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1978-04-06 第84回国会 衆議院 決算委員会 第3号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和五十三年四月六日(木曜日)     午前十時三十三分開議  出席委員    委員長 楯 兼次郎君    理事 宇野  亨君 理事 國場 幸昌君    理事 葉梨 信行君 理事 森下 元晴君    理事 馬場猪太郎君 理事 原   茂君    理事 林  孝矩君       津島 雄二君    村上  勇君       高田 富之君    村山 喜一君       春田 重昭君    安藤  巖君       麻生 良方君  出席国務大臣         国 務 大 臣         (防衛庁長官) 金丸  信君  出席政府委員         防衛政務次官  竹中 修一君         防衛庁参事官  夏目 晴雄君         防衛庁参事官  古賀 速雄君         防衛庁参事官  番匠 敦彦君         防衛庁長官官房         長       竹岡 勝美君         防衛庁長官官房         防衛審議官   上野 隆史君         防衛庁防衛局長 伊藤 圭一君         防衛庁人事教育         局長      渡邊 伊助君         防衛庁衛生局長 野津  聖君         防衛庁経理局長 原   徹君         防衛庁装備局長 間淵 直三君         防衛施設庁長官 亘理  彰君         防衛施設庁総務         部長      奥山 正也君         防衛施設庁施設         部長      高島 正一君         防衛施設庁労務         部長      菊池  久君  委員外出席者         外務省アジア局         北東アジア課長 佐藤 嘉恭君         大蔵省主計局司         計課長     石井 直一君         自治省税務局固         定資産税課長  吉住 俊彦君         会計検査院事務         総局第二局長  松田 賢一君         決算委員会調査         室長      黒田 能行君     ————————————— 委員の異動 三月二十四日  辞任         補欠選任   西田  司君     愛知 和男君   安藤  巖君     松本 善明君 同日  辞任         補欠選任   愛知 和男君     西田  司君   松本 善明君     安藤  巖君 同月二十八日  辞任         補欠選任   安藤  巖君     正森 成二君 同日  辞任         補欠選任   正森 成二君     安藤  巖君 同月二十九日  辞任         補欠選任   春田 重昭君     大久保直彦君 同日  辞任         補欠選任   大久保直彦君     春田 重昭君 同月三十一日  辞任         補欠選任   安藤  巖君     松本 善明君 同日  辞任         補欠選任   松本 善明君     安藤  巖君 四月五日  辞任         補欠選任   安藤  巖君     松本 善明君 同日  辞任         補欠選任   松本 善明君     安藤  巖君     ————————————— 本日の会議に付した案件  昭和五十年度一般会計歳入歳出決算  昭和五十年度特別会計歳入歳出決算  昭和五十年度国税収納金整理資金受払計算書  昭和五十年度政府関係機関決算書  昭和五十年度国有財産増減及び現在額総計算書  昭和五十年度国有財産無償貸付状況計算書  〔総理府所管防衛庁)〕      ————◇—————
  2. 楯兼次郎

    楯委員長 これより会議を開きます。  昭和五十年度決算外二件を一括して議題といたします。  本日は、総理府所管防衛庁について審査を行います。  まず、防衛庁長官から概要説明を求めます。金丸防衛庁長官
  3. 金丸信

    金丸国務大臣 昭和五十年度防衛庁関係歳出決算についてその概要を御説明いたします。  まず、防衛本庁経費について御説明申し上げます。  当初の歳出予算額は一兆一千九百七十四億三千七百万円余でありまして、これに昭和五十年四月以降政府職員給与を改善するため、予算補正追加額四百七十九億七千二百万円余、行政情報処理調査研究のため、行政管理庁から移しかえを受けた額六百万円余、高空における放射能じん調査研究等のため、科学技術庁から移しかえを受けた額七千三百万円余、科学的財務管理調査のため、大蔵省所管大蔵本省から移しかえを受けた額一百万円余、南極地域観測事業のため、文部省所管文部本省から移しかえを受けた額九億七千七百万円余、前年度からの繰越額二百七億五千五百万円余、職員基本給不足を生じたため、総理本府等から四十八億円の移用増加額を加え、既定予算節約等による予算補正修正減少額八十億七千一百万円余を差し引きますと、歳出予算現額は一兆二千六百三十九億五千二百万円余となります。  この歳出予算に対して支出済歳出額は一兆二千五百五十八億一千七百万円余、翌年度へ繰り越した額は七十六億七千六百万円余でありまして、差し引き不用額は四億五千八百万円余であります。  昭和五十年度予算の執行に当たっては、第四次防衛力整備計画の第四年度として着実に防衛力整備を進めることを主眼といたしました。  以下、自衛隊別にその主な内容を申し上げます。  陸上自衛隊については、七四式戦車三十三両、七三式装甲車十八両を取得し、新たに昭和五十一年度取得予定の七四式戦車四十八両、七三式装甲車十七両の購入契約をいたしました。  また、航空機については、連絡偵察機一機、多用途ヘリコプター十一機、輸送ヘリコプター二機、観測ヘリコプター十五機、練習用ヘリコプター三機、合わせて三十二機を取得し、新たに昭和五十一年度取得予定連絡偵察機一機、多用途ヘリコプター十一機、輸送ヘリコプター二機、合わせて十四機の購入契約をいたしました。  海上自衛隊については、昭和四十六年度計画護衛艦一隻、昭和四十七年度計画護衛艦一隻、潜水艦一隻、昭和四十八年度計画中型掃海艇二隻、小型掃海艇二隻、魚雷艇一隻、輸送艦一隻、昭和四十九年度計画支援船一隻、昭和五十年度計画調達にかかる支援船七隻、合わせて十七隻を取得し、新たに昭和五十一年度以降に竣工予定護衛艦一隻、潜水艦一隻、中型掃海艇三隻、輸送艦一隻、支援船一隻、合わせて七隻の建造契約をいたしました。  また、航空機については、対潜哨戒機八機、対潜飛行艇一機、対潜ヘリコプター六機、掃海ヘリコプター一機、救難ヘリコプター一機、計器飛行練習機一機、練習機三機、救難飛行艇二機、合わせて二十三機を取得し、新たに昭和五十一年度以降に取得予定の対潜哨戒機六機、対潜飛行艇二機、対潜ヘリコプター四機、練習機四機、合わせて十六機の購入契約をいたしました。  航空自衛隊については、要撃戦闘機二十四機、偵察機三機、高等練習機十九機、輸送機八機、救難ヘリコプター二機、救難捜索機二機、合わせて五十八機を取得し、新たに昭和五十一年度以降に取得予定要撃戦闘機十二機、支援戦闘機十八機、救難ヘリコプター二機、救難捜索機一機、飛行点検機一機、合わせて三十四機の購入契約をいたしました。  昭和五十年度防衛本庁職員定員自衛官二十六万六千四十六人、自衛官以外の職員二万四千二百五十三人、計二十九万二百九十九人でありまして、これを前年度職員に比べますと、自衛官については同数であり、自衛官以外の職員において百八十一人の減員となっております。  また、予備自衛官の員数は、前年度同数の三万九千六百人であります。  次に、繰越額七十六億七千六百万円余は、計画及び設計に関する諸条件等のため工事等が遅延したことによるものであります。  また、不用額四億五千八百万円余は、概算契約に対する精算の結果等により生じたものであります。  続いて防衛施設庁経費について御説明申し上げます。  当初の歳出予算額は一千二百九十七億九千三百万円余でありまして、これに昭和五十年四月以降政府職員等給与を改善するための予算補正追加額七億三千三百万円余、前年度からの繰越額百十五億三千四百万円余、アメリカ合衆国軍隊に提供している山王ホテル士官宿舎に係る争訟事件の和解により生じた施設運営等関連見舞い金及び施設運営等関連補償費不足を補うため予備費を使用した額十二億七千五百万円余を加え、既定予算節約等による予算補正修正減少額五億二千八百万円余、防衛施設周辺障害防止事業等に要する経費として移しかえをした額、農林省所管農林本省へ六億七千一百万円余、建設省所管建設本省へ十二億六千五百万円余、防衛本庁への移用額二千九百万円を差し引きますと、歳出予算現額は一千四百八億四千一百万円余となります。  この歳出予算現額に対して、支出済歳出額は一千二百九十一億四千万円余、翌年度へ繰り越した額は百十一億八千二百万円余でありまして、差し引き不用額は五億一千九百万円余であります。  支出済歳出額の主なものは、施設運営等関連諸費でありまして、防衛施設周辺生活環境整備等に関する法律等に基づき、自衛隊施設及びわが国に駐留するアメリカ合衆国軍隊等提供施設等維持運営等に関連し必要な騒音防止措置障害防止措置民生安定施設助成措置飛行場周辺安全措置、各種の補償土地購入及び賃借等経費のため、九百六十七億三千七百万円余を支出いたしました。  昭和五十年度防衛施設庁職員定員は三千五百一人でありまして、前年度職員定員に比べ五人の増員となっております。  次に、翌年度への繰越額百十一億八千二百万円余は、計画または設計に関する諸条件等のため、工事等が遅延したことによるものであります。  また、不用額五億一千九百万円余は、精算の結果等により教育施設等騒音防止対策事業費補助金等を要することが少なかったこと等により生じたものであります。  以上をもって、昭和五十年度における防衛庁関係歳出決算概要説明を終わります。  何とぞよろしく御審議のほど、お願いいたします。
  4. 楯兼次郎

  5. 松田賢一

    松田会計検査院説明員 昭和五十年度防衛庁決算につきまして検査いたしました結果の概要説明申し上げます。  検査報告に掲記いたしましたものは、本院の注意により当局において処置を講じたもの二件でございます。  その一は、艦船年次検査等工事におきます船底塗装費等積算に関するものでございます。  海上自衛隊の横須賀ほか四地方総監部では、船舶の造修等に関する訓令に基づきまして艦船検査及び修理を実施しておりますが、その際造船会社等に発注する場合の予定価格積算につきましては、海上幕僚監部が定めた船体部標準工数等により工数積算しております。そして、このうち船底塗装工事工数については、はけ、ローラー等による塗装の場合と同程度工数となっており、また、足場工事工数については工事の都度足場を組み立てたり、撤去する場合の工数といたしていたものであります。  しかしながら、近年各造船所等の施工の実態について見ますと、船底塗装ではエアレススプレーを使用するのが一般的でありますし、また、足場についても、そのまま移動ができるローリングタワー等を使用しておりまして、その所要工数積算工数を大幅に下回っていると認められましたので、当局に注意いたしましたところ、海上幕僚監部では五十一年十月に船体部標準工数等を実情に適合するよう改め、十一月以降の契約に適用するよう処置を講じたものでございます。  その二は、液体酸素調達に関するものでございます。  航空自衛隊千歳ほか五基地におきましては、配備する航空機関係から、航空機搭乗員吸入用酸素として使用する液体酸素を多量に購入しております。この液体酸素は、各航空基地に設置している液体酸素タンク注入渡しで受け入れられておりますが、設置されているタンクの容量が購入量に比べて小さいため、液体酸素を多くの回数に分割して搬入させていることにより、割り高液体酸素購入している状況でありました。  したがいまして、このような状況を改善する方策を検討いたしましたところ、タンク更新時期が来ております千歳、百里、小松、新田原の各基地についてはもちろん、更新時期が来ていない松島、那覇の両基地につきましても、タンク大型のものに取りかえれば、一度に多量の液体酸素を搬入させることができるので、輸送経費減少などによって割り安価格液体酸素購入することができ、他方のタンク設置工事費の増などの経費増加を考慮いたしてもなお相当な経費節減を図ることができると認められました。  このことにつきまして当局に注意いたしましたところ、航空自衛隊では、五十一年五月に液体酸素使用量の多い基地タンク大型化する方針を決定いたしまして、逐次タンク大型化を実施いたしておりまして、これにより液体酸素購入費節減が図れることになりました。  なお、以上のほか、昭和四十九年度決算検査報告に掲記いたしましたように、護衛艦定係港における停泊中の給電について処置を要求いたしましたが、これに対する防衛庁処置状況につきましても掲記いたしました。  以上、簡単でございますが、説明を終わります。
  6. 楯兼次郎

    楯委員長 これにて説明の聴取を終わります。     —————————————
  7. 楯兼次郎

    楯委員長 これより質疑に入ります。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。森下元晴君。
  8. 森下元晴

    森下委員 私は、治安出動の問題と定員充足の問題、この二点を中心に、短時間でございますけれども、御質問をしたいと思います。  初めに治安出動の問題ですが、先般成田開港問題につきまして、いわゆる過激派、私ども革命的な暴力集団、こういう言葉で呼びたいと思いますけれども、この国際的な信用問題にかかわる成田空港がああいう事件で延期せざるを得ない。この内容につきましては、土地を守ろうという農民方々気持ちはわかりますけれども、それに便乗して革命を起こそう、彼らはいわゆる権力に対する一つ抵抗、いわゆる戦争状況を想定して、ああいう行動に農民また一般大衆を巻き込んでやろうとしておる。これは厳に区別をしなければいけませんし、こういう問題がエスカレートしてまいりますと、もう敵か味方かというような極端な、これは国内問題だけじゃない、いわゆる戦争状況を想定しての考え方である。現に世界赤軍派の連中でも、つかまった場合に、われわれは名誉ある捕虜である、捕虜の扱いをしろというようなことを言っておる例もございます。そういうような過激派という言葉以上の、国の安全に関する問題、国防上の問題も踏まえまして、われわれは成田の問題を見詰めていきたい。  警察が、残念ながらああいう事態でございまして、十分防ぎ切れなかった。いろいろ警察なりの治安対策はあると思いますけれども、もし万一警察の力で防ぎ切れない場合に、自衛隊法の中にいわゆる治安出動の条項がございます。要請による治安出動命令による治安出動、二つございますけれども、いまの事態で、自衛隊がいわゆる自発的に命令による治安出動をやる事態であるかどうか、また、要請があればやるかどうか、非常にむずかしい問題でございますけれども、われわれは、将来やはり世界的に赤軍派のような活動が激しくなる時代を考えまして、自衛隊としてもこの問題を全然等閑視してはいけないと思います。  そこで防衛庁長官に、たまたまああいう事件があったわけでもございますから、将来に備えて、いわゆる自衛隊としての治安出動についての御見解を承りたいと思うのであります。
  9. 金丸信

    金丸国務大臣 先般の成田空港事件というものは、法治国の日本国といたしましてはまことに残念、遺憾な事件だったと私は思うわけであります。自衛隊はあのような事態に対してどのように対処するのか。命令要請という問題もあるわけでありますが、いま、あの成田空港事件のみを考えてみれば、これは警察力によって十分補完できると私は考えておるわけでありますが、たまたま将来このような事件が全国的に蜂起するというようなことが出たときは、警察と緊密な連絡の中で、いわゆる警察支援警察を前に立てて、われわれは後からこれを支援するというような考え方でいかなければならぬと思うわけであります。  この間、冗談話でこういう話が出ました。自衛隊成田空港出動する、それがいいじゃないかというお話も出ましたが、それは腹を決める人が腹を決めてもらわなければ、自衛隊は普通の訓練をしておるわけじゃない、いわゆる日本を侵害しようとして上陸してきた相手に対しては百発百中の鉄砲でこれを殺すという訓練もしておる。そういうことだから、かりそめにもその決意のない中で自衛隊出動するなどということは考え得られない。  ことに成田空港、あの一つの現象で出動というようなことは、私は、毛頭考えるべきではない、こういう考え方を持っております。
  10. 森下元晴

    森下委員 防衛庁長官の考えは、まだ、成田のああいう局部的な問題については慎重にならざるを得ないというふうにおっしゃったわけでございます。軽挙に自衛隊が動くということは、これは実は大変なことでございます。  しかし、成田空港という名前よりもむしろ東京新空港成田空港は決して千葉県の空港でもございませんし、一地域的な空港でない、いわゆる日本空港でございますし、日本を代表する空からの港でございますから、世界じゅうの人が出入りするわけです。聞くところによりますと、モスコーの空港なんかの警備は国境警備隊が防衛しておる。やはりこれくらい安全確保のために、内外の威信を守るために、いわゆる軍隊の力によって空港を守っておる、そういう世界の例もございますし、ただ五月二十日に開港ができたらいいのだというだけではなしに、開港されて後々までもこの空港の安全を確保しなければ、平和日本としての世界に対する信頼を失う。いわゆる国家権威をかけてでもこの空港は安全に開港して、そうして将来安全に運航しなくてはいけない、そういうことでございますし、将来とも他の空港と違った意味で、防衛庁長官としても警察だけの段階ではいかない段階が来るかもわからないというぐらい厳粛な気持ちでひとつ見詰めていってもらいたいと思います。その点は私の方もそれ以上申し上げません。  次の問題でございますけれども、これはたびたび外務委員会とか他の委員会内閣委員会等で論議があった問題でございますけれども、いわゆる核兵器を使えるかどうか、また細菌兵器であれば憲法第九条の解釈では使えるかどうか、たびたび論議されております。ただ、原子力基本法とか、それから一昨年締結されました核拡散防止条約、こういう問題がございまして、現在のところは、核兵器はたとえそれが自衛のためではあっても使えない。われわれはこれがちょっと解釈に苦しむのですが、防衛庁長官見解として、憲法九条のいわゆる自衛の手段としてであればどういう兵器でもよろしいか、また、そういうようないわゆる国際的な条約によって約束をしておることであるから核兵器は使えないとか、また細菌兵器は使えないか。これは非常にむずかしい問題でございますけれども、やはり国家国民を守るためには、平和国家として最後に許された行為は、やはり憲法九条に示された最後自衛のための抵抗でございまして、相手戦略核を使う、また戦術核を使う、そういう場合に、憲法九条の解釈によって核であろうと細菌兵器であろうと果たして使い得るのかどうか、お答えを願いたいと思います。
  11. 金丸信

    金丸国務大臣 憲法解釈核兵器を持つことができるという政府統一見解というものが予算委員会で示されたことは、御案内のとおりであります。しかし、私は、日本戦争は絶対してはいけない。あの負けた日本の姿、ことに、軍人でなければ日本人でないような国家にしたら、これはまた日本民族の破滅を来すということでありますし、また広島、長崎等のあの実態も見まして、核兵器は絶対使うべきでない。また、自衛隊核兵器を持つという考え方は全然持っておりません。
  12. 森下元晴

    森下委員 長官の非常に平和主義に徹した、また核に対する強い決意はよくわかりました。核の問題とか細菌兵器の問題を考えなくてもよいような、憲法前文に決められております世界の国々の日本に対する理解と申しますか平和日本に対する十分な理解というものを、私どもは信頼したい。そういう北から西からによる日本に対する威圧、また軍事的な圧力がないようにわれわれは望むわけでございます。  しかし、やはり国防という問題は万々一に備えて、町村に消防団があったり、またそれぞれ治安維持のために警察があるように、ないのが一番いいわけでございますけれども、万々一あった場合には大変だ。人間世界というものは幾ら物質文明が進みましても、残念ながら精神文明が伴っていない。やはり持てる国と持てない国という関係、長い歴史の間でも、現状維持という姿から、残念ながら戦後でも一年に二回から二回半の戦争とか内乱とか革命が起こっておる。人間という動物は、いかに文明、文化を誇りながら、平和か戦争かというくだらない問題を繰り返しておることかと思います。そういうことで、専守防衛といいましても、この国がそういう野心のある国によって侵されないように、またわれわれも第二次世界大戦の教訓を肝に銘じまして、絶対に他国を侵さないという関係が永遠に続くように願いたいと思うわけでございます。  次の問題でございますけれども、これは現在の不況問題も絡みまして、実は隊員の充足率の問題が非常に複雑になっております。不況という問題で、自衛隊に入隊したいという若い方々がかなりふえておるように思います。また一面、自衛隊をやめなければいけない人が出ましても、結局は再就職ができないというようなことで、われわれが資料をいただいておる中でも、問題は、実戦部隊充足率が非常に少ないものですから、戦闘に、実戦にたえ得るような充足率になっておらない。  たとえば陸海空を見ましても、陸が一番充足率が悪うございます。特に士の方ですね。幹部の方は比較的充足率が高いのですが、残念ながら第一線で活躍する士の充足率が非常に悪い。北海道の例をとりましても、戦車に四名乗らなくてはいけないところに三名しか充足しておらない。非常に戦力が鈍っておる。この事実について、防衛庁長官でなくても、防衛局長からお答えを願いたいと思います。
  13. 伊藤圭一

    伊藤(圭)政府委員 ただいま御指摘がございましたように、五十三年度予算におきましても、陸上自衛隊は八六%、海空自衛隊が九六%の充足率というものが予算に計上されているわけでございます。御承知のように、陸上自衛隊昭和三十五年ごろまでは一〇〇%近い充足でまいりました。その後、高度成長に伴いまして、募集難というような事情もございまして、充足率は低下いたしているわけでございます。  現在八六%を維持しておるわけでございますが、いま先生がおっしゃいましたように、私どもといたしましては、とにかく教育訓練を十分やって、精強な自衛隊をつくるのに不自由をしない範囲ではどの程度充足が必要かということを、過去何度も研究いたしました。陸上自衛隊におきましては、航空機の運用あるいはホーク、そういった高度の技術を要しますところ、あるいは学校などの教育機関、こういうところは一〇〇%の充足率を維持しながら部隊を運用しなければなりません。しかし、一般普通科部隊等におきましては、ある程度充足率があれば十分な訓練ができるというような判断をいたしておるわけでございます。このことはひとり自衛隊のみならず、世界各国軍隊におきましても、平時の教育訓練を維持するというような立場からの充足率というものを決めているわけでございます。  陸上自衛隊におきまして、いま申し上げましたような観点で、一応八六%というものを維持しておりますが、きわめて少ない十八万の陸上自衛隊員で有事即応の態勢をとるというためには、やはり充足率というものをなるべく上げる努力をしていきたいというふうにも考えているわけでございます。  したがいまして、昨年八五・五%でありましたのを、五十三年度におきましては八六%まで上げてまいったわけでございますが、さらに研究を進めまして、どの程度充足率がいいのかというのを研究を進めたいと思っておりますが、一方におきまして、隊員の人件費というものが防衛費をきわめて圧迫する要素になっているわけでございます。特に陸上自衛隊におきましては、すでにこの人件費が八〇%に到達しているというような実情もございますので、円満に新しい装備品を装備しながら、訓練を十分やりながら、どういう形で運営していくのが一番よいのかというような点についてはさらに検討したいと思っておりますけれども、現在の八六%、あるいはもう少しふやした程度のところで維持するのが適当ではないかというふうに考えているわけでございます。
  14. 森下元晴

    森下委員 そこで、この就職援護の対策ですね。若い士の場合はいわゆる停年制がないわけです。曹以上になって停年制が使われるわけでございますが、若い隊員の士を全員曹にするわけにいかないというようなことでございますから、就職問題が実は起こるのです。  先ほど長官がおっしゃいましたように、自衛隊は非常に平和に徹し切ろうというような崇高な一つの組織でございますし、団体訓練の場でもございますし、またいろいろとりっぱな教育もされるであろうし、そういう自衛隊を出た人は優先して就職採用されるというような習慣をつけることも必要であると思っております。  最近やたらに大学等がふえまして、四〇%近く短大以上へ入学する傾向がございまして、果たして大学教育の効果というものがどの程度であろうか。ただ教育というものは施設ばかり多くても決して効果が上がらないということを考えました場合に、自衛隊というものは徴兵でございませんけれども、若い方々が魅力を持って一年なり二年なり自衛隊に入隊して、そこを一つの勉強の場所とする、愛国心を養う、また郷土愛に燃える、そういう場に私はすべきであると思います。そういう意味で、ただ志願兵であって、他に就職できないから自衛隊に行くんだというのでは困ると思います。若い方々がせめて一年でも二年でも自衛隊に入隊してよかったというような制度にしてもらいたい。  そのためには、どうしても就職あっせんの強固な体制が必要だと思います。また、自衛隊の教育内容におきましても、そういう面で努力をお願いしたいし、またそうでございましたら、こういうような不況のときでございますから、定員も大幅にふやして、自衛隊のあり方が高く評価される、こういう自衛隊になってもらいたいと思うのですが、最後長官から御答弁をいただきまして、私の質問を終えたいと思います。
  15. 金丸信

    金丸国務大臣 ただいまのお話は十分私も理解できるわけでありますが、先般、自衛隊をやめて就職する人を私の会社では採用いたしたいと思うがいろいろ心配してくれないかというお話もありました。また、新しく企業に就職した社員を自衛隊で二週間訓練させてもらいたい。現在の自衛隊の規律その他等に大きな期待——団体生活の中で規律正しい生活をする、そういうものが会社に入って、下意上達、上意下達というような面からも非常にプラスになるというような考え方で、一般からも自衛隊の生活を一週間なり二週間やりたいという人がこのごろふえてきておるようであります。それには、日本国民があそこで訓練を受けることは将来非常に本人のためになるというような一つの指標をわれわれは築いていかなければならない。そういう意味で、いわゆる徴兵制度とかそういうことは別にして、国民がときに団体訓練を受けることは、国民の将来のためにも必要ではないかということを私はいつも考えておるわけでありまして、それには自衛隊が本当に国民から親しまれる自衛隊でなくてはならないし、また自衛隊員もそうした人とともども、国民とともども、社会人としてもりっぱな人間だと言われるようなことにならなければならぬ。そういう意味で、われわれは自粛自戒しながら国民の期待にこたえるような自衛隊をつくってまいりたい、このように考えておるわけであります。
  16. 森下元晴

    森下委員 終わります。
  17. 楯兼次郎

    楯委員長 次に、原茂君。
  18. 原茂

    ○原(茂)委員 きょう、またある意味では非常に大事な節目に参りましたので、北富士演習場問題の特に林雑補償問題を主点にいたしまして、御意見を聞いたり、私のある種の提案も申し上げまして、ここらでけじめをつけるということを中心にお話をしたいと思うのです。  その前に、もうすでに基地契約更改が四月十日に迫っておりまして、この間高島部長を中心に現地にもおとといか何か行きまして、演対協の会長ですとか、県当局なりその他の関係者と契約更改に関しての条件を中心にした話し合いがあったようですが、現在の状況、特に入会協定の問題、それから周辺整備事業の問題、基地の撤廃ないしは縮小の問題、この三つだけで結構ですから、現段階における交渉の内容、同時にまたその見通し、防衛庁としてこれにどう対処しようとしているのかを、簡潔に報告していただきたい。
  19. 亘理彰

    ○亘理政府委員 お話しのように、北富士演習場の使用協定はこの四月十日をもって期限が切れますので、去る一月二十四日に私が地元に参りまして、使用協定の更新について御協力方の申し入れを行ったわけでございます。以来、地元におきまして、演対協あるいは地元協議会等を中心として御要望事項等をまとめられておりまして、それを受けまして私ども鋭意交渉、お話し合いをいたしておるところでございます。  ただいま先生のお話しになりました点も、そのお話し合いの中に当然出てきている項目でございますが、その交渉の経過、内容につきましては、きょう現在もお話し合いの最中でございます。もう数日で何とか円満に妥結したいということで鋭意努力をしておる段階でございますので、交渉の内容につきまして申し上げますことは差し控えさせていただきたいと思います。  いずれにしましても、私どもは、演習場の使用と地元の発展、これが両立いたしますように最善の努力をして円満裏に使用協定の更新にこぎつけたいという念願で努力しておるところでございます。
  20. 原茂

