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1978-07-04 第84回国会 衆議院 決算委員会 第17号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和五十三年七月四日(火曜日)     午前十時三十二分開議  出席委員    委員長 楯 兼次郎君    理事 宇野  亨君 理事 國場 幸昌君    理事 葉梨 信行君 理事 森下 元晴君    理事 馬場猪太郎君 理事 原   茂君    理事 林  孝矩君       野田 卯一君    村山 喜一君       春田 重昭君    安藤  巖君       依田  実君    麻生 良方君  出席国務大臣         国 務 大 臣         (防衛庁長官) 金丸  信君  委員外出席者         防衛庁参事官  夏目 晴雄君         防衛庁参事官  古賀 速雄君         防衛庁長官官房         長       竹岡 勝美君         防衛庁防衛局長 伊藤 圭一君         防衛庁人事教育         局長      渡邊 伊助君         防衛庁衛生局長 野津  聖君         防衛庁経理局長 原   徹君         防衛庁装備局長 間淵 直三君         防衛施設庁長官 亘理  彰君         防衛施設庁施設         部長      高島 正一君         防衛施設庁労務         部長      菊池  久君         大蔵省主計局司         計課長     石井 直一君         国税庁直税部審         理課長     掃部  實君         会計検査院事務         総局第二局長  藤井健太郎君         決算委員会調査         室長      黒田 能行君     ————————————— 委員の異動 六月二十一日  辞任         補欠選任   春田 重昭君     野村 光雄君 同日  辞任         補欠選任   野村 光雄君     春田 重昭君 七月四日  辞任         補欠選任   山口 敏夫君     依田  実君 同日  辞任         補欠選任   依田  実君     山口 敏夫君     ————————————— 六月十六日  一、 昭和五十一年度一般会計歳入歳出決算     昭和五十一年度特別会計歳入歳出決算     昭和五十一年度国税収納金整理資金受払     計算書     昭和五十一年度政府関係機関決算書  二、昭和五十一年度国有財産増減及び現在額総    計算書  三、昭和五十一年度国有財産無償貸付状況総計  算書  四、歳入歳出の実況に関する件  五、国有財産増減及び現況に関する件  六、政府関係機関経理に関する件  七、国が資本金を出資している法人の会計に関    する件  八、国または公社が直接または間接に補助金、    奨励金助成金等を交付しまたは貸付金、    損失補償等財政援助を与えているものの    会計に関する件 の閉会中審査を本委員会に付託された。     ————————————— 本日の会議に付した案件  昭和五十一年度一般会計歳入歳出決算  昭和五十一年度特別会計歳入歳出決算  昭和五十一年度国税収納金整理資金受払計算書  昭和五十一年度政府関係機関決算書  昭和五十一年度国有財産増減及び現在額総計算  書  昭和五十一年度国有財産無償貸付状況総計算書  〔総理府所管防衛庁)〕      ————◇—————
  2. 楯兼次郎

    楯委員長 これより会議を開きます。  昭和五十一年度決算外二件を一括して議題といたします。  本日は、総理府所管防衛庁について審査を行います。  まず、防衛庁長官から概要説明を求めます。金丸防衛庁長官
  3. 金丸信

    金丸国務大臣 昭和五十一年度における防衛庁関係歳出決算についてその概要を御説明いたします。  まず、防衛本庁経費について御説明申し上げます。  当初の歳出予算額は一兆三千七百七億三千七百万円余でありまして、これに昭和五十一年四月以降政府職員給与を改定するため予算補正追加額一百三十一億一千万円余、行政情報処理調査研究のため、行政管理庁から移しかえを受けた額七百万円余、高空における放射能塵調査研究等のため、科学技術庁から移しかえを受けた額一億二百万円余、科学的財務管理調査のため、大蔵省所管大蔵本省から移しかえを受けた額一百万円余、南極地域観測事業のため、文部省所管文部本省から移しかえを受けた額十三億四千七百万円余、前年度からの繰越額七十六億七千六百万円余を加え、既定予算節約等による予算補正修正減少額二十二億八千三百万円余を差し引きますと、歳出予算現額は一兆三千九百六億九千九百万円余となります。  この歳出予算に対して支出済み歳出額は一兆三千八百九億二千四百万円余、翌年度へ繰り越した額は八十一億三千四百万円余でありまして、差し引き不用額は十六億四千一百万円余であります。  昭和五十一年度予算の執行に当たっては、第四次防衛力整備計画最終年度として、計上された予算を効率的に使用して計画を着実に実施し、実質的な防衛力整備を進めることを主眼といたしました。  以下、自衛隊別にその主な内容を申し上げます。  一、陸上自衛隊については、七四式戦車四十八両、七三式装甲車十七両を取得し、新たに昭和五十二年度取得予定の七四式戦車四十八両、七三式装甲車十七両の購入契約をいたしました。  また、航空機については、連絡偵察機一機、多用途ヘリコプター十一機、輸送ヘリコプター二機、観測ヘリコプター十機、合わせて二十四機を取得し、新たに昭和五十二年度取得予定連絡偵察機一機、多用途ヘリコプター十機、輸送ヘリコプター二機、合わせて十三機の購入契約をいたしました。  二、海上自衛隊については、昭和四十九年度計画中型掃海艇二隻、輸送艦一隻、昭和五十年度計画支援船一隻、昭和五十一年度計画調達にかかる支援船一隻、合わせて五隻を取得し、新たに昭和五十二年度以降に竣工予定護衛艦一隻、中型掃海艇一隻、海洋観測艦一隻、補給艦一隻、支援船一隻、合わせて五隻の建造契約をいたしました。  また、航空機については、対潜哨戒機八機、対潜飛行艇二機、対潜ヘリコプター六機、救難ヘリコプター一機、練習機四機、合わせて二十一機を取得し、新たに昭和五十二年度以降に取得予定の対潜哨戒機六機、対潜飛行艇二機、対潜ヘリコプター六機、救難ヘリコプター一機、練習機八機、合わせて二十三機の購入契約をいたしました。  三、航空自衛隊については、要撃戦闘機十二機、高等練習機十七機、輸送機六機、救難ヘリコプター二機、救難捜索機一機、飛行点検機一機、合わせて三十九機を取得し、新たに昭和五十二年度以降取得予定要撃戦闘機十機、支援戦闘機八機、高等練習機十七機、初等練習機六機、救難捜索機二機、飛行点検機一機、救難ヘリコプター二機、合わせて四十六機の購入契約をいたしました。  昭和五十一年度防衛本庁職員定員は、自衛官二十六万六千四十六人、自衛官以外の職員二万四千九十一人計二十九万百三十七人でありまして、これを前年度職員に比べますと、自衛官については同数であり、自衛官以外の職員において百六十二人の減員となっております。  また、予備自衛官の員数は、前年度同数の三万九千六百人であります。  次に、繰越額八十一億三千四百万円余は、計画及び設計に関する諸条件等のため工事等が遅延したことによるものであります。  また、不用額十六億四千一百万円余は、退職者が少なかったので、退職手当を要することが少なかったこと等のため生じたものであります。  続いて、防衛施設庁経費について御説明申し上げます。  当初の歳出予算額は一千四百十五億一千五百万円でありまして、これに昭和五十一年四月以降駐留軍等労務者労務管理事務委託職員給与を改定するための予算補正追加額五千九百万円余、前年度からの繰越額一百十一億八千二百万円余を加え、既定予算節約等による予算補正修正減少額四億八百万円余、防衛施設周辺障害防止事業等に要する経費として移しかえをした額、農林省所管農林本省へ六億五千二百万円余、建設省所管建設本省へ十二億九千九百万円余を差し引きますと、歳出予算現額は一千五百三億九千五百万円余となります。  この歳出予算現額に対して支出済歳出額は一千三百六十七億二千八百万円余、翌年度へ繰り越した額は一百二十六億一千七百万円余でありまして、差し引き不用額は十億四千九百万円余であります。  支出済歳出額の主なものは、施設運営等関連諸費でありまして、防衛施設周辺生活環境整備等に関する法律等に基づき、自衛隊施設及びわが国に駐留するアメリカ合衆国軍隊等提供施設等維持運営等に関連し必要な騒音防止措置障害防止措置民生安定施設助成措置飛行場周辺安全措置各種補償、土地の購入及び賃貸等経費のため一千四十九億二千七百万円余を支出いたしました。  昭和五十一年度防衛施設庁職員定員は三千四百九十九人でありまして、前年度職員定員に比べ二人の減員となっております。  次に、翌年度への繰越額百二十六億一千七百万円余は、計画または設計に関する諸条件及び用地の関係等のため、工事等が遅延したことによるものであります。  また、不用額十億四千九百万円余は、低位号俸職員が多かったので、職員基本給を要することが少なかったこと等により生じたものであります。  以上をもって、昭和五十一年度における防衛庁関係歳出決算概要説明を終わります。  何とぞよろしく御審議のほどお願いいたします。
  4. 楯兼次郎

  5. 藤井健太郎

    藤井会計検査院説明員 昭和五十一年度防衛庁決算につきまして検査いたしました結果、特に違法または不当と認めた事項はございません。  なお、昭和四十九年度決算検査報告に掲記いたしましたように、護衛艦定係港における停泊中の給電について処置を要求しましたが、これに対する同庁の処置状況について、昭和五十年度決算検査報告に引き続いて掲記いたしました。  以上、簡単でございますが説明を終わります。
  6. 楯兼次郎

    楯委員長 これにて説明の聴取を終わります。     —————————————
  7. 楯兼次郎

    楯委員長 これより質疑に入ります。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。村山喜一君。
  8. 村山喜一

    村山(喜)委員 先般参議院内閣委員会におきまして、有事防衛研究内容について若干の討議がなされまして、それに対する伊藤防衛局長答弁等が新聞にも出ておるのを拝見いたしました。  そこで私は、この問題については金丸長官が初めに言い出された図上研究内容であると思いますので、三矢研究とは違うのだ、これは自分の指示によって、制服だけではなくて内局も含めて、有事防衛研究内容をことしの八月からひとつやっていくのだというような話をされたことを聞いたのでありますが、この図上研究と言われます有事防衛研究研究目的と、現在防衛庁の訓令によりまして防衛計画というものがそれぞれつくられておるわけでございますが、防衛庁における防衛計画体系の上から見た場合の問題点とはどういうふうに整理をされているのか、その点についてまず承っておきたいと思うのです。
  9. 金丸信

    金丸国務大臣 詳細につきましては政府委員から御説明申し上げますが、この問題について私が指示をいたしたことは間違いありません。三矢研究とは違う、三矢研究のときは制服だけで研究しておったというところに問題があったと私は思うのですが、問題は、シビリアンコントロールはどこにあるのだということであります。  私はシビリアンコントロールということは、戦前の日本にしてはいけない、これが最大の歯どめであるということを常時申し上げておるわけでありますが、そういう意味で、自衛隊が常時そういう問題について研究しておくということは国民の負託にこたえるゆえんだ、あるいはそのようなことをいままで怠っておったということについては国民から責められるのじゃないか、遅きに失した、当然研究すべきことだ、こう私は考えておるわけでありまして、その内容については政府委員から説明をさせます。
  10. 伊藤圭一

    伊藤説明員 ただいま御質問がございました中で、防衛庁計画体系の中でどれに当たるのだという御質問一つございました。そこから御説明申し上げてみたいと思います。  まず、この防衛研究というのは部隊運用研究でございますので、計画体系の中にございます計画とは直接関係はございません。しかしながら、この計画体系の中で、長期の見積もりから始まりまして中期見積もり中期業務見積もり等一連計画の中では、いま先生の御指摘がございましたように防衛計画に反映させるための研究であるということでございます。  この内容につきましては、いわゆる部隊運用研究でございますので、防衛庁といたしましても従来から個々のものについては研究を進めておったわけでございますが、昨年来、日米防衛協力小委員会あるいは統幕機能の強化、中央指揮所整備等々について研究検討を重ねております間に、この部隊運用研究防衛研究中心としたものをもう一度改めて総合的にやってみる必要があるのではないかというのがわれわれ事務当局の中で検討されたことでございます。そのことを大臣に申し上げまして、大臣指示によって研究を行うものでございます。  それでは、従来の個々防衛研究との違いはどういう点にあるかということについて御説明申し上げたいと思います。  従来とも、現在持っております陸海空のそれぞれの勢力によって、現在有事になった場合にはどのような対応をするかという観点からの研究を進めておったわけでございますが、先ほど申し上げましたいろいろなことを検討しております中で一つの反省がございました。といいますのは、陸海空それぞれの部隊運用というものについてはかなりの程度研究はなされておりますが、この陸海空部隊を統合的に運用するという観点からの研究は必ずしも十分ではなかったという点が一つございます。それから、陸海空運用研究目的の中に、それぞれの自衛隊が抱えております欠点というものを今後防衛力整備の上でどういう形で補っていくかということもその目的の中に入っておったという点がございます。これは四次防までの防衛力整備、すなわち質、量ともにふやしていくという過程において、この運用研究の中から出てきた問題でございます。  もう一つの点は、いわゆる日米安保体制というものをお考えいただきますと、二十年前の安保体制と現在とでは違ってまいっているわけでございます。一つには自衛隊がこの二十年間に防衛力整備によりまして力をつけております。そういった中で日米防衛協力関係というものが、すべてを米軍に依頼していた時期と違って、われわれのできる範囲でしなければならないことということを防衛協力小委員会等においても研究をいたしております。そういったものを加味しながら、今回大臣指示を受けまして全体的にこの防衛研究を進めることによって、今後のいわゆる防衛計画等に反映していくことができるのではないかということで研究を始めさせていただくことになったわけでございます。
  11. 村山喜一

    村山(喜)委員 そういたしますると、やはり陸海空の統合的な部隊運用というものを中心にやっていくのだ、それは日米防衛協力小委員会討議をされたものも踏まえながらやっていくのだということになりますると、日米防衛協力小委員会でいまどういう程度まで論議がなされておるのか、その内容はつまびらかにされていないわけであります。その場合は、そういうようなものを国民の前に明らかにしながら、二年間ぐらいのこれは研究だというように承っているのですが、その内容国会等に明らかにしながらシビリアンコントロールの実が上げられる手だてというものはお考えになっているのかどうか、これが第一点です。  それから第二点は、これは金丸防衛庁長官に私はお伺いしておきたいと思うのですが、制服諸君はそれぞれの立場に立って専門領域を深く研究をし、そして体験を積みながら、その防衛立場から終始一貫取り組んでくるわけですね。それだけの蓄積と経験が積まれている。ところが、そうでない内局諸君は、これは二、三年でそれぞれのポストをかわりながら、あるいは防衛庁だけに専属をするのじゃなくて大蔵省なりほかの省庁との人事というものの中でそれが満たされていく。そうすると、やはり制服組の方がそれだけ専門家としての蓄積が多くなっていく。内局の場合には残念ながらそういうような状態にならないシステムというものがある。そうした場合に、長官が言われる文官の力によってコントロールしていく、そのことが果たして可能である現在のシステムになっているかどうか。これについて人材の問題をどういうふうにとらえていらっしゃるのか、その点は長官からお伺いをしたいと思うのです。  以上です。
  12. 金丸信

    金丸国務大臣 私は、制服はプロだ、内局はノンプロだ、こういうようなお考えのように御質問を受けたわけでありますが、そういうことになると、シビリアンコントロールという話もありましたが、私は、制服内局が抑えることによってシビリアンコントロールというものが生まれるのじゃない、あくまでもそれは政治家が判断するということであって、制服事務屋が抑えていくということがシビリアンコントロールだ、もしこう考えておるとすれば間違っておるのじゃないかという考え方を私は持っております。
  13. 伊藤圭一

    伊藤説明員 先ほども申し上げましたように、これはいわゆる部隊運用研究でございます。したがいまして、個々運用の実態というものを国会に御報告するという内容にはなじまない点もございます。しかしながら、日米防衛協力小委員会で現在研究をいたしておりまして、いわゆる防衛協力をやるに当たっての指針といいますか、そういったものは一応この秋ごろをめどにいままとめの作業に入っております。この秋ごろになりましたら、日米防衛協力関係というものはこういう指針に従ってそれぞれの制服の間で今後研究を進めていくということについては御報告できると私は思っております。さらにまた、この防衛研究の結果がそれぞれの計画に反映されまして、いわゆる防衛政策として実施する場合には、たとえば法律の面で、あるいは予算面等で、こういったものが必要になったゆえんというものを御説明するという形で御審議していただくことができるというふうに考えておるわけでございます。
  14. 村山喜一

    村山(喜)委員 秋には日米防衛協力小委員会まとめができるので報告ができる、またこの長官指示によります有事防衛研究内容については、その状況段階においてそういうようなことが考えられるようなお話でございますが、私は、先ほど長官お話しになりました文民統制かなめはもちろん政治家だと思うのですよ。だけれども、たとえばこの前の択捉のソ連の上陸演習の問題をとらえて申すわけではありませんが、栗栖統幕議長金丸長官にはそういうような報告をした、ところが内局の方には知らせる必要はない、こういうシステムだから防衛局長はその事実については栗栖統幕議長から聞いていない、だから内局制服の間において話が食い違ってきている、それを調べてみたら、まあそういうような事実はどうもなさそうだ。  こういうような問題が発展をしたそのことを考えますと、根本的なかなめは、文民統制かなめというのはこれは長官であり、あるいは総理大臣でありますが、そのかなめはやはり国会だと思うのです。国会なんです。しかしながら、国会議員のわれわれが、それをどれだけコントロールできるだけの力を持っているかということなんです。それだけの、いわゆるそういうような状態がいまのような体制の中で可能かどうかという問題を追及をしなければならない段階にあるんだ、私はそう思うのです。それだけでなくて、やはり国会追及だけで問題の処理ができるんじゃなくて、憲法というものを厳格に規定をしていく、その体制がなければこの問題の監視はできない。その憲法を原点として文民統制の基点に立たなければならないと思うのですが、そういうような意味で、私は、内局もある程度制服との連絡というものが現在のシステムの中においても欠けているのではないか、その択捉の問題一つとらえてみましてもそういうようなことが言えるのではないかと思っておるのですが、その点については長官はそれは認めていないのですか。
  15. 金丸信

    金丸国務大臣 私は、防衛の問題につきましては全くずぶの素人でございますが、政治家として防衛庁長官という職責に座ってみまして、防衛庁に出て、いろいろきょうまでの間に、いわゆるいま御指摘のような問題が全然ないのかというようなことを私も私なりに判断をいたしまして、そういうような状況の中でいわゆる機構上の問題やその他のいろいろの問題が全きを得ておるとお答えするわけにはいかぬ状態だと私は思います。それを全きものにすることが私に与えられた責任だとも考えておるわけでありまして、先ほど択捉島の問題等につきましてはいわゆる統幕議長内局との間に連絡の不十分があったというような面はまことに遺憾でありますし、また北海道道民に、統幕議長の発言によって、週刊誌では九日戦争とか十一日戦争というようなものが想定されたようなことでいろいろ心配をかけたという点については、遺憾だということを私はさきの参議院でも申し上げたわけでありますが、今後そういう面についてもできるだけの努力をいたしたい。  また私は、文民統制最高機関国会である、できるだけのことは国会お話を申し上げて御理解を積んでいくということが必要であることは当然だと考えております。
  16. 村山喜一

    村山(喜)委員 そこで、有事防衛研究内容部隊運営中心だという話でございますから、この点は総力戦想定有事立法検討をしようというような内容ではない、このことは明らかでございますね。とするならば、そういうような総力戦想定有事立法は何か防衛庁長官は別個に検討をされておるのでございますか、いないのでございますか。
  17. 竹岡勝美

    竹岡説明員 有事立法研究につきましては去年の八月に三原防衛庁長官から内局指示がございまして、もちろんわれわれ防衛庁内部におきましてもかねてその必要性を感じておったのでございますが、特に三原防衛庁長官から指示を得ましてから、自来内局中心になりまして各幕担当者とともに有事立法勉強を進めておるわけでございます。  有事と申しますと、わが国国土戦乱ちまたになるわけでございますので、そういう場合におきます一般国民避難誘導なりの場合に、恐らく国民皆さん方自衛隊が率先戦うためには大きな協力等も惜しまないだろうと思いますし、あるいは各官庁もそれぞれ戦う自衛隊への協力もあり、われわれの方も自衛隊の活動を相当優先的にやってもらわなければならぬというような事態が予想されます。そうしますと、いまの各省庁の持っております自衛隊法以外の多くの法律わが国戦乱ちまたになるというような有事ということはほとんど考えておりません。そういう点から見まして、われわれ防衛責任を持っております防衛庁各種法律その他も一緒に勉強しまして、そして一たん有事のときにこれでいけるのであろうか、あるいはどういう点が足らないのであろうか、そういった点の勉強防衛庁でいま進めておるという事態でございます。もちろんこれをもって直ちに立法手続をとるなりあるいは各省庁で法案をつくっていくなり、わが国はそういう差し迫った事態ではないと思っております。しかし、防衛責任がある防衛庁としましては、われわれがこの研究を続けていくことは必要であろうという三原長官指示を得まして現在も進めております。  これは先ほど防衛局長が答えましたこれから約二年間かかってやります防衛研究、いわゆる運用研究、これとは直ちに結びつかない、われわれは法制全般を洗いましてそれなりの勉強を続けていくというのが有事立法研究でございます。
  18. 村山喜一

    村山(喜)委員 そういたしますと、これは竹岡官房長のところで内局中心になって研究がされておる、こういうことでございますか。そして去年の八月に三原長官から指示をされたということであれば、もう大体一年たちますね。その間にある程度研究されたものがございますか。そしてその研究されたものはこういうような研究をしているのだという内審を、国会等を通じて国民の前に明らかにする意思がありますか。まだそこまでまとまったものはないのですか、その点について……。
  19. 竹岡勝美

    竹岡説明員 防衛庁内局の官房に法制調査官室というのがございまして、私の方の法制担当、官房が責任を持っておりますから、官房長がその中心になりまして、内局と各幕の法制担当者で研究を進めておるわけでございます。  それからもう一年たつわけでございますが、やはりどういった法律有事の場合に現有ある法令でどういうものが関係あるであろうというような各種の法令を一応全部洗ってみまして、そしてわれわれの基本方針はあくまでも現憲法の範囲内、すなわち憲法が絶対的に認めております国民の自由権、そういったものを侵すというようなことは全然別個の問題といたしまして、あくまでも憲法の範囲内でどういった法律改正、どういった権限付与、そういったものが要るであろうかということで洗っておるわけでございます。現在大体二週間に一遍ずつくらいで担当者が寄り寄り研究を進めております。たとえば道路交通法なりあるいは海上交通安全法なり、そういった法制が有事の場合に現在十分であるかどうか。しかし、これはあくまでもその法律の大半は他の官庁の所管法律でございますので、これが改正ということになりますとその所管庁の意思がなければいけません。そういう点からわれわれだけが部内で研究しておる段階でございますので、研究の結果こういう点が足りるとか足りないとかいま公表する時期ではまだないであろう、このように考えております。
  20. 村山喜一

    村山(喜)委員 研究という段階にとどまっておれば、まだ内容的に明らかにされてもおりませんし他の省庁との関連もある、あるいは憲法規定の問題がある、そういうような問題。特に核戦力に対しては現在の自衛隊の戦力、自衛力というものは、これはほとんど無力に近いけれども、国民に対しては大変巨大なそういう力を持っていることは間違いない。そういう意味から見ましても、憲法の中に規定されている基本的な人権であるとかあるいはその他の諸権利がどういうふうに制約をされてくるのかという問題はきわめて重要な問題であり、これは国会の場において、立法府でありますからそういうような内容のものを国民の名において許していいのかどうかというような問題についてはチェックしていく責任があります。  したがいまして、いま官房長を中心にした防衛庁内部研究段階にとどまっているようでございますが、他の諸官庁とも協議をしなければならない内容のものもあり、その研究内容のいかんによりましては大変重要な基本的人権に結びつくような問題が発生をされる可能性があると思うのですが、金丸長官は片一方においては有事防衛研究のそういうテーマを指示し、前の三原長官の時代のそういうような有事立法の問題についてはそれを継承していくというような二面作戦で、これから防衛庁長官として研究をさせていくという方針でございますか。
  21. 金丸信

    金丸国務大臣 有事立法の問題につきましては三原長官指示いたした問題でございますが、私はその問題はまことに重大な問題であることは当然でありますし、またいまのようなこういう事態の中で研究することはいいけれども、そういう問題をいろいろ表に出すということもどうかと思う、この問題は十二分に慎重に審議してやるべきであって、軽率にもこれを外に出してああだこうだと言うようなことでなく、それはそれが必要なときになるまであらゆる角度で研究しておくというものだろう、こう私は申し上げておるわけであります。
  22. 村山喜一

    村山(喜)委員 この点については長官も慎重な態度であるようでございますが、ぜひそういう態度をとられるように要請をしておきたいと思います。  次の問題に入りますが、長官が西ドイツからアメリカを回って帰ってこられた。その中で、いろいろな新聞等で報道がされておる内容のものを見ながら、あるいはまた丸山防衛次官が講演をされた内容のものを見ながら、私は、予想されるアジアの緊急事態というのは一体どういうふうに見ておられるのだろうか。たとえば仮想敵国の直接侵略というもの、それが予想されるアジアの緊急事態というふうになり得るのだろうか。特に日本の安全保障という問題の上から、参議院においては伊藤防衛局長は、侵略は西と北を想定している、こういうような内容のことを言われて、私もこの前の決算委員会のこの席で二面作戦を展開するのかというような質問をしたのでございますが、ブラウン長官等に会われた金丸長官のその受けとめ方は、そういうような直接侵略というような内容のものが中心になってきてそして日本の有事の支援計画防衛庁長官に示したという伝えの報道もございますが、そういうようなのがあったのでありましょうか。それとも予想されるアジアの緊急事態とは、いわゆる海上航路等に対する脅威をどういうふうにして処理をするのかというような問題を中心にして論議がされたのであるのか。この内容についてそれぞれの立場で伝えておりますので、予想されるアジアの緊急事態とは一体どういうようなものなのかということを、現在のこの世界の情勢の中からどのように防衛庁としては判断をしているのか、明らかにしてもらいたいと思うのです。
  23. 伊藤圭一

