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1978-04-11 第84回国会 衆議院 決算委員会 第4号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和五十三年四月十一日(火曜日)     午前十時三十分開議  出席委員    委員長 楯 兼次郎君    理事 宇野  亨君 理事 國場 幸昌君    理事 葉梨 信行君 理事 森下 元晴君    理事 馬場猪太郎君 理事 原   茂君    理事 林  孝矩君       津島 雄二君    西田  司君       野田 卯一君    高田 富之君       村山 喜一君    春田 重昭君       安藤  巖君    大成 正雄君  出席国務大臣         文 部 大 臣 砂田 重民君  出席政府委員         内閣法制局第三         部長      前田 正道君         文部大臣官房会         計課長     西崎 清久君         文部省初等中等         教育局長    諸澤 正道君         文部省大学局長 佐野文一郎君         文部省体育局長 柳川 覺治君         文部省管理局長 三角 哲生君         文化庁長官   犬丸  直君         文化庁次長   吉久 勝美君  委員外出席者         環境庁企画調整         局環境保健部保         健業務課長   大池 真澄君         環境庁自然保護         局鳥獣保護課長 野辺 忠光君         大蔵省主計局司         計課長     石井 直一君         林野庁指導部森         林保全課長   小田島輝夫君         自治省行政局公         務員部公務員第         一課長     坂  弘二君         自治省財政局指         導課長     土田 栄作君         自治省財政局調         整室長     小林  実君         会計検査院事務         総局第二局長  松田 賢一君         決算委員会調査         室長      黒田 能行君     ————————————— 委員の異動 四月七日  辞任         補欠選任   安藤  巖君     松本 善明君 同日  辞任         補欠選任   松本 善明君     安藤  巖君 同月十一日  辞任         補欠選任   山口 敏夫君     大成 正雄君 同日  辞任         補欠選任   大成 正雄君     山口 敏夫君     ————————————— 本日の会議に付した案件  昭和五十年度一般会計歳入歳出決算  昭和五十年度特別会計歳入歳出決算  昭和五十年度国税収納金整理資金受払計算書  昭和五十年度政府関係機関決算書  昭和五十年度国有財産増減及び現在額総計算書  昭和五十年度国有財産無償貸付状況計算書  (文部省所管)      ————◇—————
  2. 楯兼次郎

    楯委員長 これより会議を開きます。  昭和五十年度決算外二件を一括して議題といたします。  本日は、文部省所管について審査を行います。  まず、文部大臣から概要説明を求めます。砂田文部大臣
  3. 砂田重民

    砂田国務大臣 昭和五十年度文部省所管一般会計及び国立学校特別会計決算概要を御説明申し上げます。  まず、文部省主管一般会計歳入につきましては、歳入予算額三億八千八百五十二万円余に対しまして、収納済歳入額は四億九千百七万円余であり、差し引き一億二百五十四万円余の増加となっております。  次に、文部省所管一般会計歳出につきましては、歳出予算額二兆四千七百四十五億二千七百二十八万円余、前年度からの繰越額百五十五億一千八百九十五万円余、予備費使用額八十億六百八十一万円余を合わせた歳出予算現額二兆四千九百八十億五千三百五万円余に対しまして、支出済歳出額は二兆四千七百九十五億五千四百二十万円余であり、その差額は百八十四億九千八百八十四万円余となっております。  このうち、翌年度へ繰り越した額は百六十四億一千四百万円余で、不用額は二十億八千四百八十四万円余であります。  支出済歳出額のうち主な事項は、義務教育費国庫負担金国立学校特別会計へ繰り入れ、科学技術振興費文教施設費教育振興助成費及び育英事業費であります。  次に、これらの事項概要を御説明申し上げます。  第一に、義務教育費国庫負担金支出済歳出額は一兆三千三百七億八千五百三十六万円余であり、これは、公立義務教育学校の教職員の給与費等及び教材費の二分の一を国が負担するために要した経費であります。  第二に、国立学校特別会計へ繰り入れの支出済歳出額は五千八百三十億一千百七十二万円余であり、これは、国立学校大学附属病院及び研究所管理運営等に必要な経費に充てるため、その財源の一部を一般会計から国立学校特別会計へ繰り入れるために要した経費であります。  第三に、科学技術振興費支出済歳出額は二百三十六億九千三百十三万円余であり、これは、科学研究費補助金日本学術振興会補助金文部本省所轄研究所及び文化庁附属研究所運営等のために要した経費であります。  第四に、文教施設費支出済歳出額は二千二百三十九億七千二百九十八万円余であり、これは、公立の小学校、中学校特殊教育学校高等学校及び幼稚園の校舎等整備並びに公立学校施設等災害復旧に必要な経費の一部を国が負担または補助するために要した経費であります。  第五に、教育振興助成費支出済歳出額は二千百二十四億八百六万円余であり、これは、養護学校教育費国庫負担金義務教育教科書費初等中等教育助成費産業教育振興費公立大学等助成費学校給食費及び私立学校助成費に要した経費であります。  第六に、育英事業費支出済歳出額は三百五十五億四千七百五十万円余であり、これは、日本育英会に対する奨学資金の原資の貸し付け及び事務費の一部補助等のために要した経費であります。  次に、翌年度繰越額百六十四億一千四百万円余についてでありますが、その主なものは、文教施設費で、事業実施不測日数を要したこと等のため、年度内支出を終わらなかったものであります。  次に、不要額二十億八千四百八十四万円余についてでありますが、その主なものは、教育振興助成費で、初等中等教育助成費を要することが少なかったこと等のため、不用となったものであります。  次に、文部省におきまして、一般会計予備費として使用いたしました八十億六百八十一万円余についてでありますが、その主なものは、義務教育費国庫負担金に要した経費等であります。  次に、文部省所管国立学校特別会計決算について御説明申し上げます。  国立学校特別会計収納済歳入額は七千七百八十三億二千九百二十万円余支出済歳出額は七千四百八十五億一千八百八十六万円余であり、差し引き二百九十八億一千三十三万円余の剰余を生じました。  この剰余金は、国立学校特別会計法第十二条第一項の規定により二十億五千三十二万円余を積立金として積み立て、残額二百七十七億六千万円余を翌年度歳入に繰り入れることとして、決算を結了いたしました。  次に、歳入につきましては、歳入予算額七千四百五十八億二千五十四万円余に対しまして、収納済歳入額は七千七百八十三億二千九百二十万円余であり、差し引き三百二十五億八百六十五万円余の増加となっております。  次に、歳出につきましては、歳出予算額七千四百五十八億二千五十四万円余、前年度からの繰越額百二十六億八千百九十一万円余、昭和五十年度特別会計予算総則第十一条第一項の規定による経費増額五十三億九千百八十七万円余を合わせた歳出予算現額七千六百三十八億九千四百三十三万円余に対しまして、支出済歳出額は七千四百八十五億一千八百八十六万円余であり、その差額は百五十三憾七千五百四十六万円余となっております。  このうち、翌年度へ繰り越した額は百二十七億七千八十万円余で、不用額は二十六億四百六十六万円余であります。  支出済歳出額のうち主な事項は、国立学校大学附属病院研究所及び施設整備費であります。  次に、これらの事項概要を御説明申し上げます。  第一に、国立学校支出済歳出額は四千四百七十五億三千七百五十万円余であり、これは、国立学校管理運営研究教育等に要した経費であります。  第二に、大学附属病院支出済歳出額は一千三百五十億七千四百七十四万円余であり、これは、大学附属病院管理運営研究教育診療等に要した経費であります。  第三に、研究所支出済歳出額は五百三億九千六百九十五万円余であり、これは、研究所管理運営学術研究等に要した経費であります。  第四に、施設整備費支出済歳出額は一千百二十七億五千七百十二万円余であり、これは、国立学校大学附属病院及び研究所施設整備に要した経費であります。  次に、翌年度繰越額百二十七億七千八十万円余についてでありますが、その主なものは、施設整備費で、事業実施不測日数を要したこと等のため、年度内支出を終わらなかったものであります。  次に、不用額二十六億四百六十六万円余についてでありますが、その主なものは、国立学校で、国家公務員共済組合負担金を要することが少なかったこと等のため、不用となったものであります。  なお、昭和五十年度予算執行に当たりましては、予算の効率的な使用経理事務の厳正な処理に努力したのでありますが、会計検査院から不当事項八件の御指摘を受けましたことは、まことに遺憾に存じます。  指摘を受けた事項につきましては、直ちに適切な措置を講じましたが、今後、この種の事例の発生を未然に防止するため、より一層指導監督の徹底を図る所存であります。  以上、昭和五十年度文部省所管一般会計及び国立学校特別会計決算につきまして、その概要を御説明申し上げました。  何とぞよろしく御審議のほど、お願い申し上げます。
  4. 楯兼次郎

    楯委員長 次に、会計検査院当局から検査概要説明を求めます。松田会計検査院第二局長
  5. 松田賢一

    松田会計検査院説明員 昭和五十年度文部省決算につきまして検査いたしました結果の概要説明申し上げます。  検査報告に掲記いたしましたものは、不当事項八件でございます。  検査報告番号二号から九号までの八件は、いずれも補助事業実施及び経理が不当と認められるもので、その内容は、学校給食費及び公立文教施設整備費国庫補助金に係る事業におきまして、全部または一部が補助の対象とは認められない事業実施したりしていたものでございます。  なお、以上のほか、昭和四十九年度決算検査報告に掲記しましたように、児童生徒急増市町村公立小中学校施設特別整備事業費補助金の交付について処置を要求いたしましたが、これに対する文部省処置状況についても掲記いたしました。  以上、簡単でございますが説明を終わります。
  6. 楯兼次郎

    楯委員長 これにて説明の聴取を終わります。     —————————————
  7. 楯兼次郎

    楯委員長 これより質疑に入ります。  質疑の申し出がございますので、順次これを許します。森下元晴君。
  8. 森下元晴

    森下委員 この前甲子園で春の選抜高等学校の大会がございました。砂田文部大臣はさっそうと登板いたしまして始球式をやったわけでございますけれども、非常にいい球をほうりまして、歴代文部大臣の中では一番よかったのじゃないかと非常に好評でございます。高目の球でございました。ただ、私ちょっと不服でございましたのは、かなり左へカーブいたしまして、キャッチャーは多少無理をして取ったとテレビを見まして感じたのですが、教育行政はやはり中立でなくてはいけない、ど真ん中の球を実はほうってもらいたかったのです。  そこで、まずこの教育行政についてお尋ねしたいわけでございますけれども教育は他の行政よりも、やはり国家百年の計を担う非常に重要な行政でございます。そういうことで、まず大臣教育行政あり方について、簡単で結構でございますから御所見をお伺いしたいと思います。
  9. 砂田重民

    砂田国務大臣 教育目的が青少年、児童生徒の人格の完成を目指すものであることを常に心にとめおきまして、右からも左からも政治的な圧力というものが教育に加わらないように中立を守ってまいるのが教育行政を預かってまいります私の本分だと心得ております。  いま始球式ボールが左へいったとおっしゃいましたけれどもキャッチャーからいえば右へいったのでありまして、ボールの道よりはピッチングフォームの方をほめていただきたいと思います。
  10. 森下元晴

    森下委員 そこでまず初めにお伺いしたいのですが、国の最高教育機関はもちろん大学でございまして、わが国大学制度はもう世界一である、施設といい、また大学進学率といい、まことに教育日本であるとわれわれは自負するわけでございますけれども、その大学の中で無法地帯と称すべき地域がございまして、法治国のわが国としてはまことに憂慮すべき例が出ております。過去の教育行政が甘過ぎたのではないだろうかという感じを持つわけなんです。  調査によりますと、全国五十四大学、これは国立私立を含んでおりますが、これらの大学の一部施設極左革命暴力集団の活動の拠点になっておる。そして鉄パイプやあるいはこん棒その他の武器を蓄えてここを拠点にしております。私立大学は国の経費は余り出ておりませんけれども国立の場合は国民税金最高学府を建てておる。この中が暴力集団拠点になっておる。中には学校の講堂で教育できないという学校もございます。  こういうような状況下で、学園の自由とか大学自治とかいうたてまえもございますし、これはもちろん憲法では規定しておらないわけなのですが、習慣的にそうなっておるわけなんです。したがって、警察にしても検察にしても学長の要請がなくては出動しないというのがたてまえでございますけれども、やはり学園自治とか大学自治を守るためには、私は文部省当局が毅然たる態度をとるべきである、こういうふうに考えるわけでございますけれども、この大学自治という問題、それから大学施設の一部が無法地帯となっておって、先般の成田の問題のように、いわゆる農民の農地を失いたくないという純真な反対闘争に便乗いたしまして、そういう勢力が無謀な行動をする、いわゆる暴力的な革命予行演習をやる、こういうことでは困ると思うのです。だから決して成田の紛争もこの大学の一部の不法地帯、これとは関連がないことはないように思いますけれども、この点について御所見をお伺いしたいと思います。
  11. 砂田重民

    砂田国務大臣 各大学はおおむね平穏な状態にございますけれども、一部の大学におきましてその一部の施設占拠等不正状態が見られますことは、きわめて遺憾なことでございます。  現在大学施設占拠をされておりますところは、国立では東大、京大の二校でございまして、私立で駒沢大学施設占拠されているという報告を受けております。これらのほか、国立大学の十二校、公立大学で三校、私立大学五校にありまして、自治会室あるいはサークル室、寮などの不正常な使用状態が見られるわけでございます。  文部省といたしましても、やはり大学当局の自主的な努力によってこれを改善解決をしてもらわなければなりませんので、学長会議あるいは事務局長会議文部省が出席いたしますようなあらゆる会議の場を利用いたしまして、学内の秩序維持暴力行為の根絶について従前から努力を続けてまいったところでございます。  また、東大に見られるあの精神病棟問題等は八年もの長きにわたっておりますので、国民税金によって一つの目的を持って建設された国有財産目的どおりに使われていないということは、国民の納得するところではございません。もう遷延を許される事態ではございませんので、かつてないような措置ではございましたけれども東大総長にも文部省まで来ていただきまして、いま申し上げたようなことを、私から直接改めてお話を申し上げ、一日も早い解決についての指導助言を行ったところでございます。大学当局も非常に真剣に取り組んでおりまして、昨年の暮れから教授会が全面的に支援体制を組んで、医学部長あるいは病院長等占拠をしているグループと強い姿勢で交渉を続けてまいりますことを教授会全体でバックアップしておりまして、逐次改善の道を進んでいると考えるわけでございます。  成田のことをお触れになりましたけれども成田のスケジュール闘争的なことが判明をいたしました段階で、主として関東地区の三十六の大学に対しまして強い指導助言を行いました。学生等大学に集まって成田襲撃等拠点大学がならないように、暴力ざたに及ぶような器具等大学に置かせないように、そしてまた大学には劇薬物等があるものでございますから、これの監視体制等について強い指導助言を行いました。大学当局も真剣に取り組んでくれておりまして、今日まで密接な連絡を取り合っておりますけれども成田のあの事件の拠点大学がなったという報告は、これら大学からもまた警察からも受けておらないところでございます。  ただ、このような事態は、先ほども申し上げましたけれども国民の皆さんの納得を得られることではございません。今後もひとつなお一層強い姿勢で、大学当局が本当の学問自治を確立するために自主努力によってこれの解決努力してくれますように強い指導助言を続けてまいる決意でおります。
  12. 森下元晴

    森下委員 そこで、佐野大学局長にお尋ねしたいと思います。  東大精神病棟の問題でございますけれども、この不法占拠を例にとりました場合に、これはほかの委員会でも幾たびと審議されておりますので詳しいことは省きますけれども文部大臣東大精神病棟の例を見た場合に、これは完全に学問の自由は侵されておるというような見解を申されております。  そこで、私ども決算委員会はやはり会計検査行動検査というものに非常に強い関心を持っておるわけでございますけれども、二月に会計検査院東大精神病棟調査に参りました。これは会計検査でございますから、学校であろうとまた建設現場であろうと全国各地検査に行くのは当然でございます。これは別に学園自治とか学問の自由を侵すことはもちろんございませんし、特に東大精神病棟は貴重な資料がございます。国宝的な人間の脳標本がございます。また精神病に関する貴重な文献があるわけでございますけれども、こういうものを含めて検査に参ったわけでございますけれども、残念ながら検査院報告を聞いてみました場合に、精神神経科病棟一階五十五室のうちの四十九室、二階十室のうちの六室が占領されておる。二月十六日には占領されている一階の四十九室と二階の六室には立ち入れず、立ち入れたのは四つの部室である。そこにあった六点の備品をチェックしたが、それ以外にはできなかった。検査しようとしたが、できなかったというわけでございます。もちろん警察の護衛を受けて入る方法もあったと思いますけれども、できるだけ学園の自由というものを尊重して、検査院の独自の立場でやったわけでございますが、妨害があったようであるわけでございます。  この点について局長から、会計検査院がせっかく調査に行きながらできなかったという点につきましての釈明と申しますか、御所見を簡単にお願いしたいと思います。
  13. 佐野文一郎

    佐野政府委員 先ほど大臣からお答えを申し上げましたように、精神科病棟は長きにわたって異常な状況にございます。この事態解決のために、昨年末以来医学部長病院長中心となりまして病棟占拠している側に対して精力的な説得を続けてきているわけでございます。  しかし、二月十五日、十六日の会計検査院検査の際には、まだ大学におけるこの説得が十分に進行をしていない時点でございましたために、まことに残念であり、また申しわけないことでございますけれども会計検査院実地検査を十分に行っていただけなかったという状況にございました。  その後、東京大学は、医学部あるいは病院当局中心といたしまして、さらに精力的に説得を続けております。これと並行いたしまして、その説得の間に生まれてきた合意をもととしまして、病院事務当局は三月、四月の三回にわたりまして物品等調査のために病棟へ立ち入っております。  今後も引き続きそうした施設設備管理正常化のための努力を続け、それと並行して調査も進めてまいりたいと考えておりますけれども、それらを通じてできるだけ早く施設設備管理正常化を図ろうということで努力をいたしております。会計検査院実地検査につきましても、こうした大学当局努力の方向に沿いまして、できるだけ早くその実施に支障がないという状況を確保するように努力をしてまいりたいと存じます。
  14. 森下元晴

    森下委員 そこで、会計検査院松山局長にお伺いしたいと思うのです。  この占領中の部屋に入ろうとしたが、十五、六人に調査官が包囲された、入れなかった。そして占領派によって精神病棟が不当に管理されておる、そういう事態報告されておりますけれども、これにつきましては、警察庁の公安第三課長が、公務執行妨害の疑いがあるようなのでいまからでも調査に当たりたい、独自の立場で捜査に乗り出すことを約束したと言われております。その真偽は私直接聞いておりませんのでわかりませんけれども警察庁自体でもかなり重要視されておるのですが、これは最悪の事態でございまして、私は決して好ましくないと思うのです。だから警察の入る前に、もう一度会計検査の方で独自の立場大学当局なりまた文部省ともいろいろ連絡して、今度はひとつ勇気を持って各部屋全部御調査を願いたい。会計検査の方は別に文教行政にどうこうとかまた厚生行政に直接くちばしを入れるとか干渉するために入ったわけでございませんので、ただ、国有財産が安全に保存されておるかどうか、これだけの目的で入ったわけでございますから、取り立ててこれを妨害する理由がないと私は思うのですがね。そういう点でひとつ松田局長の御答弁を簡潔にお伺いしたいと思います。
  15. 松田賢一

    松田会計検査院説明員 二月十五、十六日の検査の後、私どものこの問題に対する対応の仕方は、現在、まずその検査を通じて大学当局におきます国有財産事務分掌者あるいは物品管理職員、これらの責任ある方が国有財産なり物品現状把握もしておらない、またそれをできる状態にない、こういうことがまず第一義的に不当な事態であるとして私ども指摘しておるわけでございまして、その結果、早急に調査なり確認をするように申し入れております。その報告を逐次受けようとしておる事態でございます。  大学につきましての検査は、もちろん本年度東大検査もございますし、その際にもやるつもりでおりますが、それまでに事情を見まして積極的に検査に臨みたい、私ども事情が許せばいつでも検査できる態勢をとりたい、さように考えております。
  16. 森下元晴

    森下委員 時間が参りましたので、締めくくりをします。  ひとつ大臣学問の自由が侵されておるということを明言されておりますし、見解を発表されておりますので、勇気を持ってお取り組み願いたい。私は歴代文部省並びに文部大臣が少し甘やかし過ぎたんじゃないだろうかということのように思いますので、大臣、ひとつ勇気を持ってこの問題に取り組んでもらいたいと思います。  そこで、委員長に、これは精神病棟だけの問題ではなしに、東大へわれわれまだ実は行ったことがないのです。行かずにこういう問題を論議するのもどうかと思いますし、また東大という最高学府へ参りまして、もちろん精神病棟の問題も含めて全般的な大学当局あり方について、ひとつ決算委員会国政調査を早急にできる機会をつくっていただきたいということを実は御要望したいわけなのです。その要望をして、私の質問を終わりたいと思います。
  17. 楯兼次郎

    楯委員長 森下委員の御要望の件については、理事会で日程、実行方法等を相談をいたしたいと思いますので、よろしくお願いします。  次に、津島雄二君。
  18. 津島雄二

    津島委員 ただいま森下委員から、主として東大精神科病棟中心にいまの大学の現状について御質問がございましたが、これをやや広い見地からいろいろお尋ねしたいと思います。  まず第一に、いまの国立大学状況です。余りむずかしい話でなくて、平穏に教育できるような環境にあるかどうか、お伺いしたいのです。本来ならば、文教の最高責任者文部大臣は、御就任になれば主だった国立大学をやはり実際視察になるのが普通だと思うのですが、最近大臣東大にでも行かれたことがありましょうか。
  19. 砂田重民

    砂田国務大臣 文部大臣就任が昨年の十一月の二十八日でございます。すぐに始まりましたのが予算編成でございます。そして直ちに年が明けて国会が始まっておりますので、まだ大学に行くのは筑波大学を見に参りましただけでございます。
  20. 津島雄二

    津島委員 筑波大学をごらんになったということは大変結構ですけれども、非常に私としては残念だと思うのです。  同じ角度からどうでしょうか、大学局長さん、いまのたとえば東大学問研究にいい雰囲気でしょうか、最近行かれたことがありますか。
  21. 佐野文一郎

    佐野政府委員 ことしに入ってから私はまだ東大へ行っておりません、昨年は何回か参りましたが。東京大学は全体としては教育研究は正常に行われておりますし、学園状況も私の見ている限りでは、もちろん正門あるいは医学部の前等に立て看板が出ているというような状況はございますけれども大学における学問研究が進められ、あるいは教育が進められる環境として不適切なものが現にあるとは考えません.  ただ、医学部の精神科病棟における研究の阻害、あるいは文学部長室における学生の座り込みが再度行われているというような点、一部局部的に不正常な状況がございますが、大学の全体の状況は、現在は正常に運営されていると考えております。
  22. 津島雄二

    津島委員 そのような御答弁であれば申し上げます。  先週、予算も通りましたし、この際文教問題についてもいろいろお尋ねしたいということもございましたし、また十年以上私母校を訪ねておりませんので、東京大学がどういう状態になっているかということで、先週の金曜日七日に訪れたのでございます。いま局長がちょっと触れられた立て看板等については、ここに写真を撮ってきております。この中で特に問題の点、後で御指摘をいたしますけれども精神科病棟のことについてはかねがね伺っておりましたから、私のような気の弱い人間が近づくと不測事態も起こるのではなかろうかということで遠くから赤れんがを見ただけでございますけれども、私が大変親しんで、またみずから勉学をいたしました法文系の一号館、二号館を、秘書を連れてきわめて穏やかな気持ちで散策をしたのでございます。  東大に就学された方ならば御存じのアーケードというのがございまして、恐らく新学期になりますと新しい希望に胸をふくらませた新入生たちがあそこは散策する場所であります。そのアーケードで立て看板が非常にたくさん出ておりますところを秘書と二人で、立て看板の趣旨をいろいろ読みまして、そして事務所のある方へちょっと入っていったのであります。  そこである人物にまず私の秘書が呼びとめられまして、おまえはどこに行くか、こういう質問であります。これに答える必要もありませんので、私ども二人はそのままずっと廊下に、中にどういうような張り紙がしてあるかというのを見る気もありましたし、また私の同級生が教授もやっておりますから、いれば訪ねようということで入っていきましたら、さらにしつこく追っかけてまいりました。おまえは何者だと、こうきた。ちょうど時間は当日の九時五十分ごろでございます。  余りしつこいし、また多少の危険を感じましたので、いや、あなたはどういう人ですかと伺ったのであります。そうしますと、おまえが先に名を名乗れときましたから、いや、それは人の名前聞くならあなたから名前を名乗るのが当然ではないですか。そうしたら、心理学科の某と——この名前はこの委員会では特に申しません、必要ならば後ほど申しますが、心理学科の某である、ところでおまえは何者か、こうきたのでございます。  もちろん私も議員バッジはつけておりません、一介の市民として行ったわけでございますが、まあ自分で言うのもおかしいですが、私はかなり上品なタイプだと思いますし、そううさん臭い風体もしてなかったと思います。そこで、その人物に、あなたはどういう理由でそういうことを聞くのですかと、こう聞きましたら、いや、おまえはどういう理由でここを歩いているのか。いや、おかしな話で、ここは皆さん、学生も市民も歩いているでしょう、東京大学というのは一般市民が用事があっても入れないところなんですか。いまは学校も休校であるし——要するにちょうど授業がないということなんでしょう——春休みであるのに何で来る必要があるか。いや、何で来る必要があるって、そこまで言われるなら言いますが、私はここの卒業生なんだ、卒業生として母校を訪れることができないというようなこれは学校なんですかと言ったら、えへへと笑って二、三人で……。私は多少の危険を感じましたから、そのアーケードから三四郎池の方へ歩いていったのでございます。  このような現状について一体どうお考えになるか、大臣及び局長の御感触を伺いたいのです。一般市民が安心して歩けない、しかも座り込みとか占拠のある場所からかなり離れた場所を歩けないという現状、これをどういうふうにお考えになるか。  先ほど大臣は、まあ学校当局も真剣である、自主努力でできるだけ問題のある、トラブルスポットだけを解決するように要請をしているとおっしゃいましたけれども、私はそのような要請であの状態改善するかどうか、非常な疑いを持っておるのでございます。大臣あれでございましたら、局長からこの段階で一言何かおっしゃっていただくことがあったらいただきたいと思います。
  23. 佐野文一郎

    佐野政府委員 すでに御案内のように、大変遺憾なことでございますが、文学部長室について文学部学生、院生有志と称する者が、学部長団交を要求して座り込みを行っております。一たんは三月二日に機動隊を導入して排除いたしましたけれども、十日に再度座り込みを行っております。現在文学部は、教授会中心といたしましてこれの排除についてその方途を検討中でございます。そういったことがございますこともあって、恐らくはこの学生、院生有志の者が大変御無礼なことを申し上げたのだと思います。  大学の構内で市民が自由に歩けない、あるいは大学の講義等が一部の過激な学生によって妨害されているというような状態は、学園として決してあってはならないことでございます。大学当局はもちろんそういったことを十分に認識をして努力をいたしておりますけれども、御指摘の点はそうした努力がまだ十分でないということを端的に示していることであろうと思います。私どもの方からも、再度大学当局に対して具体の御指摘のありました事例を例として示して、さらに改善努力を続けるように指導いたしたいと存じます。
  24. 津島雄二

    津島委員 局長がそのような認識を持っておられることは大変結構なことでありますが、私がここで御指摘申し上げたいのは、国立大学で問題があるのは特定の個所だけであるという御説明であり、また一般にはそういう認識を持たれているのでありますが、私は、より広く、学園の中の雰囲気全体に影響を与えていると思う。事件としては特定の個所に出てきますけれども、同時に学園全体の自由な研究の雰囲気に対して一つの圧力が加わっているということを、私は端的にこの事件で感じたのでございます。  想像されてもおわかりのとおり、新入生が入ってくる、たとえば立て看板を見て歩く、それを二、三人で取り囲む、おまえは賛成なのか反対なのかとやる、そしてちょっと暗いところに連れていって、おまえはわれわれの運動に対して賛成するかどうか、こういうことが行われてきたのがいままでの学園なのであります。そして、それが現在も続いているということを端的にあらわしておりますので、先ほど森下委員から委員長に御要請がございましたいまの東大中心とする国立大学の現状を、ぜひ国会としても関心を持って、予断を持たずに素直な気持ちで私どもも一度ぜひ視察をしたいし、またさせていただきたいと再度お願い申し上げる次第でございます。  そこで、この点について締めくくりでございますけれども、適切な対策が、いまのようないわゆる大学の自主的努力では不十分であると私は断定せざるを得ないのでありますが、その場合に外部の、たとえば警察権力の力をかりるということについて、東大の場合には何かある程度のルールを自分でつくっているそうですね。たとえば入学試験の場合は絶対に排除する、入学試験を妨げるような場合には警察官を入れるというような一定のルールがあるそうでありますが、どうもそのルールが、大学の特定の管理事務が、教授会なり大学管理当局の側から見て何とかやっていければいいのであって、それを超えて外部の力、警察権の力をかりるということはしないというふうに私はとれるのであります。  この点も、文部省当局大学当局とぜひお話し合いになりまして、基本はやはり学問の自由と、そしてそこから出てくるところの大学自治、あるいは学ぶ権利を守ってやることでございますから、いま侵されようとしておるのはまさに大学自治そのものでありますから、そのような認識を持って警察権の活用という点について従来よりも積極的な姿勢をとっていただくことをぜひお願い申し上げたいのでございます。
  25. 砂田重民

