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1978-03-24 第84回国会 衆議院 公害対策並びに環境保全特別委員会 第7号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和五十三年三月二十四日(金曜日)     午前十時三十分開議  出席委員    委員長 久保  等君    理事 相沢 英之君 理事 池田 行彦君    理事 登坂重次郎君 理事 林  義郎君    理事 島本 虎三君 理事 水田  稔君    理事 古寺  宏君       高村 坂彦君    西田  司君       橋本龍太郎君    岩垂寿喜男君       大原  亨君    土井たか子君       坂口  力君    竹内 勝彦君       受田 新吉君    瀬崎 博義君       工藤  晃君  出席政府委員         環境庁水質保全         局長      二瓶  博君  委員外出席者         参  考  人         (経済団体連合         会環境安全委員         会委員長)   古賀 繁一君         参  考  人         (財団法人日本         環境衛生センタ         ー衛生工学部         長)      矢込堅太郎君         参  考  人         (入浜権運動推         進全国連絡会議         代表)     高崎 裕士君         参  考  人         (水産庁南西海         区水産研究所海         洋部漁場保全研         究室長)    村上 彰男君         参  考  人         (京都大学理学         部附属瀬戸臨海         実験所助手)  布施慎一郎君         特別委員会調査         室長      綿貫 敏行君     ————————————— 委員の異動 三月二十四日  辞任         補欠選任   岩垂寿喜男君     大原  亨君   中井  洽君     受田 新吉君   東中 光雄君     瀬崎 博義君 同日  辞任         補欠選任   大原  亨君     岩垂寿喜男君   受田 新吉君     中井  洽君   瀬崎 博義君     東中 光雄君     ————————————— 本日の会議に付した案件  公害対策並びに環境保全に関する件(瀬戸内海  環境保全問題)      ————◇—————
  2. 久保等

    久保委員長 これより会議を開きます。  公害対策並びに環境保全に関する件、特に瀬戸内海環境保全問題について調査を進めます。  本日お招きいたしました参考人は、経済団体連合会環境安全委員会委員長古賀繁一君、財団法人日本環境衛生センター衛生工学部長矢込堅太郎君、入浜権運動推進全国連絡会議代表高崎裕士君、水産庁南西海水産研究所海洋部漁場保全研究室長村上彰男君及び京都大学理学部附属瀬戸臨海実験所助手布施慎一郎君、以上五名の方々であります。  なお、本日は議事の整理上、午前中は古賀参考人矢込参考人及び高崎参考人からまず御意見を承り、続いて各参考人に対し質疑を行うことといたします。また、午後からは、村上参考人及び布施参考人の御出席をいただき、同様に意見聴取の後、質疑を行います。  この際、参考人各位に一言ごあいさつを申し上げます。  本日は、御多用中のところ本委員会に御出席くださいまして、まことにありがとう存じます。  申すまでもなく、瀬戸内海は、わが国が世界にその美しさを誇る景勝地であり、また国民にとって貴重な漁業資源宝庫でもあります。この恵まれた自然環境を保全し、その恵沢を後代の国民に継承することは、現代に生きる者の責務であると考えます。  本日は、瀬戸内海環境保全問題というテーマで関係各方面の率直な御意見をお伺いし、本問題調査参考に資したいと存じ、皆様方に御出席を願ったのでございます。何とぞ、それぞれの立場から忌憚のない御意見をお述べくださいますようお願い申し上げます。  なお、御意見開陳はおのおの十分程度に要約してお述べいただき、その後、委員質疑にお答え願いたいと存じます。  それでは、最初古賀参考人からお願いいたします。
  3. 古賀繁一

    古賀参考人 ただいま御紹介いただきました古賀でございます。主として、産業界代表いたしまして意見を申し上げます。  ただいま委員長からお話がございましたとおりに、瀬戸内海地域というのは日本で非常に大事なところでありまして、ここの人口は約三千万人、全国比約二六%。工業製品出荷額全国の三分の一に達しておりまして、特に石油精製の場合は全国比約三七%能力がある。鉄鋼、これは粗鋼ベースで五〇%の能力があの地域に立地いたしておるのでございます。  また、瀬戸内海における港湾貨物取り扱い量は約十三億トン、全国のおよそ半分を担っておるなど、瀬戸内海日本列島の中でもきわめて大きな機能を果たしており、またあの地域は気候もよく住まいやすいところでありまして、日本のうちでも最も重要視しなければならない地域である、これはみんながそのとおりに考えておる地域でございます。したがいまして、瀬戸内海の問題を考える場合に、環境保全ということはもちろん重要課題であります。非常に大事な問題ではありますが、同時に、瀬戸内海地域が単に景勝の地、漁業資源宝庫であるというばかりでなく、いま申し上げましたような地域住民生活の場であり、産業活動の大事な場であり、交通輸送路としても非常に重大な役割りを果たしておる、こういう多面的な大きな機能を持っておることを忘れてはならないと存じます。  このような多面的な機能を十分に生かすように、瀬戸内海地域の多目的高度利用環境保全に留意しながら推進していくことが肝要であろうと存じます。そうした視点に立って今後、瀬戸内海地域わが国経済全体の中にどのように位置づけ、これを活用していくかについて、まず国としての基本方針をしっかり策定して、これに基づいて後継法内容を考えるのが本来の筋道ではないかと考えております。  しかし、それはそれといたしまして、私たち瀬戸内海環境保全については十分その重要性を認識しておりまして、昭和四十八年瀬戸内法が施行されて以来、産業界といたしましては非常な努力を払ってやってまいっておるのでございます。特に、同法で求めております産業排水からのCOD汚濁負荷量を半分、すなわち五〇%に削減するという目標に対しては、実際には六五%以上削減、すなわち目標を三〇%以上も超過達成して著しい成果を上げておりますことは、皆様御承知のとおりでございます。このような産業界努力によって、現在の瀬戸内海水質は、昭和四十七年当時に比べますと格段に改善されてきているわけでございます。  これに対しまして産業排水以外の一般生活排水等は、その汚濁負荷量が年々ふえる一方というのが実態でございます。たとえば、瀬戸内海地域府県COD負荷量実績について私たちが調べたところでも、確かに四十七年当時は産業排水が全体で七九%、一般生活排水が二一%と、産業排水ウエートの方が非常に高かったのでありますが、現在では、各府県とも生活排水ウエートが高まっております。  一例を挙げますと、大阪府では生活排水からのCOD負荷量が、四十七年当時の一日当たり百二十トンから五十二年には百六十トン、すなわち約三三%ふえておりまして、その他岡山、広島、香川県等でも、最近では生活排水汚濁負荷が、絶対量でも産業排水を上回っておるという実情でございます。したがいまして、現行瀬戸内法は、産業排水からのCOD汚濁負荷量削減するという面では非常に成果を上げ、貢献したわけでありますが、生活排水とその他の汚濁発生源については、これを黙過してきておりますので、全然成果を上げておりません。五年たった現在、その成果を判断いたしますと、これは結果論的ではありますが、産業排水規制に成功した、生活排水等は全然手をつけなかった、いわば片手落ちの法律だったと言わざるを得ないのでございます。産業排水について、さらに一層改善する余地が全くないとは申しませんが、その可能性は非常に限られてきておりまして、今後の瀬戸内浄化のかぎは、産業排水以外の生活排水等対策の成否にかかっておると言っても過言ではないと存じます。瀬戸内法後継法をつくる場合には、このような実態を十分踏まえて、これまで成果の上がらなかった生活排水等汚濁発生源について規制効果が上がるよう、格段の御配慮をお願い申し上げたいと思います。  次に、具体的な問題について、若干私どもの見解を申し述べます。  まず第一に、水質総量規制の問題でございます。これについては、環境庁は、現行水質汚濁防止法を改正して、瀬戸内海だけでなく全国汚濁の著しい広域的閉鎖性水域対象として、一般的な水質総量規制を導入しようという御意向のように承っております。しかしながら、さきに申し上げましたとおりに、産業排水の方は、これまでに国、地方自治体の厳しい規制によって十分な対策が実施されており、近年著しくその効果も上がってきております。問題は、むしろ残された一般生活排水等規制対策であります。水質総量規制が、水域水質影響を及ぼすすべての汚濁発生源対象として、全体的に汚濁負荷量削減するという趣旨であれば、私どもも大変結構なことだと思います。しかし、伝えられておる環境庁案では、規制対象特定事業所、すなわち工場及び下水終末処理場、これに限定されておって、現在、下水道整備のおくれ等からたれ流し同然になっておる生活排水等規制がむずかしいということで、単に削減を勧告するとか指導するとかいうことにとどめておって、いわゆる法的規制対象にはなっていないのであります。来年度は、生活排水対策としての下水道予算が、景気対策の意味合いも含めて、本年度に比べ約四三%伸びたと言われております。下水道普及率は、現在全国で二四%と言われておりますが、その特別な配慮大型予算でも、年に一ないし二%改善するにすぎないのでありまして、今後、閉鎖性水域水質浄化効果を上げていく上には、下水道施設重点的整備や第三次処理も含めた屎尿処理施設整備普及等生活排水対策、さらには農業、畜産排水養殖漁業による自家汚染等効果的な汚濁削減対策など、国、地方自治体による実際面の施策を着実に進めることの方が重要であると存じます。この面につきまして、ぜひ諸先生方の御尽力をお願いいたしたいと存じます。  第二は、富栄養化による被害防止対策の問題でございます。これについては、いわゆる富栄養化赤潮等障害発生との因果関係、あるいは赤潮そのもの発生メカニズム等が、まだ科学的に十分解明されていないと聞いております。したがって、有効な赤潮対策を講ずるには、まずこうした因果関係を徹底的に解明するとともに、赤潮防除技術を開発することが先決でありまして、国とされてもこういう問題にもっと組織的に取り組んでいただきたいと存じます。もちろん、因果関係が未解明だからといって無策でよいということではなく、産業排水生活排水等、あらゆる分野で可能な限り燐や窒素を削減していくことは必要であろうかと存じます。しかし、そうだからといって、これら特定物質法律において指定し、削減指導することになりますと、指定物質赤潮との間の因果関係を認めたかのような誤解を招くおそれもありますので、この点については、立法府におかれて慎重に御配慮を賜りたいと要望いたします。なお、たとえば燐についても、瀬戸内海に流入する全燐の七割は生活排水によるものと聞いております。この面でも、下水道整備等生活排水対策抜本的推進が重要であろうかと思います。  第三に、タンカーの航行規制や船舶からのビルジの排出規制が問題になっておるようでございます。これらにつきましては、現行海上交通安全法海洋汚染防止法ですでに規制を受けておりますが、仮にまだ十分でない点があるにしましても、本来これらの法律に基づいて運輸省なり、海上保安庁なりが対処すべき問題でありまして、瀬戸内後継法で別途規制するということは適当ではない、それぞれの法律規制さるべきで、瀬戸内法でこれを取り込むのは適当でないと考えております。むしろ、この際問題とすべきことは、こうした法律がありながら守られずに、廃油の不法投棄などによる油濁事故が頻発いたしまして、漁業被害をもたらしておる点であります。これに対しては、事故をなくすことが先決でありまして、不法投棄に対する監視、取り締まり体制の強化や原因者徹底的追求政府としてもっと力を入れるべきであると考えております。  時間が過ぎたそうでありますが、簡単に、第四番目として、埋め立ての問題に関しまして申し上げたいと思います。  瀬戸内海では、公有水面埋立法規制に加えて、現行瀬戸内法でさらに厳しい規制がかけられておるのであります。しかしながら、現在、累増する廃棄物処分のための埋め立て下水道終末処理場発電所用地などの埋め立てが焦眉の急となっております。これら産業活動国民生活のためにどうしても必要なもの、公益性の高いものについては、環境保全に十分配慮するのはもちろん、今後は社会的、経済的影響等も勘案し、総合的判断に立脚して、埋め立てが可能になるよう適正な運用を図っていただきたいと考えます。  以上、いろいろ申し上げましたが、諸先生におかれましては、私ども意見を御理解賜りまして、よろしく御高配くださるようにお願い申し上げまして、私の意見開陳を終わります。  ありがとうございました。
  4. 久保等

    久保委員長 ありがとうございました。  次に、矢込参考人にお願いいたします。
  5. 矢込堅太郎

    矢込参考人 矢込でございます。  私の専門は、衛生工学のうちの廃棄物処理でございます。その廃棄物処理立場から主として屎尿につきまして、まず、その実施状況屎尿処理技術について概要を紹介させていただきまして、それを受けまして、屎尿処理施設設置がいま非常に困難でございますが、それをどのようにしたらいいか、考え方を述べさせていただきたいと思っております。  まず最初屎尿処理状況でございますが、屎尿処理の仕方は、便所の種類によってそれに合った方法がとられております。便所は、御存じのとおり水洗便所くみ取り便所と二つございますが、まず、水洗便所の場合は公共下水道、それから、公共下水道のないところでは屎尿浄化槽によって処理されております。一方、くみ取り便所の場合は、一度収集いたしまして、それから処理されるわけでございますが、主として屎尿処理施設と呼ばれるものを中心といたしまして、そのほか下水道海洋投入農村利用あるいは自家処理というふうな方法でもって処理されております。  この内訳厚生白書等資料によって見てみますと、五十一年度総人口が一億一千三百八十万でございますが、そのうち僻地等人口百八十万を除いたものが屎尿処理対象人口ということになります。このうちの三五%、三千九百四十万人が水洗便所を使っております。このうち下水道が二千四十万、屎尿浄化槽が千九百万ということで、水洗便所のうちの下水道浄化槽の割合はほぼ半分半分ということになります。一方、くみ取り便所人口は七千三百二十万人、先ほどのうちの約六五%に当たりますが、この人口屎尿量が十万八百七十キロリッター一日に出ております。これを現在、先ほど申し上げました屎尿処理施設処理しております。  なお、屎尿浄化槽につきましては、使っておりますと、きれいになった分だけいわゆる汚泥として出てまいります。このどろは所定の量に達する前に清掃をするということになっておりまして、浄化槽の型式によりまして年一回ないし三回程度清掃したものを収集いたしまして、収集した屎尿と同じ扱いをしてございます。  これら処理されておる屎尿に適用されております技術でございますが、御存じのとおり、屎尿は人間が栄養をとりました残りかすでございます。しかし、微生物等にとってみますと栄養となる有機物などをまだ高濃度に含んでおります。したがいまして、これをそのまま環境に出しますと、主として水質汚濁でございますが、腐敗あるいは富栄養化などの汚染原因となります。  これらの汚濁原因物質を測定するのには、通常、水質分析項目といたしまして、従来からBODあるいはSSというものが使用されてきております。これを屎尿で見てみますと、BODの量は屎尿一リッターの中に十三・五グラム含まれております。また、SSは一リッターの中に二十一グラム含まれております。これを処理する方法でございますが、これは当初は、欧米で発達しておりました下水汚泥処理方法が適用されております。これは昭和二十年ごろから適用され始めたわけでございますが、それ以前は日本屎尿を肥料として使っておりましたので、急激に技術が必要であったということ、一方では、下水汚泥屎尿濃度あるいは質と似ているだろうということから欧米下水汚泥技術が適用されたわけでございます。しかし、それ以後、処理を進めてまいりますと、屎尿屎尿としての特性があるので、それに合った処理方法を確立しなければいけないということがわかってきております。一方、この屎尿処理は、市町村組織廃棄物処理清掃事業一環として行われることになっております。そこで、この技術につきましては、その組織に適合しているということが最重要要件でございます。  これらのことを踏まえまして、屎尿処理施設昭和三十年代から本格的に開発され、設置されてきておりますが、その中で、いま申し上げましたような適用要件などに合致するものといたしまして、現在、構造基準が決められております。この構造基準に示されております処理方法は、主工程生物処理、これが一番経済的なわけなのですが、これを使っております。その内訳嫌気性消化処理あるいは好気性消化処理というふうなもので、さらに細部に分けますと五方式ほどございます。現在、屎尿処理施設全国で約千二百カ所ほどございますが、このうちの九〇%強がこの方式によっております。そのほか、物理化学的な処理の分類に入るものも二方式ほどございますが、これの施設が現在数十カ所使われております。これらの施設は、いずれにいたしましても、標準的には、受け入れました屎尿、これを主工程、一、二次処理をいたしまして、BODを三〇ppm、SSを七〇ppm以下に処理して放流する。下水並みあるいは下水よりもやや処理しにくいということで、多少高い濃度処理水が得られております。  一方、屎尿浄化槽について見ますと、これも大体下水処理方法を適用している内容でございますが、水洗便所から出てきます処理対象物規模によりまして、たとえば家庭用等小規模のものは水洗便所汚水だけの単独処理、それから中、大規模になりますと、雑排水を含めまして合併処理ということで処理されております。水洗便所単独の場合は、処理特性が悪いものですから、放流水BODは九〇、それから中、大規模浄化槽につきましては、放流水BOD六〇あるいは三〇ということで決められております。そのような形で現在、屎尿処理が行われておりますが、この屎尿処理施設につきまして、設置上非常に反対が多く出ております。その反対の理由をまとめますと三点ほどになろうかと思います。一つは、環境汚染があるということです。それから二番目は、主としてこれは感情的なことと思いますが、周囲の景観とそぐわないというようなことです。三番目は、これはその施設設置しました地区にとりまして利益のない施設であるというふうなことのために、この設置がむずかしくなっておるわけでございます。  このうち、特に環境汚染、これは水質汚濁が主たるものと思います。しかし、現在の屎尿処理施設性能を見てみますと、比較的高い汚濁物質除去性能を有しております。しかし、それにもかかわらず、この施設市町村施設であるというふうなことで目立ちやすい、そして住民から市町村に苦情が通りやすいということのために、非常に厳しい条件を要求されております。これに対処するためには、処理技術をさらに高度化する等の技術上の問題が一つございますが、それと同時に、こういうふうな廃棄物というのは生活に伴って必ず出るものでございますので、こういう日常生活にとってどうしても必要な施設許容排出量、これを、たとえば環境容量に見合います総排出量のうちから、どのくらいそれに充ててよろしいかというふうな、配分をしておくことが望ましいというふうに思っております。  その他の、景観につきましては、これは今後技術的に十分対応が可能だと考えております。  それから、無利益施設だというふうな点につきましては、これは、その地域にとりまして、あるいは市町村全体にとりましては利益がある、これがなければならない施設でございますので、この利益を、たとえば設置する地区の開発とか、あるいは環境整備というふうな形のもので配分するということ、これを設置計画一環としまして当初から組み込んでおくというふうなことによって、公平化を期する必要があろうかというふうに考えております。  私の専門屎尿処理立場から、全般的なことを申し上げましたが、瀬戸内のような閉鎖水域におきましては、いまのようなことを踏まえまして、さらに厳しい詰めが必要ではなかろうかなというふうに思っております。
  6. 久保等

    久保委員長 ありがとうございました。  次に、高崎参考人にお願いいたします。
  7. 高崎裕士

    高崎参考人 入浜権運動推進全国連絡会議高崎でございます。  短い時間でございますので、レジュメと参考資料を用意いたしておりますので、御利用くださいますようにお願いいたします。  私は全くの素人でありまして、ただの住民代表ということでここに呼ばれておりますので、数字的なこと、学問的なことにつきましては、他の参考人方たちにお任せをしまして、私は、素朴な住民感情からお話しを申し上げたいと思います。  ちょうどこの二十日、二十一日と和歌山県白浜で私たちは入浜権宣言三周年全国集会というのを開きましたけれども、その場所で、外山八郎さんという高等学校先生が始められました天神崎という海岸を保存する運動お話を聞き、これを支援することを決めました。お配りをしております資料の中に「自然と文化」という冊子がございますが、この中の五十四ページのところに外山先生が書いておられますので、後ほどまたごらんくださいますように。非常に外山先生苦労をして、一私人でありながら、海岸の土地を、財団法人をつくりましてこれを買い取って保存をしようという、大変な御苦労をしておられます。そればかりでございません。私たちは、同じ集会の中で各地のそうした運動の報告を聞いたのですけれども、たとえば兵庫県西宮の甲子園浜におきましては、二千名を超す方たちが原告になられて裁判を起こされておる。これはPTAのお母さんたちから始まった運動です。子供たちに砂浜を残したいという素朴な気持ちから出発しています。それから、姫路のLNG基地についての訴訟では、漁民の人とほかの住民とが一緒になって苦しい闘いを始めたのであります。そのほか瀬戸内海を取り巻きます各地、愛媛県長浜でも、漁民住民とが一緒になって、海水浴場を守ろうという訴訟を起こしておられます。福岡県豊前、大分、その他各地で苦しい運動をしております。私の住んでおります兵庫県高砂におきます運動については後ほど少し述べたいと思いますが、どうしてこんな苦労をみんなしなければならないのかということを考えますのに、やはりそれは、これまでの環境を保全する上での、特に瀬戸内海を保全する上での法律不備、たとえば、古くは公有水面埋立法でありますとか現在の瀬戸環法といったものの不備ということが一番大きな原因じゃないか。そうした中で、行政の立ちおくれあるいはまた経済最優先の考え方といったものが原因ではないだろうかと思います。私は、本日意見を述べますに当たりまして、この後継法は、埋め立てによる海域、海岸の破壊というものを全面的に禁止していただきたい、凍結されたい、そして、私ども住民の考えております入浜権の考え方を採用していただきたいと思います。  そこで、入浜権というのは聞き慣れない言葉でございますので、かいつまんで御説明をいたしたいと思います。同じく資料の中にございます緑色の「一〇〇人証言集 高砂の海−いまむかし」というのがございます。これと、先ほどの「自然と文化」の五十二ページ、ここに「高砂市に於ける入浜権運動」というものを書いております。とともに、「一〇〇人証言集」の方の三ページ、四ページにわたりまして年表がございます。細かい点につきましてはそうしたものを見ていただくようにお願いをいたしまして、私は要点だけお話しをいたします。  兵庫県高砂と申しますと、あの謡曲で名高い、また結婚式にはつきものの、あの尉と姥の飾り物で有名な相生の松で名高い白砂青松の土地でございました。これが昭和三十六年から全面的に埋め立てが始められまして、現在、高砂市の海岸はすべて埋立地に変わってしまって、ほんのわずかも砂浜は残っておりません。松の木も枯れてしまいました。そうした中でさまざまな公害問題が出てまいりまして、私たち住民がそうしたものの実態を調べようと思いましても、海岸には一歩も立ち入ることができない、海岸線のなぎさに至るまで企業の土地になってしまって、住民海岸線を散歩することも歩くこともできない、公害を監視しようと思いましても立ち入ることができないという状況でありました。私たちは大変苦労して、釣り用のゴムボートに乗って、工場がどんな水を流しておられるのかを見に行かなければならないというようなありさまでございました。そうした中で、昔は自由に海岸を通ることができたのにと考えておりますときに、ある研究会で町の老人が言いますのに、昔はあらしの後には海岸に出て流木を集めて一年じゅうのたき物にすることができた、また、貝やエビ、魚など、打ち上げられた物を拾い集めることができたという話を聞きましたときに、これはちょうど山林、原野におきます農村、山村の入会権のようなものが海岸にも考えられるのじゃないかというふうに思いつきまして、浜に入るのだからというので入浜権という言葉を生み出したのでございます。昭和四十八年でございました。  その後、この入浜権に基づきまして、市や会社に対しまして、海岸を歩けるようにしてくださいというような運動を続けてまいりましたが、四十九年には、そうした自然の海岸が失われたために高砂市民が具体的にどれほど損失をこうむっているか、精神的な大きな損失などはとても計算できるものではございませんけれども、そのうちのごく一部の目に見えた、たとえば有料のプールに行く、遠くの海水浴場に行く、遠くの釣り場に行く、そうしたことにどれぐらい金を使ったかをアンケート調査をいたしまして推計をいたしましたところ、その年の七月、八月、二カ月間だけでありますけれども、全市で推計五億二千万円の出費があったわけであります。これにつきましては、何年か前にこの同じ委員会で田中武夫代議士がそのことに触れて質問をされておられます。  なお、それと同時に、かつて住民がどんなふうに海岸とかかわって生きておったかということを聞き取り調査をいたして集めましたものが、先ほど言いましたこの「一〇〇人証言集 高砂の海−いまむかし」でございますが、この中では、学校の校長先生、高砂神社の宮司さん、町の商店主、あらゆる階層の方々が昔のことを語っておられます。そうした方たちに私がお話を伺いますときに、御自分のそれぞれの若い日の生活、思い出、青春と結びついているからでありましょう、中には涙をこぼして語られた方もございました。この中で特徴的なのは、近代的なレクリエーションでございます海水浴、釣り、散歩といったものはほとんどすべての方が思い出してくださったわけでありますけれども、それと同時に、幾つかの民俗行事も採集されてまいりました。そうしたものを考えますときに、海岸というものは、単に現代的なレクリエーションの場所であるだけではなくて、私たち日本民族にとりましての何千年も続いてまいりました信仰の場所であり、交歓の場所であり、本当にそれは単に生産だけの場所ではなかったということに気づいたわけでございます。  そうした私たち運動は、高砂市も若干認めるところとなりまして、昨年出されました「高砂市基本構想」の中に、入浜権の考え方も取り入れられるようになりました。「高砂市基本構想」の一節でありますが、こんなふうに述べております。「とくに、本市は工場立地によって自然の海浜が失なわれ、「渚を返せ」という住民運動が「高砂」を原点として全国的に展開されている。このため、渚の回復を基調として海に親しむ場の確保につとめる。」こんなふうな言葉も市の基本構想に取り入れられたわけでございまして、私やその他若干の者が、これをさらに具体化します基本計画審議会の委員にも委嘱されたりいたしております。  さて、これは高砂における運動でございますが、全国的な入浜権運動につきましては、同じく資料の中にございます、ひらがなで「いりはまけん」と書きましたパンフレットがございますが、これの七ページに運動の年表がございますので御参考にしていただきたく思います。大ざっぱなことだけを申し上げますと、昭和五十年に東京で開きました集会で入浜権宣言というものを出したわけでございます。これは全くすべての運動の基調になっておりますので、同じ「いりはまけん」というパンフレットの二ページでございますけれども、大変恐縮ではございますが、読ませていただきます。   古来、海は万民のものであり、海浜に出て散策し、景観を楽しみ、魚を釣り、泳ぎあるいは汐を汲み、流木を集め、貝を掘りのりを摘むなど生活の糧を得ることは、地域住民の保有する法以前の権利であった。また海岸の防風林には入会権も存在してきたと思われる。われわれは、これらを含め「入浜権」と名づけよう。今日でも、憲法が保障する、よい環境のもとで生活できる国民の権利の重要な部分として、住民の「入浜権」は侵されてならないものと考える。しかるに近年、高度成長政策のもとにコンビナート化が進められ、日本各地海岸は埋立てられ自然が大きく破壊されるとともに、埋立地の水ぎわに至るまで企業に占拠されて、住民の「入浜権」は完全に侵害されるに至った。多くの公害もまたここから発している。われわれは、公害を絶滅し、自然環境を破壊から守り、あるいは自然を回復させる運動一環として、「入浜権」を保有することをここに宣言する。  以上のようなものを出したわけでございます。  これをもとにしまして、昭和五十一年高砂で宣言一周年全国集会を開きました。こうしたところには釣り団体や海水浴業者の団体等も集まりました。これはもうすべての階層から集まったわけであります。釣り人は一千五百万人と言われます。海水浴業者の団体は、はっきりと自民党さんを支持する団体でございます。こうした人たちも集まってきたわけであります。  その後、私たちはシンポジウムの中で、海浜保全基本法といったものも出しました。この点につきましても時間がございませんから資料を御参考にしていただきたく思いますが、「環境破壊」という雑誌をお配りいたしておりますが、この中にそうしたものが出ておりますので、御参考にしていただきたいと思います。  私たちは、入浜権というのは、おかの側からの住民海岸に対する権利として主張しますけれども、同時にそれは漁業権とともに複合的に存在するおかの住民の権利として、両々相まって海岸を守っていく上で必要なものではないかと考えております。同時に、漁民も含めて、すべて人間という立場で、人間と海との深いかかわり、たとえば幼子が清い波と戯れ砂を踏むというような教育的な価値、計算できない価値というものを考えていただきたく思います。私もPTAの仕事を何年もしてまいりましたけれども、最近では青少年の非行ということが一番大きな問題でございますが、そうした自然が失われたということが大きな原因ではないかと思います。  私どもの考えておりますことは、環境権、入浜権を確立して、自然の尊厳性が守られ、生きとし生けるものの命が大切にされ、漁業者が誇りと希望を持って生活でき、あわせてすべての人々がその恵沢にあずかることのできる美しい海となぎさを守っていただきたいということでございます。  後継法につきましての希望を二、三点だけ述べて終わることにいたしますが、こうした入浜権の考え方をぜひ取り入れていただきたい。ただし、そうした保全をいたしますものを、特定地域を指定するという方針につきましては問題があると思います。どんなささやかな自然でも、その地域地域の人々にとりましてはかけがえのないものでございまして、名所旧跡といったところだけではございません。また逆に、指定されなかった地域の破壊ということが進むのではないかと恐れます。また、仮にそうした地域を指定する場合でも、これは知事さんの指定ということでなく、やはり地域住民を含めた、できれば海浜保全委員会といったようなものが設置される必要があろうかと思います。  次に、瀬戸内海は一つでございますから、どこを埋め立てをいたしましても全体に致命傷を与えると思います。これ以上の開発、埋め立ては、完全な調査が行われ、どうしてもやむを得ないというところがはっきりするまでは全面凍結をすべきではないか。現行法におきまして、四十八年十一月から五十年一月にかけて、わずかの間に千六十二件、五百七十四・四ヘクタールも埋め立てられているという事実を考えますときに、どうか後継法では、埋め立ての問題をもっと厳しく扱っていただきたく思います。  最後に一言、生活排水の問題でございます。  私ども生活排水処理は重要と考えますけれども、海を埋め立て処理場をつくらなければならないような巨大な、そして合流方式の流域下水道考え方は間違っていると私たちは思います。生活排水のことを問題にいたしますならば、どうして合成洗剤を禁止しないのか、農薬の空中散布を禁止しないのかということを言いたいと思います。  時間が超過しまして失礼いたしました。終わります。(拍手)
  8. 久保等

