運営者 Bitlet 姉妹サービス
使い方 FAQ このサイトについて | login

1978-04-25 第84回国会 衆議院 災害対策特別委員会 第13号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和五十三年四月二十五日(火曜日)     午前十時二十一分開議  出席委員    委員長 川崎 寛治君    理事 天野 光晴君 理事 有馬 元治君    理事 志賀  節君 理事 高鳥  修君    理事 矢山 有作君 理事 湯山  勇君    理事 広沢 直樹君       越智 伊平君    小島 静馬君       後藤田正晴君    佐藤  隆君       斉藤滋与史君    谷  洋一君       谷川 寛三君    津島 雄二君       中島  衛君    中村  直君       原田昇左右君    森   清君       渡辺 秀央君    池端 清一君       佐藤 敬治君    渋沢 利久君       渡辺 芳男君    瀬野栄次郎君       古川 雅司君    山本悌二郎君       津川 武一君    山原健二郎君       菊池福治郎君    中馬 弘毅君       永原  稔君  出席国務大臣         内閣総理大臣  福田 赳夫君         国 務 大 臣         (国土庁長官) 櫻内 義雄君  出席政府委員         内閣法制局第二         部長      味村  治君         防衛庁長官官房         防衛審議官   上野 隆史君         国土政務次官  丹羽 久章君         国土庁長官官房         長       河野 正三君         国土庁長官官房         審議官     四柳  修君         国土庁計画・調         整局長     福島 量一君         国土庁大都市圏         整備局長    国塚 武平君         気象庁長官   有住 直介君         建設省住宅局長 救仁郷 斉君         消防庁次長   田中 和夫君  委員外出席者         科学技術庁長官         官房参事官   佐伯 宗治君         国土庁長官官房         震災対策課長  城野 好樹君         文部省学術国際         局学術課長   植木  浩君         気象庁観測部参         事官      末広 重二君         建設省都市局都         市政策課長   杉岡  浩君     ————————————— 委員の異動 四月二十五日  辞任         補欠選任   菊池福治郎君     中馬 弘毅君 同日  辞任         補欠選任   中馬 弘毅君     菊池福治郎君     ————————————— 本日の会議に付した案件  大規模地震対策特別措置法案内閣提出第七三  号)      ————◇—————
  2. 川崎寛治

    川崎委員長 これより会議を開きます。  大規模地震対策特別措置法案を議題とし、審査を進めます。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。矢山有作君。
  3. 矢山有作

    矢山委員 まずお伺いしたいのは、自衛隊法の第七十八条に「命令による治安出動」ということで、「内閣総理大臣は、間接侵略その他の緊急事態に際して、一般警察力をもつては、治安維持することができないと認められる場合には、自衛隊の全部又は一部の出動を命ずることができる。」こうなっておるわけでありますが、「その他の緊急事態」というのは、一体どういう事態想定しておられるのか承りたいのであります。
  4. 上野隆史

    上野政府委員 お答え申し上げます。  御設問の「その他の緊急事態」という具体的例でございますが、これは一般警察力をもってしては治安維持が困難であるような大規模なる騒擾とかそういうようなものを考えております。全国的な規模で多発するような大規模治安擾乱事態というものを想定しております。
  5. 矢山有作

    矢山委員 かつての会議録を調べてみたのですが、六九年七月十五日、参議院の内閣委員会において宍戸政府委員が、「その他の緊急事態に際して」という緊急事態というのは大体「関東大震災的なことが典型的なものであろう」こういうふうな答弁をなさっておりますが、この答弁、間違っておりますか。具体的に言うなら、これはそういう事態ではないのですか。
  6. 上野隆史

    上野政府委員 宍戸政府委員の挙げました例は、関東大震災におきましては、御承知のとおりいろいろな流言飛語等が飛び交いましていろいろ不幸な事態も起こったわけでございますけれども、そういうようなものを念頭に置いて御答弁をなさいました。今日におきましても、たとえばああいうような事態関東大震災におきますような場合の治安擾乱事態というものがありますれば、それはやはり自衛隊法規定しております治安出動対象になり得る事態であろうというふうに予想しております。
  7. 矢山有作

    矢山委員 そうすると、もう一つお伺いしたいのは、この七十八条の「命令による治安出動」というのは、そういう緊急事態発生した段階においての治安出動命令が下せる、こういうふうに解釈したらいいわけでしょうね。
  8. 上野隆史

    上野政府委員 そういう事態発生した後の状況でございます。その事前に出るということではございません。
  9. 矢山有作

    矢山委員 じゃ七十八条の「その他の緊急事態」というのは、大体関東大震災のような事態想定されており、しかも出動するのはそういう事態発生した段階においての出動、つまり事後出動ということになります。  ところがここで問題になるのは、七十八条による治安出動下令が、七十八条そのままに解釈すると、災害発生事態で、そういう緊急事態が起こった段階でなければ出動下令ができないのでありますが、この審議中の本法案によって警戒宣言が発せられたときには、これはその他の緊急事態に際してということで治安出動下令できるという道が開かれるのじゃありませんか。
  10. 上野隆史

    上野政府委員 まず一つお断り申し上げておきますが、治安出動対象事態というものは関東大震災級のああいう、あのときに起こったような治安事態だけを想定しておるわけではございません。それは一例でございまして、地震災害に伴いますその治安擾乱事態以外にもいろいろと治安擾乱事態はあると思いますが、そういうようなものを一般的に言っておるわけでございます。  それから今度の法案に関します事態でございますが、今度の法案は、御承知のとおり、地震防災段階でもって自衛隊警戒本部長の御要請によりまして、その持てる機動力等を活用してお手伝いを申し上げるという趣旨でございまして、こういう地震が起こった後の状況、一たん地震が起こってしまいました後は、現在の自衛隊法にあります第八十三条の「災害派遣」の条項がそのまま適用になります。したがいまして、今回の地震防災派遣規定は、警戒宣言が発せられまして、それから数日ないしは数時間後でございましょうか、地震が起こるまでの間におきます自衛隊の諸活動に関する規定でございます。
  11. 矢山有作

    矢山委員 法制局にお伺いしたいのですが、いまの論議を聞いておっていただいたと思うのです。私は、警戒宣言が発せられた段階総理災害派遣要請ができる、それと同時に、そういうときにはその段階で七十八条の治安出動下令ができる余地があるのではないかと考えるのです。やるかやらぬかは別ですよ。やるかやらぬかは別だけれども、警戒宣言が出た、災害救助のために自衛隊派遣を求める、同時に関東大震災級状態想定するなら、その段階治安維持上の出動命令を下すことも可能である。するかしないかは別です。そういうふうに法律的には解釈すべきだと私は思いますが、どうですか。
  12. 味村治

    ○味村政府委員 自衛隊法七十八条には、「内閣総理大臣は、間接侵略その他の緊急事態に際して、一般警察力をもつては、治安維持することができないと認められる場合には、」と書いてございます。地震が起こる可能性があるというだけでは、先ほど防衛庁の方から御説明のありました騒擾状態騒乱状態が直ちに発生する可能性があるということは言えないわけでございますし、現に発生もしていないわけでございますから、やはり七十八条による治安出動は、その段階では下命できないというように考えます。
  13. 矢山有作

    矢山委員 これまでの自衛隊の問題をめぐっての解釈経過を見ると、だんだん変わってきておる経過がありますから、それで私は特にこの点を聞いたのです。というのは、この大規模地震対策特別措置法想定されておるような地震というのは、まさに関東大震災を上回るような大災害が予想されて、この法律がわざわざつくられようとしているわけです。そうすると、そういうような大災害が起こった場合に、起こって被害が出た段階自衛隊派遣をやっておったのでは間尺に合わぬから、したがって事前段階災害派遣という形で、一つ自衛隊を出せるような道を開いたのだろうと思うのです。そうすると、同時に関東大震災経験に徴しても、ああした非常なパニック状態混乱状態が起こるということが警戒宣言段階推定は可能であるわけであります。そういう推定をするなら、治安出動下令ということもこれは緊急事態が起こるという想定のもとに可能であるというふうな法律解釈が可能だと私は思います。  あなたは現在の段階ではそれを否定されております。しかし、往々にして、先ほども最初に申し上げましたように、自衛隊の問題についての解釈というのは時を経てだんだん変わってきておりますから、あくまでも警戒宣言段階において自衛隊災害救助のための事前派遣と、同時に治安を考えての事前警戒宣言段階での派遣というものがあるだろう、こういうふうに想定をしておるわけであります。現在の段階では否定をされておりますからそれ以上は申し上げませんが、そういう法律解釈は可能であるというふうに私は思っております。  自衛隊災害事前派遣の問題、つまり警戒宣言段階での派遣の問題について、いままでの答弁は、災害に限って派遣するのだから、災害救助のために派遣するのだから、武器も持たなければ、災害救助という目的に限定をします。こういうふうに答弁をされております。しかしながら、私はこういうふうな大規模震災のときに治安問題を考えないということはあり得ないと思うのです。そうすれば、災害救助救援にもっぱら携わる部隊派遣、と同時に治安の問題を担当する部隊派遣、こういうものは当然考えられる、つまり、こういうような大規模災害において、災害救助の問題と治安対策の問題はまさに裏表の問題である、これを切り離して考えることは不可能であろう、私はこういうふうに考えております。  そこで、次にお伺いしたいのでありますが、私はそういうふうな解釈をなぜ下すかというと、この特別措置法の第一条にこの法律目的が掲げられております。「この法律は、」云々ということで、「社会秩序維持と公共の福祉の確保に資することを目的」としているわけであります。つまり、こういう大規模災害が起こったときには、社会秩序維持ということが大きな目的になっておる。社会秩序維持が大きな目的になっておる以上は、ただ単なる災害派遣だけにとどまるものではない。社会秩序維持のために事前治安部隊を出しておくことが最も効果的な問題であるということは防衛庁が一番よく知っているのじゃないですか。どうなんです。
  14. 上野隆史

    上野政府委員 まず、関東大震災級の大きな地震が起こったときに治安維持上重要なる問題が派生するかどうかという件でございますけれども、少なくも自衛隊が発足いたしまして以来の歴史を振り返ってみますと、たとえば大きな地震といたしましては御承知のとおり新潟地震がございました。当時、あの地震の大きさというものは、マグニチュードで言えばどうだったかということは失念いたしましたけれども、その規模につきましては関東大震災に匹敵するような大きなものであったと思いますが、その際にも、自衛隊があの地震が起こった直後は大規模災害派遣を行いましたけれども、治安維持上の問題というものは実は予想は余りしておりませんでしたし、また、現実にそういう問題も起こりませんでした。やはりああいう事態が起こりましたときに、第一義的に警察治安維持上の問題をお考えになりまして、そして必要があれば自衛隊の方にそういう情報はいただけるというふうに理解をしておりますし、また、現にそういうことでやってきておるわけでございますけれども、当時の事態は、新潟地震の場合にはそういう治安維持上の問題は警察でもって十分であるという御判断がございました。今度の大規模地震対策のこの特別措置法案でございますけれども、なるほど第一条の目的に書いてありますことは御指摘のように社会秩序維持という字句がございます。これをどう解釈すべきかは防衛庁、私どものいわば所掌外のことでございますけれども、少なくも地震防災派遣のこの条項規定するに当たりまして、治安維持上の問題というものをそこに絡ませて考えておるということは全くないわけでございます。
  15. 矢山有作

    矢山委員 過去の新潟地震の例を引かれたわけでありますが、新潟地震とこの東京を中心にした大震災で考えられる事態とは私は大きな開きがあるだろうと思います。したがって、新潟地震のときに治安上の問題がなかった、したがって災害派遣だけであって治安的な出動はやっておらぬということは、これは比較にはならぬだろう、こういうふうに思います。  そこで、災害派遣に際してはこれは御案内のように救援のために派遣されるのですね。ところが、今度の警戒宣言時の派遣というのは地震防災応急対策の実施のための支援ということで派遣をされるわけであります。ところが、その防災応急対策としてどういうものがあるかというと、もう御存じのように、病院や診療所等の施設の管理、物資収用等、交通の禁止または制限警戒区域の設定、当該区域への立入制限禁止または退去等の数多くの強権措置がとられておるわけであります。これに対しては罰則まで加えられております。そのことは二十一条から二十八条にわたって詳細に規定されておるのでありますが、こうした措置関東大震災級震災警戒宣言という段階自衛隊協力なしで警察だけでやれるということが言えるのか。これだけの権利の制限を伴う、しかも強権が発動されるということになれば、やはり軍警一体になっての体制がしかれなければこうした強権措置は行うことができないのではないか、こういうふうに思っているわけでありますが、いかがでしょう。
  16. 櫻内義雄

    櫻内国務大臣 自衛隊支援体制を考えましたときに、警戒宣言地震が起こる間の長くても数日、短ければ数時間の間でありますが、その間に県、市町村の立てておる防災応急対策に対して協力をするための出動要請総理がする、こういうことでございますから、その間にも矢山委員がおっしゃるような事態が全然考えられないとは私も思いません。しかし、どちらかといえば、そういう応急対策の方を円滑に行わしめる、こういう趣旨による支援でありますので、私としては、いまおっしゃるような事態のためにこの自衛隊支援が必要だということでなく、事前出動というものはあくまでも応急対策に対する支援で、その場合おっしゃるような事態が付随するかもしれぬということについては否定はいたしませんけれども、そもそもの目的は、やはり最初におっしゃった支援体制をとる、こういうことだと思います。
  17. 矢山有作

    矢山委員 そうすると、防衛庁なり法制局の言っておることと国土庁長官の言っておることとの間に微妙な食い違いができてくるのですね。だから私は法制局に聞いたのです。これは現実にやるかやらぬかは別の問題として、大規模地震警戒宣言が発せられた。しかも今度は関東大震災級以上でしょう。そういう宣言が発せられた段階で、災害救助のための事前発動をやるんだ。同時に、関東大震災経験に徴してもやはり治安の問題というのは重要な問題として考えられる。これは法律目的でも、社会秩序維持ということが明確に出ておるのですから、そうなれば、現実にやるやらぬは別問題として、七十八条をその際に動かして、そして事前社会秩序維持という任務を受けた自衛隊出動させるということも可能であるでしょう、こう言っているのですよ。法律解釈専門家がそのくらいのことがわかりませんか。
  18. 味村治

    ○味村政府委員 こういう大規模地震が起こりました際にどういう騒乱状態が生ずるか。これは、そういう騒乱状態が生じないように応急対策というものをあらかじめ決めておきましてとるわけでございますから、そういうことがないようにということで事前にちゃんと計画を立てておるということでございます。しかも、治安維持は本来警察のやるべきことでございます。警察が万全の措置を講ずるというのがたてまえでございますので、そういった事態万が一にないとは申せませんでしょうけれども、この大規模地震対策法ではそれは予想していないところである、このように申し上げたいと存じます。
  19. 矢山有作

    矢山委員 だから、万が一想定されぬことはないんだから、万が一想定すれば、やはりこれは警戒宣言段階で出せるという解釈になるじゃありませんか。そんなおかしなことを言ってはいけませんよ。法律的にぴしっとしなさいよ。後であなた、答弁が変わってきたんじゃ大変だよ、これは。
  20. 味村治

    ○味村政府委員 万が一そういうことが起こる可能性があると申し上げましたのは、地震が起こった後のことを申し上げているわけでございます。地震が起こる前の段階治安出動を命ずるということは七十八条の解釈上ない、このように存じております。
  21. 矢山有作

    矢山委員 そうすると、国土庁長官法制局解釈には微妙な食い違いがあります。しかし法制局は、七十八条の解釈運用に当たって現在の段階では、警戒宣言段階では絶対に治安出動はできない、こう言い切ったことになるのですね、そうですね。
  22. 味村治

    ○味村政府委員 七十八条の要件を満たしていない限りは治安出動の下命はできないということでございます。
  23. 矢山有作

    矢山委員 これはきわめてあいまいさが残る。これはやはり七十八条の条件を満たしておらなければという前提つきです。七十八条の条件を満たしたか満たさぬか、これを判定するのは政府側内閣総理大臣本部長であります。したがって、この点については私はまだまだ疑問は残るというふうに考えます。  そこでお伺いしたいのであります。六二年三月に陸上自衛隊東部方面総監部警視庁警備部共同研究成果を「大震災対策研究資料」ということでまとめております。その中に、「治安上の問題点」という項目のところでこういうことを言っておるのです。大震災時に「警備力の不備、手薄に乗じて集団的不法行為発生も懸念されるところである。もとよりこのような場合においては自衛隊協力を得て治安維持を図ることも当然考えなければならない」こういうふうに述べております。このことを見ると、大震災が起こったときに災害対策をやっていく場合には、これはまさに軍警一体治安警備というものを抜きにしては考えられておらぬということであります。こういう研究がいままで自衛隊の中で、あるいは警視庁の中で行われてきた。こういう経過を踏まえて、七十八条が警戒宣言段階で動いてくる可能性があるということを私は主張しているのですよ。こういう研究をやっているでしょう、防衛庁
  24. 上野隆史

    上野政府委員 ただいま御指摘の文書につきましては、ちょっと私、はっきりした記憶はございませんけれども、従来警察自衛隊とは、たとえば擾乱事態に関しまして種々の打ち合わせ、検討会等も開いていることは事実でございます。またそのための協定治安出動のときの協定等も、これは大分古いものでございますが、はっきりした協定もございますし、これは国会でもるる御説明申し上げているところでございます。大震火災が起こりました際の治安の問題につきまして警察は大変御心配でございまして、これは職掌柄いわば当然のことであろうと存じますが、その際に自衛隊がどういうことをするかということにつきましては大分以前につくりました警察との協定がございます。これは大震火災対象とした協定ではございませんで、一般的な治安出動的な事態が起こった場合の自衛隊役割りと申しますか、警察との役割り分担といったものを協定したものでございます。これにつきましては、これも従来国会でしばしば御説明申し上げておりますけれども、まず警察が第一義的にその事態対処に当たりまして、自衛隊は、一言で申しますれば、支援後拠の仕事をやるということから発するということになっております。警察力をもってしては全く対処ができないという事態になりまして初めて自衛隊がその騒擾の前面に出ていくという基本的な考え方でございます。
  25. 矢山有作

