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1978-04-26 第84回国会 衆議院 外務委員会 第17号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和五十三年四月二十六日(水曜日)     午前十時三十九分開議  出席委員    委員長 永田 亮一君    理事 大坪健一郎君 理事 奥田 敬和君    理事 塩崎  潤君 理事 毛利 松平君    理事 井上 一成君 理事 土井たか子君    理事 渡部 一郎君       鹿野 道彦君    川田 正則君       木村 俊夫君    鯨岡 兵輔君       小坂善太郎君    佐野 嘉吉君       竹内 黎一君    中山 正暉君       岡田 利春君    河上 民雄君       久保  等君    島田 琢郎君       高沢 寅男君    美濃 政市君       中川 嘉美君    野村 光雄君       青山  丘君    永末 英一君       津川 武一君    寺前  巖君       伊藤 公介君    楢崎弥之助君  出席国務大臣         外 務 大 臣 園田  直君         農 林 大 臣 中川 一郎君  出席政府委員         外務政務次官  愛野興一郎君         外務省条約局外         務参事官    村田 良平君         水産庁長官   森  整治君  委員外出席者         外務省アメリカ         局外務参事官  北村  汎君         外務省欧亜局外         務参事官    加藤 吉弥君         大蔵省主計局主         計官      古橋源六郎君         水産庁海洋漁業         部長      松浦  昭君         外務委員会調査         室長      高杉 幹二君     ————————————— 委員の異動 四月二十五日  辞任         補欠選任   川田 正則君     木村 武雄君   中山 正暉君     前尾繁三郎君   松本 善明君     寺前  巖君 同日  辞任         補欠選任   木村 武雄君     川田 正則君   前尾繁三郎君     中山 正暉君 同月二十六日  辞任         補欠選任   石原慎太郎君     鹿野 道彦君   河上 民雄君     島田 琢郎君   正木 良明君     野村 光雄君   佐々木良作君     永末 英一君   寺前  巖君     津川 武一君 同日  辞任         補欠選任   鹿野 道彦君     石原慎太郎君   島田 琢郎君     岡田 利春君   野村 光雄君     正木 良明君   永末 英一君     青山  丘君   津川 武一君     寺前  巖君 同日  辞任         補欠選任   岡田 利春君     河上 民雄君   青山  丘君     佐々木良作君     ————————————— 四月二十五日  漁業分野における協力に関する日本国政府と  ソヴィエト社会主義共和国連邦政府との間の協  定及び北西太平洋における千九百七十八年のさ  け・ます漁獲手続及び条件に関する議定書  の締結について承認を求めるの件(条約第一三  号)  北太平洋公海漁業に関する国際条約を改正す  る議定書締結について承認を求めるの件(条  約第一四号) 同月二十六日  日本国バングラデシュ人民共和国との間の国  際郵便為替の交換に関する約定締結について  承認を求めるの件(条約第一一号)(参議院送  付)  日本国カナダとの間の小包郵便約定締結に  ついて承認を求めるの件(条約第一二号)(参  議院送付) 同月二十五日  日中平和友好条約早期締結に関する請願(下  平正一紹介)(第三三六九号)  同(福岡義登紹介)(第三三七〇号)  同(藤田高敏紹介)(第三三七一号)  同(馬場猪太郎紹介)(第三四〇五号)  国際人権規約早期批准に関する請願清水勇  君紹介)(第三四四七号)  日ソ平和条約即時締結に関する請願森井忠  良君紹介)(第三四六七号) 同月二十六日  日ソ平和条約即時締結に関する請願上田卓  三君紹介)(第三五八三号)  同(岡田哲児紹介)(第三五八四号)  日中平和友好条約早期締結に関する請願外一  件(森井忠良紹介)(第三五八五号)  朝鮮半島の自主的平和統一促進等に関する請願  (小沢辰男紹介)(第三六六一号)  日ソ漁業交渉促進に関する請願小沢辰男君  紹介)(第三六六二号) は本委員会に付託された。     ————————————— 本日の会議に付した案件  漁業分野における協力に関する日本国政府と  ソヴィエト社会主義共和国連邦政府との間の協  定及び北西太平洋における千九百七十八年のさ  け・ます漁獲手続及び条件に関する議定書  の締結について承認を求めるの件(条約第一三  号)  北太平洋公海漁業に関する国際条約を改正す  る議定書締結について承認を求めるの件(条  約第一四号)      ————◇—————
  2. 永田亮一

