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1978-04-28 第84回国会 衆議院 外務委員会 第18号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和五十三年四月二十八日(金曜日)     午前十時五十八分開議  出席委員    委員長 永田 亮一君    理事 大坪健一郎君 理事 奥田 敬和君    理事 塩崎  潤君 理事 毛利 松平君    理事 井上 一成君 理事 土井たか子君    理事 渡部 一郎君       川田 正則君    小坂善太郎君       佐野 嘉吉君    竹内 黎一君       高沢 寅男君    中川 嘉美君       曽祢  益君    寺前  巖君       伊藤 公介君    楢崎弥之助君  出席国務大臣         外 務 大 臣 園田  直君  出席政府委員         防衛庁参事官  夏目 晴雄君         外務政務次官  愛野興一郎君         外務省アジア局         次長      三宅 和助君         外務省欧亜局長 宮澤  泰君         外務省経済協力         局長      武藤 利昭君         外務省条約局外         務参事官    村田 良平君  委員外出席者         外務大臣官房領         事移住部長   賀陽 治憲君         外務省アメリカ         局外務参事官  北村  汎君         外務委員会調査         室長      高杉 幹二君     ————————————— 委員の異動 四月二十七日  辞任         補欠選任   川田 正則君     金子 岩三君   佐野 嘉吉君     平泉  渉君   竹内 黎一君     小坂徳三郎君   中山 正暉君     久野 忠治君   佐々木良作君     曽祢  益君   寺前  巖君     東中 光雄君 同日  辞任         補欠選任   金子 岩三君     川田 正則君   久野 忠治君     中山 正暉君   小坂徳三郎君     竹内 黎一君   平泉  渉君     佐野 嘉吉君   東中 光雄君     寺前  巖君 同月二十八日  辞任         補欠選任   曽祢  益君     佐々木良作君     ————————————— 本日の会議に付した案件  日本バングラデシュ人民共和国との間の国際  郵便為替交換に関する約定締結について承  認を求めるの件(条約第一一号)(参議院送  付)  日本国カナダとの間の小包郵便約定締結に  ついて承認を求めるの件(条約第一二号)(参  議院送付)  国際情勢に関する件      ————◇—————
  2. 永田亮一

    永田委員長 これより会議を開きます。  日本国バングラデシュ人民共和国との間の国際郵便為替交換に関する約定締結について承認を求めるの件及び日本国カナダとの間の小包郵便約定締結について承認を求めるの件の両件を議題といたします。  まず、政府より順次提案理由説明を聴取いたします。外務政務次官愛野興一郎君。     —————————————  日本国バングラデシュ人民共和国との間の国際郵便為替交換に関する約定締結について承認を求めるの件  日本国カナダとの間の小包郵便約定締結について承認を求めるの件     〔本号末尾に掲載〕     —————————————
  3. 愛野興一郎

    愛野政府委員 ただいま議題となりました日本国バングラデシュ人民共和国との間の国際郵便為替交換に関する約定締結について承認を求めるの件につきまして提案理由を御説明いたします。  わが国と諸外国との郵便為替交換は、一般的には、万国郵便連合郵便為替及び郵便旅行小為替に関する約定によって規律されております。しかし、バングラデシュ人民共和国はこの多数国間の約定締約国ではありませんので、バングラデシュ人民共和国との間で郵便為替を直接交換するためには、同国との間で二国間の約定を新たに締結することが必要であります。  よって、わが国及びバングラデシュ人民共和国郵政当局は、両国の間において郵便為替の直接交換を開始するため、かねてから予備的な話し合いを行っておりました。この予備的な交渉を通じ実質的な合意が得られましたので、両国政府は、本年二月より正式に郵便為替約定締結交渉を開始し、先般最終案文について合意を見るに至りましたので、本年四月十四日に東京において日本側園田大臣及び服部郵政大臣と、バングラデシュ側カマル日バングラデシュ大使との間でこの約定署名を行った次第であります。  この約定は、前文、本文十四カ条及び末文から成り、本文十四カ条は、為替交換方式為替表示通貨為替業務に関する諸料金、両郵政庁間における決済の方式仲介業務条件等両国郵便為替業務を円滑に行うために必要となる基本的事項について定めております。  この約定締結し、わが国バングラデシュ人民共和国との間で郵便為替の直接交換を開始することとなれば、両国国民間の送金の利便が拡充されるとともに両国間の協力関係の一層の増進にも寄与するものと期待されます。  よって、ここに、この約定締結について御承認を求める次第であります。  次に、日本国カナダとの間の小包郵便約定締結について承認を求めるの件につきまして提案理由を御説明いたします。  現行日加小包郵便約定は、大正三年に締結された日加小包郵便約定を受けて、昭和三十一年に締結され、その後昭和三十七年に部分的に改正されて現在に至っております。  一方、わが国を含む世界の大多数の国が加入している万国郵便連合連合小包郵便約定にはカナダは未加入でありますが、この連合小包郵便約定は、現行日加小包郵便約定締結後、四回にわたり改正されました。このため、日加小包郵便約定連合小包郵便約定との間には、小包郵便物取り扱い等に関して差異が生じてきております。  以上の状況にかんがみ、政府といたしましては、昭和四十九年七月に新たな連合小包郵便約定が採択された機会をとらえ、昭和五十年四月に、現行日加小包郵便約定の全面的な改正を行い、両約定間の差異をなくすこととし、カナダ側に対し予備的交渉の開始を提案いたしました。両国政府は、この提案に基づき、まず予備的交渉を行い、これによる実質的な合意成立を受けて、さらに、昭和五十一年十一月から正式に改正交渉を開始し、外交経路を通じて調整を重ねた結果、このほど約定最終案文について合意を見るに至りましたので、本年四月十一日に東京において、日本側園田大臣及び服部郵政大臣カナダ側ランキン日カナダ大使との間て、この約定署名を行った次第であります。  この約定は、本文十六カ条及び附属書から成り、その主要な改正点は、次のとおりであります。  すなわち、現行約定を体系的に整理し直すとともに、取り調べ請求に関して受取人からの請求及び電信による請求を新たに認めることとし、また、価格表記小包亡失等の事故が不可抗力による場合であっても、各郵政庁が任意に損害賠償を行い得るように改めることなどにより、現行日加小包郵便約定連合小包郵便約定との間に従来見られた差異をなくし、もって、日加両国間の小包郵便物交換業務の一層の円滑化を図った次第であります。  したがいまして、かかる約定締結することは、小包郵便の分野における日加両国協力関係の一層の増進に資するものと考えられます。  よって、ここに、この約定締結について御承認を求める次第であります。  以上二件につき、何とぞ御審議の上、速やかに御承認あらんことを希望いたします。
  4. 永田亮一

    永田委員長 これにて提案理由説明は終わりました。  両件に対する質疑は後日に譲ることといたします。      ————◇—————
  5. 永田亮一

    永田委員長 国際情勢に関する件について調査を進めます。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。  なお、午後一時三十分から本会議が開かれますので、質疑者各位理事会の申し合わせの時間を厳守されますようお願いしておきます。  高沢寅男君。
  6. 高沢寅男

    高沢委員 私は、日本ベトナムとの間における経済協力、あるいは過去にさかのぼれば賠償ということにもなるのですが、そういう関係できょうはひとつお尋ねをいたしたいと思います。  最近、新聞報道するところによりますと、この四月のうちに日本ベトナム社会主義共和国との間で交換公文調印が行われる。その交換公文内容は、ベトナム側は、日本が旧南ベトナム政権に与えた経済援助約百六十八億円を時間をかけて返済をする。それに対して今度は、日本ベトナムに対して無償資金協力を行う、その内容は、五十三年度に四十億円、それから五十四、五、六年度と引き続いてそれぞれ四十億円。その無償のほかに、今度は有償で五十三年度に百億円、五十四年度に百億円、合計して二百億円になりますが、そういう資金援助を行う。こういうことでありますが、まず、この新聞報道は事実であるのかどうか、そういう交換公文調印が行われるのかどうか、それから、その内容はいま私が申し上げたような内容であるのかどうか、このことについてまずお尋ねをいたしたいと思います。
  7. 武藤利昭

    武藤政府委員 新聞報道されておるところにつきまして、私どもの方から、それが正確であるとかないとか、どの部分が正確であるとかないとかということを申し上げるのは差し控えさせていただきたいと思うのでございます。  事実関係について申し上げますと、かねてからベトナムとの間に債権債務問題というものが懸案としてあったわけでございますが、この問題につきまして、長い交渉の結果、このたびようやく両者間に合意成立いたしまして、本日の夕刻ハノイにおいて交換公文が行われることになっております。  本日行われます交換公文は、ベトナム側から日本側に対して所要支払いを行うというのが一つでございます。もう一つは、わが国からベトナムに対して四十億円の無償資金協力を行うということをうたいました交換公文が行われることになっております。
  8. 高沢寅男

    高沢委員 いま御説明内容ですが、わが国から向こうに対する四十億円の援助、これはつまり五十三年度ということですか。あと五十四年度、五年度、六年度、そういう関係はどうなるのか、それをちょっと説明願います。
  9. 武藤利昭

    武藤政府委員 本日交換公文が行われますのは、五十三年度調印をいたします四十億円についてでございます。将来のことにつきましては、交渉過程におきまして私どもの方から債権債務問題が片づくということでもございますので、今後ベトナムに対して、ベトナム経済復興発展民生の安定を助けるために引き続き協力の用意があるということは申しているわけでございますけれども、各年度幾らぐらいというようなことについての合意は別段にないわけでございます。
  10. 高沢寅男

    高沢委員 そうすると、将来のことは、そういうふうに合意ができた段階で、そのときどきでまた交換公文を結ぶということになるわけですか。
  11. 武藤利昭

    武藤政府委員 そのとおりでございます。
  12. 高沢寅男

    高沢委員 そこで、ベトナム側から日本に対して返済をするというのか支払いをするというのか、これの性格は、先ほどの説明債権債務関係という言葉もちょっとありましたが、これは交換公文の中では、ベトナム側日本に対して債務返済するという文章になるのか、あるいは別な表現になるのか、その辺はどうなんですか。
  13. 武藤利昭

    武藤政府委員 ベトナムが、かつての南ベトナムに対して与えられました日本円借款債務を引き継ぐという形をとるかどうかが実は問題だったわけでございまして、今回の解決は、そういう原則論にわたる解決を図ろうといたしますと、どうしてももう行き詰まりになってしまうというような認識に立ちまして、現実的な解決を図るという趣旨で交渉をまとめたわけでございまして、交換公文の書き方といたしましては、ベトナム側から日本側に対して所要支払いを行うということだけが書いてございます。別途両者間で支払いのためのスケジュールというふうなものを定めまして、そのスケジュールに従ってベトナム日本に対して支払いを行うということでございまして、かつての債務返済であるかどうかというようなことには触れないという解決方式にいたしたわけでございます。
  14. 高沢寅男

    高沢委員 その点はわかりました。そうすると、いまの無償のことし四十億円、あとまた将来それがつけばその都度交換公文無償協力をするということですが、ほかに有償の話はあるのですか。
  15. 武藤利昭

    武藤政府委員 有償資金協力につきましてもベトナム側から要請がございまして、検討いたしておりますが、ベトナム側の方で一体どういう計画円借款が欲しいかということにつきましてまだ最終的に決めかねているのが現状でございまして、ベトナム側の方でそのような計画がはっきりし次第、早急に私どもの方といたしましてもそれにこたえて有償の方の資金協力も供与するということになるかと存じます。
  16. 高沢寅男

    高沢委員 ここで若干過去にさかのぼりまして、旧南ベトナム政権に対して日本賠償支払いをやりました。三千九百万ドルですね、当時円の表示ですれば約百四十億円。この賠償支払いと別に、日本から旧南ベトナム政権に対して経済協力援助というものがあったと思いますが、それは実態として、年次、金額というふうなものはどういうふうな実態になったか、ちょっと御説明願いたいと思います。
  17. 武藤利昭

    武藤政府委員 旧南越に対します資金協力といたしましては、まず無償資金協力について申しますと、昭和四十五年度に九億二千万円、四十六年度に約十二億円、四十七年度に二億七千万円ばかり、四十八年度に約六十億円、四十九年度に約五十一億円というようなものを供与いたしております。片や有償資金協力につきましては、昭和三十四年度に二十七億円、昭和四十五年度に十六億円、四十六年度に四十六億円のものと四億円のものと二件あったわけでございますが、それから昭和四十七年度に約十億六千万ばかり、四十八年度に八十一億四千万ばかりのもの、以上が実績でございます。
  18. 高沢寅男