    矢山委員 警察自衛隊との協力協定があるということは私も承知しております。その協力協定は、当初の協力協定がたしか六九年秋ごろだったかと思いますが、さらに改定をされて、平常時においても自衛隊警察とはお互いに協力支援し合うというような方向に変わってきておるということも私は承知の上でこの問題は質問しておるわけです。したがって私の質問の基本的な立場は、こういう大震災害が起こったときには災害救助社会秩序維持という、治安維持というものが切り離せない形で出てくるということを私は考えながらいまの質疑をやっておるわけです。  そこで、もう一つこういうこともある。先ほど言いました「大震災対策研究資料」の中にこういう部分もあるのです。その中に「集団的不法事犯発生」というところがありますが、そこを見るとこういうことが書いてあります。「大震災発生した場合は」云々とあって「混乱に乗じて思想的な背景を持つ特定団体等大衆を動員して、国会政府機関東京都その他に請願、陳情等の挙に出ることも予想され、勢いのおもむくところ集団的不法行為をなすことも予測され、治安上最も重視しなければならない問題である。」こういうふうに関東大震災研究成果として考えておるということが述べられておるわけであります。またこういうことも言っております。「ごく一部の分子の指導なり扇動によって大衆行動に出る危険性があり、」云々「そして、米よこせ運動、水よこせ行動に出ることも予想され、みずからの要求が満たされなければ、物資貯蔵所の襲撃、略奪、暴行等不法行為を敢行することも予想される」として、視察警戒、民心の動向把握対象物警戒及び取り締まりの強化を図るとともに、現行法令のみでは不十分なので、あらかじめ必要な法令を定めておくことの必要性指摘されております。こういうところから見て、私がくどいほど言っておる、大震災時における治安対策というものは、災害救援とともに欠くべからざるものとして、不離一体のものとしてとらえられておるということであります。そのことを申し添え、さらにそうした検討の中でこういうことも言われております。こういう社会秩序を守っていくその体制強化については「通信の被害から来る手配の不能、道路損壊によるパトロールカーの現場到着の遅延、緊急配備配置場所及び方法の修正等警察活動上困難な問題がある」こういうふうに指摘されておるわけであります。つまりこういう大震災害のときには事前に手配しておかないとなかなか災害対策もやれなければ、治安対策もやれないんだということが反省として関東大震災検討の結果生まれておるわけであります。このことは、こういう大震災が起こるということを想定した警戒宣言段階で、災害のための派遣治安のための派遣社会秩序維持のための派遣というものが相伴うものであるということを私は言っているわけであります。それが相伴うとするならこの七十八条というものがその場合に生きてくるのではないか、こういうふうに私は言っておるので、何も根拠のないことで議論しておるのではない。あなた方防衛庁があるいは警察検討された過去の検討結果を踏まえて私はそのことを質問しておるのであります。だから一概にこれを私は現在の段階で、実際に騒乱状態が起こらなければ治安部隊は出ないのだということだけで、ああそういうことになりますかと言ってなかなか引き下がれない、こういうように私はあなた方の答弁の中に大きな疑問を感じておる。特に法制局なり防衛庁国土庁長官とのいまの答弁の微妙な食い違いを考えるときに、私はその疑いをますます大きくするということであります。いかがですか。
  26. 櫻内義雄

    櫻内国務大臣 私の答弁をどうおとりになったか、矢山委員は何か食い違いがあるというふうにお感じになったようでありますが、いまお願いをしておる法律のたてまえは、県なり市町村の立てておる応急対策に対しての事前支援、こういう範囲のものでございますから、それはそれなりにおとりをいただきたいと思うものであります。自衛隊法の七十八条あるいは七十九条の点につきましては、先ほどからそれぞれ担当官からはっきり申し上げておることでございまして、あくまでも関東大震災のような事態というものはこれは発災後のことであって、それで発災後に緊急の事態があれば第八十一条の要請をする、都道府県知事が要請をする治安出動総理大臣がどう判断をするかという順序で行われるものではないかと思うのであります。  今回の立法でぜひお願いをしたいのは、自衛隊行動としての災害派遣の事項がありますが、しかしその災害派遣の事項に伴っては事前出動ということがありませんから、それをお願いしておるわけで、私なりの解釈でいけば、この自衛隊行動、防衛出動には防衛出動の待機命令命令による治安出動には治安出動の待機命令があるわけですが、災害派遣の方には災害派遣の待機命令というものがございませんし、事前派遣の困難性があるので、また予想される関係県の知事さんからせっかくの立法であればこの際事前派遣もひとつ考えてもらいたいということにこたえておるわけで、この事前派遣については携行の武器類についてもそういうものは考えない、治安出動との混乱はさせない、こういうたてまえでおることを御理解いただきたいと思うのであります。
  27. 矢山有作

    矢山委員 もっと細かい点が言いたいわけでありますが、時間がありませんので、一応私がこういう警戒宣言段階災害対策治安対策が表裏の関係で出てくるということをあくまでも主張するその根拠をもう一つ申し上げておきたいと思うのです。  これは「関東大震災から得た教訓」というので陸上幕僚監部第三部が三十五年の三月にまとめた資料でありますが、この中を見ると、もう中身は言いません、項目だけ言っておきますが、一つは「治安維持に関連する法規体系の完成について」という項目でいろいろ言っております。次に「国及び地方公共機関の活動について」という項目でいろいろ言っております。また「大規模な破壊に対する心構えの確立について」ということでいろいろ言っております。「関東大震災から得た教訓」のこれらの条項、中身を読んでみると、関東大震災級災害のときには治安災害救助、これが切り離せない形で解説をされておる。このことを指摘しておきたいと思うのであります。したがって、そういうような大災害に際して災害救助治安の問題が切り離せないという関係にあるだけに、警戒宣言を発した段階災害派遣に限った部隊これはおっしゃるように災害派遣部隊は火器を携行しないでしょう、災害救援のために出るという形をとるでしょう。しかし、同時にそれは治安の問題を考えた治安部隊出動もあり得るのだということを裏づけておるものであるということを私はこの際は指摘をしておきたい。あなた方はあくまでも、警戒宣言段階では治安部隊は出さない、この七十八条の解釈によっては警戒宣言段階治安部隊は出せない、こうおっしゃるのでありますから、いまのところは私どもはそのあなた方の答弁を受けておきます。そしてその答弁が未来永劫に変わることのないようにお願いしたいと思うのであります。自衛力の限界に見られるように、そのときどきの状況で変わっていったんじゃこれはたまらぬ話、そのことを申し上げておきます。  そこでひとつお伺いしたいのは、三十六条以下において、救助業務への協力命令物資等の保管命令物資の所在する場所等への立ち入り検査、交通の禁止または制限警戒区域への立ち入り制限禁止、または当該区域からの立ち退き命令に従わなかった者等々に対して罰則を科しておるのであります。ところがこういう事態に対して罰則を科するというのは、災害対策基本法にはあります。それは災害が起こった段階でそういうような規制措置に従わない、命令に従わない場合に罰則をかけることになっておる。しかしながらこの場合は警戒宣言段階であります。いまの地震予知の能力をもってすれば、この警戒宣言が当たるか当たらぬか、悪く言うなら当たるも八卦当たらぬも八卦であります。そういう警戒宣言段階でこういう大きな国民の権利に対する制限をやって、そしてそれに対して罰則をかけていくというのは行き過ぎではないか。事態が実際に起こった段階でその命令に従わないからといって罰則をかける、これは現行法いわゆる災害対策基本法にもある。これはわかります。しかし、警戒宣言段階でその規制に従わぬからといって罰則をかける、もしそれが空振りに終わった場合には一体どうなる。空振りに終わった場合の補償措置というものは明確になっておるのですか。三十条を読んだ限りでは、その場合の補償措置が明確になっておるということは私は言えないと思う。そうすると、補償措置すら明確にしないで、当たるも八卦当たらぬも八卦の警戒宣言段階でこういう強力な強権発動をやって、それに従わなければ罰則をかけるというのはいささか行き過ぎではないかと思いますが、いかがでしょう。
  28. 四柳修

    ○四柳政府委員 御指摘の罰則の点でございますけれども、今回の法律案で四カ所ございます。第二十七条に規定する協力命令、保管命令に従わなかった場合、あるいは立入検査を拒み、妨げまたは忌避した場合が一点。それから警戒宣言が発せられた場合に交通規制に従わなかった場合が二点。三点目が、警戒宣言が発せられた場合に、危険防止の見地から設定される警戒区域からの退去命令等に従わなかった場合。四点目が、地震に関する防災信号を乱用した場合。そのうち一点と三点でございますけれども、これは地震予知が外れた場合にも罰則で担保いたしませんと、再び地震予知が行われた場合にその実効性が保たれないという見地からでございまして、やはり発災時にそういった点は非常に重要な防災対策でございます。それから第二番目の点は、警戒宣言が発せられた段階で避難等が実施されるために、これに必要な規制にほかならず、地震予知が外れるかいなかにかかわらずやはりその実効性の担保が必要でございます。最後の点でございますが、罰則で担保いたしませんと住民等に対し無用の混乱を起こし、乱用する危険性がございますものですから、その点につきましても規定を設けたわけでございます。
  29. 矢山有作

    矢山委員 答弁一つ抜けておりますが、補償措置がきわめてあいまいです。そういう中で強権を発動して罰則をかけるというのは行き過ぎではないかと私は言っているので、その肝心なところを答弁してください。もう時間がないから、残念ながら次に移りますが、そこに問題点一つある。  それからもう一つ問題点は、この法律を読んでみると政令委任事項がきわめて多い。この法律を読んだだけでは一体これがどういう形で動いていくのかというのがわからない。ほとんどが政令に委任されておるのであります。そこで私は、政令においてはどういうことを規定するのかひとつお知らせ願いたいと言ったら、こんなものが来た。見ると、それぞれの政令の中身においてどういうことを規定するのだということは一切ないわけです。そうすると、この法律というのが一体どういう形で動いていくかということはすべて行政権限に任された形になっておるわけであります。これは私はきわめてけしからぬと思う。まさに国会法律審議に対する意識的な妨害であると言わざるを得ないと思うのです。その政令の中身すらわからぬ。あなた方はまだわからぬというのだ。これから考えるというのだ。これから政令の中身を考えるという段階で、この法がどう動くかわからぬという状態の中で、何でこの審議を急ぐのか。十分政令の中身を明らかにして、この法律はこう動くのでありますということをわれわれに知らせなければ審議にならぬじゃありませんか。この点どうなんですか。
  30. 四柳修

    ○四柳政府委員 ただいまの矢山委員から御指摘の点でございますけれども、政令としてどういう事項を規定するのかという御要望でございましたから、包括的な表現で資料でお届けしたわけでございます。その中身につきまして、関係省庁等とまだ具体的な企業の規模別ですとかを詰めていない点があるものですから、そういった細かい点は特に決まっていないので包括的な表現で御連絡申し上げたわけでございまして、特に他意があってそういうことをしたわけでは毛頭ございません。
  31. 矢山有作

    矢山委員 であるとするなら、政令事項を決められた後に慎重な審議をなさっていいのであって、何もどう動くか中身のはっきりしない法律をそのまま早く審議して早く成立させてくれといって急ぐ必要はないであろう、こういうふうに私は思っておるわけであります。  そこで、もう一つどうしてもこの際お伺いしておきたいことがあります。それは自衛隊法八十三条の災害派遣の問題に絡んで、自衛隊災害派遣に関する訓令第九条というのがあります。「指定部隊等の長は、災害に際し被害がまさに発生しようとしている場合において、災害派遣要請を受け、事情やむを得ないと認めた場合は、部隊等を派遣することができる。」こういうふうになっておりますが、これは災害発生の時点ではありません。災害発生前の段階でそういうような訓令がつくられておるということであります。  そこで、一体これはどういうふうに解釈をすべきなのかということを私はお伺いしたいのであります。この訓令に関連して防災業務計画というのがつくられております。改正がなされておりまして最終的に決まったのは四十九年十二月だと思いますが、この防災業務計画の中ではいまの訓令第九条に対応するものは、予防派遣という形でこれが述べられておるわけであります。予防派遣は「指定部隊等の長は、災害に際し被害がまさに発生しようとしている場合」です。発生してはおりません。発生しようとしている場合に、都道府県知事等から災害派遣要請を受け、事情やむを得ないと認めるときには、予防派遣という形で派遣できる、こうなっておるのでありますが、これはいかに解釈したらいいのでしょう。
  32. 上野隆史

    上野政府委員 お答え申し上げます。  御指摘自衛隊災害派遣に関する訓令と申しますのは、自衛隊法の第八十三条に規定してあります災害派遣のための細部規定でございます。したがいまして、その要件は自衛隊災害派遣に関する訓令の中身はすべてこの自衛隊法の八十三条の要件の中にあるものだけでございます。  そこで御指摘の本訓令の第九条、予防派遣でございますが、この規定を読み上げますと、「災害に際し被害がまさに発生しようとしている場合において、災害派遣要請を受け、事情やむを得ないと認めた場合は、部隊等を派遣することができる。」こう規定してございます。  一方、自衛隊法の第八十三条におきましては、都道府県知事その他政令で定める者の要請によりまして「天災地変その他の災害に際して、」災害派遣するということが規定してございます。この「際して、」と申します意味は、災害が現に起こった場合はもちろんのこと、その直前、たとえば災害が起こることが合理的に判断されるような事態、たとえば水源地におきまして大雨が降っておる、水位が刻々上がってきておる、上流ではすでに堤防の決壊する事態が起こった、ここの堤防も地割れを生じてきたというような場合に、要請を受けて、そしてその堤防の土積みをするというようなことを規定しておるわけでございます。したがいまして、この災害派遣に関する訓令第九条におきましても、災害派遣要請を都道府県知事等から受けて初めて出るということで、自衛隊が独自に判断をして出るという道はございません。  一方、自衛隊法の八十三条二項のただし書きにおきましては、天災地変その他の災害に際し、その事態に照らし特に緊急を要し、都道府県知事からの要請を待ついとまがないと認められるときは、その要請がなくても、部隊等の長は部隊派遣することができるという規定がございます。この規定は、災害派遣に関する訓令におきます予防派遣について要請なしに出られるということは、予防派遣という事柄の性質上適当でないということでもって、災害派遣要請を受けて初めて出るというふうに規定しておるわけでございます。
  33. 矢山有作

    矢山委員 いずれにいたしましても、八十三条そのものの解釈からいうなら、災害発生した時点において、要請を受けあるいは自衛隊の方の判断で、災害派遣ができる、こういうことになっておるのが八十三条だと思うのです。ところがそれが、訓令で予防派遣が可能である、こういうふうになされておるということは、これはまさに私は八十三条の防衛庁の拡張解釈であろう、こういうふうに考えておるわけであります。こういう拡張解釈防衛庁が勝手にやるということはまことにけしからぬ話だと私は考えておりますが、この訓令で、予防派遣というものが規定をされ、あり得るんだということは明らかになっただろうと思います。しかしそれは、私に言わしむれば、間違った防衛庁の拡張解釈であります。  次に、これで最後にいたしますが、第三十三条に「科学技術の振興等」として「国は、地震発生を予知するため、地震に関する観測及び測量のための施設及び設備の整備に努めるとともに、地震発生の予知に資する科学技術の振興を図るため、研究体制の整備、研究の推進及びその成果の普及に努めなければならない。」としてありますが、これはまさに訓示規定であります。地震予知のための観測体制の整備等は、これまでの答弁で明らかになっておりますように、測地学審議会で第四次の地震予知計画研究しておるので、その建議を受けて検討するという段階であります。予知体制の充実は今後に残された問題である、何ら具体的なそれに対する整備の目安、充実強化の目安はこの法案上には出ていない。その上、本法の運用上重要な先ほども指摘した政令の中身もまだ明らかになっておらぬ。そういう状態の中でなぜ本法の成立を急ぐのか、私はこう考えます。本法が成立してみても、観測体制の整備にも国土防災機能の向上にも何一つ役立つものはない。本法にあるのはただ総理を頂点とした非常体制秩序維持強権発動のみである、こう断定して私は差し支えないと思うのであります。これは地震対策のための特別立法という名に値しない、まさに地震対策という名をかりて治安体制強化を図っておるのだ、こういうふうに私は考えざるを得ないと思います。  しかもこの関連で重要なのは、三十二条に、「強化地域に係る地震防災訓練の実施」ということがあります。したがって、災害対策を名にして治安体制強化のための訓練がこの法律を通すことによって大っぴらに行われる、こういう道が開ける。いわゆる災害対策はイコール治安対策である。そういう訓練を常時大っぴらに行うことができる。これはそういうことに道を開いた法律であると私は考えております。まさにけしからぬ話なんだ、これは。地震対策をやるというのならまともに地震対策をやらなければいけませんよ。地震対策に籍口して、災害対策に名をかりて治安体制強化を図るなどというのはもってのほかだ。どうなんですか。
  34. 上野隆史

    上野政府委員 災害派遣、予防派遣でございますが、これは繰り返しになりますけれども、自衛隊法の八十三条の一項で規定しております「天災地変その他の災害に際して、」自衛隊災害派遣に出ていくということは、災害発生してから後だけではなくて、災害発生が眼前に迫っており、そのままでは人命または財産に被害を生ずることが客観的に見て明らかに認められる場合を含むという解釈でございまして、もしそういうことを放置いたしますれば、これは災害派遣条項規定そのものの意味がなくなると申しますか、そういう事態におきましては運用の点からいってまことにぐあいが悪いということでございます。過去もこの規定を使いまして、先ほど例に挙げましたのが典型的な例でございますが、都道府県知事等の御要請によりまして堤防の土積み等はしておるわけでございます。
  35. 矢山有作

    矢山委員 これで終わりますが、時間の制約があって、きわめて重要な問題について徹底的な詰めができないというのはまことに残念な話であります。私は幾多の疑問を残しながら、このままの状態ではこの法律案に賛成ということにはまいらぬということを明らかにして、質疑を終わりたいと思います。
  36. 川崎寛治

