運営者 Bitlet 姉妹サービス
使い方 FAQ このサイトについて | login

1978-04-25 第84回国会 衆議院 決算委員会 第9号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和五十三年四月二十五日(火曜日)     午前十時三十分開議  出席委員    委員長 楯 兼次郎君    理事 宇野  亨君 理事 國場 幸昌君    理事 葉梨 信行君 理事 森下 元晴君    理事 原   茂君 理事 林  孝矩君       津島 雄二君    西田  司君       村上  勇君    村山 喜一君       春田 重昭君    安藤  巖君       中馬 弘毅君  出席国務大臣         国 務 大 臣         (科学技術庁長         官)      熊谷太三郎君  出席政府委員         科学技術庁計画         局長      大澤 弘之君         科学技術庁研究         調整局長    園山 重道君         科学技術庁振興         局長      杉浦  博君         科学技術庁原子         力局長     山野 正登君         科学技術庁原子         力安全局長   牧村 信之君         資源エネルギー         庁長官官房審議         官       武田  康君  委員外出席者         放射線医学総合         研究所研究部長 梅垣洋一郎君         大蔵省主計局司         計課長     石井 直一君         厚生省薬務局審         議官      本橋 信夫君         会計検査院事務         総局第一局長  前田 泰男君         参  考  人         (東京大学名誉         教授・国立相模         原病院顧問)  長野 泰一君         参  考  人         (東京大学医科         学研究所附属病         院放射線科科         長)      飯野  祐君         決算委員会調査         室長      黒田 能行君     ————————————— 委員の異動 四月二十五日  辞任         補欠選任   山口 敏夫君     中馬 弘毅君 同日  辞任         補欠選任   中馬 弘毅君     山口 敏夫君     ————————————— 本日の会議に付した案件  昭和五十年度一般会計歳入歳出決算  昭和五十年度特別会計歳入歳出決算  昭和五十年度国税収納金整理資金受払計算書  昭和五十年度政府関係機関決算書  昭和五十年度国有財産増減及び現在額総計算書  昭和五十年度国有財産無償貸付状況計算書  〔総理府所管科学技術庁)〕      ————◇—————
  2. 楯兼次郎

    楯委員長 これより会議を開きます。  昭和五十年度決算外二件を一括して議題といたします。  本日は、総理府所管科学技術庁について審査を行います。  まず、科学技術庁長官から概要説明を求めます。熊谷科学技術庁長官
  3. 熊谷太三郎

    熊谷国務大臣 科学技術庁昭和五十年度決算につきまして、その概要を御説明申し上げます。  まず、昭和五十年度の当初歳出予算額は、一千六百九十八億五千七百三十一万円でありましたが、これに予算補正追加額十四億四千二百八十二万円余、予算補正修正減少額三十九億九千九百十九万円余、予算移しかえ増加額四千八百四十七万円、予算移しかえ減少額二十一億六千七百万円余、前年度からの繰越額十四億三千六十五万円余を増減いたしますと、昭和五十年度歳出予算現額は、一千六百六十六億一千三百五万円余となります。この予算現額に対し、支出済歳出額一千六百五十六億七千六百四十二万円余、翌年度への繰越額三億一千三百九十三万円余、不用額六億二千二百六十九万円余となっております。  次に、支出済歳出額の主な費途につきまして、その大略を御説明申し上げます。  第一に、原子力関係経費といたしまして八百三十六億一千三百四十八万円余を支出いたしました。これは、動力炉・核燃料開発事業団における高速増殖炉及び新型転換炉開発ウラン濃縮技術開発ウラン資源の探鉱並びに使用済み核燃料処理施設整備日本原子力研究所における各種原子力関連試験研究及び各種原子炉運転日本原子力船開発事業団における原子力船むつ」及び定係港維持管理放射線医学総合研究所における放射線による障害防止及び放射線医学的利用に関する調査研究民間企業等に対する原子力に関する試験研究委託等原子力平和利用促進を図るために支出したものであります。  第二に、宇宙開発関係経費といたしまして六百八億八百十五万円余を支出いたしました。これは、宇宙開発事業団におけるロケット及び人工衛星開発並びにロケット打ち上げ施設等整備航空宇宙技術研究所におけるロケット等に関する基礎的、先行的試験研究のほか、種子島周辺漁業対策事業助成等のために支出したものであります。  第三に、海洋開発関係経費といたしまして十三億二百三十九万円余を支出いたしました。これは、海洋科学技術センターにおける海洋工学潜水技術等に関する試験研究実施潜水技術に関する研修の実施及び海洋開発機器高圧実験に必要な共用施設等整備並びに国が同センターに委託して行った海中作業基地による海中実験等のために支出したものであります。  第四に、試験研究機関関係経費といたしまして、当庁の付属試験研究機関のうち航空宇宙技術研究所金属材料技術研究所国立防災科学技術センター及び無機材質研究所における各種試験研究実施及びこれに関連する研究施設整備並びに運営に必要な経費として八十二億九千三百十五万円余を支出いたしました。  最後に、重要総合研究の推進を図るための特別研究促進調整費研究公務員等資質向上のための海外及び国内留学経費、理化学研究所、日本科学技術情報センター及び新技術開発事業団事業を行うための政府出資金及び補助金科学技術庁一般行政費等経費として百十六億五千九百二十四万円余を支出いたしました。  以上、簡単でありますが、昭和五十年度の決算概要を御説明申し上げました。  よろしく御審議のほどをお願い申し上げます。
  4. 楯兼次郎

  5. 前田泰男

    前田会計検査院説明員 昭和五十年度科学技術庁決算につきまして検査いたしました結果、特に違法または不当と認めたものはございません。
  6. 楯兼次郎

    楯委員長 これにて説明の聴取を終わります。      ————◇—————
  7. 楯兼次郎

    楯委員長 これより質疑に入ります。  質疑の申し出がございますので、順次これを許します。村山喜一君。
  8. 村山喜一

    村山(喜)委員 本日は、十時から松山地裁におきまして伊方原発訴訟判決がございました。ニュースを聞きますと棄却をされたというような内容でございますが、判決内容が、概要がわかっておりましたら、この際報告を願いたいと思います。
  9. 牧村信之

    牧村政府委員 お答えいたします。  私ども現地におけるテレビ報道を拝見しただけでございまして、判決の骨子その他もまだつかまえておりませんので、ただいまここで概要をと言われましたが、いましばらく時間をおかしいただきたい、かように考える次第でございます。
  10. 村山喜一

    村山(喜)委員 時間的な関係でまだ内容的に報告ができないようでございますが、さきに伊方原子炉号炉の増設の許可に対する異議申し立てについては、三月の十日に棄却の処分をされたというふうに承るのでありますが、その内容はいかがでございますか。
  11. 牧村信之

    牧村政府委員 五十二年五月二十八日付をもって異議申し立てがございましたが、五十三年の三月十日付で内閣総理大臣名行政不服審査法四十七条の二項に基づきまして異議申し立てに対し棄却する決定をいたしております。
  12. 村山喜一

    村山(喜)委員 これらの内容の問題は一連の関連があると考えますので、後日判決主文等を見た上でこの問題については取り上げることにいたしたいと思います。  そこで、本日お尋ねをいたしたいのは、原子力船むつ」の問題でございます。  そこで、現地新聞をここに持ってきておりますが、長崎久保知事が、原子炉を封鎖してかぎを私が預かるというような内容のことを、八つの漁協の組合長を呼んでそういう方針を打ち出しまして、佐世保重工救済としての「むつ」が必要であるという立場から問題が出てまいったようでございます。新聞報道するところによりますと、四月十七、十八、十九の三日間にわたりまして、県側山野原子力局長児玉参事官協議をいろいろ重ねておるようでありますが、科学技術庁としては封印に難色を示しているというような報道がございます。  その県側協議に当たられたということは事実でございますか。
  13. 山野正登

    山野政府委員 先週十七日、月曜日、火曜日、水曜日と、長崎県の副知事と私との間でいろいろ事務的な打ち合わせをしたということは事実でございます。
  14. 村山喜一

    村山(喜)委員 そのとき県側要請というのは二点ほどあったと思いますが、「原子炉に当たる圧力容器の上ブタをはずさない」、第二には「原子炉を動かす制御棒駆動装置を始動させるカギを県が預かる」、こういうふうに新聞では報道されておりますが、事実でございますか。
  15. 山野正登

    山野政府委員 原子炉封印という言葉は、今月の初めぐらいから久保長崎県知事漁業組合等と懇談されます際にお使いになった言葉のようでございますが、私どももこの原子炉封印という言葉意味を技術的に的確に理解しておく必要があるというので、先週の月曜日に副知事以下とお会いしたわけでございますが、そのときの先方のお話によりますれば、この原子炉封印の具体的な中身としましては、ただいま先生がおっしゃいましたように、一つは、遮蔽改修をいたします際に、圧力容器上ぶた撤去しないでこれを行うということ、それから二点は、原子炉運転のために設けられております運転モードスイッチかぎ制御棒駆動盤かぎ長崎県知事にお預けして管理保管してもらう、この二点が原子炉封印中身であるという説明でございました。
  16. 村山喜一

    村山(喜)委員 五十二年の七月に、「むつ」総点検改修技術検討委員会燃料棒を積んだ原料のままでも安全に修理ができる、こういう報告書を出しております。  そこで、この問題から圧力容器上ぶたを取り外さないで十分な工事ができるのかどうかという問題がございますが、そこら辺は五十一年の六月に科学技術庁と運輸省の「「修理港における原子力船むつ」の安全性等説明に対する質問事項」に対する回答」、この中の十三ページから十四ページに「遮蔽改修案概念図」という図表が出ております。この図表を見ながら、私も、そういうようなことができるのだろうかということをその図面で見てまいりましたが、長崎県側が言うように圧力容器上ぶたを外さない、その中で工事ができるというのは、非常にむずかしい要素を含んでいるように見受けるのでございますが、科学技術庁としてはその点はどういうふうにお答えになっていますか。
  17. 山野正登

    山野政府委員 遮蔽改修に際しましてこの上ぶた撤去するということは、ただいま御指摘の図で御判断いただけますように、圧力容器上蓋部の上というのは非常に各種機器が複雑に入り組んでおりまして、作業スペースの狭いところでございますので、できるだけ作業を手際よく、効率よく進めるという意味で、五十一年の要請時におきます作業手順としましては、この圧力容器上蓋を外に運び出しまして、後でこの上蓋上部遮蔽改修をするということにしてあったわけでございます。  今回、この圧力容器上蓋部における遮蔽改修を、上蓋撤去しないで行うということにしました場合についての作業が可能かどうか、また可能とした場合にもどういう不便があるか、どの程度手間がかかるかといったふうなことにつきましては、今後詳細な検討を経なければわからないことでございますので、いま直ちには御答弁いたしかねるという状況でございます。
  18. 村山喜一

    村山(喜)委員 検討中ということでございますか。そうするならば、非常に困難な作業で、たとえば第一次の遮蔽コンクリートなどを取りかえるというような作業が行われることが予定をされているわけでありますが、そういうような場合には、その圧力容器上ぶたを取り外さないでその下にあります上部第一次遮蔽コンクリートを取りかえるというような作業は非常にむずかしいと図面の上では見るわけでありますけれども、小さなコンクリートのブロックを継ぎ合わせるような形でやれば、それは作業上はできる。しかし、大変これは作業しにくい場所でもあり、そして多くの日時が必要である、無理にするならばできぬことはない、そういうような感度でございますか。
  19. 山野正登

    山野政府委員 大変技術的かつ専門的な事項でございまして、ただいま日本原子力船開発事業団におきまして鋭意検討を進めておるさなかでございますので、この時点におきまして私どもがとかくのコメントをするということはまたいろいろ誤解を招くと存じますので、その検討が済むまで回答を御猶予いただきたいというふうに考えております。
  20. 村山喜一

    村山(喜)委員 検討が済むまでというのは、いつごろまでかかるということなんですか。
  21. 山野正登

    山野政府委員 事柄の性格上、できるだけ早く検討をするように指示いたしておりますが、特に日限は切っておりません。
  22. 村山喜一

    村山(喜)委員 日限を切らないでその結論を出す、それは無限定のものではなかろう、できるだけ早く。皆さん方の方で期待をされているのはどれぐらいの期間ですか。
  23. 山野正登

    山野政府委員 日限は切っておりませんけれども、二ヵ月も三ヵ月もかかるといったようなものではないと思っております。
  24. 村山喜一

    村山(喜)委員 そこで、その問題については検討中だということで、これ以上追及いたしましても多分答えられないだろうと思いますからそれはよろしいですが、遮蔽改修工事内容は十五ページに示されておりますが、この順序でやるということを想定をしておりますね。内容は私の方から読み上げなくてもおわかりのとおりであると思うのですが、ふたをとらないで工事をやるとした場合には、その順序を今度はどういうふうに変えようということをお考えになりますか。
  25. 山野正登

    山野政府委員 上ぶたをとらないで遮蔽改修が可能かどうかという検討は、また可能とした場合にもどういった時間がかかるかといったふうな問題は、いまおっしゃいます遮蔽改修全体の作業手順といったものも当然含まれる問題でございまして、現在まだ可能かどうかという結論も出ていない段階で、この修理手順についての結論というのも当然にまだ出ておりません。
  26. 村山喜一

    村山(喜)委員 「遮蔽改修工事内容」には、やり方の順番が書いてありますね。たとえば、ハッチカバー撤去から二次遮蔽体撤去、その次に格納容器ふた搬出、ミサイルプロテクション及び制御棒駆動装置搬出、一次遮蔽コンクリート圧力容器等撤去圧力容器上ぶた搬出、仮ぶた設置、こういうようなのが遮蔽改修工事内容として出ているわけでありますが、それはいま質問を申し上げました圧力容器上ぶたを取り外さないで工事をやるという前提に立って考えた場合には、内容的にも変わってくる、こういうように考えてよろしいわけですね。
  27. 山野正登

    山野政府委員 この手順のしまいの方に、「圧力容器上蓋搬出と仮蓋の設置」というのがございますが、県の案によりますればこの項目がなくなるということでございますから、当然にこの内容は変わるということになります。
  28. 村山喜一

    村山(喜)委員 そうすると、六番目の「圧力容器上蓋搬出」、これだけがなくなってあとはやるということですか。
  29. 山野正登

    山野政府委員 いま御指摘のところは、遮蔽改修工事をいたします手順のうち、改修工事に入る前の準備段階のようなものを言っておるわけでございますが、現在のところこれ以外の項目について県の方でとかくの御要求といったふうなものは出ておりません。したがって、「原子炉部の開放」という項の中で、「圧力容器上蓋搬出と仮蓋の設置」という点を改めて、圧力容器上蓋をそのままにして(3)の「改修工事」に移りたい、こういう趣旨だと存じます。
  30. 村山喜一

    村山(喜)委員 したがって、どういうふうに考えているのですか。
  31. 山野正登

    山野政府委員 そのようなことは可能かどうかを、ただいま事業団におきまして技術的に検討を進めておるということでございます。
  32. 村山喜一

    村山(喜)委員 圧力容器ふたを取り外すということは、原子炉を密閉ではなくて開放するということを意味します。したがいまして、取り外したふたや一次遮蔽体をどのように処置をするかという問題が残っているわけでありますが、そういうものについては質問事項に対する回答の中にも出ておりません。そういう問題や、なお作業が非常にむずかしいという問題もありますけれども検討されているということで、本日はこれ以上のお答えはできないだろうと思います。  第二点の、かぎを県が預かるという意味は、これは皆さん方の出されましたこれに対する内容の中で、佐世保における修理というのは原子炉停止して行うと言いながら、実際には制御棒駆動機構を動かして制御棒引き抜きを行う、だから燃料棒は抜き取らないけれども制御棒を引き抜く、そういう試験をやる、こういうふうにわれわれは読み取っているのでありますが、知事が言うかぎを預かるという意味は、制御棒引き抜きをやらせない、こういう内容のものであるというふうに理解をしていいんですか。あなた方はどういうふうに理解をされておるのですか。
  33. 山野正登

    山野政府委員 「むつ」を修理港に持ち込みます場合には、原子炉冷態停止状態にしたまま持ち込みまして、修理期間中は原子炉運転はしないという前提でございます。そういう意味で、いま長崎県の方で運転モードスイッチかぎ等を預ってこれを管理保管したいという御趣旨は、冷態停止をさらに確認したいという御趣旨であろうかと私ども理解しておるわけでございますが、御指摘制御棒駆動試験というのをいたす場合には、やはり運転モードスイッチ制御棒駆動盤かぎは要るわけでございまして、そのような試験をします際には、県知事の了解を得て預けてあるかぎを借りてそのような試験をするというふうに考えておりまして、県知事管理保管をすることによってこのような試験はやらなくするという趣旨ではないと理解いたしております。
  34. 村山喜一

    村山(喜)委員 私たちは、原子炉停止状況定義の中で、核分裂の連鎖反応が持続しない状態を、原子炉がとまっている、運転停止状態だ、こういうふうに定義が述べられておりますから、これは言うならば未臨界状態であって、制御棒を抜けば原子炉停止状態とは言えないじゃないか。だから、未臨界停止とをごちゃごちゃにしてしまって、そして停止という言葉ですりかえているのではないだろうかとかねがね思っていましたが、制御棒引き抜きを開始すれば明らかに運転開始である、そういうふうに考えられるわけでありますが、それは運転開始ではないとあなた方はお考えになっておるのですか。  いま話を聞いておりますと、知事が預かるという意味はそういうような実験をやらないということではないのだ。知事がオーケーしさえすればそういうような改修工事内容に関するものとしてやらなければならないのだ。だからできるのだ。こういう内容のものだと判断をしていらっしゃるようでございますが、その点をもう一回確認をしておきたいと思います。
  35. 山野正登

    山野政府委員 制御棒駆動試験と申しますのは、総点検の中でも私どもは大変な重要な項目であるというふうに考えておるわけでございまして、これを省略する意思はさらさらございませんし、また県の方でもその点は十二分に御理解いただいておると考えております。  それから、制御棒駆動試験というのは、制御棒を一本ずつ引き抜きまして、同時に複数のものが抜けないように手当てをした上でこの駆動検査をしようということでございまして、あくまでも原子炉を未臨界のままに保って駆動試験をするということでございまして、通常原子炉を未臨界から臨界に持っていき、あるいは臨界を維持し、さらにはまた臨界から未臨界に持ってくるといったふうないわゆる運転という概念とは、内容を異にするというふうに考えております。
  36. 村山喜一

    村山(喜)委員 したがいまして、四十九年の八月に初歩的な設計ミスによりまして中性子漏れ発生をした。だから、当時の三菱原子力工業中性子に関する設計計算は、今日の時点で見た場合には全く信用できない。だから、設計に誤りがある原子炉を、燃料棒を装荷したままのテストを行うことは無理ではないだろうかと見ているのでありますが、皆さん方はそういうような過去の——これは現在の時点で見るわけでありますけれども、当時の設計時の計算によって出されたものはなお正確である、こういうように判断をしていらっしゃるのですか。
  37. 山野正登

    山野政府委員 今回行います総点検と申しますのは、原子炉プラント回り機器、いわゆるハードウエアだけを対象にしました点検ではございませんで、それに加えまして設計見直し等ソフトウエアにつきましても見直しを行うわけでございまして、私どもは四十九年の放射線漏れ以降、あらゆる面からこの「むつ」についての見直しをする必要があるというふうに考えておるわけでございます。一義的には事業団見直し内容というのをソフト、ハードともに案をつくったわけでございますが、これを「むつ」総点検改修技術検討委員会で御審査いただきまして、これだけの内容のものをやれば「むつ」の開発は続行し得る状態になるであろうという判断をいただきまして進めておるわけでございまして、過去のものはそのまますべて正しいという前提に立っておるわけではございません。
  38. 村山喜一

    村山(喜)委員 「むつ」の蒸気発生器は縦型のU字管方式で、当時のものとしてはこの型のものは美浜一号で実証済み内容にありますピンホールが簡単に穴があくというような、そういうような型のものだというふうにわれわれは見ているわけでございますが、これは違いますか。
  39. 山野正登

    山野政府委員 この「むつ」につきましても、蒸気発生器伝熱管健全性というのは検討項目に私ども入れておりまして、陸上炉におきます各種事例といったふうなものを十分に参考にしながら検討したいというふうに考えております。
  40. 村山喜一

    村山(喜)委員 ですから、「むつ」の燃料棒に採用されているステンレス製被覆管については、応力腐食のために使用中にひび割れを起こしやすいという事実関係は、皆さん方テストやあるいはいままでの実証試験のそういうような事例の中から、これはやはりジルカロイ被覆燃料棒に取りかえなければならないであろう、こういうふうに私たちは見るのでありますが、そこら辺はどういうふうにお考えなんですか。
  41. 山野正登

    山野政府委員 被覆管ジルカロイ合金にするかステンレスにするかという点でございますが、西独のオット・ハーン号等ステンレスを使っておる実績等もありますし、すべてステンレスではだめだということは即断できないと思いますが、この辺、先ほど申し上げましたように陸上炉の経験というものも十分に参考にしながら、健全性の解析というのをしておるという状況でございます。
  42. 村山喜一

    村山(喜)委員 いま局長が言われる西ドイツのオット・ハーン号燃料棒被覆管も、ステンレスからジルカロイ製に取りかえられておるんですよ。そういうようなことから、当初はそれでつくったんだけれども、そういうような問題が出てきたから取りかえたわけですね。そういうような意味においては問題がなお残っている。  したがいまして、私たちは単なる中性子漏れの問題でふたをしさえすればいい、遮蔽装置をするだけでこの問題は足りるとは考えていないんです。そういうような意味から、この問題については非常に未解決のものでこれからやらなければならないものがたくさん残っているというふうに考えているんですが、皆さん方遮蔽装置だけの問題だというふうにとらえていらっしゃるんですか。
  43. 山野正登

