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1978-03-17 第84回国会 衆議院 公害対策並びに環境保全特別委員会 第5号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和五十三年三月十七日(金曜日)     午前十時三十三分開議  出席委員    委員長 久保  等君    理事 池田 行彦君 理事 登坂重次郎君    理事 林  義郎君 理事 島本 虎三君    理事 水田  稔君 理事 古寺  宏君    理事 中井  洽君       高村 坂彦君    西田  司君       福島 譲二君    藤本 孝雄君       岩垂寿喜男君    土井たか子君       坂口  力君    東中 光雄君       工藤  晃君  出席国務大臣         国 務 大 臣         (環境庁長官) 山田 久就君  出席政府委員         環境政務次官  大鷹 淑子君         環境庁長官官房         長       金子 太郎君         環境庁長官官房         審議官     石渡 鷹雄君         環境庁企画調整         局長      信澤  清君         環境庁企画調整         局環境保健部長 山本 宜正君         環境庁大気保全         局長      橋本 道夫君         環境庁水質保全         局長      二瓶  博君         通商産業省立地         公害局長    左近友三郎君         建設省計画局長 大富  宏君  委員外出席者         特別委員会調査         室長      綿貫 敏行君     ――――――――――――― 三月十三日  鳥獣保護及狩猟ニ関スル法律の一部を改正する  法律案内閣提出第五七号)(予) 同月十四日  東大阪市全域を公害健康被害補償法による地域  指定等に関する請願(三谷秀治君紹介)(第二  〇四二号) は本委員会に付託された。     ――――――――――――― 三月十三日  国道一号沿線交通公害防止対策推進に関する  陳情書(第二一五  号)  自然公園施設整備促進に関する陳情書  (第二一六号)  瀬戸内海環境保全恒久対策確立に関する陳情  書外一件  (第二一七  号) は本委員会に参考送付された。     ――――――――――――― 本日の会議に付した案件  参考人出頭要求に関する件  公害健康被害補償法の一部を改正する法律案(  内閣提出第九号)      ――――◇―――――
  2. 久保等

    久保委員長 これより会議を開きます。  公害健康被害補償法の一部を改正する法律案を議題とし、審査を進めます。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。島本虎三君。
  3. 島本虎三

    島本委員 大臣、きょうは公害健康被害補償法の一部を改正する法律案審議にこれから入るわけであります。この審議に入る前に、公害健康被害補償法が提案されて、そして一部改正されて、また改正されて今回出されることになったわけでありますが、なぜそういうことにならなければならないのか、このことはまことに重大なのであります。それで、二月十日金曜日ですが、本委員会大臣所信表明がありましたが、この大臣所信表明はこれは私も高く評価しておるのであります。いままでのような「応急措置的な環境保全行政から脱却して、環境汚染未然防止を図ってまいる」、ただこれは、代々の大臣も言っているのでありますが、実現されなかったのです。その結果、被害補償法がたびたび変えられるようなことになっているのであります。今度だけは大臣はこれをはっきりと実現する決意で、国民に対する約束かと言ったらそのとおりだ、こう言ったので意を強くしているのです。したがって、この「環境影響評価法制化を図るべく鋭意努力いたしておる」、この考え方はかつてないようなりっぱな所信表明だと思っております。これは、大臣としても言ったことは決してうそじゃないと思うのでありますが、国民への誓いとしてこれを受けとめておりますが、よろしゅうございますね。
  4. 山田久就

    山田国務大臣 先般も申し上げましたように、この環境影響評価というものの重要性、したがって事前にこういうものが行われるというその存在の必要というものをぜひ実現する、このことのためには私もできるだけの努力を払っていきたい。この前申し上げたとおりでございます。
  5. 島本虎三

    島本委員 公害健康被害補償法、これをやらなければならない前提は、環境影響事前評価が不完全なままで企業が立地され、そして企業活動が展開された結果であります。したがって、私は、今後やはりこういうような事前予防という問題に重点を置いて行政をつかさどるのでなければならないと思うのであります。したがって、この健康被害補償法の問題の前に、未然防止のためにはぜひ環境アセスメント法案が必要だ、また重要だ。大臣もこの点については、よく所信表明で言っているとおりであります。  しかし、巷間伝えられるところによると、一歩退却二歩退却建設関係都市計画通産関係電力にそれぞれ関係部門が手足をもぎ取られているような、こういうような報道に胸を痛めているのであります。見るも無残な姿だ。しかし環境庁としては、やはり片手片足のない不具の子供を生んで喜ぶ親はないので、五体完全にそろった子供を生んでようやく皆さんもそれで幸せがくるのでありますから、初めからわかっておいてそういうような子供を生む努力をしてはならないと思うのです。これはいまどういうようになっているのでありますか、大臣
  6. 山田久就

    山田国務大臣 いま一歩後退二歩後退というようなお話がございましたけれども、基本的な評価基準手法というもので環境庁としてなさねばならぬこと、また、そういう責任は十分に果たしていけるようにというたてまえでわれわれが努力いたしておるということは申し上げたいと思います。  現在の段階では、非常に関連する官庁が多いことは御案内のとおりであります。私としましても、関係大臣との間の一般的な話での協力は話してありまするけれども、具体的には事務段階でとにかく詰めさせてくれという事務当局の要望でもありますので、ひとつできるだけそういうことで努力するようにということでやらしており、鋭意努力しておる段階でございます。
  7. 島本虎三

    島本委員 その努力努力として延々と続いているうちに、環境アセスメント地方段階都道府県でそれぞれ進められておるのです。北海道でも、開発影響事前評価し、いわば環境破壊等未然に防ごうとする環境アセスメントについて、三月十四日に北海道議会条例案を提案しているのです。このアセスメント条例は、その対象となる開発事業としてダム、道路、空港、工業団地その他、国のアセスメント法案対象に入るかどうか環境庁通産省がいま対立していると言われておる発電所建設も含めて八種類を挙げて、評価項目大気汚染水質汚濁等公害対策基本法で定めた七つの典型公害を挙げているわけです。こういうように見ると、大臣も一生懸命やっているのでありますけれども、必要によって地方の方が先行しているというようなことになっているじゃありませんか。これも進め方についてちょっと調べましたところが、民間の企業の場合に、企業評価知事に提出する、知事はその評価審査して意見書をつくって企業に連絡する、知事は、意見書をつくるには、学識経験者でつくる審議会から意見を聞いて公聴会を開いたりして、地域住民からの意見を聞くことになっている。住民参加の道が一応確保された。ただ、このやり方全部をいいというのではありません。しかし、こういう道をつけて、国の方がやれないならばわれわれの方が必要に迫られてやらざるを得ない、まだわりあいに本州ほども汚れておらないと言われる北海道で、環境アセスメントが三月十四日に条例として提案されているのです。そして電力もその規制の中にきちっと入っているのです。こういうのを見て、環境庁長官、少しじくじたるものがございませんですか。ほかの方が必要に迫られてやっているのに、それをつかさどる大もとの環境庁がまだ折衝中である。一体やる意思があるのかないのか、これはもう姿勢そのものによることに気がつかないのでしょうか。私は、いま公害健康被害補償法に入る前に、この重大な問題についてまずひとつ、どうなっているのかを関係当局から聞きましょう。
  8. 信澤清

    信澤政府委員 ただいま大臣から御答弁申し上げましたように、政府が決めました予算関係以外の法案提出期日を過ぎているわけでございますが、私どもといたしましては、関係省庁となお事務的に詰めてみたい、また詰める必要があると考えておりますので、大臣がなおしばらく私ども折衝を見守ってほしいということを申し上げているわけでございます。  何分にも、先生指摘になりましたように、新しい発想に基づく法案でございますし、いろいろな事業対象にいたしまして、いわばそれを横断的に横に切っていくようなたてまえの制度でございます。したがって、いろいろな制度やり方手続、こういうものの中に環境アセスメントをどのように位置づけるか、こういう点について、それぞれの立場からの御意見があるわけでございまして、そういうものを全部満たすような形で法案としては上げたい、同時にまた、そういう手続を経ますことにつきましても、いろいろ過去の御経験からいって、この制度ではうまくいかないとか、こういう御批判なり御意見があることは当然でございまして、そういう点についていろいろ話し合いをいたしておる、こういう段階でございます。
  9. 島本虎三

    島本委員 通産省建設省環境アセスメント制度化には基本的に賛成しているのであります。しかしながら、通産省の場合には、前回まで、法案内容のうちの評価項目評価基準が明確でないのだ、また評価報告書における住民意見の考慮という点、開発事業実施に当たっての評価結果の勘案意味が不明瞭であるのだ、電気事業等について訴訟問題が多発することは必至と考えられるので困るのだ、したがって、当面は行政運用によって実績を積み重ね、将来、法の制度化が望ましいのだ、こういうような考えに終始して議論されておりました。その結果が遂に出なかったのでありますが、いまでも通産省意見は変わりないのですか。
  10. 左近友三郎

    左近政府委員 昨年のいろいろな検討過程で申し上げましたことは、いま先生が御指摘されましたようなことでございますが、今年も環境庁からいろいろ案をお示しになって、どうであろうかということでございます。  われわれといたしましても、すでに申し上げておりますように、アセスメントを行うことについては賛成でございますし、現に昨年からは、電源立地については省議決定をいたしましてアセスメントを行っておるところでございます。したがいまして、われわれとしては、このアセスメントというものがどういうふうにしたら日本にうまく定着するかということを考えていろいろやってきておるわけでございまして、そのやってきておる過程において自分らとしていろいろむずかしい点がございます。そういう点について、今後法制化する場合においてどうやったらいいかというようなことについて、環境庁事務当局といろいろお話し合いをしているところでございます。したがいまして、今後についてはそういうアセスメントが円滑に行われるようにわれわれとしても環境庁とは協力をしてまいりたいと考えておりますので、反対のための反対をいたしているわけではございません。
  11. 島本虎三

    島本委員 通産省実施をしているからということですが、通産省官庁環境庁官庁環境庁はそのための官庁。そうするならば、同じ国として実施するなら、環境庁の方にやらして悪いという理由はどういうことですか。
  12. 左近友三郎

    左近政府委員 まさにおっしゃるとおりでございまして、同じ国の官庁でございます。現在われわれがやっておるアセスメントにおきましても、そのやり方その他については、その都度環境庁と御相談をしながらやっておるわけでございます。したがいまして、われわれは、どこがやったからどうだということではなくて、先ほど申し上げましたように、この新しい制度をどのように円滑にやっていくかという道を見出したいということでございます。したがいまして、通産省でやるからいい、環境庁でやられるから悪いというふうな議論をいたしているわけではございません。
  13. 島本虎三

    島本委員 電気事業等について訴訟問題が多発する、それが必至と考えられるから困る、こういうふうなことが前回までの理由でしたが、これはもう抹消いたしましたか。
  14. 左近友三郎

    左近政府委員 この具体的な内容についてはごかんべん願いたいのでございますが、いま申し上げたような点は現在ではわれわれの反対点には入れておりません。
  15. 島本虎三

    島本委員 言葉に出されないけれどもこういうことが心配なんだ、前からもそういうふうに言っていたのですね。いまそれを言えないというような言葉は出るけれども、心情的にはそれが心配なんだ、問題はこういうことでしょう。  しかし、これはよく考えてみた方がいいのです。訴訟問題が多発するのが困るとするならば、起こること自体が問題じゃないかということなんです。もしそういうことなら、初めから司法上の判決を下されるまで手をつけないというところまでいかないと解決しません。こういうような問題を考えるのは、私は憶測だと思っているのです。そういうようなものはないとするならば、ないことにして環境庁とよく折衝に当たってもらいたい。環境庁とても、いままで六百件の環境審査をしてやっているでしょう。産業公害事前調査、これは工場立地法によって大規模な工業立地でさえも実施しているのです。したがって、やろうと思えばできる。しかしSOxでやるとかBOD、これしか手法のはっきりしたものがないというのが皆さん考え方なんです。手法がはっきりしたものしかやらないというのなら、やってもやらなくてもコンピューターで出てくるのです。そこが一番問題じゃないですか。NOxでもばいじんでも、自動車の排気ガス、こういうふうなもののうち不確実なことはあります。しかし、不確実なことがあっても、それを前提として有害物質すべての評価をやってやる、それでいいじゃありませんか。それでそれがはっきり確立したならばそれが固定化するのです。初めからそれに手をつけない、これでは困るじゃありませんか。  いろいろと意見があるのはあるのです。意見勘案意味が不明だ、こう言うのでありますが、いろいろな住民からの意見が出ます。環境評価書にそれを記載、公表して理解を深めるという努力があってしかるべきじゃないですか。私は、やはりそういうようなことを恐れ過ぎているのじゃないかと思うのであります。この点、私は、本当に遺憾なのであります。新しい科学的知見、こういうようなものを重ねていけばいいじゃありませんか。そして、予測できなくても大事なものだってあります。文化財であるとか、自然景観であるとか地盤沈下、これは予測できますか。できなくともこれは重大なんです。したがって、確実なものだけに区切るということは、これはおかしいのでありますから、これを積み重ねていく、不明確なものは不明確なものとしてはっきりさせて、それを積み重ねていく。住民理解を得る努力一つとして、こういうようなことも必要じゃありませんか。住民意見、こういうようなものがないということは最大の欠陥なんですから、今後の開発電源はなおさらのことですが、この点をきちっと考えて進むべきだ、こう思うのですが、通産省どうですか。
  16. 左近友三郎

    左近政府委員 この評価基準につきまして、科学的にはっきり出ておるものとそうでないものがあるということでございます。また、ものの中には、今後科学的に努力をすれば出てまいるものと、あるいはいま御指摘のありました自然景観のように、やはり若干主観的な要素が入りまして、幾らやりましてもなかなか客観的な基準が出ないものがあるということは事実でございます。  われわれといたしましては、やはり科学的な基準が出るものは十分努力をして出していきたいというふうに考えております。しかしながら、そういうことをしても出ないものについては、やはり出ない前提で、ではアセスメントをどのような形でやっていくか、そしてまた、御指摘のように、それが地域住民にどのように御理解願うかというふうな手だてをやはり考えないと、主観的にいろいろ判定の仕方が変わりまして、そこがトラブルのもとになっても困ると思います。したがいまして、その点についてわれわれは、そういう客観的な基準が全く出ないものがあるからアセスメントができないというふうに申し上げているものではございませんで、なるべく客観的な基準の出るものについては基準を出すように努力をする、そして、現在まだ出ていないものについてアセスメントを実行するときに、地域の方にどのように御理解願うかというその手だてを十分やっておかないと、やはり紛争のもとになる、ですから、その辺をどのように具体的にやる方法を講じましょうかというようなこと、それをまたどういうふうにシステムとしてやっていくかというようなことについていろいろ御相談をしておるということでございます。
  17. 島本虎三

    島本委員 地方では、ことにまだ汚れのわりあいに少ないと言われる北海道議会でさえも、いま提案されたアセスメント条例審議対象にして進めているのです。その中にはっきり住民参加の道が確保されている。そしていま皆さんの間で問題になっている電源関係、これも発電所建設を含めて八種類挙げられているのでありますから、こういうふうにしてみると、いまさら私は、電気事業等について訴訟問題が多発する、このために環境庁に渡したくないのだ、こういうふうな考えの上に立っていない、こういうふうに思いますが、この点一つに限ってイエスノーか返答願います。
  18. 左近友三郎

    左近政府委員 先ほど先生がおっしゃいましたように、訴訟が起こるということは、むしろアセスメントやり方の結果でございまして、そのアセスメントやり方が不十分である、あるいはやり方が不分明なまま行われるから問題が起こるわけでございます。したがいまして、われわれといたしましては、そういう訴訟、もちろん訴訟は、訴訟を起こす方の自由でございますから、それを防止するということを法律でどうこうするわけにはもちろんいきませんけれどもアセスメントをやる場合に、訴訟というふうな問題が起こらないような、皆さんの納得がいくような形でやるのはどうしたらいいかということをわれわれ考えておるわけでございまして、訴訟が起こるからアセスメントをやらないという話は、話が逆立ちをしておるのではないかというふうに考えております。
  19. 島本虎三

    島本委員 それなら、それを専門にする環境庁にこの部門をやはり、ほかの都道府県でやっているように通産省も認めてもよろしい、こういうふうに考えているわけですね。イエスノーかです。
  20. 左近友三郎

    左近政府委員 環境庁とは、現在のアセスメントでも御相談をしております。したがいまして、われわれがやりますアセスメントについて、環境庁と十分協力してやっていくということは当然でございます。
  21. 島本虎三

    島本委員 はっきり答えてください。いまのようにして電気事業関係についても、これは他の方でやっているのですから、北海道でさえも対象にしているのですから、いま通産省としてもそれを環境庁の方にやってもらう、こういうふうにしてもよろしい、こう考えるのか、考えないのか、イエスノーかです。
  22. 左近友三郎

    左近政府委員 この点につきましては、いま法案について事務的に御相談をしている途中でございますので、返答は御勘弁願います。
  23. 島本虎三

    島本委員 なぜ答えられないのですか。ここは委員会です。国権最高の機関です。その執行部がなぜここで答えられないのですか。
  24. 左近友三郎

    左近政府委員 いま事務的に検討過程でございますので、お許し願います。
  25. 信澤清

    信澤政府委員 私から補足させていただきますが、いまお話しのように、通産省を初め各省といろいろ御協議いたしておりますが、具体的に電気事業云々ということを話し合ったことはございません。
  26. 島本虎三

    島本委員 いま言ったように、必要に迫られて下部都道府県でさえも何回も、これで三回目ですよ、北海道のようなまだ汚れの少ないところでも環境アセスメントがかかっているのです。そして典型公害、その中には発電所建設までもきちっとその対象の中に入れているのです。ちゃんと下の方が入れてやっているのを、国の方が入れられないなんということはおかしい。このことを言っているのですから、そこも十分考えて進めてください。皆さんのその進め方を十分監視していきたい、こう私は思っています。双方で話し合っているということ、決して下部の方との行政上のそごを来さないようにきちっとやることを私から強く要請しておきます。  それから、建設省都市計画事業、これは住民参加手続がすでに十分取り入れられている、また、都市計画事業、これは都市全体の計画として対応すべきものであると考えるということが一つ理由、それから予測評価項目は現実に評価可能なものであって合理的な評価基準が確立すべきである、こういうようなことのために、前回都市計画法では自分らでやっているから、環境影響評価、これをやはり自分の方でやらなければならない、こういうふうに言って、ついに流れてしまったのであります。いまでもこの考えに間違いないですか。
  27. 大富宏

    大富政府委員 お答えいたします。  公共事業実施するに当たりまして、環境問題に十分配慮するというのは当然でございまして、建設省といたしましては、やはり早急に何らかの有効、合理的なアセスメント制度ができることにつきましては異存がないわけでございます。目下いろいろと環境庁議論を進めているところでございますが、お示し都市計画の問題につきましては、これはむしろ環境庁の方からお答えいただいた方がいいかと思いますけれども前回示しの案よりも変わった案が提示されてございまして、私どもといたしましては、いま先生指摘のように、本来都市計画というのは環境アセスメントがねらいとすると同じように、当該都市の市民の健康で文化的な生活を確保する目的があると同時に、さらにその手続におきましても、都市計画を決定する前に案の段階公衆縦覧をいたしまして、地元住民意見を聞くという仕組みを持っているわけでございます。ただ、いままで環境アセスメントという専門技術の問題について都市計画法の中で明確にされてない部分がございますので、お示しの案につきまして、この部門についてどう調整するかということで法技術的に目下環境庁議論しているところでございまして、この問題については前向きに取り組んでいる次第でございます。
  28. 島本虎三