    高沢委員 そうすると、今回の交換公文の百六十八億円を、その性格づけはたな上げにして、とにかくベトナムから日本に支払うというそれと、いま言われた過去の有償協力、つまり向こうに対れはなりませんいますぐにはドルの数字は出せませんので、御了承いただきたいと存じます。
  19. 高沢寅男

    高沢委員 いまの点は、私の考えるところでは、恐らくドル表示では三千九百万ドルではないかと、こう思うのです。たしか当時の新聞報道でも三千九百万ドルというふうな金額で出ていたと思いますが、そうであるといたしますと、この三千九百万ドルという金額は、ちょうど南ベトナム政権に対して賠償としても支払った、あれが三千九百万ドルであるわけですから、ドル表示ということで言えばそれとちょうど同じ金額ということになるはすですが、その点はそういうことじゃないですか。
  20. 武藤利昭

    武藤政府委員 昭和五十年、昭和五十一年に私どもからベトナムの方に、無償を合わせまして百三十五億円を供与いたしましたけれども、それはあくまでもベトナム経済復興民生の安定のために協力のための資金であったということでございまして、南ベトナム、かつての南越に対します賠償金額との関係はないわけでございます。
  21. 高沢寅男

    高沢委員 いまの武藤さんの御説明では、これはベトナム復興に対する援助として行ったということですが、しかし百三十五億円のベトナムに対する援助の、その間のベトナム民主共和国との交渉あるいは今度はベトナム社会主義共和国との交渉過程で、相手側からは賠償という要求で出たんじゃないんですか。その経過をちょっと説明をお聞きしたいと思います。
  22. 三宅和助

    三宅政府委員 当初から賠償という形では本件は出ておりません。あくまでも経済協力ということで最初からこの問題は出ております。
  23. 高沢寅男

    高沢委員 私は先ほどドル表示が三千九百万ドルではないかということを言ったわけですが、それが偶然の一致なのかどうかわかりませんが、南ベトナムに対する賠償の三千九百万ドル、それと今度は、ベトナム戦争の終わった後、ベトナム民主共和国あるいはベトナム社会主義共和国に対する援助協力ドルで換算すると、やはり同じ三千九百万ドル、この関係は、私の考えでは、これは実際上、南に対してかって三千九百万ドル賠償を出したとすれば、今度はわれわれに対しても三千九百万ドルの同じ賠償を出すべきだと、こういう要求があって、結論としては賠償という名前はつかなかった。それは復興に対する援助だ、こういう名目になったとしても、内容的にはそういう性格のものとしてこれはまとまったものじゃないか、こう私は考えるわけですが、もう一度その点をお尋ねいたします。
  24. 三宅和助

    三宅政府委員 本件につきましては長い経緯がございまして、外交関係ができます前にも、本件の問題をいろいろと話し合ったわけでございます。ベトナム賠償問題というのは一応解決したという前提のもとに、賠償ということでは日本としては応じられない。先方もそれについては理解を示しまして、結局将来の問題上し経済協力を取り上げるということになったわけでございます。  金額につきましては、実は第一回の会談、いろいろと会談があったわけでございますが、決して三千九百万ドルに見合う金額先方要求した経緯は一度もございません。かなりの金額がございまして、日本側金額との折れ合いがだんだん進んで、大体こういうような金額に落ちついたということでございまして、交渉経緯の中におきまして、三千九百万ドルということを基準にして考えたことは日本側もございませんし、またベトナム側もないわけでございます。
  25. 高沢寅男

    高沢委員 昭和三十三年の国会で、当時のいわゆる南ベトナム賠償ということはこの国会で審議されて、そして賠償協定成立をした、こういう経過があるわけですね。その当時の日本国会議論において、一体ベトナムに対する賠償というものは南ベトナムだけで済むのかどうかという議論がずいぶんありました。これについてはまた後ほど触れたいと思うのですが、同時に、当時ベトナム民主共和国、すでに北ベトナムというものができていたわけですから、そちらの側からすれば、南ベトナム日本から賠償を支払って、これで対ベトナム関係は済んだということにはならぬぞということが、当時のベトナム民主共和国の側からもそういう表明が明らかにあったわけでありますから、そうであるとすれば、ベトナム戦争の終わった後のベトチム民主共和国の側から日本に対して、われわれも賠償請求する権利がある、われわれにも賠償を払うべきだということで事が始まった、私はこう見るわけです。今度は、その後いろんな交渉経過で、いま三宅さんの説明のように、最後に落ちついた形は賠償という名前はとらないということになったかもしれませんが、それは復興援助という形になったかもしれないけれども、その事柄の性格から見れば、実際上、かつての南に対する賠償と見合うものがこの百三十五億円という形で結局協定がまとまった、こういうふうに実は私はとるわけです。またそう見るのが常識的ではないか、こう考えるわけですが、その私の認識、これは当然そういうふうに見るべきじゃないかと私は思いますが、この点については、政務次官見解をひとつお話し願いたいと思います。
  26. 愛野興一郎

    愛野政府委員 わが国は一九五九年、当時このベトナム全体を代表してサンフランシスコ平和条約当事国となったベトナム共和国政府との間に賠償協定締結しておるのであります。したがって、三宅次長が申し上げますように、同協定上の義務をもうすでに履行済みでありまして、これによってわが国ベトナムに対する賠償義務はすべて終了しており、かかる事実はベトナムの統一によって何ら変更、影響がないものというふうに認識をいたしておるわけであります。
  27. 三宅和助

    三宅政府委員 ちょっと補足いたします。  実は、賠償権利を留保するという点につきましては、北ベトナム政府は当時持っておったわけでございます。私自身、実は一回、二回の訪問の過程でこの問題はお話しいたしまして、結局、過去の問題の清算ということではだめだ、やはり日本ベトナムというものは将来に向かって進まなくてはいけないということに認識一致があったわけでございます。したがいまして、当時日本側といたしましても、もちろん賠償を払うつもりも、問題は解決したという立場をとっておりますし、先方は将来に向かっての友好関係ということで、賠償ということは、すでに具体的な交渉が始まる前の段階からそういう意識を、内々持っているかどうかは私たちはわかりませんけれども、表向きは一切出してきていないという経緯でございます。
  28. 高沢寅男

    高沢委員 三宅さんがとにかくそういうふうに、直接ベトナム側と話をされた立場ですから、あなたのそういう説明は私はそれとして受けます。それに対してそうじやないだろうと、こう言う材料は私何も持っておりませんから。しかし、歴史的な経過からいって、先ほども言いましたように、これは南ベトナムに対して行われた三千九百万ドル賠償に実際上見合うという内容を持って出てきた問題である、私はそう認識をするわけです。  そこで、この百三十五億円の支払いがそういうふうなものであったとするならば、日本の国がそういうふうな性格の金の支払いをしたわけでありますから、そうであるとすると、この昭和五十年度の八十五億円、五十一年度の五十億円の支払いは、これは国会承認を受けるというような手続を踏むべきではなかったかと思うのですが、この点についての見解はいかがでしょう。
  29. 三宅和助

    三宅政府委員 実は百三十五億円という了解は当時なかったわけでございます。初年度八十五億円ということでございまして、これは通常外務省無償援助予算の枠内で、要するに予算に計上された中から支出しているわけでございます。その後次年度につきまして交渉いたしまして、若干金額の相違があったわけでございますが、最終的に五十億ということでございまして、これまた外務省の一般の予算の中から支出したということでございます。したがいまして、予算の枠内で支出したという意味におきまして、通常行政取り決めで履行し得た、こう理解しております。
  30. 高沢寅男

    高沢委員 外務省の側からすれば、当然そういう説明になるだろうと思いますが、その当時、これを非常に類似の性格のものとして、たとえばラオスに対して経済協力技術協力、こういう協定に基づく支払いの十億円、これは一九五九年から六五年までの間に支払いが行われております。それからカンボジアに対するものとしてもやはり経済技術協力、こういうことでございますが十五億円、これも五九年から六六年まで支払いが行われておりますが、こういうものはちゃんと国会承認を得ているんです。したがいまして、いまの御説明で、それは外務省予算の中でやった、こういうことでありますけれども、同じ性格のものが、一方では国会承認を得ておる、一方では国会承認を得ていないというようなこの取り扱いの違いが何か大変不明朗なものではないか、私はこういう感じを持つわけであります。これも過去にさかのぼってのことで、いまからどうこうなるわけじゃありませんが、これはやはり国会承認を得るべき性格のものではなかったか、こういうふうにも私は考えるわけですが、この点については、いま大臣着席されたばかりですから、政務次官からひとつ御見解をお願いしたいと思います。
  31. 三宅和助

    三宅政府委員 賠償、準賠償につきましては、実は多年度にわたる支出をコミットしております。したがいまして、国会承認を受けて、多年度にわたってこれを義務的な支出として出しておる。ところが、ベトナムに関しましてはすでに説明いたしましたように、その都度予算承認をいただいた中でやりくりして、次年度についてはさらに交渉して、予算で計上して支出したということで、また賠償という性格でもないということでございますので、このあたりは違う、こう御認識いただきたいと思います。
  32. 高沢寅男

    高沢委員 そうすると、いまの三宅さんの御説明では、ラオスカンボジアの方は、これは多年度にわたる、何年にもわたる支払いであるから、国会承認を得た。ベトナムの方は、その一年これでやって、また翌年、この一年という形になったので、国会承認を得なかった、こういうふうな御説明ですが、ラオスカンボジアのこれは賠償性格があっだ、そうであるから国会承認を得た、こういうことなのか、多年度だから国会承認を得たということなのか、その関係はどうなんですか。
  33. 三宅和助

    三宅政府委員 これは前者でございますが、ただ私が後半申し上げましたのは、準賠償賠償というのは、通常年度にわたって支出するという意味におきまして補足したわけでございまして、性格的には多年度にわたる支出を相手国政府にコミットしたということで国会の御承認をいただいたということでございます。
  34. 高沢寅男

    高沢委員 それでは、大臣が見えましたから、ひとつ大臣の見解お尋ねして私、終わりたいと思います。  先ほども触れましたけれども昭和三十三年の南ベトナムに対する賠償がこの国会で論議されたとき、ずいぶんわれわれ社会党の委員から、これは南ベトナムに対してということだけれども、これでベトナム関係というものを終了するということにはいかぬじゃないか、一方に北ベトナムという、そういうオーソリティーが現実にある、この北ベトナムの側からも同じような賠償請求ということは出てくるじゃないか、あるいはまた現在は北と南にベトナムが分かれた形になっておるが、これが将来統一されたベトナムになってくると、その統一されたベトナムから新たな政権請求として日本に対する賠償請求も出てくるではないか、こういう可能性がいろいろ質問されたわけですが、これは当時岸内閣総理大臣あるいは藤山外務大臣から、そういうことはございません、南ベトナム政権に対して支払いをすれば、それで対ベトナム賠償関係は完全に終わる、そして将来仮に統一された政権ができても、南ベトナムに対して支払ったその賠償支払いが、統一されたベトナム政権へも継承されるからそういう心配はない。繰り返しこういうやりとりがあったわけです。ところが、現実にはいま言いましたように、そちら側は賠償ではないとこう言われるけれども、私の見るところでは、そういう賠償という性格を持ったものとして新たに百三十五億の支払いをするようになった、こういうところに三十三回国会におけるベトナム賠償議論のやりとりは、内容的に言えば結局われわれの指摘したとおりになったんじゃないのか、こういうふうに私は考えるわけです。この種の問題は往々にして、たとえば朝鮮問題であれば、韓国が全朝鮮を代表するというような立場に立ってその処理が行われて、そして結局は、それはそれでは通らぬ事態になつでくる。かってであれば、台湾が全中国を代表するというような形でやってきて、それが通らぬ事態になってくる。ベトナムの場合も、南ベトナムが全ベトナムを代表するというたてまえでやって、結果はそうはならぬというような破綻が出てきたケースがたくさんあるわけです。そういう意味においては、私は政府におかれてこの種の外交問題を扱うには、今後再びこういう失態のないようなそういう扱いということを十分されるべきではないか、こういうふうに考えるわけですが、これはすでに過去の問題をいまさら直すということはできないにしても、今後のわが国外交のあり方として非常に重要なポイントではないか、こう考えるわけです。したがいまして、この点について最後に外務大臣から、大臣として外交運営をするに当たっての基本的な心構えをひとつお聞きをいたしまして、私の質問を終わりたいと思います。
  35. 園田直

