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1978-06-06 第84回国会 衆議院 社会労働委員会 第20号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和五十三年六月六日(火曜日)     午前十時二分開議  出席委員    委員長 木野 晴夫君    理事 越智 伊平君 理事 住  栄作君    理事 竹内 黎一君 理事 羽生田 進君    理事 村山 富市君 理事 森井 忠良君    理事 大橋 敏雄君 理事 和田 耕作君       相沢 英之君    井上  裕君       石橋 一弥君    川田 正則君       斉藤滋与史君    橋本龍太郎君       山口シヅエ君    湯川  宏君       安島 友義君    枝村 要作君       金子 みつ君    草川 昭三君       古寺  宏君   平石磨作太郎君       西田 八郎君    浦井  洋君       田中美智子君    工藤  晃君  出席国務大臣         労 働 大 臣 藤井 勝志君  出席政府委員         社会保険庁医療         保険部長    岡田 達雄君         労働大臣官房長 石井 甲二君         労働省労働基準         局長      桑原 敬一君         労働省労働基準         局安全衛生部長 野原 石松君         労働省婦人少年         局長      森山 眞弓君         労働省職業安定         局長      細野  正君         労働省職業訓練         局長      岩崎 隆造君  委員外出席者         大蔵省主税局税         制第一課長   矢澤富太郎君         厚生省社会局更         生課長     板山 賢治君         水産庁海洋漁業         部長      松浦  昭君         運輸省船員局労         政課長     松木 洋三君         労働大臣官房労         働保険徴収課長 小林 直之君         労働大臣官房統         計情報部情報解         析課長     中谷  滋君         労働大臣官房統         計情報部賃金統         計課長     小野 良二君         労働省労働基準         局労災管理課長 増田 雅一君         労働省労働基準         局補償課長   原  敏治君         労働省労働基準         局賃金福祉部長 森  英良君         労働省労働基準         局賃金福祉部企         画課長     宮川 知雄君         建設大臣官房技         術調査室長   萩原  浩君         建設省計画局労         働資材対策室長 楢崎 泰道君         日本電信電話公         社厚生局長   長谷川 實君         社会労働委員会         調査室長    河村 次郎君     ――――――――――――― 六月五日  国民健康保険制度改善に関する陳情書外二件  (第三九〇号)  国民健康保険料の算定に関する陳情書  (第三九一号)  乳幼児医療費公費負担制度確立に関する陳情  書外一件  (第三九二号)  母子家庭医療費無料化に関する陳情書  (第三九三号)  筋拘縮症医療費公費負担制度拡充に関する陳  情書(第三九四  号)  精神障害者入院医療費軽減に関する陳情書  (第三九五号)  療術行為法制化促進に関する陳情書  (第三九六号)  療術制度化阻止に関する陳情書  (第三九七号)  国立近畿中央病院医療内容充実強化に関する  陳情書  (第三九八号)  国民年金制度改善に関する陳情書外一件  (第三九九号)  北九州大規模年金保養基地早期着工に関する  陳情書  (第四〇〇号)  社会福祉対策充実強化等に関する陳情書  (第四〇一号)  生活保護基準級地引き上げに関する陳情書  (第四〇二号)  雇用対策強化に関する陳情書外一件  (第四〇三号)  短期雇用特例保険者受給選択権復活に関す  る陳情書(第四〇  四号)  国鉄等スト規制措置に関する陳情書  (第四〇五号)  原子爆弾被爆者援護法制定に関する陳情書外  一件(第  四〇六号)  戦時災害援護法制定に関する陳情書  (第四〇七号) は本委員会に参考送付された。     ――――――――――――― 本日の会議に付した案件  労働関係基本施策に関する件      ――――◇―――――
  2. 木野晴夫

    木野委員長 これより会議を開きます。  労働関係基本施策に関する件について調査を進めます。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。安島友義君。
  3. 安島友義

    安島委員 最近の経済企画庁の発表によりますと、五十二年の十月から十二月と比較しまして五十三年の一月から三月の実質国民総生産は二・四%ふえている。これをそのまま年率に延ばしますと一〇%成長可能ということになります。いずれにしましても政府の目標としている実質成長の七%は達成可能だと自信を深めたという報道が載っているわけです。しかし、これはいろいろ問題を含んでいるわけでございます。このことはさておきまして、内閣統計局が四月のいろんな労働統計発表しているわけですけれども、これらの問題と経済政策、特に雇用問題が今後どういうふうに推移するであろうかということの関連において若干質問をしていきたいと思います。就業雇用構造問題について逐次質問をしていきたいと思っております。  この統計によりますと、就業者数は五千四百十三万人で、前の月よりも四十八万人ふえているということでございますが、これはちょうど四月から新しく学校を出た人が就職した月でございますから、この学卒者といいますか、新規採用者との関連はどうなっておるのか、まず第一にお伺いしたいと思っております。
  4. 中谷滋

    中谷説明員 本年四月の労働力調査によりますと、先生いま御指摘のように就業者数は五千四百十三万人でございます。これは前年同月より四十八万人増加しておりますが、前月の三月に比較しますと百十六万人増加しております。  一方、学卒関係でございますが、職業安定局推計によりますと、本年三月の新規学卒就職者はおよそ九十六万人くらいと見込まれております。この百十六万人という四月の増加数純増分でございますので、このほかに離職による減耗分の補充もございますので、実際の労働力入職は、それよりも若干多くなるのではないか。したがいまして、百十六万人と九十六万人を直接比較はできませんけれども、大体、需要が供給を吸収できるのではないかと考えられます。  なお、安定機関によります三月末の中学、高校卒職業紹介状況を見ますと、大体九八%ぐらいは就職して、いるという状況のようでございます。
  5. 安島友義

    安島委員 いまの御説明は前年の同月と比較してのお話ですか。これは報道そのままなんですけれども、前の月ということになりますと三月と比べて四十八万人ふえている、こう述べているのですが、これは間違いですか。
  6. 中谷滋

    中谷説明員 総理府の発表によりますと、前年同月と比べまして四十八万人増加しているということでございます。前月と比較しますと百十六万人の増加でございます。
  7. 安島友義

    安島委員 そうですか、わかりました。  いろいろな統計のとり方があると思いますが、ちょうど石油ショックあたりから日本の経済がおかしくなってきているわけですから、その辺との関連で、まず四十八年から五十一年までの就業者数推移及び増加率、四十八年を一〇〇とした場合の年度別増加率等をお伺いしたいのです。
  8. 中谷滋

    中谷説明員 同じく労働力調査によりまして四十八年から五十一年までの就業者数でございますが、昭和四十八年の平均が五千二百五十九万でございます。それから昭和四十九年、これは〇・四%減りまして五千二百三十七万人でございます。それから昭和五十年、さらに〇・三%減りまして五千二百二十三万人でございます。それから昭和五十一年は、やや景気回復しまして就業者は五千二百七十一万人、前年に対しまして〇・九%増となっております。
  9. 安島友義

    安島委員 これは労働力人口増加している割りには、ふえていないといいますか、一時は減少し、その後も、ほとんど微増にとどまっているということになるわけでございますね。  次に、この就業者の中で女性就労が最近、頭打ち傾向と言われているわけですけれども、大まかにとらえまして女性就労者というのは景気、不景気に非常に大きく左右されているというか、言葉は適切でございませんが、景気調整の安全弁的な形で、非常に著しい傾向が見られると思うのでございますが、大ざっぱで結構ですから、四十五年ごろから五十二年までの間で、どういう傾向が出ているのか。それと好況、不況とのかかわりをどのようにとらえておられるのか、お伺いしたいと思うのです。
  10. 中谷滋

    中谷説明員 同じく労働力調査によりまして女子就業者動向を申し上げますと、昭和四十八年、すなわち石油ショック以前の景気の非常によろしかったときでございますが、四十八年は前年に比べまして五十三万人ふえておりまして、二千二十三万人となっております。ところが石油ショックによって昭和四十九年、五十年と急激に減りまして、昭和四十九年には五十万人減、昭和五十年には二十万人減と、女子就業者は非常に落ち込んでおります。その後、景気回復によりまして、昭和五十一年は二十三万人増、五十二年は五十七万人増と、また急激にふえ、本年の一−四月の平均をとりましても、前年同期に比べて四十五万人増となっております。  このように景気の変動に伴って非常に増減が激しいわけですけれども、御承知のように昭和四十八年には、恐らく景気の上昇に伴いまして、主として家庭主婦層等就業増加した。それが四十九年に入りまして、石油危機を契機として、また雇用調整によって家庭に戻った。さらに五十一年、五十二年には、そういう家庭に戻っていた主婦等が再び労働市場にあらわれてきたということではないかと思われます。
  11. 安島友義

    安島委員 特にパートタイム仕事が大幅に減少したと言われているわけですが、不況の中でも家電関係とか自動車 そして公共投資前倒し等通信関係等も非常に持ち直してきているわけです。これだけじゃございませんが、これらの部門というのは女子の進出が比較的目立っている職場であり、パートタイマーあるいは中には家内労働まで含めますと相当多くの女性就労しているわけです。いまのところ、まだ不況が続いているわけでございますので、パートタイム仕事が減ってきているのは具体的にはどの部門か、それらの点についてお伺いしてみたいと思うのです。  それから、これも細かいことはむずかしいかもしれませんが、規模別に見て、どういう傾向が出てきているのか。企業規模等かかわりでは、どんなふうな状況が出ているのでしょうか。
  12. 中谷滋

    中谷説明員 パートタイマー統計については、実数を把握しました的確な資料がございませんけれども労働省で行っております雇用動向調査というのがございます。これは年二回、労働者入職離職状況を調べておりまして、これで若干把握しておりますが、先生指摘のような四十八、九年ごろの資料はございませんで、五十年からとっております。  五十年以降の動向を申しますと、昭和五十年、五十一年につきましては、両年とも入職者離職者を上回っております。したがいまして、パートタイマー労働者は少しずつふえているという状況でございます。それから、いま五十二年上期だけございますけれども、五十二年一−六月の数字につきましでも、入職離職を若干超過している。したがいまして、幾らかずつパートタイマーの数もふえているのではないかと思われます。ただ、入職超過の幅を見ますと、五十年には三万二千人入職超過、五十一年には七万七千人、非常に大幅な入職超過でございましたが、五十二年上期をとりますと一万五千人、上期だけでございますけれども、やや入職超過の幅は狭まっております。  産業別に見ますと、先生指摘電気機械でございますが、これも昭和五十一年には約一万八千人の入職超過でございましたが、五十二年上期は千人の入職超過で、幅が非常に狭まっております。  それから規模別に見ますと、概して言えますことは 昭和五十一年ごろ、景気回復の初めのころは大企業入職超過が非常に大きかったのですけれども、五十二年上期をとりますと大企業では停滞しておりまして、むしろ百人未満の小企業入職が大きいという状況になっております。
  13. 安島友義

    安島委員 一応、一般的な傾向としては、いまの説明でわかりますが、内閣統計局が四月の時点で出しているものの中で、最近パートの仕事が減ってきた。これまでの傾向と比べて具体的に減ってきたという発表をしているものですから、これまでの長い経過の中でとらえているということじゃなくて、その理由をお伺いしたがったのです。どこに、そういう現象があらわれてきているのかということを、もっと知りたかったのですがね。
  14. 中谷滋

    中谷説明員 先生指摘労働力調査によります短時間就労者の問題でございますが、実は、これは三十五時間未満ということでとっておると思いますけれどもパートタイマーは現在、必ずしも三十五時間未満のものばかりではございませんで、かなり時間が長いので、労働力調査の三十五時間未満のものとパートタイマー動向と必ずしも軌を一にしないのではないかというふうに考えられます。
  15. 安島友義

    安島委員 次に、製造業就労者数推移についてお伺いしますが、ポイントだけで結構です。四十五年、四十八年、五十年、五十一年、五十二年、それから五十三年は少し詳しく一月から、わかっていれば四月まで、どういう推移をたどっているかについてお伺いしたいと思います。
  16. 中谷滋

    中谷説明員 同じく労働力調査によります製造業就業者数でございますが、昭和四十五年は千三百七十八万人でございます。昭和四十八年は千四百四十三万人で、昭和四十五年に比べますと七十万人近くふえております。昭和五十年は千三百四十六万人でございますが、これは石油ショックによりまして二年前に比べて百万人近く減っております。昭和五十一年は千三百四十五万人、昭和五十二年は千三百四十万人と、大体横ばい推移しております。本年に入りまして、これは一月から四月までの四ヵ月の平均でございますが、千三百十五万人でございまして、前年同期に比べますと三十七万人減ということになっております。
  17. 安島友義

    安島委員 いまの御説明のように、四十五年に千三百七十八万人おったのが、五十三年の一月から四月までの平均をとってみても千三百十五万人。労働力人口が非常にふえている、就業者数もふえている、にもかかわらず製造業就労者数は、全体の数字関連から言えば、数字以上に実際には減っていると見なければならないですね。こういう製造業就労者数減少傾向といいますか、いろいろ問題になっております産業構造上の諸問題、特に構造不況業種と言われているような部門では就業者数がどういうように推移しているか。具体的に言えば離職状況ですね。構造不況業種と言われている部門での就労者数がどんどん減っているわけだが、それらを具体的に把握しておられますか。
  18. 細野正

    細野政府委員 構造不況業種からの離職者の数というお尋ねでございますが、網羅的な統計というのは実はないわけでございまして、御存じ特定不況業種離職者臨時措置法によって手帳を発給している件数は私どもの方で把握しております。その数は、製造業に限って見ますと、四月末日現在で二万二千二百四十五件ということになっております。
  19. 安島友義

    安島委員 労働省統計の中で、そういう調査対象になっていないということとは別に、これは当然それぞれの分野において、特に通産省等では、もう一目瞭然と就業者数をつかんでおるわけですから、私は何も労働省がすべての数字を把握しなければならないと言っているわけじゃないが、構造不況業種と言われている部門状況というものは、労働省としては政府部内のいろいろな諸統計はとっておられるはずだから、その数字をもっと具体的に正確に把握してもらわなければ、これは委員会たびごとに、いろいろ問題を指摘しているわけですが、その具体的な対策にならないじゃないですか。それはどういうふうに把握されているのですか、全く把握していないのですか。
  20. 細野正

    細野政府委員 通産省等で把握しておられます。それぞれの所管行政に係る統計と申しますのは、どの時点就業者数が幾らあって、現時点では幾らかという数字でございまして、いわゆる離職者の数ということになりますと、どこの統計にも、正確でかつ網羅的な統計はないという状況なわけでございます。
  21. 安島友義

    安島委員 ですから、たとえば就労者数が減っているという中には、いろいろな退職自己都合退職だとか、いろいろ理由がありますが、大まかに見れば結局、就労者数が減っているという傾向の中に、構造不況業種と言われている部門での就労実態、あるいは、その中で正確な数として出なくても、どういう状況かというのは、およそ、つかめるのじゃないですか。ですから私が言っているのは、離職者数がはっきりつかめないとするならば、では就業者数傾向はどうなっているのかということです。代表的な部門でも結構なんですが……。
  22. 細野正

    細野政府委員 現在、私ども手元に、ちょっと統計を持ってきておりませんので正確に申し上げられませんが、たとえば繊維関係とか、あるいは造船関係とか、構造不況業種における離職者従業員数の減が非常に大幅であるということは確かに御指摘のとおりだと思います。
  23. 安島友義

    安島委員 他の省と違って少なくとも労働省としては、鉄鋼とか繊維造船非鉄金属という非常に問題になっている部門は、完全に正確にというのはむずかしいかもしれませんが、その辺の動向は常に的確にとらえて説明ができるような状態でないと困りますね。いまは手元にないということですから、その辺のところは後でまたお伺いしたいと思います。  次に、第三次産業と言われている部門。私はたびたび、この委員会で、第一次産業高度成長の中で急速に第二次産業に吸収されている。いまさら不況だというので、また第一次産業の方に戻るということは、いろいろな条件からして、どう見ても不可能に近い。そうすると第二次産業就労者数がどんどん減っていくのを、どこで吸収するかということになれば、もう第三次産業以外にはない、こういうことをしばしば指摘しているわけです。そこで、いまのような就業者数状況の中で、第三次産業と言われている部門では就業者数は一体どういうように推移しているのか。いままでの製造業就労者数推移についてと同じ条件で、第三次産業就労者数について御説明いただきたいと思うのです。
  24. 中谷滋

    中谷説明員 ただいま手元昭和四十五年の的確な数字はございませんので、申しわけございませんけれども昭和五十年から申しますと、昭和五十年に二千七百十万人、五十一年には二千七百六十三万人、五十三万人増でございます。昭和五十二年は二千八百三十九万人で前年に比べて七十六万人増、それから五十三年に入りまして、一月が二千八百八十九万人で前年同月に比べて八十四万人増、二月が二千八百八十三万人で前年同月に比べて七十六万人増、非常な大幅な増加になっております。
  25. 安島友義

    安島委員 まだ具体的に公共投資関連部門にどの程度、就労者がふえているかということをつかむのはむずかしいと思うのですけれども、ただ、特に政府公共投資を重点とした景気回復策によって、ある程度の雇用増加が期待されると強調しているわけですが、これは抽象的でなくて、政府部内においては計画と合わせて運輸とか建設とか、それぞれ試算をされているはずだと思うのだが、それらを総括して、労働省で調べた、というよりも政府として、公共投資関連部門就労者数は今後どの程度ふえるという見込みですか。それから、すでにそういう傾向が出ておりますか。この二点についてお伺いしたい。
  26. 細野正

    細野政府委員 政府予算委員会におきまして政府全体としての推計として御答弁したのが、今回の予算による公共投資大幅増に伴う就業機会の増大の数を十七万人と推計をいたしておるわけでございます。現在のところ統計的にあらわれておりますのは、建設業関係等における就労者数が、対前年で、かなり伸びているということは言えるわけでございますが、これ自体が今年度の予算効果というよりも、たとえば前年の公共投資追加分継続分とか、いろいろな要素がございますので、そこのところは今年度分に限った影響というものを、その中から取り出して計算することは不可能ではないかと考えております。
  27. 安島友義

    安島委員 国会審議のさなかにおいても、これまで昨年から、いろいろ景気浮揚策をずっと公共投資によって続けてきているわけです。特に私はしばしば指摘しておりますように、公共投資による雇用面での影響就労者増加というのは、主として農山村、漁村も含めてのそういう地域の、いわば日雇い的あるいは出かせぎ労働者と言われているような人が一時的に仕事につける状態が出てきている。それらが、そのときの統計指標に出てきておりますので、減ったりふえたりするのが、そういうことに大きく左右されているように思われる。そうすると農閑期と言われているようなときに主として働く方が多いわけですから、もうすでに四月の統計で、ある程度、公共投資関連部門といいますか、こういう方の就労者数というものが今後ふえるのか、あるいは、ふえるにしても、これはそれほど多くないだろうとか横ばいだろうとかというのは、おおよそ傾向がつかめると思うわけです。私が聞いているのは、あくまでも直接の面なので、公共投資を支えにして、それが広範な部門に広がるだろうということの方はなかなかむずかしいでしょう。私は、公共投資によって、まず直接就労者がふえるというような直接的な関連部門就労者についてお伺いしているわけですからね。波及効果というところまでは、それはいろいろむずかしい問題でありますから、今後の推移を見なければわかりませんが、直接的な点では、もう四月の統計でおおよそ見当がついておられる、こう判断してもいいと思うのですが、いかがですか。
  28. 細野正

    細野政府委員 できるだけ公共事業早期実施ということで、契約率等進捗状況が例年よりも早目に進んでいるというのは御存じのとおりなわけでありますが、しかしながら実際に工事が着工して、それに対する需要が出てくるというふうな段階というのは、たとえば、きょうの新聞等建設業協会の常務さんが五月末ぐらいからということをちょっと書いておられますけれども、そんなような状況でございまして、したがいまして今後、公共事業の本格的な事業が進むに従って、やはり関連部門における雇用需要がふえてくるだろうということは推測されるわけでございますけれども、それが、どのくらいのふえ方になるかとか、具体的に、どのくらいの需要が出つつあるかということを申し上げられるような、そういう段階ではないというふうに考えておるわけでございます。
  29. 安島友義

    安島委員 どうも、ちょっと実態認識が不十分なように私は思うのですけれども、これらの部門では、もう目いっぱいの仕事を抱え、それから特に建設関係などの場合では抱えるだけ抱え込んできているというような状態が、もうすでに出ているのですね。ですから、それが、これから五月になり六月になれば、さらに効果が出てくるだろうというのは、波及効果が出てくるだろうと言われるならばわかるけれども、少なくとも公共投資に直接関連する部門就労者数というものは、おおよそ、もう見えてきている、こういうふうに考えるわけですが、さらに増加するであろうという見通しに立っておられるというわけですね。わかりました。これは、これからの統計を、五月、六月の状況を見ればはっきりわかるわけです。  次に、完全失業者数推移と、その実態把握についてお伺いするわけですけれども、この三月をピークにして、四月は、前の月に比べますと、かなり減っているわけです。これはいまの問題とも、ある程度関連しますが、この四月における完全失業者数百二十三万人というものは今後どういう見通しでございますか。減るのか横ばいなのか。減るとすれば、どの程度まで減るというお見通しですか。
  30. 細野正

    細野政府委員 御指摘の完全失業者の数でございますけれども、いま先生のお話のございましたように、今後、公共事業の発注促進等の効果があらわれてくるに従って、建設関連業種を中心にした景気対策効果が実体経済にも反映してくるというように考えておりますので、そういうことと、従来から申し上げておりますような雇用対策の充実強化ということとあわせ考えまして、失業者数も特に年度の後半以降、徐々に減少してくるのではないかというように考えておるわけでございます。そういうことで、全体として年度平均で見ますと、五十三年度におきましては、五十二年度に比べて五万人ぐらい減って、年度平均百十万人ぐらいにはなるのではないかというふうに見込んでおるわけでございます。
  31. 安島友義

    安島委員 先ほども、ちょっと触れましたけれども、季節的労務者とか日雇い労務者というような層が、この公共投資がいよいよ本格的に軌道に乗ってきたという時点就労者数がふえたということが失業者の減少につながっているという見方は、これは必ずしも当たっていないのですか。私は、その傾向が一番大きいのではないかと見ておるのですが、その点どう見られておるのですか。
  32. 細野正

    細野政府委員 御指摘のように、四月に入って失業者が減った原因というのは、そのうちの一番大きな原因は、やはり季節的な要因であろう。その季節的要因というのは、いま、お話しのような季節的な労働者が四月に入って就労がふえたということであろうと思いますが、半面もう一つ、先ほど来申し上げておりますように、ある程度、景気回復の浸透があって、そのことも雇用情勢の改善に寄与しつつあるのではないか、こういうふうに考えておるわけでございます。
  33. 安島友義

    安島委員 これは各新聞の社説等で、先ほど私が冒頭申し上げましたように、政府経済見通しというものは非常に一面だけとらえて楽観的だ、事、雇用問題に関する限りは、かなり深刻だという見方に立っているわけです。特に造船等はまだまだ、この不況から脱出するための処方せんというものが見出せない状態のままに低迷している。それから非鉄金属等は、このまま放置しておくと、日本のいわゆる非鉄金属関係というのは、もうほとんど壊滅的な打撃を受けるというので、商工委員会等でも特別の立法措置を講じなければならない、こう言われているような状況です。     〔委員長退席、羽生田委員長代理着席〕 それから地域的にも、鉄鋼とか造船等に依存してきた、いわゆる沖繩とか四国、瀬戸内海沿岸、あるいは二百海里水域問題に端を発した、いわゆる北海道とか東北の漁港等とか、非常に地域的にも、いろんな問題が出てきている。  こういう状況の中で特に季節労務者というのは、これは全部がすべてそうだと言っているわけじゃありませんけれども、農山村地帯あるいは漁業労働者の一部も含めて、これからは農閑期から農繁期に移る季節ですよ。それでも、いまのような御判断に立っておられるわけですか。一方では、こういう深刻な問題を抱え、そして一時的に季節的に出かせぎと言われていて、就労形態はいろいろありますが、また仕事が忙しくなれば、それにつくというような形で、また本来の業務につくような状態が今後出てくるわけですよ。それでも、いまの失業者というものは徐々に減るだろうというお見通しなんですか。短期間ですよ。長い期間では、なかなかむずかしい面が出てきますからね、経済は生き物ですから。ですけれども短期間の推移では、そういう状況が、そう出てくるように思われませんが、これは構造不況業種と言われているところに有効な歯どめ措置がかかって初めて、そういう見通しがつくられるのだと思いますが、これの部門では、もう離職というか、いわゆる人減らしというものは大体峠を越えたという御判断ですか。
  34. 細野正

    細野政府委員 先ほど申し上げましたのは、全般的に言えば景気回復の浸透に伴って、そのことが雇用面にも好影響として出てくるだろう。しかし、先生指摘のように構造不況業種等における離職者の発生等も、今後においても当然それは考えられることでありますし、したがいまして、そういう相殺要因もございますので、全体として見れば年度平均でもって五万人減ぐらいのところになるんじゃなかろうか。それから、そのことがあらわれてくるのも、年度の後半に出てくるんじゃなかろうかというふうに申し上げたわけでありまして、手放しで非常に楽観的に雇用関係が改善されるというふうに申し上げたわけではないわけでございます。
  35. 安島友義

    安島委員 私は、少なくとも労働省としては、その辺、余りマクロ的なとらえ方で経済企画庁やなんかが見通しするのとは違って、もっと生の数字の中から、そういうものを傾向として、総体的なマクロ的な見方とミクロの面からというものを結びつけて、いまはこうだが、やがて、こうなるであろうとか、造船業界における、いわゆる人員縮減傾向というのは、いつごろから始まり、いつごろがピークだから、大体これ以上減ることはないであろうとか、そういうような問題のつかみ方を、もう少し、してもららわなければならないんじゃないかなというように思います。  次に、就業者数というのが、労働力人口のふえているわりあいには、それほどふえていないということを先ほど指摘しました。実際の数字そのものでは就業者数はふえているわけですが、その中で見落とすことのできないのは、臨時、日雇い等の雇用がふえて、常用雇用は伸び悩みの傾向にあると思われますが、これはいかがですか。
  36. 細野正

    細野政府委員 御指摘のように、最近の雇用増というものの内訳を見ますと、臨時、日雇い関係の雇用というものの割合がかなり高いという点ば御指摘のとおりであります。したがって、常用雇用が伸び悩んでいるということが、逆に言えば、言えるわけであります。  その原因として考えられますのは、景気回復の過程では、やはり第一番目に残業時間を増加することによって対処する。次に臨時、パートというような形で対処して、最終的に景気回復が軌道に乗って、先行きについても見通しが明らかになってきたという段階で常用労働者をふやす。こういうのが一般的な傾向でございますので、したがって、現在のように景気回復テンポがおくれているところへ加えて、先生指摘のような構造不況業種の問題とか円高の影響とか、いろいろな問題がございます。そこで、いま御指摘のような常用労働者の雇用の拡大がおくれているということになるわけでございます。この点につきましては、私どもとしては、本年度における景気回復の浸透ということに伴いまして、その点から常用労働者の雇用というものも、一遍にはまいりませんけれども、除々に回復をしてくるんじゃないかというふうに期待をしているわけでございます。
  37. 安島友義

