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1978-06-08 第84回国会 衆議院 決算委員会 第15号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和五十三年六月八日(木曜日)     午前十時三十二分開議  出席委員    委員長 楯 兼次郎君    理事 國場 幸昌君 理事 葉梨 信行君    理事 馬場猪太郎君 理事 原   茂君    理事 林  孝矩君       津島 雄二君    西田  司君       野田 卯一君    早川  崇君       高田 富之君    村山 喜一君       春田 重昭君    安藤  巖君       大原 一三君  出席国務大臣         大 蔵 大 臣 村山 達雄君  出席政府委員         人事院事務総局         職員局長    金井 八郎君         防衛施設庁施設         部長      高島 正一君         環境庁企画調整         局環境保健部長 山本 宜正君         環境庁自然保護         局長      出原 孝夫君         大蔵大臣官房会         計課長     村上 哲朗君         大蔵大臣官房日         本専売公社監理         官       大槻 章雄君         大蔵大臣官房審         議官      米里  恕君         大蔵大臣官房審         議官      渡辺 喜一君         大蔵省主計局次         長       山口 光秀君         大蔵省理財局次         長       川崎 昭典君         大蔵省証券局長 渡辺 豊樹君         大蔵省銀行局長 徳田 博美君         国税庁次長   谷口  昇君         国税庁間税部長 矢島錦一郎君         国税庁調査査察         部長      藤仲 貞一君         運輸省船舶局長 謝敷 宗登君  委員外出席者         内閣公共企業体         等関係閣僚会議         事務局次長   伊豫田敏雄君         総理府人事局参         事官      片山虎之介君         警察庁警備局警         備課長     若田 末人君         防衛庁防衛局運         用課長     児玉 良雄君         大蔵省主計局司         計課長     石井 直一君         建設省道路局有         料道路課長   沓掛 哲男君         建設省住宅局住         宅計画課長   鴨沢 康夫君         会計検査院事務         総局第二局長  藤井健太郎君         会計検査院事務         総局第五局長  東島 駿治君         日本専売公社総         裁       泉 美之松君         国民金融公庫総         裁       佐竹  浩君         日本開発銀行総         裁       吉岡 英一君         日本輸出入銀行         総裁      澄田  智君         参  考  人         (日本住宅公団         理事)     星野 孝俊君         参  考  人         (日本住宅公団         理事)     澤田 光英君         決算委員会調査         室長      黒田 能行君     ————————————— 委員の異動 六月八日  辞任         補欠選任   篠田 弘作君     西田  司君   山口 敏夫君     大原 一三君 同日  辞任         補欠選任   西田  司君     篠田 弘作君   大原 一三君     山口 敏夫君     ————————————— 本日の会議に付した案件  参考人出頭要求に関する件  昭和五十一年度一般会計歳入歳出決算  昭和五十一年度特別会計歳入歳出決算  昭和五十一年度国税収納金整理資金受払計算書  昭和五十一年度政府関係機関決算書  昭和五十一年度国有財産増減及び現在額総計算  書  昭和五十一年度国有財産無償貸付状況計算書  (大蔵省所管日本専売公社国民金融公庫、  日本開発銀行日本輸出入銀行)      ————◇—————
  2. 楯兼次郎

    楯委員長 これより会議を開きます。  昭和五十一年度決算外二件を一括して議題といたします。  本日は、大蔵省所管日本専売公社国民金融公庫日本開発銀行及び日本輸出入銀行について審査を行います。  この際、お諮りいたします。  本件審査のため、本日、参考人として日本住宅公団理事星野孝俊君及び理事澤田光英君の出席を求め、意見を聴取いたしたいと存じますが、御異議ございませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  3. 楯兼次郎

    楯委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決しました。  なお、参考人からの意見の聴取は、委員質疑により行いたいと存じますので、さよう御了承願います。     —————————————
  4. 楯兼次郎

    楯委員長 質疑の申し出がございますので、順次これを許します。高田富之君。
  5. 高田富之

    高田委員 本日は、住宅建設を中心といたしまして、本来の所管建設省でございましょうが、財政当局としてのお考えを、特に二、三重要な点についてお伺いいたしたい、かよう考える次第でございます。  本年度の予算の中でも非常に明らかになっておりますし、また政府基本的な方針としましても、総理の施政方針演説の中にもありますように、景気浮揚のための対策という観点からの公共事業というものに非常に格段の力を入れている。なかんずくその中でも国民生活に密着いたしました住宅建設ということには特にウエートを置いておられるわけであります。単に景気浮揚ということばかりでなく、あわせて、特にわが国で著しく立ちおくれておると言われております社会資本、なかんずく住宅という問題を解決する絶好のチャンスととらえて非常に力を入れていくということが、政府基本的な方針であると承知しておるわけでございます。  ところで、それほどさよう重点を志向しておりますはずの住宅建設あるいは宅地造成、この大事な行政が果たして政府の力を入れておりますよう所期目的を達し得るかどうかということを、今日この時点でいままでの過去の経過等を振り返りながら十分検討してみる必要があると私は考えるわけであります。  特に大蔵大臣にお伺いしたいと思いますことは、この住宅建設につきましても、政府がみずからの責任において、みずからの資金でこれを推進するという姿勢ではなく、そういった方針はおとりにならないで、もっぱら民間、あるいは公団にしましても借入金でやっている。ですから、民間につきましては特に資金手当て等については条件をいろいろと緩和する手を打っておられるわけでありまして、要するに金が借りられやすくするという方法重点的におとりになった。これによって最も力を入れておる住宅政策というものを所期目的どおり達成しようということで出発されておるわけですが、私は、どうもこれではとうてい所期目的を達成することはできないという心配が、この時点では出てきておるのだというふうに考えておるのです。  なるほど借り入れにより持ち家を建設するという場合の借り入れの枠が大きくなったとか、利息が安くなったとか、あるいは返済期限が伸びたとか、結構なことなんです。しかし、どうもこれは、もうしばらく前ですと、毎年経済高度成長を遂げており給与水準もだんだん上がってまいりますので、思い切って借金をして家を建てるというようなこともあり得たわけですが、ここへきますると、何しろ単価は非常に高くなっておるわけでありまして、所得水準の上がる見通しというものが非常に悲観的でございます。そうすると、せっかく金を借りまして建設するといいましても、途中でローンの支払いに窮するという心配をだれもがせざるを得ない状況になってしまった。また、現実に昨今の様子を見ますと中途で支払い不能に陥る例が激増しつつあるということでございますので、当然のことながら、これに飛びついて、そうしてここで住宅建設をやろうというような機運にはなかなかならぬのではないか。なるとしましても、ごく所得水準の高い者に限られてしまうわけでありますから、これでは住宅政策基本、つまり低所得層から中所得層以下のところに焦点を当てた国の住宅政策としては、とうていその目的を達することはできないということになるのではないかと、非常にこれは心配なんです。特に政府みずから責任を持ってつくるということになりますと、公団あるいは公営住宅建設なんですが、この方は実にあべこべに計画を大幅に縮小してしまったわけでしょう。半分近くまで一挙に縮小してしまったというようなことでございまして、これはそれほどさように国が力を入れておる、政府が力を入れておるというのは、事実においてはそのこと自体だけでも非常に大きな矛盾ではないかというふうにも考えられるのでありまして、何としましても問題は金でございますから、本当にこれをやろうということになれば、大臣としてやはりいまの状況をお考えになった上で、これはやはり財政的に根本的に考え直しをした方法立てなければ所期目標を達成していくことはできないというふうにお考えになっておられますかどうですか、この点をひとつお聞かせ願いたいと思うのです。
  6. 村山達雄

    村山国務大臣 いまの高田委員の御質問に対しましては、私は当面の問題とそれから中長期の問題でやや違うのじゃなかろうかと思うのでございます。当面の問題といたしまして、いま委員指摘ように、住宅公団あるいは公営公庫、こういったところで実績を見ておりますと、空き家が相当あるとか、あるいはでき上がったけれどもまだ管理中のものが相当出ておるというようなことで、需要が余りついていない。それの実績を踏まえまして、今度は戸数を大分減らしたのでございますが、考えてみますと、やはり関連公共施設がつかないいわゆる足なし団地になるというようなことでございますし、それはまたもう一遍さかのぼって考えてみますと、大規模適地がいまの情勢のもとではだんだんなくなってきた、そういうことを端的に反映していると私は思うのでございます。ことしは、その分につきましてはそれなりに縮小いたしますと同時に、いろいろな手当てをいたしておるわけでございまして、公共関連の特別の補助金三百億はもちろんでございますし、従来から立てかえ施行制度があるとか、あるいは人口急増地域におきましていろいろな学校とか消防施設等補助率を上げている、あるいは起債の充当率を上げておるとか、いろいろな措置があるわけでございます。しかし、おのずから客観的な制約のために、大規模開発ということはやや頭打ちの状況にあるということは認めざるを得ないわけだろうと思うのでございます。したがいまして、現在行われておりますのは、ミニ開発に伴う家屋の新設にどちらかといいますと需要が集中しております。しかし、御案内よう地価が非常に高い、そしてそれをローンで返さなければいかぬ、こういう状況でございます。民間にも住宅ローン制度はございまして、需要はなかなか盛んでございますけれども、やはり金利水準が相当高い、そして二十年間の返済で、われわれが見ているところでは大体収入の三分の一くらいがその返還に充てられているのではなかろうか。この面に対して政府は何らかの助成をすべきである、こう考えまして、ことしは公庫住宅に特に重点を置いているところでございます。五分五厘、最近のあれでまた少し下げましたけれども、特に低利な資金を供給いたしているのでございます。  その募集状況を見ておりますと、この四月に募集いたしましたのは非常によろしいようでございまして、ことしの経済成長との関連について申しますと、住宅に関する限りその形がいかようであれ、ほぼ見込みの線を達成するのではないか、私はかよう考えているところでございます。  当面はそんなものでございますが、今後日本につきましては御案内よう住宅という問題が非常に大きな潜在的な需要を持っておりますし、そしてまた国民生活考えましたときに、住宅だけが先進諸国に比較いたしまして劣っておるということは認めざるを得ないわけでございます。そういうことを考えますと、何らかの形でかなり大規模土地の供給を促進するような抜本的な施策必要性考えられているのでございますけれども、なかなか決め手を欠いているというのが実情であろうと思うのでございます。何よりも地価が高過ぎる、狭い国土において宅地適地が狭いということ、それから需給の関係で非常に上がっているわけでございますので、これをどのようにしたら安く促進できるであろうか。ここは、これからの日本住宅問題解決あるいは日本のこれからの経済成長、両面から考えまして基本的な問題になることは間違いない、こう思っているのでございますが、それにはどういう政策手段があるかということになりますと、一時的な答えはなかなか出てこない。今日における国土利用計画法、これにどのよう工夫を加えていくか、あるいはまた税制の面で、あるいは金融の面でどのよう支援対策を講じていくべきであろうか、こういうことが今後の重大なそして大きな政策課題になってくる、かよう考えておるわけでございます。
  7. 高田富之

    高田委員 土地政策の問題もいろいろ触れたいと思うのでありますが、きょうは時間がございませんから別の機会に譲るといたしまして、いずれにいたしましても、公庫それから公営住宅を大幅に減らしているという状態は、このままでは容認しがたいと思うのです。一番重点を置かなければならない住宅政策において、政府みずからがつくり出す部面は大幅に減らしてしまって、そしてただ民間に自力で建設しなさいという行き方だけで、さっき申しましたように、一定水準以上の所得の高い者であればあるいはそれは可能でありましょう。しかし、それすらもなかなかそう進まないのじゃないかと思いますし、かえって小さな宅地開発をやり、スプロール化現象を広げてしまうということにもなりかねませんし、いずれにしましても一番必要なのは、いま東京都でも民間個人木造アパートみたいなところを借りて住んでおる人口というのは非常に多い、三割近いというのですから。そういう最も必要なところへ手当てをするのが国の行うべき住宅政策基本でなければならぬと思うのです。それは公営及び公庫がその役割りを担わなかったらどうしてもできないことでございますから、これを大幅に後退させておいたままでは、これでいいというわけには私は絶対にいかないと思います。  ちょっとお伺いしますが、昭和五十一年度ですか、住宅建設五カ年計画というのがすでに立てられておるわけですが、その中でも公営公団住宅というのはある程度の数をきちっと計画的に立てておるわけですね。これは一体いまの状態ではやめてしまうのでしょうか、どういうことになりますか。これは建設省の方で。
  8. 鴨沢康夫

    鴨沢説明員 ただいまお尋ねの住宅建設五カ年計画は五十一年度から五十五年度にわたります五カ年の計画でございます。先生御指摘ように、公的な援助を要すると考えられる住宅はこの五カ年間に三百五十万戸建設すべきであるというふうに考えております。それで公的資金による住宅は、公営公団公庫その他含んでおりますが、これの進捗率は、五十三年度でこの予算が完全に消化されたということを前提といたしますと、三カ年間で大体六一・五%の進捗を見るというふうに見込んでおります。  ただし、全体としてはそういう次第で順調に進捗をいたしておりますが、御指摘よう公営住宅あるいは公団住宅につきまして、ただいま大蔵大臣からも答弁申し上げましたように、いろいろな悪条件が重なっておりまして、進捗状況は必ずしもよくないというのが事実でございます。  ちなみにこの進捗率を五十三年度で計算をいたしますと、公団につきましては四〇%強、公営住宅につきましては四七・一%強というふうな数字に相なっております。したがいまして、私ども財政当局と御相談をいたしまして、先ほども申し上げましたよう関連公共施設についての別枠の補助金というふうなものを設定をしていただくとか、あるいは従来からやっておりますこういう施設についての事業主体立てかえ施行制度あるいはそれに伴う財政措置というふうなものをも強化して、ぜひこの目標を達成いたしたいというふうに努力いたしておるところでございます。
  9. 高田富之

    高田委員 いろいろ工夫されておることは私も承知しておるのですが、しかし、そういう程度のことで解決するかどうか、私はこれは非常にむずかしいと思うのですね。空き家がたくさんできてしまっておるというようなことを考えますと、やはり公団建設に当たっての計画ども実情に沿わないようなことをやっているのではないか、少なくとも国民の要望に沿うという観点からの検討が非常に不足しているのではないか。同時にまた、非常に高くなっちゃっているということですね。そういうようなこともあるわけなんですが、いまどきたくさんのものがあいておる、どう工夫してもなかなかふさがらぬようなものをつくっちゃったというようなこと、これはある意味ではかなり大きな責任問題じゃないかと思うのであります。  結局、計画等もあるものですから、建設当局とすれば戸数だけは何とか消化させなければならぬということに相当頭がいくと思うのです。そのために内容的なものがおろそかになっているのではないか。同時に、査定する大蔵省の方が、そういう内容についての十分な認識あるいは検討というものをおろそかにしてやはり戸数をこなすというようなところから、予算つけ方などにも実情に沿わないものがあるのではないか、目下そういうふうに考えざるを得ないのですね。  それから、もう時間もありませんからちょっと申しますが、公団のいまの経理内容を見ましてもちょっと無理じゃないかと思うのです。自己資本なんかほとんどないですね。必要資金のほんの一部分、ないと言ってもいいくらいなんで、全部借入金先ほどお話しようにほかの金利よりは若干安いと言うのですが、しかし、これもやはり思い切った安い金利でもってやるとか、あるいは自己資本をもっとふやすとか何かしませんと、とても政府責任でやるというには、これは民間と余り変わらないようなことをやらせ、しかもいろいろ予算面でがんじがらめの枠をはめたのでは、どうも実情に沿わないような結果になって年々経理内容も悪くなっているのじゃないかというふうに考えられる。  したがいまして、特に大蔵大臣にそういうお考えがあるかどうかをあれしたいのですが、個々の技術的な小さな工夫というのはいろいろ重ねられておることはわかるのですが、もう少し抜本的な施策を講ずる必要があるのではないか。特に公団には大蔵省から副総裁も出ておるのですから、非常に緊密な連携関係にある。ある意味では建設省連帯責任よう関係で運営なさっておるわけなんです。そう見られてもしようがないわけなんです。この際やはり、住宅公団自己資金というものを年々もっと大幅に拡充していく、できるだけ近い将来に、少なくとも逆用資金の一〇%以上のものは自己資金ということでもっていかなければこれは無理じゃないか。また、使用しております借入金債券等につきましても利子補給等考えて、そういう点でやはり思い切った措置を講ずる必要があると、ここへ来て私は思うのです。そうでないとどんどん後退してしまって、この重大なときに公団はますます専業を縮小していくということにならざるを得ないのじゃないかと思うのですが、この点について大胆のお考えを承っておきたいのです。
  10. 山口光秀

    山口(光)政府委員 住宅公団金利負担を軽減する、それが結局公団住宅家賃の軽減ということになるのじゃないかという観点からのお話でございました。現行制度におきましても、家賃算定上のコストでございます金利は、財投の借入金利住宅公団が借りております金利より低くしております。現在では四%台の金利となっておるわけでございまして、その差を一般会計負担しておるわけでございます。五十三年度予算におきましては、公団補給金とかあるいは公団住宅建設費補助金というかっこうで五百二十八億円を計上しているわけでございます。  出資というお考えでございますが、出資というかっこうコストを軽減する、金利負担を軽減するという方法もあるわけでございますが、一般会計が非募債主義の時代にはそういう出資をやってまいりましたが、ただいまは御承知のように大量の国債発行に依存しておるわけでございますから、出資というかっこうでやるよりは利子補給というかっこう金利負担を軽減する方がいまのやり方としては適当ではないかということで、ただいま申し上げましたようかっこうでやっておるわけでございます。
  11. 高田富之

    高田委員 公団からお伺いしたいのですが、いまの経理内容を見ましてもますます負債が増大してまいりますし、いまの空き家ようなもの、そういう収益を生まない状態にあるものも大分多くなっておりまして、憂慮すべき状態だと思うのですよ。これは何とか抜本的な施策を講じないとますます事業縮小せざるを得ないのじゃないか。この重大な住宅政策を遂行すべき一番大事な主体がますますじり貧になっていくことはこのままでは明らかと思うのですが、いかがですか。
  12. 澤田光英

    澤田参考人 計画が大幅にダウンをいたしまして公共事業の振興に余り役立っていないという点は、まことに申しわけない事態だと思っております。私どもこれからますます政府援助を要請していくわけでございますけれども、その前に、私どもといたしましては、まず中の、斎戒沐浴といいますか空き家問題その他に対します厳しい経営というものをやろうということでございまして、現在出ております空き家、これにつきましては、たとえば形の上で変わるものは広くしたり、あるいは入居基準を緩和いたしまして単身者用を募集したり、そのほか宣伝等も行いましてできるだけ早く解消する。  さらに、もう一つございますのは、仕掛かり中の工事を私どもは十万戸以上持っております。これは、団地をつくりますのに大体三年ぐらいかかりますので、毎年四万戸ないし五万戸つくっておりますので、十万戸以上の工事中のストックがある。こういうもので、三年前に設計しましたものでいまのニーズに合わないというふうなものがかなり含まれております。こういうものは、できるものは工事をとめたりいたしまして大幅な改造を実はこの一年間行ったわけでございます。そういう、今後空き家ができるだけ発生しないような動作をやっております。  最後には、これから新しく土地を買ってやるものにつきましては、初めからいまの条件経営ができるように厳しい設計、経営計画、こういうものを立ててやっておる次第でございます。  さようなことでございますが、いずれにいたしましてもかよう土地状況でございますし、建設費単価上昇傾向にございます。そういうことから、私らの努力の上に、いままでもいろいろやっていただいておりますけれどもさらに政府の御援助等をお願いしながら、体質を改善して、また住宅行政の中に大きく寄与できるよう体質にしたい、私どもはかよう考えておる次第でございます。
  13. 高田富之

    高田委員 時間がなくなってしまうのですが、先ほどお話がありましたように、とにかく地価が非常に商いというわけなんですが、土地問題はきょうは別としましても、先ほどちょっとお話の出ました開発のときに関連する公共施設公益施設等の整備の費用を開発者負担をさせる、これが結局は分譲する土地の価格に上乗せされ、あるいは借りた家賃になるわけでございますが、こういうことから非常に高くなっている。どのくらいになっているのだろうか。これは国土庁の調査でしたか、宅地開発の中の五〇%くらいのものがそういった整備費用に充てられているというようなことなので、若干の補助金を今年度からお出しになるようにしておるようですが、これはスズメの涙にもならぬじゃないかと思うので、これはこのままの状態というのは根本的に何とかしなければならぬと思うのです。  そこへ入る、そこに住む者だけが利用する公共施設なり公益施設ならまだしもなんですが、そうじゃないのですよ。一般的な都市計画道路だとか上下水道だとかその他いろいろなものを、教育施設までみんなぶっかけていく。地方財政も非常に苦しい折から、全部それは開発者にぶっかけているというのが現状なんですね。結局公団にしても民間デベロッパーにしても同じことなんですが、普通の公団の場合にしましても、固定資産税分、都市計画税分が家賃の中に入っているわけですね。ですから二重負担になっているわけです。それにやこれや考えますと、開発によって周囲の者は利益を受けるというのもあるわけですね。ところが、中へ入ってきた者は公共施設、公益施設負担までして、そのほかまた税金も納めてというようなこと、これは税金の面から言いましてもきわめて不公平な、本来はこれは税金でやるべきものなんだから非常に不合理でありますし、まして教育施設までそんなことで負担させられる。自治体によりましては教育費なんと言って別にまた何かわけのわからない負担をさせておるところさえもあるくらい、これは非常に乱脈になっているのじゃないかと私は思うのです。  一時土地ブームでどんどん地価が上がっているときにはそういうものがみんな消えてしまったのです。地価上昇ムードの中で。今日のよう状況になりますと、こういうものがある限りは今後とても宅地開発なんかは進まない、できないだろうと思うのですよ。だから、ここらでこういう制度を思い切って抜本的に見直していかなければならぬ、こう思うのです。  でありますので、これは税の負担能力のある者が税金をしょって、そして公共施設、公益施設をやるといったよう大原則から言いましても、また住民に対していろいろな地方自治体は強制寄付さしてはいけないというような規則もあるわけですが、そういう原則をこれは全部壊してしまっているよう実情にあると私は思うのですね。これが各地方自治体にもいつの間にか伝播しておる。一種の自治体の要綱みたいなもので、条例でもなし法律でもないようなものがどんどん伝播いたしまして、一般的にこれが行われている。その内容というものはきわめて不統一なものでありますし、これは一遍総ざらいいたしまして、そして、これをわずかな補助金でどうこうというような問題じゃなく、全般に一遍にとはこれは無理でしょうけれども、たとえば人口急増地帯のごときにしましては、特別にそういう公共施設、公益施設の整備に必要なものについては特別の起債を認めて、そして国が利子もめんどうを見てやる。そして人口急増の地帯になって将来税金も上がるようにはなるのでしょうけれども、その時点で公債を返さなければならぬ、地方債を返さなければならぬというようなときにも特別の交付金か何かでめんどうを見るというくらいなことをやって、この弊害を一掃する必要があると私は思うのですが、この点は大臣どうお考えになりますか。
  14. 村山達雄

    村山国務大臣 おっしゃることはよくわかるわけでございまして、従来からそれぞれ手を尽くしているのでございます。本来から申しますと、長期的に見ますと、そこに人が住むということあるいはそこに住宅が建つということは、やがてはその人たちが払うであろう住民税あるいは固定資産税、そういったものによって最終的には地方自治の中でペイすべき性質のものであろうと思うのでございますけれども、やはりそのときまで収入は平準化して入ってまいりませんし、経費は急増するわけでございますので、その間のギャップを補うものといたしまして、先ほど申しましたよう人口急増地域あるいは児童数が急増している地域については特別に公共施設についてある種の補助金のかさ上げをやっておるとか、あるいは立てかえ施行制度も実施しておるとか、さらには地方財政におきましても起債の充当率の引き上げ、交付税の傾斜配分、こういった措置を講じておるところでございますし、特に今年はその点に着目いたしまして、三百億という公共関連の特別の補助金をいわばその目的だけのために出す制度を発足さしておるのでございます。こういう効果が積み重なりまして徐々に効果をあらわしてくるであろうと私は思うのでございます。  それからもう一つは、公共事業の採択、関連事業もやはり公共事業でございますから、公共事業のそういう細かい金額ではなくて、公共事業その本体の中から一体どれだけ自治体がそういう関連施設に優先採択していくか、これが今後大きな問題になってくるのではなかろうか、こう思っているのでございます。われわれも、それぞれの関係省との予算の配分に当たりまして今後ともその方面に十分注意してまいりたい、かように思っておるところでございます。
  15. 高田富之

    高田委員 きょうは時間の制約もございますし、細かい建設関係のことはまた改めて建設大臣にでもお伺いしたい、こう思います。  私はいろいろとお話を承ったのですが、何としてもこの住宅問題は大臣の言われるとおりでありまして、日本としましては生活関連のいろいろな施設の中で一番おくれておる、欧米諸国と比べても問題にならぬほど立ちおくれておるということはそのとおりなんですね。これを解決するために国みずからが責任を持って、そして安くて住みよい環境の適切な住宅をいかにして大量に供給するかということは国策の基本でなければならぬと思うのです。そういう点で、ただ数さえ合わせればいいという式のことでは、金を貸してやるからつくったらいいだろうということでは、この目的に沿わない、こう私は思うのです。ですから、いろいろな隘路がたくさんあることはよくわかりますけれども、しかし何といっても国の機関である公団あたりは率先して住宅建設の先頭に立って、毎年事業を拡張できる方へ向かって持っていってもらいたいのです。ことしなんかの減らし方は実に極端ですね。ひどく減らしてしまっているのですが、これでは話にならないと私は思うのです。そのために、いま二、三の問題点を出したわけですけれども、やはり要は財政上の見地から問題を解きほぐす以外にはないのじゃないかと思う。  たとえば、いまもちょっと出ましたけれども、市街化区域、調整区域に分けましたね。市街化区域というのは、本来ならば十年以内にそこにどんどん都市計画道路をつくったり必要な公共施設をつくったり公園もつくるべし学校もつくる、そういうふうなことをいたしまして、十年以内にはりっぱな市街地にするという区画だったわけですね。ところが、その中だって、先ほど言いましたように、開発する者に対じましてそういう負担を全部ぶっかけなければ進まないというのは、これは実に矛盾撞着もはなはだしいと思うのです。やはりこれはどんどん国がやるべきことはやっていくということでございませんとね。ですから思うよう公営住宅公団住宅というのが進まない、そういういろんな基本的な問題があると思います。そういうものを思い切って解決していくという措置が講ぜられない限り、これは言うべくしてなかなか進まないと思うのですよ。ですから、この機会に特に大蔵大臣に、住宅建設についての財政面での思い切った措置、これをひとつやってもらいたい、御決意をもう一遍伺いたいと思うのです。
  16. 村山達雄

    村山国務大臣 高田委員の御指摘になった点は住宅問題の基本に触れる問題でございまして、私も問題意識はもう委員と全く同感でございます。  ただ、私は、住宅問題はすぐれて土地問題だと思っているのでございます。この土地問題の解決がない限り、抜本的な解決はできないであろう。また、いまの公団公営住宅を見ておりますと、なかなか適地がない、結局余り適地でもないところに建てるからこそ空き家が出てみたりするわけでございます。  大体いま公団の一戸当たりの月額の補助金利子補給という形でやっておりますが、月額で一万七千円ぐらい補助した結果になっておるのでございますけれども、それでもなかなか入居者がないというところ、それはもう要するに適地でないということ、あるいは先ほど公団の方から説明しましたように、その家屋の模様がニーズに合っていないとか、そういう問題があるわけでございます。いろいろ細かい工夫をこらしまして、今度は公団空き家については地方団体と相談して公営の方に移しかえたらどうか、その場合には低廉譲渡をしたらどうかということも各種の委員会で指摘されておりまして、いまその問題を検討、実行しようとしているのでございます。  もとより住宅問題につきましては財政援助を措しまないものでございますけれども、どのようにしたら一番効率的であるか、当面はこういう問題になるわけでございますので、御指摘もありましたが、今後とも鋭意その点について検討を続け、そして国民のニーズにこたえるようにしてまいりたい、かような決意でおるわけでございます。
  17. 高田富之

    高田委員 時間が決ましたのできょうはこれで一応終わりますが、おっしゃるとおり、土地問題を抜きにしては住宅問題も論じられないわけでありまして、それらとの関連で改めてまたいろいろと議論をしたい、こう思うのであります。  最後に、大臣が申されたとおり、この問題につきましてはやはり今後とも十分公団建設省とも連絡をとられまして、いまのようにだんだん後ずさりしていくという事態だけは速やかに打ち切るような具体案を早く見つけていただきますように強く要請いたしまして、きょうのところはこれで質問を終わりたいと思います。
  18. 楯兼次郎

    楯委員長 原茂君。
  19. 原茂

    ○原(茂)委員 大蔵大臣、この間はどうもありがとうございました。おかげさまで……。  きょうは北富士演習場の返還国有地の問題を中心にお伺いしますが、その前に大臣に二点ばかりお伺いをしたいと思います。  まず、一般消費税の導入についてですが、何かもう税調で相当本格的な作業が始まったようでございます。大蔵省としては諮問もされておりますし、基本的な方針はすでにできていると思うのですが、これをやろうとすると、やはり不公平税制の是正でございますとか、あるいはまた福祉税等、いわゆる目的税をどうするかというような問題とか、こういうものが相当問題になるだろうと思うのですが、税率、非課税の範囲、こういうものを大蔵大臣としてはどのよう考えておられるのか。  同時に、できるならこの九月あたりの税調で正式な作業を終わらせて、十一月ごろ最終結論を出して、できたら来年度からこの一般消費税の導入をしていかないといまの国家財政の見地からいってむずかしいというようなお考えで、恐らくすでに来年度一般消費税の導入をできるものならという決意をされていると思うのですが、その点に関して四つに分けてひとつ答弁をしていただきたい。
  20. 村山達雄

