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1978-06-01 第84回国会 衆議院 決算委員会 第13号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和五十三年六月一日(木曜日)     午前十時三十分開議  出席委員    委員長 楯 兼次郎君    理事 國場 幸昌君 理事 葉梨 信行君    理事 森下 元晴君 理事 馬場猪太郎君    理事 原   茂君 理事 林  孝矩君       塩崎  潤君    津島 雄二君       西田  司君    春田 重昭君       安藤  巖君    永原  稔君       麻生 良方君  出席政府委員         人事院総裁   藤井 貞夫君         人事院事務総局         給与局長    角野幸三郎君         防衛施設庁施設         部長      高島 正一君  委員外出席者         経済企画庁調整         局経済協力第一         課長      愛甲 次郎君         大蔵省主計局司         計課長     石井 直一君         大蔵省主計局給         与課長     川崎 正道君         大蔵省主計局主         計官      塚越 則男君         資源エネルギー         庁石油部開発課         長       鈴木玄八郎君         会計検査院長  佐藤 三郎君         会計検査院事務         総局次長    柴崎 敏郎君         会計検査院事務         総局第一局長  前田 泰男君         会計検査院事務         総局第二局長  藤井健太郎君         会計検査院事務         総局第四局長  阿部 一夫君         会計検査院事務         総局第五局長  東島 駿治君         決算委員会調査         室長      黒田 能行君     ――――――――――――― 委員の異動 五月三十一日  辞任         補欠選任   春田 重昭君     二見 伸明君 同日  辞任         補欠選任   二見 伸明君     春田 重昭君 六月一日  辞任         補欠選任   篠田 弘作君     西田  司君   早川  崇君     塩崎  潤君   山口 敏夫君     永原  稔君 同日  辞任         補欠選任   塩崎  潤君     早川  崇君   西田  司君     篠田 弘作君   永原  稔君     山口 敏夫君     ――――――――――――― 本日の会議に付した案件  昭和五十一年度一般会計歳入歳出決算  昭和五十一年度特別会計歳入歳出決算  昭和五十一年度国税収納金整理資金受払計算書  昭和五十一年度政府関係機関決算書  昭和五十一年度国有財産増減及び現在額総計算  書  昭和五十一年度国有財産無償貸付状況計算書  (会計検査院所管)      ――――◇―――――
  2. 楯兼次郎

    楯委員長 これより会議を開きます。  昭和五十一年度決算外二件を一括して議題といたします。  会計検査院所管について審議を行います。  まず、会計検査院長から概要説明を求めます。佐藤会計検査院長
  3. 佐藤三郎

    佐藤会計検査院長 昭和五十一年度会計検査院主管一般会計歳入決算並び会計検査院所管一般会計歳出決算につきまして、その大要を説明申し上げます。  会計検査院主管歳入につきましては、予算額八百四十四万余円に対しまして、収納済歳入額は、九百七十六万余円であり、差し引き百三十一万余円の増加となっております。  収納済歳入額の主なものは、公務員宿舎貸付料等国有財産貸付収入八百五十六万余円であります。  次に、会計検査院所管歳出につきましては、当初予算額六十一億六千五百二十四万余円に補正予算額五百五十九万余円を加えた予算現額六十一億七千八十四万余円に対しまして、支出済歳出額は、六十一億一千四百九十二万余円で、その差額五千五百九十二万余円を不用額といたしました。  支出済歳出額のうち主なものは、人件費五十四億六千六百五十三万余円、検査旅費三億六千七百七万余円、施設整備費四千四百七十九万余円となっております。  以上、はなはだ簡単でございますが、昭和五十一年度における会計検査院関係決算説明を終わります。  よろしく御審議のほどお願いいたします。
  4. 楯兼次郎

  5. 前田泰男

    前田会計検査院説明員 昭和五十一年度会計検査院決算につきまして検査いたしました結果、特に違法または不当と認めた事項はございません。
  6. 楯兼次郎

    楯委員長 この際、昭和五十一年度決算検査報告中特に重要な事項について会計検査院長から説明を求めます。佐藤会計検査院長
  7. 佐藤三郎

    佐藤会計検査院長 昭和五十一年度決算検査報告掲記した事項につきまして、その主な事例説明いたします。  まず、「不当事項」のうち、収入に関する批難金額十五億五千三百万円の大部分を占めておりますのは、例年どおり大蔵省において租税の徴収額に過不足が生じたというものであります。これらの過不足額十四億三千七百万円につきましては、本院の指摘後、いずれも徴収または還付の処置がとられております。  次いで、支出に関する批難金額二十六億九千七百万円は、一件で十九億円の不当事例があったことなどもあって、前年度の批難金額五億八千二百万円を大幅に上回る結果になりましたが、その主なものについて説明いたします。  まず、道路建設に伴う用地買収が適切でなかったものとして阪神高速道路公団事例があります。同公団では、高速大阪西宮線建設に際しまして、西宮市所在のマンション土地三千二十六平米、建物三棟百二戸の買収及び移転補償等のため十九億八千二百万円を支払っておりましたが、この道路建設のため支障となる部分は、歩道の一部にかかるにすぎないもので、このマンション敷地のわずか五%程度土地建物一棟のうちの七戸分でありますのに、公団ではこのマンション権利者と十分な交渉を行わないまま必要の範囲を著しく超える広大な土地建物買収していたのであります。これを買収することにしました四十八年十月当時は、この道路建設は、進捗率が五〇%にも達しておらず、完成までに相当期間が必要な状況にあったわけでありますから、もっと時間をかけて買収などを行うべきであったものでありまして、このような安易な処置を不当としたものであります。  また、工事の施行が適切でなかったため不経済となった事例としては、水資源開発公団草木ダム建設工事のうち、工事費七千六百万円で実施したのり面保護工事があります。これはダム建設使用する原石を採取した跡地に崩落などの災害が発生しないよう、その傾斜面ロックネットで覆う工事でありますが、施工状況検査しましたところ、ロックネット傾斜面に固定させる役目をするルーフボルト施工されていなかったり、固定されていなかったりして、施工が設計と著しく相違していて、工事目的を達していなかったというものであります。  次に、労働省関係雇用保険失業給付金及び雇用調整給付金支給当たりまして、支給原因となる事実についての調査が十分でなかったため、支給が適正でなかったものが一億六千四百万円あります。  次に、補助事業実施及び経理が適切でなかったものは、五十件二億七千三百万円ありますが、このうち公共事業に係るものとそれ以外のもののそれぞれ一例について説明いたします。  まず、公共事業関係補助では、財団法人栃木農業公社が、乳牛等三百頭規模畜産経営を行う牧場の建設を総事業費四億九千九百万円で行う計画で四十八年度から五十年度までの間に国庫補助金四千六百万円を含む一億三百万円で事業の一部を施行しましたが、事前調査が十分でなかったため対象とした土地事業に不適格で事業を廃止せざるを得ない事態になり、事業投資効果が発現されず、補助目的を達せなかったという事例があります。  また、公共事業関係以外の補助では、国庫補助金を主な原資として都道府県農業者等に対して無利子で貸し付けている農業改良資金に関するものがございます。この不当事例は四十年度以降毎年度の検査報告掲記いたしておりますが、五十一年度におきましては、貸し付け対象とならないものに貸し付けているものなど七十事項九千三百万円、国庫補助金相当額六千百万円と件数、金額とも近年にない増加が見られ、改善の跡が認められない状況となっておりましたので、これを不当事項として掲げるとともに、この際、この農業改良資金貸し付けの適正を期すため種々抜本的措置を講ずべきであるという趣旨会計検査院法第三十四条の規定に基づく処置の要求をいたしております。  以上、「不当事項」の主なものについて説明いたしましたが、次に会計検査院法第三十四条または第三十六条の規定により意見を表示しまたは処置を要求した事項十七件のうち、その主な事例について説明いたします。  会計検査院法第三十四条の規定により、会計経理是正改善について処置を要求したものといたしましては、まず、国営印旛沼干拓事業完了に関するものがあります。農林省関東農政局が二十一年度に着工したこの事業は、四十四年三月に総事業費百八億七千八百万円をもって工事完了し、造成地の大部分である八百四十八ヘクタールが関係者に配分されておりまして、四十五年以来毎年無償耕作が許可され、相当の収穫がある状況でありますのに、同農政局事業完了手続をとっていないため、関係者から徴収すべき負担金徴収が開始されていない状況であります。同農政局は、事業完了手続をとっていないのは未配分地が八・八ヘクタール程度あるなどのためであるとしておりますが、この未配分地造成面積のわずか一%程度であり、配分地においてはすでに耕作が始められているという実情を勘案しまして、未配分地を分離するなどして事業完了手続を速やかにとり、負担金徴収を開始するなど事態是正を図る要があるということで処置を要求したものであります。  なお、以上述べました事態のほかにも国営干拓事業種々問題点を包蔵しておりまして、その事例につきましては別途「特に掲記を要すると認めた事項」として記載しております。  次に、都道府県が行う市町村等への補助に対する国庫補助金に関するものがあります。農林省都道府県の行う市町村等への補助の財源として交付いたしました国庫補助金市町村等への交付状況につきまして、五十年度に栃木県ほか十四府県に交付している主な国庫補助金七十一費目四百八十五億七百万円を調査いたしましたところ、通例三十日程度で足りると認められる事務処理期間を大きく上回る六十日以上にわたって各府県に滞留する結果となっている国庫補助金が五十九費目百三十九億五千万円もありました。また、これと同様な傾向は、五十一年度においても引き続き顕著に認められましたので、このような事態の解消に努め、国庫補助事業の円滑かつ適正な遂行を図るよう処置を要求したものであります。  次に、廃川敷地管理に関するものがあります。東北ほか七地方建設局管内の一級河川について廃川敷地処理状況検査しましたところ、廃川の公示をした面積約九百七十三万平米のうち、五十二年三月三十一白までに旧所有者への下付、新たに河川区域となる土地との交換、普通財産として大蔵省への引き継ぎ等処理を終えたものは約四百十八万平米にとどまり、残りの約五百五十五万平米は処理されないままとなっておりました。これら未処理となっている廃川敷地は、普通財産として大蔵大臣に引き継がれていないなどのため有効に利活用されておらず、また、このうちの第三者に宅地、農地等として使用を認めざるを得なくなっている約百六十五万平米については使用の対価の徴収が行われていませんでした。そして、この未徴収額は五十二年三月未現在で少なくとも約二千二百万円になっております。さらに、廃川公示さえしていないものが、本院の検査で現在判明しているものだけでも約四十二万平米見受けられました。これらの事態に対して、廃川敷地現況把握、境界の確定、関係書類整備等に努め、大蔵省への引き継ぎについても、連絡、調整を密にするなどして処理の促進を図るよう処置を要求したものであります。  次に、会計検査院法第三十六条の規定により法令、制度、行政の改善について意見を表示したものといたしましては、林野庁の製品生産事業実施に関するものがあります。同庁では、二百九十五営林署の中の四百七十四カ所の製品事業所等国有林の立木を丸太にする直営製品生産事業を行っておりますが、その状況検査しましたところ、労働の生産性が低いなどのため、事業損失の発生の著しい事業所が三十八事業所もありました。そして、同庁が素材の生産の指標としている生産性によりまして仮に算定いたしますと、三十八事業所のおおよその生産量は四十万立米になりますが、これに比べまして実際の生産量は十三万立米にすぎず、また、この十三万立米生産量を確保するために必要な人員延べ五万一千人、賃金総額で三億二千九百万円と計算されますのに、実際には十五万二千人が稼働し、賃金総額九億七千八百万円を要していて、この生産性の低さが原因丸太生産原価が著しく割り高になっており、五十一年度の丸太販売価額はこれに要した生産原価を下回る状況となっておりました。この三十八事業所のほかにもこれに類似する事業所相当数あるところから、生産性の向上に努めるとともに、必要によっては直営にかえて請負に付するなど抜本的な対策を講ずべきであるということで、改善意見を表示したものであります。  次に、「本院の注意により当局において改善処置を講じた事項」について説明いたします。これは、本院が検査の過程で不適切な会計経理を発見し、それに関して処置を要求しようと検討を進めている間に、本院の注意を契機として、当局において改善処置を講じたものでありますが、他の同種の事業運営経理執行等の参考に資するために検査報告掲記しているものでありまして、五十一年度では、八件あります。  その主なものとして、一般国道等における道路占用料に関するものについて説明いたします。建設省が直轄管理する国道に設置した電柱、看板等占用物件設置者から徴収する定額制道路占用料は、四十一年度当時の道路価格を基準として設定されたものでありますが、その間の経済情勢の変動にもかかわらず、十年以上も経過した今日に至るまで改定されていませんでした。いま、土地価格等の上昇に見合った占用料計算してみますと、実際の徴収額に比べて年間約七億五千万円程度の増収が期待できたと認められましたので、このような事態の早急な是正について、注意いたしましたところ、同省では、五十二年九月に占用料を改定する処置を講じたものであります。  以上、説明いたしました事項のほかに、「特に掲記を要すると認めた事項」として八件を掲記いたしておりますが、そのうち主な事例について説明いたします。  一つは、社会保険診療報酬所得計算特例に関するものであります。この特例措置について近年国民の間から優遇税制あるいは不公平税制といった形で批判の声が高まってきておりますところから、本院では、八十二税務署における医業所得金額が一千万円以上の医師または歯科医師五千三百七十二人を対象といたしまして、この特例適用状況調査いたしました。その結果、特例適用を受けていた者は三千八百十九人で、そのうち収支の明らかになった者は千六百九十六人でございました。また、千五百五十三人は必要経費率が七二%を超すなどの理由により特例適用を受けていませんでした。この千六百九十六人の実際経費率を見ましたところ、最高は七一・八%、最低は一九・七%で、総平均は五二%となりまして、法律で規定しております。二%の経費率との間に二〇%の開差がございました。この平均実際経費率を主な診療科目別に見ますとかなりのばらつきがございますが、社会保険診療収入規模別に実際経費率経費差額――これは、法定経費率により計算した経費と実際の経費との差額でありますが――これを見てみますと、実際経費率収入額の多寡によってはそれほど変わっておりませんでした。調査した千六百九十六人につきまして、所得税軽減額計算いたしますと、経費差額合計は二百二十億円で、一人当たり千三百二万円となりまして、仮に、これに基づいて軽減されたと認められる税額を計算いたしますと、一人当たり七百万円を超え、総額で百十八億円となったものでございます。  次は、国有財産法定外公共物)の管理に関するものであります。  建設省所管国有財産のうち、古来より農耕用道路水路等として一般に利用され、道路法河川法等適用されないいわゆる法定外公共物管理状況につきまして、本院において、都市化の進展が著しい東京都ほか一府三県下の三区五十九市十一町に所在する千三百十三件、約六十六万五千平米の現況調査いたしましたところ、里道で二百九十二件約十三万九千平米、水路で四百四十八件約二十三万七千平米、その他八件約八千平米計七百四十八件約三十八万五千平米が無断で原状を変更されて使用されておりました。  このような状況から見ますと、この種の事態は全国的に多数存在することが推定されますが、事態によっては相当財産価値のあるものが特定の者に無断使用されることになると認められたものであります。  次は、地方公共団体日本住宅公団住宅金融公庫等実施している公的資金による住宅建設及び管理に関するものであります。公団住宅に多数の空き家が存在していることは、周知のとおりでありまして、本院では前年度にも特記事項として掲記いたしましたが、本年度はさらに公営住宅公社住宅を含めまして、大都市及び周辺地域のこれら住宅建設状況管理状況について、実態を調査しましたところ、新築空き家――これは住宅建設後、入居者募集を行い居住できる状態になっているのに空き家になっている住宅でありますが、――この新築空き家が、公団住宅では、約一万四千五百戸建設費にして千四百七十九億円に上っており、公営住宅公社住宅でもかなり多数の新築空き家が見受けられました。また、公団住宅では建設したものの入居者募集もできないまま保守管理されている新築住宅が約一万七千五百戸、建設費にして千四百三十八億円見受けられました。  このような事態を生じましたのは、土地取得費大都市周辺部で特に高騰したことなどにより建設する住宅がいわゆる遠、高、狭となっていて、立地、規模等質的充足を求めるようになった近年の住宅需要に合致しないものとなっていることによるものと認められます。そして、このような状況のまま推移いたしますと、建設のために投入された財政資金効果を発現しないまま今後継続することになるものであります。さらに、住宅公団では、住宅建設計画の達成を急ぐ余り着工目途も立っていないのに発注したりするなどして、すでに発注しながら未竣工となっている住宅が約十二万五千戸ありまして、このうちには、完成しても空き家となるおそれのあるものが多く見込まれております。  次は、東海道線混雑緩和目的とする線路増設工事の一環としての横浜貨物線建設に関するものであります。この横浜貨物線建設されますと、湘南電車は現在線を、横須賀電車は現在の貨物線使用して別々に運行でき、東京-大船間の混雑が大幅に緩和されることになります。そして、この新貨物線は、四十一年五月運輸大臣認可後四十六年十月を使用開始目途として四十三年十一月から着工し五十一年度までに、建設費四百七十四億円とこれに関連する線路増設費二百三十二億円計七百六億円を投入して鉄道施設はほぼ完成しているのでありますが、住宅地を通過するところの延べ約六百メートルの区間の用地取得等について地元住民理解を得られないなどの理由からこれらの個所の工事に着手できないため、現在なお使用することができず、多額の投下資金がその効果を発現できずにいる状況にあるというものであります。  最後は、電報事業運営に関するものであります。昭和五十一年度の電報事業営業損益について見ますと、事業収入は百九十七億八千八百万円、事業支出は千三百四十七億五千八百万円で、千百四十九億七千万円の損失を生じており、この結果、五十一年度末までの損失額合計は一兆円を上回っております。そして、電報事業の現状を見ますと、他の通信手段普及発展に伴い年間取扱い通数は、三十八年度の九千四百六十万通を最高に逐年減少いたしておりまして、五十一年度は四千百八十九万通になっており、また、緊急用電報の占める割合が三十八年度には四%であったが、五十一年度には一%に減少している反面、儀礼的な慶弔電報が三十八年度には一四%であったものが五十一年度では六五%になっているなど、その状況に大きな変化が認められます。しかし、それにもかかわらず、現在なお電報緊急通信手段として中心的な役割りを担っていた当時と変わらないサービスを要望されていることもあり、窓口での受け付け通数が一日一通未満の取扱局が七一%もあるといったようにきわめて効率の低い事業運営を余儀なくされておりまして、今後も電報事業収支はさらに悪化するものと認められます。  以上、概括的でありますが、昭和五十一年度決算検査報告の主な事例について説明いたしました。会計検査院といたしましては、これらの事態関係者が深刻に受けとめ、一つ一つ是正改善に努められるよう期待いたすものでありますが、今後ますます適正かつ効果的な財政運営が確保されるよう会計検査を通じて努力してまいりたいと考えております。  特に現下の国家財政は、国債の増発が余儀なくされているなど、多事多難の時を迎えており、国民各位の強い関心が国家財政に寄せられておりますとき、会計検査院といたしましても、その輿望と期待にこたえられますよう一層の会計検査機能の充実に努めなければならないと考えておりますが、今後とも当委員会の御批判をちょうだいしつつ努力を重ねてまいる所存でございます。  せっかくの機会を与えていただきましたので、私の所信を述べさせていただきました。どうもありがとうございました。
  8. 楯兼次郎

    楯委員長 これにて説明の聴取を終わります。     ―――――――――――――
  9. 楯兼次郎

    楯委員長 これより質疑に入ります。  質疑の申し出がございますので、順次これを許します。原茂君。
  10. 原茂

    ○原(茂)委員 最初に人事院総裁に、前回の委員会で答弁をいただきました中で、その後調査しましたのと大分違っているようですから、その点をお伺いする。あと、特に北富士問題の林雑補償問題を集中的に、今日までの検査のあり方、その方法などの内容の検討をさせていただく。最後に、林雑補償支払い演対協会長白紙一任をしなければ支払いがされないという問題に対して検査院の確たる見解を伺って終わりたい、こう思います。  まず、人事院総裁にお伺いいたします。  五月十二日でございましたが、記録がおありだろうと思いますが、決算委員会における私の質問に、総裁は、「格づけの面で、同種類のものとは違って、会計検査院については一段階上の格づけをしておる」と言われたのですが、この発言は会計検査院全体が一段階上に格づけされているというように、たとえば他の省庁では五等級に格づけすべきものを検査院職員についてはその職務の性質と重要性を考え特に四等級に格づけをしているというような趣旨理解をされるのですが、事実そのとおりに理解してよろしいのかどうかが一つです。  それから二つ目に、私が調査をいたしましたところでは、相対的に見て他省庁、つまり人事院とかその他の省庁の本省の等級別職員の構成と比較いたしまして、会計検査院の方がむしろ低くなっているとさえ思えるものが多々ございますが、それでは具体的に人事院と比較して一体どうなんだろう、人事院全体の人員の中に占める指定職の比率、一等級の比率、二等級の比率というように八等級までの数字を挙げて、会計検査院の数字と比較して述べていただきたいのが二つ目。  それから三つ目に、会計検査院には一般の副長、つまり他の省庁課長補佐に相当するものに十何名かの二等級職員がいることが他省庁の場合と比べて有利になっている点だという説明も過去されておりますが、見方を変えて、二等級全体の構成率ということで見ると検査院の方が他省庁に比べて低い。これはどういうことかいろいろ考えてみますと、検査院には他省庁に見られるような何々専門官、何々参事官という処遇面で有利なポストがないことが原因のように思われます。したがって、優遇の説明にはならないように思います。むしろ検査院の二等級副長は実地検査のいわゆる主任官として検査院を代表して現地に赴くなど重要な職務に従事するということで当然ではないかと思うのですが、これが三つ目。  四つ目に、あれこれ考えてみまするに、非常に複雑かつ困難な業務を遂行しなければならない会計検査院は、他省庁さらには他省庁の本街機構におけるよりも有利な級別定数があって当然だと考えておりますが、とりあえず人事院と比較して、先ほどの第二に答弁を求めましたが、それでさえ検査院職員の方がむしろ不利に取り扱いを受けていると思いますから、この点に対してぜひ明確にお教えをいただきたいのと、先日一段階上に格づけしているという総裁の発言は一体何を根拠にして言われているのか、この点の真意をあわせて四番目にお伺いをする。
  11. 藤井貞夫

    藤井(貞)政府委員 具体的詳細に、また数字にわたりますことにつきましては、給与局長が参っておりますので後ほど御答弁を申し上げますが、私からいま先生から御質問がございました点についてまず概括的に申し述べたいと存じます。  先般の決算委員会における先生の御質問に対しまして、私は、会計検査院重要性、その職務の困難、複雑性は十分承知をいたしているつもりである、そういう見地から従来からもそれなりの措置というものは考えてきたつもりであるということを前提といたしまして、まずその第一点といたしましては、要するに調査官の格の問題につきまして申し上げました。これは類似の他省庁調査官と比較して申し上げますと、大体他の省庁のこれに相当する調査官の格づけというものは、三等級から六等級ということに原則的にはなっております。それを会計検査院の場合には、特にその重要性に配慮をいたしまして、検査官の中でも重要な職務の人は、普通他省庁では三等級どまりであるものを二等級にする道を開いております。また最下限の方につきましては、まだ初任の方々、若い方々でございますが、そういう方々につきましては、六等級一般であるのを五等級まで上げる措置を講じております。という意味で、それはやはり一つの優遇措置として当方としては考えておるつもりでございますという趣旨で申し上げたつもりでございます。  したがいまして、それぞれの比較をいたします際に、他の六等級が必ず五等級である、あるいは五等級のものは必ず四等級であるというふうに、具体的のケースに入ってまいりますと、きちっとそういうふうにランクづけができるかということになりますと、これは個々の具体的な当人の経歴その他の問題もございますし、そういう点につきましてはいろいろ問題もございますし、当の検査官の実態その他から見ましての格づけでございますので、そういう非常に形式的にランクをして一段階全部格づけについて上げておるというふうに御理解いただけるような、いわば方向を示唆をしたということに相なりますれば、これは私の少し言い過ぎでございまして、言葉が足りなかったことかと思います。  ただ、気持ちといたしましては、同種のものについて一格上の格づけをする道を開いておる。現実に二等級というものの調査官が会計検査院においてはかなりの数が出ておるということはこれは事実でございまして、そういう意味を中心といたしまして、先生も御承知の毎年やります等級別定数の格づけ決定ということについては、十分会計検査院の実態を配慮をいたしまして、優遇措置を心して考えておるということは、これは間違いがございません。そういう線で今後ともなお努力はしてまいりたいというふうに考えております。  それから、第二の点といたしまして、本省庁相互の関係で人事院の問題とかその他の点の御比較がございますが、この点はやはりそれぞれの各省の組織、地方支分部局全体の数、その他の点を比較考量をいたしまして、組織なり規模なりというものがそれぞれ違いまするし、それの職務評価というものはおのずから違ってまいりますことがございますので、総体的にただ単に本省庁だけを比較をするということも、その点は若干問題があるのではないかというふうに考えております。これが一般論でございます。  ただし、前々からも御熱心に主張をいただいておりますように、私といたしましては、会計検査院の職務内容というものがきわめて困難であり、複雑であるということは十分承知をいたしておるつもりでございまして、こういう点を踏まえて今後ともさらにその方面の推進向上に当たってまいりますとともに、その他の面においてもさらに適切な処遇が、措置が講ぜられるように努力をしてまいりたいと思っております。  今年の夏の勧告がどうなりまするか、これはいまのところ調査に入った段階で、わかりませんが、この段階におきましても、そういう点を詰めて検討する時間を持ちたいと考えております。特に最近の会計検査院検査をめぐる諸問題というものが起きておりまして、この問題が直ちにわれわれの給与に直接にはね返るべきものであるとは考えませんが、しかしこれは現実の姿でございます。会計検査院の業務の遂行というものがやはり適正に支障なく行われるためには、われわれ給与の面からも十分これに対して考慮してまいらなければならぬ部面が多いことも事実でございます。そういう観点から今後とも前向きの姿勢でこの問題に対処してまいる決意でございます。これだけ申し上げておきます。
  12. 原茂

    ○原(茂)委員 総裁のおっしゃることを聞いていると、おおむね非常な配慮をしているし、特に優遇をしている、しかし、先日、一段階上の格づけをしていると簡単に言い切ったことには誤解を生ずるおそれがあるという言いわけもあったわけです。しかし、他省庁と比べたときに、私は、特に人事院における会計検査院との比較というものを数字でお示しいただきたいと、こう言ったわけです。いまお話を聞きますと、それはあえて聞かないでもいいと思いますが、ここで会計検査院にお伺いしたいのです。  いま人事院総裁の言われたような、いわゆる二等級あるいは三等級、五等級、六等級等、他省庁との比較における優遇措置が講じられているという説明に対して、検査院の立場で、言いにくいかどうか知りませんがざっくばらんに、総裁の言うとおりになるほど優遇をされ、それが実行に移されているのだというふうにお考えかどうかを、まず先にお伺いをしておきたい。
  13. 柴崎敏郎

    ○柴崎会計検査院説明員 ただいま総裁がお述べなさいましたように、私ども、職員の給与につきましては常々お願いをいたしておりまして、級別定数の枠を広げていただくということについては御理解をいただきまして、年々御努力を願っているところでございますが、いま総裁がおっしゃいました中で、本院の調査官が最高等級から五等級に格づけをされているというこの格づけの点でございますけれども、実は私どもの方の調査官、これは予算の定数表によりますとすべて調査官という名前で一括しておりますけれども、この調査官の中には、各省におきますところの課長補佐に相当する職がございまして、これは部内的にそういう形で、身分は調査官でございますけれども、私どもの方ではこれを副長、筆頭の副長の場合にはこれを総括副長ということで呼んでおりまして、この総括副長なり副長の中には二等級のものもいただいております。ということでございまして、他省の場合の最高等級から最低六等級というこの相当職員、これは私どもの方で調べさせていただきました限りにおきましては、いわゆる課長補佐に当たる、私どもの副長に当たる者はどうも除外されているように考えられます。つまり、私どもの方で呼んでいる調査官の中の総括なりあるいは副長に相当する者を除いた、私どもの方では平調査官ということでございますが、この平調査官に相当する者だけが、三等級から六等級ということで比較として申されているように考えられるわけでございまして、その意味におきましては、私どもの方の副長に当たる二等級の者、これは各省の、たとえば金融検査官のような職務の者につきましても、承るところによりますと上席金融検査官というような名前をつけて、二等級になっておる。そのように伺いますので、そういう意味で、私どもの方の調査官の等級の格づけの比較の問題につきましては、いわゆる総括なり副長を除いた普通の調査官につきましては、各省と同じように三等級から五等級、こういうことになっております。  なお、各省の場合には最低六等級の者もいる、こういうお話でございますが、この六等級の者につきましては、私どもは調査官という職務の重要性にかんがみまして、六等級の者は調査官という名前は与えない、これは調査官の言ってみれば補佐、補助者というような立場の、主任ということで私どもは呼んでおりますので、確かに調査官という名前のものは五等級以上でございますけれども、その六等級の主任というものがほかにございます。そういう意味で、これは調査官の職務を重く見ているがゆえにそういう措置をとっているということでございます。しかし、この六等級の主任も検査には補助者として携わっておりますけれども、調査官の名前を与えていない、こういうことでございますので、いまの格づけの比較の点につきましては、いま言ったような基盤がちょっと違う基盤で御比較になられたのではなかろうか、このように考えておるわけでございます。
  14. 原茂