    川崎委員長 広沢直樹君。
  37. 広沢直樹

    ○広沢委員 これまで災害対策につきましては、災害対策基本法がございまして種々対策が講ぜられてきておるところでありますが、発生時のはっきりしない地震等に備えての事前の応急処置をとる法的根拠がいままでになかった。したがって、いわゆる大震法が検討されるということは一歩大きな前進ではないかと一応評価するものであります。  そこで、いままで多くの議論がなされてまいりましたが、一応確認の意味も含めまして各省にそれぞれ質問をいたしたいと思います。時間の関係がありますので、一々やりとりをしていると時間がございませんから一括して各省にお伺いしますので、準備をして順番にお答えをいただきたいと思う次第であります。  まず、防衛庁にお伺いをいたしたいと思いますが、これまでの災害に対する自衛隊の活躍、これについては関係者のみならず多くの方々が敬意を表しているところであります。自衛隊災害派遣は、自衛隊法第八十三条あるいは九十四条または訓令の第十四条等に基づいて行われてきております。これは災害発生後ないしは明らかに危険が予想されるものについて限定されて活動してきているわけでありまして、いわゆるその行動目的が一応明確になっているものである、しかもそれはいわゆる都道府県知事の要請により十分な打ち合わせが行われた上においてこのことは実行されてきている、したがって、都道府県知事の要請なしに独自の判断で出動したことはいままでにない、このようにも伺っております。今回の大震法十三条の二項によって自衛隊法八十三条の二が設けられ、総理すなわち警戒本部長要請事前出動が行われることになっているわけでありますが、私も大災害に対するこういった処置は一応必要であろう、このように考えるものであります。  しかし、事前出動は不測の事態に備えるものでありまして、災害状況で機動的にあらゆる事態に対応しなければ意味がないと思います。そこで、それはあくまでも防災基本計画に基づいて行われることは当然であるとしても、限定的な行動をあらかじめ定めることは困難であろうと思われます。そこでいろいろな意味、たとえば治安出動と混同されるのではないかという危倶も生じてくるわけでございます。少なくとも治安のためのいわゆる抑止力といいますか、すなわち武器の携行等を禁止するなど、明確な規定事前出動の場合にもなければならない。いままでの答弁では治安出動にはならないということは一応お答えいただいておるわけでありますけれども、災害が起こった後の出動について、これまでの出動については訓令の十四条等もございましてその規定がはっきりいたしております。これからその点についてどのように明確になされようとしているのか、お答えいただきたいわけであります。今回の場合は、総理要請出動ができるとだけ規定されておりまして、その後のことは、事前の問題については何ら規定がございません。訓令の十四条そのものは、災害派遣の場合については武器を携行しないものとするとなっておりますが、ただし書きで特に必要なときは武器の携行を一応決めております。こういっただし書きは、事前出動でありますから必要はないのではないか、このように思われますので、規定を明確にしていただきたい。現在の解釈では、事前出動は準備体制であって、災害が起こった場合に災害派遣行動をとるについてはこれまでの法律を運用するということになるわけでありますが、大震法で決めております事前出動については、災害が起こった後と事前とを区別している以上は、やはり規則というものを明確につくる必要がある。その点についてどのようにお考えになっていらっしゃるか、ひとつお伺いしたいと思います。  それからもう一つは、防衛庁の「防災業務計画」によれば「災害派遣計画をあらかじめ作成する。」ということになっておりますが、この計画についてはどのようになっておるのか、御説明をいただきたい。  さらに同計画によると、訓練としてその「特性に応じた各種災害救助訓練を行う。」となっております。いままでに何回、どのような方法で行われてきたのか、お答えをいただきたい。この場合の「訓練」というのは独自で行う訓練なのか、あるいは関係機関との協同訓練を意味するものなのか、その点もお答えいただきたいと思います。ただ、業務計画の中には、一応災害救助訓練ということと、関係機関との協同訓練ということと、二項目に分けて載っております。いままで聞いていることでは、私はその訓練といえども、あくまでも一応関係機関と連絡をとった協同的な訓練の意味にとっておりますけれども、業務計画の中では二通りの書き方をしてあるということは、独自の訓練もあり得るのではないかという解釈ができますが、その点についても明確にしていただきたい。たとえ武器を持たなかったとしても、訓練と称して独自の訓練が再々行われるということになれば、治安その他を想定して幾らでも行動訓練ができるという見方もできるわけであります。そこでやはり協同訓練に限るべきではないか、特に災害対策のための訓練は総合的連携が最も重要な問題でございますので、その点を明確にする必要があるのではないかと私は思うわけであります。  それから次に、国土庁にお伺いをいたしたいと思いますが、昨年発表しました第三次全国総合開発計画、いわゆる三全総では、防災についてどのような取り組みをする姿勢になっておるのか。その中で一部分でありますが、災害危険度の高い地域では木造建築物の建築制限を図るべきだと提言をいたしています。これは国民の合意がなければ、または国民の防災に関する意識の高揚というものが相連携して行われなければ実効性はないのではないか。必要性は当然のことでございますが、ただそれを文章化しているだけではどうにもなりませんので、その点の見通しについてもひとつお答えをいただきたい。  それから、本法案中に強化地域の指定のあり方について、強化地域は総理が指定することになっておりまして、都道府県知事の意見あるいは市町村長の意見を聞くという体制には一応なっておりますが、具体的にはどのような基準でどこが立案するのか、その点を明確にしていただきたい。と申しますのは、予知連の萩原会長もあるいは判定会の委員であります力武教授も、この問題は今後詰めなければならない問題であるというふうに指摘をいたしておるからであります。強化地域は目下東海地方、あるいは南関東は一応話題に上っておるわけでありますが、その他の地域についてはどうなるのか。観測体制が不十分であるのでその他の地域についてはわからないのか、それともその他の地域については現在全くその必要がないと判断をしておるのかどうか。もしも観測体制がまだまだ十分でないとするならば、今後の計画はどういうふうになるのか。この法案における強化地域の指定というのはまず第一番に重要な問題でありますので、気象庁の関係にも多少なるのかもしれませんが、どちらからでもこの点明確にしていただきたいと思います。  予知体制の一本化が強く主張されております。これは参考人の意見もそのとおりでございますし、いままでも論議されました。その際国土庁長官は、研究機関はそれぞれ分かれておってもよいのではないか、そして予報といいますか、そういうものが一本化される必要があるのではないかというお話でございます。研究機関は確かにそれぞれの専門分野がありますから、基礎研究がそれぞれの機関に分かれておっても当然ではないかと思いますが、そういったものをどこか一カ所に集約する、そしてそこで専門的結論を出す、さらにそれに基づいた観測体制から上がってくるデータも集約してそこで結論を出す、そういう二本のきちっとした体制の整備を今後する必要があるのではないか。その点について御意見をお伺いしておきたいと思います。  それから国土庁に伺いたいもう一点は、判定会の法的立場といいますか、こういったことも必要ではないかと思います。最も重要な部門であります判定会、予知連が一応私的諮問機関という形に相なっておりますが、この法案が実効的な活動をするについてはこういった予知体制が一番重要であるという以上、それを判定しあるいはまた専門的結論を出す予知連について何らの法的立場の規定もないということはいかがかと思います。本法案には行政の範囲に含まれず、そういう意味では大骨が抜けたように考えられるわけであります。責任はともかく、権威ある立場において法的裏づけが必要ではなかろうか。本法の三十三条に国の責務として科学技術の振興を挙げているにすぎません。本法案が成立したら予知連、判定会によってこれが実際に運用せられるわけでありまして、実効を明確にするためにも法的根拠を明確にする考えはないのかどうか、その点についてもお伺いしておきたいと思います。  次に、文部省にお伺いをいたしておきたいと思います。  予知体制の整備について、先ほどのにも多少関連しますが、測地学審議会が文部省の所管になっております。その地震予知の推進に関する年次計画、いままで一次、二次、三次と提言がございまして、五十四年から第四次の作業にかかることになっているようでございますが、これは地震防災の基本問題でありまして、科学技術庁に五十一年十月に予知推進本部ができておりますが、そこで総合的研究の集約と体制づくりがなされることになっております。やはりこういった複雑な機構、体制というものは整備されてしかるべきではないかと思うわけであります。  と申しますのは、測地学審議会でこのようなことを取り扱うことになった経緯については、測地学審議会が設置された昭和二十四年五月、当時いろいろな提言などがございますが、その中で、地球物理関係業務というのは多くの機関によって分担されて業務が重複しているものあるいは業務の境界の明確でないものが多いという指摘がありまして、「強力なる連絡調整機関を設置すること。例えば内閣直属の委員会を設置するか、又は取敢えず文部省測地学委員会を改造して利用すること。」こういうような具体的提案がなされております。したがって、この点については、一本化が叫ばれている今日、やはり体制を整備する必要があるのではないかと思われます。これは何も文部省の測地学審議会のことだけではなくて、通産省の工業技術院地質調査所ですか、こういった問題もそれぞれ関連をしていると思いますが、時間の関係でここにしぼってお答えをいただきたいと思います。もちろん、これを検討するということになりましたら全機構を検討することに相なるだろうと思いますので、その点もあわせて御答弁をいただきたいと思います。  次に、科学技術庁にお伺いいたしますが、科学技術庁にはいま予知推進本部が設置されております。政府には一応取り組む体制というものはできておりますが、いま申し上げましたような関連で、予知推進本部いわゆる科学技術庁にこういった体制を統括することは事実上無理であるのかどうか、その点についてお答えをいただきたいと思います。  なお、つけ加えて、昨年専門家による技術予測調査が科学技術庁から発表されております。それによりますと、マグニチュード六以上の地震を一カ月以内の精度で、府県別程度の範囲内で予知できる技術が開発されるとするならば二〇〇〇年以降と見ているというような記事が出ておりましたけれども、事実その点の研究はなされ、そういったことが発表されていることは認めていらっしゃるのかどうか、その点も加えてお答えいただきたいと思います。  次に、気象庁にお尋ねいたします。これまでの体制上防災気象官はありますが、今回いわゆる地震防災官を一応配置したと言われております。これは当然必要であろうと思われますが、地震予報官制度の創設もあわせて必要なのではないだろうか。予知連の方でもそういったことは指摘をいたしておるわけであります。現在東海地域判定会がありますが、これは大学の地震学者六名によって構成されております。それを受けて気象庁長官が報告を総理大臣にし、総理大臣は警報を発令することになっているわけであります。したがって、予知連の萩原会長から、観測データが集中する気象庁に予報官を置いて常時待機できる体制が必要だというような指摘もございます。本法は大地震の予知は一応可能という前提に立って立案されているものであり、この段階では当然これは必要なことではなかろうかと思うわけでございますが、その点についての御見解を伺いたいと思います。  それからもう一つは、参考人に私がお伺いしたときにお答えがあったのですが、マグニチュード八の地震は予知できる、一〇〇%ということはむずかしいわけでありますが、大体それを想定しておりまして、それ以下というものは技術的進歩を待たなければできないということがいままでの答弁であります。ところが、参考人として出席された鈴木教授は、観測網さえ充実しておれば可能だと言われました。これは技術というよりやはり体制の問題じゃないかと思われるわけでありますが、その点についての御見解をひとついただきたいと思います。  それから、あと自治省の消防庁と建設省にお伺いいたしますが、消防庁には、地震災害地震そのものよりも火災あるいは津波等、第二次災害が多くの被害を出していることは、いままでの例で証明されているわけであります。そこで、すでに予知連では観測について特別強化地域を東海、南関東に指定しているわけでありますが、そこに限定してお尋ねいたしますけれども、地震による各自の火の始末については基本中の基本であることは言うまでもありません。しかし、消防法による違反建築物等の状況はどういうふうになっているのか、整備されているのか。いままでにも火災で、あるデパートがそういうことが不備であるために焼死者を出したとか、あるいは飲食街においてもそういう例が多々あります。したがって、強化地域に指定されることになりますれば、早急にそのことは問題があるとするならば整備しなければならないと思いますが、その取り組みについてどうなっているのか、今後の対策はどういうふうになさっていかれようとしているのか。たとえば、避難路あるいは避難地周辺の不燃化の促進ということも考えていくべきではないかと思いますので、この点についてのお答えをいただきたい。  最後に、建設省にお伺いいたしますが、備えあれば憂えなしと通常言われておりますが、現状の対応と長期的対策についてお伺いしたいと思います。  一昨年、財団法人の日本都市センターが「都市防災の現況」について報告書を発表しております。その中で「これまで国や自治体の地震対策は、大地震が起きた後の対症療法に傾き、都市計画全体としての連携と調和を欠き、都市は年々地震に対する安全性を弱めてきている。」と指摘しております。これは何もこの報告を待つまでもなく、関係者は一様にこういったものについては同じ意見であります。そこで、いわゆる防災都市づくりについての現状の対策と今後の方針について御説明をいただきたい。  なお、関東大震災のような大災害を二度と繰り返さないようにしよう、こういうことで十八年前に防災の日というものが設けられて、一応そういう意識の高揚を図っているわけでありますが、その後の都市構造というのは、御承知のように伊豆の地震でも示されましたように、防災への脆弱化、都市の脆弱化といいますか、その一途をたどっておりますが、明確な都市づくりへの防災の位置づけを盛り込んだ計画というものを立て、推進していくべきであろうと思いますので、その点についてのお答えをいただきたいと思います。以上であります。
  38. 上野隆史

    上野政府委員 お答え申し上げます。  まず、災害派遣のための訓練でございますけれども、自衛隊におきます災害対処のための訓練といたしましては、陸上自衛隊の場合を例にとりますと、年間約百回程度実施しておりまして、人命救助とか救護、人員、物資の輸送、通信、消火、交通路警戒、給水、給食等について演練をいたしております。これらの訓練は、その事柄上、地方公共団体等関係都道府県あるいは民間等とも関係するところが非常に大でございますので、そこら辺との調整を十分とりつつ、それらの方々との協同訓練といった形でやるのが主でございます。たとえば、昨年の例でありますと、中京地方で「しゃち演習」というニックネームをつけてやったものもございますし、また大阪地方では「なにわ演習」というニックネームをつけてやったものもございます。  それから武器でございますが、御指摘のように、現在の自衛隊災害派遣に関する訓令の第十四条におきましては「派遣部隊等は、火器及び弾薬を携行しないものとする。ただし、救援活動のため特に必要がある場合は、最少限度必要とする火器及び弾薬を携行することができる。」こう規定しておるのは御指摘のとおりでございます。このただし書きの趣旨は、火器本来の目的、すなわち人員の殺傷等を目的とする使用ではございませんで、いままでの例で申し上げますと、雄洋丸が火災を起こしまして東京湾から房総方面に航行の自由を失って流れ出しておる、それをいわば撃沈すると申しますか、沈めるための火器の使用、あるいは谷川岳におきまして人が宙づりになっておる、生きておるか死んでおるかわからないけれども、しかし万が一生きておるということを想定いたしまして、災害派遣として出動いたしました部隊が銃でもってその索を切るということのために使う、そういうことを予想しておる規定でございます。  今回お願いいたしております防災派遣におきまして、新しい訓令が必要であるということは私どもも考えております。その場合に、武器の使用に関しましては、私どもは必要がないと考えております。この災害派遣の訓令にありますような意味ですら必要がないのではないかと考えております。御承知のとおり、災害派遣の場合も防災派遣の場合も、自衛隊が武器を使用する根拠は自衛隊法規定されておりません。今回の法律案にもありません。治安出動、防衛出動の場合には、警職法七条等を利用いたしまして武器使用の権限が明示されておりますが、今回の場合は権限がございません。したがいまして、武器の使用ということも当然予想はしておりませんし、防災派遣の場合には、武器を携行することすら必要がないのではないかと考えております。  訓令の書き方につきましては、今後内部で相談、検討してまいりたいと存じますけれども、必要のないものはそういう形での規定の仕方になると存じます。
  39. 福島量一

    ○福島(量)政府委員 お尋ねのうちの三全総関連のものについてお答え申し上げたいと思います。  御案内のように、わが国は火山活動が非常に活発でございますし、また地震多発地帯に属しておる、さらには台風常襲地帯に属しておるということでございまして、それに加えて開発が非常に進んだ、一方保全の方がやや立ちおくれておるというような関係で、国土全体が災害に対しまして非常に脆弱な構造を持っておるということは言えるかと思います。三全総ではそういう指摘に立ちまして、その基本的認識の上に各般の防災対策の樹立を強調しておるわけでございますが、先ほどお触れになりました点は、その中で特に「大都市の防災性の向上」というくだりの中に、特に大火災対策の一環として、密集市街地で非常に危険度の高い地域については木造建築の制限を図るというようなことも、防災対策の一つの今後の課題として検討をしてみる必要があろうということを実は提言をしておるわけでございまして、これが実際に具体化してくる過程におきましては、当然立法その他の措置も伴いましょうし、したがって御指摘になりましたような国民の合意ということの中でそれを推進していくということは当然のことかと考えております。
  40. 四柳修

    ○四柳政府委員 強化地域の指定の手続、基準等についてまずお答え申し上げます。  本法が施行されますと、直ちに内閣総理大臣が中央防災会議にこの強化地域の指定の諮問を行います。この場合に、中央防災会議には、先ほど御指摘がございました予知連の先生方等を含めました地震専門家からなります専門部会を設けたいと考えております。その先生方の御意見を承りまして、大規模地震発生するおそれが特に大きい地域につきまして調査、審議していただきまして、その地域で大規模地震が起きた場合に著しい被害が生じる地域を答申いただく、それによりまして関係県知事、市町村長に対しまして中央防災会議の事務局として私どもの方が聞く形になろうかと思います。そういう形で先生方の御意見も承りますし、それらの関係が詰まるかと思います。  それから、その点につきましての観測計画の点につきましては、気象庁の方からお答え申し上げます。  それから、次の予知体制あるいは判定会等の御指摘がございましたが、再々長官の方から御答弁申し上げたとおりでございますけれども、いまの御意見にもございましたように、研究機関が基礎研究を続けてきて、それらをいわば長期的視野の場では予知連の場でいろいろ先生方に御討議いただきまして御検討いただく。短期的な問題につきましては、オンラインの観測結果というものを気象庁の方に集約いたしまして、それを常時観測して、判定会の先生方が異常を御判定になる。一応長期的視野も短期的視野の場合も、いまの段階では御指摘のような専門家でその観測結果について集約的な討論をするという形は一応とられているかと思います。  なお、判定会の立場云々という御指摘がございましたが、この法律ができませんと、判定会の先生方が判定会の立場で御発表なさって、それが現在の気象業務法の十一条に言うような形で流れますけれども、この法律ができますと、御案内のように九条で気象庁長官がそれを気象庁の業務としまして受けとめられましてそれを総理大臣に御報告いただく。そういう一応一歩前進した形になりますけれども、その他の問題につきましては、やはり測地学審議会等の御建議等がございました場合に、いまの御指摘のような点をどう位置づけるかという点もまたその段階検討いたしたいと思います。
  41. 佐伯宗治

    ○佐伯説明員 御説明いたします。  地震予知推進本部の任務でございますが、これは、一昨年東海地震説が流れたときに、学者サイドから行政側の対応がないではないかという痛烈な御批判もございました。防災関係には中央防災会議という機関がございます。それをまねたわけでございますけれども、関係省庁の連絡協議機関といたしまして地震予知推進本部というのが閣議決定で設立されたわけでございます。今回の特別措置法案が成立いたしますと、そのときに緊急目的といたしました東海地方につきましてはある程度法的体制の整備が行われるということで、推進本部の業務もある程度達成されたというふうに考えておりますので、今後につきましては、推進本部自体も今後検討を加えていきたいというふうな考えでおります。  それからもう一点、技術予測調査でございますけれども、確かに、マグニチュード六以上の地震発生の有無をほぼ一カ月以内の精度で府県別程度の範囲内で予知できる技術が開発されるのは二〇〇一年であるという表現が出ておりますが、この技術予測調査と申しますのは、きわめて多数の専門家のアンケートによる調査でございまして、技術的に確信の持てる、あるいは希望的観測、こういったものをすべて含んで、それをさらに詳細にまとめたという結果でございます。  以上でございます。
  42. 有住直介

    ○有住政府委員 お答え申し上げます。  ただいまお話しございましたように、東海地域に関しましては、非常に多種目のデータが各所で行われておるわけですけれども、これを有効に気象庁に集中いたしまして、そのデータを踏まえて判定するわけでございますので、このデータの集中、それから観測網の展開ということに私ども意を用いて、もちろん気象庁だけでございませんので、関係省庁の方の御協力で展開しておりまして、いままでにかなりの展開も終え、またデータの集中につきましても関係の御協力を得まして気象庁に集めつつございます。これからもより完全にしていきたいと思っております。そういうことで手落ちなく業務を遂行していきたい、そういうふうに覚悟しているわけでございます。  それから先ほど、防災予報官というようなものを考えていないかということでございましたけれども、現在の予知技術の水準と申しますか、まだまだ非常にむずかしゅうございまして、非常にむずかしいからといって手をこまねいているわけにはいかないので、マグニチュードが八程度で東海地域ということにしぼりますと現代の技術でもお役に立つような情報は流す可能性があるんじゃないかということで、踏み切って、皆さんの御協力で予知情報を出すことになったわけです。ですけれども、まだまだいかんせん技術が非常にむずかしくて、百発百中というわけにはいきません。非常に技術がむずかしい、その中でやるというために、判定会というものを開いて、まあ医学で言えば名医中の名医という方にお集まりいただいて判断していただく、そして万遺漏のないようにしたい、そういうような構想でございまして、まだ気象庁サイドでその判定会がおやりになるようなことを予報官を置いてやるという時期には至っていない。将来、もちろん私どもも関係省庁と御協力して予知技術というものもどんどん改良し、向上していくわけでございます。そういう段階でそういう予報官というようなもので業務的にもやれるようになれば、行政機構の中で行政の業務としてやるというような時代は来るかと思いますけれども、現段階ではまだそこまで至っていないということをはなはだ残念に思うわけでございますが、そういうふうにも考えているわけでございます。
  43. 田中和夫

