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1978-08-07 第84回国会 衆議院 決算委員会 第18号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和五十三年八月七日(月曜日)     午前十時三十分開議  出席委員    委員長 楯 兼次郎君    理事 宇野  亨君 理事 葉梨 信行君    理事 森下 元晴君 理事 馬場猪太郎君    理事 原   茂君 理事 林  孝矩君    理事 塚本 三郎君       西田  司君    野田 卯一君       村上  勇君    土井たか子君       村山 喜一君    春田 重昭君       安藤  巖君    依田  実君       麻生 良方君  出席国務大臣         国 務 大 臣         (内閣官房長         官)      安倍晋太郎君         国 務 大 臣         (総理府総務長         官)         (沖繩開発庁長         官)     稻村左近四郎君  委員外出席者         内閣官房首席内         閣参事官    藤森 昭一君         人事院事務総局         管理局会計課長 斉藤 和春君         人事院事務総局         職員局長    金井 八郎君         内閣総理大臣官         房会計課長   京須  実君         内閣総理大臣官         房管理室長   小野佐千夫君         内閣総理大臣官         房総務審議官  大濱 忠志君         内閣総理大臣官         房参事官    赤松 良子君         内閣総理大臣官         房参事官    平井  清君         総理府人事局長 菅野 弘夫君         宮内庁長官官房         審議官     藤巻清太郎君         防衛庁装備局長 間淵 直三君         科学技術庁研究         調整局生活科学         技術課長    清水 眞金君         沖繩開発庁総務         局長      亀谷 禮次君         沖繩開発庁総務         局会計課長   永瀬 徳一君         沖繩開発庁振興         局長      美濃輪俊三君         国土庁長官官房         震災対策課長  城野 好樹君         法務省民事局参         事官      橘  勝治君         大蔵省主計局司         計課長     石井 直一君         国税庁次長   米山 武政君         気象庁観測部参         事官      末広 重二君         労働大臣官房参         事官      鹿野  茂君         労働省婦人少年         局婦人労働課長 高橋 久子君         労働省職業安定         局失業対策部企         画課長     小野 進一君         消防庁防災課長 千葉  武君         会計検査院事務         総局第一局長  前田 泰男君         会計検査院事務         総局第三局長  松尾恭一郎君         沖繩振興開発金         融公庫理事長  岩尾  一君         参  考  人         (地震予知連絡         会会長)    萩原 尊礼君         決算委員会調査         室長      黒田 能行君     ―――――――――――― 委員の異動 八月七日  辞任         補欠選任   高田 富之君     土井たか子君   春田 重昭君     玉城 栄一君   山口 敏夫君     依田  実君 同日  辞任         補欠選任   土井たか子君     高田 富之君   依田  実君     山口 敏夫君     ――――――――――――― 本日の会議に付した案件  参考人出頭要求に関する件  昭和五十一年度一般会計歳入歳出決算  昭和五十一年度特別会計歳入歳出決算  昭和五十一年度国税収納金整理資金受払計算書  昭和五十一年度政府関係機関決算書  昭和五十一年度国有財産増減及び現在額総計算  書  昭和五十一年度国有財産無償貸付状況計算書  〔内閣所管総理府所管総理本府、沖繩開発  庁)、沖繩振興開発金融公庫〕      ――――◇―――――
  2. 楯兼次郎

    楯委員長 これより会議を開きます。  昭和五十一年度決算外二件を一括して議題といたします。  本日は、内閣所管総理府所管総理本府等、沖繩開発庁及び沖繩振興開発金融公庫について審査を行います。  この際、お諮りいたします。  本件審査のため、本日、参考人として地震予知連絡会会長萩原尊礼君の出席を求め、意見聴取いたしたいと存じますが、御異議ございませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  3. 楯兼次郎

    楯委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決しました。  なお、参考人からの意見聴取委員質疑により行いたいと存じますので、さよう御了承願います。  参考人には、御多用中のところ本委員会に御出席くださいましてありがとうございます。     ―――――――――――――
  4. 楯兼次郎

    楯委員長 それでは、内閣官房長官から概要説明を求めます。安倍内閣官房長官
  5. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 昭和五十一年度における内閣所管一般会計歳入歳出決算につきまして、その概要を御説明申し上げます。  内閣主管歳入につきまして、歳入予算額は、九百万円余でありますが、収納済歳入額は、一千二百九十三万円余でありまして、歳入予算額と比較いたしますと、三百九十二万円余の増加となっております。  次に、内閣所管歳出につきまして、歳出予算現額は、八十五億六十一万円余でありまして、支出済歳出額は、七十七億一千三百九十七万円余であります。  この支出済歳出額歳出予算現額に比べますと、七億八千六百六十三万円余の差額を生じますが、これは人件費等を要することが少なかったため、不用となったものであります。  以上をもちまして、決算概要説明を終わります。  何とぞよろしく御審議のほどお願いいたします。
  6. 楯兼次郎

  7. 前田泰男

    前田会計検査院説明員 昭和五十一年度内閣の決算につきまして検査いたしました結果、特に違法または不当と認めたものはございません。
  8. 楯兼次郎

    楯委員長 次に、稻村国務大臣から総理本府等及び沖繩開発庁について概要説明を求めます。稻村国務大臣
  9. 稻村佐近四郎

    稻村国務大臣 昭和五十一年度における総理府所管一般会計歳入歳出決算につきまして、その概要を御説明申し上げます。  総理府主管歳入につきまして、歳入予算額は、五百四十億七百七十七万円でありますが、収納済歳入額は、六百七十九億八千八百四十八万円余でありまして、歳入予算額と比較いたしますと、百三十九億八千七十一万円余の増加となっております。  次に、総理府所管歳出につきまして、歳出予算現額は、三兆二千百十六億九千七百三十三万円余でありまして、支出済歳出額は、三兆一千六百九十四億五千七百四十五万円余であります。  この支出済歳出額歳出予算現額に比べますと、四百二十二億三千九百八十八万円余の差額を生じます。  この差額のうち翌年度繰越額は、二百七十三億九千八百六十八万円余であり、不用額は、百四十八億四千百二十万円余であります。  総理府所管歳出決算のうち、警察庁、行政管理庁、北海道開発庁、防衛庁、経済企画庁、科学技術庁、環境庁、沖繩開発庁及び国土庁については、各担当大臣から御説明申し上げることになっておりますので、これを除く部局、すなわち総理本府、公正取引委員会公害等調整委員会及び宮内庁関係につき申し上げますと、歳出予算現額は、九千四百八十六億八百七十三万円余でありまして、支出済歳出額は、九千四百四十五億四千六百八十七万円余であります。  この支出済歳出額歳出予算現額に比べますと、四十億六千百八十五万円余の差額を生じます。  この差額のうち翌年度繰越額は、十三億九千九百九万円余であり、不用額は、二十六億六千二百七十六万円余であります。  翌年度繰越額は、恩給費等でありまして、これは旧軍人遺族等恩給の請求の遅延及び軍歴調査確認に不測の日数を要したこと等のため年度内支出を終わらなかったものであります。  また、不用額は、人件費等を要することが少なかったため、不用となったものであります。  以上をもちまして、決算概要説明を終わります。  何とぞよろしく御審議のほどお願いいたします。  昭和五十一年度における沖繩開発庁歳出決算につきまして、その概要を御説明いたします。  沖繩開発庁歳出予算現額は、五百五十一億一千六百四十六万円余でありまして、このうち、支出済歳出額は、五百四十一億八千五百六十三万円余、翌年度へ繰り越した額は、七億五千八十九万円余、不用となった額は、一億七千九百九十四万円余であります。  まず、歳出予算現額につきましては、当初予算額一千十四億七千九百五十五万円余、予算補正追加額十六億三千六百八十万円、予算補正修正減少額二千三百三十七万円余、予算移替増加額百四十四万円余、予算移替減少額四百八十八億三千二百四十二万円余、前年度繰越額八億五千百四十四万円余、予備費使用額三百二万円余を増減しまして、五百五十一億一千六百四十六万円余となったものであります。  支出済歳出額の主なものは、沖繩振興開発のための財源として、道路整備特別会計治水特別会計国有林野事業特別会計港湾整備特別会計及び空港整備特別会計へ繰り入れた経費四百六十一億一千二十七万円であります。  次に、翌年度へ繰り越した額七億五千八十九万円余は、道路整備特別会計において、用地の関係補償処理の困難、計画及び設計に関する諸条件により同特別会計への繰り入れが年度内に完了しなかったこと等によるものであります。  また、不用となった一億七千九百九十四万円余は、退職手当必要額予定を下回ったこと等により生じたものであります。  以上をもちまして昭和五十一年度沖繩開発庁決算概要説明を終わります。  何とぞよろしく御審議のほどお願いいたします。
  10. 楯兼次郎

  11. 前田泰男

    前田会計検査院説明員 昭和五十一年度総理府所管決算のうち、歳入並びに総理本府、公正取引委員会公害等調整委員会及び宮内庁関係歳出につきまして検査いたしました結果、特に違法または不当と認めたものはございません。
  12. 楯兼次郎

  13. 松尾恭一郎

    松尾会計検査院説明員 昭和五十一年度沖繩開発庁決算につきまして検査いたしました結果、特に違法または不当と認めた事項はございません。
  14. 楯兼次郎

  15. 岩尾一

    岩尾説明員 昭和五十一年度沖繩振興開発金融公庫業務概況について申し上げます。  沖繩振興開発金融公庫は、沖繩における産業の開発を促進するため、長期資金を供給して、一般金融機関が行う金融を補完し、または奨励するとともに、沖繩国民大衆住宅を必要とする者、農林漁業者中小企業者、病院その他の医療施設を開設する者、環境衛生関係営業者等に対する資金で、一般金融機関が融通することを困難とするものを融通し、もって沖繩における経済の振興及び社会の開発に資することを目的として、昭和四十七年五月に発足いたしたものであります。  昭和五十一年度事業計画は、当初九百八十億円の予定でありましたが、年度中に、住宅資金として十二億円を追加しまして九百九十二億円に改定されました。  これに対しまして、実績は九百八十六億二千万円余であります。  次に、貸付残高について御説明申し上げます。  昭和五十年度末における貸付残高は、二千三百三十五億三千万円余でありましたが、昭和五十一年度における貸付額八百九十九億九千万円余が加わり、一方貸付回収金三百二十三億二千万円余がありましたので、差し引き二千九百十二億円余の貸付残高となっております。  次に、昭和五十一年度収入支出決算について御説明いたします。  昭和五十一年度における収入済額は、百七十六億六千万円余、支出済額は、百八十三億円余でありまして、収入支出を下回ること六億三千万円余となっております。  まず、収入の部におきましては、本年度収入済額は百七十六億六千万円余でありまして、これを収入予算額百九十六億円余に比較いたしますと、十九億三千万円余の減少となっております。  この減少いたしました主な理由は、貸付金利息収入等予定より少なかったためであります。  次に、支出の部におきましては、本年度支出予算現額二百二億九千万円余に対し、支出済額は百八十三億円余でありまして、差し引き十九億九千万円余の差額が生じましたが、これは借入金利息等予定より減少したためであります。  最後に、昭和五十一年度における損益について申し述べますと、本年度の総利益二百二十二億二千万円余に対し、総損失は二百十三億二千万円余でありまして、差し引き八億九千万円余の償却引当金繰入前利益を上げましたが、これを全額滞貸償却引当金及び固定資産減価償却引当金に繰り入れましたため、国庫に納入すべき利益はありませんでした。  以上が、昭和五十一年度における沖繩振興開発金融公庫業務概況であります。  何とぞよろしく御審議のほどお願い申し上げます。
  16. 楯兼次郎

    楯委員長 これにて説明聴取を終わります。     ―――――――――――――
  17. 楯兼次郎

    楯委員長 これより質疑に入ります。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。原茂君。
  18. 原茂

    ○原(茂)委員 最初に、官房長官に一言申し上げておきたいのですが、きょうは内閣所管総理府所管がこの決算委員会における審議の対象なんです。どういう事情があろうとも、この委員会の持たれることはすでにわかっているのですから、わずかに十一時まで十五分程度しか出られないというようなことがまかり通る状態というのは、委員会を軽視されたのが一つの習慣になったといいますか、それでも納得をした形になっていますが、自今、こういう審議の持ち方というのはどうかと思うので、十五分で内閣所管審議をできるはずがない。それを、それでなければもう出られない、こういった態度というのはすこぶる遺憾だと思うのですが、どうですか、考えを述べてください。
  19. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 もちろん国会に対しましては、最優先でございますから、事情の許す限りはできるだけ出なければならぬ、その責任があることは当然承知をいたしております。  ただ、私官房長官として内閣のスポークスマンをやっておる関係上、記者会見その他定例のものがございますので、そういう点について原委員の御了解を求めたわけでございまして、もちろん時間が許す限りは出るように、今後とも最善を尽くしたいと思います。
  20. 原茂

    ○原(茂)委員 きょうはほかの委員もみんな長官質問があったのを、みんなやめたらしいのですね。それで十五分だけということなんです。ですから、朝の十五分しかいけなかったら、後で所用を終わって午後の何時ならまた出られるとかという工夫でもするような、これは今後十分に注意していただいて、この次からはこういう審議の持ち方というのは、休会中なものですから私も時間がなくて、意思を十分に申し上げることができなかったわけですが、自今、こういうことは絶対にさせないし、してはいけない、こう思っていますので、協力をお願いしたいと思う。  時間の範囲で、長官にまず第一にお伺いしたいのですが、日中交渉について先にお伺いしますが、ややもすると日中の問題は、総理の本当の腹が、日中を本当にやろうという腹なのか、いやどうも疑わしいという観測などもある。自民党党内にも、タカ派ハト派などの考えがいろいろ交錯していると聞いているわけであります。  しかし、今度はいよいよ、もうあした園田さんがおいでになることを決定したわけですから、これはどんなことがあっても日中の妥結はするという前提でおいでになると思いますが、そう解釈してよろしいですか。
  21. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 日中平和友好条約締結につきましては、御案内のように、日中共同声明に基づいて今日まで両国間でいろいろと努力が重ねられたわけでございますが、今回やっと交渉が本格的に行われる、こういう段階になりまして、御案内のように、佐藤在北京大使韓念竜中国外務次官との間に今日まで十二回にわたりまして本格的な折衝が続いておりますが、昨日、総理大臣中心にいたしまして、この段階において平和条約締結を進めていくために園田外務大臣を訪中させることが適当である、こういう判断になりまして、八日に園田外務大臣が立ちまして、九日、十日、十一日と、この三日間にわたって中国側と精力的に折衝を進めて、何とかこの日中平和友好条約、懸案のこの条約締結に持っていきたい、そういう考え政府としては努力をいたしておるわけであります。
  22. 原茂

    ○原(茂)委員 重ねて聞きますが、もし九、十、十一で何らか問題がまだ残るというようなことがあったとき、引き続いてやはり締結するまでの決意で再度、再々度交渉は持つ、こういうふうにお考えになっていますか。
  23. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 九、十、十一というのは、中国側事情も御承知のとおりでございまして、したがって、中国側日本側ともにいい日にちということで九、十、十一ということに合意ができたわけでございますが、もちろん交渉を始める以上は締結目的として交渉を始めるわけでございまして、そして今日まで十二回にわたりまして精力的に交渉が、それもまた非常にいい雰囲気のもとに進んでおるわけでございますから、政府としては、何とかこの機会両国合意を見て、満足すべき形で交渉が妥結することを心から期待し、そのためには今後とも全力を尽くしてまいりたい、こう  いうふうに考えます。
  24. 原茂

    ○原(茂)委員 そこで、張香山氏が異例とも言えるようなああいう中間の内容発表をしたのですが、これは政府はどう受けとめているのですか。
  25. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 その張香山氏の発言は私も聞いたわけでございますが、現在日中交渉を行っておる当事者ではございません。当事者ではございませんから、この発言に対するコメントは政府としては差し控えるべきだ、こういうふうに思います。
  26. 原茂

    ○原(茂)委員 今度の交渉に当たって、尖閣列島の問題は日本から出すことはないでしょうか。中国はもちろん出さないと思うのですが、わが国からは尖閣列島問題は出さない、こう考えていいのですか。
  27. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 交渉内容につきましては、現在交渉が鋭意行われておるわけでございますから、これに触れることは差し控えさせていただきます。
  28. 原茂

    ○原(茂)委員 尖閣列島問題に関しては、ある意味のたな上げという、まあお互いの了解がついたことになっているわけですが、それに対しても交渉内容に関しては言えないということは、尖閣列島問題についてある意味では話題になることがあり得る、日本からもそれを言うこともあり得るかもしれない、全然ないかもしれない、こういうふうに解釈する以外にないわけですが、そう解釈していいわけですね。
  29. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 日中平和友好条約、これは日本中国の将来にわたって友好関係を強固にしていくために結ばれる条約でございますし、広範多岐にわたっての条約をめぐっての議論がいま闘わされておる最中でございます。したがって、その交渉の行われている最中に、具体的な問題について日本政府が公式に発言をするということは、相手もあることでございますから、差し控えさせていただきたい。
  30. 原茂

    ○原(茂)委員 相手もあることなんだけれども、その相手張香山氏がああいった異例のことをやるのですから。まあ日本は紳士的で結構ですが……。  それで、これ以上突っ込んでも仕方がないと思いますが、尖閣列島へたまたま明日から私ども決算委員会の視察で行くわけなんですが、わが国にとって非常に重大な問題だと思いますので、したがって、これもどうなるか、非常な関心を持ってこれから見守っていきたいと考えています。  そこで、次に議題を変えますが、毎年一回、天皇新聞記者との会見がいままであった。前長官の宇佐美さんが、もう今後はやらない、こう言ってお引きになったわけですが、しかしこれは天皇の御意思に反するのではないかと思いますし、やはり天皇国民との間をつなぐこの記者会見というものは非常に重要だと思うので、これをやはり内閣としてある意味の助言をして、そういったことを一方的に長官だけの考えで取りやめにするとか今後はしないというようなことを言いっ放しにしておいたのではいけないと思いますが、この点どうお考えになりますか。きょうは宮内庁からもおいでになっておるそうですから、後で宮内庁から、今後どうするかをお聞きします。
  31. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 この問題については、私からとやかく言うということもどうかと思いますので、まず宮内庁から答弁をいたさせます。
  32. 藤巻清太郎

    藤巻説明員 お答えいたします。  御質問の件は、一時いろいろ新聞報道もされましたけれども、宮内庁といたしましては、陛下報道関係者とお会いになる機会を今後一切取り計らわないというふうな決定をしたわけではないわけでございます。  ただ、この種のことを取り運ぶにつきましては、時期とか場所とか方法等、具体的なことにつきましてはやはり陛下のお立場というものを十分考慮に入れまして、それから御都合等考え合わせ、慎重に配慮する必要があるのではないかということで、ただいま改めて検討中というところでございます。
  33. 原茂

    ○原(茂)委員 検討中であるから、従来どおり、陛下国民のある意味における重要な接触の場としての記者会見というものは、場所、時というようなものを陛下中心考えて、今後持つ方向検討をする、そういうふうに解釈していいですか。
  34. 藤巻清太郎

    藤巻説明員 これは宮内庁が十分検討いたしまして、そしてわれわれの検討、われわれの立場だけでなくて、やはり報道をする人たち立場もございましょう。その辺をこれからいろいろ御相談していきたい、何とかしかるべき妥当な線で落ちつけばよろしいがなというふうに願いつつ、検討しているというところでございます。
  35. 原茂

    ○原(茂)委員 非常にややこしい言い方ですが、大体の方向はわかりました。今後も引き続き年一回の会見はしたい、その方向検討をするというふうに御答弁があったものと解します。  私の個人的な考えとしても、陛下は昔と違うのですから、せっかく国民の側との接触の場を求めていままでやってきたのですから、これを閉ざしてしまう、記者会見がなくなるなんというようなことは絶対にあってはいけないという考えからいま質問申し上げたわけですから、この点ひとつ十分に含んで、是が非でも年に一回ぐらい当然のこととして記者会見に臨んでいただくということを私からも懇請をしておきたいと思います。  それから次に、大分前に私、政府専用機を持つべきだということを、いまの外相の園田さんが官房長官のときに、あるいは総理にもそういったことをこの委員会で申し上げましたが、ようやく円高対策の一環としておやりになるという決定をしたようでございますが、その内容はどんなふうに、何機、いつごろから、全体の費用はどのくらいか、購入後の実際の運営はどこでやらせるつもりなのか。たとえば自衛隊にこれを移管するとすれば、自衛隊法の改正が必要になるんじゃないかと思いますが、この点も考えているのか。  私が前に申し上げたときは、国際的に言ってもいまから政府専用機を持っていいと私は思っていましたが、そのかわり、専用機ができ上がった時分には、実は社会党中心内閣総理大臣が先に乗るんだ、こう思って実は進言したわけであります。どうもその時期がすぐ来そうもありませんで、残念ながら、最初自民党総理・総裁が乗るようになるんじゃないかという感じがして何とも変な気持ちなんですが、それにしても、国際的に見てもう持っていいんじゃないかと思いますが、これはいつ、どういう状態で、いま質問した内容を四点に分けてお答えいただきたい。
  36. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 当委員会における原委員の御発言は、政府としても十分承知をいたしておるわけでございますが、最近の情勢から見まして、政府専用機を持つべきである、そういうふうな結論に達したわけでございます。これは、一つには、わが国の国際的な役割りが非常に大きくなってきた、そのために内閣総理大臣等が外国に行く機会もふえてきたことでございますし、また、いまお話がございましたように、先進国はもちろんでございますが、多くの国々が専用機を保有して要人の外国訪問等に使用しておるということ、さらにまた、危急の際の海外の邦人の救助等、民間機ではなし得ない機能も果たせるような体制を整備していくことが必要である。これはこれまで起こりましたいろいろな事件から考えまして痛感をさせられるわけでございます。同時にまた、いまお話もございましたが、いまドル減らしが緊急の課題になっております。そうしたドル減らしに真剣に取り組む姿勢を内外に表明ができる、こういうふうな観点から現在検討を行っておるわけでございます。  しかし、検討を始めてみますとなかなかむずかしい問題がたくさん出てきておるわけでございます。たとえばどういう機種にするか、これはよほど厳しく選定をしなければならぬわけでありますし、あるいは機数を二機にしたらいいのか三機にしたらいいのかというような問題とか、管理方法、これは内閣専用機を持つとしても、どこで管理をさしたらいいのか、どこに委託したらいいのかというふうな問題、管理するのは予算も大変かかるわけでございますが、そうした管理方法をめぐっていろいろと議論も分かれております。また購入時期はいつごろにしたらいいのか。いますぐここで決めて発注をするとしても大体二年間近くかかると言われておりますし、あるいはまた、パイロットを養成するとしても二年間はかかるというふうなことでありまして、そういう点等も考えまして、慎重に検討を要する問題点が非常にたくさんあるわけでございますから、いま官房長官のもとで、そうした政府専用機を保有する基本的な方向で、機種あるいは機数、管理方法、購入時期等につきまして目下検討いたしておりまして、まだ研究の段階であって、結論が出てない、決定は何もしてないというのが今日の状況でございます。
  37. 原茂

    ○原(茂)委員 残念ながら時間がないので、最後にもう一問お伺いしておきます。  大規模地震対策特別措置が、法律はすでに発効しましたが、これからいよいよ実施の段階に入るわけです。私は、あの中に余りないのですが、一番大事な問題は、いま特に人口の集中している都市における災害対策だと思うのです。したがって、人口抑制という問題が相当真剣に考えられないと、現在のように、都市集中の度合いというものを自然に任しておいたままで、いわゆる大地震特別対策ができるか。私は、一番問題になるのはやはり人だと思う。人があるから産業が興る。またそれに人も集まる。災害があったときにやはり人が中心で災害が起きるということから、やはり人口の抑制という問題を相当真剣に考えなければいけないと思うのです。きょうは時間がないようですから、地震の問題はまた後で、おいでいただいた方にずっとお伺いしますが、長官に一つだけ。  大地震対策における人口抑制という問題を真剣に取り上げていかないといけない。現状はしようがないならしようがないでいいですが、少なくとも今日以後、これ以上は都市流入をとにかく防ぎたい。都市におけるふえていく人口に対しては、結果的にそれをどこかに疎開させるという方途を政治の場で思い切って考えていかないと、大規模地震対策なんということを口では言っていますが、どんどんそれを阻害する要因になっているのは人口でございますから、人口の抑制というものを大きなテーマに取り上げていかないと本当の意味の地震対策にならぬと思うのです。これは、総理が最終的には東海地方その他に対する警報を出す、それで実際に災害に対する対策も行うという責任がある立場なんですが、その立場で人口抑制問題というものを相当真剣に考えるべきだと私は思いますが、長官からこれに対する考え方を聞いて、長官をひとつ解放したいと思います。
  38. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 地震と人口、私たちも先般の仙台を中心とする地震によりまして、いわゆる都市型の地震といいますか、都市災害といいますか、そういうものの教訓を多く得たわけでありまして、政府は、こうした地震対策、特に都市型の地震対策に対してはいろいろの角度からこの機会に再検討していく問題がたくさん出てきた、こういうふうに考えておるわけでございます。  そういう中で、これからの人口問題というものをどういうふうに考えるかということでありますが、御案内のように、人口の動態は、昭和二十五年ごろを境に多産多死というふうな型から少産少死型に転じておるわけでございまして、さらに昭和三十年以降出生の動向を見ますと、基調としては静止人口を実現する水準を超えておる。しかし、過去に出生数が多かったことの影響で、実際の人口は現在約一億一千四百万でございますが、これが昭和百二十五年ごろには約一億四千万まで増加した後静止人口になると推計されておるわけでございます。  一方この間に人口構造の老齢化というものが非常に急速に進んでまいりまして、現在生産年齢人口十五歳から六十四歳まで、八人で一人の老齢人口を支えておるのに対して、今世紀の末では大体五人で一人を支えなければならない状況に至るというふうに思っております。したがって、人口の老齢化に伴いますところのいわゆる社会的負担の増大ということには留意をしていかなければならないのじゃないか。  そうした面から見ますと、人口の抑制というものは具体的には出生の減少を図ることを意味するわけでありますが、いま申し上げましたような状況から見ますと、これを行うということは、やはり出生の減少を図るということは、国民の負担の重さ、あるいは国としての活力に重大な影響を及ぼすことにもなりますので、国の施策として抑制をしていくということは、私は、日本の将来というものを考えて、適切ではないのではないか、こういうふうに思うわけでございます。  なお、都市からの人口の集中の排除ということにつきましては、これは三全総でも計画しておるところでございますし、この点については、将来の災害対策、これまでの教訓を生かして積極的に取り組んでいく必要がある、こういうふうに考えるわけであります。
  39. 原茂