    伊藤説明員 まず、日本に対する侵略があるかないかという点につきましては、現状においてはきわめて公算が少ないというふうに私どもは考えているわけでございます。  しかし、先生も御承知のように、わが国防衛構想といたしましては、とにかく侵略を未然に防止するというのが大前提でございます。そのためには、日本としてはそれなりの防衛努力をすると同時に、日米安保体制を維持していくということがこの未然防止に最もよい方法であるというふうに判断をしているわけでございます。  今回の金丸長官とブラウン長官との会談におきましても、日本への侵略を予想いたしましてこういう形で支援をするという説明はございませんでした。  しかしながら、御承知のようにソ連の極東におきます軍事力というものは、過去十年間を見ましてもわれわれが想像する以上に強力になっているというのも事実でございます。特に海軍力の増強というのは、量、質ともに進んでまいりまして、十年前には沿岸におきます行動が主でありましたものが、一九七〇年代に入りましてからは遠洋におきます行動というものを中心に演習をいたしております。このことにつきましては、自由諸国が海路によって結ばれているという現状からいたしまして、アメリカもこの軍事力の増強というものに対してはきわめて注目をいたしているわけでございます。そして、有事になってもそういった自由諸国の海上交通路というものを確保するということを重点に考えまして、いわゆる世界戦略を考えているというのが実情でございます。そういった意味で、有事に際して有効な力を発揮できるというものを持っていることがすなわち抑止力となって世界の平和を維持するものであるというような考え方のもとに、全力を挙げて極東の平和の維持に努めるというような形で説明があったわけでございます。  なお、参議院内閣委員会におきまして私が御説明しました中に、北と西というようなことが述べられたというお話でございましたが、日本の周辺諸国を考えてみますると、一番近いのが、やはり隣国に接しておりますのが、北であり西であるということは事実でございます。したがいまして、仮に直接侵略があるとするならばそういうところは重視しなければならないということを申し上げたまででございまして、仮想敵を設けてそういう戦術構想、防衛構想を持っているというふうにお答えしたわけではないわけでございます。
  24. 村山喜一

    村山(喜)委員 長官、ブラウン長官との間でお話し合いになったものは、いま防衛局長が話したとおりでございますか。ほかにございませんでしたか。
  25. 金丸信

    金丸国務大臣 ただいま防衛局長が申し上げたとおりでありますが、私もヨーロッパを回りましてヘイグ司令官あるいはNATOの事務総長等々に会いまして、そういうものを総合して私はブラウン長官お話をしたわけでございますが、いわゆるアジアの安全はNATOの安全でもあるし、NATOの安全はアジアの安全でもある、これは両方とも大切だと私は思うけれども、アジアにおいてアメリカはアジア離れをしておるという批判もある。それらについて私は、日米関係というものは不可欠であるし、また、きょうの日本がこのようになっておること、日米関係というものは安保条約というものがあるからだと思うけれども、もしアジア離れをするということ、たとえて言えば在韓米軍の撤退というようなことが今後どんどん行われるということになれば、いわゆるアメリカに対する不信感というものは覆うべからざるものが出てくるであろうと私は思うのです。そういう意味で、私はこの際、アメリカのアジア離れについて考え方を承ってみたいというような話をいたしました。そうしたところが、アジア離れについては、いわゆる在韓米軍撤退を除いてほかのスケジュールについては全然考えてはいない。その上になお、太平洋地域に対しては今後の建艦計画等についても配慮をいたしておるというような話もあったことを申し添える次第であります。
  26. 村山喜一

    村山(喜)委員 そこで、日本の防衛構想の中の西の分でございますが、それは韓国軍の六十万、それから在韓米地上軍の存在、そういうようなものを想定して部隊編成というものの配置がなされる。ところが、今回、在韓米地上軍の六千名の撤兵が進められている。そういうようなことから、西の方の守りを強化するために部隊の移動といいますか、そういうようなものが構想になった結果、第八師団を甲師団に昇格をさせる、こういうようなことにつながってきているわけでございますか。
  27. 伊藤圭一

    伊藤説明員 それは直接の結びつきはないわけでございまして、御承知のように、一昨年の十月でございますか、「防衛計画の大綱」というのを政府としてお決めいただいたわけでございます。その際に、「防衛計画の大綱」の背景にありますものが、いわゆる基盤的防衛力と当時言われましたいわゆる部隊配備の計画でございます。この「防衛計画の大綱」の中心になっておりますものは、先ほども御説明いたしましたように、平和を維持するため、侵略を未然に防止するため、限られた自衛力というものを均衡のある形で配備しておいて、平時におきます災害派遣あるいは有事の際の部隊運用、そういった観点から、偏ることなく配備をしておきたいというのが当時の考えにございました。その検討の過程におきまして、北海道におきます第一戦車団と、現在持っております第七師団とを改編いたしまして、この第七師団を機動力を持った、すなわち戦車と人員操作を中心といたしまして機動力を持った機甲師団に改編するという結論を得たわけでございます。その結果、一個戦闘団の配備というものをほかに移せるということになってまいりまして、その際、一つには九州地区の出身の隊員が非常に多いというようなこともございました。そしてまた、九州地区には平時におきますいろいろな災害等もかなりあるわけでございます。そういった意味で、平均的、いわゆる均衡のとれた配備という観点から、一個戦闘団の第八師団への移駐を決定したわけでございまして、在韓米地上軍の撤退はその後に起きた問題でございます。
  28. 村山喜一

    村山(喜)委員 その後に起きた問題であるとするならば、そういう防衛構想というものは、そういう状況の変化というものが仮にあったとしても、それを前提として想定をする必要はない、防衛力の基本整備計画に従ってやるだけである、こういうように見てよろしいのですか。
  29. 伊藤圭一

    伊藤説明員 それは必ずしもそうではございませんで、「防衛計画の大綱」をお決めいただきましたときの前提となりました情勢判断というのがございます。それに基づきまして計画の大綱が決められたわけでございますが、この計画の大綱を決めるに当たっての前提となる情勢に大きな変化が生じた場合には、それに即した部隊配備あるいは戦術構想というものを立てなければならないと私どもは考えております。  しかしながら、在韓米地上軍の撤退につきましては、御承知のようにアメリカもきわめて慎重な態度をとっておりまして、朝鮮半島に紛争が起きないような形でこの撤退を行うということをしばしば言明しておりますし、また、この撤退の計画にいたしましても、昨年の五月に一応決められたものからさらにそのテンポをおくらせるというような措置もとっているわけでございまして、そういった点につきましてはアメリカもきわめて慎重にやっているというところから、「防衛計画の大綱」の前提となりました情勢が大きく変わることはないという判断をしたわけでございます。  したがいまして、現在におきましては、「防衛計画の大綱」に定められた防衛力整備を一日も早く達成するのが私どもの責務であるというふうに考えているわけでございます。
  30. 村山喜一

    村山(喜)委員 とするならば、それは「防衛計画の大綱」が前提としております内外情勢あるいは軍事情勢については基本的な変化がこの問題にあるとは見ていない、こういうことでよろしいですね。  そこで、続いてお尋ねをいたしますが、自衛隊のそういう二千名の部隊を北海道から実定員で持っていけるのかどうか。というのは、充足率の問題等もありますので、七師団から一個連隊を引き抜き、あるいは一個特科大隊と一個戦車中隊を抜いたら、師団規模の力がない。そこで第一戦車団をつけて機甲化師団を新設するという内容である。そうなると、二千名の部隊を北海道から抜いて実定員で配置をするということが果たして可能なのかどうか。これは空定員ではないだろうか。そうしたら、いわゆる隊員の充足率のバランスが、二千名を抜くことによって、北海道の方面隊の充足率と、それから二千名を西部方面隊の方に定員移しかえをすることによってその充足率のバランスが成り立つ。こういうことから考えれば、実際移動をするのはこの二千名という数ではないのではないかというような話がありますが、この点についてはどうでありますか。
  31. 伊藤圭一

    伊藤説明員 いま先生がおっしゃったことにつきましては、私どもも、必ずしも二千人の実員が移動するというふうには考えておりません。陸上自衛隊は、御承知のように現在でも二万五千人以上の欠員を抱えているわけでございます。そして、充足率の状況を見ますと、やはり九州出身の隊員が多い関係もございまして、九州にございます充足率というものは北海道より上がっているわけでございます。したがいまして、現在七師団に配備されている一個戦闘団を持ってくるというのではなくて、実際は、七師団と第一戦車団とを改編することによりまして定員上二千人程度の余裕ができますので、それで第八師団、すなわち現在の七千師団を九千師団に上げるということによりまして定員的には九千師団ということになりますが、実際の人員が何人九州に移動していくかという点につきましては、現在検討いたしておりますけれども、二千人全員が行くというようなものではないと考えておるわけでございます。
  32. 村山喜一

    村山(喜)委員 金丸長官、この前私はこの席で、長官が最終的には決断をする、こういうことでございましたから、南九州における自衛隊の配置計画の問題では長官がどのような措置をとられるのかということを見守っておったのでございますが、普通科一個連隊程度のものをえびの市に移駐をさせる、そして施設大隊を鹿児島の川内市に移駐をさせる、こういう内容のものがすでに新聞で発表されておるところでございます。  そこで、考えてみますと、えびの市の近くには、宮崎県の都城に普通科連隊があるわけです。そして余り距離も離れていない国分市に第一二普通科連隊があります。ということは、霧島山という演習場、これを背景にいたしまして、そこに同じような普通科連隊が、都城にもある、国分市にもある、えびの市にもある、そういうような内陸地帯に、演習場があるとはいえ、防衛計画の上から、なぜそういうところに増置をしなければならないのか、このことがわからないのであります。  第二点は、施設大隊がいま北熊本にあるわけであります。今度独立して川内市に移駐をさせる、こういう計画でございますから、当然北熊本のその施設大隊が移ってくるということになります。いま乙師団編成でございますから、今度甲師団編成にした場合には、五百五十名くらいの定員を持つ部隊が独立をした形で川内市に配置をされる、こういうことになろうかと思うのであります。この川内市の移駐の問題は当時話の中には出ていなかった問題であります。  そこで、私は、先ほどから防衛庁の任務の上から見まして、主たる任務はやはり防衛という立場でございましょうから、その立場部隊配置というものを長官が決定をされた、こういうふうに見てまいりました場合に、その施設大隊がなぜ川内に移駐をしなければならなかったのか。熊本からわざわざ引っこ抜いて持っていかなければならないようになったのには、防衛計画よりも政治的な力関係の中でその問題を処理をされたんじゃないか、こういうふうに考えるのでございます。  それが当たらないかどうかお答えをいただきたいのと、施設大隊というものはそういう師団の支援部隊——私も前軍隊におりましたときには陸軍の工兵隊におりましたから、その施設大隊の中身は自分の体験からある程度知っているつもりであります。そういうような支援作戦の部隊を師団司令部から離して、そして一個大隊が独立をして設置をされなければならないという防衛構想というものはどういうようなものであるのだろうか、このことを。いわゆる防衛計画の中でそれを決めたとおっしゃるんだったら、その根拠についてお示しを願わなければならないかと思うのです。  以上、具体的な防衛の問題については局長の方からお答えいただいていいのですが、その個所を設定をし、決定をされたのは長官でありますから、長官の方から承った後、防衛局長の答弁を求めます。
  33. 金丸信

    金丸国務大臣 この問題につきましては、宮崎県が二市、鹿児島県が七つ、市あるいは町が立候補いたしまして、非常に陳情運動が峻烈になってまいりました。私はこんなことをさしてはならぬ、早く決めるべきだ、なぜこんなに遅くまでこんなことをしておったのだと言うたわけでありますが、しかし現実はそのような状況になって、私がこれを決定せざるを得ないという事態になったわけであります。  そこで、防衛計画という立場から言って、また部隊の隊員の練度を高めるという点から言って、宮崎のえびの市が最適だという話がありました。また鹿児島からは、知事初め県議会あるいは心あるいは市の市長、議長、議会、それと一般、こういうような人たちから強い陳情がありまして、私はこれほど自衛隊を誘致したいという考え方、これに対して政治的な配慮もしなければならぬか、しかし、私は最初は一つでいくという考え方でおったわけでありますが、鹿児島県知事も参り、あるいは議長も参り、議会の人たちも参りまして、ぜひ鹿児島に一つ欲しい、何とかしてくれぬかという考え方、これをむげに却下することがどうかというようなことで、私は再度幹部と相談をいたしたわけでありますが、相談した結果、この問題については、もし知事がまとめて、これだと決めてくれるのであれば考えてもみましょう、こういう私は話をいたしましたところが、知事が川内市とまとめてきた。そこで私も、川内市というところは川内川もはんらんを間々するところであるし、こういうところに施設部隊を持っていくということも、民生安定の上からも、あるいは自衛隊のこれはやるべき仕事でもあるか、知事はいいところを決めてきてくれた、こう私は思ったわけでありますが、その決めた全責任は知事にあるわけであります。
  34. 伊藤圭一

    伊藤説明員 一つは、なぜ三つの普通科連隊を霧島演習場の周辺に集めたかというお話でございました。  御承知のように、いま二千人の一個戦闘団がこの八師団に加わるという御説明をいたしましたが、そのうちの普通科連隊の一個連隊というのは千百八十五名でございます。したがいまして、この戦闘団が一個ふえることによりまして、いろいろな支援部隊というものがそれなりにふえてまいるわけでございます。  そこで、まずこの普通科連隊をどこに置くかということにつきましては、何といいましても普通科の連隊というものは日常の訓練、演習というものが十分にできるということが一つの重点でございます。そしてまた、普通科連隊というものはその駐とん地において戦闘するというものではなく、移動していって、必要な場所で防衛に当たるわけでございますので、そういった意味からはいわゆる移動が容易にできるというような場所というものも一つの選定の理由であったわけでございます。  そういった観点からいたしますと、どうしても霧島演習場に近いえびのというところが陸上自衛隊にとっては最適地であるというような考え方がございました。いま申し上げました約二千人のうちの八百人程度というのがいわゆる支援部隊の増強ということで熊本地区に増加配備されるわけでございますが、そうなってまいりますと、現在熊本地区には約六千二百五十人の配置があるわけでございまして、それにさらに加わりますということになりますと、かなり駐とん地としても窮屈になってまいるわけでございます。そこで、そのうちの第八施設大隊を川内に持っていくという計画を立てたわけでございますが、いま先生がおっしゃいましたように師団の支援部隊であるということは間違いございませんが、この施設大隊というものも、いわゆる師団の作戦をやる場合には、いま申しましたように普通科連隊あるいは戦車大隊あるいは特科連隊、こういったものと共同して支援に当たるわけでございまして、そういった意味では平時の訓練というものが大事でございます。いま大臣から申し上げましたように、川内地区というのは施設大隊の訓練に通したいわゆる訓練場の確保というものも可能であるということが一つございます。それからまた、あそこの川が毎年洪水になるというような過去の例もございまして、いわゆる災害派遣の面でも大いに活躍できるだろうという考え方が一つございました。さらにはまた、陸上自衛隊の駐とん地といたしましては、現在宿崎県と鹿児島県にはそれぞれ一つしかございません。熊本以北の九州ではそれぞれ三ないし四の駐とん地を持っております。そういった意味から言いましても、陸上自衛隊の駐とん地がそれぞれ一つふえるということは、いわゆる自衛隊に対する理解あるいは民生に協力するという上でもかなり意味を持っているというふうに、私どもは事務的には考えたわけでございます。
  35. 村山喜一

    村山(喜)委員 時間がありませんので、あと一点だけお尋ねをしておきたいと思います。  何かお話を聞いておりますと、えびのに普通科連隊が新設をされるのは昭和五十五年度だ、それから川内市に施設大隊が移駐をするのは昭和五十六年度である、しかしいまから土地、物件を探さなければならないというような話の中で、施設大隊の駐とん地については三十ヘクタールの駐とん地が必要だ、あるいはその訓練場でございますか練習場でございますか、それが、五十ヘクタール、こういうようなことで、当該市においては地権者を集めて寄り寄り話がなされて、同意書をまとめておる。そこで、どういうような買収の形態になるのかわかりませんが、私は、開発公社あたりが買い上げをする、しかしそれは国の行政財産として将来は転用されることが明らかである、そうすると現在の法体系の中では、そういうような買収方式をとった場合には租税特別措置法の対象にはならない、こういうように見受けておるわけでございます。  そうなってまいりますと、税金の問題やその他の問題があり、あるいはそれだけの施設が果たして必要になるのかどうか。いわゆる防衛施設の基準というものが明確にされていない中で、思惑買い的な、それに上乗せをするような措置がとられていくようになった場合には、自衛隊を移駐させることによって土地が値上がりをする、そしてそれに思惑買いがついて、市のような公共団体が何らかの目的のためにやるのであればこれはまた許せる点がありましょうが、それに便乗した土地ブローカーみたいなのが動き始めたら、これは何のために自衛隊を持ってくるのだということになりかねない。  そういうような意味から、これの問題については、政治的な配慮で長官がお決めになったことは事実であります。そしてまた、その背景の中には、市民の中にもあるいは県民の中にも、川内に原子力発電所の二号炉の設置の問題が当時問題になっておりました。まだゴーサインを市議会が出さない。それは自衛隊の移駐の問題がはっきりしなければ出さないぞという意見があったことも事実であります。そしてそれが決まった途端に、二号炉の問題については賛成だということで結論を出したのです。そういうような問題との絡み合いがあるということも事実であります。  とするならば、知事がどうのこうのと言われたわけですけれども、そういうようなことは賢明な長官は見通しの上で決定をされたことには間違いはない。とするならば、いま私が申し上げておりますような施設の買収をめぐりまして、まだ予算化もされていない。五十六年度であるとするならば、土地の、物件の手当てをやるためには、五十四年度か五十五年度にならざるを得ない。そうなった場合には、先買い権みたいな形で処理がされるということになりますると、税法上の適用が及ばない、こういうようなことで問題が残るというふうに考えるのですが、これらはどういうふうに事務的に処理をされようとしているのか、防衛庁考え方と同時に、国税庁からも来ておりますから、租税特別措置の問題については明確にしておいていただきたい。  以上申し上げまして、答弁を承りまして、私の質問を終わりたいと思います。
  36. 古賀速雄

    ○古賀説明員 お答え申し上げます。  普通科連隊、施設大隊の新しく設置する場合の基準等につきましては、私どもの方では一応の基準は設けてございます。また、演習場等につきましても、大中小というふうに一応便宜的な区分をいたしまして、それぞれの基準も設けてあるわけでございます。したがいまして、私どもとしては、余分なところを買い過ぎたり買い足りなかったりというふうなことはないように、今後慎重に検討したいということでございます。  それから、適正な価格でこれを買収しなければならないのは当然でございますが、これは公有財産、私有財産を問わず、近傍類地の売買実績等を勘案いたしまして、適正な価格で買収をしたいというふうに考えておりますが、えびのは五十五年、それから川内は五十六年でございますので、その手当てはまだ私どもとしては予算的にはやっておりませんので、どういう手順でこれから買収手続を進めていくかということは、私どもとしては、今後十分に先生の御意見等も腹に据えて進めてまいりたいと思っておるわけでございます。
  37. 掃部實

    ○掃部説明員 お答えいたします。  防衛施設用地などの国の用地を地方公共団体がかわりまして代行買収をいたします場合にも、租税特別措置法の課税の特例の適用を認めておるところでございます。ただ、代行買収であるかどうかということが非常に問題になるわけでございますが、その代行買収につきましては、まず国と市町村とが書面によって相互に明確に確認されておるということでございまして、その内容といたしましては、買い取りをした資産が最終的に国に帰属するものであるということ、それから買い取りの申し出を拒む地主がありますならば国が収用法を適用いたしまして収用をするものであるということ、それから地主との売買契約におきましては完全に代行買収であるということを明示するという四つの条項を、先ほど申し上げましたように書面によって国と市町村とが明らかにしております場合には、租税特別措置法の適用を認めておるところでございます。  そういう条件が整わない、単に市がその用地を国に譲渡するという見込みだけで地主から買い取るような場合には、当然ながら租税特別措置法の適用はいたさない、かように取り扱っておるところでございます。
  38. 金丸信

    金丸国務大臣 ただいま原子力発露の問題とこの話が取引されているようなお話がありました。これは知事に任せたことでありますから、川内市へ行くかどこへ行くかということについては私は全然知らない、その京だけは明確にいたしておきます。
  39. 村山喜一

    村山(喜)委員 予算化されなければ、租税特別措置法の代行措置もどうもこうもない。まだ現在においては海のものとも山のものともわからない。市の方が自分の方で都市計画事業のためにやるのであったら、それは租税特別措置の対象になるのでしょうが、そうでもない。まだ予算化されていないのですから、国会の意思も明確にされていない段階の中で、予算が承認されていない中で、そういう先買い権のような問題が発生をして、そこでトラブルが発生をするようなことにならないように、その点を要請をしておきたいと思うのです。  それと同時に、長官はそうかもしれません、うその言えない人だろうと私は思いますから、事実はそうだろうと思うのですが、関係の住民の間、あるいは自分の市に誘致をしたいと一生懸命やっておった者は、原発にやられましたと言ってきておるのですよ。市民の中にもそういうようなものは残っておる。十分今後御留意をいただく意味において申し上げましたので、長官は耳の中に入れておいてください。  以上です。
  40. 楯兼次郎

    楯委員長 次に、馬場猪太郎君。
  41. 馬場猪太郎

    ○馬場(猪)委員 まず最初に、この五月一日に長官の名前で、五十四年度業務計画の作成に際して指針とすべき事項というのをお示しになりました。その中で、一番最初に「健全で精強な自衛隊を維持する」、こういうように冒頭の文章の中にあるのですが、「健全で精強な自衛隊」というのは、長官の頭の中にはどういうふうな自衛隊像というものを描いていらっしゃるのか、お尋ねいたしたいと思います。
  42. 金丸信

    金丸国務大臣 私はいつも申し上げておることでございますが、わが国憲法を踏まえ、自衛隊は侵さず侵されずという考え方が、自衛隊の大事な考え方でなければならない。しかし、日本を侵すものあるときはいわゆる脅威ある部隊でなくちゃならぬ、一つかみの自衛隊じゃならぬ、それには精強な部隊にならなくちゃならぬ、こう私は申し上げておるわけでありますが、それが国民の負託にこたえるゆえんだ、なまくら自衛隊じゃならない、こういうことでございます。
  43. 馬場猪太郎

    ○馬場(猪)委員 わざわざそういうふうなことを言われるということは、そういうなまくらな自衛隊の印象を持つような何かが現在あるわけですか。
  44. 金丸信

    金丸国務大臣 それはあるかないかという問題になりますと、ないことを願っておりますが、強く私はそれを要請いたしておるところでございます。
  45. 馬場猪太郎

    ○馬場(猪)委員 その中に、五十三年度に引き続いて、「各般にわたる警戒のための態勢及び指揮通信の態勢の整備並びに抗たん性及び継戦能力の向上を図る」、こういうふうな御説明がございますが、抗たん性というのはどういうことなのか、そしてまた継戦能力の向上を図るということについての内容についての御説明をいただきたいと思います。
  46. 伊藤圭一

    伊藤説明員 まず、抗たん性の問題でございますが、これはいわゆる一撃のもとに機能を失うというようなことがないようにというのがねらいでございまして、たとえば航空機などが地上におきましてすぐやられてしまうということがないようにシェルターというような形でこれを保持する、あるいはレーダーサイトがやられてしまいますとすぐ機能を失いますので、移動式のレーダーサイト等を準備しておきまして、固定式がやられた場合にこれに取ってかわるというのが抗たん性、それに対するレーダーサイトの防備のための対空戦闘能力を持たしておくというようなことが抗たん性になろうかと思います。  継戦能力といいますのは、そういった兵器類を持っておっても、続けて役に立てるためには、たとえば弾薬などを持っていなければ、弾薬がなくなりますと、これは継戦能力がなくなるわけでございます。したがいまして、弾薬とかあるいは燃料、そういったものの備蓄、そういったものが中心になろうかと考えております。
  47. 馬場猪太郎

    ○馬場(猪)委員 それではひとつ、弾薬の備蓄とおっしゃいましたが、いまどれぐらいの備蓄というものが平均して、これはそれぞれの砲によっても違うでしょうし武器によって全部違うと思いますが、平均してどのぐらいのものが現在あるか。そしてこの中で考えていらっしゃる目標、そういったものについてもお教えをいただきたいと思います。
  48. 間淵直三

    間淵説明員 お答え申し上げます。  弾薬につきましてはいろいろ弾種というものについてのばらつきがあるわけでございますが、陸海空三軍を合わせまして、ただいまの手持ち量おおよそ七万トン、こういうふうに御理解いただきたいと思います。  それから、どのくらいを目標としてどうするかということでございますが、この七万トンという量、かつては十五万トンぐらいあったことがあるわけでございますが、そこら辺を勘案いたしまして昔の量に戻すというようなことは、いまのところ頭にないわけでございますが、そのときどきの予算、財政状態といったようなものを勘案いたしまして、備蓄を少しずつでもふやしていきたい、こういうふうに思っておる次第でございます。
  49. 馬場猪太郎

    ○馬場(猪)委員 それじゃ、その七万トンというのは平均して七万トンですが、これは大体どれぐらいに耐え得るものなんでしょうか、何日間ぐらいに耐え得るものなんでしょうか。
  50. 伊藤圭一

