運営者 Bitlet 姉妹サービス
使い方 FAQ このサイトについて | login

1978-03-22 第84回国会 衆議院 公害対策並びに環境保全特別委員会 第6号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和五十三年三月二十二日(水曜日)     午前十時三十二分開議  出席委員    委員長 久保  等君    理事 相沢 英之君 理事 登坂重次郎君    理事 林  義郎君 理事 島本 虎三君    理事 水田  稔君 理事 中井  洽君       大坪健一郎君    高村 坂彦君       戸沢 政方君    友納 武人君       西田  司君    羽生田 進君       橋本龍太郎君    福島 譲二君       藤本 孝雄君    岩垂寿喜男君       小川 仁一君    川本 敏美君       土井たか子君    有島 重武君       坂口  力君    東中 光雄君       工藤  晃君  出席国務大臣         国 務 大 臣         (環境庁長官) 山田 久就君  出席政府委員         環境庁長官官房         長       金子 太郎君         環境庁長官官房         審議官     石渡 鷹雄君         環境庁企画調整         局長      信澤  清君         環境庁企画調整         局環境保健部長 山本 宜正君         環境庁自然保護         局長      出原 孝夫君         環境庁大気保全         局長      橋本 道夫君         環境庁水質保全         局長      二瓶  博君  委員外出席者         特別委員会調査         室長      綿貫 敏行君     ————————————— 委員の異動 三月二十二日  辞任         補欠選任   萩原 幸雄君     大坪健一郎君   土井たか子君     小川 仁一君   馬場  昇君     川本 敏美君   竹内 勝彦君     有島 重武君 同日  辞任         補欠選任   大坪健一郎君     萩原 幸雄君   小川 仁一君     土井たか子君   川本 敏美君     馬場  昇君   有島 重武君     竹内 勝彦君     ————————————— 本日の会議に付した案件  公害健康被害補償法の一部を改正する法律案(  内閣提出第九号)      ————◇—————
  2. 久保等

    久保委員長 これより会議を開きます。  公害健康被害補償法の一部を改正する法律案を議題とし、審査を進めます。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。岩垂寿喜男君。
  3. 岩垂寿喜男

    岩垂委員 去る三月の十九日、環境庁警官隊約三百名を動員して、水俣病認定業務促進要求して交渉を行ってきた患者を排除いたしました。話し合いを一方的に打ち切って警察官を導入して強制執行をしたことが、患者皆さんはもちろんのこと国民の中にどんな反応を巻き起こしているかという点については、現場でこの状況をつぶさに目撃した記者の皆さん気持ちの込もった報道によって判断することができます。私は、これはきわめて遺憾な事態だと抗議せざるを得ません。特に、公害健康被害補償法改正案が審議されているさなかに、患者皆さんに対して文字どおり問答無用態度をとったことは暴挙としか言いようがありません。私は、心の痛みを持ちながら、ここでこの問題について若干の点を環境庁長官に直接お尋ねをいたしたいと思います。  第一点は、警察官出動の要請はいつ行われたか、そのとき長官はどこにおられたか、そしてそれにどう対処されたかということについて最初に承っておきたいと思います。
  4. 山田久就

    山田国務大臣 このような事態を招来したことは私自身もきわめて遺憾であった。この前も申し上げましたように、こういうようなことは私としては最も避けたい、そういう考えであっただけに、非常に残念に思っているような次第でございます。  私としては、話し合いそのものはひとつ喜んでやっていきたい。しかしながら、居座りというような、実力を背景にしたようなかっこうでの話し合い、これは患者自身の健康という点から見ても、あるいはその他の点からいってもそういう事態は避けるべきだ。ひとつそういう事態は解消して、そして正常な形での話し合い、そういうことを求めていたわけでございまするから、話し合いそのものをわれわれが打ち切ろう、そういう気持ちは毛頭持っておりません。ただ、ああいうような形でのそういうもの、ことにちょうど十九日にその他いろいろな集会の後で環境庁の中でまた集会をやるというような情報もあったものでございまするから、したがってそういう点にも対処しなければならないという状況が起きたことは非常に残念なことであったと考えます。  この問題について、万一の場合も考慮して対処したいということについては、いろいろな方面との相談等によりまして、一般的な問題として私の判断を求められたのは十八日の夕刻でございまして、私自身はその時刻には関係区議会議員の陳情を受けておったと思っております。翌日に結局そういうような事態が発生したこと、重ねてこの点については非常に残念に思っているわけでございまして、ただ、今後より一層こういう問題に対しては真剣に取り組んでやっていきたい、こういう私の心からの希望、この点を申し添えておきたいと思います。
  5. 岩垂寿喜男

    岩垂委員 環境庁長官警察官出動の最高の責任者だと私は思うのです。そのときに環境庁にもおられない、そうしてどこにおられるか、クラブの諸君が捜してもわからない、こういう状態の中で現実には環境庁歴史に汚点を残したと言われてもやむを得ないこうした事態が起こっているわけであります。率直に申し上げて、話し合いは拒否しないと言っておられましたけれども、長官は、患者皆さんと何回、時間にしてどのくらいお目にかかっているか、それをちょっと伺ってみたいと思います。
  6. 山田久就

    山田国務大臣 もともと話し合いそのものを拒否されておったのは私自身であったわけです。しかしながら、話し合いそのことが必要であるということでありました。しかしながら、それはいかなる意味においても正常な話し合いという、われわれが希望しているようなそういうかっこうではございませんでした。また、その後において事務当局といたしましては、正常な話し合いということを求めて幾たびか、この異常な形のもとではありましたけれども話を続けていって、結局そういう形での話し合いが持てるような情勢判断ではなかったので、結局それが実現し得なかったことは、私自身としても非常に残念に思っております。
  7. 岩垂寿喜男

    岩垂委員 環境庁長官がみずから患者諸君のところへ出かけていって、そして窓口を開いて、起こっている事態について理解と協力を求めていくというような積極的な姿勢こそが求められなければならぬと私は思うのであります。事務当局判断で、おれが出て行かぬ方がいいからしばらくそれではじっとしていよう、こういうことであっては、あそこで訴えようとしている人たち気持ちを想像し理解をすることが一体できるだろうかどうだろうか、私はここのところを尋ねたいと思うのです。つまり、あなたのそれまでの対応であなたの誠意が通じたと長官はお考えになっていらっしゃるかどうか。たった一回、時間にして三十分、そんな時間で、しかも、やりとり経過を聞いてみると、問われている課題についても答えられていない。いますぐ解決ができないとすれば、どういう手順でどのようにするから理解をしてほしいというような、積極的な誠意の示し方というものがあってしかるべきだと私は思うのです。にもかかわらず、きわめておざなりに、そしてとにかく排除をしていく、そういう形の気持ちの方が先行しているように思われてならない。そういうことで環境庁誠意患者皆さんに通じているかどうか、そういうふうにお考えになっていらっしゃるかどうか、その点を重ねてお尋ねしておきたいと思うのです。
  8. 山田久就

    山田国務大臣 これはいろいろなそれぞれの見方や判断があろうかと思います。いま御指摘のようなお話でございまするけれども、私といたしましては、自分なりの考え誠意は持っておるつもりであります。ただ、しかしながら、正常な形での話し合い、共通の基盤で静かに話し合っていく、そういう情勢が可能でないならば、そして依然として根本問題についての抜本的な問題の追及、その受諾というものをあくまで前提として固執されるというような状況のもとで、本来もっと具体的な面であるところの認定促進チッソの問題について話し合う、これは相当具体的にも環境庁自身だけでは対応し切れない問題でありますし、同時にまた、時間の経過を要する問題でありますが、そういうことについて、中に入らないというような状況のもとにおいては、残念ながら正常な話し合いに入り得る環境というものが見出し得ない、こう判断するのはやむを得なかったと私は考えております。
  9. 岩垂寿喜男

    岩垂委員 正常な形ではないと言われておりますけれども、皆さん話し合いの継続を求めていたと私は思うのです。正常な形でないということを先入観できめつけてしまって、いわば軍門に下って話しに来いというような態度ではこの問題の解決にならぬことは、もう社会の常識がいままでの歴史を通して検証していると私は思うのです。  そこで、伺っておきますが、この前の委員会で同僚の島本委員が、警察官を導入しないようにということを強く求めました。島本さんの気持ち理解をしていますというようなやりとりで、意のあるところについてそれを受けとめたというふうに私は理解しました。しかし私の理解が大変甘かったことも感ずるわけですが、最低限、たとえば島本先生環境庁気持ちというものを連絡するとか、あるいはこの問題について長い間努力してきました馬場委員に対して連絡をするとかというようなことがなぜとられなかったのか。これらの問題についてどのようにお感じであるか、お答えを願いたいと思います。
  10. 山田久就

    山田国務大臣 いろいろこの問題を基本的に御心配いただいておるそのお気持ちはいやというほどわかりますし、また、私どもはそれなりの気持ちを了解しながら対処していったつもりでございます。しかしながら、この種のことは最も避けたい、その基本的な態度には変わりない、これも申し上げたつもりでございます。ただ、その後の情勢の中において、私はやはり一度正常な形に戻すということをしなければ本当の心の通った話し合い出発点を確保できないという判断に立たざるを得なかった、私はこの点を非常に残念なことだと思っております。
  11. 岩垂寿喜男

    岩垂委員 彼らがなぜ座り込みをせざるを得なかったか、そしてその要求は一体何であったかということについては御理解なすっておられると思いますけれども、もし先ほどから私が言っているように、それから長官がおっしゃっておられるように、すぐ実現できないとすれば、その手順を示して、患者皆さんにも、また国民皆さんにもわかってもらえるような努力を行うべきではなかったか、この点を、結果論でありますけれども長官はいまどのようにお感じになっていらっしゃるか、率直な気持ちお尋ねしたいと思います。
  12. 山田久就

    山田国務大臣 繰り返すようなことで恐縮でございますけれども、私は、心の通った話し合いは正常な環境のもとにおいてのみ初めてなし得ると思っております。それまでの手順とかいろいろな問題についての話し合いはあったけれども、結局それが実らなかった。私は、この事態出発点として、本当意味での実りある話し合いに持っていくように全力を尽くしたい、このように考えております。
  13. 岩垂寿喜男

    岩垂委員 いま私はここに、昨年の六月十四日の川本さんのいわゆる傷害事件についての控訴審判決寺尾裁判長判決文の中で述べられている言葉を引用したいと思うのです。前文は省略いたしますが、「さて、水俣病の前に水俣病はないといわれ、その原因究明に年月を要した水俣病であるが、はたしてこれを防ぐ手だてはなかったであろうか。先に「水俣病究明の過程」で指摘した事項をみるとき、患者が続発し、胎児性患者まであらわれている状況のもとで、当初奇病といわれた段階から一五年間も水銀廃液が排出されている状態を放置しておかなければならない理由は見出せない。熊大研究班による地道にして科学的な原因究明が行われた経過の中で、熊本警察本部熊本地方検察庁検察官もその気がありさえすれば、水産資源保護法、同法等基ずいて定められた熊本漁業調整規則工場排水等の規制に関する法律漁業法食品衛生法等弁護人が引用する各種の取締法令を発動することによって、加害者を処罰するとともに被害の拡大を防止することができたであろうと考えられるのに、何らそのような措置に出た事績がみられないのは、まことに残念であり、行政、検察の怠慢として非難されてもやむを得ないし、この意味において、国、県は水俣病に対し一半の責任があるといっても過言ではない。のみならず、チッソ水銀廃液の放流の原因となったアセトアルデヒドの製造は国家によって容認されていたのであるから、被害民立場からすれば、チッソと異なる意味国家もまた加害者であるといえよう。」というふうに指摘をしているわけであります。  そして、この事件公訴棄却になった経過の中で、いわゆる自主交渉という問題に触れて、患者と企業を対等の立場判断をするということは片手落ちであるということさえ明言をしているわけでございます。この判決については、国は上告を行っていますが、いま私が読み上げた事実関係として争う余地のないこの部分については、長官は恐らく同感だと思いますけれども、この点を念のためにお尋ねをしておきたいと思います。
  14. 山田久就

    山田国務大臣 非常に考えさせられる点、また考えなければならぬ点、これは全般の問題としてよく頭に踏まえて対策というものを考えていかなければならぬ、このように考えております。
  15. 岩垂寿喜男

    岩垂委員 私は、いま争う余地のない事実関係についての環境庁長官認識お尋ねしているのであります。御答弁をはぐらかさないでいただきたいと思います。
  16. 山田久就

    山田国務大臣 はぐらかすつもりはございませんが、そういう点については十分考えさせられ、そのことを考慮に入れて対処していかねばならない、こういう認識に立っております。
  17. 岩垂寿喜男

    岩垂委員 そのことを考慮に入れて対処するという意味は、この考え方と全く同じ立場に立って考慮していくというふうに理解してよろしゅうございますね。
  18. 山田久就

    山田国務大臣 御案内のごとく、国もこれの立場をとっているわけでございまするので、いまこの点に積極的に触れませんけれども、先ほど申し上げましたように、十分その点を考え、その認識考慮に入れてやっていかなければならぬ、そういう認識に立っているということでございます。
  19. 岩垂寿喜男

    岩垂委員 国も私がいま読み上げた認識に立っているのでというふうにおっしゃいました。そのように理解をいたします。  この問題については、二月二十一日に内閣委員会で、水俣病研究センター、つまり環境庁設置法の一部を改正する法律案やりとりの中で、環境庁長官が、国の水俣病に対する「政治的な責任対応のおくれに対する責任患者やすでに亡くなってしまった人々に対するいわば行政上の反省というものが必要ではないだろうか、」という私の質問に対して、「これまでの非常に時間を要した過去の点についての責任は、われわれも非常にそういう点を痛感していることは、さっきもお話し申し上げたとおりでございます。そういう反省に立って今後のことを考えていきたい、そういうことでございまして、責任の点は、いま申し上げたように、これまでのおくれ等は痛感いたしておるつもりでございます。」というふうに答弁をなすっておられます。つまり、二月二十一日の内閣委員会長官自身がお述べになったこの点については、十分その点での責任を痛感し、その立場に立って遺憾のないよう対処するというお言葉のとおりにこれからも進めていきたいというふうに理解をしてよろしゅうございますか。
  20. 山田久就

    山田国務大臣 いま御指摘のような、私がそういう認識理解、そういうようなものを踏まえて対処してまいりたいという趣旨を持っているわけでございます。
  21. 岩垂寿喜男

    岩垂委員 これももう御存じのとおりですが、昭和四十九年十月二十四日、いわゆる不作為審査請求に対する裁決に当たっての環境庁長官の談話の中に、周知のとおり、広範かつ甚大な被害を生ぜしめている水俣病問題については、水俣病に対する偏見、差別などが患者認定申請を困難ならしめてきたであろうことは追認できるところであり、また国及び県の対応策が必ずしも十分ではなかったことについて深く遺憾の意を表明するものである、としています。しかし、現在に至るもなおこの不作為違法状態というものは解消されていないと私は考えます。長官は、この現実をどう考えておられるのか、そしてどのように具体的に対処なさるおつもりなのか、この点の御答弁を煩わしておきたいと思います。
  22. 山田久就

    山田国務大臣 この認定促進の件につきましては、御承知のように昨年十月以来その認定促進についての手段を講じ、これを開始していることは御承知のとおりでございます。むろん、なお少しでもこの認定促進するという立場についての努力は、私といたしましてもいろいろ考えてやっていきたいつもりでおります。事務的にもいろいろな点は考えておりまするけれども、いろいろ他の方面との関連もある問題でもございまするので、ここでいま具体的な方法についてこうだ、ああだということは、私ども申し上げることをしばらく差し控えさせていただきたいと考えております。ただ、そういう意味では私は、不作為というものがすでに解消されて前進の段階に入っている、こういうふうに理解して差し支えないのじゃないか、こう思っております。
  23. 岩垂寿喜男

    岩垂委員 結論が出ないのに、これから対応のことを各方面相談をして決めていこうというのに、不作為状態が解消されたという認定をなさるのは一方的じゃございませんか。現実にたとえば未処分数、とりわけその中における保留者や、あるいはわからないと言われる患者の処理の問題などについてそのまま残っているじゃありませんか。これを解決するのにどれくらいかかるかということについても、患者皆さんがみんな心配しているのですよ。そして一つも前進してないじゃないですか。こういう事態をさておいて、解消しつつある、あるいは解消した、こういう言葉づかいというのは、言葉の使い方をも含めて、環境庁長官がどんなことが一体問われているのかということを私はもう一遍尋ねたくなるのです。皆さん、そうでしょう。解消したなどというしろものではない、私はこういうふうに思うのです。  そこで、もう一遍、私はその点についてお尋ねをしたいと思うのです。一体どんなテンポで、いつごろそういう方向を明らかになさるつもりなんですか、いま検討中、いま検討中とおっしゃっているのですけれども。その善意のある答弁をお聞かせください。私は、長官認識の問題を尋ねたいのです。
  24. 山田久就

    山田国務大臣 認定促進の問題は、医師の数その他の点からいって、やはり一つの枠と現実的な限界もある、このことはすでによく御承知のところであろうと思います。したがって、認定促進という段階になりましても、恐らくまだやるべきこと、なさねばならぬこと、私はいろいろあると思います。しかしながら、同時にまた、限界点のあるということも、これは事実でございます。そのことを考えながらじみちにこの問題には対処をしていくほかない、これが客観的な情勢じゃないかと、残念ながら私はこういうふうに考えております。
  25. 岩垂寿喜男

    岩垂委員 どうも、何をなさろうとしているのか、どのようにしようとしているのかという環境庁長官決意がなければ、これはどこまで行ってもどうにもならぬですよ。そういう形では、患者皆さんに正常な事態に戻れとか、そうしたら会ってあげるというふうな態度で一体環境行政が勤まるのだろうかと私は言いたくなるのです。大変失礼な言い方だけれども。だから、どういう気持ちで、あるいはどういう方針で問題の解決に当たろうとなさっておられるのか。そして患者の不満や、私に言わせれば違法状態の解消のためにどうしようとしているのかということのリーダーシップをおとりになるのはあなたじゃないですか。だから、そのことを明らかにし、しかも、それを大体いつごろまでにどういう方向でというふうなことをお示しください、私はこう言っているのです。そのことをもう一遍、くどいようですけれどもお尋ねをしておきたいと思うのです。
  26. 山田久就

    山田国務大臣 先ほども申し上げましたように、この認定促進あるいはチッソ関係の問題を含めまして、これは環境庁限りで対応し得る問題ではありません。したがいまして、このことについてはいろいろな相談を進めておりますけれども、まだその具体的な方法を言う段階になってない。このことは立場を変えてみれば御理解いただける点ではないか、こう私は思うわけでございます。
  27. 岩垂寿喜男