    ○田中(和)政府委員 いま御指摘のように、地震のときには火災が同時多発するということが一番心配なわけでございます。消防庁といたしましては、そういう場合にも備えるように、たとえばデパート等についてスプリンクラー等の消防設備を義務づけまして、東京、横浜、この付近でありますと大体九十数%、一〇〇%近くの整備が進んでおります。また、収容人員が一定規模以上のいろいろな施設につきましては防火管理者を置かせる、あるいは消防計画をつくらせて避難施設、火気使用設備等のいろいろ点検をやらせる、あるいは訓練をやらせるというようなことで指導いたしておるわけでありますが、なお不十分であるといけませんので、消防機関によって立ち入り調査をするというようなことでその徹底を期しておるわけでございます。今後、この法律の制定を契機といたしまして、さらに一層徹底を図ってまいりたい、こう考えております。  それから次に、避難路周辺の不燃化の関係につきましての御質問であったわけでございますが、建物自体は先ほど建設省の方からも御答弁がございましたように建設省の問題でございますけれども、避難地、避難路の周辺をできるだけ安全に保つために、私どもといたしましては現在百トンの耐震性の水槽の整備を進めておりまして、たとえば東京の場合でございますと、避難路周辺の線的な整備と申しますか、これがほぼ終わったという段階でございます。今後は面的な整備といいますか、さらに範囲を拡大いたしまして耐震性貯水槽の一層の整備を図ってまいりたい、こう考えております。  なお、五十三年度の予算におきましては、従来は、百トンの水槽に小型の動力ポンプをつけまして、市民消火隊でその付近の万一発生した火災を消してもらうという体制であったわけでありますが、五十三年度から新たに飲用水も兼用する千五百トンの水槽というものの補助制度も創設いたしまして、なお一層その面でも努力してまいりたい、こう考えております。
  44. 杉岡浩

    ○杉岡説明員 お答えいたします。  都市計画は、安全で快適な都市生活と利便性の高い都市機能を確保するという目的でやっておるわけでございますが、都市の安全性につきましては、オープンスペースの確保、それから都市の不燃化、この二つに基本的には尽きるわけでございます。こういった観点から、防火地域の拡大あるいは市街地再開発事業の推進あるいは避難地、避難路周辺の不燃化、さらに道路あるいは公園の整備といったようなことで都市防災を進めておるわけでございます。特に、地震があった場合に被害が大きいと思われる大都市地域につきましては、その避難地あるいは避難路等につきまして、公園あるいは道路事業を通じまして優先的に事業の配分を進めて、その整備に努めておる次第でございます。今後もこういった観点から、都市計画において都市の安全性の確保という面に努めてまいりたいというふうに考えております。
  45. 植木浩

    ○植木説明員 お答え申し上げます。  地震も地球物理現象の一つでございますが、この地震の予知につきましては、いまだ実用的な技術体系というものが確立をしておるという段階まで達しておりません。そこで、地震予知の推進のためには、先ほど来お話がございましたように、あらゆる角度から多角的なアプローチというものが必要でございまして、特に基礎研究それから観測業務、こういった両面にわたります綿密な有機的な連携協力というものが必要と考えておるわけでございます。したがって、大学あるいは各省の試験研究機関等がその機能と特色を生かしまして、観測、研究をそれぞれ行って地震予知実現に向かって進んでおるわけでございます。  お話のございました測地学審議会におきましては、現在そういった観点から大学の研究者あるいは関係行政機関の職員を構成員といたしまして、地震予知その他の地球物理諸現象の研究、観測につきましていろいろと意見を交換し、審議をし、いろいろな建議を出してきておるわけでございます。先ほども先生からお話がございましたように、地震予知につきましても、昭和三十九年以来第一次、第二次、第三次、こういった地震予知計画を建議しておりまして、現在第四次の地震予知計画を策定中ということでございます。  このように、測地学審議会は地震予知推進の性格上、各方面の方の、いわば日本じゅうの知恵を結集いたしまして、従来から計画を策定し、現在もまた策定中であるということで、及ばずながらいろいろと日本の地震予知推進のために貢献をしてきておるということで、先ほど来先生からお話がございます予知体制をさらに格段と強化すべきであるという点では、私ども全く同感でございます。このような測地学審議会の中におきます大学、各省庁の有機的な連携というものをさらに一層強化いたしまして、地震予知の推進に寄与をいたしたい、このように考えておる次第でございます。
  46. 広沢直樹

    ○広沢委員 気象庁の有住長官にお伺いいたします。  この法案の特徴というのは、予知技術が向上してまいってすでに大きな地震についての予知が一応可能だということを前提にして、警報を出せるというところまで来ているんですね。そうしますと、やはり気象業務法の中で、気象庁の業務の中での予報及び警報ということがありますが、いままで地震とか火山現象は除いているのですね。しかし一応そこまで法が実効的にできるということになれば、この気象業務法も見直す必要があるのじゃないか。それくらいの勇気がなければ、おっかなびっくりでどうもわからぬ、そこまでいっていないというようなあいまいな感じでは問題があるのじゃないかと思うのです。この法案自身の柱でありますから。その点の御意見を最後にお聞かせください。
  47. 有住直介

    ○有住政府委員 お答え申し上げます。  確かに予報技術は非常にむずかしゅうございまして、現在気象庁ではたとえば気象の予報というものをやっておりますけれども、それにしましても非常にむずかしくて、外して非常にお小言をいただくようなわけでございます。地震に関しましてはより以上に社会的影響も大きいものでございますので、慎重に皆様の御協力を得ながらやっておるわけでございますけれども、括弧を外すということになりますと、外した場合は現在やっておりますようなたとえば天気の方の予報と同じに考えるわけでございまして、それは観測から予報までを一貫いたしまして、主に気象庁が主となって専門業務的にこなしていくわけでございます。それと地震の場合を比べてみました場合に、地震の場合にはそこまで業務がいっていない。先ほど来お話が出ましたけれども、地震に関しましては何しろ地面の中で起こっていること、見えないものをいろいろな多方面の観点から観測いたしまして、そういう情報を集める。たとえば地下水の問題からあるいは地面の伸縮の問題、土地の隆起の問題とか、そういうように非常に多種類のものになります。そういうものを総合判断するということでございまして、まだ天気予報並みのような予報業務まではなかなかいかないというのが現状でございます。判断にいたしましても、やはりマグニチュード八程度、しかも東海地域というような限定をいたしまして観測網も十分に展開した場合に、私どもとしてはこれについてはやれるであろう、そういうことで踏み切ったわけでございます。ただ、その括弧を外しまして、全般的に制限なしに天気予報と同じような業務としてやるというのにはまだいっていない。私ども決して消極的ではございませんで、やはり事の重要性、警報が出た場合のそれに対する社会的な影響とか、そういういろいろなことを考えますと、やはりそれだけの関係省庁等の御協力を得ながら、万間違いのないように、遺漏のないようにということで、判定会その他で名医中の名医に集まっていただいて御判断をいただくとか、人間にしましても命にかかわるような大病の場合にはやはりそれなりの名医に診ていただくということのように、そういう体制をとってやっていきたい、そういうふうに思っておるわけでございます。
  48. 広沢直樹

    ○広沢委員 どうもありがとうございました。
  49. 川崎寛治

  50. 山原健二郎

    ○山原委員 最初に、この法案の作成に当たって、たとえば東京都あるいか神奈川県、愛知県などと協議をされたか、またそれぞれの県がどういう対応を示しておられるか、伺いたいのです。
  51. 四柳修

    ○四柳政府委員 この法案の作成に当たりましては、いま御指摘の各県をメンバーといたします知事会の特別委員会等と私どもあるいは消防庁等と接触をしながら、一応先方の意見は適宜承っております。
  52. 山原健二郎

    ○山原委員 その意見は、この法案作成に心から替成をしておるというふうに受け取っておられますか。
  53. 四柳修

    ○四柳政府委員 私どもの自己評価ということでなくて、先般参考人として御出席いただきました静岡県の山本知事から、委員の御質問に対しまして一応八十点という御評価をいただいておりますので、私どももその御評価をそれなりに受けとめております。
  54. 山原健二郎

    ○山原委員 この法案が成立した暁には、たとえばこの災害委員会で地震問題で、特に大都市ですね、東京都などがどういうふうな状態になるのかということ、当初一番それが問題だったと思うのですよ。そういう点から考えまして、東京都とかあるいは神奈川県とか愛知県などもこの法律は適用になるのですか、どうですか。
  55. 四柳修

    ○四柳政府委員 この法律ができますと、御指摘の関係地域の指定につきましては、中央防災会議専門家の意見を聞きまして、その諮問に対する御答申によりまして関係県の意見を聞くことになりますけれども、ただいまお述べになりました具体的な県につきましては、東海あるいは南関東という形で、それぞれ可能性があろうかと思います。
  56. 山原健二郎

    ○山原委員 この強化地域の指定というのはいつなされるのですかね。この法律ができたとたんに、直後に強化地域の指定が行われるのかどうか、それを伺いたいのです。新聞等にはいろいろ出ておりますが、いまどういう検討がなされておるのですか。
  57. 四柳修

    ○四柳政府委員 具体的な手続につきましては先ほど御答弁申し上げましたけれども、時間的なめどとしましては、いまの関係地域の、とりあえず東海地域が先になろうかとは思いますけれども、できることならば、今年中に指定したいということで関係県、市町村等の御協力をお願いしたいと考えております。
  58. 山原健二郎

    ○山原委員 いままでの御答弁をお聞きしますと、たとえばマグニチュード八という程度のものが東海地方に来れば、観測体制は一応整っているから網にかかるということですわね。南関東の場合には、百年程度はそういうものは起こらないだろうという推測のもとに論議が進められてきておるように思うのです。それで、結局判定会のあるのは東海ですね。そういう点から考えますと、何かいまのお話ではことしじゅうに強化地域を指定をするというお話と同時に、広く解釈をすれば東京とか神奈川とか愛知とかいうところも入るのだ、こういうわけですけれども、いままでの答弁経過から言うと、結局東海が中心で、あとのところはかかる要件がないのではないですかね、いまの予知体制であるとかいろいろなことを考えますと。その点はどうですか。
  59. 四柳修

    ○四柳政府委員 東海という形で、静岡県を中心としましてこれに隣接いたします神奈川県、愛知県、あるいは長野県・山梨県等の一部が東海の対象地区になろうと思います。後段の南関東につきましては、技術その他の面もあろうかと思いますけれども、やはり観測強化地域として指定されています以上、中央防災会議に対しましてそのようなことを御諮問申し上げるとともに、御指摘のような、技術の進歩によりましてそういったことの危険性等も出てまいりますれば、やはり指定する対象になろうかと思います。
  60. 山原健二郎

    ○山原委員 そうしますと、結局一体東京というような大都市はどういうことになるのか。  そこで、その前にお聞きしたいのですが、大体地震に強い都市、地震防災の都市づくりというのは大体どの程度にお考えになっているのですか、どれくらいの年限でできるものですか。たとえばことし地震に強い都市をつくろうと考えまして計画を立てて、それをやるためには、たとえば東京ならば、あるいは川崎ならば、川崎直下型地震の問題が一番大きな問題になってきたわけですから、川崎ならばどれくらいの年限があれば地震に強い防災都市をつくり上げることができるか、その辺の計算はしておりますか。
  61. 四柳修

    ○四柳政府委員 直接担当しております建設省の方がお帰りのようでございますので私どもの理解で申し上げますけれども、やはり一朝一夕にはできないと思います。数十年という年月の町づくりが必要だと思います。これはもちろん地域住民の方々の御理解、御協力がなければできませんものですから、そこいら辺の点につきましても相当時間がかかるかと思います。
  62. 山原健二郎

    ○山原委員 数十年かかる。一方関東、東京を考えますと、数十年、百年はマグニチュード八程度のものは来ないだろう、こういう推測です。しかし仮に百年としても、それに対する対応というのは数十年前から準備しなければならぬものなんですね。そんなふうに考えますと、この法律がいわゆる東海大地震を予測した特別な措置法の性格を持っておるとすれば、やはり大都市地震災害防止のための法律というものが考えられる必要があるのではないかと思いますが、そういう点はまだ想定もしていない、そういう準備も全くお考えになっていないというふうに受け取ってよろしいでしょうか。それはどうですか。
  63. 櫻内義雄

    櫻内国務大臣 現在災害対策基本法があって、中央防災会議が設けられておることは十分御承知のことだと思うのであります。この中央防災会議の方におきましては大都市震災対策推進要綱というものが四十六年五月につくられておりまして、その後五十年八月十五日に当面の防災対策の推進というものが決定されております。当面の対策として震災対策の強化推進、都市防災化の推進、防災体制強化及び防災意識の高揚などがそれによって行われておるわけでございます。また震災対策関係予算も逐次増加しておりまして、予知関係で言えば、五十一年二十三億円、五十二年二十九億円、五十三年四十一億円、そのほかに科学技術庁の分も入れますと四十七億以上になっておるかと思うのであります。また市街地の再開発事業であるとか住宅地区の改良事業であるとかいろいろと講ぜられておるわけでございまして、大都市に対しての対策は現在ずっとあるわけでございます。震災対策緊急事業計画もすでに本年度から第三次のものになっておるわけでございます。  今回の地震立法は、先般来申し上げておるように、マグニチュード八程度のものの予知ができ得るということを盛り込んだところが一つであります。それから地震対策に対する事前措置として県、市町村などの応急対策計画を立てよう、こういうことで、それについて一体強化地域はどこになるかというときに、東海地域、南関東地域などが考えられる、こういうことを申し上げておるわけでございますから、御指摘の大都市対策については別途すでにいろいろ講ぜられておるということを御認識いただきたいと思います。
  64. 山原健二郎

    ○山原委員 私がなぜこういうことを言っておるかと申しますと、強化地域の指定というのがほぼいまの話でも区域は想定できるわけでございますけれども、強化地域の指定というものがなければ、この法のたてまえから言いまして、たとえば防災強化計画あるいは応急対策あるいは観測体制強化というようなものもいわば適法なというか、そういう枠外にあるわけでございまして、いま大臣がおっしゃった、いや大都市については別途の立場で計画は進んでおるんだということだけでいいのかなという感じがするわけです。防災都市をつくるためには、もちろん住民の合意も必要でありますし、科学的でしかも総合的な防災都市をつくっていくということが必要なわけでございまして、それから考えますと、いまの場合、たとえば大震火災については消防庁あるいは避難地の場所については建設省の中の都市局ですか、それから避難路については道路局、あるいは災害全体については国土庁というふうにばらばらな形態であるんじゃなかろうか。そういう点を統一された形で、もっと総合的な、科学的な、しかもさらにもっと充実した前進をするようなことが必要じゃないかということを申し上げたくていまのような質問をしたわけですが、この点についてはいまのままで十分な道行きであろうか、その点どうでしょうか。
  65. 櫻内義雄

    櫻内国務大臣 強化地域の指定につきましては中央防災会議に諮って決めることをかねて御答弁申し上げておるわけでございます。その場合に、南関東の場合、予想される地震がマグニチュード八というものが予想されない、直下型の七はあるいは考えられるというような予測に立っておりますが、そうしますと、この特別措置法による予知の点では南関東地域については不十分な点があるかと思うのです。しかし事前措置としての、いまお話がありましたもっと組織的な、計画的な対策を講じておく点からしますと、この法案強化地域の適用を受けてそういう計画を立てておく方がよろしいということにもなると思うのです。したがって、この法案成立後に中央防災会議で御協議を願って、予知の点でもまだ不十分かもしれぬが強化地域にしよう、こう言えば、それはまことに結構なことだと思っておるわけでございます。
  66. 山原健二郎

    ○山原委員 次の問題として、先ほども質問が出ておりましたが、罰則の条項の問題です。これについてちょっと伺いたいのですが、警戒宣言が出まして、知事の協力命令あるいは保管命令あるいは交通規制とか立入検査とか退去命令とか、この命令系統がぐっと前面に出てきておるわけですが、それに罰則がある。ところが一方ではこの警戒宣言というものが、いわゆる空振りといいますか、を予想しているわけですね。たとえば九条三項の発生のおそれがなくなったときというのがあるわけです。いわゆる予知は外れるかもしれない、こういう法の形態のもとで罰則だけは残るということ自体は、先ほど担保というお話がありましたけれども、これは法的には疑義があるのではないかという感じがするわけです。要するに中身のないものについての罰則が生きていくということになりますと、この点はいわゆる罪刑法定主義の立場から言いましてもかなり問題があるのじゃないかと思いますが、この点については、たとえば日弁連とか法曹界の考え方というのをお聞きになっているでしょうか。
  67. 四柳修

    ○四柳政府委員 御案内のように、この法律のたてまえというのは、地震防災応急対策に要する費用というのは、それぞれ計画をおつくりになったその応急対策の実施責任者がとっていただく、そういう形で、空振りの場合にもその補償をしないという一応たてまえをとっております。  ただいま御指摘の罰則の点でございますけれども、大きく言って四つ規定があろうかと思います。一つはいま御指摘の二十七条に規定する協力命令、保管命令に従わなかった場合あるいは立入検査等を拒んだ場合、二番目は、警戒宣言が発せられた場合に交通規制に従わなかった場合、三番目は、警戒宣言が発せられた場合に危険防止の見地から設定されます警戒区域からの退去命令あるいは立入規制等に従わなかった場合、四番目が地震に関する防災信号を乱用した場合、こういう四つがあろうかと思います。このうち一の協力命令等を拒んだ場合、あるいは三の立入規制等に従わなかった場合につきましては、もしまた再び地震予知が行われた場合に、罰則がございませんと、担保されないといいますか、それだけの秩序が保たれないといいますか、そういうことが考えられましたものですから、やはり発災時におきましてもそれだけの対応が重要でございますものですから規定したわけでございまして、二番目の交通規制に従わなかったという問題につきましては、警戒宣言が発せられました段階で避難等が当然実施されます。特に津波地域等の場合は行われるかと思います。その場合にやはり秩序立った避難をいたしませんと混乱が生じますから、この点は、地震予知が外れるあるいは当たるということにかかわらずそれだけの秩序というものを保つための実効性が必要という観点でございます。それから最後の防災信号につきましても、これはやはり住民等に対しまして無用の混乱を避けるためにはその乱用をどうしても規制しなくてはなりませんものですから、そういう点で罰則を設けたわけでございます。  それからもう一つ。日弁連には聞いておりませんけれども、法務省の関係当局には意見を聞いております。
  68. 山原健二郎

    ○山原委員 これは、私は必要であるとかないとかということをいま論議しているのではなくて、法律のたてまえとしてそのことがきちんと合意に達しておるかどうかという点でお聞きしておるのです。  もう一つは、私権の制限ですね。短期間であろうとも私権の制限、たとえば基本的人権であるとか財産権であるとかいうものがいささかでも制約を受けるというような場合が生ずるわけですね。この点についても法曹界の合意とかいうようなものは得られているのでしょうか。現在弁護人抜きの裁判問題などで日弁連などずいぶん激しい要請が出ている段階ですね。そういう点では万全の合法性を確保してこういう法律を出してきたのかどうか、それを伺っておきます。
  69. 四柳修

