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1978-04-11 第84回国会 衆議院 社会労働委員会 第11号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和五十三年四月十一日(火曜日)     午前十時二分開議  出席委員    委員長 木野 晴夫君    理事 越智 伊平君 理事 住  栄作君    理事 竹内 黎一君 理事 羽生田 進君    理事 村山 富市君 理事 森井 忠良君    理事 大橋 敏雄君 理事 和田 耕作君       相沢 英之君    井上  裕君       石橋 一弥君    大坪健一郎君       大野  明君    川田 正則君       小坂徳三郎君    津島 雄二君       戸沢 政方君    友納 武人君       葉梨 信行君    山口シヅエ君       湯川  宏君    安島 友義君       枝村 要作君    大原  亨君       金子 みつ君    川本 敏美君       栗林 三郎君    田口 一男君       矢山 有作君    草川 昭三君       古寺  宏君   平石磨作太郎君       西田 八郎君    浦井  洋君       田中美智子君    工藤  晃君  出席国務大臣         労 働 大 臣 藤井 勝志君  出席政府委員         労働省職業安定         局長      細野  正君         労働省職業安定         局失業対策部長 細見  元君         労働省職業訓練         局長      岩崎 隆造君  委員外出席者         議     員 村山 富市君         議     員 川本 敏美君         経済企画庁調査         局審議官    小林  進君         通商産業省産業         政策局産業構造         課長      日下部光昭君         労働大臣官房統         計情報部情報解         析課長     中谷  滋君         労働省職業安定         局業務指導課長 田淵 孝輔君         労働省職業訓練         局訓練政策課長 守屋 孝一君         参  考  人         (雇用促進事業         団理事)    中島 寧綱君         社会労働委員会         調査室長    河村 次郎君     ————————————— 四月七日  労働基準法の一部を改正する法律案村山富市  君外九名提出衆法第一四号)  雇用対策法の一部を改正する法律案森井忠良  君外九名提出衆法第一五号)  公衆浴場法の一部を改正する法律案粕谷照美  君外九名提出参法第八号)(予) 同月十日  療術の制度化に関する請願小島静馬紹介)  (第二八〇一号)  同外百七十一件(大石千八紹介)(第二八五  四号)  同外三件(長田武士紹介)(第二八五五号)  同外五十件(栗原祐幸紹介)(第二八五六  号)  同外一件(中村喜四郎紹介)(第二八五七  号)  同外十三件(根本龍太郎紹介)(第二八五八  号)  同外三件(長谷川四郎紹介)(第二八五九  号)  同外二件(久保田円次紹介)(第二八九五  号)  同(藏内修治紹介)(第二八九六号)  同外九件(中野四郎紹介)(第二八九七号)  同外三十六件(松野幸泰紹介)(第二八九八  号)  同外四件(宮井泰良紹介)(第二八九九号)  同外二件(阿部昭吾紹介)(第二九五〇号)  同(大柴滋夫紹介)(第二九五一号)  同外三件(左藤恵紹介)(第二九五二号)  同外十八件(齋藤邦吉紹介)(第二九五三  号)  同外五件(中尾栄一紹介)(第二九五四号)  同(中曽根康弘紹介)(第二九五五号)  同(楢崎弥之助紹介)(第二九五六号)  社会保障社会福祉拡充等に関する請願(長  田武士紹介)(第二八六〇号)  同外一件(坂井弘一紹介)(第二九〇〇号)  保育事業振興に関する請願長田武士紹介)  (第二八六一号)  同(山原健二郎紹介)(第二八六二号)  公衆浴場法の一部改正に関する請願川本敏美  君紹介)(第二八六三号)  同外二件(土井たか子紹介)(第二八六四  号)  同(金子みつ紹介)(第二九八八号)  国民年金改善に関する請願柴田睦夫紹介)  (第二八六五号)  積雪寒冷地季節労働者失業給付九十日支給に  関する請願島本虎三紹介)(第二八六六  号)  同(岡田利春紹介)(第二九八〇号)  保育関係費増額に関する請願田中美智子君紹  介)(第二八六七号)  消費生活協同組合育成強化等に関する請願(  松本七郎紹介)(第二八六八号)  同(水田稔紹介)(第二八六九号)  同(渡部行雄紹介)(第二八七〇号)  同外一件(渡辺三郎紹介)(第二八七一号)  同(枝村要作紹介)(第二九七三号)  同(川本敏美紹介)(第二九七四号)  同(田中美智子紹介)(第二九七五号)  同(松沢俊昭紹介)(第二九七六号)  同(美濃政市紹介)(第二九七七号)  同(矢山有作紹介)(第二九七八号)  同(山花貞夫紹介)(第二九七九号)  母性保障法制定に関する請願木野晴夫君紹  介)(第二八九四号)  同(青山丘紹介)(第二九五七号)  同(受田新吉紹介)(第二九五八号)  同(枝村要作紹介)(第二九五九号)  同(大内啓伍紹介)(第二九六〇号)  同(大橋敏雄紹介)(第二九六一号)  同(春日一幸紹介)(第二九六二号)  同(金子みつ紹介)(第二九六三号)  同(河村勝紹介)(第二九六四号)  同(神田厚紹介)(第二九六五号)  同(小平忠紹介)(第二九六六号)  同(小宮武喜紹介)(第二九六七号)  同(佐々木良作紹介)(第二九六八号)  同(高橋高望紹介)(第二九六九号)  同(竹本孫一紹介)(第二九七〇号)  障害者・児の生活保障等に関する請願浦井洋  君紹介)(第二九七一号)  同(大橋敏雄紹介)(第二九七二号)  駐留軍関係離職者等臨時措置法期限延長に関  する請願加藤万吉紹介)(第二九八一号)  同外一件(森井忠良紹介)(第二九八二号)  環境衛生関係営業運営適正化に関する法律  の一部改正に関する請願齋藤邦吉紹介)(  第二九八三号)  同(山崎拓紹介)(第二九八四号)  みつばち保育園の認可設立に関する請願田中  美智子紹介)(第二九八五号)  保育所に対する労働基準局長通達変更に関する  請願田中美智子紹介)(第二九八六号)  戦時災害援護法制定に関する請願金子みつ君  紹介)(第二九八七号)  視覚障害者雇用促進に関する請願金子みつ  君紹介)(第二九八九号)  インフルエンザ予防接種費用国庫補助等に関  する請願椎名悦三郎紹介)(第二九九〇  号)  緊急雇用対策確立に関する請願椎名悦三郎君  紹介)(第二九九一号) は本委員会に付託された。     ————————————— 本日の会議に付した案件  参考人出頭要求に関する件  駐留軍関係離職者等臨時措置法の一部を改正す  る法律案内閣提出第三五号)  職業訓練法の一部を改正する法律案内閣提出  第五五号)  労働組合法の一部を改正する法律案内閣提出  第三七号)(参議院送付)  労働基準法の一部を改正する法律案村山富市  君外九名提出衆法第一四号)  雇用対策法の一部を改正する法律案森井忠良  君外九名提出衆法第一五号)      ————◇—————
  2. 木野晴夫

    木野委員長 これより会議を開きます。  駐留軍関係離職者等臨時措置法の一部を改正する法律案議題といたします。  本案に対する質疑は、去る三月二十八日終了いたしております。  これより本案を討論に付するのでありますが、別に申し出もありませんので、直ちに採決いたします。  駐留軍関係離職者等臨時措置法の一部を改正する法律案賛成諸君起立を求めます。     〔賛成者起立
  3. 木野晴夫

    木野委員長 起立総員。よって、本案は原案のとおり可決すべきものと決しました。     —————————————
  4. 木野晴夫

    木野委員長 この際、越智伊平君、村山富市君、大橋敏雄君、和田耕作君、浦井洋君及び工藤晃君から、本案に対し附帯決議を付すべしとの動議提出されております。  その趣旨説明を聴取いたします。越智伊平君。
  5. 越智伊平

    越智(伊)委員 私は、自由民主党、日本社会党、公明党・国民会議、民社党、日本共産党革新共同及び新自由クラブを代表いたしまして、本動議について御説明申し上げます。  案文を朗読して説明にかえさせていただきます。     駐留軍関係離職者等臨時措置法の一部を改正する法律案に対する附帯決議(案)   政府は、本法の施行に当たり、次の事項について努力すべきである。  一 円高ドル安情勢から、米軍労務関係予算の不足を理由とした人員整理労働条件切下げ等が危惧されるので、従業員雇用労働条件確保について万全を期すること。  一 現在勤務している従業員を解雇し、その業務民間業者に下請切替えを行うことは、極力回避させること。  一 従業員年間雇用計画のは握に努め、人員整理が予想されるときは、九十日以上の予告期間確保に最善を尽し、事前に十分な調整を行い、極力整理者減少を図るよう努めること。  一 就職困難な中高年齢層が多い実情にあるので、再就職促進のため既設の援護措置の一層の充実と制度の効果的な運用を図ること。  一 沖繩県の厳しい雇用情勢に対応するため、離職者雇用機会確保するための対策の効果的な実施を図ること。  一 駐留軍関係離職者等臨時措置法施行令第十条に基づく特別給付金増額及び支給区分拡大を図ること。 以上であります。  何とぞ委員各位の御賛同をお願いいたします。
  6. 木野晴夫

    木野委員長 本動議について採決いたします。  本動議のごとく決するに賛成諸君起立を求めます。     〔賛成者起立
  7. 木野晴夫

    木野委員長 起立総員。よって、本案については越智伊平君他五名提出動議のごとく附帯決議を付することに決しました。  この際、労働大臣から発言を求めておられますので、これを許します。藤井労働大臣
  8. 藤井勝志

    藤井国務大臣 ただいま御決議いただきました附帯決議につきましては、その御趣旨を十分尊重し、関係各省庁とも協議の上、措置いたしたいと存じます。     —————————————
  9. 木野晴夫

    木野委員長 なお、ただいま議決いたしました本案に関する委員会報告書の作成につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  10. 木野晴夫

    木野委員長 御異議なしと認め、さよう決しました。     —————————————     〔報告書は附録に掲載〕      ————◇—————
  11. 木野晴夫

    木野委員長 次に、職業訓練法の一部を改正する法律案議題とし、質疑に入ります。  質疑申し出がありますので、順次これを許します。大坪健一郎君。
  12. 大坪健一郎

    大坪委員 職業訓練法改正案が提案されておりますので、若干、時間をいただいて質問をさせていただきたいと思います。  ことしは野党の皆さんの御協力もあって、五十三年度の予算がすでに実行段階に入りました。相当大規模予算でございまして、この予算によって公共事業その他も積極的な、全国的な施行が望まれておるわけでございますけれども、過去三年の不況のあげく、この予算がどういう効果をもたらすかということが大変国民的な関心の的になっております。この五十三年度予算実行段階に移りまして、七〇%以上、前倒しで前半期施行するというような情勢になりました場合の、わが国雇用情勢はどんなふうになっていくであろうか。そういう雇用情勢に対応して、政府としては一体どういう施策をお進めになろうとしておられるのかということを、まず最初に、ちょっとお伺いをいたしておきたいと思います。
  13. 藤井勝志

    藤井国務大臣 もうすでに御承知のごとく、政府といたしましては、何としても長く続いております不況を脱出して景気の回復を図ることによって雇用の安定を確保したい。こういう大前提のもとに、公共事業を主軸にいたしまして積極的な財政運営をやることによって七%実質経済成長を遂げたい。こういう目標で、現在すでに予算を通していただきまして、きょうも閣議において公共事業等施行推進本部の具体的な進め方について大蔵大臣から詳細な御報告がありまして、着々予定の線で進んでおるわけでございます。  こういうことをやりまして、その到達すべき目標は、昭和五十三年度には雇用者総数で約五十五万人の増加を見込んでおるわけでございまして、特に公共事業につきましては、契約の七三%程度を上半期に集中させる。そして、いま申しましたように中央に公共事業等施行推進本部を、また地方には公共事業施行対策地方協議会を設置しまして、これが円滑な執行、推進を図る。このように進めておるわけでございまして、そのようなことをやるわけでございますけれども公共事業の直接の労働需要量というのがどの程度かということは、公共事業の種類あるいは工種、工法、地域の、そのところどころの状況、こういったことによって異なりますから、一概に、これを算定するということはなかなかむずかしいわけでございます。しかし、公共事業施行推進本部の集計によりますと、五十三年度には公共投資増加に伴い、約十七万人相当の増加が見込まれるということは、すでに予算委員会経済企画庁長官が発表されたとおりでありまして、われわれも、その目標に向かって、これが実現されるべく、あらゆる施策推進したい、このように考えております。
  14. 大坪健一郎

    大坪委員 雇用情勢で申しますと、過去数年間の累積した経済成長停滞から現在、完全雇用状態が相当破れてきておるのじゃないだろうか。完全失業者の数が百万を超えて百三十六万になったということを近々新聞も発表いたしております。一方で、そういう全体的な雇用停滞がある。今度の予算で積極的に政府資本形成によって雇用を造成したいという御希望は、大臣のいまの御説明でよくわかるわけでございますが、一方では、たとえば為替の状態は非常に厳しくなっておる。一ドルが二百二十円見当でまいりますれば、企業の損益分岐点を割るようなものが大分出てくるのではないだろうか。そういう状態の中で雇用政策を担当される労働省としては、単に公共事業推進による雇用回復あるいは雇用増加ということだけで事が足りるというふうに考えられるものであろうかどうか。その辺はどうお考えでしょうか。
  15. 藤井勝志

    藤井国務大臣 大坪委員指摘のように、私も実は、公共事業拡大実施ということだけで救われる、こういうものではない、根は深いと考えます。特に現在の進行している状況というのは、産業構造の基調が変わり、したがって、そこの職場において働く雇用状況が変化しておる。こういう質的な変化を踏まえて雇用政策を展開をしなければならぬわけでございますから、公共事業拡大は、率直に言いますと緊急避難的な対策であって、今後大きく変化する社会の諸情勢に対応して雇用確保を図るためには、別途いろいろな面において施策が総合的に推進されなければならぬ。  その一つの大切な柱として職業訓練のあり方というものを検討すべきであり、それが、これから御審議願う職業訓練法改正を、十年ぶりでありますが、ひとつ相当思い切ってやりたい、こう考えたゆえんでございます。
  16. 大坪健一郎

    大坪委員 職業訓練法改正を、そういう趣旨で行おうとされていることは、私どもも大いに賛成でございます。ただ、ここで問題点を、もう一遍ちょっと深く検討しておかなければならぬと思いますのは、職業訓練は本来、産業の将来の情勢を相当踏まえた上で、労働力産業間にどういうふうに動いていくか、雇用が全体としてどういうふうな需給関係にあるか。そういうことを十分見通した上で、それに対応する施策として出てこなければならないと思うわけでございます。  きょうは経済企画庁からもおいで願っておると思いますけれども、実は産業間の労働力移動状況あるいは年齢別学歴別雇用動向等を若干御説明いただきたい。それも数字をごたごたおっしゃっていただく必要はございません。私どもも、ある程度数字はわかっておりますから、問題は過去数年どういう傾向にあったか。特にオイルショック以後は経済トレンドが変わりまして、わが国の場合は、せいぜい五%程度成長しか確保できないような体質に明らかに変わってきていると思われるわけでございます。そういう情勢産業別年齢別学歴別のような情勢がどう変わってきておるか。それから円高に非常に情勢が固定化しつつある時期に、今後の日本産業円高情勢のもとで、どういうふうに変わり行くであろうか。石油ショック以来のトレンドが、率直に申しましてサービス業に非常に雇用がふえているような状況が出ております。それから職業別に細かく見ましても、相当従来と変わった傾向が出ている。そういう傾向円高情勢でも、なお続くのであろうか。そこら辺のことを少し御説明をいただきたい。
  17. 小林進

    小林説明員 最近の雇用情勢について申し上げます。  私ども手元の資料としまして、労働省の毎月勤労統計調査を見ましても、この数年、雇用情勢はきわめて厳しい状況にあるわけでございますけれども、特に昨年の後半から、全体的な数字としまして、ずっと減少傾向にありましたのを、ことしに入りまして一、二月やっと下げどまったというような状況でございます。  ただし、その産業別状況を見ますと、精密機械のごとく一貫して増加傾向をたどってきている業種、あるいは建設関係のごとく、ことしに入りましてから増加に転じたというところもございますけれども、鉄鋼、化学、繊維というのは、なお引き続き減少をたどっているというふうな状況でございます。ほかにサービス業に関しましては、先生御指摘のとおり一貫して増加しているというようなことで、業種別にアンバランスになってございます。  また、次に年齢別に関しまして、職業紹介状況でこれを見ますと、中高年齢層はもともとが求職が超過しているというような状況でございますけれども求人全体が、このところ減ってきていますので、一層、中高年齢に関しまして厳しい状況にあるというふうに受け取っております。  学歴別につきましては、新規学卒求人求職状況でこれを見ますと、高卒に関しましては求人求職を上回っているということは、なお続いておりますけれども、これも全体的に求人が落ちていますので、高学歴になるほど、なかなか希望したところに就職できない、むずかしくなっているというふうな状況でございます。  なお、このほか若干、男女別にこれを見てみますと、昨年の状況就業者数全体で見ますと、女子伸び男子伸びを上回っているという状況でございます。これもまた、片方完全失業者といったような面で見ますと、昨年は女子増加していたというのが、最近は男子離職者が多くなっているといったような状況でございます。
  18. 大坪健一郎

    大坪委員 もう少し、はっきりしていただきたいのですけれども、全体の傾向として私ども統計数字から判断しますと、オイルショック以後、成長率が落ちてから、第三次産業への雇用増加比率が非常にふえておるように思うのです。第三次産業雇用比率がふえておるのも、第一次産業の人間が減りながら第三次産業がふえておるのと、第二次産業から第三次産業に移っておるのが出ておるような趨勢に思われます。ただ具体的に中身を見ると、一体どういう業種で、どういう実態で、それが進行しておるのか。その辺をもう少し詳しく教えていただきたい。
  19. 小林進

    小林説明員 確かにオイルショック以後、これを別の面から、たとえば設備投資といったような面を見ましても、従来、製造業中心成長が行われましたのが、最近はサービス業中心、むしろ製造業は年々投資が落ちておるといったような状況でございます。そういった中で、特にサービス業に関しましても、大規模よりも、むしろ中小規模といったようなところで投資が行われておるというような状況は変わりないのでございますけれども、その他に関しましては非常に落ち込んでおるというようなことでございます。そういう点を反映いたしまして、雇用状況につきましても同様にサービス業中心雇用増加している。片方製造業は非常な落ち込みを何年も続けておるというような状況でございます。
  20. 大坪健一郎

    大坪委員 労働省の方が詳しく知っているかもしれませんけれどもオイルショック以後のそういう情勢と、最近の厳しい国際環境のもとで、産業間の労働移動が趨勢的に変わってきたかどうか、産業間の労働移動実態をちょっと説明していただきたい。
  21. 細野正

    細野政府委員 労働移動につきましては、オイルショックの前と後で、まずトータルで見まして御存じの雇用動向調査によりますと、オイルショック前は学卒を除いて年間三百七、八十万の入職、離職があったわけでありますが、それが約百万ぐらい落ちまして、オイルショック後は二百七、八十万で推移しておるわけでございます。その中で見ますと、やはり御指摘のように結局トータルの結果として三次に動く人の数がふえて、二次に動く人は、とんとんないし、むしろ減りぎみ、こういう状況で推移してきておるわけでございます。  なお、三次産業の部門でも、どういうところにふえたかという点については、これは細かくわかる統計事業所統計調査しかございませんので、事業所統計調査で見ますと、これは四十七年から五十年にかけてですので、ちょうどオイルショックをまたがっているような面もございますけれども、この四十七年から五十年の間に大きく伸びたものとして、細かく見ますと、たとえば病院のようなところ、あるいは診療所のようなところ、あるいは児童福祉事業関係のようなところ、こういういわば福祉関係、それから、もう一つは百貨店とか、あるいは各種の食料品小売業とか、そういう販売業関係のところ、そういうところが非常に大きな伸びを示しておるという状況でございます。
  22. 大坪健一郎

    大坪委員 年齢別はどうなっているでしょうか。私が聞きたいのは、つまり従来のオイルショック以前のようなトレンド日本経済を見る傾向が、どうも日本全体にまだ残っていて、経済成長率も変わり、体質も少し変わってきたのに、前のようなつもりでやっているのじゃないだろうか。そういう点が、たとえば職業訓練技能労働者を養成するといって機械工ばかりに目を向けておるようだけれども、一体、日本労働実態はそうなっておるのかどうか。労働者動きがそうなんだろうかというような点を実は後々お聞きしたいのです。だから初めから種明かしをするようですけれども、そこのところを少しはっきりさせていただきたい。それから年についても、どういう年齢の人が特に動いておるのか、そういうところを、ちょっとはっきりさせていただきたい。
  23. 中谷滋

    中谷説明員 年齢別労働異動関係でございますが、労働省でやっております雇用動向調査によりますと、高度成長期におきましては若年齢者労働異動が非常に高かったわけでございます。ところが石油ショック以降におきましては、若年層につきましては雇用機会減少していることもありまして、労働異動はむしろ減少しているというような状況にございます。それから高年齢者につきましても同様に労働異動は若干減少しております。ただ、四十五歳以上の中高年齢者につきましては、最近、四十八年のオイルショック以降、離職がややふえているという状況でございます。
  24. 大坪健一郎

    大坪委員 それで達観して申し上げますと、経済動きが変わってきたということを雇用面から見ると、産業別に言えば第三次産業雇用がふえ始めておる。サービス関係社会福祉関係雇用がふえ始めておる。それから若い層は大体固定して就職ができるわけです。むしろ中高年で職業をかえなければならないという必要が出たときに、うまく、それに適応する方法がない。それから中高年の上位の人が失業すると、なかなか就職ができない。こういうのが日本社会問題、労働問題の中心点ではないか。だからそこに政策がぴしっと向かないと、これは余りすっきりした政策とは言えないと思うのです。  実は西ドイツで、私が昔、中小企業の訓練センターを訪れましたときに、そこでずっと訓練をいたしておりました若い人が、あそこは技能者訓練が学校を卒業して三年間ほど行われるわけでありますけれども、歩どまりが、つまり、そこで訓練した者が、その関連の企業に就職するのが五割ぐらいだと言っておりました。残りはどこへ行くかわからぬ。それじゃあなた、どうして、そんな金を出して無理に訓練をするのだと言いましたところが、ドイツでは、どこでもこういう訓練をしておるのだから、われわれのところで訓練をした者がほかに行ったって、ほかのところで訓練をした者がこっちへ来るのだから、結局、全体として見ればバランスがとれておるので、社会的な損失はないはずだ。われわれの考えでは、これを社会連帯というのだ、こういう意見でございました。ヨーロッパの諸国では恐らく大体似たような養成制度を持っておりますから、そういう形になっておると思うのです。  ところが日本の場合は、中小企業の職業訓練を部分的にやっておる。それから公共企業体が職業訓練の一部を受け持っておる。しかしながら大企業では全然独自に別に閉鎖的に訓練を行っておる。したがって、どこどこで訓練をした場合に、そこの訓練を受けた人間が、そこの企業に完全に居残らないと、非常にメリットが悪い、効率が悪い。そういう意味で訓練に金を出すのはもったいないというような意見が強いようでございます。社会連帯の基礎の上に支えられた訓練制度ということにはどうもなっていないようです。  社会党の方々や共産党の方々が、盛んに大企業が訓練を勝手にやるのはけしからぬとかなんとかおっしゃるのですけれども、あるいは訓練が産業界の意向に従うだけではけしからぬとおっしゃるのですけれども、私は、そこのところをもう一遍しっかり考てもらわなければいかぬのじゃないかと思うのです。産業界が本気で訓練制度に取り組まない限り、そして、その産業界の訓練制度が全国的に動かない限り、実際上は、そういう社会連帯に支えられて安心した訓練制度として見られないのじゃないだろうかと思うのですけれども、そこが訓練制度の改革の方向でなければならないと思うのですが、いかがでございましょうか。
  25. 藤井勝志

    藤井国務大臣 まさに私は、今度の訓練法改正の一番基本的な問題に触れられた貴重な御意見と承ります。  先ほども私お話しいたしましたように、雇用及び産業の基調が変わりまして、いわゆる就業者が御指摘のごとく高年齢化しておる。高齢化社会の当然の現象でありますけれども、そういうふうなことになっており、また第三次産業雇用がずっとふえておる、こういうことであり、したがって離職者訓練、成人訓練、そして養成訓練の内容を高めていく。同時に、ただ訓練校の中だけの訓練ということじゃなくて、御指摘のごとく社会連帯に支えられた訓練によって、本当に社会の求める人材の養成ということをやっていくというところに本当の職業訓練のあり方がなければならぬ、私はこのように思っておるわけでございます。せっかく十年ぶりの改正でございますし、雇用を取り巻く客観情勢は大変な変革を遂げておるわけでございまして、産業構造が質的に変化しておる。こういうことを考えますと、私はやはり従来の惰性から全く発想を転換をして、職業訓練のあり方について、せっかくの改正のとき十二分に御意見を承り、論議を尽くして、よき成果を得たい、このように考えております。
  26. 大坪健一郎

    大坪委員 それで、なるたけ大臣にも、その点をお考えいただきたいと思うのですけれども、非常に傾向が変わってきておるということを重点にお考えいただかないと、従来の例の積み上げをやってしまう。従来の例の積み上げをやると、非常に効果が悪い実態になると思うのです。  たとえば日本の場合は終身雇用制が非常にきつかったのですけれども、きょうの新聞にも出ておりましたけれども、企業では終身雇用、年功序列的な賃金体系というものに対して再検討を加え始めたというようなことが、けさの朝日か何かに出ておりましたけれども、大体、中高年労働者離職動き出す。再就職が非常にむずかしい状況の中でも中高年労働者離職がふえ始める。それから第二次産業から第三次産業に移る労働者の動向の方が、第三次産業から第二次産業に移る労働者より総体として多いという空気が出てきておるというようなことになってきておりますし、年齢的に見ますと、若い方は比較的均衡しておりますけれども、年配者は、いま申し上げましたように第二次産業から第三次産業の方にたくさん移り始めているという状況を見ますと、西欧先進諸国で、すでに一般化しておりますように、労働者が一生のうち何遍か自分の職場をかえなくてはならない。そういう社会的要請というものがあって、これは労働者にとって必ずしも幸運なことではございませんけれども労働者が生涯のうち何遍か職をかえなければならないという社会的な情勢変化に対応した労働者の能力付与というものが必要な時期には、職業訓練の意味というものが従来と違って非常に重要になってくると思うのです。  そういう観点が抜けておりますと、たとえば学校を卒業して、若年労働者が非常に必要な社会情勢なのに、その若年労働者に無理に訓練をするというようなことにばかり目を奪われて、肝心な、労働者が一生のうち何遍か職場をかわらなくてはならない。その何遍かかわらなくてはならない労働者職業能力を付与することを、国が手をかさないということになってくる。あるいは企業が、そういうことに目をつぶってしまえば、だれもめんどうを見てやるものがいない。そこに不満が累積してというようなことでは非常に困ると思うのでございますが、その辺について御意見を伺いたい。
  27. 岩崎隆造

    ○岩崎政府委員 いま先生御指摘のとおりでございまして、私ども今回の法律改正で方向を転換するという考え方は、まさに、そこに一つの視点がございます。従来、御指摘のとおり職業訓練が、どちらかというと若年労働者の、新規学卒者の入職前あるいは入職後につきまして、公共職業訓練施設あるいは大企業の場合には企業内、それから中小企業の場合には共同で事業内訓練をやるというようなことに指向していたように思います。かつ、第二次産業技能労働者養成ということに重点があったように思いますが、今回にらんでおりますのは、いまおっしゃいましたとおり、労働者の各人が職業生涯におきまして、単なる入職前ないし入職時の訓練だけではなしに、それぞれの職業生涯の節目、節目におきまして必要な自分の技能をさらに高める、あるいは職種転換をしていく、あるいはまた職業転換をするというような各人の労働者が、これは自発的にか、あるいは余儀なくか、される状況の中において、それぞれ各段階に必要な適時適切な訓練が受けられるようにということの体制を確立してまいりたい。  そのためには公共職業訓練施設も、そのような方向で再編整備する必要がありますし、また、先ほどおっしゃいましたように事業内訓練が、どちらかというと自分向けの訓練をする。あるいは、せっかく訓練をした者がほかへ、その技能を持って就職されてしまったんでは、ただ乗りされてしまうというような考え方である向きがあったかもしれませんが、それにつきましては、特に中小企業については諸般の助成措置を講じ、そして共同事業内訓練という形で事業内の訓練を振興するように助成をしてまいりたいということで、諸種の法律的な規定の根拠も持たせ、あるいはまた予算的な措置も持ってやりたいと考えておりますし、また、大企業の場合にも、たとえば有給教育訓練休暇についての助成というような措置をとりまして、大企業の中でも、そういった労働者がさらに向上訓練を受け、あるいは職種転換、再就職のための訓練を受けるというようなことの機会提供についての助成、便宜を図っていきたいというような方向を考えているわけでございます。  それからもう一つ、公共訓練施設のみでなく、民間、公共一体となった訓練体制を推進してまいりたいということから、民間のいわば訓練についての総力を結集させるというようなことから、民間の自主的な団体につきまして、従来ありますものを統合して、そして活力を与え、それにまた公的な助成もいろいろな面からしてまいりたいというような諸般の施策を考えているところでございます。
  28. 大坪健一郎

    大坪委員 方向としては大体わかるんですけれども、それから、よく考えられた問題もあると思いますけれども、その訓練の位置づけの問題です。  たとえば高度成長の時期のようなときには、養成訓練といいますか、若い人たちの職業訓練に集中的に力を入れるというのも意味があったと思いますけれども、明らかに日本経済体質が変わってきて、国際社会の中では、今後ある意味では非常に付加価値の高い、技術の進んだ領域でしか、われわれの経済発展の道がない。雇用も量的に必ずしも拡大していく可能性が少ないというような時期になりますと、学校教育とか企業内の訓練教育と申しますか、そういったものとか、それから実際に、あちこちでいま、やられております各種学校、そういったものの教育と職業訓練との関係というものを少しはっきりしていただかないといかぬのじゃなかろうか。  日本の場合は、訓練をほとんど教育的にとらまえて文部省が所管をしておるようですけれども、たとえば各種学校が最近非常にふえておる。料理からコンピューターの使い方から全部各種学校でやっておる。非常に高い授業料を取って社会的ニーズにこたえておる。そういうものがまた、先ほど御説明いただいたような全体的な雇用の動向の中で、第三次産業がふえていき、その中でも新しい技術的な領域がふえていっておるということに見合っておる。そういう局面には公共職業訓練が十分機能していない。あるいは、そういう方向に動いていくのが、既存勢力とのぶつかり合いと申しますか、そういうようなこともあって大変むずかしいというような点もあろうかと思いますけれども、そこら辺の職業訓練との兼ね合いをどう考えたらいいのか。職業訓練の位置づけを、そこで、どういうふうにしたらいいのかという問題があろうかと思うのです。私は各種学校の領域を必ずしも侵犯しろとは申しませんけれども、しかし、あんなに各種学校ができて、もうかっておるということは逆に言うと、そういう本当に必要な社会的ニーズに公共職業訓練がこたえてないのじゃないかという疑問も生ずるわけでございます。その辺はどうでしょうか。
  29. 岩崎隆造

    ○岩崎政府委員 学校教育、学校の中における職業教育と、それから職業訓練との関係あるいは社会教育としての職業教育と職業訓練との関係、これは先ほど申し上げました職業人一人一人の生涯訓練という体系の中で、どのように関連づけ、有機的な連関を持って進めていくかということは、非常に広くかつ深い問題だろうと思います。これにつきましては法律でも、そういうことで職業教育と職業訓練とは重複することなく、かつ非常に深い関連を持って運営されるようにしなければならないというようなことが従来とも書かれております。  私ども、その点は今回の改正でも特に触れておりませんけれども、たとえば、いまおっしゃいました公共訓練施設において、従来、第二次産業向けの技能労働者養成ということに重点を置いて運営してきました関係上、どちらかといいますと技能労働者向けの職種の科目が非常に多いということもありまして、従来ともに職業訓練校自体も、できるだけ今後の産業構造の方向に向かっての職種転換に努力をしてまいっているところでありますが、先ほどおっしゃったように、専修学校とか各種学校が非常に時代の先取りと申しますか先端職種をやっているということがございます。私ども、たとえば今回考えております。特に中高年者の離転職者につきまして再就職のための訓練をするという場合には、単なる公共訓練施設の技能労働者向けの訓練のみならず、広く各種学校、専修学校その他、民間のそういった第三次産業的な教育訓練をやっております機関に委託をして、再就職のための職業能力を身につけさせるというようなことで展開をしてまいりたいというように考えておりますが、全体としての職業教育と職業訓練との関連づけというものは今後ともに検討課題として私ども検討を続けてまいりたい、このように考えております。
  30. 大坪健一郎

    大坪委員 私の質問の意図は、たとえば次にも、ちょっと御質問したいのですけれども、訓練を受けたい人の希望と、訓練をしてやろうという方のたてまえや体制とが大分食い違っておる。片一方は学校みたいに訓練してやろうと思っておる。片一方は、とにかく技術を身につけて、すぐ就職する道があったら就職したいのだがと思っておるのに、うまく、そこが合わないという問題があるのではないだろうか。つまり、訓練の機動的、弾力的な体制というものをつくる方法がないのだろうか。役所ですから、行政機関が行うときには必ず準則を定め予算を決めて、形を整えて一定期間やるというようなかっこうをとるのだけれども、一体それがいまの日本の国の実情、労働力を再訓練してもらいたいという一般国民の希望にうまく合っているのかどうかということなんです。  たとえば委託訓練というのがございましたり、今度はモジュール訓練というのが出ております。それから時期を決めて四月が入校期であるとか十二月が入校期であるとかというようなことが、産業が激しく移り動いていく時代に離転職を強制される日本の一般の労働者にとって、本当に身に合った問題なんだろうかということでございます。つまり各種学校のような問題にしても、委託訓練やモジュール訓練や随時入校制度をとったらどうかという問題も同じ発想にあるわけなんですけれども、そういうことに対してフレキシブルな職業訓練の動かし方というのをとることができないのだろうか。そこら辺をひとつ。
  31. 岩崎隆造

    ○岩崎政府委員 私ども今度の法律でも明確に規定しようと思っておりますのは、一つには、その職業訓練が、いまおっしゃいましたように労働者のいろいろなニーズに応ずるような形で展開されるべく、それぞれの地域における産業のあり方あるいは雇用吸収の今後の方向その他もろもろの要因を考えまして、それぞれ、その地場の訓練校が、それに対応するようなやり方を展開していきなさい、こういうことを考えておるわけでございます。  これは従来ともに、やらなければならないことであったわけですけれども、公共訓練施設が技能者を養成するというようなことを中心に考えておりました関係で、いま先生御指摘のような訓練基準なども、どちらかというと時間を限って一年間で千六百時間やれというような形での基準を、やや硬直的に決めているというような点がなかったとは申せません。ただ、従来とも在職者のための成人訓練とか、あるいは離転職者のための訓練につきましては、相当弾力的なフレキシブルな訓練基準を設けておったわけでございますが、これはいままでは法定訓練基準というようなことを言っておりましたのを、今後はもう少しフレキシブルにするために、省令に基準を落としまして、従来とも、それは法律で細かいことを決めておったわけではございませんが、準則の訓練基準というようなことにいたしまして弾力化を図る一方、訓練のやり方につきましては、いま御指摘のように離転職者なり成人訓練というものは、まさに、いつ何どき訓練を受けたいという需要があるかわかりませんのに対して、養成訓練中心でやってきたものですから、学校と同じように四月一回あるいはせいぜい四月、十月入校というようなことで、六月とか十二月に出てきた離転職者がすでに訓練を受けられないで退去させられるというようなことが訓練意欲を喪失せしめるというような問題もあったわけでございますので、その点は訓練技法の開発、これが単位制訓練、モジュール訓練と言われるものですが、そういうものの開発等もいたしまして、これは五十三年度から四訓練科目については、すでにやることにいたしておりますが、さらに、それを大いに拡大をしてまいりたいという考え方で、そのモジュール訓練方式をやりますと、各人が自学自習をしていくということが主体になりまして、そのでき上がりを、それぞれ指導員がチェックしていくというようなことで、各人各人の進み方に応じてチェックができるというようなことから、欲を言えば随時入校までいけるような状況になり得ると思います。それに先ほど申し上げた委託訓練というようなこと等を組み合わせまして、先生おっしゃるとおり弾力的な運営を今後すべく、この法律で裏づけてまいりたいというように考えておるわけでございます。
  32. 大坪健一郎