    ○原(茂)委員 総裁にもう一度いまの点をお伺いしますが、どうでしょう、お聞きになって、柴崎さんが言われたように総括副長、副長という各省の課長補佐に当たるような人も、どうも人事院では一緒に考えて優遇しているという見解をとっているように聞こえる。私もそう思いますが、この点はどうでしょうか。  それからもう一つは、いまの三等級から最低六等級までに格づけをしている中で、たとえば大蔵省あたりで、いまお話のあったような金融検査官、上席金融検査官ということで二等級支給されている事実もあるのかどうかも、あわせてひとつお答えいただきたい。
  15. 角野幸三郎

    ○角野政府委員 お答え申し上げます。  ちょっと定数上の配分の細かい話でございますので、私から補足させていただきたいと思います。  私どもが定数の設定をやりますときには、基本的な考え方といたしまして大きな柱が三つございます。給与法に挙げてあるとおりでございますが、まず行政組織法、法令の趣旨に従いという柱でございます。これはその役所の組織なり、まあ組織といいましてもその性格なり仕事から来るわけでございますが、それの変化に対応して定数を見るということが一つでございます。それから今度は、同じ一つの役所の中でも官職がいろいろございまして、その官職の職務の複雑、困難、責任ということで定数を上下に見るというのがもう一つの柱でございます。あともう一つ予算の範囲内でと、これは当然でございます。そういう三つの柱を立てまして、結果的には各省にお配りしておりますような定数の配分になっておるわけでございます。  したがいまして、これをどの省がどうということを比べますには、要件が複合しておりますために同質のものを比べるということがなかなかむずかしいということはございます。不可能とは申しませんが、なかなか厳密な比較はむずかしいという意味でございます。  それで、先ほど先生がお話しの、たとえば各省ということの中から本省だけを抜き出して比べたらどうか、省庁によっては本省的な性格のところと現場的なものといろいろございますから、本省とおっしゃるのは筋だと思いますが、これは現在の整理の仕方でございますけれども、重要なといいますか、わりと上の方のそういう官職につきましては本省を抜き出して集計をいたしておりますけれども、ややそれより下の方というと語弊がございますが、それにつきましては、その役所全体を通じて計算しておく方がかえっていいということもございます。そういうことで、本省だけ抜き出しての上から下までの分析というのはなかなかむずかしいわけでございます。これも不可能ではございませんが、当面ちょっと間に合わないというような感じであるわけでございます。  そういうことで、たとえばいまお話しございました人事院の場合に比べたらどうかという御質問がございました。ちょっと人事院のデータそのものについてはいま持ち合わせておりませんが、これはやはり上の方に、二等級とか一等級とか、その辺にどっちかと言えば全体の中で偏っている形をとっていると思っております。それはなぜかと言いますと、いろいろその役所の性質、あるいは専門職的な仕事であるのかないのか、あるいは組織がどうなのか、本省的であるか、企画的であるかというようなニュアンスによって決まることもございますが、それよりほかに、どうしても世帯といいますか規模が小さい場合には、仕事の性格上、高い等級にどうしても多くなるというような、結果論かもしれませんが、どうしても仕事からしてそういうことになると思いますから、したがって、規模によるそういう偏りも結果的には出てくるわけでございます。何か言いわけばかりしておるようでございますが、そういうこともございまして、一概には言えないのじゃないかと思います。  そこで、私どもが会計検査院調査官の定数を策定いたしますときにそれではどうなのかということになりますが、これはいまお話がございましたように、ほかの一般の専門職でありますと、いろいろございますが、一番基本形は六等級から始まって三等級というのが一般にあるものでございます。中にはたとえば専門職といいましても、労働基準監督官のように七から始まって四で終わるというのもございますし、それからいま会計検査院調査官のように五から始まって二で終わるというのもございます。例外もないことはございませんが、そんな形をとっておりまして、一般の評価としましては、どこから始まってどこで終わるかということで、その官職の等級が当たっております格が決まるというふうに私どもは基本的には考えております。  そういうことで、これは言葉遣いの問題でございますけれども、先日来の総裁の答弁もあったのだと思いますが、そこで、その格といいますかその形は、試験に合格して採用いたしまして、大体どのくらいの経験を積んで初めて調査官なら調査官になるかということで評価するというところから始まるわけでございます。それから優秀でずっと順調になさった場合に最後はどこまで抜けるかということで、二等級まで例外でなければいけるような感じで私どもは運用しているつもりでございます。そういう点で、ほかの一般の専門職の場合に比べて現在の数字のあり方がどうだということはもちろんございますけれども、それはたまたま職員構成がどうだという各省の事情もあろうと思いますが、私どもの運用の考え方といたしましては、そういうふうに順調にといいますか経験を積まれた場合には二等級までいける、そういう基本形で見ておるということで、それで優遇しておるという言葉につながる、そういうふうに私どもは思っております。  それから、もう申し上げてダブるかもしれませんが、一般にそういう専門職的な調査以外に、事務方あるいは官房の各課あるいは一般の課におります補佐でありますとか係長でありますとかいう、その辺の等級の数を合わせたらどうだというような感じがございますが、それは劈頭に申し上げましたように組織と仕事の形によって差があるというお話を申し上げるよりいたし方ないと思います。  それからもう一点、副長さんのお話がございました。二等級に副長さんがおられるということは存じております。私どもは定数を策定いたしますときに調査官として二等級までやっておりますけれども、仕事の内容としては副長ということで現場でおやりになっているということはよくわかっております。ただこの副長を策定いたしますときにも、一般の各省の課長相当の二等級を出しますのに比べまして割合としては各省よりも甘め――甘めという言葉は非常によくない言葉だと思いますが、現在そういう副長さんあるいは副長に次ぐ人が現場で調査をおやりになることの実態をわきまえて定数を策定しておる次第でございます。
  16. 原茂

    ○原(茂)委員 聞いているうちに興味を持ってきましたので、八日に当委員会における大蔵省審議をしますが、そのとき専用にもう少し突っ込んでお伺いをします。  いま人事院との比較をちょっとおっしゃったんですが、人事院は全体百三十六名に対して二等級が二十六名いるんですよ。いまの説明によると、何か専門的な技術、専門的な知識、経験というものを――まあ人間が人間を判定するのですからむずかしいでしょうが、一体どういう根拠で人事院だけが百三十六名の人員に対して約二割近く二等級がいるのか。会計検査院はどうかというと、六百九十五名に対して二等級は五十三名、一割もいない。会計検査院の専門的な知識、経験より人事院における専用的な知識、経験というものがウエートを非常に高く要求されているというふうに、人事院だから勝手にお手盛りでよくしているんじゃないかというふうにいま感じた。そうでないならそうじゃないということを相当突っ込んでお伺いするために私も調査をします。  この数字を見ただけでも、会計検査院は二等級が一割もいない、人事院には二割近くいる。三等級人事院の場合にはこれも大体三割以上います。会計検査院の場合も大体三割ちょっとになるというふうに、二等級へいくとばかに各賞の数が違ってしまうという点に、人間が人間をやって妥当と言えるかどうか知りませんが、非常な疑問を持ちます。一体専門的な技術、経験というものがどんなふうに評価をされて、だれがどこでどういう判定をしていくのか、そういう点もこれから十分突っ込んでお伺いをしなければいけないように思いましたので、他にあと二、三これはという疑問がありますが、たとえば十三日にほかの省庁がうまくいきませんときには人事院を専門的にやらしてもらうということもこれから考えます。委員長にもこれはお願いしておきます。  十三日に専門に人事院をやってこの問題を十分にお聞きするということにするか、八日の大蔵省のときにもうちょっと突っ込んでお伺いするか、どちらかにしたいと思います。きょうは時間もありませんからこれ以上質問をいたしませんから、お引き取り願って結構です。八日あるいは十三日、十三日の場合には人事院だけを専門に検討さしていただくことをあらかじめ申し上げておきたい、こう思います。人事院の方は一応これで終わります。  今度は会計検査院にお伺いいたしますが、さきの東大の精神病棟を中心の検査検査院はおやりになったまま、まだ完全にフィニッシュにはしてないのですが、文部省はもう検査もできるような状態に正常化される、されると言って今日まで来ています。この間、私は行けませんでしたが、当委員会で視察に行きました。十分な視察すらできなかった状態ですが、検査院としては、前にやりかけている検査をいつごろおやりになる予定なのか、その見通しがついているのか。
  17. 柴崎敏郎

    ○柴崎会計検査院説明員 東大の検査につきましては、例の精神病棟の問題について過日特別に検査に臨んだわけでございますが、ほとんど十分な検査ができなかった、こういうことでございます。これでは私どもも大変困るわけでございまして、そこで東大そのものの検査、これは毎年一回、十日間ぐらい実行いたしておりますが、この際精神病棟の問題もあわせて徹底的に検査をしなくちゃならない、こういうことで、その時期を実は七月三日から十日間ということで現在予定をしております。  そのことにつきまして、その後、文部省あるいは大学当局に対して事態を早く解決してくれということを再三申し入れておったわけですが、また念を入れまして文部省文部次官、それから東大総長あてに申し入れ書を渡しまして、必ず七月の初旬の検査までにはわれわれが円滑な検査ができるような体制にしておいてくれということを申し入れました。またそれに対して、つい先日でございますが、文部省それから東大からそれぞれ、全力を挙げてそのように事態の解決を図る、こういう回答が寄せられております。
  18. 原茂

    ○原(茂)委員 これはあんまり長くなってもみっともない話なんで、国家の威信にも関しますから、七月三日から十日にぜひ実行できるように期待もしますし、文部省をせっついて実行できるようにしていただくようお願いいたしておきます。  それでは、林雑補償についてこれからお伺いをしてまいります。  まず、会計検査院決算検査に関しまして、防衛関係費、なかんずく自衛隊施設などの運営に関連する予算についての会計検査一つの例として、その決算検査の方法、姿勢について検査院長を中心に質問をいたしたいと思いますので、主な点は責任ある答弁を院長からいただくようにしたいと思います。  五十一年度決算報告に記載されました「検査の結果の概要」あるいは「不当事項」「意見を表示し又は処置を要求した事項」等々を個々具体的に検討する以前の問題として、一体会計検査院はどのような姿勢でこの決算検査に臨み、どのような方法でこの決算検査を行ったのか、その基本的な姿勢、方法をまず伺っていきたいと思うのです。  本年一月七日、会計検査院予算執行についての適切な検査を行うための体制づくりをいたしました。言うまでもなく民主的な会計検査院たらんとする改革でもありますし、これは是とすべきものと考えます。  ことさらに強調するまでもなく、民主的な行政とは、いたずらに権力におもねない、暴力に屈しない、人間の合理性に全幅の信頼をかける行政でなければいけないと思います。単に事を荒立てざるをよしとしたり、多数に盲従するだけなら群れをなす動物の社会と何ら異なるところはありません。  予算執行の適正も、その根源は公正な税の配分、つまり人間の理性の尊重にあるかと思います。民主主義国家における会計検査院の使命というものは、各行政庁の非合理あるいは非合法な会計行為に対抗し、毅然として人間の合理性、合法性を守るためにこそ存在すると思います。ゆえに日本国憲法においても、行政庁の検査院にその独立の地位を保障して、最高の人を得んといたしているのもそのためであります。  けれども、仮に機構のみを改革しても人間としての理性を欠くものがあれば、いかに法がその機構上の地位を保障しましても何の役にも立たないことは当然であります。私は昨年十二月、欧米主要各国の決算制度と会計検査制度をべっ見する機会を得ましたが、いずれの国もこの理念の追求にあらゆる努力を払っている姿が強く印象に残っております。  ここで改めて憲法第九十条あるいは会計検査院法第一条を持ち出すまでもなく、会計検査院とは政府の財政の執行を監視、検査することを任務とする憲法上の機関で、内閣に対し独立の地位を持つことは当然であります。会計検査院の独立とは、会計検査権が行政権から分離され独立の国家機関たる地位を与えられるのみならず、会計検査権の行使に当たる検査官、調査官等、関係職員が、具体的検査に当たっては受検査省庁等の行政権から独立で、その指揮命令に拘束されないことを意味するものであり、さらには事実的にも行政権の何物によっても制肘されてはならないことを意味しているものでもあります。  にもかかわらず、たとえば新聞の表現などをかりて言いますと、会計検査院は税金のむだ遣いに対するお目付役、それが検査先でがっぽがっぽと税金を飲み食いしていたというのだからいやになると評されるような、みずからの独立を放棄するがごとき振る舞いは、幾ら非難されてもされ過ぎることはないと思います。  何もこのことは供応のみの問題では実はないのでありまして、たとえば受検各省庁があらかじめ不当と思われる事項を用意しておいて検査の際にそれを調査官にあえて指摘させ、その他のことについては検査をしないというようなこと、この不当と指摘させる事項を受検省庁ではおみやげと称しているようだが、そのようなことが不文律となっている省庁があるということも、これまでの私の調査で明らかとなりつつあります。  しかし、それにも増して等閑視することができないのは、明らかに違法、不当であるにもかかわらず、行政庁の政策によって法をねじ曲げ、虚偽の申告を国民になさしめることによって、会計経理の紊乱が厳然として存しているという、ここの問題。であるにもかかわらず、これを黙視、放置するがごとき会計検査のあり方こそ、いま私が問題にしようとしておるのであります。  供応ならば、破廉恥ではあっても、佐藤院長が言うがごとくにこのことによって検査に手かげんを加えることはありませんと遁辞を吐くこともできただろうし、できると思います。またおみやげは手みやげとは異なりまして、破廉恥とは映らずとも、むしろ本質的には検査権の放棄であり怠慢であります。しかし、違法な会計経理をその政策のゆえに黙視、放置するに至っては、会計検査院みずからがその独立の地位を放棄し、その存在理由を否定することにもなります。  会計検査院は、内閣から独立してその職権を行うところの権力を持っていますが、詭弁と遁辞を設けて法と論理と事実から独立することまでは、その権力の中に入らぬものと私は確信しています。現在、会計検査院はその独立的地位をみずから放棄し、監督する立場から監督される立場に転落しつつある現状というものも一部ありますから、これは厳しく認識していただかなければと存じます。  ここで私は、従来から幾度も取り上げてまいりました北富士演習場にかかわる林野雑産物損失補償の会計経理会計検査を取り上げ、その姿勢、方法をただしていきたいと思いますが、ことに昭和五十一年度の林雑補償が、私のたび重なる指摘にもかかわらず、それを嘲笑するように支払われた理由が、会計検査院のいわゆる防衛政策に対する黙視、放置にあるのではないかという点にかんがみ、この五十一年度の決算検査に限って質問をしてまいりたいと思います。  私が昨年明らかにいたしましたように、北富士においても防衛施設庁が調査官を供応していた事実があります。そして五十一年度の林雑補償支給は、あたかも黄金の気球が五月の空に浮かび上がったように本年五月一日になされてしまいました。この気球は、防衛庁長官の地元での発言として巷間伝えられていますように、検査院なんかには林雑補償は指一本触れさせない、ということを裏打ちするもののように感じられます。しかし、この気球は、受給していない農民にとっては、法を無視することによってあえてその権力を誇示する威圧的アドバルーンのごとく見えたと思いますし、これまでその違法、不当性をたび重ねて国会において指摘してまいりました私にとりましては、防衛施設庁の国会に対する挑戦であると映っております。  だが、何よりも私にとっては、これは会計検査院に対する観測気球そのものであると考えられてなりません。この支給に対する会計検査院の態度こそ、その実態を如実に見せてくれるからであります。  私は、会計検査院に対して、万悪の根源、不正の温床である現在の防衛施設庁の林雑補償制度の違法な運用に対しまして、会計検査院は思い切った斧鉞を加える勇気と見識と正義に対する信念を持つべきことを強く期待して、今日に至ったのであります。  ここであらかじめ北富士の状況を言えば、防衛施設庁の会計の紊乱がただ単に黙視されているというだけにとどまらず、その運用によって善良な国民が正当な権利を行えない、あるいは行わないという不合理が一般化してしまって、正直者は損をするという法律軽視の憂うべき風潮が北富士住民の中にみなぎっているということであります。私はこの原因が那辺に存するのか、またどうしてそうなるのかということをこれまでるる指摘してきたところでありますが、それをただすべき会計検査院がなぜに手をこまねいていられるのか。  当然のことながら、形式的にせよ検査を受けているはずの防衛施設庁は、会計検査院が定めたいわゆる計算証明規則に基づいて所定の計算書とその内容を証明するための証拠書類等を会計検査院に提出しているはずであります。そして会計検査院は、これらの計算書、証拠書類等についてあらゆる角度から常時検査を行っているはずのものであろうと思います。そこでは、これまで国会での追及も数多くなされているのでありますから、防衛施設庁が詳しく各証拠の説明をもいたしているはずであると思います。だが、説明はしょせん証明ではありません。  私は、実損があるので申請があるというのではなくて、申請があれば必ず実損はあるのだというがごとき原因と結果の入れかえを行い、われわれが幾たびか例示してきた実損を否定する積極的証拠を、防衛政策の名において糊塗し、法と理性と常識を無視した防衛施設庁の会計経理を、決して容認できるものではありません。  にもかかわらず、別段会計検査院に直接の利益があるのでやる手抜きというのではないとするにせよ、ただ防衛施設庁の威信と称する権威のために、これまでつくり上げてきた既成事実の前にその非を押し通させるがごとき検査院であっては断じてならないと考えています。  本日の私の質問が、会計検査院に何らかの疑問を生じさせるような弱点、たとえば単なる主張とか抽象的法律論とかまだ明らかになっていない証拠に関する発言等があったのでは、私の質問は中途半端に終わってしまいます。無力化します。よって、以下、具体的に資料をもって会計検査院の判断をお尋ねしていきたいと思うのであります。  さて、私は、防衛施設庁の北富士演習場にかかわる林雑補償金の支払いに関しまして、法的にも行政的にもまた実態的にも多くの疑義を抱き、国会においても繰り返し連続的にこの問題を取り上げてまいりました。  すなわち、林雑補償に関して、すべて北富士演対協の会長に白紙一任をしなければならないとする、いわゆる処理要領行政は、法的疑義の典型であること。だが、次にそれにも増して驚くべきことは、その実態において全く受給資格のない者へ林雑補償金の支払いが行われていること、しかも、かかる林雑補償金の支払いに当たって防衛施設庁は、いわゆる林雑補償実損主義の原則をあえてみずから破って、現在すでに草刈り、そだ取りのための演習場への立ち入り許可日の立ち入りの事実のないことを百も承知の上で、詐欺共犯的行為をやっている厳然たる事実が現にあることを指摘し、そして結局のところ実損主義の前提に立つ現在の林雑補償制度下にあっては、そのほとんどの北富士農民は林雑補償受給資格者たり得ないこと、したがって、忍草、新屋の農民であろうと、あるいは演対協会員であろうと、一切払うべきではない。いや、絶対に払ってはいけない。国の大切な血税をこんなふうに払うべきでないし、絶対にこれを許してはいけないのだと指摘してきたのであります。  つまり、私は、これら一連の林雑補償金の支払いに関する国会質問を通じ、北富士演習場使用協定更新期の本年四月を迎えるに当たりまして、年度がかわる三月いっぱいには、北富士に関連するこの種の問題、余りにも長過ぎるし、しかもその違法性、不当性が指摘されながらそれを摘出するような措置が講じられていないというような膠着状態を、話し合いによって、早期に、少なくとも三月いっぱいには解決をしたいと念願をし、誠心誠意取り組み、防衛庁に林雑補償行政の根本的反省を迫り、会計検査院に対しても特に厳重な調査やその是正を強く要求してきたのは御存じのとおりであります。  そしてその際、金丸防衛庁長官は、円満解決のために最善の努力を約束し、他方、松田会計検査院第二局長は、きょうおやめになりましたが、実損がないのが「全部の実態であるとすれば、現在の補償基準に関する限りにおいてはまずいことである、」とまで発言をされて、なお林雑補償制度の根本的見直しの必要性を挙げるとともに、実態の十分な検討の決意を述べております。  これほどまでに国会で取り上げられ、その法的疑義が言われ、しかも担当大臣が円満解決を標榜し、さらには会計検査院をしてまずいことであるとまで言わしめた現在の防衛施設庁の北富士演習場に係る林雑補償行政については、これらの発言を踏まえ、当然その是正改善の措置が講ぜられることが期待されましたし、不当摘出の措置が講じられなければならなかったのでありますが、いやしくもかかる発言がありながら、従来どおりの林雑補償金が支払われることなどあってはならない、あるいは絶対にしてはいけないことなのであります。「私どもとしても、補償を要するならば、この補償は一体どういう形ですべきであるか、これをひとつ本当に防衛庁の方に根本的に考え直してもらわなければいかぬのではないかという感触は私は持っております。」と松田第二局長は述べました。さきの林雑補償行政に対する法的、行政的疑義に加えて、防衛施設庁に対し、林雑補償制度そのものについての根本的な検討、見直しを要求し、会計検査院としてその実態を十分に検討をする旨の決意を表明いたしたのであります。  しかるに、本年五月一日、昭和五十一年度分の林雑補償金は支払われました。普通なら法的疑義が解明されるまで一時凍結されてしかるべきものを、事施設庁の場合にはあえて違法、不当でも許される。ここに私は防衛行政、基地行政のひずみとその強権的性格の色濃い投影を見ないわけにはいかないのであります。  その際、一体会計検査院はどう対応したか、まずこれらについて、以下順次質問をしてまいります。  言うまでもなく、林雑補償金の支出根拠は、林野雑産物損失補償額算定基準によって決められております。関係農民が入会慣行のある林野において事実上収益してきたいわゆる採取行為が、その林野を演習場に提供することによって阻害された、したがって、現実にこうむる損失を補てんする必要があるということから、この制度が設けられているところであります。このことは、故山本伊三郎参議院議員や鈴木力議員の質問に答えた内閣答弁書にも確認されています。すなわち実損主義、実損ある者のみが受給資格者であるとする制度であるが、一体会計検査院はこの点をどう考えているのか。実損主義、実損のある者が受給資格者というこの制度に対する理解を、いま私が申し上げたと同じかどうかをまず第一にお伺いをしたい。
  19. 柴崎敏郎

    ○柴崎会計検査院説明員 この問題につきましては、私どもの方でも大きな関心を持って検討しているところでございますが、御承知のとおり、地元側におきましては、入会慣行に基づく入会権を根拠とするところの補償であるということが基盤になっておる。それに対して防衛施設庁当局側の見解は、あくまでも行政措置によるところの恩恵的な給付金である、このような見解のもとにいまの取り扱いをやっているわけでございますが、いずれにいたしましても、その基盤にあるものはやはり実損ということであろうと思います。  したがいまして、この実損の実態につきまして施設庁では四十九年に実態調査をいたしておるということでありまして、その資料もございますが、その後の時の流れによりまして、現在の姿がどうなっているかということ、これもやはり私どもとしてきわめて大きな関心事でございます。
  20. 原茂

    ○原(茂)委員 結構です。いま柴崎さんの答弁で実損主義であることだけはお認めになった、そのとおりだと私は思う。  防衛施設庁の見解というのは、北富士農民は、入会権もしくはその他の社会的に承認された利益はこれを有していないと言っています。したがって、当然のことながら、北富士農民は北富士演習場内国有地上の産出物、天然果実については、適法な収取権者ではない。もし採取すれば、それは端的に言えば国有財産無断取得であり、言いかえれば窃盗になります。防衛施設庁の見解が正しいとすれば、北富士農民は窃盗を犯し続けてきたことにならざるを得ないのであります。よしんば北富士農民が入会慣行を有するとしても、それは施設庁の考えでは、入会権もしくは社会的に承認された権利ではないはずなんですから、だとすれば、北富士農民は適法な林野雑産物収取権者ではない。だから、施設庁がこれらの北富士農民を排除するか、排除しないまでも、林野雑産物の採取については何らかの対価を徴収すべき義務があります。防衛施設庁の言うように、北富士農民は入会権もその他社会的に承認された利益もないとするなら、法理論上そうなるのが当然だと私は思う。  それでいて、現実には、採取の対価を取らないばかりか、採草、採薪の権原も事実もなく、はっきりと林雑補償算定基準に該当しないのに、虚偽の申請をなさしめて、見舞い金と称して交付をしているのが現実であります。  そして施設庁は、口を開けばその措置を行政措置だと言う。だが一体、財政法親等の規定に反した行政措置なるものが存在するかどうか。行政措置はあくまで法の枠内で行われるべきものだと思います。  入会権も社会的な利益も、また何の権原もない者が国の財産を勝手にとることは、端的に言って先ほどのように盗人になります。またそれを別として、実損がないのに実損ありとして国民の血税をだまし取ることは、詐欺でもあります。どうして防衛施設庁は盗人に追い銭になるようなことを続けて今日に至っているのか。これからもやろうとするのか。またどうして詐欺の共犯的役割りのようなことをしなければならないのか。  盗人、詐欺あるいは施設庁が共犯的な行為をやっている厳然たる事実があります。これらに関する当委員会における何回もの私の指摘に対し、会計検査院は一体これまでいつ、どんな調査を、何回行ったというのでしょうか。支払いの一時停止等を要求したことがありますか。絶対に支払ってはならないものが支払われている。それにもかかわらず、会計検査院は、なぜ五十一年度分の林雑補償金を支払おうとする防衛施設庁に対し、断固たる姿勢をもってその支払いにストップをかけるように、五十年度における不正ないしは不当な事項としての指摘をしなかったのか。やればできたはずではないかと私は思う。  すでに何回も述べてまいりましたが、私の調査したところによりますと、山中部落を初め農地の状況が一変しておりまして、採草のため立ち入りを必要とする部落は忍車、新屋の両部落以外にはありません。しかも重大なことに、採草等を必要とする忍草、新屋両部落においてすら、現在は牛草刈り、屋根用のカヤ刈り、十六手切り等以外に立ち入りの事実は全くありません。堆肥の状況などについても青草堆肥は皆無で、これは私がすでに写真等を提示して証拠を見せたとおりでもあります。また一方、そだについても、富士吉田市は都市ガスを主として、他はプロパン、石油、山中湖村もプロパン、石油、山村と言われた忍草ですら現在はプロパン全戸を普及によって、囲炉裏はあってもそだの使用は全くありません。  このように現在はもはや実損は何ら存していない。それでいてそれを百も承知している防衛施設庁は、林雑補償を支払おうとし、現に五十一年度分を支払ってしまいました。実損を要件としている林雑補償で、何ら実損がないにもかかわらず見舞い金を出そうとするこの矛盾、背理、不可能事を可能とする施設庁の知恵、手だてが、虚偽申請の黙認、推奨であり、これを取りつくろい、つじつまを合わせるための実態調査日のエキストラを使っての稚拙ななれ合い演出であることは、地元ではすでに社会公知の事実であります。このことについては、エキストラを演じた本人の自白テープの証拠すら挙がっており、会計検査院の厳重な調査を要求して今日に至ったところでもあります。  それにしても、防衛施設庁の北富士演習場に係る林雑補償行政をめぐっては、昭和四十八年のいわゆる処理要領行政を法的、行政的疑義の頂点として、余りにも疑義のある問題が多過ぎています。かかる疑義を生み出した責任は果たしてだれにあるのか。また、かかる疑義を生み出すことにより、国民の健全な権利意識の自由濶達な伸長を阻み、法への信頼、遵法精神を喪失させ、行政不信、政治不信を招き、国民を金こじきに堕落させ、その精神までもむしばむ巨大な怪物の正体は一体何か。また、その手足の役割りを果たしているものは一体だれか。ひとり防衛施設庁とのみ言い切れるかどうか疑問であります。  昨年の五月六日、富士吉田市新屋部落の農民堀内清太郎さんらは、いまどき草やそだを取っている家があるか、虚偽の補償金を受け取れば後ろに手が回る、また、国が無理に押しつける補償金を受け取れば詐欺になるとして、林雑補償の五十年度分計十七万円を横浜防衛施設局に郵便為替で突き返した事件が起こっております。実損がないから受け取る権利がないとの理由で国に返還された金員であるから、これは当然国庫に返還さるべきである。ところが、施設届では、それをまたさらに演対協を通じ新屋人会組合長に渡させ、同組合長は都留信用金庫に預託をいたしました。そしてその後、現在では、供託された状態になっておって宙に浮いた形になっていると言われております。  この件については、前田第一局長から調査を約束され、昨年六月八日の決算委員会で高橋第二局長から、「申請人本人が、申請の内容が事実と異なると言っているので、事態が明確になり次第、取り消し手続をとり全額返還せざるを得ないなどの措置がとらるべきものと思われますが、補償の対象となっていないものまで含まれているという事実が本当にあるかどうかということの詳細については、なお調査中でございます。」との答弁がございましたが、あれからもう一年経過するわけでございますから、調査結果を聞きたいのと、またこの場合、施設局が本人でなく他人に送り返した措置、つまり富士吉田市のこれらの人々の返還理由である林雑補償契約に実損がないから無効だとの判断は誤りで、これらの人々に対する補償金の支出負担行為は何ら違法なものではないとする防衛施設庁の措置について、どのような見解、判断を持たれているかも、ついでにお答えをいただきたいと思います。
  21. 柴崎敏郎