    ○四柳政府委員 御案内のように、この法律におきましては、警戒宣言が発せられますと、一定の民間の企業に対しまして、あらかじめそれぞれおつくりいただきました防災応急計画に従って地震防災応急対策を実施いただくことになろうと思います。その場合に、御指摘のような制限というような問題が出てまいろうかと思います。このことは、警戒宣言が発せられた場合に当然当該企業として実施しなければならないと考えられます措置事前に御自分でお決めいただきまして、そのような緊急時におきます対応というものを円滑かつ的確に実施していただく、そのことによりまして、事業の運営または施設の間におきまして本来それぞれの企業がお持ちでございます。いわばそれぞれの義務というものを顕在化したというふうに考えておりまして、したがって、このことは具体的な権利の本質的な部分に対する侵害ではなぐ、また特別の犠牲を強いるとも考えられないという点につきまして、一応私どもの方も法務省の意見等を聞いておる段階でございます。
  70. 山原健二郎

    ○山原委員 この罰則の問題ですけれども、いまおっしゃったように幾つかの罰則規定があるわけですが、これは主として一般の民間人に対するといいますか、そういう点では罰則規定があるのですが、企業の場合を考えてみますと、たとえばコンビナートが言うことを聞かないで油なら油というものを絶えず動かしておる、そのバルブを締めないという場合に、ここには罰則規定がなくて、それは行政代執行で、たとえば消防士なら消防士が行ってバルブをとめるということですね。ここには罰則がない。そういう意味から考えまして、この法律のたてまえからいって、一般の住民、国民の権利といいますか、国民に対する罰則はかなり強烈な色彩を持ちながら、たとえば企業に対しては行政代執行で終わらせていく、罰則はそこにはないというような点があるのではないかと思いますが、そういう点はどういうふうに検討されてきたのでしょうか。
  71. 四柳修

    ○四柳政府委員 御指摘の点につきましては、二十三条で「市町村長の指示等」がございますが、その点につきましても、いま御指摘のように、罰則あるいは行政罰の適用等の可能性につきましても関係当局と検討したわけでございますけれども、この法律に残されております各種の罰則規定というのは、現在の災害対策基本法あるいは道交法等の、いわば発災後の混乱時におきます各種の罰則規定というものを発災前の秩序維持のためにいわば前倒しのようなかっこうで当該部分だけを取り上げたというかっこうになりまして、いま御指摘の企業の点につきましては、あくまでも企業の責任でやっていただく、それに対して指示をする、あるいは行政代執行をするという形での企業の自主性といいますか、あるいは御自分のことは自分で守っていただくという一つのたてまえを通したわけでございます。
  72. 山原健二郎

    ○山原委員 ここらあたりにこの法案の性格がよく出ておると思うのです。私はここへ横浜市の緊急地震対策、昭和五十年に出されたものを持ってきておりますけれども、これは実に市当局の責任を明確にしておりまして、「市民の生命、身体及び財産の安全を確保する」ということが、目的の中にもそれからその他の項目にもしばしば強調されているのです。これが抜けている。行政当局の責任をまず明らかにするという点が抜けておりまして、そしてこちらの目的の項には、結局は「社会秩序維持と公共の福祉の確保に資することを目的とする。」やはりこの点がかなり違うのです。それから企業に対しましても、この横浜市の緊急対策の場合には、たとえば「特定施設の防災上必要な保安基準は、事業の経済性に優先した厳格なものでなければならない。」というふうにかなりきちんと書かれているわけですが、その点、いま出されておりますこの大規模地震対策特別措置法趣旨社会秩序維持あるいは公共の福祉の確保ということにウエートがぐっと置かれておるという感じ、その中から私権に対する制限、罰則、企業に対しては罰則までは適用しないで行政代執行で終わらせていくというような性格が随所にあらわれてきたのではないかと思いますが、この点は私の心配のようなことはないと受け取ってよろしいのでしょうか。
  73. 四柳修

    ○四柳政府委員 この法律でいろいろ罰則を設けております点は、その罰則を設けることによって、混乱ですとか無秩序ですとか、そういった秩序を乱す、それを維持するためのいわば秩序罰という形で設けたわけでございまして、企業の方は本来御自分で御自分の企業を計画どおり守っていただく、その守っていただくことの一つの執行を担保するといいますか、そういった形で、いわば執行罰のような形で考え方を整理したわけでございまして、御懸念のような点は私どもも考えておりません。
  74. 山原健二郎

    ○山原委員 次に、この法律案を見ますと、まさにこれは金の要らぬ法律だという感じがするわけです。たとえば、静岡県の知事が公共施設等の防災対策のためにはたしか三千三百億の金が要るのだというふうに言われておるそうですが、県の段階でそういうことはとても対処できないというのです。一番熱心にやってこられた静岡県の知事が八〇%の評価を与えておられるというのですからお聞きしますけれども、静岡県に対してこの法律が成立の暁にはどれだけの補助ができるのですか。たとえば三分の二とか三分の一とか二分の一とか、そういう予想はされているのでしょうか。
  75. 四柳修

    ○四柳政府委員 具体的にどの程度の補助率ということはいま予想しておりませんけれども、御指摘のような点につきましては、確かに関係地域の指定がございまして、関係団体の防災強化計画によりまして必要な事業というものがおのずから決まってまいると思います。あるいはその緊急度等もあろうかと思います。それらによりまして、当該団体の財政力等をにらみ合わせまして、関係省庁と協議して、相なるべくはそのような措置計画どおり順調に進みますように、その段階で何らかの措置というものを関係省庁の方にお願いいたしたいと考えております。
  76. 山原健二郎

    ○山原委員 そうしますと、財政措置あるいは財政の裏づけというのは、今後法案が成立しました場合に関係省庁と打ち合わせて決めていくということなんですね。いまのところ、国土庁としては計画に対してこれだけの分担率、補助率というものは要るだろうというふうなことはまだ未定の段階にある、こういうふうに受け取ってよろしいわけですね。
  77. 四柳修

    ○四柳政府委員 静岡県の方の御要望の個々の事業につきましては、幾つか現行の制度でも対応できるものがあろうかと思います。それらにつきましては現行制度の中で優先的に取り上げる、たとえば薩た峠の問題等につきましてはそういった点も検討しておるところでございますし、あるいは直轄事業として現実に優先配分しておるところでございますけれども、一般的な形としましては、計画ができました段階でその強化について検討したいと考えております。
  78. 山原健二郎

    ○山原委員 総理大臣が警戒宣言をいたしまして、そしてこれが空振りに終わった場合のさまざまな損失の補償についてはどこが責任を持つのですか。
  79. 四柳修

    ○四柳政府委員 空振りの問題につきまして御指摘でございますけれども、たてまえとしまして、この法の三十二条にございますように、それぞれの防災応急対策を実施する責任者の方々がおとりになりました費用の負担につきましては、それぞれの責任者の御負担という形にお願いいたしたいと考えております。
  80. 山原健二郎

    ○山原委員 罰則は残り、そして損失補償については国が責任を持たない、そして県の強化計画についても、その財源的措置についてはまだ検討していない、こういうふうに言われてきますと、この法律そのものの中身も、先ほど話があったようにまだよくわかりませんし、そういう意味で非常に漠然とした形で私ども審議しているのだなという感じがするわけですが、もう時間がございませんから最後にお伺いしたいのです。  それは、強化地域に指定されました場合に当然訓練が行われると思います。しかも、この法律から言えば、その訓練には自衛隊も参加をするということになると思うのですが、これはどんな訓練をするのでしょうか、お考えになっていますか。
  81. 四柳修

    ○四柳政府委員 地方公共団体あるいは国の指定行政機関等におきます訓練につきましては、御案内のように、現在災害対策基本法の仕組みの中でもそれぞれ訓練をしておりますが、この法律ができました段階では、訓練そのものも強化計画の中の一つとして書くという形になりますから、従来のような一般的な訓練ではなくて、個々具体なある程度の事象を想定しまして、しかも、できることならば従来の訓練よりはより広範な範囲で、あるいは参加御協力いただく方々もより広い範囲で実践的な訓練をお願いいたしたい、このように考えております。
  82. 山原健二郎

    ○山原委員 この訓練というのは、いまもおっしゃったようにいままでとは違った形態のものであるというわけでございますけれども、その中で、たとえば土のうを積むとか、あるいは決壊した堤防を押さえるとか、あるいは孤立しておる人を救助するとかいうようなことはいまも現実にやっているわけですね。しかし「社会秩序維持と公共の福祉の確保に資することを目的とする。」という場合、しかも地震は予知されて数時間ないし数日間の期間がある。それを想定した地震発生の前における訓練というのは一体何かといいますと、いままでとは違った、たとえば人心の動向を調べるとか、あるいは住民の動揺や不安あるいは流言飛語その他について訓練が行われる内容を持っているんじゃないかということを感じますが、その点は、ここのところをはっきりさせないと、いま全くはっきりさせないままでこの法律審議を進めるわけにはいかぬと思いますが、これはどういうふうな検討をされておるのですか。
  83. 四柳修

    ○四柳政府委員 従来の災害対策基本法に基づきます訓練というのは、どちらかといいますと災害発生したことを前提としまして、発生後の各機関あるいは住民等の行動というものをそれぞれスケジュール表によってやってきたと思います。この法律ができますと、御案内のように警戒宣言、いわば予知情報という前の段階からのものが入ろうと思いますけれども、それらを一貫した一つのタイムスケジュールの中で、関係機関が整合性をとってそういったものが措置できるような訓練、場合によりましては、この規定によりまして、たとえば住民等の自動車の運行あるいは危険な作業の自主的制限というような住民の責務もございますから、そういったことにつきましてもPRしていただくとか、あるいは交通規制をするとか、そういった形で、従来の訓練よりは、どちらかといいますとそういう意味で住民総参加というような形での色合いを濃くして、そういったことが御懸念のような点にはならないように、やはり計画書どおり進められると考えております。
  84. 山原健二郎

    ○山原委員 これで終わります。
  85. 川崎寛治

  86. 中馬弘毅

    中馬(弘)委員 まず地震の予知について少し御専門の末広さんあたりからお答え願いたいと思うのですが、本法案の前提になっておりますのは、ある程度予知が可能かもしれないという地震でございますね。活断層型の地震といいますか、そういったことかと思います。しかし、現実にはいろいろな地震があるわけでございまして、内陸性の地震、直下型の地震、こういったものでの被害は歴史を振り返りましても相当大きなものが出ております。ここに対象になっております関東あるいは東海だけでなくて、関西におきましても、たとえば京都の寺社の大半がつぶれたとか、伏見城が全壊したとか、あるいは堺の町で何百人も死んだといったようなこともあるわけでございまして、こういったいまの段階では予知できない地震ということもあろうかと思います。しかし、これも相当な観測網をしき、観測機器を備えれば予知可能なのかどうか。それから、マグニチュードの大きさだけでなくて、震度ということがあると思います。非常に軟弱な地盤のところではマグニチュードが小さくても揺れが大きくて被害が大きいというようなこともあろうかと思います。地盤と被害との関係といったようなこと、そういうことについて現在どういう状況なのか、少しお知らせ願いたいと思います。
  87. 末広重二

    ○末広説明員 御説明申し上げます。現在の地震予知の技術はマグニチュード八程度の大規模地震であれば、エネルギーのたまっている範囲も大変広うございますし、これに従いまして関連の前兆現象も相当広範囲に、かつ明瞭にあらわれるということが、たとえば過去の昭和十九年の東南海の大地震、それから二十一年の南海道の地震等を調べましても申し上げられるところでございまして、ただいま私どもが東海地区に対して張りめぐらしました観測網を用いて常時監視しておれば前兆現象をつかみ得る、したがって、防災に結びつき得る予知情報が出せるんだというところまで来ているかと存じます。  しかしながら、御指摘のマグニチュード七程度になりますと、これはマグニチュードの段階ではたった一階級下だけでございますが、現象としましてはエネルギー的には三十分の一になってしまいまして、いま申し上げました前兆の出方、範囲、それから明瞭度等も大変下回ってしまいますので、現在の技術では、いろいろ前兆らしきものがとらえられたという例はなきにしもあらずでございますけれども、やはり防災体制に結びつけるという確度のある地震予知情報が出せないわけでございます。  しかしながら、私どもの地震予知の最終的な目標と申しますか、ゴールは、日本全体にわたりましてマグニチュード七の地震まで何とか予知できるところへ技術を進めたい、また、参考人の諸先生の御発言では、決してこれは無理なことではないんだということでございまして、今後の私どもの努力いかんということと存じております。  なお、先ほど来御議論のあります南関東地区では、関東地震の再来こそ当分先であるというふうに考えられておりますけれども、直下型の地震は起こる可能性があるわけでございまして、自然現象として若干小さいわけでございますけれども、被害ということを考えますと、これは決して軽視どころではない、十分な考慮を払うべき対象でございますので、南関東につきましてはこの法案とは無関係に、すでに数年前から観測強化が進んでおるわけでございます。これも私ども、できればマグニチュード七の予知は何とか南関東でまず最初の実を上げたいということを目的にしているわけでございます。  最後に震度の御指摘でございますが、これは大変重要でございまして、地盤の関係でほとんど同じ場所でも被害の大変大きいところと小さいところとあるわけでございます。ただいま発生可能性指摘されております東海地震につきましては、起こるとすればどういう地震が起こるかという予測を立てまして、その地震が起こった場合に静岡県を中心としてどの場所がどのくらい揺れるかということを建設省が音頭を取られまして地震工学的に詰めておりまして、最終的には一キロメッシュの細かい尺度と申しますか、で、どこがどのくらい揺れるだろうということが想定される作業が現在進んでおるところであります。
  88. 中馬弘毅

    中馬(弘)委員 もう一つお尋ねします。  いまの震度との関係ですが、お答えでは、かなり南関東の方ではそういう体制もでき始めているということでございますけれども、被害が大きい——被害ということになりますとやはり人口密集地帯だと思うのですね。人口密集地帯は必ずしも南関東だけではなく関西にもありますし、また、場合によっては地方都市の中でも非常に軟弱な地盤の上に非常に密集している地域もあるかと思います。そういうことについての調査なり御研究というのは進んでいるのですか。
  89. 末広重二

    ○末広説明員 御説明申し上げます。  私、直接担当でございませんので、いままで伺っているところをお伝えする域にとどまるわけでございますけれども、東京、横浜あるいは大阪等等の大都市におきましては、地震工学の立場から、どこの地盤が強く、どこの地盤が弱いというような地盤の強弱の一種の地質図と申しますか、地盤強度図といいますか、これが逐次でき上がっているわけでございまして、東京都、横浜市等では相当精密なものがすでにでき上がっておる、私自身も拝見したこともございますし、なお、この作業が各所で続行中であると伺っております。
  90. 中馬弘毅

    中馬(弘)委員 東京、大阪あるいは名古屋、こういった大都市でございますが、いまおっしゃったような形での一つの予知はできないけれども、地震が起こったときには相当な被害が予想されるという地域は多々あろうかと思います。これに対する一つの対策ということが、まずこの法案以前の問題として必要な気がいたしてきます。これは、大規模地震に対する一つの対策ということであるならば、静岡あるいは南関東に限ったことではないのでございまして、そうすると、やはりいまの都市のあり方といったことが問題になってきます。これは、いまの日本も低成長に入って、する仕事も余りないのだという話もありますけれども、都市の大改造に手をつけるならば、これこそ幾らでも仕事は出てくるわけでございまして、そのようなことからも、国土庁はこういう大都市というものに対してどういうお考えなのか。特に、地震の防災の観点から、いまの都市のあり方がこれでいいのかどうか、そして長期的にはどうあらねばならないかといったことを長官からお願いしたいと思います。
  91. 櫻内義雄

    櫻内国務大臣 大都市につきましては、しばしばお答えを申し上げておるように、中央防災会議で大都市に対する震災対策推進要綱をつくりまして、また、ある程度の予算措置をしながら逐次その地震対策は実施をしてきておるわけであります。震災対策につきましても、すでに一次、二次と終わって、五十三年度からは第三次ということになります。大阪とか名古屋とか東京あたりの実情を見ますと、災害想定などをするとか、あるいは計画を立てるとかいうようなことは大体全部やっておると思います。都市における大震火災対策の現状を見ますと、東京あたりですと、各区全部、計画を立てるとかあるいは被害想定をして、また、避難地などの調査もしておる。横浜ももとよりでございますが、一応の準備はしておる。それに加えて、今回の予知の可能性のある東海地域、あるいは予知はなかなかむずかしいが、南関東地域のようなところについては、今度の特別措置法でさらに対策を強化しよう、こういうことだと思います。
  92. 中馬弘毅

    中馬(弘)委員 大臣のおっしゃった意味のことは、それぞれの自治体もそれなりにやっておられると思います。これも大阪の方ですけれども、大阪でもこういうようなちゃんとした震災応急対策なんかをやっております。ここで挙げておりますのは、本当にその場の避難体制であったり、少し小公園をつくるとか、あるいは道路をどうするといったようなことで、自治体の力としてはそれしか仕方がないと思うのですね。しかし、本来やらなければならないのは、三十年先、五十年先に日本の大都市をどのような形にするのか、三全総あたりで言っておりますのもかなり大まかなことであって、どの地区をどういう形の町づくりにしていくんだといった明確な具体案がないような気がするのです。それこそ国土庁がやらなければならない仕事だという気がいたします。その点について今後どういうお取り組みをされていくか、お心構えだけでも聞かしていただきたいと思います。
  93. 櫻内義雄

    櫻内国務大臣 先ほどちょっと申し上げました五十三年度以降の三カ年計画、これは特に東海地域なども入れてでございますが、この計画対象地域は、首都圏は東京、埼玉、千葉、神奈川、山梨、中部圏では愛知、静岡、三重、近畿圏は大阪、京都、兵庫、これらにつきまして緊急事業計画を立てておるわけであります。主な予定事業の概要でまいりますと、都市防災関係では、公園事業、市街地再開発事業、都市開発資金貸付、街路事業、土地区画整理事業、防災建築事業、下水道事業というふうに分かれております。また、河川、海岸関係については、浸水対策事業、緊急道路対策事業、避難広場対策事業、住宅建築関係を見ますと、公営住宅建設事業、市街地再開発事業、住宅地区改良事業、特殊建築物等防災対策事業などがずっと列挙をされておるわけでございますから、この三カ年計画が先ほど申し上げた第三次の三カ年計画になると思いますが、こういう計画のもとで逐次震災対策を強化しておる、こういうことでございます。
  94. 中馬弘毅

    中馬(弘)委員 ちょっと議論がかみ合っていないような気がするのですが、私は行政的なことで言っているのじゃなくて、少し政治として申し上げておるのですが、たとえばナポレオンがパリの町を大きくつくった、あるいはロンドンが、大火の後にすばらしい一つの町をつくった、こういったことが日本の大都市に必要であるのじゃないかということを申し上げているので、それに対して、国土庁こそそういう青写真を国民の前にこれはすぐ来年やります。再来年やりますということじゃなくて、五十年あるいは百年でも結構です。こういう形のものにしなければいかぬのじゃないかというものが出てきてしかるべきだという気がするのです。その点についての大臣の心構えを聞きたいと思います。
  95. 櫻内義雄