    砂田国務大臣 大学自治大学におきます教育研究の自由を守るためにありますことは当然のことでございます。自治の名のもとに教育研究が阻害されるようなことは絶対に放置されるべきではありません。そしてそのような事態大学の学内にありますときに、それを排除する、解決をいたしますのは、まさに大学当局の自主的な責任であり、自主的な努力によって行われるべき筋合いのものと私は考えております。  昭和四十三、四年のあの大変な大規模な大学紛争の時代に国会で成立をいたしました大学運営に関します臨時措置法にいたしましても、事新たに国家権力をもって介入するという法律の精神ではありませんで、大学自主努力を要請する趣旨の立法でございます。そしてまた、あの法律を背景といたしまして大学当局が自主的な強い努力を積み重ねて、あのような大規模な大学紛争をだんだんおさめてまいった体験も大学当局は持っているわけでございますから、いま津島委員が御指摘になりましたような事態大学当局として当然強い責任を感じなければならないことでございます。  文部省といたしましても、大学管理運営のことにつきまして大学ともどもいろいろな工夫をしてまいったわけでございます。御承知のように、副学長を置くことができるような、あるいは参与を置くことができるような法令改正をいたしましたり、筑波大学で新しい大学教育研究の基本組織に工夫を加えた新しい管理運営の方式を確立する等、こういうことが各大学に好ましい刺激になるようにという考えもまたあったわけでございます。  私といたしましては、真の学問の自由を守るために、真の大学自治を守るために、強い姿勢での指導助言は引き続き努力をしてまいりますけれども大学当局がそのような自覚のもとに、大学当局もまた自主的な努力を積み重ねてくれますことを期待するものでございます。  具体的にこの事態にどう対処するか、学問の自由が侵されている事態を排除いたします具体的手法、具体的手段は大学当局が判断の上で決めるべき筋合いのもの、それが学問の自由を守るという立場に立つ文部省といたしましても指導助言を強めるという限界をわきまえていかなければ学問の真の自由というものは阻害されるということも、ひとつ御理解をいただきまして、私ども大学当局がお互いに努力をこれからも続けてまいります、かような意味で御理解をいただきたいと思います。
  26. 津島雄二

    津島委員 ただいまの大臣の御答弁で、はしなくも大学管理問題、大学のいわゆる自治をどう考えるかという問題に、昭和四十三、四年のあの紛争に触れながらお触れになったのでございますが、その問題に触れるちょっと前に、これは後ほど委員長に見ていただきたいのでございますが、いま東大の中にあるいろんなビラでございますけれども、私はこれが国有財産を汚しているというような程度の低い議論はするつもりはありませんけれども、この中で非常に目立ちますのは、第一点が特定の教授に対する人身攻撃、つまりこれは教授の姿勢、物の考え方に対する重大なる脅威であります。つまり、これが平気でおられるというところに、一体東大当局が学問の自由をどう考えているのか、私はこういうことを問いたいのでございます。  いまの神経科病棟については、幸か不幸か共産党と自民党とブル新と三つ並べてしかられておりますから、大変幅の広い戦線を張っておるようでありますけれども、特定の方が非常に強い攻撃を受けている。私のような気の弱い者であれば、ちょっと大学には行く気が出ないというようなビラでございます。さらに三里塚の闘争を非常に強く宣伝をするビラがたくさん張られてあったようであります。これは新学期を控えていまちょうど法文系を塗りかえておりますから大分ばがれてはきておりますけれども、これも明らかに暴力行為を使嗾するビラを平気で張らせるということ、このことをもう少し学校当局も深刻に受けとめていただきたいのです。  先ほど大臣が言われたように、まさに学問の自由とそれから学ぶ権利に対する挑戦が内部から起こっているんだという危機感を持った場合に、いままでのような大学当局の対応では済まされないということが言えるのではないかと思うのであります。  さて、それではあれだけの昭和四十三年、四十四年の紛争を経験して、大学の方も大分対応策を考えられたといま大臣は言われたのですが、私は東京大学昭和四十四年に出た「大学改革準備調査会第一次報告書」という、これを通読させていただきました。この中で感心をした面もありますが、非常に驚いた面がある。この中に「学問の自由と大学自治の基本的問題点」とありまして、その第一に、「教官の独善と大学の頽廃の可能性」、つまり大学の教官というものは、絶えず独善的にならないように社会的な要請を頭に置いてやっていかないと、これは社会から遊離するし、ひいては大学の頽廃を生むという問題点を指摘しておるのでありますが、さて今回のこの大学紛争を乗り越えて新しい大学自治の基本的方向を模索するとなりますと、五つの提案をしておりますけれども、この中で一般社会の正常な意見をどのようにして大学教育大学管理の中に持ち込むかということは、いつの間にかすうっとなくなっているのであります。つまり、ここにいまの国立大学管理体制が教授陣を中心に行われているところから、必然的に出てくる独善性がおのずから出てきている。自分で独善的にならないようにしましょうと書いておいて、それはわれわれだけで、大学の内部だけで議論すればいいんですという結論になっていると言わざるを得ないのであります。  これは、いまの国立大学が旧制の総合大学、いわゆる帝国大学のタイプ、そしてそれに新制大学が併設されてきた中で、大学管理体制を旧制大学教授会中心に組み立てていった。それに対して、何度も占領時代から大学管理あり方についていろんな提案がなされたのを全部はねのけて、結局は旧制大学の教授陣中心管理体制になっているというところから出てきた。重要な宿題をそのままにして、形だけは戦前の旧制帝国大学管理陣がそのまま残っている。その管理陣に対して、いかなる外部からの批判をも受けつけない、つまりそれが大学自治であると言わしめるような現状になってきていると言わざるを得ないのであります。  私は、これを非常に心配するのであります。なぜかと申しますと、いまこれだけの内部から問題が起こっている。また外部から見ましても、いまのたとえば東京大学を見ますと、ただ東大に入るために若い人たちにああやってむなしい受験勉強をさせている。さて入ってからの教育がどうなっている。私は大蔵省におりましたときに、東大から入ってくる若い者を部下に使ったことが何度もありますけれども、まあ十年近く訓練しないと、経済学部を出てきた学生も一人前にはとうていなれない。法律を出てきた学生も、税法を理解するのにはやはり十年近い厳しい訓練が要るということを、みずから経験しております。  つまり、いま大学の教科の内容が、本当に社会のニーズに合わなくなっているという現実がございます。このように大学の内部と外側の双方から問題が出ているにもかかわらず、いまの大学管理の形態はまさに戦前の旧制帝国大学教授会中心であり、これに一指をもつけさせないという現状であると言わざるを得ないのでございます。  私は、かつて大学管理法がいろいろ議論されました昭和三十七、八年に、いわゆる大学国民に対する責任ということが強く言われたのでありますが、いまもう一度それを喚起しなければならない時期に来ていると思うのでございます。時間があればもう少し細かく中身に入りますけれども、このような点を考えますと、いまもう一度この大学の閉鎖性を破って、本当の意味で大学自治を尊重しながら、教授の意見で尊重しながら、しかし同時に健全な国民的な要請と生きた社会との接触を取り戻すような大学管理体制の御検討をぜひ始めていただくべき時期に来ていると思うのでございますが、大臣の御意見はいかがでございましょうか。
  27. 砂田重民

    砂田国務大臣 教授会中心といたします従来の国公立大学管理運営あり方につきまして、閉鎖的、独善的な運営に陥りやすいとか、あるいは責任体制が明確でなくて異常な事態に対して時を得た適切な措置がとりがたい、こういった欠陥が指摘されているときでございます。学園紛争の経験等を経てまいりまして、各大学の中にも自主的に管理運営あり方を工夫する動きがいろいろ出てまいっておりますことも、また現実認めなければなりません。  たとえて申し上げますならば、東大も特別補佐というのを総長の周辺に置きまして——いま社会の声に耳を傾けない、全く独善的であるという御批判ございましたけれども津島委員はそのような目に遭ってこられたわけでございまして、まことに不愉快な申しわけない事態に遭ったと思う。私もそう思いますが、たとえば東大総長文部省まで招致をいたしまして、私が直接前例のない指導助言をいたしましたときも、いまの精神病棟がいかなる体制にも反対だというような過激派分子に占拠されている事態は、タックスペイヤーである国民一般にはどうしても納得ができないことです。社会の声を私はかわって総長にお話をしたわけでございます。そしてこの事態解決は、もう遷延が許されませんということを指導助言をいたしたわけでございますけれども東大総長はそのことを十分に理解をしておられまして、もうできるだけの努力をいたしますと言って、そのことを約束して帰られたわけでございますが、医学部の教授会も、教授会の全体的な支援体制をとって、また学長の特別補佐も、占拠側と医学部長あるいは病院長等が強い折衝をいたしますときも全部残られまして支援体制をとっておられる。先方がどう言ったか、こちらがどういう条件をのませたか、そのことも一々教授会等で検討を加えられた上で、事の解決が進んでいるわけでございます。  ただ、基本的に申し上げますならば、今後とも大学が社会の要請に即応して適切に運営されますように、その制度のあり方を研究をいたしまして、改善と取り組んでまいりますことが文部大臣としての責務であると肝に銘じております今日でございます。
  28. 津島雄二

    津島委員 大臣の社会の要請にこたえたよりよい大学を志向していきたいという御答弁は大変結構なんですが、この問題についての締めくくりの意味で、もう一度四十三年のときの私の経験したことをお話しいたします。というのは、先ほど大臣の言われた、私が先週特別な経験に遭ったとかあるいは精神病棟でどうであったということを越えた、実はもっと深刻な問題があるということを御理解いただきたいのです。  四十三年のあの時計台の占拠事件がありました後で、私、同級生の教授連中何人かと話をしたのでございます。ちょうど私、外国から帰ってきたばかりで、まことに驚いて、日本の大学は何でこういうことになったかということをぶつけてみたわけであります。当時総長の補佐として活躍したのがちょうど私どもと同じくらいの年代の教授連だったのですが、その人たちの一人が、これは本音だと思うのですが、長い間の紛争で疲れた、来年から外国へ行って勉強してきます。私はこの言葉に非常な衝撃を受けたのであります。日本の長い間の大学教育あり方、日本の文化のあり方にも根差すと思うのでありますが、外国へ行って外国の文献を読んでそれが勉強だと考えている風潮がある。自分の大学の中でどのように学問の自由や自治を侵される現状にあるかということは二の次だ。私は非常なショックを受けた。  それでいろいろ考えてみますと、たとえばわれわれが学校を出て、大体いまの教授の選任の仕方というのが、御承知のとおり主任教授が気に入った学生をつかまえてくる、おまえ後をやらないかということで助手にする、気に入られて助手に選ばれると大体そのまますうっと、いい講義をしようが、何を勉強しようが、大学教授まで残っておる。幸か不幸か、私どもの前後何人かそのようになった人物は大体そのまま残っております。中に亡くなった人もありますが、亡くなるまでは大体地位が安定している。  こういう閉鎖された研究室で地位も安定しておりますと、学園紛争なんか起こったら大学へ出てこない方がいいのですね。学生にいろいろ言われるよりはそれこそ外国へ行って本を読んでいた方がいい、そのような雰囲気をつくるようないまの大学管理制度になっているのです。もう一度日本の大学制度国民のものに取り戻すように、私どもはやはり国民の名において改革を叫ばなければならない。そういう意味で、ひとつぜひ間を置かずに、これは文部省だけではいけないので、世論を起こして大学の改革を考えていただきたい、特に御要望申し上げておく次第でございます。  そこで、残りました時間を利用しましてぜひお伺いしたいのですが、大学の設置基準というのが御承知のとおりございまして、この三十五条で、大学の校地は教育にふさわしい環境でなければならない、こう書いてありますね。どうでしょうか、いまの大都会の現状から言いまして、たとえば東京の本郷というようなところは教育にふさわしい環境とお考えになるでしょうか。
  29. 佐野文一郎

    佐野政府委員 これも一概には申せないわけですが、多くの場合大都市の特に中心部に所在をしている大学の場合には、校地がきわめて狭隘である、そこにおける校舎等整備がきわめて困難であるというようなことがございます。学生数も非常に多いということもございまして、大学の環境として必ずしも適切でないものが多いということは事実だと思います。
  30. 津島雄二

    津島委員 確かにそのとおりで、学校を出て二十数年たって行ってみましても、もうこれ以上校舎を建てられないだろう、新しい研究所を建てられないであろうという現状になっているのでございます。  一方、これは文部省の所管ではないかもしれませんが、昨年十一月に全国総合開発計画、いわゆる三全総が発表になったのでありますけれども、この中で非常に強く指摘しておりますのは、将来の国土政策という見地から言いまして、若い方がどんどん大都市へ集まってくる。まさに大学へ入らなければならないので集まってくる。そこに職を得て、そのまま家庭を持ち、そしてまた大都市の人口をふやしてしまうということが、いかに国土の均衡ある発展を阻害するかということが、指摘をされておるのでございます。  このような現状に顧みまして、三全総では幾つかの提案がされております。毎年東京の近郊だけでも十万人近い新しい若者が来るわけであります。この十万人の方々が東京以外のところで、いい環境の中で教育ができるということは、これは国土政策上も望ましいことであることは言うまでもないわけでございますが、この三全総で定住構想の一環として教育施設の適正配置というところで提案をされておりますことについて、文部省として何らかの具体的な検討をしておられるかどうか、まずお伺いしたいのでございます。
  31. 佐野文一郎

    佐野政府委員 一つには、高等教育の計画的な整備ということで、大学の国公私を通じた配置というものを検討いたしてきております。  昭和五十一年から五十五年までの間は十八歳人口がほとんど横ばいを続けるというようなこともございます。また最近における大学進学の状況に見られる若干の変化等もございますので、五十五年までの間は、私立学校法の規定もございますように、原則として大学の新増設は、特に必要があるもの以外は認可をしないというたてまえをとります。そしてその場合でも大都市における新増設はよほど特殊なものを除いては認めてきておりません。  それからまた、国立大学につきましても、その整備の方向は、地方の国立大学整備していくという形で、これまた大都市における大学の拡充ということについては極力差し控える方向で進んでおります。  五十六年から六十年代の当初へ向けての、私どもは後期の五ヵ年計画と呼んでおりますが、後期の計画をどのように策定をしていくかということは、現在大学設置審議会の計画分科会で検討が進められておりますけれども、その中におきましても、いま申しておりますような大学の適正配置を進めていくという方針は変わらないと考えております。大学が大都市にある場合に、それを地方に分散をしていくということは、具体的にはきわめてむずかしい問題を伴いますけれども、少なくとも今後つくっていく大学につきましては、大学全国的な配置ということを考えて、地方における大学整備に力を入れていくということで臨んでまいりたいと思います。
  32. 津島雄二

    津島委員 大学の新設は行わない、新しい大学を大都市につくらないという意味に解釈すれば、それなりに国土政策のあれに沿うかもしれませんが、すでに新入生の六五%が東京、大阪の大都市圏に行かざるを得ないほど施設を集めちゃっている。あと新設を極力抑えるということで国土政策が進むはずがないのであります。むしろ、筑波大学の例はあるかもしれませんけれども、思い切って現在大都会に集まり過ぎた大学施設を地方に分散するということをこの際積極的に御検討いただきたいのであります。東京大学を東京の近郊に移転をするというような考え方もあるそうでありますが、東京近郊などというようなことを言わずに、これは日本全国どこでも大学管理上支障のない限り適正な立地を見つけて、そこで学問に専念をしていただくということが適当ではないだろうか。富士のすそ野でもよろしいし、あるいは東北でもよろしい、北海道でもいい、それぞれ適地に施設を分割して、これを設置していくことについて可能かどうか、ぜひ後期の計画を検討する場合にこれを織り込んでいただきたいとお願いを申し上げますが、御意見いかがでございましょう。
  33. 佐野文一郎

    佐野政府委員 東京二十三区内にございます大学、短大のうち四十年度から五十三年度までの間に、いわゆる二十三区から郊外に移ったものが九校ございます。このように、具体的には中央大学のような大きな大学ではございましても、大学の御決意によって八王子に適地を求めて移転をするというようなことが行われております。大学がそういう御決意をされて、そして適地を求めていかれるということはきわめて望ましいことであり、私たちもできるだけのお助けを、お手伝いをしなければならないことだと考えております。  ただ、先ほど申しましたのは、計画的にそういった移転というものを考えてまいりますと申しましても、結局は大学がどういう御決意をなさるかにかかることでございますので、大学側の御意向を十分に伺いながら事を進めていかなければならないという点において、大変むずかしいところがあると申し上げたわけでございます。過密の状況を是正をする、あるいは大学の適正配置をできるだけ図っていくという上で、既設の大学の移転ということもまた一つの進めていかなければならないプロジェクトであることは十分に意識をしておりますので、そういったむずかしさを頭に置きながら、大学側と十分に相談をしていくということで対処をさせていただきたいと思います。
  34. 津島雄二

    津島委員 時間が参りましたので締めくくりますが、実はいまの局長の答弁を聞いておりまして、またさっきの問題を蒸し返したくなるのでありますが、いま日本の将来にとって国土政策の確立が何よりも大きな要請になっている。その要請に教育機関が沿っていくということ、これは当然だと思うんです。ある意味で国民からの要請なんであります。その要請にこたえるということ、この問題をとっても、大学がやってくれなければ何ともなりません、こういう御答弁なんです。こんな文部行政ではだめですね。これだからいかぬのです。  ですから、国土政策に沿った施設の分散というのは、これはどこの役所でもむずかしい問題ですから、それを乗り越えていくためには、国民全体の要請であるという見地に立って文部省も本格的に取り組んでいただきたい。そうでなければ、たとえば東京から立川に移転するぐらいでは、あれは大都市圏の人口を減らすことにはならないのですよ。すべての施設は首都圏の施設を使い、首都圏の水を使う。ああいう移転では、これは国土政策から言えば逆行になるだけなんですから、思い切った施設の分散をしていただきたい、これを強く要請をいたします。  私どもの住んでおります東北には、広くかつすばらしい空気がある。そして北国の寒さの中で真剣に研究のできる環境があります。そういうところを含めて、東京大学と言わない、東北大学も九州大学も思い切った施設の分散をひとつ御検討いただくという点で、前向きの御答弁を大臣からぜひいただきたいと思う次第でございます。
  35. 砂田重民

    砂田国務大臣 大学等の高等教育の適正配置、静穏な環境の中での教育研究の確保、非常に重要な課題でございますし、津島委員指摘の国土計画の線に沿う、同じレールの上を走るわけでございますから、私ども大学との意思の疎通をより密接に図りながら取り組んでまいろうと考えるわけでございますが、何さま後期の長期計画が五十六年からでございますから、大学局長もいまこの場で明確な御答弁がしにくかった、そこのところは御理解をいただきたいと思うのです。  ただ、いまもお答え申し上げましたように、大学等の高等教育機関の適正配置、静穏な環境の中での青少年のために好ましい教育研究環境を確保するということ、やはり国土計画と同じレールの上を走るわけでございますから、ひとつ真剣に検討をさせていただきたいと思います。
  36. 津島雄二

    津島委員 終わります。
  37. 楯兼次郎

  38. 馬場猪太郎

    ○馬場(猪)委員 いま東大病院の問題がありましたが、関連がありますので、冒頭にお聞きいたしたいと思います。  先ほど文部大臣も、あくまで大学自治とそして自主的な解決を図る方針で臨んでいきたいというふうにおっしゃったわけですが、これは当然のことだと思いますし、そういうふうに今後も自主的解決を促進する努力をしていただきたいと思いますが、先月の十七日にも過去五回にわたって会談が進んだという御報告理事会で受けました。その中では、いままで八年間にわたって断絶をしておったのがお互いにテーブルに着いて、そしてある程度話し合いが進んだというふうにお伺いしておりますが、三月中に解決つくんじゃないかというふうなことも聞いておったのですが、進行状況は非常にうまくいっておるのかどうか、その点についてお答えいただきたいと思います。
  39. 砂田重民

    砂田国務大臣 やはりあのような問題を正常な姿に戻しますその具体的な手法、具体的な手段については、私は大学当局の自主的な判断でおやりいただくのが筋だと考えるのです。御指摘のように進行してまいっておりますので、その状況大学局長から御報告させます。
  40. 佐野文一郎

    佐野政府委員 三月二十日までの医学部当局、病院当局病棟側との話し合いを通じまして、一つには施設設備管理について当局側の調査を認めるという体制が開かれてきております。これはまだ完全ではございません。完全に施設設備管理が進んでいるということではございませんけれども、その方向が開かれてきているということと、三月二十日の話し合いによりまして、いわゆる神経科の分担教官による病棟での診療、教育の役割りを認めていくという基本的な方向の合憲ができておりますので、これまた従来のいわゆる診療封鎖について一つの是正の方向が出てきていると判断をしております。  ただ、その後の具体的な進捗と申しますか、分担教官がどういう形で病棟における診療、教育を担当していくかという点についての具体的な話し合いがなお詰まっておりません。これは事柄として非常に大事なところに差しかかっておりますので、やや時日を要しているとは思いますけれども、当局は現在懸命の努力をいたしておりますので、私どももそういった当局の努力を見守りながらさらにできる限りの援助もし、指導もしてまいりたいと考えております。
  41. 馬場猪太郎

    ○馬場(猪)委員 五回にわたって徐々にではあるけれども一歩一歩前進をしていっておるというようなお話でございますが、基本的な問題でどういう点で対立がいまだに残っておるのですか。
  42. 佐野文一郎

    佐野政府委員 御承知のように、この問題の背景には東大の医学部紛争当時の状況がございますし、またそれに引き続いて医学部の精神科におけるいわば診療、教育あり方についての見解の対立というものが基本にあった上で、いわゆる医局講座制の解体等を主張する精医連による病棟占拠が始まったわけでございます。したがって、病棟側と外来側との間にいろいろな意味での見解の対立がございます。従来の東大努力は、何とか外来側と病棟側を同じテーブルに着けて、両者の間での話し合いが進まないかということで進められてきたわけでございますけれども、やはりそれについてはうまくいきませんでした。昨年の暮れ以来、大学側はいわゆる分担教官、これは医学部医学科の教官ではなくて、医学部保健学科の精神衛生の担当の教授、助教授でございますが、これを精神神経科の講義等の分担をする教官として発令をいたしまして、その人たちがいわば中に立って、病棟側に対する現在の不正常な状況をなくして、そして施設設備についても診療の面についても、あるいはベッドサイドの教育にしても、それを病棟実施できるようにするという方向での努力をし、さらに外来側とも、そういった病棟側との説得の進行に応じながら、外来側の意見も聞いていくというような形で進行を図ってきているものでございます。  この大学側の努力が、現在まだきわめて不十分な状況ではございますけれども、ようやくにして正常化の方向に向かって歩み出しているという状況をもたらしていると考えているわけでございます。
  43. 馬場猪太郎

    ○馬場(猪)委員 不十分だけれども正常化の道をたどっているということは、文部省当局としても、大学側の自主的解決の見込みがあるという判断をなさっているからいまのところ静観をしておられるということですね。
  44. 佐野文一郎

    佐野政府委員 すでに八年の時日を経過をしておりますし、いたずらにいわゆる話し合いというものが続けられていって、現状が変わらないとか、あるいは逆にその話し合いを通じて現在の不正常な状態が固定化されたり、あるいはさらにその状況のままでのいわば進行があるということでは、私たちは困ると思っております。そういう意味で大学側の話し合いというものが、いわば正常化の軌道を外さないように、そのステップを一つ一つ踏んでいくようにということを見守りながら指導いたしております。  現在のところ、私たちは、大学側の努力というものがこれまでに成果を上げてきておりますので、その方向をいましばらく見守ってまいりたい、ただいたずらに時日を要するということでは国民に対して申しわけないと思っております。そういうことで、いわば私たちは事態をきわめて深刻に受けとめながら、大学側の努力というものを期待をし、それを求めているということでございます。
  45. 馬場猪太郎

    ○馬場(猪)委員 先ほど申し上げましたように、徐々にながら前向きで検討が進み正常化に進んでおる。その中でやはりいろいろ刺激的なことがあれば、せっかく軌道に乗ったのがまたもとに戻るというようなこともあると思います。そういう意味では、この精神病棟の問題について新聞紙上に報じられたきっかけになったのは、当初は会計検査院検査に行ったのに正常な検査ができなかったということに発したと思うのですが、この会計検査院検査そのものは通常検査であったわけですか。
  46. 松田賢一

    松田会計検査院説明員 二月十五、十六日の検査は、東大のそういった精神神経科病棟状況につきましては、昨年の検査のときからこれはもう従前からずっとわかっていたわけなんでございます。そして、十二月ごろにはまた話し合いにも入ったという状況も聞いておりました。そのほかに、先ほども京大の話がありましたが、京大の問題もあるということで、ことしはひとつそういった大学占拠されているような状態とか国有財産物品管理状況、こういうものを総括的に見てみようじゃないかという気持ちを、昨年の暮れから検査の計画として持っておったわけでございます。  そこで、新聞に一番初め出ましたのは私どもの行く前でございまして、新聞の報道もそういうような問題を提起されましたので、私どもとしては、早急にその状態も知っておかなければいかぬということで、二月十五、十六日は本来ならば東大全体の検査をやるべきことなんでございますが、医学部の精神神経科病棟に限っての検査を行ったわけでございます。
  47. 馬場猪太郎

    ○馬場(猪)委員 そうすると、通常の検査ではなしに、新聞紙上で報道されたので、あえて実態把握のために特に行ったということなんですね。
  48. 松田賢一

    松田会計検査院説明員 そのとおりでございます。
  49. 馬場猪太郎

    ○馬場(猪)委員 そのときに立ち入りを阻んだという事実があったわけですか。そうしてまた、その事実があれば、その理由はどういうことであったわけですか。
  50. 松田賢一

    松田会計検査院説明員 病棟の方でそういった状態にあるということは、もちろんこちらも承知はして行ったわけなんです。それで、事務局の方でいろいろ書類的な検査もいたしました。われわれ、行くとすれば、やはりその状態はどうなっているかということは中に入ってみなければわからぬということで、大学の方も病棟側ともいろいろ話をしてくれまして、一応病棟におる方たちは立ち入りを拒否はしないということなんですが、ただ身の安全は保証しないという状態でございました。  それで十五日、十六日の二日かけまして、十六日の夕刻になりまして、来られても結構だということで入っていったわけなんでございます。ただ、そのときに入っていきまして、先ほど森下先生からもお話がありましたが、四室について入っていった。それから、そのほかのところにも行けたら行こうというつもりで調査官が行ったわけでございますが、そのときに、これはいま占拠側の人たちなのか、あるいはその日にデモがございましたし、その残っていた人たちなのか、これはわからないのですけれども、十五、六名の人たちに立ちふさがれた。私どもの方も調査官には、あえてそういった者を排除してまでやることはない、そう申しておりました。それで調査官としても、これ以上中へ入れないだろうという判断で帰ってきたという状態でございます。
  51. 馬場猪太郎

    ○馬場(猪)委員 いま検査院にお伺いしますと、不法に拒んだというよりか、事務的な検査はやらしてくれた。ただしかし、病室については、病状への影響だとかあるいは患者の状態とか、そういう純然たる医学上の問題のためにその場へは入れなかった。拒んだというわけじゃないのですね。その点は明らかにしておいていただきたいと思います。
  52. 松田賢一

    松田会計検査院説明員 医学上の問題といいますか、病棟側では立ち入りに来られても構いませんということで行ったわけなんですが、拒否されて、あなた方は何しに来たんだということで包囲といいますか、それをされたわけですが、それが病棟側の医学上のあれで拒否したとか、そういうことではないと思います。  ただ、その立ち入りを拒んだといいますか、ふさがった連中がどういう者であるかわからないものですから、私ども調査官は一応身の危険も感じ、その辺でやはり中は見られないということで帰ってきたわけでございます。
  53. 馬場猪太郎

    ○馬場(猪)委員 その後の経過では、先ほども大学局長からお話がありましたように、いま会談も進んでおるようでございますし、またそんなにトラブルも起こっていないようでございますので、あくまでひとつ督励をして、早期に自主的に解決させる方向にひとつ御努力をお願いするということで、一応この件については終わりたいと思います。  次に、文部大臣予算委員会で楠公述人からの、生活関係の保護の問題であるとか住宅の問題であるとか雇用の問題等々並べて、特に来年度から実施される障害児の養護学校の義務化の問題に関していろいろと公述がございました。そして参議院の予算委員会の中でも、十分に参考人の意見を拝聴して、このことを十分意を体して義務化に万全の準備を進めてまいります、こういうふうに御答弁になっておるのですが、公述人の申し述べましたことに対する大臣としての理解、これについては質疑応答がなされておりませんし、公述人の意見についての判断というのはどこでどうするかわかりませんので、この際にひとつ文部大臣の御理解の程度をお示しいただきたいと思います。
  54. 砂田重民