    ○原(茂)委員 きのうの朝日新聞の山梨版に大変詳細な交渉内容等が出ていますので、いま内容を言えないと言ってもすでに公知の事実です。この問題をきょう鮮明にしようというのが目的でございませんから、この問題に関しては後で必要がありましたら触れてまいります。  そこで最初に、いまもお話のありました成田空港の問題に関連して北富士演習場行政、なかんずくいまの林雑補償問題の具体的質疑に入る前に、防衛施設当局に申し入れをしておきたいと思うのです。  周知のごとく、成田における空港建設行政の強行は、いままで何回もやってまいりましたが、地元農民に生活破壊と動揺をもたらして、その完成の後にはさらに先日のような混乱と無秩序とを加えていることは事実であります。そこに政治が存在しない状態が出現した。むき出しの力と力の対決があっただけだという感じであります。  もちろん、あえて比較するまでもなく、成田農民の力は国家の力と比べますと万分の一にも足りない腕力にすぎません。その力をふるうのは、まるで鶏卵を岩石にぶつけるようなものだ。政府は、この投げつけられた卵に汚された体面を取りつくろおうとして、いま法秩序の確立を唱え、早期開港を叫んでいますが、空虚な白々しい——過去力によって抑えつけてまいりました農民への何らの反省も感じられない、こういう状態が強く焼きつけられているわけであります。成田農民があえてZ旗を掲げてその生存を賭して政府に問うているものは、農民農民としての生存の保障なんです。その確たる保障なく、一方的に農民の生きるすべを奪って法秩序の厳守を要求するのはまさに片手落ち、真に法治国家と言うことはできないと私は思う。大きな反省が必要ではないか。  言うまでもなく、法秩序の厳守を国民に要求することは、国家の出現とともに始まる。悠久の歴史に連鎖する国家にあって、ことさら法治国家と称するゆえんは、ほかならぬ国家権力の担い手みずからが法に拘束される、国権の発動は法によらざるを得ないということを承認するところにあると思う。  政府は農民農民としての生存を否定することにおいて、現行法秩序を崩壊せしめてしまったと言っても過言ではありません。みずから破棄してしまった法律に、いまさら政府が訴える資格はないとまで言われています。  かつて私が本委員会において北富士に関し指摘したごとく、現行法の地盤の上で行動し、法の侵害に対して現行法を擁護せんがために嘆願し、請願し、抗議してきた農民をも、政府自身があえて暴徒に変えようとしていた節があります。  この成田問題に関連して、先月三十日の衆議院本会議における民社党塚本書記長の成田一坪地主氏名公表を要求する質問に対しまして、福永運輸相がその氏名を公表し、翌三十一日、衆議院の議院運営委員会におきまして、安倍官房長官はこれを国会の国政調査権への政府の協力であると弁明しました。しかし、これは一国会議員の質疑であり、各議院の権能としての国政調査権の行使たり得ないと思う。また同様に、質疑権の範囲外でもある。当該質問がなぜ国政調査権への協力として弁明されているのか、その法的根拠を明らかにできないと私は思います。その場限りの弁明だったと私は思う。  また、この発言を国政調査権についての原則的理解であるとすると、これはきわめて当然のこととして承認することができるのですが、さきの私の林雑補償についての質問との関連でこれを理解すると、防衛施設庁はもはや私有財産等の公表は本人の同意がないとできないなどという弁明、言いわけは今後一切できないことになってしまったと思います。  事ここに至って、表面に出たことだけにかまけて、いかほどに暴徒鎮圧を語っても、その有効性は保障しがたいと思います。事態はこうした国民を威嚇するがごとき鎮圧方法で糊塗できるほどなまやさしいものではないと、成田問題に関して私は考えております。  同時に、私は政治家として、いかに迂遠に見えても、表面のことに終始することなく、その本質に心を向けなければいけないと確信して今日に至っております。  これまで幾度も取り上げてまいりました北富士演習は問題も、成田空港問題とその根は全く同じであります。一口に忍草三十年の闘争と言われておりますが、まさしくこの四半世紀を超える北富士問題は、それだけの長い間政治の不存在を雄弁に物語っていたとも言えます。政治に携わる者の一人として縁あってこの問題に乗りかかった以上、一方では農民の正当と思われる権利主張を支持し、他方では暴発を防ぐことによって、真の意味での法治国家としての問題解決をしなければいけない、かように考えていまに至っているわけであります。  問題は、単に北富士農民の法の原則に基づいた正当な権利主張の擁護に存するのではなくて、ひとえにわが日本が法治国家として存立し得るか否かの究極的な根本にかかわるところにあります。北富士農民が政府、防衛施設庁に身を賭して確約させた入会慣習の将来にわたる尊重も、いまや空言にとどまっていることは事実であります。林雑補償を見舞い金と称し、演対協に属する者、白紙一任した者のみに支払うといういわれなき差別が存する。これが憲法に基づく行政と言えるかどうか。  もちろん北富士入会農民は、かくのごとき空言にその全存在をゆだねることなく、三十年の長きにわたって農民としての生存に基づく主体的な生き方を求めてまいりました。また、北富士入会農民は、農民として明るい未来を切り開くために白紙一任という主体を放棄した安易な選択を排して、たとえ困難な道程であってもより自立的な生き方を求めて歩み続ける立場を固執してやまないのであります。私はこれらをいずれも首肯し得るものであります。  だがしかし、このような空手形といわれなき差別等が法治行政として行われていることを看過するわけにはいかないのであります。また、政府と国民がこの国民主権国家日本において、三十年の長きにわたって対決しているがごときは、これまた黙視することはできません。ここにこそ政治はあるべきだと確信いたします。速やかにこの対決は解消さるべきであります。  以上の観点から、私はこの北富士問題を考え、これまではもっぱら民のものは民にという点について行政当局にその問題点を指摘し、再三再四にわたって是正、再考を促してまいりました。  しかるに、防衛施設当局は、常に複雑な経緯というまくら言葉をもって免罪符とし、私の指摘に正当に答えようとすらしないし、出すべき資料すら出していない。しからば私の指摘が的外れなのか。否、断じてそうではない。さきの三月二日、予算委員会第一分科会における会計検査院のいまおいでになっている松田第二局長の「まずいことである」との答弁は、明らかに私の指摘が正しいことを裏打ちしています。  そこで私は、当委員会において、この複雑な経緯というまくら言葉が本当に免責根拠たり得ないことを論じただし、むしろ安易にその言葉の中に逃げ込むことができないことを証明することによって、逆にいかに行政庁としての責任をないがしろにしているかを指摘したいと思うのであります。  しかし同時に、そのまくら言葉が示唆しているがごとき複雑な地元間の対立拮抗が存するのであり、よしんば法的には現在の林雑行政に問題があるにせよ、これを一挙に瓦解させてしまうことは不必要な混乱を地元に生ぜしめることになりまして、政治的にも責任あるべき行政に不信の念を抱かせることになり、得策ではないと考えます。  したがって、ここに法的にも行政的にも納得のいく解決への指針を示し、もって政府と国民とが対立しているがごとき不幸な政治状況を速やかに解消せんとする、これが私の意図であります。もって防衛施設当局をして複雑な経緯というまくら言葉を排させ、北富士入会農民の声に虚心坦懐に耳を傾けてもらい、さきの成田空港問題をもって他山の石となすべきことを強く申し入れ、次の五項に分けて指摘、質問、申し入れを行おうと思います。  その第一は、複雑な経緯というのは演対協会長に白紙一任させることを正当化するものではなく、法的にも行政的にも違法、不当であり、当局の隠れみのにすぎないという点であります。  ここで北富士問題、なかんずく林雑補償行政に焦点を当てて問題点を指摘したいと思いますが、その前に、従来の防衛施設庁のこの問題に対する答弁は、そのすべてが複雑な経緯というまくら言葉をもって現在の林雑補償行政をあえて正当化せんとしている。したがって、さきに指摘しておいたように、果たしてこの複雑な経緯とは一体何なのか、またこのまくら言葉で糊塗せんとしている演対協会長に白紙一任した者だけに林雑補償を支払うという昭和四十八年二月作成の処理要領はどのような意味を持っているものだろうか、これを指摘しておきたいと思います。  ここに改めて言うまでもなく、北富士農民、特に忍草農民の主張するところは、北富士梨ケ原国有地に入会権あり、この原を使わんとする者は入会権者の同意を得ざるべからずという、きわめて単純な主張にあるのであります。これに対して防衛施設庁は、入会権の存否を確認することをしないで、旧陸軍北富士演習場の米軍接収という超憲法的な敗戦後の措置を奇貨としてそのままずるずると使用転換に及び、今日に至っているわけであります。この北富士入会農民の入会権主張と、それを事実上一切黙殺し続けている防衛施設庁との間の戦後三十年を超える交渉など一切の経緯こそが、真の意味での語らるべき複雑な経緯なのであります。  しかるに、防衛施設庁は、この複雑な経緯を地元での入会にまつわる複雑な経緯という問題にすりかえています。  すなわち、北富士入会農民は、みずからが主張する入会権を政府に承認させるには余りにも自分たちの存在が小さ過ぎることを知って、昭和三十九年十月十三日、北富士演習場内の土地所有者、入会権者等で演習場内に有する財産権を保全するための国との交渉を行う目的で北富士演習場林野関係権利者協議会を結成し、さらにはその目的をもっと強力に推進しようとするためにこれを発展的に解消させ、新たに入会権確立を選挙公約にした田辺県知事の誕生という背景もあって、山梨県もその構成員とする北富士演習場対策協議会を発足させたのが歴史であります。  このような歴史的経緯を前提として、演習場内に有する入会権を守るため、またこのことを演対協規約に即して言えば、「北富士演習場に関係を持つ団体」入会組合ですが、「及び住民」土地所有者ですが、その権益を守るために演対協窓口一本化方式を防衛施設庁要請したのであります。ここが大事なんです。  これらを法的に言えば、入会権を擁護することを前提としての窓口一本化方式の要請であり、演対協という人格なき社団の目的も、その定款に記されている入会権の擁護以外は演対協としては何もできないということになるのであります。  なるほどこの間、擁護すべき入会権の内容と性質をめぐって、北富士入会農民の問で最寄り入会の主張と共同入会の主張との対立が生じていることは事実であります。しかし、入会権の存在を主張していることにはいささかも両者違いはないのであります。したがって、この演対協の防衛施設庁要請した窓口一本化方式の採用は、入会権を承認あるいは擁護するということにならざるを得ないのであります。  そこで、防衛施設庁はこの入会権を承認、擁護することに努力してきたのかしら。否、断じてそのような努力はしてこなかった。それどころか、演対協窓口一本化方式の要請に便乗して、林雑補償の演対協会長への白紙一任ということがいかにも適法、妥当であるかのごとく偽装し、主張しているばかりか、逆に、さきに述べたごとき入会権の内容と性質をめぐって対立があるのを奇貨として、一方ではその対立をあおり、かつ、入会権を承認することは単に演習場内国有地だけでなく山梨県有地にも当然その制約が波及することから、山梨県と連帯してしまって、この演対協を完全に規約とは異なる団体となさしめ、事実上入会権否定の団体となさしめてきたと思います。間違いありません。  まさに権利者協議会が演習場対策協議会となり、山梨県が参加するに及んで北富士入会農民の主張は演対協に収斂され、山梨県の差配によって地元問題としてあらわれてくるようになったのであります。これが防衛施設庁当局の言う複雑な経緯であり、その結果出されたとする窓口一本化の現実であります。  敷衍すれば、防衛施設庁は、あたかも演対協という地元での論議が複雑な経緯をたどっており、その集約された意見が施設庁に来たのであり、それに従って行政しているのであるから適法、妥当なんだと主張してきているのであります。だが、果たしてそうでしょうか。問題の核心はどこに一体あるのか。山梨県という土地所有者と、その土地に入会権があると言う北富士農民との間の論議にあるのだろうか。断じてそうではない。繰り返し指摘するまでもなく、北富士演習場内国有地に入会権ありと主張する北富士農民と国との問題にあるのであります。  この入会農民と梨ケ原国有地を管理使用している防衛施設庁、すなわち国との問題こそが、複雑な経緯としてとらえられるべきものなのであります。また、その複雑な経緯を経て策定されたとする窓口一本化方式の要請は、入会権の承認、擁護を了承することによって初めて防衛施設庁としてこれを受け入れることができるはずのものであります。  このように、防衛施設当局はみずからの責任において解決すべき問題を、挙げて演対協を通じて事を運ぶとする窓口一本化方式によって回避しているのであります。このことは、単に不当な責任回避というだけではなく、防衛施設当局の責務を放棄したのでありまして、山梨県の差配する演対協に入会権の擁護を期待することはできないとして脱退した忍草入会組合が、直接防衛施設庁に交渉せんとするもその交渉を行わず、交渉自体を否定するということは、全く理由なき交渉の否定であるとともに、従来政府の確約してきた、もとより入会地使用の場合における補償交渉の当事者は、当該入会組合であるとの山上防衛施設庁長官回答言明の立場を否定するということにおいて、行政法上の信義則に反し、確約の法理にも違反するものと思います。  また、演対協がその規約に反し、もっぱら山梨県の差配で行動している事実は、山梨県とは別個独立の演対協として活動しているとは言いがたい状態にあります。窓口一本化方式の要請は、その規約目的に明記されているように、入会組合の入会権益擁護活動の一環として行われたものであり、防衛施設庁が演対協の要請に従って窓口一本化方式を採用したということは、北富士入会農民の入会権益を擁護するということを了承しない限りは、これを受け入れることはできないはずのものであります。  しかるに防衛施設庁は、入会権を擁護することはおろか、入会権そのものを否定しているのであります。それでいてこの窓口一本化方式の要請を演対協の要請として受けたものと公言しているのは、法的には詭弁であると思います。すなわち、山梨県の差配によって演対協そのものが規約目的に反した活動がなされたならば、それは演対協の活動ではないのであります。  言うまでもなく、社団法人等に類似するこの演対協は、この定款、規約以外の活動はこれをすることができず、よしんば定款、規約以外の活動を行ったとしても、その活動は無効であり、演対協の活動ではない。あえてこれを法的に評すれば、そのような活動を行うことを決定した個々人の活動であります。端的に言えば、山梨県の活動であります。  防衛施設庁が、いまなお窓口一本化方式の採用を演対協の要請として行っているものであると主張することは、いま述べた点から言って全くの詭弁であります。  以上のごとく、防衛施設庁当局がまくら言葉として常用する複雑な経緯とは、国みずから処理すべき問題を地元問題とすることによってその責任を回避せんとする卑劣な行政の表現であり、これをもって隠れみのとなし、当局の免責根拠とすることは、とうてい許さるべきものではないと思います。そこには国の責任ある行政は存在しないからであります。  第二は、林雑補償制度は、制定当時入会慣行に対するものとして、より端的に言えば入会権に対する補償制度として機能したが、山梨県、これは演習場に対する最大の土地の貸し主でありますが——の横やりと、地元住民の思惑をてことして、民生安定のための見舞い金制度として機能変化させ、当局もそうであることを確信した点について触れていきたいと思います。ここではいまの林雑補償問題に限ってただしていきたいと思うわけであります。  そもそも林雑補償制度とはいかなる制度なのか。いろいろと説明の仕方もあると思うし、事実これまでなされてきてもいます。したがって私は、そのようなたぐいの説明に屋上屋を架するような説明を求めたいとは思いません。  そもそも、制度それ自体は同じものであっても、その作用、運用によってその機能は変わってくるものであるし、ことにいま私が問題としている林雑補償制度は、それが機能し始めた昭和二十八年から数えて四半世紀にもなんなんとする経過をたどっております。したがって私は、防衛施設当局がこの林雑補償制度をどのようなものとして運営し、機能させているかを、予算法の観点から伺いたいと思います。  予算法の観点、すなわち、この林雑補償制度に基づいて北富士農民に支払われている林雑補償金の性質は、現在予算法上どのようなものと理解しているのか。端的に言って、法的には補償金なのか、見舞い金なのか、そのいずれに属するものなのかを明らかにしてもらいたいと思う。つまり言いかえれば、林雑補償とは、入会権のほか、社会的に承認された利益に対する補償の性質を持つものであれば、これは補償金である。補償金の性質を持たず、行政措置によるものであるとするなら、これは見舞い金か何かになるわけであります。  私が現在の林雑補償金を検討してみると、これは北富士演習場内への立ち入り制限により受けるという阻害を要件として、地元農民の民生安定を図り、円滑に演習を行うために、行政措置として出している見舞い金と考えられます。あたかも、先月四日の突風被害に対して、地方公共団体が行政措置として、屋根の三分の一以上が破壊されたという被害を要件として被害農民に見舞い金を出したというのと同じように、全く自治体は加害者ではないし、そのような意味では法的には出すべき責任を有しないものではあるが、しかし全体的見地から、余りにもお気の毒であるという行政庁としての裁量、すなわち行政措置として出している金員のように思われます。  法的にはこの林雑補償制度とは一体何なのか。補償という言葉が使われているので、そのまま法的にも補償金と理解すべきもののようであるが、どうもその実際上の機能は異なるようであります。一体、林雑補償金とは、入会権その他社会的に承認された利益に対する補償の性質を持つ補償金なのか、それともそうではなくて、行政措置による金員、すなわち見舞い金なのか。この点をまず明らかにしていただきたいと思います。端的に見舞い金あるいは補償金、理由はこう、どちらかにお答えをお願いする。
  21. 亘理彰

    ○亘理政府委員 いろいろお話がございましたが、先生からは再三にわたって本問題についての御質問をいただいておるわけでございまして、それだけ複雑な経緯、事情があるわけでございます。  第一点の、演対協を窓口としてという問題でございますが、私どもは……(原(茂)委員「質問にだけ答えて。いまの見舞い金と補償金だけ。後で聞きます」と呼ぶ)  それでは第二点の林雑補償の性格でございますが、これは、演習場内に立ち入って野草等を採取していた地元の方が立ち入り制限によって受ける採取阻害につきまして、演対協会長を通じまして補償申請があった場合に、その必要性及び阻害の程度について調査の上で、横浜防衛施設局長と演対協会長が補償契約を締結している金銭給付というものであります。これは、演習場の円満な使用を確保する必要上関係の住民の方の納得のいく協力を求めるためのものでございまして、政策的配慮によってとられている行政措置でございます。  見舞い金という言葉は法律用語としてどういう意味合いを持ちますか存じませんが、いま申し上げましたように、補償契約に基づいてお支払いしておる金銭給付だという観念でございます。
  22. 原茂

    ○原(茂)委員 要するに行政措置によって、行政裁量によって出す見舞い金という性質のものという端的な答弁と解釈をいたします。あなたは何か見舞い金でございますと言うことを避けているようでございますが、会計検査院の鎌田事務総長に対して、五十二年十一月三十日、あなたの名前で回答が寄せられています。要するに「円滑に演習を行うために行政措置として補償契約を締結して行っているもので、入会権その他社会的に承認された利益に対する補償の性質をもつものとして行っているものではない。」こう書いているのですから補償金ではない。そうですよ。
  23. 亘理彰

    ○亘理政府委員 予算上の扱いを申し上げますと、私どもの施設庁の予算施設運営等関連補償費という費目がございまして、その中の提供施設中間補償費という費目から支払われておるものでございます。
  24. 原茂

    ○原(茂)委員 結構です。その問題も後に触れてまいりますからそのときに。  そこで、いまの答弁で明らかになりましたように、林雑補償というのは、関係住民の民生安定を図り、円滑に演習を行うために行政措置として行っているものであり、決して入会権その他社会的に承認された利益に対する補償の性質を持つものではないということが言明もされましたし、文書にも明らかになっています。  確認しておきたいのですが、そうだとすれば、林雑補償制度は、現在法的に論ずれば、損害、損失に対する補償費としてではなくて、民生安定と円滑な演習を行うために出されているお金を出す制度として運営、機能されているものと理解していいわけですね。ただ、いいか、悪いかだけ答えてください。
  25. 亘理彰

    ○亘理政府委員 私ども申し上げておりますのは、政府の見解としては、これは入会権に対する補償の性格を持つものではないということを申し上げておるわけでございまして、いままで野草等を採取しておられた方の立ち入り制限によって受ける採取阻害について御申請を受けまして、その必要性と阻害の程度について調査した上で補償契約を締結して、それに基づいて払っておる給付でございます。予算の科目としては補償費ということでございます。
  26. 原茂

    ○原(茂)委員 端的に、そのとおりですと答えればそれでいいのですよ。  さっきも読んだように、「これは、関係住民の民生安定を図り、円滑に演習を行うために行政措置として補償契約を締結して行っているもので、入会権その他社会的に承認された利益に対する補償の性質をもつものとして行っているものではない。」と、あなたが会計検査院に出されたとおりなんです。それを確認しているだけなんですから、余分なことを言わずに、そのとおり、こうおっしゃればいいわけです。  私はこの答弁はきわめて重大だと考えている。何となれば、林雑補償費は提供施設中間補償費として——いま説明を始めようとしたことなんですが、補償費という目の区分、積算の中に組み込まれている、そのとおりであります。にもかかわらず、施設庁は、これを運用によって見舞い金あるいは場所によっては基地協力謝金として予算の執行を行っているというのであります。かかることが一体予算法上許されていいものであるかどうか。  言うまでもなく、予算に関する個別費目主義の原則は、一般国民を対象としてはいないものの、国家機関の財務行為を厳に規律する予算の執行についての法の原則であります。予算に示された目的以外にその予算を使用してはならないとする目的外使用禁止の原則の根本規範であり、侵害すべからざる法原則であります。  防衛施設庁がいまの答弁で明らかにしたように、林雑補償金を行政措置による見舞い金として運用することは、予算上断じて行うことはできないものと考えます。見舞い金と言い切らない、だがしかし、民生安定と円滑に演習を行うために払うものである、決して入会権を認めて補償を払うのではない。勝手に中途半端な解釈あるいは勝手気ままな解釈をしてこういうことをやることは、私は断じて許されないものと思う。林雑補償を、民生安定、円満な演習場の使用に対する行政措置による見舞い金というようなことに置きかえて、目にきちっとある補償費をその規定している性格と全然違って使用するということに対して、私は非常に問題があると考えます。  端的に言って、補償金と見舞い金、この予算法上全く異質のものが運用によってどうにでもなる。果たして予算法というものは運用によって変形する粘土細工のようなものでいいのかどうか。国法形式の一つたる予算がその目的を補償費としているものを、気の毒だから民生安定のために見舞い金とすることは、決して予算法上許さるべきではないと思います。  この点は、単に本件のみにかかわらず、決算委員会としてきわめて重大な問題であると考えるが、会計検査院の松田さんの御意見をちょっと聞きたい。
  27. 松田賢一

    松田会計検査院説明員 歳出予算、これはその目的に従って支出されなければならないと財政法で決まっております。ただ、いまのお話にありましたようなことを考えますと、その目的を判断するに当たりましては、その予算がそもそもどのような経費として計上されたのか、そして国会において審議可決されたかということが基準になるのじゃないか。  ところで、本件の林雑補償に関しましては、先ほども防衛施設庁長官からお話がありましたが、いわゆる行政措置として支払うものであるとして、そのような観念のもとに施設運営等関連補償費なる科目として計上されたものであるとすれば、その支払いはあながち予算に違背した不適切なものとは言えないのではないか、そういうふうに考えます。
  28. 原茂

