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1978-02-28 第84回国会 衆議院 社会労働委員会 第3号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和五十三年二月二十八日(火曜日)     午前十時開議  出席委員    委員長 木野 晴夫君    理事 越智 伊平君 理事 住  栄作君    理事 竹内 黎一君 理事 羽生田 進君    理事 村山 富市君 理事 森井 忠良君    理事 大橋 敏雄君 理事 和田 耕作君       井上  裕君    石橋 一弥君       大坪健一郎君    川田 正則君       斉藤滋与史君    津島 雄二君       戸沢 政方君    友納 武人君       葉梨 信行君    橋本龍太郎君       湯川  宏君    安島 友義君       枝村 要作君    川本 敏美君       田口 一男君    矢山 有作君       草川 昭三君   平石磨作太郎君       浦井  洋君    田中美智子君       工藤  晃君  出席国務大臣         労 働 大 臣 藤井 勝志君  出席政府委員         内閣審議官   伊豫田敏雄君         内閣法制局第三         部長      前田 正道君         経済企画庁調整         局審議官    澤野  潤君         労働大臣官房長 石井 甲二君         労働省労政局長 北川 俊夫君         労働省労働基準         局長      桑原 敬一君         労働省婦人少年         局長      森山 真弓君         労働省職業安定         局長      細野  正君         労働省職業安定         局失業対策部長 細見  元君         労働省職業訓練         局長      岩崎 隆造君  委員外出席者         林野庁林政部林         産課長     輪湖 元彦君         通商産業省産業         政策局産業構造         課長      日下部光昭君         通商産業省産業         政策局企業行動         課長      南学 政明君         通商産業省機械         情報産業局産業         機械課長    鈴木 直道君         運輸省船舶局造         船課長     間野  忠君         労働大臣官房国         際労働課長   石田  均君         日本専売公社総         務理事     原  秀三君         日本国有鉄道常         務理事     橘高 弘昌君         日本電信電話公         社総務理事   山本 正司君     ————————————— 委員の異動 二月十七日  辞任         補欠選任   津島 雄二君     林  大幹君   草川 昭三君     矢野 絢也君  平石磨作太郎君     浅井 美幸君   不破 哲三君     浦井  洋君 同日  辞任         補欠選任   林  大幹君     津島 雄二君   浅井 美幸君    平石磨作太郎君   矢野 絢也君     草川 昭三君   田中美智子君     不破 哲三君 同月十八日  辞任         補欠選任   相沢 英之君     伊東 正義君   井上  裕君     金子 一平君   大坪健一郎君     澁谷 直藏君   川田 正則君     正示啓次郎君   葉梨 信行君     藤田 義光君   不破 哲三君     田中美智子君 同日  辞任         補欠選任   伊東 正義君     相沢 英之君   金子 一平君     井上  裕君   澁谷 直藏君     大坪健一郎君   正示啓次郎君     川田 正則君   藤田 義光君     葉梨 信行君 同月二十日  辞任         補欠選任   工藤  晃君     小林 正巳君 同日  辞任         補欠選任   小林 正巳君     工藤  晃君 同月二十一日  辞任         補欠選任   相沢 英之君     白浜 仁吉君 同日  辞任         補欠選任   白浜 仁吉君     相沢 英之君 同月二十七日  辞任         補欠選任   田口 一男君     石野 久男君  平石磨作太郎君     林  孝矩君   浦井  洋君     不破 哲三君 同日  辞任         補欠選任   石野 久男君     田口 一男君   林  孝矩君    平石磨作太郎君   不破 哲三君     浦井  洋君 同月二十八日  辞任         補欠選任   栗林 三郎君     横路 孝弘君   草川 昭三君     二見 伸明君   工藤  晃君     小林 正巳君 同日  辞任         補欠選任   横路 孝弘君     栗林 三郎君   二見 伸明君     草川 昭三君   小林 正巳君     工藤  晃君     ————————————— 二月十六日  勤労者財産形成促進法の一部を改正する法律案  (内閣提出第三四号)  駐留軍関係離職者等臨時措置法の一部を改正す  る法律案内閣提出第三五号) 同月十七日  労働組合法の一部を改正する法律案内閣提出  第三七号)(予) 同日  失業対策事業就労者通勤交通費支給に関する  請願浅井美幸紹介)(第一一六四号)  同(池田克也紹介)(第一一六五号)  同(広沢直樹紹介)(第一一六六号)  同(浅井美幸紹介)(第一二一六号)  同(浅井美幸紹介)(第一二四一号)  同(浅井美幸紹介)(第一二八〇号)  同(池田克也紹介)(第一二八一号)  同(玉城栄一紹介)(第一二八二号)  児童福祉法に基づく学童保育制度化に関する  請願池田克也紹介)(第一一六七号)  同(池田克也紹介)(第一二四二号)  同(浦井洋紹介)(第一二六五号)  同(小林政子紹介)(第一二六六号)  同(柴田睦夫紹介)(第一二六七号)  同(田中美智子紹介)(第一二六八号)  同(津川武一紹介)(第一二六九号)  同(藤原ひろ子紹介)(第一二七〇号)  同(松本善明紹介)(第一二七一号)  消費生活協同組合育成強化等に関する請願(  石橋一弥紹介)(第一一六八号)  同(宇野亨紹介)(第一一六九号)  同(森美秀紹介)(第一一七〇号)  同(安島友義紹介)(第一二一〇号)  同(井上裕紹介)(第一二一一号)  同(成田知巳紹介)(第一二一二号)  同(吉浦忠治紹介)(第一二一三号)  同(石野久男紹介)(第一二八五号)  同(久保三郎紹介)(第一二八六号)  同(古川喜一君他一名君紹介)(第一二八七  号)  同(柴田睦夫紹介)(第一二八八号)  同(新村勝雄紹介)(第一二八九号)  同(竹内猛紹介)(第一二九〇号)  同(長谷川正三紹介)(第一二九一号)  同(浜田幸一紹介)(第一二九二号)  戦時災害援護法制定に関する請願外一件(田川  誠一君紹介)(第一一七一号)  同外一件(川本敏美紹介)(第一二二一号)  同外一件(久保三郎紹介)(第一二二二号)  同(田口一男紹介)(第一二二三号)  同(矢山有作紹介)(第一二二四号)  同(和田耕作紹介)(第一二二五号)  同(浦井洋紹介)(第一二八三号)  保育事業振興に関する請願永末英一紹介)  (第一一七二号)  同(塚原俊平紹介)(第一二二六号)  腎臓病患者医療改善等に関する請願外一件(  相沢英之紹介)(第一一七三号)  同(伊東正義紹介)(第一一七四号)  同外一件(石橋一弥紹介)(第一一七五号)  同(稻村左近四郎君紹介)(第一一七六号)  同(川田正則紹介)(第一一七七号)  同中山正暉紹介)(第一一七八号)  同(湯川宏紹介)(第一一七九号)  同(井上裕紹介)(第一二一七号)  同(枝村要作紹介)(第一二一八号)  同(草川昭三紹介)(第一二一九号)  同(和田耕作紹介)(第一二二〇号)  同(浦井洋紹介)(第一二七二号)  同外二件(大坪健一郎紹介)(第一二七三  号)  同(瀬崎博義紹介)(第一二七四号)  同(瀬長亀次郎紹介)(第一二七五号)  同(田中美智子紹介)(第一二七六号)  同(寺前巖紹介)(第一二七七号)  同(村山富市紹介)(第一二七八号)  同(安田純治紹介)(第一二七九号)  生活協同組合育成に関する請願岩垂寿喜男  君紹介)(第一二一四号)  同(高橋高望紹介)(第一二一五号)  日雇健康保険制度改善に関する請願吉浦忠  治君紹介)(第一二二七号)  同外四件(吉浦忠治紹介)(第一二九三号)  療術単独立法化阻止に関する請願和田耕作  君紹介)(第一二二八号)  労災認定行為に対する事業主不服申し立てに  関する請願加藤常太郎紹介)(第一二八四  号) 同月二十一日  消費生活協同組合育成強化等に関する請願(  志賀節紹介)(第一二九八号)  同(鈴木善幸紹介)(第一二九九号)  同(竹中修一紹介)(第一三〇〇号)  同(中村直紹介)(第一三〇一号)  同(灘尾弘吉紹介)(第一三〇二号)  同(村上茂利紹介)(第一三〇三号)  同(依田実紹介)(第一三〇四号)  同(小川仁一紹介)(第一三三六号)  同外二件(岡田春夫紹介)(第一三三七号)  同(木原実紹介)(第一三三八号)  同(笹山茂太郎紹介)(第一三三九号)  同(始関伊平紹介)(第一三四〇号)  同(竹内黎一君紹介)(第一三四一号)  同(中川秀直紹介)(第一三四二号)  同(根本龍太郎紹介)(第一三四三号)  同(芳賀貢紹介)(第一三四四号)  同(福岡義登紹介)(第一三四五号)  同(古川喜一紹介)(第一三四六号)  同(古川雅司紹介)(第一三四七号)  同(森井忠良紹介)(第一三四八号)  同(和田耕作紹介)(第一三四九号)  同(石田幸四郎紹介)(第一三七七号)  同(大成正雄紹介)(第一三七八号)  同外一件(大橋敏雄紹介)(第一三七九号)  同(沖本泰幸紹介)(第一三八〇号)  同(川田正則紹介)(第一三八一号)  同(草川昭三紹介)(第一三八二号)  同(小平忠紹介)(第一三八三号)  同(古寺宏紹介)(第一三八四号)  同(津島雄二紹介)(第一三八五号)  同(野村光雄紹介)(第一三八六号)  同(平石磨作太郎紹介)(第一三八七号)  同(荒木宏紹介)(第一四〇五号)  同(岡田利春紹介)(第一四〇六号)  同(北山愛郎紹介)(第一四〇七号)  同外一件(塚田庄平紹介)(第一四〇八号)  同(山本悌二郎紹介)(第一四〇九号)  同外二件(渡辺三郎紹介)(第一四一〇号)  同(阿部昭吾紹介)(第一四四三号)  同(島本虎三紹介)(第一四四四号)  同(鳩山邦夫紹介)(第一四四五号)  同(横路孝弘紹介)(第一四四六号)  腎臓病患者医療改善等に関する請願外一件(  住栄作紹介)(第一三〇五号)  同(浦井洋紹介)(第一三五〇号)  同(金子みつ紹介)(第一三五一号)  同(嶋崎譲紹介)(第一三五二号)  同(田中美智子紹介)(第一三五三号)  同(津島雄二紹介)(第一三五四号)  同(山口シヅエ紹介)(第一三五五号)  同(田中美智子紹介)(第一三九三号)  同(小坂徳三郎紹介)(第一四一二号)  同(住栄作紹介)(第一四一三号)  同(西田八郎紹介)(第一四一四号)  失業対策事業就労者通勤交通費支給に関する  請願浅井美幸紹介)(第一三二九号)  同(池田克也紹介)(第一三三〇号)  同(古川雅司紹介)(第一三三一号)  同(池田克也紹介)(第一四一一号)  戦時災害援護法制定に関する請願浦井洋君紹  介)(第一三三二号)  同外一件(加藤清二紹介)(第一三三三号)  同(多賀谷真稔紹介)(第一三三四号)  同外一件(西田八郎紹介)(第一三三五号)  同(草川昭三紹介)(第一三九一号)  同(田中美智子紹介)(第一三九二号)  同(田中美智子紹介)(第一四一八号)  同(多賀谷真稔紹介)(第一四一九号)  同(山花貞夫紹介)(第一四二〇号)  同外一件(横山利秋紹介)(第一四二一号)  同(大原亨紹介)(第一四四七号)  同(多賀谷真稔紹介)(第一四四八号)  児童福祉法に基づく学童保育制度化に関する  請願田邊誠紹介)(第一三五六号)  同(西岡武夫紹介)(第一三五七号)  診療放射線技師制度に関する請願金子みつ君  紹介)(第一三五八号)  医療保険制度改悪反対等に関する請願栗林  三郎紹介)(第一三五九号)  保育事業振興に関する請願佐々木義武君紹  介)(第一三六〇号)  生活協同組合育成強化に関する請願大成正  雄君紹介)(第一三八八号)  同(寺前巖紹介)(第一三八九号)  同(西中清紹介)(第一三九〇号)  同(荒木宏紹介)(第一四一五号)  同(藤原ひろ子紹介)(第一四一六号)  同外四件(多賀谷真稔君他一名紹介)(第一四  一七号)  同(大橋敏雄紹介)(第一四四九号)  同(加地和紹介)(第一四五〇号)  療術単独立法化阻止に関する請願宮崎茂一  君紹介)(第一四二二号)  准看護婦制度廃止に関する請願外一件(市川雄  一君紹介)(第一四五一号)  同外二件(大橋敏雄紹介)(第一四五二号)  同外一件(草川昭三紹介(第一四五三号)  同外二件(古寺宏紹介)(第一四五四号)  同外一件(権藤恒夫紹介)(第一四五五号)  同外一件(竹内勝彦紹介)(第一四五六号)  同(玉置一徳紹介)(第一四五七号)  同外一件(林孝矩紹介)(第一四五八号)  同外一件(平石磨作太郎紹介)(第一四五九  号)  同外一件(山田太郎紹介)(第一四六〇号)  同(吉田之久君紹介)(第一四六一号) 同月二十七日  戦時災害援護法制定に関する請願安藤巖君紹  介)(第一四九〇号)  同(枝村要作紹介)(第一四九一号)  同(高沢寅男紹介)(第一四九二号)  同(多賀谷真稔紹介)(第一四九三号)  同(平石磨作太郎紹介)(第一四九四号)  同(太田一夫紹介)(第一五七九号)  同(金子みつ紹介)(第一五八〇号)  准看護婦制度廃止に関する請願安藤巖君紹  介)(第一四九五号)  同(荒木宏紹介)(第一四九六号)  同(浦井洋紹介)(第一四九七号)  同(工藤晃君(共)紹介)(第一四九八号)  同(小林政子紹介)(第一四九九号)  同(柴田睦夫紹介)(第一五〇〇号)  同(瀬崎博義紹介)(第一五〇一号)  同(瀬長亀次郎紹介)(第一五〇二号)  同(田中美智子紹介)(第一五〇三号)  同(津川武一紹介)(第一五〇四号)  同(寺前巖紹介)(第一五〇五号)  同(東中光雄紹介)(第一五〇六号)  同(不破哲三紹介)(第一五〇七号)  同(藤原ひろ子紹介)(第一五〇八号)  同(正森成二君紹介)(第一五〇九号)  同(松本善明紹介)(第一五一〇号)  同(三谷秀治紹介)(第一五一一号)  同(安田純治紹介)(第一五一二号)  同(山原健二郎紹介)(第一五一三号)  同(山田太郎紹介)(第一五五〇号)  同(阿部昭吾紹介)(第一六一〇号)  同(和田耕作紹介)(第一六一一号)  失業対策事業就労者通勤交通費支給に関する  請願池田克也紹介)(第一五一四号)  同(池田克也紹介)(第一五四七号)  同(大久保直彦紹介)(第一五四八号)  消費生活協同組合育成強化等に関する請願(  小川国彦紹介)(第一五一五号)  同(奧野誠亮紹介)(第一五一六号)  同(大久保直彦紹介)(第一五四三号)  同(清水勇紹介)(第一五四四号)  同(塚田庄平紹介)(第一五四五号)  同(不破哲三紹介)(第一五四六号)  同(鹿野道彦紹介)(第一五七四号)  同(鈴木強紹介)(第一五七五号)  同(松沢俊昭紹介)(第一五七六号)  同(安井吉典紹介)(第一五七七号)  同(渡辺三郎紹介)(第一五七八号)  同(山口鶴男紹介)(第一六一七号)  保育事業振興に関する請願金子一平紹介)  (第一五一七号)  高齢者技能研修センター等設置に関する請願(  斉藤滋与史君紹介)(第一五一八号)  腎臓病患者医療改善等に関する請願外一件(  斉藤滋与史君紹介)(第一五一九号)  福祉年金引き上げ及び社会保障拡充等に関する  請願坂口力紹介)(第一五二〇号)  療術単独立法化阻止に関する請願武藤嘉文  君紹介)(第一五四九号)  同(中村弘海紹介)(第一五八七号)  同外一件(藤本孝雄紹介)(第一六一四号)  同(松永光紹介)(第一六一五号)  生活協同組合育成に関する請願河野洋平君  紹介)(第一五五一号)  同(伏木和雄紹介)(第一六一六号)  医療保険制度改悪反対等に関する請願浦井  洋君紹介)(第一五五二号)  同(田中美智子紹介)(第一五五三号)  同(松本善明紹介)(第一五五四号)  水道事業国庫補助等に関する請願安藤巖君  紹介)(第一五六〇号)  同(田中美智子紹介)(第一五六一号)  国民年金改善に関する請願金子みつ紹介)  (第一五八一号)  同(渋沢利久紹介)(第一五八二号)  同(田口一男紹介)(第一五八三号)  同(田邊誠紹介)(第一五八四号)  同(中井洽紹介)(第一五八五号)  同外一件(山本政弘紹介)(第一五八六号)  同外二件(大内啓伍紹介)(第一六一二号)  同(和田耕作紹介)(第一六一三号)  診療放射線技師制度に関する請願増田甲子七  君紹介)(第一五八八号)  生活協同組合育成強化に関する請願永末英  一君紹介)(第一五八九号)  同(松沢俊昭紹介)(第一五九〇号) は本委員会に付託された。     ————————————— 本日の会議に付した案件  勤労者財産形成促進法の一部を改正する法律案  (内閣提出第三四号)  労働関係基本施策に関する件      ————◇—————
  2. 木野晴夫

    木野委員長 これより会議を開きます。  労働関係基本施策に関する件について調査を進めます。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。石橋一弥君。
  3. 石橋一弥

    石橋(一)委員 先般の労働大臣所信表明の中で「労働時間短縮に向けて積極的な行政指導を進めたいと考えております。」こういう所信表明があったわけでございますが、どうも私といたしますと労働時間の短縮ということを、しかも、この不況の中におきましても、本当の不況の中において積極的な行政指導をやるんだということは、大部分の国民は一生懸命に不況脱出したいということで仕事をなさっているわけでございますが、この積極的な行政指導を行うんだということを大臣はこの中で本当に心からお考えになっているかどうかということを、まずお伺いをいたしたいと思います。
  4. 藤井勝志

    藤井国務大臣 労働時間短縮の問題につきましては、去年の暮れ中央労働基準審議会から、公労使一致した建議がございまして、労働時間対策の進め方について、これから行政指導によって環境整備をして、そして労働時間の短縮方向に向かうようにという声がございまして、この不況のときの災いを転じて、やはり勤労者労働者の生活の向上、労働条件改善、こういった点から行政指導としては積極的な姿勢を示す必要がある。何とならば、やはりお互いがこの世に生を受けて人生に生きがいを感ずるという、こういったこと。それから御承知のように、最近の円高の背景には、いわゆる外圧という国際的な摩擦要因がある。日本人の働き過ぎという、こういうことも問題視されておることは、これは事実でございますから、そういう問題。同時に高度成長から安定成長に経済の軌道が移り変わらなければならぬということになりますと、結局みんなで仕事を分け合うという、こういう面からいっても、長期的な目標としては、やはり働く時間を合理的に縮めていく、こういう方向行政指導としては打ち出すべきである、私はこういうふうに考えまして、御指摘のように、それならいますぐやれるかというと、それを無理いたしますと結局、企業コスト増になり、そのために零細中小企業がつぶれてくるということになれば、雇用がそれだけ圧縮されますから、そこら辺はやはり企業、その実態に対応して、そしてあくまで、これは労使の自主的な話し合いという、こういう環境づくりのためには労働省としては積極的な姿勢を示すべきである、このように考えて、あえて積極的という言葉を使った意味はそういうところにあるということを御理解いただきまして、一律にこれをやるとか、いますぐ時間を考えないで急いでやるということでなくて、たどり着かなければならない目標がむずかしいだけに姿勢は積極的であるべきだ、こういう考え方で申したわけでございます。
  5. 石橋一弥

    石橋(一)委員 ただいまのお話で、とにかく国際的な問題でございますとか、あるいは労働者そのもののいわゆる労働福祉の問題ですとか、あるいは、このような時代に仕事をみんなで分け合うのだという考え方の中でやっていかねばならないだろうということ。しかし、それをどこまでも進めていった場合は、雇用をたくさん入れてやっていった場合、それこそコスト高になって、そして、ひいては零細企業の倒産ということになっていくではないか。しかし、その中において労働時間の短縮を、こういうときであればあるほど積極的な指導をやりたいのだというお考え方、私もよくわかりますが、結局は、いろいろな国際協調でございますとか、労働福祉でございますとか、あるいは雇用の確保ということですが、いまの非常に不況なときにそれを進める、結局は失業と申しますか、かわいそうな失業者をふやさない中で、このようなことをやらねばならないということだと思いますが、この不況の中で労働省御当局は失業の見通し、これをどうお考えになっているか。あるいはまた失業の増加ということを御心配なさっているならば、これについての対策の具体的なものがあったらばお教えをいただきたいと思います。
  6. 桑原敬一

    桑原政府委員 労働時間問題を進めていきます場合に、先ほど三つ観点から大臣がお答え申し上げたわけでありますが、私どもは特に最後の雇用対策の面につきましては長期的な観点から、これは考えていかねばならぬというふうに考えます。当面、時間短縮したならば、それが直ちに雇用に結びつくかということでは、私どもはそこは軽々に言えないのではないか。この問題につきましては、中央労働基準審議会の中でも相当御議論がございまして、三つ目的はあるけれども、特に雇用について、いますぐ効果が出るかどうかについては直ちには結論づけられない、こういうふうに御指摘がございます。そういった意味で私どもは、この時間問題を進めていきます場合には三つ目的を持ちながら、特に雇用問題としての時間短縮問題については慎重な配慮を持って、長期的な観点でやっていくべきではないか、こういうふうに思います。
  7. 石橋一弥

    石橋(一)委員 長期的な観点でこれを進めていく、わかります。もっと目を、とんでもない長い歴史という長期的な観点ということから私はいつも考えておりますが、民族の興亡でございます。昨年、野党の皆様方と一緒になって東欧、トルコ、アフリカ方面を視察をさせていただきました。その中で、たとえばイスタンブールに参りまして、かつて欧州、アジア、アフリカの三大陸にまたがって六百年もの長い間築いた大帝国、オスマン・トルコ帝国、これの滅亡、あるいはローマの昔、あるいはチュニジア、ここは御承知のとおりカルタゴでございます。こうしたところが、かつては、それこそ世界に覇を唱えるほどの強大な民族であった。これが一体どのようなことで、いまのような形になっていったのだろうかということをひそかに考えてみますと、文化の爛熟でございますとか、それによっての腐敗、堕落でございますとかというのがございます。その結果が結局その民族の勤労意欲の喪失でございます。働かなくなっていった。当然のこととして、その社会は活力のない社会になるであろう。局長のおっしゃったように、もっと長い長期的な観点、歴史観に立って、この労働時間の短縮というものをよほど上手にやりませんと、私は、どうも民族の興亡そのものまでに影響を及ぼすのではないのかなという気がしてならないわけでございます。それについての大臣の御所見をいただきたいと思います。
  8. 藤井勝志

    藤井国務大臣 石橋委員のお考え方の基本において私は決して反対するものではございません。特に日本のように資源が乏しく、一億二千万の日本人が豊かな生活をするという場合に、怠けておって、これが確保できるわけではございません。ただ、私は労働大臣になりまして早々でございましたが、中央労働基準審議会からの公労使一致の建議が出されまして、「労働時間対策の進め方について」というので、これは行政指導によって、ひとつ労使の理解ある話し合いで前進するようにやってもらいたい、こういうことを受けまして、今日まで国がいろいろな運命をたどりましたけれども、敗戦後また、ここまで経済が復興したということについては、御指摘のような日本人の生活態度、勤勉に努力する、それで教育水準も高い、こういったことを失ってはならないことは当然私は前提に考えておりますけれども、ただ現在ここまで日本が経済大国になりまして、しかも諸外国との関係が、もう世界の中の日本という国際関係との協調ということを抜きにして日本の今後の繁栄はあり得ない、こういうことを考えた場合、昨今、御案内のごとく日本人の働き過ぎということが問題になっている、外圧の背景になっている、こういったことも無視できない要素だと私は思うのです。  したがって、労働時間の短縮というのは日本人が怠け者になるということではなくして、やはり働くときにはよく働き、そして余暇を持って、意義ある人生を送る、生活をする、こういうことへ、その時間を活用していく。そして、その余暇はほかの人たちの働く場に提供する、そして仕事を分かち合う。こういうことによって雇用のいわゆる需給の調整を国内的に図りながら、国際的には、日本人が国際的で協調性のある国民になり、また個々の勤労者は意義ある人生を送ってもらう、こういうことから言えば、いまの客観情勢は御指摘のごとく非常に厳しい不況のどん底でありますから、こんなことをまともに言っていると頭がどうかしているかと言われるくらいな困難性も私はわからぬことはないのです。しかし、いま申しましたようなことを考えると、どうしても登り詰めなければならぬ頂である、このように考えておるわけでございまして、民族のバイタリティーを失うような怠け者をつくるための時間短縮ではない、こう私は理解して行政指導に当たりたい、このように考えているわけでございます。
  9. 石橋一弥

    石橋(一)委員 お考え方は私もよくわかります。ただ、いま私の申し上げました歴史観といいますか、民族興亡の歴史、このこと自体については大臣といたしましてもやはり同感でございますか。
  10. 藤井勝志

    藤井国務大臣 私は基本的に、勤勉な民族が国家の繁栄をもたらす原動力である、このような点においては石橋委員と意見が一致しております。
  11. 石橋一弥

    石橋(一)委員 そこで、ただいまの御答弁の中でも、すでに触れられているわけでございますが、それこそ資源の少ない日本、貿易で国を立てている日本、そうした中において国際協調しながらやっていかなければ、世界全体の経済あるいは貿易の中において日本が袋だたきになってしまう。大臣のお言葉の中にも、外国から少し働き過ぎるということを言われている現状である、確かにそうでしょう。それこそ先進国と申し上げますか、そのような国々からは働き過ぎるということを言われておると私は思います。確かに現実的な経済の中において先進国から働き過ぎると言われていること、これもうなづけます。しかし、世界はたしか百五十三カ国か四カ国あるはずでございます。その中におきますいわゆる発展途上国は、私は日本に対して働き過ぎると言っているという話は聞いたことがございません。そうしたことがあれば私の不敏のいたすところでございますが、発展途上国の国々からは日本人は働き過ぎるとどうも言われていない。それ以上に、かえって、もっと申し上げるならば、お隣の韓国でございますとか等々から、それこそ、たとえば造船でございますとか繊維でございますとか、いろいろなことで追い上げられているのが日本の経済の実情であろう。  少なくとも資源がない日本、したがって当然のこととして資源のある国よりは頭も使い、努力もし、労働の時間もよけいにしていってこそ本当の闘いができるであろうと私はいつも考えております。ただ先進国の中から国際協調だということだけで、日本の将来を卜するところの勤労の意欲の問題にまで——国民は単純です。労働時間短縮、週休二日制、働くなということを言っているのと同じだ、こう国民は非常に単純にすぐ割り切ります。そこらのことにつきましての大臣の御所見をいただきたいと思います。
  12. 藤井勝志

    藤井国務大臣 日本人が働き過ぎだという海外からの批判というか、これは決して発展途上国からそういうことを言われているのではない、欧米先進国でございまして、やはりアメリカ、ヨーロッパ、特に現在アメリカとの経済関係において、経常収支の黒字幅が百億ドル以上というこういったことで、賃金の方は国際水準に大体もう近寄ってきておりますが、ただ労働時間の関係は現在平均して日本は四十二時間ぐらいでございます。欧米先進国は四十時間ちょっと切っておる。こういうことから、これが国際摩擦的な要因にもなっておるわけでございますから、やはり、そのような現実を踏まえて、そして民族のバイタリティーを損なわないで、余裕のできた時間にはまた生きがいのある生活態度にわれわれの考え方を変えていく。時間短縮については、むしろ日本人の価値観そのものを変えていくだけの粘り強い着実な行政指導を含めた世論喚起が必要である。そして御指摘のように、時間短縮はすぐこれが怠けることだというふうな理解が、まだ国民全体に広がっておれば、石橋委員の御指摘のごとき心配もございますから、これは私は非常に重大な今後の政治課題である、このように思います。  ただ私は、この問題をいまのままにしておって、またぞろ円高で、そのために輸出関連中小企業がどうにもならなくなって倒産の憂き目に遭うということになれば、これこそ、また大変な社会問題でありますから、そこら辺を総合的に勘案しながら前進していくということが必要ではないか、こう思うわけでございます。
  13. 石橋一弥

    石橋(一)委員 なかなかむずかしい問題で大変だと思います。いろいろな角度から、さらに御質問を続けたいと存じますけれども労働時間を短縮し、そして余暇の豊かな人生を送るんだということでやっていく、労働福祉という面から見て確かに私もうなずけるところでございます。しかし同時にまた、社会福祉という点から大きく考えてみますと、結局その国、その社会がどれだけの富を、果実をその中から生み出すか、その果実、その富を、社会福祉という考え方の中で、これは社会資本のことから始まってたくさんの広範な分配が行われるであろう、こう私は考えております。小さな果実、小さなと言うと語弊がありますが、局部的に考えてみるならば、働けない階層の皆様方あるいはお子様あるいは御老人、こうした方々に福祉の充実、高福祉をやりたいと思えば思うほど、働ける世代の人たちができ得る限り働いて、そしてその結果としての生産の拡大、果実の大きさ、生み出されたものをたくさんにしてこそ初めて、先ほど大臣の御答弁のありました活力ある社会であり、そうして、それが大きければ大きいほど高福祉社会、高福祉国家ができ上がるであろう、こう私はいつも考えております。  そうした考え方に立ちまして福祉の向上を図りたいと思えば思うほど、やはり働ける人たちが一生懸命に働くんだという思想、こうした考えと、いまの時代に国民に間違った理解をされない行政指導、それを一体どのようなことをお考えになっておりますか、よろしくお願いいたします。
  14. 藤井勝志

    藤井国務大臣 先ほどもお話を申し上げておりますように、時間短縮、これは決して怠け者を奨励するということでは断じてない。やはり勤労意欲というものは私は絶対に必要だと思うのです。ただ問題は働き方で、現在、日本は御承知の月給、日給制ということになっておりますが、こういう問題も、時間制賃金といった賃金形態も労使が自主的な話し合いで解決してもらわなければなりませんけれども、そういうふうにして、働くときは一生懸命に働く。しかし、ただ単に働く時間をだらだら長くするというようなことでなくて、余暇をまた自分の人生の価値ある暮らし向きに充当する、こういう方向へ配慮していく。こういうことによって、片や国際的摩擦も防ぎ協調的な態度になれる、こういうことでありまして、かつてわれわれが通ってきた道だけでは本当に日本が豊かになるための方策としては十分でない、私はこのように思います。  やはり勤勉という基本的な姿勢においては、もう石橋委員指摘のお考えと全く私は変わっておりません、一致しております。私の言わんとするのは、いま申したように、時間的に短縮する方向に向かって生活の知恵を、われわれがみんなで身につける努力が必要ではないか、こういうふうに思うわけでございます。
  15. 石橋一弥

    石橋(一)委員 要は、国民皆様方が何か働かなくてもいいんだという考え方にならないように、それこそ、さっきのお話のとおり価値観の転換をするところまで、りっぱな行政指導を御要望いたしたいと思います。  そこで、ただいまの御答弁の中にもございましたが、日本人の労働の質の問題と申しますか、あるいは密度の問題と申しますか、特に私は、工場に参りまして機械の前で機械に使われるような形でどんどん仕事をやっている人は別として、ホワイトカラー族と申しますか、このような方々の労働の質、密度の問題、これが欧米各国と実際問題、比較をいたして、はだに感ずることは、どうも日本人の労働の質ということに相なりますと劣っているような感じがいたして仕方がございません、同じ八時間なら八時間の中においてですね。そうした問題について、労働御当局はどうとらえておられますか。
  16. 桑原敬一

    桑原政府委員 諸外国と日本との労働密度の比較というと、統計的なデータもございませんので、私どももなかなか明確な御答弁ができないわけでありますけれども、やはりよくアジア的労働とかなんとか言われまして、時間管理その他がややもするとルーズであるということは、よく世間では言われているところでございます。ただし、私どもは過去三十年間、四十八時間制というもとで働きながら、しかも、先ほど大臣がお答え申し上げましたように四十二時間の時間短縮をしながら、日本の経済は着実に成長してきていると思います。そういった意味で、賢明な労使の方々は、労働の内容の問題も含めまして時間短縮の問題に真剣に取り組んでこられましたし、これからも取り組んでいただくことを私は期待をいたしております。
  17. 石橋一弥

    石橋(一)委員 外国の労働の質、密度の問題については統計がない。統計ではかれるような問題でないと思います。しかし、先ほどからの御当局の考え方は、どこまでも怠け者をつくるのではないのだ、ただ労働の中における価値観の転換まで図りたいのだという御姿勢。そうであるならそうであるほど、仕事のときには一生懸命に仕事をするのだというものが一緒に出ていきませんと、何か働かなくたっていいんだという感じを与えかねない、私はこう考えます。そこで、そのようなことに対しまして労働御当局として国民皆様方に、かつてPR等をしたことはございますか、あるいはPRをしようと考えておりましたならば、お答えをいただきたいと思います。
  18. 桑原敬一

    桑原政府委員 時間短縮、週休二日の問題につきましては、昭和四十八年ぐらいから行政指導をしながら進めてまいったわけでございます。その間におきまして出先の基準局を通じまして企業、関係労使に、そういった面の御理解をいただいてきたわけでございます。特に今回、昨年十一月の終わりに建議をいただきまして、その建議の趣旨を十分関係の事業所あるいは労働組合の方に御理解いただきますようにパンフレットをつくりまして、これを積極的に配布しながら、時間短縮についての御理解をいただきたい。その趣旨は、先ほど大臣が申し上げました三つ観点に尽きますけれども、そういった問題を敷衍いたしまして、この問題の必要性につきまして、わかりやすく啓蒙いたしているわけでございます。
  19. 石橋一弥

