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1978-03-23 第84回国会 衆議院 社会労働委員会 第7号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和五十三年三月二十三日(木曜日)     午前十時三十分開議  出席委員    委員長 木野 晴夫君    理事 越智 伊平君 理事 住  栄作君    理事 竹内 黎一君 理事 羽生田 進君    理事 村山 富市君 理事 森井 忠良君    理事 大橋 敏雄君 理事 和田 耕作君       相沢 英之君    井上  裕君       石橋 一弥君    大坪健一郎君       大野  明君    川田 正則君       小坂徳三郎君    斉藤滋与史君       津島 雄二君    戸沢 政方君       友納 武人君    葉梨 信行君       橋本龍太郎君    山口シヅエ君       湯川  宏君    安島 友義君       枝村 要作君    大原  亨君       金子 みつ君    川本 敏美君       田口 一男君    矢山 有作君       横山 利秋君    草川 昭三君      平石磨作太郎君    西田 八郎君       浦井  洋君    田中美智子君       工藤  晃君  出席国務大臣         厚 生 大 臣 小沢 辰男君  出席政府委員         内閣総理大臣官         房管理室長   藤井 良二君         厚生政務次官  戸井田三郎君         厚生省児童家庭         局長      石野 清治君         厚生省保険局長 八木 哲夫君         厚生省年金局長 木暮 保成君         厚生省援護局長 河野 義男君         社会保険庁年金         保険部長    大和田 潔君  委員外出席者         総理府恩給局次         長       小熊 鐵雄君         総理府恩給局恩         給問題審議室長 手塚 康夫君         大蔵省主計局共         済課長     山崎  登君         自治省行政局公         務員部福利課長 桑名 靖典君         社会労働委員会         調査室長    河村 次郎君     ————————————— 委員の異動 三月二十三日  辞任         補欠選任   栗林 三郎君     横山 利秋君   草川 昭三君     西中  清君 同日  辞任         補欠選任   横山 利秋君     栗林 三郎君   西中  清君     草川 昭三君     ————————————— 三月二十二日  療術制度化に関する請願外八件(稻村左近四  郎君紹介)(第二三三四号)  同外七件(北川石松紹介)(第二三八五号)  同外四件(関谷勝嗣君紹介)(第二四四二号)  視覚障害者雇用促進に関する請願栗林三郎  君紹介)(第二三三五号)  同(村山富市紹介)(第二四三八号)  同(森井忠良紹介)(第二四三九号)  同(石川要三紹介)(第二四六一号)  同(石橋一弥紹介)(第二四六二号)  同外一件(北川石松紹介)(第二四六三号)  同(國場幸昌紹介)(第二四六四号)  同(関谷勝嗣君紹介)(第二四六五号)  同(玉生孝久紹介)(第二四六六号)  同(玉沢徳一郎紹介)(第二四六七号)  同(中村直紹介)(第二四六八号)  同(中村靖紹介)(第二四六九号)  同(灘尾弘吉紹介)(第二四七〇号)  同(西銘順治紹介)(第二四七一号)  同(根本龍太郎紹介)(第二四七二号)  同(羽生田進紹介)(第二四七三号)  同(廣瀬正雄紹介)(第二四七四号)  同(山崎平八郎紹介)(第二四七五号)  同(与謝野馨紹介)(第二四七六号)  同(渡辺秀央紹介)(第二四七七号)  公衆浴場法の一部改正に関する請願外二件(土  井たか子紹介)(第二三三六号)  同(安島友義紹介)(第二四三三号)  同(栗林三郎紹介)(第二四三四号)  同(田口一男紹介)(第二四三五号)  同(村山富市紹介)(第二四三六号)  同(森井忠良紹介)(第二四三七号)  同(枝村要作紹介)(第二四七九号)  同(矢山有作紹介)(第二四八〇号)  療術単独立法化阻止に関する請願石井一君  紹介)(第二三八三号)  社会保障社会福祉拡充等に関する請願(長  田武士紹介)(第二三八四号)  同(瀬野栄次郎紹介)(第二四四〇号)  同(西中清紹介)(第二四四一号)  消費生活協同組合育成強化等に関する請願(  鈴切康雄紹介)(第二三八六号)  同(竹入義勝君紹介)(第二四四三号)  奄美大島医師介輔身分喪失に伴う補償措置  に関する請願田中昭二紹介)(第二三八七  号)  失業対策事業就労者通勤交通費支給に関する  請願田中昭二紹介)(第二三八八号)  戦時災害援護法制定に関する請願枝村要作君  紹介)(第二四七八号)  国民年金改善に関する請願新村勝雄紹介)  (第二四八一号) は本委員会に付託された。     ————————————— 本日の会議に付した案件  戦傷病者戦没者遺族等援護法等の一部を改正す  る法律案内閣提出第二七号)  国民年金法等の一部を改正する法律案内閣提  出第四〇号)      ————◇—————
  2. 木野晴夫

    木野委員長 これより会議を開きます。  戦傷病者戦没者遺族等援護法等の一部を改正する法律案を議題といたします。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。横山利秋君。
  3. 横山利秋

    横山委員 特に戦時災害援護法の問題につきまして時間をお許しくださった委員長初め同僚諸君に感謝をいたします。  この問題は、すでに長年にわたる問題であります。いま新しく私が申し上げるわけではありませんが、ちょうど、この三月は東京の大空襲があった月であります。この間、同僚諸君はごらんになったかと思いますが、NHKテレビ東京空襲テレビが放映されました。また一方では、東京空襲のりっぱな写真集が発刊をされました。そういう意味合いでは、きょう質問をいたしますことは大変意義があることだと存じます。短い時間でございますから、この間、放映されました東京空襲について、ある新聞の随筆をまづ披露いたします。   歳月の流れというものは恐ろしい。敗戦からしばらくの問は、戦はもう二度と——という自省から、軍備とか核を持つということはタブーだったのに、いまはもう、平和だとか広島だとかいうと、反体制の異分子のような冷ややかさで流し見る者までいる時勢になった。日本人健亡症、無信仰がしからしめたものだろう。が、時折は振り返って、真実、自己の、あるいは子孫の明日を考える糧にして欲しいものだ。  その意味では、終戦の年、三月十日の東京空襲を扱ったNHKの「東京空襲」(三月九日)は、胸にくい入る番組であった。米国の記録フィルムと、日本側記録写真と、当時、放送や取材で働いていた人たち被災した住民の、感情を抜きにした、臨場感をもって語る報告を織りまぜた編集に、冴(さ)えを感じた。いつもの、なにか事故があると、家族が遺体に取りすがって泣く、いわゆる「泣き」や「怒り」の訴えを、これでもかと撮る日本的取材ではない。静かに、強く、胸に迫って来るものがあった。  とくに、母親の黒焦げ死体の横に、まだ乳飲み子とおぼしき子供の、これも黒焦げ死体が、おそらく苦しみにもがいたであろう……股(もも)を開き、転げているカットなど、そうした現場を目撃し、死体の取り片付けを手伝わされた私など、動悸(どうき)の止まる思いがした。あれが、いま、生きているわれわれとまつたく変わらぬ、懸命に生きようとしていた善良な市民の姿であった。  戦争の悲惨さを、そこはかとなく伝えて余りある番組であった。  そこへ行くと、翌日「風見鶏」で見せた空襲のシーンなどは、やはりドラマ、大甘に甘い。記録の強さを再認させたに過ぎない。  三月には、各地に大空襲があった。私も三月に名古屋で被災を受けたものであります。そういう被災者の嘆きは、今日もまだ戦後が終わらないと言われているほど、被災を受けた国民の姿や、あるいは体は、まさに痛々しいものがあるのであります。  そこで、それらの諸君から戦時災害援護法制定を求める請願が陸続として長年にわたり国会に寄せられております。その請願趣旨は「一、一般民間空襲による戦災犠牲者傷害者死没者遺族等に対する戦時災害援護法を早急に措置されたい。二、一般民間戦災犠牲者傷害者死没者遺族等全国的調査を、国の責任において実施されたい。」これが請願趣旨であり、越えて、いまもうすでに亡くなった須原昭二参議院議員参議院において立案をし、後を引いて五十一年の五月に片山甚市君を筆頭にいたします戦時災害援護法案参議院に上程されて、すでに久しいものがあります。  この二つの要求につきまして、政府に善処を求めてまいったわけでありますが、一向政府の重い足腰が立ってはおりません。一体政府は、戦争中のこれらの被災者訴えをどう受けとめておるか、まず、それをお伺いいたしたいと存じます。
  4. 河野義男

    河野(義)政府委員 いま、二十年の三月九日、十日の空襲の悲惨なお話もございましたが、戦争中、空襲等によりまして負傷され、あるいは死亡された方々につきましては、私ども非常にお気の毒だというふうに考えております。同情にたえない次第でございます。しかし、こうした一般戦災者援護につきましては、従来から一般社会保障充実強化を図っていく中で対処することが適当であるということで、そういった一般社会保障施策の中で努力をしてまいったわけでございます。
  5. 横山利秋

    横山委員 一般社会保障の中で対処をしていく、それは長年聞き飽きた言葉なんでありますが、それでは一体軍人とか、あるいは軍属とか、あるいは義勇軍だとか、あるいは警防団あるいは一般国民被災者との違いが、何があるかということが常に語られ続けてきたわけであります。御存じのように旧憲法は、国は悪いことをしない、お上は悪いことをしない。だからお上に対して請求権はないという思想でありました。新憲法制定をされ、そして国家賠償法が新しくでき上がりました。国家賠償法なりあるいは新憲法は、国もまた間違いを起こす。公務員もまた過失やあるいは故意、そういうことによって間違いを起こす。国もまた、怠慢なるがゆえに道路の補修が十分できない。そのために被害が起こる。そういう国の責任というものを明白に憲法並びに法律で定めたわけであります。  大臣にお伺いしますが、この第二次大戦というものについての、国民とそれから国に分けて、国の責任というものは一体なかったのであるかどうか。政治家として、どうお考えになりますか。
  6. 小沢辰男

    小沢国務大臣 一般戦災者に対する国家補償の御要求ということは、すでに廃案にはなりましたけれども各党立案による提案も承知いたしております。またその後、附帯決議等についても熱心な御決議をいただいておることも承知いたしております。また過般来、本社労において先生方から、いろいろ同様趣旨の御質問等をいただいておりますが、従来まで国が考えました観点は、戦争というものに対する国家力戦国民挙げて国家目的にみんな協力し合ったということは、戦地にあると内地にあるとを問わず同じ趣旨ではないかという立論についてもよくわかりますし、また、いろいろ法律上の観点から分析されな大原委員の御見解等もいろいろ承ったわけでございますが、やはり国が特別権力関係にある方々、すなわち一定使用関係にある方々について、国が使用者責任を果たすという観点から、軍人あるいはこれに準ずるような方々に限ってのみ援護措置をとっておったというのが従来の例でございます。  それで、一般戦災者方々に対して、一体いかなる法的な根拠で、これが災害についての補償をやるかということについて、実は、そういう特別権力関係にありませんし、また一定使用関係にもない。使用者としての責任も国が果たす立場にない。そういうようなことから、従来まで一般戦災者については補償という観念が出てこなかったわけでございます。  そういう意味で、いまお尋ねの、恐らく戦争について国の責任政治家としてどう思うか、こういうお尋ねでございますが、戦争に対する国の責任ということ、その場合の国というのが一体いかなる点をお指しになるのか。当時の国の方針を決定するに当たって参加した指導的立場に立った人たち責任という意味でおっしゃるのか、あるいは国家というものは国民を離れてないわけでございますので、国民全体、日本人全体の考え方なり、あるいはそこに至った全体の責任ということを言われるのか。恐らく前者ではないか。国家そのもの国民と離れて成り立つわけではございませんので、恐らく前者お話であろうと思うのですが、そういう点で考えますと、明らかに私は、戦争責任を当時の指導者為政者というものは感ずべきであろう、こう思います。
  7. 横山利秋

    横山委員 おっしゃるように、最後の言葉が大事であります。戦争責任というのは当時の指導者である。国民は、確かに大臣のおっしゃったように、その戦争指導者に引きずられて戦争に協力をした。国民戦争を起こしたものではない。また戦争は、当時言われたように聖戦ではなくて、侵略戦争である。そして、戦争を起こした指導者責任は問わるべきであるという点については異存ございますまいね。
  8. 小沢辰男

    小沢国務大臣 全般的な当時の政府なり、あるいは為政者なりの、直接、開戦昭和十六年以降の責任というふうにとらえるのが本当なのか。あるいは戦争に至るいろいろな長い歴史的な経過というものがございますから、それぞれの見解によって、責任範囲がどの点にあるのか。あるいは日本政治あるいは指導を引っ張っていった、この戦争に至る原因の一番の根っこはどこにあるのかという議論については、これはなかなかいろいろ議論が分かれるところだろうと思うのでございまして、そういう意味で、とにかく狭く考えていって直接的に、結果的に見まして、開戦という行為以後の責任ということを考えますと、当時の政府最高方針を決定した為政者責任というものは、やはり考えざるを得ないだろうと思います。
  9. 横山利秋

    横山委員 私が申し上げております国の責任というものは、大臣の言われる長い間の歴史的な経過よりも、まさに戦争を起こすこと、戦争をやめること、その決断をするときの問題、そこに凝集されると思うのであります。だから戦争を起こしたのは国民ではない。当時の指導者である。当時の指導者は国と離れて存立するものではない。いわゆる当時の指導者が国を看板にして戦争を起こしたのだ。したがって、当時の指導者と国と分けて考えることはできないのである。国が間違いを起こしたのである。国が過失というよりも、国が故意戦争を起こした。故意という言葉は適当であるかどうかはわかりません。少なくとも戦争責任というものは国が負うべきである。しかし、そういう戦争責任権力によって国民を引きずっていった。その国民の中には軍人もおれば、軍属もおれば、警防団もおれば、一般国民もおる。そういうふうに私は理解できると思うのであります。  そこで、全国戦災傷害者連絡会の会長の杉山千佐子さんが、私が質問をすると言いましたら、短い文章ではありますけれども、ぜひ大臣に陳情してくれという文章をよこしましたので、御披露をいたしたいと思う。   昭和16年12月8日太平洋戦争がはじまり、ラジオ新聞の報道を鵜のみに信じ、いや信じこまされて、あくまでも聖戦であり、必ず勝つと国家総動員法の下に軍官民ひとつになって、国を守りつづけてきました。  突然鳴りひびく空襲警報に驚きと困惑の中にも、お国のため、陛下の御為と歯をくいしばり、お互いにはげましあって頑張りました。しかし、敵の攻撃は激しく、20年にはいってからは国中めぼしい都市は敵のなすままにされ炎の中に地獄そのままでした。瓦礫の山のそこ、ここに焼死体の山、家を焼かれ肉親をうばわれ、手足を顔を無惨に傷つき生れもつかぬ姿になっても、何ひとつ不平もウラミもいえず、国の方針にだまって従っていました。  昭和27年4月、戦傷病者戦没者遺族等援護法制定の日より、私達民間人は全く不平等な扱いをうけることになりました。同じ戦争犠牲者になぜ政府は目をむけなかったのでしょうか。特に戦災傷害者はこの30有余年は地をはうように生きてきました。今や老齢化したこれら傷害者は国から何の援護もなく怨みをだきながら死んでゆきます。すでに大半が死んでゆきました。  毎年社会福祉社会福祉各党で叫ばれつづけられ、福祉年金は増額されてますが、末端の本人の手には入らない仕組になっています。増額された事をテレビラジオ新聞でただ眺め指をくわえて、そして死んでゆきます。ふたつの年金は支給しない、33万で限度がきめられている為、ここに例をあげますと、私学共済年金28万のため福祉年金は33万の差額のみしか支給されません。現在の物価高に年収33万でどうやって生きてゆけましょう。働くには年をとりすぎ、しかも障害度も重度では雇用もむづかしく、老人ホームには65才に満たぬから資格なしといわれ益々前途は暗くなります。  両足大腿部切断の女性(20年3月19日被災)一生懸命働きつづけて年収70万をされるため社会福祉年金一級を給付されやっと最低の生計をたてています。年令も50をすぎ健康もわるく、まして危険な交通事情で車椅子での通勤もむづかしくなり今勤めをやめたらと調べますと、若年老齢年金が39万支給されますので、この時点で福祉年金は打ち切りです。働いて70万近い年収福祉年金とを加えてさえ最低生活をしていたものが39万ではどうやっても生活できません。まして両足はなく、財産もなく、ここでも死を待つのみです。  低額年金生活者にもっとあたたかい法はないのでしょうか。福祉年金を全額上のせするとか、又は障害重度保護者のない場合50才又は55才で老人ホームに入れるとか考えて頂きたいです。  戦傷病者戦没者遺族等援護法にはこうした制限はなく、同じ戦争傷害を受けながら民間ゆえに、一番救済の手を待つ弱者、戦災傷害者に何故このような苛酷な制限があるのでしょう、一日も早く是正して下さい。  あれから30有余年戦災傷害者は老齢化しています。街頭署名や陳情に出られぬ者が大半になりました。一日も早く援助の手を。   戦時災害援護法制定   全国実態調査を早急に実施   国鉄無料   医療費補装具無料  見えない目でくだくだと書きました。  ご判読下さい。 まことに哀れといいますか、気の毒といいますか、いま厚生省から事務当局から話がございましたが、あなたの話では解決できない問題をこの中に含んでいることは、おわかりのとおりだと思うのであります。  もうすでに私が申し上げるまでもなく、軍人軍属あるいはまた警防団義勇軍等については逐年一つ一つ入っていきました。そのときどきに必ず厚生省は、それは軍人とは違います。あるいはまた軍属とは違います。あるいは、これも理屈が合いませんと言ってきましたけれども、しかし結局は一つ一つわれわれの要望が入っていったわけであります。残りますのは一般戦災者、そういうことになるのであります。そして、一般戦災者もまことに数が少なくなってきました。もう老齢化している、そういう気の毒な人たちで、老齢化しているがゆえによけいに困窮度が高まっておるわけです。  ここで百尺竿頭一歩を進めて、これらの人を救済をすることが果たして理屈に合わないことであろうか、不可能なことであろうか、そう考えますと、私はそうは思わないのであります。そればかりではありません。いま私は法務委員をしておるわけですが、刑事被害者補償法を今度法務省も制定しようとしています。いま大蔵省と折衝中でありますが、要するに刑事被害者補償法というのは、赤軍派過激派がその辺へ爆弾を投げた。そのために無事の国民が傷を負った、それは気の毒だというわけで補償をしようというわけです。私はいいことだと思うのです。また飛騨川の転落事故あるいはカネミ訴訟あるいはスモン訴訟、そういう例をとりましても、近代社会の中で、いままで、とうてい国が補償しなかった問題が、新しい経済社会の新しい要請と新しい判断に立って補償されようとしているわけであります。その新しい問題とこの戦災者と比べますと、そこに法の不公平というものがどうしても出てくるとは思いませんか。  厚生省の所管ではない、それはよその省がやることだとは言えません。全体的に、それらがいま、いよいよ実現をするというのであるならば、道を歩いておって赤軍派爆弾を投げられて、そして死んだ。傷を負った。それもまた国家補償しようとする時代に、なぜ軍人軍属と変わらず、内地で私どもと一緒に防火バケツを手に、そして焼夷弾で死んでいった、本当に戦争のために、それこそ政府が何と言っても、それを信じて死んでいった戦死者と、それらの人たちの違いがどこにありますか、ないじゃありませんか。厚生省オンリーのお考えでは前のとおりのいろいろな考えがあるかもしれない。しかし他省では、あるいはまた最高裁の判決では、新しく国の責任というものが、国家賠償法の一条、二条について、あるいは食品衛生法あるいは薬事法国家責任というものが範囲が広がっていこうとしている時期ではありませんか。そういう時期に、どうしていつまでも一般戦災者の問題について冷たい態度をとるのでしょうか。私はその点が大変残念だと思うのですが、大臣はどうお考えになりますか。
  10. 小沢辰男