    岩垂委員 結論を出すというのはいつごろまでに、こう聞いているのです。
  28. 山田久就

    山田国務大臣 できる限り早い時期にという以外に、いま時期を指定して私は申し上げかねると思っております。
  29. 岩垂寿喜男

    岩垂委員 つまり、私が言いたいのは、水俣病認定業務促進を求めて患者皆さん環境庁に非常に強く要求を詰めてきたけれども、どうにもならぬ、何とかしてほしいものだ、何やっているんだという気持ちを込めてそういう行動をとったわけですよ。それに対して、できるだけ早い機会にというふうな形で、むろんいろいろむずかしいことは私もわかりますよ、わかりますが、そういうあいまいな形で、実はあちこちからアドバルーンが上がっているのです。たとえば水俣病の準認定灰色認定といいましょうか、こういうようなアドバルーンが上がってみたり。これだって法律事項でしょう。この法律を審議しているさなかにそういうことが何かアドバルーンみたいに打ち上げられている、こういう状態のことについて、国民気持ちというものは、あるいは患者皆さん気持ちというものはますます高ぶるのですよ。そういうことはない、つまり、準認定とか灰色認定というようなことについては環境庁考えていないとはっきり答えられますか。
  30. 山田久就

    山田国務大臣 対応すべき考え得る手段方法というのはいろいろあろうかと思います。いま責任ある立場でそのことを申し上げ得る段階ではない、お尋ねになってもこう申し上げるほかない。この点は御理解いただきたいと思います。
  31. 岩垂寿喜男

    岩垂委員 準認定とか灰色認定というのは環境庁としてとるべき立場でない、そういう見解であるかどうかということだけはお尋ねしておきたいと思います。
  32. 山田久就

    山田国務大臣 環境庁立場で言うならば、いま御指摘、この準認定ということがどういうことを意味するのかわかりませんけれども、そういうようなことはわれわれの考案の中にはございません。
  33. 岩垂寿喜男

    岩垂委員 言うまでもないことですけれども、昭和四十九年のいわゆる環境庁裁決というものはこれからも尊重をしていくべきものだというふうに考えますが、その点はそのように理解してよろしゅうございますか。
  34. 山田久就

    山田国務大臣 その方向で今日も進んでおります。
  35. 岩垂寿喜男

    岩垂委員 進んでおりますというのは現状認識ではないのですね。進めるか進めないかということですから、その点は言うまでもないのですけれども、その方針は変えないというふうに念のために承っておきたいと思います。
  36. 山田久就

    山田国務大臣 そのとおりでございます。
  37. 岩垂寿喜男

    岩垂委員 私は、大変歯がゆい気持ちがするのです。何かやりとりをしていても、私もわからぬということは恐らく国民もわからぬと私は思うのです。ましていわんや患者皆さんも、環境庁長官決意、とりわけ警察官導入を含めてのそれらの経過というものについて、わからないという気持ちを持っていらっしゃると思うのです。  率直に申し上げます。発足以来七年、これまで環境庁国民に開かれた役所として全国各地公害についてのさまざまな要求を受けとめてこれを行政に反映させようと努力し、国民の信頼をかち取ろうとしてきたと私はあえて信じたいと思います。私はかねてから、環境行政というのは人の健康や生命を守ると同時に、かけがえのない国土と人類の未来に対する豊かな創造力というものを政治の中にどのようにして生かしていくかということのために存在すべきものだと要請をしてまいりました。しかし、一昨日のあの事態というのは、水俣病公害の原点だと強調なすってこられた環境庁自身立場と姿勢がどんなにもろいものであり、偽りであるかということを内外に示す結果になったと私は指摘せざるを得ないのです。ある友人は、環境庁はなくなったと言った人もいます。また、ある知人は、患者不在の環境行政とつぶやいていましたけれども、その言葉はまさにこの事態を言い得ていると私は思います。  環境庁長官は、この警察官導入によって失われた環境庁に対する国民の信頼、それを回復するためにとのような努力を払われようとなさっておられるか、これはもう時間もたっておりますので、恐らく環境庁長官の胸の中にもさまざまな思いが去来しておると思います。その点のところを率直に承っておきたいと私は思うのです。
  38. 山田久就

    山田国務大臣 いま御指摘がございましたように、環境庁の任務、責任、これは一貫した立場があり、今後においてもこれにのっとってできる限りの努力をしてまいる所存でございます。  いま一昨日来の出来事についてのお話がございましたけれども、つまり、繰り返して申すことで恐縮でございますけれども、実力で居座るというようなことじゃない、正常な形での話し合い、これを本当に両者の間の話し合いという面では出発点として、問題の解決のために誠心誠意努力してまいりたい所存でございます。
  39. 岩垂寿喜男

    岩垂委員 開かれた役所とかソフトな行政だとか、そして住民や被害者の気持ちを率直に受けとめ得る、そういう役所としての機能と体制、このことをきちんとさせていく、そういうふうに理解をしてよろしょうございますか。
  40. 山田久就

    山田国務大臣 そのとおりでございます。
  41. 岩垂寿喜男

    岩垂委員 私は、今度の事件というのは、あえて事件と言わせていただきますけれども、一般的な庁舎管理というような問題ではないと思うのです。特に、女性の重症患者が四人までも全身にけいれんを起こして倒れて仲間に介抱されるという事態を目の当たりにしながら、なおかつ強制執行を続けさせようとした責任者のヒューマニズムを尋ねざるを得ません。私は、患者の救済を欠落させた環境庁のあり方というものを追及し、本当に心から反省を求めたいと思うのです。みんなが営々として努力して策き上げてきた歴史というものを突き崩すことになりかねない、そういう事態についての反省を強く求めたい気持ちでいっぱいであります。  その立場から要請をいたしますが、きのう同僚の馬場議員から連絡がありまして、環境庁患者皆さんとの交渉が行われてきて、それぞれが提示した案をたたき台として話し合いを続けることになっていたということを経過として伺いました。ですから、このことを公式に確認をし、私は早ければ早いほどいいと思います。できればきょうにでも患者皆さん長官を交えて話し合いを行っていただきたい、このように要請をいたしますが、長官誠意のある御回答を煩わしたいと思います。
  42. 山田久就

    山田国務大臣 馬場委員の大変な御心配、また御誠意、われわれもわかっているつもりであります。結局あのようなことではいけない、普通の話し合いの中でこれを取り上げる、このことはちっともわれわれは排除、拒否しているわけじゃございません。これは繰り返し申し上げている次第でございます。いろいろ御指摘もございましたけれども、われわれは実力による居座りのような圧力、こういうものをやめてほしいということ以外には、われわれの誠意方針にちっとも変わりがございません。そういうことで今後ひとつやっていきたい。ただし、いまのような状況では、正常な中における実りある話し合いを保障するような雰囲気じゃない、これが一般の判断となるんじゃないか、こう考えております。
  43. 岩垂寿喜男

    岩垂委員 長官は外交官の上がりですから、上がりと言っては申しわけない、御出身ですから、形式を考えられるという気持ちはわからぬじゃございません。しかし、環境行政というのは形式ではなくて、私は形式ではなくてとはあえて言いません、形式よりもと言いましょう、中身だと思うのです。お互いに通じ合うものがあれば、立場は違っても、それが食い違っていても必ず人間の誠意として、人間の想像力として通じ合うものがあるはずです。ですから、会わない口実、どういう状態にならなければ会わないというやり方が先に立つのではなしに、話し合いの継続があるわけですから、その継続の延長線上でできるだけ速やかに長官を交えて会う、その中であなたのいままで申された気持ちを率直に訴えたらどうですか、理解を求めたらどうなんですか。だから、この事態は両方が会うことが早ければ早いほどよい、私はそのことを言っているのです。その意味で、できるだけ速やかにいままでの話し合いの延長線上で長官を交えて会うというふうに、あえて私は、重ねて要請をいたしますが、御回答をいただきたいと思います。
  44. 山田久就

    山田国務大臣 私は、正常な形での話し合い、これが最も希望することだということは繰り返し申し上げているところでございます。したがって、そういうことが保障される形において速やかにわれわれとの話し合いが実現することをわれわれ自身も望んでいるところであります。
  45. 岩垂寿喜男

    岩垂委員 正常とおっしゃいますけれども、いま座っているわけじゃないのです。排除されたままになっているのです。だから長官自身の方から呼びかけられて、きょうがだめならあした、一遍会おうじゃないか、話をしようじゃないか、あなたの決意いかんにかかっているじゃないですか。損われた信頼を回復する手だてというものは、私はそれしかないと思うのです。そういうふうにおやりになりませんか。そういうおつもりはございませんか。くどいようですけれども、あなたの決意にかかっている。あなたの方から、いろいろあったけれども、会おうじゃないかというふうに呼びかけるおつもりはございませんか。
  46. 山田久就

    山田国務大臣 私どもの立場は繰り返し申しているようなところでございます。問題は、お互いの歩み寄りというか、相互の理解、これが私はやはり何としても必要だと思います。したがって、理解された形においてそういう事態の来ることを心から念じ、またそのことについても努めたいと思います。
  47. 岩垂寿喜男

    岩垂委員 私かお尋ねしているのは、環境庁長官環境行政の最高責任者として、ああいうふうに起こってきた事態に対する反省ということをさっきおっしゃいました。遺憾なことだったと言いました。しかしおれたちにもこういうことがあったんだということを述べて一向差し支えないと私は思うのです。だから、会おうじゃないかと長官の方から声をかけるということは、いまあなたの決意でできることなんですよ。そのことを私は求めているのです。なぜかと言えば、私は会うことだけのことを言っているんじゃないのです。先ほどからくどく申し上げてきた、環境庁行政に対する国民の信頼という角度から見た 会うという一つの事柄が、この事態によって引き起こされたいろいろなものを、完全には修復できない、しかしある部分の問題について私は修復ができるだろう、このように思うから、あなたに要請をしているのです。くどいようですが、私はもう一遍あなたの決断を求めたいと思うのです。恐縮ですが、お答えをいただきたいと思います。
  48. 山田久就

    山田国務大臣 いろいろ御心配いただいて感謝にたえません。ただ、問題は、私の決断ということだけで果たしてそういう実りある状態ができるかどうか、そういう点もございますけれども、せっかくのお申し出でございますので、われわれとしても、いまのような角度で検討させていただきたいと思います。
  49. 岩垂寿喜男

    岩垂委員 なぜそのようなことが、あなたの決断にかかっている事柄が言えないのでしょうか。  いま同僚が私のところに読売新聞の「編集手帳」を持ってきてくれました。「こんな疑問を方々で聞いた。環境庁という役所は一体何のために存在するのだろう。水俣病患者を追い出すしか能がないなら、そんな役所を専任大臣まで置いて存続させるのはムダではないか。——当然の疑問だ」という形を含めて述べられているこの言葉、これは私は、患者や一部の人たちだけの気持ちではない、国民の率直な気持ちを表明していると思うのです。だから、私の方から呼びかける、会うチャンスをつくる、そしていままでの経過について説明をし、理解を求める、同時に患者皆さんが求めているものについて精いっぱいの誠意を示して対応する、そういうふうに御答弁は願えませんか、どうしても。
  50. 山田久就

    山田国務大臣 私の方からわれわれの努力一つとして、いま御指摘のようなこと、それは呼びかけたい気持ち、こういうことも私の中にあります。それが実りある結果になるという点、これについてはいろいろなことがあろうかと思います。自分のそういう希望を知っていただきたい。そういうことを考えながら、ひとつ十分この問題については検討、対処してみたいと考えております。
  51. 岩垂寿喜男

    岩垂委員 非常に残念です。十九日のことですから、おととい、きのうとあって、きょうです。だから、それがもたらしているさまざまな影響を環境庁長官が率直に受けとめられて、問題の解決というか、そういうものを前進させていくための手だてを環境庁という立場で、あるいは長官というお立場でイニシアチブをとっていくということを私は心から求めてきたのです。にもかかわらず、依然としてあちこちと相談をしながらというふうなことになっている。積極的に呼びかけるという姿勢がない、非常に残念です。あえて言うと、それが環境行政限界なのかということを私は疑わざるを得ない、そんな感じです。つまり、大衆の中に飛び込んでいく、国民被害者の皆さん気持ちというものを尊重するために積極的に皆さんの中に入り込んでいって、できること、できないこと、それはいろいろあるでしょう、そのことをなぜ理解を求めようとなさらないのか。逃げばかりじゃだめなんです。言いわけばかりでもだめなんです。そういう意味で、私はぜひひとつ環境庁長官の側から呼びかけて、話の延長で、話をしようじゃないかというふうにしていただきたいものだと重ねてお願いを申し上げ、そしてもう聞きません。最後に一言だけ、あなたの御答弁をいただきたいと思います。
  52. 山田久就

    山田国務大臣 いま御指摘のように、われわれとしてはできること、できないこともございましょう、ただ率直にひとつイニシアチブをとってやってみる気持ちはないか——私は、実りある結果というものを求めてひとつイニシアチブをとってやる、そういう気持ちは無論持っておる、このことを御理解をいただきたいと思います。
  53. 岩垂寿喜男

    岩垂委員 時間が経過しますので、この問題はこのくらいにしておきます。  次に、一昨日、三月二十日に発表されました二酸化窒素にかかわる判定条件等専門委員会の報告についてお尋ねをいたしたいと思います。  NO2の達成率というのは五十二年度で九%前後だと言われています。これは正しいかどうか。どう判断していらっしゃるかということを含め、四十八年の五月八日に告示されたNO2の環境基準、つまり五年以内にというあの達成目標というのは達成されないことは明白となっています。環境基準を決めた学者の意見はともかくとして、このとき、つまり決めたときの四十八年の環境庁判断の基礎はどんなものであったか、そしていまそれが達成されないことについてのいわば政治的な責任というものをどのようにお考えになっていらっしゃるか、お尋ねをしておきたいと思います。
  54. 橋本道夫

    橋本(道)政府委員 いま先生の最初に御指摘のございました達成状況のところで見てみますと、五年地域では〇・〇二の環境基準が一六・二%しか達成されていません。八年地域ではゼロでございます。それから、〇・〇四という中間目標値は、五年地域では六九・七%、八年地域では一八・五%、全体としまして一〇・四%のところが環境基準を達成し、五一・四%のところが中間目標を達成しておるというのが五十一年度の測定の結果でございます。  先生の御指摘にございました四十八年の答申といいますものは、環境基準を問うということにつきましての専門委員会の答申でございました。その時点で、非常に不確かさの大きいデータの中で大きな決断で決められたものでございますが、先生のいま厳しく御指摘のございました、行政は一体そのときどういうぐあいに考えておったのかというところの問題がございます。学者の先生としては、動物実験等非常に乏しい疫学調査等の中からあれだけのものを、大きな安全性を見込んで割り切られた、これは学者の先生方としてもっともなことだったと思いますが、行政判断ということで、私は、いまこの問題に直面いたしまして、現在の大気保全局長としてもとの行政を批判するという気持ちではございませんが、環境基準を決めたときに一体これがどの程度できるのかということについてのかなりの予測を言うことは、やはり責任があるのではないか、そういうぐあいに思います。もちろん、その当時何%カットしなければならないかということは出しておりました。これはカットする所要量でございます。しかし、それがどの程度できるだろうかということにつきまして当時明確に物を言っていなかったということは、やはりその当時の技術の進展が非常に乏しかった、あるいは世界のどこにもそういう例がなかったということで無理からぬ点があるかと思いますが、現在〇・〇二をめぐる論争があらゆる分野で起こっており、また別々の角度から行政に対する不信、批判があるという中に立っていますと、私は、環境庁の大気保全局長としてはやはりそのような判断を、責任を持った見通しをすべきであるということを思っております。そういうことで、この次の問題のときにはそういうことをはっきりいたしたいと思います。環境基準は、できるかできないかといって決めるべき基準ではございません。あくまでも維持されることが望ましい基準でございますから、できるかできないかといいますのは環境基準を設定する必要条件の一つにもなりません。全く健康保護の問題であります。しかし、行政というのはあくまでもこれに具体的に対応するという責任がございますから、それをできるだけはっきりさす。だんだん技術の様相か明らかになってまいりまして、私どもは五十一年の環境白書で初めてこのことについて触れております。これは非常に批判があると思いましたがやはりどう見ても、これだけの技術進歩から見るとこういう状態であるということを申したわけでございます。そういう点で、その時点での行政判断に最大の努力をする、国民の健康を絶対に安全に守るという意欲に燃えて決断をして必死でやったことはこれは間違いございませんが、やはり手がたい行政という角度では、どのような見通しを持つのかということを、やるべきだというものとはまた別に示すべきであるというように私は感じます。そのようなことは、今度環境基準の問題の九条三項の後段の検討をいたします段におきまして、私どもは十分にその点の行政としての責任を果たしていきたい、そういうふうに考えるわけでございます。  また、いま一点のところは、この前の基準で非常に大きな安全性が含まれておるということにつきまして、かなり説明はいたしましたが、十分浸透はしていなかった。私どもはこの点についてやはり反省をいたしたい、こういうように思いますし、また自治体の方はやはり環境庁告示として示された〇・〇二ということに基づいてやられるわけでございまして、非常な御苦労を産業界との間でやられて、相当な進歩を見られたことは事実でございますが、苦しい状態か非常に生じていただろうと思います。また、産業界の方は厳しい厳しいという巻き返しの議論もあります。確かに、膨大な仕事をするにしては少し確かさが乏しいのではないかという批判があることは否定できない、私はこういうぐあいに思います。そういう点につきまして、今度九条三項の後段の判断をいたして国民の健康を絶対に守るということを明らかにするところにおきましては、物の考え方だけでなく、行政としての前提条件等もすべて明らかにした上で判断を下したい、こういうぐあいに思っております。
  55. 岩垂寿喜男

    岩垂委員 九条三項のことはまた後ほど伺います。  今度の判定条件というのは、環境基準を見直すために検討されたものなのかどうか。昨年の三月二十八日に当時の石原環境庁長官検討を諮問しているけれども、新聞報道などによればそのためにという前提があるわけですが、そのときから環境基準を緩める方針転換か行われたと考えてよろしいかどうか、この点を承っておきたいと思います。
  56. 橋本道夫