    山野政府委員 私どもも、遮蔽改修だけをすればそれで事が足りるというふうには考えていないわけでございまして、四十九年の放射線漏れ以降、いわゆる大山委員会におきます検討の結果に従って現在開発を続行しようとしておるわけでございますが、この委員会の指摘にも、放射線漏れのための直接の対応策でございます遮蔽改修に加えまして、安全に非常に関係の深い原子炉プラント周りについては特に総点検実施して、もう一度内容をすべて見直すべきであるという御提言があるわけでございますので、そういう意味遮蔽改修に加えまして遮蔽以外の重要部分についてもこの際見直しをするという方針で臨んでおります。
  44. 村山喜一

    村山(喜)委員 そこで、重いコンクリートなどを今度は設置をしようという内容のものですから、そういうようなのは、原子力船としての機能の上から従来想定をしていなかったものが加わってくるという意味においては、船としての機能がその分だけ損なわれていく、このことは否定できませんね。
  45. 山野正登

    山野政府委員 遮蔽改修工事をすることによりまして、当然に遮蔽物の総重量というのは当初予定していたよりもふえるわけでございまして、そういう意味で有効搭載量が減るということは否めない事実かと存じます。
  46. 村山喜一

    村山(喜)委員 そういうような内容を持っておることから、長崎県の久保知事が言っております原子炉を動かす制御棒駆動装置を始動させるかぎを県が預かるというのは、いかにも県民に対しては県知事が預かっているから大丈夫なように聞こえるし、そしてまた、国の方ではいやそれを否定をしているものではありません、したがいまして、われわれとしてはあくまでもそういうような制御棒を一本だけを抜き取って、そしてそういうようないわゆる構造上の問題に対する研究を進めたいんだ、臨界にならないようにしてやれば、それは停止状態と言えるんだからということで、仕事をこれから続けていこうという意思を持っている。こういうことになってまいりますると、知事が預かるということだけでは何も保証ができないということだということを明らかにするものだと見てよろしいですね。
  47. 山野正登

    山野政府委員 先生の御質問で、保証をするものではないという言葉意味でございますが、何を保証するかということでございますが、原子炉冷態停止に保たれるかどうかという趣旨でございますれば、私どもは、かぎ県知事に預けようと預けまいと、修理港におきまして原子炉運転する意思というのは全く持っておりませんし、また現在予定いたしております遮蔽改修とかあるいは総点検をするに際しまして原子炉運転というものは必要でもないわけでございますので、これは県知事かぎを預ける預けないにかかわらず、冷態停止状態というものを保つということは保証されておるというふうに考えるのでございます。  なお、この運転モードスイッチかぎを預かりたいというのは県の方からお申し出があったわけでございまして、私どもがとやかくサゼスチョン申し上げてそうなったという性格のものではないという点もあわせて御理解いただきたいと存じます。
  48. 村山喜一

    村山(喜)委員 この問題は、県漁連は核抜きが受け入れのぎりぎりの線だという立場に立っておりますし、佐世保の市議会は核つきで受け入れていくんだという決議をしている。そういう意味から封印については異論がない、原子炉封印してかぎを私が預かると知事が言っている、それは核つきなんだという意味封印については異論がないという受けとめ方をしている。そこで、県の漁連の理事会では、安全確認が前提であるということから、提案があったら前向きに検討しようということでしたが、これはその後核抜きの方針は変わらないということを確認をしているようであります。  したがいまして、いま話を聞いておりますと、知事が預かるという意味内容もそういうような核抜きの内容のものではない、こういうふうに受けとめられるわけでありまして、そういうような意味では、現地の漁民を中心にする反対の人たちが、いやそういうふうに言うているけれども制御棒引き抜きを開始すればこれは明らかに運転開始じゃないか、そういうようなことから、ふたを取り外さないで十分な工事はできないはずだ、こういうような見方をするのはあながち否定はできないだろうと思うのでありまして、そういうような意味において、この問題はこれから検討をされるということでございますが、私は非常に大きな問題をはらんでいると思いますので、大臣にこの際お答えをいただきたいのであります。  大臣は、過去において原子炉安全審査会が問題はないということで認めた、そこから出発をいたしまして「むつ」のこういうような問題が出たわけですから、そういうような意味においてはやはり行政の責任というものを感じないわけにはいかないだろうということを私は考えるわけでございます。したがいまして、やはりそういうような意味においては、こういうような事故を起こしたその原因を徹底的に検討していくことは当然のことでございますが、それのやり方の問題の中から、拙速を避けてこれが十分な合意の中で処理をされませんと、また最近は福田内閣は非常に右寄りの姿勢が強まってきた、原子力船のこの問題をこういうふうにしゃにむに急いでいこうという姿をとろうとするのは、原子力を推進力として使うのは、これは原子力潜水艦ではないんだ、こういうようなことも言われているように、原子力潜水艦を建造をする方向へ向かうための一里塚ではないだろうかという見方さえ生まれているわけですが、そういうようなものに対する科学技術庁長官のお考えはどうでございますか。
  49. 熊谷太三郎

    熊谷国務大臣 いろいろの問題が御発言の中にあったようでございますが、順序不同で考えを申し上げますと、福田内閣の姿勢がいろいろ右寄りで、それに原子力船修理関連しているのではないか、あるいはその原子力船を将来原子力の艦に変えるというような思惑もあってそういう修理を非常に急ぐのではないかというようなことも言われているがというお話でございますが、それはもう改めて申し上げるまでもなしに、わが国の原子力は法律で平和利用に限られているわけでありまして、そういう魂胆を含めましてしゃにむにこの原子力船改修を急ぐというような考えは持っていないわけであります。  それから、いまの長崎県の知事の言われております核封印につきましての技術的な大変御造詣の深いいろいろな御質問に対しましては、政府委員から大体お答えしたとおりであると考えておりますが、われわれとしましては、そういうかぎを預かられるということは、技術的な問題も含めまして安全であるという確認を知事がなさらなければ、そういういろいろな方法はとられない、何よりも安全を確認した上でこのいろいろな問題の処理を進めていくというようなお考えがその根本にあるというふうに理解して、いまいろいろ検討を進めているわけでございます。
  50. 村山喜一

    村山(喜)委員 じゃ次に、軽水炉の安全研究の問題についてお尋ねをいたします。  アメリカの「憂慮する科学者同盟」のダニエル・フォード氏が一月に日本に参りましたときに、アメリカ政府の秘密文書をもとにして調査をした結果、GEやWH社の軽水炉型の原子炉については技術的な未解決の問題が約二百点ある。蒸気タービンがおさめられている建物が壊れて、その巨大な破片によって原子炉の入っている格納庫が壊れる可能性がある。原子炉を支える土台の耐震性が十分でないというようなことから、最近のアメリカでの動きを説明をすると同時に、ゼネラルエレクトリック社やウエスチングハウス社の原子炉はここ数年一基も売れていないというような内容の話をしております。  そこで、私がお尋ねをいたしますのは、この回答書の後ろの方に今日までの事故報告というもの、日本における原子力発電所に関連をする故障や事故、五十一年三月現在、科学技術庁、通産省のその数字が出されております。発生年月日、それからプラント名と状況内容のものが出されておりますが、五十一年度は、原子力白書によりますと事故の件数は二十四件であったというふうに出ているようでございます。五十二年度は何件になっているのか、これを類型別に分類をしてみた場合にはどういうふうになりますか、その内容説明を願いたいと思います。
  51. 牧村信之

    牧村政府委員 先生御指摘原子力年報に出ております五十一年度の事故、故障件数は二十四件でございますが、五十二年度は十七件でございます。この件数は、原子炉規制法並びに電気事業法に基づき科学技術庁あるいは通産省に報告のあったものでございます。  これを原因別に仕分けいたしますと、配管であるとかノズル等のひび割れ、これが五十一年度六件に対しまして、五十二年度は十一件でございます。それから機器等の故障が、五十一年度七件に対しまして五十二年度は一件でございます。それから作業中の物理的な人身障害、これは五十一年度一件が五十二年度には三件でございます。それから、原子炉の誤操作であるとか誤った信号等によりまして原子炉が自動的にとまりました件数は、五十一年度は二件に対しまして五十二年度は一件でございます。それから蒸気発生器細管の漏洩は五十一年度一件ございましたが、五十二年度はゼロ、ございませんでした。  以上でございます。
  52. 村山喜一

    村山(喜)委員 そこで、アメリカでは二百点くらい、なお技術的に見て検討しなければならないものを持っているというふうに聞いておりますが、科学技術庁の方ではどういうふうにお考えになっているのですか。
  53. 牧村信之

    牧村政府委員 原子炉の安全を確保する上で科学技術庁としては、基本設計にかかわります安全の審査を、原子力委員会が行います安全審査を補佐してやっておるわけでございますが、ただいま申し上げましたようなトラブル、故障は詳細設計以降の段階のものであって、たとえ故障等がございましても、これは起きたときに原子炉が安全に停止し、また発見された故障等については定期検査等で十分改修ができるものというふうに判断しておる次第でございますが、ただいま御指摘の、アメリカにおきますいろいろな問題点、この点につきましてはアメリカの規制当局と私どもの方並びに通産省との間に情報交換のシステムがございまして、いろいろなトラブル等が起きました際は、その起きた理由あるいは故障の原因その他につきまして種々意見交換をする場を持っておりまして、そういうものでアメリカの軽水炉における事故、故障等については十分向こうの事情を承知し、日本の原子炉に対して必要な対応策をとるというふうな線で検討する体制をとって、安全に万全を期したいというふうな線で仕事をしておる次第でございます。
  54. 村山喜一

    村山(喜)委員 五十二年度は十七件、五十一年度が二十四件、こういう報告の数字は、規制法に基づいてそれぞれの事業体の電力会社あたりから報告があったものだけですね。  ですから、たとえば前の、四十二年以降の事故の発生件数の中には、美浜一号の蒸気発生器の細管の大量損耗、美浜二号の燃料棒の曲がり、敦賀及び福島一号での一次系配管のひび割れ、高浜一号における蒸気発生器の損耗、こういうようなものは原子力発電所の安全性を確保する重要な部分で発生をした事故でございますが、これは報告がなかったということですから、事故として行政機関に報告されたものだけで、定期検査や特別点検中に発見されたものは除外されている。とするならば、五十一年度の事故二十四件、五十二年度の十七件というのも同じようなことでございますね。
  55. 牧村信之

    牧村政府委員 先ほど私お答えしました十七件の中には、定期検査で発見されましたトラブル等が含まれております。
  56. 村山喜一

    村山(喜)委員 そういたしますと、統計のやり方を改めたわけですか。前、あなた方は五十一年三月末現在でこのとおりでございますという報告書が出されておりますね。私が先ほど申し上げましたようなことは報告の中に入っておりませんから、この中に記載されておりません。今度はそれを改めたとするならば、いつから改めたのですか。
  57. 牧村信之

    牧村政府委員 私の知る限りでは、五十一年度におきます事故、故障の件数には定期検査中に発見したものも含まれておると解釈しております。したがいまして、先生のただいまの御指摘ではございますけれども、私、従来と同じ統計と申しますか、報告に基づいて統計をとっておるというふうに承知しておる次第でございます。
  58. 村山喜一

    村山(喜)委員 大事故にはつながらない、しかしトラブルが発生をしておることは事実だと思います。そういうような意味から安全研究というものはやっておるのだとおっしゃりたいのでしょうね。  そこで、原子力工学試験センター原子力研究所、そのほかの学術機関等、あるいは一般会計の中から科学技術庁がやられているものもあるだろうと思うのだが、その中で五十一年度と五十二年度は予算的にはどうなっているのですか。たとえばセンターの場合には耐震実証試験、バルブの実証試験、燃料集合体の実証試験、ポンプの実証試験、溶接部分の熱影響部分の実証試験、こういうようなことをやって、原研の内容を調べてまいりますと、冷却材の喪失事故実験あるいは反応度事故実験、燃料体に関する研究、国際協力、内容はそういうふうに大まかに分けてありますが、それに対する予算措置はどうなっているのですか。それらを含めた全体の予算はどうなりますか。
  59. 山野正登

    山野政府委員 軽水炉の安全研究につきましては、いま御指摘のように日本原子力研究所とか国立の試験研究機関、さらに各種民間の関係機関あるいは電力会社等で行われておりまして、これが有機的に協力しながらやっておるわけでございますが、この予算的な措置といたしましては、五十二年度を例にとって全部一般会計、特別会計合計で申し上げますが、反応度事故の研究は四億四千九百万円、冷却材の喪失事故の研究二十九億五千四百万円、軽水炉の燃料の安全性研究三十一億一千九百万円、原子炉施設の構造安全研究五十三億八千百万円、放射能の放出低減化の研究五億二百万円、原子炉施設等の確率論的安全評価の研究九百万円、原子炉施設の耐震研究十七億四百万円、その他二十六億八千八百万円で、これらを合計しまして百六十八億六百万円、このうち一般会計だけを抜きますと、合計で七十五億八千七百万円という数字になっております。
  60. 村山喜一

    村山(喜)委員 それで、安全研究、安全テスト——センターの任務は何ですか、そして原研の方は何ですか。
  61. 武田康

    ○武田政府委員 先生お話しの原子力工学試験センターの業務内容についてお答え申し上げます。  原子力工学試験センターは、原子力発電用機器の安全性、信頼性を実証し、そして原子力利用にかかわります国民的合意の形成、原子力技術の進歩発展に資するということで、二年前に設立されたものでございます。  主な業務は、信頼性の実証試験でございまして、現在やっております項目といたしましては、先ほど御指摘がございましたけれども、バルブの信頼性実証試験、燃料集合体の信頼性実証試験、溶接部等熱影響部の信頼性実証試験、ポンプの信頼性実証試験、それに原子力発電施設の耐震信頼性実証試験でございます。
  62. 村山喜一

    村山(喜)委員 このセンターは財団法人ですね。それで財団法人の年鑑を調べてみると、財団法人原子力工学試験センターの名前が出てこないのです。活動をしているレポートがありません。予算は四十九億六千八百万円もついているのですよ。それだけの金を持って活動をしているはずなのに、レポートはないのです。  そういうことを考えてまいりますと、もちろん発足をしてからまだ二年目だということで実質的には五十一年度から始まったようでございますが、そういうような意味で、実証試験でもありますからそういうようなものがなかなかないのだろうと思いますけれども、しかも、それは電源開発促進対策特別会計予算の中から振り出されているわけです。  いま私が申し上げましたように、センターでもこういうような実証試験をやっているわけですね。実証試験をやるということは、それだけ安全性がまだ確認をされていないから実証試験をやっている。十分な安全を確認し、そういうようなトラブルが発生をしないようにするためにやっているのだ、こういうふうに見なければなりません。また、原研でもそういうような冷却材喪失事故実験などをおやりになっている。そういう危険性が存在をする。反応度事故実験もやっている。燃料体に対する研究もやっている。また、たとえば沸騰水型のGEの場合は非常にトラブルが多い、ひび割れ等が多発をしておるということは、新聞紙上で見られるところであります。  したがいまして、いまのは大事故につながるような事故ではございませんということでお答えになる気持ちはわかるのだけれども、しかし、この軽水炉の安全研究を徹底的にやらなければ国民の同意が得られないことも事実でありましょう。  そういうような意味においては、いまやっていらっしゃる内容に一々けちをつけるつもりはありませんが、ここまではいまのところできているのだけれども、冷却材喪失事故実験の問題等についてはまだまだ十分な実証的な実験はできないわけでございますから、そういうようなところの段階にいまあることを国民に正直に知らしていくことが必要であって、原子力発電はもう完全なものでございます。安全でございますと言うだけの説明をしておられても、私はこれは十分な科学技術庁の方針ではないと考えるのでございますが、いま申し上げましたようなことを踏まえて大臣はどういうふうにお考えになっているか、軽水炉の安全確認の問題に対する考え方についてお答えをいただいて、私の質問を終わりたいと思います。
  63. 熊谷太三郎

    熊谷国務大臣 軽水炉の、特に安全問題というやや専門的にわたったお尋ねでございますから、私の答弁が適切であるかどうかわかりません。  私どもはすべての問題にわたってそうでありますが、原子力電燈に関しましても、絶対安全などということを吹聴するものでは決してありません。どうやらここまでは心配なしに大体やっていけるであろうが、しかしまだまだ安全については研究を推進する分野がある、いつまでたってももうこれで完全に安全だということは極端に言えばあり得ない、そういうつもりで不断に安全第一ということを念願としながら、より安全より安全ということで進んでまいらねばならぬ、その辺は謙虚に考えていかねばならぬ、このように考えているわけでございます。
  64. 村山喜一

    村山(喜)委員 きょうは宇宙開発の問題も取り上げるつもりで関係省庁も呼んでおりましたが、時間の関係でできませんでしたので、やがてまた他日の機会に譲らしていただきたいと思います。  終わります。
  65. 楯兼次郎

    楯委員長 森下元晴君。
  66. 森下元晴

    ○森下委員 一番初めに、村山委員からも質問がございましたけれども伊方訴訟の問題についてお伺いしたいと思います。  四国の佐田岬にございます伊方原子力発電所の問題につきまして、原子力発電所は本当に安全であるかどうか、四国電力の伊方原子力発電所の原子炉設置をめぐりまして地元伊方町の住民が国を相手に原子炉設置許可の処分の取り消しを求めまして、行政訴訟の判決が先ほどあったわけでございます。  法廷では、原発の安全性を中心にしまして原告と国が原発の功罪について激しい科学論争を展開いたしました。原発の安全性と国の原子力行政に対して司法がどういう見解を示すか、原発をめぐる裁判は実は初めてでございまして、関係者は非常に注目しておったわけでございます。この結果によっては、石油の代替エネルギーとしての原発の推進を急ぐ国のエネルギー政策を左右する意味で、非常に重要視、注目されておった問題であります。  訴訟につきましては、提訴以来三十六回の口頭弁論が開かれ、新聞等にもずっと詳しく出ております。  この種のものは国際的にも非常に大きな問題になっておりまして、三日に米国の連邦最高裁判所が原子力発電所の安全管理は政府、議会の権利であって、裁判所が介入すべき問題でないと原発反対派の訴えを門前払いにした、そういう判決が出ておるようでございます。しかしながら、他の国の現状を見ました場合に、決してそうでない面もたくさん出ております。ドイツにおいてもフランスにおいても行政裁判が行われまして、原子炉の安全性、また立地条件の再検討を求めて建設中止の命令をしたり、計画が立ち往生に追い込まれておる、そういう例がたくさんあるようでございます。  私は、個人的には、やはり将来のエネルギーは原子力の平和利用に求めていくべきであるという持論を持っておりますけれども、やはり安全性という問題が非常に大事でございまして、その点についてお伺いしていきたいと思うのです。  きょうの判決は、請求を棄却する、いわゆる門前払いでなかったようでございます。許可処分を取り消すべき理由は認められないので原告の請求は棄却する、そして、私もテレビを見ておりましたけれども、理由の骨子として、一番初めに、原告らはいずれも本件取り消し訴訟の原告適格がある、こういうことからずっと長くいろいろと理由がつけられております。この件でちょっとお尋ねしたいのですが、原子力局長にお尋ねしたいのは、原告適格があるというのはどういう意味でしょうか。これは幼稚な質問かもわかりませんけれども、後の裁判がどうなっていくか、これで終わりなのか、その点ちょっと聞きたいと思います。
  67. 牧村信之

    牧村政府委員 端的に申しますと、原告側にこの原子炉設置許可の取り消しを訴える資格がないということで、国側はこれを主張いたしまして、先生ただいま門前払いとおっしゃられましたけれども、訴える人の適格性についての争点がこの裁判の中の重要な一つとしてあったわけでございますが、それにつきましては、判決の骨子を拝見いたしますと、適格があるというふうなことでの御判決のようでございます。(森下委員「上へは持っていけないということですか」と呼ぶ)いえ、そういうことではございません。
  68. 森下元晴

    ○森下委員 門前払いでないようでございますので、また原告側は上級の機関に持っていくんじゃないかと私は思うんですがね。この内容についてはこれ以上質問いたしません。  ただ問題は、こういう内容判決が出たわけでございまして、原子力の安全性については従来心配してきたよりは安心の度合いがかなり深くなった、私そう思うのですが、ただ問題は、先般この国会で原子力のいわゆる基本法につきまして新しい法案が出されまして、衆議院は二十日の日に可決いたしました。参議院の方へ回っておりますから成立するのはまだはっきりわかりませんけれども、参議院の方でもこのまま通れば、大体七月ごろから安全委員会ができて、行政の一貫性を目指していくであろう。いろいろ科学技術特別委員会の方で論議があったと思いますけれども、やはり原子力発電、原子力の平和利用について、かなり安全性についてのいろいろな問題が過去にあったし、また心配があるので、基本法そのものを改正していくんでなかろうか、このように実は思っております。  それと、原子力委員会のあり方についてもいろいろと触れておるようでございまして、従来の原子力委員会が果たして十分機能したかどうか。いわゆる開発と安全というものを同じ機関でやったわけでございますから、どうしても開発の方に主力が注がれて、安全の点についてはおろそかになりがちになったんじゃなかろうか。  先ほど村山委員から質問ございましたように、かなりあちこちで軽水炉の発電の事故が起こっております。大体この決算をやっております昭和五十年度では稼働率が非常に落ちておる。現在ではもっと落ちておる、半分以下になっておるわけでございます。美浜発電所なんかは動いておらない。また福島の一号、二号炉につきましても非常に機能が低下して、そしてアメリカのGEから技術者が七十名来て、約一年間ぐらい日本に常駐してこれを直さなくてはいけない。こういうような実態を見ました場合に、まだまだ原子力の平和利用のための安全という問題については研究検討をしなければいけない、このように実は思っております。宮城県の女川というところがございまして、ここで原子力発電の立地がかなり進められたわけでございますけれども、最後になりまして、放射能の問題よりもむしろ温排水の問題、この発電効率がいまの段階では余りよくないと私は思うのです。大体三分の一ぐらいが利用されて、三分の二はやはり熱となって海に出てしまう。それが非常に漁業のためによくないというようなことが、せっかくいいところまでいきながら最後に反対の理由にされた。こういう点でももっともっと発電効率等について勉強をしなければ私はいけないと思うし、まさに原子力基本法を改正する趣旨はそこにあったと思います。  だから、伊方判決がこういうふうに出たからといって、私は余り胸を張ることはできないんじゃないだろうか。まだまだ謙虚に安全性について研究しながら将来のエネルギー対策に処していかなくてはいけない、こういうことを実は申し上げたいわけでございます。  そこで、大臣にひとつ簡明に、私の申し上げました趣旨に対しまして御所見ございましたらお述べいただきたいと思います。
  69. 熊谷太三郎