    永田委員長 これより会議を開きます。  漁業分野における協力に関する日本国政府ソヴィエト社会主義共和国連邦政府との間の協定及び北西太平洋における千九百七十八年のさけます漁獲手続及び条件に関する議定書締結について承認を求めるの件及び北太平洋公海漁業に関する国際条約を改正する議定書締結について承認を求めるの件の両件を議題といたします。  政府より順次提案理由説明を聴取いたします外務大臣園田直君。
  3. 園田直

    園田国務大臣 ただいま議題となりました漁業分野における協力に関する日本国政府ソヴィエト社会主義共和国連邦政府との間の協定及び北西太平洋における千九百七十八年のさけます漁獲手続及び条件に関する議定書締結について承認を求めるの件につきまして、提案理由を御説明いたします。  日ソ両国国交回復以来二十年余の長きにわたり、サケマス中心とする北西太平洋漁業資源保存管理に貢献してきた北西太平洋公海漁業に関するわが国ソ連邦との間の条約は、ソ連側廃棄通告により、本年四月二十九日をもって失効することになりました。したがって、サケマス漁業の取り扱いを含め両国漁業関係の枠組みを定める新たな協定締結が必要となり、政府は、昨年の九月以来、三度にわたる交渉ソ連政府との間で行ってまいりました。最終的には、去る四月十一日に中川農林大臣が訪ソしてイシコフ漁業大臣との間で交渉を行いました結果、今般妥結に至り、四月二十一日にモスクワで、わが方中川農林大臣及び重光駐ソ大使先方イシコフ漁業大臣との間でこの協定及び議定書署名を行った次第であります。  この協定は、七カ条の協定本文から、また、議定書は、四項目の本文から成っております。  協定本文は、両締約国漁業分野における互恵的協力を発展させることを目的として漁獲技術増養殖技術改善等漁業分野における協力促進北西太平洋の距岸二百海里水域外側水域における遡河性魚類を含む漁業資源についての協力具体的措置は毎年両政府の間で作成される議定書により決定すること、協定目的達成のため日ソ漁業委員会が設置されること等の事項を定めております。  議定書は、協定規定に基づき、一九七八年のサケマス漁獲について、漁獲量操業水域漁期議定書規定に違反した場合の取り締まり手続等を定めております。  この協定及び議定書締結により、両国は、漁業資源保存管理及び最適利用に関する日ソ間の協力推進を今後の日ソ漁業関係中心に据えるとともに、北洋漁業において重要な地位を占めるサケマス漁業操業を本年においても継続し得ることとなりました。  よって、ここにこの協定及び議定書締結について御承認を求める次第であります。  次に、北太平洋公海漁業に関する国際条約を改正する議定書締結について承認を求めるの件につきまして提案理由を御説明いたします。  現行北太平洋公海漁業に関する国際条約は、昭和二十七年五月九日に東京署名され、昭和二十八年六月十二日に発効して以来、北太平洋における漁業資源保存管理に大きな役割りを果たしてまいりましたが、米加両国条約適用区域において新たな漁業管理権を設定したことに伴い、現行条約を改正する必要が生じました。まって、日米加三国は、合計四回にわたる交渉を行いました結果、昭和五十三年四月二十五日に東京において、本大臣カナダ側ランキン駐日大使及び米国側マンスフイールド駐日大使との間で現行条約を改正するためのこの議定書署名を行った次第であります。  この議定書により改正された北太平洋公海漁業に関する国際条約の主要な内容は、次のとおりであります。  第一に、現行条約に基づいて設置されておる北太平洋漁業国際委員会は維持されることとなります。  第二に、わが国サケ漁業に関し、操業禁止区域の設定、漁期等具体的規制措置が定められております。  第三に、取り締まり及び裁判管轄権については、二百海里水域外側においては裁判管轄権旗国に属することが確保されております。  第四に、北太平洋漁業資源に関する科学的研究推進及び調整について規定しております。  この議定書締結により、北太平洋におけるわが国サケ漁業安定的操業の継続が確保されるとともに、北太平洋漁業資源保存に関し引き続き日米加三国間の緊密な協力関係が維持されることが期待されます。  よって、ここに、この議定書締結について御承認を求める次第であります。  以上二件につき、何とぞ御審議の上、速やかに御承認あらんことをお願いいたします
  4. 永田亮一