    大坪委員 つまり私どもが考えておりますのは、職業訓練というものを官庁的な学校的な訓練の体制でなくて、たとえば百貨店でエスカレーターが動いておって、来た人はそのエスカレーターに乗ってどんどん上がって行けば二階まで上がれるというようなやり方がとれないものだろうか、こういうわけなんです。  それぞれの地域には、その地域に応じた労働力の需要の構造というものがあろうかと思います。それを全国的に一括して決めるのじゃなくて、地域地域の労働力の需要は非常に細かい具体的な問題で、いろいろあると思うのですけれども、そういうのをもう少し各都道府県なり何なりの行政主体に、うまく任せるようなやり方で、たとえば訓練科目ですとか訓練内容については、職業訓練所長さんなり県の職業訓練課長さんが、ある程度自主的に判断できる。そして、それをいま申し上げたように、百貨店のエスカレーターじゃありませんけれども、来た人が乗っかっていけば、ちゃんと二階に届けてもらえるというようなやり方で、そのエスカレーターの運転を続けていれば、指導する人がそこのそばに立っていて、うまくエスカレーターに乗っかりなさいよということだけで、何かすっとうまくいくようなやり方というのはないものでしょうかね。その辺はどうですか。
  33. 藤井勝志

    藤井国務大臣 具体的な方法につきましては、また訓練局長の方からお答えをいたしますけれども、私は御指摘の点、全く同感でございます。特に、先ほどもお話ししたように、非常に社会産業構造というものが、質的に激しく転換を余儀なくされておるわけでございますから、そういうときは、お役所的な一つの基準といいますか、ある程度一つのものは必要でございましょうけれども、本来が、今後の職業訓練というのは雇用対策と表裏一体でやるべきである。従来は、ある程度職業訓練校というのは、いわゆる学校の職業訓練課程に準じたようなやり方であったものを、むしろ現在の社会が求めているような対応の仕方をして、いつでも離職者が訓練が受けられる。訓練校でなければ民間委託する。また民間と公の訓練施設が合体でやっていく。あるいはまた訓練校の中に民間の人たちを嘱託にして常時その力を活用する。こういうふうな多様な運用をして、そして御指摘のような方向に職業訓練が生きて使われるというふうに、できるだけ工夫をしていく、こういうふうに努力すべきであるというふうに思っております。
  34. 大坪健一郎

    大坪委員 それから、やはり中小企業の職業訓練というのが、なかなかむずかしい問題でございます。ところが、日本の中小企業は西欧先進国の中小企業とちょっと違っている点がある。というのは親企業との関係が非常に深いわけでございます。サービス業は別といたしまして、サービス業の中でも一部は、そういうものもあろうかと思いますけれどもサービス業は別として、そのほかでは、関連した親企業との結びつきが非常に強い。そこで、たとえば中小企業の労働者が親企業の施設に、うまく親企業の仕事を助ける形で出ていって、そこで訓練を受けて帰ってくるというようないき方も、親企業と中小企業との関連では考えられるのではなかろうか。そういうシステムというものは事業内訓練とか委託訓練とかと違ったシステムになるのではないかと思いますけれども、そういう中小企業の職業訓練の新しいいき方というものは、今回の法律改正にはお考えになっておられませんのでしょうか。
  35. 岩崎隆造

    ○岩崎政府委員 私どもは、中小企業の訓練がそもそも中小企業独自ではできませんので、共同でやるというものに対しては、施設、設備の経費についての補助あるいは運営費の補助等は従来ともいたしておりましたし、それから今回の改正で新たに、従来は公共職業訓練施設に従業員を派遣して訓練を受けさせた場合にだけ認められております奨励制度を、そういった事業主が単独で、あるいは共同でやる認定職業訓練への派遣についても助成をするということの道をつくりました。したがって、その意味では中小企業の共同事業内訓練については相当な力になっていると思いますが、いまおっしゃいますのは、日本の場合には親企業があり、また下請、孫請というようなことになっている関係において、親企業は自分のところの技能者をりっぱな訓練をやっているけれども、その下請の中小企業についても手を伸べさせることができないかという御指摘だと思います。  私ども承知しているところでは、大きな企業で、下請関係従業員も同じ施設に入れて同じような訓練をすでにやっているというところもございます。私どもは、そのやり方がわが国職業訓練一つのあり方として有効なものであるというようにも考えますので、今後そういった面での指導、援助ということをしてまいるべく検討したいと思っておりますが、今回の中小企業主が職業訓練の派遣をする場合の奨励制度、これは中小企業の側から申しますと、大企業のやっております訓練施設に派遣をするという場合には、中小企業の事業主に対する奨励制度として適用があり得るものと考えております。
  36. 大坪健一郎

    大坪委員 全体として、そういういろいろな施策産業界を巻き込んで、やっていかなくては、職業訓練というのはうまくいかないと思うのです。労働力というものは産業の基本的な要素でございますから、産業界を巻き込む場合に、全体としての産業界が職業訓練に関心を持ち、労働力というものを、当該企業だけが特定地域と結びついて、うまいことやったという戦前の繊維産業のようなやり方では、もうやっていけない時代に来ておる。全体として労働力の配分を考えながら労働力の養成を考えながら、やっていけるように日本全体をまとめていく責任が政府にはおありになると思う。そうすると、その財源を賄うときに、その財源の賄い方を、従来のような雇用保険の保険料の一部を使うという形がいいのだろうか。もう少し大胆に産業界に負担を負わせるといういき方をとった方がいいのだろうかという疑問があるのですが、その点はどうでしょう。
  37. 岩崎隆造

    ○岩崎政府委員 現状の御説明を私から申し上げたいと思います。  まさに先生御指摘のとおり、そういった観点も踏まえまして、従来、民間の技能検定のための団体、それから職業訓練のための団体が中央段階並びに都道府県段階において、それぞれ独立して二個の存在としてあったわけでございますが、言ってみれば、おっしゃるとおり労働者の生涯訓練ということで考えますと、それから生涯訓練、技能評価というものが車の両輪のような形で運営をされていくということから申しましても、そういった民間の訓練あるいは技能評価の団体が一体になることによって、民間の大企業も中小企業も含めての訓練体制というものが活力を得るのじゃなかろうかという観点から、私どもは、双方を併合していただきまして、そこから大いにひとつ飛躍的な発展をしてもらおうという考え方で、助成措置等も今後強めてまいりたいというふうに考えております。  ただ、先ほど御指摘のような能力開発事業として雇用保険の保険料の中の一部を取るということだけでは物足りないのではないかというようなことかもしれませんが、これは確かにフランスとかイギリスとかに、そういった制度がございますが、先生も御存じのように、ドイツがちょうど日本と同じようなやり方をしているわけでございまして、使用者の負担に係る雇用保険料を雇用安定のための事業あるいは福祉のための事業、それから能力開発のための事業ということに、案分といいますか、この中で有機的に、そのときの必要に応じて投入するという考え方でございますから、私は現時点において能力開発事業というものに、もっと財源措置として大きなものを割ける余地があり得るのではあるまいか。それをまず活用して、どれだけのことができるか。その上で、またどのように考えるかというようなことは、将来課題としてはあり得ると思いますが、当面の問題としては、まず能力開発事業の拡大充実というものを図ることが当面の課題ではないか、このように考えております。
  38. 大坪健一郎

    大坪委員 将来の研究課題にしていただきたいと思います。というのは、産業界を、非常に強く抜能労働力確保の問題とか労働力確保の問題に関心づけるためには、やはり政府として産業界に、少し責任を持った判断ができるような責任を負わせることが必要じゃないか。雇用保険料というようなかっこうで取ると、何となく一般の税金を取られているような感じになっておりますからという意味なんです。  職業能力開発協会が今度できる。二つの団体を一本にまとめるということ、大変結構なことだと思いますが、しかしこれは、ぼやぼやしていると、わけのわからない団体になってしまう可能性があると思います。これは国の中央団体あるいは都道府県の団体にどういう仕事をさせるのか。それから、どういうふうに責任体制をとらせるのか。そういう点を少し御説明いただきたい。私は、この団体は非常に仕事をする団体にもなるし、ほっておくと、わけのわからない、それこそ役人の古手がのそのそしているという団体になってしまうという感じがいたします。その辺をひとつ。
  39. 藤井勝志

    藤井国務大臣 具体的なお答えは局長からいたさせますが、先ほどの御質問にも関連をしまして、私からも、ちょっとお答えをさせていただきます。  私は、労働省というのが、マンパワーという観点から、これからの産業を担う担い手として、いわゆる資本、施設という関係労働、これが車の両輪として運営をされなければならぬ。その場合の人的配置をスムーズに転換をしていく。そのためには御指摘のごとく産業界挙げて、このような方向に向かって参加してもらい、協力してもらえるという体制をつくらなければならぬ。御指摘のとおりと思うのであります。  そういうことが裏づけられるためには、雇用促進事業団のいままでの金の使い方、こういった面についても職業訓練といった方向へ流れを変えていく。福祉施設本位の雇用促進事業団のあり方、金の使い方については検討し直す。そしてマンパワーを適切に訓練をして配置転換をする。それがスムーズに自発的に産業界と一体になってやれるような方向に流れを変えるべきである。この訓練法の改正を契機に、そういう財政的な配慮もしながら促進をしていく。こういった前提に立って、先ほど局長からも答えましたような訓練関係と技能検定関係との組織づくりとか、これも一つの、その上に乗っかった具体的な施策の一環である、このように考えるわけでございます。
  40. 岩崎隆造

    ○岩崎政府委員 いま御指摘の、新しく設立しようとする職業能力開発協会でございますが、これは従来の技能検定協会と職業訓練法人連合会、各地方にそれぞれありますものを併合し、中央では中央段階のものを二つ併合して新たにつくろう、こういうことでございますが、もちろん先ほども申しましたように、検定と訓練というのは水と油ではありませんで、まさに、その正反対の密接不可分なものである。ですから従来、二つに分かれていたことが、むしろいわば勢力を二つに裂いてしまっていたきらいがあったのではないかということもありまして、これを一緒にいたしますとともに、大企業、中小企業全部ひっくるめました訓練、検定の総合団体として、この民間の力を結集させるということでございます。  もちろん仕事としましては従来の技能検定あるいは職業訓練法人連合会がやっておりました仕事を引き継ぐわけでございますが、私どもは、それとともに新たな観点で期待しておりますのは、先ほども指摘ありましたが、それぞれの労働者が自分の職業生涯において、どこで、どういうターニングポイントで、何を身につける必要があるのかというようなこと。あるいは、それに伴って、どういう訓練機関を利用し、そして訓練を受けることがいいのか。あるいは、そういうことが可能なのかというような、こういう一つとりましても情報というものにも、いま、その提供機能というものが総体的に見ますと欠けているきらいがあると思います。しかも労働者からは非常にそれが求められている。同じようなことは事業主についても言えると思います。そういった情報提供あるいは一人一人の労働者についての、そういった訓練に関する相談あるいは指導というような機能をこれに持たせて、そして労使の便宜に供してまいりたい。  あるいは必要がありますれば、もちろん、そういった既存の民間のいろいろな訓練をやっております訓練の指導者に対する研修とか、あるいは再訓練、それから要すれば、職業能力開発協会そのものが何らかの必要な職業訓練というようなものもやっていくというような方向に事業を拡大する方向を考えまして、文字どおり労働者の生涯訓練体制の民間の側における有力な推進団体ということで方向づけをしてまいりたい、このように考えております。
  41. 大坪健一郎

    大坪委員 御承知のとおり、ドイツのマイスター制度なんか見ますと、資格を持つと社会的に何かできるわけですね。たとえばマイスターの資格を持てば店が開けるとか、そういうことになっておる。日本の場合は要するにレッテルをくれるだけなんですけれども、これをたとえば中高年の離職者が検定制度を受かっていれば雇用のときには何か特典があるとか、何かそういう引っかかりをうまくつけた制度にしていただけないものだろうかという感じがいたします。  それで、もう時間がありませんから最後に大臣にお伺いしておきたいのですけれども、さっきから申しましたように、すっと流れが変わってきておると思うのです。日本経済体質が変わってきておる。だから経済体質が変わってきて成長率が低くなって、産業構造が変わり始めて、しかも為替に抑えられて、国内で、もう採算分岐点を割るような企業は、過剰労働力を吐き出したり、何かしなくちゃならない、そういう時期に来ておる。そういうときに、次に動いていくであろう産業状況というものを、相当御苦労でしょうけれども的確におつかみになっていただいて、そちらの方向に労働力を誘導するような訓練がなくては、要するに出てきたごみを拾うというような、ごみというと語弊がありますけれども、その発想では困ると思うのです。  それで一番重要な問題は、動いていく経済の実体をどう考えるかということなんですけれども、私、さっき見ておりましたら、ここで第三次産業に就業していく人たちの領域で、社会福祉関係がふえておるということと、たとえば公認会計士でありますとか税理士でありますとか、建物サービスでありますとか、そういったコンサルタントのようなものがふえておるとか、いわば、そういう文化的な状態が浸透してきた社会に必要とされるような領域の雇用がふえておって、同じ第三次産業であっても乾物屋さんとか野菜、果物の小売屋さんとか、そういったところは減っておるというようなことが出ておるようですし、自動車の運送屋さんも一般的なものは減っておる。特定の仕事を持ったものはふえておるというふうに、日本社会の内ぶところが深くなって経済的な状態が非常に重厚になってきておると思うのです。そういう状態を十分お見通しの上で、新しく改正される職業訓練法をフルに御活用いただきたい。特に戦略といいますか目標をはっきり定めて、そして、この要綱の中にもちょっと出ておりますけれども労働異動状態を見ると中高年が特に多いのですから、公共職業訓練実施体制の整備の中で離転職者訓練における訓練委託を推進するとか、労働者や事業者のニーズに沿った訓練を推進するとかいうような領域を特に重点的にお取り上げいただくようにお願いをいたしたいと思います。  最終でございますから、大臣の御意見をいただいて終わります。
  42. 藤井勝志

    藤井国務大臣 大変適切な御指摘をいただいたわけでございまして、私も、やはり何とかして新しい産業構造のビジョンを、関係省庁と、密接な連絡をとり、また専門家の意見も聞きまして策定をして、その目標に沿うて、いわゆる人的なものを再配置する。その方向に向かって職業訓練を進めていく。こういうふうな積極的な姿勢で今度の職業訓練法改正の結果を踏まえて努力したい。御趣旨の点、全く同感でございますから、今後大いにがんばりたい、このように思います。
  43. 大坪健一郎

    大坪委員 どうもありがとうございました。終わります。
  44. 木野晴夫

    木野委員長 次に、矢山有作君。
  45. 矢山有作

    矢山委員 私、きょう訓練法の改正点をめぐって二、三御質問したいと思いますが、その前に、まず最近の雇用・失業の情勢についての基本的な見方というのを労働大臣からお伺いしたいと思います。
  46. 藤井勝志

    藤井国務大臣 現在の雇用情勢は依然として厳しさが続いております。完全失業者が二月現在でありますけれども前よりも約十万人ふえまして百三十六万人、こういうことになっておりまして、完全失業率は季節修正いたしまして二・〇八%、そして有効求人倍率は〇・五四倍、前よりもちょうど有効求人倍率は数字がよくなっておりますけれども、依然として〇・五倍という線をずっと続けておる。それにもっていって御承知の構造不況業種からの離職者あるいはまた円高による輸出産業の問題、こういうことを考えますと、私はこれからの雇用情勢はますます厳しい状態に突入せざるを得ない、こういう深刻な認識を持っておるわけでございます。
  47. 矢山有作

    矢山委員 そうすると今後の雇用情勢ますます厳しくなるという考え方のようですが、私もそういうふうに思うのです。今後ますます雇用情勢が厳しくなるという状態を踏まえながら、しかも政府の方では雇用対策基本計画をつくって「雇用政策目標は、完全雇用の達成とその水準を維持することにある。」こう言っておられるわけで、私は、それが雇用政策の中心課題で推進されるのだろうと思うのですが、そこで、この完全雇用を達成するための政策手段というものをどういうふうに考えておられるか承りたい。
  48. 細野正

    細野政府委員 御指摘のように第三次雇用対策基本計画は、今後成長率が低下するであろう、こういう想定のもとで、しかもインフレを起こさずに完全雇用を達成維持していこうということを課題としているわけでございますが、この計画の中で、いろいろな事項が指摘をされているわけであります。その指摘されている事項に沿いまして現在、私どもの方で、たとえば雇用安定資金制度の創設、これにつきましては基本計画の中では、たとえば今後、成長率が低下すれば景気変動に対する対応力というものが弱くなるのではなかろうかという問題、もう一つは、成長率が低下すると成長産業の方が少なくなって衰退産業というものが表面に出てくる、そういう意味での構造転換というものに対する対応策を考えろというふうなことをいろいろ指摘されているわけであります。そういうことに対応いたしまして御存じの雇用安定資金制度というものを創設する。  それから高年齢者の問題につきましても、今後成長率が低下する中で、しかも日本の高齢化というものが諸外国に比べて、はるかに速いスピードで進む。それに対する施策を強化しなさいというふうな御指摘も、この基本計画の中でされておりまして、これに基づきまして御存じの雇用制度というものを創設いたしまして、これに対するいろいろな助成制度の拡充を現在図りつつあるという状況でございます。  また、身体障害者その他のハンディキャップを負った方々の雇用問題というものが、成長率が低下すると大きくなるのではなかろうか、こういう御指摘に基づきまして、私どもは御存じの身障者の法律改正をやりまして雇用制度というものを刷新強化する。そして納付金制度、助成金制度というようなものを導入する。  こういうふうな各般の雇用対策基本計画の中で問題とされた事項に対する対策を現在それぞれ歩を進めているという状況でございますが、なお最近の情勢にかんがみまして、雇用の機会というものを刺激するということが非常に重要じゃないか、こういう観点に立ちまして、したがって私どもとしましては今年度から中高年齢者を雇い入れる事業主に対する助成金制度というようなものを設けまして、これによって雇用の刺激をしてまいりたい。雇用機会拡大を図ってまいりたい、雇用開発を図ってまいりたい。こういうふうに考えておるわけでございます。
  49. 矢山有作

    矢山委員 いま、やられておる制度等について、いろいろ細かい説明があったわけですが、大ざっぱにとらえて完全雇用を達成しよう。そして、その水準を維持していこうというなら、要するに一つは失業の防止でしょう。それから一つは新しい雇用をいかにして創出していくかということだと思うのです。  私はその二点に分けて、では失業の防止のために、これは何といっても一番大切なことなんですから、どういう具体的な対策をとろうとするのか。そして雇用創出という面でも、どういう具体的な対策をとろうとするのか。先ほども論議に出ておりましたが、第三次産業部門、特に福祉関連部門の雇用拡大が予想されるのだということは雇用対策基本計画の中にも言っておるわけでありますから、だから、それに対応するような施策として、どういうふうに考えていくのか、それを御説明願いたい。
  50. 細野正

    細野政府委員 まず失業の防止という問題でございますが、これにつきましては御存じの雇用安定資金制度の中で、たとえば景気変動に対して一時、雇用量を調整しなければならぬという場合に対する休業とか訓練とかをやる場合の休業手当なり賃金に対する助成という制度を現在、設けておるわけでございます。  それからまた、どうしても事業規模を縮小するとか転換をしなければならぬという場合につきましては、これも、それに必要な訓練なり、あるいは場合によっては休業という問題も新しい設備ができるまでの間やるということもありますし、それから他の事業へ出向するとか、その他いろいろな労働異動というものが生じてまいるわけでございますから、その場合にも失業という形をとらずに異動が円滑に行われるようにというふうなことで、これに対する訓練とか、あるいは出向の場合の負担を出向元で持った場合の、それに対する助成とか、各般の施策をとっているわけでございます。  それからまた、たとえば高年齢者問題について言えば、定年延長というような問題も当然、失業防止という問題についての私どもの強力な政策手段というふうに考えまして、したがいまして高年齢者雇用制度というものを、まず軸にしまして、これに対する定年延長奨励金その他を今年度におきまして五割増しにするような大幅な増を図っておりますが、そういう各般の施策を通じて失業の防止に取り組む。また、例の構造不況業種関係につきましては、現在の離職者法の中で、それぞれにつきまして各事業所が再就職の援助計画を立てていただく、その中で失業の防止のために、いろいろと努力を事業所にしていただくというふうなことにいたしておるわけでございます。  それから、次に御指摘のありました第二番目の雇用創出の問題でございますが、この問題は何といっても、やはり経済が立ち直るということが第一の基本でございます。したがいまして先ほど来、御説明がありましたけれども、七%成長ということを目標に現在、大幅な景気回復政策をとっておるわけでございますが、この景気回復のための経済政策、その他産業政策と相まちまして、私どもの方としましても、先ほど来お話が出ておりますようないろいろな分野に、それから労働力の流動というものが現在でも約二百七、八十万あるわけでございますから、そういうものの中で、たとえば交代補充という側面で、ある産業から労働者が毎月毎月、統計でもごらんいただけますように一・数%の、いわば自己都合退職みたいなものがあるわけでございますから、そういう意味での交代補充需要というものは製造業の場合でも全くないわけではないわけであります。つまり規模がふえなくても交代補充需要というものがあるわけでございますから、そういう側面について、先ほど申しましたように、中高年齢者を雇い入れる場合に、これに対して賃金助成をするという制度をとることによって、失業者がそこに円滑に吸収されていくというふうなことを刺激してまいりたいというふうな各般の制度をとりたいわけでございます。
  51. 矢山有作

    矢山委員 失業防止のための、いま行われておる制度なり、それから考え方は承ったのですが、御案内のように、これを何ぼと見るかというのは、いろいろ議論があるようですけれども、企業の方では、かなりの過剰雇用があるというようなことも言っておる状態の中ですから、したがって失業防止ということを考えれば、先ほど、いろいろおっしゃった問題のほかに、やはり、いま一般的に言われておる労働時間の短縮だとか週休二日制をやるということも、これもまた失業を防止するための有力な一つの手段ではないか、こういうふうに考えておるのです。  そこで労働時間短縮、週休二日制を含んだ、これの最近の動向なり、それからまた定年延長の問題を挙げられましたが、定年延長ということは、政府は盛んに言っておられるけれども、実際の事業界の対応は定年延長どころではないので、むしろ定年を短縮して中高年齢者に早くやめてもらって、そして若年労働力に切りかえていこう、こういう要求もあるときですから、したがって、ただ定年延長が一つの方策だと言ってみても、かなり強力な政策手段がとられぬと、事実は逆の方向にいっておるということについての御認識はあるのですか。
  52. 藤井勝志

    藤井国務大臣 大変不況にあえぐ現在の経済社会、わけても円周に苦しんでおる輸出関連企業の現状、矢山委員も御案内のように岡山県の事情なんかも私も、はだで感じておるわけでございまして、そういうとき、労働時間対策の進め方、すなわち週休二日制とか時間短縮とか、こういったもろもろのなにが相そぐわないという現場の声も無視するわけにはまいりません。  しかし中長期的な観点から考えれば、やはり高度成長から低成長に移行せざるを得ない将来を考えますと、いわゆるワークシェアリング、仕事を分け合う、こういう面から、消極的な雇用対策でありますけれども、これを進めていく。同時に、これは別途、労働者の生活のゆとり、生きがい、こういった問題とか、いろいろな外の批判、日本人の働き過ぎ、こういうような総合的な考え方の上に立って、労働時間対策は粘り強く、週休二日制を中心にして前進させるべきである。ところが現在は御案内のように、もたついておることは認めざるを得ませんけれども、しかし後退はしておらない。こういう厳しいときでも、ある程度もたついておるけれども、企業は前向きに対応しようという姿勢は、われわれも率直に認めるべきである、このように思うわけでございまして、それと同じように、定年制延長の問題も、これまた大分前向きに進んではおるのです。  五十五歳のあの定年制は、戦前できた人生まさに五十年というようなときの労働慣行でございますから、これまた、やはり高齢者社会に対応して少なくとも、いま掲げております六十歳定年延長の定着ということは、ひとつ一層馬力をかけて行政指導しなければならぬ。ただ、これも御承知のように、現在の日本雇用賃金慣行というものが、いわゆる年功序列型であり、勤続年数にスライドする。こういうことをやはり労使が内部的に話し合いをしてもらって、そうして定年延長に向かって環境づくりをする、そこへ労働省が行政指導をすることによってお手伝いをする。  こういうことで私は二つとも大切な問題として、今後粘り強く行政指導を進めてまいりたい。そてして現に時間短縮の問題、労働時間の問題は五月に労働次官名において各地方局長産業別、地域別に労使の話し合いをしてもらう場をつくりたい。そして、かつてわれわれが最低賃金制を実施したような前例を踏まえて、できるところから逐次、労働時間の進め方についてコンセンサスを得ていきたい、このように考えておるわけでございます。
  53. 矢山有作

    矢山委員 この問題で、いつまでもやっておると改正問題に入れませんので、もうこれで、この問題は打ちどめにしたいと思うのですが、一つは失業防止の問題でいろいろ御見解を承りましたが、先般、私はペトリカメラの再建問題にも触れて質疑をしたのでありますが、失業防止という観点から考えるなら、現在、倒産をして企業再建のために非常に努力をしておる企業というのが、国民春闘共闘会議が調査したところによると五十四カ所ぐらいあるという話です。そうすると、これはやはり労働者が再建の意欲に燃えて努力しておるわけでありますから、これに対して、できるだけの行政的な措置をとるべきだということを言っておきました。きょうは、この問題でこれ以上お伺いしませんが、その際、ペトリカメラの問題について触れた際に申し上げましたとおりに、これはぜひ御検討いただいて、やっていただきたいと思うのが一つ。  それから雇用創出の面で経済の立ち直りが重要だ。そのためには七%経済成長を達成していく中でというふうな意味の話がありましたが、七%の経済成長というのは大変なむずかしい問題だということは一般的に言われておるところでありますし、それから経済成長経済成長といいましても、従来やってきた高度成長型の経済成長というのは、もう国際的な環境からいっても許されぬ状態になっておるわけです。そうすると、やはり雇用拡大の道をどこかに求めるとするなら、名前は忘れたのですが民間のある研究団体が、社会福祉、医療、教育等々の関連部門で、少なくとも、これを改善していくという観点に立つなら二百万人近い雇用の創出は可能である、こういうことも言っているわけであります。したがって、そういう面にもやはり積極的に目を向けて、いかにして雇用の創出をやっていくかということは労働省としても中心になって御検討いただきたい課題であるということを申し上げておきまして、この問題については、きょうは、これ以上論議をやらないということで、引き続いて今度の職訓法改正の問題の二、三についてお伺いしたいのです。  改正案説明のときだったと思いますが、この職業訓練法改正は、離転職者等の再就職のための職業訓練の機動的な実施がやれるようにするんだという説明を聞いております。その機動的な職業訓練実施ということについて、一体、具体的にどういうふうに展開をしていくのか、それを承りたい。
  54. 岩崎隆造

    ○岩崎政府委員 不幸にして再就職をしなければならないという離転職者は、多くは中高年者の場合でございますが、先ほど先生も御指摘のように、今後の雇用需要のあり方、それから中高年者として、どういった仕事が、体力的その他の問題からいきましても適当であるかということを考えますと、従来、公共職業訓練施設は、むしろ第二次産業向けの職業訓練技能労働者の育成ということの訓練が主体になっておりました。したがって、離転職者を訓練する場合にも、そういったものに向きがちであったわけでございますが、これは現在並びに今後の雇用需要と必ずしもマッチしないということも考えますと、この際、公共職業訓練施設で行います訓練職種というものを大幅に第三次産業向けに職種転換をしていかなければならないということが第一点でございます。  しかしながら、それが現実には施設もあり設備もあり、あるいは指導員もあるといったことから直ちに大幅な転換ということもできないとすれば、むしろ第三次産業向けの教育訓練をやっております民間の訓練関係の機関、あるいは専修学校とか各種学校等の教育施設も含めましたものに思い切った委託をして訓練をするというやり方を大幅にやってまいりたい。  施設内におきましても、もちろん訓練が行われるわけですが、これにつきまして、従来は養成訓練中心でありました関係上、あたかも学校の入学と同じように年に一回四月入校とか、あるいはせいぜい四月、十月二回入校というようなやり方でやっております。離転職者はいつ何どき離職するかわかりません。訓練を受けたいという時期に、ちょうど入校時期がなくて待たなければならないということでは訓練意欲を失わしめることにもなりますので、訓練のやり方を変えまして、私ども単位制訓練、モジュール訓練と言っておりますけれども、具体的には一つ一つの技能の習得課程を積み上げていって、よく引き合いに出されますのは自動車学校の教習のやり方なんですが、一つ合格したら、その次、それを合格したら、その次というように、そして指導員が、それをはたでチェックをしていくというやり方でございます。いまはビデオテープとかフィルムとか、いろいろな視聴覚教材あるいは模型というようなものも非常に発達してまいっておりますので、そういった器材等も自由に使いながら自学自習方式で離転職者がそれぞれ訓練を受けていく。そうしますと指導員は、その段階段階でチェックをするというやり方でやれることになりますので、各人、入りたいときに入れるというところまで展開ができると考えております。そのようなやり方を通じまして離転職訓練の大幅な拡充というものを図ってまいりたい、こういうように考えております。
  55. 矢山有作

    矢山委員 要するに民間機関への職業訓練の委託訓練、それが一つですね。それから、あとは随時入校それからモジュール制の導入、こういうことにまとまるんだろうと思うのです。  そこで私、聞いておるのは、こういうことを聞いておるのですが、それでいいですか。二カ月ごとに入校させて、常時三コースの訓練サイクルをとっていく、それは六カ月訓練だ、こういうふうな考え方がある、こういうことなんですが、そうなんですか。
  56. 岩崎隆造

    ○岩崎政府委員 あるいは先生具体的に、どこか職業訓練校でお聞きいただいたのかもしれませんが、私どもが考えておりますのは、随時入校というのは、ちょっと欲を言えばということでございまして、実は二人か三人が組んでお互いにチェックをし合いながら、そしてまた指導員にポイント、ポイントを見てもらうというようなやり方の方が、かえって有効であるというようなことを考えますと、当面やろうと思っておりますのは、いま先生御指摘のように、二カ月に一遍ぐらいの入校で組んでやっていってもらったらどうかということです。  それから、離転職訓練は能力再開発訓練と言っておりますが、従来の基準として標準は六カ月ということにしておりまして、これはその職種の技能習得の難易度とか、いろいろなことがありまして、これが三カ月にもなり一年にもなりという性質のものですが、この単位制の訓練を突き詰めていきますと、たとえば自動車学校を半月で、半月は極端かもしれませんが一月で卒業する人もあるし六カ月かかる人もあるというようなぐあいに、一つ一つを積み上げていって、でき上がったところで訓練が修了だということになりますれば、あるべき姿としては、訓練期間というものは単なる標準であって、必ずしも六カ月がどうこうということではないはずなんでございます。
  57. 矢山有作

    矢山委員 モジュール訓練というのは新しいやり方なんでしょうけれども職業訓練所の就職状況を調べてみると、大体養成訓練で七一・八%、能力再開発訓練で八一、三%くらいが百人未満の中小企業に就職しているわけですね。こういう数字、恐らく間違いないだろうと思うのですが、そうなってくると、この能力再開発訓練を受ける人たちにしても大体、行く先は中小企業だということになるわけですよ。そうすると中小企業に就職するときには、中小企業の仕事というのは案外、作業工程を、この部分は一つ、この部分は一つというように分けられて、その部分、部分でやるという形になっていないんじゃないか。つまり細分化がされていないんじゃないか。そうすると、どうしても自動車整備なら自動車整備として全体が見られるような形でないと就職がむずかしいのではないかと思うのですよ。  そこへモジュール訓練というのを持っていって、一つの作業工程ごとに、これが済んだら、これは単位は修得した。これで単位は修得したという形で細切れのような形になる。そのままで就職するというのは、なかなかむずかしいんじゃないでしょうか。だから、そういう意味でモジュール訓練を組み合わせて、それで原則的に六カ月修了ということになると、案外その訓練課程全体について習熟できないままに、一つの単位を修めるということで就職しなければならぬ。こういうことが起こってくると、これは非常に問題なんじゃないかという気がするのです。  特に免許や資格なんかを取っておいた方が就職にも便利がいいわけですから、そうすると全体の自動車整備士なら自動車整備士としての資格が取れるような訓練期間を持って、それを全部やらせるということが必要なんじゃないか。一つの単位を修了したから、たとえば訓練期間六カ月来た、もうどこか就職しなさいというのでは、まずいんじゃないか。だからモジュール訓練やるのはやるとしても、自動車整備なら自動車整備士としての全体の訓練は十分終わらして、それで免許や資格を取らして、それから就職させる、こういうふうなことを考えた方がいいんじゃないかと思うのです。ところが訓練期間が原則的に六カ月ぐらいになって、そしてモジュール訓練を組み合わせていくということになると、そこら問題があるんじゃないかと思うのです。私も専門家でないので、現場の諸君から聞いて、ちょっと疑問を持ったからお聞きするんですけれども、どうなんでしょう。
  58. 岩崎隆造

    ○岩崎政府委員 先生おっしゃるとおりだと思います。中小企業の場合には、むしろ、わりに幅広く、いろいろ見なければならないというようなこともございます。離転職者訓練は、どだいが就職してもらうための訓練でございますので、私ども、もう一歩踏み込んで考えますと、むしろ訓練の始まる前が一番いいわけですが、訓練が始まる前のみならず途中ででも再就職の先を、職業安定機関と訓練校それに御本人の努力もありましょうが、早く見つけまして、そして、その再就職先の方の事業主の、そこでの働き場所として要求しております。それに向くような技能を身につけるような職業訓練を、むしろオーダーメードというのでございますか、そういうような形でやれるようにというようなことも考えるわけでございます。  そのためにも、ただ単線的に、もう六カ月終われば、これでおしまいというのではなしに、モジュールですから縦にばかり積み上げておりませんで箱形に横にもいける。一つのものを基盤にしておれば、ある程度、今度それに積み上げるには応用がきくというようなこともありますので、むしろ先生の御指摘のようなものについては、モジュール訓練方式が本当に十分に確立すれば、それの要請にもこたえられる。一種のあらかじめ雇用を約束してもらいながら、それの注文を聞いて、それに向くような訓練をしていくというところまでいくと非常に有効に生きてくると思うのでございます。
  59. 矢山有作