    村山国務大臣 消費税の問題につきましては、政府の税制調査会の昨年におきます答申を踏まえまして継続作業をいたす予定になっております。  大体のスケジュールといたしましては、六月六日に第一回の今年度の税調を開きまして、いままでの国会における審議の経過その他を御紹介申し上げているところでございます。第二回目以降やはりスケジュールを決めてまいりまして、そう遠からざる機会に、税制調査会のかねてからの御意見がございますので、とりあえず実施するとした場合の一般消費税というものの具体案をまず税制調査会を中心にしてつくっていただく。納税義務者をどういうふうにやるのか、あるいは課税標準は累積型でいくのかあるいは控除型でいくのか、それとの関連において税率をどうするのか、それからどういう物資については課税対象外に置くのか、あるいは企業単位で中小企業についてどの範囲を納税義務から外していくか、そういった実務的な問題をこなしていただきまして、秋、九月ごろまでには一つの具体的な案を出して発表させていただいてはどうか、これが実は税制調査会のいままでのプランであるわけでございます。  そういたしまして、国民各層あるいは国会等のいろいろな御論議があると思いますので、それをまた踏まえまして参考にして手直しを加えて、実施するとしたらこういう形がとりあえずいいんじゃないかというのをまず固めていくという段取りが一つあるだろうと思うのです。  五十四年度の予算編成に関連いたしまして五十四年度の税制改正はどうするか、これはまた別の作業になるのではないか。恐らくそれは今後経済の推移をずっと見まして、そして予算のフレームも大体決まってくる秋も深まったころ、恐らく十一月以降になると思いますけれども、その際に来年度の税制改正、そういう視点でひとつ取り上げて、そして用意されたところの消費税を実施するかどうか、これは経済情勢、予算のフレーム両方に関係してまいるわけでございますので、そういう検討を行うのではないかと思っております。  その際、いまちょっと原委員がお触れになりました福祉との関係目的税にするかどうかというような問題も、財源、税源の使途の問題として論ぜられる一つの項目であろうかと思います。  別途地方の税源配分あるいは財源配分の問題として論ぜられることも予想されるところでございます。加えて、地方側におきましては、事業税の外形標準の導入ということを言っております。これは恐らくいまの一般消費税とそう違わない形になるべき性質のものだと一般に理解しておりますので、その場合一般消費税をもし起こすとすれば、外形標準との関係はどうなるのか。そうするとその二重はおかしいからそれはやめろということになりますと、それならば税源配分として一般消費税を一部は国に取り、一部は地方で取るという税源配分の方法によるのか、それは納税者に非常に迷惑であるから、むしろ国が一般的に消費税として取って、そしてそれを交付税の対象にするのかどうかとか、こういう問題が別途あろうと思うのでございます。  それはいずれにいたしましても来年度の税制改正を決めるときに、恐らくそのときにおける経済情勢、そのときにおける国の予算のフレーム、地方財政のフレームが決まってまいりますので、その段階でそういう問題として別途討議されるであろう、このように予測しているところでございます。
  21. 原茂

    ○原(茂)委員 その前提となる、不公平税制といっても特に医師の優遇税制、これは思い切ってやらなければいけないと思うのです。大衆は納得しないと思いますが、今度は手をつけますか。
  22. 村山達雄

    村山国務大臣 これはしばしばお答えしていますように、自由民主党の政調の決議で現在の、医師優遇税制制度は五十三年度限りとする、こういうことでございます。もちろんいろいろな関連する問題等相互ににらみ合わしていくと思います。したがって、五十四年度につきましては、党側におきましても何らかの案をつくってまいりましょうし、政府・与党は一体でございますので、政府側といたしましても相呼応いたしまして共同作業を進めて、お約束したとおり現行の制度を五十三年度限りにいたしたい、現在そういう気持ちでおるわけでございます。
  23. 原茂

    ○原(茂)委員 政府・与党一体、そうあってほしいのですが、ちょいちょいこれが一体じゃなくなって、しかも一体だと思うものがまたずるずる変更したりやらなかったり、これがいまの実態ですから。五十四年度には医者の優遇税制だけは是正するよう一歩も二歩も踏み出さなければいけないと思いますから、これは大臣、非常な決意で指導的な役割りを果たすべきだと思いますね。  次にお伺いしたいのは円高なんですが、一昨日あたりがついに二百二十円の大台を割って二百十九円九十銭、きのうは三百二十円に戻したようですが、この円高はどうですか。これは基調的にまだ円高の状態が続いていくような客観情勢だと私は思う。まだここで安定はしないと思う。大臣、どうでしょう、この円高はここいらがとまりなんだ、二百二十円台頭打ち、こういうふうにお思いなのか、基調的にまだ円高の状態が続くように客観情勢をお考えになっているかどうか、それが一つ。  それから、この間銀行協会の大会で大臣の代理がメッセージを読んだようですが、そこで思い切って銀行合併に関するまあある意味の奨励と言っていいのですか、非常に賛意を表するような合併推進論に等しいようなことをおっしゃっておられる。この銀行合併のメリット、デリメットというものをいろいろ立場、立場で考えられますが、大臣はこれを推奨する立場で何がメリットとお考えになっているのかをお伺いしたい。  最後にお伺いしたいのは、CD、例の譲渡可能定期預金証書でございますが、この問題は解決しないといけない大きな課題になっています。これも大臣はむしろ積極的な推進論者かと思うのですが、大変な問題があります。したがって、どんな問題があってもかくかくのメリットを考えた場合にやるべきだとお考えになっているその理由。  三つに分けてひとつ。
  24. 村山達雄

    村山国務大臣 円高の問題につきまして、私は通貨当局でございますので直接見通しを述べることは差し控えさせていただきたいと思いますが、世間一般の見方であると私は踏んでいる見方でございますけれども、大体一種の乱高下の時代、全面的なドル安とかそういった傾向はある程度底値感が出てきているのではなかろうか、こういうことでございまして、昨秋以来の円高あるいはことしの二月以降の急激な円高、こういうことはもうないであろうというのが普通の見方ではないかと思うのでございます。アメリカの方におきましても、エネルギー対策その他税制あるいは給与の引き上げ、そういった基本的な条件を通じましてインフレの防止について強い決意を示しつつあるところでございます。また、今後予想される国際会議におきましても、円高の問題は結局アメリカの基本的な経済条件のもとに発生した、こういう認識のようでございますので、私は、そういう意味から申しますと、いまのような形はなかなか出てこない、アメリカは相当努力してくるのじゃなかろうか、こういうふうに考えておるところでございます。  第二番目の、銀行大会において、私国会がありましたので失礼させていただきまして次官に代読いたしてもらったのでございますが、その中の金融機関の再編成に触れている部分についてのお尋ねであろうと思うのでございます。特に奨励しているという意味ではございませんけれども、今日の金融環境を考えてみますと、実体経済がこのよう状況でございますし、資金需給の状況もこのようなわけでございます。したがいまして、史上未曽有の低金利時代に入っておりまして、預金のコストと貸し出しのコストを見ますと、都市銀行では逆ざやになるところが相当出ておるわけでございます。いま有価証券等の売却によりましてその損をカバーしているというのが実態ではないかと思うのでございます。そういう環境を考えますと、これから金融機関が産業の方のニーズに対応した仕事をやり、そして公共機関としての本来の社会的、公共的使命を達成していくということが望まれるときに当たりまして、やはり経営内容が悪くなりますとおのずから健全な経営を目指さなければならないであろう、その場合には、場合によりましては業務の提携、あるいは必要によっては合併ということも一つの考えるべき手段、方法ではなかろうか、それが結局今日の金融機関の社会的使命を果たすゆえんにもつながるのではなかろうか、そういうことを予見いたしまして、その必要性についても十分考慮していただきたい、こういうことを申し上げたわけでございまして、いますぐ合併をやってくれということを申し上げたつもりではございません。一つの示唆と申しますか、配意をしていただきたい、先々を見通して配意をしてもらいたいというお願いを申し上げたつもりでございます。  第三点のCDの問題でございますが、これは非常にむずかしい問題でございます。恐らくCDの問題というのはいわばそういう貯蓄側におけるニーズがだんだん出てくるであろうということ、あるいはまたそれによりまして預金を吸収できるということ、またそれはおのずから短期なものになりましょうから、長期、短期の金融市場の分離という問題、だから短期の金利がちょっと変動したからといって長期金利に影響を及ぼすというようなことを避ける、そういう金融の合理化の可能性を秘めている問題等々考えますと、そのメリット面から検討に値する問題であることは容易に想像できるわけでございます。しかし、もちろんその場合にいろいろな競合関係が出てまいりまして、たとえば金融債に及ぼす影響はどうであろうとか、あるいは貸付信託に対する影響はどうなるであろうかとか、いろいろな問題が出てくるということも当然考えられるのでございます。しかし、そうかと言って、少々のデメリットあるいはトラブルがあるからと言ってやらないのでは、結局何にもやらぬということにつながるわけでございますので、その辺を十分功罪を見定めて、そして適当な時期に実施できるかどうか、これを検討したいというのが、いま私たちがとっている態度であるわけでございます。
  25. 原茂

    ○原(茂)委員 銀行合併の問題それからいまのCDの問題も含めて、あとまた専門的に少し時間をかけていろいろお聞きしたいと思いますが、一つだけ要望しておきたいのは、いま銀行、大企業であればあるほどに非常に経常の内容に関してばらつきがありまして、いままでになく銀行のいわゆる経営内容というものに着目しなければいけない状態になっていることは間違いない。これを救済するための措置として考えることのないようにということを、これは特に要望しておきたい。後日またこの問題を申し上げます。  そこで、北富士の問題に入りますが、大臣が恐らく前にここにおいでになったときもお聞きになったわけですが、これは委員長に断ってちょっと大臣から大蔵省施設庁にも一遍これを見ながら……。(写真を示す)結果的には北富士演習場の返還国有地の二百十四ヘクタールというものをすでに払い下げになったわけですが、その後の現状認識といま混乱いたしております責任について、きょうはただしていきたいと思うんです。  きょうは、まず第一に、地元利用権者の意思の尊重という国会議決がどのように実現されているのか、あるいは山梨県をして円満に解決を図らしめるという国会答弁は一体どう実現されているかということを第一に。  第二には、いまの混乱の原因となっている植林が完了すれば補助金が与えられる、あるいは植林が定着すれば山梨県が恩賜林組合に再払い下げをするというがごとき利益供与が何ゆえに行われ得るのかということを、せんじ詰めると聞きたいと思う。特に関係当局、大蔵、防衛施設庁に伺いますが、その本論に入る前に、大蔵当局のこの払い下げに関する国会答弁あるいは私に対する説明等、今日まできわめて納得しがたいものが非常にあります。これは私個人にとって許しがたいばかりでなくて、国会審議を愚弄するものという立場で絶対許すことのできない重大なことなので、二、三の例を挙げてまず質問をいたします。  私は、先日、五月二日ですが、現地の状況視察に参りました。ところが、ある一定の幅で帯状に植林してないところがあった。決して苗木が引き抜かれたとか開拓財産の売り戻し地などでは絶対ありません。そこで地元の人に聞きますと、そこは東富士の有料道路の予定地だから植林しないのだと造林者の吉田恩賜林組合の幹部が言っていたというのであります。  そこで、確認のために大蔵当局に伺いたいのは、この払い下げがされる直前の昨年の八月二十三日、本委員会で私は、東富士有料道路の予定敷地に当該払い下げ地が入っている事実がある、あらかじめ、この計画がわかっていながら払い下げるとはどういうわけなんだ、この予定敷地が決定されるまでは少なくとも払い下げを待つか、決定しているならその部分を除外して払い下げるのが当然だ、払い下げてまた買い上げる、全く二重の手間をかけ、金や時間や人手をむだにすると同じではないか、こうただしましたところ、川崎さんここにおいでになりますが、そういう道路を通したらということが案として出されたことはあると聞いていますが、まだ計画という段階でもなく、したがって今後売った土地をまた買い戻すというような国費のむだ遣いや二重使用が起ることは、心配ありません、明快に私の質問を一蹴しました。重ねて私が、結論的に言うなら有料道路はつくらない前提、大蔵当局の見解がそういうふうに表明されたと思うが間違いないかと念を押しましたところ、川崎さんは、有料道路に関しましては計画がありませんと確言いたしておりましたが、これは速記録で明瞭ですから間違いないと思います。これ、御存じでしょうね。  しかし、あのときの答弁は真っ赤なうそだということを、いま私は申し上げたい。  現に、本年三月二日の予算委員会第一分科会で建設省道路局の有料道路課長沓掛哲男さんが、「東富士有料道路のルートの選定に当たりましては、地形、地質、気象等の自然条件、演習場の機能、自然環境に及ぼす影響等について十分配慮する必要があり、」と答弁いたしまして、東富士有料道路の建設予定が存在することを明らかにしたその上に、「現在まで鋭意調査を進めてきた結果、基本的な路線位置につきましてはほぼ調査を完了」いたしましたと答弁をしております。わずか六カ月足らずで何で建設省がかかる調査まで完了し得よう。そんなことはできるはずがない。  まず建設省に聞きますが、六カ月前にこの計画はなかったかどうかだけ答えてください、簡単に。
  26. 沓掛哲男

    ○沓掛説明員 御説明いたします。  東富士有料道路は一般国道百三十八号の二次改築事業として、中央道河口湖インターから静岡県小山町に至る区間を有料道路として整備することを日本道路公団において検討しているものでございます。本道路は国立公園内に計画されておりますので、環境問題に特に配慮する必要があり、今後環境問題等について関係機関との協議等を始めるべく準備を進めているところでございまして、先生いま御質問の六カ月前にあったかどうかということでございますが、その時点においては、いま申し上げたようなことについていろいろ調査をいたしておりました。
  27. 原茂

    ○原(茂)委員 計画があったかなかったかだけ答えてください、簡単に。
  28. 沓掛哲男

    ○沓掛説明員 東富士有料道路を建設していこうという計画はございましたが、それがどういう位置を通過するかという路線の選定についていろいろ検討いたしておりました。
  29. 原茂

    ○原(茂)委員 ということは、川崎さんが言ったような、計画はございませんと言ったことは真っ赤なうそだということを私はあえて申し上げたわけです。これに対していますぐに川崎さんを問い詰めてみようとは思いません。しかし、そういったでたらめといいますか、その場限りのことを勝手に言って委員会を過ぎていけばいいんだというような言い方、これはもう国会を愚弄するもはなはだしいので許せないことでございますから、過ぎたことをいまやりとりしてもしようがないのだけれども、十分に注意しないと、ただその場限りのことを言うようなことをやっては絶対いけない。このようなことが二度とあったら、これは責任問題として責任をとってもらう以外ない、ただでは済まさないということだけ、今後のために申し上げておく。  次に、これまで大蔵当局はこの払い下げについて、土地状況については、現状のまま売り払いを行うことで国と県とで合意されているが、これはいろいろ問題があるが、それが全部解決しなければ契約をしないというわけにもまいらぬ事態になっておるので、契約をさせていただきますと答弁している。私が、それでは用途指定をして払い下げると、その土地を現実に使用、収益している農民等の間に衝突を起こし、トラブルが発生するのは目に見えているではないかと質問したのに対しまして、川崎さんはまた、県が円満に地元問題を解決するため万全の努力を払うという条件がついているので大丈夫でございますという答弁を行ってまいりました。  そして、この趣旨の答弁は、先月の十日の本委員会においても、県は大蔵省と契約する前後からずっと最善の努力を続けてまいりましたと答弁をし、実際山梨県が事態の円満解決のために最善の努力をしていると主張してまいりました。しかし、これも全くうそじゃないかと私は思う。私が、現実に土地を使用、収益している忍草入会組合の天野重知組合長、新屋開墾永小作権連盟の堀内清太郎代表に、なぜ山梨県との話し合いに応じないのかと先日尋ねますと、全くけげんな顔つきで、何の話のことかと反問される始末でございました。よく聞いてみますと、山梨県は何もしていない。話し合いのための電話一本すら関係農民にはしていない。これが事実なんだ。  山梨県は、ちょうど大蔵当局がこの問題を地元問題と称しているのと同様に、これを地元問題と称し、県みずからがこの問題解決のために現実にこの土地を占有利用している農民と話し合いを持つなどして円満解決を図るという条件成就のための努力を、全く行っていないのが事実であります。結局、この土地は山梨県が欲しくて払い下げを受けたのではないとの県議会での知事の発言を裏づけるように、この土地は行く行くは吉田恩賜林組合に再払い下げを行うのだから同組合を構成する市村などの問題である、したがって、地元問題であるからそれら関係市村等で処理しなさいと言っているのと同じなんだ。繰り返すが、山梨県としては何もしていない、これが事実であります。  何をもって県が最善の努力をしていると川崎さんは言えるのか。まさか県が地元問題とすりかえて、その地元市村等がつくった国有地諸懸案処理対策協議会なるものをもって県が最善の努力あるいは万全の努力を続けているなどとは言えないだろうと思います。全く主体が違うのですから、言えるはずがない。  ここで念のために断っておけば、この処理協は造林者サイドの協議会であって、かつこの植林事業を推進定着させることによって、たとえば再払い下げを受けんとするというがごとき新たな利益を得んとする団体なのだ。土地所有者としての山梨県、つまり払い下げを受けた山梨県がその払い下げ契約の条件とされている円満な解決のための努力を一体どこにしていたと言えますか。これは後で一括して答弁をお願いします。  実際これまで、あたかも農民がえこじになって一切の対話を拒否しているがごとき答弁、説明をしてきた大蔵当局は、どのような事実、意図をもってかかる答弁、説明を行ってきたのか。善意に解すると、山梨県に大蔵当局もまんまと食わされていたのか知りませんが、でないとしたら、とんでもないうそ八百を大蔵当局はこれまで国会で答弁をし続けてきたことになる。この点について明らかにしてもらいたいのが二つ目。  なお、大蔵当局もこの円満解決についての指導を行っていると言ってまいりました。逐一山梨県の相談を受けておったとの答弁をされておりますが、造林者たる吉田恩賜林組合が敢行した去る五月十二日の忍草入会組合の牧草栽培地の侵奪行為も、前もって県から相談を受け、牧草地をブルでめちゃめちゃにするような指導を行ったのか、この点の経緯についてもあわせて詳細に答弁をされたい。  三つ一緒に答えてください。
  30. 川崎昭典

    ○川崎政府委員 大蔵省といたしまして、当初からしばしば申し上げておりますように、誠意をもって山梨県と相談をしておりまして、残念ながら先生と見解が違う点多々ございますけれども、大うそをついたとかいったことはないつもりでございます。  第一の道路の点でございますが、先般来建設省からもお答えがございましたが、私この前答弁申し上げましたのは、政府部内で話し合いがついておる段階ではございませんので、まだ計画はない段階であるというふうに申し上げたつもりでございます。したがいまして、道路をつくる場合の計画と申しますのはどこからどこまでをどこへ設定するということでございますから、ただ莫然と道路をつくりたいという話であって、二百十四ヘクタールの中に道路計画があるというようなことはございませんということでございまして、現在もその状況は当時と余り変わっていないと考えるわけでございます。  次に、山梨県がどんな努力をしたか、一遍も呼びかけていないではないかというお話でございますけれども、私どもはしばしば呼びかけもしたと聞いております。また、具体的にいろいろトラブルがございました段階で、当初はお互いに実力行使といったことで行き過ぎもあったのだろうと思いますが、やはり忍耐強くしんぼうして少々のことで短気な行動はしないようにという指導を県が積極的にやってまいりました。もちろん治安当局にもいろいろお世話になっておるわけでございますが、そういう意味で現在平穏な状況に保たれておりますから何もしなかったということではないと考えております。  三番目に、権利を主張して種をまいたとかいろいろな話がございますけれども、それをまたブルドーザーでやったという御指摘でございますが、そういった点は当初から一貫して、私どもの方は権利はないと考えておるわけでございます。しかしながら、事実行為を円満に解決するために乱暴なことはしないということが私どもの望みでございまして、もしいままでにそういう点がございましたら県としても注意をしておるだろうと思いますし、今後ともそういう乱暴なことが起こらないように、円満にいくように私どもは期待しているわけでございます。
  31. 原茂

    ○原(茂)委員 川崎さん、時間の関係で早くしゃべっておりますが、何回もやりとりしているのだからわかるはずですから、私が聞いたことだけに答えてください。よけいなことを言わないように。しかも三つ目は答えていない。あのブルを入れて五月十二日にやったようなことは、県から事前に相談があって大蔵省承知の上でやったのかどうかというのが三つ目の質問ですよ。それに答えてない。それに答えてもらう。  それから、いまの道路の問題ですが、道路の計画とは一体どこからどこまでが計画だかわからないが、と言っているのですが、建設省予算第一分科会で先日答えておる。それは、もう調査は終わりましたと鈴木委員に対して答えているのですよ。六カ月前に計画がなかったものが調査がすでに終わっているというようなことは、私の知っている範囲でいままで建設省はやったことがない。有料道路をですよ。そんなばかなことがあるはずがない。いまだにそれがないといまおっしゃった。二百十四ヘクタールの地域に対しては道路の計画は聞いていません、こうおっしゃったのはいま記録にありますが、これははっきりと後で追及します。いまそれだけをやる予定がありませんから。  それから、県が積極的にやっているのを信用しているようですが、県がやった事例を具体的に後で調べて挙げていただきたい。県は地元農民に対して、一遍も呼びかけをしていない。国は県を信頼し、県が円満に解決をいたします。万全の努力をすると言っているから大丈夫です。こう言っている。県は地元農民、関係農民に電話一本していないのは事実ですから、そうじゃないという反証を後で調べて持ってきてもらうということを申し上げておく。後の答弁のときに一緒に、第三番目の山梨県からそういう相談があったかどうかということをお答えいただく。続けていきますから覚えておいてください。  さらに、大蔵当局は、口を開けば法律上の見解を異にすると、私の質問をこの一言で始末してまいりました。たとえば牧草地占有問題についてどのような法律上の見解を持って忍草入会組合の占有を否定するのか、その法的見解を根拠条文によって明示し、かつ現況を踏まえながら明らかにしてほしいと思います。これがあなたの答弁の二つ目になります。  ただし、五月十四日に大蔵当局が社会党基地対策委員会に対して行ったごとき、事実関係を歪曲した虚偽の事実をもってこの国会答弁をしてもらっては困る。許せない。  すなわち、あのときの大蔵当局の説明では、忍草入会組合は、すでに下されている仮処分の決定に反して、ブルなどで開墾整地を行っているのだから占有権は存在しないと説明しているが、これはまさしく事実に反しています。あの基地委員会のときも私が言ったとおりであります。それは逆であって、忍草入会組合が開墾整地を終了したのが昭和五十一年四月、仮処分がおりたのが同年六月であります。しかもこれ以上の開墾整地を禁止する内容であった。もし、いまなおその説明が真実であると主張するなら、それを証する文書などを指摘しながら忍草入会組合の占有が当該牧草栽培地に成立していないという大蔵省としての法律見解を明らかにしてもらう。三つ目です。
  32. 川崎昭典

    ○川崎政府委員 最初に山梨県からブルドーザーを入れてやることを相談を受けたかという点でございますが、それは全く相談を受けておりません。そういうことが相談をされたことはないということでございます。  次に、先ほどの入会権を否定してなぜ占有を認めないのかという質問でございますけれども、いわゆる権利に基づかない耕作でございますから、幾ら耕作を完了したと言ってもそこに地上権とか占有権というものが生ずるものではないという考えでございまして、これは大蔵省だけでございませんで政府の統一した考え方でございます。
  33. 原茂

    ○原(茂)委員 あなた、とぼけているのか頭がいいのか悪いのか、いいからとぼけるのがうまいのかもしらぬけれども、答えなさいということにまともに答えられないなら答えられないと言ってもらいたい。答えてない。私は、いまの占有権がないというのなら法的根拠を示してここで話をしなさいと言っている。  それからそういうことに関しても、私の質問は速記録を見て後から説明をしてもらいます。答弁をもっときちっとしてもらうようにしないと、問題のけりがつきませんから、後でその答弁を持ってきてもらう。  そこで、本論に入りますが、私はこれまでこの払い下げに関しまして、法的にも行政的にも余りにも問題があり過ぎるということを指摘いたしました。払い下げるべきではないということをるる申し上げてまいりました。しかし、昨年九月払い下げはついに行われて、かつこの払い下げ契約の問題は、目下甲府地裁において有効か無効かを含めて係争中であり、司法の場に問題は移っています。  したがって、本日は、この払い下げ契約それ自体が違法無効であるとの従来からの私の指摘をここで改めて行わんとするものではありません。  私がここでこの払い下げ契約を前提として質問するのも、もっぱらこの払い下げ契約が仮に有効であるとしても、いまなお多くの法的、行政責任が大蔵当局など関係省庁に存するということを指摘いたしまして、速やかに適正な措置を講ぜられんことを強く要請しようとするために、これから申し上げるわけであります。  これまでの大蔵当局のこの払い下げについての答弁には、さきにも述べましたように、「いろいろな問題がございまして、それが全部解決しなければ大蔵省は契約をしないというわけにもまいらぬような事態になっておりまして、」というのが速記録にもあります。先ほども言ったとおりです。この一つの答弁からも明らかなように、本年の北富士演習場使用協定を更新するための政策の具に国有財産の払い下げを法も条理も無視して行ってきたのが事実であります。  これは明白な違法の払い下げであります。しかも、これまでもたびたび明らかにしてきましたように、この払い下げ地には、入会権を主張する農民、つまりその権原に基づいて植林をしている、あるいは採草牧草地として利用している、さらには栽培牧草地として利用している農民や、開墾永小作権を主張して農地として利用している農民がたくさんおります。  そのため、私は、払い下げができるわけがないではないかと何度も申し上げてきましたが、大蔵当局は、「土地状況につきましては、現状のままで売り払いを行うということで、国と山梨県とで合意がされております。」その上、これらの該地の利用者つまり農民の占有ということについては、山梨県が円満に解決するために万全の努力を払うという条件がついておりますということを答弁している。とにかく払い下げるのだということを明らかにし、かつ実行してきたのであります。  ところが、一体どうしたというのか、さきにも述べましたように、山梨県は、これら該地を占有利用している農民と一度も話し合うことをしておりません。それどころか、五月十二日、県立ち会いのもとで、造林者である富士吉田市外二ケ村恩賜県有財産保護組合に、農民が一千万円以上も今日までかけて丹精した栽培牧草地にブルドーザーを入れさせまして、無残にも根こそぎ掘りくり返させて植林を強行しているのが現状であり、いろいろな問題が起きました。  もちろん、農民の方も、自分の権利は自分で守る以外にはないということで、牧草地死守前線行動隊というのを結成、体を張って阻止せんとしましたが、そこで流血の惨事を生じさせても全く不毛の争いとならざるを得ないとの、これは私の判断で、農民の方々に阻止行動中止を強く、要請いたしまして、ひとまずその日の植林行動についてのトラブルを生起させることを自制してもらいました。  しかし、植林を強行せんがために入会監視小屋の監視員の寝込みを襲い六週間の重傷を負わせたり、草を命とする農民の牧草をブルでめちゃめちゃにしたり、あげくの果てには農民の小屋に放火をしたり、さらには焼き殺すぞと言って農民の現住している入会監視小屋に放火するなどなど、言語に絶する無法地帯といまなってしまっているのが、この国有地の現状であります。  もはやこうなっては、今後私が幾ら要請しても、農民の憤りを制することは不可能かもしれません。  私は、このような予測された事態を避けるように口を酸っぱくして、大蔵当局が払い下げ以前に責任を持って現況利用者たる農民との話し合いを持つなどして、いわゆる地元農民と山梨県分収造林者とのトラブルを起こさせる原因となるような払い下げは絶対に避けるべきだと主張してきたのでありまして、いまなお現地では殺気立った雰囲気の緊張した状況にあり、今後いかなる事態が生じるやもわかりません。  そこで、私は、これまで指摘してきましたトラブルが、乱闘、放火、傷害事件などとして現実化した現在、もっぱらこのトラブルに限って関係当局の見解と今後の措置のとり方についてお聞きをしてみたいと思うのであります。が、この際、このトラブルを直接引き起こさせるような払い下げを敢行した大蔵当局以外にも、この事件に関係する防衛庁、防衛施設庁及び警察庁、環境庁当局等に、いわゆる当該事件についての見解をただしてもみたいと思います。  そこで、最初に警察庁当局に伺いたいのは、五十三年五月一日に発生した入会監視人襲撃事件及び五月十二日と十四日に発生した忍草入会組合所有のいわゆる断食小屋放火既遂事件と入会管理小屋放火事件の三件についてであります。  さて、だれが一体この犯罪行為を行ったのか、つまり被疑者は一体だれなのかというようなことではないことをあらかじめ断っておきたいと思います。そういうことではなくて、私が現地の人々と話した際、どうしても聞き逃すことのできない訴えを耳にしたからであります。  つまり、これら一連の事件は、国が払い下げをして植林させることを決定しているのであるし、そもそも演習場を長期的かつ安定的に使用するために払い下げをしているのであるから、それに逆らい、入会権なんて主張している忍草入会組合がある程度やられても仕方がない、要するにこれは基地問題であるから一般の刑事事件として考えないというようなことが、地元の間では公然とささやかれているのを私は聞きました。  もし仮に、このような前提で夜討ち、火つけなどの犯罪があいまいにされるようなことがあったら、私は絶対に許せないと思います。  私が一番懸念するのは、このような夜討ち、火つけなどが堂々と行われ、なおざりの捜査、形ばかりの事情聴取でこの事件が終えんするならば、警察に対する農民の不信は極度に達するということであります。  私は、これまで忍草の農民の人々に強い自制を求めてまいりました。その前提には、相手がとにもかくにも山梨県あるいは一部事務組合という地方公共団体であるから、まさかこのような犯罪を生起させるようなことはあるまいという、いま考えてみればかなり甘い判断があったことも事実であります。  しかし、現にこのような犯罪が起こってしまったのであり、かつこのような犯罪の取り締まりの任にある警察までもが、これは基地問題であり、基地政策推進の障害となっている、入会権を主張している忍草入会組合の農民が襲撃、放火されたのであるから、逆の場合であればともかく、そうではないのであるから、なおざりに、あいまいに事件を握りつぶすというような態度であったとすれば、とんでもないことだと思うし、もはや私は、何を理由にしても忍草農民に自制を求めることはできなくなります。  いま現地は極度の緊張状態にあります。これ以上、分収造林を行わんとする県や吉田恩賜林組合が何ら適正な手続を踏むことなく、忍草農民の現に育成している牧草地を侵奪するという、忍早農民の該地の占有を排除させるための適正な法的手段は、これまでに何一つとっていない。  もちろん、警察当局の民事不介入の原則は大いに尊重さるべきでありますが、それはこれら襲撃事件、放火事件などとは全く関係のない原則であります。  警察庁当局は、一体どのようにこれら入会監視員襲撃事件、断食小屋放火既遂事件及び入会管理小屋放火事件を把握しているのか、その概要を報告してもらい、またどのような態度でこれらの犯罪捜査に臨んでおられるのか、その姿勢を明らかにするとともに、犯人逮捕あるいは犯人のいわゆる浮上をしている状況、見通し、こういうものを伺わしていただきたいと思います。これは警察庁。
  34. 若田末人