    伊藤説明員 この七万トンがどのぐらいの期間持ちこたえられる量であるかということは、これはなかなかむずかしい問題でございます。しかし、陸海空自衛隊におきましていろいろな角度から所要量というものを研究したことがございます。  陸上自衛隊におきましては、ある戦闘様相、まあティピカルなものをとりますと、一カ月間十四、五万トンといいますか、それぐらいあると、ある程度の抵抗力を示し、一カ月間は持ちこたえられるだろうという計算をしたものもございます。したがいまして、そういう点からいたしますと、私ども二次防以来目標といたしております一カ月間の抵抗力というのには足りないというふうに考えております。  それからまた、艦艇、航空機の弾薬につきましては、これは大体一撃分というのを目標にいたしておりまして、それに向かって努力しているわけでございますが、この一撃分というのが一体どのぐらいの期間持ちこたえられるかということになりますと、これもなかなかむずかしゅうございまして、いわゆる艦艇が一つの行動をとる期間、その期間が一週間あるいは二週間ということになろうと思いますが、そういった期間の行動に耐え得るということでございます。  もう一つ問題がございますのは、最近のミサイルの問題でございます。ミサイルというのは、これは普通の弾と違いまして寿命がございます。非常に精密兵器でございますので、そのミサイルそのものの命中精度というものは、二年たち、三年たちますとぐっと落ちてまいります。したがって、訓練弾として使う以上の備蓄を大量に抱えておりますと、ミサイルとしての機能を失うという問題もございます。  そういったいろいろなことを検討いたしまして、いま装備局長からお答えしましたように、ふやす努力はしなければならないと思っておりますけれども、すべてのものが一カ月なら一カ月戦えるというような数を持てるというふうには考えていないわけでございます。
  51. 馬場猪太郎

    ○馬場(猪)委員 いまのところ、たとえばミサイルなんかは、一発撃ったらもう後は続かないというような事態もあるということなんですか。  そしてまた、陸上自衛隊だけ考えれば、七万トンというのはどれくらいの量なんでしょう。
  52. 伊藤圭一

    伊藤説明員 まず、陸上自衛隊にいたしますと、半月分というのが常識的に考えられるわけです。もちろんこれは弾種によりまして多いものも少ないものもあるわけでございます。  それから、ミサイルにつきましては、いわゆるベーシックロードというのがございます。これは有事の際にとりあえず戦うためにそのミサイルとして最小限持っていなければならない弾、これは持っているわけでございます。そのべーシックロードを超えた備蓄というものが必ずしも十分ではないというふうに申し上げておきたいと思います。
  53. 馬場猪太郎

    ○馬場(猪)委員 通常どの程度、各国の軍隊もやはりそれぞれ違うと思いますけれども、当然持っておかなければならない数字というものはあると思うのですが、そういう数字というのはございますか。
  54. 伊藤圭一

    伊藤説明員 これはいろいろな戦術構想あるいは戦略構想によって変わってまいりますので、決まったものというものはないわけでございます。しかし、通常の場合に、防空ミサイルその他につきましては、いわゆるベーシックロードといいますか、最初の戦闘に耐え得る、その後の補給を考えて耐え得るものというべーシックロードという規定がございまして、それは自衛隊におきましても守っていきたいというふうに考えているわけでございます。
  55. 馬場猪太郎

    ○馬場(猪)委員 じゃ、いまのところ、極端なことを申し上げますと、局地を占拠された、これを撃退しようと思っても、半月間しか自衛隊は持ちこたえるだけの力がないということが現状でございますか。
  56. 伊藤圭一

    伊藤説明員 それは一概には言えないわけでございます。その侵略の態様によって変わってくるわけでございますが、過去におきまして私どもが勉強をしたような場合に、大規模の侵略があった場合に弾の量としては十二、三万トン、あるいは十四、五万トンが欲しいということは考えたことがあるわけでございます。
  57. 馬場猪太郎

    ○馬場(猪)委員 こういう指示を出されているわけですから、一定の量というのを目途とされているわけですが、それに対して、いま言われた一撃で後の交戦能力がなくなるようでは困るということで、たとえばレーダーサイトを地下に入れるとか、あるいはまた兵器を地下に入れるような設備をする、そういうことについてはどの程度の規模が必要になるのでしょうか。
  58. 伊藤圭一

    伊藤説明員 たとえばレーダーにつきましては、従前のレーダーから徐々に三次元レーダーにかえております。この三次元レーダーにかえる過程におきまして、いわゆる半地下式という形にかえてきております。  しかし、一方、固定のレーダーサイトというものはどうしても目標にされやすいという欠点を持っているわけです。したがいまして、移動式のレーダーといいますか警戒管制装置というものにかえていけるところはかえていきたい、そういった予備の力というものを持っていきたいということで、とりあえず現在は北の方、中部、西の方、それぞれ一つの移動警戒レーダーを持っているわけでございますが、これをいま研究開発を進めておりまして、もっとハンディーなもので能力を持ったものができつつございますので、そういうものを予備の力として装備してまいりたいというふうに考えておりますが、いま全体でどのぐらいになるかということはちょっと計算したものは持っていないのが実情でございます。
  59. 馬場猪太郎

    ○馬場(猪)委員 一応一基についてどれぐらいの程度のものがかかり、そしてどれぐらいの程度の規模のことを考えていらっしゃるのか。
  60. 間淵直三

    間淵説明員 移動三次元レーダーの例をとって申し上げますと、一基につきまして十数億円というところでございます。
  61. 馬場猪太郎

    ○馬場(猪)委員 航空基地などのセンターで全部地下式にするというような費用については、どのぐらいのものがかかるのでしょうか。
  62. 古賀速雄

    ○古賀説明員 一基が約一億四千五百万でございます。——失礼いたしました。二基でございます。
  63. 馬場猪太郎

    ○馬場(猪)委員 二基で一億四千五百万ですか。  それを全体計画としてどれぐらいのことを第一次で来年度考えていらっしゃるのか。
  64. 伊藤圭一

    伊藤説明員 シェルターにつきましては実は私どもは従来余り手がけておりませんでした。ことしその二基を試験的に製作しているわけでございます。この効用を考えまして、それぞれの基地に何基ぐらい持たなければならないかというのは、五十三年度の結果によって判断しなければならないと思っているわけでございます。
  65. 馬場猪太郎

    ○馬場(猪)委員 その次に、「停年退職者の急増、労働事情の変化、若年停年隊員の要望等を考慮しつつ、各般の人事諸施策を推進し、」とあるが、この中身をひとつお示しいただきたいと思います。
  66. 渡邊伊助

    ○渡邊説明員 お答え申し上げます。  先生御承知のとおり、現在法令で自衛官については停年制がしかれておるわけでございます。二佐までは五十歳、一佐以上は若干延びておりますけれども、五十歳停年というのが大部分でございまして、これでただいまのところ、大体昭和六十年前後に約六千名前後の停年退職が出る、こういう見込みでございます。  これだけ大量の人員が退職するということになりますと非常に大きな深刻な社会問題になるというふうに考えておるわけでございます。このためにいろいろな施策を私ども部内で検討いたしておるわけでございますけれども、その一つに、停年を延長したらどうかという議論がございます。ただ、停年を延長するという問題は、単に若年停年のために大量の退職者が出るその対策のためだけではございませんで、一般社会的な情勢として、平均寿命が非常に延びておる。民間企業におきましても定年を延長しようという傾向にございます。そういう点からも考えまして、自衛官の停年制をいまのままでいいかどうかということについて見直しをしようということで現在検討をいたしているところでございます。  この停年を延長することにつきましてはいろいろ困難な問題がございますけれども、現在のところその困難なものをどういうふうにして解決したらいいかということで、もし解決できない問題があればやむを得ませんが、なるべく工夫をいたしまして前向きに停年を延長したらどうかという姿勢でいま進んでおるところでございます。
  67. 馬場猪太郎

    ○馬場(猪)委員 いろいろの困難なものと言われたのですが、どういう困難な問題があるのですか。
  68. 渡邊伊助

    ○渡邊説明員 たとえば現在どうして若年停年制がしかれているかという理由でございますけれども、それはやはり第一に精強な部隊を維持する必要がある、つまり老齢化する部隊ではやはり部隊の精強度というものは落ちるであろうということからこういう制度がしかれておるというふうに考えております。したがいまして、その問題が解決できるかどうか、つまり一般的な国民の体力というものが非常に向上しておるということであれば若干停年を延長してもその困難は乗り切れるかもしれない、そういう問題の検討一つございます。  もう一つは、停年を延長することに伴いまして当然に、階級別の定数というものが定められておりますので、昇任率というものがやはり低下せざるを得ない。これはどの程度の低下でたえられるかどうか、こういうような問題がいろいろございます。
  69. 馬場猪太郎

    ○馬場(猪)委員 その質的低下をどういう方法でカバーするという対策はお立てになっていないのですか。
  70. 渡邊伊助

    ○渡邊説明員 先ほど申しました第一の問題につきましては、現在部隊の中でどういう職域があるかというものを洗っておりまして、その職域ごとにどの程度の年齢がたえられるかどうかということを全部洗っておるわけでございまして、それが全部、たとえば三歳延長して五十三歳になった場合に、その職域にたえられるかどうか、その五十三歳の人間の数がどの程度であって、その職域の数は全部吸収できるかどうか、こういうようなことをいま検討しておるわけでございます。
  71. 馬場猪太郎

    ○馬場(猪)委員 その次に、「着手する大型の新規事業の受け入れ準備」、今年度はどういう計画がございますか。
  72. 伊藤圭一

    伊藤説明員 その前にお断りしておきたいと思うのですが、この五十四年度の業務計画というのは、いま内局と各幕が五十四年度どういう事業をやるかということを研究いたしておりますので、すでに結論が出たというわけではないことを申し上げておきます。  五十三年度に着手する大型の新規事業というのは、御承知のようにF15とP3Cの導入の問題がございます。防衛庁といたしましてこれほど大きなプロジェクトというものを二つ同時に発足するということは初めての経験でございます。もちろんそれぞれ自衛隊が違うわけでございますが、御承知のように業務計画というものは自衛隊の業務全般を支障なく実施するための計画でございますので、どういう形でどれぐらいの人員を配置してどういう手順によってこの事業を進めていくかということを現在事務的に検討しているというのが実情でございます。
  73. 馬場猪太郎

    ○馬場(猪)委員 今後の検討課題が非常にたくさんあると思いますが、飛ばしまして、それでは九番のところにまいりたいと思います。  先ほども少しお触れになったと思いますが、「陸、海、空自衛隊の統合運用に配意しつつ、」最後の方に「統合運用に必要な体制整備」ということ、これにはいろいろの欠点があるとさっきおっしゃったのですが、いままでどういうふうな欠陥が出てきておって運営が適当でなかったのかということについて、教えていただきたいと思います。
  74. 伊藤圭一

    伊藤説明員 先ほども御説明いたしましたが、私どもは、陸海空それぞれの自衛隊が現在の勢力で、現在もし武力攻撃を受けた場合にはどういう対処の仕方をするかという計画は持っているわけでございます。しかし、従来からの例によりまして陸海空それぞれが対処する計画を持っておりますが、それを統合してやるという点、あるいは協調してやるという点についての配慮が必ずしも十分ではなかったという反省がございます。したがいまして、先ほど大臣から指示がございまして、全体についての運用研究というのはやっているわけでございますが、その運用研究に資するためにも、来年度の統合運用というものについては十分配慮しながら、いわゆるそれぞれの自衛隊が演習をするに当たってもやはり統合運用という見地を重視しながらやっていきたいということで、現在検討を進めているということでございます。
  75. 馬場猪太郎

    ○馬場(猪)委員 大臣から御指示があってひとつ八月から始めようというのは、この九の項目に当たるわけでございますか。
  76. 伊藤圭一

    伊藤説明員 先ほども申し上げましたが、統合運用というものを考えるという点ではまさにこれでございます。しかし、大臣の御指示のありました防衛研究というものはこれだけではなく、従来からのいろいろな研究というものを総合いたしまして、いわゆる防衛力を最も有効に発揮できるという観点からの研究を進めてまいりたいと考えているわけでございます。
  77. 馬場猪太郎

    ○馬場(猪)委員 大臣から御指示のありました有事におけるというその有事という解釈ですね、一般論としてで結構ですが、どういうふうな解釈がおありになるのか。
  78. 伊藤圭一

    伊藤説明員 この有事というのは、必ずしもはっきり定義というものは定まっていないと考えておりますけれども、私どもは一応日本に対する武力攻撃があるということ、あるいはあるおそれのあるということ、すなわち七十六条によりまして防衛出動が下令されるというような状況有事考えているわけでございます。
  79. 馬場猪太郎

    ○馬場(猪)委員 たとえば、竹島のように占拠をされた、そして占拠をされたについては現在は外交的な方法で交渉しておる、しかしいつまでたっても外交交渉がらちが明かずに占拠され続けておったような場合はどういうようになるのですか。有事になるのですか、ならないのですか。
  80. 伊藤圭一

    伊藤説明員 自衛権の行使につきましては、先生も御承知のように三つの要件というのがございます。これは、急迫不正の侵害があったという場合、それから他に全く手段がないという場合、必要最小限の自衛力を行使するという三つの要件がございますが、竹島の問題につきましては御承知のようにせっかく外交努力が続けられているわけでございますから、他に手段がないという場合とは私どもは考えていないわけでございまして、この三要件からいたしますと、外交努力が続けられている限りは他の手段で解決を図っているというふうに考えているわけでございます。
  81. 馬場猪太郎

    ○馬場(猪)委員 もしそういう外交手段が行き詰まって、いつまでたっても交渉が進展しない場合には有事と解釈されるわけですか。
  82. 伊藤圭一

    伊藤説明員 これは私どもも事務的な立場からいたしますと、外交交渉が続けられている間は当然他の手段によって行われているというふうに判断をすべきことだろうと思います。したがいまして、私どもといたしましては、外交交渉がある限りは自衛権の行使の要件には当たらないというふうに考えておるわけでございます。
  83. 馬場猪太郎

    ○馬場(猪)委員 自衛隊としてはそうだと思うのですが、それじゃ外交交渉がどうしてもうまくいかない、これは仮定のことですが、そういった場合には、どこでどういう判断をなさるということになるのでしょう。これはひとつ大臣にお答えいただきたいと思います。
  84. 金丸信

    金丸国務大臣 まあ外交問題で、外務省がこの問題について接触をいたしておるわけでありまして、なくなったらどうする、仮定の問題についてはお答えできません。
  85. 馬場猪太郎

    ○馬場(猪)委員 仮定と言われるけれども、現実には占拠をされておって、外交交渉が全然進展しておらないわけですね。ですから、いつかは決着をつけなければならないときがあるんじゃないかと思うのですが、これはどこでどういう判断をなさるのですか。
  86. 金丸信

    金丸国務大臣 わが国は、あくまでも国を守るということであります。竹島も国の領土であります。当然守らなくちゃならないけれども、実際上はあそこへ韓国から、二、三の人が上陸しているという話も聞きます。しかし、ただいまは外交交渉でこれを進めており、この外交交渉があくまでもお互い両国間で妥結することを私はこいねがっておる一人であります。
  87. 馬場猪太郎

    ○馬場(猪)委員 有事の解釈もいろいろございますが、それじゃひとつこの間長官が西ドイツからアメリカに回ってブラウン長官とお会いになったそのときにも、アメリカ側の有事の際の米軍の来援計画というふうに言われておりましたけれども、この際の有事というのはどういう解釈をなさっているわけですか。
  88. 伊藤圭一

    伊藤説明員 アメリカ側の有事ということではございませんで、日本が侵略をされたときアメリカは全力を挙げて日本の安全のために協力するということでございまして、いわゆる日米安保体制にのっとって日本の安全のために努力するという話であったわけでございます。
  89. 馬場猪太郎

    ○馬場(猪)委員 その際どういうことが予想されますか。
  90. 伊藤圭一

    伊藤説明員 日本が直接侵略を受ける場合といたしまして、いわゆる陸上兵力による上着陸の作戦というものがございます。あるいはまた海上交通路におきます破壊という問題がございます。それから、いわゆる航空機による攻撃という場合が考えられるわけでございます。それぞれの場合におきまして、わが国防衛構想にもございますように、小規模のものについては自衛隊が独力でやるということを原則にいたしておりますが、規模が大きくなってまいりますと、米軍協力を得てこれを排除するということでございますので、それぞれの場合についてアメリカなりの支援というものをするということでございます。
  91. 馬場猪太郎

    ○馬場(猪)委員 この六月に新しく指示された防衛研究のスタッフというのはどういうふうなものになっておりますか。
  92. 伊藤圭一

    伊藤説明員 統合幕僚会議に勤務いたしております自衛官が十数名でございます。それから陸海空自衛隊からおのおの四名、約十二名がこれに参加いたします。さらに内局関係の部局が参加いたしまして、全体で三十人程度のプロジェクトチームになろうかと考えております。
  93. 馬場猪太郎

    ○馬場(猪)委員 そういうスタッフになりますと、どうしても軍事的な専門家ということが優位になるおそれがあると思うのですが、そういう点ではいかがでしょうか。
  94. 伊藤圭一

    伊藤説明員 これは部隊運用でございますから、やはりどうしても制服の知識というものは重視しなければなりません。しかし、それぞれの研究の過程におきまして、その研究の進捗の状況というものはそれぞれの時点で大臣にも報告し、また内局内局といたしまして関係各省との間で措置しなければならぬこともあるわけでございまして、そういったものを勉強しながらそれに加わっていくということでございます。したがいまして、制服のサイド、それから内局のサイドが一緒に研究をした結果というものは、その研究の過程におきましても随時大臣報告し、御指示をいただいて研究を進めていくという形になろうと考えております。
  95. 馬場猪太郎

    ○馬場(猪)委員 大臣の場合は専門家じゃないと御自分でもおっしゃっているわけですが、そこで進んだ研究がいずれは今後の防衛計画の中に皆織り込まれていくだろうと思うのです。勢い、専門的な問題になるだけに、専門家でない立場の者が判断しにくいものがいろいろと起こってくるのじゃないかと思うのですが、そういう点については、いわゆるシビリアンコントロールというものについて危惧の念を持たざるを得ないと思うのですが、その点はいかがでしょうか。
  96. 伊藤圭一

    伊藤説明員 自衛力の行使というものは、やはり与えられた条件の中で最善の効果を上げるということでございます。したがいまして、武力を行使して自衛力を行使するということになりますと、それぞれの分野の専門的な見地からの研究というものが当然ございます。したがって、それを総合的に見まして、与えられた条件の中でそれをやっているか、そしてまた、あるいは与えられた条件を超えているかという判断は、それは個々の専門的な知識がなくても十分大臣にも御理解いただけると私どもは考えておるわけでございます。  過去におきまして、それぞれの防衛計画等につきましてはもちろん制服中心になって計画は立てるわけでございますが、内局防衛局もこの計画には十分タッチいたしております。私どものスタッフの中にも長い間そういう経験を持った者もおります。私自身もいろいろなことでそういうことにかかわり合ってまいりましたが、いわゆるシビリアンといいますか、文官あるいは大臣政治家、その段階で全く理解できないというような専門的な分野というものは必ずしもたくさんあるというふうには考えません。したがいまして、いま申し上げましたように、与えられた条件の中で最善を尽くす努力というところにいわゆる専門的知識というものは生かされるのでございまして、そういった意味シビリアンコントロールというものは十分維持されるというふうに考えているわけでございます。
  97. 馬場猪太郎

    ○馬場(猪)委員 私どもが危惧しますのは、現にこの間の択捉の問題のときにもあったんじゃないでしょうか。あれが上陸作戦の演習であるということ、あるいはまた建設のためとか、あるいは波止場をつくるためとかということでそれぞれ状況が皆変わってまいります。そういう報告が事前に、五日に大臣にあったにもかかわらず、大臣の頭の中に十分ないような状態だった。そこで重要な問題を非常に軽く見られたというような欠陥が起こっているということについて、これじゃ文民統制ということが非常にむずかしい状態が起こってくるのではないかと思うのですが、大臣、その点はいかがでしょうか。
  98. 金丸信

    金丸国務大臣 択捉島の問題につきましてはいろいろ誤解を生じたこと、この機会におわびを申し上げるわけでございますが、私も政治家であります。防衛庁長官としていわゆる文民統制というものについては正しい判断をしなくちゃならぬ。しかし、私一人ではない。いわゆる国会というものがございます。最高権威の国会が大きなシビリアンコントロールである。ですから、できるだけの内容につきましては提供して御判断を願う、こういうことを私は考えておるわけであります。
  99. 馬場猪太郎

    ○馬場(猪)委員 実際に派兵をやるとかあるいは戦闘を開くというような場合については、もちろんただ単なる戦力だけじゃなしに、いわゆる自衛力だけじゃなしに、食糧の問題とかあるいは油の問題とか、総合的に判断しなければならぬ、そういう広い意味でのシビリアンコントロールは、いま言われたあるいは国会、あるいは総理大臣にもあるわけでしょうけれども、狭い意味シビリアンコントロールの中には大臣の判断能力というものが非常に重要だと思うのです。事前に報告があって、それが内局と十分連絡を通じて、そしてそれが外に発表されたというようなシステムがきちっとでき上がっていないところに、いろいろな問題があるんじゃないか。そういう点を危惧しておるのですが、そういう点はスムーズにいっておるのですか、どうですか。
  100. 金丸信

    金丸国務大臣 御質問の趣旨は、一〇〇%すべて完全にいっているのか、こういう御質問だと私は思うのですが、そういう点につきましてはじくじたるものがあると言わざるを得ません。しかし、そこで今後そういう面につきましても国民の皆さんに御迷惑をかけたりするようなことのないように、そういう問題も十分詰めていかなくちゃならぬ。しかし、私も素人だと申し上げております。まさに素人であります。素人だけれども、私も政治家を二十一年やっております。そういう中で、一つの判断というもの、これは厳しい判断もしなくちゃならぬ場合もあると思います。ぜひひとつ、そういう意味で、私も防衛庁長官として、そういうシビリアンコントロールという問題については厳正な考え方の中で対処していきますが、私ひとりでなく、国会全体の先生方にもそういう面でなお一段の御指導、また御批判をいただかなくちゃならぬ、こう考えておるわけであります。
  101. 馬場猪太郎

    ○馬場(猪)委員 先ほど陸海空の意思疎通すらなかなかうまくいかない面があるというふうに局長の方も御答弁になりました。そして大臣も、短い方は一年ぐらい、長い方でも三年ぐらいということで、しょっちゅう専門家でない方々がおかわりになる。しかも、いま研究をなさっているような問題については、逐次それを国会報告するというような状態にない。そしてまたそれを受けても専門的に検討できないような仕組みになっておるんじゃないかと思うのです。そういう意味では非常に危惧の念を感ずるわけですが、これに対して何らかの研究課題などを逐一報告できるようなそういうシステムというものはお考えになっているのかどうか。
  102. 金丸信

    金丸国務大臣 防衛問題は、衆参両院に内閣委員会というものがありまして、内閣委員会でいろいろ御質疑をいただく。しかし、野党五党はいわゆる防衛に対する特別委員会というものをつくれ。私も議運の委員長をいたしておりますとき、つくることに意義があるというようなことでいろいろ根回しもいたしたわけでありますが、自民党の方でいろいろ右顧左べんするようなことが出まして、まだこの問題が解決いたしておりませんが、私はそういうような特別委員会なり安保特別委員会、何でもいいからひとつつくっていただいて、思う存分な御質疑、御批判をいただくことが、いわゆるシビリアンコントロールの一番の大切なところじゃないかという考え方を持っておるわけであります。
  103. 馬場猪太郎

    ○馬場(猪)委員 しかし、現実には国会の中にもまだ正式に防衛問題を担当する委員会も発足しておりませんし、内閣委員会でも逐次やっておりまするけれども、なかなか十分に防衛庁との関係がうまく調整できるような状態にもなっておらないままで、このままどんどん時日が進んでいっているんじゃないかと思うのですが、それに対してはやはり防衛庁自体としても徹底できるような方法というものを考えていかなければならないと思うのです。特に広義のシビリアンコントロールといわれる意味と、狭義の、防衛庁内部でもそれができるようなシステムというものは考えていらっしゃらないのですか。
  104. 竹岡勝美

    竹岡説明員 狭い意味でのシビリアンコントロールは、防衛庁内部におきまして、内局の存在価値等のこともあると思いますけれども、内局の各参事官は長官を補佐しまして、特に基本的な事項について補佐することになっておりますが、特に内局のいわゆる文官というものと、制服自衛官、これはともに一体になってやっていかなければならぬわけでございますし、われわれ内局の者も一たん有事の場合に、制服自衛常ができる限りの力をふるってやれるような体制づくりに応援し、一方では彼らの持っておりますミリタリースピリット、われわれはシビリアンマインドというようなことで、長官制服の方々との橋渡しという役割りも持っておるわけであります。平素、御承知のとおり事務次官のところで統幕議長、各幕僚長が週に一遍の定例会議を持っておりますし、あるいは防衛庁全体の各付属機関、幕僚長あるいは内局局長、これを合わせました週に一遍の定例会議を持っておりますし、さらには内局局長クラス、それから各幕僚長、制服の代表を集めました参事官会議、これに制服関係者も出ていただいて常に連絡を密にとっておるわけでございます。同時に、先ほど防衛局長が申し上げましたとおり、毎年つくります業務計画あるいは防衛計画、これはそれぞれ制服側の方から案をつくりまして、内局へ持ち上げて、一緒になって制服の持つミリタリースピリット、われわれの持ちますシビリアンマインド、こういうものを合わせましてそれぞれの計画をつくり、長官の決裁をもってやっている。一層内局の文官と制服自衛官が本当に一体になってやっていかなければならない、こういうことを痛感しております。
  105. 馬場猪太郎