    矢山委員 雇用予約を考えておられると思うのですけれども、この厳しい不況の中で雇用予約をとってやる対応というのが、どの程度できるかというのは私は非常に疑問だと思うのですよ。そういう疑問があるから、モジュール訓練を取り入れて大体六カ月程度でやっていくというやり方に非常に疑問を持つのです。これは就職先が、先ほど言ったような工程が細分化されてない中小企業ですから、だから職業の訓練期間というのは就職するのに便利なように全体が見られるような期間の職業訓練というのが要るんじゃないか、こういうふうに考えるのが一つです。  それから先ほど来、聞いているとモジュール訓練を導入して随時入校制をとるという場合には、視聴覚教育を大幅に取り入れるという考え方のようですが、これも私は現場でいろいろ話を聞いてみると、視聴覚訓練を取り入れて職業訓練をやるというのは非常にむずかしい、こういうことを言っているわけですね。スライドを見たり、あるいは映写で映されるものを見てやれるというようなものではないので、かなり技能を手とり足とりでやらなければならぬ面が非常に多いのです。それで特に中高年で転職する人というのは、そういう傾向が強い。それから養成訓練の過程でも、そういう面が非常に多いんだ、こういうことを聞いておりますので、だから視聴覚訓練を大幅に取り入れることによって、果たして、そうした職業訓練が十分に展開できるのだろうかという疑問がもう一つあるのですがね。
  60. 岩崎隆造

    ○岩崎政府委員 視聴覚教材とか、あるいはシミュレーターといいますかシミュレーションといいますか、模型とか、そういうものを使って事実上もう試行的にやっておりまして、非常に成果を上げておりますものとして、たとえば仙台の職業訓練校とか名古屋におきます港湾の技能開発センターなどで、私も実地で見せてもらったのですが、養成訓練と能力再開発訓練で、どちらがモジュール訓練になじむだろうかと考えますれば、むしろ能力再開発訓練の方が、ある程度、中高年者で職業経験もあり、それだけに、いろいろな意味での基盤が、ある程度あるわけですから、その人にうまく視聴覚教材その他、模型を使ってもらってやるような技法を開発し、かつ指導員が、それのポイント、ポイントをチェックするという指導になれることによって、中高年者の方がむしろモジュールによって習得するのに適しているんじゃないかというように考えられるのです。  ただ、いま試行的にやっているもので、そういう成果を上げておりますし、それから、これも昭和五十三年度から、さらに訓練科目をふやし、また五十四年度以降もふやしていこうと考えているのですけれども、本当にモジュール訓練方式を、これで絶対に非の打ちどころがないというところまで技法を精密にするということを考えますと、私ども職業訓練研究センターというのを五十三年度から発足させていただくことにしておりますけれども、ここで技法、教材、そういったものを集中的に精力的に開発していきたいというように考えておりまして、その成果をまち、それからかつ、それぞれの訓練校の指導員も、まだ海のものとも山のものともわからないというような気分もお持ちではないかと思いますので、その辺は、そういった試行段階での成功事例なども考えながら、私ども十分に指導員の方々とも打ち合わせと申しますか、できれば技法の指導なども受ける機会を得ながら展開をしてまいる、こういうふうに考えております。
  61. 矢山有作

    矢山委員 これは、これからやる問題ですから、ここで、その結果が出ておるわけじゃないので断定的なことは言いませんが、疑問として持たれておる点をいま申し上げて、十分それに対応するようにしていただきたいと思うのです。  それから離転職者の場合でも、いままで自分がやっておった職業の上に上積みしていくとかなんとかいうなら、まだ再訓練もやりやすいと思うのですが、全く新しい訓練を受けるとすると、これまた容易なことでない。したがって一つの問題は、モジュール訓練を取り入れて訓練期間が大体原則的に六カ月というような扱いをしない方がいいのではないか。やはり訓練科の全体の課程を十分修めることができるような配慮が必要だ。それに対しては期間を六カ月に限定することは問題なので、それはやらぬ方がいいではないか。訓練生の個々の状態に応じて職業訓練を考えていくということが必要なんじゃないか。特に免許や資格を必要とするようなものについては、これを取らせるということが、やはり就職には便利なわけですから、それを取るまではできるだけ訓練をさせるようにする、こういうふうなことを配慮すべきじゃないかと思うのです。  というのは、なぜ私がそんなことを言うかというと、全総訓労働組合の兵庫支部が転職訓練を受けておる訓練生に対して、訓練期間として大体どのくらいがいいと思うかということでアンケート調査をやったら、訓練期間が六カ月がいいというのは全然皆無だったというんですよ。それで生活の問題さえなければ訓練期間が十八カ月欲しい。また生活の問題さえなければ訓練期間が二年は欲しい。その二年が欲しいというのが全体の五五・二%、それから十八カ月欲しいというのが一〇・五%くらい出ているんですね。それからもう一つは、これは観点が違うのですが、現在の訓練内容なら一カ年の訓練が望ましい、あるいはまた十八カ月の訓練が望ましいというのが、それぞれ二九%と一〇・五%を占めておる、こういうアンケート調査が出ているのです。これから見ても、六カ月訓練というのは訓練生自体が余り考えてないのじゃないかというふうに思われるから、訓練期間の問題を特に取り上げたわけです。だから訓練期間の弾力性を個々の訓練生に応じて持たせるということは考えてもらえますか。
  62. 岩崎隆造

    ○岩崎政府委員 私ども離転職訓練の具体的な訓練基準も相当弾力的に運用ができるようにはしております。ただ先生御指摘の問題で、ちょっと問題だと思いますのは、私も先ほど申し上げましたように現在、公共職業訓練施設が、実は離転職者のための訓練として、第二次産業の機械とか、その他のいわゆる技能職種についての訓練に、施設内の訓練としては限定されているわけで、それが中高年者にとって、いま御指摘のような問題もあって、必ずしも適していないという場合もあり得るわけでございます。  そこで私どもは今後の雇用需要のあり方も考えて、第三次産業向けのいろいろサービス関連の職種というようなものにまで訓練の幅を広げまして、施設内の訓練をそういうふうに向けていく。あるいは、すぐに施設内の訓練の転換ができない場合には、民間の教育訓練機関に委託をするというようなことで、何と申しましても離転職者は早く再就職をして、定職を得て生活を安定するというところに目的があるわけでございまして、その離転職者のそれぞれの適性能力にふさわしく、かつ雇用需要のあるものという観点から、訓練の受講そのものを職業安定機関あるいは職業訓練校も含めまして相談もし、指導にあずかって、適切な職種の訓練をして、できるだけ早く再就職に結びつけていくというやり方をすべきではないかというように考えるわけでございます。
  63. 矢山有作

    矢山委員 そこで、随時入校制をとり、また単位制をとるということになると、現在の施設設備なり指導員の定数で、これは消化できるのですか。
  64. 岩崎隆造

    ○岩崎政府委員 現在は時間進行的に皆、集合的に六カ月なり一年なりという訓練をやって、手とり足とりというやり方をしているわけですが、先ほど申し上げましたようにモジュール訓練をやりますと、各人の自学自習が主になって、ポイント、ポイントを個人の進捗状況に応じて指導員がチェックをして適切な助言をしていくという形になりますので、定数の問題からいいますと、現在の定数で、こなし得るのではないかというふうに私どもは考えております。
  65. 矢山有作

    矢山委員 大体二カ月ごとに入校させてやるというようなことで考えていくと、三コースぐらいが重なってくる時点があるでしょう。そういうときに果たして視聴覚教育の導入だけでこなせるのかというのは、実際やってみなければ大分問題があると思うのですよ。だから、これはまだ実際の経験が出されていない段階だから、議論をしても、すれ違いになるから、これ以上言いませんけれども、やはりそういう随時入校で、そして視聴覚教育を大幅に取り入れてモジュール訓練をやるという場合、そういった施設、設備、指導員との関連の問題も必ず出てくるだろうと思いますので、こういう問題についても十分配慮しながらやっていただきたいということを申し上げておきたいと思うのです。  それから次は、いろいろあるんだが時間が差し迫ってまいりますから飛ばして、今度、雇用促進事業団の高等職業訓練校は職業訓練短期大学校と技能開発センターに転換させることになっていますね。具体的にはどういうふうに考えているのですか。
  66. 岩崎隆造

    ○岩崎政府委員 これは法律の附則にも書いてございますが、今回、私ども公共職業訓練施設の再編整備というものを図ろうというのが一つのねらいでございます。と申しますのも、第二次産業向けの技能労働者の養成訓練というのが、やはり中卒が非常に減ってきているというような状況あるいは雇用の吸収力というような面からの問題もありますので、できるだけ離転職訓練なり在職労働者の向上訓練というようなことに注力をしなければならないというふうに考えるわけでございますが、その場合、雇用促進事業団の総合職業訓練校が現在全国に八十七、大体一県に二カ所くらい程度ございますけれども……(矢山委員「八十八じゃないか」と呼ぶ)失礼しました。ことしの四月から富山に短期大学校に転換いたしたものがありますので差し引いて八十七になるわけでございまして、短期大学校が東京と富山と四月一日からは三校になるということでございます。  それで一つには、今後、技能労働者というものは、技術革新それから技能の高度化というようなことから、技能労働力として相当高度の技能を持つ必要があるだろう。これを考えましたのが短期大学校でございまして、理論的なこともよくわかり、かつ技能を身につけて、いわゆる私どもテクニシャンと言っておりますが、そういった者が高校卒業者中心に、やはり産業界で需要が非常に見込まれる。  それから同時に、先ほど申し上げた成人訓練、それから離転職者訓練に大きく注力をしていかなければならないという観点から、現在、能力開発事業として全額、雇用保険の勘定でやっております雇用促進事業団の訓練校は被保険者あるいは被保険者であった者のための施設ということが中心ということから、仕事としては、やはりそういった成人訓練なり能力再開発というようなことに注力すべきであるということで、それぞれの地域の産業の動向あるいは雇用の需要の見通し、それから新規学卒者の状況、その他いろいろな要因を考えまして、短期大学校なり技能開発センターというものに原則的に転換を図っていこうという観点でございます。
  67. 矢山有作

    矢山委員 ところが、高等職業訓練校、大体八十七校あるのを、ほとんどじゃない全部、技能開発センターと短期大学校に移行させるということになると、私は養成訓練の方に相当しわ寄せがあるんじゃないかという気がするのですよ。というのは、いま養成訓練と能開訓練の状況をずっと調べた資料があるのですが、たとえば二、三の例を挙げますと、北海道では事業団の高等職業訓練校で養成訓練をやっておるのが五十二年度で千百九十です。それから県立の訓練学校で二千百七十やっている。それから秋田で見ると六百二十と七百四十、宮城で見ると五百三十と千百五十、私の岡山で見ると四百五十と四百五十、こういう形になっているのです。そうして事業団の高等職業訓練校で養成訓練を受けておるのが相当な人数おるわけですね。これを全部そういうような技能開発センターや短期大学校に移行してしまって、果たして養成訓練の方に大幅なしわが寄らないで済むのかということが気にかかるのですが、どんなものでしょう。
  68. 岩崎隆造

    ○岩崎政府委員 先生の御心配はごもっともでありまして、現時点を考えますと、まさに、そういうことになっております。それも、もとはと言えば過去二十年間雇用促進事業団の訓練校がむしろ養成訓練に傾斜していたということから、実績として、そういうふうに出てくるわけでございますけれども、何と申しましても能力再開発訓練中心に注力することが本来の設立の趣旨からいっても適当であろう。  それから県の訓練校が、それぞれの県に三、四ないし十幾つというふうにありまして、その間を縫ってと申しますと語弊があるかもしれませんが、雇用促進事業団の訓練校が一カ所ないし二カ所あるわけです。ですから、その県の中、全体の養成訓練あるいは能力再開発訓練あるいは成人訓練の需要、それも現時点のみならず今後のありようというものを考えまして、総合的に、どこの訓練校をどういうふうにするかという見直しを本来はすべきものだと思います。  そこで、能力再開発訓練中心の技能開発センターに雇用促進事業団の訓練校を編成するという一つの方向というものを出しまして、養成訓練はできるだけ県の訓練校に漸次移行していく。あるいはまた事業内訓練の振興というものを私ども図ろうとしているわけですかち、事業内訓練では養成訓練を主体に今後ますます展開していくだろうということから考えましても、やはり、このままにしておきますと、また事業内訓練あるいは県の訓練、それから雇用促進事業団の訓練、この三つどもえで少数の中卒者なり高卒者の技能者希望という人たちを奪い合うというようなことがあって、逆に片方で離転職者のための職業訓練というようなものが精力的に行われ得ない。そこで、雇用促進事業団の訓練校は本来の設立の趣旨からいって、この際、大いに離転職者訓練に注力するような形でのセンターにしてまいる必要があるのではなかろうかということを考えているわけでございます。  もちろん先生いま御心配のような、現在やっております養成訓練を直ちに来年から廃止しろというような形で持っていくことには無理があることは承知をしておりますので、県あるいは雇用促進事業団、私ども、事業内の人たちも含めて十分に話し合いをしつつ、その地域地域においての転換を図ってまいりたい。  それから今度、養成訓練の訓練課程を、実は従来ありました専修課程と高等課程を一本にして、いわば高度の技能者という意味での高等課程のような形で統一することを考えておりますが、この機会に、県では中卒の専修課程、それから事業団校は中卒の高等課程をやっているという分担の仕方を改めまして、県でも中卒の高等課程をやれるような形で、雇用促進事業団の養成訓練をスムーズに転換できるようなことを、もちろん考えてまいりたいと思っております。
  69. 矢山有作

    矢山委員 ところが、技能開発センターへ転換することによって全く機能を失う高等訓練校ですか、これが十八校ぐらいあるというのです。それはどういう地域にある高等職業訓練校かというと、田舎の方にある高等職業訓練校というのが十八校ぐらいあるのだそうですか、それが技能開発センターへ転換して能力再開発訓練をやるのには不適当なところへ立地しておるようですが、こういったものの扱いはどうなりますか。
  70. 岩崎隆造

    ○岩崎政府委員 いま申し上げたとおり、私どもも事業団をして各訓練校の立地条件その他、種々の事情に応じて無理なく転換できるように考えていくわけでございますが、たとえば、そういうところは本来、寄宿舎設備を充実する、あるいは短期大学校にむしろ転換を図っていくというようなことも考えられるわけでございまして、機能を失うであろうという十八校という数字につきましても、これは試算でございまして、私ども必ずしも、その数字を存じておりませんけれども、そういった方向で無理なく転換できるような諸施策を伴った転換措置は当然とってまいりたいというふうに考えております。
  71. 矢山有作

    矢山委員 技能再開発訓練に重点を置いて、そういった高等職業訓練校を移行さしていくというのは、結局、養成訓練を受ける者が中卒なり高卒の新卒がだんだん減っていくから、その部面を調整していけば、やれるのだという考え方のようですけれども、これはやっぱり地域の実態を十分踏まえてやりませんと、養成訓練の方に非常な犠牲を負わすようなことになるのじゃないか。  これは尼崎市の同和教育研究協議会の進路保障部事務局が調査した状況なんですけれども、尼崎市では昭和五十年をピークに高校進学が低下しておる。それから大阪府でも五十一年、五十二年、五十三年と高校進学が低下をして、特に全日制の進学に限って見ると九〇%の大台を割るというふうに言われておるわけですね。そういう状態から見ると、この人たちというのは、やはり中卒者として養成訓練課程にでも入れて職業訓練をやっていかぬと、どうにもならぬ人たちじゃないかという気がするのですね。だから、そういうような地域の実態に応じて相当な相違が出てきますから、画一的な対処の仕方をやると非常な摩擦を起こすのではないか、こういうふうに思います。  養成訓練なんか民間の訓練でやったらいいのだ、こういうふうにおっしゃいますけれども、なかなか、そうはいかないし、それから実際、先ほど来議論になっておった専修学校なんかもたくさんあるようですけれども、そこへ行くというのはかなり金のかかる話ですし、したがって私は、やはり技能開発センターや訓練短期大学校に高等職業訓練校を移行させるのも、しつこいようですが、地域の実態を十分踏まえながらやっていただかぬといかぬ。このことを特に強く言っておきたいと思うのです。
  72. 岩崎隆造

    ○岩崎政府委員 先生御指摘の点は、まことにごもっともなんでございますけれども、私どもも中卒の高校進学率が多少低まってきつつあるというところまで大きな数字として考えておりませんが、同時に、そういうところはまた離転職訓練も非常に必要な地域である場合もございまして、したがって、県の訓練校と雇用促進事業団の訓練校との調整は十分にしていかなければならぬ。  それから先ほども申し上げましたように、雇用促進事業団がいままで、言ってみれば独占的にやっておりました中卒の高等訓練課程というものは、必要に応じて、もちろん県の養成訓練過程に組み入れていきたいというようなことでございます。もちろん先ほどから再三申し上げておりますように、地域でのいろいろな事情というものを十分勘案して、画一的なやり方を同時にやるというようなことは、もちろんやる所存はございません。
  73. 矢山有作

    矢山委員 それで私は、こういうふうな考え方が出てきたという一つの原因は、先ほどもちょっと言われておったと思いますが、高等職業訓練校と都道府県立の職業訓練校との間に、同一の通校圏にあって訓練科が競合しておる。そこへもってきて養成訓練を受ける人の数が減ってきた。こういうようなことがいろいろ絡んでおるのだろうと思うのですけれども、第一次の職業訓練基本計画では、事業団校と県訓校、事業団立の高等職業訓練校と都道府県立の職業訓練校との区分けというのは、どういうところにつくるかということは、ある程度きちっとできておったはずなんですね。事業団校という言い方をしますが、事業団校の方は、県訓校のみで対応できない需要の高い職種をやる。それから県の範囲を超え、国が推進する必要のある職種をやるのだ。それから技術先端的な職種を主として分担するのだ。これが事業団校つまり高等職業訓練校。それから都道府県立の職業訓練校は、県の地域で需要の旺盛な職種をやるのだ。それから地元産業育成に必要な職種をやるのだ。こういうことで一応整理はされておったわけですね。ところが、それが設立の過程の中で重複したり競合したりするような問題が起こってきたと思うのですよ。したがって、こういう部面は、私は地域の実態に即して、ちゃんと調整をしていけば調整のできる問題だろう、そういうふうに考えます。だから、先ほど来言っているように、高等職業訓練校は何が何でも技能開発センターあるいは短期大学に移行する、こういう方針では、ちょっと硬直し過ぎる面があるのではないか、こう思うのですけれども大臣どう思われますか。
  74. 藤井勝志

    藤井国務大臣 このたびの職業訓練実施体制というものを変えるという考え方は、職業訓練のあり方について相当思い切った改革なわけですから、その改革の基本方向というのは曲げてはいけない。ただ問題は、御指摘のような地域の実情というものも十分配慮して、スムーズな訓練体制の変化、改革をやっていく、こういったことを十分考えて、やはり本当にその地域社会の要請にこたえ得るような職業訓練実施体制というものを行わなければならぬわけでありますから、かえって改革のために混乱が起こって問題が後退をするということになってはいけない。御指摘の点は十分配慮して今後の改正実施に当たりたい。このように考えております。
  75. 矢山有作

    矢山委員 次に、職業訓練校の設備基準の問題について、ちょっとお伺いしておきたいのですが、これは行政管理庁が職業訓練のあり方を調査した中で指摘されておるのですが、公共職業訓練校の養成訓練に関する設備基準というのは、四十六年二月の発訓第五号「公共職業訓練施設における養成訓練の設備基準の細目について」ということによってやられておるわけですね。ところが現行の設備基準は、昭和四十六年以降改正されておらぬ。したがって、設備基準に定められておる機械類の中には、最近の技術の進歩によって、すでに訓練に必要でなくなったものがある、こういう指摘がある。それから、現行の設備基準に定められていないけれども産業界からは強く要請されている新しい技能を習得するために必要な設備というものが要るのだ、こういうようなことを指摘されておるのですけれども、私はやはり産業界における技術進歩に対応した高度な職業訓練をやるという立場から言うなら、この設備基準というのは、いまの事態の中で再検討すべきだと思うのですけれども、どうでしょう。
  76. 岩崎隆造

    ○岩崎政府委員 その点は先生御指摘のとおりでございまして、行政管理庁の勧告を待つまでもなく私ども自身、問題として考えており、すでに再検討の作業を進めておるところでございます。特に雇用促進事業団の技能開発センターなどは、先端的な機械が備わって、そして在職労働者の向上訓練に役立つというようなことでなければ意味を失いますので、そういった面から私どもは、すでに都道府県なり雇用促進事業団との検討は済ませておりますが、何分これは専門的な問題でもありますので、専門家によります検討の研究会で、いま鋭意検討をしていただいておりまして、できるだけ早く、ことしじゅうには少なくとも再検討の結果を出したいと思っております。
  77. 矢山有作

    矢山委員 それから最後にお伺いしておきたいのですが、認定職業訓練に対する援助、助成策というのはいろいろ講じられておると思うのですが、やはり、いまの失業多発の状態の中で、積極的な職業訓練をやって、そして再就職あるいは就職に資しようとするなら、この援助、助成というものはかなり強化していかなければならぬのじゃないか、こういうふうに思うのです。  そこで全建総連の方から一、二労働省の方に、かねて要求しておる問題があると思うのです。一つは養成訓練の補助対象経費の枠の拡大とい一人当たり補助金の大幅な増額によって、補助金を実質三分の二くらいになるようにしてくれぬか。現状は実質二分の一そこそこしかならぬ。こういうことで、そういう要望が出ておるのと、もう一つ、法人である労働組合の行う職業訓練に補助金を交付してくれ。こういう主に二つの問題が出てきておるのですが、これに対する労働省の考え方を承っておきたいのです。
  78. 岩崎隆造

    ○岩崎政府委員 第一点の認定職業訓練に対する補助でございますが、これは現在、施設設備費補助と運営費補助と二つに分かれております。それで考え方としては国が三分の一持ち県が三分の一持って三分の二の補助をするというたてまえでございますが、いま御指摘の点は、それが実額三分の二になっていないんじゃないかというお話だと思います。  まず運営費につきましては、昭和五十二年度、昨年度大幅な増額をいたしました。二万五千円から四万三千円、これは八割ぐらいのアップになりますが、従来は年々一〇%ぐらいのアップでございましたのを思い切って八割増額したわけでございます。これは年額でございますけれども一人当たりの金額です。これで、まだ少ないというお話だと思いまして、今回の法律改正趣旨一つには事業内訓練の飛躍的な振興ということにあるわけですから、私ども今後ともに努力してまいりたい。  施設設備費の補助につきましては、五十三年度に、従来一件当たり二千二百万円でございましたのを三千万円、約三五%の増額を図りまして、これは今後ともに助成の充実に努めてまいりたいというように考えます。  それから第二点の法人である労働組合の行う事業内訓練でございますが、これも補助対象にせよというお話でございますので、この点につきましては今後十分に検討してまいりたいと思います。
  79. 矢山有作

    矢山委員 法人である労働組合の行う職業訓練に補助金を交付することについては、いろいろ議論もあるようですが、やはり職業訓練を受けるということは労働者の権利だと私は思いますので、そういう点からするなら多少の法律上の問題点というのを克服する努力を一つは、していただきたい。たとえば能力再開発事業として補助金が出せないとするなら、これは一般会計から出すなり何なり、いろいろその点は検討していただきたいと思うのです。  最後にひとつ、お願いしておきたいと思いますのは、訓練職種によっては、先ほど来いろいろ議論が出ておりますように、入校者が大幅に定員を割っているものもあると考えられます。しかしながら国及び都道府県が地域別、職種別の訓練需要や技術労働力不足の状況などを十分把握して訓練職種の選択の適正を期してもらいたい。特に雇用創出効果のある部門の職種を積極的に訓練科目に取り入れるということが重要ではないかと思いますので、こういった点についての具体的な検討をやり、早期に実現をしていくようにお願いをしたい。このことを要望いたしまして質疑を終わりたいと思いますが、いかがでしょう。
  80. 藤井勝志

    藤井国務大臣 御指摘の点は、しごくごもっともな御提言でございまして、十分趣旨に沿うて検討さしていただきたい、こう思います。
  81. 矢山有作

    矢山委員 終わります。
  82. 木野晴夫

    木野委員長 次に、田口一男君。
  83. 田口一男

    ○田口委員 一つは、最近よく言われますように学歴社会ですね。その学歴社会の中で、特に養成訓練を考えた場合に職業訓練校をどう位置づけるかという問題で、二つの面からお尋ねをしたいのです。     〔委員長退席、竹内(黎)委員長代理着席〕  一つは、大変嘆かわしいことだと思うのですけれども、私が聞いた範囲でいきますと、いま県に設置をしている職業訓練校、専修訓練校というのですか、それなんかを高等学校の滑りどめという理解を持っておるのですね。特に中学校の教師あたりが、そういう理解しか持っていない。そういうものでありますから、せっかく訓練校に入所をしてもらっても訓練に身が入らぬということがある。それから最近の高校生の非行なんという問題にも絡んでなんですけれども、そういう非行を働いて高校を退学させられる。その退学させられた元高校生が仕方なしに職業訓練校に入る。こういうケースは極端なケースかもしれませんけれども、間々あるということですね。  したがって、そういう者を受け入れた訓練校の指導員というのは大変に苦労をしておるし、何とかならぬかというふうな注文も多いのでありますが、そういう面に対して、いまここで、どうこうするということは実はむずかしいと思うのですけれども、それを別な面で考えると、今度、訓練校の種類なんかを、専修訓練課程を養成訓練一本に高等訓練課程というふうに変えていく。そういう機会に、むしろ権威を高めるためには、卒業した者に対する資格ですね、職業高校というふうなものとは別ですけれども、そういうことについて何かいい考えがないか。それをまずお伺いしたいと思います。
  84. 岩崎隆造

    ○岩崎政府委員 今度、専修課程と高等訓練課程と一緒にして、高等訓練課程のようなものに、技能習熟度を高める養成訓練に漸次していきたいという方向でございますから、原則として、そこの訓練課程を経た者については技能士補という、これは先生御指摘の資格、ストレートに当たるのかどうかということもあろうかと思いますが、まず技能士補という資格を与えます。それから一定の経験年数を経まして二級技能検定を受ければ二級技能士、あるいは、それからまた、さらに一級技能士に上がっていくということで、この技能の系列におきまして一応、技能検定との絡みにおきましては、訓練校を出た者が一つのそういった資格を取り得るわけでございます。  ただ同時に、職種によりまして従業するための資格とか、いろいろな点がございますので、その点につきましては従来ともに関係各省庁と、それぞれの職種の訓練科目に対応する資格制度があるものについての資格の付与ということについて努力をし、実現をしてまいっておるものもございますが、今後ともに、その点は最大限の努力をしてまいりたいと思っております。
  85. 田口一男

    ○田口委員 そういった資格を取るということを私は別に否定はしません。しかし、五十一年に出ています文部省のいわゆる教育白書ですね。ここで数字を拾ってみますと、こういう数字が二つあるのです。御存じのように「就業者の学歴構成」を見ると、昭和三十五年と四十五年の比較なんですけれども、中学校を卒業してすぐに就職する者が十年間に百五十万人減っておるわけです。ところが高等学校を卒業して就業する者が七百三十万人ふえておる。大学を卒業した者が二百六十万人もふえておる。ここのところから学歴社会と言うのでしょうけれども、問題は学歴と所得との比較ですね。この数字を白書から見ますと、初任給について言うならば、中卒一〇〇として高卒一三二、大卒が一八五、それが昭和三十九年の数字です。一番新しい四十九年の数字を見た場合に、中卒一〇〇に対して高卒一二三、大卒が一四七、ちょっと狭まってきますね。そういう傾向があると思うのですが、しかし、もう一つ数字を見ますと、初任給は確かに狭まってきておるけれども、その会社に入って五年、十年たった後に学歴がどう響いておるか、それを見ますと、昭和四十九年の数字で二十五歳から二十九歳になった者を見たときには、中卒一〇〇として高卒が九八、減っているのですが、大卒が一〇三。ところが三十から三十四歳代になると中卒一〇〇に対して高卒が一〇七、大卒が一五になっている。  こういう数字を見たときに、これは企業によっての扱いも画一的じゃないと思うのですが、せっかく訓練校に入って出て、いま言った何々技能士というような資格を持ったけれども、いま私が申し上げた数字で見る限りは、端的に言って訓練校を出た者は中卒ですね。学歴だけで見た場合に高卒にはならぬでしょう。こういったことから今度、短期大学校というふうな名称をつけたり、いろいろな改正があるのですが、私は、これを卒業した者に高校卒、大学卒の資格を与えよ、与えれば権威が高まるのだとは、そう短絡的に申しませんけれども、学歴社会と言われる今日の社会の中でも、それに対応して訓練校を修了した者に対する何々卒業程度といった資格を与えてもいいのじゃないか。一方では高校のすべりどめというふうな理解も、悪いことですが、あるのですが、その辺どうでしょう。
  86. 岩崎隆造

    ○岩崎政府委員 あるいは恐縮ですが先生の御質問に対する直接のお答えにならないかもしれませんけれども、いま文部省の調査というふうにおっしゃいましたが、私どもも実はその職業訓練校、たとえば中卒で専修課程を経た者は一年、それから高等課程を経た者は二年でございますが、これは統計上、中卒者、高卒者、大卒者という大きな区分けにして統計をとるのが一般でございまして、訓練校の一年課程なり、あるいは二年課程をとった者を一つのグループとして、どういう処遇がされているかという統計のとり方が第一ないわけなので、訓練を受けた、そして技能をそれだけ持った人が、実際に企業の中で、どういった処遇を受けているかという正確な表示の数字になっていないようにも思うのです。  ただ確かにおっしゃるように、訓練校を一年で出ました。そして企業に雇われる場合に、中卒で企業に直接入った人の一年の職歴を持った人と同じ処遇しか受けられないということでは、訓練校自体に入ったメリットがないということにつながることも考えられます。それで私どもも、数字を正確に覚えておりませんが、一番上位の四分の一ぐらいをとりますと、なるほど訓練を受けた実績を評価されているなというように、賃金でも、初任給がそもそも、そういう高いところに位置づけられているというようなところにありますけれども、平均いたしますと、ちょうどその一年の職歴のある人と同じところに落ちついてしまうということで、これはやはり技能に対する企業の扱い、評価の仕方というものの意識を、まず、どのようにかして改めていただく必要があるのではないかという観点から、私ども物を考えなければならぬと思っております。そういった点になりますと、これを強制するというようなことも手段的になかなか考えられませんので、いろいろな形でPRをし、あるいは啓蒙に努め、今後ともに、その技能労働者が技能を持っているにふさわしい評価を受けるような形で処遇をしてもらうように指導、PRに一層の努力をしてまいりたいと考えます。
  87. 田口一男

    ○田口委員 短絡的に学歴社会だから訓練校を出た者もそれ相応の資格を、高校卒に相当するような資格を与えよ、これですべて解決するとは思わぬのですが、さっきも教育白書の数字を引用しましたように、依然として企業の傾向は卒業免状によって賃金に差がつくということですから、せっかく工業訓練校などで勉強して出た者が、それ相応の待遇がされるようでなければ私は励みにならぬと思うのです。そういう意味から単にPRをさらに徹底するというだけではなくて、ひとつ、この問題は今後の検討課題、せっかく改正をするのですから、中卒二年高卒一年で高等訓練課程というふうなことになるのならば、それも検討しなければならぬのではないか。戦前、何々養成課程といったものがありましたね。それは戦後、学歴区分によると旧中卒であるとか旧高専卒であるとかいったふうにランクをつけておりますから、それらを参考にされて、やってもらいたい、これを要望しておきます。  次に、離転職者の職業訓練の問題なんですが、一つは、いまの訓練校の入校時期を見ますと年度初め、四月一日ということになっておるところが多いのですが、今日のような不況の中では、では三月三十一日に辞職しようかということはないわけですから、それを受け入れる入校時期、こういったものについて検討する必要があるのではないか。原則的に言えば、いつからでも入れるという、その辺のお考え、いかがでしょうか。
  88. 岩崎隆造

    ○岩崎政府委員 先生御指摘のとおりでございます。離転職者がいつ離転職するかわからず、それの再就職のための離転職訓練をいつ受けたいということが随時出てくるわけでございます。たとえば東京などでは訓練校が二十近くございまして、それが大体電車で通える範囲になっておりますので、離転職訓練で同じ科目をAの訓練校とBの訓練校とCの訓練校でやっているというような事態の場合には、Aの訓練校は四月と十月、それからBの訓練校は七月と一月、それからもう一つは、またその間というような配分の仕方もできるわけでございまして、現にそれをやり始めております。そういうふうに現在の訓練のやり方を変えないで、そのまま訓練時期を、それぞれの離転職者が通える範囲でもって訓練校が幾つもある場合には、やる可能性もあるわけでありますが、一般には、地方の訓練ということになりますと訓練校が一つしかないということになりますので、そこで、いわゆる単位制のモジュール訓練というやり方を技法として用いまして、その結果、訓練生の入校時期を多様化していくということが可能であろうという考え方から、すでに二、三試行的にやって成功している例はありますけれども、五十三年度から本格的に取り組んでまいりたい。そして今後、毎年度幾つかの訓練科目について、そういうことをやることによって訓練時期の事実上の多様化が図られる、こういう進め方をしてまいりたいと考えております。
  89. 田口一男

    ○田口委員 同じ行政区域に二つなり三つなりあれば便利でいいのですけれども、大体一県に県立の訓練校が、よくあって三つか四つですよね。そこで私は、直接、指導員のそういった意見を求めてみたのですが、やれるとすれば一教程ごとに、四月から六月までは一教程だ、そういうことに入校させれば、受け入れ側としてはやれるんじゃないか。ただ問題は、その指導員をどうするかということです。数、そういうこともありますから、ひとつ真剣に、これも考えてもらいたいと思うのです。  ただ私は、ここで言いたいことは、この離転職者の職業訓練の場合に、さっきから大臣、今日の不況雇用状況で相当悩んでみえる答弁をされておるのですが、昭和三十三年の訓練法が制定され、四十四年にいまの訓練法にまるっきり変えてしまった。この訓練法制定の沿革を振り返ってみると、はっきり言って訓練法自体の中に誘導政策というのはあったと思うのです。昭和三十三年のときの考えは、いわゆる近代的な技能労働者確保する、こういう趣旨のもとに訓練法というものを新しくつくった。ところが、それから十年たった四十四年の今日の訓練法をつくったときの考え方としては、定義づければ、労働力不足と、その労働力を新しい技術体系に適応するための訓練ということが一つの目的だったと私は思うのです。同時に、産業下士官といいますか、役付工を再訓練をする、そういうために昭和四十四年に新しい訓練法というものにつくり変えてしまった、こういうふうに見てもいいのではないかと私は思うのですが、その中で、この離転職者の再訓練という問題は、触れてはおりますけれども、その効果のほどは一体どうであったのか、ここのところが、これから、いまのようにどんどんと離職者が出てくる状況の中で、私は、よく言う言葉では総括をしてみる必要があると思うのです。  はっきり言えば、当時は高度成長ですから、少々中高年が離職をしても、どこかで吸収する場所があった。だから中高年の再訓練ということについても、そう問題にならなかったと思うのです。また、受ける中高年層の方も、雇用保険、当時の失業保険の給付日数を延ばすために訓練ということを安易に考えておった。ところが、これからはそうはいかぬと思うのです。したがって、私がいま申し上げたことを要約しますと、再訓練というものが、いままで当初労働省が考えたような所期の効果を上げたのかどうか。そこを総括と言うのですが、その点について、どういう見方をされておるのか、お聞きをしたいと思います。
  90. 岩崎隆造