    ○柴崎会計検査院説明員 ただいまの点にお答えいたします前に、この林雑補償の問題について、私どもといたしまして検査上の立場から、確かに先生のおっしゃるとおりこの問題はすでに古い問題でありまして、会計検査院何をしているか、こういうおしかりのお言葉もごもっともと存じますので、その辺の経緯をちょっと述べさしていただきたいと思います。  御承知のとおりこの林雑補償の問題は、最前もちょっと触れましたが、入会権があるのかないのか、ここいら辺のところが最も基本的な問題と考えております。その点につきまして、これも最前申し述べましたように、施設庁側では入会権はないということで、単なる行政措置の問題である、契約上の問題である、こういうようなことで終始取り扱いをしている、こういうのが実態でございます。  そこで、私どもといたしましては、まずこの林雑補償が何に基づいて支給されるべきものであるかというところを解明いたしたいということで検討を続けてきておったわけでございますが、この問題はなかなかむずかしい問題でございましてにわかに結論が出しかねるというような点もありまして、先生からごらんになりますと大変もどかしいお感じをお持ちであろうと思いますが、そういうことで日を重ねてまいった、こういうのがいままでの経緯でございます。  そこで、実はこの現地についての検査、これにつきましては今月中に横浜防衛施設局に赴きまして、もちろん北富士の現地につきましても検査実施したい、こういうことでいま計画を練っているところでございます。そこでいままでの懸案がどの程度解決いたしますか、それについてはまだ見通しも立ちませんけれども、できる限りの検査をし、懸案についての解決を図りたい、このように実は考えているわけでございまして、ただいまお話しの新屋の入会組合、確かに一部十七名の方々が、政府の言うとおりに要するに行政措置のものであるとしても、その基盤として実損というものを基盤に置いて交付されるものであるならば、われわれとしては現にそういうようなそだや草を取るというようなことは全くないのでもらうわけにいかないということで返還をしてきた、こういう事実がございます。そこで、これらの申し入れの返還の理由としての事実とするところがまさにそのような実態であるかどうかということについても私どもとしては明らかにする必要がある、このように考えておりますが、これもただいま申し上げました今月中の検査において何らかの方法で解明をいたしたい、このように考えているわけでございます。  それから、先生がさらにお尋ねのこの返還金というものをどのように考えるか、この問題でございますが、確かにこの返還金は、一たん国に返されたものを国はまた演対協を通じて新屋の組合長まで戻すという措置をとっております。これは一たん個人が受領して個人が返還してきたものであるのですから、個人の意思で返されたものを国がそのまま受領する、しかも施設庁側の申しておる林雑補償金の交付の根拠というものが個人の損害に対する補償である、こういうような観点に立ちますと、個人にまで渡ったものであるので、その個人が要らないという意思表示をはっきりとして返したものであるのだから、それはそこで決着をつけてしかるべきではないかという考え方は確かにございます。これに対してまた施設庁側では、いや、これはそういうことではなくて、われわれは演対協の会長を復代理人としてそこに交付したので、そこが正当債権者になっているのだ、したがって、正当債権者以外の者から返ってきたものはいわれのない戻し金であって、それは正当債権者である演対協の会長に返さざるを得ないのだ、そういうような考え方でいま述べましたような措置をとった、こういう説明をしているわけでございます。  この返還金の取り扱いあるいは解釈、そういうものについては、政府部内におきましては法務省と意見調整をするということで措置しているようでございますが、その結果がまだ私どもといたしましてはつかめておらない、そういうようなこともございまして、まず戻し金についての政府の統一した解釈をしかと伺ってからそれについての私どもの解釈を決めていきたい、現在まだ政府部内の問題である、このように私どもは考えておりますので、これについての意見はなおしばらく御猶予いただきたい、このように考えている次第でございます。
  22. 原茂

    ○原(茂)委員 防衛施設庁、高齢さん来ていますけれども、後でお伺いします。山梨県に余り振り回され過ぎちゃって、いままで山梨県と施設庁が癒着をし過ぎちゃって、後から後から無理をやっていく。したがって、見舞い金であるという性格づけも、防衛施設庁のひとりよがりの解釈で、演対協会長白紙一任ということで発表している。したがって、返された金も復代理人である演対協会長に返して、会長が処理するのはあたりまえだと言っていながら、なおかつ政府部内でこの問題中心の協議をいましている。何かがそこに介在している、何か矛盾がある、何か無理があるというようなことを、いまの柴崎さんの答弁でも感じます。私が端的にお伺いした問題に関しては、次長のおっしゃるように政府の見解が統一されてその態度が決まった後に検査院としての判断をされるという以上、それをお待ちする以外ありませんから、決まりましたらまたお知らせをいただきたいと思います。  ただ、いま次長の言われた中で三つ気にかかるのです。まだまだこれは問題が解決しそうもありませんので、時間の都合で後で追及したいと考えますが、林雑補償、入会再権の有無というものを最初にお取り上げになった。確かにそのことは非常に重要な関連があります。忍草、新屋の人々の考え方は、入会権を中心に考え当然の主張として、そこで生活し、それを守っていくという態度をとっているわけですから、これに対しては私どもは入会権の問題の確たる解決を早くと期待をしておりますが、これも幸か不平か裁判所でこれから結論を出す段階になっていますから、一応司法の場における決定を待つ以外にはないのじゃないかというふうに、入会権そのものの問題は考えるわけです。これは少しおいていいのじゃないか。  それから、林雑補償の性格づけが非常にむずかしいとおっしゃった。しかし、事は簡単なといいますか、言葉であらわすと実損に対する補償か単なる見舞い金なのかといったことに尽きると思うのですが、実損がない、単なる見舞い金だというのに、見舞い金をもらうための契約を国と行って、演対協会長が代理人であろうと何であろうと契約をする、その契約には見舞い金をもらおうとする者が細かい内訳を書く、そして見舞い金が払われるという事例が他にありますか。理由なき見舞い金を出すのに、その見舞い金を契約書を取り交わしてもらう、しかもその契約書にもらう人が内訳を全部書く。およそ見舞い金の性格とは一体何だ。施設庁がとやかく言うのはまた後で聞きたいと思いますが、恐らく会計検査院としてはいま言った常識的な端的な考え方で、余りむずかしく考えないように、施設庁が無理に見舞い金だと称している金に対する論拠というものは、常識的に国民が納得できる論拠ではないということを考えたときに、検査院はもう少し毅然たる態度でこの林雑補償金の性格づけに対しても早期に結論を出すように、私は強く要望しておきたいと思うのです。  それから、施設庁とも協力して今月中に現地調査をやると言うのですが、今日までの長い問委員会で何回私が取り上げ、会計検査院は何回調査しますと約束したか。いまだに今月中、きょうになると今月中に調査をしますというのは、まことに不満です。怠慢といいますか遅滞といいますか、何に遠慮してこんなことをいつまでもやっているのか。現地の調査をやればできないはずはない。何回か要求して、しかも局長が何回か約束をしていながら、委員会で勝手なことを言っておけば日がたてばそれでだんだん終わるのだという、ほかの行政官庁の答弁と全く同じじゃありませんか。検査院ではその態度は困ると思うし、困難はあろうけれども、もっと真剣にやるべきことをやって、この種の重要問題に関しては決着をつけるという、国民に対する義務としての熱意を持ってもらわないと、いつまでも問題の解決ができないと私は思う。これに対する答弁は、いま聞きません、後でまた聞きます。  このように、富士吉田市新屋農民などは、みずから林雑補償についての申請理由は虚偽であるとして、その旨施設局にも告白、新屋入会組合から支払われた補償金をそっくり同局に返還をしているということをいま申し上げました。昭和四十八年に処理要領を決めて以来、林雑補償行政に対し疑義を呈する事件が多発いたしまして、ここに林雑補償行政の含む矛盾が一挙に噴き出してきているというふうに私は感じておるのであります。  昭和五十一年二月二十三日には、次のような事件が起こっております。すなわち、富士吉田市の上吉田入会組合――個人ではありません、組合では藤井徳次組合長以下十六名が、昭和四十八年度分、同四十九年度分合計七十六万六千九百六十九円の林雑補償金を、組合員所属の上宿、中宿、下宿、中曽根の各自治会に昭和五十一年二月二十三日に寄付したという事件が起きております。  その理由は、入会権等に基づく集団補償であれば別だが、野草、そだ等採取もしていないのに損失補償金を個人で受け取るのは良心に反するし、後ろめたい金は受け取れませんというのだそうであります。これはもう御存じだと思う。  そこで、検査院に尋ねたいのだが、この事件が明らかに示すように、立ち入り収益の事実がないにもかかわらず、現に損失補償金が支払われていた事実に関連して、当然会計検査院は、上吉田を含む北富士演習場関係の林雑補償の申請、支払い等に関して調査したと思うのです。これからやるなんて言うが、いままでにもう調査はしたはずであります。その内容と結果が一体どうなっているのか、その実態調査を具体的に明らかにしていただきたいと思う。また、調査を行っていないとするならその理由を明らかにしてください。単に今月いっぱい、これからやります――いままでもやるやるとずっと言って、原茂をだましっ放しで来たままで何にもやっていないのか。やっていないのならその理由、やったのならその内容について、もう少し具体的に聞きたい。
  23. 柴崎敏郎

    ○柴崎会計検査院説明員 まず最初に、先生おっしゃいました私どもの検査態度が大変怠慢である、手ぬるいというおしかりの言葉は、これは身にしみて私どもちょうだいいたさなくてはならないと思います。  ただ――ただと申し上げるのは大変恐縮でございますけれども、私どもといたしましては、この問題についての検討事項は非常に数多くございます。いまの実損があるかないかということの調査ももちろんその重要な一つでございますけれども、そのほかに、たとえば入会権に基づくものであるとした場合に、そのときにはこの入会権というものの本質からいきまして、要するに入会組合、総有関係にあるところのこの共同体が第一義的に権利者になる。そしてその共同体のもとで、共同体を構成する各人、各組合員が分属するという形で次の総有関係におけるところの権利者になる、こういう関係がございます。  そういうところから、実は新屋の組合の十七名の方がもらったお金を返されたという事実の中に、施設庁側で算定したこの十七名分の補償金額がたしか六十六万九千円になっていたと思いますが、にもかかわらず、各人に渡りましたのはそれぞれ一律に一万円ずつということで計十七万円、したがいまして、約六十七万円と十七万円との差額というものはどこかへいってしまっている、そしてこれが入会組合自体に留保されている、このように考えるわけでございますが、そういった場合に、これが入会権に基づくものであれば、ただいま申し上げましたように、組合員の合意によって組合に留保されるということもあり得ることであり、必ずしも違法なことではございませんので、そこら辺のところはそういうことであれば別段問題はない。  しかしながら、施設庁側が申しているようにこれが各人に対する個人補償である、こういうぐあいに考えますと、各人にきわめて少ない金額しか渡っていないということについて私どもは疑問なしとせざるを得ない。  実はそういったような問題もあるわけでございまして、そういった点も私どもが関心を持っている重要な事項一つになるわけでございます。そういった点についてもでき得れば調査を及ぼしたい、こういうぐあいに私ども考えておりますが、それにはやはりその入会権の有無ということについての考え方の問題、ここいら辺のことがまず先決問題であろうということで、私どもは鋭意施設庁側とも意見を闘わし、実はこの四月でございましたが、施設庁側に、それらを含めての二、三の具体的な問題について、施設庁のいま取り扱っていることについてどうも腑に落ちないという取り扱い方についての疑問を呈しまして、それの回答を実は求めておったわけでございます。それがつい二、三日前にやっと私どもの手元に届きまして、それをいま検討しているところでございますが、その回答も一見したところ、率直に申しまして私どもの疑問とするところを釈然とさせ得ないような内容でございまして、そういったようなこともありますので、私どもといたしましては、実際に調査に臨む場合に、事前の準備といたしましていろいろと解明しておきたいような点も実はございました。大変長い期間でお恥ずかしゅうはございますけれども、そういったような点をいままで検討をいたしておったわけでございます。  しかし、三月に先生のお話もございますし、また、それに対して私どもの局長がお約束をしたということもございます。これは別にお約束したかどうかということだけではございませんで、私どもとしても何らかの方法で事態の解明を早くしなければならぬことでございますので、施設庁側と全く意見の合わない点もまだまだたくさんありますけれども、それはそれとしまして、今月必ず調査に赴く、こういうことでほぞを固めたというのが現状でございます。  そういう経緯ばかり申し述べましてまことに恐縮でございますが、それから、いま具体的にお示しの上吉田入会組合の件でございますが、いまちょっと関係者にただしましたところ、このことについてどう取り上げたかということは、いま参っておる関係者では詳細がよくわかりませんので、これについてはまた後日、後ほどお答えさせていただきたいと思います。
  24. 原茂

    ○原(茂)委員 上吉田の問題は後日で結構です。  そこで、いままた入会権の問題を出されたが、入会権に絡んでこの問題を処置しようとなさる前提で今月いっぱいに現地を見て結論を出すということは、私は不可能だと思うのです。入会権を絡ませたら、今月中に現地の調査を何回やっても、現地調査を通じて入会権問題について検査院としてはっきりと処置をつけるような答えは出てこないだろうと思うのです。入会権に関する限りは。  したがって、施設庁の言うように、入会権はもちろんない、国はもうすでにないんだと言っている。そして各内閣も、それから歴代の大臣も言っているように、要するに防衛庁全体の意思として、あるいは内閣の意思として、入会慣行は将来にわたって尊重をすると言っているこの事態が現存しています。これは国を代表する政府が国民に約束をしたのだ。こういうものが現存をしている。入会権はいま司法の場で決着をつけようとしている。入会権そのものはですよ。このときに、会計検査院がいつもその入会権を絡ませて、しかも今月中に現地調査をしたからといって、そういった意味における結論というものは非常にむずかしいと私は思う。したがって、防衛施設庁の言うとおりに、一応入会権はない、いわゆる社会的に承認された利益というものは有していないんだという前提に百歩譲って立ってもらって結構ですから、立った上で、林雑補償の問題について甲か乙か、検査院としての態度の表明をぴちっとしていただくということがないと、私が窃盗だ、詐欺だと口をきわめて何回も言っていることに対する検査院としての答えは出てきません。ですから、これは私の希望を強く言っておきますが、絶対、入会権をいつも使って検査院が逃げを打っている。防衛施設庁に顔を立てながら、しかも原茂にも何となく納得してもらうように、まるで両棲動物のように、何か入会権というものをうまく使って言い逃れをしているようにしか現段階ではもう理解できない、そこまで私は来ている。したがって、もう入会権というものは、司法の場で決着をつけさせる。同時にまた、内閣あるいは各大臣、防衛庁として正式に将来にわたって入会慣行は尊重すると言った入会慣行――入会権があるから入会慣行があるんだ、入会権が全然ないのに入会慣行があるなんてことはあり得ない、私はそう信じていますから、これからも変えないつもりです。  というようなことを、あえてまるでわかったようなわからないような、施設庁は勝手気ままな、法でねじ曲げた論理を展開して今日に至っている。しかも盗人に追い銭をするような国民の血税の使い方をしている。このことに対して焦点を合わせて、今月現地調査をなさるならそれも結構ですから、結論を出すように強く私はこれを要請をしておきます。  いま上吉田入会組合の問題は後でというお話がありましたが、この組合においては五十一年二月に、このような後ろめたい金をもらうわけにはいかないと自治会に寄付したばかりでなくて、五十年度の申請を拒否しました。五十一年度分については、このような納得できない補償はもらうことはできません、そしてことしの二月二十八日付をもって申請を保留する旨演対協会長に通告をした事実もございますから、これもあわせてお調べをいただきたいのであります。確たる信念によって、実損がないんだからもらえない、どろぼうはいやです。詐欺はいやでございますといった組合のこの意思というもの、新屋、忍草という問題以外にやはり重大な例証としてこれは考える必要があると思う。  以上の点は、いずれも北富士の林雑補償金についての法的または行政的疑義を端的に指摘して、現在の林雑補償行政の不当性を指弾してまいりました。彼らがまたその不当性を指弾している事実だとも言えます。  防衛施設庁のなりふり構わぬ見舞い金ばらまきに対して、良心に従って行動し、演対協にただ白紙一任しさえすればもらえる林雑補償金を受け取ることを潔しとしないで、施設庁の林雑補償行政の疑義、不当性を身をもって指摘しているのが、これら勇気ある人々の行為であります。非常に貴重であります。  なるほど、このように林雑補償行政の不当性を行動をもって指摘する人々は数は少ないかもしれません。しかし、この人々と心を同じくする人、行動にまで踏み切れない人々は、北富士には広範にいることを私は知っております。これもぜひ察しなければいけない問題だと思います。  いずれにしても、これらの行動をする人々を、ただ防衛施設庁や県というお上に服さないからというだけで、のけもの扱いにし、孤立化させ、果ては暴徒に仕立て上げている行政、政治が行われていいはずはありません。断じてあってはいけないと思う。私は、そのような行政のあり方を林雑補償に見ないわけにいきませんが、処理要領行政というのはまさにその典型であると思う。さきの実印強制問題もまたしかりです。  防衛施設庁は、林雑補償費を基地の安定的使用のための住民懐柔費にその実質を変質させる路線をいまだもって強硬に貫こうといたしております。しかし、法はそれを許すでしょうか。また、法に従い、良心に従って行動する人々の抵抗を消し去ることができるでしょうか。そして、これほどまでにその疑義、不当性が指摘されている施設庁の北富士における林雑補償行政に対して、一体会計検査院はどうするのか。施設庁に断固とした姿勢で臨んできたと言い切れるかどうか、私は非常な疑問を持っているのであります。  ついに本年の四月五日には、富士吉田市の農民が、実損がないのに損失があると補償申請をしたとして、入会組合長、演対協の会長を詐欺で、また、国から地元団体を通じて支払われた補償金が途中でピンはねされているとして――先ほども疑問があるとおっしゃったとおりです。ピンはねをされているとして、演対協会長らを業務上横領で、さらには、実態のない補償をしたとして、横浜防衛施設局長までが背任で告発されるに至っております。  にもかかわらず、施設局は、五十一年度分林雑補償金の支払い実施いたしました。施設局があえてこれを実施したのはなぜか。林雑補償行政に、言われるような疑義、不当性はいささかもないと考えたがゆえに施設局はこれを実施したのか、断じてそうではありません。もし仮に、防衛施設庁が何ら言われるような違法がないと考えているのなら、なぜ林雑補償に関する資料要求に応じないのか。今日までがんこに提出を拒否する理由は全くない。その資料を提出しさえすれば、特に林雑補償金の個人別補償額を、個人別の田畑面積あるいは牛馬別の頭数及び家族数、そだ使用個所数などを付した資料さえ提出してくれれば、その真偽のほどは一目瞭然なんであります。施設庁はがんこにこれを出さない。  防衛施設庁は、個人の秘密、プライバシーに属するからとの理由で、法律的には全く成立しない虚構の論理を恥も外聞もなく公言して、拒み続けて今日に至っております。この林雑補償の返還送付をしている新屋入会組合の人たちは、むしろみずから進んで公表してほしいと施設庁に依頼をしました。しかし、施設庁はこれを拒絶した。仕方なく、先ごろ当委員会にその公表を請願さえしています。  したがって、もはや施設庁の根拠としているプライバシーの尊重によっての拒絶は成立しない状態になりました。しかも、私は、この人々、堀内清太郎、大森清吉、堀池浩、佐藤昌吉、小俣孝太郎、堀内万治、渡辺武次、小俣明久、渡辺徳郎、渡辺きぬえ、小俣たつ、市来嘉一、堀内広雄、遠山益治、堀内角次郎、堀内隆の十六名からのいわゆる委任を受けております。しかし、あえて代理人であるというだけではなく、あわせて決算委員としても、改めてこれらの人々の資料を要求したいと思います。これらの人々は、そのプライバシーどころか、ぜひ自分の内訳を知りたい、原茂代議士から施設庁に、代理人としてこれを受け取ってもらいたい、こういう要求がありますが、プライバシーという問題は解消しました。この十六名、お出しになりますか。これは高島さん……。
  25. 高島正一

    ○高島政府委員 お答え申し上げます。  まず冒頭に、本委員会におきまして原先生から北富士の林雑補償問題につきまして再三にわたり御指摘を受けまして、私どもも、何とかこの問題を円満に解決したいと本日現在なお腐心いたしておるところでございますが、ただいまの段階でまだその前進した形を御報告できないことをまことに遺憾に存じます。  もう先生十分御案内でございますので、細かいことは申し上げませんけれども、私ども防衛施設庁にとりましては、ある一つの、北富士演習場の安定的使用ということが大きな眼目でございます。このために、昭和二十八年以来、地元の強い御要望もございまして、林雑補償という制度を確立いたし、やってまいったわけでございますが……(原(茂)委員「それは何回も聞いたから、ぼくの質問だけ答えてください。資料を出すかどうか」と呼ぶ)先ほどの十数名の方からプライバシーの問題ではないということで資料の提出方の御要請がございました。私どもも何とかこの問題を円満に解決するために、できれば地元に混乱が起きない形がとれるならばそういうことをいたしたいというふうに念願しておるわけでございますが、連日演対協その他関係機関ともいろいろ相談いたしておるわけでございますけれども、本日の段階では、まだかえってそういうことをいたしますと逆に別の混乱が地元に起きてくるというのがわれわれのいま考えている実態でございます。しかしながら、先生のおっしゃることも全く私どもはよくわかりますので、何とかもう少しお時間をいただきまして、関係の向きと相談をさせていただいた上で措置させていただきたい、かようにお願い申し上げる次第でございます。
  26. 原茂

    ○原(茂)委員 以上言った十六名から私が委任を受けて、プライバシーだからといって拒否している皆さんに、その十六名だけの資料を出せと言うのに、もう少し相談をしてそれから返事をする、まことに不可解千万といいますか、こんな理不尽なことが国政調査権の上からいっても許されるものではない。決算委員会を侮辱して軽視して、そうしてわれわれが調査しようという、しかもプライバシーで出せないと言うから、その人々が私に委任をしたと言ったらもうプライバシーの問題は解消しているはずですから、したがって、これは金丸長官とよく相談をしてもらって、金丸長官から返事をもらうように要求しておきます。直ちに返事をもらう。  防衛施設庁が、いまも言われたように個人の秘密、プライバシーに属するから、こういうことをいままでも言ってきたし、これからも言おうとしている状態はわかります。いま申し上げたように十六名の、この本人からの申し出による私に対する委任に対して、提出してもらうことを長官と相談をして、長官の確たる返事をいただくように、これはいま申し上げたように承知をされましたから、高島さんに委任をしておきます。  さて、施設庁が今日まで資料提出を拒んできた真の理由というのは、実は林雑補償の申請理由、事実が虚偽であるからであり、資料を提出さえすれば、その虚偽を真実なものとして金銭をばらまいていることが一見して明らかになってしまうから、資料は出さなかったのであります。強いて言いますといまも変わりはない。  しかし、この件に関しては、もともと施設庁と演対協との間の契約時には、個人別の諸内訳が詳細に添付されております。検査院としては、この長い間問題になっている事案として、その支払いが内訳どおりかどうかの調査が済んでいると思うので、その調査結果をここで詳細に明らかにしていただきたい。
  27. 高島正一

    ○高島政府委員 お答えいたします。  私どもの林雑補償は、先生御案内のように演対協会長を復代理人として補償契約を締結いたしまして、その契約書には、御指摘の個人別の明細等が添付されております。しかしながら、この個人別の明細を公表するということがまさにいま問題の焦点でございまして、先ほど来申し上げた点にまさに関連する問題でございますので、この点も大臣と御相談の上、御報告させていただきたい、かようにお願い申し上げたいと思います。
  28. 原茂

    ○原(茂)委員 柴崎さん、答えてください。
  29. 柴崎敏郎

    ○柴崎会計検査院説明員 私どもの検査の権限の問題から申し上げたいと思いますが、検査の権限は要するに防衛施設庁にしか実はありません。この補償金の支払いでございますが、現在の体制でまいりますと、演対協が復代理人ということで、そこに一括して支払われるわけでございますが、この支払い先である演対協について、私どもの検査は実は権限上及ばないわけでございます。  しかし、このように問題がいろいろと明らかになってまいりました段階では、権限はございませんけれども、通常私どもは肩越し検査と呼んでおりますが、当面の受検官庁である本件であれば横浜防衛施設局の検査の際に、その立ち合いのもとに検査を事実上させてもらう、こういう形で特別に問題があった場合はそういう方法を講ずるわけでございます。そういうことでございまするので、この林雑補償金の算定額、それが個人別に幾らになっているかということにつきましては、私どもの方にも施設庁から証拠書類として提出してございますので、それをまずもとにいたしまして、その算出額が算定要領に基づいてどうなっているかというようなチェック、これは四十九年度におけるところの地元の方々からの実態の調査表等も施設庁にございますので、そういったものも参考にしながら、その個人別の算定金額がどうであるかということの検査は実行いたしております。  しかし、今度は、これが演対協から各入会組合に流れ、それから入会組合から各個人にまた流れていく、こういう仕組みになっておりますが、この各個人に実際にそれでは算定額どおりに支払われたかどうかということの検査、これについては実はまだそこまで及んでおりません。これについて施設庁の方にもその関係はどうなっているのかということについては折あるごとにお尋ねはしているわけです。が、施設庁の側では、先ほども申し上げたような委任関係、そういったようなことで、実際に各人にどう支払われているかということをどうもおつかみになっていないというような事情もございまして、私どもの検査権限の及ぶ施設庁の検査においてはそれを明らかにすることができない、そういうことでございますので、これもはなはだまあ先生のおしかりを受けるところでございますが、この六月の検査の際に、全部の入会組合について当たるというわけにはまいりませんけれども、幾つかの組合についてそういった実態もでき得れば検査をいたし調査ををいたしたい、このように考えておるわけでございます。
  30. 原茂

