで、非常に信頼性が薄いといいますか、信頼関係が余りよくないのではないか、そういう点を私は危惧するわけであります。しかも、これまでの需給見通しはガイドラインだったのであります。したがって、流動する経済情勢のもとにあっては、安定基本計画の策定は非常にむずかしい。ただ学識経験者であるとかそういうスタッフをそろえればいいというものではないのではないか、その点はどうでしょうか。
  150. 河本敏夫

    河本国務大臣 安定基本計画という大変いかめしい言葉を使っておりますけれども、実際はガイドラインだと思います。
  151. 長田武士

    ○長田委員 需給見通しは非常にむずかしい問題であります。そこで、安定基本計画も流動的であるという立場に立たざるを得ないというように私は考えるわけでありますが、そうであるとすれば、安定基本計画による指示カルテルが問題になってくるわけですね。指示カルテルについて公正取引委員会が最後まで抵抗したと私は聞いておるのでありますが、指示カルテルは何ゆえに必要なのか、この点を明確にしていただきたいと思います。
  152. 河本敏夫

    河本国務大臣 安定基本計画、つまりガイドラインをつくって、このようにやったらどうかということになりますね。その場合に、業界がそのガイドラインを参考にして再建計画を進められるということが一番望ましいと私は思うのです。もっと望ましい形は、この法律に頼らないで自力でやられるのが一番望ましいわけでありますが、どうしても自力でやりにくいという場合にはこの法律に乗っかってこられる。その場合といえども、指示カルテルを待つまでもなく、安定基本計画を業界自身が自力で、自分たちの相談でおやりになることがいいと私は思います。しかし、何らかの関係でどうしてもできない、こういう場合は、万やむを得ないですから、その指示カルテルに従ってやっていただく、こういうことになっております。もちろん、指示カルテルをつくる場合には公取の同意が必要である、こういう仕組みになっておるわけであります。
  153. 長田武士

    ○長田委員 通産大臣は、安定基本計画はガイドラインとして位置づけるということでありますが、そうならば、指示カルテルは設備廃棄の勧告程度にとどめて、その勧告に基づいて業界が不況カルテルを申請するというのが本来筋ではないかと私は思うのです。通産大臣と公取委員長からもう一度お伺いしたいのですが、どうでしょうか。
  154. 河本敏夫

    河本国務大臣 先ほども申し上げましたように、業界が自力で、自分たちの相談だけで安定基本計画を実行されるということが一番いいと私は思うのです。しかし、どうしてもできないという場合には、万やむを得ないですから、できないのですから、指示カルテルでやられるように政府の方が指導せざるを得ない、こういうことでございます。
  155. 橋口收

    橋口政府委員 安定基本計画は、通産大臣からお答えがございましたように、一種のガイドラインというふうに私も理解をいたしておるわけでございまして、これを別の表現で申しますと、一種の勧告的性格を持ったものだ、こういうふうに評価をしてもよろしいと思うわけでございます。したがいまして、安定基本計画が出まして、それをよく見て、それに基づいて個々の事業者が判断をし、行動をし、また業界として可能な限り行動をし、そしてどうしてもできないという最終的な担保としての指示カルテルでございますから、そういう法律のたてまえになっておりますから、私はそれで適当な措置だというふうに考えております。
  156. 長田武士

    ○長田委員 さらに、この法律案の持つ矛盾について指摘をしてまいりたいと思います。  本法律案の対象は製造業でありますが、しかし、これでは製造業に付随するところの販売業あるいは流通部門などの間にアンバランスが生ずることは必然であります。と申しますのは、製造業自体安定基本計画に基づいて設備廃棄や設備休止を行った場合、当然供給量は減少するわけでありまして、これに付随するところの販売、流通などの各部門でも、それに対応するために何らかの防衛策を余儀なくされるわけであります。すなわち、防衛策としての共同行為に出てくることが当然予想されるわけであります。ところが、こうした部門における共同行為は独占禁止法の違反となりまして、改正独禁法では課徴金まで徴収されるわけであります。こうした不公平について、通産大臣、どのようにお考えでしょうか。
  157. 山口和男

    ○山口(和)政府委員 安定基本計画の中には、処理すべき設備の量等とともに、関係いたします事業につきましての事業転換等の問題を含めていろいろな問題を盛り込むということになっておりますので、関連事業者につきましても、そういった点で配慮をしていくということになろうかと思います。いずれにいたしましても、関係設備処理によりましてその業種不況克服、安定を図ることによって、関連事業者もその恩恵を受けていくということを期待しておるわけでございます。
  158. 長田武士

    ○長田委員 こういう不公正をなくすためにも、安定基本計画をつくる際には関連中小企業者の意向を十分反映させなければならない、そういうふうに私は考えるのです。中小企業者へのしわ寄せを防ぐためにも、本法律案で、中小企業が設備廃棄の影響を受ける場合、自動的に既存の中小企業施策を発動するようにすべきであると私は考えるのですが、どうでしょうか。
  159. 山口和男

    ○山口(和)政府委員 関連事業者への影響の問題につきましては、ただいま申し上げましたとおり、むしろいい結果をもたらすというようにわれわれは考えておるわけでございますが、問題がありますようなときには、中小企業施策といたしまして従来からいろいろとってきております施策との関連で、十分対策を講じていきたいというように考えます。
  160. 長田武士

    ○長田委員 次に、雇用確保の問題についてお尋ねをしたいと思っております。  本法案によりますと、従業員の雇用の安定について配慮が欠如していると私は考えております。すなわち、本法案には、従業員が異議の申し立てなど、物を言うための手続規定が全くないというわけで、これでは従業員が著しく不安な状態に置かれていると言わざるを得ないわけであります。従業員の立場については、本法案の共同行為の内容規定、第六条第四号で、「当該共同行為の指示を受けた事業者の従業員の地位を不当に害するものでないこと。」と、当然盛り込まれるべき条項が規定されているわけでありますが、現実に従業員が解雇された場合、これを不服として解雇の取り消しを求める訴えを起こしたくとも、この規定では法律的に見てできない仕組みであります。そうなりますと、従業員はどこへも訴えることができない。これでは単なる訓示規定だと見ざるを得ないわけであります。  そこで、私は、従業員の立場を尊重するためにも、この安定基本計画を策定する段階で、当該業種の労働組合などから意見を聞くという手続条項を設けるべきであると考えますが、この点について、大臣、いかがでしょうか。
  161. 河本敏夫

    河本国務大臣 いろいろな計画を進める段階で、それぞれ必要に応じまして各種審議会の意見を聞くことになっておりますが、その審議会には当然労働界の代表にも入っていただきましていろいろな意見を言ってもらおう、こう思っております。
  162. 長田武士

    ○長田委員 また、本法案によって設備廃棄等の処置が行われることになったときには、これに関連をいたしまして、地域経済に多大な影響を及ぼすものと考えております。したがって、当該自治体の知事に意見を求めるという条項を設けるべきであると私は考えるのですが、この点については、大臣、いかがでしょうか。
  163. 河本敏夫

    河本国務大臣 最終決定をする場合に、そういう御意見もできるだけ審議会等で反映するように工夫をしてみたいと思います。業種業種によってやや違いがあると思いますが、そこはやはり地域の意見の反映が必要でありますから、何らかの工夫をしてみたいと思います。
  164. 長田武士

    ○長田委員 本法案はいずれ当委員会において審議をすることになるわけでありますから、その際、改めてもっと深く詰めてまいりたい、こう考えておりますので、きょうはこのくらいにとどめておきます。  次に、在庫調整の問題についてお尋ねをするわけでありますが、通産、企画両大臣にお伺いをしたいのであります。  景気が回復しているかどうかということを見る目安としまして、在庫調整の動向が注目されるわけでありますが、在庫調整の完了する時期をどう見ておるのか、通産大臣と経企庁長官との意見が食い違っておったようでありますが、先日統一見解政府が発表しておるようでありますが、確認の意味でもう一度ひとつお伺いをしたいと思います。
  165. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 通産大臣のお考えと私の申し上げておりますこと、別段もともと違ってはいないように私は思っているのでございます。つまり、構造不況業種の問題はございますし、操業率は非常に低いわけでございますし、ですから、そういう状況のもとでいままで非常に積もっております在庫がほぼ調整されるのはいつだろうか、それもすべてのものが同じ時期に起こるわけではございませんから、それでそういうことを前提にして、私は、春になったら、年度でも変わったらというようなことを申しておるわけであります。そういう状況が前提のもとでありますから、それから急に在庫積み増しが起こるとか、あるいは設備投資が起こるとかいう、そういう大変活発なことを私といえども期待しておるわけではございません。大体そういう見方をいまもいたしておるわけでございます。
  166. 河本敏夫

