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1978-05-26 第84回国会 衆議院 外務委員会 第21号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和五十三年五月二十六日(金曜日)     午前十時三十四分開議  出席委員    委員長 永田 亮一君    理事 大坪健一郎君 理事 奥田 敬和君    理事 塩崎  潤君 理事 毛利 松平君    理事 井上 一成君 理事 土井たか子君    理事 渡部 一郎君 理事 渡辺  朗君       鯨岡 兵輔君    小坂善太郎君       佐野 嘉吉君    中山 正暉君       寺前  巖君    伊藤 公介君       楢崎弥之助君  出席国務大臣         外 務 大 臣 園田  直君  出席政府委員         防衛庁防衛局長 伊藤 圭一君         外務政務次官  愛野興一郎君         外務大臣官房審         議官      内藤  武君         外務省アジア局         長       中江 要介君         外務省アジア局         次長      三宅 和助君         外務省条約局長 大森 誠一君         外務省条約局外         務参事官    村田 良平君         外務省国際連合         局長      大川 美雄君  委員外出席者         外務委員会調査         室長      高杉 幹二君     ――――――――――――― 五月十二日  看護職員条約批准等に関する請願安島友義  君紹介)(第四八八四号)  同(安宅常彦紹介)(第四八八五号)  同(安藤巖紹介)(第四八八六号)  同(相沢英之紹介)(第四八八七号)  同(荒木宏紹介)(第四八八八号)  同(井上普方紹介)(第四八八九号)  同(伊賀定盛紹介)(第四八九〇号)  同(上田卓三紹介)(第四八九一号)  同(上原康助紹介)(第四八九二号)  同(浦井洋紹介)(第四八九三号)  同(小川省吾紹介)(第四八九四号)  同(小此木彦三郎紹介)(第四八九五号)  同外百八十二件(越智伊平紹介)(第四八九  六号)  同(岡田利春紹介)(第四八九七号)  同(岡田春夫紹介)(第四八九八号)  同(加藤清二紹介)(第四八九九号)  同(加藤万吉紹介)(第四九〇〇号)  同(鹿野道彦紹介)(第四九〇一号)  同(川崎寛治紹介)(第四九〇二号)  同外四件(川本敏美紹介)(第四九〇三号)  同(金子みつ紹介)(第四九〇四号)  同(工藤晃君(共)紹介)(第四九〇五号)  同(栗林三郎紹介)(第四九〇六号)  同(小泉純一郎紹介)(第四九〇七号)  同(小林進紹介)(第四九〇八号)  同(小林政子紹介)(第四九〇九号)  同(後藤茂紹介)(第四九一〇号)  同外一件(佐藤観樹紹介)(第四九一一号)  同(佐藤敬治紹介)(第四九一二号)  同外四百九十九件(佐藤隆紹介)(第四九一  三号)  同外三百三十四件(塩崎潤紹介)(第四九一  四号)  同(柴田睦夫紹介)(第四九一五号)  同(瀬崎博義紹介)(第四九二八号)  同(瀬長亀次郎紹介)(第四九一七号)  同(田中美智子紹介)(第四九一八号)  同(津川武一紹介)(第四九一九号)  同(寺前巖紹介)(第四九二〇号)  同(馬場昇紹介)(第四九二一号)  同(橋本龍太郎紹介)(第四九二二号)  同(東中光雄紹介)(第四九二三号)  同(不破哲三紹介)(第四九二四号)  同(藤原ひろ子紹介)(第四九二五号)  同(正森成二君紹介)(第四九二六号)  同(三谷秀治紹介)(第四九二七号)  同(安田純治紹介)(第四九二八号)  同(山原健二郎紹介)(第四九二九号)  同(松本善明紹介)(第五四〇七号)  世界連邦建設に関する請願河上民雄紹介)  (第四九三〇号)  同(中馬弘毅紹介)(第四九三一号)  同(永末英一紹介)(第四九三二号)  日ソ平和条約即時締結に関する請願上坂昇  君紹介)(第四九三三号) は本委員会に付託された。     ――――――――――――― 本日の会議に付した案件  国際情勢に関する件      ――――◇―――――
  2. 永田亮一

    永田委員長 これより会議を開きます。  国際情勢に関する件について調査を進めます。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。井上一成君。
  3. 井上一成

    井上(一)委員 私は、かねてより日中条約早期締結を進言してまいったわけでありますけれども、まさに機は熟したという形の中で若干日中条約についての質問をいたしたいと思います。  昨日ないし本日の報道で、すでにその手順は整ったというふうに報じられておるわけでありますけれども、日中条約交渉申し入れについては、正式にきょうの午後、首脳会談というふうに報じられておりますけれども、一応の予定はいつでございますか。
  4. 園田直

    園田国務大臣 日中友好条約交渉は、各位の御支援をいただきながら苦労してきたわけでありますが、幸い与党の方の了解を得るという話もだんだん煮詰まりまして、きょう最後に党の総務会結論が出ることになっております。この結論が出れば一刻も早く総理と今後の相談をしたいわけでありまして、そこで大体詰めができますれば来週中にも申し入れをしたい、このように考えてお  るわけでございます。
  5. 井上一成

    井上(一)委員 申し入れの時期は来週三十日というふうに一部報じられておりますが、ほぼそれに間違いがないと受けとめてよろしゅうございますか。
  6. 園田直

    園田国務大臣 日にちはきょう午後決定されると思いますが、再開を決定したら、なるべく早く再開申し入ればしたいと考えております。
  7. 井上一成

    井上(一)委員 もう一点、再開申し入れと同時  に、交渉の時期をいつにしぼっていらっしゃいますか。
  8. 園田直

    園田国務大臣 今後交渉再開申し入れるときには、ただ再開いたしたいということではなくて、いまおっしゃいましたように、いつごろから大体始めて、どういうことで詰めていきましようという具体的な申し入れをしなければならぬと思いますので、これもきょうの午後の相談で決めたいと考えております。
  9. 井上一成

    井上(一)委員 外務大臣、きょうの午後の相談ということですけれども、一応午後の相談に上げるいわゆる原案的なもの、たたき台というか、そういうものをもうお持ちだと思うのです。園田外務大臣としてはこういう手順で、こういう運びで申し入れをし交渉に当たりたいのだ、そしてとりあえず佐藤大使あるいは中江局長等事務レベルでの折衝をこうさすのだという、午後の会談に臨む外務大臣としての持ち合わせていらっしゃる手順を、ひとつここで聞かしていただきたい、こう思うのです。
  10. 園田直

    園田国務大臣 申し入れ並びに再開期日はなるべく早い方がいいと考えてやっているわけでありますが、申し入れば少なくとも来週中には終わりたい。再開期日は、どうしても国会模様とも関係をいたしますので、国会審議模様等判断をしながらやりたいと考えておりますが、同時に外務大臣がいろいろ日程を持っておりますので、国会の方の格別の御高配をいただければ、何とか早く詰めて、これがだらだらと延びないようにしたいと考えているわけでありますが、そういうこと等もあって、まだ具体的には詰め段階に至っておりません。
  11. 井上一成

    井上(一)委員 私はたしか四月の当委員会で、まさか八月にはなりませんでしょうねということを申し上げたわけで、それはもう常識的に判断をして、そういうことはあり得ないというふうに外務大臣はお答えをいただいているわけなんです。政治日程から考えて、少なくとも国会閉会後あるいはそれ以後の大臣日程等考えれば、七月中旬以降になるのではないかという危惧を持つわけなんです。まさにこれは私が四月に指摘をしたことに、当たらずとも遠からずということになるのです。きょう午後会議に出るのに、いまここで腹案がないというようなばかなことはないと思うのです。もう少し煮詰め日程について大臣から、それは、午後総理から了承を得られるか、あるいは三者会談了解が得られるかどうかは別として、外務大臣としてはどういうおつもりでいらっしゃるのか。開会中でもこの問題については本交渉に入るのだというお考えを持っていらっしゃるのか。
  12. 園田直

    園田国務大臣 今後の各党との御相談にもよりますけれども、大臣としては、でき得れば開会中でも交渉に入らせていただきたい、そうすれば最後詰めももっと早くなる、こう考えておるわけでありますが、具体的にはやはり総理の決裁を仰がなければどうこうというわけにまいりませんので、その程度でお許しを願いたいと思います。
  13. 井上一成

    井上(一)委員 さて、申し入れから交渉再開という段階の中で、どうしても事務レベルでは詰められない問題が当然指摘をされるわけであります。この詰められない問題とは一体何なのだろうか。交渉再開されれば、やはり何としても覇権問題が一番大きな重要な交渉点だというふうに私は理解をするわけでありますけれども、外務大臣いかがでございますか。
  14. 園田直

    園田国務大臣 交渉が始まりますれば、事務的に処理のできるものと事務的に話のつかないもの、話のつかないものの中には覇権問題等も入ると思いますけれども、二、三の問題がございます。
  15. 井上一成

    井上(一)委員 外務大臣訪中を予定されるということは、いわゆる事務レベル詰められない問題の解決訪中の大きな役割りだと思うのです。それはまさに覇権問題であるというふうにとらえてよろしゅうございますか。
  16. 園田直

    園田国務大臣 それも重要な中の一つに入ると存じます。
  17. 井上一成

    井上(一)委員 それでは、覇権問題以外に、双方でどうしても政治的な交渉の中で解決を図らなければいけないという問題の中に、何をいま外務大臣としてはお考えでいらっしゃるのか。
  18. 園田直

    園田国務大臣 具体的には申し上げませんが、アジアの平和のため、安定のために話し合いをする問題がいろいろあると考えております。
  19. 井上一成

    井上(一)委員 そこで、この覇権問題についてはいままで論議が相当尽くされたわけでありまして、いまも申し上げたように、もう事務レベルでの問題ではない、政治交渉解決する以外にはないと私は思うわけであります。それで、福田総理は、双方満足がいくということで問題解決をしたいというふうに話されておるわけでありますが、双方言い分が平行であれば満足いかないわけであります。  そこで、この覇権問題についてわが国中国との相違点をやはり明確にしなければいけないと思うわけです。これは日本の場合は、この条約第三国に対するものではない、中国態度としては、日中両国友好親善第三国に対するものではないというふうに要約されておるわけです。そういう意味から覇権問題で双方満足がいくということは、どちらも妥協を見出すために歩み寄らなければいけないと私は思うわけですが、外務大臣としては、そういう意味ではわが国は、満足がいくということは一歩も歩み寄らないのだということで満足を得るのか、あるいは妥協のために若干歩み寄るのだ、そして双方了解をするのだというふうに考えていらっしゃるのか、この点についてはいかがでございますか。
  20. 園田直

    園田国務大臣 せっかくの御質問でありますが、いよいよ交渉を始める交渉内容にわたることでございます。いずれにいたしましても中国には中国国益があり、日本には日本国益がある。また両国はそれ以上にアジアの平和と安定、繁栄のために尽くすという大きな使命があるわけでありますから、そういう点から十分話し合って両国が納得のいくような妥結をしたいと考えております。
  21. 井上一成

    井上(一)委員 交渉内容の問題だということです。確かにそうかもわかりません。しかしながら、交渉再開申し入れる時期において、わが方の取り組む姿勢態度はやはり明確にしておかなければいけないと思うのです。これは政府のやられることだから、あえて私は、こういう考えだからこうせよというようなことを申し上げることはいたしませんけれども、少なくとも現在の段階で、外務省としては、いわゆる日中共同声明の七項を本文に明記するという考えを持っているのか、あるいは交渉いかんによってはそういうものを持ち出そうとしているのか、あるいは全くそんなものは条約になじまないのだと思っていらっしゃるのか、どちらのお考えに立っていらっしゃるのですか。
  22. 園田直

    園田国務大臣 交渉内容経過は申し上げられませんが、日中共同声明というのが基本でありますから、日中共同声明立場を一貫して貫くということで交渉をするべきであると考えております。
  23. 井上一成

    井上(一)委員 ということは、さっきも申し上げましたように、わが国共同声明七項を何としても中国に対して理解を求めて、その七項を取り入れたいという考え方に立つわけでございますね。
  24. 園田直

    園田国務大臣 いま申し上げたとおりに、共同声明の線を一貫して貫くのが交渉基本であると考えております。
  25. 井上一成

    井上(一)委員 さっきも日本のこの覇権条項に対する考え方中国考え方相違点を大ざっぱに私は申し上げたわけですね。先日、二階堂私案というものが報ぜられたわけであります。これは、この条約に基づく日中両国間の平和友好の発展はいかなる第三国に対するものでもない、こういうことで、これはあくまでも二階堂氏の私案ではございますけれども、鄧小平氏もこれを真剣に検討するというふうに語られたと報ぜられているわけです。いわば両者が妥協点を見つけ出すために歩み寄った形としての折衷案だ、こういうふうに受けとめられるわけでありますが、これに対しては政府外務省は何らコメントを出していらっしゃらないわけでありますけれども、どう受けとめていらっしゃるのかお伺いをいたします。
  26. 園田直

    園田国務大臣 交渉を前にしてある特定の案、この案あの案に政府がいまコメントすべき立場ではないと存じます。あくまで日中共同声明というものを見詰めながら交渉を進めていきたいと考えております。
  27. 井上一成

    井上(一)委員 覇権条項については、さっきも申し上げたようにいろいろ議論が尽くされてきたわけですけれども、今回の交渉本文にどういう形で条文を盛り込むかということがむしろ問題だと思うのです。このことについてはいま申し上げたように、いわば妥協もときにはいたし方ないのだという考え方に立つのか、いやもう一切の妥協はできないのだ、わが国姿勢はずっと共同声明七項を貫きたいのだというがんとした考えを堅持されるのかどうか、重ねてここでお聞きをいたしたいと思います。
  28. 園田直