    ○原(茂)委員 検査院のお考え方に少しまた私ちょっとつけ加えて聞きたいことがありますが、これは後に譲ります。  施設庁の林雑補償費の運用をそのまま認めるわけにいかないと私は思うのですが、いまこの点についての答弁、すなわち予算法上の見解を直ちに求めることは無理だ、こう思いますので、私にも時間がありません、この点については後日その法的見解、これを文書をもって本委員会に回答してほしいと思います、私はこの予算の運用は明らかに違法であると確信していますから。  しかし、予算法上の問題は一応別として、なぜこのような解釈と運用を施設庁がとらねばならなかったか、その理由はわかるような気がいたすのであります。  林雑補償制度は、制定当時入会慣行、入会権に対する補償制度としてつくられたことは事実なのであります。このことは、制定当時の昭和三十年の六月二十四日の参議院内閣委員会での福島長官の答弁を議事録で読むとよくわかります。同長官は、入会の慣行に損害があるから払うというたてまえで払っているが、実質的には忍草の権利を認めている、忍草も補償金を受け取っているので入会権の処置の問題は再認識されていると理解しています、要点だけ三つにくくるとそういうことを言っています。要するに、入会の慣行に損害があるので、損害賠償制度として林雑補償制度は機能、運用されているのであると福島さんは言明をしているのであります。  しかし、この入会慣習、入会権をより明確にしようとして施設庁当局と権利者協議会が話し合いを持ち、それを覚書としてあらわす段になった昭和三十七年六月十九日、山梨県から、県有地には入会権はないという前提に立った県としてはこの覚書は将来県有地開発に重大な影響を与えるものと考えるので調印は認められないという横やりが入り、ましてやその山梨県は北富士演習場に土地を提供している最大の地主でありますから、施設庁はその意向に従わざるを得なかったのであります。  また、地元の富士吉田市外二ケ村恩賜県有財産保護組合という特別地方公共団体、この団体も北富士演習場に土地を提供している大手の一人でありますが、この特別地方公共団体は旧十一カ村の約四千ヘクタールにわたる入会地の管理団体だと称してその全域に共同入会権ありと主張して、忍草入会組合の主張を聞くなら土地を貸さない、実力行使も辞さないと言っているのであります。現にこの地方公共団体は、最寄り入会を主張する忍草入会組合の行動阻止資金あるいは共同入会権擁護集会出動と称するデモ資金を、何百万とばらまいております。一体、地方公共団体が私権であるはずの入会権の管理団体になれるのだろうか、これが第一の問題。  また、地方公共団体がその住民団体に運動資金として、たとえば私が調査したところによると、阻止行動資金、運動集会資金として、ある住民団体には五十万円出しているのだが——これは一部ですよ、法的に出せるのかどうか。民法上の組合であれば別ですが、きわめて違法な支出ではないかと思いますが、この点については後で調べた上で自治省の方から答弁を文書でいただきたいと思います。  きょうは自治省にもおいでいただいて少しく論議をしたかったのですが、余り時間がありませんので、いま申し上げたように、この点に関して二つに分けて文書で当委員会に答弁をお願いしたいと思います。  ともかく、このように県の横やりと地元の特別地方公共団体の思惑をてことして、林雑補償制度を見舞い金制度あるいは何々とすることにならざるを得なかったものであろうし、また、このような一連の事実は、入会権の主張をなす北富士農民の要求を無視する上で施設庁としても好都合であったのだろうと私は思う。  だが、現実に施設庁が、林雑補償制度は入会慣習等に対するものとしてではなく、見舞い金制度であると言い、確定したことの意味は、きわめて重大であると思います。何となれば、政府、防衛施設庁は、北富士梨ケ原に地元入会住民が有している入会慣行については具体的には何一つ施策を行っていないということを承認することと同一だからであります。  次いで第三に、政府及び当局は、忍草入会組合が梨ケ原演習場内に立ち入り、使用、収益する入会権を認め、これを将来にわたって尊重することを重ねて確約している一方、演習場開放日を設けて忍草入会組合構成員等北富士農民に、野草等国有地上の天然果実を採取させている事実についてであります。  何と三十余年にもわたって入会権益の擁護を叫び続けてきている北富士農民の顔をまるで逆なでするような、先ほどからのお答えだろうと思います。林雑補償、それは入会権益に対するものではない。民生安定と円滑な演習を行うために関係住民に与えられている金である。入会権もしくは社会的に承認された利益、入会慣習に対するものではないと。  このことは、今日までに散見される資料、たとえば、六つありますが、  一つ昭和三十三年九月十一日、防衛事務次官今井久「演習場内に於ける採草採木等の入会慣行は充分尊重したい。」  二つ、昭和三十五年八月九日、防衛庁長官江崎真澄「忍草区が従来所有してきた入会慣行を十分尊重し、誠意をもって善処します。」  三つ、昭和三十六年九月十二日、防衛庁長官藤枝泉介「政府は忍草区民が旧来の慣習に基づき梨ヶ原入会地に立入り使用収益してきた慣習を確認すると共にこの慣習を将来にわたって尊重する。」  四つ、昭和三十六年九月十七日、防衛庁長官藤枝泉介「政府は、北富士演習場の地元関係者が、旧来の慣習に基づき、北富士演習場入会地(梨ヶ原、大和ヶ原その他の入会地を総称する。)に立入り使用収益してきた慣習を確認すると共に、この慣習を将来にわたって尊重する。」  五つ、昭和三十九年六月二十四日、防衛施設庁長官小野裕「政府は、忍草入会組合が旧来の慣習に基づき、梨ヶ原入会地に立入り使用収益してきた入会慣習を再確認し、この慣習を将来にわたって尊重することを確約・確認する。」  六つ、昭和四十三年十二月二日、防衛施設庁長官山上重信「政府は、北富士演習場内の地元関係者が旧来の慣習に基づき立入り使用収益してきた入会慣習を再確認し、この慣習を将来にわたり尊重する。」にも、これは真っ向から相反する問題だと私は思う。  少なくとも、林雑補償とは、入会慣行に対する補償であり、山本伊三郎参議院議員が提出した質問主意書に対する政府の答弁書にある、損失をてん補するものでなければならないものであったはずであります。しかしそうではなくて、民生安定と円滑な演習場使用のために林雑補償金を出しているのだと、現在の防衛施設庁当局解釈し、それで運用していると言うが、果たしてさきに指摘しておいたように林雑補償制度をそのように解釈、運用することが予算法上適法に行い得るかどうかは、いま問題にしようとは思っていませんが、事実上このように林雑補償解釈、運用されているということが重大なのであります。  いま私が指摘したように、政府が北富士入会農民の演習場内入会地に立ち入り、使用、収益してきた入会慣習を承認し、将来にわたって尊重することをたび重ねて確認、確約してきたものは、何も実現、実行されていない。いまも履行されておりません。林雑補償を、入会慣行に対する阻害による損失補償としてではなく、民生安定と円滑な演習のために出しているのである。  一体、さきに六つの例を挙げた政府の確約は、どのような形で現実に履行されているというのか。いま言ったような林雑補償解釈、運用では、全然何も行っていないと言って間違いありません。現在の防衛施設当局は、この政府の確約を実現するために何かを実行しなければいけないはずだと思うのです。決して林雑補償がその確約の一つのあらわれであるなどとは言えないはずであります。  事実、林雑補償を演対協会長に白紙一任しなければならないとしているのは、のっぴきならぬ見舞い金としての運用の証拠であります。したがって、説明言葉のあやとか、説明不足でしたとかいったことでは糊塗できない運用をやっていると私は思います。施設庁は、この何回も出されている政府及び施設庁としての確認、確約に対しての責任ある行政を何一つやっていないと再度私は申し上げておきます。  言うまでもなく、この確認、確約は、単なる政府の方針ではなく、まさしく行政庁が現在及び将来行うであろう公法的行為について自己拘束する意図を持って北富士入会農民に対して行った意思表示なのであり、北富士農民に対する政府及び施設庁の公権的自己拘束の表明でもあります。どこに北富士農民が梨ケ原入会地に立ち入り、使用、収益してきた慣習の尊重があるのか、どのように将来にわたって尊重するというのか。現状では、施設庁は債務不履行官庁であり、その非難は同時に政府そのものにも妥当する。債務不履行政府、債務不履行官庁に国民が激怒するのは当然だと思います。政府、防衛施設庁は早急にその債務を履行すべきである。このことは法的には行政法上の信義則違反として確約の法理に明らかに違反するものでもあります。  第四に、財政法九条の枠をはめてこれを論ずると動きがとれなくなるように私は思いますので、この点について述べたいと思います。  現在の施設庁の林雑補償解釈、運用を前提とする現状において、よしんばその入会慣行は、実は入会権ではないからいいんだという理論を立てたとしても、それは決して成立しないことを指摘しなければなりません。政府、施設庁は、さきに指摘したごとく演習場内に立ち入り、使用、収益する入会慣行を認め、これを将来にわたって尊重することを確認、再確認、確約、再確約しているだけではなくて、現実に北富士入会農民が同国有地上に立ち入り、使用、収益することを承認してきているのである。  すなわち、防衛施設庁は演習場内開放日を設け、忍草入会組合員等、北富士入会農民に野草など国有地上の天然果実を無償で採取させているのである。つまり、このことは現実に地元関係住民が北富士演習場という国有地に林野雑産物採取等のために立ち入り、使用、収益することを承認しているのであり、施設庁は、もちろんこれが適法なことであるという法判断に基づいて認めているのであります。  言いかえれば、林雑補償を見舞い金あるいは何々とするにせよ、その要件は国有地へ適法に林雑物採取の目的で立ち入り、使用、収益できるという前提に立脚してこそ、演習場内への立ち入り制限を受ける林野雑産物の阻害ということを適法な要件とすることができるのであり、そもそもその立ち入り、使用、収益が違法であるとするならば、その行為こそ排除、否定さるべきであって、ましてやその違法行為をもって予算執行の要件とすることはできないはずであります。  また、施設庁が立ち入り許可日なるものを設けていることも、北富士農民の同国有地への立ち入り、使用、収益が適法行為であることをみずから承認していることにほかならない。この事実は見逃すことのできない重大な点であります。  すでに実例を挙げて、先日の予算委員会において建設省及び大蔵省の法的見解は示されているのであるから、ひとり施設庁だけが別異の解釈をとることは、もはや許されないと思います。  すなわち、国有地上の林野雑産物といえども、ほかならぬ国有地上の産出物たる天然果実であって、土地から分離するときに他に収取権者がいない限り、土地所有者たる国の所有に属するものであり、立ち入りすらできないはずのものであります。大蔵省は、権原のない人の国有地への立ち入りの規制は所有権に内在する権利であり、国有地上の果実については国有地に付合するものとして国有である。したがって、財政法九条一項の規定どおりに対価を徴収しなければならないと答弁しております。  実例において、そのように財政法が解釈、運用されているものは、十勝川の天然氷についてもそう、藤岡町の調節池に生育しているヨシについてもその対価が徴収されているという建設省の答弁からも明らかであります。敷衍すれば、北富士演習場内国有地上の林野雑産物も、適法な収取権者がない限り国の所有に属する財産となり、財政法九条一項の公法上の規制を受けることになるのであります。  まさしく施設庁が立ち入り許可日を設けて林野雑産物を採取させていること、及び林野雑産物採取行為の阻害を林雑補償の要件にしている二つの事実は、この採取行為による野草、そだなどの収取が財政法の規定に反しないし、否、むしろ正当であるとの積極的な法的評価を下していることになるのであります。  したがって、私は、施設庁が財政法違反を行っていることを承認しない以上、施設庁が立ち入り許可日を設け、北富士入会農民に林野雑産物を採取することを承認している事実、及び林雑補償においてそれがよしんば見舞い金であるとしても、予算執行の要件としている事実において、まさしく北富士農民の享有する入会慣習、すなわち、政府、防衛施設庁が確認している入会慣習の法的評価は、財政法第九条第一項に規定する「法律に基く場合を除く」という除外例に該当する場合と言わざるを得ないと考えるのであります。  また、このことは、仮に施設庁が財政法に違反していましたと頭を下げて事が済むということでは決してありません。そうだとしたら、北富士入会農民から少なくとも会計法上の時効期間五年に遡及して対価を徴収しなければならなくなるのであり、事実上防衛施設庁はやれるわけはありません。  そうではなく、この事実は決して財政法に違反しないのである。このことが、政府の言う北富士入会農民の旧来の慣習を確認し、将来にわたってこれを尊重すると確約した趣旨とも合致することでもあります。  しからば、その除外例としての依拠する法律とは何か。民法第二百九十四条において入会権は規定されております。しかし、この入会権は政府の統一見解において否定されている。したがって、幾ら施設庁でも、その統一見解を否定することはできないと思う。  では、ほかにないのか。ないとすれば、財政法違反とならざるを得ない。が、そのような依拠し得る法律がないわけではない。すなわち法例二条がその根拠たり得ることは、私の詳細な検討の結果、間違いないと確信しております。それは、「公ノ秩序又ハ善良ノ風俗ニ反セサル慣習ハ法令ノ規定ニ依りテ認メタルモノ及ヒ法令ニ規定ナキ事項ニ関スルモノニ限リ法律ト同一ノ効カヲ有ス」と規定しているのであります。法例二条であります。  政府、防衛施設庁は、これまで北富士入会権を否定してまいりました。いまなおこれを認めていない。しかし、財政法九条第一項違反とならざるためには、必ずや「法律に基く場合を除く」という除外例に依拠せざるを得ないと私は思う。  なお、これまでの経緯及び政府の入会権不存在の統一見解が存する現在、これを民法第二百九十四条のいわゆる地役入会権の規定に求めるわけにはいかないのであります。  ここで、法例二条による提案も含めて、第五として最後に申し上げたい。  法的にも行政的にも納得のいく現行林雑見舞い金制度の発展的解消と政府当局の確約の実行を迫るために、昭和二十四年十二月二十七日閣議決定の実例を踏まえて、私の提言としての理論を少しく展開していきたいと思うのであります。  これまで私は、北富士演習場にまつわるさまざまな問題を検討してまいりました。そこにはまことに複雑な経緯があったようであります。  前回、三月二十三日の当委員会において、高島さんが「たびたび申し上げておりますとおり、北富士演習場には長い長い歴史的な経緯がございます。」と言っておられるとおりだと思う。これは議事録二号の十一ページに書いてあります。しかし、さきに言ったように、その対応、対策は善意に解してもきわめてずさんで、逆にその複雑さに拍車をかけるものであったとしか言いようがありません。正鵠を期して言えば、忍草農民に対する弾圧以外の何物でもなかった。その典型が演対協窓口一本化方式にあることは否めない事実であります。  それにもかかわらず、すぐに続けて高島さんはこう言っています。「私どもは行政の立場から、何とか事態を円満に解決したいということで腐心してまいったわけでございますが、」「昭和四十四年に地方公共団体、各入会組合その他県の総意を挙げて、」「北富士演習場対策協議会というのが設立されまして、その演習場対策協議会を窓口にしてすべてを処理してほしいというのが、県の首脳部並びに各入会組合の首脳部の方々の御要請であったというふうにわれわれは理解し」「その態度は今日も変わっておらない」と言っていることは、同じく議事録の十一ページにありますが、私にはどうも盗人たけだけしい言い分としか考えようがありません。  この点はきわめて重要なので、繰り返し指摘しておきたいと思う。この演対協がどのような経緯でできたのかは、さきに言ったとおりであります。このことは、処理要領作成当時、調査官として活躍された高島部長は十分御承知のところだと思います。  参考までに先に申し上げておくが、山梨県発行の昭和四十九年度版「北富士演習場問題の概要」によりますと、当時の演対協会長小林昌治が林雑補償のことで「防衛施設庁に鶴崎次長・高島調査官ほかを訪ね」た昭和四十八年二月七日、「国側は、」「恩賜県有財産保護組合長ないし演対協会長に委任することが条件である。」と回答し、この時点で処理要領方式原案が成立したことを明らかにいたしております。逆なのです。  要するに、あくまでも演対協が成立した昭和四十四年の時点では、その設立目的は、北富士演習場に関係を持つ団体、すなわち、入会組合の権益を守ることにあったのであります。いまもって施設庁が演対協をまげて云々するのであれば、この定款、規約を再度確認することを要求します。  申すまでもなく、この演対協のような団体を一個の団体として承認すると言うのであれば、その団体とはどのようなものであるかは、定款、規約を見るにしくはないと私は思う。  規約によってこの団体の構成員を見ると、山梨県、県議会、市村、入会組合、土地所有者等、その構成員相互間に利害相反関係が見られるものであり、構成員の個性が激しく浮き上がってくるのであるが、山梨県は入会権を否定し、入会組合はこれを主張しているがごときは全くその典型であります。  だが、施設庁は演対協を一つの団体として承認している。だとすると、当然施設庁は、法的にかかる団体を団体として論ずることができなければならない。  言うまでもなく、かかる団体を法的にも団体として論じ得るためには、一定の共同目的事業を遂行するために複数人が組織的に結合したものでなければならないのは当然のこととして——これが法的に団体として承認されるための第一要件であります。そして、その組織的結合が単一体として社会的に承認されるものでなければならない。これが第二要件でしょう。  このような要件を具備充足してこそ、複数人の結合体として団体の独自性が承認されるのであって、構成員の個性が云々されることはないのであります。言いかえれば、構成員の複数性は、かかる場合にあって初めて団体の背後にひそみ、団体の単一性が承認されるのであります。逆に言えば、団体は、この単一性が承認されるがゆえに一つの団体たり得るのであります。  ほかならぬ定款、規約とは、かかる単一体としての団体を組織づけ、存立させるための組織法であり、団体構成員はこの自治法規を侵すことはできないのであります。同様に、この団体を団体として承認する者は、この規約を侵すことは絶対できないのであります。  私は、かかる観点から、演対協はその単一性を、まさにその規約第一条に高らかに掲げております「北富士演習場に関係を持つ団体及び住民の利益を守る」ところにしか見出し得ないと思います。  しかるに演対協は、林雑補償が真に入会に対する補償として政府、防衛施設庁にそれを擁護、確立させるべきものを、逆にそれをまるで抹殺するような見舞い金と変化せしめたのであり、この一事をもっても、昭和四十四年に設立された正真正銘の演対協とは言えないと断定しても構わないと私は思う。  演対協は昭和四十四年六月に生まれ、健全に育つことなく、昭和四十七年、忍草入会組合の名誉ある脱退によって死亡宣告がなされたと同然であります。それでもなお、施設庁が、演対協なる団体の存在を承認するというのであれば、施設庁の承認している演対協とは一体何なのか。その組織と単一性の二要件に即して、文書をもって明らかにしていただきたいと思います。  あらかじめ断っておきますが、昭和四十四年に作成された規約は、あくまでも現存しない団体の資料にすぎず、またそれをもって現在の演対協なるものの規約と言うのであれば、それがどうして入会団体の権益を擁護していると言えるのか、はたまた、各入会組合その他県の総意と称することができるのかを明示してもらわなければなりません。  私は、端的に言って、入会住民不在の、県と施設庁のなれ合った行政を覆い隠す隠れみのにすぎないと思います。演対協の実態は、もはやさきの答弁のごとき飾り文句で糊塗できる段階ではありません。糊塗しようと思ってもそれはもうできない。  また、別の観点からもこのことは指摘できます。指摘だけしておきますので、この点も前のとあわせて挙げて後で答弁をもらいたいと思います。  林雑見舞い金について演対協窓口一本化方式をあえて続けると、当然のことながら使用協定も演対協を窓口としなければならないことになります。高島さんの言うとおり「すべて」なのだから。したがって、施設庁が、あくまで昭和四十四年の演対協の要請に従っていくと言うならば、窓口一本化の原則で、山梨県知事をして、使用協定締結についても演対協会長に白紙一任させなければならなくなります。そうなると私は理解をいたしますが、仮にそうでないとしたら、その理由を明らかにしてもらいたいと思います。  このように、防衛施設庁の演対協窓口一本化方式は、覆いがたき矛盾に満ちていると私は信じます。  また、この複雑な経緯の中での矛盾は、単にこれだけではないことはさきに述べたとおりであります。すなわち、政府、防衛施設庁のたび重なる忍草入会組合に対する入会慣習の確認と、それを将来にわたって尊重すると確約してきた問題が、もう一方の極にあるからであります。幾つも幾つも入会慣習の確認と尊重の一札を出していることは、すでに指摘したとおりでございます。にもかかわらず、ついに林雑補償金は見舞い金として出しているとの施設庁の答弁において、いまもって入会権益擁護、その他の確約は全然実行されていないことは御承知のとおりであります。そのことそれ自体が法的には違法であり、政治的には多大の非難を浴びせられても仕方のない状態であることがわかったと私は思う。  しかも、それだけではない。仮にいまの状態のまま入会慣習は法的には何も評価しないでおくということを是とするならば、財政法違反というそしりをも甘受しなければならず、かつ、過去にさかのぼって北富士農民から林雑物の対価を徴収しなければならないという、事実上不可能な結果になってしまうのであります。  さらにまた、現在の林雑補償は、事実上その申請は虚偽にして、それに対する指弾も日一日と高まっていく状態であります。行政庁たるものがかかることを黙認し、申請者の虚偽を承認することは法秩序の破壊であり、遵法精神を弛緩させることになります。けさの朝日新聞がこの問題に関して告発をしているのを報道しておりますが、恐らくまだ見ていないとおっしゃるでしょうが、ゆっくりごらんをいただいたらいい。  どうしようもないどろ沼の状態にあるのはよくわかります。なるほど法例二条権原を承認するためには、これまで政府が確認し、将来にわたる尊重をも約束した北富士梨ケ原入会地への立ち入り、使用、収益がどのような内容を有するかなど、さまざまな調査、検討を終わらなければならないと思います。私は私なりにそれを調査、検討してみてはおりますが、その内容の一〇〇%確定までにはまだその機が熟しておりません。したがって、その内容についての見解は後に譲りたいと思います。  ただいままでるる述べてきた大綱と理論は、現在の防衛施設庁がとり得る唯一のものであり、関係当事者も同一のテーブルに着くことができるものと確信をいたしております。  法例二条権原についての補償、この問題こそ速やかになさるべきであると考えるものであります。  もちろんこのことは、現在の林雑補償とは法的に矛盾はしないものであります。何となれば、現在の林雑補償は行政措置によるものでありますから、これをどうするかはひとえに行政庁の裁量にゆだねられているものであり、法例二条権原の承認とともに、その林雑補償は漸減させることも廃止することも可能だからであります。  また、過去の事例において、このようなある一定の事案について見舞い金として支払っていたものを補償金と改め、その相互間の調整をするというようなことも行われているのであります。  たとえば、昭和二十四年十二月二十七日閣議決定になる「使用解除財産処理要綱」の十二などは、「すでに使用解除のあった財産で見舞金を支給しているものについても、本要綱によって損失金額と再計算し、支給済みの見舞金を控除の上、損失を補償すること」となっていることなどは、事案は全然異なるものといえども非常に参考に値するものと考えます。  いまやまさに演習場の使用協定の更新をせんとする時期であります。そのような意味で、北富士演習場の使用に関するすべての法制度、法運用を再検討すべき絶好の時期でもあり、さらには、地元の事情に最も明るい山梨県選出の金丸さんがその所管大臣になっていることも、この上なく時宜を得ているものと考えます。  これまでは、演習場用地をぜひ確保しておかなければならぬとして、みずからの確約に反し、またそのことによって法を犯してまで大地主たる山梨県などの意向を十分過ぎるほど聞き過ぎたのではなかったかと私は思う。  しかし、私はいま、周辺整備事業に関する補助金の問題、あるいは借地料の問題を主題としているのではございません。そのことには言及すまい。しかし、その意向の反映が直接北富士入会農民にはねかえってきてしまった林野雑産物補償行政だけは、幾ら非難しても非難し過ぎることはないと思う。  かかる忍草農民そのものに対する卑劣、不法な、言いかえれば防衛施設庁の言う北富士演習場の安定的、円滑な使用のうちに、事実上、忍草入会農民の入会慣習の無視、人格的侮辱といった性質をすら有する施設庁の入会慣習侵害に関する忍草農民抵抗は、忍草農民にとって義務とすら感じられているようであります。  それは忍草入会農民自身に対する義務であり、かつ日本社会に対する義務ですらあると言っている。「草の根を守る闘いは法治国家の根っ子を守る闘いである」とは、昭和三十六年、有名な忍草農民が梨ケ原原頭に打ち立てたスローガンでもございました。  まことに、自分の権益が卑劣なやり方で台なしにされたり踏みにじられた場合に、単にその権益ばかりではなく、それによって人格もまた無視されたのだということに気づかない者、またそうした状況の中に置かれていながら、自分自身とその正当な権益を主張しようと思わない者は、どうにも救いようがないし、そのような者が国のために何をなし得ようか、私は全然期待ができないと思います。  権益の侵害があった場合、それに対して闘うべきか、それともそれを避けるためにおのが権益を見殺しにするかという問題に直面せざるを得ない。だれもこの決断を避けるわけにはいかない。結末はどうなろうと、この決断は、いずれにしても犠牲を伴わざるを得ません。権益が平穏な秩序の犠牲になるのか、平穏な秩序が権益の犠牲にならざるを得ないのかであります。  忍草入会農民は、三十余年の長きにわたって、自己のため及び日本を真に法治国家たらしめんがための血のにじむような貴重な闘いを続けて今日に至っております。私は、この忍草の主張の中に、自分の手で自分の権益を守ろうとしている農民に救いがあるか否か、その農民が山や野の主人になれるか、自分で山や野の開発ができるか否かを確かめている、日本農民の未来についての根本的問題をも提起しているものと考えるものであります。  これを違法にも妨害しているのが、ほかならぬ防衛施設庁である。しかし、未来は築かなければなりません。  私は、これまでるる指摘してきましたように、断じて政策の犠牲を忍草農民に強いてはならないと強く指摘し、真に法治行政を行うべく、私の質問を含めた心からの提案を受け入れるように重ねて要求し、申し上げてきた諸点につき、防衛庁長官、施設庁長官などの答弁と決意のほどを聞かせていただきたいと思います。  私はここで質問を締めくくりたいと思いますが、もし時間切れのことがございましたら、後にまた個々にでも説明を求める予定でございますし、この中に要求してまいりました文書による回答はぜひお出しいただくように、委員長からぜひ計らっていただきたいと思います。  以上をもって一応私の質問を終わりますので、どうかいま申し上げた順序で、その答弁なり決意のほどをお聞かせいただきたい。
  29. 高島正一

    ○高島政府委員 お答え申し上げます。  当委員会でもたびたび御答弁申し上げてまいったわけでございますが、北富士演習場は、防衛庁にとりましてわが国の安全と平和を守る上におきましてかけがえのない施設でございます。したがいまして、防衛施設庁といたしましては、従来からこの演習場の存立と周辺地域住民の方々とのいわゆる民生安定との両立に、全力を尽くしてまいったつもりでございます。  いろいろな経緯がございましたが、昭和四十四年六月、対国折衝に関する窓口を一本化するというのが県民の総意であるということで、いわゆる演対協が設立され、自来今日までこの演対協を窓口として私どもは諸般の問題について協議を重ねてまいったわけでございます。  先生御指摘のとおり、この演対協が設立されました趣旨は、県民の総意と決意に基づき、関係団体及び住民の権益を守り福祉の向上を図るため、国との交渉、協議はすべて演対協を窓口として懸案の解決を図るということがその趣旨であり、そういった内容についての要求が当該会長から国に対してなされたところでございます。このことにつきましては、昭和四十八年の四月、山梨県知事と内閣官房長官との間においても確認されておるところでございます。  本日現在、契約更新に当たりまして、私どもは、当該演対協会長と連日折衝を重ねておるところでございます。したがいまして、先生御指摘の演対協を無視するというふうなことは、私どもとしてはとうていできない相談であるということを申し述べざるを得ないところでございます。  なお、私どもは、この演対協を特段の意図を持って窓口としているものではないということをはっきりここで申し上げさせていただきたいと存ずる次第でございます。  繰り返しますが、防衛施設庁が考えておりますのは、また念じておりますのは、演対協を窓口として地元が一本化した上で、円満に事態が解決できるということがわれわれの念願でございまして、その点につきましては先生の御指摘と全く同感でございます。しかしながら、この演対協の性格なり交渉の機関としての適当性についての御指摘については、私どもとしては現段階ではとり得ないということを申し上げておきたいと思います。
  30. 金丸信

    金丸国務大臣 政治はだれのためにあるんだ、政治は国民のためにあるということであります。ただいまいろいろお話もありましたが、この問題は非常に複雑多岐な問題が含まれておると私は考えております。ただいま施設庁から答弁もあったわけでありますが、原委員からたびたび予算委員会、分科会等でお話をいただいておるわけでありますけれども、私も先生のおっしゃることはわからぬわけじゃない。わからぬわけじゃないが、問題は、複雑多岐になっているこの問題をどのように処理するかということであろうと私は思っております。  私も防衛庁長官になりましてまだ日が浅い、そうして予算委員会等できょうまで参りまして模索をしておるという段階でございますが、そういう意味で何とか一本化することに最大の努力をすることは私のやらねばならぬ仕事だ、こう私はいま考えておるわけであります。原委員もこの問題に相当足を突っ込んでおるということでございますから、原委員にもこの問題の解決に最大の御協力をいただいて、またこの四月十日に改定する、締結をしなくちゃならぬという問題もあるわけであります。この問題についてはそれまでに解決するとは思いませんが、私はその後においてもたゆまざる努力をして、いわゆる国民のためにある政治だという考え方で対処してまいりたい。
  31. 原茂

    ○原(茂)委員 高島さんの言ったことで二つだけ、一つは聞いておきたい、一つは私の意見を言っておきたいのです。  演対協を無視して問題を処理する気持ちはない、そういうことはできない、こういう答弁があったのですが、私はきょう一時間半こうして一生懸命に物を言ってきましたが、そんなことはどこにも言っていませんから、もうちょっと記録をよく読んで、そうしてあなた自身の答弁がまるで見当違いだったことをよく知ってもらって、その上でまた改めて必要があれば意見を聞かせていただきたい。およそ勘違い。  それから、私が演対協そのものの法的な性格、設立当初の目的、こういったものに関していま施設庁の演対協とのかかわり合いが違法であると考えていることに対しては、その意見は私と同調できない、こういう答弁がるるあったわけであります。この点は同調するしないではない。高島君が自分で原に同調するかどうかを聞いているんじゃないのです。国として、法治国家として法律をもとに、あるいは公共団体なら公共団体の規約、規定をもとにしてどう判断するかを問うているわけですから、こんな場所で軽々しく私のきょうの意見に対して同調するとかしないなどということが言えたこと自体が私は非常に無理があったと思うし、その考え方自体に過ちがあると思うのです。もっとよく記録を見て、そうして法に準拠して物を考える、あるいは協会なら協会が設立されたときの規約などをよく読んで、その規約に当てはまって今日まで長い歴史を歩んできたのかどうかを検討をし反省をしてみて、その上に確たる信念を持って、同調できるとかできないかを答えなければいけない性質のものなんで、いま私は全部を言うことはできませんから集約して大事なところだけを申し上げた。そのことに対して端的にすぐいまのような意思表示がされたことは非常に軽率だ。これはもう一度考え直していただきたい。速記録を読み直して、法律こそが私たちの規範なんですから、その法律なり協会の規約をよく読んだ上、それに私の言うことが正しいのか間違っているのかの十分な検討を加えた上で、高島さんも意思表示をすべきだ。今後のために申し上げておきます。非常に軽率過ぎる。  それから最後長官に、法例二条の提案の締めくくりと同時に、何といっても地元の問題をよく知っている金丸さんがいま所管大臣であるというこの機を逸しては、この問題の突っ込んだ討議なり解決はむずかしいだろうということを申し上げたのですが、長官もいま決意を述べられたように、十日が過ぎたってこの問題の解決をしようとお考えになっている、このことは非常に結構だと思いますし、やらなければいけないと思います。  ただ、いま高島さんに申し上げたように、利の提案というものも速記録を読んでもう一度大至急に長官長官なりに検討していただかないと、これをいつもの委員会のように原があんなことを言った、適当に答弁して、まあまあ時間が過ぎて終わったということでは、いつまでたってもこの問題の解決は不可能だと思います。きょうの提案に対しては、私自身真剣に検討した上での提案でございますから、かくかくの理由でその提案には無理がある、あるいはもっと具体的にこの点とこの点は何とかして、これを援用、利用してやっていきたい、そういう点、プライベートでもあるいは公式に委員会に対する回答でも結構ですが、提案に対する長官としての考え方がぜひ具体的に示されるように強く要求をしておきたいと思うのです。  それから、軽い言葉で簡単にお話がありました、原もこの問題に大分足を突っ込んだと言われた。実は私の感じから言いますと、足なんてものじゃない、頭から全部突っ込んじゃっている。まさに命がけで突っ込んでいると言っても過言ではありません。法治国家として法に準拠して正しい政治が行われるように、このことだけを念願している。国有地の払い下げの時代から、あるいはその前の軍人林の問題から、そしてまだ解決をしておりませんがいま申し上げておる林雑補償その他入会権の問題にしましても、法治国家である限り政府もまた議員である私どもも、われわれを選んだ国民も、すべてが何を規範、基準に考えるかというと、国が定めた法律である。このことを基準に常に考えていかなければ、国に物差しがないのと同じことになる。その物差しを法に求め、これに準拠して、頭から体ごと突っ込んでいま命がけでやっているというのが私の立場ですから、足だけ突っ込んだなんと軽く見ないで、もう少し真剣に、突っ込み過ぎているほど突っ込んでいることを御承知の上で、いま前段申し上げた長官への私の要望にお答えをいただいて、質問を終わりたいと思います。
  32. 金丸信

    金丸国務大臣 原委員は頭から体じゅう全部突っ込んでいるというお話でございます。私も選挙区は山梨県であります。山梨県の国会議員が山梨県のことを真剣に考えないはずはないわけでありまして、先ほど来申し上げました私の考え方、それから先生のおっしゃった速記録を十二分にひとつ読みまして、その中で私の考え方等につきましてはいろいろまた個々にお話を申し上げてできるだけの努力をいたしたい、こう思っております。
  33. 原茂

    ○原(茂)委員 終わります。
  34. 楯兼次郎

    楯委員長 次は、馬場猪太郎君。
  35. 馬場猪太郎

    ○馬場(猪)委員 最近、武器の輸出の金融措置を弾力的にしてほしいというような商工会議所会頭の発言であるとか、あるいはまた、非常に不況の状態が長いこと続いておるので武器輸出をひとつその不況対策の下支えにしたいという意図を込めて、関経連あたりでもそういう発言があります。あるいは経団連の防衛生産委員会あたりもそういう発言がたびたび最近は出るわけですが、これは通産大臣とは違った意味で、ひとつ防衛庁長官考え方をお聞かせいただきたいと思います。
  36. 金丸信

    金丸国務大臣 私は、文民統制という立場から、不景気だから軍艦をつくれあるいはドル減らしだからアメリカから飛行機を買え、それを防衛庁で使ったらいいじゃないかというようなことを言う人がありますが、それはまさに国民を欺くものだと思っております。いわゆる防衛庁予算というものは、国会で十分に審議されて、その審議の中で承認されて防衛庁予算というものを防衛費に使うということでございますから、たまたまこのような事態になったから、輸出産業もこれを振興してというようなこと、あるいは防衛庁整備のために、近代化のために予算以上な別な枠から持ってきてやるなんということは誤解を招く、文民統制上からも絶対やってはいけない、こう私は考えております。     〔委員長退席、原(茂)委員長代理着席〕
  37. 馬場猪太郎

    ○馬場(猪)委員 防衛庁長官兵器関係とは一番関係が深いわけです。そして、ただ単に関係深いわけではなしに、コストの問題、後で触れたいと思いますが、そういう問題もあるだけに、あえてお聞きした次第です。  そこで、総理や通産相も、いままでと同じように三原則どおり変わらないんだと一応おっしゃっているのですが、兵器ということ、武器ということに対しての定義といいますか解釈というか、これについてはまたいろいろ疑義が残っております。そういう点については長官は広げるようなことはお考えにならない、いまの御発言ではそうなると思いますが、もう一度改めてその覚悟のほどをお示しいただきたいと思います。
  38. 間淵直三

    間淵政府委員 武器の定義につきましては、私ども自衛隊法の定めるところ、あるいは通産省で輸出貿易管理令で輸出の許可を与える場合の武器というものについて、その法律の目的からいたしまして多少の相違があることは事実でございます。
  39. 馬場猪太郎

    ○馬場(猪)委員 自衛隊でお決めになっていることもそうだし、そしてまた通産省自体も一定の基準を設けて認定していらっしゃるわけですが、ボーダーラインにあるものがありますよね。そういう問題についてはこういう空気、こういうムードというものはある程度左右すると思うのです。そうすると、防衛庁側の解釈いかんによってはまたそれに右へならえすることもあってはいかぬというので、そういう武器に対する従来の考え方も変えないのだということを、ひとつ長官からお答えをいただきたいと思います。
  40. 金丸信

    金丸国務大臣 先生のおっしゃっておるとおりでありますが、先ほど景気浮揚という問題で、今度の予算は景気浮揚という問題がある、そこでたとえて言えば、造船所等では閑古鳥が鳴いておるということでございますから、本来ならばいわゆる防衛庁予算の使い方というものは、装備等の点については五十二年度は三月三十一日までに、大体年度末へきて決めるということであれば景気浮揚にはならぬ、雇用対策の問題からしてもことしはこれを早めてやるということは考えておりますが、だからといって、武器を三原則を破ってどんどん輸出してもいいとか、われわれがそれを買い入れますとか、そんなことを私は毛頭考えていないということで御理解いただきたいと思います。
  41. 馬場猪太郎

    ○馬場(猪)委員 それじゃ長官、少し出ていただいて結構です。  五十二年の七月に出されております「日本の防衛」の中にも示されておりますが、ポスト四次防の五十二年以降の基盤的防衛力構想に基づいて、いままでの正面防衛力整備に重点を置いてという項が「自衛隊の現状に対する反省」の中に出ております。それではひとつ正面防衛力の現状、充足率等々を教えていただきたいと思います。
  42. 伊藤圭一

    伊藤(圭)政府委員 基盤的防衛力を一昨年の秋にお決めいただきました。御承知のように、防衛力整備というのは、昭和三十二年から始まりまして第一次防、二次防、三次防、四次防と防衛力を漸増してまいったわけでございます。四次防が終わった段階におきまして基盤的防衛力構想というものに移行いたしました。  これには幾つかの理由があるわけでございますが、一つにはいわゆる経済事情もございます。それから一つには、人員確保の問題もございます。さらにはまた、基地をこれ以上ふやすということはなかなかむずかしいという問題もございます。そういう中で、基盤的防衛力というのは、平時におきまして十分な警戒態勢をとりながら、有事の際には小規模の限定された侵攻に対して防御できるということを目指してやっておるわけでございまして、正面兵力につきましては、別表でお示しいたしましたような勢力というものを考えているわけでございます。したがいまして、別表の中でお示しをいたしましたものは、四次防が終わった段階におきまして整備されるものとそう量的には変わっていないわけでございます。  御承知のように、低空から入ってまいります早期警戒機能のための一つ部隊を追加することになっておりますし、現在の陸上自衛隊の編成そのものを多少検討いたしまして、現在の第七師団と第一戦車団を合わせまして一つの機甲師団というものを編成したり、あるいは四国に一個混成団、一個旅団を編成するというようなことは考えているわけでございますが、一応量的には概成したというふうに考えておるわけであります。
  43. 馬場猪太郎

    ○馬場(猪)委員 いま量的には何とか充足しておるとおっしゃるのですが、実際には、予算なんかを見ますと、二次防、三次防、四次防、それぞれ予算に占める比率というのもだんだん下がっていっておりますね。いまどういうふうになっていっておりますか。
  44. 伊藤圭一

    伊藤(圭)政府委員 いまの正確な数字はちょっと調べて申し上げますが、一般会計に占めます予算といたしましては従来七%から六%台になってまいりまして、五十三年度は五・五四%でございます。したがいまして、一般会計に占めております比率というものは下がってきておりますが、この要因は、御承知のように福祉関係予算あるいは公共関係予算が際立って多くなっておりますので、それの対比におきまして下がってきているということだろうと考えております。
  45. 馬場猪太郎

    ○馬場(猪)委員 正面整備費の比率というのはどういう経過をたどっておりますか。
  46. 原徹

    ○原政府委員 正面と申しますと主として武器になるわけでございますが、その予算の中で装備品等購入費というのがございます。四次防の、たとえば四十八年度で申しますと、装備品等の購入は防衛関係費の中で二五・四%を占めてございます。これが、例の石油ショックの後物価が上がり、かつ人件費が非常に上がったために人件費のウエートが高くなりまして、装備品等の購入のウエートが減ってきた、こういうことでございまして、数字で申しますと四十八年度には人件費、糧食費が防衛関係費の中で四六・五%でございます。それが五十一年度には五六%になった。装備品の購入は四十八年度に二五・四%でございましたものが五十一年度には一六・四%になったのでございます。それで、五十二年、五十三年と例のベースアップの率がそれほど高くございませんでしたから、五十二年度は人件費、糧食費が五六が五五に減り、五十三年度はこれがまた五四・四に減っております。それの裏でございますが、装備品の購入は、一六・四まで下がったものが五十二年度は一七・四、それから五十三年度は一七・一、そういう水準でございます。
  47. 馬場猪太郎