    永田委員長 これにて提案理由説明は終わりました。     —————————————
  5. 永田亮一

    永田委員長 これより質疑に入ります。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します美濃政市君。
  6. 美濃政市

    美濃委員 ただいま提案されました両条約案件につきまして若干の質問をいたしたいと思います。  条約案件に入る前に外務大臣にお伺いしたいわけですが、年々北方漁業協定は、漁獲量は削減される、あるいは交渉も難航をきわめておるわけです。もちろん、漁業交渉と領土問題を切り離してやるということは前からのわが国方針ですから、それはそのとおりでいいと思う。  この際承っておきたいのですが、領土問題が解決すればこの交渉大変楽になると思うのですけれども、日本政府として、北方領土の問題についての積極的な対策と今後の見通しを承っておきたいと思います
  7. 園田直

    園田国務大臣 北方四島についての経緯並びに今日までの交渉状況は御存じのとおりであります。  今後、非常に困難な問題ではありますけれども、国民の総意が不変の態度で一貫され、しかもわが方はソ連邦に対しては、四島以外の問題は利害共通する点が非常に多いわけでありますから、ますます友好関係の発展、緊密化を図り、相互理解を図るとともに、多様面から北方四島についての処理を進めていきたいと考えておるわけでありまして、困難ではあるけれども、そのように着々と進めていけば、必ずしも不可能ではない、こういうことで全力を尽くす所存でございます
  8. 美濃政市

    美濃委員 せっかくの機会でございますから、いま大臣が言われた方針に向かって、本年度あたりの具体的な日程、これははっきりしなくともいいですから、予定でよろしゅうございますから、決まっているものがあれば具体的な日程、もしくは、いまの時期ですから、決まった日程がなければ予定で結構ですから、お聞かせいただきたいと思います
  9. 園田直

    園田国務大臣 まず、ソ連邦に、年内に日ソ外相定期会議をやりたいということを申し出ているわけでありまして、向こうの方はこれをやることには合意をいたしておりますが、時期についてはまだ返答がございません。なおまた、経済その他の問題でいろいろ問題があるようでございますから、機に触れ折に触れ、日ソの接触を広げていきたいと考えております
  10. 美濃政市

    美濃委員 次に、北太平洋公海漁業に関する国際条約日米加の三国の協定ですが、昨年に比較して漁業区域が狭められたこと。しかし、ここにはトン数制限はないようでありますが、日数で制限されておりまして、前年対比で漁獲量はどうなるのか。漁獲量は、前年はどのぐらい協定に基づいて漁獲ができて、ことしは海域が狭まっておるわけでありますから、その漁獲量がどういうふうになるのか、お伺いしたいと思います
  11. 中川一郎

    中川国務大臣 あの線を変えたことによりまして、昨年とっておりました実績は、たしか一万二千八百トンでございます
  12. 美濃政市

    美濃委員 本年の推定はどうなります
  13. 中川一郎

    中川国務大臣 その線から入れないことになりましたから、ゼロということでございます
  14. 美濃政市

    美濃委員 もう一回、ちょっとゼロということはわからぬのですが……。
  15. 中川一郎

    中川国務大臣 お尋ねが、日米加によって規制ラインが西に動いたことによって減少された漁獲量は幾らかというお尋ねでございましたから、一万二千八百トンでございます。ことしは幾らかとおっしゃいましたから、線が動いたために船が入れなくなりましたから、一匹もとれない、一トンもとれない、ゼロ、こういうことでございます
  16. 美濃政市

    美濃委員 次に、日ソ関係でございますが、今回の協定は四万二千五百トン、こういう決定に承っておるわけですが、いろいろ中身を選択しますと、かなり漁獲量が後退しておる。  まず、第一番に、協定内容について先にお尋ねしたいと思いますが、漁業協力協定の第三条の、二百海里外の「漁業資源保存及び合理的利用」の協力という状況でございますが、これはいま、この際、サケマスのみについてお尋ねをしたいと思いますが、この内容は、どうも今回、具体的にお尋ねしたいことをお伺いしますと、四万二千五百トンの中身は、公海上で二万八千トン、ソビエトの二百海里内では一匹もとれない、そうですね、公海上で二万八千トン、わが国の二百海里の中あるいは日米加部分、こういう部分までに四万二千五百トンという漁獲制限がわたっておるというふうに聞いておるのですが、間違いないですか。
  17. 森整治