    ○原(茂)委員 私は、人口の増加を抑制しろということを言っているのではないのです。特に首都圏中心の過密都市におけるふえていく数を抑制しなければならないという意味なんです。  御承知だと思いますが、首都圏のいわゆる全国に対する人口比率は、七五年が二四・一%、一九九〇年になりますと二五・三、二〇〇〇年になると二五・五%という調査がすでにできているわけでしょう。しかも、大規模地震対策をおやりになると言いながら、この激増する人口に対するびしっとした方針を持っていないで地震対策ができるか。これは看板に偽りがあって、全然地震対策にならない。人口がふえれば産業も集中する。したがって、産業自体もやはりある程度移しかえていかなければいけない。人口も、ふえるものはどこかに定住圏を決めてやらなければいけないというような意味で申し上げているのです。したがって、ふえていく人口を減らすなんという不自然なことをいまわが国考える必要があるかどうか、そんなことを私論議していません。  この点に関しては、三全総あたりを見ましても、いわゆる大規模地震対策との関連で見れば見るほどこれは看板に偽りがあるので、絶対に人口に対するいわゆる定住化をどこかの圏内に図ろうというようなことが提言もされていない。しかも、それが実施に移されようという気配もないということは大問題で、大きなことが抜けているんだというふうに思いますから、この点十分にひとつ考えて、今後の大規模地震対策の大きな柱として、このふえていく首都圏における人口増に対してどう対処するかを基本的に何かチームをつくって考えていただく必要があるというふうに考えますが、その点だけお聞かせいただいて、長官は帰ってもらって結構です。
  40. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 御指摘の点につきましては全く同感でございまして、これからの人口の激増する地域あるいは人口集中地域、これの大災害、大地震が起こったということを考えますと、慄然とせざるを得ないわけでございますので、その点につきましては、三全総では計画は持っております。おりますけれども、今後ともこれからの大規模地震対策等に臨む政府としての基本的な考え方として、十分検討してこれに対処できるような方針を確立しなければならないというふうに考えております。そういう方向で今後努力をしてまいります。
  41. 原茂

    ○原(茂)委員 長官、結構です。  それから、今度は総務長官に先にお伺いします。萩原先生、おいでいただいてまことに申しわけありませんが、もう一問ちょっとお待ちいただきたいと思うのですが、動物の保護と管理についてお伺いをしたいわけです。  最近いわゆるペットブームといいますか、非常にいろいろな動物が家庭で飼われるようになっています。犬やネコも年々増加をいたしまして、犬の登録頭数というのが、五十年、三百十九万七千頭、五十一年、三百二十万九千頭、ネコだとか未登録犬その他のペットを含めると大変な数になると思われるのですが、未登録犬、登録犬を比較してみますと、未登録の方は登録した犬の約二倍から三倍にもなっていると言われますが、こんな事実がありますか。
  42. 小野佐千夫

    小野(佐)説明員 お答えいたします。  犬の登録につきましては、これは狂犬病予防法の関係の事務でございまして、総理府でその事務をやっておりませんので、正確な数字は私の方で把握しておりません。それからネコにつきましても、登録の正確な数字はわかっておりません。
  43. 原茂

    ○原(茂)委員 動物愛護なら総理府は関係するのですか、狂犬病予防はやってない、どっちなんですか。
  44. 小野佐千夫

    小野(佐)説明員 総理府で所管しておりますのは、動物の保護及び管理に関する法律でございまして、犬の登録とかネコの登録の数については、私の方では掌握いたしておりません。
  45. 原茂

    ○原(茂)委員 犬その他動物の保護、管理に任じようとする者が――登録されるということは、犬を保護する意味で保護、管理に当たるのですよ。野放しになっている、登録されていない犬がどのぐらいあるかもつかまないで動物の保護、管理をやろうなんということは、まるで森の中へ行って目に見える木だけを手探りでさわっているようなものである。動物全体のありようというものを把握した上で、登録されているもの、されていないもの、これに対して動物保護、管理の立場からどうするかを考えていくようにしなければ本当の意味の行政にならないと思うので、そんなかたわなことで、よくそれで動物の保護、管理に対する責任が負えるものだと思って感心しますけれども、わかっていなければそんなものいいのですが。  そこで、動物の保護及び管理に関する法律の第七条の一項及び二項によりますと、飼い主、所有者から引き取り要求が出た場合には、都道府県など、政令都市を含みますが、引き取らなければいけないということになっていますが、しかし、引き取り状況を見ますと、政令指定都市は大体専用施設があるのですが、都道府県となると保健所が代用しているのが非常に多い。中には、引き取り、収集、保管、処分、処理と一貫して保健所に任せているのが非常に多いのです。これは地方自治体の対応のおくれがそうさせているのか、政府の指導がまずいのか、どうお思いになります。
  46. 小野佐千夫

    小野(佐)説明員 犬、ネコの引き取りにつきましては、できるだけ地方自治体でやっていただくということになっております。私の方では、施設を新しくつくられるとか一部整備をされるという場合に、各都道府県で申請がありますれば補助をするということで、年々やってきております。
  47. 原茂

    ○原(茂)委員 私の聞いているのは、実際に地方自治体の実態を見ると、保健所が一貫して全部代行している。地方自治体そのものはやっていないところが多い。ところが、この法律が現にある。にもかかわらず、そういう状態に放置されているのは、地方自治体が怠慢なのか、あなた方が指導をうまくやっていないのか。後で予算の面、数字の面で聞きますけれども、基本的には一体どっちなのかな。とにかく原因あるいは責任という問題を考えたときに、そのいずれが主な原因なのかをまず聞きたいという意味質問をしているわけです。どうですか。
  48. 小野佐千夫

    小野(佐)説明員 私の方としましては、各都道府県で犬、ネコの引き取りの事務をやっていただくということで指導をしておりますが、各県につきましてもいろいろ財政その他の事情がございまして十分進んでいないところもあるようでございます。
  49. 原茂

    ○原(茂)委員 財政困難の事情というのは、自治体の財政困難ですか、あなた方の方の財政困難ですか、どっちですか。
  50. 小野佐千夫

    小野(佐)説明員 両方あろうかと思います。
  51. 原茂

    ○原(茂)委員 じゃ、その点は後で関連してお答えをいただきます。  法律にいう保護動物の中に、犬、ネコのほかにクマ、ライオン、サル、ワニ、ヘビというような猛獣ペットもだんだんふえてきているのですが、これらの実態は把握しているのでしょうか。ずいぶんちょこちょこと問題も起きていますが、それが一つ。  それから、もしこれらの猛獣ペットに対して引き取り要求が出たとき、これはやはり法律の決めるように引き取らなければいけないのじゃないかと思うのですが、どうでしょうか。  それから、もし引き取るとすると、その保管場所なんですが、そう何回も何回も猛獣ペットの引き取り要求なんか来ない。にもかかわらず保管場所がなければいけない。国も補助を行って、自治体に意思があればその保管場所をつくる。この保管場所は一回かそこら使われただけで後使われないというおそれもあるのですが、そういうことを考えますと、国が二分の一補助というのは自治体に対して非常につらいのじゃないか。もうちょっと国がこういうものに対する補助率を引き上げていかないと、猛獣ペットの何らかの事情による引き取り要求があったときの対策というものができないのじゃないかという感じがしますが、この三つに分けて。
  52. 小野佐千夫

    小野(佐)説明員 まず第一点でございますが、ライオン等のいわゆる猛獣類の飼育状況でございます。本年四月に警察庁が実施いたしました調査によりますと、一般の家庭でライオン、トラ、クマ等の猛獣を飼育しておりますのは百五十四カ所で、その数は二百三十二頭でございます。これにドライブインとか旅館等で客寄せのために飼っているものを含めますと、千百三十八頭が飼育されております。  それから、第二点のお尋ねでございますが、こういう猛獣類を引き取るという件でございますが、これは現在そういう規定はございませんので、どこが引き取るかということになりますと、動物園とかそういった公共の施設にお願いして引き取っていただくというようなことになろうかと思います。  それから、第三点の国の補助でございますが、現在の法律で規定されております「二分の一以内」というのは、犬及びネコの引き取りに関する収容施設をつくる場合の補助でございまして、猛獣等は含まれておりません。
  53. 原茂

    ○原(茂)委員 この動物の保護、管理の法律のどこに猛獣は含まれていないということが書いてあるのでしょうか。猛獣だろうが何だろうが、そういう区別をしてこの法律はつくられていないんじゃないでしょうか。
  54. 小野佐千夫

    小野(佐)説明員 動物の引き取りを義務づけられておりますのは犬とネコでございます。
  55. 原茂

    ○原(茂)委員 ですから、猛獣に関しては引き取りが義務づけられていないが、ただ法律にないだけであって、解釈のしようによっては問題が起きるんじゃないでしょうか。犬とネコ以外は引き取りの要求があっても引き取らない、引き取らないでよろしい、こういった条文が法律にありますか。
  56. 小野佐千夫

    小野(佐)説明員 先生がいま御指摘のような条文はございません。  ただ、猛獣等につきましては、これを飼っている飼養者がその責任を全うしていただくということになっております。
  57. 原茂

    ○原(茂)委員 あなたはなっています。なっていますと言っているけれども、法律にないじゃないかとぼくは言うのですよ。そうなっていますという法律の条文もないでしょう。したがって、これは問題があると思うのですね。  時間がありませんからこれは余り突っ込みませんが、問題があると思うので、いまのように猛獣ペットというものがはやってきている状況から見ると、動物の保護、管理ということを中心にこの法律のどこかを改正してもっと明瞭にしておかないと、これは解釈によっては持っている人間が要求すれば引き取らざるを得ないかもしれない。引き取らないでよろしいんだということをやはりぴちっと明確にしないと、いまおっしゃったように犬とネコというふうに限定した、動物の中のそれだけだというようなことを、もし必要があるならそういうことを条文にうたうという何かを工夫しませんと、ぼくは、猛獣ペットがこんなにはやってきて、おれはどこかへ引っ越したいがこれはもう手に負えない、だからこのライオンを引き取りに来てくれという要求だっていまの法律のもとで要求しちゃいけないことにはならないというふうに思いますから、猛獣に関してはおまえが管理することになっているのだと口じゃいまのように言ったって、法律のどこにもそんなことはないということになるから、これに対しては至急に検討をしないといけないんじゃないかなというふうに思うのですが、長官、これをお聞きになっていてどうですか。これは何とか手をつけませんと、だんだん猛獣ペットというものがふえてきますよ。
  58. 稻村佐近四郎

    稻村国務大臣 御指摘の点ですが、個人飼育ということで、以前に埼玉県下でもああいう問題がありました。そういう意味で動物保護審議会ですか、そういう実態をも踏まえて今後どうすればいいかということで、現在御審議をちょうだいをしておるところでありまして、近いうちに結論が出るのではないか、こういうふうに思っております。
  59. 原茂

    ○原(茂)委員 寡聞にして聞いてなかったのですが、そういう審議をしているなら非常に結構です。だが、これは早く結論を出す必要があるだろうと思う。  それから、先ほどの答弁の中に予算の問題があったのですが、いままでの予算の執行状況を見ますと、いま五十一年度審議をしているのですが、五十一年度中心考えると、予算額が八千三百十六万一千円、そうして歳出予算現額が九千百六十六万三千円。ところが支出済み歳出額が二千百四十二万八千円、翌年度繰越額が二千二百五万七千円、不用額が四千八百十七万八千円出ているのです。予算の半分が不用額になっている。しかも繰り越しは二千二百万円もある。私が冒頭に質問したように、一体あなた方の指導がまずいのか、自治体そのものがやろうという気がないのか。予算がないのじゃない。これは毎年ですよ。五十年度はどうかと言えば、予算額九千三百万円に対して、不用額が二千百万円出ているのです。繰り越しが八百五十万円です。これを足してみると約一億になりますよね。五十二年度はどうかといいますと、予算額が約八千二百万です。ところが繰越額が三千四百九十一万九千円、不用額が二千三百九十五万五千円なんですよ。  そこで、これはなぜいつもこんな何千万も不用額を出し、繰り越しはし、当初予算の半分も使わないのか。もっともっとこの指導がうまければ、地方自治体が保健所にこんなことを全部代行させているということはなくて済むはずなんですよね。これはどういうわけですか。さっき、自治体も国の方も予算がありませんとこう言ったんだけれども、予算がないんじゃないのです。五十一年度決算額を見てもこういう欠陥がある。五十三年がまた八千一百万の予算を取っているんですよ。それで繰り越しが来、あるいは不用額、こういうようなものはいままでのあれからいって当然出ますよ。これはどうなんですか。  これに対して、小さい予算、小さい問題だというので、大衆に接触している犬だネコだというものを、動物愛護だ何だと言いながら、しかもこれに対するいわゆる指導上の熱意が足らない、これは国の方。地方自治体の方も本当にこういうものをやろうという気がないから、せっかく出そうと思えば出せる予算があってもこれの使用ができないで、不用額が年々出てきているのだ、こういうふうに思うのですが、どうでしょう。
  60. 小野佐千夫

    小野(佐)説明員 先生御指摘のように施設不用額が立っておりまして、私たちとしても大変残念に思っておりますが、実情は各地方自治体でそういう施設をつくりたいということで予算を計上されるわけでございますが、いざ土地の取得といったようなことになりますと、地域住民の方々の反対といったようなこともございまして、容易に了解が得られないというような事情もございまして、不用額を立てるというようなことに相なっているようでございます。
  61. 原茂

    ○原(茂)委員 そういう理由もあるのですが、そればかりじゃないのです。いまおっしゃったのは、たとえば滋賀県は確かにそのとおりです。住民パワーの反対に遭ってついにできなかったというのもあります。それから三重県の場合のように県がやらないで公社がやったもんだから、公社では補助の対象にならぬというのでこれがとうとうできなかったというのもあります。それから沖繩県のごときは、これは二転、三転した理由があるのですが、あの大きな公害団地をつくっておきながら、その公害団地の貯水槽のそばへこの処理場がだんだん近づいていくようなそういう拙劣な考え方でまだやっている。あるいはそのために二回にわたって変更をするというようなことまで起きていることはわかります。わかりますが、沖繩のこともきょう時間の都合で余り詳しく申し上げませんが、やはり総じてこの種の問題に対する政府の指導に対する熱意、これがもっとあれば、この面の保健所が代行しているような自治体における数多くの現象というものはなくなっていく段階が来るだろうと私は思う。  この点で今後は自治体に対するPRももっと必要だし、それからもっと熱意を持って、ほかの仕事でこんな率で不用額が出たり繰り越しが出たら大変だと思うのですよ。金額が少ないからというので六割も七割も繰り越し、不用が出ていても知らぬ顔をして見逃されているというようなことは、金額がもっと多かったら許されるはずがないのです。ですから、この仕事も非常に大事なんですから、もうちょっと熱意を持って自治体に対する指導も行う、自治体も動物愛護の立場からする保護、管理に関する問題にもっと真剣に取り組んでいただくという指導性を発揮しなければいけないんじゃないかと思いますが、長官、どうですか、この点は。
  62. 稻村佐近四郎

    稻村国務大臣 御指摘の点はごもっともだと思います。いろいろ各省庁にまたがっておる点もあろうかと思いますが、総理府が所管ということになっておりますので、今後各省庁と緊密な連絡をとりながら、保護あるいはまたいろいろな問題についての規制と申しますか、法律と申しますか、こういった問題にも積極的に取り組んでいきたい、このように考えております。
  63. 原茂

    ○原(茂)委員 防災、それから地震予知の問題について少しくお伺いをしてまいります。  最初に、自治省の消防庁きょう来ているのですね、お伺いしたいのですが、消防庁は昨年の十一月ですか、地方自治体が災害に備えてどのような体制をとっているかという調査をなさいました。「地方防災行政の現況」、これを発表されております。それによりますと、防災を重点課題として積極的に取り組み始めていることがわかりましたが、この調査は昨年の四月、四十七都道府県と人口二十万以上の都市百二十市、東京の二十三区も多分含まれているようですが、行ったようであります。そして、具体的な対策で必要最小限度のものは全地方自治体に強力に実施方を指導すべきだが、せっかく調査をしたのですから、これはという重点的なものを積極的に指導をしていかなければいけないと思いますが、私は長野県の人間であります。長野県の関係あるいは大きな都市、二十万以上の都市を中心に聞いてみましても、まだ自治省、消防庁の積極的なこの調査による指導というものはおりていないと言うと語弊がありますが、そう積極的な指導があるようには思わない。私が問い合わせをしても、はっきりとそういう強力な指導を受けていますという回答がない。そのうちに大規模地震対策特別措置法ができた。これで恐らく長野県なんかは間違いなくいわゆる特定な地域に指定を受けるだろうという前提で、公共建物を中心にした防災対策として二千六百億円も予算をやがて組もうというので、独自の立場で長野県なら長野県という自治体が準備を始めていますが、せっかく防災行政について自治省が調査をしておきながら、そのあらわれたものによる強力な指導というものがいまだに行われていないというふうに思いますが、この点はどうなっているんでしょうか、それをひとつ。  たとえば街頭への消火器の設置ですとか、耐震貯水槽や可搬式動力ポンプの整備でございますとか、住民の自主防災組織づくりでございますとか、いわゆる避難地の指定だとか、がけ崩れや山崩れの危険地の見直し指定、その指定に当たっての十分な用地の確保だとか、避難地へ行く道の安全性だとか、人口集中に伴う避難あるいは誘導でございますとか、それから被害の想定図づくりですとか、あるいは防災無線網の充実だとか、食糧あるいは医薬品の十分な備蓄でございますとかというものの点検を実施したり、あるいは指導助言をしなければいけないと思うのですが、これがまだ十分に行き渡らないどころか指導がされていないというふうに、私の調査では思いますが、現状はどうなっているのか。  少なくとも長野県の場合、東海地震が、ここに萩原先生おいでになりますが、ある程度予想される状況の中では、長野県も相当大きな被害をこうむる場所というふうに私は考えておりますが、というようなことを考えた場合には、長野県ばかりではありません、全国どうなっているのかきょうお聞きしたいのですが、特に南関東でございますとか、あるいは東海地震でございますとかというようなものを想定したときの、いわゆる被害の想定図を大体お持ちのはずなんで、それを考えたときに、せっかく地方防災行政の現況を調査したら、その調査に基づいて、至急にこれとこれがというようなことを正式に強力な指導をしなければいけない段階に来ていると思うのですが、この点どうなっているのかをお答えをいただきたい。
  64. 千葉武

    ○千葉説明員 お答え申し上げます。  先生御指摘のように、私どもでは昨年の四月、地方防災行政の現況について調査をいたしました。これは人口二十万以上の都市について行ったものでございます。私どもといたしましては、基本的にこの調査に基づきまして、たとえば五十二年の四月一日に、消防庁長官から各都道府県知事あてに、震災対策の強化についてということで、指導の通知を出しております。  御指摘の中にもございましたが、この中で特に私どもが強調しておりますのは、まず、被害想定を作成しなさい。それから、総合的かつ広域的な防災体制の整備を行ってほしい、あるいは自主防災体制、情報収集伝達体制、防災知識の普及及び防災意識の高揚、あるいは震災訓練の実施、さらには防災施設設備等の整備の促進、あるいは公共施設の点検、火災防止対策、さらに都市防災化事業の促進、救急救護対策、避難対策というような項目を挙げまして、これらについて十分配慮をするように、こういう通知を出したわけでございます。  先生御承知のように、いわゆる防災体制等につきましては、各自治体が関係の公共機関あるいは行政機関等と協力をし合いながら地域防災計画というものをつくる仕組みになっております。そういう仕組みの中で自治体が自主的にそれをつくる、私どもはそれを側面的に指導をする、こういう仕組みにしております。  したがいまして、今後ともこういった指導を、地域防災計画をつくるに当たっての指導を、御指摘ございました大規模地震対策特別措置法もできましたので、いずれこの法律が施行された暁に十分な対応できるような指導を今後やってまいりたい、このように思っております。
  65. 原茂

    ○原(茂)委員 いまのお話でわかったのですが、通知をおろした。いま言った、大事な通知をおろしました。その通知に基づいての強力な指導というものを、いつから、たとえばどこへ、どういうふうにやった。強力な指導をしなければいけないと私は言っている。絵にかいたものは、こんなものは新聞にも出ているのですから。ところが、強力な指導を早くやっていかなければいけない。その強力な指導というものを、どういう段階で、どうやって、たとえばどこに、どういう形でおやりになっているのか。  地震なんていつ起きるかわからないから、大至急に、いいとわかったことは、やらなければいけないと決まったことは、指導をする、助言をする。しかも、困っていることがあったら、自治体に対して国の立場で協力をするために、予算的にはどうだこうだということまで強力に指導をしていかないと、一遍調査の結果おろしました、やるはずだと言っていていいかという質問をしているわけです。そんなことじゃだめですよ。私は、強力な指導を受けたと言っていないことをいま言っているわけです。強力な指導を、どういうふうに、いつ、たとえばどこへ向かっておやりになりましたか。
  66. 千葉武

    ○千葉説明員 お答え申し上げます。  基本的なたてまえは地域防災計画の中でつくる、これはよく御承知をいただいていることだと思います。国といたしましては、そういった地域防災計画をつくるに当たっての指針を示す、こういうことになっておりますが、御指摘ございましたように、強力な指導をせよという声もあるようでございますので、私どもとしましては、そういった自主的な地方団体等の防災体制というたてまえを維持しながら万全な体制が組めるような指導を、特に重点の地域については今後やってまいりたい。あわせて御指摘ございましたような財政的な援助等につきましても、現在検討しているところでございますが、ひとつぜひ実現を図ってまいりたいというふうに考えております。
  67. 原茂

    ○原(茂)委員 また国土庁中心にこういう問題を専門にやる時間でないと、これ以上余り詰めても無理かと思いますが、せっかくおろした強力な指導というものを実際にやっていく必要のある段階にもう来ている。これは萩原先生でなければわかりませんが、いつどうなるか知りませんが、私みたいにとにかく関東大震災を体験した人間は地震が一番おっかないものですから、地震対策だけは是が非でも急速にやっておかなければいけないという考えで始終地震の問題を取り上げるわけですが、ひとつ強力な指導をやっていただかないと、やろうと思ったときには勝手に自治体がやるというのと同じ結果になってしまうということです。ここで一番大事なことは、やはり防災計画というのは足並みが全部そろって、危険区域全体がとにかく同じ時期に急速にレベルアップしていかないといけないわけです。そういう意味ではもっと強力な指導というものをするようにきょうは要求をしておきます。  そこで、宮城県沖地震の経験に照らして、それとかみ合わせながら、私これから大規模地震対策に対してお伺いしたいと思うのですが、やがてあの特別措置法によって、大地震のおそれのある地域を地震防災対策強化地域に指定しなければいけないのですが、この準備はもう済んで、指定をする段階に来ているのかどうか。県市町村ごとに防災強化計画というものをつくらせることになっていますが、これもすでに作業は済み、そういうことができるようになっているのかどうかをまずお伺いしたい。  その中に、先ほどもちょっと触れましたが、地震防災対策強化地域の中に長野県は当然私は入ると思うのですが、この点はどうお考えになっているのかをお伺いしたい。
  68. 城野好樹

    ○城野説明員 御説明いたします。  大規模地震対策特別措置法は、本年六月十五日に公布されておりまして、公布の日から起算して六月以内に施行するということになってございます。現在、法の施行に必要な政令、府令というような根幹的な部分の作成作業をやっておりますが、できるだけ早い時期にひとつ施行したいということでございます。  ただ、先ほどの強化地域の点につきましては、秋口くらいから中央防災会議の中に専門委員会をつくっていただきまして、そこで専門学者の方々の御判定をいただいた上で各都道府県、市町村長の意見を聞いて指定をしたいという予定にいたしてございます。  ただ、先ほど御指摘のございましたように、防災基本計画、それから防災強化計画と言っておりますが、各省が持っております防災業務計画、それから、先ほど話が出ておりました地域防災計画の一環といたしまして地震防災強化計画というものをつくっていただくことにしておるわけでございますが、それの基本となりますのはやはり政令でございますし、国がつくります防災基本計画でございます。その案を現在練っておるところで、秋口あたりからいわゆる強化計画の作業に入っていただこうというふうに考えておるところでございます。  なお、一番最後の長野県が当然入るということに関してでございますが、これもいわゆる安政の地震のときの被害状況等の調査に基づきまして、対策を要する地域であるという判定があれば入るものというふうに考えております。
  69. 原茂

    ○原(茂)委員 この中央防災の委員会による決定というのはこれはもっともだし、今後秋口に委員会が持たれるということであればそのときを待ちますが、私は過去の経験に照らしても当然長野県がこの地域に入るというふうに考えています。  そこで、何と言っても一番大事なことは、この警報を発令するかしないかというもとになる地震予知の観測体制の強化ということです。ずいぶん長いいままでの命題なんですが、その中心的課題というのは、やはり各省庁にまたがっている行政の一元化というものを徹底しなければだめだ、長いこと言ってまいりましたし、言われてまいりましたし、検討してきたのです。ようやく最近その曙光が見えたわけですが、いまどうなっているのでしょう、完全な一元化がもうできる状態になっていますかどうか。各省庁にまたがっていますからね、地震予知観測体制というものは。その完全な一元化というものがぴちっともうできなければいけないと思うのですが、それがどんな状態になっているか、まずその点を先に。
  70. 清水眞金

    ○清水説明員 お答え申し上げます。  地震予知の一元化につきましては、先生御指摘のように、非常にむずかしい、かつ非常に大事な問題でございます。  現在どういう情勢にあるかと申しますと、地震に関する研究とか観測につきましては、まだ研究段階を脱していない。今度の法律におきましても、東海地域につきまして非常に多くの機関が集中的な観測網を張りまして、それを気象庁の方に、常時監視のデータを集中して結びつけた、そういうふうな特別な体制をとりまして、一応非常に大きな地震はとらえられるようになったというふうな状況でございますけれども、要するに、まだ技術としてこれだけやれば十分予知はできるという段階にはなっていないわけでございます。したがいまして、その観測とか研究を担当するのも、やはりいろいろな機関がそれぞれの力を十分発揮しながら、ある意味では競争でいろいろな手法を用いてその観測を幅広く進めていくというのが非常に大事なことではないか。これは世界的にもやはりそういうふうな状況でございまして、地震観測あるいはその測地測量だけやれば、それでその予知はできるというところにはまだ至っていないわけでございます。したがって、いま直ちにそういう現在やっておりますいろいろな機関を一元化してどこかでまとめるということは、非常にいろいろな弊害と申しますか、逆に阻害要因になってくるおそれがあるというふうなのが現在のわれわれの認識でございます。  ただ、予知というものをやはりどこかにまとめたような形で体制を整備していくということは非常に大事なことでございますので、今度の七月に出ました測地学審議会の第四次建議におきましても、体制の整備についてというふうな項が一項あるわけでございますが、その中で、やはりいま申し上げましたような予知技術の現状にかんがみまして実質的な意味での体制の強化を進めろ、たとえばデータを一カ所に集めろ、それから非常に危い地域、たとえば東海地域とか関東南部につきましては常時監視体制というものを気象庁に置きまして、その気象庁の方に一元化していく。さらに判定組織というものを、現在は東海地域判定会というものがございまして、これが地震予知連絡会の中にあるわけでございますが、これを今度の法律によりまして予知情報を出す責任を負った気象庁の方に位置づけるとか、そういうふうな実質的な面で一元的な働きができるように位置づけていこうというのが、今度の測地学審議会の答申でございます。  したがいまして、その線に沿いまして、今後はまず観測研究を各機関が非常に強化していく。それからさらにそういうものを有効に効果が発揮されるように、データの集中とかあるいは常時監視とか、判定組織のきちんとした位置づけとか、そういうことを的確に進めていくことが大事じゃないかというふうに考えております。
  71. 原茂