    ○馬場(猪)委員 ということは、総予算の中で人件費だとかいわゆる糧食費だけがふえて、実際の中身、防衛に必要だと言われるその中身というのはだんだん比率が少なくなってきたということで、装備が悪くなってきたというふうに解釈できるわけですか。
  48. 原徹

    ○原政府委員 確かに装備の購入等の比率が減っているわけでございます。例の四次防というのは達成率七割とか八割とか申されておりますが、計画をしたものがかなり達成割合が低かったということがございます。そういうことがはね返りましていまのような数字になってきておるということでございますが、今後の問題といたしましては、私は急激なインフレというのがなければ、人件費の割合が少しずつ減っていって、それが装備の方に回っていくだろう、また、基盤的防衛力考え方は、現有の勢力、すなわち若干の増員は艦船の就役とかあるいはAEWをつくるとかそういうことでございますけれども、大きな増員ということは余り考えておりませんから、人件費の割合はだんだん減ってきて、そしてそれが装備の方に回っていくだろう、こういうふうに考えております。
  49. 馬場猪太郎

    ○馬場(猪)委員 装備費の割合がだんだん減ってきておるのに、質的にも量的にも一次防、二次防、三次防に対してそんなに劣りがないということが言えるのですか。
  50. 伊藤圭一

    伊藤(圭)政府委員 先ほども説明いたしましたように、四次防までは、いわゆる予想されます脅威に対して必要な防衛力整備するという考え方で参ったわけでございます。いま先生が御指摘になりましたように、人件費の比率というものも上がってまいりました。これは世界的な傾向でございまして、特に募集制度をとっております各国の軍隊におきましても、人件費というものはきわめて高くなってきております。したがいまして、防衛構想の中におきまして、脅威に対処する自衛力という考え方よりは、いわゆる安全保障機構の中で必要な果たすべき役割りというものに注目をいたしまして、量的にふやすということは一応四次防程度の勢力で推移するという方向に転換をいたしました。そして必要な質的な変化に対応できる装備品を取得してまいりたいというふうな考え方に立ったわけでございます。
  51. 馬場猪太郎

    ○馬場(猪)委員 「正面防衛力整備に重点が置かれ、」そしてその正面防衛力も実質的な中身は人件費に押されて率的には非常に弱くなっていっておる。それでなおかつそういう予算内容ですが、次に書いてある「補給体制や居住施設等のいわゆる後方支援部門の整備は圧迫を受けざるをえなかった。」ということになっているわけです。ただでも予算の中で正面防衛費が十分でないのに、しかもその圧迫をしている側の後方支援部門もさらに圧迫を受けておるというが、後方支援部門のおくれておるその実情を、ひとつ教えていただきたいと思います。
  52. 伊藤圭一

    伊藤(圭)政府委員 いわゆる四次防までは質、量ともに漸増計画でまいったわけでございますので、後方部門に対する配慮というものがおくれておったというのは事実だと私どもは考えております。その中で、特に、具体的に申し上げますと、たとえば航空基地とかレーダーサイト、こういったところの抗たん性といいますか、攻撃を受けた際の生き残る力、そういった面の手当てというものが必ずしも十分でなかったということを反省いたしております。  さらには指揮通信能力、これは従来電電公社の通信に頼っておったわけでございますが、こういったものも自営の通信回線を持つ必要があるだろうということを考えております。  さらに最も私ども予算面で従来から苦しんでまいり、今後検討しなければならない問題といたしましては、弾薬の問題があるわけでございます。弾薬は当初ほとんど米軍からもらった弾薬を使って訓練をし、有事に備えてまいりましたが、最近におきましては訓練弾を上回るものを取得しながら少しずつこの備蓄を上げてまいりたいというふうに考えているわけでございます。
  53. 馬場猪太郎

    ○馬場(猪)委員 後方支援部門というのは、ただ単なるそういう基地であるとかあるいは通信施設とかそういうことじゃなしに、もっと生産部門も全部入るわけでしょう。そういう防衛生産面はどういうふうになっておるのですか。
  54. 間淵直三

    間淵政府委員 非常に広い意味の防衛力という中には、生産あるいは研究部門というのも入ると思います。
  55. 馬場猪太郎

    ○馬場(猪)委員 人があり資材があっても、あとはやはり補給をするとか、いま言われた弾薬の問題等々いろいろあるわけですから、やはり生産部門ときちっと表裏一体の関係でなければ本当の力にならないわけですね。抑止力はないわけですよ。  そういう意味では、兵器生産の実態というものはどういうものか。これは表にあらわれた正面装備力とはそれだけ食い違っておったら機能を発揮しないわけでしょう。表裏一体になってこそ一つの機能を発揮するわけですから、その兵器生産の実態というものはどういうふうになっておりますか。
  56. 間淵直三

    間淵政府委員 私どもは、装備品を調達するに当たりましては、わが国の国土とか国情あるいは国民の体位といったようなものに合った装備品を調達したいとか、あるいは非常に長い間維持運用するといったような場合には、これを自主的に修理補給といったようなものができるようにしていきたいとか、あるいは急速な科学の進歩に合わせまして、それに即応できるような研究開発を行っていきたいというのが、基本的な態度でございます。
  57. 馬場猪太郎

    ○馬場(猪)委員 基本的な態度だけではなしに、実際にいまの日本兵器産業というのは、昔のように工廠というのはないんで、結局全部民間委託でしょうから、民間で一朝有事の場合の用意ができておるのかどうか、そういう生産設備の体系、そういったものがどういう実情にあるのかということを主な部門、たとえば艦船部門であるとか航空機生産部門であるとかについてひとつ教えていただきたいのですが。
  58. 間淵直三

    間淵政府委員 私どもがただいま保有しております装備品を維持、運用するのに十分であるかどうか、あるいは今後計画あるいは考えておりますような調達を行っていくのにいま十分であるかどうかということでございますが、たとえば航空機といったようなもの、航空機に限らず主要な装備品がすべてそのときの財政経済その他の事情との調和というものを図りつつやっておるわけでございまして、一概に何と言うことはできないと思いますが、私どもが考えております維持、補給、運用あるいは調達といったようなものに関しましては、非常に先端的な部分といったようなものを除きまして十分能力を持っておる、こう考えております。
  59. 馬場猪太郎

    ○馬場(猪)委員 一たん有事の場合に急にふやさなければならぬというような場合に、果たしてそれだけの技術であるとか、それから人員であるとか施設であるとか、そういうものは持っておるわけなんですか。先ほど御説明いただいたように、二、三、四次防それぞれ予算の比率はだんだん減ってきておるし、そして人件費に食われて防衛庁にとって肝心の正面防備の方はだんだん薄くなっていっておる。したがって、その分だけ国内の生産というものが抑えられていっているわけでしょう。
  60. 間淵直三

    間淵政府委員 一たん有事の際にどのぐらいの生産力が要るかあるいは修理力が要るかという想定は非常に困難でございますが、私どもの想像し得るような事態には対処できる能力が、航空機産業も艦艇の製造産業といったようなものもこのところ下降傾向をたどっておるわけではございますが、十分能力を有しておる、こう考えております。     〔原(茂)委員長代理退席、委員長着席〕
  61. 馬場猪太郎

    ○馬場(猪)委員 冒頭に大臣にお伺いしたように、兵器の生産をもっとしやすくして、都合によっては輸出もさせてほしいというふうな要望が出てくるということは、一つは景気対策もあるでしょうし、一つは防衛生産が非常に少なくなりつつある、受注の方が。だから操業度が落ちてきているわけでしょうね。ですから、そういうことを埋めてもらわないことには、いまの日本兵器産業というのは輸出ができないのだから、結局国の予算による防衛予算以外に頼るところがないんだから、そういうところから出てきておるわけなんでしょう。たとえば航空技術なんというのは相当の長期間、十年とか十五年とかいうような長期の単位でないと人は育たないということなんでしょう。ですから、その間五年も不況が続いておるし、それ以前から防衛生産が減ってきておる中で兵器生産会社が悲鳴を上げているという、ああいうふうに兵器生産も輸出させてほしいというのはその一つのあらわれとして出てきておるのじゃないかと思うのですよ。  そうすると、その中身がどういうふうになっておるかということは当然掌握していらっしゃると思うんですが、どの程度に、たとえば艦船だったらどの程度に操業度があるんだとか、飛行機はどの程度まで動いているんだというようなことは掌握していらっしゃると思うので、お教えいただきたい。
  62. 間淵直三

    間淵政府委員 先生のお示しになりました実例について申しますと、艦艇でございますと、大体いま年一万トンぐらいの発注をしておるわけでございますが、能力としては二万トン以上有しておる。それから航空機でございますが、最盛時には工数にいたしまして二千万工数以上あったこともあるわけでございますが、ただいまのところ千五、六百万工数の能力を維持しておる、こう承知しております。
  63. 馬場猪太郎

    ○馬場(猪)委員 いま示していただいたように、艦船で一万トンの発注に対して能力が二万トンだということ。ということは半分遊んでいるということですか。
  64. 間淵直三

    間淵政府委員 造船所におきましては、設計部門とかなんとか艦艇特有の部門もございますが、多くの部門は一般の船舶の建造と共通になっておりまして、艦艇部門においてどのぐらい遊んでおるとか、そういうことは非常にとらえがたいと思うわけでございます。
  65. 馬場猪太郎

    ○馬場(猪)委員 兵器生産だけじゃなしに、一般造船もやっておるわけでしょうけれども、しかし操業度が非常に落ちておる。そしてこの不況のもとで造船関係というのは特にそれがひどいという構造不況業種だと言われておるわけですから、その中でいわば造船工業界関係から言えば当てにしておる防衛庁の仕事が少ないということですね。一層ダウンしているということになると思うのですよ。それは結局はコストに皆はね返ってくるんじゃないですか。
  66. 間淵直三

    間淵政府委員 艦艇の建造などにつきましては、従来から大体年一万トンぐらいのペースを維持しておるわけでございまして、艦艇の調達に当たりまして、艦艇だけでやっておるという会社はございませんものですから、その会社の操業度自体が下がっていくということによりまして、その艦艇のレートと申しますか、そういうものの計算をする際、多少の影響を免れることはできないと思います。
  67. 馬場猪太郎

    ○馬場(猪)委員 飛行機の方はいかがでしょうか。
  68. 間淵直三

    間淵政府委員 飛行機は、先ほど申しましたように、ことし、五十三年度ぐらいが操業のボトムになるというふうに思われるわけでございまして、来年度からP3C、F15といったようなものの発注によりまして多少上向くという程度になると思います。
  69. 馬場猪太郎

    ○馬場(猪)委員 大体いままでの防衛庁の方針は、できるだけ兵器は国内でということが中心でこられたわけなんでしょう。今度P3CあるいはF15の輸入をなさるというのは、その間にどういう関係があるのですか。
  70. 間淵直三

    間淵政府委員 先ほど申し上げましたように、できるだけ国産でやっていきたいというのが基本的な姿勢でございますが、この国産というものを厳密に言いますと、日本の技術で、日本の材料で、日本の工場で全部つくるという純粋国産と申しますか、そういうものと、それから飛行機などをつくります場合のように、製造方法に関するライセンスを取得して、ライセンス国産という二つの場合があると思うわけでございます。  それで航空機などの場合、ことに戦闘機とかそういうもの、あるいは対潜哨戒機のソフト部門とかそういうものにつきましては、非常に高度な先端的技術といったようなもの、あるいは飛行機全体をまとめるシステムの技術といったようなものについて、独力ではまだできないというような部門もあるわけでございまして、そういう点を総合的に勘案いたしまして、P3CあるいはF15というものの導入に当たりましてはライセンス国産をしたい、こう思ってそういうふうに決定した次第でございます。
  71. 馬場猪太郎

    ○馬場(猪)委員 すでに対潜哨戒機あたりは早くから国内生産という方針も一時出ておりましたね。ですから、そういう意味では研究開発費用というものも相当お出しになっていると思うのですが、どの程度お出しになっておりますか。
  72. 番匠敦彦

    ○番匠政府委員 お答え申し上げます。  ただいま先生のお話で、次期対潜機と申しますか、対潜機に関しましては国内で開発することを決めていたのではないかというようなお話がございましたけれども、そうではございませんで、次期対潜機につきましては四十五年、四十六年、四十七年の間に技術調査研究費というものを予算でいただきましてそれを使っておりますが、これらは今後次期対潜機を国内開発でいくかそれとも外国から導入した方がいいか、そのいろいろな案を検討いたしまして、一番いい方法を見つける、あるいはそのいずれの場合でも基礎的に勉強しておかなければならない点について研究をする、そういう目的の調査研究費でございまして、現実の問題では約三億五千万円くらいだったと思いますが、四十五、四十六にかけまして使用しております。  ただ、四十七年度予算につきましては、専門家会議その他で検討するようにという方針になりましたので、執行をしておりません。
  73. 馬場猪太郎

    ○馬場(猪)委員 そうすると、支援戦闘機についても、四十七年、四十八年に四億二千四百万ですか、それからまたいま言われた対潜哨戒機についても、三億二千三百万の調査委託ですか、そういった予算を組んでいらっしゃるわけですが、それを輸入に頼るということは、結局この調査委託費というものが功を奏しなかった、役に立たなかったということになるんですか。
  74. 伊藤圭一

    伊藤(圭)政府委員 いま先生が言われました支援戦闘機、これはF1というのを国産をいたしておりまして、すでに生産に入っております。  それから、P3Cにつきましては、技術調査費ということでございましたが、当時、私どもといたしましては、P2Jの後継機として国産してその能力を確保できるのではないかというような考え方もございました。したがいまして、先ほど参事官から御答弁申し上げましたように、いろんなケースについて検討したわけでございます。  ただ、あの昭和四十五年、四十六年という時点におきましては、現在のP3Cというものがまだアメリカで配備されたばかりでございまして、その情報につきまして私どもが知り得ない状況であったわけでございます。そしてさらに研究を進めまして、P3Cの実際の性能というものを知ることによりまして、きわめてすぐれた優秀な飛行機であるという判断をいたしました。  したがいまして、いわゆるライセンス生産ということをお願いいたしまして、国防会議の御決定をいただいたわけでございますが、先ほど来先生が御指摘でございますが、実はこの航空機の生産につきましては、わが国では十年間のブランクがございました。したがいまして、P2Vという最初の対潜哨戒機、これもライセンス生産でございます。さらにそれを改造いたしましたP2Jというものにかえまして、これは四十年代に生産をいたしております。したがいまして、従来からその主な対潜哨戒機あるいは戦闘機につきましては、ライセンス生産という形でまいっております。  しかし、その間に技術的な進歩もございまして、練習機におきましては、超音速の練習機T2というものを開発いたしまして、さらにこれがF1という支援戦闘機に発展してまいってきておるわけでございます。さらに大型のものといたしましては、C1という輸送機、これもジェット機で国産したというような経緯があるわけでございます。
  75. 馬場猪太郎

    ○馬場(猪)委員 いまのところは輸入に頼るのかあるいは国産に頼るのか、これはもう技術の問題とかあるいはタイミングの問題等あろうと思いますが、国内生産の基本方針は一応立てていらっしゃるわけですから、そのメリットとデメリットをひとつお知らせ願いたい。
  76. 間淵直三

    間淵政府委員 国内生産のメリットといたしましては、先ほど申し上げましたように、わが国の国土、その国情に合ったものが生産できるということ、それから飛行機、艦艇等非常に長期にわたり運用するものにつきましては、その維持、補修あるいはその改善といったようなものの体制が万全になるということ、それから技術力、産業力の維持に役立つといったようなこと、それからまた、輸出国の事情によってその輸出が禁止されるとかあるいはその仕様が変わってくるといったような場合、わが国独自のものが生産の継続ができるといったようなことでございまして、デメリットといたしましては、ライセンス生産をするにつきましては、ライセンス費とかロイアルティーといったようなものを払うわけでございますし、また、どうしても小量生産になるといったようなことから、コストが高くなるということだろうと思います。
  77. 馬場猪太郎

    ○馬場(猪)委員 いま、小量生産になるからコストが高くなる、こういうふうにおっしゃったわけですが、そうすると、そういう面では、いまのところ価格面とかそういうことで輸出に頼っている面が非常に多いと思うのです。  今度のP3CやあるいはF15というのは、どういう動機、やはりドル減らしという動機もあるでしょう、純然たる防衛的な見地ということもあるでしょう、いろいろな角度からの見方があって輸入に踏み切られたと思いますが、それはどういうような経過か、お知らせいただきたい。
  78. 伊藤圭一

    伊藤(圭)政府委員 F15とP3Cにつきましては、これはもちろんその純然たる防衛的な見地からということでございます。  御承知のように、戦闘機につきましては、現在要撃戦闘機の飛行隊といたしまして十個飛行隊を持っております。これは防衛計画の大綱におきましても、この十個飛行隊を維持するということになっておりますが、F104Jというのが五十六年度以降寿命が参りまして、除籍といいますか欠落してまいるわけでございます。そのあいた穴をどういう飛行機で埋めるかということが最大の問題でございます。その際に、航空機の技術の進歩に伴いまして、今後相当長期間にわたって防空戦闘機、要撃戦闘機として使用にたえるものというような観点からの選択をしたわけでございます。  先ほども説明申し上げましたように、超音速の戦闘機というものをつくることはできましたけれども、さらに二マッハを超える飛行機、あるいは空中におきます飛行性能、それから高高度の要撃性能、低高度の要撃性能、そういったいろいろな観点からいたしますと、現在のわが国の技術開発では、その五十六年度という時点に間に合わないという判断がございました。したがいまして、各国の航空機を調査いたしまして、その中でF15を決定していただいたわけでございます。  P3Cにつきましても、現在持っておりますP2J約八十機というものが五十六年度以降徐々に寿命が来て減ってまいります。これを補うために、どういう飛行機を選ぶかということでございましたが、最近の情勢からいたしますと、潜水艦の性能というものはきわめて上がってまいります。したがって、現在のP2Jそのものを継続して生産するだけではとてもこの能力に対応できないという判断がございまして、さらに高度の能力を持ったものということで、御案内のように、いろいろな飛行機について検討をいたしました。その結果、現段階において少なくとも一九九〇年代にわたって有効に対処できる航空機としてP3Cがすぐれているという判断のもとに、御決定をいただいた次第でございます。
  79. 馬場猪太郎

    ○馬場(猪)委員 純然たる防衛的な見地でとおっしゃったのですが、予算折衝の過程で長官自身もいろいろと大蔵省との関係でお話しになって、経済的な要因、ドル減らしという要因というのは全くなかったわけですか。
  80. 金丸信

    金丸国務大臣 そういう関係は全くありませんでした。
  81. 馬場猪太郎

    ○馬場(猪)委員 いまお聞きいたしますと、結局、技術的な面、世界的な水準ということになってくると、いまの日本航空機にしても兵器産業にしても、全体としては技術的にまだ非常におくれている面が多い。ということになると、今後の傾向としては、国産だという基本方針ではあるけれども、輸入に依存しなければならないということが多いわけですか。
  82. 間淵直三

    間淵政府委員 航空機に関しましては、ライセンス生産を行うわけでございまして、その間にその高度の技術の取得、慣熟といったようなものが十分得られるということになるわけでございまして、どういう航空機をいつ調達するかということにもかかるとは思うわけでございますが、ポテンシャルとしての能力というものは十分維持できると思っております。
  83. 馬場猪太郎

    ○馬場(猪)委員 技術的な面で学ぶところがあると言われたが、今後の傾向としてもそういう傾向になっていくわけですか。
  84. 間淵直三

    間淵政府委員 このライセンス生産などを通じまして、そういう傾向にならないように、十分技術的にも経済的にもやっていけるようにしたいと思っております。
  85. 馬場猪太郎

    ○馬場(猪)委員 技術的にも経済的にもそういうふうにならないようにとおっしゃるけれども、事実上国内に対する発注が少なくなってくれば、国内の方はますます兵器産業の生産が振興できないような状態が続くわけでしょう。そうなれば、先ほども申しましたけれども、技術者を養成していく、あるいはまた施設を維持していくということが困難になる、それがまたコストにはね返っていく、こういう傾向が悪循環として続くのじゃないでしょうか。
  86. 間淵直三

    間淵政府委員 これは経済全般のはね返りというのを予測するのは非常にむずかしいと思うわけでございますが、兵器産業と申しますか防衛産業と申しますか、そういうものだけを取り出して見ますと、現在程度の人員なり技術なりというものは十分維持できていく、こう思っておる次第でございます。
  87. 馬場猪太郎

    ○馬場(猪)委員 兵器産業は兵器産業としての特色のある部分、一般産業の部分と共用できるものではなしに兵器産業だけのものも相当あると思うのですね。そういうものを縮めなくても済んでいるわけですか。
  88. 間淵直三

    間淵政府委員 兵器産業だけの部門と申しますか兵器産業の専有部分と申しますか、そういうものに関しましては、まあ現在程度、それが中程度かかつかつの程度かいろいろ尺度はあると思うわけでございますが、現在程度のものは維持していきたいと思いますし、いけると思っておる次第でございます。
  89. 馬場猪太郎

    ○馬場(猪)委員 たとえば、これは経団連の出版物から拾ってみますと、航空機関係の操業度の低下なんかも非常に進んでいっておりますし、技術工廠の推移なんかを見てみますと、四十七年に四百十七万工数であったものが五十一年には二百四十万工数になっている。民間航空機については余り変わっていない、むしろふえていっているわけでしょうから、この減った分はほとんどがやはり防衛生産関係にかかっているのじゃないかというふうに思うのです。そういうことはないのですか。
  90. 間淵直三

    間淵政府委員 民間航空部門ではたしかYS11をその当時生産しておったと思うわけでございますが、それはなくなっておりますし、それからまた、軍事と申しますか軍用の部門といったようなものも、多少下降傾向をたどってきたことは確かでございます。
  91. 馬場猪太郎

    ○馬場(猪)委員 そうすると、やはり防衛生産の減の分だけが、これはいま飛行機の例だけを申し上げましたけれども艦船についても、あるいは特にさっきおっしゃった弾薬等についても、皆影響しておるのではないでしょうか。
  92. 間淵直三

    間淵政府委員 艦船につきましては、石油ショックによりまして艦船建造費が非常に高騰した結果、四次防のいわゆる積み残しと申しますか、そういうものが出たことは確かでございますが、その後大体年間一万トン程度の発注というものを続けておる次第でございます。  航空機につきましても、先ほど申し上げましたように多少の下降傾向はたどってきて、五十三年度が恐らくその底になるであろう、こういう現状であろうと思う次第でございます。
  93. 馬場猪太郎

    ○馬場(猪)委員 結局、防衛生産関係というものは、政府の発注する防衛予算の多い少ないにかかっているわけでしょう。ことしはいままでから見ると飛躍的に伸びましたけれども、ずっと減ってきたわけですね。その伸びた理由が、ほとんどP3CやあるいはF15というのに関連してくるのじゃないかと思うのですが、そのほかについては余り変わっておらないと思うのですね。そうすると、じり貧の状態がいまの兵器生産関係ではないかと思うのです。  そのじり貧の状態でいくということは、それがまた少数多品目生産につながり、しかもその活路が、先ほど長官からも答弁がありましたように一切武器輸出はやらないのだということになれば、国産というものはますますコスト高になって、好むと好まざるとにかかわらず、輸入の方向に走らざるを得ないというふうな傾向をたどるおそれはないのですか。
  94. 間淵直三

    間淵政府委員 先ほど申し上げましたように、いろいろな観点からできるだけ国産をしていきたいということでございますが、個々の装備品の調達に当たりましては、そのときどきの財政事情その他を勘案いたしましてどういう形態で調達するかということを決めるわけでございまして、まあ産業だけに特に重点を置いて調達するということはないわけでございます。
  95. 馬場猪太郎

    ○馬場(猪)委員 正面装備とそして後方支援のこの両方が一体になって一つの基盤防衛力というのはきちっとできるわけですが、片一方がどうしてもいまの不況業態の中で衰えていっておるということは、結局防衛産業全体が弱まっていっているということで、これはいびつな形で進んでいっておるわけですね。  ですから、そこで抑止力といいますか、それが弱くなっているという傾向がいま見られると思うのですが、そういう意味では、ある程度国内生産をふやさなければ、いびつなやつを正すことができないのじゃないかと思うのです。そうなれば結局、防衛予算をふやせという、そういう真意が、今度の兵器輸出に関しての陳情などにあらわれておるのですが、ことしはいままで、おととしまでと比べてずいぶん予算がふえたのですが、防衛予算をさらに今後も大きくふやしていこうという意向がおありなのかどうか。
  96. 原徹

    ○原政府委員 防衛予算につきましては、防衛計画の大綱にもございますように、国力、国情に応じて、そして他の諸施策とバランスを十分とりながら漸増していくというのは、国防の基本方針が出まして以来、ずっとそういうことでやっているわけでございます。そして、その経費につきましては、先生御案内のように当面はGNPの一%以内でやれるという見通しを私ども持っておりますが、そういう程度の伸びでやっていける、そういうふうに思っております。
  97. 馬場猪太郎

    ○馬場(猪)委員 いまおっしゃったように、あくまでGNP一%以内で守っていくのだという姿勢をとられる。そして新しい技術の開発はどうしてもおくれておるために輸入に頼るということになってくると、国内の防衛生産関係の総体的な力というのは弱まっていくと思うのですね。そういう場合に、それでもなおかつ絶対にいまの原則を守っていくのだという信念を、この際もう一度明らかにしていただいて、終わりたいと思います。
  98. 金丸信

    金丸国務大臣 前段申し上げましたとおり、防衛庁といたしましては、外国からこの際だからドル減しに買おうとかいうような考え方は全然持っておりませんし、いわゆる国会で承認をいただいたその予算の範囲内で効率のある防衛というものをやってまいりたい、このように考えておる次第であります。
  99. 楯兼次郎

    楯委員長 次は、春田重昭君。
  100. 春田重昭

    春田委員 きょうはいろいろな問題につきまして質問なり御確認をしてまいりたいと思いますので、どうぞ政府側におかれましては簡潔明瞭な御答弁をお願いいたします。最初それを要請しておきます。  まず、成田事件でございますけれども、今回の成田空港の開港までの足取りはさまざまな紆余曲折を経てきたわけでございます。とりわけ空港設置に反対する過激派の攻撃は非常に激しく、中でも開港を目前とした三月二十六日の極左過激派暴力集団の管制塔乱入事件は、開港の時期を五月二十日に延期させるに至らしめているわけでございまして、防衛庁長官としてはこうした極左暴力集団の行動や動向をどのように見ておられるのか、まず御意見を伺いたいと思います。
  101. 金丸信

    金丸国務大臣 先般の成田開港に当たりまして乱入した過激派の行動というものは、法治国家におきまして全く法を無視した行動であって、これを黙視しておくということはいかない、こういうように私は考えておる次第であります。
  102. 春田重昭

    春田委員 政府部内の一部の声として、成田空港反対運動を、単なる農民の反対運動から昭和四十五年ぐらいから変質して暴力革命を志向した闘争に転化している、このように認識している大臣もおるやに聞いているわけでございますけれども長官としてはどのような御見解をお持ちですか。
  103. 金丸信

    金丸国務大臣 あのような姿は、あれが拡大されればまさに世の中は無秩序な状態になっていくということであろうと私は思うわけでありますから、厳にそういうものが再び起きないような対策を政府は講じなければならぬ、こう考えております。
  104. 春田重昭

    春田委員 いや、そういう意味じゃなくして、いままでとってきた運動がその延長として今回のいわゆる暴力的な革命につながっていると見ているのかどうか、その点を確認したいのです。
  105. 金丸信

    金丸国務大臣 私はその詳細をつまびらかにはいたしておりませんが、新聞やその他で見ますと、そういうような考え方で彼らは行動をとっておるというように私は承知をいたしております。
  106. 春田重昭

    春田委員 長官としては、いわゆる一部の農民の純粋な運動もそうした過激派の運動と同じ、同調してやっている、このように見ているのですか、その点確認したいのです。
  107. 金丸信

    金丸国務大臣 いわゆる土地というものに対する農民の執着、これは十二分にとうとばなければならぬことは当然でありますが、私は今回の暴動は農民の一部過激派というような人たちだけで、あとは本当のいわゆる商売人みたいな過激派が入って行動をとったやに聞いておるわけであります。
  108. 春田重昭

    春田委員 そこで、過激集団や機動隊の両方に痛ましい犠牲が続出しているわけでございますけれども、一連の動きの中で政府部内で自衛隊出動について検討されたかどうか、この点どうですか。
  109. 金丸信

    金丸国務大臣 全然検討はいたしません。
  110. 春田重昭

    春田委員 長官としては自衛隊法の第七十九条で出動の待機のいわゆる権限というのを与えられているわけでございますけれども、この出動待機の発動もされませんでしたか。
  111. 金丸信

    金丸国務大臣 あの程度の問題につきましては、私はいわゆる警察力で十二分に維持できるという判断をいたしました。
  112. 春田重昭

    春田委員 千葉県知事からは治安出動に対する要請はありませんでしたか。
  113. 金丸信

    金丸国務大臣 ありません。
  114. 春田重昭

    春田委員 自衛隊の行動というもの、また出動というものは防衛庁設置法及び自衛隊法において明確にされておりますけれども、その法の中においては、公共の秩序が破壊されたとき、また治安の維持が困難なときにいわゆる行動ないし出動する、このように定めてあるわけでございますが、非常に抽象的なんですよ。  そこで、もっとわかりやすい自衛隊の行動、出動に対する判断の基準というか、何かそういう要綱というものは明確にないのかどうか、お答え願いたいと思います。
  115. 伊藤圭一

    伊藤(圭)政府委員 治安出動の要件というものを具体的に示せということでございますが、御承知のように治安維持に関します責任は警察が持っているわけでございます。そして警察も過去において、戦後それぞれの時期に、それぞれの治安維持に必要な体制というものをつくってきております。したがいまして、こういう場合に自衛隊が出るという行動の基準を具体的にお示しすることはきわめてむずかしいわけでございますが、警察力をもってして治安の維持が不可能になるような大きな間接侵略あるいは騒動、騒乱、そういったものを考えているわけでございまして、私どもは過去におきましてそういう事態というものを具体的に経験したことがございませんので、具体的にお示しすることはきわめてむずかしいというふうに考えております。
  116. 春田重昭