    島本委員 特に建設省はいまのような考え方に立ってきた。私がいま言ったのは、前回までこの辺で定着していたのです。これから一歩も出れなかったのであります。したがって、まだここに定着しておるかどうか聞いたわけです。進んでいるという話です。それならば計画について縦覧それから意見を聞いたりすることもできる、必要によっては都市計画の場合は公聴会もやる、そういうような制度だ、これは計画に対するものですね。それに住民感情都市機能勘案、こういうようなのも必要だ、いわば社会的影響、こういうようなものも考える必要がある、したがってこれは都市計画の方でやるのが正しいのだ、こういうような考えのようであります。しかし、環境影響に対するものが入っていないのです。ですから、そういうようなものは環境庁でやってしかるべきなんであります。そういうような点で、OECD指摘が昨年あったわけでありますが、大臣も国際的な問題に対してはなかなか関心も深いのでありますから、OECD日本に対する評価、これには目を通したと思うのであります。これは、環境の質に関しては日本政策は、汚染の減少に成功したけれども環境に関する不満を除去することに成功しなかった、環境に対する不満の真の原因が環境の質の悪化すなわち快適さの犠牲にあったとして、この新しく困難な課題解決のために新しいタイプの政策を提言している。環境を損なうような開発を阻止して環境にとって望ましい開発を促進するようなメカニズム、これは国土利用計画実施するということを含めて、これを利用する必要がある、さらに、この新しいタイプの環境政策の基本となるものが公衆参加のための組織である、こういうようにはっきり言っているのです。もうすでにこれ、言っているじゃありませんか。国土利用計画、この段階できちっとしなければ、住民が被害から逃れること、防除することはやった、しかしながら改めて快適な環境の中にいるということにはならぬぞ、住民参加考えなさい、考えるべきじゃないか、こう言っているのであります。OECDがそういうようにやっているのでありますから、当然この問題なんかでは大臣も関心を持ってしかるべきだと思うのです。このいわば都市計画に対しての手続、これははっきりと国土利用計画の中でとられてしかるべきだというならば、環境庁はその中に入ってきちっとした上に立って快適な生活を国民に与える、こういう計画機関であります。そこが、いままた新聞情報によると何か怪しいというのですが、こんなことはないでしょうね。
  29. 信澤清

    信澤政府委員 おっしゃるように、国土利用計画あるいは都市の利用計画段階環境問題を考えるというのは当然のことだと思いますし、その辺の努力が欠けている点についてのOECD指摘というものは、いま先生のおっしゃったとおりでございます。  そこで、都市計画の問題につきまして、前回のときいろいろお話があったわけでございますが、いまお話しのような問題を含めて考えますと、都市計画自身が、実際の運用状況は私どもつまびらかにいたしておりませんが、その後いろいろ建設省等とお話をした結果、やはり計画自身が良好な都市環境をつくるということを目指しているわけでございますから、したがって、一連の手続の中に環境影響評価というものを組み込んでいただく、そして手続面については、いまの都市計画法で対応するわけじゃございませんで、私ども考えておりますいわゆる環境アセスメント法案と同趣旨の規定を整備していただくという形で対応する方法はないかどうか、こういう点について建設省側からも御提案があり、それに対して私どもがいろいろ検討し、御相談をしている、こういうことでございます。
  30. 島本虎三

    島本委員 これは以前は、都市計画区域は国土の二〇%、人口の八〇%を占めておる、制度対象から除外することは考えられない、こう言っていたのが環境庁なのでありますが、そうすると、いままでの考え方と——なぜ、都市計画、この中に環境庁自身が入っていってその部分に対してはっきり対応しないのか、これはするのですか、しないのですか、その点、はっきりしてもらいたい。
  31. 信澤清

    信澤政府委員 いまの都市計画の体系で十分であるということは建設省もおっしゃっておられないわけであります。しかし、先生も御指摘のように、土地利用あるいは都市計画段階からその都市環境問題を考えていくということのためには、むしろ私ども考え方は、個別の事業をつかまえる、こういう考え方に立っているわけでございますから、やはり総合的な計画立案の段階で一連の手続を踏むというのが一つ考え方であろうと思うわけでございます。しかも、計画と申しましてもいろいろございますが、都市計画の場合、いろいろ私ども勉強させていただきますると、かなり計画の熟度が高い、つまり計画決定された具体的な内容というものが、いわば実施計画段階内容とほぼ等しい。たとえて申しますると、道路の計画等は、私どもいろんな形でもって従来から御協議等いただいておりますが、個別事業で使っておりますたしか三千分の一でございますか、そういう地図の上で表示をするというようなことをすでに計画段階でやる、こういうことでございますから、したがって、そういうものを一体的にやるというのは一つ考え方だろう、こういうふうに思うわけでございます。
  32. 島本虎三

    島本委員 ちょっと、計画段階環境影響評価もやっているのですか。
  33. 信澤清

    信澤政府委員 建設省の御説明ではそういうことをやっているということを申しておられますが、私どもは、先ほどから何回も申し上げておりますように、環境影響評価に関する部分がいまの法律体系の中にあることはあると思います。しかし、それで十分かと申しますと必ずしもそうではないので、仮に都市計画法で処理いたします場合には、対象事業その他としては私ども法案でとらえさしていただく、そうして従来からやっておられます手続と重複しないように、あるいはむしろ積極的に環境影響評価にかかわる手続をその中に組み込んでいただく、こういうお話であれば、それは一つ考え方だろうというふうに考えておるわけでございます。
  34. 島本虎三

    島本委員 どうもその辺が前の考え方より少し後退しているようであります。これは制度対象から除外することは毛頭考えられないと言っていたのですが、今度は、同じようなのが建設省にあるからそっちに任してもいい、こういうような考え方であるとすると、これはとんでもないことだ。以前と違っているわけです。私はここはどうも納得できないところであります。  これは、この場所ですから詰めておいた方がいいのですが、じゃどうなんですか、環境庁の手から離れるのですか、離れないのですか。
  35. 大富宏

    大富政府委員 お答えいたします。  都市計画は、先ほど申し上げましたように、都市住民の健康で文化的な生活を確保するために、住宅建設あるいは居住環境の整備に関する計画を含んで主な内容としているわけでございます。したがいまして、環境に配慮するということそのものが都市計画案を決定する際に非常に重要な中身になっているわけでございます。  そこで、環境庁環境アセスメント法との関係でございますけれども環境アセスメント法を大きく分けますと二つの部分がございますが、調査、予測、評価する際の手続の問題と環境アセスメントの技術面と両方あろうかと思います。そこで私どもが申し上げておりますのは、都市計画法では四十三年以来、住民手続等がもうすでに確立されてあります。ただし、環境影響の技術問題については、いま現にいろいろやっておりますけれども、あくまでもそれは試行錯誤的に、より精度の高いものをわれわれはやっておるわけでありますが、まだ制度として国において確立された手法がない。これにつきましては環境影響評価法に書かれるものがあればそれを都市計画法の方に採用いたしまして、十全の都市計画案をつくりたいというのが私ども考え方でございます。したがって、目下環境庁といろいろ議論を進めておりますのは、現在確立されておる都市計画法手続はそのまま固定するということじゃございません。環境アセスメント法に沿ってどうこれを調整するか、また新たに確立されるところの技術手法都市計画法の中にどう取り込むかということを議論しているわけでございまして、実際、都市計画法につきましては環境アセスメント法を導入しない、あるいはアセスメントをやらないということではございません。
  36. 島本虎三

    島本委員 では、環境庁の手を離れるわけですね、都市計画の部分は。お任せするわけですか。
  37. 信澤清

    信澤政府委員 いま計画局長から御答弁した中にございますように、技術的な手法については現在の都市計画法にない、こういうことを申しておるわけでございまして、その技術的な手法等については、当然のことながら、各省も過去いろいろ御経験を積んでおられますが、私どももそれなりの勉強をしてまいったわけでございます。そういうようなものにつきましては、他の事業との均衡性その他を失わないような形でいろいろな指針をつくるわけでございますが、そういう部面については環境庁としては、現実にやっていることでございますが、従来どおり物を申し上げさせていただく、こういうたてまえは貫くつもりでございます。
  38. 島本虎三

    島本委員 それくらいなら、なぜ早く出せないのですか。もうすでに何年間かかっているのですか。総理大臣でさえも言明しているのにまだ出せない。何かあるのでしょう。出してきたもの、私どもはそれをきちっと評価して、まさにこの委員会評価して——そのものに対しては、恐らくはもう片手片足がない、不具だと思っていて子供を産みたいと思うような親はいないと同じようなものであります。だからそういうようなことがないように、五体健全な子供を産ませなければならないという努力をするのがこの委員会なんです。そこを十分考えてやってもらいたい。ほかの方でもまたこれはやると思いますが、時間の関係で私はもうこれ以上触れません。しかし、これで終わったのじゃありませんから、まだ毎回、定例会がありますから皆さんに出席願って、この問題は納得のいくまでやってもらうことにいたします。きょうはこの問題についてはこれで終わりにしておきます。  大臣が二月二十八日に所信表明をされた折に、その後で中井委員が外国から車を輸入する問題に触れて、円高ドル安の関係もあって、いわゆる輸入の促進に関し自動車があるが、その場合には現在のような状態で外国車を入れることはどうなんだ、こういう質問だったわけであります。規制はきちっとしないとだめなんだ、こういうことでありましたが、大臣は、なかなかニュアンスが、どっちにとっていいのかわからぬようなことを言っていたのであります。これは多少は考慮に入れたい、こういうように言っているのですが、何を考慮に入れたいのでしょう。向こうの十分に規制されていない、基準に適合しないものでも、これは大いに入れてもいい、多少考慮したいという意味なのか。その後には、健康項目についてはわれわれはサボるようなことは決してしない、こう言っているのでありますが、これはどっちの方が本当の大臣の気持ちなんですか。
  39. 山田久就

    山田国務大臣 輸入車の排気ガスの規制等の適用、これは結局時期の問題で、われわれとしてはむろんこれを除外しようなんという気持ちは全くございません。ただ、外国から日本に輸出する台数が余り多くない、また外国における排出ガスの規制が日本ほど厳しくないということは御案内のとおりであります。そういう点では日本は非常に進んでいるので、したがって、外国での技術開発はおくれているという状況でございます。諸外国の社会的、政治的な現状から、日本におけると同様の研究開発を促進するということがきわめて困難な状況にあること等も考慮いたしました。また、これを厳格に適用する時期を、いろいろな事情を考慮して五十六年四月一日から全面的に適用するということにいたしたものでございまして、決して輸入車についてNOx対策を野放しにしようというようなことではございません。対外的な考慮それから技術的な進歩の見通しということをいろいろ勘案いたしまして、そのような時期から全面的に適用することに決めたわけでございまして、ひとつ御理解いただきたいと思います。
  40. 島本虎三

    島本委員 大臣は、いいことも言っているのですよ。健康項目についてはわれわれはサボタージュするつもりは全然ございませんと言っているのですよ。そのとおりなんですよ。大気汚染防止法による人の健康に影響がある有害物質、この中には、カドミウム及びその化合物、塩素及び塩化水素、弗素及び弗化水素、それに鉛及び鉛の化合物、第五番目にはNOxときちっとあるのです。大気汚染防止法による有害物質になっているわけです。その点について、これを緩めるようなことはしないと言っているのですから、そこをきちっとしておるからまあいいと思っていたのですが、どうもまた揺れるようですね。ここだけはきちっと考えておいてください。これだけは緩めちゃならない。きちっとした五つの項目のうちの一つですから、大気汚染防止法による有害物質の中にNOxも入っているのですから、そこを考えてやってもらいたいと思います。これにたくさん時間をとることになりますので、次に進ませてもらいます。  本題に入りますが、この公害健康被害補償法の一部を改正する法案、これはいままで二年ごとに決めてきているわけでありますが、昭和五十五年以降においての移動発生源の費用負担問題について、環境庁はこれは今後どういうふうに考えますか。
  41. 山本宜正

    ○山本(宜)政府委員 御承知のように、二年ごとになっております理由といたしましては、一つは税制調査会の自動車重量税の決まり方が二年ごとになっているという点がございます。それから今後の問題といたしまして、汚染者負担の原則にのっとり、かつ発生源の公害防除の努力が反映される、こういったような観点に立った恒久方策を確立することが大事だ、こう思っておりまして、方法についていろいろと検討はしていただいているわけでございますが、今回につきましては、中央公害対策審議会意見具申もございましたので、この方法を今回も延長したという形になっておるわけでございます。
  42. 島本虎三

    島本委員 そうすると、これは地域指定に当たって汚染の実態に即した線引き、こういうようなことはきちっとしていますか。行政区画をしようというようなことになっていると思うのですが、汚染の実態に即した線引きをすべきであって、行政区画をしようとすることは適当じゃないのじゃないか、こういうような意見の開陳を参考人の意見として聞いたこともあるのであります。たとえば五メーターぐらいのクリークが県境となって、対岸の患者は救済されないという大牟田の例をとって言ったことを聞いたこともあるのであります。これはより実態に即した、住民が納得のできる線引きをすることが必要だと思うのですが、環境庁、どうですか。
  43. 山本宜正

    ○山本(宜)政府委員 先生もよく御存じのとおり、第一種地域の指定に当たりましては、その地域の大気の汚染状況を、過去にさかのぼり、かつ現状も踏まえまして、汚染の濃度による等濃度線というようなものを描き、かつその地域の中におきます呼吸器の症状というものをとらえる調査、この二つを重ね合わせまして、いわゆる著しい大気の汚染によって起こる疾病の多発地域というものを考えております。私ども、その地域を決めるに当たりましては、場合によりましては行政区画を境とすることもございますし、また場合によりましては、河川あるいは大きい道路あるいは鉄道というような、なるべくコミュニティーの分断が少ないような形で線引きをするというようなことをしておりまして、必ずしも行政区画にのみこだわるわけではなしに、汚染の等濃度線から考えまして、場合によりましては、ほかの地域と区別するものをもって線引きをしている、こんなような状況でございます。
  44. 島本虎三

    島本委員 実態に即した、住民が納得できる線引きをせい、こういうようなことなんです。そうするならそうすると言えばいいのですよ。言葉が長いのはそうしてないのでしょう。  大牟田に早米来というところがあります。ここはすぐ五、六メーターで境が熊本県ですが、熊本県は、大牟田じゃありませんから、被害があっても救済の対象地域になっていない。やはり及ぶ範囲は、県境を越えてもきちっと救済してやるというのが筋じゃありませんか。したがって、これは実態に即したやり方をとってもらいたいということです。それをあわせて答弁してください。  それから、認定するのに、地域別の認定率に大きな差があるのはどういうわけなんですか。これは、たとえば申請認定、三重の場合は七五%ぐらい、大阪が一〇〇%、他の地域は平均八〇%、こういうようなことになっているようでありますが、これは主治医の意見が十分尊重されないからではないですか。主治医の意見が十分尊重される体制をつくるべきだ、こう思うのですが、それはやっていますか。
  45. 山本宜正

    ○山本(宜)政府委員 二点のお尋ねでございますので、それぞれにお答えいたします。  地域指定に関しまして、県境を越えて汚染がある場合、これを指定しているという事例は幾つかございます。たとえば名古屋市の指定にありましては名古屋市、東海市。それから大阪府の中でも、大阪市を越えた部分にまで地域指定を拡大しているというようなことでございまして、たしか私の記憶によりますと、大牟田市の指定の場合には、等濃度線から考えましてあのような線引きをした、かように考えておるわけでございます。  それから、地域によりまして認定率が違うというお尋ねでございますけれども、私ども二点ほどの理由考えておるわけでございます。  一点は、四日市等、かなり早い時期から地域指定をしておりましたところ、かつ四日市等は御承知のように大変汚染の改善もあるわけでございまして、そういったところでは、いわゆる新規の認定率というのが下がってきておるのでございまして、これはある意味では大変結構なことだと考えております。また、地域指定がごく最近になって行われた地域におきましては、その地域の人たちのこの制度に対する認識度、あるいはそういった意味での制度の熟度というものがまだ行き渡っていないようなことがあって認定率が高い、こういった差があるように思っておるわけでございます。
  46. 島本虎三

    島本委員 主治医の意見なんかも十分取り入れておるのですか。
  47. 山本宜正

    ○山本(宜)政府委員 お答えを忘れて申しわけございません。  御承知のように、認定審査会におきまして書面を審査するに当たりましては、必要に応じて主治医の意見を聞きながらやっているということでございますので、十分反映されていると考えております。
  48. 島本虎三

    島本委員 しかし、場所によっては一〇〇%、場所によっては七五%、その患者の身になった場合には、そういうような救済制度はやはり差別待遇だ、こういうように言わざるを得ないのでありまして、これはどこかに欠陥がありますから、この点はもう少し行政に血を通わせるようにしてやってもらわなければいけません。なぜ大阪は一〇〇%なんですか。なぜ三重は七五%なんですか。こう差があるということがわかったら、なぜみんなを一〇〇%まで上げてやる努力ができないのですか。そういうようなところが問題だと思うのであります。  その点と、あわせて今度、指定地域内外で公平にしてやるというのがPPPの原則になるわけでありますけれども、指定地域とその他の地域の賦課料率、これが九対一というふうに違うのでありますけれども汚染地域の周辺部では、企業は競って指定地域外へ行きたがる、こういうような問題があるということを参考人の意見として承知いたしましたが、同じ地域汚染企業の所在地が指定地域外になっているという例、こういうようなものはあってはならないと思うのですが、この点どうですか。
  49. 山本宜正

    ○山本(宜)政府委員 前の方のお尋ねでございますが、認定に当たりましては、私ども、各地域審査会の先生方あるいは事務当局等に折々会合していただきまして意見の交換をすることによって、いわゆる審査の公平をはかり、地域ごとに不公平がないような方法をとっております。  なお、第二点の地域指定とその周辺部分との関係でございますが、先ほど申し上げましたように、汚染の等濃度線を描きまして、地域における工場等の配置あるいは住居、人口の状況、こういったことも勘案しながら線引きをしておりますので、その辺につきましては公平を期しておるつもりでございます。
  50. 島本虎三