    ○原(茂)委員 これはちょっと萩原先生にお伺いするのですが、いまお聞きのとおりなんですが、先生のお立場で地震予知体制の一元化というものが余り強引にされるとむしろ弊害が起きる心配がある。というのは、裏を言うと、また逆の、いまのような状態では弊害もあるんだろうと思うのですが、現状ではやむを得ないと、一元化の進んでいく状況というのはこの程度でしようがないとお思いになっていますか。いまの予知観測体制というものを一元化するという上で、こういう点をこうしたらというふうな萩原先生からの要求なりお考えがあるかどうかが一点。  それから、末広先生もきょうおいでいただいておりますが、どうでしょうか、いまのような状態で気象庁が予知の警報を全責任を負って出さなければいけない立場にあるわけですが、現在の段階においてやはり仕方がないからお出しになるんでしょうか。いまの状況で十分自信を持って予知警報というものを出すという決定ができるのか、この点は末広先生からひとつお伺いして、先に萩原先生にひとつ。
  72. 萩原尊礼

    萩原参考人 地震予知に関する業務の一元化というのは、これは究極におきましてはそうならねばならないと思っております。ただ、それが現在の天気予報とかあるいは津波警報とか、そういうように完全に業務的に地震の予知情報というものが出せるような段階に近づきましたときには、もう当然一元化になってしかるべきと思うのでございますが、御承知のように、いままでは研究研究ということでやってまいったのでございますが、今度の特別措置法ができたというようなことから見ましても、研究の段階ではなくてもう実用に足を踏み入れたわけでございますが、しかし、まだある決まった法則で情報が出せるという状態ではございませんで、多分にこれからも研究していかなければならないし、またそのためには、業務観測だけでなしに大学にも非常に依存しなければならない実情でございます。そういう段階におきまして、形の上だけで一元化をして果たしていままでよりも非常に効果が上がるかどうかということを考えますと、非常に心配な点がいっぱいあるわけでございます。  現状は、御承知のように、地震予知連絡会というものが中心になって地震予知の実際の仕事を進めてきておりますが、これは長年いろいろやってきまして非常にいい体制でございます。というのは、予知連絡会というのは、非常に法的には無力な、建設省の一付属機関である国土地理院長の委嘱でございますから大変無力なんでございますが、しかし、現在まで社会的にはいろいろと信頼を受けてまいった。この連絡会の非常にいいところは、こういう法的に無力なだけに、何の気がねもなしに自由に討論ができるといういいところがあったわけでございまして、この点は、今後も当分の間はこの自由な討論を続けるような場が欲しいわけでございます。  ただ一面、今度の特別措置法ができまして、これは強化地域をつくりますにも総理大臣が中央防災会議に諮問する等の手続をとるわけでございますが、実際には地震予知連絡会の判断が大きな影響を持つものと思います。そういう非常に重大な役目を負う地震予知連絡会というものが現在のようなものでいいか、もっとちゃんとした位置づけが行われなければならないのじゃないかという声がございます。これもまたもっともなのでございますが、やはり私としては、いままでのような形で何の気がねもなしに学問的な討論をして、そしていろいろな判断をできる場としてこの連絡会の実質的な形は残していきたいと思っておるわけでございます。  あと、いろいろな機関の協力によってこれまで地震予知というものが進められてまいりまして、その機関がいろいろな省に属するということで、事務的には多少の繁雑な点もありましたが、それも皆さんの善意的な協力によって解決しつつあるわけでございまして、現在必ずしも無理に一元化をしないでもやっていけるのではないかと思っておるわけでございます。
  73. 末広重二

    ○末広説明員 御説明申し上げます。  今回、六月に制定されました法律が施行になりますと、短期予知については気象庁長官が責任を持って報告を総理のもとに差し上げるということになるわけでございます。この短期予知の手法でございますが、これは長期的に見まして大規模な地震の起こるおそれのあると思われている地域に幅広い、かつまた多種類の観測の網をしきまして、それをどこか一カ所に集めて、昼夜の別なく見張って異変のあらわれた場合には直ちにこれを把握するというのがまず手法の基礎でございます。この点につきまして先ほど来科技庁の方から御説明がございましたが、現在その一番最有力の候補地になっております東海地域につきましては、各大学、具体的には東京大学、名古屋大学、それから国土地理院、国立防災科学技術センター、通産省の工業技術院の地質調査所、それからもちろん私ども気象庁等がいろいろな観測の網をすでにしいてあるわけでございます。これをどこか一カ所に集めるわけでございますが、こういった各機関の中で二十四時間の業務をやっておりますのがたまたま私ども気象庁でございましたので、省庁の壁を破りまして、たとえば国土地理院の観測なさるデータも生のまま気象庁へつなぐということで、大学を含めまして五省庁のなすっていらっしゃるデータが現在生のまま二十四時間連続的に気象庁へ集まっております。これは技術的にはと申しますか、観測の上から言いますと一元化でございまして、ここへ踏み切りましたのは相当な技術的あるいは制度の上からでも進歩であったと思うわけであります。  次に、こういった手法によりまして異変が発見されました場合に、これが大規模地震が眼前に迫っているものであるかどうかという判定をするわけでございますが、これは萩原先生も御説明になりましたように非常に高度の学術的判断を要しますので、気象庁はこれを判定会の諸先生方の御判定をいただきまして、それを基礎として行政的には気象庁が責任を持って予知情報をお出しするということになっているわけでございます。  こういうわけで、ハードの面につきましてもソフトの面につきましても、決して満足というわけではございませんが大きな進歩がございましたので、私どもとりあえずはこれによって責任を果たしていけると思っておるわけでございます。  ただ、もちろんこれが完全なものではないわけでございまして、観測の網もより細かく、かつ種類もふやす、あるいは判定技術も一層これをみがくというようなことも当然必要でございますので、これは地震予知推進本部という強力な推進母体がございますので、ここで十分御討論いただきまして積極的に進めていきたい、こう思っているわけでございます。
  74. 原茂

    ○原(茂)委員 そこでちょっとお伺いしますが、いつごろでしたか、国土庁からつい先ごろ出ていますが、南関東の大地震を想定して、その対策案について民間の日本ビジネスオートメーション株式会社ですか、そこへ依頼して対策案なるものを出させました。私、これを見て、特にははあ大変だなと思うのは、都心の機能麻痺に備えて東京の立川基地跡などを国の災害対策基地本部の予備基地にするように提言をしてみたり、大変貴重なことをいろいろと提言されているのをこれで承知しました。  それで、立川にそれを置くかどうかというような細かい問題を聞くのじゃないのですが、南関東の大地震の想定だけでほかには何かやっていないのかどうかですね。こういった種類の調査依頼あるいは調査活動を正式に、これは五十三年三月にできていますが、この種のものは南関東だけで終わっているのか。ほかにも当然やらなければいけないと思うのですが、それは一体どうなっているのかを、これは国土庁でしょう、まずお伺いしたい。
  75. 城野好樹

    ○城野説明員 御説明いたします。  最近国土庁が発表いたしました震災応急対策基地建設調査は、南関東の一都三県を対象としまして、大規模な震災が発生した場合の災害応急対策活動をどうするかということのための必要となります基地の体系等につきまして、調査研究を行ったものでございます。そのほかの地域につきましても順次行う計画ではございますが、予算の制約等もございまして、五十三年度におきましてはむしろ各省庁の初動応急対策と申しますか、それの連携対策の調査ということをやらしていただきたいと思っておるわけでございます。
  76. 原茂

    ○原(茂)委員 それだけで、ほかに相当観測強化地域があるのですが、その面に関してのこの種の調査はやろうという計画がないのですか。それを聞いているのです。
  77. 城野好樹

    ○城野説明員 御説明いたします。  御存じのように地震予知連絡会の方で決めておられます特定観測地域というのが七地域、それから観測強化地域というのが二地域ございます。そのうち特に急を要すると認められる東海地域並びに南関東地域について、当面のところは震災対策の基礎的な調査なり初動的な応急対策なりというものをともかくもつくり上げて、次の段階で特定観測地域の方に手をつけていきたいというふうに考えております。
  78. 原茂

    ○原(茂)委員 いまの南関東それから東海地域、これに対する調査というものがこれに全部集約されて一応の対策案が出てきた、こういうふうに考えてよろしいのですか。
  79. 城野好樹

    ○城野説明員 御説明いたします。  震災対策は、先生よく御存じのように、非常に広範多岐な分野にわたっておると思うのでございます。恒久対策から、震災が起こりましたときの災害応急対策、それからその後の復旧対策と申しますか、そういう時系列的に見ましても非常に息の長い仕事であろうというふうに思うわけでございます。当面われわれの方の能力からいたしまして、急を要すると認められるいわば応急対策につきまして、そういう基礎的な調査を始めた段階ということでございまして、地方公共団体の方、消防庁を通じまして御連絡をとりながら、応急対策のレベルアップを図りたいという趣旨でその調査を公にしたというような次第でございます。今後はやや恒久的な対策を含め、また復旧対策等につきましても研究を進めてまいりたいと考えておる次第でございます。
  80. 原茂

    ○原(茂)委員 これは一々また細かくは国土庁中心のときにお伺いいたします。  それで、先日の宮城県沖地震に関連してお伺いをしたいのですが、ことしになって、二月、今回の六月の二回、震度五と発表された地震があったわけです。この地方は二月にもあったわけです。六月もあった。いずれも震度五。ちょうど前にあった前歴の明治三十一年にも期せずして二回あった。そのときは二月と八月にあったのですね。今回は二月と六月なんです。明治三十一年には二月と八月にあったわけです。この二月の後、やはり明治三十一年の二月と八月の二回あったというデータをある程度重視していれば、今回六月の宮城県沖地震に対するいわゆる警戒態勢なども少し違っていたのではないか。本年二月にあったときに、明治三十一年の二月と八月を考えたときに事によるとという観点からの調査なりあるいは研究がもう少し進んでいれば、本年六月の宮城県沖地震に関する対策なり対応の仕方が多少は違っていたのではないか、これは素人考えですが、そういう感じがしてならない。この点はどうでしょう、末広先生ですかあるいは萩原先生かしりませんが、こういう点がちゃんと加味されて、本年二月に震度五の地震が起きたとき、明治三十一年の二回にわたった地震のインターバル等も考えながらやはりきちっと考えていたということになるのか、昭和四十七年か四十八年に論文の形ですでにこの宮城県沖地震に対する予知が発表されていたことを記憶していますが、四十八年か四十七年、論文の形で発表されていたということも相当程度参考にしたのか、地震があってから、六月が終わってからそのことを参考にしたのか。二月に明治三十一年を想起して、もし二月、八月に起きていたあの地震をきちっとデータとして取り上げて検討し、かつ四十八年だと思いましたが、論文の形ですでに宮城県沖地震の予知が発表されていたのを同時にまた事前の予知研究として取り上げていたのかどうかという点をまず先に、どちらの先生でもいいですがお伺いしたい。
  81. 萩原尊礼

    萩原参考人 宮城県沖はしばしば地震が起こるところでございますが、大体マグニチュード七程度の地震でございまして、三陸沖のようにマグニチュード八という巨大地震は余り起こった例はないのでございます。それで、従来しばしばそういう地震の被害の記録があるのは江戸開府以来でございますが、それを見ますと、大体マグニチュード七程度と推定される地震が今日まで先日の地震を含めまして二十回ほど起こっておりまして、軽微な被害を仙台市等に与えております。これを見ましても大体震度五程度でありまして、それほど大きな被害はない、まああったとしても震度五程度であろうというふうにたかをくくっておったのでございます。  ただ、実際に起こってみますと、昔の震度五と今日の震度五とは大変違うのでございまして、これはうかつといえば全くうかつなのでございますが、高度成長前と今日とは全く違って、実に思いがけない被害が起こったのでございます。  それで、実際記録に残っております地震を見ますと、青葉城の石がきが崩れたという記録がしばしば出てくるのでございます。しかし、石がきというのは大体震度五で崩れるのでございますが、それでもやはり死者が出るというようなことはなかったのでございますが、今回の地震ではお城の石がきは全然崩れておりません。あの石がきを見ましても、一部盤ぶくれのような現象が起こって非常に危ない状態のところもあったわけでございますが、それすら崩れておりません。そういうわけで、予想外に被害が大きかった。これは旧市内の外側に新しく開けたところに特に被害が大きかった、そういうような状態でございまして、これは地震の予知以前の問題になるわけでございます。  そういうわけで、私どもは震度五だからいいだろう。それで特に海の中でございますので、非常に予知という点からはむずかしいので、さしあたって東北地方では三陸の沖合いのマグニチュード八級の巨大地震、それと、陸の中で起こりますマグニチュード七級のいわゆる直下型の地震、こういうものの前兆をつかむ、まずそれから始めるということで行っておったわけでございます。そういうわけで、今回の地震を前もって前兆をつかむというには至らなかったのでございます。  二月二十日にも、今回起こりましたところより六十キロばかり北の方でマグニチュード七に近いような地震が起こったのでございまして、大体この地域では一つ起こると続けて起こる、しかもその起こるのが北の方から南の方に移る、そういう習性がございます。先ほどお話がありましたように、明治のときは二月に起こって八月に起こったというような例、それも承知しておったわけでございますが、先ほど申し上げましたように、起こったとしても仙台付近では震度五であって、それほどの被害はないであろうということでたかをくくっておったというのが実情でございます。
  82. 原茂

    ○原(茂)委員 ついでに先生にお伺いしますが、そうすると、この間東大の地震研が金華山沖で三十年以内に相当程度の地震が起きるというようなことを言っていますが、これもどっちにしても、マグニチュード七ぐらい、しかも海底で、というふうに見ていい、いままでの経験からそう考えられますか。
  83. 萩原尊礼

    萩原参考人 先日地震研究所の談話会で発表になりました一連の宮城県沖及び福島県沖の地震についてのこと、このほかにいろいろな方の論文がこれまでに出されておりまして、いろいろな方の意見がございます。そういうものをみんな参考にいたしておるわけでございます。  ただ、宮城県沖といいましても、沖の方に起きます場合はマグニチュード七クラスといいましてもかなり八に近いような地震の起こる可能性はございます。ただし陸に及ぼす影響は少ないのでございます。ただ、沖の方で起きますと津波はこの間よりもずっと大きいのが起こるおそれがあるわけでございます。
  84. 原茂

    ○原(茂)委員 もう一つお伺いしますが、宮城県沖地震がこの間起きまして、これで相当大きなエネルギーはとにかく出たわけですが、すると今後大きな危険を持つところというのは、エネルギーのたまっているところというのは、やはり順序から言うと東海沖、南関東というふうに考えてよろしいのでしょうか。相当大きなエネルギーがたまっていて、宮城県沖ではあれだけ発散した、次に危険なのはやはり東海沖だ、南関東だ、こういうふうな素人考えを持つのですが、そんな考えでよろしいのでしょうか。
  85. 萩原尊礼

    萩原参考人 マグニチュード八級のいわゆる巨大地震、非常に大きな地震でございますね、これは現在そういうものを起こすエネルギーがたまっているところとしては、まず東海沖、それから南関東沖、さしあたってその二つだけ、あとは一応免疫になったらしいと考えております。
  86. 原茂

    ○原(茂)委員 これは先ほど末広先生の答弁にもあったのですが、それに関連して考えるのですが、先ほど萩原先生も、明治三十一年二月、八月に二回あったというようなこともあったけれども、まあまあどうせ大したことはないというふうな考えもあってというような説明がございました。私は、やはり予知の情報を出すという大変大きな責任をこれから負うわけですから、その意味から言うと、やはり人間がプログラムを考えてある程度電算機に突っ込んで、そうして過去のデータその他を全部電算機に突っ込んでおいて、電算機にまずまず従来の経験、それに対する分析をした科学的な情報、そういうものを突っ込んだ上で電算機からある種の警報を出してもらう。  人間の勘というのは、御存じでしょうが、奈良時代なんかの記録を見ても、私なんか素人でわかりませんが、余り地震の記述がないのです。これは、ほとんど家がない、集落がない、野っ原で、地震があったって大した感じはしません。そんなこと経験がないから言っているのかもしれませんが、とにかくだんだん集落がはっきりしてきて人も集まるというようなところで地震が起きる、被害が起きたという、後世になってからだんだんに記述、記録というものがはっきりと残っている。奈良時代に余りないというのも、やはりその当時人間の感じた災害の度合い、相当大きな地震があっても災害そのものが人間を相当恐怖させたり、圧迫したりという状況を感じさせなかったという環境というものが、奈良時代の地震の記述が少ない原因だろう。  だんだんいまになればなるほどに、大変小さな、震度五程度であっても大きな恐怖を感ずるし、また事実、へいが倒れて子供が死んでみたり、あるいは土どめが陥没したり、大きなビルディングが横になって落っこってきそうな、倒れてきそうな大きな恐怖感を与えたり、歩行者に上からビルのガラスが落っこってきてけがをしたりというようなことが、震度五であっても起きるという状況を最近になればなるほどに、われわれの人口の密集した、人のよけい集まるという集落がたくさんできてくればくるほどに、この地震というものに対する記述なり記録も顕著に残ってきているのじゃないか、これは素人考えですが、そう考えるのです。  さて、東京というこの密集地にいながら私がどう感ずるかというと、地震が来るぞ来るぞとは聞いているのですが、まだ来ない。何となく来そうもないような、来るかもしれないがそう大したことのないようなという感じを残念ながら持たざるを得ない。何か楽観的といいますか、そんな感じについなりやすい。なっている。恐らく先生方は違うのだろうと思うのですが、専門家で、一生懸命地震の予知をおやりになっているのですから違うと思うのですが、われわれが、地震が来ると大変だから手当てをするのだ、対策を立てるのだと言いながらも、しかしながらまだ何かこう楽観的な、実際にぶつかってみない限りそう大した危機感を持たないというようなことになれてしまっていく。  それで、つい、萩原先生ではありませんが、まあまあ震度五程度のものだろうというので、いままでの経験から言っても大したことはないという安心感といいますか、宮城県沖地震に対しても予知者としてお感じになったことを正直におっしゃったわけですが、やはりその種の人間の感覚、楽観的な見方を避けようとしても避けることはできないわけですから、ある程度ぴしっと科学的に電算機を使って、コンピューターによる予知というものか警報――皆さんに対する警報で、国民に対する警報ではありませんが、ぴしっと出せるようにコンピューターのフルな使い方をこの際取り入れておかないと、大変しまったというようなことがあるのじゃないか。あれが抜けていて、あれがわかっていればというようなことで後で騒がれるのじゃないだろうかという感じがしますが、もうすでにその手法は取り入れてやっているんだということになるのか、新たにそういうことをお考えになるか、私は素人なりに、従来考えたことをただずばずばと言っているだけですが、コンピューターの操作によるより正確な、いわゆる皆さん方学者に対する予知を的確に材料として織り込んでいく必要があるのじゃないか、こう考えますが、いかがでしょうか。
  87. 萩原尊礼

    萩原参考人 すでに過去に起こった地震の歴史あるいは地震観測が気象庁で行われるようになってからのデータ、こういうものはすべてコンピューターで、たとえば宮城県沖の地域でどういう地震の歴史があるかというようなことはすぐ出てまいるような仕組みになっております。これは気象庁の地震予知情報室に問い合わせれば、すぐ出てまいります。  ただ、それによってどういう判断をするかということにつきましては、地震の予知の客観的な法則がまだできておらない。コンピューターですぐ判断してもらうということができるというときには、これはもう地震予知連絡会も判定会も要らなくなったときでありまして、地震予報官が電算機を使って機械的に予報を出せるというときでございます。そういうときがあと五年後に来るか、十年後に来るかわかりませんが、それに向かっていまわれわれはそういう時代が来るように努力している段階でございまして、そういう状態でございますので、判断までをコンピューターに頼るということは、現在ではできないのでございます。
  88. 原茂

    ○原(茂)委員 わかりました。  そこでちょっとお伺いするのですが、マグニチュード、それから震度ということですね。マグニチュードあるいは震度にしても、百科事典を引いてみると書いてあるのです。マグニチュードの方はまあまあある程度そんなものかなあという感じがするのですが、震度に至っては、ちょっと人間の感覚が中心のような気がしてならないので、ちょっとお伺いしたいのですが、しかしマグニチュードの場合にも、震源から百キロの地点にねじり地震計、地面の水平度をつり糸のねじりに変えて記録する地震計、それを設置したと考えて、いわゆる指定地震計の最大振幅をミクロンであらわした数字の常用対数をマグニチュードとするというふうに事典にあるのです。  そこで、この点もちょっと聞きたいのですが、百キロの地点に設置したと考えることで、いまのようなマグニチュードを正確に表現したり、あるいはつかむことができるのでしょうか。的確にいつでも震源のあるところがわかっていて、百キロ離れたところ、あるいは百キロを中心にぴしっとはかれるようになっていないのに、一体百キロも離れた地点でその地震計が置かれていたと考えて、そうしていまのねじり糸というのですか知りませんが、つり糸のねじりに変えて記録する地震計がそこにあったとして考えて、マグニチュード幾つというのをはかるのだという。どうも素人から見るとずいぶんややこしいし、それから、百キロの地点にあると考えて、なんというようなことでいいのかなと思うのですが、ひとつこれは教えていただきたい。  それから震度も、ゼロから七まで八等級だか八階級だか知りませんが、あります。それも何かこう人間の感覚が中心のようなんですね、震度というのは。たとえば、この間の宮城県沖地震の場合でも、山に寄った方の側と海岸に沿った側では、およそ現地の人に聞いたって揺れ方が違っていますね。極端に違っている経験を聞きました。ところが、震度五だと言う。しかも、その震度五ということが発表されますと、補助金だのあるいは災害復旧のいろんな手当てだの、あるいはその地震保険の問題だろうが何だろうが、みんな震度五というものを中心に決まってくる。ところが、地域によっては、発表が震度五だって、震度六もあると感じている。その震度六だともし発表してもらったら、個人も団体もあるいは地方自治体も、手当てをするためにもらうべき金、補助金その他がずいぶん違ってくる。五と六じゃえらい違いがある。ところが、震度五と発表されましたおかげで、実際にはこれはどう考えても震度六以上だ、おれのところみんな破壊しちゃって、倒れちゃった、冗談じゃない、こう言っているのですが、言っていても、皆さんの発表が震度五だというと、震度五で全部ぎちぎちと規則で決められていたとおりに処置されます。大変な不公平、アンバランスが起きているという点からも、人間の感覚でこの震度五だ何だというのを決めるということは問題がある。その人間がたまたまどこにいるかによって、あの広範に揺れている地震のどこにいるかによって、東西南北のどこにいるかによって、恐らく同じ人間でも、震度六と感じたり、震度五と感じたりすることがあるだろうと思うのですね。それが、どこで一体震度五と感じたのか知りませんが、宮城県沖地震の場合にも、その震度五と発表されたおかげで、大変な迷惑といいますか、金銭的にもあるいはその他自治体が国との折衝の問題でも大変な違いが生じてきているということを考えますと、震度五を人間の感覚で決めるということのよしあしをひとつ私は疑問に思っていますから、これを先生からお伺いしたいのです。  ああいう広範な地域における地震のときには、やはり、四点か二点か知りませんがもうちょっと、一地震がどんなにあろうと、関東大震災があっても震度六だ、一概に全部言わないで、あるいは二点か四点か知りませんが、そこらでやはり広範な地域の場合には、変えて震度というものは発表さるべきではないかと思いますし、不可能であっても何とか困難を押しのけて、そういう配慮を実際の行政面からする必要が私はあるのじゃないかと思うのですが、この点はいかがかという二点、ひとつお伺いしたい。
  89. 萩原尊礼

    萩原参考人 初めに、マグニチュードのことからお答えいたします。  あれは百キロのところで云々といろいろな非常にややこしい定義がございますが、これはそのマグニチュードというものが提案されたときのことでございまして、実際には現在はある距離のところでの地震計がどのくらいの最大振幅を与えたかということから、グラフあるいは公式ですぐマグニチュードが出るような仕組みになっております。ですから、実際に百キロでねじり地震計が云々ということを一々やっているわけではないのでございます。  それで、日本では気象庁がいろいろ観測、百カ所ばかり観測所がございますが、できるだけたくさんの観測所で最大振幅をはかりまして、それからマグニチュードを出しましてそれの平均をとるということをやっておるわけです。  あと震度のことでございますが、これはいろいろ問題がございます。全く感じによって決めるものでございますから、おれは三だと言うのに対しておれは四と感じたと言ってがんばれば、もう水かけ論になる点もございます。ただしかし、気象庁の方とは経験を積みますれば大体同じ震度が出てくるわけでございますが、ただ問題は、震度五くらいまでは大体体の感覚でございますが、震度六になりますとつぶれ家が起こる、けれども三〇%以内である。震度七になりますと木造家屋のつぶれ家は三〇%以上に達する。こうなりますとその場所だけのあれではありませんで、ある広がりを持ったところでどのくらいの家が何%つぶれたかというようになってきて、少しその点においては矛盾があるわけでございます。そういう点で、震度という問題もいろいろ長年にわたって世界各国で議論されておるわけでございますが、どうもすっきりしたことにならないのでございます。  なお、気象庁、震度六のようなところがあるのに震度五という発表になるというお話がございましたが、これは詳しいことは末広さんからお聞き願ったらいいかと思いますが、現在気象庁で発表いたします震度というのは、気象台とかあるいは測候所で感じた震度でございます。ですから、少し離れた場所で震度六のところが生じるという場合もあり得るわけでございます。  こういうふうに、震度というのはどうもかなりあいまいな点が多いので、実際はこれからはやはり加速度なりで表示するということを並行していくべきではないかと思います。それには加速度強震計というものを全国にできるだけたくさんの数を置いておくということ、これは耐震工学の上からも大切なことでございまして、現在ではあと一千ないし二千の強震計を全国にばらまくという計画が進められておりますが、これがぜひ実現するようにしたいと私は思っている次第でございます。
  90. 原茂

    ○原(茂)委員 これは震度に対してはもうちょっと何か科学的に考えていかないと、実は先ほどもちょっと申し上げたように相当大きな、いわゆる被害を受けた人々の金銭的な差が生じてくる。いろんな面で制度的に差が出てくるのですよ。地震があったなというのでNHKを入れますと、一分かそこいらで、何をやっていても、ただいまどこどこで震度幾らの地震――なるほどいま説明を聞いてわかりました。測候所その他だけで感じたのを、あんながっちりしたところ、私のうちよりよっぽど土台もがっちりしたところで感じている。そうでないところで感じたのと違いがあるのに、これはよほど改めていただかないと、的確な震度のはかり方をもうちょっと科学的に推進してもらわないと、非常に災害を受けた人々のいわゆる後の手当ての差が起きる、金銭的に特に差が起きるという点では考える必要があると私は思いますが、これは気象庁の末広先生どうでしょうか。いまのままではいけないと思いますよ。
  91. 末広重二