    安島委員 もう一つ、問題として指摘しなければなりませんのは、雇用内容が以前と比べて非常に悪くなっている。たとえば年間就業日数二百日未満労働者数は実に八百三十七万人、四十九年と比較しまして一六・八%もふえている、また、この中で規模別状況を見ますと、大企業の雇用者は減少して、小規模企業の方でふえているというような傾向がはっきり、うかがわれているということは、統計上あらわれている数字のほかに、その内在する諸問題というのは一層いろんな問題を包含しているということを端的に裏書きするものだと思うのです。後で具体的にお伺いします。  ここで大臣にお伺いしたいのですが、私は、公共投資重点の景気対策というのは、一日も早く景気回復しなければならないという今日の情勢の中で、それはそれなりの意味といいますか、評価はいたしますけれども、事、雇用問題との関連においては、これは永続的ないわゆる雇用の安定には結びつかないということを、しばしば指摘しているわけでございますが、これまでのいわゆる労働力動向、その内容等について質問してきましたが、大臣としては、これをどういうふうに御判断されておりますか。
  38. 藤井勝志

    ○藤井国務大臣 御指摘の問題、確かに大切な基本認識につながる問題でございまして、最近おかげさまで景気が、その指標において明るさを示し出したということでございます。これが本当に産業構造の基調がいわゆる安定成長の線に乗って明るい方向へ行き出したのか、一時的な現象であるかということは、これは私は、まだ今後の推移を見守っていかなければならぬ、このように考えておるわけでございます。  公共事業によって雇用の安定を図る、これは基本的な背景としては、どうしてもこの際、公共事業の積極的な施行推進というのが必要である。しかし、これで能事終われりとすべきではないという点においては、御指摘の考え方は十分配慮しなければならぬ。すなわち、日本の産業構造の基調の変化に伴う雇用基調の変化に対応して、そして雇用政策というものを積極的に展開をしていくという、これがなければ雇用問題の抜本的解決には通じない、このように考えておるわけでございますから、御指摘の点は十分踏まえながら、片や公共事業に対する、せっかくの積極的な財政運営によって景気の立て直しをし、それが効果をあらわしつつある、この段階におきましては、いわゆる失業者吸収率制度というものを特に失業多発地帯には重点配分をして、そして所期の目的を達しながら、これだけに、すべて依存するというのは、従来のいわゆる失業対策の発想の域を出ておらない。だから、もっともっと雇用機会の創出には労働省の所管の枠組みを越えた問題提起をすべきである、このように考えておるわけでございます。
  39. 安島友義

    安島委員 次に、雇用創出についての具体策についてお伺いしたいと思いますのが、まず第一に先般、出されました次官通達は、具体的にいつ出されたのですか。
  40. 桑原敬一

    ○桑原政府委員 お尋ねは、労働時間対策の推進についての次官通達と思いますけれども、五月二十五日に出したわけでございます。この問題の基本は、一度お話し申し上げたと思いますけれども、昨年の十一月末に労働基準審議会から建議を受けました考え方の基本に立ち、また先般、国会の御決議もございましたような雇用安定に資するという観点から出したわけでございます。  考え方を申し上げますと、一つは、労働時間問題についての、特に労使のお考え方は非常に乖離をしていると私どもは考えます。したがって、この機会に、労働時間対策をどうして進めなければならないかという考え方を、この際きちっとしておきたいというのが次官通達の第一の考え方でございます。それは御承知のように、一つには、これから高齢化社会を迎えてまいります場合に、労働時間の問題はきわめて重要なテーマになってまいりますし、また一面において、お互いに仕事を分け合うという観点から労働時間問題を新しく考える。それから第三点には、国際競争の観点から、特に日本は輸出に依存しながら貿易をしていくという形でございますので、そういった公正競争の観点から労働時間の問題をよく考えようということにつきましての基本的な考え方を展開をいたしております。  そして、手法といたしましては、いろいろ時間問題を考えていきます場合に、特に週休二日等を考えていきます場合に、取引上困るとか、他の関係企業がやらないからとかいう、非常に横を見ながら、ちゅうちょしているようなきらいもございます。したがって産業別に、あるいは地域の地場産業別に、具体的に労使のお集まりをいただきながら、この問題についての推進の環境づくりをしていく、こういう基本的な考え方でございます。また、それについて国として、あるいは出先機関を含めまして積極的な資料の提供、環境づくりに私どもも最大の努力をしていく、このような基本的な考え方を、この通達に示しているようなわけでございます。
  41. 安島友義

    安島委員 たまたま一日の労働時間という労働時間と労働省の次官の労働次官が一緒になりましたが、労働省の次官通達、内容が労働時間の問題で、これは結構ですが、そういう意味で、いつ出されたのかということで私はお伺いしたわけです。  そこで、これは都道府県知事と労働基準局長に、それぞれ同じ内容のものを出されたわけですが、この内容は非常にきめ細かく、いろいろ出されているわけですから、内容そのものは評価します。問題は、一片の通達で問題が前進するような性格のものではございませんので、これをどう具体化していくかということですが、まず第一に、労働省として、こういう次官通達という形で要請をしたのは、内容は十分知ってもらうとしても、都道府県知事に対しては具体的に、どういうことを要請しようとするのか。あるいは所轄のいわば責任者である局長には、これをさらに、どういうふうに具体化させるのかという点で、それはちょっと性格が違うはずだと思います。特に知事等に対しては、どういうことを要請する考えですか。
  42. 桑原敬一

    ○桑原政府委員 確かに政策は二面性を持っておると思います。知事は、御承知のように職業安定機関あるいは職業訓練機関を所管しておる責任者でございます。今度の発想は単なる基準局の労働福祉という観点だけではなくて、そういった雇用政策との関連を持ちながら、この問題を新しく発想しようという意味におきまして、知事もしくは、その関係のある部課につきまして、この考え方を徹底していただくということが第一だと思います。  それから、私どもの方の基準局の観点からいたしましたら、労働条件の向上という面から、私どもは地方の第一線の基準局長を指揮しながら時間対策あるいは年次休暇対策をさらに推進していただきたい。そういった多面的な目的を持って今回の通達は出されている。また、そういう意味におきまして次官通達になっているわけでございます。
  43. 安島友義

    安島委員 たとえば、この中で中央、地方それぞれ業種別や産業別の労使会議とか、あるいは労働問題懇話会とか、いろいろ名称はありますが、しかし、これも全国的に私は把握しているわけではありませんが、必ずしも全体的に、こういう話し合いの場があらゆる都道府県にできているのかどうかということについては、ちょっと私は、そういうふうに承知していないわけなんでございます。したがって、これを具体的に進める上においては、まず話し合いの場を積極的に持たせるような指導あるいは協力を、知事さん、あるいは所轄の基準局長が積極的に、こういう会合を開くようなことを働きかけなければ、これは意味がないと思うのですが、今後、具体的にそういう方向で指導されるようなスケジュールが決まっているわけですか。
  44. 桑原敬一

    ○桑原政府委員 進め方は二つございまして、私ども中央では産労懇という会議の中で、労使、関係者のお話し合いを進めておるようなわけでございますけれども、地方におきましても各県に必ず地方労働基準審議会がございます。この場には労使、公益がおるわけでございまして、この場で、まず労働時間問題を積極的に取り上げていく。それから、これのほかに中央版と同じように地方版の地方産労懇がございますので、でき得れば、そちらの方がより望ましいということで、まず、そこの会議を持つ。それから今度は各論にまいりまして、先ほど申し上げました産業別の労使会議、地場産業の地域的な会議といったものの二段構えとして、やってまいりたい。御指摘のように積極的に、こういう会議を逐次進めてまいりたいと思っております。
  45. 安島友義

    安島委員 もう来月あたりから来年度予算の概算要求が省内でそれぞれ検討が始まることだと思うのですが、藤井労相試案という形で、雇用問題に対しての非常に適切な提言だと私も思っているわけですが、これはどういう性格のものなんでしょうか。
  46. 藤井勝志

    ○藤井国務大臣 実は私、労働大臣になりまして、いろいろ雇用・失業情勢を理解を深めていくに従って、先ほどもちょっとお答えをいたしましたように日本の産業構造の基調の変化、それに伴う雇用基調の変化に対応するためには、従来の労働省だけの施策の推進、その枠組みだけでは、なかなか問題解決ができない。それかといって労働省として正式なルールに従って省内の意見を取りまとめて、労働省の見解ということに運びをつけるためには、各省庁間の事務的な積み上げをしなければならぬ、こういう行政事務執行のたてまえが当然あるわけでございますが、そんなことをしておったのでは、タイミングを失しないで問題解決の前進を図ることはできない。こういうふうにいろいろ考えておったやさき、実は党内に雇用問題対策の機関ができまして、この機関に、いわゆる政府・与党という立場でありますから、そういうところへ問題提起をするためには、やはり労働大臣試案という形で問題を提起して、党の方で、ひとつ各省庁にわたる問題の取りまとめをやってもらおう、そして同時に、また広く一般にも御提案を申し上げて、いろいろ皆さん方の御意見も拝聴する、そういうことをやって、だんだんにひとつ積み上げていって、五十四年度の予算編成においては、できれば、ある程度の方向づけがしたい。そして適当な時期には雇用問題閣僚懇談会の場においても、私自身が提言をする、お話をする、こういう考え方で労働大臣試案というものをつくり上げておる次第でございます。
  47. 安島友義

    安島委員 前に、ちょっと次官通知の内容で落としましたので、これは要望にしておきますが、特に残業削減とか有給休暇の消化という点では、日本の場合には今日のような状況の中では、個人個人が消化をしていくということに非常に制約条件があるのですね。ですから本来、法のたてまえからすると変則的ですけれども、やはりこれを行使していくためには、夏季休暇とか一時的に大体気がねなくとらせるような制度、そういう労使間の話し合いとかいうものをどんどん積極的に進める必要がある。あるいは一部の産業企業等で実施されているようなデータとか、そういうものを、これからのいわゆる労働問題懇話会とか、そういう各都道府県の労働基準局等で中心になって、こういう話し合いをする場合には必要なデータというものを十分そろえた上で話し合いを進められるような御指導をお願いしておきます。  いま大臣にお伺いしましたのは、来年度予算との関連においては、これらの具体化ということは各省庁にまたがる、いろいろな問題でございますが、これはどんな性格のものか。ということは、ただ単に社会的に労働大臣としての考え方を一般に説明するというだけでは問題があるわけですね。これをどう来年度予算の中で具体的な裏づけを図ろうとするのか。これはもちろん、すべてが取り入れられることは、なかなかむずかしいと思いますけれども、これらを今後具体的に、やはり来年度予算の中に盛り込まれるようなことを労働省として提言し、やるつもりなんですか。その点、お伺いしておきます。
  48. 石井甲二

    ○石井政府委員 ただいまの労働大臣試案の考え方につきまして、性格上、大臣がお答え申し上げたとおりでありますが、これをどういうふうに具体化するかという問題が次に残っているわけでございます。ただ、一読をされておわかりと思いますが、これは全体を整合的に、ばっとやるというような、一挙に実現するというようなことだけでは、物事は運ばぬという面もございます。労働省といたしましては、労働省で具体的に行政の内部でやれるものは大臣のお考えに沿いながら進めてまいりたいと思います。  それからもう一つは、先ほど大臣からお話がありましたが、自民党内でも雇用問題につきまして委員会をつくりまして、これを推進しておりますので、私の方でも大臣のお考えを御説明をしてございます。  それから政府部内におきましても、できれば各関係省庁と、できるだけ労働大臣のお考えを意思疎通を図りながら、具体的にどうするかということを含めて、これから検討してまいりたいというふうに考えております。  そういうことで、来年度の予算要求の中に労働省として、どういう態度で組むか、あるいは各省庁どの程度の対応が、具体的ないろいろな問題があると思いますが、その限界内で、これを実現できるかということにつきましては今後の問題というふうに考えておるわけでございます。
  49. 安島友義

    安島委員 私も、やや認識不足だったのですけれども、六十五歳以上の高齢者で働いているのは日本が一番多くて、二人に一人の割合で何らかの形で働いている。アメリカは二五%、西ドイツが一五%という状況だそうです。定年制が日本と比べて非常に長く、六十五歳以上でも働けるような状況になっているところの方で、働いているのは日本と比べると少ないという逆現象が出ている。これは日本のいまの社会保障というものが、やはり、いかにきめ細かく、こういう層にまで及んでいないかというのを如実に示しているということだと思うのです。しかも、こういうような非常に不況が深刻な、幾らか明るさを取り戻したとはいいながら、雇用環境というのは依然として、まだまだ低迷から抜け出していない。     〔羽生田委員長代理退席、住委員長代理着席〕 こういう中で、有効求人倍率は平均では〇・五でありますが、五十五歳から五十九歳の年齢では〇・二、六十歳以上になりますと〇・一、十人に一人、職を探してもやっとという、きわめて深刻な状況なんです。いままでも高齢者の再雇用という問題については、いまの労働省の施策というのは、いろいろなことを講じているけれども、どれも有効な施策とは言えない。これは行政指導という面でも不十分だという点もあるでしょうけれども、魅力がないというか、そういうようなものなので、これはたとえ一時的にせよ、もっと効果的な雇用奨励策としての機能を果たすような制度に、もっと改めるべきじゃないかということを、しばしば指摘しているわけなのですけれども、高年齢者層の雇用奨励策について、来年度予算要求について、あるいは、これまでのいろいろな施策というものをもっと見直して、重点的に問題をしぼって対策を講じようというようなお考えはおありなのですか。
  50. 細野正

    細野政府委員 御指摘ございましたように、高齢者の雇用問題は、今後急速に高齢化が進みますので、今後の私どもの行政における非常に大きな重点課題の一つということになるわけでございまして、本年度におきましても、御存じのように奨励制度についての大幅な増額を図る等の施策をやったわけでございますが、さらに財界の中にも、定年延長等を主な任務の一つとする高年齢者の雇用の開発のための団体というようなものをおつくりいただくとか、あるいは定年延長のための産業別会議をやるとか、いろいろなことを本年度において着手をいたしてまいりたい、こういうふうに考えております。さらに、お話の来年度につきましては、そういうものの推移を見つつ、かつ有効な施策というものを現在検討中でございまして、そういうものによって来年度におきましても一層強化をしてまいりたいというふうに考えておるわけでございます。
  51. 安島友義

    安島委員 高齢者雇用率の達成に対して、もっと義務づけるようなことは考えていないのですか。
  52. 細野正

    細野政府委員 雇用率の問題や定年延長の問題、いずれも先生御存じのように、わが国の賃金雇用慣行と非常に密接な関係がございまして、いわば定年延長とか高齢者雇用が進むための前提条件とも言うべきものでございますので、そういう面についての労使のコンセンサスづくりということが並行して進められなければならぬという状況にございます。そういう意味で、先ほど来申しましたように、財界側に定年延長等についてのやる気、それに伴ういろいろな問題を解決するためのやる気を持ってやっていただくということと、それから産業別に具体的にやれそうなところから私どもも積極的に働きかけていくというようなこと、そういうふうなことを進めてまいりたいというふうに考えておるわけでございます。
  53. 安島友義

    安島委員 雇用環境の悪化というものは、また大きな問題が出ているわけなんですけれども産業間の格差、労働条件等の格差、あるいは大企業と中小企業の間の格差が一時は縮まってきたのですけれども、また再び拡大してきている。特に先ほどもちょっと指摘しました女子労働者就労というのが非常に景気の安全弁、調整弁的な役割りで、少し忙しくなると女子就労者がふえる。しかし、大体において賃金はどこから比較してみても、これは低い層の部門ですね。  それから最近は、仕事量を確保するためのいわば出血受注というものが中小企業あるいは大企業の下請等で非常に活発に行われているものですから、結局、注文をとっても割りに合わないから、下請が、さらに孫請と言われているように、自分でとった注文を自分のところでやらないで、そこにまた出す。そうすると孫請の方が、さらに今度は家内労働の方に、それをまたおろして、やらせていくというふうな形で、どんどん工賃の低下というものが、低廉労働者の形態はいろいろありますけれども、すそ野が非常に広がってきている。表面の就労状況とか、失業者数が、先ほどから指摘しておりますように若干減る傾向にあるといっても、内在する問題は一層大きく、いろいろな面で出てきているわけですね。  あれもこれもで大変でしょうけれども、一つの方だけに目を向けていたのでは、また次の問題が出てくるということで、特に、いま家内労働等に対しての時間割り賃金なんというようなものは、ある程度そういう方針は出しているのですが、これは都道府県の状況で見ますと、ほとんど、そのとおりに守られているような状態ではない。こういうところから、私どもが常々主張しております最低賃金制というものは、こういう状況における一つの歯どめ的な役割りと機能を持たせるというようなことをしなければならない。と同時に、直接、最低賃金制の適用を受けないような労働者に対しても適切な措置を講じないと、この面から非常に大きな問題が出てくると思うのですが、これらの行政指導に対しては、どういう御見解なのか、お伺いしたいと思うのです。
  54. 森英良

    ○森説明員 御指摘のように大変雇用情勢が悪いわけでございますが、したがって雇用機会の増大ということが非常に必要でございますけれども、雇用機会さえあれば労働条件がどんなに悪くてもいいというものではないことは御指摘のとおりでございまして、したがいまして、私どもも最低賃金につきましては、労働者における一般の賃金水準と遊離することのないように、その動向に即応いたしまして改正を行う必要がありますので、これまでも公労使三者構成の最低賃金審議会に検討をお願いいたしまして、その御意見に従って適切な改定に努めてきておるところでございます。特にオイルショックの後の昭和四十八年以降におきましては、賃金、物価の動向を考えまして、最低賃金これは四百件ございますが、その大部分について毎年その改定を行っているという状況でございます。したがいまして、今後におきましても最低賃金審議会の御意見を十分尊重いたしまして適切な改定に努めてまいりたいというふうに考えております。  なお現在、都道府県の地域の全体に、全労働者に適用される地域包括最低賃金が四十七の都道府県全部に制定されておりますので、現在は、すべての労働者が最低賃金の適用を受けておる状況でございまして、最低賃金の適用を受けないという労働者は、ごく部分的な適用除外の関係で一応ございますけれども、一般的にはないという状況まで至っております。
  55. 安島友義

    安島委員 大分時間が迫ってきましたので御見解だけ伺っておきますが、雇用不安が特に深刻な沖繩とか北九州市、先ほどもちょっと触れました四国、瀬戸内海沿岸あるいは八戸、釧路、そのほかもありますが漁港等での、いわば特定地域の雇用対策として当然これは公共投資の重点配分であるとか、あるいは、いろいろな施策が併用されて雇用不安の解消に役立つわけですけれども、来年度予算編成の中で、これは単に労働省の問題としてではなくて政府として、これらの施策を考えるべきものですが、労働省としての立場からは、これらの特定地域における雇用不安を解消させるための地場産業の振興とか、あるいは公共投資の重点配分とか、その地域に対応したような産業振興の施策とか、そういう点はどういうふうに提言されるお考えでしょうか。
  56. 細野正

    細野政府委員 御指摘のように、今後における雇用問題の一つの大きな問題としまして、構造不況業種等が集中している地域の雇用問題というものは私どもとしても大きな関心を持っておるところでございます。そういう意味で、いま先生から御指摘ございましたような各省の協力も得まして、そういう地域の振興対策あるいは公共事業の重点配置、そのやり方についてのいろいろな工夫、そういったふうなこともやってまいりたいと思いますが、同時に雇用対策の面でも何らかの形で有効な対策を検討してみたいということで、目下検討しているという状況でございます。
  57. 安島友義

    安島委員 いま人をふやすということは、なかなか各省の増員要求というのが、いろいろな制約があると思うのですが、労働省は現在の非常に不安定な雇用問題に直面して、これまでの成長時代の中の労働行政とは本質的にもう違ってきているわけですからね。政府のいろいろな施策の中で労働省としての責任と役割りを果たすためには、こういうふうにしなければなりませんということをもっと積極的に要求すべきではないか。もちろん人の問題だけではないとは思いますけれども、特に出先機関等の場合は、これは職業安定所の場合でも、それから労働基準監督行政に対しても、それから労働省としてのいろいろな雇用奨励、いわゆる再雇用、特に老齢者の雇用の問題であるとか、あるいはその必要な助成措置とかいうような問題に対しても、これは人を集めて一片の説明をするというだけで終わっている限りは、本当の意味での労働行政にはならないのですね。ですから、それはただ単に増員によって解決する問題ではないと思うのですけれども、何といっても手が回らないというような状態がもしあるとするならば、その辺については、やはりしっかり、それぞれの労働基準局の状況を把握しながら、定員の確保ということに対しても積極的に要求していくべきではないのか、こう思うのですが、これは大臣としてどうお考えですか。
  58. 藤井勝志

    ○藤井国務大臣 私も、ただいま安島委員の御指摘のとおりの認識をしております。特に先般、院議をもって雇用安定に関する決議が超党派的に決定を見たわけでございまして、私はこの際、特に五十四年度予算編成をそろそろ始めなければならぬときになっておりますから、労働省だけでは、従来の手法からいいますと、どうにもならない問題が余りにも多過ぎるわけでございます。したがって積極的に各省庁と密接な連絡をとりながら、私は私で雇用問題閣僚懇談会の場において大いに推進をしたい、このように考えております。そして、これが執行体制につきましては、やはり人の問題が大切でございまして、人員確保という問題が必要でございますから、これまた前向きで推進をしたい。同時に、最近はコンピューター時代でございますから、機械化によって人が浮いた、それはできるだけ、ひとつより重要な部面に配置転換をする、こういうことも考えながら、御趣旨の線を踏まえて大いにがんばりたい、このように考えております。
  59. 安島友義

    安島委員 最後に、労働時間短縮、週休二日制についてお伺いしたいのですけれども、労働大臣のこれまでの委員会における答弁によりますと、労働時間の短縮、週休二日制という問題は、あくまでも、それぞれの産業企業の労使間において話し合いをすることによって実現を図るのが筋ではないかという御見解をお伺いしているわけなんですが、現在の産業界や日本の、いわば欧米とは違った労働組織というものを考えますと、私はそれが仮にたてまえであったとしても、そういうことをやっていたら、いつになったら、これが実現するのかということに非常に疑問を持つわけであります。  それから、現在の産業間にも非常に大きな格差があり、いま企業の立て直しだけで精いっぱいだというふうなところも、たくさんあるわけですから、そこを画一的に一日の労働時間は何時間にして、週五日制にしなさいということを私どもは要求しているわけではないのですね。やはり、こういう点は、やれるような状況にあるところでも、いま、すくんでいる状態ですから、そのためにも、少なくとも段階的にやれるところからやっていくためには、これから立法化を進める上においても、いろいろと問題になってくるでしょうが、三年とか五年とか、そういうような段階的な経過を踏まえながら、積極的に政府がそういう方向に持っていかない限りは、どうもこのままでいきますと、幾ら藤井労働大臣が、いわゆる輸出主導型という現在のような構造基盤の中では、いろいろ問題があるということを御認識しながらも、結局、輸出一辺倒の政策を続ければ、これはさらに外圧か加わり、そして、そのしわ寄せは中小零細企業ほど受けるというような悪循環を繰り返して、福祉型のそういう社会に向けて構造を転換するのだと幾ら口で強調しても、実際にはそういう形にはなかなか移っていかない。こういう点を考えた場合には、行政指導の限界というのは労働省自身が一番よく知っているはずだ。現在の状況において精いっぱいどんなに努力をしても、いわゆる行政指導にはおのずと限界があるということは労働省が一番御承知のはずだが、法制化と言っても画一的にやれと言っているわけじゃない。そういうことを具体的に政府部内で議論をする、あるいは与党の自民党の中で、こういうことを議論するような段階にもう来ているのではないか、そういう御認識には、いまでも、まだ立てないのでございますか。
  60. 藤井勝志

    ○藤井国務大臣 いまお話がございましたが、先ほど御指摘いたしましたように、すでに衆参両院の院議をもって労働時間対策についての方針が決定されたきょう今日においては、やはり前進があるのみであって、大いに具体的な進め方については知恵を使わなければなりませんけれども、もうすでに、この問題についてはルビコン川を渡ったわけでございますから後退は許されないというふうに思うわけでありまして、結局、労使の間にも労働条件の改善というのは賃金だけではない。労働時間も含めて、どのように生産性向上の成果を分配するか、こういう認識がだんだん高まってきておりますから、従来よりも一層濃密な行政指導によって院議の線に沿うた方向に労働行政を展開していきたい、このように考えておるわけでございまして、不況の現状から考えますと、いろいろな抵抗がございます。同時に、日本人の従来の長い生活態度というものは、かせぐに追いつく貧乏なし、こういうようなことで、確かに、その点をないがしろにしてはならず、また貿易立国である日本は基本的には働くということは貴重な生活態度だと思います。働き方について、われわれが知恵を使っていく、特にまた雇用の問題については経済の成長の状況というのが過去のような高度成長は許されないということになれば、いわゆるワークシェアリング、こういう思想を持って労使が問題解決に当たってもらう。その環境づくりを労働省は濃密に行政指導において展開をする。こういうふうに考えておる次第でございます。
  61. 安島友義

    安島委員 少し前後しますけれども、いまの景気が少し上向きになってさましたらば、産業間、企業間においては、まだまだ格差が見られますけれども、一部の産業企業では確かに仕事もふえてきている。ところが先ほどから指摘しておりますように結局、時間延長でカバーしているというのが、ほとんど同様の傾向になっているわけなんですね。ですから残業時間を削減するんだと言っても、高度成長時代のように月に三十時間、四十時間はあたりまえだという考え方を基準にして、残業時間の削減というのは、どの辺を目安にしているのかということになると、何時間が適切だと言えないにしても、少なくとも残業というものはなるべくやらないのだというのをたてまえにして物事の判断の基準にしないと、どうも残業削減でなくて、ある程度の残業は労働省も認めているんだというようなことになりかねないんですね。そういう点を考えても企業別の労使関係の中だけで問題を解決するというのはきわめて困難だということを、やはり十分その点を御認識の上、もっと強力な行政指導というものを進められるよう希望いたしまして、私の質問を終わります。
  62. 住栄作

    ○住委員長代理 次に、村山富市君。
  63. 村山富市

    ○村山(富)委員 いまも雇用問題を中心にした質疑がございましたが、最近の経済全体の動向等の見通しにつきましては、政府部内でも意見が対立しているようでありまして、やや景気は上向きの基調になった、こういう見解を述べるものもあるし、あるいは、そうではなくて、まだまだ本格的な景気回復には至っておらない。したがって補正で、もう一遍てこ入れをする必要があるんだ、こういう意見があるようでございます。しかし、いずれにいたしましても、景気回復をする基調になったから雇用がそれだけ拡大されるかといえば、最近の傾向としては必ずしもそうではないと思うのです。それはなぜかといいますと、やはり経済成長の中でふくらみ過ぎた施設やら、抱え込み過ぎた人員を、この際、整理をして身軽になって、いまの安定経済に処していこう、こういう経済界の意向、企業側の意向があるようですから、したがって必ずしも景気回復がイコール雇用の拡大につながらない、こういう状況になっておると思うのです。  そこで先般、労働大臣は個人的なものなのか何かわかりませんけれども雇用創出に対する対策案というものを出された、こういうお話も聞いておりますが、その考え方や問題点等について簡単で結構ですから御説明をいただきたいと思うのです。
  64. 藤井勝志