    石橋(一)委員 質の問題につきましてはPRのパンフレット等出しても、なかなかとらえにくいことだろう、また言いにくいことだろうと思いますけれども、いずれにいたしましても、先ほどから何度もお話ししているとおり、間違った考え方を起こさないようにお願いいたしたいと思います。  何度も何度も同じようなことを申し上げるわけでございますけれども、御当局の本当の意味労働短縮、これを国民の大部分が理解していないであろう、私は本当にそう思っています。なぜかと申しますと、私ども田舎に帰りますと、大部分が大企業も何もないところでございます。したがって、われわれは一生懸命に、とにかく血眼になって働いて何とかしてここを切り抜けようと考えておるのだ。公務員の皆さん方が週休二日制をやろうと考えたり、あるいは労働時間の短縮をやろうと言っていることは、われわれにはどうしても納得ができないのだということを小企業の——小企業なんか、使用者側も労働者側も一緒になって何とかして企業を防衛しよう、こう思っています。したがって、そこに勤めている人も、あるいは農民も商人も、どうも考え方がおかしいではないか、国民感情を逆なでしているのではないか、私は、このような意見を非常に強く言われます。  そこで、労働四団体加盟の組織員数を調べてみますと約八百十六万一千いらっしゃる。民間と官公労という形で見てみますと、民間が八百九十九万、官公労が三百四十四万、合計千二百四十三万七千だという数字もいただいております。そしてまた一方、五十三年の景気見通しの中での就労人口の予測を見てみますと五千四百五万である、失業者百十万という予測を立てております。こうした観点から考えてみますと、一般国民は、組織労働者と申しますか大企業と申しますか、こうした顔に向けての週休二日制であり、労働時間の短縮を図るという感じを持っている。約四千万のそうでない労働者がいるわけです。この方々は、私の実感として、どうもそのような感じで受けとめてこの問題を考えているようでならないわけでございますが、御当局はどうお考えになりますか。
  20. 桑原敬一

    桑原政府委員 公務員の週休二日制の問題はいまテスト中でございます。第二回目のテストをやっておりますけれども、あくまでも民間の週休二日制の普及の姿を見ながら、いわゆる民間準拠的な形で進められておると私は理解をいたしております。それから、完全週休二日というのは日本ではまだ必ずしも普及しておりませんけれども、現実に何らかの形で全体的には四三%の企業が週休二日をやっておりますし、労働者数から見ますと七割程度の方が何らかの週休二日をやっておりますので、むしろ問題は、先生御指摘のように中小企業、特に三十人未満のところが非常におくれているという問題がございます。したがって、労働福祉の面から全体がそろうということが必要ではないだろうか。しかし、もちろんこういった不況のさなかでございますから、労使の話し合いの中から段階的にこれを進めていく、こういう行政指導を進めているわけでございます。
  21. 石橋一弥

    石橋(一)委員 時間がございませんので、最後に一つだけお伺いいたしたいと思います。  いままでの御答弁の中におきまして、この問題に対する大臣の御所見よくわかります。また、私といたしましても、それこそ長期的な歴史観に立っての民族の興亡の問題でございますとか、資源の少ない日本であるだけに、ただ外国から言われたので、それに従う国際協調だけの姿勢、それでいいだろうかとか、福祉国家を実現したいならばしたいほど、働ける世代は働いた方がいいという考え方、これも御理解をいただきたいと思います。そしてまた、この不況の現在であるだけに労働短縮問題については少し手控えていただきたいというのが私の本旨でございますけれども、これは積極的に推進なさり、そしてまた価値観の転換のところまでやるという御決意ですから引っ込めますけれども、一つだけお伺いいたしたいと思います。  この問題について法制化はしないであろう、こう私は考えておりますが、それについてのみお答えをいただきたいと思います。
  22. 藤井勝志

    藤井国務大臣 先ほども、お答えいたしましたように中央労働基準審議会ですね、公労使三者の一致した建議として、とりあえず行政指導によって時間短縮を週休二日制を含めてやるようにと、こういった建議もございますし、御指摘のように、これが一律に法律によって規制するということは、現在の日本の国情から見て適当ではない、このように考えておるわけでございます。
  23. 石橋一弥

    石橋(一)委員 どうもありがとうございました。
  24. 木野晴夫

    木野委員長 次に、森井忠良君。
  25. 森井忠良

    森井委員 労働大臣は、公共企業体等関係閣僚協議会の有力なメンバーでありますが、このたびのあなたの所信表明を伺いますと、スト権について一言も触れていらっしゃいません。これは一体どういうわけですか。
  26. 藤井勝志

    藤井国務大臣 公共企業体のスト権問題は、御承知のごとく公共企業体等基本問題会議において現在検討されておりまして、その検討の結果を踏まえて、われわれ政府としてもこれに対応しなければならぬ、こういうふうに考えておりますので、今の段階において労働大臣として、これに対して発言をするということは適当でない、このように考えるわけでございます。
  27. 森井忠良

    森井委員 閣僚協議会の事務局にお伺いをいたしますけれども、一体この基本問題会議の答申は、あるいは意見書の提出はいつになりますか。時間がありませんから日程だけ、ざっと御報告を願いたい。
  28. 伊豫田敏雄

    ○伊豫田政府委員 お答え申し上げます。  公共企業体等基本問題会議のただいまの審議の状況は、ようやく取りまとめに入った段階でございます。したがいまして、ただいま本年の五月ないしは六月を目途に、その意見の総括的なものが出される、このように考えております。
  29. 森井忠良

    森井委員 大臣、お聞きのように、まあ急に解散があったり、福田内閣が大幅改造して、あなたがおやめになるのならばともかくといたしまして、予想される範囲では、あなたのまだ任期中に基本問題会議の一定の意見書が出るという予定であります。いやおうなしに閣僚協議会のメンバーとして、また今日まで労働行政を積極的に進めてこられました官庁の大臣として、私はやはり避けて通ることのできない問題だと思うわけでありまして、そういう意味で、いまの日程からいたしましても、大臣所信表明の中で何がしかの意思表示があってしかるべきだと思うわけであります。いかがですか。
  30. 藤井勝志

    藤井国務大臣 この問題というのは、御承知のごとく長い沿革と歴史を持って今日に来ておりまして、国民経済に及ぼす影響も非常に大きい問題でございますし、せっかく現在検討され、間もなく結論が出る日程が進んでおるわけでございまして、私自身、労働大臣藤井勝志として、いろいろ深刻にこの問題の取り扱いについて考えております。この時期において、せっかくこれが検討されておるこの段階において、まだ私から発表すべき時期ではない、このように思います。
  31. 森井忠良

    森井委員 深刻に考えておるということでありまして、その意味は、五月ないし六月に意見書が出るというわけでありますから、それ以降、可及的速やかに労働大臣としては、できれば年内にでも結論を出したいというお考えなのか、再度ひとつ御答弁をいただきたいと思います。
  32. 藤井勝志

    藤井国務大臣 大変な重大な課題を含んだ問題でございまして、すでにもう過去の経緯を見ましても、いろいろこう両論を併記で、なかなかむずかしい事柄でございますけれども、いずれは、これに決着をつけなければならない日程が進んでおるというふうに思います。したがって私としては、できるだけひとつピリオドを打つ方向に全知全能を尽くしたい、このように考えておるわけでございます。
  33. 森井忠良

    森井委員 そこでお伺いをしたいのでありますが、御承知のとおり、この基本問題会議での意見陳述について、例の公労協がなかなか参加をいたしませんでした、結果からいいますと、ことしの一月十三日から二月二十六日まで、いわゆるこの基本問題会議そのものに問題があるということで、きわめて深刻な不信感から今日まで意見陳述を拒んでおりました公労協が、ようやく出席をして意見を述べたという段階であります。これはもう御案内のとおりであります。しかし、公労協が基本問題会議に出席をして意見を述べるについては、昨年の十二月二十七日、いわゆる政労交渉が行われました。そして例の七四春闘の合意五項目というのが出てまいりまして、私が公労協から把握をいたしましたところでは、十二月二十七日の政労交渉におきまして、スト権問題について、七四春闘合意五項目の趣旨を踏まえて結論を出す。その場合、労働側の意見を聞き、十分参考にし解決を図る。これが十二月二十七日のいわゆる政労交渉、労働大臣も出ていらっしゃったわけでありますが、そこで確認をされ、その上で、いま申し上げましたように、ことしになりまして一月十三日以降の意見聴取に公労協は応じた、私はこう理解をしておるわけでありますが、労働大臣、そのとおりでしょうか。
  34. 北川俊夫

    ○北川政府委員 公労協が基本問題会議に出席するに当たりまして、官房長官、労働大臣と会見をいたしまして、いま先生の御指摘のようなやりとりがあったということは事実でございます。
  35. 森井忠良

    森井委員 微妙な表現をするじゃないですか。やりとりがあったということは、確認をされたということなのか言いっ放しなのか、はっきりしなさいよ。これは今後の動向にきわめて重要な影響を及ぼします。
  36. 北川俊夫

    ○北川政府委員 私が申し上げたのは、文書でそういう確認のやりとりがあったということではなくて、口頭のお話の中で官房長官から、その旨のお答えがあった、そういうことでございます。
  37. 森井忠良

    森井委員 口頭といわず文書といわず、官房長官から発言があって、これを確認をされたようであります。そこで再度、藤井労働大臣に確認をするわけでありますが、いわゆる七四春闘の合意五項目というのは、これは田中内閣のときでありますけれども、四十九年の四月十三日、スト権の問題については五十年の秋までに結論を出すということも含む五項目であります。したがって、どちらかというと現在の基本問題会議は、御承知のとおり当時の専門懇が十一月二十六日に答申を出しまして、それを受けて三木内閣が五十年十二月一日に閣議決定、政府声明という形で、いわゆる経営形態等を含めてスト権の問題は審議をしなければならないということで事実上たな上げにすると同時に、いわゆる三公社五現業の経営形態を中心に審議をしなければならぬという形で今日まで推移しておるわけでありまして、言うなれば、直接スト権の問題というよりも経営形態、もっとはっきり言いますと民営に移すかどうかという問題とセットで考えてこられまして、その意味で公労協は、全く意味のない、しかも、これは損害賠償に関する部会等がありまして、言うなれば現在の公労法をそのまま絶対視をする立場からの審議もあるというふうなことで、きわめて不信感がわいて今日に至っておるわけでありますが、いまの御確認で、ようやく七四春闘の確認五項目が生きてまいりましたので、その方向で、大臣おっしゃいましたように全知全能を尽くして何とかこの問題の解決を図るという、そういうことでありますので、ぜひとも、いま私が申し上げましたような方向でやっていただきたいと思うわけであります。  この点につきまして、きょうは先ほど申し上げましたように七四春闘の合意五項目が生きてまいりましたから、この機会に関係のあります三公社の皆さんから私は御意見を承っておきたいと思うわけであります。昭和五十年十月二十一日の予算委員会、御承知のとおり、これは十一月の終わりになりますと、百九十二時間にわたる長期のストライキが行われた、その寸前でありますけれども、五十年十月二十一日の予算委員会におきまして、わが党の当時の堀昌雄委員が、三公社の総裁にそれぞれ質問をいたしております。設問は簡単でありまして、この時期にきて一体スト権を認めるべきかどうか、この点について三公社の総裁の意見を述べよという形であります。きょうは三公社の総裁においでをいただきたかったわけですが、それぞれ事情もおありと思いまして、私は、委員部を通じまして、総裁が来れなくても、きちっと総裁の意思を代弁できる責任ある地位の方に来ていただきたいと申し出をしておきました。多分そうなっておると思いますので、この機会に、先ほど申し上げましたように七四春闘の合意五項目が生きてまいりました。状態が前に戻ったわけでありますから、したがって、当時の三公社の総裁がお答えになったことで間違いがないかどうか。結論から言いますと、三公社とも、専売も、あるいは国鉄も電電公社も、それぞれの総裁から条件つきではあってもスト権は認めるべきだという発言を、そのときにしていらっしゃいます。いまもその考え方に変わりないかどうか。順序といたしましては、再現をいたしますので専売公社、電電公社、そして国鉄の順序で御答弁をいただきたいと存じます。
  38. 原秀三

    ○原説明員 専売公社でございます。専売公社といたしましては、昭和三十九年、この委員会におきまして当時の阪田総裁より、スト権、争議権を付与する方向を支持する、こういう見解を申し述べております。この見解につきまして、私ども立場はその後変わりございません。昭和五十年の先ほど先生の御指摘の予算委員会におきまして、泉総裁が同趣旨の発言をしております。これは争議権を与えるにつきまして、いろいろな環境条件の整備は必要でございます。当事者能力の拡充等いろいろの環境条件の整備は必要でございますが、この整備と相まって争議権は与えられることが望ましい、こういう見解を述べております。この見解につきまして、私ども考え方に変わりはございません。
  39. 山本正司

    山本説明員 お答え申し上げます。  労働基本権に関します公社の見解は、先生先ほど御指摘の五十年十月二十一日の予算委員会における当時の米澤総裁がお答えいたしましたとおりでございまして、変わりはございません。しかし、いずれにいたしましても、この問題は高度な政治判断、また立法政策上の問題でございまして、私どもといたしましては、速やかに公共企業体等基本問題会議において適切な結論が出されることを期待いたしておるものでございます。
  40. 橘高弘昌

    ○橘高説明員 スト権の問題につきましては、しばしば各種委員会で総裁が答弁いたしておりますが、先ほど来お話が出ておりますように現在、基本問題会議でこの問題が検討されておる段階におきまして、この問題について総裁としての見解を申し上げるのは適当な時期でない、こういうふうにお答えいたしております。
  41. 森井忠良

    森井委員 いまの答弁で電電公社の方にお伺いをいたしますが、速やかに基本問題会議で結論を出してもらいたい、こういうことなのですが、電電公社だけではありませんが、各公社と基本問題会議の大方の趨勢との違いがありますね。たとえば当事者能力の問題、それから特に民営移管の問題につきまして、三公社とも私が承知をいたしております範囲では、現在の形態を変えるべきでないという発言をしていらっしゃいます。しかし、基本問題会議での一般的な趨勢は、いわゆる民営論との引きかえでスト権の最終的な論議が始まるという理解からすれば、そういった場合に、つまり電電公社の業務の一部もしくは全部を民営にするというふうな結論が出た場合にどうしますか、それが電電公社へのお尋ねであります。  それから国鉄につきましては、いまちょっとよくわからなかったわけでありますが、当時の藤井総裁は、こういう表現になっておりますね。   争議権を付与するか否かということは、立法  政策上の高度の政治判断を要するということは  すでに申しましたので、これは繰り返しません。  しかし、国鉄の意思はどうだという御質問があ  れば、当事者としての経験から、次のように考  えております。  すなわち、現行法制のいわゆる行政処分だけ  では争議行為の抑止効果はもう限界にきている  のじゃないかと考えます。したがいまして、国  民の迷惑を最小限にする、ストを一回でも減ら  すという現実論から出発しますと、現状のまま  でいくよりも、一定の条件をつけましていわゆ  るスト権を付与していく方が好ましいというふ  うに私は考えております。こういうふうになっておるわけであります。約二、三年経過はしておりますけれども、あの当時の発言といまの答弁は少し食い違うように思いますが、再度、御答弁を願いたい。
  42. 山本正司

    山本説明員 経営形態の問題についてお答え申し上げます。  電電公社といたしましては、現在の公社経営形態が電信電話事業の運営に関しまして最も適当な経営形態であるという見解でございまして、この考え方は、公共企業体等基本問題会議の経営形態部会に対しましても、るる御説明申し上げておるところでございます。基本問題会議の審議の過程におきまして、いろいろ御意見もあるやに聞いておりますけれども、私どもといたしましては、昭和二十七年、電電公社発足以来、長年の懸案でございました電話の積滞解消あるいは全国自動即時化、こういったものを、現在の公共企業体という経営形態のもとで完全に達成をしてまいりました実績の上に立って、現在の経営形態というものが最も適切であるというふうに考えておるわけでございまして、そういった結論が出されることを私どもとしては期待いたしておるわけでございます。
  43. 橘高弘昌

    ○橘高説明員 藤井総裁が予算委員会で堀先生の質問に答えて、条件つきスト権付与を説明いたしましたのは五十年の十月二十一日でございますが、その後、御案内のように八日間にわたるスト権ストが行われ、また、その中で十二月一日には政府声明が出る。さらには翌年の三月には国鉄の首脳陣も交代するというような中で、この問題につきましては、スト権ストをめぐりまして大変国民の厳しい批判を受ける等々、種々の紆余曲折と申しますか、経過がございました。  そうした中で、もちろん労働組合との間にも、この問題をめぐりまして何度か激論が交わされてまいりました。高木総裁が就任当初、スト権の問題はメーンである、ないの議論もありまして大変労使関係も硬化いたしたと申しますか、そういうこともございましたが、その後、労使の中で労働基本権問題につきまして、この問題は避けて通れない重要な問題であると認識する、しかし、この問題の実現のためには、やはり国民的な理解が必要なので、労使双方その実現のために最大限の努力をしようというようなことで、労使関係の改善を図るために、今日までそういう認識のもとにやってきておるわけでございます。  その後は、先ほど御説明いたしましたように、しばしばこの問題は取り上げられておりますけれども、まだ総裁としては、この件について答弁する適当な時期ではない、これは申し上げられないとかなんとかということではなくて、時期が来ればということで、まだ適当な時期ではない、こう申しております。
  44. 森井忠良

    森井委員 あなた総裁でないから、これ以上言わないけれども、二公社が認めていらっしゃるのですから……。  ただ、さっき全部読まなかったけれども、先ほど申し上げました国鉄総裁の考え方は、とにかく「部下の総務部長を集めてその趣旨を徹底さし、さらに昨日組合の首脳を集めて説明したということでございまして、」という注釈がついているのですよ。もう答弁は要りませんけれども、あえて否定もしていませんから、はっきり申し上げませんが、藤井さんと高木さんで違うというような国鉄がありますか。  労働大臣、以上のようなことを踏まえまして、私は、少なくとも昭和五十三年中には、スト権の問題については、あなたの先ほどの願望も含めて鋭意努力をしていただきたいと思いますが、この問題について最後に所信を承っておきたいと思うのです。
  45. 藤井勝志

    藤井国務大臣 御発言の御趣旨を踏まえまして、鋭意全力を尽くしてまいりたいと思います。
  46. 森井忠良

    森井委員 その次に、週休二日制、時間短縮の問題について御質問をいたします。  先ほど与党の方からも質問があったわけでありまして、はっきり申し上げまして、時間短縮に関します労働大臣の御答弁、基本的な認識については私どもも同感であります。つまり、時間短縮を進めていかなければならないという点については同感であります。  しかし、問題はいろいろあるのでありまして、去年の例の十一月二十九日の中央労働基準審議会の建議、先ほど御披露がございましたけれども、これは行政指導でやれ、こういう形になっているわけですね。ここのところが私は問題だと思うのでありまして、盛んに強調されました、これは公労使全会一致の結論である、こうおっしゃるわけでありますが、労の方は、それはいまよりも時間短縮が進むということについて反対をする理由はありませんから、したがって賛成はするのです。しかし、同じ賛成でも積極的な賛成と消極的な賛成があることを御理解をいただきたい。少なくとも、やはりこの時期になりますと何らかの法的な措置を加えなければ——時間短縮も週休二日制も連動するものですね。週休二日制をやれば当然、時間短縮をやらなければならぬことになるわけですが、いずれにいたしましても何らかの法的な規制を加えなければならない時期に、もう来ているのではないかというのが私どもの認識であります。恐らく公労使の労も、その認識の上に立って、とりあえず前進的な建議でありますから賛成をしたというふうに私は理解をしたいと思うのです。  そこで実態からいきますと、こういう問題があるわけですね。なるほど時間短縮は漸次進んでおります。これはもう認識は一致をしておるわけでありますが、問題は、大企業はいいのですが中小企業が遅々として進まない。ここのところが最大の問題であります。たとえば時間短縮で申し上げますと、従業員千人以上の規模の企業、大企業と申しますか、そういうところでは、すでに週四十時間以内というのが六四・八%まで進んでいるのです。だんだん悪くなりまして、この数字は、三十人から九十九人のいわゆる中小零細企業と言われるところは、四十時間未満ということになりますと九・六%しか実施していないのです。週休二日制についても同じことが言えるのでありまして、これはどちらも五十一年の数字でありますけれども、何らかの形で週休二日制を実施しておる企業というのは、千人以上をとってみますと八七・五%もあるわけです。ところが、たとえばうんと雰細の五名から二十九人というふうな企業になりますと、わずかに一三・三%なんです。これだけ規模間格差があるわけです。大企業はある程度進んでおりますけれども、中小零細までいくとどうしようもない。ここのところをどう解決をするか、お答えいただきたいと思うのです。
  47. 桑原敬一

    桑原政府委員 御指摘のように、規模的な格差が非常に大きいということは事実でございます。私どもは、やはりそういった零細企業が経営基盤が弱くて、実態的に、そういうふうになっておるということも否定はいたしません。したがって私どもは、これをどういうふうに進めていくかということが行政として重要な目標だと思っております。  従来も週休制というものがございまして、現在、週休制が法律的にはなっておりますけれども、問屋街その他ではなかなかこれが進まなかった。法律があってもなかなか進まないという問題があったわけであります。これはやはり、零細企業になると、どうしても自営業的に家族だけでやっておるというのが、同じような産業の中にあるわけであります。結局そういった意味で、法律的な規制があってもなかなかむずかしいという問題がございますので、そういうものは地域ぐるみに週休二日制あるいは時間短縮というものを推し進めていかなければいかぬ。問題は、私どもの行政の経験からいいましても、法制的な面だけではなくて、そういったいろいろな行政手法を加えながら零細企業の時間短縮等を進めていきたい、こういうふうに思います。
  48. 森井忠良

    森井委員 労働大臣も御指摘がありましたように、日本人は言うなれば働き過ぎ、いわゆる長時間労働、これらが国際競争力の上で、ある意味で非常にダンピングに近い無理をしておる。これがやはり外圧の原因になっておると先ほどおっしゃいましたけれども、これは中央労働基準審議会でも、そのことが指摘をされておるわけですね。ところが私、驚いたのは、最近送られてきました「日経連タイムス」、これは御承知のとおり日経連の機関紙ですね。これを見ますと「春季賃金交渉の焦点」という中で「労働時間の短縮雇用はふえるか?」という題目で書いてあるわけです。全く反省がない。時短なんというのは何もしなくても、仕事をしようとしたって、いま不況なんだから仕事がないんだ、したがって、ちゃんとグラフまで入っておりまして、ほっといても時間短縮はできますよ、こういう言い方で、先ほど申し上げました国際的に見まして日本人は長時間労働じゃないか、そういった指摘に対する反省というのは全くない。しかも、これは放置をすれば何もしなくてもいいことになるわけでありまして、とにかく、いずれ仕事が底をつくまで、だんだん労働時間は短縮されるだろう。しかし景気がよくなったら、また働きなさいよというふうにもとれる。これはとり方はいろいろありますけれども、そういう中身になっておりまして、せっかく労働大臣は、これから中央労働基準審議会の建議を受けて行政指導に乗り出すとおっしゃるわけでありますが、受けて立つであろう日経連の態度は、いま申し上げましたとおり、最終的には行政指導ということを認めていらっしゃいますけれども、前段の大部分を割いて、いま仕事がないんだから、こういうことで時間短縮を気にもしてないという感じに私は受け取れるわけです。一体、審議会の建議を受けてどういうふうに行政指導されるのですか。私は、行政指導に限界があるのじゃないかという感じがいたしますけれども
  49. 桑原敬一

    桑原政府委員 いま、おっしゃいました不況仕事がないから時間が短くなる、私どもは、それは時間短縮とは思っておりません。基準審議会の御議論の中でもいろいろの御議論が出てまいりました。使用者側の方でも、日本では時間給になっていないから、なかなかむずかしくなるという御批判がございましたが、最終的には使用者側もやはり、いま御指摘のように国際的な環境の中で日本だけが、いつまでもこういう形ではいけないという御認識のもとに意見一致したわけでございますので、私どもは、そういった建議の趣旨にのっとって積極的に労使に訴えてまいりたいと思いますが、これはいま、いろいろと検討いたしておりますけれども、問題はやはり労使の話し合いということでございますので、産業別にそういった労使の話し合いの場というものの環境づくりをしていくというようなことをしてまいりたいと思いますし、また先ほどの御指摘のように、零細企業のたくさんあるような産地におきましては、そういう産地ぐるみ、いろいろなそういった行政指導を積極的にやっていくというようなことで、大臣が申し上げましたように積極的に進めてまいりたいと思っております。
  50. 森井忠良

    森井委員 どんなに積極的に進めても二つの壁がある。一つは日経連の先ほど申し上げました態度、もう一つは、どうしようもない中小零細企業の先ほど申し上げましたような数字。これで行政指導ということでできるかどうか、私は絶対に壁にぶち当たっておるという感じがいたします。そしてしかも、国際的に表に出されるときには、日本人の労働時間は順次減ってまいりました。したがって現在では大体四十二時間、それ以下になりつつあります。こういう説明がつくわけですね。大臣御承知のとおり労働基準法というのは、週四十八時間というのは昭和二十二年にできた法律なんです。いま申し上げましたように日本の実態からしても、もう四十二時間まで落ちている。しかも八割前後は、不完全ではありますけれども週休二日制も実施をしておる。御承知のとおり労働基準法では週一日の休日なんですから非現行でしょう。大体これは労働省が悪いのですよ。積極的に労働基準法の改正をいたしましょうと、なぜ言えないのですか。
  51. 桑原敬一

    桑原政府委員 実は、先ほどの建議が出ます前段といたしましては、基準審議会の中でも基準法の改正ということを一つの視点に置いて御議論があったわけでございます。その中で、いまのような建議が出てまいったわけでございますので、私どもはそういった認識のもとに積極的に進めてまいりたい、こういうふうに思っております。
  52. 森井忠良

    森井委員 労働基準法の改正をぜひともやられるように強く要求をしておきます。  そこで、時間の関係がありますから一つほど例を出してみたいのですけれども、実はせっかくの行政指導をおやりになるというところでありますが、造船に例をとりますと、労働大臣、時代逆行、歯車を逆に回しているケースがあるのですよ。  御承知のとおり、去年一年間でも二十三件でしたか造船会社が倒れています。大手というよりも中手以下でしょうね、倒れております。私は、機会がありまして、造船の企業が密集といいますか集団で設置されているところをちょっと視察をしたことがございました。何と驚いたことに労働時間の延長をしているのですよ。一日一時間の労働時間の延長なんです。しかも、労働時間の延長をいたしましても、時間外労働で残業手当がつくというものじゃないのです。要するにただ働きなんです。さらに調べてみましたら、今度は定年制も延長どころか逆に早くやめさせるような動きになっているわけですね。いままで定年制五十七歳だったのを五十五歳でやめてくれ、あるいは五十八歳だったのを五十六歳でやめてくれ、まちまちでありますけれども、総じて言えば中手の造船所は、労働時間は延長、そして定年制は何と言うのですか、早めるのですから切り上げですか、そういうことできわめて理不尽な状態になっておるわけであります。  何かといいますと、これは一種のダンピングなんですね。わが社だけは、できるだけコストを安くして国内の競争力に勝とう、国際競争力に勝とうというわけであります。何か四当五落という言葉があるのでして、とにかく五〇%以上値下げをしなければお客がとれぬというわけであります。ところが、気がついてみたら、自分の会社だけでなくて同じような会社が全部同じように時間延長、そして定年制の切り下げというものをやっておるわけですね。一体こんなことの指導があるのだろうか。とりあえず、まず所管の運輸省の方から一体どんな指導をしたのか、お答えいただきたい。
  53. 間野忠

    ○間野説明員 昨年来、造船の環境が著しく悪化いたしましたが、この原因として、為替変動の急激なものがございまして、円が特に対ドルレートで急速に上がったという問題がございます。少なくともそれまでの間、私どもの方で操業短縮を勧告いたしました際にも、まず残業時間をカットするということで雇用は維持する、その後におきましても、退職とか自然減粍といわれます年率三、四%の減り方があった場合に新規採用は控えるというようなことで、おっしゃるような時間延長というようなこともございませんで、わりに円滑に進んでまいったわけでございますけれども、昨年の春から始まりました急激な円の対ドル相場の上昇というものは、経営の面で特に中堅以下に非常な圧迫を加えてまいりまして、円では特に船価は上がっておらないわけなんですが、ドルで見た場合には急激に船価も上がっておるということで、外から見ればダンピングどころではなくて非常に船価が上がるというようなことになりましたので、ドルで見た船価もなるべく下げるべく努力しなければならないというようなことで、コストを低減する努力が非常に行われておるわけでございますが、その中の一つに、おっしゃるようなこともあったかと思います。私どもといたしましては、最初に申し上げましたように、できるだけ雇用の維持を図りながら工事量の減少に合わせていきたいということは、基本として堅持いたしていきたいと思っております。
  54. 森井忠良

    森井委員 これは具体的に申し上げますと、愛媛県の今治市なんですね。軒並み時間延長等をやっていましたけれども、私は単に運輸省だけでなくて、現地で労働省の出先にも強くこの点を指摘をしたわけです。とにかく残業手当にもならないのです。言うなれば定時間の延長なんですね。これは労働省としてどういうふうな御指導をなさいましたか。
  55. 桑原敬一

    桑原政府委員 基本的には基準法で所定されております時間内でございますから法違反はございませんけれども、従来の七時間を八時間に延ばすことは好ましいことではないというふうに私どもは基本的考え方を持っております。したがって出先の基準局、監督署を通じまして、延ばさなければならぬ理由というものを十分にただしたわけでございます。結局、御承知のように造船不況というようなかっこうで非常に大変な事態になって、労使も十分な話し合いの結果だということもございまして、私ども、あくまでも緊急避難的にやるということであれば了解できる。それからもう一つは、そういった労働条件の変化でございますから、当然に労使が十分話し合って、就業規則の変更あるいは労働協約の変更という形で処理してもらわなければ困る、こういったことを責任者を呼んで指導いたしたわけでございます。  最終的には基準法違反でございませんものですから、私どもは違反という形では取り上げることはできませんけれども、そういった事態というものは、緊急避難的に当然、早急にもとに戻すようにということを強く指導いたしているわけでございます。
  56. 森井忠良

    森井委員 運輸省、もう一つ、こういう傾向がありますね。下請と本工との関係です。  だんだんお客さんが減るわけでありますから従業員も削減をしたいという計画から見てまいりますと、これは日本造船工業会の資料でありまして、加盟二十三社についての数字が出ておるわけでありますが、本工の場合は、昭和四十九年の従業員を一〇〇といたしまして八七・七になるわけですね。人員削減の面からいいますと一二・三%の減になるようであります。ところが今度は協力従業員、いわゆる下請はどうなるかといいますと、昭和四十九年を一〇〇といたしまして実に五五・三%になるわけですね。したがって人員削減は四四・七%行われているわけです。つまり、ここでも生き残るために本工だけが手厚くされて、いわゆる関連企業といいますか下請については大幅に首切りがある、こういう形になっているわけです。  血のにじむような声として、いままでやっておった仕事の量、本工と関連企業仕事の量の比率だけは残してもらえないかという強い要望がございます。この点について、私もそうすべきだと思うわけでありますけれども、運輸省はどういう御指導をなさるのか、明確にしていただきたい。同時に、この点につきまして労働省からも、はっきりと政策的な意味で、本工と下請の労働者との関係のアンバランスについて、これからどういう政策を持って指導していこうとされるのか、お答えをいただいておきたいと思うわけであります。
  57. 間野忠

    ○間野説明員 ただいま、おっしゃいましたように造船工業会の統計によりましても、また私どもの統計によりましても、本工よりも下請の方が減り方が大きいということは事実でございます。ただ、このように全体の仕事量が非常に減少していく中におきまして、下請と本工の仕事量の比率を一定に保つことも非常に困難であるかと思います。そういうこともございまして、下請につきましては、できるだけ他部門へ転換できれば、そういうふうに努力していきたいということで、今年度におきましては特に造船の構内下請の持っております設備とか技術を活用することを考えました場合、船舶解体業の方へ転換を図ってみるのが一番手っ取り早い方向ではないかと思いまして、技術改善の補助金を交付するというようなこともやってまいりましたし、今後も海運不況の関係で老朽船の解体等は増加してまいると思いますので、造船下請がそちらの方へ転換して自立し得る分野ではないかと思います。また、そのほか要するに鉄鋼関係の工事でございますれば大体こなし得る力を持っておりますので、今度の五十三年度の予算等におきましても公共事業関係の予算が非常にふえるということでございますれば、そちらの方、主として陸の部門でございますけれども、鉄骨あるいは鉄鋼構造物関係の分野へ、できるだけ円滑に転換が図れるように努力したいというふうに考えております。
  58. 細野正

    ○細野政府委員 お答えいたします。  ただいま先生御質問の点につきましては、運輸省の方からもお話がございましたように、率直に申しまして、なかなかむずかしい問題もあるようでございますが、同時に、これまた運輸省の方からお話がありましたように、新しい需要を喚起する方向についても、いろいろ御検討のようでございますので、運輸省とも密接に連携をとりながら、できるだけ私どもとしては下請にしわが寄らないように努力してまいりたい、こういうふうに考えているわけでございます。
  59. 森井忠良

    森井委員 これはお先真っ暗な答弁ですが、後日またの機会に、雇用問題については私は集中的に審議すべきだと思いますので、この程度にしておきたいと思うのです。  そこで、運輸省に最後に、もう一つ聞いておきたいわけでありますが、大きな造船所が小さい船をつくり出したわけですよ。何万トン、何十万トンというドックに、本当にノミかシラミか知らないけれども、ちょこちょこととまっているような形で、つまり大企業が中小の造船所の仕事までとる。したがって倒産の形としては、まず中小から倒れていくという形になっておるわけです。これは御承知のとおり中小企業分野法などというものがありますけれども、これの適用にもなっていない。一体こういった現状を何とか打開する方法はないのか。放置すれば、まだこれから、どれだけ倒れるかわからないという状態ですよ。この点について運輸省の考え方を承っておきたいと思うのです。
  60. 間野忠