    砂田国務大臣 養護学校の義務化につきまして、まず基本的なことをお答えをしておきたいと思います。  心身障害児の教育につきましては、障害の種類、程度に応じまして適切な教育を行うことになっているわけでございます。養護学校教育の対象になります精神薄弱者、肢体不自由者及び病弱者の障害の程度というものは、政令によって定めているわけでございます。各教育委員会は、この政令によりまして適正な判別を行いますために、就学期の健康診断、その結果を活用いたしますほかに、医師、教育職員、児童福祉施設や児童相談所の職員など、こういった障害を持っておられる気の毒なお子様のことを体験をいたしております職員など、各方面の専門家から成ります就学指導委員会を設けております。その就学指導委員会の意見を聞きましたり、あるいは保護者の意見も適切にお聞きをいたしまして、事前に保護者に対します教育相談を実施をするなど、総合的な判断を行うように努めているところでございます。  この就学指導委員会が全市町村をカバーできるように今日までも補助をいたして、文部省としても努力をしてきたところでございますが、国といたしましてはこういう義務制の実施後もこの精神で対処をしてまいりたいと考えているわけでございます。
  55. 馬場猪太郎

    ○馬場(猪)委員 大臣は、十分わかったけれども、方針としてはやはり四十六年の中教審の答申で出されているように、あくまでも養護学校をつくったりあるいは養護学級をつくったりということで、分離、分類の方向で行っているように思うのですね。ところが、公述人の考え方というのはそういう方向じゃなしに、できるだけ地域の学校でとかあるいは現学級でという主張をしておられるわけなんです。全く方針が違っているのですね。  それは理解している、十分わかっていると言われても、わかっているけれどもそれは言うことを聞けるのか、公述人が言われるとおりなのか、いや、それは違うと言うのか、そこらのところははっきりとしておりませんので、どういうふうにお考えになっているのか。
  56. 砂田重民

    砂田国務大臣 養護学校の義務化というのは、私どもは原則といたしまして二つの義務があると心得ております。一つは、やはり養護学校を設立をしてまいります施設上の義務、それともう一つは、障害を持っておられるお子さんをそういう学校に通わせる就学の義務、この二つの義務があることを原則と考えているわけでございます。  しかし、国会等でよく御議論になります場合に、具体的なレアケースを御議論になるわけでございます。たとえば仙台の目の見えない子供さんが通常の学校に通ってちゃんと卒業した。通常の学校だからそれは義務教育を終わらないというような冷たい見方を文部省はするのか、そういう御議論があるわけでございますが、ただいま私が申し上げました、二つの原則がございます。義務がございますと申し上げましたのは、まさにこれが原則でございます。  しかし、レアケースといたしましてはいろいろな場合が考えられるわけでありますから、そのお子さんにとってどの道に進まれるのが、どの方向に就学されるのが一番幸せであるか、また政令で決めておりますその障害の種類、程度というものを、現実の問題としては非常にむずかしい判別を教育委員会はいたさなければなりませんから、先ほど申し上げましたように御両親の御意見も専門家の医師等の意見、そういうものを十分お聞きをいたしました上で判断をして、教育委員会としては就学指導委員会の意見等も聞きながら就学方針を決定していくわけでございます。学校事情が許す、御両親もそれを希望なさる。一方、できております養護学校は非常に遠隔地にある、そういうレアなケースの場合は通常の学校あるいは通常の学校の特殊学級に進むのが教育委員会の判断になることもあるわけでございまして、そういうことを理解しながら進めてまいろうとしているわけでございます。
  57. 馬場猪太郎

    ○馬場(猪)委員 そうすると、大臣としましては、必ずしも形式的に分類、分離ということで、養護学校ができたらできるだけ養護学校に行きなさいとか、あるいは養護学級へ行きなさいということでなしに、あらゆる場合を想定して、あくまで障害児の父兄なり教育委員会の判断で自由に多様な選び方ができるというふうに解釈していいわけですか。
  58. 砂田重民

    砂田国務大臣 どうも先生、原則論とレアケースの場合の問題と議論がかみ合わないような気持ちがいたして仕方がないのです。  今日の養護学校というもののあり方は、安全確保のために気を配った施設ができ、体に障害を持っておられるお子さんに好ましい教育上の機器、教材等準備ができ、また養護教育の非常に専門的な勉強をなさった教員が熱意を持って使命感に燃えてそういう場所で働いておられる。養護学校の義務化という問題が、養護学校を設立していく義務とそこに就学をさせる義務と二つの義務があると申し上げましたけれども、就学の義務がありますよと申し上げるからには、養護学校に受け入れてもらってよかったというふうに御両親からも思われるものでなければいけないわけでございますから、そういう準備を進めてまいります。  ですから私は、先ほどからその原則を申し上げておるわけでございまして、レアケースとして具体的な問題を、こういう場合はどうするのだということであれば、それは個々の判断で教育委員会が就学指導委員会等の意見を聞きながら決定をしていくことである。レアケースとして通常の学校においでになる場合もございます。そういう場合にそれを養護学校に行かなかったから義務を終了していなかったというふうな冷たい見方をされるのかとおっしゃいますから、そんなことは毛頭ございませんとお答えをしているわけでございます。
  59. 馬場猪太郎

    ○馬場(猪)委員 そうしますと、一応は、原則は、養護学校ができれば養護学校へ、養護学級ができれば養護学級へというようなことが原則であって、むしろ一般の父兄について希望があろうとなかろうと、教育委員会指導委員会なりの判定によっては本人の希望に反してでもやはり養護学校へ行くことが原則だ。特に認めること以外の場合には原則を採用されるわけですね。
  60. 砂田重民

    砂田国務大臣 おっしゃるとおりでございます。原則は原則であります。
  61. 馬場猪太郎

    ○馬場(猪)委員 楠公述人は、原則を、障害児の親あるいは本人の自由選択にしてほしいということなんですね。そういう考え方が中心を貫いているんですよ。そうじゃないですか。
  62. 砂田重民

    砂田国務大臣 楠さんはそういう御批評をなさったわけでございますが、体に障害を持っておられる御不幸なお子さんを持っておられる御両親のいろんな御意見を私ども承っているわけですが、これまたいろんな御議論、御意見があるわけでございます。養護学校を参観なさって、ここへこそ預けたいという御両親もまた非常に大ぜいおられるわけでございまして、また、各方面の御意見を伺いながら養護学校義務化を長年の間準備をしてきたことでございまして、私は養護学校に通われることがそのお子様に不幸だと初めから決めてかかる見方は、これも間違っているという気持ちがいたすわけでございます。
  63. 馬場猪太郎

    ○馬場(猪)委員 初中等局長が、さっき大臣言われたようにかつてはそういう解釈も示しておった。あくまで養護学校へ行かなければ教育課程を終了していないんだというような発言がたびたびありましたね、三十八年当時もありました。そういうことはいまは考えていないのだ、本人の意思もあるけれども、あくまでも原則だ。原則は養護学校でということは貫いていらっしゃるわけですね。それじゃ原則は、どうして養護学校でなければならないのかという根拠ですね、ひとつこれを教えていただきたいのですが。
  64. 諸澤正道

    ○諸澤政府委員 障害者は養護学校へというのは、文部省の方針というよりは、これは学校教育法のたてまえがそうであるからというふうに申し上げてよろしいかと思うのでありまして、御承知のように学校教育法は昭和二十二年に制定されまして、その中で学齢児童生徒の親はそれぞれの子供を小学校、中学校または盲、聾、養護学校の小学部、中学部へ通学させなければならないという、いわゆる義務の規定があるわけでございます。  そこで、どういう子供を盲学校、聾学校学校に通わせるかということになるわけですが、別なところで盲学校、聾学校、養護学校というのは、それぞれ盲者、聾者あるいは精神薄弱者といったような障害児を教育する学校であって、普通の小学校、中学校に準じた教育を行い、あわせて障害を克服するに必要な知識技能を授けるところですよ、こう書いて、そこでその盲者、聾者、精薄者というようなその障害者の障害の程度は、別に政令で定めます、こういうことを規定しておるわけでございますから、この学校教育法の趣旨とするところは、あくまでも普通の子供さんは小学校、中学校へ、そして障害のある子供さんはそれぞれ盲学校、聾学校、養護学校へ行くというたてまえでありますけれども、いま大臣がお話し申し上げましたように、一人一人の子供を見た場合に、教育上の必要からして合理的な理由があるという場合には、障害児で本来養護学校に行くような子供さんも例外的に普通学校へ行ってもそれは直ちに法律違反にはならないだろう、こういうふうに考えるわけです。  そうではございますけれども学校教育法が二十二年に制定されまして、盲学校、聾学校は直ちに義務制になったわけですけれども、養護学校整備状況がおくれておりますのでずっと義務制が施行されない。そこで、その後昭和四十三年であったかと思いますけれども、当時の衆議院の文教委員会でございましたが、当時の与野党の議員さん方の共同提案で、「特殊教育振興に関する件」という決議がございますが、その中でも、この養護学校を速やかに整備して、養護学校の義務制を完全実施することという決議がございますから、これは院の御意思としても養護学校の完全義務制ということでございますから、やはり障害者は養護学校へ行くんだというたてまえを御確認していただいているんではないかというふうに考えるわけでございまして、そういう経緯がございまして今日に至っておりますが、いま大臣が申しましたように 個々のケースについてはやはりいろいろ教育上の配慮というのがございますから、例外的な措置もしておる、こういうことでございます。
  65. 馬場猪太郎

    ○馬場(猪)委員 いまの局長お話しになった言い方を聞いておりますと、法律のたてまえだからというふうに受け取ったのですが、法律のたてまえと同時にまたそれが方針としても正しいんだ、そして四十三年当時の両院の決議もあり、すべてこれは正しいんだという前提でお話しになっておるわけですか。
  66. 諸澤正道

    ○諸澤政府委員 学校教育も一つの法律制度の枠の中で運営されるわけでありますから、制度の期待する運営というものを私どもはやはりやらなければいけないというふうに思うわけでございます。  ただ、特殊なそういう子供さんの教育をどういうふうにするかということは、これは教育上も医学上もいろいろ研究しなければならない課題でございますから、障害の内容によっては全く普通の子供さんと隔離しないで、普通の子供さんと一部交流をするような形で教育する方が効果が上がるんだというような学問研究の上の成果はありますようでございますから、今後の課題として、そういうものはわれわれは念頭に置いて運営を考えていかなければならないと思いますけれども、たてまえはやはり法律の命ずるところに従ってやるべきものだろうというふうに思うわけでございます。
  67. 馬場猪太郎

    ○馬場(猪)委員 二十二年当時にできた法律であり、そしてその後特に大都市周辺なんかは過密状態になって、状況はいろいろ変わってきておりますよね。ですから、四十三年に両院での決議があった当時といまの情勢というものは、ずいぶん違うと思うのです。  当時は、とにかく養護学校であろうが何であろうが、心身に障害のある子供は行くところがなかったんですよ。普通の学校へももちろんなかなか行けない。そして盲学校や聾学校、当時はこの二つぐらいしかないわけですから、こういうところへもなかなか行けないという実情であったと思うんですよ。ところが、やはり世の中も落ちついてまいりました。そして、ある程度教育の設備も整ってまいりました。そういう中で、少しでも障害のある子供を受け取ってほしいという願いがかなえられる運動というものが、四十年代ごろから出てきたと思うんですよ。  そのころの社会的な要請としては、確かに養護学校をつくってほしい、あるいは学校ができなければ一つの学校の中に養護学級をこしらえてほしい、こういう要望があったと思うんですよ。それはその時代としては正しかったと思うんです。ところが、実際には原則とは別に、例外的なものと言われたけれども、例外的なものとあるいは原則と、だんだん例外的なものの比率の方が高くなってきているという現実もあると思うんです。ですから当初、とにかく学校にさえ行ければということで養護学校へ入れた父兄が、十人なり十五人なりの障害児ばかり集めてやっている養護学校なり養護学級でやっているうちに、いろいろ気づいてきたわけですよね。  そうするとどういうことが起こったと思いますか。たとえば十人くらいの養護学級の中で新しい差別が生まれてきておりますよ。程度の重さ軽さによって、あの子よりかうちの子はまだましなんだという、そういう差別が生まれてきております。同じクラスの中で、同じように公平に教育を受けなければならない子供の中に差別が生まれておる。そしてそれだけじゃなしに、親がまたあの子と遊ぶな、この子と遊べというようなことを言うようなことも生まれてきておる。そしてまた程度の非常に軽い子供だったら、これだったら普通の学校へ行った方がよくなるのに、程度の重い子供たちとつき合っているためにむしろ悪くなるというような悩みも出てきた、こういうことも現実なんです。  そういうところから、別々に隔離してやるんでなしに、何とかもっとほかの方法はないだろうかということで、一生懸命市町村の教育委員会へ陳情なさった。そして何とかそれこそ例外的に普通学級、健常児の中に受け入れられるというような問題も起こってきたわけなんですよ。そういうことを試行錯誤しているうちに、果たして養護学校へ行けることが、やるということがいいのか悪いのか、養護学校に入れているお母さん同士、お父さん同士が議論し合っている中から問題点が出てきた。それが四十七、八年ごろだったと思うのですよ。  それから以後、私どもの門真市においては養護学校を最初につくりました。そしてその養護学校でいま申し上げたようないろいろな問題点の中から、普通の健常児の学校へ入れてもらう、そして普通の健常児のクラスへ入れてもらう、そういう過程を通じているうちに、通常児の中で健全な健常児と同じように遊んだり勉強したりしていることがどれだけ子供に刺激を与えていい方に、快方に向わせるかということが現実にわかってきたわけですね。  そうすると、いままで養護学校へ入れたということだけで満足しておった父兄の中にも、父兄だけじゃございません、子供自身も、普通の子供たちと遊びたいという欲求が生まれてきます。そのニーズがだんだんふえていっていることも事実なんです。そして今度はそれだけじゃなしに、いままでだったら確かに心身に障害のある子供に対する普通の子供たちの目、見方というものは、あれはちょっとおくれているやつだというふうな差別で見ておったのですね。それが通常児の中に入って教育するようになると、差別のまなざしで見ておった子供たちがまず一番先に、自分たちと同じ年代でありながら足が悪いために、知恵おくれのためにずいぶんいじめられているということを子供自身が発見するんですよ。そして今度は逆にその子供たちが御近所のお母さんに、あなたのところの子供はわざわざ電車に乗って遠くまで養護学校に行っている、どうしてこの近くの学校に行かないのというようなことを言うようになるんですね。理解が進んでくるんです。それに刺激されてお母さんが、いままで養護学校で満足しておったのが、今度普通の健常児のいる学校へ、しかも普通のクラスに入っていく運動を進める。  学校側も先生方としても最初は戸惑うと思うのです。確かに初めの受け入れ体制はありません。したがって、四十人なら四十人のクラスの中に一人だけ知恵おくれの子供がおると手がかかる。そうすると先生自身もこの手のかかる子供に対してどうしたらいいかという疑問を生じる、あるいはまた、その子供に手がかかるためにクラス全体のレベルが落ちる、能率が落ちるという批判が周囲の父兄から起こってくるということで悩む。しかし、一たん受け入れた限り何とかしなければならないということで、その子供たちに対する対策を考える。そこでも、先生や親よりかまず子供たちが先に、その知恵おくれの子供たちやあるいは障害を持っている子供たちに対して助けてやろう——助けてやろうじゃないんです、一緒にやろうという意欲、哀れみの言葉じゃないんです、本能的に子供同士がかばい合うという姿勢が生まれてくる。  そうすると、いままで障害児をクラスに入れることによってクラスの成績が落ちるとか能率が落ちるとかカリキュラムがはけないとかいう心配をしておったのが、逆に励みになって、健常児に対しても非常に刺激を与えておる、あるいはまた、受け入れておる先生方の中にも、子供を受け入れたために自分のクラスはどうもぐあいが悪いと世間から言われないようにしなければならぬという意欲が生まれるということで、逆に障害児を受け入れた通常クラスというのは非常に締まってきたし、よく勉強するようになる。  そういうふうな体験を通じて、これは隔離、分類の方式で、いわば障害児なんだから厄介者だから別にやっておこうというような、そういう感覚はないにしても、結果的にはそういうふうな弊害が起こってくるということを感じたために、最近はできるだけ、もちろん施設の面でもあるいは先生の受け入れの体制の面でも教育委員会の体制の面でも急にはいかないでしょうけれども、可能なところからしてほしいという運動が起こってきているわけなんですよ。  そうすると、四十三年の決議や四十六年当時の中教審の答申時代から、その当時は当然養護学校であるとかあるいは盲学校、聾学校というようないわゆる特殊学校しかなかったわけです。したがって、特殊学校しかなかったから、あくまで特殊学校をいままで経験してきたその体験の中から、こういう分類が原則だというふうにお決めになったのじゃないかと思うのですが、世の中が変わり、そして障害児の受け入れ体制も変わってきておるのにもかかわらず、また全く同じような考え方をずっとこの八年間続けていらっしゃるということについて、疑問をお感じになられないでしょうか。
  68. 砂田重民

    砂田国務大臣 馬場委員御発言の御趣旨は私はよく理解できるのです。しかし、一つはやはり心身障害先の障害に応じた適正な教育、そういう場を提供する養護学校を早く整備をして義務化をやってほしい、そういう気の毒なお子さんを持たれた御両親もまた非常に数が多いわけでございます。それはもう古い話だというのは必ずしも私は正確ではないように思うのです。その御要望は今日なお非常に強いわけでございまして、それに対応するための養護学校整備に努めてまいったわけでございます。  いまの馬場委員の御指摘の例は、先ほど私が申し上げましたようなレアケースであって、それ自体私は大変好ましいことだと思います。御両親も通常の学校へ通わせたい、またその程度の障害である。馬場委員の御指摘のとおりに、程度の軽い障害の子がということをおっしゃいましたが、普通の学校側でもそれを受け入れようという周囲の支援体制と申しますか、これもまたうまくいった、私は大変好ましい一つのレアケースだと思います。  先ほどから個別の判断についてはひとつ慎重に、御両親の意見も伺い、受け入れてくれる方の学校側の意見も伺い、総合判断で教育委員会が判断をいたしますと申し上げておりますのは、そういうレアケースの場合のことをお答えをいたしておるわけでございまして、いま子供たちの間に差別が、また両親の間に差別がということをおっしゃいましたけれども、本当にこれはさびしいことでございます。まさに人の心の問題でございますので、障害を持っておられるお子さんに対して差別心などが毛頭起こらないように私どももさらに努力を続けてまいりたい、かように考えるものでございます。
  69. 馬場猪太郎

    ○馬場(猪)委員 大臣、私古いとは言っていないんですよ。確かに障害児教育そのものはまだまだ歩み始めたところです。ですから、障害児教育を体験なさった一般の父兄も少ないのは事実です。したがって、先ほどおっしゃったように、いまだに施設も十分じゃありません。いまだに施設ができること自体、それも待ちわびている方がたくさんいらっしゃる、これも否定いたしません。そのとおりだと思うのです。  しかし、試行錯誤的に先に施設があり、施設教育を受け、そしていわば障害教育のレベルから言えば、地域の人たちも直接の御両親も子供たちもある程度先進的といいますか、レベルの高いところがだんだんふえてきているわけですね。これはただ単に映画をやったり講演会をやったり、そんなことでわかることじゃないんです。  現に、障害児が一般のクラスに入ってきたときに、同じお母さん同士の中で極端に反対した人がおるのです。PTAの会合の中でも、あなたのところの子供が入るからうちのクラスは悪くなるんだということを極端に言ったお母さんたちがたくさんおるのです。そしてその中でも、障害児であるためにじっと耐えてしんぼうしているうちに、先ほども言いましたように、お母さんはそういう意識であっても子供の方が先に意識が目覚めていく。今度は逆に卒業のときに、一番先に非難したお母さん方が体験の中から障害児と一緒にやることがこのクラスをかえってよくすることになったんだということで、その意識の壁を取り除いていくという大きな効果をもたらしておるわけでしょう。  ですから、幾ら講習会でやってもだめだと思うのです。だから、いまやっておるように、あくまで隔離、分類という方式でやることが原則だという考え方をお持ちである限りは、幾ら講習会をやったって、幾らPRをやったって、これは心の問題であるだけに感じなければならぬわけですから、感じさせることが少ないと思うのですよ。だから、あくまでそれが原則だという考え方でなしに、あくまで子供本位に考えて自由にコースを選べるんだというふうな考え方になれないものでしょうか。
  70. 砂田重民

    砂田国務大臣 お気持ちはよくわかるんです。しかし、原則論とレアケースの場合との議論で、これはなかなかかみ合いにくいと思うのでありますけれども、隔離という言葉をお使いになりますけれども、もう馬場委員御承知だと思うんです。いまの養護学校はどれだけ完備をされてきた養護学校であるかということを、現場も見てもう御存じだと思います。私も養護学校参観をしてまいりましたけれども、やはり障害を持たれたそういう気の毒なお子さんの御両親にとってみれば、自分の子供にやはりこういう場所で教育をしてほしいとお思いになるお母さんたちもたくさんあるわけでございまして、やはり特殊教育関係のいろいろな団体のお話を承ってみましても、養護教育が義務化されることに大きな期待を持っておられる。  やはりこれは原則は原則としてその整備努力をしてまいり、レアケースはレアケースとして法律だけで冷たく扱うべき筋合いのものではない、こういう考え方で進めていくのが、お子様のために一番いいのではないか、私はこのような考えを捨て去るわけにはまいりません。
  71. 馬場猪太郎

    ○馬場(猪)委員 先ほども申し上げましたように、心の問題というものはそう簡単に五年や十年で片づかないと思いますよ。そういう小さい試行錯誤を積み重ねて体験の中から生まれてくるわけでしょう。そうすると、あくまで原則は原則、レアケースはレアケースだと分けていらっしゃるということは、結局ほとんどが原則どおりにやられていくということになって、その体験の幅を広げないわけなんですよ。体験の幅を広げないということは固定化していくということなんですよ。確かに最終的には教育委員会なり、そしてまたそのもとにある指導委員会の決定かもわかりません。そこが理解を示せば、ある程度レアケースと言われることがむしろそれが原則になっていくかもわかりません。  しかし、現実の指導委員会の構成とか教育委員会の構成なんか見ますとなかなかそう簡単にはいかないと思いますよ。やはり文部省の方針自体があくまでも原則は原則だというふうに貫いていらっしゃる限り、第一義的に疑問を感じた、とにかく養護学校へ行けたらというその素朴な気持ちのところにとどまって、障害児教育そのものが少しも前へ進まないような気がするのです。ですから、原則は原則と言われるけれども、法律はそうであるけれども、現実は世の中変わってきているということなので、できるだけやはり指導委員会なんかにおいても、そういうレアケースだと言われるけれども、本当はレアケースじゃないんだというふうな指導がなされるようなことがあってこそ、初めてレベルアップもできるわけなんです。  いまの大臣のように、あくまで原則は原則でいくんだと、ソフトな言い方はされておりまするけれどもそういうふうに強く指導されますと、やはりこれはレベルアップが図れないと思うんですが、その点はいかがでしょうか。
  72. 砂田重民

    砂田国務大臣 個々のお子様にどの道を進んでいただくかという就学指導につきましては、個々の判断だと私は思うんです。率直に申し上げますと、ある場合は御両親が普通の学校へ通わせたい、そういうふうな御要望がある場合でも、それはお子様の幸せにはならないという説得を逆にしなければならない事態も出てくるかもしれません。また、その周辺がと申しますか、普通学校側と申しますか、先ほど馬場委員が御指摘になりましたようなありがたいそういう体制に学校側があって、これはもう普通の学級で大丈夫ですよ、この障害の程度ならば進めますよということになるかもしれませんし、それはやはり個々の判断にまたざるを得ない。  ただ、個々の判断というものをちゃんと考えてやってまいります、そういう指導もやってまいりますということをお答えをしているのでございますから、どうぞ御理解をいただきたい。あくまでもお子様の幸せという立場に立っての個々判断でやってまいりたいと考えているわけでございます。
  73. 馬場猪太郎

    ○馬場(猪)委員 中教審の答申もあり、そしていままで引いてこられたんだから原則を変えるということはなかなか言えないことはよくわかりますよ。しかし、考え方だけでも、心情的にでも一歩ずつ、大臣を初め文部当局全部がやはり初期の時代といろいろ経験してきた時代と違うんだということを理解を示していただかなければならぬと思うのです。  そこで、一番問題になるのはやはり指導委員会あり方だと思うのですね。指導委員会ができるだけ実態に即した考え方が果たしてできるかできないか、このことについてお伺いしたいと思うのです。  指導委員会についてはけさ資料をいただいたのですけれども、府県段階と市町村段階に指導委員会がございますね。府県段階は府県立の養護学校に対してということで、府県段階ということになれば、お医者さんの五人とか教職員の七人とかあるいは児童福祉法に決められた職員の三人というのは、まだ比較的得やすいと思うのです。しかし、市町村段階にいきますと、人数は少なくなりますけれども、お医者さんの二人と教職員七人とそれから児童福祉の一人、こういう構成で指導委員会がつくられるわけですが、果たして子供の能力を判定するような適当なお医者さんがうまく得られるかどうか、あるいは指導委員が得られるかどうか、その点については危惧はございませんか。
  74. 諸澤正道

    ○諸澤政府委員 ただいま御指摘のございました市町村に置かれる就学指導委員会と県に置かれる就学指導委員会の機能の仕方でございますが、確かに市町村におきます場合には、一町村ではなかなか人材も得られませんので、数カ町村を一つのブロックにしてそこへ置くという形にして指導しておるわけでございます。  そこでその具体的就学事務の手続は、まず就学前の子供に対して身体検査をやり、そしていまの養護学校へ行くような子供さんについては、それに加えて市町村に置かれます就学指導委員会の意見を聞いていただくということをいたします。その場合、そこでどうも判別がつかぬという場合には、県の就学指導委員会にも意見を求める、こういうことにしたいということで指導してまいります。  要するに、子供さんの障害の程度に応じては念を入れてよく検討していただくという機会をつくるために、県と市町村と二つに置く趣旨でございますので、最終的には県の就学指導委員会、これはいま御指摘のように、五人以上は医師を入れるということになっておりますので、その点は十分念を入れて指導ができ、そして判別の基礎判断ができますようにやってまいりたい、かように思うわけでございます。
  75. 馬場猪太郎

    ○馬場(猪)委員 いま医療の問題が非常に社会的ないろいろな問題を投げかけていますよ。そしてまた、文部省所管の医科歯科系の大学に入る入学の問題もいろいろ問題があっております。そういう意味では、いま医療の制度、そしてお医者さんの制度というものは、そんなに社会的な障害児の判別をするようなところまで乗り出してやれるような組織になっておるか、そしてそういう人たちが出せるような状態になっておりましょうか。
  76. 諸澤正道

    ○諸澤政府委員 現在の医者なりその他の方々の職業倫理といいますか、そういうことをお取り上げになって、適格者が得られるかどうかという御懸念は、全然ないわけではないと思いますけれども、しかし、私どもはそうかといって、やはりこういう問題は、具体的に判断をするのは専門家の立場、すなわちこの特殊教育の問題で言えば医者であるとか教育者であるとか心理学者であるとか、そういう方々に頼る以外はないわけでございますから、それが信用できぬというて、それならば一般素人の判断に任せてよいかということになれば、決してそういうことにはならぬと思いますので、やはりそういう意味では、数ある方々の中からできるだけ適格な方をお願いする努力を関係者にしてもらうということでいくよりしようがないのではないかと思うわけでございます。
  77. 馬場猪太郎

    ○馬場(猪)委員 私は医者の資質を言っているんじゃないですよ。お忙しい、そしてまた、そういう社会的なことになかなかかかわれるような状態じゃないんですよね、いまのお医者さんは。零歳児健診や三歳児健診だけでもなかなか大変なことなんですよ。障害児の判定というのは、これはそう一回や二回見ただけでわかる問題ではないと思うのです。少なくとも一年間じっと観察しなければ障害児なんて本当は認定できません。それに、そういう大変な仕事にお医者さんを委員として選び出せるような、そしてまたそれに好んでなろうというような奇特なお医者さんがそんなに出てくるでしょうか。
  78. 諸澤正道

    ○諸澤政府委員 その判定までに時間をなるべくかけて長期的に見るということは確かに必要だと思いますので、現在の制度では一月の末までに身体検査をやってどこの学校へ行くかを決めるというような制度になっておりますが、これをもう少し前へずらそうという考えをいたしております。そして御指摘のように、なかなか手間暇のかかる仕事であるということは私どもも十分承知をいたしておりますけれども、繰り返して申し上げますが、しかしやはりそういう専門の方の判断を仰ぐということはこの場合非常に大事なことでございますから、できるだけ手を尽くしてそういうことに貢献していただけるような方をお願いするという方向で指導してまいりたい、かように思うわけであります。
  79. 馬場猪太郎

    ○馬場(猪)委員 お医者さんだとか心理学者とか教育学者にそのことをお願いするということを反対しておるわけでもないのです。当然のことだと思うのです。私がいまそれに反対しているような印象のある答弁です。そんなことを言っているのではないのですよ。そういうお医者さんが得られるか得られないかということなんですよ。あるいは心理学者が得られるか得られないかと言っているのですよ。いま大阪ででも心理学者と言えば二人か三人なんですよ。それが学校や幼稚園であらゆるところから依頼に来るものだから、一年以上待たなければなかなか心理学者の人に判定していただけないのです。障害児の心理判定ができる——ほかの面での心理学者はいらっしゃるでしょう。障害児なら障害児専門の心理学者というものは、そんなに指導したからできるという問題じゃないのです。お医者さんもそうです。心理学者もそうです。そんな状態の中で、本当に公正を期せるような、子供の将来に役に立つような判定が下せるような組織になるでしょうか。
  80. 諸澤正道