    ○若田説明員 この問題は、先生御指摘のとおりに、いろいろな経過があったようでございますが、五月十二日がかなり大きな紛争があったようでございまして、これにつきましては事前に情報もございましたので、山梨県警といたしましては、他県からの部隊の応援ももらいまして五百名の体制で警備をいたしたわけでございまして、明るいうちは事なく事態が推移をいたしたわけでございます。その後傷害事件等あるいは放火事件等もあったようでございますが、いま御指摘ようなことにつきましては、警察は基地問題であるからというようなことである一方の側に立って捜査をするというようなことはございません。犯罪が起こった場合には厳正公平に捜査をいたしますし、あるいは先ほど申し上げましたように犯罪の発生が予想される場合にはいろいろな警備体制をとりまして、その県自体で足りない場合にはよその県からも応援をもらって未然防止に当たったところでございます。  それから、事後の犯罪の捜査につきましても、そういうことで厳正公平な立場で、事件も片っ方だけではなくて双方がやられている事件もあるわけでございまして、これらの事件についてそれぞれ鋭意捜査をいたしておるところでございまして、現在まで山梨県警からの報告によりますと、四十五名を取り調べをいたしておるところでございます。  それからまた、今後の見通しにつきましては、こういう事態が起こらないことが一番よろしいわけでございまして、あるいはまた、応援部隊等で未然防止をするということが直接の警察の仕事ではございますけれども、いろいろいままでの経過等もございますので、この事件が起こりました翌日の五月十三日、早速富士吉田署長が富士吉田署に県の企画管理部長並びに林政部長を招致いたしまして善処方について努力するよう、よく申し入れております。それから、双方の組合の幹部も、個別ではございますが招致いたしまして、警察事犯にならないようにというようなことで厳重に警告をいたしまして、双方とも了承をいたしておるというふうに聞いております。
  35. 原茂

    ○原(茂)委員 大体の報告は結構です。  もう一つお伺いしますが、殺すぞと叫んで入会管理小屋に、婦人が現住しているところに放火をした事件は、これは相当重い事犯として取り調べがなされなければいけないと思いますが、特にいまさらりと言われたような、まるで一般論的な取り扱いの一つにこの入会管理小屋の放火未遂事件があってはいけないと思います。この点は特段のいわゆる重い対処をしていただく必要があると思いますが、いかがですか。
  36. 若田末人

    ○若田説明員 一般論といたしまして、法律的にも、現在人が住んでおる住居に放火をいたしました場合と、それから現在住んでいない家に放火をした場合とは刑が変わっておりますので、現在住んでおる住居に放火がなされた場合には、当然捜査の結果それが明らかになった場合には、検察庁なり裁判所の段階になると思いますが重くなってまいりますし、警察の立場といたしましてもそういう面につきましては鋭意捜査をいたしてまいりたいと思います。
  37. 原茂

    ○原(茂)委員 厳正公平な立場で取り調べておいでになることを非常に歓迎します。ぜひひとつ推進していただきたいと思います。  次に、この入会管理小屋放火事件に関連しまして防衛庁に伺いたいと思います。私の調べによりますと、この入会管理小屋が放火されたとき、先ほど見せた写真の一番右の写真、つまり五月十四日朝五時ごろです。焼き殺すぞ、という罵声が数回繰り返され、十人前後の中年の男たちがこの小屋を取り囲んだようですが、当然この状況を、罵声等を、北富士演習場梨ケ原廠舎の歩哨は目撃するか耳で聞くかしているはずであるが、そのような場合、明らかに施設、区域内に所在する物、人などに対して犯罪行為が行われんとしているのでありますから、何らかの措置を講じてしかるべきであると考えますが、この点について一般的にはどのよう措置を講ずべきなのか、歩哨の立場でどうすべきなのかを明らかにしてほしいのが一つ。  もちろん当該入会管理小屋は北富士演習場施設、区域の中に存しているのでありますから、その前提で、このような犯罪行為が行われんとしたのを目撃したならば、一般に歩哨はどういう措置を講ずべきなのかということを私はお伺いしているのであります。必要があれば自衛隊法の九十六条第一項二号あるいは同法六十条第一項にも照らして答えていただきたいと思います。  続いてお伺いしておきますが、恐らく現地の調査が、十分に歩哨の応対した状況等を見ていないかもしれません、まだ調べていないかもしれませんから、したがって、先にお伺いするのですが、この小屋には、忍草入会組合の母の会の二人ないし三人が輪番で毎日泊まり込んでいるのであります。もちろんそれを知って焼き殺すぞと声を上げての放火でございます。しかも男ばかり十人前後の連中が一団となってこの小屋を取り囲んでの行いでございました。罵声に眠りから起こされた母の会の人たちは、まさか火を放つなどとは思ってもいなかったところ、実際にカヤで囲いをしてある囲いに二メートルくらいの災が上がってまいりました。それで、これは本当に焼き殺されると思って、あわてて小屋を抜け出しました。隣接している自衛隊梨ケ原廠舎歩哨の前に飛んでいき、鎮火あるいは救助の要請を行ったという事実があります。そのとき、この鎮火、救助要請をされた歩哨は、上から何の連絡もない、と言って、この要請を突っぱねたのであります。せめて電話でこの危急を一一〇番なりに知らしてもらいたいと言ったが、それは上から連絡がないからと歩哨が断りました。  私は、この事実をもってこの歩哨個人の問題としてあげつらおうとは考えていない。そもそも自衛隊はどっちの方向を向いているのかということであります。国民に愛される自衛隊とか、より精強な自衛隊というキャッチフレーズの実態を、私はここに見出したような感じがするのであります。国民が、しかも婦女子が屈強な十人前後の男に取り囲まれて、焼き殺すぞ、と言われて現に火をつけられた。そこで、すぐ目の先にいる歩哨に救助、鎮火等の要請を行ったら、それをむげに無視する。こういったことが第一に人間として許されるはずのものではないと思う。しかも、隊員は、常に徳操を養い、人格を尊重し、強い責任感を持って専心その職務の遂行に当たり、事に臨んでは危険を顧みず、身をもって責務の完遂に努め、もって国民の負託にこたえることを期するものとする。これが自衛隊法の第五十二条。こういう、より高度な使命と負託があるはずのものであります。さらには、この小屋が万が一全焼するようならば廠舎の方へ飛び火の危険も十分考えられる位置にあります。  このような具体的な事例を前提として、自衛隊のあり方、特に本件のごとき救命、鎮火要請などのあった場合の措置のとり方について、防衛庁当局の見解をお聞きしたい。
  38. 児玉良雄

    ○児玉説明員 お答えいたします。  歩哨の守るべき準則といたしましては、歩哨は所定の場所にあって絶えず周田の状況を注意深く監視する、異常あるいは不審な事故が発見されたような場合には、それを警衛司令に報告し、その指示を受けるということになっておりまして、本件の場合、忍草母の会の方から放火されたという通報を受けたようでございますが、私どもの調べでは、その時点で火災が発生しているということが確認はできませんでしたけれども、警衛司令にその旨を報告し、付近におった隊員がその周辺を見に行きましたが、その時点ではすでに現に火災が発生していることが見られなかったということで、別段の措置をその後とっておらないわけでございます。  仮にこれが火災が発生しておるということになれば、歩哨としては当然それを、いま申し上げましたような歩哨に課せられました準則、規則に従いまして警衛司令に報告し、付近におります隊員でもって消火なりその他の行為、必要な制止などの行動をするということになろうかと思います。
  39. 原茂

    ○原(茂)委員 あなたは児玉さんですね。
  40. 楯兼次郎

    楯委員長 児玉運用課長です。
  41. 原茂

    ○原(茂)委員 あなたではこれ以上言ってもどうかと思いますが、後から電話で現地に問い合わせたに違いないと思います。いまおっしゃったようなことをやるにしても、助けを求めに行ったときにすぐ応待をしたかどうかが非常な問題になるのです。三時間も四時間もたってしまってから動いたんじゃ、アクションを起こしたんじゃ何にもならないのです。この点をもう一遍調べなさい。  しかも、歩哨のいるところで焼き殺すぞという声も聞こえて、火が二メートルも上がったのを、消しましたけれども、見ているはずなんです。そのときにどういう応対をしたか。上からの指示がないから何もできない、こういうやりとりのあったことは事実なんです。あなたの話を聞いていると、何かそのときにぱっぱっぱっと歩哨としてやるべきことをやったように聞こえる。体裁がいい。そうじゃないのです。非常に時間がたってから上官に報告したり何かしたのか知りませんけれども、そこのところをよく調べること。そのときの応対、即座にアクションを起こしたかどうかということは非常に問題であると思う。歩哨として規定にあるとおりにやったということをいまおっしゃったんでしょうが、後でお聞きになったんだと思います。その応対というものが農民が納得できる応対、打てば響くという応待をしてくれないというところに問題があるんだというふうにどうか考えていただきたい。いまあなたがおっしゃったような、もし本当に全部燃えていたら何とかしただろうというようなばかな——十人前後の男が取り囲んで、火をつけて焼き殺すぞと言って、火を現実につけて、大きな声でわめいて、中から婦女子が飛び出してくる。それを歩哨の見えるところでやっている。飛び出した者は歩哨以外に頼れる人がいないから頼った。そのときの応対を間髪を入れずにやったかどうかが問題なんです。これをもう一遍調べて私のところまで返事をいただきたい。納得いく説明をしていただきたい。どうですか。
  42. 児玉良雄

    ○児玉説明員 いま先生御指摘の点につきましては、調査をして御説明いたしたいと思います。
  43. 原茂

    ○原(茂)委員 次に、私は、かくも犯罪行為を起こし、法の要求する適正な手続を踏むことなしに暴力と実力をもってまで植林行為を実行するように造林者をして駆り立てている原因は、少なくとも三つあると考えられますので、これについて質問をしてまいります。  第一に挙げなければならないのは、五月三十日までにとにかく植林をやってしまえばその分については補助金が交付されるということで、それをもらうためには植林をしてしまうこと、金にさえなればというような風潮があることは事実であります。  第二には、この忍草入会組合の継続的に支配管理している採草牧草地あるいは牧草栽培地を第一期植林実施区域として用途指定をして、本年六月末日までに植林を完了しなければならないというような用途指定期日が決まっているということ。  そして第三には、植林事業が定着した時点で山梨県が吉田恩賜林組合に再払い下げをするのだという確信が地元にはあるということが原因だろうと思う。  そこで第一に、防衛施設庁に伺いたいのは、補助金交付の点についてであります。  一般的に言って、補助金とは、政府等から、これは地方公共団体も含みますが、地方公共団体あるいは私人などに対して、たとえば産業の助成とか社会公共事業の助成とかの行政上の目的で交付される現金の給付である。かかる補助金の交付の根拠としては、これまでの補助金の交付されているのを見ると、法令に基づく場合と、予算の範囲内での行政庁の裁量による場合との二つに大別されるようであるが、一体防衛施設庁はどちらの交付根拠をもってこの造林事業に補助金を交付しようとしたりしているのか。この点について明確にしてもらいたいのが一つ。  しかし、この補助金の根拠がいずれにあろうとも、現状の植林行為に補助金を与えることは違法、不当だと私は考えている。これに対してもお答えをいただきたい。  なぜならば、現在補助事業者、造林者が行っている植林は適正な手続を踏んでいない違法な植林だと私どもは認定しているのであります。  繰り返し指摘するまでもなく、該地は忍草入会組合の占有している土地であり、しかも彼らはそれを入会権に基づいて占有しているのだと主張いたしております。しかも先ほども言ったように、五月十二日、ブルを入れてこの牧草地をめちゃめちゃにいたしました。大蔵当局に言わせると、これは五十一年の仮処分がすでになされた後、忍草入会組合が入り込んできて勝手にブルでひっくり返して牧草地にしたんだからこの占有権は認めないということだが、それは、先ほど指摘したように逆なんだ。うそなんだ。四月にすでに整地とか牧草の植え付けが終わっていた。六月に国の仮処分が出されて決定をされたのだ。したがって、いままでやった土地以外のものは手をつけてはいけない、現状不変更の仮処分がおりたことは御存じのとおりなんです。この間うそを言いましたが、これは絶対間違いがない。そういう状態で、とにかく自分たちの入会権に基づいてこれは占有しているんだと主張しているわけであります。  仮に百歩譲ってこの忍草入会組合の主張する入会権が存在していないといたしましても、造林者はまずもって、その占有している事実があるのですから、それを法的に排除しなければならないことは、法治国家である以上余りにも当然であります。にもかかわらず、これを実力をもって侵奪することは明白な違法であります。仮に忍草入会組合の該地の牧草地としての継続的支配管理、すなわち占有が不法であるとしても、この不法占有状態を実力で破壊し侵奪することは違法だと私は思う。ましてや正当な権原を持って管理支配していると確信、主張している者に対して、何ら法的な手段、手続をとらないままこれを暴力と実力で侵奪せんとするのは言語道断だと私は思う。  地方自治体と称するものがかかる法治国家の原理原則を否定するがごとき暴挙に出るのも全く理解しがたいところでございますが、さらには、かかる暴挙の上に成立する植林に補助金を出さんとすることはとうてい納得、理解し得ないところであります。  あくまでも補助事業は、その事業遂行の適法性が前提となっているのは当然だと思う。この植林事業は該植林地が忍草入会組合の占有下にあることによって、それが適法に除去されない限り違法な事業遂行ということにならざるを得ないのであります。補助金交付の対象として適法な事業遂行とは絶対に言えない。したがって、補助金は出せるわけがない。そうしないと、国が補助金を出すということにおいて、違法な占有侵奪の慫慂、奨励を行っていることになる。まるで馬の前にニンジンをぶら下げて、その馬をして他人の管理支配している畑を踏み荒させんとするがごときものと同じであります。  そこで、第二に明らかにしてほしいのは、補助金を交付する場合において、補助事業の遂行が違法であっても補助金は出せるのか否かということであります。私はあくまでも事業遂行の適法性が前提となって初めて補助金給付の対象たり得るものであると考えています。  そもそも補助金というものは、国民から徴収された税金その他の貴重な財源で賄われているものであります。当然のことではありますが、公正かつ効率的に使用されねばならぬと思います。  ところが、このような占有侵奪の違法行為を行った以上は、侵奪をされた者が黙ってこれを認めるわけはございません。現に植林しても、その植林がそのまま活着し成長するという保証はございません。苗木による占有侵奪に対し、被侵奪者がこれを引き抜いて自己の権利を守らんとするのは当然だと私は思っている。  特に、所有権のごとき観念的な権利とは異なって、占有権は土地などを支配管理している状態に与えられている権利でもあります。したがって、この占有権に関しては、極端に言えば事実対事実、実力対実力の対立が存するのみであります。このような事実状態に基づいて与えられた権利が占有権なのでありますから、この占有が侵奪された場合に、猶予しておりますとそのうちに逆に侵奪者の占有権がその土地の上に成立する可能性がある。  したがって、多くの学説もまた判決例も、占有権については侵奪された直後、すなわち新占有権の成立前であれば、いままでの事実的支配の力が被侵奪物の上に及ぼされても支障がないと言っているのであります。つまり、そのことを植林による忍草入会組合の支配管理している牧草地等の侵奪について考えてみますと、苗木を引き抜くことを正当とすると言っているのであります。  私は、だれが苗木を引き抜いているのかは知りません。しかし、法的にも、植林がそのままで生育するかどうかもわからない。また事実上苗木が抜かれているといった状況下にいまあって、どうしてこの植林に対する補助金が効率的に使用されると言い得ますか。  以上、補助金交付の根拠、補助事業遂行の適法性と効率性について解明をしながら、御答弁をいただきたいと思います。
  44. 高島正一

    ○高島政府委員 お答え申し上げます。  まず、防衛施設庁が本件植林事業に対して補助金を交付した根拠についてのお軒ねでございます。この根拠は、防衛施設周辺生活環境整備法第八条の事業として、富士吉田市外二ケ村恩賜県有財産保護組合に対して補助をしたものでございます。  それから、違法な補助ではないかというふうな御指摘でございますが、防衛施設庁の考え方といたしましては、本件植林事業が実施された土地は御案内ように四十八年の三月三十日の閣議了解に基づきまして、北富士演習場の使用と地元民生の両立を図り、林業整備事業を実施するためというのが条件でございます。  これに基づきまして、国有財産の審議会の議を経、山梨県は山梨県の北富士県有地管理規則を定めまして、これに基づき分収造林契約を結んでおるわけでございます。このような所定の手続を経まして、当該事業のために国に対して補助を申請してきたということでございます。  したがいまして、私どもの見解では、この申請の理由は地元の林業産業の振興に寄与するというふうに考えまして、それから富士山一帯の自然環境の保護を図ることにも役立つ、それから演習場内土地の荒廃に起因する洪水、土砂流出等の災害の防止、軽減に寄与する、それから演習場周辺の保安、防音等のための緩衝地帯ともなる、こういうふうな効果が期待されるということから、冒頭に申し上げました防衛施設周辺生活環境整備法の第八条を適用して補助することといたしたものでございます。
  45. 原茂

    ○原(茂)委員 そういう細かい問題はまた後で、いま説明があった問題を中心にしてやります。あんなところで植林をやって、いまおっしゃったような周辺整備の目的が達せられるかどうか、冗談じゃないと言いたい。しかし、それはまた別の機会にやります。  四十八年に決定したものに基づいてという前提でございますが、その前提を受けて国有地の払い下げが行われたんだ。払い下げが行われるに当たって前提があったんだ。条件がついているんです。川崎さん説明のように。その条件を何にもやっていない。そして四十八年に勝手に決めたことだけをやるんだ、やるんだとおっしゃる。そのやるんだと言った中の実施に対しては、国有地の払い下げに対してはかくかくの条件がついています。国会の議決もあります。何を尊重します。いろいろなことを何もやっていないということをいま指摘しているんですが、これらについてはまた別の機会にやります。  いまお伺いしたのは実は答弁になっていない。適応性のある事業に対するそういう前提で補助金はおりるべきだ、予算の効率的な使用というものが前提でなければいけない。現に、植えたって引っこ抜かれ、植えても引っこ抜かれる。しかも、あれ活着すると思いますか、植林がつくと思いますか。六月末になってちゃんと植林ができました、こういうふうにあなた方言える自信がありますか、絶対ない。そんなものをほっておいたら、侵奪者の占有権が成立してしまいますから、いまの地元農民は大変ですよ、生活権の問題ですから当然引っこ抜く。いままでの判例、法律が示しているように、侵奪者の占有権が成立しない前に自分たちの占有権を守る権利がある、それをやるんだ。あんなもの定着すると思っているのか、活着しますか、あれ。だれも六月末に活着できますと言える人はないと思う。私は、活着しないことを断言できる。絶対あんなものは定着しないということはわかっている、現にやっているんだから、引っこ抜いているんだから。植えると引っこ抜かれている。そんなまるで効率性のない予算の使い方がありますか、補助金の出し方が。そんなことがいいなんということにならぬ。これはまた別の機会に専門にこれだけやらないといけないと思いますが、いまは次の環境庁に対する質問を先にしたい。  いま私が問題としている払い下げの二百十四ヘクタール、ここは富士箱根伊豆国立公園特別地域であることは間違いありません。ところが、この特別地域において、いま私が問題としている造林君吉田恩賜林組合は、先ほど放火されたと話した忍車入会組合の入会管理小屋の通行を困難にさせる目的で——先ほどの写真の左側にある、よく見てごらんなさい。あるいはいやがらせかもしれませんが、ブルドーザーでその小屋の入り口の直前に数個の穴を掘っているのがその写真にあるとおりです。物すごい穴を掘っている。  論ずるまでもなく、このような特別地域において、みぞ、堀、穴等いかなる土地の形状を変更する場合であっても、環境庁長官の許可を受けなければならないことは、法律上明らかであります。自然公園法の第十七条三項本文あるいは同項第七号を見るまでもなく、これは当然であります。果たして恩賜林組合からこのような穴掘りの許可申請があったのか、またあったとすればそれを許可したのかどうかを、第一に明らかにしてほしい。  次に、この造林者は、とにかく山梨県と締結した分収造林契約の実行を行わんがために、すべての法を無視して夜討ち、火つけなどを行うし、忍草入会組合のいわゆる栽培牧草地を侵奪している。先ほどからるる申し上げているとおり。仮にこの分収造林契約が有効であるとしても、それはもっぱら植林を目的とするものであって、忍草入会組合に対するいやがらせのための穴掘りまでも許容するものではないはずである。  該地は国立公園特別地域であり、許可がないにもかかわらず土地の形状を変更させたというのであれば、法に従って原状回復命令を出すなど、しかるべき措置を講ずべきが当然だと私は思うのですが、環境庁当局はどういう措置をとったのか、申請があって許可をしたのか、これからどうしますかもあわせてお伺いをしたい。
  46. 出原孝夫

    ○出原政府委員 国立公園の特別地域内におきまして道路等の工作物を新築をするとか、あるいはその他の工作物あるいは耕作を行うというような場合に、自然公園法の第十七条三項の規定に基づいて、その行為を行う者が環境庁長官の許可を受けなければならないということになっております。この十七条による環境庁長官の行為におきまして、非常に大きなものにつきましては都道府県知事から環境庁長官に上げてもらって環境庁長官が許可をするということになりますが、比較的軽易なものにつきましては、それぞれ政令に基づきまして県知事に委任してございます。  本件につきましては、私どもは県から報告を受けておりませんので、実情をつまびらかにいたしておりません。したがいまして、私もいまここでお伺いした事柄でございますので、調査の上御返答をさせていただきたいと思います。
  47. 原茂

    ○原(茂)委員 写真をよく見て行ってください。ちっとやそっとの穴ぼこじゃないのですから。いいですか。したがって、調査の結果、原状回復命令を出すべきだと思いますが、出さないでいい理由があったら、また後で知らせていただきたい。原状回復命令を直ちに出してもらうようにお願いしておきます。  次に、この傷害、放火等のすべての原因をつくり出したと言っても過言でない大蔵当局にお伺いをいたします。  私はこれまで、この払い下げが行われる直前の昭和五十二年八月二十三日の本委員会においても、かかる事態が当然発生するであろうことを指摘いたしまして、大蔵当局が責任を持って、現在該地を利用している農民の方々と話をつけなければならないということを強く申し入れてまいりました。このことは一番大蔵当局が知っているところであります。しかるに、さきに申し述べましたように、どうしても契約をしないわけにはいかない、払い下げをどんどんするんだと言ってやってこられました。したがって、それまでに農民の方々と話し合いをすることはしないが、これは山梨県が円満に問題を解決するために万全の努力を払うことという条件をつけて払い下げるのであるから何も問題はございません。もちろん解決する際には国と協議をすることを前提といいますか、あるいは国の指導を受けながらやるんだということが当然の前提となっておるので、決して心配は要りませんと川崎さんは主張してこられました。このことは、そのときの川崎さんの答弁をそのまま速記録から抜粋しているのですから間違いはございません。  したがって、私の指摘が杞憂であったかというと、あにはからんや、これまで関係当局にいろいろ質問をしてきたとおりの夜討ち、放火等犯罪行為が、農民の方からではなくて、造林者の方から起きている。しかも、それで事が相済んだかというと、とんでもない。現在では、現地ではますますその緊張が一段と高まってきているのが現状であります。  先日五月十二日、忍草入会組合の栽培牧草地に、造林者である恩賜林組合がもっぱら牧草をめちゃめちゃに根こそぐためにブルを入れたその日から、忍草入会組合の農民は体を張って入会権を守るために立ち上がっております。それもそのはず、忍草農民は、自分たちには入会権があるんだ、その入会権に基づいて牧草を栽培しているんだ、全生命をかけているんだ。かつて国は、この牧草地の利用について仮処分をかけたが、先ほども言ったとおり、その二カ月前に忍草組合の予定した開墾、整地はすでに終了していたんだ。当然のこと、裁判所はとりあえず現状不変更ということだけで、これ以上の開墾、整地、耕作を禁ずる旨の決定をされております。したがって、立入禁止は認められていないのだ。そもそもこのような仮処分は、仮処分制度上特別の理由がない限り現状不変更だけしか認められないものであります。忍草入会組合はもちろんこれに対しても不服として起訴命令申し立てを行い、現在甲府地方裁判所で係争中であることは、当事者としての大蔵省は一番よく知っているところであります。  その係争中に、しかも国みずからが申請をした現状不変更の仮処分の決定があるにもかかわらず、それを引き継いだ山梨県は、何ら占有排除等の適正な法的な手続を踏むことなしに、ブルを用いて、造林者をして占有を侵奪せしめているのであります。忍草の農民でなくたって、自分が丹精した収穫期を目前にした牧草をブルで根こそぎされるということは、その胸中を察してごらんなさい、余りあるものがあるではありませんか。  そこで伺いたいことは、大蔵省はこの牧草地にブルを入れてめちゃめちゃにするということを山梨県と事前に協議したのかどうか、先ほども明確な答えはございませんでした。しかしながら、後で話はございませんと言っておりますが、大蔵省が知らないはずはない。恐らくいままでの経緯から言ってもこのことを事前に知っていたとまだ私は思っております。もし事前協議も省の指導もしていないというなら、それでは話が全く違うと思う。大蔵当局は払い下げ契約の直前まで、とにかく円満に山梨県が解決するという条件をつけているし、しかも国の指導を受けながらこれらの現況利用者との解決を図るんだということを、再三再四私に答弁をしてきているのですから。それが山梨県独自の判断で、しかも違法にも、適正な手続を踏まないまま植林を強行し、農民の牧草を、生活権をめちゃめちゃにしているという。  それでは大蔵当局は、この一触即発の現状を踏まえて一体どのよう措置を今後とろうというのか。私の方にも限界があります。具体的にどのよう措置をとるのか明らかにされたい。そうしないと、払い下げ国有地は今後何年もの間不毛の闘争の場となっていくと思います。何回も言ってまいりました。成田を再び現出してはいけないと思う。今日のこの状態を放置して、何ら国が、大蔵省が手を打たないなら、誠意を示さないなら、しかるべき措置をとらないなら、今後また第二の成田以上の不祥事の起きることを私はある意味では憂えるものでございますから、ぜひとも何らかの措置を講ずるという大蔵省の決意をここに明らかにしていただきたいと思います。  しかもそれは有効な措置を講じておかないと大変だと思いますから、どうぞ口先や抽象論だけでなく、いま現にこの事態が起きている。放火がされたり重傷を負わせる傷害事件も起きている。こんな状態のまま、しかも環境庁にも聞きましたように、環境庁の許可もなしにこの人々の通行を阻害するようなとんでもない大きな穴を掘るというようなことまで起きている。それをそのままに、ただ警察権力に任すだけでいいのか。根本的に過ちを犯している大蔵当局がきわめて明確になすべき措置をとるべきだと思いますし、万一それが私に不十分な回答でございました場合には、引き続きこの問題を後また審議を続けさせていただくことを申し上げて最後にしたいと思いますから、御答弁をいただきたい。
  48. 川崎昭典

    ○川崎政府委員 現在は平穏になっておると伺っておりますが、かなりトラブルがありましたことについては、私どもも非常に残念に思っておるわけでございます。もともと契約をいたします前から、先生のいろいろの御指摘、あるいは御希望を十分伺っておりまして慎重に事を運んだつもりではございますけれども、山梨県が責任を持って円満に解決をするように最善の努力をすると言いましても、いろいろの問題がございましたけれども、懸案とされておることははっきりいたしておりまして、その後牧草をまいて、あるいはまたそれに対してブルを入れたといったようなことは新たに起こったことでございまして、もちろんそういったことがないように、また円満に解決しなければいかぬとは思いますけれども、当初予定されておった解決すべき事案ではなかったわけでございます。そういう意味で、私の方もある程度戸惑う面もあったわけでございます。非常にむずかしい法律問題もございますし、また事実問題もございます。もともと地元問題でございますから、大蔵省が直接立ち入ってこういう措置をとるということはむずかしいかと考えます。  したがいまして、せっかくの御要望でございますけれども、いま大蔵省がこういう措置をとりますということは申し上げることができないわけでございますが、山梨県に対しましては、やはりしんぼう強く円満に解決できるように指導してほしいということを常々申しておりますし、先月も協議したばかりでございます。今後とも協議を続けて、事態が円満にいい方向に向くようにできるだけのことはいたしたい、そういうふうに考えております。
  49. 原茂