    久保委員長 ありがとうございました。     —————————————
  9. 久保等

    久保委員長 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。池田行彦君。
  10. 池田行彦

    ○池田(行)委員 参考人皆様には、お忙しい中を恐縮でございます。限られた時間でございますが、お三方に一つ、二つ御質問を申し上げたいと思います。  最初に、古賀参考人にお伺いをいたしたいのでございます。  参考人の御意見の中で、瀬戸内海というものは本当にすぐれた自然であり、その環境を守るのは大切である、しかしながら、同時にその瀬戸内海という地域、三千万の人口を擁し、また産業面においても、交通の面においても、わが国にとって非常に重要なものであるという御指摘がございました。私も全く同感でございまして、本当に瀬戸内の美しさというのは、単に自然の美しさだけではなくて、もう長年、何千年にわたりまして自然と人間とが交流してきた、人間のたつきがあそこにあった、いわば人文の美しさじゃないか、個人的にはこう考えておるものでございます。  ところで、先ほど参考人の御意見の中で、産業排水につきましては現行法のもとで非常に努力をされた、約三〇%の超過達成という実績を上げた、したがいまして、これから先、もとより改善の余地がないとは言わないけれども、それはきわめて限られたものであろう、こういった陳述がございました。これまでの産業排水にかかる御努力というのはもとよりでございます。国の規制あるいは地方公共団体のバランス基準というものを遵守していろいろ産業サイドで御努力された、その御努力は多とするわけでございますが、同時に、ここ数年続きます不況、経済の低迷というものも環境面ではあずかって力があったのではないかと思うのでございます。  そういったことも考えますと、今後、総量規制を導入するとした場合、対策をさらに進める余地がどの程度あるんだろうか、私どももいろいろ地元の方の担当者等の意見を聞いてみるわけでございますけれども現行法における割り当て量を基本にいたしまして、それを維持する、あるいはそれから若干改善することは可能であるかどうかというような観点で検討を進めておるんじゃないか。要するに、約三〇%以上超過達成した現状からさらに産業系の負荷量をカットしていく、こういったことが期待できるものだろうか、どうだろうか、こう思うのでございますけれども、その点について参考人意見をお聞かせいただきたいと思います。
  11. 古賀繁一

    古賀参考人 お答えします。  産業排水は、瀬戸内地域でもう技術の極限までやっておる業種もありますし、もうちょっとやれそうじゃないかという業種もありまして、ばらばらでございます。さっきも申し述べましたとおりに、改善ができるものは今後も改善を図っていかなくちゃならぬと考えております。  こういうふうな面につきまして、一般論として申し上げたいと思うのでありますが、公害をある程度まで防除するのは技術がありまして、また設備もそうがかりません、費用も、経費もそうがかりませんでうまくやれるのでありますが、だんだん詰めていきますと、技術的あるいは設備をするのに限界がございまして、何といいますか、幾何級数的に設備とか費用とかがかさばっていくのでございます。それから、それ以上詰めてやれと言われますと、技術がございません。幾ら金をかけてもどうにもならぬという実態に達するわけでございます。だから、その辺をどこまでやるかということが良織的な判断を要する次第であります。また、総合的な判断を要するところであります。しかし、いずれにいたしましてもPPPの原則に従いまして、こういう費用は、企業をいじめればいいということでなくして、企業が負担できる限界というのはわずかでありまして、結局回り回って最終需要家というんですか、最終消費者、そこに費用は回っていくわけであります。いま鉄で大体一割強が公害関係の費用だとおっしゃっておりますけれども、こういうのを鉄屋さんをうんといじめて負担させるというふうなことはとうていできないので、鉄屋さん自身が赤字を出しておるような状況でありまして、結局その公害防除の費用というのは回り回ってみんなが分け合うということになってまいります。だから、結局は、いいお座敷に住まうかある程度がまんするか、あるいは豪邸に住まうか、そういう選択は最終的には国民が判定さるべき問題だと思うのでございます。  そういう面も考えまして瀬戸内の工業排水の改善に私たちできるだけ努力をしていきたいと思いますが、いま何十%さらに積み得るかという御質問でございますが、ちょっといまはっきり申し上げかねますので、お許しをいただきたいと思います。
  12. 池田行彦

    ○池田(行)委員 次に、富栄養化対策の問題で、燐、窒素の関係につきまして、現在はまだ因果関係が十分解明されていないので、その解明の努力あるいは防除技術の開発の努力の方が先決ではないか、こういったふうな御意見がございましたが、一方におきまして、確かに因果関係はまだ定かではない。しかしながら、現在の赤潮状況というのはとても耐えられないので、その赤潮発生機構の解明はともかくとして、窒素、燐の規制はもう一刻も待てない、早急に導入すべきじゃないか、こういった御意見もあるわけでございます。  先ほど、そういった法による指導なり規制というものが導入されますと、あたかも因果関係が存在するかのごとき誤解を招くおそれがあるという懸念を表明しておられましたけれども、そういった点につきましては、たとえば本国会における審議の過程等を通じて、必ずしもその赤潮の発生機構というのは解明されていないし、あるいは因果関係というものもはっきりしないんだということを明らかにしつつ、ともかく何らかの防除といいましょうか、窒素、燐の削減の方向を盛り込んでいく、こういった考えも想定せられるのでございますけれども、そういうことについて、参考人はどのようにお考えでございましょうか。
  13. 古賀繁一

    古賀参考人 お答えいたします。  赤潮の発生するメカニズムがはっきりしてない、それから燐とか窒素とかが元凶であるということもはっきりしないということでございますから、それの実態に反したような取り扱い方が出ますと非常に困りますわけで、いろいろな面で大変困ることになると思いますので——といって、削減できるものは片っ端から努力して削減していかなければならぬというのも一つの進め方でございます。したがいまして、燐とか窒素とかをうまく減していくということには替成でございますけれども、それが赤潮とそれから赤潮に関連していろいろな事故が起こるそれの元凶であるというふうに結びつけられるような法案のあり方、あるいは取り扱いの仕方、これについては、事実そうではありません、はっきりしておりませんのですから、十分御配慮を賜りたい、そういう趣旨でございます。
  14. 池田行彦

    ○池田(行)委員 もう一点、古賀参考人にお伺いしたいのでございます。  タンカーの規制あるいはビルジの規制の問題につきましては、瀬戸内法によらず海上交通安全法その他の現行の法体系の方で処理すべきではないかといった御意見がございました。それはそれといたしまして、現在、タンカーの航行の実態を見ますと、昼間航行しておるものよりもむしろ夜間航行のものの方が非常に多い、こういうふうに聞いております。そういたしますと、たとえば夜間航行を禁止せよというような御意見も一部にございますが、そういったことになった場合、一つは産業活動の面で相当なコスト増と申しましょうか、そういったものも想定されますし、それともう一つは、航行安全の面からは、果たして船のふくそういたします昼間へすべて移行することがいいのかどうなのか、こういった疑問も提起されておるわけでございますけれども、そういった点につきまして参考人、いかがお考えでございましょうか。
  15. 古賀繁一

    古賀参考人 お答えいたします。  環境庁御当局から承っておりますところによりますと、最初はタンカーの夜間航行禁止というふうなお考えがあったそうでございますが、海運業界それから運輸省その他の専門御当局のいろいろ検討された結果によりますと夜間航行を禁止することはとうていできない、また夜間航行を禁止して昼間だけうんと船を混雑させるというのはかえって事故を多くするもとになる、その他いろいろな観点から、環境庁御当局も夜間航行禁止ということはいまお考えになっていないようなふうに承っております。
  16. 池田行彦

    ○池田(行)委員 ありがとうございます。  次に、高崎参考人にお伺いしたいのでございます。  ただいま参考人の御意見をお伺いしておりまして、入浜権、これはどういう性格のものであろうか。いろいろ高崎氏の基本構想であるとかあるいは宣言等をお伺いしたのでございますが、どうも私、十分理解ができませんので、二、三お伺いしたいのでございます。  入浜権というのは、お伺いしておりますと、どうも現在権利として存在するものとまではおっしゃっておらないような気がするのでございます。入会権に似たようなものがあるんじゃないかということはおっしゃいましたけれども、しかし、そういったものを将来立法論として何らか位置づけていけ、そういうような御意見のように私は伺ったわけでございますけれども、しかし、入浜権なる権利をつくりましたときに、一体権利の主体というものはどういうふうになるのだろうか、それが明確に規定できるものだろうかどうだろうかという感じがいたします。それから、どうもいろいろ考えてまいりますと、いまいろいろな公法上の、自然環境の保全あるいは環境破壊の規制といったような法的な規制がある、あるいは行政面のいろいろな指導がある、そういったいろいろな施策に伴う反射的な利益と申しましょうか、そういったものではないか。その範囲を超えて権利として果たして確立し得るものかどうか、ちょっと疑問を感じたのでございますが、その点についてお聞かせをいただきたいと思います。
  17. 高崎裕士

    高崎参考人 お答えいたします。  御質問のとおり、現行法では入浜権というようなものはございません。しかしながら、だれもがきれいな空気を吸っておりましたときには大気汚染防止法というものがなかったわけで、空気が汚れてまいりますと、大気汚染防止法というものも必要になってまいります。と同じように、何千年の間私たち祖先たち海岸をみんなで利用してまいりましたときには、そういう実定法はもちろんございませんでしたけれども、慣習としてそういうものはあったのじゃないか。ですから私どもも、法以前の権利であったという言葉で申しているわけでございますが、しかし、現在のような情勢になってまいりますと、何らかの形で入浜権というものを実定法として確立していただきたいというのが私たちの願いでございます。  確かに、おっしゃるとおり、その権利者はだれなのかということになりますと、一体どの地域までの住民なのか、全国民なのか、これは大変むずかしい問題、おっしゃるとおりでございます。  それから、反射的利益であるかそうでないか、これは実は私どもの方でも多くの法律家の方々が、この問題については、入浜権研究法律家グループというようなものもございまして、ただいま熱心に研究して取り組んでおられるところでありまして、私とも何とかして——そうした困難はございますけれども、やはり住民の大切な権利であるということだけは私どももわかります。技術的な問題につきましては、そうした法律家の方々にお任せをいたしまして研究しているところでございます。ただ、権利ということだけ私たち言うのではございませんで、権利というからには、やはり責任ということも伴うわけでして、私たちが入浜権ということを主張することは、同時にほかの住民も海や海岸に対して権利もあるし、またこれを守っていかなければならない責任もあるというように理解をいたしております。  お答えになったかどうかわかりませんが、以上でございます。
  18. 池田行彦

    ○池田(行)委員 時間がもうございませんので、あと一点だけお伺いいたしますが、高崎参考人、具体的な後継法への希望の中で、瀬戸内海は一つである、これ以上の開発埋め立ては全面禁止すべきである、こういったことをおっしゃっているのでございますが、しかし、たとえば生活排水処理だとかあるいはいろいろな廃棄物処理、あるいはヘドロをたとえば除いて埋め殺すなんといった場合に、どうしても地理的な条件その他で、ある程度の埋め立てをせずには対処できないという場合も想定されると私は思うのでございますね。そういう場合も含めて全面禁止ということになりますと、むしろ、そういった環境を守っていくための方策を一体どういうふうに進めていこうとしておられるのか、たとえば屎尿についてもどうするのだろうか、また昔のように田畑に還元するのかなとも思われるのでございますけれども、その点ちょっとお聞かせいただきたいと思います。
  19. 高崎裕士

    高崎参考人 ごもっともな御質問と思います。  生活排水につきましては、先ほどもちょっと触れましたけれども、大規模埋め立てを必要としますような流域下水道考え方は間違いではないだろうか、これは小規模の都市下水あるいは広域下水といったものを陸上で何とかつくってという考え方をできるだけやっていただきたい。それを安易に大きなものをつくって、土地がないから埋め立てたらいいんだという考え方だけはどうかおとりにならないでいただきたいというのが切なる願いでございます。そのことも含めまして、おっしゃるように、もうどうしてもというような埋め立てもあるかと思います。しかしながら、現行法で本当に埋め立てが手放しでありましたことを考えますときには、全面禁止という言葉は大変きつうございますけれども、私ちょっと説明の中では言葉をやわらげましたが、瀬戸内海全体の生態系その他あらゆる点を十分に、これ以上はできないというぐらい調査をした上で、英知を集めまして、その上で、住民も納得をした上でのもの以外はもうとにかく全面に近いくらい埋め立て禁止だというくらいの精神でやっていただきたいということでございます。
  20. 池田行彦

    ○池田(行)委員 時間が参りましたので、矢込参考人にお伺いしようと思ったのでございますが、それは同僚議員に譲りまして、私は、これで質問を終わらせていただきます。  ありがとうございました。
  21. 久保等

    久保委員長 林義郎君。
  22. 林義郎

    ○林(義)委員 瀬戸内海法は五年前に議員立法でつくった法律です。当時は緊急措置法ということでつくりまして、全体で千七百トンのCODがありましたのを、その中で三百五十トンの生活排水は除いて、残り千三百五十トンを半分にしようということで始めたわけです。五年間で大変な成果が上がったと思うのです。現在では約五百トンが産業排水、四百五十トンくらいが生活排水COD負荷量だと思うのです。  これから進めていくためにはいろいろなことを考えていかなければなりませんが、生活排水産業排水それぞれのいろいろなことを考えていくに当たりまして、何のためにやるのかということを私たちは考えなければならないと思うのです。それはなぜきれいにするのかという話である。なぜきれいにするのかというのは、そこに住んでいる住民生活のためであります。生活のためであるならば、どうしたならば一番きれいにすることができるかということを考えるべきだろうと思いますし、陸上から入ってくるものをいろいろと抑制していくということ、同時に、長い間の集積である、たまっているものがある。一説によると二億六千万トンぐらいヘドロがたまっておる、こういうふうなデータも出ておる。年間でCOD負荷量は、先ほどの話で一日四百トンとかという話でありますけれども、どんなにありましたところで、年間で七万トンか十万トンくらいである。海中にたまっているものは二億六千万トンという数字ですから、私はそのヘドロの大掃除をした方がよろしいと思う。そうでなければ瀬戸内海は絶対に昔の海に返らない。そうした意味で、私は、大計画をつくるのがいま一番必要なことだと思いますけれども、そのためにはいろいろなお互いの知識、技術を全部動員してやるべきことが必要だろうと思う。生態学的な学問研究も必要であるし、また工学的な手法も必要であるし、また住民各位の参加によってやっていくことが私は一番必要だと思うのです。そういったものを私たちはこれから考えていかなければならないだろう、こう思うのです。したがって、単にいまのCODの量をどうするとか、赤潮技術をどうするかという話ではない。お互いの国民的な決意でもって瀬戸内海をどうしていくかということがいまや一番必要なことだと思うのです。  そういった基本的な考え方で言いますときに、そういった物の考え方自体は、古賀さんは一体どういうふうに考えられるのか。瀬戸内海の中でたくさんヘドロがたまっておりますから、これをしゅんせつして、たとえばの話、黒潮の向こう側まで持っていって捨てて、日本海溝の中に落としてしまえば、そんなに大きな問題はない。あるいはそういったものをすくい上げて埋め立てをいたし、それからまたさらには、埋立地の付近のきれいになったところには海洋牧場をつくっていくというような構想を進めていくべきであろう、こう思うのです。それこそが本当に瀬戸内海を昔の海によみがえらせる方法ではないか、こう思うのです。いろいろ金はかかりますが、私はそういったことをやるべきではないかと思うのだけれども、まず古賀さん、そんな考え方についてどう思われますか。
  23. 古賀繁一

    古賀参考人 お答えします。  林先生の広大なお考えを具現されたような御構想、感服する次第でございますが、入ってくるものも、たまっておるものも、これを排除して瀬戸内をきれいにするということは、考え方としてはまことに結構なことであります。従来は、あそこに流し込むものだけを問題にしておったのを、数千年あそこに流れてたまっておるものも考えなくちゃいかぬという御構想に対しましては非常に敬意を表するものでございます。しかし、具体的に私もまだ考えが及びませんし、まあその辺のところでお許しをいただきたいと思います。
  24. 林義郎

    ○林(義)委員 そこで、矢込さんにお尋ねしたいのですが、いまの考え方はどうだということと、御専門ですからお尋ねしますが、屎尿処理です。瀬戸内海赤潮がいま大変に問題になっている。屎尿瀬戸内海の中に流れ込むということは、やはり赤潮の発生原因になると私は思うのです。  そこで、屎尿というものは、昔はわれわれの生活でも、小さなときはそうですが、皆くみ取りで持っていって、くみ取ったらダイコンを一本くれるとかなんとかという話だった。だから、思い切ってもう一遍山へ還元していくというのが、人間の住んでいる生態系からすれば一番いいんだろう、こう思うのです、窒素や燐でしょうから。これはやはり土地に還元してやることが一番いいことじゃないか。ところが、化学肥料ができたとか、臭いとかなんとかということがあるからできない。そうしますと、実はここにあるのですが、第二の方法として、これは先生ごらんになったかどうか知りませんが、高知大学の先生方が集まられて、高知県は黒潮のところですから、そこで海上生物・屎尿研究会というものをつくって、屎尿を若干加工する。屎尿の中にはいろいろなものが入っていますよ。ゴム製品が入ったりなんかしますから、そんなものをやったらいけませんけれども、そういったものは処理をして、黒潮に乗せて拡散をしていく。そのままではいかぬから少し加工しなくちゃいかぬ。珪藻なんかを用いてやると、プランクトンの発生になって海洋資源の養殖にも非常に役立つ、こういうふうなことがあります。そういった点から考えまして、そもそも屎尿というのは一体どう処理したらよろしいのか、どう考えられるのかというのが第一点です。  それから第二点は、先ほど現在の基準その他では七〇ppmしかできない、こういうことでありましたね。ところが、いまの工場の方の基準を見ますと、もう非常に高い排出基準になってきている。技術開発をどのくらいやったら、また、これは金との関連だろうと思いますが、たとえば一〇ppmにこれをするならばどのくらいの金をかけたならばできるだろうかとか、三〇ppmにしたらどのくらいになるだろうかとかというような費用効果分析というものをやっておられたのがもしもありましたならば、お教えいただきたい。以上が第二点。二つです。
  25. 矢込堅太郎