    ○原(茂)委員 結構です。やってないと言う、正直に、やってないものはしようがない。施設庁すらやっていない。国民の血税を払うのに、契約だけは見ておきながら、契約の内容どおりに払われたかどうかを当然施設庁だって検査しなければいけないのに、それがまだやられてない。したがって、検査院もそれにまだ手が届かない。六月いっぱいにやる、結構です。六月いっぱいに、ぜひそれまでやる。  ついでに、上吉田入会組合あるいは堀内清太郎さん以下が返したというような問題に対して、その真相はどうなのか、本人たちの言うとおりかどうかも調査を必ずしていただくように、重ねてこれはお願いしておきます。  すでに指摘しましたように、会計検査院は、実損がないのが全部の実態だとすればまずいことである旨、またそれに続いて、林雑補償制度そのものについて根本的検討を防衛庁にしてもらわなければならない旨の答弁を、本年三月二日にしてはいます。しかし、これほどの答弁をした会計検査院は、五十一年度分が支払われるのに際して、それを一時的にもせよ阻止するためにこの答弁以外に具体的にどのような行動をしてこられたのか。かかる答弁を会計検査院はしておきながら、なおかつ支払い凍結その他何らの検討判断が公的に示されないまま五十一年度分が支払われた事実は、ゆるがせにできないきわめて重大なことだと私は思います。なるほど現行の制度では会計検査院検査、特に実態調査が思うように十分には実施しがたい点もあることは事実でございましょうが、これほど明らかに疑義を指摘されているものをこのまま許されることはないと私は思う。  さきの四十九年度決算の締めくくりの指摘事項の四において、検査院の権限の強化充実が満場一致議決されました。国民もひとしく望むところであり、決算委員としての私もこれを強く望んでいます。しかし、問題は権限の強化充実だけにあるのではない。むしろ問題は、会計検査院がその権限を行使する姿勢、権限運用の仕方にこそあるのであり、幾ら法律でその権限を形式的に強化充実しようとも、その権限規定の運用に当たる会計検査院が他の官庁に対して卑屈な姿勢であったり、その検査権行使に手心を加えたり、ちゅうちょ逡巡して自己規制をするようであるなら、それは全くの空文に等しいものになります。問題は、現行制度においても全く同じであり、会計検査院の姿勢、検査権行使における決然たる意思、良心、これこそがまさに求められているものではないでしょうか。しかも、現行制度においてもなおかつ会計検査院が憲法上独立の機関としてその名に恥じない活動を確保する規定も、その運用を十全に駆使しさえすれば、存しないわけではないのであります。  会計検査院が正当にも指摘したように、もはや林雑補償制度そのものについて根本的な再検討をする時期に来ている。しかし、その検討がなされようとする一方で、違法、不当な支払いがどんどんなされているようであってはならないと思います。かかる違法、不当な支出を絶対避けさせるためあるいは許さないために、検査院としては断固たる措置を講ずべきであったし、講じなければならないはずだと思います。  さきの答弁を通じて見られる会計検査院による林雑補償問題解明の到達点は、なおかつ、実損がないことが全体の実態であるとすればとの消極的段階、すなわち調査段階にとどまり、調査過程でのあるいは調査結果をもとにした積極的な段階へ一歩も踏み出していない現状だと思います。しかし、この段階に踏みとどまっていることはもはや許されない状態になっていると思う。すなわち、かかるときには、詐欺の共犯、むしろ犯罪を奨励している防衛施設庁の犯罪行為、継続的な違反行為をあるいは違法行為を、会計検査院において実質上追認することを意味すると見られるからであります。意識して追認なんかするはずがない。どうも問題なのは、いまおっしゃったとおりこれから調査しようというその片っ方で払うものはどんどん払われるという、それを放置していいかどうか。この点に対しては会計検査院として篤と考えないと、またすぐ五十二年度の支払いがやってきます。あるいは五十一年度も第一回の払いのほかに、最近数年のように追加払いが何十万円かされています。年二回払われている。その二回目は絶対払わせてはいけないと思いますから、これも私から強く要望しておきます。  以上の論旨を要約し、確認的に、ここに煩瑣をいとわず会計検査院に質問をしてまいります。  言うまでもなく、検査こそ会計検査院の最大の任務であることは、ここで私があえて言う必要もないと思います。だが、林雑補償については、これまでの取り組み、いままでの答弁では、全く納得がいかないのであります。よって、この件の書面検査と実地検査の双方につきどのようにやってきたのか、できるだけ詳しく全体について答弁してほしいと思います。  ことに、繰り返して指摘するまでもなく、昨年十一月二十三日の本委員会において、松田第二局長は、この補償の検査という点に対してきわめて明快に、「ごまかされている状態であったかもしれません」とか、あるいは林雑補償は実態と遊離してきているという面がありますとか、答弁をされておりますし、さらには本年三月二日の予算委員会第一分科会においても、「現在の補償基準に関する限りにおいてはまずいことである、」と答弁をしています。だが、この答弁はいずれも、どういうふうな検査をするか検討するとか、十分調査していきたいとかの留保つきの答弁であって、確言ではございませんでした。  したがって、もうすでに半年も過ぎているのですから、かかる重大問題でもある本件に関して十分調査は行われたはずだと思いますので、全体についてできるだけ詳細にかつ具体的に、その調査結果の答弁をしていただきたいと思います。
  31. 柴崎敏郎

    ○柴崎会計検査院説明員 先ほどもちょっと触れましたが、この林雑補償金につきましては、まず受検官署である防衛施設庁、当面の担当局である横浜防衛施設局、これらにおいて検査を行うわけでございます。この検査につきましては、まず書面上は林雑補償金の算定、これが第一でございまして、この場合には各申請者の用途ごとの野草なら野草の年間の所要量から演習場内の採草可能数量、そういったようなもの等を控除して算定する、こういう方式になっておりますので、私どもとしましては、本院に証拠書類として提出されておりますところの支出負担行為の決議書とかあるいは支出の決議書、補償契約書、請求書、領収証、委任状、そのほか林野雑産物の損失補償の申請書、この申請書には個人別の内訳も当然ついております。それから、農家の経営実態調査表、こういったようなものを、先ほど申し上げました施設庁に保有しております四十九年度の調査結果であるところの実態調査表、こういったものと突き合わせるなどいたしまして、耕地面積あるいは所有牛馬の頭数、単位面積当たりの所要の野草量等の補償額の算定の基礎となっているいろいろな事項についてこれを照合していく。その中には、申請に当たって申請者の方から年度ごとの実態調査表といいますか、これも出てまいります。四十九年度の一括して調査した際の施設庁保有の実態調査表、それとの間で、やはり時の流れがございますのでそごがあるわけでございまして、そういったような点なども念を入れて検討をしていく、こういう形で書面上の検査をいたしておるわけでございます。  そこで、問題はやはり実態でございますけれども、この実態につきましては、先ほど来申し上げましたように私ども直接農家に対しての検査権限がございませんので、施設庁の協力をもらって肩越しに調査をする手段しかございません。実を申しますとそれについてはいままでやっておりませんでしたけれども、何遍も申し上げて恐縮でございますが、今月中に施設庁の協力のもとにそれの実施をぜひしたい、このように考えておるわけでございます。
  32. 原茂

    ○原(茂)委員 いま答弁のあった書面検査については、この林雑補償に関する限り全くむだに時間を浪費しているものと私は考えている。なぜなら、そこに施設庁から証拠書類として提出されている実損のためのすべての証拠書類と称されているものは、真っ赤なうそなんです。この資料は、何回も指摘したとおり、施設庁が実損のないことを百も承知の上で、もっぱら基地の安定使用のために、役人の言うことは間違いない、それが目先の金になるということをもって、巧みに誘導して演対協加盟組合員に書かせた作文にすぎないからであります。  地元では、施設庁はこのようにあえて不正なことを行ってまで地元住民に恩を売り、あるいは犯罪にまで地元住民を巻き込んで一蓮托生となし、自己の政策貫徹に反旗を翻させないように弱みを握ろうとしているということが、組合員の中から公然とささやかれているんです。  いまなお多くの人々は、目先に見える一身上の利害によってたやすく万事を決し、かつそれに従って行動するのも事実ではありますが、それは悲しい事実であります。このような人々を統御することは至極簡単でございます。若干の人々に生活の安定の足しになるようなわずかばかりの金を与えて、その人たちによって自分に刃向かう民衆をたたかせればよいというように、これは関連幹部の謀略と言っても間違いありません。  端的に言って、このような人間性のない扱いを甘受する人々は、えさとむちによって飼いならすことのできる家畜と何ら変わりがないとすら、これらの幹部は考えているのではないでしょうか。     〔委員長退席、馬場(猪)委員長代理着席〕  しかし、何といっても問題なのは、かかることを行う施設庁の金の使い方そのものであり、それを放置している検査院の怠慢だと思います。合規性、経済性、効率性等を云々する以前の問題でございましょう。  重ねて言うが、林雑補償は実損主義を前提としています。その道理として、実損の有無は実際に損害が存するか否かによって決せられるべき問題であります。いわば事実認識の問題であります。しかるに、実損があるものとしてこれまで林野雑産物補償を受給してきていた農民が、実は実損なんて存在しないと言って補償金を返上し、ある者は詐欺まがいのことはできないと言って町内会に寄付をし、また他の者は施設庁に返還送付したりしている事実が厳に存する。またこのようなことをいつまでも続けてはいけない、申請は保留しておくとしている入会組合もあります。  もしこの主張が正しければ、施設庁のこれまでの論証は虚偽である。そしてこれまで会計検査院が、知らずして施設庁の虚偽の論証を真に受けていたのなら愚人であり、知りつつこれを放置したのなら悪人と言わざるを得ません。  まず会計検査院は、上吉田入会組合の十六名の町内会への寄付及び新屋入会組合の人々の返還送付の根拠たる実損の不存在の主張についてどのような実地検査を行うのか、六月いっぱいにおやりになるそうですから、期待をして待ちます。  さきに指摘したように、五十一年度分林雑補償は本年五月一日に支給されています。このことはもう一カ月も経過しているのですから、当然施設庁から検査院の方に計算書、証拠書類ともども提出されているはずだと思って先ほど質問いたしました。しかしながら、私が重要に考えている支払いが内訳どおりになされているかどうかの調査は、施設庁もやっていないし検査院もまだできない。六月いっぱいにこれもおやりになると言うから、期待をして待ちます。  この五十一年度分林雑補償が支払われる以前に、昨年の十二月十三日すでにこの件についてきわめて不正の疑いが濃いものであるとの陳情が検査院になされております。したがって、検査院はこの陳情を受けてどのように対処したか本当は聞きたいのですが、もう先ほどの答弁で、このことはお答えをいただかなくて結構です。  今度の林雑補償支払いは、これまでの国会での経緯もあってか、あるいは施設庁の保身のためか、きわめて異例にも実印をつかせ、かつその復代理人たる演対協会長が書類を提出させた後で、これで間違いありませんねと念を押したという。しかし、金欲しさのために、またこれまでも実損は存しなかったにもかかわらず受給できたという継続的既成事実のもとに、申請者はこれらの書類を作成しているのであり、施設庁が実印だから事実であるとか演対協会長が念を押したから事実であるとかいうがごとき主張をなさんとするなら、それは笑止千万と言わなければなりません。  仮にそうだとすれば、実印だから、あるいは念を押したんだからというもったいぶりをつけた儀式を行って、これをもって実損があることにしておこうということにすぎないからであります。  だが、このような儀式で実態が変わり、急に野草やそだが必要となり、それを採取せんとしても演習場の立ち入り禁止で採取できなかった、つまり実損が生じたということには、いまからは絶対になりません。実損があるとしておくことと実損があることとは、ちょっと似てはいるがその内容ははなはだ違っております。としておくということは、実はうそかもしれないが疑問を持つのはやめておこうとする妥協であり怠惰であります。ところが、実損というものは客観的で妥協の余地のないものであります。  このような施設庁の実印強要あるいは念押しという儀式をもって会計行為を行った書類が、そもそも実損の証拠書類たり得るのか、採証法上あるいは経験則上妥当か否か、これは検査院でよくお考えをいただきたいと思います。  そもそも、このようなことをもって実損の証拠と言うがごときは、資料に関するうそであり、最も原始的あるいは根源的な不正の論証であります。真に存在しないものを存在すると強弁する著しいうその実例だと私は思う。  これに関して施設庁を追及すると、局の職員などが一戸一戸当たってその内容を確認した調査に基づいておりますと、そらぞらしいうそを平然と今日まで言い続けてまいりました。しかし、現に林雑補償をもらっている人たちが、そんな調査にはだれも来ないと明言しているのであります。  検査院は、この長い緊急な重要案件に対して、五十一年度の林雑補償の証拠書類をもとに、それが真実か否か、独自に検査院としての実地検査をしたはずでございますが、いままでやっていなかった、その内容結果を、どうか六月いっぱいにはきちっと出していただくようお願いをしておきます。  次に、林雑補償は個人補償主義を前提としているというのが防衛施設庁の前提であります。先ほども次長がおっしゃったとおり。しかるに現在、この補償申請は、入会組合団体の長に白紙一任の代理強制がなされており、かつこの団体の長は演対協会長を復代理人としなければならないということを施設庁が決定をしています。そこで、補償申請者は、自己の申請というものをほとんどその属する団体の長に任せっ放しであるから、一体自分に幾ら支給されているのかわからないというのが現状であります。全部の組合員がそうであります。  しかし、これはよく考えてみると全くおかしなことと言わざるを得ません。申請者本人が、一体自分の補償金算定の基礎としてどのくらいの田、畑、山林、原野の面積が認定されているのか、牛、馬、運搬車等がどう認定されているのか等々を、知らせてくれと言っても知らせない。本人にも知らせない本人のためのプライバシーなどというものが一体あるんでしょうか。もちろんのこと、幾ら補償金が支給されたのか、あるいは復代理人、代理人が受領したのかも絶対に報告しないというのですから。そこで、文書で施設庁、復代理人、代理人の三者に教示されたいとか報告せよとか言って何回要請しても、ナシのつぶてで返事がない。  一体、こんな会計行為が許されていいのか。施設庁が特定する代理人、復代理人を通じて申請しなければ補償はしませんと言う。そこで、言われるままにしたら、いつの間にか申請者の受領金額も、またその基礎としての実態をどのように認定してくれたのかなども、一切秘密ということになってしまった、本人は知ることができない。  この点は、あらゆる意味でまことに重大だと思います。第一に施設庁は、決算委員が国政調査として資料要求をしても、個人のプライバシーだから出さないと言う。もちろんこの理由が、法的には全く根拠となり得ないものであることは当然ですが、強制力がないということを奇貨として、絶対に今日まで出さないのであります。いや、より正確に言えば、出せない。出したらば、古い台帳を意識的に使って架空の農地に補償を支払っているように見せかけた、そのことが一見明白にばれてしまうから、出さない。この点はきわめて重大なので、もっと具体的に後日追及をしていくつもりであります。証拠を挙げて追及いたします。  しかし、民法第六百四十五条を持ち出すまでもなく、施設庁が特定した代理人、復代理人は、代理人として受任事務てんまつの報告義務が法的にあるにもかかわらず、かつその報告の要求をされてもそれを行わないというのであります。  この代理人の答えない理由は、この補償は団体補償だから、団体の総会でどのように使うか決定し了解してもらうのだから、報告する必要はないと言っているのであります。  さらに、私が調査したところによりますと、この五十、五十一年度の配分に当たっては、田畑を全然耕作していない、したがって、どう考えても林雑補償対象者たり得ない者に、現在その団体の一員だということだけで五千円の配分をしている事実、あるいは同じ三反歩の耕作者であるのに、他の条件は一緒なのに、五千円と一万円という全然異なる配分をしている事実が存しております。全く施設庁の前提と異なる理由で、各個人にはその補償金は一部しか支給されていない。この点当然検査院調査したものと思いますが、国の支払い理由とは全く異なる理由で、国の特定した代理人がその受領した金を配分し、全額を支払っていない、事実であります。  論ずるまでもないことだが、会計検査院は、書面、実地検査以外にも、必要があれば関係者に質問をしたりあるいは出頭を求めたり、資料の提出を要求したりできるはずでございます。施設庁を中に置いてやろうとすればできることを、いま次長はおっしゃいました。したがって、この点は絶対に看過することのできない重大なそこであり、かつ金銭が完全に申請者に行き渡っていないのだから、直ちに関係者に出頭を求めるなどして事情を聴取すべきだったと思いますが、いままで調査ができていないのですから、今後調査過程においては、これはぜひ呼びつけて、出頭を求めて事情をしっかりと聴取していただきたいと思います。この点も強く要望しておきます。六月いっぱいにおやりになることに加えていただきます。  最後に、二つのことを締めくくり、または質問として終わりたいと思います。  まず第一に、本日きわめて貴重な時間をいただきまして、会計検査院に、かねてより問題としてきました北富士の林雑補償問題について、検査院の取り組む姿勢、方法について、わずか二、三の具体的事件、事例の真実を挙げながら質問をいたしました。これはほんの端緒なのであります。  私が素直に感じているこの問題の所在というものは、国が一方では入会権あるいは入会慣習の尊重を確認しながら、逆に、農民が真剣にその入会慣習を守り実行しようとすることを禁ずるというがごとき、全く筋の通らないところに存在していると思います。すべて筋の通らないところには邪心があります。私は、本日の委員会のみならずこれからも徹底的に順次その邪心というものを立証しながら、論証して、あばいていきます。これまではもちろん、今日以後、会計検査院がそれに対しどのように対応してきたのか、また対応せんとするのかということについて、性根を据えて追及していきたいと決意しております。これからの調査及び質疑によって、なお六月いっぱいの実地調査によって、私は会計検査院の事実認識能力、論理的理解能力を果たして信頼し得るや否やという根本的問題にぶつかってこざるを得ないという感じが、いまいたしております。どうか検査院は、非は非として是正するということによって、国民の血のにじむような税金が適法、適正に使われているかどうかについての国民の正義感に対する最終の保障、とりでであってほしいものだと心から念願しないわけにはまいりません。白を黒としたり、明白な論理の法則を無視することによってでっち上げられている林雑補償制度の運用に、その権威と威信をかけた検査を行うように、この機会に強く申し入れておきたいと思うのであります。  さて、最後の質問は、実際には施設庁が一方的に押しつけたと言える処理要領と称する行政指導、特に演対協会長白紙一任した者のみに補償金を支払うという点についてであります。これを是とするならば、その反面には、命がけで入会を守り、主張する立場で演対協会長への白紙一任を拒否している多くの農民は、得るべき補償金が払われないまま放置されているわけだが、それはやむを得ないとするならそれで、是とするなり非とするなり、いずれにもその法的根拠は何に求めておいでになるのか、他に確固たる論理があるのかどうか。私は、この白紙一任がもとで多くの不正、不当な会計処理などが行われている事実からも、この行政指導そのものが不当でありあるいは不正であると確信をいたしておりますが、検査院長の見解を伺いたいと思います。
  33. 佐藤三郎

    佐藤会計検査院長 けさほど来るるいろいろとお話を伺い、また部下からの報告も聞きまして、本件問題は非常に腑に落ちない点が多うございますので、信頼される検査院という意味におきまして厳正なる検査を施行したい、こう考えております。  それから、最後にちょっとお触れになりましたいわゆる白紙委任状を出さない者には払わないという制度、これもまた非常に腑に落ちないやり方でございますので、これもあわせて厳重に検査したい、こう考えております。
  34. 原茂

    ○原(茂)委員 院長にもう一度お伺いいたしますが、私はこの演対協会長白紙一任といういわゆる処理要領に基づく行政指導、これが中心にあって、今日まで何回も指摘した私の言う不正、不当と思われることが、盗人に追い銭を払うような防衛施設庁のやり口など、次から次に悪いあだ花が咲いてきたというふうに確言をできるほど信じております。  したがって、いま検査院長のお話のように、腑に落ちない、非常に疑義があるという答弁でございますが、私はむしろこのことをもっと突っ込んで、不正あるいは不当事項としての指摘をしていただきたいほどに考えていますが、いままでの御答弁にありましたように、そう端的にそういった結論をお出しになる状態になっていないことは間違いありません。したがって、それ以上追及あるいは要求いたしましても無理かと思いますが、演対協会長白紙一任というこの事態を中心にいろいろな問題が起きておる現状から言うなら、一任をしなければ払わないと言っているいまの施設庁のこの行政指導に対しては、私ははなはだしく疑義を持っています。  この演対協会長白紙一任という問題に対してははなはだしく疑義を持っている私のこの考えと同感かどうかを、いま処理をしろと言うのではない、そういったお感じを持つかどうか、院長からもう一度重ねて御答弁をお願いしたいと思います。
  35. 佐藤三郎

    佐藤会計検査院長 個人補償をたてまえとして支払う、こういう前提に立ちますと、各個人が権利があるわけでございますが、それを今度は受け取り方を指定するというのは、相手が承諾すればよろしゅうございますが、そうでない場合には、何か特別な理由がない限りはこれは認められない事態だと思うのです。したがって、原委員のおっしゃるように、どうも疑問点が残っておるので厳重に検査したい、こう考えておる次第であります。
  36. 原茂

    ○原(茂)委員 本論についてはこれで終わらしていただきますが、ついでにちょっとお伺いをしておきたいのです。  これは施設庁にお伺いしますが、北富士演習場の林雑補償支払いの実績の数字を申し上げますが、そのとおりかどうかだけお答えをいただきたい。  四十七年度分二千九十七万八千円、支払い年月日は五十年四月十二日、二回目が五十二年四月二十一日。四十八年度分二千二百四万七千円、支払い年月日は五十年十二月十三日、二回目が五十一年三月六日。四十九年度分二千三百九十六万一千円、支払い年月日は五十年十二月十三日、二回目が五十一年三月二十六日。五十年度分二千七百十八万九千円、支払い年月日が五十二年四月二十一日。  ここで二つお伺いしますので、第一に、いま申し上げた数字が間違いないかどうか。  それからもう一点は、いま払われていない、いわゆる演対協に加盟しない、白紙一任をしていない農民に対する残っている金、いわゆる留保か事故か明許か知りませんが、その金が四十一年度分以来どのくらいになっているのか、年度別に。それが一つ。  それからもう一つは、四十八年度分と四十九年度分が同じ五十年十二月に払われている。二回目も五十一年三月、同じような日にまとめて四十八年度分、四十九年度分が払われています。たとえば、これからことしのうちに五十二年度分をお払いになるようなことがあり得るのかないのかということを三つ目に。  それだけ答えておいていただきます。
  37. 高島正一

    ○高島政府委員 お答え申し上げます。  第一点の昭和四十七年、四十八年、四十九年の先生御指摘の支払い年月日、支払い金額はそのとおりでございます。ただ、四十八年の二回目が五十一年三月六日とお聞きいたしましたが、これは三月二十六日でございます。その他は全部御指摘のとおりでございます。  それから第二点の、現在までに支払われていない、具体的には忍草入会組合予算額でございますが、これは御承知のように毎年林雑補償は被害発生年度、前年度に対してそれぞれ各年度予算措置を講じてまいっておるわけでございます。成立予算が消化できなかった、お支払いできなかった場合には、これは翌年度に繰り越しをいたします。繰り越しした予算額がさらに使用できなかった場合には、不用額として措置させていただいておるところでございます。  したがいまして、その未払いの組合の方々に対する予算額が現在どれだけあるかということにつきましては、われわれはいま申し上げました理由によって一部の不用額になったものについては翌々年度でなければ予算化できませんので、その分については対応いたしかねますけれども、それ以外のものについては対応できるというふうに考えておるところでございます。  それから、二回にわたって支払ったわけでございますが、その理由といたしましては、地元の入会組合の組合員の方の事情によりまして請求がおくれました関係上、二回にわたって支払いが行われた、こういうことでございます。
  38. 原茂

    ○原(茂)委員 私の質問したのは、五十一年度が五月一日現地へ払われましたね。ことし五十二年度はまだ払われる心配があるかどうか。もう一つ、五十一年度分二回目が払われるのか。実績を見ると皆二回目があります。四十七年度、四十八年度、四十九年度は。五十年度はまだ一回だけですが、これもやがて二回目が起きるのか。五十一年度分も二回目がこれから払われる予定なのか。同時に、五十二年度の分をことし払うことがあるかどうかということ。  それから、もう一つ質問しておきますが、たとえばいままでの未払いの分に対して話し合いがつきました、円満に妥結しましたというようなときには、ずっと今日まで払わない繰り越しが翌年不用額になった。そのものは新しく予算を起こして四十一年からのものをそのとき払うということになるのかどうかを一緒に。
  39. 高島正一

    ○高島政府委員 お答えいたします。  五十三年度におきましてまた二回支払うのか、こういうことの御指摘でございますが、この点につきましては、これからの私どもの現在とっております演対協会長との御相談にもよりますけれども、やはりそういう措置になろうかと思います。ただ、いろいろ先生から御指摘がありますので、私ども演対協会長とも十分これから相談をしてまいりたいと思っておりますが、現在のところは従来のとおり二度になることになるのではないかと思います。  それから、今後引き続き支払うつもりか、こういうことでございますが、これまた御指摘のとおりこの林雑補償問題というものをどのように今後進めていくかという基本の問題にかかわりますので、現在の段階でこれをこうする、ああするということは申し上げかねますが、私どもの現段階における立場といたしましては、今後もこれを踏襲していくという考え方でございます。  それからもう一点の、仮に円満に話がついたら端的に言って予算の対応措置があるか、こういう御指摘だと思いますが、先ほども御答弁申し上げましたように、一部不用に立てたものの予算化は二年おくれるという形にどうしてもならざるを得ませんので、一部については対応できないということを申し上げざるを得ませんが、大部分の額については対応できる、予算措置は講じてあるというふうにお答えさしていただきます。
  40. 原茂

    ○原(茂)委員 終わります。
  41. 馬場猪太郎

    ○馬場(猪)委員長代理 次に、塩崎潤君。
  42. 塩崎潤

    塩崎委員 お許しを得まして、昭和五十一年度決算検査報告の中の九十五ページ、「特に掲記を要すると認めた事項 社会保険診療報酬所得計算特例について」、この問題を中心として会計検査院にいろいろと御質問をし、私もなかなか十分理解できない点もございますので、皆様方に御教示を願いたいと思うのでございます。  私は、単にこの社会保険診療報酬という題目だけじゃないのです。この検査の中であらわれるところの会計検査院検査に取り組む態度と申しますか、会計検査院検査対象というものはどういうものが適当であるか、あるいはどういう角度から行われるべきかというような問題、これについていろいろ院長さんにお教えを願いたい、こんなふうに思う点が第一点でございます。  それから第二点は、この問題にあらわれました種々の私が持ちました疑問、大変誤解を招くような数字がここに出ておるようでございますから、この第二点については局長さん中心で結構だと思いますがお教えを願って、果たしてこれが何を意味するのか、こんな問題についてもお教えをいただきたいと思うわけでございます。  そこで、実は私も大蔵省で二十六年間大変会計検査院にお世話になって、ともかくも皆様方の役所を信頼してまいった。そうしてとにかく会計検査院の例の批難事項、指摘事項をできる限り少なくするために努力してまいって、私どもいろいろ勉強さしていただいてきたものでございます。したがって、会計検査院の方々のお気持ち、お考え、もう大変よくわかりますし、いつも御尊敬申し上げてきたわけでございます。  しかし、去る十二月十五日の日刊紙の朝刊をあけてみてびっくりしたのです。それは、この九十五ページの「社会保険診療報酬所得計算特例について」という皆様方の検査報告について大変新聞が書きたてて大きな波紋を起こした、このことなんです。私も長らく会計検査院のあり方を見ておりましたが、このような政策的な判断を要する問題について会計検査院意見を出してある程度こちらの方向であるというふうに示唆、あなた方は示唆していないと言われるかもしれませんが、示唆するようなことを出したのを初めて見たんです。私も政治家になってもう八年半ぐらいでございますが、大蔵省昭和十六年に入ってから会計検査院とおつき合いして初めて見たような気がするわけでございます。そこで、この問題をめぐってもうすでに佐藤観樹先生が大蔵委員会、それから工藤先生が予算委員会で、さらにまた野末先生が参議院でも御議論されておりますが、私もそれを全部読んで見ました。しかし、まだまだこの問題は、単に技術的な数字の問題を離れて会計検査院の方々に考えていただかなければならぬ点があるということを感じたものですから、この点を特に院長さん、もう長らく国政の動きを見てこられた院長さんですから、まず院長さんから伺ってみたいと思います。  皆さん方は、すでに去年の二月二十三日に北山先生の租税特別措置についても会計検査院はこれに対してメスを入れよというような御質問があって、やります。大いに研究いたしますというようなことを言っておられると思うのですね。私はこれが発端だというふうな気がいたすわけでございます。ほかにあるかもしれません。そこでまず第一にお聞きしたいのは、この租税特別措置、政策税制、つまり税制の公平は若干犠牲にしても経済成長の誘因になるならば税制上これをとるのは自由経済のもとで適当である、こういうような政策税制、租税特別措置、誘導税制を戦後もう高度成長以前からとってきて、そうして高度成長を促進してきた、これが自民党政府の大きな柱であった、こういうことは御存じだと思うんですね。しかし一方、これについては野党側から特に、これは大企業優遇である、金持ち優遇であるということで反対してきた、こういう経緯があると思うのですが、この経緯を御存じでしょうか。
  43. 佐藤三郎

    佐藤会計検査院長 そういう経緯を存じております。
  44. 塩崎潤

    塩崎委員 そういう経緯があることは存じておるということならば、会計検査院がこの問題にメスを入れるということはよほど慎重にやらなければいかぬのじゃないでしょうか。会計検査院というのは世間から大変信頼されてきておる、憲法九十条の機関である。憲法上こそ独立性の規定はありません。しかし院法の第一条には、内閣から独立するというふうに書いてある。そして身分は保証されておる。こういうことを考えてみると、まず第一に会計検査院というのは中立性を尊重されるのじゃないでしょうか。こちらがいい、自民党が悪いんだ、野党がいいんだというようなことはもちろん言われるはずもありませんが、政策というような問題について、中立的な身分まで保証された会計検査院がいろいろ批判をし、そしてその効果を占う、こんなことは果たしてできることでしょうか。それが適当であるかどうか、院長さんの御意見を承りたい。
  45. 佐藤三郎