    ○末広説明員 御説明申し上げます。  御指摘の点、二つあると思いますが、一つは震度のはかり方そのものをもう少しすっきりさせてはどうか、これは私ども痛感しているところでございまして、この震度あるいはその地震動によって被害の起こる程度あるいは人間がびっくりする程度といいますものは、必ずしも加速度という単純な量だけではあらわせない点もございまして、萩原先生もおっしゃいましたように加速度計を使いましても――揺れている時間の長さ等も勘案して将来は何とかもう少し科学的と申しますか、量的にはっきりした観測に移したいと、ただいま一生懸命検討しているところでございます。  しかし、これがよしんばうまくいきましても、あくまで震度はその機械の置かれた場所の震度でございまして、御指摘のように場所が移りますと揺れ方が違ってまいります。これは御指摘のように震度ということが後の救護活動あるいは対策等の目安にされるようになりましたので、行政的にも非常に大事な意味を持つということはこれもまた痛感しております。しかし、自然現象として、どうしても震度というのは場所によるのであるということでございますので、この点をよく御説明申し上げて、気象庁の発表する震度はその場所の平均的あるいはやや良好な地盤での震度なのであって、埋立地あるいは軟弱地盤等では震度は一階級、場所によっては二階級上回ることもあるのですということをよく御説明して、それを踏まえていただいた上で対策もとっていただくということで、御説明に今後もっと努力したい、こう思っているわけでございます。
  92. 原茂

    ○原(茂)委員 いま大事なことをおっしゃっていただいたのですが、この震度の場合、単なる口頭でいままで説明していますというだけではなくて、やはりそういうことを文書化して、場所によっては一階級上、二階級上のところもあり得るのだから、気象庁発表の震度というのは気象庁というあの地盤、こういう場所における発表なんであって、測定であって、したがって場所によっては一階級、二階級上のこともあり得るのだ、それはやはり現地における話し合いの結果決めることが妥当だとかいうような文書による指令が責任を持って気象庁から各省庁あるいは自治体にも出されるようになるとずいぶん救われるものがあると私は思うのですが、その点いかがでしょう、文書でいまのようなことをお出しいただけませんか。
  93. 末広重二

    ○末広説明員 御指摘の点につきましては、まずマグニチュードと震度を混同してお考えの方が非常に多い。これも私どもの説明不足でありますので、この点を一層御理解いただけるようにすることと、いまの震度は平均的なもの、あるいはむしろやや良好な地盤での値であるということを、それぞれの地域防災の場を通じてよく御説明申し上げるようにという指令は、宮城県沖地震の直後に気象庁の管下全部へ流したわけでございます。恐らくそれに沿って県あるいは地方公共機関等には御説明していると思いますが、なお書いたもので何かはっきりさせるようにという御趣旨は大変大事だと思いますので、これを御趣旨が生きますよう検討したいと思います。
  94. 原茂

    ○原(茂)委員 ありがとうございました。  終わります。     ―――――――――――――
  95. 楯兼次郎

    楯委員長 この際、麻生委員から発言を求められておりますので、これを許します。麻生良方君。
  96. 麻生良方

    ○麻生委員 私は、いつか防衛庁長官に対して、アメリカ司法当局及び証券取引委員会がダグラス社の海外に対する不正支払いの事実について調査したという情報について、その真偽を外務省を通じて米国に確かめるべきだということを申し上げた。その回答が寄せられておるかどうか。寄せられておるとすれば、装備局長からそれを具体的にお読み上げを願いたい。
  97. 間淵直三

    間淵説明員 お答えいたします。  先生のその件につきましての御質問がありましたものでございますから、私ども早速外務省を通じましてアメリカの司法省に照会をした結果、次のような報告が参っておる次第でございます。  「一、司法省は、ダグラス社に係る不正支払い問題については、何らかの公式、非公式の発表をしたことは一切ない。また、ダグラス社が、本年三月、同社にかかわる不正支払い問題につき連邦大陪審院が捜査中であることを発表したことは報道されているが、司法省としてこれを肯定したことも否定したこともない。」  これは、先生御承知のように、連邦刑事手続法第六条のC項にのっとりまして陪審員以下タイピストに至るまで関係者は一切守秘義務が課せられておるわけでございますが、調べられておる方の側にはその守秘義務がないということで、ダグラス社の方からその件を発表しておりますし、また、一九七五年以来のダグラス社の年次報告書というものにもその件について公表しておるわけでございまして、一般にはダグラス社を通じて知れ渡っているところでございますが、司法省といたしましては、先ほど申しました守秘義務というものによりまして、それについては一切ノーコメントだという返事をいただいておる次第でございます。  また、「米国証券取引委員会は、本件に関し調査しているが、いまだ調査を完了していないので、公表し得る資料はない。」こういう返事をいただいております。
  98. 麻生良方

    ○麻生委員 ちょっとこの際一言申し上げておきます。  これは防衛庁が、外務省を通じてですが、これだけの回答を正式に米国務省から受け取ったということは、私は大変結構なことだと評価しております。  ただ、この中で、私はこの際委員会の名において指摘しておきたいが、司法当局の回答については全く不可解でありまして、事実三月七日、米司法省は公式に、ダグラス社が不正支払いの事実がある旨を記者会見して発表しておる。しかも、その結果のコメントとして、ダグラス社がかかるコメントを発表しておるという経過になっておる、これは私の調査で。これはいずれもアメリカのことでありまして、日本としてはかかわりのないことであります。  さらに、いま最後に御報告された証券取引委員会は本件に対して調査の続行中だということは、私はやはり相当重視しなければならぬと思う。装備局長が過日来御返答になっておった、このF15購入について取り交わしていた、一切の不正支払いの事実があれば購入を取り消すということは、この際非常に重要な内容を帯びてくるものであると判断します。したがって、これ以上は米国の調査の結果に待たざるを得ないわけでありますが、もしその調査の結果何らかの形で日本がその対象国であるということになった場合、しかも特にF15についてその事実がある旨が米議会あるいは米司法省あるいは証券取引委員会等で公にされた場合、これは防衛庁としては所期の契約どおりに破棄をする、これを明言していただきたい。
  99. 間淵直三

    間淵説明員 本委員会でもたびたびお答え申し上げているところでございますが、そのような事態になりました場合には、その実態を踏まえまして、誓約書も取ってあることでございますし、そういうものもまた踏まえまして慎重に厳重に対処したい、こう思っておる次第でございます。
  100. 麻生良方

    ○麻生委員 慎重に厳重にというのはちょっと抽象的だ。誓約書では破棄をすると書いてある。ひとつはっきりおっしゃい。あなたはどうせそのときおりはせぬよ。はっきりおっしゃい。
  101. 間淵直三

    間淵説明員 誓約書に書いてございますように、契約の破棄というものをも含めて対処していきたい、こう思っております。
  102. 麻生良方

    ○麻生委員 これで私の発言は終わります。
  103. 楯兼次郎

    楯委員長 この際、午後一時三十分まで休憩いたします。     午後零時五十分休憩      ――――◇―――――     午後一時三十七分開議
  104. 楯兼次郎

    楯委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  質疑を続行いたします。馬場猪太郎君。
  105. 馬場猪太郎

    ○馬場(猪)委員 最初に、沖繩の交通問題についてお尋ねをいたしたいと思います。  七月の三十日に交通方式についての切りかえをなさった。四日間ばかりの統計しかいただいておりませんけれども、通常の事故の発生状況から比べて、当初予想はされておったことだと思いますが、特にバスを中心としての事故が非常に多かったわけでございますが、この報告以外にもその後どういうふうな経過をたどっておるか、お教えをいただきたいと思います。
  106. 稻村佐近四郎

    稻村国務大臣 沖繩の交通方式が、三十日で一応車は左、人は右ということで変更されました。そのための戸惑いということでしょうが、大変交通渋滞があったことは事実であります。その中のバスの事故の問題でありますが、こういう表現がいいのかどうかわかりませんが、軽い接触事故がきわめて多かった、特に当日は、予想されておった死亡もゼロである、また、件数におきましても、交通渋滞は、戸惑いということもございまして大変な交通渋滞ではございましたけれども、交通事故の内容においては昨年から見ればいい成績であった、こういうふうに私は受けとめておるわけであります。
  107. 馬場猪太郎

    ○馬場(猪)委員 最初の四日間と比べてそれ以後は四日間と同じくらいのぺースで事故は起こっておりますか。
  108. 平井清

    ○平井説明員 手元にはいま八月四日までの資料しか参っておりませんが、その後の人身事故の推移はきわめて落ちついた推移を示しておりまして、去年の同日ごろの水準を下回っております。
  109. 馬場猪太郎

    ○馬場(猪)委員 特に初日のバスの四十六とか、あるいは二日に至ってもまだ十二というふうに、バスの事故が比較的多く続いているのには、何か特別な原因があったのでしょうか。
  110. 稻村佐近四郎

    稻村国務大臣 バスの軽少な、事故というところまでもいかない事故も含めてのことでありますが、やはり交通変更の原因が大きくあるように私は思います。そういう意味から、やはり普通の乗用車と違って大型であるという関係から戸惑いというものが大きく災いをしておる。こういうような関係から、もちろんバス協会にも沖繩総合事務局あるいは県警本部長からも強く交通事故のないようにという指示をいたしておりますので、日がたつにつれてバス事故も減少していく、私はこういうふうに考えておるわけであります。
  111. 馬場猪太郎

    ○馬場(猪)委員 右、左を変更するわけですから、普通乗用車なり貨物なりでもある程度なれることに時間がかかると思うのですが、大型であるだけに、それだけ車両管理者が事前からなれさせなければ、なかなかそう簡単に習熟しないと思うのです。車両管理者において事前になれさせるための措置あるいは練習といいますか、そういったことが欠けておったんじゃないかと思いますが、そういう点ではいかがでしょうか。万全を期してやっておったでしょうか。
  112. 平井清

    ○平井説明員 その点につきましては、運輸省の方で各バス会社に配置されております運行管理者、これが各社における安全管理をする責にあるわけでございますが、この運行管理者につきまして、六月に自動車事故対策センターを通じまして各地区で講習会を催しまして、交通方法変更に伴う安全対策につきまして十分徹底を図ったところでございます。またその後、直前におきましてバスの経営者と組合側との話し合いによりまして、運転者に対する事前の安全教育を時間内において二時間できるという措置をとりまして、事前の訓練を実施したというふうに聞いております。
  113. 馬場猪太郎

    ○馬場(猪)委員 この種のことはただ講習会をやったり話をしたり注意をしたりするだけで済む問題じゃないと思うのです。やはりなれるということが大事だと思いますが、そういう措置は十分とっておりましたか。どうしても前日まで勤務しておって、いきなり翌日から変わったというような形で事故が多かったのではないかというふうに推測できるのですが、そういう事実はないですか。
  114. 稻村佐近四郎

    稻村国務大臣 沖繩県の交通変更というのはやはり復帰事業の一つの大きな事業でございまして、当然いつかの日にはということでございましたが、昨年の九月に政令によって七月三十日、こういうふうに決められたわけでございますから、その当時から七月三十日には左に変更するという心の準備もございましたし、また車体の問題とかハンドル等の切りかえ等々準備がなされ、いま申し上げましたように左側通行への教育、指導もしてまいっておったわけでございます。しかしながら、路上における訓練はされていなかった等々の関係から戸惑いがあって、やはり多少の事故があるものである、こういうふうに私は考えております。
  115. 馬場猪太郎

    ○馬場(猪)委員 やはり実務ですね、路上訓練等を事前にやれるような十分な安全措置を考えておかなかったことが非常にバス事故を多くした原因だと思いますので、これは直接は運輸省の関係でしょうが、皆さんの方でも今後ともひとつ注意を払っていただきたいと思います。  それから、右、左の変更によって通常の商業が非常に不利になる。たとえばガソリンスタンドだとかあるいは自動車に要するような物品販売の方々が全く道の反対側になったということによって営業が成り立たなくなったというようなことも聞いておりますが、それに対する対策というものは十分どういうふうにおとりになっているのでしょうか。
  116. 稻村佐近四郎

    稻村国務大臣 長い間の習慣を一遍に変えたわけですから、いままで右を通っておった車が左ということでありますし、また左を通行しておった人が右ということでございますから、この流れによって営業上どの程度の損失が出るかという問題は当然これから私は起きてくる問題だ、こういうふうに考えております。そういう意味で著しい営業上の損失を受ける。たとえばここにおっても営業ができないとか、あるいはどうもここは移転をしたいとか、あるいは何か商売がえをしたいとかいう人に対しては、新しい融資の制度を設けてございまして、積極的に活用していただく、こういうことにいたしております。
  117. 馬場猪太郎

    ○馬場(猪)委員 変更によって生じた被害が中小零細企業の皆さんに影響を与えないように、今後ともひとつ十分な配慮をいただきたいと思います。  もう一つ、ただ単に交通方法を切りかえるということだけではなしに、やはりこの機会沖繩県における交通事情の立ちおくれ、あるいはまた地域の要望等もあってこれをきっかけに沖繩県に対する何らかの交通対策、たとえば地域からモノレールをつくれとか国鉄をつくれとかいろいろ要望も出ておりますが、総理府として何らかの積極的な考え方をお持ちかどうか、この際お伺いしたいと思います。
  118. 稻村佐近四郎

    稻村国務大臣 交通変更に伴う特別事業ということで三つの条件が要求されておりました。その中の道路問題というのは可能な部分から積極的にやっていく。しかしながら、そのほかにおきましても立体橋、沖繩県から要望されない立体橋にいたしましても、混雑をするというその場所につきましては当然三カ所の立体橋をつくる。それからまた高速道路の南伸、約一千億くらいかかるわけでありますが、これももちろん今年度は事業に伴う調査費をつけてございまして、来年度からこれの着工に入っていく、こういうことに考えておりまして、交通変更に伴うというあの渋滞を考えたときには、沖繩の交通網の体系というか、交通、道路の体系というものを速やかに可能な部分から積極的に変えていかなければならない。ということよりかむしろ積極的に道路網の整備をしていかなければならぬ、こういう感じをはだで感じておりまして、できるだけその部分からやっていきたい、こういうふうに考えております。  モノレールの問題でございますが、すでに調査をいたしておりまして、もし沖繩県を含めて那覇市等々がモノレールをつくりたい、何とかしてつくらなければならぬというふうな地域住民の協力と申しますか、県当局、市当局の協力があれば、私はこれはつくるべきだ、こういう考え方は過去からも持っておったのでございますが、きょうは質問に率直に答えるならば地元の協力、あるいは県、市当局がこれを必要とするならば、全力を挙げて開発長官という立場でモノレールをつくるということに踏み切ってみたいと思います。しかしながら、今後の経営主体と申しますか、あるいはまた採算等々の問題を考えた場合には、よく慎重に検討してみる必要もあるのではないか、こういうふうに考えております。
  119. 馬場猪太郎

    ○馬場(猪)委員 長い占領期間もあり、そしてその以後の制約もあって、県独自でなかなかできがたいこともあると思いますし、国自体が積極的に援助をして、ただでも経済的にも立ちおくれておりますし、あるいはまた失業率も非常に高いと聞いておりますが、今後の沖繩県政に対する積極的な国の援助というものをひとつ期待いたしまして、要望いたしておきたいと思います。  次は、先々月の暮れあるいは七月の初めにわたって新聞紙上にもたびたび載りましたけれども、国税局の職員の退職後の、天下りという言葉が適当なのかどうかはわかりませんけれども、その問題について参議院でもたびたび議論が闘わされました。そして、疑惑を招いたことについて調査をするということで答弁をなさったのがちょうど一月前だと思いますので、一応今日まで調査をなさった中で、いろいろ疑惑になった点あるいは問題になる点等々につきまして、御報告いただける範囲でまずお聞かせをいただきたいと思います。
  120. 米山武政

    ○米山説明員 七月五日の参議院決算委員会で国税庁長官がいろいろ問題になっておる点について至急厳重な調査をする、こういうふうに質問の先生にお答えになっております。私どももその趣旨に沿いまして鋭意調査しております。ただ、御承知のように非常に個別な案件で人数も多いものでございますので、具体的な案件をつかむのは非常に大変でございます。それで八月一日には臨時の国税局長会議を、もちろんこの問題だけを討議したわけではございませんが、八月一日に国税局長会議を開きまして、それまでにいろいろ各局の事情を聞きました。各局の局長答弁ですと、各局非常にばらばら、まちまちでございまして、まだ十分調査できておりません。したがいまして、そうした状況を踏まえまして八月三日には再度国税庁長官の通達を出しました、実情を急いで調査しろ、そしてその調査の結果を持ち寄って改善すべき点は改善するようにやろうじゃないか、こういうふうな通達を出しておる状況でございます。したがいまして、まだ御報告申し上げるような調査結果は出ておりません。
  121. 馬場猪太郎

    ○馬場(猪)委員 いまのお話では、各局によって事情が全部違うのだ、したがって総括的にはなかなか掌握しにくいけれども、大阪においては非常に顕著に四十二条違反の疑いであるとか百三条違反の疑いであるとか、そしてまた不起訴にはなりましたけれども告訴事件、その以後、まだ発表にはなっておりませんけれども六件あたり告訴も出ております。少なくともそういう実態だけは御承知になったでしょうか。特に次長は、次長におなりになるまでの間ずっと大阪の国税局長として勤めていらっしゃったわけですから、その事情についてはある程度のことは御存じのはずなんですが、いかがでございましょうか。
  122. 米山武政

    ○米山説明員 国税職員の退職の件数と申しますと、大体年間千二、三百人の多きに及んでおります。そのうちの相当部分が税理士を開業する、こんな状況でございます。したがいまして、一、二いろいろ問題になっている点についてはそれぞれの局で調査しておりますが、しかし私どもとしましてはやはり一局一個人の問題でなくて、つまり全局の問題としてとらえるつもりでおりますので、各局の調査を待ちまして対策を練るということでやっております。個々のケース、個別のものは一、二もちろん私どもは承知しておりますが、しかし、それとてもまだ納税者の言い分、当事者の言い分いろいろ違っておりまして、なかなかはっきりした事実がつかめないというような現状でございます。
  123. 馬場猪太郎

    ○馬場(猪)委員 総括的になかなかお話しできないようですから、それではこちらから細かく聞きます。  ことしで大阪国税局における指定職以上の退職なさった方は何名ありましたか。
  124. 米山武政

    ○米山説明員 個々の局の数字はいま持ってまいりませんでしたが、全国の千二百人のうちの四分の一が指定官職、四分の三が一般の職員と申しますか指定官職以外の職員でございます。
  125. 馬場猪太郎

    ○馬場(猪)委員 全国のことは別として、この間、二十九日にわざわざ大阪へ次長いらっしゃったわけでしょう。そうすると、ことしは問題があったのかないのか、どれくらいの数の方々が退職なさって税理士におなりになったのか。お勤めになったのか、それぐらいのことは調べに行かれたのじゃないのですか。
  126. 米山武政

    ○米山説明員 詳細な数字はいま手元に持っておりませんが、大阪国税局の一年間の職員の退職は約三百人ぐらいでございます。いまの指定官職とその他の者の比率は、全国と大体同じだと思っております。
  127. 馬場猪太郎

    ○馬場(猪)委員 私の調べたのでは、指定職以上の方が大体百八十名ですね。そして、その指定職の方々について、従来やっていらっしゃるように二口ずつ局の指示に基づいて顧問税理士の予約を全部なさいましたか。
  128. 米山武政

    ○米山説明員 平均二件でございます。一件の者もありますし三件の者もありますが、平均二件、先生の御指摘のとおりでございます。
  129. 馬場猪太郎

    ○馬場(猪)委員 そうすると、平均二件として大体三百六十口、これは局長の指示に基づいて人事担当がこれをおとりになったわけですね。
  130. 米山武政

    ○米山説明員 ただいまの先生の三百六十件、そんなに多くないような気がしますが、その数字は後ほどもう一度確かめてみます。大体毎年同じ方針でやっております。
  131. 馬場猪太郎

    ○馬場(猪)委員 せんだっての長官答弁では、二つのルートがあるとおっしゃるのです。本当はもっとあると思いますが、二つのルートがあるとおっしゃる。一つは企業の側から照会があってひとつ欲しいと申し出があった、もう一つはお願いに行くケース、こういうふうにおっしゃっておる。そうすると、企業の側から何件ぐらい申し出があって、あとの何件ぐらいは局の方からお願いに行かれたのか。
  132. 米山武政

    ○米山説明員 ただいまのあっせんした件数は百二十二件でございました。そのうち何件が企業から自主的に申し出、こちらが何件頼んだというような統計は持っておりませんが、中にはこちらが思っておるときにちょうど向こうが言ってきたというようなケースもありまして、なかなか分類はできないような状況でございます。
  133. 馬場猪太郎

    ○馬場(猪)委員 おかしいですね。二つの方法があると言われておるのですよ。長官答弁になっておるのですよ。二つの方法があって、姿勢としては本当は積極的には行くべきじゃない、ですから、希望があるところに紹介をしてと、こうおっしゃっているわけですから、当然、希望があるところは百二十二件のうちで何件あって、そして希望のないところについてはどういう方法でお願いするかということはやはりお考えになるのは当然なんでしょう。掌握してないということはどういうことだ。何のために二十九日に大阪にお調べに行かれたのでしょうか。
  134. 米山武政

    ○米山説明員 大阪の場合は大体調査部で調査部所管の法人についてやるのが普通になっております。したがいまして、原局の方ではそういう数字を持っているかもしれませんが、私不勉強で申しわけありませんが、その数字、ただいま持っておりません。
  135. 馬場猪太郎

    ○馬場(猪)委員 だから、持っておらぬからあなたはお調べに行かれたのでしょう。遊びに行かれたわけじゃないでしょう。そういう数字を明らかにして、そういう誤りがあったのかないのか、そういうことを明らかにしようと思って、二十九日わざわざおいでになったわけでしょう。そして、その半月ぐらい前までは現に大阪にお勤めになっておったわけでしょう。ただ行って報告を聞くだけでお帰りになったのですか。
  136. 米山武政

    ○米山説明員 私ごとで恐縮でございますが、私、こちらへ赴任したのは二十六日でございまして、そして二十八日にそういうことが新聞に出ておりました。私、ちょうど二十九日には事務引き継ぎで向こうへ行く予定になっておりまして、実はそれを中心に行ったついでにいろいろ各方面の意見を聞いたということで、具体的に調査重点で参ったのではございません。時間も非常に短うございましたのでそこまで勉強してこなかったような状況でございます。
  137. 馬場猪太郎

    ○馬場(猪)委員 次長という立場ではそうかもしれません。しかし、前任の国税局長という立場においては、そういうことを掌握せずに、全然数字も何もわからずにとにかくとってこい、こういうふうに言われるのですか。
  138. 米山武政

    ○米山説明員 方針としまして、できるだけ相手の申し出のものを中心にし、それからいま言ったようなものでなかなか足りない場合には余り問題のないような会社についてお願いしよう、こういう基本的な方針は示しておりますが、どこの会社に当たったとか何件くらいになっておるかということまで把握しておりません。
  139. 馬場猪太郎

    ○馬場(猪)委員 担当の局長が、退職をする方が何名であり、そしてその方の士気を沮喪させないために、退職後も不安のないように、申し出のあったところにできるだけ向けるようにする、そして足らないところについてはひとつできるだけ手を尽くしてお願いをして、いままでの三十年なり二十年なり勤めた経歴を生かしてということなんでしょう。掌握せずにそういうことを進められるでしょうか。当時のあなたの名前で四月七日付で通達を出していらっしゃいますよね。無理な顧問の予約をやらないようにという意味のものを出していらっしゃいますよね。そして同じときにあなたは何かを指示なさっていますね。四月の十日前後に、国税庁という立場で総務部長に指示なさってますね。米山局長のもとにおられた総務部長は何という方ですか。
  140. 米山武政

    ○米山説明員 西内彬と申します。
  141. 馬場猪太郎

    ○馬場(猪)委員 総務部長から調査部長にまたその指示をなさってますね。そして調査部長から上席調査官に、一人二口あっせんをひとつお願いしたいという指示をなさっておりますね。指示をなさっておる方が退職者の数もあっせんの中身も御存じないというのはどういうことなんでしょうか。
  142. 米山武政

    ○米山説明員 基本的な方針を指示いたしまして、方式は大体例年どおりになっておりますので、その都度新しい指示はしておりません。
  143. 馬場猪太郎

    ○馬場(猪)委員 例年どおりにしろというのは、ことしは百八十人おられて一人二口ということを言われたのだから三百六十口とってきなさいということなんでしょう。指示をなさっている。指示をなさったことはお認めになりましたね。例年どおりの指示をしたということですね。それは大体三十一年に通達があった当時からずっとやっているから、そのままやってきたということなんですか。
  144. 米山武政

    ○米山説明員 ことしは特別の事情もございませんし、退職者の数も例年とそう違っておりません。ですから、私どもは例年どおり誤解を招くことのないように、法律違反のないように、そういうことを頭に置きながらやってまいっております。
  145. 馬場猪太郎

    ○馬場(猪)委員 調査をなさったり会議をなさっても、そんな状態じゃ実態はつかめないんじゃないですか。数字もわからなければ例年どおりとにかくやれという指示をしただけだ、あとは各局長からの報告だけに基づいて、それで本当にお調べになれるのですか。国税庁長官からは内容についてちょっと調べなさいという指示はなかったのですか。
  146. 米山武政

    ○米山説明員 いまの先生の御指摘は、私どもがあっせんを行うのは、大体年がかわるぐらいの時期からやるわけでございますが、いまのお話の調査しろというのは、今度問題になりまして、少し徹底的に調査して対策を立てようじゃないかということで、その指示をしたのは時期的には八月になってからでございます。
  147. 馬場猪太郎

    ○馬場(猪)委員 七月の五日の参議院の以後に調査に入られたわけでしょう。それに基づいて、それが主じゃないけれども出張なさったのじゃないですか。あるいはまた、この間の会議で、そういう数字も含めて皆報告を求められたのじゃないのですか。
  148. 米山武政

    ○米山説明員 問題が特にいろいろ世間の注目を浴びるようになりましたのは、六月の末、それから七月にかけてでございます。くどいようでございますが、私参りましたのはその前といいますか、ちょうど発端になったばかりで、問題の所在その他いろいろ基本的な問題の話は聞きましたが、まだ具体的な調査はしてまいりませんでした。  それから、七月五日に参議院の決算委員会長官答弁されてから各局にはその趣旨を申し伝えております。各局がそれぞれいろいろの勉強をしておりますが、何分各局ばらばらでございますので、趣旨を徹底する意味で八月一日に改めて再度指示し、その統一的な考え、方針に基づきまして各局が現在調査している段階でございます。
  149. 馬場猪太郎

    ○馬場(猪)委員 次長、あなたはそれまでに大阪の局長をやっておられたのだから、大阪の事情を相当詳しく御存じなんでしょう。ですから、一々報告を求めるまでもなしに、前任の地のことですから、ある程度そういう数字も覚えていらっしゃるでしょう。しかし、局が指示をして、人事担当を通じてやられるコース、そのうちの申し出のあったものとこちらから積極的に行ったもの、その数もおわかりにならない。そのほか個人が自分のコネでおとりになったもの、もちろんそういうことも調査もしておられないわけですね。あるいは部下がせんべつとして顧問税理士を贈る風習は御存じなんでしょう。それは全然ないと言われるのですか。
  150. 米山武政