    ○間野説明員 石油危機以来、大型船の需要というものは実質上ゼロというようなことになりまして、現在、日本国じゅうでつくっております船舶は一万トンから二万トン程度ないしはそれ以下という実態になっております。ただ、こういう船につきましても、もちろん船の種類にもよりますが、大企業も並行して従来つくっておった船でございますし、特に改めて大手が乗り出してきたということではなくて、昔から大手も中手もつくっておったという分野でございます。御指摘のように大型のドックで、こういう小さな船をつくるということは本来、好ましいことでもございませんが、ただ雇用というようなことから考えましても、大型の新鋭工場で全く仕事がなくなるというようなことは問題もございますので、われわれといたしましては、大型ドックで小型船をつくる場合も一隻半以上並べてはいけないというような行政指導をいたしております。そして現に守られておると思っております。  それから、先ほど申し上げました操業短縮を実施する際にも、たとえば五十三年度で申しますと、大手につきましては四十九年度の六〇%、中堅の十七社につきましては同じく四十九年度の七〇%、その下の中小十六社につきましては七五%というように、操業度の勧告を行う場合には規模が大きいほど厳しい操業短縮率を割り当てるというようなことを行っております。また本当の内航船、特に船舶整備公団が共有方式で建造いたしますような内航船については、大手それからある程度以上の中堅会社というようなものは自粛するように一応の指導をやっておりますし、今後も続けてまいりたいというふうに考えております。
  61. 森井忠良

    森井委員 まだ問題がありますが、時間が参りましたのでやめさせていただきます。  労働基準法にまつわる性差別の現状等、まだお聞きしたいことがたくさんありましたけれども、また、そのためにおいでいただいた政府委員あるいは説明員の方もあったわけでありますが、また次の機会に譲ることにいたしまして、質問を終わります。
  62. 木野晴夫

    木野委員長 この際、午後一時三十分まで休憩いたします。     午前十一時三十二分休憩      ————◇—————     午後一時三十五分開議
  63. 木野晴夫

    木野委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  労働関係基本施策に関する件について質疑を続行いたします。川本敏美君。
  64. 川本敏美

    川本委員 労働大臣に、当面する二、三の問題について私は質問をいたしたいと思うわけです。  昨年、通常国会さらに臨時国会の二回にわたりまして、私は日雇い労働者の求職者給付金の日額の改善の問題について要望し、当時、石田労働大臣から前向きの答弁がなされているわけです。私はいままで、日雇い労働者失業給付の日額表の改定をもっと早くしなければいけないのではないかという観点から要望してまいったわけですけれども、これについて労働省はどのように措置しようとしておるのか、まずお聞きいたしたいと思うわけです。
  65. 藤井勝志

    藤井国務大臣 日雇い労働求職者給付金の日額の改善につきましては、前労働大臣からの事務引き継ぎもございまして、被保険者の賃金水準に対応する給付とするために、雇用保険法第四十九条の規定に基づく日額の自動スライド制を実施することにより、その引き上げを行うことにいたしたいと考えております。
  66. 川本敏美

    川本委員 雇用保険法第四十九条の規定による日額の改正で、民間の日雇い労働者の賃金に対応できるような給付水準が確保できますか。
  67. 細野正

    ○細野政府委員 雇用保険法第四十九条の規定によりまして日額の自動スライドを行いますと、新しい方の第一級が四千百円、新しい第二級が二千七百円、新第三級は千七百七十円というふうになりまして、それぞれ五二%の引き上げになるわけでございます。この結果、民間の日雇い労働者を含めたほとんどの被保険者につきまして、その賃金水準に対応した給付を確保することができるのじゃないか、こういうふうに考えております。
  68. 川本敏美

    川本委員 そうすると従来の一級が二千七百円、二級が千七百七十円、三級が千百六十円だったと思うのですが、このうちの三級を切り捨てて、新しい一級として四千百円というのを設定して、従来の一級が二級、従来の二級が三級、こういう形に変えよう、こういうことで間違いございませんね。
  69. 細野正

    ○細野政府委員 先生がいまおっしゃったとおりでございます。
  70. 川本敏美

    川本委員 民間の日雇い労働者の賃金実態に対応するためには早急に実施をすべきだと思うわけです。これはいつ実施するつもりですか、大臣にお答えをいただきたいと思うわけです。
  71. 藤井勝志

    藤井国務大臣 御指摘のように、できるだけ早く実施を要するという事情を踏まえまして、近く中央職業安定審議会に諮問いたしまして、新年度から実施をすることにいたしたい、このように考えております。
  72. 川本敏美

    川本委員 新年度からとおっしゃいますと、この四月一日から実施をされる、こういうことになるわけだと思うのですが、その点もう一度念を押しておきたいと思う。四月から実施いたしますと失業保険の証紙は上がりますね、その失業保険の証紙を四月に貼付いたしますと、給付の方は五月からしかふえないのじゃないか、こういうふうに私は思うのですけれども、四月に実施しても給付を受けるのは五月から、こういうふうに理解をして間違いないですか。
  73. 細野正

    ○細野政府委員 ただいま、お話しございましたように徴収の方は四月一日から、給付の方は五月一日から、こういうことになります。
  74. 川本敏美

    川本委員 いだいま局長の答弁では、新しい一級は二千七百円に対して五二%ふやして四千百円になる。保険料の方は従来一日六十三円だったと思う。今度の新しい保険料の証紙は一級で一日幾らになりますか。
  75. 細野正

    ○細野政府委員 保険料につきましても同じやり方でアップをいたしまして、比率も全く同じになります。したがいまして、お尋ねの新しい一級の方は九十六円になるわけでございます。
  76. 川本敏美

    川本委員 私も昨年も当時申し上げてまいったわけですけれども、日雇い給付金の自動スライド規定、これによって自動スライドをしていくわけですけれども、その基本となる雇用保険法のいわゆる基本手当の自動スライドと同時に、基本手当の基準の範囲内において行うのがたてまえではなかろうかと私は考えておるわけです。現在のやり方ですと、去年、基本手当の方は自動スライドで上がりました。そして約一年ずれて今度、日雇い給付の日額がふえる。こういうことでは現在、労働の二重構造ということがよく言われますけれども、常用労働者と日雇い労働者との間に差別があると言われても仕方がないのじゃなかろうかと私は思うわけです。だから本来考えなければいかぬことは、雇用保険法の基本手当の基準が変わるときには、同じように日額の方も変わる、こういうふうにしていかなければならないと考えておるわけですけれども、その点について局長からお答えをいただきたいと思うわけです。
  77. 細野正

    ○細野政府委員 お話ございましたように、自動スライドの考え方自体は、御指摘のように被保険者の賃金水準の変動に対応するということである点は全く変わりがないわけでございます。しかし、日雇い労働被保険者につきましては、雇用形態やら職種やら賃金の支払い系統と、いろいろ異なる面がございまして、必ずしも一般の被保険者の賃金水準の変動とは同じでないという側面がございまして、必ずしも同一基準によることが適当であるとは言いかねると考えております。したがいまして、同様な趣旨で、自動スライドの実施月につきましても一般の場合と同じにすることには困難な面があると考えているわけでございます。
  78. 川本敏美

    川本委員 いまお答えをいただきましたけれども、私はこれは差別だと思う。だから近い将来、これに対して一応同時に基準も変更する、実施も同じにやる、こういう体制ができなければ、本当に労働の二重構造といいますか、こういうものをなくして失業の不安をなくしていく、近代化していくことはできないのじゃなかろうかと私は思いますので、その点について大臣、ひとつ前向きに取り組んでいただきますよう要望いたしておきたいと思うわけです。  それからもう一つ、最近の雇用情勢にはまことに厳しいものがあることは、いまさら申し上げるまでもないと思う。御承知のように、私はこの前も主張してきたのですけれども現在、失業者が町に満ちあふれておる、百万人を超す失業者がおると言われておりますけれども、その失業者というのは統計上、調査する時点で一週間のうちでたとえ一時間でも二時間でも働いたら一応失業者じゃないとよく言われておるわけです。ところが日雇い労働者の場合は、仕事がだんだん減ってまいります。仕事が減ってまいりますと、いままで月に二十日働いておった人が十七日になり十五日になり、そして十日になって、もう生活保護費すれすれの収入しかないような、一カ月に十日しか働けなくても、これは失業者ではないわけなんです。そういう惨めな状態で、いま日雇い労働者の生活の実態は、こういう深刻な不況の中で非常に苦しんでおるわけです。  そういう観点から見ますと、日雇い労働者のいわゆる認定に必要な労働の日数は一カ月に十四日、二カ月を通じて二十八日なければならぬ。それだけ手帳に証紙として貼付されていなければ資格がない、こういうことになっておるわけですが、これはもう現在の雇用失業情勢の実態に合致しないのではないかと私は思うわけです。私は昨年も申し上げたのですけれども、この十四枚を少なくとも十二枚、二カ月で二十四枚程度にしなければ、日雇い労働者がせっかく制度に加入しながら労働する日数が足りない。それもどこへ行ってもいいというわけじゃないのですね。事業主が登録された事業所でなければいかぬわけです。そこへ行って働く日が一カ月に十二日、これはもうぎりぎりの線だと私は思うわけです。だから早急にこの制度を改善して、一カ月十二日、二カ月二十四枚の証紙で失業保険日雇い給付が受けられるようにすべきではないかと私は思うわけですけれども、この点について再度お答えをいただきたいと思う。
  79. 細野正

    ○細野政府委員 まず、最初にお尋ねがございました自動スライドにつきまして一般と合わせるべきじゃないか、こういう点につきましては、先ほど申しましたように、いろいろ非常にむずかしい問題がございますが、なお今後の研究課題にさせていただきたいと考えるわけでございます。  それから、後の方で御指摘のございました二カ月二十八日という要件が厳し過ぎないかという問題でございますが、被保険者であります日雇い労働者の就労実態を私ども調査をしてみますと、毎月における就労日数がおおむね十八日前後でございます。したがいまして、そういう状況から見ると厳しいとは考えられないのではなかろうか。それからまた一方、財政面から見ましても、日雇い労働者の保険関係は恒常的に大幅赤字でございまして、これ以上緩和することは、また財政的にも非常に困難な事情にあるという点につきましても、ひとつ御理解をいただきたい、こういうふうに考えるわけでございます。
  80. 川本敏美

    川本委員 日雇い労働者の就労実態の問題につきまして、いま平均で十八日だというお話で、それがいつごろの御調査か私にはわからないのですけれども、現実に私どもの奈良県で、日雇い給付の特例給付ですけれども適用を受けております林業労働者の実態を申し上げますと、木材の需要が減っておりますために木材の伐採量が年々減少を続けております。     〔委員長退席、越智(伊)委員長代理着席〕 昭和四十七、八年をピークにして年々木材の伐採量が減ってまいりますために、山林労働者の働く日数も、それに応じてだんだん減少してまいりました。極端な例を言いますと、吉野郡の川上村という一番のモデル地域と言われる山村地帯ですけれども、この辺へ行きますと従来の木材の伐採量が三分の一にも減っておる。そうなりますと労働者の就労日数は、冬は、山は雪で十二月から三月までは仕事ができないわけです。だから残りの大体八カ月程度働くわけですけれども、一カ月二十二日程度であったのが、あるいは十五日になりあるいはそれが現在では十日になりというような、実際としてはもう生活保護費すれすれの実情に追い込まれておるという事実があるわけです。だから私は、一方で平均十八日かもわかりませんが、私どもの奈良県で日雇いの特例給付を受けている林業労働者等の実態から見て、やはりぜひ二カ月二十四枚というように改正すべきではないかということを申し上げておるわけですので、この点もう一度検討していただくように強く要望申し上げておきたいと思う。  それから財政的なことも、いまおっしゃいましたけれども、私は、日雇い給付というものは最初から財政的な問題が当然ついて回る問題だと思う。保険というものは、いわゆる財政の悪いところと財政のいいところとを大きくプールすることによって財政の均衡が保たれればいい制度なのですから、その中の一部分の日雇いの給付の部分だけ取り出して財政的にどうだこうだという議論は、私としてはこれはお受けすることができないと思う。だから財政的な見地から云々ということについては、今後そういう立場ではなしに、労働者の生活をどうして守るのかという立場から考えていただきますように、これもまた強く意見として申し上げておきたいと思うわけです。  それで私は、さらに二、三点御質問申し上げたいわけですが、去る二月の二十日に永大産業が会社更生法の申請をするという事態が起こりました。すでに新聞等でも報ぜられておりますので、いまさら、ここで申し上げる必要もないと思うのですけれども、永大産業は、関係会社を合わせますと従業員数は四千二百五十名だという説もございますし、あるいは関連会社等も全部を含めると七千人を超えるのだという説もあるわけです。私は、この永大産業の関係会社全部を含めて、やはり雇用の問題について大きな問題となりつつあると思うのですが、労働省としては、この問題に対して、どのように対処しようとしておるのか、まずお聞きをいたしたいと思う。
  81. 細野正

    ○細野政府委員 お答えいたします。  永大産業の倒産に関しましては、去る二十日に同社の責任者を招致しまして、同社及び関係企業労働者雇用面の影響等につきまして事情聴取をいたしておるわけでございます。その際に、従業員の雇用の安定と労働条件の確保について指導いたしたところでございます。  今後どうするかということでございますが、今後とも本省及び現地機関におきまして、関連の下請企業も含めまして、雇用面の事態の推移の把握に努めてまいりたい。同時に雇用安定資金制度の活用等によりまして、雇用の安定に配慮するよう指導に遺憾のないように努めてまいりたいというふうに考えておるわけでございます。  なお、具体的にとりました措置としましては、まず関連下請企業に関しまして、関係行政機関と連携をとりつつ、労働者雇用不安が生じないように必要な相談指導を行う、これはもちろんでございますが……。さらに、永大産業を雇用安定資金制度に基づく大型倒産事業主ということに指定をいたしました。したがいまして、下請関係につきまして安定資金制度の活用をできるように配慮をいたしておるわけでございます。
  82. 川本敏美

    川本委員 通産省お見えいただいておると思うのですが、たしか二月の二十一日ですか二日、翌日か翌々日の新聞を見ますと、実は今度国会に、いまのこの第八十四国会に政府が提出をすでに予定をし、閣議でも決定されております特定不況産業安定臨時措置法、この法律の適用について、当初この法案を閣議決定する当時は、いわゆるその適用事業として、一つは平電炉業界、二番目にはアルミ製錬業、あるいは三番目には合成繊維製造業、四番目にいわゆる造船業、船舶製造業、こういうようなものを予定しておったけれども、永大産業が倒産したからということで急遽、政府、通産省は、合板業界あるいは精糖業界等をこの法律の適用業種にする、こういうふうに踏み切った、こういうことが報ぜられておったわけですけれども、この点について、あるいはこれは農林省になるのかもわかりませんが、まず通産省から、これをお聞きしたいと思います。
  83. 南学政明

    南学説明員 御指摘のように政府といたしましては、去る二月二十一日、特定不況産業安定臨時措置法案を国会に提出したところでございます。  その特定不況産業の業種指定につきましては、平電炉、アルミ製錬、合繊、船舶、これが法律上明記されておりまして、その他の業種につきましては主務大臣が政令で定めるということになっております。この政令でどういう業種を定めるかにつきましては要件が法案に書かれております。設備過剰の状況が長期間見込まれる、あるいは相当部分の経営の著しい不安定が長期間継続するおそれがあるとかというような要件が掲げられておりますが、この要件に合致するかどうか、これは合板あるいは精糖業であれば農林省において判断し、政令指定をするかどうかを考え、検討されることと考えております。
  84. 輪湖元彦

    輪湖説明員 お答えします。  合板製造業につきましては典型的な構造不況業種の一つということになっておりますけれども、現在その構造改善につきまして、国の助成のもとに日本合板工業組合連合会において構造改善基金を設けまして、過剰設備の買い上げを行うこととしているわけでございます。これに加えまして、現在の国会に提出されてございます特定不況産業安定臨時措置法が成立いたしました場合には、その適用も受けまして、さらに円滑な構造改善の実施に努めてまいりたいと考えております。
  85. 川本敏美

    川本委員 通産省にお聞きしたいのですが、この法案の中には、いわゆる労働者の意見を反映することができるのかどうかという問題点が私はあろうと思うのです。そこで先般、私も予算委員会等の質疑を聞いておりますと、通産大臣は、この法案ができた後には、いわゆる産業構造審議会というものが設置されるのだ、その産業構造審議会の中に労働者の代表も入っていただいて意見を述べてもらうのだ、こういうようなことを御答弁されておったように私は思う。  しかし、いままで合板等の問題についていろいろ意見があります。これについては後ほど林野庁の方に申し上げようと私は思うのですけれども、合板が果たして設備廃棄をしなければならないというような不況業種なのかどうかということについては、これは今後の住宅建設の見通しあるいは需要の見通し等とも関連ありますけれども、決して設備廃棄をしなければならぬほどの業界ではないと私は平素から思っておるわけです。  しかし、そういう従来の不況カルテルあるいは休業カルテル、こういう過程で、そこで働く労働者の意見が少しも反映されていないわけであります。こういう産業構造審議会といっても、労働者の代表をそこへ入れればいいというのではおかしいので、少なくとも関係する業界の全国レベルの労働組合の代表の意見を事前に聞かなければ設備廃棄はできないというように法律の中に明記すべきではないか、私はこのように私の意見として持っておるわけなんです。この点について通産省はどのように考えておられるのか、お聞きしたいと思います。
  86. 南学政明

    南学説明員 主務大臣が今回の法案で設備の処理等に関する安定基本計画を策定したり、あるいは共同行為の指示をするような場合、これは御指摘のように広く各界の意見を聞いて慎重を期する必要があると考えますので、法案では関係審議会の意見を聞いて対処していくということになっております。その際、当省といたしましては雇用面にも十分留意する必要があると考えておりますので、関係審議会の委員の選任あるいは運営等に当たりまして、全国レベルの労働組合の意向が十分反映されるよう配慮していきたい、このように考えておる次第でございます。
  87. 川本敏美

    川本委員 通産省に、もう一度お聞きしたいのですが、全国レベルの労働組合の意見が反映されるといっても、これはやはり私の言っていることとは違うと思う。全国レベルの労働組合といっても、たとえて言えば総評、同盟、新産別、中立労連、こういうようなものも、これもやはり全国レベルの労働組合です。しかし、私の言うのは、たとえて言いますと、先ほど来のこのなににありましたように、平電炉の関係の全国レベルの労働組合、アルミ製錬に関係する全国レベルの労働組合あるいは合成繊維に関係する全国レベルの労働組合あるいは造船、船舶製造に関係する全国レベルの労働組合、そういう直接、設備廃棄によって雇用の問題に深刻な影響のある全国レベルの関係労働組合の代表でなければ、本当の労働者の意見を聞いたことにならないのではないか、協議したことにならないのじゃないか、私はこう思っておるわけです。その点についてどう考えておるのか、もう一度明確な御答弁をいただきたい。
  88. 南学政明

    南学説明員 御指摘のように関係労働組合、平電炉であれば平電炉の組合というような代表から設備処理等についてのいろいろな意見を伺うということは非常に重要なことであろうかと思いますので、そのような方向で関係労働組合の代表者の意向が十分反映されるように配慮していきたい、このように考えております。
  89. 川本敏美

    川本委員 そこで私は林野庁にお聞きをしたいのですけれども、合板製造業につきましては、すでに昭和四十九年以来全国的に工場や企業の倒産あるいは休廃業が相次いでおります。もう今日までで、たしか五十を超える企業、工場が休廃業をしておるのじゃなかろうかと思うわけです。そういう立場から見ると、四十八年のピークにおける生産から見ると、もう生産量というのは大きくダウンをしてきておる。さらに現在一二%設備過剰だといいますけれども、国の住宅政策その他の状況から見ても、昭和五十五年になれば、現行の設備が一〇〇%フル稼働をしても追いつかない程度の需要になってくるのではないかというのが前からの私の主張なんです。だから現在そういう、もう二、三年先にすぐフル稼働になるという見通しがある状態の中で、今日、設備の廃棄を法律によって強行しようというのは私は全く解しかねるわけです。この点について林野庁はどのように考えておられるのか、もう一度林野庁の御意見をお聞きしたいと思います。
  90. 輪湖元彦

    輪湖説明員 普通合板製造業の設備につきましては、現在約二十四億六千万平方メートルの能力を持っておるものと私どもは見ております。これに対しまして需要の方は約十七億八千万平方メートル程度でございまして、三〇%程度のギャップがございます。したがいまして、今後の合板需要の伸びも期待されるわけでございますけれども、五十五年段階で一二%の設備廃棄をいたしまして、需要に生産能力が追いつかないという事態にはならないというふうに私どもは見ておる次第でございます。
  91. 川本敏美

    川本委員 きのう、きょうぐらいの新聞を見ますと、いま一番需要の多いものは、いわゆるコンクリート型枠用の十二ミリの合板ですね。この合板の値段がもう急ピッチでいま上がってきておると思うのです。急ピッチで十二ミリ厚の普通合板の値段が上がるということは、もうやはり供給量が需要量に追いつかないから、これは上がるということになるので、先般来の政府の公共投資、これに関連して生コンも、従来八千円前後であったのが一万一千円ぐらいに上がってきておる、三〇%ぐらい上がってきておる。それと同じに、その型枠材の合板の価格も上がってきておる、こういう状況をどう見ておるのか、この点についてもう一度お聞きしたいと思います。
  92. 輪湖元彦

    輪湖説明員 お答えいたします。  特に厚物十二ミリの構造用合板につきましては、先週はかなり値戻しをしておるわけでございますが、なぜ、その値が戻ってきたかということにつきましては、永大の倒産関連で、永大が六%の合板のシェアを持っておりますので、そういったことが響いて、まあ思惑で流通段階でそれを買うということで上がったんだろうと思っております。したがいまして、なお公共事業の需要の推移とか、そういったものを見なければいけませんので、いまの価格動向につきましては、もうしばらく、その動向を見守っていきたいと思いますけれども、先週のその値動きにつきましては永大関連ということで動いたというふうに私ども考えておる次第でございます。
  93. 川本敏美

    川本委員 私が聞いておる範囲内では、これは私が聞いておるぐらいですから金融筋とか業界の方は私より早く聞いておると思うのですけれども、永大の会社更生法申請というのは、ほかの場合と違って非常に早い段階でなされておる。だから財政的な面もとことん行き詰まっていない。さらには会計処理については全部銀行で処理をしてきておるので不明なところは少しもないというような形で、恐らく更生決定というのは普通三カ月も六カ月もかかるところでも永大の場合は二カ月くらいで更生決定がなされるんじゃないか、こういうようなことも言われており、そういうことが先ほど労働省のお話のように、永大の会社更生法の申請が余り大きく雇用問題に響くとは考えていないという裏づけになって、先ほどの御答弁が出たものと私は思うのですけれども、そういう状態の中で、いま永大が倒産し会社更生法の申請をしたというだけで直ちに合板業界全体をこの新しい法律の適用にして、そして設備廃棄に踏み切るということは、余りにも拙速であり早計ではなかろうかと思うわけです。  先ほど、合板の値段が上がったのは永大関連だというお話ですけれども、そういう観点から見た場合でも、少なくとも今後あるいは一年、二年不況カルテルを続ける中で業界の推移を見定めて、その上で決定しても差しつかえないんじゃないかと私は思うわけです。ところが昨年、林野庁の長官は、不況カルテルというのはもうことしの三月、この五十三年の三月が最後だ、こういうことを言われたと思うのですが、私はこの際、不況カルテルをさらに一年なり延長して、その推移をよく見定めるという慎重な態度であってもらいたいと思うわけですけれども、それについてもう一度、御答弁いただきたいと思います。
  94. 輪湖元彦

    輪湖説明員 普通合板製造業の業界につきましては過去三年間ほとんど、特に昨年につきましては九月を除きまして連続的に、カルテルないしは大臣命令によります生産調整命令をかけておるわけでございます。したがいまして、先ほど申し上げましたように稼働率も非常に低いわけでございまして、収益性からいきましても大部分の企業がマイナスというかっこうでございまして、体力が非常に疲弊しておるわけでございまして、そういった中でカルテルのみによりまして、そういう調整をしていくということが大変にむずかしくなってきているというふうに私も判断したわけでございます。したがいまして、この際、業界の中で設備調整をして抜本的に対応したい、こういう機運がまとまりつつございましたものですから、そういったことを受けまして、そのような助成を考えたわけでございます。  なお現在、三月いっぱいまで続ける予定でございます大臣命令によります生産調整事業につきましては、その継続方につきまして、なお今後の需要動向、価格動向、そういったものを見つつ、慎重に判断をさせていただきたい、こういうように思っております。
  95. 川本敏美

    川本委員 私は最後に労働大臣に、もう一度お尋ねいたしたいわけです。  先ほど来お聞きのように、通産省あるいは林野庁等の関係において、いわゆる特定不況産業安定臨時措置法ですか、この制定が今国会に提案され、進められようとしておるわけですが、その対象業種等について、特に合板等についてはいろいろな意見の分かれるところであります。さらに、この法律の中には、先ほど通産省からは、関係審議会に全国レベルの関係労働者の代表を入れて意見を聞くのだとおっしゃっておりますけれども、審議会で意見を述べても、それが少数意見になった場合には、やはり無視されるということもあるのじゃなかろうか。本来のあり方から言えば、やはり雇用の問題は、失業者が出れば最後に全部、労働省がおしりをふいていくわけなんですから、だからやはり労働省が積極的にこの問題に関与をして、関係労働者雇用を継続さしていく、失業者を出さない、こういう前提に立って対処すべきではないか。そのために今日まで、この法案制定の過程で労働省はどのようにやってきたのか、このことについて労働大臣から御答弁いただきたいと思います。
  96. 藤井勝志

    藤井国務大臣 御指摘のごとく、このたび通産省から提案される予定の特定不況産業安定臨時措置法、この法案というのは、労働者雇用に重大な影響があるというこの認識の上に、私は、これが法律案の成立過程において、去る十七日、通産大臣と会いまして、いろいろ協議をいたしました。そして合意を見ましたことは、事業主及び国及び都道府県は、失業の予防その他の雇用の安定について十分配慮する旨を条文に明記する、こういったこと、それから、産業の安定基本計画の策定及び共同行為の指示に当たっても、事前に労働省と十分協議をする。これをひっくるめて申しますと労働省と事前に十分協議する。こういったことで通産大臣と合意を見まして、法律案が現在作成をされておる、こういう状況でございます。
  97. 川本敏美

    川本委員 終わります。
  98. 越智伊平

    ○越智(伊)委員長代理 矢山有作君。
  99. 矢山有作

    矢山委員 時間がきわめて限られておりますので、私もできるだけ簡潔にお伺いいたしますから、御答弁の方も簡潔にひとつ要点をお答えいただきたいと思います。  最初に労働大臣にお伺いをいたします。現在、非常に倒産がふえ、また失業がふえておるわけでありますが、それの原因は一体何であるというふうにお考えになっておりますか。これが第一点であります。
  100. 藤井勝志

    藤井国務大臣 いま御質問のありました問題は相当広範な内容を持っておる問題でございまして、これを簡単に私の立場で御答弁申し上げるということは、なかなかむずかしいことではないかと思いますけれども、要するところ現在、日本の経済の置かれた内外の諸情勢の変化、強いて言えば産業構造の変化と申しましょうか、そういったことが背景になって現在のような不況の問題、それが引き起こす雇用不安の問題、こういったことになっておる、このように認識するわけでございます。
  101. 矢山有作

    矢山委員 いろいろ原因はあると思うのですが、先ほどもお触れになりましたように、私は産業構造の変化というのが一つは大きな原因だろうと思うのです。失業、倒産の状況を見ますと、やはり現在、政府、大企業が進めておる機電一体化を軸とした産業構造の高度化、それから労働集約的な産業の韓国などへの移転が進む中での大企業の合理化、下請再編と見るべきではないかというふうに私は思っておるのです。たとえば例を挙げて申し上げますと、大手の印刷機のコンピューター化によって中小企業の印刷機メーカーが競争力を失い、倒産が続出しております。御存じのとおりであります。またカメラ業界にしても、大手メーカーがIC化に成功いたしまして、その結果、工程の短縮あるいはコストダウンを図った。このことが中小メーカーの倒産の多発、それに伴う失業の増大、こういうことになっている。これも実態を御存じだと思うのです。それからまた繊維を初め労働集約型の産業は、現在、日本の資本が低賃金の韓国などへ進出しておりますが、そういうことから、こういう構造不況というものが起こった、私はこういうふうに思うのです。要するに、産業構造の変化と一口に言っておりますが、それは産業構造の高度化を目指す合理化の中で、いわゆる倒産、失業が起こっておる、こういうことになるんではないか。そういう意味のことを大臣もおっしゃったと思うのですが、そういうように理解してよろしいか。
  102. 藤井勝志

    藤井国務大臣 御指摘考え方におおむね私も一致しておると思いますが、ただ一つ、このような状態をどう受けとめるかという受けとめ方について、これは当時の社会的背景と現在とは、やはり趣が違いますけれども、いわば産業革命のように、これから日本の経済が進む道のりというのは非常に厳しい状況でございまして、いろいろな総合的な施策の推進によって、経済の高度成長から安定成長への軌道修正をしなければならない大変困難な問題ではないかと思います。
  103. 矢山有作

    矢山委員 そうすると大体、私の言ったことを首肯されたわけでありますが、そうなると産業構造の高度化を目指すそういう政策の中で、中小企業の倒産が続出したり、あるいは失業が多発しておるということになれば、私はその責任はやはり政府なり大企業にあると思うのです。そうすると、政府はやはり進んで、そういう事態に至らぬように積極的な手を打つということがなくては、経済構造が変化しておるのだから仕方がないではないか、こういうことでは、その経済構造の変化の政策が推し進められる中で犠牲になっていく労働者なり中小企業者は、これはたまったものではないということになる。  そこで、具体的に一体どういうふうにこれを考えていったらいいのか。私は先ほども言ったように国の政治のあり方として、そういう産業構造が変化していく中で切り捨てになって倒産をしていく中小企業失業者がないような方策というものを積極的に考えるべきではないか、こう思うのです。
  104. 藤井勝志

    藤井国務大臣 先ほどもお話をいたしましたように、対応の仕方ということについて、私はやはり日本の経済の内外を取り巻く環境の変化という、これに対応して、そして、たとえば発展途上国の追い上げによって繊維関係あたり、なかなかむずかしくなっておりますけれども、やはりこういった企業の生き延びるためには、日本においては消費者のニードに対応するような製品の高級化ということによって生き延びる。そのことに対応できないような企業は、これは方向転換をする。その企業に働く労働者の方々というのは、いわゆる職業訓練によって配置転換で新しく伸び行く産業の方に向かってもらう、こういう意味において、いわば産業革命のような一つの時代が来ているんだから、ひとつみんなで総合的に施策を進めていくように持っていかなければならぬ。私は、これは食いとめることのできない時代の流れである、このように思うわけでございまして、政府の政策が云々ということは、後ろ向きのことでない対応の仕方を、われわれは積極的にこれからやっていかなければならぬではないか、このように思うわけでございます。
  105. 矢山有作

    矢山委員 後ろ向きでない前向きの政策がどんどん展開をされて、そしてその中で業種転換ができ、そして失業者の救済ができていくというなら、これはもうぜひ、そうならなければならぬことだ。ところが、そういう産業構造の変化の中で中小企業が倒産をしていく、失業がふえていく、こういう状態の中にあっても、企業の側つまり経営者の側、あるいはまた労働者の側にしても、そういう状態の中で倒産をしたが、しかし何とかして立ち直ろう、企業を再建しようとして非常に努力しておる中小企業もあるわけですね。一体それに対してどうするのかということなんですね。  それはもう産業構造が変化していっているんだから、おまえさんたちのいまの状態はその変化についていけないのだから仕方がないんだというのでは、経営者にしても、あるいは労働者にしても、その企業を再建させようとして一生懸命になっておるのを、それでほっておいたんでは私はいけないと思う。そういうふうに企業の側なりあるいは労働者の側が企業再建に努力しようとする熱意があって、それを実際にやろうとしておるなら、それに対するやはり第一次的には支援の体制、どういう具体的な手当てをしたらいいのだろうか。そこのところがぼくは前段で出てこなければならぬと思うのですが、どうなんでしょう。
  106. 藤井勝志

    藤井国務大臣 御指摘のことは私も全くそのとおりだと思うのでありまして、将来の展望というようなものを踏まえた答弁として簡単に申し上げましたから、言葉足らずの点がございますが、その間を取り持ってスムーズにこの世の中の移り変わりに対応するために労働政策、雇用政策としては、何よりも雇用安定資金制度という、これを積極的に活用し、また雇用保険制度の活用、同時にまた先般成立いたしました特定不況業種離職者臨時措置法、こういったものを活用して、そして職業訓練あるいは訓練手当、こういったものをやる。と同時に、今度は民間の企業の活力を大いに生かして、中高年齢層が特にこういうときはしわ寄せを受けますから、中高年齢者を雇い入れる事業主に対しては、また特別な助成をやっていく、こういったことも配慮せなければならず、同時にまた緊急避難的な対策としては、公共事業を今度は拡大をいたします。積極的な公共事業対策をやりますから、それには特に失業多発地帯は地域を指定いたしまして、指定地域には職業安定所の紹介するいわゆる単純失業者を四〇%は雇い入れなければならぬ。こういう制度もフルに活用して、総合的に現在の摩擦的な失業状況といいますか、そういうものは回避していかなければならぬ、このように思うわけでございます。
  107. 矢山有作