    橋本(道)政府委員 第一点の、見直すためであるかということでございますが、この点は非常に慎重に対処をいたしたわけでございます。  九条三項では二つの段がございまして、一つが適切な科学的な検討を加えるというものでございます。それから第二段が必要な改定を行うという段階でございます。そういう点で、環境基準は、できないから緩めるとか、圧力がかかるから緩めるというような性質では毛頭ない。そのことをやらなかったということは、いままで環境基準を守るということを私は言い張ってまいりまして、その点はひとつ御理解いただけるのではないかと思います。  ただ、非常に不確かな段階で割り切って決めておるということでございまして、やはりこの五年間に相当新しい科学的な知見が出まして、しかもかなり確かになってきておるということ、そういうものを踏まえてやはり科学的な検討が必要だ、この一点にしぼって今回の諮問は判断条件等について問うということにしておるわけでございます。緩めるかどうかということは本質的な議論では全くございません。できないポイントがあるということは明確にいたしておりましたが、緩めるというような前提条件で、先見的な立場で今回の検討をお願いしたわけでは毛頭ございません。
  57. 岩垂寿喜男

    岩垂委員 このところ環境行政がいわば後退に次ぐ後退を続けているということについては、もう私が例示する必要はないと思います。そこには産業界の強い圧力があることも事実である。さらには産構審の答申、通産省を初めとする政府部内の突き上げ等々が公然化してきました。NOxに対する環境庁の姿勢が、これらの巻き返しというか圧力と無縁ではないと見られることはやむを得ないと私は思うのです。この点について、先ほど橋本さんは一定の回答をいたしましたが、環境庁はこれらの問題、これらの見方に対してどのように対応なさるおつもりか、はっきりと示していただきたいと思います。
  58. 橋本道夫

    橋本(道)政府委員 いま先生の御指摘のございましたように、完全に第三者的にながめた場合には、そのような解釈をする人がほとんどであろうということは、残念ながら私もそう思います。  これに対して、一体どういうぐあいに対応するかということでございますが、まず第一に、今回いただきました判定条件と指針につきましてできるだけ多くの方によく説明をするということが大事であると思います。それとともに、その環境基準の本質的な性格ということを、九条一項あるいは九条三項あるいは九条四項ということに沿いまして、これはいろいろなむずかしいことがあろうと思いますが、徹底的にお話をするということが基本であると思います。そしていろいろ巻き返しという議論がされますが、もう一つは、日本の窒素酸化物対策は世界で初めてやられているものである、どこの経験もない、それを日本が必死になってやってまいりまして、現在到達しております自動車の排気ガスの技術あるいは固定発生源の脱硝技術は世界の最先端でございます。アメリカはもう日本のものを習いに来ているわけでございます。ですから、そのようなことにつきましてもやはり認識をしていただいて、私どもはマキシマムな努力はしてきたと思います。批判はあると思います。批判はあると思いますが、マキシマムな努力はして、世界のほかの国が到達していないところにきていることは事実でございます。そういうものを踏まえまして、これからの対応の中で、専門委員会の答申の中にも指摘しておりますが、大気汚染の非特異的な健康影響を防ぐというのが基本でございます。NO2だけの特別な影響があればこれは話は別でございます。非常に高濃度になるとこれは起こります。現在日本にそのような高濃度はありません。そういう点で、非特異的な健康被害を防ぐということの観点に立って、その中でNOxをどういうぐあいに位置づけるかということも整理をしながら、またどのような形で進めていこうと考えているかということを十分お話をして、その上で環境庁としての方針を決めていくということに最大の努力を注ぎたい。特に、地方自治体の方あるいは住民の方あるいは産業界、いろいろ立場は違うでしょうが、この点の最大の努力をいたしてまいりたいと思います。
  59. 岩垂寿喜男

    岩垂委員 四十八年の基準を決めたときの専門委員会、つまり四十七年の専門委員会では、基準を含めて諮問をして答申を得ていますね。今度は、判定条件というふうな形で諮問をして答申を受ける、基準を決めるのは環境庁というか、行政がやるということになるわけですね。そこに政治的な思惑が作用する余地はないのかというふうに、これは正直なところ疑問を持たざるを得ない。こういう疑問に対して、その理由と、疑問に答える環境庁の姿勢はどのようなものであるか、尋ねておきたいと思います。
  60. 橋本道夫

    橋本(道)政府委員 四十八年のときには確かに、環境基準を問うという諮問でございます。それに対してストレートの答申がございました。それで今回は、その点を非常に慎重に分けまして、九条三項の前段ということで科学的な点検ということにいたしました。一番大きな理由は何かといいますと、私は、この科学や行政の専門家が余りにも行政や政治や社会的なトラブルの中に巻き込まれるために判断が狂ってくるリスクがあるというぐあいに感ずるわけであります。ですから、先生方は冷静、公正に、また厳しい立場でいろいろなお考え、いろいろな学説があるでしょうから、その中で自由に討議をしていただいて、そして最大限の合意がいまの科学者の中のどこに来るかということを何物にもこだわらずやっていただくということに力を入れたわけでございます。私は、専門委員会に、一番最初と一番最後以外には一切出席をいたしておりません。このようなやり方をしたことは初めてでございます。そういう形でございますが、これは先ほど申しましたように一切こちらから干渉しない。いろいろな疑いをかけられました。両方の側から疑いがかかりましたが、これは全くそういうことをいたしておりません。そういうことで、先生方には、もとの答申も何も全く考えないで結構です。とにかくあれから五年間たって、いまの内外のすべての新しい知見をあわせて見るとどこに来るかということを徹底して御議論ください、もしも意見がどうしても合わないというときならば、これは分かれた答申か出てもいたし方ないという気持ちまで申しております。けれども、先生方の中にいろいろな御議論があって非常な御苦労をされています。しかしながら、一昨日の専門委員会と部会に私は初めて出席をいたしましたが、これはおかしなことでございますが、最後の初めてでございます。全員一致であの表現が出てきているということにつきましては、個々の先生にはいろいろなお考えがまだあろうかと思いますが、少なくともあそこに書かれたものについては専門家の最大の合意であるというところがやはり基本ではないかと思います。  そこで、この後、それでは行政、政治として判断をするということをなぜおまえは言うのかということでございます。確かにいろいろな疑いをかけられる節はあろうかと思います。しかし、基準を決定するというのは学者の責任ではございません。これは行政、政治の責任でございます。そう申しますと、これはまた壟断をして曲げるのではないかというような議論が出るのは、当然そういう問題はあろうかと思いますが、しかしながら、隠れみの的に使うという意思は全く持っておりませんで、今度出されたものは、いまの科学的な確かさ、不確かさを言うと、あれぐらいな幅でしか物が言えない。しかもその幅は、あそこに出した数字は病気や死亡に直接つながるものではない。健康からの偏りを防ぐということの角度から出たものだというようなことでございますので、これは、これから環境基準をどういうぐあいに決めるかということにつきまして、法的な問題、あるいは判定条件と指針値との関係、あるいは国際的な比較等の問題等を入れまして、そして環境庁としての考えをその都度明らかにしながら、いろいろな人々の意見を整理をしてまいりたいと思います。そして、行政としてどういう判断をするかということにつきましては、いろいろな御議論があって恐らく一致することはなかなか無理だと思いますが、これはやはり少しでもよくする、全体の汚染をなくするということで私どもは腹をくくって検討していきたい、そういうふうに思っております。
  61. 岩垂寿喜男

    岩垂委員 公害基本法によれば、環境基準は人の健康を保護する上で維持することが望ましい基準となっていることはもう私が言うまでもない。しかし、これに対してたとえば日本鉄鋼連盟は、日本の環境基準は経済的考慮をしていない、世界一厳しいものだ、あるいは設定の科学的根拠があいまいだというふうなことを主張して、その見直しを求め、昨年十二月の産構審の答申でも、現行の環境基準の科学的根拠には疑問があること、さらにこれまで得られた各種の知見では、いまの環境濃度が呼吸器疾患に及ぼす悪影響が確認されていないこと等々を理由にして、まず適正な環境基準を設定した上、技術的可能性、経済的、社会的費用と効果などを考慮して政策のプライオリティーを決めるべきだと提言をしております。これらの見解によりますと、先ほどから局長が何回か強調されているように、ちょっと違っている。基本法九条三項の見直しの条件というのが経済的にあるいは技術的に達成できない、だから基準を変えることは当然だという解釈に立っている。こういう見方というのは、私は矛盾がある、非常に問題がある、こういうふうに指摘をせざるを得ませんが、九条三項の、環境庁としてのこれらに対する回答を含めた見解をただしておきたいと思います。
  62. 橋本道夫

    橋本(道)政府委員 まず最初のこの環境基準の性質が人の健康を保護する上で維持することが望ましいということでございまして、産業界がいろいろ比較しております数字といいますのはアメリカの数字を引いておるわけであります。アメリカの法律上の用語は、公衆衛生に必要な、レクジット・ツー・パブリックヘルス、こういう言い方をしております。そういう言い方でございまして、日本のような維持することが望ましいという表現ではございません。また、いろいろ法的な拘束の意味が日本とアメリカでは非常に違っております。そういうことで、私どもは日本の公害対策基本法に基づく環境基準を決めるのであるということが基本でございまして、環境基準は汚染と影響という観点から、いま申しました九条の維持されることが望ましいという条件で決めるのが、これが環境基準であります。  非常に端的に申しますと、環境基準を決めるときには経済とか技術とかそういう達成の可能性云々は、これは入っておりません。それはこの法律条文をつくり、またその後の解釈によってもそうであります。しかしながら、これをいかに達成をしていくかということでは当然に技術、経済の可能性というものを配慮に入れてくる、これはもう当然の話でございます。これは通産省の産構審の答申の中でも環境基準は環境庁が健康の観点で決める、これは通産省もその点は明確に意識をしております。私どもは、そういうことで環境基準は環境庁が決める、しかしながら、達成をしていくやり方につきましては、これは非常に広い総合施策を必要とするというものでございます。  そういう点におきまして、どういうぐあいにこの達成の方途を図るのかということになってまいりますと、一体いつごろの目標で、どれぐらいできると思いながらやるのか、それには幾通りぐらいやり方が一応考えられるのか、その技術の費用と効果を見てみるとどういうものなのか、あるいはいまNOx対策を進めていくときにどこに問題があるのか。キーの問題は、私どもはエネルギーの問題と立地スペースの問題と費用の問題だと思います。そういうものを頭にちゃんと整理をいたしまして、そして達成していく方途をはっきりさせていかなければならないということを強く感じておるわけであります。そういう意味で、環境基準を決めるという話と、それから達成の方途を図るという話は、これは分けて考えるという立場で私どもは対処をいたすという考えでございます。  産業界の方が申しておりました、根拠が薄弱ではないかということでございますか、環境基準の数字そのものに直接の何か悪い根拠でもあるとこれは大変な話でございます。しかし、その導き出す前段階のいろいろな科学的なデータがまだ乏しかったのではないか、これは私は、乏しかったのではないかという指摘は当然あると思います。そういう問題でございますので、その対策の進め方という点におきましては、やはり最大限の努力をするとともに、経済と科学的技術の可能性ということは十分頭に置いてこれは進めなければならない。このことは九条四項の問題になってまいりまして、九条三項にストレートにこの問題は関係してくるものとは私どもは考えておりません。
  63. 岩垂寿喜男

    岩垂委員 専門家の間にその扱いをめぐって、たとえば望ましい水準、いま私が申し上げた環境基準の見方ですね、それと健康を守るための水準というふうに分けるべきだというふうな意見があるように承っていますけれども、そういう意見というのは委員会の中であったのですか。
  64. 橋本道夫

    橋本(道)政府委員 いま先生の御指摘のございました点は、実は私もこの一年間いろいろな御質問のときに、専門家の先生に、いわゆるアクセプタブルとデザイアラブルということでレベルを示してもらえないだろうかということを当初に口頭でお願いしたことは事実でございます。これは諮問文そのものには入っておりません。アクセプタブルというのは受容、受け入れられる、それから望ましいというのはデザイアラブルということになるわけでございますが、先生方もずいぶんその御議論をされました。御議論をされましたが、何分やはり、その望ましいとかアクセプタブルという議論をいたしますと、非常にいろんな価値体系の違い、判断の相違がお互いの中にある。そこで純粋に科学的な立場から、健康という問題のどのような健康を保護しようとしているのかということにきわめて厳しい御議論をなさいまして、そういうことで、病気とかあるいは死ぬとか、そのような問題を尺度とはしない、むしろ正常な健康からの偏りを生じないようにしようというような考え方に立って見ると、現在の科学的な確かさ、不確かさからはあのような幅を持って物を言えるということをおっしゃられたわけであります。そういう意味でアクセプタブル、デザイアラブルということは専門委員会で御議論をなさいましたが、これはやはりむずかしい、学問としては無理だということでやめられまして、いま申しましたような健康の保護という水準を頭に置かれていろいろな専門家が最終的に合意されたのが今回の新値でございます。
  65. 岩垂寿喜男

    岩垂委員 産構審の答申の中で、たとえば窒素酸化物の対策の社会的影響について、固定発生源における排煙脱硫装置の設置だとか重油から軽油への燃料転換だとかあるいは電力、灯油の必要性、これは維持費の面から強調したり、あるいは移動発生源の規制についても今後トラックやバスなどについての投資か膨大に必要だということを指摘していますが、電力、これから公共投資の目玉だと言われておりますので、あるいは鉄鋼、セメント、ガラスなどに、つまり産業別にその対策というものを、技術的な進みぐあいを含めて環境庁はどのようにとらえていらっしゃるか、それからトラックやバスの二次規制という問題が当然問題になってくると思うのですが、これらについての環境庁としての見解をお聞きしておきたいと思います。
  66. 橋本道夫

    橋本(道)政府委員 第一段の先生の御質問の、技術の現在の進捗状況あるいは見通しということを業種別にどう見ておるかという御質問でございます。  そこで、まず固定発生源の脱硝ということにつきましては、通産省の計算は九〇%以上脱硝するという形の最も徹底した脱硝を頭に置いて計算をされるというぐあいに私どもは解しております。確かにそういうことをやるとああいう計算が出てくるということはあると思います。ただ、近くまた技術評価の報告を公表いたしたいと思いますが、無触媒脱硝というのはかなりの進展をしてまいりました。この場合には、あの場合よりはこの脱硝率は低うございますが、スペースとかエネルギーとか費用とかいう点では格段の相違があるということでございまして、このような点はもう少し新しい知見で整理をしてみる必要があると思います。  それから次は軽質化という問題がございまして、この通産省の見通しされたのをよく拝見すると、非常に大きな金が軽質化のための投資にかかるという形になっております。勘ぐれば、その固定発生源の脱硝だけでいくと金は余りすごいことにならない。これは軽質化の投資を含めないと膨大な金にならぬ。しかし、いまエネルギーは一番ディフェンスするのにいい材料であると思われたのかもしらぬと思われるぐらいな計算なんであります。ですから、その計算は私は別に誤っておるとは、私どもそういう判断を持っているわけではございませんが、どこまで軽質化が要るかということにつきましてはかなり議論の余地があるのではないか。これは現在低硫黄化対策でかなり軽質化された重油を使われておるわけであります。あるいは灯油を使われておるわけであります。そういう点で現在すでにやっているものも、そういう点はよく今後は総量規制等の調査のときにはっきり確かめて数量的に整理をしていくということであります。しかしながら、あくまでもこの軽質化が将来必要だろうということは、これはまず間違いのないところだと思います。そういう観点からいきますと、前のSOx対策は大成功いたしましたが、あれだけの高度成長下で大体十年の歳月を必要といたしておりました。現在の軽質化の問題を、これはずっとやってきました感じ、感覚から、あるいはほかの国と議論してみたり、いろいろなことを見ますと、軽質化を本当にバックに入れてやるとすると、恐らくこれは六十年代の中ごろか過ぎごろまで本当にかかるのではないだろうかという感想を持っております。通産省の答申は六十年までにやってしまうという計算でしておられますから、そこにかなりな無理が入ってくるという要素があるのではないか、こういうぐあいに見ております。  それから、業種別に見ますと、電力は非常に対策を積極的にやるグループに入っております。日本の発電所は、世界のどこの国の発電所に比べましても、大気汚染に関しては最高水準でございます。そういうことで、電力につきましては、石炭にせよ、それから重油にせよあるいはLNGにせよ、すべて現在脱硝施設の新しいものをつくるのが決定いたして工事が進んでいるものがあるということでございまして、これは電力代を上げるというインパクトが起こるといこうことは考えざるを得ませんが、少なくとも問題のサイトについてはやるということにつきましては、電力はきわめて積極的な姿勢を示しておると思います。  それから、鉄鋼の方でございますが、鉄鋼の焼結は千葉の川鉄で初めてのものがやられました。また、日本鋼管で新しいものが入ってまいります。確かに、川鉄のケースに比べて日本鋼管はさらに進んだ形になってきております。現在のところはやはり相当なエネルギーとスペースを食うということは間違いございませんが、これは五十年代後半には熟成されるというぐあいにわれわれ考えております。また、鉄鋼の方もきわめて積極的に研究を進めておられます。  コークス炉につきましては、これはもうすでに入り出しておるという形でございまして、時間をかけてやれば問題ない。  それからセメントにつきましては、これはNSPという新しい形が出てまいりまして、これは別にNOx対策でやったわけじゃないのだそうですが、非常に省エネルギーでしかもNOxの生成が低いというものが出てまいりまして、この方についてはNSPとコンバインした形で、ほかのNOx対策というのは相当な水準までいくと思うのです。  厄介なのは、ガラス溶融炉が全体のNOxの排出の二七%くらいあります。しかも非常に小さい工場もあるという形でありまして、ガラス溶融炉については研究が進められている最中ですが、まだ何とも申せないというところでございます。  全体的にボイラーのバーナーあるいは燃焼の方法あるいは加熱炉等についてはきわめて進歩してきていることは事実でございまして、五十年度の技術評価の報告、五十一年度の技術評価、五十二年度の技術評価の報告もまた明らかにしながら対策の方向を打ち出したいと思っております。  それから最後の自動車関係でございますが、五十四年度規制をすでに告示をいたしました。これはトラック、バス、ディーゼルを入れております。これは端的に申しまして、騒音の規制の方に優先順位をつけております。そういうことで、告示を出してから一年余しかもうリードタイムがない。しかし騒音の条件というのは非常に厳しいものをまずクリアしたということで、できるというレベルしか現在入っておりませんので甘いのではないかという批判があることは私どもも承知しておりますが、この次の第二段階というところにつきましては、大型のトラック、バス、ディーゼルというものはなかなかむずかしい議論だろうと思います。これは、専門委員会ではいつまでにということははっきり言えず、第一段階をやってから第二段階は数年後にできるのではないだろうかと言われましたが、五十年代末とはそこまではよう言わないということでございましたが、大気部会として、政策的な立場からの、遅くとも五十年代末までにはやるということを出したわけでございます。  この中でやはり問題の難易があろうと思います。少し軽い作業車、いわゆるライトバンなんかその間に入りますし、あるいはディーゼルの乗用車というのは大型のトラックやバスよりかはもう少し早くできるのではないだろうか。しかし、この点のはっきりした見通しは、五十四年規制車があらわれてまいりましたら、五十四年規制車の技術評価を徹底していたしまして、そしてできるだけ早い時期にめどをつけたいと考えておるわけでございます。
  67. 岩垂寿喜男