    小沢国務大臣 私ども援護法援護対象にいたしておりますのは、先生おっしゃるように、その後いろいろな未処遇者の拡大を図りまして処遇対象に入れてまいりましたけれども、すべて国との一定使用関係というものを法的に明確にする措置によって、その措置に裏づけられて初めて補償責任というものを果たしてきているわけでございまして、したがって、そういう面からいうと、同情はいたしますけれども、遺憾ながら対象にはならぬ、こういう考え方できました。それらの方々一般社会保障の中で、身体障害者の方は身体障害者福祉の面から救済をする、あるいは所得の非常に少ない方々あるいはまた生活困窮者方々には、他の近代的な社会保障制度によって救済するということでやってまいりました。  いま先生お話は、それとは別の観点で、いわゆる一億総力戦体制戦争というものに相対した当時の実情から見て、別の観点から戦争犠牲者に何らかひとつ補償すべきだ、あるいは救済措置をすべきだというお考えだろうと思うのでございまして、そうでないと、私どもとしては国との一定権力関係にない者を国が使用者としての責任援護の中で果たしていくということは、ちょっと、いまその考えを変えろと言われましても、私どもはどうしようもないわけでございます。  ただ別個の観点から、そうした当時の実情等を踏まえて、何らか検討すべきじゃないかというお話が、この前からるるございましたので、それで私は、そういう面で何らかの検討をすべき問題だろうと思うから、なおひとつよく検討さしてもらいたい。ここで私また従来の考えを一てきして新たなる観点からやるにしては、新たなる観点から、その補償なり援護をする法的な、あるいは行政的な理由というものを、われわれとしてはどこかに明確にして出していかなければ、やはりいけないわけでございますので、国家賠償法お話がございましたけれども、本来、国家賠償法というものは戦争行為による損害というものを賠償することを全く予定をいたしておりません。あれは戦後のものでございますし、適用をさかのぼるというような趣旨ではございませんものですから、国家賠償法制定した今日、これらを国家賠償法の精神から取り上げろと言われましても、これはちょっと法律趣旨が違うと思うのでございます。したがって、いろいろ当委員会で、この前の審議から御議論がございましたので、私どもも御立論の趣旨を十分よく検討さしていただきまして、どういう理由から、またどういう観点から、これを爼上に上せた方がいいのか、これをもう少し研究をさしていただく時間を与えていただかなければいかぬだろう、こういう考えで申し上げているわけであります。
  11. 横山利秋

    横山委員 従来の軍人軍属と別なカテゴリーから考えるというのは間違いです。ここに昭和十八年の内務省の「時局防空必携」というものがあります。   防空必勝の誓  一、私達は「御国を守る戦士」です。命を投げ出して持場を守ります。  一、私達は必勝の信念を持って、最後まで戦ひ抜きます。  一、私達は準備を完全にし、自信のつくまで訓練を積みます。  一、私達は命令に服従し、勝手な行動を慎みます。  一、私達は互に扶け合い力を協せて防空に当ります。 これは内務省が、政府がつくったものです。そうして防空演習のときにみんな大きな声で唱和したものですね。政府が押しつけたものです。それからその「時局防空必携」の最後のところに、「空襲による被害救済保険」の問題に触れています。それから「罪と罰」に触れています。  1 犯罪は平時より一層重く、且つ速かに罰して、不安なく防空活動が出来るやうに考へられてゐる。  2 特に重く罰せられる罪。   イ、燈火管制中の窃盗、強盗とか風俗上の罪。   ロ、防空、通信、交通、重要生産等の施設を壊したりしてこれを妨害する罪。   ハ、業者が儲けようとして買占めをしたり、売り惜しみをしたりその他一般国民の経済生活を乱す罪。   ニ、流言ひ語の罪。   ホ、その他国土防衛を害する罪。  3 燈火管制を怠ったり、防空活動の出来る者で規則に定められた防空業務に従事しなかつたりするとそれぞれ処罰を受ける。 まさにこれは、お互いにこの年配ですから、当時のいきさつをよくわかっている人間同士お互い議論しているわけですが、まさにあのときの雰囲気というものは、外地におります軍人と、内地におって、この「時局防空必携」で「私達は「御国を守る戦士」です。命を投げ出して持場を守ります。」と言っている人間と、どこに一体違いがあるだろうか。  むしろ私は、そう言ってはなんですけれども、私も野戦に行きましたが、野戦における空襲状況と、国土防衛をしておるわれわれの防空状況とは格段の違いがあると言っても過言ではありません。それは野戦の方が、必死の激戦のときは別です。しかし広範なアジア大陸に参加しておる日本軍人と、国土の狭いところで毎日毎日空襲を受けているわれわれの激戦の状況とは、しかも守るにすべなきわれわれの状況、逃げ惑うわれわれの状態、「時局防空必携」で徹底的に憲兵やあるいはその他の人に追い回された状況とは、どうして一体違いがあるか。どちらにより危険があったか、どちらがより被害惨たんたるものであったか、あなたもおわかりのとおりだと思うのです。それを別のカテゴリーだ、別の角度からアプローチしたいというのは私は間違いがあると思うのです。  それから、私が先ほど言った最後に、いま刑事被害者補償法制定されようとしておると言いましたね。私はそれとこれとはカテゴリーが違うと思います。けれども刑事被害者補償法制定しようとわれわれが言っておることについて各党は賛成し、法務省も賛成し、大蔵省も、予算の問題はあるけれども、もう少し予算上の配慮をしてくれたならば、つまり少なかったならば考えてもいいというところまで踏み込んできているわけです。それとこれとの均衡をどうお考えでしょうか。それは昔の話だ、今度はいまの話だということで国民が納得するでしょうか、この年とった人たちは納得するでしょうか。だから大臣は、別なアプローチと言わないで、この「時局防空必携」をもう一遍よく読んでくださって、外地と内地との対比の上において理屈がつくことであります。お年寄りばかりで、だんだん死んでいくことでありますから、もうここで軍人が済んで、軍属が済んで、警防団が済んで、そして看護婦が相談になって、もう残る一般国民救済をすべきときではありませんか。そのために各地から出ておることは御存じのことだと思いますが、ここに資料がありますのは、大阪市議会、大阪府議会、堺市議会、東京都議会、西宮市議会、これは前の古い記録でございますから、ほかにもたくさん出ておるかもしれませんが、これらの地方自治体がそれを必要だと考えて、戦時災害援護法制定なり実情調査をしろと言っておるわけであります。  そこで総理府からおいでになったと思うのでありますが、この要請に基づく全国的調査はどういうふうに行われ、どういうふうに処理されておるか、伺いたいと思います。
  12. 藤井良二

    ○藤井(良)政府委員 お答えいたします。  本年度から全国戦災史実調査というのを実施いたしております。その中身といたしましては、全国各地に空襲や艦砲射撃などによる戦災を受けてから、すでに三十余年を経ておるわけでございますけれども、一部の地域を除きまして、これらの記録はほとんど整理されておりません。そこで戦災体験者や関係資料が少なくなっていく今日、戦後三十年を一区切りといたしまして戦災に関する資料を調査、整理して刊行し、戦災の惨禍を後世に伝え、戦災犠牲者の慰霊に資するということを目的にいたしまして、今年度と来年度にかけて調査をする予定にしております。
  13. 横山利秋

    横山委員 その目的が違うじゃありませんか。われわれが要求しているのは民間戦災犠牲者傷害者、死没者の遺族等の全国調査をしてもらいたい、こういうことが何回も言われておる。あなたの方の調査はこの要求が含まれていますか。また、だれがその調査をやっているんですか。
  14. 藤井良二

    ○藤井(良)政府委員 調査の項目といたしましては、戦災をこうむった当時の戦災都市の状況だとか、あるいは空襲の状況、戦災の状況、その戦災に関する記録、そういったものを調査しようとするものでございまして、この調査は日本戦災遺族会、これは昭和五十二年六月に社団法人として認可された団体でございますが、この団体にお願いして、主として慰霊に資するということを目的として調査している次第でございます。
  15. 横山利秋

    横山委員 私の問いに答えてないのですが、この被災者、遺族、傷病者、死没者の全国的調査をなぜ中に含めなかったかということ。それから、もう一つ奇異に感じますことは、この全国戦災傷害者連絡会会長杉山千佐子さん、長年にわたってこの運動を続けておる、この人が一番よく知っているのです。全国的組織を持っているのです。それに連絡はあったのですか、なかったのですか。これだけ野党がそろって言うておる問題について、あなた方がこれらの団体に何の連絡もなくて、五十二年六月といえば去年ですか、社団法人ができたという、それはどういう団体か私よくわからないのですが、どうして一体、杉山会長のやっておる団体の協力を求めないのですか。
  16. 藤井良二

    ○藤井(良)政府委員 これは従来から全国戦災犠牲者遺族会連絡協議会というのがございまして、これを社団法人にして、そこに調査させたらどうかというお話がございましたので、そこに調査させることにしたわけでございます。したがいまして、先生がいま指摘されました、けがをされた方たちの団体とは直接連絡をしておりません。ただ、今後必要になれば連絡をしてまいりたいと思っております。
  17. 横山利秋

    横山委員 私どもの国会側の要求を何だと思っていらっしゃるのですか。これほど法案も出、そして調査も依頼し、善処するという話があって調査をなさるならば、当然のように、この請願者である全国戦災傷害者連絡会がいまどうなっておるか、死んだ人はどうなったか、けがした人はいまどうなっておるかということは調査の一項目でなければならぬ。遺族の皆さんといえば、もうそれぞれ遺族なんでありますから、現にけがをして、いまだ生きて、この社会の中で耐え抜いておられる人々の協力を求めなければならぬじゃありませんか。その何とかという社団法人には、政府は補助金なり調査費なんか出していらっしゃるのですか。どのくらい出しているのですか。
  18. 藤井良二

    ○藤井(良)政府委員 補助金は出しておりません。ただ、いま申し上げましたような戦災史を作成するための委託費を出しております。
  19. 横山利秋

    横山委員 どのくらい。
  20. 藤井良二

    ○藤井(良)政府委員 本年度が約二千二百万、それから来年度が千六百万ぐらいでございます。
  21. 横山利秋

    横山委員 私はその団体がどういう団体だか、よく知りません。知りませんけれども、それは何か奇異なものを感じますね。これほど国会で議論になって、その焦点になっているのが全国戦災傷害者連絡会である。そして、その団体からの訴えを聞いて法案を提出をし、そして私どもも、それらの人々が日ごと夜ごと街頭募金をやったり署名運動をやっていることを多としている。一生懸命やっておる。それらの人と何の縁もゆかりもない、遺族の会合だとおっしゃる。それは遺族の皆さんもお気の毒であるから、この私ども援護法の中にも一つ入るわけでありますが、実際活動をして、ちまたで一生懸命に街頭募金や署名運動や集会を開いてお互いに励まし合っておる、この被災者の人を抜きにして、どうして一体調査ができるでしょうか。議論ができるでしょうか。しかも、そちらへ二千万円、千六百万円という大変な額がいって、どういうふうに使われておるのか、私は奇異に感ずるわけなんであります。しかし時間がございませんから、あなたには、それらの政府の調査費か委託費か知りませんけれども、それらが公正に使われるよう、杉山会長の組織にも十分連絡をされて協力を求められることを期待したいと思いますが、いかがですか。
  22. 藤井良二

    ○藤井(良)政府委員 この措置というのは、もっぱら戦災家族の慰霊措置ということを中心にして考えておりましたので、いま先生の言われる団体には連絡しておりませんが、この調査を進めるに当たりまして、そういったことが必要になれば連絡してまいりたいと思っております。
  23. 横山利秋

    横山委員 必要になればじゃありませんよ。大臣、どう思いますかね。私はその団体のいろいろなことを知っているのですが、いま言いにくい点があるのですよ。しかし、私の方が筋が通っているじゃありませんか。現に被災して、手足がもがれて、目がなくて苦しんでおる人たち、そうした人たちが団体をつくって運動している。しかも、それは国会におる者はだれも知っている、会っているんですよ。そういう長年の努力の団体に何の御連絡もなくして、どうして一体その後の調査が十分目的を達するでありましょうか。総理府のやっていることだから私は知らぬとおっしゃらないでしょうね。あなたが、いま私の約三十分ぐらいの質問に答えて、ひとつ別な意味での何かアプローチをしてみようとおっしゃるならば、まさに実態調査から始まらなければならぬ。その実態調査が何か別な角度で行われておる実態調査では意味がないじゃありませんか。ですから、私はいまの社団法人をとやこう、もうここで申し上げますまい。申し上げますまいが、少なくとも全国戦災傷害者連絡会にも協力を求めて、言うところの全国的調査が円滑に行なわれるように——それは慰霊もいいでしょう、後世に残すのもいいでしょう。しかし同時に、いま苦しんでおる人が一体どうなっておるか、そういうことが何にも行われない調査が何になりますか。大臣、どうお考えになりますか。
  24. 小沢辰男

    小沢国務大臣 総理府でやっております調査は、私ども厚生省のような観点からでなくて、史実の調査のために戦没者の方々の協会と連絡をとってやっておられるわけでございます。おっしゃるように一般戦災者方々、特にその中で、この前から議論がありますように財産被害は別問題にしまして、生命をなくされた戦災死没者の方、それと戦災によって傷害を受けた方々の実態調査をぜひ早く実現すべきだというお話も承りましたが、援護をやるかやらないか。援護をやるとすれば一体どういうような形がいいのか。戦災による死亡の方と傷害の方との関係をどういうふうにあれしたらいいのかという基本方針が固まらないのに調査をするということは、やはりなかなかできないことだと私は思うのです。(横山委員「生きている人の調査をせずに死んだ人ばかり調査している」と呼ぶ)いえ、死んだ人の調査をしているわけじゃないのですよ。あれは史実調査としての調査費でございまして、それについていろいろ委託費を出して、その中で死没者の方々の実態をある程度調査しようということだと思うのです。  戦災による障害者の方々については、私ども厚生行政基礎調査の中で、四十何年でしたか、それから五十年に再度、障害者の中で特に戦災の方々についての調査をやろうとしたわけでございます。そのときに十都府県ぐらいでございますか、十ちょっとあったと思いますが、協力を得ることができなかったわけでございまして、それで、この厚生行政基礎調査の中で戦災の障害というものの分類をやることができなかった事情もございます。  これは私の未成熟な段階での見解でございますけれども援護措置をやるかやらぬかの方針を決めて、ついては実態がどうなっているだろうかということを調べなければいかぬと思うのです。その方針が決まらないのに実態調査をやるということになりますと、これはやはり片手落ちじゃないかと思いますから、そういう何らかの援護措置をやるということをいろいろな角度から、また、それはどういう法的な行政的な理由づけをやるかということを、まず検討しまして、その結果、そういう方向にいくためには戦災による死亡者の方の実態はどうだ、現実には正確に数がどれくらいあるか、戦災による障害者の方で、その程度がどういう状況にあるかということをよく調べる必要があるのじゃないかと思いますので、そういう観点から、ひとつ検討させていただきたいと思います。
  25. 横山利秋