    河本国務大臣 大勢として、在庫調整は私も順調に進んでおると思います。宮澤長官のお述べになりましたことと同意見でございます。
  167. 長田武士

    ○長田委員 ただいま両大臣から御答弁をいただいたわけでありますが、在庫調整が進んでいるものは、私は、公共事業関係のものに限られているのではないか、このように考えますが、どうでしょうか。
  168. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 それは、ただいまのところ公共投資関係のものが自然需要あるいは仮需要が出ておりますから、在庫調整が進み始めておりますけれども、しかし、流通在庫は、何によらず一般にかなり低くなっておりますことは申し上げられるのではないか。またもう一つ、一般論として、原材料在庫の動きは比較的遅いということも申し上げられるのではないかと思います。さしずめ目立ちますのは公共投資関連でございますけれども、一般的に、まあ一様の早さではありませんけれども調整が進み始めていると申し上げてよろしいのではないかと思います。
  169. 長田武士

    ○長田委員 しかし、在庫調整が進むといたしましても、民間需要の裏づけのあるものとないものとでは意味合いが異なってくるわけであります。つまり企業の減量作戦のあらわれと見る向きもあるわけですが、この点、どう分析されておりますか。
  170. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 これは前段に申し上げましたように、もとより減量経営の結果でありますことは間違いございませんで、非常に稼働率も低い、そういうことがあっての在庫調整でありますことはそのとおりで、決して経済が正常に動いておって在庫が大変に減ってきたというようなことではないと思います。
  171. 長田武士

    ○長田委員 在庫調整の面から見ても、景気の回復に向けての効果は、私は、各品目によって異なっていると思うのです。したがって、五十三年度の予算においては、どうしても公共事業関連資材需要が偏ってしまうわけであります。これでは本格的な民需は喚起できない、景気の回復は望めないと私は考えているわけであります。政府は、在庫調整判断で、過去二年間、二度の誤りを犯しておるわけであります。今回の政府統一見解は、どのような判断のもとに在庫調整を進めようとされておるのか、その点、具体的にお示しいただきたいと思います。
  172. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 政府財政主導型の施策をとろうとしておりますのは、もとより、さしずめ公共事業とかあるいは住宅とかいうところから経済の始動を刺激を与えようとしておるわけでございますけれども、もうしばしば御議論になりますように、これらのものは一定の乗数効果を持つものでございますから、やがてそれが経済の各分野に波及をしていって、そして各分野での経済諸要素が活発になっていくという、それが波及効果でございますから、したがって、さしずめは、まさにたとえば公共事業関連のものが動き出す、あるいは住宅関連のものが動き出す。どこかから始めなければなりませんから、そういうところから始まりますけれども政府経済運営の基本的な考え方は、それが国民経済全般に及ぶということでありまして、したがって、やがては消費にも及ぶと考えておるわけであります。  過去にも在庫調整が終わるという予測をしたことがあったではないか、昨年まさにそういうことが何度かあったわけでございますけれども、昨年の場合、後半には円高の問題もございましたが、やはり経営者が経済の前途に非常に不安を持って、適正在庫考えられておったものから、実はさらに適正の物差しをもう一段厳しく低いところへ置くというようなこともございまして、思ったとおりの在庫調整が行われませんでした。しかし、これだけ政府公共投資を積み重ねてまいりますと、他方減量経営が行われておることは確かでございますから、いつかは在庫調整が行われなければならない。これもまた否定なさる方もいらっしゃらないだろうと思うので、その時期がいつかということで、今回、先ほど申し上げましたような判断をいたしておりまして、またそれなりの動きも、ジグザグではありますけれども、最近見えてきておるというふうに考えておるわけであります。
  173. 長田武士

    ○長田委員 それでは、具体的にお尋ねいたしますが、従来の回復期における在庫調整完了時の製品在庫率指数はどのくらいであったのか、お尋ねいたします。
  174. 岩田幸基

    ○岩田政府委員 過去の景気回復局面での在庫率でございますが、もちろん同じ景気回復局面と申しましても、原因も違いますし、環境も違いますので、同じような在庫の動きをするということではございませんけれども、たとえば昭和四十六年から七、八年にかけての回復局面で申しますと、景気の底が四十六年の十—十二月でございます。その当時の在庫率が、これは四十五年基準の数字でございますが、一一六・二、これがその後ずうっと在庫率が減ってまいりまして、在庫率のボトムになりましたのが四十八年の七—九月、八七・一ということで、約二九ポイント下がっております。  そのもっと前の四十年不況からの回復過程で申しますと、やはり四十年の暮れ十—十二月が景気の底でございますが、そのときの在庫率が一〇七・二、在庫率のボトムが四十二年の七—九月、八八・一ということでございまして、このときには一九ポイントばかり在庫率が下がっております。  今回の場合は、五十年の一−三月が景気の底でございますが、当時の在庫率が一五二、ごく最近、昨年の十—十二月が一二六ということでございますから、やはり二六ポイントばかり下がっております。そういう点から考えますと、そろそろ在庫率も底をつくのではないかというような感じがするわけでございます。
  175. 長田武士

    ○長田委員 重ねてお尋ねをするわけでありますが、政府は、在庫調整の終了時を五十三年度の初めごろということでありますが、この場合、在庫率指数はどのぐらいになるのか、お尋ねをいたします。
  176. 岩田幸基

    ○岩田政府委員 在庫率指数がどのくらいになるかということは、先ほど長官もお答えいたしましたように、そのときの企業家の心理状態でございますとかあるいは在庫の局面でございますとかで違いますので、幾つぐらいになればということはなかなかわかりにくいわけでございますが、ただ、言えますことは、先ほど御説明しましたように、前回あるいは前々回の場合は、在庫率が九〇近くなってから反転に転ずるということでございました。いままだ在庫率は一二〇を超えているわけでございますが、これは一つは、御承知のように、この四、五年の間いろいろな商品の多様化が進んでおりまして手持ち在庫の量がふえてきている、つまり在庫率指数が傾向的に見ますとだんだん上方にシフトしてきているということがございます。それからもう一つは、やはり構造不況業種、特に非鉄金属とか紙パというようなものの在庫が相当ございますものですから、景気が回復いたしましても急にはこういうものの在庫は減らないということで、指数が少し高くなっている。  そのほか、やや技術的な話でございますけれども、四十九年ごろから実は在庫指数のつくり方が少し変わっておりまして、たとえて申しますと、自動車の在庫というようなものは、昔は、たとえばトヨタで申しますとトヨタ自工の在庫在庫指数に入れていたわけでございますが、四十九年からはトヨタ自販の在庫も見るというような技術的な変化がございました。それやこれやを合わせてみますと、いまの一二〇幾つというのは昔の九〇あるいは一〇〇ぐらいにほぼ匹敵するわけでございますので、そろそろ局面が変わってくるんじゃないかと思っておりますが、具体的に幾つになればということはなかなか申し上げられないと思っております。
  177. 長田武士

    ○長田委員 経企庁長官、いま御答弁で、いろいろ計算基準といいますか在庫の基準が変わっておるんで、一二六は昔の九〇くらいであろう、こういう御答弁ですが、どうなんですか、この点は私は納得できないんですけれども
  178. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 四十五年を一〇〇とした数字で、十—十二月ごろ一二六、一二五ぐらいまでいったと思いますけれども、そういうことで多少在庫のとり方も変わっております。いま申し上げたようなことでよろしいのではないかと私は思います。
  179. 長田武士