    矢込参考人 お答えいたします。  ただいまの御説、技術的には非常に道理に合った方法だというふうに思います。先ほどもお話しいたしましたように、屎尿というものは、元来微生物が利用できる栄養を持っているというふうなこと、あるいは植物も利用できる栄養を持っているというふうなことで、いままでそういう形で使われ、あるいは還元を受けた場合も浄化されてきたわけでございます。しかし、その量が集中的にふえてきたというふうなことと、一方では、化学肥料の発達によりまして生産性を高めようという方向が非常に強く出たという点から、とにかくなるべく経済的に屎尿処理し、なおかつ、環境影響のないような形にしようというふうなことで各種の処理方法が開発されてきていると思います。  その中で、海洋投入というふうな処理方法、これはでき得れば非常に容易な方法かと思いますが、考えてみますと幾つか解決しなければならない点があるだろうと思います。それを挙げてみますと、まず第一番目は屎尿の中に含まれております夾雑物、これはやはりそういう環境に出しましても分解しないものが最近かなりございますので、ここら辺のものにつきましては破砕あるいはその他沈でん剤等を加えまして海洋投入することになっておりますが、ここら辺はできれば夾雑物をまず除去して、これは別途焼却等の処分をしてから海洋投入を図ったらどうかと思います。  さらに、必ずしも伝染病原菌がいるわけではございませんが、消化器系伝染病の防止というふうな面から多少の安全化対策をしなければならないだろうと思います。そのためには、やはり薬剤等で微生物を殺す、そういうふうな消化器系の病原菌を殺すよりも、腐敗あるいは好気性処理等をすることによってそういうふうな微生物が死にますので、そういうふうな第一段階の処理と言いますが、一次処理等をして海洋に放流をするというふうなことも実際に可能かと思います。  ただ、そういうふうに理論的には可能かと思いますけれども、実際に今度海洋の、受ける側の立場から見ますと、どういうふうな形で海洋が環境影響を受けるか、こういうふうな長期的な研究調査、こんなふうなものを進めておきませんと、何か起きてしまってから手を加えようということは非常にむずかしいことですので、そういうふうな長期的な事前調査等を行う必要があるだろうということ。  それからもう一つ、もし実際にそういうふうな形で環境容量的に支障がない、あるいはかえって有効だというふうなことが得られたといたしましても、今度これをどんなふうな形で濃度調整をしながら投入するのかというふうなことが解決されなければいかぬと思います。その場合、いままで廃棄物処理あるいは清掃というふうなものが市町村組織の固有事業とされておりますけれども、そういうふうな処理をする場合に、どこが事業主体になって、だれがその費用を負担するのかというふうな問題等も絡めまして、かなり全体的な位置づけが必要ではなかろうかというふうに思います。そういうふうな状況ですので、現段階でさしあたって早急にそういうふうな方向に持っていくことはある程度まだ確かだとは言い切れないだろうと思います。以上が第一点のことでございます。  それから、第二点の屎尿処理技術の問題ですが、先ほど標準的な性能を申し上げました。これもやはり市町村が事業主体であるというふうなこと、それからその費用の負担はあくまでも排出者責任という形で、間接的には税金で負うものでございますが、そういう形の絡み合いで標準的な処理技術として一応の基準が決まっております。しかし、これでは現状、環境に何か影響があるのじゃないかということで、住民等の要望から技術的にはかなり開発が進んでおりまして、たとえばBODで一〇というふうなレベルの技術はすでにある程度固まっております。しかし、残っているものを半分あるいはそのまた半分というふうに下げていくということは非常に経費的に問題でございます。私ども概要的に試算しておりますが、たとえばBOD三〇の性能施設、人件費、施設の償却費を別にいたしまして、屎尿一キロリットル当たり約千円程度かかるだろうというふうに思っております。これに対しまして、たとえばBODを二〇とかあるいは一五ぐらいのレベルまで下げるような内容にいたしますと、その費用が千五百円から二千円ぐらいになるだろう、BOD一〇以下というふうな技術もないことはありませんが、装置の安定性その他まだ多少の改良が必要な段階です。しかし、運転して運転し切れないことはございません。そういうふうな施設につきましては、経費が二千五百円から三千円ぐらいかかるだろうというふうに言われております。したがいまして、放流したときの環境影響があるかないかということと、それから費用をどのように分担するかあるいは施設をどのように運営するかというふうな総合的な評価の中で決めらるべきものであろう。なおかつ、先ほど申し上げましたように、どうしても必要なこの種の施設について排出量の配分がぜひ必要ではなかろうか、こう思います。
  26. 林義郎

    ○林(義)委員 高崎参考人にお尋ねしますが、先ほど入浜権のお話がありました。入会権に似た権利だ、こういうふうなお話でございます。どうもよくわからないのは、入会権というのは民法に規定がしてあります。しかし、民法に規定してありますのは、封建的遺制があったからこれをやむなくやるというので、妥協の産物として入会権をつくったというのが法社会学の定説なんです。いまさら近代社会の中で封建的遺制に似たような制度をつくるというのは私はどうもよくわからないのです。私は封建的遺制ではないのだろうと思うのです。住民の憲法二十五条に基づいた健康で文化的な生活を営む権利を有するというところから出てきているので、それをどういうふうな形でやっていくかというのがどうもねらいではないか、こういうふうに私は思うのです。高崎さんだって恐らく封建的な遺制をいま復活しようなんということは私は考えておられないのだろうと思うのです。入会権などというのはだんだんだんだん消滅してくる権利ですからね。したがって、むしろ二十五条に基づいた健康で文化的なものというのは一体住民として何があるのだということをいろんな形でやっていく必要があるのではないかと私は思うのです。先ほどいろいろな話を私もしましたが、そんな話で考えていく方がいいので、権利権利と言うと、権利となるとどこまでが権利で、それはどういった権原があって、七百九条の損害賠償のときにどういうふうになるのだとかなんとかという話を詰めていきますと、これは大変な論争をやらざるを得ないと思うのです。そんな論争をするよりは、むしろやはり環境の問題、自然を守っていく問題、瀬戸内海をきれいにしていく問題ということで素直に取り上げた方がいいのではないかという感じを持って私はお話を聞いたのです。一体どちらなのでしょう。やはり憲法二十五条のものをやっていくというふうにお考えではないのでしょうか、その辺どうなんでしょう。
  27. 高崎裕士

    高崎参考人 お答えします。  入浜権が入会権から発想しました関係でそうしたふうにお考えになられる方がたくさんあるわけですけれども、おっしゃるとおり、封建的な遺制をこの際復活せいと言っているわけでは決してございませんで、憲法に保障された環境権の一環としての入浜権ということを考えております。しかしながら、やはり何らかの形で入浜権というものが、あるいは環境権でもようございますけれども、実定法として言葉の上で明記されるようなものがあるということが海岸を守る上で大変役に立つのではないかというだけのことでございます。  それから、封建的遺制ではないのですけれども、近代的な土地所有権という観点からしますと、一つの土地を一人の所有者が利用するということが果たしていいのかどうか。たとえば海岸のように、漁民も利用する、住民も利用する、いろんな人たちが複合的に利用する、これは封建的というよりは、むしろ古くからあったよい祖先たちの習慣ではないだろうか。そうしたものは私は復活した方がいいんじゃないだろうかというふうに考えます。  それから、大変恐縮ですが、私には御質問なかったのですけれども瀬戸内海のヘドロ処理の問題ですが、ようございますか。
  28. 林義郎

    ○林(義)委員 時間は大丈夫ですか。
  29. 久保等

    久保委員長 大体時間です。
  30. 高崎裕士

    高崎参考人 それでは、やめます。
  31. 林義郎

    ○林(義)委員 恐縮ですが、後で聞きます。
  32. 久保等

    久保委員長 島本虎三君。
  33. 島本虎三

    ○島本委員 私の後で同僚が二人、具体的な問題でやりますので、私の場合は、三人に考え方と現実の問題について一、二を、ちょっと一問で問いただしておきたいと思いますが、要領よく具体的にお願いしたいのであります。  まず、古賀参考人にお伺いいたしますが、先ほどの御意見開陳、よく聞かせてもらいました。その中で、瀬戸内海環境保全が必要だ、しかし経済全体の中で生かし、活用するのが筋道だ、こういうふうにおっしゃられました。経済の中で活用するのが筋道だとすると、まくら言葉は環境保全であっても、結局は利用するという立場を離れてはだめなんだというふうに聞こえてくる。それが環境破壊につながるおそれがないか。ここがちょっと私は心配なので、この点をまず聞きたいのであります。  それと、努力している実態を数字をもって明らかにされました。これは敬服いたします。工場は確かに汚濁負荷量、COD、当時一千三百五十トン一日に出ているのを、それを五〇%に削減する、その努力をされた結果六五%以上、目標を三〇%も上回って達成した。こういうようなことで、もうこれ以上やらない、やる必要はない、こういうふうにお考えになるのかどうか。努力したと言うけれども、これは石油ショック、それ以後であります。そして工場の操短と不況とによるところの生産の削減あるいはストップ、こういうようなことの結果が予想を上回ったのでありまして、当時は予想を下回って進行してきたのです。そしてそれ以後ぴたっと予想を上回った、こういうようなことであります。したがって、今後の情勢によって、これ以上やる必要がない、やらない、こういうようなことなんでしょうかどうか。ちょっと私、その点疑問を持って聞きましたので、その点のお考えを伺っておきたいのであります。  それともう一つ、古賀参考人でありますけれども、タンカーの航行の規制問題について、これはもう現行法によって規定されているから特にそれは必要ないのではないか、こういうような御意見があったようであります。しかし、瀬戸内海は各島々、こういうようなところを歩きますし、航路も狭うございます。あのフランスの沿岸でさえも、十七万キロ流出するような事故があの広場で起きているのであります。十五万トンタンカー、これが全部流出してしまったわけでしょう。これは重大なことだ。もしこれが瀬戸内海であった場合はどうなりましょうか。やはり規制はきめ細かく、こういうことを起こさないようにしておくというのが、環境保全のための基礎的な考え方じゃなかろうか。利用または活用の方面に重点を置くのは破壊につながりはせぬか、こういうふうに思うわけであります。そういうような点、ちょっとお伺いしたいのであります。  それともう一つ、これはいろいろタンカーの問題であるとか燐、窒素の問題等につきまして、環境庁から伺ったところによりますとということなんですが、これは環境庁のどなたからお聞きになったのでしょうか。これも一言聞かしていただきたいと思います。  また、埋め立ての点については、今度はこれは高崎参考人古賀参考人の間に意見が完全に背馳しているわけであります。埋め立ては原則禁止なんでありますが、具体的な問題として、現行法ではそれは緩められているのであります。これを今後は、廃棄物処理であるとか下水道、発電所、こういうようなもののための埋め立ては当然すべきだ、すべきじゃない、この二つが完全に対峙しているのでありますが、この点余り長くはなしに、基本的な考え方を、瀬戸内海法に取り入れるために必要でありますから、はっきりとお知らせ願いたい、こういうように思うのであります。  次に、矢込参考人にお伺いいたしますが、高崎参考人の方からは入浜権というようなことで、三項目にわたって出ております。これは確かにわかります。矢込参考人に伺いたいのでありますが、生活排水処理、これはやはり古賀参考人が言われるように、今後瀬戸内海環境保全の上から絶対必要なんです。大事なんです。専門家として、これは流域下水道というようなことになりますと、大きくなって悪水を入れる、工場からどういうような水をそこに流すかわからない、こういうような状態で、果たして流域下水道をやることによって瀬戸内海環境の整備ができるのでしょうかどうか。この点、もう少しきめ細かくきちっとやらなければならないのじゃないか、あるいは大きいのじゃない、中ほどのやつ、または小さい個々に処理するものにするとか、いろいろあるのじゃないか、流域下水道現行考えられておるとおりでは、瀬戸内海環境保全にならないのじゃないか、こういうふうにさえ思うのでありますが、この点はいかがなものでございましょうか。私、そういうふうに感じました。  いろいろとまだまだあるのでありますが、専門的に私の後から質問してくださいますので、いま基本的な考え方のみ聞きました。確かに燐と窒素の規制も大事なんです。そして古賀参考人、これは工場の方ではやるだけやった、後は燐、窒素、この生活排水規制がなければだめなんで、その方面が重点じゃないか、そのとおりだと思います。私もそれは賛成なんです。洗剤が大きい影響力を与えている。その洗剤をつくって売っているのも工場であり、会社じゃございませんか。そうすると、こういうふうに考えてみたら、もっともっと業界としてはこういうような点は環境保全のために考えるべきではないか、こう思いますが、以上の点、古賀参考人に四点、矢込参考人に一点、高崎参考人に二点、この点を要領よく教えていただきたいと思います。
  34. 古賀繁一

    古賀参考人 お答え申し上げます。  第一点でございますが、国として国民として総合的に判断して大本を御決定になるのがしかるべきじゃないかと申し上げておるのでございまして、経済面、産業面を優先してというふうな考え方ではもちろんございません。総合的に判断して瀬戸内地域をどうするかということを基本的にしっかり固めていただくのが先決ではございませんでしょうか、そう申し上げております。  次は、産業排水は、業界がずいぶん設備もし、金もかけ、人も使って、現在あそこまでやりまして、この二、三年間非常に努力して、実際いまやっとほっとしているところでございます。しかし、さっき申し上げましたように、もうやれる最高のところまでやっているところもありますし、もうちょっと改善できないか、できそうだというものもございますので、今後は環境庁の御指導、通産省の御指導に従って、できるものは万全の努力をしていきたい。しかし、生活排水は、さっき申し上げましたように、大変申しにくいのでございますけれども、これまでたれ流し的なところが多くて、産業排水はもう煮詰めに煮詰められて、さっきおっしゃいましたように、相当な成果を上げておるということはひとつ率直に御認識を賜りたいと思います。  次は航行規制の問題でございますが、これはもちはもち屋に任して、環境庁の御趣旨に沿うように、たとえば運輸省とか海運業界あるいは取り締まりをやられる海上保安庁、そういうもち屋に任せて、環境庁の御趣旨に沿うように実現されるのが至当であって、そういう専門のいろいろな法規、取り締まり、行政機関、これはもう国際的にりっぱなものがありますのに、それに環境庁がさらに何か上乗せしておやりになるのはどうかと思います、そういうことを申し上げております。  それから、埋め立ての問題は、両方同じことを申し上げておると思うのでございますが、言い方がポジティブな面から言っておるのとネガティブな面から言っておるのと差があるだけで、趣旨としては同じ考えだと私は判断いたしております。  それから環境庁がおっしゃった、ちょっとはっきり聞き取れませんでしたけれども、夜間航行の問題については、一番初めの考えを変えたということは環境庁の担当局長からじかにお話を伺いました。これはいろいろな方面で検討されて、夜間航行を禁止するとかえってまずくなるということがはっきりしたそうでございまして、私たちもそのように判断いたしております。  それから燐窒素、その他有害と思われるものを削減していくというのは結構なことで、当然そうしなくちゃならぬと思いますし、われわれもできるだけ協力していきたいと思っております。生活排水から出るのが燐につきましては七割、洗剤につきましては、私もはっきりいたしませんけれども、一割か一割二分か、ごくわずか出るだけでありまして、これもだんだん技術が進んでいくともっと減っていくというふうに洗剤関係専門家の方から伺っておりますので、洗剤全部やめてしまっても大した効果は出ない、やはり生活排水から出るものをまともに受けとめて善処していかないと効果が上がらぬ、そういうふうに私たち聞いておりますので、御参考までに申し上げます。  以上で尽きておりますでしょうか、何か落ちておりましたらどうぞ。
  35. 島本虎三

    ○島本委員 結構です。
  36. 矢込堅太郎

    矢込参考人 流域下水道の運営上のことと思いますが、これについてお答えいたします。  私、下水道の方の専門でございませんので多少不確かなところもございますが、一般的にこういうふうないろいろのものが入ってきた排水を、高度にそして経済的に確実に処理するというふうな立場から見ますと、なるべく大規模の方がよろしいというのが一般的でございます。この場合、ただ流域下水道のように種々の排水が入ってくるものにつきましては、入ってしまってから処理するのが困難なもの、あるいは困難な量につきましては、あらかじめ除害設備を設けることになっているというふうに存じておりますが、そういうふうなことを確実に実施させるということと、同時にその実施状況を監視するというふうな体制を完備いたしますれば、流域下水道のような形で大規模処理し、なおかつ今度は放流先等の拡散、自浄作用等を調査しまして、その影響のないような処置を図れば最も合理的ではなかろうかなというふうに思っております。
  37. 高崎裕士

    高崎参考人 埋め立て問題につきまして、私は、基本的に全面禁止ということを先ほどから申し上げているとおりであります。少なくとも瀬戸内海におきましては、工場のための埋め立てということは言語道断であろうかと思います。流域下水道とか発電所という問題もあるわけですけれども、発電所の問題につきましては、エネルギー問題全般から考えて、都市政策、人口問題、エネルギー問題、結局ひっくるめて経済のあり方、文明のあり方全体をもう一度問い直さなければならない。そうした上で本当に発電所はこれ以上要るのかということを問い直さなければならないと考えております。といいましても、私は社会をどうこうするというような大それた考えを持っているわけでは決してございませんが、とにかく人類全体がいまのままで進んでいけば破滅することは確かでございますから、やはりここらで、そういうことを言います私たち自身がみずからの豊かさを問い直すということから始めなければならない。そうした上で、少なくとも瀬戸内海では工場も発電所もこれ以上は必要はないというふうに私は考えます。万やむを得ぬための埋め立てということでございますけれども、これは、たとえば漁民生活のための建設であるとか、そうした問題につきましては、先ほどから申し上げておりますように、瀬戸内海全体の生態系等を考えまして許可される場合もあるかと思います。大量の産業廃棄物処理するために埋め立てをしなければならないというのも、考えてみれば大変愚かなことだろうと思います。そうした大量の産業廃棄物が出ないような経済の構造をみんなで考えなければならない時期にもはや来ているのではないかと思います。  埋め立てとも関係ございますけれども、流域下水道につきましては、海を埋め立てなければならない巨大な合流方式の流域下水道はいけません。先ほどの参考人と私は反対でございまして、なるべく小規模のものの方がよろしいと申し上げたいと思います。それは、大きいものは一たん企業の排水を合流いたしますれば現在の技術では分離することは不可能でございます。処理は全く困難でございます。処理困難なまま海に流さなければなりませんから、海をきれいにするために下水道をつくったことが、かえって海を汚くすると思います。これを焼きます上でも、大変に貴重な重油を使って、エネルギーの損失でございますし、その排煙公害が発生いたします。残りました灰も重金属等を含みますので、田畑に還元することができなくなり、その処理がまた困難で、これをまた埋め立てなければならないという、そういう悪循環を繰り返すと思います。小規模の、企業の排水とは全く分離した生活排水のみのものを地上につくるべきであろうかと思います。  それから、先生おっしゃいました合成洗剤の問題は、まことに重大であろうかと思います。私は素人でありますから、昼からの参考人の方が述べられると思いますけれども、三重大学の研究によりましたら、合成洗剤と赤潮との相関性ということがわかってきているとのことでございます。主婦の健康も害し、子孫にあるいは悪い遺伝的な影響を残すかもしれない、そうして海を汚くする、下水処理を困難にいたします合成洗剤は全面的に禁止すべきであろうかと思うのであります。  以上でございます。
  38. 島本虎三

    ○島本委員 ありがとうございました。
  39. 久保等

    久保委員長 次は、水田稔君。
  40. 水田稔

    ○水田委員 参考人の皆さん、御苦労さまでございます。  最初古賀参考人にお伺いしたいのですが、先ほどの御意見の中にも、瀬戸内海沿岸というのが日本の生産量の相当部分を占めておる、しかも大変な閉鎖水域である、そういうことを考えますと、これはいまの状態の中から、当面の不景気の対策と同時に、これからの日本の産業構造の問題まで考えていかなければならぬと思います。そういう中で、そういう点を考えれば、瀬戸内海沿岸に工場をこれ以上立地したりあるいは埋め立てをするというようなことは私どもは考えるべきでない、もっと全体的な産業構造のあり方なり工場立地の場所なりを考えるところに来ておる、こういうぐあいに考えておるわけですが、その点についてはどのようにお考えでしょうか。
  41. 古賀繁一

    古賀参考人 お答え申し上げます。  瀬戸内地域は住まうのにも非常に快適なところでありますし、あそこにいろんな産業が緊密な連絡がとれて、集約されて立地して、しかも外国と違いまして、外国はよく山奥でありますし、それから中国でもそれぞれの地区に分散して工業立地をしておられますが、そうでなくて、瀬戸内という日本の最も恵まれた地域にたくさんの産業が立地いたしまして、材料のない国、原料のない国でありますから、外国から持ってくるのにもあそこは費用が少なくて済む、それから、彼此融通し合って産業活動が効率的にできる。いろいろすぐれた点がありまして、日本の産業の国際競争力を十分持たせる一つの大きな基盤になっておるわけであります。したがいまして、あそこをうまく利用してきて、日本の産業経済が発達してきて、国民生活を豊かにし、幸せにすることができるように瀬戸内が貢献してきた、その点は、私たち諸外国を見まして、日本の特異な点として高く評価しなければならない。ああいうところがなければ、なかなか経済的に日本の現在の地位の確保ということはできていないと思うのでございます。  先日、きのうでしたか、おとといでしたか、NHKのテレビで、日本は食糧の輸入がとまったらどうなるかという想定のもとで組まれた放送があったのでありますが、簡単に申し上げますと、日本人口一億一千のうち三千五百万人は餓死するという結論がありました。徳川時代は三千万、私たちが子供のときは、小学校で日本人口ここに六千万、いま一億一千万、これだけの人口を養えておりますのも、ああいうみごとな世界に類のないりっぱな地点があって、そこに勤勉な日本人が知恵をしぼって切磋琢磨、刻苦努力しているのが現在の日本の地位を確保しておる一つのもとだと思うのであります。  したがいまして、いろいろな事柄をあの辺から、もうどこかほかに、山陰地方に持っていくとか、北陸地方に持っていくとか、九州に持っていくとかということをいたしましても、国際競争力がどういうふうになるかということを考えますと、軽々には結論が出せないのでありまして、そういういろんな点を国として全体的に、総合的に判断されて、瀬戸内は今後どうするかという基本方針が確立されなければいかぬのじゃないかと私は考えております。
  42. 水田稔

    ○水田委員 恐れ入りますが、私、与えられておる時間が限られておりますものですから、要点だけで御答弁いただきたいと思います。論議をする場所ではありませんから申し上げませんが、いまの御発言を聞いておりますと、それは瀬戸内海のあの風光明媚な、そして日本民族をはぐくんできたその地域に対する国民の願望というものが全くお気持ちの中にないように感じられますので、そのことだけ申し上げて、その点は終わりたいと思います。  一つは、赤潮の問題については一切解明されてないという先ほどの御意見ですが、私どもは、赤潮の素因になるものは窒素と燐ということはこれは否定できない事実だろう。ただ、そこからどういう引き金によって赤潮が発生して消滅していくか、そういうメカニズムがわからない。ですからそういう点から言えば、窒素と燐というのは、除去できるものはしなければ、瀬戸内海という閉鎖水域では赤潮の発生が防げないという考え方に立っておるわけです。先ほどの御意見によりますと、その窒素、燐さえも原因物としてはまだ不確定だこういう言われ方をされるわけであります。そういうぐあいに言われますと、私はどうしても思い出すのは水俣病が、ネコ百号で明らかになりながら十年間伏せられてきた事実というもの、そしてそういう中で、一つの企業がつぶれるかもしれない、そして患者の補償もできないという問題、これは産業界の基本的な姿勢の問題だと思います。その点について、窒素と燐が全くいまのところ無縁と言い切れるのかどうか、どういう御理解をなさっておるのかお聞かせしていただきたい思うのです。
  43. 古賀繁一

    古賀参考人 私も専門家ではございませんので、私たちが承っております点は、まだその辺のところがはっきりしていないというふうに承っておりまして、そのように理解をいたしております。何かはっきりしたものがございますれば、私たちもいろいろと勉強させていただきたいと思いますので、今後とも御教授を賜りたいのでございますが、現在のところ、私たち関係があるというふうには、それが定説ではっきりしているというふうには理解をいたしておりません。
  44. 水田稔

    ○水田委員 論議をする場所じゃありませんから御意見だけ伺っておきます。  それでは古賀参考人、たとえば瀬戸内海へ流入しておる窒素というのは産業界からどういうものが出ておるか、あるいはたとえばボイラーの清缶剤にいわゆる六価の重クロム酸が使われたりあるいはそれにかわるものとしてポリリンソーが使われておる、こういうことは御存じでしょうか。
  45. 古賀繁一

    古賀参考人 余り詳しいことは存じません。
  46. 水田稔

    ○水田委員 論議は避けます。  それでは、船舶の航行の問題ですが、私たちは、縦割り行政の中で瀬戸内海の特殊な地域が守り切れないということで、瀬戸内海法の後継法の中に航行規制の問題も考えていきたい、こういうぐあいに思っておるわけです。古賀参考人は、やるのなら別のいわゆる縦割りのあれでやれというんですが、縦割りなら航行規制については、やらなければならぬあるいはやってもいい、こうお考えかどうか。  それから、あの狭水道に超大型な船舶が現に入っておるわけなんですが、そういう点について、いわゆる大型船舶が入ればスピードを落とさなければなりませんし、スピードを落とせば当然船のかじのききが悪くなる、そういうところで大型船舶を入れるということは危険じゃないか、こういう論議があるわけですが、その二つの点についてはどういうぐあいにお考えでしょうか。
  47. 古賀繁一

    古賀参考人 お答え申し上げます。  さっきも申し上げましたとおりに、瀬戸内にも外国の船がたくさんまいりますし、こういう航海関係の規則というのは国際的な規則でありまして、運輸省その他国際的に決められた規則を日本の海運業者はもちろん、外国から航行してまいります船もそれを守っていくわけであります。いろんな会議、国際会議、その他運輸省、−海上保安庁、それぞれもちはもち屋で所管しておるのでありますから、そこに環境庁として必要なことはお話しになりまして、なるほどそうだということになれば、そのもち屋がそういたしますでしょうし、それはかえって悪いということであればもち屋が処置する、そういうふうにお運びになった方がよろしいんではございませんかと、そう申し上げております。
  48. 水田稔

    ○水田委員 それは先ほどの御意見なんです。質問を申し上げましたのは、いまの瀬戸内海の現況から非常に危険だということです。たとえば縦割りならそういう規制をすべきだとお考えかどうか、あるいは超大型をあの狭い水道に入れることによって大変な事故が順次起きて、それは油汚染というのが現実にあるわけですが、そういう点についての規制については全く必要がない、海上保安庁に任せておいたらいいというお考えか、あるいはそういう危険を避けるために産業界としても何らかの規制をしなければならぬとお考えになっておるか、そのいずれかだけで結構なんです。
  49. 古賀繁一