    ○森(整)政府委員 そのとおりでございます
  18. 美濃政市

    美濃委員 そうすると、この協定にある二百海里の外の漁業資源という適用のあり方ですが、ソビエトの方は二百海里の中へ全然入ってとれない。わが国の二百海里まで漁獲量制限される。これはいわゆる遡河性回遊魚であるということも一面あるとは思いますけれども、どうしてそういうふうになるわけですか。どうも私どもが通例考えると、余りソビエト干渉が行き過ぎでないか、そういう感じを受けるのですが、これはいかがですか。
  19. 森整治

    ○森(整)政府委員 一つは、サケマス北太平洋で全海域にわたって回遊をしておるわけでございます。一番問題なのは、そういう、今回いろいろ取り決めされておる中で、やはりアジア系、ことにソ連系サケマスが非常に多いということでございまして、お互い母川国主義ということから、資源評価方式としていろいろ話し合いが行われてきたわけでございます。そういう結果、北太平洋全体のサケマス漁獲数量日ソ間で合意された。そのうち公海分が二万八千トン、四万二千トンというのは、アメリカの二百海里も含めた、日本の二百海里も含めた数量でございますけれども、これはそういうサケマス資源保存合理的利用について、日本お互い協力をしていこう、こういうことから一応一方的に行う約束として、議定書に四万二千五百トンという数字を決めた、こういうふうに御理解をいただきたいと思います
  20. 美濃政市

    美濃委員 もう一回、もうちょっと砕いて承りたいのですが、なぜそうしなければならぬのか。協力という言葉はわかるけれども、なぜ日本の二百海里部分をそういう漁獲量制限対象にしなければならないのか、その理由をもうちょっと具体的に説明してもらいたい。
  21. 森整治

    ○森(整)政府委員 先ほどから申し上げておりますように、日本でとっておりますサケマスが、日本産もございましょうけれども、大部分ソ連系サケマス、こう御理解いただいていいと思います。もちろんアメリカサケも入っておると思いますが、大部分ソ連系サケで、ソ連との間で合理的な利用資源保存ということを話し合っているわけですから、そういうものの一環としていまの取り決めを行った。ただ厳密な意味で制約されるのは公海分のものでございますけれども、その他の分も含めて起源は一応ソ連にあるということは、科学的ないままでの調査から認めざるを得ない問題である、それを尊重してお互い協力していきましょうというお約束をする、こういうことに御理解いただいたらいいのではないかと思います
  22. 美濃政市

    美濃委員 サケマスに限らず魚は泳いでおるものですからね。将来国際海洋法会議やその他で二百海里という問題と資源母川国主義の問題が話し合われると思いますが、二百海里という——わが国の二百海里の中でもそういう制限をすることについて話し合いをしなければならぬということが常識になるのか、それとも二国間で特別にそういう話し合いを進めるという約束があるのか、そこをはっきり聞いておきたいと思います。他の国からお互い二百海里の中へ入っておるわけですね。日本から向こうへは入っておりませんね。日本からソビエトの二百海里の中に入っているサケマスもしくは別の魚についての資源的な話し合いというのはあるのですか。一方的にソビエトだけが日本にこういうことを押しつけてくるような、話はわからぬわけでもないが、二百海里という専管水域を設定しているその中におれのところの魚が泳いで入っていくと言う。この関係は必要以上な干渉ではないかという感じがするのですが、いかがですか。
  23. 中川一郎

    中川国務大臣 二百海里時代を迎えまして、二百海里の中の魚については沿岸国管轄権を持つ、こういうことが一つでございます公海におきましても、遡河性魚類については二百海里を越えた公海においても母川国がこれを管轄する、こういう流れがあるわけでございます。  そこで、御指摘公海の遡河性サケマスならいいけれども、日本の二百海里ないしはアメリカの二百海里のサケマスにまでソビエトが口を出すのはおかしいではないか、こういう御趣旨だと思います。確かにそういうことは言えますが、資源としては、公海ではございませんけれども、残念ながらこの場合のサケマス母川国ソビエト中心になる。そこで資源を扱う扱い方としては、これぐらいとった方がお互い日本のためにも向こうのためにもいいのではないか。ただし規制に当たりましては、アメリカの二百海里においても日本の二百海里においてもソビエト干渉は受けない。こういう仕分けをしておるところでございます
  24. 美濃政市