    ○長田委員 長官、五十三年度当初までには大体在庫が相当減る、こういうお考えのようでありますが、ここでは在庫率指数、どのくらいにお考えですか。
  180. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 それはちょっと指数で申し上げられないので、企業家の心理とかいろいろなことがございますから、これが適正だ、こう考え判断はかなり主観的なものでもありますから、ちょっと指数で申し上げにくいんじゃないかと私は思います。
  181. 長田武士

    ○長田委員 政府は、五十三年度初めまでに終了し、その後は在庫積み増しが始まり、本格的な回復に向かう、こういう判断をされているわけです。確かに、セメントなどの建設資材関連製品においては、在庫調整が順調に進んでおると私は考えております。これらの製品にいたしましても、セメントなどは三月末の操業率が七〇%前後、このようにも言われておるのです。また、一方では、減産や生産制限によって需給の改善を図っているものも実は少なくないのであります。これらのものは、通産省のガイドポストや不況カルテルによる面が非常に大きいと思われます。そのために、在庫調整が進んでいるといっても、需要増によるものと、需要は冷えたまま減産による在庫調整があるわけであります。最近における在庫の減少は、生産減少によるものが需要増によるものよりも大きいのではないか、そのようにも実は考えるわけであります。したがって、もしこのとおりだとすれば、景気拡大の面からは余り効果がないのではないか、こう思いますが、この点については、長官、どうでしょうか。
  182. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 確かに両面があるわけでありまして、つまり、需要がふえてきて在庫が減っていくという場合と、それから、何かの意味で操業度を維持しなければならないので、やむを得ず在庫は減らせないでふえてしまうという場合と、両方ございますこと、御指摘のとおりだと思います。  昨年なんかは、この在庫調整がすぐ済むと思ったのになかなか済まなかったということの中には、やはり思い切って減量経営に徹することができないというようなこともあったのではないかと私は思いますから、確かに両面ございますけれども、今回のようにずっとほぼ何期かにわたりまして在庫が減ってきておって、しかもその間稼働率や何かにそんなに大きな変化がないということになりますと、やはりこれは減量の結果減ったのであろうなという要素が強いと思うのです。他方で、今度セメントとかなんとかいうように需要が出てまいりますと、これは稼働率が上がってまいりますから、そうしますと、在庫積み増しが多少あるなということじゃないかということでございます。  全体として、私どもは、在庫調整が年度かわるころには済むのじゃないかと言っておりますのは両様でございますけれども、少なくともそれから後、在庫積み増し需要が出て大変に大きくなるというふうには見ていないわけでして、調整は済んで、公共事業波及効果はしたがってかなり広く出るであろうけれども、そうかといって、大変に稼働率が上がったり、需要に応じて在庫積み増しが大きく行われるというふうには、なかなかそういうふうには活発に動かないのではないかと思っております。
  183. 長田武士

    ○長田委員 経企庁の「五十二年経済の回顧と課題」を見ますと、設備投資が出ないのは在庫調整が完了してない、そういう理由を挙げておるのですね。したがって、在庫調整さえ完了すれば設備投資が出てくる、そういう考え方のようであります。このことは、在庫調整によって在庫積み増しが積極的に展開されるということなんでしょうか。
  184. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 昨年末の回顧のその部分は、公共投資が行われましたがなかなか波及効果がなかったということについて、それは在庫が壁になって吸収してしまったからであるという説明を実証的にしようとしたものでございます。  今回仮に在庫調整が進んでまいるといたしますと、そうすると、すぐそれが設備投資に結びつくというのは短絡的でございまして、やはりまず在庫調整が済みまして、需要が起これば稼働率が上がっていくというふうに考えなければなりませんので、稼働率が本当に思い切って上がりましたら、それは新しい設備を呼ぶことになると思いますが、何度も申し上げておりますとおり、稼働率指数そのものがいまから一年たっても九二ぐらいと申し上げておりますことは、まだまだフル稼働に近い状態にはちょっとならないということでございますから、したがって、すぐそれより前に設備投資があちこちから出てくるというふうには、五十三年度中には考えにくいのではないか、製造業についてはそういうふうに思うわけでございます。
  185. 長田武士

    ○長田委員 在庫調整関連いたしまして、次に設備投資についてお伺いをしたいわけでありますが、政府は、五十三年度における民間企業設備投資を名目で九・九%、実質では六・七%と見込んでおるようであります。そこで、製造業、非製造業、また主な業種について上期、下期別にどのような見通しを持っていらっしゃるのか、長官、おわかりでしたらお答えをいただきたいと思います。
  186. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 名目九・九%の設備投資の中で、製造業は名目で三%ぐらいでございます。先ほど申しましたように、これには大きな期待ができにくいわけでございます。電力を含めまして非製造が一三・八、ほぼ一四程度、あとは個人・金融等々が一一ぐらいでございます。全体として申しますと、二十五兆六千億の中で一つのアイテムとして一番大きいのは電力でございます。これは一二・五%ぐらいになりますが、ただ、申し上げましたように、高度成長期と違いまして、製造業が持っております企業設備投資のウエートは大変に減ってまいっておりまして、実績によって見ますと、五十一年度あたりで三割ぐらいしかございません。それに対して非製造がほとんど四割ございます。最近の経済はどうもそんなふうになってきてしまっておるわけでございますが、そういうウエートの違いということとともに、五十三年度におきましても、製造業ではせいぜい名目で三%くらいの伸びではないか。やはり非製造、個人・金融等に主な投資意欲があるということになると思います。
  187. 長田武士

    ○長田委員 どうやら、政府は電力業界の設備投資に大きな期待を寄せているようであります。  そこで伺いますが、政府は、果たして電力業界の五兆円に上る設備投資を可能と見ていらっしゃるのかどうか。産業構造審議会がまとめた五十三年度の電力設備投資計画は約三兆一千億、このうち電力会社は二兆九千億円、これが五兆円ともなれば、この計画を七〇%も上回る必要があるというわけであります。エネルギー庁が電力各社の企画室・部長クラスを呼んでヒヤリングをしたときに、これらの部長クラスは、とても達成できる数字ではないという答えが返ってきたということであります。この点、政府はどのようにお考えになっていらっしゃいますか。
  188. 河本敏夫

    河本国務大臣 五十年代を通じまして、政府は、大体新たに一億キロ程度の電源開発が必要であると考えております。それは、六%台の成長を十年間続けるといたしますと、五十年代初めの一億キロという発電能力をおよそ倍近くしなければならぬ、こういうことであります。そして、それに必要とする資金は、五十年価格で約三十五兆円と想定をしておるのです。若干の物価騰貴がございますから、約五十兆円投資を十年間にしなければならぬ。これが五十年代を通じてのアウトラインでございます。  そこで、五十三年度でありますが、九電力及び電源開発から現実に工事計画としての報告がありましたものを全部合計いたしますと、約三兆二千億円弱になります。別に、いま申し上げましたように五十四年度以降も膨大な計画がありますので、その膨大な計画の中から、一部機械等の繰り上げ発注をする部分が現在までに約一兆円内定をいたしております。しかし、過去二、三年間電源開発が大変おくれておりまして、このまままいりますと、三、四年先には相当電力不足が起こるのではないか、これに対処いたしましてやはり電力開発というものを急がなければならぬ、こういう事態がございますし、景気対策上からもこの電力投資というものは非常に大きな役割りを果たしますので、一番障害になっております立地問題について、いま政府は業界と協力いたしまして懸命に解決に努力をいたしておるところでございます。この立地問題の進行の経過を見まして、なお繰り上げ投資をさらに一兆円程度のものを追加していこう、こういう考え方でございます。だから、現在まで確定しておりますのは、工事と繰り上げ発注と合わせまして四兆二千億でございまして、五兆は、これからの努力いかんによって五兆にしたい、こういう考え方でございます。
  189. 長田武士