    ○諸澤政府委員 特殊教育の問題は、特に養護学校関係の教育をどうするかということは、具体的教育方法にしてもこれは非常に未開拓の分野があるわけでございまして、御承知のように、国立特殊教育総合研究所というのができましたのが昭和四十七年でございまして、ここで現在お医者さんや心理学者等が集まりまして、いろいろな障害に対応する教育方法なり内容はどうあるべきかということを研究していただいておるわけであります。私の聞きますところでも、必ずしも一つの事柄について医学的なり教育学的な一つの定説が生まれておるという問題ばかりではないようでございます。  したがって、おっしゃるように個々の子供、しかもまだこれからいろいろな発達可能性のある子供をどういうふうに判断するかというのは非常にむずかしいことであろうということは十分承知をいたしますけれども、しかし、これは言ってみれば特殊教育全体のわが国の水準の問題でありますから、やはり関係者の研究と努力をお願いしてそこでやる以外に方法はないのではないかというふうに思うわけでございます。
  81. 馬場猪太郎

    ○馬場(猪)委員 もちろんそのとおりなんですよ。ですけれども、そういう人が果たして得られるのかどうか。数の上から言っても質の上から言っても、それだけ得られるのかどうかということを問題にしているのです。そうすると、実際問題できもしないことを決めてそして指導をする、指導委員会という名前をつける。名前は指導委員会かもわかりませんけれども、実際は判別委員会です。障害児か障害児でないかと判別するだけなんです。程度の差というもの、そこまで厳密にはかれるような委員会にならないのです。しかも、原則はちっとも変わらないということになると、結局劣者と優者という区別をするだけの機関に陥るじゃありませんか。そういうことになると、本当の障害児教育としての歩み方もいまの文部省の方針ではできないのじゃないでしょうかと言っているのですよ。
  82. 諸澤正道

    ○諸澤政府委員 現在判別委員会というのは、県の段階ではほとんど九〇%の県が置いておりますし、市町村の段階では約七〇%の市町村が置いております。そして、就学指導委員会補助をする条件として、先ほど御指摘のように、県の場合は五人以上の医者、市町村の場合は二人以上の医者を必ず入れなさいということにいたしておりまして、現在置かれておりまするところの判別委員会には、いずれもこれらの数以上のお医者さんが入っております。  先生御指摘のように、それらの方々が必ず適格な人か、あるいは十分時間的余裕を持ってやっておるかどうかということの個々のケースにつきましては、もちろん十分承知しておるわけじゃございませんけれども、私どもは、やはりそれらの専門家の方々のお力に信頼してやっていく以外にしようがないと思っております。
  83. 馬場猪太郎

    ○馬場(猪)委員 いま数のことを言われたのですが、八年間かかってやっと府県で九千六%ですか、そして市町村段階では六七%でしょう。来年を控えてこれだけ組織化するだけでも、指導委員会をつくるだけでも時間がかかっておるのでしょう、組織化するだけでも、形を整えるだけでも。しかも、その中身となるとなかなか、本当に子供の内部まで立ち入って判定できるかできないかわからないようなそういう状態にあるときに、考えていらっしゃるような、子供の将来がよくなるような障害児教育ができるのかと言っているのですよ。金のことを言っているのじゃないのですよ。疑問があるならある、まだ足りないなら足りないとおっしゃったらいいのです。
  84. 諸澤正道

    ○諸澤政府委員 五十二年度には、未設置の県及び市町村に対して全部就学指導委員会をつくるに必要な補助金を予算計上いたしておりますので、明五十四年度の当初までには、全市町村、全都道府県をカバーするだけの就学指導委員会は設置し得る見通しでございます。そしてそれらの委員会には、いま申しましたようなお医者さん等につきましても最善の努力をして御協力いただく方々をお願いするように指導をしてまいりたいと思うわけでございます。
  85. 馬場猪太郎

    ○馬場(猪)委員 文部省指導だけしていればいいのですけれども、府県や市町村はそれを受け入れて、実際それが効果があるかないか、しかもその効果があるかないかということは、ほかのことと違ってその人の人格にかかわるのですよ。回復可能性のある子供を一般学級に入れて、少しでも刺激を多くして——回復可能性のある子供をむしろ障害の中でレベルダウンをさせるような結果を来したならば、その一生を台なしにするのですよ。それだけの重要な判定をするのに十分それだけの機能をし得るものがあるのかないのか、それができるのかできないのか、まだどこでも判断できないような状態なんですよ。数だけつくればいいというものじゃないのですよ。  そういう現実があるのにもかかわらず、依然として国の法律だから、あるいは中教審の答申だから、かつての議決があったからという考えではうまくいかないんじゃないですかと申し上げているのですよ。
  86. 諸澤正道

    ○諸澤政府委員 繰り返しになりますけれども、私は、現段階におきましては、各都道府県、市町村も、いまの時点でやれる最良の方を何とか努力をして委員にお願いしておる、そういうふうに考えるわけでございますので、引き続きそういう努力の積み重ねによって、より適切な就学指導ができるように努めてまいりたいと思うわけでございます。
  87. 馬場猪太郎

    ○馬場(猪)委員 時間が参りましたので終わりたいと思いますが、大臣、私が先ほどから申し上げたのは、障害児を持つ父兄のごくわずかの意見、その中のごくわずかな例かもわかりません。しかし、心情は理解していただけると思いますので、いま制度的にどうせいと言ってもそうはできないでしょうけれども、できるだけ実情に合った、できるだけ子供たちが希望するところへ行けるような、そういう制度に努力をしていただきたいということで御要望を申し上げたいと思いますが、最後にひとつ大臣の御答弁をお願いしたいと思います。
  88. 砂田重民

    砂田国務大臣 お気の毒な障害を持っておられるお子さんたちの御両親方が組織をしておられます特殊教育関係の各種団体の皆様方の御意見も承っているわけでございまして、馬場委員指摘のそういうお話も十分私には理解ができることでございますから、就学指導委員会の構成につきましても、お子様の立場に立って、お子様の幸せのために適切な判断のできるような就学指導委員会を組織をしてまいりますことに、そしてそれが五十三年度中に全市町村をカバーできますように最善の努力を尽くしてまいりたい、かように考えるものでございます。
  89. 馬場猪太郎

    ○馬場(猪)委員 終わります。
  90. 楯兼次郎

    楯委員長 午後二時再開することとし、この際、休憩いたします。     午後零時五十分休憩      ————◇—————     午後二時六分開議
  91. 楯兼次郎

    楯委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  質疑を続行いたします。原茂君。
  92. 原茂

    ○原(茂)委員 きょうは四点ばかりお伺いをしますが、時間がありましたら最後にもう一点追加します。  最初に、体育問題について少しくお伺いします。  前の総務長官の藤田さんが、いわゆる一億総スポーツの構想を出しました。私見のように立ち消えになったそうですか、しかし、一部はその後文部省も取り入れているようです。その件に関してまず最初にお伺いをします。  私があえて申し上げるまでもなく、最近のいろいろな諸般の環境等を考えたとき、特にまた週休二日制などもいよいよ実施の段階にまいりました。その余暇もどう使うかが問題になる。そこへ老齢化社会という決まり切った段階に入っていくわけですから、したがって、国民全体の体力の向上を考えたとき、非常に体育というものは必要になってまいります。まず最初に、例の藤田構想なるものをいま文部大臣はどうお考えになっているのか、お伺いしたい。
  93. 砂田重民

    砂田国務大臣 前藤田総務長官が、体力づくりやスポーツ振興に大変御熱心でありましたことは承知をいたしておりますけれども、同長官のスポーツクラブ構想というものについては、実は具体的なお話を私は承知をいたしておりません。ただ、スポーツクラブを育成振興するということは非常に重要なことだと心得ておりますし、特に生活環境がこのように変わってまいりますと、どうしても体育、スポーツというものになじまなければ大変不健康な状態にもなってまいります。しかも、いま御発言のように、スポーツに親しむための時間というものはみんなよりたくさん持てるような状態になってまいりましたので、文部省としても、スポーツ振興という立場から非常に意義のあることでございますから、このために必要な措置を講じてその振興を図っていきたい、こう考えまして、五十三年度の体育局関係の予算につきましても、相当充実した新しい構想も盛り込みまして予算編成をいたしたつもりでございます。
  94. 原茂

    ○原(茂)委員 いま大臣の言われた例のスポーツクラブですが、藤田構想によると、二面グループぐらいを目途にしてというのが中心で構想が発表されていたわけです。しかし、文部省も五十二年度にすでに五百七市町村に予算づけを行いながら、スポーツクラブのいわゆる増強に踏み出したわけです。私は、五十二年度はたしか三億八千万ぐらいの予算しかついていないように思うのですが、五十三年度はもちろんもっと多くなっているのでしょうが、このことを考えたときに、いまの景気の状態を考えると、政府は思い切って国内の消費をというので政策の重点をそこに置いているわけですから、そういった面から言っても単なる国民の体育だけでなくて、やはりこういったものに力を入れることが政府のいまの経済対策の一環にもなるのじゃないか、こう思われるので、現在の五百七市町村、これを何年くらいの間にどのくらいまでふやしていくつもりなのか、このスポーツクラブのごく短期の構想、見通しをひとつ先にお聞かせをいただきたい。
  95. 砂田重民

    砂田国務大臣 事業費といたしましては一億円ほどのものを計上いたしておりますけれども、スポーツクラブはいま先生御指摘の五百何十かあるわけですが、これを幾つまでふやしていこうという具体的な長期計画はまだ持っておりません。
  96. 原茂

    ○原(茂)委員 さらに藤田さんの構想では、スポーツクラブの効率的な運用を図ろうというので、現在全国で約六万五千人を数える体育指導員あるいはスポーツ指導員といったようなリーダーを育成しようということを考えている。文部省もこの点もうすでに踏み出したようですが、これに対しては、たとえば三年なり五年の中期の間にどの程度こういったものの拡充強化を図ろうと考えておるのか。そういったものはありませんか。
  97. 柳川覺治

    ○柳川政府委員 スポーツ指導員の拡充策につきましては、現在たとえば体育協会で上級コーチあるいはコーチあるいは指導員、トレーニングドクター等の認定を行っておりますし、また市町村で、非常勤の公務員でございますが、四万六千人の指導委員の委嘱をする、あるいは国庫補助によりましてスポーツ担当の社会局主事の派遣を行う等の施策を講じておるところでございまして、将来にわたってこの社会体育スポーツの指導体制がいかにあるべきかという御指摘の点につきましては、現在文部省の方といたしまして昨年の八月に体育指導者の資格認定に関する調査研究の研究会を設けさせていただいております。また、五十三年度予算で、社会体育施設にどのような指導員が専属または非常勤で配置されるかという基準の作成に関する調査研究費も計上いたしまして、この面の社会的ニード及びこれに対応する具体の施策について検討を進めたいということの体制をとっておる次第でございます。
  98. 原茂

    ○原(茂)委員 細かく全部お聞きしようと思ったのですがやめますが、大臣どうでしょう、この藤田構想にとらわれる必要はないと思いますが、少なくとも国民体育というのは諸般の情勢から非常にその必要性が高まっている。国民も、これから生ずる余暇をやはりスポーツへと第一義に考えていくだろう、こう思います。これにこたえるのは、やはり地方の自治体が中心ですから、そういうことを考えたときに、藤田構想にはとらわれなくていいのですが、文部省として、中期、長期のこういった国民体育に関する構想、計画というものができなければ、文部省が困るのじゃなくて、国民もそうですか、地方自治体も非常に困る。思いつきで、必要があったらその都度というわけにこのスポーツはいきません。したがって、文部省としてのこういった種類の国民皆体育、こう考えたときの構想を、三年、五年というふうに一応の目標を設定して計画的にこれを進めるという計画がなければいけないと思うのですが、こういうものをおつくりになる気はありませんか。
  99. 砂田重民

    砂田国務大臣 市町村の基礎体力づくりと申しますか、市町村にありますスポーツクラブ、私は藤田前総務長官がおっしゃったことも大変価値ある御発言だと思います。  ただ、一概にスポーツクラブと申しましても実はいろいろな態様で、各地にそれぞれ態様の違うスポーツクラブができてまいっております。どういうふうに取り組んでまいったらいいか。実は私が就任いたしましたときはもう五十三年度予算の編成直前でございました。いま実は少し勉強しておるところでございますけれども、何といっても基本的にはまだ施設が足りません。もっとスポーツに親しみたいという意欲のあられる方が地域社会には相当数おられますのに、その御要望にこたえるだけの施設がまだ十分ではございません。  文部省といたしましては、体育施設整備費も思い切ってふやしていく。同時に、先ほど先生御発言のありました指導者の研修をやっていく。そしてまた、地域社会にできておりますスポーツクラブがあこがれの的のように考えております国際級の選手に、そういう地域に回っていってもらって指導してもらう。そういう総合的な施策をこれから講じていかなければならないと考えております。学校の開放もまたこれに含まれることでございますので、五十四年度予算の概算要求までに何か具体的な計画を持ちたい、かように考えているところでございます。
  100. 原茂

    ○原(茂)委員 ぜひ計画を持つべきだと思います。持たなければ成果の上がる実施は不可能だろうと思うのです。遅まきながらやっていただく必要があるだろう。五十四年度予算前にと言う、非常に結構ですから、そのときにまたその構想をお伺いしたいと思う。  それからもう一点、教育上必要だという体育施設国民総体育、総スポーツを考えたときに、いろいろな施設を考えたとき、国の予算なり補助のほかにギャンブルの収益を利用しているのがずいぶんあります。現在、全体の予算の中でこの種の体育の施設にギャンブルの収益が使われているパーセンテージは大体どのくらいになりますか。五十二年度で結構ですから。
  101. 柳川覺治

    ○柳川政府委員 日本自転車振興会、日本小型自動車振興会、日本船舶振興会、これの五十二年度補助額は四百五十五億一千八百万円でございますが、この補助は体育、文教、社会福祉、医療、公衆衛生その他に分かれておりますが、このうち二十九億四千万円、六・五%が体育関係の施設もしくは事業費に対する補助として交付されております。
  102. 原茂

    ○原(茂)委員 これからこれをふやしていくのですか、減らしていくのですか。
  103. 柳川覺治

    ○柳川政府委員 この辺の補助事業費につきましてはそれぞれの団体において決定されるものでございまして、例年、申請に基づきましてそれぞれの団体において審査、決定されるものでございますので、将来私どもとしてはこの分野の増額が図られるよう希望はいたしてまいりますが、御決定いただくのはそれぞれの団体でございますので、ここで私どもは希望を持っておるということだけをお答えさせていただきたいと思います。
  104. 原茂

    ○原(茂)委員 予算の方は枠があって窮屈でしょうが、この種の金は思い切って文部省指導的に強力に要請をするなり、思い切ってこの金を使うことを考えるべきじゃないかと思うのです、ただ団体だけに任しておかないで。文部省としての計画ができたら、恐らく収益などを当てにするといいますか、これに相当ウエートを置くような方針は同時につくっていいんじゃないかと思うのです、せっかく収益があるのですから。これもひとつ考えておいていただきたい。  それから、いま国民全体が体育に親しもうというときに思い出されるのは、例のママさんバレーとか、早起き野球、一般野球ですとか、卓球ですとか、こういったものが、これはもう底辺が非常に広く、老若男女を問わず入っていける、また現に携わってもいるというようなことから、やはりこの面に対する国の補助なり助成というものは非常に大事だと思いまして資料をちょうだいしましたが、野球クラブなどいま全国で約十二万チームある、それからママさんバレーが六万一千チームある。こういうものに対して、予算を見ると大して予算が使われていないのですが、いままでと同じようなこの程度の予算助成しかできないものでしょうか。これがもっとふえるように、各自治中心に考えていくのですが、やはり思い切って金の面から助けてやらないといけない面が非常にあるのですが、どうでしょう、卓球それから野球、ママさんバレー、こういったものに対して予算は、これからどの程度補助金なり助成金として出されることになりますか。
  105. 砂田重民

    砂田国務大臣 もう先生御承知だと思いますが、五十三年度予算で、主としてママさんバレーが身近に利用できるような比較的小さい体育館等を新規事業として取り上げたわけでございます。  これからというお話でございましたが、それは五十四年度予算編成以降になることなので、どうもここで明確なお答えがいたしにくいわけでございますけれども、体育、スポーツということがこれだけ大事なことになってまいりましたのは、もう全国罠的な意識がそうでございますから、やはり何といっても基本的に施設が足りない、これはもう現実、事実でございますから、ひとつ特段の努力を払って財政当局の理解を得ながら五十四年度予算編成にまず取り組みたい、かように考えるわけでございます。
  106. 原茂

    ○原(茂)委員 これはもうぜひ計画的に、先ほど言いましたあの計画ができたら、そういった予算の面でやはり裏づけしていかないといけませんので、これは、五十四年度予算の前につくる計画の中にはやはり予算的にも思い切った措置を講ずるように、これは私から要請しておきます。  次に、選手の強化問題ですが、選手の強化のために特に予算をつけるようになりました。五十二年度からですね。五十二年度一億八千万ですか、正式に選手強化費というものがつくようになったわけですね。五十三年度は四億五千万ぐらいかな、選手強化事業予算として計上されているわけですね。その選手強化の問題なんですが、いろいろなやり方があるし、物で見たり人から聞いたりしてよくわかります。  しかしたとえば、これはどこへ行ったときですか、宗兄弟以下五人の長距離ランナーが、メキシコの西郊にあるメキシコオリンピックトレーニングセンター、これは宿泊場も兼ねているようですが、そこの空気の希薄なところで訓練しなければいけないというので、わざわざメキシコまで出かけていっているのですね。宗兄弟ほか三人、五人で行っている。そして監督、指導者も一緒に行って七人ぐらい行っているのです。そこで合宿訓練をする。確かに、普通のところで空気の割合が二〇%だから、あの上へ行くと約二千三百メートルぐらいですか、高地へ行って空気のあれが一五%ぐらいになる、そこでやると非常な訓練になるというのでことし行ったわけですね、もう帰ってきましたけれども。  ああいう訓練もそれも必要だと思うのですが、私はやはり選手強化のためには、日本の国内に二千三百メーターだろうが、二千メーターだろうが二千五百メーターだっていっぱいあるのですからね、富士山ろくだっていいし。さっきの話じゃないけれども、長野県内にいっぱいありますよ。わざわざメキシコまで出ていかなくったって、日本に幾らでもこんな高地があるのですから、そういう高地を、しかも一般に開放できるような施設、いわゆる長距離ランナー用の訓練施設、センターをやはり日本の国内にきっちりしたものをつくるというようなことに——あそこへ行ってどのくらい使ったか知りませんよ、いま聞こうと思ったけれども聞くのは時間がないからやめますけれども、選手の強化費を考えたときに、私は、どうもそういうもったいないことをしないで、日本の国内でもって幾らでも二千メーター以上の高地があるのですから、緯度を考えるなら緯度を考えても結構ですから、日本は細長いし、幾らでも場所はあるのですから、そういうことに考えを転換していくような、選手強化の問題の一環としてああいったむだは省いた方がいいのじゃないだろうか、こう思いますが、どうですか。
  107. 砂田重民

    砂田国務大臣 選手強化事業につきましては、五十三年度で四億五百万を支出することにいたしております。  選手の強化事業というのは、やはり競技種目によってやり方がいろいろ違うようでございますけれども、やはり日本体育協会で重点競技種目をしばってもらわなければなりませんことが一つございます。日本体協で重点競技の種目をしぼりまして、昨年から実施をいたしておりますけれども、体協と各競技団体の間でもいろいろと密接な連絡をとりながら、それぞれ競技団体が考えます選手強化策を持って取り組んでいるわけでございまして、文部省としてもそのことを体協を通じてよく話を聞いているわけでございますが、外国チームとの交流試合でありますとか、あるいは有名な外国選手を日本に招いて、そこで選手の強化を図るということば必要なことであろうと思います。  いま御指摘の、マラソンの選手がメキシコへ行って空気の希薄なところで練習すればいいという、どういうことで陸上競技連盟がそういうことを思いつかれたのか、そのことを私詳細承知をいたしておりませんけれども、できるだけ国内の設備を充実させていくことには努力をしてまいりますけれども、すべての競技について直ちにというわけにもまいりませんでしょうし……。いま先生のお話を伺っておりますと、何か特別の事情が体協の長距離選手、マラソン選手にあったのかもしれませんけれども、どうもマラソンの練習だけならわざわざメキシコまで行かなくても日本でもそういった適切なコースがあるような気持ちがいたします。またその事情等を体協を通じて問い合わせてみたいと考えますが……。
  108. 原茂

    ○原(茂)委員 とにかく去年より、五十三年度は四億五百万も強化費をつけるのですから、つける以上は、ああいった強化の内容に関して、もうちょっと当局が熱心に検討しませんと、ただ体育協会が、あそこへ行きたい、ここへ行った方がいいのだと言ったからといってそれが使われていくようなことのないように、これはその意味ではやはり十分な指導監督が必要だろうと思うのですよ。宗兄弟以下五人が行ったというのは、間違いなく空気の希薄なところでトレーニングしたいというだけですよ。これはもう間違いないです。ということを考えますと、やはり強化費などをつけたからいいのだ、後は団体に任せっ放しだというのじゃいけないのではないかという考えで一例を挙げただけですから、後は考えていただきたい。  最後に、国民体育大会のことに関してちょっと伺いたい。ことしは長野県のやまびこ国体ですね。この間、冬季の国体を二月の十九日から二十二日ごろまでやりました。そのときに、NHKのスタジオ102あるいは長野におけるNHKの放送などで現場が出た後、その中で、成績について言うのじゃないですよ、そうじゃないのですが、こういうことを言っているのですね。サービスマンというのがあるのですよ。サービスマンというのは、何か選手のサービスをしたり、競技のサービスをしたり、要するにスポーツ用品を売るあるいはつくっている側から特別に人を派遣して、これは販売の一種の手なのかもしれませんが、サービスマン、サービスマンと称しているのです。そのときもサービスマンと言われたのですが、これがこういうことを言っておるのですよ、われわれがもしいないと競技が成り立たないよ、こういうことをNHKのテレビで言っているのですよ。われわれがもしいなければ競技は成り立たないと言っているのです。これはずいぶんどぎつい言い方なんですが、何が言っているのかといったら紹介されたサービスマン、すなわちスポーツ用品の販売員であり、メーカーの出張員なんです。これがサービスマンと称されている。そのとき何をやっているかが紹介されて、それが大写しでもって何を言ったかといったら、われわれがいなかったらこの競技が成り立たない、こういうことを大胆に言えるほど——実はその後いろいろ聞いてみますと、各地のスポーツの大会などがあるときにはこういったサービスマンといいますか、いわゆるスポーツ用品のメーカー、販売の側から派遣されている人々が、選手のくつを履かせるのから、脱いだスキーをどんどんふくのから、いろいろワックスを塗るのからやっているのが常識のようなんですね。諸外国で、もう御存じでしょうけれども、メーカーのあれが見えちゃいけないとか、ここへメーカーの印をつけちゃいけないとか、そのことで選手が失格したりいろいろしていますね。日本はこの点少し寛大なのかもしれませんが、その点でも目に余るものがそろそろ日本でもあるわけです、大写しにメーカーが出てくるような……。  やはり日本の場合も、選手あるいは団体とスポーツ用品の販売会社ないしはメーカーとの癒着らしいものは、しかもNHKのテレビでわれわれがいなければこの競技は成り立たないと言えるほどの癒着ぶりは、何かの方法で自粛してもらう、規制をするということが必要ではないだろうかということを感じたのですが、どうですか。
  109. 砂田重民

    砂田国務大臣 御指摘のサービスマンというのはスキー競技だけにあるようでございます。いまおっしゃったスキーメーカーのサービスマンが、スキーのワックス塗り、その日そのときの雪質によって全く違うワックスを塗るというようなことから、ビンディングの調整等専門的な技術を要する整備に当たっているようでございますが、競技運営上支障があるということのために、財団法人全日本スキー連盟ではサービスマン委員会規程というのを設けておりまして、同連盟の関与する競技会等におけるメーカー等の行うサービス業務を厳正かつ安全に運営できるように、そしてそれがアマチュア規定に触れないように、そういう枠を設けて管理指導をしておると聞いております。これは甘木では青森国体からそうなっているようでございます。  ことし二月の長野国体におきましても約四十名のサービスマンがスキー用具の整備に当たっていたそうでございますが、このようなサービスマン制度はわが国だけではなくて、オリンピックを初めとするスキーの国際競技大会などでも広く行われているようでございまして、私ども文部省といたしましても、このような制度の実情につきましてスキー連盟等からもう少し詳しい事情を聞きましてよく検討したい、かように考えるわけでございます。
  110. 原茂

    ○原(茂)委員 大臣おっしゃることはそれで一理あるからいいのですが、私の言っている焦点は、そのサービスマンがテレビなどで堂々と、われわれがいなければこの競技は成り立たない、そう言い切られているのはどうも行き過ぎじゃないかと言うのですよ。これはNHKですから事実です。これも青森以来やっていることなので仕方がないんだ、スキー連盟でやっているのだからという調子で見逃してはいけない。そこまで言われるようになると何か癒着が過ぎているというふうに考えるのですが、どうですか。
  111. 砂田重民

    砂田国務大臣 サービスマン自身がNHKテレビなどで、われわれサービスマンがいなければ競技が成り立たないという言い方は何を指しているのか、少し不穏当な発言だと私は思います。あるいはあのスキーのワックスというものが、その選手の滑り出す直前に雪質が変わってワックスを塗りかえなければならないというような事情があるかとは思いますけれども、スキーの専門家でないわれわれにすると、スキーの選手自身がそういうことは見きわめられないのだろうか、そういう気持ちもするわけでございまして、先ほどよく事情を聞いて一遍研究をしてみたいとお答えいたしましたのは、そういうことを踏まえてのことでございますので、よく研究させていただきたいと思います。
  112. 原茂

    ○原(茂)委員 それから、これは大臣にお答えいただく。問題は、違った問題に入ります。  入学試験、大学高等学校何でもいいのですけれども、その問題に関連してちょっとお伺いしたい。  いま何々という予備校がたくさんあるのは御存じですね。私は、予備校というのは弊害もあるが非常にいいところもあるなと考えている。予備校の弊害なんと言うと怒られてしまうかもしれませんが、私なりに考えて、これは一番いいところだなと思うのが一つあるのです。それは何かといいますと、予備校の場合は二ヵ月ないし三ヵ月で定期的に試験をするんですね。テストをやる。そのテストをやった答案に対して克明に正誤をはっきりさせ、そうして過ちがあれば、過ちを詳細にわたって添削をして本人に返しているのです。これは非常に本人に対して次に出ていく刺激になりますし、恐らく予備校の一番いい点は、答案に対する正誤をはっきりさせ、それに対して細かく添削をして返してやるという点にあると私思うのです。これはどなたが考えても非常にいいことだということになると思うのです。  いま、大学入試の裏口入学とか何々汚職が起きた、どこの大学で幾ら取ってしまったなんて、ずいぶんいろいろな事件がありました。私は、そういったことを防ぐことが一つと、もう一つは、せっかく大学なり高等学校なり中学を受験した諸君が、おれはこれが悪かった、ここで誤ったんだという過ちを、ちょうど予備校の答案を返してもらうのと同じように返されたら、本人に対する大変な刺激になると思うし、同時にそのことが次の飛躍にもなるだろう。実は大学どこを受けた、落っこちました、しかし本人は大丈夫できたよと言って帰ってきたのだけれども、どこが悪いんだか、とにかく受かってなかったと言って、家族まで非常に暗い気持ちになるわけです。これも受験をしたその答案に対して正誤をはっきりして細かい添削をしてやって、受験者、生徒本人に返してもらうということをやれば、家庭的にも非常に助かるし、本人も大きな刺激を与えられる。  同時に、前段に申し上げたように、裏口入学だ何だということはない。それだけで防げるわけのものではありませんが、そういう点で非常によくなると私は思うので、まず真っ先に公立が、もしそのために人手がかかる、費用がかかるというなら受験料を上げたって差し支えないのですから、そうしてでも、受験をした生徒に対してその答案に克明に正誤を明確にしながらまた必要な指導的な添削を行って返す。これにうんと時間がかかるでしょう。うんと手間がかかると思う。しかしながら、それを思い切ってやることが、一つは忌まわしいあの事件を防ぐ一助になるだろう、一つは本人の次の大きな飛躍への刺激になる。  ちょうど予備校の一番いい点と同じものは一切の学校の受験に採用していくということをすべきだと私は思うのですが、どうでしょう。これはぜひやっていただいたら相当の効果があると思う。やはり公立を先にやって、そして私立に及ぼしていくということが一番大事だと思うのです。  この二つの観点から、ぜひ受験生の答案に対して、まず公立が公の立場で親切な指導をする、刺激を与えてやる、家庭的にも、ああここが悪かったのかとはっきりわかるようにしてやるということをやるべきだと思うのですが、いかがですか。
  113. 砂田重民