    岩垂委員 東京都の公害研究所がNO2の環境基準と光化学スモッグの関係についての研究データを明らかにしましたことは御承知のとおりです。これは環境基準の見直し論というものがNOx自体の毒性を中心にして論じられていることに対する貴重な示唆ではないかと思うわけです。つまりそれは複合汚染の問題を含めた総合的なとらえ方が求められているということを教えていると私は思うのです。  ところで、端的に伺いますが、たとえばばい煙あるいはハイドロカーボンについて、いままで規制を続けてきたSO2やNOxなどとも関連させてどんな規制のタイムテーブルを進めようとなさっていらっしゃるのか。これはNOxを二倍、三倍に緩めるというふうに国民感じているわけです。つまり、総合的にどうとらえて国民の健康を守っていくのか、こういう方針がきちんと打ち出されないと環境庁は一体何をやっているんだということになるだろうと思うので、いま私が申し上げたことは非常に重要なことですから、この際、そのタイムテーブルをはっきり示していただきたいと思います。
  68. 橋本道夫

    橋本(道)政府委員 東京都がオキシダントの関係でNOxの問題についてコメントをしていることは承知をいたしております。オキシダントに対する対策としては環境庁——日本のやり方はNOxとハイドロカーボンを両方ともだんだん下げていくという方針をとっておりまして、これは一部の方からはアメリカと違うという批判を受けておりますが、つい最近やりました日米会議ではアメリカは日本の方向に入ってきております。そういうことで、東京都の方の御指摘の中の重要なポイントは複合汚染、それをトータルとして抑えるということが基本ではないか。これはきわめて妥当な、今後の方向として必要な方向だと思います。端的に申しまして、NOxだけをきりもみするような議論をいままでいたしております。それはそれなりに進歩をもたらした面もありますけれども、全体として非特異的な大気汚染による健康に対する好ましくない被害を防ぐという考え方から見ますと、ある意味では非常にバランスの外れた議論をする可能性というのは十分あるわけでございます。専門委員会の中でもやはり非特異性の影響、先ほどちょっとお答えいたしましたが、そういうことで複合汚染の対策を今度徹底的に進めるということがキーだろうと思います。住民の方々の御意見も複合汚染というところでございます。ですからNOxだけに結びつけて見るということも、やり方はございますが、ほかのものもたくさんある中でそのものだけを見ているということの限界を知りながら議論をしないと危ないということでございます。  そこで今後の方向は、これはまだ構想の段階でございまして、確定したものでも何でもございません、ただ先生の御指摘に対しまして、構想としてこういうものを頭に置きながらいま方向を打ち出そうと考えておるというところを申しますと、大気汚染物質は、ばいじん、SOx、NOx、ハイドロカーボン、オキシダント、これだけあるわけです。現在、日本のばいじんの汚染濃度は高いです。このばいじん対策というのはまるで小学校の義務教育みたいな話ですが、日本はまだこれは非常によろしくございません。ほとんど一般の関心は引きませんが、これはきわめて誤った受け取り方であると思います。NOx対策というのはある意味ではノーベル賞的なむずかしさのもの、これに非常に力が入ってしまって、肝心の小学校くらいのものが落ちておるということでございまして、今までSOxの工場全体の総量規制ということをやってまいりましたが、複合汚染全体をどういうぐあいにずっと抑え込んでしまうかということが、今後の環境基準の検討に際してもあるいは今後の対策の展開に当たってもキーの問題ではないかと思います。  そこで、ばいじんにつきましては、三十八年ごろに第一次規制をやり、その次に四十六年から八年に第二次規制をやりました。環境庁は、投資をいたしましてその償却が終わるまでは次の規制を始めないという考え方に立っておりますが、そういうことでいきますと大体五十五年ごろに償却の期間が参ります。そこでこの五十五年以降にはばいじんの規制基準も厳しくするのは当然でございます。ことしの予算の中にもばいじん規制基準を厳しくする準備のためのものが入っております。そこで固定発生源といたしましては、ばいじんとSOxとNOx、これは全体から出てまいります。この三つをいかに最適化して抑え込むかということがエネルギーの消費の問題にとっても、その装置のスペースの問題にしても、あるいは二重投資を防ぐという問題にしてもキーであるというぐあいに私どもは強く思っております。そういうことで、いままではこれはばいじんの規制、これはSOxの規制、これはNOxの規制と、ばらばらにやってまいりましたが、このやり方を完全に改めてまいりたいという考えを持っております。  そこで、粗い構想といたしますと、五十年代後半にばいじんもSOxもNOxも全体を含めて最適化した抑え方をやる。そのかわりエネルギーの軽量化は少し長くかかります。それをぴしっとやると、これは少し時間が長くかかりますが、世界的には最初の方式になると思います。そういうことと並行してエネルギーの軽質化、これは六十年代中ごろから後半まで入ると思います。それからトラック、バスの規制の結果がきれいに終わるのは六十年代の中ごろでございます。そういうものを全部あわせまして、ばいじん、SOx、NOxと抑える。特にSOxは、ディーゼルの自動車は軽油の場合に中にSが入っております。少し低くなりますが、もう少し低くする必要があります。また黒い煙を抑える必要がございます。また、SOxはもうほとんど環境基準に到達いたしますが、これを維持するのは相当大変なことでございますけれども、重油脱硫施設は相当の余力がございます。これはまずまず問題なく五十年代いっぱいでいけるというぐあいに感じております。  問題はハイドロカーボンの方でございまして、ハイドロカーボンの方は、一つは固定発生源のハイドロカーボンという問題に対する規制の検討をずっとこの二年余りの間いたしております。これは来年あたりにはこの問題にはっきり、恐らく法律を改正しなければできないのではないかと思いますが、そういう問題がございます。  また、溶剤の中のHC対策、これは少し時間がかかります。物を変えていくということでございます。また、ディーゼルトラックの中のハイドロカーボンは、まだもう少し下げる余地がございます。そういうものを含めまして、五十年代と六十年代のタイムスケジュールを考えながら、全体として最も最適化された対策で複合汚染全体を抑え込むということに、今回の転機を活用していくことが、国民の健康の保護のためのキーではないかというぐあいに考えております。
  69. 岩垂寿喜男

    岩垂委員 私は専門家じゃないので、NOxの問題について、たとえば専門委員会や大気部会におけるクライテリアを求める作業を通して、環境庁が特にNOxの環境基準についてどんなオリエンテーションを持ったかということを実はお聞かせを願いたい、こういうふうに思うのです。それはどういうことを意味しているかといえば、局長から御答弁いただいたように、やはりいまやるべきだと私は思うのです。つまり、円高ドル安という事態検討してみれば、当然のことに、賃金の問題もありましょう。つまり労働者の労働条件のこともありましょう。一ころのようなソシアルダンピングということは別としても、労働条件全体を含めて、先進資本主義国の労働条件と比べても非常に低いものがあるということとあわせて、やはり環境を犠牲にしてきたという事実を歴史的に検証してみる必要があるのじゃないか。だから、本当意味で円高ドル安を解消していく手だてというものは、いまこそやはり環境問題をきちんとして、この狭い国土で日本国民がひしめいているという状態考えたときに、総合的な環境対策、さっきあなたが申された最適な生活環境をつくっていく手だてを環境庁が示すべきときが来ている。いまだから必要なんだ。このことを訴えながら、その点についての答弁を煩わしたいと思うのです。
  70. 橋本道夫

    橋本(道)政府委員 まず第一点は、今回の専門委員会の報告を見て、どのようなオリエンテーションを持ったかということでございますが、この点につきましては、先ほどちょっと申し上げましたように、現在の最善の科学的な知見では、ああいう幅で表現できるという状態であるということと、それからその中には複合汚染やもろもろのものを頭に入れて先生方の御答申をいただいた。また、その御答申といいますのは、病気や死亡というものを尺度としてではなしに、健康からの偏りを防ぐという積極的な面から答申をされたということを頭に置いて、この環境基準につきましての必要な検討ということは行われなければならない。それはいまだということにつきましては、先生の御指摘のとおりであります。  そこで、現在の状況判断といたしまして、日本の大気汚染の状況を世界じゅうに比べてみますと、特にNOxの問題だけ見ましても、大体中等度汚染レベルでございます。最悪の場所ではございません。それから、全体の大気汚染状態は、四十年代前半から四十年代後半の初めにかけての健康の危険性があるというようなところはもはや乗り越えた、少なくとも大気汚染については私どもそう判断しております。しかし、まだこれはよろしくないということは間違いございません。昔の四日市みたいなのはもってのほかのような状態でありますし、また川崎の大師の昔の汚染などということはもってのほかの状態で、そのような状態は現在はないということでございます。そういう点で、指針値の中に使われたクライテリアで見ますと、NOxの非常に特異的な影響で、急性の病気のふえるのに影響があるというのは、年平均〇・〇六から〇・〇八以上のところ、アメリカのチャタヌーガの数字を引いておられますが、大体非常に高濃度汚染でございまして、地域汚染ステーションでは〇・〇五何がしというのが現在の最高でございます。そういうところはない。それから年平均〇・〇五というところは、よくはないが、どうも完全に悪いという科学的な証明をし切れないという状態でございまして、これはまだ部分的にはございます。それから現在〇・〇三とか〇・〇二という数字で見ますと、〇・〇三で見れば大体八七%ぐらいがこれ以下に入っている。〇・〇二以下で見ますと五七%ぐらいが入っておる。そういう全体から見ますと、現在危機は脱したが、まだよくない。ですから、望ましいという状態に持っていくというステージに来ておるのではないか。そういうことのために総合対策をはっきり組んで、NOx問題を固めることば事実でございますが、総合対策の中でのオリエンテーションをかっちりつけながら固めて進めていくということが今後の一番大事なところではないだろうかというぐあいに考えておるわけでございます。
  71. 岩垂寿喜男

    岩垂委員 時間がなくなってまいりまして恐縮ですが、すぐ済みますからもうちょっと……。  これは「公害病被認定者発病時期・居住開始時期状況」という川崎市の衛生局で調べたものですけれども、これは山本さんにお伺いしますが、総数で三千六百六十七人、昭和四十五年一月から五十二年十二月の間の認定分です。実は川崎市が公害防止条例を施行したのは四十九年一月です。使用前、使用後という言い方はちょっとおかしいのですけれども、その四十九年以前と以後というふうに、発病時期をトータルでとらえて統計をしてみますと、四十九年以前というのは九二%、四十九年の九月以降になりますが二%ぐらい。つまり発病がどういう状態に分布されているかということがこれでわかるわけですね。  片一方で、昨年の一月から十二月の認定分というのを見ますと、非常におもしろい資料なんですけれども、さっきのように使用前、使用後で言いますと、公害防止条例ができてSO2がかなり改善をされてきたという状況のもとで、昨年一年の認定分の発病時期をとらえてみますと、四十九年以前が六〇%、以降が四〇%なんです。こうした資料の示しているものは、SO2以外の原因物質、これは窒素酸化物も含めてだろうと思うのですが、私はやはり問題にされてしかるべきだし、そういう原因があるのではないかということを、これは推測でございますが、一見して推測できるのです。こうした資料を環境庁で全国的に集約をして、特に同じ指定年度で患者状態というものを具体的に検討して統計にとってみると、NOxがもたらしている健康被害の実態に対する非常に有益な結果が出てくると思うのです。こういうことをやっていらっしゃいますか。
  72. 山本宜正

    ○山本(宜)政府委員 大変有益な、示唆の多い資料でございますが、私ども、ほかの指定地域におきましても、本年度については、指定地域内の患者さんのいろいろなデータを取り寄せまして、それをいま先生の御指摘のような問題を解明する一つの材料として検討はさせていただいております。  ただ、いまの先生の御解釈でございますが、最近になって法施行前からの発病者が減ってきていることは確かでございますが、それで直ちにNOxと考えていいかどうかにつきましては、いろいろな専門の先生方の御意見等も含めましていま少し検討してまいりたい、かように考えておるわけでございます。
  73. 岩垂寿喜男

    岩垂委員 これはできるだけ早くして、こういうことからこの補償法の問題も議論していくべきだと私は思うのです。そこのところがないと私は議論にならぬのではないかと思いますので、できるだけ速やかに全国的な統計を明らかにして、その傾向値を公表していただきたい、このように思います。  それから、これは実は私どもが主張していた例の沿道調査、大気、騒音及び沿道住民の健康影響についての調査をなさったわけですが、これは実は宮前といいましょうか南平といいましょうか、川崎地域での調査というのは、A1とB1という距離が百五十メートルですね。これは客観的に見て、汚染レベルは同じなんです。こういう形、しかも山があって、汚染状況というのは共通なんです。それで、その有意性とか、あるいはNOxの影響とかという形で結論を出すという出し方について、地元の住民は毎日そこに住んでいますから、何をやっているんだ、これで違いがわかるわけないじゃないかという問題があるわけです。こういう不合理というものは、まあこれは報告書の中にもございますけれども、是正をして、もう一遍やはりきちんと調査なさるおつもりございませんか。
  74. 山本宜正

    ○山本(宜)政府委員 沿道調査を計画する段階で、他のデータから五十メートル以内それから百五十メートル以上離れたところの自動車排ガスの影響と思われる汚染の状況を調べた上で当時の調査計画がデザインされた、かように聞いているわけでございます。先生御指摘のように、川崎の場合は、地形等の影響がありまして、予想したような条件でない大気汚染の状況があったようでございますが、これにつきましては、私ども沿道調査の手法の問題も含めましていま検討させていただきまして、その手法の検討をまって次のステップの調査を進めましてNOx問題についての調査をしてみたい、かように考えておるわけでございます。
  75. 岩垂寿喜男

    岩垂委員 もう一遍やるんですね。
  76. 山本宜正

    ○山本(宜)政府委員 同じ地域をもってもう一遍やるという形はちょっと考えにくいと思います。特に川崎の料金所の付近の地形からいたしまして、どうも適切ではないように私は思っております。したがいまして、他に実験計画として非常にすぐれた地域がありますならば、そういったところを選んでやる、しかしながら、ねらいといたしましては、沿道における自動車の排ガスによる影響調査ということの結果が得られるようなものでありたい、かように思っておりますが、手法につきましての検討をいま進めている段階でございます。
  77. 岩垂寿喜男

    岩垂委員 ちょっと時間をオーバーして済みません。  最後になりますが、療養手当の支給に関する日数制限のことです。これは山本さん、御存じでございますからくどくは言いません。つまり、四日未満の者には実費補償は必要ではない、こういう考え方に立っておるわけですね。これは、たとえばほかの制度、結核予防法とか予防接種法とか、あるいは原爆被爆者特別措置法などと比べてみても、あるいは補償法の第二種地域の場合と比較してみても、根拠が非常に薄いのではないかというふうに思うのです。  実は、ちょっと資料をお渡しします。——本当に行かなくてもいいのに、四日行かないと手当がもらえないという実態。片一方では、実は投薬は二週間に一遍でいい人もいる。それなのに四日かからなければ、手当というか、補償がいただけないという実態というのは、どう考えたって不合理だと私は思うのです。いま示しましたように、四日のところでうんとふえているのです。これは補償を受けるために患者に、不要なと言っては言葉が過ぎますけれども、言ってしまえばそういう受診を強いているという状態指摘されてもやむを得ないだろうというふうに思うのです。医療費をとってみても、実はそう大した負担に——三日と四日とどのくらい違っているのかと言えば、一件当たりの医療費の平均額で見ると、一日から二日の差額が約三千二百円、二日から三日が四千七百円あるのに対して、三日から四日の差額というのは約千二百円なんです。極端に実は低くなっています。一方で、再診料を六十歳以上の人は八百円、六十歳未満が千三十円ですか、そういうふうにこれを払っていくことを勘案してみますと、三日と四日の間には治療内容においてほとんど差異がないというふうに考えるのが妥当だと私は思うのですが、その立場から見ての診療費、医療費から見てもそんなにふえないですよ。  だから、私は、この日数制限というものを取りやめてほしいというふうに思うのです。これはもう環境庁自身もそのおつもりになっていらっしゃると思うのですが、ことしの予算案で私もお願いをしましたけれども、実現をしなかった理由というのは一体どういうことか、そしてそれを改善されるお気持ちがあるかどうかということを、最後でございますが承っておきたいと思います。
  78. 山本宜正

    ○山本(宜)政府委員 御指摘の実情がありますことも、私よく存じております。ただ、私ども、いま少し状況の分析をいたしまして、本年度予算では実現を見なかったわけでございますけれども、今後はいわゆる前進の方向検討を進めてまいり、なるべくそういった方向をとりたいと私は考えております。
  79. 岩垂寿喜男

    岩垂委員 山本さんの方では、つまり環境庁では予算を実現するために努力をなすったわけでしょう。大蔵が壁だったわけでしょう。だとすれば、それらの問題の解決を含めて、やはり来年度から何とかしますというふうに、この際、環境庁としての決意を、交渉経過やりとりを含めて答えてくれませんか。これは患者皆さんにとっては大変大きな問題なんです。いまお手元にお届けした資料によっても明らかなことでございますので、その点を、これは長官に、長い間手持ちぶさたのようでございますからお答えを煩わしたいと思うのです。
  80. 山田久就

    山田国務大臣 明年度予算でできるだけひとつ努力をしてみたいと考えております。
  81. 岩垂寿喜男

    岩垂委員 終わります。どうも長い間済みませんでした。
  82. 久保等

    久保委員長 この際、午後一時より再開することとし、暫時休憩いたします。     午後零時十七分休憩      ————◇—————     午後一時七分開議
  83. 久保等

    久保委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  午前中に引き続き、公害健康被害補償法の一部を改正する法律案の質疑を続行いたします。坂口力君。
  84. 坂口力