    ○米山説明員 退職職員に対して局なり署なりでいろいろあっせんし、また本人が自分で知人等を頼っていろいろ探し、あるいはまた知人がその退職者のためにいろいろやっている、いろいろケースが複雑でございます。それから何と申しましても、役所があっせんするというのは件数としてははっきりわかるわけでございますが、自分が探したりあるいは知人があっせんしてやるというのは、なかなかそういうのを報告を求めるというようなことまでいたしておりません。これは役所がする場合には、役所の行為としてやるわけでございますから、しっかりした数字をつかむわけでございますか、そうでないような個人の――税理士というのは一つの自由業でございますので、自由業のいろいろの行為について、従来法律違反をするな、納税者から批判を招くようなことをするなという基本的な線は十分徹底しておりますが、その他のことにつきましては余り関与していない、現在まではそういう形でございますので、個人がいろいろしていた、何件ぐらい持ってどういうところに関与しているかというようなところまではとっておりません。
  151. 馬場猪太郎

    ○馬場(猪)委員 この間の長官の御答弁によっても、個人がコネを頼るとかあるいは先輩後輩の間柄で推薦したりとりにいったりするというようなことは、弊害があるから好ましいことではないけれども、局の人事担当でできるだけ一元的にやっているのだ、しかし、やっていること自体も全体悪いとおっしゃっているのですね。そしてあと、個人的にやっていることについても悪いとおっしゃっているのです。ですが、局が直接一元的にやっておられることも内容は掌握しておらない、個人でやっていることも全く知らない、これで調査になりますでしょうか。今後もそういう数字がはっきり出てきますでしょうか。
  152. 米山武政

    ○米山説明員 官がその立場であっせんするものにつきましては、詳細がわかります。ただ、個人が個人として動いた分については、やめてからいろいろ知人なりなんなりの紹介で顧問税理士になるというような場合には、なかなか報告を求めるということもむずかしいわけでございます。  ただ一つ、税理士には基本的な帳簿として、どういうところが顧問先になっているかというようなことは帳簿をつけさせるようになっておりますので、それが始まってから帳簿をつけるようになれば、それをこちらが調査すればわかるようになります。  ただ、そうは申しましても非常に正確な数字がわかるかどうかわかりませんが、任意にこちらからアンケートでも出して、ここはどうなっているかということを求めれば、これは拒否する者もいるかもしれませんが、ある程度の数字がつかめると思いますが、完全につかめる数字というものは官があっせんしたものが中心になると思います。
  153. 馬場猪太郎

    ○馬場(猪)委員 自分が仕事柄調査に行ったところを通じて個人的に知り合いになった企業、こういったところへ頼むということは、仕事の上で公務員としての立場で、その立場を利用して顧問になることを委嘱するということは正しいことなんでしょうか。これは正しくないですね。そういうことは好ましくないと言っておられるわけでしょう。だから、日常の行動の中でそういうことをある程度掌握できなかったとしたら、野放しじゃありませんか。  抽象的なことはやめましょう。それじゃ、ことし七月にやめられたことだったら覚えてらっしゃるでしょうね。北のやめられた税務署長さんは何とおっしゃいますか。
  154. 米山武政

    ○米山説明員 私いまリストを持ってきておりませんが、主要署長でございますので記憶がございますが、芝文雄だと思います。
  155. 馬場猪太郎

    ○馬場(猪)委員 芝文雄署長は七月の何日にやめられて、そして局自体がどれだけのあっせんをなさいましたか。
  156. 米山武政

    ○米山説明員 税務署長を退職したのは七月十日付でございます。ただ、だれに局がどういう法人なり企業をあっせんしたか、私いま手元にその書類を持ってきておりませんので、その点についてはお答えできません。
  157. 馬場猪太郎

    ○馬場(猪)委員 手元に持ってこられてなくても、あっせんした事実ははっきりしておりますか。
  158. 米山武政

    ○米山説明員 大体平均的に原則として二件あっせんすることになっておりますが、中には自分は官のあっせんを受けたくない、自力で、知人なりなんなりが自分に頼んできているから、なかなか開拓できない人に回してくれというような人もいますので、わかりませんが、普通の場合は大体二件程度受けております。この芝君がその二件を受けたかどうか、私ちょっといま手元に持っておりませんので、正確にお答えできません。
  159. 馬場猪太郎

    ○馬場(猪)委員 おやめになったのは七月十日ですね。そして北税務署の隣にビルがございます。ここへ五月に芝さんのお名前で部屋を借りていらっしゃるのです。そしてそこへ北税務署の調査官を一人ずつと常駐をさしていらっしゃるのですね。そこへ北税務署の備えつけの企業一覧表をお渡しになって――ですから、五月に移ったわけですから、それ以前から含めて四、五、六の三ヵ月間で百二十件の顧問先の予約をとっていらっしゃるのです。一件当たり五万から三万という契約で、合計いたしますと年間約四千八百万ぐらいになるでしょうか、これだけの予約をとっていらっしゃるのです。片方で担当の人事を通じて二口の、これは国税局の正規のルートなんでしょうね、そういうお話を、そして別個にこれだけのことをやっていらっしゃるのですね。  七月十日に退職になっているわけですから、四月ごろから特定の調査官にこれを訪問させて歩くということは、どういうことになるでしょう。総理府人事局の方で、公務員としての服務義務に違反するのかしないのか、そしてまた常駐している職員はどういうふうになるのですか、御判断をいただきたいと思う。
  160. 菅野弘夫

    ○菅野説明員 お答えを申し上げます。  公務員法にいろいろな服務の規定がございまして、いまお話しのことは急なお話でございますので、その詳細について具体的なケースごとに、果たしてそれが公務員法に触れるのか触れないのかということを判断しなければなりません。急なお話でございますので、この場ですぐに即答させていただくのは遠慮させていただきますけれども、一般的に申しまして、職員というものは厳正な服務が必要でございますし、職務に専念する義務もございます。それから具体的な法自体という問題にならない場合でも、職務の公正な執行に疑惑を持たれたりあるいは信用を失墜するに値するようなそういう行為は厳に慎まなければならないというふうに存じておりまして、具体的なケースにつきましては、まだいまのケース、先生からお聞きしたばかりでございますし、国税の方からもそういう報告を受けておりませんので、個々のケースについては、いまお答え申しましたような範囲で御判断をいただきたいと思います。
  161. 馬場猪太郎

    ○馬場(猪)委員 だから、この事実についてはお調べにならないとおわかりにならないでしょうけれども、いま申し上げた例として、これは明らかに何条と何条に違反するでしょうか。こういう例の場合、一般論としてで結構ですから。
  162. 菅野弘夫

    ○菅野説明員 いまの場合もなかなか複雑でございまして、やめる前に何か特定の職員を別の部屋に置いてどうのこうのということになりますと、そういうことを命じたこと、あるいはそういうことを命ぜられてそういうことに従事した職員自体もいろいろな問題があるのじゃないかと思います。それがおよそ本人の職務と関係がないということになりますと、職務専念義務の違反になり、その他服務上のいろいろな規定に触れるのじゃないかと思います。
  163. 馬場猪太郎

    ○馬場(猪)委員 まず、いま言われた職務専念義務の違反、これは一つ成り立ちますね。それから職務以外の仕事をやっておって、そして顧問先にそういう勧誘をして歩いている、その不信感ということになって、信用失墜ということにもかかってくるのじゃないでしょうか。それからまた、税務署に備えつけてあるそういう企業の調査一覧表等を持ち出して隣のビルに持っていくことについては、これはどういうふうになるでしょうか。
  164. 菅野弘夫

    ○菅野説明員 急なお話でございまして、具体的なケースについてどうもお答えしにくいと思いますけれども、一般的なことで申しますれば、その他その秘密保持が完全なのかどうかということもありましょうし、服務全般の問題、そのほかの問題にもあるいは触れるかもしれません。  先ほどからお答え申しておりますように、要するに服務の規定というのはきわめて抽象的に書いてございますので、それが法に触れるかどうかということになりますと、これは具体的なケースに当たって慎重にお答えしなければならないと思います。
  165. 馬場猪太郎

    ○馬場(猪)委員 そういう場合はどうすればいいのですか。たとえばいまのような場合だったら、七月十日に退職なさっているのです。もう公務員じゃないのです。そして四月、五月、六月ごろからそういう違反らしき、疑わしき問題が出てきているわけです。そうすると、これを告発するにしても何にしても、やはり確かめなければなりませんね。そうすると、調べてみますと二カ月か三カ月たってしまいます。事実上、これは調査をして告発する段階でやめられてしまうわけですから、結局、法律あってなきがごとしということになってしまいます。せっかく国家公務員法があっても、これを適用していいのかどうか。事実上、三カ月や四カ月の間では調査のしようもない。そして告発しても、終わった時点ではもうすでに退職されておる、公務員じゃなくなっておる、これでは全く公務員法というのは抜け穴だらけであって、公務員としての規律を守ることができないんじゃないかと思いますが、そういう場合はどうしたらいいんでしょう。
  166. 菅野弘夫

    ○菅野説明員 公務員法自体は職員であるという身分を前提とした法律でございますので、いまお話しのようなことがございました場合に、これは職員である、そういう状態のもとにおきまして、いまの例でございますと国税御当局が十分に把握をし、そういうことがないように厳に御指導されるべきであるというふうに思います。
  167. 馬場猪太郎

    ○馬場(猪)委員 いま人事局長は、国税局内でそういうことをきちっと掌握して起こらないようにしなければ方法がないと言われているのですが、肝心の当時の国税局長さんがそういうことを全く御存じないわけですね。そして一署の署長、最高幹部ですから、部下からの内部告発か何かがない限りこれは明らかに表に出ませんね。内部的にそういうことを監査したり明らかにしたりする規律を保てる機構というものは、国税局の中にはないのですか。
  168. 米山武政

    ○米山説明員 税務署長のそういう日常の仕事のあり方というのは、もちろん上部の機構であります国税局の組織挙げて常時一般的に監督しているわけでございますが、国税局の場合にはほかの組織と違いましていろいろ問題が多いわけでございまして、監察官制度というのがございまして、特に職員の非行の予防、それから現実にいろいろ発生した場合にその調査に当たるための特別の組織を持っております。
  169. 馬場猪太郎

    ○馬場(猪)委員 その監察官組織もこのことを全然御存じないわけですか。そしていままでに告訴になったような事件についても全く掌握していらっしゃらないわけですか。
  170. 米山武政

    ○米山説明員 この問題、どれが事実かというような点がなかなかむずかしいわけでございまして、たとえば新聞紙上いろいろ問題になっている点につきましても、私どもいろいろ調査しておりますが、当事者の言い分がいろいろ食い違ったりしておりまして、一方的な問題もございますし、それからまた、こちらが本当にうっかりしていてつかんでないという、世間の批判がそのとおりだということもございまして、なかなか事実というのはむずかしくてわかりにくうございます。この点につきましては、私いままで非常に不勉強でございますが存じておりませんでした。
  171. 馬場猪太郎

    ○馬場(猪)委員 いま言われたのは、事実を調べますといろいろ食い違いがあると言われたのですね。じゃお調べになったわけですね。どういう点をお調べになって、どういう点が食い違いがありましたか。
  172. 米山武政

    ○米山説明員 たとえばあっせんの場合でございますが、納税者の言い分として、いつも国税局の方からもういいのに押し込まれた、こういうふうなことが言われる。そのためにその納税者に当たってみますと、いや私はそういうことを言ったことはありませんというようなことを言うのです。ですから、この事実関係というのは、特にはっきりと表にあらわれた行為ではないものですから、そうした場合それは心理的な圧迫があるじゃないかという問題もありますし、一つ一つのケースについても事実というのはやぶの中の問題で、どれが本当かということはなかなかわかりにくい問題であります。  しかし、私どもとしては、こういう問題は事実はどうであれ、李下に冠を正さずと申しますので、世間のそういういろいろな疑惑を招くようなことは、たとえ法律に触れなくてもできるだけ避けるように、こういうふうな指導をしていくつもりでおります。
  173. 馬場猪太郎

    ○馬場(猪)委員 それじゃ、法律で刑事事件になるとかそういうことを抜きにしてでも、今後の税務行政だとかあるいはまた納税者の士気に悪い影響を与えないために、当然税務署は税務署として、あるいは国税局は国税局としてそれぞれ手を打たなければならぬわけでしょう。だから、事実関係を明らかにして、事実関係が告訴された内容と違っておれば違っておるではっきり出して、これは正しいのだと言い張ればいいわけでしょう。そのためにも調査をしなければならないわけでしょう。  では、特にすでにこの間の参議院でも出ました箕面市に住むAさんの問題についてはもうお調べになりましたか。問題は疑惑になっておるわけですから、起訴になろうとなるまいと、一応国税当局としてはそれは明るいんだということをはっきり言えるように調べなければいかぬわけでしょうから、それについてはどうなさっていますか。
  174. 米山武政

    ○米山説明員 この点につきましては、告発されましたので、私どもといたしましては、告発された場合には、捜査当局のせっかくの捜査に当たってできるだけその捜査を見守る、そしてその結論が出たところでさらに行政上のいろいろな措置をとる、こういうふうにしております。  なお、いまの件は、私はどうもはっきり経過はわかりませんが、恐らく告発第一号になったケースで、この間容疑事実なしということで不起訴処分になった案件だろうと思います。私ども、その前にいろいろ問題がありましたのでいろいろ話を聞きましたが、法律に触れるようなこと、たとえば税理士法四十二条に触れるようなことはなかった、それから顧問としてやった行為も国家公務員法百三条に触れるようなことはなかった、当事者からの調査では私どもはそういうふうにとらえております。
  175. 馬場猪太郎

    ○馬場(猪)委員 まだ十分聞いていないと言われるけれども、いま、お調べになったのでは四十二条違反になっていない、百三条にも違反になっていないという。お調べになったのじゃないですか。さっきは個々の問題だからまだ調べてないとおっしゃっている。またお話を聞きますと、これは告発になったことだから調べたとおっしゃる。だから検察は検察として、あくまで自主的にシロはシロ、クロはクロとして影響のないようにということでお調べになったんでしょう。
  176. 米山武政

    ○米山説明員 先ほどお答え申し上げましたのは、七月五日に参議院の決算委員会長官答弁され、調査すると言ったときからもうすでに時間がたっているからほとんどわかっているのだろうからその内容を答えてみよ、こういうような御指摘と私は思いましたので、先ほどのようなお答えをしたわけでございます。  もちろん個々のいろいろ問題になったケースはその都度やっておりますが、いま申しましたように、国税職員は一年間に退職が千二百人もおりますので、そういうものについて調査するとなかなか時間がかかります。しかし、一つ一つ丁寧に調べてみたいと思っておりますが、一件調べたからすぐこれでどうということではなくて、いろいろ共通の問題、全国的な各局に共通する問題、そういうふうなものは多いと思いますので、調査も相当のところが把握できた段階でいろいろ措置をしたい、こういうふうに考えております。
  177. 馬場猪太郎

    ○馬場(猪)委員 そうすると、問題になったから御承知のAさんについてはどういうわけで不起訴になったのですか。わかっておりますが、あなたの方で明らかに把握しておられる不起訴になった理由を述べていただきたい。
  178. 米山武政

    ○米山説明員 残念ながら、不起訴理由につきましては私どもには何の連絡もございません。したがいまして、正確な不起訴処分の理由というのはわからないわけでございます。新聞承知している程度しかわかっておりません。
  179. 馬場猪太郎

    ○馬場(猪)委員 それじゃ、検察庁の方の理由はわからなくても、あなた方の方で調べられて、どういうわけでそれは法に触れないのだというふうに判断なさったのか。
  180. 米山武政

    ○米山説明員 新聞で伝えられるところによりますと、不起訴処分の理由というのは、このAが四十九年七月八日から五十年七月の間に七つほどの会社に関係している、これは税理士法違反ではないかということでございますが、私どもは、この不起訴理由は、告発の理由としてこう言われているけれども、実際にはこの間に税理士業務を行っていないので税理士法違反ではない、こういうふうな理由と聞いております。私どもの調査も同様でございます。  それから二番目に、これは具体的な一つの会社、これはAが署長をやっていたその管内の会社でございますが、そこに署長をやめた直後から、直後と申しましても七月にやめて十一月からでございますが、十一月から一万円の報酬を受け取って業務を行っているので、これは税理士法違反ではないか、こういうふうな告発の理由に対しまして、検察当局は、ただ金をもらっているというだけでは業務とは言えない、四十二条に定める税理士業務というのは具体的、個別的でなければならぬ、ただ抽象的なそういうものではない、しかも調査に初めて立ち会ったのは二年四カ月後である、こういうふうに言っております。私どもの調査もこれと同様でございます。  それから三番目は、そういう顧問ということでお金をもらっているのは国家公務員法百三条にいう営利企業の地位についたのではないか、こういう指摘に対しまして、検察当局は、営利企業の地位というのは一身専属的な従業員の地位というものを指している、単にコンサルタント的な、その都度その都度要請に応じて相談に乗るというものは営利企業の地位ではないと判断する、したがって、公務員法百三条違反とは言えない、こういうのが理由と聞いております。私どもの調査も同様でございます。
  181. 馬場猪太郎

    ○馬場(猪)委員 新聞によればとおっしゃったけれども、私どもの調査と言われているのだからやはり調査なさったわけですよね。検察庁も調査したけれども、新聞によればという前置きで話されたけれども、いまの御答弁は私どもの調査も検察庁と同じでございますとおっしゃっているのですから、調査をやられたわけでしょう。調査してないというのではなしに、されたことはされたのでしょう。
  182. 米山武政

    ○米山説明員 いまの新聞によればと申しましたのは、検察当局から私の方には何の連絡もございませんので、不起訴処分理由というのがどういう理由か正確には承知していない。ただ、新聞に書いてあるのがそういうふうに書いてありましたので、もしそれが検察当局の不起訴処分理由であるなら私どもの調査と同じである。問題になりますと、一応監督官庁、監督者としまして、私どもいろいろのヒヤリングなり何なりはいたします。
  183. 馬場猪太郎

    ○馬場(猪)委員 やはり調査をなさっているのです。個々には調査してないなんてさっきおっしゃったけれども、調査はなさったことはなさった。それはそれでいいです。  それでその中に、具体的な税理士業務をやっておらない、だから金はもらっておってもそれは関係ないというのですが、顧問料としてお金を継続的にもらっておった場合には、契約書を交わそうと交わすまいとそれは顧問契約を結んだことになるのかどうか、法務当局が来ておられたらそういう解釈についてお教えいただきたいと思います。
  184. 橘勝治

    ○橘説明員 会社の顧問というものの実態はさまざまなものがあろうかと思うわけでございますが、一般的に申しますと、会社の求めに応じまして専門的な知識を供給するとかあるいはアドバイスをするとか、そういう業務を行うということになろうかと思います。  そこで、そういう業務を委託する契約でございますが、これは民法上の典型的な契約の中の準委任契約に当たるのではないか、かように考えるわけでございます。そういたしますと、準委任契約というものにつきましては、書面を作成するということが要件になっておりませんので、書面を要しないわけでございます。双方の意思表示の合致があればそれで契約は成立する、こういうことになるわけでございます。
  185. 馬場猪太郎

    ○馬場(猪)委員 顧問税理士の側と企業側とで、お互いきちっと毎月毎月顧問料を払って、文書によって交わそうが交わすまいが、一応契約条項は成り立つということですね、一般論。契約が成り立てば、実際の業務を直接やろうとやるまいと、それは税理士業をやっていないという解釈はできないのじゃないでしょうか。文書を書くとか、具体的な相談に乗るとか、立ち会いするとか、そうでなくても契約が成り立つということで、税理士業が成り立っておるのじゃないでしょうか。
  186. 米山武政

    ○米山説明員 いまのお話、ちょっとよく私理解できないところがあるわけでございますが、たとえば顧問契約が成立した場合に、顧問としての業務は行う、それは約束したことになりますが、それが直ちに税理士業務を行うことを意味しないと思うわけでございます。と申しますのは、税理士業務というのは、税理士法第二条に、はっきりこれとこれは税理士業務である、こういうふうにうたってあるわけでございます。もう御承知でございますが、申告、不服申し立て等の税務代理の業務、それから申告書、申請書等を税務官公署に提出する税務書類の作成、それからいまの申告等に対する相談に応ずる税務相談、この三つが税理士業務でございまして、一般の会計、経理、金融等のコンサルタント的な顧問の業務というのは税理士業務に当たらない、こういうふうに私ども解釈しております。
  187. 馬場猪太郎

    ○馬場(猪)委員 それはあくまで国税庁としての解釈論だと思います。  もう時間がなくなりましたけれども、先ほど私申し上げましたように、元北税務署の芝さんが約五千万近い顧問料をお約束なさって、これからずっと一年間、九月には芝会計事務所を隣のビルにお建てになるわけです。その間お金はもらっておっても、税理士業務をやらなかったら、それはあくまで単なる顧問であって、もらい得であって、会社に出ようが出まいがそういうことは関係なしだ、こういうふうになるわけですから、今後皆やり得だということになりますね。そういうことが公然と許されていいのでしょうか。道義的に考えてみてもおかしいのじゃないでしょうか。  そしてまた、御本人が行かなくても、間接にだれかが税理士業務の手助けをする、そういうことも含まれてくると思います。これは脱法行為と言えないかもわかりませんけれども、しり抜け行為だと言わなければならぬと思いますが、そういう道義的な行為についても全く反省の色をお持ちじゃないのでしょうか。  こういうことが許されるとなれば、顧問契約だけとって、あとはじっと本人は動かない、いわゆる税理士業務をやらずに金だけ入る。これは寄付金でしょうか、そうでもないのでしょう。そういうことが許されるのでしょうか。
  188. 米山武政

    ○米山説明員 この具体的ケース、顧問となってどのくらい金が入るか、もし馬場先生おっしゃるとおりとすれば相当巨額なものでございます。  ただ私ども、税理士業務はもちろんやってはいけない、それからかわりの者を使って脱法行為みたいなことをするのも、もちろんこれは問題でございます。ただ先生御指摘のように、それでは何もしないで金だけもらっておるのはいいのか、道義的にどうかという点、社会的にいろいろ批判があろうと思います。  ただこの場合に、月に何回か行っていろいろの相談に応ずる、たとえばうちの会社の帳簿組織がうまくないのだけれどもどうしたらいいかとか、あるいはそういうふうな税務に直接関係のない経理、会計のいろいろのアドバイス、それからその他のいろいろなアドバイス、そういうことを恐らく顧問契約の内容としているのだろうと思います。そういうことに対する報酬として、いま一件何万円か知りませんが、それは高いかどうか、私どもとしては、社会的ないろいろな問題がありますが、ちょっと判断がしかねるわけでございます。
  189. 馬場猪太郎

    ○馬場(猪)委員 もう時間が参りましたのでこれ以上できませんけれども、こういう道義的に考えても、法律上はやはり抜けている点もある程度あるだろうと思います。運用上もいろいろあると思います。しかし、要は納税者にいろいろ影響を与えるということは、今後納税に対して市民の目、国民の目はますます厳しくなるだろうと思います。これを明らかにしないと、納税を拒否しようという姿勢まで出てくるかもわかりません。そういう意味では、法律がどうであろうと姿勢を正すことは大事なことだと思いますし、ひとつ国税局としてもあるいは国税庁としても姿勢を正していただきたいということだけ申し上げて、一応終わりたいと思います。
  190. 楯兼次郎

  191. 土井たか子

    ○土井委員 きょう私は、ただいま馬場委員の方から御質問のございました国税庁、国税局の退職職員の税理士開業の顧問先あっせんに関する問題について、さらに質問を進めたいと思います。  去る八月三日に国税庁長官から国税局長並びに国税事務所長あての通達が出されましたが、恐らくただいま問題になっておりますこの顧問先あっせんに関するいろいろな国民の疑惑、納税者の疑惑にこたえまして、今回はあっせんを一切取りやめますという通達が出るに違いないと思ったのです。ところが何のことはない、通達の中身を見ると、相も変わらず、納税者等から批判や疑惑を招くことのないように留意するとともに、部下職員に対してもその趣旨の徹底をしながら、顧問先あっせんに対してお墨つきを出される通達であるわけなんです。この問題に対して国税庁としてはどのようにお考えになっていらっしゃるのか、国民の納税の義務というものに対する行政のあり方自身に対して、まことに不信の念を禁じ得ません。  そこで、きょうは長官の御出席を私は求めたわけでありますけれども、長官はただいま忙しいということで当委員会に対する御出席を断られたわけであります。大臣、長官というのは常に忙しいのです。国会審議を一体どのように考えていらっしゃるかということを私はまず聞きたい気持ちでおりますけれども、きょうここに御出席の次長に対して私はいまから少しお尋ねを進めます。  いままでこのいろいろなあっせんに対しまして、国税局があっせんをするという形を公にもお認めになってきたわけでありますけれども、実際問題は、局の中の職員が、それに対していろいろと顧問先のいわば注文取りみたいなことを具体的にやられないと中身は整わないというのが実は実態であります。  そうして、一連のいろいろな、これはもう告発もありまた申し出もあり、いろいろなことに対して、実態はこうでありますという投書の欄、電話の欄は山積みになっているわけでありますけれども、そういうことから見てまいりますと、大変ゆゆしい一連の現象が出てくるのです。税務調査という仕事の中で、お願いできませんかというあっせんをおやりになることもございますし、また、そういうことをおやりになるために、税務調査と顧問予約というものを取引するというおそれなしといたしません。現にそういう疑惑というのを持っている納税者というのは山ほどあります。  ここに私、きょうは総理府からも御出席をお願い申し上げておりますから、まず端的にお尋ねをしたいのですが、こういうあっせんというのは税務職員の職務の中に入りますか。いかがですか。
  192. 菅野弘夫

    ○菅野説明員 あっせんというのは職務に入るかどうかというお尋ねだったと思いますけれども、これは千差万別であると思います。あっせんというのを一言に、これを入るとか入らないとかなかなか申しにくいと思いますけれども、いろいろな退職管理の一環として、それぞれそういう仕事を持った方が退職後の職場先というものをいろいろ開拓をし、退職管理をスムーズに進めるという意味一般的なものでございましたならば、これはそれを行う、職務を担当する人によりますけれども職務に入らないということはないと思います。  しかし、先ほど申しましたように、あっせんというのも非常に幅の広いお話でございまして、いまお尋ねのように、いろいろなケースがあるようでございますので、やはり具体的な個々のケースに当たらないと一概には申せないと思います。
  193. 土井たか子

    ○土井委員 人事課とか、退職後の世話をするというのは、各省庁の中でもそれぞれの職務があるわけでしょう。税務署の職員というのは、すべてこのあっせんをやるということを職務と考えていいのですか。
  194. 菅野弘夫

    ○菅野説明員 そういう意味においていまお答えしたわけでございますが、税務署の一般の職員全体が退職後のあっせんの仕事に当たるということはないと思います。そういう職務はないと思います。
  195. 土井たか子