    園田国務大臣 ベトナムわが国との債務あるいは補償の問題については、現実的に両方が両方の体面なり言い分を崩さないように解決したわけであります。でございますが、今後この種の問題については、御注意等の点もよく拝承して、現実に注意しながらやっていくべきことは当然であると考えております。
  36. 高沢寅男

    高沢委員 なお私はっけ加えて申し上げておきますが、ベトナム復興援助あるいはベトナム経済発展の援助のために、こういうわが国からの資金協力をする、あるいは技術協力をするということは大いにやるべきである、こういう立場でございますが、問題はその性格づけが、先ほど言いましたように、過去の過ちから非常にあいまいな性格づけの処理に苦労されるというようなことになったんじゃないかということでお尋ねした次第でありまして、したがいまして、今後のそういう協力関係は大いに積極的にやっていただきたいということを要望申し上げまして質問を終わります。
  37. 永田亮一

  38. 土井たか子

    ○土井委員 いよいよ外務大臣はこの三十日、日米首脳会談のために日本を出発されるわけでございますが、この日米首脳会談におけるいろんな懸案事項というのがある中で、本来この問題がさほど深刻に討議をされるという予定にない問題も含めて、きょうは二、三、時間の範囲内で御質問をさせていただきたいと思うのです。  それはまず、申し上げるまでもないことでございますが、外務大臣のお立場からすれば、ある意味では政治生命をかけて懸命にこれに取り組んでこられた日中平和友好条約、この問題の前に、予期しなかった中国の漁船による尖閣列島問題が出てまいりました。これはアメリカにいらっしゃいまして、報道の伝えるところによると、中国問題に対する討議という議題が当然出てくるわけでございますから、何らかの御説明をこれについてはなさるであろうし、いろいろ見解についてお互いが披瀝し合うということもあろうかと思いますが、この問題に対してはアメリカ側との話し合いの中でどのように臨んでいかれようとするのでございますか、まずこの点をひとつお聞かせいただきたいと思います。
  39. 園田直

    園田国務大臣 日本とアメリカの会談でアジア情勢、その中で中国の問題も出てくると私も予想いたします。その際、私の方の方針はアメリカもすでに知っておるところでありますから、今回尖閣列島周辺で起きた事件は、両国とも、中国の方も日本の方も、御承知のとおりにこの問題は、当面の事件は大体解決したわけでありますから、これに対する処理というか扱い方は日中友好条約締結の障害にならないように処理をして、一日も早く友好条約締結したいという私の意思を向こうに言うだけでございます。また、私の方からは、ブレジンスキーが行って、帰りに日本に来られるが、大体どういう方針で話し合われるのか、こういうことを聞くつもりでございます。
  40. 土井たか子

    ○土井委員 条約条約、今回の尖閣列島問題はそれはそれという対応の仕方を大臣としては明確にされていく、こういう基本問題がございますけれども、ただいま国民の目から見ますと、これは中国側は事あるたびごとに偶発的な出来事であるということを、公式的にもまた訪中されている方々に対しても説明を展開されてきているわけであります。偶発的な出来事というふうに国民自身が果たして理解できるかどうか、これは一つの課題として後々残っていこうと思うわけでありますが、ただ、一つはこれをたな上げにしながら片や日中平和友好条約というものの早期締結を具体的に実現しなければならない、このことの日程に一切狂いはないということをまず確認をしておきたいと思うのですが、大臣、この点は大丈夫でございますね。
  41. 園田直

    園田国務大臣 問題は問題として尖閣列島は、繰り返しませんが、すでにいままで申し上げているとおりのことでございますから、友好条約締結は、ややおくれましたけれども、予定どおりに実行できるように努力をしていきたいと考えております。
  42. 土井たか子

    ○土井委員 七二年当時、日中国交回復に当たりましてのお互いの政府のいわば了解事項の内容に戻るということが、当面この問題については大変大切な中身であろうと思いますが、そういうときに、また新たに火種をつけるようなことが、いまの政府の閣内にあるのではないかということが大変気にかかる。それはどういうことかといいますと、先日来報道によりますと、官房長官が尖閣列島の中に緊急避難の港を建設するということの内容を、いろいろ地元の漁民の代表の方々との会談の席上明らかにされてきているわけであります。これは来年度予算で、県を通じて手続をしさえすれば前向きに検討するというところまで言われているわけでありますが、こういう問題に対して、外務大臣は一体どのような御所見をお持ちでいらっしゃいますか。
  43. 園田直

    園田国務大臣 尖閣列島は御承知のような島でありまして、ここへ漁港をつくるということは専門的に見るとなかなか困難な問題でもあります。しかし、そういう技術的なことは抜きにいたしまして、きのう総理大臣が記者会見で、こういう問題は慎重にやりたいというような答弁をしておられましたが、いずれにしても、今後いろいろあると思いますが、火種をつけるようなことをやることはわが方にとっては不得策でありますから、この点はひとつ両方がよく合意をしていきたいと考えております。
  44. 土井たか子

    ○土井委員 そうすると、少し以前にはヘリの基地をつくるとか、あるいは今回はこういう避難港の建設という構想が披瀝されるとか、尖閣列島に対して閣内でもいろいろそういう意見がちらちら聞こえてくるわけでありますけれども、こういうことに対して外務大臣は、一切やるべきでないというふうな御見解に立っていらっしゃると理解してよろしゅうございますか。
  45. 園田直

    園田国務大臣 閣議ではその問題はまだ一回も出たことはございません。官房長官が地元の陳情を受けた際の返答に、そういうことを発言したと聞いております。いずれにいたしましても、私はこの問題が日中友好条約締結の障害にならないように、中国もそういうおつもりのようでありますが、私の方もそういうことでやりたい。したがって、こちらから火種をつけるようなことは得策ではないという方針でございます。
  46. 土井たか子

    ○土井委員 ついでに少し確認をしておきたいのは、こういう避難港にしろヘリの基地にしろいずれにしろ、そういう施設や、したがって日本人というのがそこに居住するからといって、国際的にわが国の島である、わが国の領土であるということが認められることに当然の帰結としてなるとは思いませんけれども、この点はいかがでございますか。
  47. 園田直

    園田国務大臣 尖閣列島でわが方が主権を行使し有効的に支配していることは、いままでのことで十分である。その点から言えば、私はいままでのことで十分であると考えております。
  48. 土井たか子

    ○土井委員 いままでのことで十分であるというふうな外務大臣の御所見でありますけれども、したがってそういう立場からすると、追い打ちをかけるようなかっこうでいろいろ施設をつくったりそこに居住するというふうなことはことさら必要でないということにもなると思いますが、いかがでございますか。
  49. 園田直

    園田国務大臣 先ほどから繰り返しますとおり、いままでのままでりっぱに有効支配をしておるわけでありますから、いろいろ問題出てくればでありますが、いまこの問題を中国の方では、これを日中友好関係を進展させる上の障害にしたくない、あるいはまた、非公式ではありますけれども、紛争が起きないようにこの島に近寄らぬというところまでいっている中国の配慮に対して、こちらがことさらにいろんな問題を起こすことは、外交上は有利ではないと考えております。
  50. 土井たか子

    ○土井委員 外交上の配慮という問題が一つ基本的にただいまの問題にはございましょう。ただ、一般論としてこの節確かめておくという意味で私は申し上げているわけでありますが、そこに港をつくる、施設をつくる、そしてその国の人が居住をする、このことによって国際的にそこはその国の領有に属するものであるということが確認されることには必ずしもならない、こういうふうに私は常に考えて今日まできているわけでありますが、外務大臣としては、この一般論として私がお尋ねすることにどのようにお答えになりますか。
  51. 園田直

    園田国務大臣 一般論としてお答えをすれば、そういう施設をしてもしなくてもいままでと変わりはない、私はこう思います。
  52. 土井たか子

    ○土井委員 どうも一般論としてお尋ねしていることに対して御答弁がすれ違っているのですが、つまり一つの島であるとか一つの土地の領有権に対して争いがある場合に、その島であるとか土地に対して、ある特定の国が施設をつくったり築港したりして、そこにその国の人を住まわせるということによって、そこはわが国の領有に属する場所であるというふうな意思表示をするという場合がないとは限りません。そういうことをしたからといって、国際的にこれはその国の領土である、この領土権はその国に属するということを確認されることにはならないと思うけれどもいかがでございますかという質問をしているわけでございます。
  53. 園田直

    園田国務大臣 私も同じようなことでお答えをしておるつもりでありますが、さらに繰り返しますと、いままで何もしないで——何もしないでというのは、いままでの原状のままであるのと、あるいはここに何か施設を加えた場合と、わが国の意思の表示にはなるかもわからぬが、他の国々に対して、有効支配をしているあるいはわが国のものであると証拠立てることにはプラスにはならぬ、こういうお答えをしているわけでありますから、同じことを言っているわけであります。
  54. 土井たか子

    ○土井委員 さてそれで、尖閣列島の問題は、アメリカとの間での話し合いの中にも、外務大臣先ほど来御答弁になりました基本姿勢で臨まれるということでございますし、また訪米後、帰国された上での外務委員会で、恐らくこの問題に対してはさらに具体的にお尋ねを進めることに相なるかと思います。  片や、今回アメリカに行かれるのに大変大きな問題として論じられておりますのに、防衛分担金の問題がございます。米軍施設維持費に対してアメリカ側が要求することが予想できる。このことに対して日本が非常に安易な姿勢で臨んでいくのではないかという懸念が非常にいま持たれているわけであります。基地の維持管理費については、先日当委員会の楢崎委員の方からの御質問もございましたけれども、約十億ドルは年間必要であるというふうなことが伝えられております。これを日本側で負担するためには、もうだれでもよく知っております大平外務大臣当時の統一解釈などから、現在の地位協定の枠内ではできないというふうにはっきり確認をしなければならない問題だと思います。これ以上負担するために地位協定を曲げてまでアメリカ側のその要求に応ずるということは、私は絶対に間違いだと思っておりますが、こういう点に対しまして外務大臣、どのようなお立場、どのようなお考えをもってアメリカに臨まれますか。
  55. 園田直

    園田国務大臣 いまの問題は、ちょっと新聞に書かれたことがございますが、今度の首脳者会談議題には全然これはのっておりません。向こうからもまたその話はないと私は考えております。こういう問題は首脳者会談で出されるべき筋合いの問題ではありません。予想して答えるわけにはまいりませんけれども、この問題は、御承知のとおり、地位協定ではっきり決まっておりますから、その枠内で操作する以外にはできないわけでありますから、これは今度の議題にならぬという自信を持っております。
  56. 土井たか子

    ○土井委員 しかし、経済的な側面での話し合いというのがどうしても今度は重点になるということは言うまでもございません。日本の黒字減らしというのは効果を上げていないという非常にはっきりした立場で、アメリカ側はドル防衛の強固な壁をもってこちらに追ってくるでしょう。そういう節、やはり在日米軍の基地に対しての施設維持費、こういう問題に対して日本側に大型肩がわりの方針をもって臨むということも、これは予想にかたくないところであります。したがいまして、一切議題となっていないというふうに外務大臣としては振り切られますけれども、やはりこの点はそうはいかないのではないか。いままでの新聞紙上でも、内閣総理大臣はこれに対しては、かなりこちらとしては向こうの話し合いに対して決断を迫られるのではないかという向きの御見解も二、三披瀝されているわけでありますから、外務大臣としては、いま御答弁になったことは、これはきっぱりと大丈夫、ひとつ外務大臣の責任においてこのことに対してははっきり、いまの地位協定の枠を破る、大平外務大臣当時の統一見解を破るようなことは一切しないというふうに、再度御確認をさせていただいてよろしゅうございますね。
  57. 園田直

    園田国務大臣 これからの会談でありますから、いろいろ予想して申し上げるわけにまいりませんけれども、この問題については、こちらからもちろん言うはずはないし、向こうからも首脳者会談に出るはずはありません。仮に出たとすれば、外務大臣がこれに列席しているわけでありますから、ここで答弁した趣旨の返答を外務大臣がやるつもりでございます。
  58. 土井たか子