    矢山委員 ちょっと私の質問の趣旨が、言い回しで私の責任で十分御理解いただけなかったんじゃないかと思うんですが、いまおっしゃった問題は倒産をして失業ができた後の話なんですね。失業をした人に対して、そういう手厚い保護をやる、社会保障的な手を打っていく、あるいは職業転換ができるような手を打っていく。そういうことを積極的にやるということは、これはそれなりに私はいいことだと思うし、やらなければならぬことだと思うのです。  私が中心を置いてお聞きしたいのは、倒産をした企業を何とかして企業側なりあるいは労働者側が一生懸命になって再建をして、そこで職の安定を得ていこう、こういう努力をしておる、それに対してどういう姿勢で臨むのか。産業構造が高度化していっているんだから、おまえさんのところが再建したってだめなんだと言って切ってしまうのか。それとも、そういう企業努力をしておる、そうすれば再建の道が歩めるような支援というものを政府としてはとっていくべきじゃないか。それでもなおかつ倒産をして失業が出てくれば、その失業者に対しては、おっしゃったような現行の法律を最大限に活用するなり、あるいは新規立法をやって、その失業者を救済をしていく、これはもう当然のことです。ちょっと質問の焦点がお答えのところと違っているんです。
  108. 藤井勝志

    藤井国務大臣 私がお答えをしたことが少し言葉足らずで、私はおっしゃるようなことに対して雇用安定事業というのが活用されなければならぬ、このように思うわけでございまして、雇用安定事業については、すでに御案内だと思いますけれども、景気変動等雇用調整事業と、それから事業転換等雇用調整事業という二種類があって、それぞれ倒産する前、企業労働者を抱えて休業さす、それに対して手当を出す。また抱えている労働者が職業訓練を受ける、それに対して訓練手当をやる。こういうもろもろの施策がこれに含まれて、倒産に至らないで既存の企業において職業訓練して再配置をする。こういうふうなことが制度においても、すでに発足をしておるわけでありますから、そういう点を御説明申し上げたわけでございます。
  109. 矢山有作

    矢山委員 だから大臣、私はそれはそれなりに結構だと言うんです。それは大いにやっていただかなければならぬ。どうも私の質問の趣旨が御理解いただけないんじゃないかと思うのですが、現在、経営困難に陥った、倒産した、ところがやはり経営者の側なり労働者の側で、その企業を再建の見通しがある、だから再建させようとして努力しておる。その場合には、私はいまおっしゃったようなその手当ての前に、再建に対して支援をしてやるという方法が政府としてお考えになれないのかという意味のことを言っているんです。そういうようなのは、ほっぽらかしにしておくのか、こう言っているわけですよ。
  110. 藤井勝志

    藤井国務大臣 一度手を上げて、もうつぶれてしまった。しかし、それは時代がそうさしたのだから、一遍、政治は、これをめんどうを見るべきではないか、こういう御趣旨の御質問である。(矢山委員「再建の見通しがある場合ですよ」と呼ぶ)再建の見通しがある場合におきまして、労使が具体的な計画を出して、そしてそれに対して、まず何よりも事業は金融面ですね、金融面がこれをバックアップする、こういうふうな体制が整えば、おのずからまた道が新たに開けてくる。こういう点については労働大臣の立場では一応手が切れたといいますか、そういうことにならざるを得ない、このように思うわけでございます。
  111. 矢山有作

    矢山委員 私は労働大臣の立場ということは承知して言っておりますが、しかし労働大臣といえども、国の政策決定には重要な役割りを果たされるわけですから、したがって、労働大臣だから労働問題だけを考えておればいいのだというわけにはいかないので、やはり企業再建をさせる、そのための手だてを、再建しようとする側が熱心に再建の意欲を持ち、またそれが可能性があるということになれば、政府側の施策として、これを積極的に支援するということがあっていいのではないか。そのことがいま重要な問題ではありませんか。なぜかというと、いわゆる産業高度化政策というものが進んでおるときであるからこそ重要である、その点を強調したかったわけであります。しかし、時間の関係もありますから、次に質問を移しますが、その点は今後の重要な課題として御検討いただかなければならぬと私は思います。  実は、最近破産宣告を受けたカメラ会社にペトリカメラKKというのがあるのです。これは五十二年の十月一日と十一日の二回にわたり不渡り手形を出しました。そして十月十一日だったと思いますが、尾崎という弁護士の方を代理人として、会社の社長の方から会社整理手続開始決定の申し立てを東京地裁民事第八部に対して行ったわけであります。そして所要の手続を進めておるとき、突然、債権者の一部である東巧精器株式会社ほか五十八名による破産申し立てがありました。そして五十三年一月十三日破産宣告がなされました。これに対して総評の全金東京地方本部及び同ペトリカメラ支部から抗告申し立てがなされ、また足立労働基準監督署に対しまして賃金不払いによる申告がなされておるのでありますが、今日までの経過と現状、あわせて、これに対する労働省側の御見解を承りたいと思います。
  112. 北川俊夫

    ○北川政府委員 ペトリカメラの労働争議につきまして、現在まで私たちで把握しておるところを簡単に御説明を申し上げます。  いま先生御指摘のように、ペトリカメラは創業大正八年でございまして、本社工場を足立区、それから埼玉工場を杉戸に有しておりまして、破産当時約六百名の従業員を抱えております。労働組合は、いま先生御指摘のような総評全国金属労働組合東京地方本部ペトリカメラ支部、これが約百三十名と聞いておりますが、それ以外に管理職の人たちの組合及び埼玉工場関係の組合等があるようでございます。  主な経過としましては、先生の御指摘のように昨年の十月一日に約一億三千万の不渡りを出しました。それを契機に労使が今後の再建等につきまして話し合いまして、十月の四日に労使協定を結んでおります。その要旨は、第一点としまして、労使双方とも再建に努力をする。しかしながら、もし経営が不能に陥ったときには、会社は工場施設を組合が利用して生産活動をすることを保障する。また退職金につきましては三倍支給をする。そういう債権確保のために、会社所有の動産、債権譲渡と不動産の所有権の移転、こういう内容の協定が結ばれておるところでございまして、それを結びました同日、組合は茨城県の大洗町の会社所有地につきまして代位弁済ということで所有権の移転登記をしております。  なお十月十一日、これも先生御指摘のように、東京地裁に対して会社整理の申し立てを行いました。十一月十四日、そういう会社整理の申し立てが行われておるのと並行いたしまして、一部債権者から東京地裁に対しまして破産の申し立てを行っております。  十二月七日になりまして、全金ペトリ支部労働組合側は、東京地労委に対して、会社側を被申し立て人として、会社が長期間賃金を支払っていない、こういうようなことで、むしろ組合を敵視し、その破壊をねらっておるのだということで、不当労働行為の救済の申し立てを行っております。十二月十三日、東京地裁はこれに対して破産宣告を決定いたしております。同二十六日、二月九日、二月二十三日と、先ほど先生御指摘の松尾という破産管財人とペトリ支部との話し合いが行われましたけれども労働協約の履行等をめぐりまして両者についてまだ意見が一致しておらない、こういうふうに聞いております。  なお労働省といたしましては、こういう非常にむずかしい事態に会社が入っておりまして、管財人といたしましては、聞きますところ、再建をも含めて今後の事後処理について誠心誠意取り組みたいというような態度を表明しております。したがいまして、管財人と労働組合との間で十分お話し合いをされて、再建を含め、あるいは事後処理について両者が納得のいく結論が出るように期待をしておりますし、必要に応じては関係省庁と十分連絡をいたし、適切な指導をいたす考えでございます。
  113. 矢山有作

    矢山委員 そこで通産省の方に、ちょっとお伺いしておきたいのですが、五十二年二月十六日、通産省に対して経営者及び組合から、ペトリカメラKKの窮状を訴えて支援を求めるというようなことがあったようです。また会社の整理手続の開始決定の申し立て後に、これは五十二年十一月八日でありますが、そのときにも通産省に対して組合からの何カ条かにわたる要求というものが出されておるようでありますが、この経緯を見ると、通産省は大体ペトリカメラの状況というのは把握しておったと思うのです。そこで、それに対してどういうような措置をとってこられたのか、そのことを承りたい。
  114. 鈴木直道

    鈴木説明員 お答えいたします。  先生御指摘のとおり、昨年の春及び秋にペトリカメラから、私どももいろいろなお申し入れをいただいております。その中の要点の一つは、カメラ業界におきます安値競争、いわゆる過当競争防止について、当省として何らかの措置を講ずべきじゃないか。あるいはまた、こういう困った企業に対します融資の拡充という点について努力せよというのがポイントだったと思います。  第一の過当競争につきましては、その要因と言われますものの一つは、やはり内需の低下でございます。カメラ全体は、たとえば昨年一年間でございますと、二四%くらい生産額がふえているわけでありますが、内需はマイナス三%ということで、内需の低下自身が国内の安値競争の一つの要因になっている、かように思います。しかし現在、輸出比率がすでに七割近くになっておりまして、ペトリカメラの方も輸出比率が相当高うございます。  問題は輸出につきまして適正な価格で売ってもらう、すなわち量よりも質の面でかせいでいただくような輸出をしていただきたい、これが重要なポイントだということで、昨年の夏以降、外国向けの輸出価格の是正につきまして最大限の努力を払いました。現在カメラの輸出につきましては、輸出価格及び取引条件に関する協定を世界向けにやっておりますが、八月及びこの年末にかけまして、ほぼ一割の価格の上昇のための協定改定を、指導により、やっていただいた、こういうことで輸出価格の改善ということで業界全体の改善を図っていただきたい、かように考えておるわけでございます。  第二の中小企業に対します融資制度、これにつきましては、昨年の秋でございますが、例の円高以降、中小企業は非常に輸出面で苦しい状況になったわけでございますが、そのための緊急融資制度を設定いたしまして、それにカメラも指定させていただきました。今般、御審議をいただいて通させていただきました円高騰関連中小企業対策臨時措置法におきましても、カメラを対象業種に指定する等、いわば金融面でのいろいろな手だての制度を大幅に拡充するということで努力をいたしておるわけでございます。  以上でございます。
  115. 矢山有作

    矢山委員 一般論でなしに、あなたが申し立てを受けたときに通産省として何かペトリカメラと、経営者も行っておったのでしょうから、話し合いをやって、要求というか要請に対して積極的な具体的な指導をしたのかどうか。そこのところが聞きたいのです。一般論を私は言っておるのじゃないので、時間をとりますから、要点をかちっとつかまえて答弁してください。
  116. 鈴木直道

    鈴木説明員 お答えいたします。  個々の企業の活動につきまして、私ども直接的に入っていくということは非常にむずかしゅうございます。いま申し上げましたようなマクロ的な対策を積極的に何としてでもやりながら、その中でペトリカメラ自身の再建を大いに図っていただきたい、かような考え方で諸般の対策を進めたわけでございます。
  117. 矢山有作

    矢山委員 私も通産省に個々の企業に立ち入って云々ということを要求しているんじゃないんですよ。そういう話が出てきたときには、先ほど私が指摘したように産業構造高度化の中で起こっておる重要な問題、倒産の問題なんだから、したがって、それだけに国の政策として、そういう高度化を進めておるなら、そういう話が来たときには、その中小企業に対して積極的な相談に乗ってやる、そして何とか、つぶさないような手だてを考えてやるというのがあなた方の仕事ではありませんか、こう言っているわけです。そのことをよく考えてくださいね。そうせぬと、日本の産業構造を高度化しさえすればいいんだ、あなた方が、通産省が。あとは中小企業がつぶれようが失業者が飯が食えなくなろうが、そんなことは知っちゃおらぬというのは、きわめてけしからぬ話だ。そこのところを私は言っているということを理解しておいてください。  次に進みますが、組合としては、会社の経営困難となった状態の中で全力を挙げて企業再建を目指し、経営者側とも話し合い、そして再建の約束を取りつけ、そしてまた、その約束を信頼をし、会社整理手続を進めるのにも再建を目標に全面的に協力をしてきたわけであります。そのことは先ほどの御答弁の中でも一部触れておられるところであります。そして、その整理のために五十二年の十月十一日、先ほど言いましたように整理開始の申し立てをし、同時に同日、商法の規定に基づいて債務弁済禁止、不動産の処分禁止、金員の借り入れ禁止の保全処分の申し立てをした。同裁判所、これは東京地方裁判所、民事では八部です。同裁判所は、同月十三日不動産の処分禁止の保全処分を決定した。  次いで、会社は同月十八日、草加市、草加勤労福祉会館において債権者約二百名の参集を得て、会社整理開始の申し立てをなすに至った経緯を説明し、さらに同月二十六日、同所において債権者百五十八名の出席のもとに会議を開き、一、昭和五十二年五月末日現在の貸借対照表及び損益計算書、二、同年九月末日現在の債権総括表、三、同年十月二十五日作成の生産計画表を提出し、会社の資産及び営業の概況並びに当面の生産、営業方針を報告した。  そして、会社は組合の協力を得て在庫品を処分し、当面の水道、ガス、電力、電話などの公共料金を支払って生産を継続する措置を講ずるとともに、十一月二十四日、債権額三万円以下の小口債権者の債権を弁済した。さらに同年十二月二十七日、三万円を超える五万円以下の債権者に対しても弁済がなされた。  次に、従来主たる取引先であったスイス国法人フインカメラ・エス・エとの間に会社再建のための交渉を前記弁護士が会社代理人となって進め、同年十一月二十一日にペトリカメラの再建に関する覚書を交換し、販路の確保及び生産の維持についての積極的協力について合意するとともに、その具体化のための基本協定が昭和五十三年一月六日締結された。そしてさらに取引基本契約書が作成される段階になっていた。  次に、資産状況の調査については、前記事件の担当裁判所である東京地方裁判所民事第八部の指示と了解を得て、前記弁護士を通じて、清水幹雄公認会計士に経理監査を、大河内一雄不動産鑑定士に不動産の評価鑑定を委嘱した。  そして昭和五十三年一月六日にはすべての不動産鑑定報告書が作成された。また同月二十五日には経理監査報告書が作成される予定である。  組合は、会社が右申し立てをなした後、必要に応じ会社と企業再建のための協議をするとともに、職場にとどまり生産業務に従事してきた。そして会社と組合は協議の上、近く整理計画案を立案し、債権者の同意を得べく鋭意努力していたところであります。  そういう状態の中で、突然五十三年の一月十三日に破産の宣告がなされたということであります。これはまさに私は経営者が労働者を裏切るのもはなはだしいと思う。経営者と労働者が、先ほど労働省からもおっしゃったように、私もいま言ったように、何回かにわたって話し合いをし、協定書までつくり、その協定書については公証人役場で認証まで得ておる。労働者の方は、再建に企業、経営者側は真剣に取り組んでおると思って信頼し切っておるわけです。それをこういうことをやるというのは、まさに私は労働者企業の側に対する信頼を逆手にとった、きわめて卑劣なやり方だと思うのですが、どうお感じになりますか、労働大臣
  118. 藤井勝志

    藤井国務大臣 いまお話を聞きまして、確かにいろいろな問題が会社側、経営者、使用者側にもありますが、ここに至りましたきょう今日、やはり関係者の話し合い、ないしは、もうすでに裁判所にかかっておるわけですから裁判所の判断、こういったものを踏まえて、労働省としてはできるだけの協力をいたさなければならぬ、このように思っておるわけであります。
  119. 矢山有作

    矢山委員 だから私が前段に労働大臣にお尋ねしたのは、このことに関係があるからお尋ねしたわけです。だから、経営者が一たん労働者側と約束をし協定まで結んで、労働者は再建を信じ切って全面的に協力しているんですから、その期待を裏切って突如と破産宣告の申し立てをやる。そして破産宣告をやらしてしまうというのは、私はきわめて残念だと思う。したがって、この問題については、先ほど御答弁の中にありましたように、今後全力を挙げて企業の再建という方向に向けて努力をしていただきたいと思うのです。しかも、先ほど言いましたいままでの経過の中で、企業再建の見通しというものを、整理申し立ての弁護士は確実につかんで進めておったわけですから、このことをひとつ念頭に置いておいていただきたい。  そして、つけ加えて私は一、二の事例を挙げながら経営者側の不当性というものをはっきり指摘しておきたいと思うのです。これは時間の都合で一、二しか挙げませんが、一つはペトリカメラ株式会社は四十八年四月二十三日、同社黒羽工場、これは栃木県黒羽町にあります黒羽工場建設のため中小企業金融公庫から五千万円を借り入れ、これに手持ち資金四百四十二万円を加えて工場建設を行いました。ところが、工場が完成するや、四十九年の六月一日その工場をペトリカメラ社長栗林敏夫氏の弟栗林庸夫氏を社長とする別会社黒羽光学株式会社に賃貸いたしました。なお、参考のために申しますと、黒羽光学株式会社の設立は四十九年七月一日になっております。さらにその後、五十一年九月二十日には、その工場を三千五百万円で黒羽光学株式会社に売却しております。ところが、その登記は会社整理申し立て後の五十二年十月二十日にやっている。こういう事例が一つあります。  それからもう一つは、会社整理の申し立てをなされた。これは五十二年十月十一日です。その手続を進めつつ、会社再建の有力な手がかりとして、従来主たる取引先であったスイス国法人フィンカメラ・エス・エとの間で会社再建のための交渉を会社代理人として尾崎弁護士が進め、五十二年十一月二十一日、ペトリカメラ再建に関する覚書を交換し、その具体化のための基本協定が五十三年一月六日締結され、さらに取引基本契約書が作成される段階になっておったということは、さきに、述べたところであります。ところが、こうした手続が進んでいるとき経営者側は、五十二年十二月五日、フィンカメラ・エス・エにブランド譲渡の届け出をやっております。そして五十三年一月六日、これは基本協定が締結された日でありますが、ブランド譲渡の契約を経営者とフィンカメラ・エス・エの間で締結をしております。そして五十三年一月十九日、破産宣告後ですが、ブランド譲渡の登録がなされております。  この一、二の例を見ると、まさに経営者側が企業を再建するのだと言って労働者をだまくらかした。そして陰で自分の資産はできるだけ保全をしていこう、こういう卑劣な手段をとる。そして、自分の持っておるブランドを売り渡してしまう。しかも、このブランドは先ほど言いましたように、代理人である尾崎弁護士が会社再建のかなめとして交渉中のものでしょう。そういうことをやっているわけです。これはただ単にこのペトリカメラ経営者だけの問題でなしに、こういうえげつないことをやるのは何かいろいろな問題が絡み合っておるのじゃないかということを想像するのです。  したがって私は、何としてもこの実態はあなた方の手で解明をして、労働者企業再建の意欲というものを尊重して、その方向に向けて全力を挙げていただきたい。これは労働者としてもやっていただきたいし、きょう、せっかく通産省が来ておるのだから、通産省は申し立てがあった時点で具体的な、積極的な相談に乗って知恵をかすということをやっていないのだから、その責任上もこの事態を徹底的に調査して——いまなお労働者側は、経営者と相談しながら会社を再建したいと言っている。ところが、経営者の方がずっこけてしまって、どこへ行ったかわからぬのだから、こんなばかな話はないので、通産省も、この問題については積極的に取り組んでもらいたい、こう思うのですが、労働大臣なり通産省の方の御意見を聞きたいと思います。
  120. 藤井勝志

    藤井国務大臣 お話を承りまして、確かに常識では判断できないような、非常に理解しにくい今度の事件といいますか会社の倒産。一応たてまえから言いますと、破産は債権者が申請する、宣告は裁判所が宣告する、こういうことになって、そこまで事が進んできておるわけでございますけれども、使用者側が即債権者側ということにもなりますから非常に無責任な対応の仕方になっている、そういう面から言いますと、われわれ労働省としては労働者雇用安定、生活の確保、こういう面からいっても、まことに遺憾千万な事柄のように思いますけれども、ここまで事が進んできておりますから、通産省とよく連絡をとって、そしてわれわれの立場でできる範囲の協力について努力をいたしたい、このように考えます。
  121. 鈴木直道

    鈴木説明員 労働大臣と同意見でございます。私どもも誠意を持って調査いたします。
  122. 矢山有作

    矢山委員 じゃ、これでやめますが、私もいまの労働大臣の積極的な御発言を信頼いたします。ぜひともこの実態をお調べの上で、この不況のさなかに職を失ってしまえば、社会保障的にどんな手厚いことをやられても、これは限りのある問題なので、できるなら会社を再建させて、そこで働くということが何といっても労働者の最大の望みですから、その点をよくお考えいただいて、再建のために、それぞれ関係省庁と連絡をとって、ぜひ努力していただきたいと思います。法律的にいろいろな問題もありましょうが、その点を検討し、克服しながらやっていただきたい。  きょうは時間の関係で一応問題提起という状態になったかもしれませんが、今後とも私どもも、この会社の再建問題については、さらに調査を進めながら皆さんの御協力を得て、必要なときには随時また皆さんの御見解を伺わせていただきたい、このように考えておりますので、きょうはこれで終わらせていただきます。
  123. 越智伊平

    ○越智(伊)委員長代理 田口一男君。
  124. 田口一男

    田口委員 きょうは二つほど質問をしたいのですが、まず第一に、最前からそれぞれの立場で御質問のあった雇用の問題なんですが、まず雇用対策の総論として確かめておきたいのですけれども、今日の不況、それによってもたらされる雇用不安そして離職者の状態、こういったものをどう見ておるかということです。  そこで、先ほど矢山委員の御質問に対する大臣の答弁もあったのですが、いまの不況は単なる景気循環的な不況ではない。産業構造の変化によって相当長期にわたるであろうという見方、一つはそういうふうに解釈をしておるのですが、それが間違いないかどうかが第一点。  同時に、そういった観点に立って、先ほどもお話がありましたように、通産省が今度提案しております特定不況産業安定臨時措置法、この立法の趣旨も、いま言った産業構造の変化に基づいて過剰設備を廃棄したり凍結したり、そうすれば長期にわたるそういう問題がある程度解決するであろう、こういうもくろみのもとに、この臨時措置法を立法したのか。そこで、いまの問題に関連して通産省にお伺いをしたいのですけれども、平電炉であるとかアルミであるとか繊維であるとか造船、いろいろ言っておりますけれども、いま特定不況産業に特定する産業から、設備の廃棄や格納などによって一体どれほどの失業者が出るだろうと見ておるのか、それが二つ目。  さらに三つ目の問題なんですけれども、いま毎月毎月百万以上の完全失業者が統計に出ておりますけれども、この失業者の中身を見た場合に、一口に中高年が多いと言っておるけれども、ただそれだけなのか。さらに最近の雇用の異動、あるところを離職をして幸いにどこかに就職をした、こういった労働力の異動というのは、どういった傾向を持っているのか。そういう点について、これは労働省にお聞きをしたいと思います。
  125. 南学政明

    南学説明員 第二に御指摘になられました、いわゆる構造不況業種から、どの程度の離職者が出るであろうかという点についてお答えさせていただきますが、私ども、低迷を続ける生産動向、低水準の稼働率等から判断しますと、一般的には現在かなりの企業において過剰雇用感というのがあるのは事実であろうかと思います。ただ各業種、各企業がどの程度、具体的に過剰雇用を有しているかという点になりますと、過剰雇用感というのは、そのときどきの業況によって変化するものでございますし、また各企業が相当長期にわたる生産見通し等に基づいて判断していく筋合いのものでございますので、どの程度、過剰雇用を持ち、これを離職させるかというのは、正確に把握することはきわめて困難な情勢にあります。また、ある程度そういう過剰雇用感がある場合にも、日本的な労使慣行のもとでは、解雇というのは労使間における最後のぎりぎりの問題でございまして、多くの企業の場合は関連事業部門への配置転換であるとか、あるいは関連会社への出向等の各企業のいろいろな実態に応じて対応をしていきますので、それが直ちに離職に結びつくというようなこともないかと存じております。
  126. 細野正

    ○細野政府委員 労働異動についてのお尋ねでございましたが、手元に正確な資料を持っておりませんので、記憶で大ざっぱな数字を申し上げて恐縮でございますが、年間に二百七、八十万人の流入と流出というのが五十一年の年間の雇用の動向だったというふうに記憶いたしております。五十二年は上期まで出ておりまして、そのいずれの数も対前年に比較してみまして、景気のいいときに比べて若干減っておりますけれども、そう大きな落ち込みではないというふうに記憶いたしております。
  127. 田口一男

    田口委員 そういたしますと、通産省で考えておるのはちょっと甘いと私は思うのですが、確かに業種の関係によって一体何万何千何百何十何人の離職者が出るだろうということを、いまここで答えろということは私も言いません。それは不可能だと思うのですね。しかし、通産省が出しておるいろいろな資料を見ますと、たとえば平電炉、これは五十二年九月の通商産業省の「構造不況業種の現状及び対策について」というプリントの「現状と問題点」にあるのですが、平電炉を例にとってみますと、下請を含んだ労働者が五十二年九月には約四万人おった。     〔越智(伊)委員長代理退席、羽生田委員長代理着席〕 しかし、現在の生産能力とそこから推計される過剰能力というものを見ると、五十一年度の生産能力が二千四百四十万トン、うち過剰能力が七百万トン、五十五年度では平電炉で三百三十万トンが過剰である、こういった数字が出ておりますから、単純に計算をすると、四万人の下請を含む労働者の約三割見当は余るということになるわけですよね、単純な算術計算をすると。この調子でアルミであるとか塩化ビニールであるとか化学肥料、繊維、段ボール原紙、こういったいわゆる構造不況業種から吐き出される労働者は相当出てくるものと予想をしなければならぬのではないか。  さらに、そういったところから出される労働者の実態というものは、いま職安局長のお話にありましたように、多少の高低はあるでしょうけれども、いままで労働省が出した各種統計資料、それから総理府の労働力調査なんかを見ますと、こういうことが言えるんじゃないかと思うのですね。まず出される者は中高年齢者が多い。それから、それがすぐに失業状態になるんじゃなくて、しばらく雇用保険なんかももらっておりながら次の職を見つける場合、総理府統計局の労働力調査によりますと、臨時日雇いといったいわゆる不安定雇用の方に移っていく。それから卸・小売であるとか金融・保険、不動産であるとかサービス業といったいわゆる第三次産業の方に移っていく。さらに規模別で見ますと、事業所統計によりますと、これまた四十九人未満のいわゆる中小企業の方にどんどん移っていって大企業の方には吸収がない、こういうことが言えるわけですね。  ですから総括をすれば、いま言った不況産業の安定臨時措置法によって、何人かは知らないけれども離職者が出るだろう。その離職者は中高年齢者が多いであろうし、その後の行き先は完全失業者になるか、または中小企業へ行ったり臨時日雇いといった不安定雇用の方にたまっていく、こういうことが現状から言えると思うのですね。そうなってくると、その点については労働省もそれから通産省も、ある程度の離職者はやむを得ないだろうという見地に立つならば、当然に、そういった余った労働力を安定した雇用の状態で最終的にどこで吸収するか、ここのところが雇用対策を立てるのに一番重要になってくると思うのですね。その日暮らしの日傭取り、こういったところで、ともかく失業状態が統計に出てこなければいいんだというのではなくて、安定した雇用の状態に最終的に吸収をするということが、労働省の、そしてまた産業政策の一番の中心にならなければならぬのじゃないか、こう思うのですけれども、そういう点については、現行の法体制の中で労働省がいままで打ち出しておる雇用安定資金なり、また昨年暮れの議員立法による離職者対策法、こういったものも通りましたけれども、いかんせん、当面何とか食っていけばいいんだ、一月のうちで一週間なり二週間なり何とか職にありつければいいんだという状態に甘んじておるんじゃないかという気がするのです。大臣、その辺どう思いますか。  ですから、最終的に過剰人員を吸収する場所ということを、まずここで政策として明示をしなければ、不安定雇用というものはいつまでもいつまでも続いていく。これは労働者にとって一番不安の種である。また通産省は、そういったことを考えずに特定不況産業云々というふうなことで、どんどんと切っていく。これでは労働者は、高度成長のときには金の卵と言われ、こうなったら無残に切られるということになってしまうのではないか、こう思うのですが、いかがでしょうか。
  128. 細野正

    ○細野政府委員 今後の雇用の吸収の方向等については、後ほど大臣からお答えがあると思いますので、最初に、数字的な分析をおっしゃいました点について、私から若干お答えしたいと存じます。  先ほど、労働異動の実態全体のお話と、そしてその結果としてふえているのが比較的、臨時、日雇い等が多くて、そのことは発生した離職者が失業者になるか、あるいは日雇い、臨時といった不安定雇用にいっているということではないか、そういうお話でございました。  全体としてのそういう傾向自体を、もちろん否定するわけではございません。先ほどお話のございました不安定雇用のところがふえている、これは確かにおっしゃるとおりなのです。ただし、一方におきまして女子の非労働力が労働力化しているというのも同じ統計から出てきているわけです。女子の非労働力の労働力化がどこへいっているかというのも、これもストレートに見える統計がないのですけれども、ほぼ人間的に見合っているのを見ますと、非労働力の女子の労働力の女子の労働力化というところが、臨時、日雇い、特にパートのところにふえている部分と、ほぼ結びついているというような状況から見ますと、先ほどの先生のお話のようにストレートに離職した人が臨時、日雇いにいっているとは必ずしも言い切れない面があって、そういう面もございましょうけれども、むしろ臨時、日雇いがふえているのは、女子の非労働力の労働力化の人たちが、その部分へ進出しているのじゃなかろうか、こういうふうに考えられる面の方が強いのじゃないかというふうに思っているわけでございます。
  129. 藤井勝志

    藤井国務大臣 御指摘のとおり、やはり本当に労働者の福祉の向上、生活の安定という面からいって、これから再就職をするという場合に、安定した雇用の道を労働省としては全力を挙げて創出せなければならぬ。特に中高年齢層の雇用問題というのは、これからの雇用政策の大切な柱になろうかと思うのでありまして、そういう面につきましては、やはり製造業の中でも特に機械工業、こういった面で将来性のある産業への配置転換、それから第三次産業といたしましては生活福祉、医療保険、教育情報、こういった面へ、この際、特定不況業種から出られた離職者の再就職の道を積極的に開拓せなければならぬ。このためには職業訓練法、十年前に制定されましたが、これも時代の要請に対応できるような方向に職業訓練法の改正も現在、準備を急いでおるわけでございます。いま申しましたような方向に向かって特に中高年齢層の雇用の安定を図っていこう。また同時に、当面の迎え水としては、このような中高年齢者を雇い入れる事業主に対しては特別の助成をして、それらの事業主の協力も仰いで雇用の安定を図ろう、このように考えておるわけでございます。
  130. 田口一男

    田口委員 いまの大臣のお話で、私もそうなければならぬと思うのですが、安定した雇用ということが一番望ましいわけですね。それは異論がない。ところが、いますぐには、なかなかそれが見つからぬ。  そこで、通産省にお伺いしたいのですが、そういう構想があるのかどうか。これはちょっと古いのですが石油ショック以降に産業構造審議会報告の「産業構造の長期ビジョン」これを通産省は出しているのですね。これを見ますと、これからのニーズに対応した産業としていろいろ六つ七つ挙げております。その金額的な面も計算をしておるのですが、たとえば、いま大臣のお話しになったような医療なり福祉なりということに関連をして健康維持という、昭和六十年のニーズ別、産業別生産額を見ると、昭和四十五年価格で四十九兆七千七百億もの生産額が出る。大変な金額ですね。そういったビジョンだけではなくて、それを実際に移していくような政策というものをあわせ出さないことには、ただ不況だからその不況産業の安定を図るために設備の廃棄をすればいいんだというだけでは片手落ちになるのではないのか。  また、労働省の側にこれは注文をつけたいのですけれども、いずれ職業訓練法の改正のときにも申し上げたいと思いますけれども、今日まで昭和二十年代、三十年代、四十年代を振り返ってみると、この訓練法なり雇用保険法の改正、さらに新しい立法、こういうものは一口に言うと、こちらの水は甘いぞという誘導政策をとっておったと思うのですね。農業から第二次産業に移した。住宅建ててやるからこちらに来なさいとか、それから、いつまでも雇用保険をもらっておったら、もう締めつけるぞと言って窓口で規制を強めて、どんどんと特定の産業に就職をさせた。いい悪いは別ですよ。ともかく私は、その内容は別として、こちらの水は甘いぞということで特定の産業から特定の産業に労働力の移動を政策的にやったと思う。それがなぜ今日できないのか。ですから通産省の産業構造ビジョンなんかと相まって、構造の変化になってきたんだから、そこにおったって、もうだめですよ、こちらの方が長期的に安定した就職になりますよ、こういうことをやらなければ雇用対策というものは生きてこぬのではないか。  そこで後の問題もありますので、そういう考えに立って私は当面、雇用対策で二つしか方法がないと思うのですね。その一つは、ともかくいま勤めておる、働いておる雇用を何としても維持する。首を切らさない、雇用維持のためにいろいろな方策があると思うのですが、午前中森井委員からのお話にありましたような週休二日とか時間短縮ということによって雇用の維持を図る。当然に労働基準法の改正もしなければならぬ。それから、いま大臣がおっしゃったように、医療とか保育所、これは労働基準局から基準法違反ということで何回か指摘をされておりますけれども、そういった医療、社会福祉なんかのところに増強させる。  さらに、解雇規制ということをもっと前面に打ち出す必要があるのではないかと思う。これは最近の判例が示しておるのですけれども、幾ら経営権の自由だといっても、ばっさばっさと首を切ることは解雇権の乱用だという判例が出されておりますね。そして経営権の自由と労働者の生存権というものをどこでクロスさせるかというためには、この産業解雇規制のための話し合いの場をつくることが必要じゃないかという説もあります。そういった観点に立って、個別に解雇規制の立法をするというよりも、いまある法律の中で、具体的には雇用対策法の二十一条を全面的に改正をして、ここで届け出をさせるなり労使が十分に相談をするなり、こういった意味を含めた解雇規制を強化するということによって、雇用の維持を図ることが当面、緊急的な課題ではないだろうか。  さらに、二つあるという最後の一つは、さっきも大臣がおっしゃっておりましたように緊急避難的に、そうはやったけれども失業した、離職をした。その失業労働者の生活の安定を図るためには、いまの雇用保険法を最大限に活用をする。地域援助の制度を設けるとか、さらに、これは訓練法のときにも具体的に申し上げますが、こういった実態があるわけですね。現行のそれぞれの延長給付、広域延長とか全国延長とか個別延長、訓練延長、こういった延長給付がありますが、御存じのように順位が決まっていますね。広域延長を先にやって、全国延長をやって個別延長をやって訓練延長だ、こういった順序が決められておりますから、訓練を受けて、さあどこかへ勤めよう。ところがなかなか見つからない。せっかく訓練を受けたけれども、訓練を受けた後、何も手当が入ってこないですね。これはわかるでしょう、訓練延長は最後ですから。だから失業者に対する方法として、この順序を何か変えていくということも必要なんじゃないか、こういうことを緊急避難的に考えてみたのですけれども、御所見はどんなものでしょうか。
  131. 藤井勝志