    ○土井委員 そうすると、税務署の署長から、顧問先というものをひとつ獲得してくるようにということを言われて、それに従って調査をしに行ったときに、帰る間際に、言いにくそうに、ちょっとお願いを申し上げたいのだがと言って、そうして相手方も、税務署員から言われることだからというので、いやいやながら聞かれて、そうしてお互いにそれに対して予約をとってくるという行為、これは国家公務員法の百一条から考えていかがになりますか。
  196. 菅野弘夫

    ○菅野説明員 先ほど申しましたように、いろいろなケースがあると思いますが、いま先生の言われましたようなことを考えた場合には、実際に調査に参りまして、その調査の最中にそういう話を切り出すということは非常に非常識だと思いますし、これはその時期あるいは発言内容その他いろいろなケースがあるから十分調べないとわかりませんけれども、それは全く適当でないと思います。言い方あるいはそのことによってはあるいは先生の御指摘のように、公務員法上の条章に触れる場合もあると思います。
  197. 土井たか子

    ○土井委員 これは触れる場合があるどころの騒ぎじゃないのです。触れる場合を一般として考えなければいけないのじゃないですか。百一条の条文をよくお読みいただきたいと思うのです。「政府がなすべき責を有する職務にのみ従事しなければならない。」と書いてあるのですよ。「政府がなすべき責を有する職務」、この中に税務職員は自分の上司の退職後の就職先をあっせんするということも含まれているのですか、どうなのですか。
  198. 菅野弘夫

    ○菅野説明員 ケースごとでございますので、非常に想定をはっきりしませんとお答えがしにくいわけでございますが、いま言われましたように、人事担当の者でないそういう一般的な調査を担当する者が調査に参りまして、それでその調査の席上あるいはその延長上においてそういうことを申すということは、先生の御指摘になったような条文、その他服務全般の問題として多大の問題があると思います。
  199. 土井たか子

    ○土井委員 これはいわゆる職権乱用とか地位利用ということもはっきり言えると思うのですよ。いまの国家公務員法の百一条から考えたら、違法行為というのもこの中で一般的に行われているとまず認識をしなければならないと思うのです。こういう状況について、顧問先を獲得してくるようにというふうに命ずる上司の立場はどうなりますか。
  200. 菅野弘夫

    ○菅野説明員 国税の一般的な調査に参りまして、その調査の席上においてそういうものを獲得してくるようにという職務命令があったとすれば、これもやはり非常に問題である。職務に関連をしてそういうことをするということは、公正な仕事の執行というものに対しましてもこれを著しく傷つけるものでございますので、そういう職務命令が適当でないことはもちろんでございます。
  201. 土井たか子

    ○土井委員 先ほどから適当、不適当ということで御答弁されておりますが、適当、不適当は言うまでもございません、これは不適当です。しかし、現に定められている国家公務員法の法条に違反するということが具体的に認識されなければだめですよ。この問題は、国家公務員法違反だと私は見ています。そして、しかもそれが個々別々に自分の自主的な判断によってやっているのじゃない、上司の命によってやっているのですよ。このことはすでに元税務署員であって実は上司の命令に従って会社探しをやったということをみずから告白している人が出てきているのです。このことはもうすでに新聞紙上にも出ておりますけれども、こういう例は一例、二例じゃない。こういう投書の類について申し上げますならば、具体的にそういうことをちゃんと書いた投書も来ています。  今回のこの通達の内容を読んでみますと、「顧問先あつせん等に当つては、納税者等から批判や疑惑を招くことのないよう十分留意するとともに、」と書いてあるけれども、そして「部下職員に対してもその趣旨の徹底を図ること。」と書いてありますが、従来と違って何らか具体的にこれは取りやめるというふうな指示なり、こうでなければならないということがあったら、ある程度いままでとは違った行き方で国税庁としてはこの問題に臨まれるのだなというのがわかりますが、今回のこの通達は従来と何の変わりもないのですよ。  ただいままで行われてまいりました顧問先のあっせんのやり方と同じように繰り返される限りは、国家公務員法違反というおそれなしとしない。このことを総理府の人事を担当する責任者としてはっきり御明確にひとつこの場所で御答弁をいただきたいと思うのです。いかがですか。
  202. 菅野弘夫

    ○菅野説明員 お答えを申し上げます。  公務員法の服務の条文はたくさんございますけれども、これはやはりかなり抽象的に書いておりますので、個々具体的なケースに当たってそれが違反するとか違反しないとかということを判断しなければならないと思います。そういう意味において、個々具体的なケースにつきましては私たちも十分存じておりませんので、一般的な抽象的なお答えしかできないわけでございますけれども、先生がいま言われましたようなケースで、職務で行った先で職務中にそういうふうな顧問先のあっせんという話が出るということになりますと、これは大変問題でございまして、そういうことはないと思いますけれども、実際にそういう具体的な例があるとすれば、これは先生の言われましたおそれなしとしないというのに私も同感でございます。
  203. 土井たか子

    ○土井委員 そういうことがありとすればとおっしゃいますが、これは告発をまつまでもなく、一般的に考えて、現職の税務署員が上司からいろいろと顧問先をまとめてくるようにという命を受けて、そのことをどういう形でするかというと、やはりいろいろな自分が調査をした相手、自分が税務の担当の上で知った相手に対して依頼をするというかっこう以外にならないのです。それはいつ何どき、どういう形で頼んだかということは個々のケースに当たらないとわからないかもしれませんが、一般的に自分がその公職である職務上知り得た相手に対して公職にある立場でこういうことを頼むのですよ。これは本来税務署の職員としてなすべき職責から離れている問題だと私は言わざるを得ません。このことをやれと命ずる上司がいて、しかもこのことをよろしいと言っている国税庁の今回の通達があるのです。この点から考えて、総理府の人事担当の立場としてはどのようにお考えになりますか。  私は人事担当といま申し上げたけれども、せっかく長官がお出ましなんだから、長官にひとつこの点どのようにお考えになるかというお考えを示していただきたいと思います。
  204. 稻村佐近四郎

    稻村国務大臣 総理府としましては国家公務員の服務に関する問題を担当いたしております。そういうふうな関係から先ほど来いろいろな質疑応答を聞いておるわけですが、やはり公務員としては誤解をされるような行為はあってはならない。そういう意味から、今後はひとつ、いまの御意見は御意見といたしまして、綱紀粛正と申しますか、厳に戒めてまいりたいと考えております。
  205. 土井たか子

    ○土井委員 そうすると具体的に言うと、厳に戒めてまいりたいとおっしゃる総理長官とされては、国税庁が退職職員に対して国税庁の名において現職の職員を使ったりして顧問先のあっせんをすることについて認めていくということは好ましくないというふうにお考えであるかどうか。この点問題だと思いますよ。いかがですか。
  206. 稻村佐近四郎

    稻村国務大臣 公務員が地位を利用して、得意先というのではなく納税者に対して、実はこういうわけであるからこの人がということで、ぜひひとつその人のために顧問先になってもらいたい、もし具体的なそういう事実が、責任者が指令をしておるとするならば、これはゆゆしき問題である。そういう意味から、その実態把握ということは人事局としてはいたしておりませんが、先ほど来の質疑応答の中で、私はそういった誤解を受けるようなことは厳に戒めなければならぬと考えております。
  207. 土井たか子

    ○土井委員 そうするとさらに一歩進んで、長官とされては、国税庁がただいま退職後の職員に対して顧問先をあっせんするようなことはいろいろな疑惑を招く、特に事もあろうに納税者と国税庁との癒着ということもこういうルートを通じて起こる可能性も十分にある、こういうことから考えて好ましくないというふうにお考えになっているとわれわれとしては理解してよろしゅうございますね。
  208. 稻村佐近四郎

    稻村国務大臣 これはいろいろなケースがあるのじゃないかと思います。そういう意味から、全部含めて好ましくないというのではなく、やはりそういうケースを踏まえて、今後は綱紀粛正という面に全力を挙げなければならない、こういうふうに考えております。
  209. 土井たか子

    ○土井委員 長官、申し上げますが、いろいろなケースとおっしゃるのは一般的にそれが許されないときに問題にすべき問題意識だと私は思うのです。いまは一般的にこれをやってよろしいになっているのですよ。やらないのが特例になるのです。  長官に申し上げたいのは、これをやってよろしいというのを 一般的に考えてやるということ自身が間違いではないかということを申し上げているのです。いろいろなケースに当たって考えていかなければならないとおっしゃるのは、特にそうしなければならないというふうな場合もあるだろう。けれども、一般的にこれをどういう場合にでも、いわゆる国税庁お墨つきのやり方として、むしろ国税庁が奨励をせんがばかりのやり方で、退職後の顧問先をあっせんするなどというのは間違いだということを私は聞いているわけです。いかがですか。
  210. 稻村佐近四郎

    稻村国務大臣 いま土井さんがおっしゃいました、退職後のその人の生活を支えていく、そういう目的で現職の公務員が地位を利用してという場合においては、これは大変いけないと思います。しかしながら、私がケース・バイ・ケースと申し上げましたのは、いまの納税というのは大変複雑であります。そういう意味から、適正納税、合理性ある納税、こういう意味において、一般企業側というのは、長い間自分が企業に参画しましたとしても、なかなか納税という問題になじみ切れない。そういう場合に、やはり専門家の指導を受けたい、専門家の意見を聞きたい、こういう場合もあり得るわけであります。そういう意味から、全部が全部、地位を利用して自分の立場利益誘導する、先輩の顔を立てるというために、自分の地位を利用してということになると問題になると思いますが、そういう意味でケース・バイ・ケースと申し上げておるわけであります。
  211. 土井たか子

    ○土井委員 長官、こういう質問をやっていると時間が大変かかると思うのです。ただしかし、いまの御答弁からいたしますと言わざるを得ません。  専門家の意見というと、一般試験に合格して税理士の資格を持っている、現に専門家である税理士というのがあるのです。御承知のとおりに。何も国税庁の職員に対してあるところの特別試験で税理士になるはずの人に対して、その官職、地位を利用して、予約をして顧問先を獲得しながら、その業務あっせんを国税庁がやる必要はいささかもないと私は思いますよ。この問題、いかがですか。
  212. 稻村佐近四郎

    稻村国務大臣 それでは全部整理をしてお答えいたします。  国家公務員、いま国税庁問題に焦点をしぼられておりますが、納税者あるいは国民から疑惑を持たれるようなことは一切やってはならぬ、こういうふうにお答えをしておきたいと思います。
  213. 土井たか子

    ○土井委員 さらば、国民、納税者から、いろいろこれに対して、実はいままで黙っていたけれどもという匿名の手紙とかはがきとか電話のたぐいがたくさんあるのです。なぜ名前を明かせないかというと、これまた非常に情ない話でありますけれども、自分の名前が公にされるといろいろな取り扱いにおいて税務署から差別があるかもしれないという気持ちから、自分の名前を隠していろいろな告発があるわけです。  その中でも最もゆゆしきは、税務署の署員の中から、実はこういうことがあるために、自分たちとしては仕事の上でまことにやりづらいし、また士気の高揚をこれで図るというのが国税庁の今回の通達の趣旨かもしれないけれども、この意に反して、士気の高揚どころか、私たちとしてはまことにこういうことで仕事がやりづらいという意味の告発すらあるのです。現にまじめに働いている職員という立場から考えると、一切こういうあっせんなどはやめるべきだと私は思いますが、いかがですか。
  214. 稻村佐近四郎

    稻村国務大臣 現在新聞等で発表されましてから、私も公務員の服務に関する問題を掌握しておるというような関係から、国税庁の方から報告を聞いておる範囲内におきまして、現在国税庁は調査中ではあるが、信用を失墜するようなことはないというふうに御報告を聞いておるわけであります。
  215. 土井たか子

    ○土井委員 それはまことに甘いですね。国税庁からの報告を長官は信用されているようでありますけれども、長官の名において、長官立場でこういうことの調査をしようとしたら幾らだってできるんでしょう。また私はなさるべきだと思いますよ。国税庁からの報告について、さらに総理府独自で長官がひとつ調査をお進めになるように私はここで要求したいと思います。よろしゅうございますか。  さらに私は、具体的な事例を示せと言われたら、幾らだってありますから出しますよ。こんな思わしくないことがある、こんな思わしくないことがあるということは幾らだって出します。時間があれば何ぼでも出しますよ。  実は、幾らこんな通達を出して、あっせんをするのに対して国民の疑惑を招かないようにと言われても、現にあっせんをやる限りは疑惑のある方があたりまえであって、疑惑をなくすことができないということを、私は証拠としていろいろな事例を挙げようとすれば幾らだって挙げられます。長官、いかがですか。総理府としてもこのことに対して調査に乗り出してしかるべきだと私は思いますけれども、このことに対していかがですか。
  216. 稻村佐近四郎

    稻村国務大臣 国税庁は国税庁として独立をして人事の管理をされております。そういう意味から、私は国税庁の方がただいまの意見を率直に聞いていただいて、今後迅速かつ適正にひとつ調査を進めていただくことを私の方からも国税庁長官にお願いをしておきたいと思います。
  217. 土井たか子

    ○土井委員 長官にお願いしてばかりいても、長官から聞こえてくるのは、大体大丈夫だ、国民の批判というのはございませんという報告しか届かないと思いますよ。具体的にいま告発は全国的に展開されつつありますし、そして告発の内容というのは日を追ってふえていくであろうと私は思いますけれども、しかし、ここで時間の都合がありますから私は一例だけ申し上げて、こんなことがあるというのも総理長官としてお聞きおきいただきたいと思います。  御承知だと思いますが、優良法人というのが各税務署管内にございます。優良法人に認定するのは税務署の仕事であります。この優良法人というのは各税務署管内――きょう私はある地域ての、具体的に言うと神戸でありますけれども、リストアップされた優良法人名簿を持ってまいりました。こういう名簿をちゃんと税務署としては持っていらっしゃるわけであります。ところが、名指しで私は申し上げますけれども、元西福岡税務署長は、飯塚税務署在任中に、その管内の優良法人十数社と親しくなられて、これは当然親しくなるのです。二カ月に一回くらいの定期的な会合があるわけですから、お互いに親しくなるのはあたりまえなんでありますが、退職後税理士を開業すると同時に、これらの優良法人のすべてに顧問入りなすったわけです。そこで、これはもうすでに顧問税理士がいるところにも入り込まれたわけでありますから、二階建て、三階建て、いわゆる屋上さらに屋を重ねる税理士業務ということに当然なっていくわけでありますが、その方は現在博多駅前通りの豪華なビルで事務所を開いて、五十二年度には、退職後わずか二年目で高額所得者に名を連ねるということになっているのです。これは長官、お考えいただいて一目瞭然です。在任中の地位を利用して間接的に顧問先をかき集めながら、優良法人という行政手段というものを利用して、この顧問先というものを獲得されて現在の状況にあると考えていいんじゃないですか。  こういう例というのは、挙げていったらいっぱいあるのです。現に税務署の署員の方から、これは匿名のはがきでありますけれども、来ているのは、現在の署員が推定した一カ月の収入についてこれをよく見てくださいというはがきなんですが、名指しでこれは書いてある。歴代の大阪国税局の直税部の次長であります。古くは四十八年に退職された方、近くは五十年の七月、五十二年の七月、さりにことし退職される方々、ことし退職  は、これは顧問先の予約なのでありますが、これは地位利用以外の何物でもないと私は思います。こういう方々の大体一カ月の収入は、四十八年退職の当時の直税部次長、四百五十件くらいあるから、一件平均の一カ月のこれに対しての謝礼は五万円くらいと見て、何と一カ月に二千二百五十万、五十年の七月に退職された国税局直税部次長については、二百五十件くらいだからこれは計算して千二百五十万くらい、五十二年退職の直税部次長については大体三百件くらいだから千五百万くらい、ことし退職されるはずの方は、これはすでに三百五十件くらいも予約がございまして、一千七百五十万円くらいだぞということが書いてあるのです。もちろん名前はわかりません。税務署内の署員なんです。職員なんですよ。匿名です。極端な例とおっしゃるかもしれないけれども、こういうことが現にまかり通っているのですよ。あっせんをやるということをお認めになる限りはこういうことになるのです。  こういうふうなことを挙げていけと言われたらこれはもういっぱいあるのですよ。それでしかもなおかつ、疑惑を招くようなことはないということを信じながら、これに対しては国税庁の長官がどうお考えになるかに全部寄りかかるというふうに総理長官としておっしゃるのですか。総理府というのはやはり人事問題に対しても責任がおありになるのじゃないでしょうか。国家公務員法に従って考えて、公務員に対してはその職務の職責遂行という上から全きを期すという点で、総理府としてはやはりしっかりとこういう問題に対してもにらんでいただかなければならぬ。いかがですか。私はきょうは国税庁の方には聞きません。したがって、総理府の長官にこの点に対するお答えをいただきたいと思います。
  218. 稻村佐近四郎

    稻村国務大臣 先ほども申し上げましたように、各省庁、独立の立場で人事管理をいたしておるわけです。そういう意味から、いま具体的にこう例を挙げられましたが、その具体的な例というのは、お聞きをいたしておりますと、私はそれは地位を利用したということでなく、個人的な信用が大変高く評価をされて開拓をされたものだ、いまの具体的な例でですよ。そういう意味で、退職後自分の大変な人柄というか実績と申しますか、その人の能力と申しましょうか、いまの世の中の趨勢から考えて、やはりそれは自分の開拓であるものと、あるいはまた自分の現職中の地位の利用という問題もございますので、私はこれは一口に言うことはできないのではないか。  しかしながら、総理府といたしましては、全省庁の人事管理を扱っている以上は、国民の誤解を受けるような行為は一切避けなければならぬ、こういうことでやはり人事局といたしましては各省庁に呼びかける、こういうことのないように、誤解を受けないように、こういうことに精力を傾けてまいりたい、こういうように考えております。
  219. 土井たか子

    ○土井委員 各省庁にとおっしゃいますが、総理長官、各省庁の中で、わけても国税庁というのはどういう仕事をやっているところなんですか。国民の義務の中でも納税の義務というのは、政治家としての長官はひとつ心して考えていただかなければなりませんよ。納税者の立場からすると、国税庁のただいまのこのやり方に対して、先ほど馬場委員も言われましたけれども、一体喜んで納税するという気になるでしょうか。  私はそういうことから考えますと、公務員にはいろいろな職務がございます。しかし、あらゆる公務員の職務の中でも国税庁また国税局の職員くらい綱紀の粛正というのを常に考えなければならぬ職種というのはほかにないと私は申し上げてもいいくらいだと思うのです。特定の納税者との癒着というのは慎むべきだと思うのです。特定の一握りにも足りないような納税者に対して特に有利に取り計らうために一般の納税者が迷惑をするなんというのはもってのほかだと思うのです。憲法十五条というのをひとつしっかりごらんいただくと、その点は絶対許されることじゃありません。  したがいまして、そういう点から考えても、一般の他の省庁に声をかけるのと同様にとおっしゃるけれども、その認識は改めていただきたい。この問題は深刻ですよ。ただいま納税者の目というのはこの問題に対してしっかりと向けられているということも、認識いただきたいと思うのです。  国税庁としてはこのことに対してまるで他人ごとのような顔つきで座っていらっしゃいますけれども、一体どのようにお考えになっていらっしゃるかということと、最後にもう一たび総理長官に、先ほど言われたことに対して私はさらにお尋ねをしているわけですから、御答弁をいただきたいと思います。
  220. 稻村佐近四郎

    稻村国務大臣 御指摘の点は大変ごもっともだと思います。私は国務大臣という立場から、国税庁長官に現在の意見を強く申し上げたいと思います。
  221. 楯兼次郎

    楯委員長 国税庁次長はいいですか。
  222. 土井たか子

    ○土井委員 次長はいいですよ。もう時間だから。  ありがとうございました。
  223. 楯兼次郎

  224. 春田重昭

    春田委員 きょうは四点だけお尋ねしたいと思いますが、最初に、先ほども質問が出ました政府専用機の問題でございます。  官房長官に聞きたかったわけでございますけれども、官房長官が在席しておりませんので、内閣の事務局の方にお尋ねいたしますが、先ほどの官房長官答弁によりますと、持つべきであるという結論が出たということでございました。この持つべきであるという結論が出たのはいつの閣議なのか、明確にお答えいただきたいと思います。
  225. 藤森昭一

    ○藤森説明員 お答えを申し上げます。  政府専用機の保有につきまして議論になりました閣議は、六月三十日の閣議でございます。この閣議におきまして政府専用機の必要性というものが強調され、その基本的な方向に沿って官房長官の手元で検討するようにということが了解されたというふうに聞いております。
  226. 春田重昭

    春田委員 それを受けて内閣の事務局の方には指示があったわけでございますか。指示があれば、どういう指示があったのか、お答えいただきたいと思います。
  227. 藤森昭一

    ○藤森説明員 この問題につきましてはいろいろな角度から慎重に検討しなければならないということがございまして、官房長官の御指示に基づきまして、想定し得るいろいろな航空機の機種、性能、あるいはその管理運用の方向方法等につきまして、事務的な見地からいろいろな問題点を整理する、こういう角度での御指示がございました。その線に沿って検討いたしておる次第でございます。
  228. 春田重昭

    春田委員 先ほどの官房長官答弁でも、現在検討段階であるとか研究段階である、まだ決定はしていないという御答弁がございましたけれども、少なくとも来年度予算に組み入れるとすれば、秋の大体十月ないし十一月くらいまでに結論が出なかったら非常に予算的にむずかしいのじゃないかと思うのですけれども、このあたりまでに一応結論が出そうなのかどうか、事務局としてはどうですか。
  229. 藤森昭一

    ○藤森説明員 ただいまのところの進行状況は、内閣総理府、運輸省、防衛庁、外務省等の課長レベルの専門家によりまして、いろいろな問題点を各種のデータに基づきまして慎重な検討をしておるわけでございますが、この成果を官房長官の方に御報告して、官房長官の御判断でまたしかるべき委員会等を設けて、そこで最終的な決定がされる、私どもといたしましてはかように考えております。
  230. 春田重昭

    春田委員 この問題につきましては、持つべきであるという声もありますし、時期的に見てまだ早いのではないかという声もございますし、いろいろあるわけでございますけれども、事務当局としてはどのようにお考えになっておりますか。
  231. 藤森昭一

    ○藤森説明員 私どもはただいまのスタンスといたしましては、保有するという基本的な線に沿って問題点を検討しているわけでございまして、持つべきか否かという点について私どもは判断をする立場にはございませんけれども、各国の実情等から考えてみますと、先進国のみならず、開発途上国におきましても専用機と言われるものを持っておるのがほとんどであるというふうに考えられますので、その線から言うと、日本という国がその国際的な役割り等からかんがみまして、これを持つことは決して不適当ではないというふうに事務的には考えております。
  232. 春田重昭

    春田委員 確かにいま参事官がおっしゃったような理由もありましょうし、政治が国際化を迎えた事情もありましょうし、黒字減らしの一環としても必要でありましょう。先ほど原委員からは、個人的には持つべきであるというような御意見があったそうでありますけれども、私の個人的な意見は、やはり時期という問題があると思うのです。しかし、確かにそういう理由があったとしても、五年目を迎えた不況で国民が苦しんでいる、そういうときに政府専用機、大体一機百億円くらいということで報道もされておりますし、それが三機あったら三百億、持てば非常に経常費も高くなるという問題もございますし、私は時期があると思うのですね。そういう点で、時期ということは国民のコンセンサスを得るという問題もありますから、より慎重に検討していただきたい、このことを要望いたしまして、この問題につきましては終わらせていただきます。  続きまして、先ほどこの問題も出ましたけれども、猛獣ペットの管理、規制の問題でございます。  より具体的に質問させていただきたいと思いますが、この問題はどこの省庁が責任を持ってやっていくのかという問題で、いままでいろいろ論議されておったみたいでございます。自治省なのか、それともいわゆる警察庁なのか、総理府なのか、いろいろな論議がされてきたわけでございますけれども、責任を持ってどこの省庁がやっていくのか、これは総理府の方から御答弁いただきたいと思うのです。
  233. 小野佐千夫

    小野(佐)説明員 動物の保護及び管理に関する法律は、総理府の方で所管いたしております。
  234. 春田重昭

    春田委員 だから、それは主体は牛や犬やネコという保護動物ですよね。私が言う猛獣ペットについての管理、規制はどこがやるかということです。
  235. 小野佐千夫

    小野(佐)説明員 動物の危害から人間を守るという点につきましては、動物の保護及び管理に関する法律の第六条に基づきまして、各地方の公共団体が条例によってこれを制限することができるということに相なっております。
  236. 春田重昭

    春田委員 先ほどの原委員質問からしてみても、非常に何かピントが合わないわけでございますけれども、いわゆるいまの答弁からいったら、地方自治体が条例をつくって、それを管理運営するのだというような答弁みたいでございますけれども、政府としては、総理府がいわゆる保護動物も含めて、猛獣ペット等もすべて管理、規制するのだ、このように理解していいのですか。
  237. 小野佐千夫

    小野(佐)説明員 それは地方公共団体がおやりいただくということになっております。
  238. 春田重昭

    春田委員 その地方団体をいろいろな面で行政指導していくいわゆる政府の責任があるわけでしょう。それはどこの省庁がやるかというのです。
  239. 小野佐千夫

    小野(佐)説明員 その点につきましては、関係省庁といろいろ協議しながら私の方で一緒になってやっていくということになっております。
  240. 春田重昭

    春田委員 どうも合わないですね。いわゆる関係省庁と連携をとると言っても、中心のいわゆる所管の省庁はどこなんですか。  長官、猛獣ペットにつきましては総理府は責任を持ってやっていくべき立場じゃないですか。先ほどの室長答弁と何か合わないのですけれども、先ほどの原質問のあれから見ても、何か非常に逃げの姿勢が見えるわけでございますけれども、この猛獣ペットというのは、この春ですか埼玉県の児玉町でライオンの飼い主殺しが起こりました。その後いろいろな反響を呼んで、先ほどもお話があったように、全国で一千頭以上の猛獣ペットがおるわけでしょう。そういう面からも、野放し状態になっているこの問題をきちっと今後規制、管理しなかったら、埼玉県の事故が今後あらゆるところに起こってくるのじゃないかという危惧があるわけですよ。そんなあいまいな答弁でなくて、どこの省が責任を持ってやっていくのか。これは総理府じゃないですか。長官、どうですか。
  241. 稻村佐近四郎

    稻村国務大臣 御指摘のように、埼玉県下のあの不幸な問題で、各党の中で猛獣の個人飼育を禁止しようじゃないか、各党議員立法等でいこうじゃないか、こういう動きが先般あったことは御承知のとおりです。ところが、国会の都合の関係から、これは提出するに至らなかったということでございます。  いま猛獣を含めて、毒蛇、こういったものも入るだろうと思いますが、これは総理府が所管してはどうか、こういう問題ですが、それを避けるというわけではありませんが、いまここで何か立法とか何かがあって、総理府、これを所管しろよということになりますと、これは大変御迷惑のかかることでございますから喜んで進んで所管事項として持っていきたいと思っておりますが、しかしながら、猛獣の飼育問題については現在のところ動物審議会で、これをどうするか、こういう問題が検討されておりまして、この結果、総理府、君の方でやれよ、君の方が一番適当に思う、こういったことになれば、当然猛獣を含めて総理府が所管をする、こういうことになると思います。  そういう意味で、いまの場合私の方から進んでこれはぜひ引き受けさせていただきたいとは、これは大変名誉なことでございますけれども、まだ諮問機関等々がそういう結論が出ておりませんので、今後積極的に進めていただくようにしたい、こういうふうに思っております。
  242. 春田重昭