    古賀参考人 私どもではその辺のところはわかりません。だから、もち屋が決めれば決まったところに従っていく、そういう考え方でございます。
  50. 水田稔

    ○水田委員 時間が余りありませんから、済みませんが、あとの参考人の方に一緒に御質問いたしますけれども、順次答えていただきたいと思います。  一つは矢込参考人に。いま簡易浄化槽というのが、これは建設省の型式承認を受けると大体建築確認のときにそのまま認められてつくわけです。これは本当は管理が非常にむずかしいのですが、実際上は野放しの状態で、生のような状態で流れておるわけですが、そういう点は何か御研究になったことがあるかどうか。  それからもう一つは、下水道終末処理場の管理、運転の仕方によって能力というのは大変違ってくるということなどについては御研究になった例があるかどうか。それから、それに関連して、三次処理というのが窒素と燐についてはそれほどの効果がないというようなことなども言われておるわけでありますが、そういう点について何か御研究がありましたらお聞かせいただきたい。  それから高崎参考人には、私どもも、そういった瀬戸内海については、単に漁民だけのものではない、地域周辺に住んでおる漁民を含めて住民全体のものだと思うのですが、とかく私たちの耳に入るのは、いわゆるいそ釣りの人たちと漁業者との間のトラブルです。そういう点で、この入浜権という問題を主張していく中で、漁業者との関係は一体どういうぐあいにお考えになっておるのか、この点をお聞かせいただきたいと思います。
  51. 矢込堅太郎

    矢込参考人 お答えいたします。  最初の簡易浄化槽の件ですが、簡易浄化槽というのは、これはいわゆる略称ではなかろうかと思います。たとえばこれが小型浄化槽、いわゆる屎尿単独処理用の小型浄化槽ということになりますと、これは建築基準法あるいは廃棄物処理清掃法によりまして、つくるときに建物と一緒の場合には建築主事の確認を受けなければいけません。それから、建物はできておりまして浄化槽だけつくる場合には保健所に届け出をしなければいけないことになっております。そのときに、その内容が所定の内容になっているかチェックを受けるわけでございますから、それを経ているものにつきましては一定の性能が確保されるはずでございます。  ただ、維持管理によりまして、維持管理しやすい浄化槽としにくい浄化槽がございます。しにくいものにつきましては、これは維持管理業等に委託をいたしまして、管理の万全を期しているというような状況でございます。  それから終末下水処理場につきましては、残念ながら私、その方の専門でございませんので、現状を存じません。  それから、三番目の高度処理でございますが、これは、たとえば私ども専門分野であります屎尿処理について見てみますと、現在かなりの段階まで実用化が進んでおります。ただ、先ほども申し上げましたように、市町村組織としての管理体制あるいは経費、そして実際の環境影響等の全般的な判断でもって実際に使われているところもございます。そんなふうな状況でございます。
  52. 高崎裕士

    高崎参考人 お答えいたします。  入浜権に関連して漁民と釣り人とのトラブルの問題でございますけれども、私どもは入浜権ということを主張しますときには、やはり漁業権を最優先して考えるべきであろうと考えておりますし、また自覚を持ちました釣り人、釣り団体などでは、海をきれいにするという運動を行い、漁民の方の迷惑にならないように心がけております。権利を主張することは同時に責任の自覚でもあるということを先ほど申しましたけれども、そういった意味でも入浜権運動に多くの釣り人が立ち上がることはむしろ正しいことじゃないか、必要なことじゃないかと考えております。私どもは、補償金は要らない、海を返せと叫んで闘っているそういう漁民の人たちと手を組んで現在闘っております。  一昨日、姫路LNG基地訴訟の第一回公判が開かれましたけれども、その中で、おかの住民代表漁民代表とがそれぞれ立って切々と訴えました。おかの代表が訴えましたのは、入浜権そのものの主張でございましたけれども漁民代表が訴えましたのは、自分たちはこれまで埋め立てが進むたびに藻場が失われ、汚濁が進んで魚がとれなくなってきた、希望が持てない、もうやめたいと思うけれども、息子はやはり海で生活をしたいと言っていると言って、涙を流しながら切々と訴えたそうであります。私どもは、そうしたことを考えますときに、先ほども食糧問題のお話がございましたが、むしろそうしたことゆえに漁民や農民が希望を持って生きていける、そういう政策をやっていただきたいと思います。  ついでですから申しますけれども、タンカーの航行規制の問題につきましては、LNGタンカーなどが今後入ってくる可能性がありますけれども、そういうものは夜だけではなくて、昼間でも瀬戸内海のような狭いところには入れてはならない。これまででもすでに漁民が船にぶつけられて死んでおりますから、LNGのような場合ですと、一たん事故が起きましたら、これはもう沿岸住民にまで大きな被害が及ぶと考えます。  以上でございます。
  53. 水田稔

    ○水田委員 高崎さんにもう一つだけ。  私どもは、これからの規制というのは埋め立てなり工場立地はアセスメント法できちっと厳しくやる。同時に、先ほど林さんの方からありましたように、これまでに大変なヘドロもたまっておるし、海岸のなぎさというものがなくなってきたということで、新しい後継法の中には、たとえば藻場とか人工海浜であるとか、そういうものの復元をぜひ入れていきたい、こういうぐあいに考えておりますが、そういう点についてどういうぐあいにお考えになりますか。
  54. 高崎裕士

    高崎参考人 ヘドロの処理についてですけれども、私どもの狭い範囲の経験で、高砂本港の水銀汚染がございましたときに、これは十分に研究をしてからでなければ処理をしてはならないと私たちが主張いたしましたのに、あわててしゅんせつをいたしました結果、当初底質から、数字が間違っておりましたらごめんください、五三ppm出ておりましたものが、しゅんせつをした結果、かえって底にたまっております汚いヘドロが露出をいたしまして、三七二ppmに一挙にはね上がったという経験もございますし、そうした二次公害の問題もございます。ですから、先ほど非常に雄大な御計画も承ったわけですけれども、それには、よほど慎重に御検討いただき、研究していただいてからでないと、問題があるのではないかと考えます。  それから、いわゆる海浜の回復ということでありますけれども、これをやります上で、またぞろ沖の砂をサンドポンプでもってしゅんせつをして吐き出すというような乱暴なやり方は絶対してはならぬ。私ども高砂で考えておりますことは、せいぜい離岸堤をつくりましてトンボロ現象で砂がたまるのを五十年でも百年でもいいから待つという、そうした自然の作用にわずかに手をかすという程度以上のことはしてはならぬのじゃないか、これまで破壊してきましたことを回復しようとしてまた自然の摂理を無視するようなことをしてはならぬのではないか、こんなふうに考えますので、養浜計画、海岸の回復ということもこれまた慎重にしていただかなければならぬと思います。
  55. 水田稔

    ○水田委員 どうもありがとうございました。  終わります。
  56. 久保等

    久保委員長 坂口力君。
  57. 坂口力

    ○坂口委員 参考人の皆さん方には大変お忙しいところをきょうはありがとうございました。  与えられました時間が非常に限られておりますので、各参考人一問ずつ基本的な問題をお聞かせをいただいて終わりにさせていただきたいと思います。  まず最初古賀参考人にお伺いをいたしますが、先ほどいろいろのお話の中で、瀬戸内海が温暖の地で居住地域としてもまた産業の立地上から見ましても大変恵まれた地域であるというお話がございましたけれども、それは私もおっしゃるとおりであるというふうに思うわけでございます。それだけに、この環境が共通の財産であり、多くの人が住めば住むほど、あるいはまた多くの産業がそこに存在すればするほど、その地域を利用するための条件というものはこれは狭められてくることは当然だと思うわけであります。  先ほど参考人は企業をいじめるという言葉をお使いになりましたけれども、この瀬戸内海の臨時措置法はそういう意味でできたわけでは決してないわけであります。しかしながら、結果的に非常に企業に厳しかったということをおっしゃりたかったのではなかろうかと思いますが、確かに、企業についてはある程度の厳しさが要求されたと思います。  それから、この居住者の一般排水に対しましてのことを言われましたが、この問題も、全体の量から申しますとやはり企業が非常に多くてその次に続いて生活排水の問題があるということで、そこにはある程度の差があることもこれはお認めになっていることだと思います。しかし、私も、この排水の問題も決してなおざりにできない問題であるということにおきましては参考人と同じ意見を持つ者の一人でございます。したがいまして、簡単で結構でございますので御意見をお伺いさせていただきたいのは、一つは、今度後継法をきちっとするにいたしまして、どうしても総量規制考え方というものは徹底してここに貫いていかねばならない、こう私どもは考えているわけでありますが、このことについては私は異論はないと思いますけれども、もしも御意見がございましたらお聞かせをいただきたいというのが一つ。  それからもう一つ、生活排水につきまして、私も、これを解決していきますためにはどうしましても国の下水道に対する国庫補助率等をアップをして、そして何らかの方法を講じなければならないというふうに考えている一人でございますが、その辺に対する御意見等もありましたら、あわせてお答えをいただきたいと思います。
  58. 古賀繁一

    古賀参考人 お答えいたします。  水質総量規制、これは趣旨としては賛成でございます。それから、日本下水道の普及率は二四%、それから瀬戸内はちょっとよくて二七%と聞いておりますが、それでも、私たち欧米によく経済関係会議に出ますと、公式の場ではありませんけれども日本はそういう生活排水をたれ流して、欧米は八〇%とか九五%の下水道普及率でございますから二四とか二七とかいうのは開発途上国並みでありますので、そういうふうにたれ流しながらどんどん輸出してきて失業と貧困を輸出してくるんだ、もうちょっと何かやり方があるんじゃないかと言われるのでありますけれども、そういう面から申しましても、下水道の普及率を今後計画的に飛躍的に高めていただいて、世界に恥ずかしくない文明国に前進させていただきたい、特別な御配慮をお願いいたします。
  59. 坂口力

    ○坂口委員 もう一つだけお聞きをしておきたいと思いますが、企業がこれ以上公害防止ということを強く言われるということになると経営的に成り立たないというようなお話も先ほどされたわけでありますが、これはいかに厳しくとも、特に瀬戸内のように多くの企業がたくさん集まるようなところにおきましては、どうしてもいろいろの公害を抑えるための施設というのを導入せざるを得ない。たとえそれで経営的にはなはだむずかしくなったとしてもそれは導入をして、しかる後にその中で経営のあり方というものをやはり考えてもらわなければならない。これをむずかしいからというので除外をして考えるのではなしに、やはり公害に対するいろいろの設備を導入するということを中心にして考え直してもらわなければならない、こう私どもは考えているわけでございますが、それに対してもう一言だけ御意見をちょうだいして、終わりにしたいと思います。
  60. 古賀繁一

    古賀参考人 お答えいたします。  そのとおりに考えております。しかし、さっきも申し上げましたように、それにかかる費用、これは回り回って消費者、一般国民、最終需要家、これに回ってくるので、そこら辺のところを十分御判断の上、御主張をお願いしたい。  また、産業排水関係処理は世界で日本は最もすぐれて進んで成果を上げております。ここにべらぼうな費用がかかるようにいたしますとコスト高になりまして、回り回って海外への国際競争力が全般的に劣ってくるというふうなことになりまして、また基本的な問題が出てまいりますので、その辺のことも御配慮いただきまして、厳しくやればやるほど、幾ら金をかけても厳しくやればやるほど日本国民のためになるんだという考え方は一面的な考え方でありまして、総合的に御判断をお願いしたいと思います。
  61. 坂口力

    ○坂口委員 ありがとうございます。  それじゃ矢込参考人にお聞きをしたいと思いますが、参考人専門的な立場からいろいろお話をいただきました。私も衛生学を学びました一人として大変興味深く聞かせていただいたわけでございます。また、このお仕事の非常な重要性というものもよく存じておりますし、またこの研究のむずかしさということもある程度存じているつもりでございます。きょうは非常に時間がございませんので、その詳しいお話先生からお聞きをするいとまがございませんが、ただ一つ、基本的な問題で先生がどういうふうにお考えになっているかということをお聞きをしておきたいと思います。それは、現在たとえ不可能であったとしても、先生のある程度の夢も含めてお答えをいただいていいわけでございますが、この屎尿処理という問題、この問題をどう解決していくのか。これは自然生態系の中でどう還元していくのが最も好ましいのかという基本的な問題がございます。これについてどういうふうにお考えになっているかをひとつお聞きをしておきたいと思います。
  62. 矢込堅太郎

    矢込参考人 お答えいたします。  現状では、先ほど申し上げましたような各種の方法で進めざるを得ないと思いますけれども、その中でやはり昔肥料に使ったもの、これをなぜかなりの費用をかけて処理しているかという問題をもう一度洗い直す必要があろうかと思います。そのためには、先ほどお話のありました海洋投入の問題とか、あるいは農地等に利用するということをもう一度考え直す必要があろうかと思います。ただ、その場合でも、やはり初めの段階での夾雑物の処理、それからある程度の安定化、それから病原菌等に対する安全化、こういうふうなものを図ってから利用する形が必要ではなかろうかと思います。  ただ、その場合、これは非常に夢のような話になりますけれども、そういうふうな形のものをたとえば農村等で利用する場合に、現在の農業は省力化というふうなことが非常に叫ばれておりますので、液状のまま利用するということは非常にむずかしいかと思います。そこら辺のところを、たとえばそういう液をカセットのような入れ物に入れまして現在の耕耘機に乗せて、たとえば肥料何条まき、どのくらいの量でもって調節すれば一アール当たりどのくらい利用できるんだというふうな形にすれば、現段階で非常に困難とされております二次処理以降あるいは放流を含めての問題も解決されるのではなかろうかと思います。ただ、そこら辺まで実際に持っていくのには、先ほど申し上げましたようないろいろな面での事前的な調査、それから、だれがある段階までその事業をするのかというふうな事業配分の問題、こんなふうなことをかなり煮詰めてからでないとむずかしかろう、こういうふうに思っております。
  63. 坂口力

    ○坂口委員 ありがとうございます。  最後に高崎参考人にお聞きをしたいと思いますが、先ほど参考人は計算できない価値という言葉を使われまして、大変興味深く聞かせていただいたわけでございます。合理主義的な社会の中で、ややもいたしますと価値としての忘れられがちな問題を提起されているわけでありまして、そういう意味におきましては私、非常に感銘を新たにする面があるわけでございます。しかしながら、単なる過去に対するノスタルジアというと大変おしかりを受けるかもしれませんけれども、そういった面だけであってはならないわけでございますし、また参考人が入浜権運動推進全国連絡会議代表というふうな組織的な動きもしておみえになるわけでありますから、決してまたそういうわけではなかろうと思うわけでございます。未来における人間の生存秩序と申しますか、そういう新しい未来の生存秩序の中で、入浜権というものを中心とした運動がどのような役目を果たしていくのかという理論を私はぜひお聞かせをいただきたいときょうは思っていたわけでございますが、時間的な制約もございまして十分にお伺いをすることができなかったのは残念でございますが、そういうふうな意味で一言何かつけ加えていただくことがございますれば、その辺のところをお聞かせをいただきたいと思います。
  64. 高崎裕士

    高崎参考人 単なるノスタルジアでないことは確かでございます。しかし、同時にまた、私たちの祖先が持っておりました非常にすぐれたもの、そういうものが近代合理主義のすべて生産のみの考え方の中で失われてきていることは確かでございます。そうしたことが単なる回顧趣味ではないのであって、現在起こっておりますさまざまな鋭い問題、先ほども申しましたけれども、青少年の非行の問題それ一つを取り上げてみましても、実は、私たちがこういうものを失ったということが大きな原因だ、それは教育学の上からも心理学の上からも、人間というものを単に計算できる面だけでとらえるのではなく、もっと深い全体像として人間というものをとらえますときに、自然というものが、特に海浜、海というものがどんなに人間にとって大事であるかということを考えざるを得ないわけでありまして、むしろ先生おっしゃいます未来の生存秩序といった中で、本当にすべての生きとし生けるものも含めてこの宇宙船地球号の上で、滅亡ではなく生き長らえていくためには、いまは失ったものの回復も含めて文明のあり方全体をどうするのかということで、もし人類に英知があるものならば、この際、総文明批判とでも言うべきことをやらなければだめじゃないか。私ども埋め立て反対ということを言いましても、片一方では、それでは経済がひっくり返ってしまう、国民が食えなくなるということで、いつも中途半端に終わってしまいますけれども、ここでは、もう人類はみんなで考え直さなければならないときが来ているのじゃないだろうかと思います。  お許しをいただきまして、先ほど言い忘れましたことを、先生は御質問ではございませんが、一言だけ言わせていただきますならば、流域下水道の問題ですけれども、国庫補助の問題がございまして、地方自治体も非常に困っております。流域下水道でありましたならばお金を出さなくて済むということで、地方自治体は泣く泣くこっちの方に飛びついてしまいます。そうした意味では、公共下水、都市下水といった面で国庫補助を同率にしていただくか、あるいはむしろそういうものにふやしていただくということも、先生方の御努力をお願いしたく思います。
  65. 坂口力

    ○坂口委員 ありがとうございました。
  66. 久保等

    久保委員長 以上で午前中の参考人に対する質疑は終了いたしました。  参考人各位には、長時間にわたり貴重な御意見をお述べいただきまして、まことにありがとう存じました。委員会代表いたしまして厚くお礼申し上げます。  この際、午後二時三十分より再開することとし、暫時休憩いたします。     午後零時五十七分休憩      ————◇—————     午後二時三十四分開議
  67. 久保等

    久保委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  瀬戸内海環境保全問題について、午前中に引き続き参考人から御意見を聴取いたします。  ただいま御出席をいただいております参考人は、水産庁南西海水産研究所海洋部漁場保全研究室長村上彰男君、京都大学理学部附属瀬戸臨海実験所助手布施慎一郎君のお二人であります。  この際、両参考人に一言ごあいさつを申し上げます。  本日は、御多用中のところ本委員会に御出席をくださいまして、まことにありがとう存じます。  申すまでもなく、瀬戸内海は、わが国が世界にその美しさを誇る景勝地であり、また国民にとって貴重な漁業資源宝庫であります。この恵まれた自然環境を保全し、その恵沢を後代の国民に継承することは、現代に生きるものの責務であると考えます。  本日は、瀬戸内海環境保全問題というテーマでそれぞれの御研究の立場から率直な御意見をお伺いし、本問題調査参考に資したいと存じ、皆様方に御出席を願ったのであります。何とぞ、忌憚のない御意見をお述べくださるようお願い申し上げます。  なお、御意見開陳はおのおの十分程度に要約してお述べいただき、その後、委員質疑にお答え願いたいと存じます。  それでは、村上参考人からお願いいたします。
  68. 村上彰男