    藤井国務大臣 いろいろな問題提起がございましたが、時間の短縮により仕事を分け合うというこの考え方は、やはり労使の自主的な話し合いによって、その方向へいくように、環境づくり労働省としては極力努めたい、このように考えております。  それから解雇規制の問題でありますが、これまた労働協約とか就業規則、こういったことで勝手に解雇はできない。解雇する場合にはどういう話し合い、こういうことになっておりますし、特に今度の特定不況業種離職者臨時措置法の場合には事前に申し入れをする、こういうことによって、やむを得ず解雇の場合にも労使の話し合いということが、まず大前提になっておるわけでございます。  それから、いろいろ訓練をした、ところが、せっかく訓練をしたけれども就職の道がない、こういったことでは困るではないかというお話でございますけれども、いままでの実績は、再就職のために訓練をした労働者は大体再就職の道についておる、こういう現状でございます。ただ、これからの雇用情勢の厳しさを考えますと、そう楽観は許されませんから、いろいろな訓練の科目の選定に当たっては、先ほど申しましたような製造業においては将来性のある産業、また第三次産業としては、これから日本が進むべき社会構造を担う担い手としての人づくり、職業訓練をやっていく、こういうことによってスムーズな人の配置転換ができるように最善の努力をしなければならぬ、このように思います。
  132. 日下部光昭

    ○日下部説明員 産業構造全体のことについてお答えいたしたいと思います。  私どもは、いま、こういう情勢のもとで産業構造はこれからどうあるべきかということを、いろいろ検討しておるわけでございますが、日本のこれからの置かれた立場ということを考えますと、その内容としては、やはり省資源省エネルギー型の産業構造であるとか、あるいは資源を少ししか使わないで、できるだけ高い付加価値をつくっていく産業というものが主導的な役割りを担っていくだろうということは一つあると思います。  それからもう一つは、国民のニーズというものが、物離れとかなんとか言われておりますけれども、社会的な需要といいますか、そういう方向へいっておるということがあって、その観点から三次産業というものが重要になってくるというファクターがあると思います。  いずれにしても、そういうようなかっこうで、だんだんいくんだろうと思いますけれども、もちろん、そういう産業構造を形成していく過程では、雇用吸収力ということを十分われわれ勘案しながらやっていかなければいけないわけでございますが、いま申し上げたような産業分野というものは雇用吸収力がある産業分野でございまして、長期的なビジョンを、いま先生が先ほど数字をおっしゃいましたけれども、そういうものをわれわれとしても今後とも見直しながら、どういうような感じで雇用吸収が行われていくかということを頭に置いた産業構造の形成ということを図っていきたいと考えておるわけでございます。
  133. 田口一男

    田口委員 いま大臣お答えになったが、ちょっと取り違えていると思うのです。これは職安局長ちょっと答えていただきたいのですが、現在の雇用保険法の二十八条の場合、延長給付の順序が決まっておる。そうすると訓練を受けた後、就職活動をする場合に手当は何もないわけですね、そうでしょう、理屈からいけば。だから、これを改めて、この訓練延長に相当する給付を受けておるときには基本手当を中断したらどうかというのです。そうすれば訓練を受けた後、就職活動する際に基本手当をもらいながら就職活動ができるじゃないか。だから順序を変更するか、中断をして訓練延長を受けさす、こういうことは考えられないかということです。
  134. 細野正

    ○細野政府委員 先ほど大臣からお答えしましたように、訓練を受け終わった方につきましては、現在までのところ、そう時間を置かずにほとんど就職をしておられる、あるいは自営の道についておられるということから、実態的に必ずしも、そういうことが現在のところは必要ないんじゃなかろうか、こういう趣旨で大臣がお答えになったろうと思います。  理論的には、そういうことも考えられるじゃないかというお尋ねの趣旨かと思うのでございますが、いま申し上げましたような事情でございますから、今後の情勢の推移を見ながら、そういう問題は現実的な問題として検討すべき問題ではないか、こういうふうに考えておるわけでございます。
  135. 田口一男

    田口委員 雇用の問題は以上で終わりますが、次に、具体的な問題として、いま基準局を中心に労働基準法施行規則三十五条の改正作業が相当煮詰まっておると思うのですが、そういうことに関連をして昭和五十年の夏に大々的に社会問題となりました日本化工のクロム問題ですね。このことについてお伺いをしたいのですが、まず問題を整理するために、たしか昨年の三月だったと思うのですが、本委員会田邊誠委員がこの問題に触れられました。そういったことを契機にしてだと思うのですが、クロムの疫学調査をいま労働省が進めておると聞いております。この疫学調査の目的をもう一遍ここではっきりさせていただきたい。
  136. 桑原敬一

    桑原政府委員 日本化工の小松川工場におきます疫学調査の目的でございますが、御指摘のように大変な社会問題になりましたクロムの労災上の取り扱いの問題でございますが、あの問題が起こりまして、私どもはさっそく専門家会議を開いて、まず認定基準をつくったわけでございます。もちろん、これには医学的な専門家にお集まりいただいて十分な討議をした上でやったわけでございます。もちろん、それは中間的な形でございまして、私ども一は、その後のいろいろな個別症例等を参考にしながら、こういう認定基準は見直していかなければならないという基本的な考え方を持っておるわけでございます。  そういたしますと、やはり問題なのは、現在認定基準で足りない面もあるのではないか。そういたしますと、特にクロム化合物によって業務上であるのではないかといういろいろな御意見もあるわけでございますので、そういった臨床上あるいは病理学上、特異性にまだ乏しいという問題も、また学説的にもあるわけでございます。そうすると問題の解決としては、やはりそういった疫学調査をやって問題を解明しなきゃならぬということは当然出てまいりますので、五十一年の一月につくりました認定基準を補完する意味において、こういった疫学調査をいま進めておるわけでございます。  第一次調査は、二十二年の九月一日から五十一年八月三十一日までの間に雇われて、クロム酸塩製造工程において、お仕事を一年以上やっておられた五百三十二名の方について疫学調査をするということで、その設計につきましては専門家の会議を開きまして設計をして、第一次調査を進めておったわけでございます。そういう問題につきましては、先ほどお話ございました田邊先生の方から国会で、二十二年の九月一日以降というのでは、やはり問題があるのではないか、二十二年九月一日現在に在籍する人も当然含めるべきではないかという御指摘ございましたので、そういうことを含めて、専門家会議に御意見を聞いて、いま第二次調査をあわせてやっておる、こういうような段階でございます。
  137. 田口一男

    田口委員 そうすると疫学調査は、目的はわかりましたけれども、その調査をやっておるのは、いまちょっと話が出ました専門家会議がやっておるのですか。  それと、聞くところによりますと労働省は独自でやっておるというふうに聞いておるのですけれども、もし、やっておるとするならば、その専門家会議と、それから独自でやっておるのと、どうもおかしいじゃないですか。
  138. 桑原敬一

    桑原政府委員 非常に専門的なことでございますので、専門家会議の御意見を聞いて設計をいたしまして、実施自体は労働省がやっておるわけでございます。
  139. 田口一男

    田口委員 そうすると労働省自体が実施をしておる。それは専門家会議と全く別ということですね。別の人がやっておる。専門的なことになるから専門家会議にゆだねた。ところが、実際にその専門家会議が調査をせずに労働省がやる、こういう形になっておるのですか。
  140. 桑原敬一

    桑原政府委員 設計は専門家会議にいろいろと御意見を聞いて決めたわけでございますが、調査を実施しました後は、またその分析評価というものは専門家会議にお願いをする、こういうようなことでございます。
  141. 田口一男

    田口委員 そうすると、こういう理解でいいのですか。調査の手法、そういったものは専門家会議で設計をして、そしてそれを労働省が調査をして、調査した結果を専門家会議に、このとおりでございますと報告をして、そこで専門家会議がいろいろ評価をする。となれば実質的には専門家会議がやったことと同じだ、こういう理解になるのですか。
  142. 桑原敬一

    桑原政府委員 いまの先生のおっしゃったとおりだと私考えます。
  143. 田口一男

    田口委員 じゃ、さっきも言いました昨年、本委員会で田邊さんが当時の労働大臣に、いま言った質問をして、被害者と世論に疑惑を与えないよう調査を再検討する。その結果、二十二年九月現在というふうに改められたと、いまお答えがありましたけれども、じゃ一体、日本化工のどういう労働者を対象にしておるのか。二十二年九月現在在職しておる者ということなんですけれども、その辺もう少し詳しく。
  144. 桑原敬一

    桑原政府委員 この疫学調査は先生も御承知と思いますけれども、その調査結果が分析に十分たえられなければならないということでございます。そのためには一般の国民と、そこに働いておる当該労働者との比較をしなければなりませんから、その母集団というのはきちっとしていなければなりません。しかも、その母集団というのは、何年間という設計されたその間において、具体的に性、年齢あるいは疾病の発生状況、生存率、死亡率、こういった具体的な統計がとれるような人たちでなければならぬわけでございます。一部がとれないということになりますと、統計全体が非常に意味をなさなくなるわけでございますので、専門家の御意見を聞きまして、九月一日現在におられる方で、そういう問題きちっととれる方ということになるわけでございます。そういたしますと、そういった労働者名簿がきちっとあって、そして調査のいろいろな項目について完全に記入ができる労働者、こういうことになるわけでございます。
  145. 田口一男

    田口委員 もっと具体的に言うと、昭和二十二年九月現在、日本化工を中心にしてクロムのいろいろな作業をしておった労働者、そして現在判明しておる、こういうことですか。もっとずばり言えば、その日本化工の正社員といいますか本工といいますか、本工ばかりじゃ仕事していませんね。下請とか社外工こういったものも二十二年九月現在ということで押さえておるのか、そこのところです。
  146. 桑原敬一

    桑原政府委員 御指摘のように下請とか、そういう臨時工というものがきちっとしておればよろしいのですけれども、私どもいろいろと名簿で当たってみますと、いろいろの人が所在不明とか何かございまして、結局、結果的には本工を調査をするという結果になったわけでございます。
  147. 田口一男

    田口委員 問題はそこのところですね。いま局長おっしゃったように分析にたえ得る母集団、それが本工に限られてきた。そして社外工、下請工が除外をされた。ところがそれだけで、このクロムの疫学調査というものが本当に満足のいく結果が得られるか。当時の状況を田邊さんからも私は後で聞きましたし、いろいろの資料も見るのですが、わかっておる下請でも松渕組とか共立運送というんですか、そういったいわゆる下請社外工が、本工と同じ条件で、むしろ条件から見れば、ミストなんというのはひどい状態の中で社外工が働いておる。当然にいま言った肺がんであるとか何であるとかというのは社外工、下請工にもあらわれておると見るべきですわね。それを除外してなぜ本工だけをやったのか。  しかも当時の数字を見ますと、日本化工の全社員、クロムに関係をしていない社員も含めて、その数に対して下請社外工の比率というものが大体四〇%ぐらいに上っておるんじゃないか、こういう調査があるんですけれども、そうであればあるほど社外工を除外をした疫学調査というものは、その効果のほどというものは十分でない。そしてまた社外工、下請工のそういった不幸な状態にある人から見ると、それが何ら疫学調査に反映をされないのですから、救済なり何なりということについても当然、関係がなしになってしまうだろう、こういう心配があると思うんですね。その辺はどうでしょう。
  148. 桑原敬一

    桑原政府委員 疫学調査は、あくまでも統計的な確実性というものをやはり期待いたさなければならぬわけでございます。したがって、本工なら本工のたとえば一〇〇の中に何人そういう病気が出るかという、そういう発生率みたいなものをとるわけでございます。そうすると下請とか何かという全体の一〇〇というものをどう押さえるか。一〇〇というのは一つの構成の全体を一〇〇ととりまして、その中で二だったら二%の発生率、こうなるわけでございますけれども、そういう母集団を確定できないと統計の処理ができないわけでございます。  問題は、統計処理した結果そういったクロムと病気との因果関係がはっきりしてまいりますれば、たとえ、そういう下請とか何かの方が調査されてなくても、問題の処理は全く同じように行政的には処理されるわけでございますから、問題は、やはり統計的に確実性と申しますか、発生の確実さというものを処理するためには、どうしてもそういう科学的な処理をしなければならない。で、臨時工とか下請の一部だけをとってきて、そしてそれを調べるというわけにはいかない。全体の母集団の一〇〇という形をつかまえて、その中で何人発生するか、こういうような処理をするわけでございますから、そういったいろいろな調査をする項目について完全に調べられる基礎数というものが一番把握できる労働者に、どうしても限らざるを得ない、そういう調査から来る一つの結果だ、こういうふうに私は考えるわけでございまして、意識して下請とか臨時工を外したわけではございません。
  149. 田口一男

    田口委員 それなら、いま決まっておる母集団の観察期間というのはどうなんですか。それではなはだしく疑問に思うのですけれども、聞いた話では昭和二十二年九月現在在職しておる者から、ずっと本工を調べる。そうすると極端な場合には昭和五十年、五十一年に日本化工に入った者も母集団の中に入るわけでしょう。入ると思うのですね。平たい言葉で言えば去年やおととし入った者。それからクロムによる発がんの状態は、昨年ベンジジンの問題でも言いましたけれども、相当長期にわたる潜伏というのですか、症候がはっきりするまでには二十年も三十年もかかる場合がある。そうすると、きのうやおととい入った者も母集団に入れてしまえば、実はけさもちょっと言ったのですが、疫学調査の結果が薄れてしまうのじゃないかという勘ぐりができるわけですね。しかも一方、社外工や下請工を入れてない。きのうやおととい入った者を入れて、社外工や下請工のような危険な状態で条件の悪い中で働いておった者を除外をする。いま局長は決して意識的にとおっしゃいましたが、結果として、いや大したことはなかったのですよという疫学調査の数字が出てくるのじゃないか、こう勘ぐるのです。だから社外工、下請工という者も入れてやるべきじゃないかと私は思うのです。また技術的に困難なら母集団を二つに分けて、本工の母集団、下請社外工の母集団ということは技術的に不可能なのかどうか、そこら辺はどうでしょう。専門的で私も十分じゃないのですけれども
  150. 桑原敬一

    桑原政府委員 二十二年九月一日現在在籍した方から五十一年八月三十一日までの間に雇われた方ですから、おっしゃいますようにごく最近入っておられる方まで入るわけでございます。その中で一年以上クロムの作業に従事しておる方、こういう限定をいたしております。したがって非常に新しい方もございますが、やはり潜伏期間の長いこういう病気でございますから、できるだけ長い期間で見る、そして統計処理は全体で薄めるのじゃなくて、たとえば二十年だったらどういう問題が出てくるか、あるいは十年だったらどういう因果関係があるか、そういう従事期間数と病気との関係、いろいろクロスしながら統計をとるわけでございますので、特定の十年だけをとるというわけにはいかないわけでございます。非常に潜伏期間が長いですから、長くとる、そして一年くらいでは全然問題にならぬけれども五年だったら問題になるとか、そういうような追跡調査をしていくわけでございます。そういった意味で、長くとることは薄めるという意味ではございませんで、そういった従事期間別にいろいろな分析をする。  それからもう一つは、これはクロムに従事しておられる労働者と、その疾病との因果関係を調べるわけでございますから、臨時工、下請といっても、その契約関係で常にクロム作業だけしているかどうかもわからないわけでございますね。やはりきちっとクロム作業に従事している確実な方をとらえて医学的な統計処理をすることが科学的な厳密さの意味で非常に必要ではないか、そういうふうに思います。
  151. 田口一男

    田口委員 薄めるということは私もちょっと疑問に思っておるだけなんですが、じゃ重ねて確かめたいのですが、いま言ったそういう統計処理上、母集団としては本工に限定した。その結果、因果関係というものがはっきりしてきた。そうすれば当然にその結果として、社外工、下請工の方でも、そういう症状が出れば、これは因果関係ははっきりしておるという中で処理ができるのか、処理しようとしておるのか。その辺のお考えは。
  152. 桑原敬一

    桑原政府委員 疫学調査の結果どういうふうに有意性があるかという判断は、これから必要でございますが、もし仮に有意性があって、それが相当高い形で因果関係があるということになれば、しかも、その下請、臨時の方がクロム作業に従事する期間が長くて、本工と同じような形になっておれば、当然同じような扱いになる、こういうふうに思います。これは仮定の取り扱いの議論でございますが、同じ扱いになるということでございます。
  153. 田口一男

    田口委員 もう時間が来ましたから、最後に一点だけ、これは要望を含めてお伺いをするのですが、確かに、こういう問題は正確に調査をして正確な資料を得ることが必要だということは私も認めます。そういう意味で社外工、下請工を含めるべきじゃないかと強く主張しておるのですけれども、この三十五条改正の中身を見ても、     〔羽生田委員長代理退席、委員長着席〕 単に、その工程における業務による肺がんまたは上気道のがんということに限定をしている。大正八年に当時の商工省ですか農商務省ですか、何かで出した資料に出ておるように、胃がんであるとか肝臓がんであるとか、そういったものも出ておることが明らかであるのに、なぜ、ここに限定しようとしておるのか。これを、やはりクロムとの因果関係が明らかなことは十分出ておるのですから、単に肺がん、上気道のがんに限定することは実態に即していない。いままでの意見を十分くみ切っていないんじゃないかという気がいたします。ですから、たとえば肝臓がん、胃がん、こういったものについても当然に入れるべきじゃないかと思いますが、それだけお伺いをして終わりたいと思います。
  154. 桑原敬一

    桑原政府委員 三十五条の問題は、二十二年にできましてから改定をいたしておりませんものですから大作業でございまして、一年半かかってやってきたわけでございます。しかも斯界の権威を集めまして十分慎重に検討してまいりました。  いまおっしゃいました肺がん、上気道がん以外のがんにつきましては、いまの段階では医学的コンセンサスがまだ得られておりません。しかし私どもは、この問題については重要でございますので、引き続き専門家会議に十分外国の症例、資料、そういったものを御検討いただいて、引き続き御審議をいただきたい、こういうふうに思っておるわけでございます。
  155. 田口一男

    田口委員 一応終わります。
  156. 木野晴夫

    木野委員長 次に、大橋敏雄君。
  157. 大橋敏雄

    大橋委員 ことさら申し上げるまでもないのですけれども、人それぞれ目的を持って生きておるわけですが、最終目的というものは幸せな人生、幸福な生活ということであろうと思います。私、小学校のころ、よく学び、よく遊べと教えられました。そういう論法でいきますと、よく働き、よく休み、よく楽しめ、これが労働福祉の基本ではなかろうかと考えるわけです。  わが国にも確かに年休制度はあります。あるにはあるのですけれども、実際それを活用しているという人は非常に少ない。つまり事業主に気がねをしたり、あるいは日単位で、あるいはまた病気のときか、あるいは慶弔のときくらいにしか実際は使っておらない。そういうのが年休をとる理由となっているわけですね。もうこれは、これまで各委員もその都度、指摘してきた問題ではございますが、私はこれは真剣に考えなければならぬ問題だろうと思います。  国際社会では二週間連続して休暇を与えるべしというILO百三十二号条約があるわけでございますが、労働大臣はこの条約を批准するお考えをお持ちでないか、初めにお伺いしたいと思います。
  158. 石井甲二

    ○石井政府委員 お答えいたします。  先生御指摘のILO条約の百三十二号条約でございますが、内容としましては、一年の勤務につき少なくとも三労働週の有給休暇を与える。それから分割する場合も、その一は二労働週を下回らない、この二つのことを規定しております。  現在ILO条約との関係におきまして問題になりますのは労働基準法との関係でございますが、現在の基準法は一年の勤務につき六労働日でございまして、勤続一年増すごとに一労働日を加算いたしまして最高二十日ということでございます。したがいまして、現在の労働基準法とILO百三十二号条約との間にはかなりの懸隔がございまして、現在の情勢のもとではなかなか困難な情勢にあるというのが実態でございます。
  159. 大橋敏雄

    大橋委員 それではお尋ねしますが、ILOで採択した条約の中で労働時間あるいは休日、休暇、こういうもので、わが国で批准したものはありますか。
  160. 石井甲二

    ○石井政府委員 ILO条約で労働時間、休日、休暇関係の条約が幾つかございます。その中には、たとえばガラスびん工場の条約とか路面運送の条約とか、個々の産業あるいは業種によって労働時間を規制する条約がございますが、基本的なものとしまして労働時間の工業条約あるいは四十時間制条約、週休条約、有給休暇条約というのが普遍的な基本条約でございますが、いずれにおきましても現在わが国では批准をしておらないというのが現状でございます。
  161. 大橋敏雄

    大橋委員 労働大臣、聞かれましたか。わが国はまだ一本も、そういう趣旨の条約は批准していないのですね。わが国の労働者は私はかわいそうだと思います。もっと国際的に伸びていかねばならぬと思うわけですが、きのうの新聞報道によりますと国際人権規約、この批准案件を四月初旬をめどに今国会に提出して承認を図る方針だということが政府で決まったと報道されておりますが、これは間違いございませんか。
  162. 石井甲二

    ○石井政府委員 お答えいたします。  国際人権規約の批准につきましては所管が外務省でございます。現在、外務省を中心にいたしまして、この批准の可能性あるいは進め方について関係各省が鋭意検討中でございます。
  163. 大橋敏雄

    大橋委員 いま、いろいろおっしゃいましたけれども、これは労働問題でもあり文教問題でもありということで各省庁でいま検討中であるということではございますが、新聞報道によりますと、はっきりとその国会提出を決めたとあります。労働大臣もその協議の中にいらっしゃったはずですから、その結論はどうなんですか。
  164. 藤井勝志

    藤井国務大臣 お尋ねの問題でございますけれども、まだ私の方に外務大臣から正式の協議はございません。ただ、労働省の事務方の方でいろいろ外務省と接触をしておる、こういう段階でございます。
  165. 大橋敏雄

    大橋委員 先ほどから私が申し上げておりますように、わが国の労働者は、わが国政府の労働政策ないしは労働行政の貧弱なために大変不利な立場に置かれていると思うのです。  じゃ、なぜ国際人権規約をいままで承認しなかったのか、その理由をおっしゃってください。
  166. 藤井勝志

    藤井国務大臣 日本のいままでの国際人権規約の批准に対する姿勢というのは、一応日本がこれを批准したならば必ずこれを国内法に結びつけてこれが実現を確保する。外で約束したことを内では適当にやる、こういうやり方をしてないものですから、国内法との整合性という問題で相当時間をかけて関係省と協議をする、こういうことになって、国際人権規約の批准が数の点においては、よその国より相当おくれておることは事実でございますけれども、この規約の重要性は私もよく承知いたしております。したがって逐次、外務省を中心にして関係各省と密接な連絡をとって前進するように努力いたしたい、このように考えております。
  167. 大橋敏雄

    大橋委員 新聞報道によりますと「政府が、人権規約の早期批准に踏み切ったのは、当初、締約国がソ連、東欧諸国などに限定され、“絵にかいたモチ”の感があった人権規約を、その後、イギリス、西ドイツ、カナダ、北欧諸国など西側先進国がぞくぞく批准し、このままではわが国が取り残されそうな情勢となったためだ。アメリカも、昨秋署名をすませ、フランスは三月の総選挙後に国会提出の運びといわれる。」こういうことで先進諸国も続々と批准していっているわけです。やはりバスに乗りおくれては大変だというそのお気持ちが、わが国政府部内にも相当盛り上がってきたと思う。  それは喜ばしいことなのですけれども、人権規約のA規約の中には留保事項というのが認められているわけです。その報道によりますと、スト権などを含めた三つの項目を留保して提案するのだという考えのようです。たとえば公休日に対する労働者の報酬の問題、公務員を含むすべての労働者のスト権の保障、中高等教育の無償化、これを留保した上で批准の動きにいこうということのようなんですね。大臣はそういうお考えはないですか。
  168. 石井甲二

    ○石井政府委員 お答えいたします。  先ほどお答えいたしましたように現在、批准の方向につきまして各省寄り集まりまして検討中でございます。  労働省関係につきましては、先生御指摘三つの中の二つがございます。一つは、第七条(d)に規定する公の休日に対する報酬及び第八条第一項に規定する同盟罷業をする権利が問題となっておりますことは確かでございますが、これにつきましては現在検討中ということでございます。
  169. 大橋敏雄

    大橋委員 要するにわが国の労働者を本当に守ろう、労働福祉行政を推進させようとすれば、こういうところが肝心なところですから、これが抜けるようじゃしようがないと私は思うのです。いろいろ事情もあるようでございますが、これはきわめて重要な問題ですから、私のこの意のあるところを十分踏まえられて、それこそ労働行政の先頭に立っていらっしゃる大臣ですから、その意気込みで批准を推進してください。お願いします。  このような状態では対日労働観の改善もなかなか進まないのじゃないかと思うのです。来年度の予算案を見ましても労働外交の推進がうたってありますね。予算規模を見てまいりますと、かなりの額にはなっているのですけれども、よくよく調べてみると、その予算のほとんどはILO分担金に取られてしまうということじゃないですか。こういうことでは、労働省考えているような労働外交の推進はできないのじゃないか、私はこう思うのでございますが、いかがなものですか。
  170. 藤井勝志

    藤井国務大臣 労働外交の推進につきましては、石田大臣の事務引き継ぎのときにも特に問題の重要性を指摘されまして、私もそれをしかと受けとめて予算編成に取り組んだわけでございます。  御指摘のごとく金額こそ、そうたくさんございませんけれども、やはり労働外交の展開といった線についても新しく予算措置ができておりますし、あるいはレーバーアタッシェも豪州のメルボルンに一カ所設ける、こういうふうにやりますし、この労働外交についてのまさに黎明期といいますか、いよいよこれから展開するということでございまして、大いに皆さん方の御鞭達を得て私もがんばりたい、このように思っております。
  171. 大橋敏雄

    大橋委員 予算が少ないことを認められたようでございますが、そうした国際的な労働外交を展開するには、やはり予算が大事だと思うのです。いまの程度の予算では、ただ単なる名目的な、申しわけ的な動きしかできないと思います。これはもっと積極的に前進してもらいたいと思います。  時間も限られておりますので次に移りますけれども、この前、集中審議のときに積み残しになったところを少し詰めてみたいと思います。  広域延長給付制度がありますね。一体これはどういうときに適用されるのか、もう一度改めてお尋ねします。
  172. 細野正

    ○細野政府委員 お尋ねの広域延長給付制度でございますが、これは広域職業紹介地域として指定されました地域から、その地域以外のところに就職する方々に対しまして雇用保険の給付の延長をする、こういう制度でございます。
  173. 大橋敏雄

    大橋委員 その前に大事な要件があるのです。「一定地域に多数の失業者が集中して発生し、かつ、滞留した場合」でしょう。この労働省から出されている「雇用保険法の解説」の中にそう書いてあります。括弧して「(例えば、福岡県の筑豊地域等)」とまでしてありますよ。いま沖繩だとか北海道だとか北九州などは、その条件に当てはまると思うのですね。多発地域、滞留しているということについては当てはまりますね。どうですか。
  174. 細野正

    ○細野政府委員 御指摘の地域は該当いたします。
  175. 大橋敏雄

    大橋委員 さて、後が問題なんですね。「これらの失業者をその周辺地域で就職させることが困難であるため、失業者多発地域の求職者を他地域に向かって広範囲に計画的かつ強力に職業紹介を行おうとするものである。」要するに、滞留しているところから、よその地域に出ていこうという方にのみ適用させようというのでしょう。これじゃ話にならないと思うのです。現実にこの制度を適用された人がいままで何人いますか。
  176. 細野正

    ○細野政府委員 御指摘のように、この制度の実績はきわめて少ないという点はおっしゃるとおりでございます。ただし、この実情は、一つには、この制度に乗る方が広域延長制度になじまない方、たとえば季節労務者のような方がかなりおられることと、もう一つは広域延長制度を利用される方がほとんど所定地域内に就職をしておられるという実情にもよるわけでございます。
  177. 大橋敏雄

    大橋委員 大臣、広域延長給付制度というのがあるのですよ。あるのですけれども、ほとんど適用された者がいないのですよ。ごくわずかなんです。予算は余りに余っているわけですよ。いまのような大不況下、失業者が多発のとき、特にいま言ったような沖繩だとか北海道、北九州、こういうところにこそ、これを生かしてほしいと思うのですよ。だから従来の目的あるいはその内容からいくと条件に当てはまらないかもしれませんけれども、現実的にその予算を使って失業者を救って再就職させようという考えから、この制度を見直すべきだと思うのです。大事な判断だと思うのですよ。いかがですか。
  178. 藤井勝志

    藤井国務大臣 御指摘のごとく、この広域失業給付制度の活用がきわめて少ない。その事情については、ただいま局長からもいろいろお話し申し上げましたが、いずれにいたしましても私もこの制度をもう一回見直して検討をいたしたい、このように思います。
  179. 大橋敏雄

    大橋委員 活用の方向で検討していきたいということですか。ちょっと確認しておきましょう。
  180. 細野正

    ○細野政府委員 ただいま大臣からお答え申し上げましたのは、地域外に就職される方について、この制度の活用の方途を具体的に検討してまいりたい、こういうことを申し上げたわけでございます。したがいまして、前段のお尋ねのように地域内について、この制度を適用するという趣旨で大臣がお答えになったのではないわけでございます。
  181. 大橋敏雄

    大橋委員 いま日本全国不況になって再就職困難なときですよ。従来の事情とはいまは違うのですよ。史上最大の雇用不安のときですよ。そういうときですから、特例的にも、この内容を緩和して活用したらどうかと言っているわけですよ。
  182. 藤井勝志

    藤井国務大臣 私が先ほど申し上げたのは、現在の広域失業給付制度、地域外に出ていく場合に給付するというこのあり方が、利用がきわめて少ない。したがって、この制度は一遍検討してみる必要がある。そして御指摘のような方向に活用できる、財源的にもいろいろな面で可能性があれば、これまた、それを含めて検討いたしたい、こう考えます。
  183. 大橋敏雄

    大橋委員 大臣の決意を御信頼申し上げます。  もう少し時間がありますから、もう一つ聞いておきます。  定年延長の問題ですけれども、経済社会基本計画で、実は六十歳定年延長を実現しようということで進んだわけですけれども、その最終年度が五十二年度いっぱいであったわけですね。五十二年度いっぱいで六十歳定年延長を一般化しようということだったんですよ。それがまだできていないですね。できていないどころか、話にならないわけですよ。それに対して、その六十歳延長を今後具体的に、いつごろまでに実現するように努力するか、その目標は計画的に立てられるかどうかということが一つ。それからもう一つ、定年延長奨励金の活用の改善の必要性があろうと思いますので、まず最初の問題をお答えください。
  184. 藤井勝志

    藤井国務大臣 定年延長の問題とりあえず六十歳を当面の努力目標として、これが実現を図るということについては私もできるだけ努力をしなければならぬ。ただ、いつごろまでにこれをやるかという時期的な問題については、きょうのこの段階では御答弁申し上げかねる、御容赦願いたい、こう思います。
  185. 大橋敏雄

    大橋委員 あなたは今度大臣になったばかりだから、やむを得ないかもしれませんけれども、計画は五十二年度で達成しますと書いてあるんです。労働省もその意気込みで来たはずなんですよ。しかし、さっぱりそれが進まないんですね。その一つのネックはこの定年延長奨励金の使い方にあると思うのです。これがまた、ほとんど使われていないですよ。全く使われていないというのじゃなくて、きわめてこれが少ない。この金がいっぱい余っていますよ。それはなぜかといいますと、支給の対象が、定年年齢五十五歳以上に引き上げるときに事業主に、最初にその恩恵を受ける労働者についてのみ支給しますとあるんですね。いわゆる定年年齢を五十六歳以上に引き上げた場合に、最初に、その恩恵を受ける労働者についてだけ一回限り支給するということになっておるわけですよ。  たとえば、引き上げようとする最初の年に恩恵を受ける労働者が一人いるとします。そうして翌年には十名いるとします。もう一つの考えで、最初の年に十人いて次の年に一人だということになれば、これは恐らく、どちらをとるかといえば、二年目から実施したくなるという状況にある方の立場から進むんだろうと思うのです。いま説明していることがおわかりになりますか。最初の恩恵を受けられる、そのときだけ一回限り支給するということですから、恩恵を受ける労働者が一人、翌年には十人いるという事業所と、最初が十人で翌年が一人の事業所では延長しよう、実施しようとする時期が分かれてくるんではないか、こう私は思うのです。どうでしょうか。
  186. 細野正

    ○細野政府委員 定年延長の奨励金につきましては、先生御指摘のように、最初の該当者ということに限られるという点、それは御指摘のとおりでございます。しかし、その定年延長自体が、なかなかその進捗が思うようにいかないということの一番基本的な問題というのは、やはり賃金体系の問題とか、あるいは退職金の問題とか、あるいは人事管理の問題、その他のもろもろの問題があるわけでございまして、そういう意味でそういうものの改善がなかなか労使間においてそのコンセンサスが得にくいというところが一つのネックになっているわけでございますが、同時に、いま御指摘のように定年延長奨励金そのものについても、一つにはこれがよく知られていないという側面がございまして、私どももその周知徹底が至っていない点について反省をいたしたわけでございまして、今後とも、その周知徹底を図りますとともに、その今後の推移を見ながら、先生御指摘のような制度上のいろいろな問題点もあるかと思われますので、今後研究をさせていただきたい、こういうふうに考えておるわけでございます。
  187. 大橋敏雄

    大橋委員 定年延長の奨励金の利用が実績として大変少ないわけです。だから、やはり私はここに問題があると指摘するのです。必ずあると思います。ですから、この際、できれば支給期間を三年程度、一年きりだけではなくて、三年程度延長して、この三年間は事業所の負担を軽減してあげるというようなことで検討をされるならば、これは恐らく定年延長の促進につながる、私はこのように確信するのですけれども、これはいかがなもんですかね。
  188. 藤井勝志