    春田委員 それが野放しになっている元凶だと思うのですよ。  この前参議院で決算委員会がございました。加藤自治大臣が答弁しておりますけれども、加藤自治大臣は、これはもう私のところでございません、いわゆる動物の保護及び管理に関する法律から見て当然総理府の所管でございますという形で、自治省の方は逃げているわけですよ。いまのようなそういう長官発言であれば、どこの省庁が責任を持ってやっていくのか、その間事故が起こったらどうするのか、これは非常に大きな問題だと思うのです。少なくとも現行法ではこの動物の保護及び管理に関する法律しかないわけです。これは総理府の所管の法律であって、この第六条、第七条を受けて都道府県が条例をつくるという形になっているわけです。  ところが室長、御存じですか。都道府県で条例をつくるように指導するのは私はやはり総理府だと思うのですけれども、現在地方自治体でこの条例をつくっているのは何市、何県あるのですか。
  243. 小野佐千夫

    小野(佐)説明員 現在までに条例をつくっているのは京都府と横浜市でございます。
  244. 春田重昭

    春田委員 全国で都道府県は四十七でしょう。指定都市が九都市ありますね。合わせて五十六あるわけです。その中でたった京都と横浜だけでしょう。こういう状態なんですよ。条例をつくるように総理府としては指導なさっているのですか。
  245. 小野佐千夫

    小野(佐)説明員 先般の全国課長会議におきましても、埼玉県の事件の例もございますので、なるべく速やかに条例を制定してほしいということを私の方では指導いたしております。私どもが聞いておりますところによりますと、現在数県で条例制定の動きが出ているようでございます。
  246. 春田重昭

    春田委員 そういう全国の課長会議で条例をつくるように指導したということは、総理府としてはやはりこの法律があるから一応いまのところは責任を持ってやっていこうということでやっているわけでしょう。そう理解していいわけですか。
  247. 小野佐千夫

    小野(佐)説明員 そのとおりでございます。
  248. 春田重昭

    春田委員 したがって長官、動物保護審議会の答申が出るまでということを何回もおっしゃっておりますけれども、この答申が出るまでは当面は総理府が責任を持ってやっていく、こう理解していいですね。
  249. 稻村佐近四郎

    稻村国務大臣 いま御指摘の点は猛獣の点だと思います。猛獣の取り扱いということになりますと、やはり個人の飼育はどうなんだ、あるいはこういう場所でどうなんだ、こういう問題でないと管理体系が整わないのだと思います。そういう意味で、その間はどこも扱うところがないから総理府が扱えばいいじゃないか、また総理府は、いまの動物の保護及び管理に関する法律があるから猛獣に対しては審議会の結論が出るまで責任を持つべきじゃないか、この気持ちはよくわかりますが、やはり猛獣という立場から、いまここで私が明確に総理府はその間責任を持ちますと、こう申し上げましても、立法の措置がないと、またこれに規制をするものがないということになりますと、私が責任を持つとこう申し上げておいて、明日また埼玉県のような事故が起きたとするならば、一体きのうの発言は何であったか。責任を回避するわけではないのですけれども、私どもの方ではできる限りの努力はいたしますが、その間のすべての責任は総理府で持て、こうおっしゃいますと、やはり二、三歩引き下がらなければならない、こういうことをぜひひとつ御理解を賜りたいと思います。
  250. 春田重昭

    春田委員 実は長官自身としては、この間のような事故が起こった場合どこが責任をとるべきだと思っておりますか。
  251. 稻村佐近四郎

    稻村国務大臣 これはだれが責任をとるとか責任をとらないとか――現在飼い主等もわかっておりますから、やはり地方自治体等々で埼玉県下のあの状態というものをよく知っていただいて、現在のところは飼い主が間違いのない飼育管理をしていただくようにわれわれの方からも、いまは所管ということでなくても一部それを保護している、またこれが立法化された場合、立法化されなくても何かの形でなった場合は、当然総理府の中に来るであろう、こういう心構えから、そういうところを速やかに調査をさせて、それが果たして安全であるか、あるいは危ない形で飼育されておるのか、こういったことは早急に調べてみたい、こう思っております。
  252. 春田重昭

    春田委員 長官、条例ができているのは二つだけなんですからこれはすぐできないですよ。いろいろな本会議が開かれなかったらできないわけですから。  私はこの問題がはっきりしなかったら先に進まないわけですよ。少なくとも現行の動物の保護及び管理に関する法律は総理府で、この中には保護動物も入っているし猛獣も含めているわけですよ。しかし、私が最後の結論として言いたいのは、猛獣ペットに関してはこの法律では非常に弱い、新しい立法が必要ではないかということを言いたいのですけれども、当面はないですから。この中に含まれているわけですよ、猛獣だって。したがって、新しい法律ができるまでは総理府が責任を持ってやっていくべきではないか、こういう論議を展開しているわけですよ。その課長会議等で年一回やっているわけでしょう。少なくとも責任の一端は感じているわけですから、やはり総理府としては責任を持ってもらわなければ困りますよ。どうでしょうか。
  253. 稻村佐近四郎

    稻村国務大臣 お答えいたします。埼玉県の場合は、もう指導要綱というかつくりまして、そして速やかに条例をつくる、こういう運びになっております。そういう意味から、個所等もそう多くないわけでございますから、そういうところに働きかけて一日も早く条例をつくっていただくというふうにして私の方から進めていくということを、これはここでお約束いたします。  しかしながら、その責任の所在という問題ですから、そういう問題に行きつ戻りつやっておってもいけませんので、この辺ひとつ御了解賜って、私どもも決して法案がないから、あるいは法律がないから置き去りにしておるものではない、この担当室も一生懸命に今後の対策――今後ということは、むしろ現在の飼育されておられるところの環境というものをよく調査をいたしておりますので、責任の問題は、それでは君は持つと言って何を根拠にして持つのだとくれば、これはまた大変なことでございますから、責任ということよりかむしろ対策、こういうことでひとつお願いを申し上げたいと思います。
  254. 春田重昭

    春田委員 それでは私は、総理府が責任を持って今後対策を練っていただきたいということを前提にしながら、次の質問を展開してまいりたいと思いますので、よろしくお願いしたいと思います。  先ほどの質問の中でも、いま全国で猛獣ペットはどれくらいおるかということが御説明ございました。全国二百八十三個所で一千百三十八頭というのがございます。  そこで、この数字というのは、どうも警察庁が派出所、交番所を通して掌握したみたいでございますけれども、必ずしも正確な数字ではないようでございます。もっともっと数がふえてくるのではないかと思うのです。  そこで、数が正確に把握されてないというのは、飼育する人、またいわゆる動物を販売する人の資格といいますか許可証といいますか、そういう面が明確でないから正確な動物の数字が出てこないと思うのです。犬は登録制というのがございますので大体の数はわかりますけれども、最も危険動物である猛獣に関してもいわゆる登録制にすべきではないか。業者の方にも許可証を持たせていわゆるライセンスを与えてやるべきではないか。車を運転するのにも運転免許証が要りますし、ガソリンスタンドを経営するにしてもそういう危険物の取扱主任の免許は要るわけでありまして、それぞれ当然必要なところには許可証が要るわけですよ。こういう面を今後やはり考えていく必要があるのではないか、こう思いますけれども、どうでしょうか。
  255. 小野佐千夫

    小野(佐)説明員 先生ただいま御指摘の猛獣による危害防止対策を進めていくに当たりまして、猛獣がどのくらいどこにいるかということを把握することが必要だと考えます。このために、猛獣を登録させるということも一つの方法であろうかと考えますが、現在動物園等におきましてはその数が判明しておりますし、また個人の愛玩用あるいは客寄せ等の営業用に飼育しております猛獣等につきましては、先般の警察庁の調査結果もございます。さらには地方公共団体に対しまして、個人の飼育を許可制とする条例の制定につきましては、先ほどもお答えいたしましたように、促進方をお願いしているところでございまして、逐次その詳細な実態の把握に努めてまいりたい、このように考えております。
  256. 春田重昭

    春田委員 私が言っているのは、登録制にすべきじゃないか、また販売業者については許可証が必要ではないかということですけれども、この点どうですか。
  257. 小野佐千夫

    小野(佐)説明員 猛獣の危害を防止する方法といたしまして、猛獣の販売に資格を与えるように持っていくとか、あるいは個人の飼育を許可制にするといったようないろいろな方法があろうかと思われます。目下これらのこと等も含めまして、動物保護審議会におきましていろいろ御検討をお願いしているところでございます。
  258. 春田重昭

    春田委員 検討中ということですね。  それからもう一点、国内で繁殖した動物を飼う人もありますけれども、輸入の場合もあるわけですね。この場合の検疫の問題です。ところが、農林省に聞いたところによると、偶蹄類、たとえばひづめが二つに割れているような動物については検疫している。牛とかラクダとか、それから馬、これはやっているというのです。ところが、ライオンやクマやヒョウ、トラ、これについては、いわゆる偶蹄類でございませんから、検疫をやっていないわけですよ。もしこれらの動物で悪性の伝染病を持った動物が入ってきた場合、大変なことになるわけですよ。これはいまたしか農林省がやっておりますけれども、こういう点も含めて農林省に、総理府としてはやはり進言したりまた指導したりすべきではないかと思いますけれども、この点どうでしょうか。
  259. 小野佐千夫

    小野(佐)説明員 今後関係省庁ともよく協議してまいりたいと思います。
  260. 春田重昭

    春田委員 いずれにいたしましても、この猛獣ペットにつきましては、現行法では動物の保護及び管理に関する法律がございますし、そのほか犬、ネコに関する基準、展示動物に関する基準、こういうものがございますけれども、猛獣ペットに関する基準がないわけですね。これはもう先ほどから何回も論議しているとおりでございます。そういう点においては、やはりいまこそ飼育基準や規制というものを早急に決めるべきであると思いますが、この動物審議会の答申というのは大体いつごろ出そうなのですか。
  261. 小野佐千夫

    小野(佐)説明員 一応年内を目途に何らかの御審議の結果をおまとめいただくように、目下お願いしているところでございます。
  262. 春田重昭

    春田委員 いずれにいたしましても、第二次、第三次の事故が出ないように、早急にひとつ方向づけだけを決めていただきたい、そして審議会の答申が出ましたならば即座に責任体制をとっていただきたい、このことをお願いいたしまして、この問題につきましては終わりたいと思います。  続きまして、沖繩の雇用問題について若干お尋ねしたいわけでございます。  沖繩の雇用、失業の情勢でございますが、全国平均と沖繩と比較した場合、非常に失業者数が多いわけですね。そこで、全国平均と沖繩を比較した場合どのようになるのか、一番新しい時点での御説明をいただきたいと思います。
  263. 鹿野茂

    ○鹿野説明員 沖繩県におきます雇用、失業情勢は、先生御指摘のとおり大変厳しいものがあるわけでございます。復帰当時沖繩県の失業率は三・七%で、その時点におきます全国平均が一・三%であったわけでございます。したがいまして、約三倍に近い失業率であったわけでございますが、その後沖繩県における失業情勢というのは年を追いまして悪化の傾向をたどりまして、昨年の六月には七・九%という非常に厳しい率があったわけでございます。本年四月以降若干好転の兆しが見えておりまして、四月には七・二%、五月には六・〇%、六月には五・七%になっておるわけでございます。しかしながら、この六月現在におきます全国平均の失業率が二・二%でございますので、依然として三倍に近い厳しい失業率にあると言えるわけでございます。
  264. 春田重昭

    春田委員 お説のとおりでございますが、全国平均と比べた場合約三倍近く沖繩は高いわけですね。これはどういう原因なのですか。
  265. 鹿野茂

    ○鹿野説明員 基本的には、沖繩県におきます産業基盤が弱いということで、雇用吸収率が弱いということであろうかと思いますが、さらにつけ加えまして、本土復帰後に米軍の基地関係からの離職者が非常に多く発生した、四十七年以降約二万人近い離職者の発生があるということが第一点ではなかろうかと思うわけでございます。  第二点目といたしましては、先ほど申し上げましたように、沖繩県におきます雇用基盤が弱いということで、新しく学校を卒業する方の中で、かなりの方が失業という状態のまま定着をしてしまうということと、さらにつけ加えまして、かなりの方々が県外就職いたしておるわけでございますが、その若い人たちの中にUターン者がきわめて多いということが、また一つの大きな原因であろうかと思うわけでございます。  さらに、海洋博後におきます企業倒産も五十一年、五十二年と増加の傾向が見られておりますので、そういうようなことも一つの理由になっているかと思うわけでございます。
  266. 春田重昭

    春田委員 確かに若年層の失業者が高いわけですよ。十五歳から二十九歳までの統計をとってみましても、全国平均が四一%なのに沖繩は五八・六%、十五歳から三十九歳までの例をとってみますと、全国平均が六〇・一%、沖繩では七二・四%になっております。このように非常に高いわけでございます。いまの御説明ではUターン現象があるということでございますが、この若年層の失業者が非常に高いという原因、もっと具体的に言った場合どうなるのか、どういうところに原因があるのか、この辺もちょっと説明していただきたいと思います。
  267. 鹿野茂

    ○鹿野説明員 先ほどの御説明でちょっと触れさせていただきましたけれども、一つには沖繩県におきます若い、新しく学校を卒業する方々が、沖繩県内の就職を希望する、しかし雇用機会がないままに、そのまま失業の状態にあるということが一つの原因であろうかと思います。  さらにつけ加えまして、沖繩県の場合はまだ進学率が非常に悪いわけでございます。いわゆる進学浪人という状態のまま失業の状態に入ってしまうということも一つの原因であろうかと思うわけでございますが、やはり若年者の失業率が高いという一番大きな原因は、Uターン者が非常に多いということが挙げられるのではなかろうかと思うわけでございます。  このUターン者の状況につきましては、実態を正確に把握することはなかなか困難であるわけでございますが、Uターンをして沖繩県内の安定所に再びあらわれた人の実態を調べた数字がございます。この数字を見ますと、五十一年度におきましては二千八百八十八人になっております。五十二年度におきましては二千七百五十五人になっておるわけでございます。これらのUターン者の年齢別構成を見てみますと、やはり約六五%以上の人たちが二十四歳以下の若い方で占められておるわけでございます。したがいまして、当然本土へ就職してからの就職の期間も三年未満というところに大部分の方が集中をいたしておるわけでございます。  ちなみに、このUターン者のUターンの理由等をよく見てみますと、県内で就職したいという方が六八・六%、家庭の都合というのが一二・八%、したがいまして、八〇%強の人々がほとんどこういうような理由でUターンをしている。事業所の都合であるとか労働条件に問題を持つというUターン者は合わせまして約九%にしかなっていないわけでございます。
  268. 春田重昭

    春田委員 そこで、これらの異常に高い失業者に対してどういう手を打っているか、どういう施策があるかという問題でございますが、これは、若年者も含めまして、いわゆる沖繩全体の問題として失業者に対してどういう手を打っているのか、現在どういう対策をやっているのか、この辺御説明いただきたいと思います。
  269. 鹿野茂

    ○鹿野説明員 先ほどから申し上げておりますように、沖繩県は非常に厳しい失業情勢にあるわけでございます。これを特徴的に申し上げますと、まず一つは、先生御指摘いただきましたように、若年の失業者が非常に多いということ、それからもう一つは、基地関係からの離職者が多いということ、この二点が沖繩県の失業情勢の特徴的な姿ではないかと思うわけでございます。したがいまして、私どもといたしましては、この沖繩県の失業情勢の特徴に合わせました対策を講じておるところでございます。  一つは、若い方々につきましては、やはり沖繩県の将来の産業の基幹労働力になっていただくという意味からも、できるだけ近代的なというか、そういう産業に就職していただいて必要な技能を身につけていただく、こういう観点から県外就職への広域職業紹介を推進させていただいているところでございます。そのために、特に本年度から沖繩県外へ就職する方々につきましては、就職資金貸付制度というのを設けまして、就職の準備に必要な一定の資金を貸し付けるという趣旨と合わせまして、二年以上定着したならばその返還を免除するという意味で定着への意欲を向上させるというような施策なり、あるいは沖繩県の方々を採用していただいた事業主に対しましては雇用奨励金を支給する、さらに、沖繩県外へ就職した人たちのめんどうを見ていただくという意味での就職援護相談員というようなものを全国各地に配置をしたいということで、若い方々の県外就職を推進しているところでございます。  さらに、県外に就職し得ない中高年の方々につきましては、やはり沖繩県の中で雇用機会を確保しなければならないという観点から、本年度も大幅な増額を見られました公共事業への吸収を図っておるところでございます。沖繩県におきましては、沖繩振興開発特別措置法に基づきまして、無技能者については六〇%という高い吸収率が課せられておるわけでございます。この吸収率の活用を図って公共事業への吸収を図っていく、同時に、やはり中高年齢雇用開発給付金等の活用を図りながら、沖繩県内の企業に中高年の方々ができるだけ吸収できるようにしてまいりたい。  一応こういうような施策を基本にいたしながら、さらに沖繩県の離職者につきましては、一定の方々に就職援護制度もございますので、この就職援護制度の活用を図りながら職業訓練なり職業紹介の推進に努めているところでございます。
  270. 春田重昭

    春田委員 労働省は労働省なりにそれぞれやっているわけでございますけれども、いかんせん失業率は相変らず高いわけですね。  そこで、沖繩開発庁があるわけでございますけれども、開発庁としてはどういう対策を練っているのか、お答えをいただきたいと思います。
  271. 亀谷禮次

    ○亀谷説明員 お答え申し上げます。  ただいま労働省の方から、いまの厳しい雇用の状況及びその中身につきましては、御答弁があったところのとおりでございます。  私どもは、御案内のように、四十七年に沖繩が復帰しましてから現在の沖繩振興開発十カ年計画、この春でちょうど六年を経過したわけでございます。その中で沖繩県と十分協議した上の振興開発計画を策定して現在やっておるところでございますが、先生も御案内のことだと思いますけれども、社会資本の整備が、戦後三十年近い間のおくれがかなりございますので、そういったものを中心に、この六年間急速な投資をやってまいりました。そういったことで、私どもの目から見まして非常におくれておりました社会資本整備がかなり充実をしてきたと考えております。そういったことで、おおむね計画の中身としてのそういった面は順調にいっておると思いますと同時に、この六年間、実質の経済成長率も本土に比べてかなり高い成長をしてきたわけでございます。  ただ、この雇用にも関連をいたしますけれども、何分にも産業構造の中におきます第二次産業を中心にした雇用吸収効果の高い部面が非常におくれておる、こういうところからいたしまして、当然、長い目で見まして労働雇用にも影響を与えますが、何といってもやはり地場産業を興す以外に当面の大きな方策がないわけでございます。そういったことで、私どもも極力現在の一次、二次、三次産業を絡めた地場産業の振興ということに鋭意努力をいたしますと同時に、当面やはり振興開発事業を施行することによるところの公共事業を中心にした労働力の吸収という面も無視できないわけでございますので、たとえば現年度、五十三年度の予算も、昨年当初に比べまして三五%近い非常に高い伸びで一応組んで、現在執行中でございます。  そういったことを踏まえまして、たとえば、できるだけ地場の中小企業にも発注をさせるというふうないろいろな手をとっているところでございまして、なおかつ沖繩に何といってもそういった新たな企業を興すという必要もございますが、先生御案内のように、本土を含めていま非常に厳しい状況の中で、必ずしも意に沿うようにはまいりませんけれども、本年度から沖繩振興開発金融公庫に新たに出資の機能にも付与いたしまして、せっかく県とも相談をしまして、できるだけ地場の企業を振興させるという面もかたがた努力をしておるところでございます。
  272. 春田重昭

    春田委員 予算が前年度の三五%伸びたということは聞いておりますけれども、いかんせん失業者の方は相も変わらず数多いわけでございまして、いわゆる事業と就職というものが結びつくような施策を今後とも講じていただきたいと思います。  時間がございませんので、この問題、もう一点だけ聞いて終わりたいと思いますが、これは労働省の方にお尋ねしたいわけでございますけれども、中高年齢者等の雇用の促進に関する特別措置法という法律がございますね。この中で、特定地域の開発就労事業というのが設置されておりますけれども、沖繩県はこの特定地域に指定されているのかどうか、お答えいただきたいと思います。
  273. 小野進一

    小野(進)説明員 沖繩県は御指摘の中高法の特定地域に指定されておりません。
  274. 春田重昭

    春田委員 なぜ特定地域に指定されていないのですか、これだけ失業率が高いのに。
  275. 小野進一

    小野(進)説明員 沖繩の地域につきましては、沖繩振興開発特別措置法で、同じように労働大臣が職業安定、職業紹介に関する計画を定めるようになっておりますし、また同じ沖繩振興開発法の中で公共事業に関する失業者吸収率の制度も定められておりまして、現在のところ、特定地域の指定はいたしておりません。
  276. 春田重昭

    春田委員 確かに振興法の中にうたってありますけれども、しかし、これだけでは救えないわけですよ。現実に国内平均の約三倍ぐらいの失業者がおるわけですから、私はこの沖繩振興開発法とともに、いわゆる特定地域に指定して沖繩の県民も救っていかなかったならば、戦後三十年間、アメリカの傘下で相当苦しい思いをしながらきた、やっと本土復帰になった、しかしながら一向によくならない、海洋博も国策としてやった、しかし決して成功とは言えない、その海洋博の後遺症によるいわゆる倒産が非常に続出してきた、こういう問題もございますから、私は沖繩の面は、当然沖繩振興法プラスアルファとしてもっと強力ないろんな施策を講じていかなかったならば、失業者は解消しないと思うのですよ。そういう面でも、この特定地域は沖繩においては検討する必要があるのではなかろうかと思いますけれども、どうでしょうか。
  277. 小野進一

    小野(進)説明員 特定地域に指定されます大きな効果は、先ほど申し上げましたような、労働大臣がその地域の雇用に関する計画を定めるということと、それから失業者吸収率に関する規定が適用されるということでございます。この両者は、さっき申し上げましたように沖繩振興法で沖繩の方にも適用がありまして、それで中高法の規定の適用が除外されたわけでございます。  ただ、中高年齢者に対して手帳を支給しつつ、職業指導、職業紹介をするという仕組みは沖繩の方にも適用されておるわけでございますので、その大きな効果であるところが競合いたしておりますので、沖繩について、沖繩全体がそういう沖繩振興法の対象になっているのに重ねて特定地域として指定することがいいのかどうか、改めて検討させていただきたいと思います。
  278. 春田重昭

    春田委員 最後に、交通遺児対策について御質問いたします。  車社会と言われる今日、交通事故が及ぼす影響は非常に大きいわけでございます。とりわけ輪禍によって生じたいわゆる交通遺児は社会的に大きなハンディを負っております。将来ある子供の育成には万全の配慮がなされなければなりませんけれども、現在全国的に交通遺児は何名ぐらいいるのか、これに対してどのような施策が講じられているのか、簡単に御説明いただきたいと思います。
  279. 平井清

    ○平井説明員 交通遺児と言われておる方々でございますが、交通事故によって保護者を亡くされた方は、昭和五十一年度総理府で運輸省と共同して行いました調査の結果によりますと、五万七千六百二十人という交通遺児の方がいらっしゃいます。ついでにいわゆる遺児ということで調査をいたしましたところによりますと、その他の交通事故以外の災害で遺児となられた方が二万五千二百九十五人、そのほか一般的に病死、離別その他の原因で保護者がおられない、遺児であるという方が五十九万一千八百五十六人という結果が出ております。これは大体高校以下の年齢で、高、中、小学校、そのほか幼稚園、乳児院、そういう施設に入っておられる方、これらの方々を調査した結果でございます。  これらの遺児の方に対する対策でございますけれども、一般の遺児対策といたしましては、厚生省の関係では児童扶養手当でございますとか母子福祉年金、母子福祉資金の貸し付け、こういったものがございますし、労働省の関係におきましては寡婦の雇用奨励金といった制度もございます。これは雇用保険法の中で決められておることでございますが、そのほかに文部省関係で就学奨励援助といったものもございます。  これらの制度のほかに、交通遺児のみを対象とした制度というのは幾つかございます。三つございますけれども、一つは自動車事故対策センター、これは運輸省所管の特殊法人でございます。この所管で義務教育終了以前の交通遺児の方々に対しまして育成資金の貸し付けというものをやっております。これは月額として九千円、一時金といたしまして当初二十万円、また小中学校に入学いたしましたときに支度金として二万七千円というような金額を、無利子で二十年間貸し付けるという制度でございます。  それから高校、大学という大きい層の交通遺児対策といたしましては、交通遺児育英会、これは総理府と文部省の共管の公益法人でございますけれども、これから高校生に対しましては月額一万円、大学生に対しては月額二万円という奨学資金の貸し付けの制度、貸し付けの仕方は先ほどの事故対策センターと同じでございますが、これをやっております。また、五十三年度からは入学一時金ということで、特に入学時に経費のかさみます私立高校に対して二十万円、それから私立大学に対しては二十五万円という入学一時金の貸し付けをいたしております。  それから三番目でございますが、交通遺児の高等学校の授業料につきまして減免事業が行われております。これは運輸省の所管でございまして、いわゆる自動車損害賠償責任再保険特別会計、自賠特会でございますが、ここから公立の高等学校の授業料につきましては全額免除、私立の高等学校につきましては半額免除ということをめどにいたしまして、都道府県と国とがそれぞれ折半という形で補助をいたしております。  遺児の数、それに対する助成措置等につきまして御説明申し上げました。
  280. 春田重昭

    春田委員 いま最後に説明のありました交通遺児等の高等学校授業料減免事業がありますね、これは昭和五十一年度から始まったわけでありますが、五十一年度は運輸省、五十二年度では総理府と運輸省が共管した。さらに五十三年度にはまた運輸省に戻ったという経緯があるわけでございますが、これはどういう理由なのか、時間がございませんので簡単に説明してください。
  281. 平井清

    ○平井説明員 御説明申し上げます。  交通遺児のみを対象とする福祉対策でございますので、当初、運輸省の先ほど申し上げました自賠特会から補助金が出されるということになったわけでございますが、五十二年度につきましては、これは運輸省も交通遺児対策については調査もいろいろいたしておりまして所管といたしておりますので、自賠特会とそれぞれ折半という形で共同で所管するという形になったわけでございます。ところが、五十三年度につきましては、折から補助金の整理統合という要請が非常に強く打ち出されまして、また両方で共同で所管しておりますと、補助金の交付手続がきわめて繁雑になるというところから、そういう両方で折半という形のもの、これはほかにもあったわけでございますが、これをどっちかへ整理統合しようということでございますので、当初運輸省へついておったということもございまして、この遺児の高校授業料減免事業については運輸省の自賠特会の方へ全部つけるという形で整理されたという経緯でございます。
  282. 春田重昭