    ○原(茂)委員 これで終わりますが、大蔵大臣、いままでお聞きになったとおり、しかもこれは非常に長い問いろいろな問題があって今日に及んでいるわけであります。いま単に川崎次長の答弁だけでこの問題が解決するとは思いません。大臣としてもこの問題に関しては十分な検討を加えた上で、いま大蔵省基本的になすべきことをなしてこの問題がここでおさまるというような事態にする義務があると思うので、ぜひそういった意味検討を十分にした上で処置をお願いしたいと思いますが、大臣から最後に決意を聞いて、終わります。
  50. 村山達雄

    村山国務大臣 この問題の経緯につきましては、原先生からもしばしば聞いているところでございますし、私も従来から山梨県の国会議員が全部与野党そろって措置を求めてきて、それをもとにいたしまして閣議決定が行われ、しかる後払い下げが行われる、現在植林が行われる、そして両組合の間に非常に大きなトラブルがあり、その中で法律問題あるいは事実問題、非常に困難な状況にあることはよく理解いたしました。  私は、この問題は法律問題もさることながら、何とかこの両組合の人たちが円満に解決できるという、先に向かっての努力が一番大事ではなかろうか、そう思っているところでございます。先般原委員お話を聞きまして、早速県当局を呼びまして川崎次長から指示をさしたところでございます。しかし、その後の状態につきましては、るるまたきょうお話がありました。なお、今後とも県と十分な連絡をとりまして、事実上一体どうしたらいいのか、こういう事実問題がむしろ中心であると私は思いますので、この上とも県と協議をいたしまして、大蔵省といたしましても最大限の努力を払ってまいりたい、かように思っておるところでございます。
  51. 原茂

    ○原(茂)委員 終わります。
  52. 楯兼次郎

    楯委員長 午後一時三十分再開することとし、この際、休憩いたします。     午後零時四十二分休憩      ————◇—————     午後一時三十五分開議
  53. 楯兼次郎

    楯委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  質疑を続行いたします。馬場猪太郎君。
  54. 馬場猪太郎

    ○馬場(猪)委員 物特を含めて過去三回ほど酒税法関係についてお伺いをいたしたわけですが、ずっとウイスキーばかりをお伺いいたしておりました。それで、いままでの経過の中で少し聞き漏らしたことがあるわけですが、ウイスキーばかりというわけにもいきませんので清酒に入りたいと思いますが、一、二点だけ、前に保留になっているようなものをひとつお答えいただきたいと思います。  たとえば、ウイスキーの色素の中にコチニール等の物質を入れているということについて、カラメルだけしか使っておりませんということだったわけですから、害が予想されるようなものについては、当然通達でもって使わないようにひとつ御指示をいただきたいと思いますし、また香味量の中にも、ワイン以外のものもあるいは使われておるかもわからないというよう状態もありますので、そういう点について、飲むものですから、速やかに通達などによって、有害と思われるようなものは使われないようにひとつお考えいただきたいということを申し上げておったのですが、その後いかがなったでしょうか、お伺いしたいと思います。
  55. 矢島錦一郎

    ○矢島政府委員 先般、ウイスキーの香味料、それから着色料につきまして、コチニールの問題に関連いたしまして先生の御質問がございましたのでありますが、日本の酒税法は御案内のとおりでございますが、ウイスキーにつきましても、食品衛生法の範囲内で使用が可能であるものだけについて使っておりまして、香味料につきましては、先ほど先生のお話にもございましたように、酒類以外のものは使用されていないというのが実情でございまして、その使用量も〇・二%から四・六%の範囲内ということで、五%の範囲内の使用になっております。  ただ、先生の御質問もございましたので、私どもといたしましても実はいろいろな例を具体的に調べてみたのでございますが、香味料を全然使用していないという事例もございました。それから過去にブランディーを使用しておったという事例もございます。それからシェリーなんかをたるに詰めまして、それを次のたるにあけましてウイスキーを貯蔵するという例、それからシェリー酒を使用する例とか、あるいはブランディーとシェリーと両方使う例等、いろいろな例がございましたわけでありますが、いずれにいたしましてもこういうよう状況になっております。  それから、着色料につきましては、先般カラメルだけであるということを申し上げたわけでございますが、やはりカラメルが使われておるわけでございまして、これは色の微調整をやるためにはどうしてもこういうものを使わないといけないということで、要するに砂糖を原料といたしましたカラメルを使っておるわけでございますが、大体〇・五%前後の微量が使用されておるということでございます。  それから、先生御質問のございましたコチニールとかアナトーというような色素につきましては、調査の結果全く使われていないということがわかりましたので、御報告を申し上げたいと思います。  いずれにいたしましても、使用の実態はこういうようなぐあいでございますが、やはり食品でございますし、こういう毒なものが入ってはいけないということはもちろん先生のおっしゃるとおりでございますので、いままでの使用状況を見ましても、食品衛生法で規定されたもののうちでも特に必要最小限度のものに限って使うというのが私どもの指導でございますが、そういう点につきまして、必要なものについては通達等もあるいは出すといったことも含めまして、さらに検討をさせていただきたいというふうに思っているわけでございます。
  56. 馬場猪太郎

    ○馬場(猪)委員 使っていないと言われるけれども、売っている方は売っているんですよ。ですから、やはり通達か何かで本当に守られるようにきちっと示しをつけておいていただく必要があると思いますので、あえて申し上げたのです。
  57. 矢島錦一郎

    ○矢島政府委員 御趣旨を体しましてさらに検討いたしまして、そういうことのないように注意してまいりたいと思っております。
  58. 馬場猪太郎

    ○馬場(猪)委員 なおウイスキーの流通とか価格の問題その他についてもまだまだお聞きしたいことがありますけれども、きょうは清酒を中心としてお伺いいたしたいと思います。  現在、酒税法で言うところの清酒にはどういうものがあって、どういうものが流通しておるか、お教えいただきたいと思います。
  59. 矢島錦一郎

    ○矢島政府委員 お答え申し上げます。  酒税法の三条三号という規定がございまして、この中におきまして清酒というものは、一番目といたしましては「米、米こうじ及び水を原料として発酵させて、こしたもの」、二番目といたしまして「米、水及び清酒かす、米こうじその他政令で定める物品を原料として発酵させて、こしたもの」、三番目といたしまして「清酒に清酒かすを加えて、こしたもの」となっております。  ちょっとお時間を拝借して大変恐縮でございますが、若干補足させていただきますと、酒税法施行令第二条第一号におきましては、ただいま先生のお話もありました「政令で定める物品」というものの中でございますが、「麦、あわ、とうもろこし、こうりやん、きび、ひえ若しくはでんぷん又はこれらのこうじ」というものが使われております。それからさらに第二号で「アルコール、しょうちゅう、ぶどう糖、水あめ、有機酸、アミノ酸塩又は清酒」が原料として使われるということでございます。  しかし、清酒としての品質保持という問題もございまして、こういう政令で定める原料につきましてはその重量の合計が米及び米こうじの重量を超えないものに限るということで制限が行われております。  それから、あるいは御質問がちょっと違う御質問だったかとも思いますので、清酒の種類について申し上げますと、普通酒という区分のほかに三倍増醸酒、アルコール添加酒という区分もございます。  さらにお酒の種類といたしましては、いろいろな区分によりまして、たとえば吟醸酒とか生一本とか本醸造とか、いろいろなお酒のつくり方のいかんによって区分をした、清酒の製造法による区分方法もございます。  以上でございます。
  60. 馬場猪太郎

    ○馬場(猪)委員 私が言いました酒税法で言うところのものは、結局三つですね。三条で言っている昔からの米及び米こうじ、水といったものからつくられたいわゆる純米酒と言われているものですね。これと政令の二つということになりますね。  その中で、いま三増酒とアル添酒というものがあるわけですが、それぞれどれぐらいのパーセンテージで生産され、市場へ出ておりますか。
  61. 矢島錦一郎

    ○矢島政府委員 お答えが大変おそくなりまして失礼いたしました。  アルコール無添加酒、アル添酒、三倍増醸酒の生産量、出荷量でございますが、最近の年度、昭和五十一酒造年度におきます製成数量について見ますと、アルコール二十度換算でございますが、普通酒が八十二万七千六百九十三キロリットル、三倍増醸酒が四十二万八千六百七十キロリットル、合計百二十五万六千三百六十三キロリットルとなっております。  これを構成比で見ますと、普通酒の場合に六五・九%、三倍増醸酒が三四・一%でございます。  さらに、アルコール無添加酒がこのほかに製成数量としてどのくらいあるかということでございます。これは国税庁では調べておりませんが、酒造組合中央会の調査結果では一万二千七百六キロリットルになりますので、全体のお酒の製成数量の中では約一%になろうかと思います。  それから、出荷数量につきましては、実は本造りとか原酒とかいろいろな形で出ておるものですから、アルコール無添加酒あるいはアル添酒あるいは三倍増醸酒といった区分によっては調査しておりません。したがって、詳細についてはわからないという実態になっております。
  62. 馬場猪太郎

    ○馬場(猪)委員 われわれが普通常識として考えておるお酒は三条三号のイの純米酒、これが従来のお酒だと思うのです。それが全体量の一%くらいしか出ていない。あとは三増醸にしろアル添にしろ全部で——数字が合いませんね。六五・九と三四・一だったら九〇ですね。あと一〇%くらいはどうなっているのですか。
  63. 矢島錦一郎

    ○矢島政府委員 いま申し上げた数字をもう一遍繰り返しますと、普通酒が六五・九%、三倍増醸酒が三四・一%でございますので、両方合わせまして一〇〇%でございます。  その内訳といたしまして、普通酒の中に約一%の純米酒がある、こういうことでございます。
  64. 馬場猪太郎

    ○馬場(猪)委員 いわゆる純米酒というのは常識的にわかりますけれども、普通酒の中のアル添酒というのはどういうものか御説明いただきたいと思います。
  65. 矢島錦一郎

    ○矢島政府委員 アル添酒と申しますものは、普通の醸造法によってつくりましたお酒に対しまして、アルコールを添加したお酒をアル添酒と普通言っておるわけでございます。
  66. 馬場猪太郎

    ○馬場(猪)委員 原料的にはどういうことになるのでしょうか。たとえば純米酒の場合は一〇〇%米、米こうじ及び水ということで天然物質ですね。ですけれども、アル添酒はそれがどういう比率になっておるのか。
  67. 矢島錦一郎

    ○矢島政府委員 アル添酒だけというのはなかなか計算がむずかしいのでございますが、五十一酒造年度におきます原料の使用状況という点から申し上げますと、原料の中で普通酒——普通酒は先ほど申し上げましたように純米酒も入っておりますので純米酒とアル添酒の合計になろうかと思いますが、玄米におきましては四十五万八千九百五十五トン使われております。原料用アルコールが四万九千五百八キロリットル使われております。それからあと乳酸が一万二千四百八十六キログラムでございます。こはく酸が二百九十七キログラム、くえん酸が七キログラム、清酒かすが五百八十四・三トン、あと清酒が実数といたしまして五百六十三・七キロリットル、以上が普通酒の場合の原料とお考えいただいて結構かと思います。
  68. 馬場猪太郎

    ○馬場(猪)委員 いわゆる純米酒は一%ですからほとんどがアル添酒ということになりますね。そうすると、そのアル添酒のうちで、いわゆる米からとったあるいは米こうじからとったアルコールでできた度合いと、それから添加しているアルコールの度合いは、どういうパーセンテージになっていますか。
  69. 矢島錦一郎

    ○矢島政府委員 突然の御質問なんで、あるいは多少間違いがあるかと思いますが、大体原料米六に対して四くらいがアルコールではないかというふうに思われます。  それから、先ほど申し上げました四万九千五百八キロリットルというのは、百度換算数量でございますので、現実には市販酒換算になりますともっと薄まった形になりますので、この数字が直ちにその比率に反映するということにはならないということは、ひとつお含みおきいただきたいと思います。
  70. 馬場猪太郎

    ○馬場(猪)委員 それでは純米酒で、純米酒は米、米こうじが一〇〇%でしょう、それで一トン当たり、玄米でも白米でもいいですから、お米からとったアルコールというのはどれくらいとれるのですか。
  71. 矢島錦一郎

    ○矢島政府委員 手持ちにはちょっと……。調べてからお答えいたしたいと思いますが……。
  72. 馬場猪太郎

    ○馬場(猪)委員 そんなのは常識じゃないですか。税法に載ってあるんだから、そのとおり、それの構成比はどうですか、表はあるんじゃないですか。事前にちゃんと言ってあるじゃないですか。——私の方にいただいている資料を読みましょうか、それでは。白米一トンから平均して三千七十八リットル、普通酒の場合は二千四百七十八、三増酒の場合は五千三百七十九、無添加の場合は千七百四十八リットル、こういうふうにこれに載っておりますが、アル添酒の場合はすでに醸造の段階でもアルコールを入れているわけでしょう。そうすると、全体のアルコールと純粋に米からとったアルコールの比率はどれくらいかというのはすぐ出るでしょう。
  73. 楯兼次郎

    楯委員長 どうですか、資料を提出した方がわからぬでは審議できぬじゃないですか。  間税部長
  74. 矢島錦一郎

    ○矢島政府委員 ちょっとあるいは正確な数字にならないかと思いますが、五十一BYの精製清酒につきまして、実製造数量につきまして見ますと、玄米五十六万七千六百七十六トン使いまして、アルコールを十万六千五百九十四キロリットルつくっておりますが、それによりまして仮にそれを全量米からつくるというふうにいたしますと、アルコール換算では十四万四千六百七十六キロリットルということになります。そうしますと、玄米一トン当たりの精製アルコールは二百五十四・八六リットルという数字になろうかと思います。
  75. 馬場猪太郎

    ○馬場(猪)委員 それでは、アルコール添加酒全体として平均して考えた場合には、米からつくったアルコールと、いわゆる粗留アルコール等精製アルコールとの比率というのはどういうことになるのですか。さっき言われた大体四分六ということでいいわけですか。四分が米からつくったアルコール、六分がアルコールということですか。
  76. 矢島錦一郎

    ○矢島政府委員 普通酒の場合には大体そういうことになろうかと思いますが、そのほかに三増酒というお酒がございますので、またちょっと、この数字がお酒全体についてどのくらいかということになりますと、必ずしも正しくないというふうに思います。
  77. 馬場猪太郎

    ○馬場(猪)委員 それでは、三増酒は、三増酒だけで考えた場合は、米からつくったアルコールと、ほかの粗留アルコール等精製アルコールはどれくらいだという比率もわからないわけですか。
  78. 矢島錦一郎

    ○矢島政府委員 調べましてお答えいたします。
  79. 馬場猪太郎

    ○馬場(猪)委員 後でまたいただくとして、一%の純米酒を除いては、いま言われるように、いわゆるアル添酒というものと三増酒と——三増酒は恐らくそれのもっとひどいものだと思いますけれども、普通酒と言われるものでも六〇%が粗留アルコールということでしょう。ということになると、ウイスキーの二級、一級ぐらいとみんな中身は一緒だということで、ウイスキーの場合はモルトが入っているだけで、そして清酒の場合はそこに日本の米からつくったアルコールが入っているだけで、色が違うだけというような結果になりはしないでしょうか。
  80. 矢島錦一郎

    ○矢島政府委員 お答えいたします。  先般来ウイスキーにつきましていろいろ御質問がございましたが、清酒の場合につきましても、さまざまなものがございまして、御案内ように、純米酒から、あるいは本醸造といいましてアルコールの非常に少ないもの、ほとんどが米からつくったアルコールといいますかお酒を中心としたもの、それから普通のアル添酒というもの——アル添酒につきましても、いろいろなものがございます。さらに、そのほかに、醸造酒を使いましてブレンドしたもの、いろいろなものがございまして、現実問題といたしましては、そういうものをいろいろブレンドして出荷しているということでございますので、先生御指摘ように、アルコールで全部つくったもの、あるいは相当の部分は確かにアルコールも入っておりますけれども、そのお酒自体について見ますと、必ずしもそのお言葉が当たらないのじゃないかというふうに私ども考えておるわけでございます。
  81. 馬場猪太郎

    ○馬場(猪)委員 アル添酒でも四分六だと言われるのですよ。三増酒はもっとアルコールの量が多いわけですよね。そして三増酒というのは、ずっと調べてみますと、一トン当たりに三〇%のアルコールが二千四百リットルということですよ。三〇%ということは、普通市場に流れているのは一五、六%ぐらいですから、それを倍に薄めるというふうに見なければならぬと思いますから、一トン当たり——私の方の調べたところでは、一トン当たり千七百四十八リットルの、米からできた酒、アルコールができるのですが、四千八百リットルがアルコールが入っておるということになるのでしょう。それが市場に大体三十数%流れておる。そうすると、一番いいものでも四分六の割合でアルコールが入っているもの、それとまた三増酒とを混合して市場に出しておる。これがいまの日本の九十何%か、九九%ぐらいまでの日本の酒なんですよ。
  82. 矢島錦一郎

    ○矢島政府委員 ちょっとお答えになるかどうかわかりませんが、醸造酒だけにつきまして原料を調べましたものがございますが、五十一酒造年度について見ますと、玄米では十万八千七百二十トン使っておりまして、醸造割合が一九・三%、原料用アルコールが五万七千八十五キロリットル、あとブドウ糖とかいろいろなものがございますが、これを平均いたしますと、つまり普通酒と醸造酒と両方入れました五十一酒造年度の清酒の製造状況表というものから御説明申し上げますと、玄米では五十六万七千六百七十六トン使いまして、その原料米の玄米は白米に直しますと四十一万一千八百八十七トンということになります。そうしますと、お米を約七二・六%精米しまして、原料アルコールはそのほかに十万六千五百九十三キロリットル使っている。平均いたしまして使用割合は二百五十八リットルでございます。あとブドウ糖その他を使っているというよう状況になっておるわけでございます。
  83. 馬場猪太郎

    ○馬場(猪)委員 総量で言っていただいてもなかなかびんときませんから、大体いま日本の市場で流れている清酒の中で、アルコールの度合いと本当に純粋な米からとったものとの度合いはどうかということをさっきからお聞きしているのですけれども、数字が出ないようですから、それはそれで後でまたいただきますけれども、それじゃ、いま酒造組合があるいは公取委員会といろいろと御相談になって市場に出しておるものについて、たとえば吟醸酒とかあるいはまた本醸造とかいういろいろ言葉をつくっておりますけれども、それについて中身をひとつ示していただきたいと思います。
  84. 矢島錦一郎

    ○矢島政府委員 先生御質問の吟醸酒その他ということにつきましては、中央会が自主的に公取とも相談をしながら、現在の清酒の表示に関する基準というものをつくっておりまして、たとえば吟醸酒というのは精米歩合を六〇%以下、といいますと、ぬかを四〇%以上出すわけでございますが、そのぐらいみがいた白米と、先ほどから申し上げております醸造用アルコールを原料としてアルコールの使用量が、白米千キロ当たり百二十リットル以下、これはアルコール分一〇〇%換算でございますが、以下でありまして、糖類を使用しない清酒、いわゆる吟醸づくりをした清酒を吟醸酒と言っております。  それから、本醸造というのがそのほかにございますが、本醸造というのは、白米と醸造用アルコールを原料といたしまして、アルコールの使用量が白米千キログラム当たり百二十リットル以下でありまして、糖類を使用しない清酒、これは、ですから先ほど先生のおっしゃっておられた三増酒は全然入っていないというお酒でございます。  それから、純米酒は、御案内ように白米だけを原料といたしまして、アルコールとか糖類を全然使用していないといったようなものでございます。  そのほか、たとえば手造りとか、秘蔵とか、原酒とか、生一本といったものがございますが、特に生一本だけについて申し上げますと、生一本というのは、米及び米こうじだけを原料といたしまして、自醸酒といいまして、おけ買いしないというお酒だけでつくりまして、かつ原酒であるものに限る。  このほかいろいろな名称がございますが、清酒の中央会といたしまして自主的にこういうものを決めまして、現在売り出しておるというのが現状でございます。
  85. 馬場猪太郎

    ○馬場(猪)委員 いま言われたのは比較的質のいいお酒で、非常にパーセンテージが少ない。いわゆる普通酒とか三増酒と言われるものが悪いかいいか、これはわかりません、いまのアルコールはずいぶんよくなっているそうですから。しかし、われわれの常識で考えている米からつくった酒という、普通そういうふうに考えているものから比べれば、いわばわれわれの持っておる酒に対する認識というのは、灘とか伏見とか、いわゆる上方でつくった灘流の酒だと思います。市場に流れているのはほとんど戦時中からつくられた、大蔵省流という呼び方をしていいのかわかりませんけれども、そういったお酒だと思います。市場がほとんどそういうことだと思うのですが、その大蔵省流のお酒というのは、アル添にしろ三増酒にしろ、アルコールを主体としている。これじゃやはり飲んでいる方の立場になれば、もう一つどうもお酒を飲んでいるような感じがいたしません。アルコールばかり飲まされている。ただ色が白いか、こはく色かの違いだけだという感じしかいたしません。  それで、やはりアルコールをできるだけ少なくするよう措置というのはとっていらっしゃるはずなのですが、それはどういうふうになっておるのでしょうか。
  86. 矢島錦一郎

    ○矢島政府委員 お答えいたします。  先生がおっしゃるようにいろいろいきさつがございまして、戦争前は御案内ように本格的な清酒と申しますか、米、米こうじを中心としたお酒でございました。しかし、アルコールを添加するという技術につきましては、江戸時代から柱じょうちゅうと申しまして、いいお酒をつくるコツというふうに言われております。明治時代になりましてもそういうよう方法がずっと継承されてきておりまして、戦前からそういうアルコール添加のお酒というのがございました。ただ、現在のように、一般的に非常に普及したという状態にはなかったわけでございます。  それから、三倍増醸酒というのは、御案内ように非常にお米が足りなくなりまして、昭和二十四年からであったと思うのでございますが、国民の側におきましてお酒を非常に飲みたいという需要も多い、しかしお米ができないという実情もございまして、まず試験的に実施いたしまして次第に普及してきたというお酒でございます。  ただ、お酒の種類につきましては、私どもといたしましては、それぞれに純米酒、アル添酒、三倍増醸酒、いろいろ特色があると思うのでございますが、酒質はあくまでも国民の嗜好に合ったものであると同時に、いいものでなければならないという見地から、国税庁におきましてもその一つの基準をつくりまして、具体的に申し上げますと、「清酒の製造方法の承認基準について」という通達をつくりまして、これによりまして、そのアルコールの添加量とかあるいは増醸比率というものを一定の限度以下に抑えるというよう措置をとっておるわけでございます。
  87. 馬場猪太郎

    ○馬場(猪)委員 その承認基準について、現在はどういうふうな限度を設けてやっておりますか。
  88. 矢島錦一郎

    ○矢島政府委員 これはいきさつがございまして、昭和二十五年からいろいろ変遷を重ねておるわけでございますが、昭和四十八年九月に定めました承認基準によりましては、その使用する原料用アルコールは連続式蒸留機によって製造したアルコールであるということ。これは連続式蒸留機というのは非常に精製されたアルコールができるわけでございまして、品質の点からいってこういうものに限定しているというのが実情でございます。  それから、第二の方法といたしましては、その原料用アルコールの総使用量は白米千キログラム当たり二百八十リットル、これはアルコール一〇〇%換算でございますが、二百八十リットル以下であることというのが一つでございます。  三番目といたしましては、増醸酒の製造に使用する白米の数量は、総使用白米の二三%以下であることというのが三番目でございます。  四番目といたしましては、増醸酒に使用する原料用アルコールは、白米千キログラム当たり二千四百リットル、これは三〇%換算でございます。  以上四つの基準を設けまして、少しでもやはり酒質のいいものをつくるということで私どもは指導しておるわけでございます。
  89. 馬場猪太郎

    ○馬場(猪)委員 アルコール一〇〇%換算とか三〇%換算とかということで、一々基準が違うのはどういうわけなんですか。
  90. 矢島錦一郎

    ○矢島政府委員 いろいろいきさつがあるわけでございますが、業界、まあ御案内ように中小企業でございまして、それから終戦後二十四年から三増酒がいろいろ出てきたといった三増酒全盛時代を経まして現在に至っておるわけでございますが、業界としても少しでもいいものをつくっていきたいという気持ちがある一方、コストの問題とか設備の問題とか技術の問題とか、いろいろむずかしい問題がございまして、なかなか進まない。少しずつはよくなっておるわけでございますが、進まない。そういうような、いわば現在の実態に合わせてそういうような基準が設けられておるわけでございます。  それから、先ほどちょっと御説明が不十分でお答え申し上げなかったのでございますが、五十一酒造年度の実績でいきますと、米からできるアルコールが普通酒の場合で七〇%でございます。それから添加アルコールが三〇%。それから三地酒の場合でございますが、米からできるアルコールが三三%、添加アルコールが六七%。合計いたしますと、その米からできるアルコールが六〇%、それから添加アルコールが四〇%ということで、先ほど申し上げました六、四、大体こういう数字になろうかと思うのでございます。不十分な御答弁で申しわけないと思います。
  91. 馬場猪太郎

    ○馬場(猪)委員 そのときの状態とか中小企業の状態と言われたけれども、同じ四十八年の九月に出された通達で、普通酒の方は百度換算でいき、そして三増酒の方は三十度換算で言われておる。なぜそういうように分けて言われるのですかと言うのです。同じときに出されているのです。
  92. 矢島錦一郎

    ○矢島政府委員 ちょっと十分なお答えにならないかと思いますが、大体慣行として行われておりましたのは、当時三〇%というような比率で取引されておりましたし、それから一〇〇%というのも取引の実態に合わせたものではないかというふうに思われます。
  93. 馬場猪太郎

    ○馬場(猪)委員 取引実態に合わしたって、これじゃわかりっこないですよ。物差しがみな違うんだ。一つ一つ違うんですよ。なぜあえてそういうふうなやり方をなさるんでしょうか。普通だったら同じ物差しではかるはずですよ。中には二十度という換算のやつもある、三〇%という換算もあれば、まちまちの換算率でこういう承認基準を決めておられる。そのこと自体が非常に不明朗に感じますが、いかがでしょうか。
  94. 矢島錦一郎

    ○矢島政府委員 ちょっと十分な御説明ができませんで申しわけございませんが、決して不明朗なことでそういうふうになっているのではないというふうに私ども考えておるわけでございます。
  95. 馬場猪太郎

    ○馬場(猪)委員 どうも全く私の質問に答えていただいていないので、またそれは後にしましょう。  それじゃひとつ、質をよくするように努めておるとおっしゃるのですが、過去二十八年見ますと、承認基準の変遷を見ますとちっともよくしておられないのですね。たとえば普通酒の場合昭和三十三年度には玄米一トン当たり六百リットルの範囲、アルコールの添加率をこういうふうに決めておられる。ところが四十四年−四十七年になりますと、今度は一トン当たり八百リットルの範囲と、二百リットルふえておるのです。あるいは増醸酒の場合も——増醸酒の場合はどういうわけか二七%から二六%に減っているというふうに、普通酒の場合なんか、アルコール添加率を減らす、質の向上を図っていると言いながら、三十三年から四十四年、十年の間に逆転してむしろふやしていっているという情勢にあるじゃありませんか。言っておられることとしておることがずいぶん違うように思うのですが、いかがでしょう。
  96. 矢島錦一郎

    ○矢島政府委員 御説明申し上げます。  六百リットルと八百リットルという普通醸造の場合の製造湯元のアルコールの使用数量でございますが、これは計算の単位が違っておりまして、当初三十三年は六百リットルとございますが、これは玄米ベースで計算したものでございます。それから、四十四年から四十七年につきましては使用白米千キログラム当たり八百リットルの範囲内ということで、玄米を実際にはみがきまして、現在約七割台の精白歩合でございますが、みがきました白米のベースで何リットルという計算になっておりますので、一見ふえたように思われるわけでございますが、実際はそうではございません。  それから、御案内ように、製造場元のアルコール使用限度数量は四十四年から四十七年までは使用白米千キログラム当たり二百九十五リットルであったものが、四十八年以降については二百八十リットルということでむしろ減少しているというのが実態でございます。
  97. 馬場猪太郎

    ○馬場(猪)委員 いま現在精白率はどれくらいになっておりますか。三十四年までは七五%というふうに大蔵省の方で承認基準としてお決めになっておるのですが、三十五年以後は制限なしということになっておりますが、これは自由という意味ですか、何らかの指導をなさっているわけですか。
  98. 矢島錦一郎

    ○矢島政府委員 お答え申し上げます。  現在幾らみがいてもいいということで特に制限はございませんが、平均で申し上げますと、酒、増醸酒両方合わせまして、七二・六、約七三の精米歩合というふうにお考えいただいて結構だと思います。
  99. 馬場猪太郎

    ○馬場(猪)委員 先ほどの御説明であれば、本醸造とか吟醸というのはできるだけ米をみがいてぬかを多く出す、いい方にということですね。ところが、現在は、最初は七五%のみがき率ということであったのに、七三平均になって、これもよくなってないですね。むしろ後退しておりますね。
  100. 矢島錦一郎

    ○矢島政府委員 精白歩合でございますが、七五というのは二五ぬかを出すということでございます。それから七三というのは二七ぬかを出すということでございますので……。
  101. 馬場猪太郎

    ○馬場(猪)委員 了解。  それじゃ、米からのアルコールは一キロリットル当たり大体幾らぐらいになりますか。そして粗留アルコール等精製アルコールは大体一キロリットル当たり幾らぐらいになりますか。
  102. 矢島錦一郎

    ○矢島政府委員 ちょっと単価につきましてはいま調べまして後ほどお答えいたしたいと思いますが、原料米の価格でございますが、価格につきましては、清酒、ウルチ米の場合で自流米で五十二年が一万七千四百円、六十キロ三等でございます。四十四年を一〇〇といたしますと、五十二年につきましては約二倍という上昇を見ております。  以上でございます。
  103. 馬場猪太郎