    ○岩崎政府委員 恐縮ですが、再訓練、能力再開発訓練について先生御指摘の点、ごもっともだと思うのですが、四十四年法では、やはり当時の第二次産業への雇用吸収力というものが非常に大きかった。そのために技能労働者の育成、確保ということが非常に大きな課題であったわけです。その当時から離転職者のための再訓練というものは、やる体制になっておったことはもちろんでございますが、まず何といっても中卒に、まだ非常な給源があったものですから、中卒者主体の養成訓練をする。かつ、その施設において能力再開発訓練におきましても、技能労働者不足を補うため離転職者を何とか技能労働者に仕立て上げてやろう、こういうような考え方に基づいておったと思いますけれども、その離転職者の訓練というのは、先生おっしゃいますように事実上、労働者不足に支えられて、訓練を受けるまでもなく、どちらかに就職ができてしまうというようなこともありまして、離転職者訓練が非常に機能しなかったということがあると思います。  現在この二、三年、離転職者が非常に出てまいりまして、このため再就職のための訓練、これは今後の厳しい雇用情勢というものを考えてみますと、何の技能も持たずに手放しで就職先を探すということは非常に困難である。これは必ずしも第二次産業的な技能だけではなしに、広く第三次産業的なものも含めてでございますが、ですから、何か身につけるもの、腕を持って就職するということが必要である。ところが、いまの体制は、技能労働者の訓練ということで、高度成長時代の第二次産業向けの訓練科目が多いために、いまになって必ずしも離転職訓練が十分に機能し得ないという問題が出てまいっております。  そこで、公共訓練施設そのものの職種転換も大いにやっていかなければなりませんし、それから民間の教育訓練機関に、今後の雇用需要が見込まれるような職種についての訓練を委託して、再就職のための訓練を幅広くやっていきたい、こういう観点から私ども今回の体制整備を考えたわけでございます。
  91. 田口一男

    ○田口委員 「職業訓練基本計画」昭和五十一年六月に策定したものがありますね。そのうちの「第三部 職業訓練及び技能検定の実施目標と基本的施策」(1)ア、イ、ウとありましてウの項に「離転職者等に対する職業訓練」として大変よいことが書かれておるのですが、「随時入校制や訓練期間の短縮・延長」さらに「離転職者については、その生活実態に即し、職業訓練が不安のない状態で受けられるように配慮されなければならない。」全くもっともなことが書かれております。私は本法改正後に、この趣旨が十分に生かされなければならぬと思うのですが、同時に、さっき能力再開発訓練で、どういうふうに総括をしたかと申し上げたのですけれども、誘導政策という性格をとるのならば、俗な言葉で言えば、これからは、こういう分野の職業が売れ口がいいだろう、そういったものを先取りをして訓練をするということができぬものかどうか、これは大臣どうでしょうか。
  92. 藤井勝志

    藤井国務大臣 しばしばお話を申し上げておりますように現在、日本産業構造が質的に転換を遂げつつあるわけでございまして、そういう時代には、やはり新しい産業構造のビジョンをしっかりとつかんで、その目標を目指して人の配置を考える、あるいは配置転換をする、こういうことが一番好ましい、私はこのように思うのであります。  ただ問題は、やはり本当に生活を支えている人の配置転換なり配置を決めるわけでございますから、いいと思ったけれども当てが狂った、こういうことでは労働者に対して、あるいは働き手に対して、かえって恩があだになるというふうなことになりますから、そこら辺を考えますと、やや先取りはしたいが、一歩一歩確めながら前進をしていく、こういうことに現実はならざるを得ないような実情も私は考えた場合は、やはり目標を考えながら、できるだけ、その線に沿うて足を踏み外さないような訓練の科目の設定なり訓練方法、これを選ぶべきであって、そのためには、その地域の産業の要請あるいは労働者のニーズ、こういったものにこたえるように絶えず訓練のあり方を検討していく、内容を絶えず日進月歩していくべきである、このように考えておるわけでございます。
  93. 田口一男

    ○田口委員 確かに、そうだと思いますが、先般、北九州に雇用の問題で調査に行きまして、そこで直接聞かされたのですけれども、いま大臣がおっしゃったように先取りをするにしても、まあ確かにむずかしいのですけれども、中高年の離職者と若年の離職者と考えた場合に、若い者は、ひとつ、そこの訓練で覚えて、たとえば北九州から遠く北海道へ、これは可能だと思うのですね。しかし中高年の場合には、もうそこに往みついておるわけですから、そう移動するということも困難だ。そこで、いま言った地域に合ったような訓練科目というものを、ぜひとも訓練校に設置してもらいたい、画一的ではなくて。そういう意見がある、そう言うのですが、訓練法のたてまえからいうと、科目の必置義務というのですか、一体そういうものはあるのですか。
  94. 岩崎隆造

    ○岩崎政府委員 それはございません。まさに先生御指摘のとおり、ただいま大臣もおっしゃったとおり、その地域、地域における雇用需要、それに伴う訓練需要、そういう中で訓練科目を設定する、こういうことにしておるわけです。
  95. 田口一男

    ○田口委員 それはわかりました。  それじゃ最後に、問題は、特に離転職者の生活がかかっておるのですから訓練を受ける。ところが従来の傾向からいけば、単に失業給付の延長のための方便にしかすぎなかった。たまたま職安局長見えていますから、前もちょっとお尋ねしたことがあるのですが、これからは訓練は労働者の権利であると同時に義務でもあるという位置づけでいかなければならぬ。そういうことから、不幸にして離職をする、雇用保険の基本手当をもらう、その順序を、いまですと百八十日なり三百日なり基本手当をもらって、そこで切れそうになるから訓練延長ということになる。これを本人の希望によって随時真ん中にはめ込んで、訓練を受けても、すぐに就職できるという状態には、これからはむずかしいのですから、こういった給付の順序というものを、その離職者の希望に任せる、そういったことにならぬのでしょうか。
  96. 細野正

    細野政府委員 訓練のための給付の延長制度といいますのは、原則的には、やはり所定給付日数の間に訓練を受けていただくという原則がまずありまして、そうは言っても訓練の期間と給付の期間との間にずれが出てまいります。それは所定給付日数の短かい方もあれば、あるいは入所の関係で入所時期がずれるとか、いろいろな問題がありまして、いま申し上げましたように所定給付日数と訓練の期間との間にずれが出てくる。その場合に給付が切れるようでは訓練を続けることが困難になるのじゃなかろうか、こういう趣旨で、いわば特例的にやっておりますのが訓練延長制度なわけでございます。  そういう意味で、先生の御指摘のような訓練を受講する期間は、いわば別途の給付制度として考えて、そこのところのダブる期間はむしろ後ろへくっつけちゃおう、こういう御提案なわけでございますけれども、そうしますと、いま申し上げましたような考え方から申しまして、他の訓練を受けない方との間に均衡が非常に崩れてくるのじゃなかろうか。同じく負担をしておられる方の中で非常に大きな均衡が崩れてくるのじゃないかということと、それからもう一つは、非常に雇用機会の不足の地域、特定の地域をもってきた場合は多少問題があるかと思いますが、たとえば昨年の東京都の例なんかでは、昨年の例は、もう東京都しか統計がとれませんので見ますと、もう訓練修了直後に九割以上が就業しているというふうな状況でございまして、そういうふうな就業の状況が非常に高いといいますのも、一つには、訓練修了時には何としても就職をしていただこう、こういうことで安定所も訓練所も全力を挙げて、いわば完全雇用を目指して、両者協力して緊密に努力をしている、そういう一つの気構えの問題。  それからもう一つは、受給者の方も、訓練修了時には就職するのだという決意、心構えを、訓練を受けている間に徐々に、指導相談等もやりながら、そういう希望を高めていくという両者の気持ち、気構えみたいなものが、いま申し上げましたような数字にも出ている。もちろん、受けている訓練の内容に対する評価もあるわけですけれども、それプラスいま申し上げましたような両者の心構え、気構えみたいなものが、いま申し上げたような就職との結びつきということになっているように思われるわけでありまして、そういう意味で、その辺の気構えが逆に崩れるおそれも、先生御指摘のようなやり方をすると出てくるのじゃなかろうかというふうな、いろいろな懸念、問題点もございまして、現時点では、その点はなかなかむずかしいのじゃないかなというふうに考えているわけでございます。
  97. 田口一男

    ○田口委員 心構えと言うのですけれども、ここに書いてあるように「不安のない状態職業訓練を受ける」。それぞれ失業しておる者は、もう一日がやり切れぬわけですからね。だから、きれいな言い方をすれば、漫然と失業給付基本手当をもらっているということは労働者として、いいことじゃないのです。だから、その間に訓練をはさんで、そこで生活の心配もなく訓練に従事して、修了したら、すぐに就職が見つかるということが一番いいのですよ。それはむずかしいだろう。後に給付があるのだからという気持ちの問題、そういったことで基本手当の給付が切れてどうこうという、この順序を、そうそう、かたくなな運用をする必要はないのじゃないかという気がするのですよ。相当むずかしいと言うのですから、私はこれ以上、深追いはしませんが、その辺のところも、今日の雇用情勢を考えた上で、ひとつ検討してもらいたい。  これでもう本当の最後にしますが、今度は問題の受け入れ側の公共訓練校に限って言いますけれども、指導員の数は、私が見た限りでは、大体一科目二人というのは、ちょっとないですね。一科目一人とか……。ですから、その辺の配置基準といったものはどうなっておるのか。そうして、どんどんと職業訓練の機会がふえてくる、離転職者も多くなる。それに対応する受けざらとしての訓練校を充実するためには、指導員をもっとふやす必要があるし、それから、いまの設備が、特に県立の訓練校を見た場合には、お粗末な訓練校施設が多いのですけれども、そういうものに対する国の助成ということも考える必要があるのではないか。その辺のところをお伺いして終わりたいと思います。
  98. 岩崎隆造

    ○岩崎政府委員 ちょっと事務的なことを申し上げます。  現在、指導員の配置は、基準といたしましては、訓練ごとに三十人以下の訓練生を一単位とする場合には三人、それから三十人を超え五十人以下の場合には四人ということにいたしておりまして、私ども全体として見ますと、現在、公共職業訓練施設には配置が六千八百人、そして訓練生を実績でとってまいりますと、十一人に一人ぐらい指導員がいるということになっているわけです。  そこで、あるいは先生、具体的な訓練校についての御指摘かもしれませんが、先ほども申し上げましたように、そういった基準は一応そういうふうになっておりますし、離転職訓練者が非常に多いというような場合に、モジュール訓練方式で自学自習方式をとって、ある程度の人数が吸収できるように、あるいはまた委託訓練等の方式でやれる、さらには、場合によっては施設の中に、いろいろな非常勤講師等も委嘱をしてやるというようなことも、予算措置としては、できておりまして、そういった必要が出る場合には随時それに対応できるようなことにしてまいりたいと存じております。  それから訓練施設の問題につきましては、私ども逐年、計画的に訓練施設の老朽機器を新鋭のものにかえていくとか、あるいは建物そのものも更新を図っていくというようなことをやってはおりますが、雇用促進事業団の施設につきましては、直接具体的に雇用促進事業団と話をしてやっております。それから都道府県のものにつきましては、補助の関係もございますので、都道府県の申請を待って私ども対処するようにして、いまのところ、そういうことで逐次改善を図っていってまいっていると申し上げられると思います。
  99. 藤井勝志

    藤井国務大臣 私は、職業訓練が成果を上げるかどうかのかぎは、教育に通ずるわけでございますから、やはり人にあると思うのでありまして、職業訓練の指導員というものの養成といいますか、そういうことを重視しなければならぬ。現在、訓練大学校の長期訓練過程を経た人、並びに都道府県で行う試験に合格した人が指導に当たっておるわけでございますけれども、私はぜひ指導員の資質の向上のために十二分な今後の対策を考えると同時に、新しく、これからその地域のニーズにこたえ、労働者の要請にこたえるためには部外の講師を活用していく。そして非常に優秀な技術を持ち、技能を持っている人が定年退職をしているとか、そういった人の知識、経験、技術、こういったものを、部外講師として訓練校にひとつ結びつけて活用さしてもらう、こういうこともあわせて考えていって所期の目的を達すべきだ、このように思っておるわけでございます。
  100. 田口一男

    ○田口委員 いま、せっかく大臣のお答えをいただいたのですけれども、いまの訓練校の指導員の気持ちを私がかわって言いますと、昭和三十年代の終わりから四十年代の初め、いわゆる高度成長のときには、自分で教えたいわゆる修了生、訓練生ですね、それが卒業して企業に就職しますと、指導員の賃金よりも高いものをもらっていると、よく私なんかにこぼしていたもんです。何とか上がらぬのかと。ところが、いまはそういう悩みがなくなって、どんどん入ってくる、人が足らぬ、これはもう踏んだりけったりじゃないかという意見もあるんです。  いま講師の話も出ましたけれども、一時間幾ら出しておるか。これは県によって違うんでしょうが、一時間千四百五十円です。講師の謝礼が。そして最近は各種学校、例の専修学校、それがどんどんできていますから、専修学校の講師などになっていますね。一時間しゃべって三千円から、しかも往復の汽車賃までつける。講師もいい講師を、OBなんかを迎えようと思ったって千四百五十円ではなかなか来手がないじゃないかと言う人もあるんです。ですから、そういう点についても現実を、実態を調べて改善されるように要望いたしまして、終わりたいと思います。(拍手)
  101. 竹内黎一

    ○竹内(黎)委員長代理 この際、午後二時二十分まで休憩いたします。     午後零時五十五分休憩      ————◇—————     午後二時二十分開議
  102. 木野晴夫

    木野委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  内閣提出労働組合法の一部を改正する法律案議題とし、提案理由の説明を聴取いたします。労働大臣藤井勝志君。     —————————————  労働組合法の一部を改正する法律案     〔本号末尾に掲載〕     —————————————
  103. 藤井勝志

    藤井国務大臣 ただいま議題となりました労働組合法の一部を改正する法律案につきまして、その提案理由及び内容の概要を御説明申し上げます。  近年、中央労働委員会及び東京都、大阪府等の一部の地方労働委員会におきましては、不当労働行為事件の件数の増加、事案の内容の複雑化等のため、事件の処理が著しく長期化し、また、委員の負担も過重になるなど、労働委員会の機能の十全な発揮に支障を来すほどになっております。このような事情にかんがみ、政府としては、これらの労働委員会委員の定数を増加することとし、もってその事務の円滑な遂行を期することとした次第であります。  次に、この法律案の内容につきまして、その概要を御説明申し上げます。  第一に、中央労働委員会委員の定数につきまして、現行法においては、使用者委員労働者委員及び公益委員各八人とされておりますが、これを、各側一人ずつ増加し、各九人とすることとしております。  第二に、東京都及び大阪府の地方労働委員会委員の定数につきまして、現行法においては、それぞれ、各側十一人及び九人とされておりますが、これを、両地方労働委員会とも各側二人ずつ増加し、東京都地方労働委員会にあっては各十三人、大阪府地方労働委員会にあっては各十一人とすることとしております。  また、その他の地方労働委員会委員の定数につきまして、現行法においては、各側七人または五人のいずれかを政令で定めることとされておりますが、これに加えて、各側九人の地方労働委員会も政令で定めることができることとしております。  なお、以上のような労働委員会委員の定数の増加に伴い、所要の規定の整備をいたしております。  以上、この法律案の提案理由及びその内容の概要につきまして御説明申し上げました。何とぞ御審議の上、速やかに御可決あらんことをお願い申し上げます。      ————◇—————
  104. 木野晴夫

    木野委員長 次に、村山富市君外九名提出労働基準法の一部を改正する法律案議題とし、提案理由の説明を聴取いたします。村山富市君。     —————————————  労働基準法の一部を改正する法律案     〔本号末尾に掲載〕     —————————————
  105. 村山富市

    村山(富)議員 私は日本社会党を代表して、ただいま議題となりました労働基準法の一部を改正する法律案についてその提案理由及び内容の概要を御説明申し上げます。  今や完全失業者は恒常的に百万人を超え、二月末には百三十六万人に達しました。  そればかりではありません。潜在的な失業者、あるいは半失業者とも言うべき人々がこの何倍もおります。具体的に見ますと、一年未満契約の臨時雇いが二百四万人、日雇い労働者が百二十四万人、常用雇用とはいうものの週十五時間以下の就労が三十万人、同じく週三十五時間以下の就労が百七十六万人も存在しております。これに完全失業者を加えると、八百七十万人に達するのであります。  また、北海道には降雪期の失業者が三十万人、東北などには出かせぎが十五万人、全国にわたる零細家内企業従事者が百五十万人もおります。これを加えると、失業者、半失業者、潜在的失業者は全体で千六十五万人に及ぶのであります。  現在の賃金労働者人口三千七百二十万人のうち、実に三分の一に迫る人々が、失業あるいは失業に近いきわめて不安定な状態に置かれているということを、私どもが看過してよいはずはありません。  しかも、有効求人倍率は、平均で〇・五、中高年齢層に至っては〇・一にまで低下したまま、少しも改善されそうになく、失業者の再就職はきわめて困難になっております。のみならず新卒者の就職も困難になっており、大学には留年が激増しております。  このような失業の増加と、雇用不安定の進行に対して、雇用拡大し、安定化させるためには、従来の政府施策では余りに不十分であり、実効に欠けていることが明らかになっております。完全週休二日制を実施することによって、一人当たりの労働時間を短縮することが、必要不可決になっているのであります。時間外労働、休日労働等を、賃金割り増し率の引き上げによって減少させ、雇用拡大に転化させることも重要になっております。  円相場の急騰に象徴されているように、日本は、欧米諸国に比べて、合理化が高度に進められ、労働密度が非常に高くなっているにもかかわらず、長時間労働が続けられております。そのため労働災害や職業病が多発し、健康を奪われている労働者が大変多くなっております。一方ではアンバランスないわゆる集中豪雨的輸出拡大によって、アメリカやEC諸国の非難を受けております。このような事態を克服するためにも労働時間の短縮、完全週休二日制の早期実施は不可欠になっておるのであります。  社会党は、このような状況にかんがみ、完全週休二日制の実現のために、労働基準法改正を提案する次第であります。  次に、この改正法案の内容について御説明申し上げます。  第一は、週休二日制についてであります。  この改正法は、労働者に対して毎週少なくとも二回の休日を与えなければならないものとすることといたしております。現行第三十五条は毎週少なくとも一回の休日を与えなければならないと定めておりますが、ここを二回の休日と改めるのであります。  また、これに伴って、第三十二条の週労働時間は現行の四十八時間以内を、四十時間以内に改めることにいたしております。  したがってまた、第六十条第二項の、満十五歳未満の年少者の週労働時間は、現行の四十二時間を、三十五時間に改めるものといたしております。  第二に、時間外、休日労働等の賃金割り増し率の引き上げについてであります。  この改正法は、第三十七条の、時間外労働の賃金割り増し率を、現行の二五%から、五〇%に引き上げるものとすることといたしております。  休日労働の賃金割り増し率は、現行の二五%から、一〇〇%に引き上げることといたしております。  深夜労働の賃金割り増し率は、現行の二五%から五〇%に引き上げることといたしております。  最後に、この改正法は、中小企業における完全実施のための準備期間を配慮し、二年後の昭和五十五年四月一日から実行するものとすることといたしております。  以上、この法律案の提案理由及びその内容につきまして、御説明申し上げました。  この法案は、労働団体のみならず、未組織の労働者を含む三千七百万全労働者とその家族の切なる立場に立つ重要な内容であることを十分に勘案され、御審議の上、速やかに御可決あらんことをお願い申し上げます。      ————◇—————
  106. 木野晴夫

    木野委員長 次に、森井忠良君外九名提出雇用対策法の一部を改正する法律案議題とし、提案理由の説明を聴取いたします。川本敏美君。     ————————————— 雇用対策法の一部を改正する法律案    〔本号末尾に掲載〕     —————————————
  107. 川本敏美

    川本議員 私は日本社会党を代表して、ただいま議題となりました雇用対策法の一部を改正する法律案について、その提案理由及び内容の概要を御説明申し上げます。  勤労国民の福祉と生活向上を犠牲にすることによって進められてきた過去の高度経済成長の結果、多くの産業において過大な設備が出現し、不況が長期化しております。しかし、この不況の原因を考えるとき、労働者に少しの責任もないことは言うまでもありません。不況を生み出している責任は、政府と大企業にあることは明らかであります。  パイを大きくすることに協力せよと言われて、低賃金、長時間労働に甘んじてきた日本労働者が、今度はパイが大きくなり過ぎたから解雇されてしまうというのでは、まことに踏んだりけったりであると言わなくてはなりません。  とうとう完全失業者は百三十六万人を数えるに至りました。臨時、日雇い、パート等の半失業者とも言うべき人々を加えると実に八百七十万人に達しております。  その上に、日経連の賃金問題研究委員会報告によると、経営者にとって、過剰人員と感ぜられ、整理したい労働者が四百万人もいるとされておるのであります。  しかも、高い利潤を上げて、生産が増加している企業においてさえ、雇用拡大することなく、むしろ人員を整理しながら、時間外労働等による労働強化や、臨時工や社外工などによってカバーすることが一般的な風潮になっております。  そのような不適当な解雇を規制し、雇用を安定させることは緊急の課題となっています。  一方では、全国の各自治体が、それぞれの条件に応じて雇用を創出し、失業を抑えていくために、都道府県知事や、地方職業安定審議会等の権限を強め、必要な任務を与えることも不可欠になっております。  社会党は、このような状況にかんがみ、これ以上、失業者が増加するのを防ぐために、雇用対策法改正を提案する次第であります。  次に、この改正法案の内容について御説明申し上げます。  第一はこの改正法の目的であります。  この法律は、現行法第二十一条に定められた大量の雇用変動の届け出制度を改善・強化することによって、不適当な大量解雇を規制し、雇用の安定を図ることを目的といたしております。  第二は、届け出義務の内容改善についてであります。  現在、政令によって、事業主は一事業所において一カ月の期間内に五十人以上の労働者を解雇しようとするときは、公共職業安定所長に届け出なければならないとされているものを、法律によって一カ月の期間内に三十人以上の労働者を解雇しようとするときは、都道府県知事に届け出なければならないものといたしております。なお、この届け出は、政令によって、予定の少なくとも一カ月以前でなくてはならないものとすることといたしております。  また届け出に当たっては、事業主は、労働組合または労働者の過半数を代表する者の意見書を提出しなければならないことといたしております。  第三は、届け出についての審議や勧告についてであります。  この法律は、届け出を受けた都道府県知事が、その解雇について、地方職業安定審議会または地区職業安定審議会の意見を聞かなければならないものとすることといたしております。  都道府県知事は、地方職業安定審議会等の意見に基づき、その解雇が不適当であると認めるときは、事業主に対し、必要な勧告をすることができるものとすることといたしております。  また、国または地方公共団体の任命権者は、さきに規定された解雇について、公共職業安定所長に通知しなければならないものといたしております。  第四は、労働力の需給均衡の確保についてであります。  この法律は、届け出または通知があったときは、国は職業安定機関が相互に連絡を緊密にし、広範囲にわたり求人または求職を開拓し、また職業紹介を行うこと、公共の職業訓練機関が職業訓練を行うこと等の措置により、一定の地域における労働力の需給に著しい不均衡が生じないように、離職者就職の促進または、当該事業における労働力確保に努めるものとすることといたしております。  以上、この法律案の提案理由及びその内容につきまして、御説明申し上げました。  この法律案は、いまや全人口の七割を占める労働者の、きわめてつつましくも切実なる要望であることを十二分に配慮され、御審議の上、速やかに御可決されんことを切望いたします。
  108. 木野晴夫

    木野委員長 これにて三法律案の提案理由の説明は終わりました。      ————◇—————
  109. 木野晴夫

    木野委員長 職業訓練法の一部を改正する法律案議題とし、質疑を続行いたします。大原亨君。
  110. 大原亨

    ○大原(亨)委員 けさほどから労働大臣から、雇用情勢について深刻であると受けとめておる、こういう御答弁がありましたが、ただいまは村山委員や、あるいは川本委員から労働基準法の一部改正雇用対策法の一部改正について提案がありました中にも明らかなように、潜在失業者が一千六十五万人というふうに、言うならば不完全雇用が、完全失業者百三十六万の背景にある、こういう提案の趣旨説明がありました。  そこで、最初に質問いたしたいのですが、統計に出てまいります日本の失業者の概念は、労働力調査実施の月末の一週間、収入を伴う仕事に一時間以上従事しなかった者、加えて就業可能で、就業を希望し、求職行動をとった人、こういうふうになっておりますね。非常に厳しい条件で失業者を計算する仕組みになっているわけです。そこで、ちょっと念のために聞くんですが、西ドイツやイギリス等の主要国における完全失業者についての統計の出し方について、ひとつ簡潔にお答えください。
  111. 中谷滋

    中谷説明員 失業者の算定方法につきまして先生いま御指摘のとおり、わが国の場合は労働力調査におきまして、各月の月末一週間におきまして、調査週間中少しも仕事をしなかった者のうち仕事を探している者、これが失業者になっております。先生御質問の西ドイツあるいはイギリスの例でございますけれども、これらの国におきましては、各国の職業安定所に登録している者で失業している者、しかも就業を希望している者、こういうものをとっております。
  112. 大原亨

    ○大原(亨)委員 日本で西ドイツやイギリスのように職業安定所に登録をして引き続いて就職する意思のある者、そういう観点でとりますと、どういう数字になりますか。
  113. 細野正

    細野政府委員 便宜、雇用保険の受給者の率をとると、大体ヨーロッパの失業保険の失業者の率と、ほぼ似たようなかっこうになりますので、これをとりますと、現在の場合約二・六%ぐらいという状況でございます。
  114. 大原亨

    ○大原(亨)委員 人員にして。
  115. 細野正

    細野政府委員 一月現在で六十四万九千人でございます。
  116. 大原亨

    ○大原(亨)委員 日本雇用保険の受給者で日本では失業者がわかるような仕組みになりますか。外国の西ドイツやイギリスの職業安定所の機能というのは、日本よりも、簡単に言えばしっかりしているのじゃないですか。つまり日本は失業者を窓口で完全に把握できないから、こういう月末の調査で一週間働かない、こういうところでとるのではないですか。
  117. 細野正

    細野政府委員 統計で見ます限り、労働力異動の中で安定所を経由する割合というのは、国によって若干の違いはありますけれども日本の場合と大差はないというふうに承知しております。
  118. 大原亨

    ○大原(亨)委員 日本はなぜ国際基準に従って失業者を出さないのですか。
  119. 細野正

    細野政府委員 国際基準とおっしゃる意味が、ちょっとよく私も了解しかねるのですが、要するにアメリカの場合には、ほぼ日本労働力調査による完全失業者と同じようなとり方をし、ヨーロッパの場合には安定所の窓口における失業保険受給者をつかまえて、これで失業率の判断をしているということでございますから、そういう意味で、わが国の場合には両方ともの、やや似た統計というものはいずれも持っている、こういうことになるわけでございます。
  120. 大原亨

    ○大原(亨)委員 これはアメリカかどこかですが、一カ月のうちに十五日以上と十五日以下しか働いてない者、こういうふうなとり方をしているところがありますね。
  121. 細野正

    細野政府委員 私も労働力調査に類似のアメリカの調査の内容は、それほど詳しくはないのですが、私の記憶している限りでは、日本で一時間と言っている部分について、もう少し多い時間で判断をしている、そういう脚注が向こうの統計についていたことを記憶しておりますけれども、それはしかし全般的にそれを見るのではなくて、ある部分の人について、そういう時間によって判断するという規定でございまして、日本のように、あらゆるものについて一時間というふうな適用をしているのと同じ意味で十何時間という指定をしているのとは違ったように私は記憶しているわけでございます。
  122. 大原亨

    ○大原(亨)委員 これは議論しても何ですが、やはり一つの国際基準というか、それから日本には雇用の中において二重構造とか、あるいは不完全雇用とか言うなれば半失業状況の者が非常に多い。そういう上に日本の高度成長が成り立っておるし、あるいは輸出産業が成り立っておる、こういうことが一つの特色であるということは国際的にも言われておるわけですね。  この問題はともかくといたしまして、時間が限られておりますから質問を進めてまいります。  通産省、これは議論は余りいたしませんが、簡単に答えてもらいたいのです。特定不況産業についての例の特別法を商工委員会でやりました。そのときに私も質問の内容を調査室の方から聞いたのですが、つまりスクラップにする場合に、雇用関係あるから御質問するわけですが、たとえば省資源省エネルギーとか環境保全型とか、あるいは知識集約型とか、あるいは新しい国際分業、中進国の追い上げ、こういうようないろんなことを予想をいたしまして日本の新しい産業構造を考えていくわけであるというふうな総論は大体言うわけでありますが、そこで構造不況産業に対応するスクラップに対応する指示カルテルを決めたわけだと思います。新しい産業構造、これから雇用を保障し、あるいは職業訓練をするときに目標となる、そういう産業について通産省はどのような目標なり展望を持っているか。計画経済ではないわけですけれども、誘導目標を持っているか。どういうふうな考え方に意見を統一して産業政策を展開いたしておるのか。こういう点だけを、どういう答弁をいたしておるかという点をまとめて御答弁いただきたいと思います。
  123. 日下部光昭

    ○日下部説明員 お答えいたします。  構造不況対策を進める場合にも、先生おっしゃいましたとおり長期の産業構造の行方とか就業構造の行方というものが非常に重要なファクターになるわけでございます。私どもは、長期の問題といたしましては、やはりエネルギー制約の問題、それから経済成長率あるいは技術革新というものが、昔は追い越す目標があったということがありますけれども、これからは自分で考えてやっていかなければいかぬという時代に入ってくるわけですから、どうしても技術革新のテンポが落ちるというような問題、それから発展途上国の工業化の進展という問題、そういうものを考えると、どうしても、できるだけ少ない資源を使いながら、しかも知恵を働かして高い付加価値を得る、要するに知識集約型の産業ということを目指していかなければいけないだろうということが基本的な考え方としてあるわけでございます。これは機械なんか典型になるわけですけれども、それ以外の分野でも、おのおのそういう頭を働かして少ない資源で高い付加価値を得ていくというようなかっこうで産業の展開をしていくということが非常に大事ではないかということを考えておるわけでございます。  それからもう一つ、国民ニーズといいますか、国民の生活のパターンといいますか、そういうことから考えますと、物離れというようなことも最近言われておりますけれども、そういう三次産業型の産業もふえていくということがあるわけでございます。こういうような産業は、いずれも雇用吸収力というものは幸いにしてある産業でございまして、われわれとしては、そういう雇用吸収力のある産業が、これからの日本経済をリードしていくような産業になっていくであろうというような目標を持ちながら、具体的に、それじゃどうなっていくのかということについては、いま、いろいろ検討しておるところでございます。これは産業構造という面での話でございますが、就業構造というのは産業構造とうらはらの問題でございまして、同じようなことが言えるのではなかろうかというふうに考えております。  いま申し上げたのは長期の話で、構造不況対策というのは、もっと短期の面というのが、いろいろあるわけでございますが、短期のことは労働省で、いろいろおやりいただいておるわけでございますけれども、その場合にも、かつて大臣が、この委員会でも御答弁いただいておりましたけれども、そういう長期の方向をにらみながら考えていくということになるのではないかというふうに考えております。
  124. 大原亨

    ○大原(亨)委員 労働大臣、いまの通産省のそういう新しい産業構造に対するビジョン、これはいままで長い間、商工委員会で議論したのですが、結論的な答弁がありましたが、雇用政策をやる上において参考になりますか。
  125. 藤井勝志

    藤井国務大臣 基本的な考えとしては、ただいま通産省からお話があった考え方は、われわれも十分参考にすべき意見である、このように思います。
  126. 大原亨

    ○大原(亨)委員 どこが参考になりますか。
  127. 藤井勝志

    藤井国務大臣 一口に申しますと、産業構造の質的な転換に対応して雇用政策も相呼応すべきである。そのように雇用構造は産業構造と表裏一体であるという認識において私も考え方を同じくし、今後も私はやはり各省庁との連絡を密にして、いわば新しい産業構造のビジョンを策定する、こういうことで今後、通産省あたりとも密接な連絡をとっていきたい、このように考えておるわけでございます。
  128. 大原亨

    ○大原(亨)委員 通産省の産業構造課長は、簡単に言うと国民のニーズ、新しい産業構造それから付加価値の高いものということですが、私もいろいろ文章読んでみましたら、ああいうふうに序論ばかりずっと書いてあります。省エネルギー省資源型、環境保全型、知識集約型とか国際分業、しかし中身がないわけです。スクラップにするということは言うのだけれども、さて日本はどういう産業構造を目指してやるのかという点については、ほとんど示唆を与えていない。  労働省は昨年末に特定不況業種離職者法をやりましたね。そこでお聞きするのですが、特定業種離職者法と、それから今度の通産省の特定不況産業安定臨時措置法とは、どういう関係になって運営されるのですか。
  129. 細野正

    細野政府委員 先生御存じのように、特定不況業種離職者臨時措置法の方は適用する場合の要件が二つございまして、一つは法令または国の施策によって行われる事業規模の縮小等に伴う離職者である。それからもう一つは生産なり雇用なりの各種の指標がある程度のダウンをしているという、その二つの事態をつかまえまして、これを適用していくわけでございます。一方、そういう観点から見ますと、今度の特定不況産業安定臨時措置法案の方も、国の施策として事業規模の縮小等を行うという政策目的だけは離職者臨時措置法と軌を一にしているわけでございまして、そういう意味から、あと残るのは生産なり雇用なりの数値がどうなるかという、そこのところが判断基準として全く同じかどうかについては、今後の運用の問題になってくるわけでございます。したがって、そういうふうに考えてみますと、この両方の法律というものは、ほぼ同じ事態に対して同じ対応の仕方をしようとしているものでございますから、たてまえとしては一応独立の法律になっておりますけれども、運用は結果的には一致するものではないかというふうに私どもは考えているわけでございます。
  130. 大原亨

    ○大原(亨)委員 去年は非常に世論も起きて法律ができたわけですが、この特定不況業種離職者法は、言うなれば離職をいたしまして再就職に至るまでの訓練や諸手当を含めて一定のめどをつける、不況産業についてめどをつける、こういうことですね。しかし、再就職する場所は主としてどういうところがあるか。就職したけれども、すぐ事業主に対する補助も切れて、だめになってしまうという場合が多いわけです。それで安い賃金のところへ行くということで、しばらくいたしましたらやめる、こういうことがわりあい多いわけですね。ですから再就職する場合に、しっかりと国民のニーズなり、あるいは、これからの仕事に対する、きちっとした職業訓練を身につけてやるということが必要ですね。ですから、そういう点では、どの程度実益があるのか私はよく判断ができない。これについては再就職するまでのコースを一応描いたわけですね。ですから訓練手当や職業訓練等を頭に置いて、やっておるわけですから、そこについて、この法律は足りない点があるのではないかと私は思うのです。この法律はまだ時間がたっていませんけれども実施されました段階で労働省は、これは議員立法的なものでありますが、どういう評価をしていますか。
  131. 細野正