    藤井国務大臣 お互い寿命が延びたきょう今日、定年延長の問題は、私は広い意味において高齢者の雇用対策としても非常に大切な政策の柱だと思うのです。ただ問題は、いま安定局長もお答えをいたしましたように、やはり日本の年功序列的な賃金体系あるいは退職金のあり方、こういったことが、定年延長奨励金のいろいろ普及が徹底してない、こういう問題もさることながら、むしろいま申しましたような年功序列的な賃金体系そのほかが、なかなか企業が延長に踏み切れない環境ではないか。したがって、この問題は、労使の自主的な話し合い、こういった環境づくりが相伴わなければまいりませんから、労働省として、労働大臣としても一生懸命に努力いたしますけれども、そのような労使関係の理解というもの、環境づくりというもの、こういうものにやはり重点も置きながら全体的に前進をするように努力をいたしたい、このように考えます。
  189. 大橋敏雄

    大橋委員 年功序列型賃金体系云々という長々とした説明があったわけです。そういうことは十分承知の上で定年延長の促進を図ろうと考え出されたのが定年延長奨励金のことではないかと私は思うのです。だから、奨励金の使い方が、実態的にはその実績が上がってこないわけですから、欠陥があるに決まっているわけです。だから私はそこのところを、せっかくつくった奨励金制度だ、その恩恵を受けて事業主が負担を少しでも軽く受けながら、その目的である定年延長が促進していく、図っていくということになれば、りっぱなことではないか。だから、この定年延長奨励金の活用の仕方、これは検討に値するのじゃないですかと、こう言っているのです。そこをもう一度。
  190. 細野正

    ○細野政府委員 定年延長奨励金につきましては、来年度予算におきまして五割アップというふうな大幅なアップをいたしまして、この制度が利用しやすいような改善を図っているわけでありまして、いろいろ御指摘の問題点もあろうかと思うのですが、一挙にあれもこれもというわけにまいりませんので、今後、先ほど申しましたように、実績の推移の中でまた検討させていただきたい、こういうふうに考えておるわけでございます。
  191. 大橋敏雄

    大橋委員 時間が参りましたので、草川委員と交代いたします。
  192. 木野晴夫

    木野委員長 次に、草川昭三君。
  193. 草川昭三

    草川委員 草川でございます。  最初に、経済企画庁の方お見えになっておられますか。——経済企画庁の方に、実は先回、衆議院の予算委員会で公明党の矢野書記長が経済成長率の問題で質問をした中で、ことしの春闘相場というものが一体どうなるのだろうかという質問があったわけであります。私、議事録を持ってまいりましたけれども、正確に申し上げますと、そのときに矢野委員が「くどいようですけれども、その見通しは、昨年のベースアップの実績に比べて高い基準で想定されたのか、あるいは低い基準で想定されたのか。上なのか下なのかということです。その辺もう一遍ちょっと言ってみてください。」宮澤国務大臣が「少し下回っております。」これが非常に新聞なんかでもベースアップについては下回るのではないだろうかという表現で報道されたわけですが、たまたま二月四日の新聞を見ますと、私そのまま申し上げますけれども「春闘相場言及せず 宮沢発言で経企庁釈明 経済企画庁の宮崎調整局長は三日夕記者会見し、ことしの春闘相場について宮沢経企庁長官が同日の衆議院予算委員会で「昨年より下回る」と述べた、との報道について「その事実はない」と釈明した。」ということがあるわけでございますが、そのことは事実かどうか、お聞かせ願いたいと思うのです。
  194. 澤野潤

    ○澤野政府委員 きょう宮崎調整局長はちょうど物価問題等特別委員会に出ておりますので、私からお答え申し上げます。  二月三日の衆議院予算委員会における矢野委員に対します長官の発言は、いま草川先生おっしゃいましたように「少し下回っております。」と申したわけでございますが、その「少し下回っております。」というのは、矢野委員がお話しになりました「くどいようですけれども、その見通しは、」ということに対して長官がお答えになったものでございまして、「その見通し」と申しますのは、その前に宮澤長官がお答えになっております終わりから三行目ぐらいの「一人当たりの所得でございますが、私ども一応九・四ぐらいではないかというふうに置いております。」ということでございまして、一人当たりの雇用者所得、これが五十三年度の見通しにおきましては大体九・四%程度と見ておるわけでございまして、これが一部の報道機関等で少し不正確に報道されたというようなことでございますが、その点につきまして宮崎調整局長から、はっきりとその見通しというものについて説明いたしたわけでございまして、決して長官のおっしゃったことを否定したわけではございません。
  195. 草川昭三

    草川委員 私、これは常識的には明らかに、矢野委員が昨年のベースアップの実績に比べて高い基準で想定されたかどうかという質問をして、少し下回ると言っておるわけです。そういう御答弁があったわけですよ。いま言われましたのは、その一つ前の大臣の発言で雇用者一人当たり九・四ぐらいではないだろうか、こう言ったわけですから、こじつけだと思うわけです。ですから経済企画庁というのは、予算委員会のベースアップの問題についての質問、ああいう答弁、あれは関係ないんだよということを簡単に、その日の晩に、少なくとも質疑応答を否定できるような大変権限持った役所かどうか。非常に子供っぽい質問ですけれども、そういうことができるのかどうか。私は非常に強い不満があるわけです。こういう質問をしたって、できない、そういうことではないという御答弁になると思うのですけれども、私は非常に不満があるのです。ですから、ここでこういう質問をしたいと思うのです。  御存じのとおり雇用者一人当たりの伸び率とベースアップ率というのは一種の相関関係があると私、思うのです。五十年度の場合は、雇用者一人当たりの伸び率は一三・二、ベースアップは一三・一で、ほぼ同じであります。五十一年度は雇用者一人当たりの伸びは一一・一と見るのですが、ベアは八・八で、ちょっと下回るわけです。五十二年度はこれは最終的には決まっておりませんが、一〇・七が雇用者一人当たりの伸びでベースアップ率は八・八、多少〇・一%ぐらいの違いはありますがベアは八・八。そこで、五十三年度は九・五か、あるいは九・四と長官は言っておみえになるわけでございますが、九・四とするならば五十三年のベアはどうなんですか。やはり一〇・七から九・五となったのですから下がると思うのですが、下がらぬのですか。それとも上がるのですか。いま、おたくの方は否定されたわけですから、上がるということもあり得るわけですか。
  196. 澤野潤

    ○澤野政府委員 お答え申し上げます。  政府の経済見通しにおきましては、春闘の賃上げ率は全く想定いたしておりません。したがいまして、上がるとか下がるとかという問題ではなしに、むしろ雇用者所得と申しますのは、国民所得の計算上、統計上の問題でございまして、この雇用者所得といわゆる賃金、俸給に値します所定内賃金というものの関係は、長官が予算委員会でよく御説明になりましたように、雇用者所得を一〇〇にいたしますと大体五〇%強ということでございます。そういうことで一応雇用者所得というものは、消費者物価とか実質の国民総生産の伸び率とか、また労働力の需給関係といったようなものからマクロ的に計算しておりまして、春闘のベースアップ等とは直接関連させておりません。したがいまして、もし関連があるとすれば、先ほど申しました所定内賃金というものが雇用者所得の五〇%強という点におきまして関連があるという程度でございまして、直接の関係はございませんので、上がるとか下がるとかということを申し上げる立場にはございません。  それからちょっと、私どもの方の統計によりますと、五十年度におきます一人当たりの雇用者所得は一三・七ということになっております。それから、五十一年度は一一・二、五十二年度の実績見通しで一〇・五で、これが五十三年度におきましては九・四に下がると申し上げたのが長官の真意でございますので、御了承をお願いいたしたいと思います。
  197. 草川昭三

    草川委員 いま、この数字の若干の食い違いが出ておりますけれども、それはおたくの方の資料の方が正しいと思うのです。私の方は金子美雄さんのセンターの資料で物を申し上げておりますから、多少の違いがあると思うので、それはおたくの方がいいと思うのですけれども雇用者一人当たりの伸び率とベースアップとの相関関係は大体五〇%から五四%だ、こういう関係で、それはそれでいいと思うのです。ですから、それだからこそ逆に、労働省なんかが調べております。労働省労政局調べで賃上げ率というものが出るわけでございますが、これは結果として出てくるわけでございますから、どうしたって全く関係のない数字ではなくて非常に重要な相関関係があると私は思うのです。ただ一定の比率で合うというわけじゃないでしょう。  大企業の場合の政策的な賃金の決定ということと、雇用者一人当たりの伸び率の想定というものは政策的に決まる場合がありますから、毎年一定の相関関係があるとは思いませんけれども、上がるか下がるかという質問に対しては、当然常識的に見て、ことしは冷え込んでおるから下がるであろうということを宮澤国務大臣は言われたと私は思うのです。「少し下回っております。」という答弁があったと思うのです。だから一般的にはマスコミは、新聞社は、ベアについては下がるのではないだろうかという報道をしたと思うのですよ。だから私は、上がるとか下がるとか関係ないと言われるけれども、関係があると思うのです。事実、関係があるからこそ、わざわざ経済企画庁が否定の談話をしたと私は思うのです。そうでなければ、なぜこういう談話をされたのですか。談話をわざわざ発表された真の理由をお聞かせ願いたいと思うのです。
  198. 澤野潤

    ○澤野政府委員 先ほど申しましたように、長官が予算委員会でお答えになりましたことにつきまして、一部報道機関で不正確な報道がございましたので、その不正確な報道を正確に直すために宮崎調整局長が正確にレクチュアをされたのだというのが真意でございます。
  199. 草川昭三

    草川委員 じゃ、ちょっとくどいようですけれどももう一回、経済企画庁としてはどうお考えになるかということをお聞かせ願いたいのです。ベースアップ率の統計というのは雇用者一人当たりの伸び率と五〇から五四の関係があると言われたのだけれども、経済の見通しなりあるいは今後の発展のために全く興味のない数字ですかどうですか、お聞かせ願いたいと思います。
  200. 澤野潤

    ○澤野政府委員 興味があるとかないとかという点について、ちょっと私お答えする立場にないのでございますけれども、関連といたしましては、雇用者所得というものが一〇〇である場合には所定内賃金が五〇強でございまして、五〇強の影響は出てまいるわけでございますし、これが個人所得の中では、これらの雇用者所得と申しますものが約六〇%でございますから、全体の中では三割強というものが個人所得と所定内給与との関係があるということでございまして、そういうベースアップというものが先ほど先生がおっしゃいましたように結果的に出てまいりますもので、これはあらかじめ想定いたして経済見通しを作成しておりませんので、そういう面におきましてはベースアップというものと所定内給与、それから雇用者所得というものについて、見通しをつくる段階においては関係ないというふうに申し上げておるわけでございます。
  201. 草川昭三

    草川委員 いずれにいたしましても、きょうは長官もお見えになっておられぬわけですし、宮崎局長もお見えになっておられないわけですから、これ以上論議はいたしませんけれども、私は一般論的な常識的な答弁であり、あるいは報道機関も常識的な報道をしたと思うのです。それをわざわざ春闘相場言及せずというような否定を、なぜ経済企画庁がするのか。いまは不正確だという御答弁でございましたけれども、私は不正確ではないと思うのですね。実際のあり方ではなかったのか、こう思うわけです。しかし、すれ違いのことでございますので、これで終わりますから、どうぞこれで結構でございます。御退席を願いたいと思うのです。  そこで今度はひとつ、いまも賃上げという問題が出てきたわけでございますけれども、個人消費の拡大というのが非常にいま話題になっておるわけでございますし、予算委員会等でも個人消費の伸びがどうなるのだろうかということが中心であったのではないだろうか、こう思います。また、いま所得減税という問題が具体的な問題になってきておるわけでございますが、ひとつ労働大臣に、賃上げとか所得減税というものは、個人消費の拡大だとか、ひいては景気の回復に役立つのかどうか。どうお考えになられるか、ひとつお聞かせ願いたいと思うのです。
  202. 藤井勝志

    藤井国務大臣 ふところぐあいがよくなるということは、やはり財布が軽いよりも物を買ってみようという意欲が増してくる、これを私は否定するものではございません。私は自然の物の考え方だと思うのですが、ただ現在における経済の状況を踏まえて考えてみますと、長い長い不況の現状が続いておる。先々が明るい方向へいかなければ財布のひもが緩まない、こういう相関関係も否定することはできない。そこら辺で景気の回復を優先させよう。このためには公共事業を積極的にやっていこうということも一つの考えです。鶏と卵のような関係でございますから、なかなかそこら辺はむずかしい一つの判断だ、見識の分かれるところではないかというふうに思うわけでございまして、以上のようなことで私はお答えにかえたいと思います。
  203. 草川昭三

    草川委員 大臣所信表明にはなかったわけでございますから、お聞きしたわけでございますが、いま言われるとおりに、やはり一般国民の方々の所得をふやすという中で景気を刺激していかなければ、基本的に景気の回復というのは私はないと思うのです。御存じのとおりに最近、初任給の据え置きだとか、それから過剰雇用の問題だとか、あるいは定年制の引き下げの問題だとか、いわゆる労働需要の面から考えますと暗い話が多いのです。私は、そういうことになりますと、ますます景気というのは冷え込むのではないだろうかと思うがゆえに、いまの大臣の御見解をいただいたわけでございます。ひとつ労使の関係に介入するという立場ではなくて、労政としては、いろいろなあらゆる機会にオーバーな雰囲気をなくするように御活躍を願いたい、こういうように思うわけであります。これは要望でございます。  続きまして、雇用不安の問題が具体的に出ておるわけでございますが、一つの見方は、三月の失業者は史上最高の百三十万から百五十万人台に上るのではないだろうかという三月危機を懸念する空気というのは一段と強くなるというのも事実だと思うのです。ところが一方、雇用情勢が非常に深刻であるけれども、余り短絡的に景気の落ち込みを過大に失業増に結びつけるのは問題がある。なぜなら製造業の常用雇用者指数というのは前年度に比べて下がっていくのだけれども、総理府統計の全産業の就業者数というのは伸びていくから、そんなに短絡的に考えるなという意見が労働省の中にも一部あるのではないだろうか、こう思うのです。そこでひとつ大臣として、これからの当面する労働行政は、どのようなところに視点を当てられて行政を進められるのか、お聞かせ願いたいと思うのです。
  204. 藤井勝志

    藤井国務大臣 現在の雇用情勢は一口に申しますと非常に厳しい。と申しますのは、産業構造の変化に伴って、現在いろいろ離職者の問題が当面の課題でございますと同時に、円高によって輸出関連の中小企業も非常に苦境に立っておる、こういう点から考えますと、去年の三月末現在の失業者は百二十七万人、こういうふうに統計は示しております。私は、それよりもことしの場合は一層厳しい雇用情勢ということを踏まえて、これが対策に万全を期さなければならぬ、このように思います。
  205. 草川昭三

    草川委員 大臣は、いま非常に厳しいという立場から行政を進められるということを申されたので、ぜひ私はその厳しい立場の上で行政指導をやっていただきたいと思いますし、なお私が先ほど総理府統計の全産業における就業者数が伸びておるということを申し上げたわけでございますが、こちらの方は、御存じのとおり女性だとか臨時だとか日雇いがふえておる数字があるわけでございますし、しかも雇用者数の伸びを産業別に見ましても、卸・小売、金融・保険、不動産、サービス業で増加しておるわけですから、直ちに製造業の失業者が移動するということについては困難だと思うのです。  また、これは今度、新しく職業訓練の問題で別な機会があると思うので申し上げておきたいと思うのですが、史上最大の失業者になるであろうという展望のもとに、いろいろな施策というのをやられると思うのでございますが、今度の予算委員会の中でも問題になっておりますけれども、国として公共事業を増加をするということで、失業者の救済なり雇用というものを新しく吸収するということが盛んに言われておるわけです。当然また私どもも、それはそれで大いにやっていただきたいという立場でございますけれども、問題は公共事業の直接の労働需要量をどう見るかという問題が非常に重要な問題だと思うのです。  これは予算委員会でいろいろと具体的な問題提起が出て、最終的には建設省は公共事業によって五万人ふえるんだ、日本の国全体で十七万人の雇用増が積み重なっていく、こうなるんだということが建設大臣から新聞報道で出たわけです。私あれを見て非常に意外に思ったんですね。その前のときの予算委員会では、たしか社会党の多賀谷書記長が御質問なされて労働省としては具体的な数字を持ってないというふうな御答弁があって問題が出たわけでございますね。だけれども今度は建設大臣の方から、大蔵省が持っております公共事業施行推進本部がまとめた資料では十七万人アップで二百二十二万人、こう予定をしておる、こういうことになったわけです。本来ならば、これは労働省が持っておるわけですからね、この程度の資料ならば。できたら労働省として事前に、こういうような数字はあるんだというぐらいのことを言っておかないと、雇用を守る、雇用をつくり出すというんですか、日本の国の一番大切なもとである労働省の態度として私は非常に残念な気がしてならなかったわけであります。  私は、きょうは建設省の方も大蔵省の方も呼んでおりませんので問題があるわけでございますけれども、しかし、あの資料というのは、本当に公共投資、今回の金額で二百二十二万人の雇用というものが確保できるかどうか、かなり疑問なんです。それはどういうことかといいますと、あの資料の積算というのは、過去の公共投資の発注の部分的な、ミクロ的な一つの積算を根拠にしたということ、これの積み重ねと、いろいろな関連指数によって、ああいう数字になったわけでございますが、たとえば今回のようにセメントの材料が上がってくる、あるいは建設用の棒鋼が一万円もトン当たり上がってくると、材料代の方が高くなりますと人件費の方が圧迫をされるという数字になってくるわけであります。ですから私は、いま雇用というものが非常に国民的に関心を持たれておるような段階の中で、ああいう数字が出るということについては、労働省の専門的な立場からいうと不正確じゃないだろうかという一種の危惧があるわけでございますが、私のこういう考え方がいいのかどうか、非常に間違っておるのかどうか。これは大臣でなくて結構ですから、ひとつ専門的な立場から御答弁を願いたいと思います。
  206. 細野正

    ○細野政府委員 公共事業による失業者等の吸収の数というのは、先生いま御指摘のようにいろいろな問題がありまして、これをあらかじめ手回しよく計算するということは非常に困難だという点は先生御指摘のとおりだというふうに考えます。
  207. 草川昭三

    草川委員 そこで、むずかしいということですけれども、いずれは労働省の方でも、具体的な職種別だとかあるいは地域別だとかあるいは年齢別的な有効求人倍率なんかでもわかるわけでございますし、ある程度の情勢を判断して公共投資、たとえば橋だとか道路だとか学校だとかいろいろな分類があると思うのですけれども、そういうものに応ずる職種別な労働力というんですか、こういうようなものを出せるように、ぜひ要望をしておきたいと思うのです。  また、公共事業を今後具体的に実施する場合に、特に地域別の雇用失業情勢に応じて配分をするように、私は労働省がイニシアチブを握ってやるべきだと思うのですけれども、その点について御意見を聞かせていただきたいと思うのです。
  208. 藤井勝志

    藤井国務大臣 公共事業に失業者を吸収するということは、法律に定められたいわゆる吸収率制度を活用して、いよいよ当面の厳しい雇用情勢にも対応しなければならぬというので、実は公共事業施行対策本部におきまして、きのう事務次官会議を開き、きょうは実は閣議がございまして、私の方から発言をいたしまして、各都道府県が要請をする公共事業の実施に当たりましては、失業者をこれに吸収をするように特別の配慮を関係官庁においてやってもらいたい。同時に、労働省といたしましても失業多発地帯に対しては地区の指定を追加する。そして造船関係で非常に不況な地域、そのほか特定不況業種あたりで失業者がたくさん出るところは随時、地区の指定を拡大をしていく。こういうことによって失業者の吸収率制度を積極的に活用していく。公共事業に失業者を吸収するという方向に努力をするということに、きょうも話をいたしたわけでございます。
  209. 草川昭三

    草川委員 これは各地域の実情によって違います。繊維の失業者の多いところは公共投資というわけにもまいりませんでしょうし、あるいは造船という場合なら、またそれぞれいろいろな吸収の仕方ということも考えられるでしょうし、私はどちらかといいますと労働省というのは、いままで失業対策事業というのは過去あったわけですけれども、これを余り高く評価してないと思うのですね。ですから地域ごとに予算を投入をして、そこで雇用を吸収するという施策については非常に憶病のような気がしてなりません。そこで、もういまや、まさしく時代は変わったわけでございますから、アメリカだとかヨーロッパなんかでやっておるように、その地域に応ずる仕事というものを具体的に労働省がつくり出して、指示をして、関係省庁に、こういう仕事をひとつつくったらどうなんだろうというぐらいに積極的なイニシアチブを私は握っていただきたいと思うのです。  そういう点で労働省の中に、いま雇用問題についての臨時雇用対策本部というのがあるわけですね。この程度のことでは不十分だと私は思うので、労働大臣が建設だとか通産だとか国土庁だとか関係省庁に呼びかけて、内閣にいわゆる雇用問題についての関係閣僚会議を設けて、そこで労働大臣が積極的に、あなたのところではこういう仕事だ、あるいはアメリカのカーター大統領じゃないんだけれども、若年労働力なら山で環境整備のために何々部隊をつくれだとか、あるいは中高年齢の多いところではしかじかかくかくだとか、あるいは港湾が非常に汚れておるならば港湾を清掃するような大型プロジェクトをつくれとかいうくらいの、積極的な強力な、閣僚会議なんかの議長になって、労働省が強引に、他の省庁より一段高いところでやらないと、日本の基本的な産業構造が変わってきておるわけです。また変えなければ対応できないわけです。しかも日本の一貫した高校から大学という教育の新規労働力を押し出す面からいったって重化学工業的な一つのラインになっておるわけですから、私はそういう意味で、関係閣僚会議なんかをつくれという意見についての基本的な労働大臣の見解を賜りたいと思うわけであります。
  210. 藤井勝志

    藤井国務大臣 労働大臣に対して時節柄、激励の気持ちを込めた御提言がございましたが、いま内閣には雇用対策の閣僚懇談会というのがございます。これが必要に応じて機能を発揮することによって、御提言の線は事実上可能だと思うのでありますが、ただ一つ私がここに申し上げたいことは、アメリカあたりは各大統領が仕事をする場合、法律を一つ一つつくることによって事業が施行される、こういう仕組みに制度上なっておりまして、わが方はそのようなことは必要がなくて、雇用安定資金制度であるとか、そのほかのもろもろの対策雇用対策法に基づくいろいろ政令によって、これが雇用対策の助成をやっていく、対策をやっていくということになっております。  私たちが一つの具体的な失業対策事業に失業者を結びつけるということを、なぜ消極的にならざるを得ないか、賛成しかねるかといいますと、過去において、すでに苦い経験をしておりまして、そのような失業対策事業にこれを結びつけるということになれば、再就職の機会が失われて、そこに停滞してしまう。現在、かつて行われました失業対策事業に、もうすでに十九年も滞留をしている、こういう状態でございまして、かつて戦後間もないころ経済安定本部がございました。その時分は、いま御指摘のように、これが計画を立てまして、そしてそれを事業所管庁に張りつける、こういうことに制度がなっておりましたが、これでは非常に能率がよくない。公共事業の効率が非常に悪いということで、この制度は途中からなくなったわけでございまして、現在やはり公共事業をやりながら失業者の吸収率制度というもので運営をしていく。そして、できるだけ職業訓練をやって再就職、こういう方向労働者が結びつく。常用雇用というのがやはり労働者の幸せの道であって、いつまでも失業救済事業にへばりつかなければ前進ができないような結果を生んでおる過去の制度というのは、われわれは反省しなければならぬではないか、このように思うわけでございます。
  211. 草川昭三

    草川委員 いま大臣から御答弁があったわけでございますけれども、過去の失対事業の失敗ということ、あるいは苦い経験だという言葉が出たわけですが、この問題はちょっとまた重要な御答弁だと私は思うんですよ。それはきょうは本筋でないので、なぜそういうことになったのかというのは、一言で言うならば失業者がふえたら金だけ渡しておこうじゃないか。おまえさんたちはこの金で、安い一日の日当で何か適当に、とにかく仕事をやっておきなさいという一種の切り捨て政策だったと私は思うんですよ。あるいは職業安定所でも、私この前も先輩の大橋議員と山谷へ朝早く五時から行ってまいりました。まさしく、あそこの実態というものは、仕事がなくて国からのいろいろな職業紹介があるわけでございますけれども、勇躍意気込んで仕事をやるという雰囲気じゃないのですよね。まさしくあれは、私いま切り捨て政策だと言いましたけれども、劣等感を感じさせるような、そういう関門を何回かくぐらなければ仕事にありつけないというような雰囲気になっておるわけです。  ヨーロッパとかアメリカというのはそういうものじゃないと私は思うんですね。もちろん日本のような終身雇用ではなくて、レイオフ制度ということも非常にドライな形で行われますし、あるいは労働組合の組織形態も日本とは違いますから、産業別に非常にめんどうを見るというようなところがありますから、わりとからっとした明るいところがあるわけでございますが、日本のように安定所の門をくぐって失業保険をもらう、雇用保険をもらう、非常にいやでいやでしようがない、まさしく人生の落後者だ、失業という惨めな気持ちに一たん浸らないと雇用保険というのはもらえないような雰囲気になっておるわけですね。これは大臣、そういう実情については御存じないと思うんですよ。だから私は、これから失業になった人の気持ちになってやれば、たまたま、いま大臣お話しになりましたけれども、これからは違った意味失業ということを考えていくならば、大胆なひとつ施策ということをやる必要があるんじゃないだろうか。そして仕事がなければ雇用保険で、大体そういう割り切ったやり方があると私は思うんです。大体いまの労働省というのは西ドイツ方式でしょう。皆さん方のやり方というのは、いろいろな意味で西ドイツがすべての模範になっておるわけですよ。だったら西ドイツの安定所なんかへ行ったって日本のような安定所と違うでしょう。だから、少なくとも西ドイツの労働者雇用保険を受け取れるような雰囲気で行政をやってもらいたいと思うんですよ。  そうでないと、いろいろと何とか、この前の若年失業者会議というので事務次官も行っておみえになったようですが、日本の苦い失業対策だということを言われておりますが、いまのまま放置をしておったら、相変わらずああいう切り捨て政策になると思うんですよ。だったら、あと何がやれるかといったら中途半端な職業訓練しかないのですよ、雇用を吸収するというなら。あとは公共投資をやってくださいよ。公共投資をやれば、どういう形で救済されるかといえば、結局、社外工、臨時工、日雇いですよ、道路工事にしても建設工事にしても。そんなまともな常用労働者がふえるという形にならぬわけですよ、いまの公共投資の増加ということは。数の上ではそれは十万人か十七万人ふえるかもわかりませんよ。だけれども、いま大臣が言われたように本当に失業がふえる、雇用を拡大する。しかもあるべきは常用労働者をふやすというなら、私は基本的な考え方を変えていただかないと、いま言われたような方向にはならぬと思うのです。これは私の意見ですけれどもね。一遍ここは大臣なり局長なり私の意見が間違っておるのかどうか、お聞かせ願いたいと思います。
  212. 細野正

    ○細野政府委員 失業者の吸収については、いろいろな考え方があると思うのでございますが、現在の政府がとっております雇用に対処する基本的な考え方というのは、やはり有効需要を拡大することによって民間に常用就職をふやしていこうということを基本にしておるわけであります。その手段として公共事業というものが有力な手段になっているわけであります。したがいまして、公共事業に直接吸収することを中心に物を考えているわけではないわけでございます。  したがって、先生の御指摘のように、公共事業に直接吸収することを中心に考えておれば、その雇用形態というのは公共事業の性格上、常用的な労働者がふえるということは比較的少ないという御指摘も確かに当たるわけでございますが、いま考えておりますのは、民間の有効需要全体を拡大して、それによって民間に雇用を拡大していきたい、こういう考え方に立っておるわけでございまして、そういう手段として公共事業というものを使っていきたい。  その場合に、せっかく公共事業をやるわけでございますから、公共事業の場も失業者の吸収というものにできるだけ活用してまいりたい。そういう角度から、先ほど来、大臣がお話し申し上げておりますように、たとえば地域の配分等についても配慮いたしますし、それから実際に行われる場合には、その吸収についても吸収率等を活用して、できるだけ失業者が吸収されるように図ってまいりたい。  しかし、基本はあくまでも先ほど来申し上げておりますように、民間の景気が立ち直って民間に常用雇用が拡大されることである。その補助的な手段として私どもとしては、たとえば職業訓練によって失業者等に、起きてくる民間常用雇用に適するような訓練をやってまいりたい。あるいは民間で常用雇用に採用していただく場合には、これについて中高年齢者については賃金の三分の二、二分の一というようなものを助成をしていきたい。そういういろいろな補助手段を通じて、起きつつある民間の雇用需要というものにマッチするように対処してまいりたい。こういう考え方で現在の政府の全体としての雇用対策が成り立っておる、こういうふうに考えておるわけでございます。
  213. 草川昭三

    草川委員 時間がないので私余り触れませんが、たとえばいま言われた民間で雇用状況をよくしようということだとすると、さしあたり第三次産業だと思うのですよ。いま実際、民間で製造業というのは余りありませんから、第三次産業にどうしても向けざるを得ない。ところが第三次産業というのは小売店だとか卸だとか、その他のサービス産業たくさんありますけれども、大体私どもがつかんでおる範囲内でしぼっていきますと、スーパーだとかそういうところしか実際ないのですよ。だから非常に少ないわけですよ。そこらになりますと賃金がうんと少ない。だから実際上の雇用がそこでは吸収できない。  そこで、この前ある方とお話をしていたら、第三次産業というよりも実際いま一番仕事があるのは外食産業だぞ、外で飯をするラーメン屋だとか二十四時間ドーナツを売るような、そういうところしかないんだよ。しかし、そういうところの職業訓練まで考えていないのですよ、いまの労働者というのは。外食産業までのところには。相変わらず左官屋さんだとか庭師さんだとか、そんな話なんですよ。私はそれではだめだと思うのですが、きょうはまた職業の訓練の話はやめておきますから、次の機会でそれはやらせていただくということにして、ひとつぜひ私どもが申し上げたような形で、本当に新しい立場で失業吸収ということを考えていただきたいと思うわけです。  そこで今度、話を変えましてILO問題で少し御質問をしたいと思うのですが、御存じのとおり、昨年アメリカがILOを脱退をいたしました。ILOは、いまさら言うまでもございませんけれども、国際的に労働者の経済的、社会的地位の向上に果たした役割りは大きいと思うのですが、政治的過ぎるだとか、政、労、使、三者の構成の崩れがあるとかということで出たわけでございますけれども、私はILOの重要性から考えて、アメリカに復帰をするように日本は全力を挙げるべきではないだろうか、こう思っております。しかし、それが短期的に復帰できる見通しがあるのかないのか。いろんな問題もありますけれども、ひとつ大臣に、アメリカの復帰の見通しについての所見を賜りたいと思うのです。
  214. 藤井勝志

    藤井国務大臣 アメリカがILOから脱退をいたしました事情につきましては、すでに御案内だと思いますけれども、政治的な偏向ということや、そのほかいろんな事情でアメリカはやむを得ず脱退をいたしましたけれども、脱退に当たって条件をつけられて、自分たちが希望するような方向にILOの大勢が変わるならば復帰する、こういうことがございますから、われわれとしては、何といってもILOができるときの創立者としての強力な推進者でもあったし、同時にまた、自由陣営の実力者でございますから、総会の場において、あるいは理事会の場において、アメリカがILOに復帰するように日本としては極力努力をしなければならぬ、このように考えておりますが、いまのところ、いつごろILOにアメリカが復帰してもらえるかということの目安はまだ立っておりません。
  215. 草川昭三

    草川委員 そこで、いつ復帰できるかという目安は全く立っていないと思うのですよ。それだけにILOを脱退したために、大体あれは予算的にはアメリカというのはかなりの、四分の一くらいの分担をしておったのではないかと私は思うのですけれども、大幅に予算に穴があいたわけです。何か話によりますと一九七八年と七九年で四千二百三十万ドルの穴があいたというような数字が出ておりますし、昨年の十一月の理事会で、それだけ困るわけですから、事業を縮小しようということと、それから加盟国の寄付金でこの穴を埋めようじゃないかということが理事会で論議になったようでございます。さらに、そういう上に立った決定から、各国から、すでに十四カ国だそうですか、二百三十万ドルの寄付金がベルギーだとかノルウェーだとかスウェーデンから寄せられておる、あるいはオランダなんかは、そのほかにさらに四百万ドル、フランスも二百万ドルというように寄付を決めておるようですが、日本はこのことについて反対をしておるのですか、賛成をしてみえるのですか、お聞かせ願いたいと思います。
  216. 石井甲二

    ○石井政府委員 お答えいたします。  アメリカの脱退につきまして、それに伴いましてILOの分担金が二五%、すなわちアメリカが二五%の分担金を出しておったわけでありますが、これが収入不足となったわけでございます。現在ILOにおきまして理事会を中心に、これをどうするか、すなわち、できるだけ予算の削減をもちまして今後のILOの運営をやっていこうという方向で検討をしている最中でございます。  ところで、現在わが国としましては、アメリカが脱退した分担金の減額というものを踏まえまして、できるだけILOの運営を収支均衡の原則に近い努力をしてもらいたいという主張をしておるわけでございますが、先ほど先生が御指摘になりましたように現在、任意拠出金ということ、すなわちボランタリーによりまして各国に、実際のアメリカの分担金の削減分とおりではございませんが、ある程度の金額をそこに期待をしておるというのが事実でございます。現実にも、御指摘のように幾つかの国が、現在の正式の任意拠出の状況を私どもの把握した結果によりますと百七十二万ドルということがございますが、さらにこれに追加いたしまして各国が今後対応するだろうと思います。政府といたしましては、さきに申し上げましたような考え方を踏まえながら、各加盟国なかんずく西欧の主要先進諸国の状況等を慎重に見きわめた上で、わが国独自の立場で検討を加えてまいりたいということでございます。
  217. 草川昭三

    草川委員 もっと具体的にひとつ御答弁願いたいのですが、では日本政府としては、減額というのですか。収支均衡してくれということは、事業内容を小さくしてでもいいから、まあおまえ適当にやってくれよと、こういうことなんですか。事業内容を縮小しろということを認めるわけですか。
  218. 石井甲二