    横山委員 時間がございませんので、注文だけ申し上げておきます。  大臣の言われることもわからぬではないのです。しかし、それは三年も四年も前に言ってくださるなら私は了とする。けれども、いままた新しくそういうことをおっしゃったのでは迷惑千万です。しかも総理府が二千万も一千六百万もかけて二年かかってやろうとしているのです。あなたがいま言うような意味があるならば、あうんの呼吸で、おれの方は方針が決まっていないけれども、おまえの方でやっているときに、ついでに調査をしておいてくれと言えば、あなたの立場も保てるわけです。総理府も総理府だと思うのです。こちらの方は死んだ人も生きている人も全国的調査をしてくれと言っている。向こうの方は死んだ人だけ調査しているというらしい。そんなことなら、あなたは後ろを向いて、おい、生きているやつもついでに調査しろ。おれの責任じゃないけれども、おまえの方で調査して、いい資料があったらよこせ、そこでおれは方針を決める。これで、もうできるじゃありませんか、あなたは閣僚のお一人なのだから。私の言う意味はおわかりでしょう。やってくださいよ。これで終わりますけれども、どうですか。
  26. 小沢辰男

    小沢国務大臣 総理府総務長官とよく相談してみます。五十二年度の調査の実態、それから五十三年度のものは予算が通過してから実行ですから、両方でよく協議してみます。
  27. 横山利秋

    横山委員 お願いします。では終わります。
  28. 木野晴夫

  29. 平石磨作太郎

    ○平石委員 私は、戦傷病者戦没者遺族等援護法に関連して、戦争参加者の一人として、かねてから問題になっております旧従軍看護婦の、恩給適用を含め何らかの救済措置を求める問題について質問をいたしてまいります。  この問題は、すでに国会において、たびたび取り上げられております。旧陸軍海軍看護婦はもちろんのこと、日赤救護看護婦は白衣の天使として召集され、陸海軍の命令のもとに国家行為たる公務、すなわち戦闘に参加し、ときには兵隊と同様に弾薬の運搬あるいは搬送に協力をし、また軍の衛生兵とともに傷ついた将兵の救護、看護に当たってきた事実、まさに女性兵士として取り扱われておったわけです。また終戦後は、兵隊と同じく捕虜として外地に抑留され、そして第一次引き揚げが昭和二十八年、以来十八次にわたって、昭和三十五年に引き揚げておられます。そういう形で長期抑留をされて苦労をされておるわけです。こういった従軍看護婦が兵同様に救済処遇を求めることは当然のことです。また国民的な立場からも、戦後三十二年間放置してあることに強い憤りすら感じておる。全国からの激励の電話や手紙、あるいはテレビラジオ等によってマスコミが国民的な立場から、その人たちを激励しておられる実情、こういうことを考えてみますと、これこそ行政で解決をつけなければならない戦後処理の大きな問題だ、こう認識をするわけです。  このような事実を踏まえて、国会において請願が三回にわたって採択をされております。さらに五十年十二月十八日の衆議院内閣委員会、あるいは五十年十一月六日におきましては参議院内閣委員会で附帯決議がなされており、そして参議院内閣委員会におきましては、当時従軍看護婦として苦労された岡松八千代さんが参考人として実情を述べておられます。こういったことを踏まえて、七十七国会におきましては、参議院段階において恩給適用の特例法すら野党が提出をした、こういう経過をたどっております。さらに衆議院内閣委員会におきしまても、野党として各党一致、特例法の提案をする予定でありましたけれども、恩給局長の前向きな答弁等もあって、これを差し控えておるという実情にあるわけです。そういう経過をたどって、私も昨年の社労委員会において、この問題を取り上げてまいりました。そして今国会におけるいわゆる衆議院の一般質問としての予算委員会で取り上げ、さらに各党が一致して、いままでに三十名の国会議員がこの問題を取り上げております。そして過日の社労委員会におきましては、社会党の金子先生もこの問題を取り上げました。そのように政治的には過去四十七年以来ずっと各党一致してこの問題に取り組んでおるわけでありまして、こういった情勢を踏まえて厚生大臣は、このことをどのように受けとめるのか、ひとつお伺いをしてみたいと思うわけです。
  30. 小沢辰男

    小沢国務大臣 平石先生、ずいぶん前から日赤従軍看護婦の問題につきまして御熱心にいろいろ御検討いただいておること、私も承知をいたし、かつ敬意を表しておるわけでございますが、私、この前も申し上げましたように、この問題については、特に看護婦さんという立場、しかも最前線で軍人、兵士と一緒になって仕事をしなければならないような方々のことを考えますと、しかも戦地で砲煙弾雨の間に活躍されるわけでございますから、私としては、おっしゃるとおりだろうと思うのであります。ただ従来まで、戦傷または戦没以外は援護法対象にはしていない。これはいろいろな理由があってのことでございますが、それともう一つは、同じように戦地にありまして兵たん部なり、あるいはまた基地の作業なりその他に従事されました一般軍属、準軍属方々等が約数百万おられるわけでございますので、これらの方々に対する均衡といいますか、そういう点から政府部内で非常に慎重にやってきて、問題が進んでいなかったわけでございます。  国会の四十七年以来の問題の取り上げ方、特にこの問題については他の軍属、準軍属と違いまして特別な事情にあるという御議論等もございますものですから、総理府の方でいま検討を進めていただいているわけでございます。それについて、同じ内閣における閣僚として、私は協力を申し上げるにやぶさかではないという立場から、いろいろと実は今後の進め方いかんによっては私ども協議に積極的に参加していきたい、かように考えておるところでございます。
  31. 平石磨作太郎

    ○平石委員 こういった事実について、どのように受けとめておられるか。恩給局の方に答弁を願います。
  32. 小熊鐵雄

    ○小熊説明員 ただいま小沢大臣の方から説明がありましたように現在、恩給局として、日赤問題について恩給法そのもので処遇するということは非常に困難であるということにかんがみまして、先般、私ども大臣が御答弁申し上げたように、恩給法以外の何らかの方法で処遇する。どういう方法が適当であるか、これを積極的に検討せよ、こういう大臣お話もございまして、ただいま検討を進めておるということでございます。
  33. 平石磨作太郎

    ○平石委員 いまの御答弁で、いま申し上げた事実については厚生大臣並びに恩給局が確認をされたわけです。それで恩給局のいまの御答弁の中に、恩給法の適用については非常に困難なものがある、こういうお話がございました。これは前々から国会で論議を重ねながら、その点の解明がまだできません。恩給の適用ということになりますと、昔の軍人恩給法を見てみますと、四十一条には「恩給ノ支給ハ陸海軍大臣ノ證明ニ依リ恩給局ノ審査ヲ經テ内閣総理大臣之ヲ裁定ス」こういう規定がございます。それから新しいいまの恩給法の関係を見てみますと、恩給給与規則第一条では、本属庁を経由して請求する、こうなり、さらにそれを受けた恩給給与細則、この第二条におきましては、軍人軍属の恩給は退職時における都道府県知事及び厚生大臣を経由して差し出すことを要す、こういう規定になっております。したがいまして、恩給適用が困難だといういまの恩給局の御答弁、そして恩給を請求するについては厚生大臣を経由してすることを要す、こういう規定等からいたしますと、この看護婦さんたちが戦場に参加をした一つの根拠をやはり明らかにしていかねばならぬ、私はこのように思うわけです。したがって、この看護婦さんたちが兵同様に動員をされた根拠について、厚生大臣お尋ねをいたします。
  34. 河野義男

    河野(義)政府委員 看護婦が動員された根拠と申しましても、援護局におきましては、先ほど大臣から申し上げましたように、看護婦としてけがをされ、あるいは死亡された方について援護する、こういう援護法を運用しておりまして、その根拠についてはお答え申し上げかねるわけでございます。
  35. 平石磨作太郎

    ○平石委員 いまの御答弁で、戦傷病者戦没者遺族等援護法で、傷つかれあるいは死亡せられた従軍看護婦については処遇がなされておるわけですよ。処遇がなされるということは、公務に起因をしたということ。公務に起因したのは、さいぜん私が申し上げたように国家行為としての戦闘行為に参加した、これが公務に起因ということになるわけです。そうすると、この恩給適用においても、あるいは戦傷病者戦没者遺族等援護法についても、適用するについては、やはり看護婦さんが戦場に動員をせられた根拠がわからずしてできますか。
  36. 河野義男

    河野(義)政府委員 日赤救護員が戦時衛生勤務につかれる場合には、日赤社令その他の規則によりますと、陸海軍大臣から救護員の派遣の要請があるわけでございます。その要請を受けまして、日赤本社あるいは日赤の支部から救護員の方に対して召集がなされるわけでございまして、召集があって、これに応じられますと、宣誓をされまして軍属の扱いをされるわけでございまして、戦時衛生勤務につかれまして、陸軍刑法等の適用もあるわけでございます。そういう実態だと私ども理解しております。
  37. 平石磨作太郎

    ○平石委員 いまのお話日本赤十字社令という勅令が出てまいりました。したがって、いわゆる女子を戦場に動員するということについては、私は根拠として、ひとつお示しをしてみたいのですが、旧憲法、昔の大日本帝国憲法の第二十条「日本臣民ハ法律ノ定ムル所ニ従ヒ兵役ノ義務ヲ有ス」そこで「法律ノ定ムル所ニ従ヒ」という兵役法がここにございます。この兵役法によりますと「帝国臣民タル男子ハ本法ノ定ムル所ニ依リ兵役ニ服ス」したがって男子が兵役に服す、こうなっておる。だから女子は兵役に服することはできなかった。義務はなかった。そのなかった女子を戦場に連れていった。それはいま局長のおっしゃった日本赤十字社令によるわけです。  その日本赤十字社令は、これは私も前の国会で論議をいたしましたが、いわば法律です。人権を制限することについての勅令は法律であるということ。そしてもう一つ、旧憲法の三十一条に「本章ニ掲ケタル條規ハ」——本章というのは第二章の臣民の権利義務です。「本章ニ掲ケタル條規ハ戦時又ハ國家事變ノ場合ニ於テ天皇大権ノ施行ヲ妨クルコトナシ」こうなっておる。だから、天皇の大権事項としての勅令は法律であるということです。それに基づいて陸海軍大臣の定むるところにより日赤社長が看護婦さんたちを召集したということです。  だから、そこでは起因した公務ということについての十分な根拠は、旧憲法から兵役法、さらに日赤社令という勅令からいって厳然たる形式的な事実だと私は思うが、どうですか。
  38. 河野義男

    河野(義)政府委員 日赤救護員につきましては、先ほど申しましたような手続によりまして日赤救護員が召集されまして戦時衛生勤務につかれるわけでございまして、その実体に着目いたしまして、援護法上は軍人軍属といたしまして、国との特別な関係、使用関係をそこに見まして、援護措置を講ずることに相なっておるわけでございます。
  39. 平石磨作太郎

    ○平石委員 それではもう一つお伺いします。  この旧日赤社令の中に、第一条に「日本赤十字社ハ救護員ヲ養成シ救護材料ヲ準備シ陸軍大臣海軍大臣ノ定ムル所ニ依リ陸海軍ノ戦時衛生勤務ヲ幇助ス」こうなっております。この陸海軍大臣の「定ムル所ニ依リ」という、この定むるところは何ですか。
  40. 河野義男

    河野(義)政府委員 日本赤十字社の任務の一つの大きい柱は救護員の活動だろうと思います。それにつきまして、先ほど申しましたように日赤救護員がそういった戦時衛生勤務につかれる場合の手続が、それぞれ陸海軍の規則等で定められているというふうに理解しておるわけでございます。
  41. 平石磨作太郎

    ○平石委員 その陸海軍大臣の定むるいわゆる陸軍省令だと思うのですが、これはありますか。どういうように決めていますか。
  42. 河野義男

    河野(義)政府委員 いま、その省令は手元にございませんが、たとえば日赤救護員が充員召集をされまして軍の指揮下に入られる場合には、宣誓等をされまして、そして軍属処遇がなされるわけでございます。そういったことが省令その他の規定で定められているというふうに私は理解しておるわけでございます。
  43. 平石磨作太郎

    ○平石委員 その省令がお手元にないとおっしゃいますが、省令を後でいいですから出していただきたいと思います。  それから、いま局長さんは軍属軍属というお話でございました。もちろん引き揚げ証明書にも軍属としての判をついてあり、あるいは、いままでの処遇の戦傷病者援護法においても軍属として取り扱われております。  ところで、先ほどから出ました勅令。勅令はいわば法律なんです。この法律の第十条に「看護婦及看護人ノ待遇ハ兵ニ準ス」とあるわけです。この「兵ニ準ス」というのは意味は何でしょうか。
  44. 河野義男

    河野(義)政府委員 いま御指摘のように日赤救護員、看護婦の待遇は兵に準ずという規定が日本赤十字社令にあるわけでございますが、その待遇というものはどの範囲のものを指しているか、その辺はいま定かではございません。たとえば、そういう軍という団体、組織の中におけるいろいろな儀礼上の処遇問題もありますし、あるいは給与その他の問題もあると思いますが、その辺どの範囲のものを指しているか、いまそれは定かではございませんけれども、日赤救護員の特殊性もございますので、そういったことも踏まえまして、その待遇につきましては兵に準ずるというような規定だろうというふうに私、理解しております。
  45. 平石磨作太郎

    ○平石委員 いま定かではございませんということでお話がありました。この軍属になったということの根拠を一応探してみますと、軍属として格づけをされた、いわゆる軍属だということになっておるのは、陸軍の通達によるわけなんです。陸軍のいわゆる衛生勤務に服する日本赤十字社救護員の身分取り扱いに関する件といお陸軍大臣の通達があるわけですが、通達、通牒というのはこれは行政指導ですよ。「兵ニ準ス」というのは勅令なんですね。ひとつお伺いしてみましょう。勅令と通達と、どのように優先効が違いますか。
  46. 河野義男

    河野(義)政府委員 日本赤十字社令は、先ほど先生から御指摘がありましたように旧憲法下における一つの独立命令でございまして、法律と同じような効力を持っている面もあるわけでございます。通達等はその法令を実施するための細目について指示したものでございまして、内容的には一致するというふうに考えております。
  47. 平石磨作太郎

    ○平石委員 優先効については、その勅令を実施するについての陸軍大臣の通達なんだ、こういうお話、そのとおりだと思います。この陸軍大臣の通達「戦時衛生勤務ニ服スル日本赤十字社救護員ノ取扱ニ関スル件」昭和十四年七月十七日陸普四四三八号、これによりますと「戦時衛生勤務ニ服スル日本赤十字社救護員ノ取扱ニ関シ左ノ如ク定ム」ということで、第二条に「救護員ノ始メテ陸軍部隊ノ指揮下ニ入リタルトキ当該部隊長ハ之ヲシテ宣誓セシムルモノトス但シ特別ノ事情アルトキハ陸軍大臣ノ指定スル者ヲシテ宣誓ノ式ヲ行ハシムルコトヲ得」それから第三条に「前条ノ規定ニ依リ宣誓シタル救護員ハ其ノ時ヨリ陸軍ノ指揮下ヲ離ルル時迄之ヲ軍属トス」こうなっています。これはいま読み上げたように主題にある、いわゆる救護員の取り扱いに関する件という通達なんです。そして、いま答弁の中で、目的は一緒だ、こうおっしゃいましたが、この勅令の中には「兵ニ準ス」とあるわけです。だから兵に準ずる者が軍属としての位置づけをせられたというのは通達によってなされておるわけです。  だから「兵ニ準ス」というこの法律に相当すべき勅令は、やはり身分においても、あるいは待遇においても兵に準ずるのだ。昔は、先ほど旧憲法で言いましたように、あるいは兵役法から来ますように、女子の兵隊はなかった。女子の兵隊がないから「兵ニ準ス」とこうなっておるわけです。だから、実質はもう兵隊と一緒ですよ。陸軍の中に衛生兵という兵隊がおりました。この衛生兵は負傷せられた傷兵の救護、看護に当たるのを任務とした。それと同じように看護婦さんたちが衛生業務に携わったということは、これは実質において女性兵士としての取り扱いです。ただ形式的には、あくまでも兵というものは女子にはなかったから「兵ニ準ス」とこうなっておる。それを軍属と、通達によって、「取扱ニ関スル件」で、なされている。そういう意味で私は、これは根拠は非常に薄弱だと思うのです。  だから、あくまでも軍属としての、戦傷病者の方では援護法処遇がなされるのですから、それはいいとして、いま大臣が、傷害を受けられた、あるいは死亡せられた者に限ってとおっしゃった。そうしますと、厚生省は戦傷病者の援護法によって、この従軍看護婦が現地において公務で戦った、このことは評価をしておるわけですね。法律の上で評価しておる。具体的に評価をしておるわけです。その評価をしたことが、傷ついた者、死んだ者と、これに限定をしておるわけです。だから、その評価そのものは、何も生きておろうが死のうが、負傷されようが差異はない。そうしますと、生きた者について、生きて無事に帰られた、いわゆる無傷で帰られたという方の評価を行政的に行わない理由を言ってください。
  48. 河野義男