    ○藤井国務大臣 先ほども質問にお答えをしたわけでございますが、これは労働大臣としての公の立場を離れたいわゆる試案でございます。ただ労働大臣と試案だと言っても、これは体は一つでございますから、全く別というのではなく、この問題について私は大いに皆さん方の御意見も踏まえて、あの案をつくったわけでございます。ただ、この案に盛られておる問題については、詳細は省略いたしますけれども、各省庁にまたがる問題でございますから、たまたま党の方に雇用問題を取り扱う機関ができましたから、その機関に政調会を通じていま御審議を願っておる最中でございます。  同時に五十四年度の予算編成も始まらんとしておるわけでございますから、政府部内においても私は私で、雇用対策閣僚懇談会の場において、適当な時分には、ひとつ皆さんの御協力を得るべく話をさせてもらう考え方を持っております。同時に役所の方も、ひとつ事務方が横の連絡をとってもらう、こういうふうにして従来の労働省の雇用政策だけでは問題は解決できないという認識でありまして、その認識の前提は、やはり日本の産業構造の基調が変わってきておる、また変わらなければならない。その基調の変化に対応して雇用の基調も変化するわけでございますから、その変化に対応してマンパワーを適正に配置転換をしていく、そのためには職業訓練も含めて推進をする、こういうふうに考えておるわけでございまして、そのようなことをやるためには、やはり政府が基本方針ということについてコンセンサスを得なければなりませんから、大いに今後努力をしなければならぬ。また特に先般、院議をもって雇用安定に関する御決議をいただいたわけでございますから、そういうものも踏まえながら、ひとつ大いに精力的に私は私の立場で、できるだけの努力をいたしたい、このように考えておるわけであります。
  65. 村山富市

    ○村山(富)委員 雇用問題というのは、やはりあなたの文章にも書いてありますように、できるだけ失業者を出さないという対策を講ずることが大事であって、失業の予防。同時に失業者が出れば、その失業中の生活をどうして保障するか、あるいは再就職が可能になるような手だてをどう講じていくかということ。それからもう一つは、やはり雇用の場所を拡大する、最近の言葉で言えば雇用を創出をする、こういう具体的な政策を出していく。こういうことしかないと思うのですね。  そこで、雇用の創出を図っていくためには、緊急的、即効的に、いますぐ効果が上がる、こういう緊急的な対策と、それから、ある程度、長期的な展望に立った安定した長期の雇用を拡大していく、こういう二つの方法が考えられるということは当然だと思うのです。これは、いまもお話がございましたように、国会でも雇用安定に関する決議を本会議で全会一致でしているわけでありますから、国会の意思として雇用を創出をし、拡大、安定を図っていこう、こういう意思決定もなされているわけですから、それを背景にして、もっと強力に労働大臣は雇用の創出の方向に力を注いでいくということは大変結構なことだし、必要なことだと思うのです。いままで労働省がやってきたことは、言うならば受け身の姿勢で、失業者が出たら、どうそれを救済するか、こういう後追いのかっこうで事後処理をしていく、こういう政策が主体であったわけですけれども、この機会に、むしろ積極的に転換をしていく、こういう方向に変えていただきたいと思うのです。  そういう意味で、内容をつぶさに検討すれば、いろいろ問題はあるにしても、特に長期的な雇用の拡大を図る一つの方策として福祉型産業構造を支える職業をふやしていく対策、これは社会党が常々雇用創出に対する一つの案として国会にも出してありますけれども、それと考え方は大体同じではないかと思うのです。そういう意味では国会のコンセンサスも得られるのではないかと思いますから、せっかく考えたこの案を、どうこれから具体的に生かしていくのか。あるいは閣議決定を待ってやっていくのか。あるいは来年度予算に具体的に反映する手だてとして、どういう方法を考えているのか。この案を実現をさしていく手だてについて、どういうお考えなのか聞いておきたいと思うのです。
  66. 石井甲二

    ○石井政府委員 先ほど大臣からも申し上げましたが、この問題につきましては大臣がお答えしたような性格のものでございます。私が官房長としてブレーン的な立場として、いろいろ大臣のお考えに参加もしたことがございますが、その観点から申し上げたいと思います。  まず、これがどういうふうなことで実現に向かっていくかということでございます。私どもとしては、いろんな方向はあると思いますが、問題が非常に各省にわたっており、かつ中には非常にむずかしい、あるいは長期的な解決を要する問題もございます。したがいまして、これを各省が受けて立つような条件をつくり上げていく必要があると思いますが、労働省といたしましては、大臣のお考えに沿いまして、政府部内におきましても、できれば関連各省にこういう問題についての提起を行って、かつ、それぞれ行政的ないろいろな問題があると思いますけれども、できるだけ、その方向に持っていくようなコンセンサスといいますか、そういうものを具体的に図っていきたいというふうに考えております。  それから、もう一つは先ほど大臣からもお話がありましたが、たまたま自民党におきましても政調の中に雇用問題の委員会をつくっておりまして、これがまた、考え方あるいは物の見方といいますか、あるいは方向を検討する一つの意識といいますか、それが、この考え方の方向と非常に関連をした内容を持っている委員会なものですから、私どもの方でも大臣のお考えをその委員会にも御報告を申し上げ、御検討願っておるということでございます。  したがいまして、行政内部として、これに対してどういう対応をするかというのは、労働省が雇用という行政の主管官庁であるという立場から、まず関係各省に、この考え方の理解を図って、かつ具体的に、どういうところにネックがあるか、あるいは促進する場合に、どういう手だてがお互いに協調できるかという点を探ってまいりたいというふうに考えております。
  67. 村山富市

    ○村山(富)委員 これは、どの程度の現状分析をされ、試算をされて出したものかわかりませんけれども、たとえば、ここに書いてあるような施策が仮に行われた場合に、どの程度の雇用創出になるのか、どの程度の就労が確保されることになるのか、そういう試算はあるわけですか。同時に、この実現性については、どの程度の期待が持てるのですか。
  68. 石井甲二

    ○石井政府委員 この雇用創出策を作成する場合に、どれだけの具体的なデータなり、あるいは条件を設定しながら、ここに書いたかということでございますが、結論から申し上げますと、具体的に積み上げて、たとえば何万人という形までは実は考えた前提がございません。ただ問題は、先ほど大臣がお答え申し上げましたように、たとえば経済計画におきましても、あるいは労働省でお願いをしました雇用対策基本計画につきましても、一つの全体の成長率あるいは、その中での労働の供給、需要量というものをはじき出しておるわけでございます。問題は、根底にありますのは単なる有効需要なり、あるいは成長率対策だけではない。その内容については単一なものではない。先ほど大臣が申し上げましたように、産業構造の変化という問題、それに対応する労働力の創出の場を、その変化の中で求める、あるいは、それを労働力の配置という形で職業訓練を媒介にした一つの行動をする必要があるという意味での、いわば内容の一つの対応をするというふうに私どもは受け取っておるわけでございます。
  69. 村山富市

    ○村山(富)委員 これは単なる案を発表しただけでは意味がないので、その政策が実行されるということでなければ目的が達せられないわけですから、ひとつ大いに力を発揮して実現ができるように期待していますから、がんばってください。  それから、次に問題を移しますが、これはこの委員会でも何度か取り上げて問題にしてきたのですけれども、大分県の佐伯市、南海部郡一帯のじん肺問題です。これは最近の動向を見ますと、昨年五十二年の一月から十二月までの一年間に、すでにもう三十二名以上の死亡者を出しているわけです。ことしに入ってまいりましても一月から三月までに中名近くの方が亡くなっているわけです。これは大変深刻な問題でございまして、こういう事態がこれから二度と発生しないように、粉じん職場の労働条件なり、あるいは安全対策なりに万全を期してもらわなければならぬというのは当然の話でありますが、特に、それだけに、いま療養に努めておる、その人たちに不安のないようにしてやることが大事ではないかというように思いますから、そういう観点で幾つかの問題についてお尋ねをしておきたいと思うのです。  第一の問題は、今度じん肺法の改正をする際の審議の際にも、じん肺の患者同盟の方から出されておりましたが、とりわけ合併症の問題について、仮に療養して合併症である肺結核の方は治癒した。そして、じん肺の方は、そのために管理三になった。こういう場合に療養給付が打ち切られるのではないか、こういう心配と不安が出されておりましたね。それに対しては、そんなことはない、従前と変わらないのだ、こういう御答弁をいただいておるわけでありますけれども、いまだに、その心配と不安は解消しておらないようですから、その点について、まずお尋ねしておきたいと思うのです。
  70. 増田雅一

    ○増田説明員 いま、お話しのように昨年じん肺法が改正されたわけでございますが、新しい改正後のじん肺法によりますと、療養を要しますのは管理四と合併症にかかった者でございます。改正前のじん肺法は管理四の方について療養を要するとしていたわけでございまして、その旧法によりまして管理四の認定を受けまして療養を受けていた方につきましては、経過措置で、これは管理四である限り労災の療養の対象になるわけでございます。ただ、新法施行後に管理二または管理三の方が合併症になりまして療養を受けるような状態になった。そこで先生お話しのように合併症が治った場合には、これは新しいじん肺法によりまして療養を要する状態ではなくなりますので、新法によります方は、その場合に治癒ということに相なるかと思います。
  71. 村山富市

    ○村山(富)委員 そこらの経緯ですけれども、旧法の場合には合併症であるにしろ管理四になった人は継続して、ずっと療養を受けられる。新法、改正法では、仮にじん肺は管理三、合併症があって管理四で療養を受けている。そして療養をしている過程の中で肺結核の方ば治癒した。そうすると、じん肺ですから、管理三ですから打ち切られる。これは改正前の法の適用と改正後の法の適用と具体的に、どういうところに違いがあるのですか。違いがないのですか、どっちですか。
  72. 増田雅一

    ○増田説明員 実態的には変わりがないと思いますが、手続の面で、旧法の場合には、管理四と一度認定された方は随時申請その他、申請によりまして、じん肺の管理区分の変更を受けない限り一度決定された管理区分に、そのままいたということでございます。ただ、新法にばりますと、その辺が合併症の取り扱いが変わりまして、管理二あるいは管理三でも合併症を併発された方は療養の対象になりますが、その合併症がなくなったと認定された場合に治癒になるというふうに、申請によりまして管理区分の変更を受けないでも、その療養上の取り扱いが変わってくるということになっているわけでございます。
  73. 村山富市

    ○村山(富)委員 そうしますと、やっぱり改正前の法の適用と改正後の適用では違いがあるわけですね。これはいままでは三年と一年半という違いがありますよ。三年と一年半で傷病補償年金に切りかえられる。三年だったところが一年半になった、この違いがあることはよくわかりますね。だけれども管理四になって療養している合併症の方が、改正前の法の適用と改正後の法の適用とで、どういう違いがあるのか、そこのところをはっきり言ってください。あるのかないのか。
  74. 増田雅一

    ○増田説明員 旧法によります場合ば、管理区分が四になったといった場合には、これは純粋のじん肺で、いわばもう治らないような形のじん肺で管理四になってしまったという場合と、それから、いわゆる合併症を併発したために管理四になったという場合と二つ含まれておりました。ところが新法の場合には、その前者のみで、いわゆる単純じん肺でもって管理四になるということはあり得ますが、合併症につきましては取り扱いが異なりまして、療養を要するという点では同じでございますけれども、じん肺の方が管理二あるいは管理三であっても、肺結核等の合併症を併発した場合には、これを療養の対象とするというふうになったわけでございます。     〔住委員長代理退席、羽生田委員長代理着席〕 したがいまして合併症につきましては、じん肺の方は管理二あるいは管理三でございますから療養を要する状態にはないわけでございますが、合併症が治りました場合には、その限りにおいて療養の必要がなくなるというふうな取り扱いになったわけでございます。
  75. 村山富市

    ○村山(富)委員 ちょっと、どこに理解の違いがあるのかわかりませんけれども、合併症の範囲が広くなったということはわかりますよ。それは別として、ただ改正前の法律では、合併症の場合も含め、合併症の場合で管理四になった、あるいは、じん肺だけで管理四になった、こういう者が療養を受けられた。新法の場合には、その合併症の者が合併をしておる肺結核の方は仮に治った。そうしますとじん肺の方は管理三だあるいは管理二だ、こうなった場合に補償が打ち切られる。これは旧法の場合と改正後の場合と扱いが違うんですかと聞いているわけですよ。
  76. 増田雅一

    ○増田説明員 その限りにおきましては新法と旧法では取り扱いが異なっているということになると思います。
  77. 村山富市

    ○村山(富)委員 そうしますと、これはやはり当時、患者同盟の皆さんが心配されておった点は、そのとおりになるわけですね。ところが、その点は改正前の法律でも、やはり、そういう扱いがあったのではないんですか。たとえば合併症の場合に、肺結核の方は治って、じん肺の方は管理二、管理三になった。こういう場合にも、ずっと継続して補償給付はしておったのかどうか。それを今度は改正案では打ち切るようになったのかどうか。その点ひとつはっきりしてください。
  78. 桑原敬一

    ○桑原政府委員 このじん肺法の改正につきましては、当委員会で御審議いただきましたので改正の趣旨は御存じいただいていると思いますけれども、結局いままでは、じん肺になりましたら結果的に管理四になって、結局、治らないというかっこうになっておりました。こういうようなことでは予防法としては全く意味をなさないということで、じん肺法の改正を私ども考えたわけでございます。したがって管理一、二、少なくとも管理三のイで水際作戦をして、もう最終的に治らないような管理四にはしない、そういうようなことで、いろいろな手だてをした法律案の改正をしたわけでございます。したがって、患者同盟の方が御心配いただくような問題につきましては、既得権の問題もございますから、もうすでに、やむを得ず管理四になっておられますから治らない。したがって、そういう方たちについては、治らぬ以上はずっと療養をしていただく、こういうことで、きちっと割り切ったわけでございます。  今後の問題は、じん肺については管理一とか二というのは病気ではないわけでございます。ただ、いままでは結核だけが合併しまして、それがずっと予後が悪くて管理四になられたわけです。今度は御承知のように、肺結核以外に結核性胸膜炎とか続発性気管支炎とか続発性気管支拡張症とか続発性気胸とか、いろいろなそういうじん肺を進行させる合併症を早目に見つけて、そしてそれを治させる。治れば、もうこれはじん肺は進行しないわけでございますから、そういう割り切りをきちっとして今度の法改正をしたわけでございますから、いままでより悪くなることは絶対ない、こういう整理の仕方をしていることを御理解いただきたいと思います。
  79. 村山富市

    ○村山(富)委員 あと問題があって時間がありませんから、もうこれ以上突っ込みませんけれども、現実に、そういう不安があるんですよ。ですから一年半になって傷病補償年金に切りかえられるというときに、そこで合併症の場合に結核の方が治っておれば打ち切りになる、こういう不安を持っていますから、そこらの扱いについては、ひとつ不安のないように取り扱いに十分配慮していただくということをお願いしておきたいと思うんですね。  それからもう一つは、仮に管理三になった場合に、改正案ではイ、ロと区分しておりますけれども、いずれにしても作業転換をするわけですね。しなければならぬわけです。その場合に、いつかも言いましたように、同一企業内で作業転換のできる者はいいわけですよ。だけれども、できない者は、改正案では一年に一回健康診断を義務づけられるとか、あるいは粉じん職場でない作業場にかわるとかいうようなことができないものですから、もうあなたはやめてくれといって、やめさせられるケースがある。出かせぎ労働者の場合なんかは特にそうですね。そうすると作業転換はできないわけですよ。こういう場合が一つありますね。  それからもう一つは、いまお話がありましたように、合併症で療養を受けておって、そして肺結核の方は治癒して、じん肺の方は管理二になった、管理三になった。したがって療養を打ち切られた。こういう場合に、その人はまた、どこかの作業場に働きに行かなければならぬわけです。冒頭にお話し申し上げましたように雇用問題が非常に深刻ですから、雇う方も、言うならば、そんなきずのある人、厄介者を抱え込んで賃金を払うなんということをしなくたって幾らでもあるわけですから、再就職はきわめて困難だ、こういう状況に追い込まれておると思うんですよ、実際問題として。ですから私は、この際そういう人たちに対しては、仮に管理三で職場を離れて帰ってきた、あるいは療養を打ち切られて帰ったというような者については、希望すれば適当な職業訓練を施して、そして再就職がしやすくなるような手だてを講じてやる必要があるのじゃないかということを考えますが、その点はどうでしょうか。
  80. 野原石松

    ○野原政府委員 確かに先生いま御指摘されましたように、管理区分三の者に対して作業転換をするということを考える場合に、新しい仕事についての技能が十分身についていないということで、それが再雇用の妨げになるのではないかというふうに私ども考えるわけであります。そこで、そういう方々に対して一刻も早く新しい仕事についての技能を身につけさせる、こういうことが大事でありまして、そういう点については新しいじん肺法の中にも、事業者の義務として必要な教育を行うべしという努力規定はあるのですが、ただ、これだけではなかなか有効に機能しないということも考えまして、国としても、そういう場合の援護措置を講じたいということで若干の予算措置も講ずることができましたので、現在考えておりますのは、じん肺作業転換教育訓練援護措置制度というものなんですが、特に問題は中小企業に多いものですから、中小企業に働かれる、あるいは、そういうところへ再雇用される方々を対象にして、事業者に対して、そういう際の転換訓練というものを委託し、それに必要な一定額の補助措置をしよう、こういうことで、この規定を有効に活用してまいりたいというふうに考えております。
  81. 村山富市

    ○村山(富)委員 同一雇用主のもとで作業転換をする場合、その作業転換がしやすくなるように、いまお話がありましたように雇用主にある程度の援助をして、そして再訓練をして、粉じん職場でない作業場に転換をする道を図っていく、それは私は結構なことだと思うのです。だけれども私がいま申し上げましたのは雇用主がかわるんですね。それは本人は働くといったって、作業転換をする作業場がなければ働きようがないわけですから、したがって、あなた、もうやめて帰ってください、結構です。こう言えば解雇になるわけですよ。そして引き揚げて帰ってくる、こういう者もあるでしょう。それからもう一つは、いま申しましたように、療養を打ち切られて、粉じん職場でない作業場を見つけて働かなければならぬ、こういう人もあるでしょう。そういう者に対しては、まだ雇用主がないわけですから援助のしようがないわけですよ。ですから、そういう者については一定の期間、本人が希望する職業訓練を受けることができて、そして新しい技術を身につけて、どこかの作業場に働きに行ける、こういう再就職がしやすくなるような手だてを考えてやってもいいんではないか、必要があるのではないか、こういう質問ですから、どうですか。
  82. 野原石松

    ○野原政府委員 先ほど私が申し上げましたのは、同一企業の中で他の作業に転換をするという場合を主として考えておりましたが、確かに事業場を新しいところへ求めていくという再雇用の場合もかなりございますので、先ほど申し上げました同一企業内にこだわらず、先生指摘のような他に職を求める場合、まだ雇用主が決まっていないというような方々もあるわけですが、そういう者も含めまして、この制度をいかに適用するかということを考えたいと思います。
  83. 村山富市

    ○村山(富)委員 それはひとつ今後十分検討してください。これはいまのような深刻な雇用状況の中ですから、一層やはり再就職は厳しいわけですよ。しかも、やはり生活は困るわけですから、再就職が可能になるような手だてを、そういう方法を考えて講じてあげるということは必要だと思いますから、十分ひとつ検討してもらいたいと思うのです。  もう一つは、今度の改正された法律で、前にもございましたけれども若干範囲が拡大されまして、作業転換をする場合に作業転換手当を出すことになっていますね。これは基準局長が勧奨した場合、指示した場合、なっていますね。ところが、いま申し上げますように同一雇用主で同一企業内で作業転換をする場合に手当は出せるかもしれませんよ。しかし、やめて帰る者については扱いはどういうことになるのか。首になって帰る者ですね。特に、こういう隧道工事あたりの出かせぎに行っている者は、いま申し上げましたように、やむなく、やめて帰る方が多いのですよ。そういう者に対して作業転換手当というのはどういう扱いになるのか、その点ひとつ、はっきりしてくれませんか。
  84. 野原石松

    ○野原政府委員 御承知のように、今回のじん肺法の改正に伴いまして、従来は都道府県労働基準局長事業者に対して作業転換を勧告し、その勧告に基づいて作業転換を行った者に対し、平均賃金の三十日分の転換手当を出しなさい、こういうことになっておったのですが、今回これが三段階に分かれまして、管理三のイに該当する者につきましては、都道府県労働基準局長が作業転換を勧奨する。それからロの者、もう少し重い方ですが、この方に対しましては、一般的な努力義務として、そういう作業転換に努めなさいということが法律の中にうたわれまして、そのうちのさらに重い方々に対しましては、地方じん肺審査医の意見に基づきまして都道府県労働基準局長が作業転換を指示する。こういうふうに三つのケースに分かれて適用することになりまして、そのうち前の二つにつきましては、従来どおり三十日分が、後の基準局長が指示する場合の作業転換は倍の六十日分ということで転換手当も引き上げることになったわけです。これは、いま先生が御指摘のような出かせぎの方々あるいは、その他そこでやめていくという方々についても適用されるということになっておりますので、御心配の点はないというふうにお答えしたいと思います。
  85. 村山富市

    ○村山(富)委員 ちょっと確認しておきますけれども、やめて帰る場合、あるいは雇用主がかわった作業場に働きに行く場合、いろいろケースがあると思うのですよ。そういう場合も、もと使っておった雇用主が、作業転換手当を三十日分あるいは六十日分、条件に従って支給をする義務がありますね。それはそのとおり確認していいですか。それはイエスかノーかでいいですから。
  86. 野原石松

    ○野原政府委員 そのとおりでございます。これは法律をお読みいただくとわかるわけですが「常時粉じん作業に従事しなくなったとき」というとらえ方をしておりますので、そういったケースを含めまして、この対象になるというふうに御理解いただいて結構です。
  87. 村山富市

    ○村山(富)委員 それでは、それは継続して雇用される、されぬにかかわらず、どのようなことになろうとも、雇用主が三十日分、六十日分の作業転換手当を支給する義務がある。いいですね。
  88. 野原石松

    ○野原政府委員 はい。
  89. 村山富市

    ○村山(富)委員 次に、最近こういう方々から、こういう意見が出ているわけです。と申しますのは管理区分の認定について、改正前よりも改正後の方が検査の方法や判定の基準が非常に厳しくなったという声があるのですけれども、それは具体的に、どういうふうに変わったわけですか。
  90. 野原石松

    ○野原政府委員 じん肺の健康診断のお話でございますが、最近の医学の進歩、それから先ほども話がありましたように、今回の改正によって合併症はじん肺と切り離して定義をするということにもなりましたので、専門家の御意見をいただきまして、じん肺健康診断、いろいろな検査をやるわけですが、その検査の体系とか、あるいはやり方というものを改めております。特に肺機能検査でありますが、これにつきましては、できる限り肺機能障害というものを客観的に評価し得る方法というようなことで、たとえば動脈血ガスを分析する方法というようなものも今回新しく導入したわけであります。  ところで、そういうふうに多少やり方を変えましたので、判定の基準も変わるわけでありますが、特に肺機能検査につきましては、じん肺の有所見者の方々につきまして、いろいろな肺機能障害を検査の結果、詳細に検討いたしまして新しい基準を設けたわけであります。ただ、結果的に見ますと、前のものと比べて肺機能障害を判定する基準による障害の程度というものは、ほぼ同じだ、従来のものよりも今回のやり方によって答えが厳しく出るというようなことはないということをお答えいたしたいと思います。
  91. 村山富市

    ○村山(富)委員 これは非常に専門的な話になるものですから、ここで議論をしても仕方がない面があると思うのですけれども、ただ一般的に、そういう声があるのですよ。これは変な話ですけれども、申請する側では、管理三では、さっき言いますように作業転換するだけであって、療養を受けられぬわけですから、もういっそのこと管理四にしてもらいたい、こういう要望が強いのですね。それだけに、改正前の扱いよりも改正後の扱いの方が厳しくなったから、それは今度管理四にはならぬぞ、こういう不安と心配を大変皆さん持っておられます。ですから、医学の進歩に従って検査をする部面がふえた。そのことは逆に言えば、いい意味で解釈すれば、救済される部面が広がったというふうに理解すればいいわけですけれども、そうは必ずしも思っていない。否むしろ、なかなか厳しくなったから判定がむずかしいよ。それは管理四になんかならぬよ、こういう意見の方が強いものですから、そこらの点はひとつ不安のないように、扱いについても配慮していただきたいというように思いますね。  それからもう一つは、その一つの例として、こういうことがあるわけですよ。たとえば、さっきの合併症じゃありませんけれども、肺結核なんかの合併症の場合には、結核予防法に基づいて本人が知事に申請をする。そして保健所に審査会がありますから、その審査会にかかって知事が決定をした者でなければ認めない。こういう扱いをしている向きがあるというのですね。そんな事実がありますか。     〔羽生田委員長代理退席、委員長着席〕
  92. 野原石松

    ○野原政府委員 御承知のように結核で治療を要するか否かということは、じん肺に合併した結核だということになれば当然、要療養ということになりますので、先生指摘のように結核予防法に基づいて知事が決定をした者だけが療養の対象になるというような事実はないと私ども考えております。そういうことにはなっていないと思います。
  93. 村山富市

    ○村山(富)委員 これは不安を解消する意味で、やはりここで明確にしてもらう必要があると思いますから、なければないと……。  それから、こういう事例があるわけですよ。旧法で言いますと三年、改正案では一年半で傷病補償年金に切りかえられるという場合に、障害等級が決められますね。その等級を決めるのに写真の判定だけで決めるのは、やはり無理があるのではないか。これは具体的な事例がありますけれども、具体的な事例は申し上げませんが、たとえば傷病年金に切りかえられて一年もたたないうちに、じん肺で亡くなったというような人が障害三級であったというようなことは、ちょっとおかしいのではないか。そういう事例がありますから、そういう切りかえの場合には写真の判定だけでなくて、どういう点が考慮されて判定をされておるのか、その点ちょっと聞かしてくれませんか。
  94. 増田雅一

    ○増田説明員 いま御指摘のような傷病補償年金の格づけ、私ども廃疾等級というふうに呼んでおりますが、その場合には決して写真のみではやっておりませんで、主治医のいままで診ました診断の状況その他を十分考慮して廃疾等級の格づけを行っております。
  95. 村山富市

    ○村山(富)委員 これは現実に、そういう事例があるものですから、具体的な問題については後でまた申し上げますけれども、十分ひとつ、その点も配慮して、扱いについては慎重を期してやってもらいたいというふうに思います。  それからもう一つは、こういうじん肺患者等々の重度の方には就学援護費というのが出ていますね。この就学援護費を単に一部の重度の者だけでなくて、少なくとも、さっき言いました傷病補償年金三級の場合の方にも支給ができるように対象範囲を拡大してもらえぬだろうかという要望が強いのですけれども、それはどういうふうになされていますか。
  96. 増田雅一

    ○増田説明員 労災就学援護費につきましては、これは非常に重度の傷病にかかられている方、重度の障害を残す方、それから遺族補償年金を受けている方、そういう方々の子弟に支給しているわけでございます。  そこで、じん肺の場合でございますが、廃疾等級三級に該当するじん肺にかかられた方にも一部支給しております。と申しますのは、これは合併症の場合には治った場合に、この就学援護費が障害等級の一−三級という非常に重い方にだけ差し上げるということの均衡からいたしまして、合併症が治った後に管理二、三になって、障害等級三級以上にならないような方には、やはり均衡上差し上げられないということで、そういう方々には支給しておりませんけれども、単純じん肺でもって、仮に治癒いたしましても障害等級三級以上になるというふうに見込まれる方には支給をしております。
  97. 村山富市