    ○長田委員 五十二年度における電力債の起債規模は、産業構造審議会ベースに比べて九%程度の未達成になる見通しだそうです。五十二年度中の七千億の繰り上げ発注分も一〇〇%消化できないというような話も私は聞いておるのですが、この点はいかがでしょうか。
  190. 橋本利一

    ○橋本(利)政府委員 五十二年度におきまして電力債は当初一兆円程度の起債を予定しておったわけでございますが、その後、若干の工事のずれ、一方、内部留保全の増といったような問題がございまして、ただいまお話のように、当初予定よりも千数百億電力債の発行を少なくするというような見通しになっております。したがいまして、これは電力債の発行ができないからということではございませんで、ただいま申し上げたようなことから電力債の発行をその程度必要としなくなった、こういうことでございます。  それから、五十二年度における繰り上げ発注あるいは仮発注は、当初七千億というふうに見込んでおったわけでございますが、最近各社から事情聴取いたしましたところ一五、六%程度あるいは未達になるんじゃなかろうか、なお一層の努力をいたしますが、三百ないし四百億程度未達になるおそれもある、こういう事情でございます。
  191. 長田武士

    ○長田委員 政府は、五十三年度の設備投資見通しが達成できると非常に楽観されているようでありますが、日本経済新聞社が二月一日現在で実施いたしました設備投資調査のうち、主要四百二社を対象に中間集計結果が発表されておるわけであります。これによりますと、工事ベースの各社合計の設備投資額は五十二年度実績見込み額に比べ七・六%増と比較的高い伸びになるものの、電力業界を除けば六・三%減と、名目でさえ前年水準を下回るということであります。特に製造業では七・六%の減、非製造業の計画では一九・二%の増と大幅に増加するが、電力を除けば三・二%減となる予定である、このような調査結果を出しております。このような調査結果から、五十二年度同様、政府見通しを大幅に下回る公算があるのではないか、私はそういうふうに危惧しておるのですが、その点、どうでしょうか。
  192. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 この点は、私どもが七%ぐらいな経済成長がいろいろなことから考えてあると考えておりますマクロの観察と、企業を実際に経営している人たちが昨年経験いたしましたようないわばミクロの感覚とには開きがございますから、やはり経営者としては、もう少し経済の動きがはっきりしてまいりませんと、設備投資なんというのはとてもとてもという気持ちになっておられることは想像にかたくございませんで、一つはそういうことがあらわれているのではないかと思います。  もう一つは、先ほども申し上げましたけれども、個人業とか金融業とかいうものの設備投資のウエートが相当大きく、ことに個人の場合大きくなっているわけですが、これはいずれにしてもつかみにくい分野であります。つかみにくいという点では、実は私どもも、いわゆる製造業、大きな製造業のようなたっぷりしたデータで判断することができないのでございますから、同じようにつかみにくいという意味では私どももむずかしい立場にあるわけでございますけれども、その辺の見通しのつけ方が分かれているのではないかと思っております。
  193. 長田武士

    ○長田委員 次に、公共事業関連資材についてお尋ねするわけでありますが、政府が設置された公共事業等施行推進本部は、去る二月二十七日、公共事業推進への総合対策をまとめたわけでありますが、これによりますと、景気を一刻も早く上向きにさせるために、来年度の公共事業予算は上半期中におおむね七割の契約を済ませる、そういう目標を決めておるわけであります。そして、これの消化対策についても具体的に明らかにしたわけでありますが、ここで私は、一部にその現象が見られる関連資材の品不足価格の高騰などがさらに進行するのではないかということを実は心配をいたしております。と申しますのは、昨年夏ごろから、セメント、生コン、丸棒、ブロック、パイルなどの建設資材は、品不足を反映いたしまして軒並みに値上がりをいたしておるわけでございます。こうした事態に対して通産省はどのように対応されようとしておるのか、まずお伺いしたいと思います。
  194. 山口和男

    ○山口(和)政府委員 公共事業関連物資の動向につきまして、最近、一部の物資につきまして価格的にも若干動意が見られるというようなこともございます。御指摘のとおり、セメント、生コン等につきましては動きがあるわけでございますが、ただ、全体として見まして、現在の生産量と生産能力との関係を見ますと、稼働率等から見ましても、たとえばセメントにつきましても現在のところ七〇%程度稼働率になっておりますし、まだまだ生産能力の余裕があるというように見られるわけでございます。ただ、一時的にあるいは地域的に需給関係について若干問題が起こるというようなこともございますので、相当の面をも含めまして、公共事業の遂行に支障がないように、円滑に供給がなされるように十分指導してまいりたいと考えております。
  195. 長田武士

    ○長田委員 去る二月十六日の予算委員会で、わが党の同僚議員であります宮地委員の質問に対しまして、関東中央生コン工業組合が昨年十一月から通産省の認可を受けて実施しております生産調整について、通産大臣は、二月末で打ち切るよう指導中であると答弁をされておるのでありますが、この生産調整について、三月に入った現在、打ち切られておるかどうか、この点お尋ねをいたします。
  196. 藤原一郎

    ○藤原政府委員 お答え申し上げます。  いまお示しの生コンクリート工業組合の調整事業でございますが、大臣が予算委員会で御答弁いたしましたとおり、二月末をもって調整事業を打ち切るべく指導いたしておりましたところ、三月一日付をもちまして調整規程の廃止の届け出がございまして、これを認可した次第でございます。したがって、打ち切られたわけでございます。
  197. 長田武士

    ○長田委員 重ねてお尋ねしたいのでありますが、公共事業の積極推進政策が建設資材の値上げという問題を引き起こすわけであります。これが引き金となりまして国民生活関連物資の値上げに影響を及ぼすことのないように、経済企画庁としては対策を立てられるべきだと私は考えるわけであります。具体的にどのような施策を講じられていらっしゃるのか、また、講じようとされておるのか、この点、大臣、いかがでしょうか。
  198. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 各省庁でつくっております物価担当官会議というものがございますが、ここでまず、さしずめ公共事業関連資材価格についてお互いに十分監視もし、行政指導しようではないかという合意がすでになされておりまして、さらにその後、先月末のことでございますが、再び物価担当官会議を開きまして、その他のものにつきましても、ことに年度末でもございますし、一般に値上がりというようなことが便乗して行われないようにということで、さらに各省で協力しようということを申し合わせておりまして、ただいまのところ、幸いにしてそのような動きは出ておらないように存じております。
  199. 長田武士

    ○長田委員 次に、自主開発原油の引き取りについて、通産大臣にお伺いをしたいと思います。  すでに御承知のとおり、日中長期貿易協定が、民間代表の経済界の努力によりまして成功いたしたわけであります。このことにつきましては、日中友好を願う国民の望みを実現したものとして、私どもは、関係者各位の尽力に敬意を表するものであります。これによって、わが国におけるエネルギーの安定供給に大きく貢献できるものと考えております。まだ、政府といたしましても、これを単に民間経済人の協定とせず、政府自身の協定と考え、誠実に実現される用意は当然しておられることと思います。  この日中長期貿易協定によりますと、七八年から八五年の八年間で二百億ドル以上の貿易が予想されており、中でも、特に日本側にとって大きな課題であります中国原油の輸入は、七八年の七百万トン、これを起点といたしまして、八二年には千五百万トンが決定されております。そして、八五年には三千万トンが予想されておるわけであります。  ところが、問題は、中国産の原油はパラフィンが多く含まれておりまして、特別な分解装置が必要とされておるわけであります。このため政府は、その措置として五十三年度予算案に一億円の調査費を盛り込んでおられるわけでありますが、今後どのようなスケジュールで重質油の分解装置を導入されるのか、具体的にお示しをいただきたいと思います。
  200. 河本敏夫