    ○馬場(猪)委員 国民は、このごろ戦力解釈というものはだんだん広がっていっておりますし、それだけにシビリアンコントロールに対する関心というものは非常に強いわけですから、内部的にもそういう機構をきちっと立てていただくと同時に、広義のシビリアンコントロールの制度というものはやはり今後もつくっていただかなければならぬと思います。  さらに、いまそういう問題を控えて有事の作戦研究ということをやる以前に、本当はもっとやるべきことがたくさんあるのじゃないかと思うのです。自衛隊自身がお調べになった調査によっても、現在では七十数%の人たちが自衛隊の存在を災害対策等の出動によって意識しておるというような結果があるということも資料でいただきましたけれども、そういうことについて災害対策についての積極的な——たとえばわが国では専門的な軍事的な研究とか防衛問題だけ言われておるけれども、本来ならば国民全体が防衛意識を持つようにならなければ防衛というものはうまくいかないのじゃないかと思うのです。そういう意味では自衛隊に求めている災害対策なんかに対する要望というのは非常に高いわけですから、そういう意味での自衛隊での対策というのはどういうふうに考えていらっしゃるのか。
  106. 伊藤圭一

    伊藤説明員 先生のおっしゃるとおりでございます。私どもは自衛隊というのは二十七万の巨大な組織を持っておりまして、このエネルギーというものは有事の際に国民の生命、財産を守る力として働くわけでございますが、平時におきましてもやはり国民の生命、財産の安全のためにこれを国民のために使わなければならない、いわゆる民生協力というものはきわめて重視しているわけでございます。  御承知のように、脅威というものは、いわゆる武力攻撃という人為的なものもございますが、天災による自然の脅威というものは特に日本の場合には考えなければならない問題でございます。したがいまして、災害派遣につきましては自衛隊が発足以来きわめて力を入れているところでございまして、現時点におきましては予想される災害におおむね対応できるような体制はとっているわけでございます。しかし、最近特に注目されております大災審、大きな震災が起きたときの災害派遣、こういったものにつきましては経験のない分野でございますので、いろいろな場合を想定しながら有効に対処できるというような方法をとっているわけでございます。  具体的には、災害派遣に必要な土木機材等も普通科連隊にも配備するということが四次防以来行われておりまして、それぞれの普通科連隊も災害出動しましたときには、従来は人力によって人命を救済したりあるいは道路を警戒したりということでございましたが、いまではかなりの機械力をもって迅速にこれに対処できるというような能力を高めてきているところでございます。
  107. 馬場猪太郎

    ○馬場(猪)委員 今後とも災害対策に対する充実ということもひとつお図りいただきたいと思います。  もう一つ先ほども防空資材だとかレーダー設備に対するシェルターの問題を挙げましたけれども、人命に対して地下ごうをつくるとかそういった方面の防護対策について防衛庁としてはお考えになっているのか、おらないのか。
  108. 伊藤圭一

    伊藤説明員 人命というのが国民全体ということになりますと、実は私どもは細々と研究はいたしておりますけれども、実際の施策はやはり政府全体の施策として取り上げられるべきものでございまして、現在私どもが担当いたしております防衛の分野としてそういうことを全部やれるかどうかという問題は別にあるわけでございまして、政府全体としてそういう方向に持っていっていただきたいというふうに考えておるわけでございます。
  109. 馬場猪太郎

    ○馬場(猪)委員 現在では防衛庁自体としての国民全体のそういうシェルター計画というのはお持ちじゃないわけですか。
  110. 伊藤圭一

    伊藤説明員 それは計画としては持っておりません。
  111. 馬場猪太郎

    ○馬場(猪)委員 どこの国へ行きましても民防というのは非常に重要だと思いまするし、そういう点については大臣はどういうお考えをお持ちになっていますか。
  112. 金丸信

    金丸国務大臣 私は、ヨーロッパあるいはアメリカへ行ってみまして、そういう施設が非常にりっぱなものができ上がっておる。人命は大切だということを考えれば、そういうものはつくらなければいかぬという考え方でおるのですが、こういう問題を防衛庁が取り上げていくということについてなかなか国民の合意ができるのかできないのか。二十七万の自衛隊員だけで日本の防衛ができるものじゃない、あるいは自民党だけで日本の防衛ができるものじゃない。国民すべての人の合意がなければならない。それは野党の皆さんの合意も得なければ防衛というものはできない。コンセンサスをそこに得なければならぬ。そういう意味で、野党の皆さんがそれはやらなければいかぬという御声援をいただけば、当然われわれはそれに力を得てそういうようなことも考えてみたい、こう思うわけであります。
  113. 馬場猪太郎

    ○馬場(猪)委員 特に災害との関連において、ただ単なる戦力の行使とかいうような意味でなしに、災害対策との関連においてこういう問題を考えなくてはいけないということを申し上げているのでありまして、防衛庁も広い意味で、平和を守り、民心を守り、日本国民を守るという意味での研究をお進めいただきたいということで、終わりたいと思います。
  114. 楯兼次郎

    楯委員長 この際、午後一時四十五分まで休憩いたします。     午後零時三十七分休憩      ————◇—————     午後一時四十六分開議
  115. 楯兼次郎

    楯委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  質疑を続行いたします。原茂君。
  116. 原茂

    ○原(茂)委員 私が防衛庁の皆さんに質問するのに北富士がないのはどうもちょっとおかしいだろうと思うのですが、きょうは北富士問題を一時休もうと思いますが、長官に一言だけお尋ねしておきます。  北富士問題もそろそろどろ沼の様相を呈すおそれがあります。ここらで北富士の周辺における諸問題の解決に本腰を入れて、長官として、特に地元の問題でもございますから、お考えをいただいたらと思って期待をいたしておりますが、その決意のほどだけお伺いをしておきたい。
  117. 金丸信

    金丸国務大臣 原先生の期待しておる問題につきまして、私も大いにこたえたいと意欲を燃やしておる次第であります。
  118. 原茂

    ○原(茂)委員 それではきょうの本論に移ってまいりますが、最近のベトナム情勢を見ますと、ある意味におけるソビエト、中国の状態が非常に悪くなっておりますが、一説によりますと、米国の第七艦隊がグアムの海域からベトナムの海域へ移動をした。何か全面的な悪い状態になることを予想したアメリカの行動のように客観的に見られるわけです。私ども全面戦争といいますか、そういったベトナム中心のソビエト、中国などの戦争状態が起きないことを念願いたしておりますが、ある種の緊張状態というのに現在のベトナムの状況は当たっていると思うのです。御存じの四月三十日に中国がいきなり華僑をどんどんベトナムは追い帰しているといった発表がありまして以来、先月の二十日までにすでに十五万人の華僑が中国に帰ったというようなこと、また引き続き状況が悪化していまして、現在もある意味における全面的な国交断絶の状態に向かっているというようなことを考えますと、このベトナムを中心にしたソ連、中国の緊張状態というものが、米国の第七艦隊をグアムからベトナムに移しているというようなことを考えたときに、ある程度こういったベトナム中心の問題というものは、わが国も、防衛を担当する長官としてはやはり何がしかの心配もされているでしょうし、これに対する手当てなど何かをお考えになる状態になっているのかどうか。防衛庁として、いまのベトナム中心状況をどうお考えになっているか。一体わが国がこれに対応するためにどのようなことをいまお考えになっているかを、まず最初にお伺いをしておきたいと思います。
  119. 伊藤圭一

    伊藤説明員 ベトナムの状況につきましては、私どももできる限りの情報をとるように努力はいたしております。しかし、いま先生がおっしゃいましたような、第七艦隊がそれに備えて行動を起こしたというようなことは入っておりません。ただ、カムラン湾に地対空のミサイルが置かれたようだというようなことは、情報としては知っているわけでございます。  それからまた、ベトナムと中国との関係といいますのは、御承知のように二千年来いろいろトラブルのあったところでございまして、今度の華僑の帰国問題を通じて険悪化しているという状況も、情報としては知っているわけでございます。  しかし、私どもといたしましては、いまこのベトナムの問題というものが、極東の平和というものを直ちに覆すような状態というふうには判断していないわけでございます。したがいまして、このベトナムと中国との関係あるいはソ連の動き等につきます情報を集めるということには努力をいたしておりますが、わが国自衛隊といたしましてこれに対応するというようなことは考えていないわけでございます。
  120. 原茂

    ○原(茂)委員 いまのお話で、第七艦隊の移動については関知していないとおっしゃったのですが、第七艦隊がある意味の行動を起こす、あるいはそれが日本の周辺において移動を行うというようなときに、第七艦隊の移動なりあるいはある種の目的を持った行動なりというものは、日本では全然関知し得ない状況にあるのでしょうか。少なくとも、常時第七艦隊の動きというものは、まず日米関係からいったら、お互いに情報の交換等が行われ、あるいはある程度憶測できるような、そういった程度のいわゆる周辺状況の情報交換、こういうようなものもあってしかるべきだと思うのですが、第七艦隊というあの大きなものの移動なりあるいは作戦的な行動の行われるときに、何ら日本は関知しない。少なくとも、いまベトナムに起きているあの事態の中で、グアム周辺からベトナム海域に第七艦隊が移動をしたという事実はあったと思うのですが、それすら関知しないという状況というのは、何か日米間、余りわが国防衛庁が言っているほどのいわゆる緊密さ——連絡に欠けてい過ぎるんじゃないかという感じがしますが、どうですか。
  121. 伊藤圭一

    伊藤説明員 わが国米軍との間では、いろいろ情報は交換いたします。しかし、御存じのように、個々の艦艇の動き等につきましては、必要な範囲の情報の交換を行いますけれども、すべてにわたってその情報をくれるというものではございません。  しかし、私がいま申し上げましたのは、今度のベトナムの緊張といいますか、あるいは中国との間の緊張状態に伴って、第七艦隊が行動を起こしてベトナムに移動したというような情報は得ていないということでございます。
  122. 原茂

    ○原(茂)委員 もしベトナムを中心に移動を起こしたのでなくて第七艦隊が何らかの行動を起こした、そういうときには情報交換はあるのですか。それもない、第七艦隊の移動等については一切何の情報交換もない、こう解釈していいのですか。
  123. 伊藤圭一

    伊藤説明員 それはそうではございませんで、わが国の安全にかかわりのあるというような場合、もちろん情報の交換はございます。さらには、先生も御承知だと思いますけれども、七〇年に入りましてから第七艦隊の担当区域というものが広がりまして、インド洋で常時行動をいたしております。そういった関係につきまして、現実に年間を通じて数隻のものが動いておる、航空母艦を主にした駆逐艦、巡洋艦等が行動しているというようなことはございます。  ただ、第七艦隊というのは、西太平洋並びにインド洋の防衛といいますか、安全に寄与するという任務のために常時西太平洋で行動いたしております。したがいまして、個々のものを全部海上自衛隊に情報として与えるということではないわけでございまして、必要なものは当然のことながらもらっているということでございます。
  124. 原茂

    ○原(茂)委員 ベトナムのいまの緊張状態というものは、日本にとっては関係のない、万一悪い状態になってもわが国防衛上何ら関連のないもの、こう解釈していいわけですか。
  125. 伊藤圭一

    伊藤説明員 日本の安全というものは、やはり極東の安全と平和によって支えられているというふうに私どもは考えているわけです。したがいまして、極東におきます軍事情勢、軍事力の動きというものには常に注意を払っているわけでございまして、全然関係がないというふうには考えておりませんが、日本に対する直接な武力行動を伴うような危険ということになりますと、これはベトナムで緊張状態があるからといって直ちに起きるというふうには考えていないということでございます。
  126. 原茂

    ○原(茂)委員 では、そのことを少し後でまた引用しますが、長官にお伺いします。  この間、ワシントンを訪問した長官がブラウン長官との会談をされました。その会談の中、いろいろな問題があったと思いますが、主なものの一つとして、やはりわが国の海上航路の防衛という点について、アメリカが本来持つ防衛力のほかに、日本がその海上航路の防衛の分担をしてもらいたいと、直截に言うとそういった要請があったと聞いていますが、そのことは、実はもう昨年六月の、米軍がいわゆる韓国から撤退しようという計画が発表された当時、アメリカはわが国に対しまして北東アジア地域への海上交通路防衛の分担というものを強く求めた、去年の六月すでにそういうことのあったことを、二月二十四日のアメリカの上院軍事委員会におけるブラウン国防長官の証言でこれが明らかになったわけです。  考えてみますと、すでに昨年三月、日米首脳会談で福田総理がカーター大統領に会ったときもそのことが大統領から要請がありましたと新聞が当時報道いたしております。ということを、一連のものを考えてみますと、今回長官がおいでになってブラウン長官との話の中に、いわゆる海上防衛、こういう問題が出るのも、長い間の懸案であり、ここでまた、けりをつける意味で、長官の訪米を契機にブラウン長官から発言があったのだろうと思うのですが、その内容と真相をひとつ長官から……。
  127. 金丸信

    金丸国務大臣 私はブラウン長官と会いまして、会談の内容につきましては、日米関係は不可欠であると——アジア離れをしておるということも耳にするけれども、アメリカはこれに対してどのような考え方であるかという問題、これに対しては歯切れのいい言葉で、いわゆる日米関係は不可欠である、それがアジアの安定であると、非常に歯切れのいい再確認をいたしました。  次に、防衛分担金という問題につきまして、これは私から言い出したわけでありますが、いわゆる日米関係が不可欠ということであるならばこの信頼性を高めることは必要である。その信頼性を高めるということは、いわゆるドル安、円高というとき、思いやりという気持ちがあればこそこの信頼性が高まる。しかし、それはアメリカから要求されることでなくて、日本自体が考えるべきことだと私は思う。  また、私の出発前に、沖繩県知事初め、あるいは議会の決議、それからおたくの党の上原康助先生あるいは大出俊先生が参りまして、沖繩における駐留軍の解雇問題は大きな政治問題であるし、これがまた社会問題でもあるし、沖繩は日本全体から見て非常に失業者が多いところである、これについては政治家として最善の努力をして、ブラウン長官と交渉をしてくれということでありました。私はこの問題についてはブラウン長官に強い要請をし、ブラウン長官はこれに対して検討をいたしますという約束をいたしたわけでありますが、この問題については非常に厳しいという感じもいたしました。そこで、私はアメリカで会う首脳の人々すべてにこの問題について強い要請をしてまいったわけであります。  私はそのようなお話を申し上げ、ブラウン長官からは、ただいま御指摘のような作戦計画等のようなお話を私は全然承ってまいりません。
  128. 原茂

    ○原(茂)委員 長官は六月二十日にブラウン長官にお会いになったのですが、少なくともアメリカ国防総省の周辺においては、これからはソ連太平洋艦隊に対応するためには米海軍を支援するために海上自衛隊自身も応分の努力を負うてもらいたい、こういったことがマスコミにもどんどん流れてまいりますし、長官が行かれたときにこの問題の要請があったと言われていますが、いまのお話ですと、そういうことは一切ございません、全然その問題にブラウン長官は言及しなかった、こういうふうな御答弁だったと思うのですが、それでよろしいのですか。
  129. 金丸信

    金丸国務大臣 全くそのとおりであります。うそは申しておりません。
  130. 原茂

    ○原(茂)委員 そういう要請があったにしても、それに全面的にこたえるという問題が起きますと、憲法上の疑義も私にはあるわけでございます。  そこで、話題を変えてお伺いいたしますが、先日、六月ですが、新聞の発表によりますと、硫黄島においていわゆる三自衛隊の共同訓練というものを計画して、そのために五十四年度を第一年度として四十億円の予算を何とかつくって、そうしてこれこれの整備をまず行うというようなことを発表されていますが、この事実はいかがでしょうか。
  131. 夏目晴雄

    ○夏目説明員 御承知のように、航空自衛隊の訓練空域が非常に制約を受けております関係上、いろいろな点について現在その改善について検討しております。その一環として硫黄島における訓練ということも事務的には検討しておりますが、先般新聞に出たような具体的な形としてはまだ何も決定しておりません。
  132. 原茂

    ○原(茂)委員 これは局長の答弁を求めたいのだけれども、決定をしていないのだがその計画はあるということなのですか、計画もないのですか。
  133. 夏目晴雄

    ○夏目説明員 いま御説明いたしましたように、事務的には検討はしておりますが、御承知のようにあそこにはいわゆる島民の帰島の問題、それから遺骨の問題、地盤隆起の問題、それから航空路等もあの上を通っているというふうな問題がございまして、これらを詰めるには相当な時間が必要でございます。したがいまして、来年予算要求して大がかりな工事をするというふうにはなかなかまいらないのじゃないか。ただいませっかく事務的に検討している段階でございます。
  134. 原茂

    ○原(茂)委員 これは仮定の話になるかもしれませんが、やがて現在のアメリカが考えている、先ほどもちょっと中東という言葉が出ましたが、アメリカは中東までのラインというものを中部太平洋上における大変肝心な、いわゆる海上交通防衛の要路と考えていることは間違いない。そういうときに、たとえば南東、南西航路といいますか、台湾と日本、日本から小笠原諸島、こういったところにおけるいわゆる物資あるいは弾薬等の緊急輸送の任務分担、せめてその程度のものはアメリカが日本に要求してくるだろうということは当然と考えているのですが、全然今日まで幕僚間においてもそういった問題を論議したことがありませんか。絶対にないのか。幕僚間でそういったものを話し合ったことはあるのか。いま私が言ったように、アメリカが要求をしてきてあたりまえじゃないかと私が思うような、そういった南東、南西航路等における日本のアメリカに対する防衛分担というものをもうすでに考えていなければいけない状態にまでなっているように思うのですが、その点とあわせて二つ答えてくれませんか。
  135. 伊藤圭一

    伊藤説明員 いま先生が御指摘になりました南東、南西航路、これは実は海上自衛隊は発足当時から海上護衛の任務ということで、海上自衛隊の勢力の中でこの二つの航路について必要な物資の輸送等の場合に護衛に当たるという任務を重視いたしまして、その線に沿って防衛力整備いたしておるところでございます。このことは決してアメリカから要請されたというものではなく、日本の周辺が海で囲まれているという現状から考えまして、海上自衛隊の任務として重要であると思われるのは沿岸の警備と海上輸送路の確保ということでございまして、これはその線に沿って現在護衛艦約六十隻という整備を終わっているわけでございます。したがいまして、有事の際に、いま先生がおっしゃいましたような緊急の物資を輸送するための船団の護衛等は海上自衛隊がやらなければならないと思っておりますけれども、これは決してアメリカに要請されてやるものではなく、わが方の海上自衛隊の能力として持ちたいと考えているところでございます。  また、先ほども申し上げましたが、アメリカといたしましては中東からアメリカに至る海上交通路というものはもちろん重視しているところでございまして、御承知のように自由諸国というものは海路によって結ばれているという地理的な条件というものがございます。したがいまして、それぞれの国との海上交通というものを安全にやるということに対しましては、アメリカはきわめて関心を持っているというのも事実でございます。
  136. 原茂

    ○原(茂)委員 すると、アメリカの要請があったかなかったかは別にして、日本本来の海上防衛という立場で南東、南西航路というものを重視している。いまの御答弁で、重視しているんだという、自発的な問題だということはわかりましたが、すると、アメリカの要請はないんだけれども、このソ連艦隊等に対抗していくための特に対潜能力というようなものも同時に考えなければいけないというので、本年度を第一年度に十一年間で購入しようというP3Cの四十五機購入というものも、この線に沿った対潜能力の向上という点で実は計画をされている、こういうことになりますか。
  137. 伊藤圭一

    伊藤説明員 御承知のように、極東におきますソ連の艦艇あるいは中国の海軍力にいたしましても、潜水艦というものを保有いたしております。特にソ連の極東におきます潜水艦というのは百二十隻前後と見積もられておりますが、そのうち半数近くが原子力潜水艦にかわってきているのが実情でございます。したがいまして、海上交通路の安全を図るというためには、どうしても潜水艦といいますか、水中からの攻撃というものに対して注目しなければならないというのが世界的な傾向になっているわけでございます。  そこで、現在持っておりますP2Jという対潜哨戒機は、従来の電池によって水中行動いたします潜水艦に対しましては、発見し、探知し、これを局限いたしまして攻撃するという能力は十分持っておったわけでございますが、いわゆる原子力潜水艦の出現によりまして、潜水艦の性能が革命的に向上したという点が二つございます。  一つの点は、通常の潜水艦でございますと、電池で航走いたしますので、一日に何回かは浮き上がってシュノーケルで蓄電しなければなりません。水上に頭を出すということは潜水艦にとってはきわめて弱点でございまして、これは発見される公算がきわめて大きいわけでございます。その点が原子力潜水艦でございますと、もぐったままで一カ月あるいは二カ月という行動が可能になってまいります。  もう一つの点は、電池で走ります潜水艦は、その電池をなるべく少なく使うために、水中におきます行動というものはきわめてゆっくりした速力で動いております。ところが、原子力潜水艦になりますと、これは三十五ノット以上の速力で一カ月も航行できるという能力でございますので、広い範囲を捜索し、探知し、そして追尾しなければならないという問題が起きてくるわけでございます。そうなってまいりますと、従来のような捜索、探知の方法では必ずしも十分ではございません。  そこで、P3Cの導入によりまして、音を聞き分けましてその方向を定め、広い範囲で潜水艦を捜索し、追尾するという能力の向上というものがどうしても必要になってきたわけでございます。たまたまP2Jという飛行機が寿命が参りまして除籍になっている時期を迎えておりますので、この機会に、P3Cという新しい能力を持った高性能の対潜哨戒機にかえていきたいということで、政府の御決定をいただき、国会予算をお認めいただいたわけでございます。
  138. 原茂

    ○原(茂)委員 いまのP3Cを四十五機用意する、対潜能力を向上せしめる、これを先ほどの話につなげると、その中の一部として南西、南東航路のいわゆる海上防衛に当たるというふうにつながっていくわけですか。そう見てよろしいですか。
  139. 伊藤圭一

    伊藤説明員 いわゆる航路の安全を守るために、潜水艦の脅威というものが当然あるわけでございまして、それに対応する能力を高めていくということは、海上交通の安全に役立つというふうに考えているわけでございます。
  140. 原茂

    ○原(茂)委員 そこで、そういうようなわが国独自の海上防衛というものを考えていくときに、いろいろな事態を想定したときの作戦上、米軍とこの種の日本独自の計画をお互いによく知り合いながら、また米軍の戦力の実態も知りながら、よく連絡なり交換をしていきながらでないと、わが国の海上防衛能力は、あるとき、ある事件の起きたときには役に立たなくなる。という意味では、日米間で緊密に、わが国の独自のいま言った海上防衛計画というものもアメリカに知らせ、アメリカの基本的な海上防衛、特にアメリカ本土から中東に至るまでの水路、まあ一例をとって言うと、こういったものをソ連艦隊から守るとかあるいはその他不時に備えるとかいったときの、アメリカのいわゆる防衛上のあるいは技術上の作戦計画等もある程度日本が知らされ、その連携のもとにやっていかないと、この種の中部太平洋上の日米防衛というものが完全にはできないという意味で、日本独自の防衛力を持っていればいいんだ、日本独自の海上防衛考えればいいんだ、アメリカは全然関知しない、こういうやり方で一体日本の海上防衛というものをやっていける仕組みになっているのか。私はそうじゃないと思いますが、この点もはっきりお答えをいただきたい。
  141. 伊藤圭一

    伊藤説明員 それはいま先生がおっしゃったとおりでございます。まず、自由諸国のいわゆる海上の交通の安全というものは、もちろん日本だけで守れるものではございません。これは世界の友好国がお互いに責任を持ってやらなければならないということは当然でございます。まして、日本の安全を守るために日米共同で対処しなければならないというのは、日米安保体制をとっております私どもとしては常に考えているところでございます。  したがいまして、御承知のように、日米防衛協力小委員会におきまして、いま個々の問題を研究いたしております。いずれこの秋ごろには一つのガイドラインといいますか、指針というものを示していただきまして、それを日米安保協議委員会報告いたしまして、そういった線で日米がそれぞれ有事に対処する考え方というものをまとめることになると思いますが、その際に、当然のことながら、共同で対処できる最も有効な方法というものを考えながら計画を進めてまいらなければならないというふうに考えているわけでございます。
  142. 原茂

    ○原(茂)委員 言いにくそうにしながらだんだん物を言ってきているのですが、この秋ごろになると当然日米協議の中でそういった問題が具体化してくるだろうという御答弁ですが、いままでは全然それがない、秋に初めて日米協議の結果そういうものが出てくるだろう、いままでは全然なかったということになるのですか。
  143. 伊藤圭一

    伊藤説明員 これは全然なかったというわけではございません。先生も御承知のことと思いますが、いまから十数年前に国会で御議論がございまして、日米協力については幕僚間で研究をしているという事実はございます。その幕僚間でつくったメモというようなものはございますけれども、日米両国の防衛責任者が認めたような形の研究なり計画というものはなかったわけでございます。幕僚間の単なる研究というものでありますと、これはいわゆる研究にとどまるわけでございますので、共同対処を整々とやるために、一昨年、当時の坂田長官とシュレジンジャー長官の間で、日米防衛協力について研究をさせ、それに基づいてガイドラインを示し、日米双方の防衛責任者が承知した上でそういった研究なり計画なりを立てさせようということで、この作業が始まったわけでございます。  したがいまして、いままで全然なかったというわけではございませんが、同時にそのことは単なる幕僚同士のいわゆる机上の研究にすぎなかったということでございます。
  144. 原茂

    ○原(茂)委員 それも少しおかしな答弁なんだけれども、たとえばの話ですが、いまP3Cを四十五機装備することに決まった。五十三年度を第一年度にすでに発足をしました。これはアメリカとは一切協議もしない、話し合いもしない、日本独自の選択でこういうものの装備を決めた、購入を決めた、この種の大変な国費を使う四十五機の購入に対してアメリカとの作戦上の何らの配慮もしないで日本独自でこの購入も決めた、いまの説明だとこう解釈してよろしゅうございますか。
  145. 伊藤圭一