    細野政府委員 雇用問題は午前中から御議論がございましたように、失業の予防の問題、それから失業者の求職活動中の生活の安定やら、あるいは技能の付与の問題、それからもう一つは、先生がいま御指摘のように再就職の先の問題と三つに分かれるわけでございます。  その中で、まず失業の予防の方から申し上げますと、これにつきましては離職者臨時措置法そのものにおきましても、もちろん手当てをいたしておりますけれども、基本的には、雇用保険法の改正におきまして先生も御存じの雇用安定資金制度というものがすでに発足をしておりまして、その雇用安定資金制度によりまして短期的な雇用調整、それからどうしても長期にわたるので人を事業転換していかなければならぬという場合につきましての訓練なり、あるいは休業なり、あるいは出向なりについての、それぞれの助成制度を設けているわけでございます。さらに、高年齢者等の問題につきましては定年延長というものを積極的に進めることによって予防してまいるというふうな各種の制度がございます。その上に、さらに特定不況業種離職者臨時措置法におきましては、一定規模以上の雇用の変動を生じます場合には再就職援助計画というものをつくって安定所に提出することになっておりますが、その再就職援助計画の中で、いろいろと事業主側にも再就職の援助のための努力をしていただくということをやっているわけでございます。そういう意味で、失業の予防関係の各種の仕組みは、離職者臨時措置法及びその前からできている制度と両方合わせまして、かなり充実されているというふうに考えるわけでございます。  それから離職者の生活の安定なり技能付与の問題は、先ほど先生からも御指摘ございましたので詳しくは申し上げませんけれども、それぞれ充実をされているわけでございます。  残る問題としては、先生御指摘の、今後どういうところへ就職させるのか。あるいは見込みがあるのか。こういう問題になってくるわけでございます。一般的に申し上げますと、たとえば、まず就職先ということになりますと、確かに御指摘のように、中長期的な見通しも大事でございますが、同時に、訓練を修了した時点で現実に就職していかなければならぬという問題がございます。したがいまして現実の求人求職状況というものも非常に大きな問題になるわけでございます。そういう意味で、先生も御承知のように、安定所におきまして職種別の求人倍率というものを持っているわけでございます。そういう意味で、非常に不況下ではございますけれども、現在でも求人倍率が高くて、しかも求人数の比較的多いという職種が技能職種を中心にかなりあるわけでございます。そういうものが私ども一つの大きなよりどころになりますと同時に、さらに御存じの訓練局でやっておられる技能労働者需給状況調査等もございまして、そういうものに基づいて行き先あるいは訓練を受けるべき先についての私どものめど、もちろん求職者御本人の能力、適性なり、あるいは御希望というものも当然これまた大きな要素になってくる。  さらに中長期の問題になりますと、製造業の中でも、先ほど通産省からもお話ございましたけれども付加価値の高い産業、たとえば機械産業等におきまして、現在この不況下でも比較的順調にいっておられる業種等もございますし、それから従来までの、たとえばこの五年間なり三年間なりの動きを見てまいりますと、第三次産業におきまして、たとえば生活関係とか福祉、医療、保健関係とか教育、情報関係とか、現実に着実にふえている職種で、しかも、その後における伸びが今後においても望ましい方向ではないかと思われるものが幾つかあるわけでございます。そういうところについて積極的に雇用の吸収を図っていく必要があるのではないか。その場合に活用されるべきものとして、本年度から、中高年齢者を雇い入れてくれる事業主に対して助成金を支給するという一種の賃金補助の制度を採用いたしているわけでございます。そういうものをフル活用しまして、雇用問題について、できるだけ万全を期してまいりたいというふうに考えておるわけでございます。
  132. 大原亨

    ○大原(亨)委員 私、久しぶりに労働問題を質問しようと思って、職業訓練をずっと調べてみたのです。昭和三十三年それから昭和四十四年の大改正雇用対策法について、ずっとやってみたのですが、労働省法律というのは間口がずっと広くて、けんらんたるように見えるけれども中身がない、奥行きがない。それが一つの特色だと思うのですよ。私は、資本主義のこういう経済の体制の中では、雇用問題についてはなかなかきちっとした歯どめがないということは十分わかるのです。わかるのですけれども、やはりもう少し実効のある計画が立たないかということについて一つの疑問を持ちました。  私は先般、北九州へ行きました。北九州は百四万程度で人口はもう横ばいです。昔は御承知のとおり石炭の町でして、エネルギーのあるところへ八幡製鉄や、その他の住友金属等の鉄鋼産業が起きて、言うなれば日本の重化学工業の中心でしたが、石炭がだめになり、鉄鋼もだんだんと古くなってスクラップになる。非常に成長産業の中にあって、不況産業とは言えない電機産業にいたしましても、安川電機のように二回にわたって八百人、九百人というふうな希望退職の合理化、首切りをやる、こういう状況で、町全体は非常に沈滞しておるのですが、それに対応する職業安定所や職業訓練所の活動の仕方について、それほど生き生きしている活動というふうには私は思わなかった。それは何かといいますと、建物、施設もやはり古い。金をかけてない。それからスタッフについても、いろいろ不自由を忍んでやっておる。普通の文部省関係の学校とはやはり何といったって雲泥の差がある。  しかし、これからは、この改正案一つのポイントにもなっておりますが、テクニシャンの養成ということで、短期大学の構想があるわけですけれども、学校教育の方は学歴社会、受験戦争、教育の荒廃ということで、大学を卒業いたしましても就職できない、そういう状況になっている。本当の社会的なニーズにこたえて、そして自分の能力を十分に発揮できるような職業訓練というものが非常にウエートが高くなる状況にあるのに、実際は、そういう地域的なニーズに対応できない。昔は八幡製鉄や住友に就職するのを訓練すればよかった。しかし、そこは訓練するところがない。そこはもう首を切っている、整理している。じゃ、どこへ行って何を働くために職業訓練をするのかということについては、ほとんど確たる目標がないように私は見受けました。ですから私は、職業訓練法制度として、いろいろな発想をやっておるわけですけれども、そこに一つ問題があるというふうに思ったことが一つです。  いま、ちょっと御答弁の中にありましたが、労働省職業訓練局で技能労働者の需給状況調査をした資料がここにあるのですが、不足数の多い職種と不足率の高い職種というのがあるのです。時間の関係で私の方で指摘をいたしておきますが、不足率の高い職種というのをとってみますと、二九・八%の不足率を持っているのが鉄筋工、それから配管工・鉛工、タイル張工、ちょっと一つ飛んで左官、家具工・建具工、構造物鉄工、建築大工、ブリキ職・板金工、ブロック建築工、こういうふうになっているのですが、見てみますと住宅とか建築関係が非常に多いわけです。この調査というものも、政府のいろいろな報告を見てみましても、第二次の職業訓練の基本計画を見てみましても、失業者はあるけれども本当の技能者は不足しているのだ、こういう説明が随所に出ておるわけですが、それを私は資料で、どういうことかと思って見てみますと、こういう不足数が数字の上で出ているわけです。それを一つ目標にして私は職業訓練をやるのだと思うのですが、そう理解してよろしいのですか。
  133. 岩崎隆造

    ○岩崎政府委員 いま御指摘のとおり、先生、資料で御指摘いただきましたが、確かに建設関係の職種において、この調査では不足を訴えられている職種が多うございます。また、しかし同時に、業界で自主的に事業内の訓練を共同あるいは単独でやっている業界、それもまた建設関係の業界は非常に熱心にやっておられます。公共訓練施設におきましても、それぞれの地域におきます需要に応じて、そのような建設関係の訓練科目も設定されておりますが、このような技能労働者の不足状況が出てまいっておりますし、私ども今回の法律改正でも、業界が自主的におやりになっておられます事業内訓練については、より一層の助成振興を図ってまいりたい。そういうことによって、そういった関連の技能職種の訓練による技能者の増加を図ってまいりたいと同時に、これは特に建設関係につきましては、一昨年成立させていただきました建設関係雇用の改善に関する法律によります助成援護措置も、格段に建設関係についてはなされることになっておりますので、そういう助成措置を講じて建設関係の自主的な事業内訓練を振興いたしますとともに、公共訓練施設におきましても、そういった雇用需要に対応いたしますような訓練科目の一層の充実を図ってまいりたいと考えております。
  134. 大原亨

    ○大原(亨)委員 職業訓練で国がやる場合がありますね。それから雇用促進事業団がやる場合がありますね。それから都道府県、それから市町村がやる場合がありますね。それから事業体がやる場合がありますね。これは分類いたしますと、事業主体でいいますと、そういうふうになっているのですが、これは事業主の場合、いま御答弁がありましたが、私は建築関係について時間があれば申し上げるのですが、国とか地方公共団体とか事業団がやるのは、どういう考え方で、そういう経営主体を分けてやった方がいいとするのか。国がいい、都道府県がよろしい、市町村がよろしい、事業団がよろしい、こういうのは財政の都合だけで私はやっているのではないと思うのですが、全体としては職業訓練の統一的な方針が要ると思うのです。総合計画が要ると思うのですが、しかし、そういう訓練の主体、事業主体は、どういう考え方で分けておるのか。訓練の内容によって分けておるのか。私はそれぞれに特色があると思うのですね。だから特色を生かすようなことであるならば納得できるのですが、そういう点がどうも便宜主義ではないかというふうな印象ですね。
  135. 岩崎隆造

    ○岩崎政府委員 職業訓練につきましては、沿革的には戦前から企業内の技能者養成あるいは職業補導事業というようなものが公共で行われるというような形になっておりましたが、昭和三十三年に、これを一緒にして職業訓練に統合いたしまして、そして従来の職業補導所、これは県立が主でございますけれども、これが技能者養成もやるようになった。それからさらに雇用促進事業団の総合高等職業訓練校が各地にできるようになったわけでございますが、これの設立の趣旨は、一つには失業者の再就職のための職業訓練という目的と、それからもう一つは、それぞれの地域、地域におきます。その地域の産業に対する必要な技能労働力の供給、さらには、むしろ広域的に、その地域の新規学卒者を養成書訓練をいたしまして、広域的に必要な地域における必要な産業労働者を送り出すというような機能など、そのとき、そのときの事情に応じまして公共訓練施設の果たしてきた役割りというのが、その時代、時代あるいはその地域、地域の状況に応じてできてきておったと思います。  たとえば石炭の離職者対策が必要な場合には産炭地の離職者の非常にたくさん出るところに総合高等職業訓練校がつくられまして、そこで離転職訓練を大いにやって再就職に結びつけたというような時代の要請に基づくものもございました。それから技能者養成につきましても同じようなことでございまして、やはり、そのとき、そのときの地域の状況あるいは、そのときどきの状況、あるいはまた事業内訓練が非常に熱心にやっておられるところと、実は比較的公共訓練によりかかっているところというようなことが沿革的に出てまいっておりまして、必ずしも私ども斉一的に従来行われていたとは、率直に言って言えない点があるかと思います。  しかし、それぞれの時代、時代、その地域、地域における訓練需要に応じてやってきたということでございますが、今後の方向といたしましては、けさほど来、御説明申し上げておりますようなことで、現在並びに今後の訓練需要ということに対応いたしまして、雇用促進事業団校あるいは都道府県校それから事業内訓練、こういうことの責務の分担ということを、できるだけ明確にしつつ訓練体制の再編整備、充実を図ってまいりたい、このように考えております。
  136. 大原亨

    ○大原(亨)委員 職業訓練大学校の設立目的は指導員の養成ですね。指導員を一年間二百名卒業させまして、いままで大体どこへ就職いたしておりますか。それから各職業訓練やセンターに就職をする、そういう指導員以外に、どういう人が指導員になっているのですか。
  137. 岩崎隆造

    ○岩崎政府委員 訓練大学校の本来の目的は、先生御指摘のとおり訓練指導員の育成にあるわけでございますが、現在までの訓練大学校を出た者の半数ぐらいは、訓練指導員として主に雇用促進事業団立の職業訓練校の指導員になっておるわけでございます。そのような者につきましては、都道府県の職業訓練校の指導員になっておる者が、これは案外、数としては少ないのでございますが若干と、そのほかは、職業訓練大学校で訓練関係、特に理論と技能とを双方身につけたという特色を生かした形で、それぞれの民間企業における企業内での職業訓練の指導員ないし実際の生産現場における技術者として活躍している、こういう実績になっております。
  138. 大原亨

    ○大原(亨)委員 大体、職業訓練は半数以上はやってないのじゃないですか。  それから職業訓練関係の指導員は、職業訓練大学校以外は大体どういう方が就職しているのですか、一般的に。それから、職業訓練大学を卒業いたしましたら待遇は大体どれくらいなんですか。
  139. 岩崎隆造

    ○岩崎政府委員 都道府県の訓練校並びに雇用促進事業団の訓練校が約四百ぐらいございますが、それの設立の経過は、高度成長時代の技能労働者の養成確保ということで、雇用促進事業団の訓練校もそうでございますが、ある時期に非常に集中的にできたときがございます。ですから、そのときには訓練指導員の資格を法律上決めておりまして、労働大臣が行います職業訓練指導員の試験に合格した者の中から指導員として採用するという形で、その当時の職業訓練の体制をつくったという時期がございますので、この時期には主には民間の実際に技能を身につけ、かつ指導能力を持った人たちを充てている。その人たちが現在もまだ訓練校のきっと三分の二ぐらいの人数になっておると思いますが、学歴的に申しますと、大学出が半数ぐらいな構成になっておると思います。
  140. 大原亨

    ○大原(亨)委員 大学校を出た人の待遇はどうなんですか。
  141. 岩崎隆造

    ○岩崎政府委員 都道府県の訓練校の場合には訓練指導員手当というものがついておるところが多いと思いますけれども、一般には技術系の職員としての、それぞれの学歴に応じた給与体系に基づく手当を受けておると思います。  それから雇用促進事業団の訓練指導員につきましては、雇用促進事業団の給与法におきます訓練指導員のための俸給表というのがございまして、それに応じて俸給が決まり、それに現実に指導しておる者については指導員手当がついておるというかっこうになっております。
  142. 大原亨

    ○大原(亨)委員 私は思うのですが、労働省職業訓練ぐらいは、養成訓練、中卒から始めて大学まで、本当の実力社会の方がいいと思うのです。学歴なんということではなしに、実際に実力を持った者はきちっと待遇を受ける、そういうふうに変えていく。いま学歴社会というので大学を出た者が三六%もおる。四〇%近いでしょう。こんなのは就職どうしますか。管理職になるわけじゃなし、定員があるわけじゃなし、これは日本では一つの大きな社会問題ですよ。フランスやイタリアでは、もうすでに始まっていますね。学生運動が盛んなときとまた違う。あのころは少しぜいたくなのが新左翼へいってやった。今度は非常に大きな社会問題が出てくるわけです。だから、やはり、この学歴社会とか受験戦争を変えていくというのは、実質的な労働省職業訓練なんかのそういう中で技能検定の制度もあるのですから、そういう点で、きちっともう自分がこれだというて一生懸命打ち込んでやったならば幾らでも上がれるような、そして、ちゃんとした社会的な処遇もされるというふうにしていかないと、職業訓練自体が沈滞してしまうのじゃないかと私は思います。  指導員の定員は枠があるのですか。総定員法の枠の中へはまるのですか、公務員だけは。
  143. 岩崎隆造

    ○岩崎政府委員 先生おっしゃる点は、国家公務員の総定員法という形では入ってまいりません。「雇用促進事業団の職員は政府関係機関としての雇用促進事業団の職員でございますので、総定員法によるものは現業、非現業含めての国家公務員そのものの総定員でございます。
  144. 大原亨

    ○大原(亨)委員 県に委託した場合は。
  145. 岩崎隆造

    ○岩崎政府委員 県の訓練校の場合には、それぞれの県の職員についての定員の規定が条例等で定められているかどうか、私、全部について定かではございませんが、それがあるといたしまして、そういう国と同じような総定員法的考え方でやっているとすれば、それはそれにはまると思います。
  146. 大原亨

    ○大原(亨)委員 職業訓練大学校でなしに、指導員の定員があるというふうに指摘をしているところがあるが、それはないですね。総定員法の関係は、これは事業団だから、ありませんね。たとえば天下ったのは、これは出向だから、あるかもしらぬが……。
  147. 岩崎隆造

    ○岩崎政府委員 職業訓練大学校は雇用促進事業団の一つの施設でございますので、雇用促進事業団の職員ということになるわけですが、ただ、雇用促進事業団の総計としての定員ないしその配分として、職業訓練大学校の指導員が、教授が何人それから事務職員が何人という定数は決まっているはずだと思います。
  148. 大原亨

    ○大原(亨)委員 高等学校へ進学しないで中卒で就職する人、その人員はいま非常に減っていますよね。万で言えば一けたになっているでしょう。そこで養成訓練について今度、改正しようというわけですね。そういう中学卒業の養成訓練については将来はどういう位置づけをいたしますか。
  149. 岩崎隆造

    ○岩崎政府委員 現在、新規学卒者の養成訓練といたしましては、専修訓練課程というものと、それから高等訓練課程というものを設けておりまして、専修訓練課程というのは、技能者としての基礎的な技能を付与することを目的とするということでございますし、高等訓練課程というのは、熟練技能者としての多能的な素地を与えるということになっております。したがいまして、たとえばその中学卒業者をとって見ますと、専修訓練課程は中学卒程度の学力を持った人について一年の訓練、それから高等訓練課程は、中学卒の学力を持っている者について二年の訓練課程ということに現在はいたしておるわけでございます。  それで実際の受け持ちの仕方としましては、現在は雇用促進事業団立の総合高等職業訓練校で中学卒の二年という高等訓練課程を養成しており、それから県の場合には専修課程、中学卒一年の養成課程をやっているという配分を事実上しておるわけでございますけれども、今度の法律改正で、最近の技術革新ないし高度化に応じて要請される新しい技能を身につけ、あるいはまた将来、職業生涯を展開していくためには、多能的な素地を持っているような技能者の育成ということが必要になりますので、徐々ではございますが、基本的な考え方は高等訓練課程に一本化して専修訓練課程を漸次廃止する方向に持ってまいりたい。これは実際に中学卒の人がどんどん減っていくということに対応いたしまして、現在、県の場合にも専修訓練課程だけではなく、高等訓練課程に一部養成を切りかえていくということができておりますが、現在は、これは運営方針でございますけれども、中学卒の二年という訓練課程を県には認可してきておりませんでした。したがいまして今度の方向といたしましては、けさほど来申し上げておりますように、雇用促進事業団立の訓練校は漸次短期大学校ないし技能開発センターに転換を図るとともに、都道府県立の訓練校の養成課程を高等課程として中学卒の二年ものあるいは高等学校卒の一年ものというものに切りかえて、高度技能者の養成という時代の要請にこたえたい、このように考えております。
  150. 大原亨

    ○大原(亨)委員 つまり、こういうことですね。中学校卒の進学しない技能志望者を対象として都道府県立の職業訓練校で二年課程でやる。それは制度として、やはり高等学校に進学しない希望者の要請にこたえるような体制をとるということについては変わらない、こういうふうに考えてよろしいか。
  151. 岩崎隆造

    ○岩崎政府委員 先生おっしゃるとおりでございます。
  152. 大原亨

    ○大原(亨)委員 私も、しばしばこの問題で聞くのですが、たとえば全般的には高校進学率は非常に高いのですが、同和地区等は低いわけです。これは議論はいたしませんが。ですから、そういう人々を対象とする訓練で、職業訓練校を出て、さらに技能の訓練を受けたい、勉強したいといえば、そういう訓練の受けられる機会を得る、こういう措置をきちっととっていただきたい、こう思いますがいかがでしょうか。訓練校で終わりですか。
  153. 岩崎隆造

    ○岩崎政府委員 いまのように新規学卒者に対しては、中学卒の場合に漸次二年ものの高等訓練課程で、がっちりした訓練、幅広い訓練をいたしてまいりたい、こういうことでございますが、そこを修了いたしまして一般には技能工として就職をするわけでございます。ただし、その後におきましても、技術革新あるいは新しい機械、技能の導入ということによって、みずから入職前につけました技能者としての技能度が、やはり陳腐になってくるというようなこともございますので、今回目的にしております生涯訓練体制の確立ということで、在職労働者が随時みずからの欲求によりまして、さらに向上訓練を受けられるというような体制を確立し、それに対応する公共職業訓練施設につきましても、先ほど申し上げましたような技能開発センターというもので、その場を提供することといたしますし、また、その受けようとする労働者について、たとえば派遣奨励とか有給教育訓練休暇奨励という制度の裏づけをもって、さらに高い技能を求め得るような形の制度を確立してまいりたい、このように考えております。
  154. 大原亨

    ○大原(亨)委員 次は、ちょっと変えまして、身体障害者職業訓練校ですが、これは改正後は内容的にどういう点を改めるわけですか。身体障害者職業訓練については、都道府県に委託をしているのが全国で十一カ所あるわけですが、これについては身体障害者に対する職業訓練は非常に重要だと思うのですけれども実施いたしまして就職する状況、そういう一つの実績というか、そういうものについて、ひとつお答えいただきたい。
  155. 岩崎隆造

    ○岩崎政府委員 身体障害者職業訓練校は、先生御指摘のとおり国で設立いたしまして県に運営を委託しておるものが十一校、それに県が自主的につくっておりますものが三校ございまして、それの入校定員数が大体二千ということになっております。それで、現実には入校率が七五%くらいでございまして、そこを修了いたしました訓練生の就職率は八〇%くらいなことになっております。  入校率が必ずしも満杯になっていないというような状況につきましては、訓練校の所在がブロック別くらいなことになっておりますので、手近にないというようなことから、しり込みをする障害者もおられると思いますし、それから障害者自身が望んでおられます訓練科目が必ずしも用意されていない。あるいは訓練施設そのものが寄宿舎も含めましてカムファタブルなものになっていないというような障害も若干、私ども自身、気づいておりますので、これらは今後の問題といたしまして、たとえば訓練職種についても、身体障害者に非常に適当であり、かつ今後の雇用需要にもマッチするような形での新たな訓練職種の開発、それから施設、設備につきましては、できるだけ速い速度で新しいものに改善をしていくという方向で努力をしてまいりたいと思っております。
  156. 大原亨

    ○大原(亨)委員 身体障害者雇用促進法という法律があるのですが、身体障害者雇用促進法はしばしば改正いたしました。それで官公庁や公共企業体、民間に対して一定の雇用率を課しておりますね。ただ問題は、身体障害者雇用促進法と身体障害者の訓練との関係なんですが、私は身体障害者雇用促進法は、雇用率を一歩進めて率だけではなしに、たとえば盲人であるならば、どういう職種については訓練をし開発をするならば仕事が可能である、こういう障害者程度と質に対応する職種を決めて、その職種については優先雇用をする、そういう制度雇用促進法でつくる。率だけを課しておきますと、軽度な者だけを雇って数字を合わせるということになります。しかも、けしからぬことは官公庁の中でも雇用率を達成していないし、特に大企業が悪いということですが、その議論はまた別にするといたしまして、問題は身体障害者雇用促進を一歩進めて、可能な職場については優先雇用するという制度を具体的に法律で決めて、雇用促進法と訓練とを結びつける。身体障害者については、こういう職場に働く希望がある、こういう前提で訓練もやる。また学校教育との関係もつける。そういうことになるならば私は訓練の中身が充実してくると思う。リハビリテーションにいたしましても充実してくると思うのです。そうしないで、いまのような法律では少し足りないのではないか。もちろん意義がないことはありませんけれども足りないのではないか。  たとえば盲人なら盲人の職業歴があるのですから、身体障害者雇用促進法の改正と身体障害者の訓練の内容というものを結びつけて、局は違うのですけれども、結びつけて運営していく。あるいは文部省もこれに参加をしていくというふうな、働きたいですから、職業ですから、自分の働く場所をきちっと目標を定めるならば、盲人の方だって、はり、マッサージだけじゃなくていいわけです。あんまだけじゃなくてもいいのです。これは広く今度は高等学校にも大学にも入っているわけですから、職業の分野はかなりあってもいい。だから量的なそういうパーセントの規制だけでなしに、そういう質的なことと訓練とを結びつける、こういう点において一歩前進することが必要ではないか、こういうように思うのですね。身体障害者雇用促進法の関係で議論はちょいちょい出ておりますけれども、お答えいただきまして、そして訓練の関係のお答えをいただきたい。
  157. 細野正

    細野政府委員 先生御指摘のように、まず当面の問題としましては、大企業とか一部の産業等におきまして、かなり雇用率を下回っているところがございますので、これについて雇用率を達成するためにも努力を懸命に続けてまいりたいというように考えておりますが、しかし雇用率がだんだん進めば進むほど、先生御指摘のように今後の問題として重度の方の雇用の促進ということが重大問題になることは、全く先生の御指摘のとおりだと思います。したがいまして私どもも、いま申し上げましたような努力を続ける過程で、いろいろ問題がございますけれども、重度の障害者の方の雇用促進についてのあり方について研究、検討を進めまして、やはり今後そういう方向について何かの工夫が要るのではないかというように考えておりますので、今後とも勉強させていただきたい、こういうふうに考えている次第でございます。
  158. 大原亨

    ○大原(亨)委員 肢体不自由の方でも設備さえあれば車いすで仕事ができるわけですよ。そうすれば、このポストについては障害者を優先的に雇用する。そして雇用率も決めておく。そうすると今度は学校でも訓練所でも、それを目標にして訓練をする。装具や施設については補助をする。こういうことになれば一生の職場は確保できる。本当の意味の完全雇用を達成する。そういうふうなきめ細かな、縦割り行政について克服しながら総合的、系統的なことを、これからの雇用対策は必要ではないかというふうに私は考えます。  私も初めて一わたり見てみまして、まあ労働大臣は、わかったようなわからぬような上手な答弁されましたが、通産省と関係がない。それから労働省は縦割り行政。厚生省の年金と雇用との関係がない。きちっと、だれが責任を持ってやるかという、一人の人間の生活と仕事をどうするかという観点がない。労働省の中では訓練局と職安局との関係が、たとえば北九州へ行きましても、窓口へ行っていいのか、職業訓練校で親身に就職を世話してもらいたい、こういう希望もある。あるけれども職安との関係が筋が違うものですから、うまく連絡がとれてない。こういうこと等もあるわけです。ですから、職業訓練というのは一定の目標を立てて、そして技能をみがくなり、いままでいろいろなコースをたどってきた人が入ってくるわけです。倒産しましたり、いろいろな職業をかえた人が入ってくるわけですから、そこで一生の働きがいのある職場の訓練をしようということになれば、人間というものは全能力を発揮すれば、りっぱなものですから、そこでやりがいがあるような体制をとることが必要ではないか。そういう点で、身体障害者雇用促進法と訓練所との関係について指摘をいたしました。大臣に御答弁いただきまして私の質問を終わります。
  159. 藤井勝志

    藤井国務大臣 御指摘のように、職業訓練雇用という問題は、これはまさに表裏一体で進めるべきであります。特に身体障害者というハンディキャップのある人の雇用確保という面においては、やはり、そのような訓練をする機関において就職の道と結びつけた、これが職業訓練を行うということが私は非常に大切なことだと思うのです。とかく従来、同じ労働省の中でも職業訓練職業安定というのが現場においてやや一致していないという、こういう御指摘でございますが、これは絶対にそうあってはいけないわけでありまして、今後一層注意いたしますと同時に、これから先、雇用問題がここまで大切な現在の課題になってきておりますから、御指摘の点を十分踏まえて、労働省としては、やはり雇用の機会の拡大ということも考えながら、諸般の施策を各省と十二分に密接な連絡をとって、きめ細かく配慮していきたい、このように考えます。
  160. 大原亨

    ○大原(亨)委員 終わります。(拍手)     —————————————
  161. 木野晴夫

    木野委員長 この際、お諮りいたします。  ただいま議題となっております職業訓練法の一部を改正する法律案審査のため、本日、雇用促進事業団理事中島寧綱君に参考人として出席を求め、意見を聴取いたしたいと存じますが、御異議ございませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  162. 木野晴夫

    木野委員長 御異議なしと認め、さよう決しました。     —————————————
  163. 木野晴夫

    木野委員長 質疑を続行いたします。大橋敏雄君。
  164. 大橋敏雄

    大橋委員 ただいま議題になっております職業訓練法の一部改正に当たりまして、若干質問をしたいと思います。  私は、いまから六、七年前だったと思いますが、ヨーロッパの各国を視察させていただきました。そのときには西ドイツ、フランスそれからイギリスの職業訓練の実情もつぶさに視察をしたわけでございますが、そのときの印象は、フランスやイギリスあるいは西ドイツの職業訓練というものは、いわゆる場当たり的な訓練ではなくて、その国の産業政策の方向にのっとった職業訓練がなされている。その訓練の内容も非常に高度なものであったという印象が、いまにも残っているわけでございます。それに引きかえて、わが国職業訓練の実情はと顧みたときに、非常にさびしい思いがしたわけです。従来、職業訓練というものは何だか陰の役割り的な感じがしてならなかったのです。ちょうど舞台裏の小道具係みたいな感じと言った方が適切かもしれません。  しかし、わが国職業訓練の問題もだんだん問題が指摘されてきまして、その改善が見られてきたわけでございますが、今日ようやく舞台裏から表舞台にクローズアップされてきたなという感じを受けてきたわけです。非常にうれしい気持ちでございますが、職業訓練のあり方について根本的な見直しが始められている。  私は、このときに当たりまして、まず労働大臣にお願いしたいことは、職業訓練のあり方というものは、わが国の将来を見通した産業構造あるいは産業政策、その動向に対応する訓練内容でなければならない、このように思うわけでございます。また、職業訓練雇用対策の問題が先ほどから論議されているわけでございますが、私も、この関係はちょうど御飯とおはしの関係じゃないだろうか、なべとふたの関係でなければならない。せっかく習得した技術や知識が実社会に出てみると過去のものであったということでは、これは無意味だと思うわけでございます。先ほどからの大臣の答弁を聞いておりますと、職業訓練雇用が表裏一体のものである、何らかの工夫をこらしていきたいという答弁があっておりますが、では具体的に、どのような機関を持たれるのか、それは示されておりません。  恐らく、この職業訓練の問題は、労働省の中でもかなりの連携を保った上での検討が進められなければならぬわけでありますが、労働省だけではおさまらない問題であります。通産省あるいは経企庁、あるいはまた文部省、厚生省も含まれるかもしれませんが、そういう関係各省庁をがっちり一本化するような連絡機関を設けて、本当に真剣な検討がなされなければ、将来のそうしたプランは立てられないと私は思うのでございますが、その点について大臣の御見解を承りたいと思います。
  165. 藤井勝志

    藤井国務大臣 まさに御指摘のように、これからの職業訓練政策の進め方、行政のあり方というものは、願わくば一刻も早く新しい日本産業構造のビジョンというものを確立する。これは関係各省にまたがるわけでございますが、そういう認識を踏まえて、そして現在この産業構造が質的に転換をまさに遂げつつあるわけでございますから、必然的に雇用及び産業の基調の変化に対応して就業者の構造がこれに伴い、また高齢者社会という時代に日本社会が入っておりますから、そのような人たちが第二の人生を新しい職場についていくということ、それと、これから拡大するであろう第三次産業への雇用の対応の仕方、こういうことを念頭に置いて、これからの職業訓練というものを推進すべきである。職業訓練というのが、むしろ後追いといいますか、従来のようなやり方より一歩抜き出て、先ほどお話がございましたように、いかにしてマンパワーを時代の要請にこたえて配置がえするか、配置転換をするか、こういうふうな一つの理念、考えのもとに職業訓練の政策を推進していく、こういうふうに進めていくのが私は理想である。理想はなかなか簡単にまいりませんけれども、絶えず、その考え方を念頭に置いて職業訓練の今後の実施体制を進めていかなければならぬ、このように思うわけでございます。  そして具体的に、いろいろ今度の改正で盛り込んでおります問題につきましては、私がいま申しましたような次元とは、ちょっと余りにも具体的に過ぎますので、訓練局長から必要によって答弁させます。
  166. 大橋敏雄

    大橋委員 私は、現在の長期不況から企業が倒産し、失業者が続発する。この救済の立場からの職業訓練、これは当然必要だと思います。これは今度の法改正でかなり真剣な検討の上、対策が盛られているやに私は感じます。私がいま言わんとしているのは、それと同時に将来構想、将来のプラン立てのための専門機関が必要じゃないか、必要ですよ。それは考えられますか、こう聞いているわけです。いかがです。
  167. 藤井勝志

    藤井国務大臣 私は、ぜひ取り組まなければならぬ課題として、先ほど御質問に、ある程度お答えをしましたけれども、この問題については雇用政策調査研究会という諮問機関もございますし、現にいろいろ相談をしております。特に日本社会において、国際的に見て、おくれておる分野というのがあります。そして日本人の社会の生活の質を向上していくという面において、特に福祉面であるとか、あるいは教育面であるとか、あるいはサービス関係の施設また陣容、こういう面において日本人の生活の質を向上し、あわせて雇用拡大をそこに見つける、こういうことも考える。ただ従来のように設備をふやして生産を上げていくというようなことだけでなくて、そういう生活の質の向上のための人の配置を考えていく、こういうところまで掘り下げた検討をすべきではないか、このように思うわけでございます。
  168. 大橋敏雄

    大橋委員 将来を見通した産業構造あるいは産業政策の上に立った、それに対応する職業訓練のあり方というものに対して、労働省が中心となって各関係省庁との連絡協議機関的なものをつくって推進していかれる、このように理解してよろしいでしょうか。
  169. 藤井勝志

    藤井国務大臣 この問題については、ぜひ御意思を体して私も検討させていただきます。ただ労働省だけで問題は解決いたしませんから、先ほど申しましたように、新しい産業構造のビジョンをつくるために労働省がマンパワーというサイドから取り組むという場合に、各省にも呼びかけて御提言の線が前進するように努力していきたい、このように思います。
  170. 大橋敏雄

    大橋委員 長期不況という状況下では、高齢化社会とともに、雇用のしわ寄せをまともに受けているのは中高年齢層ないしは身体障害者の方々だろうと私は思います。  特に、きょうは身体障害者雇用を中心に若干お尋ねしてみたいと思うのですが、一昨年の五月、身体障害者雇用促進法の改正をいたしました。そして五十一年の十月一日から、それが施行されているわけでございますが、その内容は、簡単に申し上げますと、企業における身体障害者雇用義務を法的に強化したということであったと思うのです。労働省は昨年の十月に身体障害者雇用状況調査をなされまして、その結果を発表なさっておりますが、その主な内容を申し上げますと、雇用率を達成していないのは特殊法人などは七割以上、あるいは民間企業も約半数以上が未達成である。また民間の中では大企業ほど未達成が多いという状況が発表されておりました。産業別では、金融・保険、不動産、卸・小売業等々となっていたようでございます。私のいま申し上げたことに何か間違いがあれば反論していただきたいのですけれども、恐らく、このとおりだったと思います。  ところで、前に労働大臣をなさった石田労働大臣は、金融機関に対して身体障害者雇用の促進方を要請してまいりますということを確約なさっていたわけでございますが、その後どのような指導がなされ、どのような効果が上がってきたのか、お尋ねしてみたいと思います。
  171. 細野正

    細野政府委員 先生御指摘のように、金融機関の身障者の雇用の実際の雇用率が非常に悪いわけでございます。それで、昨年の秋でございますけれども労働大臣が銀行の幹部の方と会いまして、そこの席上で法定雇用率のこと、それから、それをいかに下回っているかということ、しかも金融機関のような代表的な、現在の不況の影響をそう強く受けている産業に入らないわけでございますので、いろいろな社会的責任からいっても、これはぜひ守るべきものであるということを強く要請かつ指導いたしました。その席上、さすがに銀行側も、これについては全く弁解をいたしませんで、これはそのための特別な対策委員会をつくって努力をいたしますということを確約をいたしたわけでございます。  その後どうなっているかというお話でございますけれども、現時点までにおいて、たとえば学卒を採るときに採ったとか、あるいは安定所に求人を申し込んで採ったとかいう個別の状況等は私ども聞いておりますけれども、金融関係全体で現在までに何人採用されたかというところまで、まだ把握いたしておりませんが、しかし現実に、それについてかなり心を配り、採用の努力をしているということは事実というふうに私ども個々の事例から判断しております。  なお、今後におきましても、御存じと思いますけれども身障法の改正の際に、未達成のものについては雇い入れ計画の作成を命ずることができるという規定がございまして、この規定を活用して、恐らく、いろいろ努力はしてくれてはいても、まだ法定雇用率と実雇用率との間には差があるだろうと思いますので、その差を埋めるための努力をさせてまいりたいというふうに考え、現在、各安定所長から作成命令等を発出している、そういう状況でございます。
  172. 大橋敏雄