    砂田国務大臣 いま先生の御指摘大学の試験の学力検査の問題につきましては、支障のない限り標準的な解答例でございますとか、あるいは出題の意図等を適切な方法で明らかにするように、各大学に対しまして、文部省としては「大学入学者選抜実施要項」というものを通じて指導をしてまいっておるところでございます。実施校の数字等、後ほど大学局長からお答えさせますが、しかし入学者の選抜を必ずしも学力試験だけで行っておるわけではございませんので、合否の判定は、学力試験の成績のほかに調査書の内容でございますとか、実技検査、面接、小論文等の成績、必要に応じて実施をいたします健康診断等、ほかの適当と認める資料を合理的に学力試験の成績と総合判断をして入学者を決定するものでございますから、その結果自体を、端的に内容を示す場合には、大変むずかしい問題がまた起こってくるわけでございます。したがって、判定の方法や結果の内容を受験生に示すか否かは、これはもう大学の自主的な判断にまたなければなりませんが、冒頭申し上げましたように、学力検査の結果だけはできるだけ知らせるように、そういう指導をしているところでございます。  どれくらいの大学実施しておりますか、大学局長からちょっと数字をお答えいたします。
  114. 佐野文一郎

    佐野政府委員 現在、大臣が申し上げました学力検査問題の標準的な解答例なりあるいは出題の意図というものを明らかにするという指導をいたしておりますが、国立大学の場合、八十二校中それを実施しているのは五十二年度でまだ三校にとどまります。これをもっとふやすような努力をしなければいけないと思います。  それから、学力検査の問題、これは全校が公表をしております。  学力検査の個人の成績につきましては、要請があった場合には高等学校に通知をするということを現在いたしておりますけれども、これを行っている国立大学は三十三校、四〇・二%は実施をいたしております。もちろんこの場合でも、先生御指摘のように添削をして返すというようなことはまだいたしておるところはどこもございませんが、結果を知らせるということは四〇%のものが高校あてに行っております。
  115. 原茂

    ○原(茂)委員 いまの局長の答弁はあれですか、私の言っているのは入学試験に関してですよ。一般の学力検査を言っているのじゃないですよ。
  116. 佐野文一郎

    佐野政府委員 御指摘のように入学試験の際の学力検査の問題に関してでございます。
  117. 原茂

    ○原(茂)委員 まだ添削をやってない、やっているところもごくわずかだというのですが、せっかく少しでもやっているのなら、添削はもちろんやって、それこそ文部省の学閥をやろうとする者に対する親切な指導のやり方だと思うのですよ。ですから、大学に任せておかないで、やはり文部省としても方針を決めて、そうして正誤をはっきりすると同時に、きちっと添削をしていわゆる指導的な解答をしてやる。手間も時間もかかるでしょうが、そうしてやることが非常に大事だと思う。それが一点。  それからもう一つは、学力だけじゃないのだ、おっしゃるとおりです。ほかの要素もあるのです。ほかの要素だって発表できるのならした方がいいのです、本人のためには。家庭のためにもいい、社会のためにもいい。しかしながら、それは発表は一遍にしなくてもいいですが、せめて学力だけは知らせてやると非常に大きな効果があると私は思うのですよ。ただ知らせるのじゃなくて、いま言ったように指導的な添削を行うということはぜひやるべきだ。ただ標準の解答か何かをつけてやるというやり方でもいいのでしょうが、そうでない、もうちょっと突っ込んだ親切な、いわゆる本当の国民全体の教育指導する立場で思い切ってそこまでやるべきだと思うのですが、もう一遍大臣答えてください。
  118. 砂田重民

    砂田国務大臣 やはり大学の入試の選抜という仕事は、大学当局自身の非常に重要な教育にかかわる問題でございますから、大学の判断にまたなければならないというのが原則でございます。ですけれども、入試のときの学力検査の問題についても、これは支障のない限り標準的な解答例や出題の意図等を各大学ができるだけ発表できますように、これからも指導をしてまいろうと考えますが、添削までしてということは、大学当局の時間的な能力もございましょうし、直ちにということはなかなか困難ではないかという気がいたします。
  119. 原茂

    ○原(茂)委員 いいことだったら、直ちにしなくても、とにかくそういう指導をするということはやはり必要だと思いますよ。悪いことならいけませんけれども、いいことだったらそういう指導をするということは必要だと思うのですよ。  私は大学ばかり言っているんじゃない。高等学校だってまず公立からやりなさいと言っている。いまの指導をするという点と、それから高等学校にまでそれを及ぼしなさいという点、いかがですか。
  120. 砂田重民

    砂田国務大臣 検討をさせていただきたいと思います。
  121. 原茂

    ○原(茂)委員 この問題はもう時間がありませんからその程度にしておきます。  次に、ニホンカモシカの問題、前から懸案になっておる問題なんですが、いままで何回も何回もカモシカ問題ではある意味では検討をしていただいて今日に至ったはずです。なかなか遅々としてわれわれの要求するとおり進まなかった。しかし、今国会にようやく、例の約束した麻酔銃の使用に関する法律の改正に関してはいま出されているようですね。恐らくこれは今国会で成立するだろうと思うのです。そこで麻酔銃を使うことを許そうという前提でしょうか。ニホンカモシカの捕獲のために麻酔銃を使えるようにしなさいと酸っぱくなるほど言ってまいりましたが、いま法律の改正が出されて、これが今国会を通過するという前提になってきました。ということは、腹構えとしてはやがてカモシカの捕獲に対して麻酔銃の使用を許可しよう、そういう前提でしょうか。それが一つ。  それから、うわさに聞きますと、もうすでに麻酔銃に使う麻酔薬を上野動物園の中にある研究機関に研究をさせて、その麻酔薬を、これならよろしいという、一応いよいよ試してみようという段階に来たと聞きますが、そうでしょうか。  その次に、この麻酔銃そのものは、御存じのピストルなんかでは一メートルか二メートルでしょう、現在の麻酔銃では十メートル以内ぐらい。それで五十メートル、七十、八十メートルぐらいまで届くような麻酔銃の試作をすでにやったと聞いていますが、その点はいかがでしょうか。  それからもう一つ、麻酔銃を使って捕獲の訓練をしようというのに、幸いに小坂にいま捕獲しているニホンカモシカを使って、この麻酔銃による麻酔薬の効め目を試そうと考えているようですが、これは事実でしょうか。いつおやりになりますか。  それから、前から問題にしておりますように、せっかく麻酔銃を使って捕獲をしましても、これを一体どこへ置いておくのか、どこへ囲うのかが決まらないといけないので、やはり国有林の相当広いところを、林野庁なり環境庁と文化庁は相談をして、そして早く一定の地域を決めて、そこにはもうきちっとしたさくをやって出ないようにしておいて、そこへ捕獲したニホンカモシカは置きなさい、こう言って提案をしたら、それも検討をします、検討をしますで今日に至っておりますが、それはどうなりましたか。  まず六点を答えてください。
  122. 犬丸直

    ○犬丸(直)政府委員 カモシカの問題につきまして、初めに文化庁の立場からのお答えを申し上げます。あとは環境庁の方からまた補足していただきたいと思います。  このカモシカの問題につきましては、私ども基本的な対策と応急的な対策と二つを考えておりますが、基本的な考え方は、やはりカモシカというものが全体にどういう状況にあるかということをしっかり把握して、その上に立ちませんといろいろな根本的な施策が考えられませんので、まずこれは環境庁、林野庁等とも御協力しながらその基本的な状況を把握するということに努めております。  しかしながら、さしあたり一部分の町村等ではカモシカの被害に悩むというような状況もございますので、応急対策として捕獲をするとかいうようなことを考えなければいけない。そういう線の上で麻酔銃の問題も起こってくるわけでございます。いままでできるだけそういうものを使わないで網でつかまえるという別な方法でつかまえることを考えておったわけでございますけれども、どうもうまくいきませんので、状況によりまして、地元からの御申請等ございましたらその状況によって判断するわけでございますけれども、終局的には麻酔銃使用も許可せざるを得ないことになるのではなかろうかという、そういう予測を現在持っております。  なお、銃の点につきましては、環境庁の方で御検討願っておりますので、そちらの方からお答え願いたいと思います。
  123. 野辺忠光

    ○野辺説明員 麻酔銃の使用の問題につきましてお答え申し上げたいと思います。  麻酔銃につきましては、カモシカの捕獲のみならず大型獣類のいわばいろいろな調査実験等にも非常に有効であろうというふうに考えているわけでございまして、現在、法律の方では鳥獣保護及狩猟ニ関スル法律の改正をお願いいたしまして、それで麻酔銃に使用いたします劇物等の使用ができる、結果的に麻酔銃の使用ができるようにいたしていきたいというふうに考えておるわけでございます。  そのためには、麻酔銃に使用いたします薬品の種類であるとか量であるとかあるいはまた麻酔銃そのものの効力、そういったものにつきまして、現在、五十二年度と五十三年度で日本動物園水族館協会の方にお願いを申し上げまして実験をいたしております。ただ、五十二年度におきましては、薬品等の種類、量等について、カモシカでなくてほかの一般日本産のシカとかそういうものを対象にいたしておりますが、カモシカにつきましては、現段階では屋内におきます実験を近くやりたいというふうに考えております。  また、その使用量等につきまして若干の成果を見ましたところで、できれば小坂町等の現在捕獲いたしております三頭のカモシカをそのために麻酔銃を使用して実験を試みたいと考えております。  私どもといたしましては、法律の改正がお願いできますれば、六月ぐらいからは施行の段階に至ると思いますので、それまでには何とか形をつけていきたいと考えておりまして、現在検討中でございます。  なお、収容する場所等につきましては、私どもの方で各動物園等にいろいろ調査研究をお願いいたしまして、いろいろな意味での収容能力をチェックいたしておりますが、五十数頭については現段階では動物園ごとにある程度めどを得ております。  そういう状況でございます。
  124. 小田島輝夫

    ○小田島説明員 御説明申し上げます。  先生のお尋ねの国有林に一定の地域を限って自然動物園的なものをつくりましてカモシカを放し飼いする、こういうお話でございますが、捕獲をしましたカモシカを収容するごく限られた小面積のものにつきましては、ただいま環境庁の方から御説明がございましたように収容能力が五十頭ぐらいある。さらにそれ以上の頭数あるいは面積の保護区域をつくる、被害対策としまして保護区を設けてそこで種の保存あるいは維持、増殖を図るというような恒久対策につきましては、現在三庁で進めております調査の結果にまちまして、その結果によって必要な地域を限って保護区を設けたい。林野庁としましては、基本的には保護区を設けることにつきましては賛成でございますので、調査の結果にまちたい、こういうことでございます。
  125. 原茂

    ○原(茂)委員 これはおととし、去年ともう何回も言っているのですよ。そうして三庁で相談をする。足かけ三年になってまだ動物園だ、五十頭範囲の小さいところだなんて言っているのですが、そうやって日がたつうちに大変甚大な被害を、いま里へおりてきて畑まで荒らしているのですよ。単なるヒノキだ何だの若葉を食うとかなんとかだけではなくなってきた。下までおりてくるところがうんとあるのですよ。何十億という被害が起きているのです。  その被害を補償する手当てが何にもない。国は勝手に、これは特別天然記念物であると指定だけしておいて、これがどこで食うかは知ったことじゃない。民間を荒らそうが公有林を食おうが、どんな被害でもいいからどこへでも行って食ってこい。前にも言ったのですが、そんなばかな、この種の国の特別天然記念物の指定なんということをやっていいかどうかですよ。私が一番先に取り上げたのはもう六年前じゃないですか。ようやく麻酔銃だけが、いま法律が出てきた、強く要求したものが。  しかもまだ、カモシカの実態がどのぐらいいるのか、どんな生息状況にあるのか、調べております。調べております。食いちぎった歯型を見ても、ウサギだかネズミだかわかりません、カモシカとは限りません、何年でも同じ答弁しかしてないじゃないですか。何のために一体こんな官庁があるのだ。こうやっている間にどんなに被害があると思いますか。  当然大きな国有林野を、何百ヘクタールか知りませんがとにかく設定して、麻酔銃をせっかく使うなら、捕獲をしてそこへ入れなければだめですよ。そのことを早く基本的にやらない限り、何回も言うようですが、国が勝手に指定しておいて、指定された動物が食うのはどこへでも行って荒らして食ってこい、どろぼうしろ、どんな被害が起きたって知ったことじゃない、そんなばかな指定は取り消さなければいけない。指定をするからにはその後の手当てもきちっとすべきじゃありませんか。何年同じことを言っているんだ。そうして三庁でまた相談をします、何年同じことを言っているのですか。これはここではどこが一番主導的にやるのか知りませんが、私の言っていることにぴしっと答えてごらんなさい。
  126. 犬丸直

    ○犬丸(直)政府委員 御指摘のようにカモシカの問題につきましては昭和五十年度ごろからずいぶん長い間の懸案でございますが、事柄が実態調査の把握が非常にむずかしいという点もございますし、複雑でございますので、私どもといたしましてはいままで一つ一つ手を打ってきたつもりでおるわけでございますが、部分的にはおっしゃるような大変まどろっこいというようなお気持ちを与えているかもしれませんけれども、だんだんわれわれの検討も煮詰まってまいりましたので、さらに一歩を進めた施策を講じたいと思っております。  なお、いままで私どもが対策を講じました事柄につきましては、被害対策の調査をするとかいうような調査費関係の補助金のほかに、防護さくをつくってそういう畑などに行かないようにするということで、五十年度以来総額三千五百万円ぐらいの補助金を出しております。これが場所によりましては相当効果をあらわしておるところもございます。しかし、部分的にはまだそれでも不十分だということで、さらに保護、捕獲のための補助金というようなこともやってまいったわけでございます。いろいろ手を打ってまいりましたけれども、一部の場所におきましてはなお有効でないということでございますので、さらに私どももう一歩進んだ手をこれから打ちたいと考えておる次第でございます。
  127. 原茂

    ○原(茂)委員 しかし、麻酔銃を、法律が通ったら使わせるように許可するようになるだろうと言ったのは進歩です。これは進歩。それから早く麻酔銃を使って一定のエリアの中に入れるということ、これはもうすぐやってくださいよ。いますぐといま言うとすぐのようだが、そうではない、もうずっと長いのですから。これはやるべきですよ。きょうは課長さん方が来ているから環境庁も林野庁もだめですが、文化庁は主導的にこれをやってもらわなければ困ると思うのですよ。  それからいまの防護さくの話ですが、防護さくが事実一番効果があります。ところが、効果のないところはひどい。防護さくの中に雪がいっぱい積もると防護さくの中にみんな入ってきちゃって、そこへ飼っているようなもので、その中は全部やられてしまうのですよ。ですから、いいこともあれば悪い点もあるのですね。防護さくはいまのところ効果があることは間違いない。しかし雪が積もったときに逆に防護さくの中で飼っているような状態になっているというものもあります。したがって、防護さくオンリーではいけないのでしょう。いけないのでしょうが、いまのところはそれ以外にない。どんどん予算をつけて防護さくをつくらしてやりながら、いま言った一定の範囲を決めてここに、何百町歩というところにとにかく捕獲したものを入れるということをやる以外に解決方法はない。麻酔銃は私の言うとおりようやく出してきたんだ。これは三年目ですよ。だから、同じように言っているのですから、一定の地域に保護することを強く言っておきますが、大至急にやるべきですよ、時間がたっていますから。これだけ、カモシカについてお願いをしておきたい。  あと阿久遺跡の問題について最後にちょっとお伺いしたいのですが、細かいことはいろいろ分科会でもお伺いしましたし、この間、参議院で村沢牧議員がお伺いしたようです。したがって、多くのことを聞こうと思いませんが、いままとめてこれも言っちゃいますから、まとめて答えていただきます。  県の教育委員会から報告なり意見具申があったと思うんですが、一体どんな内容なのか。  それから、道路公団からも報告なり意見具申があったと思うが、どんな内容か。  それから、つい先ごろでしょう、埋蔵文化財の専門委員会が開かれたと思うんですが、一体どんなふうでしたか。  それから、この四月、今月には専門委員会を開いて諸学者の意見を聞く予定だと聞いていますが、一体どうでしょうか。専門委員会を開いたその結果、文化庁としての方針を決めますかどうか。その前後に文化庁としての集中審議なり、各当事者との折衝を行うと思いますが、おやりになりますかどうか。日程はどんな日程になりますか。  それから、全面保存を前提として対処する方針は、今後も変わりはないのかどうか。  それから、部分保存を主張していると聞く県や地元や道路公団等の考えに対して、いまの段階でどうお考えになりますか。  七つ目に、県教育委員会の事務局が、去る一月の十日に、それがなければ保存問題についての検討ができないからとの理由で公団に技術的な資料の提出を要求いたしましたが、同じその日に県教育委員会は部分保存の方針を決めたというが、一体どうお思いになりますか。この矛盾に満ちた過程はすでに明らかになっております。多分御存じだと思う。この点を外部から指摘された県教育委員会は、新年度調査費等予算折衝を急ぐ必要があるのでやったんだと弁明をしていますが、これは詭弁だと思います。これに対して文化庁どうお考えになるか。  八つ目、地元原村の柏木区が先日の総会で、早急の国の史跡指定、それから全域の国費買い上げ促進、中央道予定路線の工事促進という、一言で言えば県教育委員会の部分保存全面支持という立場で方針の決議をして、原村当局もこの線に沿って独自の陳情をしていますが、一体これにはどう対処いたしますか。  九つ目、このような部分保存という貴重な遺跡の中央を高速道でぶった切っても、国の史跡に値するかどうか、これは最も重要な検討事項として国の審議会が権威をかけて審議をなさると思いますが、一体どうでしょう。いま発見された非常に膨大な、ちょうどそのど真ん中を、二十五メーターの中央道がこれからぶった切るかどうか。ぶった切ったとしてもいわゆる国史跡の重要なものとして考えることができるかどうかについては、国の審議会が検討をなさると思いますが、一体この点に関してどうお思いになりますか。  文化庁の今後の方針を確認したいと思うのです。第一に、県教育委員会、地元、公団、研究者、考古学界や県文化財審議会などの保存問題についての経過や考え方を聞いて、文化庁独自の技術的検討を行うということをやるかどうか。その結果をもとに国の審議会にかけるのか。その上で遺跡全域の確認調査実施とその方法、国史跡指定の可否、その場合の中央道のあり方などについて決定を行うこととなると私は思いますが、この手順でよろしいかどうか、そういうふうにおやりになるかどうか。  十一番目、いずれにしてもこの二律背反に等しい全面、部分の保存要求に対して早急に、いわゆる時期的にも毅然たる方針が示されなければならないと思いますが、長官の決意と、先にも促しておいたとおり、長官自身がすぐにでも行って現地を踏査するようなことをぜひやって決断をしなければいけないと思いますが、おいでいただけるかどうか。  最後に、県教育委員会は文化庁の判断を求めてその指示のもとに言動ずるのが原則だと思いますが、いかがですか。  これだけ一括してお答えください。
  128. 犬丸直

    ○犬丸(直)政府委員 大変たくさんの項目にわたる御質問でございまして、あるいは落とすかもしれませんけれども、また追加してお答えしたいと思います。  まず、基本的な考え方を申し上げたいと思いますが、阿久遺跡につきましては、昭和四十八年に最初道路公団から長野県教育委員会を通じて協議が行われた、それに端を発しておるわけでございます。それでその際に、文化庁からは早速その発掘調査を事前にしてほしい、道路が確定する前にしてほしい。そしてもし重要な遺構が出てきたようなときには、その保存を配慮してほしいというような申し入れをいたしたわけでございます。この指導に従いまして、道路公団では長野県教育委員会に委託して調査をする。長野県の方ではそれを受けてさらに具体的な調査を、長野県中央遺跡調査会というものをつくりまして、県、関係市町村の教育委員会で構成されるそういうものをつくりまして調査を進めたわけでございます。五十年十月から発足、調査を開始いたしております。  それで、非常に重要な大事な遺跡であるということがもっと早期に発見されておりますれば、あるいは路線変更というようなことも容易であったのかもしれませんが、これは遺跡の実情がいろいろまちまちでございまして、ちょっと調べたのではなかなかわからない、工事を進めてみたら、掘ってみたら大事な物があったというようなことがございます。この阿久遺跡の場合にはその後者の例に近いことでございまして、五十三年終了というようなことで調査を進めてまいりましたところ、五十二年になりまして、昨年の終わり、大分遅くなりましてから、非常に大事な遺構があるということがわかってまいったわけでございます。  それで、その旨が教育委員会から報告されたので、文化庁といたしましては担当調査官を現地に派遣するというようなことをいたしまして、と同時に、県の教育委員会と道路公団とが十分相談して、できるだけその保存ができるように協議するようにということを指導したわけでございます。  そしてその結果、文化庁の指導に従いまして県の教育委員会から道路公団に求めた結果によって、道路公団が検討した結果が、ことしの二月二十一日に至って長野県教育委員会に提示せられた。それが長野県を経由をしまして私どもの手元に届きましたのが、ごく最近の四月三日でございます。  そういう状況でございまして、かなり事態が進んでしまった状況のもとに私ども最終的な報告を聞いたわけでございます。そしてその御報告、公団の検討結果によりますると、残念ながら事ここに至っては迂回するとかあるいはトンネルをつくるとかあるいは高架にするというようなことがきわめて困難な状況にあるという公団の見解であり、県の教育委員会としては、遺跡は貴重なのだからできるだけ国指定というようなことに持っていってほしいというような見解を添えて私どもの方へ参っておるわけでございます。  それで、その途中の御質問の一つにございました、県の教育委員会が一月十日に公団に対して資料の提供を求めながら、同日に部分保存を決定したというようなことが言われておりますけれども、これは事情を調べてみまするとそういうことではないので、必ずしもそういう正式決定したのではないが、非常に悲観的な報告であったもので、そういう感触を何かの機会に漏らしたということであるようでございます。  そういうふうなことで、現在の段階ではあれをそのまま残すということについてはかなりむずかしい状況にあるようでございますが、さらに十分公団等とも相談し、委員会の意見も聞きまして、それから地元に長野県考古学界の団体があるようでございます。地元のかなりまじめな研究者が一生懸命これは心配しておられるということでございますので、そういう方たちの意見も伺いながら、これは道路敷以外にも、その周りのところにもかなりの遺跡があると考えられますので、全体としていまの段階で最良の方法としてどういうことが考えられるだろうかということを検討した上で措置してまいりたいと考えております。  前の委員会でも申し上げましたが、私も現地へ出かける労は少しもいといません。ただそれは状況に応じてと申し上げましたのは、私が参りますことが事態の進展に役に立てばということでございまして、タイミングを十分図りまして、さしあたり近くまた私どもの専門委員を派遣しようと思っておりますけれども、できるだけそういう形で遺憾なく対処してまいりたいと考えておる次第でございます。
  129. 原茂

    ○原(茂)委員 全面保存の方針はどうするのですか。
  130. 犬丸直

    ○犬丸(直)政府委員 これはまだ状況を十分調べて——それから、さっき御質問にございました文化庁に置かれております専門委員会でございますが、これは文化財保護審議会の中に専門調査会というものがございまして、それがいろいろな部門を担当していますけれども、その中の第三専門調査会が史跡等の埋蔵文化財の関係の調査会でございます。調査会の専門委員には百二十名ぐらいの専門家がおられますので、その一部分の第三調査会にも埋蔵文化財専門の方たちがおられますので、そういう方たちの御意見を十分拝聴し専門的な立場から検討いたしまして、できるだけのことをしたいと思っておりますけれども、それがどういう形でやることがいまの段階で最良かということは、いまのところはまだ予断を持っておりませんけれども、できるだけ保存をする方向で努力してまいりたいと考えておる次第でございます。
  131. 原茂

    ○原(茂)委員 終わります。
  132. 楯兼次郎

    楯委員長 村山喜一君。
  133. 村山喜一

    ○村山(喜)委員 五十年度文部省の不当案件が八件あり、五十一年度は六事業に不当事件があるという報告書をいただいております。そこで、私はまずその点についてお尋ねをいたします。  これは補助の対象を間違ったとか、いろいろ理由が書いてございますが、そのことは、いま補助金の内容が実態の支出に適応していない、補助単価とか数量が適合していないところから問題が出てきているのではないだろうかと思うのですが、そういう点はございませんか。  それで、五十三年度は、従来学校建築の場合等は門とかへいとかいうものは補助の対象にしていなかったと聞いておりますが、今度は改正されることになるわけでございますか。渡り廊下は改正されたと聞いておりますが、そこら辺はどういうふうに考えられるのか、まずその点を承りたいと思います。
  134. 砂田重民

    砂田国務大臣 公立文教施設整備事業にかかります地方負担の問題でございますが、従来に引き続いて五十三年度改善努力を払ってまいります。ほぼ補助面積及び単価は実情に即したものになったと考えております。  まず第一に、補助単価につきましては、毎年物価上昇に見合う改定をいたしてまいりましたけれども、五十三年度予算におきまして前年度に比べ六・三%の増を図りました。  なお、補助事業実施に当たりましては、地域の建築単価の実情を反映した補助単価を設定いたしまして、単価面での超過負担が生じないような配慮をいたしました。  第二番目に、建築面積につきましては、五十三年度におきまして小中学校補助基準面積をおおむね一六%増加をすることといたしまして、実情に即した補助面積となるよう措置することといたしております。従来補助対象外とされておりました門でございますとか、いま御指摘の渡り廊下、こういうものにつきましては五十二年度より補助対象に加えておりまして、補助対象事業の範囲についても改善を図ってまいったところでございます。
  135. 村山喜一

    ○村山(喜)委員 去年の三月、茨城県勝田市の田彦小学校の市の超過負担の実態調査をいたしましたら、単価と数量の点で七千百六十九万六千円の超過負担をしなければならなかったという報告がございます。そういう意味において、急増地域の補助対象事業として取り上げて処置をしたという中には、まあ間違いでしたものとは思うのでありますが、不当事項の中で指摘をされておりますように補助率が低いとか何とかという問題があってそういうのが今日なお後を断たない、そういうような問題があるかと思いましたので、いま文部大臣からお答えをいただいたわけでございますが、今回は数量補正が一六%伸びて、いま申し上げましたようなことも十分に措置ができる、こういうことでございますので、その点については超過負担は発生しないものだ、こう確信してよろしゅうございますか。
  136. 砂田重民

    砂田国務大臣 補助対象という観点に立てば御発言のとおりでございます。
  137. 村山喜一

    ○村山(喜)委員 そこで私は、教育の内容の問題について若干御質問をいたしたいと思うのです。  中学生の学習指導要領はもう決定をしたわけでございますか。それともまだいろいろな意見を聞いてやるという作業段階にあるわけでございますか。
  138. 砂田重民

    砂田国務大臣 小中学校の学習指導要領は改定決定をいたしました。ただいま高等学校の分と取り組んでいるところでございます。
  139. 村山喜一

    ○村山(喜)委員 そういたしますと、これは法的拘束力があるものでございますね。
  140. 諸澤正道

    ○諸澤政府委員 御承知のように、学習指導要領は、小中高等学校における教育課程編成の基準としてこの基準によるということが学校教育法の施行規則に明定されておりますので、そういう意味で教育活動を拘束すると考えていただいてよろしいかと思います。
  141. 村山喜一

    ○村山(喜)委員 最近、公害の関係が非常に多発をいたしまして、公害がどういう現象の中から生まれてくるのか、それに対して学校教育の中でどういう立場で問題をとらえながら教えていくようにしようとしているのかという点をいろいろ検討をしてみたのでございますが、お手元に中学校の理科の学習指導要領がございますか。
  142. 諸澤正道

    ○諸澤政府委員 ございます。
  143. 村山喜一

    ○村山(喜)委員 そこで、その内容でございますが、公害ですから理科だろうというので見てみましたら、それらしいのがあります。それを見ているうちに、これはわれわれが習ってきたのと若干違っている考え方なのか、明らかでない点がございましたので、まずそれをお尋ねいたします。これは大臣がお答えにならなくても結構です。担当の局長からお答えをいただきたいと思います。  物質と原子、分子、元素の関係なんです。  学習指導要領によりますと、原子と分子というところでは、「物質は、原子や分子からできていること。」というのを教えることになっているわけですが、われわれは、原子が結合した形で分子というふうにいままで習ってきたわけであります。それで、そこに元素というのがありますが、原子というのは原子記号であらわされるという形に表現をしなければ、これは原子が一個とかあるいは二個とか、そこに何個で成り立っているかということが出てこなければ、初めのうちは初歩的な学習の中では出てこないのじゃないだろうか。化学式というのが一個の分子をつくり上げている原子の種類とその数をあらわすというふうに、初めの段階では教えるのが正しいのじゃないだろうか。  そういうようなことを考えながらその記述を見てまいりますと、この表現によりますると、物質というのは原子や分子からできていること、こういうことを教えるということになっているのですが、それは「原子や分子」じゃなくて「原子・分子」というふうに表現をするのが科学的に正しいのではないだろうかという考え方を持つのですが、そういうようなのはこの表現で間違いないというふうに思っていらっしゃるのでしょうか。それが第一点です。  それから第二点は、公害の問題は、「人間と自然」というところに書いてございます。「自然の開発や利用に当たっては、自然界のつり合いを考慮しながら、計画的に行うことが重要であることを考察させる。」これはそのとおりだと思うのです。  その考察をさせるという中から、これはこういうような学習指導要領をつくられる場合には、専門の学者やあるいは現場の教育者の意見もお聞きになっているだろうと思いますし、また環境庁やそのほかのところとも十分打ち合わせをしながら学習指導要領というものがつくられたと思うのでありますが、そういうような意味において科学と社会とのかかわり合いという問題をどういうふうに教えようとしておられるのか。それがどうもはっきりこの中には出ていないように思うのでありますが、そういうような点からどういうことを考えていらっしゃるのか、説明を願いたいのであります。
  144. 諸澤正道