    伊藤説明員 まず、私どもは、いま現在約八十機のP2Jという飛行機を持っております。このP2Jという飛行機は、御承知のように最初アメリカからP2Vという飛行機を供与されました。それを日本におきまして性能を向上させる改造をしてつくっておりますのがP2Jというものでございます。そういった過去の一連のものからいたしますと、対潜作戦能力というものの出発点はアメリカの指導のもとにつくられていったというのは事実でございます。しかしながら、このP2JをP3Cという新しい飛行機にかえるに当たっては、いわゆる対潜能力を向上させるという観点から私どもが海上自衛隊中心とした作業によって選択したものであって、アメリカがこれを持てと言うから持ったものではないということを申し上げているわけでございまして、結果としてアメリカの海軍もP3Cを使っておりますから、そういった意味では有効に対処できることになろうというふうには考えておりますが、アメリカ側がこれを持てということではなかったということを申し上げているわけでございます。
  146. 原茂

    ○原(茂)委員 私は、アメリカ側が示唆したから、あるいはアメリカ側のオーダーがあったから持ったんだというような質問をしてない、またそんなふうには考えたくないから。そうじゃなくて、いま質問している一連の関係からいって、こういうものも日米韓の作戦上のいわゆるある技術上の必要から最も適しているものはP3Cであるとかいうようなことぐらいの打ち合わせもしないで、日本が単独でとにかく日本自体の海上防衛のために、対潜能力を高めるために、こういったことでこういうものを装備しようとしているのじゃないでしょうという質問をしたわけです。だから、いまのでわかりましたが、アメリカが買えと言い、持てと言ったから持ったんだろうという質問を、かつてはずいぶんいたしましたが、私はいまそのことを質問しようとしているのではありません。  そこで、これにも関連するんですが、これから秋にそういった日米協議の中では必要が認められ、そうしてお互いの防衛をどうしようか、どう分担しようかということまでは話が進んでいくんだろうと思うんですが、先ほど局長の言われたような、世界の国すべてがいわゆる航路の自由を守る、その責任があるというような答弁が一部ありましたが、私がきょう聞いているのは世界全体がどうするかということを聞いているのじゃないので、日米関係において、特に冒頭に長官質問しましたように、ブラウン長官などがもうすでに発言しただろうとマスコミも報道し、防衛庁もある程度これに対する考え方、たとえば南東あるいは南西航路等二航路を同時にわが国が分担して防衛するということは現在の能力からいって不可能だ、こういった防衛庁の首脳のコメントも新聞などには載っている。これも事実に反するということになる。マスコミはでたらめを書いている、各紙が書いていますが、これはみんなでたらめだ、そういうことになるわけですか。
  147. 伊藤圭一

    伊藤説明員 でたらめというふうには申し上げるつもりは毛頭ございません。御承知のように一九七〇年になりましてから、アメリカの基本的な政策といたしまして、同盟国に対して自助の努力というものを要請し続けていることは事実でございます。特に昨年来そういった傾向が強く出ておりますのは、御承知のように昨年の五月にNATOの首脳会議におきまして実質国防費三%の増ということを決議いたしております。この実効が上がらなかったせいもありますでしょうが、ことし同じようなことを繰り返しアメリカは要請し、NATO諸国はそれを受けるような形で合意をいたしているということはございます。  それで昨年P3CとF15というものを決定いたしまして本年度予算でお認めいただいたわけでございますが、アメリカはいまから十年前とかあるいは十五年前、いわゆる日本の自衛力がまだ微々たるものであったときに比べますと、日本の自助努力というものに対しては期待しているということは間違いのないところでございます。  したがいまして、そういった意味で今回のブラウン長官金丸長官との会談におきましても、ソ連の海軍力の増強ぶりというものについて説明がございました。その中で特にアメリカが注目しているのは、ソ連の極東における海軍力というものが、七〇年に入ってから単に沿岸の防備の能力だけではなくて、遠洋、大洋におきます行動というものができる力を蓄積しているんだ、したがって、自由諸国の海上交通路に対してもかなり脅威になっているので、こういった点についてはもちろんアメリカも努力するけれども、それぞれの関係の諸国の自助の努力というものを期待するというような意味内容ではなかったかというふうに私どもは——具体的にどこそこの海上交通はそっちがやれ、そういうような話は全くございませんでしたが、昨年来のアメリカの考え方等々から考えまして、われわれとしても自助の防衛努力というものはしていかなければならないというふうに考えたわけでございます。
  148. 原茂

    ○原(茂)委員 七〇年来のソ連の艦隊の変化というものは著しいものがあるし、内容的に大きな変化のあることは知っています。ソ連艦隊の変化に伴って、前から要求されているがアメリカから関係諸国の自助的な努力を要請された、その日本における自助的努力とは一体何になるのか。
  149. 伊藤圭一

    伊藤説明員 これは私どもは具体的にアメリカの国防総省から聞いているというわけではございませんけれども、しばしばアメリカの政府の責任者あるいは軍の責任者等が議会等において話しているところは、日本の防空能力の向上あるいは対潜能力の向上、そういったものがやはり期待される分野だというふうに私どもは理解しているわけでございます。
  150. 原茂

    ○原(茂)委員 そういうふうにだんだん話してくると、マスコミの報道していることは全部うそだということにはならない。そういう意味で全部うそだという否定はいたしませんという答弁があったんだと思います。  もう一つ突っ込んでお伺いするんですが、いままでのアメリカの関係方面からいろいろと要請されているものを総合するとという前提ですが、その総合されたものがこの秋の日米協議の中である程度具体化してくるもの、こう考えてよろしいですか。
  151. 伊藤圭一

    伊藤説明員 アメリカの国内でいろいろ議論があるということはいま申したとおりでございますが、私どもといたしましても、日本の地勢的な環境からいたしまして、わが国にとりましての防衛力としてはやはり防空能力、それから対潜能力というものが必要であるというふうには考えております。したがいまして、こういった能力を向上していく努力は今後も続けてまいりたいと思っておりますが、そういう中で、日本としてできることとできないことをはっきりいたしまして、そして共同対処する場合に整々と実施できるようにするためにはどうすればよいかというような観点からの研究の結果、それに基づきますいわゆる今後の計画を立てるに当たっての指針、そういったものをこの秋までに決めて示していただきたいというふうに考えているわけでございます。
  152. 原茂

    ○原(茂)委員 その日本の分野というものはやはり限界があるからなかなかあれもこれもはできないというので、そのうちの防空なりあるいは海上防衛なりというものに限った場合でもなおかつわが国の力に限界があるし、また時間的な制約もあって、そう急に理想的なものはできない、こういうふうにお考えになっているらしい。これはもっともだと思いますが、その場合、航空、防空に対しては次にまた言及をさせてもらいますが、きょうは私は海上の問題だけに言及してお答えをいただくのですが、わが国がやはり実際に自助的な努力によって自発的に、ある意味では日米間の作戦上のいわゆるラインは当然のごとく考えながらも、わが国独自の考えによって今後の海上防衛というものを考えていくといったときの日本の役割りというものは、いま言った、先ほどもちょっと私が触れたんですが、南東、南西、両ラインを同時にわが国が独自でもし一朝の場合に防衛するということはいま不可能だ、防衛庁の首脳部がこう言ったというコメントが載っていましたが、そのことの本当かうそかは別にして、日本自体が本当に考えたときに、いま日本が守ろうという海域、いわゆる航路、こういうものはやはり一応も二応も南東、南西、台湾から日本、日本から小笠原諸島、こういったことを、いわゆる最大のエリアを考えていいのかどうか、この点をひとつ。
  153. 伊藤圭一

    伊藤説明員 これにはオペレーションの問題とそれから防衛力整備の問題と二つあるわけでございます。  私どもが一次防以来海上の護衛能力として考えておりましたのは、日本から一千マイル程度の海上の交通については、オペレーション上できるような防衛力を持ちたいということで防衛力整備に努力してまいったわけでございます。したがいまして、そのいま先生がおっしゃいました二つの航路をいわゆる航路帯として完全にクリアにしておくという能力はもちろんないわけでございます。しかしながら、緊急の場合に私どもが予想しております侵略というものは期間的には比較的限定されるのではないかということになってまいりますと、その間どうしても緊急に持ってこなければならないものと言いますと、これはきわめて限られてくるわけでございます。たとえば、必要な弾を運ぶとかあるいは緊急の食糧を運ぶというような場合があるかと思いますが、そういう場合には船団を護衛して、その程度の距離のところを安全に守っていく能力というものを整備し、これを運用するということを考えているわけでございます。
  154. 原茂

    ○原(茂)委員 いまおっしゃった程度のものなら、二つの航路をいま日本でまずまずこれなら大丈夫という体制ができているんですか。
  155. 伊藤圭一

    伊藤説明員 自衛艦隊には護衛隊群というのを現在四つ持っております。これは通常におきますところの訓練をやっておりますので、その中の一群というものは常に高練度のものを持っているわけでございます。したがいまして、この一群によりまして一つの船団というものを護衛しながらそういった距離を護衛するということは可能でございます。  したがいまして、私どもといたしましては、この四群のうち練度を高めておけば、二つの船団を守ると同時に、今度は沿岸の警備といたしましては、太平洋洋と日本海側の沿岸を警備する能力は持っているというふうにしたいと思っているわけでございます。
  156. 原茂

    ○原(茂)委員 これは想定なんですが、アメリカがハワイから中東、あるいは短いところで言いますとマレーシア、こういったものをとにかく防衛の基本水路として考えていったときに、アメリカの国内で論議されており、しかも日本にも報道されているように、もうすでにソ連のいまの艦隊の質的な変化と向上等を考えたりあるいは数量的なものを考えたときに、この基本的な中部太平洋上のいわゆる中東までの線を守ることだけである意味では精いっぱい。そこで日本における海上自衛隊の分担として日本からグアムまであるいは台湾まで、こういった航路自体に万が一の武器弾薬なりあるいはその他の緊急物質の輸送搬入等の任に当たってもらう必要がある、こう言われたときに、いまのわが国の力をもってしてこの二つの航路を実際に担当することはできるのですか、できないのですか。
  157. 伊藤圭一

    伊藤説明員 これはいろいろ事態の様相によっても違うと思います。アメリカの第七艦隊、それから太平洋におります第三艦隊、このすべての艦隊をもっていま先生がおっしゃいましたような航路を守るというだけの問題ではないだろうと思います。したがいまして、西太平洋におきます第七艦隊というのはきわめて強力な艦隊でございますから、そういうものがまず西太平洋のいわゆる日本に脅威を与えるような国の艦艇の行動というものは制止するということはあり得ると思います。その中で南東、南西航路というものにつきまして、先ほど来申し上げましたように、これを全くクリアにしておってどこの国の船でも安全に通れるというような形でその航路を維持するということは、なかなか困難だと思っておりますが、いま申し上げましたように、必要な緊急物資を運んでくるために船団を護衛しながら来るという能力は、現在のこの四群の中でこれを実行することは不可能ではないというふうに考えているわけでございます。
  158. 原茂

    ○原(茂)委員 私が設定した、仮定したその問題のときに、いまのアメリカ防衛の海上航路を考えたときに、そのちょうど中間に当たる日本から小笠原諸島まではいいんですが、すなわちグアムまではいいんですが、グアムからソロモンに至る間は作戦上どうなるのですか。グアムからソロモンまでの間の短絡はどうなる。
  159. 伊藤圭一

    伊藤説明員 これは実はそう分けましてここからここまではどう、だというようなことについては、まだ詳しい研究は進められておりません。  しかし、いま申し上げましたように第七艦隊がおる。それから太平沖艦隊というものがございまして、第三艦隊も太平洋にはいるわけでございます。したがいまして、そういった海域全般についてはアメリカの海軍力をもって制圧するというような考え方を出しているようでございます。
  160. 原茂

    ○原(茂)委員 そこで少し戻るのですが、いまの南東、南西両航路をどうこうという問題は一応おくとしまして、小笠原諸島、特に硫黄島の海上防衛立場から言う重要性というものが非常にはっきりしてくるんじゃないかと思うのですが、この硫黄島あるいはそのちょっと手前にあります鳥島でしたか、特に硫黄島でいいんですが、わが国が当然防衛しなければいけないという海上航路というものを考えたとき、硫黄島の重要性というものは非常にクローズアップされてくるというふうに考えますが、それがあるからいわゆる三自衛隊の共同訓練というものを硫黄島でやろうという計画ができたんだというふうにずばり考えますが、この関連はどうでしょうか。
  161. 伊藤圭一

    伊藤説明員 硫黄島が防衛上必要であるということは間違いございません。といいますのは、船団を護衛します場合にも、必ず対潜哨戒機がその船団の前方で潜水艦の動きというものを把握しながら船団というものは進んでいくことになるわけでございますから、そういった意味で硫黄島が海上自衛隊の基地としてP2Jあるいは将来P3Cというものがあそこを根拠にしてオペレーションをするということは、海上防衛のためにはきわめて重要なことだと私どもも考えております。  ただ、それのために演習の基地とするということとは必ずしも結びつかないのでございまして、先ほど教育担当参事官の方から御説明がありましたように、空域の問題に制約がある、あるいは対地攻撃等におきましてなかなか場所を得られないというところから、硫黄島あたりも一つの候補地として研究してみる価値があるということでやっているわけでございまして、あそこの基地が重要である、すなわち訓練の基地にするんだというふうには結びつかないものでございます。
  162. 原茂

    ○原(茂)委員 作戦上なのか何か知らぬけれども、なかなかずばり物が言えないようですから、余り言いたくないことを言わせようとは思いませんが、この硫黄島の手前にある南鳥島は、その意味においてはどうなんですか。
  163. 伊藤圭一

    伊藤説明員 南鳥島というものは、私どもはそこにうちの施設を持っておりませんので、どういう形をした島でどういうものに利用されるかということは存じておりませんけれども、いわゆる対潜作戦の対潜哨戒機がオペレーションをする上では硫黄島があればかなり有効に使えるというふうに考えているわけでございます。——どうも失礼しました。南鳥島は飛行場がございまして、その飛行場を管理しているわけでございますが、南鳥島は硫黄島からもっと遠くに離れているわけでございますが、具体的にあそこを使ってどのようなオペレーションができるかということは必ずしも私も十分把握いたしておりませんけれども、硫黄島というのはいま申し上げましたように対潜哨戒機の基地としてはかなり有効に使えるというふうに考えております。
  164. 原茂

    ○原(茂)委員 硫黄島の広さは大体二十三平方キロですか、そのくらいだと思うのです。この中にいま二千六百五十メートル、幅が百前後の滑走路が一本ありますね。ですから小松などの滑走路とほぼ同じような滑走路があります。現在その一本の滑走路だけしかないのですが、これでいまの共同訓練をするのに支障はない、共同訓練を三軍がやろうというのにこのままでやる、こういうことになりますか。
  165. 夏目晴雄

    ○夏目説明員 硫黄島における施設はいま申されたとおりでございますけれども、したがいまして、先ほどお話が出ています総合訓練場というようなものをもしあそこに置くとすれば、相当大がかりな工事が必要になろうか、こういうふうに思っております。
  166. 原茂

    ○原(茂)委員 どのくらいの工事費が必要になるのですか。
  167. 夏目晴雄

    ○夏目説明員 現存、硫黄島におきましては、現在厚木にございます第四航空群の隷下の硫黄島基地分遣隊というものがございまして、これは人員約五十名、この部隊がこの施設の維持、整備、それからあそこに飛んできますところの航空機に対する支援、管制あるいは給油等の支援を行っている、それだけの隊舎その他が若干あるだけでございまして、先ほどから申し上げておりますようにどういう訓練施設が必要か、そういうことをこれから検討する段階でございまして、まだ最終的なプランを持っているということでございませんので、いま直ちに先生の御質問に対してお答えする材料を持ち合わしておりません。
  168. 原茂

    ○原(茂)委員 いまはっきりとその材料を持っていて説明なんかしようものなら、まだ東京都がうんと言わない、地元にいろいろな問題がある、われわれもまたいろいろな考えを持っているというときに、先走って全部こういうふうにやりますなんということはわかっていても言えないのだろうと思いますから、それ以上聞きませんが、現在の段階で、硫黄島におけるいわゆる三軍の共同訓練をやろうという計画はあっても、考えてはいるけれども、実際には検討していない、そんなばかな、悠長な事態ではない。日米間におけるいろいろな折衝の内容から言い、あるいはアメリカにおける世論あるいは関係機関の発言等を考えても、硫黄島は日本のいわゆる対潜能力上もう必須の基地であるという点を考えたら、これはもうとっくの昔に手をつけ、すでにいろいろな調査が済んでいると私は思うのですが、これはまだまだその考えはあってもそこまで進んでいないと言われればなるほど言えないんだなあと思う以外にありませんから、きょうはあえて突っ込みません。  そこで、硫黄島についてもうちょっとお聞きしておきたいのですが、硫黄島にアメリカの沿岸警備隊が三十名常駐していますが、これは何をしているのですか。日本の海上自衛隊は五十名程度ですね。これは気象観測か何かやっているのじゃないかと思うのですが、アメリカの沿岸警備隊三十名というのは、一体何をやっているのですか。
  169. 亘理彰

    ○亘理説明員 お答えいたします。  硫黄島にも南鳥島にも米軍のロランCの施設がございます。ロランCは御承知のとおり艦船あるいは航空機に対する後方支援装置でございまして、これをアメリカのコーストガードが管理しているわけでございます。
  170. 原茂

    ○原(茂)委員 つかぬことを聞きますが、お二人とも答弁するのに硫黄トウ、硫黄トウと言っているが、硫黄ジマですか、硫黄トウですか、どっちが本当なんですか。
  171. 亘理彰

    ○亘理説明員 硫黄ジマだそうでございます。
  172. 原茂

    ○原(茂)委員 だそうですか。とにかく日本には大変重要な基地になるんですから、硫黄ジマと言うべきものは硫黄ジマと言うくらいの配慮が幹部はなければいけない。  そこで、もう一つお伺いしたいのですが、この硫黄島の、いま使っている一本の滑走路しかありませんが、国有地、私有地をどういうふうに使っているのでしょうか。御存じのように民有地が八百二十八ヘクタール、国有地が二十二、国有林が千三百十二ヘクタール、このうち、どの程度をどういうふうに使っているのですか。
  173. 古賀速雄

    ○古賀説明員 お答えいたします。  海上自衛隊で使用しております面積は約四百九十五万平米でございまして、そのうち、民有地が百五十五万平米でございます。残りが国有地でございまして、これは大蔵省の普通財産で、使用承認を得て現在使用しているわけでございます。  使用の状態でございますけれども、揚陸場や飛行場、飛行場は先ほどお話がありましたように二千六百五十メートルで、幅が六十メートルでございますが、主に民有地は飛行場の用地として、国有地とともに混在して使用されております。
  174. 原茂

    ○原(茂)委員 硫黄島にはいまほかの一般人は住んでいないのですが、そうすると、私有地というのはどういう人の私有地なのでしょうか。
  175. 高島正一

    ○高島説明員 所有者が三十五名ということは承知しておりますが、その方々はいわゆる不在地主でございまして、恐らく企業関係の方が多いのじゃないかと思いますが、詳細はただいま手持ちの資料がございませんので、調査の上お答え申し上げたいと存じます。
  176. 原茂

    ○原(茂)委員 高島さんの顔を見ると北富士を思い出すのだけれども、きょうこんなところでまさかこんな答弁があるとは思わなかった。なるほど範囲が広いんですね。驚きました。  現在ここで共同訓練をもしするとしたときに、当然拡張あるいは整備等が行われなければいけませんが、その場合に、この民有地というものに対しては、いま不在地主である、企業関係らしいというのですが、こういうところとの折衝も必要になってくる、それから国有林は大蔵省にもう少し幅広く使うということを折衝する必要があるということになりますか。
  177. 古賀速雄

    ○古賀説明員 先ほどから申し上げますように、具体的な計画がございませんので、私どもとしては現在その腹づもりは、計画としては持っておりませんが、仮定の問題としてはそういうこともあろうかと思います。
  178. 原茂

    ○原(茂)委員 その場合に、東京都の意向というのはどうなりますか。
  179. 古賀速雄

    ○古賀説明員 一般論でございますが、新しく用地を取得する場合には、当然地元及びそういう関係地方公共団体と十分な交渉をするというのが一般論でございます。
  180. 原茂

    ○原(茂)委員 一般論で結構ですが、私の言っているのは、東京都を例に出したのですが、いわゆる硫黄島というものの基地の大拡張をするといったときに、東京都などがいわゆるいま軍事基地化を進めるということに反対、現在もうすでに美濃部知事からはそういう意思表示が議会を通じてされていますが、そういったことも当然、いわゆる一般論的に言って、基地の拡充強化をいま硫黄島に行う、しかもそれは将来非常に重要な基地になると私は考えますが、そういったものに対する東京都住民、あるいはその他のこれに対する意向というものをやはり相当そんたくする必要があると思いますが、こういうようなことも配慮するようにならなければいけないと思いますが、どうですか。
  181. 古賀速雄

    ○古賀説明員 当然そのような配慮は必要だと思います。
  182. 原茂

    ○原(茂)委員 長官に最後にお伺いしますが、私がきょうお伺いしたことで私の趣旨はおわかりになったと思うのですが、当然日米間におけるいまの南東、南西航路に対する日本の防衛分担というものがやがて非常に近い将来に現実の問題になってくる。ブラウン長官からはその話はなかった。しかしながら、局長説明のように、いままでの周りの状況からいって云々という説明もありました。  私は、このアメリカのやがてあるであろう要請、いわゆる日本の分担水域をはっきりするという意味の要請ですが、そういう場合に、秋なら秋に一つの協議の中からそういったものが出てくるであろうことを当然のこととして想定をしていますが、大臣は、いわゆる私のその想定というものは全然杞憂なんだ、もう絶対に日米の海上水域のいわゆる防衛分担というものはあり得ないというふうにお考えか、やがて必要だということになるというふうにお考えか、最後にそれだけお伺いして、終わります。
  183. 金丸信

    金丸国務大臣 私がワシントンに参りましてワシントンで内外の記者と記者会見をいたしましたら、ただいまのような質問が出ました。私は、そういう質問が出るということは、多くの人がそういう考え方を持っておるのじゃないかという示唆を受けたわけでありまして、私もそういう面につきまして今後十分に検討していかなければならぬ、こう考えております。
  184. 原茂

    ○原(茂)委員 終わります。
  185. 楯兼次郎

    楯委員長 林孝矩君。
  186. 林孝矩

    ○林(孝)委員 最近、防衛問題に関してあらゆる角度からさまざまな討議がなされております。本委員会の本日の議論もその一つであると思いますが、政府の対応も、ことしの一月の施政方針演説、この中に防衛に関する一項がわざわざ入れられたり、F15、P3C導入問題であるとか、あるいは核兵器についての憲法論争、こうしたことなどで政府が高姿勢に転じた、このようなマスコミの指摘もあるわけであります。また、制服の首脳といいますかトップの人が、就任当初から、認証官にしろ、こういうふうに言ってみたり、専守防衛立場を踏み越えるかのようなことを言ったり、防衛情勢について重大な判断の誤りを犯したりなどして、いろいろ物議を醸しているわけであります。  そこで、お伺いいたしますが、長官は最近の一連の防衛論議というものを、責任者としてどのように受けとめられておるか、お伺いします。
  187. 金丸信

    金丸国務大臣 防衛論議が、国会におきましてもあるいは新聞紙上等におきましても非常に行われておるわけでありますが、論議というものが行われることは非常に結構なことだと思うわけでありますが、さりとて、日本は平和憲法を踏まえて、私はいつも申し上げることでありますが、侵さず侵されずという考え方、防衛計画の基本方針あるいは防衛計画の大綱というようなことを踏まえながら、ことに日本は絶対よそは攻めないという考え方、それにはいわゆる近隣諸国とは友好関係を結びながら、そして平和外交を推進し、その上でわれわれはお互いに共存共栄のできるような、全世界というわけにもいきませんが、できればアジアにおける諸国家、われわれと同じ考え方を持つ国々とは手を携えながら共存共栄をすることが私は当然な考え方でなければならぬと思うわけでありますし、また、日本の防衛という問題につきましては、日本一国だけで守るということはできない。われわれの先輩が日米安全保障条約というものを結んでくれた。私はこの日米安全保障条約というものの信頼性を高めながら、すき間風の入らないように、そうして最小限の防衛というような問題について対処していく、国民の負担が多くなるような防衛という問題になってはいかないというような考え方とあわせまして、ただいま御指摘の、いわゆる防衛庁のいろいろの分野における人からいろいろ高姿勢の発言があるというような誤解を招いた面も、私も認めざるを得ません。そういうことにつきましては重々今後とも慎重に対処するようにしなければならぬと、私も十分注意をいたしておるところでありますし、また、先ほど来申し上げましたように、防衛という問題は、まさに国会が最高権威であります。先生方の十分な御指導とそして御批判と御叱正をいただくところにこれからの日本の防衛がある、こう私は思っておるわけであります。
  188. 林孝矩

    ○林(孝)委員 そこで、今日における一国の安全保障政策、平和保障政策と言ってもいいかと思いますが、この安全保障政策は、経済、外交、資源エネルギー、食糧、科学技術、文化等々を含む総合的かつ立体的な観点から立案されるべきであると思います。私は、その早急な立案こそ急務であると考えるわけでございますが、長官の見解はいかがですか。
  189. 金丸信