    園田国務大臣 交渉再開を前にして腹組みを言うことは決して交渉のためによいことではないと考えますので、その御答弁は御勘弁を願いたいと思います。
  29. 井上一成

    井上(一)委員 外務大臣、私がいま指摘したように満足のいく形ということは、どうしてもわが国考えを押し通すということに受けとめてよろしゅうございますか。
  30. 園田直

    園田国務大臣 外務大臣としては、事務的に整理をして、最後に結末をつけるべく交渉に行くわけでありますが、やはり外務大臣としては、日本外務大臣でありますから、日本立場をよく踏まえつつ、しかし相手のあることでもあり、アジアという大きな問題もあり、世界という大きな問題もあることでありますから、その点は今後話し合う段階においてだんだん出てくることと存じます。
  31. 井上一成

    井上(一)委員 私なりに危惧する面もあるわけでありますけれども、申し入れをし再開はしたけれども、いわゆる締結に至らなかった、一つの枠があって、その枠を乗り越えて妥協することはできない、それは双方満足ができないのだという形の中で締結を見るに至らなかったというようなことがあっては、決してこれは両国のためにならない、こういうふうに思うわけであります。そういう結果をもたらさないためにも、この際、外務大臣としてはやはり譲るべき点は譲り、あるいは双方話し合いの中で一致点を見つけて、何としても、交渉再開そして締結ということに一気に踏み切る熱意を十分お持ちであると思いますけれども、重ねてここでその熱意を確認さしていただきたいと思うわけでございます。
  32. 園田直

    園田国務大臣 条約交渉再開するに当たっては、御指摘のとおり、条約締結することが目的で交渉再開するわけであります。しかし、その経過については双方お互い言い分があるわけでありますから、お互い話し合いお互いに論じ合って最後結論を出すべきことだと考えております。
  33. 井上一成

    井上(一)委員 私は、外務大臣日中友好条約締結に寄せられる情熱というものについては日ごろから敬意を表しておるわけであります。ぜひ私自身外務大臣に声援を送りたいし、またわれわれもできる範囲内で協力をしていきたい、こう思うわけなんです。  外務大臣、この日中問題についてあなたは政治生命をかけて取り組んでいらっしゃるということは、もうすべての人が承知をしておるわけなんです。ところが、福田総理がこの問題については非常に慎重な態度をとっていらっしゃる。そこで交渉をし、そして一生懸命外務大臣政治折衝をなさっておる中で、いや満足がいかないのだということで、いわゆる俗に言う、二階に上がったらかけたはしごが外されてしまうというようなことになれば、これはとんでもないことになると思うのです。外務大臣には、そんな場合にはひとつあなた自身政治家としての出処進退を明らかにしながら、責任という問題について重大な決意で事に処していただけると私は信じてはおりますけれども、当然そんな折には福田内閣はつぶれておるかもわかりません。つぶれておるかもわかりませんけれども、あえてここで外務大臣に、政治生命をかけて重大決意を持ってこの日中の平和友好条約締結努力するという決意のほどを、重ねて承っておきたいと思います。
  34. 園田直

    園田国務大臣 この問題で総理が慎重にやられたのは当然であって、日中両国民の長きにわたる行動を規制し、真のアジアの幸せを願うためでありますから、国の最高責任者は慎重に判断されたのは当然だろうと思います。しかし、判断し、決意をされて、いよいよ再開しようとなったら、ごらんのとおりに、それぞれ総理みずから陣頭に立って、妥協のための交渉再開を進められておるわけであります。外務大臣としては総理真意を十分伺っておりますので、私と総理の間に意見の食い違いがあるはずはありませんし、またあってはならぬと思います。この交渉に当たっては、微力でありますが外務大臣、全精魂を傾けてこれに努力をする覚悟でございます。
  35. 井上一成

    井上(一)委員 十分外務大臣熱意がうかがえるわけであります。ひとつ全精魂を傾けて日中平和友好条約締結されるように御努力を心から願っておきたいと思います。  さて続いて、国連軍縮総会に御出席をされる外務大臣に、私はここでひとつお聞きをしておきたいと思います。  いまさら私が申し上げるまでもないのでございますけれども、常々、わが国世界で唯一の被爆国である、あるいは平和憲法を持っている、あるいは軍事大国にならないのだ、口ではいろいろな表現で論じられておるわけであります。今回、そのことが強く世界各国に訴えられる絶好の機会でもあると思うわけであります。過日も国会で、すでに決議がなされております。そして民間の平和を願う諸団体の代表が、これまた国連に出向いております。  私はかねがね、核廃絶という問題について提唱してきたわけであります。平和を守ることが、そして人権を守ることがいかに大切であり、そのことがいかに困難であるかということも指摘をしてきたわけであります。  この際、ぜひお聞きしておきたいことは、核の洗礼を受けたわが国代表である外務大臣発言というものは非常に重い、いわゆる重みが意義のある言葉になるわけでありますけれども、いかがでございますか、そのことを自覚して十分に理解をしながら、外務大臣はこの国連軍縮総会での発言、とりわけ核廃絶についてどのように訴えようとなさっていらっしゃるのか。大変失敬な言い方になりますけれども、自民党では究極的廃絶という表現を使われる節もあるわけであります。私は核廃絶、そして二度と核を使ってはならないし、使われてはいけないということをぜひ提唱していただきたい、こういうふうに思うのですが、外務大臣のお考えを若干承っておきたいと思います。
  36. 園田直

    園田国務大臣 お許しを得てあさって早朝に出発をして特別軍縮総会出席をするわけでありますが、国会開会中でありますし、残念ながらきわめて短期間滞在するわけであります。  総会演説するだけではなくて、その場に集まられた各国の方々とひざを交えて話し合うことはきわめて大事なことであると考えておりますが、なかなか時間が許しません。しかし許す範囲において、演説するばかりでなく、演説の趣旨を各国指導者に訴えて帰る所存でございます。  演説につきましては、いま井上先生がおっしゃいましたとおり、あるいは平素この委員各位が仰せられたことは、ことごとく演説の中に盛り込んでおるつもりでおりますが、特にいまおっしゃいましたように被爆国、ただ一つ洗礼を受けた国であるということ、非核三原則、なお憲法九条と――憲法九条というのは、憲法九条によってわれわれは手足を出すことを禁じられておるという消極的な意味ではなくて、世界の人類に先立ってわれわれは力というものを放棄したのだという誇りを持って憲法九条を訴え、その立場から核全廃あるいはその他の問題について、理想とそして現実的な提案をして帰る覚悟でございます。
  37. 井上一成

    井上(一)委員 この問題については土井委員からもいろいろ質問があると思います。  重ねてもう一点。こんな機会は全くめったとないわけなんです。それに、トンボ返りと言うのでしょうが、貨物便で帰ってこなければいけないというようなハードスケジュールです。全く何を考えているのだろうか、本当に外務大臣はわれわれの意を体して、国会の意を体して世界に平和の重要性、大切さをどれだけ訴えられるのであろうか、むしろ私は疑いを持つわけであります。まあこういう機会でありますから、ぜひとも時間を割いて、何ら貨物便で帰らなければいけないというほどのことはない、むしろそれよりも向こうに滞在をして、少なくとも平和宣言日本は二度と戦争に巻き込まれない、そしてこの地球上から核を廃絶するのだという強い信念で、永世中立平和宣言を強く――わが国だからこそできるのです。外務大臣、ほかの国ではでき得ないこと、それはまさに平和宣言だ、そういうことをあえて、形はどうであろうとも、言葉ばどうであろうとも、そういう強い真意を訴えるというお考えを持っていらっしゃるのか、、もう一度この点について重ねてお聞きをしたいと思います。
  38. 園田直

    園田国務大臣 御発言のとおりの決意を持ってやってくるつもりでございます。
  39. 井上一成

    井上(一)委員 ぜひ期待をいたしております。  さらにもう一点。これは人権問題に触れるわけでありますけれども、国際人権規約を批准することに外務大臣はもうその手順を整えていただいたとわれわれは理解をしておるわけです。今回国連に行かれるわけでありますので、国連でいわゆる条約本文、原本に、閣議決定を得るならば署名はできるわけなんですが、そのような用意をお考えでいらっしゃるかどうか、この一点についてお聞きをしたいと思います。
  40. 園田直

    園田国務大臣 こういう機会に、内外に対して日本姿勢を示すためにも、人権規約署名ができればよいと望んでおるところでございまして、いま一生懸命に準備しているところでございます。
  41. 井上一成

    井上(一)委員 最後にもう一点。これは急を要するのであえてきょうの機会質問をいたしたい。  すでに報じられておりますエルサルバドルにおける邦人誘拐事件であります。今回の邦人誘拐事件というものは、私は非常に大きな問題であるというふうに受けとめておるわけであります。報道だけの中でしか理解ができないわけでありますけれども、わが国の大使館がどのようにこの問題に対して対応をしてきたのか、あるいはこのことについて何か条件を出したのか、あるいは、過去このような事例がおこったわけでありますけれども、それ以後わが国外務省がどういう対応をされてきたのか、とりわけ今回の、いわゆるインシンカの社長である松本さんの誘拐事件について、わが国政府、とりわけ外務省はどのように対応をし、どのようにこの問題を解決するために努力をなさろうとしていらっしゃるのかお聞きをして、私の質問を終えたいと思います。
  42. 内藤武

    ○内藤政府委員 お答えいたします。  このたびの松本インシンカ社長の事件につきましては、はなはだ憂慮すべき事態でございまして、過去におきましては、かつて八年ほど前に、わが国の場合においては最初の例といたしまして、ブラジル、サンパウロにおいて大口総領事が政治ゲリラによって誘拐されて、その後ブラジル政府の介入もありまして釈放されたという事態がございます。今回の場合におきましては、日本時間五月十八日に松本社長が誘拐せられたことが判明した直後におきまして、わが国政府といたしましては、わが方の大使館にしかるべき増強を行うためにワシントンの大使館並びにメキシコの大使館からもそれぞれ館員を増強いたしまして、また、わが方の大使館におきましては被害者であったところの松本夫人並びに松本社長の属しておりますところのインシンカの社の人々と緊密な連絡をとってやっております。現在の対応といたしましては、その後におきましてようやくインシンカ側と犯人の方とある種の接触がつけられたようでございます。犯人側といたしましては、当初といいますか、それはまだ生きておりますけれども、日本時間の二十七日午前三時という時点までにすべての条件が満たされない場合においては社長を処刑するということを言っておりまして、それについてはまだ条件が必ずしも満たされておらないから、そのような先方が声明したところの処刑の期限というものは生きておるということを申しております。他方、大使館としては、インシンカと緊密な連絡をとって、そのために必要なる助言をし、あるいはエルサルバドル政府に対して、随時、最大強力なる、絶対松本社長の生命に危険がないようにということを強く申し入れまして、日本政府からも、総理並びに外務大臣から先方のそれぞれ大統領並びに外務大臣に、エルサルバドル政府の最高最善の努力を要請しております。そして、事態その後と申しますと、ようやくに先方犯人と二回程度すでに接触をつけておられまして、ある意味の条件についての先方の言い分であり、わが方としての言い分というものが、順次伝わっておるということで、今後も当然に、非常に本件は急を要しますので、遺漏がないように万全の措置をとりたい。  現状は以上でございます。
  43. 井上一成

    井上(一)委員 時間がないのでこの問題については次の機会に譲りますが、外務省として何らかの条件を示して現地大使館に訓令を出したかどうか。
  44. 内藤武

    ○内藤政府委員 条件といたしまして、まずエルサルバドル政府自身が、いままでにおいて何回もそのような事件があったことでございますから、そのような誘拐事件については最も的確なる判断を持っておりますので、その助言を常に仰ぎながらやっておるということで、総理並びに外務大臣の先方に対するメッセージにおきましては、個々のケースについてではなくて、全般的にいろいろ協力を要請するということで、個々の場合の対応ぶりについてはわが方の大使が先方の官憲と随時連絡してやっておるし、インシンカの社の方とも非常に緊密な連絡をしてやっておるということでございます。
  45. 井上一成

    井上(一)委員 時間がありませんので、私はこの問題についてはさらに次回に質疑を譲ります。
  46. 永田亮一

    永田委員長 この際、園田外務大臣から発言を求められておりますので、これを許します。
  47. 園田直

    園田国務大臣 土井委員から質問を受けます前に、五月十日の当委員会で、韓国でスパイ犯として服役をしておる在日韓国人徐俊植に関しての御質問、善処方の要請がございました。これに関して私より趣旨に沿って努力をいたしますと答弁をいたしておりましたが、その後の経過を簡単に御報告を申し上げます。  ちょうど当時須之部在韓大使が帰国しておりましたので、これを直接呼びまして、私と土井委員の応答を彼に説明をし、そして帰任したら直ちにこれに対する善処方を指示したわけでございます。須之部大使は、帰任いたしましてから直ちに朴外務部長官と会談をして、同長官に対し、五月十日の土井委員外務大臣とのやりとりを紹介し、これに基づき、韓国政府の内政干渉にわたらないように注意しながら、人道上の問題として善処方を要請したわけであります。韓国側がこれをどう受けとめて該人物の処遇をどのようにするかは今後わかることでありますが、とりあえず以上御報告をいたしておきます。
  48. 永田亮一