    春田委員 要するに、判断の基準の一つとして警察力でカバーできない場合は自衛隊出動もあり得る、こう理解したらいいわけですね。  ということは、今回のいわゆる成田事件につきましては警視庁ないし千葉県警で約一万四千名ですかの警察官が当たったわけでございますけれども、ああいう相当混乱した事件になってきたわけでございますが、あの人数でも十分足りる、いわゆるあの事件は公団ないし警察の不始末が原因であって自衛隊出動までには至らない、このようにお考えになっておるのですか。
  117. 伊藤圭一

    伊藤(圭)政府委員 この間の成田事件におきましては、警官が一万四千名でございますか、配備についておったようでございます。暴徒の規模は百数十名であったというふうに私どもは聞いております。したがいまして、警察の手に負えないという中には、その暴徒の規模、持っている武器、その他地域的な広がり、そういったものが条件になってまいると思いますけれども、あの成田の地域におきまして一万四千人の警官がおり、百数十人の暴徒ということでは、私ども警察力で十分対処できる暴徒であったというふうに考えているわけでございます。
  118. 春田重昭

    春田委員 暴徒の人数とともに、先ほどちょっと話がありました質的に高い武器、これもあると思うのです。いわゆる電気もりとか火炎びん等が相当投げられているわけですけれども、この電気もりというのは質的に高い武器とは解釈されないのですか。
  119. 伊藤圭一

    伊藤(圭)政府委員 御承知のように、自衛隊が持っております武器というのは直接侵略に対応するようなきわめて高度な武器でございます。したがいまして、確かに新しい武器ではあったかもしれません。しかし、現在の警察力は、御承知のように一九六〇年代以降きわめて部隊としての行動を重ねるような訓練もできているわけでございます。したがいまして、警察が持っている武器、そういったもので対処できるのではないかというふうに判断をいたしております。
  120. 春田重昭

    春田委員 本日の新聞におきまして、政府部内で過激派対策の一つとして団結小屋、要塞の建造物撤去について新立法を考えている、このように大きく報道されているわけでございますけれども、この新立法以外に、周辺警備に対する立法化、警察官の職務権限の強化、それらを含めた治安立法の動きがないのかどうか、長官に対して何らかの打診はなかったのかどうか。
  121. 金丸信

    金丸国務大臣 私には、全然打診はありません。
  122. 春田重昭

    春田委員 いずれにいたしましても、今回の事件を通してさまざまな論議、が交わされるわけでございますけれども、過去に公権力の強化による暗い歴史があるだけに、いま来た道を逆戻りするようなことがあっては絶対ならない。私は、このような点で長官には慎重な行動、対処をしていただきたい、このことを要請しておきます。  続きまして、竹島の問題でございます。きょうは外務省の方がお見えになっておると思いますので、最初にそちらの方にお聞きしたいと思いますが、この竹島の領有権というのは、歴史的な経緯を踏まえてわが国の領土として私は認識しておるわけでございますけれども、現在韓国軍が数名いわゆる占拠していると聞いておりますけれども、こういう事実があるのかどうか。それが事実とすれば、これは不法占拠として見るのかどうか、お答え願いたいと思います。
  123. 佐藤嘉恭

    ○佐藤説明員 お答え申し上げます。  先生御指摘のとおり、竹島は歴史的事実に照らしましても、また国際法上もわが国の固有の領土である、こういうことは明白でございまして、政府といたしましては終始一貫この態度を貫いてきたわけでございます。他方、遺憾ながら韓国政府当局によります竹島の不法占拠が続いておるということも事実でございます。私どもといたしましては、海上保安庁等の御協力も得まして、竹島の海上周辺の巡視などを行い、また繰り返し韓国政府に対しまして文書または口頭によりまして抗議を行っておるということでございます。
  124. 春田重昭

    春田委員 長官にお尋ねしますけれども、かつて分科会におきましてわが党の委員の質問に対しまして、この竹島には自衛権は及ぶのだ、したがってそれを行使するとともに、日本の安全保障上支障がないとは言えない、このように御答弁されたと聞いておりますけれども、この意味はどういう意味なのか。できましたら、ひとつ具体的にお答え願いたいと思います。
  125. 金丸信

    金丸国務大臣 この問題につきましては、ただいま外務省からもお話がありましたように、日本の領土であることは当然でありますが、平和的手段でこれを解決したいということでございますから、防衛庁はこれに対処する考え方は持っておらない、こういうことであります。
  126. 春田重昭

    春田委員 ただいま外務省の方がお答えになったように、年に一回、夏ごろですか、海上保安庁が巡回しているらしいのですね。島の近くに近づいたら、またその岸壁に近づこうとしたら韓国軍が発砲するということも聞いておりますし……。  で、話し合い、平和的手段によって解決していきたいということでございますけれども、韓国側は、少数でございますけれども軍隊がおり、いろいろな建物が毎年毎年、巡回するたびにふえていっているそうですね。いわゆる既成事実をつくろうとしておる。となれば、過去五十三回ですか、話し合い、いろいろな抗議もあったと聞いておりますけれども、それでもいままで解決しないし、膠着状態が続いておるわけですよ。  こういういわゆる膠着状態のままであっても、防衛庁としてはあくまでアクションといいますか行動は起こさないのかどうかですね。どうですか。
  127. 金丸信

    金丸国務大臣 防衛庁といたしましては、アクションを起こしてはいけないという考え方を持っております。
  128. 春田重昭

    春田委員 そうしたら、外務省の方にお聞きしますけれども、いろいろな抗議ないし話し合いを従来からしてきたということでございますが、この前の分科会ないし委員会の答弁では、外務大臣は、秋ごろ日韓閣僚会議をやるのでその席上に正式に議題としていきたいということでおっしゃっておりますけれども、大体いつごろなんですか。また、その前にはないのか、秋まで待つのかどうか。その点、あわせてお答え願いたいと思います。
  129. 佐藤嘉恭

    ○佐藤説明員 先般外務大臣がお答えになりました趣旨は、私どもの了解しておりますところは、竹島問題をあくまでも平和的手段で解決したいという外務大臣の就任以来の所信をお述べになったものというふうに理解しておるわけでございます。  去る二月に韓国の外務大臣が来られまして、その際、園田外務大臣とも会談を持っておられますが、園田外務大臣の方から竹島の問題についてお取り上げになったということもございます。  また、まだ日にちは決まっておりませんけれども、恐らく夏過ぎにとり行われるだろうと予定されている閣僚会議におきましても、いま御説明申し上げましたような大臣の所信の表明はあろうかというふうに考えております。
  130. 春田重昭

    春田委員 そうしたら、秋までは正式な話し合いというのは持たれないわけですね。
  131. 佐藤嘉恭

    ○佐藤説明員 外務大臣レベルのものはなかろうかと思いますが、私ども事務当局といたしましては、機会あるごとにこの問題を、先ほども申し上げましたように口頭または文書で抗議しているような次第でありますので、その点を御理解いただきたいと思います。
  132. 春田重昭

    春田委員 そこで、五月、福田総理がカーター大統領との首脳会談でお出かけになるわけでございますけれども、いわゆるこの二国間の話し合いが平行線でずっと来ているという中において、第三国、第三者の仲介、特にアメリカの仲介というものはあり得ないのかどうか。どうでしょうか。
  133. 佐藤嘉恭

    ○佐藤説明員 先生もよく御承知のことかと思いますが、竹島問題につきましては、日本と韓国との間で合意されております紛争の解決に関する交換公文というのがございまして、そこに定めるところの手続に従って、まず日本と韓国との外交上の経路を通じて解決していく、努力していく、こういう約束ができておりますので、私どもといたしましては、この交換公文の精神にのっとりまして日韓間で粘り強く外交交渉を進めてまいりたい、このように考えております。
  134. 春田重昭

    春田委員 この交換公文の中の「両国政府が合意する手続に従い、調停によって解決を図るものとする。」ということは、いわゆる国際司法裁判所の調停に応じて和解の方向に行く、このように理解していいのですか。
  135. 佐藤嘉恭

    ○佐藤説明員 ただいま申し上げました交換公文の中には、先生の御指摘になったような手続が定めてあるわけでございますが、現状におきまして韓国側がこの調停手続に応じてくるということは当面考えられないような状態、はなはだ遺憾ではございますけれども、そういうような状況にございますのも、これまた事実でございます。したがいまして、私どもといたしましては、またもとに戻るわけでございますが、外交経路を通じて日韓間でさらに話し合いを続けていくということが現在最も現実的なアプローチではないかというふうに考えております。
  136. 春田重昭

    春田委員 裁判もやらないということですね。そうしたら、いままでも何回か話し合いをやってきているわけでしょう。平行線のままに来ている、膠着状態のままになっている。大体どういう条件が出た場合、双方が一つのテーブルに着いて、そしてその話し合いが本当に一つの打開の方向にいくのか。その背景といいますか、その点はどのようにお考えになっていますか。
  137. 佐藤嘉恭

    ○佐藤説明員 現状におきましては、先生も十分御承知のとおり、なかなか調停という手続にも乗ってきませんし、あるいは国際司法裁判所というものにつきましても韓国側が応訴をするという条件がございません。これは遺憾なことではございますけれども、私どもとしてはともかく粘り強く外交交渉を続けていく。あるいは韓国側の事実上の不法占拠、その内容が一層強められると申しますか、新たな構築物がふえるとか、そういうことがないように配慮をしていきたいと思いますし、かかる観点に立ちまして外交交渉を続けていくということが最も現実的な方法であろうか、この態度を強く進めていくしか遺憾ながらいま方法はない、こういうふうに考えております。
  138. 春田重昭

    春田委員 わからないこともないのですが、従来からも粘り強く話し合いの努力をなさっているのですから。私がお聞きしたいのは、従来からも日韓間というのはいいムードではありません。それがやはりいいムードになってくるという条件が芽生えれば、この竹島問題も一つの解決の方向に行くんではなかろうか。それがたとえば、いま日韓大陸棚法案というものが今国会に上程されておりますけれども、いま衆議院の委員会でつるされておりますよ。これらが本会議を通った場合には、こうした竹島問題も一つの解決の方向に行くんではなかろうかという見方もあるわけですが、その点どうですか。
  139. 佐藤嘉恭

    ○佐藤説明員 先生御指摘の日韓大陸棚協定国内関連法が通った場合に、韓国側が竹島問題につきましてどういう態度に出てくるかという点につきましては、私ども、必ずしもこれによって韓国側の態度が急に変わってくるというようなことを予想し得る材料が残念ながらいまのところないものでございますから、その点非常に苦慮するわけでございますけれども、私どもといたしましては先生のいま御指摘になりましたようなことにも留意いたしまして、なお一層外交交渉を進めてまいりたい、かように考えております。
  140. 春田重昭

    春田委員 最後に、従来の領有権、自衛権の問題以外に、最近新聞発表になったわけでございますけれども、韓国が二百海里の実施を検討するということで報道されておりますけれども、また新たな問題がこれによって出てくるのではなかろうかと私は恐れるわけでございます。これによりますと、韓国筋は、三月の「二十八日からジュネーブで始まった第三次国連海洋法会議第七会期の結果が出次第、二百カイリ経済水域の実施時期につき検討、決定する方針を決めたことを明らかにした。」こうなっているわけですよ。そうしたら、従来の領有権、自衛権の問題に新たに漁業権という問題が出てくるわけでございますけれども、こうしたことを考えれば、従来も粘り強く一生懸命努力されておりますが、従来のペースのままの話し合いでいいのかどうか、その辺相当懸念するわけでございますけれども、何か新しい打開策がないかどうか。その辺何かないですか、粘り強くやるというのではなくして。  この二百海里説につきましては、そちらの方に情報が入っていると思いますけれども、あわせてどのようにお考えになっておるか、御答弁願いたいと思います。
  141. 佐藤嘉恭

    ○佐藤説明員 第一点の、韓国によります二百海里の設定の問題でございますが、私どもも報道によりまして、韓国側が海洋法の会議の動向を見きわめながら考えていきたいという報道があることは承知しております。ただ、韓国政府の方から私どもに二百海里設定の見通しについて詳しい通報と申しますか、連絡というものはないわけでございます。  それから第二点、二百海里を設定した場合に、漁業権の問題その他いろいろ海に関連します問題が出てくるという御指摘は、先生の御指摘のとおりだろうと思います。私どもといたしましても、日韓間のそういう全般の関係に留意いたしながら、この竹島の問題につきましても対処してまいりたいという気持ちでございます。
  142. 春田重昭

    春田委員 大臣の時間がないそうでございますので、一点だけ確認して、それの答弁で御退場願いたいと思います。  最近防衛庁としては、あのアメリカの安保ただ乗り論ということに対する批判をかわそうという意味で、日米オフセット協定の締結ないしそれに近い体制をつくる動きがある、このように新聞報道がされているわけでございますけれども、その真偽のほどはどうなのか。
  143. 金丸信

    金丸国務大臣 まさにそれは偽だと思います。
  144. 春田重昭

    春田委員 長官、結構です。  それでは、事務局の方で御答弁願いたいと思いますが、全くそういう歯牙にもかけないという長官の答弁でございますけれども、この新聞以外にも最近の月刊誌「財界」でありますけれども、そこにも同じような記事が載っておるわけですよね。全く防衛庁としても検討もしてないし話題にもなってないのが、非常に具体的に報道されておるわけでございますけれども、その点がどうも私は不思議でならないわけでございますが、全然検討もしないとなるとそれ以上聞く必要もないわけでございますけれども、この報道というのは一つの問題提起として出されていることで、非常に興味ある記事になっておりますけれども、この新聞記事を見て防衛庁としてはどのようにお考えになっておるのか。
  145. 伊藤圭一

    伊藤(圭)政府委員 御承知のように、アメリカの政府はそういう態度をとっておりませんけれども、議会あるいは国民の中に、日本が防衛ただ乗りをしているというような意見があるというのは事実のようでございます。したがいまして、そういうことを背景といたしますと、現在西ドイツとアメリカがやっているようなオフセット協定というようなものも考えられるのではないかというようなお考えのもとに記事になっている点もあるかと思いますけれども、現実の問題として、私どもはこういったオフセット協定というようなものは考えていないわけでございます。  ただ、いわゆるニクソン・ドクトリン以来、アメリカという国は、それぞれの国が自分の防衛について責任を持ってほしいという気持ちを持っております。したがいまして、わが国がいわゆる自衛力として必要なものを改善していく努力をしているということは、それなりに評価しているというふうに考えておるわけでございます。
  146. 春田重昭

    春田委員 続きまして、特別調達資金という問題があるわけでございますけれども、この資金は米軍の需要に応じて物資及び役務の調達となっておりますけれども、物資の調達とはどういうことなのか、また役務の調達とはどういうことを示すのか、具体的に御説明願いたいと思うのです。これは施設庁の方ですね。
  147. 菊池久

    ○菊池政府委員 役務関係につきましては、駐留軍労務者の提供だけでございます。
  148. 春田重昭

    春田委員 物資の調達はないんですか。
  149. 奥山正也

    ○奥山政府委員 物資の面におきましては、油の調達がございます。
  150. 春田重昭

    春田委員 燃料調達はどの基地ですか。
  151. 奥山正也

    ○奥山政府委員 硫黄島及び南鳥島におきます米軍施設に対する燃料の調達でございます。
  152. 春田重昭

    春田委員 その資金の枠と運営、あわせて事務の取り扱いについても御説明願いたいと思います。
  153. 奥山正也

    ○奥山政府委員 米軍からそういう燃料調達の依頼がございましたら、その委託を受けまして防衛施設庁の方でその油を調達いたしましてそれを米軍に提供する、その後で米軍からその経費が償還されるという手続でございます。
  154. 春田重昭

    春田委員 その資金の枠と事務の取り扱いについても御説明願います。
  155. 奥山正也

    ○奥山政府委員 特別調達資金は一般会計に所属する資金でございまして、その性格は、契約に基づく調達を資金で立てかえ払いをいたしまして、その後に米側から償還を受けるという手続になっておりまして、一定額の資金が常に回転する形態をとっておりまして、資金の受け払いも歳入歳出外として取り扱われるということでございます。  枠は七十五億円でございます。
  156. 春田重昭

    春田委員 事務の委任ということが特別調達資金設置令の第五条にありますけれども、地方公共団体に対する委託でございますけれども決算額の中にも労務管理事務費の中で地方公共団体に対する委託費というのが設けられております。そこで、この委託費の支出といわゆる償還額の決算額でございますけれども昭和二十六年から特別調達資金が発足しておるわけでございますけれども、二十六年からは大変でございますから、昭和四十三年度からの支出額と償還額、この額について御説明願いたいと思います。
  157. 菊池久

    ○菊池政府委員 昭和四十三年度の支出額でございますが、十億八百万でございます。それに対します償還額が九億七百万。それから四十四年度が十一億三千九百万、それに対しまして償還額が九億七千四百万。それから四十五年度は十二億五千万に対しまして償還額が九億二千四百万。四十六年度につきましては十一億三千二百万の支出額に対しまして償還額が八億五千八百万でございます。四十七年度につきましては、十六億九千六百万の支出額に対しまして償還額は、これは暫定償還額でございましていまだ最終決定を見ていないのでございますが、現在の償還額が六億五千万でございます。四十八年度につきましては、十八億九千二百万の支出額に対しまして償還額が五億六千八百万でございます。四十九年度につきましては、二十三億八千九百万の支出額に対しまして償還額が四億七千二百万。五十年度におきましては二十五億二百万の支出額に対しまして償還額が四億一千二百万。五十一年度は二十四億一千八百万の支出額に対しまして償還額が三億六千一百万でございます。四十七年度から五十一年度にわたります償還額につきましては暫定償還額でございまして、まだ最終的な償還を受けていない段階でございます。
  158. 春田重昭

    春田委員 そこで、四十二年度から四十六年度までの決算を見てみますと、支出額に対する償還額にかなり差がございます。日本政府が一時立てかえ払いとして出すわけでございまして、後で米軍の方へ請求する、米軍の方がそれを調査して償還するわけでございますけれども、四十三年度はただいま御説明があったように、十億八百万に対して九億七百万、一億一百万の差が出ているわけでございます。四十四年度、四十五年度、四十六年度もかなりの差があるわけでございますけれども、その理由はいかなる理由なのか、御説明願いたいと思います。
  159. 菊池久

    ○菊池政府委員 ただいま先生お話ございました関係地方公共団体に対します委託費の関係でございますが、関係地方公共団体に対します労務管理に要します経費でございますが、これは日米間の労務基本契約に基づきまして日本側が処理することとされております経費につきましては米軍側から償還を受けておりますが、その中にさらに駐留軍関係の離職者に対します特別給付金の給付事務その他の日本側独自でやっております施策がございます。そういうものが一切含まれることになっております関係上、日本側の支出額と米側の償還額との間に差がございます。これは労務提供契約に基づきます日本側の提供事務につきましては、日米間の協議の結果としまして償還を受けることになっております。さらに離職者対策等にかかわる経費につきましては、性格上米側から償還を受けられないという性格がございまして、それが主な差でございます。
  160. 春田重昭

    春田委員 そこで、全部が全部償還されないという説明がございましたけれども、率からいっても年々償還率が下がっていっておるわけですね。四十六年度まで清算されたこの決算額を見てみましても、四十三年は九〇%、四十四年は八五・五%に下がっている。四十五年が七三・九%に下がっている。四十六年が七五・八%と若干上がっておりますけれども、四十三年から比べてみれば相当なダウンになっております。これはどういう原因なんですか。
  161. 菊池久

    ○菊池政府委員 ただいまの年度におきまして四十三年度と大分差があるという御指摘でございますが、これは主たる原因は日本側におきます労務対策経費、離職対策経費増加等によりますのが主でございます。
  162. 春田重昭

    春田委員 しかし、ここで駐留軍従業員の推移を見ますれば、四十三年五万六百四十八人おられた方が四十四年には五万五百十一人ということで、百人しか減ってないわけです。離職者はわずか百名なんですよ。それにしては率が下がり過ぎているのじゃないですか。  私が言いたいのは、安保ただ乗り論という形で最近防衛分担を日本側に押しつけようというアメリカ側の意向が非常に強くなってきているわけでございます。五十三年度からは、基地労働者の健康保険だとか厚生年金とかいうものを日本側が一部負担しようということで、五十数億円計上されております。こういうものがこのあたりから出てきているんじゃないかというおそれを私は持っているわけでございますけれども、そういうアメリカ側のごり押しといいますか圧力といいますか、そういうもので償還額が年々下がっていっている、こういう点は考えられませんか。
  163. 菊池久

    ○菊池政府委員 先生の御指摘になっております点につきましては、先ほど御答弁申し上げたような内容でございまして、今度五十三年度から社会保障関係経費を分担するということになりましたのは、まさに米軍のごり押しということではございませんで、ここ数年給与改定につきましては大変労務者にしわ寄せがいきまして、国家公務員と同時、同率の改定を行うというふうな趣旨で交渉をやっておりましたが、大変それがおくれまして翌年度に持ち越すという事態にまでなっております。これは人件費の高騰ということもございますが、さらに、米側におきます経費の削減等も影響していると思います。  そこで、われわれが考えましたのは、従業員の福利対策、それから雇用の安定ということを念頭に置きまして経費分担を行い、幾らかでも従業員の福利厚生並びに雇用の安定を図ろうという趣旨でございまして、決して米軍側のごり押しということに屈したわけではございません。
  164. 春田重昭

    春田委員 それにしては償還年数がかなりかかっているわけですよ。昭和四十三年度は、四十七年度までということで五年かかってやっと返されている。四十四年度におきましても四年間、四十五年度につきましては三年間ということで、確かに精算するには相当な日数がかかると思いますけれども関係都道府県というのは十二県でしょう。十二県の関係都道府県の調査をするのにそんなにかかるかどうかというのが、私は不思議でならないわけです。  米軍に一年間の合計額を出して要求するのは大体何月ぐらいなんですか。それで、米軍側がそれによって調査するのはどれくらいの期間でしているのですか。
  165. 菊池久

    ○菊池政府委員 償還が大変おくれております点についての御指摘でございますが、関係地方公共団体におきまして要しました労務管理関係経費につきましては、原則としまして毎会計年度終了いたしますと、百二十日以内に、履行の状態によりまして日本側が要しました経費に関します経費調書というものをつくりまして米側に支出調書を提出するわけでございますが、その後米側は各関係機関、これは三軍がそれぞれ関与しています関係上、関係します各軍がそれぞれ調査等を行いまして、さらに契約担当官、それから各軍の司令部等を通じまして諸般の手続を経まして、その後に日米間の調整を図るというふうなたてまえになっております。そういうことで、精算に大変日時を要している状態になっておりますが、非常に多岐な米軍部内の調整機能ということで実際上の日時を要している次第でございます。  しかしながら、先生御指摘のとおり、償還につきましては、長い年度におきましては五年間もかかっているという実態がございますので、まさに五十三年度からは日本側がこの労務管理費経費を持つことになりましたので、五十二年度までの分につきましては、鋭意米軍と早急に償還の実現を図るように交渉を開始している次第でございます。
  166. 春田重昭

    春田委員 大体百二十日以内に調書を出して、それから米軍が調査したとしても、せいぜい十二県ですから、一県一ヵ月としても一年間で終わってしまうわけです。一ヵ月もかからないと思うのです。そういう面からいったら、私はこうしたやり方は米軍の意識的なやり方と思わざるを得ないわけですよ。それが今回こうして労務費の一部負担という形で返ってきたということで“いままでも話し合いを行っていたけれども、それが正常な話し合いであったかどうか非常に疑わしい。法的にも特別調達資金というのは厳格に、明確に立てかえて、後で米軍は支払うということになっているわけですから、給与等においては二ヵ月ぐらいで償還されているわけでしょう。ところが労務管理費だけは四年も五年もかかって非常に遅くなっているし、償還額も非常に少なくなってきている。当然そういう疑いを持つわけですよ。そういう点で今後もっと強気に交渉していただきたい、このことを要望いたしまして、私の当面の質問は終わりたいと思います。
  167. 楯兼次郎

    楯委員長 午後三時再開することとし、この際休憩いたします。     午後二時十六分休憩      ————◇—————     午後三時五分開議
  168. 楯兼次郎

    楯委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  質疑を続行いたします。春田重昭君。
  169. 春田重昭

    春田委員 長官にお尋ねしたいと思いますが、防衛費の問題でございます。  防衛の費用というものはGNP一%というものが国防会議を経て五十一年の十一月五日ですか、閣僚会議で決定されたそうでございますけれども、五十二年度予算では〇・八%に低下していたものが、五十三年度長官は一%を強く主張されたそうでございますが、結果的には〇・九%になったそうでございます。最近、防衛費GNP一%突破論というものが出ておりますけれども、どのような御感触を長官は持っておられますか、お尋ねしたいと思います。
  170. 金丸信

    金丸国務大臣 五十三年度予算は五十二年度の八月ですか、概算要求というものをやるわけであります。そのときは私が防衛庁長官じゃなかった。しかし、当面一%以内と三木内閣のときの国防会議で決まったようでございますが、この一%問題について、私は一%なんということを声を大にして言ったわけでもありません。予算折衝に行って、いわゆる概算要求だけのものをもらってくることだけは大臣としてやらなければならぬ、こう思って一生懸命にやった。  また、GNPを取っ払えというような意見もありますが、このGNPという問題は、当面一%というものは、いままで何年か積み上げてきた結果、当面一%でいけるという考え方が出ておるわけでありますが、その問題につきましては私が多くを語るより、当時の予算編成をした経理局長がおりますから、経理局長から説明させます。
  171. 原徹

    ○原政府委員 五十三年度予算、GNPの〇・九である、そういうことで、例のF15とかP3Cを買うことに関しまして将来一%を超えるんではないかという御議論が予算委員会等で大分ございました。私ども国防会議で当面一%以内でいくというときに、まず中身が、防衛計画の大綱によりますと、部隊の規模は余りふやさないという前提に立っております。AEWとか若干のものはございます。  そういたしますと、防衛関係費の中で五五%を占めますのは人件費でございます。人件費がどうなるかということが大変大きな要素でございます。ことしの五十三年度予算で申しますと、人件費の割合は五四・五%ぐらいになっておりますが、五十一年度のときには五六%であった。それが若干減ってくるわけであります。先を見ますると、やはり人件費の割合は若干ずつ減るんじゃないかというふうに思いますが、そういたしますと、残りは維持費というのがあるわけでございます。  その前提といたしまして、五十一年に一%以内を決めましたときの背景として、例の五十年代前期経済計画というのがございました。実質六%これから成長が続くんだ、そういう前提がございました。そういうことで考えれば、人件費がそういうことでございますから、GNPと同じだけ防衛費が伸びるといたしますれば、若干ずつ人件費の割合は落ちていく。それから維持費についてもそれで大体賄える。そういうことになってくるわけでございますので、F15やP3Cを買いましても、これも計算があるわけでございますが、過去におきましてP2JそれからF4という戦闘機、それを四十年の途中からずっと買っておりました。そのときにその二つの種類の飛行機に防衛関係費の七・三%を使ったわけであります。それが余り大きくなれば、これは確かにはみ出すという問題になるわけでございますが、仮にいまのGNPと同じだけ防衛費が伸びるということは、いまの〇・九%が続くということでございます。そういうことでやってみますると、防衛関係費の六・八%ぐらいをこの二つの飛行機の調達に割けばよい、大体そういうことになるわけでございます。それで、御案内のように〇・九%と一%の間には、五十三年度予算で申しまして二千億のすき間があるわけでございます。実質六%成長するということになりますと、そのすき間の方も成長するわけでございますから、まあ一%を超えないでやっていけるだろう、そういうふうな見通しを持っているわけでございます。
  172. 春田重昭

    春田委員 長官、私が最初に聞いたのは予算の経過でなくして、一%というガイドライン、これは今後ともかたく守っていくのか、それは将来一%を突破するかもしれない、こういう情勢に合わせて変わっていくのか、その基本的なことをお尋ねしているんですよ。
  173. 金丸信

    金丸国務大臣 当面ということですから、当面の解釈をどのようにおとりになるかはわかりませんが、私は当面というのは、いわゆる二、三年も当面、四、五年も当面。しかし、防衛費というものは、国民にえらい負担をかけるようなことがあってはならぬということだけは確かだと思いますし、また昔の軍隊のような、日本の国だけの力で守るなんていうことはできない。国際社会の中で、日米安全保障条約というものもあることでございますから、その強力な抑止力によってもっとやるべきことがあるのではないか。  たとえて言えば、いわゆる近隣諸国に平和外交を進めるためには経済援助をするとか、それも平和外交の上の大きな防衛だと私は思うのですよ。そういうようなものにできるだけ使って、われわれの自衛隊というものはその内容を近代化して、効率のあるもの、そして金はできるだけかけない、こういうような考え方で、当面はとこう政府が言っておるのは、少なくも五十八、九年ごろまではよほどの事態が変化されない限りは持っていくように努力すべきだ、またそのような考え方防衛庁では持っておるわけであります。
  174. 春田重昭

    春田委員 ことしの一月三十一日の新聞報道では、五十七年度まではGNP一%を維持できるだろうという報道もされております。この点どうか。  それと、長官は当面ということで大体五十八、九年とおっしゃいましたけれども、前期経済計画では五十七年度まで出ているわけですよね。この経済成長は大体実質六%と読んでGNP一%以内ということになっているわけでございますが、経済成長が六%以下になった場合は当然一%突破ということも考えられるのか、その点あわせて御答弁願いたいと思います。
  175. 原徹

    ○原政府委員 先ほどお答えいたしましたように、そういう背景と申しますか、実質六%が続くのだということで、前期経済計画は五十五年まででございましたが、最近経済企画庁が出しましたのは、五十七年ぐらいまではやはり実質六%でいくのだ、そういうことでございます。  それで、私どもが経済見通しをやるわけではございませんので、経済企画庁がそういう見通しを持っているわけでございますから、そういう見通しでいくとするならば、一%を超えることは多分あるまいというふうに私は思っております。それで、成長率が変われば自然GNP比率は変わるわけでございますが、GNPの方もそういう見通しなものでございますから、私どもも一%を超えることはない、そういう見通しになるわけでございます。
  176. 春田重昭