    河本国務大臣 先月中旬、いまお述べになりました長期の貿易協定が両国間で調印、成立をいたしました。政府のそれに対する対応の仕方でありますが、一つは、この協定が円滑に遂行されるように支援をしていくということはもうすでに明らかにしております。それから第二点は、この協定が将来拡大される方向に発展をするように、これまた政府の方が支援をしていく、こういう方針でございます。拡大される方向とは何ぞやといいますと、それはやはり将来中国石油の輸入を増量する、こういうことであります。現在の協定では、一九八一年、昭和五十六年に後半三年間の石油の輸入量を見直そう、こういうことになっております。見直すということは、五年目に予定されております千五百万トンプラスアルファにしよう、こういうことでございます。  そのために、中国油が重質油であるということにかんがみまして、新しい分解精製装置というものをつくらなければいかぬわけでありますが、これをどういう形でいつどこにつくるかということにつきまして、調査委員会を先般発足させました。できるだけ早く結論を出していただきまして、できることならばことしの六、七月ごろまでに結論を出していただきまして、その結論を受けまして早急に建設に着手したい、こう思っております。しかし、何分にも問題が非常に多いものですから、そしてむずかしい問題等もございますので、ナショナルプロジェクトとしてこれを進めていきたい、このように考えております。
  201. 長田武士

    ○長田委員 それには、当然重油の分解装置つき製油所を建設しなくてはならないわけですね。この計画を国家的事業として進めるわけに当然なると思いますけれども、この導入計画については石油業界が反対しておる、そういう動きもあるようですが、大臣、どうでしょうか。
  202. 河本敏夫

    河本国務大臣 この点につきまして、先般石油業界の代表の方と懇談をいたしました。ナショナルプロジェクトとして進めるわけでありますから、このナショナルプロジェクトというものが現在の石油業界の圧迫になるようなことがあってはいけませんので、そういうことのないように十分配慮をして進めていくつもりであるということを申し述べました。そして石油業界も、大局的な見地に立って、単に日本の石油業界ということだけではなく、日中両国の経済関係、それからさらに日本経済の将来ということをよく考えていただいて、そういう大局的見地に立って協力をしてもらいたい。だから、ナショナルプロジェクトでありますから、日本の石油業界にも当然入っていただくつもりでおります。
  203. 長田武士

    ○長田委員 新聞の報道によりますと、政府の構想に対して既存の脱硫装置を改造または転用して中国原油を処理することができるという新しい構想が、実は一部の石油業界から出ているようであります。その事実はあるのでしょうか。あるとすれば、通産省として検討する用意があるのかないのか。
  204. 橋本利一

    ○橋本(利)政府委員 現在、わが国にも分解設備が全くないということではございません。御指摘のような設備を改造することによって活用するというケースもあるわけでございますが、ただ、これは本来的に脱硫設備としてつくられておりますので、特定の油にしか適用できないといったような点もございます。将来ともに重質油が非常にウエートが高くなっていく、それを大量に分解するための装置ということで私たちは現在検討いたしておるわけでございますが、御指摘のようなケースにつきましてもその検討の中で考えていってみたい、かように思っております。
  205. 長田武士

    ○長田委員 重質油分解装置の導入が計画どおり進みますと、中国産原油を安定的に増量できるわけですね。引き取ることが可能であると考えるわけでありますが、この場合、国内需要者の引き取りは心配ないのかどうか、この点、どうでしょうか。
  206. 河本敏夫

    河本国務大臣 先ほどナショナルプロジェクトとしての研究をしておるということを言っておきましたが、もちろんその中には消費者の代表の方にも入っていただきまして、そして、消費面でもやはり万遺漏なきを期していきたいと考えております。
  207. 長田武士

    ○長田委員 この点につきましては、私は、石油安定供給確保のために、供給先の多角化というのは非常に大切だろうと思います。当局の今後の努力に期待をしたいと思います。ところが、石油安定供給確保の施策としてもっと期待できる自主開発原油、これについて、五十一年度の実績でわが国の引き取り量がどのくらいあったのか、この点、お伺いします。
  208. 橋本利一

    ○橋本(利)政府委員 五十二年度における自主開発原油の輸入量は約二千三百万キロリッター、全体の輸入量の八%弱というふうに見込んでおります。
  209. 長田武士

    ○長田委員 ただいま自主開発の石油について御答弁があったわけでありますが、政府の政策は、昭和四十二年に発表された総合エネルギー調査会答申の中で、昭和六十年までに長期安定供給を確保するという見地から、全供給量のうち自主開発原油の割合を三〇%に引き上げるべきであるという政策目標が定められております。さらに、昭和五十二年八月に発表されたエネ調石油部会の中間報告では、自主開発原油、GG原油などいわゆる政策原油の供給割合を全体の三分の一程度とし、自主開発原油は新たに百万バレル・パー・デーの供給確保を目標とする石油政策を発表しているわけですね。このように、わが国の石油政策は、石油の安定供給のために自主開発原油の確保を目指しておるわけであります。  こうした政策目標が明確になっておるにもかかわらず、五十一年度は総輸入量のわずか八・七%にすぎないという実情であります。しかも、これは自主開発原油総量の約八〇%にすぎず、残りの約七百万キロリットルは国内でも引き取り手がないわけであります。そして第三国に向けて輸出されておるわけであります。こうした売れ行き不振によって、生産量自体が生産能力に比べて落ち込んでおる現状にございます。たとえばアラビア石油では、年産能力が二千六百十万キロリットルあるわけでありますが、生産量は約一千五百八十万キロリットルにとどまっております。  そこで、お伺いいたしますが、政府は明確なる政策目標を持っているにもかかわらず、何ゆえに自主開発原油を全量引き取ることができないのか。先ほど来申し上げてきた中国原油は引き取れるが、自主開発原油は引き取れないとする原因は一体どこにあるのか、この点についてお尋ねをいたします。
  210. 橋本利一

    ○橋本(利)政府委員 現在の自主開発原油の能力は、一日当たり約七十万バレルになっておるわけでございますが、先ほど来御指摘になっておりますように、現実には四十万バレル程度しか輸入し得てないというのが実際でございます。この理由は、政策原油なるものの多くがいわゆる重質油であるという油の性状からくるものと、一方、国内では需要が軽質化しつつあって、しかも全体として需要が減退しておるといったような状況も手伝いまして、必ずしも政策原油の引き取りが順調に進んでおらない、かように考えるわけでございますが、先ほどもお触れになりましたように、できるだけ多くの政策原油を将来ともに引き取るためにも、アラ石のようにその大半のウエートを占めておるものにつきましてより積極的に輸入し得るように措置してまいる必要がある、また、その方向で努力いたしたい、かように考えております。
  211. 長田武士

    ○長田委員 最後に、一問お尋ねいたします。  長官、具体的な方途というものはございますか。余り抽象的ではどうも理解できないのです。具体的にどういうふうにするのかということです。現状はいま私が御説明したとおりだと思いますね。
  212. 橋本利一

    ○橋本(利)政府委員 一つは、原重油関税制度の中で、政策原油であって重質油、こういったものを対象といたしまして、バレル当たり七セント程度の関税の軽減をお願いいたしております。  それから、かつてオイルショック前後まで、いわゆるプロラタ方式なるものがあったわけでございます。こういったものにつきましては、現在五十三年度の石油の供給計画を作業中でございますので、その供給計画の中で最終的に態度を決めたい。  いずれにいたしましても、コマーシャルベースのもので入り得ない向きもございますので、それに対して行政指導することによって政策原油の引き取りを促進したい、かように考えております。
  213. 長田武士

    ○長田委員 それでは、時間が参りましたので、まだ問題はたくさんございますけれども、次の機会に譲りたいと思います。  ありがとうございました。
  214. 野呂恭一