    村上参考人 村上でございます。  私は、瀬戸内海の海域の汚染という問題を研究している一研究者の立場から、瀬戸内海環境保全に対しまして総括的な意見を申し述べます。  皆様の御努力によって成立いたしました臨時措置法によりまして、瀬戸内海環境というものは、若干ではありますが好転の兆しが見えてきたということで、はなはだ私どもにとってもありがたいことでございます。しかしながら、なかなかまだこれだけでは油断ができませんので、たとえばCODの海における濃度分布を見ますと、なるほど排水口直近のようなCOD何十ミリグラム・パー・リッターといったようなところは確かに目に見えた改善が見えるのでありますが、一方、沖合い部におきましてはなかなかそう顕著な改善の跡というのはいまだしというところでございます。  一方、臨時措置法の規則に漏れましたNとかPとかいういわゆる富栄養化を促進する物質、これについては御承知のように汚染負荷量もそう減っておりませんので、海の中の状態も総体的に申し上げると横ばいである。海域別にはそれぞれ特徴がありながら、やはりここ二、三年横ばいの状態を続けている。そういうことに関連いたしまして、御承知のように、昨年の夏の播磨灘のホルネリア大赤潮、それから毎年のように起きる燧灘東部の貧酸素化、そういったことが相変わらず生じているわけでございます。それから、埋め立てという問題も、臨時措置法でこれを厳しく制限するとなっておりまして、これに関しましては、現に埋め立て中というところは、かつてほどその増加の勢いはないものの、何がしかのものがございますし、また、そういった計画とかあるいは架橋などの海洋工事、こういったものの計画あるいは一部着工というものが続いている状態であります。  そういった状況にありまして、近く環境庁あたりで検討されましたCODの総量規制の問題がございます。御承知のように、瀬戸内海では、臨時措置法によりまして産業排水によるCOD負荷の半減措置がとられまして、結果的には各産業の操業短縮なども絡んだせいかもしれませんが、五十一年秋にはかつての量の、四十七年時点の三分の一に減ったわけでございます。  今後、特に瀬戸内海について申しますと、たとえばCODの総量規制をやっていった場合に、これは実際問題としてどのくらいまで減らせるかということが起きてくるわけでございまして、他の東京湾とかあるいは伊勢、三河とは違いまして、すでに第二次産業に関する限り三分の一減という操作を経た瀬戸内海では、今後、第二次産業の分がどのくらいまで減らせるかということと、もう一つ、それ以外のもの、つまり第一次産業であるとかあるいは生活排水の分がどのくらいまで減らせるかといったことにすべてがかかってきていると存じます。したがいまして、場合によっては、瀬戸内海に関する限り現状が著しく減るといったことは、私ども研究の立場から申しますと、負荷量が著しく減るということはそう大きな期待は持てないんじゃないかというふうな前提で物を考えております。  これに関しまして、たとえば総量規制のもととなる環境容量といった考え方がございます。ところが、この環境容量というのは、確かに私どもも概念としてはしばしば用いておりますし、また物事を理解していただくためには非常に便利な言葉なんでございますが、さて、その内容は何だと言われますと、遺憾ながら研究の段階がそのメカニズムなりあるいは個々の経路の量なりをはっきりと指摘できる段階には至っていないということを申し添えておきます。  さて、現在瀬戸内海で最も大きな問題となっている富栄養化の阻止の問題でございます。私、最近いろいろ昔の富栄養状態を調べておりますが、たまたま昭和十年の四月でございますが、昭和十年に当時、神戸にございます海洋気象台が大阪湾の調査を行っておられます。このときの状況というのが一体現状とどういうふうに違っているだろうかということを検討したのでありますが、詳しく申し上げる時間がございませんので、ごく大ざっぱにかいつまんで申しますと、たとえばCODでございますが、これは当時は過マンガン酸カリ消費量と申しておりましたので、そのデータ、数字を四分の一すると現在使っているCODの濃度になるわけでございますが、それで見ますと、大阪湾の奥、淀川などの河口域に一ミリグラム・パー・リッター、俗称ppmでございますが、一の範囲がございます。そして、いわゆる大阪湾の奥部と言われるところが最高が一・六でございます。ところが一方、大阪湾の中央部それから南の方、つまり紀伊水道と友ケ島を結ぶ線、ここでは大体〇・五とか〇・六とかいう値でございます。  それから、富栄養化原因物質の一つのP、燐がありますが、これは御承知のように、海中には溶けている形のものと溶けない形のものがある。溶けている形の中でも、有機物質の形あるいは無機物質の形がございますが、昔は余りそういう分析法が進んでおりませんでしたので、この昭和十年は、DIP、溶けている無機の燐という形のものが分析されております。分析法は現在と同じでございます。それで見ますと、先ほどのCODの高かった奥部でも最高が〇・二六、単位はマイクログラム・パー・リッターに直してあります。それから南部に至りましては〇・一から〇・二という値であります。  それから窒素につきましては、同じくDIN、溶けている無機体の窒素、これは三つの形がございますが、その中で生物がよく利用する硝酸体の窒素、この値が分析されております。この方は分析法が今日と若干違っておりますので精度のほどは保証いたしかねますが、先ほどの大阪湾奥部では同じくマイクログラム・パー・リッターの単位で最高が八、それから奥部と称せられるところはすべて一以上、それから南部では一から二の値ということになっております。このNO3、硝酸体の窒素が高いというのは、御承知のように、大阪湾には淀川を初め幾多の流入河川がございます。この河川水というのは、元来、硝酸体窒素の濃度の非常に高いものであります。通常の状態で海洋の十倍ぐらいございます。したがいまして、こういった高い値は当然、河川水本来の値、それから、昭和十年でございますから大阪市及びその周辺の人口は、当時、私、子供のころ東京市民五百万と申しておりましたから、そういった比率から考えても恐らく現在の半分以下であっただろうと思います。しかしながら、そういった生活排水あるいは中小企業というものの汚染排水がまざっていると思いますが、いずれにいたしましても、最高で八ということであります。  こういうことから考えますと、瀬戸内海本来のそういった値、つまり、紀伊水道から入ってきて友ケ島水道から淡路島に沿って明石海峡に抜ける水が、少なくとも瀬戸内海の沖合部の本来の値だというふうに一応考えられるわけですが、そうしますと、少なくとも四月の時点ではCODが一以下、それからDIPが〇・二ぐらい、それからNO3のNが一ないし二ということではないかと思われます。これを現在赤潮の発生に対しまして、水産側の者がよく申します危険限界と比較いたしますと、DIPが〇・四五、つまり半分以下の値であります。DINに至りましては、これは硝酸体とアンモニア体がほぼ同量でございますので、大体倍をすればよろしいのですが、その危険限界の七のやはり半分以下だということであります。  なお、ここで申し上げておきたいのは、瀬戸内海というのは元来が富栄養化した海域であります。したがいましてそれに応じた生物生産が行われ、美味佳肴というものを産出しております。したがいましてこういったものを、特にNとかPとかを非常に低くするということはかえって悪い結果を招くのでありまして、たとえばどのくらいがよろしいかという限度をまず考える、その一つの尺度として、いま昭和十年の瀬戸内海沖合水の値を申し上げたわけですが、いずれにいたしましても、その富栄養化はとても赤潮の危険限界を上回るものではない。それも半分以下であるということははっきり言えると思います。したがいまして、瀬戸内海富栄養化を阻止するためには、本来富栄養化の持っている効用を殺さないように、つまり角をためて牛を殺すという愚を繰り返さないように、しかも高く富栄養化が進みまして、赤潮とか貧酸素とかいう悪影響が出ないように、そういう幅で規制すべきである。そういうふうに保つには、では負荷量をどう保つべきかということをよく研究してかからないといけないわけであります。実際問題としてN、Pの負荷量を規制するということはいろいろ御論議のあるところだと思います。特に処理技術が格段に困難なNとかPに至りましては、それを除去あるいは規制するということが経済的にもきわめて莫大な経費を要するということは、私ども自然科学を研究しております人間にとっても十分理解できるところであります。しかしながら現状は、たとえば広島湾で試算いたしますと、少なくとも現時点でのN、P負荷は、欲を言えば四割程度にしたい、六割カットしたいといったような、これは概略の数字でございますが出てまいりますので、いずれにしても何とかカットする方法を見つけなければならぬ。処理に金がかかる、あるいは技術的に困難ならば、使うということを減らす。使うを減らせば出るも減る道理でございますから、そういったことを考える。いま非常に大きな、負荷源と申しませんが使われている物としては、たとえば化学肥料であるとか、あるいは燐についての洗剤などが云々されております。これらの効用というものは、負荷に対する寄与率というのはもっと突き詰めて調べなければなりませんが、いずれにいたしましても、もしほかで代用できる、つまり瀬戸内海へ窒素、燐を入れないような方法で済むのならば、そういう方法に切りかえるといったようなことも、さしあたって大切なことであると思います。  それから、富栄養化の根源である蓄積汚泥、これも確かに、特に広島湾とか大阪湾のように二次湾の奥では大量のものが沈積しておりまして、これが赤潮の誘因になったり、あるいは貧酸素化の直接の原因になっております。したがいまして、これをとるということは、当然、富栄養化の進行防止に対しましてきわめて効率ある対策とは存じますが、ただ、この場合注意しなければならないことは、それによって二次公害を起こすという問題であります。つまり、せっかく、俗な言葉で申しますと、海底にある間は比較的海水中に対する寄与というのは少ないのでありますが、これをかきまぜますと一遍に溶出してくる。N、Pに限らず赤潮の増殖促進因子である有機物も溶出します。したがいまして、寝た子を起こさないようにするということも大切なことであろうと思います。  次に、環境アセスメントの問題が云々されておりますが、私どもは、環境アセスメントというのは、あるインプットを与えるものと、それによって影響を受ける双方の側のものがその行為に対する合意のための一つの手段であると考えております。したがいまして、それは必ずしも学問的にきっぱりと割り切れるものではないし、あるいは、ある必要も薄い。要するに両方が合意すればよろしいのではないかと考えます。しかしながら、少なくともそのあるインプットに対して、環境に対する影響と、それを評価するということに関する限りは、あくまでこれは自然科学あるいは社会科学も含めまして科学的な問題であろう。私どもがタッチできる範囲というのはその点にあるんだというふうに考えて、ただいま水産庁の研究プロジェクトとして、別府湾を例にとりまして、埋め立てた場合に漁業にどういう影響があるかという調査研究を五年間の計画でやっておりまして、現在その中間に差しかかっております。しかしながら、実際問題として、これまでの研究結果によりますと、予測評価ということが一体何をインデックスとしてやるべきか、そしてそれをつかむにはどういう技法があるか、それからそれを評価するための基準は何かということで、幾多の難関に差しかかっております。残された二年間でこれがすべて解決するとは思いませんが、アセスメントがより合理的なアセスメントであるために何らかの寄与をいたしたいと思ってやっているわけであります。  ここで一言申し述べておきますと、アセスメントというものは、社会的には、往々にして影響をインプットする側の免罪符になるおそれがあるということであります。アセスメントをやっているから大丈夫だ。その大丈夫ということを本当に突き詰めないと、往々にして免罪符になりかねないということを私どもおそれるわけであります。  埋め立て規制に関しましては、臨時措置法で厳しく制限されておりますが、これをやる場合に、瀬戸内海におきましては各海域の海洋環境も非常に異なっておりますので、海域ごとに、埋め立ての総量規制というとおかしいのですが、どの程度の埋め立てをする、つまり浅海をどのくらい減らす、それから自然汀線をどのくらい減らすという限度を決めて、それによって行うべきであろうと私は思います。  それからもう一つ、海域の利用を利用目的、利水目的によって区分けしよう。これは御承知のようにアメリカのコーストアクトなどに生かされている精神ですが、これを瀬戸内海に適用できるかどうかという問題がございます。御承知のように、瀬戸内海というのは一衣帯水でございますから、実はそういうことは無理である、ある海域をある目的で制限しても、他の海域からの影響が加わってきた場合、そういうことが守れるかどうかという点で、私は、瀬戸内海でははなはだ困難であろうと思うものであります。  次に、研究体制の整備でありますが、これにつきましては、皆様方が先般私どもの研究所へお越しの際、若干申し述べましたので、詳しいことは省きますが、いずれにしても、現在、瀬戸内海の海域環境の保全上、研究面で一番緊急である問題は、赤潮とか影響予測評価といった問題であろうと思います。赤潮にしろ、影響予測評価にしろ、われわれ水産側といたしましても、ない知恵をしぼりまして、日夜奮闘しているところでありますが、なおかつ幾多の難問が残っている。  特に赤潮に関しましては、環境庁と御一緒に水産庁に赤潮研究会というものを設けまして、どの点を突き詰めるべきかという全体的な討論を重ねておるところでありますが、問題は、そういう問題点をどうやって解決するかという調査研究の体制にあると思います。現状では、たとえば赤潮予測調査を私ども各県の水産試験場と御一緒にやらせていただいているものの、そこには非常に無理がある、オーバーワークがあることは認めざるを得ません。それから、現在の研究体制は、何か赤潮によって被害があったときどっとお金が来て、さあ今年度でその原因を究明しろといった形のものが多うございますが、こういった生物学的な現象の機構解明というものは、言葉は悪いのでございますが、そういう場当たり的な調査による進歩というのは多くを望めないものであります。したがいまして、例を赤潮の発生機構の解明にとりますと、ほかのことにとらわれずに、それだけ専門にできるようなプロジェクトチームをつくってやるべきである。私は何も、そういうものが一堂に会し、一つの大きな建物の中でやる必要は毛頭ないと思いますが、少なくとも全身全霊でそれに打ち込めるような研究者によるプロジェクトチームをつくる、そして研究費はもとより、研究期間においてもそうのんびりしたことは言っておれませんので、最低五年、欲を言えば十年の間、赤潮発生機構の解明に専心従事させる。その従事すべき研究者は、幾多の水産試験場を初め幾多の大学にもいらっしゃいます。したがいまして、そういう研究者をどうやって有機的に効率的に動かしていくかというプロジェクトをつくることが先決であろうと思います。なお、これに関しましては、各県の公害研究所、それに類似した機関もございますので、ぜひこういうところの御協力を賜りたいと思っております。  いずれにしましても、こういうプロジェクトチームでやっていく場合、一番大切なのはプロジェクトリーダーというものの存在でございまして、そのプロジェクトリーダーに適切な人間を得られるかどうかが、研究成果を左右する大きなかぎであろうと思います。  以上、各点について述べましたが、これから御審議されるかもしれない瀬戸内海環境保全臨時措置法の恒久立法化に対しまして、私は、総括的に申しますと、ぜひこれは成立させていただきたい。具体的な内容につきましては、特にこういった不況下におきましてはいろいろな困難があることは十分承知の上で申し上げるのでありますが、仮にこれが精神的な立法に終わっても、そんなことはないと思いますが、最悪の場合、精神をうたうということだけでも私は非常に価値のある問題だ、つまり瀬戸内海を守ろうという国民の総意のよりどころとして法律の上でもぜひこれを明文化していただきたい。瀬戸内海の保全回復ということは決してなまやさしいことではございません。富栄養化の解消には、いろいろ社会的な要因に左右されると思いますが、少なくとも五年、十年という歳月をかけなければできないことだと思います。その際、国民の決意のよりどころになる法律があることは非常に貴重なことでありまして、われわれは、瀬戸内海環境保全というのはそうなまやさしいものではない、はっきり言えば特効薬というものはあり得ない、非常な困難と闘いながらでなければ成就できないということから考えましても、ぜひ瀬戸内海環境保全法という精神のよりどころがあってほしい。そのもとにそれぞれの立場で長い苦しい道を歩んでいくことが肝要であろうと存じます。  どうもありがとうございました。
  69. 久保等

    久保委員長 ありがとうございました。  次に、布施参考人にお願いいたします。
  70. 布施慎一郎

    布施参考人 私は、京大の臨海実験所、これは瀬戸内海から外れたところにあるのですが、そこで学生の時代から瀬戸内海の藻場の研究を続けてまいりました。その立場から藻場について報告したいと思います。  私が藻場の仕事を始めましたのは笠岡湾で、昭和二十七年だったと思います。ところが、いまその笠岡湾はもう埋め立てられてしまって、藻場は当然もう跡形もないわけです。さらに、笠岡湾の外の方に神島という、肥料をつくる神島化学のある島があったわけでありますけれども、その島の外側でガラモ場の研究をしました。そこも、いまもぐってみると、昔生えておった——ガラモ場というのはホンダワラの生えている藻場を言うわけですけれども、ホンダワラが全然生えていないわけです。どうしてこのようなことになったかということなんですけれども、その前に、藻場がなぜそんなに大事かということを少しお話ししたいと思います。  藻場については、瀬戸内海の臨時措置法に、大事なところだから保護するというようなことが出ておりますので、詳しいことは省略しますけれども、いずれにしましても、浅い海の中の特徴といいますのは、光によって植物が一次生産をしますけれども、特にその中で、大型の海草類がそこに生育しているというのが特徴であります。ですから、光が届くといいましても大型の海草が生育する範囲でありまして、したがって、瀬戸内海みたいにわりと濁っておるところですと、大体十メートルぐらいが限度になります。もっと澄んでいるところですと、たとえば四十メートルぐらいが大型藻類の生育できる場所ということにもなりますから、生物学的にはそういう一つの生態区分をしております。ですから、瀬戸内海では大体十メートルぐらいまでは海草が生えてもいいんだと昔から思っているわけですけれども、その特徴がなくなるわけです。  その浅い海での海草の生えることの特徴といいますのは、先ほども話がありましたように、富栄養化されていくその栄養をそれが消費してくれるということが一つあります。  それから、アマモなんかでしたらそういうふうにして消費された栄養でもってアマモの葉っぱができるわけです。その葉っぱが枯れて堆積したものをいろいろな生物が食べる、つまり溶けている状態では植物しか利用できませんけれども、そういうふうに有機物になりますと動物が利用できて、動物が繁殖するということになります。  さらに、海草が生えていることによる有利さといいますのは、海草にいろいろな生物がくっつくわけです。たとえばヨコエビであるとかワレカラであるとか、珪藻類が、海草の葉っぱそのものにいろいろな生物が住み場所としてくっつくわけです。それが魚のえさになるわけです。そうして、魚のえさということと同時に、またそういう海草の生えた場所は周りから保護されておりますから、小さな、まだ泳ぐことが上手でない幼魚、稚魚の隠れ住む場所としても有効なわけです。ですから、住み場所ということと食物がとれる場所という二重の重要さを持つわけです。  話がちょっと余談みたいなものになりますが、大阪にできる関西新空港の予定地のところに観測塔が建っております。観測塔は去年の九月に——でき上がったのはもっと後ですけれども、柱ができまして、それにどんな生物がつくか早速付着板を取りつけていま実験中なんですけれども、ためしに一月十一日にちょうどゼロメートルのところあたりに付着板を取りつけました。この間、本調査を始めるために三月十四日ですか、その前にくっつけてある付着板を取り除いて新しい付着板を取りつけようと思ったところ、前につけた付着板はもう周りの状態とわからないほどいろいろなものがついております。  何がついているか水の中でわかりませんから、それをビニールの袋に入れて持って帰ってクロロフィルの量を測定したところなんですけれども、海草が、それは先ほどお話しした大型藻類ではなくて小さな海草がたくさんついておりまして、それに無数のワレカラがくっついているのです。大阪湾は俗に死の海と言って、初め研究計画を立てるときには恐らく観測塔ぐらいのところにはそんなにいろいろなものはつかないだろうという予測をしておったのですが、あにはからんや、大変ものがつきました。ですから、そういった意味で海草が生えて、それを食物とする、あるいは海草にくっつく小さな珪藻を食物として小動物が集まってくるというのは、海の中では大変重要なことであり、それが大変浅い海での大きな特徴になっていると思うわけです。  そのような藻場が瀬戸内海でいまどんどん減っているわけですね。すでにどん底に達したということが言えると思うのですけれども、とにかくそれ以前にあった藻場よりも、昭和四十年に五〇%に減り、さらにそれから六年後の四十六年には三五%に減っているということが報告されております。それで、私が調査しましたのは、いま言う昭和二十七年から六年間であります。その後十年ほどちょっと中断しまして、また昭和四十年ごろから八年間、IBP、国際生物学事業計画というのが計画されまして、燧灘で藻場の縮小のことを再び、今度はもっと定量化するために始めたわけです。ちょうどその四十一年から四十八年ぐらいにかけましてはどんどん衰退していく過程にあったものですから、標準的な、つまり量的なものを出すための標準的な状態をよう出さずじまいでした。つまり私の研究は、結局、汚染による藻場の衰退の現状を毎年もぐって追っておりまして、標準状態を出すという研究はまさに失敗に終わったわけなんです。  その藻場の衰退の現状は、昔十メートルぐらいまでは生えておったのが、いまはすでに三メートルか四メートルぐらいの浅いところにしか生えておりません。ですから、いその斜めになったところの成育深度がうんと浅くなっている、つまり狭くなっているわけです。しかもその生えているところでも、生え方というのはまばらです。その状態が、この数年になりますか、海の水がだんだんきれいになったという話をよく聞きますけれども、藻場の方はなかなか回復していかないわけです。その点、これはなかなか回復しませんで、もちろん水がきれいになったからすぐ回復するものではなくて、ちょっと生え出したときにそれをがりがり食うウニやら何やらがいますから、一遍なくなるとなかなかもとのとおりには戻らないという一面はありましょう。しかし、非常に浅い、二メートルよりもっと浅いところに生えているようなホンダワラのたぐいのアカモクとか、それからいま盛んに養殖しているワカメ、そういったものはどんどんふえているわけです。それで、たとえば同じ広島大学に付属している臨海実験所が向島にありまして、そこではほとんど毎年ずっと見ておりますけれども、おととしにはとうとうそこの観音崎というところにあった藻場が全くなくなってしまったというふうに、依然として一方では藻場の衰退が進んでおります。したがって、後継法ではぜひこの点を、やはり藻場が回復しないと瀬戸内海は本当にもとに戻ったのではないということなので、そのために全力を挙げていただきたいと思う次第です。  なお、この藻場の衰退によって——藻場で漁業が行われている。特にこれは刺し網漁業なんですけれども、たとえばメバルとかアイナメとかクジメとか、そういったやつが、先ほど申しました葉っぱにくっつくヨコエビとかワレカラなどをえさにして住んでいるわけですが、そいつがいまは漁業が成り立たなくなった。つまり、昭和三十年ぐらいには笠岡の市場へ行きますと、いまごろはちょうどシーズンでして、冬から春にかけましては市場の中一面にメバルとかアイナメとかカサゴ、そういったものがいっぱいだったわけです。いま行きますと、刺し網のメバルなんかトロ箱に探してもなかなか見つからないぐらい、一匹数百円するくらいの値段になっています。一方では底びきの魚ばかりになっている、そういうふうに変わっています。  そういうふうに変わったことに対してどういうふうにするか。マダイが少なくなったからそれならマダイを放流しようじゃないかとかいう話になります、あるいは藻場がなくなったから人工藻場をつくろうじゃないかという話があります。それは対症療法として処理されるのであれば全くナンセンスだと思います。海の場合は、これまた瀬戸内海とちょっと外れますけれども、私のおる白浜のあたりはイシサンゴの生息の北限地とされているのです。その北限地というのは、ときどきやってくる寒波でイシサンゴが全滅してしまうわけです。しかし、ぬくい冬が数年続きますとまたもとのイシサンゴの群体が一面に広がる。ところが余り長い夏が続きますと、今度は南の方からサンゴを食うオニヒトデがだんだん北上してまいります。オニヒトデに食われてしまう。ところが、白浜まではオニヒトデはやってきましたけれども、ようイシサンゴを食い尽くすことができなくて、寒波によってやられるというふうに、生物が環境と気象的な条件と、それから生物自身によるたとえばそのような複雑な関係があるわけです。ですからここで言いたいのは、イシサンゴがなくなったからといってそれを無理やり植えつけるのではなくて、環境さえ保護しておけばイシサンゴはもとに戻るし、生物はもとへ戻るというふうに考えます。そのようにした上で自分らの、人間として必要な、たとえばマダイをふやすなり何なりを否定するつもりは全然ありませんけれども、とにかく生物生産をもとへ戻すためにも、そのためにこそやはり環境を回復させることが非常に大事な問題だ。陸上の生物ですと、いまトキだとか鳥なんかを保護するのにも、これも環境の問題があると思いますけれども特定の生物を一生懸命ふやす算段をしますけれども、特に海の中では環境が大事だということを結びにして、私の報告を終わります。
  71. 久保等

    久保委員長 ありがとうございました。     —————————————
  72. 久保等

    久保委員長 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。林義郎君。
  73. 林義郎

    ○林(義)委員 村上さんには瀬戸内海法律を五年前につくるときに大変にお世話になりましたが、また五年たってお世話になるようでございまして、きょうまた御来会いただきましたことを心からお礼申し上げておきたいと思います。  五年前にやりましたときは、瀬戸内海は死の海になるのではないか、もうとにかく大変だから緊急臨時的にやろうということで、工場立地の規制を初めといたしまして、産業排水の二分の一カットということを中心にし、埋め立ても厳しく制限をしよう、こういうことで当時考えたわけであります。当時と比較いたしまして、いま状況が大分違ってきましたし、今度のはとにかく急いで何かしなければという話でもない。むしろじっくり構えて、これから瀬戸内海をどうしていくべきかという基本的な観点から議論をしていくべき問題ではないか。それは、臨時措置法をつくるのでなくて恒久措置法をつくるわけですから、当然に基本問題も踏まえた議論をしなければならないと私は思うのです。  そこで、村上さんは赤潮の大変な御専門家でありますし、赤潮の方の著作も相当ございますから教えてもらいたいのですが、先ほどございましたように、PとNが赤潮の大きな発生要因物質であるといわれております。これが出てきますのはやはり生活排水産業排水それから屎尿、こういうことになるのだろうと思うのです。琵琶湖も閉鎖性水域でありまして、琵琶湖でも調査したところが、家畜であるとか自然流水とかというのがわりに多い、こういうようなデータが、日本土木学会だったと思いますが、出ています。これはやはり削減をするのと、もう一つ、これを削減していくというのは、生活排水ですから、やはり下水道の整備をしていくとか、あるいは屎尿処理施設の整備をしていくということが、いろいろとやっていかなければなりませんが、これもひとつ金のかかることである。そうしますと、やはりそこをできるだけ金をかけてやるが、これも金というのは限度があるわけですから、おのずから決まってきますし、赤潮対策ということでヘドロのいろんな処理をやはり考えていかなければならないのじゃないだろうかと思うのです。  先ほども蓄積汚泥を取ることは効果的であるというようなお話がありましたが、これは工法が問題であろう。確かに私も工法が問題だろうと思いますが、やはりそういった形で瀬戸内海全体をひとつきれいにしていくということ、入るものも抑えると同時に、たまっているものをかい出していくということは考え方としては私はやるべきだろう。やり方としてはいろいろな問題があります。ありますが、そういった考え方をやはり出していかなければ、将来としてはよくないのではないか、こういうことなんです。  そういうふうなことを考えて、もう一つは、いまありますところの法律の中には、国立公園としての自然景観を保つ、漁業資源宝庫である、こう言っておりましたが、現代的な要請といたしましては、二百海里問題というのがありまして、実は、私も党の水産部会長を仰せつかっておりまして、まああちらこちらで大変な魚の騒動になってきているわけです。いま瀬戸内海六十万トンありますが、この六十万トンの魚を、たとえば十年かけて百二十万トンの倍増にするとかいう計画を立てて、布施さんからもお話がありましたが、海草のガラモ場であるとかアジモ場であるとかというものの造成を計画的にやっていく、水産庁の方でも今年の予算では、たなをつって海草を生やしてやろうとかいろいろなことを考えてやっておりますし、瀬戸内海の栽培センターではいろいろとその辺も検討しておられるようですが、そういったような全体的な計画を立てるということについて、そんなことを言ったところで、それは観念の話ではできるかもしれないけれども、なかなかそうはいきませんよ、こういうことなんでしょうか、どうなんでしょうか。その辺をまず私はお聞かせいただきたいと思います。
  74. 村上彰男

    村上参考人 お答えいたします。  確かに瀬戸内海の漁業的な利用、これ一番大きいということなんですが、国民瀬戸内海をどういうふうに利用するかというまず最初の原点を定める。もちろん日本のことでございますから、いまおっしゃるように、漁業としての利用という面の比重が多いということは当然でございますが、まずどういうふうな利用をするんだという計画を立てる。それに従って、たとえば漁業で申しますと、今度はもう一段きめ細かく、ただいま魚を六十万トンから倍増するとおっしゃいましたが、それではどういう魚をどこでどういうふうにふやしていくんだという計画を立てる。その場合に一番肝要なのは、魚というのは御承知のようにすむ場所が汚ければこれは絵にかいたもちに終わる。したがいまして、瀬戸内海の海域環境というものは、そういう計画に対してどういうふうにやっていくべきだということが二次的に起きていくわけであります。いろいろな利水面から考えまして、海域環境というのはここではこういうふうにあるべきだ、これも当然、全くの人為で左右することは不可能でございますので、瀬戸内海というものが持つ本来の海域としての性格をいかにうまく利用するか、そういうことがすべての利水計画の基本になるような詰めをやっていく。したがって、水産面ではここでこういうものをこれだけふやすんだといったような計画に今度はもとからさかのぼって、そういう利水の計画が定められるというフィードバック、そのフィードバックの関係にあると思います。その場合、やはり一番必要なのは、瀬戸内海というものはそれぞれの利水面によってどういう海域環境であるべきかということをまず考える、そして、それが実際に人間の力でどの程度できるのだという限界を見定めて、その上でおのおのの利水というものをきめ細かく決めていく、むしろ私はそちらの道の方が先んじるんじゃないかというふうに考えております。
  75. 林義郎

    ○林(義)委員 海域としての性格、海域環境というようなお話ですが、私は二つあると思うのですね。  一つは、瀬戸内海はやはり大変な産業の発達したところでもありますし、三千万という人間が周辺におるわけですから、また、古来から交通の要衝というような話もありますから、これを全然否定しちゃうわけには私はいかぬのだろうと思うのです。否定しないで、しかも、かつ瀬戸内海でどんな魚をやっていくかという話をやっていかなければならないと思うのです。先ほど六十万トンと申しましたが、六十万トンの約半分はカキとかノリとかでありまして、特に最近はカキとかノリとかというのが非常にふえている。タイなどは余りふえてないわけでありまして、先ほど布施さんがおっしゃったように、アイナメなどというのは全く減ってきているというのは数字的にも出ています。だから、やはり瀬戸内海ですむということになると、たとえばの話、ハマチの養殖などというのはここでやっていますが、ハマチの養殖というのはああいった閉鎖性水域でやるのには、ああいうふうなたくさんのえさをやって、しかも、こう囲ってやるというのはどうも余り好ましいやり方ではないのではないだろうか。むしろ高知県の沖とか日本海の中で、すうっと水の流れるようなところでああいったものをやるのならば、ひとつ考え方だけでも——余り水の流れのないいわゆる閉鎖性のところで、しかも赤潮が常襲的に起こるようなところでやるのはどうだろうかなという、私はこういう感じがするのです。もちろん地元の方々はそれぞれやっておられるわけですから、それをいますぐやめろということではないけれども、全体として見たならば、やはりそういったことを考えていかなければならない。そうすると海域の場合に、私は、ノリ、カキ、それからクルマエビ、シャコとかいろいろないわゆる魚介類とそれから魚ということになると、昔からあったところのタイであるとか、それからサワラとかそういったような魚がすむというぐらいのことを大体中心にして考えてやれば、そこでいろいろな海面利用計画などというものはできるのではないだろうかと思うのですが、この辺は私も水産の専門ではありませんから、ひとつ村上さん、専門家としてどういうふうにお考えになりますか、お教えいただきたいと思います。
  76. 村上彰男