    ○土井委員 さらに日米首脳会議の席で問題になるのは、やはり朝鮮半島の問題というのが大きな一つの課題になるのではないか。ASEANに対してカーター大統領が非常に積極的姿勢というものを見せられているというやさきでもあります。また、片や在韓米軍の撤退に伴って、補完策としていろいろアメリカ側では考えられている向きというのが、最近新聞紙上によりましてもまたニュースによりましても、私たちは知り得るところでございます。そのうちの一つに、四月五日の当外務委員会におきまして、私はチトー大統領がアメリカのカーター大統領とこの三月に会見をされた節、アメリカと北朝鮮の接近を軌道に乗せるということに対しての提唱をされた、このことを取り上げて外務大臣に御質問をいたしました。外務大臣とされては、あの四月五日の外務委員会においては、まあこれがうまくいけば一つの道であるとも考えるけれども、なかなか現実においてはこれを受け入れられないのではなかろうかというふうな想像をいたしておりますというふうな御答弁をされた後、新聞とかいろいろな各所からの情報で承っておることについて、うまくいけばというふうな前提で答弁するのは軽率かもしれないけれども、うまく道が開けてくれば、わが日本としても、日本立場からこれに対する協力はしたいというふうに考えておりますというふうな御答弁でもあったわけであります。  昨年の夏ごろアメリカは、それ以前の中国を含めての四者でという線を外して、北と南の各朝鮮とアメリカの三者会談構想というのを新たに朝鮮半島政策として打ち出していったといういきさつがいまだんだん明らかにされつつあるわけでありますけれども、この間の事情に対しては逐一日本としては知らされていたのでありますか。いかがでありますか。
  59. 園田直

    園田国務大臣 首脳者会談で、アジア情勢の中でいまの朝鮮半島の問題は当然出てくるものと想像いたします。その際、わが方からは、首脳者会談においても、私とバンス国務長官の会談においても、いまのことはどうなっておるのか、見通しはどうだというお尋ねをしたいとは思っておるところでありますが、この前申し上げましたとおり、この構想が南北緊張緩和の、そして対話の道を開くということにつながれば歓迎すべきことである、こう思っておるわけでありますが、その実情についてはまだなかなか詳細には存じていないところでございます。
  60. 土井たか子

    ○土井委員 詳細にはまだおわかりになっていらっしゃらないということでりますから、詳細にわたる部面はともかくといたしまして、一応いま申し上げた三者会談というものが昨年の夏ごろから、アメリカ側から打ち出された朝鮮半島に対する政策として、具体的に展開をされつつあったという事実については、日本としては十分にそのいきさつについて御存じであったかどうかという点はいかがなんでございますか。
  61. 園田直

    園田国務大臣 このことについては、一方からばかりでなく、関係されている国からそれぞれ必要なことは連絡をいただいております。
  62. 土井たか子

    ○土井委員 いま外務大臣のおっしゃった必要な国とおっしゃるのは、差し支えなければお聞かせをいただきたいのですが、たとえばどういう国でありますか。
  63. 園田直

    園田国務大臣 たとえば米国であるとか、あるいは仲介に立ってこれをやろうとしておられる関係のことであります。
  64. 土井たか子

    ○土井委員 そうすると、チトー大統領とかルーマニア大統領という名前も出たりするわけでありますが、ルーマニアであるとかチトー大統領なんかの動きについて、それぞれ日本外務省としては事情をその都度聴取されてきたということをこちらとしては理解してよろしのうございますか。
  65. 園田直

    園田国務大臣 事前に情報として知っておったと答弁する以外にございません。と申しますことは、このような事件は、どこの国でもそうでありますが、そういうことを一々話したということは交渉には支障を来すわけでありますし、また、それぞれの国の立場もあることでありますから、外務大臣は情報として事前に承っておった、こういうふうに申し上げておきます。
  66. 土井たか子

    ○土井委員 情報としていろいろな動きがある背後に恐らく考えられるのは、アメリカ側は、在韓米軍が撤退した後の朝鮮半島に対して、あくまでも力の均衡というものを大前提として、いろいろな対策を朝鮮半島に対してとっていく外交姿勢というものを崩さないで続けるであろうと思うわけでありますが、そういう点からすると、外交政治的な補完策というものでやっていこう、必ずしも軍事力というものを必要としないという基本姿勢に立って、朝鮮半島に対して平和的な打開をいろいろ模索しながら具体的に進めてきているのではないかというふうにまず読んで差し支えなかろうと思うわけであります。そういうことからすると、最近特に伝えられるのは、いわゆるピンポン外交、アメリカから朝鮮民主主義人民共和国に対して選手を送るというピンポン外交の問題が伝えられてきております。米中間においてもピンポン外交で始まった。この朝鮮民主主義人民共和国に対しても、一つはピンポン外交から三者会談というものを具体的にさらに推進させていくという気配が見えているのではないかと考えられるわけでありますが、外務大臣はこれをどのようにお考えになっていらっしゃいますか。
  67. 園田直

    園田国務大臣 ピンポンをやるグループが向こうへ行くということに政治的な意味は全然ない、単なるピンポンであってピンポン外交ではない、こういう説明を受けております。
  68. 土井たか子

    ○土井委員 それはアメリカ側の説明でございまして、米中間の接近という問題でもピンポンはあくまでもスポーツであって政治問題とは関係ないということで始まったといういきさつもございます。そして特に皮肉なことに、米中間の接近内容というものは、頭越しに日本の頭上を通過してお互いが球を打ち合ったといういきさつもございます。そういうことからいたしますと、今回の朝鮮民主主義人民共和国に対してのピンポン外交の行き方も、米中間の接近の第二の場所というものがここでまた展開されつつあるのではないかという受けとめ方をする向きがあるわけでございます。しかし、いずれにいたしましても、かなりアメリカ側がこの問題に対して積極的に動いているということだけは、もう現実の問題として認めざるを得ない。こういうときに日本としては、四月五日の外務委員会において、これに対して努力をすることをしたいと考えているというふうな御答弁をなさった外務大臣でございますから、どのように受けとめ、どのようにこのことに対して日本としては対応することが現実に必要である、またこういうふうにやっていきたいというふうなお考えをお持ちになっていらっしゃるか、お聞かせいただきたいと思います。
  69. 園田直

    園田国務大臣 ピンポンの問題はそのようなことではないという説明を受けているわけでありますから、それを外務大臣が、こう言っているが本旨はこうらしいと言うわけにはまいりません。日本政府としては、朝鮮半島の南北の対立が緊張緩和をされ、対話の道が開かれることを希望しているわけでありますから、そういう方向でやっていきたいと考えております。
  70. 土井たか子

    ○土井委員 対話の道が開かれるのでありますから、それに対しての努力をさらにしていきたいという御答弁をただいま外務大臣としてはなさったわけでありますが、先ほど外務大臣も少しお触れになりましたブレジンスキー補佐官の訪中、訪韓という問題が日程のうちにございます。このブレジンスキー補佐官の訪中、訪韓ということは、先ほど、アメリカは言うまでもなく、関係諸国からもそれぞれの情報をそれぞれ聞いてきたというふうなことを外務大臣としてお答えになったアメリカを含めての三者会談の問題、これが具体的に動くのではないかという課題も背負っての訪中、訪韓であろうと私たちはにらんでいるわけでありますが、この三者会談の推進に対して外務大臣としての御感想、さらにそれに対して、日本としてはどのような取り組み方が必要であるかという問題を再度お尋ねしたいと思います。
  71. 園田直

    園田国務大臣 ちょっと質問わかりかねますが、三者会談とおっしゃいますのは、ブレジンスキーが中国へ行って、そこで米、中、韓とこういう意味でございましょうか、それとも中国を舞台にして米、韓、北朝鮮とこういう意味でございますか。後の方でございますか。——プレジンスキーが中国を訪問いたしますのは、形式から言えば上海の共同声明で定期会合をすることになっておりますから、その定期会合ということで形式的には訪中するものであるというふうに考えておりますけれども、第二番目には、米国がアジアというものに対して重大な関心を持っているということであるとか、あるいは中国を中心にするアジア情勢の意見交換等であることでありまして、米中関係が表面上前進することはあり得ないと考えますが、そういう国際情勢の問題で話し合うのじゃなかろうかとは想像をいたしております。  帰りに二日間ぐらい日本に寄られてその後韓国に行くという予定だそうでございますから、そういうことも判断の一つの要素にしながら、米国でもその話を聞きますし、また中国から帰られるときにも話を聞いてこれに対応の処置をしたい、こう考えております。
  72. 土井たか子

    ○土井委員 アメリカに行っていろいろ話し合いをして、向こう側の立場とか情勢を聞いた上で分析をして判断をする、これは当然のことでありますけれども、ただいまアメリカに行かれるに先立ちまして、たとえばベトナム難民問題なども、恐らくカーター人権外交からすればアメリカ側は大変強い姿勢で日本に対してある種の期待とある種の要望を持っている。それにこたえるべく、率直に申し上げますと、ある意味ではっけ焼き刃とも申し上げなければならないような対策を、大急ぎで今回おつくりになったようなかっこうにもなっております。内容からいうと、私は種々問題があると思います。こういうつけ焼刃めいた対策を持ってアメリカに臨まれるというのは本来間違っていると私自身は言わざるを得ぬわけでありますけれども、同じように今回アメリカに行って話を聞く、アメリカがどうやってきたかということをそれを通じて知りたいというだけではないので、やはり北朝鮮に対して日本としてはどのようにやっていくか、このようなアプローチの仕方を日本としては具体的に考えているのだというものを持っての話し合いでないことには、首脳会談にならないと思うのです。日本側としてはどういう御用意を持ってこの問題に臨まれるのか。いかがですか。
  73. 園田直

    園田国務大臣 北朝鮮に対する問題は、南北の緊張を緩和しながら対話の道を広げて、将来南北が平和的ななにをするというのが申し上げておる方針でありまして、その方針に基づいて向こうでは会談をする所存でございます。
  74. 土井たか子

    ○土井委員 その基本線というのは、お伺いをしなくても、しっかりと踏んまえた土で外務大臣が事を運ばれることは私たち百も承知なのでありますけれども、具体的にアメリカ側と話をする場合に、基本的なことばかり百万遍繰り返してみたって具体的な話し合いにはならないと思うのです。従来朝鮮民主主義人民共和国に対しての対応をとってきたこととは違って、いまアメリカ側がいろいろ展開しつつある北と南の朝鮮とアメリカとの三者会談という問題であるとか、訪中、訪韓というアメリカ側の問題であるとかを客観情勢として受けている日本としては具体的にこうなんだというところが何らかないと、日米間の具体的な、韓国を含めながら朝鮮半島に対しての話し合いの道、打開の方策というものを切り開くことにならないと思うわけでありますが、いかがなんですか。
  75. 園田直

    園田国務大臣 会談の朝鮮半島に対する方針は申し上げましたが、その会談でどのように話し、どのような具体的な問題を出すかということは、ここで私がお答えするともうきょうのうちに米国に通ずるわけであります。土井先生が演説をされる前にその演説のテープを前もってやりますと聴衆は全然聞かぬわけでありますから、これは具体的な問題はお答えしない方が効果的だろうと思います。
  76. 土井たか子

    ○土井委員 ただ、いまのお答えを聞いておりますと、従来にない画期的なことを胸の中に持ってアメリカに行かれるということがうかがい知れるわけでありますが、その点はそうなんですか。
  77. 園田直

    園田国務大臣 画期的であるかつまらぬことであるかは、帰ってきてからおしかりを受けるか、あるいはまあまあとおっしゃるか、これは私自身が言うことじゃございませんので……。
  78. 土井たか子

    ○土井委員 ただ、従来にない一つ提案を携えていらっしゃるということだけはうかがい知れるわけであります。それ以上この問題に対してお伺いを進めても、いまの御発言からするとむだなように思います。  最後に、アメリカに行かれて共同声明を、今回の日米首脳会議の結果御用意をされますか。お出しになりますか。どうですか。
  79. 園田直