    河野(義)政府委員 先生が先ほどお話しのとおり、日赤の従軍看護婦につきましては、戦争中、国との特別なそういう使用関係がありましたので、国は使用者責任観点から、援護法によって処遇しておるわけでございまして、いまの援護法の体系におきましては、そういう戦争中、戦時衛生勤務につかれて大変功績があったわけでございますが、そういう方々についての処遇の制度は現在ないわけでございまして、厚生省といたしましては、傷つかれた人、不幸に亡くなられた人について軍人と同じように軍属として処遇しておるわけでございます。
  49. 平石磨作太郎

    ○平石委員 ないわけでしてというのが、それは法律のたてまえからはそうです。法律の評価を、生きておる者と死んでおる者と差異はないんだ。この評価はどうですかということです。  いま私、ちょっと大臣にお聞きいたします。この「兵ニ準ス」ということと軍属との関係。それと、いま局長がおっしゃったように、いわゆる援護法の関係では、負傷者ないしはそういった方に限っておる、この評価ですね。「兵ニ準ス」ということと、それから生きておろうが死のうがどうしようが、看護婦さんが戦地にいて公務で働いた、これの評価は、私は生きておっても死んでおっても一緒だと思う。そのことの見解について、大臣のお答えをいただきたい。
  50. 小沢辰男

    小沢国務大臣 援護法の精神というのは、実は基本的には国との一定使用関係、それから特に特別権力関係にある方々をまず基本にしているわけでございますけれども、それらの方は、いわば遺族としての恩給法の処遇、それから戦傷病者としての傷痍軍人としての処遇というものがございますけれども、これは国家補償観点からやっているわけでございますが、それに準ずる形で戦没者と戦傷の方々だけを援護法でやる、こういうたてまえになっております。ただいま先生がおっしゃったように、確かに兵に準ずるというのは、処遇といいますか、待遇面では兵に準ずるという規定をはっきり書きまして、しかし身分は軍属だ、こういうことでございます。一方、恩給法のたてまえからいいますと、国家との特別な権力関係でない者は、その程度の薄い者は、軍属以下は恩給法の対象になってないわけでございます。したがって、身分は軍属だということがございますので、恩給法では、これを恩給の対象にはしない。たとえ同じように召集を受けて帰ってきた方でも、同じ部隊におられた看護婦さんと、その方との違いが恩給法上あるのは、片方は召集によって兵役の任務について特別権力関係国家との間に生じているから、その人が元気にお帰りになった。戦時加算をつけて恩給で処遇する。片方の方は特別権力関係をそこまで見てないものですから、処遇は兵に準じた待遇はするというふうに何かのランクを決めなければいかぬですから、そうやっておりますけれども、身分は軍属だと言っているものですから、生きて帰られた方には恩給法の適用はない、こうやっておるわけです。  そこで矛盾が出てくるわけでございますので、私ども援護法は、やはり戦傷という事実あるいは戦没という非常に高度の犠牲というものを考えて、これを軍属に対しても、あるいは準軍属に対しても適用を申し上げて、恩給ではどうにもならぬものを、私どもはその非常に重い戦没と戦傷という事実に着目して援護法では特に準軍属軍属までを援護対象にしている、こういうことで、いままで健康でお帰りになった準軍属軍属方々、しかもその中に従軍看護婦さんが含まれるという体系で、いままでは援護対象にしなかった、こういうことでございます。  そこで問題は、一体いまの陸海軍のその法令、しかも赤十字社令、これが陸海軍大臣の命令によって赤十字がこれに応ずる形で本人に召集をする。しかもその召集する権限は日赤の社長に、日赤社令によってその権限が出てくる。その社令は戦前のあれですから、これは法律と同じような権限を持つということに着目して、その行為国家権力関係に見るか。この前、提示されました赤紙によって応召された方々国家との即権力関係と見るかどうかが、この議論の一番のポイントだろうと思うのでございます。  そういたしますと準軍属あるいは軍属との一線を引くものを、そこで何か解決の方途を見出すことができないだろうかと私は個人的には思っているわけでございますが、その赤紙すなわち赤十字社令によって行われた召集、それについての応召、これは恐らく事実上として断ることはできない問題だろうと思うのです。われわれ男子の兵役の赤紙召集と同じような実態ではないかと思うのですけれども、それが法的な構成としてどうなっているかということを、もう少し私も調べまして、この問題についての打開の道を探っていくべきじゃないかな、こう思っておるわけでございます。
  51. 平石磨作太郎

    ○平石委員 いまの大臣のお答えは、もう従来の政府のお答えそのものなんですね。いま問題点については大臣、指摘ございました。やはり陸軍大臣の定むるところによって、ここにもございますが、「陸亜密第一〇三号救護班派遣ノ件達陸軍大臣東條英機昭和拾七年壹月拾四日日本赤十字社社長公爵徳川圀順殿南方軍及臺灣軍ニ於ケル衛生勤務幇助ノ為別紙要領ニ依リ其社ヨリ救護班ヲ派遣スヘシ」こういう陸軍大臣命令によって日赤社長は召集をした。そしてここにも、先ほど大臣がおっしゃいましたが赤紙があります。この赤紙は、これに基づいて日赤社長が「戦時召集状救護看護婦山崎近衛特別救護班要員トシテ召集ス依テ九月弐日午後拾時高知縣高知市西弘小路日本赤十字祉高知支部ニ参著シ此ノ召集状ヲ以テ届出ラルヘシ昭和十二年九月一日日本赤十字祉高知支部」こういう形で出されておるわけです。  だから私は、こういう事実にしろ、いま法的にずっと御説明を申し上げ、大臣の理解を深めていただいたように、こういう赤紙召集というのは他にはありません。国家総動員法に基づく戦争の協力者もおります。こういった方々軍属さんは、すべていわゆる徴用という形式で徴用されたわけです。こういうように戦時召集状という形の赤紙を出されたのは、いまここにある兵役法による兵隊、そして日赤社令によるところの看護婦、これ以外にはないのですね。そして、局長に要望をしておきましたが、「陸軍大臣ノ定ムル所ニ依リ」という、この定むるところによる陸軍省令、その定むるところによって陸軍大臣は日赤社長を指揮監督しておるのです。その定むるところが、私の調査で、私もまだそこをよう見つけておりません。だから、いま局長は、ここに持っていないとおっしゃるのだから、後で出していただくように私は要望をいたしましたが、そういう一つの法的な経過があるし、経路があるのですよ。そして、事実としてこういうことが発行せられておる。だから、私はこれを見たときに、法的にも、事実の上からいっても、いま大臣がお答えがあったように、これは「兵ニ準ス」ということは、身分も準ずれば処遇も準ずるんだということになると私は思うのですよ。  大臣のいまのお答えは、政府答弁と同しように、身分については軍属でありまして、そして処遇については云々と、こう言われる。私は、この召集形式においてそうであるし、それから召集をされてから以降の看護婦さんの取り扱いについての陸軍大臣の通達を見ましても「戦時事務ニ際シ陸軍統轄下ニ在リテ衛生勤務ヲ幇助スル其社救護員ハ宣誓若ハ読法ノ式ヲ履行シ軍属トシテ陸軍刑法及陸軍懲罰令ノ適用ヲ受クルモノトス。」だから、陸軍刑法、陸軍懲罰令が適用されるということは特別の身分を持っておるからだ。一般刑法の適用はないのですから特別の身分を持っておる。その特別の身分の根拠は、社令の十条にいう「兵に準ス」というところから出てきておるんだ、私はこう理解が可能だと思うのですよ。そして社令の第十一条には「陸海軍ノ戦時衛生勤務ニ服スル日本赤十字社救護員ノ給与ハ陸軍大臣海軍大臣ノ定ムル所ニ依リ之ヲ官給スルコトヲ得」こうなっている。だから、給与も陸軍と同じように官給いたしましょう。陸軍刑法、懲罰令も陸軍と同じように適用いたします。そして召集については同じく戦時召集状をもって、赤紙召集でもって召集いたします。すべてが兵隊と一緒じゃないですか。だから、これの根拠はどこから来ているかというたら、勅令第十条の「兵ニ準ス」というところから出てきておるのです。これを軍属と言うのは、これは形式的に陸軍通達によってなされておるが、やはり先ほど申し上げたように勅令と通達とでは優先効が違う。あくまでも勅令が優先するんだということの理屈は私は十分可能だと思う。そこをちゅうちょする必要はない。だから私は、大臣も「兵ニ準ス」ということを、身分そして処遇においてもそうなんだと、ひとつ決断してください。
  52. 小沢辰男

    小沢国務大臣 平石先生はどうも私が従来と同じで、ちっとも前進をしていないとおっしゃいましたが、私は、最後に申し上げたのは相当前進した考え方で申し上げているつもりなんですね。  ただ要するに、一番いま総理府なりあるいはわれわれの方で、この問題について長くかかっておりますのは、総務長官もおっしゃっておるように、私も前から予算委員会でも、ここでも申し上げているように、気持ちの上では何とかしたいなと思っておりますけれども、一番の支障は、軍属、準軍属一般方々数百万に、これをどうやって及ばないような線を引きつつ、この従軍看護婦さんだけの取り扱いをするかというところに苦労しているんだろうと思うのです。私は、従来ともそうだと思うのですね。  そこで、先ほど申し上げたのは私の所見ですけれども、これは総理府とよく相談してみないといけませんが、日赤社令によって召集、応召、それに応ずる、それの行為が、しかも、その後、社令に基づいた身分関係が、陸海軍大臣の要請によりということになっておりますけれども、それによって応召された方が特別権力関係に立つと解釈できるかどうかがポイントだろうと思うのです。むしろ、身分処遇を兵に準ずるということをおっしゃいましたが、恐らく、これはいままでのいろいろ挙げられましたものから見ますと、身分は軍属、待遇、処遇については兵に準ずるということであって、処遇について兵に準ずるという文言だけから、これを兵隊と同じ特別権力関係に置くという解釈は、これだけでは私は無理だろうと思うのです。したがって、どうしても救済の道としては赤十字社令というものの法的な性格。それに基づいて行われた召集。それに応じた応召。そして現実に戦地において同じような勤務についた。この関係を、国家による特別権力関係にその人が立ったと見るかどうかが分かれ目だと思いますので、この点を検討させていただきたいと申し上げているのは、相当私は前向きに申し上げているつもりなんです。
  53. 平石磨作太郎

    ○平石委員 いま大臣が前向きに検討ということをおっしゃいましたので、一応ここで、この問題はおきますが、なお、恩給法が四十一年に一部改正がなされました。さらに国家公務員共済あるいは地方公務員共済、長期給付に関する施行法その他ございます。これには旧従軍看護婦が戦地において戦時衛生勤務に服した期間というものが算入をされてきたわけです。この算入されてきたことについて、ちょっと恩給局へお聞きいたします。  一つの例を挙げましょう。看護婦長として従軍、実在職五年、恩給公務員として勤めた実在職十四年、通算在職十九年、これは適用になりますか。
  54. 手塚康夫

    ○手塚説明員 ただいま先生が挙げられました設例の場合には、十四年ですと本来文官として十一年足りないわけでございますが、その場合に、各期間として、戦時衛生勤務に服した期間を特別に評価してそれを加えて見るということで資格を与えております。
  55. 平石磨作太郎

    ○平石委員 今度大蔵省へお聞きいたします。  看護婦として従軍、在職年が五年、あと国家公務員共済組合員としての期間が在職十五年、通算いたしまして在職二十年、これは年金の適用になりますか。
  56. 山崎登

    山崎説明員 年金の適用になります。
  57. 平石磨作太郎

    ○平石委員 いまのケースで従軍看護婦として従軍、実在五年と、それから地方公務員共済組合員としての期間、在職十五年、適用になりますか。
  58. 桑名靖典

    ○桑名説明員 日本赤十字社の救護員で戦後、地方公務員になりました者のうち、いまお話がございました看護婦というその処遇でございますが、旧陸海軍の将校、下士官に相当する職に定められている人につきましては、恩給公務員として恩給公務員期間と同様に通算する措置をとっているわけでございます。その期間が兵の階級に相当する看護婦等につきましては、共済制度上は、いわゆる資格期間という期間でございまして、いま御質問のございました看護婦の期間が将校相当でございますと二十年の普通在職年の額の計算の基礎になりますが、兵の階級に相当する者でございますと、資格期間として足して二十年でございますから、年金権は発生いたしますけれども、年額の基礎には、そういう公務員となった十五年が基礎となって計算することにされております。
  59. 平石磨作太郎

    ○平石委員 いずれにしろ、そういう形で戦地衛生勤務に服した期間が認められたということですね、行政的に。  大蔵省にお聞きをいたします。  こういう従軍看護婦が、陸海軍看護婦を含め——いま私は日赤看護婦のことを申し上げました。陸海軍看護婦はもともと雇用関係があるのだから私は触れてないのです。これを忘れてもらっては困るのですが、日赤看護婦について、いま大臣とやりとりしたように、身分の問題があるから私は日赤のみ申し上げておりますが、陸海軍看護婦、これを大蔵省はいま実施しておりますところのあの特例法によって何人処遇されておるのか。いわゆる旧共済令による処遇が、どのような形になって、どのくらい処遇されておるかをひとつお示し願いたい。
  60. 山崎登

    山崎説明員 陸海軍の看護婦さんにつきましては、当時任官者につきましては恩給法の適用がされておりました。また、雇用人につきましては旧共済組合令の適用を受けておったわけでございますけれども、その場合、陸海軍の女子たる組合員につきましては退職年金制度の適用がございませんでした。それで、当時は保険システムになっておるわけでございまして、掛金も相当低率にしてございます。このことは、女子たる組合員につきましては長期在職者という方々が少なかった。したがって掛金も少なくて、退職年金の適用を受けていないというのが実情でございまして、現実に、どれだけ年金の適用者がいるかというのは、ちょっと私どもの手元に資料がございません。
  61. 平石磨作太郎

    ○平石委員 いわゆる国家公務員共済組合として適用の、こういった従軍看護婦を含めた処遇の給付額、これをひとつお示し願いたい。
  62. 山崎登

    山崎説明員 給付額それ自身は、いまも申し上げましたように対象人員もわかりませんので、給付額自体もわからないわけでございます。
  63. 平石磨作太郎

    ○平石委員 私のとった資料によりますと、四十六年が五百七十三億円。これはすべての、いま言った旧共済令による看護婦を含めた全員の額。それはわかるのでしょう。その金額が、もう時間がないから私申し上げます。五十一年度で二千五百九十三億円。間違いございませんね。その二千五百九十三億円の中で、いわゆる看護婦さんたちのその当時の戦時衛生勤務に服したものを繰り込んだ、これは国家補償、いわゆる昔の恩給法によるところの整理資源として国庫から入っておるわけですね。共済組合という法律は、戦後、掛金をかけてやるのです。ところが、それに引き継いだから、国庫から、その整理原資として五十一年度において千二百六十五億円、出ております。地方公務員の場合、どのくらいおって、どうか。ひとつまた御返事を願いたい。
  64. 桑名靖典

    ○桑名説明員 この制度ができましたのが昭和四十一年の十月でございますか、その当時の調査によりますと、従軍看護婦であられた方で召集解除後、地方公共団体に勤務した方々が、都道府県の職員になられた方が二十六人でございます。それから市町村の職員になられた方々が九十一人、計百十七人おられるわけでございますが、この方々のうち二人が婦長の職にあられた方でございますので、いわゆる恩給公務員期間として額の計算の実期間に算入されているわけでございます。そのほかの方々については、先ほど申し上げましたいわゆる資格期間として、共済年金の受給権の発生の基礎になっている期間に算入されている方々でございます。
  65. 平石磨作太郎

    ○平石委員 いま御答弁がございましたように、それぞれ国家公務員、地方公務員になられた方は戦時衛生勤務に服した期間を、いまおっしゃったように日赤の看護婦さんもこれに入っておるわけですが、それを国家公務員共済あるいは地方公務員共済に認めた。あるいは恩給法の一部改正によって婦長以上は認めたということは、その根拠は何か。ひとつ恩給局の方に恩給についてお答え願いたい。
  66. 手塚康夫

    ○手塚説明員 この点は、過去、制定のときの経緯、必ずしもつまびらかではございませんが、私考えますに、やはり本日先生がいろいろ議論なさったような点を考慮して、恩給公務員の資格期間として年数に足らないような方を救うための一つの方策として、そういう通算措置をとられたものというふうに理解しております。
  67. 平石磨作太郎

    ○平石委員 自治省、どうですか。自治省はなぜそれを加えたか。戦時衛生勤務の看護婦さん、その期間だけをなぜ加えたか。
  68. 桑名靖典

    ○桑名説明員 日赤の従軍看護婦の期間について、恩給法上の取り扱いが恩給公務員期間に算入されたことに伴いまして、恩給法の適用を受けた方々については共済制度上は過去の期間を全部通算する措置を取り扱っておりますこととの均衡上、そういう方々については通算をする道を開いたわけでございます。ただ、恩給法上、恩給公務員の期間に算入しなかった、いわゆる兵の階級にあられる看護婦さんの方々については恩給法の適用がないわけでございますので、共済組合制度上、過去の期間を算入するわけにはまいりませんので、恩給公務員との均衡上、資格期間として、その期間を加えることによって年金権を発生させる、その資格期間として取り扱ったわけでございます。
  69. 平石磨作太郎