    熊谷国務大臣 いろいろお話がありましたが、第一に伊方の裁判の結果でございますが、これは御承知のような判決の結果になりましたが、私どもといたしましては、このような内容がいかがであれ、判決の結果につきましては、厳粛に、また冷静に、かつ謙虚に受けとめまして、そして今後とも原子力発電所の推進のためには安全性を第一とし、並びに地元の方々の御納得をあわせて考えまして、この二つを両輪として原子力行政を進めてまいりたい、このように考えているわけであります。  それから、安全性の問題につきまして、決して安全性はこれで十分ではない、たとえば原子力基本法等で原子力安全委員会を新設したり、いろいろな法的な改正を行うということもやはりその端的なあらわれではないかというお話でございますが、そのとおりでありまして、私どもは現在の原子力発電が決して心配なく実用段階には達していると思います。しかし、それではもう絶対安全か、完全に安全かなどということは、これまた私どもは絶対に考えもしておりませんし、もちろん言わないわけであります。何事もそうでありますけれども、ことに原子力の問題につきましては、やはり不断に安全に留意いたしまして安全の研究を推進してまいりまして、そうしてより安全より安全ということで、絶対とか完全とかという域までは達しませんでも、少しでもその域に近づけることを常に念頭に置きまして原子力行政に当たりたい、このように考えておるわけでございます。
  70. 森下元晴

    ○森下委員 大臣の答弁も安全の上に安全を重ねて指導していきたいということですが、よろしくお願いしたいと思います。  この原子力基本法の審議の過程でいろいろな意見が出た中に、安全委員会を公正取引委員会のような強力な権限を持たせる行政委員会としての性格とせよ、こういうような意見も実はあったようにわれわれは聞いております。そういうものがあれば、裁判まで持っていかぬでもよかったのではないかという気持ちもするわけです。なぜ司法まで持ち込んで安全性の問題で争わなくてはいけないか。しかし、今回の基本法の改正によって、これは総理大臣の諮問機関にとどまりましたけれども、附帯決議の中で、強い信念と科学知識を兼ねた学識経験者の起用が全党一致で決議された。その意味で、安全委員会の方は五名決めるわけでございますけれども、安全委員の人選をかなりしっかりやってもらわないと、過去の人選はわれわれが考えてもおざなりであった、もう少し専門的な立場の人を入れていただいてやってもらいたい。官庁の機関の中で審議会とか調査会とかいろいろな諮問機関がございますけれども、どうも御用機関的な場合が多いわけでございますが、少なくともこの原子力の場合はかなり権威のある人材を委員会の人選の基準にしてもらいたい、そういうことをお願いしたいと思います。これは答弁要りません。  それから次は、核防条約、これは一昨年の五月に批准をいたしまして、もうすでにやられておるわけでございますけれども、この中の平和利用の問題については四条にかなり詳しく書いてございますし、平和利用の場合には核防条約に加盟し、また批准すればかなり有利にいける、また協力もいたしますというようなことを実は書いてございます。核防条約に入らないとそういう恩典がないのですよというようなことで調印もしたしまた批准も実はしたと思うわけでございますけれども、最近の動きを見ました場合に、アメリカとかソ連の大国主義がせっかくのNPT、核拡散防止条約の内容と違う方向に行っておる、いわゆる大国のエゴがそのまままる出しになって、核の不拡散どころかますます核は拡散されておる。しかも、持っておらない国にはますます締めつけが激しい。  だから、せっかく通産省あたりが将来日本型の軽水炉を商業製品として知識集約型の花形産業としてやりたくても、査察が非常に厳しいわけでございますから、それすらもできにくい。皆さん方も非常に頭を痛めておると思いますけれども、実はきのうからきょうにかけてアメリカの方からおいでになってそのことの相談をしておるようでございますけれども、濃縮問題ですね。再処理の問題は宇野長官のときにいろいろとアメリカまで行ってやられましたけれども、ウラン濃縮の規制の問題、これなんか私は非常におかしいと思うのです。  核防条約の第四条では、平和利用について可能なときには単独でやってもよろしいというようなことを書いてありますね。「可能なときは、単独で又は他の国若しくは国際機関と共同して、世界の開発途上にある地域の必要に妥当な考慮を払って、平和的目的のための原子力の応用、特に締約国である非核兵器国の領域におけるその応用の一層の発展に貢献することに協力する。」そういうことをうたいながら、昨年は再処理の問題でかなりアメリカから厳しい注文がございました。その釈明のために宇野長官もアメリカにおいでになった。  今度は山陰の人形峠の、たくさんはないと思いますけれども、ここのウラニウムを原料とする建設中のウラン濃縮パイロットプラントの商業化にアメリカがクレームをつけてきております。これなんか完全に核防条約の精神に違反するわけでございまして、いわゆる濃縮のためには共同開発もいいし、また濃縮したものをアメリカから、またよその国から買うこともいいわけでございますけれども、やはり自主開発の分野も残されておるわけでございますから、これまでも規制を受ける。また国際査察を受けなくてはいけない。  もちろん日本は非核三原則とか原子力基本法がございまして、核兵器をつくることは絶対にできないし、強く規制されておりますし、また国会の決議もされておりますから、そういうことはございませんけれども、いろいろ学術的な研究をする場合には多少高濃縮のウランをつくる必要がある場合もございます。それまでもなぜ規制されなければいけないか。これは大国の核独占の一つのエゴのあらわれであって、こういうことではいつまでたってもドイツのような商業製品としての原子炉の商品化はできない、こういうふうに思うわけでございます。  きょうたまたま日米原子力協定の改定のための予備交渉が始まっておるわけでございますから、ひとつこの点アメリカの方へ、われわれは核防条約を批准しておるのだから平和的な利用のためには自主的開発も大らかな気持ちで見てもらいたい、変なスパイ的な査察をやらぬようにしてくれ、こういう注文は強くやるべきである、このように思っております。  もう一つは、アメリカばかりのことを言うとおかしいわけでありまして、いわゆるソ連の例の原子力衛星が一月二十四日カナダの北部に落ちまして、世界じゅうが大変衝撃を受けました。先般もNHKのテレビでそれをずっとドキュメンタリーふうに報道しておりました。どこへ落ちるかわからない。特に日本の場合は核については非常に神経質になっておりますから、もしあれが事前に発表されたら大変なパニックになるような事態であったと思います。しかし、問題はこれだけではございません。幸いカナダの北部の余り人のおらない氷の上に落ちたわけでございますから、大したことはなかったかもわかりませんけれども、まだ残る九体が飛行中である。出力が大体四十キロワットで電力出力にして三キロワット、アメリカに比べてソ連の原子力衛星はまだまだ幼稚なようでございまして、この点われわれも非常に心配しております。国内で原子力、核の問題また放射能の問題等に非常に神経質になっておりますけれども、いつ頭の上からそういうものが落ちてくるかもわからない。  こういうことを考えました場合、大国による——大国というのは原子力兵器を持っている国を私は大国と言いたいわけでございますけれども、アメリカ、ソ連、中国またフランス、イギリス、そういう国はこの条約に入っている国と入っておらない国がございますけれども、まことに勝手なことをやっておるという点も言うべきときにはちゃんと言わないと、どうも日本の、これは外務省の問題でございますけれども、弱いと思うのですね。そういう点で科学技術庁の方も、ただ技術だけの問題じゃなしに、将来は、原子力発電が安全であって、しかも商業製品としてドイツ以上にりっぱな商品として、自動車とかまた過去の造船にかわる花形産業として外貨が獲得できるように、そういうように実は願っておるわけでございます。  そこで、いま私が申し上げたことにつきまして、大臣から、何か御所見ございましたら御発言願いたいと思います。
  71. 熊谷太三郎

    熊谷国務大臣 いろいろお話がございましたが、御承知のようにわが国は原子力につきましてはその平和利用に徹しているわけでありまして、先般もIAEAの事務局次長をしております日本の方がお帰りになってたまたまお話を承ったわけでございますが、日本がこのように原子力の平和利用に徹しているこの現実の姿を、まだ国際的には十分に理解されていないと言われたくらいでありますが、平和利用に徹しているわけであります。そういう現実であるのにもかかわりませず、残念なるかな日本はウラン資源もありませんし、また核燃料サイクルの確立につきましても非常に、率直に言えばまだ立ちおくれているわけでありまして、そういういろいろな事情のために、ともすれば資源を持てる各国からの、われわれから率直に言えば不必要なくらいの圧迫をたびごとに感ずるというのは、残念なるかな現実でございます。  このようないろいろな問題が発生してまいりまして、日本としては今後ともよほど考えていかねばならぬ。第一に、日本はどこまでも核不拡散には協力していくという姿をはっきり理解を求めますとともに、日本が、核の原子力の平和利用なくしては生存し得ないというそういう現実、そういう切実な日本の事情もよく徹底して理解してもらわなければならぬ、その努力を第一に怠ってはならぬと考えるわけでありますが、一方におきましては、あるいは核燃料サイクルに関する再処理でありますとか、あるいは濃縮でありますとかその他の問題につきまして、早く自主技術を確立していく。そのほか、あるいはいわゆる新型転換炉でありますとか、あるいは高速増殖炉でありますとか、そういう燃料の極度に節約できる、そういう能率のいい原子力発電所を早く自主的に開発していかねばならぬ、そういう努力も反面に怠ってはならぬと思うわけであります。  要するに、日本の立場、日本の事情を世界にはっきり徹底して理解してもらうという努力をいたしますとともに、この核燃料、ウランのない日本が少しでもこれを補うことのできるようないま申し上げたようないろいろの実質的な研究を進めていって、そして何とかして原子力の平和利用によりまして日本の当面しますエネルギー危機を乗り切っていかねばならぬ、このように切実に思っているわけでございます。
  72. 森下元晴

    ○森下委員 最後になりますけれども、重水炉の「ふげん」の問題でございます。これはいわゆる原型炉としてもうすでに動いておりますし、来年四月には定常運転にこぎつける、こういうことでございまして、私ども決算委員会は実はもう数年前に現地へ調査に参りまして見ております。しかし、これはあくまでも原型炉でございまして、実証炉になるためにはかなりまだ年月を要するであろう。やはり先ほど村山委員からもお話がございましたように、「むつ号」がなぜ失敗したかというのは、いわゆる実験炉からいわゆる原型炉の段階を飛び越してもう実証的に入ってしまった、そういうような手落ちがあったように私は思うのです。その点、「ふげん」の場合は、現在原型炉で実験しておりますから、これが仮に効率が悪くてうまくいかぬでも、私は、これはこれでそれだけの効果はあると思います。  ただ問題は、重水炉の場合は、なるほど天然ウランが使えるとかいろいろわが国に乏しいウランの節約にはなると思いますけれども、重水というのはなかなか簡単にこれが自主開発できにくい、カナダからこれを求めなくてはいけないという欠点も実はございますし、効率の面でも電力会社等では余り期待しておらないような風聞もいろいろ聞きまして、この点、過去かなりの国費を投入して、これがいわゆる実証炉として実用的に使われない場合に、私は非常に心配の種ができる、こういうふうに実は考えておるわけなんです。世界の趨勢を見ましても、やはりいまは軽水炉時代でございまして、軽水炉の欠点もいろいろございますけれども、まだ十年や十五年は軽水炉の時代が続くであろう、そういうことで、今後もひとつこの日本型の軽水炉——ドイツは先ほど申しましたようにすでに商業化して、ブラジルとかイランとか、また最近は東京電力もドイツのこの軽水炉を輸入したいというようなことを言っておるように、かなり、日本と同じように出発しながら集中的に軽水炉の開発のために力を入れたためにそうなったと思うのですが、まだまだ軽水炉の時代が続くであろう。  現在、決算的に申し上げましたならば、五十年度で原子力関係に入れた金は五千六百七十億、残念ながら、そのうちでこの軽水炉の開発に入れたのが大体四百億、七%ぐらいしか軽水炉の開発のために入れておらない。これはもう大臣お知りだと思いますけれども、少しアメリカの軽水炉に頼り過ぎて、アメリカの軽水炉さえ使えば一〇〇%安全だというところに、原子力委員会なんかの誤りがあったように思います。科学技術庁長官にしてもしょっちゅうおかわりになっておるものですから、恐らくそこまで配慮ができなかったのじゃないかと思うのですが、原子力開発のために入れました金の中で、現在世界の八三%を占めておりますこの軽水炉に金を入れておらない。二十年先、三十年先の核融合とか高速増殖炉にはかなり入っておりますけれども、残念ながら軽水炉の開発のためには入っておらない。この点私は、遅まきながらでも結構でございますから、日本型の、しかもドイツのように周辺特許から原理特許まで取れるような、そういう面でひとつ科学技術庁が大いに奮起して、また予算もその方に投入してもらいたい。それがやはり予算の効率的な使用方法であって、将来の日本のエネルギー政策のためにいいのだということを最後に申し上げまして、大臣の最後の御所見をいただきまして、私の質問を終わりたいと思います。
  73. 熊谷太三郎

    熊谷国務大臣 いろいろお話がありましたが、そういう重水炉なり高速増殖炉のようなものよりも、むしろ現実に行われている軽水炉のためにもつと多額の経費あるいは精力をかけて自主的な改良研究をすべきでないかという御意見のように承りました。いろいろの事情もありますし、また、たとえばATRにつきましても、これにもただ重水炉を使って独立したATRをつくるというだけの使命ではなくして、今後のFBRの研究開発のためにも非常に重大ないろいろの要素があるということも承っているわけでございまして、それはそれなりに理由もあるわけでございます。しかし、いまお話しになりましたようなもっと軽水炉に力を注ぐべきではないかというようなことも、これも非常に有力な意見としてあるわけでございます。この点は今後十分研究いたしましてまた善処してまいりたい、このように考えます。
  74. 楯兼次郎

    楯委員長 午後二時再開することとし、この際、休憩いたします。     午後零時十二分休憩      ————◇—————     午後二時二分開議
  75. 楯兼次郎

    楯委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  ただいま、参考人として東京大学名誉教授、国立相模原病院雇問の長野泰一君及び東京大学医科学研究所附属病院放射線科科長の飯野祐君の御出席をいただいております。  参考人各位には、御多用中のところ当委員会に御出席いただきまして、まことにありがとうございます。原茂委員のがん制圧問題に関する質疑に対し、それぞれ御専門のお立場から忌憚のない御意見をお述べいただきたいと存じます。  それでは、質疑を続行いたします。原茂君。
  76. 原茂

    ○原(茂)委員 きょうは参考人の先生方においでいただきまして、ありがとうございました。  なお、梅垣先生にもおいでをいただきましたが、私自身が素人でございますから、病気のことを知らずに、がんが恐ろしいものだということだけ知っている一人でございまして、その意味で最近巷間伝えられておりますような放射線医学総合研究所、放医研等の研究が大分進んでいる、それからいろいろの話なりあるいはまた文書なりが出てまいりまして大きな期待を寄せてもおりますし、片方またインターフェロンと言われる、私ども考えてもみなかった何か大きな期待の持てるような、がんの抑制因子といいますか、こういうものが現に治療的な効果を発揮されているというようなことを聞きまして、きょう科学技術庁、特に放射線などを審議いたします決算委員会で、この際、専門にがんの二つの面からの私ども素人が知りたいと思いますことをお伺いしてみたい、こう思ったわけでございます。  何しろ学のない、医学知識のない、ただがんに恐れおののいている一人としてお伺いするわけでございますから、いろいろ申し上げることに半端なことあるいは陳腐なことをお伺いすると思いますが、どうぞあしからずお許しをいただきまして、できるだけ私どもにわかりやすく簡潔な御説明なり御答弁をちょうだいいたしますように、おわびを兼ねてお願いを申し上げておきます。  きょう特に、私もそうでしたが、全国的なストの影響で、ここまでお運びいただくのに大変な御苦労をお願いしたと思います。この点も厚くお礼を申し上げます。  そこで、順序を一応、放射線関係を先にお伺いをいたしまして、後に長野先生を中心にインターフェロンの質問を申し上げたいと思いますので、大変恐縮でございますが、しばらく長野先生もお聞きをいただきたいと思います。なお、私の質問中に科学技術庁の当局として、一々私が質問申し上げませんでも、これはお答えをいただくこととお考えでしたら、同時にまた技術庁からも発言を求めていただきまして御答弁をいただくようにお願いをしたいと思います。  そこでまず、梅垣先生と飯野先生に先にお伺いをいたします。  いわゆるエックス線、ガンマ線、コバルト60、速中性子線、陽子線、言うところのパイ中間子線等、これが重荷電粒子線と言うのかもしれませんが、われわれには難解な放射線治療の実施調査研究が進んでいるようでございますが、まずこれを全体グローバルに予算の面についてお伺いをいたしますので、技術庁から先にお伺いをし、なお先生方にも私のお伺いします趣旨に沿ってざっくばらんにお答えをいただきたいと思います。  現在の調査研究の目的は、今日までのあるいはいまの五十三年度に組まれました予算などで理想的に進めることができるとお思いになりますかどうか。先生方にも、何をやろう、あれをやろうと考えましても、装置をあるいは設備をと考えても、やはり予算がつきものでございます。しかし、予算だけありましても、人手、機械の完成というものを考えますと、金があるからと言ってこの種の調査研究ができるとは思いませんが、そうは言っても、そういうもののバランスをとりながら理想的にはこんな面でもう少し予算が欲しい、いまの予算ではあれもこれもやりたいと思うができないということを何かお感じでございましたら、冒頭に、この予算の面で、いま計画なさっておられます先生方の仕事、研究、調査が支障を来すといいますか、こうあれば理想的だと考えられることがございましたら、それを先生方にお伺いいたします。  その前に技術庁から、現在この放医研を中心に放射線のがんの治療を目途とした面における予算が大体どの程度組まれ、いままで使われてまいりましたかを先にお伺いをして、先生方お二人からはその後、お話を聞きたいと、こう思います。
  77. 山野正登

    山野政府委員 私どもの方で組んでおりますがんの放射線治療関係予算というのは、放射線医学総合研究所における研究のために組んでおる予算でございますが、放射線医学総合研究所におきましては、昭和四十五年から四ヵ年計画で医学用専門といたしましては世界最大規模のサイクロトロンの設置ということをいたしまして、これによりますがんの治療、並びにこの施設を使いましての短寿命のアイソトープを生産し、それによる疾病の診断への利用といったふうなことについて研究を行っておるわけでございますが、この関係予算を申し上げますと、昭和四十五年から昭和五十三本会計年度までの総合計で申し上げまして、約三十五億円でございます。これを年次別に近々のものを申し上げますと、昭和五十一年度が三億二千一百万円、五十二年度が三億七千二百万円、五十三年度が四億九千四百万円というふうになっております。
  78. 梅垣洋一郎

    ○梅垣説明員 それでは意見を申し上げます。  放医研といたしましては、日本の現状から見ますと過分とも言えるぐらいの予算をいただいて研究をやっております。幸いなことにサイクロトロン等の加速器につきましては、最初から医学利用を目的として設計、製作された器械としては、放医研の器械は世界でも最大級のものでございます。また、その付属設備としてもいろいろ予算をいただきましたので、私どもから見ますと現状としてはかなり満足のできる器械となって、またそれによる治療もその器械に見合った実績を上げていると私は思っております。  ただし、放医研の器械もこれはまだ進歩の途上の器械でございまして、本当の意味で病院の中に設置するという器械ではございません。ちょうど物理学的の機械と病院の中の器械の間ぐらい、過渡期の機械だと思っていただければよろしいかと思います。したがいまして、放医研での実績を御参照いただきまして、今後は日本のがんの治療施設にもっと便利でコンパクトでしかも安い器械を入れていただくことが必要であると思います。  それともう一つ、私が希望を申し上げたいことは、器械だけあれば治療がうまくいくというものではございません。これはやはりがんの診療体制の問題が重要かと思います。日本はがんセンター整備が着々と進行はしておりますけれども、こういう大型の器械を使った集中的な医療を行うという面ではまだ十分ではないと思います。やはりそういう協力体制が必要になるかと思います。これに関しては、日本の場合、各官庁の間の調整また研究者の間の協力ということが非常に大事でありますので、研究者の方は私ども自分で努力はしておりますが、特に官庁関係あるいは行政関係に有機的な連絡のもとに御支援いただくようにお願いしたいと思います。  以上でよろしゅうございますか。
  79. 飯野祐

