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板川委員 時間がもう五分ほどだそうですから、最後にひとつ、これも
考え方として文字の上で
関係があるんですが、特定
不況産業安定法という
法律が通産省で目下
用意をされている。一月十九日の新聞にも報道をされております。私は、この
法案は非常に重要な
内容を持っておる
法案だ、こう考えておりますので、これは私の
見解をひとつ述べておいて、
大臣に十分慎重な配慮をしてもらいたいと思って、申し上げてみたいと思います。
通産省は、構造
不況対策として特定
不況産業安定法というのを準備し、そして新聞の報道によりますと——一月十九日に新聞に載ったんですから、十八日に発表したんでしょう。そして一月二十六日の閣議で
決定をして、できればこの
円高対策法と一緒にその成立を希望しておった、こういうことも伝えられております。
私はこの
法律を一読いたしまして、これは大変な
法律だ、もしこのような重要
法案を、
国会の
審議もろくにしないで
不況対策に名をかりて成立を図ろうというもくろみは、これは私は官僚の独善であり、時代錯誤もはなはだしいと考えざるを得ないのであります。
その問題の二、三を指摘してみたいと思うのでありますが、第一は、福田内閣は御
承知のように独占禁止法の改正を
実現をいたしました。
国会で四年間の
審議を通じて独禁法の改正が行われた。御
承知のとおりであります。カルテル課徴金を創設をした。寡占規制の強化を図った。ところが、この特定
不況産業安定法によりますと、その改正したカルテル規制もあるいは寡占規制も全く骨抜きになる
内容を持っておるという点でありますが、もし福田内閣がこの特定
不況産業安定法というのを通そうということになると、独禁法行政としてまさに矛盾した
考え方になるわけであります。
第二点としては、
国会で自民党も賛成をされ、全会一致で
決定された
内容の
法律を、しかも独禁法の改正は昨年十二月二日から実行されておるのであります。その改正してまだ発足したてのころに、その独禁法の完全な骨抜き
法案を準備する、こういうことは
国会の
審議を軽視する官僚独善の思想ではないだろうか、こう思います。
法案の
内容は、
昭和六年に実は
不況対策に名をかりて軍国主義に拍車をかけた重要
産業統制法、御
承知のように、
昭和恐慌、
昭和五年、六年、濱口内閣の金解禁が実施され、
円高に決まったために
昭和恐慌の出発となったわけでありますが、その
不況対策として重要
産業統制法が
昭和六年にできました。この
昭和六年にできた重要
産業統制法と今度の
用意された
法律の
内容は全く同じであります。
第一に
目的が
不況産業対策だということ、第二は、重要
産業統制法の
内容ですが、二分の一以上が賛成ならば
業種指定をする、これも同じであります。それから、
企業の合併やカルテルを奨励してアウトサイダー規制命令を国が出せるようにし、その規制命令に反した場合には罰則を加える、これも今回の
法律と
内容が全く同じであります。それから、五年の限時法、これも今度の
内容と同じですね。そして重要
産業統制法は五年という限時法であったにかかわらず、もちろん延長されて、
日本経済が統制
経済、官僚の統制下に置かれ、そして軍国主義の道へ走った、こういう過去の重要
産業統制法と全く同じようなものをこの民主主義の時代にちょっと字句を変えただけで出すというのは、これは私は官僚の時代錯誤ではないだろうかと思います。
昭和四、五年の
昭和恐慌の場合には、
日本では二百万からの失業者がありました。いまの比率に換算いたしますと約四百万からの失業者があるわけでありますが、五年、六年、物価が三二%下がる、
輸出が三割も下がる、そして米の値段が半値になり、繭の値段が三分の一になる、実はこういうことになった。
不況対策として出された
法律でありますが、これが今日同じような、名前だけ変えて出るというのは、この発想自体に私は問題があると思うのであります。
アメリカでも、御
承知のように、一九二九年、
昭和四年ウォール街の株の大暴落から世界恐慌に発展したわけでありますが、アメリカでは
日本以上に
産業が停滞し、失業者が四人に一人という状況であったと言われておるのであります。そのときに、ルーズベルト大統領が一九三三年にニューディール政策をとって、初期のニューディール政策のときには二年間独禁法の適用禁止をしたのです。しかし、独禁法の適用禁止をしたら、逆に物価が上がり、生産が停滞して失業者がふえるということで、その後反省をして、逆に今度は独占禁止法の強化を打ち出した、こういう歴史上の一つの前例もある。
そういうことをも考えずに通産官僚が
不況対策という名目のもとにこのような時代錯誤的な
法案を
用意をし、しかも聞くところによると、この円
対策法と一緒に
国会を通過させてほしい、こういう
考え方を持っておった、あるいは
委員会の中でもそれをやってもいいじゃないかという賛成の方もあったというのでありますが、これは私は重要な問題だと思うのであります。
大臣、私は言いっぱなしでもいいと思うのですが、この
法案の性格をよくお考えになっていただいて——財界の一部でも反対の論もあります。われわればかりじゃありません。ひとつ十分慎重に対処をされることを要望しておきたいと思いますが、
大臣、いかがですか。