    ○石井政府委員 お答えいたします。  ILOの活動につきましては従来の長い歴史がございます。また、ILOの活動自体が労働関係における国際的な進展につきまして大きな役割りを果たしておることは事実でございます。ただ、現実にアメリカが脱退したことに伴いまして、予算あるいは実行の資金が減少することは確かでございます。したがいまして、ILOの本来の活動というものをここで縮小するということを主張しているわけではございませんで、むしろいままでのILOの、たとえば人員につきましてもあるいは事業についても、もう一回見直しをいたしまして、本当に適正な状態をこの際つくり上げるべきだというのが私どもの主張でございまして、決してILOが本来の役割りを放棄する、あるいはそれを過小評価するという考え方は全くとっておらないところでございます。
  219. 草川昭三

    草川委員 いまヨーロッパの先進国の態度も見て対処をしたいということをおっしゃられたわけですが、少なくともオランダだとかフランスは決めたわけでしょう。寄付をするということを、任意拠出をするということを決めておるわけですね。だから、日本の政府も、もうそろそろ対応が迫られておると思うのですが、その日本政府としての、またあるいは労働省として、どう対処をされるのか。もう出さぬと突っぱねるのかあるいは出す方向で検討しておるのか、その点の見解を賜りたいと思います。
  220. 石井甲二

    ○石井政府委員 ILOの今後に対しまして日本政府が対処する、すなわち特に分担金についてどうするかという問題につきましては、やはり西欧の特に志を同じくする各国の情勢を見ながら、これに対処しようという考え方でございまして、決してこれを全く出さないという方向で検討しておるというわけではございません。
  221. 草川昭三

    草川委員 では、もう一回ちょっとお聞きしますけれども、いわゆる全く出さないということではないという答弁がいま出たわけでございますけれども、何か出すことについて反対だと受けとめられておるわけですよね、いま、われわれが聞いておる範囲では。では反対はしていないわけですね。
  222. 石井甲二

    ○石井政府委員 お答えいたします。  全く出さないという前提で物を考えているわけではございませんで、したがいまして反対だということを前提にして現在検討しているということではございません。
  223. 草川昭三

    草川委員 これは要望になりますけれども、これだけ、いま国際的な労働事情というのは非常に重要な問題点になっておるわけですから、ひとつ前向きの形でぜひ対処をしていただきたいと思うわけです。  そこで、今度はひとつ国内に移るわけでございますけれども、御存じのとおりにILOの東京支局というのがあるわけですが、いま言われたような形でございますから非常に人員が削減をされまして、予算も相当大幅にカットされまして、そのカットの割合も、それぞれの支局の中では東京支局のカットが非常に大きいようであります。何か日本は十余名の職員が見えるようでございますけれども、そのうち九名ぐらいが対象になっておるということでございまして、いまのこのILOの東京支局というのは、いろいろと国際的な情報を速やかに労使の方にも流していただける唯一の場所ではないだろうか、こう思うのです。ILOの公用語と日本語の翻訳や、また日本の情報というのをそれぞれILOにも出していただけるわけでございますが、このように半分以上の削減が行われるということになりますと、日本におけるILOの機能というものが維持できないのではないか、私はこう思うのですが、その点についての見解を聞かせていただきたいと思うのです。
  224. 石井甲二

    ○石井政府委員 ILOの東京支局の問題につきましては、私どもは先生のいま申されました基本的な考え方に全く同感であります。ただ問題は、東京支局のあり方自体は、当然のことでございますがILO自体の問題でございます。したがって、ILOが国際機関としての立場から東京支局をどう考えるかということに尽きるわけでございますが、ただ私どもとしましては、東京におけるILOの機能というものが大幅に低下するということは政府としても非常に問題であるというふうに考えております。特に東洋におきましては言語の問題等を含めまして活動についてはよけいな負担がかかっておるわけでございますので、私どもといたしましてもILO事務局に対しまして強い態度で今後とも臨んでまいりたいというふうに考えておる次第でございます。
  225. 草川昭三

    草川委員 いま官房長が言われたように、ひとつILOの本部に対して、日本に対してそんなに他に比べて過酷な削減というのはおかしいじゃないかということは強く主張をしていただかなければいかぬわけですが、私が聞いておる範囲内では、もうすでにそういう方針は出てしまって、具体的に事務局の削減というのが爼上に上っておるように私ども聞いておるわけです。そういう体制になりますと、先ほど触れたように機能の維持と強化というのは望み得ないことになるわけでして、たとえばいまの状況の中で何か日本の労働省として別な形でバックアップをするということはできないのだろうか。たとえば中央に対して言っていただくことは言っていただくわけですが、実施されている段階で、その事務局体制を含めて何か支援体制を考えることはないだろうかということを質問したいわけです。
  226. 石井甲二

    ○石井政府委員 ILOの東京支局の現在の定数は十二名でございます。私どもいままでILOの東京支局の定員に対する状況をずっと見守ってまいりましたが、私どもも相当努力をいたしまして、最初ILOが考えていたことよりも次第に復活をしていっているのが現状でございます。今後この問題についてどういうバックアップ体制をとるかということでございますが、やはり私どもといたしましては、特にILOの拠出の分担金といたしましてはアメリカに次ぐ大国であったわけでございまして、アメリカが抜けた後は日本がトップに立つというような状況でございますので、やはり東京支局というもののILO全体の総合的な立場の必要性を強調いたしまして、この問題について、さらにあらゆる機会にILO事務局に対して意見を申し上げたいというふうに考えております。
  227. 草川昭三

    草川委員 これは御存じのとおり、すでに労働四団体の方も統一して、四団体が足並みをそろえまして、ILOの労組連絡会議というのがあるわけでございますが、労働理事の原口さんを初め四団体の名前で労働大臣にも申し出がされておるわけでございまして、私はいまのような程度でなくて何らかの形で、つなぎと言うと言葉が悪いのですけれども、別な組織でILO協会というのがありますね、これはまた別な組織でございますけれども、そういうところにも臨時に助成をするとかして、たとえば本部でカットされたメンバーなんかを、そういうところでつなぎの形で、ひとつ事務局の運営なんかでカバーをしていただく。いまこそ、こういうような組織の方々を使って、日本の現状と諸外国との交流というものを正しく評価をしていかなければいけませんし、あるいはこのようなILOという国際的な組織の中で、日本に対する産業的な批判もかなり出ておるわけですから、それの誤解のないような情報を早くとるという体制が必要だと思うのです。肝心のそういう情報の窓口なり、情報とは限りませんけれども、基本的なパイプの窓口が狭まるということは、これは単に労働界だけの問題ではなくて産業界としても重要な問題だと思うし、政府は政府のルートがあるからいいようなものでございますけれども、ILOの場としての情報の幅が薄くなるということは問題だと思うので、それは特にひとつお考え願いたいと思うのです。  まだそのほかに実はILOの批准の問題についての政府の大体のお考えなんかも聞こうと思っていましたが、これはまたスト権等があって別の機会に譲りたいと思いますけれども、最後に一遍、大臣の方から、将来のILO問題に対する取り組みについてのお考えだけ聞かせていただいて、発言を終わりたいと思うのです。
  228. 藤井勝志

    藤井国務大臣 わが国は御承知のごとくILOの加盟国でございますし、現在のところアメリカが脱退しているというこの現実を踏まえて、いろいろ御指摘のありました問題点に積極的に対応していかなければならぬ。特にILOの本部のありますジュネーブ、外務省の沢木大使が非常に積極的に活躍してもらっておるという情報を私は承知いたしておりますので、ジュネーブの沢木大使、外務省の出先ともよく連絡をとって万遺憾なきを期したい、このように思います。
  229. 草川昭三

    草川委員 以上で終わります。
  230. 木野晴夫

    木野委員長 次に、和田耕作君。
  231. 和田耕作

    和田(耕)委員 いまILO関係の質疑があったんですけれども、この問題について一言お伺いしたいのですが、昨年の七月でしたか九月でしたか、看護職員についてのILOの条約が決まって、そして勧告文が出されたということを聞いておるのですけれども、この問題で日本の政府は棄権をしたということですけれども、理由はどういうふうなところにあったのか。これをお聞かせいただきたい。
  232. 石井甲二

    ○石井政府委員 御指摘のように、看護職員の雇用及び労働生活条件に関する条約、百四十九号条約の問題につきましては、棄権をいたしたわけでございます。この事情につきましては、最初この内容における国際的な条件の設定に当たりましては勧告という形が想定をされておりまして、これをもとにしまして対応いたしたわけでございますが、途中で条約にするという変更がございました。そういうことから、それに対応する、率直な言い方をしますといとまがなかった問題もございまして、そういう結果になったということでございますので、御了解いただきたいと思います。
  233. 和田耕作

    和田(耕)委員 非常に事務的な理由でということだと思うのですけれども、ただ、あの条約並びに勧告の中には、看護職員の給与そして地位の向上という問題を強調していると同時に、週休二日制の問題が強く取り上げられておるようですけれども、こういう問題は棄権という態度表明と関係があるんでしょうか、ないんでしょうか。
  234. 石田均

    石田説明員 ただいまの御質問にお答えいたします。  週休二日制といったことでございますが、休日の関係につきましては、条約ではございませんで勧告の方に触れられてございます。それで、詳しく申し上げますと、日本政府代表が棄権をいたしましたのは条約の採択のときでございまして、勧告につきましては賛成をいたしております。  以上でございます。
  235. 和田耕作

    和田(耕)委員 それで近い機会にこの問題を検討されて、条約自身に賛成をするという見通しがありますか。
  236. 石井甲二

    ○石井政府委員 看護条約につきましては、条約の制定が非常に最近であるということもございますが、その内容を見ますと大体二つの状態、内容を含んでおります。一つは、看護業務と看護職員に関する計画の樹立に当たりまして看護職員を参加させること、あるいは雇用労働条件の決定は、なるべく関係労使団体との交渉によること、これが一つであります。もう一つは、看護職員は一定の労働条件に関し、少なくとも他の労働者と同等な条件を享受することというようなことが規定してございます。  問題は、この本条約と国内法制との関係の問題が問題になっております。一つは、同等なという意味でございます。すなわち、他の労働者と少なくとも同等な条件を享受するという場合の同等なという意味が明らかでございません。たとえば現在、労働基準法におきましては四十条の規定によりまして、いわゆる労働時間の特例が設けてありますが、病院とかあるいは診療所の特に看護職員につきましては一日九時間、週五十四時間という特例がございます。その場合、一般の労働条件と同等な条件ということをどう理解していいのかということもございまして、この点についてさらに検討をいたす必要がございます。それが一つの例でございまして、さらに検討いたしてまいりたい。それからもう一つは、やはり厚生省等の関係官庁との関係もございますので、それらを含めて今後検討する必要があるだろうというふうに考えておる次第であります。
  237. 和田耕作

    和田(耕)委員 きょうは厚生省の関係官にもおいで願ってと思ったのですが、急だったもので、ちょうどいらっしゃれないようですから、この問題は後日再び質問したいと思うんですけれども、これは特に厚生省関係の看護職員の仕事の仕方というんですか、職員自身の内部の構成というんですか、そういうものとかなり関係してくる問題ですから、厚生省との関係が非常に大事な問題になってくると思うんですけれども、きょうは肝心の厚生省の側の人がいらっしゃいませんから、これは今後また御質問することにいたします。  しかし、こういう国際条約というものは、ほとんど大部分の国——これは棄権をしたのは、アメリカとイギリスでしたか。
  238. 石田均

    石田説明員 お答えいたします。  棄権した国がかなりございますが、政府関係で主なものを申し上げますとオーストラリア、アメリカ、スペイン、オランダ、イギリス等が棄権をいたしております。
  239. 和田耕作

    和田(耕)委員 そのアメリカは脱退しようとしているからわかるんですけれども、イギリスとオランダの理由はどういう理由か、わかっておれば……。
  240. 石田均

    石田説明員 これは具体的に個々の国についてはっきりわかっておるわけではございませんけれども、大筋を申し上げますと、わが国がとりました態度と同様でございまして、従来、勧告ということで総会まで準備が進められてきた。急に条約が提案になりまして、条約につきまして賛否を問われても、いますぐはっきりした答えをする用意がないというようなことで、棄権をした国が多かったというふうに承知をいたしております。
  241. 和田耕作

    和田(耕)委員 確かに勧告文が、全面的にこれを賛成して実行していくという姿勢があれば、大部分の問題はそれでいいと思うんですけれども、なおひとつ、この問題は前向きに検討していただきたいと思います。また後の機会に御質問をしたいと思います。  きょうは労働大臣、特に最近の雇用状況、失業状況なんですけれども、いよいよあしたから三月という非常に注目されておる、失業がふえるんじゃないか、倒産がふえるんじゃないかという月を迎えるのですが、現在からの一番最近の状態から見て、三月の失業状況というのはどういうふうに考えたらいいのか。現在の数字と三月に予想される数字をちょっとお伺いしたいと思います。
  242. 藤井勝志

    藤井国務大臣 現在のこの厳しい雇用情勢の認識でございますが、去年の三月は、先ほどもちょっと触れましたように失業者が百二十七万人という、こういった数字を示しておるわけでございますが、去年と比較いたしまして、ことしの日本の経済情勢、雇用情勢というのは一層厳しい。これはもう私から申し上げるまでもないわけでございまして、そういう点から考えまして、これを上回る——どの程度上回るかという見方はいろいろありますが、いろいろ現在の情勢を判断して、われわれは大体一割ぐらい上回るという前提で約百三十万人台の完全失業、こういう状況を踏まえて今後対策を進めていきたい、このように思います。
  243. 和田耕作

    和田(耕)委員 この三日ほど前にも日本の一流企業と言われる、構造不況の中に入っておる企業のトップの人といろいろ話をする機会がありましたが、その会社の状態を聞いておりまして、率直な話でしたから、私は本当に寒けがするような思いをしたのを、ごく最近、非常に強く印象づけられておるのですけれども、たとえば繊維の一番トップメーカーの東洋レーヨンにしましても、この二、三年のうちに七千人から八千人という人をいろいろな形で整理をする。そうしてまた三菱重工業という会社でも、同じく二、三年のうちに一万数千名をいろいろ整理をしている。しかも、まだこれで終わったわけではない。つまり、業界のトップの最も強いと言われておるところがそういう状況、おとといの会社の名前は申し上げられませんが、いまの二つの会社はもう新聞にも載っておりますから申し上げるのですけれども、これは非常に深刻な状態があるように思うのですね。これはちょっとやそっとではなかなか解決できない。つまり、かなり慢性化したといいますか、構造化した設備の過剰という問題が背景にあるわけですから、なかなか解決できない問題があるわけで、労働省の完全失業の数字に出てきておる以上に実際は厳しい状態があるのではないだろうかと思うわけですが、その中でも、とりわけ中高年齢層の失業という問題が特にクローズアップされてくるわけですね。アメリカなんかでは逆に若年層が首を切られる感じになっておりますけれども、日本の場合はどの職場を見ましても中高年齢層が首を切られるというようなケースになっておるように思うのです。  現在の百十万そこそこの完全失業者の中の年齢構成はわかりますか。それと業種別がわかれば、なおそれをつけ加えていただきたい。
  244. 細野正

    ○細野政府委員 完全失業者の中の年齢別構成のお尋ねでございますが、十五歳から二十九歳層が四十三万人、それから三十歳から四十四歳層が三十一万人、四十五歳から五十四歳層が十七万人、五十五歳以上層が二十一万人ということでございまして、これは五十二年十二月の百十一万という総数の内訳でございます。したがいまして、一般に中高年齢と言われます四十五歳で切ってみますと、四十五歳未満のところが七十四万人、四十五歳以上が三十八万人という状況でございます。  なお、一般の何といいますか最近の非常に厳しい情勢の感覚からいうと、やや奇異に感ぜられますのは、最近の傾向としては女子の二十歳代、三十歳代での増加がむしろ目立っているということです。もちろん御懸念の中高年齢のところもふえているわけですが、目立ってふえているのは、むしろ若年女子のところであるというのが、最近の雇用情勢の厳しさとやや違和感のあるところでございます。  なお、業種別の完全失業者についてのお尋ねですが、これは現在の労働力調査、これは総理府がやっている調査でございますが、その中では、結局、失業者ですと、どこから出てきたかということを聞かなければならないのですが、その質問がないものですから業種別に完全失業者の数というものを把握してないという状況でございます。
  245. 和田耕作

    和田(耕)委員 女子の状態をちょっと補足していただきたいのです。
  246. 細野正

    ○細野政府委員 ちょっと、いま手元にデータを持ってきておりませんが、ここ数カ月、総理府の労働力調査の発表のごとに目立ってふえているのが女子の若年のところだという発表が何回か続けられているので、新聞等にも出ているわけでございます。
  247. 和田耕作

    和田(耕)委員 ふえている女子の年齢はどの程度の年齢ですか。
  248. 細野正

    ○細野政府委員 一番ふえているのが二十歳代、三十歳代というところでございます。
  249. 和田耕作

    和田(耕)委員 全体の数字はやはり青壮年層がかなり多いようですけれども、その中には女子の失業というものが非常に多いということが言われるわけで、中高年齢層という数字は、内容的に点検してみれば世帯を持って非常に深刻な人たちがかなり多い。     〔委員長退席、越智(伊)委員長代理着席〕 女子が深刻でないということじゃないので、女子は女子としてまた別に非常に重要な面があるのですけれども、中高年齢と女子労働者失業というのが非常に典型的な状態ですね。弱い層にまず第一に被害が、失業という脅威が向けられているというような感じがするわけなんですね。  これはなお数字的に点検していきたいと思うのですが、このような状態でございますから、この中高年齢層と女子の失業者という問題を一応焦点にしながらの対策というものが必要であるし、労働省も中高年齢層についてはもう三、四年前から、かなり一生懸命やっておられることは認めるわけで、また評価もするわけでございますけれども、いままでのような対策で中高年齢層という問題が救えるかどうか、これは私非常に不安に思うのですけれども、やっておられる労働省の皆さん方は、いままでのような状態でやっていけるというようにお考えになっておられるのか。あるいは不安があるとすれば、今後カバーするとすればどういう点にあるのか、そういう問題についてお伺いしたいと思います。
  250. 細野正

    ○細野政府委員 この中高年齢層の今後の雇用の見方につきましては、今後の経済情勢がどうなるかということの見方いかんによって、かなり見通しが変わってくるかと思うのでございますが、私どもは現時点におきまして、御存じのように公共事業中心に有効需要を喚起して民間の景気を回復する、こういう考え方に立っておるわけでございまして、これが最近、幸いにして在庫がやや減る傾向が出てきておるというようなことから、有効に働くのではないかなというふうに考えておるわけでございますが、そういう状況で、ある程度、景気というものが少なくとも本年の後半には回復の兆しが出てくるのではなかろうかというふうに見ておるわけであります。  ただし、そうだといたしましても、経済よりも雇用の回復というのはややタイムラグがあるということも、いわば常識的なことでございますから、そういう意味からいいますと、ことしの上期あるいは多少それ以降にずれて、やはり雇用関係というのはなかなかはかばかしい改善というものは見られないんじゃないかというふうな感じがするわけであります。  しかし、そういう前提に立ってみても、たとえば毎年の労働力の流動というのは、学卒を除きましても毎年の入職者、つまり自己都合退職を含めまして、年々全産業で約二百七、八十万あるわけでありますが、それが学卒を入れると約三百七、八十万の人間というものが少なくとも入職をしているという状況になるわけであります。もちろん、それは全員がふえるわけではなくて、やめた人の後の穴埋めを含めての話でございますが、いまよりも著しく悪くならない限り、そういう流動の中で中高年齢層の人を含めまして離職者の吸収というものは、容易だというふうに申し上げるのは大変危険だと思うのですけれども、しかし不可能ではないんじゃなかろうか。  ただし、これはいま申しましたように、景気がことしの上期あるいは多少ずれて、雇用については少なくともはかばかしい改善がないとすると、やはり何かの刺激が必要なんじゃなかろうかというふうなことで、来年度から藤井労働大臣の新政策としまして、中高年齢者を雇い入れる事業主の方に、大企業の場合には賃金の二分の一、中小企業の場合には三分の二の助成をしていこう。それから職業訓練をできるだけ弾力的に、種目等についても中高年齢者向きの種目を大幅に取り入れるし、やり方につきましても、公共訓練という施設でやりますと定員をふやすというのがなかなかむずかしゅうございますから、できるだけ民間のたとえば自動車の教習所みたいな教育機関をフルに活用していく。あるいは民間の事業内の職業訓練所がございますから、そういうもののしっかりしたもの、認定を受けているようなものにこれを委託するというような形で、できるだけ全体としての計画数をふやすと同時に、その職種についてもバラエエィーに富んで実情に即したものにしていきたい。それから種目についても、高年の人ですと、なかなか一般の訓練科目に向かない面もございますから、たとえば造園科とか、あるいはビルの管理科というふうな高年の方でもやれる仕事についての訓練種目を取り入れていくとか、いろいろな工夫をこらしまして、いま申しましたような全体的な経済の中で雇用の拡大あるいは雇用機会の拡大を図ってまいりたい、こういうふうに考えているわけでございます。
  251. 和田耕作

    和田(耕)委員 定年延長の問題がこの三年、四年のうちにいろいろ論ぜられ、労働省も、それを奨励するような方向に動いてきたわけでございますけれども、この問題だけを考えましても、終身雇用制に基づいて賃金が年配の人はずっと上がっていくというこの制度は、現に非常な勢いで崩壊をしておるという事実があると思うのです。  たとえば、いろいろな会社でも、やめてもらうときには、五十以上の人に、あるいは四十八ごろから特別ないい条件の退職手当を出すとか、いろいろなことをやって自発的な退職を促していくというようなことがあったりしておるようでございますけれども、現在では高年齢者の賃金を低くして、新しく事業で雇用していくというような動きも出ているようですね。高年齢者を逆に賃金を低くして、その事業で使えるような状態をつくっていく。あるいはまた、ある会社によれば、五十以上の人は会社をやめてもらうけれども、会社が全額出資した別会社をつくって、会社の中の福祉厚生とか年配者に向いているような仕事を高齢者にやらすとかいうような形で、年功序列体系とは全く違った、能力に応じた考え方を基盤にして高年齢者を再び仕事の体系の中にいろいろな形で取り入れようという努力があるようですけれども労働省としては、こういう動きをどういうふうにごらんになっておられるか。
  252. 細野正

    ○細野政府委員 いま先生御指摘のいろいろな事例の中には、やや性格の違うものが入っておりまして、一概に私ども考え方を申し上げるのはむずかしい点もございますが、ごく大ざっぱに言えば、いまお話しのような事例を前提にして申し上げますと、私どもも、たとえば定年が延長される、あるいは御存じのように、高年齢者につきましては六%の雇用率というものを努力義務として中高年雇用促進法によって課せられているわけですが、こういうものが実現をしていくためには、どうしてもいま御指摘のように年齢が高まって、これも個人差がございますけれども、一般的に能力がやや落ちてきているという状況の中で賃金だけが高まるという制度を維持して、なおかつ定年を延長する、あるいは高年者の雇用率を達成していくということには非常に困難を伴うわけでございます。例外的な企業等においては、そういう場合もございますけれども、一般的には、それはきわめて困難であると考えるわけでございます。  したがいまして、私どもは定年延長を先生御指摘のように当面六十歳ということでやっているわけですが、その場合の考え方としては、いま御指摘の賃金体系の問題あるいはたとえば定年を延長しても、その後引き続き退職金が累増していくというようなやり方、あるいはもう一つの大きなネックは人事が詰まってしまうという問題があって、これがまた会社側だけでなくて労働者側にも定年延長について非常に積極的でない、つまり若い人の方にそういう点についての心配、懸念があるというふうなこともございまして、こういう点について、この辺になりますといわば労働条件の問題でございますから労使の間でコンセンサスを得て、たとえばある程度定年を延長した場合には賃金は横ばいにするとか場合によっては下げるというようなことすら考えなければいかぬ場合、企業もあるのじゃなかろうか。その辺は賃金体系の問題ですから、まさに労使によってコンセンサスを得ながら進めていくことが必要なのじゃないか。  そういうことで私どもは、定年延長を進める際には、各種の助成金という奨励措置が片一方にある。片一方には雇用率という一つの法律上の努力義務がある中で、それの達成のための条件として、いま御指摘のような賃金体系、退職金、人事管理ということについて労使が話し合いで実現できる前提を地ならししてつくった上で進めていかなければいかぬのじゃないか、こういうふうに考えているわけであります。
  253. 和田耕作

    和田(耕)委員 いま申し上げた後の例で、会社の中には福祉厚生とか庶務的な事項とか、年配者にもできる仕事か相当たくさんあるわけですね。そういうふうな仕事をさせるために別会社をつくる。別会社をつくるという意味は、つまり賃金体系を変えるという意味になる。事実、別会社に行った人は一応、会社をやめて別会社に就職して大体二割から二割五分ぐらい賃金が下がっているようですけれども、そういうような会社をつくって高年齢層を組織的に収容していくという考え方、も二、三の繊維関係の工場ではすでに実行されておるようですけれども、今後、恒常的な高年齢社会に入っていくということになると、こういう問題も考えていかなければならぬのじゃないかという感じがするのですよ。  つまり、そこのところでぐずぐずしておると、終身雇用で高いまま賃金も退職手当も何ももらっていくという状態では、なかなか言うべくして行われない、五十歳なら五十歳あるいは五十五歳なら五十五歳というところで切れば、その後は、はっきり責任を持った別会社でその人たちを雇用する。これが別会社でなくて会社の中で行われれば一番スムーズなんですけれども、それがなかなかむずかしければ、そういうふうなことでもして高年齢者の雇用の機会を拡大していくということが必要だという感じがするのです。  こういう問題はもっと広げて考えますと、たとえば公共事業、役所関係、特に市役所とか県庁とか福祉事務所とかなんとか地方のそういうところは、恐らく半分以上は中高年齢層でやれる仕事が多いと思うのです。いま役人さんがやっておることが多いのですが、役人さんがやっておる仕事の半分以上は年とった人にやれる仕事だ。これは誤解のないように聞いてもらいたいと思うのですけれども、そういうような形で中高年齢層の職場をもっと組織的、総合的に拡大していくような配慮をしていただけないか。必要があれば、そういうことを目標にした委員会のようなものをつくっていただけないか。つまり、中高年齢層の雇用を総合的に組織的に拡大する目的でそういうことをやっていただけないか。  そうしませんと、これは単に臨時的なものではなくて、こういう問題は景気循環の網の目で救われるものでもないのです。もっとこういうものとして対策を講ずる必要があるわけですね。労働省も、たとえば中高年齢層に対する雇用の率を設けたり、あるいは特別の法律をつくって、いろいろな形で助成をしたり職業訓練をやったり、いろいろやっておりますけれども、そういうことだけではなくて、もっと雇用機会を拡大していく、雇用機会そのものを拡大していく。先ほど公明党の委員も言っておりましたけれども、職業訓練をやりましても、働く場所がなければ結局景気循環を待っているより仕方がないということにもなって余り役立たない。しかし、中高年齢の場合は、景気循環を待っても、なかなか恩恵に浴する人が少ないわけですから、もっと産業全体あるいは職場全体の構成から見て中高年齢層に適当な就職の機会を拡大していくということについて、一段の御努力をいただきたいと思うのですが、これはひとつ何か適当なオーソライズするための委員会のようなものを設けるとか、そういうことを見詰めていく機関が私は必要だと思うのです。労働大臣、いかがでしょう。
  254. 細野正

    ○細野政府委員 高年齢者の雇用促進の問題につきましては、御存じの六%という努力義務につきまして、未達成の企業については達成計画の作成を命じて計画的に達成に努力をさせるという規定があるわけでございます。この規定に基づきまして実際の調査をやった結果が昨年の十月に出たばかりでございまして、その結果、雇用率が全体的には六%が五・六%で下回っている状況であります。したがって、未達成の企業もかなりあるという事実が個別にわかったわけでございます。  そこで、こういう不況下であり、しかも構造不況業種等、御指摘のように非常にいろいろな問題を抱えておる企業も多うございますから、どの企業にも一律というわけにはなかなかまいりませんけれども、私どもとしては、まず雇用率の達成の状況がきわめて悪い、非常に下回っている。その次には、現在新しく人を採用しているという状況にある。それから下回っているのも率だけではなくて人数も相当下回っている、したがって一定の規模以上である。こういうことになりますが、そういうところを重点的に安定所長から雇用率の達成のための計画をつくらせまして、そしてその計画に従って具体的に努力させるというふうなことを現在やりつつあるわけでございます。したがって、これも高年者の雇用促進のための一つの具体的な手段なわけであります。  なお、この中高年問題につきましては、御存じのように各産業団体、これがほぼ網羅的に集まりまして、日経連、日商、中央会に労働省の四者が幹事団体になって中央雇用対策協議会というのがございまして、ここが十年ぐらい前から、この中高年問題を推進するためのいろいろな申し合わせをやり、その実施を産業界に浸透させるというようなことをやってきているわけでございまして、現在でもそういうための検討を続けているわけでございまして、この機関も活用してまいりたいと考えておるわけでございます。
  255. 藤井勝志

    藤井国務大臣 中高年、特に高年齢者の雇用問題に関連し定年制のお話まで御発言がございましたが、現在日本の社会がいわゆる高齢者社会になって男子は七十二歳、女子は七十七歳という寿命になった今日、人生まさに五十年と言うたときとほとんど変わらないような定年制が施行されておる、これはできるだけ早く解消して、とりあえず六十を一応のめどに、これが実施されるように、先ほど局長からもいろいろ説明をいたしましたし先生からもお話がございましたが、ひとつ一刻も早く、そういう方向へ実現するように全力を挙げたい、このように考えております。  同時に、高年齢者の問題について一つの示唆のある御提案がございました。私は、この問題はこの問題として、たまたま労働省の諮問機関として雇用政策調査研究会という会がございますから、いまの和田委員の御提案は一応諮らせていただきたい、このように考えます。
  256. 和田耕作

    和田(耕)委員 最後に、私も相当年配になってきましたから、これからひとつ中高年齢層の職場を拡大することを目標にして努力してみたいと思っておるのです。やはり何といっても人間の幸せという問題は、いろいろ考え方がありますけれども、平均的に見て年配になって幸せになるということが人間の幸せのポイントですね。若いときは何ぼ幸せそうに見えても年配になって不幸せになると、その人の生涯は真っ黒の生涯になる。逆はまた逆ですから。結局、人間の幸せという面から見て年配者の幸せという問題は非常に大事なことなんですね。政治の問題が人間の幸せという問題を中心にするなれば、どうしてもこの問題を避けて通れない。また高年齢社会にもうすでに入りつつある。しかも大変な不景気でこれらの問題を解決できない条件のもとにある。食うに困るような状態をなくする、あるいはまた病気をしても見る人もないような状態をなくすることはあたりまえのことですけれども、それだけではうまくいかない。年配者で元気な人がふえておるのですから、その人たちを何かの形で仕事につけられるような総合的な一つの対策がぜひとも急がれると思うのです。こういうふうに不景気になってきて、しかも、まだまだ長期化するという状態のもとで、また放置されるようなことがありますから、ぜひとも、そういう問題意識を持って見守って対策をしていく機関が私は必要だと思うので、まず、その問題を強調いたしまして、きょうの私の質問を終わりたいと思います。これからこの問題を見詰めながら何回も何回も御質問をしてまいりたいと思いますけれども、ひとつよろしくお願いを申し上げます。  ありがとうございました。
  257. 越智伊平

    ○越智(伊)委員長代理 浦井洋君。
  258. 浦井洋

    浦井委員 時間が余りないようでありますから少し早口でしゃべりたいと思うのですが、大臣並びに基準局長にお尋ねしたいと思う。  わが国には零細な自営商工業者が本人で三百万、家族で六百万というたくさんの方がおられるわけであります。これらの人は社会的にも経済的にもかなり重要な役割を果たしておられるにもかかわらず、行政的な保護は最も受けておらない層だと言っても過言ではないのであります。ですから、大きな企業であるとか大資本がプレッシャーをかけてきた場合ほとんど無権利の状態に置かれておる。しかも、こういう人たちは概して高年齢者が多いということで、こういう人たちの生活や営業を守っていくということが、国の施策にとっては非常に必要なことだというふうに私は思うわけであります。     〔越智(伊)委員長代理退席、委員長着席〕 そこで、家内労働法に定められている最低工賃制度の問題について、例を引きながら質問をしてみたいと思うわけであります。  私たちの調査では、愛知県の毛織物産地の賃機業者というのは、朝の六時から夜の十一時ごろまで、あるいはまた静岡県の別珍コール天産地の賃機業者は、朝の五時から夜の十一時まで操業しておる、これは工賃が安くて長時間働かないと生活ができないからだ。現に愛知県の一宮市では市の総合計画書の中で、一宮における未熟児出産率、乳幼児死亡率が県下他町村に比べて高い。これは繊維業に従事する婦人の過重労働、劣悪な労働条件に起因する、こういうように認めているほどであります。これは別に愛知県あるいは静岡県だけに限らず、全国の繊維産地のほとんどに共通した問題であって、いま賃機業者の中からは、最低工賃制度を実施して工賃の切り下げに歯どめをかけるとともに、適正な工賃による発注が行われて、八時間労働で生活できるようにしたいというような大きな要望が出てきておるし、運動が起こっておるわけであります。  そこで尋ねたいわけでありますけれども、現在、織物業で最低工賃を決定しておるところは、都道府県の数で一体何県で、そしてケースとしては何ケースあるのかということを初めにお聞きしておきたいと思う。
  259. 桑原敬一

    桑原政府委員 繊維関係で最低工賃を決定いたしております決定件数は十四件でございます。(浦井委員「県の数は」と呼ぶ)県の数も十四でございます。
  260. 浦井洋