    島本委員 あわせてですけれども、賦課と給付、この地域別の収支、これが一部地域で不均衡がはなはだしいところがあるようでありまして、それは皆さんの方で知っているでしょう。十分知っていると思うのであります。昭和五十二年度にこれは若干是正されたようでありますが、なお五十三年度でも地域の事情に見合うように賦課率の改善をする必要がある、こう思っているのですが、環境庁でもその点を考えていますかどうか。  それと、もう一つは補償給付の事務費、これとあわせて答弁してください。  尼崎市では、五十一年度、年間五千五百万円の人件費です。しかし国の補助が五百八十万円。二分の一補助が十分の一補助の実態である。必要とする人員を十分見ていないんじゃないか。したがって、補償給付の事務費や公害保健福祉事業については都道府県などが超過負担を行っておる。これは二分の一と言いながらも実際は十分の一ほどになっている。これは尼崎市と横浜の例として、はっきり具体的に意見の開陳があったわけであります。これはやはり全額何とかしてやらないとうまくないんじゃないか、こう思うわけです。国として財政上適切な措置を講ずる必要があると思いますが、この点はどうですか。
  51. 山本宜正

    ○山本(宜)政府委員 賦課金等の収支につきまして、五十二年度においてその差額の四分の一の補正を行ったわけでございます。これは御承知のように、中央公害対策審議会の御意見を賜って、二分の一程度をめどにということでございますが、私ども、五十三年度につきましてはその趣旨を体しました修正をやってまいりたいと思って、目下事務的に検討しているところでございます。  人件費あるいは事務費等地方公共団体に対する助成の点についてでございますが、人件費につきましては、五十三年度予算の御審議の中でも御存じだと存じますが、約五〇%増の人件費の予算案をお願いしておるわけでございまして、従来必ずしも十分でなかったという声は地方からもございますので、改善をしてまいりたいと思っております。  また、福祉事業事業費の補助につきましては、年々若干ずつでございますが改善を図りまして、今後もその方向でまいりたい。また、福祉事業の施行につきましても、都道府県地方の声を聞きながら、それが円滑に行えるように、内容の改善等も図りつつあるところでございます。
  52. 島本虎三

    島本委員 内容の改善は具体的に図っているのですか。
  53. 山本宜正

    ○山本(宜)政府委員 主な事業内容の拡充につきまして、ちょっとさかのぼって申し上げますが、昭和五十一年度におきましては、未就学児童の転地療養事業、これは従来学童の転地療養事業というのが当初からございましたが、これを新設いたしました。五十二年度におきましては、指定施設利用健康回復事業の新設、特定の施設を利用するわけでございますが、健康回復のためにそういった施設利用ということの事業の新設をいたしました。五十三年度におきましては、大気系疾患のいわゆる機能回復、リハビリテーションにおける知識の普及事業、こういった事業地方公共団体において行えるように、福祉事業内容の拡充を年々やっているわけでございます。
  54. 島本虎三

    島本委員 そうすると、現在指定疾病になっていない目、鼻、のどなんかの症状については、何か検討対象にしていますか。
  55. 山本宜正

    ○山本(宜)政府委員 患者さん方あるいは地域の人たちからの陳情によりまして、目、耳、鼻、のどといったものの炎症疾病について大気汚染との関係があるのではないかというようなことでの御要望がよくございます。私ども、内外の知見の収集ということを努めておりまして、大気汚染以外の諸因子によるということもあるかもしれませんが、その辺は疫学的、臨床所見の客観的な把握方法といったような調査方法の検討を行っております。  いままで得られました調査資料等から考えまして、こういった疾病がいわゆる急性あるいは一過性と申しますか、かかってすぐ治るといったようなことなどから、指定疾病に加えることにつきましては、いまの段階では私ども消極的に考えておるわけでございます。
  56. 島本虎三

    島本委員 中央公害対策審議会の昭和四十九年十一月二十五日の答申によると、NOx及び浮遊粒子状物質についてもSOxと同様に地域指定に当たってその対象として考慮されるべきだとされております。しかし、最近サンケイ新聞によると、NO2の環境基準が大幅に後退しそうな様子が報道されているのでありますが、大臣、これは答申の趣旨とちょっと違うのではないかと思いますが、これはどういうことですか。
  57. 山田久就

    山田国務大臣 現在NOxの問題については、諸条件について中公審の方で審査をお願いいたしておるわけでございまして、近くその答申が出るというふうにわれわれも期待しております。その前のいろいろな報道、これについては特に私はどういう理由かということは触れませんけれども、答申に基づいてできるだけ科学的、客観的に、それを踏まえてやりたいというのがわれわれの方針である、この点はよく御理解いただきたいと思います。
  58. 島本虎三

    島本委員 これはやはり早急に地域指定要件に加えるべきじゃないですか。特に一九七七年、アメリカの労働衛生専門会議で時間加重平均五ppmという基準が勧告されておるわけであります。環境庁の委託を受けた研究班もNOxは大気汚染の指標となり得るというようなことを言われておりますが、健康に対する有毒性はこれで明らかではないかと思うわけであります。したがって、早急に地域指定要件に加えるべきではないかと思うのでありますが、これはいかがなものでしょうか。
  59. 山本宜正

    ○山本(宜)政府委員 御承知のように、窒素酸化物による健康影響ということで、これまでも複合大気汚染健康影響調査というようなものを実施いたしましてデータを発表しているわけでございますが、これまでのところ私どもが得られておる知見によりますと、現在測定されております窒素酸化物の環境大気中の濃度、これによりまして疾病を多発させているということにつきましてはどうも明らかなデータがございません。御承知のように、先ほど申し上げました調査は、いわゆるBMRCという方式によってせきとかたんとかいうようなものを一つの指標にした調査でございまして、この法律によりますのは、著しい大気の汚染があって疾病が多発するという場合に一つ地域に指定するということにしておりますので、私どもといたしましては、いま少しその間のデータを収集いたしまして今後の検討をさせていただきたい、かように考えているわけでございます。
  60. 島本虎三

    島本委員 疑わしきは救済する、こういう公害行政の原点に立ち返って、きちっとこの問題に対処をしてもらいたいと思うのであります。  それから、最後になりますが、水俣病の認定について、その特殊性にかんがみまして、環境庁でもいろいろと具体案を早急に提示すべきではないか。このことについて、かつて私どもも、何よりも先に、世界の公害の原点とも言われておるのがこの水俣病対策でありますから、当面する問題についての対策に手を抜いてはならない、水俣病患者の救済は完全に行うべきだ、救済はPPPの原則を守るべきだ、そしてチッソ救済の融資をしておったそれらの金融機関もともに汚染原因者というような立場をはっきりさせるべきだ、しかしながら関係金融機関に対する指導は国が責任をもってやるべきだ、したがって補償のための熊本県債は発行すべきじゃないじゃないか、こういう見解を発表しておったわけであります。いまこの問題と関連いたしまして、環境庁でもはっきりした救済の態度を表明したかのように言われておるのでありますが、これは一体どうなっているでしょうか。  それと、水俣病の審査認定業務は緊急に処置しておかないとだめな問題でありますが、認定業務は県が主体になって住民の立場で行い、国は認定業務がスムーズに行われるようにあらゆる措置をとってやるべきだ、私どもはこういうような見解なのであります。しかし、大臣もこれらの見解に対してははっきりした態度をとっておられるように思います。一体環境庁はどういうような態度をとっておられるのでしょうか。  それから、いま座り込みがあの場所でずっと続いているということを聞いているのです。私どもの方には要請が来ない。したがってまだ出ていっていない。これは政治家が中に入ったりしていろいろとやることを避けて自分らが解決したいという意図のようであります。そうならば、環境庁は純粋な気持ちでこの問題に対処すべきじゃないかと思っているのですが、これに対して一体どういうような態度をとっておられましょうか。
  61. 山田久就

    山田国務大臣 この水俣病については、われわれもこのいきさつ等にかんがみまして、その救済問題については最も大きな関心を払って対処したい考えでございます。  ただ、国の責任という問題につきまして、ただいまちょうど環境庁での座り込みの問題について御指摘がありましたけれども、これはわれわれとしても、従来からもいろいろ発言があったようでございまするけれども、そのときどきの問題について、それが十分だったかどうかというような点についてはなお詰めたいと思っております。問題があったようには考えられますけれども、しかしながら、全面的に国がその責任を認めよという点については、残念ながら私はそういうようなことを容認していく立場にもないし、特に、まだ具体的には手続がとられていないようですけれども、歴代の関係大臣等に対する訴追等のことも考えられているような環境のもとにおいては、むしろこの問題の対処を政治的に非常にむずかしい状況に置いておるということじゃないかと思います。にもかかわらず、政府としては、事水俣病の認定業務の推進ということについては、これは何としてもできるだけのことをやりたいということで、御承知のように、関係閣僚会議の議を経まして、政府として対応策について申し合わせを行って、ちょうど昨年の十月からこの問題を実行に移して、熊本県の協力も得て、検診体制の整備、そして認定業務の促進ということについては一生懸命になってやっているところでございます。なお、これをさらに促進する余地がないかということについては、お医者さんの数あるいは省き得る時間、いろいろな問題がございますので、現地の方ともよく相談していく必要があるわけでございますけれども、できるだけこの方面についてもやりたい、こう考えております。この点、この検診体制の整備ということに加えて、御承知のように認定の判断が困難という事例では、症例研究班なども設けまして認定促進を図っておりまするほか、県の検診機能を強化するための施設、設備等の充実ということについても、補助金その他のこともいろいろ考え努力いたしておるわけでございます。  それで、これらの現在の施策の強化によって何とかひとつできるだけいまの認定問題に対する前進を図りたい、いまの客観情勢の可能な限度においてそれをやりたいということを考えているわけでございまして、私は、やはりこういう問題で話し合いでいくということが、いまわれわれの可能な現実の体制じゃないかというふうに考えております。  いま座り込み等で根本問題を解決することは困難であると思っておるのでございまして、したがって、もっと正常な形で話し合いを続けていくように、患者の健康その他のこともありますし、そういう話し合いはあんなかっこうでなくてもできる、したがって、そういうことでやっていってほしいということを要望して、一日も早く正常な形で話し合いを続けて問題解決に寄与するようにという立場で努力しているのが私どもの立場でございます。
  62. 島本虎三

    島本委員 さっぱり理解できない。本当に、もう一回議事録を読み直してみないと、何を言ったか、私はわからない。  ただ、いま座り込んでいる人たちは、私どもの方にも要請は来ていないのです。いままではいろいろと御援助願いたい、また会わせてもらいたい、こういうのが来ているのです。今回は来ていない。したがって、こういうような意向だ——やはり私どもだけで話し合って、そして他のいろいろな勢力は入れないで解決したいのだ、純粋な気持ちでやっているのだから、長官も純粋な気持ちでそれに対処したらいかがですか、このことなんです。純粋な気持ちで詰めたらいいじゃありませんか。これはやはり加害者責任の認識、この点で違っているでしょう。いま言ったように、国の方は避けているでしょう。では患者はどうすればいいのですか。だれの責任なんですか。会社だけですか。会社をだれが指導して、だれが認可してやらせたのですか。だれが許可してやらせたのですか。会社がつぶれたたらどうなるのですか。そういう対策も考えない、やはり心配だから座り込むのじゃありませんか。だからこそ純粋な気持ちでもっと話し合ってやったらどうかと言うのです。  巷間伝えられるところによると、何か警官隊を動員して排除をする機運もあるということを聞くのですが、そんなことをしてはいけません。それは絶対ないでしょうね、これは念を押しますが、長官。
  63. 山田久就

    山田国務大臣 私は、患者側の要求もやはり可能、不可能の限界があると思うのです。したがって、具体的な方法を超えて根本問題をまず容認せいということを言われておったのでは、どうしたって解決の道を見出すことはできないと私は思うのです。事実われわれとしてなし得る限度ということは、これは最初に患者も話し合いを拒否しておったようですけれども、とにかく話し合えということで、われわれの当局を通じて詰めて話をさせています。話をさせていますけれども、とにかく根本問題が解決しなければという態度で立ち返っている限りは、どうしても解決が困難であります。われわれとしても、いま申し上げたように、健康上の理由もあるし、われわれの可能なのはこの限度なんだということを伝え、したがって、あとの話し合いというのは、いまのチッソの問題もありましたけれども、そういう問題も含めて、われわれはもっと普通の形で十分話し合いができるというふうに考えているのです。したがって、そういう点の勧告も私はしております。そういうことで、患者の方も、普通の皆さん方もやはり考えて、正常な形でやっていただく、そういうことを私は本当に強く促している。もう繰り返しわれわれはやっているのだ、このことはひとつよく御理解いただきたいと思います。
  64. 島本虎三

    島本委員 大臣、それがなかなか困難であるということはわかるのです。だからこそあえて具体的に言いますけれども、われわれの同僚の馬場昇代議士が——同郷の人ですよ。中へ入っていろいろ詰めて、こう出しているでしょう。全然だめだというものも可能性が生じてきたでしょう。それが、またある機会にだめになってしまう。こういうことじゃ困るから、めんどう見てやる点はめんどう見てやる、もし、これが責任だというのなら回避してもどうにもならない。いまからその準備をしてきちっと対策を練る、これが必要じゃありませんか。大臣、根気よく話してください。  ただ、私もあなたも幸いにして見たところ丈夫なようですから、座り込んでいる患者の気持ちはわからないことが多いのです。私も入ってみて若干びっくりしたことがあった。一時間たつと起伏が出るのです。そういうようなことになったら怒号を発するのです。それを黙って皆さんは耐えなければならないのです。それをいいことにして出て行ってしまったり、排除したりする、こういうようなことは一切してはならないのです。話し合いをしてください。私は要請したい。決して警官隊を動員してあの病人を外に出すようなことは一切しないと思いますが、大臣、そうでしょうね。
  65. 山田久就

    山田国務大臣 いま十分話し合いをやっている経過を……。後から私、言います。
  66. 山本宜正

    ○山本(宜)政府委員 話し合いをいたしております経過につきまして、ごく簡単に申し上げますと、二十四日に午後一時から二時の間に陳情という形で見えまして、三点ほどの要求項目を掲げてきたわけでございます。第一点は、国の責任を認めろ、それからヘドロの処理の問題等でございました。私ども、いろいろと意見のやりとりをいたしましたけれども、なかなか両者の間での話がつきません。私ども、その後、数回にわたりまして、毎日あるいは一日おきくらいには少人数での話し合いをいたしております。しかしながら、その後の事情の変更といたしまして、訴訟提起等の意見も表明されておるわけでございまして、そういった段階になりますと、国の方といたしましての過去におきます環境庁を超えた部分の責任論などというところに言及されますと、私どもといたしましてはとてもお答えできない部分でございますし、そういう意味で平行線をたどっている部分がございます。しかしながら、私ども、今後の申請者に対する医療の問題等、具体的な問題ではお答えできる案を少しは考えておるわけでございますけれども、そういったところまで話が発展していかないようなところでございまして、私どもといたしましては、現在は絶えず接触をしながら話し合いを続けている段階でございます。
  67. 島本虎三

    島本委員 せっかくそこまでやっているから、その辺、実りのあるような交渉の状態まで持っていってほしいということです。過去にやはり困難だったけれども成功した例があるでしょう。そういうような点からして、やはり一生懸命心配している人もいるのです。そして案を出しているでしょう。確かに、ヘドロの処理には絶対に二次公害を出さない原則に立って関係者間で十分な話し合いを行って処理したい、対処する、いいじゃないですか、これで。せっかく苦労してみんな一生懸命やっているのに、何か環境庁の方では及び腰になっている点が最近あるように見られる。進んで中へ入りなさいよ。進んで中へ入って話し合いなさいよ、来るのを待つのではなくて。そうして、できるなら大臣大臣ということで中へ入って話したら、感情も情勢も変わるのです。それをやってみてくださいませんか。確かに一回、異常な雰囲気だったでしょう。しかし、それが絶対じゃないのですから。次々と繰り返すことによって話し合いもついてくるじゃありませんか。そうして、これは決して警官隊による排除なんかしてはならない、病人ですから。こう思いますが、大臣、いかがですか。
  68. 山田久就

    山田国務大臣 そもそも話し合いというものに入ったのは、私の方が強くこれを要望して向こうに入ってもらった、こういういきさつです。とにかく強制力なんかは用いないということは、初めからそういうたてまえで、したがって、話し合いということでずっと今日までやってきたので、実際、われわれの関係者も本当に誠心誠意、しかも一生懸命になって繰り返しやってきているけれども、しかしながら、いわば最初のスタートと申しますか、根本問題において責任を認めなければということで結局進行しないという結果になっているのは非常に残念なことだと私は思うのです。そこに本当に、これだけ繰り返しやっているのですから、実りのあるめどがあれば私は喜んでいつでもお会いしたい、そう思います。しかしながら、いまのような態度はやはり相手方も考え直してやっていってもらわなければこれは切りのないようなことになってしまって非常に残念だと思うので、また先生からもそういう点についてはひとつ大いに言っていただきたい、こう思うくらいでございまして、やはり相手方もぜひ正常化ということに立ってやるという考えになってもらいたい、こう考えております。
  69. 島本虎三

    島本委員 官房長、これは警官隊によって排除するなんという計画はないでしょうね。
  70. 金子太郎

    ○金子政府委員 いまの時点ではそのようなことは考えておりません。
  71. 島本虎三

    島本委員 それは考えてはならないと思います。十分話し合いを詰めてやるように指導してもらいたい。官房長、どうですか。
  72. 金子太郎

    ○金子政府委員 御意見はよくわかりました。
  73. 島本虎三

    島本委員 わかったということは、やらないということでしょう。
  74. 金子太郎

    ○金子政府委員 先生の御意見理解したということでございます。
  75. 島本虎三

    島本委員 理解したということは、やらないということ、こういうふうに私は理解しておきたいと思います。  時間になってまいりましたが、大臣、いま聞いたとおりなのですが、私は、本当に患者と会ったりなにかして思い当たるところがあるのです。本当に苦しいのです。あの人たちは周期がありますよ。それをも耐え忍びながら向こうも苦しいけれどもやっているのです。したがってそれを考えたならば、曲がりなりにも、警官隊を動員してそれを排除するなんということはやってはならない。私の意はわかったということを官房長は言ってますから、大臣もわかったということを一言言ってください。
  76. 山田久就

    山田国務大臣 強制力についての私の基本的な立場は先ほど申し上げたとおりです。しかしながら、これはやはり相対的で、相手にも正常な形でやるという態度というものをぜひとっていただきたい、私はこう思います。ひとつそういう意味において円満に解決するよう、ぜひまたお力添えをお願いしたいと思います。
  77. 島本虎三

    島本委員 申しわけないけれども大臣を動かす事実上のかなめは官房長でしょう。官房長の考えとして、私の意向がわかったということは、これからやはり話し合いによってはぐっと煮詰めていく、その努力はする、そうして警官隊を動員しないんだ、こういうように私は、あなたの答弁からかたく信じているのです。そのとおりですか。
  78. 金子太郎

    ○金子政府委員 患者側との話し合いがさらに進むかどうかは、今後患者と接触してみなければ何とも申し上げられないところでございます。(島本委員「警官隊」と呼ぶ)先ほどから申し上げておりますように、いまの時点では考えておりません。
  79. 島本虎三

    島本委員 私の意がわかったということは、どういう意味ですか。
  80. 金子太郎

    ○金子政府委員 先生の御意見理解したということでございます。
  81. 島本虎三

    島本委員 理解したということは——私の考えていることは警官隊を動員するなということです。それを理解したということは、やらないということでしょう。
  82. 金子太郎