    櫻内国務大臣 そういう高度の政治的配慮の一つのあらわれといたしましては、筑波学園都市をつくって、研究機関、大学等をなるべく大都市の東京から移していこう、これは現に着々と進んで、明年度あたりは筑波学園都市の概成ができるわけでございます。また、大都市のあり方につきまして、工場などを誘導地域の方に持っていく、できるだけ大都市から出してしまうということも鋭意努力をしておるわけでございまして、また、大都市における建築物につきましては、それぞれが耐震建築物になっておるわけで、その間にはまだ古い建物も随所に見られますけれども、しかし、十年、二十年さかのぼって考えていただきますならば、東京の改造というものも相当進んでおると思うのであります。また、大阪についてもそういうことが言えるわけでございまして、もちろん、これをもって足れりとしておるわけではございません。ますます努力しなければならぬことは言うまでもございませんが、一応、政治的に見て申し上げると、以上のようなことだと思います。
  96. 中馬弘毅

    中馬(弘)委員 ひとつ五十年先、百年先の一つの青写真を国民の前に提示されるぐらいの勇気というものが政治に期待されるのじゃないかという気がいたしております。  次に、町の自治組織といいますか、防災自治組織のあり方あたり、この法案とももちろん関連するわけでございますが、たとえば警戒宣言を出して、それをどのように住民に周知させるかといったことを少し具体的に考えてまいりますと、非常な問題があろうかと思います。昔の江戸の町あたりは、ちゃんと自治組織がきれいにできておりました。しかし、明治の中期ぐらいから日本は大都市集中が起こりまして、人間は各個ばらばらになって都市に集まってきた。その中には、本当の意味での自治組織も何もできていないのが現状かと思います。それでもしかし、古いところで町内会組織なんかがまだ残っておるところは、一つのことを周知する場合、あるいはどこかへ避難させるときに指導して連れていくといったリーダーもちゃんとはっきりしているかもしれません。しかし新興住宅地では隣の人も知らないというような状況です。ここにどうやって周知させるのか。「住民等の責務」というようなこともここに書いておられます。しかし、これが果たして具体的にはどんな形でそこにやっていかれるのか、これは大変な問題だと思います。これは自治省の問題かと思いますが、消防庁あたり、現実の問題として町内会組織も自治会もほとんどないようなところがたくさんございます。そこに周知させるにはどうされるか、ここをお尋ねしたいと思います。
  97. 田中和夫

    ○田中(和)政府委員 いま先生の御指摘の問題に直接お答えすることになりますかどうかわかりませんが、現在百トンの耐震性水槽というものを耐震対策として普及をいたしております。これは市民消火隊があって、そこに小型動力ポンプもあって、そこに耐震性の百トンの水槽があって、自分たちの周辺の火はその場で消そう、公共消防が駆けつける前に、あるいは大震災のときには駆けつけることができないかもしれないから、付近の火は付近の人たちで消そうという趣旨のものでありますが、たとえば東京の場合でありますと、すでに六百個ほどそういう耐震性水槽が避難路、避難地の周辺に埋設されておりまして、そこには市民消火隊も置かれておるという状態でございます。しかし、それだけでは十分でありません。事業所には自衛防災組織あるいは自衛消防組織というようなものがだんだん法律で義務づけられてつくられてきておりますし、また婦人消防クラブというのも全国にも相当な数がございますが、そういったような消防関係の自主的なあるいは法律的なそういう組織を育成しながら、いまのそういった末端における消防、防災に関する自治的な組織というものの充実を図ってまいりたい。それで、今度の警戒宣言の場合にも、市町村から防災無線なりあるいは広報車あるいはサイレン等で末端まで周知を図るわけでありますが、そこにそういった自治組織があればもっと徹底が期せられるんではないかという感じも強くいたしますので、たとえば新興住宅地における自治組織といったような、アパート群のありますところのそういう地域における徹底の仕方というようなことについては、今後地域地域に即して十分指導してまいりたい、こう考えております。
  98. 中馬弘毅

    中馬(弘)委員 時間が参りましたので、あと一問だけにしておきますが、いま言ったことも含めまして、これは消防庁の範囲を超えると思いますが、一つ自治組織をはっきり育て上げることがまずは防災につながるのじゃないかという気がいたしております。それに少しおろした形でございますが、防災応急計画、これは七条に言っております。これで各事業所とかあるいは映画館とかそういったところが都道府県知事に届けを出すことになっております。しかし、それを地震防災的な立場からチェックするスタッフが果たしてそれだけそろっているのかどうか、そこのところのお答えをひとつお願いしまして、質問を終わらせてもらいたいと思います。
  99. 田中和夫

    ○田中(和)政府委員 現在でも消防法なりあるいは石防法の規定によりまして、消防計画あるいは予防規程といったようなものを一定規模以上の事業所がつくらなければならぬということになっておりまして、これに対する指導を現地の消防機関がいたしておるわけでございます。現在、予防要員ということで一応考えられます職員が全国に一万名ぐらい消防職員の中におりまして、これらがそういう指導をいたしておりますが、今回の法律によりまして、それに予知に伴う地震防災応急対策といったようなものを消防計画で予防規程の中に盛り込ませることを考えておりますが、これはまた消防庁の方でもマニュアルを示してきめの細かい指導をいたしましてやっていきたいと思います。現在そういうことで現地の消防機関が指導いたしておりますし、それにこの分が加わるという形でございますが、これはやっていけるのではないか、こう考えております。
  100. 川崎寛治

    川崎委員長 この際、暫時休憩いたします。     午後零時五十五分休憩      ————◇—————     午後一時五十六分開議
  101. 川崎寛治

    川崎委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  大規模地震対策特別措置法案を議題とし、質疑を続行いたします。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。湯山勇君。
  102. 湯山勇

    ○湯山委員 気象庁長官にお尋ねいたします。  現在審議中の法律の中で、気象業務法十一条の二がございます。その中に、「大規模地震発生するおそれがあると認めるときは、」気象庁長官は「内閣総理大臣に報告」云々とあります。これはどういうふうにして気象庁長官は大規模地震発生するおそれがあるということを認めるのですか。このことをひとつお答えいただきたいと思います。
  103. 有住直介

    ○有住政府委員 お答え申し上げます。  地殻内の地震をキャッチするためには、非常にいろいろな多種目の観測が必要でございますので、それらは気象庁に集中するように現在進めつつありますが、さらにそれを進行させまして、それを、気象庁の業務の特徴と申しますか、二十四時間の勤務体制で仕事をやっておりますので、そこでそれらを監視しておりまして、そしてこれは異常だという基準に合った値が出てきましたときに、判定会の会長の萩原先生のところにすぐ御連絡申し上げまして、そして委員会を開くかどうかということを決めていただくわけでございますが、委員会が開かれますと、そこで、その監視中に出てきました異常現象が大規模地震発生につながるものかどうかということを判定していただくわけです。その判定に基づきまして、これは大規模地震につながるということになりましたときに、私といたしましてはそれをよく承りました上で大臣に御報告する、そういうことになります。  気象庁といたしましては、非常に大切なのは、データの集中業務とかあるいはオールワッチとか、また判定会の先生方が判定を間違いなくやっていただくための体制を準備する、万遺漏のないようにその辺を責任を持ってやりたい、そういうふうに思っておるわけであります。
  104. 湯山勇

    ○湯山委員 一般の御答弁ならそれでもいいのですが、判定会の意向がそうなる、ならないというのはなかなかむずかしい問題で、六人の委員が三人三人になる場合もあると思いますし、それから不確定な要素は、たとえば一体東海地域で果たして起こるかどうかということについても意見が分かれる場合があると思うのです。それから、一体それがマグニチュード八内外かどうかという判定もしなければなりません。それから、そういう予知できる——予知できなければ問題にならないわけですが、考えてみると、予知できる場合があり、できない場合があり、それから予知というのは何といいますか、いまの問題を含めることになりますけれども、マグニチュードについても議論は分かれるのです。それが果たして言った地域か違っているかということについても意見が分かれる場合がありますね。会議の結論が出ないというようなときには、法律によれば長官が判断しないといけませんが、何をもってどう判断するか、そのところが聞きたかったわけです。
  105. 有住直介

    ○有住政府委員 お答えいたします。  確かに非常にむずかしい問題というのはあり得ると思います。判定会の中で六人の先生にお願いしておりますが、意見はいろいろと分かれるということも可能性としてはあり得るわけでございますけれども、会長が萩原先生でございますけれども、会長が最後的な結論はお下しいただく、そういうふうになっておりまして、もし萩原先生が御都合の悪いときには次の方、またその方に事故があるようなときにはその次の方というふうにいたしまして、賛成多数の合議制ということではなくて、最終的にはそのときの会長先生または代理の方が最終的に御判断の上判定を下していただく、そういうふうになっておるわけでございます。
  106. 湯山勇

    ○湯山委員 それはこの法律の条文と違いますね。どうですか。条文は気象庁長官が認める、こうなっておるのですよ。いまおっしゃるのでは、会長の萩原さんが認めるか次の人が認めるということになったものを、気象庁長官は一向自分の判断ではなくてそこで出た結論をそのままをもって総理に報告する、ちっとも気象庁長官の判断というのは出てきません、いまの御答弁では。何をどう判断するのでしょう、認めるというのは。
  107. 有住直介

    ○有住政府委員 お答えいたします。  そういう判定会の組織をつくりまして、そして判定会の会長さんの御意見をいただくということ、それからそういう体制なりまたはデータの集中とか監視、そういうものを含めた上で判定会の会長先生の御意見を尊重して判断するということでございます。
  108. 湯山勇

    ○湯山委員 そうすると、会長の意見と違う判断もありますね。認める認めないというのは気象庁長官の権限ですから、そうすると意見がずいぶん分かれたという場合に、会長としてはこう思うと判断するという場合にはこれは間違うこともあると思うのです。それから会長がいなくて次の万の場合だって間違う場合はありますよね。そのときにもやはり機械的に気象庁長官はそれをそのままうのみにして認めるわけですか。
  109. 有住直介

    ○有住政府委員 お答え申し上げます。  これは判定会の中でいろいろ議論はあり得るとは思うのでございますけれども、会長先生に最終的な結論を出していただく。非常にむずかしい予知事業でございますので、私どもとしては斯界の権威者中の権威者という方に判断をしていただく。私といたしましては権威者中の権威者の方の御判断を尊重していきたい、そういうふうに思っているわけでございます。いまの時点では非常にむずかしい予知業務でございますので、まだ業務的に気象庁ぐらいだけで結論を出すのは非常に時期尚早であろうということで、お互いの斯界の権威者その他関係省庁の方と御相談した上でそういう形式を選ぶようにしたわけでございます。
  110. 湯山勇

    ○湯山委員 大変危険な御答弁をなさった。いまのところは最高の権威者である会長の意見を尊重するしかない、それに従うしかないという御答弁ですが、いまの日本の予知技術で不確定な要素は地域にもあるし、マグニチュードにもあるしするわけですから、そういう不確定要素を含んだものを一人だけの意見で——たとえ権威者といえども六人皆それぞれの権威者でしょうから、いまのように気象庁長官が認めるときという場合には、そうするだけではなくて、たとえば六人の中の四人がそう言った場合とか、三人の意見が一致した場合とか、そういうことも一つのめどになるわけではないですか。そうでないと、会長だけ、あるいは会長がいないときは会長代理だけという決め方というのは、これだけ大きなことを決めて総理がそれをやるという報告としては非常に危険だと思うので、私はもしいまの長官の御答弁のようなことであればちょっとそれは承服できません。国土庁長官はその点どうお考えでしょうか。
  111. 櫻内義雄

    櫻内国務大臣 この十一条の二に「第三条第一項に規定する地震防災対策強化地域に係る大規模地震発生するおそれがあると認めるときは、直ちに、政令で定めるところにより、発生のおそれがあると認める地震に関する情報を内閣総理大臣に報告しなければならない。」と、ここで気象庁長官の任務がはっきりしておりますね。「発生のおそれがあると認める地震に関する情報」というのは一体どういうことかということをお考えいただきますと、現在の予知技術からいたしますとマグニチュード八程度のものが予知できる、こういうことをしばしば申し上げておるわけであります。そしてマグニチュード八程度のおそれのある地域はどこか、これは東海地域である。したがって、予知連絡会に東海地域判定会というのが設けられておりますから、この判定会の判定を踏まえ、また気象庁には一切の地震に関する現在可能な限りのデータを集中いたしておりますから、そこで判定会の判定をもとに、気象庁長官はその他の情報をも勘案しながら、これは発生のおそれがあるならあるという判断の責任はとって総理大臣に報告をするわけであります。その判断の前提について、ただ一人の会長の判断なのかそれとも多数の意見によるのか、これは会長も独断をするわけではないと私は思います。当然判定会の皆さんの協議により、あるいはもし会長として判断に不足する場合は、気象庁長官に最終的な報告の責任がありますから、気象庁長官とも協議の上判断をする。だから、判定の場合の見方は湯山委員のおっしゃるようなことが普通の考え方である、こう思います。
  112. 湯山勇

    ○湯山委員 大臣の御答弁ならば幾らか了承できますが、気象庁長官、あなた、余り会長さん、それは権威者であろうけれども、その個人を、こういう重要な責任のある場合に、いまおっしゃったような御答弁でその人のことを信頼するんだということだけではいかぬし、判断するためには会長がどうおっしゃっても、あの先生はこう言う、この先生もこう言うということであれば、これはやはり判断するためのプロセスを考えておかないといかぬということを御指摘申し上げて、大臣の答弁でまだすっきりしないところも若干あるのですけれども了承することにしておきます。何かありましたら、大事な点ですから……。
  113. 有住直介

    ○有住政府委員 お答えいたします。  どうも口不調法で申しわけございませんが、判定会といいますのは一朝事があるときにもちろん集まっていただくわけでございますけれども、そういうときでなくても、あるとき突然に集まって資料の相談をということでも十分なことにはいかないというおそれもございますので、ふだんのときでもお集まりいただきまして先生方の御議論をいただき、お互いの意思疎通を図っていただいているわけでございます。そういうことで、確かに万一にその意見が割れるということもあり得るとは申し上げましたけれども、そういうことはほとんどないのじゃないか。  それから、いま国土庁長官からもお話がございましたように、私どもに対しても確かに会長から意見を聞かれることはあるし、私といたしましても、そういう判定会の状況というものもよくお聞きするなりあるいは場合によっては傍聴させていただくというようなことで、私の意見も十分に自分で考えるということも入れるような形で対処していきたい、そういうふうに思っております。
  114. 湯山勇

    ○湯山委員 これは非常に大事な点ですから、もう一度申します。  みんなの意見が食い違うだろうと思われるのは、一つは、いつ起こるかという想定をしなければいかぬでしょう。これもいろいろ意見があると思うのですよ。一時間先、いやこれは一日ぐらい、まだ三日ぐらいある、そういう意見ももちろん出てくるし、これは八ぐらいはくると言う人も、いやそうはいかぬぞ、これは七ぐらいじゃないかと言う人もあるでしょうし、それから場所も想定しておったが、どうもこのひずみのあり方ではこの辺じゃないか、いやこの活断層はこうなっておるのだからこの辺が今度は危ないのじゃないかということの意見も分かれ得ることを考えておかなければいかぬわけです。そうなると、まとまるだろうというような甘いのじゃなくて、いよいよぎりぎりこうなったときにどう判断するかという腹を気象庁長官はしっかり決めておく必要があるということでこのことを申し上げたのですから、非常に重要な責任ですから、ひとつ心しておってください。  第二です。国土庁長官にお尋ねします。  時間の関係もあって、条文等はもう申しません。本部長総理が就任される。総理に事故があるときには国務大臣をもって代理を指名するとあります。この本部長代理の国務大臣というのは、大臣はどういう人を予想しておられますか。
  115. 櫻内義雄

    櫻内国務大臣 総理には何かの場合に臨時総理を指名される場合がありますが、この場合の本部長の代行すべき者は、災害を担当しておる国務大臣が指定されるであろうと思います。したがって、その場合は国土庁長官をあらかじめ指定するものと想像いたします。
  116. 湯山勇

    ○湯山委員 内閣法の九条に、総理に事故があるあるいは欠けた場合にはやはりその代理を指名するという規定がございます。そうすると、総理大臣に事故があるという条件が同じですから、総理大臣は国土庁長官をこの分では代理にする、それから一方では内閣法によって、副総理なら副総理という人があれば、それを代理に指名する、こういうことになるようにいまの御答弁からは受け取れます。  そうなりますと、これは大変な問題が起こるのは、もしこのままの法律ですと、その本部長も、つまり国土庁長官自衛隊派遣要請をします。それから今度は、総理大臣は当然総理大臣の権限として出動命令を同じ自衛隊に出す。これは私は、総理大臣の代理が二人おるというのは、あたかもその段階では総理大臣が二人おるという形になりますので、ここのところ、ちょっと問題があるというように思うのです。  そこで、まだ十分お詰めになっていらっしゃらないと思いますけれども、私は、総理大臣がこの本部長になるというのも行政全体を統合していくという観点からいけば、これはもう内閣法によって総理大臣の代理が指名されればその人が本部長になるのであって、ここでここの問題を頭を二つにするというのはちょっと解せかねる点があります。ただ、条文にだれをするとなっていませんから、この点はやり方によっては非常に重要な問題ですから、ちょっとお詰めしようと思ったら総理大臣が見えましたから、これはお考えおきください。検討していただきたい。
  117. 櫻内義雄

    櫻内国務大臣 内閣法第九条で臨時総理が指定されておりますれば、この警戒本部長の職務もその臨時総理が当然行う、そういうことでございます。
  118. 湯山勇

    ○湯山委員 では、大変明快になりました。
  119. 川崎寛治

    川崎委員長 ただいまより内閣総理大臣に対する質疑を行います。  質疑者各位は、理事会で申し合わせました持ち時間を厳守されますよう、あらかじめお願い申し上げます。  湯山勇君。
  120. 湯山勇

    ○湯山委員 前文句を抜きにして総理に直接お尋ねいたします。  四項目お尋ねいたしたいと思いますので、総理から四項目について御答弁をいただきたいと思います。  第一は、気象庁長官からマグニチュード八以上の地震が起こるおそれがあるという報告を総理はお受けになります。それをお受けになると、総理が必要と判断した場合に警戒宣言をお発しになる。この判断は一体、総理御自身は地震学者でもございませんししますから、判断というのはどういうことを御判断になるだろうか、どういうことから必要とお認めになるか、これをひとつお聞かせいただきたい。これが第一点です。  第二点は、これもこの法律によりますと、「地震防災応急対策」というのがございまして、その中の第五項には、「犯罪の予防、」それから「交通」とかいろいろありますが、結局「社会秩序維持に関する事項」というのがございます。そうすると、自衛隊を防災派遣した場合に、行った場合に、第五項があるのですから、当然これは治安活動に従事するということがこの条文どおりいけばあるわけです。しかしこのことはお互い非常に心配しておる点で、防災派遣された自衛隊治安出動なんか絶対従事しないのだという保証があるかどうか、総理から明確にしていただきたい。これが第二点です。  第三点。これだけ大きなことをやっていくのですが、私ども社会党は、これだけ大きなことをやっていくためには、現在の機構では不十分である、現在は幾つかの課はありますけれども、防災の局長もいなければ、また防災庁もない。審議官が一人ですから、審議官というのでは一体何の役目をしておるのか職員録を見てもわからない。各県は計画を立てなければならない、各省、連絡しなければならない。四柳審議官というのは春の柳で、まことに防災とは関係なさそうなお名前ですから……。総理、これだけ大きいことをおやりになって、総理本部長になられるのであれば、私はわが党が前に申し上げましたように、地震庁とか地象庁とかいうものを明確につくって、あるいはそれまでの経緯として局をつくるとか——同和対策では同和対策室長というのがあります。そこで地震室長というのもおかしいですが、とにかく防災室長とか、やがて防災局、防災庁というような機構をきちっとしなければ、これはなかなか任務が多過ぎるし、できないと思いますので、そういうことのお考えがあるかどうか、これをお尋ねいたしたいと思います。  それからその次に、何といっても、地震対策の一番大事な点は、地震が起こっても大丈夫だという体制をつくるところにあります。伊豆を回ってみましても、なるほどいま決められた金網を張ってありますけれども、これで地震が来て上の石が落ちたら、これは一たまりもないというようなところがたくさんあります。そこで、最初に返りますが、総理が判断されるための予知体制をつくるためにも、うんと金をお出しいただかなければならないし、それから地震対策の第一は、とにかく安心できるようにしておくことですから、防災の公共事業その他にずいぶん多額の費用を出さなければ、この法律は生きないと思うのです。そこでそういうふうに予算をうんとお出しになる、そういうお心構えがおありになるかどうか、この四点をお尋ねいたしたいと思います。
  121. 福田赳夫