    佐藤会計検査院長 お説のとおり、会計検査院は中立公平ということが一番大事なことでございまして、したがって、検査報告の内容につきましてもその点は特に気を使って作業してまいっておるつもりでございます。  先ほどの北山愛郎さんのお話もちょっと出たのでございますが、私、本件の診療報酬の問題は野党からそういう話があったからという感覚は決して持っておりませんので、国民世論がかなり高まってきておるときに、それこそ会計検査院は一番中立的な立場にあるんだから、会計検査院としては中立的な数字が出せる、客観的に信じてもらえる数字が出せる、それによって公平なる議論をしてもらおう、こういう感覚で出したものでございまして、決して野党が言ったからといってこういう問題を提起した次第ではございません。
  46. 塩崎潤

    塩崎委員 医師優遇税制だけの話じゃないのですよ。北山委員とあなたの間の御討議を見ておりますと、いや、大いにやります。そしてほかにまた二、三ありますというようなことまで言っておられる。私は、これは大変危険なことだと思うのです。あなたも言っておられる。この政策税制の効果なんということは計算できますか。私はあなた以上に税金をやってきた。私はこの問題ぐらい悩んだことはない。そしてアメリカでもやっておりますよ、これは日本の特別措置だけじゃなくて、どこの国でもやっている。ことに自由主義経済の国であればあるほど、たとえばアメリカが投資税制をやっておるから日本もやれ、やれ、社会党は大企業優遇だからやめろとこう言われる。しかし、アメリカでもこの投資優遇税制の結果、七%税額控除するという結果、どれだけ投資がふえたかなんというのを分析したのは一つもない。ただ投資した人の税金がまけられる。表面はそれしか出ないのですよ。皆さん、こんなことで客観的に取り扱うということだと思ったら、これはどこかのからくりにひっかかるようなものじゃないでしょうか。  私はここで、後でだんだんと内容に入ってみて、いかに立論がむずかしいかということをだんだんと皆さん方に御質問していくのですけれども、本当にあなたも疑問を持っておられる。効果なんというのはなかなかわかりませんが、やってみますというぐあいに言っておられる。政策というものあるいは政治というものは多分に世界観に基づくもの、多分に納税者の心理状態に依存するもの、数字には出ないものなんです。本当にこんなことを分析することは暗やみの中で黒ネコを探すようなものなんですよ。それもまた黒ネコがいないかもしらぬ。そんなことをやるということは、私は、これからだんだん追及していく社会保険診療報酬課税の皆さん方の検査報告を見ても、いかにむずかしいか、しかし非常に勉強されておる、しかしなかなかむずかしい問題だと思うのですが、どうでしょうか、客観的に取り扱ううまい方法がありましょうか。ちょっともう一遍お伺いしたいのです。
  47. 佐藤三郎

    佐藤会計検査院長 おっしゃるように、効果の問題、これは非常にむずかしい問題で、まさに不可能に近いと申し上げるのが本当かもしれません。もし私の方で効果までも確実にとらえられるものならば、院法三十六条には、法律、制度の改善意見を申し上げることができる、こう書いてありますので、院法三十六条に基づきまして、意見を申し上げるということをやったであろうと思います。しかし、そういう点がむずかしくてできませんので、ただ税制面から見た数字だけを申し上げる、こういうことになったわけです。
  48. 塩崎潤

    塩崎委員 政策税制を単に税制上の減税効果だけ見るなら、それはメスを入れたことにも何にもならぬのです。  そこで、それはともかくとして、まだいろいろと院長さんにこれから申し上げたいと思うのですけれども、それでは院長さん、どうなんですか。これは十二月十四日に内閣に報告された。ところが十二月十五日に各紙ともここに大きく取り上げて、会計検査院が取り上げたものだから特に大きく取り上げている。医師優遇税制により千六百億円国が損、一人当たり開業医七百万も減税とか、やはり何とかとか、大変センセーショナルな見出しで取り上げておる。この新聞を見られて院長さんはどういう御感想を持たれたか、御印象を持たれたか、これを承りたいのです。やっぱり自分の思ったとおり所期の効果が出た、ねらいが出た、こういうふうに思われたかどうか、ここを伺いたい。
  49. 佐藤三郎

    佐藤会計検査院長 実はその新聞を見ましたときに、これは大分誤解をして書かれたなという印象が強うございました。これはあのとき新聞記者に発表会がございまして、あと質問がございましたけれども、あのとき説明に出ましたのは総務課長で、次長も出ましたけれども、それに質問がかなりあったのです。それで当院といたしましては、かなり詳しく説明したつもりだったのです。ところが、新聞に出ましたのは、一つの新聞は非常に正確に書いてあったのですが、どうもほかの新聞は正確度が非常に薄くて誤解を招くような記事になっておりまして、これはいけないことだな、今後はこういう問題については特に慎重に、記者発表等については誤解されやすいところがどこにあるかをあらかじめよく考えて、その部面を特別に力を入れて説明するということをしなければ、せっかくこれだけ苦労してつくっても何にもならぬなという感じを持ちました。
  50. 塩崎潤

    塩崎委員 いま院長さんから、この新聞を見て大変驚かれて、自分たちの予想外であった、したがって、このような問題は慎重に取り扱わなければならぬという御答弁があったが、私もそうだと思うのです。いま申しましたように、会計検査院は本当に独立の地位を持った機関ですし、会計検査を厳正にやっていただくためには世間の信用が大事だと思うのですね。最近世論が高まったから医師優遇税制を取り上げたと言うのですけれども、その世論というのもこんなようにあらわれたところの世論を皆さん盛んに気にされておる。恐らく会計検査院をもとにした新聞、皆さん方には予想外だったとしても、読んでいる人はこれが世論だな、こういうふうに思ってしまうものですから、私は大変心配しまして、皆さん方によほど注意していただかないと将来国政を誤ると思う。  皆さん御案内のように、会計検査院は独立の地位を持っている。憲法上の独立ではない、財政上の規定のところにあるから、行政、司法、立法の三つの中に入らない、三権分立に入らないにしても、また別の方向に走って、変な形で国政上の権力分立の効果が失われたら大変なことになると思ってきた。戦前、明治憲法時代には枢密院みたいなものがあって責任の所在が明確でなかった。こんなことを考えたら、これらの問題をよほど慎重に扱っていただいて――私は院法三十六条にも多分に疑問を持っているのです。たとえば、裁判所が違憲審査権を持っておっても、安保条約なんというものはどうですか。これは合憲性の判断を越える高度の政治問題で、裁判所の判断になじまないというような最高裁の判決が出ましたね。会計検査院の独立性を尊重されるならば、主観的な恣意的な判断、これは多分に政治的な判断とつながるものですから、それには接近されない方がいいと思うのです。院法三十六条というものはそういう政治的な判断を伴う。政策、政治、この問題は裁判所と同じように――悪法も法なりということを裁判所は盛んに言われる、こういう精神をもっていかれないと、私は大変なことになると思うのですね。  だから、院法三十六条は、私も資料をいただきましたが、私が大蔵省の主税局の事務官をしておったとき、入場税法の政治とも関係のないような本当の抜け穴、こんなところで埋めなさいという、政治的な問題にならない会計上の抜け穴、手落ち、こういった点を十分に細かく――会計検査院ぐらい緻密に検査する役所はないのですから、税務署なんか税金に追われて大量処理していくために、法律を無視し、資料に気づかずしてやっている、皆さん方がおるから、会計検査院にしかられるからそういう点は慎重にいきましょうということになっておるのですよ。ところが、法律どおりにやってもいろいろ問題があるというような印象を与えたら、これは大変なんです。私は、それは院法三十六条でやるのがいいかどうか疑問だと思っておりますが、これはまたいろいろと議論をしなければならぬと思うのです。  いま私申しましたように政治的な判断を伴う、院法三十六条で改善意見を出すと言うなら、これは皆さん方は、内閣で責任をとってもらわなければならぬ。こんなように誤解を招くことは、自民党は大変損をしておるのですよ。皆さん方は選挙をやられぬからいかぬので、そんなことはぴんとこない。私ら選挙をやっておるから、こういうように書かれるごとに国民から批判を受けて、おまえらこんなこと必死にやってきておるじゃないか。ところが、大蔵大臣がこんなことを言ったら、私どもは自由民主党の政調会に来てもらって追及する、大蔵省の諸君もいろいろと追及するが、会計検査院は独立ですからどうも追及のしようがないでしょう。ここにときどき来ても皆さん方は涼しい顔をされておるから、塩崎潤、陣笠代議士の手なんか及ばない。総理大臣といえども、行政権を持っておるが、国会に対しては内閣は連帯責任を負うのでしょう。皆さん方は内閣に連帯責任を食わぬでしょう。  こんなことをどんどんやってくださるのなら、自民党の政調会に来ていただいて、院長さんのみならず、前田局長あたりの優秀な頭脳を利用してもっと使いたいと思うのですが、自由民主党にどんどん出てきてくれますか、そして私どもに、こういうことをしたらいいのだと教えていただけるのですか。そういうことはやるべきではないと思う。裁判官と同じように、国の会計法そしてまた財政支出を静かに見守るのが会計検査院の役目であって、大蔵省の役人や建設省の役人のように、自民党の政調会に来てこれがいいです。あれがいいです。主観的な判断を述べ、またお互いに論議し、自民党の代議士に怒られてこれでいけとか政治力にやられたとかいうようなことがあったらいかぬと思う。どうなんですか。自民党に来ていただいて皆さん方と議論して、皆さん方の頭脳が使えるかどうか、こんなことは会計検査院の職務から離れるような気がするのですが、いかがなものでしょうか。
  51. 佐藤三郎

    佐藤会計検査院長 中立を旨とする独立官庁である会計検査院でございますので、院長がそういう場に臨むということは不適当だ、こういうふうに考えております。
  52. 塩崎潤

    塩崎委員 全くごもっともなお話で、会計検査院の方々を自由民主党の政調会に呼んでつるし上げるなんということは適当じゃないと思うのです。あの岡原長官があの発言をしただけで裁判官訴追委員会で大騒ぎをしているような昨今でしょう。会計検査院は慎重な態度をとっていただき、多分に政治的な問題についてはこれはどうしても判断を越える、こういうふうに考えていかなければならぬというようにいまの御答弁から大体わかってきた。  したがって、北山愛郎先生の御質問も、確かに租税特別措置というのは隠れたる補助金である、こんな意見もずいぶんあるのです。しかし、この効果など総合的に見た人はだれもおらぬのですよ。これは日本人の学者じゃだめだから、最近出た「アジアの巨人・日本」という有名なブルッキングズ・インスティチュートの学者の分析を読んでみても、確かに日本の租税特別措置は数が多い、しかし、これに頼ってやってきたんだ、これは日本の政策の大変な特徴である、これくらいしか書いてないので、効果についてはわからぬと書いてある。アメリカでもわからぬ。ドイツでもわからぬ。ドイツも盛んにやっている。ですから、北山愛郎先生とのお話で院長大変張り切られたのだが、これは国会のいろいろなやりとりの経過で生まれたものだと私は思うので、あと二、三あるというようなことを聞いて、二、三出るなら政調会にでも来てもらって議論をしてもらわないと、選挙が近いとときどき新聞に出ておりますから、自民党の票が減るようなことになって大変気にするわけです。  私は元主税局長ですから、何をやっても、税金の問題ならおまえが悪いと言われるおそれがあるものですから、そういうふうに発表されるなら一遍院長さんに、あるいは前田局長にも来てもらってやっていかなければいかぬと思いますから、慎重に扱っていただくということをやっていただく。これは主観的な判断の問題、政治的な判断。税の公平を犠牲にしてでも経済成長を促進するという誘引効果を生むなら自由主義経済では適当である、補助金よりもはるかにすぐれた効果がある。これは余り議論したら長くなりますから、院長と議論しても仕方がないからやめますけれども、そういう哲学がある。そういう哲学をぶち壊しに来られたら、あなたの哲学は何か、やはり野党の哲学に立った哲学かというようなことを言わざるを得ぬようになってくるのですよ。この点だけは特にお願いいたしまして、またその次にだんだんと内容に入って、これからこんなような問題があるからなかなか判断がつかぬのだということをひとつ申し上げたいと思うのです。  今度は、医師優遇税制と言われる社会保険診療報酬所得計算特例という内容に入っていきたい。  これでも自由民主党の中は議論が分かれておりますが、共産党はこの優遇税制は賛成だと言っているのですよ。ところが他の野党は反対だと言っている。こんなふうに政党の中で渦の巻いておる問題について皆さん方が取り上げていったのですから、これは世論が言っておるからと。世論というものも院長さんの世論というのは何でしょうか、新聞かもしれません、私はよくわからないんだ。そこで、その世論に従って分析したと言われるこの問題について、少しお尋ねしたいのです。  まず、内容の問題については、佐藤観樹先生、それから工藤先生、野末先生がいろいろと御議論されておりますから、皆様方も十分その点は御存じかと思うのです。  まず最初に、「特に掲記を要すると認めた事項」こういう表題で取り上げたことが問題なんですね。いや三十六条じゃないんだ、「特に掲記を要すると認めた事項」、こういうところに、同時に皆さん方の表現、私は速記録も読んでみましたが、多分に奥歯にはさまったような、いやそういうことを言っているんじゃないんだとか、いや客観的に事実を書いただけだと言われておるのですけれども、その次のところにも「特に掲記を要すると認めた事項」という項目が各省の中にたくさんあります。しかし、それは多分に法律問題を離れた、政策問題を離れた、政策の意識のない、たとえば畦畔の問題、これは公共財産だがまだまだ何らの取り扱いが決まっておらぬ、将来立法も要るんではないかというようなにおいのするような書き方、処理が大変混乱しておるというようなこと、それから住宅公団の例の建設した住宅があいておる問題、これは法律改正の問題の中に含まないような私は気がするわけでございますが、この社会保険診療報酬計算特例だけは異質なものですから、先ほど来言っておる、私は疑問を持っているわけです。  そこで、これは議員立法ででき上がっている。議員立法でできたのです。御存じですか。「特に掲記を要する」これは国会のところにでも書くんならいいんですけれども、議員に対して文句を言っていかなければならぬのですが、大蔵省に対して文句を言ったのは、税法は大蔵省所管だからこういうことを書いてきたのでしょうかね。これは大蔵省はとても自分では直せないから議員立法で直してくれと言う。法律改正の問題はむしろ国会に対する批難事項とでもやって、やられるという気持ちはお持ちになりませんか。大蔵省の範囲を超えているじゃありませんか。大蔵省に何と言ったところで、これは法律なんです。国会が悪い、こういうことになりませんか。院長さん、どうですか。
  53. 佐藤三郎

    佐藤会計検査院長 国会の法律を批難するという意識は毛頭ございませんで、こういう面が出ているという事実を申し上げて、それじゃあとどうするかということは、これは政治責任者のなさることである、こういう考えでございます。
  54. 塩崎潤

    塩崎委員 これは各省の批難事項を見ますと、この法律どおりやっておらぬということで批難されておる、あるいは不当にやっておるからやられておる。これはそうでしょう。税務署はこの法律どおり取り扱ってきてここに書かれたのですね。その法律たるや議員立法でできておる。法律どおりやって、ここで「特に掲記を要すると認めた」、これは国会に対してせめて三十六条、私はそこまでいけないと思うのですけれども、国会の項に入れるべきじゃないでしょうか。いまおっしゃった点はよくわからない。なぜ大蔵省注意するのですか。法律を直さぬ限りもう直しようがないのですね。どうなんです。もう一遍ひとつお願いします。
  55. 佐藤三郎

    佐藤会計検査院長 これは税金については大蔵省でございますし、それから大蔵省と申しますと、内閣が提案権を持っておるわけでございますので、大蔵省の所管に入れておる、ただそれだけのことでございます。
  56. 塩崎潤

    塩崎委員 そこで、同じ議論を繰り返しても時間が経過いたしますので、その次の質問に移りたいと思いますが、ここに書いてあることは、確かに、私がこれから申し上げるようにはっきりと書いてないのですけれども、皆さん方の意図するところはこんなことじゃないでしょうか。  確かに、この制度は、昭和三十九年の議員立法で、社会保険診療報酬の単価が適正になるまで税の特別措置を講じていくのだ。しかし、どうも、単価が適正になったかどうかしれないけれども、医師というものは他の所得者に比べて何倍かの収入あるいは所得水準になっておるのだ、したがって、もう適正化は図られておる、よくわからないが図られておるように見える、見てもいいんじゃなかろうか――あなた方の意図ですよ。私の想像だ。悪い想像かもしれません。しかも、七二%の経費というのは行き過ぎで、調べてみたら五二%なんだ、二〇%も超過しておるじゃありませんか、よってこの際は法律を直して七三%を五二%にすべし、こういうふうに考えられておるのが皆さん方の意図じゃありませんか。新聞はそう書いているのですよ。  そのことは、たまたまもう一つの裏づけがある。大蔵省が、昭和五十年の税制調査会の答申の中に、基本的な所得率というものは、これは五二でいいのだ。したがって、それは五二でいいのだが、経過的に五千万円以上にしていこう、七二%を認めるのは千五百万以下の部分にしよう、こういう案を五十年に出しておるのですね。     〔馬場(猪)委員長代理退席、委員長着席〕 まさしく大蔵省の議論に対して根拠を与え、そして世間に対してそれが正当であるというふうに印象づけようとした、こういうふうに考えるのは私の邪推でしょうかね。新聞はそう書いてきたんですよ。そして、皆さん方がもう三回ばかり質問を受けた方々の質問は、大体そういうふうに考えて御質問しておるが、皆さん方は、いや、そうじゃないのだ、ただ事実を淡々と書いただけである。淡々とにしては、新聞の行き過ぎなんでしょうか。私は、もう皆さん方の意図は、そういうふうに考えておると思うのです。いかがです。
  57. 佐藤三郎

    佐藤会計検査院長 五二%がいいとは私たちは毛頭考えておるわけではございませんで、これは塩崎委員十分御承知のように、医療行政全体から判断しなければならない問題でございますので、ただ税の面だけとってみるとこういう数字が出ますよということを申し上げているにすぎないのです。五二%でいいんだということを私たちは毛頭考えておりません。
  58. 塩崎潤

    塩崎委員 そうすると、税の面だけなら、もう税負担の点と、あるいは所得率の何%ということぐらいを書いたらいいんですね。この前の、見てくださいよ、こういうことを書いてありますよ。「この特例は、昭和三十九年に社会保険診療報酬の適正化が実現するまでの暫定措置として創設されたものであるが、」云々とあって、「数次の診療報酬の増額改定が行われた」、これは税の見地でも何でもありません。それから、五十年分の医業所得者の平均所得は給与所得者の四・六倍云々ということで、人の何倍になっているじゃないか、こんなことはまくら言葉にしてはよけいじゃありませんか。  私も長らく税金畑でやっておりますけれども、これは税の前の所得という背景であり、多分にこのことは、皆さん方診療報酬の適正化ができておる、したがって他の所得者の何倍にもなるんだ、こういうことを意味するのではありませんか。これは税の見地を淡々と書いたものじゃありませんよ。ですから、いろいろなところでこれが引用されて出てくるのです。新聞のみならず、代議士の方々でも、これを攻撃するときに皆さん方が根拠に引いておる。これは税だけではありません。税なら七二がいいかどうかという点を議論したらいい。経費の点を見ていったらいいんじゃないんですか。
  59. 前田泰男

    前田会計検査院説明員 恐縮でございますが、原案の作成者として答弁させていただきます。  先ほど先生が、診療報酬の適正化はできておると考えているのではないかというお話でございました。ただ、このファーストパラグラフに書いてありますところは、要するに診療報酬そのものの総額を言っておるわけでございます。現在問題になっておりますのは、いわゆる技術料と言われますところのものが適正かどうかということが、いま医師会のお医者さんの間ではかなり問題になっておると思われます。ここに書いてありますのは、薬価から以下全部入れまして、そして国民の医療経費はぐんぐん上がっているというのが実情である。それでここに書きましたゆえんは、二十九年にこの制度ができて、暫定措置としてできたわけでございまして、十年以上たったわけでございます。その間このような事情の変更があったんだから一応見直しをするべき時期であるのではなかろうかと考えるというような意味で、これを書いたわけでございます。
  60. 塩崎潤

    塩崎委員 大変明快のように見えて明快でない答弁で、私もよく理解できないんです。こういうふうに、そんな他の所得者と比較する意味は何にあるんですか。医者だけでいいじゃありませんか。そして、七二がいいか五二がいいかということでいいのであって、人より何倍も伸びておるというのはこれはどういうわけですか。それは恐らく蛇足じゃありませんか。何か筆が滑ったんじゃないですか。
  61. 前田泰男

    前田会計検査院説明員 一番初めの二十九年ごろではサラリーマン所得と医師の所得はそれほど差はなかった。余りなかった。それが急に開いてきたということで、お医者さんの所得もかなり上がってきたということが申し上げられるのじゃないかという意味でございます。蛇足と言われれば若干そういう気もいたします。
  62. 塩崎潤

    塩崎委員 蛇足よりも手が滑って、やはりそこに平清盛みたいなことではないんですか、よろいがちらちらと見える。やはりここまで上がったから七二を直して五二にしろと、こういうふうに世の中の人は読むんですね。それ以外のこのまくら言葉の意味はないと私は思うのです。他の所得者の四・六倍である、ですからもうそろそろこれを直していいんではないかということが衣の下から見えておるんじゃないですか。衣の下がよろいか、よろいの下が衣か知らないけれども、ちらちら見せておるんでしょう、これは。どうです。
  63. 前田泰男

    前田会計検査院説明員 先生がそのようにおとりになったということでございますが、書きましたときには、ただ客観的な事実を書いてみようという気以外になかったわけでございます。  ただ、いずれにしましても、あらゆる制度というのはある程度の年月がたちますればやはり見直しの時期というのがあってしかるべきではなかろうか、これが原案を書きました私の頭にあったわけでございます。その意味で、ちょうどこのようになってきているのですから、いわゆる技術料でございますか、これの適正化というのも図って、あわせて税制の検討も行うということもあっていいのではないか、このように考えたわけであります。
  64. 塩崎潤

    塩崎委員 いま前田局長から、はしなくもよろいが見えたわけです。それは会計検査院の正式な答弁として考えておっていいでしょうか。  院長、どうですかね、こういった、他の所得者に比べて何倍かになったからこの制度は見直してもいいんだということをいま初めて私は伺ったんで、これはまたなかなか容易ならざることだなあと。これまでの各委員会における御答弁は、淡々と事実を書いたんだ、こういうふうに言われておるんですが、これはやはり政策的な、もうこういう事態に達したから自由民主党はこんなものにいつまでもすがりつかないで直せということを勧告をしておる、こういうふうに考えていいんでしょうか。院長さん、ちょっと言っていただきたい。
  65. 佐藤三郎

    佐藤会計検査院長 直せというそういう積極的な意図はございません。ただ、この結果を、医療行政、医療税制の参考にしていただきたい、こういうつもりでございまして、直せというようなそういう僭越な意図は毛頭ございません。
  66. 塩崎潤

    塩崎委員 新聞はこれを引用して、こんなことを直さない自由民主党だからけしからぬと、こう言うんです。それはもう私がたびたび言ったように、皆さん方が考えられたことが新聞になりますと、大変な反響を生む。それが私どもが皆さん方を攻撃できるならいいんです。会計検査院というのは神聖にして侵すべからざる人物ばかりだ、憲法上そこは保障されている。私は、現行法に基づく会計検査だけやっておられる、そこの点の独立性だと思うのですが、政策的な問題に対していろいろ御発言をされるなら、これはまた会計検査院法から全部見直して、私が先ほど申し上げましたように、自民党にしょっちゅう院長に来てもらわなければならぬ、こんなことになるので、しかし、最初に院長さんが言われたように、この反響が非常に大きかった、こういった点は反省されると言うから、いまのもちょっと言葉の行き過ぎであろうと思って、私も余り追及しないことにします。したがって、この租税特別措置など大いにやりますなんと言ったら私は大変気にしますから、これはひとつ慎重にやっていっていただく。政治問題だ。そして自由民主党の悪口にならないようなことを考えていただきたい、こういうふうに思うわけでございます。  さて、その次は、いまの適正化の推定というような問題にもいろいろあるのですけれども、一番みんなが不思議に思ったのは、特例の不適用者を除いて計算してみたら五二%になった。つまり経費が七二%以下の者だけを計算してみたら五二になった。これはもうどの質問する人も、全くばかげたことを言っているじゃないかという質問をしておりますね。あたりまえじゃないか。私もそう思う。  私はもう一つ、税の専門的な見地から見れば、これは医師全般に優遇を与えるのだ、社会保険診療に携わる医師全般に与えるというよりも、社会保険診療報酬に対して優遇を与える。したがって、特定の者には適用なくても、適用を受けた人だけで社会保険診療報酬の不足が助かればいいという仕組みの意味しかないと思っておる。全く私もこれも制度が完全にいい仕組みだとは思わぬのです。だれでもこんなことは、税の素人が考えてもおかしな制度だと思う。経費を使おうが使うまいが七二というんですからね。こんなことは三歳の童子でもわかる。会計検査院みたいな優秀な人の頭脳を借りなくてもいいのです。しかし、それが二十九年からきたという。つまり七二%まで見てあるからということだけなんです。経費がそれを上回っておる人は何らの恩典がないんですね。しかし、標準率というのは皆そういうものなんです。  これはまた私の専門領域なんですが、いま農業なんというのはこういう標準率で課税しておるんです。どんなに経費がかかっても、平均的な一反歩七俵とったと見ましょうと。そしてその経費は三割と見ましょう。四割かかった人でも、まあがまんしてください。どうせ帳簿も完全についてないんだし、ある年はかかったかもしらぬ、その次かからぬかもわからぬ。それで平均して三割ぐらいという約束でやってきておる。  自由診療なんて、皆さん御案内のとおり標準率があるでしょう。七〇ぐらいの標準率を使っておる。この制度は認めるのでしょう。ですから、とにかく七二以下の人だけ集めて五二なんて意味がないじゃありませんか。二九%の特例適用者、この人たちを入れたら幾らぐらいになる、それと比較すべきで、七二以下の人が五二であったから、七二は二〇%よけいである。あたりまえな話で、七二以下の人だけ集めて五二である。九〇、一〇〇、この人たちも入れて、個人開業医の社会保険診療報酬の標準率というのはこういうものだというのを出さなければいかぬじゃないですか。それが目安になる。全くこれは税務署に行ったら笑われるような標準率になってくるのですね。しかも、御案内のように、病院とかなんとかいったら赤字になっていくんでしょう。赤字なんというのはむしろマイナスで標準率を入れていかなければならぬのですね。これはまさしく皆さん方の意図で何か都合のいいところの数字だけ集めて、二〇%も開差があるなんというのはけしからぬのだと、二重にも三重にも誤謬を犯して出しておる。そう思いませんか。前田局長、どうです。
  67. 前田泰男

    前田会計検査院説明員 いま先生標準率という言葉をお使いになりましたけれども、私たちの場合計算いたしましたのは減税の対象になった方、その平均減税率は大体どのくらいなんだろうかという意味で五二を出したわけでございまして、標準率という考え方をとったわけではございません。  なおちなみに、超した方千五百五十三人おられたわけですが、その方々全部は調査いたしませんでしたけれども、一部抽出調査いたしまして加重平均いたしました結果、六八%という数字が出ております。
  68. 塩崎潤

    塩崎委員 そうすると、大蔵省が五二%というような標準率を依然として残していく、そして上の方は七二、これはおかしなことになりますね。依然としてあなた方の攻撃の対象になるのでしょう。税制調査会で出したという大蔵省の案がありますね。五二とか六二とか七二とかいうのがありますね。依然としてその問題は残りますね。おかしいですね。
  69. 前田泰男

    前田会計検査院説明員 大蔵省の、政府の税調がおつくりになりました社会保険診療報酬一千五百万未満は七二%、それからずっと上がって最高が五二%という数字を先生は言っておられるわけでございますね。別にその数字に対しまして、大蔵省が一番上に五二という数字を盛っておられますけれども、これは一応標準税率という考え方でお出しになったのかどうか、私はよく存じませんけれども。
  70. 塩崎潤