    金丸国務大臣 おっしゃられるとおりだと思います。
  190. 林孝矩

    ○林(孝)委員 ところが、政府は今日まで総合的安全保障を検討してきたことがあるのかどうか、このことに大きな疑問を持っております。もしあるとしたならば、どういう立場の人、組織がそれに参画してきたのか、お伺いします。
  191. 伊藤圭一

    伊藤説明員 いま先生がおっしゃいました総合的な安全保障政策というものが、まとまった形でつくられたということはないと私も思います。  しかしながら、いわゆる国連を中心とした平和外交努力というものが「国防の基本方針」の第一項に書いてございます。この面につきましては、従来から外務省を中心とした平和外交の努力というものは続けられているというふうに私は考えております。  第二項には、民生の安定と愛国心を高揚することによって、いわゆる国防といいますか、安全保障政策の機軸とするというようなことが書いてございますが、この面につきましては経済力の向上、国民生活の向上、こういった面についてそれぞれの省庁で努力いたしているところでございますし、また、食糧問題あるいはエネルギー問題というものが、特に四十八年の石油危機の問題を契機といたしましてそれぞれの分野で研究がなされているというふうに考えております。  最後に「国防の基本方針」の中で書いてございますのは、いわゆる現状においては必要最小限の自衛力を持つ努力をするのだということと、国連が安全保障に対して機能を十分に発揮するまでの間は、日米安保体制によって日本の安全を守っていくという方針がとられているわけでございます。  したがいまして、「国防の基本方針」に盛られていることはそれぞれの政府の担当の省庁においてそれぞれの努力はなされていると思いますが、いま先生がおっしゃいましたように、それを総合的にまとめ一つ計画なり研究の成果という形でまとまったものはないというふうに思っているわけでございます。したがいまして、こういうものは、広く国防会議等を通じまして関係省庁がそれぞれの担当する分野の研究成果をまとめまして安全保障政策というものがつくられていくべきものであるというふうに考えているわけでございます。
  192. 林孝矩

    ○林(孝)委員 長官、いま答弁にありましたように、「国防の基本方針」として定められておる事柄は当然のこととして各省庁によって努力がなされていると思う、しかしまとまった形としてはそういうものはないということでありますが、これは防衛庁などの一つ省庁だけの検討事項であるとか、あるいは一つ省庁によって立案されるものというたぐいのものではないと私は思うのです。  長官もアメリカに行かれて十分御存じであると思いますけれども、アメリカでは国家安全保障会議というものがあり、政府が関係省庁を含む総合的な安全保障を検討しておるわけですね。わが国においてもそのように総合的な安全保障を検討する場を設けるべきではないか、これは提案を含めた質問でございますが、この点に関して長官が積極的にその中核となって行動する、あるいは総理に進言するなりそういうお考えをお持ちであるかないか、お伺いしたいと思います。
  193. 金丸信

    金丸国務大臣 私は、国防会議等においてこういう問題が十分に審議されるというようなことに持っていくことがいまの状況の中では一番いいんじゃないかという考え方を持っておるわけであります。しかし、なかなかそういう問題が国防会議検討されていないことは事実であります。しかし、それではいかぬ。それには機構も改正しなくちゃならぬかもしらぬ。あらゆる努力をいたしまして、ただいまの御提案につきましては私も総理にも進言し、私が中心になりましてひとつ推進してまいりたい、このようにも考えております。
  194. 林孝矩

    ○林(孝)委員 長官のいまの答弁は非常に積極的でありますし、またぜひそうしていただきたいという気持ちであるわけでありますけれども、今日までの経過から見てみますと、ずっと歴代の自民党政権の中でこのような場所が設けられてこなかった。そのことが国民に与える影響といいますか、安全保障問題をきわめて狭い意味防衛問題である軍事問題、こういうことにしか受け取られてこなかった、またそういうことにしか対応してこなかった。その結果、多くの国防会議内容、運営、そういうものを見ても、また国防会議というと軍事一辺倒のことであるというような印象といいますか、事実またそうした内容のものが大半を占めているわけです。これは国民に軍事力の際限のない拡大ということを印象づけた時期もありましたし、そういう事実というものを過去の経緯から見てみますと、いま長官が御答弁になったように、その実現に向かって総理にも進言していく、長官中心になって行動を起こすというその決意を実行に移されることは非常に画期的なことであると思うわけです。ぜひそうしていただきたい。  私は、総合的な安全保障の問題で、もちろん軍事力面の役割りというものを無視するものではありません。それは無視できないことでございますけれども、重要なことは軍事面の位置づけ、これを明確にすることであると思うわけです。なぜかと言いますと、いたずらに軍事力の増強を図っていきますと、これは逆に日本の安全保障にとってマイナスの要因が増加してくる。いま国民が政府に要求しているものは、安全保障イコール軍事力の増強という安易な対応の転換、ここに問題があるということなんですね。この点に関して、いわゆる安全保障イコール軍事力の増強という安易な対応、この転換を迫っている国民の要求に対して、長官の見解はどのようなものであるか、お伺いしたいと思います。
  195. 金丸信

    金丸国務大臣 私は、防衛という問題は軍事力だけ増強すればそれでよろしいということでなくて、先ほど申し上げましたように、いわゆる近隣諸国との友好関係、あるいはまたお互いに共存共栄できるような、もし日本で経済援助ができるものはできるだけ援助をし、そしてともに栄えるようなことを考えることが防衛のまず基盤だと思います。  そういうようなことを考えながら、ただいま先生のおっしゃられるようないわゆる安全保障というような問題につきまして、国防会議等におきましてもF15を買う、P3Cを買う、それだけのいわゆる会議であってはならぬ。そういう問題も、安全保障、エネルギーの問題も食糧の問題も、その他問題がたくさんあろうと思うのですが、そういう大枠の中で、国民も本当に日本の防衛という問題を大局的に考えて、そして近隣諸国とも手を携えていく、そういう理解、コンセンサスを得るということが必要。先ほど来申し上げましたように、二十七万の自衛隊だけでは日本の防衛はできません。一億一千万の国民の、それは自民党だけでやれるものではない。野党の皆さんの、先生方の国会においても合意を得なければやれない。それを押し切って防衛をやるということは、これは無謀だと私は考えております。
  196. 林孝矩

    ○林(孝)委員 国防会議が本来その総合的な安全保障の検討をする、そうした役割りを果たす組織でなければならないわけでありますけれども、長官お話しになっているように、またわれわれもその内容について知っているように、現行の国防会議の組織、機構、こういうものでは、いま提案しております総合安全保障という課題に対して取り組むことが、極端な言い方をすれば不可能である、そういう国防会議の組織、機構であると私は思うわけです。  したがって、この国防会議が本来この役割りを果たすということになりますれば、現在の国防会議のあり方、また組織、機構、こういうものをどういう方向に持っていったらいいかということが次の課題になると思うわけです。  そうしますと、具体的に国防会議の改組、組織を改めるということですね、こういうことなどを長官考えられた上で、この国防会議のあり方というものに取り組まれようとするのか。この点は言葉だけではなしに、本当に長官が総理に進言し、長官中心になって行動をこれから起こすと言われるならば、ここに着目するということは当然のことだと思いますし、その点についてどう考えられておるか、お答え願いたいと思います。
  197. 金丸信

    金丸国務大臣 いままでの国防会議というものは、自衛隊設立してまだ過渡期というようなことで、この問題が疎んじられておったと私は思いますが、先生のおっしゃられるとおりだと私は思います。  この問題は、私の所管のところでなくて内閣の所管であります。先ほど来から消し上げましたように、総理にもこれ十分にひとつ伝達して、この問題をいまの内閣で、この素案をつくっておるようであります。なお一層拍車をかけて御期待に沿うようにいたしたい、こう考えております。
  198. 林孝矩

    ○林(孝)委員 それでは次に、今度は安全保障特別委員会設立という問題が午前中の議論でもございました。そこで、防衛庁長官も特別委員会の設置に賛成という意向を、先ほど来の答弁でもされておったわけでありますが、われわれも同じように、この安全保障問題はきわめて重要な問題でありますから、あらゆる面からの議論を展開して、国民的な合意を形成していく必要がある。そうした意味において、従来から国会に安全保障問題を専門に論議する安全保障特別委員会の設置を強く主張してきたわけであります。午前中の答弁にも、自民党内に反対があるということを長官がおっしゃっておりました。その動きの面はさておいて、どういう理由で反対されておるのか、その設置されない原因、党内に反対があるその反対の理由というものはどこにあるのかという点について明確にしておきたいと思うわけですが。
  199. 金丸信

    金丸国務大臣 私の耳に入ってくるところをお話し申し上げると、いわゆる自衛隊の秘密が漏れてしまう、そういうようなことが理由のようであります。ほかにもあると思うのですが、私は、そういう秘密が漏れるとか漏れないというような問題は、内閣委員会防衛庁の所管の委員会であります。そういうことになれば、そこで質問されたって漏れるものは漏れるということであろうと思う。そういうたわいのないことを言っているのが自民党の幹部の中におるということはまことに残念至極だ、こう思っておるわけであります。私は、この特別委員会について、衆議院の議運の委員長をやっておるとき、法案を審議しない委員会だ、ただあら探しの委員会だというような批判もありましたが、つくることに意義がある、こういう強い姿勢で臨んでおったわけであります。ごく一部という状況でありますから、私はこの問題は十二分に熱意を持って理解を求めて、一日も早く設立することに今後とも努力いたしたい、こう考えておるわけであります。
  200. 林孝矩

    ○林(孝)委員 がんばっていただきたいと思います。  それから次に、情報管理体制、これについても、けさからの議論に少し重複することもありますけれども、お伺いしておきたいと思います。  ソ連の択捉島での演習について防衛庁内で判断が、俗に言われるところの制服組内局で異なっていたということであります。この情報収集体制が庁内で確立されていないのではないかという心配があるわけです。  また、情報収集に伴う情報分析、それから判断の責任体制、これについては明確になっているのかどうか、この二点、お伺いします。
  201. 金丸信

    金丸国務大臣 その問題につきましては、非常に御迷惑をかけたわけでありますが、私は情報の問題につきまして択捉島の問題が、統幕議長のテレビへの発言、また委員会における防衛局長の発言、どちらもこの問題につきましては判断でありますから、全然間違ったという判断ではないと思います。一つの可能性はあるということであろうと思います。アメリカへ参りまして、アメリカでその話も聞きました。アメリカでもこの問題についてははっきりしない。これはまた別のところから私は耳にいたしたのですが、いわゆるちょうどあの問題が起きたころの択捉島周辺の気象状況というものは霧に包まれておるという状況もあった。  そういうような状況もありまして、どちらがどうだという判断は、判断ですからどちらにも可能性があった。しかし、それが国会の答弁とテレビへの判断で言ったということにつきまして、いわゆる一本化しておらぬじゃないかという判断がある。  私は防衛庁長官になりまして、統幕というところがあります。最高機関であります。しかし、統幕は有事のときでなければいわゆる命令系統が一本にならぬという。有事のときでなければ、ふだんのとき練習しなくて、訓練しておかなくて、それで一本になれるのか。統幕議長、これは月給どろぼうではないかと私が言えば、全くそのとおりだと統幕議長が言う。  そういうところに、この体制を変えなければ国民の負託にこたえることはできないというようなことで、この間の問題につきましては国民の皆さんに御迷惑をかけた。しかし、どっちが悪い、いいという判断には私も頭を痛めておるところでございます。
  202. 林孝矩

    ○林(孝)委員 したがって、その情報収集体制を確立するという努力を当然なされておると思いますし、また、その情報分析、判断の責任体制というものもいかにすればいいか、こういうことが起こらないようにということでの対応もすでになされているのではないかということを前提にして、いまどういうふうになっておるかということをお伺いしておるわけです。
  203. 伊藤圭一

    伊藤説明員 情報を担当しております部局は陸海空にそれぞれございます。それから内局と統幕にもあるわけでございます。それぞれの分野で集めました情報を収集いたしまして、関係の部局が集まりまして、常に検討を加えているわけでございます。そうして、各自衛隊が集めました情報、それに内局が収集した情報、あるいは統幕が収集した情報を総合して判断して大臣に御報告するというようなシステムになっているわけでございます。
  204. 林孝矩

    ○林(孝)委員 ちょっと古い話になりますが、二年前のソ連のミグ戦闘機、この事件のときも防衛庁長官のもとにその情報が伝わるのがおくれたという経緯があったと私記憶しておるのですが、そうじゃなかったでしょうか。
  205. 伊藤圭一

    伊藤説明員 ミグ事件のは、情報というよりは事実をお伝えするのがおくれたということだろうと思います。これは、たまたま二時ごろでございましたか、私どもがすぐその事実の連絡を受けまして大臣連絡をとるべく努力をしたわけでございますが、ちょうど名古屋に御出張中でございまして、連絡をとりましたときにはすでに駅に向かう車の中におられたということで直ちに連絡がとれませんで、新幹線にお乗りになってから連絡をとりまして御報告をしたということでございまして、その間に一時間以上の時間がたったということで御批判をいただいた問題でございます。
  206. 林孝矩

    ○林(孝)委員 ソ連の原子炉衛星墜落事件、このときも長官のもとに、情報といいますか事実といいますか、伝わるのがおくれた、こういう事実があるわけですが、この点はどうですか。
  207. 金丸信

    金丸国務大臣 そのときもおくれたということで委員会でもいろいろ締め上げられたわけであります。そのときは情報は入ったわけでありますが、たまたま夕方の六時、丸山次官がアメリカでの次官レベルの会議から帰ってきた。そのとき、まあ人間のことですからそういうことはあるわけでありますが、私に報告するのを忘れた。それはまさに時差ぼけであったということでありまして、時差ぼけを責めるわけにもいかないことですから、今後こういうことのないようにと注意はいたしましたが、そのようないきさつがあったことは承知いたしております。
  208. 林孝矩

    ○林(孝)委員 肝心な軍事的情報、こうしたことに対する対応が十分に確立されていない。いろいろ理由があると思います。あるけれども、これがそれでいいのかということになりますと決してそうではないのでありまして、長官も当然、時差ぼけであるからそういうことがあっても構わないという気持ちではないと私は思います。  したがって、大事なことは、こうした対応能力といいますか、確立されてないものを確立していくという努力、そしてこれだけの手が打たれておればそういうことは起こり得ないという対策が防衛庁の中に確立されなければならない、こう思うわけなんです。  現在、防衛庁内部検討中の中央機構改革、これについてお伺いいたしますが、今回内部でまとまった素案が報道されました。その骨子は、内局の改編、統幕機能強化、情報一元化、こうした点にあると伝えられておりますが、どのような構想が議論されておるのか、お伺いします。
  209. 竹岡勝美

    竹岡説明員 防衛庁も発足しましてもう二十四年になるわけですけれども、その問いろいろな周辺の状況等々で、防衛庁自体の内部組織をこの際十分に検討すべきではないだろうか。     〔委員長退席、原(茂)委員長代理着席〕 こういう意味で、「防衛計画の大綱」というものを定めまして、平時における装備その他の関連は一応詰まっておりますので、これに対応します防衛庁自衛隊全体の中央機構をもう一度見直してみようということで、いま先生御指摘のとおり、去年の夏から各幕、それから統幕、内局中心になりまして四つのプロジェクトチ−ムをつくったわけです。一つは、内局と統幕と各幕のそれぞれの事務をお互いにもう少し、現在事務調整の訓令がございますけれども、最近の状況等に合わせて事務の割り振り等を見直してみようじゃないかというのが第一。それから第二には、統合幕僚会議、統幕機構を一層強化していく必要があるのではないだろうかということの見直し、これが第二。第三は、先ほどからたびたび先生御指摘のとおり情報関係、これは統幕にもそれぞれの責任がございますし、内局にもございますし、各幕は各幕のものがございますが、これはさらに全庁的な一元化というものを考える必要があるというのが第三点。第四点は、あわせまして内局自体の組織、現在官房ほか五つの局、四人の参事官から成り立っておりますけれども、これらの各局の仕事の割り振り等が現状でいいのであろうか、この四つのプロジェクトで一応それぞれ事務段階で詰めさせてみたわけでございます。  まだ中途段階でございますけれども、最初の内局、統幕、各幕の事務調整、これは訓令改正で若干の手直しをやる必要があろうという試案が来ておりますが、さらにこれは参事官会議にかけて決めたいと思っております。  第二の統幕機構の強化も、現在まだ、法律改正も若干要るのではなかろうかと思われますけれども、法律改正に至らない段階において、お互い各幕、内局も統幕に権限をある程度移譲し、これを盛り立てていこうということで、内部の通達でもある程度の改革ができるのではなかろうかということで、一つのまだ事務段階の試案ができつつございます。  第三の情報関係の一元化。これは中央指揮所のあり方というものをあわせて検討しておりますので、まだ差し迫った結論は出ておりません。  第四番目の内局の改正でございますけれども、これもそれぞれの案が出ております。特に先ほどから御承知のとおり、防衛庁防衛局にいま非常に事務が集中しておるということ等から見まして、その分の情報関係は別の部局に持たして防衛局長の負担を軽からしめてもいいのではなかろうか、あるいは、防衛局はもう少し広い意味での安全保障というものを勉強していいんじゃなかろうか、あるいは装備局と経理局との関連、長期に見ます装備の開発等の装備局と防衛局との関連、こういった点も相当錯綜しておりますので、どのように改正するか。新聞にもこの間出ましたように、一応一つの案も出ておりますけれども、これは問題が非常に大きいだけに、もうしばらく部内で討議していきたいという段階でございます。
  210. 林孝矩

    ○林(孝)委員 最終的な案の取りまとめはいつごろになる見通しでしょうか。
  211. 竹岡勝美

    竹岡説明員 昨年これを四つのプロジェクトチームでやろうというときには、ことしの七月いっぱいで一応の第一次試案的なものを出してみようということで、先ほど言いました課長レベルの事務案がこの七月中にはでき上がると思います。ただし、これを本当の成案にしまして、必要なものは法律改正も要るでしょうし、完全に長官までの決裁を得た一つの案にしますのにはもうしばらく時日がかかるのじゃなかろうかというように考えております。七月いっぱいに事務的な案ができまして、これを参事官会議討議いたしまして、その上で長官の御判断が要るものは要る、将来法律改正が要るならば五十五年度あたりの法律改正に出す必要があろうというようなことで準備を考えております。
  212. 林孝矩

    ○林(孝)委員 防衛二法の改正の絡みで海外派兵ができるようにするのではないかというふうに言われている節もあるのですが、この点についてはどのようにお考えですか。
  213. 竹岡勝美

    竹岡説明員 わが自衛隊は、現在の憲法のもとにおきまして、国家の正当防衛権ということで武力行使を伴いますものは、あくまでも必要最小限度の国の自衛、自衛権の行使ということで、限定されておるわけでございます。そのために、海外に、諸外国の領域において武力を行使するということは、憲法のたてまえ上許されないということから、従来それを海外派兵という言葉で、そういう海外派兵は憲法上できないということに政府は統一した見解を持っております。  一方では、先ほど防衛局長から言いましたとおり、「国防の基本方針」の第一項にも、国連の活動、大いにこれを支援し、平和外交を進めていくというのがございますけれども、一部の声で、自衛隊もいわゆる世界の平和に役立つ、あるいは国連の平和活動を支援してもいいのではないだろうか、武力の行使を伴わないことであるならば、たとえば国連警察軍等に対しまして、輸送部隊なり医療部隊なり、こういうものを派遣しまして、海外派兵じゃなくてむしろ派遣だと思いますけれども、派遣しまして、国連活動、世界の平和活動にわが国も何らかの貢献をしてもいいのではないだろうかという一部の声も出ております。  しかし、これは非常に高度の政治的な判断が必要な問題であり、これをやろうと思えば、憲法には触れないにいたしましても、現在の防衛庁設置法、自衛隊法を改正して、その任務を自衛隊に与えなければできません。そういう法律改正も伴いますし、非常に高度の政治的な判断であり、かつ国民が現在そこまでの自衛隊に対しますコンセンサスが固まっているかということになりますと、まだしばらく時日がかかるのではなかろうか。  ただし、事務的にはそういう声もあるということで、そういった場合にどういう活動が可能であろうか、どういう態様が考えられるであろうかという事務的な勉強は進めておりますけれども、あとは高度の政治的な判断、国民のコンセンサスの固まりによって決まるべき問題だと思っております。
  214. 林孝矩

    ○林(孝)委員 それから、午前中の質問と重複すると思いますが、機構改革は有事即応体制の強化をねらったものであるというような話、批評といいますかもあるわけです。さきに、長官指示でなされることになった、いわゆる新三矢研究先ほど質問にもございました、これも有事事態に対する対処の検討ということである、こういうことも聞くわけですね。この有事事態はどういう事態を言うかということについては、三つの有事という意味説明がございました。  今回、長官の訪米に際して、アメリカの方から、日本の有事の際の来援計画について提示された、こう言いますけれども、アメリカは日本の有事というものをどのように考えているのか、日本側と食い違っていないかどうか、この点についてはいかがでしょうか。
  215. 伊藤圭一

    伊藤説明員 先ほども御説明いたしましたように、有事というものが定義として定まっているわけではございませんけれども、私どもといたしましては、日本が武力によって侵略を受ける場合、あるいはそのおそれのある場合、すなわち自衛隊法七十六条によりまして防衛出動が下令されるような事態というふうに考えております。アメリカも、日本におきます有事というものは、まさに日本が直接侵略を受けたような場合というふうに考えているものと考えております。
  216. 林孝矩

    ○林(孝)委員 先月、長官が訪米に先立ってNATO諸国を訪れたわけでありますが、ヨーロッパの軍事情勢についてどのような印象を持たれましたか。
  217. 金丸信

    金丸国務大臣 私はNATOヘイグ司令官あるいはNATO事務総長、あるいはドイツのアペル国防大臣等と会いましたが、この三人の方々の考え方が、ソ連の最近における増強ぶりというものについて、非常に強くその問題を指摘いたしておりました。ことにNATOに参りまして、ヘイグ司令官が、NATOの安全はアジアの安全であるし、アジアの安全はNATOの安全である、そうしてそういう話の中から、どの方もこもごも、戦争はやってはならない、やらぬためにはどうすべきか、非常に頭をしぼっておるところを私は聞かされまして、非常に感銘を受けたわけであります。  また、日本は海に囲まれておるということでありますから、何かワンクッションあるというような状況、そういう中でございますから、NATO、ことにドイツへ参りまして、国連の部隊の視察をいたしましたが、将兵から一兵卒に至るまで、その練度の高い、たくましいど根性、そういうものを見せつけられたということを思いながら、また装備その他環境等、はるかにわが国防衛よりまさっておる、こちらは少しく立ちおくれたという感じもいたしました。  そういう中で非常に印象的でありましたのは、お互いに戦争はやりたくない、そうしてできるだけ話し合いで、ですから兵器の装備等につきましても、相手方を刺激するような、エスカレートするようなことはしてならない、しかし一国の防衛は厳然たる態度で臨まなくちゃならぬというような考え方、そういうものを承ってまいりまして、非常に私は参考になったわけであります。
  218. 林孝矩

    ○林(孝)委員 その西ドイツを訪問されたときに会われたアペル国防相との間で、防衛技術協力、共同研究について話し合ったということでございますが、この問題については前々から日本側から提案していたということを言われておるわけです。その経緯、真意について御説明を願いたいと思います。
  219. 金丸信

    金丸国務大臣 一国の防衛は、その国の国民の英知によって国を守ることを考えるということが私は原則だと思います。そういう中で、防衛庁の抜本の研究費というものはスズメの涙ほどであります。アメリカの研究費と比べればその格差というものは全くお話にならぬことはおわかり願えると思うわけでありますが、しかし一国の防衛をやろうという国民の英知、そういうようなことを私は考えながら、来年度はこういう問題をひとつ予算的にも相当ふやしてもらうようなことを考えるべきじゃないかという考え方を私は持っております。  そういう考えを持っておった私がアペル大臣と会いましたら、アペル大臣の方から、四、五年前に防衛庁から局長級の人が参りましていわゆる技術協力というような共同研究というようなことを言ったけれども、ナシのつぶてになったという話があった。先ほど申し上げましたようにNATOの安全はアジアの安全であるしアジアの安全はNATOの安全であるという、私もそれは共鳴いたしました。そういうことから言えば、いわゆる昔の枢軸国ということでなくて、お互いに自由社会を守り、そうして戦争をやらないというためにも、抑止力というものはしっかりしたものを整える、それにはお互いに頭脳の交換というものはあってしかるべきだ、研究いたしましょう、私も賛意を表したわけでありますが、それは事務的に詰めてみましょうということであります。事務的にいま詰めておるようでありますが、えらい期待することができそうもないような事務局の話をいま聞いておるわけであります。いまドイツ大使館も窓口にして話を進めておるようでありますが、事務的な段階であるということだけは御理解いただきたい。
  220. 林孝矩

    ○林(孝)委員 次に、防衛費についてでありますが、政府は以前より、防衛費をGNPの一%以内にするという方針を、とっているわけでありますが、今後もその方針を続けるということに、長官考え方として変わりはないかどうか、お伺いしておきたいと思います。
  221. 金丸信

    金丸国務大臣 私は、防衛費の問題につきましてはいろいろ言っております。この際、ドル安円高だ。この際、アメリカからどんどん買う物は買ったらどうだというような話もあります。また、防衛費はいわゆる当面一%ということについては、それは逆さまな議論じゃないかと言う人もあります。しかし、当面一%という根拠というものは、きょうまでの積み重ねの中から一%が出てきたということであります。そういうことを考えてみれば、この際、だからひとつ思い切って一%以上にしろというような考え方は、これは飛躍だ。国民のコンセンサスを得ながら防衛というものはやっていかなくてはならぬという点から考えれば、当面一%という考え方については、私は変わってはおりません。
  222. 林孝矩