    美濃委員 そうすると今回の協定に基づく四万二千五百トンで、操業日誌等についてソビエト監視船等日本の漁船を監視するという面はどこまでになりますか。公海上これはあるのですか、どこまでこの四万二千五百トンの協約に基づいて干渉されるのか。
  25. 中川一郎

    中川国務大臣 四万二千トンの監視につきましては両国監視船監視をするということになっておりますが、わが国の二百海里ないしアメリカの二百海里内につきましてはソ連船監視することができません。わが国監視をする、こういうことになっておるわけであります
  26. 美濃政市

    美濃委員 公海上の二万八千トンについてはソビエト監視船監視を受ける、これは漁業日誌等についての点検を求められる、こう解釈すべきですか。
  27. 中川一郎

    中川国務大臣 これは日本監視船ソビエト監視船も共同で監視する、こうなっております
  28. 美濃政市

    美濃委員 次に、今回の漁獲量協定を見て、残念ながらこれまた大幅減船をしなければならない。昨年の船全部でとるということにはならないのではないか。政府としてはこれを進めるに当たってどのようにお考えになっているか。帰ってきて減船話し合いが全部の漁業関係者との間にできたのか、できたのであればそのできた内容を、できていなければ政府としての考え方を聞かしていただきたい。
  29. 中川一郎

    中川国務大臣 御承知のように、残念ながら漁獲量が約三割減っておりますので、三割はこの際減船せざるを得ないという基本方針のもとに、まず中部流し網、いわゆる四八船につきましてはほぼ三割をめどに減船したいし、このことは業界にもお伝えしつつあります。  それから母船式につきましても三割減船でございますから、母船が六船団ございますので二船団減船せざるを得ない。その場合、それについております独航船も二船団分は削減せざるを得ないということになります。ただし水域が狭められましたので二母船団分減船して四船団を残すことが可能かどうか非常に技術的にむずかしゅうございますので、場合によってはこの際三船団削減をして三船団を残す。三船団減らす場合、一船団分独航船については、これは全部切るというのではなくして、できるならば残ります母船団に一船団分独航船を配属せしめて、これは技術的に必要な量でございますが、全部というわけにはまいりませんけれども、できるだけ独航船は残して母船は縮小するという姿勢で取り組みたい。  なお、太平洋あるいは日本海の小型関係については減船はしないということの方針を固めておる次第でございます。  なお、やり方その他確定的なことはこれから業界と話し合って決めていきたい。決定的なことはもう少しお待ちをいただきたいと思う次第でございます
  30. 美濃政市

    美濃委員 この減船に伴う措置ですね、これはこういうふうに年々漁獲量が減少されていくと、新聞その他で報道されておるように、減船対象になる者も地獄、残る者も地獄ということで、先の見通しがないのですから、たとえば減船に伴う補償を残る者に何ぼか持たすことにするのは、この段階ではもう不可能でないか。減船に伴う損害の補償全額政府が持つべきでないかと思うのですが、その辺はどのようにお考えになっておりますか。
  31. 中川一郎

    中川国務大臣 昨年二割以上の減船をいたしました際は、共補償政府交付金ということで処置をいたしたわけでございます。ことしも原則は昨年にならってやるのでございますが、御指摘のとおり、ことし減船をされます人については、昨年の共補償というものを背負っておりますので、この点は昨年の減船の場合とまた違った条件にある。また残ります人も従来の共補償を持っておりますし、またやめるに当たって今回の共補償が実際問題としてできにくい、こういう二重、三重の問題を持っておることを十分承知いたしておりますので、これにどう対処するか、昨年の方式にならい、ことし苦しくなっておりますものを政府としてどう対処するか、漁民の皆さんとも相談をして何とか成り立つようなことしの方式というものを考え出したい。具体的にはこれから業界財政当局相談をして決着を見たい、こう思っておる次第でございます
  32. 美濃政市

    美濃委員 私はこういうことが予測されますから、昨年減船が起きたときに当時の鈴木農林大臣に、これはことしだけではなくて、将来、去年の交渉を見ておっても、さらに漁獲量が減らされるということがなければ幸いだが、懸念される、そこで、これは大幅な補償措置でありますから、やはりつかみで補償措置をするよりも、財政法から見ても特別立法の必要があるのではないかということを提起したわけですね。それで当時の鈴木農林大臣は、十分検討する、こういうことだったのですが、その後ことしもつかみでやるのか。これはことしでもまだ終わらないと思うのですね。やはり特別立法を必要とすると私は思うのですが、その関係についてはどのようにお考えになっておられますか。
  33. 中川一郎