    ○金子政府委員 理解したということは理解したということでございます。
  83. 島本虎三

    島本委員 理解したということは理解したということだ。理解したということは理解しないということだと言ったら、あなたは無能力者と言われますよ。そんな答弁なんておかしいじゃありませんか。話し合いをしてください、そして警官隊によって排除するようなことはしなさんな。私の気持ちを理解したと言う。理解したならば、しないということですね。理解理解です、何ですか、それは。恐らくは大臣がそんなことを言うから官房長も言えないのですかね、さっき大分いいところまで言ってきていながら。しかし、患者ですからそんなことは絶対しないようにしてください。もう長い間やってきたわれわれとしても、それを本当に心が痛むほど知っていますから、これを心から要請いたします。  大臣、いろいろ考えてください。一回や二回じゃらちが明かない。あれほどわれわれが議論を闘わした前長官でさえも、向こうへ一、二回行ったりしているのです。あなたまだ行っていませんね。せめて患者とはよく話してください。話す努力、実らなくてもその熱意にほだされますよ。そういうようにしてやってください。  まことに実りのない質問になりましたことを残念に思いながら、これで終わります。
  84. 久保等

    久保委員長 この際、午後一時より再開することとし、暫時休憩いたします。     午後零時二分休憩      ————◇—————     午後一時十一分開議
  85. 久保等

    久保委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  午前中に引き続き、公害健康被害補償法の一部を改正する法律案の質疑を続行いたします。水田稔君。
  86. 水田稔

    ○水田委員 私の質問に入ります前に、午前中の島本委員の最後の質問に対して大臣並びに官房長からの答弁があったわけですが、水俣の問題というのは、これは、当時それだけの知見がなかったとは言いながら、生産だけを考え国民の命と健康ということに配慮が払われなかった国の責任、これは法的な責任ということだけじゃなくて道義的な責任を含めて。そして不作為による違法状態がすでに一年近く続いておる、そういう中で、現実に患者が救済されないということの事態の中で起こった問題であるだけに、私は、島本委員か警察力を使わないようにと言う気持ちは痛いほどわかるわけでありまして、私は午前中の論議を聞いておりまして、大臣がやはり前面へ出て、そういうことをやらないで解決する、そういう決意が私はあのお二人の答弁からはくみ取れない。その点だけを私は大臣の口からぜひ一言、長く言っていただく必要はないと思うのです。解決のための最善の努力大臣が先頭に立ってやるということをお答えいただけるかどうか、まずお伺いしたいと思うのです。
  87. 山田久就

    山田国務大臣 先ほども申し上げましたように、私は、力によらない解決ということでやるんだということで、これはもう私は最初からそういうことで終始してまいっておったのです。しかしながら、問題がいつまでたっても片づかない。ことに根本問題のところで、一生懸命になって話し合いをやっておっても、一番根本のものを、いわば陳情者の言うとおりに言ってもらわなければということになってくると、どうしても、心から熱望していても、実りのある話し合いにはそれはなかなか入っていかない。実りあるものは、やはり具体的な問題について入っていくということで、そのためには、とにかくいまのような座り込みというようなことでなくて正常な形においてこれはやるべきだということを繰り返し求めてきていることであって、したがって、私なんかの意図はそういうところにあるのですけれども、同時に、いたずらに公共の場所に座り込みを続ける、これはそれなりに他のいろいろな影響を生んでいるようなわけでございまして、そういうことは避けてもらいたいということを繰り返し言っているので、やはり紳士的にというか、相手においてもこの状況というものを理解して応じてもらう、そういうことは当然、私は、あえて義務とも言わぬけれども、そういう立場に立ってもらわなければ困る、こういうふうに考えております。ですから、そういうような状況においてやるようにということで、私の基本的なことはいま申し上げたようなことでございますが、いつまでもやっておられるということになったら、私はこの際、この問題についてはいろいろなことを申し上げ得るような環境、雰囲気にない、こっちのことをもう少し理解してもらいたいということを強く訴えたい、こういうふうに考えているような次第でございます。
  88. 水田稔

    ○水田委員 この論議を幾ら続けても、どうも本論に入れませんので、私の方から見解だけ申し上げておきたいと思うのです。  少なくとも環境庁との話し合いの中で警察権力か行使されるということになれば——国民の見る目は、環境庁というのは国民の側に開かれた官庁という期待が、前大臣の時代で大分変わりましたけれども、そういう期待が非常に強いわけです。その中で、環境庁が患者の代表を警察力を使って排除するということが起これば、これは公害問題に関心を持つ多くの国民がもはや環境庁はわれわれの味方ではない、こういう立場に全部が立つという事態が起こるということも十分腹の中に入れていただいて、そういう立場で私は円満に解決のための対処を大臣に特に要望いたしまして、これは答弁は結構でございます。要望だけにいたしておきます。  それでは、提案されております法案に対する質問に入りたいと思うのでありますが、今回で一部改正が二回でありますが、前回の法改正のときに附帯決議が七項目にわたってつけられております。これは島本委員からもその中の幾つかの項目についての質問がありましたので、その点は省略いたしますが、一つは「窒素酸化物の規制については、排出基準を一層強化するとともに、脱硝技術の開発の促進等により、総量規制方式の早期確立をはかること。」こういうことがあるわけです。この数年来の動きを見ておりますと、脱硝技術の開発がなかなか進まないということで、実際問題としては、幾つかの実験プラントはあるにいたしましても、それぞれのコンビナートでやられておることは、ノズルの改良であるとか燃焼方式の改良あるいは燃料転換等、いわゆる在来からやれることだけで、根本的な解決の方向がなかなか見出されておらないわけです。この点については、こういうことで環境庁がこの二年間に本来なら適切な措置を講ずべきものとして国会から要求されたものでありますが、これがきわめて進展状況がよろしくない、こういうぐあいに思うのでありますが、一体どのようにされてきたのか、まずお伺いしたいと思うのです。
  89. 橋本道夫

    ○橋本(道)政府委員 いま先生の御指摘のございました五十一年三月の附帯決議の関係でございますが、まず第一の問題は、五十一年及び五十二年、おのおのの年におきまして防止技術の技術評価をいたしてきております。五十一年のものにつきましては、五十二年初頭に公表いたしました。五十年度に比べてかなり進捗してきておるという状況でございまして、五十二年度のものにつきましては現在最終の取りまとめをいたしておりまして、これはやはり全体として見ますと、相当コストも下がってきているとか、あるいは無触媒脱硝が非常に具体化しそうになってきているとか、そういう進歩がございます。  それから次は、規制はどうなったかという点につきましては、五十二年の六月に三次規制というのをいたしまして、この三次規制は、まず一つは大型ボイラー等に対する規制基準を厳しくしたというのがございます。それから、規制対象施設を少し小さいところまで引き下げました。これは地上汚染に対してはわりあい小さい施設の影響が非常に大きいということがございまして、それをやりまして、また、施設の種類としまして、焼結炉等三種類の新しい施設をそれに加えたわけでございます。そういうことで種類の拡大もいたしまして、大体それまでは約三千四百施設しかこの対象になっていなかったのが一万三千施設に拡大をしまして、全体の排出量に対して七三%規制がそれをカバーすることになったということでございます。そういうことで、三次規制だけの効果を見ますと、小さいものをかなり拾ってございますので、割合は大きくございませんが、八%というカット率になっているというところでございます。技術の中でいまいろいろ進んでおらぬではないかという御指摘がございましたが、発電所につきましては、現在も脱硝施設がもう具体的に入ってきております。クリーンなガスだけではなしに、重油専焼に対しましてももうすでに入っておりますし、また例の苫小牧東のケースは石炭火力に対しても約束が入って、その計画で現にもう建設を進められてきておるというような状態でございます。また、そういう意味でクリーンのガスはもうすでにできた、それから重油燃焼につきましてもケースが相当あらわれてきたということでございまして、それから焼結等につきましては、先生指摘のように入ってはおりますが、実施スケールでありますけれども、非常にまだ開発的な色彩が払拭し切れない、これは非常な大きなスペースと非常なエネルギーと非常なコストを食うというところが問題でございまして、そういうところで、近く整理されてまとめられます五十二年度の技術評価では前年度に対する進歩を出してまいりたい。また、燃焼の関係の方につきましては相当これは進んでまいりまして、バーナーの改良あるいは燃焼方法等もすでに相当なところにきております。いろいろの御批判がありますが、現在日本がやっております窒素酸化物対策といいますのは、確かに世界で最も進んでいることは事実でございますし、なぜもっと早く進まないのかという御批判のお気持ちはわかりますが、私たちもそういう気持ちも持ちますが、国際水準では最も進んでおって最も厳しい規制をしておるという事実も、比較的な問題として御理解を願えればと思っております。
  90. 水田稔

    ○水田委員 特に窒素酸化物の問題につきましては、不況でありますから操業率が落ちておるということから、それぞれの地域で言えば、四十八年までの状態とは若干違った状態があると思う。それがゆえにさらにこの問題に対して産業界が消極的になる心配があるわけでありますから、これは環境庁としてもこの附帯決議についてはさらに努力するように要望しておきたいと思うのです。  それからこの中にあります「都市型複合汚染に対処するため、窒素酸化物等の影響についても、汚染状況の総合的調査を行うとともに、」云々ということがあるわけであります。これは複合大気汚染健康影響調査あるいは自動車沿道住民健康影響調査等をやられておるようでありますが、この結果について、そこから先に進んでくるものがまだ全く出てきてないと私は思うのです。それから、この調査は一体どういう調査をやられたのか、それから報告されたものをどう評価して、いわゆる健康被害を少なくし、さらにまた健康被害を受けた人たちに対する補償の中に、それは地域指定の問題もありましょうし、補償の負担金の取り方もありましょうし、そういうものにどういうぐあいに生かされてきたのか、伺いたいと思います。
  91. 山本宜正

    ○山本(宜)政府委員 先生御存じと思いますが、かいつまんで二つの調査の内容それから補償法との関係につきまして、少し御説明申し上げたいと思います。  複合大気汚染健康影響調査につきましては、五年間にわたりまして、かなり早い時期から計画をされたものでございまして、一応その当時、汚染のひどいところ、ひどくないところというような六地域につきまして、同じ人をずっと追いかけながら、疫学的にいろんな大気汚染物質を測定しつつその影響評価していこうということでなされたものでございます。昨年の二月、これにつきまして環境庁といたしましては、いわゆる基本的な解析と申しますか、そういったことで報告をいたしまして、後は広くいろいろな学者の先生方の評価に供するというような形でやっておりまして、その後いろいろな先生方の研究データ等も出ております。  また、自動車沿道調査につきましては、自動車の交通量の著しいところの付近の住民に何らかの形での影響はないだろうかということで、いわゆる自動車による大気汚染並びに騒音等による影響調査をやってみたわけでございます。  両調査の結果から勘案いたしますと、窒素酸化物の現在の汚染の濃度というような程度では、いわゆる著しい健康障害というものが出ているようには見受けられないデータでございます。一つこの点御理解いただきたいのは、私ども健康被害補償法による疾病というのは、補償に値する疾病ということでございますし、いまの二つの調査の中で取り上げられました影響調査と申しますのは、いわゆるBMRC方式と申します呼吸器のせき、たんというような症状に着目をした症状がどの程度に出るかということを見たわけでございまして、これの症状をもって直ちに疾病と言うのにはかなりの隔たりがあるということを御理解いただきたいと思います。  私ども、この二つの調査だけではなしに、内外のいろいろな文献並びに調査、さらには動物実験による結果、そういったいろいろなデータを踏まえまして今後の行政的な施策の検討に利用したい、かように思っているわけでございまして、現在、窒素酸化物につきましては、公害研究所で濃度を変えた動物実験等を進めておりまして、また内外の文献等につきましても私ども収集しておりますし、またこの自動車沿道調査等につきましても、今後手法等の開発を進めて、何らかの形でやはり資料の収集調査をしていかなければならない、かように考えておるわけでございます。したがいまして、いまの時点におきましては、現在測定されております大気汚染の中における窒素酸化物の濃度において著しい障害を来すという形は私ども見受けられないのでございますけれども、外国の文献等を見ますと、現在の汚染状況の数十倍あるいは百数十倍というような濃度におきましての影響というのは職業病等の経験からあるわけでございますので、そういう意味で、いま少し資料を集めて今後の施策の方向を決めたい、かように思っているわけでございます。
  92. 水田稔

    ○水田委員 二つの調査の説明をされたわけですが、これは公環特で昨年の十月二十六日にそれぞれ参考人を呼びまして、そういった調査に対する御意見も伺っておるわけであります。その中で、これは沿道調査の方ですが、道路から五十メートルまでをA地区、百五十ないし二百五十メートル離れた地域をB地区、こういうぐあいにしておること、そしてもう一つは、兵庫の状態をそのまま、これは神奈川ですが、そこへ持ち込んでおるということで、そのことについて私が参考人にお伺いしたところ、こういう意見が出ております。川崎と兵庫というバックグラウンドがまるっきり違う、また汚染も、ただ一つの道路だけなのかそれとも工場街の中なのか、そういった汚染の原因になるものが複数に存在するものをそのまま使うということは間違いである、それから、この沿道調査については、全く汚染されてない地域との比較というのはここではとられていない、この調査そのものからは断定的に言えないのではないか、こういう御意見のようであります。ただいまの答弁では、こういったものも含めて相関なしというような御答弁であります。  もう一つは、これは地方新聞でありますから恐らく共同通信の出したものだろうと思うのですが、ことしの二月二十日に、この複合大気汚染健康影響調査についてこういう報道がされておるのであります。「疫学データから窒素酸化物が大気汚染の指標となり得ることを証明したのは今回が初めてである。」、恐らくこれは環境庁等を取材されてこういう記事を書かれたのだろうと思う。そういう点から言いますと、いまの答弁は全く反対だと思うのです。そこらあたり、一体どういうぐあいにお考えかお伺いしたいと思います。
  93. 山本宜正

    ○山本(宜)政府委員 私も青山参考人の陳述につきまして読んでみたわけでございますけれども、ここは若干青山先生には誤解があるかと思います。というのは、川崎と兵庫を一緒にして考えている、一律にしてそれを見るということには基本的に調査の方法の立て方として誤りがあるのではなかろうか、こう言っておられるわけでございますが、沿道調査につきましては、自動車の排ガスの影響ということに着目した調査でございまして、一応川崎の地域それから兵庫の地域につきましては、その地域に対しまする工場、いわゆる固定発生源からの影響というのはそう余り高くないということで一つの選定をいたしております。また、道路に近い地域とそれから百五十メートル以上離れた地域、この二つを選びまして、そのそれぞれの地域の中の人についての健康調査をしているわけでございますが、五十メートルと百五十メートルを選んだという一つ理由といたしましては、道路の端から五十メートルまでの自動車の排ガスの影響と比べて、それから百五十メートル以上離れた場合にはその道路端からの濃度影響がそう大きくないのじゃなかろうかというようなことを他のデータから類推いたしまして、それで地域を選んでいる。したがいまして、この道路に近い地域と離れた地域における濃度、それからそれらの地域における健康影響調査というものをやってみたわけでございますが、これらにつきまして、必ずしも濃度と影響との関係がはっきりしてなかった、逆転したようなケースもあるわけでございまして、そういう意味でその調査一つだけで答えを判断するには若干問題があるという形の結論を私どもは握っているわけでございます。しかしながら騒音の調査は、道路端に近いところと離れたところでは騒音による影響は非常にはっきり出ておったというのが調査内容でございます。  また、二月二十日の新聞のいわゆる窒素酸化物の沿道調査の内容に関する報道があったわけでございますが、先ほど申し上げましたように、昨年の二月に一応環境庁としての公式発表をいたしました後、その資料は各専門先生方の手に渡っておりまして、現在その専門先生方から統計学的ないろいろな手法を用いた評価等をしていただいておりますし、私どもの方も、委託研究といたしまして、深く入った評価研究をお願いしております。これにつきましては、その報告が近く私どもの手に入る予定でございますし、それによって今後の判断はしてまいりたい、かように思うわけでございます。  その報道等によりますと、窒素酸化物が新しい指標になり得る、こういうことを書いてあったようでございますが、大気汚染というのは御承知のように硫黄酸化物、窒素酸化物、浮遊粉じん等々たくさんの種類があるわけでございますけれども、特にその中で横綱、大関とでも申しますか、それは硫黄酸化物であり、窒素酸化物であり、浮遊粉じんである、こういうぐあいに私ども考えております。そういう意味での継続的な数々の地域における大気汚染の観測データを持っておるわけでございまして、いままでの大気汚染評価の中では決して窒素酸化物の評価を落としているわけではございませんが、健康障害という観点でのデータが不足しているというのが現在の状況でございます。
  94. 水田稔

    ○水田委員 私は、青山先生の御意見を見当違いと言うのは失礼な話だと思うのです。というのは、たとえばA地区とB地区とではむしろB地区の方が汚染が高いということが出ているわけです。バックグラウンドについては、それには全く記述はないわけですね。川崎と兵庫が全く同じバックグラウンドではないし、むしろバックグラウンドの汚染状態というものをつかまえる資料が裏にないからこういう結果が出たのじゃないかと疑うべきだと思うのです。そういう不完全な調査をやることがますますNOxとの関係を結論づけるものをおくらせておる。環境庁地域指定をするときに使った資料、きわめて不完全なものを日本システム開発研究所というのが持っていって、これはデータ全部は持っていってないのですが、その中の一部分を持っていって、NOxは人体の健康被害には影響がないというような宣伝のためにむしろ使われておるわけですね。だから調査研究をするならば、たとえば自動車沿道排ガスなら、学問的に言っても環境汚染の全くないところでそれだけを調べる、そういう手法でやるならいいです。川崎と兵庫では違うし、そこではバックグラウンドにどういう汚染源があるか、どういうパターンでそれはいっているか、それに対して自動車から出たものはどうなのか、私も素人ですけれども、それくらいのことはやらなければ、調査結果がA地区よりB地区の方が高いというのがあるというくらいでは、それは本当の意味の人体影響との関係を調べる調査になっていない、そういう点では環境庁の取り組みの姿勢に問題があるのではないか、そういうことで私は申し上げているので、青山参考人の御意見が間違っておるとは私は絶対思っておりません。調査をやるなら徹底的にやるということです。一遍やって、これをやったらこうだった、それは不完全なものだった、これをやっても不完全だったということでなくて、国民の中からは何年来もNOxと人体への影響関係を明らかにしてほしいという要求が出ておるわけですから、調査研究ぐらいはもう少しまともにやってもらいたいと思うのです。もう一度その点をお答え願いたいと思います。
  95. 山本宜正