    ○村山(富)委員 これは、仮にいま療養をしています。そして、この方は、あと一年もすれば管理二か三になって働くことができる、こういう人は対象にしない。いま、そうですね。ところが、必ずしも一年か一年半後に、その方がそうなるとは限らぬわけでしょう。ですから言うならば、いま療養を受けている方に対しては、もうはっきり本人が私はよくなります。医者も言っているし自分もそう思っているというようなものは別にして、ちょっとわからぬというようなものについては、やはり十分恩恵を受けられるような扱い上の配慮をしてやる必要があるのではないかというように思いますから、この線引きは実際には大変むずかしいと思いますけれども、できるだけ恩恵を受ける範囲を拡大してあげるということに、もう少し前向きに検討してもらうということを要望しておきたいと思うのです。これはここで余り詰めたって結論は出ないでしょうからね。  それから次に、先般、宮崎県の松尾鉱山に調査に参りましたので、その調査時点で若干問題になっておりました点について御質問しておきたいと思うのですが、労災保険では、休廃止鉱山等で法施行前に就労して法施行後に職業病が発現した、こういうものについて療養等の特別の援護を行っているわけですけれども、療養の費目を除き援護額がきわめて低額になっておる。そのために生活にも困るし療養にも専念できない、こういう実情があるということが訴えられているわけです。したがって、そういう方々も、ある程度、安心して療養に専念できるような手だてを講じてあげるという意味で、援護費の引き上げを図ってもらいたい、こういう要望が強いのですけれども、この点はどうでしょうか。
  98. 増田雅一

    ○増田説明員 先生御承知のように、労災保険の場合は、法施行前に傷病にかかられた方につきましては、これは法制定時の附則によりまして、そういう方々の補償を引き受けておりませんので、そういう法律上の制約と、それから保険の原理上から、法施行前の方々についての補償は行うことができないわけでございます。しかし、そういう方々が現実におられまして、松尾鉱山の場合にも何人かそういう方がおられまして、非常に療養の面でお気の毒な状態にあるということでもございますので、労働福祉事業の一環といたしまして、特別援護措置ということで、療養と若干の療養雑費を差し上げておるわけでございます。  いま先生御発言の療養雑費につきましては、余り高額というふうには申し上げられませんが、私どもといたしましても毎年その引き上げには努力しておるわけでございます。大体五千円から二千円の幅で毎年引き上げてきておるわけでございますが、ただ、類似の制度がございまして、たとえば原子爆弾の被爆者に対する特別措置に関する法律、それから公害健康被害補償法というようなそれぞれの法律等に基づきます類似の制度がござい・まして、やはり予算的には、そういう点と足並みを合わせるという必要がございますので現状の額にとどまっているわけでございますが、なお今後とも、その引き上げについては努力してまいりたいと思います。
  99. 村山富市

    ○村山(富)委員 次に、労働省が先般、労災の診断サービスというのをあそこでやっていますね。その結果を公表しているわけですが、砒素中毒の身体に及ぼす影響をごく小範囲に限定しているのではないか、こういう理解をされているわけですね。それで、こういう患者が自主健診をやって他の大学や病院等で健康診断をした結果と大きな差が出ている。たとえば心疾患とかあるいは造血器の障害とか肝臓、腎臓等の障害とか、それから胃腸障害等が砒素の影響によるというところが多く研究結果として発表されておる。こういうものと今度、診断サービスでやられた健診の結果とは大分内容的に違いがある。これはやっぱり砒素中毒の認定要件があるのですね、この要件に縛られ過ぎて、ごく小範囲に限定されているのではないか、こういうとらえ方をしているわけですけれども、この認定要件の扱い方あるいは今後の再検討等については、どういうふうにお考えですか。
  100. 増田雅一

    ○増田説明員 砒素その他の化学物質の中毒等につきましての認定につきましては、私ども従来から認定基準等を設けまして認定に努めてきたわけでございます。ただ、今回の松尾鉱山の診断サービスの認定要件につきましては、これは御承知のように環境庁のつくりました認定要件に従っておるわけでございます。私どもといたしましては先般、職業病の範囲を決めております労働基準法施行規則三十五条の改正をいたしまして、そういう中毒等につきましても大幅に現状を見詰め直した改正を行ったわけでございますが、今後とも、その見直しを行っていくとともに、認定要件等の整備を行っていきたい。砒素中毒等につきましても、その中で、そういう認定要件なり何なりの整備を図っていきたいというふうに考えておるわけでございます。
  101. 村山富市

    ○村山(富)委員 環境庁がつくっている認定要件というのは、これは三要件があるとか言っていましたね。これはやっぱり絶対的なものなんですか。
  102. 増田雅一

    ○増田説明員 ただいまの医学水準においては、私ども一応至当な条件ではないかというふうに考えておるわけでございます。
  103. 村山富市

    ○村山(富)委員 そうしますと、労働省が認定する場合の要件も、その三要件を絶対要件として扱っていますか。それはどうですか。
  104. 桑原敬一

    ○桑原政府委員 松尾鉱山のこの問題につきましては、非常にそこの地域の社会におきましても重要な問題でございましたので、私ども十分な準備をしながら、また、そういう人たちについて、その後のアフターケアもやってあげなければならぬというようなことで、やってまいりました。それで、環境庁の基準が絶対かというお話でございますが、いまの医学の知見では非常に客観的な基準ではないかと思っております。ただ、私どもにも労災関係の専門家がおられますので、一、二その環境庁の基準を広げて判断をいたした経緯がございます。
  105. 村山富市

    ○村山(富)委員 さっきも、ちょっと触れましたように、砒素中毒が影響して他のいろいろな障害が起こってくるという、影響の範囲というものは相当拡大された解釈をしているお医者さんもおるし、専門家、学者もおるわけです。ですから、これは絶対的な基準というのは、なかなかむずかしいと思います。ですから、単に環境庁がつくっている基準だけが絶対なものではなくて、やはり、いま局長言われましたように労働省には、それぞれ専門のお医者もおるわけです。専門家もおるわけですから、この認定の基準については相当弾力性を持った専門家の意見というものも取り上げながら、やっていく必要があるのではないかというように思いますから、今後の検討課題としても十分検討していただいて、要はやはり、そういう患者が救済されていけばいいわけですから、そういう前提に立って今後の運用も前向きに検討していただきたいというように思います。  それから最後に、いまの問題と関連をしまして、私も現地に行って見ましたけれども、この診断サービスの結果、個人別に通知を出しておるわけですね。その通知書は、もうごく簡単に、ほっと結果を書いてあるだけです。そこで受け取った方々は、健康障害の種類やら程度やら、どういう診断をして、こういうことになったのか、砒素中毒との関連は一体あるのかないのか、そういう点がきわめて不明確で、あなたは砒素中毒との関係はなし、こう書いてあるだけで、私も見て、これは余り不親切過ぎるのではないか、こういうふうに思いました。これはいろいろプライバシーの問題やら、お医者さんの判断の問題もあるでしょうから全部内容まで公にすることはできませんけれども、本人が希望する場合には、やはり本人に、あなたはこうこうこれで、こうなんですという臨床の所見やら分析の結果等について知らしてやってもいいのではないかというように思いますが、その点はどうでしょうか。
  106. 増田雅一

    ○増田説明員 今回の診断サービスの結果につきましては、私ども、旧松尾鉱山元労働者の砒素中毒に関する検討委員会の診断の結果を、そのまま御通知申し上げたわけでございます。なお、この検討委員会が行いました臨床所見等の詳しいデータにつきましては、検査実施医療機関が保管しているものでございますので、そういう被災者の方の主治医等が療養管理上必要であるというふうなことで要求がありますれば、データ保管者への照会等の労を私どもはいとわないものでございます。
  107. 村山富市

    ○村山(富)委員 それではひとつ積極的に、もし、そういう申し出があれば、本人も安心できるような、安心と信頼が持てるような手だては講じてやる必要があるというように思いますから、そういう扱いをしてもらいたいと思うのです。  さっき申しましたように、自主健診をした結果と今度の診断サービスの診断の結果とは大分内容的に違いがあるものですから、それだけに不安を持つ。そして監督署に行って、だれが調べたのか、健診したのか、お医者さんの名前を知らしてもらいたいと言えば、それは言えません、こう言うものだから、そら見ろ、秘密にするじゃないか、こういうことで疑念が疑念を生んでいく、こういう結果になるので、そういう点はやはり心理的なものもありますから、扱いについては十分配慮して、やはりお互いに信頼関係を持っていくことは大事なことですから、そういう意味の配慮もひとつ十分した上で扱ってもらいたいと思うのです。  以上、具体的な結論の出ない問題もございますけれども、要は、こういう悲惨な状況が生まれてこないようにすることがやはり大事ですから、災害の予防についても、あるいは不幸にして災害が起こって患者が発生した場合にも、あるいは、その患者が治って再就職をする場合といったようなことを一貫して、しっかり保障していく手だてを考えてやるということが大事だと思いますから、今後もっと積極的に、こうした政策を推進されるように、心から皆さん方の御健闘を期待しながら質問を終わります。
  108. 木野晴夫

    木野委員長 この際、午後一時三十分まで休憩いたします。     午後零時二十五分休憩      ————◇—————     午後一時三十三分開議
  109. 木野晴夫

    木野委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  労働関係基本施策に関する件について質疑を続行いたします。古寺宏君。
  110. 古寺宏

    ○古寺委員 二百海里時代に入りましてから、北洋漁場などから締め出されました北転船などに対しまして、千三百四十二億円の減船漁業者救済費交付金というものが交付をされておりますが、この交付の要綱を見ますと、これは五十二年八月二十三日の水産庁長官の通達でございますが、この交付金の中には労務費が含まれていることになっております。     〔委員長退席、越智(伊)委員長代理着席〕 しかし現在、私どもがいろいろお聞きしますところによりますと、まだ全然、乗組員に対して労務費が交付されていないというお話をしばしば承るわけでございますが、この補償の対象の減船の中で、交付した船が何隻で、現在、交付されていない船が何隻あるのか、その点について水産庁から承りたいと存じます。
  111. 松浦昭

    ○松浦説明員 お答えいたします。  昨年の日ソ漁業交渉の結果によりまして、先生指摘のように、約一千隻の減船を行いまして、その所要交付金も一千億以上ということで交付をいたしたわけでございますが、その交付手続はすでに全部完了いたしております。ただ、交付された金をもとにいたしまして、船主が労働者、従業員の方に、その内容でございますところの給与の一部その他を支払う、その手続が済んでいないという件数が若干あるわけでございます。私ども水産庁の方に上がってきております件数では、サケ・マスに関しまして数件ございます。また、沖合い底びき漁船あるいは北転船等につきましては、ほとんど片づきましたが、まだ一件、片づいていない、そのまま、まだ労使の間で話し合っているものがあるというふうに聞いております。
  112. 古寺宏

    ○古寺委員 私が新聞等報道によりまして現在、八戸の関係だけで調べてみましても、第五久栄丸、これば沖底の百二十四トン、第一三島丸、八戸母船式サケ・マス九十六トン、第三十八幾久丸、八戸母船式サケ・マス九十六トン、第三長運丸、八戸中部転換船、第八新興丸、八戸沖底百二十四トン、こういうように八戸だけでも五隻ございます。あなたのお話の内容によりますと、ほとんどが交付が済んでいるというようなお話でございますが、北海道あるいは東北各地においても、まだ未交付の船主が相当ある、こういうふうに承っているわけでございますが、調査が私は不十分だと思いますので、今後早急にこの実態を把握されて、適切な指導をしていただきたいと思います。  そこで、お聞きしたいのですが、たとえば塩釜の第八三吉丸、会社の名前は丸恵会社、代表者は中林秀雄さんという方でございます。ここでは五億交付金を受け取っていながら、実際には名目上の減船であった、こういうふうに言われておりますが、この内容については御承知でございますか。
  113. 松浦昭

    ○松浦説明員 お答えいたします。  ただいま先生おっしゃられました宮城県の塩釜の船につきましては、水産庁まで報告が上がってきておりません。私ども存じておらないわけでございます。宮城県につきましては、石巻地区の北転船について問題があったということは前に聞いておったのでございますけれども、これは大体話し合いがつくということを聞いておりまして、ただいま御指摘の塩釜の船については、水産庁に報告が上がってきていない状況でございます。
  114. 古寺宏

    ○古寺委員 こういうふうに交付金を受け取れないような減船をして政府の救済金を受け取っておる。こういう事例に対しては、水産庁はどのように対処するおつもりですか。
  115. 松浦昭

    ○松浦説明員 お答えいたします。  当該事案が、いかなる理由によりまして本来、交付金の対象とできないような減船者であったかということにつきましては、つまびらかでございませんので、よく調査をいたしたいというふうに考えます。
  116. 古寺宏

    ○古寺委員 それと、同じく八戸の第五久栄丸の場合には乗組員が全然いない。それで減船の交付金が交付されているわけです。こういう交付の仕方でいいのですか。
  117. 松浦昭

    ○松浦説明員 われわれが交付金を交付いたしました際には全部、都道府県を通じましてチェックをいたしまして、現実に休漁をいたし、かつ減船をしたものに交付をいたしているつもりでございまして、さような事例があるとは私どもも全然存じておりませんでした。なお、その点につきましては、御指摘でございますので調査をいたしたいと思います。
  118. 古寺宏

    ○古寺委員 知らないというのはおかしいじゃないですか。貴重な国民の税金を交付金として支払うわけですから、乗組員がいない船に対して救済費交付金を支払うというのはおかしいじゃないですか。
  119. 松浦昭

    ○松浦説明員 ただいま先生指摘の船につきましては、私どもに報告が上がってきてない船でございまして、いかなる事態になって、そういうことになったかということはつまびらかではございません。もとより全然乗組員がいない場合には船が休漁しているはずもないわけでございまして、当時は当然、船に乗組員が乗っていたというふうに考えているわけでございますが、なお内容がよくわかりませんので、よく調査をしたいというふうに考える次第でございます。
  120. 古寺宏

    ○古寺委員 そこで、今回の日ソ交渉によりまして、また三割の減船が行われたわけでございますが、今回のこの日ソ漁業交渉による減船に対する補償は、いつごろ行われる予定でございますか。
  121. 松浦昭

    ○松浦説明員 今回の日ソの協力協定交渉によりまして、特にサケ・マスにつきましてはクォータ量も四万二千五百トンということで三割の減になっておりまして、その結果、はなはだ残念なことでございますが、母船式独航船及び基地式独航船につきましては三割の減船をせざるを得ないということになりまして、関係者の努力によりまして、ようやく船は出港いたしたという状態になっております。  残っておる問題は、ただいま先生指摘の救済対策でございまして、これにつきましては誠意を持って、できるだけの措置を講じたいと考えておる次第でございますが、時期につきましては目下準備中でございまして、できるだけ早く交付をいたしたいというふうに考えている次第でございます。
  122. 古寺宏

    ○古寺委員 その際、昨年の事例から申しまして、乗組員に対して実際に政府交付金がまだ渡っていないというケースがたくさんあるわけです。これが労使紛争の原因になっているわけです。こういう問題を解消するために、労務費に対しては、きちっと、これこれの比率によって支払いをすべきだという具体的な内容というものを私は明示すべきだと思うのです。しかも今回の場合は、もう昨年と違いましてサケ・マスに限定されておりますので、業種も三業種くらいでございますから、そういう内容について具体的に、どのように船主と乗組員と配分すべ雪か、きちっと明示をして、そういうような紛争が起きないように、これから指導していかなければならないと思いますが、いかがですか。
  123. 松浦昭

    ○松浦説明員 労務費につきましては、昨年も給与、退職金あるいは船員保険料及び食糧費を織り込んで交付金を決めておりまして、さらに、給与につきましては準備期間については固定給あるいは漁期間の分につきましては固定給プラス歩合給の一部ということで交付をいたした次第でございます。また退職金につきましても固定給に歩合給の一部を加えた額の二カ月分ということで算定をいたしたわけでございますが、具体的な労使間の話し合いにつきましては、実際この給与相当分あるいは退職金分を幾ら見るかということにつきまして、やはり労使間でよく相談をしていただくということが大前提であろうと思います。  特に、ただいま先生サケ・マスとおっしゃったわけでございますが、サケ・マスは御案内のように裏作がございまして、あるいは大目流しとかあるいはサンマその他の漁業に従事する場合もございます。また漁業の経営形態ごとに、かなり給与の内容、歩合給、固定給の比率等も異なっておりますので、余り画一的な指導をいたすことは必ずしも労使間の問題をうまく片づけるのには役立たない場合もあるのじゃないかというふうに考えておりますが、しかしながら当然、私どもといたしましても状況に応じまして、この労使間の話し合いを円滑に進めますために、必要がありますれば関係団体あるいは関係都道府県を通じまして指導していきたいというふうに考えております。
  124. 古寺宏

    ○古寺委員 そういう具体的な内容につきましては、よく検討なさいまして、問題が起きないように、はっきり明示をして、しかも、いつならいつまでに乗組員に支払いを完了するというふうに期日等についてもきちんとして交付をすべきだ、こう思いますので、よろしくお願いしたいと思います。  次は着底トロールの問題でございますが、一時、日ソ漁業暫定協定に基づきまして着底トロールは操業できないというようなお話がございました。その後、大陸棚資源その他の問題を条件として付しまして一応操業ができるようになったわけでございますが、八月から、また、この着底トロールの操業が始まるのですが、これの見通しと、それから今年の十二月には、また暫定協定が更新されることになりますが、来年度の見通しについて承りたいと思います。
  125. 松浦昭

    ○松浦説明員 いわゆる着底トロールの禁止問題は、ことしの三月に協力協定、特にサケ・マスの交渉をやっておりましたところが、突如ソ側が言い出しましたことでございまして、実は私も、その交渉を現実に担当しておったわけでございますが、本来、去年の日ソ交渉及びソ日交渉におきまして着底トロールの問題は完全に解決がついていたと思っておりましたところ、ソ側が新たに、この問題を持ち出したわけでございます。そこで鋭意交渉をソ側と進めまして、その結果ただいま先生おっしゃられましたように大陸棚資源、特にカニ、ツブ等の資源でございますが、これらの資源を混獲するような状態になりました場合には船を移動させるとか、あるいは漁具をかえるといったようなことを約束いたしまして、また大陸棚資源をとりました場合には直ちにこれを海中に返すということを条件にいたしまして、本年いっぱいは着底トロールにつきましては、その操業がソ連の二百海里内において行われ得るようにいたしてございます。  問題は先生指摘の第二点の明年以降がどうなるかということでございますが、ことしの十一月の十五日までに双方の代表が集まりまして、明年の日ソ及びソ日の両協定につきましてのクォータその他の規制措置を討議することになっております。その場合に着底トロールの禁止問題が蒸し返されないかどうかということでございますが、私どもの予想といたしましては、ことし、あれだけのきつい態度でソ側が出てまいりましたので、やはりこれを恐らく持ち出すのではないかという予想をいたしております。特に問題は、日本の二百海里におきましてもソ側の着底トロールを禁止している水域がございますので、それとのいわばレシプロシティーと申しますか相互主義による問題点というものが浮かび上がってくるのじゃないかというふうに考えておるわけでございますが、われわれといたしましては、とにかく、ことしこのようなことで大変な議論の後に、ようやく、この問題を解決いたしましたので、何とか明年もこの方式で継続をいたしたいというふうに考えている次第でございます。
  126. 古寺宏

    ○古寺委員 これは何日か、ちょっと忘れましたが四月に、やはりツブとか、あるいはカニとか海草とか、そういうものが混獲されて罰金を取られている例がございますね。現在の漁法でもっと大陸棚資源と混獲しない操業ができるのでございますか。
  127. 松浦昭

    ○松浦説明員 現在の着底トロールの方式によりますと、率直に申しまして大陸棚資源を混獲しないという保証はございません。したがいまして、今回の着底トロールの交渉の妥結の結果は、混獲をいたしましても、その混獲が非常に多い状態になりましたら場所を変える。あるいは、とりました混獲物を海中に返すということを条件にいたしまして着底トロールを継続するということでございます。したがいまして、大陸棚資源が若干入る場合には、これを海中に返せば、それで、なお操業ができるという状態になっております。
  128. 古寺宏

    ○古寺委員 それは非常に不可能に近い操業ではないかと私は思うのですが、きょうは時間がございませんので次に進みます。  青森県の例で申し上げますが、この六月に近海の着底トロールを許可するというお話を承っておりますが、戦後この近海の沿岸漁業の資源を守るために、これは禁止してきたわけです。それを、いま近海トロールによって、これを漁獲するということになりますと、せっかくつくりました魚礁も根こそぎ枯渇をする、そういう心配があるわけです。こういう面に対して水産庁は、沿岸漁民を守るために、あるいは資源を守るために、どういう指導をしたり、どういう協議に基づいて今月から解禁をするのか、その理由をひとつお話ししていただきたいと思います。
  129. 松浦昭

    ○松浦説明員 お尋ねになりました件は、恐らく今回、青森県の前浜の深海部をトロールで試験操業してみるというお話だろうと思います。この試験操業の許可は現に水産庁に上がってきております。この申請の内容を見てみますと、第一は操業海域は深海五百メーターよりも深いところというところでございまして、非常に深いところを引いてみるということでございます。それから、かつ距岸十二海里から外ということになっておりまして、このようないわば未利用資源と申しますか、海外の二百海里の資源が、なかなかわが方で獲得できない状況のもとにおきまして、わが国の中の二百海里の資源を開発したいということから青森県が申請してきたものというふうに考えている次第でございます。  私どもといたしましては、かようないままで利用していない資源というものを開発することにつきましては積極的な意思を持っているわけでございます。ただ、お話のように、これが沿岸との関係で非常に大きな紛争を生ずるというようなことになりますと大変なことであるというように考えまして、ただいまのように深海の水深五百メーター以上あるいは十二海里以遠の海底ということであれば、沿岸との調整もかなり図り得るのではないか。それから延べ操業日数も三百日隻ということで、きわめて限定されておりますし、かつ、この試験操業は六月末までということで、ごく短期間の操業でございます。したがいまして、わが方といたしましては、この試験操業につきましては、さらに沿岸漁民の御心配につきまして十分に青森県にもただしまして、私ども伺っているところでは、青森県が六月二日に沿岸の方もお集めになって十分その了解をとっているというお話でございますけれども、なお念を押しまして、沿岸の方々の御心配がないという状態になりますれば、これにつきまして許可をいたしたいというふうに考えている次第でございます。
  130. 古寺宏

    ○古寺委員 いままでも一隻か二隻の密漁船がこういう操業をしましても、沿岸漁民は非常に神経質になっているわけです。戦後三十年間せっかく一生懸命資源を守ってきたのに、試験操業という名目のもとに、一遍にこれを根こそぎ荒らすということは、これは許されないことだと思うのです。そういう面につきまして、十二分にその点を配慮して、今後紛争が起きないように、問題が起きないように、その上に立って許可を与えるようにしていただきたいと思います。  次は、特に漁船も含めまして船員の離職者が多いわけでございますが、海運局の船員職業安定係という方が一人しかいらっしゃらないのですね、支局やいろいろなところを回りますと。そのために、業務が多過ぎて十分に離転職の問題、就職のあっせん、相談その他ができないような実情になっているわけです。非常に過重な労働になっているわけです。これはやはり船員の離職者を再就職させるとか、あるいは職業を転換する、いろいろ職業相談に当たるためにも、もう少し増員をして、離職された方々のめんどうを見るような体制をつくらぬといかぬと思うわけでございますが、これの体制が非常におくれているようでございますが、海運局の方に、今後どうするのか、その対応策を承りたいと思います。
  131. 松木洋三

    ○松木説明員 ただいま先生指摘のように海運局、支局におきます船員職業安定所の体制は決して人数が多いわけでございません。ただ、現在までの体制は、通常の職安業務に対応できるように重点的に配置してまいってきたわけでございます。今回の北洋関係離職者が多数、一時に発生するということでございまして、私どもといたしましても、本年度、東北地区におきましては特に新たに職安業務を開設する支局を二カ所ふやしたというようなことを含めまして、増員も若干でございますが、いたし、さらに定員でカバーできない部分については臨時職員等を有機的に配置するというようなことをいたし、さらにまた、民間の相談員の方々をお願いするというような、いろいろなことで懸命にいま努力をしておるところでございまして、今後さらに職安業務が十分機能を発揮できるように努力をしてまいるつもりでございます。
  132. 古寺宏

    ○古寺委員 これは定員をふやさぬといかぬと思うのですね。全然職業安定係のいないところもあるわけでございましょう。こういう場合には、これはどういうふうに措置するのですか。
  133. 松木洋三

    ○松木説明員 昨年度までの状態で東北地区を例にとって申し上げますと、船員職業安定所は五ヵ所、業務を行っておりまして、もっぱら、その仕事に従事している職員が六名という定員配置になっておるわけでございます。本年、先ほど申し上げましたような情勢を受けまして三名の定員増をしておるというような状況でございまして、決して十分と胸を張って申し上げられるほどではございませんけれども、それなりの努力をしてまいってきておるつもりでございます。
  134. 古寺宏

    ○古寺委員 私も、おたくの方から御説明を受けまして定員がふえたと思っておったのですが、実際にお聞きしますと、いままでの職員を係長とか何かにしまして、労働力そのものは全然ふえていない、絶対数はいままでと同じ、こういうような内容であるというふうに承っているのですが、これはどうなんですか。
  135. 松木洋三

    ○松木説明員 東北地区で申し上げますと、おっしゃるような意味での定員の再配置をしたものが二名と純増が一名ということでございます。先ほども申し上げましたが。そういうことによりまして業務の転換を行っておりますので、それをカバーする意味でも非常勤職員を背後に配置しまして、従来の業務に支障を来さないように、そういうような努力をいたしておるところでございます。
  136. 古寺宏

    ○古寺委員 これは私ちょっと無理だと思うのですね。ここに資料がございますが、北海道の例で申し上げますと、稚内なんというのは求職の申込者が四百十二名いるわけです。あるいは八戸は求職の申込者が五百十一名ですよ。小名浜は三百十九名、こういう求職申込者に対して一人の人がやっている。公共職業安定所へ行ったってわかります。一人の方がどんなに努力したって職業安定業務というものはできませんよ。こういう体制で漁業離職者をよくめんどう見てあげましょうといったって、これはできない相談じゃないでしょうかね。どういうふうに海運局、お考えなんですか。
  137. 松木洋三

    ○松木説明員 先ほど来申し上げておりますように、決して人数が多いとは申し上げられないわけでございますが、従来からの配置と申しますのが、そういう通常の行政需要に対応できるようにということでの重点的配備になっておりまして、今回のこういう多数の需要発生に対しましても、それなりの対応ができるようにということで実は考えておりまして、ただいまお話しのような稚内等につきましても、本年また定員増で一名定員を配置するというようなことをやっております。その一名の定員で十分に職業紹介ができているかどうかということで御心配をいただいておるわけでございますが、私どもとしてはそれなりの努力をいたしておりまして、現場の状態も非常に忙しい状態がいま続いておるわけでございますが、それなりに私どもの現場の職員も士気養成に努力をいたしておるところでございますので、そういう私どもの努力をひとつお認めいただければありがたいと存ずるわけでございます。
  138. 古寺宏

    ○古寺委員 努力は大いに過重なぐらいに一生懸命おやりになっているわけですから、もう御努力に対しては敬意を表しますが、とても、いまの体制では消化し切れないのですね。しかも、これが全国的に見まして、やはり離職者の多い地域と全くない地域があるわけです。多い地域に対しては、やはり臨機応変に職員をふやして、それに対応していかなければいけないと思うのですね。こういう面については、やはり労働問題でございますので、労働省としても、漁業の離職者を守る立場から運輸省、海運局と綿密な連携をとって増員を考えるとか、あるいは、どのようにやったら再就職がうまく進んでいくとか、こういう問題について一体になって取り組んでいかなければならないと思うのですが、労働省は、これはどう考えているわけですか。
  139. 細野正