    大橋委員 いまの答弁を聞いていますと、金融機関に確かに労働大臣が身体障害者雇用について要請をした。そのときに銀行側は何らの弁解もなくて、その要請に対して努力すると確約をし、いま行われているだろうと思いますという答弁でした。というのは、まだ銀行全体としてのその状況を把握していないというわけでしょう。これではやはり労働省の方が怠慢だと思うのですね。と同時に、いまもおっしゃったとおりに、身体障害者の雇い入れに関する計画を未達成の企業には命令することができるわけですね。いま命令をしているとおっしゃいましたよ。だけれども、どこの銀行がどうなっているのかわからないのに、いま、しているんだとおっしゃっても何かぴんとこないですね。漠然と全体的になさっているのか、その企業を目指して、君のところは未達成じゃないか、計画を出しなさい、ここまでやっているのかどうか、どうですか。
  173. 細野正

    細野政府委員 ただいま御指摘のございました雇い入れ計画の作成命令でございますが、これは別に金融機関だけではなくて、すべてにまたがるわけでございますが、先ほども指摘がございましたが、未達成の企業の割合を先ほど過半数というふうにおっしゃいましたが、たしか四七・三%ぐらいで、過半数は割っているわけですが、半分近いという状況でございますから、全部というわけにはまいりませんけれども、いま大体、以下申し上げるような要件で作成命令を出す考え方でやっておるわけであります。  その要件は、一つ雇用の割合が著しく低い、つまり実雇用率が非常に低い。もう一つは、法定雇用率だけでなくて、差としての人間の数が非常に大きい。したがってこれは大企業が中心ですけれども、三番目の要件としては、新規に労働者を継続的に雇っているという、この三つの要件のあるところについては作成命令を出そうじゃないか、こういう考え方で作成命令を出すように安定所長に昨年指示をいたしたわけであります。それに基づきまして各安定所におきましては、ことしの三月三十一日までに雇い入れ計画書を出すように、その該当するものについて命令を出しているわけであります。  したがって各安定所は、どこの企業がどれだけ足りないかというのは全部知っておりまして、それに基づいて、さっきのような要件を満たすところに対する命令を出して、そしてその計画をつくらせて、そのできた計画を届け出るのは三月三十一日、こういうことでございまして、現在取りまとめ中という段階なわけでございます。数字把握もまだできないのは、そういう事情でございまして、目下いわば大ざっぱに言うと集計中みたいな状況であるということでございます。
  174. 大橋敏雄

    大橋委員 よくわかりました。集計の結果が、またいずれ発表されるだろうと思いますが、これが後で質問いたします納付金制度と非常に関連深い問題になると思うのです。  また、身体障害者を解雇する場合には公共職業安定所に届け出なければならないことになっているはずでございますが、この点は実施されているでしょうか。
  175. 細野正

    細野政府委員 御指摘の届け出制度は、身障法に基づきまして、できるだけ早く各安定所が身障者の方の雇用確保のための措置をとる、こういうことでございます。したがいまして、各安定所において、この数字の把握等はしていると思いますが、私どもの方で全国的な集計は現在していないという状況でございます。
  176. 大橋敏雄

    大橋委員 これは非常に重要な事項でございますので、本省で取りまとめるというのも大変でしょうけれども、行政指導をがっちりしていただきたいということです。  時間が非常に制約されておりますので次に移りますが、一昨年の法改正のときに目玉の一つとして身体障害者雇用促進協会の設置の問題がございました。私も、この協会の設置については、その成果に対して大きな期待を抱いていた一人でございます。そういうことで実際に動き出しまして、もう一年半になりますか、したがいまして、目的達成のため健全な発展を期待する立場から、私は、この身体障害者雇用促進協会の問題に触れてみたいと思うのです。  実績や問題点についてお伺いしていくわけでございますが、初めに納付金についてでございますが、これは雇用率未達成のところの企業が、これはもちろん三百人以上雇っている企業が対象になるわけでございますが、一人三万円が徴収されることになっておりますね。これの五十二年度の当初見込み額と実際に入ってきた実績、その額、企業数、不足数、これを教えていただきたい。
  177. 細野正

    細野政府委員 御指摘の納付金でございますが、五十二年度の当初の見込みは、企業数で四千五百、納付額で五十七億円程度というふうに見込んでいたわけでございますが、これに対しまして納付の実績は、実雇用率が予想を下回っていたことを反映いたしまして、企業数一体はほぼ四千五百ということで合っていたわけでございますが、納付の額が九十二億円というふうに当初見込みをかなり上回ったという状況でございます。
  178. 大橋敏雄

    大橋委員 当初見込みは、たしか五十七億五千万でしたね、それが実際には九十二億円入ってきたということですか。大変な開きがあるわけでございますが、これは未達成企業から徴収したお金がよけいに入ってきたということなんですけれども、大企業などは身体障害者雇用するよりも金で済ませた方が簡単だという傾向があるんじゃないかと私は思うのでございますが、PRが不十分じゃないかという気もするのですが、この点どうですか。
  179. 細野正

    細野政府委員 納付金というものの性格について、当初いろんな意味での誤解があったわけでございます。そういう意味で、たとえば、これは罰金みたいなものではないかというような考え方をおとりになる企業なんかは、いろいろ努力してみても実際に採用がむずかしい場合には、この金を免れていいんじゃないかというような、いろんな反論みたいなものもあれば、逆に先生がいま御指摘のように、これさえ納めればというようなお考えのところもある。そういうことでなく、この納付金というのは、あくまでも身体障害者雇用する場合にかかる経費についての調整をするためのものであって、したがって雇用率そのものを決して免れるものではないということを、これをいま御議論をいただいております身体障害者雇用促進協会等を通じ、あるいは県を通じ、いろいろな場合に私ども、事業者の方々にも徹底を図ってまいりまして、その点についての御理解はかなり得られてきているのじゃなかろうかというふうに考えているわけでございます。  ただ、これほど大きく差が開いたことにつきましては、一つには、やはり不況の影響で新規採用をしないというところが、かなり先生も御存じのように、あるわけでございまして、そういうところでは、いまいる方を切って身体障害者の方を採るというわけになかなかまいりませんで、そういう意味で身体障害者の方の雇用がテンポが非常に鈍ったということが一つ大きな原因でございます。  そのほかに、これまた先生御案内のように、従来は事業所単位で掛けたものを企業単位に改めましたので、そうしますと、小さな支店、出張所をいっぱい持っているところは、いままで義務がなかったと申しますか、雇用率が掛からなかったのが全部に掛かってしまうということで……
  180. 大橋敏雄

    大橋委員 時間が迫りますから聞きますけれども、それでは五十三年度の納付金の見込み、恐らく五十二年度の実績を踏まえてから試算なさっていると思うのですけれども、どの程度お見込みでしょうか。
  181. 細野正

    細野政府委員 先ほどの五十二年度は、先生御存じのように六カ月分でございますから、したがって五十三年度ということになりますと一年分ということになります。しかし、私どもも先ほど申しましたように極力努力して雇用率を上げるように考えておりますから、したがいまして、いろいろな不確定要素はございますけれども、一年分としては約百六十億ぐらいではないかなというふうに一応見込んでいるという状況でございます。
  182. 大橋敏雄

    大橋委員 百六十億程度を見込んでいるということですね。  協会の方が来ていらっしゃいますので、ちょっとお尋ねしますが、おたくで出しているパンフレットの中に非常にいい文句があるのですよ。  事業主である皆さんは、心身障害者雇用についてどのようにお考えでしょうか。まだまだ消極的なのが現状のようです。その理由としては、「身障者は能率が落ちるから」とか「適した仕事がないから」といったことがあげられています。   たしかに、そういった面のあることは否定はできません。しかし、能力に適した仕事に就いた場合、健常な人に勝るとも劣らない能力を発揮するものです。まじめでねばり強く、その事業所に欠かせない人となっている実例もたくさんあります。私は、このとおりだと思うのです。こういう内容を実際に企業に対して、ただこれはぱっと配る程度なのか。それとも何か具体的に説明会でもなさってPRなさっているかどうか。その点をお尋ねしたいと思います。
  183. 田淵孝輔

    ○田淵説明員 私から説明させていただきますが、このパンフレットは労働省職業安定局と身体障害者雇用促進協会の連名でつくったものでございまして、このパンフレットは各安定所で、いろいろな事業主の集まる機会に配付して説明するとか、あるいは身体障害者雇用促進協会の方は、各都道府県に地方の協会が、やはりそれぞれ事業主の団体がございまして、その会員の方々に配付したり、あるいは研修会というような形で労務担当の方に集まっていただきまして、それぞれ配って、いろいろ説明に使っております。
  184. 大橋敏雄

    大橋委員 これは本当に、やり方次第では、ぐっと変わってくると思うのです。情熱を持ってやらなければいかぬです。  私はなぜ、これを言うかというと、これからお尋ねする予算の実績を見まして、ちょっと熱が足りないのじゃないかと思われるのがたくさんあるわけです。とりあえずお尋ねしますが、雇用調整金の五十二年度の見込み額と実績、あるいは報奨金の五十二年度の見込み額と実績を述べてください。
  185. 細野正

    細野政府委員 まず雇用調整金でございますが、これは当初見込みが十四億円でございますが、実績は七億円でございます。それから報奨金は、当初見込み十億円でございましたが、実績は三億円でございます。助成金は目下集計中という状況でございます。
  186. 大橋敏雄

    大橋委員 いまおっしゃるとおり、調整金は最初十四億見ておったけれども実績は七億だ。報奨金は十億見ておったけれども三億だ。私は、これでは何のために納付金が集められたんだろうか、生かされてないじゃないか、こういうふうに考えられて仕方がないです。いずれも、こうして実績が予算額を大幅に下回っている理由は一体何だ。私の考えでは申請漏れがかなりあるのではないかと思うのですけれども、どうですか。
  187. 田淵孝輔

    ○田淵説明員 調整金につきましては、大企業は納付金を納める立場にある三百人以上の企業でございますから、まず申告漏れはないと思います。やはり雇用状況が悪かったせいだと思っております。  ただ、三百人未満の企業に出します報奨金とか、あるいは、すべての企業に渡す助成金、新しく雇い入れる場合に機械器具の新設等に助成するという制度は、私どもは極力PRしておりますが、場合によれば、やはりまだ申請漏れがあり得るということで、今後とも極力PRに努めたいと思います。
  188. 大橋敏雄

    大橋委員 これは大臣にお尋ねしますが、せっかくこういうすばらしい制度ができまして、雇用調整金だとか報奨金の問題があるわけですけれども、額が少ない。あるいは条件が、三名または七名以上の身障者を雇用しなければならぬというふうに非常に厳しいわけですね。いまの実績を見たら、ほとんど使われていないわけですよ。こういうのは大いに改善の必要があろうと思うのですけれども、いかがですか、条件緩和。
  189. 藤井勝志

    藤井国務大臣 せっかく身体障害者雇用促進の画期的な制度として納付金制度実施されたわけでございますが、時あたかも厳しい経済情勢ということで期待したような結果になっていないということは、まことに残念でありまして、御指摘のとおりだと思います。これから十分この制度趣旨を徹底をして、同時にまた身体障害者雇用調整金であるとか報奨金であるとか各種の助成金の紹介もフルにいたしまして、この制度が所期の目的に完全に機能を発揮して、そうして身体障害者が適当な職場について、生きがいのある生活をしてもらうべく、労働省としては今後一層努力しなければならぬ、このように思います。
  190. 大橋敏雄

    大橋委員 これは大いに実態を踏まえた上で改善していただきたいと思います。  それから助成金については、まだ集計中だなんということでございますが、いよいよ、もう五十三年度の予算が執行されることになるんですよ。少し仕事がとろいのではないかと思います。  それで、助成金も恐らく、たしか十一億五千二百七十八万五千円が見込まれていたと思うのですけれども、これもまだ実績の方はずいぶん下回っているのではないかと私は予想するわけです。なぜかというと、これもやはり条件が厳しいですね。新たに常用雇用する事業主でなければならぬとか、あるいは身体障害者等の専任指導員助成金などは、五人以上の雇い入れという厳しい条件がついていますね。だから私は、支給条件あるいは支給額の改善が必要だと思うのでございますが、その辺はどうですか。
  191. 藤井勝志

    藤井国務大臣 御指摘のとおり、現行の助成金の支給要件の緩和であるとか助成率の引き上げ、こういったことを含めまして、助成制度の拡充ということについて今後、積極的な配慮をいたしまして、制度がフルに機能するように努力しなければならぬ、このように思います。
  192. 大橋敏雄

    大橋委員 実態に即して支給条件を緩和し、支給額等をまた考え直すというふうに理解してよろしいでしょうか。
  193. 藤井勝志

    藤井国務大臣 御指摘のとおりであります。
  194. 大橋敏雄

    大橋委員 ひとつ、これが生かされるように改善していただきたいことを再度御要望しておきます。  ただ問題は、このように予算を組みながらも大変実績が低い。余ったお金はどうなるのかということを調べてみましたら、全部積立金の方にいっているようでございます。私は、この五十二年度の実績を見ますと、まるで積み立てをするために使わなかったのじゃなかろうかというような感じを受けてなりません。積み立てるよりも実際に調整金や報奨金あるいは助成金をフルに活用して目的を達成していただきたいということを強く要望しておきます。  そこで、五十二年度の予算業務委託費というのがございますね。それから身体障害者雇用促進協会の方に、その委託費を預けられて、その予算の中に、また業務諸費というのがあるわけでございますが、おのおの幾らが計上されていたのか、御説明願いたいと思います。
  195. 細野正

    細野政府委員 とりあえず業務諸費について申し上げます。  身障法に基づきまして、納付金の徴収と調整金、報奨金、助成金の支給等の業務について、事業団から促進協会と都道府県の促進協会と両方に業務を委託しておるわけでございますが、そのために必要な経費ということで三億四千百九十九万計上いたしております。
  196. 大橋敏雄

    大橋委員 私がいま聞いたのは、それじゃなくて、業務委託費が五億一千四百五十九万八千円、一般運営費は一億六千五百五十九万一千円、合わせますと六億八千十八万九千円ですか、これが身体障害者雇用納付金事業特別会計の総予算に占めるパーセントは一一・七%になっています。いいですね。これは私は余りにも取り過ぎじゃないかと思うのです。普通一般的に業務諸費というような管理費は、総予算の中の五、六%ですよね。これが二・七%使われているということは私は問題ではないかと思うのですが、どうですか。
  197. 田淵孝輔

    ○田淵説明員 先生御指摘のとおりの数字でございますが、その占める割合は、昨年度五十二年度は初年度でございまして一一・七%を占めておりました。そのとおりでございますが、これは初年度ということで、先ほど局長からお答えしましたように、業務取扱費の中の業務諸費は三億四千百九十九万でございまして、創業経費というようなことで、かなり、そのウェートが高うございますが、明年度以降につきましては通常ペースに戻るわけでございますので、先生御指摘のとおりウェートをうんと下げて予算を組みたいと考えております。
  198. 大橋敏雄

    大橋委員 これは本当に私は問題だと思います。五億一千四百五十九万八千円の中で、さらに業務諸費というのが三億四千百九十九万一千円、六五%を占めていますよ。こんなばかな話があるかと言いたいくらいの予算内容になっております。来年度は大きくこれを改善していくという御答弁でございますので、私は皆さんの運営のあり方を今後とも関心を持って見守っていきたい。  私が、なぜこう申し上げるかというと、身体障害者雇用というものは非常に重要な問題だからでございます。予算の面から、いろいろと問題点が見えておりますので、こういうことがないように、ひとつよろしくお願いいたします。これはまた来年度の実績は、その時期になったら私は取り上げますから、二度と、こういうだらしないというよりも問題と思われるような内容にならないように。そうしないと、大体この協会の運営はだれがやっているのかというような問題に発展していきますよ。天下りのための職場をつくっただけじゃないか、本当に身体障害者のために働いているのかというような指摘が起こるのじゃないかということを私は警告しておきます。  では最後に、最近の身体障害者求職申し込みと就職状況についてお尋ねするわけでございますが、なお、その就職先の事業所規模はどういうことになっているか、それが一つ。  それから、もう時間がないから、まとめて言っておきますが、雇用奨励金の利用状況はどうなっているか。この雇用奨励金も条件を大幅に緩和しなければ活用が不十分だ、私はこのように考えております。  続いて申し上げますが、身体障害者職業訓練校は国立十一校、県立三校、計十四校ありますけれども、入校、就職状況はどうなっているか。まず、そこまで聞いておきます。
  199. 細野正

    細野政府委員 最初にお尋ねございました身障者の求職申し込み、就職状況について申し上げます。  五十二年の求職就職状況は、新規求職申し込み件数が四万九千四百二十人、それから就職件数が二万三千四百三十三人でございまして、前年に比較して求職の方が二・九%、就職が三・四%それぞれ増加をしているわけでございます。なお、規模別の就職状況統計上、把握がちょっとできない状況になっております。  それから二番目にお尋ねの雇用奨励金制度でございますが、これにつきましては、支給の実績は一般会計で八億四千五百万、特別会計で四億一千百万、予算が十六億でございますので、合計しますと十二億六千万程度でございますから、かなりこれは消化をされているというふうに考えておる次第でございます。
  200. 岩崎隆造

    ○岩崎政府委員 身体障害者訓練校の訓練規模は、十四校、約二千人の定員規模でございますが、入校率は約七〇%、それからその訓練の修了者の就職率は約八〇%、これは五十二年三月の修了者の数字でございます。
  201. 大橋敏雄

    大橋委員 それでは最後に、せっかく参考人おいででございますので。  いままでの質疑応答を聞かれて、どこを問題にしているかがおわかりになったと思います。私たちは何も身体障害者雇用促進協会を責め立てようという気持ちで申し上げたわけではございません。健全なる発展を期待するがゆえに私は言ったわけですから、その気持ちをくみ取られた上で、あなたのお気持ちを述べていただきたいこと、それが一つです。  それから最後に大臣にお尋ねしておきます。  今後、身体障害者職業の安定を図る上で、その職業能力の開発向上が最も重要であると考えております。今後、身体障害者職業訓練を拡充するための具体的な方策はどうなのか。両方お尋ねして終わりたいと思います。
  202. 中島寧綱

    ○中島参考人 大橋先生の御意見なり御質問なり伺っておりまして、ごもっともだと思います。私どもの方は雇用促進事業団でございまして、雇用納付金制度等につきまして雇用促進協会の方に委託費を差し上げて、そして身体障害者雇用促進等について、いろいろ活動していただいているわけでございます。雇用促進事業団の業務雇用促進協会の業務も、すべて身体障害者のためにあるわけでございますから、御趣旨を体して、よりよい運営をやっていきたい。それから予算等につきましても労働省の指導を受けながら適切に使われるように努力いたしていきたい、こう思います。よろしくお願いいたします。
  203. 藤井勝志

    藤井国務大臣 御指摘の身体障害者に対する職業訓練の充実、本年度は新たに身体障害者向けの訓練科を七科新設することにいたしております。そして五十四年度からは、すでにお話が出ておりますが、埼玉県所沢市に設立される国立リハビリテーションセンターで職業リハビリテーションの一環として二百名の職業訓練実施することにいたしております。今後とも身体障害者職業訓練の充実を図るために、第一は適性に応じた訓練職種の開発及び新増設、第二は職業訓練施設の改善等を講ずることによりまして、これらの人たちの就職の促進と職業の安定を図るために努めてまいりたい、このように思います。
  204. 大橋敏雄

    大橋委員 終わります。
  205. 木野晴夫

    木野委員長 次に、草川昭三君。
  206. 草川昭三

    ○草川委員 現在の、この職業訓練法律というものについては、部分的には非常に喜ばれるというのですか、非常に利用されている面もあるのですけれども、やはり現実的ないまの産業界の状況だとかいうものに対比をしてみると、なじまないというと言葉が悪いのですけれども、ぴったりとかみ合っていない面の方が実は多いのではないかということを私はかねがね思っておるわけです。これは批判という意味ではなくて、審議会なんかでも産業界の代表、労働組合の代表、いろいろな方の御意見もあると思うのですが、もっと幅広い意見を聞きながら、せっかく国も膨大な予算というものを職業訓練に対して投入をするわけでありますから、もう少し職業訓練そのものが現実にマッチをするような法律というものに仕立てていただきたいというのが実は私の本来の率直な要望でもあり、感想でもあるのです。  意見がましいことになりましたけれども、もともと職業訓練法ができたのは昭和の三十三年ですか、初めのころでございますが、当時はやはり失業対策という面に大きいウエートを置いて訓練法が活用されたのではないだろうか。その後、池田内閣になりまして昭和三十五年から高度成長が始まってまいりまして、若年労働力というのが足りなくなってくるということになって、今度は非常に若年労働力の技能訓練というところにウエートがかかってくる。そしてまた、今日の非常に不況の時代になってまいりますと、もう一度、失業対策的な意味で訓練法の手直しをする。  私は、その都度の情勢によって変わることが悪いという意味で申し上げておるわけでないけれども、いわゆる本来あるべき職業訓練の基本的な構えというのは、今後一体どういうようにウエートを置かれていくのか。たとえば中高年齢がとりあえず非常に重要な時代になるので中高年齢対策にいくのか、あるいは能力再開発というところにウエートを置いていくのか、若年労働力の方に置いていくのか、まず基本的なポリシーというのですか、現在の職業訓練についての基本的な考え方について、労働省の考え方をお伺いしたいと思います。
  207. 藤井勝志

    藤井国務大臣 まず大前提としては、社会の求める人材の養成、これは広い意味においては教育全体でありますけれども、特に労働省の場合は実務的な職業訓練、こういったものを主体にいたしまして、これからの職業訓練の基本的な理念というのは、日本産業構造が変革をしておる、質的な変化も現在遂げつつある。そのような目標を踏まえて、それに対応する人の配置転換、こういったことで職業訓練というものを進めていくべきである。そして、より当面の問題としては、御案内のような不況業種の構造的な要因による離職者、こういう面からして中高年齢者が、高齢者社会と相まって相当数が多いわけでございますから、そういった方々の再就職というものも、あわせて時代的な強い要請である。それと若年の中学卒業者というような者は数が少なくなってきておりますから、従来の職業訓練のあり方について、もうちょっと生涯訓練という面からの職業訓練の配慮をしていく。このようなことが私は基本的な考えとして明確に意識されて職業訓練行政を改善すべきである、このように考えております。
  208. 草川昭三

    ○草川委員 いま大臣の方から日本産業構造が質的に変化をするので、そういうものを構えてというお話がございましたが、それは大変いい方向ではないだろうかと思います。それだけに、では一体どういうような受けざらを想定しながら、やっていくのかという大変むずかしい問題が出るのですが、これは少し後でお伺いをすることにいたしまして、実は職業訓練法改正というのが、ある新聞にかなり大きく、たしか、ことしの正月の初めだったと思いますが、出ました。そのときに、いろいろな言い方が出ておるわけでございますけれども労働省は、特定の訓練の中に成人教育指導官とか、環境汚染監視官など雇用の創出につながる新しい職種を含めていきたいというようなことで、これは大臣の写真入りで報道されておりまして、私、非常に労働省の政策については興味を持ったのです。     〔委員長退席、住委員長代理着席〕 ところがその後、今度の提案になってまいりますと、環境汚染監視官だとか成人教育指導官という新しい雇用の創出につながる職業訓練というのは影をひそめたわけです。これは新聞報道の間違いじゃないか、こう聞いたら、いや実は労働省の中でも、いろいろあるわさという話で問題は終わったのであります。  これは私の推察でありますけれども、次官が昨年ヨーロッパで若年失業者の国際会議に出られたレポートが、これも新聞に出ておりました。そのときの事務次官のレポートは、ヨーロッパでは若年の労働者が非常にふえておる、アメリカなんかも含めての報告でございますが。というので、新しい意味での雇用創出という意味で、森林資源を保護するために新しい公共投資をやって、そこで何万人かの雇用をつくり上げるというような報道が出ておりましたので、ああ労働省は国際的ないろいろな知恵というか状況というものを先取りしたな、なかなか職業訓練にとっては基本的におもしろい方向ではないだろうかと思って、私、興味深く、その新聞を見ておったのです。ところが現実には、ことしの予算委員会なんかでも各野党の先生方からも新しい雇用をつくり上げなさいというのでいろいろな提案が出たわけですが、この一月段階、まあ去年の暮れだと思うのですが、少なくとも労働省は成人教育指導官だとかというので、若い学校の先生というのですか、そういうようなものをつくり上げたらどうだとか、過去の経験者ですね、年配の中高年齢の経験者を、そういう指導官に充てたらどうだろうとか、環境汚染の監視官なんかを、ひとつ雇用の創出につながる問題として考えてみえたようですが、なぜ、それが後退したのか、そこらの考え方を、ちょっとお伺いしたいと思うのです。
  209. 岩崎隆造

    ○岩崎政府委員 私、昨年一月には、もう訓練局長ではあったわけですが、そのような新聞報道、もちろん私がしゃべったものでないことでもありますけれども、新聞記事そのものを、うかつでよく承知していないのでございます。  それから先ほどのお話の、これは次官のレポートでございますので、ヨーロッパではそういうことがあるということなんだろうと思いますけれども、私どもも私どもなりに、先ほどから大臣も、ほかの先生方の御質問に答えておられますが、今後の雇用需要のあり方、産業構造のあり方、それに伴う雇用需要、それに対応して訓練需要をどういうふうに開拓していくかという問題については、私どもの省内では、もちろん安定局と訓練局、さらには各省とも今後話し合いを続けながら、そういったものの具体的な開拓に努めてまいりたい。これは法律そのものの中に具体的なそういう職種とか、そういうものの展開が書かれる性質でもございませんので、法律自体では、そういったものの体制整備のいわば器づくりということで、お願いをしておりますので、そこに具体的に出てきていないということでございます。
  210. 草川昭三

    ○草川委員 局長、御存じないというお話でございますが、一月の上旬、日にちは忘れましたけれども、読売新聞の一面に労働省職業訓練という問題で大きく出ていますので、私は一つの方向ではないだろうかと思って、いまのような質問をしたわけです。  そこで、今度は職業訓練の現状についてでございますけれども、前々から第一次計画というのが出たわけでございますが、この実施上、公共職業訓練施設の入校者数が伸び悩んでおるのではないだろうかという御意見がございます。先ほども大橋議員の御質問について、卒業生については八〇%の就職状況等もあるという状況だとか、入校もかなり率がいいというお話がございましたが、いろいろな訓練があるわけでございますけれども、入校者数というのは標ばいか、そんなに伸びてないと私は思うのですけれども、そのような状況について、お伺いしたいと思います。
  211. 岩崎隆造

    ○岩崎政府委員 先生御指摘のいまの第一次訓練の基本計画、これは昭和四十六年度から昭和五十年度までということで、いわば前回、昭和四十四年の法改正に基づいた訓練の基本計画であったと思います。     〔住委員長代理退席、羽生田委員長代理着席〕 それで御指摘のように第二次の訓練基本計画が一昨年度から五年間ということで策定されたわけでございますが、その中に、養成訓練がその第一次訓練基本計画で目標にしておりました数を下回ったということの反省を一つ指摘にしておりまして、それに基づいて今後、養成訓練をどう展開していくかということで第二次基本計画で方向を示しているわけでございます。  その反省といたしましては、第一に、進学率が予想よりもはるかに上回る高校進学率であったために中卒者が非常に少ない。それから高卒者に養成訓練の主体を移そうという方向づけではあったのですが、思ったよりも高校を出て訓練校に入校する者の伸びが少ない。それから、ちょうど高度成長時代でありましたために、新規学卒者が訓練校で技能を身につけるという過程を経ないで直接、企業に就職する道がたくさんあったというようなことから、養成訓練の目標数が伸びなかったということなわけでございます。ただ、そのこともありまして、逐年その可能性というものをつぶさに調べまして、養成訓練の定員を漸次減少させるということを一方でやっておりますので、入校する実数はだんだんに減ってきているのですが、入校率そのものは横ばいであるという状況にあるわけでございます。
  212. 草川昭三

    ○草川委員 いま、この養成訓練の計画から下回ったというのは、確かに進学率との関係は当然あると思うのです。それと同時に、そうは言いますけれども、実際進学できない方もお見えになるわけでございますから、それだけに私は訓練の必要性というものは大切にしていかなければいかぬと思うのです。そういう意味では、さらに今回の改正の中で、いろいろとそれがまた別な意味で質的に強化をされるという面があるので、これはぜひ育てていただきたいというような気がしますし、ただし、その場合でも、場所だとか、あるいは選択科目が時宜に応ずるものであるべきだろうと思いますし、そのような点なんかは特に強化の方向をお願い申し上げたいと思います。  そこで今度は、高校入学、高校卒業者がふえてくるわけでございますが、また別な形で事業主が行う職業訓練というものがあるわけでございますが、これが今後伸びると思われるのかどうか。あるいは、これから円高不況等で企業サイドの中でも新規採用が非常に減少しておりますし、あるいは、ときには不定期採用のみという場合もありますし、この企業内訓練の経費を削減するという例はずいぶん出ておるわけでございますが、一体、この事業主等の行う職業訓練について、今回の改正案の中にもいろいろな援助等の方法がございますが、この円高不況なり減量経営に対応する職業訓練の見通しについてお伺いをしたいと思います。
  213. 岩崎隆造

    ○岩崎政府委員 事業内訓練につきましては、昭和四十年代、高度成長時期におきましては相当伸びを示したわけでございまして、現在私どもが把握しておりますところでは、法律に定めます職業訓練の基準に基づく訓練をやっております訓練校が千十校で、約八万人が養成訓練の対象になっております。最近三、四年、確かに、いまの御指摘のような点がありまして、養成訓練の数が横ばい、ないし、むしろちょっと減少傾向にございますけれども、今後の方向といたしまして私どもは各種の助成、援護措置等も強化をしてまいりたいと考えておりますし、事業主そのものが自主的な形で、しっかりした技能者を養成することが結局企業の安定的な基盤を醸成するんだということで、必ず、この見直しというものがあり得るだろうと思っております。  ただ、それほど激増するとかというようなことは考えられませんが、同時に、養成訓練というよりも、むしろ在職労働者がさらに技能の向上を求める、あるいは能力の再開発を求めるというような労働者の需要というものが非常に多くなってまいりまして、その面での成人訓練、在職者訓練という形で事業内の訓練が非常に伸びてきております。これは将来といえども非常に大きな伸び率でまいるのではなかろうか。これに対しても私ども助成措置を講じてまいりたい、このように考えております。
  214. 草川昭三

    ○草川委員 企業の中での訓練について、実は企業といいましても、大企業もあれば中企業もあれば小企業もあるわけでございます。  ここで少し小企業の方に話を移していくわけでございますが、この前も私、この社会労働委員会で電気工事士の訓練の問題を取り上げさせていただいたわけでございますが、ただいまのところ労働省関係のいろいろな資格取得のために職業訓練等がやられておるわけでございますが、他の法令に基づく資格取得、この電気工事士を初め、いろいろな業界があると思うのでございますが、どういうようなものを現実に職業訓練の対象にしてみえるのか。そこから少し内容に入っていきたいと思いますから、他法令に基づく資格取得の現状についてお伺いしたいと思います。
  215. 岩崎隆造

    ○岩崎政府委員 職業訓練を現在やっております職種について、各省庁関係あるいは労働省の内部の関係も含めまして、それが一つの資格に結びついている職種というのは、ちょっと数字はわかりませんのですが相当ございます。その中で、従来すでに各省庁とも連係を保ち、あるいは労働省内でも話がつきまして、訓練修了生がそういった各省庁所管の資格に結びついたことになっておりますものとしては、たとえば労働省所管の関係では労働安全衛生法の作業主任者その他につきましての資格との連係ができておりますし、あるいは建設省関係での建設業法に基づく職種につきましての各種の資格というものが連係ができております。  ただ、職業訓練校でやっております訓練、たとえば測量士とか、いまお話しの電気工事士というようなもので各省庁に既存の資格があるのに対しまして、職業訓練校でのカリキュラムの問題あるいは講師の問題等、いろいろそれぞれの職種について問題点があるわけでございますが、引き続き従来から各省庁にそれぞれ折衝はしており、かつ近い将来に見込みがあろうかなというようなものもないわけではございませんが、そういう現状でございますので、職業訓練を受けることによって各種の資格に結びつくというメリットを得るように、各省庁との折衝を今後、精力的に進めてまいりたいと存じます。
  216. 草川昭三

    ○草川委員 ちょっと私の質問が悪かったと思うのですけれども職業訓練に並行して当然、技能検定という問題が出てくるわけでございまして、その技能検定のあり方が、いま局長が御答弁なさったことと関連をしてくるわけでございますが、たまたま電気工事士の例を取り上げましたけれども、電気工事士の職業訓練は、いま労働省の方でもいろいろとやっていただいておるわけです。たまたま技能検定ということになりますと、電気工事士の方は技能検定がないわけです。一級、二級という検定がないわけです。これは業界の方々は、自分のところの店員と言うと言葉が悪いのですが、従業員の方々に、たとえば大工さん、左官屋さんと同じように、一級だとか二級だとかというような技能検定を労働省がやっておるわけだから、電気工事士の場合でも、あってもいいのではないだろうかという陳情が、実は通産省の方にはなされておるわけです。通産省の方は、電気工事士という、それだけでいいじゃないか、何もわざわざ一級、二級とする必要はないのだよということで終わっておるのです。私は労働省職業訓練という立場から言うならば、あってもいいのじゃないだろうか、こう思うのです。他省にまたがると、なかなか労働省の方も言いづらいというのが現状だと思うのですが、それではいけないのであって、それを乗り越えてもらわなければいかぬわけですが、その技能検定で他の省庁にまたがるものは、まだほかにもたくさんあると思うのです。そこをひとつ私は言いたかったわけでありますので、その点についての局長の答弁を願いたいと思います。
  217. 岩崎隆造

    ○岩崎政府委員 わかりました。いま御指摘の電気工事士については、この前の機会にも先生から御指摘があったと思います。そのときに通産省の担当官もお話があったと思いますが、技能検定制度昭和三十三年の法律でできまして、これはいわば技能の熟練度を公証して一般には一級と二級に分けておりますので、一定の技能習熟度に達した者が二級、さらに、その高度の技能習熟度を持った者が一級ということで従来やってきております。各種の資格は、たとえばいまの電気工事士あるいは測量士——測量士は適当でないかもしれませんが、たとえば自動車整備士とか溶接工とかいうようなものは昭和三十三年、実は電気工事士は後なんですが、一つの従業資格としての資格として設けられております。従業資格というものは最小限いわばその工事について間違いない、あるいは安全性が間違いないというようなことで認められるべき性質のものだと思うのですが、技能検定というのは、いわばその上に立って技能がさらに熟練している、さらに高度の熟練者であるということの検証をするわけでありますから、実は矛盾はしないはずなのでありますけれども、そういう観点から私どもも、両立が可能なのであって、片方があれば必ずしも片方がなくていいというものではないし、技能検定をやることによって、片方の資格を滅失してしまうものではないという観点から、各省とそれぞれの資格についていろいろと折衝をしております。  この前、電気工事士につきまして通産省の担当官からも前向きのお話があったと思います。私どもも引き続きそういうことで事務レベルでは折衝をいたしておりまして、技能の種類がいろいろございますけれども、その中で、ある職種は検定がない。それからある職種についてのみ検定制度があるということでは、やはり技能者全体の技能水準の向上ということについては十分でございませんので、今後なお一層努力をしてまいりたいと思っております。
  218. 草川昭三