    春田委員 これは将来のことでございますので、大臣に聞いても確たる回答が出るかどうかわからないわけでございますが、将来GNP一%が崩れる場合は、これは国民のコンセンサスが非常に必要ではなかろうかと私は思います。最近、総理府で自衛隊に対するアンケートをとられたそうでございますけれども、これを変える時点で国民のそういうコンセンサスを得る必要があると私は思いますが、そういうお考えは持っておられますか。
  177. 金丸信

    金丸国務大臣 この問題は国民に理解を得ることは当然でありますし、国民に理解を得るということは、国会の先生方の理解を得るということであろうと私は思っております。
  178. 春田重昭

    春田委員 それでは、時間の都合で次へ進みます。  この問題は確認しておきたいわけでございますが、陸上自衛隊に関して、現行の十三個師団の再編成が検討されるということで一部報道されたわけでございますけれども、その後の経過はどのようになっているのか。
  179. 伊藤圭一

    伊藤(圭)政府委員 現在、陸上自衛隊は十三個の師団と、それから沖繩に一個の混成団を持っているわけでございます。それで、防衛計画の大綱でお決めいただきましたのは、師団といたしましては、この十三個の師団の中から第七師団、これは機甲師団で、他の師団より戦車をたくさん持っております。現在、七十数両だったと記憶いたしておりますが、それと、第一戦車団というのが北海道にございまして、これが二百二、三十両戦車を持っておりますが、これを合わせまして機甲師団を一つつくるということと、それから、その機甲師団をつくりますことによりまして定員的に余剰が出てまいります。これをもちまして、現在熊本にございます第八師団、これが乙師団になっておりまして、七千名の定員の師団でございますが、これを九千人の甲師団に改編するということ。それから、現在四国には旅団とか師団とかいう単位のものがございません。したがいまして、四国に一個混成団を編成するということを考えております。それでこの編成につきましては、現在検討いたしておりますが、一応五十五年度を目途に改編を進めてまいりたいというふうに考えておる次第でございます。
  180. 春田重昭

    春田委員 当時の防衛庁長官は坂田さんですが、坂田長官と当時の三好陸上幕僚長、このいわゆる文官と制服組の意見が対立していたということで報道されているわけでございますけれども、これは現在どのような方向で進んでいるのか。対立したままで来ているのか、その後話し合いがなされたのかですね。
  181. 伊藤圭一

    伊藤(圭)政府委員 私どもは、大臣と幕僚長の間で対立しておったというふうには考えておりません。いろいろな意見がその検討の過程においてあったということは事実でございますが、第七師団を機甲師団にすることによりまして定員的に余剰が出てまいります。それで、これをどういった編成の部隊に加えるべきかということについての議論はなされましたけれども一つには、隊員の生活向上のための施策という一面も確かにあったわけでございます。  といいますのは、御承知のように九州出身の隊員が非常に多うございます。それで、現在陸上自衛隊といたしましては、一番多くの人員が北海道に集まっておりますので、退職近くになりますと、郷里へ戻って再就職の道を選びたいという隊員もやはりいるわけでございまして、九州関係定員をオーバーするような状況にもあるわけでございますので、そういった隊員の生活を考えるということも一つございますし、また、防衛計画の大綱でお決めいただきました、国土の中にすきのないような適正な配置という観点からいたしましても、第八師団を甲師団に改編する形によりまして、平時におきます災害派遣その他についてもできるだけ早く必要な部隊が現地に行ける体制をとれると考えているわけでございます。
  182. 春田重昭

    春田委員 さらに従来から内局と陸海空の三自衛隊、また統合幕僚会議等を含む機構改革も検討している、このようにも聞いておりますけれども、現況について御説明願います。
  183. 夏目晴雄

    ○夏目政府委員 防衛庁の中央組織は、昭和二十九年の防衛庁発足以来相当な年月がたっているわけでございます。その間において若干の変動はございましたが、基本的な枠組みといいますか骨組みはほとんど変わっていないわけでございます。ところが一方、防衛庁内外のいろいろな問題あるいは自衛隊の規模、内容その他も相当変化してきているということから、もう一度防衛庁の中央組織を見直してみよう、内局はどういう仕事をすべきなのか、統幕との関係はどうあるべきかを広範に検討し見直しをする必要があるのではないかということで、本年の七月をめどにいま事務的な検討を進めている段階でございます。
  184. 春田重昭

    春田委員 次に、自衛隊の定数の問題でございます。  総定員方式を取り入れたいという意向があると聞いておりますけれども、この問題についてはどのような検討がなされているのか。
  185. 伊藤圭一

    伊藤(圭)政府委員 自衛隊定員につきましては、陸上自衛隊は十八万人でございます。海空が四万五千人程度で、これは丸い数字はないわけでございます。と言いますのは、陸上自衛隊の能力は、編成によります十八万の定数によっていわゆる戦う姿勢という形で考えられておりますので、編成上十八万人の定数というものを持っているわけでございますが、海空につきましては、艦艇であり航空機であり、こういった装備品を動かすことによっての防衛体制をとっておりますので、それを動かすための人員が現実にどのくらい定数的に必要かということによって、艦艇が新しく更新され飛行機が新しい性能のものにかわることによって、それぞれの定数が変わってまいるわけでございます。  したがいまして、丸く定めることはきわめてむずかしいわけでございますが、シビリアンコントロールの立場から、大体どれぐらいの規模の陸海空自衛隊を持つかを人員的に総定員数という形であらわすのも一つのコントロールのあり方ではないかという観点から、検討をしているわけでございます。  いま申し上げましたような理由で、陸上自衛隊については比較的一つのターゲットを示していただくことが可能でございますけれども海空につきましては、何と言いましても艦艇、航空機が主力になっておりますので、防衛計画の大綱で要撃戦闘のための十個飛行隊あるいは防空戦闘のため合わせて十三飛行隊、あるいは艦艇につきましては護衛艦約六十隻というような数字はお決めいただいておるわけでございますが、それに伴って何万人とか何万何千人というのを事務的に積み上げるのはきわめてむずかしい問題があるわけでございまして、そういった点を含めまして現在研究をしているというのが実情でございます。
  186. 春田重昭

    春田委員 自衛隊の現員数は定員に相当足らないわけでございますが、先ほどの質問においても充足率ということがあって、必ずしも現員が定員に達していないという御説明がございましたけれども陸上自衛隊の場合、充足率が八五・七五%になっておりますね。これを絶対数とすれば十五万四千三百五十名です。ところが二月末現在の現員は十五万二千百四十五人ということで二千名も不足しているわけでございます。この点から言って、隊員の待遇が相当悪いのではなかろうか。二年任期でございますので、中途退職の人が多くなってきているのではなかろうかという考え方を持っております。こうした総定員方式を検討するのも結構でございますが、その前にもっとやるべきことがあるのではなかろうかと思いますが、この原因がそういう待遇の面でないのかどうか、お答え願いたいと思います。
  187. 伊藤圭一

    伊藤(圭)政府委員 いま先生がおっしゃいましたように確かに陸上自衛隊は八五・七五、五十三年度は八六%を充足率として予算を計上しておるわけでございます。ただ、海空につきましては九六%でございますので、御承知のように海空につきましては定員管理上必要な欠員という程度を余り超えていないと私どもは判断しております。  隊員がやめていく原因でございますが、これにつきましては人教局長から御説明いただくことにいたします。
  188. 渡邊伊助

    ○渡邊(伊)政府委員 先生おっしゃいますように、中途退職率でございますけれども、これは最近の経済状況等によりまして、従来は一任期を終了するまでに至らず退職する者が非常に多うございましたけれども、処遇改善等の施策を講じた結果、また特別退職手当の創設ということもございまして、現在中途退職をする者は、二任期あるいは三任期に至る途中で退職する者が非常に多うございます。     〔委員長退席、原(茂)委員長代理着席〕  おっしゃるように、私どもはこれに対する対策として、自衛隊の生活が魅力あるようにということで、従来から処遇改善等について努力を重ねているところでございます。
  189. 春田重昭

    春田委員 自衛隊の停年制の問題でございますが、この問題も五十年の九月に人事制度調査会が報告を出しております。この報告の中では延長するようにと出ておりますけれども、この経過はどうなっておるか。時間がないので簡単に。
  190. 渡邊伊助

    ○渡邊(伊)政府委員 人事制度調査委員会におきまして報告が出まして、それ以来部内において慎重に検討いたしておるところでございます。これは一度制度を変えますと取り返しのつかないことでして、慎重に対処しなければならないことでございます。  いろいろ問題点がありまして、たとえばいま若年停年制をなぜとっているかということは、一番大きな理由としては、部隊の精強性を維持するということでございます。したがいまして、停年を延長することによって部隊の精強度にどのような影響があるかということも考えてみなければなりません。また、停年を延長することによって昇任の率が低下してまいります。これも慎重に対処しなければならないということで現在検討いたしておりますが、ただいまの腹づもりとしては、ことしの夏ごろまでには何らかの方向を見出したい、こう考えております。
  191. 春田重昭

    春田委員 確かに三曹から二佐までは五十年という形になっているわけですね。全体の九割だと聞いております。この方たちを延長すれば相当大きな作業になるのではなかろうかと思いますが、しかし人間にとって五十歳というのは最も働き盛りなんですよ。精強の問題もあると思いますけれども、現在自衛官の現員は定員を満たしておりませんし、先ほど言ったように充足率までも達していないわけですよ。そういう点から言ったらかなりの余裕があるわけでございまして、この延長が即大きな混乱には私はつながらないと思いますけれども、大体ことしの夏までに結論を出そうということでございますので、民間企業ではいま五十五歳から六十歳まで延長しようという大きな動きがあるときだけに、こういう処遇、待遇等の改善も必要ではなかろうか、こういう点を意見として述べておきます。  さらに、情報収集または報告体制の件でございますけれども、古い話になりますが、五十一年の九月の六日ですか、ソ連のミグ25戦闘機が強制着陸したわけでございます。そのときの領空侵犯の報告が一時間半かかったというわけですね。最近の卑近な例で言えば、ソ連の原子炉衛星の墜落の事件がありました。このときも四日間も事務段階で握られたままで、防衛庁の最高である長官に知らされるのは、そのように非常におくれていた。こういうことから、非常に情報収集体制がいまの防衛庁では完全ではないんではないかということが言われておるわけでございます。  そこで、聞くところによりますと、何か情報本部というのをつくる動きがあるやに聞いておるわけでございますけれども、その辺は検討されているのですか。
  192. 伊藤圭一

    伊藤(圭)政府委員 この専守防衛の立場からいたしますと、情報というものはきわめて重要でございます。いま先生から御指摘がございましたが、情報を収集し、分析し、そして的確に責任者である長官に御報告をするこの体制というものは、きわめて重要だと私どもは考えております。しかしながら、この体制をつくっただけでなく、それをうまく運用するということが大事ではないかというふうに考えておりまして、先ほど夏目参事官の方から御答弁申し上げましたように、中央機構の検討の一環としてこの情報体制のあり方というものを検討いたしておりますが、いままだ、その情報本部をつくった方がいいのか、あるいは現在の体制の中でその運用を早くやった方がいいのか、そういった点について検討している段階でございます。
  193. 春田重昭

    春田委員 大体めどとしては、いつごろまでに大体の方向が出るのかわかりませんか。
  194. 伊藤圭一

    伊藤(圭)政府委員 夏目参事官のところでいま各方面の部会で検討した結果を集めておりまして、情報関係につきましても一応の結論が出ます。月か八月ころをめどにいたしておるわけでございます。
  195. 春田重昭

    春田委員 最後に、防衛公使というものが五十三年度予算で決定されたわけでございますけれども、いわゆるこの防衛公使というのは、従来あった防衛駐在官とどういう身分的な違いがあるのか、またどういういわゆる使命を帯びていくのか、この点御説明願いたいと思います。
  196. 伊藤圭一

    伊藤(圭)政府委員 防衛公使という形で認められたわけじゃございませんで、現在私どもは防衛駐在官として自衛官の身分を持った者を十九カ国に二十七名派遣をしておるわけでございます。しかしながら、特にアメリカなどにおきましては、いわゆる制服対制服の情報交換と同時に、それを取りまとめる形でいわゆるシビリアンサイドからの情報交換というものも必要ではないかということでございまして、アメリカにおきまして現在六名配置されております自衛官のうち一人内局のシビリアンを派遣するということが認められたわけでございます。  したがいまして、専門的な情報の交換と同時に、全体的なシビリアンサイドの情報交換というものを可能にするということで、五十三年度お認めいただいておるわけでございまして、現在内局のシビリアンで外国に駐在いたしておりますのは、カナダに一名行っているだけでございますが、今回アメリカにおきましてもそういうふうな体制をとりたいということでございまして、身分といたしましては、公使というような高い身分にはならないというふうに考えております。
  197. 春田重昭

    春田委員 その他の各国には、お考えは持ってないのですか。
  198. 伊藤圭一

    伊藤(圭)政府委員 複数で派遣しております国は、現在アメリカとソ連でございます。したがいまして、いわゆる防衛情報というのは、第一義的にはやはり制服対制服の間で交換し合うというのが自然な形でございますので、ほかの国についてはまだそこまで余裕がないような状況でございますが、将来の問題としては、そういったことも考えてまいりたいというふうに思っております。
  199. 春田重昭

    春田委員 質問を終わります。
  200. 原茂

    ○原(茂)委員長代理 村山喜一君。
  201. 村山喜一

    ○村山(喜)委員 私は初めに金丸長官にお尋ねをしておきたいと思いますが、三月の十九日ですか、防衛大学の卒業式に長官が行かれまして、あいさつをされました中で、精強な自衛隊というものを非常に強調をされた。そこで、精強な自衛隊というのは、いままでは国民に理解をされる自衛隊という形でPRが行われていたが、そこに何らかの質の転化があるのではないだろうかと、当時の新聞は書いておりました。  それから、これは一月の八日ですか、陸上自衛隊の第一空挺団において長官が訓示をされた、敵に脅威を与えないで何の防衛かというふうに強調された、こう聞いております。  脅威というのには、皆さん方がおつくりになりました防衛白書の中にも、そういう意図、意思というのですか、それと能力、これがやはり一つの脅威を形成をすると書いてある。  そこで私は、長官がこのことについてどういうような気持ちでお話しになったのか、そういうようなことについてまず承って、それから逐次質問に入りたいと思うのです。
  202. 金丸信

    金丸国務大臣 防衛大学に参りまして、ただいま御質問の趣旨を申し上げたことは事実であります。また、一月八日、空挺部隊へ参りまして、ただいま先生のおっしゃられたようなことも申し上げたことは事実であります。  一月八日に空挺部隊の諸君に対して私は訓辞をいたしたわけでありますが、そのとき、私は、新聞はそこだけとらえたわけでございますが、その前に、日本は平和憲法を踏まえて侵さず侵されずという考え方自衛隊の精神だ、しかし相手方が日本に上陸してくるとき、脅威なき防衛があるか、一握りの防衛ということであるならば、これは国民の血税を使って国民に対して申しわけない、こういう考え方であります。  また、防衛大学で御指摘のようなことを申し上げましたのは、いわゆる自衛隊の中核になるべき人たちでありますから、この人たちは、心身ともに精強であり、そしてまた、愛される自衛隊で、理解ある自衛隊にならなければならぬことは当然であります。  私は、戦前、五・一五事件、二・二六事件、そういうものをつぶさにこの目でこのはだで経験した一人でありますし、また私のふるさとの甲府市がB29に爆撃される姿も私は目の前に見た。当時日本の軍人は、軍人でなければ日本人ではないというような気構えの中で、国民には自由一つなかった、こんな国家にしてはならぬ。私のことを、金丸信はあちらこちらで放言するからタカだと言う人もあるけれども金丸信はハトだ、こう思っておるわけであります。
  203. 村山喜一

    ○村山(喜)委員 ハト派かどうかは今後の行動の中に出てくるだろうと思うのだけれども、前後が抜けておったということですね、一つは。  それから防衛大学の場合には、心身ともに精強な、こう言ったのであって、愛される自衛隊とかあるいは理解をされる自衛隊、こういうようなのは当然だということで、それについてはお話をカットされたのですか。そこだけは言われたのですか、言われないのですか。
  204. 金丸信

    金丸国務大臣 それは私の精神の中にあることでありまして、精強という問題について申し上げたわけであります。
  205. 村山喜一

    ○村山(喜)委員 やはり精神の中にあっても、それを表現をしなければそのことはわかりませんね。だから、記者諸君がそこまで推測をして書くわけにはいかぬから、やはり精強ということを強調した、その面をとらえて、いままでとトーン季違うのじゃないか、こういう形の中で出してきたのじゃないだろうかと私は思うのですが、その点はいま長官が補説をされたような気持ちで言った、いまでもそういうような気持ちである、こういうふうに受け取っていいのですか。
  206. 金丸信

    金丸国務大臣 そのとき私が読み上げました内容がありますから申し上げますが、「自衛隊が国民の理解と信頼を得るためには何よりもまず精強でなければなりません。国家の危機・存亡のときに、わが国の平和と独立を守るため、侵略者に敢然と立ち向かう精強な自衛隊であって初めて国民の理解と信頼が得られる。」こう申しておるわけであります。
  207. 村山喜一

    ○村山(喜)委員 では、次の問題に入ります。  いま日本自衛隊の配置、装備、そういうような問題をながめてみますと、陸の方は北をにらみ、海は東を向いている、空の方は西を向いている、こういうふうによく言われるわけであります。自衛隊の構成というのは、その発足以来アメリカ軍の穴埋めのために次から次に配置をされてきたという形の中で、今日自衛隊が置かれているそういうような問題を日米安保体制の中においてとらえていった場合には、たとえば陸なりあるいは空の第一線部隊と言われるアメリカの実戦部隊は、北海道において一兵もいない、そういうような状態の中で沖繩と関東にはアメリカの軍隊が駐留をしている、こういうような配置になっているのじゃないかと私たちは思っているのです。  そこで、兵器についても先ほど以来いろいろ質疑が行われておりますが、金があるから新しい物を買って、そういうような形の中で、じゃ運用の目的は一体どういうようなものになっていくのかという明確さが足らないのではないか。そういうような兵器の運用についての一つの戦略構想というものがあるのだろうというようなことが指摘をされております。  そこで具体的にお尋ねをいたします。  F15というこれから装備をしようとする戦闘機、これはいま私たちが知るところでは、アメリカが実戦配置をやっている。そのほかイスラエルあるいは中近東の産油国の中で買いたいというようなことで、世界のそういうような自衛隊とは言わない軍隊の中で、高性能のF15を備えている国は、現在のところそういう国々以外にはない、こういうふうにわれわれ聞かされておるのですが、F15というのはどういう国々が保有し、これから保有しようとしているか、このことについてまずお尋ねしたいと思います。
  208. 伊藤圭一

    伊藤(圭)政府委員 F15という飛行機につきましては、現在アメリカが七百二十九機の生産を決定いたしております。そのうちすでに二百七十機が完成しておりまして、これを配備いたしております。  それからもう一つは、イスラエルが本年末までに二十五機を配備する計画を持っております。  わが国は五十三年度予算においてこの国内生産が認められておるわけでございますが、その他の国々が検討をしているということは二、三聞いておりますけれども、この飛行機を装備する決定ということにはまだ至っていないというふうに承知いたしております。
  209. 村山喜一

    ○村山(喜)委員 そこで、飛行機年鑑ですか、防衛白書の中にも出ておりますが、F15という飛行機がどんなに優秀であるかということを大変高く評価をされて、それによってわれわれは選んだんだと、こう書いてある。なるほど装備のところを見てみると、フェニックスあるいはスパロー、サイドワインダー、いずれも空対空のミサイルを備えて、そしてマッハ二・三四というスピードが出るきわめて全天候性の飛行機で、これより優秀な飛行機はない、こういうように書いてありますね。まさにそうだろうと思う。アメリカでは第一線の部隊に配属をされたこれは超近代的な兵器であるという。それがアメリカでは戦力。だからイスラエルも二十五機買いたい、こういうことで近代的な装備を備えようとしている。そういうところではこれは大変な戦力を持っている武器なんですが、日本に来るとこれは戦力ではないのですか。ちょっとわれわれにもわからないのですが.これは自衛力ですか。ちょっとここを説明してください。
  210. 伊藤圭一

    伊藤(圭)政府委員 先ほど先生から運用構想がはっきりしていないというお話がございましたが御承知のように、航空自衛隊の任務というのは防空作戦をやるということでございます。したがいまして、その防空作戦をやるに当たっては、考えられます脅威に対処して有効にいわゆる格闘ができなければならないという観点からの選定をしたわけでございます。  さらにまた、先ほど来御説明いたしておりますように、要撃機部隊というのを十個飛行隊持つことを防衛計画の大綱でお決めいただいております。さらに、この十個飛行隊の中の現在持っておりますF104の飛行機というものが五十六年以降減ってまいりますので、これにかわるべき飛行機というものを私どもは選定したわけでございます。  その際考えなければなりませんことは、F15という飛行機、これは14あるいは16と同じように、今後相当長期間にわたって使用する飛行機でございます。したがいまして、五十六年以降の時点から装備する飛行機についての優秀性ということになりますと、長く使えるという観点、それからその時点になりますと航空機の技術というものがどのように発展していくかということを踏まえての選定をしたわけでございまして、これは必要最小限度の自衛力というふうに私どもは考えているわけでございます。  なお、先ほど先生の御指摘がございましたが、F15はフェニックスというミサイルは搭載することはできないわけでございまして、これはF14が搭載するものでございます。
  211. 村山喜一

    ○村山(喜)委員 私は、資料としていただいた防衛白書の中で、九十八ページに、そういうようなフェニックスの空対空ミサイルを装備してある、これはジェーン航空年鑑による、こういうふうに書いてありますから、これは防衛庁の資料だろうと思ってそれを引用しているんですから、その点は間違いないように申し上げておきます。それはいいんです。  そこで、任務というのは防空作戦だといま局長はおっしゃいましたね。     〔原(茂)委員長代理退席、委員長着席〕 ところが、この飛行機は、いわゆる制空戦闘を主任務にしている。そして対地攻撃の任務もあわせ持っているんだ、こういうように書いてあるんですが、そういうようなのには使わないんですか。いまおっしゃるように防空作戦だけに使うんですか。そういうように運用のなには規定をしてやられるつもりなんですか。
  212. 伊藤圭一

    伊藤(圭)政府委員 まず最初に、先生がお示しになりました防衛白書のところにフェニックスが書いてございますが、それはF14に積めるということで書いてあるはずでございます。15ではございませんので、その点を御説明申し上げたいと思います。  さらに、このF15は格闘戦闘機であるということでございますが、格闘戦闘というのはどういうことかと申しますと、空中におきます戦闘においてきわめて優秀な能力を持っているということでございます。そういう意味で、わが国におきましては、爆撃機あるいは戦闘爆撃機によります日本に対する攻撃というものに対処するために、空中性能、飛行性能のすぐれたF15を選んだわけでございます。  もちろんこの飛行機は爆弾も搭載することができるわけでございまして、そしてこれを投下することも可能でございます。したがいまして、主目的はもちろん要撃でございますけれども、他国の艦船あるいは上陸用舟艇等によりまして日本に上陸を企図するような場合には、これを対艦船用に使うということもあり得ないことではないわけでございますが、私どもは主としてそういった対地支援あるいは対艦攻撃を主目的といたしますF1という飛行隊を三個飛行隊持っておりますので、主として使用されるのはそれらの飛行機でございますが、いよいよ戦闘状態が激しくなってきてそういったことが必要になれば、付随的にそういった機能も当然持っているというふうに考えているわけでございます。
  213. 村山喜一

    ○村山(喜)委員 長官、いま局長説明を聞いておりますと、とにかくことしの予算の中で認められた。これが実戦配置につくのは五十六年ということ、そのころからFの104と交代をしていくんだという話でございますが、日本の場合には何といっても平和憲法を持っているわけです。そして専守防衛というんですか、相手の侵略があった場合にはそれに対して対処していくんだ、こういう考え方。ところが、Fの15という戦闘機は大変な能力を持っている。そのころ、昭和五十六年ころになったら技術の発展とともに世界じゅうが大体そういうような水準に達するであろう。だからこの際、日本の場合にはアメリカに次いでイスラエルと同じようにそういうような能力を持たなければならない、こういうことになるのでしょうかね。  だからそこら辺が、そこまで見通しをしながら、そうして専守防衛というのがあるのだろうか。どうもいま聞いていると、そういうような非常にりっぱな攻撃力のあるすばらしい飛行機だから、この際装備をするのだ。しかもそれは、だから敵が攻め寄せてきた場合にはそうだ。それは運用はそういうふうにきちっとするでしょうが、それだけの能力を持っているということは、先を見越して、世界の技術水準の発達、発展というものを余りに先取りをしているような気がいたすのでありますが、その点はいかがですか。
  214. 金丸信

    金丸国務大臣 要撃戦闘機としては専守防衛にふさわしい戦闘機であるというように私は承知いたしておるわけでありますが、先生のおっしゃるように、私も優秀な飛行機であるということだけは、素人ですが、わかります。  そこで、総理も私もしばしば予算委員会でも述べておるわけでありますが、日本はいわゆる平和憲法を踏まえて絶対外に向かって攻めていくようなことはいたしません。これは憲法というものを踏まえておるわけでありますから、総理がそれだけの言明をする以上、いわゆる憲法を破るということになればこれは国賊だ。そういうことを考えてみれば、いわゆる先取りと言うけれども、この日進月歩の近代化していく中で、そのときは国民の血税を使って買ってみたが四、五年先にいったら使いものにならなかったというようなことであってはならぬということから考えてみれば、私はいわゆる憲法を踏まえて敵に脅威を与えないという考え方、攻めてきたらこちらで迎え撃つ、こういう考え方があるわけでありますから、その御心配は不必要じゃないか、こう私は思っておるわけであります。
  215. 村山喜一

    ○村山(喜)委員 他国に侵略的な攻撃的な脅威は与えない、長官、それはいわゆる意思の問題として、憲法がある、そういうような意思を持っているのだ、だから、能力はあってもそういうような脅威を与えないということですか。この能力は否定をされないわけですか、その点はいかがですか。
  216. 金丸信

    金丸国務大臣 F15を近隣諸国が見て、これを脅威という感じを持つか持たないか、こういうことでありますが、私は日本憲法という問題があることだから、われわれは絶対向こうには参りません。しかし向こうが脅威を感じるか感じないかという問題については、それは知るべき筋もない、こういうことだと思います。
  217. 村山喜一

    ○村山(喜)委員 それは主観の問題だということなんでしょうね。だから相手の判断の問題だ。しかし、私はやはりその主観的な意図、意思というものは、長官、が言われることはわかるのです。しかし、能力から言えばそれだけの力というものを持っているがゆえに買うんじゃないですか。
  218. 伊藤圭一

    伊藤(圭)政府委員 いま先生がおっしゃっております能力というのは、私どもが考えておりますのは、要撃戦闘の能力というものを重視しているわけでございます。先生は恐らくこの能力というのが足が長くて爆弾が搭載できるというような観点からおっしゃっておられるかと存じますけれども、私どもが調査いたしましたすべての点からいたしまして、この飛行機は確かに足は長うございます。何にも積まないで最も経済的に飛びますと四千六百キロ程度を飛ぶわけでございます。しかし、その総合的な能力ということから申し上げますと、いわゆる侵入するためには低空を長く飛んでたくさんの爆弾を持っていかなければならないということになります。そういう点からいたしますと、二百五十ポンドの爆弾を十八発搭載いたしますと二百八十海里程度でございます。同時にまた、空中給油をやればどこまでも行けるではないかという御議論もございますが、これは能力という点からいたしますと、パイロットの能力といたしまして、単座の飛行機で低空を長くいつまでも飛ぶことはほとんど不可能でございます。したがいまして、総合的な面からいきますと、能力という点でも私どもは他国に攻撃的な脅威を与えるような能力を持ったものではないというふうに考えているわけでございます。
  219. 村山喜一

    ○村山(喜)委員 防衛局長、そのルックダウン能力というものをF15は持っているのですか。
  220. 伊藤圭一

    伊藤(圭)政府委員 ルックダウン能力といいますのは、低空で飛んでまいります移動する目標をレーダーでとらえる、そしてそれに対して攻撃をする能力ということでございまして、この点ではF15というのはきわめてすぐれた能力を持っております。
  221. 村山喜一

    ○村山(喜)委員 では長官にお伺いしますが、早期警戒機は購入をする予定になっておるのですか。
  222. 伊藤圭一

    伊藤(圭)政府委員 御承知のように、防衛計画の大綱におきまして早期警戒機の部隊を一個飛行隊編成するということを国防会議で御決定いただいております。いわゆる低空侵入というものに対しましては、レーダーの性質上から固定レーダーではなかなかつかまえにくいという点がございます。したがいまして、できるだけ早い機会にこういった早期警戒機を装備いたしまして、そういった能力もつけたいというふうに考えておるわけでございます。
  223. 村山喜一

    ○村山(喜)委員 そうすると、その早期警戒機は来年度予算の中で芽を出そう、こういうふうに考えているわけですか。
  224. 伊藤圭一

    伊藤(圭)政府委員 これは調査をいたしておりまして、現段階におきましてはアメリカで開発いたしましたE2Cという飛行機が最も適当であるというふうには考えておりますが、このE2Cという飛行機はアメリカにおきましては艦載機でございます。したがいまして、航空母艦に積みましてその艦艇の防護のために使用しているわけでございますが、私どもは御承知のように二十八ヵ所のレーダーサイトによりまして警戒態勢をとっておるわけでございますので、これらのレーダーサイトとの連接の問題等をことし研究を進めまして、予算に間に合えば五十四年度予算でお願いしたいというふうに希望しているところでございます。
  225. 村山喜一

    ○村山(喜)委員 そこで、F15はどこどこに配置をするのですか。というのは、この前、参議院の予算委員会で質問があって、千歳と新田原には配置をすることになるでしょうというような答弁がなされましたね。そこで、先ほどから話を聞いておりますと、F104との関係において機種の交代をするのだという話でありまして、いまそれが配置をされているところは五ヵ所あるわけですから、そういうところが予定をされることになるのですか。どういうことになりますか。
  226. 伊藤圭一

    伊藤(圭)政府委員 これはまだ最終的に決定をいたしておりません。予算委員会におきまして千歳や百里に配備するのかという御質問がございまして、そういうところも当然有力な候補であるというふうにお答えいたしました。F104にかわるF15でございますが、いわゆる部隊の運用からいたしまして、いまあるところにそのまま配備をするのか、あるいは多少移動するのかというようなことはさらに検討を進めたいと思いますけれども、現在ファントムあるいはF104が配備されている基地に配備することになると考えております。
  227. 村山喜一