    園田国務大臣 今度の会談で、外務大臣として総理に御意見を申し上げている点は、いままでの首脳者会談というのは、全体会議というか、ついていったわれわれ事務当局も入れて全体で会議をするのが大体首脳者会談で、その前に二、三十分二人だけで話す時間があるわけでありますが、少なくとも首脳者会談というのは、こういう時期には率直に腹を割って、具体的にこちらの言うことも向こうの欲することも、いやであっても言うべきであろう。こういうことから、首脳者会談というのは思い切って一時間でも三十分でもいいからやりなさい、全体会議をやる時間がなくなったら結構だ、こういうふうに言っているのが一つであります。  それからもう一つは、共同声明というのは、土井先生よく御承知のとおりに、大体事務的に両方が詰めておきまして、そして会談の結果に大体予想をつけて、両方から文章等も大体見当をつけて、会談が終わったらそれが違ったところを修正する程度でありまして、会談の効果を宣伝するための看板にすぎないわけでありますが、往々にして、私の経験からすると、その共同声明というものに縛られて会談が形式的、固定的になるおそれがあるわけでありますから、今度は思い切って、共同声明なんか出さなくてもよろしい、こういうことでもろもろの問題を話してもらいたい、こう考えておるわけであります。  大体会談の主たるものは二人きりの首脳者会談に重点を置く、そして、国際経済国際情勢を話してもらう。私とバンス国務長官の問題では、いま土井先生が御質問なされたような身の回りの具体的な問題を突っ込んで話す、こういうつもりでおるわけでございます。
  80. 土井たか子

    ○土井委員 時間が参りました。きょうはこれで質問を終えたいと思いますが、きょうの御答弁になりました内容に対して、しっかりと首脳会談に臨まれますように申し上げさせていただいて、終わります。ありがとうございました。
  81. 永田亮一

    永田委員長 中川嘉美君。
  82. 中川嘉美

    ○中川(嘉)委員 ただいまの御質問にも関連をして伺いたいと思います。  報道によりますと、ブレジンスキー補佐官は五月の日米首脳会談で、台湾問題と米中問題について福田総理の見解を求めることになるというふうなことが報道されておりますが、これらの件が実際に首脳会談そのものの正式な議題となっているのかどうか、この点について伺いたいと思います。
  83. 園田直

    園田国務大臣 台湾問題は全然議題になっておりません。
  84. 中川嘉美

    ○中川(嘉)委員 正式な議題として現時点でなっていないということかと思いますが、これは当然そういった議題がどこかで出ないとは限らないと私は思いますので、かなり正式な形で出されるかもわからないし、そのときの用意のためにという前提で私は伺っておきたいと思うのです。  これはやはりわが国立場ということも考慮して伺うわけですけれども、アメリカにおいては米中関係の正常化の過程で、日本の台湾に対する見解というものを重視しているということでありますが、改めて政府の台湾に対する見解向こうで述べることになりますと、私はここで若干御確認をしておかなければならない、このように思うわけです。この問題についてのわれわれの今日までの質問に対して、日中共同声明の条文を反復するだけではわれわれの疑念は全く晴らすことにはなっていない、このように思います。  なぜならば、日中平和友好条約交渉に際して、与党内のいわゆる台湾派と言われるところのグループは、政府に対して台湾の地位を明らかにせよ、このように迫ってきておるわけで、もし日中共同声明で台湾の地位が明確であるとするならば、このような主張というものはあり得ないわけではないかと私は思います。これらの人たちは、台湾は中国領土の不可分の部分ではなくて、少なくとも半国家的存在、こういう認識であるように思われる節もなくはないわけです。  したがって、日米首脳会談で台湾の地位について質問をもしされた場合、仮に首脳会談の場でなかったとしても、米側からその見解を求められたような場合に、わが国としてどのような見解を述べられるのか。誤解を残すような見解を表明しないためにも、政府の明確なこの見解をお聞きしておきたいと思いますので、外務大臣の所信を伺いたいと思います。
  85. 園田直

    園田国務大臣 首脳者会談またはその他の会談で台湾問題が議題になることは万々あり得ない、こう思うわけであります。先般の首脳者会談でも台湾問題は全然出ませずに、中国問題が出たときに、日本は友好条約を進めていくつもりだ、こういう簡単な話をしたところ、向こうからは、それは結構です。わが方は台潟の関係があるから日本みたいに簡単にいかぬのだ、こういう返事が一言あっただけであります。したがいまして、米国が日本の台湾に対する態度であるとかあるいは取り扱い等について質問することは万々あり得ないと考えております。
  86. 中川嘉美

    ○中川(嘉)委員 全然ないであろうということだから、その心準備といいますか、その必要もないのじゃないかということであれば、ちょっとこれは問題だと思いますので、そういうことがあった場合のためにも、ここではもうこれ以上お聞きしませんけれども、ひとつ十分な対応を考えておいていただきたい、このように思います。  次に、大韓航空の強制着陸事件に関連をして、防空識別圏について若干伺いたいと思います。  この防空識別圏というのはあくまでも当該国のみのものであって、いわゆる第三国をいかなる形にせよ拘束するものではないわけであります。したがって、国際法上で言えばいかなる国も拘束されないものと解するわけですけれども、この点はどうか。すべての国の航空機は、いわゆる防空識別圏については軍用機も民間機も航行は自由である、このように解するものですけれども、これらの点はいかがでし上うか、伺いたいと思います。
  87. 村田良平

    ○村田政府委員 いま先生御指摘のとおりでございます。
  88. 中川嘉美

    ○中川(嘉)委員 報道によりますと、ソ連は防空識別圏を領空に準じて主権行為を行っているのではないか、このように言われておりますが、ソ連の防空識別圏に対する認識というものは一体どういうようなものなのか。わが国も日航の北極圏航路が現在あるわけですけれども、今回のような事件の繰り返しを防止する必要からも、この点を十分に解明しておく必要があるのではないかと私は思いますので、ただいまの質問をここでしてみたいと思うわけであります。
  89. 村田良平

    ○村田政府委員 新聞等によりますと、ソ連がこの防空識別圏は領空に準ずるようなものである、そこで主権を行使しているというふうな報道もあるようでございますけれども国際法的には先ほどの先生の御指摘のとおりでございまして、いずれの国の航空機といえども、その部分は飛行できるわけでございます。  ただ、たとえば公海におきましても、軍事演習等をするということがある場合に、そこを民間機が通航いたしますと事故が起こるというふうな場合には、あらかじめ演習をする国が、これこれこういう区域において演習するということを通告しまして事故を避けるということは現に行われておるわけでございます。したがいまして、ソ連がそういう線を引きました場合に、各国の民間航空がトラブルが起こらないようにということを心得て事実上の運航をやるということはあるかもしれませんけれども権利としてソ連がそういう特別の領空的なものをつくるということはできないわけでございます。
  90. 中川嘉美

    ○中川(嘉)委員 こういうふうないわゆる領空に準じて主権行為を行っているのじゃないかという疑念がある以上は、ソ連のそういうものに対する認識がどういうものなのかということだけはやはり一度確認をしておいていただいた方がいいのじゃないだろろうか。国際法的にはもちろん先ほどのような次第ですけれども、実は日本航空の北極圏航路に関係があるわけですから、そういう解釈で終わりでございますと言うのではなしに、ひとつ確認だけはぜひしておいていただきたい、私はこのように思います。  防空識別圏を設定した国は、その設定したという事実とその範囲を各国に提示をする必要があるのかどうか、また、その必要があるならば、それはどのような方法でやられるのかお答えをいただきたいと思います。
  91. 村田良平

    ○村田政府委員 国際法に基づいた制度ではございませんので、特に厳密な規則というものはございません。
  92. 中川嘉美

    ○中川(嘉)委員 そうしますと、たとえば中国とか韓国、朝鮮民主主義人民共和国あるいはソ連そのもの、それから台湾も、それぞれ設定している防空識別圏の範囲というものは、わが国としては資料として御提出をいただくことができるのかできないのか、手元にあるのかないのか、この辺はいかがでしょう。
  93. 賀陽治憲

    ○賀陽説明員 ただいまの資料でございますが、これは防衛庁に早速問い合わせまして、お手元に差し上げることが可能かどうかということを確かめたいと思います。
  94. 中川嘉美

    ○中川(嘉)委員 今回の大韓航空機強制着陸事件は、発生後もうすでに一週間以上たっておるわけです。しかもソ連軍用機の銃撃によって日本人乗客が犠牲となっておるにもかかわらず、この事件に対与るソ連政府立場、それから見解あるいは釈明等が何ら表明されていないことは理解に苦しむわけなんてすが、こうしたソ連の沈黙といいますか、こういったものを政府はどのように見ているのか、まだ事実が最終的に究明されていない、解明されていない段階でございますので、どこの国がどうということは私は申しませんけれども、こうしたソ連の沈黙に対して政府はどのように見ておられるか、またソ連政府に事件の内容とか経緯について政府説明を求めるべきではないかと私は思いますが、この点はどうか。もし、もうすでに何らかの方法でこの説明を求めたとするならば、その辺の詳細をこの際御説明いただきたいと思うのです。
  95. 賀陽治憲

    ○賀陽説明員 ソ連政府に対しましては、事件後直ちに、在モスコーのわが方の大使館を通じまして、事実関係を早急にわが方に伝達するようにということを申し述べたわけでございます。その後東京におきまして領事移住部長から、在京のソ連大使館のジノビエフ公使に対しまして、さらにそれを敷衍した申し入れを行いまして、その後、御承知のように御指摘のような若干の憶測的報道と思われるものがございますので、やはり何よりもソ連政府から直接情報をもらいたい、これが一番真相を究明する道であろうということで、昨日の午後四時半に、同じルートで先方に督促をしたわけでございます。先方は直ちにこれを本国政府に伝えて、できるだけ早く処理いたしたいということを申した実情でございます。
  96. 中川嘉美

    ○中川(嘉)委員 先ほども申したように、銃撃によってわが国の乗客も犠牲になっている、こういうことを考えますと、やはりこの際、一日も早くこの実情というものをわが国政府がつかむためにも、さらに引き続き強力にこの努力を続けていただきたい、このように思います。  今回の事件で、大韓航空機の領空侵犯がなされたとしても、ソ連側のとった措置、これは私は過剰防衛もしくは行き過ぎがあったのではなかろうか、こういう印象が残るわけですけれども政府としてはこの点についてどういう認識を持っておられるかお答えをいただきたいと思います。
  97. 賀陽治憲

    ○賀陽説明員 この点につきましては、事実関係を韓国及びソ連に問い合わせておりますので、これらが把握されるまでは日本政府としての考え方を申し述べることは時期尚早であろうかと思っておるわけでございます。ただ、韓国筋の新聞報道等では、当該機がやはり領空侵犯をした事実につきましては、韓国側の大韓航空の役員等もこれを認めるかのごとき発言を行っておることはわれわれも承知しておるわけでございますが、ソ連機の対応ぶりその他につきましての真相というものは、まだわれわれとしては確固たるインフォメーションを持つに至っていないわけでございます。
  98. 中川嘉美

    ○中川(嘉)委員 そうしますと、現在まで政府が収集をしたいろいろな情報はいかなる内容のものであるかということになると、われわれが報道等で認識をしている程度のもの以上のものではないような気もするわけなんですが、そうしますと現在のところ、この責任の所在というものはどのようになっているかということになるといかがですか。これはいまの時点ではまだ決めかねることかと思いますが、さらに新しい情報が何か入っていればそれをお答えいただきたいし、いまのこの責任の所在ということにも関連をしてこの際お答えをいただきたいと思います。
  99. 賀陽治憲

    ○賀陽説明員 現在の段階では、責任の所在を明らかにし得るような全般的詳細な情報は、直接には把握するに至っておりません。
  100. 中川嘉美

    ○中川(嘉)委員 ワシントンポストによりますと、ソ連当局の情報として、大韓航空機はスパイ飛行をしていたということを報道しているわけですけれども日本政府は、このことについてもソ連政府に対して公式にその真相を照会すべきではないかと私は思いますが、この点はいかがでしょうか。
  101. 賀陽治憲

    ○賀陽説明員 ただいま御指摘のスパイ機とみなす云々のお話でございますが、恐らく韓国の当該機が領空の中に入ったということ自体がすでにそういう疑いを起こさしめたということはあるいはあろうかと思いますけれども、この点につきましても、本当にスパイ行動であったのかどうかという点等につきましては、これは非常に慎重に事実関係を収集して判断しなければならない問題でございまして、私どもといたしましては、その点についての考え方、コメントは差し控えたいと思っておるわけでございます。現在の段階におきましては、少なくともこれに対して判断をする立場にはございません。
  102. 中川嘉美