    ○草川委員 そこで、実はこの技能検定資格を取ったそれぞれの労働者の方々が、どういうメリットがあるかという点が問題になってくるわけです。私は先週この社労委員会で大分県の方も現地調査をさせていただいたわけでありますが、そこの安定所の方々のお話を聞きますと、たとえば大工さん、左官屋さんというのは、技能検定を取りますと賃金にある程度の、大体、日給で千円とか二千円とか三千円とかという差がつくから、技能検定というものは、どちらかと言えば大工さん、左官屋さんの建設関係には非常に評判がいいというわけですよ。ところが一面、今度は大都会のようなところになってまいりますと、いまおっしゃられたように、たとえば電気溶接工なんというものは、わりと職業訓練校の中でも職業訓練では人気のいいところなんですね。ところが、ここを出ましても、今度は一級溶接士、二級溶接士という認定だけでは賃金に差がつかないのですよね。たとえば国鉄関係の橋梁工事になりますと、国鉄の溶接の資格を取らなければいかぬ。あるいはボイラーなら日本何とか協会のボイラーの一級、二級、三級、これまた別の資格を取らなければいかぬ。あるいは造船所へ行けば、日本海事協会の一級、二級、三級の資格を取らないとライセンスがもらえない。こういうように、これも他省庁にまたがるわけですけれども、電気溶接工と一口に言いましてもいろいろなグレードが違うわけですよ。ですから、せっかく職業訓練校で技能検定をするならば、この学校は電気溶接でも本当にボイラーをやりますよ、しかも原子力ボイラーのような特殊の超一級だとか、あるいは、こちらへいけば造船関係で、いま造船、不況でございますけれども日本海事協会の一級のライセンスを取りましたよと言えば、わかりました、単価も一日一万幾らをつけましょうと自動的に相場が決まるわけですね。これがいま労働省職業訓練校にはないものですから、また、正直なことを申し上げまして、それを受け入れる非常にたくさんの材料代が要るわけでございますし、それだけのペイをする予算もないというようなことになって、結局、中途半端な形の技能士というのですか、訓練しかできないのではないだろうか。ここを突破をしていきませんと、たまたま、いま建設関係にはいいんだけれども、その他の産業に応用の度合いが少ないので問題があると思うのですが、私がいま申し上げたようなことについて、将来どういうようにやられていくのか、お考えを聞かせていただきたいと思います。
  219. 岩崎隆造

    ○岩崎政府委員 確かに先生御指摘のようなことで、建設関係の職種あるいは自家営業をしているような職種と申しますか、時計の修理とか、あるいは家具の製造というような、いわば中小企業性といいますか生活関連職種、そんなようなものについては、賃金体系においても相当、技能度というものが反映しているように思います。それから私どもも、都道府県で特に公共事業の発注などにつきましては、請負業者が一定の技能士を擁していることを発注条件にしたり、あるいは、そういった時計修理とか、あるいは家具製造とかというような技能職種の店につきまして、これは一級検定を取っている優秀な技能の店であるというような表示をしてもらうというような形で、相当広い範囲での都道府県が、そういう形でのメリットを次第に社会的な雰囲気づくりとあわせましてやってきておると思うのですが、問題は、先生も御指摘の、生産工程の中における技能職種、大企業の中での技能職種ということになると思います。  これは、わが国の賃金慣行にも実は問題があろうかと思いますが、大きな企業で、特に技能者が非常に重用されているようなところでも、技能検定があります職種が現時点で九十職種でございますけれども、技能者全体に占める九十職種の技能者の割合というのは、実は二割とか三割とかというような数字にしかなりません。そうすると、その余の技能職種の方々は技能検定を受けようとしても受けることができない。あるものについては技能検定を受けた人たちだけ賃金面で優遇をしようとすると、そのほかの技能を持っている人たちは、国家検定がないために処遇のしようがないということから、会社によりましては、会社で社内検定というものを、およその技能職種すべてについて自己開発をいたしまして、その中で国家検定がある職種につきましては、国家検定を合格した者を相当優遇的なグレードに位置づけて賃金の処遇をしていくというようなやり方をしているところもあるわけでございます。  私どもは、そういうことを踏まえますと、やはり技能検定の職種をできるだけ全職種に広げるという方向で今後考えていかなければならない。その場合、しかし、いろいろな職種がございまして、検定技法等について相当工夫をしなければならないものがあります。今回、法律改正でお願いしておりますのは、従来技能検定は一級と二級に分けてやるということにいたしておりました。ところが、技能の種類によりましては、一級、二級に分けることが適当でないと申しますか、それほどでない。しかし、ある程度の習熟度は検証する必要があるというようなものもございますので、単一等級の検定というものをやれるように今度法律改正でお願いをしてございます。  それからさらに、このように生産のやり方が変わってまいりますと、装置産業とか、あるいは組作業とかというようなことに従事する労働者がふえてまいっておりまして、そういうものについての技能検定ができないだろうかということで、これは専門家の先生方にお願いをして、いま検討しておりまして、こういうものを開発することによって、検定を受ける人たちのすそ野を広げて、そしてそれが客観的に、検定を受けたくても受けられないために云々というような不公平がない状況の中において、検定に合格した者を賃金面でも優遇していくというような措置が積極的にできていくのではあるまいか、このように考えておるわけであります。
  220. 草川昭三

    ○草川委員 そういう意味で今度の法律では、今後、検定協会が能開協というのですか、新しいのに統一をする。従来の経営者の方々なんかの、あるいは職業別組合なんかの独自の連合会というのですか共同連合会のようなものと、従来の協会とが統一をするという、そこらあたりで細かい話が出ていくと思うのですが、よく聞いてみますと、検定協会の方が従来はしっかりしておったので、まあ事業者団体の方が弱くて、統一をすると全部そっちの方に吸い取られてしまうのではないだろうか。だから、逆に経営者団体の方は産業訓練何とか協会の方が、かえって従来のつき合いからいっても伸び伸びとしてやれるのじゃないだろうか。そんな心配も一部の業界の方々にはあるようであります。しかし、どっちにしましても、この職業検定、技能検定というのは非常に重大な役割りになってくるので、ひとつぜひとも新しいニーズに応ずるということも必要でございますし、それが賃金に反映をするような形で位置づけができるように運営をしていただきたいと思うわけであります。  それから、時間がなくなってしまいましたので申しわけございませんけれども、実は製造業を中心とするというのが、どうしても、いままで職業訓練の前提にあったと思うのです。ところが、いまや、まさしくもう製造業雇用が減になってきまして、第三次産業の方にふえてくるわけですから、いま一番盛んなのは外食産業というのがあるわけですね。あるいは郊外レストランというようなものがある。料理人、コックというようなものが非常に不足をしておる。だから第三次産業に応ずるような職業訓練というのは実はほとんどないわけですよ。これこそが、さしあたり必要な受けざらの職業訓練ではないだろうか、こう思うのですが、そこの点についての考え方を最後に聞かしていただいて、私の質問を終わりたい、このように思います。
  221. 藤井勝志

    藤井国務大臣 技術検定の試験制度というのは、私は、御指摘のごとく職業訓練制度の画竜点睛といいましょうか、大切な決め手だと思います。     〔羽生田委員長代理退席、委員長着席〕 したがって、せっかく職業訓練を経た人が公の評価をされて、その能力を検定されたことが、やはり将来の職種の選定はもちろんですが、具体的に言いますと、職場における格づけに反映されるように、また他の省庁の資格試験などがある場合には、それがやはり有効に役立って、場合によっては試験の免除というような、こういうところまで結びつけていかれれば非常に職業訓練が生きてくる、私はこのように思いますから、今後もひとつ十二分に意を体して検討させていただきたい、このように思います。
  222. 草川昭三

    ○草川委員 どうも本当にありがとうございました。特にいま大臣が最後におっしゃられた、他省庁の非常に有効な有力な資格が、免除等ができるように、一日も早く、そういうことができるようなことをお願いして、私の質問を終わりたいと思います。
  223. 木野晴夫

    木野委員長 次に、古寺宏君。
  224. 古寺宏

    ○古寺委員 職業訓練法の一部を改正する法律案についてお尋ねをするわけでございますが、私この改正に当たりまして、一応近いところの各訓練所を見て回ったわけでございますが、そこで感じましたことを中心にいたしましてお尋ねをしてまいりたいと思います。  まず最初に、認定訓練の実施状況でございますが、先日、労働省の方からいただきました資料を拝見いたしましても、昭和四十五年には養成訓練は十万二千四百五十一人、それが昭和五十二年には八万人に減っております。こういうふうに非常に訓練生が減っているというようなのが実情でございます。私もずっと回ったのでございますが、かつては昭和四十八年には八百人前後おった学校でもって現在百四、五十人、あるいは九百人ぐらいおった学校で二百人前後、また中には二、三十人から十人ぎりぎりというような学校もございまして、経営上非常にいろいろな問題が起きているわけでございますが、今後この法律改正によって、これら瀕死の状況にある、いわゆる認定職業訓練校に対しては、どういうような政策によって、これを蘇生させ、そしてまた振興を図っていくおつもりなのか、承りたいと思います。
  225. 岩崎隆造

    ○岩崎政府委員 今回の職業訓練法改正一つの大きな柱として、事業主が自主的に単独で、あるいは共同で行います訓練の飛躍的な振興、そのための思い切った助成、援助ということを一つ施策の方針としておるところでございます。  それで、たとえば施設、設備の問題あるいは運営費の問題等につきましては予算措置で、すでに昨年度あるいは本年度、大幅な増額をしておるところでございますけれども、同時に中小企業を中心の共同職業訓練校では、一週間に一遍にせよ賃金を払いながら職業訓練のために仕事を休ませるということ自体が、なかなか大変であるというようなことがありまして、それを助成するために私ども、共同訓練校に昼間集合訓練に派遣をいたします場合の賃金支払いの分につきまして助成をするという形で、これを訓練派遣奨励給付金の一つとして法律で裏づけ、かつ今年度の予算でお願いをしておって、これは成立させていただいたわけでございます。  と同時に、職業訓練を共同でやります場合に、一週間に一遍の職業訓練あるいは二遍の職業訓練をやるわけでございますから、一つの施設を持って一週間に一遍だけ使って、あとは空っぽというようなことでは、なかなかそれだけの施設を持とうといたしません。それで、私ども実は、できれば幾つかの事業主の団体が一つの建物、施設をつくりまして、それを一週間に一日ずつの交代で訓練をすれば、五業種ないし六業種の訓練が一つの施設で行い得るというようなことも考えます。そうすると施設、設備の補助もありますし、それぞれの業界の持つ負担というものも少なくなるわけでございまして、そういった指導面での施策もやってまいりたい。それから、何と申しましても、公共職業訓練施設自体も、事業内の訓練に対して、たとえば指導員の派遣とか、あるいは施設そのものを貸与するというような形での協力を強めていくように努めてまいりたい。  そして先ほどからも、たびたびお話が出ておりますが、従来の技能検定協会と、それから職業訓練法人団体を、生涯訓練、生涯技能評価を本当に民間の力を結集してできるような団体に糾合いたしまして、これに対する助成、そしてそれを通じて、また、それぞれの事業内訓練に対する指導、援助、助成というような施策も相まちまして事業内訓練の振興に寄与してまいりたい、このように考えております。
  226. 古寺宏

    ○古寺委員 この事業内の認定訓練の場合の補助金でございますが、これは国が三分の一、県、地方自治体が三分の一、それから事業主が三分の一ですね。現在二万一千五百円ですか。幾らですか、金額は。
  227. 岩崎隆造

    ○岩崎政府委員 いま先生御指摘の三分の一、三分の一を国、都道府県が持って三分の二を補助し、事業主が三分の一を持つという点はそのとおりでございますが、金額的には、いま先生御指摘の点は多分年間運営費の問題だと思います。これは訓練生一人につきまして国と県が補助します合計が四万六千円でございます。二万一千五百円というのは、五十二年度は国が二万一千五百円、県が二万一千五百円、合計四万三千円を補助するという形で、それは前年度と比べますと八割ぐらいの増を去年やることができたわけでございます。今年度はそれを四万六千円にいたしましたから、先生おっしゃる計算ですと、国が二万三千円、県が二万三千円ということでございます。
  228. 古寺宏

    ○古寺委員 今度、改定になるわけですが、講師の謝金を払うとか、あるいは材料費とか教材費とか、いろいろかかりますね。生徒数の多いところは、まだいいんですが、だんだん訓練生が減っているところはもう大変な状況なんですよ。ですから、国が三分の一、地方自治体が三分の一ですね、四万六千円。残りの二万三千円についても全額あるいは、その半分ぐらいでも補助してもらわぬと、この起死回生はできないわけですよ。  東京の場合を見てまいりますと、東京で校舎を持って、やるなんということはほとんど不可能に近いんですね。もうほとんどが借り上げです。講師の先生方も謝金なんか払えないところがいっぱいあるんですね、洋裁学校なんかでも。全部、謝金は社会奉仕みたいに無料で、足代だけ支払って運営しているという状態なんです。こういうような、いわゆる認定訓練校の問題を解決するためには、何としても援助、助成ということが必要になるのですが、その中で特に、この補助金に対する補助率の引き上げというものが今後一番大きな問題じゃないか、こう思うわけなんですが、この点について、これからどういうふうに改善するおつもりですか。
  229. 岩崎隆造

    ○岩崎政府委員 いま申し上げました共同職業訓練校は、実際のやり方は、たとえば高等課程ですと三年をとりまして、それには基礎学科と基礎実技と応用実技がございます。基礎学科と基礎実技を集合で大体一週間に一日、仕事を休んで訓練を受ける。そして、あとの五日間は、それぞれの職場でオン・ザ・ジョブの応用実技訓練をしている。その応用実技訓練は、それぞれの職場で多分、指導員資格を持った先輩の人がおられて、その人に手とり足とり教えてもらっているということで、実際に講師でお願いするというのは結局、共同で集合訓練をする一日についてでございまして、言ってみれば、この講師の日当のような形での謝礼金ということになるわけなんだろうと思います。  私どもも、確かに訓練生一人当たり運営費補助幾ら、こういう言ってみれば、つかみの金になっておりますので、訓練生が減れば、それ掛ける、それだけの分しかありませんので少額になってしまうという問題点はよくわかります。ただ、三分の二の助成を、あとの三分の一を全部持ってしまえばいいということになりますのですが、それだと、ちょうど自主訓練といいますか、事業主自身が自主的におやりになるということと、どういう関係になりますかということも考えられますが、ただ、つかみでやっております。いまのような補助の仕方を、もう少し算定基礎をきちっとしてやるというようなことで事実上、補助を高めていくというようなやり方はあろうかと思います。私ども、その面では十分に今後、検討はしてまいりたいと思っております。
  230. 古寺宏

    ○古寺委員 今後は養成訓練については事業主のいわゆる認定訓練の方に、できるだけお願いをして、しかも、いままでの夜間行っている訓練をだんだん昼間に持っていく。そのためにこそ、この有給教育訓練休暇奨励給付金制度という、一日千三百四十円ですか千五百円ですか、そういう制度をつくって、だんだんに昼に移行していく。ところが現実の問題として、事業主の大部分が中小企業の場合に、昼、訓練していただいて仕事を休むということは容易じゃないんですね。それから、この給付金制度も、一年生のうちは、まあこのくらいの金額でもやむを得ぬけれども、二年生、三年生になりますと、もう四千円、五千円の収入のある生徒なんですね。そういう人を休ませて訓練校にやるということは事業主にとっては大変な負担になるわけです。  そういう問題を今後考えますと、何か労働省の考え方は、養成訓練は全部民間の事業主の方に押しつけちゃって、そして短大ですとか技能開発センターですとか技術専門学校、そういう方面だけに今後、力を入れていくというような感じがするのです。いままでの養成訓練にしましても中卒が対象であったわけですが、今後は高卒もどんどん入ってくると思うのです。そういう面から考えますと、いままでのような大変な状態になっている認定訓練の内容を充実していくためには、もっと思い切った施策を行いませんと、ますます大変な状況になると私は思うのです。そういう面で助成の問題にしましても、あるいは給付金の問題にしましても、もっと実態に合った、実際の現場に合った方向で検討しなければならない問題じゃないか、こう思うのですが、いかがですか。
  231. 岩崎隆造

    ○岩崎政府委員 いま先生御指摘の、実は一日千三百四十円とおっしゃいましたが、これは本年度千四百八十円にしたのでございます。これは共同職業訓練に対する派遣奨励給付金という制度で、今度法律の裏づけをいただきまして、今年度初めて予算執行をすることができたわけでございます。これは従来なかったわけでございますから、私どもとしては新しい一つの助成措置ができたというように考えておりますのですが、いま先生がおっしゃるとおり中小企業が主体でございますので、これに対する助成を来年度以降さらに拡大していかなければならないという点については私どもも全く同感でございまして、今回の法律一つのねらいでもございますのですから、大いに努力をしてまいりたいと思っております。
  232. 古寺宏

    ○古寺委員 次に技術専門学校です。写真をごらんになってください。それは三沢の技術専門学校なんです。そこの溶接の実習棟というのは米軍から払い下げたバラックなんです。寄宿舎も同じような状態です。いま持ってきたと思ったら入ってないので、お見せできないのですが、八戸市というところの技術専門学校へ参りますと、もっとひどいのです。校舎がみんなプレハブなんです。それで青森県の技術専門学校には体育館というのが全然ないんですね。八戸の技術専門学校の寄宿舎は、ちょうど鶏小屋のような状態でございます。全く人間が住めるような状態ではございません。こういうような悪い環境の中で、りっぱな技能士の養成ができるというふうに労働省は今日までお考えになっているのかどうか。まず、その点から承りたいと思います。
  233. 岩崎隆造

    ○岩崎政府委員 私ども全国に雇用促進事業団と都道府県立と合わせまして四百ほどの訓練校がございまして、雇用促進事業団立は全額、雇用勘定からの能力開発事業ということでやっておるのですが、県の場合には国が施設設備につきましては半額補助というやり万をしております。  そこで私どもも毎年、必ず予算の編成前に、各県でそういった増改築あるいは設備の新設あるいは、かえることにつきましての方針につきましてヒヤリングをいたしまして、そして実際に予算折衝をした結果につきまして具体的な実施計画を、また新年度早々に、それぞれの県と折衝いたしまして、逐次その新増設をしていくということでございます。  先生御指摘の老朽施設設備で、ちゃんとした訓練ができるかとおっしゃられると、抽象的には、それでは十分なものはできないとお答えするより仕方がないのでございまして、できるだけ今後そういった新増設を、まあ大体戦後の建物ですと寿命も来ておるというようなところが多うございますから、県と十分に実情の把握をいたしまして予算折衝をし、できるだけ大幅にやるように努めてまいりたいと存じます。
  234. 古寺宏

    ○古寺委員 そこで労働大臣にお尋ねしたいのですが、大臣は、こういうような実際の職業訓練校、いわゆる技術専門学校ですとか、あるいは事業団の総合職業訓練校とか、また事業主が行っている認定職業訓練校、共同訓練校、こういうようなところを、どのくらい、ごらんになったのでございましょうか。
  235. 藤井勝志

    藤井国務大臣 実は着任いたしまして、すぐ補正予算あるいは予算審議、そういうようなことで、合間を見まして東京都心を中心に、職業訓練大学校をまず頂点にして一、二カ所見ました。また、たまたま私は正月、国元に帰りまして、国元の県立の職業訓練校と雇用促進事業団立の訓練校、この現場を見たわけでございまして、いろいろ御指摘の非常に老朽な施設あるいは中の機械設備、こういったものについては、やはり相当改善をしなければならない点が多々ある、このように認識をいたしております。
  236. 古寺宏

    ○古寺委員 これは八戸の場合でございまして一つの例なんですが、現在八戸市は、いわゆる構造不況業種の倒産している東北砂鉄ですとか、いろいろございますね。それから二百海里の問題がございます。そういうことで離転職の職業訓練も行っているんです。ところが学校がそういうような実情でございますために、たとえば機械科は新産都市会館というところに分校をつくる。それから建築科やブロック建築科は中居林分校と称して共同高等職業訓練校の方につくる。それから根城分校というのは、これは八戸市の水道部の水道工場、そこに分校をつくる。それから八戸市の農業センター、ここに造園科をつくるというふうに細切れの学校なんです。しかも、講師を派遣していく場合に、講師に対する月の報酬は幾らでございますか。
  237. 岩崎隆造

    ○岩崎政府委員 私ども国といたしまして幾らという基準を持っておりませんので、それぞれ県の条例だと思いますが、それで決めた金額で払っておられると思います。ちょっと具体的に青森が幾らかということは存じませんのでございますが。
  238. 古寺宏

    ○古寺委員 講師をお願いして払うのに十五万円なんですよ。ですから、なり手がないんですね、新規にお願いするのに十五万円ですから。そういうふうに本校ががたがたの状態でしょう。そして、こういうような離転職の方々がどんどんふえてこられて、そして、いろいろなところに分校をばらばらにつくって、やらなければいけない。こういうような受け入れ体制しかないという状態でもって、果たして今度の改正の目的その他にも盛られているような、りっぱな職業訓練ができるかどうかということは、私は非常に疑問であると思うのです。長い間の積もり積もった日本職業訓練の弊害というものが、いま一挙に噴き出しているような感じが私はするわけなんです。  日本産業構造の転換と同じように、今後この職業訓練を大きく転換していくためには、ここで思い切った政策をとらなければ同じような失敗を繰り返すのではないか、こういうふうに私は思うのですが、今後のいわゆる養成訓練じゃなくて離転職者に対する職業訓練に対して、単位制度その他いろんなことを考えていらっしゃるようでございますが、これからの一番大事なポイントと申しますか、どこに重点を置いて今後、職業訓練を進めて、この問題を解決なさるおつもりか、承りたいと思います。
  239. 藤井勝志

    藤井国務大臣 居は気を移すと言いますか、やはり施設あるいは機械設備といったもの並びに、その施設の中で職業訓練実施される指導員、こういった陣容と、それから設備関係を御指摘のごとく、この際できるだけ改革をしていく。これは先立つものは財政ということもありますけれども、ひとつ思い切って思いを新たにして、まさに職業訓練の原点に返り、現在の時代の要請にこたえ得るような方向に改善をする。職業訓練のための訓練ではないのでありまして、本当に現在の日本社会が求め、御指摘のように構造不況業種あるいは二百海里問題で離職しておられる方々の再就職に、その職業訓練が生きて役立つような内容になるよう、この訓練法改正を契機に全力を尽くしていきたい、このように考えるわけでございます。
  240. 古寺宏

    ○古寺委員 一つの例でございますが、自動車の整備科というのがございます。これは青森の事業団の総合職業訓練校に参りますと、実習場が狭くて思うように実習ができない。それから教材の自動車が、予算がないために非常に古い型式の自動車で実習をしているのです。そうしますと、いまもうすでに排ガス規制の時代に古い年式の自動車で一生懸命勉強しても、実際に今度、整備工場に行ったときに、いろいろ思うように整備ができないというような問題も起きているそうでございます。そういう面からいきまして、やはり新しい時代に対応した機械器具なり教材というものが必要になるわけでございまして、この共同訓練校等におきましても、やはり八ミリの映写機ですとか、スライドですとか、いろんなものが欲しい。そういうものがあれば講師の方も手数が省けるし非常に訓練がしやすいというような強い要望もあるわけです。そういうような非常に大事な、どうしてもこれから手を入れて改善をしなければならないような問題が、今回のこの改正には、はっきりと盛り込まれていない。漠然とした助成をふやすとか、詰めるようにするとか、そういうありきたりの言葉で何か濁しているような感じがするわけですが、そういう面を今後思い切って力を入れてもらいませんと、今度の改正の目的は達成できないのではないかと思うわけです。最後に、そういうことを申し上げたのですが、今後その教材費その他についてどういうようなお考えを持っているか、お伺いしたいと思うのです。
  241. 藤井勝志

    藤井国務大臣 御指摘のことは私も全く同感でございまして、せっかく十年ぶりに職業訓練法改正をするわけでございますし、しかも十年間に大変世の中が移り変わり、現在厳しい経済情勢のもとで雇用安定の一環として職業訓練をやるわけですから、いま、いろいろ具体的に御指摘になった問題も、やはり言葉だけで終わらないで、ひとつ、これが実行できるような裏づけを、ぜひ今後進めてまいりたい。特に、これから肉づけをして、いろいろやるのは、五十四年度の予算措置が目張りされれば、ある程度、御期待にこたえられるような方向へ相当いったなという実感が出てくるに違いないので、実感を持っていただけるように今後、努力したい、このように思います。
  242. 古寺宏

    ○古寺委員 次に、建築とか左官とか、いろいろな科目によって単位時間というか基準時間が違いますね。これの見直しについては、お考えですか。
  243. 岩崎隆造

    ○岩崎政府委員 先生仰せの点は、訓練基準におけるそれぞれの訓練職種に対するカリキュラムの時間構成の問題だと思いますが、訓練基準につきましても、従来ともにある程度の弾力性を持って運営できるようなことで基準を設けておりますが、この際を契機といたしまして、もう一度、検討をしてみたいと思っているわけでございます。そして特に今年度から職業訓練研究センターを設置させていただきましたので、ここで訓練技法の問題あるいは訓練課程の問題その他につきまして、学問的な研究の裏づけも持って研究をしてまいりたいと思っておりますので、その成果を待って、できるだけ早い機会に矛盾のある点は是正をしてまいるようにいたしたいと思っております。
  244. 古寺宏

    ○古寺委員 それから、せっかく訓練を受けた方々が、社会的にそれなりに認められ、処遇され、希望を持って訓練を受けられるような体制をつくらぬといかぬと思うのです。現在、いろいろお聞きしてみますと、せっかく訓練を受けても検定試験に合格できなかったり、あるいは、いろいろな資格を得られないというような方々がたくさんいるようなお話を承っているわけでございますが、全国的に見て、卒業生はどういう状況でございますか。
  245. 岩崎隆造

    ○岩崎政府委員 恐縮ですが、先生お尋ねの件は、訓練校を修了した者の検定との関係でございましょうか、資格との関係でございますか。
  246. 古寺宏

    ○古寺委員 たとえば溶接技術であれば、これは労働基準監督署でやっていますね。ガス溶接は労働省でやっている。それから電気工事科というのは通産省でございますか、それから自動車整備科であれば運輸省とか、それぞれにいろいろな資格があるようでございます。それと別個に、さらにまた検定試験があるでしょう。技能士とか技能士補とか、ありますね。そういうような訓練校を卒業した人たちが、どのくらいの率で、そういういろいろな資格を得ているか。また検定試験の方は全国的に見て、どれくらいの率で合格しているのか。それを承りたいのです。
  247. 守屋孝一

    ○守屋説明員 技能検定の実施状況につきましては、これは五十一年までの実績の数字で幾つかの例を挙げてみますと、たとえば板金等でございますと、技能検定を受けられた方のうち一級の合格率は約五五%、二級の合格率は約五〇%、この程度の合格率になっております。ほかに、たとえば木工等でございますと、木工の中でも作業が細かくございますが、平均しましてこれもやはり受検者の中で五〇%から六〇%という程度の合格率でございます。  この受検者の方といいますのは、これはだれでもというわけではございませんで、職業訓練修了後ある一定のOJTいわゆる実務経験をお持ちになりまして、その上で受検される。だから多くの方の場合は訓練とつながった中で検定をお受けになっているわけでございますが、大体いま申し上げたような数字でございます。全体の平均で申し上げましても、これは職種によって相当変動がございますが、全体の平均でいきますと二級の方の合格率が四割弱、一級の方が五割弱の合格率である、かような状況になっております。
  248. 古寺宏

    ○古寺委員 そうしますと、一級、二級合わせて全員が大体合格ということですか。
  249. 守屋孝一

    ○守屋説明員 いま申しましたのは、ちょっと私の言い方が順序逆に申し上げまして恐縮でございましたが、訓練校を卒業されまして、一定の実務経験を持たれて、まず二級を受ける資格がつくわけです。ここで、いま申し上げましたような平均で四割弱の方が合格される。それから次にまた一定の実務経験を持たれまして、あるいは工場訓練をお受けになりまして、その上で一級の技能検定を受ける資格をおつけになる、ここで合格されるのが五割弱ぐらいの方である、このように申し上げたわけでございます。だからだんだんヒエラルキーが狭まってきておるわけでございます。
  250. 古寺宏

    ○古寺委員 その検定試験の場合でございますが、検定試験の前に講習会を無料で開いて検定試験の準備をしてくださるところもあるし、全く講習会をやらずに検定試験を行うところもあるというので、合格率が地域によって非常にまちまちであるということを伺っているわけでございますが、これは公平に講習を受けるような機会を与えられないものでございますか。
  251. 守屋孝一

    ○守屋説明員 いま、おっしゃった講習というのは、どのような講習のことをお指しになったのか、あれでございますが、いずれにいたしましても、私どもの方で向上訓練の一つといたしまして、こういう技能検定を受ける前の訓練の制度があるわけでございます。向上訓練の一環として、やっておるわけでございます。今後は生涯訓練体系の確立という中では、当然養成訓練の後の向上訓練ということが非常に重要になってまいります。こういう意味合いから今後、技能開発センターを拡大する中で、こういうところでも大いにこういう向上訓練をやってまいりたいというように考えておりますので、ひとつ、よろしくお願いしたいと思います。
  252. 古寺宏

    ○古寺委員 法律と内容は一応ある程度変わるわけですけれども、建物も、それから指導員その他も、あるいは科目におきましても、いままでと余り変化はないと思うのです。事業団が持っております八十八の訓練校が短大と技能開発センターになる。そして養成訓練はできるだけ民間に移行していくというような方向に思われるわけですが、施設、設備あるいは指導員、そういう内容におきましては余りかわりばえがしないと思うのです。そういう体制でもって、果たして労働省がいま考えておられるような計画が実現できるかどうかということは、これは非常に心配なわけでございます。  特に先ほども申し上げましたように、寄宿舎は鶏小屋のようなところに住んでいなければならない。おふろも一週間に二回しか入れない。体育館は全然なくて体操もできない。養成訓練であれば、最近は高校がよくなりまして、どんどんみんな高校へ行くわけです。ところが、いろいろな家庭の事情その他で技術専門学校へ入った。名前は技術専門学校であるけれども、入ったところが、実習はプレハブの実習棟でしなければならない。寄宿舎は冬は暖房も何もなくて、ぶるぶるふるえているというようなところを、名前だけ変えても、それでは私は本当の訓練の実は上がらぬのじゃないか、こういうことを申し上げたいし、さらにまた民間に養成訓練をお任せしていくに当たっては、やはり共同訓練校その他については十分な助成をしてあげなければ、もうすでに閉鎖している学校がたくさんあるわけです。それをつぶれていくのを見ているような状態では、私は訓練の実は上がらぬ、こう思うわけです。そういう面について最後に大臣の強い御決意を承って、質問を終わりたいと思います。
  253. 藤井勝志

    藤井国務大臣 熱心なお気持ちで、いろいろ職業訓練の改革のために御提言がございました。御指摘のごとく、一朝一夕にそう胸のすくような改革というのがたちどころに実現することは、もちろん至難でございますけれども、やはり目標を立ててぜひ改革をしなければならぬということ。そして職業訓練のこの時代に与えられた使命、そういうようなものを考えますと、ひとつ何とかして、労働省としては全力を挙げて、御趣旨の線を踏まえて努力をいたしたい、このように考えております。
  254. 木野晴夫

    木野委員長 次に、西田八郎君。
  255. 西田八郎

    ○西田(八)委員 せんだっての予算委員会職業訓練に対して積極的に取り組んでほしいという要望を申し上げておいたわけでありますが、それが今回、職業訓練法改正という形で提案されてきたことには一応の敬意を表したいと思うのです。しかし、それにつけましても現在のきわめて流動する経済情勢、特に、わが国産業構造全体がいろいろな形で見直しを言われておるときに、これからの訓練行政というのは非常に国民の期待が大きいと同時に、また、それだけに、むずかしいものがたくさんあると思うのです。したがって、従来の観念にとらわれることなしに、思い切った施策というものを必要としてくるわけでありまして、そうした点について、まだ幾らか疑問の残る節もございますので、幾つかの項目に分けて質問をしたいと思います。  まず最初に、現在、構造不況業種離職者対策措置法が施行されまして、すでに構造不況業種と言われる各職場から多くの離職者が出ておられるわけでありますが、まだ失業給付があるからということで、ゆっくり構えておられる方もあるだろうし、こういう厳しい情勢の中だから一日も早く再就職をしたいということで努力をしておられる方もあろうと思うのです。  そこで現在の、いわゆる雇用情勢ですね、求人倍率〇・五と言われておるわけですが、これはあくまでも平均であって、一体どのような業種に対しての求人が多いのか。また今後の新しい求職先として一体どのような業種があるのか。よく言われる新規雇用創出ということでありますが、そういう面について、安定所の窓口等では、いろいろな現実に即した要望等が出ておると思うのです。したがって、それらの状況について安定局長から、ひとつお答えをいただきたいと思います。
  256. 細野正

    細野政府委員 先生御指摘のように、いま大変、雇用関係は厳しい情勢下にあるわけでございますが、こういう不況のもとにおきましても、職種別に見ますと、求人倍率が高くて、しかも求人数が多いという職種が、技能的なものを中心に、あるわけでございます。たとえば安定所の窓口におきまする求人倍率で見ますと、男子につきましては、旋盤とか金属プレスとか電気溶接とか自動車修理、電気工等につきまして求人倍率がかなり高い。女子につきましても、同じく旋盤工とか切削木工とか現金出納事務とか水産物加工とか、そういう関係におきまして求人倍率が高いというふうな状況にあるわけであります。それからまた同時に、訓練局で行われました調査によりましても、たとえば不足の非常に多い職種として、自動車運転手とか機械工、配管工・鉛工等、相当数あるわけでございます。  これは現にある求人求職状況ということになりますが、一方、中長期的に見てどうなのかという問題が、もう一つあるわけでございまして、その辺につきましても、製造業の中でも比較的付加価値の高い関係のもの、たとえば機械産業、それも内訳を見ますと、精密機械関係とか電機関係とか、あるいは電子計算機、事務機械、そういうふうないろいろな関係の職種がございまして、そういう部門については今後ともある程度、期待できるのではなかろうか。それから、特に第三次産業におきましては、生活関係福祉関係、医療、保健関係、教育、情報、こういうふうな多様な部門におきまして、これは現に過去においても伸びてきておりますし、今後においても伸びるのじゃなかろうかというふうな部門があるわけでございまして、こういう部門を中心に雇用吸収を考えていきたいというふうに考えているわけでございます。
  257. 西田八郎

    ○西田(八)委員 窓口で見られると、そういうふうで、聞いておりますと倍率〇・五というのは、いかにも解せないわけでありますが、せんだって私は宮崎へ行って、ある中小企業の団体の方と話をしてきたわけです。そのときに、たまたま求人の話が出まして、求人倍率〇・〇一というのがあるというのですね。百人に一人なら、全く就職先はないと断定していい、それぐらい低いところもあるということです。したがって、いま言われるように当面、不況業種と指定された中にも特殊なことをやっておられるところでは忙しいところがあって、そういうところからは、こういう労働者をあっせんしてほしいという求人があるかもわかりません。しかし全体的にながめた場合には、私はやはり安定局長の言われるほど楽観したものではないのではないか、むしろ非常に厳しいのではないかと思います。  そういう意味で、ことしの大学卒が何らかの形で大体当てはまったとはいうものの、正規に雇用されたとみなされるのが約六割ぐらいではないだろうかというふうに言われておりまして、四〇%近い人が完全には就職していない。家業を手伝っておるというように、いろいろな形で落ちついてはいるけれども、実際は潜在的失業者の形になってきておる。そういうような状況のときに、特に中高年齢、その中でも高齢者については非常に厳しいのではないかと私は思うのです。  また、この人たちが生活を支える上においては全く家庭のかなめと言われるくらいなんですね。私たちと同年配もしくは十歳ばかり下の人がそうではないかと思うのです。私の十年前というのを考えてみますと、まだ子供たちはそれぞれ学校に就学中であります。まさしく自分の力で、すべてを支えていかなければならぬというような時期に、不況業種でなくても、いつ倒産するかもわからぬというような不安にさらされているわけですね。  そういう中高齢者、特に高齢者に対する適当な職種というものが本当に見つかるのかどうか。これはいろいろとビル管理だとかなんとかやられているようでありますけれども、企業は、人員整理をする場合には、どうしても高齢者を整理の対象にいたします。     〔委員長退席、竹内(黎)委員長代理着席〕 それはもう、わが国の賃金体系が終身雇用制度、年功序列型になっておりますから、経費を節減するという意味で、あるいは若い労働力労働量そのものを比較した場合には、若い方が比較的有利でありますから、どうしても高齢者が対象になるわけでありますが、そういう高齢者が職業を失った場合、新しく就職するような職種が果たして考えられておるかどうか。今度の訓練の中で一体どのように、それに対処していこうとされておるのか。ひとつ、お伺いしたいと思います。
  258. 藤井勝志