    ○山本(宜)政府委員 私の説明の仕方が若干不十分だったかと思いますけれども、この沿道調査を計画するときには、その以前に、そのほかのデータから、いわゆる自動車の沿道に近い地域とそれからどのくらい離れた地域を選んで比較したらいいだろうか、こういう前提に立って考えたと思います。それでその結果として、道路の端から五十メートルまでの地域、それから道路から百五十メートル以上離れた地域、これらの間における汚染のいわゆる傾斜を見たと思います。道路端から百五十メートル以上になりましてもその減衰が見られないということは、一応影響がないと考えられるのでございまして、そういう意味で、道路端に近い地域と離れた地域、これを相互に比較する、また川崎と兵庫を相互に比較するということではなしに、川崎は川崎で、兵庫は兵庫でという形での比較をいたしておりまして、その辺、比較の仕方あるいは調査の計画の仕方には、計画としては間違いはなかったと思うわけです。しかしながら、出てきた結果は、そういったデザインの期待と反して濃度が逆転しておったというのがあるわけであります。これは恐らく、川崎の場合などは、自動車の料金所の付近の地形でごらんいただきますように、平たんのところでないというようなこと、あるいは風向きあるいは団地の建築物、そんなようなことから実は逆転してデータが出ておるというのがあるわけでございまして、そういう意味では、今後そういったところをきちっと詰めた調査が必要ではないだろうか、こう思っているわけでございまして、私どもそういったことも今後の手法開発の中で考えてやっていかなければならない、かように思っておるわけでございます。
  96. 水田稔

    ○水田委員 大臣にこれはお答えいただきたいのですが、このNOxの人体影響という問題は、もう長い年月にわたって国民からの要求として出ておるわけです。これはこの委員会における附帯決議の中にも載っております。最終的にはわれわれも、やはり同じような附帯決議をつけざるを得ない。そういう点では、この解明を急ぐためには、調査研究というのに環境庁としては最大の努力をしてもらいたいと思うのです。この点についての大臣の決意のほどをひとつ聞かしていただきたいと思います。
  97. 山田久就

    山田国務大臣 この点については、われわれも最大の努力をいたしているつもりでございます。けさほども申し上げましたとおりに、近く中公審から、専門部会等の意見で、客観的なこれまでに得られたいろいろな知見をもとにしての答申が得られることを期待しているものでございます。ただ、この件については、私も素人でございまするので、申し上げるのもいかがかと思いまするが、どうも世界のあれを見ておりまするというと、事柄自身が、いろいろな調査のデータの非常にとりにくい、また、データを出すのには相当長期間のいろいろ知見を得ることが必要な仕事のように思いまして、非常にむずかしいということが一つの原因じゃないか、こう思います。  今度の答申がどんなふうになってくるか、まだ私もわかりませんけれども、いずれにしましても、とにかくこの答申を踏まえて、そして客観的、科学的にこれに対処していきたい、こう考えているわけでございます。
  98. 水田稔

    ○水田委員 こればかりやっていても時間がなくなるのですが、実は、この複合汚染の健康影響調査でも、完璧なものではなくて、この最後のところにも、「例えば呼吸機能検査の実施率が地域、年度により低い場合もみられたことも一つの問題点である。」ということで、完璧なものではないわけですし、それから自動車沿道の調査にしても、学者の中には批判するものもあるような、完璧なものでないというところに問題がある。  それからもう一つは、科学的と言われますが、そういう点では青山参考人の意見の中にも、たとえば「国民健康保険の受診率もいいでしょうし、それから各開業医の先生のモニタリングの結果としての有病率も結構だろうし、発病率も結構だろう」、こういった、たとえばそれぞれの地域汚染の状況を調べて、そこにおける病気の状態を調べる方法というのは現実にあるわけですね。そういうものには全く触れない。だから、そういう点を含めた総合的な、積極的な調査研究を進めてもらいたい。このことを、時間がありませんから、要望にとどめておきます。  それから次は、これは午前中に島本委員からも質問されたわけでありますが、昨年度は、中公審の答申では、賦課金と補償給付の非常なアンバランスがあって それについては二分の一程度をとにかく調整しろ、こういう御意見だったのですが、実際には四分の一で実施されたわけです。ことしの状況を見ますと、さらに大変なアンバランスな状況が出ておるわけです。ことし、たとえば倉敷を例にとってみますと、賦課金が四十一億九千八百十六万五千円、給付金が十一億円、納めた金の四分の一で、四分の三は全部ほかに回る。これは去年の調整をした後、同じようにこういうことが引き続いて起こっておるわけであります。  これは去年も申し上げたし、細谷さんからも大牟田の問題を具体的に挙げて質問もされたわけであります。そういう地域指定の問題、あるいはいまの指定地域と外は九対一、いわゆる自動車に関連するものと固定発生源と八対二というような問題をそのままにして調整できるような性質のものではない、そのように私は思うわけであります。一体どういうところに一番問題があると環境庁はとらまえておられるか、お伺いしたいと思うのです。
  99. 山本宜正

    ○山本(宜)政府委員 汚染者負担の原則というのを基本といたしましてこの法律は施行されたわけでございますが、大気汚染に関しましては、事業者が共同で責任を負うのが適当であるという考え方から、費用の負担を広く全国から求めるということにいたしたわけでございまして、そういう意味で、指定地域と指定地域外からも取るという形で九対一という割合の固定発生源からの費用負担を求めているわけでございます。  しかしながら、制度の施行後の状況を見ておりますと、御指摘のように、指定地域間の費用と負担が著しく乖離するところが生じてまいったのは事実でございまして、これはいわゆる汚染者負担の原則からも望ましくないと実は考えるわけでございます。したがいまして、中央公害対策審議会の答申で、五十二年度から指定地域の賦課料率に格差を設けたわけでございます。  今後私ども、五十三年度におきましても、中公審が答申で指摘しておりますような趣旨に近づける方向で賦課料率の格差の是正はしてまいりたい、かように思っております。この点に関しましても、いろいろ地域ごとの問題がございまして、費用負担並びに専門先生方、中公審の先生方の御意見も聞きながら、関係方面との詰めをしてまいりたいと思います。そういったような方向で改善を図っていきたい、かように思っているわけでございます。
  100. 水田稔

    ○水田委員 いまの答弁は、私は、そういうやり方ではPPPの原則に反するから申し上げておるわけです。たとえば地方交付税のような調整をやるにしても、少なくとも倍を超すような負担が出てくるということは、汚染者負担の原則から著しく外れておる、そういうぐあいに当然考えるべきです。それをいまのようなやり方で年々やったところで、これは御承知だろうと思うのですが、いわゆる排煙脱硫をやって硫黄酸化物の排出量は減ってきた、しかし、翌年にはその単価が倍にも上がっていく、支払い総額はふえていくという、いわゆる努力をしても負担が逆にふえてくるという問題もあるわけです。そういうことを考えると、これは全体的に指標というものを考え直す必要がある、そういうぐあいに思うわけです。その点、いまの答弁では、指標の問題ではなくて、単に賦課金と給付のアンバランスを年々出た実績だけで調整していくというような考え方では解消できるものではないと私は思うのです。そこで、たとえばの話、八対二について、今度も中公審がこの問題について答申をしておるのは、八対二を動かさなくていい、こういうことでありますが、そのもとになったものは「賦課対象別年度別推定排出量割合試算」、これは資料としていただいたものですが、それを見ますと、四十八年度はSOx一・六に対してNOx三四・七で、これは単純な算術平均で一八・一というのを出している。それから五十一年度はSOxが三・七でNOxが三八、これは足して二で割って二〇・八、だから八対二でいい、これぐらいずさんな物の見方というのはないと思うのです。この推移というのは、やはり指標という問題まで含めて八対二という考え方をそのまま踏襲することは、NOxだけ見ると、四十八年が三四・七で五十一年は三八になっておるわけですから、そういう点も注目すべき数値、そういうものだと思うのです。そういう点を含めて考えなければならぬだろうし、また、これは前回も申し上げたのですが、たとえば固定発生源と移動発生源の比率を見る場合、これは汚染者負担の原則という立場で考えた場合、全く自動車が一日に何台かしか通らない山の中で自動車が排ガスを出したところで、これは自然浄化力はあると思うのです。ところが、都市部ではそうもいかぬでしょう。そこで、たとえば都市の形態の中で、大規模な臨海工業地帯を近くに持ったところで、その周辺の自動車の通行量か少なくても大変なあれを受けるわけです。逆に言えば、規制の対象になっていない、あるいは賦課金を納めてない、そういう小さな煙源をたくさん持った、そういう形態の都市であれば違った率になってくると思うのです。それらも汚染者負担の原則から、当然考慮すべき問題だと思うのです。  たとえば、岡山県で実際に調査をやったデータがあります。これは、水島では固定発生源と移動発生源の率は七〇対三〇。県庁所在地の岡山市は、小さな工業地帯はありますけれども、違った形の都市形態です。ここでは移動発生源と固定発生源では五〇対五〇という数字がちゃんと調査で出ておるわけです。そういうことなどを総合的に考えた指標の再検討というのは当然私は必要だと思うのです。その点についてお答えいただきたいと思います。
  101. 山本宜正

    ○山本(宜)政府委員 二点お答え申し上げます。  いまほど先生指摘ございました四十八年度におきます二〇対八〇という比率につきましては、私ども、いわゆる硫黄酸化物と窒素酸化物と、それらを合わせて等価であるという考え方をもちまして、そのそれぞれが固定発生源、移動発生源、いわゆる自動車、それぞれの中でどのくらいの排出量を占めているかというのを見たわけでございます。いわゆる硫黄酸化物なら硫黄酸化物の固定発生源と自動車の割合、これは四十八年におきましては、固定発生源が硫黄酸化物といたしまして九八・四%を占めております。自動車が一・六%を占めております。窒素酸化物につきましては、固定発生源が六五・三%、自動車が三四・七%を占めております。したがいまして、これを足し算してみますと、固定発生源が八一・九%、自動車が一八・一%、したがいましてこれをほぼ八対二と見た。四十九年、五十年、五十一年それぞれいたしてみましても、それらはそれぞれ八一・四対一八・六、八一・五対一八・五、五十一年度は七九・二対二〇・八というぐあいに、八対二という割合になっておりますので、これをもとといたしまして八対二の計算をしたわけでございます。  それからいま一点は、確かにこの制度の開始につきましては、御承知のように、この制度は大変ユニークな、外国にも例のない制度でございますので、当初いろいろとデータも不足した関係から、かなりの割り切りをもって行政をやっております。したがいまして、現在私ども各方面からいろいろな問題点の指摘を受けております。したがいまして、私ども中公審の環境保健部会の中に小委員会を設けまして、それらのいろいろな御意見を整理いたしまして、そのそれぞれについて、今後施策にどう反映していくかということの御検討を、若干時間がかかるかと思いますが、現在進めつつありますので、そういった御意見を賜りながら、いろいろな問題点、特に現在の賦課のかけ方等につきましても、また何らかの新しい、納得のいく御意見が出ましたならばそれを採用して、少しでもPPPの原則並びに一般社会からの合意の得られる方向での運用を図ってまいりたい、かように思っておるわけでございます。
  102. 水田稔

    ○水田委員 もう時間が参りましたので、あと一問だけ。  そういうぐあいにずっと見てまいりますと、いまの賦課徴収のあり方というのは問題があり過ぎる、こういうぐあいに思うわけです。中公審で検討した中でも、これはこの法律ができる最初にそういう論議もあったと聞いておりますが、もともと燃焼から起こるわけですから、そういう点で言えば、原料として使うもの等を一部除いて、石油の元で押さえていくということが一番公平になると思うのです。矛盾が大変少なくなってくる。そういう点で、これは今度の中公審の答申の中にも、考え方の中に一と二という考え方があるというだけの指摘で、方向は出しておりません。やむを得ず現在のものを引き続いて、こういうことになっておりますけれども、これは財源を、いわゆる汚染者負担の原則を貫くならば、そこまで返った検討を当然すべきじゃないかと思うのです。この点を最後にお伺いしたいと思うのです。
  103. 山本宜正

    ○山本(宜)政府委員 当時中公審でいろいろ御検討をいただいた経緯、その後の状況を私、見てまいりますと、たとえば固定発生源についてのいろいろな賦課の仕方、あるいは移動発生源につきましてもどのような形で徴収をしたらいいかということを、大変数多く挙げて検討しておられたわけでございます。その中で、現在の自動車重量税から引き当てるという方式は、二、三の理由のもとに選択されたわけでございまして、これで一番完璧な方法だとは言いがたいと思いますが、先生の御提案されますような、石油から徴収する場合には、石油以外の燃料を使っている移動発生源からの賦課も考えなければならない、この点が抜けるのではなかろうか。それから、燃料というところに汚染の賦課金を賦課するということによって、汚染物質の排出防除に対する努力というものが反映されないのではないか。いわゆる自動車重量税をかけることによって、自動車の排出を減らすような方向への一つの技術的な努力のインセンティブがあるのではないだろうかというような点、まあいろいろと御検討をいただいております。したがいまして、そういった中から、現時点では徴収コストの面から考えましても一番いいと考えられるものを選択した、こういう事情でございまして、いろいろな方法についてのそれぞれの利害を検討しながら、この方法に落ちついているということでございます。これもまた当然御提案があり、附帯決議にもございますならば、今後私どもはいろいろと中公審の中で御検討願ってまいりたい、かように思っているわけでございます。
  104. 水田稔

    ○水田委員 一つは、非常なアンバランスができてきたこと、もう一つは、SOxについては金をかけて努力してきてもそれが翌年のいわゆる賦課徴収の単価にははね返ってこないことなど、たくさんな矛盾点がいまの制度のもとで出てきた。これは非常に大きな矛盾が出ておることは認めざるを得ないと思うのです。そういう中で考えるとしたならば、もう少し汚染者負担の原則に返るような、もう一遍もとへ返って考える時期である、そのことだけ申し上げまして、これは答弁はよろしいです。  質問を終わります。
  105. 久保等

    久保委員長 次に、古寺宏君。
  106. 古寺宏

    ○古寺委員 これはきょうの朝日新聞でございますが、この新聞の中に「政務次官会議かみつく」という記事が載っておりまして、その中でいろいろなことが書かれてございますが、この新聞の報道が事実かどうか、政務次官にお伺いしたいと思います。
  107. 大鷹淑子

    ○大鷹政府委員 昨日、政務次官会議がございました。討論する議題が出ておりまして、それが終わった後に座り込みに関することが話題になりました。
  108. 古寺宏

    ○古寺委員 この新聞の記事にあるとおりでございますか。
  109. 大鷹淑子

    ○大鷹政府委員 朝日新聞をお指しでございますか。何かいろいろと記事が出ておりますので……。(古寺委員「私が持っているのは朝日でございます」と呼ぶ)朝日でございますか。事実でございます。
  110. 古寺宏

    ○古寺委員 その中で、丹羽国土政務次官が、これはおっしゃったのかどうかわかりませんが、いつまで、あのままにしておくのか、早く解決せよというのではなく、要するに追い出せという趣旨の発言をしたとございますが、これは事実でございますか。
  111. 大鷹淑子

    ○大鷹政府委員 追い出せというようなお言葉は出ておりません。次官がおっしゃいましたのは、陳情の後、座り込みが続いているけれども一体どうなっているのか、庁舎に張り紙がしてあったり、おふろ、食事まで出しているそうだけれども、家賃の要らない家に住んでいるようなものだ、環境庁はどう考えているのだというようなお言葉はございました。
  112. 古寺宏

    ○古寺委員 そうしますと、ふろに入れたり食事も出しているというような事実はないわけでございますか。
  113. 金子太郎

    ○金子政府委員 そのような事実はございません。
  114. 古寺宏

    ○古寺委員 さらにこの記事の中で、政務次官は、この件につきまして大臣に御報告をしておきます、こういうふうに書かれてございますが、どういうふうに大臣に御報告なさったのですか。
  115. 大鷹淑子

    ○大鷹政府委員 大臣もお忙しゅうございますので電話で御報告したのでございますが、私はそのときに、次官がお話しなすったときに、食事は支持者の方たちが差し入れていらっしゃるということは申し上げまして、長官が、座り込んでいらっしゃる患者さんの中にお体の悪い方もいらっしゃるから、決して健康によくないのでお引き揚げいただきたい、そういうことをかねがねおっしゃって、そういうふうに指導をするということをおっしゃっていらっしゃいましたので、そういうことを次官に申し上げたわけでございますが、ですから、やはり正常な形で根本問題を詰めていこうということのお話し合いをさせていただきました。
  116. 古寺宏

    ○古寺委員 この政務次官会議で、水俣病患者がなぜ座り込みをしているのかというようなことについては全然議論はなかった、こういうふうに書かれているのですが、そうしますというと、大鷹政務次官は、この問題については全然発言をなさらなかったわけでございますか。
  117. 大鷹淑子

    ○大鷹政府委員 当日は八時半からの朝食会でございまして、議題というのが決まっておりまして、当日は外務省それから経済企画庁の報告が一時間以上ございまして、そしてもうそろそろ終わりかけて皆さんお立ちになるときで、この話題が急に出たということで、十分か十五分ぐらいの時間でございまして、それで閉会ということになりましたので、水俣病の座り込みの方たちのことに関してお話し合いするという時間はございませんでした。
  118. 古寺宏

    ○古寺委員 それではあなたにお尋ねしますが、現在水俣病患者が座り込みをしているのは、どういう要求があって座り込みをなさっておりますか。
  119. 大鷹淑子

    ○大鷹政府委員 国の加害責任を認めよということなどでございます。
  120. 古寺宏

    ○古寺委員 などでは困るのでありまして、正確にお答えしていただきます。
  121. 山本宜正

    ○山本(宜)政府委員 私からかわってお答えさせていただきます。  二月二十四日の日に熊本県知事、総理大臣環境庁長官に対しましての要求書という形で私たちに示されましたものは三点ございます。一点は、「不作為の違法が熊本地裁で確認されてから、熊本県と国の法無視が一年余も続いている」、「この違法状態がなしくずしに被害者に強制されていることに我々はこの苦痛からの解放を要求するとともに、違法状態を直ちに解消されるよう強く要求する。」、第二点は、「水俣病事件発生の由来と経過をみるとき、県と国は水俣病事件にかかる自らの非を認め、被害者汚染地域の復権に早急なる万全の施策を講ずることを要求する。」、第三番目に、「水俣湾ヘドロ処理について、現在国、県が進めている計画は、水俣病被害の全体像の把握という大前提が全く欠け落ちており、逆に水俣病事件のもみ消しに利用されている。被害者、周辺住民意見を無視して進められている現計画の危険性は明白である。」云々とございまして、このような「不測の事態についての責任は全て国、県にあり、我々は本計画の白紙撤回を強く要求する。」、こういう三点がポイントでございます。
  122. 古寺宏

    ○古寺委員 これ以上政務次官には申し上げませんが、いまのような患者さんの要求内容につきましては、よくその内容を把握していただきまして、こういう政務次官会議等の席で十二分に各政務次官に認識をしていただくように、ひとつこれから努めていただきたいと思います。  次に、これは大臣にお尋ねしますが、安倍官房長官が庁舎管理面について環境庁長官に注意しなければならないと思っている、こういう記事が載っているわけでございますが、官房長官の方からは何かそういうような注意があったのでございますか。
  123. 山田久就

    山田国務大臣 特に注意はございません。ただし、そのニュースを私が知ったものですから、官房長官に何か私の方に言うことがあるのかということを委員会の席でしたけれどもちょっと確かめたところが、合同庁舎の各方面からいろいろな意見が出てきているので、ひとつそういうことを考慮に入れて考えておいてほしい、こういうようなお話でした。
  124. 古寺宏