    ○中川(嘉)委員 そうしますとわが国政府としては、ソ連側に対して、本件に関する事実をひとつぜひ知らせてもらいたいのだという非常に抽象的な言い方で照会しているのか、それともいま伺ったように一つ一つの問題を、こういう問題についてはどうかとか、もうこの時点になりますといろいろなことが明らかになってきているわけです。銃撃だと思っていたところが、最近の報道では、ミサイルか何かで撃ったために羽があれほど大きくもぎ取れたというような報道も出ているし、単なる機銃ではないような報道もあるわけです。そういうことで、政府としてただ事実を教えてもらいたいのだという程度の対応ではないと私は思いますけれども、詳細に分類しながら、この点はこうかとか、あの点についてはどうなんだというような形での照会ということは当然なされていると思いますが、この辺はどうなんですか。
  103. 賀陽治憲

    ○賀陽説明員 その点につきましては、特に昨日の夕方のソ連公使との話し合いにおきまして、先方に対しまして、AP電でございますが、これがソ連当局者の言明を引用いたしまして一連の事実関係報道しておる、それから、イギリスのデーリー・テレグラフがやはり北欧NATO筋の情報を報道しておる、それから先ほど御指摘のございましたワシントンポストの報道等がございます。そういったものについて、あなたはそれを読んでおるかという質問をしたわけでございますが、それは十分読んでおるということでございました。それに対しましてわれわれといたしましては、そういった種々の報道がなされていることにかんがみ、そういった点についての詳細な点を含めて事実関係を早急に、ソ連政府から直接に把握いたしたいということをさらに申し入れた次第でございます。
  104. 中川嘉美

    ○中川(嘉)委員 なぜ私はこういう言い方をするかといいますと、やはり事実を調べてみたらスパイ飛行であったとか、なかったとかということは今後の処理に非常に大きな影響を与えることは御承知のとおりだと思うので、そういうことはなるべくそっとふせておきたいみたいな、そういうことがあってはならないと思うのですね。その点だけはひとつ十分お含みの上、今後とも交渉に当たっていただきたい、こう思います。  これに関連して伺いますが、今度の事件でわが国政府としてはソ連側にいわゆる違法性があったと見ているかどうか、この点はどうでしょうか。
  105. 賀陽治憲

    ○賀陽説明員 この点につきまして判断をなし得るだけの情報その他を持ち合わせておりません。
  106. 中川嘉美

    ○中川(嘉)委員 もし違法性があった場合、これを立証する当事者というのは、やはり韓国の政府とそれから大韓航空ではないかと私は思うわけですが、日本政府がソ連に対して違法性というものを訴えて賠償要求できるのかどうか、これらの点についてお答えをいただきたい。  日本として、これは韓国と当然情報交換もする必要があると思うのです。そういつた立場からも、こういった日本政府そのものがソ連に対して違法性というものを直接訴えて賠償要求できるんだという権利を留保しておかなければならないと私は思いますが、この点はどうでしょうか。
  107. 村田良平

    ○村田政府委員 先ほど領事移住部長が申しましたように、事実関係がまだ究明されておりませんので、仮定の答弁になるわけでございますけれどもわが国がソ連に対しまして国際法上の責任を追及する、具体的には賠償を求めるとか、あるいは責任者の処罰を求めるとか、いろいろなやり方があるわけでございますけれども、そのためには、わが国として、本件事故の事実関係につきましてやはり立証する必要はあるわけでございます。しかし、わが国民がその被害者になっている、そしてある国の国際法違反行為によってわが国民が被害をこうむったという場合には、一般論といたしまして、わが国も相手国に対する責任追及ができる、こういうことでございます。
  108. 中川嘉美

    ○中川(嘉)委員 日本人乗客の犠牲者とか負傷者に対する補償の要求ということになりますと、どうでしょうか、大韓航空に対して行うのかあるいはソ連に対して行うのか、違法性のいかんによって違ってくると思うのですが、この点はどうですか、犠牲者に対する賠償は。
  109. 賀陽治憲

    ○賀陽説明員 わが方の死者の御遺族、負傷者等の補償問題につきましては、第一義的に大韓航空とこれらの方々の問題でございまして、新聞報道等によりますると、すでに大韓航空はそういう話し合いを始めつつあるということを聞いておるわけでございます。
  110. 中川嘉美

    ○中川(嘉)委員 日本政府は、韓国政府もしくはソ連政府に対して犠牲者の補償、賠償といいますか、これについていわゆる外交保護権というものを行使する用意があるのかどうか。この点はいかがでしょうか。
  111. 賀陽治憲

    ○賀陽説明員 この点につきましては、違法性の立証が今後に待たなければならぬということでございますが、先ほど村田参事官からお答えを申し上げましたように、一般論として、補償を求めるような事態になれば補償を求めるということが出てくるものと思います。ただ現在の段階ではこれは仮定の域を出ないわけでございます。
  112. 中川嘉美

    ○中川(嘉)委員 そうしますと、原則として、日本人犠牲者と大韓航空もしくばソ連政府との直接交渉みたいな形をとりながら、この違法性云々がその間に出てくるわけですが、その経過を見ながら、次第によっては外交保護権というものを行使することもある、こういうふうに解釈してよろしいのですか。
  113. 賀陽治憲

    ○賀陽説明員 原則論として、ただいま中川委員の仰せられたとおりだと考えます。
  114. 中川嘉美

    ○中川(嘉)委員 では、最後にもう一点だけ伺って終わりたいと思いますが、大韓航空に過失があったのか、それともソ連当局の違法性によって起こった事件であるのか、いずれにしても、日本人乗客が死亡したという事実というものは厳然としてここにあるわけなんです。賠償問題については、先ほど申し上げましたように外交保護権を行使すべきであると私は考えるわけなので、この点について、いま御答弁はいただいておりますが、そういった考え方を持って犠牲者というものを本当に守ろうという、そういう気持ちがあるかどうか、最後にもう一度確認をして私の質問を終えておきたいと思います。
  115. 賀陽治憲

    ○賀陽説明員 亡くなられました方の御遺体の行政解剖というのを、御遺族の御了解を得て現に行っておるわけでございますが、金属片は発見されましたけれども、その金属片が何の金属片であるかということを確定するに至っておりませんので、時間がかかっております。これがいつまでということを申し上げる段階にないわけでございますが、恐らく来週以降になるというふうに考えておるわけでございますが、そういった行政解剖の手続を尽くしました後に、その後の問題が生じてくるものと考えております。
  116. 中川嘉美

    ○中川(嘉)委員 それでは終わりますが、非常に複雑なこういつたいわゆる強制着陸事件ということだけに、いろいろ国際間のそれぞれの的確な連絡というものをやはり継続していきませんと、いわゆるわが国の犠牲者を守るということにも通じていかないと私は思いますので、今後さらに政府としては鋭意努力されることを要望しまして、終わりたいと思います。
  117. 永田亮一

    永田委員長 曽祢益君。
  118. 曾禰益

    曽祢委員 まず、尖閣諸島に関して御質問したいと思います。  政府は、四月十二日の中国漁船団による尖閣諸島付近の日本領海侵犯事件に対して、どういうふうな解決を必要とされておるのか、これをまず伺いたいと思います。  その趣旨は、私は、後でもさらに詳しく申し上げますけれども、中国側の領有権に関する主張、これと今度の明白な領海侵犯の事件とは、これはむろん関連ありますけれども、一応切り離して、いまの、この間起こった漁船による領海侵犯事件のこの解決、処理ですね、これについてどういうことを必要としておられるのか、まず伺いたいのです。  と申しますのは、これは片言の引用になるかもしれませんが、先ほど同僚の土井委員の御質問に関して、外務大臣は、当面の事件は解決したという言葉をお使いになったのですね。私は、どこまでが当面の事件であるのか、また、解決したというのはどういうことを言うのか、これが非常に問題である。したがって、領海侵犯の事件の解決というのはどういうことなのか。ただ、退去しただけの現状でもこの事件は済んだと見るのか、どうも政府のこの点に関する態度がそれこそきちんとしていないような感じがします。総理大臣はもう少しきちんとする、私はもっともだという点もあると思うのですね。ただ、あれは偶発的な事件だという、それから大局上余り突つかぬ方がいいじゃないかという、こういう点においてはおおむね反対ではありません。しかしそれにしても、領海侵犯ということがどうも偶発的と思われないような状況で起こったということ、現に退去していることは事実だけれども、それでこの事件解決と言えるのかどうか。そういう事態が相当永続的といいますか、継続的に大丈夫だというところまで見ていく必要がある等々がございますので、まずこの領海侵犯事件の原状回復及びそれに伴うミニマムの解決の条件というものを外務大臣としてどう考えておられるかを明確にお示し願いたい。
  119. 園田直

    園田国務大臣 私が尖閣諸島周辺の事件は解決したと言いましたのは、この処理が解決したということではなくて、領海侵犯した中国の船が領海外に退去し、集団をもって領海付近におった船が逐次後方に下がって、ただいま点在をして操業しているわけでありますから、領海侵犯をしたというその事件は解決をした、こういつたことであります。したがいまして、次にこの事件に関する処理は、日中共同声明をやったときの立場に返って、これを固定化して、そして友好条約の方は進める、こういう方針でございます。
  120. 曾禰益

    曽祢委員 私は事件解決というこの問題について、もう少し中間的な問題があるような感じがするのです。つまり、中国側の王暁雲アジア局次長が言った向こう説明ですね、これは大体偶発的な事件だということ自身が、領海侵犯を続けてやろうとかなんとかいうことで領有権のあれをつくろうという意味じゃないんだということ。それから計画的に侵犯させたわけではない、両方の意味があると思うのですけれども、もう一つそこにもっとはっきりした意思表示が外交当局間にあっていいのではないか。たとえば昨日のマスコミの報道によっても、宇都宮議員に対して廖承志氏が言っているように、いや、もう退去しているよ、そればかりでなくて漁船に対して領海を侵さないようにということも注意をしている。そういうことが、外交関係があるのに——廖承志氏が宇都宮氏に言って悪いということじゃない。その裏をとるという言葉はちょっとどうかと思いますけれども、そのくらいのことが、ただ王暁雲氏のさらりとした説明だけでなく、もっと漁船にもそういうことのないように、要するに事件の解決というのには、はっきり言えば再発の防止について日本側が納得し得るようなサムシングがぼくは必要だと思うんですね。余り重箱のすみをつつく必要はないけれども、きちんとした解決というのには、再発防止に関する現状がもう大丈夫だという相当の時間をかけるのか、時間をかけない方がいいと思うのなら、何とかもう少し政府が外交筋を通して、侵犯が起こらないように、国民が安心できるような何らかの態度の表明が向こうもやはりあってしかるべきだ。廖承志さんの言ったことを外交ルートを通じて何かあってしかれべきだと思う、そのためにある大使館なんですから。そういうことをきっかけに侵犯事件はこれで一応解決していくということになる。したがって、その上に立って、まあ領有権問題はあるけれども、これはまた後で触れますけれども、日中友好条約交渉に入るその条件がそのときに一応整うということになると思う。その前の何かというものが必要だと思うのですが、それに対する外務大臣のお考えを伺いたい。
  121. 園田直

    園田国務大臣 私が先ほど事件は解決したという言葉を、もっとわかりやすく間違いないように言うと、事態は解決をしたということでありまして、この事件の処理についてはいまの御発言と私もほぼ同様に考えておりまして、外交ルートを通じてこの問題の処理について両方の意見を一致させ、そして国民が不安のないようにけりをつける必要があると考えて、その準備をしているところでございます。
  122. 曾禰益

    曽祢委員 まあ準備のことですから、余り詳しく根掘り葉掘り聞くつもりはありませんけれども、そういう趣旨で必要な訓令その他の処置をとっておられる、それで現地における大使館の活動を待っている、こういうふうに解釈してよろしゅうございますか。
  123. 園田直