    ○坂口委員 最初に、長官に対して二、三御質問を申し上げて、具体的な問題に入らせていただきたいと思います。  けさからもいろいろ御議論がございましたけれども、最近、環境庁を取り巻きますいろいろの状態というのは、必ずしも好ましい方向に行っていないとわれわれ考えているわけであります。一つは、環境アセスメント法案にいたしましても、あるいはまた地盤沈下法案にいたしましても、それからまた、その他環境庁の重要法案と思われますものが、もうこの次は出す、この次は出すと言いながらそれが現実に日の目を見てこない。こういったところから、果たして環境庁はやる気があるのであろうかという厳しい意見があちこちで起こるのは、これはもう当然のことであると思うわけであります。また、けさからもいろいろ議論のありましたような水俣病患者に対する取り扱い等につきましても、厳しい批判のあるとおりでございます。  こういったことを考えますと、環境庁が以前ほどやらんかなの構えを示していないのではないか。どうも通産省や建設省に押されがちになって遠慮しがちにやっているのではないかという印象を受けるわけです。したがって、私は、環境庁長官は毅然たる態度でこういった状態には対処をしていただきたいと思いますし、そして環境庁が発足した当時のあの意気込みをもう一度持ってやっていただきたいと思うわけであります。まず最初に環境庁長官決意からお聞きをしていきたいと思います。
  85. 山田久就

    山田国務大臣 いろいろ御鞭撻をいただきまして、まことにありがとうございます。無論、われわれといたしましても、一生懸命になってやる決意を持って臨んでおります。いろいろ後退というような印象、これは私から申し上げて恐縮でございまするけれども、それは当たっておらないと私は思う。ふんどしを全部外しているのならとっくにものは片づいているのであって、むしろわれわれがわれわれの任務に基づいて一生懸命になって努力をしておればこそ、あえて摩擦とは申しませんけれども、いろいろな問題と取っ組むのに時間がかかっているようなことでございまして、いまの御鞭撻によりまして、さらに決意を新たにして、一生懸命になって、初心に従って大いにやっていきたいと思っておりまするので、よろしくお願いいたしたいと思います。
  86. 坂口力

    ○坂口委員 長官決意のかたいことを聞いて半分安心をしたわけでございますけれども、(「安心はだめだ」と呼ぶ者あり)安心はだめだという不規則発言もございますが、半分は安心をいたしましたが、しかしながら、現実問題といたしましては、そういうふうなあちこちで批判の声が上がっても不思議ではない幾つかの条件があるわけであります。長官は、われわれが努力をしておればこそいろいろ摩擦も生じるということをおっしゃいました。それは当然のことだろうと思いますが、しかし、その摩擦を乗り越えるところまで行っていない。これだけは事実であります。  それでは具体的に一、二の問題だけお聞きしておきますが、たとえばアセスメント法案、それから地盤沈下法案、これはどうですか。今国会中に法案として出ますか。それからもう一つ、瀬戸内海法案、この三つですね。これはどうしてもやらなければならない法案でありますが、いかがでございますか。
  87. 山田久就

    山田国務大臣 瀬戸内海法案、これは日切れ法案でもございます。しかしながら、この臨時法案が生まれたその精神に基づいてひとつできるだけりっぱなものをということでやっているので、まだちょっと手間をとっておりますけれども、これは必ず今次国会に提出いたします。  アセスメント法案の点でございまするけれども、これもできれば今次国会ということで、いつも申し上げておりまするように、昨年はいろいろ長官からも発言かあったようでありまするけれども、端的に言うならば、みんなを土俵の上に上げることにもなかなかむずかしい点があった。今日においては、法案を出すそのことの必要性ということでは、われわれの努力、そういう意味では十分実ってまいったと信じております。土俵の上には上っているのでございまするけれども、いまいろいろと問題点についてがんばっている。ただし、基本的なこの環境基準、そういうもとについて十分われわれが発言権を持っていくということについては、その趣旨にのっとって鋭意努力中でございます。  地盤沈下法案にいたしましては、これは端的に言うならば、われわれがこの問題を主張しておったわけですけれども、関係各省それぞれの立場があることはもうすでに御承知のとおりでございまするけれども、今度は、関係各省の方で張り切ってまいりまして、おれの方でむしろこれをやりたいというような熱意、そんなようなものがぶつかり合って、率直に言って、これは熱意による衝突というような結果になっておりますので、われわれもちょっと弱っているのですけれども、しかしながら、既定方針によってがんばっている点は変わりはございません。どうか御了承をいただきたいと思います。
  88. 坂口力

    ○坂口委員 いま三法案についてお聞きをいたしましたか、今回、今国会中に出るのやら出ないのやら、よく言えばさっぱりわからぬということだと思います。アセスメント法案なんかはもう三年越しであります。これは一体やるのかやらぬのか、やらぬのならやらぬとはっきり決めてほしい、都道府県はそうと言っているわけです。国がやらぬというのならば、都道府県段階でやろうじゃないか、こういう意見も出ておりますし、すでにもうやっているところもあるわけでありまして、都道府県かやっておりますことを国ができぬというわけがないので、これは長官がとにかく存任中に、環境アセスメントと地盤沈下だけだけはどうしても片づけるのだ、これくらいの決意を持っていただかぬと、長官の胸の中にその決意かないことには事が進まない、こういうふうに私は思うわけです。  どうかひとつ長官に、それはいろいろの問題はございましょう、それは私どももわかっております。わかっておりますが、決意を新たにしていただいて、この問題に取り組んでもらいたい。そうしてこの国会中に、少々これは後半になってもやむを得ませんから、どうしても出すという御決意をここで御披露をお願いをしたいと思います。
  89. 山田久就

    山田国務大臣 だんだん物は煮つまってまいりました。それだけに難点も大きくなってまいりました。したがって、これは決意を新たにしなければなかなかまいりませんので、ひとつ御鞭撻によって大いに決意を新たにしてがんばっていきたいと思います。
  90. 坂口力

    ○坂口委員 それでは、具体的な問題に入らせていただきますが、これも午前中に岩垂議員の方から質問がございましたけれども、中公審のNO2にかかわる判定条件等専門委員会の出されました判定条件と指針についてでございます。けさいろいろの意見が出ましたので、大体意見は出尽くしたというふうな感じもいたしますが、もう少し整理をする意見で、重複いたしますが、お聞きをしておきたいと思います。  一つは、今回出ましたものは、読んで字のごとく判定条件とその指針でございます。あくまでもこれは環境基準ではないわけでございます。はっきりさせていただきたいのは、今度出ました判定条件と指針をもとにして判定基準の見直しをおやりになるのかならぬのかということをひとつはっきりとしておいていただきたい。
  91. 橋本道夫

    橋本(道)政府委員 この判定条件と指針値が出されまして、今度は九条三項の後段の必要な改定をしなければならないというところがあるわけでございますが、そこにつきましては、判定条件と指針値を基礎にいたしまして改定するというのもあれば、改定しないという、そういうオプションもあるわけでございまして、また改定するという議論にしても、これまたいろいろの変形があるわけでございます。そういものを全部一回整理してみて、そうして前提条件を整理した上で最終的に判断したい、そういうぐあいに考えております。
  92. 坂口力

    ○坂口委員 環境庁は、いままではクライテリアの諮問について、環境基準の見直しをするものではないと言明をしておみえになったと思います。これは見直しをするということになれば、いままでの方針とは若干違うようにも思うわけです。いま御答弁いただきましたが、それじゃ、環境基準の見直しをするということであるならば、一番その判断の中心になるものと申しますか、それは何ですか。
  93. 橋本道夫

    橋本(道)政府委員 従来、環境基準を見直すものではないという言い方をしておりましたのは、これは諮問条項を、基準そのものをストレートに聞いておりません。四十八年のときには、環境基準そのものを聞いたわけでございます。そういうことで、厳し過ぎるからとか、できないからとか、そういうことだけの議論で環境基準というのは軽々しく変える話では全くないですし、そのようなことが変えるべき条件にもならない、こういうことでございます。  ただ、非常に大きな安全率を見込んで、非常に不確定な要素で決めていたことは間違いもない事実でございます。ですから、そういうものに対して、現在の時点ではもう少し豊かな、確かな資料ならば一体どういうような判定条件と指針になるのかということをお伺いしたわけでございまして、この答申が出れば、次にまた新しい局面が出てきたということで、先ほど、基準を見直すか見直さないかということにつきましてはいろいろなオプションで整理をするということを申し上げたわけでございます。  その中で一番大きな問題は何かということでございますが、根本的には、国民の健康の保護ということは絶対にゆるがせにできないという考え方でございます。そして今度の判定条件と指針値の中に、健康からの隔たりが正常な範囲を超えるというようなことを防ぐ、これは非常に積極的な考え方が入っております。従来は病気とか死亡とかいうことを中心にしていました。それで、有病率が高まるとか死亡率が高まるということを中心にしていましたが、今回はそのもう一つ手前の、健康からの偏りというところに着目して判定条件と指針値か出されたということは、健康の保護という観点からは、より確かな基礎があらわれてきたというふうに思います。  それから、従来は一日平均値で示されておりました。これは知見があったから出したわけではございません。年の〇・〇二というのは、前もそういう見当をお持ちになっておられて、それを一日平均値に直すと大体〇・〇四ということにおよそなる、そうすると、硫黄酸化物と一緒だから半分ぐらいに厳しくしよう、知見が違うからというような粗筋の判断を持ったわけですが、前と今度で一体どこが違うのだということをはっきりすることがきわめて大事だと思うのです。  たとえば、前のときには、腺腫瘍の増殖というのがございまして、NO2に暴露してインフルエンザにかけたネズミの肺の中に腺腫瘍の増殖がある。これは果たして腺腫か、それとも反応性のものだけか、それを危ない方にとったわけです。がんのリスクがある。今回は前から五年以上たちまして、あの増殖は途中でとまるというのは確かめられております。それ以上無制限に悪性腫瘍のように広がるものではない、いままでそういうデータもまたないということで、現在、国際的にはNO2が発がん性があるという見解を持っておりません。ですから、そういう点では一つ外れたなという考えは持っております。  それから、一時間値と年平均値としてお出しになりました。一時間値は従来ございませんでした。いまも日本には一時間値のデータは、測定データはありますが影響データはございません。ただ、WHOのときに比べて、さらに新しい人間の知見が、外国の知見でございますが加わっております。それから判断して一時間値を出してきておられる。それから年平均値の方も前よりもさらに進んだ形で、まだまだ不確かさはございますが、そういう角度から年平均値の数字を出してこられたというようなところは前のときとは違っておる。そういうことを十分頭に入れた上で、国民の健康保護は絶対に狂わせられないという角度から、もう少し確かな物の見方をして判断することができるかどうかということが、行政に課せられた最も重要なポイントだと思っております。
  94. 坂口力

    ○坂口委員 今回出されました判定条件及び指針は、最近のあらゆるデータを集められまして、現在考え得る最上のものであろうと私も思います。ただ、この出ました判定条件なるものをどう行政の場で活用するかということはまた別の問題でございますので、このすぐれた判定条件及びその指針が十分に生かされるように、ひとつお願いをする次第でございます。  いまお聞きいたしまして幾つかのことがわかったわけでありますが、そうするとNO2について、これ以下なら健康に影響を与えないレベルというものを判定するための資料データである、こういうふうに理解してよろしいでしょうか。判定条件もしくは指針値は、いわゆる閾値のことを意味するというふうに環境庁の方も理解をしておみえになるのかどうか、お聞きしたいと思います。
  95. 橋本道夫

    橋本(道)政府委員 いま先生のお言葉にございましたが、今回は閾濃度というストレートな表現を使っておりません。いまの測定の持つ誤差、あるいは人口のいろいろな構造、あるいはそのほかのいろいろの誤差そのものが入りまして、そういうものを頭に入れてみると、これくらいな幅でしか物が言えないということが一つございます。これは〇・一と〇・二の間ぐらいだ、〇・一とすぱっと数式を引けるかというとどうもそれは引けない、〇・二ということで引けるかというとそれも引けない、その間ぐらいとしか物が言えないということが、科学者としての非常に良心的な判定条件に基づく判断だというぐあいに受け取っております。  そういう意味で、私は、専門委員会の報告をずっと見て、閾濃度という考えに立っているものとは、そういう前の言い方とはその点は変わっております。たとえば、短時間値ですと、閾濃度というような議論をすると、〇・五ppmというようなことになってしまうわけです。これは非常に確認された、数字でぴしゃっと引けるところですね。そういう点か非常に変わってきておるということでございます。  しかも、健康への影響ということは、いろいろな影響がありまして、たとえば目の暗応調の時間が少し延びるとか、あるいはにおいが少しわかるとか、あるいは気管支の過敏性が高まるけれども全く普通の範囲内であるとか、そういうところを今回の報告は非常に注意深く見ておられるわけでございます。ですから、そういう観点から見まして、閾濃度というような言い方でおっしゃっておられますが、この範囲にあれば、もちろんそれ以下は問題はございませんが、この範囲にあれば健康からの隔たりがなくして大丈夫ですよという形になっております。しかもその範囲が、病気や死亡とはかなりかけ離れたレベルになっておるということははっきり言えるのではないかと思っております。
  96. 坂口力

    ○坂口委員 わかりました。そういたしますと、もう一つだけお聞きしておきたいと思います。ある意味では、繰り返すことにもなりますが、環境基準と判定条件とはあくまでも異なるものでありますが、判定条件は絶対に健康に影響を与えない値である。環境基準というのは、法律には、人間の健康が維持される上で望ましい基準値である、こういうことになっているわけでありますが、健康への影響が考えられない最低値という意味ではなくて、それを含んで、それを上回るものでなければならぬと思うわけです。その辺のところが、もし環境基準というものの見直しが行われますときに、どう取り上げられるかということに若干の心配も実はあるわけでありまして、その辺のところについてもう一つお答えをいただいて、次に進みたいと思います。
  97. 橋本道夫

    橋本(道)政府委員 いまの先生の御指摘のございましたことは、国民の健康を保護する上で維持されることが望ましいという条件でございます。そういう点を環境基準というのは頭に入れてちゃんと確保しなければならないということは、これは行政としてどんなことがあってもやらなければならないことである。それでは、維持されることが望ましいというのは一つの線であるかというと、決して線ではないと思うのです。いろいろな程度のものがあると思います。たとえば、大丈夫だと言えば、本当は五十で大丈夫だけれども百はとってあるというものがあったり、六十、七十、八十、いろいろそういうものがあるわけでございます。そういうものがあった場合に、それでは行政の基準としてどう判断するか。大丈夫ということは、もう絶対確保しなければならない、必要だなどというようなぎりぎりの程度でもいかぬ、そういうことを頭に置いた上で一体どういうぐあいに判断をするのかというところが行政としての責務だと思います。従来は非常に不確かなところできわめて大きなリスクを見込んでおった。そのうちのリスクの幾つかは外されたということも頭に置いた上で行政判断というのはすべきであって、できるかできないかとか、厳し過ぎるか厳しくないかというようなことを基本に判断すべきではないという考え方に立って環境庁対応いたしたい、こういうように思っております。
  98. 坂口力

    ○坂口委員 この問題は、最後にと申しましたが、もう一つだけお聞きしておきます。  先ほど局長さんが御答弁になりました中で、肺がんとの関係がございました。動物実験の段階ではNO2の影響というのは大体排除していいのではないかというような知見が得られた、こういうことでございますが、この大気汚染の問題の中で、ぜんそくの問題でございますとかいろいろございますけれども、しかし一番大事なことと申しますか一番重要なことは、これによって肺がんが多発することはないかどうかという心配ではなかったかと思います。したがって、いままでのいろいろの科学者のデータもこのことに対して多くの時間が費やされていると思います。いままでのデータでは、その辺のところが排除されるのかどうか、私ちょっとよくわかりませんけれども、いずれにいたしましても、肺がんというような病気は長期間を要して発生をしてくるものでありますから、軽率に判断もしかねる面もあろうかと思います。これはこの委員会でも、実は一年前でありましたか、あるいはもう二年ぐらい前になるかわかりませんが、各地域の肺がんの発生地図というものをつくってほしいということを申しまして、これは担当は厚生省の方でございますが、厚生省の方でがん地図なるものをおつくりいただきました。でき上がっておりますが、まだ十分な分析の段階までは至っていないということでございます。NO2なんかが非常に問題になっております。この法案とかかわりのありますいわゆる指定地域の幾つかを取り上げまして肺がんの発生率を見てみますと、必ずしもそう高いとは言えない数字が出ております。ただ、福岡県の大牟田市で肺がんの発生率が、これは生の数字だけでありますけれども、男女まぜて人口十万対で二一・三という数字が出ておりまして、全国平均の一四・一に比べますと、ここだけは非常に高いという数字が出ておりますが、ほかの千葉市でありますとか四日市市、倉敷市だとか北九州市というのは、そう高い数字は出ておりません。こういった数字をながめまして、これだけで物は言えないと思いますけれども、しかし、これから将来の問題としてこのことを除外してはこの大気汚染の問題は考えられないと思うわけでございます。  動物実験のお話が若干出ましたけれども、今回のこの諮問の過程の中でそうした疫学的な調査等が問題になったのかどうか、そういったものがある程度議論されたのかどうか。報告書を私まだ詳しく見せていただいておりませんのでちょっとわかりにくいわけでありますが、その点がございましたら一言つけ加えていただきたいと思います。
  99. 橋本道夫

    橋本(道)政府委員 肺がんの問題につきましては、動物実験の方で、先ほど申しました腺腫瘍の増殖が一体どうなるかというのが、あるところでとまるというのが出て、それ以降に出ないというのが一つの証拠でございます。そういうことだけでそれじゃ肺がんがすべてクリアしたか、学問的にはまだいろいろの議論があると思います。そういうことはやはり専門委員会の中でも指摘をしておりまして、非常に長期遅発の問題についてはよく注意をしてみるように、あるいは細菌を使ってみると変異原性がある、そういうことも頭に置いてやるようにということで、これはあくまでも純粋な科学研究次元の問題でございまして、私どもは、ICRAと申じまして国際がん研究センター、これはWHOがやっておりますものですが、そこの資料はすべて入れまして実は点検をしております。そういうことで、いま国際的にNO2を肺がんと結びつけてやるという形には受け取られてはおらないということでございますので、疫学の方からだけ入るのは非常に無理で、それならたばこの方がはるかにものすごいという問題になりますので、疫学の方から肺がんがないという判断を下したというものではございません。
  100. 坂口力