    野呂委員長 板川正吾君。
  215. 板川正吾

    ○板川委員 経企庁長官通産大臣、大蔵省、三者に質問いたしたいと思います。与えられた時間が三十分そこそこでございますから、簡単に御答弁願って結構であります。  経企庁長官にお伺いをいたします。  五十三年度の経済成長率七%は、アメリカから押しつけられたのか、日本政府の自発的な宣言なのかは別といたしまして、アメリカ側の関心の的は、七%の成長率というよりも、日本が本当に経常収支を六十億ドル黒字程度に抑えてくれるのかどうか、その点が外国としては実は関心を持つ的だろうと私は思うのです。これが七%であったって、経常収支が百五十億ドルもふえたら意味はないんであって、問題は、去年までは百億ドルと予想しておったものですが、とにかく六十億ドル程度に黒字を縮めてほしい、こういうところに外国の要請なりがあったと思うのですが、いかがでしょうか。
  216. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 わが国の立場といたしまして、先進国の一つとして非常に大きな経常収支を重ねていくことは問題があるというふうに考えてまいったわけですし、また、アメリカとしてもそのような気持ちを持っておりましたこともそのとおりでございます。したがいまして、われわれが自主的に決定いたした六十億ドルでございますが、先進国の一つとして、わが国は、この目標を達成することに国際的な広い意味での責任を持っておると私ども考えております。
  217. 板川正吾

    ○板川委員 この六十億ドルが果たして実現可能かという点になると、私は非常に危惧を持っているのです。昨年を振り返ってみますと、五十二年度予算を組んだときには、御承知のように、マイナス七億ドルの経常収支である、こう言っておりました。ところが、十月になりましてその後の情勢を見ますと、七億ドルのマイナスじゃない、逆に六十五億ドルの黒字である、こういう見直しをされました。それで、五十三年度の予算を立てる昨年の暮れ、経常収支の黒字は百億ドルになるだろう、こういうふうに再修正、見直しをしました。ところが、最近、五十二年度末になりますと、百三十五億ドルくらいの黒字になることが、まあこれは予想でありますが、予想されておるのですね。  この数字の経過を顧みますと、昨年の前半、初めのころはそんなにふえるとは思わなかった、途中でだんだんふえてきて、最後になったら急激に黒字になってきた、こういうふうに数字の推移が見直しの数字からいっても見られるわけですね。こうずっと上がってきて、去年一年間で百三十五億ドルもふえたのを、五十三年度、今度六十億ドルで抑えるというのはなかなか容易なことじゃないと思いますね。後半、輸出がぐっと減って輸入がふえるというような情勢になれば、六十億ドルは可能かもしれませんが、いまの不況状態で、輸出がそういうように激減して輸入をふやすというのはなかなかむずかしいだろうと思います。  御承知のように、ことしの七月にボンにおいて主要国の首脳会談がある。そこへ行った場合、いまの情勢でいけばとても六十億ドルじゃない、百億ドルははるかに超す状態になるおそれがある。ここで、福田総理がこの前も間違った、ことしも二回も見込み違いをするということになりますと、国際的不信を買うのじゃないだろうか、こう思いますが、五十三年度六十億ドル経常黒字ということに果たして自信がおありでしょうか、その点を伺っておきます。
  218. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 わが国は、国内に資源がございませんので、どうしても原材料を輸入しまして、そして付加価値の高い工業製品をつくり、国内で消費し、輸出もするということで長年設備投資もいたしてまいりましたので、板川委員よく御承知のように、いまやわが国の工業製品の価格面あるいは価格以外の条件における競争力というのは、非常なものになってまいっております。したがいまして、それだけの長年積み重ねました貿易のトレンドというのを急に変えるということは、もとより非常にむずかしいことでございます。  しかしながら、まず、昨年と比べますと円高というものがかなり重くのしかかってまいりましたし、それからカラーテレビでありますとか鉄鋼などのように、いろいろな意味での規制措置にわが国が同意した部分もございます。それからまた、造船のように世界に需要がない、これは確かにこれからの受注ということは非常に困難になっているような要素もございますから、少し時間をかけますと輸出の増勢が衰えてくるということは、恐らく間違いのないところであろうと思います。  しかし、他方で国内の経済活動が強くなりませんと、原材料の輸入というものはなかなか急にはふえないということでございますが、下半期ごろになりますと、ぽつぽつそういうことも起こってくるであろう。したがいまして、年全体としては六十億ドルという経常収支にとどめたいと考えておるわけでありますが、これはもう相当な努力を必要といたします。おっしゃるとおりであります。いろいろな工夫も要ると思いますが、何とかそれはやっていかなければならない。それで、ちょうど御指摘のいわゆる頂上会談が七月ごろでございますが、そのころまでにそういうトレンドが少しずつ出てきたということに何とかやっていきたいとただいま腐心をいたしておるところでございます。
  219. 板川正吾

    ○板川委員 昨年初めは円レート二百九十三円、昨年の暮れに二百四十円、いま二百四十円を割りつつあるわけであります。いまの論理でいきますと、円高などになれば輸入が安いからふえて、自然に輸出にブレーキがかかるから調整できるという論理になるわけですが、実際の経済がそう動いていないものですから、これはなかなか大変だろうと思いますが、七月の頂上会談にはある程度具体性を持った数字を持っていかないと、また国際的不信を買うのじゃないか、その点がちょっと心配ですから、一言尋ねてみたのであります。  続いて、経企庁長官福田内閣のデノミネ政策について伺ってみたいと思います。  福田総理のデノミネ発言を拾ってみますと、戦後処理としていずれはやらなくてはならない問題であるというふうに肯定をしつつ、しかし、いまは次の事情から言ってやるべきではない、こう言うんですね。そしてその事情というのが、一つは国際収支が堅調でない、物価が不安定である、景気の回復が思わしくない、言い方は多少違うかもしれないが、大体その三点で、将来やりたい、やるべきであるが、いまはやらない、こういう理由を言っているようでありますが、経企庁長官もそのようにお考えでしょうか。
  220. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 福田総理は、私の理解いたしますところでは、他の二つの条件はまあまあであるが、景気の見通しというものがいかにもついていない、この条件が成就、具備していないと言われているように私は思うのでございますが、確かにそのとおりでありまして、こうやって何とか雇用を改善して不況を脱出しようと心を合わせてこの仕事に取りかかろうとしておりますときに、デノミというようなものはとかく誤解をされる場合もございまして、そういう問題を持ち込みますと、いちずに一つの目標を達成しようとしておりますときに、やはり阻害要因になるように私は思いますので、福田総理のその条件が成就していないからという御判断は、私はそうあってしかるべきものではないかと思っております。
  221. 板川正吾

    ○板川委員 私には実は総理の論理がわからないのです。なぜなら、実はその反対の論理がそのまま賛成の論理につながっていると思うのです。  たとえば国際収支が堅調でないと言うが、黒字が多くて、どうして黒字減らしをやろうかというときに、堅調過ぎて困っているのに、堅調でないというのは一体どういうお考えなのであろうか、こう思います。  第二の、物価は安定していないと言いますが、確かにまだ六%ないし七%上がるのですから、それは安定していないと言えばしていないのですけれども、昨年より徐々にほぼ安定しつつあるんですね。高位安定ですけれども、ほぼ安定しつつある。だから、安定している場所が高いだけでありますね。政府経済成長率を六%ないし七%を考えておるでしょうが、経済界情勢は恐らく四、五%だろうと一般は見ておりますから、四、五%の経済成長率で、この三年ないし五年の跡を見ても、物価が特別大幅に上がるという可能性はないんじゃないだろうか、私はこう思います。ですから、物価が安定してないというのも、どうも理由にならないように私は思う。  それで、第三の景気の回復の見通しが悪いというのですけれども、これはいろいろ説があるかもしれませんが、需給のギャップがあるというときに、逆にやる時期ではないかという論理があるんじゃないでしょうか。景気の回復が思わしくない、それは供給に対して需要が少ないからだ、こういうことでしょう。この需要創出のために逆にやるべきだという論理もあるんじゃないでしょうか、こう思うのですね。  だから、どうも福田総理の反対論を聞いていますと、国民を納得させるものではないと思うのです。やらないというならやらないで、それは政治判断ですから結構ですが、あの三つの論理では、デノミネをやらぬという論理にならぬのじゃないでしょうか、この点、どうお考えですか。
  222. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 福田総理の言われましたことを私が理解しておりますのは、私自身もそう考えておりますが、物価については、おっしゃいますようにまずまず安定基調にあると思います。それから国際収支、これはちょっとよ過ぎるようなことでございますから、これもいい。第三の国内の経済の不安定ということが問題なのではないか。それはつまり、需給ギャップというようなこともさることでございますけれども、いかにも国民全体が経済の前途に対し不安を持っておる、まだ回復過程に入っていくという自信を持ち得ない状態でデノミというような問題を持ち込むことは、一つの撹乱要素になってしまうのではないか、こう言っておられるのだと私は理解しておりますし、私も実はさように思っておるわけでございます。
  223. 板川正吾