  49. 土井たか子

    土井委員 ただいまは、先日の質問に対しての経過を御報告いただきました。なおかつ二十七日という日が目の前でございますから、一層これに注目をしつつ、いろいろな点での御努力の方を心より期待するわけであります。  さて、ただいま国民の悲願の目で見られております国連史上初の軍縮特別総会が催されているわけでありますが、いよいよ園田外務大臣は三十日にこの世紀の、記録にとどまるであろう軍縮史上初めての大がかりな会議での演説をされるわけであります。外務大臣が大変意欲的でおありになるというのはよくわかっております。ただ私たちといたしまして、軍縮、特に核の廃絶というのは国民悲願の問題でございまして、世界でただ一つ被爆国として、また非核三原則を国是とする国として、さらに世界に二つとない平和憲法憲法として持っている国として、日本の国際社会における発言というのは大変に説得性があると私は思うわけであります。したがいまして、園田外務大臣がこの演説に対して大変な意欲をお持ちになっていらっしゃるということもわれわれにはよくうなずけるところでありますし、またそうでなければならないと大変な期待をしているわけであります。  先日、国会の方で決議をいたしましたが、昨年の四月十五日に、軍縮特別総会についての日本政府見解というのが公にされておりますが、この中身を見ますと、外務省当局はいわば大変低調な姿勢でこの問題に乗ろうとなすっているということがうかがわれるわけであります。  そこで、具体的なことをひとつ外務大臣にお尋ねをしたいわけでありますが、核について、先制核不使用ということが、一つは非核保有国であるわが国立場からすると、具体的に提唱されてしかるべき問題ではないかと思います。もう外務大臣御承知のとおりで、第三十二回国連総会でカーター大統領も、アメリカは自衛の場合を除いて核兵器を先制使用しないという宣言をはっきりいたしましたし、中国についても一九六四年にすでに、最初には核兵器を使用しないという宣言をいたしております。ソビエトの場合も、ワルシャワ条約機構国との共同提案の形でこの提案をいたしております。こういうことからいたしますと、核保有国間で核先制不使用ということの条約づくりというのはもう可能になっているわけでありますが、非核保有国の安全保障という点から申しましても、また非核保有国の立場からこの問題に対して提唱するということは非常に意味が大きいと私は思うわけです。いま申し上げました先制核不使用について、演説の中で外務大臣はお訴えになるべきだと思いますけれども、この点はどのような御用意とどのような御見解をお持ちでいらっしゃるのか、いかがでございますか。
  50. 園田直

    園田国務大臣 軍縮特別総会における私の世界各国に訴える演説の要旨、これは衆参両院の決議あるいは本委員会における皆様方の御意見等を十分しんしゃくし、かつまたカーター大統領あるいはブレジネフ書記長、世界各国指導者の就任のあいさつあるいは本問題に対する見解等の演説等も十分私も検討いたしておりますので、いまおっしゃった点は訴えるかっこうで準備をいたしております。
  51. 土井たか子

    土井委員 ただいまの御答弁で、先制核不使用についての提唱を、外務大臣が軍縮特別総会演説の中で織り込まれるということを具体的に御答弁になったわけですが、さらに、中南米非核地帯条約、別名トラテロルコ条約と申しますけれども、このトラテロルコ条約に今月ソビエトが署名をいたしました。したがいまして、懸案でございましたこの条約が実質的に実効性ある条約になったわけであります。これに対して外務大臣はどのようにお考えになっていらっしゃいますか。
  52. 大川美雄

    ○大川政府委員 ラ米非核地帯の設置を決めておりますトラテロルコ条約は、その付属議定書にアメリカとソ連がいままで署名をしておりませんでしたために有効に発効するに至っておらなかったわけでございますけれども、この両国が最近それぞれ関係の付属議定書に対する態度を改めましたので、ようやく近いうちにこの非核地帯が現実のものとなるということは私どもとしても喜ばしいことと存じます。ただ、発効するのに非常に時間がかかったということで、一般的に非核地帯なるものが適切な条件の整った地域で設置されることは望ましいのでありますけれども、現実にはその設置が実現することがなかなか容易ではないということもいままでの過程を通じて感じ取った次第でございます。
  53. 土井たか子

    土井委員 容易であるかないかということを私はお伺いをしているわけじゃありません。一つ一つこういう問題を具体的に実現するのには確かに大変な努力が必要なんです。それをあえてやらなければならないということがお互いの間で確認されているわけですから、ただいまの御答弁の最後の方の部分なんというのは、不必要なことをおっしゃっているにすぎないというふうに私は思うわけであります。  すでに国連総会においては中南米、南アジア、中東、アフリカ、南太平洋、各非核兵器地帯設置構想というのが承認されているわけであります。わが国としては、非核三原則の立場からいたしましても、それを具体化して内容に織り込んだ、非核三原則をそのまま認めたものとして、これを世界の各地域につくっていくことができれば、世界の平和を現実のものにすることができるという立場で、かって核拡散防止条約を審議するこの外務委員会の席で、決議の中にもこれを盛り込んでおります。当時の外務大臣であった宮澤外務大臣から、非核保有国にとってこのアジア地域はラテンアメリカに次いで非核地帯というものが可能になる条件があると思うのでございます。そこで、そういうことについて常に外交的な目標としてそちらの方に向かっていきたい、その努力をしてまいりたい、こういうことが御答弁の中にもはっきり述べられているわけなんですね。  そこで外務大臣にお伺いをいたしますが、この核拡散防止条約、NPTの決議の中で、当委員会でも討議をされ、具体的に織り込まれた非核武装地帯、これに対して、当然この構想の実現方を、世界各地につくっていくための訴えを、この総会外務大臣はなさるに違いないと期待をするわけでありますが、この点はいかがでございますか。
  54. 園田直

    園田国務大臣 いま事務当局が答弁いたしましたように、現実としてはなかなか困難である。困難であるからといってほっておいては、永久にこれは困難であります。困難であるからこそわれわれはこれの推進に努力をし、世界に訴える必要があると考えております。  なお、決議されました国会の決議の第四項にもこの点は明瞭に書いてございますので、私もいまめ御発言の趣旨に従って努力をする所存でございます。
  55. 土井たか子

    土井委員 努力をする所存とおっしゃるのは、それはやはりこの総会での演説の中にもそれを力強く、具体的に提唱をされるという意味で受けとめさせていただいてよろしゅうございますか。
  56. 園田直

    園田国務大臣 努力する所存とは、心の中で思っているということではなくて、演説でも言うし、また、世界指導者お互い理解し合う場合には、機会を通じてそういうことをお互いに話し合う、短時間ではありますが、できるだけの努力はする、こういうことでございます。
  57. 土井たか子

    土井委員 アジア太平洋地域においてつくられることがわれわれにとっては大変大切であります。そのための努力をまた日本が率先してなすべきであると思われますが、この事柄について外務大臣としてはどのようにお考えになっていらっしゃいますか。
  58. 園田直

    園田国務大臣 アジア地域における非核武装地帯設置ということは、これは現実の安全保障の問題からいうと、なかなか、具体的になってくるとむずかしい問題でございます。しかし一定の方向にこれを推進していくことは大事でございますから、その点は十分踏まえながら訴えてまいりたいと思います。
  59. 土井たか子

    土井委員 国連の場所に臨まれる外務大臣とされては、いろいろいま御準備中であるかと思いますが、昨年私たち外務当局から示されたような中身は、非常に低調です。まことに消極的と言わざるを得ません。今回の、国連史上初めてと言われるこの軍縮特別総会の席において、日本がどのようなことを提唱し、何を主張するかというのは世界注視の的である。まことに園田外務大臣の任や重しということを私は言わざるを得ないわけであります。その点をひとつ銘記されまして、具体的にいま私がここで申し上げた二つの事柄、これは具体的であります。各国が十分に園田外務大臣の意のあるところに対して協力をしなければならないという、そういう機運がひとつ出てまいりますように御努力方を心から念じてやみません。  さて、竹島の問題にさらに私は歩を移したいと思うのです。  四月の三十日、韓国側が領海十二海里設定をいたしまして、竹島の周辺にも韓国の十二海里の領海の海域を設けたということが伝えられたわけでありますが、五月の八日以降、島根県を初めといたしまして日本海沿岸の日本の漁船をこの海域から締め出すということが具体的にございました。この韓国側の行為に対しまして、外務当局とされてはどのような取り扱いをしてこられたのでございますか、ひとつこの点をまずお伺いしたいと思います。
  60. 中江要介

    中江政府委員 ただいま御指摘の、今般五月八日に韓国の外務部がわが方の大使館に対しまして、竹島周辺水域における日本漁船の操業について領海侵犯であるという抗議をし、かつ退去すべきであるという申し入れをしてきましたときには、即刻その場でわが方の古川公使から、日本領土である竹島周辺で日本漁船か存在し、操業するということには何の問題もない、むしろ、韓国側が抗議してきたことに対して抗議するというふうに反論しております。そして、後これをどういうふうに外交的に処理するかにつきましては、現地の状況を客観的に正確に把握した上で正式に抗議を申し入れようということで、水産当局その他からの事実をただいま整理いたしまして、文書による抗議の申し入れを準備しているというのが現段階でございます。
  61. 土井たか子

    土井委員 いまの局長の御答弁からすると、その結果、今日現在、あそこはわが国の漁船の安全操業は約束されていると言い得るかどうかですね、いかがでございますか。
  62. 中江要介

    中江政府委員 これは土井委員も御承知のように、日韓正常化交渉以前からある問題でございまして、正常化のときに領有権の紛争について決着を見ることができなかったという関係で、そのまま、韓国は韓国のものだという主張を取り下げておりませんし、わが国はもちろん固有の領土だという主張を続けておりますので、この基本に触れる問題についてにわかに合意ができるかというと、これは大変むずかしいということは御理解いただけると思いますが、他方、注目すべきことは、にもかかわらず日韓漁業協定のもとで日韓双方の安全操業秩序というものが正常化以来最近まで維持されてきております。そこに急に一つの問題が起きたわけでございますが、その背景に、韓国側による四月三十日の領海拡張という国内法の動きがあったことも承知はしておりますけれども、いま申されました日韓双方の漁船の安全操業という、これは日韓双方の漁業者の共通の利益でございますのてそれを大きく害さないための努力というものは静かに行われているということで御理解いただければと思います。
  63. 土井たか子

    土井委員 いまの御答弁を聞いておりますと、なかなかこれに対して大丈夫だと言い切れるような状況でないことはよくわかっているわけでありますが、五、六月がズワイガニやイカ釣りの最盛期であるということは言うまでもございません。日本漁船の操業保障のために、当然わが領海である海域においてはその安全は確保されてしかるべきであります。このわが国の領海である海域におけるわが国の漁船の操業に対して、その安全性の確保というのは一体だれがやるのかといったら、政府をおいてほかにない。したがいまして、日本政府としてはこれに対する対処の方法というのはどのように考えていらっしゃるのですか。再度この点についてのお尋ねをいたします。
  64. 中江要介

    中江政府委員 日本漁船の安全操業を確保するのは日本政府責任である、これはおっしゃるとおりでございます。そのことは、日本の領海内はもちろんのこと、公海における操業についてもそうでございますし、隣国との漁業協定に基づく操業秩序ということになりますと、その協定に基づいて相手国と協力しながらこの安全を確保するということで、これはいままで日本の、第一義的には水産庁、第二義的には海上保安庁、そういった政府機関がこのために努力をしてまいっております。  おっしゃいますように、日本立場からいたしますと、竹島は日本の領土でございますから、その周辺水域、特に十二海里の領海内というのは日本の領海でありますから、当然日本政府機関によってその安全操業が確保されるべきである、そのために海上保安庁なり水産庁が安全確保のために何らかの措置をとるという必要に迫られてそういう措置をとられることには、外務省としても、あるいは政府全体として何らこれに特別の考慮を払うという必要はない、当然守るべきものは守るということでいいではないか、こういうことでございます。現実の問題として、日韓漁業協定か発効して以来、あの地域の漁業秩序は守られてきておるわけでございますので、そういう状態が今後とも続いていくと、その中で根っこになっております領有権の問題については、これは日韓間で別途その解決のために努力しなければならぬ、こういうことでございます。
  65. 土井たか子

    土井委員 ただいままでその秩序が守られてきたとおっしゃいますが、そうでないためにいろいろと紛争が起こるわけであります。漁民の方々も、安全が脅かされながらの操業ということをやらなければならない。陳情が国会に相次いでいることはよく御承知のとおりであります。何とかしてほしい。どうなさるのですか。連日の、これはわれわれも請願を受けたり陳情をいただいたりする。三月二日の衆議院の内閣委員会で、竹島を日韓閣僚会議の議題とするということを園田外務大臣が答弁の中でお約束をされました。その翌日、すなわち三月三日、韓国の外務省側は、この発言に対しまして、常識外れの主張であると真っ向からこれに反論をしてきたわけであります。日本の国民の考えから申しますと、三月二日の衆議院の内閣委員会での園田外務大臣答弁というのは、思い切った答弁をしてくださった、やっぱり園田外務大臣だという思いであります。国会における大臣発言というのは権威がある。われわれは、園田外務大臣発言に対して、常にこれを大事に考えているわけでありますけれども、園田外務大臣、韓国側がもし常識外れの主張であると真っ向から反論をしていることのこの主張を譲らず、閣僚会議の議題とすることができないような事態になった場合には、どのような対処をなさるおつもりでいらっしゃいますか。いかがでございます。
  66. 園田直

    園田国務大臣 竹島の問題は、日韓条約を結ぶときに、これは両方が紛争地帯として認め、平和的な話し合い解決するということになっているわけでありますから、平和的な話し合いをするの、は当然のことでありまして、これを議題にするのはあたりまえのことであると考えております。したかいまして、私は、それは当然のこととしてこれを処理していくつもりでございまして、もしそういう当然のことが議題にならぬようであれば、いろいろな会議をやっても無意味であると考えております。
  67. 土井たか子