    春田委員 となれば、交通遺児対策に関しては、いわゆる総理府独自の事業というのは行われていないわけですよね。先ほども御説明あったように、育成資金は運輸省所管でございますし、それから奨学金の問題につきましては文部省と共管になっておりますし、いま言った高校授業料の減免事業というのは運輸省に戻ったということで、いわゆる総理府が独自でやっていく事業はないわけでございます。何らかの独自の交通遺児対策が必要ではないかと思うのですけれども、どうでしょうか。
  283. 平井清

    ○平井説明員 総理府というものの職責でございますけれども、総理府が交通遺児対策をやるということは別にどこにも積極的に書いてあるわけではございません。いろいろな省庁にまたがりますので、調整をやり、どこもやれないところをうちでやるという形でやってまいったわけでございます。  今回も、たとえば交通事故相談所というものは運輸省と共管でやっておったわけでございますが、先ほどのような整理統合の際には総理府でやるという形になりました。今回、高校の授業料の減免については運輸省でやるということになりましたけれども、運輸省といたしましてもこの高校授業料の減免事業は重要事業という中で今後改善を図っていくということでございますので、その点は運輸省と相談しながら今後善処してまいりたいと考えております。あえて総理府でなければならぬというふうには考えておりません。
  284. 春田重昭

    春田委員 時間がございませんのでそれ以上質問いたしませんけれども、さらにお尋ねしたいわけでございます。  この制度、これは国と地方公共団体が二分の一ずつ負担しておりますね。そこで、現況の地方自治体は非常に赤字がふえておるわけでございます。この二分の一負担というものはやはりアップする必要があるのではないかと思いますけれども、どうでしょうか。
  285. 平井清

    ○平井説明員 お答えいたします。  これはそういう形で制度として発足いたしたわけでございますけれども、公立の高校につきましては、元来都道府県といたしましては独自に相当広範囲に低所得者につきましては減免事業を実施いたしております。したがいまして、国との折半という形で遺児の高校授業料減免事業の適用を受けますと、地方はかえって財源的には楽になるという面もございますので、あとは私立だけという形でございますから、いままでのところ各都道府県から分担率の点につきまして特に御意見は承っておりません。現状で適当なのじゃないかというふうに承知いたしております。
  286. 春田重昭

    春田委員 さらに、これは高校生のみが対象でございますけれども、大学まで広げるという意思はございませんか。拡大するという意思はございませんか。
  287. 平井清

    ○平井説明員 遺児の保護という観点から参りますとそれは大学までいったのにこしたことはないわけでございますけれども、何分にも交通遺児だけという制度でございます。ほかの、はるかに数多い遺児一般、また生活困窮の一般の家庭とのつり合いというものを考えなければなりません。高校の場合には、もう高校教育というのが義務教育に準ずるということで強い要望がございましたのでこうやって実現いたしたわけでございますけれども、大学教育ということになりますとやはりその点では大分差がある、義務教育と同程度だというところまではまだ大分距離がございますので、そういうところへ急に一足飛びにいくというわけにはなかなかまいらぬだろう、今後とも慎重に検討を要する問題ではないかと考えております。
  288. 春田重昭

    春田委員 それから入学の一時金の問題でございますが、これは授業料とともに非常に父兄から声があるわけでありますけれども、この入学一時金の貸与制度というものを考える必要があるのではないかと思いますけれども、どうでしょうか。
  289. 平井清

    ○平井説明員 入学一時金の問題につきましては、先ほどちょっと触れましたように、交通遺児育英会の方で私立高校及び私立大学入学の際の一時金制度を今年度から設けたということでございます。また、こういう制度の今後の充実について指導を図っていきたいというふうに考えております。
  290. 春田重昭

    春田委員 私立はやっているみたいですが、公立がないわけですよね。公立だって大体十万近くかかるわけですよ。そういう面から言っても、公立の場合も考える必要があるのではなかろうかということがあります。  いずれにいたしましても、時間がございませんので、最後に長官の決意をお伺いしたいわけでございます。  ここに、私も全部は読ませていただく時間はございませんでしたけれども、「交通遺児の教育調査」、「交通遺児の母親の職業調査」、「交通遺児の母親の疾病と医療」と、交通遺児育英会がいろいろ調査をしております。この中をかいつまんで読んでみますと、交通遺児の非常に苦しい状況がよくわかりますし、母親のみずからの健康を度外視した犠牲の上に立って生活をやっている、また学校に行っているという面があるわけでございます。総理府にも交通対策室というのがあるわけですから、その意味からしても、総理府が責任を持って交通遺児対策については積極的にやっていただきたい、このように要望する次第でございます。  長官の決意をお伺いいたしまして、私の質問を終わりたいと思います。
  291. 稻村佐近四郎

    稻村国務大臣 交通遺児の全般についていろいろ御意見を承ったわけでございますが、大変重要な問題ばかりでございますので、各省庁と緊密な連絡をとりまして適切な処置をとってまいりたい、こういうふうに思っております。
  292. 楯兼次郎

    楯委員長 安藤巖君。
  293. 安藤巖

    ○安藤委員 私は、国際婦人年の国内行動計画の前期重点目標についてお尋ねをします。  この重点目標の中で年次計画を立てて達成目標を掲げておりますのは、若年定年制、結婚退職制などの改善年次計画だけであります。したがいまして、これが計画どおりに実施をされて成果が上げられるかどうかというのは、まさに国内行動計画全体が達成されるのかどうかにかかってきますし、国際婦人年の目標達成に対する政府の姿勢が問われることになるというふうに考えます。こういう観点で総理府並びに労働省にお尋ねをしたいと思います。  この年次計画によりますと、「昭和五十二年度においては、行政指導対象の実態把握を行う。」ということになっております。労働省の婦人少年局は  ことしの六月二十二日に実態把握をした結果、把握をした企業の数は一万四千六百というふうに発表されました。年次計画に言う行政指導対象の企業はこれで全部把握できたということになりますかどうか、これで実態把握は完了したと言えるのかどうか、まず最初にお尋ねいたします。
  294. 高橋久子

    ○高橋説明員 お答えいたします。  年次計画に基づきまして、昭和五十二年度にはこういった制度を行っている企業を鋭意把握したわけでございまして、先生御指摘のように一万四千六百の数字を把握いたしました。しかしながら、これで把握漏れがないとは言えませんので、私どもは今後ともさらに把握に努めてまいりたい、このように考えております。
  295. 安藤巖

    ○安藤委員 そこで、予想される行政指導対象の企業というのは、大体どのくらいあるというふうに見込んでおられますか。
  296. 高橋久子

    ○高橋説明員 実は私どもの方で、三十人以上の企業につきましては雇用管理調査によりまして、定年制を実施しているかどうか、それからその定年制を男女別に実施しているかどうかということについて調査をいたしております。これはあくまでも統計の手法によるわけでございますので、個々の企業名までわかるわけではございませんが、これで推計いたしますと、約一万を若干超す程度の企業があるというふうに把握されているわけでございます。  ただ、三十人未満の企業につきましては全く推計する手だてがございませんので、私どもの方の企業名を把握するという作業は今後とも続けまして、できるだけ全体の企業が把握されるように努力をしてまいりたい、このように考えております。
  297. 安藤巖

    ○安藤委員 いまおっしゃった調査は、女子労働者の雇用管理に関する調査というのだと私は思いますけれども、私の方でちょっと調査をした数字があるのですが、総理府統計局の昭和五十年度の事業所統計調査報告によりますと、常用雇用、いまおっしゃった三十人以下十人以上の、これは農林水産業と鉱業を除いた企業数は約二十八万四千、そしていまおっしゃった昭和五十二年九月の女子労働者の雇用管理に関する調査、これは労働省婦人少年局がおやりになった調査なんですが、これによりますと、常用雇用三十人以上の企業で行政指導の対象となる五十五歳未満の女子定年制のある企業は一三・五%という数字になります。この数字を総理府統計局の把握いたしました、先ほど申し上げました十人以上の企業に対して当てはめて計算をすれば、これも概算ですが、行政指導の対象となる企業は三万八千になるという数字が出てまいっております。そうしますと、一万四千六百ではまだ半分にも足らないのではないかというふうに考えられるわけなんです。  それで、婦人少年室、各都道府県にありますけれども、最近私が調査しましたところによりますと、たとえば北海道の婦人少年室では、労働基準監督署の数で言うと、まだ半分も調査は終わっていないということです。それから、愛知の場合ですと、約十五万の企業のうち十二万ぐらい調査をした。そのうち行政指導の対象になると思われるのは千百五十社ぐらい。そこへ確認のためにはがきを出したところが、回答が来たのはわずかに三百五十社にすぎない、こういうような実態を聞いております。年次計画の第一歩が実態の把握ですね。この実態把握がこういうような状態だとすると、この計画が本当に達成できるのかどうか、非常に心もとない感じがするわけです。  そこで、私お尋ねしたいのは、こういうふうに実態把握が五十二年度中にやるというのがまだ行われていない、先ほど私が申し上げましたような数字も出ている、その理由は一体どういうところにあるのだろうか。そうして、これはいつまでにその実態把握を完了されるおつもりなのか、それをお尋ねしたいと思います。
  298. 高橋久子

    ○高橋説明員 実態把握につきまして地域別にかなり進度に違いがあるというのは、先生御指摘のとおりでございます。地域によりましてはかなり全貌に近い数字が把握し得たところもございますけれども、非常に地域が広範で、しかも対象企業数が多いというところでは、室の主体的能力等の関係もございまして、まだ把握が思うように進んでいないというところもございます。  ただ、しかしながら、監督署における就業規則を見るという方法も一つの方法としては使っておりますけれども、そのほかいろいろな手だてによってこういうことを行っておりますので、いろんな方法によって把握されておりますから、必ずしも監督署を見た数というのがそれだけしか進んでいないということにはならないのではないかというふうに考えております。  ただ、私どもも先ほどから申し上げておりますように、この数字は必ずしも十分なものとは考えておりませんので、今後ともこの把握には努めてまいりたい、このように申し上げたいと思います。
  299. 安藤巖

    ○安藤委員 大体見込みはいつごろの予定なんですか。いつごろまでには把握できる見通しかという見通しはまだ立てておられないのですか。
  300. 高橋久子

    ○高橋説明員 五十二年度中に把握するということが目標でございました。五十二年度中に鋭意行ったわけでございますけれども、まだこれで残っているものがございますし、また、企業によりましてはそういった制度を新たに導入するところも出てくるということで、何年までに全部把握し切るということはなかなか申し上げられないわけでございます。五十三年度からは、把握された企業についての改善指導ということにも力を入れてまいりますので、それと並行いたしましてこの実態把握ということを続けてまいりたい、このように考えております。
  301. 安藤巖

    ○安藤委員 なかなか大変な仕事だと思いますけれども、やはり実態把握をしないことには、いまおっしゃった改善指導もできませんから、その辺のところはいろいろ問題を解決しながらやっていただきたいと思うのですが、後でその点は総務長官にもお尋ねしたいと思います。  そこで、いま改善指導のお話が出てまいりましたけれども、中央段階では、これは事業主団体に対する指導を行うということでやっておられることは承知しております。それから地方の段階では集団指導及び個別指導、これをおやりになるということは、六月二十二日付の「若年定年制・結婚退職制等改善年次計画の推進について」という文書に述べておられるとおりであります。  ところで、もう集団指導に入っておられるというふうに聞いておりますけれども、この集団指導はどれくらい進んでおりますか、お尋ねしたいと思います。そしてその集団指導に参加している企業の実態ですね、パーセンテージでいいですが、大体どのくらいの数の企業が参加しているのか、いかがでしょうか。
  302. 高橋久子

    ○高橋説明員 地方における事業主団体に対する集団指導につきましては、私どもが去る六月の下旬に中央において事業主団体を指導いたしましたその後、着手をしております。  現在、各室において進行中でございますので、私どもはまだその数を把握するという状況に至っておりません。また、かなり進んでまいりました段階で一応の実施状況を把握したい、このように考えております。
  303. 安藤巖

    ○安藤委員 これも私の方で二、三聞いたところによりますと、神奈川県では七月の末に行われましたけれども、集団指導の出席者は、大体指導対象企業の三分の一、それから福岡県では八月の初めに行われたようですが、百二十三の対象企業のうち出席は四十六、まず大体三分の一くらいですね。それから大阪府では六月に行われたのですが、五百社のうち百十社、これはなかなか参加状況はよくないですね。  そこで、参加してこない企業に対してはどういうような指導をしていかれることになりますか。
  304. 高橋久子

    ○高橋説明員 私どもの把握しております状況によりますと、集団指導に出席してきている企業というのは、それほどたくさん出席してきているという状況にはないようでございます。ただ、この集団指導は、この対象になっている企業ができるだけ集団指導に出席するように、何度も繰り返して行う予定でございます。  出席をしない企業に対しては、繰り返し集団指導を開催いたしまして出席を求める。それでもなおかつ出席しない企業につきましては、この年次計画を送付する。あるいは五十三年度、五十四年度の特に改善の対象にしております四十歳未満のものであるとか、結婚、妊娠、出産退職制等を行っている企業につきましては、室の職員あるいは雇用コンサルタント等が個別に出向きまして改善指導を行う、このような予定でおります。
  305. 安藤巖

    ○安藤委員 一生懸命努力をしておられるということはわかりますけれども、総務長官にここでお尋ねしたいのですが、集団指導に参加される企業も少ない。それはもう何回も繰り返しておやりになるというお話もいまありましたが、実態把握も十分に行われていない、参加企業も少ないということになりますと、やはりいまのお話にありましたように、個別的に指導するというようなことをこれは相当強力にやる必要があるのではないかと思うのですね。ところが、実態把握という第一歩の状態がもうすでに、先ほど私も申し上げましたし、御答弁の中にもありましたような状態なんです。こういうことで、これは本当にこの年次計画を達成するということであれば、やはり達成できるような体制を整えなければならぬと思うのです。婦人問題企画推進本部の本部長は総理大臣、総務長官は副本部長であられるわけなんですね。だから、いま聞いておられて、本当にこの計画を達成するためにはどうしたら、いか、どういうふうに考えておられるのか、副本部長としての総務長官にお尋ねしたいと思います。
  306. 稻村佐近四郎

    稻村国務大臣 国内行動計画という枠組みの中で推進をするということになると思いますが、問題は、各省庁相当またがっております。そういう意味から、十省庁の中で本部を設置いたしまして、そして強力に推進をいたしております。そこで、本部だけというわけにもまいりませんので、これは各地方公共団体にも相当大きな役割りを果たしてもらわなければならぬということで、昨年、行政関係者の推進会議を開きました。そうして各公共団体の中でも窓口を設置いたしまして、国内行動計画に基づいて強力に推進をしておるというのが実態であります。
  307. 安藤巖

    ○安藤委員 その点については具体的にまたすぐ後でお尋ねをいたしますけれども、先ほど私が言いました福岡県の場合で言いますと、とにかく百二十三の対象企業のうち四十六社ですから、まだ約八十社残っているわけですね。この八十社に対して個別指導をするとして、福岡県の婦人少年室、これは室長さんを含めて四人です。だから、一日に午前、午後二社ずつとしても、四十日かかるわけです。しかも、こればかりにかかりっきりというわけにはまいらぬと思います。やはり婦人の地位の向上の問題とか、あるいは全般的な婦人問題の調査とか、あるいはいろいろな相談とか、相当たくさんの仕事があると思いますね。いま、それをこれからおやりになるという決意を表明されて、具体的な計画もお立てになっているということですが、私は思うのには、これは労働省婦人少年局じゃなくて労働省にお尋ねしたいと思うのですが、もう婦人少年室任せということではなくて、労働省本省がこれに本格的に取り組まなければならぬ問題じゃないかというふうに思うのです。だから、その辺のところをお尋ねしたいということが一点。  もう一つは、この行動計画前期重点目標を達成するについての具体的な基準とか手引きとか、あるいはそのための個別指導をおやりになるについての研修とか、そういうようなものは行われているのかどうか。行われていないとすれば、やはり労働省全体としてそういう問題にも取り組んでいただきたいと思うのですが、いかがでしょうか。
  308. 高橋久子

    ○高橋説明員 この年次計画につきましては、先生おっしゃいますように、私どもは、国内行動計画前期重点目標の最重点として取り組んでおります。これはただ婦人少年局だけではなくて、労働省におきましても関係の労働基準局等と緊密な連携のもとにこの行政を進めているところでございます。  ただ、私どもの主体的能力というのは必ずしも十分ではございませんし、また、こういった問題というのを解決いたしますのに、行政当局の指導だけで解決できるということもございませんで、やはり世間一般にこういった制度の存在そのものを許さないという社会的な機運が醸成されることが必要であると思います。  そこで、私どもは、十月の下旬に毎年婦人労働旬間というものを実施しておりますが、この婦人労働旬間を中心といたしまして、世間に、このような制度を初め男女差別というものはこれからの社会においては許されないんだという、そういった機運の醸成に努めてまいりたい、このように考えております。
  309. 安藤巖

    ○安藤委員 いま二つ目に私がお尋ねいたしました、具体的な基準をつくるとか、あるいは手引きをつくるとか、あるいは研修をやるとかというようなことはどうなんでございましょうか。
  310. 高橋久子

    ○高橋説明員 これは具体的に行ってまいりますのに、私どもは、集団指導の際に使うべきテキスト等、たとえばこのようなものについてどのような裁判事例があって、それはどういった理由で合理的理由を認められていないのかといったような裁判事例をつくる等、具体的な指導方法について室の職員を指導しているところでございます。また、コンサルタントにつきましても、コンサルタントの参考資料等をつくっております。
  311. 安藤巖

    ○安藤委員 いま労働省全体としての取り組みの話もちょっと出ましたが、労働基準局のこの問題についての協力関係の問題についてお尋ねしたいのです。  ここに、昭和五十三年四月二十日付の労働省労働基準局監督課長から都道府県労働基準局監督課長あての「若年定年制・結婚退職制等改善説明会の開催について」、先ほどの集団指導の問題ですね、協力をするようにというこれは通達の文書なんですが、中身を見て私は驚きました。どういうような協力が行われているかといいますと、都道府県労働基準局または労働基準監督署共催の名義をこの説明会の開催に当たって利用するということ、共催人として名義を貸す、それともう一つは、労働基準局または労働基準監督署の会議室を貸す、この二つなんですよ。これで本当に協力しているということになるのかというんですね。説明会の共催者になる、名義を貸すだけですよ。それと会議室を貸すということなんですよ。これだけで協力しているというと、これはあたりまえの話であって、特別に文書を出してまで協力しろということにはならぬのじゃないかと思うのですね。  だから、たとえば具体的に申し上げますと、婦人少年室の職員の方が労働基準監督署へ行って、先ほどのお話のように、各企業から届け出をされております就業規則、これについて男女差別の定年制があるかどうかということを調査しておられるわけです。ところが、その同じ監督署で、そういうような差別定年制のきちっと記載をしてある就業規則を届け出に来られて、その問題について何らチェックすることもなく届け出を受理されておるというようなことがあるというんです。そうなると、これは全く婦人少年室のやることであって私らは知らぬ、まさに狭い意味のなわ張り意識みたいなのがあるんじゃないかという気がするのです。だから、そういうふうに差別定年制が記されておる就業規則を片っ方で受けつけておくということは、婦人少年室の職員の人たちが一生懸命その改善に取り組んでおられても、これはしり抜けじゃないかという気がします。  これは、ことしの二月二十八日に当院の社会労働委員会で田中美智子議員が質問をしましたのに対して、労働省の桑原労働基準局長答弁をしまして、そういう点も協力をしてまいりたいという答弁があるんです。ところが、実際に改まっていないということも聞いております。だから、そういう点で、たとえばいま私が具体的に申し上げましたような問題でも、そういうような就業規則があれば、それを受理する段階できちっとチェックをしてその辺のところを改善指導するというようなことをやったっていいじゃないかと思うのです。当然やるべきじゃないかと思うのですね。あるいは受理した後でもその点を見つければその改善指導をするというようなことをやらぬと、先ほどから実態把握の問題から私がお尋ねしておりますけれども、なかなか大変なことなんですね。  だから、そういうような点で労働省全体としてちゃんとこの問題について協力するという態度がどうも薄いのじゃないかという気がするんですが、いかがでしょうか。  これは高橋さんにお尋ねするよりも、ほかの労働省の担当の方に私はお答えいただいた方がいいと思うのですが……。
  312. 高橋久子

    ○高橋説明員 婦人少年局の方では各局に十分私どもの方の年次計画の達成に協力をしてもらうよう、そうしてこれを労働省全体の行政として進めていくということで、一体となってやっていきたいということで話し合っているわけでございます。ただいま先生がおっしゃったような点につきましても、十分各局と連携をとりつつこの行政を進めてまいりたい、このように考えております。
  313. 安藤巖

    ○安藤委員 それで、今後の問題についてお尋ねしたいんですが、いろいろ行政指導をおやりになる、ところがなかなか是正をしないというような企業があった場合に、その企業名を公表するということも含めて社会的な批判をするなりというようなことは考えておられないのかどうか。  と言いますのは、昨年の六月十四日付の新聞によりますと、高橋さんが「五十四年度末のタイムリミットまでに改善しない企業に対しては個別に何らかの強制的な措置も考えることになろう」という談話を発表しておられる。それから同年の六月二十二日の新聞の記事ですが、改善に努力しない企業があれば、社名を公表その他の具体的制裁も検討していくと婦人少年局は大変な張り切り方であるという記事も出ているわけなんです。こういうような点は現在はどういうふうに考えておられますか。
  314. 高橋久子

    ○高橋説明員 私どもといたしましては、このような制度につきましては、企業の中におきまして自主的に改善されていくということを期待しているわけでございます。そうして、少なくともこの年次計画のそれぞれの年度末までには改善されることを期待するわけでございますが、もし年度末までに改善されない企業につきましては、いろいろな方法によりまして効果的な改善されるべき措置を考えていきたい、このように考えております。どのような措置をとるかということについては、いまここで申し上げるということはできませんけれども、この計画の実効ある実施のためにはいろいろな方法を検討してみたい、このように考えているところでございます。  ただ、先ほどから再三申し上げておりますように、私どもがそのような強い措置をとらなくても改善されるように、自主的な改善というものが期待されるわけでございまして、そのための世論の喚起ということに努めてまいりたい、このように考えております。
  315. 安藤巖

    ○安藤委員 そこで、総務長官にお尋ねしたいんですが、先ほどこの行動計画の推進については地方公共団体の協力も得てやっていく、窓口もつくるというようなお話がございましたけれども、民間の企業に対してこの男女差別をなくするように改善指導していくということをやっておられるわけですが、公の機関がやはり率先をして差別を撤廃するということが肝心だと思います。  そこで、中央の諸官庁ももちろんありますけれども、きょうは地方自治体の問題について、先ほど総務長官の御答弁の中にもありましたのでお尋ねするんですが、地方自治体では退職勧奨制度ですね、この男女差別が多いというふうに聞いております。この実態を労働省は把握しておられるのかどうかということと、そしてこれは労働省にもお願いをしたい、要請をしたいと思うのですが、その推進本部の副本部長である総務長官の方から、あるいは総理府として、自治省に対して各地方公共団体でこういうような退職勧奨について男女差別があるのかないのか、その実態はどうなのかということをきちっと把握をされるべきではないかというふうに思うのですが、いかがでしょう。  というのは、もう一つこれは具体的に申し上げますと、たとえば総務長官の地元の石川県、これは八つの市のうちで、全部退職勧奨が行われているわけですが、男女差別がないのは金沢市だけ、あとは全部差別があるわけなんです。町村を含めますと、退職勧奨を行っている三十三の市町村中三十一の市町村では男女差別があります。  これは一つの目下体例ですが、こういうようなことをまず率先して改善さしていくべきではないかと思います。それにはその実態をやはり把握しなければならぬと思います。だから、こういう点を自治省に強く要請をして調査をしてもらうというようなことはお考えになりませんか。
  316. 赤松良子

    ○赤松説明員 先生の御指摘のように男女の差別がなくなるようにということは推進本部の最重点でやっておりますが、特に地方自治体に対しましては直接には自治省が指導に当たっておられるわけでございます。したがいまして、その実態の把握につきましても、私どもは自治省と適宜協議をいたしまして連絡をとりながら実態の把握に努めてまいったところでございます。ただ、何分にも都道府県、市町村を含めますと三千三百の多数に上るわけでございまして、自治省といえどもなかなか全部を一度に把握なさるということは困難だというような実態もございまして、できる限り私どもとしては自治省と連絡をとってそういう遺憾なことのないようにいたしたい、こういうふうに考えている次第でございます。
  317. 稻村佐近四郎

    稻村国務大臣 いま安藤さんから自分の県のことを言われまして、私もそれはよく承知しておりまして、関係者には十分話をいたしております。  いま赤松さんからお話しありましたように、やはり婦人対策といたしましては、婦人の地位の向上、少なくとも男女平等、こういった原則で婦人対策を推進いたしておりますので、それが安藤さんは皮肉というわけではないけれどもわが県を挙げられたわけでございまして、今後はそのようなことのないように十分話し合いを進めてまいりたい、こういうふうに思っております。
  318. 安藤巖

    ○安藤委員 最後に一点だけお尋ねしておしまいにしますが、先ほどお答えの中にもありましたように、社会的な運動として婦人問題を解決していきたいというお話もございましたが、行動計画の中にもそういうことがうたわれております。これは読む時間がありませんから省略しますけれども、一つは婦人団体の自主的な学習活動を奨励するため必要な援助も行うということも含まれておるわけですね。だから、そうしますと、たとえば中央組織を持つ婦人団体あるいは労働組合の婦人部などに対しては、労働省なりあるいは総理府の方から、地方の婦人団体あるいは地方の労働組合の婦人部などに対しては、婦人少年室などから、積極的に関係資料を提供するというようなことをしていただきたいと思うのですね。たとえば、調査の結果あるいは改善の進行状況あるいは政府の資料、外国の動向あるいは国会の質疑等々、積極的に提供していただくということも考えていただきたいと思うのですが、いかがでしょう。この御答弁をいただいて、質問を終わります。
  319. 赤松良子

    ○赤松説明員 国内行動計画の推進のために啓発活動が非常に重要な役割りを果たすということは全くおっしゃるとおりであると考えております。先生の御指摘のような各種団体あるいは労働組合その他との連絡も十分に活発にこれまでもいたしてきたつもりではおりますけれども、先生御承知のように一九八〇年には第二回の世界会議が行われる予定でございます。そのための準備のために周知を図るということも私どもの非常に大きな任務と考えておりますので、今後ますますそれらの団体等と連絡を緊密にとって、会議等もいろいろな場所、いろいろな段階において行いたいというふうに思っております。  また、推進本部のニュースもこのたび出すことにいたしましたので、近くお目にかけられると思いますが、これも全国津々浦々に配布する予定でございますので、これまで以上に広報活動については力を入れてまいりたい、このように考えております。
  320. 安藤巖

    ○安藤委員 終わります。
  321. 楯兼次郎

    楯委員長 本日は、これにて散会いたします。     午後四時五十一分散会