    浦井委員 県の数は十三都府県で、そしてケースとしては十四件だ、こういうふうに理解——そうですね。
  261. 桑原敬一

    桑原政府委員 そのとおりでございます。
  262. 浦井洋

    浦井委員 そこで、通産省の統計によりますと、織物業の産地というのは四十六都道府県にあって、産地の数としては百八産地に達しておる、こういうことであります。ところが、いまのように十三都府県で十四ケースだ。これらの産地では、専業的な家内労働者の賃機業者を含めて二十万近くの家内労働者がおるわけなのです。ところが、いま言ったような数字しか最低工賃が決定をされておらない。これは一体どういう理由なのかということを、ちょっと尋ねておきたいと思う。
  263. 桑原敬一

    桑原政府委員 私どもは、家内労働法の精神に沿って、できるだけ低廉な工賃が支払われないように、最低工賃を決めるべくいろいろと努力はいたしてきております。したがって、主要都府県には家内労働審議会がございますし、それ以外の県には労働基準審議会がございまして、そういうところで、労、公、使、学者の関係の方々が十分に御相談をいただいて適正な工賃を決めていただくように努力をいたしておりますけれども、たとえば、ことしになって岐阜が始めるというようなことで逐次、最低工賃の決定が進んでおりますけれども、御指摘のように必ずしもまだ十分ではない、こういう状況でございます。
  264. 浦井洋

    浦井委員 余り答えになっておらないわけなのです。しかし先へ進みますけれども、ただいま局長言われたように、岐阜県では最低工賃が決定された。ところが隣の愛知県では、これがまだ決定されておらない。これは一体どういう理由なのですか。
  265. 桑原敬一

    桑原政府委員 私どもも、岐阜で決められますと、一衣帯水の隣の県でございますから当然に競争関係にあるので、こういった最低工賃が決められることが望ましいと思います。現在基準局におきまして、どうしてもこういう工賃を決められます場合には実態調査というものが必要でございますので、現在その調査を進めております。こういったデータに基づきまして、早急にそういう工賃が決められるように努力をいたしてまいりたい、こういうふうに思います。
  266. 浦井洋

    浦井委員 そうすると、いまの局長のお話では、近々のうちに基準局の方で諮問を審議会に出す、そしてそこで答申を受けて決定をする、そういうように理解をしてもよろしいですか。
  267. 桑原敬一

    桑原政府委員 実態調査をいたしておりますのは、まさに御指摘のような方向で進めたいためでございます。
  268. 浦井洋

    浦井委員 そういうふうに私は理解をしておきたいと思うのです。  そこで、ところがその額の問題でありますけれども、家内労働法の十三条によりますと、最低工賃というのは地域最賃「との均衡を考慮して定められなければならない。」この均衡を考慮して定めるとは一体どういうことなのか、ひとつ政府の答えを求めておきたいと思う。
  269. 桑原敬一

    桑原政府委員 均衡を考慮して定めるというのは、必ずしも同額であるという意味ではございませんわけでございます。したがって、普通の最低賃金を決めます場合と非常に違いまして、御承知のように家内労働につきましては、その品目別にいろいろな単位がございまして、それによっていろいろ能率換算するような形で決められますものですから、一概に比較できない。しかしながら、結果的に八時間換算し、それからいろいろな諸材料費等を引きながら、そして最低賃金とどういうふうな関係になるかということは常に頭に置きながら御審議をいただいておるというふうに理解をいたしております。
  270. 浦井洋

    浦井委員 やはり少なくとも経費を引いて最賃以下のものであっては実質上生活ができないということは、常識的に判断されると思う。ところが、ことしの二月の十九日から実施されておる岐阜県の最低工賃というのは、ここが大事なところなんですが、一般に普及する織機で平均的技能で計算をしてみると、一人一時間工賃が三百九十二円、電力費であるとか消耗品費であるとか機械償却費など経費三〇%を引くと二百七十六円になる。ところが岐阜の繊維労働者の地域最賃というのは、二月の二十二日に実施をされたわけでありますけれども三百七円、やはり約一割の差がある。これでは、生活ができない、こういう声があるわけであります。  それからもう一つ。これはもういまの局長の答弁によりまして最低工賃がしかれるであろうと思う愛知県でありますけれども、愛知県の尾西市のアンケート調査によりますと、一人一時間の工賃収入が三百八十五円五十五銭、これで同じように三〇%経費を控除すると二百六十九円八十八銭、ところが愛知県の同一産業の最低賃金は二百八十九円二十五銭で、やはり一割に近い開きがあって、これは愛知県の方がまだ差がひどい、こういう状況が調査の結果わかってきたわけであります。だから決めても、決めることはよいことだけれども、やはり地域の同一産業の最賃を下回らないような決め方をしなければならぬと思うわけでありますけれども、これはどうでしょうか。
  271. 桑原敬一

    桑原政府委員 この一時間当たりの額を出しますのは、平均能率をどこで見るかというのは非常にむずかしい問題があると思います。私どもは岐阜の局から報告を受けまして、その岐阜の局が最賃関係の審議会に御報告申し上げた数字を申し上げますけれども、岐阜で繊維最賃が三百七円、毛織物の最低工賃は三百五十円、こういう換算をいたしております。そういう御報告を審議会にいたしております。愛知につきましては、御指摘のように繊維最賃は三百十三円七十五銭でございます。これはまあ今後決まるわけでございますけれども、どうしてもその換算の仕方によっていろいろと問題が出てくるし、また比較が非常にむずかしいということでございますが、いずれにいたしましても、私どもはこういった最低賃金の動きというものを十分勘案しながら決めていくべきであろう。ただ、一概にそれが高いか低いかということは比較しにくい。特に非常に技能の高い家内労働につきましては、むしろ最低賃金よりも高いというのが実態でございまして、非常に技能の少ないものにつきましては最低賃金よりも低いということも、必ずしも一般ではございませんが、言える点もございますので、要はそういった内職の実態、家内労働の実態に合わせながら最低賃金と比較をし、考慮していきたいと思います。
  272. 浦井洋

    浦井委員 いま局長が言われたように、その換算の仕方だろうと思う。具体的には岐阜の場合には標準能率というところが問題になるわけです。これは岐阜の基準局の資料では、時間当たりの換算工賃が、いま言われたように経費を除いて地域の最賃を上回っておるのは確かなんです。しかし、換算の基準となる標準能率を見ると、一日八時間労働で紳士服地の場合に三十二メートル生産できる、こういうふうになっておる。ところが、普通に使われておる広幅織機というのでは一日十三時間労働で二日に一反、六十メートル、これを生産するのが常識になっておるという。いま局長が言われたように、かなり複雑な工程があるということでありますから、基準局が発表されておるような標準能率ではやっていけない。実際には八時間当たり三十二メートルではなしに、織機がフル回転をしても約二十三メートルしかできない。これで時間当たり換算をしてみると地域最賃よりも下回る、こういう結果が出ておるわけなんです。これは岐阜の方もそうでありますし、これから定められる愛知県についても、最低工賃を決められることは早くやってもらわなければならぬわけでありますけれども、やはりそのレベルを十分に実態に即応して決めてもらうような案を、ひとつ中央家内労働審議会に答申をしていただく、このことを私は要望をしておきたいと思うわけです。  それからその次に、この制度を一たんできておるところで守る問題があるわけです。たとえば先ほど申し上げた静岡県の場合でありますけれども、別珍コール天産地では、この最低工賃制度が実施されておるけれども、一昨年末以降の調査の結果、大部分の産元企業がこれに違反をしておるということが発見をされて、千九百万円の未払い工賃を支払うということになったわけです。また未払い工賃が支払われたといっても、賃機業者が弱いために架空の領収書であるとか、あるいはきずものがあったということで工賃を相殺するという状態で、実際に支払われたかどうか疑問の状態がたくさんあるということを私は調査をして知ったわけであります。局長も御承知のように、賃機業者の立場というのは弱いわけですし、みずから進んで家内労働法の違反だということで基準監督署に申告をするというようなことは、まずあり得ないというわけなんで、やはり単に最低工賃を決めて、そのまま、はいよろしいということで済ますのではなしに、監督官庁が十分に常日ごろ監視をして回るというような細心の注意が私は必要だと思うわけでありますけれども、その点についてひとつ局長の御意見を聞いておきたいと思います。
  273. 桑原敬一

    桑原政府委員 最低工賃を決めました以上は、それを必ず実行させるということが当然でございますし、いま御指摘の静岡県でございました面につきましても、申告がございまして是正をさせて支払いをさせたという実績がございますが、私どもも、できるだけ家内労働旬間をつくったりなんかしまして、いろいろ工夫をしながら積極的に監督をし、また悪いものは指導をしていく、こういうふうなことで努力をいたしているわけでございます。
  274. 浦井洋

    浦井委員 工夫をこらしてと言われたのですけれども、ひとつ創意工夫をこらして零細な賃機業者が一家心中をするというようなことのないように十分な指導監督をやっていただきたい、このことを要望をしておきたいわけであります。愛知県、岐阜県、静岡県の県名を出しましたけれども、確かに逆輸入もあるし不況であるということで、全国どこの繊維産地でも同じような状態であるわけなんです。  そこで最後に労働大臣にお尋ねをしておきたいわけでありますけれども、先ほどからお話を聞いていただいてもわかるように、織物産地の専業家内労働者の生計、暮らしを確保するために、そういう百八のすべての産地に少なくとも最低工賃を決めるように大臣からも特段の指導をお願いしたい、指導を行うべきではないかということを私は申し上げたいわけでありますが、この点どうですか。
  275. 藤井勝志

    藤井国務大臣 御趣旨の点を踏まえて、できるだけ努力をいたしたい、こう思います。
  276. 浦井洋

    浦井委員 大臣がこれに特段の指導をやるということであれば、日本の繊維だけに限らず地場産業にとっては、こういう不況円高の中で非常に朗報になるわけでありますから、ひとつ大臣の重大な決意を促して私、質問を終わりたいと思うわけです。
  277. 木野晴夫

    木野委員長 次に、田中美智子君。
  278. 田中美智子

    ○田中(美)委員 婦人のための国内行動計画の前期の五カ年計画というのが出されましたけれども、その中のただ一つの目玉商品というのでしょうか、婦人の差別定年制をなくしていくという計画が出されています。その中で昭和五十二年度中に実態の把握を行うというふうに書かれておりますけれども、もう五十二年度も終わりになりますが、把握が一体どうなっているのか、お答え願いたいと思います。
  279. 森山真弓

    ○森山(真)政府委員 先生のおっしゃいますとおり、昨年の六月、その前の二月にできました国内行動計画を受けまして、労働省が受け持ちます雇用問題の重要なポイントといたしまして、若年定年制、結婚退職制等改善年次計画というものを作成したわけでございます。これは五カ年をかけまして、若年定年制なり結婚退職制なり、女子が特段、女子であるために不利な退職をしなくても済むように、そういう制度を少しずつなくしていこうという計画でございまして、この計画期間を通しまして広く男女別の定年制を解消していきたいと考えているわけでございます。  いま、この五十二年度の間に実態を把握するということで鋭意まとめ中でございまして、まだ具体的に御報告できる段階ではございませんが、私どもの出先の職員も大変一生懸命やってくれまして次第にまとまりつつあるところでございますが、まだ、いまのところ御報告できる段階ではございません。
  280. 田中美智子

    ○田中(美)委員 時間がありませんので、なるたけ簡潔にお答え願いたいと思います。  まだ報告できないということは、いつごろまとまって、いつごろ報告できる予定であるかということをお聞かせ願いたい。簡潔にお願いします。
  281. 森山真弓

    ○森山(真)政府委員 五十二年度中に実態を把握するという予定でございますので、五十二年度中、つまり三月いっぱいにはまとめる予定でございます。
  282. 田中美智子

    ○田中(美)委員 まとめるということは報告できるということですね、国民に向かって報告できると。
  283. 森山真弓

    ○森山(真)政府委員 三月になってみませんとはっきりわかりませんけれども、多分できるのではないかと考えます。
  284. 田中美智子

    ○田中(美)委員 それでは年度中にその報告をいただきたい。婦人の多くは期待を持って、楽しみとは言いません、相当悪い線が出ると思いますので。しかし、それが基礎になるわけですから期待を持っていますので、三月中にぜひこれを報告していただきたいと思います。  次に、五十三年と五十四年度には四十歳未満をなくしていく。それから今度は五十五年と五十六年度には五十五歳未満を実際になくしていく。実態を把握するだけでなくて、実際に差別定年制を解消するというふうに行動計画に書かれているわけですけれども、これは一体、具体的にどういうふうにしてなくしていかれる保証があるのかということで、まず直接に、だれが、どこで、これをなくす努力を中心になってやっていくのかということを一言、簡単に話してください。
  285. 森山真弓

    ○森山(真)政府委員 これは労働省の中でも特に婦人少年局が中心になってやっている仕事でございます。もちろん他局、他省の御協力もいただいているわけでございますけれども、婦人少年局が中心になってやっているわけでございます。
  286. 田中美智子

    ○田中(美)委員 婦人少年室の人員は何名ですか。
  287. 森山真弓

    ○森山(真)政府委員 婦人少年室の職員でございましょうか。全国四十七都道府県にあります婦人少年室の職員の人数は、百七十五人でございます。
  288. 田中美智子

    ○田中(美)委員 森山さんに伺いますけれども、百七十五名でできますか。できる自信がありますか。
  289. 森山真弓

    ○森山(真)政府委員 おっしゃるとおり百七十五人という人数は大変少のうございまして、完全に一〇〇%五年間でできるであろうということを、いまお約束できるかといいますと、残念ながら、もう少しやってみないとわかりませんが、みんな一騎当千の職員でございまして一生懸命やっておりますので、十分成果は上がると考えております。
  290. 田中美智子

    ○田中(美)委員 わずか百七十五名、労働大臣ちゃんと聞いててくださいね、日本国じゅうから差別定年制をなくしていくということは大変な仕事です。言うことを聞かない企業というのがどんなにたくさんあるか。いままで国会で私自身が取り上げた問題でも大変長い時間がかかっているということを考えれば、わずか百七十五名で自信がないという森山局長の自信がないようなお答えというのは当然だと思うのです。精いっぱい虚勢とは言いませんけれども張られて、何とかやろうという決意を述べられたのであって、実際にできる確信というのは、確信を持ってやれます。こういうふうには言えていないわけです。  それで、先ほど森山さんがお話しになったように、婦人少年局が中心になってやるけれども、ほかからも協力を得るのだ、多少得るのだ、こう言っているわけですけれども、ほかというのは労働基準局だというふうに思うのですけれども労働基準局長としては、これに対してどの程度、多少というのは非常に抽象的ですので、どの程度協力ができるのかお答え願いたいと思います。
  291. 桑原敬一

    桑原政府委員 婦人少年室は大体基準局と一緒の庁舎におりまして、有形無形いままでも連携をとって御援助申し上げておりますし、基準行政と婦人少年行政、きわめて密接な関係がございますので、いままで以上にまた協力してまいりたい、こういうふうに思います。
  292. 田中美智子

    ○田中(美)委員 ちょっと、木に竹を接いだような答えでなくて、いままでどおりというのはいままで婦人の差別というのがなくなっていないから、これを国連レベルでみんなでお話をして、そして日本は、日本の行動計画として順位をつける。それでまず最初に定年制をやる、こう言ったわけですね。ですから、この婦人の定年制に対して基準局長としてはどういう決意で協力をするのか。いままでどおりということは協力しないということですよ。しないというのはオーバーかもしれませんけれども、まあのんびり協力するということですね。これは新しい形で目玉商品で出てきたというところに国民は期待をしておるわけですから、ここには新たな決意というものが要るはずです。
  293. 桑原敬一

    桑原政府委員 いまは、いままでどおりじゃなくて、いままで以上にと申し上げたつもりでございます。  御承知のように基準局の仕事は基準法の施行が中心でございますので、それなりに限度がございます。しかし、私どもは実際に事業主を集めていろいろ基準法上の説明もいたしますし、いろいろの機会がございますので、そういった事業主の集まる集団指導の機会等を利用しまして、この問題についても十分な御協力を申し上げてまいりたい、こう思います。
  294. 田中美智子

    ○田中(美)委員 基準局長は十分な協力をしていただける、非常に抽象的ですけれども。たとえば就業規則があるものと、それから慣行でやられておるものがありますが、就業規則の場合は、変わった場合とか、それから新しくつくった場合には、これは届けるわけですね。労基署に届けるわけですね。そこできちっとチェックをして、そこの中に差別定年制が入っていないかどうかということぐらいは、一々少年室の方で後からやってもらうのではなくて、直接そこで、もうぱっとチェックをして受け付けないというようなことはできないでしょうか。そういう協力はできるのじゃないですか、簡単に。
  295. 桑原敬一

    桑原政府委員 現在、婦人少年局で御調査いただいております定年制のいろいろな調査、これも、私どもの監督署で事業所台帳から選んで就業規則等も引き出していろいろと御協力申し上げておりますので、いまおっしゃいましたようなことにつきましても協力をしてまいりたいと思っております。
  296. 田中美智子

    ○田中(美)委員 ぜひ窓口で、それをまず労基署でやっていただきたい。  それからもう一つ、定期監督指導というのをやっていらっしゃると思うのですね。それの中の重点指導の対象に、この差別定年制をやっていただきたいというふうに思うのですけれども、いかがでしょうか。
  297. 桑原敬一

    桑原政府委員 先ほど申し上げましたように、監督官は一応の権限行使の法律的根拠がございますので、先生も御承知のように定年制問題自体は四条の問題になりませんものですから、監督自体の中に入れることは非常にむずかしいと思います。
  298. 田中美智子

    ○田中(美)委員 大臣と基準局長の両方に伺いたいのですけれども、婦人少年室がやるから、あとはほっておくというのではなくて、婦人少年局を中心にして、これを守り立てながら労働省全体、いやむしろ政府全体がやらなければいけないことですけれども、少なくとも労働省全体がこれに取りかからなければならないのじゃないですか。ですから、基準局は基準法だけではなくて指導ということがあるわけですから、法違反を摘発するというような、お巡りさんのような仕事だけではないわけでしょう。いま、この国内行動計画で具体的にやる、こう出ているのは、これがただ一つじゃないですか。せめて、この一つぐらいは労働省が全力を挙げて婦人少年室と局を守り立ててやっていただきたい。その点をまず大臣に御決意を伺いたいと思います。
  299. 藤井勝志

    藤井国務大臣 職場におきます男女平等の実現、これは現在のわれわれ労働行政の重要な課題の一つと考えております。したがいまして、労働省全体として真剣に取り組まなきゃならない、このように考えておりますから、大いに今後がんばりたい、こう思います。
  300. 田中美智子

    ○田中(美)委員 いまの言葉は非常に抽象的ですけれども、予算の面、人員の面という点で特別の配慮をして、この差別定年制の問題がこの国内計画どおりに五十六年にはりっぱに日本から追放されるというふうにぜひお願いしたいと思うのです。  それで実際のところ、こう見ていますと、一生懸命やる、それで人間はいろいろ優秀な人間があちこちにそろえてあるというふうであっても、やはり人間の数が足らなければ、指導というのはなかなかむずかしいというふうに思うのですね。いま、愛知県の岡崎労働基準監督署、ここの管内というのを見てみますと、時間がありませんので私の方が申しますけれども、ここは昭和三十年には労働基準法の対象になる労働者の数というのが約五万人だったわけです。それが十年後の昭和四十年には十五万一千人にふえている。それから五十二年には何と二十万一千八百三十七名というふうにこれがふえている。三十年からしますと、その対象の労働者が四倍にふえているわけです。それが監督官になりますと昭和三十年では五名、それが五十二年では九名しかいない。二十万一千八百三十七名に対して九名しかいない。一・八倍しかふえていないのですね。これは一例です。  こういう状態でどうして——そこの人は夜寝ずに働いているのですよ。監督官や婦人少年室が全力を挙げて働いていても、こんな状態では監督することはできない。差別定年の問題だけでなくて、ほかのものも含めてもできないではないかというふうに思います。どうしてこんな状態を放置しているのか。全国的に一律に数でもって割ってみるということは必ずしも現実的ではありませんけれども、一応私は数でやってみたわけですね。労基署の数で大体その対象人口を割ってみますと、一つの労基署で十万くらいなんですね。そうすると岡崎は約二倍になっているのですね。ということは、やはり労基署をもう一つつくらなければならないという状態じゃないかと思うのです。こういうことをしないと、幾ら大臣が一生懸命やります。こう言われても、こういう物理的なものをきちっとやっていかない限りはできないのじゃないかと思うのですけれども、その点はいかがでしょうか。
  301. 藤井勝志

    藤井国務大臣 労働行政というのは私から申し上げるまでもなくマン・ツー・マンの仕事で、建設省あたりとはちょっと趣が違うと理解しております。したがいまして、私は労働大臣になりましたとき、行政簡素化、人員削減計画に沿って過去十年間、昭和四十三年から五十二年まで十年間におきまして純減いたしておる事実を見まして、私は非常に意外に思ったのです。純減すること二千三百名、これがいま御指摘のような婦人少年室の人員の少なさにもしわ寄せされておる、このように考えたわけでございまして、この問題は五十三年度の予算編成におきまして、大蔵省、行政管理庁の理解ある対応をしてもらいまして純減はようやくとどまりました。これからは必要なところに、全体的にはチープガバメント、行政機構の簡素化、こういう線から、なかなかむずかしい問題でありましょうけれども、大いに努力しなければならぬ。同時に、特に婦人少年室の問題につきましては、室の人員をふやすということだけでなくて外郭団体、共助してもらう外郭的な民間の力をおかりする、こういうことによって人員の不足を補っていくことが一石二鳥ではないか、こういう考え方も持っておりますから、両々相まって努力しなければならぬ、このように思います。
  302. 田中美智子

    ○田中(美)委員 もう一つ落ちておりますけれども、少年室だけじゃなくて労基署の問題。
  303. 桑原敬一

    桑原政府委員 地域の管内の事業所の動きによって私どもは定員を再配分し、必要によってはそういう機構の拡充をしていかなければならぬと感じております。ただ、いま大臣も申し上げましたように、いま非常に厳しい環境にございまして、役所を新設するということもなかなかむずかしい状況にございますが、いまも大臣がお話しになりましたように、私どもはいろいろな関係機関との連携をやるような形で積極的な対応をしていきたい、こういうふうに思います。
  304. 田中美智子

    ○田中(美)委員 ちょっといま何を言われたのかさっぱり意味がわからないのです。局長自身わからずに言っていらっしゃるのじゃないですか。私が言っていますのは、ほかの労基署から比べますと岡崎の労基署というのは二倍の対象を持っているというわけですからね。ですから労基署を一つつくることを私は一番要求するわけですけれども、人員をぐんとふやすとか何らかの対応をしてほしいと言っているのです。それに簡単に答えていただきたいのです。
  305. 桑原敬一

    桑原政府委員 基準監督署をさらに一つふやすということは、いまなかなかむずかしい環境にあると申し上げたわけです。したがって、そういったたくさん事業所がふえたところにつきましては機動力を増強したり、あるいはいろいろな私どもの連携深い、たとえばコンサルタント制度とかいろいろございますから、そういった私どもの足りないところは民間のそれぞれ専門的な御協力をいただきながらやっていきたい、こういうふうに申したわけです。
  306. 田中美智子

    ○田中(美)委員 そんなことで、こんなにたくさんのことはできないですよ、民間で民間でと言われますけれども。少年室の場合は民間の人の力をかりるということは大事なことだと私は思うのです。それは婦人は非常に協力したがっているわけです。しかし、各少年室を見ましても、人員がわずか三人というところは十六県もあるんですね。三人とか四人とかといいますと、一人かぜを引いて病気で休めば二人しかいないというふうなことになれば、周りの人たちが協力しようと思ってもしようがない。周りの人を指導することができないじゃないかというので、いま大臣の、どんどん人員が減らされていっている、これはしわ寄せをされているんだという見方、これは正しいと私は思うのです。しわ寄せをされているのです。それがストップをした。ストップしたのなら、これをもとへ戻すように、しわ寄せがなくなるように、なくなる方向大臣に持っていっていただかないと、いま婦人少年局長が言われたように民間の力をかりるということさえやはり最低限、人間というのは物理的に要るわけですよ。一人病気で休んだら二人だ、二人でどうして協力してもらえるかという点を考えて、いま大臣の言われたしわ寄せが来ているんだ、こういう観点から婦人少年局の果たさなければならない大きな役割り、この役割りを重視して、ぜひいろいろな形で協力やまた改善をしていただきたいというふうに大臣に強く要求します。  というのは、国際的にも日本の状態というのは見られているわけですよ。この差別定年制が、国内行動計画で天下に公表したものを本当に日本はやるのかどうかということは、日本の婦人——さっき男性という声もありましたが、婦人の国民全部が見ているというだけでなくて、世界の人たちがこれを見ているわけですから、そういう点で、いまこの大きな任務を負っている婦人少年局、室が全力を挙げて働けるように、しわ寄せをされたもの全部もとへ押し返していただきたいということを大臣に強く要求します。  それから基準局長にお聞きしたいのです。一つつくることはできない、労基署を一つふやすことはできない。じゃそれはどうやってやるんだということですけれども、中身の問題を、こういうふうにして、ああいうふうにしてということでは時間がありませんけれども、まず、ここの管内にはトヨタ自動車工業というところがあります。ここには四万何がし、約四万五千人に及ぶ労働者が働いているわけです。豊田市内だけにこれが全部いるわけではありませんけれども、ほぼそこに集まっているわけですね。その中に四千人の婦人労働者がおります。この婦人労働者を私は人に調べてもらったわけですけれども、それによりますと一人も既婚者がいないということです。そしてこれは就業規則にはないわけです。ですから恐らく婦人少年局が調べる中では、就業規則だけで調べてきた場合には、この四千人の婦人というのは差別定年制の中に出てこないのではないかというふうに思う数ですね。一つの会社の中に四千人の婦人が一人も既婚者がいない。そしてこれは慣行として、結婚しますとみんな退職をさせられていくということなわけです。この状態を一体どうしていくのか、これはむしろ基準局長にちょっとお聞きしたい。
  307. 桑原敬一

    桑原政府委員 法律論で申しますと、基準法では特に強制的にどうこうする根拠規定はございません。しかし、お話のような結婚退職というような形が裏にあるということだと思いますので、婦人少年室ともども、そういった問題の実態については十分調べてみたい、こういうふうに思います。
  308. 田中美智子

    ○田中(美)委員 森山局長どうですか。
  309. 森山真弓

    ○森山(真)政府委員 いま先生が御指摘になりましたような例が、ほかにもたくさんあるのでございますけれども、あらかじめ実態を把握いたしまして、そして計画的に直していくという、その計画には具体的な事例が発生いたしませんとわかりません。慣行のみによるものはなかなかつかみにくいわけでございます。ですから、この計画によって解消する対象というのは、文書、就業規則なり労働協約なりその他の方法で、あらかじめ制度として決められているものをまずなくしていこう。そして具体的な事例がいま御指摘のような場合に発生いたしましたときには、それは具体的な事例に応じて御相談に応じ、改善指導していこうというつもりでございます。
  310. 田中美智子

    ○田中(美)委員 ちょっと局長弱いんじゃないですか。行動計画には「職業生活のあらゆる領域で男女が平等の機会と待遇を得られるよう、雇用制度、慣行の改善に努める。」こう言っているわけですからね。国内行動計画は、制度だけでなく慣行もと言っているわけです。ですから就業規則さえなければ——まあそういうふうに言われたのではないと思いますけれども、極端に言えば、就業規則さえなければ、これはもう全部見逃されるのだというなら、どこだって安心してどんどん就業規則を取っ払ってしまう、組合が弱ければみんな取られるということになってしまうわけですので、いま私が調べてもらいましたトヨタ自動車工業というのは、いま発生した事例については、こう言われましたので、基準局長も調べますと言われましたし、これはいま特定に出てきたものですので、四千人の婦人労働者の中で一人も既婚者がいないということは、だれが見たってこれは怪しいと思うのは当然だと思います。ですからぜひこれを至急調べていただきたい。そして御報告をしていただきたいと思います。両局長にお願いします。よろしいですね。
  311. 森山真弓

    ○森山(真)政府委員 御指摘のような事実がございますかどうか、調べさせていただきます。
  312. 田中美智子

    ○田中(美)委員 それではよろしくお願いします。  それでは最後に一つだけ、大急ぎでやります。  いまの日本の婦人の実態というものは世界に対して恥ずかしいということを私は言ったわけですけれども、妊産婦の死亡にしましても、WHOの統計国においては一、二というトップを争っているという状態ですし、それから賃金の問題においても日本の婦人の差別賃金というのは、男性を一〇〇として五七%という低い状態にあるわけです。こういうことがいま世界を舞台にして非常に問題になっておりますけれども、フランスの共産党の書記長のマルシェさん、この方が日本の婦人というのは非常に奴隷的な状態にあるということで論議を呼んでいます。これに対して市川房枝さんも、これは新聞情報ですけれども、欧米に比べると日本での男女差別は歴然としている。これはフランス駐在の大使がマルシェ書記長に抗議をしたということですけれども、抗議なんかは必要ない。抗議するなら日本政府にすべきですよ。こう市川さんは言っておられるわけですね。私はいまここで、それに対してとやかく言うということではありませんけれども、こういう形で日本の婦人の状態というものが世界に知らされていくわけですね。そういうふうにヨーロッパの人、アメリカの人、そういう人は見ているわけです。そういう点で、特にフランスのように婦人の賃金が男性の八六%、八七%という状態ですと、高給取りのところに男性が多いわけですから、一般の婦人のところでは男女差別の差別賃金というのはほとんどないように見えるわけです。実生活ではですね。そういう中で生活している人が日本の婦人を見たときには、これは非常にひどい状態にある、こういうふうに思うと思うのです。  それからもう一つはレジャー、休暇の問題ですけれども、これでも調べてみますと、日本では長期の有給休暇は、一年間に二週間以下、十四日以下というのが六八%。約七〇%というのはもう二週間以下しか休暇がない。それに比べてフランスなどでは三週間以上から九週間まで、二十一日から六十三日まで、こうした長い休暇をもらっている人たちが約八五%もいるということですから、そういう状態の中で働いているヨーロッパの人たち、これは男も女も含めて、そういう人たちが日本のこういう状態を見ますと、統計を見ただけでも、それこそびっくりしてしまうということですので、この国内行動計画でやると言っている問題というのは、実に最低の問題だと思うのです。ですから、これだけは絶対にやっていただきたい。この差別定年制だけは絶対に世界に対して恥ずかしくないようにやっていただきたい。その決意を大臣に伺いまして、質問を終わりにしたいと思います。
  313. 藤井勝志

    藤井国務大臣 御趣旨を踏まえて努力いたします。      ————◇—————
  314. 木野晴夫

    木野委員長 勤労者財産形成促進法の一部を改正する法律案を議題とし、提案理由の説明を聴取いたします。労働大臣藤井勝志君。     —————————————  勤労者財産形成促進法の一部を改正する法律案     〔本号末尾に掲載〕     —————————————
  315. 藤井勝志

    藤井国務大臣 ただいま議題となりました勤労者財産形成促進法の一部を改正する法律案につきまして、その提案理由及び内容の概要を御説明申し上げます。  いまや国民の大部分を占めるに至っている勤労者とその家族の生活の動向は、わが国経済社会の将来に深く関連する問題でありますが、勤労者生活の現状を見ますと、賃金水準はこれまでの経済成長のもとで改善されたものの、貯蓄や住宅等の資産保有の面では、なおいまだ相当の立ちおくれが見られるところであります。  このような勤労者生活の実情にかんがみ、勤労者の財産形成を促進して、その生活の一層の安定を図るため、昭和四十六年に勤労者財産形成促進法が制定され、昭和五十年には、同法の一部改正が行われました。  現行制度においては、勤労者の行う財産形成貯蓄及びこれに対する事業主の援助としての財産形成給付金について税制上の優遇措置等が講ぜられるとともに、財産形成貯蓄を原資とする勤労者のための持ち家融資制度が設けられております。財産形成貯蓄を行う勤労者数は、制度発足以来六年余にして、七百四十万人に達し、その貯蓄額は一兆六千億円を超える等、勤労者の本制度に対する期待の大きさがうかがわれるところであります。  このような勤労者の期待とその努力にこたえ、その生活を真に豊かで安定したものにするためには、現行の勤労者財産形成促進制度の内容は、まだ必ずしも十分とは申せません。  政府は、このような観点から勤労者財産形成促進制度を大幅に拡充したいと考え、そのための案を勤労者財産形成審議会に諮問し、これを了承する旨の全会一致の答申をいただきましたので、ここに勤労者財産形成促進法の一部を改正する法律案として提出した次第であります。  次に、この法律案の内容につきまして、その概要を御説明申し上げます。  第一は、勤労者財産形成基金制度の創設であります。勤労者の財産形成のための事業主の援助を一層促進するため、当該事業場の労使の合意を前提とし、財産形成貯蓄を行っている勤労者を加入員として、労使をもって組織する勤労者財産形成基金を設立することができることとしております。  基金は、事業主が拠出した金銭について信託会社、銀行等と勤労者財産形成基金契約を締結し、その加入員である勤労者に対して財産形成基金給付金が支払われるようにすることとし、その給付金について課税上特別の措置を講ずるとともに、基金の設立についての奨励金及び事業主の拠出についての助成金を支給することといたしております。  第二は、勤労者財産形成持ち家融資制度の拡充であります。  勤労者の持ち家の取得を一層促進するため、勤労者財産形成持ち家個人融資の貸付限度額を引き上げるとともに、融資の対象について、現行の新築住宅の建設または購入のための資金のほか、中古住宅の購入及び住宅の改良のための資金を加えることとし、さらに、公務員等に対する融資について、その仕組みを改善することといたしております。  第三は、進学融資制度の創設であります。  勤労者の長期的な生活設計を一層容易にするため、雇用促進事業団は、勤労者財産形成持ち家融資のほか、勤労者またはその子弟の進学に要する資金の貸し付けを行うことといたしております。  その他、この法律案におきましては、その附則において、所得税法、法人税法、租税特別措置法等関係法律の所要の整備を行うことといたしております。以上、この法律の提案理由及びその内容の概要につきまして御説明申し上げました。  何とぞ御審議の上、速やかに御可決あらんことをお願い申し上げます。
  316. 木野晴夫

    木野委員長 これにて提案理由の説明は終わりました。  次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。     午後六時五十二分散会      ————◇—————