    中川国務大臣 御質問趣旨がちょっとわかりませんが、去年鈴木大臣にお話をされたときに、ことしだけで終わらないから来年も減ることを考えてやったらどうかと言ったのと同じように、ことしも、来年からまた減船があるかもしれないからそれを考えてやったらどうか、こういう趣旨でございますか、お尋ね趣旨は。ちょっとわからなかったものですから……。
  34. 美濃政市

    美濃委員 これは減船に伴う、言うなら損失補償でありますから、立法措置の問題です。つかみで財政措置をするのじゃなくて、法律をつくって、減船に対する補償の法律が必要でないかということを鈴木農林大臣に提起したわけです。十分検討するという約束、答弁だったわけです。それがなければ幸いだったのだが、ことしも出てきた。その関係はどういうふうにお考えになっておるか。
  35. 森整治

    ○森(整)政府委員 昨年の北洋関係の問題につきましては、離職者の問題は一応法律措置で講じております。  それから加工業者に対しましていろいろ救済を行うというような話も、一応法律を要する問題につきましては法律で対応する。  ただ直接、ただいま減船に伴いまして救済措置を講ずる、救済のための交付金をどうするかということにつきましては、財政措置でできる限り早く手当てをした方がよろしい。また、別に特に法律を必要としないだろうというふうにただいまも考えておりますし、その線で対応していくべきではなかろうかというふうに思っております
  36. 美濃政市

    美濃委員 この件はいまの答弁では疑義があると思いますけれども、時間の関係できょうはこの程度にしておきます。  次に、今回、ふ化事業の協力費ですか、入漁料ではないわけですね、十七億六千万円をソ連側に支払うことになりましたが、この支出はどうなりますか。キロ当たり九百二十円として水揚げの四・五%ということで、これは漁業者に負担をさすのか、政府が出すのか。
  37. 中川一郎

    中川国務大臣 これは入漁料ということではなくして協力費ということで出しますが、性格の発想は入漁料的なものでございますし、協力にいたしましても、やはり民間がこれを負担するのを原則とするということで、支出の方法等々、民間の代表でございます日本水産会とソビエト側との話し合いになっております。しかし、民間だけで負担できるかどうかという問題やあるいは協力の仕方等を検討いたしまして、政府もできるだけこれに支出をして協力をしたい。どのような協力をするかにつきましては、これからまた業界話し合いをして詰めたい、こういうことになっておるわけでございます
  38. 美濃政市

    美濃委員 いまのところ政府としては、その十七億六千万円出すということは約束されたわけです。はっきり何ぼか見ようとか、まあ額はこれからの相談ですから、政府も一部は見なければならぬとお考えになっておるか、これは全部漁業者に負担さそうというお考えか、そこをはっきり聞いておきたいと思う。
  39. 中川一郎

    中川国務大臣 十七億六千万の話につきましては、四・五%を四万二千五百トンへ、単価であります九千二百円、三つ掛け算しますと十七億六千万円になるわけでございます話し合い政府がいたしましたけれども、形式は、業界ソビエト側と話し合って業界が払うという仕組みになっております。しかし、政府としても業界だけでは大変であろうと考えておりますので、どの辺になりますかわかりませんが、業界と話し合って協力したいな、しなければならないな、こう考えておるわけでございます
  40. 美濃政市

    美濃委員 次に、この際お伺いしておきたいことは、北方領土地域からたびたび、旧漁業補償ですね、いわゆる占領に入る前の漁業権、旧漁業権を補償してくれ、そして旧漁業権の打ち切りを政府はやってくれという要請が強いわけですが、その関係政府としてはどの程度考えておるか。
  41. 森整治

    ○森(整)政府委員 北方四島の問題に絡む旧漁業権の補償問題の御質問と思います。  これにつきましては、御承知のように講和条約ができましてから後には、すでに旧漁業権というのが失効しておるという見解のもとにずっと処理をしてきておりまして、そのためにいろいろ北方協会等の措置を講じてきておるわけでございます。したがいまして、何か新しく創造的に物を考えるということであればまた全然話は違うわけでございますけれども、旧体制からのずっと引き継ぎの問題として考える限りは、われわれとしてはすでに漁業権は消滅しておるということで処理せざるを得ないと思っております。その別の手当てとしていろいろな措置がすでに講ぜられておるものというふうに理解をいたしておるわけでございます
  42. 美濃政市