    土井委員 いろいろな会議をやっても無意味というばかりでなくて、私は、外務大臣は当然のことを言われていると思うのです。思い切ったことを言われたなんというふうに本来は考えるべきではない。これを、思い切ったことを言われたということに、当然のことを言われたにもかかわらず、そこまで考えるくらいに世の中が怪しげになってきているわけであって、当然のことを言われているにすぎないと私は思うわけであります。  それならば、こういうことを提唱しても相手方が問題にしないような会議をやってみても仕方がないで終わるのではなくて、当然なことが問題にされないような会議になってしまっているというふうな状況からすると、これに対して、会議に臨まないとか、会議を持たないというふうな方法ではなくて、もう一つ積極的に何らかの対策を考えなければならないと思うのです。経済援助に対してこれを打ち切ることを考えるとか、いろいろな方法というのは、しかるべき方法としてあるであろうと私は思うわけでありますが、外務大臣、それに対しての何らかの御所信がおありになるかどうか、いかがでございますか。
  68. 園田直

    園田国務大臣 私がいよいよ提案をして、議題とすることになれば、韓国側もこれに応ずるものと私は確信をいたしております。  応じない場合にどうやるかああやるかということは、いま申し上げるべきではなくて、私はこういう人間でありますから、人を脅迫することはきわめて下手でありますから、ひとつよく話し合っていきたいと考えております。
  69. 土井たか子

    土井委員 人を脅迫することは、これは好ましくない、おっしゃるとおりでありますが、ただ、何遍誠意を持ってこの問題に問いかけても、相手方が素知らぬ顔でこれに乗ってこようとしない、誠意のあるところを見せないという場合にはどうなさいますか。  竹島問題に対しては、これに対する解決法というのは、大まかに分けると三つくらいにしかならないと私は思うわけであります。  一つは、粘り強く、根気強く、平和的に解決する話し合いを続ける。ただ、これに対しては、本当に粘り強く日本側はやってきておると思うのですよ。三十数回に及ぶ口上書なるものを韓国側に提示なさっている。そうでしょう。一向にらちはあきません。  二つ目の方法として考えられるのは、おそらくは第三者のあっせんによる調停ではなかろうかと思います。  さて三つ目の方法としては、国際裁判による解決しかないと思われるわけでありますが、二つ目の方法の一つとして考えられるあり方として、先日ブレジンスキー補佐官が日本中国、韓国へ訪問をされているわけでありますけれども、竹島問題について、日本でブレンジンスキー補佐官からの何らかの話があったかどうか、この点いかがでございますか。
  70. 園田直

    園田国務大臣 全然ございません。私の方もいたしません。
  71. 土井たか子

    土井委員 国際司法裁判所に提訴をするという方法が一つまだあります。一九五四年、昭和二十九年九月二十五日に、日本側は韓国に対して国際司法裁判所に提訴を提案しておりますが、十月二十八日になりまして、この提案を拒否するというかっこうになっております。つまり、提訴しても応訴しない。この理由は一体どこの辺にあるのかまた、国際司法裁判所は、両者間の合意がなければ提訴できないのかどうか。この点についてのお考えをひとつお聞かせいただきたいと思います。
  72. 園田直

    園田国務大臣 竹島の問題については、私は段階的に三つあると考えております。  一つは、現在の日本漁船の操業をさせるという点、もう一つは、この島の帰属を決定をするという点、これは文書の交換によって決まっておるわけでありますが、その前に、文書の交換による、紛争地帯であるから両方から平和的な話し合いをするという、その点から逸脱を韓国はしておるわけでありますから、まず第一には、原点に返って、一平和的に話し合いをするという方法、すなわち、実効支配というものを力をもって積み重ねていくという韓国のやり方は、これはこのまま許すわけにはまいりません。そして次には帰属の問題、こういう三つの段階に分かれると思うわけであります。  そこで、私は、いまおっしゃいますとおりに、粘り強く話し合ってくるということでありますが、その粘り強さももう限界に来たと考えておりますので、ここでひとつ腰を据えて相談をする時期が来た、こう考えておるわけであります。  何にしても、いま前もって言うわけではありませんけれども、金を貸している方が借りている方の言うとおりになってずるずるいくということは、これは国民としてもお許しにならぬと、こう考えておりますので、そういうつもりでこの話は詰めていきたいと考えております。
  73. 土井たか子

    土井委員 こちらも一生懸命粘り強くやったことにも限度がある、おっしゃるとおりでありまして、これは党として社会党の立場からいたしますと、国際司法裁判所に提訴するという方法は、従来外務省は、両方がこれに対して合意しなければならないということを言われ続けてきたことに対して、そればかりではないと、いわゆるフォルム・プロロガチュームという方法がある。裁判のいわゆる慣行法でありますが、これは相手国との何らの合意がない場合においても、一方の当事国が訴えを一方的に提起して、他方が後で本訴を争う形で応訴するという方法であります。裁判所規程には現在明文の規定はございません。しかし、裁判慣行を通じて確立した方法でございまして、いままで事例が多々ございます。日本としてこの方法をとるということは不可能じゃないが、どのように思っていらっしゃいますか。
  74. 大森誠一

    ○大森政府委員 いま先生がおっしゃいました国際司法裁判所への提訴の問題でございますか、国際司法裁判所規程に、当事国となっていない国、非当事国を相手とする訴訟が国際司法裁判所に係属するためには、その非当事国が自発的に国際司法裁判所の管轄を受諾し、その判決を誠実に遵守するといった趣旨のことを含んだ宣言を国際司法裁判所に寄託することが必要であるとされておりますので、相手国側かみずから進んでこのような宣言を行わない限り、わか方か一方的に訴訟を提起いたしましても、その訴訟は却下されるということになると考えるわけでございます。  なお、先生御指摘のコルフ海峡事件でございますが、この場合には、英国と、国際司法裁判所規程の当事国ではなかったアルバニアとの間の係争の問題でございますが、アルバニアは、当時はこの事件を国際司法裁判所に付託すべしという国連安全保障理事会の勧告を受諾したということが一つございます。さらに、この裁判所あての書簡におきまして、アルバニアとしては裁判所に出頭する意向があるということを述べたという経緯がございまして、その結果、国際司法裁判所は一九四八年の判決におきまして、このような趣旨を述べた書簡にかんがみまして、アルバニアによる裁判所の管轄権の任意的な受諾であるということを示すものであるという判示を行ったということから、国際司法裁判所の判決がおりた、こういうことがその経緯でございます。
  75. 土井たか子

    土井委員 相手が応訴するかしないか、この問題はよくわかりません。ただ、日本側が提訴することか必要であるという立場で問題にしているわけであります。再度このことに対しては具体的に追及をし、そして、外務省側の見解も明らかにさせていかなければならないと私は思いますが、ただ一つ、ここではっきり申し上げておきたいことは、かつて一九五三年、国際司法裁判所で問題にされた、フランスとイギリスとの間で問題にされましたマンキエイ事件を通じまして、そこで明らかにされたことは、非常にこの竹島の問題に対して関連がある問題であると私は見るわけであります。それはどういうことかというと、日本はただいま竹島問題について、韓国に三十数回にわたる口上書というものを出しておりますけれども、この口上書というものが、果たして実際の行為についての証拠性を持つのかどうかということになると、全くその証拠は認められてない。フランス側は、何回となくイギリスに口上書を出したという事例があるわけでありますが、この口上書というものの効力が全く国際司法裁判所においては認められていないわけであります。それは、この紛争の発生について客観的に認定をされた証拠許容の期日から、具体的な紛争に対していかにこれを解決するかということが問題にされているわけでありまして、この期日以後の一切の行為、事実というものは証拠として許容されないということになっているわけでありますから、今日ただいま政治的な問題として何回となく口上書をお出しになっているけれども、いざとなってこれが国際的に争われるということになったら、何らの意味も持たないということをはっきりと付言させていただきたいと思います。こういうことからすれば、根気強く、粘り強くいま外交交渉を重ねております、韓国側に対してこっちの意のあるところをるる説明し、向こうに理解を求めている段階でありますということを言われ続けて、もうみんなしびれが切れたわけであります。外務大臣みずからが先ほども言われたとおり、いろいろ粘り強くやることにも限度があるということから考えますと、いま国際司法裁判所への提訴ということをひとつ真剣に考えるということが大切じゃないか。相手が応訴するかどうかわかりません、いままでだめだった、恐らくやったってだめでしょう、こんなことで引っ込んでいる問題ではないと私は思うわけであります。ひとつ国民の名においてこの問題に対して真剣に考えを進められることを切に望みたいわけでありますが、外務大臣からその点に関するお考えなり御見解をお伺いして、終わりにしたいと思います。
  76. 園田直

    園田国務大臣 許されたる平和的解決の方法は、ありとあらゆることをやっていく覚悟でございます。
  77. 土井たか子

    土井委員 いまのではしようがない。それは司法裁判所の問題も含めてですか。
  78. 園田直

    園田国務大臣 その問題も平和的解決の方法の一つの手段であると考えております。
  79. 土井たか子

    土井委員 終わります。
  80. 永田亮一

    永田委員長 渡部一郎君。
  81. 渡部一郎

    ○渡部(一)委員 五月二十三日から六月二十八日に至る約一カ月余、国連軍縮特別総会が行われるのに当たり、私ども国会の意思は、先日、国際連合軍縮特別総会に関する決議案として決定され、政府にも表示されました。  私どもは、いま人類の最大の課題として、核戦争を防止するという大きな責務を担っております。ストックホルムの平和研究所の説によれば、広島型原爆の百万発分がすでに核兵器として蓄積されているという今日、人類を何十回も殺すのに当たるような膨大な核兵器群が蓄積され、米ソ両国を中心とする核戦略体系は、質量ともにますますその度を高めているのが実情であります。私どもは政治を扱う者として、いかなる任務よりも、戦争を抑止し、核戦争を防止することが重大であることは、言をまたぬところであります。したがいまして、この国連軍縮特別総会は、私たち日本国民としても、平和憲法を持ち、しかも唯一の被爆国でもあり、そして核戦争が起こったら生存できぬ人類に属しているということも十分考慮した上で、特別の関心と特別の貢献をなすべきものと思うものであります。  この特別総会は、一九七六年八月の第五回非同盟諸国首脳会議でユーゴのチトー大統領が提唱し、それが支持され、同年十二月の国連総会第一政治委員会で決定し、五十四カ国による準備委員会が五回にわたる会合を開いた上決定されたものであると聞いておりますが、非同盟諸国の主導型であるということは、私どもは今日の核軍縮問題についての大きな特色であると存じます。ということは、対決している米ソ両国からこのような提案か行われるのではなく、むしろ被害者となり、一方的な被脅迫者となるべきグループからこうした意見が起こったことは、注目すべきことであると思うのであります。したがって、私どもは、この会議が非同盟諸国から言われたという事実を考えますときに、非同盟諸国の言い分だからといって軽視するのではなく、日本はその独自の立場として、非核三原則を持ち、平和憲法を持ち、唯一の被爆国であるという立場から、この問題に対して特別の関心を持ち、貢献をなすべきだと思いますが、いかがでございますか。
  82. 園田直

    園田国務大臣 ただいまの御発言のことは、私も全くそのとおりに考えております。平和国家としていく日本被爆国として洗礼を受けた日本、二度と再び他の人々にこの洗礼を受けさせてはならぬ、こういうことから、全く同じ意見でございます。したがいまして、渡部先生の方でしょっちゅう言っていらっしゃる、国を個人の立場に置け、こういう主張をされているようでありますが、これが一人一人の人間であるならば、この軍縮総会というものはすぐまとまると思うわけでありますが、そこへ国という一つのエゴイズムが出てまいりまして、大国の駆け引きの場になっておったということは否み得ないことであると思います。  そこで今度の軍縮総会では、今度の特別軍縮総会が非同盟側から提唱された軍縮総会であるという特異なものであると同時に、国連の正式な機関でないということ等にもかんがみて、理想を訴えると同時に、国連及び国連特別軍縮総会の今後のあり方、機構等についても、私はそういう点を訴える覚悟でございます。  いずれにいたしましても、大国が自分の国のエゴイズムによって、軍縮であるとか国連であるとか、こういう舞台で駆け引きずるのではなくて、本当に生きるか死ぬかの、一つ一つの国の、多数の結集によってこれは理想の方向へ前進せしめていくべきであると考えております。
  83. 渡部一郎

    ○渡部(一)委員 わが国では軍縮の問題は安全保障の問題と同一視され、これを論ずることばむしろタブー視されてきた気味がございます。またわが国において、遺憾なことでありまするけれども、わが国の平和が達成している以上、周辺のこうした問題に目をつぶる動きもございましたし、本日の委員会を軍縮の問題に集中して議論しようという意見を提出しました際、抵抗のあったことも事実であります。しかし本日こうしてお話ができるからには、同総会に参加される外務大臣の大きな激励として、外務大臣にこれを受けていただける論議にしなければならぬと私は思っているものであります。ただ私は、日本政府のいままでのこの軍縮特別総会に対する態度が、アメリカの核のかさのもとにある日本の国であるから、軍縮総会で非同盟諸国に寄ったような意見を言うのは間違いなんだ、むしろ矛盾しているのであるというような発想があるのではないかと心配をいたしております。  私は、現実の政治というものは理想との間のかけ橋になるべきだと思います。現実の姿にのみ力点を置いて、この総会でアメリカに気がねをした発言をするのであるならば、行かぬ方がいいのであります。私は今回の特別総会総理が御出席にならぬことに深い不満を持つ一人であります。それであるからこそ、外務大臣の御活動と同地における声明というものは、日本国民の輿望がかかるだけでなく重大な意義がある、外務大臣御在職中の最大のできごとになるであろうし、ぜひ成功していただかなければならぬと思うものであります。  私は、軍縮の問題についての日本政府考え方が貧弱であることについては何回も当委員会で述べました。軍縮省も持つ国があるのに日本は軍縮室しか持たぬのはどういうわけかと私はこの委員会で申し述べたこともあります。いま人数が少しふえたそうでありますけれども、外務省の中にあるのは依然として軍縮室にすぎない。安全保障を扱う部局と外交を扱う部局と軍縮を扱う部局とは、おのおの同じほどの規模であっても不思議でないのに、日本ではこれをやはり刺身のつまにされておる。そして総理も出かけない。また各国の中には、こうした際には野党の党首を全部引き連れて一緒になって参加する国もある。わが国ではそういうこともない。また、いままでの外務大臣を総動員して団員に加え、この際各国との交渉を盛り上げ、そうして自国の平和的姿勢を明らかにしようという国もある。ところがわが国はそれもしない。これは私は余りにも日本のこの問題に対する不十分な姿勢をあらわしているのではないかと遺憾に存じているわけでありますが、外相はその辺は十分御承知の上、お一人でそれを回復するためにがんばられるおつもりではありましょうが、御見識を承りたいと思います。
  84. 園田直