    ○馬場(猪)委員 私なぜそういうことをお尋ねするかと言えば、米からつくったアルコールに対しても、いわゆる精製アルコール、廃蜜糖からつくられた精製アルコールについても、結局税金は同じことなんでしょう。ざっと計算してみましたら、米からつくったアルコールが大体百十万ぐらいするんじゃないでしょうか。そして粗留アルコールが二十万くらいじゃないでしょうか。でも、できてきた結果に対しては税金は同じ扱いをする。これじゃ、いい米の酒はできないのがあたりまえじゃないでしょうか。大蔵省流の醸造でいけば、できるだけ安くあげて、そして税金はできるだけ高く取る、こういうふうな考え方に貫かれておったためにこういう結果が出てきているんじゃないでしょうか。
  104. 矢島錦一郎

    ○矢島政府委員 原料代についてはちょっと調べまして後ほどお答えいたしますが、おっしゃるとおり、確かに米からつくりましたアルコールの方が高いことは事実でございます。それから糖蜜その他からつくられましたアルコールが低いということでございますので、税率は同じじゃないかというようお話でございますが、やはり級別制度もございまして、非常によくみがいたお米からつくりましたお酒、あるいはアルコールの添加量の非常に少ないお酒、こういうものにつきましては、やはり特級酒とか一級酒という認定も受けておりますし、それから、二級酒はどちらかと言えば、中には地酒でいいお酒といいますかアル添酒のみというのもあるかもしれませんが、普通の場合にはやはり醸造用糖類をまぜまして三増酒の割合がかなり入っているようなお酒が普通でございますので、そういう意味におきまして、税率面のバランスはとれておるというふうに私は考えておるわけでございます。
  105. 馬場猪太郎

    ○馬場(猪)委員 私が申し上げているのは製品としてのことを言っておるのじゃなしに、三増酒なりアル添酒なりあるいは純米酒なり、それぞれがまだブレンドされない酒には、六〇%安いアルコールが入って、四〇%高いアルコールが入っておる。しかし、その安いアルコールと高いアルコールとの税率をかけるときには、蔵出しをするときには同じ率をかけておるわけですから同じ扱いだと言っているのです。そういうことでしょう。ということは、結局米の値段が上がっているのですから、コストが上がる一方ですから、どこかで安く上げなければ売れないということでしょう。ただでもウイスキーやビールに押されて日本酒は売れないということで、できるだけコストを下げるために結果的にはそういうふうになっているんじゃないでしょうかと言っているのです。
  106. 矢島錦一郎

    ○矢島政府委員 お答え申し上げます。  先生御質問のとおり、やはりお酒につきましては、米というものを中心にした場合には、お米の値段は御案内ように毎年上がっておるわけでございます。一方におきましてアルコールはそれほど上がらないといった問題もございまして、やはり傾向といたしましては清酒そのものが九九・六%までが中小企業性を持った産業でございます。したがいまして、少しでもこういうような原料事情も同時に緩和しながら清酒をつくっていこうという立場に立つ限りは、そういうようコストダウンということはある程度考えていかざるを得ないし、また当然のことではないかというふうに考えるわけでございます。
  107. 馬場猪太郎

    ○馬場(猪)委員 全くお答えになっていない。私は、この間のウイスキーからきょうのお酒についても、全部質の問題だけ申し上げているのですけれども、結局その質が、いまの酒税法のために酒を昔のように——いいか悪いか、これまた議論があるところだと思います。あるいは大蔵省流のお酒のつくり方もいいんだと言えば、それは日本の現在のお酒として一つの意味があるかもしれませんけれども、いまの酒税法に基づいて大蔵省の指導してやっておられる清酒のつくり方でいけば、結局悪い方へ悪い方へ、質の悪いものに流れていってしまう、それがまた酒の需要を減らしていくという悪循環をたどっているんじゃないかというふうに申し上げているわけです。  時間がありませんから、もう一つだけ聞いておきます。ウイスキーの特級、一級、二級の級別というのは、ブレンドの率と度数、これで決めておられますね。しかし清酒の方は、特級、一級、二級の区別は、そういう中身じゃなしに、もちろん中身もあるでしょうけれども、国税庁長官もしくは国税局長の委嘱された審議会のもとで鑑定をなさって決めるわけですね。そうすると物差しが違うのですね。同じ酒税法の中に決められながら、特級、一級、二級という名前をつけながら、ウイスキーの物差しと日本酒の物差しは違うのです。違うということは、飲む側にとって非常に不公平じゃないでしょうか。特級、一級、二級のウイスキーを考えて、やはりモルトが多いものは級も上だと思うが、清酒は違うのですから。清酒とウイスキーとの物差しの違いというものは、これはどう考えてもおかしいと思いますが、その点はいかがでしょう。
  108. 矢島錦一郎

    ○矢島政府委員 お答え申し上げます。  確かに先生のおっしゃるとおり、ウイスキーの場合には度数と原酒の混和率ということによって級別が決められておることは事実でございます。一方におきまして清酒の場合には官能審査で決めておりまして、品質上欠点がなくて香味とか色調が優良なものを特級、それから佳良なものを一級、それから審査を受けなかったもの、あるいは審査を受けてもそれに合格しなかったものを二級ということで、もっぱら官能審査によっておるということは、確かに洋酒の場合、ウイスキー類の場合と、清酒の場合で判断基準が違うという御指摘はあろうかと思うわけでございますが、私どもといたしましてはやはりウイスキーの場合にはできるだけ——まあ級別を決めるメルクマールが何かということだと思うのでございますが、ウイスキーの場合につきましてはやはり原酒の混和率、モルトとかそういう原酒がたくさん入っているものほどいいものだというのは、経験則によりまして、そういうことで一応確立している問題でございます。したがいまして、そういう原酒混和率によることの方がより妥当であるということで決めておるわけでございます。  一方また清酒の方につきましては、御案内ようにいろいろなたとえば分析値でやればいいじゃないかというような御意見もあるいはあろうかと思うのでございますが、やはり西独とかフランスあたりでもこれは官能でやっているというのが普通でございますし、あくまでも官能、まあ官能といいますか非常に微妙な味の違いというものはあくまでも官能審査でないとわからないというのが実情でございまして、しかもその官能審査を行うに当たりましては非常な専門家が大ぜい集まってやるということで公平を期しておるわけでございまして、まあ清酒の級別のあり方が現在のような官能審査のやり方によっているということは決しておかしくないというふうに私ども考えておるわけでございます。
  109. 馬場猪太郎

    ○馬場(猪)委員 官能審査が悪いなんてちっとも言ってないのですよ。ウイスキーの基準とこっちと違うということを言っているだけで、いま一、二の例を申し上げただけで、この間からの質問の中で、いまの酒税法は現状に合わない点がずいぶんあるのじゃないかと思う、だからひとつ御研究をいただきたいということを申し上げているのです。そのごく一、二の例しか申し上げてないのですが、大蔵大臣、もう時間が参りましたので、この間からたびたび酒税の関係ばかりで申しわけないのですが、いろいろ矛盾点とかあるいは腑に落ちない点とか実情に合わない点があるので、酒税についていろいろと御研究いただきたいし、将来改正していただかなければならない問題もあると思いますので、大蔵大臣に所感をお伺いしたいと思います。
  110. 村山達雄

    村山国務大臣 ことし酒税法の増税をいたしました際にも、大蔵委員会におきまして、いま馬場委員が言われたような各種の問題が提起されたわけでございます。何分にも致酔飲料であり、しかも嗜好品であり、しかも財政物資だ、そういう枠の中でやっているわけでございますので、なかなか一律的に明快に答えられないということは、大蔵委員会においてもわれわれは経験いたしたところでございます。ただいま累次にわたりまして馬場委員からいろいろの御指摘がありました。私たちも十分参考になるところがありますので、ぜひ今後研究の材料にさせていただきたい、かように思っておるところでございます。
  111. 馬場猪太郎

    ○馬場(猪)委員 終わります。
  112. 楯兼次郎

  113. 村山喜一

    村山(喜)委員 大蔵大臣は、佐世保市工の救済問題がここまで解決が長引いたのは、佐世保重工の取引でメーンになる銀行あるいは大株主がいないことに原因がある、こういうふうに言われたことがございますか。
  114. 村山達雄

    村山国務大臣 その種のことを紀君からの質問に答えまして、正確にそう言ったかどうかわかりませんけれども、一つの経営の特色というのはその辺にあるんじゃないか、その種のことを申したような記憶がございます。
  115. 村山喜一

    村山(喜)委員 大蔵大臣は総理大臣から、佐世保重工の問題につきましては救済について三回指示をされたと新聞では報道しておりますが、そうでございますか。
  116. 村山達雄

    村山国務大臣 閣議の後だと思いますけれども、総理から、佐世保重工の問題が非常に重要な問題になっているから大蔵省の立場からも考えてくれと言われたことは、たしか三度くらいあったような気がいたします。
  117. 村山喜一

    村山(喜)委員 そこで、財政、金融、税制の責任を持っていらっしゃる大蔵大臣は、全銀協の会長をしておられます松沢さんが言っておられますように、経営責任体制ができないことには金融サイドの問題にはならない、そういう感度はお持ちでございますか。
  118. 村山達雄

    村山国務大臣 やはり中心になる人は経営者でございますから、直接の経営者と申しますかあるいはそれに関連する親会社と申しますかあるいは株主サイド、その方面のしっかりした経営の決意と見通し、そういう具体的のプランを中心に企業というものは経営を維持し、立て直すときには立て直すべきものであろう、このように思っております。
  119. 村山喜一

    村山(喜)委員 そこで、けさほどのNHKのニュースを聞いておりましたら、金融面からの支援策がまとまったようなことを報道をしておりましたが、まとまりましたか。
  120. 村山達雄

    村山国務大臣 まだまとまったとは聞いておりません。
  121. 村山喜一

    村山(喜)委員 新聞に出ております内容のことも、まだまとまった内容ではないというふうに見てよろしいのですか。
  122. 村山達雄

    村山国務大臣 実はまだきょうの新聞をよく読んでいないのはまことに申しわけないのでございますが、まとまっているとは私は承知しておりません。
  123. 村山喜一

    村山(喜)委員 そこで私はお尋ねをいたしますが、この問題は政治論で処理をされているのではないだろうかという世間の風評がございますが、一体どういう立場でこの再建という問題を考えていかれておるのか、所管の省は運輸省でございますから、運輸省の船舶局長からお答えをいただきたいのでございます。  というのは、われわれが聞いております日本の造船業の現況はきわめて深刻でございまして、大幅な船腹過剰でタンカーが七千五言万トン、バルクが二千五百万トンも過剰状態である。建造能力は千九百万トンある。それに対して五十二年の准水量は九百八十三万トンで、五十三年の受注量は三百万トンそこそこではないだろうかというような話を聞いているわけでございます。そうなってくると、五十四年から五十五年にかけましての造船業の規模というものは大変低い操業率にとどまらざるを得ない。そうなった場合には、二十三万六千人の従業員がおるわけでございますが、人間も半分でよければ施設も半分でいい、こういうよう状況の中で、運輸省の造船所操業度の短縮勧告値というものが定められておるようでございますが、そういうものから見ましても、とてもじゃないけれどもそこまで到達ができない。  そういうふうになってまいりますと、ことしの夏ごろ特定不況産業安定臨時措置法によります安定基本計画が提示をされ、それとの関連の中で佐世保重工再建の問題はとらえなければならないのではないだろうか。そういうふうに考えてまいりますと、救済の線引きという基準は一体何だろうということが問われていると思うのであります。  そこで、そのことについて船舶局長の御答弁をいただきたいのです。
  124. 謝敷宗登

    ○謝敷政府委員 お答えを申し上げます。  現在の造船不況は、先生御指摘ように世界的に船腹が過剰であって、かつそれに対しまして世界の造船能力はかなりの水準にあるということから起こってきておるわけでございます。したがいまして、私どもとしましては、五十二年度、五十三年度、五十四年度というように、五十一年の海運造船合理化審議会の答申によりまして操業短縮を勧告することによって不況を切り抜けよう、こういうふうな考え方できたわけでございますが、確かに最近の受注状況等を見てまいりますと、一月、二月、三月で約七十五万トンということでございますから、一カ月ベースといいますと、二十五万トンぐらいの最になっております。ただ、これは一月が低かったためでございまして、二月、三月、四月、五月と大体見てまいりますと、月間約三十万トンぐらいのグロストンのところで終始しております。ただ、三十万トンといいましても十二カ月とっても三百六十万トンということでございますから、造船能力から見ますとはるかに低い水準であることは間違いないところでございます。  現在、海運造船合理化審議会で、特定不況産業安定臨時措置法に基づきます安定基本計画、あるいはその前段になります政令指定の業種になるための安定化方策について議論をしております。ここでは、先生先ほど指摘の千九百万トンという数字はいわゆるタンカーを含めた総トンでございまして、今後の受注の船穂を考えてみますと、貨物船なりあるいはLNG、LPG船等の船種が多くなりますので、そういう意味では貨物船換算トン数に直しますと能力はこれよりもかなり低い水準になります。それにしましても能力の過剰という問題を避けて通れないわけでして、いわゆる特安法による設備削減あるいは設備の休廃止についていま現在数字の詰めをやっておるところであります。そういうさなかにおいて佐世保重工の問題をどう考えるかということでございます。  佐世保重工の実態を申し上げますと、五十二年度の売り上げで見ますと、新造船部門が約六五%でございます。修繕、陸上機械、鉄鋼等の部門が残りの約三五%でございます。これはほかの専業造船所に比べますと、修繕等の部門がかなり多いわけでございまして、今後、佐世保重工の再建の場合には、新造船部門を縮小してその他の部門を伸ばす。こういう方向で関係者の協力が得られるように努力しているわけでございます。したがいまして、新造部門がかなりの水準に落ち込むということも想定して、再建ができるよう検討をしておるわけでございます。  全体における佐世保重工の地位という点から申し上げますと、従来は大手の七社に次ぎますいわゆる準大手というふうに目されてきておりまして、したがいまして、この企業が最悪の事態を迎えるということは、先ほど御説明いたしました全体の構造改普請を展開していく場合にきわめて悪い影響を与えるということにもなりますし、地域経済に与える影響もきわめて大きいということから、佐世保重工の従来の内容を見て、これなら、できるだけの努力をすれば経営の安定化ができるのではないかという意味で、関係者の協力を得て進めているところでございます。
  125. 村山喜一

    村山(喜)委員 大蔵大臣は金融支援の具体的なものはまだ詰まっていないとおっしゃいました。しかしながら、物の考え方というのはある程度まで詰まってきているんだというふうにつかんで悪いんですか。というのは、まず経営体制をしっかりしなくちゃいけません。それから第二には、佐世保重工の再建の青写真が示されなければ、だめです。そしていま退職金の支払いもなされていないわけですが、それをどういうようにするのか、あるいはいま資本金を上回る今日までの累積した赤字がありますが、それに対してどういうふうな措置をするのか。それから、これから操業をやっていく場合に新規の資金が必要ですから、それをどういうふうにして担保させるのか。こういうような問題が系統的には考えられるわけでございます。  だから、大蔵省の立場としては、金融支援の方が先に立つんじゃなくて、順序としては、まずそれをだれが再建するのかという経営責任者がきちっと決まる。それから、大株主がそれぞれのなににおいて協力をする。それから、運輸省を中心にした再建の宵写真ができる。こうして初めて金融支援というものの有効性が生まれてくるんだ、こういうふうに私は思うのですが、その順序を踏み違えるようなことはなさらないでしょうね。私の言っておるのは間違いでしょうか。
  126. 村山達雄

    村山国務大臣 やはりいま村山委員がおっしゃったような手順で事は決まっていくのであろうと思っておるわけでございます。
  127. 村山喜一

    村山(喜)委員 そこで、再度船舶局長にお尋ねいたします。  再建の青写真が未提出だ。経営者の方もだれが引き受けるというのはまだ確定をしていないようでございます。いまちょっと聞きましたところでは、運輸省としては、新造部門を減らして補修や陸上その他の部門でかせいだらどうか、こういうようなことでございますが、われわれは七月でドックの上は空になるよう状態だと聞いておるのです。佐世保重工というのはそれだけの技術を持ち能力を持っているので、体制が整えば、そして金融の道がつけば、国家的に見て再建をしなければならないという企業でございますか。それともローカル的な意味で、その地域経済の不安や雇用の面だけに問題があるんだというとらえ方でございますか。その点は運輸省の位置づけはどういうようになっておるのですか。
  128. 謝敷宗登

    ○謝敷政府委員 運輸省としましては、先ほど御説明を申し上げましたとおり、先生いま御指摘のいわゆる経営計画についての青写真の問題につきましては、新造と修理と機械、鉄鋼と三部門に分けまして、新造部門については、現状の三分の一程度に落ち込むという最悪の場合に耐えていけるか、こういうことを検討したわけでございます。その量につきましては、これは先ほど先生御指摘ような金融支援なり経営主体が決まりませんとなかなか確定の受洗までにこぎつけられませんが、体制の整備を急いで、現在引き合い中のものは受注にこぎつけまして、その他貨物船等の受注についても前からの引き合いがあります。したがいまして、これらを固めて、あるいは五十四年度につきましても三分の一程度の目標であれば私どもとしては一応達成可能な量だ、こう判断をしたわけでございます。  それから、技術的な面につきましては、かつて海洋構造物なりあるいはLNG船の技術提携なり技術の開発なりその他についてもやっておりますので、これを経営といいますか営業努力といいますか、そういうものと結びつけて売り上げに具体的に役立つように努力をしていくということで、経営主体が的確に決まれば再建し得ると判断をしたわけでございます。  全体の中でどうしても残しておくべき企業かどうかという点でございますが、私どもといたしましては、先ほども申しましたようにこれは準大手と言われるクラスのところでございまして、技術的にも従来からの実績もあるわけでございますから、経営が安定し、その方向が見えるのであれば立て直しを図るべきだ、こう考えておりますし、同時に地域的な雇用問題、その他関連中小企業の問題も考え立て直しについて努力をしておるところでございます。
  129. 村山喜一

    村山(喜)委員 銀行局長にお尋ねしますが、村田社長が六月三日に記者会見をいたしましたときに、希望退職者の募集では金融機関からの強い示唆があった、やめてもらったのに金融機関が融資を渋るのは心外だ、こういうよう意味の発言がございますね。  そこでお尋ねをいたしますが、合理化する上で、首を切りなさい、こういうようなことを金融機関が会社に対して指導した、また大蔵省として指導された、そういうような事実があるのかないのか。  それから私は、再建のめどが一応立てば担保物件はなくても将来の可能性にある程度期待をかげながらやらなければならないという点で、今日のこういう状況でございますから、雇用の安定という点から金融機関もかぶる、泣いてもらわなければならない点もあるだろうと思うのですが、泣くための、いわゆるどこまで泣いたらいいのか、これも腹を決めて指導されなければならない段階にあると思うのですが、そういう点についてはどのようなことをお考えになっておるのか、お尋ねをしたいのです。  特にここでお尋ねしておきたいのは、今国会で特定不況産業安定臨時措置法が制定をされますときに、社会党初め野党の方から、雇用の問題につきましては特に当該労働組合の意見を聞いて措置をしなさいということも中に取り入れられておるわけでございますから、そういう面を考えるならば、この問題についてはきわめて重要な意味合いがあると思いますので、そこら辺の限界線についてお間かせをいただいておきたいと思うのです。
  130. 徳田博美

    ○徳田政府委員 先生御質問のまず第一の点でございますが、金融機関といたしましては、預金者の、頭金を運用しているわけでございますので、預金者保護の観点からも融資先の企業の経営の健全性ということについては常に重大な関心を払っているわけでございますが、ただしかし、いま先生の御質問のような個々の企業内部の雇用問題につきましては、これは本来企業内部の事柄でございまして、金融機関としてそこまで立ち入って指示をするというようなことは適当ではないと考えられるわけでございます。したがいまして、この点につきましては、実は昨年、各金融機関の団体を集めまして、金融機関としてそのような行き過ぎた処理のないように十分に注意をきせているところでございます。  それから、第二の点でございますが、最近、構造的に問題を抱えた業種を中心に経営が困難に陥る企業が住じているわけでございまして、こういう企業に対しての金融機関の支援が問題になっているわけでございます。本来、このような企業支援の問題は、通例、個々の金融機関が社会的公共性の自覚のもとに良識を持ってみずから判断すべき問題でございますし、また国民の預金を預かる立場にある金融機関としては、預金者保護の立場から申しましても当然そこに一定の限界があるわけでございます。  しかしながら、他面におきまして、このような企業が経営困難に陥りますような場合には、雇用の問題であるとか下請の中小企業への影響の問題あるいは関連中小企業への波及、さらに地元への社会的影響等もあるわけでございまして、こういう点も勘案する必要があるわけでございます。したがいまして、企業としてみずから非常に真摯な経営努力を行っている企業が金融支援を求めてまいりました場合には、中長期的に見ましてその企業に再建のめどがあるという場合には、金融機関としてもその社会的公共性を自覚いたしまして、もちろん先ほど申し上げましたように預金者保護というような点から限界はあるわけでございますが、その限界のぎりぎりのところまで支援を行うように指導しているわけでございます。その限界につきましては、ケース・バイ・ケースでございますので一定の基準というものを申し上げることははなはだむずかしいもの、このよう考えております。
  131. 村山喜一

    村山(喜)委員 そういたしますると、佐世保重工の場合は限界企業救済ではない、「むつ」受け入れの問題に関連をするそういうような政治的な対策ではないのだ、こういうふうに政府は言うわけですか。これは、関係閣僚の一人として大蔵大臣は出ていらっしゃるわけですから、その点を明らかにしておいていただきたいのです。
  132. 村山達雄

    村山国務大臣 これはやはり、構造不況業種対策、それに対応する金融機関の社会的あるいは公共的使命の達成がいかにあるべきか、こういうすぐれて経済問題、特に今日におけるそのような環境下においてのしかも影響度の多いこの種の事業についていかにあるべきか、やはりこういう全体の経済環境の中における金融機関のあり方、そういう問題であろうと考えておるわけでございます。
  133. 村山喜一

    村山(喜)委員 では、最後にこの問題をお尋ねしておきます。この佐世保重工救済の問題は、ごく近いうちにめどがつきますか。めどがつく自信がございますか。
  134. 村山達雄

    村山国務大臣 いろいろな方が非常に御心配をされまして、経営者あるいは株主あるいは親会社と申しますか、その方面の意思統一が非常に好転しつつあるということで具体策が近く出そうだ、こう聞いておりますので、その意味では一ころよりは希望が持てるのではないかと思いますけれども、何分にもその経営者方面の具体策というものがまだ金融機関の方に提示されていない段階だと思います。したがいまして、いまの段階で大丈夫であるとかだめであるとかそういうことは申し上げかねますが、一ころ新聞紙上に騒がれたときから見ますとかなりの前進を経営者側において見ている、かように承知しているところでございます。
  135. 村山喜一

    村山(喜)委員 運輸省は主管の省でございますが、船舶局長、どうですか、いつごろまでにめどがつきそうですか。
  136. 謝敷宗登

    ○謝敷政府委員 私どもの立場といたしましては、一日も早く経営責任者が決まりまして、その責任者を中心としまして関係株主あるいは取引事業者の協力の具体的内容を固めていくわけでございますが、その意味におきまして経営責任者が関係者の御努力によりましてかなり明るく見えるような段階に来ているのではないか、こういうふうに考えておりますので、日時を明言するわけにはいきませんが、私どもとしては対外的な受注活動等から見まして一日も早く解決の方向に向かうようにお願いをし、努力をしていきたい、こう考えております。
  137. 村山喜一

    村山(喜)委員 一定の見通しをお持ちなのでしょうが、ここで言うわけにはいかぬということなのだろうというふうに受けとめておきます。  応問が余りありませんので、あとは簡単にやります。  そこで、これは私のところにも関係があるわけですが、水俣病の問題でございます。一体これからどうするのだということ、がきわめて重要な問題でございまして、住民環視の的でございます。そこで、今国会に提出をされました「公害の状況に関する年次報告」あるいは「昭和五十三年度において講じようとする公害の防止に関する施策」を見てみますると、水俣病の検診やあるいは認定業務の促進は百五十人検診と百二十人審査、その対制を整えていくのだとか、あるいは国立水俣病研究センターを十月一日から発足をさせるのだというようなことが書いてあります。そこで、私はそれはそういうようなベースでやってもらいたいと思うのですが、同時に、国でも認定ができるようにやろうじゃないかという働きが政府・自民党の中にあるようでございます。これも促進をする意味ではきわめて結構だとは思うのですが、しかし、問題は、県債発行の問題であるとかあるいは補償水準の問題であるとかいうようなことがいま新聞に非常に大きく出ております。  そこでまず環境庁にお尋ねしたいのは、いわゆる患者と会社側が結びました協定によります賠償といいますか、その協定条項の中における補償水準というのは現況のまま進めていくのだという意味で、私は、その財源の問題はまたいずれいろいろな方法考えなければもう支払いができないよう状態になっているのですから、内容を変えるという意味ではないんだと環境庁は受けとめていらっしゃると聞いているのですが、それはどうでございますか。
  138. 山本宜正

    ○山本(宜)政府委員 お答えいたします。  現在チッソが患者との間におきまして、たしか昭和四十八年だと記憶しておりますが、補償協定を結びまして、その線によって両者間の補償がなされているわけでございまして、先生御存じのとおりでございます。  この協定は、御承知のように形式的に申しますと私人間の契約に基づきましてなされておるわけでございまして、国といたしましては、その内容等の問題につきまして立ち入っていく立場にございません。しかしながら、患者の救済の問題というのは大変重要な問題でございますので、これにつきましてのチッソの補償が円滑に実施されるようなことは重大な問題として今後考えていかなければならないんじゃないか、かよう考えているわけでございます。
  139. 村山喜一

    村山(喜)委員 新聞に次官通知の素案要綱というのが出ておりますが、こういうようなのを環境庁はお出しになったんですか。
  140. 山本宜正

    ○山本(宜)政府委員 先生御承知のように、水俣病と申しますのは、大変医学的な診断の面でもむずかしい問題でございます。したがいまして、私どもかねがね水俣病の診断につき決して医学者の御意見等を聞きながら、その判断の要件というものを昨年提示いたしました。これによって、現在いろいろな認定業務がなされているわけでございます。  先般、新聞に一部次官通知の要綱というような形で出ておりましたけれども、現在私どもまだ次官通知を出すという段階までは来ておりませんが、やはり水俣病の問題につきましては、この法が定めますように迅速かつ公正に患者の救済が行われるということが必要でございますので、その仕事が円滑にいくよう意味での指導ということは今後してまいりたいと思っておるわけでございます。
  141. 村山喜一

    村山(喜)委員 余りはっきりしませんが、疑わしきは認定をするという大石環境庁長官の出しました長官通達を事実上修正をするという内容にならないように、関係地区の代表といたしましても私は要請をしておきます。  それから、県債の問題等に対するものは、これは詰まっておるんですか、大蔵大臣
  142. 村山達雄

    村山国務大臣 これは所管省におきましていろいろ案を立てて、関係省庁にそれぞれネゴをしておるというふうに聞いております。まだ私の方には参っておりませんけれども、いずれ関係省庁閥の案がまとまりますと大蔵省所管事項についても何らかの協議があるもの、かように思っておるわけでございます。
  143. 村山喜一

    村山(喜)委員 この問題はまだ大臣のところまで来ていないようでございますから、そのうちにいろいろまた地元の代表としても御要請申し上げる機会があるかと思います。  そこで最後に、これは証券取引法、商法違反の問題でございます。が、不二サッシ工業と不二サッシ販売、四百三十億の粉飾決算が出た、こういうようなのが新聞に報道されましたが、これは事実でございますか。事実であるとするならば、これは私もさっき調べてみたんですが、公認会計士の監査意見書が出ております。適正である、しかもそれは無限定に適正である、こういう報告書が出ておる。内容は、そうなってくるときわめて悪質であります。それに対してどういうよう措置を現在までおとりになっているのか、その事実関係といまとっている内容についての報告を求めたいと思います。
  144. 渡辺豊樹

    渡辺(豊)政府委員 いま先生から御指摘ございましたように、去る五月二十九日、不二サッシ工業と不二サッシ販売の両社が五十三年度三月期の決算発表に際しまして、過年度損益修正損として不二サッシ工業で三百三十四億円、不二サッシ販売で九十六億円、過去において不適正な会計処理があったということを発表した次第でございます。不二サッシ工業及び不二サッシ販売からは、有価証券報告書の提出を大蔵省は受けておるわけでございまして、不二サッシ工業及び不二サッシ販売が経営者が交代いたしましてから新たに監査法人が入りまして、過去にさかのぼって会計処理をいろいろと調査したわけでございますが、会社及び監査法人からも同様な数字の報告は受けております。     〔委員長退席、原(茂)委員長代理着席〕  何分にも金額が大きく、かつかなり以前からそのような会計処理が行われていたということでございますので、会社及び監査法人から事情聴取するだけではなく、証券取引法に基づく大蔵省の検査をこの六日火曜日から着手しております。  いま申し上げましたように金額が大きく、過去にさかのぼりますので、実態を究明するにはかなりの時間がかかろうかと思いますが、そういう検査等を通じまして実態を把握いたしました上で、有価証券報告書に虚偽記載があれば、ある事実を確認した上で有価証券報告書の訂正を求めたいと考えておりますし、先生御指摘ように関与いたしました公認会計士が虚偽証明をしていたという事実を把握した場合には、公認会計士法に基づきまして当該公認会計士の懲戒処分をしなければならないというふうに考えております。
  145. 村山喜一

    村山(喜)委員 大臣、新聞でこれは伝えておりますが、有価証券報告雷を調べる大蔵省の監察官というのは、たった七名でやっておるんだそうですね。それで目が届かない。そういうところに企業内容の開示の監督ができないという問題が指摘をされておりますが、それに対しては、こういうような事件がしょっちゅう出てきたのではこれは大変なことになりますので、今後の対応策はお考えになっていますか。  それだけ承りまして、私の質問を終わりたいと思います。
  146. 村山達雄