    ○坂口委員 それでは次に進ませていただきたいと思います。  この法案の中で、移動発生源にかかわります費用負担について問題になるわけでありますが、いわゆる自動車重量税引き当て方式というのは合理的で妥当性もあるというふうに考えられておりますけれども、この引き当て方式というのは、補償制度の発足、四十九年ですね、発足から五十二年度まで、そして今回は五十二年度から五十四年度までというふうに延長の措置がとられるわけでありますが、この法律の制定時、附帯決議もなされておりますし、恒久的な方策を確立することが求められているわけであります。重量税の引き当て方式をとるにいたしましても、またほかのいずれの手段をとるにいたしましても、恒久的な方法考えておくべきではないか、こういうふうに思いますが、それに対する見解をまずお聞きをしておきたいと思います。
  101. 山本宜正

    ○山本(宜)政府委員 今回提出しております改正案では、御承知のように五十三年度及び五十四年度の二年間の自動車重量税引き当て方式というものを出しているわけでございますが、これにつきましては、次のような理由があるわけでございます。第一点は、財源を引き当てるべき自動車重量税につきましては、御承知のように、現行税率の特別措置の適用期間がさしあたり二年だということから二年という形にさせていただきました。それから第二番目には、自動車に係る費用負担のあり方につきましては、本制度の費用負担関係のいろんな問題とも関係する長期的な検討課題であるわけでございまして、今後、大気汚染の動向あるいはそれによる健康被害の発生、そういったような態様がどういうぐあいに変わっていくか、そんなようなことを見きわめながら対処していきたい、かように思っておりますし、今後の状況を踏まえながらそのあり方を見直していきたい、こう思っておるわけでございます。  さらに、今後、五十五年度以降についての費用負担のあり方、すなわち先生のお尋ねの恒久的な対策、費用負担のあり方でございますが、汚染者負担の原則にのっとっていかなければなりませんし、またこういったようなものを制度として乗せた場合に、いわゆる公害防除、汚染防除の努力に対するインセンティブというものが当然必要となるわけでありまして、そういった観点に立っての恒久的方策を考えたい、こういうぐあいに思っておりまして、関係の方々のいろいろお知恵を拝借するようなことを現在しているところでございます。
  102. 坂口力

    ○坂口委員 移動発生源につきましては、いままで自動車のみになっているわけでありますが、その他の移動発生源というものもあるわけであります。たとえば飛行機でありますとか船舶というようなものも汚染物質の排出量はかなり大きいものがございます。たとえば飛行機をとってみました場合に、環境庁の調査でも、千六百ccクラスの乗用車に比較して、ジャンボ機一機でNO2だけをとりましても二千七百八十七台分になる、こういうデータが出ているわけであります。また、YS11機をとりましても、千六百ccクラスの乗用車に比べてNO2は百四台分に匹敵する、こういうデータもあるわけでありまして、これは数は少ないですから問題にならないと言えばならないかもしれませんけれども、しかし、最近はかなり飛行機の台数もふえてきておるわけでありますので、飛行機の問題は今後どうなるかということが一つあると思うのです。それから、そのほか船舶の問題もあろうかと思います。大気汚染ばかりがいま問題になっておりますが、水質汚濁の問題もあるわけでありまして、そういう意味で船舶の問題がどうかということもございます。こういったことにこれからの問題としてどう取り組んでいかれるかということを、ひとつお聞きをしたいと思います。
  103. 山本宜正

    ○山本(宜)政府委員 先生の御指摘のように、この制度の費用負担につきまして、自動車以外の発生源というものの取り扱いが一つ問題になるわけでございます。昨年の中央公害対策審議会の審議の中で、他の移動発生源についても負担を求めるべきことが望ましいけれども、その汚染寄与度が総体的に少ないということが第一点。それから、これらに負担を求める場合には、徴収の技術といいますか、コストの面も含めまして、徴収方法が複雑にならざるを得ないというようなことから、現在のところ強いて負担を求めなくともやむを得ないのじゃないだろうか、このような御意見をいただいているわけでございます。  ちなみに、自動車以外の移動発生源の問題といたしましては、御指摘のように自動車以外に航空機、船舶というようなものがあるわけでございますけれども、また、御指摘のように航空機、船舶等の排出量というのはかなり大きいわけでございますが、一応自動車以外の移動発生源からどのくらい硫黄酸化物あるいは窒素酸化物が出るかということを、その燃料の使用量から推定してみたわけでございますが、約五%程度であろうというぐあいに推算されております。  そのようなことでございまして、現在のところ費用負担を求めていないわけでございますが、今後、費用負担のあり方全般についての検討の中で、中央公害対策審議会の委員の先生方の御意見を聞きながら、この問題を検討してまいりたい、かように思っておるわけでございます。
  104. 坂口力

    ○坂口委員 たとえば羽田空港を例にとりますと、航空機による汚染物質の排出量というものは、  一日当たりかなりな量に上るだろうと思うのです。これはCO三・三トン、HC一・六トン、NOx〇・八トンという空港のデータをアメリカの環境保護庁が出しておりますが、羽田空港の場合には非常に飛行機の出入りの数が多いわけでありますから、大体この三倍から多ければ五倍ぐらいになっているのではなかろうかというような推測もあるわけでありまして、全体に対する寄与度が低くても、汚染者負担の原則という点から見ますと、こういう面も除外することはできない問題になりはしないかというふうに思いますので、問題提起として発言をさせていただいておきます。  それから最後に、大蔵委員会でいま審議をされようといたしております石油新税がございますが、これがもし成立をしました場合、自動車重量税及び公害補償費の自動車重量の引き当て方式の関係が変わるのか変わらないのかということがございます。これはまだ石油新税が通過をいたしておりませんので、聞きますのはまだ若干早過ぎるかとも思いますが、この石油新税は、日本で採掘されます石油あるいはまた外国から輸入されます石油におしなべて三・五%の税をかけるわけでありまして、年間約千六百億円前後になる予定でございます。そういうことになりますと、この税の使い道等の問題が出てくると思いますが、それとこの法案との絡みも将来の問題といたしましては問題になるのではないかと思います。もしそういった点で、いままですでに議論が出ておったといたしましたら、ここで御答弁をしておいていただきたいと思います。
  105. 信澤清

    信澤政府委員 お話しのように、石油新税を今国会で御審議いただいているわけでございます。そこで、私どもも、いろいろな賦課徴収の方法一つとして原燃料に着目するという方法があることは承知をいたしておるわけでございますし、当委員会でもたびたびお話があったわけでございます。そこまでの基本的な考え方を改めるということは今回いたしませんでした。したがって、今回ちょうど重量税の特別措置が二年間、これまた国会で御審議いただいておるわけでございますが、それにあわせまして、従前のように二年間の特別措置ということでこの法案の御審議をいただいておるわけでございます。  いずれにいたしましても、自動車あるいは原燃料にかかわる税のあり方というのは、今後いろいろな問題が出ると思います。その中で、私どものような制度の財源としてどう絡めるかということは、先ほど来部長が答弁いたしております中公審における審議と並行的に私ども事務的に詰める必要がある、このように考えております。
  106. 坂口力

    ○坂口委員 ありがとうございました。終わります。
  107. 久保等

    久保委員長 この際、暫時休憩いたします。     午後一時四十七分休憩      ————◇—————     午後二時五十四分開議
  108. 久保等

    久保委員長 休憩前に引き続き、会議を開きます。  質疑を続行いたします。中井洽君。
  109. 中井洽

    ○中井委員 初めに大臣にお尋ねをいたします。  午前中あるいは午後からの議論の中でもすでに何回か言われたわけでありますが、過日の水俣病患者皆さんを強制撤去された、そのことについて、私も幾つかお尋ねをしたいと思います。  最初に、患者さんたちが座り込まれて二十数日目に強制撤去をされた、こういうことであります。それの最大の理由はどういうところにございますか。
  110. 山田久就

    山田国務大臣 われわれといたしましては、とにかく話し合いということで問題の解決点を見出していきたい、こういうたてまえをとっておればこそ、われわれの方からとにかく話し合いを始めるべきだということを主張して、そして話し合いということになったわけです。ただ、しかしながら、話し合いといいましても、座り込みというような実力行使を背景にしたような形でのそういう話し合い、これは結局正常な形で本当の心の通う話し合いというものはできない。したがって、これはぜひやめてもらいたい。それも、われわれも忍耐強くノーマルな形でということを言ったのですけれども、とうとう二十日オーバーというようなことになってまいりまして、このことは、実際、みんなの立場から考えてみてもなおさらそうだと思うのですけれども、患者の健康というものから見ても、全く好ましい形ではないし、また、何しろ合同庁舎の正面に座っているということですから、ほかに与えるいろいろな障害の点から見ても、とにかくこういう形というものは早くやめて、話し合いはいつでもやるというふうに私は言っているのだから、そういう形に切りかえてやってもらいたいということを要求しましたけれども、とうとうそれが聞き入れられないままになっておったので、一応ああいう形の話し合いというものを打ち切って、そしてノーマルな形でということを出発点にしたい、やむにやまれぬ気持ちのことだったわけで、この点ひとつ御理解をいただきたい、こう存ずる次第でございます。
  111. 中井洽

    ○中井委員 そうしますと、大臣のおっしゃる正常な形での、あるいはノーマルな形での話し合い、これにはいつでも応じるんだ、このお気持ちには変わりはございませんか。
  112. 山田久就

    山田国務大臣 そのとおりでございます。
  113. 中井洽

    ○中井委員 私もはっきりと覚えてないわけでありますが、たとえば三木前環境庁長官あるいは石原前長官と、環境庁長官がかわられるたびに何らかの形で水俣病患者さんとお会いになる、あるいはまた水俣に行かれるというようなことですが、しかし、いま大臣のおっしゃった正常な形での話し合いというものは、たとえば患者さんのグループと環境庁はこういう形で話し合うんだという一つの合意に達したものがあるわけでございますか、どうなんですか。
  114. 山田久就

    山田国務大臣 その線の合意というものではございませんけれども、常識的に見て、改善するものには時、場所、そして議題、どのくらいの人数というようなことで話し合いを決める、こういうことでございまして、いま居座りというようなことがあれば、引き続きそれが居座りみたいなことにならないような、そういうめどというものをわれわれは期待しているわけです。今後においてもそういうラインのことを、つまりそういう形での心の通う話し合い、それを出発点としたいということで、別に話し合いそのものを打ち切るということをわれわれはちっとも意図してないんだ、このことを私どもはよく強調して申し添えたい点でございます。
  115. 中井洽

    ○中井委員 そうしますと、水俣病患者さんの中にも十幾つのグループがおられますが、今後もしこういう形でそれらの方々が個々に来られたら一応拒否というようなかっこうになってしまう、強制的な面会等をすれば拒否というかっこうになる。それが逆に言えば、新聞等で、あるいはマスコミ等で、環境庁の姿勢はけしからぬじゃないかという形で非難を受ける、こういうことであります。こういった形がいつまで続くのか、そんな話し合う、話し合わぬでけんかをしたってちっとも解決にならないわけであります。したがって、大臣が、こういう形で環境庁は正常な話し合いができる、考えておるということであるならば、それを患者さんのグループに、熊本県を通じるなりあるいはお世話をいただいておる国会議員の方々を通じるなりして——患者さんの側にもこういう形でないと困るという御希望があると思うわけであります。水俣病の問題は、もう大臣と会う会わぬでまだ騒いでおるというような段階でないと私は思うわけであります。一刻も早く環境庁あるいは大臣がイニシアチブをとられて、そういった話し合いの場、正式な話し合いの場というのはこういうものにしましょうというルールを確立して、そしてその中で率直に話し合いをされるあるいは患者さんの御意見を聞いていく、こういったことであれば、何もこんにな騒ぐことはないと思うのであります。その点についてどうでございますか。
  116. 山田久就

    山田国務大臣 全くお話しのとおりでございまして、われわれとしては、話し合いの継続はこっちが進んで考えているところでございますから、したがって、そういう形でのことについては、今度はあんな形になったことは非常に残念なことでございまして、むしろ進んでこういう形ならということ、お説のとおりひとつ十分先方に通ずるようにして、そして所期の実りある成果を得る、その道を開くことをひとつ努力いたしたいと思います。
  117. 中井洽

    ○中井委員 先ほどの坂口先生への御答弁の中にもあったようでありますが、進んで会うという呼びかけをしてもいいというようなことでもございます。いまの御答弁もございます。ぜひとも話し合いのルールというものを合意していただいて、そしてその中でいつでも環境庁患者さんとか話し合えるというような方法をしていただきたい。とにかく、こういった初歩的なと言えば大変失礼ですが、民主主義の初めのところから騒いでいるようでは一向進まないし、問題がいやな方向へそれてしまう、私はそれを恐れるわけであります。ぜひお願いを申し上げます。  それと同時に、ああいう形で強制撤去をされた、私はいろいろと議論はあると思うのでありますが、その裏にはやはり環境庁自体として、この水俣病の対策について、たとえばチッソの不安、チッソが倒産をしないか、そして倒産をしたときには支払えないのじゃないか、こういった不安に対する何らかの対策、あるいはいま一番問題となっております認定患者さんがたくさんたまっておる、これを早期に認定をしていく方法、何らか方向が見出された、そういう自信のもとに手続を踏まれて強制撤去をされたんだというふうに私は理解をしておりますが、その点について環境庁どうでございますか。
  118. 信澤清

    信澤政府委員 チッソをどうするかという問題と、ただいまお話しの、先生のお言葉をかりれば強制撤去とは直接にはかかわりはない問題と私考えます。  まずチッソの問題でございますか、私どもの考え方は、チッソそのものの救済をということじゃございませんで、患者の補償を補償協定に基づいてきちっと履行してもらう、それから同時に、地元におきますチッソの水俣工場を存続させることによっていたずらなる社会不安を起こさない、この二つの観点からチッソの問題を考えておるわけでございまして、この問題につきましては、私どもだけでできませんので、通産省と当面よく相談しておりまして、さらに目下財政当局にも幾つかの案についてそれぞれ御意見を伺っておる、こういう段階でございます。  それから、認定促進の問題は、これはあるいは部長から申し上げた方がよろしいかと思いますが、いずれにいたしましても、昨年十月から、昨年の閣僚協に基づく新しい一歩前進した措置をとっておるわけでございますから、少しその様子を見ながら、なお改善の余地があるかどうか、こういう問題についてはこれまた別途事務的には詰めておるところでございます。
  119. 中井洽

    ○中井委員 私が申し上げたのは、信澤さん、違うのです。そういう形で患者さんたちが来られる、手続とかそういったことについてはともかく、来られる。それを環境庁としては、手続どおり十分話し合いをしようということをしながらも、いろいろなことがあって、しかも手続的にきちっと強制撤去をしていただいたんだ、こういうことであります。それの是非は私は言いません。しかし、世論の動向として、たとえばいまの水俣病に対して環境庁はここまでやっておるんだぞ、ここまで努力をしているのだ、それは患者さんにも十分伝えたし、それから世論にも伝えてあるのだ、そういうことでなければ、強制撤去をした、法的には何にも間違いございませんだけでは世論が硬直化をするのじゃないか。したがって、そういったことは十分患者さんにも、こういう方向で進んでおるという話が伝わっているのか、あるいは熊本やらとも十分な打ち合わせができておって前進をしておるのか、こういうことを聞いたわけであります。
  120. 信澤清

    信澤政府委員 私が直接患者と会っておりませんので必ずしも十分でないかもしれませんが、いまお話しのような問題をお互いに話し合おうということをこちらから申したわけでございますが、どちらかと申せば基本的な原則論を向こうはおっしゃっておって、そして細かい話に入れなかったというのが実情のように承知いたしております。
  121. 中井洽

    ○中井委員 それでは時間の関係もございますし、ほかの健康被害補償法について幾つかお尋ねをしたいと思います。  公害健康被害補償法の基本というものが民事責任を踏まえた補償制度である、このことについては基本的にはまだ相変わらず間違いがないと思うのでありますが、どうでございますか。
  122. 山本宜正

    ○山本(宜)政府委員 現在の健康被害補償法ができる前に、特別措置法として医療費の給付を行う法律がつくってございましたが、本法にはさらに補償給付という点が加わったわけでございます。歴史的に本法に至るまでの背景を見ますと、当時、四日市裁判、水俣裁判等いろいろな健害被害をめぐる民事裁判がございまして、そういった意味から民事訴訟というものを踏まえた現在の補償制度ができている、かようになっているところでございます。
  123. 中井洽

    ○中井委員 そうしますと、たとえば第一種地域に係る費用の移動発生源、固定発生源、この費用の負担の割合、こういうものがほぼ民事責任を踏まえた補償の割合、これを反映しているものと考えてよろしゅうございますか。
  124. 山本宜正

    ○山本(宜)政府委員 厳密にお尋ねのとおりでございますと、地域ごとにこういった制度の収支が合うような形で成り立ち得るわけでございますが、大気汚染というものを見てまいりますと、全国的にこの費用を負担させた方がよろしいというような御意見もございまして、費用の賦課につきましても、全国を一本といたしまして、指定地域内と指定地域外とにつきましては差を設けたりしておりますが、自動車等移動発生源等につきましては、全国を一律とした考え方で制度が組まれているという状況でございます。
  125. 中井洽

    ○中井委員 大変初歩的な質問で悪いのですが、そうしますと、この公費部分というのは、責任という形から言えば何に当たるわけでありますか。
  126. 信澤清

    信澤政府委員 やや法律的な問題でございますから、私から若干申し上げたいと思います。  お話しのように、民事責任を踏まえた補償のてん補ということがこの法律で目的でございます。しかし、それを行政的に運営していくということについて、その部分まで汚染者であるあるいは原因者である人たちに負担させるかどうか、これは議論のあるところでございまして、たとえば他の社会保障制度等におきましても健康保険の事務費は国が補助をするというようなたてまえをとっておるわけでございますので、そのようなことを参考といたしまして、行政上必要な経費、これは公費で負担をするというたてまえをとっております。  それからもう一つ、福祉事業というものがございます。これは補償をするにとどまらず積極的に健康の回復を目指す、いわば保健行政に係る分野もあるわけでございますので、そこで公費と原因者が折半して負担をする、公費のうち国、県がそれぞれ半分、こういうたてまえをとっているわけでございます。
  127. 中井洽

    ○中井委員 そうしますと、今度の提案されました法案は、そのまま、いわゆる移動発生源、自動車の負担、五十四年度まで延ばす、こういうことであります。ということは、これは何年かたっているわけでありますが、科学的に自動車、移動発生源、固定発生源の大気汚染あるいはそれによって起こる疾病に寄与率というものかまあまあ余り変わらない、こういうことであると理解していいわけですね。
  128. 山本宜正