    園田国務大臣 御発言のとおりに、わが日本の安全は核の傘下によって保たれているわけであります。しかし核の傘下に保たれた安全というのは、何%の率かわかりませんが、核戦争が起こった場合には日本は間違いなしに絶滅をするという運命を運命づけられていることは御発言のとおりでありまして、私もそのように考えるわけであります。     〔委員長退席、奥田委員長代理着席〕 核の傘下によって安全を保っておる日本であるがゆえに、核の傘下に入らなくても安全が保てるような世界をつくることが、われわれの理想であり、目標でなければならぬということは、全く御発言のとおりであります。微力でありますが、総理大臣ほどのことはできぬかもわかりませんが、外務大臣として出席しましたからには、民間団体からは五百名の代表が行っております。被爆地の広島、長崎からも市長が行っております。こういう人々と密接に連携をしながら、日本立場を訴え、将来に向かっての訴えをしたいと考えておるわけでございます。
  85. 渡部一郎

    ○渡部(一)委員 私は、現在の世界の中の最大の迷信は核のかさという迷信だろうと思います。核の下に入ってお互いに核兵器をたくさん持てば安全が保たれるという限界は超えております。両方が抑止力と称する脅迫力を行使して相互に威嚇し合えば、そのどん詰まりはともに全滅するしかないというところから私たちの考え方を立て直さなければならぬと存じます。その理性ある立場を保つのが日本外交にとって最も大事な合意でなければならぬと存じます。矛盾した外交路線をわが国がたどらなければならぬのは、わが国の地勢的な状況もあることは十分承知の上で言うのでありますが、したがって国連総会において、核のかさとか、核の抑止力とか、核をふやすことによって安全が保障されるとかという迷信は打ち砕かれなければならぬと存じます。その意味日本の外交の果たす役割りというのは今回の総会におけるまさに白眉でなければならぬ、こう私は思っております。というものは、核による被害を受けた国はわが国であることは公然周知の事実であり、また両陣営の谷間にあって核戦争に必ず巻き込まれる地勢学的な立場にあるところのわが国立場というものは、これを発言するに最もふさわしいと思うからであります。その点は外務大臣はどうお考えかをお示しをいただきたい。
  86. 園田直

    園田国務大臣 抑せのとおりであると考えております。
  87. 渡部一郎

    ○渡部(一)委員 今回の軍縮総会の意義で、私は一つだけ遺憾なことがあります。それは、この軍縮特別総会の準備委員会において、いままでの国連総会の原則がたな上げにされ、国連総会では多数決方式がそのルールでありまするけれども、多数決によるのではなく、コンセンサス方式であるというふうに議事運営の基本方針を決めておると聞いております。これは事実上どうした形になるのか、細目のことは私は存じておりませんが、また運用の仕方によってはかなりの幅があるものとは思いますけれども、コンセンサス方式というのは、要するに日本風に言えば、満場一致である部分についてのみ集約をするということになろうかと存じます。これははなはだ不十分であります。  というのは、明らかにこの総会に好意を持たぬ米ソ両国が、大統領も第一書記も出てこないこの米ソ両国が、裏でこれに対して反論の意向を示せば、事実上文章もまとまらなければ行動計画もまとまらなくなる可能性があるからであります。  私はしたがって、今回の総会では、この国連特別総会の特別が、表決の方式まで特別であったというのは非常に残念な思いがするわけであります。せめてこの総会を国際世論の集結の場として、十分の御発言をしていただきたいなと私たちは考えておるわけでありますが、その点はどうお考えでございますか。
  88. 大川美雄

    ○大川政府委員 軍縮特別総会国連総会一つの形でございますから、当然ながら国連総会の議事規則が適用になります。ただし、軍縮の分野でございますので、できればコンセンサスというような形で物事が決定していくことが望ましいというような申し合わせと申しますかが、準備委員会段階で表明されたことは事実でございまして、これは非同盟の国々もそういったことに賛成をしたと承知いたしております。
  89. 渡部一郎

    ○渡部(一)委員 今回の日本政府国連軍縮特別総会に寄せるペーパーでございますが、去年の段階で表明されております。去年の段階で表明されておりますがゆえに、また非常に総括的、概括的かつ抽象的な部分が多いとは存じますけれども、この内容が、私は今回不十分だったと思う一人であります。  したがって、今回の国会における特別総会に関する決議案の作成に当たり、私は積極的に関与し、リーダーシップをとった一人でありますが、特に政府が盛り込んだお立場、すなわち四項目ございまして、核軍備競争の停止と核兵器の削減、化学兵器の禁止、通常兵器の国際的移転、軍事費削減問題の五つ、この五つ以外で特に確認をさせていただきたい点について申し上げたいと存じます。  すなわち、国会における決議において、私どもは第二の項目で、「唯一の被爆国であり、非核三原則を国是として堅持する我が国は、特に核兵器不拡散条約を真に実効あらしめるために、すべての核兵器国に対し、地下核実験を含めた包括的核実験禁止条約早期締結及び核兵器の削減並びに核兵器が二度と使われないよう要請するとともに同条約未加盟国の加盟について強く訴えること。」こうなっております。この中で特に申し上げたいのは、地下核実験を含めた包括的核実験禁止条約早期締結については、ジュネーブ会議において米ソ両国の強いリーダーシップのもとに事実上これを討議することができなくなっておるのであります。したがって、フランス案の中には地下核実験の停止等の問題についてジュネーブの会議は邪魔である、むしろ国連の傘下に置くべきであるという強い主張がなされているやに聞き及んでいるのであります。わが国は、地下核実験の全面即時停止には賛成である旨、この委員会においてもしばしば意見が表示されました。ジュネーブの会議についてどういうふうに評価されるのか、議論が細目にわたった場合、日本立場をどういうふうに表示されるのか、地下核実験の即時停止、この問題についてはどうアプローチされ、攻め寄せられるのか、お伺いしたいと存じます。
  90. 大川美雄

    ○大川政府委員 ジュネーブの軍縮委員会は、軍縮の交渉の場としてはそれなりにいままで有効な機能を果たしてきたと思っております。ただし、いまのままの姿で完全であるとは思っておりません。いろいろ改善の余地はあろうかと思います。  包括的核実験の禁止条約につきましては、ただいま米英ソの三カ国でもって協議をいたしておりまして、近々のうちには、その協議がまとまった上で具体的な条約交渉の場である軍縮委員会に話が移ってくるということでありますし、わが国としてもそれが一日も早からんことを強く望んでおります。今度の総会におきましてもその点は訴える所存でございます。
  91. 渡部一郎

    ○渡部(一)委員 要するに、米英ソあるいは中仏を加えたこの五カ国の非核保有国に対するわがままと申しますか、勝手と申しますか、これこそまさにガン中のガンであろうと私は思います。  わが国政府は、したがってこういう問題についてはっきり物を言っていただきたいと私は思っております。包括核実験禁止条約早期締結ができるかどうか、米英ソ三国に対して、いつやるのか、期限はいつなのかと厳格に聞いていただきたいと思いますが、外務大臣いかがですか。
  92. 園田直

    園田国務大臣 この夏ごろまでに軍縮総会に訴えるようにやるつもりでございます。
  93. 渡部一郎

    ○渡部(一)委員 それは外務大臣の最初の総括演説の中ではそう織り込めないかもしれませんけれども、ぎりぎりとやっていただきたい。そういうのをぎりぎりやらないと、日本外交は何しているかということになりかねないから、私は特に強く申し上げるわけであります。  また、わが国における国際的な不満は、核兵器不拡散条約、こうしたものが今日空洞化しているのではないかという不満が強いのであります。わが党もこれに賛成をいたした党であります。この同僚議員の大半もこれに賛同いたしたわけであります。ところがこのときの条件は、米英中ソ仏のこの五カ国が、少なくとも核軍縮に対して正式に意思表示をすることを明らかにさせようとして私たちは交渉をいたしたはずであります。なかんずく核兵器の不拡散に関する条約六条に示されております核兵器保有国の核軍縮交渉の約束が、交渉のときには言われていたにもかかわらず、その後実効的に行われていない、これは本当に人をばかにした話と言わざるを得ないのであります。日本外交としてはこのような国際場裏において、核防条約において約束した話は一体どうなったのかと国際的に詰問し、難詰し、追究し、ねじり上げるところのいいチャンスだと私は思います。この生々しいところに接近しなければ、この軍縮総会の真の意味はない、それでなかったら、わが国は積極的に不拡散条約なんかやめるべきであります。そしてこのようなでたらめな、それこそ自分の国の安全のみを図るような愚かな米ソ外交というものに対して、核保有国に対して、核非保有国を代表して日本外交こそがまさに言わねばならぬのであります。  私は福田さんに余り期待をしておりませんが、園田外務大臣に大きな期待を持つがゆえに、あえてこれほどのことを申すのでありますが、ひとつこの辺、何事かと、日本国民の多くの不満を代表し、また、日本ほど大きな声でこういう場所で言えない小さな国々を代表して、厳重に迫っていただきたいと思いますが、いかがですか。
  94. 園田直

    園田国務大臣 いまの問題は、私の訴える演説の原稿の中では、足りないところを補完すべきであるというような程度の準備でありますけれども、いまの御発言によってもう一遍ここのところは文言を検討してみます。
  95. 渡部一郎

    ○渡部(一)委員 それは非常に結構なことと存じますし、ひとつ私以上にオーバーにやっていただきたいと、ぜひともお願いいたします。私は本当にこれは問題だと思うからなんです。  次に、今国会の決議で初めて非核武装地帯構想が国会の決議として取り上げられ、成立をいたしました。文言を読み上げれば、「非核武装地帯構想が、世界の平和の維持に重要な意義を有していることにかんがみ、適切な条件の整っている地域から漸次世界の各地域に非核武装地帯の設置が実現するよう国際的努力をするとともに、同地帯に核保有国による核攻撃が行われない保証をとりつけること。」となっております。この非核武装地帯構想こそが、まさに核保有国は攻撃しない、核を私の方は持っていないというところには核攻撃をしない、こういう構想を核武装国が承認するならば、世界の中は、核で攻撃され得る地帯とされない地帯とに分けることができる。それがある部分形式的な部分があることは認めるとしても、世界に対して核戦争から逃れ得る道を与えることになるし、選択の余地を与えることができると思うわけです。これについては特段に強く表示していただきたいとまた思いますが、いかがでしょうか。
  96. 園田直

    園田国務大臣 いまの点は衆参両議院の決議にも入っているところでありますので、十分考慮してやるつもりでございます。
  97. 渡部一郎

    ○渡部(一)委員 あと二つ申し上げたいのです。  通常兵器の国際的移転が大問題になっており、日本外務省のペーパーにもそれが強く表示されております。私は、武器を世界じゅうに輸出しない国として日本立場はユニークであると同時に、世界の模範だと思います。このすばらしい立場を、ポイントを持つわれわれとしては、これを世界の場裏で言うべきだとは思います。ところが私は、それと同時に、この言葉の裏で、国際的移転に反対するのだから、だからわが国としては国内用の兵器を日本国内でつくり、そして今度は別の名目で外国へ輸出するべきだという議論が関経連等を中心として行われつつある事態に対しては、警戒をなすべきだと思います。国際的移転の禁止は、すなわちわが国も国際的移転を禁止すべきものであると同時に、名目をかえて輸出するようなやり方はわが国も慎むべきであるし、それと同時に、膨大な日本国用の軍需産業を開発するような道もまた警戒して、これに対する抑制措置をとるということが大事だろうと思うわけであります。国務大臣としての大臣の御見識を承りたい。
  98. 園田直

    園田国務大臣 通常兵器の問題については、わが外務省事務当局はきわめて熱心でありまして、伝統を持っております。ただ、私は、通常兵器ばかり言って、核の方を言わぬと都合悪いぞ、それからもう一つは、通常兵器は、いま紛争している小さい国々がありますので、なかなか賛成を得がたいという点もありますけれども、これは外務省事務当局は年来から主張しているところでありますから、これははっきりと私の演説の中に織り込むつもりでおります。
  99. 渡部一郎

    ○渡部(一)委員 最後にもう一つ申し上げておきたいのですが、この軍縮特別総会で大きな特色は、五十カ国ないし六十カ国の大統領とか首相とかが直接ここにお越しになり、軍縮の問題について、平和の問題について話し合うということだと私は思います。各国の首脳がこうしてお話し合いをするということがなければ、この軍縮の問題は、相互不信が背景になっている以上、今後進まないものと私は思います。したがって、こうした国連軍縮特別総会に御出席の際には、このような試みが非常によい試みであると評価されるとともに、これをむしろしょっちゅう開けるように、国連の特別総会の形であるとないとにかかわらず、核保有国非保有国を問わず、各国の首脳が核軍縮問題について積極的にお話し合いができるように、日本政府としてはリーダーシップをとり、提言をなすべきだと思いますが、いかがでしょうか。
  100. 園田直