    ○飯野参考人 私は、東京大学医科学研究所の附属病院の放射線科の科長をやっておりますが、私のところにもサイクロトロンがございます。いま梅垣先生がおっしゃいましたように、サイクロトロンの治療というのはまだその緒についたばかりでございまして、日本では、いまの梅垣先生の放医研のサイクロトロン、それから私の所属しております医科研のサイクロトロン、この二台だけが医療用として動いているわけです。  私どものところでは一昨年の十一月から治療を開始いたしましたが、その予算的なことということに関しまして、私としてはちょっと言いにくいことではありますが、非常な不自由を感じております。放射線治療を成功させるために必要なことは、正しい線量を正しい場所、つまり病巣にかけて、その周囲の正常組織にはかけないようにするということがその根底でありますけれども、これを実行するためには、私どもの単なる勘というようなものではなくて、いろいろな装置の力をかりなければならないわけです。その装置も、かつて五年前には最新式のものであっても、五年、六年たつに従ってもはやそれは古いものとなり、また新しいものが世の中の進歩に従って出てくるわけです。そういうものをどんどん使いこなして、そして正しい治療を行いたい、そういうふうに考えているわけです。私どものところでサイクロトロンが入ったのはもう四年も前になりますけれども、当時リニアックとかベータトロンなどの器械があちこちのがんセンターとか大学病院に設置されておりますが、そういうところでは、当然のこととしてシミュレーターと申しまして照射野を確認するテレビつきのエックス線装置が付属するはずのものでありますが、実は、それも私どものところではございません。  それからもう一つ、今度は、上手にかけようとしますと、ただ正面からかけるとか横からかけるとかいうことでなくて、斜めからかけるとか、あるいは一方向からだけでなくて二方向からあるいは三方向からかけて、いかにしてその病巣に線量を集中させるかという技術を使わなければならないわけですが、人間の体というのは非常に複雑でありまして、それからまた、人間の体の中の組織も種々さまざまであるわけで、それをされいに上手にやろうとすれば、やはりどうしても治療計画装置、コンピューターを使った器械ですが、そういうものの助けをかりなければ最善の治療というものはできないわけです。そういったような装置も私どものところでは要求はしておりますが、まだ設置されておりません。  そうなりますと、実際にサイクロトロンという非常に最高ないい器械を買っていただいても、そういう周辺機器を世の中の進歩に応じてどんどん与えていただかないと、私どもとしては非常に仕事がやりにくいということになるわけです。  それから、サイクロトロン本体でございますけれども、私どものところのは実はエネルギーが低いわけで、やはり放医研のような大きな装置、それからまた十分な周辺機器を備えて、それからまた、器械を動かすのは人間でありますから当然人間が必要になるわけで、そういう人の方の配慮も十分にお願いしたい、そういうふうに考えるわけです。  それから、いささかずれるかもしれませんけれども、日本全体として放射線治療を見た場合に感じられますことは、サイクロトロンという一つのそういう新しいものに力を入れていくというのも当然必要なことでありますけれども、地方によってはまだまだそのリニアックやべータトロンというそういう半ば普遍化したような装置の恩恵にすら浴せない患者が実はたくさんおるわけでありまして、そういう方の御努力も十分にやっていただきたい、そういうふうに思います。
  80. 原茂

    ○原(茂)委員 文部省には来てもらえなかったですか。——科学技術庁でわかりますか、東大の医科学研究所の放射線科を中心にした、何か知りませんが、こういったものの予算はどのぐらいかわかりますか。
  81. 山野正登

    山野政府委員 東京大学についての予算は私存じませんが、文部省の科研費の中のがん特別研究の予算というものを見ますと、昭和五十二年度、昨年度でございますが、合計で約三千万円余りといったふうなところになっておるようでございます。
  82. 原茂

    ○原(茂)委員 ここで、途中で聞いておきますが、放医研のサイクロトロンと東大のサイクロトロンのエネルギーの違いというのはどのぐらいあるものでしょう。どんなに違うのでしょう、大きさは。
  83. 飯野祐

    ○飯野参考人 放医研のサイクロトロンは重陽子で三十ミリオンエレクトロンボルト、私どものところですと十五ミリオンエレクトロンボルト、エネルギーからいえば約半分です。これは具体的にいままである治療器械と比べますと、放医研の場合にはいま非常にポピュラーに使われておりますコバルト60の深部到達性とほぼ同様ということです。それから私どもの器械ですと、コバルトまでいかず昔の二百五十キロボルトの深部治療装置、いまはこういう器械はどこのメーカーもつくってない、またどんどん使われなくなっている器械ですが、それより少しいい程度、そういうことになっております。
  84. 原茂

    ○原(茂)委員 これはまた後で予算の面で考えなければいけないのかもしれません。  ここで途中でお聞きしたいのですが、正式の治療をまだやっていないと思いますが、調査研究の過程で人間に対する治療がすでに両所ともに行われていると思います。後で出てまいりますが、資料がございましたが、これは私の記憶に間違いございませんか。東大の方でもおやりになる、それから放医研の方でもおやりになる、その人数はどうでしょう。実際に治療をしたのはいつごろか知りませんが、病気が違うのだと思いますが、人数は大体どのくらい治療したことになっていますか、両方……。
  85. 梅垣洋一郎

    ○梅垣説明員 私から放医研の場合について申し上げます。  昭和五十年の十一月から治療を始めておりまして、昭和五十三年、ことしの三月末までに三百六名の方を治療いたしております。
  86. 飯野祐

    ○飯野参考人 私どもは放医研より一年おくれまして五十一年の十一月から始めましたが、現在治療中の者が、いまちょうど六十五人目の治療を行っております。
  87. 原茂

    ○原(茂)委員 ありがとうございました。  そこで、素人でよくわかりませんが、原子核でございますが、これは陽子、中性子、パイ中間子など目に見えない多くの微粒子でこれができているのだろうと思います。そこで、陽子線というものはサイクロトロン、円型加速器の中で原子核をばらばらにして、そして取り出した陽子の流れ、ビームと説明されていますが、放射線のことですが、そういうものを陽子線と言うのかどうか、まず先に陽子についてお伺いしたい。
  88. 梅垣洋一郎

    ○梅垣説明員 陽子は水素の原子核と同じものでありまして、水素をイオンの形にしましてサイクロトロンに注入して加速いたしますと、非常に高いエネルギーの陽子を取り出すことができまして、中性子をつくる場合には、加速した陽子あるいは重陽子、重陽子は重水素の原子核でありますが、そのどちらかをターゲット、標的にぶつけて、そこで出てくる中性子を使っております。しかし、一次粒子である陽子、重陽子、あるいはさらにもっと重たい電気を持った粒子を治療に使うこともできます。  中性子と電気を持った陽子の一番の違いは、中性子の方は体をどこまでも突き抜けるという性質を持っておりますが、陽子、重陽子、重イオン、さらにパイ中間子というような電気を持った粒子は、体の中のある深さまで行きますとそのエネルギーに応じた深さでとまってしまう。とまる直前のところで非常に強い生物学的作用、これががんの治療、特に治りにくいがんを治療するのに役に立つと思われております。
  89. 原茂

    ○原(茂)委員 いま専門的にちょっとお話しいただいたわけですが、従来私ども放射線放射線と言っておりました、それがいろいろな形で治療に使われていたわけです。いまの陽子線なら陽子線と比べたとき、放射線といって従来使われたものは、いまお話のあったようにある対象に向かってずっとストレートに入るのじゃなくて、波のように体じゆうに広がっていく、そういうものと陽子線などを比較したときには非常に違いがあるのじゃないかという感じが、素人ですが、いたします。その陽子線の局部的なある対象に向かって非常に強く作用するということが利用されて、焼く力が強いというのでしょうか、がん治療に役立てるということに世界的にも方々の国がこれに力を入れておる、こういうように理解してよろしいものでしょうか。
  90. 梅垣洋一郎

    ○梅垣説明員 いま先生がおっしゃられたとおりでございます。現在の状態では私どもの研究に期待されているのは、第一にはいままでの力ではとても治らなかったような、どちらかというと進行した末期に近いがんの方を何とか治してほしいという希望が多いようであります。  しかし、将来のがんの治療のことを考えますと、もちろんそういう方を何とかして救うことは非常に重要と思いますが、もう少し早い時期にもっと治りやすい時期に確実に治す、しかも治った後が非常にぐあいよく治る、もとの仕事もできるし、社会に復帰できる、きれいに治すということが将来非常に大事になると思います。進行した大きながんを治すときには現在の速中性子線の治療はよろしいと思いますが、もっと小さいがんを、そこだけ集中的に放射線を照射しましてきれいに治すという意味では、将来陽子線、それから重イオン、パイ中間子などが大いに役立つと思います。その場合には、うまくいけば現在広く行われております手術の大部分もあるいはせずに済むかもしれないと思っております。
  91. 原茂

    ○原(茂)委員 ですから、従来一般に言う放射線による治療は、表面に近いがん、これはベータトロンから放出される電子線、体の内部深くあるがん、これはコバルト60のガンマ線とか高エネルギーのエックス線を使用されていただろうと思いますが、これはそう理解していいんですね。  聞くところによると、がん細胞も健康な組織と全く同じなんで、赤血球から酸素の供給を受けているが、がん組織では血管の障害を受けて血管が狭くなって、酸素の供給が少くなっていわゆる無酸素細胞の状態になる。この無酸素細胞という状態放射線に対する抵抗力が非常に強くて、コバルト60のガンマ線で照射してもほとんど効果が見られなかったのが、放医研の医療用のサイクロトロンによるいわゆる高速中性子線を使いましたところ、がん細胞の酸素含有量に関係なく強力な破壊力を示すので、今後高速中性子線によるがんの治療が従来の放射線治療の限界を突き破る大きな可能性があることまでは確定的にわかった段階だ、こう理解してよろしゅうございますか。
  92. 梅垣洋一郎

    ○梅垣説明員 ちょっといまのお言葉はほめ過ぎでありまして、それほど違うとは実は私は思っておりません。  というのは、確かにがんの組織が大きくなりますと、がんの細胞自体が余りふえ過ぎて栄養が追いつかなくなって、自分で腐ってくるという現象が起こりまして、そういう場合には酸素が非常に少くなって、その辺には確かに放射線で殺しにくいがん細胞がふえてくると思いますが、しかしそれでも上手に治療しますと、いままでのエックス線でもかなりのところまで治っております。ですから、これは相対的な比率の問題であります。全く酸素がない場合にはエックス線に対して中性子が二倍以上効き目が強いということがわかっておりますが、人間の体の中で絶対的に酸素がないということもありませんので、酸素の供給というのは相対的なもので、いろいろまじっております。  ただ問題は、中性子線の治療というのは分割照射と申しまして、何回かに分けてかけておるのです。何回かかける分割の仕方を上手にやりますと、効き目が一回かけたときは一倍半とか二倍であったものがだんだん上がってまいりまして、しまいにはエックス線に比べて五、六倍も効くということがよくございます。特にいま御指摘になったような効きにくいがん、酸素の供給が恐らく悪いと思われるようながんに対して分割照射を上手にやりますと、確かに数倍効くと思われる経験をしております。また場合によりますと、いままでのエックス線、コバルトと速中性子線を組み合わせて使う、そうしますと、これはどちらの放射線にもいいところがありまして、それを組み合わせるとより効果が上がる場合もございます。
  93. 原茂

    ○原(茂)委員 いまお話がありましたように、従来の放射線を治療に使う、エックス線、ガンマ線、電子線、こういうような放射線治療の主力になっていたものも、上手に使えば相当がん治療に効果を上げてきたし、それをまたいろいろミックスして使うというようなことでまた違った効果を上げてきた。したがって、現在、私が先ほど言ったほどそうはっきり断定的な状態ではないというふうな御説明かと思います。  ただ、私どもの知っている俗に言う胃がん、一種の腺がんというのでしょうか知りませんが、それとか、あるいはもっと骨だとか軟骨組織の肉腫というような放射線の非常に効きにくいがん、そういうようなものが現にあって、それに対してはいま研究されている中性子線でやる方が効果がある、この程度には理解してよろしゅうございますか。——よろしいそうでございますから、先へ進ませていきます。  この速中性子線というものの特徴なんですが、これはこういう特徴だと考えていいのでしょうか。放射線に強い種類のがんに対して強い作用を示すという。中性子を利用する治療には電子炉を使用して行われている脳腫瘍の治療がある。これは脳腫瘍の中に取り込まれた硼素を放射化して出てくるアルファ線で腫瘍細胞を死滅させることを目的としている。放射化に適した熱中性子使用されているというように物に書いてあるし、聞いておりますが、この方法というのは脳腫瘍だけに応用が可能なので、他のがんには別に応用ができない、あるいは研究してない、現状はどうなのかをちょっと伺います。
  94. 梅垣洋一郎

    ○梅垣説明員 ただいまお話しになりました熱中性子捕獲療法、これは日本では帝京大学の畠中教授が熱心に推進しておられます。この治療は現在のところ脳腫瘍が一番よろしい適応かと存じます。それは、脳の組織には脳血管関門というものがありまして、血管の中からいろいろな物質が容易に脳の組織に移行できないような仕組みがございます。ところが、そこに腫瘍ができますと、腫瘍のところはそういう血管の機能が壊れてしまいまして、血液の中に注入した、いまのお話では硼素でありますが、ボロン10と言っておりますが、そういう元素が腫瘍の中に取り込まれます。取り込まれた時期に熱中性子を照射いたしますと、そのボロン、硼素が放射化されますので、結局脳腫瘍だけが選択的に治療されるということで、非常によろしい治療になりまして、また実績も上がっております。  ただし、人間のほかの臓器にはいま申し上げた脳血管関門のようなものがございませんので、なかなかこの硼素を選択的に注入することができません。しかし、これについても研究が進んでおりまして、将来ほかの種類のがんに応用できないということはないと思います。  また、脊髄の周りを取り囲んでいるようながんを治療する場合には、むしろ脊髄のような神経組織に棚素が行かないということを利用して、脊髄の周りのがんだけ照射して脊髄を傷めないという可能性もございますので、まだこれから研究が必要かと思っております。
  95. 原茂

    ○原(茂)委員 よくわかりました。よくと言ったって本当のことはわかりませんし、専門的にはわかりませんが、私が勝手に頭に描いていることの一部一部が理解できるような気がするわけです。  そこで、中性子線によるがんの治療研究についてというその目的に向かっていままでずっと研究をしてきた過程をちょっとお伺いしておきたいのですが、昭和四十四年の五月でしたか、サイクロトロンによる中性子線医用懇談会の設置原子力委員会がまず認めて、そして四十四年六月になってサイクロトロンによる中性子線医用懇談会の報告がされて、同じく四十四年六月に速中性子線によるがん治療の研究推進を原子力委員会が正式に決定をして、四十四年度に特別研究促進調整費によって、速中性子線による悪性腫瘍の治療に関する特別研究を実施して、四十五年から五十年に放射線医学総合研究所、放医研の特別研究、中性子線等の医学利用に関する調査研究を行い、五十一年から五十三年、同じく放医研の特別研究、サイクロトロンの医学利用に関する調査研究を行うというように、五十三年までにこういった順序でおやりになってきて、そして途中で四十六年一月には放医研は医療用サイクロトロンの装置建設でフランスからその装置を買おうというので契約をした。四十九年には放医研の医療用サイクロトロンが完成した。五十年十一月には放医研医療用サイクロトロンが稼働して、速中性子線による治療予備実験が開始された。これは実際に予備実験がすでに五十年には開始されて、本格的な治療研究が五十一年にはなされている、こうなっていますが、いまそういう段階にいるのかどうか、これが一つ。もう一つは、五十三年度には陽子線による治療予備実験が開始される、こういうように言われていますが、これはそのとおりでございますか。——それでお伺いいたしますが、いまのこういった予備実験なりあるいは実際に治療の開始といいますか、やる場合に、厚生省に来ていただいていると思うのですが、来ていますか、厚生省——こういう中性子線などを実際のがん患者に利用するというときに、これは大学なり放医研が治療してみようということになれば、別に厚生省としては、この種の中性子線を使った治療を行うことに対して、ちょうど薬事関係の許可が要ると同じような何かそういうことをするのですか。全然関係なしに大学あるいは研究所は勝手に進めてよろしいものでしょうか。
  96. 本橋信夫

    ○本橋説明員 お答えいたします。  ただいまの中性子を用います治療に関しまして、研究開発段階におきましては薬事法上のいわゆる承認その他は必要ございません。
  97. 原茂

    ○原(茂)委員 いまお伺いしたのは、研究開発段階で、その途中で、私なら私のがんに研究開発が目的で治療ができるかどうか。先ほど言った三百名、今日までに六十五名というような人々に実際に照射を行って、研究開発の目的で治療するわけですが、こういう場合はどうですかということを聞いているのです。
  98. 本橋信夫

    ○本橋説明員 それは医療としての一環でございますので、薬事法上はそういう器械を業として製造販売しようとするものは厚生大臣の承認を受けて販売するということになるわけでございまして、医療の一環として医師が責任を持っておやりになる分においては薬事法はかかわっておりません。
  99. 梅垣洋一郎

    ○梅垣説明員 いま御指摘になりましたような新しい医療の手段を実験開発と申しますか研究するために、世界医師会では、ヘルシンキ宣言、さらにその後東京大会で改定さおました医師のための自主規制のような宣言がございます。それと、ICRPでは医療用の放射線を研究用に使うときのための勧告と申しますか、これだけのことは満足するようにということを書いた勧告を、ナンバー十五だったと思いますが、出しております。その後、WHOでも医療用放射線を新しく開発して医学に用いるときのための心得を勧告しております。私どもは、法規制の面では何もございませんけれども、以上の勧告を受けまして、それに共通に書いてありますことは、専門家及び第三者を交えた評価のための委員会をつくれということで、そういう委員会をつくりまして、そこで治療を始めてもよろしいかどうか、また治療の結果について評価していただく、また公表についてもその委員会の承認を得る、そういう手続を受けてやっております。  ただし、WHOの勧告にもありますように、将来このような委員会は国のレベル、地方自治体のレベル、さらに各研究所のレベルできちんとした形にするようにというような勧告が出されておりますので、日本の法規制においてもそういう対応がなされることをわれわれは希望しております。
  100. 原茂

    ○原(茂)委員 そこで一つお伺いしたいのですが、たとえば、私どもが聞いている範囲では、五十三年から陽子線による治療研究が開始される。確かにある一定の深さにあるがんならがんに対して、非常に大きな放射線が作用してがんそのものを殺していくというようなものが、たまたま先生方の知り合いか、放医研を知っているとか、東大の放射線科を知っているとかという患者、先生が知っていれば勧めるのかどうか知りませんが、運よくそこへ行って本当に後で効果があるもの、全部が知る前でも、私なら私がそうなったときに、ぜひやっていただきたいと言ったときには自由にやってくれるわけですか、研究材料にしてくださいと言えば。一般の者は、知らない者は知らないので、知っている者だけがたまたま運よくがんの最も先端的なこの治療を受けられたということになってしまうのですか、どうですか。
  101. 梅垣洋一郎

    ○梅垣説明員 いまのような新しい治療が本当によろしいかどうかということは、いまの段階では必ずしもお約束ができないわけであります。速中性子線治療のときもそうでありましたけれども、こういう種類のがん、こういう場所のがんで、この程度の進行状態、病期と申しますが、こういう方なら必ずこういう治療でよい結果が得られるはずだ、そう見込みをつけまして、こういうがんを適応にしようということで、クリニカルトライアル要領という規則をつくっております。それを先ほど申し上げました委員会の先生方、大体日本じゅうの放射線治療の主な専門家にお送りしてございます。治療は原則としてそういう専門家の方の紹介によるということにしております。直接おいでになった方も事情によっては治療しておりますが、なるべく専門家のルートを通した方がよろしいかと思っております。
  102. 原茂

    ○原(茂)委員 しかも、この治療を無料でおやりになっておるのですね。がんがうっかり治っちゃった、それもただで治ったなんてえらいことですからね。とにかくただなんですから、しかも何か先生方の紹介があればいいのですが、先生方がうっかり紹介を忘れたりそれを思い出さなかったりしたときに、患者の私どもからぜひ放医研のサイクロトロンによる治療を受けたいと、患者自身がたまたまこういうことを知って、東大でお願いしたい、放医研でお願いしたいと言ったようなときに、おやりいただく道はありますか。
  103. 梅垣洋一郎

    ○梅垣説明員 むしろいまのお言葉はありがたいぐらいでありまして、私どものところ、あるいは東大医科研にもたくさん紹介していただいておりますけれども、その中で本当の意味で速中性子線治療に適当な方、あるいはこれからの陽子線治療に適当な方というのは、案外少ないのであります。より分けるとかなり減ってしまう。そういう意味では、御紹介いただいた方のほかにもみずからおいでいただいた方とよくお話をしまして、適応と見た場合には積極的に治療するようにしております。いまのところはまだ能力を非常にオーバーするというほどにはなっておりません。
  104. 原茂

    ○原(茂)委員 これは速中性子線の治療というのはまわりの正常な組織に悪い影響がある、陽子線の場合にはそういうことがわりあいに少ない、こういう違いでもあるのでしょうか。
  105. 梅垣洋一郎

    ○梅垣説明員 おっしゃるとおりでございます。しかし、大きながんを治療しようと思いますと、大きながんというのは周りにがんが目に見えない顕微鏡的なレベルで浸潤しておりますので、どうしてもある程度広く照射せざるを得ない、広く照射すればある程度障害が伴うのはこれもやむを得ないことと思っております。陽子線の治療というのはがんの境界がはっきりしているもの、ということは、どちらかというと小さながんですが、確実にこの範囲に限局しているというものだけを適応に選ぶつもりでおります。
  106. 原茂

    ○原(茂)委員 現在の放医研のサイクロトロンの、いま研究されている陽子線のエネルギーというのはどのぐらいですか。
  107. 梅垣洋一郎

    ○梅垣説明員 現在七十ミリオンエレクトロンボルト、これを最大エネルギーの目標として整備を行っております。大体七十ミリオンエレクトロンボルトは出ると思います。
  108. 原茂

    ○原(茂)委員 表面からどのくらいの深さまで行くものでしょう。
  109. 梅垣洋一郎

    ○梅垣説明員 最大四センチぐらいまでであります。
  110. 原茂

    ○原(茂)委員 四センチ以上のがんというと、どういうがんなんでしょうか、もっと深部のがんといいますと。
  111. 梅垣洋一郎

    ○梅垣説明員 体のほとんど全部のがんは四センチより深いところでありまして、放医研のエネルギーはその点でははなはだ物足りない、不足ではございます。
  112. 原茂

    ○原(茂)委員 これはサイクロトロンの何かを大きくするというか、容量が大きいというか何か知りませんが、サイクロトロンという器械そのものの、何千万電子ボルトというか何か知りませんが、そういうものを大きくすることによってもっと深くいける、こういうものでしょうか。
  113. 梅垣洋一郎

    ○梅垣説明員 私は専門ではございませんが、放医研に入っておりますサイクロトロンの電源を増強いたしまして、要するにマグネットを強くすれば最大百ミリオンエレクトロンボルトまでは加速できる可能性はあるそうでございます。
  114. 原茂

    ○原(茂)委員 そうすると、陽子線による治療というものを最大限にいまのままで活用しようというと、三センチないし四センチよりもっと深いそれをどうしてもやりたいというときには、体を開いて悪いところへ直にやるということまでやるわけですか。現にやっているのですか。
  115. 梅垣洋一郎