    ○平石委員 ただいま恩給局と自治省にお答えいただきましたが、この四十一年七月八日政令第二百四十五号、これは恩給法改正に基づくものですが、この政令の第一条において、恩給公務員に相当する救護員として定められている者は、日本赤十字社令、明治三十四年勅令第二百二十三号によって規定されている理事員、医員、調剤員、看護婦監督、書記、調剤員補、看護婦長及び看護人長となっている。しかして、同社令による救護員としては、そのほかにも看護婦及び看護人が挙げられているが、これは恩給法上の公務員に相当する者から除かれている。だから恩給公務員としては婦長以上が当然そういう形になった。それから共済組合の関係においては、やはり看護婦が共済組合員として資格期間として、いま御答弁になったように入ったわけです。資格期間として入った根拠は何なのかと先ほど私がお尋ねをしたのですが、これは日本赤十字社令に基づいて、こうなっておる。日本赤十字社令に基づく、いわゆる十条の兵に準ずるという規定から、日赤看護婦、皆さんから言われたように、いわゆる民間ですよ。公務員じゃないのです。民間人であるが、ただし日赤の社長のあの命令によって出ていった、さらに陸軍大臣の命令に服した。そして、十条の兵に準ずるということから、身分は軍属でございますとおっしゃいますけれども、兵に準ずるというところから、それぞれ恩給法の上に、共済組合法の上に空期間として入ってきたのですよ。恩給法ではお金が出ております。  だから、空期間としてでも認めたということは、資格期間として認めたことは身分があるということですよ。だから、その身分があるのであるなら、公務員になった者だけは、その公務員でなかった期間を引き継ぎますけれども、公務員にならなかった者は何の手当てもできません。法制上もできません。私はこれでは片手落ちじゃないかと思うのですよ。だから、そういうように公務員でなかった、いわば恩給公務員でもなければ共済組合員でもなかった期間の戦時衛生勤務の期間を、後で身分を取得した、保有した公務員には、ずっと継ぎ足してやっておる。ここを認めておるのですから、この認める期間は、国民年金に入っておられる、あるいは厚生年金に入って民間で活動しておられる看護婦さんについても、同じくその期間を私は資格期間として認めるべきじゃないか、これは第三の提案です。恩給法の壁が厚いというのであるなら、一歩下がって、そういう形ででも処遇が可能ではないかと私は思うのですよ。そういうことで、ひとつ御答弁をいただきたい。
  70. 小沢辰男

    小沢国務大臣 恩給法や旧令共済組合法等に通算を認めておるからといって、会社が主体になっております厚生年金をすぐ通算をしろというのは、ちょっと無理じゃないかと思うのですよね。国民年金法、当時全然ございませんし、これは旧令共済の通算に期間を認めたり、あるいは地方公務員でもそうですが、あるいは恩給法でも認めているというのは、やはり勤務の態様がそういう長期にわたって公務に従事したということをとらまえてやっておるわけですから、会社が適用事業所になっている厚生年金にこれを通算しろというのは少し無理じゃないかと思うのですよ。これは全然性格が違いますから、その点はひとつ、いまここで私がどうも余り軽々に検討するとか、そういうようなことは、ちょっとできないんじゃないかと思いますね。
  71. 平石磨作太郎

    ○平石委員 もう時間がなくなりました。  そこで、いま大臣がおっしゃったが、いずれにしろ稻村長官は過日の予算分科会においての質問の中で答弁がなされております。その答弁は、非常に前向きに検討をさしていただいて、今国会中に、今会期中に、実施の時期はともかくとして何らかの方向を見出したい、こういう答弁がなされておるわけです。そのように非常に前向きに進んでおるわけです。いま、事務当局あるいは大臣の御答弁をお聞きしたわけですけれども、非常にガードがかたい。だから私は、各党が一致したこの問題について、もっと積極的に稻村長官の御答弁を生かす形において、厚生省そして大蔵省あるいは自治省、そういったそれぞれの関連において空期間が認められておるのだから、協議を願って方針を打ち立てていただきたい。これは政府部内において、国務大臣として厚生大臣ひとつ、きょうは稻村長官見えていませんから稻村長官に言うわけにいきませんが、そういう御答弁を受けて政府部内で協議をし、第三の道なら第三の道考えていただきたいことを要望して、終わらしていただきます。
  72. 木野晴夫

    木野委員長 次に、工藤晃君。
  73. 工藤晃

    ○工藤(晃)委員(新自) 戦傷病者戦没者遺族等援護法等の一部を改正する法律案の質疑に関連いたしまして、本日は援護行政について幾つかの質問をさせていただきたいと思います。  まず最初に、遺族年金等の四回払いが今度行われてくるというふうに聞いておりますけれども、受給者の方からすれば盆、暮れに、ぜひそれをもらいたいというような御要望が強いように承っておりますけれども、それについて何か御配慮なさっておるかどうか承りたいと思います。
  74. 河野義男

    河野(義)政府委員 御指摘のように遺族年金等につきましては、従来から年二回払いで支給されておりましたけれども、近年、年金額が大幅に増額されまして、遺族の生計に占める年金の役割りが非常に大きくなりました。そこで今回、恩給や他の公的年金と同様に四回払いをすることにいたしたわけでございます。毎年一月、四月、七月、十月を支払い期とする予定でございますが、御指摘のようにやはり受給者からしますと、正月を迎える暮れに年金が欲しいということはもう十分理解できるわけでございます。そこで、従来から四回払いでございました障害年金も含めまして、恩給と同じように、いわゆる暮れ払いができるようにしたいというふうに考えております。その場合に、受給者の請求があるときには前年の十二月においても支払うことができるようにいたしまして、受給者の便宜を図っていきたい、かように考えておるわけでございます。
  75. 工藤晃

    ○工藤(晃)委員(新自) それはいつごろから行われるかということが一つと、それから、それをできるだけ多くの方々に通告をするというか、知ってもらう手段、方法については、どのように考えていらっしゃいますか。
  76. 河野義男

    河野(義)政府委員 実施の時期でございますが、五十四年の一月払いから適用するという予定でございますので、したがいまして五十三年の十二月から、受給者が請求されれば十二月払いができる、こういう態勢でございます。しかし、これは請求があった場合にその特例を認めるわけでございますので、十分この制度の趣旨を周知徹底しまして、そういう希望される方がこの制度を活用されるようにPRしていきたい、かように考えております。
  77. 工藤晃

    ○工藤(晃)委員(新自) ぜひ多くの方々に熟知していただけるように御努力をいただきたい、かように考えて、この問題を終わります。  次に、トロトラストの問題について幾つかの質問をさせていただきたい、かように思います。  これはドイツで開発されました二酸化トリウムのゾル、溶液でございまして、血管や肝臓、脾臓のエックス線の血管造影剤に好んで使われた造影剤でございますが、この後遺症が問題になって、一時大変問題を提起した問題だろうと思いますけれども、このトロトラストの顆粒の凝集化というものと、それからトリウムの出す放射能という二つの問題が結局、後遺症の原因だというふうに言われておりますけれども、それについて、まずこれがどのようなところに、どのような後遺症をもたらすかについては、いろいろ研究もされておられるようでございます。たとえば肝臓とか造血器あるいはリンパ組織、こういうところへ好んで影響するという、こういうふうなことも言われておりますし、あるいは肝線維症、肝腫瘍、白血病、再生不良性貧血あるいはがん、こういうふうな発がん性を持っているというふうな、こういうところから大きな問題が提起されたと思いますが、このような問題について厚生省としては、現在どのような検診を実施されているのか。あるいは、その進捗状態はどのような状態であるかについて概略を御説明いただきたい、かように思います。
  78. 河野義男

    河野(義)政府委員 このトロトラストにつきましては、いま先生からお話がございましたように戦争中、戦傷の診断に際しまして、血管造影剤として使われたわけでございます。それが肝臓その他の臓器に沈着しまして放射線を出しておる、こういうことでございますが、これにつきましては五十一年度に専門家のお医者さんからなる調査班をつくりまして、いわゆる予備調査をいたしまして、今後のこれらのトロトラストを注入された方の検診はどういうふうにすればいいかというようなことを研究していただきまして、その予備調査の結果に基づきまして五十二年度、五十三年度、二年度にわたりましてトロトラストの注入された戦傷病者につきまして検診を実施いたしておるわけでございます。五十二年度におきまして、ほぼその半数を調査したい、こういうことで現在鋭意進めておるところでございます。五十三年度に終わりたい、こういうことでございます。
  79. 工藤晃

    ○工藤(晃)委員(新自) そうすると、いま政府が調査されているのは旧軍人軍属対象に調査をされているということでございます。その約半数とおっしゃいましたけれども、調査対象は大体どれぐらいの数でございますか。
  80. 河野義男

    河野(義)政府委員 先ほどトロトラストを注入された方と申しましたが、戦傷病者全員、いわゆる戦傷病者手帳を持っておられる方全員に、これを活用というふうに考えておりまして、戦傷病者手帳を持っておられる方が約十五万ございます。
  81. 工藤晃

    ○工藤(晃)委員(新自) 手帳を持っておられる方は、もちろん調査の対象になりましょうけれども、それ以外にも御自分では自覚症状がない、いわゆる潜在された患者さんも、あるいは検査すればたくさんいらっしゃるのじゃないかという気がしますけれども日本で、こういう造影剤が大体どれくらい、その時期に使用されたのか。その使用された本数というか対象者は大体どれぐらいあったのかということを概略つかんでいらっしゃるようでしたら、お教え願いたいと思います。
  82. 河野義男

    河野(義)政府委員 トロトラストの注入がどのくらい使われたか、はっきりした資料はございませんが、二万ないし三万とも言われております。
  83. 工藤晃

    ○工藤(晃)委員(新自) そうしますと五十二年、五十三年でこういう調査をなさる。二万あるいは三万という数が、その数字そのものを信憑性があると仮定しまして、大体その調査対象の中で確実にそういうものが使用されたのだというふうに発見できる数は大体何%ぐらいになるのか、お教え願いたいと思います。
  84. 河野義男

    河野(義)政府委員 戦傷病者手帳を所持される戦傷病者全員に呼びかけるわけでございますが、明らかにこのトロトラストを注入されてない方もあるわけでありまして、この中から、これに応じられる方が出てくるわけでございます。その結果、検診をやりまして、どの程度注入された人があるかという点につきましては、現在検診の実施中でございまして、はっきりしたことは申し上げかねますけれども、従前の予備調査なども考慮いたしまして私どもの予測では一%前後あるのではだかろうかというふうに推定しております。
  85. 工藤晃

    ○工藤(晃)委員(新自) そうしますと、要するに発見率はその程度であろうという予測からいきますと、対象者が千五百人ですか、それぐらいが大体対象者になってまいるということで解釈してよろしいでしょうか。
  86. 河野義男

    河野(義)政府委員 検診をいたしまして明らかにトロトラストが注入されて沈着している方が一%といたしますと、千五百人ぐらいではなかろうか、こういうふうに推測しておるわけでございます。
  87. 工藤晃

    ○工藤(晃)委員(新自) その中で、現実にもう、そういう発見者の中から、これは確かに障害がある、正常な状態ではない、こういうふうに認定できるような状態の人は大体何人くらいいらっしゃいますか。
  88. 河野義男

    河野(義)政府委員 まだ検診を続行しておりまして、むずかしいケースにつきましては判定委員会で判定してもらう、そういう作業中でございまして、個々のケースにつきまして、この人はどういう障害があるかというようなことは、まだはっきり全国的につかんでおりませんが、トロトラスト注入者で現に医療が必要な者につきましては、公務上の傷病としまして戦傷病者特別援護法に基づきまして必要な療養の給付をすることになっています。また、傷病恩給等の適用につきましても、トロトラストによる障害がありますれば、障害年金等について配慮するような仕組みになっております。現実に検診の結果まだ具体的な状況が把握されておりませんので具体的には申し上げかねますけれども、制度としては、そのような処遇、配慮することになっております。
  89. 工藤晃

    ○工藤(晃)委員(新自) もちろん、これは検査のやり方あるいは熱意の持ち方、そういうことで数字はずいぶん変わってまいろうと思いますけれども、現在は主にどういうところを拠点にして検査をなさっているのか。あるいは、もちろんこれは知らなければ受診をしてこないでしょうから、やはりそういうことに対して、どのようなPRをなさっているのか。そういう点について現況をお知らせ願いたいと思います。
  90. 河野義男

    河野(義)政府委員 この検診の呼びかけにつきましては、日本傷痍軍人会、日傷と申しますが、その団体を通して十分PRをいたしております。また、県におきましては戦傷病者カードがございますので、個々の戦傷病者につきまして呼びかけを行うようにしておるわけであります。また、その検診を担当する医療機関は、国立病院とか公立病院二、三カ所にお願いしてやっておるわけでありまして、こういった人たちの取り扱いについては、慎重に、かつ親切にやっていくということを特に指示しておるわけでございます。
  91. 工藤晃

    ○工藤(晃)委員(新自) この問題ばかりにかかっておれませんが、民間の方で、たとえば、いま対象になさっている以外の民間に流れた分の推定は、何か御調査その他でございますか。
  92. 河野義男

    河野(義)政府委員 いま民間についての状況は、私ども把握いたしておりません。先ほど申しましたようにトロトラストを受けられた戦傷病者については、できるだけ漏れなく検診をして、自後の管理が十分できるようにということで現在やっておる状況でございます。
  93. 工藤晃

    ○工藤(晃)委員(新自) もちろん、これは輸入された薬品ですから、軍隊だけに使用されたものとは思えない。あるいはまた、それを特別調査することも困難でしょうから、各病院で、他の疾患のために来られて検査したところが、そういうものが出てきたということも、これは発見の段階においてはあると思うのです。それも、できるだけ国公立病院を中心に、もしそういう者がいたら報告をしてもらいたい、こういうふうな通達でもお出しになっておかれますと、そういうことについての留意がなされるのではないか。あるいはまた、新しい何かの発見ができるように思いますので、そういう点についての御配慮をしていただけるかどうか、お尋ねしておきたいと思います。
  94. 河野義男

    河野(義)政府委員 そういったことにつきましては、関係の局と十分連絡をとっていきたい、かように考えております。
  95. 工藤晃

    ○工藤(晃)委員(新自) じゃ、この問題はこれぐらいにしまして、せっかく調査をなさっておられるのですから、十分その調査を完全にしていただいた上で、ぜひそれに対する援護処置あるいは医療の給付その他についても十分御配慮をいただきたい、これを最後にお願いしておきます。  それから次に、簡単にお聞きしたいのですが、沖繩の墓園の開所というのですか、これがもうそろそろ予定されているというように承っておりますが、これの建設状況と、それに伴う沖繩における遺骨の収集状況、これを簡単にお答えいただきたい、かように思います。
  96. 河野義男

    河野(義)政府委員 沖繩の戦没者の墓園の建設につきましては、今年度と五十三年度の二年計画で進めておるわけでございまして、建設する場所は糸満市の摩文仁の平和記念公園の一画で、現在工事に着手しております。第一期工事としては、整地、納骨堂の基礎工事をいたしまして、五十三年度に完成するということでございます。完成はこの秋を予定しておりまして、その際、全国の関係遺族を集めまして、慰霊祭というようなことをいま考えておるわけでございます。  また、沖繩における遺骨の収集の事業でございますが、現在まで約十七万六千柱の戦没者の遺骨が収集されております。現在残されております遺骨は、落盤等のために中に入っていくことが非常にむずかしいごうの中あるいは地下ごうの中あるいは自然ごう、そういったところと、沖繩全体が戦場になりましたので、まだ南部地区の山野に遺骨が未処理のまま残っておるわけでございます。そこで、前段の非常に収集のむずしい自然ごうとかあるいは地下ごうにつきましては、現段階では機械力を使わなければ危険あるいは困難があるわけでございますので、それにつきましては国が直接実施する。それから山野にあります遺骨の収集につきましては、従来どおり県に委託して遺骨の収集を進めていきたい、かように考えておるわけでございます。
  97. 工藤晃

    ○工藤(晃)委員(新自) この際、できるだけそういう未回収の遺骨収集事業を積極的に推進していただきたい、これをお願いいたしておきます。  四つ目に、引き揚げ者に対する援護処置の現状を簡単に御説明いただきたいと思います。
  98. 河野義男

    河野(義)政府委員 引き揚げ者の援護につきましては、まず緊急援護につきまして、万全を期する必要があるわけでございます。それからさらに、中期的に見まして、早く日本の社会に適応していただくということでございますが、これにつきましては既存のいろいろな制度があるわけでございます。そこで、既存の制度を活用いたしまして、労働省とか、あるいは文部省とか関係各省が緊密な協力をいたしまして推進していかなければならない、かように考えておりまして、従来以上に努力をしていきたい、かように考えております。
  99. 工藤晃

    ○工藤(晃)委員(新自) 具体的に、引き揚げた後、その方々のめんどうをどのような形で、どれぐらいの期間、見ていらっしゃるのか。あるいは、その後、その方々日本の環境にどのようななじみ方をしているのか。あるいはまた、そういうことで大変困っていらっしゃる方が現在いらっしゃるのか。あるいはうまく社会環境になじんで生活をされているのか。そこら辺の実情を簡単にお答えいただきたい、かように思います。
  100. 河野義男