    ○板川委員 では、経済が徐々に過熱をして、物価がやや上がりぎみになってそして落ちつくようになると、逆に、デノミネをやるとさらに物価は上がりますよ、インフレを促進しますぞ、こういうことになる可能性がありますね。この点はどうお考えですか。
  224. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 ですから、恐らく総理大臣が思っておられますことは、経済が仮に七%の成長をしていきまして、大体うまく拡大均衡に入っていって、そして幸いにして物価の方も落ちつきを続けておる、そういうことにでもなってくればあるいは問題を考える、逆に言えばそう言われたのではなかろうか。板川委員の言われますように、そのときに物価が物すごく上がってしまって、国際収支が大変赤字になってしまったのでは、またほかの二つの条件が壊れるわけでございますから、そういうものがうまくそろった状況でなら考えられることではないか、こう言われておるのだと私は理解するわけです。
  225. 板川正吾

    ○板川委員 長官、デノミネにいろいろ町の評論家が雑誌などに書いておりまして、最近幾らか鎮静化したりしましたが、一時は、デノミネをやれば大変なインフレになるという説があるかと思うと、逆にデフレになるという説もあり、あるいはデノミネと一緒に資産再評価をやるというので妙な無配株が高値になったり、いろいろな思惑があるんですね。町の経済評論家の見方も私は正しくないと思うのですが、福田総理の反対論も、どうも国民を納得させるものじゃない、こう思うのです。  私は、不明確な反対論よりも、やるならやると決めて、そして準備とPRに時間をかけて無用な誤解を解消したら、そんなにこのことで混乱も起こるはずはないし、そのために内閣の関心がデノミネの方向に行ってしまうというほどの問題ではないんじゃないか、こう思うのです。御承知のように、成功したフランスの例もあります。フランスでは三カ年かかりましたけれども、日本で四年ないし五年かけるつもりなら、そんなにこの問題を重要視しなくてもいいんじゃないだろうか。そして、いま需給ギャップがあって不況のときですから、逆に早くおやりになる方が、いろいろな問題があるでしょうが、早く、時間をかけておやりになる方が、その方向の方が望ましいのじゃないか、こういう私個人の考えでありますが、どうぞひとつ念頭に置いて、機会があったら御検討願いたいと思います。  経企庁長官、結構です。御苦労さまでした。  通産大臣、一言この機会に要請したいと思うのですが、御承知のように、国内の金属鉱業、主として銅、鉛、亜鉛産業でありますが、石油ショック、円高による不況のためにまさに倒産寸前の状況、こう言われておるのです。この三月、四月にかけて倒産または転廃業する鉱山が相次いでおる。松木鉱山百九十四人おるところです。尾去沢鉱山二百十一人従業員がおります。紀州鉱山三百七十一人、秩父鉱山八十一人、鰐渕鉱山八十人、新宮鉱山四十六人、この三月、四月にこういう中小鉱山が相次いで姿を消していくわけであります。しかし、この鉱山はかつてははなばなしくわが国の高度成長を支えてきた産業であります。それががんの患者のようにやせ衰えてやがて消えていく、こういう状況であります。しかもこれらの倒産なり休廃山なりは大地震の前の予震みたいなもので、いつかは日本の鉱山全体がつぶれるようなことがあっても不思議ではない。累積赤字百六十億円になる。小さい企業ばかりですが、百六十億円になる、こういう状況ですね。倒産したらそれは離職者対策法があるからいいじゃないかというのでは、私は、わが国の鉱業政策にはならない、こう思います。  そこで、私は、わが国の鉱業の最低限の維持のために、当面二つの問題について大臣に要請をいたし、御見解を承りたいと思います。  政府は、倒産対策のために、いろいろ倒産した企業関連倒産防止のための緊急融資等の措置をとっておりますが、工場の場合には、会社更生法なりでやがてそれが再建される道があります。しかし、鉱山は、一たん倒産したらもう離合集散もしますし、なかなか再建は不可能な状況になるでしょう。ですから、倒産する前にそれに救済の手を差し伸べる必要があるんじゃないか、そういう考え方から、私は、最低限の維持のために、場合によっては緊急融資の道を講じてもらいたい、これが第一点であります。  第二点は、金属鉱業事業団が国内探鉱のために融資をしておるわけでありますが、これは主として大企業をやっております。中小鉱山は、探査補助金があるからということで、その融資が受けられないのでありますが、この際、そのかきねを取り払って、中小鉱山にも金属鉱業事業団の融資ができるようにしていただけないだろうか。と同時に、中小鉱山は探査補助金をいただいておりますが、五十三年度の予算が成立をした場合に、なるべく早い機会にその中小鉱山の探査補助金が中小鉱山の手に入るように便宜を計らっていただけないだろうか、この点を要請としてお願いしたいのでありますが、いかがですか。
  226. 河本敏夫

    河本国務大臣 最近、わが国の中小の非鉄鉱業の鉱山は、非常な深刻な状態にございます。要するに、国際価格が下がっておりますから、現在の生産費ではとてもやっていけない、こういうことが基本でございます。  そこで、一つには、抜本的にこの業界全体を一体どうしたらよいのかという問題でございます。いま、この抜本的な問題につきましては、鉱業審議会にいろいろ審議をしていただいておりますが、国際競争力を失った業界をどう救済するのか、どう再建をするのか、こういうむずかしい問題があるものですから、なかなかまだ結論が出ておりません。  もう一つは、こういう抜本的な対策のほかに、緊急の課題として、いま企業経営が非常にむずかしい状態になっておる幾つかの事業体に対して、どう対処するか、どう対処すべき方法があるか、こういうことでございますが、幾つかの方法はあるようであります。具体的な対策につきましては、担当の資源エネルギー庁の長官と中小企業庁の長官から具体的に説明をさせます。
  227. 橋本利一

    ○橋本(利)政府委員 初めに、緊急融資の問題でございますが、私の方で、せんだっても各社から事情聴取いたしました。二、三の山を除きまして、六月ごろ、上期ぐらいまでの資金繰りの手当てはできておる、だから、問題はその二、三の山をどうするかということでございまして、現在親会社と一緒になりまして再建計画案を策定しておる、この計画ができ次第、金融機関とコンタクトをとりたい、こういうことでございますので、私たちもそれに協力して融資が実現するように努めたいと思います。  それから二番目の、金属鉱業事業団法を改正して中小鉱山に対しても融資できないかという御指摘でございますが、これは御承知のように、新鉱床探査補助金という補助金制度をとっておりますので、片方で、融資ができるならば補助金は要らないじゃないかといったような反論も出てまいりますので、むしろ新鉱床探査補助金を質的、量的に拡充していくという方向がいいんじゃなかろうかと思います。  三番目に、ただいまの新鉱床探査補助金をできるだけ早く交付するようにという御指摘でございます。せっかくの予算でございますので、予算が成立次第、できるだけ早く交付し得るように準備を進めたい、かように考えております。
  228. 板川正吾