    ○梅垣説明員 現在はまだやっておりません。現在進めております準備は、サイクロトロンから出てまいりますビームを水平の方向に引き出しまして水平の方向で治療するように計画しております。これが一番お金がかからないものですから。もしそれでよい結果を得ましたら、九十度曲げまして垂直の方向で照射することも考えております。その場合には、いまおっしゃられました、おなかを開いてかけるというようなことも可能になるかと存じます。
  116. 原茂

    ○原(茂)委員 陽子線による治療というものを五十三年度からやるというふうに物に書いてあるのですが、すると現在持っているサイクロトロンによる陽子線の治療、いろいろな装置が必要になるでしょうが、そういうものの準備ができて、とにかく五十三年度、ことしですが、五十三年度のいつごろからおやりになれるのかが一つ。  それから、いまの三センチ、四センチの程度しかできない、もっと深部にいっぱいがんというのはあるのですが、そのがんをやるための設備なり何かを別途に設置することをお考えになっているのかどうか。それはどうでしょう。
  117. 梅垣洋一郎

    ○梅垣説明員 五十三年度中に治療しようと思えばできないことはないと思いますが、必ずできるとはお約束できない状態にございます。というのは、その線量をはかる器械、それからビームを制御する器械をいまつくっておりますので、これが動いてみないと何ともわかりません。しかし、目標としては、五十三年度末ぎりぎりに一人でも二人でも治療ができるようにしたいと思っております。  それから、先ほどサイクロトロンのエネルギーを百ミリオンエレクトロンボルトまで上げる可能性があるとは申し上げましたが、それでもせいぜい七、八センチぐらいのものでありまして、人間の体の中のがんを治療するには不十分でございます。したがって、私どもとしては現在のサイクロトロンのエネルギーアップよりは、むしろ将来のもっと大型の加速器を建設していただくことを希望いたしております。それが放医研であっても、ほかの場所であっても、とにかく日本全体としてそういう大型加速器の建設をお考えいただけると将来非常に役に立つのではないかと思っております。
  118. 原茂

    ○原(茂)委員 飯野先生にちょっとお伺いしますが、東大のいまお持ちになっている、放医研の約半分ぐらいの力というのか何というのか知りませんが、器械でやる、実際にわれわれの知っているがんに応用されているのはどんながんに応用されているのでしょう。  それから、放医研でお使いになっているがんではこういうものをやっているんだけれども、東大ではこの程度のがんをいままでやって治してきたとか、効果があったとか、現在の限界としてはこれ以上のがんはできないとかいう点がもしわかりましたら……。
  119. 飯野祐

    ○飯野参考人 お答えいたします。  私どものは御指摘のとおりにエネルギーが低いので、やはりどうしても比較的浅いところのがんが対象になります。したがって、いままでやりました多くのものは、頭頸部と申しまして、結局、口の中とか舌とかのどとかそれから首、さらに下がりまして最近は肺がん、これも余り深いものあるいは中央に寄ったようなものは避けまして端っこの方のものなど、そういったようなものを主として対象にしております。  それで結局、うちの方で非常にやりづらいものと申しますとおなかになります。おなか、特に先生が先ほどおっしゃった、胃がんというお言葉が出ましたが、あれはうちの器械ではなかなかやれないところです。それからあと比較的簡単にやれそうなところでやっていないのは四肢、手足です。手足のものはうちの器械が——放医研は天井から真下に出るのですけれども、うちのは横から出ますので、ついこの間まではいすに座らせてかけておりましたので、位置を決めること、それからまた、その位置を次の治療のときに再現するということが非常に困難でありましたので、四肢の方はまだやっておりません。
  120. 原茂

    ○原(茂)委員 梅垣先生に後でいまの私の質問お答えいただきたいのですが、東大と違って放医研の場合には、いままでやった治療、がんで言うならこういう程度のがんができているし、将来はまた必要があれば開いてやってもいいんだが、たとえばどういうがんだということをお伺いしたいのですが、お答えいただきます。  飯野先生に次いでお伺いしておくのですが、先ほどおっしゃった周辺機器ですね、たとえば角度を変えていろいろなところからやりたいとおっしゃった。それは幾らぐらいかかるものなんでしょう。
  121. 飯野祐

    ○飯野参考人 これは簡単な治療用に開発されたコンピューターで、すでに日本で私の考えております社のものでもう二十数台入っておりますが、これが定価で三千五、六百万円のものだと思います。
  122. 梅垣洋一郎

    ○梅垣説明員 いまの御質問は治療成績のことだと思いますが、初めに全体のことを申し上げますと、昭和五十一年度末までに治療を受けて現在一年以上たっているという方について見ますと、全体で百七十三名おられますが、そのうちの七十七名、四四・五%、約半数足らずでありますが、その方々は現在一応治っております。治癒の状態にあります。また四十七名、二七%の方は非常に効果がありまして、治癒に近い状態までいった。その後再発したり亡くなったりした方もございますが、大体ほとんど全部の方には効果がありますが、その中で治り切った方というのは現在半数弱であります。しかし、これはサイクロトロンで治療を受けた方というのは、大部分いままでの治療では余り治る見込みのなかった方を対象にしておりますので、それを考えますと、かなりよろしいかと思います。  これを部位別に詳しく統計を申し上げればよろしいわけですが、これは部位別にしますと数が減ってしまいますので、余り従来の治療と比べて統計的の差が出るというところまではいっておりません。しかし、初めにもお話が出ましたが、骨肉腫とか軟骨肉腫とか悪性黒色腫、こういう従来の治療ではほとんど効き目がなかったと思われるような腫瘍に対しては、確かに非常によく効いております。また生存率も格段に向上しております。それから子宮がんで三期、四期と言われるような、どちらかというと進行した病気のがんの方ですが、この方々も効果が従来の治療よりはかなりよろしいので、治療成績が従来二〇%から二五%程度のものが倍の四〇から五〇%近くになるのではないかと期待しております。それから肺がんの中でもパンコースト型という名前がついておりますが、肩とか首とか縦隔とかそういうところへ連続的に浸潤して非常に痛みの強いがんがございますが、こういう方には従来の治療よりもずっとよく効いております。ただし、そういう方は体じゅうに広がることが多いので、治り切る方は少ないのでありますけれども、その中でも二、三人の方は治るのではないかと期待しながら見ております。  そういうわけで、放医研の場合には体の中の深いところをできるだけ治療しまして、東大とあわせて効果が上がるように考えております。
  123. 原茂

    ○原(茂)委員 梅垣先生のところには、飯野先生がおっしゃった角度を変えて照射できるような三千六百万円ぐらいの器械があるのですか。
  124. 梅垣洋一郎

    ○梅垣説明員 いまのお話は、治療を始める前に治療の計画を立てるためのコンピューターのお話だと思います。それは私どものところにございます。  ただ、私どもは将来はそれをもっと進めて治療の器械あるいは治療のビーム自体をコンピューターでコントロールすることを考えておりまして、陽子線治療はそのようなシステムにするつもりでおります。
  125. 原茂

    ○原(茂)委員 飯野先生、ぼくの聞き違いですか。先ほどの周辺機器というのは角度を変えて照射して治療するためじゃないのですか。
  126. 飯野祐

    ○飯野参考人 治療周辺機器は治療するための器械でございます。  ちょっと繰り返しになりますが、たとえばほっぺたにできたがんを治すときに、こちらからかけた方がいいか、こうかけた方がいいか、あるいはこうかけた方がいいか、いろいろなかけ方が考えられるわけです。そのときに、こうかけたらどういうふうに病巣のところに線量が集まって、周辺の正常部分には線量が集まらないか、それを線量分布と申しますが、それを機械で計算さして検討するわけなんです。これはこういう人間の複雑な体形と相まって普通の勘ではなかなかいかない。特に中性子の場合、特に私どもの場合はエネルギーが低く深部到達性が悪いですから、どうしてもそういうようなものの力をかりたいと思うわけです。
  127. 原茂

    ○原(茂)委員 ここで原子力局にちょっとお伺いしますが、去年の十月からもう一歩進んで重荷電粒子、パイ中間子といいますか、こういうもののがん治療についての加速器の医学利用に関する検討会を発足させて、すでに去年の十月から検討しておるというふうに発表されていますが、現におやりになっていますか。その検討会の進みぐあい、一体どんな結論を現在出しておるのか。
  128. 山野正登

    山野政府委員 この放射線の医学利用の分野というのは原子力平和利用の中でも大変重要な分野でございますので、私どもといたしましても原子力局の中にただいま先生がお述べになりましたような加速器の医学利用に関する研究会を設けまして、パイ中間子、軽イオン、陽子、中性子等の加速器を用いて発生する放射線を医学に利用することについて各種の研究をいたしておるわけでございますが、昨年の十月から現在まで検討をいたしまして、大体今月中、残り少なくなりましたが四月中に報告をまとめたいと考えております。  一方、現在原子力委員会で原子力開発利用の長期計画の見直しというのを進めておるわけでございますが、この研究会の検討の成果もぜひこの長期計画の中に盛り込んでまいりたいと考えております。  まだ最終結論を発表し得る段階ではございませんが、現在まとめようといたしております方向といたしましては、速中性子線の治療は実用間近にある、関係機関は協力してその実用化を進めるべきであるといった趣旨。第二点といたしましては、パイ中間子あるいは軽イオン等による治療はまだまだ相互間の優劣を判然と区別、判断するに至っていない状況でございますので、このような加速器の建設は今後なお慎重な検討を要する。さらに、今後この分野における放射線利用の重要性にかんがみまして、今後原子力委員会の中でもこのような研究の組織をつくるべきではないかといった提言が、この報告の骨子になる予定でございます。
  129. 原茂

    ○原(茂)委員 少し一般的なことをこれからお伺いしたいと思うのです。  私どもにはわかりませんが、がんがどういう状態発生するのかという原因についてウイルス説を唱える者、あるいは突然変異誘起物質によってがんが生ずるという説が、国際的にも日本でもどっちがどうと決まったか、このことをきょうお伺いするつもりはありませんが、このどちらの原因でなったがんであろうと、放射線による治療の効果は同じでしょうか。
  130. 梅垣洋一郎

    ○梅垣説明員 できてしまったがんに対する効果は同じだと思います。  ただし、その例外と申しますか、放射線とかやけどとかが原因になってがんができる場合がございます。そういう場合にはその場所が大変に荒廃しているといいますか、瘢痕化しているようなところにできたがんには放射線は効きにくいし、もちろん薬も効きにくいので、そういう場合には切って取るより仕方がないということもございます。しかし、いま御指摘になったウイルスとか突然変異は余り関係ないかと思います。
  131. 原茂

    ○原(茂)委員 原発がんといいますか、もとのがんのうちはわりあいに治療がしやすいのですが、先ほどからちょいちょいお話のある転移して広がった場合にも、同じように追いかけていけば結局効いて撲滅できるのですか。
  132. 梅垣洋一郎

    ○梅垣説明員 それはケース・バイ・ケースでございます。たとえば先ほどちょっと申しました骨肉腫のような肉腫は、原発巣も転移巣も同じように治療しております。この場合には、転移が出ましてもそれを照射したり切除したりしつこく治療することでかなり治っております。ところが、非常に速い、大変な勢いで体じゅうに広がるような転移性のがんに対しては、放射線の治療は一時は効きますが治すには無力なことが多いので、これは化学療法にまつよりほかないと思います。それでもなかなかむずかしいかと思います。相手次第だと思います。
  133. 原茂

    ○原(茂)委員 ついでに教えてもらいたいのですが、非常に速くぐっと転移していくがんというのはどういうがんですか、われわれの知っているがんで。
  134. 梅垣洋一郎

    ○梅垣説明員 肺がんなどは非常に速いです。それから、血液、リンパ系からできる肉腫も非常に速いのであります。どういうわけでそうなるのか私にはよくわかりませんが、やはり増殖の速い種類のがんは転移のできるのも転移が広がるのも速いようでございます。
  135. 原茂

    ○原(茂)委員 この器械といいますかサイクロトロンは非常に高価なものだと思うのです。したがって、治療にはコストを考えなければならないと思うのです。いま非常に高いものでしょうね。将来どうして安くするのか、それも研究はどこかでしているのでしょうか。
  136. 梅垣洋一郎

    ○梅垣説明員 私どものところの器械から治療費を計算するのは大変にむずかしいことでございますが、一応の目安をつけてみますと、一人の患者さんを治療するのに百万円から二百万円くらいかかっているのではないかと思います。これを現在のリニアックとかコバルトの治療、これは十万円から二十万円くらいのものでありますけれども、それの二、三倍以内におさめようというのが諸外国の目標でありまして、またそれに見合ったような器械の設計も出てきております。これは実現可能だと思います。
  137. 原茂

    ○原(茂)委員 安くするための一つの方法としては、物に書いてありましたが、大きな強力な器械にして、ビームを何本も同時に使うということで安くしていこうというようなこともあるのだそうですね。それを研究なさっていますか、一本でなくて何本も。
  138. 梅垣洋一郎

    ○梅垣説明員 私どもの方ではもう部屋ができておりましてその研究はできません。しかし、将来の加速器の研究にはぜひともそれを盛り込むべきだと思います。その場合、一つの加速器に幾ら治療室をつくるかというのは、これは加速器の出力とかなり関係がありまして、非常に出力の大きな加速器でありますと、部屋をたくさんつくった方が経済的になるかと思います。しかし、出力の少ない加速器ではそれほど効率は上がりません。もっとはっきり申しますと、重イオンのような放射線は非常に出力が大きいので、治療室をたくさんつくってビームを振り分けるというメリットが大きいかと思いますが、パイメソンの場合は、出力をたくさんとるというのが現在一番むずかしい問題でありますので、その辺がまだ若干疑問がございます。
  139. 原茂

    ○原(茂)委員 原子力局へ聞くのですが、ここらが原子力委員会がもっと本腰を入れないといけないのじゃないか。ある程度いいという方向が出ているものをきっちり、これとこれとこういう程度にというようなまだまだデータは出ていないでしょうが、いままでのお話を聞いても相当程度の治療度というものがあるわけですし、特にがんというものは非常に手がつかないような感じがしているのにある種の光明が与えられたような気がします。せっかくこういったものが、いまサイクロトロンが一つある。しかし、これは将来コストを考えたときに、やはり粒子の流れを取り出すようなものを、たくさん取り出すような強力なものにして、そして一遍に十人なり二十人の患者にもできるというようなことをしなければいけないというのは、素人の私でもわかるのです。原子力局が、原子力委員会がもとをつくるのかもしれませんが、このことに先ほど局長が、原子力局自身でも何か考えなければいけないということを発言されていましたが、その何かというのは、やはりこういったことこそいま至急に手をかけていって別途の研究をすべきじゃないかと思うのですが、どうですか。
  140. 山野正登

    山野政府委員 先生御指摘のとおりでございまして、原子力委員会としましても、従来のサイクロトロンによる研究の成果に加えまして、新しい陽子線等の線源によるがんの治療の研究というのは積極的に進めてまいろうという方針でございますし、また従来の長期計画に加えまして、恐らく新しい長期計画にもそのような趣旨が盛り込まれることになるというふうに私ども考えておりますが、科学技術庁といたしましても、この趣旨に沿いまして、私ども傘下の放医研の研究の拡充というものには格段の力を入れていきたいと思っておりますし、それから先ほども指摘がありましたが、放医研に加えまして、文部省傘下のまた各大学の研究あるいは厚生省傘下の研究といった各組織との協力関係というのも重視いたしまして、できるだけ大きな成果の上がるように努力をしたいというふうに考えております。
  141. 原茂

    ○原(茂)委員 また両先生に最後にお伺いするのですが、これは早期発見のがんと、何が早期か何がレートか知りませんが、遅く発見されたがん、早期発見のがん、いずれにも同じ効力があるというものかどうかが一つ。  それからもう一つは、がん発見のためにこれが利用できないのかどうか。これはとんでもないということなのかもしれません。がん発見ができるということは非常にありがたいことなのですが、それに利用ができないものかどうか。将来の問題も含めて、感じで結構です。  それからもう一つは、もっと進んで、がんを予防するという点で、これを何か、健康体と言ってはおかしいですが、われわれに照射してがんの予防に役立てることができないだろうか、何線でも結構ですが。それが三つ目。  最後に、がんの疑いがある、そういう時点で、何かまだ全然わからないがどうもいろいろな徴候からいって何かのがんの疑いがあるといったようなときに、これを利用することができないものかどうか。  この四つ、最後にお伺いをしたいのです。
  142. 梅垣洋一郎

    ○梅垣説明員 早期のがんと進行したがんの違いということでありますが、どんながんの方でも初めには早期のがんの状態があったものと思っております。最近の研究によりますと、がんになったばかりといいますか、がんか、がんでないかの境の状態というのは、案外その期間が長いということもわかっております。その時期でありますと、手術にしても、いまのような放射線の治療にしても、きわめて局部だけの限局的の治療で済みますので、体にさわりがない。そういうことをこの陽子線の治療も目指しておるわけでございます。  それから、そういう早期がんの診断に役に立つかということでありますが、この陽子線とかそれから荷電粒子線で、いまちょうどエックス線で写真を撮っておりますように写真を撮りますと、いまのエックス線よりももっと小さな変化が見つかるという可能性がございます。したがって、治療と同じように加速器を診断に使うということもこれから大いに役に立つことだと思っております。  それから、その疑いの時点でどうするかという問題でありますが、現在がんの集団検診が非常に進んでまいりましたが、これをやみくもにやったのでは費用もかかるわりに能率が上がりませんので、いわゆるハイリスクグループ、高危険度のグループをどうやってえり分けるか、そういう方を注意深く観察して、もしおかしければすぐ治療をやる、そういう発見体制の研究が、これは私の専門ではございませんが、このがんの方の研究の焦点になっております。もし、そういう国民のがんについての健康管理が徹底しますと、その最も適当な時期に適当な治療法を組み合わせるということで、費用も最小限、それから体に対する侵襲も最小限で、しかも最大の成果が上がるようになるかと思います。  がんが予防できるかという問題ですが、これも私の専門外でございます。しかし、現在できているがんのほとんど全部、もう九〇%以上が、実は環境とか毎日とっている食物とか空気とか、そういうものが結局は原因になって起こっているものだと思います。治療の方から言いますと、治療の必要がないぐらいにまで予防していただければ一番よろしいかと思いますが、しかし、これは医学が進歩しますとどうしても平均年齢が伸びますし、平均年齢が伸びれば全部がんになるのも、これはもうある意味ではやむを得ない。したがって、この予防は究極的にはむずかしいのではないかと思います。しかし、いまのようなハイリスクのグループの方を上手に管理して、芽のできた時期につぶすという治療、それには私どももこれから大いにお手伝いできるのではないかと思っております。
  143. 原茂

    ○原(茂)委員 ありがとうございました。  一応両先生ちょっと、あと最後にまた三先生にお願いしますが、ここで長野先生にインターフェロンのことに関してお伺いをしてまいりたいと思います。  これはきょうもお配りをいただきまして、後でゆっくり見せていただきたいと思いますが、このインターフェロンの発見、これは大変学術語を使っていろいろ説明をされるところだと思いますが、新聞なり週刊誌などで私どもは読んで、大体その程度には頭に入っているという前提でお伺いをいたしますので、同じことをお伺いをいたしませんが、ある種の抗体ができてそうしていわゆるウイルスの増殖を抑制したのではなくて、他の何かしらぬ、何かが増殖をとめたんだというところに、たしか長野先生のお考えになった非常に貴重なもとがあるように私は考えていますが、違いましたら後でお話し願いたいのですが、そのウイルスの抑制因子というものを、先生が五四年、昭和二十九年に発表されまして、インヒビトリーファクターと名づけられて、たまたまインターフェロンのイニシアルと同じような頭になったわけですが、そういったインターフェロンをずっと頭に入れながらおかしいなと思いましたのは、イギリスのアイザックス博士がおくれて同じようにお考えになって、二種類のウイルスは感染しないという、いわゆるウイルス干渉の研究をされたというのですが、この博士がインターフェロンと名づけたのがいま広く伝わっている、これが五七年。このインターフェロンが、侵入した、いわゆる冒された細胞に対してどういう抑制的なあれをするかどうかということも一応知らせていただきました物で見ました。  ただ途中で、これはたしか病院じゃなくて、スウェーデンのストランダー氏というのがこのインターフェロンを使って、何の病気を実験されたか知りませんが、抗がん剤としてこれを人間に使って効果があったということが、同時にあそこに書かれておりましたが、先生のお考えでは、このインターフェロンを使ってスウェーデンのストランダー氏が効果を上げたと言いますが、そのインターフェロンは一体どうしてつくったものだとお考えになりますか。これをまず先にお伺いしておきます。
  144. 長野泰一

    ○長野参考人 インターフェロンというものは、ウイルスがふえて病気を起こすのを抑えるものとして初めに発見されたのでありますけれども、その後ウイルスとは一応関係のない悪性腫瘍——悪性腫瘍のことをきょう便宜上がんと言わせてもらいますが、ウイルスとは一応関係のないがんが大きくなるのを抑えるという事実が多くの動物実験で明らかにされまして、これはインターフェロンを研究していただれも最初には予想しなかったことであります。  いまお話のありましたスウェーデンのストランダーという人が骨肉腫というがんに実際に使っているのですけれども、この骨肉腫という病気はウイルスで起こるという証拠は全然ありません。一応ウイルスとは関係のない、いわば本質的ながんであると思いますが、このストランダー氏らは一九七一年からやっておりますからもう数年になりますが、その治療成績は世界各国のがんの専門家、それから統計学の専門家、ウイルス学の専門家が寄ってたかって検討した結果、これは有効であると認めざるを得ないというのがいま大体世界の定説になっておりまして、どういうわけか理屈はわかりませんが、ウイルスの増殖を抑えるインターフェロンというものががん細胞がふえるのも抑えることは大体確かだと考えられております。
  145. 原茂