    ○山本(宜)政府委員 現在の補償法では、補償費並びに治療費等につきましては、発生者負担の原則というものを踏まえまして、汚染原因者から負担をしてもらう、かような形になっておりまして、その中で特に工場、事業場等固定発生源につきましては、ある一定規模以上の煙突の排出量に賦課をいたしております。また、自動車の排気ガスによる汚染というものも見過せない。固定発生源八に対して移動発生源の汚染負荷量が約二であるということから、八対二の割合で自動車からも負担をしてもらうという原則に立ちまして、しかしながら、自動車からの負担の仕方につきましては、いろいろな賦課の方法があるわけでございますけれども、現状といたしましては、徴収技術あるいは徴収コストというような点も含めまして考えて、自動車重量税というものから引き当てるという方式をとっておるわけでございます。
  129. 中井洽

    ○中井委員 私どももこの法案改正に別に反対なわけではなく、賛成でありますからあれでありますが、どうも自動車の重量税のところで、民事責任を踏まえた補償制度というのとぶつかり合うわけであります。いろいろお考えをいただいて、徴収コスト等から、重量税以外にないじゃないかということでおやりになるようでありますが、たとえばいま一種指定地域は三十九カ所ある。そうすると、その三十九カ所における固定発生源、移動発生源の寄与率というのはわかるわけでございます。そうすると、その三十九カ所だけの自動車というか、移動発生源の寄与率というのはもう少し高いのじゃないか、たとえば二〇%よりか高いのじゃないか、あるいは全国平均とほぼ同じなのか、そこのところはどうでございましょう。
  130. 信澤清

    信澤政府委員 先ほど先生のお話の公費というものを、実は先生の御質問の意味を十分理解しないで申し上げたわけでございます。と申しますのは、今回御提案をしておりますのは、重量税から引き当てる、したがって一般会計から支出をする、その点を先生は問題にされているということはいまのお話を伺ってわかったわけでございまして、これはあくまで重量税と申しますものの性格上……(中井委員「いや違うのです。さっきのでいいのです」と呼ぶ)それでは、その点はあれしたいと思います。  それから、法律の性格でございますが、基本的には民事責任を踏まえております。同時に共同責任という考え方をこの法律はとっておるわけでございます。したがって、疾病と排出との間に直接責任関係がない場合であっても、いわば共同責任を負うという立場から全国的に拠出をさせるあるいは賦課する、こういうたてまえをとっておるわけでございます。したがって、いまお話しのように、指定をされております個々具体的な地域を見ますと、そこにおける疾病の発生と汚染者の負担とが必ずしも均衡してない、こういう問題が出てくるわけでございますが、これはできるだけ均衡させることを図りながら、やはり反面共同責任だというたてまえを貫かざるを得ないということで今日のような姿になっておるという問題がございます。  なお、自動車につきましては、移動の状況等を十分把握できないという問題がございますので、いわば技術的に困難な面がありますので、できるだけ汚染者負担の原則に近い、しかも共同責任というたてまえを貫きながらいままで運用してきたものでございまして、この点は将来、なおさらに検討すべき問題だと考えます。
  131. 中井洽

    ○中井委員 私がお尋ねしていますのは、別にどうやこうや言っているわけじゃない。三十九カ所の一種指定地域で、たとえば汚染度をはかる、固定発生源というのは大体わかるわけです。その残りをほぼ——ほぼというのもおかしいてすか、移動発生源として寄与するものだとして計算したら、全国平均より高くなりますか、低くなりますか、こう聞いているわけです。
  132. 山本宜正

    ○山本(宜)政府委員 先生のお尋ねに正確にお答えできる資料を実は持ってないわけでございますが、全国の汚染全体として固定発生源と移動発生源とを比べてみて、それが八対二である、これは御承知のとおりでございます。それを地域に戻して、指定地域内でどうであろうかということにつきましては、御承知のように現在の自動車重量税というのは、登録されているところの、俗にいわゆる車検と言っております車体検査のたびごとにそれぞれの重量に応じて賦課されておりますので、きちんとしたところが出てこないわけでございますが、およその推定をいたしますと、指定地域内だけについてみますと、確かに、固定発生源が大きくて自動車の登録台数の少ないところ、たとえて申しますと千葉であるとかいうようなところは、当然のことながら自動車の方から負担している分が少なくなり、固定発生源の方から負担しているのが大きくなるというような現象はあろうかと思いますが、推定でございまして、余り正確な状況は把握しておらないわけでございます。
  133. 中井洽

    ○中井委員 それでは違う観点からお尋ねをいたします。  昨年一年間で、たとえば第一種地域で認定された患者さんはどのぐらいおられますか。
  134. 山本宜正

    ○山本(宜)政府委員 ちょっと、少し後にお答えさしていただきます。
  135. 中井洽

    ○中井委員 それでは三十九地区ですね、軒並み大気汚染の状況というものはよくなっているというのか、改善をされておりますか。
  136. 山本宜正

    ○山本(宜)政府委員 地域ごとにそれぞれ若干の差はございますか、全体といたしましては、硫黄酸化物につきましては改善を見ておりますし、特に先生の地元でございます四日市、川崎等におきまして大変著しい改善かなされておるわけでございます。
  137. 中井洽

    ○中井委員 人数はわかりましたか。
  138. 山本宜正

    ○山本(宜)政府委員 いまお尋ねの五十一年の一月から十二月までの新規の認定患者数は約二万二千名弱でございます。
  139. 中井洽

    ○中井委員 五十二年はどうですか。
  140. 山本宜正

    ○山本(宜)政府委員 五十二年につきましては、一月から九月までのはございますが、九カ月分でございますのでちょっと比較性がないかと思いますけれども、一万一千五百ぐらいでございます。
  141. 中井洽

    ○中井委員 そうしますと、私もはっきりと考えをまとめて聞いているのじゃなしに、まことに申しわけないわけでありますが、たとえば指定をされておる三十九地区で、そこの患者さんのいわゆる補償というものを、固定発生源と自動車、自動車の場合には特に全国の八対二の責任と、それから共同責任と二つの面で全国の重量税の中から取っていく、こういうことであります。そうしますと、そちらの形ではなるほどわりあい公平に責任者に持たしていくということです。しかし、それならその三十九地区以外のいわゆる気管支系の患者さんたちが何かばかばかしいじゃないかという話になりはせぬか、それは変な言い方じゃなしに、そういう気が私はいたします。  そういう観点からいたしますと、私どもが聞いている範囲では、この制度ができて、あるいは総量規制というものが行われて以来、大気汚染というものがずいぶん改善をされてきた、自動車も、排ガス対策については、五十三年規制等、かなり思い切った規制をしてきておる。それにもかかわらず、いまざっと聞かしていただいただけでありますが、患者さんだって五十一年から五十二年にかけてそういった状態。そうすると、指定地域と指定地域外で少し不公平な面があるのじゃないか、こういった病気に悩まされている人たちにとって不公平感があるのじゃないか。あるいは逆に、この三十九の指定地域の中で、過日も問題になりましたけれども、認定率が一〇〇%のところもあれば八〇%のところもある、こういった形ではなかなか公平感ということから見て納得がいかない点があるのじゃないかと思うわけでありますが、どうですか。
  142. 山本宜正

    ○山本(宜)政府委員 先生御承知のように、この第一種の疾病と申しますのは四つの疾病がございます。これは大気汚染の原因によって起こるもの、あるいはそれによって増悪されるものもございますが、ほかの原因によって起こることもあるわけでございまして、そういう意味で非特異的な疾病といっているわけでございます。したがって、指定地域内におきましては、ほかの原因によって起こる四疾病も公害病として認定されて扱われる。臨床診断の上ではこれを差別して診断することはできない状況でございますので、それを中に含めている。したがいまして、地域を指定する場合には大気の著しい汚染とこれらの疾病の多発が予見されるようなデータを見まして地域指定をしているというようなことでございまして、それ以外の地域におきますところでのものを省いておるわけでございます。この辺は非特異的疾患の一つの宿命を制度の中に踏まえてつくってあるところでございます。  また、お尋ねの、地域ごとに認定状況を見てまいりますと、認定率と俗に申しますか、必ずしも一定ではございませんし、地域で差がございます。これを少し分析してまいりますと、各地域の汚染の態様が違う、汚染のひどいところもございますし、汚染の軽かったところも最近では地域指定になっております。そういった点もあると思いますし、また地域指定をした後、その後の時間的経過、たとえば四日市、川崎等のように旧法時代から指定を受けておったところにおきましては、最近の新発生率というのは大変減っております。しかしながら、地域指定が最近になってなされたところにおきましては逆にふえているというようなこともございまして、この制度に対する熟度というようなものも一つの要因として考えられると思っておるわけでございます。  また この認定の仕方につきまして、地域ごとに何か差があるのではないかというお尋ねなり御疑問がおありかと思いますけれども、これらにつきましては、私ども、中央公害対策審議会の答申を踏まえまして指導通知を出しておりますし、また認定審査に当たっていただく先生方の全国会議あるいはブロック会議、こういったような会議を催すことによって私どもの見解も伝えるとともに、先生方の日ごろのいろいろな問題点、御苦心の点というものも御披瀝いただきまして、地域ごとの認定の医学的な判断についての格差がないように指導をしているところでございます。
  143. 中井洽

    ○中井委員 制度自体、私どももこれが一番いいと考えているわけじゃありません。そうかといって、これよりかいい制度というのもなかなか、たとえば重量税以外からどういうふうな形で補償を取っていくかわからない状態であります。むずかしいとは思いますか、まあまあ不公平感の出ないような形で制度そのもの検討をしていただきたいと思うわけであります。  たとえば、重量税から取ればある程度公平だ、取りやすい、こうおっしゃいますけれども、排ガス規制を完全にしてある車、それと排ガス規制を全然していない中古車、そういったものは、同じ重量であるならば同じ重量税を払っているわけです。その個人にとりましては同じ負担である。私は大変な不公平だと思う。そういった点からも、きょうは大蔵省を呼ぶのを忘れたのでありますが、たとえば排ガス規制をきちっと完備した車の重量税を安くするなんていうことは、私はあっていいと思うのです。そういった形での制度の充実というものに対して、一層御努力をいただきますようにお願いをいたしまして、質問を終わります。
  144. 久保等

    久保委員長 工藤晃君。
  145. 工藤晃

    ○工藤(晃)委員(新自) 公害健康被害補償法の一部を改正する法律案に関連いたしまして、本日は環境庁の方にポイント一つだけをお聞きし、また御見解をお願いしたいと思います。  ただいま行われておりますこの健康被害を補償する考え方の中に、国定発生源と移動発生源、これの負担を八対二で求めているということでございます。その原資は、移動発生源の場合には自動車重量税から引き当てていく、こういう考え方でございますけれども、本来公害を発生するパターンは、主として石油という、こういう燃料を使用する過程において公害が結果的に出てくるということでございますので、だれが負担をどのようにするかという問題についてはいままで十分討議をされたことだろうと思いますが、この意見についてもいろいろ分かれるところもあろうかというふうに考えるわけでございます。わが国においては、こういうふうな形で一応健康被害を補償していこうということになっているようでございますけれども、しかしながら、こういう形で健康被害を補償すればいいのだという考え方では困ると思うわけでございまして、石油を輸入し、あるいはそれを精製し、あるいは販売をし、あるいはまたそれを燃料としていろいろな形で最終的に公害を出してくる、こういう過程の皆さん方がやはりそれに対する何らかの責任感じていただかなければならないということはもう当然でございます。ただ、この原資をどのように求めていくかということについては、この二法が日本ではとられているととらえているわけですけれども、しかし、これはあくまでも後追い政策だろうというふうに考えているわけなんであります。常にこういうものを後追い的に補償していったところで公害被害を減少さすことにはならない。逆に言えば、そういうすべての過程においてそういう被害を出さないような、公害を出さないような研究開発努力が積極的に推進されていかなければならない。本来言えば、こういう健康被害補償制度なんというものが利用されないで、制度だけが残っている方がいいわけでありますから、そういう意味においては、一方においては十分そういう積極的な公害対策を推進しなければならないというふうに考えるわけでその点について総括的に環境庁の今後の御見解を承りたい、かように思うわけです。
  146. 信澤清

    信澤政府委員 公害の発生した後の始末をするということが私どもの仕事の一つでございますけれども、本来的には公害が起きないようにする。先生お話しのように、未然にこれを防止するということにむしろ私どもの努力はさらに向けられなければならぬ、基本的にはそのように考えております。
  147. 工藤晃

    ○工藤(晃)委員(新自) そういうふうな基本的なお考えを承りますと同時に、それを具体的に施策の中に盛っていっていただかなければならない、かように考えるわけでございまして、その一つの提案でございます。きょうはこの一点にしぼって環境庁にいろいろと御意見のあるところを承っていきたい、かように思うわけです。  まず、石油を輸入し、またはそれを精製する業者、あるいはそれを大口販売する業者、こういう業者はいわば汚染物質を販売しているわけですから、こういうところへいまのような発想で、自分の売る商品の中から公害発生源が主に販売されていくというふうに考えていいわけですから、そういうものの中からそういうものを取り除いていく、あるいは予防し、あるいは発生を防いでいく、こういう技術開発が積極的に行われているかどうか、そういう点をまず第一番にお聞きをしたいと思います。
  148. 山本宜正

    ○山本(宜)政府委員 先生のお尋ねの、石油に一つ着目をして何らかの形で金員を取ったらどうだろうか、こういうことでございますけれども、実はこの制度の中で、特に自動車に着目してどのような賦課をしたらよろしいかということにつきまして大別いたしますと、自動車に対する賦課金でやる方法、それから既存の税制度から引き当てる方式というように大別されますし、また、その中をいろいろな形で約十数種類の方法について検討いたしました。  石油だけに着目いたしまして賦課いたしましたときには、問題点として一、二ございます。一つは、石油以外の燃料、たとえばプロパンとかなんとか、ああいうような石油以外の燃料を使っている移動発生源に対する賦課が落ちる。それからまた、御承知のようにその税制が物によりましては地方税であったりするというようなことから、徴収するのにいろいろむずかしい点があるというようなことなどがございまして現在のところに落ちついた、かように聞いておるわけでございます。
  149. 工藤晃

    ○工藤(晃)委員(新自) 石油以外の発生源と石油から出す発生源の比率は比較にならないほど石油が大きいと私は思うのです。だから、もし問題解決を積極的にするとすれば、石油発生源を中心に物を考えなければ、その比率で九九対一という比率があったと仮定しまして、一に着目していたのでは九九に対する解決は何もできない。であるから、逆に言えば、積極的にそういう解決をするという目的からは逸脱してしまうのではないかという考え方を持つわけでございまして、私が先ほど申しましたのは、そういうことに対して環境庁としては、そういうことをぜひ今後ともに具体的にやらなければならぬというふうに考えていらっしゃるのか、あるいはまた、いやもういまの現状のままでいいんだ、あるいはまた、現状のままやっていっても公害はどんどん日本の科学技術が進歩するから自然に減ってくるだろうというふうな、要するに自然に減少するだろうということを期待する、そういう程度にとどめていらっしゃるのか、あるいはまた、科学技術の発達、進歩というものをもっともっと積極的にやらなければいかぬというふうに、こういう部門に対してお考えになっていらっしゃるのかという点を私はお聞きしたかったわけです。
  150. 信澤清

    信澤政府委員 今回御審議いただいておりますのが公害健康被害の問題でございますので、やはり当面健康被害については、直接汚染物質を排出するというものがあるわけでございまして、そういう企業なり何なりの民事責任とのかかわり合いにおいてこの法律が組み立てられております。したがって、先ほど来部長が申し上げたような御答弁になるわけでございますが、基本的な問題として、この制度についても使用燃料、特に石油に着目して、そして財源の負担を求めるべきではないか、こういう御意見はあり得るし、また私どもも議論をしてきたわけでございます。さような意味で、先生御提案にかかわる使用燃料、特に石油に着目してそこから財源を出したらどうか、あるいはもっと広い意味公害対策をそういうものを財源にして進めていく、研究開発を含めてでございますが、そういう御所見であろうかと思います。  これは私ども過去においても検討してまいりましたが、御提案の御趣旨のようなことも広い意味で長期的な問題として検討する必要があるのではないか、このように思うわけでございます。ただ、いままで検討いたしました過程から申しますと、特に公害健康被害とのかかわり合いにおいては、いわゆる汚染物質というものが必ずしも石油の成分、使用燃料の成分と直接にかかわりのない部分がございます。SO2を初めとするSOxの問題については、石油の成分と非常に深いつながりがあることは申すまでもありません。しかし、窒素酸化物になりますと、これは石油の成分も問題でございますが、温度、つまり高温を発するところには必ずNOが出るわけでございますから、温度の問題あるいは燃焼方法の問題ということがあるわけでございまして、そちらの方の工夫をしない限りいろいろな排出規制を行うことは困難だというように私は専門家から聞いておるわけでございます。したがって、いろいろ工夫をしなければなりませんが、その根っこにある使用燃料について、さらに公害対策の見地からもろもろの研究を進め、またその段階公害防除を図るべきだ、こういう御意見は当然あり得ると思いますし、そういう観点に立っての研究も進めていきたい、こういうように思うわけでございます。
  151. 工藤晃

    ○工藤(晃)委員(新自) どういう因果関係があって公害が出るにしろ、その燃料を使用しているから出るわけですから、そういう中において、これはたとえば温度が関係するからこういうものが出てくるんだ、たとえば窒素酸化物がふえてくるんだということであっても、使う燃料そのものから何かの利益を生み出していくわけで、また、その燃料を売る商売はそれを目的に利益を得ているわけです。そういう意味で、やはりこういう問題の解決というのは、後追い政策で、健康被害が出たからそれを補償するという考え方に甘んじていただいたのでは困るわけで、そういう公害そのものの発生を防止できるあらゆる手段を総合的に解決していくという考え方が一番必要なのじゃないかという考え方から私は申し上げているわけです。  それにつきまして、実は、たとえば大きくその責任感じていただかなければならない石油輸入業者あるいは石油精製業者、あるいはまたそれを販売する大きな企業、そういうものがそれでは自己のそういう公害に対する責任をどういう形で負っているかというと、要するに、ただいまの健康被害補償法の原資を、自分のところの精製過程において実際の公害を出したものに比例した——要するによその企業と何ら変わりのない基準でしか責任を負うていないという現状のようでございます。その点はどうですか。
  152. 信澤清