    村上参考人 ただいまの御質問のハマチの養殖に関してでございますが、私は養殖の方の専門家ではございませんし、また漁政的な面での発言は全然資格のない者でございますので、単に海域環境、漁場環境という面から見て、ハマチの養殖というのは瀬戸内海で一体どんなことなんだということをお答えいたします。  おっしゃるように、ハマチというものは、元来が外洋性の魚で、その幼時期を内海で過ごすというものでございまして、たび重なる赤潮によってまず被害を受けております。その被害の機構というのは、これは俗な言葉で申しますと、エラの間隔が非常に狭いために詰まりやすいということが非常に大きな要因を占めております。そうしますと、過去の瀬戸内海はいざ知らず、現状のように富栄養化の進んだところで、そういう赤潮被害の頻発するところでは、少なくとも技術的にはハマチを養殖するということはきわめて困難になってきているということは間違いないところだと思います。  ハマチ養殖による汚染の負荷の問題、これはまだ十分に定量的な詰めは出ておりませんので、私いま申し上げるわけにはいきませんが、ただ現象として過去のホルネリア赤潮、昨年までも含めましてホルネリア赤潮の発生海域というのは何らかの形でハマチ養殖海面に関連している海域であるということは、事実として間違いのない点でございます。したがいまして、瀬戸内海でハマチを養殖するということは、漁業環境がつまり富栄養化の進行が抑えられ、しかもハマチ養殖によってそういった進行を引き起こさないような、そういう十分な配慮のもとで行わないと技術的にはきわめてむずかしい問題だろうと思います。
  77. 林義郎

    ○林(義)委員 そこで、海域としての性格でハマチ養殖はどうも余り——政策的な話は別にしまして、技術的な話としてはそういうことだというお話でありますが、いま数字を見ますと、たとえば四十五年と五十年と比較しますと、マダイなどというのは二千トンから三千トンくらいふえているわけですね。クルマエビなども四百六十六トンから千二百四十トンにふえている。ガザミが百九十六トンから千三百二十七トン、こんなふうな魚がふえているのだろうと私は思うのです。と同時に、カキだとかノリだとかというものがふえてきている。やはり海の利用ということになるとこんな魚でやらなくてはしようがないというふうに考えるのですか。それともそのほかに何か考えられるようなものがあるかどうか、その辺はどうなんでしょう。
  78. 村上彰男

    村上参考人 現状の富栄養化の進行度に応じた漁業面での利用というものは確かに考えられると思います。極端な例が、非常に富栄養化した海では、ノリというものは非常に窒素を要求いたしますので、よく育つ、品質もいい、これは確かにそのとおりでございます。しかしながら、仮に海の生物面からの、つまり漁業面からの利用にいたしましても、海の生産物というものは、その根拠になる生態系というものが多種多様の存在があって初めて海域生産が最大になるわけでございます。したがいまして、たとえばある種の生産に適した環境にしてしまうということは、生物面から考えての総合的な利用の上で果たして得策であるかどうか。極端なことを申しますれば、ノリをとりたければ、ただいまの技術で申しますと陸上にプールをつくって海水を導入してそこに栄養塩を入れて——そういう養殖技術もすでに技術としてはあるわけです。ですから仮にノリだけを対象にするのならばそういうことも当然考えなければいけない。しかしながら、瀬戸内海の漁業面での海域利用というのは、そういう単一のものをねらうということは果たして総合的に見て得策かどうか。  それからもう一点は、ノリのような富栄養化の進行した条件で収獲が期待されるもの、それに合った富栄養化の状態、もちろんそれが進めばノリもだめになってしまう。そうすると瀬戸内海という海をノリに適したような富栄養化の状態に保全——保全というのはおかしいのですが、とめておくという技術を人間が持てるかどうか。これは技術的に考えても非常に不可能であろうと思います。やはり海域利用の根本は瀬戸内海環境の保全、生物が昔どおりの多彩な生態系、そういうものに海域環境を持っていくということが根本問題だろうと思います。
  79. 林義郎

    ○林(義)委員 そこで、昔のような多彩なものにするということになると、先ほど布施さんからお話がありましたようにアジモ場とかガラモ場とかというものをやっていくということが必要なんでしょうけれども、だんだんなくなってきているのですから、なかなかできないというお話ですが、やはり復活をさせなくてはいかぬだろうと思いますが、その辺の技術というのは、植物学的な技術もあるでしょうし工学的な技術もあるでしょうし、そのほかのいろんな技術があるのでしょうけれども、その技術的な開発というのは、これから相当やっていけば研究が進んでいくものなのか、これは自然にほっておかなければしようがないものなのか、その辺はどうなんでしょう。村上さん、どうですか。
  80. 村上彰男

    村上参考人 藻類は御承知のように少なくとも窒素、燐などを非常に吸収してそれをほかの栄養階層に転化する大きな役割りを持っております。したがいまして、布施参考人がおっしゃいましたような藻場とか藻類、そういったものの保全といいますか増殖といいますか、そういうことが環境保全に非常に役に立つということは確かであります。しかしながら一方、それだけでやれるかと申しますと、実は藻類によってあり余った栄養塩を有用な用に転化していくという役割りは、人間がふやせるという範囲ではそう大きな役割りはしないのであります。たとえば私、かつて、有明海で、ノリがあれだけとれている海で、人間の手で窒素分をノリとして収獲するわけですから、ノリというものによって一体どのくらいの窒素分が収獲できているのだろうかという計算をしたことがありますが、これはまことに微々たるものでありまして、植物プランクトンを回る窒素の方が何けたも、それこそ何千倍も何万倍も多いものであります。したがいまして、一石二鳥という考え方はわかるのでありますが、ただそれによって富栄養化の進行を阻止するということはきわめて困難である。仮に藻場の造成にいたしましても、藻が生えるような環境というものがまず第一である。ですから、そういう藻類によって富栄養化の調節を図るということも一つの手段として——これは人工的に藻類を増殖させるということは、環境さえうまく制御できれば、技術はございます。したがいまして、手段として有効なことは私どもわかりますが、やはりその以前に海域の富栄養化の進行をとにかくとめる、いろいろな方法でとめるということが前提にあって初めて言えることだと存じます。
  81. 林義郎

    ○林(義)委員 環境によっていろいろ海草類が変わってくるというようなことも私はよくわかるのですが、そのときに、環境というようなことになりますと、先ほど最初村上さんからお話がありましたけれども、現状は、CODの負荷量をこれから著しく減らすということは現実的にはなかなかない、減らしても、いまのある負荷量の三分の一にまたこの五年間でしてしまえなどということは現実的にはできないと私は思っているのです。そこで、そうするとどういうふうな形でやっていくかということにりますと、瀬戸内海に入ってくるものを三分の一とか二分の一とかという目標を立ててやるというのは非常にむずかしいことになりますから、そうすると、やはり中にあるものを吸い取ってどこか持っていって処理するしかないのではないだろうか、こう思いますが、その辺、どうなんでしょうか。
  82. 村上彰男

    村上参考人 蓄積汚染の除去ということは確かに有効であろうと思います。ただ、さきにも申しましたように、これは技術的に非常に困難が伴う、あるいは経費が莫大に要るという条件はつきますが、これは確かに有効であります。  ただ、ここで一言申し上げておきたいのは、瀬戸内海のある海域、たとえば先ほど申しました広島湾の奥、大阪湾の奥、燧灘の東部、こういうところは元来がそういった有機物、これは窒素、燐も意味しますが、有機物を多量に含んだ懸濁物質の沈積域になっております。したがいまして、取るからには、自然の状態で負荷されるそういう沈積物はやむを得ないといたしましても、人間の手で加えるそういう沈積物、これは非常に多いわけでございますが、そういうものをカットしていかない限り、取っても取っても取り切れない。さいの河原みたいなことになるのじゃないか。それから、ある意味においては自然の、たとえば先ほど申しました昭和十年のようなかつての瀬戸内海では、そういうものが沈積して、それが海の中の物質の循環を助けていたという面もございます。ですから、取るというためには、有効なことはわかりますが、その辺をよく突き詰めて、またさいの河原にならぬような防止をして、そしてやっていくということが肝要だろうと存じます。
  83. 林義郎

    ○林(義)委員 私も、たとえば広島の海田湾というのがありますけれども、海田湾などというのは、あそこはやはり埋め立てをやって埋め殺しをしてしまうとか、広島の中から出てくるいろいろななにがありますから、そこで、あそこの汚れたところを、そのほかの江田島の方であるとかなんとかというようなところとは遮断をしてしまうような工法を考えていくのが一番現実的な方法ではないかと思うのです。あそこを吸い上げてまたどこかへ持っていくといったところで、次から次へ出てくるわけですから、私はとてもしようがないだろうと思いますから、そういった工法というかあるいはそういった評価の技術的な手法というものは、いま大体確立されていると考えていいのでしょうか。どうでしょうか。
  84. 村上彰男

    村上参考人 私、海田湾につきましては具体的にどうこう申し上げる立場にございませんので、一般論として申し上げます。  底の泥が汚れた海域、たとえばこれは有機汚染でもよろしいし、富栄養化でもよろしいし、あるいは金属、毒物でもよろしいのですが、そういうところの汚染を除去することが有効であるということは、これは言うまでもございません。しかし、一般的に申しまして非常な停滞域、それから、汚泥があるばかりにどんどんそれが外へ流出していくといったようなケースに限って、それを仮に埋めてしまうといったような工法といいますか対策、これは全面的には否定できないと思います。つまり、こうなりますと、もうすでに自然科学の範疇を離れましてそれこそ利水上の問題になりますが、少なくとも海洋学的に申しまして、現にほかへどんどん悪影響を及ぼしている、それを至急に何とかしなければいかぬというような場合に、これはもちろん局部的な問題でございますが、そういうような特殊なケースに限ってはそういう対策があり得るのではないかというふうに考えます。
  85. 林義郎

    ○林(義)委員 海田湾の例を出しましたのですが、もう一つ、やはり瀬戸内海で同じような例があるのは伊与三島のところだろうと私は思うのです。これは工場の問題で、そこが違うと言えば違うのですけれども、あそこの地形その他を考えましても同じような問題が言えるのじゃないか、こう思うのです。  そこで、ちょっと時間もたちましたけれども、布施さんにお尋ねしますが、藻場の問題、先生大変御研究になっておられるようでございますが、多種類の魚がすまなければならない、そうすると、藻場というものがどうしても必要である。海草が必要であるというときに、先ほどのお話では、いまや四メートルぐらいのところしかそういった藻場がなくなった。深いところはなくなった。そういった深いところのものを、昔はあったのでしたら、やはり気候条件がそんなに昔と違うわけではないと思いますから、何らかの形で昔と同じような環境にするということを考えていかなければならない。考えていって、もしもそれが非常に困難であるということならば、別のことを水産の方でも考えていかなければならないと思いますが、これはどういうふうなことをやっていったらいいのでしょうか。
  86. 布施慎一郎

    布施参考人 少し私の専門とは外れると思うのですけれども、いずれにしても結果論的に見れば、海草の生育深度が浅くなっていくことは、透明度の低下が第一の要因になっていると思うのです。ちょうど村上さんがどこかで報告されていますが、一年間に四十センチずつですか、透明度が小さくなっていく、そういうのに歩調を合わせまして、海草の生育深度が浅くなっているわけです。そしてちょうど十年間に四メートルぐらい浅くなる、計算が合うものですから、一つはそういうふうに思っております。それからさらに、光が少なくなったということがあります。ですから、先ほど、もともと瀬戸内海は十メートルぐらいまでしか海草は生えないということを話しましたけれども、現在はそれが四メートルぐらいまでしか生えなくなっているということになると思うのです。さらに、それがただ四メートルまででなくて、先ほどちょっと笠岡湾の外のガラモ場の話をしまして、そこではホンダワラがなくなっているという話をしましたけれども、かわりにほかのものが生えていることは生えているわけです。紅藻のたぐいとか、それからごく浅いところでは、この二年ぐらいはちょっと少なくなりましたけれども、アオサがものすごく多いのです。そういうふうに、汚染に強いといいますか、光が少なくても、アオサなんかは潮が満ち干する間に生えますから、潮が引いたときには日光によく当たるわけですので、太陽の不足ということはないわけです。ですから、富栄養化された栄養によって莫大にふえたわけです。紅藻になりますと、少し光が少ないところでもふえますから、その下は褐藻がなくなって紅藻になっちゃったというふうに解釈されるわけです。ですから、どうしてもこれを解決しようと思えば、その立場から考えますと、透明度をよくするより仕方がないというふうに考えるわけです。
  87. 林義郎

    ○林(義)委員 透明度の問題がありました。確かにそうだと思うのです。植物ですから、栄養分をとって光合成をする、光合成の量がなくなれば、いかに栄養分を与えたところでできないだろう、こういうことだろうと思うのです。そうしますと、やはり透明度をよくしていくためには何をするかということですね。SSをなにするとか、入ってくるもののCODを抑えるとか、また中に入って下にたまっているものをとっていく、こんなことしかないんだろうと思いますが、何かそのほかに考えられますか。
  88. 布施慎一郎

    布施参考人 まさにそのとおりで、ほかのことは余り考えつきません。それで、私は先ほども環境の問題でイシサンゴの例を話しましたけれども、そういった意味でも、海の生物については環境をよくするということが第一条件だというふうに考えておるわけです。
  89. 林義郎

    ○林(義)委員 もう一つ、環境について、たとえばいまの、海草が生えてくる、そうすると先ほどの話では、窒素分が海草の形で自然の状態で吸収されていきますね。それから魚がたくさんすむようになればいろいろなプランクトンを食べる、プランクトンがまた発生してくるというような形の循環体系というもので昔のような状況に返すというのが一番大切なことなんじゃないか。そこで、それは自然の形でほっておいていいのか。何か少し積極的にどこかでやっていかなくちゃいかぬのじゃないか、こう思っておるのですよ。瀬戸内海というのは私たちの子供のときとは全然違ったような海になっていくということは確かに事実でありますから、それを復元させていくための工法というのは何かないか、その辺を、先生どうでしょう。
  90. 布施慎一郎

    布施参考人 私は、工法になったら全く専門外になりますけれども、少し昔の例を見てみますと、たとえば東京湾でも、いまの水島、倉敷あたりでも、かなり泥沼になった時代があるみたいです。貝塚の貝がどんどん変わっておるわけです。あるときには、たしかハイガイだと思いましたけれども、そればかりの貝塚が出てきて、しかもその貝塚の量から見ると、そのとき住んでいた人が食い得る以上のハイガイの貝がらだというわけです。そうすると、それをどうやって利用していたかというと、恐らく当時もう製塩ができていましたから塩づけにしたか干したかして、いまみたいに売り歩くか何か、商業としてか知りませんけれども、要するによそへ出しておったという推定が成り立っておるわけです。つまり、それに応じた利用の仕方を考えていると思うのです。  そこで、いまの利用の仕方がどうかということを考えるわけです。それはそういった意味では自然を利用するのではなくて、これは全く、結論を急ぎますけれども、破壊だと思いますから、これは何とか直していかなければだめだというふうにしか工法としては思いつかないわけです。それで工法としてもしあるとしましても、あえて言うならば、臨時措置法の埋め立てについてのところにも何か書いてありましたけれども、もし環境が損なわれるならその代替のところを考えなければいかぬということです。そうすると、海の場合は埋め立てたら海がなくなるのですから、その代替というのはどこか陸地につくらなければいかぬことになるのです。そういうことができない限り、つぶすということに対してはもっともっと慎重でなければならないと思います。ですから、いまの工法は何かということについての的確なお答えは、そういった意味では残念ながらできません。
  91. 林義郎

    ○林(義)委員 村上さん、実は午前中別の方が来られましてお話しをしたのですが、PとNの問題に関連して赤潮の問題が大変だと私も思うのですが、屎尿処理の問題、どうお考えになりますか。村上さんの御専門でないかもしれませんけれども、私、お尋ねしたいのは、本来屎尿というのは人間が排せつするものですから、もとは山中なり田畑の方へ還元をしておったと思うのです。いま浄化槽ができたりなにかしてそこで集中処理をするという形になっておる。けさほどの話では七〇ppmぐらいのところまで浄化槽でやれる、こういうことですけれども、七〇ppmにしましても、その分だけはやはり瀬戸内海が汚れるわけです。しかもN分というものは相当に多いと思いますから、処理をする方法としては屎尿をそのままやるというわけにはいかぬでしょうけれども、若干の加工をして、たとえば屎尿の中に入っているゴム製品だとかいろいろなものがあるでしょうから、そんなものはのけたりなんかして、肥料になるように、またはプランクトンの発生の原因になるように珪藻を加えるとかいろいろしまして、黒潮に乗せて希釈拡散させていく。黒潮というのは貧栄養代表的なところだろうと思いますから、そういったところへ持っていくというのは私は一つの考え方ではないかと思います。これは実は高知大学か何かの先生がそういったことを書いておられますが、そういったような考え方というのはどうなんでしょうか。
  92. 村上彰男

    村上参考人 実際に、黒潮以遠の公海にそういうものが捨てられるかどうかということは別といたしまして、屎尿処理方法の一つとして、貧栄養な海域にそれをまいていくということは、私は、原則的に海の中での栄養物質の循環から考えて、決して不合理な話ではないと思います。それによる漁業被害、これはもちろん避けなければなりません。ですからその方法が問題なんですが、おっしゃるように、屎尿の中には特にこれといった毒物は存在しないはずであります。したがいまして、一つの方法として、そういうことができ得る条件があるならば、貧栄養海域にこれを与えていくということは、学問的には決して矛盾した話ではないと私は思います。
  93. 林義郎

    ○林(義)委員 どうもありがとうございました。
  94. 久保等

    久保委員長 島本虎三君。
  95. 島本虎三

    ○島本委員 村上参考人には、委員会として昨年は大変おじゃまいたしまして、早朝にもかかわりませず御出席願い、いろいろ参考意見をちょうだいさせてもらったりしたほか、後から印刷物まで送ってもらってずいぶん参考になったことを、当時の委員長として心からお礼を申し上げる次第でございます。ありがとうございました。今回また貴重な参考意見を賜りまして、本当にうれしいきわみであります。  私も、瀬戸内海環境保全臨時措置法、これの後継法、それと閉鎖性水域のいわば総量規制、こういうような問題を控えて、瀬戸内海はいま重大な一つの関頭にあるというように思っておるのであります。  それで、いま貴重な意見を賜りましたけれども、NでもPでも、なかなか規制は困難であるということはよくわかるのであります。そして広島なんかに至っても、四割、六割程度カットしたら、それでも莫大な費用がかかる、これも了解できるのであります。しかし、化学肥料や燐、洗剤、こういうようなものに対して、先生は、窒素や燐は、入れない方法を講ずる方がいいのじゃないかというようなことのようであります。それにこしたことはないのでありますが、それじゃ、こうなったときに具体的に何か考えられましょうか。そこを教えてもらえたら、これは幼稚ですけれども、その点をちょっと思ったわけです。  いま林委員の方からも質問がありましたけれども、第二番目の、蓄積汚泥のことでありますが、確かに効果ある対策でなければ二次公害を起こす、これはもう重々理解できるところです。海中に置けば、有機物を含んだ沈積物としてのいわばたまり場になるのだ、さいの河原になるようなことより、まず寝た子を起こさない方がいいのじゃないか、これもわかるわけです。しかし、瀬戸内海というのは無限の底じゃない、下は岩盤じゃないかと思うのであります。そうすると、その上にたまっておる、かつて排出されたいろいろな汚泥、こういうようなものじゃないかと思うのです。そっとしておいたら永久に瀬戸内海の方に、それは総量規制するにしても、環境を破壊する一つの素材として残ることになるのでありますけれども、そこを何とか、一年間の期間をおいてもいい、またいろいろな方法を講じてもいい、そこにあるきたないもの、悪いものは取って根本的に処理しなければ、これは根本的な対策にならないのじゃないかな、こういうように思いながらいままでの格調の高いやりとりを聞いていたのでありますが、私の具体的にして低い基準を置いた質問になりますが、この点等について、大いに今後の参考になると思うのですけれども、どんなことでもいいですから、思いついたことをぴたっと言ってくださいませんか。
  96. 村上彰男

    村上参考人 非常にむずかしい御質問で、私もちょっと答えに窮するのでありますが、第一問のN、Pを入れない具体的な方法、これは社会情勢を全く無視して申し上げます。  そういたしますと、たとえばこれは日本のメーカーもずいぶん御努力なさっているようでありますが、仮に洗剤でありますれば、そのPの含有量を下げる、これは全部なくすことはできないでしょうけれども、そういう方法も一つあります。それから、ただいま林先生から御指摘のあったような屎尿、これは全くできるかどうか存じませんが、少なくとも瀬戸内海オンリーで考えますと、瀬戸内海に対しては全く影響のないようなオープンシーに行ってこれを捨ててくるというような方法、それから逆に、これは実際にやれるかどうか、その投尿者に聞いてみないとわかりませんが、海洋だけでなしに、農地還元あるいは山林還元、こういったこと、そのほか、ありとあらゆるいわば機械的な除去処理によらない負荷削減、これは実は、技術的にも社会的にも経費的にもどうであろうかということを、さらに追究し、研究していく必要があろうというふうに考えます。  それから第二問の蓄積汚泥の除去でございますが、これは確かにおっしゃるように著しく不当なもの、この不当という意味は、別に道徳的な意味ではなしに、瀬戸内海海域環境にとって全く困った存在ということで、仮にパルプかす、このようなものはあってはならないものであるし、また、それが大量に積もっているところについては除去する必要があろうかと思います。  私が先ほど意見開陳で申し上げましたのは、いわば自然の——自然という意味が、たとえば昭和十年というふうな時点で瀬戸内海の海域環境が比較的正常に保たれていたときの負荷、この程度のもあというのは、海域環境の保全を必ずしも阻害してない、プラスしている、つまり、たとえば窒素、燐で申しますと、海底のヘドロがございますと、そのうちで溶け出して海水の富栄養化を促進させる部分というのは、きわめて表層の十センチか十五センチの部分に限られているということがわかっております。したがいまして、それより下に沈んだものは、当然、垂直流によっても余り巻き上がりませんし、つまり寝た状態にあるわけであります。これは自然の水域、たとえば湖沼などではっきりいたしますが、湖沼というものは、有史以来こうできて自然的に発生してくるものなんですが、結局、何万年あるいはもっと長い年月の何十、何百万年、その間にはだんだん干上がってくる、これが自然の状態であります。したがいまして、瀬戸内海というのは、私の記憶では、現状どおりにできましてからまだ八千年ぐらいにしかならないと思いますが、その間の自然の負荷による堆積は当然あるわけでありまして、そういう意味で、自然の負荷だけで瀬戸内海がいますぐ干上がってしまうということは、時間的に見てとても考えられません。そういった自然の負荷による堆積というものは、何も目くじらを立てる必要はない。おっしゃるように、ごく近年の十年とか二十年の間の元来あってはならないものの負荷による堆積が実は一番の問題であろう。これを取るということは私も賛成でございます。
  97. 島本虎三

    ○島本委員 なるほど、それでまたわかってまいりました。  それで、なお先生の方からも参考意見として、後継法についてはやはりはっきり明文化しておいてもらいたい、励みにもなる、精神的立法であっても価値あるものである、こういうようなことがあったのですが、もちろんそうならないようにやらなければならないわけです。しかし、そういうようなものでも意味がある、こういうことも十分理解されました。  それで、瀬戸内海の場合だと、必ずこの埋め立てに対する意見があるのであります。埋め立てをした者は、上物が目的で下物をつくるわけでありまして、そういうようになると、いろいろ大義名分があるわけです。上の方には屎尿処理場をつくるのであるとか、また下水処理場をつくるのであるとかと、いろいろそうなるのであります。そういう大義名分の立つ中には、午前中は火力発電所をつくるという話もあったわけでありますけれども埋め立てでもそういう用途を限定した埋め立てならば、瀬戸内海という閉鎖性水域の中で、現在埋め立てても有効でしょうか。それとも先生が言ったように、そっと寝た子を起こさないようにしておいた方が、自然還元サイクルに乗って常に浄化作用を起こしてきれいな状態に継続できるのだ、こういうようなことになるのでしょうか。いつでもこの辺にくると具体的な議論がぱっと分かれるのでありまして、この辺についても両先生にひとつ御高見を承っておきたいのであります。
  98. 村上彰男