    ○原(茂)委員 このインターフェロンが抑制因子となって作用して、ふえることを防ぐというのですが、このインターフェロンをつくるのに、人間に効くものは人間の細胞からつくっていかなければいけない、まあ白血球を培養してつくるのだ、こう言われていますが、それがもし事実だとするなら、どういう方法でつくられたインターフェロンをこのストランダー氏は使ったんだろうかというのが疑問なんですが、その点はどう先生お考えになりますか。
  146. 長野泰一

    ○長野参考人 いまおっしゃったとおりインターフェロンというものは特別の性質がありまして、人間の体で働くためには人間の生きた細胞でつくられたインターフェロンでなければならないという奇妙な性質がありますので、人間に使うためには人間の生きた細胞を大量に集めて、その細胞につくらせるほかはないのであります。それで、基礎的なことでまだ研究をしなければならぬことはたくさんありますけれども、がんに効くであろうという希望が持てるようになった現在、動物実験ばかりにこってないで人間のためのインターフェロンを大量につくって人間の患者を治療する、応用実験といいますか、そういうことをぜひやらなければならぬ段階だと思います。  スウェーデンで実際に人間にやっておりますのは莫大な量を使っておりますが、それを供給しているのは、フィンランドの研究者がフィンランド赤十字の全面的なバックアップのもとに、大げさに言えばフィンランドじゅうの輸血用の血液から白血球だけを取り出しまして、その白血球にインターフェロンをつくらせて、それを全部スウェーデンに提供してやっているのでありまして、人間の細胞といいましてもそう簡単に人の体から細胞をもらうわけにはいきませんが、一番簡単にもらえるのは血液でございます。その血液の中の白血球、赤い方でなくて白い方の血球が幸いにインターフェロンをつくることがわかっておりますので、それをフィンランドとスウェーデンが協力してやっておるわけであります。  ですから、もう基礎研究はとにかくとして、いろいろな意見があるでしょうけれども、私個人の考えでは、この白血球で大量につくれる、つくったのは確かに骨肉腫という非常に悪性のがんには効いているという事実があるのですから、細胞としては白血球を選んで大量につくることを実際にもう始めるべき時期だと考えております。
  147. 原茂

    ○原(茂)委員 おっしゃるとおりでしょう。それで、そうすると人間の血液の白血球の量以外には何かをまぜてふやすということはできないので、結局、献血、われわれの血液をとって、その中にある白血球の量、大ぜいの人間から白血球をとっても、その量以外にはふえないという窮屈な状態が予想されるのかどうかが一つです。  それからもう一つは、いまおっしゃったフィンランドの国立血清研究所が供給をしているようですが、日本でも何か東京都の医学総合研究所か何か知りませんが、そこらで、やはり同じようにか知りませんが、培養細胞を利用してつくっているというのですが、これも現在では同じ効果が何かありそうな、あるいは使ってみてあったというようなことになっているのでしょうか。東京都の研究所で培養細胞により作成したもの、これが量産の可能性があるのかどうか。  これは薬事になるかどうか知りませんが、もしこれが使われているとするなら、先ほど厚生省にお伺いしましたと同じように、日本でもすでにインターフェロンとして、正式に使われることを前提として薬事として許可を与えて使っているのかどうか、これは厚生省から。  先生からはいま言った二点を先にお教えいただきたい。
  148. 長野泰一

    ○長野参考人 おっしゃるとおり白血球はどんどんふやすわけにはいきませんので、その意味では量は限定されるわけであります。しかし、日本のたとえば赤十字の組織は非常に大きなものでありまして、フィンランドのような小さい国で集めている白血球の何倍かの量は容易に集まるはずだと思います。  それから、白血球以外の細胞でつくれることもわかっておりまして、白血球にあらざる人の細胞でつくって、実際に人間に応用していることはもうあちこちで公表されております。アメリカ、ベルギーその他で成績が出ておりますが、効くようであります。しかし、それはふやすことのできる細胞なんですが、ふやすことがかなり困難であるために、大量につくってどんどん日常の医療に使うなんという段階にはまだはるかに遠い段階にあります。  そういう研究をしたい人は大いにしたらいいと思うのでありますが、私が申し上げたいのは、一般の社会の人から見ていまぜひしてほしいことは、こうやればできるということがわかっている方法で、つまり白血球を使って大量につくってがんに悩んでいる人に早く使う、そのことが肝心だと私自身は考えております。
  149. 本橋信夫

    ○本橋説明員 インターフェロンは、将来医薬品として使われるということになりますれば、厚生大臣の製造承認が必要になるわけであります。その申請に当たりましては、たとえば物理化学的な試験、薬理的な試験、毒性の試験、それから臨床のデータを添えまして、厚生大臣に申請をしていただくことになるわけでございます。そういたしますと、厚生大臣はその資料を中央薬事審議会に諮りまして、学問的に有効性、安全性を十分確認をいたしまして、そして答申をいただき、最終的には厚生大臣の承認がおりるということになるわけでございまして、承認が得られましたならば、それを製品として製造販売が可能になるということでございます。現段階では研究開発の途中でございますので、使用される医師が責任を持って患者に使用されておるということでございます。
  150. 原茂

    ○原(茂)委員 要するにインターフェロンというものは、薬事法によって許可をして正式の販売をされたものじゃないという理解でいいのですね。  いま言った東京都の総合研究所ですか、そこでもある程度つくっているというのですが、これを御存じかどうか、厚生省にもう一度と、それから製薬会社では、インターフェロンを誘発する物質の発見に何か希望を持って力を入れて、そして人間に無害な誘発物質の発見というものが見込みがありそうだというようなことを言っていますが、これはお聞きになっていますか。
  151. 本橋信夫

    ○本橋説明員 まず東京都の臨床医学総合研究所で行われております研究のためのインターフェロンは、東レ株式会社が提供をしておるというように聞いております。東レ株式会社は、先ほど先生おっしゃいましたようないわゆる培養細胞の方法でインターフェロンを産生しております。そのほかに、先ほど長野先生のお話にありましたような白血球を使う方法につきましては、厚生省も研究班をつくりまして目下研究をしておりますけれども、ミドリ十字という会社がございまして、そこでも研究を進めておるように聞いております。  それから、いま先生おっしゃいました誘起物質、誘発物質の研究でございますが、これはインターフェロンを取り出さないで、体の中で、インターフェロンを産生させるためのいわば誘発物質でございまして、幾つかの研究がなされておりますが、まだ研究の中途段階であるというように承知をしております。物によりましては可能性があるのではないかというふうに考えております。
  152. 原茂

    ○原(茂)委員 最後に、長野先生にお伺いするのですが、結局人間に効くインターフェロンをつくるためには、現段階では献血の量、すなわち血液から抽出される白血球の量、その量が多ければ多いだけいいのですが、その量によってインターフェロンの量が左右される。しかも、現在まだ厚生省が正式に認めるような状況になっていなくて、お医者様の考え方で使ってみようということで使われている段階である。使われた結果、日本でも人間に相当の効果があったということになっているのでしょうか。現在まだ白血球が自由に手に入らない、したがって人間に効くインターフェロンとしては作成ができない、したがって人間には治療用として抑制用として使っていない、だから効果はわからないという段階なのでしょうか。  先ほどの、フィンランドと比べたら国民の数が多いのですからという先生のお話は全くそうなんですが、残念ながら献血そのものがいま非常に窮屈な状態にあるようです。しかし、目的を違えて献血をやれば、まだまだ一億一千万の国民ですからできないことはない、確かに量はたくさんあるというふうに思いますが、現在までのところ、人間の白血球から培養されたインターフェロンががんの治療にかくかくの効果があったという段階でしょうか。白血球によるインターフェロンができるまでまだまだ人間に試みたり、あるいはその成果を期待はするけれども現在はつかんでいないという段階でございましょうか、その点お伺いします。
  153. 長野泰一

    ○長野参考人 京都の府立医大にインターフェロンの研究者がおりまして、それがただいまお話のありましたミドリ十字とか京都の日赤とかと協力して白血球を使っての人間用のインターフェロンをつくって、実際に人間に使って、その結果を学会で報告しておりますが、大量につくることができないものですから、何々病患者一名についてやったとか、二名についてやったとかいう非常に小規模なことしか行われていないのであります。一例とか二例とか、ちょっと世界の学会では物を言えないような小規模ながら、その結果は、私どもが見ると確かに効いていると思います。
  154. 原茂

    ○原(茂)委員 ありがとうございました。  最後に、三先生はいずれもがんと取り組んでこられたわけですから、われわれが知りたいことを簡単にお聞きしてみます。一口におっしゃっていただくことは無理でしょうが、一般的にがん発生の原因とは何か。済みませんが素人の私どもに先生方のお考えになっているところを最後にお教えいただいて、終わりたいと思うのです。
  155. 長野泰一

    ○長野参考人 実験用の動物にはビールスが原因で起こるがんがわりにたくさんわかっておりますが、人間のがん、一般に悪性腫瘍がどうして起こるのかはわかりません。世界じゆうだれにもわかりません。
  156. 原茂

    ○原(茂)委員 ほかの先生方ひとつ……。
  157. 梅垣洋一郎

    ○梅垣説明員 本当の原因はいまお話しのとおりわからないと思いますが、がんの発生促進する因子はかなりわかっております。それはもう環境の問題、酒、たばこ、特にたばこの問題、これはよくわかっておりますので、これはもっと日本の国策として本気で取り組まれるのがいいんではないかと私は思っております。
  158. 飯野祐

    ○飯野参考人 長野先生がおっしゃいましたように、私もがんの原因というのはわかっていないんだと思います。  そして、その促進因子ということに関しましては、梅垣先生がおっしゃったことと同感でございます。
  159. 原茂

    ○原(茂)委員 どうもありがとうございました。  終わります。
  160. 楯兼次郎

    楯委員長 参考人各位には、長時間御出席をいただき貴重な御意見をお述べいただきまして、まことにありがとうございました。厚くお礼を申し上げます。  どうぞ御退席ください。  林孝矩君。
  161. 林孝矩

    ○林(孝)委員 科学技術行政のあり方についてお伺いいたします。  わが国の科学技術の研究投資を金額的に見ますと、まず順調に推移をしておるように思われるわけでありますが、昭和五十年の水準、これはアメリカの十兆二千六百億円、ソ連の六兆九千億円、これは別としましても、西ドイツの二兆八千三百億円、フランスの一兆七千七百億円と比べてみますと、わが国の二兆六千二百億円、これは国際的にそう遜色がないくらい研究活動は活発であると私は思います。  科学技術白書の分析によりましても、アメリカ、西ドイツ、フランス、イギリス、日本、この五カ国の比較で、技術水準は、一九六〇年代後半のアメリカの一〇〇に対して日本が二二・二、第五位であったわけでありますが、一九七〇年代前半では四一・〇で第三位になっております。それから技術開発力水準、これは一九六〇年代後半で一四・六で第五位が、一九七〇年代前半では三〇・〇、第三位になっているわけであります。このように、日本の科学技術の水準は国際比較の上でも目覚ましく向上しつつあると言えると思います。  しかし、問題は、研究費の実質値が四十五年を一〇〇として四十七年ごろから二〇台のレベルで横ばいになっております。その伸びが見られないということであります。  また、その研究開発投資は民間が主導的で、四十年代半ばごろからは、国、地方公共団体の負担割合の水準が二六から二七%前後となってきております。わが国の研究投資は民間が七割以上を占めている。アメリカを初め先進主要国では、大体半分以上は政府関係による科学技術の投資によって占められているわけであります。わが国の場合こういう構造になっておりますので、この数年の経済情勢のもとでは、民間の投資停滞、これが起こりますと、直ちに国全体の研究活動にとってマイナスの影響を及ぼすことになるわけです。これは対外的要因とともに、近年の技術の停滞傾向をもたらした大きな要因であると思うわけです。  わが国の科学技術の置かれている現状、これはまさに「技術開発試練の時を迎えて」とサブタイトルのつけられました五十一年度白書が憂慮すべきと指摘しているとおりであると思います。政府関係の科学技術投資の改善について長官はどのように考えられておられますか、まずお伺いしたいと思います。
  162. 大澤弘之

    ○大澤政府委員 お答え申し上げます。  ただいま先生数字を挙げて御指摘をいただきましたとおりでございますが、一番新しい数字で申しますと、五十一年度の日本の研究投資は少しふえまして二兆九千億円という数字になっておるのでございます。民間の投資が、これだけ不況でございますから著しく停滞をしておるという私どもも観測をしておったのでございますけれども、数字の面自身では、従来どおりある程度の伸びはしておるのでございます。しかし、かつてのような民間投資の伸び率といいますか、そういうものはやはり御指摘のように経済不況でございますので期待ができません。したがいまして、私どもは、これからの日本の経済をしょって立つのは技術開発でございますので、民間の投資の停滞分を補うという言い方はおかしいのかもしれないのでございますけれども、政府が投資をしていかなければならない部面がますますふえてまいりますので、政府関係の研究投資の拡大に努めてまいらなければならないもの、こういうふうに考えておるわけでございます。     〔委員長退席、村山(喜)委員長代理着席〕  そういう分野につきましては、単にいわゆる大型と申しますか、開発研究と称されるものだけではございませんで、基礎研究の段階から、最近の基礎研究は非常に大型のものも出てまいっておりますので、そういう大型の基礎研究を含めまして基礎研究の段階から、開発研究にわたります各般の部面で研究投資をふやしていくように努力をいたしたいと考えておるところでございます。
  163. 熊谷太三郎

    熊谷国務大臣 ただいま政府委員からお答えしたとおりでございますが、全くわが国におきましては、政府関係の研究開発の投資額が非常に比率が少ないわけでございまして、ことにこういう経済情勢になってまいりますと、非常に民間の研究投資の額も停滞してくるわけでございますし、一面必要性はますます高まってくるわけでございますので、今後ともこの政府関係の研究開発の投資額をふやしてまいらねばならぬと考えておるわけでございます。したがって、科学技術庁関係のそういう費用はもちろんといたしまして、研究開発の総合調整を任務としております当庁といたしまして、政府全体の研究開発の投資額がもっと比率が上がっていくように今後努めてまいりたい、このように考えております。
  164. 林孝矩

    ○林(孝)委員 わが国の社会経済が直面する諸問題の解決に当たって、科学技術の果たす役割りは実に重要であると思います。長官は科学技術に期待されているものをどう認識されているか、お伺いしたいと思います。
  165. 熊谷太三郎

    熊谷国務大臣 いろいろございますが、一応気づいておりますようなことをまとめてみますと、第一に資源の安定的供給の確保と節約といった問題、これは言うまでもありませんが、わが国は非常に資源の乏しい国でございますから、その安定的な供給と、なるべく資源を有効に利用しますために節約しなければならぬという問題は、第一に考えなければならぬと考えております。  いま一つは、環境あるいは安全問題等の解決のために、われわれの仕事を進めてまいらねばなりません。  それから、国民の健康の維持、増進、このために科学技術庁としてのいろいろな職責を果たしてまいらねばならぬと思っております。  あるいは国際協調と国際競争力の確保、こういう問題につきましても、十分科学技術の面から配慮しなければならぬと思います。  それから、科学技術の先導的な、あるいは基礎的な研究開発、こういうものもきわめて必要であろうかと考えているわけであります。  これらを目標といたしまして、今後研究開発資金の一層の充実でありますとか、あるいは人材の充実等に努めまして、具体的な研究、科学技術の推進を図ってまいりたい、このように考えております。
  166. 林孝矩

    ○林(孝)委員 そこで、それを予算の面で、あるいは決算の面で考えてみますと、五十年度では科学技術振興費三千二百六十億円のうち、宇宙、原子力関係が千五百六十億円、四八%を占めております。また、五十三年度のエネルギー対策費予算の研究開発費の中で、原子力関係費が千三百四十億で、これに対して非核エネルギーが七十五億円、全体の五%にすぎないわけです。私、アンバランスと思うわけですが、欧米の例ではどのような比率になっているか、説明を願いたいと思います。
  167. 大澤弘之

    ○大澤政府委員 お答え申し上げます。  原子力と非核といいますか、その比率をとります数字が実はいろいろあるのでございますが、私どものところで一応妥当かと思ってとっておる数字でございます。  アメリカにおきましては原子力が五二%、非核エネルギー分が四八%。西ドイツにおきましては原子力が七五%、非核エネルギーが二五%。イギリスが原子力が五八%、非核エネルギー分は四二%。フランスでは原子力が六六%、非核分が三四%、といった程度になっております。これに比べまして日本の五十三年度予算、これはまたエネルギー研究開発費のとり方が実はいろいろあるのでございますが、一般会計でエネルギー対策費というふうにくくられておりますものの中での研究開発にかかわります予算額の比率を比べますと、日本は原子力が九四、非核エネルギーが六、大ざっぱな数字ではそういうことになっております。
  168. 林孝矩

    ○林(孝)委員 これも欧米と比較しますと、極端に非核エネルギーの開発予算というものが少ないと私は思うわけです。また、宇宙開発費が八百六十億円で、これも非核エネルギーの十倍以上になっております。科学技術庁は、原子力、宇宙、海洋開発などといったいわゆる科学技術庁の目玉といいますか、そういう項目に偏り過ぎているのではないかと思うわけですが、その点はいかがですか。
  169. 熊谷太三郎

    熊谷国務大臣 的確なお答えになるかどうかわかりませんが、予算といいますか費用だけの面から言いますと、あるいは御指摘のような金額になってまいりますので、その点からは非常に軽重があるかと存じますが、たとえばエネルギーの問題にいたしますと、やはりエネルギーということは食糧と並んで国民生活、今後の日本の経済発展、そういうものを含めまして欠くことのできないきわめて重要な問題でありますが、御承知のようにエネルギー源の大部分を占めております石油問題の前途を考えますと、早く代替エネルギーを充実していかねばならぬという問題になりまして、どうしても現在の段階では、核融合を含めまして原子力という問題を考えざるを得ないということになります。その結果原子力の平和利用の推進を図っていくということになりますと、どうしてもそちらに当面費用が要るというふうなことから、いまそういうふうな経費の大小が生じてくる面もあると思います。  これは必ずしもそのとおりだとは言えませんが、決して他の問題を軽視しているのではありませんが、そういう内容やほかの事情を考えまして、そういうぐあいに現在形の上ではなっているかと考えるわけであります。決してほかのものを軽視しているつもりではないと考えております。
  170. 林孝矩

    ○林(孝)委員 バランスの問題として私はこの点を指摘しておきたいと思うのです。問題は、研究開発投資について優先順位を決めて資源配分を行うときに、いわゆる国民のコンセンサスを得ながら、科学技術庁が本来の任務である各省庁の科学技術行政を総合調整する、こういう機能を発揮するか否かにあると思うわけです。そういうことが最も重要なことであると私は思うわけでありますが、この点に関しては長官はどのような見解をお持ちになっておりますか。
  171. 大澤弘之

    ○大澤政府委員 先生御指摘のとおりでございまして、私どもそういう努力をしておるのでございますが、具体的に申し上げますと、政府全体の科学技術の方向と申しますか、あるいは研究開発をいたしますときの課題といったようなことにつきましては、内閣総理大臣の諮問機関であります科学技術会議というところが、大体今後十年間を想定いたしましてどういう方向でどういう研究開発課題をというようなことの摘出をまずいたしております。科学技術庁は、これに基づきまして御指摘の総合調整と申しますか、研究開発の総合調整ということではいわゆる見積もり方針の調整ということで、各省が毎年予算に提出をいたしますもろもろのうちの主として研究開発に関するもの、私ども科学技術振興費と呼んでおるのでございますが、そういう部面につきまして各省との間での調整を進めます。このときには、ただいま申し上げました科学技術会議がまとめました意見と申しますか答申の線に沿ってそれを基本方針として、そうして各省の研究開発の方向を調整をしていくといったような具体的な仕事をしておるわけでございます。  おっしゃいますように、エネルギーの分野にあるいは宇宙開発の分野に科学技術庁予算自身は片寄っておるのでございますけれども科学技術庁自身はそういう先導的、基盤的な分野というのが役割りでございまして、国全体から見ますと、食糧の問題あるいは健康の維持の問題等々につきましても、先ほど大臣からお答えがございましたような、つまり基本的な方向といたしましては資源制約の克服なり国民の健康維持なりということを一つずつの柱にしておるわけでございまして、そういう全体のバランスをとりながら総合調整を進めておるということかと考えております。
  172. 熊谷太三郎

    熊谷国務大臣 いま申し上げたとおりかと思いますが、いろいろな事情も関係もあるかと思いますが、率直に申し上げまして、総合調整ということはきわめて重要でありますけれども、なおいまの科学技術庁としまして全力を挙げてはおりますが、まだ不十分ではないか、今後ともますます大いに努力しなければならぬ、このように考えております。
  173. 林孝矩

    ○林(孝)委員 資源の乏しいわが国のことでありますから、基本的には技術立国、こういう立場でいかなければならない、こう思うわけです。こういう問題を指摘いたしますのは、やはり今後の低成長下での研究投資の確保、それから適切な配分ということですね。これが最重要なことであると考えるからでありますけれども、現在の研究投資、それから人材などの投入、資源の配分、こうした状況を分析評価して最適配分のあるべき姿を求めていく。こういう意味において五年あるいは十年の中期あるいは長期計画、こうした所要資金を盛り込んだ科学技術庁の技術開発計画、こうした計画の策定ということを考えられる予定はあるかないか、また必要と認めるか認めないか、考えておられるならばそのことに対する概略をお伺いしたいと思います。
  174. 大澤弘之