    河野(義)政府委員 まず、定着地におきます援護につきましては、今年度からでございますが、引揚者生活指導員によりまして生活指導とか、日本語の習得あるいは就労のあっせん、あるいは福祉制度の活用への助言指導、そういったことをマン・ツー・マンでやっていただくわけでございます。そのほか、生活の苦しい方には生活保護法の適用とか、あるいは就労につきまして、やはり日本語の習得というのは一番重要なことでございますので、日本語の習得のために生業補助も配慮していくとか、あるいは職業訓練、就職等につきまして労働関係機関と緊密な連絡をとっていくとか、あるいは子弟の教育につきましては文部省の関係でございますが、学校の指定とか、あるいは必要な教材の支給とか、そういったこと。また住宅の問題につきましては、地方公共団体と緊密な連絡をとりまして公営住宅について配慮する。そういったことを中期的、総合的に進めていきたい、かように考えております。  それから、すでに引き揚げられた方についての状況につきましては、全体としては把握しておりませんが、いろいろ個々にうまくいっているケースもございますし、非常に苦労されている方もございますが、今後、すでに引き揚げられた方々についての実態調査をいたしまして、今後の援護行政の参考にしていきたい、かように考えております。
  101. 工藤晃

    ○工藤(晃)委員(新自) その実態調査はどのような方法で、いつからなさって、結果がいつごろ出るのか、お教え願いたいと思います。
  102. 河野義男

    河野(義)政府委員 引き揚げられた方のその後の状況の把握につきましては、まずどういう調査、どういう内容にするか、まだ固まっておりません。早急にそういった調査の内容それから調査の方法、そういったことを固めまして、五十三年度中にまとめたい、こういう気持ちでおるわけでございます。
  103. 工藤晃

    ○工藤(晃)委員(新自) この問題について最後にお願いをしておきたいのは、引き揚げてきた当初あるいは比較的短期間だけごめんどうを見るというのではなくて、その方々の長期に及ぶ経過についても実態の中で十分御調査いただいて、それに対するアフターケアというものを中心になってやるところがないといけない。いろいろな援護方法というものが、いまもおっしゃったように非常に多岐にわたっているようでございますから、それを、実情もわからない、言葉も十分でない方々に、私の聞くところによると一年半ぐらいで打ち切られているようですけれども、こういう期間だけじゃなくて、長期に及んでそういうことのアフターケアを十分やっていくような政策を、今後ぜひお考えいただきたい、かように私は切望しておきます。その調査と同時に、そういうものに対する具体的対策を十分立てていただきたい、かようにお願いしておきます。  大臣、時間が参りましたので、最後にお願いしておきますが、こういう、ただいま質問をいたしましたものを含めて援護行政を今後どのようにお進めになられようとしているのか、できるだけ的確に具体的に、許された時間お答えをいただきたい、かように思って御質問を申し上げます。
  104. 小沢辰男

    小沢国務大臣 まず、戦傷病者及び戦没者等の援護につきましては、老齢化の進行等がございますので、年金の給付の改善等、国家補償の精神に基づきまして一層の努力をいたしたいと思います。  それから第二に、遺骨収集活動あるいは慰霊の事業等につきまして、戦没者の方々の心情をくみまして、できるだけ今後とも努力をしてまいろうと思います。  なお、引き揚げ者の援護の問題につきまして、確かに先生おっしゃるように一時的に流れてはいけませんので、この実態調査等踏まえまして今後とも心を配っていきたい、かように考えております。  要は援護行政というものは、戦争の犠牲によっていろいろあらわれてくる方々援護でございますので、私どもは戦後三十年を経た今日ではありますが、なお十分考慮して、民族の悠久に続きます生存のためにも、しっかりした考え方で善処していかなければならぬと考えております。
  105. 工藤晃

    ○工藤(晃)委員(新自) 大臣のお答えの中でも、特に引き揚げ者に対する援護を、きょうは重点的に具体的にお願いをしておきたいと思いますが、この問も宮城県で一時帰国の方の大変悲惨な事故もあったようでございます。こういうふうな援護措置というのは、やはりケース・バイ・ケースに非常にきめの細かい対策が必然的に求められてまいろうと思いますので、単にこういうアドバイザーをつけているから大丈夫だろうとか、そういうふうな単に制度上の問題にとどまらず、できるだけ一人一人に対してケース・バイ・ケースの御配慮をして差し上げていただきたい。そうでないと、これも大変大きな戦争犠牲者であろう、かように考えますので、そういう方々に対する御配慮を最後に十分具体的にお願いをして、私の質問を終わらせていただきます。
  106. 木野晴夫

    木野委員長 これにて本案についての質疑は終了いたしました。     —————————————
  107. 木野晴夫

    木野委員長 これより本案を討論に付するのでありますが、別に申し出もありませんので、戦傷病者戦没者遺族等援護法等の一部を改正する法律案について採決に入ります。  本案に賛成の諸君の起立を求めます。     〔賛成者起立〕
  108. 木野晴夫

    木野委員長 起立総員。よって、本案は原案のとおり可決すべきものと決しました。     —————————————
  109. 木野晴夫

    木野委員長 この際、住栄作君、村山富市君、大橋敏雄君、和田耕作君、浦井洋君及び工藤晃君から、本案に対し附帯決議を付すべしとの動議が提出されております。  その趣旨の説明を聴取いたします。住栄作君。
  110. 住栄作

    ○住委員 私は、自由民主党、日本社会党、公明党・国民会議、民社党、日本共産党・革新共同及び新自由クラブを代表いたしまして、本動議について御説明を申し上げます。  案文を朗読して説明にかえさせていただきます。    戦傷病者戦没者遺族等援護法等の一部を改正する法律案に対する附帯決議(案)   政府は、次の事項につき、格段の努力を払うべきである。 一 第二次大戦末期における閣議決定に基づく国民義勇隊、国民義勇戦闘隊の組織、活動状況及び旧義勇兵役法、国民義勇戦闘隊員に対する陸軍刑法等の適用に関する法律の実施状況を明確にし、公平適切な措置をとり得るよう検討すること。 一 公共防空に関する警防団の組織、創設の経緯及び活動状況について明確にするとともに、公平適切な措置をとり得るよう検討すること。 一 満洲開拓青年義勇隊開拓団について更に当時の実状を明らかにするよう努めること。 一 戦地勤務に服した日赤従軍看護婦等の当時の実状にかんがみ、旧軍人軍属に比し不利とならないよう必要な措置をとるよう検討すること。 一 国民の生活水準の向上等にみあつて、今後とも援護の水準を引き上げ、公平な援護措置が行われるよう努めること。    なお、戦没者遺族等の老齢化の現状にかんがみ、一層の優遇措置を講ずるとともに手続等の簡素化を図ること。 一 生存未帰還者の調査については、引き続き関係方面との連絡を密にし、調査及び帰還の推進に万全を期するとともに、中国からの引揚者及び一時帰国者の生活状況を調査し、援護対策の充実に努めること。 一 法律の内容について必要な広報等に努める等更にその周知徹底を図るとともに、戦傷病者相談員、戦没者遺族相談員の処遇の改善について検討すること。 以上であります。  何とぞ委員各位の御賛同をお願いいたします。
  111. 木野晴夫

    木野委員長 本動議について採決いたします。  本動議のごとく決するに賛成の諸君の起立を求めます。     〔賛成者起立〕
  112. 木野晴夫

    木野委員長 起立総員。よって、本案については住栄作君外五名提出の動議のごとく附帯決議を付することに決しました。  この際、厚生大臣から発言を求められておりますので、これを許します。小沢厚生大臣
  113. 小沢辰男

    小沢国務大臣 ただいま御決議になられました附帯決議につきましては、その御趣旨を尊重いたしまして検討を重ね、努力いたす所存でございます。     —————————————
  114. 木野晴夫

    木野委員長 なお、ただいま議決いたしました本案に関する委員会報告書の作成につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  115. 木野晴夫

    木野委員長 御異議なしと認め、さよう決しました。     —————————————     〔報告書は附録に掲載〕      ————◇—————
  116. 木野晴夫

    木野委員長 次に、国民年金法等の一部を改正する法律案を議題とし、提案理由の説明を聴取いたします。厚生大臣小沢辰男君。     —————————————  国民年金法等の一部を改正する法律案     〔本号末尾に掲載〕     —————————————
  117. 小沢辰男

    小沢国務大臣 ただいま議題となりました国民年金法等の一部を改正する法律案について、その提案理由及び内容の概要を御説明申し上げます。  所得保障の中心である年金制度を初め、児童、母子家庭、心身障害者に係る諸手当の制度については、従来より充実に努めてきたところでありますが、昨今の経済社会情勢にかんがみ、これらの制度について所要の改善を行い、老齢者を初め、児童、母子家庭、心身障害者の福祉の向上を図る必要があります。  今回の改正案は、このような趣旨にかんがみ、福祉年金並びに児童扶養手当、特別児童扶養手当、福祉手当及び児童手当の額の引き上げ、厚生年金、船員保険及び拠出制国民年金の物価スライド実施時期の繰り上げその他の改正を行い、これらの制度の充実を図ろうとするものであります。  以下、改正案の内容について、概略を御説明申し上げます。  まず、国民年金の改正について申し上げます。  第一に、福祉年金の額につきましては、消費者物価上昇率を上回る一〇%の引き上げを行うこととし、昭和五十三年八月より老齢福祉年金を月額一万五千円から一万六千五百円に、障害福祉年金を一級障害について月額二万二千五百円から二万四千八百円に、二級障害については月額一万五千円から一万六千五百円に、母子福祉年金及び準母子福祉年金を月額一万九千五百円から二万千五百円に、それぞれ引き上げることとしております。  第二に、拠出制国民年金昭和五十三年度における物価スライドの実施時期を、昭和五十四年一月から昭和五十三年七月に繰り上げることとしております。  第三に、保険料の額につきましては、昭和五十四年四月から三千三百円に、昭和五十五年四月から三千六百五十円に、それぞれ引き上げることとしております。  第四に、いわゆる無年金者対策につきましては、過去に保険料を滞納している期間がある者について、昭和五十三年七月より二カ年間特例納付を実施することとし、その保険料については、四千円とすることとしております。  次に、厚生年金保険及び船員保険の年金部門の改正について申し上げます。  第一に、スライドの実施時期の繰り上げにつきましては、十一月から六月に繰り上げることとしております。  第二に、在職老齢年金の改善として、最近の物価等の動向に対応し、六十五歳以上の在職者に支給される老齢年金について、全額支給の対象を標準報酬月額十三万四千円以下の者にまで広げるとともに、六十歳以上六十五歳未満の在職者に支給される老齢年金についても、その支給対象を標準報酬月額十三万四千円までの者に拡大することとしております。  また、七十歳以後も引き続き在職している者の老齢年金年金額を、七十歳の時点で改めて計算する措置を行うこととしております。  第三に、寡婦加算額をそれぞれ月額千円引き上げ、子供二人以上の寡婦の場合六千円、子供一人の寡婦の場合四千円、六十歳以上の寡婦の場合三千円とすることとしております。  なお、在職老齢年金及び寡婦加算額の改善につきましては、昭和五十三年六月より実施することとしております。  次に、児童扶養手当等の額につきましては、福祉年金に準じて、本年八月から児童扶養手当の額につきましては、児童一人の場合月額一万九千五百円から二万千五百円に、特別児童扶養手当の額につきましては障害児一人につき月額一万五千円から一万六千五百円に、重度障害児一人につき月額二万二千五百円から二万四千八百円に、福祉手当の額につきましては、月額五千五百円から六千二百五十円に、それぞれ引き上げることとしております。  次に、児童手当の改正につきましては、低所得者に対する児童手当の額を昭和五十三年十月より月額五千円から六千円に引き上げるほか、新たに児童の健全な育成及び資質の向上に資する施設をすることができることとしております。  最後に、資金の借り入れに制限のある特殊法人等について、当該法人が年金福祉事業団から住宅資金を借り入れることができるようにすることとしております。  以上が、この法律案の提案理由及びその内容の概要であります。何とぞ慎重御審議の上、速やかに御可決あらんことをお願いいたします。
  118. 木野晴夫

    木野委員長 これにて提案理由の説明は終わりました。     —————————————
  119. 木野晴夫

    木野委員長 これより質疑に入ります。  質疑の申し出がありますので、これを許します。湯川宏君。
  120. 湯川宏

    ○湯川委員 提案されました国民年金法等の改正並びにそれに関連した幾つかの問題につきまして御質疑を申し上げたいと思います。  まず、年金の問題というのは近時、非常に世上、議論されてきておるところでございますが、年金制度自体が八つの制度に分かれており、いろいろの問題につきまして、また日本の従来の例からいいまして、恩給とかあるいは厚生年金の一部等につきましては本格的な年金として国民に関連はございますが、国民年金につきましては経過的なものが中心でありますようなことから、本当に年金に関係する実感としては、国民の中でまだ十分に習熟されていないというふうな感じがいたすのであります。  しかしながら、言うまでもなく厚生白書にも書いておられますように、高齢者社会の入り口に立つ社会保障について本格的に取り組んでいくという構えを示されておりますが、いよいよ高齢者社会、人によりましては日本においては超高齢者社会、西欧諸国においても例のないような超高齢者社会を迎えるのではないかというふうなことを言われておるときに当たりまして、年金制度の持つ重要性というものは、本当に日本民族初めてその重要性にぶつかり、これに対して、どのように国民として対処するかということが大きな問題になっておると思います。  こういう時期におきまして、小沢厚生大臣が例の医療保険の抜本的な改正ということにも取り組んでおられます。また、この年金制度の総合的な見直しといいますか、改善についても努力をしておられる。その他厚生行政全般につきまして大変な努力を示されておることにつきまして敬意を表するのでございますが、大臣の従来の御経験等からいいまして、本当にこの問題の改正の中心になって御活躍される立場から、われわれも非常に期待を申し上げておるわけでございます。そこで大臣に、まず、年金制度の基本的なあり方というものについて、どのようなお考えを持っておるか、総括的に御所見を伺いたいと思います。
  121. 小沢辰男

    小沢国務大臣 おっしゃるように高齢化社会を迎えまして、しかも、その高齢化の速度が非常に早い日本の国でございますので、所得保障の重要性が今後ますます高まっていくだろうと思います。私どもは現在、年金制度基本構想懇談会というものにお願いをいたしましていろいろと御検討願っております。  しかし、私として今後、年金制度のあり方について、どういうような面で検討をしていくかということを二、三申し上げますと、まず第一には、老齢化社会の進展に伴いまして負担と給付の面で再検討をする必要があるのではないかという点が第一点でございます。  それから経過年金につきまして、五年、十年あるいは福祉年金等の経過年金につきまして、その性格等を十分再検討しまして、この改善の方向を、いかにあるべきかということを見出していきたい。  それから第三点は、何といっても不公平感があってはなりませんので、各制度これをすべてを一本に統合するということは年金の性格上適当ではないと思いますけれども、できるだけ整理統合しまして、各制度間の整合性を考えながら不公平な制度を改革していきたい、かように考えておるところでございます。特に、もちろん近い将来ではありませんが、相当先のことを考えますと、支給開始年齢等については現在の制度を十分検討していかなければならぬのではないかというふうに考えます。これは国民の負担あるいは税金等の問題も全部国民の負担でございますので、そういうような面から十分検討していかなければならぬなと考えておるわけでございまして、いずれにしましても各制度間の整合性を考えなければいけませんが、将来は、やはり公平感に立った一体的な制度の確立ということが重要ではなかろうかと考えております。
  122. 湯川宏

    ○湯川委員 ただいま大臣の基本的な取り組み方の姿勢をお伺いしたのでございますが、まことにそのような方法で精力的に取り組んでいただきたいと思うのでございます。  言うまでもなく日本の社会、特に戦後三十年間いろいろのいきさつがございましたけれども、戦後の十年間は、いわば混乱といいますか、立ち直るための大変なもがきの期間。三十年過ぎてからは十五年近くは高度成長であったということで、一国の国民生活あるいは経済社会としては、いわば異例な時期であったかと思います。そこへ、言うまでもなくオイルショックなり国際通貨の問題等々、最近は従来と違った要素のものが組み合ってきておりますが、こういう時点で初めて年金制度、特に国民の老後、一国の老後問題をどのように考えるかということを根本的に検討しなければならない、そういうタイミングにも、ちょうど合っているというふうに思うのでございます。  さような意味で従来の日本の社会の中で、特に老人の問題というのは必ずしも素直な形で、あるいは、かくあるべきであろうというふうな一般的な認識がやや混乱してきた。特に戦争後の核家族化のことにしましても、あるいは相続に関連しました親に対する扶養の心構え、親に対する子供の考え方等にしてもそうでございますし、また都市への人口集中等による、いろいろの摩擦等もあったために、こういう老年に対して老年自身が、また若い者から見て老年の方たちに、どのような生活をしていただくのが国民的に好ましいか。日本的なそういう老人の生き方についての考え方というのは確かに混乱してきたかと思います。さような意味で、従来は例の小説、丹羽文雄じゃございませんが、いやがらせの年齢とか、あるいは恍惚の人とか、いろいろ特異な形で老年が受けとめられたことがございますが、本当の意味で、これからの人口の相当部分を占めてくる老年者が、どのような生き方をするのが好ましいかという点の模索というものが本格的にされなければならないという意味で、私は今回の取り組んでおられる年金制度の進め方というものが、日本国民生活の将来に、また日本国民経済社会の将来に非常に大きな影響を持つ大変な要素であるというふうな感じがいたします。さような意味におきましても、このことについての取り組み方に大臣を初めとして、あらゆる日本の知能を動員して取り組んでいただきたいと思うのでございます。  そこで、年金制度基本構想懇談会の中間報告等も私も拝見いたしました。非常に本格的な構えで取り組んでおられるということに敬意を表するのでありますが、先ほど、ちょっと触れました日本の高齢化のスピードの速さ、特に、それが稼働人口に対する比率から申しまして大変な重さになってくることは事実でございますが、給付費の総額の見通しというものが大変大きな要素になるわけでございます。これにつきまして世紀の変わり目である昭和七十五年でございますか、昭和七十五年では、いろいろの年金を含めまして、どれくらいの額になるか、また昭和八十五年といえば二〇一〇年でございますか、そのころにおいては、おおむねどれくらいのものになるのかという数字をお教え願いたいと思います。
  123. 木暮保成