    園田国務大臣 そのとおりでございます。
  124. 曾禰益

    曽祢委員 次に、日中平和友好条約締結前に中国側の領有権の主張に対する問題を解決しておけという議論が国内にもあるようです。自民党の党内にもそういう意見とそうでない意見があるようですが、私はこの問題については、やはり類型のいろいろな似たような問題に対する日本側の態度との関連で考えていく必要があると思います。類型の問題というのはそれぞれのケース・バイ・ケースで違いますけれども、とにかく日本の領土であるのに外国側に占拠されておるケースと、外国側からまだ領土権に関する主張があるけれども日本がほぼ有効的に支配しているケースと違うと思うんですね。たとえば、言うまでもなくソ連との間には北方領土、少なくとも国民のコンセンサスから言えば北方四島の不法占拠の事態が続いている。しかもそれは向こうがもう完全に有効的に支配している。この問題。それについては、わが方としては、そういう事態を平和条約締結によって固定化することは絶対にできぬ。また平和条約を結ぶ前に、どうしてもこの四島の返還が、少なくとも平和条約締結と同時に行われる必要がある、こういう態度をとって、これはこれなりに国民のコンセンサスによる支持があると思う。  今度は日本と韓国との間の竹島問題、これは今度の尖閣諸島に関する日本と中国との関係に非常に影響がある似て非なる事件だと思うんですね。竹島も日本の領土であることは明瞭なのに、はっきりとこれは実力的には向こう側が半分以上支配している状態でしょう。しかもその状態がありながら、日本は韓国との間に御承知のように日韓基本条約、これをもう六五年に結んでいるんですね。そのときから今日に至るまでその他いろいろな、たとえばいまもまだ国会で問題になっているいわゆる大陸棚協定の問題等々、この韓国の不当な支配に対して、日本は、それはあるけれども日韓関係については条約を結んだり何かしている、こういう事態がある。  ところがこの尖閣諸島に関しては、今度確かに中国側のどういう間違いか知らぬけれども漁船の侵犯事件が起こった。これが全くの独立なハプニングだと仮に見れば、中国側は領有権は主張しているけれども日本が完全に支配していることは間違いないんですね。先ほども、さらにこの支配の事実をもう少し強くしろなんていろいろな議論はある。そんなことなくとも、領有権の主張はあったけれども日本が有効的に支配している日本の領土なんですね。あのハプニングの漁船による不幸な領海侵犯というものがなくなり、そういうことの再発防止ができれば、この尖閣諸島に関する日本の主張は事実において確認されて、それに対して中国がチャレンジはしているが、これは法律的にチャレンジしているだけなのです。それをほっておいて日中平和友好条約を結んではいかぬというのが一部の世論にある。自民党の一部にもかなり強いようだ。それはちょっとおかしいのじゃないか。それでは韓国との関係はどうだということになると思うのですね。  ですから、そういうふうにひとつ物を整理して考えてみる必要があるのじゃないか。つまり、言いかえれば平和友好条約内容の問題がありますよ。これについては後で時間があれば私の意見も申し上げますけれども、それはそれとして、少なくともこの不幸なる漁船による領海侵犯事件が一応解決し、再発防止に見込みがついたならば、まず自民党の党議を固めて、そして日中平和友好条約の問題に入ることに妨げはない。これは三つの例から見て、日本が有効に支配しているところなんですから、向こうから領土権のクレームがあったからといって平和友好条約締結を妨げるのはおかしい、こう考えるが、外務大臣のお考えを伺いたい。
  125. 園田直

    園田国務大臣 いまの御発言は全くそのとおりでありまして、一言も補足するところはございません。
  126. 曾禰益

    曽祢委員 大変に明快なあれで結構ですが、そういうつもりでひとつ冒頭申し上げたようにまず一つ一つ積み上げていく必要がある。やはり再発防止に関して国民が納得する中国側の公の説明を聞いて、その点でひとつ平和友好条約の話を。  そこで、平和友好条約の問題について、時間がございませんけれども、大変に失礼ですが、私の懸念するところを一言だけ外務大臣に申し上げたい。日ソ共同宣言がちょうど二十二年前にできたときにも私が非常に心配したのは、河野一郎氏が余り気負い過ぎて、通訳も連れずにソ連のトップと会談して——河野一郎氏というのは農林大臣で全権です。河野全権が、歯舞、色丹、国後、択捉四島をそのまま継続審議として平和条約まで持っておいて、そして共同宣言でやろうと思って両国間にほぼ合意ができた。それじゃどうも足りぬからというので、それで歯舞、色丹だけは返還を非常に迫った。ところが、できた条約そのものから見れば、果たしてそれが改善であるか改悪であるかわからなくなった。共同宣言第九項を見れば、返してやる、しかし返すときには国後、択捉を捨てるという地図にサインしろ、こうやられてしまう。ですから、あのときに二島を返せということを余り焦ったために、四島ぐるみで、あるいはとにかく日本の国連加盟だとかいろいろな利点のある——当時は統一社会党で私も賛成したのですけれども、平和条約は無理だから共同宣言でとにかく国交調整をやるべきだ。ほぼ国民的な支持があった問題ですけれども、それをやるのに一つの問題が領土問題。領土問題でかえって余り焦って、その後田中総理がコスイギン首相に迫っても、ソ連にしてみれば、それは歯舞、色丹をお返しすることで領土問題は解決だというようなつれない態度を一貫してとっているのですね。  そういうことをやはり考えてみないと、詰めをいわゆる大使館レベルといいますか、通常のルートで相当やっておいて、そして最後の決断をするのが内閣であり、外務大臣であり、総理だと思うのですね。いきなり飛び込んでいって、解決するといって、その解決そのものがいわゆる日本式の、国会なんかでよく与党と野党の間にあるような玉虫色の解決なんかということをするのは、これはかえって後世に悔いを残す危険がある。したがって、詰めばしっかり、いわゆる事務は事務屋にやらしておいて、その上で大局的判断と、また場合によって交渉打開のために大臣が行かれて直接おやりになることもあろうけれども、やはりそういう慎重な覇権問題に対する態度をとってほしい。共同宣言の趣旨を踏まえながら、しかしこれが第三国に対する共同戦線でないということを明確にはっきりしたような内容のものをつくる、これにひとつ努力をしていただきたいと思いますので、私の注文だけで大変恐縮ですけれども、御見解を承り、これで私の質問を終わります。
  127. 園田直

    園田国務大臣 不肖私、外務大臣に就任しまして以来、日中問題にかかわらず、いま御指導のような線は十分守りながらやらなければ将来に禍根を残す、こういう点は十分慎んでおるところでございます。日中問題についてもいま貴重な御指導をいただきまして、いままでもそうでありましたが、特にこの問題についてはよく詰めるところは詰め、キャリアのやるべきところはやり、そして大事をとって最後に必要があれば私が乗り出す、こういうことは十分戒心をしてやりたいと思っております。ありがとうございました。
  128. 永田亮一

    永田委員長 寺前巖君。
  129. 寺前巖

    寺前委員 防衛庁は十四日の日に、海上自衛隊と米海軍の合同海上演習を十七日から四日間行うということを発表されました。伊豆諸島の東方海域でそれをおやりになったようです。聞いてみると、対潜捜索攻撃訓練、通信連絡訓練をアメリカの側と日本の側がそれぞれやった。参加した艦隊などを見ると、空母ミッドウェー、巡洋艦、駆逐艦、駆逐艦、補給艦というのがアメリカの側でついて、航空機が延べ九機参加した。P3Cらしい。日本側は「はるな」 「ひえい」という最新鋭のヘリ空母など護衛艦と補給艦、航空機が延べ十数機これに参加する。そして、さらに潜水艦が参加した、こういうような報告を聞きました。  そこで、私がお聞きをしたいのは、空母ミッドウェーとの間の日米の対潜合同演習というものは今回が初めてなのか、いままでにもあったのか、このことです。
  130. 夏目晴雄

    ○夏目政府委員 御承知のように、海上自衛隊におきましては、従来とも米側とのいわゆる共同訓練というものを八十回ばかり実施しておりますが、そのうち空母との共同訓練というのは過去十数回ございます。本年の四月には、ただいまお話のありましたとおり、ミッドウェーを中心とするアメリカと共同訓練を実施したことは事実でございます。
  131. 寺前巖

    寺前委員 短時間ですから質問をよう聞いてくれ。ミッドウェーとの間には初めてかと聞いている。
  132. 夏目晴雄

    ○夏目政府委員 ミッドウェーとの訓練は初めてでございます。
  133. 寺前巖

    寺前委員 対潜訓練をおやりになったというのですから、日本の潜水艦が、このミッドウェーやこれらの側から言わすと仮想敵国の役割りを果たしたのだろうというふうに見るのですが、間違いありませんか。
  134. 夏目晴雄

    ○夏目政府委員 共同訓練と申しますのは、御承知のとおり、同じ訓練項目につきまして日米双方の練度の維持向上を図ることを目的として実施しているわけでございまして、今回の訓練につきましては、いわゆる訓練目的そのものが対潜捜索訓練というのが主目的でございますので、海上自衛隊から参加した潜水艦に対する捜索、発見、攻撃といった一連の動作を演練したわけでございます。
  135. 寺前巖

    寺前委員 それではその次に、ちょっとこれは専門家の皆さんの間ではどういうふうにおっしゃっているのか教えてほしいのですが、潜水艦がアメリカの艦隊なり日本の護衛艦なりを含めるところの部隊に向かって攻撃をかけてくる、これに対して捜索をやり攻撃をするという、こういうふうなその一つの目的に向かっての行動が今回加えられておると思うのですが、複数の船が同一目的に向かって活動する、こういうのを何と言うのですか、何とか任務群とか、何かそういうような言い方があるのですか、ちょっと専門用語を教えておいてほしいと思います。
  136. 夏目晴雄

    ○夏目政府委員 いま御質問の趣旨がちょっとよくわかりかねますが、特段その訓練の中身が、いま申し上げたような対潜捜索訓練を日米双方で実施するということにつきまして、任務区分とか、そういうものは特にございません。
  137. 寺前巖

    寺前委員 また後で教えてもらうことにして、時間のあれがありますからあれですが、要するに、日本の船とアメリカの船が、攻撃を受けるに対して共同して同一の任務につくということがこの活動の中で展開をされたと思うのですね。そうすると、向こうの船に対して同一の任務にそれぞれがついたら、当然のことながら統一的な指揮をしなければならないことになると思いますが、それはだれがやるのですか。
  138. 夏目晴雄

    ○夏目政府委員 今回の訓練の実施に際しまして、特別に統一した指揮官を設定して実施しているということはございませんで、それぞれの、海上自衛隊の指揮官が一方の統制官になり、米海軍の指揮官がアメリカ軍側の統制官になるということで、相互の統制官の間において連絡調整をしながら実施しているというのが実情でございます。
  139. 寺前巖

    寺前委員 調整しながらも、最終的に総合的に、同一の任務についている以上は、同一の方向に最終的指揮をしなければならないことになるのじゃないですか。そうでなかったならば、わしはこう思う、わしはこう思うということになってしまったら、それは同一の任務を果たし得ないから撃破されてしまうということになるのじゃないでしょうか。
  140. 夏目晴雄

    ○夏目政府委員 当然のことながら、演習の実施に際しては双方の綿密な事務連絡調整の上に行っておりまして、実際の訓練の実施に際しても、ただいま申し上げたような、双方の統制官の調整の上でやっているということで、統一の指揮官を設けなくても訓練は実施し得る、また、過去そういう形で実施してまいったということを申し上げたいと思います。
  141. 寺前巖

    寺前委員 それではちょっとお聞きしておきますが、そういう統一的な指揮をする必要は、同一の任務についたときには起こらないというのですね。潜水艦の攻撃に対して、同一の任務についているのでしょう、目的を一つにする、だから別に指揮官がなくても調整しておったらいいというのだったら、日本の艦隊でもそういうことが言えるということになりますね、どうです。
  142. 夏目晴雄

    ○夏目政府委員 今回実施しました訓練というのは、あくまでも戦術技量の向上ということを目的として実施しているものでございまして、実際の戦闘場面とは必ずしも同じではございませんけれども、そういう面から見ても、連絡調整ということで十分可能であるというふうに考えております。
  143. 寺前巖

    寺前委員 ちょっとあなた、よく聞いておってくださいよ。  同一の任務につくのだ。潜水艦の攻撃を受ける、こちらの部隊は空母を中心とするところの艦隊がある、日本の船を見ると護衛艦だ、そうすると護衛の任務を一緒になって受け持っているようだ。潜水艦の攻撃を受ける、これに対して同一の防衛の任務、護衛の任務についた。そうすると、同一の任務についたということになったら、お互いの間にそれは連絡調整をしていったら守れるというのだったら、それじゃこれと次元を離れて、日本の艦隊の中でも、それでは何も指揮官がなくったって、攻撃に対して同一の任務に協議でつけるのだったら指揮官は要らぬじゃないかという論になるけれども、そこはどうなんですか。それとも、同一の問題に対してやはり総合的な指揮が要るとすれば、指揮官体制というのをつくらなかったら非現実的じゃないですか、撃破されてしまうんじゃないですかと言うのです。
  144. 夏目晴雄