    ○諸澤政府委員 御質問の前段の中学校の理科第一分野、これは物理、化学の分野でございますが、そこでただいま御指摘のような記述の問題、「原子・分子」ですが、そういう方が正しいのではないかというような御質問でございますが、私専門でございませんので、その点につきましては後ほど専門家によく確かめてみまして、表現としてどうしても不適切であるということであれば直すにやぶさかではございません。  ただ、先ほど大臣からも申し上げましたように、この指導要領は昨年の五月の初めに発表して、六月の末に正式に指導要領という形で告示をいたしておりまして、その間御意見のありましたところは直しておりますので、なおひとつ検討させるということで御了承をいただきたいと思います。  それから次に、公害に対してどういう角度からこれを指導要領で取り上げ、学校教育するかという点でございますが、ごく大ざっぱに基本的な考えを申し上げますと、公害の問題は現在の学習指導要領の前の学習指導要領の時代から取り上げてございますが、たしか昭和四十五年に公害対策基本法の修正がありまして、その際に、それまでの公害に対する考え方というものが、指導要領の上におきましても、国民福祉の向上と経済の発展というものの調和を考えるんだというようなことを教えなさいよというトーンになっておりましたが、それを改めまして、要するに国民生活の向上、福祉の発展ということをとにかく目的として、公害の防除ということに力を注がなければいけないという考え方で終始きておるわけでございます。  したがいまして、これを扱う場面というものは、小中高等学校を通じまして、一つは社会科の学習でございますが、社会科のうちでも公民的分野における学習の中で、いま申しましたような趣旨で公害というものを扱ってきております。  もう一つは、いま御指摘のありました中学校の理科につきましても、指導要領で言えば五十ページの第二分野でございますか、そこは生物と地学の分野になるわけでありますが、その第二分野の中で、たとえばその一番最後の、項の「(7) 人間と自然」というところで、そこに「自然環境や自然の事物・現象の基礎的な理解をもとにして、人間の生存を支える条件を認識させるとともに、自然の開発や利用に当たっては、自然界のつり合いを考慮しながら、計画的に行うことが重要であることを考察させる。」ということで、さらにそのページの一番下のところ、ア、イというところのイの「自然界のつり合いと環境保全」ということで、「自然界には、エネルギーの流れや物質の循環があり、様々なつり合いが保たれていること。」「自然の開発や利用が、自然界のつり合いを変えたり破壊したりすることがあるので、自然の保存や調整により環境保全をすることが重要であること。」ということで、理科の学習におきましては、自然と人間のかかわり合いという中において、自然を保護し調整をしていくということが、開発に当たって十分に考慮されなければならぬというような観点から指導をする、こういうことになっておりまして、そのほかにいま申しましたような公民的分野であるとかあるいは保健体育の分野におきましても、健康との観点あるいは今日における国民の社会生活との観点からの公害の問題を取り上げさせる、こういうことになっておるわけでございます。
  145. 村山喜一

    ○村山(喜)委員 その点は承っておきますが、ちょっとこの際、自治省と環境庁に、いまの公害に取り組む状況説明願いたいと思うのです。  まず第一点は、認定患者の数がどういうふうに推移をしているのか、一番新しい時点でどのような状況に現在なっているのか。  第二点は、公害関係の予算とそれから地方公共団体における職員がどういう数に現在なっているのか。  その点について両方から説明を願いたいと思います。
  146. 大池真澄

    ○大池説明員 第一点についてお答え申し上げます。  公害健康被害補償法による認定患者数につきましては、各実施主体からの業務報告に基づきまして把握しておるところでございますが、各年度末現在及び直近の五十二年十二月末現在の認定患者数を申し上げます。  慢性気管支炎などの大気汚染系疾病を対象とする第一種地域についての認定患者数につきましては、昭和四十九年度末現在一万九千二百八十一名、五十年度末現在三万四千百八十四名、五十一年度末現在五万三千四百十四名、直近の五十二年十二月末現在で六万一千二百七十六名となっております。なお、第一種地域につきましては、現行制度の施行されました昭和四十九年九月において十二地域であったものが、その後三回にわたって追加拡大をされておりまして、現在三十九地域になっておるわけでございます。  また、水俣病などの特異的疾病を対象とする第二種地域につきまして、認定患者数は昭和四十九年度末現在千三百二十五名、五十年度末現在千五百四十九名、五十一年度末現在千六百八十八名、五十二年十二月末現在で千八再四十一名でございます。
  147. 小林実

    ○小林説明員 地方自治体における公害関係の予算につきましての御質問でございますが、決算の形でとっておりますので、その数字を申し上げたいと思います。  御承知のとおり公害関係につきましては四十五年から四十六年にかけまして各種の立法がされまして、四十六年度におきましては五千八百六十六億円でございましたが、五十年度一兆四千二百五十八億円、五十一年度一兆五千七十八億円というふうに大幅に増額しておるわけでございます。
  148. 村山喜一

    ○村山(喜)委員 定員関係はどうなりますか。公害白書を見てみると後ろの方に定員関係が出ておりましたが、これは確認していい数字ですか、環境庁。——地方公共団体の公害対策のいわゆる強化といいますか、その中で担当の職員の数が公害白書には出ておりますね、出ているのです。だから、その数を言ってもらいたいということを環境庁に質問として要求しているわけです。
  149. 大池真澄

    ○大池説明員 ちょっと別の部門の所管になるものでございますから、ただいま用意しておりませんので、後刻……。
  150. 村山喜一

    ○村山(喜)委員 自治省の方に定員を調べてもらうように話したら、いや予算はわかるけれども数はわからぬ、こういう話でありましたから、どこかにあるだろうと思って白書を見ておりましたら、後ろの資料に出ているのです。その中には、便宜上私の方で読み上げますが、一九七六年都道府県で六千二百六十七名、それから市町村で六千九百四名、これだけが公害行政に取り組んでいるという数字が出ているのです。この点は申し上げておきます。  そこで文部省ですが、まあお聞きのとおり第一種地域における認定患者の数は六万一千二百七十六名に及んでいるわけですね。内容は子供とお年寄りが大部分だと書いてありますが、そのことは文部省知っておりますか。
  151. 諸澤正道

    ○諸澤政府委員 いまお聞きしましたけれども、細かい具体的な数は私ども十分承知いたしておりません。
  152. 村山喜一

    ○村山(喜)委員 やはり文部省も、小さな子供が認定患者の大部分を占めているという状態、そしてお年寄りがそういう指定の慢性気管支炎であるとかあるいはぜんそく性の気管支炎とかというのが多いという状態、その両方を足し合わせると六〇・二%を占めていると書いてある、これを一遍読んでいただいて、そしてSOxの被害の結果苦しんでいるこういう人たち、あるいはNOxの問題でなお恐怖にさらされているそういう地域の人たち、これを学校教育という立場からどうあるべきかということを考えてもらわなければ、今日の教育行政というものは十分できないんじゃないだろうかと思いますので、文部大臣もそれから初中局長もぜひ公害白書をお読みをいただきたい。  これは新聞に出ておりましたが、環状七号線沿いの順一君という子供が一向に小児ぜんそくが治らずに入退院を続けて四年も苦しんでいる姿が新聞に出ておりましたですね。こういうのをお考えになれば、コンビナートの隣に金網越しに小学校をつくることがいかに問題があるかということがおわかりになるのではないだろうかと私は思うのですよ。  そういう点からやはり文部省指導要領というものももう一回よく見ながら、これをもとにしてつくられる教科書がどういうようなものが出るであろうかとわれわれも関心を持っておりますが、ぜひその公害白書はお読みいただくようにお願いをしておきたいと思うのです。  そこで、この中で理科のところをまた読んでみますと、どうも金属というものをまともに物質として取り扱いをしていないのではないだろうかというふうに受けとめられるのは、金属による汚染、最近は水銀とか鉛とかあるいはカドミウムというような重金属による汚染というものが非常に問題になっておることは大臣も御承知のとおりでございます。私は自分の隣が水俣市でございますので、水俣病の悲惨な状態を患者の姿なども現地に行きまして見ております。そういう中から、これらのいわゆる重金属によります汚染の状態の中で、土壌が汚染をされ、工業排水や産業廃棄物によりまして農作物や魚介類、そういうような食物が健康に影響を与えている、そして身体や精神の発育を阻害をしている、こういう状態を正しく見詰めていく、そういうようなことから見ていくならば、金属というものを物質としてまともに取り扱っていない指導要領というのはおかしいのではないだろうか、こういうように思ったものですから、いま第二種地域の公害の状態について数字を発表をしてもらったわけでございます。  たとえば水俣病であるとかあるいはイタイイタイ病であるとかというようなカドミウムの慢性中毒が発生をするような事件、これが今日なお問題が残されながら解決を依然として見ていない。熊本大学の学者の説によりますと、不知火海のほとりには推計一万人ぐらいの潜在的な水俣病患者がおるのではないだろうか、こういうように言われておるのです。それが一番弱い層、子供とかお年寄りにそういうような悪い影響が非常に強く出てくる。その次には生活のレベルの低い人ほどそういうようなものが出てくる、こういうような特性を持っているのが公害なんです。  そういう状態の中でこの金属の取り扱いをどういうふうにお考えになっているかをちょっと御説明いただけませんか。
  153. 諸澤正道

    ○諸澤政府委員 今日公害の原因になっておりますところの水銀とか鉛とかいう金属をどういうふうに中学校の理科の段階で具体的に教え、それがまた公害という面からどういうふうに扱われ、どういう悪影響があるかというようなことは、恐らく体系的にその面だけ取り上げていま教えていないのではなかろうかと私は思うわけでございます。ただ、公害の問題は先ほど申しましたように、理科あるいは社会の勉強あるいは保健の勉強等を通じまして、子供の発達段階に即応してどの程度のことをこの段階の子供に教えたらよいかという観点から、ごく大づかみな基本を示しておるわけでございますので、ただいま御指摘になりましたような点につきましてはなおよく専門家に検討をしていただきまして、必要に応じてどういうふうに取り入れていくかというような点も今後の指導書の作成その他において検討してまいりたい、かように思うわけでございます。     〔委員長退席、馬場(猪)委員長代理着席〕
  154. 村山喜一

    ○村山(喜)委員 科学も日進月歩の勢いで発達をしますし、公害に関する科学も日本は外国に比べたら前進をした方だと言われており、行政や法制化の上において確かに前進をしているわけでございます。しかしながら、全体のものとして公害というものを受けとめながら、教育の中でそれが正しく取り上げられているかということについては、臭い物にはふたをしろということになってしまったのでは問題が残る。公害というものについては学問的にももっと体系的にやらなければならないというので、学術研究費の中でも若干は見てあるようでございますが、まだまだこれからの分野だ、こういうふうに考えておりますけれども文部大臣もそういうふうにお考えになっていらっしゃるのか、御所見をお伺いしておきたいと思います。
  155. 砂田重民

    砂田国務大臣 公害の問題は非常に重要な問題でございます。学習指導要領、小中学校の改定を終わりましたけれども、同時にこの学習指導要領に基づいての指導書をこれからつくるわけでございますし、教科書もこれからつくられていくわけでございます。初中局長がお答えをいたしましたように、十分これに対処してまいる努力をしなければなりませんが、この学習指導要領の中に書かれております基本的な事項、社会、理科あるいは保健体育等を通じて書かれておりますことを現場で生かした教育に創意工夫をこらしてまいらなければなりません。それはある場合には地域社会的な特性もまたあることでございますから、このことを十分踏まえながら公害の問題の重要性を認識しつつ取り組んでまいりたいと考えるわけでございます。
  156. 村山喜一

    ○村山(喜)委員 水俣の場合、初めにネコが狂い死にをしたとかあるいはカラスが大量に死んだとか、いわゆる人間以外にそういう生物的な現象が出てきたわけですね。そのときにこの問題を総合的に取り上げるという観点あるいは科学的な対処の仕方があったならば、ああいう悲惨な状態は起こらなかったかもしれないと言われておるのです。そこに、いわゆる縦割りの行政あるいは学問の体系があるけれども、それを総合して観察するという態度が欠けておったがためにそういう結果が生まれてきたのだと言われておりますので、いま教科別にとおっしゃいましたが、問題を総合的にとらえる能力というものをこれからはさらに養成してもらうような指導要領等をおつくりにならなければならないのではないかと思いますから、あえて申し上げておきたいと思います。  そこでもう一つは、これは教育長の任命の問題でございます。  地方教育行政の組織及び運営に関する法律によりまして、県の教育長を任命する場合には、文部大臣の承認を得て県の教育委員会がこれを行うことに相なっております。  そこで、いま文部省から各府県教育委員会に出向をしている教育長並びに事務局の職員の数はわかりますか。
  157. 諸澤正道

    ○諸澤政府委員 県の教育長に文部省におった職員で現在就任しておりますのは、三名ございます。それから指定都市の教育長に一名でございます。それから教育委員会の事務局の課長に何名行っておりますかということは、私所管でございませんから正確には承知いたしておりませんけれども、十数名行っておろうかと思います。それ以下の職員で文部省から交流しておるのは若干あろうかと思いますが、数はわかりません。
  158. 村山喜一

    ○村山(喜)委員 自治省の方にお尋ねをいたします。地方交付税によります給与の単価でございますが、標準団体の場合の市町村の三役と教育長の給与の標準額を発表してもらいたいと思います。
  159. 坂弘二

    ○坂説明員 市町村におきます教育長と三役の地方交付税上の給与額でございますが、それにつきましては年額で、これは本俸、手当等全部含みました総額で申し上げたいと思います。  教育長の場合、五十二年度が五百四十万円、これは五十三年度は六百四万円に改定をする予定でございます。それから市長は五十二年度は七百五十一万円、これを五十三年度は八百二十七万円にする予定でございます。助役につきましては五百七十八万円、これが五十三年度は六百四十二万円。収入役につきましては五十二年度は五百十一万円、五十三年度が五百六十四万円の予定でございます。
  160. 村山喜一

    ○村山(喜)委員 標準団体、十万の規模のところがこういうことでございますから、町村が小さくなってまいりますと、これよりも低くなることは大臣御承知だと思います。  そこで、私がお尋ねをしたいのは、当該の市町村長やあるいは教育委員会教育長を任命をするのに当たりまして、県の教育委員会に相談に参ります。そして現役のばりばりしてまだ若い活動的な人を教育長に欲しい。そういうような人は、現場では学校長等でございます。学校長をしている人に白羽の矢が立ちまして、これは具体的に出ている事例でありますが、町の教育長に請われ赴任をする、こういうことになりました。ところが学校長の方が給与が高いのであります。そこで、教育長に行く場合の条件といたしまして、現在もらっている現給を保障をしてもらいたいという要求を出しまして、それは承知をしましたということで教育長の給与を条例の改正をいたしまして引き上げて、そして教育長に来てもらう、こういう形をとって現在ある町の教育長に赴任をしているわけでございます。  それが、そういう形で、これは一人ではございません、複数でございます。こういうような行政組織という、そういう形が現実に生まれつつあるわけでございますが、これは文部省としてそういうようなものを指導をしておられる結果生まれたものであるのかないのか、その点をお聞かせいただきたい。
  161. 砂田重民

    砂田国務大臣 教育委員会は、村山委員御承知のように五人ないし三人の非常勤の委員で構成をされておりますので、そういう合議体でございますから、その性質上みずから実際の事務を処理をいたしますために、教育委員会教育行政に関して十分な力量を備えた教育長が置かれることになっているわけでございます。教育長の任命に当たっては、このような制度の趣旨に沿いまして、教育行政についてすぐれた行政的識見や手腕を持った人が、そしてまた教育について深い造詣を持たれた方が選任されることが必要でございます。  そういう意味から、文部省では教育長にふさわしい人材が得られますように、その給与につきましても、助役さんあるいは少なくとも収入役の方方に劣らないようなものにしていただくような指導をいたしているわけでございます。昭和四十七年にそのような教育長等の待遇改善についての指導をいたしたわけでございます。そうして、そのことはやはり小学校、中学校の校長先生とほぼ見合った額、やはり教育長という職掌柄、小中学校の校長先生と大体見合っているところ、それが妥当な線ではなかろうか、そのように考えるものでございます。
  162. 村山喜一

    ○村山(喜)委員 そういうような指導をしていらっしゃるのかどうか、諸澤さんお答えください。
  163. 諸澤正道

    ○諸澤政府委員 私どもは、市町村の教育長というのは教育委員の中から選任することになっておりますので、やはりその三人の教育委員さんの中で教育のエキスパートに教育長になっていただいて当該市町村の教育行政を円滑に進めていただく、そのためにはやはりりっぱな人を選んでほしいということはもう常々申し上げておるところでございます。  りっぱな人を採るためには、場合によっては御指摘のように現職の校長さんを持ってこなければならぬというようなことで、その方の給与をかなり高いものにしなきゃならないというような事態もございますが、何といっても私どもの第一に指導しておりますことは、りっぱな人材、適当な人材を教育長に持ってきていただきたいということであり、そしてそれにふさわしい処遇をしていただきたいということは、これまでもたびたび指導してきているところでございます。
  164. 村山喜一

    ○村山(喜)委員 当該市町村の教育長を任命をする原則というのは、五名ないし三名の教育委員の中から教育長を任命をする、こういうことでございますから、通常であるならばその当該市町村に該当者がおればそこから採用する、しかし適当な人がいない場合に現役の校長でもそればやむを得ない、こういう方針でありますか、それとも適当な人物であるならば学校長をやめて教育長になることは大いに好ましいという指導でございますか、どうなんですか。
  165. 諸澤正道

    ○諸澤政府委員 いま申しましたように、教育長はやはり教育行政についての専門家であることが非常に望ましいというふうに私どもは考えるわけでございます。したがいまして、もちろん校長さんの経験を持っておられる方というような方で、十分識見と能力をお持ちの方はその適格者でありますから、そういう方が現在の教育委員会の中にいないという場合には、そういう方ももちろん適任者としてお迎えいただくということは歓迎すべきことでありますが、初めから校長経験者が一番いいんだというような指導はもちろんしていないわけでございます。
  166. 村山喜一

    ○村山(喜)委員 そうしたら、自由に当該の地方公共団体の実情に合わせて処理をせよという指導でございますか、どうなんですか。
  167. 諸澤正道

    ○諸澤政府委員 全国に三千幾つの市町村があって、教育長がおられるわけですけれども、これまでのいろいろの経験を聞きますと、人物としてはりっぱな方でありましても、具体的に教育行政については全然経験がないということでありますと、やはり教育委員会教育長は実際上は各学校教職員の監督者の立場にあるわけでございますから、十分な行政ができ得ないうらみがある場合もあるということでございますので、もちろん教育長の選任は各市町村教育委員会の判断によるところでございますが、繰り返しますがその際には適格者をぜひ教育長に据えるようにお骨折りを願いたい、こういうふうに申し上げておるわけでございます。
  168. 村山喜一

    ○村山(喜)委員 適格者であればその実情に応じてやってよろしい、こういうふうに受けとめます。  そこで、こういうような私が申し上げたようなケースは、全国的にどういうふうになっておりますか。
  169. 諸澤正道

    ○諸澤政府委員 四十九年の五月現在で、三千二百九十四人の教育長のうちに教職員経験者が千五百三十七名とございますから四六・七%、これが全部校長さんかどうかちょっとわかりませんけれども……。
  170. 村山喜一

    ○村山(喜)委員 私が聞いているのはそれじゃないんですよ。元校長であったとか元教育事務所におったとか元教育委員会の県の職員であったとか、そういうようなのを聞いているんじゃございません。  私が聞いているのは、まだこれから後十年は、学校現場に残れば教育者としてこれからりっぱに学校経営もやってもらえる、そういうような人物が、まだ停年ではない、ばりばり仕事がやれる段階の中で現役をやめてそうして教育長に就任をするというケースが全国的に多いのですかと聞いているのです。
  171. 諸澤正道

    ○諸澤政府委員 私は具体的にどのくらいあるのか承知いたしておりませんが、いま担当の課長補佐に聞きますと、そういうケースは余り多くないというふうに聞いております。
  172. 村山喜一

    ○村山(喜)委員 余り多くないから安心しているのですがね。というのは、これは身分はどうなりますか。県費支弁の教職員が特別職の市町村の公務員になった場合には、身分は切れますか。
  173. 諸澤正道

    ○諸澤政府委員 学校の先生としての一般職の公務員を一遍やめまして市町村の公務員になるわけでありますから、それは一遍身分が切れるのが通常だと思います。
  174. 村山喜一

    ○村山(喜)委員 この点はっきり確認をしておかなければならないと思うのは、そういう形で特別職になりまして、教育長になった。ところが、四年間という任期がありますから、やめるころになりましてまた県費支弁の教職員に帰ってくる、こういう現場と交流をするというような行政のやり方をやっていけば、これはやはり県の教育委員会が地教委をそういうふうに行政の仕組みを通じて支配をする形態になると思うのですよ。  だから、やはりそこら辺はけじめを明確にして、退職をなさった人が特別職に任用されてそれがまた県の教職員になるというような道はありませんよという指導をすることが正しいと思うのですが、その点はいかがでございますか。
  175. 諸澤正道

    ○諸澤政府委員 身分は一遍切れまして、市町村の特別職の公務員になって教育長をやる。それから、まだ年も若くてもう一回現場に帰るという場合には、県立学校であれば再び県の公務員になるということは、これは制度上可能だろうと思いますし、またその場合に、年金の通算とかいうようなことはそれぞれの条例等で決まっておるところに従って実施をするということであろうかと思いますが、個々の人についてケースを具体的にお聞きしてみませんと、その辺はどういうふうにやっておりますか、承知はできないわけでございます。
  176. 村山喜一

    ○村山(喜)委員 文部大臣、これは非常に重要なことだと思うのですよ。それぞれ県の教育委員会指導助言文部省指導助言あるいは援助という問題は法に定めてあります。しかし、そういうような行政のシステムを通じまして文部省が県の教育委員会を牛耳り、県の教育委員会が市町村の教育委員会を牛耳っていく、こういうような意図にかられるような行動に出ていくならば、教育界は管理あって教育なしと言われるような状態がいまでもあると言われるような状況の中で、官僚統制的な道を開くことになります。この点は非常に重要な問題でありますから、便宜的にその個人を中心に問題をとらえるというやり方はやめてもらいたい。やはり行政はそういうようなシステムとしては明確にけじめをつけてもらわないと制度自体が崩壊をする、こういうように思いますので、この点については大臣所見をお伺いしたいと思います。
  177. 砂田重民

    砂田国務大臣 都道府県教育委員会、そして市町村の教育委員会、この教育委員会というものの制度自体が非常に重要なものでございますから、いま村山委員がお使いになりました言葉をかりて言いますならば、国が牛耳るとか、県が市町村教育委員会を牛耳るとか、そういうことが断じてあってはならないことだと私は考えます。  市町村の教育長の任命について、その市町村の何か特殊事情があって例外的なことが行われているのが、数少ない例でございましょうが、あるかもしれませんけれども、そのことをもって県教育委員会が市町村教育委員会を牛耳るようなことが断じてあってはならない。また私どもも、都道府県教育委員会というものは法律で明確な意義づけをして制度的に存在するものでございますから、国家権力がそういう場所に立ち入っていく、このようなことがあってはならないものと考えます。
  178. 村山喜一

    ○村山(喜)委員 最後に一つだけお伺いをいたします。これは定数の問題でございますが、初中局長にお尋ねいたします。  教頭が、例の学校教育法の改正でございましたか、授業を持たなくてもいいような法律改正が行われましたね。そういうようなことから、いわゆる教頭の枠外加算というのですか、そういうようなものが法律制定後とられてきたように聞いているのですが、五十三年度予算的に全国で何名になりますか。
  179. 諸澤正道

    ○諸澤政府委員 ちょっと五十三年度の教頭の定数増の前に、これまでとられてきた仕組みを御説明した方がよろしいかと思うのですけれども、四十九年からやりましたその五ヵ年計画では、教頭定数相当分として、小学校は六学級以上、中学校は三学級以上の全学校数の二分の一に相当する分を計上する、そういう前提があったわけでございます。そして四十九年に教頭の法制化がなされたことに伴いまして、十八学級以上の学校に一人ずつの教頭が置けるような定数の配置をしようということで、五十年、五十一年、五十二年、五十三年度の四ヵ年で、最初のときは千人、後八百、八百、八百でございますから、三千四百人処置をしてきた、こういうことでございます。     〔馬場(猪)委員長代理退席、委員長着席〕
  180. 村山喜一

    ○村山(喜)委員 そういたしますと、三千四百というのは、これは二千名というのは、基準というものに照らし合わせた場合に、加配という姿になっておりますか、なっておりませんか。いま諸澤さん言われたように、十八学級以上の学校に置いておる、これはそういうようになっていると思います。その配置基準はどういうふうになっているのですか。私たちが聞くのでは、千四百くらいが配置基準になっているんだというふうに聞いているのですが、あとの二千名というのは加配といいますか、加えるという形の中で配置がされているのではないだろうかと思っているのですが、どうなんですか。
  181. 諸澤正道

    ○諸澤政府委員 教頭の定数の問題は、現実に教頭がどれくらい発令されておるかということがまずあるわけでございますが、御承知のように、小学校の数が二万ちょっと超しておりますけれども、教頭の数はほぼその全部の学校にいるわけでございますね。それから中学校ももちろん約一万の学校におる。  したがって、教頭の定数を加配するといっても、現実にはその定数をもらって新たに教頭を発令するんではなくて、すでに教頭さんのいるところに定数が加配になって教員が増員される、こういうかっこうになるわけです。  そこで、どういう学校に加配をするかということは、全体的な基準といたしましてはいま申し上げたようなことで国はやっておりますけれども、各県の実態を聞きまして、過疎地の小規模学校を抱えているところと大規模学校のたくさんあるところでは条件が違いますので、そこで毎年あなたの県はそれじゃこういうことでいきましょう、あなたの県はこういうことでいきましょうというふうな配分をしているわけでございます。
  182. 村山喜一

    ○村山(喜)委員 これで終わりますが、文部大臣、私は教頭の問題をめぐりまして、前永井文部大臣だったかな、その前だったですか、予算委員会で問題を取り上げまして、教頭というのは校長の補佐役ではあるけれども、実際、教員としては一番脂が乗り切ったころで、こういうような教頭さんを事務管理中心にするようなやり方はまずいじゃないか、やはり教育の先頭に立って指導ができるような立場にもあるのだから、そういうような指導力を示してもらう立場にあるのが教頭さんじゃないかという話をしましたら、当時の文部大臣は、きょうは速記録は持ってきておりませんが、全くそのとおりでございます。事務であるとかあるいは簡単なものは事務職員を置いたりしてやればいいのであって、事務をやらせるために教頭という制度を考えるのは間違いだ、こういうことでございましたが、最近はだんだんそれが変わってまいりまして 校長はもちろん授業をやらない、教頭も大きな学校の場合には授業をやらないでいい、そういうふうにして事務屋というのですか、教育者ではなくて事務屋みたいなかっこうで金の出し入れやあるいは全体の管理、そういうようなことをやっているように見受けるのです。これでは教職員を、教育を振興するという意味から本当に活用しているのだろうかという気がしてならないわけでございます。  それで私は、この定数の問題が、そういうような三千四百名という加算になっておるけれども、これは障害児の義務化との関係の中でそれがおくれてきたために、現実に五十四年度から義務化されるのですが、それまでの間の準備的な行為があるからということでそういうようなものが加配をされたという関係があるのではないか。そうなってきた場合には、障害児の教育の充実に振り向けるべき教員がそういうような管理関係の強化のために使われているのではないかという考え方をせざるを得ないのですが、その点は間違いかどうか。  その点を確認した上で、教頭のあり方という問題は、管理部門に重点を置くのではなくて、校長とか教頭というのは学校の中では一番経験も多いしすぐれた指導者でなければならない、そういうような意味で、教壇に立つことも考えるようなシステムがなければ、子供を離れた教育者というのはあり得ないと私は思うのですよ。だから校長になれば教壇から去っていいというような校長は間違いである、教頭もそうだ。やはりもっと指導力を発揮してもらうようなそういう行政組織というものを考えてもらいたいという気持ちでございますが、それに対する大臣所見をお伺いをいたしまして、私の質問を終わります。
  183. 砂田重民

    砂田国務大臣 村山委員予算委員会で御質問になりましたのはどの文部大臣のときであったかつまびらかにいたしませんが、文部省といたしましては、今日もなお、教頭さんに積極的に教壇にお立ちください、こういうお願い、指導を続けているわけでございます。  しかしながら、現実問題として校務分掌のいろいろな仕事の役割りから、そう長い時間教壇に立つわけにいかない。そのことによって他の教員の方々に必要以上の担当していただく時間がふえることも好ましいことではございませんので、そこで代替定員の措置をとってきたわけでございます。まさに村山委員が御指摘の点と同じ考え方に立っておりますことをお答えをいたしまして、今後もそのような指導を引き続いてやってまいります。
  184. 楯兼次郎