    村山国務大臣 いま実地検査中でございます。どの辺に問題があるのか、証券局のその担当官が少ないというところにあるのか、あるいは公認会計士という非常に高い資格を持っておる人たち、その人たちの自覚の問題にあるのか、その辺を十分究明しながら必要な措置をとってまいりたいと考えておるところでございます。
  147. 原茂

    ○原(茂)委員長代理 林孝矩君。
  148. 林孝矩

    ○林(孝)委員 私は、まず最初に最近のこととして、たばこの小売価格の値上げ問題についてお伺いしたいと思います。  このたばこ値上げという問題が報道された内容でございますが、平均三〇%強値上げをする、こういうことが伝えられております。このたばこの値上げについて大臣がお考えになっておること、それとたばこの小売価格を値上げするという根拠、これについて大臣はどのようにお考えであるか。またどのような根拠をもって値上げを決定されようとしておるか、この点についてお伺いしたいと思います。
  149. 村山達雄

    村山国務大臣 新聞に出たかどうか、私はっきり知りませんが、私は、たばこの値上げをやる、あるいは何%やると言ったことはございません。  ただ、若干つけ加えておきますと、御案内ようにたばこの値上げは昭和五十年度にやったわけでございますけれども、その後原料価格あるいは労賃、特に葉たばこの値上げ等によりまして、納付金、つまり国庫に入る納付金率が非常に下がっていることは事実でございます。五十一年度にその前の二三・二%から峯三・五%まで一〇上がりましたものが、五十三年度予算では再び二五・六%に落ちているという事実は、やはり注目すべきであろう。  それから、もう一つ申し上げますと、いまの専売公社の経営形態の問題が論じられているわけでございます。  そういったものを十分踏まえまして、そして今後の経済の推移、来年度における予算フレーム等、こういった問題を総合勘案の上決定すべき問題ではなかろうか、いま考えているのはそういうところでございます。
  150. 林孝矩

    ○林(孝)委員 値上げを否定されたわけでありますが、大蔵省、それから日本専売公社、この両当局が五十四年度の予算検討過程においてこのたばこの小売価格の値上げを協議されている、こういう事実はございませんか。
  151. 泉美之松

    ○泉説明員 お答えいたします。  先ほど大蔵大臣からお答えされましたように、前回、昭和五十年十二月にたばこの定価改定を行いましてから今日まで約二年半たっておるわけでございます。その間、現在の専売納付金制度でございますと、専売公社の利益の中から納付金を納めるということになっておるわけでありますが、その益金が、毎年の葉たばこの値上げ及び賃金のアップあるいは材料費の高騰等によりましてコストアップが毎年起きますので、昭和五十一年度には六〇・五%にまで回復いたしました益金率が年々低下してまいることになるわけであります。そうなりますと、財政の上からいたしますと専売納付金が年々減っていくということになりますので、これをふやしてもらいたいということを財政当局がお考えになるのはごもっともでございます。  ただ、それをいつ値上げするかにつきましては、消費者物価の動向、他の物価の動向、消費資金の動向、こういったものをにらみながら検討しなければならないわけでありまして、まだ昭和五十四年度の予算編成には着手いたしておりませんので、大蔵省と専売公社の間でたばこの値上げについて協議をいたしているような事実はございません。  しかし、御存じのように昨年末大蔵省から専売公社に対して、製造たばこの定価改定を五十三年度中にできないかという点と、内部留保金の一部を取り崩してもらいたいという二つの申し入れがありまして、政府機関の一員といたしまして内部留保の取り崩しには応じたのであります。定価価格の改定につきましては、いろいろ問題がありますので見送らせていただいておる経緯がございます。そういう点からいたしますと、五十四年度には製造たばこの定価改定の問題が再燃することは必至と思っております。しかしまだ、先般新聞紙上に出ましたよう検討をいたしておるわけではございません。
  152. 林孝矩

    ○林(孝)委員 昭和五十年の定価改定のときの国会審議でもいろいろ議題になったことでありますが、現行の専売納付金制度、また価格問題あるいは健康問題、こうした点について議論されてきた事実が過去にあるわけですが、その結果五十年度には附帯決議もつけられておることは大臣も御存じだと思います。これらの国会審議の過程で議論されてきた課題に対する大蔵省当局あるいは専売公社当局の努力といいますか改善された点、どのようになっておるか、これについてお伺いしておきたいと思うわけです。
  153. 大槻章雄

    ○大槻政府委員 お答えいたします。  五十年の定価改定の際に、先生御指摘ような附帯決議のあったことは事実でございます。その趣旨にかんがみまして、納付金制度のあり方、これは消費税制度の導入問題等でございますが、それから価格問題等につきまして、大蔵省及び専売公社において鋭意検討を進めているところでございます。しかしながら、これらの問題につきましては専売公社の経営形態のあり方とも密接に結びつく問題でございますし、現在御案内ように公共企業体等基本問題会議検討が進められているところでございますので、大蔵省といたしましては同会議の結論を待って慎重に対処する方針でございます。  なお、喫煙と健康の問題につきましては、公社において引き続き研究を行うとともに、製品面におきましても消費の多様化に対応しつつ、できるだけ緩和な銘柄を開発するように努めているところでございます。
  154. 林孝矩

    ○林(孝)委員 抽象的な一般論的ないまの答弁でありまして、当時議論されておりました具体的な問題について、基本問題会議に譲られた格好でその結論を待つということでございますけれども、相当の年月を経過しているわけでございます。当然のこととしてそれだけの努力が払われなければならない。そういう面では非常に残念に思うわけでありますが、先ほど来の答弁の中で、たばこの小売価格の値上げに関して、日本専売公社の利益金から支払われる専売納付金、これが非常に低下しておる。その理由として、葉たばこの値上がりであるとかあるいは賃金のアップ、また材料費、いわゆるコストのアップということが言われたわけでありますけれども、もう一面から考えていきますと、五十年の値上げからいわゆる需要量といいますか、これはどういう形になっておりますか。値上げされる前、値上げされてから後、その比率はどういうパーセンテージになっておるか、御説明願いたいと思います。
  155. 泉美之松

    ○泉説明員 お答えいたします。  昭和五十年の定価改定前におきましては、年々五%ないし六%の数量でたばこの販売が伸びておったわけでございますが、昭和五十年十二月に定価改定を行いました後、五十一年度は前年に比べまして十一億本減少いたしました。率にいたしますと〇・四%の減でございます。五十二年度になりまして三千十一億本に達しまして、前年に比べまして四・二%の増加になっておるわけでございます。五十一年度に十一億本減って、五十二年度に百二十億本ふえた。しかし、二年間をならして考えますと、二年間でようやく百十億本ふえた、つまり一年に直しますと五十五億本ふえたという程度でありまして、伸び率といたしましては、それ以前の伸び率に比べまして大変低下いたしまして、二%足らずの平均伸び率になっておるわけでございます。  こういうふうになりましたのは、一つには健康と契煙の問題が大変やかましくなってまいりました。したがって、健康上喫煙をやめる方がふえ、あるいは本数を制限する人がふえたということが一つ。  それからもう一つは、やはりここ数年ベースアップが一けた台にとどまっておって、たばこの購入資金が制約を受けてきておる、こういう二つの大きな点が原因になっておるもの、このよう考えておるのでございます。
  156. 林孝矩

    ○林(孝)委員 いま御答弁がございましたように、いわゆる昭和五十年以降の伸び率は、それ以前の伸び率と比較して非常に低下している。こうした理由というのは、やはりたばこに対する嫌煙権といいますか、そうした運動も含めて、値上げという問題に対する消費者の抵抗といいますか、そういうものもあると思います。  と同時に、もう一つ私が指摘したいことは、五十年のたばこの値上げによって起こった他の消費物価への影響、こういうものも考えられるわけですね。したがって、こうしたたばこの小売価格の値上げという問題に対しては非常に影響が大きい。その理由がちまたに言われているところの財政上の問題、こういうことで小売価格の値上げというものが考えられる。それは考えられないといえばうそだと思いますが、当然そうしたことも一つのファクターとしては考えられるでしょう。しかし、それ以外の根拠というものが非常に希薄な環境の中において、たばこの小売価格の値上げというものが実施される、こういう形というものは、私は庶民はそれを認めないであろうと思うわけです。したがって、現在の状況というものが、先ほど来の答弁を聞いておりますと、五十四年度の予算編成に関しては、当然のこととしてこうした値上げ問題が出てくるであろう、これは専売公社総裁の御答弁では必至のことであるという表現をされました。大臣は同じ考え方でおられるのか、それともまた別の考え方を持っておられるか、その点についてはいかがでしょうか。
  157. 村山達雄

    村山国務大臣 先ほど総裁が言われたのは、従来の経緯からして、公社の総裁としては、また財政当局が言ってくるのではないか、こういう構えでいろいろ御検討されていると承ったのでございます。私は、やはり先ほど申しましたように、いろいろな問題を勘案して考えねばならぬというわけで、まだ来年度のフレームも決まっておりませんので、いま断定的なことは申し上げられません。  ただし、いまの値上げという中に二つの問題があるということだけは事実でございまして、一つは、消費税に相当するいわば一般会計に入るもの、これが大分減ってきたから上げてくれ、こういう問題と、そうではなくて、葉たばこなり人件費が上がった、したがって、その部分だけ上げてくれ、こういういわば公共料金部門と、それから消費税相当部門、この両方があるわけなのでございます。その両者の差異に着目して言っておりますのが、いわゆる消費税として導入すべきであるという議論の根底になっていると思うのでございます。  しかし同時に、経営形態と理論的に不可分ではございませんけれども、実際上はある程度結びついているというところにまたこの問題のむずかしさがあるわけでございます。  純理論的に考えますと、税でございますと、そう毎年毎年上げているというような税はあるわけではございません。だから、消費税部門のようなもの、それが納付金という形であれあるいは消費税という形であれ、実質上一般会計に入るべき税相当分というものはある期間を置いてやるべきものでありましょうし、そうでなくて原価の値上がりによりましてくる分につきましては、もう少しその価格改定については弾力的に考えてもいいのではなかろうか。たとえば今年度国鉄料金につきまして、いわば経過的ではありますけれども、法定事項から外させていただいた、これはやはり公共料金だという考え方であろうと思うのでございます。いまのたばこの小売価格というものを分析して、両方のそういう考えがあってもしかるべきじゃないか、こう思うのでございます。  最終的なことはやはり経済の推移あるいは公社の意見、さらには予算のフレーム等が決まりませんと私はお答えできないわけでございますが、その場合でも問題は二つに考えられる余地はある、このよう考えているのでございます。
  158. 林孝矩

    ○林(孝)委員 そうしますと、大臣はその二つのうちの一つ、特に消費税として一般会計に組み入れるという方針重点的にとっていこう、こういう意向をお持ちになっておると理解していいでしょうか。
  159. 村山達雄

    村山国務大臣 もし二つに分離するとすれば、原価の上がった分、つまり公共料金の分の方がわりと納得が得やすいのではなかろうか、逆でございます。しかし、現行制度でございますと、黙っておりますと、コストの上がった分も全部小売価格をほうっておきますから、その結果益金率はどんどん下がっていくわけでございます。その分だけ上げるということになりますると、益金率の方はそう変化がないはずでございますから、やはり筋道としては二つの方法考えられるのではなかろうか。  いずれにいたしましても、最後の答えはもう少し様子を見させていただいて、その上で決めさせていただきたい。政府提案をするかしないかについてももう少し様子を見させていただきたい、こういうことでございます。
  160. 林孝矩

    ○林(孝)委員 提案の手続の問題まで考えられているということでございますから、これは非常に問題を含むと思います。  それからさらにお伺いいたしますが、輸入されている外国たばこについて、昨年の十一月でしたか、円高差益による定価見直しが行われたわけです。さらにその後の差益から政府は値下げの約束をしているわけでありますけれども検討状況について御説明願いたいと思います。
  161. 大槻章雄

    ○大槻政府委員 お答えいたします。  外国製造たばこの小売定価につきましては、外貨建て購入原価及び為替相場の動向等を勘案しながら、先生御指摘ように昨年十一月、英国製品を中心として一部銘柄につきまして値下げを行った次第でございますが、今般、四月二十一日の経済対策閣僚会議において為替差益を還元すべきことが決定されましたことにかんがみまして、再度見直しを行うということにいたしたわけでございます。  具体的な内容につきましては現在検討中でございますが、七月一日実施を目途に、原則として全銘柄について十円程度の値下げを行いたいというふうに考えておる次第でございます。
  162. 林孝矩

    ○林(孝)委員 それから先ほど大臣の答弁にありました経営形態の問題についてでありますが、いわゆる日本専売公社、これは公社だけに限らないわけでありますけれども、民営論というものが、もう大分以前になりますけれどもいろいろな角度から論じられておるわけであります。公共企業体等のスト権問題に端を発して審議が行われている公共企業体等基本問題会議、ここにおいて今月の半ばごろには答申が出されるというように聞いておるわけでありますけれども、その中で、専売公社のたばこ部門については民営が適当との答申はほぼ間違いない、こういう報道もあるわけです。  これは総理府に伺いますが、この基本問題会議、ここでの審議の経過、状況、いつごろ取りまとめがなされるか、基本問題会議での議論の範囲、これについても御説明を願いたいと思います。大臣に伺った最初の問題に対する答弁とあわせてお伺いします。
  163. 伊豫田敏雄

    ○伊豫田説明員 内閣の公共企業体等基本問題会議事務局の次長でございます。  お答えいたします。  現在、公共企業体等基本問題会議は、約二年間の審議を経まして全体に取りまとめの段階に入っております。  目途といたしましては、当初五月または六月と言っておりましたが、若干おくれてまいりまして、ただいまの状況では中旬または下旬に全体としての取りまとめを行うことができるのではないか、その段階で政府に対して意見書として提出することができるのではなかろうか、このよう考えられております。  なお、経営形態懇談会の専売公社部会につきましては、おおむね取りまとめを完了いたしておりますが、他とあわせまして、ただいま申し上げました中旬または下旬の段階でこれを提出する、あるいは発表することになるだろう、このよう考えております。
  164. 林孝矩

    ○林(孝)委員 審議の状況あるいは議論の範囲、そうした点についてはどういうことになっておりますか。
  165. 伊豫田敏雄

    ○伊豫田説明員 審議の進捗状況は、ただいま申し上げましたよう状況でございます。  それから、審議の内容につきましては、専売公社部会は経営形態懇談会の一部会としてございまして、主たる目的は、その経営形態がいかにあるべきかという問題でございますが、その個別の内容につきましては、ただいまの段階ではまだ非公開でやっておりまして、近く全体としての意見が発表される段階に来ておりますので、詳細な内容はこの席で申し上げることもいかがかと思いますので、その点は差し控えさせていただきたいと考えますが、基本的に専売公社事業の持っている公共性あるいは財政専売という意味の持つ公共性、こういうものから見て、専売公社の経営形態をどう考えたらいいか、あるいは効率の面で、民営であることの、いわゆる市場原理に基づくところの利点を放棄してなお現在公社営でしていることの意味は何であろうか、こういうふうな観点から検討を行っております。  それからなお、個別的な問題として、それに関連をいたしまして小売定価の問題、消費税の問題、あるいは葉たばこの問題、それぞれ必要な範囲において検討をさせていただいておることは事実でございます。  以上でございます。
  166. 林孝矩

    ○林(孝)委員 大臣にお伺いいたしますが、先ほど経営形態に関する基本問題会議で審議されておるところでありますけれども、私がいま申し上げました公共企業体の民営化という一つの問題として議論されておるという日本専売公社の民営化、これを、一般論で結構ですけれども大臣はどのように受けとめられておるか。
  167. 村山達雄

    村山国務大臣 まだ答申が出ていない、それでいませっかく審議中でございますので、私がとやかく言うことは差し控えさせていただきたいと思いますが、民営のプラス面もございましょうし、それからまたいまのような公社形態のプラス面も、私は論点としては幾つかあると思うのでございます。  しかし、どういう結論が出てくるか、その結論がいかなる理由によるものであるか、そういうことによりまして、大蔵省といたしましても、経営形態そのものについてやはり最終的な結論、そしてそれをいつから実施するか等、あるいはやるかやらぬか等、態度を決めなければなりませんでしょうし、そしてまたその経営形態と関連いたしまして、先ほど申しましたような現在の納付金制度そのままでいいか、あるいは納付金というものを二つの分割にするということになるのか、あるいはいやがおうでも消費税形態というものをとりまして、公共料金とは形の上でも別にしなければならないという結論が出るのか、その辺は相互に関連している問題でございますので、いまはその答申を待っておるという段階でございます。
  168. 林孝矩

    ○林(孝)委員 大蔵省並びに日本専売公社がこの基本問題会議から意見を求められた、あるいは資料提出を求められた、こういうことがあるかないか。そしてもしあるとしたならば、どのよう意見を述べ、また資料を提出したのか、その点について御説明願いたいと思います。
  169. 大槻章雄

    ○大槻政府委員 大蔵省は、公共企業体等基本問題会議経営形態懇談会専売公社部会のために、専売公社経営の現状と問題点についての資料を作成いたしまして、五十一年の十一月から五十二年の五月までの間五回にわたり、これを部会で説明いたしたわけでございます。  しかし、これらの資料及び説明はすべて事実を取りまとめたものでございまして、経営形態のあり方についての大蔵省意見は一切含まれていないわけでございます。
  170. 泉美之松

    ○泉説明員 専売公社といたしましては、昨年十一月一日に公共企業体等基本問題会議経営形態懇談会の専売部会におきまして、私に専売公社の経営形態に対する意見の開陳を求められました。  そこで私は、基本的には現行専売制度及び公社制度を存続するのが適当である。ただし、専売制度及び公社制度につきましては、長年の間にいろいろ実態に即さない面が出てきておる。たとえば専売納付金制度がとられておるけれども先ほど申し上げましたように、公社の利益があった場合にその中から納めるという形になっていますために、本来消費税相当分というのは利益があってもなくても納めるべきものなのに、利益があるときだけ納めればいいという形になっていますために、国民には消費税相当分が一体幾らなのかわからない形になっております。こういう点は制度を改めるべきではないか。それから、そういうふうにいたしますれば、専売公社は利益がなくてもその納付金を納めるというような形になりますと、赤字のまま放置されては経営が成り立ちませんので、定価改定がもっとスムーズにできるようなやり方を考えなければいけないのではないか、こういうふうな意見を申し述べた次第でございます。
  171. 林孝矩

    ○林(孝)委員 日本以外の国でたばこの専売制をとっている国というのは、どういうところがございますか。
  172. 大槻章雄

    ○大槻政府委員 お答えいたします。  たばこにつきまして日本以外で専売制度をとっている自由主義経済圏は、先進国の中ではイタリア、フランス、オーストリアの三カ国でございます。
  173. 林孝矩

    ○林(孝)委員 三カ国ということであります。わが国はいわゆる国策として八十年の歴史を持つ専売制をとっている国でありますが、その間一種の秩序というものが維持され、定着化され、そして国の財政に貢献してきた、こういうことは事実あると思うのです。  これは日本専売公社総裁にお伺いしたいわけでありますけれども、現在の段階における専売制度の意義を、先ほどはこのまま存続した方がいいかどうかという御答弁は伺いました。専売制度の意義についてどのようにお考えになっておるか、もう少し詳しくお願いしたいと思います。
  174. 泉美之松

    ○泉説明員 お答えいたします。  私どもといたしましては、専売制によって国及び地方団体に財政寄与をいたしておるという点、それから、葉たばこ専売によりまして、葉たばこ耕作農民に対しましてその耕作した葉たばこを全部買いとることによりまして、耕作者の労に報いておるという点、それから専売制によってできるだけ安い価格で消費者に製造たばこを提供できておる点、そういった点が専売制のメリットだと考えておるのであります。  これをもし民営にいたしますと、やはりよその民営会社の例を見ましても広告宣伝に相当多額の金を費やすことになりましょうし、また民営ということになりますと、独占禁止法の関係で数社に分割民営という形にならざるを得ないと思いますが、そういうふうにいたしますと、製造たばこ及び原料の葉たばこの交錯輸送が生じまして、それによって流通経費が相当高くなってまいる。こういった点からいたしますと、民営にしても税収入がふえない。むしろ広告宣伝費とか交錯輸送のために経費がかかり過ぎて税収入がふえない。それよりは専売公社のままで、先ほど申し上げました専売納付金制度を改善していく方がむしろ収入が確保し安定化する、このよう考えておるのでございます。
  175. 林孝矩

    ○林(孝)委員 このたばこ問題の締めくくりとしてこれは大臣にお伺いしておきますが、最近の嫌煙権運動というものを含めて、いわゆる消費量というものがこれからさらに伸びるかどうかという問題、これがあると思うのです。それから、もし伸びなければ、その財源としてもそれだけの効果、価値しか生じないということであります。そうしたこと。それから、値上げの他の物価に対する影響、こうした経済状況の中で行われる公共料金の値上げ、こうした問題に対する見解、それから特に低所得者といいますか、そうした人たちの中での影響力、低所得者の方の消費量、これはどれぐらいかわかりませんけれども、与える影響というものは非常に大きいと思うわけです。そうしたことを勘案して、大臣は、今回のそうした一つの問題として基本問題会議の答申というものが近々出されるわけですけれども、こうした答申を受ける以前に、いま日本専売公社総裁意見も出ました、お聞きになっておってどのように感じられるか、この点についても締めくくりとして答弁を伺っておきたいと思うのです。
  176. 村山達雄

    村山国務大臣 財政収入という問題から言いますと、いま泉総裁がおっしゃったことは私も全く同感でございます。恐らくそうであろうと思うのでございます。しかし、いろいろな意味で議論されておりますし、ただいままたより広い角度で委員からも御発言がございましたので、それらの問題を全部踏まえました上で具体的な決定はやりたい、このように思っておるところでございます。
  177. 林孝矩

    ○林(孝)委員 次に、政府系金融機関の経理の決算報告に関する問題をお伺いしたいと思います。  去る五月二十六日に行われました業務概要説明、この中で日本開発銀行における五十一年度の貸付実行額は七千六百七億八千九百万円、このようになっております。既往貸し付けの回収は三千六百二億七千七百万円、年度末貸付残高は三兆八千七百二十四億三千八百万円、このように国会に報告されました。  そこでお伺いいたしますけれども、五十一年度末における貸付金残高のうちで返済期限を六カ月以上経過した元金延滞額は幾らであったか、お伺いします。
  178. 吉岡英一

    ○吉岡説明員 お答えを申し上げます。  五十一年度における延滞額は三百二億円でございます。
  179. 林孝矩

    ○林(孝)委員 私がいまここでお伺いした理由を申し述べますと、この延滞額三百二億円という答弁がございましたけれども、この延滞額をどういう理由で本委員会に報告がなされなかったのか。たとえば国民金融公庫の場合は概要説明の中で本委員会に報告されております。こういう根拠、理由というものは一体どこにあるのかということ。それからその三百二億円という延滞の貸付先はどこなのか。またその延滞は五十一年度の日本開発銀行の事業報告書のどこに書いてあるのか、お伺いします。
  180. 吉岡英一

    ○吉岡説明員 お答え申し上げます。  三百二億円の延滞額を業務報告に申し上げなかったのは、特に理由というほどのことはないように存じます。概要の御報告でありますので、どういう点に主として重点を置いて御報告をいたしますか、いろいろ考え方があると思うのでありますが、ここ十年ほどいまの延滞額を報告しない習慣と申しますか、そういうことになっておるという程度の理由でございます。
  181. 林孝矩

    ○林(孝)委員 私の質問に対する答弁が漏れておりますが、この三百二億円の延滞の貸付先はどこか。  いまの業務報告書に掲載しなかったという理由は、特に理由がない。本委員会に報告するということについて、この延滞額というものはその程度の認識で総裁は受けとめられておるのか。  その点について二点お伺いいたします。
  182. 吉岡英一

    ○吉岡説明員 最初に御答弁が漏れました三百二億円のうち延滞額の内訳でございますが、個々の会社名については差し控えさせていただきたいと思いますが、業種別に申し上げますと、そのうちの大部分と申しますか百八十五億円が石炭関係でございます。それから四十九億円が海運関係でございます。この二つで約七割近い金額になっております。  それから、延滞額を御報告しないという点でございますが、もちろん金融機関として延滞額は大事な問題であることは間違いございませんが、なるべく延滞の発生しないよう方針で貸し出しをやっております結果、大体におきまして貸出残高に対しまして従来一%を切る程度の延滞額の推移で、同じような率でまいってきております。そういうことから、十年ほど前から特に御報告しないことになったんだと考えております。
  183. 林孝矩

    ○林(孝)委員 私は、そういう考え方でなしに、やはり国民の前に明らかにするべき事項だと考えるのです。     〔原(茂)委員長代理退席、委員長着席〕 政府関係機関融資でございますから、その財源についても当然国家の予算として国会で審議されているわけですね。本委員会は決算委員会でございますから、それが適切に使用されているかどうか、運用されているかどうか、その結果どういう状態になっているかということを審議するのが本委員会でございます。したがって、当然のこととして、そうした三百二億の延滞額というものは業務報告として、決算報告として本委員会で説明されるべきではないか、私はこういう認識に立っておるわけでありますけれども総裁はこの認識に対して合意される考えはあるかないか、お伺いいたします。
  184. 吉岡英一

    ○吉岡説明員 お答え申し上げます。  確かに一つの御見識でありまして、十分参考にいたしまして、従来の経緯等もなお一層よく調べまして検討いたしたいと思います。
  185. 林孝矩

    ○林(孝)委員 四十八年度から五十二年度までのそれぞれの貸付金回収額と、返済期限を六カ月以上経過した元金残高、それから両者の比率はどうなっているか。この点についてお伺いします。
  186. 吉岡英一

    ○吉岡説明員 お答え申し上げます。  四十八年度は、貸付残高は二兆六千三百八十億円、回収額が二千三百二億円、六カ月以上の延滞額が二百二億円、回収額に対する延滞額の割合が八・八%でございます。四十九年度について同じ数字を申し上げますと、貸付残高三兆百五億円、回収額二千五百九十二億円、延滞額百九十六億円、割合が七・六%。五十年度が三兆四千七百十九億円の貸付残高に対して、回収額が三千四十七億円、延滞額は四百三十二億円、割合が一四・二%。五十一年度が貸付残高三兆八千七百二十四億円、回収額が三千六百三億円、延滞額が三百二億円、割合が八・四%。五十二年度が貸付残高四兆一千七十五億円、回収額四千三百八十二億円、延滞額三百十八億円、回収割合七・三%でございます。
  187. 林孝矩

    ○林(孝)委員 大臣、いま御説明がございましたように、五十一年度で言えば回収が三千六百三億円、延滞が三百二億円ですから、率で言うと八・四%、一番多い年度で一四%以上の延滞率、いわゆる不良債権ですね、こういうものが出ているわけですけれども、こういう実態を大臣はどのよう考えられておりますか。
  188. 吉岡英一

    ○吉岡説明員 大臣の御答弁の前にちょっと補足をさせていただきたいと思いますが、御承知のように回収額は当該年度一年間の返済を受けました回収額でございまして、それから六カ月以上の延滞額というのは何年間かにわたる延滞額の累積した残高でございます。したがって、この両者間の比率がどういう意味を持ちますか、われわれはふだん余り使っておらない数字でございます。御指示によって数字は出しましたが、これがどういう意味を持つかはもう少し検討させていただきたいと思っております。われわれが普通こういう延滞額をにらむ場合に使っております数字は、貸付残高に対して延滞額がどういうパーセントになるかというのを常時にらんでおるのでありまして、そのパーセントを申し上げますと、四十八年度が〇・八、四十九年度が〇・七、五十年度が一・二、五十一年度が〇・八、五十二年度が〇・八というようなパーセントになっております。
  189. 村山達雄

    村山国務大臣 いま、私たちは常識で言いますと、やはり貸出残高対延滞額でございます。しかし、いずれにいたしましても、延滞は少ないにこしたことはございません。いま聞きますと、別の計数でございますけれども、やはり石炭、それから海運、いまの構造不況業種の典型的なところで出ているわけでございます。それぞれの原因をよく調べまして、適切な対処をしていくよりしようがないなと思っておるのでございます。にわかに取り上げるということもなかなか大変なことであろうと思います。こういう状況を踏まえまして、今後の融資のあり方等についても参考にすべき問題であろうと思っておるところでございます。
  190. 林孝矩

    ○林(孝)委員 それから、四十八年度から五十二年度の間で返済の猶予を与えた額があるのです。その額と、それから貸付先を説明していただきたいと思います。
  191. 吉岡英一

    ○吉岡説明員 お答え申し上げます。  五十二年度の返済猶予額が三十億、五十一年度が九億、五十年度が十七億、四十九年度が二十二億でございまして、ちょっと四十八年度まで時間的に間に合わなくて数字が出ておりませんが、御必要であれば後で御報告申し上げたいと存じます。  なお、返済猶予額の中身はいろいろになっておりますが、たとえば五十二年度の三十億で申しますと、そのうちの約半分ぐらいが苛性ソーダ関係の会社でございます。それからその次に多いのが海運関係でございます。これも業種別だけで御了承願いたいと思います。
  192. 林孝矩

    ○林(孝)委員 いま日本開発銀行を中心にして、延滞額の問題、業務報告、決算報告に対する姿勢の問題、あるいは六カ月以上経過した延滞額の多い業種、さらに返済の猶予を与えた額等について質問してきました。これらのことに対して、私はいま日本開発銀行について取り上げているわけでありますけれども、同じ政府関係金融機関で、たとえば国民金融公庫の四十八年から五十二年度のそれぞれの年度末貸し付けであるとか残高、あるいは年度中の貸付金の回収額、返済が六カ月以上おくれている延滞額、各年度の滞貸償却高、こうしたものについては、国民金融公庫の場合は、これは対象は国民大衆で日本開発銀行と比較すれば非常に大衆性がある。そういうところの業務報告の内容日本開発銀行の業務報告の内容、本委員会に報告される内容を比較してみますと、国民金融公庫の方がずっときめ細かく、誠意ある報告がなされておる。また現場での業務そのものも、融資額が小単位に、非常に多様化しておる、複雑だ、こういう状態の中で回収に対しても熱心に積極的に行われておるし、そうした業務内容を比較してみますと、日本開発銀行の場合は、いま私が指摘いたしました本委員会に対する決算報告の姿勢にも明らかなように、延滞額それ自体も五十一年度においては報告されておらない。こういうことで比較しますと、同じ政府系の金融機関でもずいぶん違うなという感じを禁じ得ないわけであります。  大臣はどのようにお考えでしょうか。
  193. 吉岡英一