    美濃委員 いまの、旧漁業権は消滅しておるという解釈は大きく問題があろうかと思います。しかし、きょうは条約審議が主体であり、私の持ち時間がございませんから、承っただけにしておきますけれども、ここで申し上げておきます。消滅したという考え、これは大きな問題があると私は思います。それだけを提起しておきまして、先へ行きます。  最近、韓国の漁船団が非常に、特に北海道の近海を荒らしておる、何とかしてくれという沿岸町村からの要請もたびたび出てきておる、こういうことがありますが、韓国との関係は二百海里も適用されておりませんし、沿岸地域からはそういう要請があり、資源の問題、あるいは網を破られたという問題、いろいろ紛争が起きておるわけですが、これにつきまして政府はどういう対策をお考えになっておるか、承りたいと思います
  43. 中川一郎

    中川国務大臣 北海道沖における韓国漁船の問題につきましては三つございます一つは被害漁具に対する補償をどうするか。それから操業規制をどうするかという問題。もう一つは、二百海里ではありませんけれども、操業水域についてわれわれの言い分を聞いてもらいたい。三つございます。  一つ補償問題については、委員会を設けまして実態を明らかにし補償をするということで、補償できるものはしてもらうことになっております。今後もその話し合いを詰めていく。  それから規制につきましては、向こうの係官が乗って間違いを起こさないようにということを注意深くやっていただくようになっております。ただ、話し合いがついておりませんのは、二百海里はソビエトとの間にはできておりますが、韓国との間にはできておりませんので、ここは自由操業であるということで話し合いがついておりません。そこで初村政務次官に先般韓国に行ってもらいまして、向こうの責任者と十分話し合って、その点を申し込んできたところでございます。場合によっては、これは外交ルートをもって話し合いをしなければならないかもしれないということでございますが、向こうとしては、今後も十分話し合って円満にやっていきたいということでございますので、今後ともさらにその点について話し合いを進めて、操業水域についても決着をつけたい。鋭意努力いたしておるところでございます
  44. 美濃政市

    美濃委員 今回の一連の交渉過程を見まして、規制措置その他につきましても、日本交渉は少し弱いのではないか。けんか腰になれというのじゃございませんけれども、やはり二百海里内の問題、こういう問題についてももう少し主体性を持った、日本側の言い分がもう少し通ってもいいのじゃないか、卑近な言葉で言えば、何かソビエトに少し押し回されておるのじゃないかという感じが私はしてならないわけでありまして、これで終わったわけではございません。協定はできても、年々の漁獲その他は議定書によって毎年交渉になるわけでありますから、これからの体制についても、日本政府としてはもっと十分日本の主体性をこの交渉に反映できるように努力してもらいたいと思います。  以上で、終わります
  45. 永田亮一

    永田委員長 井上一成君。
  46. 井上一成

    ○井上(一)委員 二百海里時代二年目を迎えた本年の日ソサケマス漁業交渉は、従来にない難航をしたわけでありますが、交渉経緯を振り返って、農林大臣としてはどのような御感想を持っていらっしゃるか、まずお伺いをしたいと思います
  47. 中川一郎