    ○大澤政府委員 お答え申し上げます。  科学技術の分野が大変広うございますので、いろいろな分野といいますかいろいろなところで、先生いまお話がございましたようなことでの人材なり資金なりの動員計画と申しますか、積み上げを全部していくということは、実はなかなかむずかしゅうございまして、私ども科学技術庁は発足以来何回か努力をしてきているのでございますけれども、やはりミクロからの積み上げと申しますか、そういう点ではなかなかむずかしゅうございましてできていないのでございますが、マクロ的にはおっしゃいますような押さえ方をしていく必要があろうということでございまして、先ほども答弁でちょっと申し上げさしていただきましたが、科学技術会議が今後の十年間の日本の科学技術の基本的な計画だということで出しておりますものに、「長期的展望に立った総合的科学技術政策の基本について」という答申を出しておるわけでございます。この中では特に人材の量的な問題には触れておりません。人材に関しましてはむしろ質的な触れ方をしておるのでございますが、研究投資の面につきましては対国民所得比というようなことで、これは現在二・〇三%かと思いましたが、現在そういう水準にあるわけでございます。これを当面の目標として二・五%まで、長期的には三%の水準まで研究開発投資と申しますか、それを確保していくようにということを答申として出しております。  これの中身は、先ほど申しましたように幾つかの研究開発課題をいろいろな分野にわたりまして指摘をしておるのでございますが、実はその研究開発分野個々についての金額を積み上げるというようなところまでは、五年先、十年先というのは大変無理なのでございますので、できていないということでございます。  しかし、重要な分野、私どもいまエネルギーの研究開発の分野は特に重要な分野であろうということで、エネルギーの研究開発につきましては、そういうもう少しきめ細かな基本計画といったようなものをつくるべく努力をしておる段階でございますし、さらには将来食糧なりあるいは防災なりといった主要分野について御指摘のような計画というのがまとめられればこれはいいことだということで努力をしておるところでございます。  資金のことばかりではございませんで、どういう時期にどういう研究開発をなし遂げるといいますか、そういう目標づくりをして、その目標づくりに努力をする、あるいはその研究開発自身の評価をしていくというようなことの基本になるものということで、御指摘のような計画をつくっていくということは大変大事なことだと思って努力をしておるところでございます。
  175. 林孝矩

    ○林(孝)委員 科学技術庁は科学技術行政の総合的な調整の機能を推進していくという立場にあるわけですから、こうした計画策定というものは、日本と欧米諸国と比較しましても、日本の場合はそうした目標の設定であるとかあるいは計画の策定という面においてややおくれておる、私はそういう認識をしておるわけです。ですから、大いに積極的にそうした問題に取り組んでもらいたい。  それから、先ほど答弁のありました食糧問題、これについては他の問題と比較しますと、よりそうした必要性というものもわかりますし、策定しやすいのではないか、目標を設定しやすいのではないかというような気もするわけです。そういう意味において、長官のそうした問題に対する今後の取り組む考え方といいますか、それを伺っておきたいと思います。
  176. 熊谷太三郎

    熊谷国務大臣 全く仰せのとおりでありまして、特に食糧問題等につきましても十分ひとつ熱意を持って取り組んでまいりたい、このように考えております。
  177. 林孝矩

    ○林(孝)委員 次に、科学技術情報の全国的流通システム、NIST構想についてお伺いいたしますが、科学技術の高度に発達した現代においては、科学技術情報の的確な流通、効率的な利用、こうしたことは科学技術水準の向上だとかあるいは研究開発の成果を実用化に結びつけるためにも非常に重要なことであると思います。また、五十一年度科学技術白書を見ますと、科学技術の現下の情勢を分析した上で、技術開発の効率的な推進の課題の一つとして技術情報流通の促進、充実、こういうことを指摘しておるわけであります。昭和四十四年の諮問第四号「科学技術情報の流通に関する基本的方策について」に対する科学技術会議の答申、これは科学技術情報の全国的流通システムのNIST構想が提示されておるわけでありますが、それ以来約九ヵ年を経過しているわけであります。NISTの構想及び現在までの検討の経緯、それから具体的な進捗状況はどういうふうになっているか、伺っておきたいと思います。
  178. 杉浦博

    ○杉浦政府委員 お答えいたします。  科学技術情報を担当いたしております振興局長でございます。  いまの御質問でございますが、お話しのとおり、昭和四十四年「科学技術情報の流通に関する基本的方策について」という答申をいただいておりまして、その答申の翌年、早速でございますが、科学技術庁の中にNISTの検討委員会というのを設置いたしまして、NISTの構想の総合的な機能分析というようなことを始めたわけでございます。  この情報の問題でございますけれども、本質的に非常に複雑な問題を含んでおりまして、御承知かと思いますが、現在世界じゅうから出てまいります情報の数が大体四百万ぐらいじゃないかと言われておるわけです。その中でNIST構想を充実させますために情報のプールをできるだけ大きくするというようなことが必要になってまいりまして、情報の収集の仕方、こういった方法をどうするかという問題もございますし、それから情報を利用していただく意味合いにおきまして、ただ単に得た情報が右から左に渡されるという性質のものでございませんので、わりあいに高度な、テクニカルな検討が必要になってまいります。その意味におきまして、四十五年の検討委員会では、クリアリングと申しておりますが、ガイドしていく、そういった機能がどうあるべきか、あるいは専門センターをどういうふうな形にするのか、地域にサービスするのにはどうしたらいいかというような問題が取り上げられました。  それから、情報の問題は諸外国でも非常に関心が強くて、むしろ日本より進んでいるのじゃないかと思われますので、そういった諸外国の調査も並行して進めてまいりまして、そういった構想のおよその点ができましたので、昭和四十八年になりまして科学技術庁の中に懇談会を設置いたしまして、この構想を具体化しようという動きになってまいりました。  お話しのNIST構想でございますが、科学技術情報の懇談会の報告書としましてNIST構想が提示されたわけでございます。四十九年八月にそういった報告書が出てまいりまして、その八月以来この方針に沿いましてわれわれは鋭意その充実を図ろうと考えておるわけでございますが、総合センターだとか専門センター、データセンター、クリアリングセンター機構、そういったものをどのように有機的に関連をつけるか、そして日本全体の科学技術情報の円滑な流通をどういうふうに確保するかということにつきまして、専門家も交えまして相当精力的に現在充実しておるわけでございます。  その総合センターの中心といたしまして、御存じかと思いますが、日本科学技術情報センターというのがございまして、JICSTと呼んでおりますが、このJICSTを総合センターというところに位置づけまして、専門センター整備充実、今後どういう努力が必要であるかというようなことも並行して現在検討し、さらにいろいろと情報の蓄積を図っておる、こういう次第でございます。
  179. 林孝矩

    ○林(孝)委員 JICSTの整備に対する国の資金投入はどれほどになっているか、お伺いしたいと思います。出資金、補助金等五十年度、五十一年度、五十二年度の実績及び五十三年度の予算、これを伺いたいと思います。
  180. 杉浦博

    ○杉浦政府委員 お答え申し上げます。  JICSTは昭和三十二年に設立されまして、トータルで申し上げますと、五十二年度までに政府出資金と国庫補助金は百七十五億円でございます。  これを年度別に申し上げますと、五十年度は政府出資金が八億四千万、国庫補助金が約十二億円でございます。五十一年度は、若干丸くいたしまして、政府出資金が九億三千万、国庫補助金が十三億三千万、五十二年度は政府出資金が十一億、国庫補助金が約十六億でございます。御質問の五十三年度は、政府出資金が十四億、国庫補助金が約十七億、トータルいたしまして三十一億になります。
  181. 林孝矩

    ○林(孝)委員 JICSTに対しての財政資金の投入についてはわかりましたが、専門センターの方についての整備について、年次計画であるとか、あるいはその年次計画をどのような資金で行うか、こうした面についてはどのようになっておりますでしょうか。
  182. 杉浦博

    ○杉浦政府委員 お答え申し上げます。  専門センターと申しますのは、現在われわれ考えておりますのが十三ございます。これは、環境関係では国立公害研究所、原子力につきましては日本原子力研究所、船舶については船舶振興会、医学については国際医学情報センター、こういった専門センターが十三ございます。  ところが、この専門センターにつきましては、おのおののセンターの中で、これは機関によって違いますけれども、たとえば情報部であるとか技術情報部あるいは情報管理室というような情報関係を担当する部門がございます。それから、機関そのものが情報を提供するような情報センターというのもございます。機関によって色彩が違いますけれども、そういったおのおのの機関で専門情報を収集、処理、提供をしてもらっている形になっております。したがいまして、NISTの構想を実現しますために、いろいろそういった専門センターとの関連づけその他を研究する必要がございまして、NISTの情報サービス機関の連絡会というのを開いておりまして、そこでおのおのの専門センターとのつながりというようなものを現在検討しておるわけでございます。  それから、御質問の国の資金というのはどういうものが出ておるかということでございますが、たとえて申し上げますと、特許庁から日本特許情報センターに対しまして、特許情報の検索システムというものを開発するための助成金が出ておりますし、それから厚生省、通産省から医療情報システム開発センターに対しまして、その開発の委託というようなことで委託費が出ております。  ただ、各分野の情報の質が違いますので、全部にわたって年次計画が樹立されたという段階にはまだ至っておりません。しかし、これは将来そちらの方向に努力をしなければいかぬ、こういうふうに考えております。
  183. 林孝矩

    ○林(孝)委員 第一点として、財団、社団法人である専門センターに対しては国の補助等がなされているかどうか。  それから第二点は、諸外国の情報センターの推進整備の例として、民間機関に対して助成などが行われているかどうかということ。  それから第三点は、こうした民間の協力を専門分野において得ながら活動していくということは必要であり、重要であると思いますが、それぞれの分野の情報収集、加工、分析、サービス提供活動というものを全く民間に負う、こういうふうになってしまっているのがはなはだ多いが、これをどう考えるかという点。  それから第四点は、各分野のそれぞれの活動状況に差異がある。このばらつきに対してはどのような対策を考えているか。  この四点についてお伺いしたいと思います。
  184. 杉浦博

    ○杉浦政府委員 お答えを申し上げます。  まず、御質問の第一の点でございますが、財団と社団法人、こういった専門センターに対して国の補助等がなされておるかということでございますが、これは一部助成をしておるということでございまして、活動をバックアップするために、政府によるシステムの開発費というのが助成金として出ている程度でございまして、大きな声で出ているというふうに申し上げる段階にはまだないと思います。  それから諸外国の例でございますが、たとえば、これはアメリカでございますけれども、国立科学財団というのがございます。それから西独におきましては、情報ドキュメンテーション協会というのがございます。このアメリカの国立の科学財団は全額国の活動ということになっております。それからドイツでございますけれども、これもやはり連邦とか州の予算を使って研究を進めておるということでございます。それから科学情報につきましては、フランスにおきましても、やはり科学技術情報局というのがございますが、これも政府機関でございます。それからソ連でございますが、これがやはり全ソ科学技術情報研究所という研究所でございます。  これらがいろいろの機能を果たしておるわけですが、こういった機関から民間に対していろいろな活動の調整あるいは研究開発の委託というようなことが行われておるというふうに聞いております。  それから御質問の第三点でございますけれども、先ほども申し上げましたように、専門センターは現在十三ございますが、あるものは国の研究機関でございますし、いろいろございます。その十三の内訳ができておりますので申し上げますと、国の研究機関が三つ、それから特殊法人が二つ、認可法人が一つ、その他の七つが公益法人なわけでございます。  それで、われわれが専門センターとして育成をしたいど考えております機関が、機関の性格自身もおのおの違うものですから、全部一律に統一をして動いていくというのがなかなかむずかしゅうございまして、おのずから公益法人につきましては、その法人を抱えております各界の情報に対する要望だとか、あるいはそのセンターができた歴史的な経過、こういったことから見まして必ずしも足並みがそろっておりません。これはある程度やむを得ないかというふうに考えております。しかし、われわれのNIST構想をだんだんに進めていきまして、ある種の理想的な形まで進んでまいりますと、こういった違った足並みもやはりどこかで合わせていって、総合センターとして、あるいは日本全体として情報が非常に円滑に利用されるというような時期が来るように、現在研究中でございます。
  185. 林孝矩

    ○林(孝)委員 現在、わが国でデータセンターに相当する活動が行われているのは、自然観測データと物性データの分野だけであると言われておるわけでありますが、他の分野でもデータセンター活動の重要性が認識され始めております。したがって、その振興という意味においてどういう対応策を講じていくか、この点が一点。  それから、科学技術情報流通の効率化を図るためには、流通する情報を標準化する、また互換性を高めていくということが必要であると言われておりますけれども、その点についてはどう考えておられるか。この二点をお願いします。
  186. 杉浦博

    ○杉浦政府委員 お答えを申し上げます。  データセンターにつきましては、非常に専門的になって自信のあることは申し上げられませんが、情報の中に文献の情報と数値のデータ情報と二つございまして、数値の情報センターの流通体制の整備というのは、実は文献情報に比してまだ十分ではない、こういうふうに言われております。  それで、数値データにつきましては、自然観測データ、物性データ、それから生物系のデータ、工学系のデータ、こういったデータがあるのでございますが、物性データを初めといたしまして、これらのデータセンター整備に関する検討を現在順次進めている、こういうふうに申し上げたいと思います。  それで、自然観測データにつきましては、現在、国公立の調査観測機関あるいは大学、こういったところを中心といたしましたデータセンター活動がすでに相当進んでおりますし、物性データにつきましては、学会、協会あるいは国公立の試験研究機関、こういったところを中心といたしまして、現在育成に努めておる、こういうことでございます。ただ、生物系のデータとか、工学系のデータにつきましては、今後より一層の拡充整備が必要であるということで、この辺の拡充に努力をしたい、こういうふうに考えております。  それから、御質問の第二点でございますが、いわゆる科学技術情報の標準化でございますが、これにつきまして、過去においてどういうことをやってきたかという実例でちょっとお答え申し上げますと、これはまず標準化すべきテーマといたしまして、たとえば抄録を作成する、その作成をします場合の基準というものを決めた。これはいろんな形で情報が集まってまいります。長いのもあれば短いのもありますが、それをコンピューターに入れます場合に一つの定型的なものが要るわけです。そういった抄録をつくる場合の基準というのが、まず真っ先にできました。  それから、書物とか雑誌でございますが、こういった情報をどのように提供するかという、いわゆる書誌的情報の記述というのに二番目に取り組みました。  それからあとは、いろんな雑誌がございますが、そういった雑誌名の略記をどうするか、それから機関名の表記をどういうふうにするか、それから書誌情報の形式に関するレコード、これをどういうふうにするかというような点で、いろんな標準化の問題と取り組んでおりまして、これもむしろ現在まだ過程にあると言っていいかと思います。     〔村山(喜)委員長代理退席、委員長着席〕  こういった情報の標準化につきましては、いわゆる緊要性の高いものから順次取り上げていきまして、その普及に努めていくということを考えておるわけでございます。  ただ、この標準化を考えます場合に、われわれだけといいますか日本だけでできない面がありまして、国際的な一つの基準みたいなものもありまして、そういった国際会議ども通じまして、なるべく世界じゅうに通用するようなものにしていきたいという配慮も払いつつ、標準化の問題を進めておる次第でございます。
  187. 林孝矩

    ○林(孝)委員 それから、JICSTの情報資料の収集活動についてでございますが、雑誌の収集はどれほど行っているか、五十二年度の実績、五十三年度の予定をお伺いします。
  188. 杉浦博

    ○杉浦政府委員 お答え申し上げます。  雑誌でございますけれども、これは外国の雑誌と国内の雑誌に分けて申し上げますと、五十二年度では外国の雑誌を六千百種、それから国内の雑誌は三千三百種、合計いたしまして九千四百種収集いたしております。それから、五十三年度の予定でございますが、外国雑誌が六千三百種、それから国内雑誌が三千三百種、合計いたしまして九千六百種でございます。
  189. 林孝矩

    ○林(孝)委員 これらの雑誌の入手の形態、購入の予算額をお伺いするわけでありますが、さらに外国雑誌の収集について、丸善、紀伊国屋、こうした代理店を通してほとんどが購入されておると思います。こうした収集方法というもので、果たして満足な資料を収集することができるのかどうか、この点についてはいかがでしょうか。
  190. 杉浦博

    ○杉浦政府委員 お答えいたします。  まず、雑誌の購入の予算でございますが、五十三年度、外国雑誌用といたしまして、約一億六千万円の予算を持っております。それから、国内雑誌につきましては、六百万円でございます。  雑誌の購入の方法でございますけれども、これは外国雑誌のうちで市販をされておりますものにつきましては、書店を通じて購入をいたしておりまして、これは紀伊国屋、丸善といった専門店を通じて購入をいたしております。  それから、外国の学会、協会、研究機関等で発行されまして、会員のみに頒布というようなことで、一般市販されてないものにつきましては、交換等によって入手をするというふうに努めております。  現在のところ、国内の雑誌につきましては、いろいろ交換その他を通じましたり贈与を受けたりして収集いたしておりますが、現在こういう形態で収集を行っております。
  191. 林孝矩

    ○林(孝)委員 国内の場合は収集するのはさして余り支障がないと思いますけれども、特に外国の場合、こうした書店、代理店二つに頼っておるというだけでなしに、たとえば在外公館を通して外国の資料を収集するとか、またはJICSTの職員を海外に駐在させるとか、あるいは専門知識を持った人が収集に当たる、こうした充実した資料の収集を図るということによって、効率的に科学技術発展のための資料収集を考えていかなければならない、このように思うわけです。これはこちらの意見として申し上げておきます。見解があったら述べてください。  それから、技術レポートは現在どれくらい収集しているのかということ。  また、テクニカルレポートについてADとNASAレポートの収集が五十一年十月より中止したということを聞いておりますが、その理由はどうなっておりますか。これらの点について……。
  192. 杉浦博

    ○杉浦政府委員 お答えいたします。  まず、外国資料の収集の方策について、非常に激励をいただいたようなことでございますが、系統的に在外公館を通じて資料を入手するという方法はまだ講じておりませんけれども、五十三年度の予算で、やはりただ購入をするというだけで若干さびしいものですから、専門家を長期出張させようということで、予算措置もとりまして、パリに専門家を派遣をいたしまして欧州の資料を集めたい、こういう措置をとりました。  それから、技術レポートでございますけれども、現在技術レポートはアメリカにおいて発行されている技術レポートを積極的に収集いたしております。これはその国の発表の形態あたりも関係しているようでありますが、五十二年度におきまして、これはERDAと言っておりましたが、現在はDOEでございますが、そのレポート、それから米国の商務省発行のレポート、NASAのレポート、こういったレポートを年間約三万五千件収集をいたしております。  ただ、先生のお話がいまございましたけれども、NASAのレポートは現在まだ収集を継続しております。ただ、ADのレポート、これは国防省のレポートですが、このレポートは軍事に関するレポートとか、それから人文科学に関係する分野のレポートが非常に多うございまして、いわゆる科学技術情報センターで持っております文献速報、これはアイテムが決まっておりますが、そこに該当する専門分野のものが非常に少ないということで、五十一年の十月から収集を中止いたしております。
  193. 林孝矩

    ○林(孝)委員 時間が来ておりますので、この後、外国特許明細書等の問題、オンラインによる文献検索システムの問題等を省きまして、クリアリング業務について伺って、終わりたいと思います。  「公共試験研究機関案内」として、公共試験研究機関における計画の中で進行中の研究開発情報を網羅的に収集したものを発刊しているわけでありますが、この収集方法はどうしているのか、対象機関がどれほどあるのか、それから諸外国の例ではどうしているのか、さらに研究開発情報を各機関に義務づけて報告させることはできないのかどうか、また、各省庁において委託研究を行っているもののテーマ、概要報告を収集して発刊するつもりはないか、この点。  それと最後に、これは長官にお伺いして終わりたいのですが、NIST構想推進についての決意、以上の質問で終わりたいと思います。
  194. 杉浦博

    ○杉浦政府委員 お答え申し上げます。  クリアリング業務についての御質問でございます。  これは利用者が知りたいと思う、そういった事柄あるいは研究者と研究機関、こういった需要の方々に対して案内を申し上げるシステムでございますが、こういった現在実施もしくは計画している研究課題、それから研究概要、それから研究者名、それから研究の機関、こういったことにつきまして、約七百六十の機関から現在アンケートをとりまして、そういたしましてクリアリングサービスに供している次第でございます。現在、磁気テープ、これに入れましてJICSTのオンラインの文献検索システム、これによるサービスも開始しております。  ただ、いま御質問の、いわゆる各省庁において行っておる研究について報告を義務づけるということについての御質問かと思いますけれども、現在、各研究機関では年報その他で相当詳しい発表もしておられますし、それからアンケートの調査をやりました経験から、その過程で大きな障害といいますか、そういったこともございませんで、特に何かの形で強制をして出していただくというようなことでなくて、いまの体制で充実が図れるんじゃないか、こういうふうに考えております。したがいまして、こういった網羅的な収集に努力はいたしてまいりますけれども、現在の体制でしばらく努力をしたい、こういうふうに考えております。
  195. 熊谷太三郎

    熊谷国務大臣 今後NIST構想のためには一層その整備と充実に努めまして科学技術振興の基盤の整備に努めてまいりたい、このように考えております。
  196. 林孝矩

    ○林(孝)委員 終わります。
  197. 楯兼次郎

    楯委員長 次に、安藤巖君。
  198. 安藤巖

    ○安藤委員 私は、科学技術庁に、災害を防ぐ防災対策、特に地盤沈下によるゼロメートル地帯の防災対策についていろいろお伺いをしたいと思うのです。  しかし、漠然とそういうことをお聞きしてもなかなか話がかみ合わなくても困りますので、まず第一にお尋ねしたいのは、先ほどもちょっとお話がございましたが、科学技術会議というのがあります。このメンバーに科学技術庁の長官は入っておられるわけですし、この会議の事務局的な役割りを科学技術庁がやっておられるわけです。したがいまして、そういうことまではわかるのですけれども、具体的にこの科学技術会議でいろいろ諮問をされて答申をなされる、いろいろな計画が発表される、そういうものについて具体的にどういうような役割りを科学技術庁は果たしておられるのか、あるいは果たしていこうとしておられるのか、まずその点をお尋ねしたいと思います。
  199. 大澤弘之