    ○林(孝)委員 それから、最近の北方四島周辺のソ連の演習、アメリカ第七艦隊増強もソ連の太平洋地域での軍事力の推移に注目してのことである、こういう防衛当局の分析もあるわけでございますが、一方、外務省も防衛庁も中国は日本にとって脅威ではないという見解を言明しております。マスコミなどでソ連の太平洋への軍事的進出が盛んに言われているわけでありますが、防衛庁としては、ソ連は日本の防衛にとって脅威であると考えておられるかどうか。この点についてお伺いします。
  223. 伊藤圭一

    伊藤説明員 ソ連という国を特定して脅威であるかどうかということについては、仮想敵国は持っていないわけでございます。しかし、日本の周辺諸国の軍事力ということを考えますと、近隣諸国の中でソ連という国がずば抜けて大きな軍事力を持っているというのは事実でございます。
  224. 林孝矩

    ○林(孝)委員 あえて仮想敵国という言葉を使わずに、脅威と考えているかどうかということでお伺いしたわけであります。
  225. 伊藤圭一

    伊藤説明員 脅威という場合には、持っている能力と、それから意図というものが結びついた場合に、初めて顕在化された脅威ということになろうかと思います。そういった意味では、現在の時点におきまして顕在化された脅威であるかということになると、必ずしもそういうふうには考えておりません。しかし、能力というものを潜在的な脅威というような形でとらえる場合に、きわめて強大な能力であるという場合には、やはり潜在的な脅威としての一つの存在としては考えざるを得ないというふうに思っております。
  226. 林孝矩

    ○林(孝)委員 次に、米軍の駐留費の分担問題についてお伺いいたします。  在日米軍の駐留費の分担は、従来からアメリカ側の強い要請であったわけでありますが、長官がブラウン米国防長官との会談の際に、アメリカ側から話が出る前に日本側から分担増を約束した、このように報道されておるわけであります。長官が分担増というものをこちらから積極的に切り出したことの認識について、お伺いしておきたいと思います。
  227. 金丸信

    金丸国務大臣 私はブラウン長官と会談をいたしました。日米関係は不可欠であるという話、その不可欠であるならば不可欠であるようにしておくためにはどうすべきか、信頼性を高めるということだ。信頼性を高めるということはどういうことだ、それは思いやりだという考え方を私は持ちました。その思いやりの中で、ドル安円高という状況を見て横を向いておるということは信頼性を高めるゆえんになるだろうか、そういうことを考えてみまして、これは、地位協定もあります。大平発言もある、そういうことも踏まえながら、ひとつ十分に検討してこの問題に対処するようにすべきではないかということを、私は施設庁長官にも指示いたしたわけであります。  また、ブラウン長官とその問題について話をいたしました。私はそれはアメリカから要求されることでなくて、思いやりということですから、こちらで考えるということである。これに対しては、ブラウン長官はその奥意に対して非常に感銘をいたしておりました。向こうから要求は何事もありませんでした。  そういう状況でございますが、私はそのとき、金額等の問題については日本の予算編成等の問題もあります。しかし、私はこの問題につきましては、総理にもあるいは園田外務大臣にもあるいは大蔵大臣にも理解を得てアメリカへ行ったわけでありまして、この問題はできるだけ思いやりの気持ちが向こうに通ずるようなことを私はしてやりたい、しかしその金額等については今後の検討の問題である、こういうことであります。
  228. 林孝矩

    ○林(孝)委員 アメリカでは、日本に対するいわゆる安保ただ乗り論、こういうものが再燃する兆しがあると言われておりますが、長官は安保ただ乗り論をかわすために駐留費の分担増を考えているのかどうか。  また、アメリカ側の一部に存在するこの安保ただ乗り論について長官はどのような認識をされているか。この二点についてお伺いします。
  229. 金丸信

    金丸国務大臣 アメリカにおいてただ乗り論というものが国民の声の中にあるということも私は聞いております。しかし、向こうから、ブラウン長官にしてもブレジンスキー特別補佐官も私に言ったわけではありません。ただ、日米関係は、日米安全保障条約という中には日本の経済の繁栄という問題も含まれております。あるいは文化という問題も含まれている。そういう中でいわゆるいろいろ論議されておるこういうような問題の中で、日本に対する批判というものが吸収されるということであれば、なおかつそれはいいことじゃないかというような考え方は、私は頭の中にはあったわけであります。
  230. 林孝矩

    ○林(孝)委員 わが国がアメリカからただ乗りと批判される理由は何もないのであります。逆に、経済的面に限っても相当の予算を計上していると言えます。  そこで、具体的にお伺いいたしますが、在日米軍基地を提供していることに絡む経費、たとえば民有地借料、移設経費、地元対策費、さらには駐留軍労務者に対する日本側の負担、これらは今年度予算ではそれぞれ幾らぐらいになっておりますか。
  231. 亘理彰

    ○亘理説明員 お答えいたします。  米軍の駐留に関連いたしましてわが方もいろいろの経費負担をしておりますが、五十三年度予算におきまして一応の試算を申し上げますと、試算と申しますのは施設でたとえば米軍自衛隊と共同で使用しているようなものもございますので、一定の基準で割り振っておるわけでございますが、申し上げますと、借料の関係では三百三十七億円、それから移設対策、いわゆるリロケーションの関係で二百六十九億円、周辺対策の関係で二百七十二億円、それから労務関係経費で八十八億円、その他一般行政経費等を含めまして百五十八億円、合計一千百二十四億円ということでございます。これは冒頭申し上げましたとおり、一応の試算でございます。
  232. 林孝矩

    ○林(孝)委員 現在、日本に駐留する米軍将兵の総員の数は幾らになっておりますか。
  233. 亘理彰

    ○亘理説明員 本年の三月末現在におきまして、在日米軍の総数は約四万六千名強というふうに承知しております。
  234. 林孝矩

    ○林(孝)委員 この分担問題で、防衛庁は西ドイツの状況を調査、検討していると言われておりますが、西ドイツに駐留している米軍の総数及び西ドイツ側の分担している駐留費はいかほどになっておりますか。
  235. 亘理彰

    ○亘理説明員 西ドイツに駐留しております米軍は、これも本年三月末で約二十三万人と承知しております。これに関連しまして、西独がどの程度の直接の負担をしておるかということは、詳細は不明でございまして、いろいろ合わせますと約七億ドル程度という情報もございますが、いろいろ予算制度の違いなどもございまして、調べておりますが正確なところはまだ掌握しておりません。在外公館等を通じまして調べまして、わかり次第また御報告いたしたいと思います。
  236. 林孝矩

    ○林(孝)委員 いずれにいたしましても、日本の分担は西ドイツと比較して決して少なくない。日本がいわゆる安保ただ乗りと言われるゆえんは何にもないという根拠にもなるわけでありまして、これは掌握をしていただきたいと思います。  もう一つは、本来アメリカ側との話し合いについては、それがたとえ在日米軍の駐留費の分担問題といえども、第一義的には外務省当局が担当すべきである、こういう批判が政府部内にあるやに聞いております。また、これは予算を伴う問題でもあり、当然大蔵省の了解も必要である。長官が出発前に、外務省、大蔵省の理解を求めて行ったと先ほど言われたわけでありますが、そうした後にこういう声が出てくるということは一体どういうことなのか。また、政府部内にはそういう声はない、このように長官は言明されるかどうか、この点についてお答え願いたいと思います。
  237. 亘理彰

    ○亘理説明員 在日米軍の駐留経費につきまして日本側で何らかの措置をとります場合に、これは予算を要するわけでございます。この予算防衛施設庁に計上されるわけでございます。しかしながら、防衛施設庁だけで判断すべきことではもちろんございませんので、地位協定との関連において当然外務省とも相談しなければなりません。それから、明年度の財源事情全般との関係で、予算でございますから、当然大蔵省とも相談いたさなければなりません。そういうことで、その他もございますが、関係省庁とは十分に協議をして進めていかなければならないことは当然でございます。  したがいまして、今般ワシントンにおきましても、大臣はそういうことを踏まえられまして、具体的なことは一切おっしゃらなかったわけでございまして、私どもがこれから施設庁として事務的に峯を固めまして、それを関係省庁に御相談して、最終的には来年度予算の一環として措置すべきものがあれば措置する、こういうことでございます。
  238. 林孝矩

    ○林(孝)委員 そうしますと、出発前にはそうした話し合いというか、理解というものは持たれてなくて、これからそうした理解、話し合いというものを持っていくということでしょうか。
  239. 金丸信

    金丸国務大臣 出かける前に私は理解を求めて行ったわけでありまして、しかし金額等の問題についてはこれからの問題であります。十分検討しなければならぬことは当然だと考えております。
  240. 林孝矩

    ○林(孝)委員 ブラウン氏が来日する十月にはアメリカに正式な結果の返事をする、こういう約束をされたということでありますが、総理はそのことを御存じですか。
  241. 金丸信

    金丸国務大臣 ブラウン長官が秋見えるという秋とは何だ、秋とは十月だろうという見方もありますし、十月末という見方もあるようでありますが、あるいは十一月初めかもしらぬと私は思うのですが、この問題は私も帰国報告をいたしておりますから、総理も十分承知をいたしております。
  242. 林孝矩

    ○林(孝)委員 分担増について、日本政府が円高ドル安の事態考えて行う思いやり、先ほど長官が、信頼性を高めることということは思いやりであると言われたわけです。こういう発言でありますが、直接予算関係する問題である以上、理論的な根拠、こういうものが必要であると思うわけです。具体的にどういう名目で分担するつもりなのか、またそれは地位協定の拡大解釈のおそれはないかどうか、この点についていかがですか。
  243. 亘理彰

    ○亘理説明員 私ども大臣の御指示を受けまして事務的にいろいろ検討に入っているところでございますが、来年度予算として取り上げる問題でございますので、これはこれから慎重に十分検討いたすということでございます。その際に、経費の全体の程度の問題もございますが、個々経費について、地位協定との関係でどういうふうに考えるべきかということももちろん含むわけでございます。  大臣も常に言われておりますように、今回私どもが検討しておりますのは、地位協定の枠内において日本側としてなすべきことをなす、なし得ることをできるだけ考える、こういうことでございますので、具体的にその内容について申し上げる用意はまだございませんけれども、検討としては幅広く検討してまいりたい、こう思っております。
  244. 林孝矩

    ○林(孝)委員 この理論的な根拠、名目ですね、こういう問題であるとか、地位協定の枠の中ということで、地位協定の拡大解釈にならないかどうかということについての検討、これはいま検討中ということであると私も思うわけですが、しかしこれはタイムリミットのある問題だと思うのです。そういうことについてはどのように見通されておりますか。
  245. 亘理彰

    ○亘理説明員 何らかの結論を得まして措置をする場合には、五十四年度予算の問題ということになります。その過程におきまして、関係省庁と十分協議をいたさなければなりません。御承知のとおり政府予算の決定は、最終的には、通常でありますと十二月ということであります。それで、政府としての案を決定しました場合に、国会にお諮りして国会の審議を経る、こういうことになるわけでございます。その前に概算要求の問題がございますが、私どもは防衛庁防衛施設庁立場で、この概算要求の時点にできるだけ具体的な内容を詰める作業を進めるべく努力いたしたいと思っております。
  246. 林孝矩

    ○林(孝)委員 もし仮に円高ドル安という状態がおさまって、逆にドルが高くなった場合、日本側の分担を縮小するということもあるのかどうか。それともレートの変更には関係なく、日本側が米軍駐留費の大幅分担という方針を貫いていくのかどうか。こうした点はどう考えておりますか。
  247. 亘理彰

    ○亘理説明員 今回大臣がおっしゃっております思いやりと申しますのは、在日米軍の経費のやりくりが大変窮屈になっておるということも一つのきっかけでございます。これは石油ショック以来のわが国の賃金、物価の急騰、特に最近、この一年ないし一年半における円高問題が絡んでおるわけでございますが、ただ、私どもいま検討しておりますのは、この為替相場の変動によります米側のドル負担増をストレートにカバーするというふうなことを考えているわけではないわけでございます。そういう状況も踏まえまして、思いやりの気持ちを持って地位協定の範囲内でできるだけのことを考えよう、こういうことでございます。  逆に、円安ドル高になった場合どうか、こうおっしゃいますが、仮定の問題にはお答えしにくいわけでございますが、いずれにしましても、この地位協定の範囲内で運用いたします場合にも、われわれは固定的に物を考えるべきではない、そのときそのときの状況に応じてなすべきことをなす、こういうことで対処すべきかと思うわけでございます。
  248. 林孝矩

    ○林(孝)委員 この円高ドル安の問題は、仮定の問題で答えにくいと言われましたけれども、当然考えておかなければならない問題でありまして、概算要求という中でこれの予算の決着をつけるという先ほどの答弁を前提にするなら、当然こうした方針がはっきりせないで概算要求をするということには私はならないと思うのです。いかがですか。
  249. 亘理彰

    ○亘理説明員 繰り返しになりますが、この円高による為替相場の変動による負担増をストレートにカバーしよう、こういう気持ちではございません。私どもは、現在、最近の状況に応じてとるべき措置を地位協定の範囲内でできるだけ考えよう、こういうことでございますので、将来どういう事態になったときにどういう措置をとるかということは、またそのときどきの万般の状況によって判断すべきことであろうと思います。
  250. 林孝矩

    ○林(孝)委員 それではもう一つお伺いいたしますが、信頼性を高めることの内容が思いやりである、この思いやりという非常にあいまいな表現の中で予算という理論的な根拠を求めること、またこの思いやりの範囲とか、いろんな意味でこの思いやりという言葉はあいまいなんでありますが、いずれにしてもこの長官の発言によって、日本は長官の思いやりということで分担増をするということを約束したことには変わりないわけです。これは新たな負担であります。     〔原(茂)委員長代理退席、葉梨委員長代理着席〕 この新たな財政負担というものを日本の義務とお考えであるかどうか。  私がなぜこんなことを聞くかと言えば、思いやりという法的根拠の非常にあいまいなことで一たん財政支出というものを認めた場合に、これは法的義務が生ずる、こういうおそれもあります。協定の拡大解釈、こういう心配もある。そういうことで日本の義務だと考えられるかどうかという点について、お伺いしておきたいわけであります。
  251. 亘理彰

    ○亘理説明員 大臣の思いやりというのは、一般的なそういうお気持ちを申されたことでございまして、具体的内容については、私どもがその大臣のお気持ちを受けてこれから詰めてまいるべきものでございます。その場合に、私どもは、地位協定の改定というふうなことを考えているわけではございませんので、地位協定の枠内において、地位協定の正当な解釈の許す範囲においてどういうことが考えられるか、こういうことを詰めていこうと思っているわけでございます。  これが具体化いたします場合には、予算措置でございますから、当然国会の御審議を十分経るというものでございますが、対米上の義務になるかどうかという点につきましては、私どもは、これはその地位協定の枠内において考えるべきことについて新たに協定上の義務を負うというふうなものではない、こういうふうに思っております。
  252. 林孝矩

    ○林(孝)委員 いわゆる義務ではない、思いやりで日本が自発的に申し出た、こういうことですね。そうであるならば、いわゆる法的義務がないということです。いわゆる法的義務がないということであるならば、協定の枠内で行うなどという言い方をするのはよくないことではないでしょうか。適切な言い方ではないと思うのです。この地位協定の枠内で行うということであれば、これは法的義務じゃないですか。     〔葉梨委員長代理退席、委員長着席〕 したがって、義務ではないと言われたわけでしょう。法的義務がないということならば、協定の枠内で行うという言い方もおかしいし、思いやりで済むのであったならば、では今回この時期に財政負担を始める理由は何かということになるわけです。日本の義務ではないと言いながら、地位協定という一つ法律的な根拠の中で、思いやりという、これを包含してしまう、ここに非常にあいまいさと矛盾がまた新たに生ずるわけですね。いかがですか。
  253. 亘理彰

    ○亘理説明員 ただいま具体的内容につきまして、鋭意これから時間をかけまして関係省庁とも協議して詰めようという段階でございますので、十分御納得のいくように具体的な事例に即してお話しすることがむずかしいわけでございますけれども、私どもは、地位協定において、日米間の義務というものが、あらゆる例にわたって巨細に規定されておるというふうには考えていないわけでございます。昨年の十二月の合憲によりまして、社会保障関係経費その他約六十一億円を五十三年度において予算化しまして、国会の御審議を経たわけでございますが、これは決して日本側の義務として考え予算化をお願いしたというわけではないのでございます。もちろんその合憲ができました後で、日米間で実務者レベルでたとえば基本労務契約というふうなものを結び、これは毎年結ぶわけでございますが、そのときには、予算上日本政府でとられた措置を踏まえてその契約、基本労務契約等に書さ込まれるわけでございますので、そういう意味では契約上の問題になりますが、すべての経費の問題が、これが地位協定上の義務である、義務でない、というふうには必ずしも割り切れないというふうに考えております。
  254. 林孝矩

    ○林(孝)委員 この思いやりということは、日本の法的義務が生じないと言いながら、協定の枠内で行うという言い方をしておる、これは適切でないと私は思うのです。法的義務がないというならば、地位協定という枠内ではない、新たな法的義務が生じたということになるわけですね。したがって、この法的義務が生じないものに対して、円高だから思いやりだということで財政上の負担が新たに生ずる。こういう財政上の負担というのは、これは国民の税金ですから、新たなこうした負担というものを認めるということは、これは会計検査上どういうことになるのか、これは会計検査院に伺いたいのです。  私がいま指摘しているのは、この長官の思いやりということで新たな財政負担が生ずる、これは日本の法的義務ではないという答弁がありました。法的に義務のないことに対する財政負担、これが果たして適正な財政負担と言えるかどうか、会計検査上の問題として見解を伺っておきたいと思います。——私は会計検査院に先に聞いている。
  255. 藤井健太郎

    藤井会計検査院説明員 お答えいたします。  ただいまのいろいろの御審議を承っていますと、まだ予算的措置その他について未検討の様子でございますので、この際答弁を控えさせていただきたいと思います。
  256. 林孝矩

    ○林(孝)委員 会計検査院にさらにお伺いしますが、これは未検討のことだから見解を発表できないということだったら、いままでの決算委員会で未検討のことに対する見解は一切発表してなかったかというと、そうじゃないじゃないですか、そうでしょう。具体的な仮定の問題ですよ。具体的な仮定といっても事実として起こってくる問題ですよ。これは実際負担されるということになれば、当然それは起こってくるじゃないですか。いかがですか。
  257. 藤井健太郎

    藤井会計検査院説明員 お答えいたします。  ただいまの内容によりますと、支出そのものがすべて法的な根拠を要するというものではないと思います。予算的には。ですから、法的な根拠のない支出も行政的にあるかと思います。
  258. 林孝矩

    ○林(孝)委員 そうしますと、会計検査上は法的根拠のない支出を認めるということですか。
  259. 藤井健太郎

    藤井会計検査院説明員 お答えいたします。  予算的にはそういうこともあり得ます。予算の執行としてそういうことはあり得ると思います。
  260. 林孝矩

    ○林(孝)委員 予算というのは、国会で議決されて通ったものが予算として執行されるわけです。国会を通過しない予算が執行されるということはあり得ない。いまのこの議題はそうじゃないですよ、これは。
  261. 楯兼次郎

    楯委員長 施設庁長官がさっきから手を挙げておるので一言。
  262. 亘理彰

    ○亘理説明員 すべての経費支出が国会の御承認を経なければならないことは当然でございまして、これは一点の疑いの余地もございません。それが予算措置であるわけでございます。  例を挙げて申し上げますと、たとえば、これは長年にわたってやっておりますが、駐留軍従業員の健康保険組合が赤字でございまして、この赤字に対する補助金を日本側で支出いたしております。これは毎年予算に計上しまして国会の御承認をいただいて支出しているわけでございますが、これは何らか法的な義務としてやっている、こういうことではございませんので、日本政府の自発的な意思によって、そうして従業員の保護、健康の保全という見地から予算計上を国会にお願いして、御承認をいただいて支出しておる、こういうことでございます。
  263. 林孝矩

    ○林(孝)委員 いまのことに対して反論しますが、そのことと、いま円高ドル安ということによってアメリカが非常に苦しんでいるという認識に立って、信頼性を高めることが思いやりだということで分担金を増額する、新たな財政負担というものが、法的義務がない、法的根拠がない、義務も根拠もない財政負担というものがここで新たに生ずる。これは会計検査上の問題として適正ではないのではないかということについて、ぼくは会計検査院に聞いているわけです。いまも施設庁長官が最初から手を何回も挙げられておるからそのことかと思ったら、ちょっと次元の違う話が出てきましたから、検査院にお伺いします。
  264. 藤井健太郎

    藤井会計検査院説明員 お答えいたします。  確かに予算執行、それも予算そのものは議会で議決されますけれども、執行そのものがすべて法的根拠を有しなければならぬということではないと思います。
  265. 林孝矩

    ○林(孝)委員 一般論ではなしに、具体的に私が例を挙げているわけですから、この件に関してどういうルールでもって適正なのか。たとえば三百億というふうに伝えられるわけですね。こういう財政負担が、法的根拠もなく法的義務もなく新たに生ずるということが、会計検査上適正だ、こういうルールで適正だというルールを教えていただきたい。
  266. 藤井健太郎

    藤井会計検査院説明員 いまだ明確な内容を存じておりませんので、はっきりしたお答えは申し上げられませんけれども……。
  267. 林孝矩

    ○林(孝)委員 明確に存じていないからはっきり答えられないというならば、最初にその答弁をすべきであって、順序が逆じゃないですか。  じゃ、この議論は保留にしておきます。しかし、これは重大な問題ですので、検査院においても十分議論をされて、それで答えていただきたい。よろしくお願いします。  それから次に、P3C、F15についてお伺いしますが、自衛隊の次期主力戦闘機F15と対潜哨戒機P3Cの導入に関する日米両政府間の事務手続が完了した、六月二十日、F15とP3Cの取得、生産のための取り決め書簡、これが園田外相とマンスフィールド駐日大使との間で交換され、ワシントンでは長官が、日米事務レベルで交換書簡に基づいて実施細目を取り決めた覚書に調印された。この覚書で日本側は公正な比例配分による分担金を支払う、このようにされているだけで、具体的分担額がどういうふうになっておるのか、F15の研究開発費の日本側負担額はどういうふうになっておるのか、こうした具体的な負担については非常に明確性を欠いておりますが、この点について御答弁を願いたいと思います。
  268. 間淵直三

    間淵説明員 先生御指摘のように、了解覚書と申しますか、レター・オブ・アンダースタンディングというものが、米国防省の安全保障援助局長防衛庁の装備局長の間に二十日に調印されたわけでございまして、その中に、F15、P3Cもでございますが、研究開発費の一部を負担するという項目があるわけでございまして、この主要装備品の研究開発費の負担ということに関しましては、一九六七年以来国防省令で定められておりまして、また一九七七年には武器輸出管理法にもその旨が定められておりまして、他国にその装備品を売却またはライセンス生産させるという場合には、研究開発費の一部を負担させる、こういうふうに規定されているわけでございます。その規定に従いまして、F15、P3Cの開発分担金というものを支払うことになっておるわけでございますが、その具体的な数字につきましては、各国ともこれを秘ということにしておりまして、具体的な数字が申し上げられないのは非常に残念でございますが、その法律にもありますように、フェア、公正に、エクイタブルと申しますか、比例配分するということになっておるわけでございまして、F15の開発、まあ二十億ドル程度かかったということでございますが、その開発に要した費用というものを、アメリカをも含めまして日本その他の国に売却しておるわけでございますが、それらの取得機数に応じまして公平に比例配分する、そういうことになっておる次第でございます。
  269. 林孝矩

    ○林(孝)委員 どうしても言えないという極秘事項であるということですが、米軍の調達価格に比べて日本の購入価格、これが非常に高くなる。これは、アメリカ政府が投資した研究開発費、これに対する日本側の負担が高額になるためではないかという心配があるわけですが、この点についてはいかがですか。
  270. 間淵直三

    間淵説明員 御指摘のように、わが国がFMSから買い入れる飛行機の代金とアメリカ政府が買い入れる代金との間には、相当と申しますか、かなりの差があるわけでございまして、これは、ただいま申し上げました研究開発費の分担金、あるいはFMSの管理費、これは価格の三%でございますが、それとか、輸送の費用であるとか、あるいはアメリカ政府が自分の所有する機械を使用させまして飛行機をつくらせたという場合には、私どもが、外国が買う場合にはその償却金といったようなものを支払うわけでございまして、その合計でございますが、まあ外国が買う場合だけ開発分担金といったものがふえるというようなことはないわけでございまして、アメリカが買うものも分母に含めまして比例配分しておるということで、特別外国が買う場合に高くなっておるということはないと存じております。
  271. 林孝矩

    ○林(孝)委員 それは額が示されないとわからないのですが、この額も秘密ですか。
  272. 間淵直三

    間淵説明員 非常に残念でございますが秘密になっておるわけでございまして、私どもはその数字を提示を受けまして、それからアメリカの調達計画、それから各外国への売却計画、日本を含めまして、そういうものを詳細に聴取いたしまして、比例配分を受けた結果、公平なものとこう信じておる次第でございます。
  273. 林孝矩

    ○林(孝)委員 それでは次に、時間が来ましたから、最後に伺いますが、五十三年度から導入した対潜哨戒機P3C搭載コンピューターについて数年以内に輸入品から純国内開発製品に切りかえる、こういう方向で検討されていると聞いているがどうかという問題。  それからF15、新主力戦闘機のセントラルコンピューター、これについてはどうか。  技術的に見てもP3C並みのコンピューターの国内開発は可能なのかどうか。この三点を伺って、終わりたいと思います。
  274. 間淵直三