    村上参考人 私、先ほど特殊な場合には埋め立てというものも原則的にはやむを得ないと申しましたのは、あくまで瀬戸内海の場合、瀬戸内海の海域環境を保全あるいは改善していくために役立つという立場で申し上げましたので、いまおっしゃるような上物については全く私は先ほどは申し上げませんでした。ただいまの御質問で、上物が来るということに当然なっていくわけですが、それがまた汚染負荷を及ぼすということは、確かにこれは汚染負荷の増大につながるおそれがありますので、好ましくございません。  御承知のように、浅い海とか砂浜、こういったところの海域浄化に関する役割りというものは莫大なものがございます。目下私どもは、別府湾の調査においてそれを定量的に突きとめる研究をしております。その主役はバクテリアなんでありますが、有機物の分解ということに非常に効果のあるものであります。したがいまして、瀬戸内海に関しましてはすでに埋め立てというものあるいは自然汀線の消滅というものはかなり進んでおりますので、でき得る限りそれを避けたい。ただ、先ほど申しましたように、それがその海域の環境浄化に役立つというならば、その環境浄化の一つとして被覆あるいは埋め立て、こういうものも理屈としてはあり得るだろう。その上に何を持ってくるかということは、これは別個の問題でございます。先生おっしゃるように、たとえばそれを言いわけにして持ってくるということは私は考えておりませんし、また、そういうことになれば最初環境保全の目的に反することは明らかであります。
  99. 島本虎三

    ○島本委員 瀬戸内海どこに行ってみましてもいま余りに工場が多いから、それを分散させた方がいいという、国の方の三全総もそういうふうなことに発想を置いているようでありますが、やはり多過ぎるのじゃないか、こういうふうにさえ思うのであります。しかし、これは先生、いかがなものでしょうか。やはりいろいろやっておきたい上物の種類の中に発電というものがあるのであります。しかし、そうなると火力もあるであろうし、あるいは将来のことを思ったならば原子力発電なんかも考えているかもしれません。温排水が四六時中出るわけでありますが、その温排水がこれまた赤潮の発生を誘発して、そして環境の保全に対しては有害になるような結果になるのじゃないか、こう思われるのであります。  この点等についても、私は本当に皆さんの意見を十分に聞きたいと思っているのでありますけれども、この温排水が赤潮発生の要因というか促進というか、そういうものになっているかどうか。これがまた瀬戸内海の水の環境悪化のために一つの要因になっているのじゃないかとさえ思うのでありますが、その件についての御高見をひとつ承りたいと思います。
  100. 村上彰男

    村上参考人 私、温排水は専門的に研究しておりませんのではなはだ知識不足で、ごく一般論で申し上げます。  温排水というのは御承知のように、海の場合ですが、海の水温を数度あるいは場合によっては局地的に何度か上げていく、かなりの高範囲に一、二度上げるという性格のものでございます。おっしゃるような瀬戸内海に限って申しますと、実は、赤潮の発生の促進要因としては温排水はどういう関連があるかと申しますと、これは放射能とかそういうものは全然抜きにいたしまして水温だけで申しますと、確かに水温を上げるわけですから、少なくとも悪質な赤潮の発生というのは高温期に集中いたしますので、その意味では確かに全然影響がないということは申し上げられない。ところが、その水温が上がる範囲というのは瀬戸内海の海域に比べて、つまり現在の赤潮発生の海域に比べますときわめて微々たるものである。したがいまして、瀬戸内海に関する限り赤潮発生の要因としては一位とは考えられない。第N位にはあるでしょうが、一位とはとうてい考えられないというふうに考えます。したがいまして、そういった発電などによる温排水、これも実は局地的にはもちろん問題なんでありまして、こういった自然環境に対する変動要因、これが少なければ少ないほど回復にとって有利であるということは原則的には当然考えられるところであります。
  101. 島本虎三

    ○島本委員 瀬戸内海の場合には、つい何年か前までは、生のまま屎尿を小豆島あたりの沖合いに捨てておったという実例さえあるわけであります。最近はそんなことありませんが、しかし、そういうふうになった結果が広域経営の下水道処理によった方がいいのじゃないか、こういうことになってきているわけであります。しかし、そういうふうにして工場排水もその中に入れて処理してしまうようなことになると、一部強力な意見としても、学者間にも、大きくなればなるほど下水道計画、こういうようなものに対しては流域下水道は害があっても益は少ないものであるというような意見が最近大いに出されておるのであります。そして、できるならば小さいもの、できるならば個々の処理をして、処理したものをそこへ流す、こういうような限度をきちっとさせる、これでない限りは大きくなればなるほど有害になる、まして工場なんかをその中へ入れる場合にはきちっとチェックする、そういうことにしておかないと、瀬戸内海にこれを流入してもいいと思ってやったら結果は悪かった、こういうことになりかねない、この下水道計画については、ただ単に思いつきやすぐに飛びついていくようなものであってはならないと警告を発している向きがあるわけであります。参議院等におきましても、参考人として招致して十分その意見を聞き、評価されているようでありますが、瀬戸内海をきれいな水に還元し、悪くしない、こういうようなことになると、いま生活排水、それに工場排水、こういうようなものが全部ここに集中してくるおそれがあるのでありますが、この点等については、余りでかいものじゃなく、工場等においてもチェックできるようなものにして、中または小さいものが望ましいのじゃないか、こう思っておるのでありますけれども、午前中は大きければ大きいほどいいというような意見も出たようでございまして、はなはだ私と意見が違うのであります。こういうふうなことにして注ぐ下水道計画に対しても、質をもう少し検討すべきではないか、私はそう思っておるのであります。これが一つであります。  それと、時間がないのが残念なんでありますけれども、もう一つ。ハマチでも何でも養殖して、その結果が水質汚濁に相当の悪影響を及ぼしている、こういうような結果も見られているようなんでありますが、いかがなんでしょうか。これを全部養殖させないようにして、そうして表面だけのやつはそういうような有害なものをとっても、自然にあるようなものまで手をつけないというふうにして瀬戸内海全体を牧場にする、そういうような構想で、いろいろなものをそのまま住まわしておく。ケニアの自然動物園みたいなもので、あそこは自然の魚物園である、こういうような構想なんかどうなのかな、こう思ったりするのでありますけれども、この下水道計画と牧場計画に対して、将来の瀬戸内海の望ましい姿としてどうお考えになりますか。
  102. 村上彰男

    村上参考人 第一の問題、私は下水道に関しましては無知でございまして、おっしゃるような論議があるということは存じております。瀬戸内海の場合に、下水処理によって除去される少なくとも栄養塩類がきわめて高率でない限りは、それを集中的に海流に出すということはむしろまずいのじゃないか。おっしゃるように、それを分散して出す、たとえば一例といたしまして、私先ほど申し上げなかったと思うのですが、周防灘というところは、その西の海域が非常に貧栄養海域であります。特に燐においては足りない、そういうようなところに関しましては、それにつり合うような補給をしていくということが好ましいのでありますが、それじゃ何百万人もの下水をだあっとある一カ所に集中して出すということは、少なくともその周辺の富栄養化を明らかに進行させるわけでありますから、これはおっしゃるような適所分散、場合によっては入れない、そういうようなきめの細かい検討が必要かと思います。  第二点の、利水的に原始的牧場計画はどうか、これは非常に次元の高いお話でございますので、私ごときの云々できるところではないのでありますが、私は、基本的には瀬戸内海の利用というものは、日本人がどういうふうに利用するかという総意に基づいて利用していくべきだという立場でございます。したがいまして、その一環として原始的な牧場計画というものもあり得ると思いますが、ただ、瀬戸内海というものを原始的な牧場にした場合には、そのほかの利水価値というもの、利水の方法といいますか、それは非常に制約を受けるだろう、これは確かに言えるのではないかというふうに考えます。
  103. 島本虎三

    ○島本委員 どうもありがとうございました。
  104. 久保等

    久保委員長 水田稔君。
  105. 水田稔

    ○水田委員 参考人先生方、御苦労さんでございます。  村上先生の先ほどの御意見を伺っておりますと、灘部においてはCODの改善はまだまだということ、そして富栄養分の窒素、燐の負荷は減ってないという御意見がありました。これを伺いますと、臨時措置法によって瀬戸内海の状態は、一応歯どめはできたけれども、いわゆる改善の方向へはまだ向かってない、こういうぐあいに先生の御意見を理解してよろしいでしょうか。
  106. 村上彰男

    村上参考人 おっしゃるように、総括的には私もそういうふうに思っております。
  107. 水田稔

    ○水田委員 それから、ちょっと先生お話がわりに早口だったものですから、私申しわけないのですが、この昭和十年の神戸の海洋気象台の数字をずっと挙げられまして、そしていわゆる紀伊水道から大阪湾の南部の方ですね、そのときの状態、そしていまの灘部との比較では、現況全体で二分の一程度のところにある、こういうお話だったと思うのですけれども、たとえば昭和十年を基準にして、それが日本瀬戸内海沿岸の工場の張りつきぐあいから見て、それが普通の形であったであろう、いわゆる生活排水、その他の汚染によってそうなっておっただろう、それと比べて、いまの灘部が大体その二分の一くらい、数字で言うと、これは五十一年の五月で、十八の灘部の単純平均ですが、トータル窒素で〇・三九八、トータル燐で〇・〇三ppmですね。それが当時の大阪湾南部紀伊水道と比較して半分くらいだ、こういうぐあいに御説明いただいたと理解してよろしいでしょうか。
  108. 村上彰男

    村上参考人 ただいまのおっしゃられました数字はppmで、これはいまの私が先ほど申しましたマイクログラム・アト・パー・リッターの単位に換算しますと、トータルNで二八、トータルPで一ということになります。それと先ほど申し上げましたのとの比較でございますが、これはむしろトータルで比較すると、実は、先ほど申しました有機物というものがございますので、昔のデータはございませんので、むしろ比較するときには無機のやつ同士で比較すべきであるというふうに考えますが、いずれにいたしましても、当時の紀伊水道から入ってくる水は瀬戸内海の沖合い水に比べて現状は倍以上にふえているということは否定できない、現状は倍以上にふえている。つまり瀬戸内海本来の大部分の水というのは、先ほど御紹介いたしましたような、仮にCODで言えば一あるいは窒素で言えば二前後ですか、燐で言えば〇・二か三、そういったところが本来の水であろう。ただし、これは過去のデータを偶然にも探り当てたのですが、非常に少ないのです。それで、お断りいたしましたように四月の状態でございます。これは海域の環境というのは、季節変化が非常に大きいので、この数字も当然変わっていく。ただ、四月という時点は、年間の変動から見て極端に高い方ではないし、極端に低い方でもない。どちらかというと中くらい、平均とは申しませんが中くらいの状態であるということは言えると思います。
  109. 水田稔

    ○水田委員 私どもは、総量規制をやろうとして、瀬戸内海環境容量をどうやって決めるかということでいろいろ検討しましたけれども瀬戸内海へ出入りする水がどういうぐあいになっているか、あるいはその海域ごとでまた地形が違うものですから、大変むずかしいということで、先生の七四年四月の「公害と対策」という中に、水質の総量規制という文章があるわけです。その中に、少なくとも昭和四十四年の三分の一程度に削減することが望ましい、こう書いてあるわけです。私どもは、何らかの数値を持ってきて、できれば昭和三十年——私も瀬戸内海沿岸に住んでおりますが、昭和三十年というのは、いわゆる本船航路でタイ網がまだ健在であった当時ですから、タイ、サワラが入るという水の状態でした。それから二、三年でタイ網がだめになりまして、いま鞆でも、タイ網を上げるときに横からタイを入れておるわけで、あそこにおるわけじゃないのですから、当面はそういうところを目安にした全体の、そこまでの総量規制をやりたい、こう考えておるわけです。  私ども昭和十年のを参考にさせていただきたいのですが、先生は先ほど四十四年の三分の一、こう言われた。そこらあたり、何らか使い得る数というものは一体ないのだろうか。あるいは私どもは、たとえば当時の水産の調査資料に基づく、上がってきた魚の状態とかあるいは分析の仕方は、いまは戦前とは違う面がありますが、ある程度の換算をして、沿岸全体でそういう資料も集められるものなら集めて、ある程度の目安をつくっていきたい、こう思うのですが、それについて、先生の御見解を聞かしていただきたいと思うのです。
  110. 村上彰男

    村上参考人 お答えいたします。  おっしゃるように、たとえばCODとN、Pとかというものの仮に昭和三十年あるいはそれ以前の状態のデータ、これはきわめて少ないのであります。たまにあっても局所的であったり、あるいは時間的にもそのときだけというものがほとんどでございまして、こういう数値そのものの時間変化を追うような資料は、少なくとも昭和四十六年以降でないとございません。  ただし、私は絶望しないのは、実は、いまタイ網の例をおっしゃいましたが、まことに適切な例だったと思います。たとえばそういった漁獲あるいは漁獲物の状況あるいは赤潮状況、そういう個々の数値でなしに、海のありさまを総合的に示すような指標、これはいろいろ水産側のデータを調べればあるわけでございます。少なくとも赤潮などに関しましては、かなりの昔まで翻ってあるわけであります。したがいまして、そういうことを頼りにやっていくよりしようがない現状なんでありますが、最初におっしゃいました総量規制、四十四年の三分の一にしろと私が申しておりますのは、当時まだ——その後もう少しふえたのでありますが、これは明らかにそういった海の総合環境の指標要因、その総合要因の変化と一その当時の負荷とを対比した場合に三分の一という数字が出るのでありまして、先ほどの広島の例の四分の一も、やはり同じようなやり方なんですが、逆に申しますと、環境容量をつかんで、それから負荷量を出すということは、先ほど申しましたようにきわめて困難である。  ただ、ここで一つ申し上げたいというのは、先ほど布施さんがおっしゃったIBPの計画以来十年間にわたって燧灘、備後灘で入ってくる窒素の量と、それが海の中でどう回るかという研究を私どもいたしましたが、それによりますと、当時入ってきている窒素の量の二けたくらい多い量が海の中にある。ですから一見問題ないようなんですが、その入ってきている量がここ二十年間に二倍近くにふえただけであれだけ海域環境が違う。ですから、決して現存量に対して負荷量を考えるんじゃなくて、その負荷量そのものが少なくとも倍くらいになった、全体から見ればほんの一%にも満たない、実際にある窒素から言えば一%にも満たない増加でありながら海の状況は全く変わってしまうというものが海なんだというふうに御理解いただきたいと思います。
  111. 水田稔

    ○水田委員 実は、けさほど別な参考人に御意見を聞きましたら、いわゆる赤潮原因というのは窒素、燐それからメカニズムを含めてすべてまだ赤潮との因果関係は明らかでない、こういう御意見がありまして、私どもの理解では、少なくともベースになるものとしては、富栄養の一番大きなものは窒素と燐、その存在、そして泥質の状況あるいは重金属等、さらにはまた雨水が大量に流れ込んでくる、そういった状態が引き金になって、断定的には言えないにしても、そういう引き金になるのがどういう形で起こり、どういう形になっておるかということがまだまだ十分解明されておらない、しかし、ベースになるものは窒素、燐という栄養分が存在することによると、そういうぐあいに理解しておるわけですが、その点はいかがでしょうか。
  112. 村上彰男

    村上参考人 一つの例として申し上げますと、実は昨年起きました赤潮のホルネリアについて、赤潮生物のホルネリアの密度がどのくらいあるかと申しますと、最高が海水一ミリリットル中に千個、もう少し千二百くらいあったのですが、千個というオーダーであります。それでは、このホルネリアが千個いた場合、そのホルネリアが持っている窒素というのは一体どのくらいなんだという計算をしてみたのであります。当然ホルネリアの周辺の海水からそれはとらなければならない。そこでそういう計算をしてみますと周辺の海水の窒素の濃度というのは最低で十マイクログラム・アト・パー・リッターなければいかぬという答えが出てまいります。ホルネリアは有機の窒素も使用できますので、DINで比較するのはだめなんですが、この濃度というのはさほど富栄養化の進んだ海域の濃度ではないにしても、少なくとも富栄養化がある程度進んだ濃度であります。この十マイクロのものを完全に吸収できるかどうかということもございますし、それから考えましても、少なくとも広範囲の大規模赤潮、ホルネリアにいたしましても何でもそうですが、そのためにはある程度の富栄養化の進行が必要である。これは必要物質なんですから、明らかであります。したがいまして、私ども非常に心外に思っておりますのは、赤潮の発生機構の解明というのは十分には積んでおりません。  時間が長くなりますのでごく簡単にしか申し上げませんが、実は窒素、燐以外にそれの制約を握る物質がある。これも完全にはわかっておりませんし、あることはわかっております。なぜ集まるかということも完全にわかっていない。ですから、そういう不明な点があるのですが、逆にそのために、実は窒素、燐は第一基本物質じゃないんだ、窒素、燐なんか要らないんだ、普通の濃度でも起きるのだという議論があるというのは、いまの計算結果から申しますと、私としてはきわめて不本意であります。少なくとも窒素、燐がある程度の濃度富栄養化の進行度でなければあれだけの大規模赤潮を長期間にわたって維持できないはずであります。
  113. 水田稔

    ○水田委員 そうすると先生、窒素、燐というのは、私が先ほど申し上げましたように主要な一つの原因物質であることは間違いない、赤潮対策としては、当面わからないことは解明を急がなければならぬけれども、現在以上に窒素、燐が瀬戸内海に流入することは何としても避ける、そして、方法があるものについては、先ほどの先生の、自然に存在する状態を破壊するという意味ではなくて、これ以上の負荷をかけないということは瀬戸内海環境保全のためにはきわめて重要なことだ、こういうぐあいに理解してよろしゅうございますか。
  114. 村上彰男

    村上参考人 おっしゃるとおりであります。単に赤潮対策だけでなしに、富栄養化による悪影響、たとえば貧酸素化、このためにも少なくとも原因物質である富栄養化、窒素、燐、これを減らすという努力は絶対に怠ってはならないと私は思います。
  115. 水田稔

    ○水田委員 布施先生に一つ藻場の回復の問題をお伺いしてよろしいでしょうか。さっきちょっと御答弁があって、専門でないと言われたのですが、私どもは人工海浜なり人工藻場というものを考える場合も、いわゆるヘドロについても高濃度汚染は何とかしなければならぬ、しかし、その場合でも二次汚染を起こさないようなことを考えなければならないし、それから藻場なり人工海浜を考える場合でも、現在ある生態系を急激に変えるというようなことは避けるべきだ、しかし一つは、自然に水だけを回復さす中で、ある程度何らかの努力をして、早く回復するというためには何らかのことをやるべきではないだろうかという考え方を持っておるのですが、その点はいかがでしょうか。
  116. 布施慎一郎

    布施参考人 それは自然に、つまり先ほどお話がありましたからあれですけれども、透明度が悪いまま何ぼふやそうと思っても、それは光がないからふえることができないのです。  それからもう一つ、温排水の例でもそうなんですけれども、これから原子力発電所が林立しますと、アメリカで困った例は、セントローレンス川でしたか、非常に密集して建つものですから、温度が八度高い水が出て、それがもとの温度まで下がってからまた発電所が八度高い水を出すというふうになればいいのですけれども、その間にもう一つつけますと、八度が四度ぐらいに下がったところへ、もう一度八度の水が出て温度が十二度になるとか、そういうように瀬戸内海がなってきますと、そういうふうにしておいて一生懸命藻場を回復しようと思っても、それはできない相談なんです。ですから、そういう物理的にどうしてもだめなものは、ちゃんとそこまで持っていかなければだめです。それからあと、そういう条件が整ったときに回復しないのは、これはまたいろいろな要因があると思います。それは、たとえばさっきヘドロのお話がありましたけれども、ヘドロが多くなったりすると、特に上からおりてくるヘドロになる前のデトリタスがうんと多いときには、それを食う生物がふえるということも考えられます。そういうものはまた一方、岩場で待ち構えているように、新しく生えてきた芽生えをがりがりかじりますから、藻場をスムーズに成長させようと思うと、そういうウニを特別にとってやらなければならぬ、そういうことも必要であります。ですから、あくまでも最低必要な条件は整えてやらなければだめです。それから逆に、十分生えてしまいますと、あれは鳥羽のアワビの盛んにとれるところですけれども、そこでは海草の芽生えはアワビも食うのですけれども、それからウニも食べているのですけれども、しかし海草はどんどん成長するわけです。ですから、やはり条件というのは相当必要なわけです。その上での努力ということです。
  117. 水田稔

    ○水田委員 どうもありがとうございました。終わります。
  118. 久保等

    久保委員長 古寺宏君。
  119. 古寺宏

    ○古寺委員 非常に時間が限られてございますので、簡単に質問をさせていただきたいと思います。  まず最初に、総量規制の問題でございますが、現在、環境庁等におきましてはCODを対象に考えているようでございますが、他の物質についての総量規制についてどういうふうにお考えになっておられるか、村上参考人に承りたいと思います。
  120. 村上彰男

    村上参考人 しばしば申し上げましたように、私は、少なくともN、Pというものの負荷の削減、これは方法といたしまして総量規制ができるかどうかは別といたしまして、負荷量の削減、これは絶対に必要だと思っております。
  121. 古寺宏

    ○古寺委員 N、Pの総量規制はできるというふうにお考えでしょうか。
  122. 村上彰男

    村上参考人 これは先ほど意見の中で申し述べましたように、総量規制の根拠となる数字を詰めるということが実は環境容量というものを定量化することにつながりますので、現状の学問レベルでは不可能である、これはさらに高度の研究を必要とするというふうに考えております。
  123. 古寺宏

    ○古寺委員 先ほど広島湾の例をとりまして、N、Pを大体六〇%ぐらいカットする必要があるという御意見がございましたが、瀬戸内海全体でもってN、Pに関してはどのくらいの削減が必要というふうにお考えでしょうか。
  124. 村上彰男

    村上参考人 全体については試算しておりません。それから、広島湾の六〇%カットというのは、先ほどお答え申しましたように、負荷量の推移と海域環境の推移を対比した場合の数字でございます。したがいまして、環境容量その他に基づいた海洋学的な詰めを行った上の数字ではございません。ただ申し添えますが、瀬戸内海全体に対する負荷量、私どもの試算では、四十七年時点で概略窒素が五百トン、燐がその十分の一となっておりますが、これは明らかに多過ぎるということだけは言えると思います。
  125. 古寺宏

    ○古寺委員 そうしますと、きょう最初に御意見の陳述があったわけでございますが、本来あるべき瀬戸内海のNあるいはPの数値、これを一つの目標とすべきであるというふうにお考えでしょうか。
  126. 村上彰男

    村上参考人 ただいまの御質問は、負荷量として目標値にすべきだという意味でございましょうか。私はその点は、負荷量の算定というものを過去にさかのぼってもう少しきめ細かくやらないと、それからその経年変化が、たまたま海域環境は十年のデータを私、使いましたが、その後どうなったか、つまり、瀬戸内海として許せる富栄養の程度が何年ごろまでかということを詰めていかないと、片一方の負荷量の経年変化と対比して、これがいい数字だということは申し上げられないと思います。その意味では、これは全くの想像ですが、昭和十年時点の負荷量よりは幾分ふえるのじゃないかというふうに考えております。
  127. 古寺宏

    ○古寺委員 けさほどの参考人の方の中に、現在、富栄養化因果関係あるいはメカニズムというものがはっきりしていないので、燐あるいは窒素の規制ということは非常にむずかしいというような御意見もあったわけでございますが、富栄養化と燐あるいは窒素との因果関係、この点については学問的にはっきりしているわけでございましょうか。
  128. 村上彰男

    村上参考人 因果関係と申しますより、そういった富栄養化の基礎になる物質が多い状態、つまりN、Pの多い状態を富栄養化と申しております。そのあらわれ方は多様でございますけれども富栄養化という言葉の中には、言葉自体がN、Pが多いという意味を持っております。
  129. 古寺宏

    ○古寺委員 次に、瀬戸内海では現在ハマチの養殖をやっておるわけでございますが、ハマチの養殖のえさが赤潮の一因になっているというふうにも言われておりますが、この点に関してはどういうふうにお考えでしょうか。
  130. 村上彰男

    村上参考人 これにつきまして、一般の魚の中の有機物質、それが特にホルネリアの増殖にどういう影響があるかということは、香川大学の岡市先生その他によって研究が進められております。しかしながら、いまおっしゃられるハマチのえさが原因であるかどうかということについては、まだ学問的には解決されておりません。これも至急に解決を要する問題だと思います。
  131. 古寺宏

    ○古寺委員 赤潮が発生する場合には、その以前において非常に降水量が多い、そしてまた、海水が希釈をされておって、その後好天が続く、そういう場合に赤潮が多く発生するというふうにお聞きしているのでございますが、そのメカニズムはどういうふうになっているわけでございましょうか。
  132. 村上彰男