    ○吉岡説明員 開銀の業務報告についておしかりを受けたようでございますので、ちょっと申し上げておきたいと思います。  業務概要としてここで読み上げます内容はおっしゃったとおりでございますが、同時に別途業務報告書を提出いたしておりまして、その方にはかなり詳しい御報告を申し上げておるわけでございます。
  194. 村山達雄

    村山国務大臣 私も詳しくはわかりませんが、いま総裁が言っておりますので、ごらんいただいた上で改めて御指摘願えれば非常に幸せだと思っております。  なお、全体の延滞額の問題でございますけれども、最近見ておりますと、資金需要国民大衆の方にずっと偏っておりまして、国民金融公庫の方はどんどんふえておりますし、開銀の方は資金の伸びがそれほどない、しかも、それぞれ持っている役割りが違うわけでございまして、国民公庫の方は地域金融的な意味がたくさんあると思いますけれども、小さいにもかかわらず延滞率が少ない。片方は、民間企業では融資できないという構造不況業種を中心に貸しておったために延滞額が多いなという感じを持ったわけでございます。  今後のあり方につきましては、ただいま補足説明いたしました点をも踏まえまして、大蔵省自身でも十分検討してみたい、かように思っております。
  195. 林孝矩

    ○林(孝)委員 私ちょっとわからないのでお伺いしますけれども、いま総裁が業務報告に延滞額については詳しく記載されておると言われましたけれども、業務報告のどこでしょうか。
  196. 吉岡英一

    ○吉岡説明員 御指摘の延滞額については書いてありません。(林(孝)委員「ないでしょう」と呼ぶ)はい。そのほかの点について詳しくと申し上げたつもりでございます。
  197. 林孝矩

    ○林(孝)委員 ちょっと待ってください。業務報告にそれ以外のことについて詳しく述べているということを言いましたか。
  198. 吉岡英一

    ○吉岡説明員 言葉が足りなかったら申しわけなかったと思いますが、ここで読み上げます業務報告以外に、もっと詳しいものを報告書として提出してあるということを申し上げたつもりでございます。
  199. 林孝矩

    ○林(孝)委員 私の質問は、延滞額について本委員会に決算報告をすべきである、されていないというのはおかしいということを言っているのじゃないですか。それについて議論がずっと来ているわけでしょう。それ以外のことが述べてあると言うなんというのは議論のすりかえじゃないですか。延滞額について決算報告がなされていない、業務報告に載っていない、なぜ本委員会に報告しないのだ、こういう議論をしているのでしょう。それに対して業務報告に詳しく述べていると言うから、どこに出ているかと聞いたら、それ以外のことだ。一体何を聞いているのですか。
  200. 吉岡英一

    ○吉岡説明員 国民金融公庫の報告全般と開銀の報告全般についての御意見かと思いまして、そういう……(林(孝)委員「その中にも延滞額の問題があるじゃないですか」と呼ぶ)大変失礼いたしました。延滞については、先ほど申し上げましたように、先生の御意見を参考にいたしまして、なおよく検討いたしたいと思います。
  201. 林孝矩

    ○林(孝)委員 会計検査院にお伺いします。  この五十一年度の検査報告書と五十年度の検査報告書、この二つを比較してみますと、日本開発銀行について報告の形態が変わっております。先ほど総裁は延滞額については十年間報告してないという慣習があると言われましたけれども、それは事実に反することでありまして、五十年度においてはここに「六箇月以上経過した元金延滞額」として本委員会に報告されておるのが、五十一年度になるとがらっと形態を変えて、報告がなされなくなっておる。これは先ほど開発銀行の総裁にも申し上げましたように、同じ意味で会計検査院も、こうした検査の内容についてはより詳しく国会に報告すべきである。それが五十一年度から物すごく簡略化されてしまっている。ですから、延滞額なんというものはすっ飛んでしまって、検査院の報告の中にも全然出てきていない。こういうことについての理由は検査院は特別お持ちになっているのですか。
  202. 東島駿治

    ○東島会計検査院説明員 お答えいたします。  先生御指摘のとおり、五十年度までは各政府機関の業績についていろいろ書いておりましたが、五十一年度におきましては検査報告の記述方法を変えまして、記述を簡明化するとか、特記事項を加えましてその充実を図り、表現を平易化するということに努めたわけでございまして、ほかの政府関係機関の概説につきましても、一般会計とか特別会計とのバランスから簡略化したわけでございます。  しかしながら、先生御指摘のとおり、延滞状況の記述についてはこれを省略してしまいましたために、経営成績がつかみにくいということも先ほど来先生の御指摘どおりでございまして、今後この記述方法につきましては前向きに検討していきたい、先生の御趣旨を踏まえまして十分検討していきたい、このよう考えております。
  203. 林孝矩

    ○林(孝)委員 これはちゃんとやってください。そうしないと、決算委員会に決算報告をするということは、国民に決算報告をするということであります。非常に重大な役割りを持つ決算委員会なんですから、それが簡略化されて非常に重大なポイントを占める延滞額なんというようなものが抹消されてしまっておる。そうすると、開発銀行もそういう気持ちがいままでなかった、これから検討するということですけれども、どこからもそういうものが国民の前に明らかにされてこないわけです。そうすると、政府関係の融資機関である日本開発銀行がどういうところに融資をして、どれだけの額をして、どれだけ回収されているか、先ほど来、石炭業界と海運業界が非常に構造不況ということで、そういうところの延滞額が多いということが言われましたけれども、延滞額が出てなければそういう議論さえわからないわけです。  そういう意味で、会計検査院も決算報告の内容というものはより詳しく検査の状況、そうしたものを記載すべきであると私は思う。ただ不当事項だとかそういうことだけではなしに、大事な点であると思います。よろしいでしょうか。
  204. 東島駿治

    ○東島会計検査院説明員 お答えいたします。  先生のただいまの御指摘、十分私ども踏まえまして、今後国民の方にもよくわかるような平易な、それでしかもその団体の運営がよくわかるようなものにしていきたい、このよう考えております。
  205. 林孝矩

    ○林(孝)委員 大臣、きょう私は日本開発銀行だけ取り上げておりますけれども、こういうことを通して政府関係の金融機関の経理のあり方、こういうものについては決算委員会として非常に関心のあることでもございますし、今後の姿勢として大臣がそういう点に関してどういう考え方に立っていかれるのか、明快にしておいていただきたいと思うのです。
  206. 村山達雄

    村山国務大臣 大蔵省といたしましても、会計検査院と緊密な連絡をとりまして、御趣旨に沿うような方向で検討を進めてまいりたいと思います。
  207. 林孝矩

    ○林(孝)委員 この問題はこれで終わりますので、総裁、どうも御苦労さまでした。  次に、週休二日制の問題について簡単に要点をお伺いして、終わりたいと思います。  民間企業の週休二日制はかなり進んできておるという調査があります。たとえば五百人以上の規模の企業で四十七年に三五・六%、五十二年には八五・三%、このようにふえて、五百人未満で四十七年には一三・六%、それが五十二年には六三・四%と非常に飛躍して拡大されていっているという状況でございます。普及率全体で六九・一%、こういうことでございますが、総理府の実施した調査では、週休二日制に対する考え方はどういう結果であったか、これについて一点と、それから公務員の週休二日制に対する世論調査、これについてはどういう結果であったか、この二点についてお伺いします。
  208. 片山虎之介

    ○片山説明員 お答えいたします。  二点ございまして、公務員の週休二日制に関します世論調査結果動向でございますが、昨年の七月に総理府の広報室で実施しました結果によりますと、公務員の週休二日制につきましては、開庁であれば、役所を開くのであれば賛成とする者が五四%、それから閉庁であっても賛成とする者が一〇%、合わせて六四%でございました。それで開庁であっても反対とする者は一四%、一概に言えぬ、わからないとする者が二二%であったわけでございます。  御承知のように、現在、公務員の週休二日制につきましては試行の後の再試行、本年の四月から実施いたしているわけでございますが、どのくらい国民の方にこれが周知されているか、これにつきましても昨年の七月に同じ広報室で調査いたしたわけでございますが、最初の試行を知っているという方は四二%、知らないと言われました方が五八%、こういう状況でございました。
  209. 林孝矩

    ○林(孝)委員 時間が来ておりますので、結論的に質問申し上げますけれども、人事院としてはどういう考え方をお持ちになっておるか。  それから、大蔵大臣としてはどういう考え方をお持ちになっておるか。
  210. 金井八郎

    ○金井政府委員 職員の週休二日制につきましては、本年の四月から第二回目の試行に入っているところでございまして、第一回目の試行が昨年の九月いっぱいで終わったわけでございますけれども、試行の結果を振り返ってみますると、試行に参加しなかった省庁がございましたし、あるいは試行におきまして期間が短かった関係で、問題点の把握についてなお十分とは言えないということもございました。そういうことで、現在お願いして第二回目の試行に入っているわけでございます。現在は、第一回目の試行に比べますと、全省庁参加していただいております。なお、一部学校関係、それから厚生省の病院関係については、若干検討中ということでまだ試行に入っておりませんけれども、ほとんど大部分の省庁が参加しておるわけでございます。  そういうことで四月から始まりましたので、来年の三月までの一年間の期間に第一回目で不十分であったという点を反省いたしまして、各省庁における問題点をそれぞれどういうふうに工夫改善して予算、定員の範囲内で本格実施に入ることができるかどうかという観点から種々検討をしていただくということを現在しているわけでございます。したがいまして、来年終わりました段階で、試行の結果をしさいに分析検討して次の方策に進めていくということを考えておるわけでございます。
  211. 村山達雄

    村山国務大臣 公務員の週休二日制の問題につきましては、もしそれを完全に実施して支障が出なければ、それ自身は私はいいことだと思っているのでございます。問題は、現実問題としていろいろの世論があるわけでございまして、それがやられると民間がたまらない、こういうことになりますと、その原因が一体どこにあるか、そういうことを構わずに官庁が率先してやるということはどんなものであろうか。いろいろな考え方があるわけでございますが、問題は、将来のあるべき問題とそれから現にある問題、それをどうつないでいくか、その辺に一番大きな問題があるような感じがいたしております。
  212. 林孝矩

    ○林(孝)委員 最後に二点お伺いしますが、官庁先行あるいは官民並行、民間先行と、こういう三つがありますけれども、これは人事院の方にお伺いしますが、諸外国ではどういう形が多いかということ。  それから、大蔵大臣に最後にお伺いすることは、金融機関の場合にどういうタイミングで踏み切ることが望ましいとお考えか、それだけお伺いして終わりたいと思います。
  213. 金井八郎

    ○金井政府委員 昭和四十八年の三月に外務省に協力を得て行ったわけでございますけれども、主要三十五カ国の公務員の週休制度調査を行ったわけでございます。それで、その中でいわゆる官庁先行型と申しますか、そういうものが、三十五カ国のうちでアメリカ、イギリス等九カ国、四五%になっておりましたし、それから民間が先に入ったというところが、西ドイツ、フランス等八カ国で四〇%、それからいわゆる官民並行型と申しますか、そういうものが、オーストリア、ソ連等四カ国、一五%、こういう分布になっております。  そこで、わが国の場合を考えてみますると、昨年の四月の調査におきまして、企業規模百人以上の民間企業におきましては、何らかの形での週休二日制を施行している企業が六九・一%に及んでおりますので、その意味で申しますと、すでにわが国の中では、いわば民が先行で週休二日制が行われているという見方が一応できるかと思いますが、大体そういうところでございます。
  214. 村山達雄

    村山国務大臣 いま林委員のおっしゃいましたことは、実は衆参の大蔵委員会でもずいぶん時間をかけてこの問題を討議いたしたのでございます。現在、金融機関は部分的と申しますか、交代制による二日制というのは大部分実施しているのでございますけれども、たとえば土曜、日曜完全に店を閉めるということをいまやっていないのは御承知のとおりでございます。その原因を、金融制度調査会等でいろいろアンケート調査をいたしますと、完全に休まれては困るという中小企業者、あるいはこのごろのサラリーマンの方々が土曜日に相談に行かれるというようなことで、完全に閉まられては困るというようなことがやはり大きなネックになっているわけでございます。  衆参大蔵委員会における結論といたしましては、少なくともお客さん方に、土曜日はやらないんだ、なるべく来ないでほしいというような積み重ねを漸次やって、それで完全二日制をやるべきではなかろうか。すぐ法律を変えるということは無理にしても、少なくともまずその方に一歩一歩近づくような努力を積み重ねて、できるだけ早い機会に週休二日制に踏み切るべきである、こういう結論でございました。私たちも同感でございまして、そのような方向で逐次積み重ねてまいりましょう、こういうことを言っているのでございます。  なお、金融機関側といたしましては、これは公務員の週休二日制と密接な関係がございまして、郵便局対銀行という問題があるわけでございます。片方の金融機関は開いているということになりますと、これは預金その他のシフトが行われるわけでございますので、実は公務員の週休二日制の実施の問題とも密接に絡んでいる。これも大蔵委員会においては、それはもっともであるということで、並行的にこの問題はさらに一層検討を進めていこうということになったわけでございます。
  215. 林孝矩

    ○林(孝)委員 終わります。
  216. 楯兼次郎

    楯委員長 春田重昭君。
  217. 春田重昭

    ○春田委員 銀行預金で少額貯蓄非課税制度があります。いわゆるマル優制度でございますけれども、現在このマル優制度は三百万が限度となっておりますが、最近、この制度は、銀行利子も低くなったことでもあり、預金者保護の上からも限度額を上げるべきである、そういう声が一部ございますけれども大蔵省としてはどのような御見解なのか、お伺いしたいと思います。
  218. 米里恕

    ○米里政府委員 少額貯蓄非課税制度の問題でございますが、先生おっしゃいましたように、現在三百万円まで非課税ということになっております。これに加えまして、現在、御承知のように郵便貯金の非課税の枠が三百万円までございます。それから少額国債の利子の非課税制度、これも枠が三百万円、合わせまして元本九百万円までは利子が非課税であるという制度になっております。  一方、国民の平均的な貯蓄高でございますが、総理府の調べによりますと、これは一番最近入手できる数字でございますが、五十二年の末で、勤労者一世帯当たりの平均貯蓄額が三百四十九万円ということに相なっております。そしてこの三百四十九万円という実績から見ますと、現在の三つ合わせて九百万円という限度枠は十分ではなかろうか。特にこの制度は、御承知のように、国民の健全な少額な貯蓄を奨励する、優遇するというよう制度でございますので、余りこれが高額貯蓄者まで及ぶようになるということは制度の趣旨から見てもいかがかと思いますので、私どもとしては、現在の限度枠は適当なものではないかというように感じておる次第でございます。
  219. 春田重昭

    ○春田委員 ただいま審議官から御説明のあった、そういう説もございますが、確かに国債、公債というのは期間が非常に長いわけですよね。割り引いても五年、利率で十年という、一般の人には余りなじめないものでございますし、まあ郵便貯金がございますから、郵便貯金と銀行預金を入れたら六百万あるではないか、こうなるわけでございますけれども、郵便貯金は場所的にも非常に不便なところにございますし、たとえばガス、水道、電気代等の自動払い等ができませんし、預金者はどうしても銀行の方が中心にならざるを得ないわけですよね。そういう点からも、どうしても銀行預金を利用しやすい。そういう面から、この際考える必要があるのではなかろうかと私は思うわけでございまして、昭和四十八年当時、百五十万が三百万に改定されたわけでございますけれども、ただいまの御説明にもあったように、三百四十九万というのが昭和五十二年末の一世帯当たりの預金高でございます。ところが、昭和四十八年当時を振り返ってみますと百九十四万円なんですよね。したがって、倍率から考えたら約一・八倍になっているわけです。昭和四十八年が百五十万で百九十四万の預金高でございました。マル優制度は、百五十万だったのです。そういう点から考えたら、三百万の限度額が五年も据え置かれたままになっておるわけでございまして、預金高も相当ふえている、銀行利子も減ってきた、そういう面からは、確かに資産者を守る制度になるではないかという意見もございますけれども、いわゆる低所得者を守る意味においても、この際一考をする必要があるのではなかろうか。銀行利子に対する税率も、ことしの一月からですか、三五%になりましたし、そういうあらゆる点を総合して考えた場合、この限度額もそろそろ上げるべきではないかと思いますけれども、再度御答弁いただきたいと思います。
  220. 米里恕

    ○米里政府委員 お答えいたします。  まず一つは、勤労者一世帯当たりの貯蓄額と比べて限度額がどうであろうかという過去の実績につきましては、先生御指摘のとおり、率で申しますと確かにおっしゃるような点があろうかと思いますが、この少額貯蓄非課税限度額が上がりますと、常にスライドいたしまして郵便貯金の限度額も上がっておる。郵便貯金はなかなか利用しにくいのじゃないかというお話もございましたけれども、むしろ店舗の配置その他から考えますと、金融機関の場合よりも郵便貯金の方が郵便局の分布状態から見て地理的にはかなり利用しやすい点もあろうかと思います。そういう意味で、百五十万という少貯の限度額が三百万に上がりますと郵貯も合わせて三百万に上がっておるということから見ますと、その枠と一世帯当たりの貯蓄額の差と申しますか、すき間と申しますか、余裕の部分はむしろ引き上げに伴って時系列でだんだん広がってきておる状態じゃないかと思います。  また、もう一つの観点から申し上げますと、現在どのぐらい勤労者の方々が少額貯蓄非課税制度を利用しておられるかを考えてみますと、実績ははるかに現在の限度枠よりも下回った状態で平均的には利用しておられるというようなことから考えましても、先生のお考えも一つの考え方かと思いますけれども、私どもは現在の枠で十分ではないかと考えておる次第でございます。
  221. 春田重昭

    ○春田委員 今後の課題として問題提起をしておきます。  続きまして、先日来有名人、文化人等の脱税が国税庁より摘発され、大きな社会問題になっておることは御承知のとおりでございます。  そこで、国税庁の方にお尋ねいたしますけれども、脱税に使われている実態はどういう形態が多いのか、できましたら事例を挙げて御説明いただきたい。また、できれば銀行別にその実態の数がわかれば御報告いただきたい。
  222. 藤仲貞一

    藤仲政府委員 お答えをいたします。  御質問は、架空名義あるいは無記名の預金が脱税に使われている実態いかん、こういうことであろうかと存じますが、税務行政全体を通ずる統計というものはございません。そこで、昭和五十一年度中に全国の国税局におきまして査察調査を行いまして検察庁に告発をいたしました百五十七件の事案についてお答え申し上げます。  脱税によって得た利益の資産としての留保形態といたしましては、その過半が預金という形で留保されておりまして、この別口預金と言われるものの大部分が架名預金、無記名預金となっているのが実情でございます。そこで、別口預金の内容はどうなっておるかを百五十七件の結果について見ますると、総額が約百三十億円でございますが、その内容は五六・七%が架名預金、三六・六%が無記名預金、その他は本人名義等いわゆる実名の預金でございますが、これが六・七%となっております。  実例をもって示せという御質問でございますが、私どもの立場からいたしまして個別の納税者につきまして具体的なことを申し上げるのは差し控えさせていただきまして、五十一年度に処理いたしました事案のうちで別口預金の残高が特に大きかったものを一例として申し上げさせていただきたいと存じます。  そういう意味におきましては、五十一年度中に処理しました百五十七件のうちで非常に大きな額を留保していた事案がございます。架名預金におきまして百三十五口座、無記名預金におきまして二十七口座、合計百六十二口座で約五億円を留保していた事例がございます。  ただ、いま査察事件の結果について別口預金で留保している形態について申し上げたわけでございますが、御承知のように査察調査に基づき告発したものでございますから件数も限られておりますし、またもっとも悪質な脱税事件について査察をしている実情でございますので、これをもって直ちに全般の預金の状況、趨勢を推測することができるかどうかは、私にはわかりません。御了承をいただきたいと存じます。  それから、金融機関別にどうなっておるかという御質問でございますのでお答えを申し上げます。  先ほど申し上げましたとおり、別口預金の残高は約百三十億円あるわけでございますが、その中身を都市銀行、地方銀行、相互銀行、信用金庫、その他の五つに分けました資料がございます。これによってお答えを申し上げます。  これによりますと、都市銀行が三七・二%、地方銀行が一四・一%、相互銀行が一四・二%、信用金庫が一九・九%、その他が一四・六%、かような構成になっておるわけでございます。
  223. 春田重昭

    ○春田委員 国税庁は守秘義務があるわけでございますので、名前は発表できないということでございますけれども、最近の新聞報道によれば、たとえば最近の事件では日展の会長が二億円相当の架空名義の隠し預金をやっていた。また日本歯科大学の理事長が四億八千万円の架空名義また無記名の隠し預金があった。また過去さかのぼればロッキード事件の児玉譽士夫、また華道界、舞踊界の家元と、同じようなケースがかなり出ているわけでございます。  いずれも、別口預金といま部長から話がございましたが、私から言ったら隠し預金ですね。いわゆる架空名義、無記名の隠し預金である。これは全部税金逃れ、また特定の使途に使うための隠し預金であるように思えてならないわけです。  このように最近大物が続々とそういう形で摘発されておるわけでございますけれども、これに対して国税庁はどういう見解を持っておられるのか、お伺いしたいと思います。
  224. 藤仲貞一

    藤仲政府委員 不正所得を預金として留保する場合に、架空名義あるいは無記名の預金にしておるのが多いことは御指摘のとおりであろうかと思います。  私ども税務調査に当たりましては、あらゆる資料、情報に基づきましていろいろ手を尽くして調査をするわけでございまして、その場合におきまして脱税をしておる者が資産を預金という形で留保しておる場合には当然銀行の方も調査するわけでございますが、その場合に、御指摘ように架空名義の預金あるいは無記名の預金がございますと、私どもの立場から申し上げますならば調査の上で支障があることは否めないわけでございます。  そういうことで、私どもただいま申し上げましたよう実情につきましては、銀行局の方にこれを御連絡申し上げまして、こういう点についての自粛を銀行側に通達していただくように再三お願いしておるところでございますが、銀行局の方でもいろいろ金融機関の方を指導していらっしゃるようでございまして、たとえば全銀協等が自粛の通達を再三出しておられることを承知しておる次第でございます。
  225. 春田重昭

    ○春田委員 国税庁の方が銀行局の方の答弁もしていただいたわけでございますけれども、これに対して銀行局はどういう見解をお持ちなのか、お伺いしたいと思います。
  226. 渡辺喜一

    渡辺(喜)政府委員 預金が脱税その他不正の目的に使用されることは、本来の預金の目的から全く逸脱した行為でございます。当然のことながら、私ども、金融機関に対してはそういうものについては十分留意するようにかねてから指導してまいっておるわけでございます。  特に架空名義の頭金につきまして、これは制度的にも認められていないものでございますので、銀行の窓口において架空名義であるということがわかった場合は、これを是正するようにお客さんの協力を求めていく、こういうことで、全銀協等の金融機関の団体に対しましてもそういう指導をいたしておりまして、全銀協等から下部の各金融機関に対してその旨の通達もしばしば発せられておる、こういう状況でございます。  無記名預金の方は、制度的に一応認められておる預金でございます。無記名預金を受け入れる場合には、これは預金者の心理といいますか、資産蓄積についての預金者の一般的な考え方、風習、そういうものも考慮してこういう制度が一応あるわけでございますが、金融機関は必ず無記名預金を預ける人に対してはそれがだれであるかということを十分確認して、金融機関としてはその無記名預金の預金者を承知して受け入れる、こういうことで指導をいたしておるわけであります。現に普通預金を受け入れる場合というのは、取引先というのが非常に多いわけでございまして、そういう場合は当然金融機関は相手方を十分承知しておる。それからまた、外交等で集金に行って預金を集めてくる、こういう場合も当然相手方がわかっておるわけでございます。そういう意味で、無記名預金の受け入れについては十分相手方を確認して受け入れる、こういう指導をいたしておるわけでございます。
  227. 春田重昭

    ○春田委員 いま国税庁の方と銀行局の方は若干やはりニュアンスが違うと思うのですよ。国税庁の方としては余り好ましくない、したがって、脱税等を挙げる場合はあらゆる情報を駆使してという話がありましたけれども、恐らく国税庁だけの調査では非常にむずかしいと思うのですよ。内部告発とかいろんな外からの情報がなかったらこれはなかなかわからない問題です。そういう点で無記名、架空というのは国税庁にとっては余り好ましくないわけですよ。したがって、銀行局もその辺は指導なりそういう徹底というのは必要になってくるわけでございますけれども、架空と無記名では、架空は制度化されていない、無記名は制度化されている、このようにいま審議官の方から御答弁があったわけでございます。  この架空につきましてですけれども、確かにいろんな指導はしている。私ここにいただいておりますけれども、口頭で昭和四十七年十月十八日付で各金融機関に徹底されたみたいでございまして、全銀協からもいろいろ各金融機関に徹底しているみたいでございますが、その一つがポスターですよね、ポスターといっても何か銀行のすみっこに張ってるみたいでなかなか預金者がわからないような形になっていますし、また対お客という関係から考えれば、銀行としては一銭でも多い方がいいわけですから、なかなかいわゆる架空名義で来ても言えないと思うのですよ、一円でも欲しいわけですから。そういう点から考えたら、もっと抜本的に厳しい姿勢で臨む必要があるのではなかろうかと思うのでございます。  最近のこの日本歯科大学の理事長のいわゆる隠し金の問題についても、ここに朝日新聞の記事がございますけれども、記者との話し合いの中では、「銀行を信用できないなら現金で学校の金庫に保管し、学校法人の帳簿に記載すればよい。架空名義で銀行に預金するとは逆ではないか。」こういうような記者団の質問に対しまして、理事長はこう言っているのですよ。「私は銀行や経理のことには知識がない。銀行の人が」いわゆる架空名義、「無記名でも預金できる、と教えたのでその通りにした。」と答えているのですよ。いわゆる無記名とか架空名義はだめですよというよりは、逆に銀行側が勧めているような形の理事長の答弁になっているわけですよね。  そういう点で、確かに、徹底はしております。指導しておりますと言えるけれども、この架空名義の預金に対しては、従来の大蔵省の態度というのは非常に弱いのじゃないか、このように思います。もっとポスター以外でも強力にやる必要があるのではないかと思いますけれども、どう思いますか。
  228. 渡辺喜一

    渡辺(喜)政府委員 いま御指摘の新聞の記事のようなことが本当であるとすれば、それはとんでもない話でございまして、当然私どももそれが事実ならその責任を追及しなければいけないと思うわけでございます。  架空名義につきましては、ポスターを張る場所も、受け入れるカウンターの下に張れ、一番目につきやすいところに張れ、こういう指導をいたしておりまして、現に金融機関の検査に際しましては、まず店に入って所定の位置にそのポスターが張ってあるかどうかというのを見るというのが検査の常道になっておるわけでございます。  それから、たとえば満期日とかその他もろもろの機会をつかまえまして、通知をその記載されておる住所に出す。その通知が所定の住所氏名のところに届くか届かないかというふうなことを通じて確認をするというようなことも奨励しておるわけでございます。御指摘もございますので、なおさらに一層指導を徹底いたしたい、かよう考える次第でございます。
  229. 春田重昭

    ○春田委員 聞くところによりますと、この架空名義というのは、各銀行に一人の人がずうっと行くのじゃなくして、特定の銀行に、ある人が何十本という判こを持って、行っている例がある。それは銀行側としては、あるときは加藤清正であり、あるときは大橋巨泉であり、いろいろこう持ってくるわけでしょう、大体わかると思うのですよね。そういう芸能人の名前を使った場合はわかりますけれども、山田太郎とか一郎とかいったらわからないわけですよ。けれども、持ってくる人は大体決まっているわけですから、その一人が判こを何十本と持っているというのですね。そういう点から考えたら、ある程度銀行でも察知できると思うのですよ。それが現在必ずしも徹底されてない。こういうことは、通り一遍の口頭の通達といいますか、これではやはり弱いように思いますし、再度この架空名義については銀行協会に対して大蔵省としては強い姿勢で言うべきではないか。最近の、脱税問題がだんだん摘発されている、こういう現状、事例からして、やはりこの架空名義というのはもう一本くぎを刺す必要があるのではないか、こう思います。  それから、無記名預金でございますけれども、これは制度化されているということでございますが、戦後いろいろ経緯がありまして、一たんはやめてまた復活、そういういろんな経緯があるみたいでございますけれども、この無記名預金が誕生した背景というのはどういうことなんですか、ちょっと説明してくれますか。
  230. 渡辺喜一

    渡辺(喜)政府委員 無記名預金を復活いたしましたのは、たしか昭和二十七年だと思いますが、当時何よりもまず優先されるべきことは資本の蓄積である、日本経済を敗戦の破滅から立ち直らせるというためには資本蓄積が最優先される、こういう考え方に基づきまして、貯蓄増強の手段としてこの無記名預金という制度を復活した、こういうふうに私どもは承知いたしております。
  231. 春田重昭