    ○村山(喜)委員 長官、去年の七月に第十回の米韓安保合同委員会がありまして、在韓米地上軍の撤退がことしの六月ごろから開始される、こういうようなこともいろいろ聞いておるわけでありますが、この韓国の場合と日本の防衛との関係は、在韓米地上軍の撤退の開始に伴う問題としてはどのように受けとめていらっしゃるのですか。
  228. 伊藤圭一

    伊藤(圭)政府委員 朝鮮半島というのは、いわゆる日本周辺諸国の中では日本本土に最も近いところの一つでございます。したがいまして、この半島におきます紛争というものは日本の安全にとってきわめて重要なものであるというふうに判断をいたしておるわけでございますが、昨年の米韓協議、あるいはその以前にハビブ次官あるいはブラウン統参議長が韓国に参りまして、この撤退計画を推進するに当たって現在の朝鮮半島におけるような状態、すなわち紛争が起きないような状態を維持しながら必要な撤退を行うというような方針を示しておりまして、米政府も日本政府に対しまして再三そういうことを説明いたしておりますので、本年中に引き揚げます約六千人、それから今後五年程度のうちに在韓米地上軍の主力部隊を引き揚げるというこの計画が、直ちに朝鮮半島に紛争を起こすというふうには考えておりませんので、直接わが国の防衛に大きな影響があるというふうには考えていないわけでございます。
  229. 村山喜一

    ○村山(喜)委員 四月四日の新聞に「来援米軍規模明示できず 共同対処計画 政府筋判断」という大きな記事が出ておりましたが、いわゆる日米防衛協力小委員会で今後のまとめを協議中だが、こういうような状況だというのが出されておりますね。そこで私は、米国の極東戦略の変化というものは当然受けとめておられるだろうと思うのですが、そういうような面からどういうふうに受けとめて、この問題について対処しようとしていらっしゃるのか。何といっても安保体制のもとにおける自衛隊だ、こういうようなことで、自衛隊の場合には自衛力、戦力ではないと言われておるのですから、アメリカの極東戦略というものが変わっていく、それに対応してどういうふうにすべきだとお考えになっていらっしゃるのですか。
  230. 伊藤圭一

    伊藤(圭)政府委員 アメリカの極東戦略が変わっているではないかという御指摘でございますが、御承知のように一九七〇年だったと思いますがニクソン・ドクトリンが出まして、いわゆる自助の努力というものを各国に要請をいたしております。そのころから、アメリカが世界のいわゆる警察官として強大な軍事力によって同盟国を完全に自分の力だけで守るという体制から、それぞれの国の自助の努力というものを求めてきているというのは事実でございます。韓国におきましても一九七二年に従来二個師団ありましたものが一個師団引き揚げておりますし、極東に配備されております米軍につきましても、全体の規模からいたしますとベトナム戦争以後急速に減ってまいりまして、現在では十三万人程度を超えたところでございます。  そういった意味では確かに体制的には変わってきているということは言えようかと思いますけれども、同時にアメリカは、この同盟条約を結んでおります各国に対するコミットメントはかたく守るということを再三明言いたしておりますし、カーター政権になりましてからも政府の責任において繰り返しそのことが言われているわけでございます。現に数は減りましたけれども、きわめて強力な米軍事力というものが西太平洋にも展開しておるわけでございますので、私どもは日米安保体制のもとに日本の安全を守るという考え方のもとに自衛隊の運営をしているわけでございますが、この考え方を大きく改めなければならないという状況ではないと判断をいたしておるわけでございます。
  231. 村山喜一

    ○村山(喜)委員 そういたしますと、基盤的防衛力の強化という形で防衛計画がつくられた、それで対応していけば十分だ、こういうふうに受けとめていらっしゃるわけですね。
  232. 伊藤圭一

    伊藤(圭)政府委員 御承知のように国防の基本方針の中では、自衛のために必要な最小限度の自衛力を整備していくということになっております。その規模につきまして従来四次防まで漸増してまいったわけでございますが、一昨年の十月に防衛計画の大綱というものをお決めいただきました。したがいまして、この大綱に基づく防衛力整備し、維持運用するということによって、日米安保体制は有効に維持されていくと私どもは考えているわけでございます。
  233. 村山喜一

    ○村山(喜)委員 そこで、内容を見てみますと、五十三ページに、「奇襲的に行われる侵略について、平時から備えようとしているものである。」こういうように書いてあります。そこで、では目標は何かと言えば、「限定的かつ小規模な侵略」の事態に有効に対処し得るものなんだ。「限定的かつ小規模な侵略」というのはどの程度の規模の侵略ですか。たとえば戦車師団が上陸してくる。限定的かつ小規模というのはそういう内容のものを想定しているのですか。
  234. 伊藤圭一

    伊藤(圭)政府委員 防衛計画の大綱の御説明にも書いてございますように、平時におきまして警戒機能を重視し、そして国土全体についてすきのない防衛体制を建設してまいるつもりでいるわけでございます。同時にそのことは、いま御指摘がございましたように、小規模あるいは奇襲的なものに備え得るものであるということでございますが、全体的に見ますと、日米安保体制の最大の目的はやはり抑止力であると私どもは考えております。といいますことは、この世界最強の米軍事力に対抗するような形で攻撃をしてくるということは公算としてはきわめて少ないだろうと思っているわけでございます。  といたしますと、日本に対する侵略が現実に行われる場合には、このアメリカの軍事力に対決するような形ではなく、既成事実をつくるというような形で行われるということが、まず起こり得るものとしては比較的多いのではないか。その場合に、現在のような情報の発達した社会におきましては、準備を進めまして本格的に攻撃をするためには部隊の移動もございます。それから補給品の集積というものもございます。そういうものによってかなり早い期間にそのことはキャッチできるわけでございますが、そういった準備を余りしなくて、とりあえず攻撃をかけてくるというのは規模的にはきわめて小さいでありましょうし、またそういったものに対処できるだけの即応態勢をとっておくということは必要であると考えております。そういった観点からいたしますと、仮に陸上の部隊が攻撃を加えるような場合でもそう大きな規模ではないと私どもは考えているわけでございます。
  235. 村山喜一

    ○村山(喜)委員 そういうようなのもちゃんと書いてありますから読んだらわかるんです。書いてないことを聞いているんですよ。  「限定的かつ小規模な侵略」は想定をしなければ、そういうような自衛隊の配置とか任務という問題が達成ができないんじゃないですか。だからそういうようなのは内容的にはどういうものをお考えになっているんですかということを聞いている。この前、長官が二週間ぐらいもてるんだとかなんとか言われたというようなことをちらっと新聞で見たものだから、「限定的かつ小規模な侵略」とは一体どの程度の規模の軍事侵略を考えているのかということを聞いているのです。
  236. 伊藤圭一

    伊藤(圭)政府委員 これは断定的に申し上げるのはきわめてむずかしいわけでございます。ということは、周辺諸国が仮に侵略を決意いたしまして、どのぐらいの規模で攻撃をかけるかというのは相手の意思によるわけでございますから、現在極東にありますあるいは日本の周辺諸国が持っている軍事力、そういったものから判断する以外にないわけでございますけれども、航空部隊につきましては、自国の防空のための飛行機も必要でございますし、今度は攻撃をかける場合の機数の中でさらに稼働率という問題もございますので、われわれが予想しているのは何機であって、それにどう対処するかということはなかなか申し上げにくいわけでございますが、一応配備されております機数あるいは配備されております陸上勢力、そういうものから判断いたしましていろいろな場合を想定しているわけでございます。  具体的に数字がどうなっているんだということになりますときわめてお答えしにくいわけでございますが、私どもが軍事常識的に考えてみまして、日本の本土に対して陸上兵力が来るような場合には、まあ数個師団といいますか、一、二個師団、そういった程度の勢力がとりあえず準備なしに攻撃が可能な勢力ではないかというふうに考えているわけでございます。
  237. 村山喜一

    ○村山(喜)委員 数個師団と言えば、これは大変な部隊ですね。もちろん師団規模というのは各国によって違うわけですから、日本自衛隊のように甲師団が一万名とか乙師団が七千名とか、それはいろいろあるのでしょうが、各国の軍備の状態を見ると、一万五千名、そういう数字が出ておりますよね。そういうようなのを想定をしておるのですか。数個師団がやってくる、それが限定的な小規模な侵略ですか。そこまで想定をして、それに対する訓練をやっているのですか。
  238. 伊藤圭一

    伊藤(圭)政府委員 いま申し上げましたように、たとえば輸送船の能力あるいは輸送機による空挺作戦の能力、そういったものをいろいろ判断いたしますと、一個師団あるいは二個師団というような兵力を差し向ける能力のある国もあるという判断を持っているわけでございます。  では、それに対して対処する訓練をやっているかということでございますが、私どもは十三個師団を持っております。したがいまして、そういった部隊を実際に動かして演習をやるという広い演習場というものは持っておりませんので、指揮所訓練という形で、幹部が部隊を動かす訓練といったものは師団単位の訓練も実際に行っているところでございます。
  239. 村山喜一

    ○村山(喜)委員 この点は、いま戦術的には方面隊を中心にした共同作戦ですか、そういうものは大体対処できる能力を持つに至っているだろうということも言われておる。それは図上作戦かどうか知りません、自衛隊訓練内容が明らかになっておりませんから。しかし、全然準備もしないで直ちに日本に数個範囲を上陸させて、そこで侵略をやる、それだけの能力を持っている国と言えば、それはもう大体わかるわけですね。それを想定してそういうような訓練、演習をやっているのか聞くと、それは図上訓練みたいなことを答える。そういうような演習場もない。実際はどういうような演習の規模で動かして訓練をやっているのですか。それは全然やっていないのですか。
  240. 夏目晴雄

    ○夏目政府委員 陸上自衛隊について師団規模の対抗演習をやる演習場があるかないかというふうな御指摘でございましたが、現在の陸上自衛隊の大演習場というのはきわめて数が少のうございまして、そういう意味では師団対抗という形で実員を動かすような十分な演習場というものはございません。したがいまして、指揮所演習であるとか、あるいは師団の規模で対抗するとか、あるいは一方を仮設敵というふうな形にして、訓練を効率的に実施しているというような現状でございます。
  241. 村山喜一

    ○村山(喜)委員 そこで、先ほどの質問に答えて、北海道における機甲科師団の創設、それから第八師団の甲師団への昇格、あるいは四国の混成旅団の創設、五十五年を目安にしてやりたい、こういうようなお話でございましたが、これはそうなると、北の方では陸を中心にして北の方をにらんでいるのでしょうが、いわゆる東西二正面防衛構想というものの中からそういうようなものが生まれてきたのでしょうか。
  242. 伊藤圭一

    伊藤(圭)政府委員 二正面防衛作戦というお話でございますが、御承知のように、わが国の周辺にございます国の中でわが国の国土に一番近いのは朝鮮半島であり、北は樺太、サハリンであるということは間違いないことでございます。したがいまして、私どもは従来から、そういったわが国にきわめて近いところの防衛体制というものは重視しなければならないということは考えておるわけでございます。  しかしながら、今回のその配備につきましては、二正面作戦ということではございませんで、実は、北海道におきます。師団を改編いたしまして、第一戦車団と合わせまして一個の機甲師団というものを編成したいと思っておるわけでございます。その際に、新しい編成に基づきまして定員的には約二千五百の定員余剰が出てまいります。これを十八万の体制の中でどこに振り向けたらよいだろうかということを検討いたしました。その結果、先ほど申しましたように九州出身の隊員が多いというようなこともございます。同時にまた、乙師団であります第八師団を甲師団九千人の定員の師団にするということによって、そういった九州出身の隊員に対する生活面の処遇改善にもなるというようなこと等々勘案いたしまして、さらにはまた、全国的に見まして陸上自衛隊等ができるだけ平均的に配備され、災害派遣その他にも活躍できるようにしたいというような考え方でございます。
  243. 村山喜一

    ○村山(喜)委員 それは先ほども聞いておりましたからわかっております。  そこで長官、これは長官答えてくださいよ、そういうような動きをめぐりまして長官のところにもあちこちから大変な陳情が来ているのじゃないだろうかと私は思うのです。これは鹿児島県の県議会で問題になりまして、それぞれの理由によって違いますが、出身者が多いというようなこともありまして、自分のところに誘致をしたいという誘致運動が大変な勢いで参議院の選挙のころから始まっているのですよ。それがまた一つの集票的な機構にも働いていることも事実であります。それはだれがということは私は言いません。  しかしながら、部隊をどこに置くのかということについては、これはやはり一つ防衛力の配置という問題からお考えになるのだろうと思うし、それから、ただ隊舎をつくってそこに自衛隊を駐とんさせるだけではこれは意味ないわけですから、誘致をしている人たちは勝手なことを言いまして、自衛隊が一個連隊やってきたら自衛隊に対する基地交付金が四億円も入るのだ、こういうようなことを言って宣伝をしている人たちがおるのですよ。まるで企業誘致と同じように考えまして、おれのところへと、基地交付金はこっちの方へと。  そこで私は、そういうような普通科連隊が配置をされた場合に基地交付金がどのような形で出されているのかという実例を調べてみたら、これはもう話にならないぐらいの状態です。そこで、その細かいものは自治省の方から説明を願いたいのです、その数字を具体的に一例を引いて述べていただきたいと思いますが、これはやはり金丸長官部隊の配置の問題は長官がお決めになるのでしょう。どういうところにどういう必要性に応じてやるのだ、最終の段階であなたが判断をされるだろうと思いますので、ちょっとそのことについてお伺いをしたいと思います。
  244. 金丸信

    金丸国務大臣 九州——鹿児島、宮崎、熊本、ことに鹿児島からの誘致運動が熱心な姿が見えます。私が防衛庁長官になりましてからも、何回か私のところに陳情が、各市、町から来ておるわけでありますが、ただ、誘致する市なり町の方からぜひ私のところへ、こう言われてみても、簡単に、はいそこへ参りますと言うわけにはいかない。いわゆる防衛上の問題もありますし、ただいま防衛局長からお話しになったようなお話もありますし、そういうことも踏まえながら慎重にこれは対処しなければならぬ。  また、これの決定は防衛庁長官が決定することでありますから、なるほどと、こう言われるような配置をいたさなければならぬ、いわゆる部隊の設置をしなければならぬ、こんなように考えております。
  245. 吉住俊彦

    ○吉住説明員 一例を引いて説明せよというお言葉でございますので、鹿児島県の場合を例に引いて御説明を申し上げたいと思います。  五十二年度のいわゆる基地交付金はすでに交付いたしておりますが、鹿児島県につきましては全体で八つの市町村に交付をいたしておりますが、たとえば一番大きいのは鹿屋市でございまして……(村山(喜)委員「それを聞いているのじゃない、普通科連隊だ」と呼ぶ)  一般的に普通科連隊が配備されたといたしましても、主たる施設は、いわゆる営舎施設のうち隊舎の占めるウエートが非常に高うございます。隊舎施設につきましては残念ながら現在のところ対象資産に含まれておりませんので、それに対しては基地交付金は交付されない、こういう仕組みになっております。
  246. 村山喜一

    ○村山(喜)委員 だから課長、そういう仕組みになっているから、陸上自衛隊普通科連隊を一個連隊持ってきたときに数億円の基地交付金が出るなどというのは間違いである、具体的には、私がいただいた資料では国分には連隊があります、その金額をあなたの方で述べていただけば、その数字がはっきりするわけですよ。
  247. 吉住俊彦

    ○吉住説明員 国分市につきまして、五十二年度基地交付金の決定額は百二十七万五千円でございます。
  248. 村山喜一

    ○村山(喜)委員 自治省の固定資産に見合う交付金は、積算のやり方というのは、それだけの資産に見合って七五%が基本的な単位で、あとは態容補正のような形で配分がされておるようでございます。  そこで、問題は、防衛施設周辺生活環境整備等に関する法律に基づくいわゆる特定防衛施設周辺整備調整交付金、この配分の仕方はどうなりますか。
  249. 亘理彰

    ○亘理政府委員 お答えいたします。  ただいまお話しの点は、防衛施設周辺生活環境整備等に関する法律の九条に基づく交付金でございますが、これはジェット飛行場、砲撃、射爆撃が行われる演習場、あるいは面積の広大な防衛施設等の設置または運用によって、その周辺地域における生活環境あるいはその開発に及ぼす影響程度を考慮いたしまして、この関係の市町村が行います公共用の施設の整備について特に配慮する必要があると見られる場合、この防衛施設とそれから市町村をそれぞれ指定しました上で、交付金を交付するというものでございます。これの算定基準は、周辺環境整備法の施行規則に定められておるところでございますが、防衛施設の面積、市町村の人口、さらに特定防衛施設の運用状況等を基礎として算定するということになっております。
  250. 村山喜一

    ○村山(喜)委員 お尋ねしますが、その場合はやはり七五%と二五%、こういうような配分ですね。そうすると、二五%の場合には、あれは点数で計算をして出すようになっていますね。演習がどういう形で行われた、あるいはその射撃訓練がどういうふうにして行われた、それによりまして点数で出していくようになっておりますね。だから、一年間済んでみなければわかりませんわね。そうすると、後でこれは調整はされておるのですか。それが一つ。  それから、そのような点数によって出した場合に、そういうような各施設ごとに金額はわかっておりますが、それを算定をしていく基礎というものは発表ができますか、できませんか。
  251. 亘理彰

    ○亘理政府委員 点数によって配分していますのは七五%の部分でございます。それで、これは過去三年の先ほど申し上げました要因を点数化しまして、それによって全体の予算金額の七五%について割り振りをして配分をする、こういうことでございます。点数自体の算定の方法は施行規則にも明らかになっているわけでございます。  合計点数がどの町村が何点だということは外には発表いたさないこととしておりますが、結果としては全体の予算枠の七五%と比較していただければ、総合のウエートはおのずからわかるわけでございます。
  252. 村山喜一

    ○村山(喜)委員 そこで、これは決算委員会ですから、七五%は点数でやります。あとの二五%は何ですか、政治判断ですか。
  253. 亘理彰

    ○亘理政府委員 残りの二五%につきましては、施設の運用の態容の変化によって個々に算定をするということにいたしております。
  254. 村山喜一

    ○村山(喜)委員 運用の態容の変化というのは何ですか。
  255. 亘理彰

    ○亘理政府委員 たとえば飛行場でありますと、新しい機種の配備あるいは新しい部隊の編成等々でございます。
  256. 村山喜一

    ○村山(喜)委員 そういうようなのはこの委員会には提出ができますか、できませんか。
  257. 亘理彰

    ○亘理政府委員 おっしゃる意味は、その二五%分の個々の配分内容ということでございますか。——可能な限り、御説明いたすようにいたします。
  258. 村山喜一

    ○村山(喜)委員 これで終わりますが、私は、やはりこれは態容補正みたいな形になりますから、その二五%がどういうような基準でどのように配分されたかというのは、なかなか数字の中に出てこないんですよ。決算書をもらっておりますが、その中にはそういう説明がありません。そこで新しい機種の配置をしたから、ここには特別にこれだけだというのは、どうもいまの説明を聞いていると、さじかげんみたいな点があるように受け取れるわけです。それではない、やはり科学的な根拠に基づいて支出をしておりますよということであれば、できるだけではなくて、やはり正確にそういうようなことに対して証明をしてもらわなければならぬ。  そういうような意味において、委員長の方で理事会あたりでこの問題については処理を願いたい、以上要請を申し上げまして、終わります。
  259. 楯兼次郎

    楯委員長 次、安藤巖君。
  260. 安藤巖

    安藤委員 私は、愛知県刈谷市の米軍の依佐美通信基地についていろいろお尋ねをしたいと思います。  まず最初に、この通信基地の機能ですね、どういう周波の電波を出しているかとか、あるいは出力はどれくらいなのか、その電波はどれくらいまで到達するのか、どういうような性能をその電波は持っているのか、そういうような点について、まずお尋ねをしたいと思います。
  261. 間淵直三

    間淵政府委員 依佐美の通信基地は在日米海軍の通信施設でございまして、艦船に対する通信を行っておると聞いております。その周波数とか出力その他につきましては、米軍施設の機能に関することでございまして、公表は差し控えさせていただきたいと思います。
  262. 安藤巖

    安藤委員 この基地は、日本電気興業株式会社が設備、鉄塔等を所有しておって、それを日本の政府が借りて、そしてアメリカの海軍に貸している、こういうような形になっているわけですね。だから、そういうことからすると、どういうような機能を持っているかというようなことを知らないはずはないし、言えないはずはないと思うのですが、どうです。言ってくださいよ。
  263. 間淵直三

    間淵政府委員 ただいま先生御指摘のような形態で使用しておるわけでございますが、その能力、性能その他につきましては、やはり差し控えさせていただきたいと思います。
  264. 安藤巖

    安藤委員 それはどういうような理由で、ただ米軍が使っておるから発表できないということだけなのか。いろいろな機密に属する事項だということなのか。その答弁できない理由を言ってください。
  265. 間淵直三

    間淵政府委員 米軍の使用しているものでございまして、機密に属する事項もあると思われますので、差し控えさしていただきたいと思います。
  266. 安藤巖

    安藤委員 機密に属する事項もあるとおっしゃるのですが、どういうところが機密なのか、はっきりしていただかなくてはならぬと思うのですが、しかし、そういうやりとりをしておりますと時間がありませんので、これは一般のパンフレットとか雑誌等にも明らかになっている事実なので、私の方から言いますけれども、間違っているなら間違っていると言ってください。  出力は七百キロワットアワーの電力を持っている。そしてその電力によって十七・四四二キロヘルツの超低周波を発信している。それから、この電波の及ぶ区域は、アジア全域、太平洋、インド洋にまで及ぶ。この超低周波は水面下十ないし十五メートルにおいて受信可能だと言われておるのですが、どうですか。  そして、どうしてこれが機密になるのかということもついでに言ってください。
  267. 間淵直三

    間淵政府委員 パンフレットなどに出ておるということでございますが、私どもが公式に知り得ているところとそれが合っているかどうかというようなことも、そういうことを申し上げることによっていろいろ推定が成り立つわけでございまして、そういうことも差し控えさしていただきたいと思います。
  268. 安藤巖

    安藤委員 いま私が言いました機能についてどういうことが機密なのか、なぜそれが機密なのかということは、まだ答弁いただいておりません。  そして、いま私が言いました性能を持っているというのが間違っているなら間違っているということをはっきり言っていただくか、あるいは逆に、こうこうこういう性能だ、私が言ったとおりなのかどうかということもはっきりしていただかないと、そういうパンフレットとか雑誌等々に載るわけですから、いろいろな憶測を生むということにもなります。だからそういう点でもこれははっきりさせるべきだと思うのですが、どうですか。
  269. 間淵直三

    間淵政府委員 先生がおっしゃられたいろいろの数字が、そのとおりでございます。あるいは問違っておりますと言うこと自体が、公式に私どもが知り得たことを言うということになるわけでございまして、はっきり申し上げることができないのははなはだ残念でございますが、御容赦いただきたいと思います。
  270. 安藤巖

    安藤委員 それがどういう機密になるのか、なぜ機.密なのかという点についても答弁を求めているのですが、それについては答弁がないのです。答弁してください。
  271. 間淵直三

    間淵政府委員 通信の態様あるいはその能力ということは、事柄の性格上軍事上の機密でございます。
  272. 安藤巖

    安藤委員 最初に私が言いましたように、日本電気興業株式会社から日本が借り受けて、そしてアメリカ軍に貸しているという経過については、そのとおりだという話がありました。だから、そういうことからすると、いろいろいま機密云々ということで答弁をしていただけないのですけれども、いま私が言いましたような機能を持っているかどうかという点については、防衛庁としてはしっかりと把握をしておられると思うのですが、どうですか。
  273. 間淵直三

    間淵政府委員 はっきりかどうかはわかりませんが、一応の知識は伝えられております。
  274. 安藤巖

    安藤委員 いま私が言いました性能については公然化されているというふうに思います。この点は全部明確かどうかわからぬという御答弁ですけれども、そういう能力を持っている通信基地だということも防衛庁の方は理解はしておられるということは、いまの答弁でわかりました。  それで、いろいろお尋ねしたいことがありますので次に進みますけれども、しかしこれで私は納得したわけではありません。いま言いましたような経過で、アメリカ海軍の通信基地として使われているということからすれば、そしてこれは日本の国内にある基地ですから、ちゃんと日本の国民に対して明らかにすべきだというふうに思うのです。これから私が申し上げるようないろいろな危険性を持っているという点からしても、機密だ機密だということで隠し通すことは絶対に許すことはできないということを、まず申し上げておきます。  そこで、アメリカの海軍がこの通信基地をどのように使っているかということは、先ほどの御答弁の趣旨からすると当然答弁できないということになるんじゃないかというふうに思うのですが、これは水面下十ないし十五メートルまで入る電波だということは科学的に明らかになっていることなんです。この超低周波の電波は海水をそれだけ通す。ということは、潜水艦が水中にもぐったままで受信が可能である電波だ。そしてこれは通信基地ですからメッセージを出しているわけです。それを潜水艦が受けているというふうに使われていることは、間違いないと思うのです。  その関係防衛施設庁からいただいた資料によりますと、機能として、在日米海軍の通信施設で、艦船に対する通信を行っていると聞いているというふうにあります。この艦船というのは潜水艦理解していいのかどうか。いかがですか。
  275. 間淵直三

    間淵政府委員 超長波の音波を出しておるということは聞いておるわけでございまして、そういたしますと潜水艦も含まれておるということは容易に推測できます。
  276. 安藤巖

    安藤委員 こういうような超長波を出す通信基地が、太平洋で依佐美の基地以外にどういうところにあるか知っておられますか。
  277. 間淵直三

    間淵政府委員 フィリピン及びハワイにおのおの一ヵ所ある、こう聞いております。
  278. 安藤巖

    安藤委員 そうではなくて、私の方の調査によると、ワシントン、 ハワイ、グアム、オーストラリアのノースウェストケープにあるというふうに私は聞いているのです。そういういろいろな基地からも通信が発信されておるだろうと思うのですが、この依佐美の基地については、在日米海軍基地の横須賀からこの通信基地へ短波で送って、そしてそこからメッセージを発信する、こういうふうに使っていると聞いていますが、それは間違いないですか。
  279. 間淵直三

    間淵政府委員 依佐美の基地は送信施設でございますから、そういうふうに使われておることは想像できるところでございます。
  280. 安藤巖

    安藤委員 そこで、この依佐美の通信基地日本海上自衛隊が使っているという話を聞いているのですが、そういう事実があるかどうかということと、使っておるとすればどういうような形態で使っているか、お答えいただきたいと思います。
  281. 間淵直三

    間淵政府委員 依佐美の送信所は米軍の専有の施設でございますが、いわば便宜供与を受けるという形においてわが海上自衛隊も利用させていただいております。
  282. 安藤巖

    安藤委員 便宜供与を受けるというと、具体的にはどういうような形で供与を受けているのですか。
  283. 間淵直三

    間淵政府委員 何らかの形での取り決めと申しますか、同意と申しますか、そういうものによりまして一定の時間帯を限るとか、そういうことで米軍の運用に差し支えない範囲でこれを利用させてもらっておる、そういうことでございます。
  284. 安藤巖

    安藤委員 何らかの取り決めということを言っておられるのですが、もちろん何らかの取り決めがなければ便宜供与を受けることもできないと思うけれども、これはたとえば地位協定の二条四項の(a)に該当するというようなことで便宜供与を受けておるのか。いわゆる共同使用基地ということですね。そうではなくてもっとほかのことなのかどうか。
  285. 間淵直三

    間淵政府委員 地位協定の三条による施設でございまして、その三条による施設を便宜供与という形で使用させてもらっておる、そういうことでございます。
  286. 安藤巖

    安藤委員 その便宜供与の取り決め、これはいつどこでどういうような形でなされた取り決めでございますか。
  287. 間淵直三

    間淵政府委員 昭和四十年一月に海上自衛隊と米海軍との間に結ばれたものでございます。
  288. 安藤巖

    安藤委員 そうしますと、これは制服同士の協定ということになるわけですね。日米合同委員会で取り決められたものではなくて、制服同士の協定、こういうことになるわけですね。  そうかどうかということと、それからその内容はどういうものなのか、お答えいただきたいと思います。
  289. 間淵直三

    間淵政府委員 米軍施設の技術的運用というものに関するものでございまして、制服同士の間で、合同委員会の議を経るということはなく結ばれたものでございまして、これは三条によります施設でございますから、合同委員会の議を経るということは必要ないと思います。  その内容は、わが海上自衛隊がこれを使用させてもらうについての時間であるとか態様であるとか、そういうことでございます。
  290. 安藤巖

    安藤委員 だから、その時間であるとか態様であるとかということの中身をお尋ねしているのです。それを答えてください。
  291. 間淵直三

    間淵政府委員 その中身は軍事運用に関することでございまして、事柄の性格上、公表を差し控えさせていただきたいと思います。
  292. 安藤巖

    安藤委員 また公表を差し控えさせていただきたいという答弁が出てきたのですが、これは全く公表されていないのですか。二時間ずつの通信の時間の間十五分間海上自衛隊が使うことができる、私知っているのですよ。そういう協定なんだということが明らかにされていると思うのですが、私もいま言いましたようにもう現実に知っている。そしていろいろ公表できない公表できないとばっかりおっしゃるので、アメリカの上院外交委員会、フルブライト委員長の外交委員会、そこの安保協定・対外公約小委員会委員長サイミントン、いわゆるサイミントン委員会においてこの制服同士の協定というのは明らかにされているのですよ。だからそれがどうして公表できないのですか。
  293. 間淵直三

    間淵政府委員 サイミントン委員会においてこのことが討議されたということは存じておりまして、その際も、いま先生が御指摘になった十五分間云々というようなことに対しまして、政府側がおおむねそのくらいでしょう、しかし詳細については公表できない、こう申しておることは存じております。
  294. 安藤巖

    安藤委員 公表できないというのは、日本防衛庁が公表できないということにしているのか、あるいは外務省あたりからそれは公表してくれるなと言われているのか、あるいはアメリカのサイミントン委員会の方からこれは公表するなというふうに言われているのか、一体どちらですか。
  295. 間淵直三

    間淵政府委員 こういう事柄でございますから、私どもの判断、それからアメリカ側の意向といったようなもの、総合的にそういうように判断しているわけでございます。
  296. 安藤巖