    村上参考人 御質問のメカニズムという意味が、私は実は的確につかめておりませんので、見当が違うかもしれませんが、一般に最近の悪質化した赤潮、つまり鞭毛藻類による赤潮、この赤潮生物種の生活条件と申しますか、これはかなり塩分の低い方に好適範囲を持っているということは一般論として言えます。しかしながら、低くなければだめかと申しますと、好適塩分範囲というのはかなり幅が広い。高い塩分でもよろしい。その一つの例が、昨年七月の播磨灘のホルネリア赤潮、あるいは錦江湾、志摩半島沖、こういうところでかなり塩分の高いところで発生しております。ですから、低いということが必ずしも決定的な要因とは思いません。一言にして言えば、低くても発生できるし、かといって高ければ発生できないというものではない。ホルネリアに関してはそういうふうに言えると思います。
  133. 古寺宏

    ○古寺委員 最初赤潮というのは非常に上層に小範囲に発生するけれども、だんだん下の方に拡大されていって、しかもその範囲も大きくなってくる。そのために、魚類はえらと申しますか、窒息死でよく死亡しているというのでございますが、それがだんだん進行しますと、貝類においても、ある程度の成長をいたしますと、それが死亡する。それも赤潮原因になっているというお話も承ったのでございますが、この赤潮の発生は、プランクトンと申しますか、内容が非常に悪化して変化していくようでございますが、最近の傾向としてはどのようになっているのでしょうか。
  134. 村上彰男

    村上参考人 赤潮の悪化と申しましたのは、一つにはその発生の時期が周年化している、長期である、範囲が広い、それから発生の生物種が漁業被害を伴うものが多くなっている、こういう意味を総括して申し上げました。  ただいまのお話で、貝が死ぬということは、貝と申しましても、たとえばカキのように海の下を離れてつっているものの場合と、ハマグリ、アサリのように下に生活しているもの、これは被害を受ける機構が違います。たとえば、下にいる貝は、赤潮生物が大増殖したものが死ぬ、そして下へ沈む、そのときに分解する、ですから水中の酸素をとってしまう、その低酸素化によって死ぬ例が多いようでございます。  一方、カキに関しましては、直接赤潮の水塊内で死んだという例はございません。ただし、赤潮というのは、ある種のプランクトンがそこのプランクトンを独占してしまいますから、カキのえさがなくなってしまう、えさがなくなるためにカキのグリコーゲンが非常に減ってしまう、つまりやせ細ってしまうということはわかっております。
  135. 古寺宏

    ○古寺委員 次に、今後下水道の促進を図っていくわけでございますが、現在の二次処理の段階では、P、Nの処理は不可能に近い。その場合に、終末処理場をどんどんつくっていった場合には、かえって赤潮の発生源になるという可能性がある、こういうことが言われているのでございますが、その点についてはいかがでございますか。
  136. 村上彰男

    村上参考人 この点につきましては、ずいぶん古くから、たとえば山口大学の中西先生その他によって指摘されております。おっしゃるように、終末処理場の周辺の富栄養度は、かえってそれがあるために上がる。たとえば、野放しでちょろちょろ流れれば、流れる途中の削減あるいは分散ということで、局地的に見ればその周辺の濃度は上がる、これは当然のことでございます。しかしながら、それでは未処理で全く野放しで出した方がいいのかと申しますと、これは観点によって違いますが、局地的な濃度増加があっても、広域的に全体として減らす方を選ぶ方がより効率がいいのか、それともそうじゃないのかということは、なお赤潮の発生要因に関する限り突き詰めていかなければならない問題だと思います。
  137. 古寺宏

    ○古寺委員 先ほど埋め立ての問題に関連いたしまして、環境アセスメントが開発側の免罪符になる危険性があるというようなお話があったわけでございますが、今後、終末処理場をつくるあるいは屎尿処理場をつくる、いろいろな問題が出てまいりまして、それに関連して埋め立ての問題も出ると思うわけでございます。その場合に、埋め立てをする目的によってアセスメントを考えるべきかへあるいは将来起こり得る環境影響を予測して埋め立ての問題を考えるべきか、どちらを選択すべきとお考えでしょうか。
  138. 村上彰男

    村上参考人 ちょっと私、御質問の御趣旨を取り違えているかもしれませんが、アセスメントでわれわれ研究者として一番関心があり、また最も重要だと思うものは、あくまで埋め立て、あるいは上物を含めても結構ですが、埋め立てによって海域環境がどう変わり、それが生物を通じて漁業にどう影響するかということを現在研究テーマとしてやっております。したがいまして、埋め立てるかどうかということは、ちょっとおかしな言い方かもしれませんが、私どものいまの研究の対象ではなしに、埋め立てたらどうなるかという影響を予測するためには何をするか、そして予測された影響をどういうふうに評価するかということが現在の私どもの目的でありまして、埋め立ての可否ということは、おのずとこれは海洋学と申しますか自然科学だけではない社会的な要因で、こういう私どもの答案をごらんになった上で決定されるべきだというふうな立場で物を考えております。
  139. 古寺宏

    ○古寺委員 どうも私の質問の仕方が悪いのだと思いますが、環境をよくするためには下水道終末処理場あるいは屎尿処理場等をつくらぬといかぬ、そのためには、土地がないので埋め立てをしなければならないという問題が起きてまいります。しかし、埋め立てをすることによって環境に非常に影響があるというような問題も出てくるわけでございます。鶏が先か卵が先かというような話でございますが、そういう場合に環境アセスメントはどのように住民との合意を得る手段として使われていくべきかという考え方の問題でございますが、承りたいと思います。
  140. 村上彰男

    村上参考人 原則的には、いまおっしゃいました処理場を海浜につくる、あるいは埋め立てによってもとにかく海浜につくるという考え方そのものに私は疑問を持っております。つまり、海というものを、いろいろな処理をしてもなおかつ残るわけですから、そういうものの捨て場と考えている、その考え方自身に私は問題があろうと思う。決して海は捨て場ではない。たとえば処理場をなぜ山へつくれないのか、なぜそれではその処理排水を中水道なりあるいはもっと低級の水として使えないのか、なぜ海に流さなければならないのか、この必然性が私にはどうしてもいまだに理解できないということでございます。
  141. 古寺宏

    ○古寺委員 布施参考人にお伺いしたいのでございますが、今後、関西空港の問題が出てまいりますが、この関西空港が埋め立てによりまして建設される場合に、藻場等に及ぼす影響はどういうふうにお考えでしょうか。
  142. 布施慎一郎

    布施参考人 大阪湾にはもう藻場がほとんどありませんから影響がないみたいですけれども、私たち、いまそれを水産の立場からどういうふうに調査しているかということになると思うのですけれども、たしか運輸省が出した十何冊かのものの中には、模型実験によって、あそこへ空港をつくると明石市の流れがちょっと変わるような数値も出ていますし、加太の方は余り変わるようには出てなかったと思うのですけれども、そうすると明石市の方に生えている海草の状態とかあるいは汚染域がどのように広がるか、そういうことをいまやっておるわけです。なお、与えられた課題というのは、むしろそういうところへ空港ができると藻場をそこへ養成してもっとうまいこといくのじゃないかという話がありまして、ですからその点も、果たして本当に藻場ができるかどうかも検討課題なのです。むしろいま言われているのは、新しい藻場がそれによってできるのじゃないかということを言われております。
  143. 古寺宏

    ○古寺委員 私の見た範囲では、いろんな港湾計画あるいは埋め立てをやります際には、どうしても入り浜と申しますか非常に藻場の多いようなところを埋め立てをして建設工事が行われているように思うわけです。そういう面からいたしまして、今後この瀬戸内海の限られた自然環境の中で埋め立てをするということについて、藻場との関連について先生はどういうふうにお考えですか。
  144. 布施慎一郎

    布施参考人 その立場から言いますと、私は、藻場を破壊する、埋め立てというのは大概そうですから、まず原則として反対せざるを得ないわけです。藻場の立場からだけでも一つそういう結論が出ますけれども、なぎさ、海岸近くというのは、藻場もあり、もちろん砂のところもあり、どろのところもあり、いろんな環境のところがあるわけです。そういうことによって瀬戸内海環境の多様性があるわけですし、それによって瀬戸内海のたとえば魚の多様性が保持されて心のふるさとにもなっているわけですから、そういったことも含めて藻場が大事だということを叫び続けるわけです。
  145. 古寺宏

    ○古寺委員 先ほど村上先生から、現在の赤潮等に関する研究体制が非常に不十分であるというふうに承ったわけでございますが、今後この赤潮の問題を究明していくためにどういうような研究体制を先生の御構想としてお考えになっておられるか、また、そのプロジェクトチームをつくる場合のリーダーとしてはどういう方々が日本にはいらっしゃるのか、お考えを承りたいと思います。
  146. 村上彰男

    村上参考人 具体的に人名を挙げろとおっしゃっても、ちょっと私、とっさに出てきませんが、ただ、プロジェクトチームのつくり方、これは、現在の瀬戸内海の実情で申しますと、赤潮に対して非常に造詣の深い研究者が少なくとも数人はおられます。主として水産研究所とかあるいは水産試験場の方なんですが、そういう方々が先ほども申し上げましたように一つの目的に向かって——実は私、この目的は赤潮というよりもむしろ赤潮を含んだ富栄養というプロジェクトにすべきだという意見を持っておりますが、そういう方々、あるいは、現在赤潮に携わっておられなくても当然そういう御造詣の深い方がいらっしゃいます。それは、たとえば環境庁関係の方あるいは大学関係の方、富栄養に関しましては、そういった日本の大学、研究所、ひっくるめますと、私存じ上げているだけでも少なくとも三十人は下らないと思います。瀬戸内海だけのことに限りませんで、一般に閉鎖性水域富栄養化ということに関しますと、仮に、実現できるかどうかは別といたしまして、プロジェクトチームをつくるのであれば、いろいろな専門分野でそういう問題を研究できる方、それだけの力量を持たれた方は、私の存じ上げている限りでも三十人を下りません。したがって、それは、プロジェクトチームをつくることは可能であります。  それから、リーダーの点はちょっと御勘弁願いますが、日本には確かにそういうリーダーにふさわしいりっぱな先生が何人かはいらっしゃいます。ですから、実際にそういうことをやれるような基盤がありさえすればこれは決して不可能ではない、それからまた、そういうことの研究レベルは決して諸外国にひけをとるものではないというふうに自負しております。
  147. 古寺宏

    ○古寺委員 時間ですから終わります。  どうもありがとうございました。
  148. 久保等

  149. 受田新吉

    受田委員 私、村上先生お一人にしぼってお尋ねをさせていただきたいと思います。布施先生の分はお預けにさせていただきます。  私自身が瀬戸内海の島の出身で、終始世界の公園瀬戸内海で幼き日を明け暮れてきたわけです。日本の持つこの世界の宝を大事にするためのいわばわれわれ地域住民の大変大きな防波堤として、瀬戸内海環境保全のための臨時措置法が生まれたわけです。ところが、この措置法に対しまして、一昨年、瀬戸内海環境保全審議会が措置法の第三条の環境保全に関する基本計画の考え方について答申をしておるわけですが、村上先生、これは十分御理解をいただいておられるでしょうか。
  150. 村上彰男

    村上参考人 概念的には理解しております。個々の細かいことは私、余りよく存じません。
  151. 受田新吉

    受田委員 概念的に御理解をいただいてありがとうございます。そうしますと、概念的に見られて、さらにこれに織り込むべき問題点はないか。概念的で結構でございますが、大体これに一応の要望が尽くされておるとお考えでございましょうか。
  152. 村上彰男

    村上参考人 私、この臨時措置法の制定に当たりまして、こちらで参考意見を述べさせていただいたこともございますし、私は、私の申し上げたことが基本計画としては非常によく織り込まれているというふうに思っております。
  153. 受田新吉

    受田委員 私、先生のいろいろな御意見等もお話を要約された文書等で拝見をしておりまして、得がたいお人がおいでるという喜びを感じているわけです。いわゆるこの環境保全臨時措置法の後継の法律というものについて、先生御自身の御研究によってさらにこれに新しく盛り込んでいかなければならない具体的な御提言があるかどうかです。
  154. 村上彰男

    村上参考人 非常にむずかしい高度の御質問で、私、とっさにはちょっと答弁いたしかねますが、先ほど来私が申し上げました、さしあたっての緊急事態、つまり富栄養化をどう解消するかというもう少し具体化した基本計画、これが盛り込まれれば非常にありがたいと思います。
  155. 受田新吉

    受田委員 大変いい御意見を伺いました。われわれ瀬戸内海に住まっておる者から見ると、実は、瀬戸内海をいろいろと縮めて押し寄せてくる弊害、それは沿岸の重工業化ということです。その重工業化に伴う当然の措置として、埋め立て計画がこれまで、われわれから見たら本当に残念なほど瀬戸内海環境保全を無視してやられてきたわけです。そこで、この時点で、ここまで進んでこの環境保全にも影響のある埋め立てが大幅に行われてきた以上、新しい埋め立てはもう一切やめるという厳しいものにしてはどうか。環境保全に余り影響のない埋め立てというようなのと影響のある埋め立てというようなものと分け隔てをすると、これはなかなか限界がむずかしいので、現時点において埋め立てを計画されているものの完成と同時に、新しい埋め立て計画はもう一切やめてしまうという厳しいものを考えてはどうかという提言でございますが……。
  156. 村上彰男

    村上参考人 実は私、先ほど昭和十年時点の環境のことを申しました。しかし埋め立てに関する限り、当時と現在では大きな差がございます。したがいまして、現在いかに努力しても、昭和十年時点の環境を取り戻すということは、事埋め立てに関してはそれをひっくり返さない限り実際問題として不可能であります。したがいまして、私、先ほどから申し上げておりますように、瀬戸内海を今後どういうふうに使っていくのだということが、実は埋め立て問題にいたしましても今後どうするかというかぎを握るのでありまして、おっしゃるように埋め立ては全廃しろということが、私も観念的には賛成でございます、しかしながら、そういうことが許されるかどうかということは、これは私どもの分担範囲ではないのでありまして、今後埋め立てがさらに進めばどうなるかというデータを私は御提供申し上げたいというつもりでおります。
  157. 受田新吉

    受田委員 データを御提出していただくという御意向であります。  私は、この瀬戸内海環境保全で、もう一つ新しい形態を生み出す状態を考えなければならぬと思うのです。本四架橋が今度できてくる。そうすると、陸上から陸上へ橋で交通が頻繁になってくる。私の郷里、山口県大島という島には一昨年橋がかかりました。その橋によって大量の、一日五千台以上の自動車が入り込んで、特に日曜などはその大島のきれいな島の周辺の海岸が非常に汚されてくるのです。これは、橋がかかるとその美しかった島が、その周辺が汚染されるという、つまり、人間が、それぞれ美しい島へ寄る、そして物を捨ててくる。そういう環境を大事にするための人間教育をまずやらなければいかぬ。旅の恥はかき捨てという被害を私の島がいま受けているわけです。美しい島が橋ができたゆえに非常な新しい不安を招いておるという意味で、環境保全には人間教育を、保全のための大衆教育をやる。赤潮発生に対する防止策にいたしましても、監視体制が強化されておりましても、この資料を拝見しますとなお被害が増大しておるという現象などを見まして、いかに一人一人の人間が環境を大事にすることに強い心がけを持たなければならぬかということに最後は尽きるのじゃないかと思うのですが、いかがでしょうか。
  158. 村上彰男

    村上参考人 おっしゃるとおりでありまして、私も先ほどの意見開陳の締めくくりとして、特に不況下の現在では経費などの点で多くの困難がある、しかし、国民各自が環境を保全する決意のもとにそれぞれの立場で長く苦しい道を歩むことが唯一の解決策であるというふうに申し上げたと思いますが、全く先生の御意見に賛成でございます。
  159. 受田新吉

    受田委員 私の体験から、瀬戸内海は真帆、白帆が行き交うて、島かと見ればみさきなり、みさきかと見れば島なりという世界の公園であるこの喜び、この喜びを日本国民みんなが味わう、世界の人々にも味わっていただくというためには、これはそうした人間の心の中に植えつける大変なエネルギーを必要とするわけでございますが、同時に、私たちの周辺にも瀬戸内海漁業に対する愛着というものは大変なものがあるのです。タイとかハマチとかいうその周辺の漁場を、祖先伝来の漁場を守っていきたい、そして沿岸において養殖にまた新しい道を開きたい、そういう強い願いがあって、しかも日本的に見たならば瀬戸内漁業というものは、先生御自身の御研究を拝見しても非常に大きなウエートに置いていただいておるので、この問題は、つまり外海のようなあらしの中に行われる漁業ではなくて、内海の平和な美しい環境の中で、しかも非常においしい魚がとれるというこの漁場をさらに育成していくという配慮、このための農林水産政策の新しい展開というものがこれまた入ってくるということですね。そういうものを含めましてこの際、後継法にはひとつ雄大な計画を織り込んで、もう万全の後継法が樹立、制定されるようにしむけていきたいし、そのためには、いま先生御指摘されましたとおり、いま赤潮発生機構の究明プロジェクトの問題等がありましたが、そういうものを具体的に、つまりそういう偉い研究家が三十数名おられれば、それをどういうふうに生かして使うかという具体的な方法等をひとつ的確にわれわれが協力してつくり出していきたい、こう願います。  質問の時間が終わりましたので、失礼でございましたが、どうも……。
  160. 久保等

  161. 瀬崎博義

    瀬崎委員 参考人の両先生、御苦労さまです。また、昨年秋の委員派遣で瀬戸内海視察でお邪魔をいたしました一人として、村上先生に厚くお礼を申し上げたいと思うのです。  私も、もとは大阪湾のすぐそばに住んでおりましたし、いまは琵琶湖を抱えております滋賀県におりますので、瀬戸内海の問題には深い関心を抱いております。そこで、多少繰り返しも含むかもわかりませんが、瀬戸内海保全のために、その対策の有効性それから緊急性の順序からいって少なくもこういう手は打つべきである、そういう対策について、それぞれの専門立場からで結構ですから、いま一度まとめて御意見を承りたいと思うのです。  まず村上先生からお願いしたいと思います。
  162. 村上彰男

    村上参考人 私自身十分に整理しておりませんので、あるいは前後がひっくり返っているかもしれませんが、対策といたしまして、これは実行可能かどうかは別として、理屈から考えまして、やはり第一が富栄養化促進物質の負荷の削減、あるいは先ほどもお話に出ましたように、海中にある富栄養化の根源になるような物質の除去と申しますか、とにかく第一番に、やはり私は富栄養化の防止ということをしていただきたいと思います。  その次に、海域環境の保全にとって必要な瀬戸内海の、これはあえて私は環境容量という言葉を使わしていただきますが、観念的な、概念的なものとして受け取っていただいて結構ですが、環境容量を増進するためにやはり海域というものを保つ、つまり、たとえば浅海とか汀線をこれ以上なくさないということ、これも有効あるいは緊急な問題であろうと思います。  どうもまだ全般的に私、頭がまとまっておりませんので、とりあえず現状で特にお願いしたい二点を申し述べさせていただきました。
  163. 瀬崎博義

    瀬崎委員 布施先生にもお伺いしたいと思います。
  164. 布施慎一郎

    布施参考人 いまの御意見にプラスするような形になりますけれども埋め立ての問題です。これはいままで言われていますのは、さっき出ましたけれども、もう一つ急がなければならぬのは、すでに埋め立てを許可といいますか、着工途中のものも含めまして一遍見直しをする必要があるというふうに思います。
  165. 瀬崎博義

    瀬崎委員 主として赤潮対策が一つの焦点になっているわけでありますが、政府の計画によりますと、窒素の方は今後とも野放しで、燐についてはガイドラインをつくる程度の規制、これもすぐに実行することではないようでありますが、果たしてこういうことで赤潮対策と言えるのかどうか、多少とも赤潮に何らかの影響を与え得る可能性があるのかどうか、この点について、これは村上先生に伺いたいと思います。
  166. 村上彰男

    村上参考人 いずれにいたしましても、現状のままの富栄養物質汚染負荷の状態では赤潮は当分の間続く。たとえば昨年起きましたホルネリアの赤潮は、四十七年以来五年ぶりでございます。これは、私どもも含めまして、よもやまた四十七年の二の舞は起こらないだろうという非常な安易感があった。しかしながら、事実やはり負荷というものが続いている範囲では、当然五年目でありましてもあのようなものが起こっている。このことから見ましても、現状が続く限り赤潮というものは続いていくだろうということははっきり言えると思います。
  167. 瀬崎博義

    瀬崎委員 布施先生の先ほどからのお話では、藻場がずいぶんと減っている、しかもなお減る傾向にあるようなお話なんですが、瀬戸内海での漁獲量などを見ておりますと、種類は別にいたしまして、とにかく年々ふえている傾向にあるわけですが、その藻場の減少とか環境汚染との関係でこういう点をどう評価されているのか。現在は多少ふえておっても、いまの瀬戸内海の状態が今後続いた場合、将来の漁獲量はどういうことになるのであろうか、これはまず布施先生の方に伺ってみたいと思うのです。
  168. 布施慎一郎

    布施参考人 増加しているのは確かなんですけれども、南西海区水研の報告によりますと、最近増加傾向がとどまって横ばいになっているということがこれに出ているのですけれども、横ばいといいましても、それは上がってきたのを、点がこういうふうにばらついているものを結んでいますから、考え方によっては下降線をかくこともできるような、そういう線です。ですから、これはどういうふうに理解するかの問題はありましょうけれども、少なくとも横ばいになっているということ、いままでのように楽観できない、まだふえるのではないかというような可能性がひょっとするとなくなっているのじゃないかということが危ぶまれます。  今度は内容を見ますと、これはいつも言われていますように、値段の高い魚、タイとかサワラとかいうのは、とにかく高級魚が減る傾向があって、それから底びきの魚が、ややふえている傾向があるけれども、最近それも減る傾向があるということもあります。  それから、特にふえている中身はカタクチイワシとイカナゴです。これはどちらも一年物ですし、特にカタクチイワシは内海産ということではなくて、冬はみんな外へ出ちゃって、それから改めて入ってくるやつですから、そういった意味でも、カタクチイワシがふえているということに気をつけなければいけないと思いますが、これによってこの全漁獲量がふえているのだということです。これはちょっと専門立場になりませんで、これの聞きかじりです。
  169. 瀬崎博義

    瀬崎委員 いまの質問でありますが、今後の瀬戸内海での漁業の問題を考えるときに、やはり必要な対策として村上先生が大事だとお考えになっている点をひとつお聞きしたいと思うのです。
  170. 村上彰男

    村上参考人 何よりも大切なのは、漁業を営む漁場の保全であります。もうこれに尽きると思います。
  171. 瀬崎博義

    瀬崎委員 それから、政府の方の総量規制の計画でいきますと、いまのところはCODのみしか対象になっていないのでありますが、われわれはこれはきわめて不十分だと思いますし、特にその点では、各汚染物質の排出濃度と量をあわせて規制すること、特に有機汚濁規制の場合には総量規制対象BODSSにまで拡大する必要があるのではないか、このようにも考えるのですけれども、この点、村上先生の御意見、どうでしょう。
  172. 村上彰男

    村上参考人 そういう規制技術的にできるのかどうかという点は、私よく存じません。ただ、たとえばCODという項目を対象にしてやった場合に、それに付随して、まあ、BODとCODというのは実は海と淡水で使い分けているので、本質的には同じものを指しているはずですが、BODあるいはSSが減少していることも事実であります。
  173. 瀬崎博義

    瀬崎委員 最後に、先ほど布施先生の方からは、埋め立てについては、現在許可が出て着工中のものについても、もう一度見直す必要があるというお話がありましたが、そのほか瀬戸内海では、現在、本四架橋があるとかあるいはLPGの基地がつくられるとかというのがあるわけでありますが、そういう大規模な工場立地についても、特に環境汚染を伴うような鉄鋼とか石油、石油化学、電力、パルプ、こういったものについては相当厳しい立地規制なしには環境保全ができないんじゃないかと思うのですが、この点はいかがでしょうか。
  174. 布施慎一郎

    布施参考人 そのとおりです。ですから、いま私自身大阪空港の埋め立てによる問題について、そういう仕事を水産、漁業の立場からやっているわけですけれども、その中で特に問題になりますのは、人間の排出物、これは規制はできませんけれども対処することはいろいろできるわけです。対処しないのは、むしろ自治体なり政府なりの怠慢と言ってもいいと思うのです。工場の方は何を出すか、これはわかりませんから、そういった意味で、私一人じゃないですけれども、みなが苦心惨たんして、工場は何を出しているかわかっているのに、それを隠しているのを一生懸命探ってきたわけです。そういうことのないように、ですから、そういう物を建てるときにはよほどのはっきりした体制をとる必要があると思います。
  175. 瀬崎博義

    瀬崎委員 どうもありがとうございました。
  176. 久保等

    久保委員長 以上で参考人に対する質疑は終了いたしました。  この際、両参考人に一言ごあいさつを申し上げます。  本日は、御多用中のところ長時間にわたり貴重な御意見をお述べいただきまして、まことにありがとうございました。委員会代表いたしまして厚くお礼を申し上げます。どうもありがとうございました。  次回は、来る二十八日午前十時理事会、十時三十分より委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。     午後五時二分散会