    間淵説明員 P3Cに搭載されておりまするスペリーユニバック社のコンピューターでございますが、わが国のコンピューター技術といったようなものから見まして、ハード、コンピューターの機器そのものというものの製造に関してはこれは可能だというふうに存じておりますが、問題はソフト部門、周辺機器部門と申しますか、そういう部門でございますが、その部門もかなりの努力と経費といったようなものによりましては不可能ではない、こういうふうに思っておるところでございます。  また、F15に搭載されておりますIBM社のセントラルコンピューターでございますが、これは非常に小型化されておりまして、しかも急速な温度の変化といったようなものに耐えるようにつくってあるわけでございまして、私どもの経験してない部門というものもかなりあるように見受けられるわけでございますが、こういうものも、日本の技術からしたら相当の金といったようなものをかければ絶対不可能というふうには考えておらないわけでございますが、いずれも、政府レベルにおきましてはこれを国内でライセンス生産してもよろしいということになっておるわけでございますが、IBM社の営業方針あるいはスペリーユニバック社の商業的な方針といったようなものから、第一次契約では、これをライセンス生産はしない、ただ、維持修理に必要な技術援助とまでは言わないですが、技術指導といったようなものについては、スペリーユニバック社も、IBM社もこれは提供するといったようなことになっておるわけでございまして、したがいまして、当面の維持修理といったようなものは国内でやっていくわけでございますが、それ以降をどうするか。本当に自主的な運用といったようなものを確保していくためにどうしていくかということにつきましては、先ほど申し上げましたような点を考慮に入れまして、ただいま慎重に検討しておるところでございます。
  275. 林孝矩

    ○林(孝)委員 終わります。
  276. 楯兼次郎

    楯委員長 安藤巖君。
  277. 安藤巖

    ○安藤委員 私は最初に、けさの新聞に報道されておりますが、愛知県の、これは航空自衛隊の小牧基地、ここを飛び立ったファントム戦闘機の風防が吹っ飛んで粉みじんになって地上に落下したという事故について、あれから相当の時間がたっているのですから、どういうような原因でこうなりたのかという原因究明、それから被害の状況等について調査しておられるのでしたら、それをまずお聞きしたいと思います。
  278. 夏目晴雄

    ○夏目説明員 昨日、七月三日十五時三十四分に茨城県の百里基地所在の第七航空団所属のF4EJファントムが小牧基地を離陸しました直後、前席のキャノピーが外れまして、小牧基地の北方約二マイル弱のところだと思いますが、落下しまして、たんぼの中に落ちたわけでございます。事故機はすぐまた小牧基地に引き返しまして、人身その他の被害はなかったわけでございますが、関係者の皆様に非常に迷惑をかけたことをおわびいたします。  なお、事故原因につきましては、現在キャノピーの大部分、九〇%についてはもうすでに回収を終わっておりますので、直ちに事故調査に入っておりますが、その原因その他については、ただいままだ調査中でございますので、申し上げられる段階ではございません。
  279. 安藤巖

    ○安藤委員 早速徹底的に原因を究明していただきたいということと、その究明された原因については報告をしていただきたいと思うのですが、よろしいですか。
  280. 夏目晴雄

    ○夏目説明員 原因究明の調査が完了しましたならば、必要に応じて御報告したいと思います。
  281. 安藤巖

    ○安藤委員 それからもう一つ。原因がまだわかってないということですが、私の見るところでは、これはファントムの欠陥じゃないか。いわゆる欠陥車というのがありましたが、欠陥ファントムではないかと思うのです。だから、この原因が徹底的に究明されて明らかになって、そしてその事故の原因を取り除く、いわゆる安全性が確認されるまで、この小牧基地における、あるいは全体のファントムの飛行を中止すべきである。少なくともこれは三菱航空機のオーバーホール直後の事故ですね。だから、全体として、欠陥ファントムは原因がはっきりするまでは飛ばすなということを強く要求したいのです。そして少なくともこの三菱名航のオーバーホールに伴ういわゆるテスト飛行その他の飛行、これを原因が明らかになるまで中止すべきだということを強く要求いたしますが、この点はどうですか。
  282. 夏目晴雄

    ○夏目説明員 原因の究明につきましてはもちろん鋭意努力いたしますが、われわれ、ファントムが欠陥機であるという認識は持っておりませんし、事故原因の究明は究明といたしまして、所要の訓練は引き続きさしていただきたい、こういうふうに考えております。
  283. 安藤巖

    ○安藤委員 そういうふうに私の方が強く要求するのは、今回吹っ飛んだ風防は幸いにしてたんぼの中に落ちたのですが、しかし二百メートル南側にはずっと民家があるわけです。ちょっと二百メートルずれて——たんぼの中に落下した破片が突き刺さっていたというような状況が新聞の報道に載っていますけれども、民家に落ちたら完全に屋根を突き破っていただろうというふうに言われているのです。そういう意味で、これは非常に危険だから安全性が確認されるまでは飛行を中止してほしいということを要求しているのです。だから、そういうことも踏まえてしっかりと考えていただきたいと思います。いいですね。  時間がありませんから本論に入りまして、先ほど質問をしておられたのですが、米軍基地従業員の労務費の分担問題についてお尋ねをしたいと思います。  六月の二十日に防衛庁長官はブラウン国防長官と会談されて、在日米軍の駐留経費の分担を積極的にふやしていくということを約束をしてこられておるわけです。そして、これも先ほどから話になっておりますけれども、昭和五十三年度ベースで六十一億円の福利費、管理費を負担する、これをも増額するということまで提案をしておられるというふうに聞いております。この六十一億円の管理費、福利費の負担ということにつきましても、これは地位協定に違反するものである。もともと私どもは、逐次日米安保条約、地位協定は廃棄すべきであるということを強く主張しておりますけれども、この地位協定にすら違反をするというふうに主張してまいっております。ところが、この約束をされるということになると一層歯どめがなくなってしまって、具体的には地位協定の二十四条一項になりますけれども、これが歯どめがあってなきがごときになる。これは許されないことだと思います。具体的に六十一億円を負担することになった福利費、管理費以外に、一体どういうような項目のものをさらに負担しようといまお考えになっているのか、お聞きしたいと思います。
  284. 亘理彰

    ○亘理説明員 この点はたびたびお答え申し上げておるわけでございますが、私どもは、大臣の御指示を受けましていろいろこれから関係省庁とも協議して検討してまいりたいということでございますが、いまの段階で何をどうするという結論を得ていないわけでございます。したがいまして、現在の段階で具体的にお答え申し上げることはできないわけでございまして、いずれにしましても、地位協定の枠内で何をなし得るかということを幅広く検討したい、こういう考えでございます。  その場合に、私ども申し上げておることでございますが、いつも念頭にありますのは、一つ日米安保体制の重要性ということにかんがみまして、この日米安保体制の核心をなす、実体をなすところの在日米軍の駐留が、最近の円高等の状況によりまして大変やりくりが苦しくなってきておる、こういう事情は理解できるところでございますので、大臣の仰せられる思いやりの精神をもって何をなし得るか、これを検討したい、こういうことでございます。在日米軍の駐留が円滑に行われるようにするのは私どもの仕事の大きな一つであるとわきまえております。  もう一つは、在日米軍に働きます日本人従業員の雇用の問題でございます。現在二万二千人の従業員が本土、沖繩におるわけでございますが、外国軍隊という特異な環境の中で苦労しておる従業員でございまして、家族を含めれば約十万人に近い人々の生活の問題でもあるわけでございます。私どもは形式上その雇用主という立場にありまして、この従業員の雇用と生活について無関心でいられないことは当然でございます。  常にこの二つの問題が私ども念頭にあるわけでございますが、いずれにしましても地位協定の範囲内においてなし得ることを鋭意検討いたしまして、結論を得ましたならば、来年度予算の一環として御審議をお願いしたい、こう考えている次第でございます。
  285. 安藤巖

    ○安藤委員 そこで、先ほどから話の出ております六十一億円を負担することになった合意、この合意そのものについて、わが党の柴田議員が六月六日に当院の内閣委員会で、その不法、不当を明らかにして質問をいたしました。これに対して亘理さんは、地位協定に該当しない費用だというふうに答弁をしておられるわけです。地位協定に該当しないということで日本が負担していくということになりますと——地位協定には労務費についてはどちらが負担するかということは一言も書いてないわけなんです。地位協定に書いてないということになりますと、労務費関係については全部日本が負担してもいいというような論法になってしまって、際限がなくなると思うのです。地位協定の二十四条一項は、二十四条全体がそうなんですが、どちらが米軍を日本国内において維持するか、いま私がお尋ねしておる問題については、在日米軍基地の従業員の労務費の負担の問題について、アメリカ側が負担するのか日本が負担するのか、どちらが負担するのかということについて決めてあるわけです。ところが、いまの労務費の問題については、日本政府が負担するということはもちろん一言も書いてないわけです。それを、地位協定に書いてないからこれは負担できるのだ、関係ない費用なんだということになったら、全く地位協定に書いてないことを日本の方から積極的に負担するというようなことになって、これは明らかに地位協定にも違反するものじゃないか。書いてないことを負担するというのですからね。その点はいかがですか。
  286. 亘理彰

    ○亘理説明員 いまお話しの六十一億円につきましては、昨年十二月末の日米間の合意に基づいて予算化をお願いしたわけでございますが、これは御承知のとおり長い経緯がございまして、石油ショック以降わが国の賃金、物価が大変高騰した、一方、米国政府の海外駐留経費の削減といった事情もございまして、何年も駐留軍従業員の給与改定が円滑に実施できないという事態が出たわけでございます。特に四十九年及び五十年のごときは、公務員のベースアップが行われましても、その後の日米間の交渉が難航いたしまして、駐留軍従業員については、結果的には公務員と同率の給与改定が実施されましたけれども、実際に従業員の手に渡ったのは半年もおくれるという事態が続きました。こういうことでは大変困るということで、従業員の生活にかかわる大きな問題でございますので、こういうことが放置されては労使関係やあるいは雇用の安定確保がきわめて困難になるということで、労務関係全般について日米間で基本的に相談をしようということで話し合いを行ってきたわけでございます。  この話し合いは、六十一億円の問題だけではございませんので、本来従業員の給与改定について円滑に行われるようにという趣旨で始まりまして、そのほかいわゆる業者切りかえの問題でありますとか、長期雇用計画の問題でありますとか、いろいろな問題がございまして、あわせて合意に至ったわけでございます。  この六十一億円の内容は、御承知のとおり法定福利費、任意福利費、それから労務管理費ということでございますが、これは日本政府が雇用主の立場において従業員の生活、雇用の関係を安定した基盤に置くために日本政府で負担してしかるべきであるという判断のもとに、五十三年度から日本側が負担することとしたわけでございます。  地位協定というのは、御承知のとおり一般的な指針を示しておるものでございますが、個々経費についてこれはどう、あれはどうというふうに一々書いてあるわけではございません。検討の必要が生じましたときには、個々経費についてしさいに検討いたしまして、地位協定にもとるものではないかどうかということを、これは私どもだけではなくて関係省庁で協議いたしまして、そして国会において予算の御審議を仰ぐ、こういうことでございます。予算の審議の過程におきまして、国会における大多数の御賛成がなければ私どもは実行できないわけでございますので、十分これから検討いたしまして、何ができるかできないかということを詰めまして、御納得のいく説明を申し上げられるということでなければならないと思っております。  具体的な内容についていま申し上げられませんけれども、そういう考えで、国会におきましても大方の御理解の得られる範囲においてなし得ることを考えてまいりたいというのが私どもの立場でございます。
  287. 安藤巖

    ○安藤委員 福利費、管理費を日本の方が負担することはない、これはアメリカに負担させてしかるべきだ、あたりまえだということを私どもは言っているのです。  一つの根拠としてお尋ねするのですが、特別調達資金設置令というのがありますね。これは地位協定に規定するアメリカの諸機関の需要に応じて行う物及び役務の調達を円滑にするためとあって、ほかの国際連合軍云々というのもありますけれども、そういうことも含めて設置をされたものですね。この第六条に、調達に関する事務の取り扱いに要する経費についての取り扱いが載っております。この「調達に関する事務の取扱に要する経費」というのは、役務の管理費が含まれているということははっきりしていることだと思うのですが、これは一度は支出しても、アメリカ政府の方から支払いを受けて、それをまた一般会計に繰り入れるというような仕組みで循環させることによって運営をされていくことができる仕組みになっておるわけです。そういうことになりますと、当然役務の管理費についてはアメリカ政府に負担をしてもらうということが前提になっている設置令なんですね。これは例ですが、法律としての効力があるということは御承知のとおりなんですけれども……。  そうしますと、やはり労務の管理費というのは、当然アメリカに負担させてしかるべきものである、させなければならないものであるということが言えると思うのです。こういう点から見て、労務管理費を日本側が負担するという点は違法じゃないかと思うのですが、いかがですか。
  288. 亘理彰

    ○亘理説明員 特別調達資金は、お話しのとおり回転資金たることが本来の使命でございますが、第四条をごらんいただきますと、調達に要する経費等の支払い資金として使用するものとする、こういう規定もあるわけでございまして、いまお話しのように、あらゆる場合に回転する経費でなければならぬということではないと思います。  それからなお、この労務管理事務費は、米軍の駐留しております県に所在します労務管理事務所の人件、事務費のことでございますけれども、これは調達資金から支出しているわけではございませんで、一般会計から直接支出しているわけでございます。
  289. 安藤巖

    ○安藤委員 先ほど私が申し上げましたことが正しいと私どもは思うのですが、この問題についてあれこれやっておりますと時間がありませんので、ほかの点からも追及をしたいというふうに思います。  四月二十日の参議院の社会労働委員会で、わが党の山中議員の質問に対しまして、菊池労務部長さん、この人は、「在日米軍が任務遂行するために労働力を使用するのに直接的に必要な経費」、これは途中ちょっと質問が入ってそれは省略しますが、「日本の労働力を使用するために直接的に必要な経費、それは労働基準法の第十一条に該当する経費かと思う次第でございます。」こういう答弁をしておられるわけです。  ところが、その後の六月六日に当院の内閣委員会で亘理さんは、そういう問題はまだ具体的に生じていない段階なので具体的な検討はしていない、軽々にお答えすることは控えさせていただきたい、こういうふうに答弁してみえるわけです。そうすると、前に菊池さんは、労働基準法第十一条、これは賃金、給料、手当、賞与その他名称のいかんを問わず、労働の対償となるものが労働基準法第十一条の規定なんですけれども、これは地位協定第二十四条以降に規定するアメリカが負担するものだという答弁をしておられる。ところが亘理さんは、まだそういうことは検討中なので答弁する段階ではないというようなことを言っておられるのですが、これは亘理さんの方がえらい人なので、菊池さんの方のそんなことは違うのだというようなことになるのか、あるいはだから菊池さんの言ったのはうそなんで、そんなことは間違っておるということになるのか、どちらなんですか。一遍はっきりしていただきたいと思います。
  290. 菊池久

    ○菊池説明員 お答えいたします。  四月二十日の山中先生の御質問に対しましては、先生の御質問の趣旨が、五十三年度におきまして、基本契約でございますが、MLC契約という契約がございまして、その契約の第四条に十三項目の経費が書いてございますが、その中でどういう経費を日本政府がこれから持つようにするのか、それから五十三年度以降、米側がどういう経費を持つようにするのかという御指摘でございましたので、それにつきまして御回答申し上げた次第であります。
  291. 安藤巖

    ○安藤委員 だから、私は、防衛庁長官は、ブラウン国防長官に対して、六十一億円の枠をさらに広げて増額するという約束も積極的にしてこられたことを最初にお尋ねしました。さらに増額するということになると、この十三項目で、六十一億円の中に入れて日本側が負担することになったという項目を、私も議事録を読んで知っておりますが、それをさらにこの十三項目のうちで拡大するのかどうか。一体どこのところで区切りをつけるのか、それがはっきりしないことになるのです。ですから、労働基準法第十一条の規定にあるあれは、どこまで行ったってアメリカにずっと負担してもらうのか、それもとっ外すのか、一体どちらかということなんですが、いかがですか。
  292. 亘理彰

    ○亘理説明員 一つ大臣が今度ブラウン長官とお会いになった際お話しになったことは、地位協定の範囲内で、最近の円高等の事情にかんがみて、思いやりの気持ちをもってできるだけのことを考えたいということであったわけでございますが、具体的にどういう経費をどうするというふうなことをおっしゃったわけでは全くございません。  それから、ただいま菊池労務部長が御答弁を申し上げましたように、菊池労務部長の答弁いたしましたことは、五十三年度のMLC契約、基本労務契約の内容について申し上げたわけでございます。私がお答えしておりますのは、今後のことについて——労務費といいましてもいろんな費目がございます。それからその内容も大変複雑でございます。これをしさいにいままで検討してこれはどうのあれはどうのという割り振りをしたわけではございませんので、幅広くその可能性について検討するということを申し上げたわけでございますが、たとえば労務費について何をどう考えるということは申した覚えは一切ないわけでございます。これから検討させていただきたい、そして検討の結果まとまりましたならば、五十四年度予算の一環として御審議を願って十分な御説明をいたしたい、こう申しておるわけでございます。
  293. 安藤巖

    ○安藤委員 あなたの答弁によると、先ほど私が言いました四月二十日の答弁にしても、「在日米軍が任務遂行するために労働力を使用するのに直接的に必要な経費」ということで歯どめをされて、それでそれ以外のものは、管理費、それから福利費等は地位協定に含まれていないものだ、こういうような話なんです。菊池さんはその直接的に必要な経費というものは労働基準法の第十一条に該当する経費だと言ってみえるのですよ。だから、菊池さんはでたらめなことを言ったのかどうかということなんです。私がお尋ねしているのは。まだ検討中だから菊池さんが勝手なことを言ったのか、やはり菊池さんの言ったとおりでいいのかどうか、直接的に必要な経費というのは労働基準法第十一条に規定するものなのかどうか、それをはっきりしていただきたいんです。
  294. 亘理彰

    ○亘理説明員 繰り返すようでございますが、菊池労務部長がお答えしましたのは、五十三年度の基本労務契約に関して申し上げたわけでございます。これは毎年予算が通りました後で在日米軍との間で三本の労務関係の契約を結ぶわけでございますが、その五十三年度の契約の内容について申したわけでございます。私が申しておるのは、今後のことについて、五十四年度以降のことについては幅広く検討してみたい、こういうことを申し上げておるわけでございまして、決して矛盾はないと存じます。
  295. 安藤巖

    ○安藤委員 いや、そういう経過のことを聞いているんじゃないですよ。直接的に必要な経費は労働基準法十一条に該当する経費だと言っているんですから、もうこれははっきりしているんですよ。だから、それをまだ検討中と言っておられるその問題なんです。その基本労務契約の中のあれこれの問題についての話は経過としてあったにしても、「在日米軍が任務遂行するために労働力を使用するのに直接的に必要な経費」、これをアメリカ軍が負担するのであって、それ以外のものは日本が負担することになっていいんだ、それは地位協定に含まれていないんだというのが亘理さんの答弁でしょう。ところが、その直接的に必要な経費というのは「労働基準法の第十一条に該当する経費かと思う」、こう言っているんですから、完全に食い違っているんじゃないですか。  それから、その問題も改めてお尋ねしますが、時間がありませんからもう一つ。まだあともう一つありますから。もう一つ、これは昭和五十二年八月二日に当院の外務委員会で、当時の鳩山外務大臣、これはいまの「地位協定では維持的な経費は米側の負担と、このように定められております。駐留軍の労務者の給与は維持的な経費であるというふうに私どもは考えております。」こういうふうに答弁をしておられるわけです。だから、労務者の給与というのはアメリカが地位協定に従って負担すべきものであるということははっきり言っておられるわけですが、亘理さんはそれもまだ検討中だと言われるわけですか。
  296. 亘理彰

    ○亘理説明員 ただいまの点は、先般の参議院内閣委員会においても共産党の先生から御質問がありまして、外務当局からもお答えしておるわけでございますが、御指摘の点は、昨年の八月二日の衆議院の外務委員会における当時の鳩山外務大臣の答弁でございますが、これにつきましては、この段階においては昨年の労務問題の検討についてもまだ結論を得ていない段階でのお話でございまして、これは先日外務当局も申し上げましたように、駐留軍従業員の給与個々内容にわたって十分な検討をいたしました上での見解を申されたものではないということを外務当局も御答弁いたしておるわけでございます。先ほども申し上げましたように、給与内容は非常に多岐にわたっております。かつ、そのそれぞれが複雑な内容になっておりますので、そのそれぞれについて検討してそれをどう考えるべきかということは、十分検討をしました上でお答えしたい。検討未熟の段階で軽々にお答えするのは差し控えたいと思うわけでございます。
  297. 安藤巖

    ○安藤委員 そうしますと、先ほどの労働基準法十一条の経費というのもそれは間違っておったということになるのか。そういうことはもう考えていないということになるのですか。あるいは鳩山外務大臣の、駐留軍の労務者の給与、これも違うんだ、まだそれは検討中なんだ、それも違う、こうおっしゃるのですか。地位協定ができてからのずっと自民党政府のこれは一貫した解釈じゃなかったのですか。いまの段階でそれは検討中だ、もう一遍白紙に戻って検討中だとおっしゃるのですか。おかしいじゃないですか、それは。
  298. 亘理彰

    ○亘理説明員 どうもたびたび同じことを申し上げるわけでございますが、一口に給与といいましても非常に複雑な内容でございますから、だんだん細かい議論に入っていきます場合には、しさいに、私どもばかりでなくて関係省庁とも十分検討してお答えしなければならない。私どもは現在の時点では何をどうするということを申し上げているわけではなくて、幅広く検討したいということを申し上げているだけでございます。
  299. 安藤巖

    ○安藤委員 だから、これは給与は維持的な経費に入るのか入らぬのかということなんですよ。給与の中にいろいろあるでしょう。しかし、その給与というものは維持的な経費になるのかどうか、アメリカ軍が負担すべきものなのかどうか、労働基準法十一条の経費は、あれは維持的な経費になるのかどうか、どちらですか。
  300. 楯兼次郎

    楯委員長 簡単に、わかるように答えてください。
  301. 亘理彰

    ○亘理説明員 給与が一般的に維持的な経費に入らないと、こう申しておるわけではないわけでございます。給与内容も万般、複雑多岐でございますので、そのすべてについてその維持的経費に入るものと観念すべきかどうかということについてはさらに検討を要すると申し上げておるわけでございます。
  302. 安藤巖

    ○安藤委員 労働基準法の十一条はどうなりますか。
  303. 菊池久

    ○菊池説明員 基準法の十一条に申します概念でございますけれども、これはいわゆる賃金という概念でございまして、いわゆる駐留軍労務者に払われる経費そのものについての規定ではないわけでございます。したがいまして、その十一条に照らしまして駐留軍従業員に払われる賃金等の経費についても検討しなければならないというふうに思っている次第でございます。
  304. 安藤巖

    ○安藤委員 それはあなたは、必要な経費は労働基準法十一条に規定する経費かと思うと言っているじゃないですか。幾らえらい人が違うことを言ったからといってすぐ変えるのはおかしいじゃないですか。
  305. 亘理彰

    ○亘理説明員 先ほどから申し上げておりますように、菊池労務部長は五十三年度の労務契約の内容に関してお答えしたわけでございます。私の答弁を御信用いただきたいと思います。
  306. 安藤巖

    ○安藤委員 時間が迫ってきて申しわけないのですが、あともう一つありますが、もう一つだけこの点についてお願いします。
  307. 楯兼次郎

    楯委員長 早くやってください、簡単に。
  308. 安藤巖

    ○安藤委員 だから、鳩山外務大臣が言われた駐留軍の労務者の給与、これは維持的な経費に入るのかどうか、労働基準法十一条に規定する経費、これは維持的な経費に入るのかどうか、これをはっきり答えてください。
  309. 亘理彰

    ○亘理説明員 従業員の給与が維持的経費に入らないということは申しておらないわけです。ただ、給与内容も複雑多様でございますから、そのすべてが地位協定上の維持的経費と観念すべきかどうかについては検討を要する、こう申し上げておるわけでございます。
  310. 安藤巖

    ○安藤委員 十一条はどうなる、維持的経費かどうか。
  311. 楯兼次郎

    楯委員長 基準法十一条の解釈は……。
  312. 亘理彰

    ○亘理説明員 面接には、地位協定との関連においてこれが地位協定に触れるか触れないかという問題でございますが、その検討の際に、ただいまの労働基準法との関連においてもどう考えるべきかということは十分検討いたしまして、政府としての結論が出ました段階で十分な御説明をいたすようにいたしたいと思います。
  313. 安藤巖

    ○安藤委員 どうもはっきりしないのですが、駐留軍の労務者の給与が維持的経費に入らないとは言っていないというところまでおっしゃったのですが、労働基準法の十一条の関係についてはあなたは何も答弁をしていない。そうすると、あなたよりはえらくない人かもしれませんが、菊池さんの維持的経費、直接的な経費は労働基準法十一条に該当する経費だというのが、最初にして最後の一番新しい答弁なんですよ。だから、これを変更するということは私はできぬと思うのですよ。  この問題を抜きにして、もう一言だけ……。  先ほど委員がお尋ねになった、金丸長官がブラウン長官とお会いになったときに、新聞に報道されておるような、インド洋あるいは中東に至る海上交通路の問題について要請を受けたかどうかという点については、要請を受けていないというふうにおっしゃったのですが、その点について一言お尋ねしたいのです。アメリカの航路あるいはアメリカの船団の安全のために自衛隊が出動するということになればこれは憲法違反になる、これは憲法上許されない行為だと思いますが、いかがでしょう。これは長官、一言だけ……。
  314. 伊藤圭一

    伊藤説明員 自衛隊が持っておりますのは個別的な自衛権でございますから、日本の船によって輸送するのを守るという任務でございます。
  315. 楯兼次郎

    楯委員長 本日は、これにて散会いたします。     午後五時三分散会