    安藤委員 こういう事柄ということもわかりませんし、総合的に判断をしているというのは、防衛庁がそういうように判断しているのか、総合的というのは何と何と何を総合的に判断をしてそういうふうに判断しているのか。  長官、笑っているところじゃないですよ。いいですか。そういうようにいろいろこれは公表できない公表できないということを言われておったのでは、まさに日本の国民は目隠しをされて、物も見えない、隠されておる、それから聞こえないというような状態のままで危険なところへ連れ込まれていってしまうというおそれがあるのです。だからその辺のところを明らかにしなければならぬと思って、いまお尋ねしておるのです。それを公表できない、こういうようなことだから総合的に判断をして公表できない、その公表できない根拠も何も明らかにされていないのですよ。だから、何と何と何をこういうふうに総合的に判断したから公表できないんだということを、はっきり答えてください。
  297. 間淵直三

    間淵政府委員 先ほど先生が十五分ぐらいかとおっしゃったことでございますけれども、現在おおむね二十分ぐらいということを申し上げたいと思うわけでございますが、こういう軍事に関することというのは国の安全の基本に関することでございまして、だれが、いつ、どういう形態で送信しておるというようなことがきちんとわかるということになりますれば、それを傍受していろいろの暗号の解読であるとかそういうことに非常に便宜を供することになる、こういうふうに思うわけでございます。
  298. 安藤巖

    安藤委員 いつ何時から何分までの間どういうふうに使うかということまでこの協定の中に規定されているのかどうか。それはもっと具体的な事務レベルで行われているんじゃないかと思うのですよ。だから、この協定そのものとしてはそういうところまでではなくて、いま私が言いましたように、いま二十分とおっしゃったんですが、最初私が言うと後からぼつぼつ、十五分だと言ったのは違ってそれは二十分だというふうにおっしゃるのですが、そういう基本的な事柄を決めてあるんじゃないかと思うのです。  いま大体少しずつお話しになったので言うのですが、結局これは二時間ごとのスケジュールのうち十五分間とにかく使うというのが協定で行われた。現在はそれが二十分だ。現在もそれはアメリカ海軍の依佐美通信基地の便宜供与を日本海上自衛隊が受けておるということにもなるわけですね、ということを確認したいということです。  それから、その協定の内容というのは、いまも私が言いましたように、基本的な何時間のうち何分というようなことだと思うのです。何時から何分間という具体的な取り決めは、もっと事務的な具体的な取り決めあるいは約束といいますか、そういうようなところで決められていると思うのです。だから、いまの制服レベルの協定自体は国民の前に明らかにしたってちっとも軍事機密に触れるものではないと思うのです。明らかにすることを要求するとともに、いま質問したことを答えてください。
  299. 間淵直三

    間淵政府委員 協定と申しますか、取り決めと申しますか、それにはかなり詳しいところまで数字を入れて書いてございます。  それから、一番初めの、その協定に従ってわが海上自衛隊がこれを使用しておるかということについては、現在もそのとおりでございます。
  300. 安藤巖

    安藤委員 そういうようなことがあるので、公表できないということですが、そういう機密だとお考えになること、これは一歩譲ってそういうことは削除して、基本的なところについて公表されることは考えないかどうか、これは長官にもお尋ねしたいのです。いいですか、長官。基本的なところを公表することを考えていただきたいということを要望して、そういうことを考えないかということをお尋ねしたいと思います。  それから、時間の関係でそのことは後でお答えいただくとして、アメリカの海軍と日本海上自衛隊との合同演習が行われているということは、いろいろな機会に国会においても答弁をしていただいております。現実に、防衛庁からきのう私は、昭和四十八年から五十二年まで五年間の合同演習に参加した艦艇等について、資料をいただきました。これに基づいてお尋ねしたいことがあるのですが、これは、もちろん合同演習ですからアメリカの海軍も参加しているわけです。このいただいた資料によりますと、アメリカの海軍の艦艇として潜水艦というのがあるのです。各一隻ずつ参加しています。この潜水艦はどういう型の潜水艦か、たとえば、よく言われておるポラリス型とかポセイドン型とかというような、どういう型か。  そして艦の名前がわかったら、全部じゃなくてもいいのですが、五十年それから五十二年、二回ありますけれども、この範囲で結構ですからお答えいただきたいと思います。
  301. 金丸信

    金丸国務大臣 防衛庁長官の仕事もたくさん、多いものですから、私は大局的な指示はいたしておるわけです。秘密は秘密、絶対筋を通さなくてはいけない、こういうことであります。
  302. 夏目晴雄

    ○夏目政府委員 共同訓練と申し上げますのは、自衛隊と米軍とが同一の訓練項目につきまして、日米双方の戦術、技量の向上を目的として実施しているものでございます。最近におきましては、海上自衛隊が年間おおむね数回、米海軍と対潜訓練を主体とした共同訓練を実施しておりますが、潜水艦が参加した回数はどうかということでございますが、過去四十八年から五十二年度までの間におきまして、アメリカの潜水艦が参加した訓練の回数が七回ございます。そのうちの四回は在来型の潜水艦、三回は原子力推進の潜水艦でございます。ただし、この原子力推進の潜水艦もポラリスとかそういうものではなくて、いわゆる在来型の原子力推進の潜水艦であるということでございます。
  303. 安藤巖

    安藤委員 名前もお尋ねしたのですが、これは時間がないから簡単にはしょりますが、第六十八国会でわが党の岩間正男委員防衛庁に質問いたしまして、時の久保防衛局長が答弁をされて、艦の名前ですよ、アメリカ側はわかるかどうかちょっと調べてみます、後でお知らせしますという答弁をしているのです。ところが、後でと言って、まだ後でかどうか知りませんが、まだお知らせいただいていないのです。だから、きょうここで艦の名前をお知らせいただきたいと思います。
  304. 夏目晴雄

    ○夏目政府委員 アメリカの潜水艦の名前につきましては、アメリカ海軍からの申し入れもありまして公表を差し控えさせていただきたい、こういうふうに思います。
  305. 安藤巖

    安藤委員 それは、アメリカの海軍からそういうふうに言われておるということですね。そういうようにお聞きしておきます。  それから最後に、これを防衛庁長官の御注意も喚起し長官からもお答えいただきたいと思うのですが、先ほど依佐美の基地についての性能のところで私が申し上げました、公然の事実というふうになっているということで申し上げたのですが、超長波の電波、これは科学的に海面下十ないし十五メートルまで通す電波である、そしてその電波はいろいろなメッセージが乗っている電波で、これは指令を与えているということになります。この前の二月三日に本院の予算委員会で、わが党の不破議員がロランCの問題を取り上げました。このロランCというのが非常に危険な電波発信基地だということを指摘したのですけれども、これは全部は申し上げませんが、アメリカの下院の軍事委員会あるいはアメリカの国防報告等から見ましても、「この通信システムはロランCその他から成る海軍通信送信システム」と、こういう言い方をしているのですね。「ロランCその他」と、この「その他」の中に当然この依佐美の基地のようなものは入っていると思うのです。というのは、潜水艦に指令することができるような海面下に十ないし十五メートル入る電波を出して、それにメッセージが乗っているということになれば、完全にこれは潜水艦に対して、あるいは核装備を持っている弾道ミサイルの潜水艦にもこれは指令を発することができるということで、いざというときには一番優先的に攻撃される目標だということになります。だから、「ロランCその他から成る海軍通信送信システム」というのは、弾道ミサイル潜水艦自体ほど残存性が高くないというふうに言っているのです。だから、潜水艦自体よりも先にこの通信基地はたたかれるのだということをはっきりと、アメリカの国防省の報告が言っているわけですね。  そういうことからすると、非常に危険きわまりない基地だと言わなければなりません。そういうことからしますと、これは先ほどからその機能について公表することはできないとかなんとか言っておられますけれども、まさに日本の国民にとって、生命、身体、財産を守る自衛隊というふうに言っておられるその自衛隊が便宜供与を受けている通信施設が、まさに日本の国民の生命、身体、財産をいざというときには脅かすような、最初にたたかれる基地を持っているということになります。こういう危険なものは一日も早く撤去するという方向で考え、そして実行に移していただきたいというふうに思います。  しかも、依佐美の通信基地はもう二回以上、私が正確に知っているだけでも二回ですが、感電死事故まで起こっているわけですね。そういう点から言っても非常に危険きわまりない基地日本の国土の中にあるということが実にはっきりしております。  そういう点で、そういうことも含めて撤去ということを考えるべきだと思うのですが、その方針についても強く要請して質問いたします。これは防衛庁長官にお願いいたします。
  306. 金丸信

    金丸国務大臣 ただいま御指摘の電波装置あるいはロランCの問題、この問題につきましては、私の承知いたしておるところでは、軍事、平時を問わず、船舶あるいは航空機の電波灯台である。こういうものを除去した方がいいというお話もあるわけでありますが、日米安全保障条約というような中で、ではこっちのを外したら向こうのどこかの相手国にそれがあってこっちにはない、わが国の防衛はどうなるのだ、そういうことを考えてみれば、とてもそんなお話に乗るわけにはいかない、こういうことであります。
  307. 楯兼次郎

    楯委員長 次、麻生良方君。
  308. 麻生良方

    ○麻生委員 私は、この前三原防衛庁長官が在任中にF15戦闘購入問題についてその経緯をただして、まだ不明確な点がかなり残っておったのですけれども、大臣.一年半もたたないうちに交代されてしまいまして、はなはだ遺憾でございますが、その前に、本来なら防衛の基本的な問題について長官と論争を重ねてみたいと思っておりましたけれども、与えられた時間が三十分ということでございますので、核心だけを御質問させていただきたいと思います。  まず、防衛庁は今度の予算で次期主力戦闘機としてF15購入を決定しておるわけです。このF15購入に際しまして、ダグラス、グラマン、ダイナミックスの三社に対してそれぞれ誓約書を要求した事実がありますか。あるかないかだけ答えてください。
  309. 間淵直三

    間淵政府委員 ございます。
  310. 麻生良方

    ○麻生委員 その中でダグラス社の回答と他の二社の回答との間に若干のニュアンスの相違がありましたか。あったかないかだけ答えてください。
  311. 間淵直三

    間淵政府委員 ございました。
  312. 麻生良方

    ○麻生委員 どういう点でございますか。簡単に答えてください。
  313. 間淵直三

    間淵政府委員 原価監査その他の受け入れの点だったと思います。
  314. 麻生良方

    ○麻生委員 それからもう一つ、私の入手している資料によれば、他の二社は永久、今後ともずっと誓約書を遵守するとあるのに対して、ダグラスは「原則として」という言葉が英語で入っておりますな。これは認めますか。
  315. 間淵直三

    間淵政府委員 「イン・プリンシプル」、ございました。
  316. 麻生良方

    ○麻生委員 さらにもう一つ、この誓約書の署名はダグラス社の最高責任者である社長名にはなっていないですな。この点も認めますか。
  317. 間淵直三

    間淵政府委員 ミスターR・C・リトル・マクダネルダグラス社マーケティング担当副社長でございます。
  318. 麻生良方

    ○麻生委員 アメリカの会社における副社長という地位はどういうものであるか、大体御存じだろうと思います。しかし、それ以上に追及しません。  ところで、当時、江口装備局長書簡の中で、これらの書簡に基づいて防衛庁要請した点の中で、ロッキード事件にかんがみて、もし仮にそれぞれの当該社が海外に対する不正な支払い、不正な政治献金等々を行った場合は購入を取り消すという旨が記載されておる。その事実は認めますね。
  319. 間淵直三

    間淵政府委員 そのとおりでございます。
  320. 麻生良方

    ○麻生委員 さて、防衛庁長官、今度は長官に答えていただきたい。  本年の三月七日、米国の司法省、連邦大陪審院及びアメリカの証券取引委員会などによって、ダグラス社が二百五十万ドルを上回る海外の不正支払いが行われている事実を明らかにしておる、かつ、目下それを上回る不正支払いが行われている可能性があるとして特別捜査班が設けられて捜査が行われているという事実を、長官は御存じですか。
  321. 間淵直三

    間淵政府委員 その前に、技術的なことでございますから、私からお答え申し上げます。  マクダネルダグラス社がそういうことをやったということは存じております。それは、軍需品及び民間飛行機の売り込みに関して調査を行ったところ、民間の飛行機の売り込みに関してそういう事実があるように思われる、そういうふうに聞いております。
  322. 麻生良方

    ○麻生委員 民間の飛行機に関する限りという情報を、あなたはどこから入手したのですか。
  323. 間淵直三

    間淵政府委員 マクダネル社から報告を受けております。
  324. 麻生良方

    ○麻生委員 それはつまりはダグラス社から聞いたというだけの話でしょう。捜査当局から聞いたわけじゃないのですね。そうですね。  そうすると、ダグラス社と日本の商社との間に、日本の政府に対して戦闘機を売り込むに当たっての契約ができているという事実は認めますね。
  325. 間淵直三

    間淵政府委員 日商岩井との間に代理店契約があることは認めます。
  326. 麻生良方

    ○麻生委員 そういうふうに言われる、民間対民間ということになると、確かにダグラス社と日商岩井との間における関係は、民間会社と民間会社ですな。しかし、この間にもし万が一不正の事実があった場合は、江口書簡によっては、ただ政府だけではなくて商社、つまり取引のあっせん業者に対しても不正の事実が明らかになった場合は取り消すということが明記されていますよ。
  327. 間淵直三

    間淵政府委員 民間機の売り込みに関して二百五十万ドルの——ダグラス社によれば不正の支払いではないと申しておりますが、そういう支払いがあったということは承知しておりますが、今回のF15の導入に関しましてはそういうことは絶対ないと再三再四向こうから言明してきております。
  328. 麻生良方

    ○麻生委員 それは先方の言明であって、アメリカの捜査当局の言明でも何でもないのです。  ところで、防衛庁は、ダグラスと日商岩井との間にどういう契約内容とマージンの契約内容があるのか、入手していますか。
  329. 間淵直三

    間淵政府委員 選定の過程におきましてその契約書の写しを入手しております。
  330. 麻生良方

    ○麻生委員 その契約書の写しは、後で資料として御提出願えますか。
  331. 間淵直三

    間淵政府委員 マクダネルダグラス社と日商岩井との間の関係でございまして、私どもは選定の過程でその提示を受けたわけでございますが、第三者には漏らさないということで提示を受けておるから、この提示は差し控えさせていただきたいと思います。
  332. 麻生良方

    ○麻生委員 防衛庁長官、F15戦闘機はだれの金で買うのですか。
  333. 金丸信

    金丸国務大臣 国民の税金によって賄います。
  334. 麻生良方

    ○麻生委員 そのとおりでございます。たとえばソウルの地下鉄事件。実に五・一%に上るマージンが数社の商社によって取得されていたという事実に対して一これはまだ明らかにされておりませんが、そういううわさもある。また、ロッキード事件にかんがみまして同じような事実があって、日本では実に前総理が逮捕されるという不幸な事件さえ起こっておりますな。  そういう点から、このF15戦闘機、防衛庁の試算では六十九億、私がアメリカに赴いてフィッシュ国防次官及びダグラスの社長に直接会って聞いたときに、昨年度でありますけれども、開発費を含めて概算四十二億。その四十二億が七十二億にはね上がるという根拠については、過般予算委員会で只松委員がいろいろ質疑をしておりますから、私はここでは繰り返しません。  しかし、それだけの差額がなぜ生ずるかということについて、その支払いをする側の国民になぜそれが説明できないのか。それは単なる商社と商社の秘密であるから言えないのか。民間の商社の売買なら別でございます。買うのは政府であっても、その金は国民の税金なんですぞ。なぜそれが言えないのですか。
  335. 間淵直三

    間淵政府委員 米軍が調達する価格と私どもが買おうとする価格との差、これは過日他の委員会で御説明申し上げたところでございますが、これは別に商社のコミッションが高いとかそういうことではなくて、研究開発費の振り掛けであるとか米軍のFMSの管理費であるとか、その他取得年度の差によるというように、厳密な積み重ねができておるわけでございます。
  336. 麻生良方

    ○麻生委員 実は私は昨年六月七日、ニューヨークの同社の支社でダグラスの社長グラフ氏に会見しておるわけです。そのときにグラフ氏は、直接日商岩井との間においてはかなり長期にわたる販売契約がある、しかも当然その販売契約の中にはマージン契約も含まれておるということを言明して、その内容は私あてに送付する旨を確約したんです。しかし、同月二十一日に私あてに同社の社長から返事が参りまして、顧問弁護士に相談した結果、残念ながら貴意に沿いかねるという返事が来ております。  これについてはやはりいまと同じように日本の国会では明らかにできない、これを繰り返すわけですか。
  337. 間淵直三

    間淵政府委員 私どもがF15の購入に当たりましては、完成機につきましては米国政府との契約、それから国内生産機につきましては国内でこれを生産しておる会社と契約するわけでございまして、その間のエージェントその他ということは私どもは直接関係しておらないところでございます。
  338. 麻生良方

    ○麻生委員 そうすると、そういう商社の契約内容についても米国に要求することもできない、こういうことですか。
  339. 間淵直三

    間淵政府委員 大きな点は全部把握しております。
  340. 麻生良方

    ○麻生委員 大きな点はじゃないですよ。具体的な契約内容のコピーのことを私は言っているのです。
  341. 間淵直三

    間淵政府委員 契約の写しを持っております。したがいまして、内容は了知しております。
  342. 麻生良方

    ○麻生委員 それを発表できない、こう言うわけですな。  ところで、防衛庁長官、アメリカには武器輸出に関して規制する法律があることは御存じですな——御存じですね。その法律は現在どうなっていますか。防衛庁長官にお尋ねします。
  343. 金丸信

    金丸国務大臣 その辺はつまびらかにしておりません。
  344. 麻生良方

    ○麻生委員 その法律が改正されたことは御存じですか。
  345. 間淵直三

    間淵政府委員 承知しております。
  346. 麻生良方

    ○麻生委員 その改正された点の非常に重要な点は、アメリカ政府が、ロッキード事件という不詳事件が起こって各国に迷惑をかけた結果、武器輸出に関してかなり厳重な規制をした。その中で、特に政治献金及びその他のマージン等について一定の額以上に上る場合はすべてアメリカ国務省の武器管理局に届けねばならないという法律ができておりますな。御存じですね。
  347. 間淵直三

    間淵政府委員 承知しております。
  348. 麻生良方

    ○麻生委員 その法律の末尾にどんなことが書いてありますかね。
  349. 間淵直三

    間淵政府委員 正確なことは記憶しておりませんが、米国務省へそれに関連して出す報告書は全部私の方にも提出する、そういうことになっております。
  350. 麻生良方

    ○麻生委員 そうならば、日本政府がアメリカの国務省に対して、いま起こっているような不正事件と指摘されているようなダグラス社の現在の状況について、アメリカのこの法律に基づいて請求する権利は日本政府にはあるというわけですな。
  351. 間淵直三

    間淵政府委員 正確には記憶しておりませんが、末尾にたしか政府間でそういうものに関しての協定ができるということになっておると思います。
  352. 麻生良方

    ○麻生委員 正確にしておきましょう。「本節のいかなる規定も米国と外国政府間の国際協定により、法の施行又は規制を目的とする外国政府への情報の提供を妨げるものではない。」とありますな。この項の活用は日本政府としてお考えではないんですか。  少なくともアメリカの司法及び議会及び大陪審院がダグラスに対して、二百五十万ドルを上回ると言われる不正支出が仮に民間企業の取引の中であったにせよ、なおかつ大規模な捜査が展開されているという情報をあなたが御承知であるにもかかわらず、その情報の内容をいまだにアメリカ政府に対して要求してないで予算を組んだというのは、どういう意味ですか。
  353. 間淵直三

    間淵政府委員 末尾にある取り決めというのは、たしかローエンフォースメントに関してということだろうと思うわけでございまして、この点に関しまして関係者と、果たしてその条項がこういうケースに適用できるかどうかということについて検討をしておるところでございます。
  354. 麻生良方

    ○麻生委員 私は、昨年の九月二十一日に米下院の国際関係委員会委員長のザブロスキー氏に会っております。彼の紹介によって米国務省の武器管理局長のウィリアム・ロビンソン氏にも私は会っております。その際におけるロビンソン氏の説明によれば、日本政府ないしは国会が正式な手続を経て米国務省に請求をすれば情報の提供は不可能ではないということを言明しておるのです。これは私に対しても——私はその当時の情報メモを確実に入手しております。  したがって、いま現にダグラス社に対して何の疑惑も生まれてないというなら私はこんな質問はいたしません。しかし、現にアメリカは議会、司法、陪審院まで含めて特別捜査班を編成し、ダグラスの二百五十万ドルに上るそれ以上の不正が行われている可能性があるとして、十五社のうちの最大の多国籍企業の一つとして追及を受けておる。しかも起訴される可能性さえあると報じられておる。  防衛庁長官、もしダグラス社がその事実が明らかになって起訴されたという場合には、F15の購入は取り消しますか、取り消しませんか。防衛庁長官にはっきり答えてもらいたい。これは長官に答えていただきたい。あなたに聞いていない。
  355. 金丸信

    金丸国務大臣 私は、そういう問題がありましてもわが国の防衛庁との関係は何らない。私は、これを決めるにつきましては私の政治生命をかけておるわけでありますから、もしそのようなことが出たら、当然防衛庁長官はやめるべきだ、こう考えていますが、国防会議で決まりましたものは取り消す考え方はありません。
  356. 麻生良方

    ○麻生委員 あなたが防衛庁長官をやめると言っても、一番初めに江口局長購入を取り消すという文書を出してそれに誓約させていながら、あなたの首が飛んだだけでは事は済まぬですよ。この誓約書は一体何のための誓約書なんですか。江口さん個人の誓約書なんですか。
  357. 間淵直三

    間淵政府委員 先ほども申し上げましたように、二百五十万ドルの支払いは一九七五年までに行われたものでございまして、しかもコマーシャルエアクラフトの売り込みに関するものと、こう承知しております。  それから、この誓約書は個人のものではございません。
  358. 麻生良方

    ○麻生委員 いや、私が聞いているのは、いまあなたが入手している情報のことだけではない。現在は捜査が進行中だと報ぜられておるのです。また、事実、ダグラス社のスポークスマンも捜査は進行されているというコメントを発表しているのです。ただし何の捜査がされているかについてはコメントはできないということを、ダグラス社のスポークスマンは言っている。したがって、今後の捜査いかんによっては、実はあなたがいまお答えになっている情報以上に巨額にわたる政治献金ないしは賄賂が諸外国の同種の飛行機、これは何も民間飛行機だけではない、軍用機に対しても同じように支払われている可能性がないとは断定できないのです。これはアメリカが捜査していることなんです。  したがって、私が聞いていることは、アメリカが捜査した結果、ロッキード事件と同じように、その事実が出てきたときは、F15の購入を取り消すかどうかということを聞いているのです。
  359. 金丸信

    金丸国務大臣 その事件は五、六年前の事件であると私は承知しているのですが、この問題は現在の問題でありまして、防衛庁がいわゆるかかわり合っているということは全然ないと私は確信をいたしております。
  360. 麻生良方

    ○麻生委員 あなたの確信を聞いているんじゃないのですよ。この誓約書の意味について私は聞いているのですよ。
  361. 間淵直三

    間淵政府委員 誓約書における処罰規定とか申しますものは、契約を解除する、あるいは贈賄またはそういうものに使った金品を徴収する、こう書いてあるわけでございまして、非常に仮定のお話でなかなか答えにくいところでございますが、もし万々々が一にもそういうことになった場合には、この条項に照らして慎重に検討しなければならないと思います。
  362. 麻生良方

    ○麻生委員 その慎重の検討の中には取り消すことも含まれているという意味ですな。
  363. 間淵直三

    間淵政府委員 そういうことでございます。
  364. 麻生良方

    ○麻生委員 万々々が一ですか、そういうふうになることを私も希望しております。  しかし防衛庁長官、これは五年前のことではない。アメリカ捜査当局が捜査を始めたのは二年前から、すでに私が行ったときからダグラス社に対しては米議会のある筋、国務省及び司法省が捜査を開始しておったのです、その当時においてすら。ロッキードだって何もいまに始まった事件ではないのです。御承知のように、これは金丸長官には大変申し上げづらい。田中前総理が逮捕されたのだって時効になっているはずなんです。しかし、そのときの事件によって、これだけ日本政府が前総理の逮捕という事件まで招来している以上、ダグラスが過去、五年前にせよ、三年前にせよ、二年前にせよ、そういう賄賂をロッキードと同じようにやっていたという事実が出た場合には、これは同じようなスキャンダルが起こる可能性もなしとはしないじゃないですか。だから私は、この誓約書についてはっきりとした見解を問いただしておきたいのです。  その事実がアメリカの調査の結果明らかにされ、日本政府もそれを確認せざるを得なくなった場合においては、F15の購入は取り消すかどうか、もう一度防衛庁長官お答え願いたい。
  365. 金丸信

    金丸国務大臣 私はそういうことは絶対にないと確信をしておりますが、いま装備局長は万々々が一、そういう場合は取り消す、こう言っている。装備局長が取り消すと言うところを、私がなおそれはだめだと言う筋もない。私は装備局長の責任でやらせたいと思います。
  366. 麻生良方

    ○麻生委員 もっともそのときあなたが長官でいるかどうかさえもよくわかりませんからな。  それからもう一つ、この際政府に、このアメリカの新しい法律に基づいて、再度現在のアメリカの捜査の状況が単なるダグラス社からの情報ではなくて、米国務省からの正式情報として入手すべき要請を行っていただきたい旨を私は提言をいたします。これはやっていただけるでしょうか。
  367. 間淵直三

    間淵政府委員 将来の支払いにつきましては、私どもでできるかもしれぬと思うわけでございますが、過去のことでございましたら私どもの管轄かどうか、法務省の問題ではないか、こう思うわけでございます。
  368. 麻生良方

    ○麻生委員 過去のことと言いましても、F15戦闘機の購入をめぐって三社に対して調査団を派遣したのは過去のことじゃないですか。問題はその時点から発生している。しかも、その時点において、防衛庁は制服組の一人を日商岩井に天下りさせているじゃありませんか。その事実は認めますか。
  369. 間淵直三

    間淵政府委員 捜査の状況についてその資料を欲しいというようなことは、やはり司法当局の問題ではないか、かように思うわけでございます。
  370. 麻生良方

    ○麻生委員 そんなことはありませんよ。米議会ないしは日本政府の請求があれば妨げないという法律ですよ、アメリカの法律は。
  371. 間淵直三

    間淵政府委員 それは将来の支払いに対する問題だ、こう了解しております。
  372. 麻生良方

    ○麻生委員 そうじゃありませんよ。この武器輸出法の改正については、いままでまた今後にわたってということなのであって、過去のことについても含まれておるのですよ。そして、特に現在F15戦闘機を日本政府が購入すると決定したら直ちにこの法律は効力を発することになっておるわけですよ。  したがって、政府がその気になれば、米国務省に対していまの米国から報ぜられているダグラス社に対する疑惑の情報についての請求は不可能ではない。私は直接アメリカの当事者に聞いてきておるのですよ。何ならそのテープを聞かせましょうか。
  373. 間淵直三

    間淵政府委員 F15に関しましては、私どももあるいはそういうオーソリティーがあるかなというふうに感ずるわけでございますが、いずれにいたしましても関係者と法律的その他の問題をよく詰めて対処したいと思います。
  374. 麻生良方

    ○麻生委員 三十分という時間でございまして、時間が切れました。  防衛庁長官、私は第二のロッキード事件は起こしたくないと思っておるわけです。特に日商岩井については従来から戦闘購入についてはしばしばうわさの種をまいている商社である。私は商社を悪であるとは考えておりません。しかし、少なくとも日本政府がアメリカないしは他国から武器を購入する場合においては、国民の税金で購入するのだということを前提に置いた上で、その価格が生まれてくるゆえんのすべてを明らかにしていただきたい。  たとえばP3Cについては私はもう二度と追及はいたしませんよ。すでに政府対政府の直でお買いになると言明している。丸紅も手を引いている。しかし、お買いになると言われたその価格の中にかつてロッキードが日本の工作金として使った費用まで上乗せされているとすれば、結局はロッキードで使われた金はわれわれ国民の税金でしりぬぐいしているという結果にならざるを得ない。しかし、それはいま追及はいたしません。  しかし、再びF15について、もしアメリカの国会や司法当局でダグラス社が起訴され、外国に対して不正な賄賂が行われている事実が明らかになって、なおかつ日本がF15を購入したらどうなりますか。しかもその対象の中に日本が入り、日本の政府高官や日本の商社まで名指しされて米国の委員会で発言されてきたらどうなりますか。だからチェックとして防衛庁はこの誓約書を要求したのだろうと私は推測している。  したがって、この誓約書は非常に重要なことなんです。だからこの誓約書どおりに、もし米国において不正の事実が明らかにされた場合にははっきりとした態度を政府はとってもらいたいということを、防衛庁長官に私は重ねて要求しておる。  しかし、それがいつ明らかになるかはわからない。したがって、防衛庁長官がそのとき在任であるかどうかわからぬ。しかしそれはそれとして、委員会の記録としてこれを残しておいていただく。次の防衛庁長官にだれがおなりになるのか、福田内閣がいつまで続くのかわからぬけれども、少なくとも大臣が交代されれば前の大臣の言ったことは一切無に帰してしまうという日本のこの政界のあり方は私は納得できません。  防衛庁長官、私がきょうここで質問したことをぜひ銘記していただいて、あなたがかつてお感じになったように、不幸なことが起こらないように防衛庁に歯どめをはっきりかけておいていただきたい。これが私の質問の趣旨でございます。  なお、今後アメリカの調査いかんによっては起訴される可能性さえなしとしないという報道が出ておるのでありますから、重ねて、その事実の情報をダグラス社からとるのではなくて、米国の国務省に要請するよう政府に要求すると同時に、最後にもう一つ委員長にお願いしたい。  この際の当事者の言明によれば、立法府の請求があっても提出することはできるとしております。したがって、この際決算委員会の名において、米国で報ぜられているダグラス社の不正事件と称されるものの内容がどういうものであるかについて、この米国の法律に基づいてアメリカの国務省にその事実を報告してもらうような手続をとるよう理事会で御検討願いたい。これを委員長最後にお願い申し上げて質問を終えたいと思いますが、委員長理事会で御協議願えますか。
  375. 楯兼次郎

    楯委員長 御要求の趣は理事会において御相談申し上げます。
  376. 金丸信

    金丸国務大臣 麻生委員のただいまのロッキードの二の舞をしてはならぬ、まさに私もそのとおりだと思います。この問題については十分に対処してまいりたいと思います。
  377. 麻生良方

    ○麻生委員 以上をもって私の質問を終わります。  どうもありがとうございました。
  378. 楯兼次郎

    楯委員長 次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。     午後五時四十分散会