    ○福田内閣総理大臣 まず気象庁長官の報告を受けた場合の総理の判断はどうやってやるのだ、こういうことでございますが、これは国土庁長官に、また科学技術庁長官によく意見を聞きます。その聞いた結果を踏まえまして、閣議に諮って総理の方針を決める、このように御理解を願います。  それから、自衛隊地震防災派遣治安出動との関係についてのお尋ねでございますが、地震防災派遣は、地震防災応急対策の的確かつ迅速な実施を支援する行動であり、治安出動は国内における治安維持のため警察力の補完として行動するための出動であり、この両者は全く関係がない、このように御理解を願います。  それから機構、予算についての御所見でございますが、地震の予知は一昨年から地震予知推進本部を中心といたしまして、大学を含めた関係機関が連携、協力して推進してきたところでありますが、その成果を踏まえまして、今回の特別立法ということになったわけであります。しかしながら、地震予知をさらに推進するためには、学識経験者の意見を十分聞きながら、一層充実してまいる、このような考え方でございます。
  122. 湯山勇

    ○湯山委員 総理大臣、いまの御答弁で残っておるのは、一番大事なのは、つまり防災のために派遣して人間が行ってやるというのではなくて、いまの公共事業その他で心配ないようにしておけば一番いいわけですから、そのための国の予算というものは画期的に拡大しないと、ただ人間ばかり動かすのじゃだめなのです。これについてのお考えです。
  123. 福田赳夫

    ○福田内閣総理大臣 防災地区が決まる、こういうことになりますれば、防災対策を講じなければならぬ、こういうことになります。そのためには財政措置が必要になることでありますが、これは積極的にその整備をする、このような考えでございます。
  124. 湯山勇

    ○湯山委員 もう一つ答弁漏れです。政府がこれだけのことをやっていくための政府の体制強化のために、いま国土庁には審議官一人しかいません。その審議官にも肩書きがないのです。これではとても困るので、いわゆる防災庁をつくるとか、それでなければ防災局か、とにかく早速に——長官はまだたくさんやることがありますから、防災をこれだけやっていくのには、しかるべき責任者の、長のいる機構が必要だ。これをひとつお考え願えるかどうか。
  125. 福田赳夫

    ○福田内閣総理大臣 これだけの法律ができますれば、これを執行するために人員、予算、こういうものが必要であることは当然です。しかし、それをただ国家財政、国家公務員定員の純増だ、こういうような考え方はいたしません。やはりみんな時代の変化に応じまして、不要不急となっておる、そういう面がありまするから、そういう面等のやりくりをする、これが当然必要になってくる、こういうふうに思いますが、この法律を、その立法の趣旨に従って働かせるという意味の予算、また機構の充実、これはもう当然のことであります。
  126. 湯山勇

    ○湯山委員 以上です。
  127. 川崎寛治

    川崎委員長 広沢直樹君。
  128. 広沢直樹

    ○広沢委員 総理には過般の予算委員会で伊豆大島近海地震がありましたときにも早急な対策をとるように御要望申し上げました。この法案が提出されまして、これができれば万全だというわけではございませんけれども、一歩前進だと受けとめております。  そこで、総理は中央防災会議の議長でありますし、また本法案地震対策については警戒本部長ということになっておりまして、防災については全責任のある立場にあります。地震における大惨事は想像にかたくない、過去の経験からしまして大変な問題であります。万一の場合は、その判断に誤りがあれば、責任問題にもなる重大な問題ではないかと私どもは考えております。  そこでお伺いしますが、今日の防災体制について種々おくれが指摘されておりますが、どのような御認識に立っておられるか、その点をまず第一点お伺いしたい。  それからもう一点は、防災事業の位置づけが経済発展の後追い的になっているところに今日の最大の問題があることが指摘されております。都市構造による防災の脆弱化傾向、これも論議されたところであります。防災事業を国家的大事業として最重要視すべきではないか、このように思うわけであります。過去の例をとりましても、三千人以上の犠牲、あるいは一万戸以上の被害を出した地震は、統計によりますと十年に一回というくらい大変な状況にございます。そして、いまの時代的国民の要求というのは、経済発展よりもいまや公害問題にも見られますように安全性と安定というものを求めている時代であります。これも参考人の意見にもございましたが、中国の周元総理は、そのような位置づけから、国民総ぐるみで災害に備える体制を確立したと聞いております。その一例として、地震対策については、中国では学者が一万人、わが国では間接も入れて大体千人以下という状況ではないかと思います。そしてまた、中国では、民間の十五万人がその予知に全力を挙げて、過去五回の大きな地震について四回までその予知が的中した。技術水準は、日、米、中、ソ、同じである。これも参考人が申しておりましたが、問題は、それに取り組む姿勢の問題であり、それを指導していく政治の責任であると思うわけでございますが、この地震対策についての位置づけというものをどのように感じておられるのか。  それから、いまも質問がございましたが、それにつけても、静岡県の山本知事は、目下地震災害から県民を守るためには約三千二百億円の金が要る、こういう試算を、さきの参考人として出席の際、意見として述べておられました。もしもそのためにどうしても処置をとらなければならないならば、二、三年はすべての予算を削っても取り組まなければならないという決意まで披瀝されたのであります。この対策に取り組むに当たっては、人員あるいはお金、こういうものが相当かかることは当然であります。特に、防災強化地域に指定しましたところについては、抜本的対策、すなわち税制あるいは財政、金融及び人員の配置等、それから観測の集中的強化、等々が相まってこれは必要な問題であろうと思いますが、今後その体制について確立していくためにどのような御決意をなさっていらっしゃるのか、この点をまずお伺いしたいと思います。
  129. 福田赳夫

    ○福田内閣総理大臣 この種防災につきましての基本的な考え方の認識はどうかということでございますが、こういうものは、災害が起こってからどうするという対策と、そういう災害が起こらないような対策ということとの二つの面があると私は思うのですが、やはり起こってから後の始末ということもさることながら、起こらないように最善の工夫をする、こういうことが大事だ、このように思います。今回の特別立法も、その前者に重きを置いた考え方、これをあらわしておるわけであります。  なお、財政措置なんかを一体どうするか、こういうお話でございますが、この法律案では、強化地域の指定後、関係地方公共団体は地震防災強化計画に基づいて避難地、避難路、消防用施設等を整備することを予定しております。これらの整備に要する経費につきましては、従来から、所要の財政措置を講じ、予算の優先配分を初めとしてできるだけの配慮をしてきたところでありますが、今後も、特にその強力な促進をしようとする強化地域内の事業の実施に当たりましては、事業内容、事業量が確定し、所要経費、財源等の見込みが明らかになった段階で、関係省庁において十分検討さしてまいりたい、このように考えております。
  130. 広沢直樹

    ○広沢委員 財政、税制、金融、そういった面の具体的措置強化地域に対してはおとりになる考えがあるかどうか。
  131. 福田赳夫

    ○福田内閣総理大臣 それはこれからの問題でありますが、法律ができた以上、これが所期の効果を上げなければならぬ。そのために必要ないろいろな行政措置はあります。また、場合によったら立法措置をお願いしなければならぬ問題もあろうか、こういうふうに思いますが、できる限り法がその効果を上げ得るような措置はとらなければならぬ、このように考えております。
  132. 広沢直樹

    ○広沢委員 本法案の最も重要なところは、やはり観測体制の充実、そしてまた強化地域の指定、同時に、今度は判定会から気象庁長官を通じて報告を受けた総理警戒本部長としてのおとりになる処置、こういったものが一つの焦点になっているわけでございます。それで、気象庁長官から報告を受けた時点で、総理は閣議を招集して、あるいは閣議に諮って警戒宣言をなさる、こういう段取りになっておりますが、すでに判定会という最高の権威が出した判定に基づいて気象庁長官がこれを総理に報告をしたならば、これはもう直ちに警戒宣言に結びつく体制にあると理解していいのか。その場合総理としては警戒宣言について一応検討されるということになるのか。それから、今度は、警戒宣言をした場合に、自衛隊派遣、これは本部長の任務になっておりますが、これは一応事前予防措置としての派遣というものがぜひ必要であるならば、警戒宣言と同時に——必要を認めた場合はというふうになっておりますが、直ちに自衛隊派遣に結びつくものであるのかどうか。そういうことを考えてまいりますと、判定会の立場というものは非常に重要な問題になってまいりますので、今後現在の機構をさらに検討されて、構成上の問題も含めて判定会の法的な位置づけというものが必要になってくるのではないか、このように考えておりますが、その点についての総理のお考えをお伺いしておきたいと思います。一にかかって総理の責任というのは判定会で判定を出したときからすでに発生しているわけでございますから、行政の責任の長としてはこれについてひとつ明快な考え方を持っていなければならないと思います。それから、いろいろの議論の中で、野球にたとえて、三振はしても見逃しの三振はしたくないということは、空振りも覚悟であるということであります。したがって、そのことも含めて考えていくならば、これに対する警戒本部長の立場になられる総理の判断というものは非常に重要になってまいりますが、その点含めてお答えいただきたい。
  133. 福田赳夫

    ○福田内閣総理大臣 地震判定会の任務、立場、こういうものをさらに明快にせい、こういうような御趣旨でございますが、それはそのように努力をいたします。  また、気象庁長官はその専門技術的な立場から地震予知情報を内閣総理大臣に報告するものであり、その報告を受けた内閣総理大臣は、地震予知情報について専門技術的な面から再検討を加えるということではなくて、報告にかかわる地震予知情報の確度と地震発生の切迫性等から見まして、地震災害を防止または軽減するための地震災害応急対策を緊急に講ずる必要があるかどうかを判断して警戒宣言を出す、こういうことになる、このように御理解を願います。  なお、仮に地震予知情報の確度がきわめて低いと考えられるような場合におきましては、地震防災応急対策に伴う社会的、経済的負担の大きさ等を勘案して、新たな地震予知情報が得られる段階まで警戒宣言を発することを待つということもまたあり得る、このような御理解でやっていただきたいと思います。
  134. 広沢直樹

    ○広沢委員 時間ですから終わります。
  135. 川崎寛治

  136. 山本悌二郎

    ○山本(悌)委員 先ほどから大臣に費用の話がしばしば出ておりますけれども、これは非常に重要なことだと思うのであります。なぜかと申し上げますと、これだけの大きな法案をつくっておきながら、費用に関しては全くないのであります。毎日新聞の社説にも、「法案自体に欠けていて問題なのは、耐震構造化や都市防災についての国庫補助等の助成措置である。これらは、今回の法案作成の経過検討されたものの、膨大な費用がかかる」が、これはどうするのか、こういうふうに何回かにわたって出ておるのですけれども、先ほどからの御答弁では納得しかねるのであります。いわば地震が起きてからの問題は、それはまた予備費や何やらで補てんすることは不可能ではないでしょうけれども、これだけ前にいわゆる防災という形で何かをしろといって地方にいろいろ命令をする、地方もしなければならないという。国はどれだけの金を出すのか、地方はどれだけの負担をするのか、その辺の区分がはっきりしていないのですが、総理大臣、いかがお考えでございますか。
  137. 福田赳夫

    ○福田内閣総理大臣 この法律ができますと、自然これは財政の裏づけということが実施上必要になってくるわけでありまして、そのことは十分承知いたしております。その都度その都度防災計画というものができる。その際に財政の裏づけをどうするかということを検討いたしまして、万遺憾なきを期したいと考えております。
  138. 山本悌二郎

    ○山本(悌)委員 国の方はそれで納得しますが、地方の方はどういたします。地方財政は三兆五百億も大赤字を抱えておるのですけれども、これは地方に押しつけられますると、地方の方はこれまた大きな問題であります。そのときそのとき考えるといったって、そのときそのとき考えようがないじゃないですか、実際もう地方の交付税も決まってしまったんだし。先ほど話がありましたように静岡県の知事さんは、三千二百億もの金が現実に要る、こう言っているんじゃございませんか。それはどういうふうにお考えでございますか。
  139. 福田赳夫

    ○福田内閣総理大臣 地方も、それは財政のたてまえから言いますれば、国と同じでございまして、必要な財政措置、これは国と相談いたしまして、そしてその都度その都度妥当な措置をとる、こういうことになるわけであります。財政が窮乏しているからそういうことはむずかしいじゃないかというお話ですが、その面におきましては国もまた同じなんで、窮乏の中でもこういう対策はしなければならぬ。その点は中央、地方よく相談をいたしまして、必要があれば国が協力をするとかいろいろな道もあろうかと思いますが、万遺憾なきを期してまいりたい、このように考えます。
  140. 山本悌二郎

    ○山本(悌)委員 総理大臣がそうおっしゃるんだから間違いはないものと確信をいたしておきます。  二番目は、実際大規模地震が起きた場合、これはマグニチュード八という関東大震災一つのいい例でありましたけれども、そういう大地震が起きてパニック状態になるというようなときに、都知事あるいは県知事あるいは市町村長、その他いろいろそういう責任の所在の問題が出てまいるのでありますけれども、総理大臣、そういう大きな問題が起きたときに、最終責任というのは総理大臣がお負いになるわけでしょうね。いかがでございますか。
  141. 福田赳夫

    ○福田内閣総理大臣 国民の生命、財産、さようなものにつきまして最終的には総理大臣が責任を負います。
  142. 山本悌二郎

    ○山本(悌)委員 よくわかりました。  これは関東大震災一つの例を見ればわかるのでありますけれども、この委員会でもいろいろ御議論がありますように、自衛隊出動問題とかあるいはまた警察の権限問題とか、いろいろな大きな問題が起きるのであります。いわば何十万、何百万という人の生命にかかわり、またそういうときに限って流言飛語等が飛びまして、私の記憶ではございますけれども、たしか関東大震災のときに、その当時朝鮮人が火をつけたんではないかとかいろいろな問題が起きて、殺傷まで起きたということがあったわけであります。そんなことはもう今日はないと思いますけれども、しかしこれは非常に重要なことで、一末端の指揮者や市町村長の責任の負えるような問題ではないので、どうかひとつ総理大臣の責任において腹を据えてかかっていただきたいと思います。  最後にもう一つお尋ねいたします。これはこの法案には直接かかわりはないのでありましょうけれども、天皇、皇室については総理大臣はどのようにお考えになっておりますか。国民だけの問題ではないでございましょう。
  143. 福田赳夫

    ○福田内閣総理大臣 日本国憲法に、天皇につきましてはちゃんとその規定があるわけでありまして、日本国の象徴であり、民族統合の象徴である、そのようにしかと理解いたしまして尊崇をいたしておる、これが私の立場でございます。
  144. 山本悌二郎

    ○山本(悌)委員 そうすると、その避難もあるいはまた防備も十分できておるということでございますね。
  145. 福田赳夫

    ○福田内閣総理大臣 まだ私そこまで確かめておりませんけれども、早急にチェックしてみます。
  146. 山本悌二郎

    ○山本(悌)委員 これは笑い事ではないんです。皇居だけは別だというわけにいかないと私は思うのです。むろんこの法律そのものは国民全般にかかわる問題でありますけれども、皇室や天皇陛下だけは別だというような議論にはならないと私は思うのです。もう万全は期していると思いますけれども、しかし総理はどういうふうに考えておられるか、もう一度御決意だけお聞きして私の質問を終わりたいと思うのです。
  147. 福田赳夫

    ○福田内閣総理大臣 私は、ただいま申し上げましたように、天皇は、これは日本国の象徴であり、日本民族統合の象徴である、でありますから、そのように考え、それに即して尊崇をいたしておる、そういう考え方に立ちまして、この地震問題等の適応につきましても考えてまいりたい、そういうことでございます。
  148. 山本悌二郎

    ○山本(悌)委員 終わります。
  149. 川崎寛治

    川崎委員長 津川武一君。
  150. 津川武一

    ○津川委員 国民の命、財産、国土を大規模地震、特に大都市地震から救わなければならぬということで、私たちも一生懸命考え、政策も提案してまいりました。今度の立法に当たりまして、総理、この委員会の論議でも明らかになりましたが、東海地方を指定してそれなりに一つのものを集める、それはそれなりにいいとして、南関東、大都市をどうするか、東京をどうするかということなんです。東京を防災都市として整備していく上では、何十年という日数が必要なので、いま計画的に防災都市をつくる。危険なものは東京から去らせる、必要な重要なものは去らせる、避難公園をつくる、いろいろなことがたくさんあると思うのです。これは今度の立法で指定される東海地方と並んで二頭立てとして直ちにスタートしなければならぬ、こういう態勢なんです。ところが、大都市はおくれているんです。特に東京、南関東は、やっていると言ってもおくれている。この点の対策を総理はどう考えているか、ひとつ伺わしていただきたいと思うのです。先ほど中央防災会議があってやっているというのは国土庁長官から説明があるけれども、これは両頭立てでいっていない、そこに問題がある。  もう一つの問題は、これも委員会で明らかになったことなんですが、地震の基礎研究が実用化の領域に達していないというのが文部省の正直な告白へそれから専門家にみんな来ていただいたら、予知の技術がそのまま行政につながる段階にいっていないという、そういう状態の中で、予知して今度は総理の権限発動ということになるわけです。  そこで、まず第一に地震研究強化体制をやることが何よりも必要だと言って、ほかの雑物をのいて、この法案を特別措置という法律案にした方がよかったんじゃないか、こう考えているわけです。そこで地震の予知や研究強化体制について、この二つのことをまず総理から答えていただきます。
  151. 福田赳夫

    ○福田内閣総理大臣 まず大都市の震災対策でございますが、これはもう大変な大問題でありまして、かねてこれに対しましては政府は大変な努力を傾注いたしておるわけです。そして、現に東京都という地区におきましてはいろいろな計画が立てられ、それが実施に移されつつある、こういうことでございます。つまり昭和四十六年、中央防災会議において決定された大都市震災対策推進要綱に基づきまして総合的に推進されておるわけでありますが、中でも人口、産業の適正配置の実現及び都市の震災対策事業の推進による耐災環境の整備は震災対策の基本的事項として長期的視野に立った施策の推進が図られておるのであります。また昨年十一月閣議決定した第三次全国総合開発計画におきましても大都市の防災性の向上を重要な計画課題とするとともに、定住構想のもとで人口の定住、産業の地方分散等を積極的に図っていくことといたしております。政府といたしましては今後ともこれらの基本的方向に沿って、東京を初めとする大都市の防災対策の充実強化に取り組んでいく考えでございます。これは非常に困難な問題でありますが、粘り強くやっていくほかはない、このように考えています。
  152. 津川武一