    ○古寺委員 現在の座り込みの問題につきましては、閣議等で、この問題について長官からお話しになったことがございますか。
  125. 山田久就

    山田国務大臣 特に関係大臣については、私は非公式に話をしております。ただし、閣議の席でこれを特に議題として取り上げておりません。
  126. 古寺宏

    ○古寺委員 そうしますと、患者さんの要求については総理にお話をしてございますか。
  127. 山田久就

    山田国務大臣 根本的な点については総理の耳にも入っていると申し上げていいと思います。
  128. 古寺宏

    ○古寺委員 この問題につきましては、これは環境庁だけで解決をするということは容易でない問題だと思うのです。やはり高度の政治的ないろいろな解決策を考えなければならない問題でございますので、いつまでも患者さんをああいう状態にしておいて、そして環境庁の担当の職員の方々がそれに対応していつまでも対峙しておっても解決はつかぬと思うのですよ。ですから、こういう問題については、長官なり政務次官がもろと積極的にこの問題の解決に当たらぬといかぬと思うわけでございますが、もう大分たっています。先月の二十四日からでございますから、もう少しで一カ月になります。大臣は、どういうふうにこれを解決なさるおつもりですか。
  129. 山田久就

    山田国務大臣 当初からわれわれは、先方がその基本的な要求を入れなければ会わないというのに対して、話し合わないで物が解決にはいかぬということで、強く彼らとわれわれとの会見を要求しました。これに応じて会見をいたしましたけれども、しかしながら、やはり基本的な彼らの、全面的に国家で責任を負えという点を受諾するのでなければ話にならないという一点張りでございますので、こういう状況においては実りのある解決は見出すことはできない、もっと問題を限定して具体的に話し合うべきだ、そのラインで環境庁の担当者が話し合いを続けていこうとしておりますけれども、実りある反応が出ておりません。したがって、これは単に座り込みで解決するものではない、話し合いはいつでも応ずるけれども、そのような正常じゃない状態というものは、健康の点からも排除すべきであるということを先方に申し入れさせております。われわれとしては、もっと正常な形で話し合いをすべきだと考えております。  いま御指摘のように、これは一環境庁考えることのできる、そういう問題ではありません。根本的な問題に対してああいうかっこうで迫っておる、私はこれは非常に残念だと思っております。基本的な問題については、すでに事務的にはいろいろの検討は始めておりますけれども、しかしながら、そう早急に解決し得る事柄ではない、私はそういう広範な問題であるという意識に立っておりますので、正常な形に早く立ち戻って、そうして誠心誠意の話し合いを続けていくこと、これが双方にとって利益のある問題だ、こういうことで、私は、強くそういう意味での反省も促して、それが早くわかってもらうということを強く期待しております。それ以外になかなか今日解決ということはできないんじゃないかと残念ながら思っております。
  130. 古寺宏

    ○古寺委員 政務次官は、何か人口問題の懇談会があるそうでございますので、どうぞそちらの方へおいでになってください。  そこで、大臣に申し上げますが、高度な政治的な判断が必要だということはいまお認めになった。それに対して大臣がどれだけの努力をなさっていらっしゃるのか、その点を承りたいのです。
  131. 山田久就

    山田国務大臣 政治的な判断というものは、それに対応する具体的な内容を必要とします。具体的な対応策というものは、私はいまの段階でこれを申し上げ得る段階には達しておりませんけれども、そう簡単な問題ではない。であればこそ、そう容易に結論が生み出せるものではないけれども、しかしながら、そういう具体的な対応策について検討する以外に脱出の道がないと私は考えております。
  132. 古寺宏

    ○古寺委員 現在は、チッソの問題につきましては、いわゆる民事協定でもって、私法上の問題でもって補償金が患者さんに支払われておるわけですが、今後このチッソが不況のために、経営不振のために倒産をするような事態が発生した場合には、一体だれが患者さんに補償するのでしょうか、大臣から伺います。
  133. 山田久就

    山田国務大臣 この問題は、具体的には非常にむずかしい問題だと思います。問題は、いま御指摘のように、私法契約上の問題でありますし、したがって、それに政府が直ちにとってかわるという問題は、一チッソの問題を越えて、これは全般的な問題になろうかと私は考えます。したがって、この対応策というものは、恐らくは非常に具体的な個々の形においての対策というようなものが考えられていかなければ解決案に到達し得ないような、そういう困難な性格を持っているものと私は判断いたしております。
  134. 古寺宏

    ○古寺委員 そうしますと、現在の補償法はPPPの原則で成り立っておりますね。しかし、不況によりまして企業が倒産をしたり、いろいろな問題が発生してきます。その場合の補完措置というものがなければいけないと思うのですが、どうですか。
  135. 山田久就

    山田国務大臣 いわばその点が法の盲点と言えば盲点です。しかしながら、この点は、やはり事前にこの盲点に備えるということの実際上のむずかしさから来ているのじゃないかと思います。私どもが先ほど指摘しましたように、私契約上の問題、PPPの原則、これが実際上継続し得なくなったときの、たとえばだれがこの問題をやっていくかということは、平たく言えば、事前に仮にこれを予測したような何かの案を立てるということになるならば、これまた計画的に会社をつぶすということも起こってくるかもしれぬし、いろいろな場合が考え得るというようなむずかしい問題も出てくるでございましょう。また、国家が補償すると申しましても、これはやはり国民の税金であるということの観点に立ってみますと、そう容易な、つまり安易な解決方法もできない。ここにこの問題の取り組み方の非常にむずかしい点が存する。この点だけをここで私も指摘しておきたいと思います。
  136. 古寺宏

    ○古寺委員 仮にチッソが近い将来において経営不振になりまして、水俣病患者から、現在の補償法によって補償していただきたい、こういう申し出があった場合にはどうなりますか、大臣
  137. 信澤清

    信澤政府委員 若干事務的な部分もございますので、私から御答弁させていただきます。  お話しのような場合、当然予想されるわけでございます。現在も民事上の協定ではございますが、一応補償法に規定いたしております認定を受ける、これを足がかりにしているわけでございます。認定を受けた患者が希望すれば補償協定にいく、こういう仕組みになっておるわけでございますから、いま御指摘の問題は現在でもあり得るわけでございます。こちらの方がよろしいということでこちらへ参るという場合があるわけでございます。ただ第二種の地域に係る疾病につきましては、先生御承知のように排出者といいますか、補償すべき責任者が特定されておりますから、いずれにいたしてもチッソの負担という法律構成をとっておるわけでございます。したがって、法形式的に申しますと補償法の対象の給付が行われるわけでございますが、総体から見ますれば、その金額を最終的に負担すべきチッソそのものがいなくなってしまう、こういう状態になるわけでございますので、いわば法制定当時想定しておらなかったようなそういう事態になる。そこで、さっきから大臣申し上げているように、いわば法の盲点ということにつながっていくわけでございます。
  138. 古寺宏

    ○古寺委員 いままで補償を受けてきた方々に、いろいろな状態が起きて加害者、加害企業あるいは公害健康被害補償協会からの特定賦課金の納付がない場合、都道府県知事は補償法の上からいって認定患者に対する補償の責務があるのかどうか、その点はいかがですか。
  139. 信澤清

    信澤政府委員 法律そのものを形式的に読みますと、恐らく給付の義務が都道府県知事にあるわけでございます。したがって、給付をしなければならないという規定は残るわけでございます。ただ、現実問題といたしまして、その費用を支弁いたしますのは都道府県でございますが、その財源は御案内のように特定賦課金、こういうことになっておるわけでございますから、事実上の問題としては動かない、こういう結果になるわけでございます。したがって、ただいまの段階では、私ども、そのような場合を想定いたしまして、それでもなお給付が行われるのだと言い切るには、実際問題としてそう言い切れないという事情にあるわけでございます。
  140. 古寺宏

    ○古寺委員 そうしますと、患者さんは泣き寝入りという状態になるわけですか。どうでございますか。
  141. 信澤清

    信澤政府委員 泣き寝入りにしないために、先生先ほどお話しのように補完措置なり何なりを考えていく必要があるのではないか、こういうことで、先ほど申し上げましたように、法律制定当時想定しておらなかった事態でございますので、仮に民事協定に基づく補償ではなくて補償法に基づく給付というふうになります場合のことも考えながら、対応について研究をしているということでございます。
  142. 古寺宏

    ○古寺委員 そうしますと大臣、やはり現在の補償法というものを改正しまして補完措置というものを考えなければいけないわけです。ですから、大臣はそういうような事態が起きても十分に患者さんに補償していけるように現在の補償法を改正して補完措置を講ずるお考えがあるかどうか、その点を承りたいと思います。
  143. 山田久就

    山田国務大臣 この対応措置は、これは患者の立場ということを考えれば何とかしなければいかぬ。そこでこれの対応措置をいまの補償法の改正ということによって対応するかどうか。いろいろな他の波及面、いろいろな問題がございますので、とにかく対応措置としていろいろ案を考究中である、これが現在の状況でございます。
  144. 古寺宏

    ○古寺委員 すると、この法律を改正しないで補完するような方法というのはどういうのがございますか。
  145. 信澤清

    信澤政府委員 ただいま検討しておりますので、具体的にこれということを申し上げるわけにはまいりませんが、あの補償法案ができまして、補償法案を国会で御審議いただきました過程でもそのような御質疑があったわけでございます。その際の政府委員の答弁は、あの法律の仕組みを考える場合、そういう場合を想定してはそもそも成り立たない、そこで、そういうような事態が起きました場合にはその段階で予算上あるいは法律上の措置をとることになります、こういう御答弁を申し上げているわけでございます。私どももやはりそのとおり考えておるわけでございますので、法律改正によらないほかの方法があり得るかどうかという問題までを含めまして研究中というふうに御理解いただきたいと思います。
  146. 古寺宏

    ○古寺委員 そこで、現在笹ケ谷とか土呂久の場合の財源、これはどういうふうになっていますか。
  147. 信澤清

    信澤政府委員 特定賦課金を負担すべき負担者が現在確定しておらないという状況にあるわけで、決して存在しないという前提に立っているわけではございません。
  148. 古寺宏

    ○古寺委員 よく意味がわからないのですが、笹ケ谷の場合、具体的にお答えしてください。
  149. 信澤清

    信澤政府委員 先ほど、チッソの場合には、チッソが倒産して負担ができなくなった場合ということでお話がございましたので、それとの違いを申し上げたわけでございます。つまり、だれか負担者がいるはずなんでございます。しかし特定できない。しかし現実に患者の救済をしなければならない。そこで、先ほどもお話に出ました補償協会に法律的に短期長期の借り入れができるようになっておりますので、借入金によって処理をいたしているというのが実情でございます。
  150. 古寺宏

    ○古寺委員 補償法のたてまえからいきますと、これは当然PPPの原則が貫かれているわけでございますが、たとえば休廃止鉱山、あるいは大気汚染事務費の問題、保健福祉事業、いろいろ公費で負担されているものもあるわけです。したがって、先ほどのチッソに戻りますが、こういうような補完措置としては当然公費負担というような問題も考えなければならないような事態になることも予想されるのですが、そういう点についても検討しておられますか。
  151. 信澤清

    信澤政府委員 先生いま御指摘のように、給付金そのものはPPPのたてまえを貫く必要があるわけでございます。ただ、福祉事業あるいは事務費等については、制度を動かす上で必要な経費あるいは福祉事業のように患者救済につながる問題ではありますが地域の保健福祉事業でもあるというようなものについては、一部公費を入れている、こういう考えでございますから、その考えを補償給付にそのまま持ち込むということはいかがか、率直に申し上げましてそのように考えます。
  152. 古寺宏

    ○古寺委員 それでは、補完措置を講ずるような対策を、法改正をするなり、検討中ということでございますから、そういう点についてのきちんとした措置を講ずることを強く要望しておきたいと思います。  次は公害保健福祉事業の問題でございます。これは、先日もお尋ねを申し上げましたが、非常に予算の消化率が悪いわけです。この点について、今年度はどういうふうに対応されるお考えか、承りたいと思います。
  153. 山本宜正

    ○山本(宜)政府委員 先生指摘のように、この法施行以来のかなりユニークな行政的な内容としての福祉事業実施につきましては、御指摘のように十分実施が図られていないという点につきましては、しばしば御指摘を受けておるわけでございます。  一つは、私ども制度の仕組みのつくり方並びに事業進め方についての指導が不十分であったのではないかという点も反省いたしますし、また事業内容につきましても年々少しずつ、事業がしやすいように新たな内容も加えたり、あるいは補助金の交付をする基準等につきましての地方の実情に合った方向をとっておりまして、五十三年度におきましては、新しく患者のリハビリテーションの指導に関する部分の事業を加えたりいたしまして、逐次改善を図っていきたい、かように考えておるわけでございます。
  154. 古寺宏

    ○古寺委員 この問題については、昨年でございましたか、参考人をお呼びして意見聴取をした場合にも、なぜこういう事業が充実しないのかといういろいろないままでの問題点が指摘されたわけでございますが、そういう問題点に対する改善についてはお考えでございますか。
  155. 山本宜正

    ○山本(宜)政府委員 考え努力していって、五十三年度には一つの新しい事業を含めてみた、同時に、これは予算の執行の段階の問題でございますけれども、いろいろ事業内容を承認するに当たっての地方の実情を踏まえた相談に乗りながら、少しでも福祉事業が進むようにいたしているわけでございます。
  156. 古寺宏

    ○古寺委員 そこで、この未指定地域でございますね、青森県の八戸市とかあるいは富山市のように、国の指定にはなっていないが、地方自治体が単独でこの公害病患者を救済しているところがございます。そういうところに対しては保健福祉事業というものはどうなんでございますか。
  157. 山本宜正

    ○山本(宜)政府委員 先生御承知のように、この法の仕組みからいたしまして、法の四十六条に、指定地域に関しての福祉事業についてのみ補助をすることにいたしております。したがいまして、地方が独自でいたしておりますものについての福祉事業の推進補助ということは考えておらないわけでございます。
  158. 古寺宏

    ○古寺委員 そこで、大気汚染公害病の指定地域になるためには二つの要件がありますね。主に有症率とか、それから汚染の度合いが三度以上とかいうようになっているわけでございますが、現在この有症率が二倍以上になっている地域は全国でどのくらいございますか。
  159. 山本宜正

    ○山本(宜)政府委員 お尋ねのいわゆるBMRCによるせき、たんの有症率の調査につきましては、実は全国的にいたしたことがございません。したがいまして、私どもいままで地域を指定する場合には、過去における汚染の濃度、硫黄酸化物、窒素酸化物等々の汚染の状況を踏まえまして、その上でこの地域に関しての有症率等の調査を進めまして、それで両者合わせまして線引きをしていく、こういう形でございますので、まことに残念でございますが、いわゆるBMRC方式による有症率についての全国的なデータは持っておらないわけであります。
  160. 古寺宏

    ○古寺委員 ここで簡単にお尋ねしたいわけですが、公害病認定地域の中にいる公害病の患者さん、それから認定地域でない、いわゆる自治体が独自でやっている、あるいは未指定地域公害病の患者さん、これはどういうふうに違いますか。どちらも公害病でしょう。
  161. 山本宜正

    ○山本(宜)政府委員 先生に申し上げるのは大変釈迦に説法みたいなことに相なるかと思いますけれども、御承知のように、現在のいわゆる大気汚染による呼及器四疾病をこの救済法あるいはかつての旧法等で取り上げた経緯は、御承知のように肺気腫、慢性気管支炎、気管支ぜんそくというような四疾病は、大気汚染によって起こるものとそれ以外の原因によって起こる、すなわち非特異的な疾患でございます。しかしながら、大気汚染の著しい地域におきましてはこれらの四疾病が多発するという、過去の四日市等の苦い経験をしたわけでございまして、それに着目いたしまして地域を指定いたしまして、その地域内におけるこの四疾病につきましては、ほかの原因の者も含めまして救済法の対象にするという形態をとっているわけでございます。したがいまして、それ以外の地域におきまして同様の疾病の人があるというものを、直ちにこれが公害によるものかどうかということは、御承知のように疾病像からは特定できないのがこの第一種疾病の特徴かと思います。私どもそういう考え方で立っておるわけでございます。
  162. 古寺宏

    ○古寺委員 それではもう少し狭めまして、この公害病の認定地域にいる公害病患者さんと、地方自治体で認定した公害病の、大気汚染による疾患ですよ、その公害病では、これは同じでございましょう。
  163. 山本宜正

    ○山本(宜)政府委員 制度から考えますと同じでないというぐあいに考えられますが、もう一遍申し上げますと、疾病が、原因との関係が特定できないものでございますので、地域を決めて、その中の非特異の疾患を補償の対象にする、こういう形でございまして、地方それぞれが独自でやっておりますのは、それぞれ独自の考え方でございまして、たとえば東京都等は、十八歳未満の者につきましての医療費という考え方をとっておりますが、この辺につきまして同じと言えるかどうかにつきまして、私は、制度的には違うというぐあいに考えておるわけでございます。
  164. 古寺宏

    ○古寺委員 制度上では違いがあろうかとは思いますが、仮に八戸市の例で申し上げましょう。八戸市の場合には有症率は一応条件を満たしている。しかし、汚染度においてはデータが十分でない、こういうことで一応保留されたことがございました。しかも、現在持っておるデータなり有症率でいきますと、非常に指定される地域が狭められる。それから企業の賦課金が、指定になったために九倍にはね上がる、こういう問題等があって、当然指定されなければならない地域でありながら指定されずに、地方自治体が現在その救済を行っているわけです。これは指定されますと、そこにいるぜんそくなり気管支炎の患者さんは当然公害病に認定されていろいろな制度の恩恵を受けるわけですが、自治体が独自でやっている場合には、これは市独自の制度の上に乗っかっているのですが、同じ公害病患者でありながら、制度上の違いから、いま御説明があったように違いが出てくるのです。  私が申し上げたいのは、そういう地方自治体が行っている救済制度の中には公害保健福祉事業というものが現在ないのですね。しかしながら、この公害保健福祉事業の中には公費も導入されているわけですから、私は、公害病の認定地域以外の市なりあるいは府なり、都なりが独自でやっているような地域に対しても当然公害保健福祉事業というものは実施すべきでないか、こう考えるわけですが、大臣はどうですか。
  165. 山本宜正

    ○山本(宜)政府委員 私からお答えさしていただきます。  この制度ができました歴史を考えてみますと、御承知のように四日市裁判等、地域住民の疾病に苦しんでいる中から民事訴訟が提起されました。裁判をいたしますには大変費用なり時間なりいろいろな手順がかかるわけでございます。したがいまして、そういった民事を踏まえてこの法律ができて、それによって迅速な救済が行われるという趣旨でできたわけでございますので、そういう意味から考えますと、民事でございますと、原因者等を特定して地域地域で負担するというような形になるわけでございますけれども、それを大気汚染にかかわっているような全国それぞれの広い範囲で負担をすべきであるという考え方から制度が成り立ったわけでございまして、その制度運用の上で地域の指定をする条件を決めるという形で運用されているわけでございますので、その辺はひとつ十分御理解いただきたいと思います。
  166. 古寺宏