    藤井国務大臣 御指摘の特に求人倍率〇・〇一、私は〇・〇九ぐらいに一応数字を読んでおりますけれども、大変厳しい雇用情勢である高年齢者、五十五歳以上の人たちの雇用問題については、私は、やはり何といっても基本的には定年延長問題というものを推進して、少なくとも六十歳をめどに一刻も早く実現をしなければならぬ。それと、いわゆる高齢者雇用制度を軸として、できるだけ高齢者の雇用の安定を図っていく。それに五十三年度の新しい雇用政策といたしまして、中高年齢者を雇い入れる事業主に対して助成をしていく、中小企業の場合には三分の二の、普通支払う賃金の助成をする、こういうことによって中高年齢者雇用機会拡大をしていく。これは民間の協力を得るということでありまして、拡大していく第三次産業部門に大いにわれわれは期待をいたしたい、このように思います。  それと職業訓練のあり方、これまた中高年齢者に向くような職業訓練の科目の選定ということが伴わなければならぬわけでありますが、すでに御承知のごとく、ビル管理であるとか造園であるとか、そのほか人生の経験が生かされるようなもの、肉体的に過重労働でないもの、サービス関係の仕事、こういうものに職業訓練と相まって中高年齢者雇用確保を進めていきたい、このように私は考えているわけでございます。
  259. 西田八郎

    ○西田(八)委員 そのように大臣がお考えであることは、せんだっての、この委員会での私の質問でもお答えをいただいたわけです。しかし現実には、そう大臣が言われるほど私はなまやさしいものではないと思うのです。企業も、この厳しい情勢の中で食うか食われるか、のるかそるかの勝負をしておるわけです。したがって、できるだけ若い労働力で効率の高い、しかも日本的賃金で、言うならば賃金の低いところで、より大きな効率を上げようというのが、私は企業の偽らざる腹ではないかと思うのです。そういう点から考えますと、これはもう本当に言うはやすく行うはかたしということで、なかなか実現できないと思うのですが、そういう点について何か産業界と話し合うとか、あるいは企業の人たちに強く要請するとか、そういうことを実際に労働省として、あるいは政府として何か行ってこられたことがあるのかどうか。ひとつ伺っておきたいと思います。
  260. 細野正

    細野政府委員 需要拡大のために、いろいろな努力が必要じゃないかということは、まさに御指摘のとおりでございます。したがいまして、先月二十五日に経済対策閣僚会議雇用問題の閣僚会議と合同のものを開催いたしました折にも、労働大臣から、たとえば造船の需要拡大について強く関係官庁に要請をしていただきまして、関係官庁にも、かなりそれについての必要性と今後努力しなければならぬという点についての御了解を得られたように聞いておるわけでございます。  たとえば定年問題につきましても、あるいは時間短縮の問題につきましても、本年度からは産業別会議を開催していただきまして、それぞれの産業の事情に応じまして、定年延長についても一つ目標を設けて進めていく、それから時間短縮についても、それと同じようなやり方をやっていくというふうなことを現在考えておるわけでございます。  それから、たとえば身体障害者問題につきましても、これも昨年末、最も実雇用率の悪い金融機関等につきまして幹部を招致して、それについて強く要請をいたしまして、現在のところ特別の対策委員会をつくって身障者の雇用のために努力していただいておるということでございます。  まあなかなか関係各省もいろいろございますし一遍にまいりませんけれども、いろいろな局面、いろいろな段階で、いろいろな形で関係の役所あるいは産業界に現在、働きかけつつありますし、また今後とも、やっていきたいというふうに考えておるわけでございます。
  261. 西田八郎

    ○西田(八)委員 これは雇用対策をやっているわけじゃなくて職業訓練法律改正問題でありますから、この問題を余り突っ込んでは申し上げたくありませんが、私はやはり新規雇用を開拓するということは、いまの日本経済情勢では非常に厳しいと思います。したがって、できますならば現在いる企業の中で何らかの職種転換を図らせるなり、あるいは、その企業自体の業務転換を図るなりして、そして生き延びるということを考えていくことも必要ではないか。そのために、この訓練法を改正して、それに対応しようというのが今度の趣旨のように思いますので、したがって、そういう点で十分ひとつ指導を強化してほしい。  今度の佐世保重工の希望退職を見ておりましても、大体八百人ぐらいを予定しておりましたのが千七百人近く出ていますね。きょうのテレビでもやっておりました。それはやはり経営側から非常に強く肩たたきがなされたというようなことも言われておりますし、さらにまた、若年労働者が造船というものに対して、もうこの辺で見切りをつけてやめていこうという人もかなり出たようだというようなことでありますけれども、私は、そういう事態を考えたときに、肩たたきというようなことが高齢者に限って行われることのないように、ひとつ努力をしてもらいたい。それは企業の側にしてみれば、もう本当に背に腹はかえられぬのでありますから、私は決して企業側の味方をするわけでありませんが、その立場で考えてみると、全く仕事はないわ、といって労働者をたくさん路頭に迷わすわけにいかぬわという苦肉の策で行われているんだろうとは思いますけれども、しかし、そういうために高齢者、特に再就職がむずかしいと言われる中高齢者が、そのような憂き目を見ないように、ひとつ十分な御指導をいただきたいというふうに思うわけでございます。  さて、そこで私は、これからの産業構造というものを考えた場合に、従来の日本の基幹産業と言われました繊維、造船、鉄鋼というものが、いまや構造不況業種であって、戦後新しく興ってきました自動車産業であるとか家庭電気製品であるとか精密機械、いわゆるカメラであるとか、そうしたものが非常な好況業種、全く好況とは言えませんでしょうが、何とかやっていける業種だというふうに言われておるわけです。しかし、これとても決して将来にわたって安定した産業あるいは業種とは言い切れないと思うのですね。  したがって、そういう点を考えた場合、私は予算委員会等における福田総理のお答えを聞いておると、あの人の頭の中に不況というものが深刻に刻み込まれているのだろうかということを疑問に思うわけです。本当に海外へは二百五十万からの人がどっと出かけていくわ、日本のものはどんどん売れるわ、こんなときに何で不況不況と言うんだろう。おれはちょっとも不況だと思っていないぞというような節々を、私は質問しておって痛切に感じたわけであります。  したがって私は、そういう面で、総理はおらぬですから、労働大臣にお願いしたいのです。本当にもっと真剣に受けとめて、そして労働大臣だけが、この問題に取り組むというのではなしに、私はやはり通産、運輸、厚生、農林、いろいろ多岐にわたるだろうと思うのですが、そういう中で新しい日本雇用を安定させる方法というものは一体何があるのかということをお考えいただいておるのかどうか。雇用対策何とか閣僚懇談会とかなんとかあるらしいのですが、わずか三十分や一時間で果たしてそういうことが本当に真剣に論議されているのかどうか。国民の目には真剣に映っていないと思うのであります。そういう面で、どういうふうに一体、労働大臣として、それらの省庁と連絡をとっておられるのか。できましたならば、そういう中でどういうことが論議され、将来の方向として、どういうものがあるということを論議されていたのか、中身についてでも聞かしていただければ幸いだと思います。
  262. 藤井勝志

    藤井国務大臣 先ほど職業安定局長からちょっと御報告を、お答えとしていたしましたが、去る三月二十五日に、円高がますます厳しくなってくるという、そこで経済閣僚対策会議、私は特に事前に強調いたしまして雇用問題関係閣僚会議を共催してもらいまして、その場でいろいろ話しました事柄が、先ほど局長から報告があったわけでございまして、そのときにはまだ十二分に結論までは至っておりませんが、問題検討事項として、いろいろ話をしたわけでございます。  そこで私は、そのときの話よりも、むしろ労働大臣として雇用機会の創出を図る——いままでの労働行政は、そこまでいく必要はなかったわけです。失業を未然に防ぐということと、失業が出た場合に離職者の生活の安定、早く就職ができるように、これで一応労働行政の務めは果たせる。ところが私が労働大臣になりまして、昨今の情勢を考えると、それだけで能事終われりとするわけにはいかない。全く、しりに火のついたような状況で、特に特定の地域、特定の産業に集中的に大量の離職者が発生する場合の対応策、こういう問題。  私は五つほどに問題点を分類をいたしまして、いまの第一の問題については、特に造船関係、こういったなにが多いわけですから、海上保安庁等の官公庁船の造船を前倒しでやり、またふやすように、ひとつ積極的にやるべきだ。同時にまた洋上工法による航空飛行場建設、ここら辺も思い切って発想を転換して、いままでは飛行場は内陸地帯でなければできないようなことを、これひとつ積極的にやったらどうか。それと船の解撤事業、これは特に中小造船企業、一応五十二年度はやって、スクラップの相場が安いということで途中投げしているという、これなんかも、もう一遍見直すべきだ、これは先般の会合で検討事項にいたしたわけでございます。  そういうようなことと、もう一つ今度は第二のカテゴリーは、国際的に見て、おくれておる分野に人を充実していく。これは医療、保健施設であるとか、あるいは社会福祉関係、余暇施設、こういうような面とか、公共的サービス施設、こういうものは非常にわが方はおくれております。そういったところへ、生活の質を向上するために人を十二分に配置する。病院関係、公的病院や診療所あたりの人員、理想から言えば教育方面にも、もうちょっと考えてみるべきだというふうに思います。こういうことをやると相当の人数が、私の計算ではアメリカ並みにやると四十五万人ぐらい要る、こういう線も出るのです。これはまだ公の場で、そうはっきりは出しておりませんので検討は要りますけれども、そういったこと。  そのほか長期的には、私はどうしても企業化を促進しなければならぬ問題が多々あると思うのです。お互いがすぐ思い当たるのは、新しいエネルギー開発の推進、そして飛行機産業あたりが、今度YXの飛行機産業、これをいよいよやることになりましたけれども、私は十年ほど前にアメリカの飛行場を見学しまして、自動車もいいけれども、組み立て作業で、これほど高い技術と教育水準のある労働力が必要な分野はない。なるほど軍事力が背景になっておりませんから、ジェット機をつくったり何かするということはむずかしいですけれども、民間の航空機ぐらいは国内の需要のみならず、ある程度、自動車が伸びたごとく飛行機産業を伸ばすことによって高度の技術を身につけた雇用拡大が大いにできるではないか。こういうことを考えたり、いろいろございまして、その最後のカテゴリーとしては、ワークシェアリング、仕事を分かち合うという点において労働時間問題というものを検討すべきである。こういうことを踏まえながら、いろいろ今後施策を進めていくというのが、これからの労働行政に課せられた新しい使命である、このように考えておるわけでございます。
  263. 西田八郎

    ○西田(八)委員 そういう点も、われわれも提唱をしておりますし、いま大臣が四十五万人と言われましたが、私どもの試算によりますと五十四万人、ちょうど逆になるわけですが、五十四万人というのは、この間わが党の雇用政策として発表したばかりでございます。しかし、これは労働省がそういうふうにお考えになっても厚生省の中には非常に強い反対意見もありますし、特に看護婦、准看ということになれば長年月の養成を必要とするわけです。しかし国際条約等によりますと、看護をする人は看護婦と、いわゆる日本で言う准看、それと看護補助というのがあるわけですね。これはそう高度な技術や学識を必要としないわけで、半年ないしは一年の訓練で十分な人が養成できる。その人たちがもっとふえていけば日本の医療看護ももっと向上するんではないか。あるいは一定の病院に勤めることの困難な、就労の困難な人についてはパートタイマーのような形で、ホームヘルパーというような作業にも従事できるのではないだろうか。  いま寝たきり老人が四十八万人ですか、非常にたくさんな人がおられるのに、現在厚生省で委託をしておりますホームヘルパーはわずか一万六千人、これでは三十人に一人ぐらいの割合でしか看護ができない。一日二時間ずつにしたって毎日はできないというような状況ですから、そういうところへもっと重点を置けば、そうしたものも一つの新しい雇用として創出できる。また、そういう訓練なら私は現在の訓練校あるいはその他民間の学校等を通じて教育することができると思うのです。  したがって、そういう点は、これは労働省だけで力んでみても、どうすることもできない問題で、ぜひともひとつ、そういう関係省庁との連携を強くしてもらいたい。いずれまた厚生日に小沢厚生大臣にも、そうした問題を私は提起するつもりはしておりますけれども、そういう点、十分な連携をしてもらいたいと思うのであります。  そこで私は、現在の日本社会情勢の中で非常に問題になってくるのは、高学歴化してきておるこの社会の中において、新しく学校を卒業する人たち、あるいは現在の職場から離職をしていく人たちの中にも非常に学歴の高い人たちがいるわけですよね。その人たちに、つるはしやスコップを持って公共事業のいわゆる人夫として、労務者として働けというのはむずかしいだろうと思う。したがって、そういう高学歴化の中における、こうした社会の中におけるいわゆる養成訓練、新しい業種への転換あるいは新しい技術の習得といったような養成訓練についての基本的な労働省としての考え方を、この際に聞かしておいてほしいと思います。
  264. 岩崎隆造

    ○岩崎政府委員 今回の法律改正一つの柱といたしまして、現在の技術革新あるいは産業構造の変革ということに基づきます技能労働者のあり方、これは、ある意味では非常に高度の幅の広い技能を習得した者である必要がある。それからまた先端的な機械、機器等を駆使できるような技能を身につけるような、そして、これは同時に、学歴がある程度高くなければできないというような人たちを対象にする訓練だと思います。  そういう点から、従来あります中学卒業者の一年訓練という専修訓練課程というものを、漸次そういった学歴構成の高度化あるいは要求されます技能の高度化ということと相まちまして、訓練の内容を高度化ないし幅の広いものにしていきたいということから専修訓練課程を漸次、高等訓練課程に切りかえていく。ですから、今後の養成訓練のあり方としては高等訓練課程一本にするという考え方で私どもやってまいりたい。  その上に積み重ねます特別高等訓練課程、いま短期大学校と言っておりますが、これはいわば腕と頭と兼ね備えたテクニシャンというような言葉を使っておりますけれども、そういったことで、実際に非常に理論的なことも強く、かつ技能も身につけている、こういうような技能者群というものが今後必要になってくるのではないかという観点から、養成訓練というものを、そういう方面に漸次転換していくという方針を今回の法律改正でとっております。
  265. 西田八郎

    ○西田(八)委員 その訓練がそうして高度化するのはいいんですが、それはそれで私は高学歴化社会に対応する方法としていいと思うのですが、逆にまた最近の状況から見ますと、私の身内に中学校の教師をしておるのがおるんですが、三年前に一度、中学三年生を卒業させたわけですね。そしてことしまた中学三年生を卒業させた。三年前は訓練校へ入れようなんという考え方を持った親は一人もいなかった。どれだけ知能指数が低くても、たとえ私立高校へでも入れたいというのが親の希望であったようであります。ところが、ことしの卒業生は、一クラスに一ないし二名、六クラスありますと一つの学校から十名近い訓練校志望者が出てきておるというようなことを言われておるわけです。  そうすると片一方で高度化されていくと、その中学校を卒業して、いま専修課程へ入りたいというような子供たちが入るところがなくなってしまうんじゃないかという心配があるわけです。それについては、いまの訓練制度といいますか、訓練機関の変更をいろいろ考えておられますね。変更を考えておられる中で、それはどういうところへ位置づけて、どんなような訓練をされるのか聞かしていただきたい。
  266. 岩崎隆造

    ○岩崎政府委員 基本的な考え方は先ほど御説明申し上げたとおりなんですが、漸次切りかえるというふうに申し上げましたけれども、現在あります。それぞれの専修課程というものを直ちに廃止するということではなしに、それぞれの地域における、そういったいろいろな需要を考えまして、その中で無理なく転換していく。したがって今後、先生の御指摘のようなことがまだ相当継続するということでありますれば、当然その需要に応じたところに従来の専修訓練課程の科目というものは存置してやっていくということで対処してまいりたいと思っているわけです。
  267. 西田八郎

    ○西田(八)委員 それと私は高等学校教育あるいは短期大学等の教育との関連が非常に重要に結びついてくると思いますね。いま中学卒業する進学希望者の順位というのは、まず首席から中ごろ、あるいは上位から順番に高校の普通科、それから次が商業科、最後に工業科というようなことで、工業科志望者というのは、こんなこと言っていいのか悪いのかわかりませんが、現実でありますから申し上げますと、比較的知能指数の低いというか、成績の悪い子が工業科へ集中しているというようなことも言われているわけです。そうするとそういう人たちが工業学校で受ける理論的な学習と実際的に受ける技術、それと訓練校との関係というのは非常にむずかしくなってくるんじゃないか。  私はやはり、このような事態にならない前から、日本の学校教育というものはもう一回考えるべきではないかという私見を持っておるわけでありますけれども、いまこそ本当に、そういう意味で学校教育と将来への職業というものとがうまく結びついていくという方法を考えていかなければならぬ。そうすると当然そこには、いまやられようとしておる国の職業訓練制度というものとオーバーラップする部分が出てくるわけですね。そういう関係はどのようにお考えになっておるのか伺いたい。
  268. 藤井勝志

    藤井国務大臣 非常に激しい変化をしております現時点における職業訓練のあり方について、いわゆる職業教育との接点ですね、これをどういうふうに考えたらいいかということは、私は、なかなか根の深いといいますか、そう簡単に割り切れない深い問題だと思うのです。私は労働大臣になりまして、文部大臣に会見を申し込みまして、すでに二回ばかり会っておるわけでございまして、われわれの念願は、やはり本当に社会が求める人材をいかにして養成するかという、そして労働省の立場においての職業訓練ということと人間そのものの教育という点からの文部行政というものとが絶えず補完し合って、そして時代の要請にこたえ得るような人材養成ということについて、ひとつ大いに緊密な連絡をとってやろうではないか。特に学歴社会といいますか、そういったことに偏り過ぎておる現代、本当に実力のある人が正しく評価され、そして適材が適所につくということについて、ひとつ労働省職業訓練というものと文部省の職業教育というものを絶えず密接な連携のもとに効果のあるような運び方をしたい。随時会談をしようということで、いま二回ほどやりましたが、引き続き今後もやってまいりたい、このように思います。
  269. 西田八郎

    ○西田(八)委員 ぜひとも、これは早急に、その基礎的な条件を整えてほしいと思うのです。一時、産学協同なんて言って、どうも産業界が要請するから、必要とするから学校制度をそういうふうに持っていって、雨後の竹の子のようにたくさん大学をつくったなんて言って批判も出ましたけれども、それは批判の出るような要因もあったと思うのです。しかし私は、いま産学協同というよりも国全体の施策として将来の日本社会情勢産業構造、それと国民の生活、特にその中の職業というものと、どう結びつけていくかということを、やはり政府自体が非常に高いレベルで展望を立てて、それに対応できるような方法というものを考えていく、いま時期ではないかというふうに思うわけでありまして、そういう点で特に要望をしておきたいと思います。  次に、非常に具体的なことになるわけでありますが、現在、不況業種から離職した人たちが大体どういう形で訓練を受けておられるか、先ほど安定局長にお答え願ったわけですが、実際の状況等があったら聞かせてほしいと思います。
  270. 守屋孝一

    ○守屋説明員 現在、不況業種から離職されました方につきましては、いままでの過去の経緯で見ますと大体五%ないし六%、これくらいの方が訓練をお受けにおいでになっている。あとの方は、できるだけ、すぐ他に就職されるという形をおとりになるというように承知をしております。  これらの方に対する訓練につきましては、もちろん隣接訓練施設等がございまして、そこで当然適当な職種があれば、そこで能力再開発訓練を行うという形をとっておりますが、また必要によりましては、最近は特に三次産業等あるいは適当な職種がそこの訓練施設にないという場合等におきまして、これは外の教育訓練機関に対して委託するという形で機動的な職業訓練推進する体制をしいてきております。このような形でもって離転職者の方の職業訓練推進を図っておるというのが現状でございます。
  271. 西田八郎

    ○西田(八)委員 課長、それはどの程度の数になるか、数字の上でわかりませんか。
  272. 守屋孝一

    ○守屋説明員 数字につきましては、まだ決算が出ておりませんので五十二年度分、最終的に集計しておりませんから何とも言えませんが、訓練枠につきましては、いわゆる中高年齢者に対する離転職訓練は約六万の枠を持っておりまして、これで対処しておりますので、訓練を受けたいという希望の方につきましては、ほとんどの方が訓練を受けられるというように考えております。
  273. 西田八郎

    ○西田(八)委員 それは私どもの聞いておる情勢と若干違うように思いますけれども、まだ失業給付金の受給期間中にあるわけですね。したがって、これのある間はということで、のんびり構えておられる方も、かなりあるのではないかと思いますが、ぼちぼちこれから九十日間の切れる人がもう出てくる時期でありますし、長い人でも二百日、三百日ですから、これからかなりな数に及んでくると思うのです。したがって、そういう人たちに対する訓練所入所についての便宜は特別に図られておるわけでありますが、同時に、それについて、いま守屋課長から答弁のあった中で委託という問題が出ましたが、今度新しく法律改正の中で、はっきり委託することができることになるわけですが、この制度をどういうふうに考えておられるのか、ひとつお聞かせいただきたいと思います。
  274. 守屋孝一

    ○守屋説明員 委託訓練は、いままでも訓練法上に規定がございまして、これはある意味では、きわめて限定的な書き方になっておったわけであります。やはり訓練はあくまでも訓練施設の中で行うというのが基本になっております。ただ、こういう形で訓練をやっておりますと、そのときどきの社会情勢なり、また雇用需要なり、これに即応する体制がなかなかとれない。と申しますのは、訓練所を建てて訓練をそこでするということになりますと、どうしても二年、三年という施設を建てるまでにかかってまいりますので、機動的な訓練体制をしいて、いわゆる雇用需要あるいは訓練ニーズに対応するための適切な訓練をやるということになると、どうしてもまず委託訓練という方式をとらざるを得ないのではないかというように考えております。したがいまして、この訓練方式はきわめて機動的な、そのときどきの社会情勢なり雇用情勢に対応したところの訓練をやる、こういうための措置であるというように考えております。
  275. 西田八郎

    ○西田(八)委員 それでニーズに応じてやるということなんですが、問題は訓練校あるいは訓練施設ということになりますと限られてくるわけですね。ですから私は、どっと出てくる人たちに対して、それを十分充足していこうとすると、かなり委託というような形をとらざるを得ないのじゃないかというふうに思うわけです。そこで大幅に必要な職種についての指定をされて、そしてもうどんどんと進められていいのじゃないか。これも早くから言っていたわけです。タイピスト学院だとか、あるいは洋裁学校はどうか、ちょっとわかりませんが、その他いろいろな施設があるわけです。最近電子工学院だとか、いわゆる各種学校と言われるものがあるわけです。     〔竹内(黎)委員長代理退席、羽生田委員長代理着席〕 そういうところを最大に利用されるというのも一つの方法ではないか。国で訓練所を一つ建てる、あるいはそこに訓練するための器材その他を納入しようとすると相当の額の金を必要とするわけです。それでなくてさえ、いま訓練校で使っているのに余り新しい器材というのはないですね。旋盤でも古いものしかない。基礎訓練するのだから、それでいいということかもしれませんが、やはり出ていく人にしてみれば、せっかく習ってきたのに入ったところと、えらい違った、とまどうようなことがあってはならないわけですから、そういう面から考えると、そういう民間の施設というのは、わりあいに新しいものを、どんどんと取り入れるようにしておるわけです。そういう方法は、せっかく日本の場合は外国に比べて、そういう面も分業化していますし、かなり進んでいるように思うので、私は利用したらどうかと思うのですが、利用することについて何か問題点があるのか。もし、問題点があるとするなら、それは何か。ひとつ聞かしていただきたいと思います。
  276. 岩崎隆造

    ○岩崎政府委員 先生御指摘の委託訓練を、できるだけニーズに応じてやっていくということは、私ども全国の都道府県にも指示をしております。  ただ具体的に、現在の離転職者というのは家族も持ち、住宅も持ちということなものですから、余り遠くに離れて就職ができない。したがって、その地域、地域における雇用需要、それに対応して、どういう訓練を受けられるかということで対応していかないといけませんので、現実には、それぞれの地域の職業安定機関それから訓練校、それにさらに商工団体とか経営者団体あるいはまた労働者の代表等を交えまして、それに、その地域における事業内訓練あるいは民間の教育訓練施設等の方々も集まっていただいて、そこで実際にどういう雇用需要があり、そしてどういう訓練ができるかということの中から具体的な訓練ニーズを見出して、そして雇用に結びつくような訓練が委託できるのならば委託でやる。それから施設内でやれるならば施設内でやるということの対応をしていけということを指示して、着々そういう方向で進んでいると思うのですが、具体的には、たとえば不況業種につきましての離転職訓練につきまして、長崎とか、あるいは愛媛とかというところで、ある程度、話をしながら、そういう器を用意はするようなかっこうになってきております。  私どもも必要に応じまして予算を機動的に配賦するということをやってまいりたいと思っておりますが、その地域、地域の具体的な事情で展開のできる準備はできておるわけですが、先ほど先生も御指摘のようなことで、具体的に、どれだけ大量に出てきたかという実績につきましては、まだ余り把握ができてないというのが実情でございます。
  277. 西田八郎

    ○西田(八)委員 それからもう一つ、委託になるかどうかは別として、都道府県もしくは市町村が、地場産業として非常に発展しているところ、あるいは新しい工場誘致なんかをした場合に、それに対応するためにということで研修所等を持ってやっているようですね。たとえば滋賀県なら繊維技術研究所なんというのがあるわけです。そういうところも利用されたらどうか。さらにまた、訓練をするのに大して器材の要らない、たとえば、さっき言ったホームヘルパー等は市町村の公民館活動を通じてでも、できるのではないかと私は思うわけですが、そういう地方自治体、公共団体との提携というものも考えておられるのかどうか。これを考えられれば、かなり効率の高い効果を上げられるのではないかというふうに私は思うのですが。
  278. 岩崎隆造

    ○岩崎政府委員 各県がそれぞれ、その地域、地域におけるいろいろな雇用需要、訓練需要、それからどのような民間訓練施設があるかということをつかんで具体的にやっていただくことになりますが、いま先生が御指摘のような点も貴重な御示唆でございますので、今後そういう方向で検討させていただきたいと思います。
  279. 西田八郎

    ○西田(八)委員 その次に、ことしは相当膨大な公共事業費というのが予算の中に組まれておるわけです。各都道府県、市町村等におきましても、予測せざる補助がついたり事業費をもらったりして実は困っておるというようなことで、公共事業関係の技術者が非常に不足しておるということを聞いておるわけですね。これは早急に半年や三カ月で、こういう訓練ができるものではないと思いますが、わが党の佐々木委員長が本会議で代表質問のときにも、これは五十四年度に連動させるんたという考え方に立たなければ、この公共事業は出しっ放しになってしまうのじゃないかということで質問をし、かつ福田総理からも、それはそういうことを考えておるのでと、このことに関しては答弁を保留しておられるわけです。ということは、私は五十四年に当然連動されるものだというふうに考えています。そうだとすると、こういう公共事業を進めるに当たって技術者不足のために、せっかくの公共事業が消化し切れない、未消化のままで来年度へ申し送っていくというようなことは、現在の景気浮揚策としては最も排除しなければならない問題だと思うのです。そういう面で、公共事業との関係における都道府県等との連携の上で、こういう関係の技術者あるいは技能者というのですか、そういう人たちの養成等について何かお考えになっておりますか。
  280. 守屋孝一

    ○守屋説明員 公共事業の技能労働力の不足状況につきましては、世上一般に言われておりますのは、鉄筋工、型枠工の不足が憂慮されているという点でございます。この鉄筋工、型枠工につきまして、またこれ以外の建設関係職種につきましても、私どもも、この点非常に関心を持っておりまして、各県に通知いたしまして、四半期ごとに、その状況について関係業界と十分連絡の上、どの程度の不足状況かというのをまず把握する。その上で、先ほどから話に出ております委託訓練、このようなものを活用いたしまして、あるいは施設内でも一部訓練をやっておりますが、こういうものを活用して技能労働力の養成に努めたいというように考えております。  ただ、技能労働者と一概に言いましても、鉄筋工、型枠工にもランクがございまして、フォアマンとか一番トップクラスの方は相当の長い経験年数を持っておられます。その下に経験年数五年あるいは三年程度のいわゆる一人前の鉄筋工、型枠工の方がありまして、さらにその下に短期訓練で一応作業ができるという、まあ言うなれば半熟練工といいますか、そういうランクがあるわけでございまして、前の二つの方は、とてもいますぐ私ども養成できるという職種ではございません。後のきわめて短期間に養成が可能なと言われる半熟練工的部分については、私どもも、その不足状況に対応いたしまして、それぞれの県で、いわゆる委託訓練あるいは能力再開発訓練、こういうものを活用する中で、これに対処してまいりたい、かように考えております。
  281. 西田八郎

    ○西田(八)委員 とにかく、いま本当に厳しい状況の中でネコの目のようにくるくると経済情勢が変わっていっておるわけですね。しかも、それに連れ立って好不況がきわめて顕著にあらわれてくるというような情勢、そういう中における労働者雇用不安、職業転換不安というのは非常に大きいものがある。職業転換ということに対する不安といいますか、自信がないという点もあろうと思いますが、そういう問題でやはり私は、本当にこの職業訓練がもっとそうしたものに対応できるようにしていただきたい。ほかの行政というのはどうしても時間がかかり過ぎて、やっと歩き出した時分には、もうガンもハトも立ってしまった後ということが多いので、ぜひひとつ職業訓練だけについては、そういうことのないように先取り先取りをしていって、それに対応できるようにしてもらいたいということを特に要望しておきたいと思います。  次に問題になりますのは、有給の訓練奨励制度というのが設けられておるわけであります。この場合に中小企業の場合、先ほども古寺委員から質問があったわけですが、全額月給を払って休日を与えて、わざわざ訓練に出してという中小企業は少ないのじゃないか。これはとてもじゃないが、それだけの余裕は中小企業にはないと私は思うのですね。しかし、訓練を受けたいという人には訓練を受けさせなければいかぬわけで、その場合に、いま昼間だけになっておる訓練の制度を夜間に持っていってはどうか。夜間の訓練所の開設というのは技術上むずかしいのか。あるいは金で済むことなら金で済ませればいいわけですが、そういうことは考えられないですか。
  282. 岩崎隆造

    ○岩崎政府委員 いま先生御指摘の点は、有給教育訓練休暇なり、あるいは派遣奨励の措置の対象として夜間のものもというお話であるかと思いますが……(西田(八)委員「いや違う」と呼ぶ)そうですか、ちょっと恐縮ですが、たとえば……。
  283. 西田八郎

    ○西田(八)委員 こういう制度があっても働いている労働者にとっては実際は利用できないのです。これは本人にも多少のメリットがあるのかもわかりませんが、ほとんど事業主に対して給付されるわけでしょう。払った賃金日額分に対して千四百八十円の還元をするというか、給付金制度があるわけですね。しかし、中小企業では、そのくらいの金をもらったって、一人前の人を一日休ませてやらすというような余裕が人員配置上もないわけですよ。しかし、その中に働いている労働者の立場からいけば、何か新しいものを身につけたい、あるいは向上訓練でも受けて技術を向上させたいという希望があるわけで、そういう人たちの希望を満たすために夜間訓練というのは考えられないかどうか。
  284. 岩崎隆造

    ○岩崎政府委員 失礼いたしました。先生おっしゃる点は、恐らく、すでに在職労働者で養成訓練ではなしに向上訓練の成人訓練を受けたいという労働者の方々のニーズに対して、公共職業訓練施設などが定時制訓練というようなものを開設して夜間訓練を受けられるようにしろというお話だと存じます。  現在、東京とか大阪とか、そのほか幾つかの訓練施設では夜間の訓練も定時制訓練としてやっているのでございます。ただ、成人訓練というようなことになりますと、特に先生御指摘の、いまのようなお話もあります。できるだけ昼やった方が、きちっとした、いい訓練を受けられるのだという一つの理想がございますので、そのために昼、出やすいように、出しやすいようにということで派遣奨励とか、あるいは有給教育訓練休暇の奨励制度というようなものを設けて、使用者の賃金負担をできるだけ軽減して、出しやすいように出やすいようにという措置を私どもはとっておるわけでございます。  定時制訓練につきましても、そういった需要があることは十分わかりますので、都道府県においても、あるいは雇用促進事業団においても、できるだけ定時制訓練ができるような方向で進めていってもらいたい。実際には、いままでずっと昼間訓練でやってきたという労働条件というか労使慣行的な面もございますので、具体的な実現につきましては、それぞれの施設において十分に話し合いをしながら、そういう方向で進めていってもらいたいということを、私どもは事あるごとに要請してまいりたいと思っております。
  285. 西田八郎

    ○西田(八)委員 時間が来ましたので、あと二、三あるわけですがこれで終わりにいたしますが、いま言われるような点で、事業主がそれを行う場合には、給付金制度で事業主に対するある程度の補助があるとするならば、進んで、そうした夜間の訓練を受けてでも自分の技術を向上させたい、あるいは他の技術を身につけたいというような人に対して、何らかの奨励措置といいますか、そういう方法を考えてもらいたいと思うわけです。これは後々の問題として提起だけしておきたいと思います。  最後に労働大臣に。いま非常にみんな迷っていると思うのです。これなら大丈夫だと思った大企業が、ばさっといかれる。あるいは、わが社だけはと思っておったら、その会社から人員整理が出されてきたとか、工場閉鎖が相次いでおるというような状況の中で、労働者はいまほど雇用不安にさらされているときはないし、雇用不安にさらされるということは、新しい職業への転換を非常に大きく求めているときだと思うのです。したがって、先ほども申し上げましたように、これから一体どういう職種が安定職種としてあるのかという点について指針を、各省連携の上で政府の方で国民に示され、示すだけではなしに、即それに対応できる実質的な行政を進めていただきたいというふうに私は希望を申し上げておきたいと思います。  特に構造不況業種は、造船にしても繊維にしても、ほとんど、その地域社会の中心企業として今日まで存在してきておるわけです。したがって、そこで起こってくる問題は、単なる企業だけではなしに地域社会全体の問題として、とらえなければならぬ。しかも、そこへ土着というか永住している人にとっては、その周辺の市町村にまで大きな影響を及ぼすわけでありますから、そういう点について十分なる措置を講じ、そして一日も早く技能、職種転換あるいは職業訓練等の過程を経て新しい仕事につけるような環境というものを職業訓練の中でつくっていただくように特にお願いをして、私の質問を終わります。
  286. 羽生田進

    ○羽生田委員長代理 次回は、明十二日水曜日午前九時五十分理事会、午前十時委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。     午後六時四十七分散会      ————◇—————