    ○津川委員 総理から大変流れのいいお話を伺いましたが、問題は東海地方でM8、ところが東京にはM7の直下型地震が起きるという同じ可能性があるわけです。東海のM8の方がほっておけない、と同時に東京のM7の直下型地震とどっちが被害が大きいか、これが現実の仮定なんだ。それに対して総理はぺらぺらしゃべった。ところがM8のところには特別法で計画的にいこう、足りなくてもまだ予算をつけると言っている。東京のところにはそういう計画的なものがない。だからあえてこれを言うのです。いま読まれたものでは東京都民、南関東が納得しない。なぜ人口の薄いところのあっちに重点を注いで、東京をどうしてくれるんだ。総理からもう少し明確な答弁を聞かないと南関東の人は納得しません。重ねて答えてください。
  153. 福田赳夫

    ○福田内閣総理大臣 私は、東京都知事の仕事、これはいろいろありますけれども、震災に対する防災、これなんが非常に重要な仕事だろうと思います。中央政府それから東京都、これは連携をとりながら、長い目で防災対策が整備されるように努力をいたしており、かなりこれは進んではおるのです。しかし、何せこれだけの大都市の防災でございますから、それは容易じゃない。これはもうぺらぺらしゃべって、それでいいというわけじゃございませんです。本当に真剣な努力を、しかも長い年月たゆまずやっていかなければならぬ問題である、そのように考えています。
  154. 津川武一

    ○津川委員 そこで、ぺらぺらしゃべるのではなくて、やると言うからいいです。  東京の、下からの、国民の、市民の防災体制、横浜の市民の防災体制を比べていただきたいのです。段違いの差なんです。これだけの差がある。だから、これはやはり何かしなければならぬ。江戸というと昔から火消しで有名なんです。東京はあの伝統が滅びているんだ。横浜あたりはそれが生きているんだ。そこいらもやはり体制を整えなければならぬので、私はぺらぺらと言ったけれども、総理に特別な対策を、M7の直下型の地震に対することをこの対策の中に強化することを重ねて求めて、何しろ十分という質問だから、次へ移っていきます。  自衛隊出動です。現行法における自衛隊災害出動規定、今度は二つ変わってきたのです。いままでは知事の要請、今度は、知事の要請でなく総理要請出動することになっている。したがってかなり大きなものになるのです。いままでのは小さいのです。今度はどんな規模でもできるという、ここに大きな今度の法律の違いが出てくる。これが一つ。第二番目には、自衛隊はいままでは主として災害救助のため、事後処理のためでした。その点では、私も災害など現地で見てみると、国民がかなり自衛隊に期待しているし、力にもしております。ところが今度は、予防、事前出動するという違いが出てきたのです。これは、何といっても大変なことなんです。しかも、その事前出動で訓練も含める。規模が大きい。範囲が広い。訓練も含める。実際に災害が起きたときには具体的な任務しかやれないから、これはたいしたことないのですけれども、事前の予防のときにはあれやこれやの可能性を考えてやるから、かなり大きな範囲の活動ができることになる。私たちは、地震対策はいろいろな点で強化していかなければならぬと思う。ところが今度地震対策を口実に自衛隊治安出動の準備を、訓練を、福田総理はその気にならなくても、そのときの総理防衛庁長官の考え方によってはそういう治安出動の準備ができる。この地震対策をいいことにしてやっていく。だから地域住民は、自衛隊が本当に物を片づけるために動いてくれるならいいけれども、こういう訓練や出動のために出てくるなら真っ平だと言もているのです。もう一度出動について考え直してくれませんか。いかがでございますか。
  155. 福田赳夫

    ○福田内閣総理大臣 防災出動治安出動の準備行為になるから慎重にせいという御所見のようですが、これは私はそうは考えません。治安出動も、認められている国の制度であり、自衛隊の非常に重要な任務の一つです。そういうような事態が起こることは私は希望しません。ですから、治安出動なんというのはめったにあるとは思いません。思いませんけれども、防災出動が十分に行われるということは必要なことなんです。防災出動が十分に行われて、国民の期待にこたえるということになるべきだというふうに考えておりますが、その結果治安出動のときの多少の訓練になるという副次的な効果が出てきてどこが悪いのか。むしろ国費を効率的に使うゆえんであるというくらいな気持ちがいたします。
  156. 津川武一

    ○津川委員 時間が来たので終わりますが、いまの総理の発言は非常に重大に受けとめます。この間の伊豆地震のときに上陸する地点が、地域の人だと、そういう訓練のために上陸しているということもありましたので、いまの総理の発言は何としても受け入れられないし、これを国民に伝えるということをここで申し上げて、質問を終わります。
  157. 川崎寛治

    川崎委員長 永原稔君。
  158. 永原稔

    ○永原委員 この大規模地震対策特別措置法案をめぐる論議で非常に明らかになったのが、東海地域にいわば既成事実のようにマグニチュード八程度の地震が起こるであろう、こういうことが明確にされたことだと思います。そういう中で年内にもこの地域指定が行われるような状況にありますけれども、強化地域を指定し、また警戒宣言をし、その本部長になる総理大臣が非常に御心労のこととは思います。法律で守ってやろうという姿勢については評価しますが、住民サイドに立った場合に、強化地域の指定がなされ、あるいは警戒宣言もいつ出るかわからない、そういうような状況にあるときに非常に恐怖感に駆られるわけです。感謝と恐怖の気持ちがないまざっているような状況にあるというのが実態だと思います。そういう中で強化地域というのはいわば特定地域になります。そういう地域の防災に力を入れるということですので、何かこの地域の防災に対して特別に事業枠を設定して対処なさるお気持ちがないかどうか、その点を承りたいのです。公共事業でこなしていくということになりますと、これは長期計画がそれぞれございますので、その中でこなすというだけにとどまってしまいます。したがって、補助率の問題にしても対象事業の問題にしても、特に特定地域の防災事業ということで特別事業をお考えいただけないかどうか、そういう点について総理のお気持ちを伺いたいと思います。
  159. 福田赳夫

    ○福田内閣総理大臣 防災のための事業計画ができる、それをどういうふうに財政上の裏づけをするか、こういう問題でありますが、どういう形の財政措置をするか、一般公共事業の中にそういう項目を設けてやっていくのか、あるいは特別の、公共事業以外の枠でやるのか、どういう気持ちだ、こういうようなお尋ねのようでありますが、やはりこれは、公共事業は公共事業なんですね。その公共事業の中でどういう扱いをするか、こういう問題ですが、これはどういう扱いをするか、予算措置まで私まだ報告を受けておりませんけれども、要するにこの法律ができた、そして法律に基づいて防災事業計画ができた、それが実施されないというのでは困るのですが、これが安定的に実施されるということを旨としてこの財政の裏づけをする、このように御理解願います。
  160. 永原稔

    ○永原委員 災害復旧の中で激特と言われるものがございます。これは激甚災害について、短期的に、集中的に投資をやる事業ですが、これもやはり一定の公共事業の枠の中でやるものですから、災害復旧費の枠を特別にふやしてはございませんので、そこでたくさん投資をやれば、ほかのところにしわ寄せがいくというような不満が出てくるわけです。そういうような事態災害復旧にはありますので、防災事業という観点から、ぜひ、別枠を設けてでもこれに取り組んでいただきたい、そういう気持ちで総理大臣に訴えているわけです。よろしくお願いいたします。  もう一つ、考えてみますと強化地域というのは特定地域になります。そういう中で、一般的な建築基準法などがそのまま適用されていていいのだろうか、防災の観点から別の措置が必要ではないであろうかと思いますけれども、建設省の方ではどういうようにお考えでしょうか。
  161. 救仁郷斉

    ○救仁郷政府委員 現行の建築基準法の耐震規定でございますが、これは関東大震災経験にかんがみまして、関東大震災級地震がまいりましても一応十分な規定が整備してございます。ただ、強化地域に指定されますと、私どもとしては、新しくつくる建物よりも、むしろ既存の老朽化した建物の対策、これの方がもっと重要かと思います。したがいまして、そういった既存の老朽化した建築物の点検それから保守、そういったものに力を入れてまいりたいというように考えている次第でございます。
  162. 永原稔

    ○永原委員 既存の建物の点検、保守というようなことについて、これは国が検査なさって、そしてそれについて何か財政的な措置もなさるということなんでしょうか。
  163. 救仁郷斉

    ○救仁郷政府委員 私ども建設省では、そういった耐震の診断基準というものを二、三年前から毎年予算をいただいて整備してまいっております。それに基づきまして地方公共団体の担当の職員等に対しまして研修を行いまして、そうして地方公共団体で研修をしていただくというようなことを考えております。  なお、本年から、そういった診断が終わりました建物につきましては、いろいろな関係の融資等を利用いたしまして改修を促進するように指導いたしているところでございます。
  164. 永原稔

    ○永原委員 それはあくまで個人の住宅ですと個人がやるということですね。そういうように理解していいですね。
  165. 救仁郷斉

    ○救仁郷政府委員 そういうことでございますが、できるだけ政府系の金融の措置を講じたいというように考えております。
  166. 永原稔

    ○永原委員 私は実際地方行政の第一線で働いたことがあるわけですけれども、そういう中で、先ほど来自衛隊派遣の問題がいろいろ議論されております。総理大臣は防衛庁長官に要請をするというだけで済むかもしれません。しかし現実災害復旧に携わっていただく自衛隊派遣を知事が要請する場合には、どこにどれだけの人員を、おおむねどのくらいの期間というように具体的に要請しなければならないのです。総理大臣が事前自衛隊に、まだ起こるか起こらないかわからない、現実被害がどこに起こるか、どの程度になるかもわからない、そういうときにどういう方法で自衛隊要請なさるのか、またそれを受けて立つ自衛隊がどういうように隊員の配置をなさるのか、そういう点について防衛庁の方から伺いたいと思います。
  167. 上野隆史

    上野政府委員 お答え申し上げます。  現実地震防災派遣の際に自衛隊がどういう御支援を申し上げるかということは、これは今後策定されます地震防災強化計画の中で地方公共団体等とも十分な連絡調整をとりながら策定されていくわけでございます。  被害場所が不明な地点に自衛隊地震防災派遣をしても余り実効がないのではないかという点についてでございますが、これは地震が起こるであろう地域そのものにあらかじめ自衛隊派遣いたしましたのでは、地震が起こった場合に地震被害をまともに受けますので、これはおっしゃるとおりまことに困った事態に相なりますので、そういうことは考えておりません。あらかじめ部隊を集めます場合には、地震が起こるであろう地域の周辺の駐とん地等に集めまして、そうしてその状況を見守るということに相なろうかと思います。  そのほかに、地震防災派遣の内容といたしましては、連絡業務でありますとか地域住民への広報業務でありますとか、あるいは水防の問題でありますとか、いろいろお手伝いするところは自衛隊の資材、人員を使いまして多々あろうかと存じますけれども、ただいま御質問の中にありますような大規模部隊をどう動かすのだという点につきましては、先ほどお答え申し上げたように考えております。
  168. 永原稔

    ○永原委員 たとえば静岡県の場合ですと、第一師団の配下の部隊が動くわけです。そういうのが富士学校とかあるいは南北の基地、そういうところに配置されるというのが事前派遣ということになるわけですね。
  169. 上野隆史

    上野政府委員 具体的な部隊名等はまだこれから計画を策定する段階でございますのではっきり申し上げられませんが、大方の考え方としてはそういうように考えております。
  170. 永原稔

    ○永原委員 終わります。
  171. 川崎寛治

    川崎委員長 以上で総理大臣に対する質疑は終わりました。  国土庁長官及び関係政府に対する質疑を続行いたします。湯山勇君。
  172. 湯山勇

    ○湯山委員 長官にお尋ねいたします。  今回の防災派遣には、本法、大規模地震対策特別措置法の十三条二項、これに自衛隊に対する規定がございます。もちろん災害派遣というのが自衛隊法にありますけれども、災害基本法にはそういう自衛隊に対する規定は何もないのです。なぜ災害基本法に自衛隊災害派遣に関する条項がないのか、これを承りたいと思います。
  173. 櫻内義雄

    櫻内国務大臣 災害対策基本法は、言うまでもなく発災後の措置を中心としての法律でございます。今回の場合は地震の予知、そして事前に万全を尽くす上にはどうか、こういうことから、現在地震が起こるおそれがあると言われておる東海地域関係の方々、特に静岡県知事などから、事前自衛隊派遣はどうだろうという相談がありましたので、それを今度の法案に盛り込んだ、こういうことでございます。
  174. 湯山勇

    ○湯山委員 事実論じゃなくて、法律です。災害派遣も基本法でこういうふうに手続的な規定があるということならば、それは理解できます。しかし、いずれにしても自衛隊派遣であることには違いないわけです。それがこの場合は別な法律規定が要って災害派遣の場合は要らないということの説明と、いまの大臣のとはちょっと違うわけです。  そこで御参考までに、警察法にも同じように七十一条に緊急事態布告ということがあります。しかし警察法には自衛隊出動規定はありません。自衛隊法ではもちろん七十八条による出動ができます。これも他の法律自衛隊のこういうことを規定はしていないわけです。もう時間がありませんから申し上げますが、多分、現在自衛隊法にいまのように規定がないから、それをつくるための前提としてこれをつくったので、自衛隊法の中に防災派遣という条項があれば前の方は要らない。つまり、前の場合は、防災派遣というのがすでに自衛隊法にあって、そこで基本法にはうたう必要がなかった、今度の場合は、ないからこうしたというのですが、しかし今度入ればもう要らないということになる。これは警察法も同じで、警察法自体には自衛隊に触れた部分はありません。このことは、常識的にといいますか、軍隊には防災とか災害救援とか、あるいは警察支援とかいった本来任務はありません。だから、他の法律で軍隊を動かすということは通常、常識としてはないことで、ヨーロッパのように災害のときには周りの国々がそれをねらっておるという場合にむしろそれらを排除する、つまり外からの侵略を防ぐための配置について、内部の防災活動治安活動が安心してやれるようにということで、逆なんです。したがって、本来から言えば警察法も基本法も自衛隊の本務に干渉するような条項というのは入れないのが常識なんです。この場合も自衛隊法にあれば、現地の隊の指揮というのは本部長がするわけでもありませんし、あるいは現在の災害派遣にしても知事なり市町村がそこへ行っておる自衛隊の指揮はできない。これはあくまでも隊の指揮系統によって作業するわけですから、この十三条の二項というのは要らないもので、もしいまの政府の意図のようにおやりになるのであれば、自衛隊法単独の改正で十分できるわけです。知事が要請する、本部長要請するということが入ればそれでできるわけで、あえてこの地震特別措置法自衛隊法の七十八条関係の規定をする必要はないわけですから、この点ひとつ大臣、十分お考えをいただきたいと思います。
  175. 櫻内義雄

    櫻内国務大臣 湯山委員の御所見は私も傾聴すべきところがあると思います。今回の第十三条二項の事項につきましては、後の自衛隊法の一部改正「第九条 自衛隊法の一部を次のように改正する。」という条項との絡み合いになるわけでございます。そうでなく、自衛隊法直接に災害派遣の項で今回のような措置法律上やるのが適切ではないかという御所見であれば、私は、法律専門家ではございませんが、法体系上は、ここにも防衛出動、防衛出動待機命令、それから命令による治安出動治安出動待機命令、それと要請による治安出動災害派遣、こうなっておりますから、ここへ並べて今回のような措置を法文上やるというお考え方について別に異論はございませんが、今回のこの特別措置法を中心としての措置法律的にはこれでもいい、こういうことで今回のような十三条二項に表現をしたと聞いております。これ以上のことはちょっと私、法律専門家じゃありませんから……。
  176. 矢山有作

    矢山委員 関連で。  国土庁長官にお伺いしたいのですが、いまの自衛隊法で、事が起こる前の出動を認めておるのは防衛出動だけなんです。あれは七十六条でしたか、そのときには事前出動ができる。その他の場合は事前出動自衛隊法ではできない形になっているわけです。そこでもし事前出動に道を開こうとするなら、自衛隊法を改正しなければならぬ。ところが、自衛隊法を正面から改正することを避けて、この特別措置法自衛隊法をいらおうとしているわけです。そして自衛隊事前派遣ができるような法律に変えようとしている。そこが問題だと言っているわけです。  そこで、自衛隊災害のときに事前派遣ができるということになってくると、先ほど私が治安出動の問題に関連して申し上げたように、災害派遣との関連で警戒宣言段階事前治安のための出動もできるという法体系が整うてくるんだ、こういうことを私は申し上げている。だから災害対策治安対策というのはまさに表裏一体、不可分の関係にあるじゃないかということを申し上げたのです。それが一番心配な点です。ところが、いまの総理との質疑応答を聞いておりますと、総理はついに、災害派遣の場合にも治安訓練をやるのがなぜ悪いか、こういうふうな開き直りをされたわけです。そこで私は、やはり私どもが質疑で申し上げた不安な点、自衛隊法の中で事前派遣を認める条項がきわめて危険な要素を含んでおるということを言っておるわけであります。その点おわかりいただけますか。
  177. 櫻内義雄

    櫻内国務大臣 専門的な点については後ほど担当官より御説明を申し上げさせますが、命令による治安出動、それからもう御承知で御質問でありましょうが、先ほども申し上げたのですが、治安出動待機命令も七十九条ではっきりしておるわけですね。
  178. 矢山有作

    矢山委員 事前はできないのですよ。
  179. 櫻内義雄

    櫻内国務大臣 いやいや、事前にですね、これは。治安出動待機命令、緊迫し……
  180. 矢山有作

    矢山委員 待機しているだけですから、出動じゃないのです。それは。
  181. 櫻内義雄

    櫻内国務大臣 そうすると、防衛の方も出動待機命令ですね。
  182. 矢山有作

    矢山委員 防衛はあります。括弧書きを見てください。「外部からの武力攻撃のおそれのある場合」ということになっています。
  183. 櫻内義雄

    櫻内国務大臣 それじゃ後ほど。  私申し上げたように、別に湯山委員矢山委員のおっしゃっていることを、御所見としてそういう考え方もできる、しかしこれを立法するときに、法律的にも十三条二項で適切であるという専門的な見解があって、それで私はこのとおりの措置法で提案に賛成したわけでございますが、御所見は御所見として私もわからないではないです。先ほどから承っておるところであります。
  184. 矢山有作

    矢山委員 そこで、所見として承っていただきましたら、あなたの方から重ねて、災害事前派遣に関連をして裏表の関係で治安出動命令のあの条項を活用して警戒宣言段階治安のために自衛隊を出すことは絶対にありませんと、このことを断言していただけますか。
  185. 櫻内義雄

    櫻内国務大臣 それはもうしばしば申し上げておるわけでございまして、関係の防災機関が実施する地震防災対策、応急対策支援するために、事前の、しかも予想されるのはきわめて短時間あるいは短時日の支援であるわけであります。この応急対策を実施する上に必要な、たとえば緊急輸送とか避難の指示とか救護とか情報の伝達のためにのみ出動するものであって、そして携行する武器など、それは全然考えておらぬということを明白に申し上げておるわけであります。
  186. 湯山勇

    ○湯山委員 では、私に対する大臣の答弁は私は了承いたします。  以上で終わります。
  187. 川崎寛治

    川崎委員長 これにて本案に対する質疑は終了いたしました。  次回は、明二十六日正午理事会、午後四時委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。     午後三時二十三分散会