    楯委員長 林孝矩君。
  185. 林孝矩

    ○林(孝)委員 まず最初にお伺いいたしますが、学校教育法第十二条で「学校においては、別に法律で定めるところにより、学生、生徒、児童及び幼児並びに職員の健康の保持増進を図るため、健康診断を行い、その他その保健に必要な措置を講じなければならない。」とうたっているわけでありますが、学校保健行政は申すまでもなく重要な使命を担っているわけであります。この学校保健というものの教育に占める位置づけ、基本的な認識について、大臣にお伺いしたいと思います。
  186. 砂田重民

    砂田国務大臣 健康、安全で幸福な生活を営む習慣を養いまして、心身の調和ある発達を図りますことが、学校教育目的にとって最も大事なことでございます。児童、生徒あるいは学生、青少年並びに職員の健康の保持増進を図りますことが、学校教育の円滑な実施とその成果の確保に資する基本的な要件であると考えております。
  187. 林孝矩

    ○林(孝)委員 それであるならば、まず学校保健関係の予算の中で、公立小中学校児童生徒等健康増進特別事業等の補助が、五十年度において六億四千四百万、五十一年度五億九千九百万、五十二年度五億八千七百万、五十三年度五億七千二百万と、年々減少しておる。この減少しているのはどういう理由なのか、明らかにしてもらいたいと思います。
  188. 砂田重民

    砂田国務大臣 政府におきましては、最近の財政事情から、補助金と名のつきますほとんどのものが節約対象となっておりまして、この補助金につきましても毎年その節約補助金の対象になっているわけでございます。節約率が二・五%、機械的な節約減となっているわけでございます。どこかで取り返さなければなりませんので、先般御審議をいただいて成立させていただきました五十三年度予算におきましては、この節約とは別に日本学校保健会での研究委託費等で、別に同様な金額を立てたわけでございます。
  189. 林孝矩

    ○林(孝)委員 これは後の質問との関連がありますので一応確認しておいたわけでありますが、次に、学校における骨折事故対策についてお伺いします。  先月発表された埼玉県児童生徒骨折対策委員会調査によりますと、埼玉県での学校管理下における骨折の全児童生徒に対する発生率は、小学校の事故発生率は四十一年度が〇・四五%、四十六年度が〇・六二%、五十一年度〇・七三%、中学校の場合は四十一年度が〇・八六%、四十六年度一・二七%、五十一年度一・五二%、高等学校の場合、四十一年度が〇・五二%、四十六年度〇・六五%、五十一年度〇・七九%、このようになっております。この十年間で小学校が六一%、中学校が七六%、高等学校が五三%の数字が示すように、骨折事故が非常に増加しているわけであります。  こういう驚くべき実態が、先月埼玉県の調査により明らかにされたわけでありますが、文部省全国的な実態を掌握しているかどうか。この点はいかがですか。
  190. 柳川覺治

    ○柳川政府委員 学校における児童生徒等の事故につきましては、日本学校安全会で災害給付を行っておりますが、その災害給付事業の対象となりました件数からその実情を承知しておるわけでございます。それによりますと、全国的に見まして骨折事故の全加入者に対する発生率は、埼玉県のいま御指摘の場合よりも若干低くなっております。  小学校で申しまして昭和四十一年度に〇・四一%の発生率でございますが、五十一年度は〇・六五%と約五割程度増加しております。中学校におきましても〇・八〇%が五十一年度一・二五%と約五割近く発生率が高まっている。高等学校では四十一年度〇・五六%が五十一年度〇・六九%と、この面は埼玉県の場合は五割程度の増でございますが、全国的には二割程度にとどまっておるということでございます。  ただ、もう一つ、負傷の事故に占める骨折の割合を見ますと、小学校で四十一年度二一・四四%が五十一年度は二一・〇%、中学校で二五・〇三%から二四・八%、高等学校は二〇・四九%から二二・四%と、十年間の全負傷の中に占める骨折の割合としては大体横ばいというような状態でございます。
  191. 林孝矩

    ○林(孝)委員 問題意識の点と関連してお伺いしておきますが、骨折事故等の原因調査、予防対策について、日本学校保健会において五十年度より引き続き調査研究が行われておると聞いておりますが、活動状況はどのようになっておるか、また具体的な勧告を受けておるかどうか、この点についてお伺いしておきたいと思います。  それから、ただいま答弁のありました四十一年度、五十一年度の小学校、中学校高等学校における全国的なデータの実態でありますけれども、それに対して埼玉県よりも割合が低い、こういう認識でいいのかどうか。文部省としてこの問題に対する意識をどのように持っておるのか、この点をお伺いしたい。  さらに、具体的な調査研究を文部省として行っているかどうか、この三点お伺いしたいと思います。
  192. 柳川覺治

    ○柳川政府委員 昭和五十一年度から、日本学校保健会に専門家を含めました学校保健関係者によります骨傷害委員会を設けまして、児童生徒の骨折事故の発生状況あるいはその栄養その他の生活の実態等につきまして調査研究を行っているところでございます。  五十一年度におきましては、都内の小学校二十校、中学校三十校を無作為抽出いたしまして実態調査を行いました。また、引き続きまして、昭和五十二年度におきましても、同数の小中学校調査対象といたしまして、家族及び学校からの詳細な質問調査を行いまして、それに基づく検討、分析を現在行っているところでございます。  なお、日本学校保健会からは、五十一年度及び五十二年度に、学校保健センター的事業報告書というものの中で中間報告をいただいております。  さらに、この問題につきましては、保健会の研究の結果に基づきまして具体的な施策の検討に入りたいというように考えておるところでございます。  御指摘の骨折の件数、事故発生の状態でございますが、先ほどの全国的に把握いたしておりますのは、安全会の給付の対象となったものでございまして、あるいはこれ以外に必ずしも安全会の給付の対象とはならない、あるいは骨折には至らないがこれに近いけがもあるというようなこともあろうかと思います。この辺の全国的な調査につきましては、保健調査の対象とはいたしておりませんが、さらに安全会等の給付事業との関連も配慮しながら、全国的な実態の把握に努めてまいりたいというように考えておるところでございます。
  193. 林孝矩

    ○林(孝)委員 問題意識の点についての私の質問に対する答弁としてまだ明確になっていないわけですけれども、こういう骨折事故、ただいま答弁がありました骨折に至らないけが、これはさらに多い、それが調査対象となっていない、こういう状態といいますか、行政といいますか、こういう行政あり方でいいと思われるかどうか。学校における負傷事故が教育に及ぼす影響、子供の人格形成に及ぼす影響、こういう点から考えてどのようにお考えなのか、これは文部大臣にお伺いしたいと思います。
  194. 砂田重民

    砂田国務大臣 心身ともに健全な人間を育成することは教育の重大な課題でございますので、学校におきます事故は心身の発達を阻害もいたしますし、また治療期間、どうしてもその間の教科の学習のおくれということも考えられるわけでございます。子供の人間形成にとっても重大な影響のあることでございますので、学校におきましては安全管理、安全指導の徹底をさらにしてまいらなければなりません。事故の防止につきまして万全を期するべきでございますし、従来も「指導の手引」等を作成をいたしまして、学校にあります、教育現場にありますそういう方々のために、こういう手引きを作成、配付いたしまして、趣旨徹底を図ってまいったところでございます。  文部省といたしましても、今後も安全教育指導者の講習会等を充実させていく努力を一層強めてまいりたい、かように考えますと同時に、教育現場であります学校におられる指導者の方々にもひとつ熱意を持ってこの点と取り組んでいただきたい、かように考えているものでございます。
  195. 林孝矩

    ○林(孝)委員 そのとおりでして、ですからこうした問題、驚くべき事故率ですね。まさかこんなに骨折事故等が起こっているということは考えられない。しかし、具体的に数字で見ますと非常に大きいわけでしょう。したがって、それがどうして起こるかという原因一つにしても、まだ全然明確になっていないわけですね。そして具体的にそういう原因が明確になっていないから、指導手引きといっても、それに対応する手引きというのは的確性を欠いておるかもわからないし、そういうあいまいな状態でこの問題を置いておいてはならない。  したがって、先ほどから、実際数字にあらわれていない、いわゆる骨折に至らなかったけがであるとかこういうようなものに対しても調査範囲を対象を広げるなり、とにかくこうした事故がどういう原因で起こるのかということですね、そうした調査またその予防対策、こうしたものについても、もっと行政当局が早急に機動的に、有機的に組織を動かしてこの問題に対する措置を講じなければならないのではないか、こう私は思うわけです。考え方はいかがですか。具体的にどうしますか。
  196. 砂田重民

    砂田国務大臣 各方面で児童生徒の骨折事故がふえておりますことについて、栄養過多であるとか運動不足であるとか、そういう議論は報道等を通じてわれわれの目にも入るわけでございますけれども、そういったものではなくて、文部省みずからが責任を持って対処ができるようにと考えまして、学校保健会に委嘱をいたしまして、専門家の医師等にも参加をしていただいてその原因解明に努めてもおりますし、またその原因解明がなされませんと、的確な予防方策というものが——ただ安全に安全にといって教育活動が萎縮することも決して好ましいことではございませんので、いま学校保健会でせっかくその原因解明の努力中でございますので、できるだけ早く結論を出していただいて取り組んでまいりたい、かように考えているものでございます。
  197. 林孝矩

    ○林(孝)委員 それと同じく、これはまた次のテーマでございますが、数年前から、子供たちの中で背骨の曲がっている子供たちが非常に多いと言われ出しました。そして新附であるとかテレビであるとか、マスコミ等の話題になり、あるいは医学の学会でも専門家の指摘するところとなり、児童生徒の健康異常の一つとしていま社会問題になっているのがあります。それは脊柱側書症と言われているものでありますけれども、この病気といいますか、これについて大臣は御存じですか。
  198. 砂田重民

    砂田国務大臣 承知をいたしております。
  199. 林孝矩

    ○林(孝)委員 いわゆる背骨が曲がっておるということでありますけれども、特に学校保健の立場からこの問題と取り組んでいる文部省に、この対策についてお伺いしたいと思います。  まず、一九七五年七月に、アメリカのミネソタ州衛生部と教育部が共同で出した「学校健康診断による脊椎側彎症の早期発見」、こういうものがありますが、どういう内容になっておりますか、御説四を願いたいと思います。
  200. 柳川覺治

    ○柳川政府委員 御指摘の点は、一九七四年七月にアメリカ整形外科学会が、学童期の脊柱側彎症に関しまして、定期健康診断による早期発見、早期治療につきまして勧告をしたことに応じたものでございますが、その主な内容といたしましては、  一つには、学童の五ないし一〇%に側彎症のおそれがあること。  二つに、特に女子に多く、通常十歳から十二歳で発症するということ。  それから三つ目に、多くは軽い症状であるが、進行性の側彎症につきましては、早期に治療し、悪化防止に努める必要がある。  それから四番目に、早期に発見できれば矯正用器具のみで治療効果が上がる。すでに症状が進行した場合は、手術を適用することはやむを得ないというような指摘でございます。  また、スクリーニング法の心得のある学校職員によれば、三十秒間の体前屈、体を前にかがめる前屈の検査方法で疑わしい者の発見が可能であるということでございます。  また六番目に、側彎症の疑いがある児童につきましては、適切な医療機関に送致して、専門家の診断と治療を受けさせることが大事である、というような内容のものでございます。
  201. 林孝矩

    ○林(孝)委員 それから、一九七四年の七月にアメリカの整形外科学会が、学童の脊柱異常に関し、早期発見、適正な治療の勧告をアメリカ全土に出して注意を喚起しているわけでありますが、わが国では、文部省においてどのような対策を講じてこられたか、お伺いしたいと思います。
  202. 柳川覺治

    ○柳川政府委員 一九七六年、昭和五十一年の春以降、わが国におきましてこの側彎症の問題が急速に論議されてまいりました。そこで文部省といたしましては、この問題の研究者であり、また提唱者の一人でございます千葉大学の医学部整形外科教室の井上教授との連携を密にいたしまして、側彎症の病態、治療、発見法等に関し指導を受けております。  それ以降、体育局といたしまして、各種の研修会、講習会等におきまして、この側彎症を重視していく問題を課題として取り上げまして、井上教授も講師に招きまして、特に養護教諭の研修会等でこの面の認識、対策の強化を指導してまいったところでございます。  また、五十二年度の定期健康診断の開始に先立ちまして、五十二年二月十八日付でございますが、学校保健課長通知でもって「脊柱側わん症の早期発見について」の指導通知をいたしまして、さらにこの面の周知徹底方を進めておるところでございます。
  203. 林孝矩

    ○林(孝)委員 この脊柱側彎症の原因はどういう原因なんでしょうか。
  204. 柳川覺治

    ○柳川政府委員 一般に三つに大別されると言われております。一つは、脊柱に先天的に奇形のあるもの、二つには、小児麻痺などによりまして、筋肉の力が体の左右でアンバランスになったために脊柱に側彎を生ずるもの、また三番目のものが、原因が全く不明で発生するもの、このように分けられておりますが、この第三のものが特発性側彎症というように呼ばれております。  この特発性側彎症につきましては、発生原因についての科学的な解明がまだなされていないということで、一般には発育異常、連動不足による身体刺激の不足、全身性の代謝異常及び栄養のアンバランスなどの各種の説がございますが、いずれにいたしましても、単一の原因によるものではないというように言われております。したがいまして、この辺の問題につきましても、日本学校保健会に、脊柱側彎症の早期発見の方法等も含めまして、調査研究をお願いいたしておるところでございます。
  205. 林孝矩

    ○林(孝)委員 この原因不明のいわゆる特発性側彎症は、割合としてどれぐらいありますか。
  206. 柳川覺治

    ○柳川政府委員 いま申し述べました三つの大別されるものの中で、全体の七〇%程度のものがこの原因不明のいわゆる特発性側彎症に該当するというように言われておると聞いております。
  207. 林孝矩

    ○林(孝)委員 側彎症の特徴についてお願いします。
  208. 柳川覺治

    ○柳川政府委員 側彎症の症状は、脊柱の湾曲による変形が主なものでございます。  初期におきましては脊柱が左右に曲がる症状を呈しますが、進行すると肩胛骨が出っ張り、また胸の方も左右非対称となり、重症になりますと、それによりまして胸や腹部の片側が圧迫されるなどの症状が見られまして、体全体の器官、機能に障害を及ぼす症状が起こると言われております。
  209. 林孝矩

    ○林(孝)委員 治療方法としてはどういうものが考えられますか。
  210. 柳川覺治

    ○柳川政府委員 症状の程度または年齢等の時期によりまして治療方法が異なると聞いておりますが、一般には矯正のみによる場合と、手術を行った後脊柱を固定し、そのまま矯正を維持する方法がとられております。  特に、手術につきましては、脊柱の成長は十五歳あるいは十六歳ごろまで続くと言われておりますので、この時期までは手術を行うことは必ずしも適切でないということで、十五、六歳の時期まで待つ場合が多いようでございます。
  211. 林孝矩

    ○林(孝)委員 側彎症について、いま、原因、一番多いのは特発性側書症である、あるいはその病気の特徴、治療方法、こうした点をお伺いしてきたわけでありますが、全国的に見まして、文部省は患者児童の具体的な数字を掌握しておりますか。
  212. 柳川覺治

    ○柳川政府委員 学校における健康診断におきまして、古くから脊柱、胸郭の疾病及び異常の有無については検査項目として検査を行ってまいっておるわけでございます。脊柱及び胸郭に異常のある者、あるいはその疑いのある者につきましては、直ちに専門医等によって精密検査を受けるといった迅速な措置を講ずるよう父兄に連絡、指示をすることを行ってまいっております。  その実態でございますが、脊柱、胸郭異常のある者として調査した結果は、幼稚園については〇・七四%、小学校で〇・八九%、中学校で〇・七五%、高等学校で〇・六〇%となっております。いずれも昭和五十二年度学校保健統計調査の結果でございます。
  213. 林孝矩

    ○林(孝)委員 側彎症の具体的な発見状況は、どのような形で発見されておりますか。
  214. 柳川覺治

    ○柳川政府委員 具体には、学校におきます定期の健康診断の際に、校医によりまして異常の疑いが指摘されます。また、専門医の精密検査によって発見された例、あるいは最近では、さきに申し述べましたとおり、昨年二月十八日付の学校保健課長通知で早期発見の通知をいたしましたが、学校では毎月体重測定を行いますので、その体重測定をする際に、これに基づいて養護教諭が異常の疑いを持ちまして校医と相談の結果、専門医によって精密検査を受けまして、その結果判明した例も多くなってきております。  さらには、これは当然でございますが、家庭におきまして母親等が入浴中に脊柱の異常に疑いを持ち、そのことによって早期発見された例もあろうかと思いますが、学校におきましては、年に一度行います定期の健康診断及び毎月行います体重測定の際に疑いのある者の発見に努めておるところでございます。
  215. 林孝矩

    ○林(孝)委員 一つ指摘をしておきますが、学校における定期健康検査で側彎症の発見が全児童に対して十分なされ得る検査が行われている、そのように認識をされておりますか。
  216. 柳川覺治

    ○柳川政府委員 原因につきましてもまだ明確ではない症状の問題でございまして、学校における健康診断は、内科、眼科、耳鼻科等診療科別の医師を学校医としてお願いして実施しているわけでございますが、整形外科医等のこの症状に対する専門医を学校にお願いするまでには至っておりません。そのようなこともありまして、必ずしもこの健康診断ですべての疑わしき者に対しての発見がなされておるとは言い切れない面があろうかと思いますが、この面につきましては、さきに養護教諭の方々に発見の指導も重ねてまいりまして、それら健康診断と相まちまして的確な判断が行われるよう指導してまいりたいと考えておるところでございます。
  217. 林孝矩

    ○林(孝)委員 いま答弁がありましたように、指導はしておるけれども十分とは言えない現場での実態でございます。したがって、先ほど文部省が五十二年度の実態掌握として挙げられた数字と、現実に現場で調査に当たった数字と違ってくるという結果が生まれてきているわけです。  側彎症の子供は百人に一人の割合と言われてきておる。ところが、最近千葉大学あるいは旭川医科大学の小学生、中学生を対象にした調査によりますと、百人のうち一・三人から二・五人、さらに増加の傾向にあるという結果が出ております。また、東京都の大田区の調査によっても、四万五千六百九十四人の対象者のうち一・七%の要注意ないし要医療という結果が出ているわけです。それから、千葉市内での千二百十二名の対象者中機能性側彎症を含めると二二・二%にもなっておる。このうち要治療及び要観察の児童は三・四%、これほどの発見率であったわけです。  こういう実態が最近の調査で明らかにされておる。したがって、文部省調査とはずいぶん差があります。このように専門家の調査の結果を示す数字が、いずれも文部統計にある胸郭と脊柱異常を合わせた数字よりも高い。専門家の調査の方が先ほど言われた文部省の数字と比較するとずいぶん多いわけですけれども文部省はこういう数字をどのように認識されておりますか。
  218. 柳川覺治

    ○柳川政府委員 ただいまお示しいただきました千葉県における千葉大学の整形外科の研究室で調査されました結果、あるいはこの辺に大変御熱心な取り組みをしております大田区の教育委員会調査結果等によりますと、相当専門的な立場からのこの面の追跡発見調査をされたわけでございまして、それによりますと、いま御指摘のとおり、小学校で一・六%、中学校で四・五%程度の発見がなされておるということでございます。したがいまして、今後、先ほども申し上げましたが、的確な診断が行われるよう指導がますます大事になると思いますし、この面の早期発見の方途等につきまして、現在学校保健会の方にその具体の問題について調査研究をいただいておりますので、それらの調査の結果も待ちまして、具体の指導の強化、また具体の発見方法につきましての技術的な指導等につきましても研究をしてまいりたいというように考えておるところでございます。
  219. 林孝矩

    ○林(孝)委員 これはたとえば全国の児童を対象にこうした側彎症の実態というものを調査するためには、それだけの専門的な知識を持った人の助言だとか、あるいは本気になってこういう問題に取り組んでいくという姿勢、こういうものが必要になってくると思うわけでありますが、いまいろいろお伺いしている過程で感じることは、いままでの数年の間こうしたことについて非常に文部省としての取り組みが弱かったのではないか、もっと積極的にこの問題に関して取り組んでおれば、早期発見ということにも役立ちますし、また実際専門家の調査文部省調査とがこんなに食い違うということも起こらなかったでありましょうし、もっとこうした側彎症に対する予防であるとか、あるいはほとんどが原因不明だという、こういう実態に対して、より前進した結果が得られたのではないかと思うわけです。  先ほど定期健康診断の検査項目に対する答弁があったわけでありますけれども、いままでの健康診断の検査項目、それの経緯、何年ころまではこの問題については全然検査項目に入っていなかったとか、何年からこういう問題に対して検査項目に入れたという、経緯について説明願えますか。
  220. 柳川覺治

    ○柳川政府委員 側彎あるいは前彎、後彎、脊柱異常の問題につきましては、戦前の身体検査からも、いわゆる脊柱正、栄養可ということは、私どもの小学校のころからも行われておったわけでございまして、特に学校保健法が制定されました三十三年以降、この健康診断の項目につきましては、脊柱及び胸郭の異常につきまして検査をするという項目を設定いたしまして、その検査項目の具体の指導に当たりましては、前彎、側彎、後彎等につきまして十分注意するようにいたして指導内容を盛り込んでおるわけでございますが、最近まで脊柱の問題につきましては、特にカリエスの問題がございましたので、脊柱の異常、特にカリエスなどの異常について検査することということを検査項目の内容といたしてまいりました。  この辺の問題が、いま、側彎症の問題につきまして遅い対応だとおしかりを受けておりますが、アメリカ自体で、先ほど先生からも御指摘ございましたとおり、昭和五十年、五十一年あたりにこの問題が大きく取り上げられてきたということでございまして、わが国でもそれに対応して、文部省も、科学研究費等の面で、この面の大学での研究の促進がなされておったものでございますから、かねて脊柱の異常につきましては健康診断の最も大事な項目の一つとしてまいりましたから、その面から側彎症問題につきましてもそれなりの指導体制をとってきたということでございます。  なお、不十分な点につきましては、今後さらに努力すべき課題ではあろうと思いますが、そういうような取り組みでいま進めておるところでございます。
  221. 林孝矩

    ○林(孝)委員 五十二年二月十八日の、先ほどお話のありました通達、これは各学校において定期健診や日常の健康観察の中で発見に努めるよう指導したものである。ところが、一部で学校に届くのが定期健康診断に間に合わなかったり、あるいは健康診断に胸郭、脊柱異常の有無の項目があるという理由から、特に指導する必要はないという教育委員会独自の判断から、この通達が握りつぶされている例がありました。こういう実例について大臣は御存じでありますか。
  222. 砂田重民

    砂田国務大臣 承知をいたしております。文部省から出された文書が教育委員会独自の判断で握りつぶされていたということは、きわめて遺憾なことだと存じます。  やはり、文部省も、教育委員会も、当然児童の幸せを願ってのことでございますから、今後このようなことのないように教育委員会指導してまいることにいたしております。
  223. 林孝矩

    ○林(孝)委員 そのように指導をしてきた、あるいは実態掌握しているという中にも、こうした通達が学校にまで行き届かない、こういう実態があるわけでありまして、私は特に重大な問題意識を持って指摘しておきますけれども、いま大臣の御答弁にもありましたように、小学校、中学あるいは高校、こうした大事な成長期におけるこういう側彎症の問題に対する問題意識の持ち方、先ほども埼玉県の骨折の実態調査に関連して申し上げましたけれども、こういう問題に対する問題意識の持ち方、ここのところに、だれがどうということではございませんけれども、全体として文部行政の中でやはり甘さがあるのではないか、私はこういうふうに感ずるわけです。  したがいまして、これを機会に、考え方をさらに一歩積極的に能動的にお持ちになって、そしてこの原因の究明であるとかあるいは実態の掌握であるとか、また実態の掌握一つにしても、文部省として、ただ定期健診のいま行われている状態で果たして発見されるかどうかというところまで分析をされて、そしてこの問題の解決に結果として大きな役割りを果たす、そういう行政をやっていただきたい、このように考えるわけですけれども、この点についてはどのように受けとめられておりますか。
  224. 砂田重民

    砂田国務大臣 非常に重要なことでございますので、私どももさらに問題意識を重要視をいたしまして、積極的に努力を続けてまいります。
  225. 林孝矩

    ○林(孝)委員 わが国の側彎症の発見例としては、申し上げておきますけれども、家庭において入浴どきや、それから親と連れ立って歩いている、そういうときの発見が非常に多いわけです。また通達でも、定期健診等の機会と並んで、日常の児童生徒姿勢異常などの健康観察を重視している。自治体での対策努力としても、先ほど申し上げました東京大田区などのように、ここの場合は学校と医師、父兄が一体となってこの側彎症の問題と取り組んでおる。独自の予算措置まで講じている、こういう例もあるわけですね。  したがいまして、文部省として課長通達、これだけで解決できるものでもありませんし、研修指導だけで事足りるものでもないと私は思うわけであります。したがって、学校の養護教諭それから担任の教師の人たち、こういう人たちにも積極的に働きかけて、さらに、小学校あるいは中学、高校の子供たちを持っている父兄、こういう父兄にも呼びかけて、脊柱側彎症に対する正しい知識を持たせると同時に、これを早期発見して、ひどい状態にならないうちに矯正していく、こういう運動を起こす必要があるのではないか、このようにも思うわけでありますが、こうした具体的な対策、具体的な運動、こういうものについての考え方はお持ちになっておりますでしょうか。
  226. 砂田重民

    砂田国務大臣 側彎症の発見につきましては、各種の講習会等を通じましてさらにその趣旨の徹底を図ってまいりますが、実は近く健康診断の方法等を改善をすることにいたしておりますので、その機会に合わせて、特にこの側彎症の問題について各都道府県に対しまして重ねて注意を喚起をしたい、かように考えております。児童生徒たちの健康診断の方法、やり方を改善をいたしますときは、それだけ学校現場におきましても非常に強い関心を持つ時期でございますので、これにタイミングを合わせて、御発言の御趣旨を十分体して徹底をしてまいりたい、かように考えております。
  227. 林孝矩

    ○林(孝)委員 そういう決断は非常にいいことだと私は思います。評価するわけです。健康診断の方法改善の内容といいますか、そういうものについてはいまどのように考えておられますか。
  228. 柳川覺治

    ○柳川政府委員 脊柱の異常につきまして検査項目とすることには変わりございませんが、従来特にカリエス等に力点を置くような表現をいたしておりましたところは、その面につきましてはその必要がないだろうということが専門の委員の先生から御指摘されております。それで、従来この検査に当たりましての指導通達を出しておりますが、この中で、側彎、前彎、後彎等につきまして注意することがうたってございますが、特に最近の側彎症の発生の実態にかんがみまして、この面の側彎症に対する早期発見につきまして適切な措置を講ずるような内容のものをこの指導の中で盛り込んでまいり、その辺に力点を合わせた指導を強化していくということであろうかというように現在検討中でございます。
  229. 林孝矩

    ○林(孝)委員 診断方法改善と同じく、この調査研究の促進という面も図らなければならないと思うのです。たとえばその予防対策を確立するための調査であるとか、あるいは特別なプロジェクトチームをつくって研究に当たるとか、こういう専門家の特別の研究機関といいますか、そういうものを文部省として設置して、予防対策あるいはこの側彎症の解決のために働きかける、こういう点についてはいかがでしょうか。
  230. 柳川覺治

    ○柳川政府委員 いま学校保健に関する各種の問題、またそのときどきにいろいろな異常の実態が起こっておりますし、先ほど来御指摘の従来見られなかった骨折の現象等が起こってきております。それらにいかに対応していくかということでございますが、基本的には、医療行政あるいは医療研究の大きな研究課題のその中で対応していく問題でございますが、学校保健という、子供たちである、また集団生活の場であるというような観点に立ちまして、文部省といたしましては、そのセンター的機能を財団法人日本学校保健会の活動に期待してまいってきております。  したがいまして、この問題につきましても、日本学校保健会にこの面の専門の委員会を設けていただきまして、その面でこの側彎症対策に資するための各種の方途につきましていま御研究をいただいておるところでございます。  その辺の研究の過程からも、アメリカの整形外科学会でも御指摘されましたような、体前屈による簡易な発見の仕方もあるということもございましたので、その辺の勧告も受けまして、昨年保健課長通知でもって、とりあえず毎月行われる体重検査、そういうときも利用してできる限り早期発見に努めるようというような対応をしておるわけでございます。したがいまして、この研究委員会のいままでの御研究の結果でも、日本におけるこの面の発生率は欧米とほぼ同率であろうと先生御指摘のとおり、一%よりもむしろ超えるような状態であろうということも認識されております。それで、この専門家によりましていま簡明な手引書を作成中でございますので、近くこの面の手引書も発刊されるのではないかというように期待をしておるところでございます。
  231. 林孝矩

    ○林(孝)委員 最後に、大臣にお伺いしておきますけれども、いま御答弁にありました学校保健の立場から、たとえば公害対策あるいは心臓、腎臓などの難病対策ですね、こういうことについても文部省が今日まで取り組んで予算措置も講じてきたことは事実あるわけですから、この側彎症についても予算の新設措置、こうした面においても考えていく必要があるんではないか、このように思うわけでありますけれども、この点について大臣の決意を伺って、この問題は終わりたいと思います。
  232. 砂田重民