    ○春田委員 昭和二十二年に貯蓄奨励、増強で発足して、昭和二十四年シャウプ勧告で一たん廃止になって、昭和二十七年再度復活してきているわけですね。現在までなっている。確かにたんす預金等のそういう頭金を引き出すためにこの制度ができたと思いますけれども、しかし確かにこれは  一定の役割りはもう果たしたと思うのです。現今においては、果たしてこの制度が必要かどうかということは、やはり疑問だと思うのですよ。聞くところによると、全体額の一%ぐらいしか占めてないということも聞いておりますし、本当にその無記名預金が正しい預金にされておれば、いわゆる正式な名前、正式な住所を届けて、自分自身で預金通帳そのものをわからないところへちゃんとしまっておったらいいわけですから。銀行だって、守秘義務で、明かさないわけですから。だから、この無記名預金制度というのは、一定の役割りを果たした。しかし、銀行においては、そのような脱税の温床となったり、資産家の所得隠しになったり、そういう悪の温床になりがちだ。この無記名預金制度は廃止の方向も考えて再検討する時期じゃないかと私は思うわけでございますけれども、どうですか。
  232. 渡辺喜一

    渡辺(喜)政府委員 おっしゃいますとおり、無記名預金のウエートといいますか、総預金に対する比率というのはどんどん下がってまいっておりまして、最近時点におきましては、総預金のわずか〇・七%というふうなことになっておるわけでございます。  ただ、この制度はすでにもう二十五年以上も続いてまいっておる制度でございまして、それなりの機能、役割りというものを果たしてきておるということも事実でございますし、それから、個人が資本蓄積する、特に金融資産という形で資産を持つ、こういう場合に預金その他もろもろの形態があるわけでございます。たとえば、社債を買うとか金融債を購入するというふうなこともあるわけでございまして、そういう預金以外の他の金融資産とのバランスというふうなものも考えていかなければいけないという面もあろうかと思います。  それから、まだある程度のニーズがあるのにこれを禁止してしまう、こういうことになりますと、そういうものがたとえば架空名義等に逃げていくというおそれもなきにしもあらずということでございまして、おっしゃるような方向で検討はいたしたいと思いますけれども、いろいろむずかしい問題を含んでおるということも申し上げておきたいと思うわけでございます。
  233. 春田重昭

    ○春田委員 そういう話もわかりますけれども、しかし、銀行預金に関しては一定の役割りを果たしたと私は思うわけです。再度検討する時期に来ていると私は意見として言っておきます。  最後に、大臣の方にお尋ねいたしますけれども、先日の税調でも利子配当の所得の課税、これが昭和五十五年十二月末で分離課税が終わってしまうわけですね。その後総合課税にすべきである、こういうことが税調からも出ているみたいでございますけれども、これは分離課税から総合課税にするということでもう腹が決まっているのかどうか、大臣にお尋ねしたいと思います。
  234. 村山達雄

    村山国務大臣 分離課税から総合課税に移った方が税制としてはやはり公平な税制が敷かれる、こういう観点から総合課税にいけるかどうか、技術的に非常に問題があるわけでございますので、その点をいま鋭意税制調査会で検討している段階であるわけでございます。  一つは、金融機関はコンピューター制度をやっておりますが、当座預金等についてはその必要があるわけでございますが、定期についてまでそれだけのことをやらせるかどうか。やはり総合課税ということになると、名寄せが当然的確に行われなければならぬわけでございます。もし的確な名寄せが行われないままに税制だけ総合課税にいたしますと、結果は、この前一遍やりましたように、かえって大変な不公平が出てしまう、また財政収入も激減する、こういう問題がありますので、まず技術的にそれが可能であるかどうか、その負担に銀行がたえられるかどうか、そういう問題をいま詰めてやっておるところでございます。したがいまして、分離課税の制度が切れますところを一つの目安に置いているわけでございますけれども、必ずしもそのときまでにいい答えが出るという保証はありませんけれども、一生懸命勉強いたしますということで、いま真剣に検討を進めているさなかでございます。
  235. 春田重昭

    ○春田委員 時間が参りましたけれども、もう一点だけ。  同じく税調の審議の中でも、分離課税から総合課税に移行する段階において、架空名義、それから無記名の預金については当然取り締まりの強化といいますか、管理というものが大事である、このような一項が投げかけられているみたいでございますけれども大臣、国税庁と銀行局を抱える大蔵省として、国税庁としては余り好ましくない、銀行局では長年のあれですからもうちょっと見ていきたい、こういうことでございますけれども大臣の最後の御見解をお伺いして、終わりたいと思います。
  236. 村山達雄

    村山国務大臣 架空預金というようなものがなくなった方がいいことには違いございません。しかし、名寄せをやるという場合にやはり他人名義を借りるということもありますし、全然架空のやつをやるということもございます。要は、それを一人の真実の人間に総合することができるかどうかという一点にかかっているわけでございます。その答えが出ますれば、そのように正式のやり方でやりたいし、どうしてもそこはうまくいかないというのなら今度は税制の方でまた別の知恵を出す、両方の知恵の出し合いの問題じゃないか、私はそういうふうににらんでいるわけでございます。いずれにいたしましても、真剣にこの問題は取り組んでやってみたいと思います。
  237. 春田重昭

    ○春田委員 終わります。
  238. 楯兼次郎

    楯委員長 安藤巖君。
  239. 安藤巖

    ○安藤委員 私は、税務行政の問題についてお尋ねをしたいと思います。  国税庁からは谷口次長さんお見えになっておられますが、まず、国税庁の方にお尋ねしたいと思います。  昭和二十五年に青色申告制度というのが新設をされたわけですが、それ以来国税庁の方では、いろいろ青色申告を拡充させるという御趣旨だと思いますけれども、いま私がここにも持っておりますが、「青色申告のおすすめ」というパンフレット、あるいは「青色申告をどうぞ」というきれいなパンフレットもございます。それで、いろいろ宣伝をしておられて、青色申告をすると特典が全部で四十四もあるということも書いてあるわけですね。そして、このきれいな方では、まあ全部申し上げることも必要でないと思うし、これは国税庁の方がよく御存じだと思うのですが、たとえば、青色にすると帳簿調査に基づかない推計課税による更正を受けることがないとか、あるいは更正通知書にその理由を明確に記載しなければならないことになるとか、青色専従者の給与は完全給与制が認められるとかというような恩典に浴することができるという宣伝がなされております。  こういうことからいたしますと、国税庁の方としては、この青色申告をする人たちをもっとふやしたいという御意向であると思いますが、いかがでしょうか。
  240. 谷口昇

    ○谷口(昇)政府委員 ただいまの御質問にお答えいたします。  私ども国税庁といたしましては、ただいま先生もお話しのように、青色申告制度は申告納税制度の本旨を実現するためにきわめて重要である、このよう考えております。申告納税制度でございますので、どうしても御本人の方がまずみずから所得を申告をして、そしてまたそれを納税していただく、こういうシステムになっております。その場合に、どうしてもその所得を申告していただく場合にはやはり税法を承知をしていただくとか、あるいは御自分で会計上御自分の所得がわかっていただくとか、そういうことが必要であろうと思います。  そこで、私どもは、申告納税を推進する上においては、どうしてもそういう記帳慣習が必要である、あるいはそういう税法について一人でも多くの人がよりよく知っていただきたい、こういうことで、国税庁としては、青色申告を通じまして申告納税制度が定着をしていくようにこいねがっておるわけであります。その意味におきましても、この青色申告というものにつきましては、私どもは、先ほど先生のお話にもありましたように、昭和二十五年にこの制度が創設されましてから、自来、青色申告の普及あるいは育成ということについては鋭意努力をしておる、こういう姿勢にございます。
  241. 安藤巖

    ○安藤委員 そこで、青色申告を所轄の税務署で承認をされて、青色申告をされる人が出てくるわけですが、青色申告の承認取り消しという処分をされる人も出てくるわけですね。現実に出ているわけですが、この青色申告の取り消しというようなことは、いまおっしゃったような青色申告制度についての啓蒙、そして普及、それからさらにそういう人たちがふえるということを期待しておられるということからすると、相当慎重におやりになるんじゃないかというふうに思っておるのですが、現実に昨年の十一月十七日の大蔵委員会ですか、税制及び税の執行に関する小委員会、ここで磯邊国税庁長官も、青色申告の取り消しについてはかなり慎重に考慮していると。これは具体的に三菱商事という大会社が帳簿に記載の遺漏があった、あるいは隠しておったというような疑いがあって、質問をされたときの御答弁なんですけれども、やはりこういうよう考え方で慎重におやりになるというふうに伺ってよろしいのでしょうか。
  242. 谷口昇

    ○谷口(昇)政府委員 先ほど申しておりますように、青色申告制度は私ども国税庁として申告納税制度のどうしても大きな柱である、このよう考えております。そこで、その申告納税制度といいますか、青色申告制度というものがどうやって定着するかということに非常に心を砕いておるわけでありますが、先ほどお話しように二十五年以来いろいろと経過を経ております。  御承知と思いますけれども、これはその年分の初めに申請をなされまして、それで青色申告の承認という形でそういう方々は青色申告承認者という形になるわけでありますが、先ほど申しましたように、制度がまだ成熟しておらないころには私どもは青色申告の普及、育成ということにむしろ力を入れまして、その結果として青色申告の取り消しということについてはかなり慎重にいたしておりました。その後次第に、いろいろな経過があるわけでありますが、先ほど来申しておりますように、いろんな納税者の方がおられます。先生のお話も出ましたが、大法人はともかくといたしまして、個人の所得税の場合にはいろんな納税者の方がおられます。特に日本の場合には記帳慣行というのがなかなか定着しがたいという事実がどうも一方においてあるようでございます。そこで何とかしてその記帳慣行を定着せしめなければならぬということで、何とかその定着をせしめる意味におきましても、たまたま納税者の方が青色申告の記載について、これは先生も御承知のとおりに、その記載内容が不実のものがあるとかいろいろな場合があるわけでありますが、そういう場合でも、私どもはいろんなものを総合判断をいたしまして、要するに青色申告の取り消しをそう形式的にばっさり行うというような形にはあんまりいたさずに、できるだけ普及、育成に力を入れておる、こういう姿勢でやってきておるつもりであります。
  243. 安藤巖

    ○安藤委員 その点についてはまた後でお尋ねをいたしますけれども、青色申告の取り消しをされてその通知を納税者の人にすることになるわけなんですが、これは普通どういうよう方法でやっておられるのですか。交付の場合もあるし、郵便の場合もあろうかと思うのですが。
  244. 谷口昇

    ○谷口(昇)政府委員 お答えいたします。  ただいまの御質問の点でありますけれども、私ども、青色申告の承認あるいは青色申告の取り消しをいたしました場合、これは一つの処分であるわけであります。処分でございますので、御承知のとおり私どもはその処分をどういう形で相手に伝えるかということが問題になる。それは通常私どもは郵便による方法を用いておりますが、もちろんその処分の通達の仕方には場合によっては交付ということもありますけれども、通常はやはり郵便による方法というのが多かろう、このよう考えております。
  245. 安藤巖

    ○安藤委員 その取り消し処分の効力が発生するのは、郵便の場合ですと、その処分を記載した書面の入っている郵便、これがその納税君のところへ到達したときに効力が発生するということになりますか。あるいは交付の場合は、渡したときに発生するということになりますか。
  246. 谷口昇

    ○谷口(昇)政府委員 お答え申し上げます。  ただいま通常郵便と申し上げましたが、書留郵便の場合ももちろんございます。書留郵便の場合には当然相手方に通知が行くわけでありますから、それで大体わかると思います。それから通常郵便でやった場合には、これは御承知のとおりに、いつから効果が発生するかといいますのは、私どもはこれにつきましては相手方に届いたであろうということを推認をするといいますか、そういうような形で考えております。大体書留が多いかと思いますけれども、書留でない場合にも通常郵便でやります。その場合は先ほどような形で処理をさせていただいております。
  247. 安藤巖

    ○安藤委員 そうしますと、交付の場合は直接渡しますからいいんですが、郵便の場合はそれが送達をされるということによって効果が発生する、こういうふうに理解していいかと思いますが、うなずいておられるから、そうだと思います。  そこで、青色申告の取り消し処分がなされましたときに、これに対して不服申し立てとしていろいろな方法があると思うのですが、まず最初に考えられるのは、その税務署長に対する異議の申し立てというのがあると思います。この異議の申し立てをする場合に審理がされるわけですね。この審理の内容は、所得税法の百五十条の二項ですか、そこに取り消し処分をするについては、取り消し処分の基因となった事実を付記しなければならぬということになるわけですから、そういう事実の有無についての審理が行われるのだというふうに思いますが、そのとおりでよろしいのですか。
  248. 谷口昇

    ○谷口(昇)政府委員 ただいまお話しのとおりであります。
  249. 安藤巖

    ○安藤委員 そこでもう一つ、青色申告の取り消し処分がなされますと、いわゆる白色申告をしたということになりますね。白色申告に対して更正処分がなされるという場合にもつながっていくかと思いますけれども、この青色の取り消し処分と更正処分、これは二つの別の処分だというふうに思っておりますが、そういうふうに思ってよろしいのですか。
  250. 谷口昇

    ○谷口(昇)政府委員 お答えをいたします。  ただいまの青色申告の取り消し処分とそれにかかわるといいますか、更正決定処分でございますね、青色申告を取り消しますので当然のことながら白色というふうに先生のお話のとおりだと思いますが、その二つの処分はそれ自体は独立をしておるというふうに考えております。
  251. 安藤巖

    ○安藤委員 ところで、先ほどの郵便での取り消し処分の通知に関連してお尋ねしたいのですが、取り消し処分の通知とそれに関連する更正処分、更正決定とも言われておりますが、この通知が同じ封筒で同時に送達されるというような事例があるのですが、そういうようなことは知っておられるのか、あるいはそういうようなふうにしてよろしい、あるいはそういうふうにしなさいというような指導を国税庁の方でしておられるのでしょうか。
  252. 谷口昇

    ○谷口(昇)政府委員 ただいまのお話でございますけれども、青色申告の処分の通知書と更正処分の通知書を同封して発送しておるかというお話でございますが、これは私どもは同封して発送する場合もあると思っております。
  253. 安藤巖

    ○安藤委員 あると思っておるという御答弁でございますが、そういうふうにしてもよろしいという指導をしておられるということになりますか。
  254. 谷口昇

    ○谷口(昇)政府委員 同封してもよいというふうに申しております。
  255. 安藤巖

    ○安藤委員 いまの御答弁がありますから具体的に申し上げるまでもないと思いますが、後との関連でちょっと具体的に申し上げたいのですが、いまここに私が持っておりますのは、東京国税局管内の江東西税務署長さんからの、土屋という人、これは中華料理店をやっておられる人ですが、青色申告の承認取り消し通知書、五十三年二月二十八日付。そしてこれは昭和五十一年分以降の青色申告の承認を取り消すということですね。そして同じ日付で、昭和五十一年分の所得税についての更正通知書、これは同じ封筒に入っておったわけです。それからもう一つは、やはり江東西税務署長さんの承認取り消し通知書と更正処分、これは仲という印刷業の人ですが、この人に対しても同じようになされているわけです。あるいは豊橋の、これは名古屋国税局管内ですが、鈴木という人に対しては、これは交付をされている。取り消し処分通知と更正決定通知書ですか、これが一緒に渡されているわけです。だから、そういうようなことをやってもよろしいというふうに指導しておられるということですが、そうしますと、これは何か法的に、いまおっしゃったように独立したということは別々の処分ですね、これを同時に行ってもいいというのは、何か法的な根拠があるのでしょうか。
  256. 谷口昇

    ○谷口(昇)政府委員 お答えを申し上げます。  青色申告取り消し通知書と更正処分の通知書を同封して発送した場合の効力、これはどうだ……(安藤委員「法的な根拠」と呼ぶ)法的な根拠、そういうふうにお答えをするわけでありますが、先ほど申しましたように、それぞれは独立をいたしておりますが、私どもはその場合、これは御案内のとおりに名古屋高裁の判例がございますけれども、私どもはこういう二つの処分については、それが同封されておりますことは、その名古屋高裁の裁判例に即しましても、これは正当である、このよう考えております。
  257. 安藤巖

    ○安藤委員 いま私が申し上げました江東西税務署の関係で、そういう二つの処分を同時に、同じ封筒に入れて送られてきた人たちが、税務署にどういうことだということでいろいろ事情をただしに行きましたところ、郵便事業の現状から考えて、というのは恐らくおくれているということじゃなかろうかと思うのですが、一緒に知ってもらった方がいいから、そういう郵便事業の現状から考えてそういうことにしたんだ、あるいはそういうことをやってはいけないという法律がないからそういうふうにしたんだというふうに説明をしておられるようですが、それは違った説明になりますか。
  258. 谷口昇

    ○谷口(昇)政府委員 先ほどお答えをいたしましたとおり、私どもは、この同封という問題については、先ほどの高裁の裁判例にもありますとおりに、そのこと自体はそれでいいんだ、このよう考えております。ですから、郵便事情がどうだということについては、私実は初めてお伺いするわけでありますが、前後の事情がどういう状況でそういうふうに申したか、そこはちょっと私も承知しておりませんので、これはまた後刻調べておきますけれども先ほど申しましたように、国税庁といたしましては、この青色申告の取り消し処分通知書と更正処分通知書は同封いたしましても名古屋高裁の判例に即してこれはこれでいいんだ、こういうふうに考えております。
  259. 安藤巖

    ○安藤委員 そうしますと、青色申告承認取り消しの効力が発生するのは、郵便に付する場合はそれが送達をされたときと先ほど御答弁にありましたね。その効力の発生する前に白色ということで更正処分をされたことになるわけなんですね。送達する前に更正処分をして、それと一緒に同封をして送るわけですから、まだ青色申告の取り消し処分というのは効力が発生していないのです。送達されてないのです。まだ税務署の机の上にあるのです。そして、その段階で更正処分をして、更正処分の決定通知書と机にある青色申告取り消し処分書と一緒にして封筒に入れて送るわけですから、まだ青色申告承認取り消しの処分は到達しておりませんね。だから効力は発生してないのですよ。そういう段階で更正処分決定をすることができるのかどうか、大いにこれは疑問があると思うのですが、何か法的な根拠があるのですか。
  260. 谷口昇

    ○谷口(昇)政府委員 お答え申し上げます。  先ほども申し上げましたとおり、この青色申告の承認取り消し通知書と更正通知書とが同封され納税者に送達された場合には、青色申告の承認取り消し処分が更正処分に論理的に先行しておるということでわれわれは考えておるわけですが、青色申告承認取り消し処分が更正処分に先行するものと、したがって解すべきである、ということは、先ほど申しましたように名古屋高裁そのものの判例にそういうような判示がある、このよう考えております。
  261. 安藤巖

    ○安藤委員 取り消しが先行して、更正処分の方が後からだという考え方ですね。ところが、先行するにしても、これは受け取る方は全く同時ですね。同時なんです。そして更正処分は白色に対する更正処分ですから、いわゆる推計課税がなされ得るわけなんです。青色申告の場合は、まだ効果が発生する前は青色申告に対する更正でなければならぬはずです。そうしますと、ちゃんと帳簿書類等を調査をして更正の理由は付記しなければならぬはずなんですよ。ところが、帳簿書類等は調査しないで、その理由も付記されないで更正処分がなされるという矛盾が出てくるんじゃないですか。その辺のところはどういうふうに理解しておられるのでしょうか。
  262. 谷口昇

    ○谷口(昇)政府委員 お答え申し上げます。  先ほど来お答えいたしておるわけでありますけれども、まずその青色申告の承認を取り消しますね。取り消しますと、その結果としてそれは白色になります。白色になりますと、これは御案内のとおり更正理由の付記ということは青色と違いますので要らないわけであります。白色の場合でも、まあ実額収支といいますか、そういうものが具体的にあって、またそういうことに即して調査が行われます場合もないわけではありませんが、そういうことでない場合には、私ども御承知のとおりに推計課税ということをいたします。その結果としてそれを更正する、こういう形になります。  いまお話しの青色申告処分と、それから取り消し処分通知書と更正処分通知書とが同封をしておるわけですから、同封をしまして発送している。そうすると、先ほど申しましたように、また先生御指摘ように、納税者の方のところに着くという形で効力が発生をするわけでありますから、着きましたときには一緒のものが着いているわけでありますね。一緒のものが着いておるわけですが、先ほど御説明いたしましたように、これは青色申告承認取り消し処分の方が更正処分に論理的に先行しておる、このよう考えておりまして、結果として、先ほどような更正理由の付記というのは、白色申告でございますので、それは要らない。したがいまして、青色申告の取り消しになり、同時に更正がある、こんなふうに考えておるわけであります。
  263. 安藤巖

    ○安藤委員 これは判例の言うておるところで、それに徴しておられるということはわかります。しかし、先ほど私が言いましたようなそういう矛盾があることはやはり考えられるんじゃないかと思うのですね。  それからもう一つ、最初にお尋ねしましたように青色申告の取り消し処分に対する異議申し立てをした場合は、取り消しの事由に該当するそういう事由があるかどうかということが審理の対象になるはずですね。だから、そういう青色申告の取り消しに対する異議の申し立てをして、取り消しの事由に該当する事実があるかどうかという審理もなされないままに更正処分がなされる、こういうことにもなりますね。  たとえばもう一つは、こういう話があるのです。青色申告の取り消し処分に対する異議申し立てと、それから更正処分に対する異議申し立てと、二つの異議申し立てをすればいいではないかという議論もあるということは知っておりますけれども、青色申告の取り消しに対する異議申し立てをして、青色申告の取り消しが是か非かということの結論が出される以前に、もうすでに白色ということで、白色に対する更正処分がなされる、これは矛盾しているのじゃないかと思うのです。最初にお尋ねしたような幾つかの恩典を失わないための青色申告取り消しに対する異議申し立て権が侵害されることになるのではないかと思うのですが、どのようにお考えでしょうか。
  264. 谷口昇

    ○谷口(昇)政府委員 先ほどから答弁申し上げておりますように、青色申告取り消し処分とその後に続きます更正処分とがたまたま同封されております。そのことに対して私どもは、先ほど名古屋高裁の判例に即して申し上げました。それに対しまして先生の方から、青色申告の取り消しについては異議の申し立てができるというお話がありましたが、私もそう思います。同時に、更正処分についても異議の申し立てができるというのもそのとおりであります。当然、その、更正処分あるいは青色申告取り消し処分についての異議の申し立てがなされると思いますが、これにつきましては、当然出てきましたものは、御承知のとおりにその異議の段階で私どもは慎重に検討いたしますけれども、青色申告の取り消し処分の中身をなすものと更正した場合の中身をなすものとはかなり似ている場合があります。したがって、これにつきましては相互に関連する部分も当然あるわけでありますので、異議申し立てが出ましたならば、それは並行審理という形になろうかと思いますが、いずれにいたしましても、それぞれの処分について異議がなされてくる場合があり得ると私ども考えております。
  265. 安藤巖

    ○安藤委員 そういう場合に、理論的には青色申告取り消し処分が間違っておったという結論が出ることもあるわけですね。そういう場合は、白色に対する更正処分というのはもともと間違った前提に立っての更正処分ですから、おかしなことになるわけですね。そのような場合はどういう処理になりますか。
  266. 谷口昇

    ○谷口(昇)政府委員 お答え申し上げます。  ただいま先生がお話しになりましたとおり、青色申告の取り消しというものに対しての異議申し立ての結果、先ほど言いましたように慎重に審議をした結果、それがまた逆に取り消しの取り消しといいますか、そういうことがあった場合は、当然のことながら青色に復活いたします。そういたしますと、青色申告の取り消しにかかわって白色申告だとして更正したものは取り消しになる、こういうふうに考えております。
  267. 安藤巖

    ○安藤委員 時間がたってきますので、もう一つ、ほかのことをお尋ねします。  青色申告の取り消しをされますと、当該申告の年度分以降は青色申告とは扱われなくて、いわゆる白色として扱われることになりますね。  そこで、先ほど私があえて言いましたのは、土星という人なのですが、この人に対しては、「昭和五十一年分以降の青色申告の承認を取り消します。」という処分通知書が昭和五十三年二月二十八日付で来ているわけです。ところが、この人に対して、もちろん同じ税務署からですが、「昭和五十二年分所得税の更正通知書」というのも来ているのです。これは青というところに丸を打って、青色で来ているのです。そうなると、これは前に青色申告取り消しの通知を出しておいて、また青色として扱っていただいているということになるわけですね。だから、これは一体どうなっているのかというのが一つと、青色取り消し処分というのは、こういう扱いがなされていることからすると、相当いいかげんに、ずさんに調査がなされて、そしてやられているのではないかという疑問も差しはさまざるを得ぬということになるのですね。こういう事実があるのです。お見せしましょうか。これはどういうことなのでしょうか、ちょっと説明していただきたいと思います。また青色として扱われているのだから復活したのか、前の取り消しが間違っていたのかということです。
  268. 谷口昇

    ○谷口(昇)政府委員 個別の案件については、私はいま初めてお伺いしますので、どういうことになっているか直ちにはわかりかねますけれども、たとえば五十一年分で青色を取り消した場合には当然五十一年分以降は青色でなくなる、これは御承知のとおりであります。したがいまして、その結果としてそれは白色になります。ただし、御本人がまた一定の時期を経過して、たとえば青色申告の承認申請をされるということも、人によってはあります。これはまた別の話としてそこから始まる、こうなるわけですが、いま具体的におっしゃいました事案については、もう少し詳細に見た上でまた御報告するなり御説明をしたい、このよう考えております。
  269. 安藤巖

    ○安藤委員 また青色申告承認申請をするというのは、取り消し処分になってから一年以内はできないということになっていますから、この土屋さんがされたという話も聞いておりませんし、時期的にいってもそういう余裕はなかったはずです。だから、これは明らかに税務当局の方がまだ青色として認めておられるということのりっぱな証拠にもなるのですね。それと、最初にお尋ねしましたように、相当慎重になさるということだけれども、そうではなくて、実際上は相当ずさんにやっておられるのではないかという疑いも私は持たざるを得ぬと思うのです。  そこで、もう一つ、関連をして、先ほど私が同封されてきたもう一人として申し上げました仲という人に関してですが、この人に対して「昭和四十九年分以降の青色申告の承認を取り消します。」ということで、「(取り消しの基因となった事実)」として、昭和五十二年八月二十四日、同月三十一日及び十月十三日の三回にわたって調査官が事業所にお邪魔をして帳簿書類等の提示を求めたというのがあるのです。ところが、事実はそうではなくて、真ん中の八月三十一日は、この仲さんという人はかぜを引いて自宅の方にいた。自宅は埼玉県の所沢です。だから、この納税地である洗車区永代一の十の十三というところにはいなかった。もちろん奥さんは、この調査員の人にいままで一回も会ったことはないということになりますと、三回行ったというのは真っ赤な偽りということになります。それから、最後の十月十三日は、わずか五分いただけで帰ってしまった。こういう虚偽の事実を「(取り消しの基因となった事実)」というところへちゃんとお書きになって、そして青色申告の承認を取り消す、このようなことをおやりになるというのでは、慎重な調査に基づいて、取り消しについては慎重な態度をとると最初におっしゃったことと矛盾したことをやっておられる、それとは食い違ったことをやっておられるのじゃないかと思うのです。これはいやしくも虚偽の事実が書いてありますから、この取り消し処分の取り消しというのをなさるべきではないかと思うのですが、いかがでしょうか。
  270. 谷口昇

    ○谷口(昇)政府委員 御質問にお答えいたします。  御質問の事案は、たまたま先生の方からお名前が出たわけでありますが、個別案件でございますので、私どもはちょっとこの席上で具体的にはお答えを申し上げかねるわけであります。私どもが承知をしておりますのでは、数回にわたりて臨場をしている、あるいはその際に帳簿書類の提示を求めたにもかかわらず、その提示がなかった、こういうことは所得税法の御承知のとおりの規定に違反するわけでありますが、納税者の方は、先ほど先生もお話しのように、異議を申し立てておられるということのようでございますが、その異議申し立ての段階で、先ほどども申しましたように、十分にまた審理をいたすつもりでございます。したがいまして、具体的に個別的にそういうことがあったかどうかについては、私もちょっといま、初めてのケースでございますので、承知をいたしておりませんが、ちょうどたまたま先生のお話しのよう異議申し立てに出ておるようでありますならば、その段階で、先ほど答弁いたしましたように、十分に調査をいたしましたり、あるいは審理をいたしまして、しかるべく処理をする、こういうことに相なろうかと思います。
  271. 安藤巖

    ○安藤委員 時間がちょっと過ぎておりますのでこれでやめますけれども、いまの仲さんの場合は、異議の申し立てをしておられるようだからと。もちろんしております。ところが、これと一緒に先ほど申し上げましたように更正処分の方も来ておるのですから、この取り消し処分についての異議の申し立てそのものについての審理が十分行われていない段階で、もうすでに更正処分が来ているのですから、非常に忙しいわけです。忙しくてかなわないわけです。両方とも応対しなければなりませんから。だから、そういうことは、納税者にとってはとんでもないことになるということで、考えていただくべきことではないかと思うのです。  それから、慎重になさるべきことであるにもかかわらず、虚偽の事実を書いて、これが事由だというふうにやられたのでは、せっかく啓蒙宣伝活動をして拡大をやられようという青色申告制度を、税務署自身がこれを無にされる一端の役割りを担っておられるのじゃないかとも疑われるし、慎重に扱うべきなのが実は慎重でないということにもなってくると思うのです。ですから、これは調査された上で、今後注意していただきたいと思うのです。  それから、これはもう質問ではありませんが、反面調査の問題につきましても、この前も私お尋ねしたのですが、「税務運営方針」の十七ページ、これは御承知だからあえて申し上げるまでもないのですが、「反面調査は、客観的に見てやむを得ないと認められる場合に限って行うこととする。」というふうに「税務運営方針」にもあるわけですね。ところが現実にはそうではなくて、税務署の係員の人が一回だけ納税者のところに行って、そして丑分ほどやりとりして、もうあと調査をしないですぐ反面調査をやるという事例がいまあっちこっちに出ているのを聞いているのです。だから、この「税務運営方針」の方針とも違うことをやっておられるというふうに思いますので、そいいう点もしかるべく厳重に、正しく指導していただくよう要望いたしまして、私の質問を終わります。
  272. 楯兼次郎

    楯委員長 次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。     午後五時三十三分散会