    塩崎委員 この制度が二十九年にでき上がったのは、税務上の実際に扱っておった標準率制度からきたのです。私は直税部長でございましたが、お医者さんの標準率は大体五〇くらいと言っておった、あるいは外科医は七〇とか言っておった。当時は自由診療が多かったものですから、社会保険診療部分は少なかったからそれと厳密に分けてやったことはありませんけれども、そのときに単価不足の問題が起こった。当時の池田さんが、税務の実際で一点単価十八円まで行っておったものを十円の引き上げができなかったから、税金の面で標準率を二五%から三〇%にして、ひとつ税で恩典を与えることによって単価引き上げの方はあきらめてくれ、こういうことで始まったのです。ところが、これが税務の第一線で法律に縛られないでやるものですから、いやそれは実際はおかしいということでなかなかうまく統一ができなかった。そこで、議員の方々が議員立法で、これはやはり困るじゃないかということで二五、三〇の中間をとって二八にした経緯がある。これは前田さんがまだ生まれない前かもしらぬ、もう生まれておったですかね、私が直税部長で大変苦労してきた、そういうものなんです。  したがって、七二以下を集めて何とか言うこと自体だめなんです。これはあなた方の書いてありますように、最低は一九・七で最高は七一・八、そうなるに決まっておるのです。しかし、帳簿をつけない人たちにとってみれば、そういう標準率課税制度が便利なんですよ。帳簿をつけたところでまた税務署にいろいろなことを言われる。ことにお医者さんなんて経理が苦手じゃありませんか。標準率という制度はまた別の意味において、しかも法定することによって、税務署からこれは書いたけれども否認するとかしないとか、カルテを出せとかいって、診療の勉強の時間もないようになることを防ぐ意味においての大変な期待を持っておるところがまだあるのです。こんなことをあなた方は一つも分析されておらぬ。  そして七二以下集めたら五二だから二〇オーバーしておるというような、中には一九・七ですからこれは五〇もオーバーしておるのでしょうね。これをおかしいおかしいと言っておったのでは、これは会計検査院のようにこれだけ税に詳しい方々にしてはおかしいと思うのです。一遍、上回った、マイナスの病院の報酬まで入れたら――どうせ平均課税というのは不十分なものですよ。しかし、それながらやってきた。ドイツなんというのは標準率制度を公開して外の本屋に売っておるのです。帳簿もつけられない人たちはこれでいい、そこまでやっておるのですよ。そういう点もひとつ研究していただいて、もう少し税に対する広い勉強をしていただかないと、私はただ単に数字だけ集めて、そして誤解を招くような発表は会計検査院のためにとらぬ。ひとつ研究していただきたいと思うのですが、どうですか。
  71. 前田泰男

    前田会計検査院説明員 先生いま標準課税、それからお医者さんは経理に非常にうとい方が多いということから標準課税というのが実態であろう、そのようなことはわれわれも薄々は存じておったわけでありますけれども、最近は税務署、国税庁それ自体が青色申告に非常に力を入れておられまして、なるべく申告納税でいきたい、こういうぐあいに言っておられるときでもございましたもので、あえて権衡課税という考え方でもってすべてを押し切るという考え方はとらなかったわけであります。
  72. 塩崎潤

    塩崎委員 いま帳簿のなかなかつけにくい方々の標準率課税の問題、所得率、経費率の問題の範囲に入ったのですが、本当に会計検査院が税制のことをこれだけ御心配されるなら、やることがたくさんあると思うのです。メスを入れなければならぬ点が。しかし、こういう約束できておる、あるいは政策できておるというときには、こういう誤解を招くような発表はよくないと私は思うのです。  たとえば給与所得控除という制度がありますね。御存じですか。あれは給与をエンプロイイーがエンプロイヤーからもらって、その給与者だけに適用されておる制度ですね。事業所得者には適用されてない。あるいは不動産収入には適用されてない、そういうものなんです。あの制度は皆さん方どういうふうに考えておられるか。一つの根拠は何と思われるか伺いたいと思うのです。  一番よく言われますのは、給与所得者には経費を引かぬじゃないか、ワイシャツがかかるじゃないか、靴がちびるじゃないか、あるいは通勤費がかかるじゃないか、ときには疲れるから一ぱい飲まなければならないじゃないかというようなことも言われる。友達ともつき合わなければならぬじゃないか、そんなような趣旨を含めて給与所得控除があることは御案内のとおりですが、しかし、これは非常に概括的なもので、最高六百万円を超える金額で一〇%無制限に引くのです。たとえば三千万や四千万の給与をもらっておる社長さんは幾らでもある。そうすると百五十万円までは四割も引くのですからね。六百万を超えると一〇%引くと書いてある。かつては頭打ちしておったが、いまは頭打ちなしだ。そうすると三千万や四千万の給与をもらっておる人たちはたくさんある。三百万、もうちょっと多いでしょう。下の控除率は高い。それは果たして経費と合うでしょうか。こんなことを考えたら税制というのは一つの約束ごと、かかろうがかかるまいが、こういうふうに見ていってトラブルをなくそうとするものなんです。こんな点、メスを入れたことがありますか、どうですか。
  73. 前田泰男

    前田会計検査院説明員 給与所得控除、これにつきましてはいま先生がおっしゃいましたとおり私も理解しておりまして、これは結局約束ごと、これ以上やむを得なかろうというぐあいに私は考えておりました。
  74. 塩崎潤

    塩崎委員 ですから、これは政策なんです。こんな控除をしておる国は世界にないのです。それは単に経費というだけではない。ガラス張りの収入だからこれだけしんしゃくしてあげましょう。これがもう一つ強い前は、一定限度、たとえば五十万で引くのは頭打ちするというようなことを言っておりましたが、ガラス張りの所得ということ、そして一代限りの所得であるということから、こういうふうに頭打ちまでなくしてきたのですが、これは経費論から見たら出てこない議論、こんなような議論は会計検査院ではやられないのですね。私はやったらいかぬと思う、政策なんだから、ガラス張りの所得で日本独自の税務の環境から来て認めた制度なんだから。皆さん方がどんなにメスを入れたってそれはなかなか通るものじゃないし、メスを入れてない。私はお医者さんの所得にもそういったところがあると思う。ですから、標準率制といった問題は、いまのように税務署との間のトラブルを避ける、そのほかに社会保険診療なんというのは支払基金に行ったらもうだれでもわかるガラス張りの所得、こんな点も見ないと、皆さん方のように単純に七二と五二との間の二〇がある――しかも二九%の多数の人たち、七二%を超して八〇、九〇もかかっている人は無視してやるのですからね。全く、五十一年度の決算報告書に書いてあることは誤解を招く、そして研究の仕方としては大変不十分なままに出たから大混乱を来しておる、こういうふうに思うのですが、いかがですか。
  75. 前田泰男

    前田会計検査院説明員 われわれ自身の説明の仕方が悪かった、これは先ほど院長がおっしゃったとおりでございまして、いろいろ誤り伝えられたことは一応おっしゃるとおりでございます。ただ、われわれといたしましては、一応決算書に出ました数字を忠実に書きまして、それでひとつ検討をお願いしたい、それだけ以上の意味は持っておりませんでした。
  76. 塩崎潤

    塩崎委員 だんだん時間もなくなってまいりましたが、まだまだ御質問をしたいことがたくさんございます。そのほかに、御案内のように開業医は個人じゃなければ開業ができない、医療法人になるには三人以上常時医者がいなければならぬとか、そのために個人所得税しか適用にならないで、商工業者のように、法人になって、企業に帰属する所縁は会社の中に残し、自分の生計費に帰属する分だけ給与の形で取っている、こういったことができない、こんなような問題があることも、もう御存じだと思うのです。そんなことまでも考えながらやらないと、ここを中途半端なままで出すと大変誤解を与えて、しかもまた自由民主党がひどい税制を維持しておるじゃないか、こんなふうに言われるだけじゃないかと思うのですね。  しかも、診療報酬についても常に問題がある。今度の健保法でも通るか通らないかわからないぐらい議論がある。これを考えたら、私が最初申し上げましたように、この政策税制は多分に世界観の問題、哲学の問題であり、約束の問題なんです。これにメスを入れるときには慎重に扱っていただくことをお願いして、ちょうど約束の時間になりましたのでこれでやめますが、院長さん、そういう私の最後のお願いに対して、ひとつ御感想を述べていただきたいと思います。
  77. 佐藤三郎

    佐藤会計検査院長 税の専門家にいろいろと貴重なる御意見を拝聴いたしまして、今後の参考にさせていただきますが、要するに国の収入支出というのは、政策、そういったものの裏表になっておりますものですから、その接点の問題が非常に多く出てまいります。したがって、おっしゃるように、私たちは言わなければならぬものは言わなければならぬ。その場合に、発表の仕方というものをよほど慎重に考えなければならぬということ、これはもうもちろんでございまして、今後ともその点は慎重審議してやっていきたい、こう存じます。
  78. 塩崎潤

    塩崎委員 これで終わります。ありがとうございました。
  79. 楯兼次郎

    楯委員長 森田重昭君。
  80. 春田重昭

    春田委員 最初に検査院の体制についてお尋ねします。  この問題につきましては先ほど原委員から御質問があったわけでございますが、さらに五十年度決算議決案にもちゃんと挙げられておりますし、たびたび委員会でも指摘されておることでございます。この会計検査院の充実強化というものは、最近の複雑な国の会計、政治経済状態からしても、その体制強化は急務であると私は思っております。  そこで、五十三年度予算ではいかなる検査体制の強化がなされたのか、まず院長から御説明いただきたいと思います。
  81. 佐藤三郎

    佐藤会計検査院長 五十三年度の予算におきましては、検査の円滑化を図るため新たに検査活動費が認められましたが、今後ともその充実を図る所存でございます。  それから、職員の数でございますが、四十九年度までは千二百十二名でありましたが、五十二年度までに千二百二十名となり、五十三年度においても引き続き増員をお願いいたしましたが、諸般の状況から前年度と同数にとどまりました。しかしながら、財政規模の拡大もあり、検査の充実を図るため、今後とも増員の実現に努力してまいりたい、こういうふうに考えております。  それから、俸給でございますが、御承知のように本院職員についても一般職の給与法が適用されておりますので、本院の職務の特殊性にかんがみ四十四年度から俸給の調整額というものをずっと要求いたしておりますが、四十九年度から俸給の調整額が実現するまでの暫定的措置ということで特殊勤務手当が検査一日当たり五百四十円、わずかですが認められているにとどまりまして、肝心の調整額という問題はまだ実現するに至っておりません。この点も、今後大いに努力していかなければならぬ点だと考えております。  それから、旅費でございますが、国家公務員の旅費法に定められた定額をわれわれは受けておるわけでございますが、本院の出張の特殊性にかんがみまして、実際に宿泊に要した宿泊料が規定の定額を超過する場合が間々ございまして従来から問題になっておりましたが、この点は、五十三年度におきましては大蔵当局と協議をいたしまして、旅費法の協議条項を適用いたしましてその超過額について追給する、そして不足が生じないようにするという協議ができまして、これは五十三年の一月からでございますが、実行に移しております。  以上でございます。
  82. 春田重昭

    春田委員 院長からは現状とそれに対する若干のこうしてもらいたいという要望もまじっていたように思うわけでございますが、きょうは大蔵省の方においでいただいておりますので、まず大蔵省の方にお尋ねいたします。  会計検査院は、院法第一条で内閣に対して独立の地位を有しております。これは御存じのとおりでございます。そして、憲法第九十条によって国の収入支出決算検査をするとともに、「会計経理を監督し、その適正を期し、且つ、是正を図る。」権限を有している。これは院法第二十条に載っております。しかし、現実は、こうした法的位置づけではありますが、予算面ではお寒い状態にあります。  まず、定員の件でございますが、いま院長からも御説明がありましたように全然ふえていないわけでございます。昭和四十二年度が定員が千二百十二名で実員が千二百十名、昭和五十二年度が定員が千三百二十名で実員が千二百十二名、五十三年度では定員が千二百二十名で実員が千二百十一名ということで、十一年間で実員はわずか一名しかふえておりません。  そして検査員の方でございますが、検査官は昭和四十三年度に八百九十九名でございましたが、昭和五十二年度九百四十六名になっております。したがって、この十年間で四十七名がふえているわけでございます。ところが、その間、この検査対象個所というものは、昭和四十二年度が三万七千九百二十一カ所でございましたが、昭和五十二年度におきましては四万一千八百八十四カ所ということで、三千九百六十三カ所が増加しているわけであります。これでは会計検査院法にある、国の収入支出を正しく把握し、正確な是正をしていく、このようないわゆる法的に裏づけされたことが予算面で裏づけされてないわけでございまして、実情は必ずしも合ってない、こう指摘してもいいと思いますが、この点大蔵省としてはどのようにお考えになっておりますか。
  83. 塚越則男

    ○塚越説明員 お答え申し上げます。  財政規模の拡大、それから検査対象増加ということに対処いたしまして人員増が必要だという点でございますが、大蔵省としても従来から会計検査重要性ということを十分認識いたしまして、毎年度調査官の増員あるいは技術専門官の増員というようなことで、可能な限りの配慮を払ってまいっている次第でございます。今後とも検査院重要性ということを十分認識いたしまして、必要な配慮を払ってまいりたいというふうに考えております。
  84. 春田重昭

    春田委員 しかし、現実にはふえてないわけでしょう。御存じかもしれませんけれども、今後調査官の欠員というのは年ごとに増加していく、こういうことを私は聞いているわけでございます。ここに資料をいただいておりますけれども、新しい院法ができたのが昭和二十二、三年だそうでございまして、その当時は五、六百名の増員があったそうでございます。それがだんだん、昭和二十二、三年は三十歳前後でお入りになったと思いますが、今日相当お年になりまして、昭和六十年くらいから定年によって相当退職者が出てくるのではないか。そういうことで、昭和六十年には調査官の欠員が二十五名、昭和六十一年には四十八名になるだろうと見込まれております。さらに昭和六十二年には六十一名、昭和六十三年には七十五名、こういうことで、いわゆる定年の方たちが非常にふえてくる。そして、その反面若い人が入ってない、こういうことで、検査官が非常に少なくなってきている、こういうふうに私は聞いているわけでございますけれども、この点につきまして、大蔵省、御存じですか。
  85. 塚越則男

    ○塚越説明員 欠員の状況は、いまお述べになりました数字自体を私どもよく承知しておりませんが、年齢構成の関係でそういうことになってきているのかというふうに承知しております。私どもとしては、欠員がそういうふうになっているということは承知しておりません。
  86. 春田重昭

    春田委員 そういうように事務的な答弁じゃなくして、おたくは課長さんですからそれ以上答弁できないかもしれませんけれども、この数字は事実でございますから深刻に受けとめていただきたいと思うのです。  いずれにいたしましても、若い人が入っても、検査官になるまでは大体五、六年かかると言われている。検査対象は年々多くなってきているし、内容だって非常に複雑になってきているわけです。そういう面からいきましたら、現在の体制からいったら、相当実施率だって悪くなっていくだろうし、内容も低下していくんじゃないか、こういうことが言われます。そういう点で、会計検査院の場合は総定員数にひっかからないわけでございますから、予算の配慮だけあったらいけるわけですから、そういう実情をよく踏まえて、体制強化は早急にしていただきたい、このように要望しておきます。  さらに、旅費の中で宿泊料の問題でございます。これは一般公務員と共通する問題でございますけれども、この額は御存じのとおり昭和五十年十一月から適用されて今日まで据え置きになっているわけです。これは毎年毎年物価上昇がこれだけあって、二年ないし三年間も据え置くということはどういう理由なんですか、大蔵省の方。
  87. 川崎正道

    ○川崎説明員 お答えいたします。  先生御承知のように、日当あるいは宿泊料等につきましては、消費者物価等の動向を見まして、実態調査の結果によりまして過去改定してまいっております。本年度につきましても現在実態調査をしておりまして、その調査の結果に基づきまして改定を要するかどうか今後検討してまいりたい、このように考えております。
  88. 春田重昭

    春田委員 これは会計検査院だけじゃなくして一般公務員全部に共通する問題でございますけれども、大蔵省の方、三等級から五等級の方で大都市に行った場合は食事つきで六千五百円、六等級以下の方は五千二百円、実はこの額で済みますか、どうなんですか。
  89. 川崎正道

    ○川崎説明員 宿泊施設は各地にいろいろな施設がございまして、一概に宿泊料金がどうこうというのはなかなか申し上げるわけにまいらないわけでございますが、実際に出張いたしまして、規定の料金で賄えないという場合には、旅費法に四十六条二項というのがございます。先生御承知のとおりだと思いますが、その四十六条二項に基づきまして、検査院大蔵省で協議いたしまして調整を行うことといたしております。
  90. 春田重昭

    春田委員 そういうように一々調整しなければならないようなことではいけないと思うのです。やはり現実に合った額にすべきだと思うのですよ。逐次改定する意向でございますということですが、近いうちにという形で、たとえば来年くらいに改定する意向があるのかどうか、どうなんですか。
  91. 川崎正道

    ○川崎説明員 先ほどもお答えいたしましたように、現在実態調査をいたしております。その調査の結果によりまして改定をいたすことになっておりますので、実態の結果が出てまいりませんと、いまからどうこうということは申し上げるわけにはいかないかと思いますが、実態の結果を見まして検討いたしたい、このように考えております。
  92. 春田重昭

    春田委員 実態の調査をやっていると言いましても、この問題は昨年から問題になっているわけですよ。非常に遅いじゃないですか。要するに、やる気があればそういうことはもうすでに結論が出ているのではないですか。私もそういう調査官の生々しい声を実際に聞いておりますけれども、検査院の方たちは年間のうち約三分の二はほとんど出張なんです。出張そのものが仕事なんですから、そういう点には手厚い保護とまでは言いませんけれども、実情に合った線だけは出してやらなかったら正しい検査なんかできませんよ。よろしくお願いしたいと思います。  そこで、会計検査院の方にお尋ねしてまいります。大蔵省の方はもう結構でございます。  検査実施率でございますけれども、相当検査対象個所がふえてきていると聞いておりますが、最近、この五年間検査対象個所と実施個所、これを数字を並べて御説明いただきたいと思います。
  93. 柴崎敏郎

    ○柴崎会計検査院説明員 実地検査の施行個所、五年間でございますね。――四十八年から申し上げます。四十八年は三千四十一カ所、これは全検査対象個所に対しまして施行率七・三%になります。それから四十九年三千百四十二カ所、これは七・五%になります。五十年三千四百七十四カ所、施行率八・三%、五十一年三千四百七十四カ所、八・三%、五十二年三千七百九カ所、八・八%、このような状況になっております。
  94. 春田重昭

    春田委員 ただいま御説明あったように、検査実施率はきわめて低いわけでございまして、まだ一割にも達してないわけでございますが、これによる不当事項、それから批難金額というものがここの私の資料にございますけれども、たとえば昭和四十七年は不当件数が百七十六件で批難金額が十四億四千五百七十万円出ております。四十八年が百五十二件、十三億九千万、四十九年が八十六件で十六億五千九百万、五十年が八十二件で十八億七千二百万、五十一年が七十四件で四十三億一千九百万、このように不当事項の件数と金額が挙がっておりますが、この実施率からしてこのような件数と金額が出ているわけでございまして、これを単純計算いたしますと、一〇〇%検査をやっていけば年間大体三百億円ぐらいの不当金額が出るのではなかろうかと私は思うわけでございます。  いずれにしましても、現体制ではこれがいわゆる最高検査実施率なのじゃないかと私は思っておるわけでございますが、院長としては、年々若干ずつ高くなってきておりますけれども、その検査実施率は現体制では最高これでやむを得ない、これで手いっぱいなのだ、そういうお考えなのか、またその他何らかの方法でこの検査実施率はふやしていきたい、そういう意向なのか、その点まずお伺いしたいと思います。
  95. 佐藤三郎

    佐藤会計検査院長 決して現状の施行率で満足しているわけではございません。増員、それから旅費の増額等によって一割以上ぐらいの線には持っていきたいというふうに私としては考えております。
  96. 春田重昭

    春田委員 続きまして、検査院が不当と認めた事項意見を表示または処置を要求した事項というのがございますけれども、特に資料によりますと、この「不当事項」、「意見を表示し又は処置を要求した事項」の中で、農林省建設省が非常に多いわけですね。これはどういう理由なのか、御説明いただきたいと思います。
  97. 柴崎敏郎

    ○柴崎会計検査院説明員 私どもは検査対象によりまして組織上の重点的な配置というものを常に考えておるわけでございますが、そういった意味合いにおきましてことしの当初にも相当大幅な機構をいじりまして組織も変えた。要するに、言ってみますれば問題の多いようなところにはそれなりの人員を配置して検査の力を注ぐ、こういうことでございますので、そういったような結果がこういうような形で出ているのではなかろうか。要するに、比較的私どもが検査する上において問題が従来から多かったというようなところについてはまたそれなりの検査をしているということが、このような結果になっているのではなかろうかと思います。
  98. 春田重昭

    春田委員 次長からそういう説明がございましたけれども、私は農林省建設省補助事業が非常に多い、そういう補助事業が多いがゆえにそれに対する不当貸し付け等が非常に多いのではなかろうかと思っておるわけでございます。この中で、たとえば農林省の例の中で、農業改良資金というものがありますが、この農業改良資金というのは、五十一年度の説明でもございましたように昭和四十年からずっと毎年毎年挙げられているわけですね。なぜこのように毎年毎年会計検査院としては不当事項として挙げ処置要求をしながら、相も変わらず挙がってくるか。特に五十一年度におきましては件数も金額相当上がっております。  そこで、この問題につきまして若干御質問いたしますけれども、過去三年間、四十九年度、五十年度、五十一年度の不当件数とその金額をまずお示し願いたいと思います。
  99. 阿部一夫

    ○阿部会計検査院説明員 お答えいたします。  農業改良資金に関する検査の指摘事項の件数及び金額でございますが、四十九年度におきましては二十一件、金額といたしまして一千六十二万八千円でございます。これは旧国庫助金相当額にいたしますと約七百万万円ぐらいでございますが、貸付額で申しまして一千六十二万八千円でございます。それから五十年度でございますが、二十三件、貸付額で申しまして一千二百九十七万九千円でございます。それから五十一年度は七十件、九千三百九十二万八千円、これも貸付額でございますが、以上のような数字になっております。
  100. 春田重昭

    春田委員 三年間説明がございましたけれども、特に五十一年度が件数にしても金額にしても非常に多く出ているわけでございますけれども、この理由はどういう理由なんですか。
  101. 阿部一夫

    ○阿部会計検査院説明員 五十一年度が件数、金額ともにふえました一つ理由として考えられますのは、調査いたしましたものが、たとえば五十年度でございますと二百九十二件であったのが五十一年度は七百二十四件ということで、まずたくさん調べたということが原因であろうかと思いますが、しかしながら、調査件数に対する指摘事項の件数の比率、つまり指摘率を見ましても、四十九年度五・一%、五十年度七・九%、五十一年度九・六%というようなことで、たくさん見ましたので不当事項もたくさん出たというだけではなしに、指摘率も上がっているという現象が出ております。  この原因は何かという御質問だと思うのでございますが、率直に申し上げまして、五十一年度の指摘率がこういうふうに上がりましたはっきりした理由というのは、私どももこれだという一つ理由を挙げて申し上げることはなかなかむずかしいわけでございます。ただ、いろいろ考えられますことは、たとえば五十一年度分、つまり昨年実施した検査でございますが、農業改良資金検査だけをやるのではなしに、近代化資金といったようなほかの制度資金の検査と合わせてやった、その結果、ほかの制度資金の方でもうすでにお金を借りているのにこちらの方で重ねて借りたというような、分数としては、そういうすでに借りているものであるからこの改良資金の貸し付け対象としてはならないもの、われわれは対象外と言っておりますが、そういうものがかなり出てきているということが一つ考えられる。  それから、これは私どもは限度超過貸し付けとかあるいは低額実施と申しておりますが、これだけのお金がかかるのだということで申し込んで借りたのですが、実際には当初の予定よりも安くでき上がってしまった。当初の予定よりも少ない金額ででき上がった場合にはそれをちゃんと申告して貸付金額を減らすというふうにしなければならないのに、それをそういうふうにしないで、実際にかかった金額が少ないのにたくさんかかったような形で貸付事務が終わってしまっているというような範疇のものもあるわけでございます。昨年検査対象にいたしましたものは、実際に貸し付けを行ったのは五十年度あるいは五十一年度に貸し付けを行ったものでございますが、不況というようなことで業者の方が値引きをしてくれるということがあったために、当初の予定よりも低額で実施してしまったのにそれをそのままにしていたというようなものも出てきたのではないか。それが二番目の理由でございます。  そのほか考えられる理由といたしましては、担当課の調査団の人たちがだんだん検査に習熟してきて徹底した検査ができるようになった、検査能力の向上というようなことも考えられるかと思いますが、指摘率の増加原因としてはこれが唯一の理由だということで明確なお答えはできないわけでございまして、いま申し上げましたようないろいろな事情が絡み合ってこういう形としてあらわれてきたのではなかろうか、このように考えております。
  102. 春田重昭

    春田委員 それは何らかの理由があると思いますけれども、こうして十年一筋、会計検査院としては不当事項として挙げる、それが一向に直っていない、またその件数が年々多くなってきているということは、何ぼ会計検査院不当事項として挙げても農林省はそれを真剣に受けとめていない。これは会計検査院の権限がある面では疑われると思うわけですね。言ったそばからなめられていると言われても仕方がない。  したがって、農林省に限らず各省庁の大臣は、当委員会では、不当事項、いろいろな改善要求があればその是正を図り今後注意してまいります。いつもそういう誓いはするけれども、また同じことが翌年度に出てくる。こういう繰り返し、形式だけのことであっては絶対ならないと私は思うのです。この農業改良資金につきましては、私は前も農林省の方にお尋ねしましたけれども、相も変わらず不当事項が挙がってきているということは、会計検査院としてはもう少し厳しく指導したり指摘したり何らかの厳しい措置をとってもいいのではないか、このような考え方もするわけでございます。  文部省におきましては、たとえば私学に補助金なんか出しておりますけれども、学生数や専任職員数によって補助金が決まるわけです。それを会計検査院調査して、その数に誤りがあった場合は補助金を返還させております。そういう強い措置も文部省所管の私大の補助金についてはとっているわけですよ。  そういう一面、農林省の所管である農業改良資金につきましては、無利子であるだけに殺到し、こういう不正が非常に起きやすい条件になっておりますけれども、十年一筋変わらないとなれば、ますますそれが増長しているとなれば、ここで何らか厳しい措置をしてもいいのではないかという考え方を持っているわけでございますが、どのようにお考えになりますか。
  103. 阿部一夫

    ○阿部会計検査院説明員 先生御指摘のように、農業改良資金不当事項というのは、四十年度の検査報告から十年以上にわたりまして毎年掲記してきたわけでございますが、私どもも不当事項を指摘し、これを他山の石として将来この貸し付けに係る経理がよくなることを期待しながらやってきたわけでございますが、不当事項がなくなるというような事態がなかなか生まれてこなかったわけでございます。  そこで、昨年は、今後どうしたらいいかということを検討いたしました結果、単に不当事項ということで検査報告に書くだけでは不十分ではないかと考えまして、五十一年度の検査報告の百三十三ページに記載してございますが、農業改良資金貸し付けについて会計検査院法三十四条の処置要求をしたわけでございます。この内容につきましては検査報告に書いてあるとおりでございますが、貸し付けの審査とか事業完了後の事業費の確認とか、そういう段階の事務処理のやり方をもっと適確なものにしなければいけないのではないかという立場から、処置要求をしたわけでございます。  それとあわせて、これは無利子の金でございまして、指摘された場合にはその不当貸付額は従来も返還させていたわけでございますが、いつまでに返還しなさいという期限までに返してしまえば元金分だけを返すということで事が足りる。まさに正しからざることをして見つかった場合には返せばそれだけで済む、そういうことではおもしろくないのではないか、うその報告を出して不当な貸し付けを受けたような者に対しては、当初の貸し付けの時期にさかのぼって違約金を取るというような制度も考えなければならないのではないかというようなことも盛り込みまして、会計検査院法第三十四条の処置要求をいたしたわけでございます。  私どもといたしましては、この処置要求に対して、農林省が適確な手を打って、改良資金の貸し付けに係る経理改善されるということを大いに期待している次第でございます。
  104. 春田重昭