    信澤政府委員 御意見はよくわかりますし、私どもも研究をしてまいったわけでございます。そこで、先ほど申し上げたような問題のほかに、確かに燃料を売っているあるいは輸入しているという立場の方々の責任というものは当然あると思います。問題は、その結果、石油を使って事業活動を営んでいる、こういう方々のいわば公害防止努力をどのように反映させるか。つまり、その段階で全く施策を講ずるなという御趣旨じゃないと思いますから、それ相応のことを石油の輸入業者なり精製業者なり販売業者がやった後、今度は使用者である事業についてまた格別の公害防除措置を要求する等公害防除の努力要求するたてまえの制度ができないわけじゃありません。ありませんが、全くそれで切り離してしまうということは、やはり燃料を使う人たち公害に対する努力というものを的確には反映できないおそれがあるのではないか、こういうような考え方もございます。ただし、現在でもいわゆる石油脱硫という形で石油の段階で脱硫をする、低硫黄の石油を供給するということはいたしているわけでございます。
  153. 工藤晃

    ○工藤(晃)委員(新自) 私が申し上げたいのは、たとえば車の、移動発生源の消費者のその公害に対する責任よりも、要するにそういう公害を売り込んでいる企業がその責任の重さを、社会的に責任をどういうふうにとられるかということになれば、やはりそれを専門に売ることによって利益を得ている企業の方が責任を重く感じてもらわなければならぬじゃないかというふうに私は感じるわけです。だから、そういう意味におきまして、逆にそういうところが企業的責任を制度の上で何ら負うていないという現状に対して私は批判をしたいという考え方が一つございます。  それからもう一つは、総合的にそういう健康被害補償制度を促進しなければならぬということは、逆に言えばこれは不幸なことであって、そういうものが利用されないような社会を生み出すために必要なことは、くどいようですが、総合的な科学技術の進歩、発展というものに期待をし、あるいはまたそれを促進、助成していくという積極的姿勢が国としてもなされなければならないのではないか。そういうふうな考え方から、それではそういうものを具体的にどう促進させればいいかということになれば、先ほど申し上げましたような、そういう発生源を販売しているところに余りにもそういう責任論が制度上つくられていないということから、やはり企業の利益の一部をそういう研究開発あるいはまた学問の進歩のために有効であろうところへ再配分をしていくというか、社会的還元をしていくということを具体的に環境庁が指示、あるいは制度をつくる、そういう財源を求めて再配分をしていくというお考えはあるかないかというのがきょうの私の質問の要旨でございます。それについて……。
  154. 橋本道夫

    橋本(道)政府委員 補償法の関連のことは環境保健部と企画調整局でお答えになりますが、いまの先生のお話をずっとお伺いしておりますと、石油業者の持つ責務ということと技術開発ということを結びつけて御議論なさっているように思います。そういう点で申しますと、公害対策基本法の三条で「事業者の責務」というのがございまして、その中に直接自分が排出する事業者としての責務と、ある物を製造することによってそれが使用されることによって伴う公害をなるべく少なくするようにする、この二つの責務がございます。そういう意味で、補償法の問題は別にしまして、公害対策基本法では両者の責務がかかっております。  石油業者について申しますと、石油業者は直接自分が排出するものに対する責任、これは当然であります。それからもう一つは、間接の責任はどうやってやっているかと申しますと、日本はこれもまた最も世界で進んでいるわけでございまして、重油脱硫装置というのか四十一基ございます。日本のは、そういうことでこの重油脱硫装置を動かし、また原重油関税の還付を受けたものを排煙脱硫に回すという形のものをやっておりまして、その排煙脱硫装置というのは千三十三基ございます。現在そういうことで、硫黄酸化物対策としては実は最も進んでいる形でございまして、現在の技術開発で問題になるのは何かと言いますと、むしろ窒素酸化物の方でございます。それは軽質化という方向に入ってまいりまして、これは現在技術があるというものにつきまして石油業界も約一兆五千億円ばかりを六十年までに軽質化に使うということに入っておりますし、そういう点では、その中でのさらに問題は、石油の中にある窒素分を抜くという技術の方に、通産省のエネルギーの方でもこれは指摘しております。これはいま新しい施設としてかなり抜くものがあらわれてまいりました。ただ、もう少しコストを下げてよくしなければならないということで、環境庁は直接関与をしておりませんが、石油業界としては、そういう意味での対策としては、補償法は別にいたしまして、きわめて先進的なことをやっているということは御理解を願いたいと思います。
  155. 工藤晃

    ○工藤(晃)委員(新自) 一部理解をいたします。もちろん企業内努力によってなされている部分か大部分だろうと思いますけれども。学問の進歩というのは、やはりそこに要求がある、あるいはまたそれをなさねばならないという宿命に至ったときに開発をされ、進歩するものだと思うのです。そういう意味において企業内努力を期待するのはあたりまえのことであって、それをやっていなければとんでもない話で、逆に言えば、それは経営の努力が足りないと言って叱責されなければならない。だからそういう意味において、世界的にそういう部分か進歩しているということは大いに結構でございますけれども、それで十分ということではないのであって、より進歩させなければならないし、またそういうことについて総合的に研究開発をしていかなければならぬ場合には企業内努力だけでは足りない、かように思うわけです。ですから、たとえばそういう原資を企業責任という立場から積極的に出していただいて、そういうものを基金に積み立てておいて、すべての官公私立の、あるいは研究機関でも結構です。大学でも研究所でも企業内の研究所でもいいのですけれども、そういうところでいい仕事をされているところへは、どんどん補助金を出してあげるなりあるいはその研究開発を促進させるために援助をしてあげる、原資として行くような考え方が生まれてきていいんじゃないか、こういうふうに私は思うわけで、そういうことについて周辺の問題を質問してきたわけでございます。  ですから、私が申し上げたいのは、そういうものを何らかの形でそういうふうに積み上げていかなければ、二十一世紀へかけての日本の産業の構造の変化にもこれは大いに寄与することですし、こういうことを努力しなければ日本の産業構造の変化にも対応できないということですから、そういうところへは、積極的にその責任を果たそうという意欲を燃やしてもらって、それにみぞを掘ってそこへ水が流れてくるようにしていただきたい。これが日本の科学技術の将来のためにも大変必要なことだろう。それで、無公害な産業をこれからもどんどん発展させなければならないし、あるいはまた、その結果生まれてきたいろいろな機械は、逆に世界へ輸出することによって、日本だけではない、世界の公害の防止にも大きく寄与できるということから、やはり研究開発のために金をかけなければならない。やはり知性の開発のためには、無形のものにもつともっと金をかけていくという姿勢がなければならない。そういう点についていま、そういうものの発想がないとすれば、ぜひそういうところへ金をかけるという考え方を特ってもらいたい。これか私の考え方でございます。  そういう意味において、この一点、最後に大臣から総合的にお答えをちょうだいしたいと思いますけれども、その前にお聞きしたいのは、いまもおっしゃいましたように、今後の公害防止対策の一つに、脱硝装置を開発していかなければならない、窒素酸化物の低下を図っていく、その中でも主として固定発生源の窒素酸化物の低下を図るということが一つの大きなポイントになっているようでございます。そういうものについて関連してお聞きいたしますけれども、日本の石油精製メーカーの中で脱硝装置をつけているところは大体何カ所あるのですかということが一つ。それから、私が聞き及ぶところによっては、脱硝装置はいま日本で四十基ぐらいセットされているそうですが、その中で石油精製メーカーがセットした台数は何台くらいで、その普及率は何%くらいあるのか、それについて具体的にお答えをいただきたい、かように思います。
  156. 橋本道夫

    橋本(道)政府委員 脱硝の五十二年の数字はいま集めておりますので、いまありますのは五十一年度の末の数字でございますが、実用化の大規模脱硝は三十五基入っております。それからテストの形のか約五十基入っております。この分類は、実は発生施設の型で統計を持っておりますので、どれだけが石油かというのは、ちょっといますぐには申しかねます。ただ、明確に石油であるというのは、石油加熱炉というのがございまして、これが五基ございます。これはフルスケールのものが入っております。そういうことで、石油関係の脱硝につきましては相当積極的なものがある。  それからもう一つ、研究組合ですが、これはいま、残念ながら石油についての研究組合はよく存じませんが、現在、鉄鋼であれガラスであれ窯業であれ、みんな研究組合を組みまして、そこで非常に積極的な脱硝技術の開発をしておるというのが実態でございます。それに対しまして政府は、研究費に対する税制上の優遇措置を持っておるという形でやっておるわけであります。  先生のお尋ねに、正確に石油が幾つかということをお答えはできませんが、石油加熱炉の五基は明確な一つの事例でございます。
  157. 工藤晃

    ○工藤(晃)委員(新自) 私がいまお聞きしましたのは、その脱硝装置が石油精製メーカーの中で何%くらい普及しているかによって、石油精製メーカーのそういう公害に対する認識程度は類推できるのではないか、かように考えたからでございます。ですから、これはひとつはっきりと数字を調べて出してください。少なくともそういう公害を売り込む商人が、自分のところの石油の装置をまだつけていないというようなところがあったとすれば、これは大変な怠慢だと私は思うのです。だから少なくとも、その効果がどうあれ、最低限いまの科学技術の最高峰で予防していく、発生を防止していくという企業責任をこの際はっきり認識してもらわなければならぬ。同時に、先ほどから申し上げているように、積極的にそういう学問の進歩のために、技術開発のために、利益の一部を還元してもらわなければならぬ。こういう二点について、最後に私は、文書でひとつその数字を出していただきたい、かように思います。  時間が参りますので、私がいま申し上げたように、そういう原因を生み出しながら利益を計上している企業に対して、こういう公害責任は私のところはこれだけだというのじゃなくて、日本の学問の進歩のために積極的に金を出していくという制度をつくってもらって、逆に言えば、怠けているところからは金をたくさん取る、一生懸命やっているところには金をつぎ込むという再配分について積極的に公害関係行政官庁が努力をしてもらう、そういう窓口になってもらわなければならぬ、こういうように考えていることについて、最後に総括的に大臣から御返答をいただきたいと思います。
  158. 山田久就

    山田国務大臣 この公害の防除ということは、実にみんなが国家的に考えていかなければいかぬ。ことに、これは技術革新というものと相まって、より効果的な結果が得られるわけでございますから、そういうような点について、いま御指摘のございましたような問題を含めて、ひとつわれわれとしては十分検討しなければならぬ問題だと思いますので研究してまいりたい、こう考えるような次第でございます。
  159. 工藤晃

    ○工藤(晃)委員(新自) 研究をしていただくのじゃなくて、やってもらわなければ困るから申し上げているので、その点研究するというのは、学問を研究してもらうのであって、われわれは、そういうことについて学問の進歩をやっていただくために具体的に制度をつくってもらえぬだろうか、あるいはまたそういうことについて、制度でなくてもいい、何かそこに発想を持って具体的なそういう学問の進歩を期待できるような行政をやってもらえぬかと申し上げているのです。大臣、ひとつその点……。
  160. 山田久就

    山田国務大臣 私のお答えしましたのは、その点についての制度化というようなこと、これは私のところひとりでできる問題でもございませんが、御指摘の点は制度の問題として考え検討してまいりたい、こう申し上げた次第でございます。
  161. 工藤晃

    ○工藤(晃)委員(新自) それでは、先ほどの問題に返りまして、石油精製業者すら、もし、今後公害対策の大きなポイントになるであろう窒素酸化物の除去について脱硝装置をつけていないとすれば、これは大変大きな問題を私は世の中に提起すると思います。その程度の認識しかないという裏づけでございますから。あるいはまた、もしそういうことについて、つけたくてもつけられないんだというのならば、各企業からつけられない理由を提示してもらわなければならぬと考えますので、最後に大臣、これは企業責任というものを形にあらわす材料ですから、ひとつぜひ、そういうものは、もし普及していない場合には普及させる努力を具体的に環境庁はやっていただかなければならぬと思います。それについてお答えをいただきたい。
  162. 山田久就

    山田国務大臣 御趣旨よくわかります。ひとつ努力いたしたいと思います。
  163. 工藤晃

    ○工藤(晃)委員(新自) それでは、私の質問はこれで終わりますが、ひとつその数字については必ず御報告いただきたい。
  164. 久保等

    久保委員長 これにて本案に対する質疑は終了いたしました。     —————————————
  165. 久保等

    久保委員長 ただいま委員長の手元に、東中光雄君より本案に対する修正案が提出されております。  提出者より趣旨の説明を求めます。東中光雄君。     —————————————  公害健康被害補償法の一部を改正する法律案に対する修正案     〔本号末尾に掲載〕     —————————————
  166. 東中光雄

    ○東中委員 私は、日本共産党・革新共同を代表して、公害健康被害補償法の一部を改正する法律案に対する私たちの修正案の提案理由と、その説明を行います。  原案は、補償費等の一部に充てるため、自動車重量税の収入見込み額の一部に相当する金額を交付するという四十九年度以来の臨時措置を五十一年に続き、再び二年間延長するというものであります。  私たちは、この臨時措置を決めた四十九年、五十一年の過去二回の審議において、こめ自動車重量税の引き当ての措置は、自動車メーカーを免罪し自動車使用者に責任を転嫁するものであること、またこれはとりもなおさず一般会計から支出される国費による補償費の負担であることを指摘し、臨時措置であってもこれに強く反対をし、修正案を提出しました。にもかかわらず、政府が本委員会の附帯決議さえ二度にわたって無視し、再びこの臨時措置の延長を行おうとするのはまことに遺憾であります。  さらに、今回のこの臨時措置の無原則的な延長は、本補償制度の持つ矛盾、すなわち窒素酸化物の排出を根拠に自動車の補償費負担を決めながらこの窒素酸化物を地域指定の要件としないという矛盾を固定化するものです。この矛盾は、一方で窒素酸化物を地域指定要件としないことで多くの患者を切り捨て、他方で自動車の窒素酸化物の排出を理由に補償費の二割が自動車重量税から支出され、公害企業を二重に利するものとなっています。  以上の理由から、制度発足以来の問題である公害保健福祉事業等にある公費負担の解消を含め、窒素酸化物を地域指定要件とし、公害患者の不当な切り捨てをなくし、また自動車メーカーの補償責任を明確にする修正案を提出する次第であります。  次に、修正案の概要を御説明いたします。  第一は、補償費等の一部に充てるため、五十三年度、五十四年度の臨時措置として、輸入業者を含む自動車メーカーから賦課金を徴収することとし、その賦課金額は、自動車の種別総排気量、汚染物質の排出量等を勘案して政令で定める金額に出荷台数を乗じて算定するという点であります。  第二は、ばい煙発生施設等設置者に対する汚染負荷量賦課金の賦課対象物質に硫黄酸化物とともに窒素酸化物を法定することにより、窒素酸化物が被害発生の原因物質であることを明確にし、これを地域指定の要件とするという点であります。  第三は、公害保健福祉事業費、自治体の補償給付事務費及び公害健康被害補償協会の事務費にある公費負担を全廃し、これを企業負担とするという点であります。  以上、慎重に御審議の上、速やかに可決されるようお願いいたします。
  167. 久保等

    久保委員長 以上で修正案の趣旨説明は終わりました。     —————————————
  168. 久保等

    久保委員長 これより本案及び修正案を一括して討論に付するのでありますが、別に討論の申し出がありませんので、直ちに公害健康被害補償法の一部を改正する法律案及びこれに対する修正案について採決いたします。  まず、東中光雄君提出の修正案について採決いたします。  本修正案に賛成の諸君の起立を求めます。     〔賛成者起立〕
  169. 久保等

    久保委員長 起立少数。よって、本修正案は否決されました。  次に、原案について採決いたします。  本案に賛成の諸君の起立を求めます。     〔賛成者起立〕
  170. 久保等

    久保委員長 起立多数。よって、本案は原案のとおり可決すべきものと決しました。     —————————————
  171. 久保等

    久保委員長 次に、ただいま議決いたしました本案に対し、林義郎君、島本虎三君、坂口力君、中井洽君及び工藤晃君より附帯決議を付すべしとの動議が提出されております。  まず、提出者から趣旨の説明を求めます。林義郎君。
  172. 林義郎

    ○林(義)委員 私は、ただいま議決されました公害健康被害補償法の一部を改正する法律案に対する附帯決議案につき、自由民主党、日本社会党、公明党・国民会議、民社党及び新自由クラブを代表して、その趣旨を御説明申し上げます。  まず、案文を朗読いたします。     公害健康被害補償法の一部を改正する法律案に対する附帯決議(案)   政府は、本法の施行に当たって、次の諸点につき適切な措置を講ずべきである。  一、昭和五十五年以降における費用徴収方法については、汚染の原因者負担の原則にのつとるとともに、発生源の公害防除の努力が十分反映されることを重点においた方策の確立に努めること。  二、第一種地域における費用負担と補償給付等の地域別収支について、著しい不均衡を生じている地域があるので、費用負担が公平に行われるよう汚染負荷量賦課金の賦課料率を決定すること。  三、幹線道路周辺における大気汚染状況を改善するため、バス・トラック等の排出ガス規制をさらに一層強化するよう努めるとともに、自動車交通に関する総合的な対策の推進を図ること。  四、工場等固定発生源から排出される窒素酸化物の規制については、排出基準を一層強化するとともに、脱硝技術の開発の促進等により、総量規制方式の早期確立を図ること。  五、最近における都市型複合汚染に対処するため、窒素酸化物等についても、健康被害との因果関係を究明し、その結果に基づいて地域指定の見直しを行うこと。  六、著しい大気汚染の影響による疾病については、現に指定されたもののほか、目、鼻、咽喉等の被害及びその因果関係についても調査を実施し、その結果に基づき、指定疾病に加えること。  七、補償給付の改善を行うとともに、転地療養事業等の公害保健福祉事業の充実、強化を図ること。  八、本制度の対象となつていない騒音、振動等による健康被害及び財産被害についても、その実態の把握に努め、被害者の補償措置を早急に確立するよう検討すること。 以上でありますが、その趣旨につきましては、案文中に尽くされておりますので、説明を省略させていただきます。  何とぞ委員各位の御賛同をお願い申し上げます。(拍手)
  173. 久保等

    久保委員長 以上で趣旨の説明は終わりました。  採決いたします。  本動機に賛成の諸君の起立を求めます。     〔賛成者起立〕
  174. 久保等

    久保委員長 起立総員。よって、本案に対し附帯決議を付することに決しました。  この際、山田環境庁長官より発言を求められておりますので、これを許します。山田環境庁長官
  175. 山田久就

    山田国務大臣 ただいまの決議に対しましては、その趣旨を体して努力いたします。     —————————————
  176. 久保等

    久保委員長 お諮りいたします。  ただいま議決いたしました本案に対する委員会報告書の作成につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  177. 久保等

    久保委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決しました。     —————————————     〔報告書は附録に掲載〕     —————————————
  178. 久保等

    久保委員長 次回は、来る二十四日金曜日午前十時理事会、十時三十分より委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。     午後四時五分散会      ————◇—————