    ○夏目政府委員 実際の戦闘場面というようなことを考えた場合に、指揮系統が一本化されている方が非常にシンプルであり効率的であるという御指摘は、そのとおりだと思います。したがいまして、われわれ自衛隊におきます訓練については、それぞれの決められた指揮系統を通じた演練というものが行われるわけでございますけれども、米海軍と海上自衛隊とはあくまでも別個のものでございますし、その間には指揮系統というものはございません。したがいまして、ただいま申し上げたような調整ということで、それぞれの統制官が連絡をとり合いながら、緊密に訓練を実施するという形で実施しているわけでございます。
  145. 寺前巖

    寺前委員 そうすると、いまのお話からもおわかりのとおりに、現実的には、実行する場合には、この同一の任務についた場合は同一の指揮のもとに所属するということでなかったら実効は上がちないということはあなた自身もお認めになった、私はそうだろうと思うのです。そうでなかったら撃破されてしまう、そんなことは非現実的だというふうに思うわけです。  そこで、次に外務大臣にちょっとお聞きしたいと思うのですが、いま現に行われているミッドウェー、これはこの間のクレーター米海軍長官の発言にもありましたように、核積載鑑としての性能を持った船ですよ。そうしてここに第七艦隊のフリゲート艦なり駆逐艦なりがついて、補給艦もついて活動する、日本の艦隊は護衛艦としてこの周りに一緒について活動している。そうすると現実的にも、いま防衛庁の人がおっしゃったように、本来ならば同一の指揮のもとでなかったら現実的ではないという方向になってきていり。  私はこの演習の結果から、そういう方向に誘導される方向があるというふうに感ずるわけなんですが、そこで、外務大臣にお聞きしたいと思うのは、片っ方は核ミサイル、核爆雷を持っているアメリカの艦隊です。そういうアメリカの艦隊をたとえば日本の側がこれを指揮して、現実的には指揮しないとだめだということになったら、指揮するということになったら、核部隊を指揮することになってしまうから、これは非核三原則の面から見ても許されないことだろう。それからまた、アメリカの側が指揮するということになったら、これは非核三原則の側から見ても、そういうものを持っている指揮官から指揮をされるということも、また受け入れることのできない内容になるだろうというふうに思うのですが、いずれにしても、これがこの艦隊の構成において、こういうふうに現実的になったら、どちらかの司令官を設定しなければ現実的ではないという方向に流れる訓練をやっているということになると、私はこの訓練は非常に重大な段階にきた訓練だというふうに思うのですが、外務大臣としては、この非核三原則を持っている日本として、核兵器を持っている艦隊とのこういう訓練というのは、特段のまた訓練としてこれはやめてもらう必要があるというふうに思うのですが、いかがなものでしょうか。
  146. 北村汎

    ○北村説明員 ただちょっと技術的な問題がございますので、私から先に答えさしていただきますが、先ほども防衛庁の方から御説明がございましたように、アメリカ軍とそれから日本の自衛隊との間で共同の作戦指揮をやるということは全然考えておらないところでございまして、現在も防衛協力委員会において、作戦機能の問題についていろいろ日米で協議をしておりますけれども、この場合におきましても、それぞれがそれぞれの指揮系統に基づいて行動し、そうしてその間をいかに調整して整合のとれたものにするかということを研究しておるわけでございまして、決してそのアメリカの指揮に入るとか、日本が両方を一緒に指揮するとか、そういうようなことではございません。
  147. 寺前巖

    寺前委員 ぼくは外務大臣にちょっと聞いておるわけですね。そのことについてはそれでいいでしょう、そのこと自身は。それはさておいて、現実の戦闘問題となったら、それは非常に危険性がある。それは向こうは巧撃が同一ですから、それに対して同一の任務につく以上は統一的な指揮をしなかったら、非現実的だという方向に話はいくに決まっている。そうすると、この核武装している部隊の指揮官から指揮を受けるか、ないしは日本の側が指揮をする、いずれにしたって核武器を持ったところに向かって、中心にした活動になっているのですから、日本も非核三原則の側から見ると、こういう部隊指揮に、あるいは防衛に一緒に参加しているということ自身がきわめて危険な訓練だ、私はこういう訓練はやらすべきではないと思うけれども、どうだ。それが一つ。  時間が来ましたので、もう一つ、いまもお話が出た日米防衛協力委員会の共同作戦大綱の方向の問題ですね。これ私はちょっとこの際に外務大臣に聞いておきますけれども、憲法第九条の論争問題の中で、個別自衛権は認められるけれども集団自衛権は認められないのだということを従来言ってきたと思うのです。したがって、いまお話があったように、両国の別々の指揮の調整だという話がそこから出てきた。私は外務大臣に念を押しておきたいのは、この集団自衛を構成するから海上自衛隊がアメリカの空母を直接援護するというような活動ということは許されないのだという解釈をしっかりとおとりになるのかどうか。この二つを大臣からお聞きしておきたいと思うのです。
  148. 園田直

    園田国務大臣 いま発言されましたとおり、日本の審法は集団自衛権を認めておりません。したがって、個々の自衛力をそれぞれ発揮する、こういうことになっておりますから、いま事務当局がお答えしましたとおり、実際の場合に米軍と日本が共同して戦闘をやることはあり得ません。ただ、日本の対潜水艦捜索の練度を向上するために、便宜上やられた訓練であると思いますから、いささかもそういう御懸念はないと考えます。
  149. 寺前巖

    寺前委員 もうお約束の時間が過ぎましたから、改めてまたやりたいと思いますけれども、練度だけでは済まない性格を持っているということを検討をお願いしたいということで、終わります。
  150. 永田亮一

    永田委員長 伊藤公介君。
  151. 伊藤公介

    ○伊藤(公)委員 私は、先ほども質疑がございましたけれども、大韓航空の補償の問題についてこれは大韓航空の問題だけでなしに、こうした事故が起きる可能性がこれからもあるわけでございますので、この犠牲者の補償の問題はいまどのように考えていられるのか、まずお尋ねをしたいと思います。
  152. 賀陽治憲

    ○賀陽説明員 今回の事件の犠牲者の補償問題でございますが、大韓航空とこれらの方々との補償問題として第一義的に把握されるわけでございまして、この点については先ほどちょっと申し上げましたが、新聞報道でございますが、大韓航空会社がすでに補償の話し合いを始めたということでございます。  それから、ソ連との関係でございますけれども、これは事実関係を鋭意収集に努めておりまして、現在の段階ではわれわれの立場を申し上げる段階に至っておりません。
  153. 伊藤公介

    ○伊藤(公)委員 そうしますと、これは、この補償は航空会社が補償するわけですか、あるいは韓国もその補償を国としてするということになるわけですか、どうなんですか。
  154. 賀陽治憲

    ○賀陽説明員 第一義的には先生ただいま仰せになりましたように、航空会社と個人間の問題でございますが、これは韓国機の今回の強制着陸に至りました経過等にかんがみまして、韓国政府と韓国の航空会社の間にどういう関係が生ずるかという点は、これは不明でございます。
  155. 伊藤公介

    ○伊藤(公)委員 三月の二十五日にラングーンの郊外でビルマ航空機の事故がありました。乗っていた乗客、乗務員全員が死亡したという事故がございました。これには御承知のとおり、日本外務省それから建設省の派遣をされた日本政府技術協力団の団員の方々がこの飛行機に乗っていたわけでございます。その補償金は、航空会社の取得をする事故補償金から一人四万チャット、約百三十六万円が支給されることになった、こう報じられております。これは家族のこれからの将来のことを考えますと、百三十六万円の補償金で、これで終わりだと言うことはとてもできない状況だと思う。ところが、このビルマ航空機の国内航空用の航空券には運送条件として、乗客の生命あるいは財産に対しては一切の責任を負わないのだ、こういうことが明記されているわけであります。もちろん、これは日本政府としては、この補償の百三十六万円は現状の国際状況の中では適当ではないという申し入れを恐らくされると思いますし、されていられると思いますけれども、しかし、現実にビルマという国の国情、発展途上国で、それに対しての十分な補償ができるかどうかという問題が一つあります。あわせて現地の日本の大使館からは、この発展途上国で起きた事故、公務に携わっている方々が受けた事故に対しての補償という問題は、改めてこれは考えなければならない時期ではないか、検討すべきだという強い要請がある、こう聞いておるわけでありますが、こうしたラングーン郊外でのビルマ航空機で受けた死亡者に対する補償の問題は具体的にいまどのように考えていられるかお尋ねをいたします。
  156. 賀陽治憲

    ○賀陽説明員 外務省の中の直接の担当官が参っておりません。したがいまして、私から申し上げることは、いまのような点につきましては、公務上の事故であったというようなことから、それにいかなる補償が行われるべきかという点につきましてもいろいろ検討が加えられるべき段階に来ておるというふうに考えておるわけでございます。  それから、ビルマ航空の運送約款等のお話があったわけでございますが、これにつきましては、私直接の担当でございませんので十分に承知しておりませんので、さらに調べまして後刻お答えをさせていただきます。
  157. 伊藤公介

    ○伊藤(公)委員 今度の大韓航空による死亡事故、これに対しても十分な補償がされるかどうかという問題が残ると思うのですね。こういう時期に、発展途上国で十分な補償をされない場合にその補償をどうするかという問題をひとつぜひ検討していただきたいと思うのです。  いま申し上げたラングーンで起きた死亡事故については、すでに政府としてはビルマ政府に対して何らかの要請をしておられますか、どうですか。
  158. 賀陽治憲

    ○賀陽説明員 すでに要請を行っておるわけでございますが、中身の詳細につきましては、私、直接担当でございませんので後ほどお調べしてお答えいたします。
  159. 伊藤公介

    ○伊藤(公)委員 それでは改めて、こうした海外に公務で出かけた方々に対する補償の問題、その問題が十分補償されないという状況の場合に、どういう形で、残された家族の方々の生活のことまで含めた補償をしていくかということを政府としてもひとつきちっと御検討をいただきたい。また、現状の詳細については改めて御報告をいただきたいと思います。  すでに時間が来てしまいました。私は日中問題についてもいろいろお尋ねをしたいと思ったわけでありますが、外務大臣に一点だけお尋ねをしたいと思います。  今度の尖閣列島の問題、領海の侵犯の問題が起きて、日中問題が少なくともそのスケジュールがおくれたことはもちろん事実だと思います。そこで、いま大使級の会談で政治的な決着をつけていきたい、こういう方針を伺っているわけでありますけれども、大使級の会談で決着をつけるということは、官房長官なんかは避難港をここにつくるべきだとか、あるいは何らかのはっきりした決着をつけるべきだという意見もある。大使級の会談の中ではどういう決着をつけていくお考えなのか、明らかにしていただきたいと思います。
  160. 園田直

    園田国務大臣 尖閣列島周辺の現状をまず御報告申し上げますと、けさの六時の状況は、領海外、十二海里以遠の地域に中国の漁船が百隻余り散在をして操業いたしております。この辺の海域は現在ウマヅラハギという魚の産卵期に当たっておりまして、通常、大体百隻程度いまごろはウマヅラハギの漁に当たっているわけでありまして、昨年の例をとりましても、昨年の四月ごろにも、この付近に中国漁船が八十隻近く来て漁をしておったということで、事態そのものはもとに返った、こう判断をしております。  そこで、本件の処理に当たっては、先ほども申し上げましたとおり、両国間で日中共同声明の線に立ち戻って、この事件が起こる以前の状況に固定をして日中友好条約交渉に進むことが妥当であると私は判断をしておるわけでありますが、その段取りについては、官房長官も、私も、総理も全く意見は一致しておりまして、総理の指示に従ってそういう方向で詰めてみろ、こういうことでいま詰めておるところでございます。
  161. 伊藤公介

    ○伊藤(公)委員 時間が参りましたので、終わります。
  162. 永田亮一

    永田委員長 本日は、これにて散会いたします。     午後一時二十七分散会      ————◇—————