    細野政府委員 先生御存じのように漁船員関係につきまして海上労働に就職を希望される方につきましては、海上労働の特殊性ということで、その実情に通じました海運局が紹介のお世話をしておる、こういう状況でございまして、私どもの安定所の方では陸上労働に希望される方に対する紹介指導等を行っておる、こういう体制になっているわけでございますが、しかし従来から一定の場合につきまして海運局への求職の申し込みを取り次ぐとか、あるいは海上労働者の求人、求職に関する情報の収集に努めるとか、そういうような相互の援助、協力関係があるわけでございます。そういう意味で現地におきまして先ほど申しましたような陸上労働を希望する方に対する就職指導はもちろんのことでございますけれども、海運局で行っておられる業務につきましても、相互に連絡をとりながら援助協力をやっていくように、こういう体制でまいりたい、こう考えておるわけでございます。
  140. 古寺宏

    ○古寺委員 漁業の離職者の場合には非常に中高年齢者が多くなっておりますね。しかしながら、この再就職の希望は海上を希望しておられる。今後こういう方々が漁臨法等に基づいて、いろいろ救済はされておりますが、ある一定の時期に達した場合に、どのようにして、この人たちを雇用していくのか。雇用の場をつくるのか。これは非常に大きな問題ではないかと思うのですが、こういう問題については労働省としては、どのようにお考えですか。
  141. 細野正

    細野政府委員 現在でも、すでに海運局さんの方の御努力で就職されている方もありますし、それから安定所の努力で就職している方もあるわけでございますが、しかし全般的には現在それぞれの離職者臨時措置法によりまして就職促進手当等の支給を受けておられる、あるいは保険の受給を受けておられる、こういう状況にあるわけであります。その場合に、それぞれの特に海上部門から陸上部門へ就職される方につきましては、従来のやっておられる職業経験を生かすことがなかなかむずかしい状況でございますので、そこで職業訓練ということが非常に重要になってくるわけであります。そういう意味で陸上を希望される方についての職業訓練というものをできるだけ弾力的に実施をする。そのやり方なり、あるいは、その予算面における援助とか、そういういろいろな面についてのやり方を弾力的にやりまして、そういう形によって新しい職場への結びつきを円滑にしていきたい。こういうことで情報の提供その他の業務とあわせまして再就職の促進を図ってまいりたい、こう考えておるわけであります。
  142. 古寺宏

    ○古寺委員 時間がないので突っ込んでお話し合いできないのは残念ですが、次回にしまして、今度は、この船員保険の漁船部門における失業保険の適用の問題でございますが、現在、船員保険に加入していながら失業保険の適用を受けていない方が五〇%を超えているのですね。半数を超えているわけです。適用されている方が四九・九%でございますので、適用されていない方が五〇%を超えているということになります。その場合によく言われるのは、通年雇用でないから失業保険は適用にならないのだ、こういうお話を承るのですが、陸上の場合は、季節労務者の場合には六カ月の間に四ヵ月と二十二日働いておりますと失業保険の給付の対象になっているわけですね。ところが、たとえて申し上げますと、ニュージーのイカのような問題は、当然私はこれは通年雇用であるというふうに考えるわけです。また実際にこの漁業の形態のお話を聞いてみますと、通年雇用と何ら変わりがないのですね。ところが社会保険庁の方では、イカつり漁業は通年雇用でないから適用しない。ニュージーのイカは、これはいかぬということで適用除外になっているわけでございますが、ほとんどの漁業の内容を調べてみますと必ず裏作として何かやっているわけですね。すると年間を通しまして、ある期間の準備期間は中に一カ月とか半月入りますが、ほとんどが通年雇用と言ってもいいと思うのです。こういうような漁業者に対して、なぜ失業保険をいつまでも適用しないでおくのか、その辺をお聞きしたいと思います。
  143. 岡田達雄

    ○岡田政府委員 お答え申し上げます。  ただいま先生が御指摘数字でございますが、私ども、ことしの二月末現在で押さえました数字では、適用率が全体の五四・二%というふうになっておりまして半分を超えておりますけれども、これは漁船についてでございます。とにかく御指摘のとおり短期雇用と申しますか、期間雇用と申しますか、そういうものにつきましては適用外というたてまえをとっております。  この点につきまして、いろいろとお話があるのでございますけれども先生御存じのとおり何せ二十三万という非常に狭い、ごく小単位でございますので、おかの場合と異なりまし七、おかの場合には、たしか雇用保険は二千三百万人というふうに承っておりますけれども、何せ私ども百分の一の規模でございます。それから保険料の負担におきましても、御存じのとおり漁船と汽船におきまして、汽船にはこういう短期雇用といった問題はございませんので、汽船部門の方の負担と、この漁船部門の負担、この均衡ということも考えなければなりませんし、この適用に当たりましては、いろいろな問題があるわけでございますけれどもとにかく私ども、できるだけ法律に忠実に、未適用のものにつきましては今後とも適用を強硬に図ってまいりたい、さように考えておるところでございます。ただ、あくまで期間雇用、一年未満就業者につきましては、先ほど申し上げましたような事情によりまして失業保険の適用はとてもむずかしいというふうに考えておりますので、御了承賜りたい、さように存ずる次第でございます。
  144. 古寺宏

    ○古寺委員 大臣に申し上げておきたいのですが、漁業離職者実態を見ますというと、せっかく救済費交付金が政府から交付されても、まだ漁船員に渡っていない。あるいはまた再就職しようとしても、海運局へ行きましても、一人の人間が何百人という人間を担当して職業相談その他に当たっている。あるいはまた、いまお話がございましたように、非常に船員の数が少ないという理由でもって、ほとんど通年雇用に等しい、そういう業態でありながら失業保険に加入できないというような矛盾がたくさんあるわけです。やはり労働者を守るという立場から、労働大臣もひとつ閣僚のお一人として、今後こういうような問題の解決には前向きの姿勢で検討をしていただきたいと思いますが、いかがですか。
  145. 藤井勝志

    ○藤井国務大臣 御指摘の点、私も十分問題の解決に今後、国務大臣という立場においても、また労働者の生活の安定、福祉の向上という面においても積極的に推進をしなければならない、このように思っております。特に、運輸省関係労働省関係というふうに離職者を取り扱う窓口が一応区分されておりますけれども、こちらからも、やはり積極的に情報交換、協力体制を進めていかなければ、二百海里時代になっているきょう今日、漁業あるいは離職者の窮状を考えると本当にお気の毒である、こういうふうに考えますから、大いに御趣旨に沿って努力をいたしたい、このように思います。
  146. 古寺宏

    ○古寺委員 終わります。
  147. 越智伊平

    ○越智(伊)委員長代理 次に、草川昭三君。
  148. 草川昭三

    ○草川委員 公明党・国民会議の草川でございます。  まず最初に、大臣にお伺いをするわけでございますが、実は経済動向が非常に一時的に回復に向かっておると言われておりますけれども、雇用の面に限っては一向によくなっていないというのが統計数字では出ておるわけであります。そういう中で過日、二十七日でございますか、労働省は次官通達で、時間外労働を削減したい、あるいは週休二日制を推進するというような通達を出されて、雇用創出を図りたいというような提案がなされております。  実は昨年の十二月に、石田労働大臣のときでございますが、非常に労働省は力を込めまして、全国で三千人に上る労働基準監督官を動員いたしまして、比較的生産活動が活発な自動車、家電、出版、印刷、こういうところに立入調査をいたしまして、操業度が上がっておるにもかかわらず、雇用の創出ではなくて残業で操業度の増加を解消しているというので、非常にこれは問題であるという非常に意気込んだ調査をされておるんですが、これが、ただいまのところでは残念ながら労働省としては新聞発表もされておりません。昨年の十二月の調査でございますから、少なくとも五月ぐらいには発表になっていなければいかぬと思うのでありますが、なぜ発表をされなかったのか。あるいは実態はどの程度なのか、お伺いをしたい、こういうように思います。
  149. 桑原敬一

    ○桑原政府委員 昨年の十二月から一月にかけまして調査をいたしまして、取りまとめを急いでおりまして、五月に、その結果が一応の速報が出ましたので、まとめております。後ほどまた先生のお手元にもお届けしたいと思いますが、一応私どもとしては、昨年の十一月の終わりに中央労働基準審議会から労働時間問題についての建議もいただきましたので、その処理の仕方の一環といたしましても、この結果については速報だけ御報告したようなわけでございます。いずれ、この詳報もまとめて新聞発表いたしたいということでございます。  おおむね申し上げますが、お話のように自動車とか家電とか六業種、合計五千百事業所について、所定労働時間、休日、残業時間、休日労働、年次有給休暇の実態について調べましたわけでございます。  大筋、速報の観点から申し上げますと、所定労働時間、所定休日につきましては、規模による格差が非常に大きい。規模の大きいほど週所定労働時間が短い。所定休日が多い。こういう結論でございます。  それから残業、休日出勤は、規模、業種を問わず、この調査業種につきましては多うございます。まあそういう業種を選んだわけでございますけれども、一日二時間を超える残業を行った事業所は調査対象事業所の二・七%、それから一カ月四十時間を超える残業を行った事業所は調査対象事業所の五・五%でございます。  それから年次有給休暇の付与日数は、規模の大きいほど法定を上回る休暇制度を持っておりますし、また与えておりますが、小さいほど給付すべき日数が少ない。それから平均的に年次有給休暇の消化率は六〇・四%でございます。  以上であります。
  150. 草川昭三

    ○草川委員 私も実は三月十七日に衆議院の予算委員会で、雇用の問題について、この資料を早く出してもらいたいということを申し上げたんですが、当時はまだ発表できないということでございました。私は、この雇用の創出と残業時間とは非常に相関関係があると思うので、やはり一応まとめられたら関係方面には早急に知らせるということが大切ではないだろうか、こう思います。非常に、そういう点では遺憾の意を表したいと思うのであります。  いまの数字の中で問題は、対前年度の比較が出てくると思うのですが、対前年度の比較は二%アップぐらいだというように私は聞いておりますから、余り今回の調査そのものでは目立った過当の報告がないかもわかりません。しかし、それは対前年度も、やはり自動車を初めとする今日の比較的景気のいい産業は残業で操業度を消化をしておるということだと思うので、より本質的に、大臣もおっしゃっておみえになります雇用を分かち合うという、ワークシェアリングというのですか、そういう理念というものを特に私は、これからも労働省は追求をしていただきたいということを、まず最初に申し上げておきたいというように思います。  第二番目の問題は、実は一昨年、五十一年だと思いますが、建設雇用改善法というものができました。いわゆる一人親方というのですか、大工さん、左官屋さん、鉄筋工、今日で言うならば公共投資の対象になる技能労働者の方々というのは、一般の製造業労働者に比べまして非常におくれた雇用関係にあるというので、建設雇用改善法ができまして、昨年の十一月に、これの推進運動を労働省もやられたと思うのであります。しかし、残念ながら私ども、いろいろと調査をいたしてまいりますと、当初の目的であるところの末端の建設技能労働者の、一般の労働者のような社会保険というのでしょうか、失業保険、今日の雇用保険だとか、労災保険だとか、各種の年金が一般の労働者扱いに比べて、なおおくれておると思うのですが、その点についての実績あるいは実情について労働省調査をされておられると思うので、お聞かせいただきたいと思います。
  151. 小林直之

    ○小林説明員 労働省所管の労災保険と雇用保険の適用状況についてお答え申し上げます。  建設業につきましては、先生御案内のとおり労働者を使用しておる事業は全部当然適用ということになっております。その法制に基づきまして、私ども第一線機関を動員して鋭意適用の促進に努めておるところでございますが、その結果、労災保険は五十一年度末、去年の三月末で建設業適用事業場数三十五万六千、その労働者数三百九十六万人、それから雇用保険は、ことしの一月末現在で、建設業につきまして適用事業場数十六万、被保険者数百九十九万九千人、こういうことになっております。
  152. 草川昭三

    ○草川委員 いまの数字を見ても、労災の場合は包括適用もあるのでしょうけれども三百九十六万人に対して、片や二百万弱、いろいろと食い違いがかなりあるわけでございます。私どもは、この建設雇用改善法で、どこで働こうと労働者は同じような適用をしてもらいたいということでございますが、ざっくばらんに申し上げますと、現実には下請単価が非常に安いので、通常の社会保険を払うだけの条件がないというのが非常に多いわけでありまして、また、この建設雇用改善法を避けるために、下請の外注化というものも末端では、かなり行われておるわけであります。  一種の避けて通ろうというようなことでございますが、決して、これはいいことではないわけです。いいことではないので、それを一番末端の雇用者の方々とお話をいたしますと、われわれだって、だんだん技能労働者が不足をしてきておるんだ。後継者がいなくなってきておるんだから、製造業労働者と同じような条件にしたいと思うけれども、非常に元請の方で単価を切り下げられておる。そうかといって、最終工程をする労働者の方々に、その犠牲を負わせるわけにいかないので、結局は社会保険というものを払わずして、直接賃金というのですか、それを維持して七千円とか八千円をキープしたいんだ、こういうことをおっしゃられるわけでありまして、現在の公共投資のあり方等を含めまして、一体どういう形で労務費というものが流れていくのか、非常に私、問題があると思うわけであります。  そういった意味で、ひとつ今度は視点を変えまして、建設省の方もお見えになっておられると思うので、建設省の方に伺います。  現在、建設技能労働者が非常に不足をしてきておる。また同時に、建設労働者も年齢的に高齢化してきておるというふうに言われておるのですが、そのために何か非常に大がかりな調査をやりたいということを言っておみえになるようであります。なぜ、そういうような調査をやらなければいけないのか。あるいは、その原因等についてお考えがあるなら、まず建設省にお伺いをしたい、こういうように思います。
  153. 楢崎泰道

    ○楢崎説明員 先生のお尋ねの件でございますが、先生指摘のとおりに建設労働者、なかんずく技能工、中でも鉄筋工、型枠工などの技能工につきましては、建設投資がオイルショック後落ち込みましたのに伴いまして減少傾向が見られておるわけでございます。それからもう一つ、御指摘のとおりに若年労働者が入ってこないということもございまして、高齢化が年々進んでおるということでございます。これは将来にわたる建設工事の円滑な施工ということを考えますと、非常に重要な問題であると私どもは認識いたしております。そういう観点から、現在の建設技能工の実態それから意識、それを各業態別に把握して、短期にとどまらず長期の視点を踏まえた対策を考えていきたい、こういうふうな観点から、いま調査をやっているところでございます。
  154. 草川昭三

    ○草川委員 いま建設省から御答弁があったわけですが、非常に重要な問題を建設省はやられておると思うのですが、労働省は、このような事実について、どうお考えになられますか。
  155. 細野正

    細野政府委員 御指摘ございましたように、技能労働力の不足という状況があるわけでございますが、調べてみますと、年齢的にも、それほど大きく製造業との間に差があるわけじゃございませんけれども平均的な比率を見ますと、若干、製造業よりも高齢化が進んでいるというふうな状況であるわけでございまして、結局、建設労働者の確保という観点のためには、建設業自体の職場の改善、こういうことが必要だという観点で、私ども先生指摘のような建設雇用改善法の普及を早急に進める、あるいは助成制度というものを訓練の充実強化と含めて積極的に活用していく、そういうふうなことで福祉の向上、能力開発ということを図ってまいりたいというふうに考えておるわけでございます。
  156. 草川昭三

    ○草川委員 いま、訓練助成という意味で労働省の方もお考えになるというのは、私それはそれでいいと思うのですけれども建設技能工が非常に不足をしておる。なかんずく鉄筋工なんかそうですよ。それから大工、左官などの不足も非常に多いわけでございますが、一つは私は賃金の実態が非常に安いのではないだろうか、こう思うわけでありまして、労働省でも結構です。建設省の場合は建設関係労働者だけの賃金だと思います。これは平均年齢をどこに置くかというような問題もございますが、いま一体どの程度、製造業建設技能工との間に賃金で格差があると見られておりますか。大ざっぱで結構でございますからお答え願いたいと思います。
  157. 細野正

    細野政府委員 五十二年の年平均でございますが、毎勤によりまして、製造業の現金給与総額が十七万七千九十円、前年同期比九・一%増、こういうことでございます。一方、建設業は同じく五十二年度の年平均をとりまして十五万三百十円、前年同期比一一・六%増、こういうことでございまして、賃金比較の方法として、いま申しましたように総平均で比べることには相当問題がございますけれども、とりあえずの手元資料で申し上げれば、そういう状況で、絶対水準から見れば建設業が若干低くて、そのかわり前年同期比のアップ率は建設業の方が高くなっている、こういう状況だと思われます。
  158. 草川昭三

    ○草川委員 いま、おっしゃられた建設業の統計資料は、規模別で千人以上だとか九十九人以下だとか、いろいろなのがあるわけでございます。毎勤にひっかかってくる建設労働者の賃金はそうだと思うのです。ところが実は、いわゆる大工さん、左官屋さんというところに個別に当たってまいりますと、事実こういう要請書も出ておるわけでございますが、たまたま私、出身が愛知県でございますから、愛知県左官業組合連合会だとか愛知県左官業協同組合だとか東海躯体建設工業協同組合だとか東海地区建設工業組合等の陳情を見ますと、実は昭和四十八年以降、工事請負価格というものが次第に下降線をたどっておる、請負価格も下がってきておるというわけです。そして適正価格による見積書を提出しても、それに対してゼネコンから大幅な値引きの要求が再三ある。われわれとしては労賃に値引き分を吸収消化させることは、もう限界が来ておるのでと、こういう言い方で単価を上げてくれということを言っておるわけでございますし、それから大工、左官に払う賃金というものも横ばいだということを言っております。事実、私どもも個々の労働者の方に当たってまいりますと、賃金がA、B、Cとか、未熟練、中熟練とあるわけでございますけれども、ここ最近、一日七千円、八千円クラスというところの単価の横ばいが続いておる、こういう資料もあるわけであります。  でございますから結局、建設と言いましても、ゼネコンの労働者建設でございますし、一次関係の大きいのも建設業に入ってまいりますから、毎月の賃金統計にひっかからない労働者が今日の公共投資等の一番末端で、たとえば学校建設の場合だと柱を立てるとか鉄筋を組むとか、あるいは橋梁の場合でも、そこで鉄筋なんかを組んでいく、こういうことになるわけでありまして、私は、労働省が当初考えられた雇用改善法の対象の労働者の賃金というものは実際、非常に条件が悪いということを指摘をせざるを得ないと思うのです。そういう点で、建設技能労働者の細かい個別の職種別の推移というようなものを一体どの程度評価をしてみえるのか、あるいはつかんでみえるのか、これも労働省にお伺いしたい、こう思います。
  159. 小野良二

    ○小野説明員 お答えいたします。  労働省では毎年、屋外労働者職種別賃金調査というものをやっておりまして、これは毎年八月分の賃金につきまして、建設業につきましては先ほどお話がございました大工とか左官、そういうものを含めまして二十七職種について賃金を調査しております。  お話が出ております代表的な大工、左官についてお答えいたしますと、五十二年八月分の賃金、これはいわゆる決まって支給する現金給与額と申しまして残業手当等も含まれた額でございますけれども、これで一日平均が、大工が七千四百十三円、左官が七千百十五円。推移というお話もございましたが、五十一年の比較で申しますと、大工の場合は七・五%上がっておりまして、左官の場合は五・八%上がっております。  概況は以上でございます。
  160. 草川昭三

    ○草川委員 民間労働者の五十一年と五十二年の比較は、平均的には八・八%アップであります。建設の場合は大工が七・五%、左官が五・八%ですから、一般的な民間の八・八%に比べると非常に低いわけであります。  こういうことを考えてまいりますと、業界の方々が陳情してみえますように近年、建設業界は若年労働者にとって労働条件の落差が非常に大きい、全く魅力がない職種になって、青少年の労務者の養成もほとんど皆無に等しい状況であるということを訴えておるわけであります。また現在、就労技能労働者の年齢は次第に高齢化し、作業能率の増進による生産性の向上もほとんど期待し得ないし、もうこの際、大工もやめる、左官もやめるという方々も大変多くなってきておるという数字があります。そこで、さっきのように話を戻しまして、もうめんどうくさいから、建設雇用促進法も煩わしいから、思い切って小さな単位でも全部下請にしてしまおうというので、一人親方というのがますますふえてくる可能性があり、労働条件というものがますます悪化をすることになります。  実は彼らにとってみると建設雇用促進法案をやりたいのだけれども、いわゆる法定外の福利費が幾ら見積もりを出しても、われわれにはゼネコンでは認められぬということを言うわけです。ちなみに、ここにありますのは社会保障年鑑で公の資料でございますが、労働省労働者福祉施設制度調査の七五年の資料で、法定外福利費というものは五千人以上の企業では一カ月一人一万六百四十二円かけておるのです。この中には住居に関する費用だとか労災付加給付の費用、慶弔見舞いというようなものも入っているわけであります。ところが、これが九十九人以下三十人以上の零細中小になりますと一ヵ月三千四百八十七円かかる。これはれつきとした資料であります。  一方、私どもが大工さん、左官屋さんの親方連中に当たってまいりますと、法定福利費は、健保だとか年金、労災保険等を含めますと法定内では千分の百三くらいだ。そのほか法定外の福利費を若干、従業員の慰安会の費用とかいうものを入れると、それでも千分の百七十五予定をしなければいかぬ。この費用が、七千円、八千円の賃金を払うと、逆算して、どうしても出ない、こういうのが末端の親方連中の声になってきておるわけであります。  いま公共投資公共投資ということが盛んに言われておるわけでございますが、一般的な福利費用すら削らなければならないような状況なのかどうかということを、ここで改めて建設省の方に聞きたいわけであります。いまの公共投資というものは、法定内、法定外の福利費まで削らなければいけないほど単価を切り詰めて公共投資の発注をしておるのかどうか、その点についてお聞かせ願いたいと思います。
  161. 萩原浩

    ○萩原説明員 お答えいたします。  公共事業におきますいろいろな積算問題につきましては、材料とか労務費あるいは、いわゆる経費と申しておりますけれども、下請に出しますいろいろな経費そのほか現場におきまして、いろいろな経費がかかります。これを私ども現場経費と呼んでおります。それから、あと会社が本支店経費として必要といたします経費、これを私ども一般管理費と呼んでおります。先生指摘のいろいろな福利関係につきましては、現場関係、たとえば現場の従業員であるとか労務者に関する法定福利費につきましては現場管理費の中で積算する。それから本支店に従事されます従業員の方の法定福利費につきましては一般管理費の中で積算をするというたてまえをとっておりまして、これにつきましては、いろいろな調査に基づきまして所定の費用を積算いたしておるということでございます。  また、この法定福利費の中に考えます項目といたしましては、先ほどから御指摘ございますような労災保険料、雇用保険料、健康保険料、厚生年金保険料、それから建設退職金共済の掛金、このようなものを算定いたしております。  なお、法定外福利費につきましては、実態が非常にいろいろございますものですから、まだ完全に実態を踏まえるような形にはいたしておりませんけれども、現場の従業員の方々への法定外福利費につきましては、現場管理費の中で保険料として積算するというたてまえをとらしていただいております。
  162. 草川昭三

    ○草川委員 そうすると、いわゆる公共投資、たとえば橋あるいは河川改修、各項目がございますから一概に同率というわけにはまいらぬと思うのですね。しかし、現実に一番われわれの目のつくところで、末端で働いておる人から、とにかく福利費というものが出ないと言ってみえるわけでありますね。しかし、いまの説明によりますと、内容は別として、とりあえず管理費というものは含んでおるはずだし、また当然だと思うのですね。そんなものを含まなくて積算をするわけがない。どこかで、それが消えておるわけだと思うのであります。どこで、それが消えておるかというのが問題だと私は思うのですね。どこに消えておるのか、お聞かせ願いたいと思うのですよ。
  163. 萩原浩

    ○萩原説明員 現在、私どもが工事を発注いたしまして、受注者側で、いろいろその中で経理をされて工事をやっていただくということになるわけでございます。発注者側といたしまして、その内訳といいますか、たとえば一億円で工事を出しましたときに、その一億円の使い道でございますが、これにつきまして現在、発注者の立場で細かく、どこまでも調査できるというような形にはなってございません。したがいまして、その法定福利費が一体どこへいってしまっているんだという先生の御指摘につきまして、いま、つまびらかに申し上げる資料を持ってございませんけれども、たとえば果たして、それを払っているかどうかというものを、折に触れまして抽出調査をやるということをいたしておりますけれども、これが現実に全然支払われていないとかいうようなデータは遺憾ながら、まだ、つかまえていないという実態でございます。法規に従った掛金なり、いろいろな法規に従って工事をいたすようにということについては、従来とも十分注意をして監督しているところでございますけれども、なお一層、その点につきまして、どういう形で趣旨を徹底すればいいか十分研究いたしたいと考えております。
  164. 草川昭三

    ○草川委員 私は結局、入札の段階でAなりBなりCなりの業界の競争が激しいので非常にダンピングが行われる。ダンピングが行われる中でAというゼネコンは二五%の本社経費だけ取って次に落とす。Bという第二次の小さなゼネコンはゼネコンなりに、たとえば二〇%の経費を取って下へ落とすという段階の中で、本来、積算をされておるところの一コース・プラス・アルファの十何%なり二〇%なりの法定福利費なり法定外福利費というものが消えていくのではないだろうかと思うわけであります。でありますから私は、そういう今日の実態というものの追跡調査をぜひしていただきたいと思うのです。これは労働省にもお願いをしたいのです。労働省は、末端に働く労働者の立場に立って、いろんな調査をやってもらわなければいかぬわけですから、労働省発注の公共投資というところだけでも見出して、そういうような調査をして、現実に、どういうような形で公共投資のあり方が、どこかで雲散霧消するような形で消えていき、末端の労働者が苦しみながら仕事をする、そして建設関係の技能労働者がいなくなるような現状というものを早くなくすような対策を立ててもらいたい、こういうように申し上げておきたいと思うわけであります。  そこで、私は一つ提案があるわけでありますけれども労働省も技能訓練をやっておりますし、大工、左官等についても技能士という名称を与えております。でございますから、この際、技能士というものを一種のユニオンにして技能士会というものを労働省は積極的に育てたらどうか。それで、この技能士のラベル、いわゆるユニオンラベルが張ってあるならば、国の、建設省の検査なんかもフリーパスで通る。この技能士のラベルが張ってなければ、それはアウトサイダーの連中のやっておることだから、少し厳格に調査をするというような技能士会のようなものを積極的に育てていったらどうか、こう思うのです。これを育成する考え方があるのかないのか、ひとつ労働省の方にお聞かせ願いたい、このように思います。
  165. 岩崎隆造

    ○岩崎政府委員 いま御指摘のありました技能士会というのは一級、二級の技能検定を受けまして合格いたしました技能士が、現在のところは自主的に組織をいたしまして、相互に親睦を図る、あるいはまた情報交換、それから切磋琢磨の場として自主的な運営を行っているというような活動でございます。技能士の社会的な地位を高めるため、そういうような趣旨でも、技能士が自主的に組織をして、このような運動を行っていくということについては、私どもも、それ自体非常に結構なことだと存じております。  ただ先ほどお話のございましたようなことにつきましても、たとえば都道府県におきましては、技能士がつくりました製品につきまして、あるいはまた技能士が行っております業務につきまして、特に推奨をするような形での措置をとって、店に、そのようなユニオンラベル的なものを表示をして技能士の処遇を図っているというようなことも聞いておりますし、また公共事業の受注につきましても、受注する側におきまして一定のレベルの技能士を雇用していることを条件にしているというようなことで、技能士の育成それから尊重という機運を図っているということを聞いております。  それに対して法的な規制を直ちに行い、こういうようなものを勧奨する、あるいは技能士の組織を強制するというようなことは当面いかがかと存じますが、そのような具体的な推奨策等を私どもも推進する方向で対処してまいりたい、このように考えております。
  166. 草川昭三