    ○木暮政府委員 年金の給付費につきましては、ただいま先生おっしゃいましたように、人口の老齢化に伴いまして受給者は急増してまいります。それに伴いまして年金の給付費もふえてまいるわけでございます。私ども昭和五十一年度価格で推計をいたしたのでございますが、昭和五十一年度におきましては四兆円でございます年金の給付費、それが世紀の変わり目の昭和七十五年には十六兆五千億くらいになるという見通しでございます。なお、老齢化がピークに近づきます昭和八十五年におきましては二十三兆円になろうというふうに見込んでおる次第でございます。  これを国民所得との対比で見ますと、現在三%強でございますが、七十五年には九・七%を占めるのではないか。さらに昭和八十五年には一三・二%程度のシェアになるのではないかというふうに見通しておる次第でございます。
  124. 湯川宏

    ○湯川委員 こういう年金の将来のとらまえ方というものを現在、努力しておられるわけでございますが、今回提案されております諸事項につきましては、学者等に言わせれば、いわば微調整をしておられるんだという見方であります。私も、そういう基本的な抜本改正を前にして、言われるような微調整というふうな形で進められざるを得なかった事情につきましても、よくわかるのでございますが、これに関連しまして一、二お尋ねを申し上げたいと思います。  社会保険審議会等におきまして、一つは、いわゆるいまの経過年金については低いではないか。今日のような老齢者にとって厳しい社会情勢のもとにおいて、もちろん年金制度としては、こういうスタートして、そう日もない時点であるから、いろいろの事情のあることはよくわかりますが、経過年金につきまして今回のような提案をされるにつきまして厚生省としても、立案者としても大変な御苦労を願ったことと思いますけれども、こういうふうなところでおさめざるを得なかったというふうな御説明を伺いたいと思います。
  125. 木暮保成

    ○木暮政府委員 わが国の年金制度の年金水準でございますが、厚生年金につきましては、制度の設計の基礎にございますモデル年金はもちろん、現実に支給されております年金額も、かなりの額になっておりまして、国際的に比較しても遜色がないということが言えようかと思うわけでございます。それに対しまして国民年金につきましては、制度の発足後まだ日がたっておりませんので、制度自体が目指しておりまする年金水準は厚生年金に大体匹敵するものでございますけれども、いま先生御指摘の経過年金につきましては必ずしも十分ではないという指摘がなされておるわけでございます。  そこで、福祉年金につきまして現行一万五千円を来年度一万六千五百円にするという御提案をしておるわけでございますが、これにつきましても月額千円引き上げますのに満年度で六百億の財源が必要であるということで、財源の問題に大きなウエートがあると同時に、日本年金の場合には年数加算制というやり方をいたしておりまして、年金の掛金を掛けた年数に応じて給付をするということになっております。そこで、この福祉年金を初め経過年金を底上げしていく場合に、年数を多く掛けました年金の水準とのバランスの問題が出てくる。そういうことがございまして、ことしの法律改正といたしましては、福祉年金につきましては一万五千円を一万六千五百円にする。その上の各拠出年金につきましては、これは法律の規定に従いまして物価にスライドをする。ただし、その実施期日につきましては、昨年度の国会の与野党の御意向を踏まえまして、昨年同様の繰り上げ措置を講じておるところでございます。
  126. 湯川宏

    ○湯川委員 次に、婦人の年金保障に関連した点でございますが、婦人に対しましては国年等で任意加入の制度が設けられておられますし、また、通算老齢年金に資格期間として算入する等々のことを御配慮になっておるわけでございますけれども、これも社会保険審議会の御意見かと思いますが、全般的に婦人に対する年金保障が弱過ぎるではないかというふうな点、特に遺族になった場合の二分の一という点は、やはり世帯を経営していく実態から申して、二人が一人になったのだから半分でいいわというふうな考え方はいかにも実情に沿わない。したがって、過去におきましても七〇%にするという案の御検討がなされたように伺いますが、私もこの母子世帯についての対策が、福祉行政全般のバランスからいいまして、どうしても少し弱いのじゃないかというふうな実感がするのであります。議論の中にも、特に若い、子供さんのない寡婦の場合には、まだいろいろの道が開けようかと思いますが、高齢の寡婦とか、あるいは子供を抱えたいわば三十数歳以上の寡婦等につきましては、なかなかむずかしい状況であるわけです。したがって、母子世帯に対する施策は役所側としてもいろいろ進められておるところでございますが、やはり総体的に申して、この婦人に対する施策が弱いというふうな感じがするのです。このことに対しまして、大臣の今後に対する姿勢といいますか、お考え方を承りたいと思います。
  127. 小沢辰男

    小沢国務大臣 わが国の年金制度の中で、いわゆる遺族年金の額二分の一の問題は、今後、年金制度を根本的に見直す際には一つの大きな問題点として私どもは検討していかなければならぬと思っております。これは当然おっしゃるように遺族年金の問題が二分の一であるということは、他の先進国並みに相当の引き上げを要するだろうと考えておるわけでございますが、そのためには、やはり年金制度全般の検討の中で、いろいろ問題点等を整理していかなければならぬと考えております。しかし、この遺族年金の額の引き上げについては重要な検討課題であるということは私どもも十分認識しておるところでございます。前向きに今後、将来の課題として増額の方向で考えていかなければならぬと基本的には私は思っております。  なお、詳しい点は局長から答弁させます。
  128. 木暮保成

    ○木暮政府委員 婦人の年金権の問題につきましては、私ども取り組むべき重要課題の一つというふうに考えておるわけでございます。  いま御指摘の遺族年金の給付率の問題でございますが、ただいまは老齢年金の二分の一ということになっておるわけでございます。これの改善ということを当然やらなければならないわけでございますが、いろいろ関連する問題がございまして、当面昭和五十一年度の改正で、ただいま先生御指摘のございましたように子供のある寡婦、そういう方々には寡婦加算をするということにいたしたわけでございます。今度御提案申し上げております法案におきましても、その寡婦加算の増額をするということにいたしておるわけでございます。  それで、この問題を解決してまいりますには、やはり幾つかの問題がございまして、一つには外国の制度が七割程度の遺族年金を出しておるわけでございますが、それには遺族の年齢とか、あるいはまた亡くなられた御主人と遺族との婚姻期間とか、いろいろな条件をつけておるわけでございます。それに対しまして日本の場合には、ほとんど無条件に等しいというようなことがございまして、今後、人口の老齢化に伴いまして年金の給付費がふえるということを考えますと、その辺の合理化もひとつ図らなければならないというふうに思っておるわけでございます。  それからもう一つ、日本年金額の場合には世帯経費というものの観念が余りないように思うわけでございます。本人が一人で受給する場合にも、あるいは配偶者がおる場合にも余り金額に変わりがないということがあるわけでございます。ここら辺も本人あるいは二人家族の場合、それぞれ世帯の実情に応じた給付額にしなければならないということが一つあるわけでございます。端的に申し上げますと、配偶者のない一人の場合が優遇されており、同じ一人でも未亡人の場合には優遇されていないということがございますので、ここら辺の調整をひとつ図らなければならないと思っておるわけでございます。  またもう一つ、国民年金に被用者の妻が任意加入するという制度があるわけでございますけれども、現在六百万を超す方々がこれに加入しておられるわけでございます。現時点では年金額の給付水準等の絡みもありまして、それ相応の機能を果たすことが期待されておるわけでございますけれども、将来におきましては、国民のサイドから見ましても保険料の二重負担になりますし、また保険財政から見ますと、かなり給付の重複が出てまいる、あるいはまた国庫負担が二重になるというようなことがございまして、遺族年金の充実をする場合には、どうしてもこの点につきましても制度の改革を考えなければならない。  その三つの問題、いずれも制度の基礎に関係する問題でございまして、いま年金の基本構想懇でも御検討いただいておりますが、そこら辺の条件整備をいたしまして、遺族年金の改善に努力をしたいと思っておる次第でございます。
  129. 湯川宏

    ○湯川委員 ただいまの大臣及び局長の御答弁、了解をいたしますし、また、そのような心構えでお進め願いたいと思います。いまの国年の任意加入の問題が、将来の問題としては問題点があるということも、これは年金懇でも触れられておることもわかります。それから寡婦加算で、とにもかくにも何がしかの指標を示したいということで御努力くださっていることも多といたしたいと思いますが、要するに、夫といいますか、主たる稼働者を失った家庭に対する援護といいますか、世帯保障的な色彩に重点を移したいという考え方は、ひとつぜひお進め願いたいと思うのであります。  その次に私は、老人との同居、別居の問題についてお伺いしたいと思います。年金制度は制度自体としても、もちろん整合性といいますか、いろいろの点が必要でございますが、要するに、ねらうところは、日本の老人が真っ当な形で心安らかく豊かな生活ができるというところにあると思います。そのためにどのような制度があり得るかということかと思うのであります。  そこで、この同居、別居の問題につきまして、先ほどちょっと触れましたが、いろいろの意識の上での混乱というものがあったと一般に言われております。総理府の老人対策室でございますか、老人対策室の何度かにわたる調査でもうかがえますように、また東京都でやられた意識調査でも示されておりますように、やはり日本人としては、やむを得ない事情は別としまして、できることなら両親とともに同居したいという気持ちがあることは事実だと思います。数字の上では、同居世帯は年々減っておるという統計が出ておりますが、やはり一般的な国民の意識としては、両親との同居が、老人側から見ましても、また、これを支える壮年の方から見ましても、将来のお孫さんの方からの立場から見ましても、それが好ましいというのがやはり一般的な多数の人の意識かと思うのであります。  ところが、これに対しまして、今日の制度から見まして、そのことを推奨するといいますか、そのことに支えをする施策が必ずしも十分じゃない。もちろん住宅事情が今日のような状況でありますから、ペア住宅とかあるいは三世帯がまずまず真っ当に生活できる家庭の状況というものに恵まれた世帯が必ずしも多くないということはよくわかりますが、このお互いの理解さえあれば、そういう世帯間の同居ができるという世帯は、実際はやはりかなりあると思うのであります。  この同居につきまして、これを側面的に援助する施策というものがとられなければならないと思うわけでありますが、まず第一に、同齢者を扶養する子供に対して所得税の上での控除を一層強化できないかというのが第一点。第二点は、両親を相当な年月にわたりまして扶養してきた子供に対して、両親が死亡した場合の遺産相続につきまして特別な配慮をしていく等、こういう幾つかの方策を、これでつるという意味ではなくて、これによって社会的にも報いるという気持ちから、そのような方策がぜひとられるべきではないかというふうな感じがいたすのでございます。このことにつきましては、これは税との関係でございますが、厚生省としても本格的な御検討を、もちろん、しておられると思いますが、ひとつさらに進めていただきたいと思いますが、これに対する御見解を伺いたいと思います。
  130. 木暮保成

    ○木暮政府委員 お年寄りの子供との同居状況でございますが、昭和三十五年に八一・六%の六十五歳以上の方が子供と同居しておったわけでございます。それが次第次第に減りつつあるわけでございますが、一番最近の四十九年の調査でも七四・七%の方々が子供と同居しておるわけでございまして、これは外国と比べまして非常に高い同居率でございます。また、いろいろ世論調査をいたしますと、これは若い方の、五十四歳までの方の世論調査でございますが、親との同居につきまして、同居するのがよいという意見が四五・六%もございます。別居するのがよいと積極的に言っておりますのが一五・六%でございまして、親が元気なうちは別居、親の体が弱ったら同居するというのが三八・一%あるわけでございます。したがいまして、若い人々の同居の考え方につきましても、かなり外国と違う点があろうかと思うわけでございます。一方、お年寄りの老後の暮らしの希望としましては、子供と一緒に暮らしたいというのが五〇%を占めておる。子供とは別に暮らしたいというのは二七・八%というような数字に出ておるわけでございます。  社会保障と同居との関係はどういうことになるのか、そこら辺はさらに研究をしてみなければならないことでございますけれども、私どもいろいろな会合に呼ばれますと、同居を促進するために、居住条件をよくするということと並びまして、年金をある程度充実してもらえば二代の夫婦が余り角を突き合わせなくて同居できていく。そういう意味からも年金を充実してほしいということがあるわけでございます。この点、社会保障との関連は必ずしも研究は進んでおりませんけれども、私ども、今後の年金あるいは社会保障の進め方の検討の場合に大きなウエートの一つというふうに考えておる次第でございます。
  131. 湯川宏

    ○湯川委員 そこで、年金財政といいますか、年金の急速度に重くなってくることに関連しまして、費用負担の問題を続いてお伺いしたいと思います。  こういう年金等につきましては多々ますます弁ずというのが一般的な気持ちでございますが、これを賄うための費用負担につきましての検討が精力的にされなければならない。特に一般の人に対して、わが国の年金制度の将来がどうなるのかということを十分に説明しながら進めなければならないと思いますが、言うまでもなく、これからの保険料の水準が上昇するということは不可避なことであると思いますし、特に国民年金の方が年金の山を迎えるのが厚年に比べで早いと言われておる関係もあり、厚生省のいろいろの御検討でも、ほとんど毎年、将来にわたって保険料を上げていかなければならない。将来は、昭和八十五年等を考えれば五十一年度の価格でもっても八千六百円というふうな数字が出されておるように思います。厚年につきましても恐らく二〇%程度の保険料を徴収しなければ、とうてい賄っていけないというふうな大変な数字が予測されるわけでございます。  さようなことになりますと、年金の問題と医療保障の問題あるいは生活に関連した社会資本の充実というふうな国民的な要請とが競合するという心配も述べられておりますが、確かに大きな問題であるわけであります。今日の給付体系なりあるいは年金額の水準をそのままにして、こうだというふうに説明をされておるようでありますが、いろいろの改善をこの間に加えていくならば、さらにこの数字が大きくふくらむことは言うまでもないわけでございます。そこで、やはり給付の重点的な配分といいますか、あるいは給付体系の合理化というものについて厳しく立ち向かっていかれる必要があるというふうに思うのであります。  国庫負担の問題につきましては諸外国と比べて高いと言われておるようであります。一般会計の中で昭和四十年には一・八%程度だったものが五十一年では四・六%になっておるというふうなこと。これが、今後どのようなところまで国庫負担が可能かということも、これからの安定成長の中での財政運営としての限度というものがありましょうから、そういたしますと保険料負担に主として頼らざるを得ないということになってくるわけであります。そういうふうなことから、どうしても一般国民へのコンセンサスといいますか、負担料の増高に対するパブリックアクセプタンスといいますか、一般的に、そういうことはやむを得ないというふうに受容されるような説明が必要でありますし、また、そういう体系を将来長期的に安定化させるためには、行政当局としても必ずしも耳ざわりのいいことばかり申し上げておられては目的を達しにくい。そういう福祉の厳しさといいますか、あるいは筋肉の引き締まったといいますか、そういう締まった態度での取り組み方というものがぜひ必要かと思うのであります。  今日の状態では世代間の利害対立というふうなところまでは来てないと思いますが、これがもう十年、十五年すれば、この保険料の問題、積み立てとか賦課の問題を含めまして、世代の間での負担の限界といいますか、相当問題になってくることかと思うわけでございます。過日、二月の終わりでございましたか、新聞記事でございますけれども、スイスで六十五歳のものを六十歳に引き下げたらどうかという提案が拒否された、否決されたというふうに聞いています。こういう年金の成熟した国において、もちろん六十歳で年金をもらうということになれば、雇用の点で追い立てられるのじゃないかという気持ちも働いたかとも思いますが、もっと大きい問題は、六十歳からの人を、若い者がそれを支えなければならないかどうかという問題に対する非常に冷めたといいますか、冷静な判断で国民投票が行われたと書いておりましたが、そのようなことかと思います。それからまた去年のドイツの年金財政の調整法とでも訳すべきもので、数年前の改善が、オイルショックその他を通じたこの数年間の変動によりまして相当むずかしい状況になっている、これに対して保険料をアップするか、あるいは給付の内容につきまして検討を加えるかという点で議論をされたが、やはり給付の内容について、ある程度のセーブをするという方向におさまったというふうに聞いておりますが、さようなスイスとかドイツのいま御披露した点につきましては、大体事実と合っておりますか。     〔委員長退席、竹内(黎)委員長代理着席〕
  132. 木暮保成