    園田国務大臣 軍縮問題がなかなか成績を上げないのは、一に各国の疑心暗鬼から出ていることでありますから、相互がしばしば会って話すということが一番大事であると思います。私も御趣旨のように考えております。
  101. 渡部一郎

    ○渡部(一)委員 御認識は承りましたが、総会においてそういう方針で日本政府として意思表示をし、運動をしていただけるでしょうか。
  102. 園田直

    園田国務大臣 私は考えたら黙っておれない方でありますから、間違いなしに訴えてまいります。
  103. 渡部一郎

    ○渡部(一)委員 もう一つ軍縮総会というのは、軍縮だけについていろいろと相談する総会ではなく、場外でいろいろなお話や相談があるということは、予想されるところであります。そこで、ぜひお願いしたいことがあります。  この間、情報文化局のテレビ等に対する発表によれば、EC諸国の平均的な世論調査によれば、わが国が非民主国家である、独裁国家であるという人が三〇%もあり、また、日本が核兵器を保有しているという人々が三〇%以上もあるということであります。ふだんの外務省各国政府に対するPRが非常に徹底されておるおかげでこれほどいい成績をおさめたというふうに一方で見る方があるかもしれませんけれども、私どもとしては、わが国が核兵器保有国であるとか、あるいは独裁国家であるとか、議会制民主主義を持たぬ国であるとかというような評価、実質的に間違っている部分が三割も、テーマによっては六割もあるということに、大きな驚きを見出している一人であります。  文化広報予算について、私は毎年一回ずつぐらい、ここ七、八年にわたり発言を続けているものでありますが、こういうチャンスこそ、テーマと関連もあることでありますから、諸外国に対して十分日本の平和的な姿勢、非核三原則について、日本の議会民主政治について、核武装の問題に対する態度について、十分の資料を配布し、あるいは説明、広報をなすべきだと思いますが、いかがでしょうか。予算が足りないとかなんとかで、既存の枠の中ではできないだろうと私は思いますから、特別の配慮をなすべきだと思いますが、いかがでしょうか。
  104. 園田直

    園田国務大臣 私も、外務省調査報告を見まして、まさにこれに対する絶好のチャンスであるということは、第一に考えたわけであります。できるだけのことをして帰ってまいりたいと思います。
  105. 渡部一郎

    ○渡部(一)委員 私は持ち時間を終わったようでありますからこれで終わりにさせていただきますが、外務大臣がこの未曽有の使命に対し勇敢に取り組まれることに敬意を表し、あなたの後ろにある国会の合意した決議のあることを想起され、また、その後ろに戦争を抑止したいという数千万の核兵器核戦争反対の署名運動があり、またその後ろには日本国民の共通した平和への願いと、世界の人類の生存をかけた希望があることを想起されまして、被爆国、そして平和憲法を持ち、非核三原則を持つ日本代表として、全力を尽くして努力されるように希望したいと存じます。
  106. 奥田敬和

    ○奥田委員長代理 渡辺朗君。
  107. 渡辺朗

    ○渡辺(朗)委員 国連軍縮総会、これに臨むわが国政府の方針をお尋ねしたいと思いますが、それに先立って一、二、日中関係の問題につきまして、外務大臣質問をさしていただきます。  先般中国訪問の後、日本に寄られましたブレジンスキー大統領補佐官と、会談外務大臣はされたわけですけれども、どのような内容で、日中問題お話が何か出ましたでしょうか。ここら辺はいかがでございましょう。
  108. 園田直

    園田国務大臣 ブレジンスキー大統領補佐官と私の会談は、日中問題については前の日の総理大臣との会談で承ったわけでありますが、大体日中問題に対しては特別目新しい話はございませんでした。私との会談では、中国を含むアジアの問題、それから今後アジアの、ASEANの安全よりも繁栄と発展のためにどのようにやるべきかということが主な話し合いの議題でございました。
  109. 渡辺朗

    ○渡辺(朗)委員 大変有意義であったというふうに新聞では外務大臣の印象を聞いておりますが、日中条約の問題についてブレジンスキーから何か言及されたようなことはありませんでしたでしょうか。
  110. 園田直

    園田国務大臣 日中条約の問題については、特別向こうから意見も出ませんでした。ただ中国の方は、一日も早く条約を結びたいと希望しているようだ、この程度の話でございます。私の方は私の方でアジアの平和と繁栄のために、私の方もできるだけ早く締結をしたい、この程度の話でございます。
  111. 渡辺朗

    ○渡辺(朗)委員 このたび、外務大臣国連に行かれるわけですが、中国代表はどなたが出てこられるでしょう。そしてまた、その中国代表とお話し合いをされるような用意はお持ちでいらっしゃいますか。
  112. 園田直

    園田国務大臣 中国の黄華外務長官がおいでになって、私の演説の前日に演説をされることになっております。私は、時間は非常に束縛されておるわけでありますけれども、寝る時間も惜しんで、なるべくおいでになっておる各国指導者の方々にはお会いしたいと考えておるわけであります。  なお、最後に私は、各国指導者に対して御案内をして、お茶会を考えているわけでありますが、これには中国の外務長官及び駐米大使もおいでになるのじゃなかろうかと考えております。
  113. 渡辺朗

    ○渡辺(朗)委員 黄華外相が中国側では参加するということであるならば、このデリケートな時期でございます。本当に日本側の日中平和友好条約についての考え方、私はやはり別途お話し合いをされるような御努力をされてはいかがかと思いますので、ぜひそのような機会をつくられてはどうでしょう。その点を御要望も申し上げておきます。     〔奥田委員長代理退席、大坪委員長代理着席〕  さて、それでは軍縮総会の問題について私はお尋ねいたしますが、これは先ほどもお話がありましたように、国連初の軍縮問題の総会でございます。人類の悲願をかけた会議だというふうに御認識されて活動されるわけでございますけれども、外務大臣の御成功を祈ります。同時に、外務大臣の御活躍によって軍縮が一歩二歩前進するように期待するものでございます。私は、この問題については時間も限定されておりますから、本当に一つか二つかの点でお尋ねをしたいと思います。  軍縮の十年というふうに国連が決めました。そうして今回の総会では行動計画、これを決めることになっております。私は、総括的一般的な演説をされること、日本政府の方針を出されること、大変結構でありますけれども、具体的にどのような提案をこの行動計画の中に日本の提案として盛り込まれるのか、ここら辺、ひとつ外務大臣のお考えを聞かせていただきたいと思います。
  114. 大川美雄

    ○大川政府委員 今度採択されると予定されております軍縮に関する行動計画におきましては、核軍縮の問題は言うまでもなく、核不拡散の問題、通常兵器の問題軍事費の問題、開発の問題、いろいろな問題が織り込まれることになっております。  その中で日本として具体的に強く主張をいたしたいと考えておりますのは、包括的核実験禁止条約早期締結、先ほども申し上げましたけれども、ただいま米英ソ三国で協議いたしておりますけれども、速やかに三国間の協議を終えて、この条約交渉をジュネーブの軍縮委員会に移すべきであるということを主張することが一つございます。  それから、核の不拡散の問題につきましては、できるだけ多くの国が速やかに核不拡散条約の締約国となること、その際に、核不拡散条約の内在しております核兵器国と非核兵器国の間の義務の不均衡を是正するような形でこの条約が、何と申しましょうか、補完、補強されていくということを強く訴える予定でございます。  通常兵器の問題につきましては、従来から具体的な考え方としては、まず現在の国際間の通常兵器の移転の現状をつまびらかに調査する、メスを入れるべきである、そこからどういう具体的なステップをとり得るか、それは国際間でみんなで考えていこうといったようなことを主張するつもりでございます。
  115. 渡辺朗

    ○渡辺(朗)委員 この問題で先般の外務委員会でも私質問をさせていただきました。そのときに、査察の問題で日本に専門家の会議を招致したいというような提案をすでに行ったということも御報告がありました。私は、いまのような、たとえば包括的核実験禁止協定あるいはまた保有国と非保有国の間の義務の不均衡の是正の問題、その他いろいろな非常に専門的な会議、こういうものが出てくると思います。そういう場合に、日本側が積極的にひとつ招致して日本でやる、こういう提案はもっとされてはいかがかと思いますが、その点、大臣いかがでございましょう。
  116. 大川美雄

    ○大川政府委員 日本が今度、ことしの九月に招致いたしております会議がございます。それは先般御説明申し上げましたけれども、地下核実験の探知を、地震学的な方法で国際的に行う技術の問題でございまして、これにつきましては、カナダとスウェーデンと日本が従来から非常に緊密に協力しながら努力いたしております。その三カ国が提唱いたしておりますシステムを、試行的に条約の発効前にでも実施できないかという角度からいろいろ検討いたしておりまして、その専門家の人たちをこの九月に日本に呼んでおります。そのほかに今後軍縮関係の会議につきまして、できれば、機会があれば日本に積極的に招致していくことは望ましいと私どもも考えております。
  117. 渡辺朗

    ○渡辺(朗)委員 外務大臣、軍縮委員会でも、ジュネーブに置かなければならぬということは、私は必ずしもないと思うのですね。やはり日本かそのように核軍縮の問題あるいは一般軍縮の問題、こういうことに非常に熱心だということのためには、そういう国際的な会議というものが日本でも行われる、俗な言葉で言えば、あるいは貸し座敷外交的になるかもわかりません、しかし日本としてやるべきだ、私はこういうふうに思いますので、もし御同意であるならばそういう点、大いに招致をされるような御努力を賜りたいと思います。いかがでございましょう。
  118. 園田直

    園田国務大臣 仰せのとおりであると存じますので、そういう点に注意をしてやっていきたいと思います。
  119. 渡辺朗

    ○渡辺(朗)委員 第二に、私は軍縮の問題の機構についてお尋ねをしたいと思います。  先ほどもお話が出ましたけれども、軍縮委員会が設置されて以降、なかなか進展をしておらない、いら立ちも日本の国民の中、あるいは世界の人々の中に大きくなってきている、こういう実態だと思うのです。これは米ソ共同議長国というような形で運営されているところにも問題があるでしょう。あるいはその他の、いまのコンセンサス方式か、あるいは多数決方式か、こういうような問題もございましょう。今回の国連総会において機構の改革の問題が出た際に、日本として本当にこの問題を、軍縮を積極的に推進するというならば、機構の問題を推し進めなければだめだ、改革をしなければだめだと私は思うのです。これは討議の中身なり、あるいは今後の話の進展というものに大きな影響をもたらしてくるだろうと思います。したがって日本側としてどのような機構改革をやるのか、これはやはり具体的に提案することによって外務大臣演説の中身が生きてくると私は思います。そういう観点から、どのような点をどう改革をしようとする提案を日本側はされるのか、お尋ねをしたいと思うのです。
  120. 大川美雄

    ○大川政府委員 今度採択されます予定の文書の中には、軍縮の宣言と行動計画とそのほかに機構に関する文書が一つ予定されております。したがいまして、その問題を審議する作業グループでいろいろ具体的な意見が出るかと思います。  機構の問題につきましては、軍縮問題の審議の場としては従来から国連の第一委員会が活動をいたしておりますし、さらに具体的な軍縮条約交渉の場といたしましては、ジュネーブにあります軍縮委員会が比較的有効に機能いたしておると私どもは考えております。ただし十全ではございませんで、いろいろ改善の余地はあろうかと思います。その改善の対象として云々されている問題の中に、ジュネーブ軍縮委員会の共同議長制の問題もございますし、その他その加盟国の数の問題も論議されております。しかし、新たに軍縮のための別の機構をつくるという話はございますけれども、私どもは、それはややもすれば屋上屋を架するようなことになるのではないか。でございますので、現在の状態は改善する余地はございますけれども、新たに軍縮委員会のようなものを国連の中に設けることは必ずしも必要ではないのではないか。しかし、ジュネーブの軍縮委員会国連との間の連携を強化するといったようなことは必要ではないかと考えております。
  121. 渡辺朗

    ○渡辺(朗)委員 私、そこら辺大変重要なところだと思うのです。そうすると、従来のように日本政府としては軍縮委員会国連第一委員会の二本立てでいくという考え方、これを通そう、これで進もう、こういうふうに考えておられる、そういうふうに私は理解をいたしました。そうすると、今回、むしろそれで進展がないから機構を改革していこうという基本的な要望が出ている、それに対してはどちらかというと、米ソの立場に立って現状維持でいこうというふうにも理解される、そういうふうに理解してよろしいですか。
  122. 大川美雄

    ○大川政府委員 必ずしもそうではございませんで、現在のジュネーブの軍縮委員会のあり方は、決して完全に満足すべきものではない、いろいろ改善の余地はあると私どもは考えております。
  123. 渡辺朗

    ○渡辺(朗)委員 大臣、やはりこれは、中国、フランスか参加しないといけないと思うのです。先般私も申し上げました。そうしたら外務大臣は、それはそうなんだというふうにもおっしゃいました。そうであるならば、一層中仏が参加できる体制に、それを包み込んで核軍縮の問題は進められなければならぬ。それではこれについては、どのようにして中仏をその中に引き入れていくのか、こういう提案はお持ちでございましようか。
  124. 園田直

    園田国務大臣 私は中国、フランスには参加を訴えるつもりでおります。なおフランスの方では、この軍縮総会というものが機構を改革するなら自分たちも入るということを言っていることはいま御指摘のとおりでありますから、こういう点についてもよく相談をしてみたいと思っております。
  125. 渡辺朗