    ○草川委員 いま、そういうお話がございましたが、私は、もう少し積極的に一歩前へ出て、いわゆる建設、特に屋外関係労働者の労働条件というものを下から積み上げていき、オンコストというのですか最低限の歯どめをかいませんと、せっかく建設業の雇用改善のための法案ができておりましても抽象的な法案になってしまって、かえって業者いじめというのですか、末端の零細の業者いじめに使われてしまうのではないだろうか、こう思います。  そういう意味で、私は最後に労働大臣に要望なりを申し上げて御意見を賜りたいと思うのでありますけれども、結論的に単価の値上げという、労働者の立場から言うならば大幅な賃上げというものを条件にしない限りは、建設関係の技能者の確保というのは困難だ、こういうように思います。そういう意味で、工事発注者であるところの国に対しても、労務費単価の臨時的な引き上げが私は必要だと思うわけです。そういった意味で、これはどこが主管をするかということは別にしまして、労働大臣として関係の省庁に、少なくとも公共投資がこれで、どんどんできるわけでございますけれども、その労務単価の値上げということだけは、ひとつ最低の歯どめをかってもらいたいというようなことを申し入れをしていただきたい、こう思うわけでございますけれども、その点について大臣の御見解を賜りたい、こういうように思います。
  167. 藤井勝志

    ○藤井国務大臣 御指摘のとおり、公共事業を積極的に推進するためには、これに携わる技能労働者の雇用問題賃金問題というのが非常に大切な要素になります。したがって、建設雇用改善法がせっかくできておるわけですから、この趣旨を踏まえて、特に、これからの時代の要請として建設労働者の技能向上のためには、職業訓練の積極的な展開とともに、この賃金の問題につきましても、よく客観的な環境づくりをすべく、この後、努力をいたしたい、このように考えております。
  168. 草川昭三

    ○草川委員 時間が来たので、これで私は終わりたいと思いますけれども、私は、いまの大臣の答弁では非常に不満でございます。現実に事態というのは進行しておるわけでございますし、非常に、これから格差が同じ労働者の中にも出てくるわけでございます。     〔越智(伊)委員長代理退席、委員長着席〕 特に屋外労働者の場合は非常に条件が悪い中で、がんばっておられるわけでございますので、ひとつ基本的な今日の雇用のあり方あるいはまたゼネコンから末端の建設労働者に至るところの流通過程というんですか、そういう流れというものを十分把握をされて、本当に労働者が後継者をどんどん育てていき、あるいは若手労働者建設業界に復帰をすることができるような対応策をお願いいたしまして、私の質問を終わりたい、こういうように思います。
  169. 木野晴夫

    木野委員長 次に、大橋敏雄君。
  170. 大橋敏雄

    ○大橋委員 五年越しの不況、それから企業が続々と倒産し、失業者も続発するという全国的な深刻な問題であることは、いまさら申し上げるまでもないわけですが、雇用・失業情勢の悪化が全国的な中にも特に顕著なのが沖繩だとか、あるいは福岡、北海道である、こういうことで今国会もずいぶんと議論してまいったわけでございます。先般、先週ですか、労働大臣はその非常に厳しい福岡県を労働情勢の御視察に行かれたと伺っておりますが、行かれた、その実情を報告してもらいたいと思います。
  171. 藤井勝志

    ○藤井国務大臣 先週末、御指摘の福岡県、特に福岡、博多方面を視察いたしまして、特に関係四団体の労働組合代表からも、いろいろ事情を聞いたのでありますが、特に、あの地帯がいわゆる基礎産業、素材産業を中心にした地帯だけに、大変構造不況に悩んでおる製鉄企業という、こういつた面が非常に深くあの地帯に暗い影を落としております。特に完全失業者の率というものが非常に大きく出ておりまして、有効求人倍率に例をとってみましても八幡区あたりが〇・二八倍、全国平均〇・五五倍から比較いたしましても、そういった非常に厳しい情勢にあるわけでございますから、そういったところに対する雇用安定対策としては、業種指定においても、地区的な特殊性を踏まえて一遍この基準の見直しを検討すべきではないかというふうな印象を受けて帰りました。これは職業安定審議会の専門部会において、すでに検討を経て、この指定基準をつくっておるわけでございますけれども、現地にいま具体的な厳しい雇用情勢が発生しておりますし、そういう事情を踏まえて、もう一回そういう場において検討をしてもらう必要がある、このように認識をして帰ったわけでございます。
  172. 大橋敏雄

    ○大橋委員 いまも御説明がありましたように、福岡県の有効求人倍率は、その数字の上から見ても大変な状況にあるわけですね。国の平均が〇・五五倍ですか、それに比べて福岡県全体として〇・二七、半分以下であるわけですね。ましてや北九州の八幡区などは、〇・二八とおっしゃったように本当に厳しい状況にあるわけですね。労働組合の方から率直に実情を披瀝されて、何としても、これに対応する対策を立ててほしいという要望があったと思います。われわれも、このような不況の中でございますので、特定不況業種の労働者を守ろうということで先国会、法律をつくりましたですね。また従前から雇用保険法の中に安定事業というものがあって、それなりの対策は進めてきているわけですね。しかし今度お行きになって、従来施行しているこうした法律が実態的にまだ手直しをしなければならぬ、見直しをしなければならぬということがはっきりされたと思うんですね。そういう点はどこだったか、ちょっと御説明願いたいのです。
  173. 藤井勝志

    ○藤井国務大臣 この前、予算委員会中には政務次官並びに関係の審議官が手分けをして長崎、佐世保、今治それから函館、沖繩、こういうふうに現地視察をしたわけでございまして、残された地区である北九州を中心に現地の事情を調べたわけでございます。飯塚市あたりは〇・一四倍というふうな有効求人倍率でございまして、このような事情を考えますと、一応雇用安定資金制度について、あるいはまた特定不況業種離職者臨時措置法、この法を運営するに当たっての業種指定の基準というものについて、やはり、その地域の特殊性、地域性というものも考えて、そして、この基準を当てはめる運営において、もう一回見直ししてみる必要があるのではないか。制度が発足して、まだ、これからでございますが、ひとつ実情に合うように、本当に雇用不安に悩む地帯に対して、いまのような制度の改善も考えなければならず、同時に雇用創出についても積極的に労働省として打てる手は打ち、関係省庁と密接な連絡をとっていくべきである。  特に福岡県におきましては雇用問題会議というのを県がつくっておりまして、われわれ労働省としては職業安定所を中心に雇用対策連絡協議会というのをつくっておるわけでございますから、この辺と密接な連絡をとって、たとえば公共事業の重点配分、こういった場合には、これを消化する地方自治体の受け入れ体制というものも考慮しなければなりません。また、場合によっては公共事業を消化するに当たって、もうこれ以上はとても受け入れられないという地方自治体も十分想定できるわけでございますが、そういう場合に対して本省の方、自治省の方からどういう手を打ってもらえるか、そういう方面もあわせ考えながら対策を進めていかなければならぬではないか。関係省庁とわれわれはよく連絡をとり、出先は地方自治体と連絡をとって対応策を進めていくということに一層努力をしなければならぬというふうに感じて帰ったわけでございます。
  174. 大橋敏雄

    ○大橋委員 いまもお話がありましたように、業種の指定基準ですかね、それが確かに実態と合わないものが見受けられた。これは見直しをする必要があるということでございますが、これはぜひとも、そうした福岡県のような特殊事情、それに対応するいわゆる運用をやるための基準にしていただきたい。これをいつごろまでに、そうなさっていただけるのかお尋ねしたいわけですね。これが一つ。  それからもう一つは、救済事業を起こしていかなければならぬというお話でございましたけれども、その救済事業をさらに増加させていくという具体的なものがあるのかどうか。たとえば特開事業等も、その枠を拡大して大いにやってほしいという要望が労働組合からも出たと思うのですね。そういうことに対しても、お考えがあろうかと思いますので、この際、御意見を述べていただきたいと思います。
  175. 藤井勝志

    ○藤井国務大臣 雇用安定事業の業種指定を、いつごろまでに見直しをやるかという問題につきましては、あれから帰りまして早速、担当局長関係者にいろいろ話して、おりまして、私としては、できるだけ早く検討の結論を得たいというふうに考えておりますが、この問題につきましては局長から答弁をさせます。  それから、公共事業の重点配分、この問題でございますが、これまた労働省だけでは問題解決できませんので、これが対策本部あるいは建設省、こういったところと緊密な連絡をとって、消化できる範囲において善処していきたい。これは特に地方自治体の方から、やはりこれだけのものを、ひとつやるのだという両方の話し合いがうまく進まないと、むずかしい問題でありますから、大いに、そういった方面についても側面的な協力をいたしたい、このように考えておるわけでございます。
  176. 細野正

    細野政府委員 安定事業関係とか、あるいは離職者法等に関する基準問題につきましては、現在、御存じの安定審議会の中に専門部会がございまして、つい先般行われました部会におきまして、問題点を持ち寄って、いろいろ検討しようということになっております。一方、現在、各ブロック別に所長会議をずっと開催して、私ども交代でそこへ出まして実情把握に努めております。そういうものの各地の実情等と、それから、いまの部会の進行状況とあわせまして、いずれにしても、できるだけ早い機会に結論を得て、実情に合わない点は改善をしてまいりたい、こういうふうに考えているわけでございます。     〔委員長退席、羽生田委員長代理着席〕
  177. 大橋敏雄

    ○大橋委員 私は大至急やってほしいということを要望しておきます。なぜならば、いま中央安定審議会の中で業種を指定する場合、その前の三年間の状況を見るとか、あるいは一年前の状況を見るとか、その法律のたてまえから、そういうのが一応決められて、それで対策をされていると思うのですけれども、こういうこと自体が実態とかなりずれているわけですね。そういうのを含めて、一日も早く実情に応じた基準というものをつくって実施してもらいたい。  もう時間がございませんが、もう一つ具体的なことを聞きますと、特定地域の指定に当たって職安別にずっと決められているわけでございますが、福岡県の中でも特に北九州ですが、北九州は五区に分かれていて、八幡は一応指定されているわけですけれども、若松とか戸畑が指定外になっているのですね。これは私は非常に片手落ちだと思うのです。こういうものも当然早急に改善されなければならぬと考えるわけでございますが、その点をお尋ねしておきます。
  178. 細野正

    細野政府委員 この地域の指定問題につきましては、一つには、その地域の実情そのものの把握、もう一つには現地の各県なり市町村なりとの意思疎通も非常に重要でございますので、よく相談の上でもって検討させていただきたい、こう思っております。
  179. 大橋敏雄

    ○大橋委員 とにかく、いま北九州は五つの区には分かれておりますけれども、北九州市という一つの市ですからね。そして、若松区にしろ戸畑区にしろ、八幡区以上に実態的には深刻な状態にあるわけですから、当然これは改善されてしかるべきだと思います。強く要望しておきます。  時間が参りましたのでこの辺で質問を終わりますけれども、いま言ったような状況を踏まえながら、全国的な立場に立って、各地域の実情に応じた対応を積極的に進めていってもらいたい、こういう気持ちでいっぱいでございます。最後にもう一度、大臣の御決意を聞いて終わりたいと思います。
  180. 藤井勝志

    ○藤井国務大臣 今度のこの日本経済不況状況というのは、地域的に、また業種間で、地場産業に直結しているというふうなところが非常に深刻な雇用情勢に見舞われておるわけでございますから、やはり業種指定においても、あるいはまた地区の指定におきましても、その土地の特殊性ということに着目をして、もう一遍見直す、これの結論を早く出すように私としても努力をいたしたい、このように思います。
  181. 大橋敏雄

    ○大橋委員 終わります。
  182. 羽生田進

    ○羽生田委員長代理 次に、西田八郎君。
  183. 西田八郎

    ○西田(八)委員 いま、大橋委員あるいは草川委員から深刻な雇用情勢について質問があったわけでありますが、漁業離職者対策臨時措置法、不況業種離職者対策臨時措置法等ができまして半年を経過しようとしておるわけですね。それ以前に、造船あるいは平電炉あるいは繊維等においては、この離職者法が成立する前に、すでにもう不況のあらしが吹いておりまして多数の離職者が出ておるわけでありますが、そうした離職者のその後の状況、そうしたことについて数点質問をしてみたいと思うのです。  失業者の数が現在の統計からいいますと毎月五万ないし十万ずつふえていっておるわけですね。そういう状況の中で、これらの法律に定められた、いわゆる特定業種の離職者手帳、これの交付状況というものは、数の上で、あるいは業種別に一体どのようになっているか。もし把握しておられたら、ひとつお聞かせいただきたいと思います。
  184. 細野正

    細野政府委員 お尋ねのございました離職者臨時措置法の関係の求職手帳の発給状況でございますが、四月末日現在で二万二千七百九十六人という状況でございます。それから同じ四月末日で、この中で再就職した方の数は、千九百四十五人という状況になっております。なお業種別には、いま手元に持っております業種別が出ている資料が少し時点が古うございますので、いまの二万二千と総計において合わないのですけれども、大体その過半数が船舶製造修理業関係、要するに造船ということで、その情勢は現在も変わっていないのじゃないか、こういうふうに考えております。
  185. 西田八郎

    ○西田(八)委員 大体、造船業が主体のようになっておるようでありますが、そこで私どもも直接関係してきた繊維産業ですね。この女子労働者で、かなり、やめていくのがおるのですけれども、こういうのは実際、離職者手帳を受け取っておりますか。現場の状況はどうでしょうね。
  186. 細野正

    細野政府委員 私ども統計で、男女の区別が出ておりませんので、ちょっと正確に、いまの御質問にお答えすることにはならぬかと思いますが、しかし、さっき手帳発給者の過半数が造船関係だということを申しましたが、その次に多いのは、やはり繊維関係で、紡績関係、それから織物、染色整理、それから外衣製造、その辺あたりが、数から言うと、その次に続くような状況でございますから、繊維の数も相当数に上っている。ただし、ちょっと男女の区別はわからない、こういうことでございます。
  187. 西田八郎

    ○西田(八)委員 男女の数はわからない。むずかしいかもわかりませんが、年齢別、性別、そうした面で、ひとつ精細なデータをおつくりになっていただけないか。ということは、先ほど再就職が千九百四十五人だと言われましたが、これは一割にも満たない現況ですよね。本当に私どもも、不況になって倒産をした工場あるいは、その地域へ行って、いまずっと地域別に事後対策といいますか、アフターケアといいますか、そういうことを対策するために回っておるわけでありますが、どこへ行っても就職がむずかしいということを口にするわけです。  案外、若年の特に女子の場合は第三次産業、サービス業の方へ、それなりに就職をしているようであります。この場合も、安定所等を通ぜずに、すっと行ってしまうのも、かなりあるように見受けられるわけで、そういうのは安定所としての追跡ができないし、結局ずるずると、そのままよからぬ方向へ、のめり込んでしまうという必配もございます。会社としても、あるいはまた関係の労働組合としても、そういうことのないように心配をして、いろいろと追跡をするのですけれども、とにかく一業種から何十人、何百人と離職していく、あるいは地域ぐるみになれば相当な数に上るというような場合は、状況を把握するということは非常にむずかしいことだと思いますけれども、ひとつ、そういう点で十分努力をしていただきたいし、何でしたら関係の市町村なり都道府県の協力も得て、そうしたことに対して十分な対策を立てられるようにしてほしいと思うのですが、この再就職できない状況といいますか、もちろん求人が少ないから再就職できないと思うのですけれども、これを打開するというのは、何かいい方法はあるのかどうか。  たとえば失業保険給付期間中は、下手なところに働きに行くより手当の方が高いから、失業手当が済んでからという、のんびり型も中にはあるかとも思うのですけれども、しかし、それはごく限られた人で、やはり落ちついた安定した働き口を見つけたいというのが実際の心理だと思うのです。そういう意味で、再就職は非常にむずかしいというのが実情だと思うのですが、それに対して、どんな打開策をお持ちなのか。また現場で、どういう御指導をいただいているのか、ひとつお聞きをいたしたいと思います。
  188. 細野正

    細野政府委員 現在、まだ雇用保険なり、その延長なりという状況にある方が多いわけでありますが、その間におきましても、たとえば今治地区とか、あるいは佐世保地区とか、特に造船中心の関係のところにおきましては、かなり職業訓練を熱心に進めていただいておりまして、その場合に離職者の方の希望職種もとりまして、希望職種と就職の可能性との絡みで職業相談をしながら訓練を受けてもらって、そういう形で訓練を修了した方についての就職を一生懸命あっせんをするというやり方をとっておりまして、現在までのところ、そういう意味では、まだ数が少ないせいもあるかと思いますけれども、比較的短期の訓練を修了した方なんかについては、わりあいにうまく就職したというふうなことを聞いておりますが、これからが実際は本格的になるので、保険が延長まで含めると、まだしばらくは続くわけでございますが、秋ごろになると保険の延長切れというような問題も出てまいりますし、そのころに一番数的にも多くなってまいりますから、そういう意味で、今後一層、いま申しましたような求人開拓と合わせながら、もちろん御本人の希望と合わした訓練というものを非常に活用していったらどうだろうか。その場合にも、従来の公共訓練施設だけでなくて、できるだけ他の施設の委託訓練なんかも活用しながら、そういうことを進めてまいりたい。また、職種的に言いますと、一部たとえば建設関係の職種とか、あるいは自動車の運転手さんとか、それから溶接関係とか、職種的にはまだ就職可能な道もあるわけでございまして、そういうものとの結合を極力図ってまいりたい、こういうふうに考えておるわけであります。
  189. 西田八郎

    ○西田(八)委員 これは、いわゆる労働の需給の関係になると思うのですが、いま溶接関係等という話がありましたけれども、主として人を求めてこられる業界の職種というのは、どんな職種があって、そして、それに対して就職者が希望する職種これがうまくかみ合うのかどうか。そこに需給ギャップがあると、幾ら求人があっても就職できないというような状況が生まれてきます。そういう場合に一体どういうことにするか。  もちろん、それにはそれに対応した職業訓練というものも必要になってくると思うのですが、訓練局長もお見えですから、訓練として一体どういう訓練をしていくのか。その辺、安定所の窓口と訓練の方向というものとがうまくかみ合っていかないと、なかなか再就職がむずかしい。そして特に中高年齢の場合は、やはりいちずに自分はこれだけが専門だというふうに思い込んできているのもあると思いますよね。いまさら、あほらしくて途中から、そんなことにかわれるか、そういう、いわば意地みたいなものもあろうと思うし、あるいは一つは、先々の不安というのもまた大きいと思うんですよね。これなら、おれは自信があるけれども、果たして、こんなことでということもあるでしょうが、そういう再就職希望者の訓練あるいは再就職への指導といいますか、そういうことについて、どういうようなことをしておられるか。もちろん、そういうことをするについては現在の安定所の職員の数だけでは、とうてい事足りないと私は思いますけれども、その辺のところも含めて、ひとつ御両所からお答えをいただきたいと思います。
  190. 細野正

    細野政府委員 離職者の希望ということになりますと、これは全国的な統計というわけに、ちょっとまいりませんので、部分的に申し上げますと、たとえば現在手元に持っておりますのは、長崎の佐世保地区における造船離職者の希望の職種を見ているわけでございますが、これによりますと一番パーセントで多いのが配管工、その次が一般事務、それから自動車運転手、それからプレス工、それから機械運転、それから溶接、それから営業販売、まだそのほか続きますけれども、それが大体一番多い配管工で一一%、それから最後に申し上げました営業販売で七%ぐらいですから、かなり一割前後のところで散っているということになるわけでございます。  それからなお、先生からいま御懸念を含めてのお話がありましたように、私どもも実際に担当している安定所の話を聞いてみましても、やはりしばらくは、かなり、いままでの仕事を固執しておられて、そのうちに、ぼちぼちと転職やむなしという方もふえてきて、それから保険か非常に切れごろになってきてから、これはどうしても、ほかの職種にというようなことを希望する方がそこで一番多くなるというふうな、およその傾向のようでございまして、そういう意味で、ある意味では私どもの方の相談、指導も重要ですし、それから関係の労働組合やあるいは会社側からも、そういう意味での一般的な雇用情勢なり今後の見通しなりについてのいろいろな援助あるいは協力というようなものが、かなり御本人が決断をされるのに役立っている。私ども実際に、たとえば今治地区なんかでも労働組合の方がやはりある程度、造船関係の職種から転職することを勧めてくださっているというふうな情勢もありまして、それが知事さんが非常に訓練に御熱心だということと合わさって、非常に訓練がうまくいっているというような状況も聞いておるわけでありまして、そういういろいろなきめの細かい、それこそ文字どおりきめの細かい、しかも私どもだけではなくて、いろいろな各方面での協力関係を保ちながら指導、相談をやっていくことが必要だなということを最近痛感しておるような状況なわけでございます。
  191. 岩崎隆造

    ○岩崎政府委員 先ほどから職業安定局長がお答え申し上げたとおりでございます。私どもとしましても昨年来、特に職業訓練当局に対して言っているのは、職業安定機関との連携を十分に密にして、これは一般的な全国的な傾向のみならず、やはり、その地域、地域における求人状況というものがございます。それで需要がある職種というものも当然その地域、地域によって異なるものが出てまいります。したがいまして、職業安定所で十分その辺の把握をしていただく。そして実際に出てまいりました求職者に対して、その人に一番希望するようなものに合うような形でのものを見つけて差し上げるのが第一でございますが、場合によっては、いままでの職種と違った職業訓練を受けて、それに転向していただくということも必要なわけで、そこはやはり失業保険の受給期間中に十分な職業相談あるいは職業指導というようなものを行っていただきまして、それで職業訓練はそれに対応いたしまして、先ほど安定局長が申し上げましたが、この間の職業訓練法の改正でも、そういうような方向をはっきり出していただいたわけでございますけれども、既存の訓練校の職種のみならず、その職種転換あるいはまた幅の広い民間職業訓練施設への委託というような形で職種転換を進めてまいりたい。もちろん第一義的には、いままでずっと身につけてきた技能をほかの業種ででも生かしたいということがございます。私どもも職業指導あるいは職業訓練の方向としましても、いままでの技能に何かを付加すれば、いままでのものを生かしながら就職できるという方に対しましては、当然、求人状況がそういうことに合っておりますれば、そういう方向で職業指導することはもちろんでございますが、場合によりましては職種転換を進めて職業訓練をして再就職の道を開いていただく、こういう方向で努力をしているわけでございます。
  192. 西田八郎

    ○西田(八)委員 そこで訓練局長、今度、訓練法が改正されましたが、それで、いままでの訓練校制度も大幅に改定をし、たま委託制度というものが新しく設けられたわけですが、大体まだ法が改正されて、そんなにたっていないわけですから、なかなか実行までは至ってないと思うのですが、その委託する先はどんなところがいいのか。そういうもののめどといいますか、大体いつごろに、そういうものができ上がる予定でございますか。
  193. 岩崎隆造

    ○岩崎政府委員 私ども、すでに法律改正の御提案を申し上げている段階から、各都道府県の訓練当局とは、それぞれ、さしで、その地域、地域における訓練需要というものを見出して、それに転換を図る、あるいは委託先を考えるというようなことで対応をさせるような努力をしてきてまいっております。具体的には来月の中旬以降に各都道府県の担当者がいろいろと資料を持ち寄りまして、私どもと具体的な計画をするつもりでおりますけれども、個別の形ではいろいろな面で、先ほど安定局長からも申し上げましたように、たとえば佐世保とか今治とか、そういう特定不況業種の離職者が非常に出てまいっておるようなところでは、すでに相当の展開ができつつあるというように考えております。
  194. 西田八郎

    ○西田(八)委員 そこで正規に離職票をもらって離職者手帳等を給付された人はそれでいいのですね。ところがパートだとか、あるいは臨時という形で、雇用保険法の対象外の労働者がかなりおられると思うのですよ。そういう人たちがパートがなくなって、もう沈んでいる。主婦業に帰ったというのですか、家庭へ帰ってしまったというような人も私は相当数に上ると思うのですね。たとえば繊維の場合なんか、それが一番多いと思うのですよ。内職がなくなって事実上失業状態。しかし、それは失業と計算されないですね。あるいは一時的に紡績工場の季節労務者で入っている場合は、これははっきりと離職者票が出されるわけですが、そうでない人、二時間なり三時間なり、あるいは、ほとんど八時間働きながらもパートタイマーという名前で使われている人たち、こういう人たちの数というものは相当数に上ると思うのですが、これは労働省で把握できてないでしょうね。
  195. 細野正

    細野政府委員 労働力調査で臨時パートの産業別の出入り等は、ある程度、把握できるとは思いますけれども、いま先生指摘のように、いわゆる雇用調整としての出入りということになると、これは率直に申しまして把握困難だというふうに考えております。
  196. 西田八郎

    ○西田(八)委員 そういう人たちも、実際は働きにいくところがあったらということで求めておられるわけですよ。ところが、なかなか適職がないということですね。そこで考えられるのが、せんだっても都道府県に、私どもの選挙区である滋賀県にも雇用対策協議会ができまして、いろいろ相談をしておられるわけですが、一体何をやったらいいだろうか。第二の失対になっても困るしということで関係者は本当に頭を痛めておるわけなんです。特に、その場合に婦人のパートで働いておられて、実際いま言う雇用調整の中へ入りていないし、統計にも出てこないというような人に対して何があるだろうかというような話が出たわけですが、そういうときに、たまたま私どもの方で、ホームヘルパーであるとか、現在は全国で百六十万人からの、いわゆるかぎっ子がいるそうですね。一年生から三年生まで全国で、その数は百六十万に達すると言われておるわけですが、そうしたところが、これは厚生省が多少の補償をしておるようですけれども、市営であるとか、あるいは自分たちが全くの私立で、お互いにお金を持ち合ってということで学童保育というのをやっておられるのですね。これは正式な保育所ではありませんから、保母の資格もないわけで、言うなれば保育ママといいますか、学校がひけてから、帰ってきた子供を五時なら五時まで、めんどう見てあげる、一時から五時まで。そうすると五時に、それぞれお母さん方も帰ってこられるから、お宅へ帰らせる。自分も帰って夕飯の支度をするということで、多少経験のある人ですと、これは適職のように思うのですけれども、そういう人たちが必要ではないか。したがって、そういう人たちの養成に努めたらどうだろうというような話がたまたま出たし、せんだって労働大臣に全国婦人の集いの代表と一緒に陳情をされたときにも、そういう話が出ておったと思うのですが、こういうことについて、どうなんですか、職業訓練というのか講習というのか、これは労働省として取り組む問題なのかどうかですね。
  197. 岩崎隆造

    ○岩崎政府委員 いま御指摘の点でございますが、確かに、そういったものの需要というものの把握が第一に大切なわけでございます。  私ども、いまのところ法定基準でやっております職業訓練としましては、家政とか、あるいは給食というような形で、これはやはり三カ月とか六ヵ月の所要時間での訓練をやっております。これは婦人向けの訓練校でやっておりましたり、あるいは一般の訓練校でも婦人向けの職種として、そういうものをやっておる。  しかし先生指摘のような数字の問題はともかくとして、大体千人単位になるかならないかぐらいの規模でやっております。ですから先ほど申し上げましたような委託とか、そういうようなことで、これはその地域、地域におきます需要に対応いたしまして、その把握ができまして、それに希望する御婦人がおられますれば、そういうような離転職訓練として委託訓練の形で、そういうものを拡大していくということは、もちろん考えなければならぬと思っております。  ただ、私ども、ちょっとホームヘルパーとか、あるいは先生指摘のような職種での最小限の訓練の所要期間というようなものが十分専門的にわかりませんのですが、その辺も検討させていただきます。
  198. 西田八郎