    ○木暮政府委員 いまお話しのドイツにつきましては、わりあい詳しい連絡がございまして、ドイツは千分の百八十の保険料になっておるわけでございます。保険料率をこれ以上引き上げるということは、かなり無理があるのではないかという観点から、年金の額を賃金に合わせましてスライドしておるわけでございますが、当面そのスライドの時期を半年おくらせる。それからまた、その賃金の動向に応じて年金額を調整するわけでございますが、過去の一番賃金が伸びが高かった年度を外して計算をするという措置をとったというふうに聞いておるわけでございます。スイスにつきましては、私ども現在、先生御指摘の新聞記事を拝見したということで、それ以上の情報は、いまのところ得ておりません。
  133. 湯川宏

    ○湯川委員 こういう費用負担の将来動向に関連しまして、先ほど大臣がお述べになりました支給開始の年齢の問題でありますが、これについてお考えとしては、段階的にある程度上げていかなければならない状況であるというふうに、なおお考えであると了解してよろしゅうございますか。
  134. 木暮保成

    ○木暮政府委員 支給開始は日本の場合には厚生年金がただいま男子六十歳、女子五十五歳でございますが、先ほど御指摘のように、いまの制度のままでまいりますと、厚生年金の保険料は千分の二百を超えるというようなことが予想されておるわけでございます。外国の制度と直接比較はなかなかむずかしいのでございますが、ドイツは千分の百八十のところで、かなり苦しいということでございますので、私ども遺族年金等の改善と並んで給付の合理化ということをしなければならないと思っておるわけでございます。その中の一番大きな問題は、やはり支給開始年齢の問題だというふうに考えておりまして、これはどうしても避けて通れない問題だというふうに思っておる次第でございます。ただ、これは雇用条件ともいろいろ絡みますし、そういう点から、御指摘のありましたように長期的に計画を立てまして、段階的に実施していくべきものであろうかというふうに思っておる次第でございます。
  135. 湯川宏

    ○湯川委員 支給年齢の問題につきましては、確かにむずかしい問題でありますし、過去の諸制度の経緯等から見て慎重な取り組み方をされなければならない問題かと思いますが、要は、わが国の年金制度の長期的な展望といいますか、見通しの立つ、国民として信頼し得るもの、自分のライフサイクルから見て老後をおおむねどのように送り得るのかということが予測し得るような信頼できる制度というものが何よりも必要である。さような意味で、先ほど申し上げましたように、必ずしも一般受けしない、あるいはそう喜ばれないことであっても、長い制度の将来のためには、このことはしていかなければならぬということについての筋はひとつ通していただきたいと思います。  それから、こういう支給開始年齢の変貌等もある程度検討されなければならないというふうな状況と関連しまして、高年者の雇用の問題につきましては特別の配慮を進めていかなければならないことは言うまでもないことでございます。もちろん雇用の問題は当面は労働省関係ということに相なるのでございましょうが、わが国の縦割り行政の弊を超えるという意味で、現在、地方の民生部系統で民生委員その他の方々が、高齢者の雇用につきまして、いろいろボランタリーな組織をつくったりしてやっておられるということも私も存じております。しかし、こういうふうないわば非常に散発的と言っては失礼ですが、総合的でないことだけでは、とうていこのような状況には即応できない、対応できないというふうに思います。しかし老齢者の問題は若年労働者と違いまして、全国あちこちに転勤するということではございません。やはり地域の市町村とか、あるいはそれより広い、あるいは狭い程度のコミュニティーの中での就労の実態というものに即して考えられるべきものだと思うわけであります。さような意味で、厚生省としても老齢者の生活安定という角度から、その問題について精力的に取り組んでいかれるようにお願い申し上げたいと思います。
  136. 小沢辰男

    小沢国務大臣 湯川先生おっしゃるように、雇用問題は労働省の政策ではありますが、将来老齢化社会ということを考えた場合に、私ども、ことにこれからの経済情勢が総理が言われているように、ある程度静かなる成長ということを考えていきますと、それからまた国際的な経済事情等いろいろな困難な問題等を考えてみますと、福祉医療面、いわば厚生関係の面での雇用の創出ということは真剣に考えていかなければいかぬだろうと思うのです。  その場合に老年者、高年齢層の就職対策といいますと相当幅広くなりますけれども、いま言った一般社会からようやく定年等で、まあ定年というものが六十五までいってくれて、ちょうど雇用から離れたときに年金制度に移れば一番いいのですけれども、それがなかなかいけない場合に、定年後の労働力というものを福祉関係や医療面で、もっと活用できるように厚生省みずから考えていかなければいかぬじゃないだろうか。もちろん前のような給料を全部保障していくということはとうていできないと思いますが、しかし、それと年金支給開始までの所得保障の相当な充足になるような形で考えていかなければいけない、新しいこれからの私どもの課題ではないかと思っておりまして、ぜひ先生方のお知恵等もいろいろかりて、私どもはこの問題には、いまから積極的に取り組んでいきたいと考えております。
  137. 湯川宏

    ○湯川委員 非常に力強い厚生大臣のお考えを伺ったのであります。いろいろ社会保障あるいは社会福祉に関連しまして、いま福祉サービスの点で立ち損ねがある、確かにそういうことは言えるかと思います。そうしますと地域的な単位で、そういうことに対するマンパワーが必要であります。しかし従来、地方自治体が運営している施設の職員等々は一般のベースに乗りますが、財政的にもなかなか問題があって、本当は保育所は建てたいんだけれども、なかなか新規雇用が大変だから、ことしはちょっと延ばしたいということにもよくぶつかるわけであります。さような意味で、こういう方たちの働き場所を、いま言われた企業に対するしかるべき配慮をした上で、今後福祉サービスの充足に伴って生ずるであろうポストについても考えていっていただきたい、かように考えます。  そこで、あと二、三事務的なことも含めましてあれですが、国民年金の保険料の徴収状況について、ちょっとお伺いしたいと思います。
  138. 大和田潔

    ○大和田政府委員 国民年金昭和五十一年度の保険料徴収率は九六・四%でございます。これは、ちょっと補足いたしますと、他の公租公課の徴収率に比べまして遜色のない徴収率というふうになっております。  以上でございます。
  139. 湯川宏

    ○湯川委員 このことにつきまして、強制徴収を行っていないんだというふうに私は聞いておりますが、私も現場を幾らか見た経験もございますが、強制徴収しないで、こういう成績を上げておられるということはりっぱだと私は思うのですが、これについて市町村に厚生省として、どういうふうな指導といいますか、あれをしておられるか、ちょっと御参考までに伺いたいと思います。
  140. 大和田潔

    ○大和田政府委員 これにつきましては市町村に非常に努力をしていただいておりまして、私ども感謝しているわけでございますが、この徴収の方法、この徴収率を確保いたしておりますやり方といたしましては、実は一つは、制度発足以来でございますけれども、保険料の納付組織というものの育成強化を図ってきております。この納付組織というものが、かなりの地域におきまして敷衍いたしておるわけでございます。  それから、それ以外にはたとえば納付案内書という文書を出しまして、これこれの保険料を納めていただきたいと個人個人に出しておるというようなことからいたしまして、徴収率が確保されておる。あるいは口座振替といったような制度も、これはだんだんと利用されているといったようなことでございます。  それから、もう少し申し上げますと、やはり保険料を滞納するという方がおられる。この滞納する方に対しましては、この国民年金制度は自主納付をたてまえにしておりますので、滞納される、そういう場合には、もうこれはぴしぴしと文書を差し上げまして、滞納しないでほしいという勧告をするということを励行しておりましたり、あるいは、そういった場合に個別徴収をやる、あるいは集合徴収をやる、さまざまな方法で保険料の収納というものを確保する、いろいろな方法で努力をしていただいているわけでございます。  以上でございます。
  141. 湯川宏

    ○湯川委員 いま述べられたようなことで、相当な徴収の成績を上げておられるわけでございますが、今回の例の無年金者対策、過去において二回やられて、それぞれ二百万人程度ずつ救ったんだという御説明を伺ったことがございますが、今回三たび、この無年金者対策というものをとられるわけでございます。これは厚生省としておおむねどの程度の員数が予測されるのであるか。  またもう一つは、いま言われたような徴収の成績を上げておられるにもかかわらず、なお無年金者がこのように残っておる。それは本人の信念として、これに応じないという方とか、あるいは、その他の移動とか、いろいろなことが考えられるかと思いますが、全般的に厚生省としては、どういうことで無年金者がどれぐらい、なお残っておるのかという、その辺の見方を伺いたいと思います。
  142. 大和田潔

    ○大和田政府委員 まず、無年金者がどれくらいおるだろうか。実は、この数字が非常にむずかしゅうございます。私ども、この数字の把握がむずかしゅうございますけれども、おおむね百万人程度はいるというふうに、非常に概数で大ざっぱでございますが、そういうふうに考えております。  なぜ、こういった方々が出たんだろうかという問題でございますけれども、私ども第一線の責任者の人から、いろいろと話を聞いてみるわけでございますが、やはり非常に残念でございますけれども、この制度に関して、どうしてもまだ関心が薄い。たとえば子供がおる。したがって、その子供の世話になって老後は暮らすから年金には入る必要はない。あるいは貯金を持っている。これは特にお金持ちの方に多いようでございますが、私は貯金を持っておる、金があるから入らないというような方がおられる。あるいは、これはそう多いかどうかわかりませんが、病弱だから、もうそんなに私は長く生きない。したがって年金制度は必要ないというふうに言われるような、そういう方々がおるようでございます。またさらに、やはりもっと無関心といいますか、先ほど申しました文書を、年金の被保険者はもちろんのこと、やはり未適用者に対しましても、未適用者であるということがわかりますると差し上げることになっております。その場合でも文書に対する回答がない。つまり本当に全く無関心であるというような方々でございますね。こういうような方々がおられます。文書を差し上げましても御回答していただけないという方がかなり見受けられるというようなことを、第一線の連中が言っておったわけであります。  さらに、これもそう多くはございませんけれども、制度発足のときにいろいろ反対運動、反対の動きがあったわけでございますが、そういった反対または不賛成というような労々の影響といいますか、そういうようなことによりまして、まだ加入をがえんじないという方もおられるわけでございます。  それから、先ほど先生もちょっとおっしゃいましたけれども、移動でなかなか把握できない。つまり住民登録をされないで動いておられるという方々がかなりおられるわけでありまして、こういう方々は事務的に把握しようと思いましても、なかなか把握できない。そこで頭が痛いわけでございますけれども、何とか住民登録をしていただくことによって加入というものが確保できるように、私どももお願いいたしておるわけでございますが、そういったような方々もかなりおられるのじゃないかというふうに考えております。
  143. 湯川宏

    ○湯川委員 私の選挙区に例のあいりん地区というのがありまして、東京の山谷等と比べても大変なところでございますが、そういうふうなところで関心を持たれないという方もあるのです。いま言われた幾つかのこともあると思いますが。  ただ、前回の特例納付では、いわば、これが最後だというふうにやって進められたと思いますが、今回それがまた三度目に、もう一回やるのだということでございます。そこで、こういう国民年金を支えてきておる一般国民から見ると、若いときから長年にわたってこの制度を支えてきて、そして自分の老後に期待するというのがたてまえでございますが、今回のような特例給付を次々に認めていくということになりますと、そういう本来の加入者の意識というものに対して余り好ましくない影響がありやせぬかというようなことも考えられるのですが、そのことについていかがお考えか。
  144. 木暮保成

    ○木暮政府委員 無年金対策は過去二回やりまして、いずれも今回限りというようなことで実施をいたしたわけでございますが、昨年ごろ、また非常に御希望が多かったわけでございます。また国会でもいろいろ御議論があったわけで、いろいろちゅうちょした末、第三回目の特例納付をするということに踏み切ったわけでございます。  ちゅうちょいたしましたのは、いま先生おっしゃいましたように、国民年金法律の規定どおりたゆまぬ保険料納付に支えられてきておるわけでございまして、高齢者になってから特例納付をすれば年金に結びつくというような慣習ができてしまいますと、保険料の納付に非常に障害が起きて、ひいては国民年金の運営ができなくなるということもあったわけでございます。ただ、いま部長も申し上げましたように、かなりの方が年金に結びつかない可能性があるということでございますので、今回が最後ということで、もう一回、繰り返して実施をするということに決めた次第でございます。
  145. 湯川宏

    ○湯川委員 そういうことで、いろいろの御配慮もあった上で四千円というのを決められたかと思いますが、ひとつ今回でもって、特別の意志堅固な反対者は別にしまして、善良な市民が間違いなく年金者になれるように格別の御配慮をお願いしたいと思います。  それから最後にオンラインの問題につきまして、これから受給者その他関係者がべらぼうにふえてまいりますし、それから一般市民からいって年金のことはようわからない。それに対して尋ねに行っても何カ月も返事が来なくて、大体答えてくれるのか、くれないのかわからないというふうなことで、年金に対しては半ばあきらめたような感じを持っておる人がかなりおるように思いますが、オンラインの問題につきましては、いろいろ審議会においても早急に進めると言っておられるし、恐らく厚生省もそのつもりだろうと思いますが、職員組合等との関係で、なお十分うまく見通しが立たないというふうに、ちょっと聞いたのですが、その辺の実情をひとつお聞かせ願いたいと思います。
  146. 大和田潔

    ○大和田政府委員 このオンライン計画につきましては、昭和五十四年度から六カ年計画でオンラインを進めるという計画を立てておりまして、これはその計画どおり進めるということでやっております。  組合との関係というお話でございますけれども、組合とも、この問題につきましては話し合っておりますし、決して、この関係でうまくいってないということはないというふうに私ども考えております。ぜひ、この計画を五十四年度から実施して、先生おっしゃいますように被保険者並びに受給者に対するサービスというものの向上に一層努めていきたいというふうに考えておるところでございます。
  147. 湯川宏

    ○湯川委員 時間もほとんどなくなったんですが、最後に児童手当のことにつきまして一、二お伺いしたいと思います。  児童手当につきましては、いろいろ議論のあるところだと私は思います。特に三子以降という点、これは財政的な点からと言われれば、それは別ですが、児童の健全育成あるいは家庭の所得保障に資するというふうな点から見て、この三子以降についてというのは、どうも、のみ込みが悪いのであります。中央児童福祉審議会の今回の答申も拝見いたしましたが、大変失礼ですが、私の個人的な感じでは、どうも歯切れが悪いといいますか、苦しいというふうな感じがするのであります。児童手当につきましては、たてまえからいえば、これは厚生省所管であって、賃金政策とかあるいは人口政策的な要素はないのだというふうに答えられると思いますが、本来こういうものがそういう形でいけば、作用としては、いろいろな作用があるわけですね。最もひどい例から言えば、おやじの酒代になるというものもあるわけです。ですから、本当の意味でこういう財源が生かされるためには、少しこの児童手当について根本的な考え方をされる必要があるのではないかという感じが、私はずっと前からしておるのであります。  そういう意味で、私はこれを否定するものではありませんが、すんなりのみ込めるような児童手当のあり方ということについて、いろいろ今回幾つかの制度についても御検討されるときでございますので、児童手当につきましても根本的にひとつ、私の言うことにいささかの意味があるとお考えならば、その辺を御検討を賜りたいというふうに思うのでありますが、ちょっと、これについて大臣の感触をお伺いしたいと思います。
  148. 小沢辰男

    小沢国務大臣 湯川先生のおっしゃるように、児童手当につきましては、やはりいろいろな面で検討しなければいけない事項がたくさんあると思います。現行制度でやりましても第三子からということでございますし、それから賃金の中における家族手当との問題、それから税制で扶養控除というものがあるわけでございます。諸外国の行き方を、最近の傾向を見ましても、むしろ税制の控除関係をやめて児童手当に走る方と、児童手当を整理といいますか、というふうにいく方とあるようでありますが、御承知のとおり家族の控除というものは、たしか一人二十九万であったと思うのですが、児童手当は、月五千円といたしますと年に六万円だけでございますから、そういう面でも非常に中途半端になっておる。一子、二子、三子、この順序についても、いろいろな意見があろうかと思いますし、これはぜひ、いろいろな先生方の意見なり、あるいは実情等も十分検討しまして、私として根本的に、児童手当制度自体もちろん存続をしていかなければいかぬと思いますし、先生もおっしゃるように、これを全く否定しておられないわけで、ただ、今日の姿でいいかどうかということについては大いに疑念があるというお尋ねで、私も同感でございまして、いろいろな方々の意見を聞いた上で、ひとつ根本的に検討していきたいという私はいま率直に気持ちを持っております。
  149. 湯川宏

    ○湯川委員 いろいろ熱意のある御答弁をいただきまして、ありがとうございました。  特に、この年金の問題につきましては、国民一般が意識しているよりはるかに大きな問題であるという点で、これの抜本改正につきまして、先ほど申し上げましたように日本のあらゆる知能を総動員して、今日の段階において、あるべき好ましい制度の見出しということにあらゆる御努力を傾注されるようにお願い申し上げまして、私の質問を終わります。  ありがとうございました。
  150. 竹内黎一

    ○竹内(黎)委員長代理 次回は、来る二十八日火曜日午前九時五十分理事会、午前十時委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。     午後一時五十七分散会      ————◇—————