    ○板川委員 鉱山の、山の会社の関係も、いろいろピンからキリと言っちゃ悪いのですが、何とかやっていけるのと、だめだというのが一、二あるようでありますから、そういう点もひとつ考慮されて、緊急融資的なものも、倒産してしまってからでなくて、ひとつ考えてほしいということを要請をいたしておきます。  それでは、もう一つ。大蔵省、これは通産省も聞いてもらいたいのでありますが、永大産業倒産問題で私、現地調査をしてまいりました。  計画倒産ではないか、こういうような疑いを持たれた発言ども記者会見でございました。私は、計画倒産というのがどういう意味か、たとえば従来言われている計画倒産というのは、会社の理事者が在任中に悪いことをして、財産をほかに隠してそして倒産をさせて、後で隠しておいた財産をふところに入れる、こういう悪質なものを計画倒産と一般に言われておったと思うのでありますが、今度の場合は、私は、計画倒産と言うんじゃなくて、管理倒産と言ってもいい感じがいたします。  それは普通、倒産の場合に、あらゆる対策を打って、どうしても手形が割れないとか金融の道がつかないとかといってバンザイをするという倒産、今度の場合にはある程度将来を予測して、そして倒産という手続を経て再建するためのいわば心の準備、あるいは若干の金の準備、あるいは原材料の在庫、こういうものを計算して倒産の道を選んだ、こんな感じがいたします。ですから、土曜日に会社更生法の申請をして、その夕方裁判所がこれを受け付けて、保全管理人を任命した。一日置いて、月曜日には普通のとおりに、残業はいたしませんけれども、普通に操業をやっておるという状況で、わりあいに落ちついておるような感じがいたします。ですから、全くせっぱ詰まったんじゃなくて、ある程度ちゃんと計算もし、再建の道も講じて倒産の道を選んだ。  ですから、山口工場、永大木材という会社ですが、二月二十日に裁判所に会社更生法の申し立てをして、普通、更生開始決定をするのには三カ月から四カ月、理事者の前任者が不正でもやっていると、その財産を計算したりしますと七カ月も八カ月もかかって、更生開始がおくれる場合がありますが、この場合には四月二十日、ちょうど二月目には裁判所で更生開始決定をしたい、こういう状況のようでありますから、計画倒産というよりも、管理された倒産ではないかという感じがいたします。  現地調査をした結果を一言報告をしておきます。  そこで、永大本社で川上社長の説明によりますと、倒産の原因は、前々社長時代に社債を発行して資金を集めて投資した事業が皆失敗した。むだな投資だったことが倒産の原因と思う、こういう発言がありました。堺工場に十億円、それから小山工場が九億円、厚木工場五億円、シンガポール工場三十四億円、これらの工場がその後ほとんど成果を上げてない、これが赤字累積の原因となって倒産の原因となった、こういうことを言っておりました。  そこで、これは大蔵省に伺いますが、社債を発行する場合には、資金をどう使うか、社債発行の目論見書が公表される。そして公認会計士がこれをチェックし、それを受託銀行が債権者にかわって資金の使途などをチェックする、そういう方式がとられておるならば、社債を発行して膨大な金を集めて適当にそれを使うということはないはずだ、こう思うのでありますが、この場合に、社債発行したことを適切に使わなかった、使ったが工場はみんなろくに動かない、こういうことのようでありますが、これは公認会計士、受託銀行にも責任があるのじゃないか、私はこう思いますが、大蔵省、どう思いますか。
  229. 冨尾一郎

    ○冨尾説明員 お答えいたします。  いま、社債の発行等によって増資した資金をどのように使うかという意味で、それを限定する目論見書の発行交付をすべきではないかという御質問でございますが、実は、現在発行されておる社債につきましては、すべて担保つきという形で発行されておりまして、商法の発行限度内でございますと証券取引法上は有価証券届出書の手続は要しない。したがいまして、目論見書の作成交付は不要ということになっておるわけでございます。  これは、担保つき社債ということになっておりますし、商法の発行限度内で発行されるということでございますので、社債権者の方には十分手厚い措置がとられておるという事情を考慮して、目論見書の作成交付は不要となったわけでございます。このように目論見書をつくらないという制度は、昭和二十八年以来すでに発行市場においては定着したものとなっておりまして、私どもといたしましては、特に問題はない、このように考えております。
  230. 板川正吾

    ○板川委員 昭和二十八年に証券取引法を改正されて、その附則の七号で、一億円以上社債を募集をする場合は、公認会計士が監査した有価証券届出書を大蔵省に出す。この届出書の内容は、一般に言う社債発行目論見書と同じですね。しかし、当分の間——当然出さなくてもいいというのではないですよ。当分の間、物上担保つきの普通社債に限り、届出書を出さなくてもよい、そういうことなんでしょう。  あなたの言うのは、当然出さなくてもいいのだ、二十八年の法改正以来問題はなかった——問題が全くなかったわけじゃない。一件あるでしょう。ただ、この物上担保つきの普通社債に限って、目論見書を出さなくてもいいと言っているのです。しかし、それも当分の間ですよ。昭和二十八年からもう五十三年ですから、当分の間は過ぎているのだ。この当分の間届出書を出さないでもいいという条項はもう削除して、社債発行する場合には、その社債をどういう道に使うのか、ちゃんとそれは届出書を取ってやる方が債権者保護になるのじゃないでしょうか。  確かに、そのために債権者が損をしたという例は、戦後一件しかないそうであります。八件の場合は銀行が全部しょった。今度の場合も、銀行がしょうから、債権者には社債に限りは損害はない、こういうことなんでしょうが、これは起こったら負担すればいいというものではなくて、それを事前に防止するためには、証券取引法第四条、附則の七号のただし「当分の間」というものはもう取っていいのではないか。社債一億円以上発行する場合には、何に使うかちゃんと公表して、そして債権者も銀行も皆チェックできるようにしたら、少なくとも社債を悪用するようなことが防止できるのだから、もうその条項を改正すべきではないか、私はこう思いますが、いかがですか。
  231. 冨尾一郎

    ○冨尾説明員 ただいま私が、目論見書の交付につきましては要らない制度が二十八年以来続いていると申し上げましたのは、従来、実績といたしまして、発行されました社債がすべて担保つきであるという実情に即して申し上げたわけでございます。  実は、この制度につきましては、昨年、社債発行限度暫定措置法という法律をつくっていただきまして、その際にも御議論をいただいたところでございます。その社債発行限度暫定措置法の審議の過程で、社債発行限度を超えて発行する場合には、担保つきであっても有価証券届出書の提出、目論見書の作成交付が必要であるというふうにいたしましたが、発行限度内については従来のままという扱いに実はなっております。これは繰り返すようでございますけれども、発行限度内でございますれば、担保つきという面もございますし、社債権者の方には格別問題ないということでお認めいただいたものと私ども了解しているわけでございます。
  232. 板川正吾

    ○板川委員 倒産した場合に、銀行が制度として社債を買い取る義務はないのでしょう。あるのですか。ないでしょう。制度としてはないのです。だから、たまたま今度の場合でも、戦後の場合でも一件を除いて銀行が全部社債を引き取っているから損害は与えてない、しかし、それは銀行が法律どおり私の方はそこまでやりませんと言ったら、債権者はそれだけ損害を受けることになるでしょう。それならば、人の金を何億円も集めるのですから、目論見書を出させて、公認会計士も受託銀行もちゃんとそれをチェックするような方式をとるのが原則じゃないか、私はこう言うのですよ。いかがなんですか。
  233. 冨尾一郎

    ○冨尾説明員 おっしゃるように、商法の発行限度内の社債につきましても目論見書の作成交付が必要ではないかという御議論は、従来からございます。私どもとしても、今後商法改正との——実は商法改正が、現在法制審議会の方で検討されているように聞いておりますが、その辺で社債の問題についてどのような方向が打ち出されるかということも十分考慮いたしまして、一般的に投資家保護という見地からこの問題を十分検討してまいりたい、このように考えております。
  234. 板川正吾

    ○板川委員 そういう意見があるということを、商法改正の審議会があるそうですから、十分反映してもらいたいと思います。  永大産業は、転換社債を三回、百九十五億、普通社債三回、三十四億。転換社債には目論見書が出されますが、普通社債では、ない。集められた金が適正に使われたかどうかをチェックするためにも、物上担保の有無にかかわらず、債権者保護のたてまえから目論見書を出すようにすべきだ、こういう見解を申し述べまして、私の質問を終わります。  ありがとうございました。
  235. 野呂恭一

    野呂委員長 これにて通商産業大臣及び経済企画庁長官の所信に対する質疑は終了いたしました。  次回は、来る七日火曜日午前十時理事会、午前十時三十分から委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。     午後四時二十九分散会