    ○渡辺(朗)委員 ジスカールデスタン大統領が、一月二十五日でございましたか、国連総会に対して、また軍縮問題に対して提案をしております。三つの提案があったように聞いておりますが、そういう提案の中で、たとえばいまのジュネーブ軍縮委員会を完全に国連に統合するということを提案しております。これに対しては、ジスカールデスタンが実際に国連総会でこれを再度提案するかどうか、この辺はわからぬと思いますけれども、提案をした場合には日本側はどのような態度をとりますか。いまのお話だと私は反対という立場をとるように理解できるわけですし、それではフランスを引き入れるということにはならぬのではあるまいかというふうな点を疑問に思いますのでお尋ねいたします。
  126. 園田直

    園田国務大臣 ただいまの点では、まことに残念ながら、大臣が先ほどの委員への答弁に対しては、軍縮総会というもの、この軍縮というものはやはり国連の傘下に入れるか、その中に組み入れるか考えなければならぬという答弁をしたわけでありますが、いま局長はそういうのはいかぬ、こう言っておるわけでありますが、これは後でよく調整をしてお答えをいたします。
  127. 渡辺朗

    ○渡辺(朗)委員 ひとつ出発までにちゃんと調整はしておいてください。やはり日本がこういうところでも大国に対して発言し、説得し、そうしてまとめていく、そこに外交というものの成果が私は評価されるのだろうと思うのです。  具体的にもう一つ聞きます。ワルトハイム事務総長は、五月二十三日に、総会開会の冒頭に当たりまして、軍縮、兵器制限の実現のための方法を探る、それを目的とする専門家による特別委員会をつくる、こういうことを言っております。これに対して外務大臣、これは賛成でございますか。
  128. 園田直

    園田国務大臣 賛成でございます。
  129. 渡辺朗

    ○渡辺(朗)委員 大変結構なんで、大いに激励をして賛成の方向でそれを実現さしてやっていただきたいと思います。  二番目に、ワルトハイム事務総長は、同じく、軍縮のための献金制度、一ビリオン、十億ドル軍備に使う国は百万ドルの献金をというふうに提案をされたように聞いております。いかがお考えでございましょう。
  130. 園田直

    園田国務大臣 私は、軍縮をして、軍備に使う金を南北問題に使えということを、現にすでに米国その他に提案をしておるわけでありますが、いまの御発言、提案等も十分入れて検討してみたいと思います。
  131. 渡辺朗

    ○渡辺(朗)委員 大臣、これは軍備のために十億ドル使っている国は百万ドル献金、そして軍縮のために使うということをワルトハイム事務総長は提案しておられる。もちろん南北問題への拠出というようなことは、途上国援助というものは積極的に日本はやるべきだと思うのです。だけれども、この問題、ワルトハイム提案だけに限れば、大臣、ひとつこれはやはりここで態度を決めておかれた方がいいと思う。何となれば、十億ドルのお金を使う、そして百万ドルの献金を1日本は軍備をそれほど大きく持っておらぬからと、こういう論理もあり得るでしょうけれども、この際むしろ日本は積極的に支援をし、そのような献金制度をつくり上げていくための先頭に立つということがもう一つ具体的な行動として示される、態度で示そうという言葉がありますけれども、やはりそれはやるべきだと思うのです。その意味で、検討されるということよりも、むしろ大臣としてここら辺で、そうしたいという決意ぐらいは聞きたいと思いますが、いかがでございましょう。
  132. 園田直

    園田国務大臣 私の南北問題に使えというのと同じような方向の発言でありますし、その意見は私自身としてはよいことであると考えておりますが、検討してどうするかということはもう少し検討してからお答えしたいと思います。
  133. 渡辺朗

    ○渡辺(朗)委員 それでは時間も参りましたので、これでもってやめますが、最後にもう一度、本当にこれで日本外交の、軍縮問題を契機にしてやはり大きく発言もしていただき、それから実際的にリーダーシップもとっていただく好機でございますので、外務大臣の御活躍を期待いたしまして、私の質問を終わらせていただきます。がんばってください。
  134. 大坪健一郎

    ○大坪委員長代理 寺前巖君。
  135. 寺前巖

    寺前委員 限られた時間でございますので、要点のみの質問をしたいと思います。  まず第一点。核兵器全面禁止なんていうことは空想だ、現実的なものでないということを言う人がおるけれども、外務大臣、あなたはどう思われますか。
  136. 園田直

    園田国務大臣 空想であってはならぬと思います。
  137. 寺前巖

    寺前委員 とすると、あなたは参議院で、絶対に使ってもらっては困るのだという、この悲願は必ず国連で訴えてきたい、それは、空想にさせないためにそのことを訴えてくるという立場を表明されたというふうに思いますが、それではその願いを必ず物にさせるためにはどうしたらいいのですか。どうされるつもりですか。
  138. 園田直

    園田国務大臣 私が発言したことは御指摘のとおりであります。そこで、理想を実現するためには、いまの軍縮総会というものを核を持った大国の自我から来る駆け引きにしないで、核の脅威を受ける多数の国々が集まって話し合い、そして足並みをそろえていくことによって、一歩一歩とその目的を達成したいと考えております。
  139. 寺前巖

    寺前委員 核兵器を使ってもらっては困るということを具体化させるためには何をやるのですか。
  140. 園田直

    園田国務大臣 ただいま申し上げましたとおりに、核を使ってもらっては困るという国々が集まって、そして具体的に一歩一歩と核が使えないように持っていくということが必要であろうと思います。
  141. 寺前巖

    寺前委員 現実の政治というのは、協定を結ぶとか何かしなかったら拘束を受けるものではないのじゃないでしょうか。あなたたちが実際に当委員会におかけになるいろいろな協定というのは、実際上効果をもたらすために協定というのを結ぶのじゃないのでしょうか。それ以外の方法で何かやるとおっしゃるのでしょうか。困るという国々が集まって何をやるのですか。具体的効果をもたらすものは何ですか。
  142. 園田直

    園田国務大臣 一歩一歩と現実に従って、話がまとまればそれによって決議をするなり、あるいはだんだん進んでくれば条約をつくるなり協定をつくるなり、そういうことにだんだん発展してくると思います。
  143. 寺前巖

    寺前委員 それでは外務大臣は、この軍縮総会を、そういう核兵器を使ってもらっては困るというその重要な第一歩の場として活動するという決意としてお聞きしてよろしいね。
  144. 園田直

    園田国務大臣 その決意がなければむだになるわけでありますから、そういう決意演説をし、その決意で、短時間でありますが、走り回ってくるつもりでおります。
  145. 寺前巖

    寺前委員 非同盟諸国から核兵器使用禁止の提案が出されるということを聞いております。そうすると、そういう決意で参加されるところの外務大臣は、この核兵器使用禁止の提案について賛意を当然表されると思いますが、そういうふうに理解してよろしゅうございますか。
  146. 園田直

    園田国務大臣 非同盟からそういう案が出されると聞いておりますが、提案の理由を承り、話を承った上で態度は決定いたします。
  147. 寺前巖

    寺前委員 承ってそれからだということでは、研究が足らぬというのか、その決意がはっきりしないじゃありませんか。従来日本政府がとってこられた態度というのは、一貫して棄権という態度をとってこられている。ところが大臣はその決意で一歩一歩やるのだと言う。そういう決意を示しておられるところの国があるならば、それに対して当然賛成の意思を表明されてしかるべきではないか。重要な一歩にされるという以上は、そういうものにされる必要があるのじゃないでしょうか。
  148. 園田直

    園田国務大臣 いろいろ出される提案その他というものは、いろいろ提案の理由もあるでしょうし、あるいはまた果たして核の脅威を受ける国々の気持ちから出ている行為であるか、あるいは背後にある国々のいろんな意向によるのか、そういうことも十分考慮してやる必要がありますから、十分承ってから、これに対する態度を決定をいたします。
  149. 寺前巖

    寺前委員 現実の問題になったらそういうふうに一歩下がられるということは、私は理解に苦しみます。本当に核兵器をとめようという立場に立たれる国があるならば、喜んで迎えてこそしかるべきじゃないでしょうか。それが唯一の被爆国政府としてのとるべき態度だ。私は反省を求めたいと思います。  時間がないので次へ行きます。  日本を含む西側十一カ国ば、米ソ間の戦略兵器制限交渉によって行うことを基調とする案を出しておられるようです。昨年四月の軍縮総会に対する日本政府の見解を見ても、こういう核兵器の保有国の責任の自覚に求めておられます。すなわち、米ソ超大国に期待をするというのがその立場であります。ところが米ソ超大国というのは、みずから核軍拡をやめるという保証はどこから考えてもありません。日本政府は、先ほどから包括的核実験の禁止条約という問題を提起しておられます。それは新型兵器の出現には若干の効果をもたらすか知りませんが、核実験がもう進んでしまって、核兵器の保有国というのは、ことさら実験がなかったからといって、ちゃんと核兵器はすでに持っている。あるいは新型兵器の分野についてもすでに開発が進んでいるという国もあります。こういう段階で実験の禁止だけでは、そうすると現実にある兵器そのものに対するところの、この脅威に対する拘束というものは何ももたらさないことになってしまう。ですから、そういう意味では、この軍縮総会というのが核兵器を持っている国を拘束させるという姿でなければならないということを、私は先ほどから強調しているところであります。  そこで、ひとつ大臣に聞きたいと思います。  オランダの国会では、中性子爆弾、中にはきれいな爆弾だからいいじゃないかと言う人がおりますけれども、しかし生物については、あの核兵器のときとは違うか知らないけれども、その生存においては恐るべき兵器であることも、これまた事実であります。その中性子爆弾について、NATO配備に対する反対の決議を上げられたようであります。また国防大臣も抗議の辞表を出すという態度をおとりになったようであります。こういうふうにこういう新しい型の兵器に対しても積極的な活動が幾つかの国で展開をされているわけですが、外務大臣はこういう世界の流れの中で唯一の被爆国代表として今度行かれるわけですが、この中性子爆弾に対して、実験をとめるというだけではこれはちょっとぐあい悪い。兵器とその運搬手段の生産あるいは貯蔵、配備、使用をやめさせるという、こういうオランダの諸君が提起している態度を見ても、日本政府としては、もっとこういう問題についても積極的な態度表明があってしかるべきではないだろうかというように私は思うのです。外務大臣は、こういうオランダの姿を見ながら、一体こういう問題に対してどういうふうにしたらいいとお考えになりますか。
  150. 大川美雄

    ○大川政府委員 いわゆる中性子爆弾につきましては、いろいろの意見がございます。その配備の対象として考えられております西ヨーロッパの国々においても、いろいろな意見があるようでございます。  そこで、四月の初めでございますが、アメリカの大統領は、いわゆる中性子爆弾の生産を延期するということを決定したと発表しております。すなわち、この兵器の生産についての最終的決定は将来に持ち越されたということでございまして、この問題は今後主要配備先と見られているNATOの諸国とアメリカが協議して決定するものと承知いたしておりまして、この協議が続けられ、慎重に何らかの結論が出されるものと思います。私どもはそれを注視する所存でございます。
  151. 寺前巖

    寺前委員 外務大臣は、アメリカ自身においてもこれについての生産の一時的な停止がなされているだけだ、生産はいっでも起こすことができる、オランダでは配備に対する反対が生まれている、こういうときに、アメリカのかさのもとに日米安保条約を公然とうたっておられるあなたとしては、アメリカの軍隊がここにその兵器を持ってくる、アメリカ自身において生産をして日本へ持ってくることに対して、待てという声を叫ばれるのか、叫ばれないのか、はっきりしてほしいと思います。
  152. 園田直

    園田国務大臣 日本にアメリカが中性子爆弾を持ってくることは、考えてもおらぬし、われわれも想像もしておりません。
  153. 寺前巖

    寺前委員 考えてもおらないということは、困るとおっしゃるのかどうか。
  154. 園田直

    園田国務大臣 そういう状態はあり得ない、こう言っているわけであります。
  155. 寺前巖

    寺前委員 繰り返しの話で率直に御指摘をなさらないということは、何か一物があると国民は考えざるを得ないわけです。困るものは困るとはっきりおっしゃるべきではないのですか。
  156. 園田直

    園田国務大臣 中性子爆弾というのは、そもそも戦車用につくられたものであって、これはヨーロッパ戦線に考えてつくられたものでありまして、日本ではその必要はないわけであります。困るか困らぬかという質問、愚問だと思います。日本には核爆弾は持ち込ませぬということになっておるわけであります。
  157. 寺前巖

    寺前委員 ヨーロッパ戦線で配置をされようと、日本には持ってこないだろうということと、それからそういうものが、こういう破壊兵器は日本では困るのだということを、したがって、もう一つ言うならば、そのもとである生産そのものから、それからすでに生産段階から配備することができる段階にまでアメリカは来ている、そういうことを全体を含めてそういうことをしないようにということを積極的に国連軍縮総会においても、単なる実験禁止という段階だけではなくして、提起をすべき性格を持っているのではないかということについて、大臣の所見を聞いているわけです。
  158. 園田直

    園田国務大臣 中性子爆弾もそうでありますが、われわれはもっともっと大きな核廃絶を理想としてやっていくわけでありますから、そういう問題が出れば、その場で私は所見を述べますが、軍縮総会でそういう問題は議題にはならぬと思います。
  159. 寺前巖