    春田委員 処置要求してどういう形で農林省が姿勢を改めるか、それはまた五十三年度の決算時に見なければなりませんけれども、いずれにしても、こうした問題は農林省に限らず、たとえば労働省におきましては雇用調整給付金建設省におきましても補助事業で共通したことが言えるわけですよ。  私は単に一つの例を示したわけでございますけれども、これは会計検査院の権限といいますか威信にかけても、不当事項処置要求を出したものは、その同じ行為といいますか類似行為は再び起こさせない、そこまで徹底したアフターケアといいますか、次年度におきましても十分な監視をやるべきではないか。一応不当事項を表明した、処置要求を出した、それで終わりではなしに、再びそれを起こさせないというのが会計検査院の使命ではないかと思いますし、あり方だと私は思うのですよ。  そういう点で、同じことが従来から繰り返されて、そして当委員会では大臣が形式的に謝ってそれでチョンでは、会計検査院の存在価値がないと思うのですよ。そういう面では会計検査院としてはあらゆる手を使って、国民の血税をむだにしないようにするためにも、最後に、これは全体的な問題として、こうした不当事項処置要求等に関して、そういう問題を二度と起こさせないという各省庁に対する院長の強い決意をお伺いしたいと思います。
  105. 佐藤三郎

    佐藤会計検査院長 まことにごもっともな御意見で、そういうことが二度と起こらないように最大限努力いたしたい、こう考えておりますが、たとえば悪いですが、幾らやってもどろぼうが絶えないように、改良資金のように貸付先が非常に種々雑多でございますと、いろいろな人間がございまして後を絶たないというような事情もございますが、そう言ってもおれませんので、最大限努力いたしたいと存じます。
  106. 春田重昭

    春田委員 それでは、この問題につきましては終わります。  続きまして、石油開発公団の点につきましてお尋ねいたしますが、「昭和五十一年度決算検査報告」の中に石油開発公団特記事項が掲載されておりますけれども、きょうは資源エネルギー庁の方がお見えになっておりますので、そちらの方からこの概要につきましてまず御説明いただきたいと思います。
  107. 鈴木玄八郎

    ○鈴木説明員 お答えいたします。  石油開発公団の投融資につきまして御指摘があったわけでございますが、その後の状況につきまして簡単に御報告いたします。  その後、一社につきましては、すでに解散の手続を終了いたしまして、それからまた別の一社につきましては、株式を民間株主に譲渡いたしております。そのほか、石油開発公団が投融資をいたしました企業のうち、昭和五十年度末現在、七社が鉱区を返還し、現在探鉱活動を行っておりませんが、これらの企業に対しましては、各社の現状に応じて適切な処理をするよう指導していきたいと考えております。  まず、コロンビア石油とサバ石油開発につきましては、現在、解散手続中または残務整理中でございまして、近く整理ができる見込みでございます。それから、スマトラ石油とアンデス石油の両社につきましては、解散の方向で残務整理またはプロジェクトの終結手続をしているところでございます。それから、ジルド・オーストラリアとオセアニア石油の両社につきましては、前者は、公団の持ち株を民間株主に売却して公団の出資金を整理したいと考えており、後者につきましては、他鉱区への進出を検討中でございますので、当面これらの動向を見守ってまいりたいと考えております。それから、カタール石油につきましては、商業生産段階に入っております他の石油開発会社の株式を保有しておりますので、その回収状況を勘案いたしまして、公団出資金の処理について今後検討してまいりたいと考えております。
  108. 春田重昭

    春田委員 この決算報告の中には「休眠会社」という形でうたわれておりますけれども、この中で何社休眠会社があるのか、そして休眠会社に至った理由、これをもう少し御説明いただきたいと思います。
  109. 鈴木玄八郎

    ○鈴木説明員 申しわけありません、御指摘を受けました会社は十一社でございまして、もう二社についていま御説明をしなかったわけでございますが、私どもは、いま申し上げなかったその二社につきましては、必ずしも休眠会社であるとは考えておりません。それで、アラカン石油開発株式会社と北日本大陸棚石油株式会社の二社についていま御報告を落としてしまったわけでございますが、アラカン石油開発につきましては、ビルマの他のプロジェクトについて相手国政府と交渉中でございます。それから、北日本大陸棚石油株式会社につきましては、鉱区を持っておりまして、フィージビリティースタディーも行っておりますので、必ずしも休眠ということに当たらないのではないかと考えまして、ちょっといま説明を落としたわけでございます。申しわけありません。  それから、一般的にこういう休眠会社がなぜ起こるかということでございますけれども、石油開発公団は、探鉱投融資の対象とするプロジェクトを選択するに当たりましては、きわめて厳しい審査をいたしておるつもりでございまして、公団への持ち込み件数に対する採択の件数は約七%程度でございます。しかし、石油の探鉱開発事業はその性格の上できわめてリスクが高くて、公団が投融資をしたプロジェクトの試掘の成功率、油なりガスなりが出てきたものは二二%、それから商業油田の発見率は五・二%でございます。ちなみに、自由世界におけるアメリカやカナダを除きました他の諸国の試掘成功率を、七一年から七四年までについてとりまして試算をしてみますと、試掘の成功率は二一・七%、商業油田の発見率は三・三%でございまして、公団の扱っております件数はこれとほぼ同程度、またはこれより幾らか高いという感じでございます。  しかしながら、探鉱事業に失敗するケースが発生いたしまして、休眠状態となる企業が生じてくる場合がこういうことであるわけでございますけれども、いずれにしても、こういう問題は少しでも改善するということで、今後とも投融資対象プロジェクトを極力厳選いたしまして、公団事業効率、資金効率が一層向上するよう指導してまいりたいと考えております。
  110. 春田重昭

    春田委員 いまの説明からわかるように、成功率が非常に悪いわけですね。いわゆる商業ベースで成功したのは五・二%である、しかしこれは他の自由世界から比べれば若干高い、こういう説明でございますけれども、探鉱しても、掘っても、九五%が不成功になっているわけですね。そういう面からいきましたら、この石油開発公団の制度というものは非常にばくち的な性格を帯びたものであると私は思うわけでございまして、公団が多額の金を出資したり貸し付けたり、民間も残りを出すわけでございますけれども、出なかった場合はパアになっちゃうわけですね、元も子もなくなる。成功した場合はその利益を公団が民間に譲渡する、こういう制度だと思うのですが、わずか五%しか成功しないとなれば、そういう点ではばくち的な要素が非常に強いわけでございます。  そこで、採択リスクが七%という話がいまございましたけれども、また、石油は掘ってみなかったらわからないと言えばそれまででございますけれども、まず何といっても事前審査といいますか、事前調査というのがそこで非常に重要になってくると思うのですよね。一応一鉱区掘るのに大体二十億ないし三十億と言われておりますし、掘ってみなかったらわからないといえども、やはりある程度調査をして掘らなかったら二十億ないし三十億ほうってしまうことになるわけですからね。採択率七%ということでございますが、この辺のところをもう少し厳しくチェックして、いわゆる成功率を高めるという方法はないわけですか。
  111. 鈴木玄八郎

    ○鈴木説明員 先ほど商業油田の発見率は五二%と申し上げましたが、一カ所につきまして何本か掘る場合もございますので、二十本に一本しか当たらないということでは必ずしもないわけでございます。  ただ、先生御指摘のとおり、いずれにしてもきわめてリスクが高いために、成功しないケースが非常に多いわけでございますが、実際に石油の探鉱を行います場合には、事前に十分な物理探査をまず行いまして、地層の状況をある程度調べた上で試掘井を掘るということでございます。先生御指摘のように、ただいま井戸を一本掘りますと、海で申し上げますと、大体二十億ないし二十五億の資金が必要なわけでございまして、きわめて莫大な資金が必要なわけでございます。  公団といたしましては、これまでも厳重な審査をいたしまして、各段階での審査をした上、かつ契約条件等も十分に検討して、確実性の高いものを採択しているつもりでございますけれども、いずれにしても国民の税金で運営している公団でございますので、今後ともプロジェクトを極力厳選いたしまして、事業効率を一層上げるようにいたしたいと考えております。ただ、エネルギーの安定供給の確保の面から石油開発はぜひとも進めなければいけないと考えておりますので、その目的を十分に配慮しつつ慎重に検討いたしたいと考えております。
  112. 春田重昭

    春田委員 この決算報告書によれば、五十一年度までの公団の投融資額が二千八百七十九億七百五十五万円ということで上がっております。したがって、五%の成功ですから、この投融資額のほとんどが不良資産になってくるということは当然だと思うわけですね。  そこで、検査院の方にお尋ねいたしますけれども、この検査報告の中では「休眠会社」という言葉を使っておられますけれども、これらの会社は時期が来れば再び探鉱を開始する、このように考えていいのですか。
  113. 阿部一夫

    ○阿部会計検査院説明員 当初の探鉱につきましては失敗したけれども、ほかのところで探鉱をやろうという会社もあるかと思いますが、私どもはここで取り上げました十一社につきましては、探鉱利権を放棄したりあるいは長期間探鉱事業実施されていなかったりして休眠状態になっている。したがいまして、私どもといたしましては、これらの会社に対する公団の出資金は早晩整理せざるを得なくなるのではないか、一応そのように考えたわけでございます。
  114. 春田重昭

    春田委員 したがって、そういう意味からいったら、休眠会社ではなくてすでに倒産と考えてもいいわけでしょう。それを会計検査院では非常に気を使って遠回しでこのような書き方をなさっておりますけれども、いわゆる先ほどエネ庁からの説明からいけば、もう再び探鉱しないということですから、倒産会社であって、当然この会社はいわゆる不良債権として上がってくるのではないですか。何か休眠会社と言ったら一時休んでおって再びチャンスがあれば、時期が来ればやはり探鉱を開始する、そのように一般的には解釈されますよ。その点どうですか。
  115. 阿部一夫

    ○阿部会計検査院説明員 私ども第三者的な立場で批判する機関といたしましては、この会社は実質的には倒産であるという認定というのは断定的に申し上げにくいということで、御了承いただきたいと思います。
  116. 春田重昭

    春田委員 多分にこの石油公団というのが政策的なものがございますので、会計検査院としては非常にそういう面では気を使っておられるということはよくわかりますけれども、しかしこの言葉の言う「休眠会社」というのは、私は先ほどの説明からいったらこれはもう倒産会社であって、早晩整理しなければいけないと思うのです。そういう意味で、整理せざるを得ないだろうという形で、ここへ会計検査院掲記しているわけでしょう。いわゆるこれは国策という形でできたんだから改善要求までいかなかったと思うのですが、院長の方にお尋ねいたしますけれども、この種の問題は特記事項として挙げられておりますけれども、やはりもうちょっと慎重にやっていくためにも、額が大きいだけに改善要求なり処置をして、厳しくいわゆる石油開発公団にはその姿勢で臨めと言うのが本当ではなかろうかと思いますけれども、どうでしょうか。
  117. 佐藤三郎

    佐藤会計検査院長 非常に探鉱事業というのはむずかしいのは委員のおっしゃるとおりでして、したがって、こういう結果が出たについて、こういう点をこういうふうに改善しろと言うのも非常にむずかしいのですね。私どもでよう詰め切れなかったというのが実情でございます。もしそういう面を詰め切れれば、改善意見としてもちろん出したはずなんでございますが、したがって、バランスにこういう架空の資産が載っかっているぞという程度の表現で終わった次第でございます。
  118. 春田重昭

    春田委員 私もわからないわけじゃないわけですけれども、この文章を読んだら何か本当に何らかの処置を要求しているように私は思えるわけでございますけれども、こういう表現で終わっているわけでございますが、エネ庁の方にお聞きをいたしますけれども、決算報告の中では、このように改善要求なり処置は要求されておりませんけれども、私は決して甘えてはならないと思うのですよ。いわゆるリスクが大きいのは私も承知しておりますけれども、しかし、この多額の金額というのは全部税金なんですから、したがって、いわゆる五%の成功が九五%の不成功を上回るだけのいわゆる配当なり利益があるかといったら、決してないわけですからね。将来のエネルギー対策の上にこのように踏み切ったと思いますけれども、私は、会計検査院特記事項として挙げて、改善要求はしてないからといって、決して甘えてはならないと思うのです。  最後にエネ庁の方の決意を聞いて、終わりたいと思います。
  119. 鈴木玄八郎

    ○鈴木説明員 御指摘いただきました、休眠状態になりました企業につきましては、それぞれの企業について概況を先ほど申し上げたとおりでございますけれども、できる限り速やかに、事情に応じまして、当該企業をできるものは清算または解散をさせまして、石油開発公団の資産が不良資産化することがないように努めたいと考えております。  それから、公団事業全体につきましても、国民の税金で運営されているという点を十分に考慮いたしまして、今後とも一層厳格な審査を行いまして、効果を上げるようにいたしたいと考えております。
  120. 春田重昭

    春田委員 それでは、エネルギー庁の方、結構でございます。  次に、経企庁の方においでになっていただいておりますけれども、海外経済協力基金の問題につきまして若干お尋ねいたしますが、去る五月二十七日読売に載りました、インドネシアにありますカマンタ・ベジタブルオイル社、現在係争中でございますけれども、この係争に至った経緯、これを御説明いただきたいと思います。
  121. 愛甲次郎

    ○愛甲説明員 お答えいたします。  具体的な数字等につきましては申し上げるのを差し控えさせていただきたいと思いますが、確かに、御指摘の新聞記事の件に該当する案件につきまして、つまりインドネシアにおけるココナツヤシの搾油事業というものを対象といたしまして基金が一般案件として貸し付けを行ったという事実がございます。これは四十九年から五十年にわたって貸し付けが行われたわけでございますが、この事業は、事業がスタートしてすぐに、ココナツヤシの干ばつによります生産減ということが起こりまして、その結果原料高ということを招いた。そのような事実も反映いたしまして、翌五十年に至りまして、インドネシア政府によりまして、パームオイル等を含む食糧の輸出制限措置というのがとられたわけでございます。  一つは原料高、一つは販路を押さえられた、この二つの理由から経営不振に陥りまして、その経営不振が端になりまして、インドネシア側と日本側との間の関係が悪化いたしまして、いろいろあったようでございますけれども、五十一年には事業撤退やむなしという事態に立ち至り、五十二年の四月に至りまして正式に事業撤退ということで、基金といたしましては、貸し付けの全額を一括繰り上げ償還ということで借入人の方から返還してもらったということで、現在基金と日本企業との問は関係が消えておるわけでございます。  以上、私ども承知をしております点を申し上げました。
  122. 春田重昭

    春田委員 これはいつ設立されたのですか。  それから、基金からどれだけの融資額が行ったのか。その二点、ちょっとお尋ねいたします。
  123. 愛甲次郎

    ○愛甲説明員 現地の事業を行う会社そのものの設立は四十八年でございまして、それから基金の方で出しました額は二十一億円ということでございます。
  124. 春田重昭

    春田委員 経営不振になった理由は、干ばつが理由で結局原料商になったということでございますけれども、これは設立してわずか二、三年で経営不振になっているわけです。確かに基金としてはお金は返してもらっているから現在は貸借関係はないわけでございますけれども、二、三年で経営不振になって倒産する、こういう日本企業に対して安易に基金が貸したということは、私は非常に道義的な問題があると思うのです。そういう点で、返してもらったからそれでおしまいじゃなくして、とかく基金にはいろんな問題がございますだけに、私はより慎重に今後やっていく必要があると思いますけれども、会計検査院はこの件御存じですか。
  125. 東島駿治

    ○東島会計検査院説明員 お答えいたします。  融資した事実はよく承知しておりまして、それがまた返還されたことについても承知しておりましたが、先ほど先生御指摘のように、その後の推移というものについてははっきり申しまして調査しておりませんでした。
  126. 春田重昭

    春田委員 時間がありませんが、いずれにいたしましてもこうしたケースというのは、企業の思うがままに今回の基金の融資がなされたように私は思います。そういう点で、返ってきたのでいいようなものでありますけれども、やはり基金の融資のあり方というのは今後非常に大事になってくるのではなかろうかと思いますので、より慎重に基金の扱いをやっていただきたい、このことをお願いいたしまして、時間が参りましたので、今後十分注意して融資体制をやっていただきたい、このことを要望いたしまして、私の質問を終わります。どうもありがとうございました。
  127. 楯兼次郎

  128. 馬場猪太郎

    ○馬場(猪)委員 いまちょうど原子力船「むつ」はまた長崎へ行くか行くまいかということで、長崎でもいまもめておりますが、三十八年ごろから着工したこの上原子力船「むつ」について昨年の決算委員会でもお伺いしたんですが、当時の宇野長官のお話のときにはいまにも解決しそうな御答弁がございました。そしてきわめて短い期間のうちに解決するだろうということで、ではひとつめどを示していただきたいということを言ったのですが、それはもう何カ月というようなことじゃなしに、本当に近いうちに解決するだろうと言われておりましたけれども、結局いまになってみますと解決をいたしておりません。その間この特記事項に示されておりますように、百七十四億を超えるような大きな費用をかけてなおいまだに解決のめどもつかないような状態で青森に係留されておりますが、原子力船「むつ」についての見通しについてお伺いをいたしたいと思いますが、科学技術庁はおいでになっておりますか。――見えてないですか。おいでになっていないようですから、それじゃひとついま現在で検査院としてどういうふうに判断していらっしゃるのか、お伺いしたいと思います。
  129. 前田泰男

    前田会計検査院説明員 お答え申し上げます。  「むつ」につきましては、あれだけの金がかかりながら投資効果が発現されないという点は特記事項でお書きしたわけでございます。それから後、われわれといたしましてはむろんあれを書きっ放しにするという気はございませんで、その後の経過をずっと追ってみよう、そのように考えていたわけでございますが、それは、先生おっしゃいましたとおり、確かにまだ係留されたままでございまするけれども、事業団法の改正案が通るとかあるいは佐世保あたりの修理港としての受け入れの見通しがついてくるといったような若干明るいニュースも見えるということで、いまのところわれわれとしては大体事態を見守っている。実際問題といたしましては、一般管理費だけでも一年間十四億円ぐらいかかってまいりますけれども、その過程を会計経理的に見守っているというのがいまの現状でございます。
  130. 馬場猪太郎

    ○馬場(猪)委員 五十年度には特記事項として挙げられたけれども、じゃ、前の年にはどういう状況だったのでしょうか。
  131. 前田泰男

    前田会計検査院説明員 前の年にはというお話がいまございました。検査はわれわれむろんずっとやってまいりました。ただ実際問題としておくれている理由が、われわれが特記事項にせざるを得なかったような理由がございまして、五十年度に特記事項という道が開かれたものでございますので初めてあそこに書いたわけでございますが、四十九年まではそういう報告する場所がなかったと申しますか、検査はずっといたしておりました。
  132. 馬場猪太郎

    ○馬場(猪)委員 いまから振り返ってみると、前年度もずっと同じような状態できたと思うのですね。その間科学技術庁なりまた原子力船開発事業団に対してどういう措置をおとりになってきましたか。
  133. 前田泰男

    前田会計検査院説明員 原子力船「むつ」のその後の全体に対しまして大きな立場から物を言ったということはございませんけれども、一応われわれ、工事がございましたり、あるいは物品の購入がございましたり、そういたしますと、一応不経済な点はないか、こういったような点で四十七年に三件一応照会を出し、それから五十年には、恐らく特記事項の時期と一致いたしますが、このときに一件照会を出しているというのが実情でございます。
  134. 馬場猪太郎

    ○馬場(猪)委員 これは毎年ずっと見てきたけれども、いま始まったことじゃなしに、その当時から四年も五年も前から政治問題化したこの「むつ」ですから、そう簡単に解決つくというのは予想はなかったと思うのです。それじゃひとつこの特記事項として挙げて強く訴えるということで、果たして少しでも前によくなるような見通しというのはあるんですか。
  135. 前田泰男

    前田会計検査院説明員 先ほどもちょっと申し上げましたとおり、確かに先生おっしゃるとおり、「むつ」はまだ青森につながれたままでございます。ただわれわれずっと見ておりまして、事業団法が一時はもう死亡寸前のところまでいっておりまして、全然先の見通しも立たないという状況は、法律の改正でどうやら息を吹き返した。それからもう一つは、佐世保において修理の道というのが開かれつつあるということで、われわれとしては見守っている、いまの段階はそうでございます。
  136. 馬場猪太郎

    ○馬場(猪)委員 その間、ここにも指摘してあるように、漁連に対しても十二億を超える補助をし、あるいはまた関連施設として体育館の建設や放送施設等に対しても一億七千万の助成をするなど、直接原子力船「むつ」に関係することでなしに、そういった周辺環境対策的なものにもずいぶん使われておるのですが、これは政治的な問題でしょうけれども、こういうふうな傾向で、地元の歓迎しないものを持ってくるのだからひとつ何かよこせというような形で図られるというような形態というのは、許されていいのでしょうか。
  137. 前田泰男

    前田会計検査院説明員 この点につきましてはいろいろ御批判がおありと私も考えます。ただ、この場合におきまして、やはり「むつ」という船に乗っておりますところの船員のいわば人命という問題があって、われわれとしてはいささかごね得という感じがしないでもございませんけれども、漁民は漁民なりにやはり相当の悲壮感を持っておられたのだろうと想像いたします。したがいまして、われわれはこれを不当とは書いてないわけでございます。
  138. 馬場猪太郎

    ○馬場(猪)委員 こういうことを許した結果が、今度また長崎でもいろいろの条件、たとえば伝えられるところによれば佐世保に持ってくることによって地域に何か潤いを与えてもらいたいということで、たとえば新幹線網の誘致などということが報道されておりますが、そういうことにやはり影響しているんじゃないですか。
  139. 前田泰男

    前田会計検査院説明員 その点につきましてはあるいは先生のおっしゃるようなことがあるのかもしれませんが、われわれとしては確かめておりませんので、答弁を御容赦願います。
  140. 馬場猪太郎

    ○馬場(猪)委員 検査院が御指摘になっても、相手側も、技術庁にしてもなかなか受け入れるような状態でないということもよくわかるのですよ。しかし、その当時は確かにいま言われたように船員の生命あるいは健康のためにということであっても、やはり何か別個の方法で考えないと、定係港を求めるとかあるいはまたほかの寄港地を求めるとかいうたびに、それをせんがための支払いをしなければならない事態が生じてくるんじゃないかと思うのですが、そういう点については事業団とどういうふうな話し合いをなさいましたか。
  141. 前田泰男

    前田会計検査院説明員 新聞紙上等で先生のおっしゃるようなことを私も目にしておるわけでございますけれども、現在のところまだうちの調査官と事業団との間でそのような話し合いをしたことはございません。
  142. 馬場猪太郎

    ○馬場(猪)委員 原子力問題などというのは非常に専門の分野であり、恐らく検査院としてもそんなに原子力問題をおわかりの方がたくさんいらっしゃるわけじゃないと思うのですが、先の見通しはどうなんでしょう。いままで百七十億を超える予算をつぎ込み、そして三年間管理費だけでも五十一年に十四億、五十二年に二十三億、五十三年で二十六億、何にもせずに約六十三億ずっと使ってきておるわけでしょう。もし長崎が解決ついていったところで、ここでまた、果たしてそこが定係港になるのかまた戻るのか、こういう問題はずっとついて回るわけですが、見通しというのはどういうふうにつけておられるのでしょうか。
  143. 前田泰男

    前田会計検査院説明員 先ほどからも申し上げましたとおり、われわれといたしましてはとにかく修理をしなければいけない。したがいまして、佐世保が受け入れてくれる、それをじっと待っていると申し上げるほかないわけでございます。そういうことでございます。
  144. 馬場猪太郎

    ○馬場(猪)委員 じっと手をこまねいて待っておる。見通しとして、これじゃ修理をしたところで果たして使いものになるのかならないのかわからないままで、もし使いものにならないという立場をとるならば修理をすることはむだなんでしょう。もし使えるとすればどれだけの費用をかければ使えるのか、そういうことをだれもがわからないわけですね。ですから、そういう見通しもはっきりしないままずっと継続して修理をする、そしてまたその修理に対しても相当な費用がかかると思うのですが、これもただ単に手をこまねいているだけじゃ、検査院としての権限も何もないということになりますね。そして、ただ単に外から、服の上から問診をして、ちょっとぐあいが悪いですねということを言うだけで終わってしまうという結果に終わりはしないのでしょうか。
  145. 前田泰男

    前田会計検査院説明員 お答え申し上げます。  現在、どうも一番困ることは、青森につながれておるままの「むつ」の姿では一体どこをどう直したらいいのかというようなことまではっきりわかっていない。やはり佐世保に持ってまいりまして、いよいよ修理にかかりまして、原子炉は十分まだ使えるはずでございますけれども、ほかの修理のところが一体どういうことになってくるのか、これがまだはっきりわかっていないというところから、会計検査院としてはいまちょっと手の打ちようがないというのが現状なわけでございます。
  146. 馬場猪太郎

    ○馬場(猪)委員 繰り返すようですが、先の見通しのないようなものだったら、どうもこれはぐあいが悪いじゃないでしょうかというようなことを、会計検査院として、ただ単に特記事項として述べるだけではなしに、事業団なり科学技術庁に早く決断を出させるように持っていかなければならないのじゃないでしょうか。それについては、もちろん専門知識が要るわけですから、そういった場合にはそういう専門知識を持っていらっしゃる方が検査院の中においでになるのですか。
  147. 前田泰男

    前田会計検査院説明員 原子力船事業団を担当しておりますのは、私のところの上席調査官、科学技術担当というところでございまして、原子力関係の機関を大体一括して持たせておるわけでございます。したがいまして、できる限り官房当局にも配慮いただきまして、いまのところ電気四名、機械四名の技術的職員を中に入れてございます。検査院の中ではかなり技術職員としては恵まれた方だと思います。  ただ、先生も恐らく御心配になっていらっしゃると思いますが、原子力船といったような先端技術になりますと、しかも今度の「むつ」が生き返るかどうかということ、ことに問題が炉心にあるということになりますと、ちょっとわれわれだけでは判断いたしかねる、これが現状でございます。私も先生にこのまま放置しておくと申し上げたわけではございませんので、見守っておりますけれども、いつかどうしてもそういう判断をしなければならない場合もあるいはあろうかと思います。その際にはやはり事業団なり科学技術庁なりそのほかの方々の御意見を聞くのは当然でございますけれども、あるいは信用いただける大学の先生のところに伺ったり、あるいは現在検査院法に残っております顧問という制度を活用したい、こういうことに相なろうかと思うわけでございます。
  148. 馬場猪太郎

    ○馬場(猪)委員 もちろん担当官庁がみずからの手でそういう判断もしなければならぬでしょうけれども、検査院としても、いままでずっとお調べになってきた上は、担当官庁が決断しかねておるようなときには、いいならいい、悪いなら悪いで早く見通しをつけなければいかぬわけです。そういう場合に、ただ単に大学の先生を訪ね歩く程度で判断のできるような資料収集もできるし、そして理解もできるようないま組織になっておるのですか。
  149. 前田泰男

    前田会計検査院説明員 事柄を原子力船だけにしぼってお話しするといたしますと、私は私としてやり得るだろうという最高限のことで申し上げたわけでございますけれども、この原子力船が大体使いものになるのかならないのか、いまの事態において判断せよといったようなことになりますと、恐らく私は不可能であろうと考えます。
  150. 馬場猪太郎

    ○馬場(猪)委員 そういうことになりますと、検査院が何名かのチームを編成されて一生懸命お調べになって、そして最終決断を何も出していない。ただ特記事項に書くだけだということになると、今後の見通しをはっきり立てて、次どうしなさいということを言えないような状態じゃ、検査しに行くこと自体むだに終わってしまうのじゃないでしょうか。
  151. 前田泰男

    前田会計検査院説明員 むしろ、特記事項で書きましたことは、科学技術的なこともあるかと思いますけれども、しかし、われわれの能力の現状でございます。したがいまして、ここで書きましたのは、いろいろ政治的な理由があってこうなりまして、いままで死んでしまったと言われても仕方ない、また少なくとも寝てしまっている金がこれだけあるということを、はっきり会計的に申し上げる、これが会計検査院の一番大きな仕事でございますから、これを会計的に申し上げて、これだけの金の投資効果が減殺されているぞということを申し上げて、そちらの方面から注意を喚起するというのがこの特記事項のねらいであったわけでございます。
  152. 馬場猪太郎

    ○馬場(猪)委員 原子力問題というのは非常に高度な技術を要し専門知識を要するものですから、恐らく検査院独自の機能だけでは、今後の判断をするだけの十分な組織をお持ちじゃないと思うのですね。そういった場合に、どこかの知恵もかりなければならないと思いますし、あるいはまた専門家のいろいろな意見もかりなければならないと思うのですが、そういったときには、何か特別な諮問機関をつくるとかあるいは特別な委員会をつくるとかいうことによってそれを検査するというようなことはできるのですか。
  153. 柴崎敏郎