    ○西田(八)委員 ひとつ労働大臣、この点は特にお力を入れていただいて、そして、そういう方向で、潜在している、下にもぐっている、そういう失業者と言うんですか、職を失った人たちの対策というものに重点を置いていただきたい、お願いをしたいということ。  もう一つは、例の炭鉱がなくなりましたときに、産炭地振興法という法律があって、特定の地域に対して、ある程度の援助をしながら工場誘致なんかをやられた経験があるわけです。今度の造船だとか繊維不況というのは、炭鉱のように、なくなってしまうものではないわけですが、しかし造船業あるいは繊維業も、お互いに、その一つの地域のメーン産業になっておることは事実なんですね、主産業になっておることは。したがって、そこの火が消えるということは、町全体の火が消えるということにもなるわけなんです。したがって、こういう不況地域に対する振興対策というのはとらなければならぬというふうに思うのです。これは、あるいは通産の仕事であるかもわかりませんが、たまたま、ここで大臣がおられますので、大臣、経済閣僚会議に出られるのでしょうから、そういうことについて何か特別の措置をするというようなお考えはないかどうか。もしお持ちならば積極的にお進めいただきたいと思うのですが、いかがでございましょうか。
  199. 藤井勝志

    ○藤井国務大臣 特に造船業がその地区の主体をなしておるようなところ、あるいはまた地場産業としての繊維産業、こういったところに対して、どのような雇用対策を進めていくかということ、これは実際なかなかむずかしい問題でございます。しかし、われわれとしては、たとえば造船地帯においては、やはり船をつくることをふやす、海上保安庁の巡視艇の建造を急いでもらう。あるいは解体船の作業を進めてもらう。こういうふうにして新しく雇用の機会を創出するような仕事をふやすような方面に対して、運輸省並びに、そのほか関係省庁に連絡をとっていくということでございまして、繊維産業の場合には、これまた構造不況業種として非常にむずかしい条件に立たされておるわけでございますけれども、今度は、ところによってはダウンストリームの製品加工というような方面へ消費者のニーズに対応した工夫をいろいろしてもらう。そういう面に職業訓練と結びつけた対策をやったらどうかとか、いろいろ現在検討をしておりまして、特に今度、新しい試みとして地域職業訓練センター、こういった問題について、それぞれの地区において、ふさわしい計画をお持ちのところもあるようでございますから、そこら辺の関係者とよく連絡をとって、せっかく、ことし新しい試みとして全国に三つばかり予算としては取っておりますから、そういう面を踏まえて、これから地場産業が新しい方向へ展開していくための人手をつくり上げる。マンパワーをひとつ、その地域に形成していくという、こういう努力も必要ではないか、このように思うわけであります。
  200. 西田八郎

    ○西田(八)委員 大臣の言われんとするところはわかるのですが、ただ、それだけでは実際は地域の振興にはならないと思うんですね。ですから地域の振興をさせるためには、やはり何か積極的に国の施策として、そうした将来きわめて雇用の安定する業種あるいはそれにふさわしいような事業というものを展開していかなければならないと思うんです。しかし、それには市町村自体の現在の硬直化した財政状況の中では、とても、やり切れない問題があると思うんですね。したがって、そうした特定の地域、たとえば離職者が何%か出ているという一つの線を決めて、そこから上になるようなところに対しては特別の援助、指導というようなことも考えるべきじゃないかというふうに思うわけですね。これは産炭地はそういうふうになっているわけですよね。産炭地振興というのは、そういうふうになっているわけですが、こうした不況地域についても、そういう対策を立てるべきではないかというふうに思うわけでございますが、これも先ほども言うように、これは労働大臣の直接所管事項じゃないので、むずかしいかもわかりませんが、どらかひとつ今後の政府部内の討議の中で、こういう意見もあったということをお伝えいただいて、対処、善処していただくようにお願いをしておきたいと思います。  それから先ほど土木関係労働者のことについて質問が出ておったわけですが、最近こういうようなのが出てきておるわけですね。公共事業に非常にたくさん出てきた。しかし土木事業というのは上から下へ何段階にも分かれて下請、下請と入っていくわけです。そうすると下請、その次、孫請、そして曾孫請ぐらいになってきますと、資材その他では、もう削減できないわけですね。当然、上の出される方から工費を安くするためには、どうしても労賃でしほるよりほかない、こういう形になってきて、そして一番下の孫請、曾孫請あたりにおいては、たとえば最近の労務賃から比べて、一日五千円も見積もられておればいい方で、五千円を割る場合がたくさんあるわけですね。そうすると労働者の来手がないのです。それでは。したがって、それが県道の修理であるといたしますならば、われわれの住まいしておるところの道を直すのだから、ひとつ協力してやってくれということで、その県道の通る部落の人たちに一戸に一人出てこい、男の場合は三千円渡そう、女の場合は二千五百円だ、それが弁当代だということで人を集めて工事をしている実態が、ある地方で明らかになったわけですね。  これは明らかに労働者賃金の中間搾取になるのではないかというふうに思うわけですが、そうした実態があるということを私はここで明らかにしておきたい。それは労働行政の面で、労働基準法のように中間搾取の排除という厳然とした条項もあるわけですから、ひとつ、そういった問題については十分建設省にも注意を促すようにお願いしておきたい。  また最近、新聞やあるいは週刊誌等によりますと、立ちんぼ、いわゆる職業安定所へ行っても、なかなか求人がないし就職できない。ただし、その日その日、失業保険が切れて、どうすることもできないということで、たとえ五百円でも六百円でも現金をつかみたいというので、大阪の釜ケ崎や東京の山谷に似たような形のものがどんどんふえてきている。あるいは札幌あたりの駅の構内に浮浪者と目される、いわゆる北洋漁業の離職者がうろついて何十人かにふえている。毎日その数がふえているというようなことが報道されておるわけです。  これはまさに職業安定行政の上からいって、あるいは雇用行政の上からいって好ましくない状態だと思うのです。したがって、そういう悪質な業者に対して厳しく取り締まると同時に、やはり、そういう人たちに対して、おれは長年、二十年漁船に乗ってきたんだ。いまや陸に上がったかっぱ、何することもできないという前途に対して夢も希望も失った、そういう労働者に対して希望を持たせる、あるいは新しい職というものを身につけさせるということは、きわめて重要なことはできないかと思うのですが、そういう問題についても、限られた数で、しかも大量の離職者を抱えて、その指導というものは大変だろうと思いますけれども、ぜひ、そういう面にも心を配っていただいて対処していただきたいと思うのですが、ひとつ大臣の所信を聞かしていただきたいと思います。     〔羽生田委員長代理退席、委員長着席〕
  201. 藤井勝志

    ○藤井国務大臣 長い不況の続く現在、ある程度経済指標としては明るさが感じられるような情報なり意見も出ておりますけれども、これが本当に本格的な日本の経済の体質が立ち直って、その方向へ向かっておるのか、一時的な現象であるかということは、まだまだ私は見きわめがむずかしいのではないかというふうに思います。少なくとも雇用の面においでは、御指摘のような非常に重苦しい深刻な状態が目の前に現在、展開をし、われわれは、その直接の雇用不安に悩む労働者の声を耳にしておるわけでございますから、われわれはあらゆる力を尽くし、情報を集めて、そして、関係省庁と連格をとって積極的に問題解決に前進をしなければならぬ。そういう意味から、けさ方から、いろいろ御意見に対してお答えをしておりますように、労働省の枠組みをはみ出したような雇用創出の問題提起をいたしておるわけでございまして、大いにひとつ、いいと思うことは何でも提言をし、これを実行に移すように関係方面に働きかける努力を一層今後も続けていきたい、このように考えておるわけでございます。
  202. 西田八郎

    ○西田(八)委員 最近盛んに、景気がよくなってきた、こういうふうに宣伝をされておるのですが、あたりまえで、三月期というのは大きな会社の決算期なんですよ。その決算期に赤字を出したくないということが各企業の経営者の願望ですよ。したがって経済指標というのは、三月のものがよくなってくるのはあたりまえ。それだけに頼っていたのでは、まだまだ実感として、そんなものじゃないと思うのです。ですから、そういう数字にとらわれずに、実際に失業者を扱う安定所を持っておられるのだし、実際に職を求めて、こういう仕事をしたいから、こういう技能を身につけたいという労働者を扱っておられる労働省は、毎日毎日の実情が本当に手にとるようにわかる行政庁でありますから、そういう面でひとつ手おくれのない、生きた指導と生きた行政をお願いをしておきたいと思います。出てくる数字というのは二ヵ月後くらいしか出てきませんから、そのころにやっていたのではガンもハトも立ってしまった後なんです。  どうかひとつ、そういう点に努力をしていただきたいということをお願いし、最後に、せっかく婦人少年局長がお見えになっていただいているのでお伺いしたいのですが、「「国内行動計画」のしおり」というのに「婦人問題解決への出発点「国内行動計画」」という中で、「雇用・職業における男女平等の確保のために法令を見直します。」このように明確に書いてあるわけなんです。一体「男女平等の確保のために」ということは現在、男女平等でないという意味だと思うのですが、その辺どういうふうにして見直そうとされておるのか。あるいは、どこに問題点があるかをお聞かせをいただきたいと思います。余り時間がないので、私これが最後の質問になるわけですけれども、ひとつ。
  203. 森山眞弓

    ○森山(真)政府委員 ただいま法律的に男女の平等ということがはっきりうたわれておりますのは、まず日本国憲法初め民法、労働関係の法律でも種々ございます。たとえば労働基準法におきましては、特に賃金につきましては、女子であることを理由にして差をつけてはいけないということがはっきり書かれております。しかし、職場の労働条件というのは、ほかにもいろいろなものがございまして、労働時間でありますとか、その他福利厚生でありますとか、職業訓練、昇進昇格、退職、採用、その他さまざまな場があるわけでございます。そういう場に関する男女の平等というのは必ずしも法律的に明確になっていない部分が多くございまして、その面について平等を要求する声が非常に強くなっているわけでございます。  それから、ただいま申しました労働基準法は三十年前にできたものが、ほとんどそのままになっておりまして、女子の保護につきましても、いろいろと配慮して書いてはございますけれども、いまの時代にも一つと必要な面もあるかもしれませんし、あるいは、いまの職場の環境からいいまして、もう必要のない、科学的根拠が認められないというものもあるかもしれないということでございまして、数年前から労働基準法研究会におきまして研究をしていただいているわけでございます。その結果を待ちまして、いまの世の中に合います。また婦人の実情に合いますような法制を確保したいという考え方でございます。
  204. 西田八郎

    ○西田(八)委員 婦人問題だけで一時間くらい、やりとりはあると思うのですが、特に私はきょうお願いしておきたいのは、このようにして国内行動計画の中にも、そうした不平等な面があるということを暗に認めておられるわけでありますし、いま局長の答弁の中にもあったわけですが、憲法十四条では、男女の性別による差別待遇の撤廃ということが明確に書かれておるわけですが、労働基準法三条になりますと性別というのは全然入ってこないのですね。その辺に根本的な問題があるのではないかというふうに思うわけですが、その三条の中に、性別で差別扱いをしてはならないということを明確に記入されるよう、基準法改正のいろいろ研究をしておられるようですが、そちらの方に強い意見として具申をしていただきたい、要望するわけですが、ひとつお願いをしたいと思います。これは労働大臣にもお願いをしておきたいと思います。
  205. 森山眞弓

    ○森山(真)政府委員 労働基準法の三条に性別というものを入れることが望ましいという御意見が、いまいろいろな方から述べられております。先生もそのような御意見のようでいらっしゃいますが、職場における男女平等、さまざまな場において男女の平等をもっと確保するというためには、いろいろな方法があるかと思います。いま研究会でもお考えいただいているわけでございますが、諸外国の例なども研究いたしまして、日本の実情に合いました一番いい方法をとっていきたいと考えております。
  206. 西田八郎

    ○西田(八)委員 いま局長の答弁も非常に消極的であるように伺いました。これは非常にむずかしい、いろいろな問題があるのだろうと思いますが、それは今日の職場の中では、そういうことがあってはならないと思うし、アメリカあたり、先進国、先進国と言われながらも、生理休暇なんかについても全然制限はしておりませんし、そういう点からいけば、諸外国の例というようなことを言わずに、日本には日本の労使慣行というものがあるわけですから、日本の国内法としての基準法でありますから、そういう点、余り外国の例にとらわれず、ひとつ婦人の立場というのですか、人間として差別してはいけないという基本に立って御努力をいただきたいということをお願いして私の質問を終わります。
  207. 木野晴夫

    木野委員長 次に、田中美智子君。
  208. 田中美智子

    ○田中(美)委員 大臣及び基準局長にお伺いしたいわけですけれども、火力発電所などが建設されるときに、いろいろな事故が起きると労災などが発生するわけです。そのときに基準局と企業との癒着があるのではないかという疑いが、うわさが流れるわけなんです。静岡にあります中部電力の新清水火力建設所、建設しているときにはそう言っているわけですが、そこで、いろいろの労災が起きても、中部電力が責任を持たなければならないと思うものが下請企業の方に押しつけられた。これは基準局や基準監督署が中部電力と癒着をしているのではないか、こういううわさが非常に流れた時期があったわけです。ちょうど、この発電所が建設されている最中です。  それが、いまになりまして疑わしいと思われるような中部電力の中のこういう伝票が出てきたわけです。これを見てみますと、中部電力から払われて飲み食いをしているわけです。これはたくさんあるわけですけれども、その中の幾つかを御紹介しますと、昭和四十七年四月十二日に浜松の労働基準監督署が浜松シーサイドゴルフクラブというところで一万七千五百二十八円の飲み食いをしている。その次に、昭和四十七年十月十九日、これは静岡の労働基準局と新清水火力建設所が嵯峨という料亭で約五万六千四百二十円という飲み食いをしております。それから四十七年十二月六日に静岡労働基準監督署との懇談ということで、幸楽という料亭ほかで、やはり新清水火力建設所、これが九万五千八十二円という伝票が切られています。四十七年十二月十四日、これも静岡労働基準局幹部との懇談という名前になりまして、これは全部、伝票の写真を撮ったものを持ってきたわけですけれども、日本橋という料亭で十一万一千七百五十四円という飲み食いをしている。それから、せんべつも、これはいまも盛んにやられているということを聞いておりますけれども、かわっていくときに、せんべつを出しているわけです。こういうものも、いろいろ監督課長とか庶務課長とかいう人たちが転任をしていくときに、ちょうど、この時期に限って三千円とか六千円とかいうような金額が支出されているわけです。それから四十八年三月といいますと、ちょうど、この発電所が完成する直前ですね。直前にやはり静岡労働基準局の基準局長の西山正夫さんという方が北海道の基準局長に転任していっているわけです。このときにやはり五千円というせんべつも出ている。金額は小さいけれども、このせんべつはたくさんあります。こういう領収書がある。ちょうどこの時期にあれしている局長までがせんべつをもらっているということ、いまになってこういうものが出てきているわけです。  これは日にちがたって、もう時効なんだと言われてしまいますと、これは企業側の証拠品なわけですけれども、国民としてみれば、直接の監督の権限を持っているところと監督される企業とが飲み食いをしているということは一体どういうことなんだ。法的にはこれは贈収賄になるかならないかということは別にしまして、こういうことが行われて何年も後になって、これは時効だということでは、企業政府、特に労働省企業との癒着というものに対する国民の不信感というものを増していくのではないかと思います。これについて一体どうお考えになるか。どうしたらいいのか。お二人にお聞きしたいと思います。
  209. 桑原敬一

    ○桑原政府委員 御指摘の問題につきましては私どもは、まず、そういう事実があることはきわめて遺憾だと思います。私どもは公務員でございますから、全体の奉仕者という立場が一つあります。とともに特に労働基準監督官というのは権限を行使して労働者の保護に徹しなければならぬ役所でありますから、そういった関係のある事業所と会食をしたり、ゴルフをともにするということは、私どもは厳に戒めておるつもりでございます。こういう問題は常に何回言っても言い足りないというふうに私どもは基本的に考えております。五十三年度の運営方針につきましても、一般的には運営方針は業務だけを書くのか通例でございますけれども、五十三年度の運営方針におきましては綱紀粛正という項目を設けまして、とかく、そういったことがいろいろと言われがちでございますので、厳に慎むように指導いたしております。また御指摘のような問題につきましては、私どもは十分調査をして措置をとるべきことだと思います。
  210. 藤井勝志

    ○藤井国務大臣 局長がお答えしたことで尽きておるわけでございますけれども、よく言われるように李下に冠を正さず、こういう姿勢がぜひ必要である。綱紀の粛正ということについては、われわれも今後一層厳重に配慮していきたい、このように考えます。
  211. 田中美智子

    ○田中(美)委員 今後厳重にしていただくということは当然ですけれども、こうしたものが出てきている。名前も全部ではありませんけれども、わかっているわけです。そういうものについては、いま調査して処置をしたいというふうに言われましたので、今後姿勢を正すのは当然ですが、やはり、こういう証拠のあるものだけというわけではありませんが、せめて、こういうはっきりわかったものについては厳重な処置をとっていただきたい。そうしませんと、労災で当然、中部電力にしてもらえる人たちが何もされないままに放置されてきた。その人たちは本当に悔やんでも悔やまれないという状態で終わってしまっているわけです。そういう点では非常に罪の深いことだと思いますので厳重な処置をとっていただきたいし、今後、労働省がこういう疑いを持たれるようなこと、一緒に料亭で飲み食いすることは李下に冠どころではないわけですので、そういうことは一切しない。用事があるならば、きちっとしたところで話し合いをするという形をとっていただきたいと思います。  その次に、労働省が出しております通達五九三、これは四つの疾病について言われておりますけれども、この中の頭頸部の外傷ですね、こういう病気で療養している人たちの社会復帰がおくれていく。それでは困るので、この五九三通達の中では「療養期間中の計画就労」ということで、被災者の症状と必要とする療養の状況を考慮して、規則的かつ段階的に行うというようなことを言われているわけです。それで、実際に企業を指導なさるときに、たとえば通勤訓練といって、病気が治りかけの人で、職場へ出て、すぐ帰ってくるというのも行われていますし、それから一時間、二時間、三時間働いて帰ってくる、それを何カ月か続けて、だんだん五時間、六時間と延ばしていって八時間勤務にするという指導をしていらっしゃると思うのですけれども、そういう通勤訓練とか二、三時間の就労という事例は労働省の方では御存じでしょうか。
  212. 原敏治

    ○原説明員 ただいま御指摘の頸肩腕症候群あるいはむち打ち症等の症状者に対する社会復帰関係の指導は五九三通達という通達で実施をしておるわけでございますが、この通達は症状等の特異性から、なかなか社会復帰がうまくまいりませんので(田中(美)委員「簡潔にお願いします」と呼ぶ)こういう形でやっておりますが、指導の実際の実情は私ども細かくとっておりませんので、具体的には、すべてを統計的に承知はしておりませんが、実際の話で実情を聞きますと、短時間の就労の場合もございますし、短時間の就労を余りにも固執していたために、両者の、事業主との話し合いがうまくいかなくて就労が現実に行われていないという実情も聞いております。
  213. 田中美智子

    ○田中(美)委員 委員長、注意していただきたいのですけれども、私の質問したことに答えていただきたいのです。五九三通達の中身はお互いにわかっているわけですから、いま現在、通勤訓練をしているとか、二時間、三時間という勤務をしている、そういう指導をしているところがあるかないかと聞いているわけです。
  214. 原敏治

    ○原説明員 具体的な指導につきましては、各監督署におきまして症状や、あるいは会社の実情等に合わせて話し合いを進めることにいたしておりますので、それぞれのケース、ケースによって違いがございます。したがいまして、その辺、数字的には把握ができておりません。
  215. 田中美智子

    ○田中(美)委員 どうして私の質問に答えてくれないのですか。数字なんか聞いていませんよ。そういう指導をしているか、弾力的にしているかと言っているのです。そういうケースが幾つあるかと聞いているわけじゃないですよ。たくさんあるでしょう。だから、それを聞いているのです。ありますかと確認しているのですよ。
  216. 原敏治

    ○原説明員 短時間の就労につきまして指導した結果もございます。
  217. 田中美智子

    ○田中(美)委員 通勤訓練や二、三時間をしたのがあるかと聞いているのです。初めから。どうして、それに答えてくれないのですか。どうして、そんなに逃げるのですか。
  218. 原敏治

    ○原説明員 逃げているつもりではないのでございますが、通勤訓練や、あるいは短時間の就労段階的に就労する方式等につきましては、労使で話し合うように私どもの方で行政指導を進めております。そういう結果が出ております。
  219. 田中美智子

    ○田中(美)委員 あなた、いつまでたっても答えない。私は、いま二、三時間ということを言っている。二、三時間勤務をしている事例があるじゃないか、そういう指導をしている事例があるじゃないかと言っているわけですよ。あなた、どうしても言わないのですね。
  220. 原敏治

    ○原説明員 ケースとしては二時間ないし三時間で就労に入ったものもございます。
  221. 田中美智子

    ○田中(美)委員 それで済むものを、なぜ、そんなに長いこと時間をとらして、そういう妨害的なことをするのですか。全く、おとなしく話していれば、そういうふうになってしまう。本当に態度がけしからぬと私は思います。実際にあるから、もう一度、確認しているわけですよ。  それから、主治医の指示を尊重するということが、この五九三通達に書かれてあるということを一応、確認しまして、次に質問を変えていきたいと思います。  次に、公社の方に伺いたいわけですけれども労働省では、この五九三通達によって医者の指示を尊重するとか、それから通勤訓練も含めて、事によっては二時間、三時間でもという弾力的な指導をしているわけですね。それなのに国の直轄である電報電話局が、それをやろうとしないということは、どうしてなのかということなんです。  事例を言って、ちょっとお願いしたいと思いますが、これは愛知県の知立電報電話局の瀬間都美子さんという方です。この方は、昭和四十四年から頸腕によりまして休業したり勤務したりしている、御存じだと思います。公社の方には健康管理規定というのがありまして、四時間以下の勤務というのはさせないんだ、こういうことを言っているわけですね。実際に、この瀬間さんという方は公社のいわれるままに——労働省が、一般企業には通勤訓練を初め二時間、三時間という勤務も五九三通達によって指導されているものもあるのに、公社の方は絶対それを認めようとしない。そして四時間勤務でなければだめだというので、瀬間さんは一年休んで、それから五ヵ月、四時間勤務をした。それで、またすぐ再発をしたので、今度は十一ヵ月休みまして、また四時間でなければだめだというので四時間働いた。また再発しまして、今度は十ヵ月休んだ。そしてまた四時間勤務を八ヵ月続けたわけです。しかし、それでまた、つぶれてしまったという形で、いま休んでいらっしゃるのですけれども、医者は、最近ずっと元気になってきた。四月の段階で、非常によくなってきたから二時間勤務を二ヵ月やりなさい。それで様子を見て、九月になったら四時間勤務してもいいと、いまのところは予測できます。だから、ほんのわずかの間だから二時間勤務をするようにということを言っている。それを公社の方は、この健康管理規定というものを盾にとって、四時間以下はできないと言っている。  同じ国のやる中で、労働者は一般企業にそういう指導をしておきながら、公社は、それを言うことを聞かない。同じでないということは一体どういうことなんでしょうか。それで私は、理由を聞くよりも瀬間さんを早速、二時間勤務で二ヵ月と言っているのですから、それくらいのことは弾力的に勤務させて、四時間勤務になり、そして八時間勤務になるようにしていただきたい、これをお願いしたいと思います。公社の方にお答え願います。
  222. 長谷川實

    ○長谷川説明員 お答えします。  ただいま先生のおっしゃいましたように、瀬間さんから一日に二時間の就労ということで診断書が出ていることは事実でございます。私どもといたしましては、本人のお気持ちなり主治医のおっしゃっていることはわからないでもないのですけれども、やはり一日二時間程度ということになりますと、本人の健康管理上も、あるいは職場におきます職場管理上も余り適切とは言いがたいというので、むしろ、その間一生懸命治療をしていただいて早くよくなっていただいて、一日に四時間以上の勤務ができるようになられることをこいねがっているわけでございます。  以上でございます。
  223. 田中美智子

    ○田中(美)委員 医者の指示に従うようにと五九三通達に言っているのに、あなたの指示で、そんなに勝手に、休んでいた方がいいのだということは言えないはずでしょう。  私は、それでは調査に入りたいと思います。あなたがどうしても、それを拒否なさるというなら。どういうふうに健康管理ができないのか、二時間勤務にする、わずか二ヵ月やるということができないということの調査に入りたいと思いますが、労働大臣は五九三通達をどういうふうに思われますか。一般企業には、これをやれと言っていながら、公社は断固この健康管理基準は改めないわけですか。それでは同じ政府の中でおかしいじゃないですか。その点のお答えを両方からお願いしたい。
  224. 桑原敬一

    ○桑原政府委員 この五九三号通達は、私ども、こういった病気をされた方が医者の判断を受けながら、できるだけ早く職場復帰していただきたいということで、一般企業を含めましてお願いいたしているわけでございます。したがって、この通達の趣旨に沿って電電公社も十分お話し合いをしていただきたい。いまお話聞いておりますと、この問題について医者の御意見なり受け入れ側の御意見というようなことも十分整理していきませんと、いたずらに混乱だけありますと、せっかくの職場復帰がむずかしくなると思いますので、十分お話し合いをしていただきたいと思います。
  225. 田中美智子

    ○田中(美)委員 それでは労働省の方から調査をしていただけますか。その場合、二時間でも通勤訓練でもできるというふうに五九三通達になっているのに、公社の方は絶対、四時間以下はやらせない、こういうふうにおっしゃるならば、労働省として一度その瀬間さんの問題を調査していただきたいと思います。その結果によって私も調査に入りたいと思いますので、それをお願いいたします。よろしいですか。
  226. 桑原敬一

    ○桑原政府委員 せっかく、いま担当局長も来て答弁中でございますので、私どももよく事情をお聞きいたしたいと思います。
  227. 田中美智子

    ○田中(美)委員 それでは次に基準局長にお尋ねいたしますが、東海銀行という銀行があります。ここでは住宅補給金規程という規程ができていまして、いわゆる住宅手当のことですね、これが男子と女子とで、はっきりと差別がされているわけです。ちゃんと印刷に刷って書かれております。男子の場合には月八千円以上の家賃を超えるものは三ヵ月について五万四千円を限度として実費を支給する。女子の場合は月四千円以上の家賃の人は三ヵ月で三万九千円を限度として実費を支給するというふうになっています。これは明らかに労働基準法四条違反だというふうに思いますので、早速に、これは基準法違反であるかどうかというものを調査して御報告いただきたいと思います。  その次に、もう一つ同じ東海銀行ですけれども、ここでは男女の賃金差別ではないかという疑いがあるわけですけれども、入行いたしますと事務四級というところから出発します。男の方は事務一級までというものは文句なしに全員がいきます。それが女子になりますと、三級から二級にいくときに、ほとんど三級にとどめ置かれて、二級にいくのはほんの数が少ない。それから二級から一級にいくのは、ほとんどないに等しいほどに少なくなってしまうということですね。これは明らかに賃金差別ではないかというふうに思うわけです。  それで試算をしてみたわけです。年齢が四十、五十というのではありません。年齢は二十五歳で、ここでは評価というのはほとんどできないと私、思うのですけれども、二十五歳の男子が予定どおり、きちっと二級になります。同じに入った女子二十五歳が三級にとどめ置かれておきますと、本俸は余り変わらないのですが、資格手当というのが一ヵ月約七千円変わります。これにいろいろ臨給というのがあったりしますので、大体十五万円というものが年間二十五歳の男女で差がつきます。それから二十六歳になりますと、この資格手当というのが、男子と女子の差というのが約三万になってしまいます。そういう関係から、二十六歳の男女になりますと年間約五十六万五千五百円というような大きな男女差が出るわけです。これは私は明らかに差別だというふうに思います。先ほどの住宅手当、これは明らかに労働基準法違反だと思います。これは早速、違反であるかどうかということを調査をしていただきまして、もし違反ならば是正していただきたいというふうに思いますが、その点の回答を簡潔にお願いします。
  228. 宮川知雄