    寺前委員 はぐらかされますので、もうこれ以上時間がありませんのでやめますが、ワルトハイム国連事務総長の報告を見ても、核防条約などの諸措置について、それらは軍備競争の速度を遅くしたり軍備の現実の基礎に重大な影響を与えたりする任務にまでは進んでいない。いままでいろいろなことをやってきたことについては、軍備競争の速度をおくらすということすら現実にはなっていないんだということを報告をしております。元国連大使の松井明さんも専門家としてこの報告の中に加わっておられるようでありますが、この指摘にもあるように、核兵器そのものの全面禁止に向かって実際上の仕事をやらないと国際的に困るではないかということの指摘が、この国連総会に当たってもワルトハイム報告でも世界的に問題にされているところであります。とすると、先ほどからの核兵器の使用を何とか禁止をさせることを叫びたいということをおっしゃってきた外務大臣として、この核兵器の全面禁止を現実的な目標とするプログラムというものは一体どういうふうに考えておられるのか。
  160. 大川美雄

    ○大川政府委員 ただいまお述べになりました点は、いまの事務総長の報告が検討された際に非常にもめたところと承知いたしております。現在までの核防条約を含むいろいろの軍縮関係の条約は、あるいは核軍備の縮減に直ちに結びつかなかったかもしれませんけれども、これからはアメリカとソ連の戦略核兵器削減交渉が第三段階に移れば、いよいよ削減の段階に入るものと私どもは理解いたしておりますし、速やかにその段階に入っていくことを強く期待している次第でございます。
  161. 寺前巖

    寺前委員 大臣に御意見を聞いておるのですけれども、いまの話では兵器の削減の話というのは米ソの方に期待をかけているだけではないか。そうでなくして、拘束を国際的に全部でしてしまうという意味のものに、兵器の使用というものをしていく必要がある。もう兵器の使用そのものをすぐとめさせなんだら、現実仁保有されているのだから大変だ。この大変だという事実に対するプログラム、実験の話ではない、すぐ使うという問題に対してのプログラムをどこにどういうふうに求めているのか。いまの話だけでは米ソにだけ求めているだけだ、米ソでうまいことをやってくれということを祈っているだけだ。これだけではだめなんじゃないだろうかという問題についての大臣の所見を聞きたい。
  162. 園田直

    園田国務大臣 それは御発言のとおりであると考えます。
  163. 寺前巖

    寺前委員 具体的なプログラムのお話はありませんでした。もう時間が参りましたので、またの機会にさしていただきます。  最後に、私、この間大臣のところに竹島の問題について申し入れに行きました。大臣に対して率直に韓国政府に対して文書で抗議をしなさいということをはっきり言っておきました。現実に竹島周辺の領海内における漁民の安全操業は保障されているのかどうか、現時点において私はもう一度重ねて聞いておきたいと思う。安全操業は保障されているのか、不安な状態が続いているのかということが一つ。  それから第二番目に、現実的に不当な占拠をされているし、いわば軍事占領とも言うべき姿になっている。そこへ軍艦が入ってきて、そして今度は十二海里の外まで出よと、領海侵犯が現実になされている。その強い態度、領海侵犯に対する強い抗議あるいは事実上のこういう軍事占領とも言うべき姿が起こっていることに対して、一体その文書をいつになったら出すのか。現実に起こっている問題は即刻やらなければならない性格だ。なぜ準備をだけして、一向に発動しないのか。発動できない理由があるとすれば、一体どこにあるのか。  そして第三番目に、大臣はこの前経済援助の中止に値するというような発言がありました。いま大陸棚協定の国内法の相談国会の中で最終段階に来ているように聞いております。こういうふうに見てくると、現実に日本の領土、領海が侵されているところの関係が、友好関係を全く、それこそ踏みにじっているところの内容そのものであります。私はこの大陸棚そのものが重大な問題だと思いますけれども、それ以上に、こういう現実が起こっていることに対してどういうふうに制裁というのでしょうか、経済援助の中止の問題、大陸棚協定の取り扱いの問題において重大な態度があってしかるべきだと思うのですが、大臣、これについてのこの段階における姿を御説明いただいて、質問を終わりたいと思います。
  164. 三宅和助

    ○三宅政府委員 まず第一点の領海侵犯の問題でございます。  すでに八日の日には、先方とのやりとりで、これは口頭で強く抗議しておりますが、文書につきましては現在準備中でございます。準備中と申しますのは、やはり文書である以上いろいろな事実関係を十分調査いたしまして、そう遠からず文書で先方に手交いたしたいということで、現在事実の確認その他いろいろな点を検討しているという段階でございまして、意識的にこれを遅延しているということではございません。  それから第二点の、安全操業の問題でございますが、これにつきましては先方といろいろと現在話しておりまして、やや好転の兆しが見えている、しかし、安全操業の問題につきましてはいろいろと機微な点がございますものですから、これ以上のことは発言は差し控えさしていただきたいと思います。いずれにいたしましても、政府といたしましては全力を挙げまして、緊急の問題といたしましてこの安全操業の問題について真剣に取り組んでいるということで御理解いただきたいと思います。  それから第三点の、それでは領土権、竹島問題をめぐっていかなる方策で、強い態度で臨むかという点でございますが、これは今後いろいろと諸般の状況を考えまして、いかなる方策が一番有効であるか、そうすることによっていかにして相手をまず話し合いに出せるかということで、現在検討しておりますし、今後検討してまいりたい、こう考えております。
  165. 寺前巖

    寺前委員 時間が来ておりますので、大臣に、私はこの間わざわざ大臣にお話をした後の話でありますので、きちんとしていただきたいと思うのです。あのときもお話ししたように、漁民の漁期からいうと五月、六月という時期を避けることはできない段階にあるままで不安な状態が続いているし、しかも領海侵犯という問題は友好関係の基本にかかわる問題であります。それだけに大臣決意が、目下検討中でいつまでも置かれておくというわけにはいかないと思うのです。大臣の所見を聞きたいと思います。
  166. 園田直

    園田国務大臣 竹島周辺の操業の問題については、その後韓国といろいろ交渉いたしておりまして、この操業は少なくとも緩和されておるはずでございます。それ以上のことは申し上げられません。  次に、その後の処置については私は腰を据えて交渉するつもりでございます。交渉するについては、その時期やその他がございますので、ただいまそれを準備をしているところでございます。
  167. 大坪健一郎

    ○大坪委員長代理 楢崎弥之助君。
  168. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 この際、お伺いをいたしておきますが、佐藤内閣時代に、当時の大平外務大臣が核四政策というものを出されました。これは今日も生きておりますか。
  169. 園田直

    園田国務大臣 いまの御質問は、非核三原則に平和利用を加えたものでございましょうか。
  170. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 私は、軍縮総会に出られるから当然こういうことは――日本政府としてはあの核問題の論議のときに、その場を逃れるために出された政策ではないと私は重要視しておるわけですが、御記憶にないわけでしょうか。
  171. 園田直

    園田国務大臣 勉強不足で申しわけございません。当然これは生きております。
  172. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 つまり私の記憶によれば、一つは核軍縮の問題である。二番目に平和利用の問題である。三番目に日米安保条約というのが入っているのですね。そして四番目に非核三原則、こうなっております。非核三原則というのは条件つきなんです。そのときの説明は。それがいまも生きておるんでしょうかというのを実は聞きたかった。つまりそういう政策を抱えながら軍縮に対する意見をいろいろ言われるということは迫力に欠くる点があるのではないか。当時私どもは、この核四政策というのは牛乳と青酸カリを一緒にまぜて飲めというような政策ではないか、大変議論をしたところなんです。特に安保条約が非核三原則の一つの前提というか、条件になっておるという点、こういうわかりにくい政策をいまもまだ堅持されておるのであろうか、これをお伺いしておるわけなんですよね。
  173. 大川美雄

    ○大川政府委員 現在も変わっておりません。
  174. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 そうであれば、先ほど申し上げたとおり、これは今日的に考えて、安保条約を前提にして非核三原則を言っているんだというようなことじゃ、国連総会における日本の主張について非常に迫力が欠ける、あの中の非核三原則だけ取り上げて国会決議でもそうなっておるけれども、私はそういう危惧を表明しておきたいと思います。  もう一遍、当時の大平外務大臣が出された核四政策というものについて、軍縮はいいでしょう、平和利用もいいでしょう、非核三原則ももちろんいい、その中に一本日米安保条約というものをその四政策の中にわざわざ入れたという点は、つまりこの安保条約というものが、当時から言っているとおり、いわゆる核安保というものなのですよね。だからそういうものを前提としながら、核のかさに入りながら、一方において核の廃絶などと言う点について非常に弱い点があるのではないか、堂々と胸を張って主張されるについては、こういうものがある限りなかなかそうはいかぬのじゃないか、これの、私は危惧を表明しておるわけですよ。もう一遍この点については、もうずいぶん前の政策ですから、生きておりますという簡単なあれでなしに、あなた知らなかったでしょう、外務大臣は別として外務当局は。もう少し真剣にこういうものは考えていただきたいと、時間がありませんから要望しておきたいと思います。  それからもう一つ、これは私ちょっと注意を喚起しておきたいのは、唯一の被爆国というこのことです。これは国会決議の中に入っているけれども、この唯一の被爆国というこの認識について、私は今日的にはもう少しグローバルに、つまりそういうナショナリズムではなしに今日的には考える必要がある、その国籍からいうと、放射能の汚染を受けている人たち、あるいはその被爆をしている人たちは必ずしも日本人だけではないのですよ、今日では。当時、日本において被爆した韓国の人たちもおる。朝鮮の人たちもおる。中国の人たちもおる。それから、例のミクロネシアのビキニの人たちの問題もある。あるいはついせんだってワシントンポストが公表したように、核実験に参加したアメリカの三軍の将兵あるいはペンタゴンの職員二、三十万について調査をしたところ大変な被曝の状態が出てきておる。そういう問題が今日的な問題である。これは私あえて議論はしたくないのです。だから、最初の被爆国だということだと現実に合うということだと思うのです。この問題は、今日ではそういうナショナリズムを超えた国際的な問題になっておる、こういう認識もひとつ持っていただきたい。私はこれは議論をいたしません。  それから次に、先ほど土井議員も出された問題ですけれども、非核地帯の問題。ASEANのクアラルンプール宣言もあります。それからインド洋平和地帯案については七一年総会でこれは採択されておりますね、もちろん日本中国、インドも含めて。スリランカの主張によってそれが採択された。そして国連加盟のアジア関係十五カ国によって特別委員会をつくって検討するということになっておったのですが、この問題はその後どういう進展をしておるでありましょうか。
  175. 大川美雄

    ○大川政府委員 インド洋平和ゾーンのための特別委員会には、日本もメンバー国として毎年出席しております。来年、インド洋沿岸国、背後国が集まってこの問題を検討する会議も予定されております。その会議には、日本も何らかの形で出ることになろうかと思います。
  176. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 つまりそういう点について、具体的に日本政府というものが努力をしていく、具体的に行動の面で示すということでなくてはいけない。つまり五十年の外務委員会で核防条約の採決の際に、当時、日本社会党は党内二分したような激しい議論があった。土井議員も言ったけれども、結局、最終的に宮澤さんのアジア太平洋地域における非核地帯の設定について真剣に努力するという表明があって、当時の社会党は賛成に回ったといういきさつがあるのですよ、これは非常に努力をして。あのような答弁というものも具体的な行動の面で生かしていってもらいたい。今度の国会決議の中にもこの問題は入っています。ですから具体的にぜひ行動の面で示していっていただきたい。これも要望として申し上げておきます。  それから竹島の安全操業の問題これは西日本漁民にとっては重大なんですね。特にイカ漁業は深刻な打撃を受けている。これはもし安全操業ができなくてイカ漁業等が重大な損害を受けたときに、国の政策によってそうなるのだから、国の責任があると思うのですが、この点の措置はどのようにお考えでしょうか。
  177. 三宅和助

    ○三宅政府委員 まず国といたしましては、外交交渉によって何とかして安全操業を確保すべく、現在真剣に努力して、すでに大臣申し上げましたように改善、緩和の兆しが見えているということでございます。  それから補償の問題につきましては、現在水産庁の方で、諸状況を勘案しながらいろいろな形の対応をしていきたいということで検討しておると承知しております。
  178. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 この点は国の責任であるから、国家賠償法などと大げさなことは言いませんけれども、救済の問題についてはひとつ十分頭の中に入れておっていただきたい。  最後に一問だけお伺いしておきますが、日中問題についてです。  交渉締結は別だ、いやそうでないなどという、こんなばかげたことはない。与党の方余りおられないのにこんなことを言って申しわけないけれども、私は内政干渉するつもりはないのですが、外から見ておって、こんなばかばかしい議論をしながら交渉を申し込まれた中国は一体どう感ずるだろうかということを危惧するわけです。たとえば、これは一つの仮説の問題ですが、佐藤・韓念竜会談が行われるとして、ああそうですか、園田さんいらっしゃいと中国がもし言った場合にどうなりますか。
  179. 園田直

    園田国務大臣 交渉と妥結は別であるなどという議論がばかげた議論であるということは全く同意見であります。そういうことは絶対いたしません。  それから私のいまのところの心組みは、まず交渉再開申し入れるその際には、大体日取りその他を決定して申し入れる、そこでまず第一回目には事務的にいろいろ整理して詰めていく、必要に応じて私が総理の指示によって向こうに参る、こういう段取りになるかと考えております。  それからまた先ほどの被爆国ということに対する認識は非常によくわかりました。十分注意をいたします。
  180. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 時間が来ましたから一問だけにします。  外務大臣の頭の中では、交渉再開をして成功するかどうかの確率をどのように見ておられますか。非常に厳しい質問ですけれども、重大なところへ来ていると私は思うのです。
  181. 園田直

    園田国務大臣 交渉再開をするからには、必ず妥結をするということでやらなければ交渉にならぬと思います。
  182. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 ひとつ成功をお祈りいたします。  以上です。
  183. 大坪健一郎

    ○大坪委員長代理 次回は、来る三十一日水曜日午前十時理事会、午前十時三十分より委員会開会することとし、本日は、これにて散会いたします。     午後一時十八分散会