    ○古寺委員 どうも理解できないのですが、たとえば市独自でやっているところも企業は賦課金を払っております。その賦課金のほかに、その市独自でやっている公害病患者の給付やいろんなもののために、さらにまた上乗せして賦課金を市の方へ出しているわけですね。二重に出しているわけですよ。そういう非常に矛盾した面があるのですが、そういう面については大臣はどうですか、よろしいですか大臣、聞いていますか。
  167. 山本宜正

    ○山本(宜)政府委員 地方地方で独自の方式でいたしておりますのは、地方の自治体が仲立ちになりましてその地域企業との間の協定を結びながらやっておるわけでございますので、それに私どものいまの制度が介入して福祉事業だけをめんどうを見ていくというような形は不自然ではないか、私どもかように考えておるわけでございます。
  168. 古寺宏

    ○古寺委員 不自然ということはどうも納得いかないのですがね。この保健福祉事業なるものがリハビリテーションに関する事業ですとかいろいろな問題があるわけですが、そういうものをやるのに、自治体のみでやるということは不可能でございましょう。当然、総合的に見て、認定されていない地域についても保健福祉事業というものは同じようにやっていく必要があるのじゃないか、こう考えるのですが、いかがですか。
  169. 山本宜正

    ○山本(宜)政府委員 私ども、保健福祉事業というのは医療よりも若干超えた、いろいろな医療を助ける部分でございますので、この地域を指定したところにおいては、単なる医療、補償、その上に健康を回復するに必要な事業というものをつけ加えているわけでございまして、逆に全国一億全部が地域指定という形になれば、これはまた話は別でございますけれども、やはり制度の組み立てといたしましては、当該地域汚染というものがまず認められなければならない。それに立ってPPPの原則というものを導入しながら制度をつくっているわけでございますので、そういう意味では、この制度には指定地域外のことにつきましては入りにくい、こういうぐあいに言えると思います。
  170. 古寺宏

    ○古寺委員 そうしますと、そういう地域については、結局その地域だけでそういう事業をやらなければならぬということですか。
  171. 山本宜正

    ○山本(宜)政府委員 さように考えております。
  172. 古寺宏

    ○古寺委員 どうもこれはなかなか納得できない問題ですが、やはり公害病患者には変わりがないわけですから、そういう患者さんの健康回復を一日も早く図るためには、当然この保健福祉事業のようなものは、そういう独自でやっている地域対象に入れてこれは行うべきであると考えますが、これはひとつ大臣にお伺いして、終わります。
  173. 山田久就

    山田国務大臣 やはり市の場合にもPPPの原則と結びついているものですから、どういうふうになっていくのでしょうか、一応ひとつ検討さしていただきたいと思います。
  174. 古寺宏

    ○古寺委員 こういうふうに、現在、保健福祉事業があっても十分に予算を消化できないような状態なんです。予算があるのです。しかも、PPPの原則によって、現在、国のいわゆる地域の認定を受けなくとも市独自でやっているわけですね。当然その賦課金は出しているわけです。九倍の賦課金は出しておりませんが、賦課金は出しているわけですよ。そういう面からいけば、当然私は、福祉事業というものについてはそういう地域についても見てあげるべきだ、こういうふうに考えるわけなんですが、大臣からもう一遍お伺いしましょう。
  175. 山田久就

    山田国務大臣 まあ、ひとつよく検討さしていただきます。
  176. 古寺宏

    ○古寺委員 検討検討と言っても、なかなか結論は出てこないと思いますが、ひとつそういう方向で結論が出るように検討いただきたいと思います。
  177. 久保等

    久保委員長 次に、東中光雄君。
  178. 東中光雄

    ○東中委員 本法案との関係で、窒素酸化物の問題についてお伺いしたいと思います。  いまなお窒素酸化物が地域指定の要件とされていないために、全国で不当に指定地域が制限されて、多くの公害病患者が放置されておる。さきの同僚議員の質問の中でもいろいろ問題が出ておりましたが、この問題では、法成立以来次第に解決が遠のいていくような印象さえ持たれるわけですが、環境庁の、この窒素酸化物を地域指定要件とすることについての率直な現時点での見解を承りたい、こう思います。
  179. 山本宜正

    ○山本(宜)政府委員 若干細かい話でございますので、私からお答えさしていただきます。  現在の大気汚染による健康被害補償法地域の指定に当たりましては、御承知のように、硫黄酸化物を一つの指標とし、かつ呼吸器の症状というものを疫学的にとらえた調査データ、この両者で指定をしているわけでございます。  基本的な考え方といたしましては、現在の大気汚染というのは、御承知のように石油、石炭というような化石燃料を燃すことによって起こる大気汚染、また、自動車の汚染というものを含めました大気汚染のいろいろな物質が複合して健康に対する影響を与えている、かように考えているわけでございますが、その地域汚染の状況をつかまえますためには、硫黄酸化物をその代表的な指標として従来使っていたという経緯でございます。この硫黄酸化物を使うことにつきましては、いろいろな測定の方面から考えました利便がございました。  また、窒素酸化物につきましては、今日ではかなり測定点もふえましたけれども、測定方法についてのむずかしさが一つございました。  それからいま一点は、この法律によりましては、御承知のように著しい大気の汚染等によって疾病が多発するということを要件としておりますが、BMRC等による呼吸機能調査と申しますのは、実は疾病を調査しているのではなしに、疾病の初期症状とでも申しますか、指定四疾病にならない段階でも呼吸器に何らかの影響を与えているということで、せきとかたんというものをとらえて見ているわけでございまして、有症率即疾病多発というぐあいには考えられないわけでございます。  そういったようなことで現在おりますのと、窒素酸化物による健康影響という点につきましては、いわゆる疾病と言われるほどの補償を必要とする程度のものについての確たるデータがないという段階でございますので、これにつきましては、いま少し資料等を求めて今後の対応を考えていかなければならない、かように思っておるわけでございます。
  180. 東中光雄

    ○東中委員 SOxが代表的な指標だ、こう言われたのでありますけれども、NOxとSOxとでは、ずいぶん発生源も違いますし、発生源対策も違いますし、硫黄酸化物が減ったからといって窒素酸化物は減るのではなくて、むしろふえている場面も出てきておるという関係にあるわけですが、いまここに地域指定の要件に窒素酸化物を当然入れるべきだ。硫黄酸化物だけでは代表的な指標としては役立たないということを示す材料というのは、ずいぶんあると思いますけれども一つここで申し上げたいのは、たとえば硫黄酸化物の汚染が改善されても患者が一向に減らないという例がここにあります。硫黄酸化物の汚染が改善されたのは四十六年、七年以降です。しかし一向に患者の発生が減らないというのは、大阪の西淀川区の認定患者の年度別推移を見てみますと非常にはっきりするわけであります。昭和四十六年は前年と比べて約一千人患者がふえています。以下、四十七年は約五百人、四十八年は五百人、四十九年は約四百人、五十年約八百人、五十一年約五百人、五十二年約五百人、こういうぐあいで、最初の年は一応別にしまして、毎年コンスタントに認定患者の数がふえています。汚染の主役は硫黄酸化物からむしろ窒素酸化物に変わったというふうに言えるのではないか、硫黄酸化物の方は下がっておるのに、患者は依然として同じようにふえているわけですから。こういう点についてどうお考えですか。
  181. 山本宜正

    ○山本(宜)政府委員 なかなかロジックとしてむずかしい点があるわけでございますが、私はこのように考えております。  現在、指定疾病と挙げられておりますぜんそく、慢性気管支炎、気管支ぜんそくというようなものにつきまして、全国的にどうであろうかということを見るために、国民健康調査あるいは患者調査というようなものがございます。私、つぶさには分析しておりませんが、ざっと見てまいりますと、全国的にふえております。これが全国の汚染とパラレルかどうかということにつきましては、また別の検討をしなければならないと思いますが、ふえております。これは私ども、あるいは専門家の間では、医療需要がふえた関係であろうというぐあいに理解をしておるわけでございます。したがいまして、私ども、ある地域におきましてこういった疾病がふえているか減っているかということにつきましては、その地域とその影響の、いわゆる大気汚染影響のない地域との間の比較をしてみませんと明らかな点がわからないというのがいま学問的な理解、分析の仕方でございます。  先生指摘のように、私ども見ておりますのは、地域指定がごく最近に行われた地域におきましては新発生が、いわゆる申請をして認定をされた患者さんがふえております。これには一つ制度に対する熟度がまだ十分でないために、いわゆる制度発足して間もないのでふえているのであろう、こういう解釈をしております。また一方、四日市のように大気汚染が改善されたところにおきましては、かなり著しく新発生が減っております。  これらのことを比較して考えますと、やはり大気汚染が改善されて、ある時期、時間がたちますと、その地域における患者の発生は減ってくるのではないだろうかということだと考えておりますし、現在ふえつつあるところにつきましては、地域の実情が、まだ熟度が達していないということだと考えておりまして、硫黄酸化物と窒素酸化物の相互の汚染関係が変わったということだけで単純に理解するのは誤りでないだろうかと考えているわけでございます。
  182. 東中光雄

    ○東中委員 いま私が挙げました大阪の西淀川区というのは、ずいぶん早くから指定されておる、全国でも一番早く指定された地域であります。そして、硫黄酸化物はなるほど下がってきておる。しかし、依然として新しい患者は、いま部長の言われたような、制度についての認識が余りないからというような問題はこの地域については当然言えないような状況であります、しかし、毎年コンスタントに、約五百人ですがふえておる。五十年では七百八十八名ふえました。五十一年は五百十八名ふえておる。五十二年は五百五十二名ふえておる。こういうようにずっとふえておるわけです。これをどういうふうに説明されるのですか。
  183. 山本宜正

    ○山本(宜)政府委員 私ども一つの分析として四日市の例を挙げたわけでございますが、大阪の地域におきます新認定患者のふえが、他の地域の傾向に比べて著しく傾斜が強いということはよく知っておりまして、これには何かいろいろな条件があるのではないだろうか、かように考えていま分析を進めているところでございます。
  184. 東中光雄

    ○東中委員 もう一つの例を挙げますが、硫黄酸化物の汚染が改善された後に生まれた現在の乳幼児ですが、この人たちの患者がやはり相当たくさんあります。生まれたときにはもう硫黄酸化物が減っているわけですから、過去の硫黄酸化物による影響というのはないはずの子供が相当の患者数を出している。大阪で言いますと、ゼロ歳から四歳までの認定患者が全市の認定患者の一割を超える状態になっております。千九百二十名います。東京の大田区の場合で言いますと、ゼロ歳から四歳までの認定患者が千七十一名、全認定患者が三千百二十四名、これは昭和五十二年六月二十四日現在でありますけれども、実に三分の一に達しておる、三割にも達しておる。こういう実態を見ますと、硫黄酸化物汚染によるのではなくて、窒素酸化物については直接指定の要件にはなっていないけれども、この影響は硫黄酸化物以外の、したがって主なものとしては窒素酸化物ということになると思うのですが、それによる影響だと考えざるを得ないわけですが、そういう点どうお考えですか。
  185. 山本宜正

    ○山本(宜)政府委員 私どもの方でも、まだつぶさに分析はいたしておりませんが、いま御指摘のような発生につきましては、御承知のように、大気汚染というのは複合汚染でございまして、硫黄酸化物、窒素酸化物、浮遊粉じん等々いろいろなものがひっくるめられているわけでございます。したがいまして、硫黄酸化物が減ったから直ちに窒素酸化物に着目するのではなしに、いろいろな関係を見きわめていかなければならない、かように考えておりまして、単純に硫黄酸化物が減ってなおかつ子供が新患者になる、直ちに窒素酸化物というぐあいなロジックにはならないと思います。したがいまして、私どもいろいろな物質の影響ということにつきましての動物実験等、疫学的なデータのほかに臨床的なデータ、動物実験というようなものも加えて判断をしていかなければ、正鵠なる科学的な判断が下せないのではないだろうか、かように考えているわけでございます。
  186. 東中光雄

    ○東中委員 いずれにしましても、法律で言う著しい大気の汚染という大気汚染の指標は硫黄酸化物に、要するに代表的な指標としてそれに限って環境庁はやっているわけですが、この指定要件を定めたときの中公審の答申では「現時点においては硫黄酸化物を指標として表さざるを得なかった。」というふうに言っております。しかし「窒素酸化物のうち二酸化窒素の健康影響があることは実験的、疫学的研究から知られているし、浮遊粒子状物質についても健康影響において硫黄酸化物と相乗効果があることが知られている。したがって、大気の汚染の程度を判定するに当たっては硫黄酸化物のみならず窒素酸化物、浮遊粒子状物質についても十分考慮し、総合的に大気の汚染の程度を判定すべきである。」こういうふうに言っています。したがいまして、一応硫黄酸化物を指標とするけれども、窒素酸化物なんかも考慮に入れて総合的に判断するというようなたてまえですね。  そこでお聞きしたいのですが、現在指定の基準は、硫黄酸化物汚染が三度以上ということになっているわけですけれども、硫黄酸化物三度以下の汚染で窒素酸化物汚染がひどいということで地域指定をされたことがあるかどうか、まずこれをお伺いしたい。
  187. 山本宜正

    ○山本(宜)政府委員 ございません。
  188. 東中光雄

    ○東中委員 そうすると、結局、硫黄酸化物汚染だけでやっておるということになるわけですね。
  189. 山本宜正

    ○山本(宜)政府委員 御承知のように、大気汚染にはいま代表的にはその三つがあるわけでございますけれども、硫黄酸化物を指標にするというのは、確かにそれによって全体の大気汚染を推しはかる材料であるということと、測定方法あるいは測定点というもの、測定技術の面からの便宜さ、こういったことが一つの方法として取り上げられている理由でありまして、中公審のこの制度発足のときの御意見にありますような点につきましては、私ども、現在鋭意資料を収集しておるわけでございまして、その上で判断していかなければならない、かように思っているわけでございます。
  190. 東中光雄

    ○東中委員 窒素酸化物汚染による患者があるということは認められるのでしょう。しかし、それは指定のときには全部ネグってしまうということなんですか。
  191. 山本宜正

    ○山本(宜)政府委員 現在、窒素酸化物の濃度が高いということによって起こる健康影響ということにつきましては、アメリカにおきます俗にチャタヌーガ・スタディーという研究がございます。これは火薬工場の付近におきまして非常に高濃度の汚染がある中ではかった調査でございますが、現在わが国におきまして窒素酸化物の測定点が多数ございますが、その中ではかられております測定濃度というのはずっとかけ離れて低いわけでございます。したがいまして、この低い濃度の状況においての影響というのが出るかどうかということについては、いまだ確としたデータはございません。また、動物実験等現在進めておりますが、そういった現状の大気汚染の中の窒素酸化物の濃度で起こるかどうかということについての確信が得られない限りにおきましては、窒素酸化物だけで状況を判断するということは不十分だと思うわけでございます。複合汚染と申しますのは、単に単一の物質が相加作用ということだけではなしに、何らかのほかの意味での相乗作用的なことがあるのではないだろうかということでございまして、その点はひとつよく御理解いただきたいと思っております。
  192. 東中光雄

    ○東中委員 窒素酸化物だけでと私は言っているわけではないのです。窒素酸化物もその指標に入れるべきだということを言っているのだということが一つ。  それから、先ほど言いましたように、東京の大田区の例あるいは大阪の例で見ましても、硫黄酸化物の方はずっと三度以下に下がっておる。しかし認定患者数は、大田区の場合は全年齢の中でゼロ歳から四歳までの人が三割にもなっている。こういう状態、これはなぜそういうことが起こるのかということについては、分析してみます、あるいはまだよく分析していませんというようなことでほっておいたのでは、中公審がまず一番最初に出したときも、窒素酸化物ももう指定要件に入れることを前提にして、量的に検討するというか、資料を詰めるということになっておったわけですが、いまの部長の話では、もう全部ネグっちゃうみたいなことになってしまっている。えらい後退じゃないですか。
  193. 橋本道夫

    ○橋本(道)政府委員 いまの先生の御質問の関係で、公害健康被害補償法の方からは保険部長から答弁がございましたが、われわれの大気汚染防止の関係の、いまちょうど判定条件というのをやっておりまして、近く出てまいりますが、影響関係でどう見ているかということも若干つけ加えて御説明しておいた方がいいのではないかということで、私、いま出てまいったわけでございます。  四十八年に補償法をつくりますとき、私、これを担当いたしましたが、そのころの汚染は、西淀川も全部が汚れておった、ばいじん汚れておる、SOxも汚れておる、NOxも全部汚れておる、そういう時期でございます。その中で幸いSOxはかなりよくなってきた。しかしながら、ばいじんはまだ決してそういいと言えるようなところではない。日本全国が窒素酸化物だけを目のかたきにしておりますが、実はばいじん汚染の状況というのは、教育で言えば義務教育みたいなシンプルなものですが、これは日本は非常に劣っております。その関心が余り出ないのですが、実はそれがまだ非常に悪いのが残っておるということで、西淀川を指定したときには確かにSOxを使いました。SOxを使いましたが、西淀のその当時の実態というのは、指定したときにはいずれもが汚れておったというところであります。いま議論になっておりますのは、ばいじん汚れてない、SOxも汚れてない、NOxが高いところがどうかということの議論になっておるわけでございまして、これはもとの歴史をたどってみてもそういうのがない、ただ、NOxだけが高いというところでどうかということを確めようと思ってやったのが、一つは沿道調査でございます。沿道調査でやりますと、年平均〇・〇五ぐらいのところで、どうも見てはよくはないが、悪いとぴしゃっと言い切るような科学的な断言ができない。アメリカも同じような調査をしております。やはり年平均〇・〇五ぐらいのところで、少し高いけれども、いろいろな汚染物質があって、これがNOxだけだと断定できない、同じような状況になっております。  そういう点で、いまはバランスが違っておるがもとはみんなが悪かったというところは、いままず全部指定地域にかかってしまっています。ですから、西淀川の場合も指定地域にかかってしまっておるのです。けれども、いまの西淀の汚染が、それではあるいはすごくいいか、もう文句はないかと言われると、これはまだ確かにばいじんが悪い、それからNOxが、まだ年平均〇・〇四をちょっと超えるぐらいのところで、まだ悪いところです。決してこれでいいとは全く思っておりません。ですから、そういう点で影響はあるやもしれないということは考えられますが、それでは年平均〇・〇四というようなところで補償に値する患者さんが多発するかというと、それはとうていそういうところには言えないというのが現在の知見でございまして、そこらは、私どもの方はクライテリアでそれを整理しておりますし、補償法の方では、それではNOxだけが高かったところはひっかかるか、ほかのものは全部低い、NOxだけでもひっかかるか。アメリカの資料を見ますと、年平均が〇・〇八か〇・一ぐらいになると恐らく日本でもひっかかるのじゃないかと思います。しかし、日本じゅうを探してもそんなところはありません。ですから、そのような問題は日本の問題ではないわけです。そうすると、日本で問題になっているのは、年平均〇・〇五ぐらいのところです。〇・〇五ぐらいのところはどうもちょっと、傾向としては高そうだが、統計的にも言い切りができないという状態であります。  それで、そういうところで今度はばいじんとSOxとNOxの三つが一体どんなぐあいに関係し合っておるのであろうかということの手がかりとして六都市、五年をやったわけであります。あれを見ますと、ばいじんとSOxが下がって、NOxがある程度上がって、水平になっても有症率は下がった、こういうデータがあります。そういうようなデータでありますが、しかし確かに相関はある。相関はあるということですから、別に関係がないとは言い切れないが、どうも見てみると、まだばいじんは相当高い、SOxはまだこれは少し高いぞという状況であります。  ですから、そういう点でまだ複合汚染としてのあいまいもこたる言い方しかできないので、いま先生のおっしゃるように、すべてをNOxに結びつけて議論をするというのは、現在の科学の段階ではそういうやり方はとれない、こういうことであります。
  194. 東中光雄