    ○宮川説明員 御指摘の点は正直のところ、まだ私ども承知しておりません。ただ、特に賃金問題につきまして男女差があってはならないことは御説のとおりでございます。従来から、そういう指導をやっておるわけでございますが、先生指摘の点につきましては調査いたしまして、そういう違反等の事実がございますれば善処いたしたいと思います。
  229. 田中美智子

    ○田中(美)委員 その結果をすぐにお知らせいただけますでしょうか。
  230. 宮川知雄

    ○宮川説明員 はい。
  231. 田中美智子

    ○田中(美)委員 では、その次に、やはり同じ東海銀行ですけれども、今度は基準法三条違反ではないか、不均等な待遇が起きているのではないかという疑いのある人のことを、ちょっと触れたいと思います。  これは三名で、羽鳥健一さん四十四歳、岩槻勤さん四十二歳、古沢清さん三十六歳。この方たちは、それぞれに羽鳥さんは同期に入った人と十二年、賃金に差がついております。それから岩槻さんは十年ついております。古沢さんは五年ついております。現在のところで同期に入った人と年間の差額を比べてみますと、羽鳥さんは年間二百二十五万の差がついている。岩槻さんは二百二十一万円の差がついている。古沢さんは百十四万円の差がついている。これが現状です。この現状が果たして三条違反であるかどうかということの調査を願いたいというふうに思うわけですけれども、私のところに、もちろん、この人たちからの訴えもありましたし、また、その他の人たちからも、いろいろな訴えが来ております。  時間がありませんから、その中のほんの一部を御紹介しますけれども、羽鳥健一さんについては、職場で上司から、これは支店長代理とか次長とかいう地位の人たちから二時間も三時間にもわたって、君は労音などの外部団体に入っているんではないかというようなことを盛んに詰問される。特に入るなということを言われる。それから周りの職場の人たちに対して、自分がかわいいと思ったら羽鳥とつき合ってはならないということを言っているとか、また検査役などというような人から、組合活動をしなければ昇格させるんだけれどもということで、組合活動をやめろということも言われています。それから、これは丸ノ内支店で起きたことですけれども、この羽鳥さんはいま丸ノ内支店にいます。ここに名古屋から転勤になったときに、最初に次長が、羽鳥君をどこの席に座らせようか。結局こんな困った男はどこに座らせようか、こういうようなことを職場委員に言った。職場委員の中のある女性が、そういう差別をする、そんなひどいことをするんなら私はあの人の味方をするというようなことで、そこで反撃してトラブルが起きたというような話が周囲の労働者から私のところにありました。  それから古沢清さんという方は、との人は昇給時の三年連続しての評価というものが水準を非常に上回っている。だから西野支店長という方が主事に推薦を約束した。人事に推薦を出したけれども、やはり昇格はしなかった。それでまた、この人に対して支店長代理が、仕事もよくやっているし、人間関係もいいし、評価もとてもいい。しかし支店長代理のところでは、そこら辺の段階のところでは昇給について、どうしようもない。ということは、どこかで上から差別を受けているんだと言わんばかりのことを言っているとか、こういう話があるわけです。  それから岩槻さんに至っては非常にひどいことを、驚くべきことを言っているわけです。伊藤是介さんという人事部の副長ですか、この人が岩槻さんに、君は幾ら隠そうとしても共産党員じゃないか、おれたちにはわかっているんだ。公安から、それは聞いている。公安とは毎週一回情報交換をしているので、わかっているんだ。こういうことを言って、いやがらせをしたり、それから服部支店長が、共産党員というのは忙しいのかね、そんなとろいことはやめておけというようなことを堂々と言っているわけですね。  これはたくさんの訴えの中の一部を、いま私が言ったわけですけれども、こういうことが職場でうわさにもされ、それを実際に耳にした人たちもいるということから、本人たちは、いわれのない不当な不均等な待遇を受けているんだというふうに、もちろん思っています。それから周りの労働者も、そのように思っている人が非常に多いということが言えると思います。  それで、ことしの四月になってですが、いま羽鳥健一さんは丸ノ内支店にいるわけですけれども、この支店の小嶋清一郎支店長という方が四月一日に羽鳥さんと面談をしているわけです。この羽鳥さんたちは頭取に対して、自分たちがこのような不当な行為を受けているからという具体的な事例を全部会社側には渡してあるわけです。いま私が言ったようなことは。その返事をくれというふうなことで頭取あてに文書を出しているわけですね。それに対して、そのときに、君の文書は読んだ、君の気持ちもよくわかる。しかし支店長というのは限られた期間この店で勤務しているときのことだけしか評価できないのだ。いま現在、君は非常にまじめによく働いているし、係長も係のことはすべて任せられるというふうにほめている。そして臨店検査というのがありまして、この成績も最高の五点になっているというようなことを言って、現に羽鳥さんが非常に優秀であるということを言っているわけです。この羽鳥さんはあちこちの支店を動いているわけですが、どこでも、そのようなことを言われてきているわけですね。ですから一体どこが悪くて、もう四十四歳になっていながら、まだ三十歳ちょっとの人の賃金のところにとどめ置かれているのかということは、思い当たることが本人にもなければ周りの人たちにもないという状態です。そういうことで、私はぜひ、これを調査をしていただきたいわけです。  コンメンタールなどを読みましても、先ほどの男女の差別の問題にしても、やはりそれを区別してもいいんだという立証されるようなものがない限りは、これは差別とみなされるんだということがコンメンタールには書かれているわけですね。ですから、この羽鳥さん以下三人を区別をしてもいいのだというふうに会社側がどのように立証できるのか、その立証をしていただきたいというふうに私は思うわけです。立証ができなければ、それば差別ではないかとコンメンタールにも書いてあるわけです。私たちはこの話を聞いた限りでは、明らかに不均等な待遇である。会社の好みによって、組合活動をしたりそういうことをする人間に対しては昇格させない、そして賃金を上げないという差別をしている、基準法三条違反であるというふうに思いますので、これは至急立証していただくように、その調査をしていただきたいと思います。いかがでしょうか。
  232. 宮川知雄

    ○宮川説明員 人事管理上の取り扱いが、それが不当な差別であるかどうかは、正直なところ大変デリケートな問題がございます。しかし、お説のようなことがあるとすれば労働基準法三条あるいは四条、この場合には男性の方々のようでございますが、問題があろうかと思われますので、調べまして適当な措置をとっていきたい。ただ、先生指摘のように、それが組合活動を理由とする云々ということになりますと、労働基準法というよりも、むしろ労働組合法の問題いわゆる不当労働行為という問題になりますので、そういうふうになりますと、これは労使関係ということで基準機関というよりも労働委員会系統ということになりますことは先生御承知のとおりだと思います。
  233. 田中美智子

    ○田中(美)委員 私の言っていますものは三条の思想、信条というものについてと言っておりますし、周りの人たちは、そのように見ているわけですので、私はいま三条のことを言っているわけですね。ですから組合活動そのものではなくて、組合活動をしようとする思想、そういう考え方を持っている者について差別をするという、これも入ると思うのです。それ以外に労音に入るというのが思想がどうだとか、私は非常に不思議に思いますけれども、そういうようなことも言っているということですので、そういう点で三条についての調査をし処置をしていただきたいと思います。  その点、大臣は、いまの男女差別の賃金それから三条違反の問題というようなことについて十分に御指導していただいて、きっちりと調査をし私の方に回答していただくように、最後に大臣の御回答を聞きたいと思います。
  234. 藤井勝志

    ○藤井国務大臣 御指摘の件は調査をいたしまして、そして仮にも法規違反の点があれが是正をし適切な指導をいたしたい、このように考えます。
  235. 田中美智子

    ○田中(美)委員 質問を終わります。
  236. 木野晴夫

    木野委員長 次に、工藤晃君。
  237. 工藤晃

    ○工藤(晃)委員(新自) 本日は、身体障害者あるいは母子家庭の御婦人、そのような社会的に弱者と言われる方々の雇用の問題について質疑をさせていただきたいと思います。  六月四日の朝日新聞に大きく「障害者にも仕事の場を」という見出しで、今日のこういう障害者に対する雇用の問題をクローズアップさしているわけでございまして、その中で最初に書かれている部分の要点を読んでみたいと思います。  障害者が、不自由な身をこらえながら作り上げ  た製品をもっと利用してほしい、仕事の場もふ  やしてほしい——障害者のこうした声を背景  に、全国社会福祉協議会や各地の授産施設が中  心となって「障害を持つ人にも就労の場を」と  いう運動が進められている。こういうことが書かれておりまして、その次に  障害者が仕事を持ち、自立してゆくことこそが、  リハビリテーションの最終目標といえる。障害  者たちの集会や活動の中で、あるいはふだんの  話し合いの場で、もっとも強い関心を寄せられ  るのが「就労」の問題だ。やはり、「仕事を持つ」  ということが、障害者自身にとっての生きがい  につながり、しかも自活の道に通じているだけ  に、もっとも基本的な課題だ——と考える障害  者が圧倒的に多い。こういうことが書かれておりまして、それから昭和五十一年十月に改正されました身体障害者雇用促進法、こういうものをもっと生かしてほしいということが言われております。それから、逆に今度は、そういう身体障害者を雇用しない場合には、身体障害者雇用納付金制度を設けて、そこから逆に月額三万円のお金を徴収して、そういう促進をしておるところに、それを配分していくというような考え方でありますが、それが  九十四億円にものほり、制度の趣旨がまったく  生かされない結果となった。“罰則金”を納める  のを覚悟で障害者を雇い入れることを拒んでい  る企業が多いという実情である。   労働省職業安定局が昨年六月行った身障者の  雇用状況調査によると、障害者の雇用率を一・  五%以上と定められている民間企業のうち、四  七・二%が雇用率を達成してないし、一・八%  以上の特殊法人にいたっては七三・一%が未達  成というありさまだ。とくに、民間企業につい  ては、規模の大きい(従業員数が多い)企業ほ  ど障害者雇用率が低い。従業員数が百人以下の  小企業の雇用率達成の割合が五七・七%である  のに対し、千人以上の企業は二一・一%という  ひどさ。こういうことが言われているわけですね。  ここから考えましても、とにかく雇用促進法という法律がつくられて、それが本当にどれだけ機能しているのかという問題が一つ考えられなければならない問題であるし、特に特殊法人などの雇用の達成率が非常に悪いということは、ある意味においては、やはりこういう問題についての一つの反省材料にならざるを得ないのじゃないかというふうにも思います。それからまた、そういう者を収容し得る能力を持っている大企業が、逆に中小企業に比べてそういう達成率が非常に悪いということも問題点だろうと思う。それにはそれなりの、いろいろな理由がございましょうけれども、そういうことに対しても何らかの対策を、こういう不況下でございますから早急に考えていかなければならない問題であろうというふうに考えるわけでございます。  そういうことと同時に、たとえば全国の授産施設や福祉工場でつくられたものが、うまくさばけないために非常に困っているのだということとか、それから、そういう製品をできるだけ国や公共団体に利用してもらいたいという要望もあるようでございます。また昭和二十四年につくられた身体障害者福祉法というものが非常に形骸化してしまっている。この中にも  二十五条は「身体障害者の援護を目的とする社  会福祉法人で厚生大臣の指定するものは、その  援護する身体障害者の製作したほうき、はたき、  ぞうきんその他政令で定める物品について、国  又は地方公共団体の行政機関に対し、購買を求  めることができる」とある。障害者が働いて作  るものといったら「ほうき」や「ぞうきん」ぐ  らいしかない、といった認識の古さが、この条  文からのぞかれる。こういうことが書いてございます。まあだらだらしゃべれば切りがございませんので、これぐらいにします。  こういう大きな問題の断面が紙面にも取り上げられているという現状を私たちは深刻にとらえなければならぬ。この前のときにも私は、こういう身障者を含めた社会的弱者に対する失業対策は、できるだけひとつ、きめ細かくやっていただきたいということも申し上げたし、身障者の職業訓練法の場合にも、そういういままでの訓練法から多少発想を変えて、ひとつ、そういう弱者の職業訓練についてもお考えをいただきたい、こういうことを言い続けてまいったのですけれども、ここで時間がございませんので、できるだけ、それを限られた時間の中で要約してお答えをいただきたいと思いますので、実は、こういう問題について私が考えました一つのプランを最初に三つ申し上げます。そして労働省、厚生省、大蔵省から、こういうプランについてのお考えなどをお聞きしながら、何らかの前向きの姿勢を出していただければありがたい、かように考えるわけでございます。  そのプランの一番目は、たとえば身障者の雇用促進法というのがつくられておりまして、一・五%以上雇用しなければならないという法律は一応つくられているわけですが、大企業ほど、その実行が行われていないということでございます。そういう中で、特にこういう不景気の中で、政府景気浮揚という立場から非常に熱心に、いま公共事業投資をしているわけでございます。そういう公共事業に関与する企業、あるいは、そういうものの落札に参加する企業ですね、あるいは地方公共団体にいろいろ関連を持つ企業、こういう企業でも、やはり、こういう雇用促進の達成をしていないところがたくさんあるのじゃないかと思うわけです。ですから、こういう公共事業に関与する企業に対しては、要するに関与する資格として、一・五%以上の達成をした企業でないと、そういうものに関与する資格を与えないというふうな制度をつくってはいかがかという一つの案を提示したいと思うのです。もちろん公共事業、国の出す事業に関与する以上は、できるだけ、その企業としての、そういう弱者に対する責任も果たしていただかなければならない。そういう未達成の、責任を果たしていないような企業が堂々と同じ資格で参加していくということは、私はやはり不公平ではないかと思うわけでございますので、まず、そういうことを考えてみたらどうだろうかという案を一つ提示いたします。  二番目に、ほうきやぞうきんその他でなくて、政府あるいは地方公共団体のような行政機構の中で消費するものを総合的に調査研究をして、その中で弱者の人たちが健常者に比べてそう能力的に劣らないような単純作業の部門で生産できるようなものは、できるだけ福祉工場とか、あるいは授産施設その他、一方においては福祉を対象にするような、民間でも結構ですけれども、そういうふうな企業に優先的に発注して、計画的にそういうものを生産させ計画的にそれを吸収していく、こういうふうな方法をとれば、逆に日本全国にそういうふうなものを適正配置をしながら、そこで身障者の職業訓練も計画的にできるのじゃないか。  そういう中から、できるだけ販売ルートを一般の市場に流さないで吸収してあげる。そういうことによって、一方において、そういう販売のために必要な経費というものを節減しながら、そういう社会的弱者の方々に対する給与も、そういう面の省力によって比較的生み出せるのじゃないかという考え方が持てるわけでございますので、この新聞の一部分にも書いてございますけれども、授産施設協議会の大須賀会長自身も何か名古屋でクリーニングの授産所を開いておられて「主に母子寮の母親たちに来てもらっていますが、わたし自身がセールスから集金までやるという状態です。どこの施設でも施設長自ら製品の売り込みから原材料の仕入れまでやっている。せめて、販売に苦労しないですむようになれば、と願っている」こういうことを言われているわけですから、そういう面において販売に苦労しないで、できるだけ生産にだけ苦労できるようなものを計画的に考えてあげれば、その地域社会における社会的弱者の方々の生活の安定にも大きく寄与するのじゃないかと思います。  どうも聞いてみますところ、行政機構の中で、そういうものを計画的に消費し計画的に吸収していくというふうな発想が、いまのところ、まだないようでございますので、総括的に、そういうものの計画を立て発注していくというような機構が生まれれば大変いいのじゃないかなというふうに考えているわけです。こういうことについて二つ目に、そういう市場の開発を、既存の方々の分野を侵食して、そこへ当てはめるというのじゃなくて、新しくその市場を開発していく、こういうプロジェクトを組まれたらいかがだろうか、こういうふうに考えているわけでございます。  それから三番目には、これは特に大蔵省の方にも御意見を伺いたいと思うのですけれども、単純作業でできるような部分については、大企業から、そういう福祉工場へ特に発注をしてあげるということを促進するような方法を考えたらどうか。もちろんハンディがあるから自由競争の中で、その下請工場へ出せといっても、なかなかむずかしいところもございましょうから、逆に、企業がそういう下請をするような福祉工場をどんどん抱えて、そこへ製品の発注というものを推進するような企業に対しては、そういうところへ出した製品に対して何らかの税制上の優遇措置を考えてあげて、できるだけ、そういう面の福祉工場のいわば経営の安定が図れるような施策を考えてあげたらどうだろうか。  社会的弱者と言われる方々の生活の場を確保するために、こういうことをやったらどうだろうかというふうな、そういう考え方で私が考えました三点ほど提起したわけでございますので、時間の関係上、労働、厚生、大蔵の、この三つの点についてのお考えをまずお伺いしたい、かように思います。
  238. 細野正

    細野政府委員 私の方から第一点目の公共事業に関与する事業者に対して身障の雇用率を要件にすべきじゃないかという、この点についてお答えを申し上げます。  直ちに現段階で入札資格等にまでひっかけるのは、なかなかいろいろな問題があるかと考えますが、しかし先生指摘のように、公共事業の発注を受ける、国から資金的な面についての、金を受け取りながらの事業をやっていく、そういうものにつきまして、身体障害者の雇用率を極力進めるべきという点は、全く私ども同感でございまして、そこで現在、先生御存じのように、身体障害者の雇用率を達成するための計画の作成命令という制度がございます。これを発動します要件としては、未達成の率が非常に高くて、それから一方において、毎年といいますか、採用する数がわりにあって、それから、これを発動するについての必要性が高い、こういう三つの要件を考えているわけでございますが、いまのような、特に一と二の要件に大体該当すると思いますし、また該当する場合には積極的に雇用率の達成をするための計画の作成命令を発動してまいりたい。そういう形で、先生のおっしゃったような趣旨を生かしていくように今後、行政指導を強めてまいりたい、こういうふうに考えている次第でございます。
  239. 板山賢治

    ○板山説明員 厚生省の社会局の更生課長でございますが、いま全国で、身体障害者の授産施設あるいは福祉工場それに精神薄弱者の授産施設を入れますと二百五十カ所ぐらいございまして、その授産科目というのはクリーニングとか縫製とか印刷、電気部品の組み立てとか、こういうものが主でございますが、その土地、土地のきわめてローカルカラーの強いものなどを中心にして作業をいたしておるわけでございます。  先生の御提案のように、新しい官公需を生み出すために新製品といいますか新しい物品を受注あるいは生産させる。それを全国的に計画的に生産販売をさせてあげたらどうか。こういう御提案、確かに的を射た御提案でございますけれども、ただ、これは既存の業者とか、あるいは民間のそれぞれの生産者等との摩擦、競合というふうなものがございまして、従来も長いこと民間関係者からは、このような提案もあり、要望も出ておったのでございますけれども、なかなか日の目を見ないで、それぞれの知恵と工夫に任せられているというのが現状でございます。  ただ厚生省も、こういった授産施設や福祉工場がなるべくうまく運営できるようにということで、たとえば国立病院など、あるいは国鉄の寝台車のカバーというようなもの、こういった現在行われております業種のクリーニングその他に対応します官公需というものは、できるだけ優先的に身体障害者の施設に発注をしていただきたい、こういう働きかけなどをいたしまして、かなり成果を上げている面もございます。行政ベースで、そういったことが可能かどうか、この辺も研究しながら、むしろ大須賀さんなどを中心とします民間のそういった努力を助成していくということによって、いま御指摘のような経営が安定していくような努力をいたしていきたい。このように思いながら取り組んでいる最中でございますので、もうしばらく研究をさしていただきたいと思います。
  240. 矢澤富太郎

    ○矢澤説明員 ただいま御指摘のございました障害者の雇用促進のためには、すでに税制において幾つかの措置を講じております。  その一つは、身体障害者を二割以上雇用している企業に対しまして、その企業が持っている工場用建物でございますとか機械装置等について、通常の償却のほかに、五年間たとえば三分の一とか四分の一の割り増し償却を認めて、税負担を軽減するという措置がその一つでございます。  もう一つは、恐らくこういった授産施設あるいは福祉工場は社団法人というような形で、公益法人の形をとっているものが多いと思いますが、そういった公益法人にありましては、五割以上身体障害者を雇用している場合には、その利益には税金をかけない、非課税とするという措置を講じているわけでございます。  ところで先生の御指摘は、発注した際に発注に着目して、発注した企業に税金をまけようという御提案でございますが、一つの問題は、ただいま御承知のように租税特別措置は世の中の御要請にこたえて整理、合理化の方向で進めておりますので、現在あります措置に加えて屋上屋を重ねるようなことはいかがなものかという問題が一つあろうかと思います。さらには、そういった措置の効果というものについても、従来以上に厳しく見ていかなければならないという問題がございます。そういった問題は別といたしまして、技術的に見ましても、発注に着目して発注した企業に対して税をまけるということは、なかなか技術的に、いまの税制には乗ってこないのではないかというようなむずかしい問題もあろうかと思いますので、現在ございます租税特別措置の御活用によって、この辺に対処していただきたい、かように考えております。
  241. 工藤晃

    ○工藤(晃)委員(新自) 何事か一つ新しいものをやろうと思えば、障害があるのは当然でございますし、いい面があれば必ず悪い面がございましょうけれども、ただ、いま大蔵省のおっしゃったようなことは、もし、それがうまく機能していれば、大企業の雇用率が非常に低いという結果は出てこないと思うのですね。あるいは、そういうことが浸透していないことも理由の一つかもしれませんけれども、やはり、はだに合わないということもあるかもしれない。ですから、私は不公平税制を是正するということは何でも公平にしてしまえということではないと思うので、やはり是正しなければならないものは是正しながら、逆に不公平をつくり上げることも社会的公平をつくり上げるために必要な場合もあるかもしれませんから、そういうことはやはり前向きに御検討をいただくという方がいいのではないか。いままでのものを利用して、それでいいじゃないかということであれば、新しい雇用の拡大は私はできないと思うのですね。ですから一体どういうことをやれば企業がそういう身体障害者を初めとする社会的弱者の生活の保障をしてもらえるような職場が開けるかということについても、十分相手の立場も聞いてみて、そういうことをやってくれるなら、こっちの方がいいよということであれば、そういうことに対する発想の転換も必要じゃないかと思います。  それから労働省、厚生省、皆さん、おのおのの一生懸命なさっておられるようでございますけれども、やはり総合的に、それを検討するという形が生まれていないのではないか。そのために、せっかくの努力が十分生かされた形で生まれてこないという、そういう感じが私は、いましているわけなんで、できることならば、たとえば厚生省の方がおっしゃったように、シートカバーを発注するということもいいでしょうけれども、何もかも、ばらばらにやるよりも、やはりどこか一つプロジェクトを組んで、そこへ行けば全部の資料があり、その中で、最もそういう人たちに対して適応した分野はどういうところにあるかということを研究して、その上に計画的に、それを各都道府県に配分をしていくというふうな、こういう計画性というものが相当大きな効果をもたらすのではなかろうか。各分野において個々ばらばらに、いろいろなことを研究開発されるよりも、そういうことに対して一つのプロジェクトを組み、税制の面からも、また逆に更生施設の面からも、あるいは逆に雇用の面からも、すべてそういうものの中から計画経済的な発想で、そういう分野を確保していくということが、逆に、これからの高齢化社会に対応する一つの対応の仕方ではないか。  だから、たとえば職業訓練のあれにしましても、将来の保障というものが受ける側にとっては重要なことだと思うのです。行き先が保障されないで職業訓練を受けるよりも、あなたがいらっしゃるところには、こういう授産場あるいは、こういう福祉工場があるから、そこで、あなたはこういう計画のもとに、こういう仕事、技術を覚えて、そこに行けば、その工場は倒れる心配はないのだ。そこで、その計画に順応した、機能を十分発揮できるような職業訓練を指導するとか、あるいは、それを一つの核にして、その地域の中で、わざわざ工場まで通ってくるというのも身体障害者にとって大変なことだと思いますから、できるだけ家庭に下請を持ち帰るというか、そういうものを配分して、それをまた回収して、それが中心になって、その地域の身障者の雇用の確保という役割りを果たしてもらうとか、また、そういう事業に関与する方々、企業主は、逆に、その地域の中での福祉活動の中心になってもらえるという、そういういろいろな多目的な形の生活の場を積極的に確保してあげるということが必要なんじゃなかろうかと思います。  そういうことで、時間が参りましたので最後に労働大臣に、私がただいま申し上げましたようなことを総合的にひとつ御検討いただけるような具体的なお考えがお示し願えるかどうか。もし願えるとするならば、一つの省で解決はむずかしかろうと思いますので、そういうところへブリッジをかけていただいて、できるだけひとつ省力化し、あるいは整合化しながら、そういうものを有効的に活用できるようなシステムをお考えいただければありがたいな、こう思うのですが、ひとつ大臣の所信をお伺いいたしたいと思います。
  242. 藤井勝志

    ○藤井国務大臣 御指摘の点は私も本当に同感の気持ちでございまして、現下の雇用・失業情勢に対処する雇用創出対策について、公の立場を離れて、いわゆる試案を取りまとめたのもそこにあるわけでございまして、現在の日本の産業構造の基調が変化を遂げつつあるわけでございまして、その変化に対応して雇用基調も、これに人手を配置転換をしていくという、こういったことを考えなければ、私はただ単に景気回復しただけで問題が片づかない、このような点も心配をいたします。したがって、いろいろ提言をしておるわけでございますけれども、各省庁にまたがる問題でございますし、特に先立つものは金でございますし、また税制面の配慮もしなければなりませんから、そこら辺になると大蔵省という、こういった点の理解を得なければなりません。これをひっくるめて、私はこれからの雇用政策というのは、ただ単に労働省の枠組みだけでは解決がつかない。総合的経済政策を踏まえて問題の解決を図るという、こういう線から内閣全体がひとつ取り組む、やはりこういうことになるべきであるというふうに思います。  そういう上においては先般、衆参両院において雇用安定に関する決議を院議をもってされました。これはまさに超党派で、このような問題意識で、あのような意思表示がなされたと私は受けとめます。したがって、そういう前提のもとに労働省がある程度、世話役といいますか、そういった点において関係省庁に積極的に連絡をし、同時にまた、たまたま党内に雇用問題の調査検討する機関ができましたから、そこへも問題を検討していただくことにしておるわけでございまして、そういうことによって、現在の転換期に対応していく方策を具体的に一つ一つ前進さしていきたい、このように念願をしておる次第であります。
  243. 工藤晃

    ○工藤(晃)委員(新自) ぜひ積極的に、またかつ具体的に御努力をいただくことを心からお願いをして私の質疑を終わります。
  244. 木野晴夫

    木野委員長 次回は、明後八日木曜日午前十時理事会、午前十時三十分委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。    午後四時五十五分散会