    砂田国務大臣 側彎症あるいは他の病気もそうでございましょうが、難病に対します基本的な対策は厚生行政の場で行われているわけでございます。しかし、児童生徒に大変側書症が多い、あるいは骨折が多いという現実の問題がございますので、文部省といたしましても、学校保健の立場から積極的な協力をしてまいる、予算等の問題も含めてさらに積極的に検討をしてまいりたい、かように考えております。
  233. 林孝矩

    ○林(孝)委員 次にお伺いいたしますことは、地方財政の悪化というものが、非常に苦しい地方財政に陥っているということが一方にあり、国が地方自治体に負担をかけてはならないという原則が私はあると思うのでありますが、文部省が五十三年一月一日現在、地方自治体から無償で借り上げている文部省関係の土地、建物、土地について四十九件、百八十三万六千六百八平方メートル、建物について十三件、一万七千八百十八平方メートル、これだけ無償で借り上げている文部省関係の土地、建物があるわけです。  これは確認を求めるわけでありますが、昭和三十年十二月二十九日以降使用の契約をしたもの、それ以降に使用するという契約をしたものはこのうちどれぐらいあるか、この二点についてお伺いしてみたいと思います。
  234. 砂田重民

    砂田国務大臣 ただいま御指摘の土地並びに建物の件数、面積、数字は間違いございません。  また、このうち昭和三十年十二月二十九日以降使用を開始いたしましたのは、土地につきましては三十九件、百三十三万六千三百四十九平方メートル、建物は十二件、一万六千三百六十八平方メートルでございます。
  235. 林孝矩

    ○林(孝)委員 地方財政再建促進特別措置法、これの第二十四条第二項の趣旨はどのような趣旨になっておるか。ここに述べられておる原則について、これは自治省に伺いたいと思いますが、説明をしていただきたいと思います。
  236. 土田栄作

    ○土田説明員 お答え申し上げます。  地方財政再建促進特別措置法第二十四条第二項は、国と地方団体との間の財政秩序を維持し、地方財政の健全化を図るという見地から、地方公共団体は当分の間、国、それから公社、公団等に対しまして帯付金の支出というものを原則的に禁止いたしております。この番付金等の支出というものの中には土地の無償貸与というものも含まれるということでございます。  ただ、ただし響きがございまして、特定の限られました要件に該当いたしまして、自治大臣の承認を得た場合はこの限りではないということになっております。
  237. 林孝矩

    ○林(孝)委員 自治大臣はこの承認を、文部省の先ほど申し上げました土地、建物についてしているかどうか。
  238. 土田栄作

    ○土田説明員 法律の要件でございますが、法律の要件は「地方公共団体がその施設を国又は公社等に移管しようとする場合その他やむを得ないと認められる政令で定める場合」ということでございまして、承認できるケースは非常に限られております。  したがいまして、県立大学国立大学に移管するというような場合に用地とそれから建物を国へ寄付するということで承認した事例はございますけれども、ただいま問題になっておりますような土地の無償提供というもので自治大臣が承認したという事例はございません。
  239. 林孝矩

    ○林(孝)委員 法制局に伺いますが、国等の自治体からの土地などの無償借り上げ、これは違法であると、これは昨年の三月十八日の内閣法制局長官の国会答弁にあるわけですけれども、これは現在も変わりございませんか。
  240. 前田正道

    ○前田(正)政府委員 地方財政再建促進特別措置法の第二十四条の第二項の解釈に関しましては、御指摘のように昨年の三月十八日に本院の予算委員会で御質問がありまして、これに対しまして、内閣法制局長官から、同法の第二十四条第二項の規定は、国と地方公共団体との間の財政秩序を確立いたしまして、さらに地方財政の健全化を図るという趣旨からいたしまして、原則としまして地方公共団体が国または公社等に寄付金等を支出することを禁止した規定であります。そしてこの寄付金等につきましては、その内容が実質的に寄付金的な性格を有するものは含まれます。したがいまして、用地の無償提供等につきましてはこの番付金等に含まれまして適法とは言いかねるというお答えをしておりますけれども、この見解は現在も変わりはございません。
  241. 林孝矩

    ○林(孝)委員 そこで文部省に伺いますが、私の手元に地方自治体から借り入れ使用している財産調べの結果がございます。この中で無償で借り入れている、こういうものがずいぶんあるわけです。いま自治省あるいは内閣法制局の判断でも明らかなように、すでにまた予算委員会においても明らかにされているように、そういうものは違法である、こういうことで、たとえば自治省の財政局長が四十八年七月二日付の申し入れ書でこの点は違法であるということを指摘しておる。自治省に確認しておきますが、これは間違いはありませんですか。
  242. 土田栄作

    ○土田説明員 個別に違法という事例が判明いたしましたものにつきましては、私の方から文書で各省に申し入れております。間違いございません。
  243. 林孝矩

    ○林(孝)委員 それから、その後自治省がこの点について毎年その申し入れをしているという事実もあるわけですけれども、その申し入れの内容というものはどういうことになっておりますか。
  244. 土田栄作

    ○土田説明員 これは財政局長名でございますが、「国及び公社等が設置する施設に対して地方公共団体が経費負担すること(施設の用に供する土地を無償で貸し付けることを含む。)は、地方財政再建促進特別措置法第二十四条第二項の規定により禁止されているところであるので、所要経費の全額を予算に計上されたいこと。なお、現在、地方公共団体から無償で借り上げている用地がある場合においては、買上げ、交換又は適正な対価による有償借上げをすべく適切な措置を講じられたいこと。」ということの申し入れを各省に対して行っております。
  245. 林孝矩

    ○林(孝)委員 文部大臣、いまのやりとりで大体御理解を願えたと思いますが、いわゆる文部省が無償で借り入れている土地だとか建物、こういうものは、先ほど指摘いたしました地方財政再建促進特別措置法第二十四条の法解釈、法制局の方からも話がございましたように、よくない、こういう議論が、いま初めてではなしに、もうすでに行われてきたわけです。ところが、行われてきて、そして自治省からは、無償借り受けするのではなしに、毎年の予算にそれを計上するべきだという申し入れを自治省から文部省に対して行われておる。ところが、予算化されないで、依然としてその実態は無償で借り受けしておるわけです。  私、時間がありませんから、これを一つずつ読み上げませんけれども、この実態というものは、これは非常に広範囲に全国に散らばっておりまして、金額にしても相当の金額になります。これが地方自治体の財政へ還元されるということになれば、それだけ、冒頭に申し上げましたようにいわゆる地方公共団体の財源を潤すことになることは事実でありますから、こういう点について文部省が今日までの考え方を改めて、そして先頭を切ってこういうことの解決に取り組む、ということは予算化していく、こういう作業をするという決断をされるべきではないか、このことを伺って、私の質問を終わりたいと思います。
  246. 砂田重民

    砂田国務大臣 文部省所管国立学校等の各機関におきまして地方自治体から無償で借りております土地、建物の多くは、国立工業高等専門学校国立大学の実験実習施設にかかわるものが多うございます。このうちで国立の工業高等専門学校につきましては、その設置について当初地元の強い御要望を受けてその協力のもとに国が設置をしたという経緯もありましたことから、その用地等について地方自治体から無償で提供を受け使用してまいったわけでございますが、これにつきましては地方財政再建促進特別措置法の趣旨が明確でございますので、国有地との交換処理によりまして国有化を図りつつあるところでございます。  校地につきましては、国立工業高等専門学校四十六校中、初めから国有地を利用いたしました十一校を除きまして、交換処理を必要とする三十五校のうち三十二校につきましては、すでに交換処理を完了いたしました。今度も引き続いて交換処理によりまして鋭意国有化を図ってまいる所存でございます。  また、国立大学の実験実習施設につきましては、やはり所在する地域の学術、文化、産業、生活環境等の向上に役立つものであるという地方自治体の御理解から、その設置につきまして地元の積極的な御協力によって地方自治体議会の承認を得てその用地を無償で使用しているものでございますから、これも先生御指摘の地方財政再建促進特別措置法の趣旨を踏まえまして、それぞれについて従来の経緯等を考慮の上、その適正規模等を検討いたしまして、今後も引き続き自治省等関係方面と十分協議の上措置をしてまいりたい、かように考えますが、五十三年度予算にもこれの解決のための予算計上をいたしておりますので、会計課長からちょっと御説明をいたさせます。
  247. 西崎清久

    ○西崎政府委員 ただいまの件の五十三年度予算でございますが、五十二年度における一般会計予算は借料といたしまして一億七千六百五十八万円余を計上いたしておったわけでございます。これを婦人教育会館等を全額有償にするということも含めまして二億八百七十六万円余に増額いたしております。それから医科大学等の医学部の用地等で、五十二年度は四億八千三百四十三万円余を計上いたしておりますが、五十三年度におきましてはこれを二倍近くの八億一千四百五十一万円余といたしております。  なお、先生が冒頭におっしゃいました件数と面積との件でございますが、これは大臣がお答え申し上げましたのに間違いございませんが、建物については一千平方メートル以上、土地については三千平方メートル以上を集計した数字として間違いないわけでございます。  以上でございます。
  248. 林孝矩

    ○林(孝)委員 終わります。
  249. 楯兼次郎

    楯委員長 次に、安藤巖君。
  250. 安藤巖

    安藤委員 私は、東大医学部の附属病院精神神経科病棟の問題について、お尋ねをしたいと思います。  最近、文部大臣東大学長を呼ばれて、この病棟が暴徒に占拠されている異常な事態、これを正常に戻すためにいろいろ御努力をされているということは知っております。そして三月二十日に確認ということができまして、医学部の教授会としては精神医学教室が正常の状態へ一歩を踏み出すものと理解するという、いわゆる確認をしてお見えになっておるようですが、大臣はこの病棟の問題について、正常な状態というのは一体どういう状態を考えておられるのか、まずお尋ねしたいと思います。
  251. 砂田重民

    砂田国務大臣 それは、医学部の精神病科におきます教育、研究、診療が何の邪魔されるところもなく実行される状態が正常な状態であると考えております。
  252. 安藤巖

    安藤委員 いま基本的なことが大臣がおっしゃったんですが、具体的に言うと、この正常化というのはどういう状態を言うのか、お尋ねしたいと思います。たとえば教育診療等が正常に行われる状態というふうにおっしゃったのですが、具体的には臨床実習がどういうふうに行われるかとか、あるいはこの確認なるものに名前の挙がっている三人の人たちの診療、教育がどういうふうに行われるのか、あるいは国有財産である物品あるいは財産の管理がどうなるのか、そういうようなことをお尋ねしたいと思います。
  253. 佐野文一郎

    佐野政府委員 御指摘のように、一つには病棟施設あるいは物品管理というものが完全に当局の管理下に入る、いわゆる施設設備における自主管理と称されている状況が完全に解消をするということでございます。  それから、教育、診療の面におきましては、御指摘のように現在この病棟では病床実習が不可能な状況にございます。この病棟において学生の臨床実習が可能になるということが一つ。  さらに、患者に対する診療の面が、現在は実質的には東大の職員以外の者によって行われておりますけれども病棟における診療の状況が完全に医学部病院の職員によって行われる状態が確保されることが必要でございます。  さらに、私どもはそういったことをもちろん図っていかなければなりませんけれども、そういったことがさらに完全に正常に行われるという状態を確保するためには、現在この精神神経科は教授、助教授を欠くような診療科全体の運営の状況にございますので、こういった状況を正して教授、助教授が任命をされて、そして通常の診療科の場合と同じように外来、病棟それぞれが相まって一体となって診療、教育が行われるような状況を確保すること、これが正常化の最終の目標であると考えております。
  254. 安藤巖

    安藤委員 そうしますと、この附属病院の精神科病棟での定員というのがあると思いますけれども、定員外でも、たとえば臨床研修医の方、あるいは医員という方ですね、これは研修後にさらに診療に当たる方だと聞いておりますが、あるいはさらに研究生という方で、これはきちっとこの病院に登録をして、診療科長の許可を得ていろいろ研究や診療に当たる、こういう定員外の人たち以外の人たちが入って診療したり研究したりどうこうすることがないというような状態、これも一つ入るんじゃありませんか。
  255. 佐野文一郎

    佐野政府委員 先ほども申しましたように、現在病棟では東大の職員でない者が事実上診療に当たっております。こういった状況はもとより排除しなければ正常な状況とは申せません。また、御指摘の研修医につきましても、現在病棟には二名の届け出の研修医がございます。これは病院に届け出て、そして承認を受けて研修をしているものではありますけれども、無給でございます。私どもは、無給の研修医というものはあってはならない性質のものであると考えております。これも是正をしていく必要がございます。
  256. 安藤巖

    安藤委員 いまおっしゃったような正常な状態ということを実現するためには、やはり大学医学部あるいは附属病院と関係のないいまの占拠派の人たちがこの建物から出ていかない限り実現できないと思うのですが、この人たちが退去するということもやはり正常化の中身だということになりますか。
  257. 佐野文一郎

    佐野政府委員 御指摘のように、病棟の患者に対する診療あるいは病棟における臨床実習というものが、東京大学の医学部の職員によって実施をされる状況が正常な状況でございます。現在の状況はきわめて不正常な状況で推移をしているわけでございますから、そういった状況を最終的には、またできるだけ早い機会に是正をしなければならないと考えております。  実際問題として、現在病棟に患者が十五名ないし十六名入院をいたしております。この入院患者に対する診療というものが東大の職員以外の者の手によって事実上行われておる、それが非常に長期にわたって行われてきている、いわゆる診療封鎖と言われているような状況があるわけでございますが、この是正のための努力東大の当局は続けてきておると理解をしております。
  258. 安藤巖

    安藤委員 ですから、いま占拠している人たちが全部出ていかなければ正常化ということにはならないと思いますので、退去するということも当然これは前提になってくると思うがどうかということをお尋ねしておるのです。  そのことと、この確認ができたことによって、いまおっしゃった自主管理の一部が崩れたというふうに文部省あるいは大学当局は考えておられるというふうに聞いておりますが、そのとおりかどうか、二つお答えください。
  259. 佐野文一郎

    佐野政府委員 最終的には、現在病棟において診療の仕事に当たっております東大職員以外の者が退去をするということが、正常化のためには必要でございます。  また、私どもは、今回の確認書による合意というのは、いわゆる分担教官について病棟における診療、教育の役割りを認めたものと理解をいたしております。そういう意味におきまして、従来の診療封鎖というものについて事態改善されていく一歩を進めたものという評価をしております。  ただ、この合意は、いわば基本的な方向についての合意があったにとどまっている、これをさらに進めて、どのように具体的に病棟における分担教官の診療、教育の役割りというものを具体化していくかという点に、現在大学当局の苦心がかかっていると理解をしております。
  260. 安藤巖

    安藤委員 基本的な問題についてのことだというふうにおっしゃっておるのですが、先ほど私がお尋ねしました自主管理の一部が崩れたということなのかどうかという点については、まだ明確な御答弁をいただいていないのですけれども、三人の土居教授、佐藤、逸見助教授の分担教官の方々は、この確認の二十日以降この病棟内に立ち入っているのですか、いないのですか。
  261. 佐野文一郎

    佐野政府委員 病棟の中には立ち入っておらないと承知をしております。
  262. 安藤巖

    安藤委員 そうしますと、診療、教育担当としてこの分担教官を信認するというようなことを確認されたらしいですけれども、診療、教育をこの病棟の中で行っているという事実もまだないわけですね。
  263. 佐野文一郎

    佐野政府委員 御指摘のとおりでございます。分担教宣の診療、教育の役割りを認めるという基本的な方向は合意されておりますけれども、具体的にどういう形で分担教官が診療あるいは教育というものに責任を持っていくか、それを実際に実施していくかという点についての詰めが現在行われていると考えております。
  264. 安藤巖

    安藤委員 そうしますと、教室会議の方やあるいは外来の方のお医者さんとか看護婦さんも、この病棟の方には出入りできない状態であるというふうになっていると思うのですね。いまその詰めをしておられるというのですが、その詰めはどなたとどなたがやっておられるのですか。
  265. 佐野文一郎

    佐野政府委員 分担教官、主として診療科長事務取扱である佐藤助教授が病院側としては中心になり、相手方は現に病棟占拠しております精医連の代表である森山公夫を代表として話し合いが行われておると理解しております。
  266. 安藤巖

    安藤委員 それで、その詰めを行うことによって、最初にお尋ねいたしましたような正常化が実現するという見通しを持っておられるのでしょうか。
  267. 佐野文一郎

    佐野政府委員 三月二十日に基本的な方向が合意をされてから、すでにかなりの日時を経過しております。私どもは、事柄が基本的な方向についての合意が成立をし、その具体化を図るというきわめてむずかしい段階に差しかかっているために時日を要しているということは理解できますけれども、詰めをするということでいたずらに事態が遷延していくということは許されないことだと考えております。  もちろん、従来、大学病棟側との話し合いあるいは説得を通じて事態正常化を図ることが最も適策であるというふうに判断をし、またそれに従って、確かに正常化は具体的にも前進を見ているという評価をすることができますし、大学が続けている努力というものを見守っていく。そしてその方向はさらに前進をするということを私たちは期待をしておりますけれども、具体的に、先ほど来申し上げておりますような最終的な正常化状況をつくり出すためには、さらに病院当局あるいは医学部当局、さらには東大の総長以下の全体の努力というものがさらに必要であると考えております。
  268. 安藤巖

    安藤委員 いろいろ努力をしておられるということはわかりますが、確認書を拝見いたしますと、分担教官の役割りについて認めるということと、それから必要な人員の充足等と同時に施設改善を行うということも中に入っておるのですが、この二十日以降に施設改善について品物を提供するとかいうようなことばないでしょうか。
  269. 佐野文一郎

    佐野政府委員 その確認書について私どもが非常に懸念をしておりますのは、率直に申しまして、現在の不正常な状況のままで人員の充足が行われ、あるいは施設設備改善措置が行われるということでございます。これは現在の不正常な状況をさらに固定することにつながりかねない。  したがって、確認書の方向については私どもはそれを評価をいたしますけれども、それが正常化のステップを踏み誤らないように、正常化を進めながらその前提の上で、人員の充足なりあるいは施設設備整備が行われていかなければ、話が逆になると考えております。そのこともまた十分お考えになって、医学部の教授会は、正常化の方向を進めるということを確認しながら、その確認書を御了解になったと理解をしております  もちろん施設設備の中でも、私ども調査をしました結果、たとえば食器だなであるとかあるいは食堂の網戸であるとか、保健管理あるいは衛生の見地から考えてきわめて不適切なものがあれば、それは事の性質上最低限の補修はする必要があると思いますけれども、それ以上のことにつきましては、いま申しましたような基本の方向に合致するものでない限りは私どもは進めるべきでないと考えております。
  270. 安藤巖

    安藤委員 だから、二十日以降にそういう施設改善に資するような品物を送り込んだことはあるのかないのかということを具体的にお尋ねしているのです。
  271. 佐野文一郎

    佐野政府委員 これまではそういった措置をとっておりません。
  272. 安藤巖

    安藤委員 いまのお話でいろいろ詰めをしておられるということで、最終的には正常化を実現したいというお気持ちはよくわかります。  ところで、精医連の代表の森山という人といろいろやっておられるようですが、三月二十日以降に精医連の方でこの確認なるものについてどういう態度をとっておるかということは御存じなんでしょうか。
  273. 佐野文一郎

    佐野政府委員 確認がなされた方向についての佐藤助教授との間のいわば予備的な交渉というものは行われておりますけれども、具体の進展を見ておりません。
  274. 安藤巖

    安藤委員 残念ながらこの東大精神科医師連合、いわゆる精医連の方はまだ自主管理貫徹ということを叫んでいるのを御存じないでしょうか。いま私がここに持っておりますのは、もちろん三月二十日以降、三月二十七日付の「公選人事実現——「教室会議」解体を全学の闘う力でかちとろう!」というビラですけれども、時間がありませんからしぼりにしぼって申し上げますが、このビラの中に「医当局がいかなる策動をめぐらそうと、われわれは断乎として病棟自主管理闘争を貫徹し、精神科病棟ではない!)の公選人事を実現する。」こういうことがうたわれているのです。  ということになりますと、三月二十日の確認に基づいていろいろ詰めをしておられるということで、正常化へのワンステップだと考えておられるけれども、相手方である精医連の方はちっともそういうことは考えてない。あくまでも自主管理を貫徹すると言っているのですが、この辺はちっともそういう状況を御存知じないのですか。こういうような態度を精医連がとっておるとすると、いま考えておられるようなコースというのはだめじゃないかと思うのですが、どうでしょう。
  275. 佐野文一郎

    佐野政府委員 精医連側がビラをもって御指摘のような点を申していることは承知をしております。しかし、病院当局占拠側との間において長時間にわたる話し合いが行われ、病院当局説得の中で確認という形がとられているわけでございます。その確認の内容は、明らかに自主管理、特に診療の封鎖と言われてきたものについて事態を変えるものを基本的な方向として持っております。そのことは単に病院側がそう言っているということではなくて、まさに病棟側がそのことを認めたわけであります。ビラに書かれていることは書かれていることとして、私たちは病棟状況改善のためのステップが切られているということは事実であると考え、またそれを評価しております。
  276. 安藤巖

    安藤委員 確認書の中にも病棟側の方が何か認めるみたいなことが出ておるし、いまの御答弁によると相当相手方を信用しておみえになって、詰めを行って正常化の方向へ行けるんだと考えておられるのですが、そうしますと、結局、占拠側の方が大学当局正常化に向かっての一つ一つの要望なり基本的な態度なりを認めるということにならないとこれは何も実現できない、こういうことになりますか。
  277. 佐野文一郎

    佐野政府委員 病院当局、医学部当局はこれまでいわゆる話し合い、説得によって事態解決することが最も適当な方法であると考えて進めてきております。私どもは現段階までの進捗状況から判断いたしましてそれを理解し、その方向での大学側の努力をさらに期待をし、また強く指導をしているわけでございます。そういう状況で事柄が進んでおりますので、占拠側と話し合いをし、それを説得して一つ一つ事柄を前進させていくという方向をとらざるを得ない状況に現在ございます。  そのことは考えようによってはきわめて不正常な、異常な状況でございます。相手方がもともと不正常な状況占拠をしている人たちでございますから、それを相手方として事柄を詰めていくということ自体が異常な状況であることは十分わかりますけれども、当面はやはりそういった大学側の努力をさらに進めていただくことが適当ではないかと考えております。
  278. 安藤巖

    安藤委員 いろいろ努力をしておられることはわかるのです。説得をし、話し合いをするということなんですが、その結果、相手方が説得に応じない、当局の言い分を最終的には認めないということになったら、にっちもさっちもいかないことになるのではないかと心配するのです、説得なさるのはいいのですが。  そこで、私がそのことで申し上げたいのは、精医連という団体を一体どういう団体だと認識しておられるかということなんです。  私がここに持っておりますのは「月刊労評」という機関誌なんです。この「労評」は、ことしの三、四月の合併号、だから三月二十六日の成田暴力行為の後と思われるのですが、たとえば「三・二六 三里塚空港阻止全国結集大集会」ですか、管制塔占拠報告が入り歓声が上がって大成功だという記事を載せておるのですね。そして東大の精医連はこの労評の一周年記念に対して「労評一周年へのラブレター」というものを出して「赤レンガ病棟自主管理闘争が十年目を迎える日、満二歳のあなたに、二度目のラブレターが送れますよう共にがんばりましょう。東大精神科医師連合」と書いてある。  こういうふうに、東大精医連というのは成田空港を暴力で破壊したあの暴力集団等の仲間だということがはっきりしておるのです。  しかも、同じ三、四月号なんですが、先ほど私が言いました自主管理の問題について「労評」に東大精医連みずからが、三・二〇は公選人事、看護婦さんの増員、施設改善、この三項目の要求実現に一定に近づいたものとしてこれをかち取ったという言い方までしているのです。「今後、さらには医教授会の外向けの確認(アリバイ作り)にさせることなく、我々の要求の中味に沿ってこれを実現させていく!」ということまで言っているのですよ。  だから、自主管理をあくまで徹底的に貫徹するということとあわせて、成田をあのようなことにさせた暴力集団の仲間の団体であるということをはっきり認識される必要があると思うのです。だから、それを信用して説得に応ずるまで説得を続けるということでは、とてもじゃないが正常化は実現できないのじゃないかというふうに私は心配するわけです。  もう一つ申し上げますと、東大病院反戦青年委員会というのがあるのです。これもどういう団体か御存じでしょう。暴力集団の一つです。内線の五三六八という電話番号は病棟の中にあるのです、いまの占拠派が占拠している中にあるのですよ。いまはありませんけれども、かつてはこの反戦青年委員会がこの病棟の電話を連絡の電話番号に使っておったということまではっきりしているのですね。だからいま、大学当局あるいはいろいろ行政的に指導助言をしておられる文部省当局が、この東大精神科病棟の問題で相手にしておられるのはこういうような暴力集団だということをはっきりと認識される必要があると思うのですが、いかがでしょうか。
  279. 佐野文一郎

    佐野政府委員 東大精医連は四十三年の十月に医局講座制の解体等を主張する精神神経科の講師、助手等によって結成されたものでございます。その後、授業の再開その他医学部の紛争を収拾することについて意見を異にする人々が精神医学教室会議をつくったということもございまして、両方の対立が現在まで続いているわけでございます。ただ現在は、精医連と称している者の中に東大の医師というのは講師一名がいるのみでございます。その他の者は、同じように医局講座制の解体等を主張しておりますけれども東大卒業の医師を中心とした医師の集団であって、いわゆる東大の医師によってのみ構成されている団体ではなくなっております。また、その団体が結成されて以来の状況を見ましても、いわゆる過激派と言われておりますセクトに属していた人々がいるということも承知をしております。また、全体として過激派集団にきわめて近い思想の持ち主が多いということも承知しております。  そういう状況のもとで、またそのことは医学部も病院も十分に承知をしながら、正常化の道を進めてきているわけでございます。もちろん精医連の側は三項目を貫徹するという主張を現在掲げているかもしれませんけれども、病院側がそれを是認するわけではもちろんございません。そういった事柄は事柄として、これまで両者の確認という形でのステップが切られてきているわけでございますから、十分に御指摘の問題点は承知をしながら、さらに強い姿勢正常化を進めていってもらうように指導いたしてまいります。
  280. 安藤巖

    安藤委員 まだ北病棟の十一階建ての建物の四階が占拠されている問題もあるでしょう。だからその問題もただそうと思ったのですが、時間がありませんからやめます。  そこで、大臣に最終的にお尋ねしたいのですけれども大臣も、三月二十九日の文教委員会で、占拠をしておる団体、それから占拠状態について、「いかなる体制にも反対だというような破壊的な過激派集団、まさに暴徒による占拠が不当、不法に行われている」という認識を持っておられるわけですね。しかも、いま私がお尋ねする中で申し上げましたように、占拠をしている精医連という団体が、まさに成田空港で大活躍をした本当に破壊的な暴力集団、にせ左翼の暴力集団と仲間である、気脈を通じている団体であるということは非常にはっきりしていると思うのです。だから、そういうような団体を相手にして、信頼をして、説得に応ずることを期待して、そして、最初におっしゃったような正常化という方向へ持っていくことができるのかどうか、その点非常に懸念するのですが、その点について最後にお尋ねして、私の質問を終わります。
  281. 砂田重民

    砂田国務大臣 あの病棟占拠している集団がどういう集団であるかということを、私は承知をいたしております。また、東大総長もその集団の性格を正確に把握をしておられることを私は確認をいたしております。そういう上に立って、文部省まで東大総長に来ていただきまして、いまの事態は絶対に国民の容認するものではない、もう遷延は許されません、いろいろ御努力をしておられることは評価をいたしますけれども国民の理解できるところではないということを、指導助言を強くいたしたわけでございます。そして、大学総長は、その責任の所在は私にもございますということを私に明確にお答えになりました上で、これの正常化への道はやはり話し合いによってとっていきたい、解決正常化への手法は話し合いに求めていくのだという現実の解決手法を話し合いの道に大学総長がとられた、私はやはりそれに信頼をしていかなければならないと考えます。そしてまた、そのことが正常化への道を一歩一歩歩んでおります事実も、大学当局努力を認めなければならないと考えます。  それは、東大総長に私が直接お目にかかってお話しいたしましたときも、全教授会的な支援体制解決を図られるべきだということを申し上げたのでありますけれども教授会、医学部教授会全体が、分担教官等が交渉いたしますときにやはり支援体制を十分とって、先ほどお話のございましたいわゆる確認書というものの中身につきましても、それが正常化への道を歩むのだということを教授会として確認をしておられるわけでございます。私はやはり、解決手段として具体的に、話し合いによってやります、必ず解決をいたしますということをお約束して帰られました東大総長のその手法のとおりに事を進めていただいて、一日も早い解決を期待しながら、強い私の解決への熱望の気持ちは捨てずに、指導助言を続けてまいる、かように考えているものでございます。
  282. 楯兼次郎

    楯委員長 次回は、明十二日水曜日午前十時理事会、午前十時三十分委員会を開くこととし、本日は、これにて散会いたします。     午後五時五十七分散会