    ○東中委員 これは複合汚染ですから、私は何もNOxだけを言っておるわけじゃないので、ただNOxを指定要件からはずしてしまって、それでSOxだけですべてを代表するような指標にはならぬのではないかということを言っておるわけであります。だから、ただSOxだけでいくと、たとえば硫黄酸化物汚染が改善されてきたから、だからもう指定解除したらどうかというような議論に進んでいきかねないということを非常に心配します。そういう性質のものじゃない、むしろNOxについては、当初の中公審の答申からいっても、指定要件に入れていくことが前提になっていたんだから、それがいまむしろ後退しているということを指摘しているわけであって、これはもう何回も同じことを言いませんが、SOx汚染が改善されたから、だから他の汚染物質とかかわりなく、それを理由にして地域指定を解除していくというようなことにはならないということは、これはここではっきり断言しておいてもらいたいと思うのですが、どうでしょう。
  195. 山本宜正

    ○山本(宜)政府委員 現在、中公審の答申の中にも解除要件につきましての意見が述べられておりますけれども、この点につきましては、いまの時点でそのようなところがございませんのでありますが、先生のお尋ねの点につきましていまここで確と断言するにつきましては、もう少し検討を進めてみなければならない、かように思うわけでございます。
  196. 東中光雄

    ○東中委員 そうすると、いよいよややこしいことになるんですね。代表指標だと言うて、しかしそれは三つの、ばいじんと、それからNOxも含めてということで硫黄酸化物を汚染の代表指標としてやってきた。それが今度は代表指標だけを見て解除する、ほかの汚染物質に関係なしにやってしまうというようなことがまだあり得るという趣旨のことをいま部長は答えられているので、それはないということをはっきり断言しておいていいんじゃないですか。ほかの汚染物質とかかわりなしにやるというようなことはない、当然じゃないですか。
  197. 山本宜正

    ○山本(宜)政府委員 中公審の答申にいただいております地域指定解除要件といたしましては、「「著しい大気の汚染」がなくなり「その影響による疾病が多発」しなくなることが考えられる、具体的には相当期間にわたり大気の汚染の程度が一度か環境基準を満たす程度に」云々、こういうぐあいになっておりまして、その指標に何をとるかということについては、特に大気汚染の程度が低くなり、その影響による疾病の多発がなくなるということで、かなり包括的な言い方をしているわけでございまして、これにつきましては、検討してもう少し詳細な一つの要件を考えていかなければならないんじゃないか、かような点でお答え申したわけでございます。
  198. 東中光雄

    ○東中委員 だから、いま部長が言うていることを別の言葉で言えば、硫黄酸化物汚染が改善されたということで、他の汚染物質とかかわりなしにそういう指定要件を解除するというようなことはないと、この中公審の解除要件から言っても、それははっきり言えるんじゃないですか。そんなこと、何をちゅうちょしているのですか。ほかの汚染物質との関係を含めてのことでしょう。
  199. 山本宜正

    ○山本(宜)政府委員 一つには、患者の多発が減るという要件でございます。そういった要件がなければ解除できないわけでございますし、大気の汚染の程度というのについて、特に硫黄酸化物という形でいまその解除要件の中には述べていないわけでございます。したがいまして、これは、いま窒素酸化物を指定要件に加えていないのには、いろいろと今後のデータを見なければならないということを私は申し上げているのでありまして、解除要件につきましても、そういったことも考えていかなければならない科学的知見が得られたら、そういったことも考えに入れるということでお答えしたつもりでございます。
  200. 東中光雄

    ○東中委員 次の問題、別の角度からお聞きしたいのですが、いわゆる補償費の費用負担。自動車重量税が二割負担をしているわけですが、これは自動車が何を排出しているということでこの負担になっているのですか。
  201. 山本宜正

    ○山本(宜)政府委員 自動車の排出ガスの中では、窒素酸化物がかなりの量を占めるということでカウントしているわけでございます。
  202. 東中光雄

    ○東中委員 窒素酸化物を排出するから、自動車は補償費の二割を負担するということに結局なっているわけですが、この二割ということを計算した根拠はどういうことですか、
  203. 山本宜正

    ○山本(宜)政府委員 制度発足いたしましたときに、固定発生源、いわゆる工場、事業場等から出てくる煙突の排出ガス中の硫黄酸化物、窒素酸化物、それから自動車の排出ガスの中の硫黄酸化物、窒素酸化物、こういったもののシェアをそれぞれの物質につきまして見まして、それを相加いたしましてながめましたところ、固定発生源からはその足したものが八〇%、自動車からは約二〇%であるということから、八対二という割合を出したわけでございます。
  204. 東中光雄

    ○東中委員 環境庁が出しておる「日本環境政策 OECDレビュー会議のための参考資料」の百二十九ページによりますと、「この推計において、SOx、NOxの排出割合の算術平均を行ったのは、SOx、NOxの被害発生に対する寄与度は数量的に評価することは、現時点においては不可能であり、それぞれ物質の総量にそれほどの差がないことから、その単位当たり寄与度も等しいものとしたことによる。」というふうになっています。結局、固定発生源か移動発生源かは別として、SOxとNOxとの寄与度は五対五というふうに、寄与度が等しいものとしたことによるという立場ですね、そうじゃございませんか。
  205. 山本宜正

    ○山本(宜)政府委員 おっしゃるとおりでございますが、これは一つ行政的な判断の割り切りで賦課金の計算にそういった考え方を導入した、かように聞いております。
  206. 東中光雄

    ○東中委員 行政的な割り切りだからむちゃくちゃに何の根拠もなしにやるということではないので、算数的にきっちり出せないけれども、相当の根拠があるからここで割り切ったということだと思うのですが、そうすると、補償面ではSOxだけで代表指標としてやる、しかし、地域指定ということになると、今度は、NOxは全くあらわれてこない。SOxが三度以上になっていなければ指定しないのですから、NOxいかんにかかわらずそういう態度をとっているわけでありますから、そうすると、窒素酸化物汚染の補償というのはゼロだけれども、補償費ということになったら、結局、窒素酸化物が硫黄酸化物と同じ程度のものを前提にして、自動車については八対二ということで二割の自動車重量税からの補償、こういうことになるわけで、非常に矛盾が出てくると思うのですが、その点はどうですか。
  207. 山本宜正

    ○山本(宜)政府委員 いまの負荷量を計算するときに、硫黄酸化物、窒素酸化物をそれぞれ固定発生源、移動発生源でパーセンテージを出してそれを足し算したということでございますが、いわゆる排出量という点から見ましてもほぼ同じような数字になっております。  先ほどから申し上げておりますように、現在の大気汚染の態様の中で、確かに硫黄酸化物と窒素酸化物のシェアが変わりつつあるということは私どもよくわかりますけれども、硫黄酸化物をインデックスにしておったということによって窒素酸化物をカウントしてないわけでございませんで、ある種の割合である、それが、窒素酸化物の方は余り減少してないけれども硫黄酸化物の方は減ってきたということでございます。減ってきたのでございまして、ゼロになったわけではございませんし、ある割合の違いが来ているということでございます。したがいまして、中公審の当初の制度発足のときに、これらの三つのものを代表として考えなければいかぬということは言われておりますが、一つには、地域指定をする場合に、測定の技術あるいは測定点の大きさ、数の多さというような点から考えまして、硫黄酸化物の方が歴史的にも技術的にもかなり測定点も多い、窒素酸化物の方については測定方法のむずかしさという点からも余りすぐれてないというようなこともあって、硫黄酸化物をインデックスとして使っているわけでございまして、それぞれを単純分離して考えているのではないということをひとつ御理解をいただきたいと思います。
  208. 東中光雄

    ○東中委員 要するに、自動車から出る窒素酸化物による被害の補償として自動車重量税、結局、自動車使用者が被害者に対する補償費の一部を負担する、こういうことになっているわけですね。ところが、窒素酸化物は今度は指定要件とはならないということになると、指定要件の窒素酸化物の基準をどこにするかということをいま言っているのじゃなくて、およそ窒素酸化物を指定要件の中に入れないということになると、これは自動車使用者がその被害者に対する補償をするという理屈にはなってこないんじゃないですか。
  209. 山本宜正

    ○山本(宜)政府委員 大変くどいように申し上げまして恐縮でございますけれども大気汚染の中には窒素酸化物と硫黄酸化物と浮遊粉じんというものが代表として入っているのですが、そのほかいろいろあるわけでございます。硫黄酸化物を指標としているというのは、硫黄酸化物だけを考えているのではなしに、硫黄酸化物をはかることによって、その裏側には窒素酸化物も浮遊粉じんも、そういったものがある割合で入っているということを考えての上で、指標という考え方に立ってやっているわけでございまして、それぞれを単純分離した考え方でいるのではないということをひとつ御理解をいただきたいと思います。
  210. 東中光雄

    ○東中委員 硫黄酸化物と窒素酸化物とは、硫黄酸化物を調べればその裏側に窒素酸化物があるなどという関係にないということは、発生源が違うし、それから現に、硫黄酸化物は減っていっても窒素酸化物は減らない、むしろふえていっているというような関係から見ても、硫黄酸化物を見れば窒素酸化物も大体それについてパラレルに出てくるというのだったらまた別ですけれども、そうではなくて明らかに違うのです。だから代表指標にはならない。ところが費用負担ということになったら、窒素酸化物は加害者なんだということを前提にして二割の負担をさせているということになるので、これはどうしたって矛盾ですね。
  211. 山本宜正

    ○山本(宜)政府委員 先ほどから申し上げておりますように、固定発生源における硫黄酸化物と窒素酸化物の割合——窒素酸化物というのは自動車だけから出ているのではなしに、固定発生源からもかなりの量が出ているわけです。しかしながら、自動車の方は硫黄酸化物が少なくて窒素酸化物が多いという性質がございます。したがいまして、それらをあわせ考えて、先ほど賦課の割合を算出して自動車重量税の方からの引き当ての割合を考えたということでありまして、指定要件の場合の硫黄酸化物というのは、硫黄酸化物を一つの指標としておりますが、それには当然のことながら窒素酸化物がある割合で入っている、ただそのシェアが最近変わってきたということは私十分認めるわけでございまして、その排出量の割合でながめてみますと、ここ数年の間で若干は変わっておりますが、片っ方、カウントしなくていいほど減っているということではないわけであります。  いま一点、窒素酸化物単独で健康影響考えるかということにつきましては、これはまだデータがないということでございますので、いまのところ硫黄酸化物を指標にしておりますが、これは中公審の中でもおっしゃっておられますように、今後一つ検討課題として検討していこうということを申し上げたいと思います。
  212. 東中光雄

    ○東中委員 とにかく、この制度が発足した当時の窒素酸化物に対する態度といま環境庁が言われている態度とでは明らかに後退といいますか、変更が行われていると言わざるを得ぬわけであります。そして、いろいろ説明はされますけれども、率直に見たら、被害補償は、同じ程度の寄与度として計算上二割の費用負担をする、しかし窒素酸化物については指定要件からは全く排除してしまうというのは、どう考えたって納得のいくものじゃありません。仮に窒素酸化物が非常に多くて硫黄酸化物の汚染度が低いから指定されないという場合をも考えて、そういう場合は補償はされないけれども、補償費は自動車使用者がその地域についてじゃなくて負担させられるということになるわけですね。そうじゃないですか。
  213. 橋本道夫

    ○橋本(道)政府委員 先ほどの御質問といまの御質問、それからいま変わってきているということの関係につきまして、若干補足をして申し上げたいと思うのです。  まず第一は、補償法で対象としているのは非特異性の疾患であるということでございまして、その非特異性の疾患は何によって起こっているかというと、SO2だけで起こっているわけではありませんで、ばいじんやSOxやみんなが絡んで起こっておる。その中で、日本では四日市や西淀川でもSO2は非常に高かったことは事実であります。ですから、SO2の関係が一番つかまえやすかったということは事実でございます。  そういうことで、それでは一体どういうぐあいにして放出量をはじいてシェアを決めて賦課をするかということになりましたときに、マクロでは排出量を計数として計算をして、それでSOxにつきましてもNOxにつきましても、固定発生源と移動発生源に割って等価として見ると二と八であったという状態があったわけです。  賦課金となりますと、今度は賦課金の理由は、民事の責任を踏まえてという答申を基礎に置いております。そのときの議論として、自動車は民事の責任を踏まえ得るかということになりますと、少なくとも複合汚染の場合のあちこち動き回っておる自動車を、民事の責任を踏まえて賦課をすることは無理なのではないだろうかという議論が非常に支配的でありまして、自動車についてはやはり社会的責任を踏まえてやる。それから、全国の固定発生源施設に対しては、民事の責任を踏まえなければならない潜在的なリスクはあるということが一方にあってああいう制度を組み立ててきたというところがあるわけであります。そこで全体で共同して費用負担をするという構成になってきたわけであります。  ですから、マクロではこの計算ができますからやりましたが、ミクロの面になりますと、自動車は社会的責任として全体のコントリビューションの分だけは全国一律に持つということですけれども、そういう形で持ちましたので賦課金というような形はとっていない。しかしながら、固定発生源の方は賦課金という形をとっておるわけです。  そこで、それではNOxがどうなんだ、ずいぶん後退したではないかという御指摘でございますが、当初の考え方は、正直に申しましてNOxはもうちょっと悪いであろうと思っていました。ところが、いろいろ六都市の五年間をやってみても、あるいは例の沿道調査をやってみても、どうもこれだけで、複合の一翼を担っていることは間違いがないが、NOxだけをつかまえてきて、ほかのものが余りないところに至るまで賦課金をかけるような状態は、やってみると怪しげだが、よくはないがどうにも証明ができない。そうすると、よくはないというところで、先ほどの複合汚染の一端を担っていることは事実でございますけれども、それでは複合汚染のほかの状態がほとんどなくてNOxだけ高いときにやれるかとなってくると、それが調査研究の結果なかなか出てこないということで、当初のトーンといまのトーンとが違ってきているということは事実であります。ただ、そのトーンが違ってきているということは、補償についての議論がそういう次元からとらえているということだけであって、防止の次元からは、あくまでもNOxは健康によくない、しかし補償に至るような実質的な被害の実証がいまできないということで、複合汚染の一翼としては持っておるからNOxは金は取る、自動車についても社会的責任を踏まえて金は取るという形の構成になっているということを御理解をいただければいいのではないか。非常にやっかいな議論でございますが、私は両方ずっとやってまいりまして、そういう角度でお考えいただけると、単に後退という感覚だけの問題ではないものがあるのではないだろうかということでいま申し上げたわけであります。
  214. 東中光雄

    ○東中委員 それは後退に次ぐ後退であると私は思うのです。いまの複合大気汚染調査の分析についても、参議院でわが党の沓脱議員が、環境庁の分析に対して欠陥を指摘しましたけれども、今度岩波の「科学」の五十三年一月号に、東大の西村肇助教授らが「NO2環境基準の再評価」というのを書いています。  この新しい分析によると、四十七年以降は窒素酸化物と有症率とは因果関係ありと判定して、これについて統計学的にも信頼でき、疫学的にも意味のある結果だというふうに言っておりますけれども、これは専門家の分析結果でありますから、これについて環境庁はもちろん御検討になっておると思うのですが、御見解を承りたい。
  215. 山本宜正

    ○山本(宜)政府委員 六都市の複合大気汚染の公表を昨年の二月にいたしました。これは、統計的な分析につきましては基礎的な手法を使ってやったわけでございまして、これを広く公表することによっていろいろな学者によるデータの解析あるいは統計的な分析というのにゆだねたわけでございまして、私もいまの論文を読んでおります。そのほかいろいろな方がいろいろな形でやっておりますし、また私の方でも学者グループにお願いいたしまして解析、評価を行っていただいております。私どもの方で委託いたしましたのは、まだ報告をちょうだいしておりませんが、近くちょうだいするわけでございまして、統計的な手法で解析したことによって、相関関係はわかると思いますが、因果関係が直ちに立証できるという形のものは統計的な処理では私は出てこないだろうと実は思っております。しかしながら、複合大気汚染の調査はいわゆるせき、たんという症状をとらえての調査でございまして、疾病多発という現在の補償法の対象の状態のものをとらえているのではないということが一つ基礎にあるということを御理解いただきたい、かように思うわけでございます。
  216. 東中光雄

    ○東中委員 時間が来ましたので終わりますけれども、各界からこの分析をしてもらいたいというふうに言っておった環境庁としては、いまこういうのが出てきて、環境庁の分析とは反対の結論が出ているわけでありますから、そういう点については謙虚に検討を進めてもらいたいということが第一点。  それからもう一つ、ちょっと聞き落としたのですが、自動車重量税でこの費用を負担しているわけですけれども、今度の法改正もそれを延長するわけでありますが、これはPPPの原則から言っても、自動車使用者が払う重量税でなくて、自動車メーカーが、その構造から言ってそういうものをつくっているわけですから、それ以外に自動車使用者は選択の余地がないわけですから、だからこれはメーカーに本来は負担させるべきであり、PPPの原則から公費負担の一掃を図るべきだと私たちは考えるのですが、その点について最後にお聞きして、質問を終わりたいと思います。
  217. 山本宜正

    ○山本(宜)政府委員 中央公害対策審議会で、自動車の排出ガスによって影響する大気汚染の問題をどうやって賦課するかということで、いろいろな方法を御検討いただきました。  先生の御提案の自動車メーカーに賦課するということにつきましては、一つの方法として考えられます。しかしながら、これは今後生産される新車というものに対しての対応としては出てくるわけでございますが、現在ちまたを走っております自動車には相当、俗に使用経過車と言っておりますけれども、そういうものもございます。したがいまして、自動車メーカーにかけるということはある種の公正が得られないという点があるということから、それを採用しなかったというように言われております。検討段階ではその問題も入れて十分検討した結果として、いまの方法をとっているわけでございますので、御理解をいただきたいと思います。
  218. 東中光雄

    ○東中委員 時間ですから終わります。      ————◇—————
  219. 久保等

    久保委員長 この際、参考人出頭要求に関する件についてお諮りいたします。  公害対策並びに環境保全に関する件、特に瀬戸内海環境保全問題調査のため、参考人の出頭を求め意見を聴取することとし、その人選、意見を聴取する日時等につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  220. 久保等

    久保委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決しました。  次回は、来る二十二日水曜日午前十時理事会、十時三十分より委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。     午後三時四十五分散会