    ○大澤政府委員 お答え申し上げます。  科学技術会議は総理大臣の諮問機関なんでございますが、成り立ちは、ただいま先生のお話がございましたように、総理大臣を議長にいたしまして、大蔵大臣、文部大臣、経済企画庁長官、科学技術庁長官と、そのほか日本学術会議の会長、学識経験の議員が五人というような構成でございます。そこで科学技術庁は、いま御指摘がございましたようにこの事務局をしておるのでございますが、科学技術会議は日本の科学技術の全体でございますので、大学の関係のことにつきましても所掌していると申しますか仕事の範囲に入っております。科学技術庁は大学の関係は入っておりませんで、これは文部省の所管ということになっております。したがいまして、科学技術会議の庶務の関係では、大学の分野につきましては文部省の方も一緒になってと、こういう取り決めがございまして、科学技術庁と文部省とが共同して庶務に当たる、こういうふうなことで進めております。  なお、この議員のもとに専門委員というのが置かれておりまして、現在百三十名ばかりの専門委員が任命をされております。この専門委員の方々はそれぞれの部会に所属をしておるのでございますが、部会の方は、総合部会、研究目標部会、エネルギー科学技術部会、ライフサイエンス部会、日本学術会議連絡部会という五つの部会で構成されております。専門委員の方々は、大学、それから国立試験研究機関あるいは民間の会社の研究開発なり技術開発なりを担当なさる要路の方といったような方々の学識経験者で構成をされております。いわば官学民、日本の総力を挙げて日本の方向を決めていくと申しますか議論をして、一つのまとまった方向を打ち出す、こういうような仕組みになっておるわけでございます。  そこで私ども事務局は、そういう委員の方々に御相談をしながらこの仕事をまとめていくといいますか、そういう形をして仕事を進めておるということでございます。
  200. 安藤巖

    ○安藤委員 いろいろやっておられるというようなお話しかないわけでございますけれども、具体的にたとえば普通第六号答申というふうに言われているようなんですが、科学技術会議昭和五十二年五月二十五日の「長期的展望に立った総合的科学技術政策の基本について」、幾つかの項目にわたっていろいろあるわけでございますけれども、その中のこれは第二部ですか、七十七ページのところですが、これは「重要研究開発の推進」というところの部で、その第二章の中にあるのですが、「課題と目標」というので、「洪水制御技術」というのがありまして、「堤防、護岸、水門等の河川施設管理に関する技術の高度化を図るとともに、」云々という、いろいろ洪水制御技術を開発するというようなことがうたってあるわけですね。  それからさらには、これはその前の五号答申と言われておりますが、「国民生活に密着をした研究開発目標に関する意見」というのがあるわけです。この中にはもちろんたくさんあるわけですが、八十ページのところには、最初に申し上げましたように海岸地域のゼロメートル地帯では津波、高潮、集中豪雨などによる浸水が頻繁に発生しておる。だから、地盤沈下地域では地震に対して家屋の倒壊、堤防の決壊などの危険な状態が進行していると言えるという指摘もなされておるわけです。  具体的に申し上げますと、たとえばこれは三重県の桑名郡長島町議会の「地盤沈下対策総合立法の成立促進に関する意見書」というものの中で、三重県桑名郡長島町では、この十年間の沈下量が一・八メートルにも及んでいるということなんですね。  それから、これは新聞記事なんですが、「地盤沈下のひどい愛知、三重両県の県境周辺の住民は、十人のうち九人までが「地盤沈下」ということばに、不安を感じている」、これは建設省の中部地建の調査でも出ているわけです。  そして、全国五十八地域での地盤沈下の地帯は、東京、神奈川、埼玉の広さに匹敵する八千二百十平方キロ、こういうような状況にあるわけですので、相当科学的なメスを入れてやっていただく必要があるのではないかというふうに思っておるわけです。  いまこういうことをやっているというお話がありましたけれども、そういう役割りを果たしておられるのですから、特にこういうような答申も出ておるわけですね。そしていま申し上げましたような現状がある。だから、これについて各省庁の技術陣を総動員するという意味で、科学技術庁の方が連絡調整ということもおやりになるんじゃないかと思うのですが、やはり連絡調整よりもさらにプロジェクトチームをつくってこういう面についてひとつ施策を出していこう、あるいはそれを推進していこう、そういうようなお考えはないのでしょうか。
  201. 大澤弘之

    ○大澤政府委員 御指摘がございましたように、「国民生活に密着した研究開発目標に関する意見」というのは、先ほど先生おっしゃいました六号答申の前の五号答申、昭和四十六年に出したものがございまして、それはちょうどいまの六号答申と相対応するような形でございます。それをさらにもう少し詳しく研究開発の目標を摘出してその必要性も訴え、各省と申しますかいろいろなところで国民生活に密着した分野での研究開発の努力を大いにしていただきたいというような趣旨で五号答申をブレークダウンするといいますか、より詳細に展開をするという形で「国民生活に密着した研究開発目標に関する意見」というのを出したわけでございます。  これにつきましては、科学技術会議でまとめますときには当然、いまお話がございました地盤沈下等の問題に関しましては建設省とか、あるいは港湾関係では運輸省とか、関係のところにも御相談をしながらこれをまとめていっております。先ほど日本全体を挙げてのコンセンサスということでございまして、各省庁もやはりそういう方向での努力が必要だということも認められた上で、こういう形にまとまっておるわけでございます。  私ども、これがまとまりました上では、総理大臣を通じまして関係各省庁大臣に、こういう意見が出たのでそういうことで努力をしていただきたいという通知といいますか、そういう手続もしております。科学技術庁はなかなかすべてのことができませんで、どちらかと申しますと先導的、基盤的な分野と申しますか、新しい分野に科学技術庁は取り組んでおるのでございますが、それぞれ所管の省庁もございますものですから、そういうところで、所管の省庁の分野でこういうことの大事な指摘をしてございますので努力をしていただきたいということで、進めておるわけでございます。
  202. 安藤巖

    ○安藤委員 それはわかっておるのです。それよりも一歩進んで科学技術庁がイニシアチブをとって、そして建設省あるいは運輸省関係の技術者を総動員して一つにまとめて、いろいろな面があろうかと思いますけれども、いま申し上げましたような実態にあるゼロメートル地帯あるいはマイナスメートル地帯ですね、この防災対策について技術的に建築工学的、土木工学的なことがいろいろあろうかと思うのですが、それを技術的に一遍追求する、そういうようなチームをつくろう、こういうことを具体的にお考えになってもいいんじゃないかと思うのですが、そういう点はいかがでしょうか。
  203. 熊谷太三郎

    熊谷国務大臣 一歩突っ込んでそこまで具体的に推進すべきではないか、こういう御意見でございます。なかなか実行の上では現在の科学技術庁の立場としてはそう容易なものではありませんが、今後そういう問題につきましてできるだけのもっと突っ込んだ推進をしていただくように、一つの例としてそういうプロジェクトチームをつくったらどうだというような御発言もあったわけでございますので、それぞれ専門の省庁におかれましてもっと突っ込んだなにをやってもらいたいということを推進したいと考えております。
  204. 安藤巖

    ○安藤委員 大臣の答弁が私の希望にちょっと近づいたようですけれども、各省庁にやってもらいたいということを強力に推進していきたいということはわかるのですが、私が申し上げておるのは、科学技術庁がヘゲモニーを持って、これだけとこれだけの技術陣は集まれということでおやりになることはどうかということなんです。  たとえば、もう一つお話しますと、中央防災会議というのがありますね。この会長は総理なんですが、この事務局的な仕事をやっておられるのは科学技術庁ではないわけなんですけれども科学技術庁の長官もこの委員の一人に入っておられるわけです。災害対策基本法に基づきましてこの防災会議では、防災の基本計画というのがいまできておるわけですけれども、それを毎年再検討するという作業をしておられるところなんですが、ここでの科学技術庁としての役割りというのがあろうかと思うのです。ここでも指摘されておりますのは、暴風雨あるいは豪雨による災害対策についての科学的なあるいは技術的な研究というのが項目としてちゃんとあるわけです。その中には当然ゼロメートル地帯の対策も入っていると思われるのですけれども、これについても科学技術庁も具体的な役割りを果たしていこうということをやっていただきたいと思うのです。  聞くところによりますと、これは国土庁が事務局的な仕事をやっておられると聞いておりますが、国土庁の方でも科学技術庁に対してそういうようなことをやってもらえたらいいんだがということを考えておるという話も聞いておるのです。  だから、そういう具体的な注文も出ておるのですから、科学技術庁として、もう一つ大臣にお尋ねしたいのですが、そういうゼロメートル地帯の防災対策について科学技術のメスを入れる、そして研究開発を進めて国民の生命、財産を守るために一はだ脱ぐというような方向で動き出していただきたいと思うのですが、いかがでしょうか。
  205. 熊谷太三郎

    熊谷国務大臣 先ほど十分御発言の趣旨に適切でない御答弁をしたようにお話しでございますが、要するに御発言の趣旨は、各省庁でなしに科学技術庁自身がそういうプロジェクトチームをつくってもっと突っ込んだ研究といいますか、そういう方向に進め、もっと積極的に科学技術庁が推進しろという御意見のように考え、それでよろしゅうございましょうか、そういう御発言だったかと思うわけでございます。具体的にプロジェクトチームをつくってこうやりますということは、ちょっとここでまだお答えはいたしかねますけれども、そういうこともひとつ今後考えてみるということで御勘弁いただきたいと考えるわけでございます。  また、防災問題につきましても、そういう趣旨でもっと積極的に科学技術庁自身がいろいろな問題の推進に当たれ、こういう御意見かと拝聴いたしましたので、ひとつそういうふうに努力してまいりたいと考えております。
  206. 安藤巖

    ○安藤委員 それでは、大臣から相当前向きの御答弁をいただきましたので、ほかの問題に移りたいと思います。  午前中も問題になりましたが、原子力船むつ」の問題について二、三お尋ねをしたいと思うのです。  佐世保港での修理の問題がいまいろいろ言われております。これも午前中話題になりましたが、佐世保での修理ができるかどうかという見通しについては、いまの段階ではどんなものでございましょうか。
  207. 山野正登

    山野政府委員 先生御承知のように、五十一年初めに、内閣総理大臣から長崎県知事佐世保市長に対しまして、「むつ」の修理港として佐世保港を選定して、これを受け入れてほしいという協力の依頼をいたしておるわけでございます。これに対しまして、昨年の四月に、県の方は県議会の議決をもって、また市の方は市議会の議決をもちまして、県としては核燃料棒を抜いて入港するということを条件に受けよう、また佐世保市の方は、実質的には政府の要請どおりこれを受けてもよろしいという結論に達しておるわけでございまして、この異なった結論に対しまして、政府はいろいろ対応の仕方というものを過去一年間検討してまいったわけでございます。その間、長崎県知事が新しく原子炉封印という表現で今月の初めぐらいから地元の関係漁協等に話をしておられる経緯がありまして、これについて先週私どももその内容というものをいろいろ承ったわけでございます。  私どもとしましては、五十一年の初めに協力をお願いしました際に先方に提示しました内容で十分安全に作業はできると現在でも確信いたしておりますが、せっかく地元のそういう新しい御提言もございましたので、これを現在、日本原子力船開発事業団を中心にいたしまして、受け入れ可能なりや否や検討しているさなかでございまして、この検討の結果を待ちまして、今後地元にいかように要請していくかいかないかといったようなことを決めようといたしているわけでございまして、この経過をいましばらくお待ちいただきたいというふうに考えております。
  208. 安藤巖

    ○安藤委員 ということですのでこれ以上お尋ねはいたしませんが、いまのところいろいろ話は進めているけれども、まだいつからというまでには至ってないということですね。  そこで私お尋ねしたいのは、いろいろ問題に思っておりますのは、佐世保修理をすることについて、漁連の人たちあるいは知事さんあるいは市長さんあるいは地元の人たちといろいろ交渉しておられるというようなことも聞いておりますけれども、見返りの問題として魚の値段を下げないように、あるいは下がらないように対策を立てるとか、あるいは漁業基金を設けてやるとか、さらには長崎新幹線を優先して着工するとか、佐世保重工を救済して地元の一つの景気対策にするとかいうような話が出ているのですね。これは新聞にいろいろ報道されておりますから、それがどうかということはお尋ねいたしませんけれども、そこで私が問題にしたいのは、御承知のように「むつ放射線漏れ問題調査委員会というのがありまして、これは昭和五十年五月十三日に調査報告書というのを出しておるわけです。全部言うておる時間的な余裕がありませんからほんの一つぐらい申し上げたいと思うのですが、たとえばこの中で再三にわたって、「地元の住民に、責任をもって積極的に接触、交渉し、正確な情報を伝え、理解を深めるよう努力をすること。」という指摘があるわけです。そのほかにも同様趣旨指摘が二カ所ほどあるのを知っております。その後、同年の九月十一日、原子力委員原子力船懇談会、ここでもやはり、これは六ページですが、「定係港近隣の地元住民を中心とする」、これはむつ市のことも入っておるわけなんですけれども、「国民の理解と協力を得ることが大前提である。このため、政府および事業団は、きめ細かな対応を通じて地元住民の理解と協力を得るよう最善の努力をすべきである。」という指摘ですね。この地元の「理解と協力を得るよう最善の努力をすべきである。」あるいは正確な情報を提供すべきであるということは、何も見返り、いま私が申し上げましたようないろいろ報道されておりますような見返りをやれということではないと思うのですね。だから、この見返りをやるということになりますと、安全性の問題についてあるいは原子力船の今後の発展の問題について、エネルギーの転換の問題について、いろいろ正確な情報提供をして協力を求めるという方向ではなくして、活弧つきの安全性を、えさを見返りにして押しつけるやり方ではないかと思うのですね。だから、これは大いに考えていただかなくちゃならぬ問題だと思うのですが、いかがでしょうか。
  209. 熊谷太三郎

    熊谷国務大臣 御発言の御趣旨はごもっともでございます。さっき今後の見通しにつきましてお尋ねがありまして、政府委員からちょっとお答えしたようでございますが、この見通しにつきましては、先ほど申し上げましたように長崎県から新たな御提案がありまして、そういう御提案どおりにやってもちろん安全が保たれ、それから県民の方の御理解が得られるようなことになるかどうか、これについては技術的にいま鋭意検討いたしておりますので、その結果を待たなければその御提言に応ずるかどうかということもまだ決まっておりませんし、そういうことに応ずることができるかどうかということが先決問題でありまして、それからどうなるかということについては、まだその見通しははっきりしていないわけでございます。  ただ、長崎新幹線がどうしたとか、魚価の安定策云々の問題あるいは佐世保の重工業のいわゆる救済でございますか、そういう問題を見返りにして、そういう本筋の問題をそれとすりかえるといったようなことでは大変いかぬじゃないか、こういうお話でございますが、これはもうわれわれが当初から考えているところでありまして、本筋におきまして、安全性につきまして県内の御理解があることが先決問題、それで受け入れていただくということになってから後に起こる問題であると思っております。  ただ、その中で魚価云々の問題でございますが、これは、「むつ」が入港いたしましても漁民の方々にそういう御心配をかけることはないと思っておりますが、ただ、風評によって万々一にもそういうことがあるとしましたらこれは非常にお気の毒なことになりますから、この点は別に見返りということではなしに、そういう場合に対する処置はこれはやはり講じておかねばならぬと考えております。  それから、いまの佐世保重工の救済云々、これは全く別個の問題でありまして、最近に起きました問題でございますが、「むつ」受け入れをされる、そういうことを考えていただく長崎県とされましては、あるいは佐世保としてはどういうお考えを持っておられるか、これはわかりませんが、われわれとしては佐世保重工を救済するからほかの本筋の問題は差しおいて入港、修理させていただきたい、こういうことは申し上げるつもりはないわけであります。  ただ、それが修理が仮に実現するとしますれば、いろいろな意味におきましてそういうふうな面の一部メリットはあると考えておりますし、もちろんそういう考え方から、一年前に佐世保あるいは長崎県が条件つきながら入港、再修理を認めるというような御意見が出てきたものと思います。しかし、われわれとしましては、佐世保重工の救済のためにそういうほかの本筋の問題をうっちゃって再修理させていただきたいということは絶対に申し上げぬつもりでおります。  それから、新幹線の問題でございますが、これは昨年来からいろいろ取りざたされておる問題でございます。これは国が、整備計画ができました新幹線五線につきましていよいよ工事実施するかどうかという問題、そういう段階に来ておりますので、われわれとしましてはやはり本筋の問題を認めて入港、再修理を認めていただくということであれば、その後において五線の中に間違いなしに長崎県の新幹線をひとつぜひ実行してもらいたいということであればわれわれとしてできるだけの御協力はしたい、こう思っておりますが、これも新幹線を必ずやるから、そのかわりに修理港を認めよ、そういうふうなことは在来からわれわれとしては考えておりませんので、見返りと本筋の問題とを混同するようなことは厳に慎まねばならぬ、このように考えておるわけでございます。
  210. 安藤巖

    ○安藤委員 いま大臣のおっしゃったように、魚価の安定の問題とかそれから造船業界の振興の問題については、別途政府が責任を持って経済政策をきちっとやるという方向で解決すべき問題だと思いますね。だから、大臣がいまおっしゃったような方向でこれからも進めていただきたいと思います。  時間がありませんから二つほどまとめて質問いたします。  先ほど申し上げました調査報告書、この中で幾つかの指摘原子力事業団の構成なりあるいは遮蔽設備の欠陥なりあるのですが、そのうちの人の関係だけについてちょっとお尋ねしたいのです。  こういう指摘があるのです。これは調査報告書の三十一ページからあるのですが、「問題となっている原子力第一船の遮蔽について、原子炉安全専門審査会で審査を担当したのは、環境専門の委員を主体とするグループであった。」「遮廠設計の専門家と評価された人はいなかった点を指摘しなければならない。」これは重大な指摘だと思うのです。「この結果、審議内容は往々にして、結果に対する責任と役割の限界をあいまいにしたまま、無難な結論が採用される恐れがある。そこで、この審査と現実的な設計との間には、工学的・技術的空げきの存在する可能性が考えられる。」中性子が漏れたのもすき間から漏れたというのですが、ここのところにもすき間があるのじゃないかと思うのです。  それから、原子力船事業団の中の役員の人たち、これは責任の一貫性がないという指摘があるのです。原子炉部長さんとか技術部長さんとかそういう人たちは官庁あるいは民間から出向してきているので、二、三年で交代していっている、こういうことでは一貫した責任体制がとれていないではないかという指摘もあります。  それから、原子力船むつ」の乗組員の編成の問題についても、今後第二船とかなんとかいうような計画もあるということを聞いておりますので、そういう点からもこれは問題にすべきじゃないかと思うのです。「原子力船むつ」の乗組員の編成については、各種のデータを収集するための試験航海を行うものであるから、原子炉主任技術者を含む特別に強化した原子炉要員の組織を編成し、保安上の責任体制を十分に確立するとともに、技術上の問題の処理や記録に万全を期することが必要である。」これはその必要性が満たされていなかったから、こういう「必要である」という指摘がなされていると思うのです。  私が先ほど言いましたような住民の人たちに正確な情報を知らせる、そして理解を得、協力を得るというためには、こういう指摘にもきちっとこたえていかなければならぬと思いますね。そして、そういうことを踏まえて、いまやるべきことは国民的な合意をつくっていくことが一番大事じゃないかと思うのです。  午前中も大臣は、原子力船をしゃにむに改修を急ぐことは考えていないということも答弁しておられるわけです。だから、いま私が強調しているのは、やはりこの問題について国民的合意を得るということに最大の精力を注ぐべきじゃないか。その中身はいろいろありますけれども、いま私は人の問題だけにしぼってお尋ねしたのですが、それはどういうような対応の措置がいまとられようとしているのかということだけをお尋ねして、私の質問を終わりたいと思います。
  211. 牧村信之

    牧村政府委員 私の担当の安全審査関係について、先に御答弁さしていただきます。  確かに御指摘をいただきました原子力船むつ」の審査実施いたしました当時には、遮蔽設計に関しましては原子炉物理であるとか原子炉工学の分野の専門家に見ていただきまして、非常にむずかしい遮蔽の専門家がいなかったことは事実でございます。このような御指摘をいただきましたので、その後審査員を増強いたしまして、五十年度に遮蔽の専門家の方を発令して、現在では原子炉施設の遮蔽審査に当たりましてはこの先生が中心になられて遮蔽の安全審査を進めておるという段階でございます。  そのほか安全審査会といたしましては、審査員の下の実際のいろいろな計算等をお手伝いをする調査員の制度がございますけれども、その方々を増強するというようなことで安全審査の機能の向上を図っておる次第でございます。
  212. 山野正登

    山野政府委員 「むつ」の放射線漏れ問題調査委員会の指摘に従いまして事業団の技術能力を拡大強化する施策というのも講じておるわけでございますが、放射線漏れ問題調査委員会の指摘というのは三つあると思います。  一つは、技術的責任を持つ一貫した開発体制をとるべきこと、第二点が、経験に裏づけられた高い技術能力を有する組織とすること、最後が、技術的知識等が集積され、技術開発を確立する機能を整備する必要がある、この三点が指摘されておるわけでございます。  これに対しまして、私どもはその後昭和五十年の四月と六月に理事長と理事の全員の入れかえを行いまして、新しく技術担当理事には経験の豊富な実務家、具体的には原研の研究所長並びに造船メーカーから経験豊富な実務家を起用いたしております。  それから、技術部門の再編成につきましては、技術データを一元的に管理し、これを蓄積する機能を充実するとか、あるいは今後行います安全性の総点検遮蔽改修実施といったふうな具体的業務にマッチした形に再編成をするといったふうなことを実行いたしております。  それからさらに、理事の担当業務につきましても、この責任の所在を明確にするという意味ではっきり担当を分けまして、責任体制を明確化いたしております。  また、ただいま先生御指摘の出向者の問題でございますが、確かに出向者は多いわけでございますが、この派遣期間をできるだけ長くいたしまして、この経験を十分に活用できるように派遣元にも協力を依頼いたしております。  それから、実験航海に対します体制の整備、具体的には乗組員の編成の問題でございますが、これも今後実験航海に備えましてどういう編成にするかということを検討してまいるわけでございますが、この検討委員会で指摘されておりますように、原子炉主任技術者といったふうなものを含めまして、実際に今後技術上の問題の処理あるいは記録の保持といったふうなことに万全を期し得るような陣容をもって乗組員の編成を行いたいというふうに考えておるわけでございます。
  213. 楯兼次郎

    楯委員長 次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。     午後五時二十二分散会