    ○柴崎会計検査院説明員 本件の問題を離れまして一般論として申し上げますが、要するに高度の知識を必要とするような事項について検査上必要である、こういう場合にはその専門の方を招聘して顧問を置くというようなこともできます。あるいは顧問というような身分関係でなくて、特別にそういう専門家に委嘱して種々の鑑定とか知識をいただく、つまり委託をするというような形、こういう手だてもございます。
  154. 馬場猪太郎

    ○馬場(猪)委員 そういう場合は、あらかじめ予算にちゃんと用意して予備費的なものはお持ちになっているのですか。
  155. 柴崎敏郎

    ○柴崎会計検査院説明員 必ずしも十分ではございませんけれども、やはりそういう場合も想定しまして、もっと事柄の小さな小規模事項で外部の方の力を煩わすというようなこともございますので、これは予算費目としては謝金ということになろうかと思いますけれども、そういうような形で一応予算はいただいておりますが、正式に顧問というようなことになりますと、その顧問料というものも相当の額を用意しなければなりませんので、これはまた大蔵省にお願いをして予算をつけてさらに増していただく、こういうようなことが必要になろうかと思います。
  156. 馬場猪太郎

    ○馬場(猪)委員 先ほどからたびたび議論に出ておりますように、調査をなさるにしてもなかなか調査費も十分じゃないというときに、恐らくそんなに予備費が組めるような――専門の技術者あるいは専門家を呼んで諮問をするような機構をこしらえたところでうまくいくはずがないと思いますし、それだけの潤沢な予算もあるはずないと思いますが、そういった場合、特にこういうふうな原子力問題なんかの専門家を委嘱しようと思えば相当予算が要りますが、そういうときには大蔵省と事前に簡単に話ができるような仕組みになっているのですか。
  157. 柴崎敏郎

    ○柴崎会計検査院説明員 その点は、私どもの方の予算担当の者が大蔵省の主計の方によく事情をお話しして理解をいただいた上で措置をお願いする、こういう機会は十分にございます。
  158. 馬場猪太郎

    ○馬場(猪)委員 わりにあっさりと理解を得てやれるというふうにおっしゃるのだったら、それだったら結構仕事はできるということなんですね。
  159. 柴崎敏郎

    ○柴崎会計検査院説明員 ただいまのは手続上のことを申し上げましたので、そういう手だてがあるということを申し上げたわけでございまして、これは大蔵省さんの方でもいろいろの点を考えられまして、そのときに私どもの方の希望を入れてくださるかどうか、これは仮定の問題でございます。私どもの方ではそういう場合にはぜひお願いしたいとは思いますけれども、必ず実現するかどうか、その点はしかとは申し上げられません。
  160. 馬場猪太郎

    ○馬場(猪)委員 いま一般論として言われたわけですが、今度の原子力船問題についてはまだそんな判断をするような時期には来ておらないということでしょうか。
  161. 前田泰男

    前田会計検査院説明員 せっかくの先生のお言葉でございまするから検討させていただきたいと思いますが、いままでのわれわれの態度は、佐世保が一刻も早く修理港として決まり、そこに行って分解修理にかかるのを待つということでございました。
  162. 馬場猪太郎

    ○馬場(猪)委員 伝え聞くところによりますと、佐世保へ行ったところで二年ないし三年ぐらい修理にかかるわけでしょう。そして佐世保の期待しておりますのは、それをきっかけに佐世保重工を支えて地域の産業を衰えさせないようにという期待がある程度あるように伺っておりますけれども、実際には微々たる修理費に終わってしまうのじゃないかというふうなことも言われております。したがって、私どもから見れば、これはもういいかげんに決着をつけなければいかぬ時期じゃないかというふうに思うのです。  直ちにいまから調査したところでこれを十分調査し終わるのに一年も二年もかかるだろうと思いますから、そういう時期に来ているのじゃないかと思うのですが、そういうことをおつくりになって大蔵省に折衝なさって――科学技術庁自体はやはり自分のところの仕事ですからメンツもありましょうから、やはり指摘をしてあげてこそ早くそういう決断が下せるようになると思うのですが、そういうふうなお考えはまだお持ちじゃないですか。
  163. 前田泰男

    前田会計検査院説明員 われわれとしてはこういうことも考えられると申し上げたわけですけれども、いまの段階でとにかくこの原子力船「むつ」がほとんど物の役に立たないであろうと言うためには、こちらとしては相当程度たくさんの資料を集めないと、結局は科学技術庁に申し上げるということは不可能でございます。  それから、先ほど顧問の先生ということを申し上げましたけれども、顧問の先生には御意見を伺いに行くことでございまして、やはり当然われわれ自身がデータを集めなければならない。やはり佐世保に行くまではちょっとむずかしいのではなかろうか、このように考えております。
  164. 馬場猪太郎

    ○馬場(猪)委員 こういった場合には、大蔵省はスムーズに新しく臨時的な支出をするというようなことが受け入れられるような仕組みになっておるのかどうか、大蔵省、おいでになっておったらひとつお答えいただきたいと思います。
  165. 塚越則男

    ○塚越説明員 具体的な「むつ」の話ということではなくて、一般論ということでお話し申し上げたいと思うのです。  まず、会計検査院検査に必要な経費ということでございますが、これは毎年度、検査旅費というような形で一括して予算計上しておりまして、その予算の枠の中で個々の検査事案について検査院の方で計画をお立てになって、それに従ってその執行をやっておられるわけでございます。  検査計画の具体的内容ということは私ども承知しておりません、会計検査院の方のお話でございますが、御質問のような特別な調査というようなものが必要になった場合に、そういう場合も想定して通常の場合には一定の余裕枠というようなものを残して計画をお組みになるのだろうと思います。したがって、そういうものによって特別な場合に対処されていくわけでございまして、既定の経費の枠の中で対処されるということになろうかと思います。
  166. 馬場猪太郎

    ○馬場(猪)委員 検査院にお伺いすると、幾分の予算は持っておるけれどもそういう新しい大きな事態については協議をしてとおっしゃるけれども、大蔵省のいまの口ぶりを聞いておりますと、余り積極的にお出しになるような仕組みになっておらないようですね。そういうことになると、せっかく調査をやると言ったってできないのじゃないですか。
  167. 柴崎敏郎

    ○柴崎会計検査院説明員 いま塚越主計官が申されましたことは、経常的な私どもの検査のあり方についてのお話であろうと思います。もちろん私どもは年間を通して検査計画を立てるわけでございますが、その間にどのような別の必要な検査事項が起こるかわかりませんので、それは旅費にいたしましても何にいたしましてもそういう一応の予備といいますか、ゆとりも待たせた上で実行していく、こういうわけでございますので、その段階で通常は処理をすべきことではないか、これは当然のことであろうと思います。  私、先ほど先生のお尋ねに基づいて申し上げましたのは、要するに、そういうゆとりの範囲を超えるような必要が起こった場合にはどういう手だてがあるかという意味合いに理解いたしまして、その場合には年度途中でいきなり要求するといってもこれは大蔵省さん、財政当局のお立場があるわけでございますので、新年度の予算にそれをさらに、こういったような計画があるので、それについてはたとえばその謝金なら謝金が非常に窮屈であるからその辺のところをもう少し見てもらえないかというような折衝でございますね、そういったような手だてがある、それによってそこは処理していくことになろう、こういう意味合いで申し上げたわけでございます。
  168. 馬場猪太郎

    ○馬場(猪)委員 両者の言い分を聞いておりますと、やはり会計検査院検査対象からいろいろな接待を受けてやらざるを得ないような予算の仕組みになっているような感じがしますよね。たとえば「むつ」の問題について長崎へいま一チームを派遣して調べに行くという場合には、どういうふうなチーム編成になって、どういう予算になって、そしていま現在の予算の執行の中でそれが十分賄えるようになっているのかどうか、その点ひとつ一遍教えてもらいたいと思います。
  169. 柴崎敏郎

    ○柴崎会計検査院説明員 私どもの部内の職員だけで行う検査ということを前提にいたして考えた場合には、この四月から新年度が始まったばかりでございまして、もちろん年間の私どもの検査のスケジュールはございますけれども、しかし、なお予備というような形で、具体的にいまお示しの長崎なら長崎に五人なら五人のチームをたとえば一週間派遣するという程度のこういった旅費につきましては、これは予備の中で十分賄うことができる、そういうようなゆとりは持たしてあるわけでございます。
  170. 馬場猪太郎

    ○馬場(猪)委員 一回だけを言っているわけじゃないのです。いま一人当たり年間どれくらい外へ出て調査をなさっておるのか。そしてそれを総トータルしていきますと十分賄い切れておるのかどうか。せんだっての御説明によると、いままでは現地でいろいろ調達しておった旅館にしろあるいは調査先にしろ、全部自前でいまやっていらっしゃるわけでしょう。そのために不足額を生じて、一月だったかある程度大蔵省から予算をお認めになったということでしょうね。ただそのときの場当たり的でなしに、制度的にそういうことが保証されておるのか。年間トータルしてみてちゃんとそれが成り立っておるのか。それがまた個人個人出張なさる、検査をなさる職員の皆さんも赤字を出さずにうまくいけるようにいまのままでやっていけるのですか。
  171. 柴崎敏郎

    ○柴崎会計検査院説明員 私どもが検査で出張する場合の経費の主たるものは、もちろん足代もございますが、宿屋の宿泊料とか旅行中の雑費とかいうようなものが主体になります。これにつきましては、先ほども院長から御説明を申し上げましたが、ことしの一月から、要するに仮にその宿泊料に足を出した場合、そのような場合には、旅費法の特例によりましてその点を調整してもらって足の出ないようにしてもらう、そういうことで大蔵省と協議をいたしまして了解のもとに特別の措置をいたしておりますので、大変きつい出張はいたしておりますけれども、経費的にお金の上で出張官が足を出すという点はその点で一応救済はされている。  ただ、これも宿泊場所の選定などではずいぶん苦労いたしますし、なるべく足を出さないようにということで、泊まる旅館などについては相当窮屈な粗末な旅館、大体ビジネスホテルなどを利用しておりますけれども、そういった面についての出張官からのもう少し改善してくれないかというような声は高く上がっておりますので、そういったような是正改善事項というものは多分に残されておりますけれども、現実に出張官がそういったそれぞれの犠牲においての努力というものは別といたしまして、お金の点で足を出しているという点は幸いにして救済されているということでございます。
  172. 馬場猪太郎

    ○馬場(猪)委員 新しくプロジェクトをつくったりして特別な専門家を養成したり顧問にしたりする、新しい事情に対しても起こってみなければわからないというようなこと、またいまの日常の出張に対しても何か消極的な態度しか見えない、予算のうちでやっておこうかというような感じで終わってしまうような気がしてならないのです。いまこそ会計検査院検査というものは積極的に厳正に行われなければならないのですが、どうも後ろ向きの縮こまってやっているような姿勢にうかがえてならないのですが、そういうおそれはないのでしょうか。ひとつ検査院長、どういうふうに見ていらっしゃるのか、お答えいただきたいと思います。
  173. 佐藤三郎

    佐藤会計検査院長 予算の制約はかなりございますが、しかし制約はあるにしろ、会計検査院としては独立官庁としてすべきことはしなくちゃならないと考えておりますので、その場合なお予算がつかないということなら、これはまた二重予算の制度を発動しなくちゃならぬかとも思います。しかし、そこへいくまでに、いままで大蔵省の方で金をつけてくれるというような事態でおさまっておるのですが、私の方としては決して、遠慮してなすべきことをやめてしまうというようなことは絶対しないつもりでおります。
  174. 馬場猪太郎

    ○馬場(猪)委員 絶対しないつもりと言われても、実際に出張なさる職員が十分なことができなかったりするとどうしても消極的にならざるを得ないと思うのですが、そういうことにならないようにひとつお気をつけいただいて、積極的な検査ができるように希望いたしまして、終わりたいと思います。
  175. 楯兼次郎

    楯委員長 安藤巖君。
  176. 安藤巖

    ○安藤委員 私は会計検査院の綱紀の粛正問題についてお尋ねしたいと思います。  会計検査院の接待問題につきましては、実地検査に当たっての綱紀粛正ということで改善の措置がとられて、それが実行に移されているということは承知をいたしております。そこで、私がお尋ねしたいのは、この実地検査以外の場、実地検査と関係のない場合についての綱紀粛正の問題についてお尋ねしたいと思うわけであります。  会計検査院の職員の人たちが、各省庁の会計担当の職員の人たちあるいは民間企業の人たちと会食をしたり、あるいは民間企業の人から飲食のもてなしを受けたり、あるいは物品の供与を受けたりというようなことは、これもいかぬと思うのですけれども、この点はいいのかいかぬのかということをまず最初にお尋ねしたいと思います。
  177. 柴崎敏郎

    ○柴崎会計検査院説明員 私どもが検査に臨んだ場合の検査の相手方と会食をする、これは一切してはならないということはすでにかたく職員に厳命してありまして、また現にそれが実行されております。いまお尋ねの点は、受検官庁との会食ということではなく、民間の企業の会社の人たち、そういう人たちと検査院の職員という資格で会食の席を同じくするということがどうかという御質問であろうと思います。これは私ども会計検査院という独立機関の、厳正でなくてはならない立場の者といたしまして、そういう場合でありましても、それが仮に検査の相手方でなくても、会計検査院職員の立場でそういう席に連なるということは好ましいことではございませんので、そういうこともあってはならない、このように考えております。
  178. 安藤巖

    ○安藤委員 そうしますと、そういうようなあってはならないといまおっしゃったようなことは、これまで検査院の職員には全くなかったというふうに言えるのか、あるいはあったかもしれぬがなということなのか、そういう点はどうですか。
  179. 柴崎敏郎

    ○柴崎会計検査院説明員 昨年大変御指摘を受けました本院の接待問題、これがございましてから、本院としては従来に増して、まさに絶対的な形でそういった綱紀の粛正、これを図っているわけでございますので、それ以降におきましてはそういうことはまず絶対ない、このように確信いたしておりますが、その以前におきましてももちろんそういうような方針で臨んでいたわけではございますけれでも、たまたま接待問題ということもあったというようなことから見まして、それ以前の段階でそういったようなことが全く皆無であったかどうか、こういうことについては、ちょっと確信を持って断言し切れない、なかったことを望みますけれども、断言し切れないというのが私の心境でございます。
  180. 安藤巖

    ○安藤委員 もう少し具体的にお話をしたいと思うのですが、そういうようなもてなしを民間の企業から受けて、そういうようなことで民間企業がいわゆる会計検査院の中に食い込んで、そしてその関係を利用して検査院の職員の方に、各省庁あるいはその出先機関、さらには地方公共団体に名刺紹介をもらって、そして官公需を受注するについて便宜を計らってもらっているというような話をよく聞いているのですが、そういうようなことは全くいままででもなかったということは言えるのでしょうか。
  181. 柴崎敏郎

    ○柴崎会計検査院説明員 結論から申し上げますと、その点についていままで、去年の接待問題以降は別として、それ以前においで全くなかったかどうか、この点も同じように、必ずしもなかった、絶対なかったとは言い切れないのではなかろうかと思います。  ただその場合に、一概に会社と申しましても、たまたま自分の親戚の者とか身内の者とかが関係しているような場合に、親密さ、情といいますか、そういうようなところから、そういったような名刺を書くようなことがあったかもしれませんし、その会社の形もいろいろあろうと思いますけれども、そういうぐあいに考えていきますと、必ずしも絶対なかった、こうは断言できないのではなかろうか、このように考えるわけでございます。
  182. 安藤巖

    ○安藤委員 そこで、これからさらに具体的に事例を出してお尋ねしたいのですけれども、これは検査院にきちっと姿勢を正していただきたいという趣旨でお尋ねするわけですから、正直にお答えいただきたいと思うのです。  一つの企業と会計検査院との間に、見逃すことのできない癒着関係と言ってもいいほどの事実があります。だから、その関係について、これは院長にお答えいただかなくてはならぬことではないかと思いますが、院長は、本所建設工業株式会社という名前の会社を御存じですか。
  183. 佐藤三郎

    佐藤会計検査院長 名前は聞いております。
  184. 安藤巖

    ○安藤委員 名前を聞いておられるなら、この社長が竹中啓郎、専務宮沢鉎治、こういう人だということも御存じだと思うのですが、この本所建設工業株式会社と会計検査院とはどういうような関係になっておるのですか。
  185. 佐藤三郎

    佐藤会計検査院長 私もよくは知らないのですが、うちの職員の住宅建設を請け負ったのが二、三あるようです。それは聞いております。
  186. 安藤巖

    ○安藤委員 昨年の一月十三日に、院長は、この本所建設工業株式会社の招待を受けて、霞ヶ関の中にある東京会館というところで新年会をおやりになったことはありませんか。
  187. 佐藤三郎

    佐藤会計検査院長 それは全く覚えがございません。だれか人違いじゃございませんか。霞ヶ関のどこでございますか。
  188. 安藤巖

    ○安藤委員 東京会館。
  189. 佐藤三郎

    佐藤会計検査院長 それは覚えがございません。
  190. 安藤巖

    ○安藤委員 記憶を喚起していただくためにもうちょっとお尋ねしますが、前々院長の白木さんと佐藤さん、そして現在の検査官の知野さん、この三人の方が本所建設工業株式会社の招待を受けて、そしてもちろんこの会社の幹部と一緒に新年会を東京会館でおやりになったということは、私の方の調査でわかっているのですが、まだ記憶は喚起いたしませんか。
  191. 佐藤三郎

    佐藤会計検査院長 わかりました。白木前々院長と知野さんと、それから私が、東京会館で食事を白木前々院長に誘われてしたことはございます。しかし、それは本所土木の人は全然来ておりません。私は白木さんにごちそうになったとばかり思っております。出席のメンバーはそれだけです。
  192. 安藤巖

    ○安藤委員 いま院長は木所土木とおっしゃったのですが、これは前の社名が本所土木工業株式会社というのでそういうふうにおっしゃったと思うのですが、この代金は、ではどこが払ったというふうに記憶しておられますか。
  193. 佐藤三郎

    佐藤会計検査院長 これは前々院長の招待でございますので、私は、あなたどこから払うかと聞くあれもございませんので、全然存じません。
  194. 安藤巖

    ○安藤委員 実はこの本所建設工業株式会社が金十万円なりをそのとき支払っているというのが、私の方の調査でわかっているのですよ。いまの御答弁からすると、院長はそういうことも知らぬというふうにおっしゃるだろうと思うのですが、前の名前は本所土木、現在本所建設工業、この会社と会計検査院あるいはいまおっしゃった白木前々の院長さんとはどういうような関係だというふうに記憶しておられますか。
  195. 佐藤三郎

    佐藤会計検査院長 それは、白木院長との関係なんかはあるようでございますけれども、私はつまびらかでございません。
  196. 安藤巖

    ○安藤委員 会社の登記簿謄本によりますと、一年足らずですけれども、前々院長の白木さんの奥さん、白木篤子さんがこの会社の監査役をしておられるというのがはっきりわかっているのです。監査役をしておられたのは昭和四十九年の六月五日から五十年の三月十五日、もちろん突如として監査役になられたわけでもないと思いますし、監査役をおやめになってもそれ以後いろいろなおつき合いがあったのじゃないかというふうに思うのですが、こういうふうに本所建設工業株式会社と、いまのところ白木前々院長というふうに申し上げておきますけれども、何らかの深いつながりがあった。それから、先ほどおっしゃったような東京会館での新年会の招待者であったということまで、いまのところわかったわけです。  ところで院長は、この本所建設工業株式会社、前の名前本所土木から品物を受け取ったというふうなことはございませんか。
  197. 佐藤三郎

    佐藤会計検査院長 記憶にございますのは、たしか新巻サケをもらった記憶はございます。
  198. 安藤巖

    ○安藤委員 それはどういういきさつで院長はこの会社から新巻サケをおもらいになったのですか。
  199. 佐藤三郎

    佐藤会計検査院長 私はよく存じませんが、白木前々院長の御友人か何かで、そんな関係で送ってこられたのじゃないかなというくらいにしか思っておりませんでしたけれども……。
  200. 安藤巖

    ○安藤委員 そういうような認識でお受け取りになったということですが、これは白木前々院長の友人というようなことで相当近い範囲の人たちだけに配られたものではないという事実が、私の調査でわかっているのです。検査院の中でそういう贈り物が盆暮れに相当ばらまかれているというような事実は御存じなかったのでしょうか。
  201. 佐藤三郎

    佐藤会計検査院長 そういうことまでは私の方ではちょっと存じませんでした。
  202. 安藤巖

    ○安藤委員 私の方で調査しましたところによると、毎年毎年のところまでまだ調査は行き届いておりませんけれども、これは昭和四十九年のサケの配達名簿というのを私は持っているのです。この当時は院長は白石さん、佐藤さんはその当時検査官であられたわけです。知野さんも検査官です。その名簿の中に、もちろん白石院長も載っているのです。そうして現在の院長の佐藤さんも載っております。知野さんも載っております。そして秘書官三名、それから事務総長、当時石川さん、それから次長の鎌田さん、現在の総長です。それから本村局長、中村局長、松尾参事官、渡辺厚生管理官外課長五名、さらに木村忠夫厚生管理官付副長外九名、合計で二十七名載っているのです。  ということになると、これは一つ事例でございますけれども、いま院長が御答弁なさったように、白木さんとの個人的なつながりの範囲で、あるいはその関係だけでこういう贈り物がされていたのではなくて、まさに院長まで含めてですから、最上席の監督責任者、この人達も含めて院の相当多数の人たちがこの本所建設工業株式会社から贈り物を受けているという事実ははっきりしているのです。そうなりますと、そういう個人的な知り合いとかなんとかという関係ではないと言わなければならないと思うのです。  これは、いま私が申し上げたことなのですが、こういう事実について院長はいまどういうふうにお考えになりますか。
  203. 佐藤三郎

    佐藤会計検査院長 そういうことをしたのが一体どういう意図があったか、ひとつよく考えてみないといかぬのですけれども、あの当時われわれ職員の住宅政策で持ち家政策を進めておったものですから、したがって、その注文をとるというような意味もあったんじゃなかろうかなという気もするのですが、果たしてどういう意図があったか、そこら辺もう少し調べさせていただけませんと、ちょっと私いまここでお答えできないのですけれども……。
  204. 安藤巖

    ○安藤委員 もちろんこれは厳重に調査をしていただいて、意図がどうであれ、こういう品物を民間の会社からそうそうたる人たちがほとんどぐるみ的に受け取っているということは、これは問題だと思うのです。だから、これは厳重に調査をして、そしてこの委員会に報告していただきたいと思うのですよ。  それで、その意図はどういうところにあったかということについてもう少し申し上げますと、最初に民間企業からの飲食のもてなし云々のことをお尋ねいたしましたが、この本所建設工業株式会社が何回かにわたって会計検査院の職員をもてなしをしている。私の調査したところによりますと、もう五年以上前から新宿あるいは神楽坂の、本所建設の社長の竹中さんと特別な関係のある飲食店あるいはバー、そういうところで飲食のもてなしを受けておるという事実があるのです。関係している会計検査院の職員の方は二十数名、二十名以上に上ります。だから、そういうことになると、最初に申し上げましたように、これはとんでもない、許すことのできない癒着だと言わざるを得ぬと思うのです。  そして、それがどういうようなことになっているかと言いますと、この本所建設工業株式会社は、現在は相当人数が減っているようでございますけれども、二十人足らずの会社で、財務諸表等の官公需を受けるための登録、指名入札をすることのできる登録をいたしますね、その登録の申請をすることもできないような会社であるにもかかわらず、会計検査院の指定業者だということでほかの省庁に対して紹介を受けて、そしてそのほかの省庁から官公需を受注する便宜を計らってもらっているという事実があるのです。これも私の調査ですが、総理府あるいは自治省関係で営繕関係の仕事をもらっております。だから、そういうようなところに使われている事実があるのですよ。  こうなりますと、これは何か個人的なつながりだとかあるいは親戚だとかというようなことでは全くなくて、まさにこれは会計検査院がうまく利用されて、そして一民間企業に特別な便宜を計らっているとしか言いようがないと思うのですよ。これはいま私が申し上げましたバーとかあるいは飲食店での会食関係は、会計検査院の職員ばかりではなくて、そういう省庁の会計関係の職員も一緒になって飲食のもてなしを受けておるということにもなっております。こうなりますと、これは完全な収賄罪です。会計検査院の職員はあっせん収賄罪になるんじゃないですか、これで仕事をやるということになればね。  しかし、私は、いろいろな事実も持っておりますけれども、ここで個人個人の刑事責任をあれこれするということはいま考えておりませんし、そういう場でもありませんので挙げませんけれども、やはりこの辺のところもしっかり厳重に調査をしていただいて、そしてそういうようなことは直ちにやめていただく、そして調査の結果は、もちろんこの委員会に報告をしていただきたいと思うのですが、いかがでしょう。
  205. 佐藤三郎

    佐藤会計検査院長 おっしゃるようなことがあったとすればまことに遺憾なことでございますので、私の方でも調査したいと存じます。  それから、あの十一月の過剰接待問題以来はそういうことはまず絶対ないと確信しておりますが、その前に、あるいはそういうことはあったかもしらぬということは先ほど次長からも答弁がありましたけれども、しかしあの過剰接待以後は絶対にそういうことはないし、本所土木もまず出入りはしてないのじゃなかろうかと思っております。
  206. 安藤巖

    ○安藤委員 接待問題についての改善措置については、先ほども私が申し上げましたように相当改善措置がとられて、それが実行に移されているということは知っておりますけれども、それは事すぐれて実地検査に当たっての問題というふうにしぼられているんです。もちろんこれはきちっとやっていただく必要があります。受検があるからどうのこうのということになっているんです。私がいまお尋ねしているのは、実地検査に当たってのそういうような綱紀粛正をおやりになる、これは非常に結構なことで、やっていただかなくてはいかぬことなんですけれども、実地検査とは関係のない場でのいま私が申し上げましたようなつながりのところで、一番えらい人から、贈り物を民間の企業からもらう、あるいは飲食店あるいはバーで接待を受ける、こういうことになったら、幾ら実地検査のときにこういうふうに綱紀を粛正するんだ、みやげ物をもらってはいかぬ、会食してはいかぬということを言っても、これは完全な底抜けだと思うのですよ。何だということになるのじゃないですか。  だから、そういう点で私は、院長以下えりを正してきちっと調査をして、そしてしかるべき責任をとるべきものはとってもらって、そしてその結果もきちっと委員会に報告していただかなくてはならぬ問題だというふうに思うのです。もちろん、多くの会計検査院の職員は、自分の使命感に燃えて一生懸命やっておられると思います。しかし、こういうようなことでは、検査院の権威を回復するといっていろいろな措置をとっておられるけれども、何にもならぬと思うのですね。そういう点についてきちっとえりを正していただかなくてはいかぬと思うのです。いかがでしょう。
  207. 佐藤三郎

    佐藤会計検査院長 まことにごもっともな御意見でございまして、いわゆる名刺紹介なんかについても、過剰接待の後、職員に流してございます。そういうことを絶対しないように。あれはたしか当決算委員会でもその紹介の問題が出たと思います。そんな関係もありまして、厳重にそれは流してございまして、以後は絶対ないと確信いたしております。
  208. 安藤巖

    ○安藤委員 いろいろ調査をしていただくということですが、先ほどの品物の授受の問題につきましては、サケのほかにタイだとかあるいはコンブとかそういうようなものもまとめて官房のところへ四十、五十の数が持ってこられて、そこから職員の手を通じて先ほど私が名前を挙げましたような人のところへ配ってもらっているというんですよ、検査院の内部で。ということになりますと、これは公然と行われているのじゃないかと思うのです。だから、不感症になっているのじゃないかという疑いさえ持たざるを得ないと思うのです。その辺のところを、全くそんなこと知らなかった、全くなかったと思うというようなことでは済まされないと思うのですよ。品物を持ってとにかく職員があちこち動いているのですから、盆暮れになると。これはゆゆしい問題だと思います。そういう点で、これはきちっと腹を決めてやっていただかなければならぬというふうに思います。そういうことで再度院長の決意をお伺いして、私の質問を終わりたいと思います。
  209. 佐藤三郎

    佐藤会計検査院長 御指摘のようなこと、私の方でまたよく調査いたしますが、そういうことが絶対ないのが本来の、当然のことでございますので、今後ともそういうことのないように細心の注意をいたしたいと存じます。
  210. 楯兼次郎

    楯委員長 次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。     午後四時十四分散会