    中川国務大臣 サケマスにつきましては、二十数年前からだんだん、最盛期は十四、五万トンもあったものが、一昨年は八万トンまで下がっておる。さらに二百海里第一年目を迎えまして昨年は二万トンの減少、そして六万二千トンが昨年の実績でございます。  ここまで下がってまいりましたので、今年はぜひともこのベースは守りたいという気持ちはございました。しかし相手側が、昨年、長かった日ソ漁業条約というものを破棄いたしまして、沖取りは一切認めない、こういう基本方針で今年度に臨んでまいったわけでございますので、その間に大きな開きがある。昨年調整済みであるから、この程度はもう継続したいとするわが方と、資源を大事にし、遡河性サケマス母川国管轄権を持つものである、また資源を大事にする意味からいっても沖取りはやめるべきである、こういう考え方との間に大きな開きがございまして、私といたしましては何とか減船等のような事態が発生しないように、日ソ友好の関係からいっても、あるいは資源の保護の上からいっても、この程度はいいのではないか、こういう気持ちで交渉に臨みました。ただ、いままでのような操業ソビエトが応ずるわけはない、わが国資源についてはかなり協力的でなければならない、そのためには、ソビエト河川におけるふ化場あるいは養殖センター、あるいは川の開発というようなものについて、ソビエトとともに力を合わせてやっていく、こういう姿勢で資源問題に対処し、実績を確保したいと臨んだのでございます。  約十日間、毎日といっていいほど精力的に交渉いたしましたが、わが国の立場もわかるということで、当初提案しておりました沖取り一切禁止はすでに解消されておりますし、私が参ります前に三万五千五百トンという数字も出ておりました。その後イシコフさんが理解を示してくれまして、三角水域の一部の窓をあける等、あるいは漁期あるいは旗国主義等についてはほぼ話し合いがついたのでございますが、最終的には向こうが譲れない、三角水域の大部分をどうしても譲ることができなくて、その段階に至って平行線の交渉ということになってまいりました。そこでもっと粘り強くと思いましたが、漁期が外れたり、あるいは無条約状態というようなことになりましてはと思いまして、総合的に判断をして、この協定あるいは議定書のような内容になったわけでございます。  私といたしましては、資源の問題、あるいは母川国主義、あるいは二百海里時代、相手のあること等々ではございますけれども、今年もまた減船をしなければならないという事態に立ち至ったことは、まことに残念であり、申しわけないことだな、しかしこういった時代にはこういう方法しかないのかなとも思っておりますが、深刻に受けとめておるところでございます
  48. 井上一成

    ○井上(一)委員 母川国主義を背景に沖取り禁止をしたソ連側の主張、そういう中で交渉を進めてこられた農林大臣として、本協定をどのように評価なさっていらっしゃるのか。
  49. 中川一郎

    中川国務大臣 一つは、日ソ関係のかけ橋となっておりました魚関係協定が無条約状態に立ち至らずに継続できたことは評価できることだと存じます。また、サケマスにつきましても海洋法の精神に基づいて経済的混乱が起きないようにという決め事がありますが、この点については見解の相違はありましても、向こう側としては一切沖取りは禁止したいところであったが、経済的混乱や日ソ友好の観点からいってこれを全面的に禁止することはしない、この程度の操業を認めたということはそういう観点からであるということでございますので、日ソ関係あるいは海洋法、母川国主義等々の最小限度の線は得られましたが、何分にもかなりの縮小でございまして、痛手は非常に大きいと思っておるわけでございます
  50. 井上一成

    ○井上(一)委員 無条約状態を避けられたということでありますが、協定は五年間としても議定書は毎年交わさなければいけないわけであります。来年はこれより漁獲量が減ることはないでしょうね。
  51. 中川一郎

    中川国務大臣 この点は非常にむずかしいところでございまして、議定書によってサケマスについては両国間が話し合いをして決めていくということになっておりますから、来年再来年のことは来年再来年ということになります。しかし、私としての考え方は、基本協定であります協力協定が五年間であるということ、そしてその初年度に当たります今年度の議定書に基づくサケマスの取り扱いは確かに今年度のものでありますが、五年以上の協定を結びました初年度でございますから、まず今後についてもことし決めましたことがベースとなって話し合いが進められるであろう。そうなってまいりますと、これに大きな変化はない。ことし四万二千五百トン決めますに当たりましては、アメリカ水域が非常に狭くなったことによる減少、さらにはことしは不漁年であるという問題がありまして約五千トンぐらいは少なくしなければならなくなったということ、それに加えてソビエト側も資源を大事にする、こういう三つのものが重なりまして四万二千五百トンとなったわけでございますアメリカ水域については今後変更はないものと見て結構でございますし、ソビエト水域が今後どのくらい縮小するか、来年は豊漁年であるとするならばその辺のところはまた言えば言える根拠があるということではございますが、来年は来年でまた話し合うことでございますのでわかりませんが、私としては五年間の協定であり、その初年度の話し合いの今年度の結果でございますので、来年度は今年度をベースにして話し合っていく。その間に特別な資源量の変更とか、あるいは操業について特別の違反があったとかいうような、ことしに比較して来年が変わった事態が発生するということがあれば別ではありますけれども、まずまずこのベースは基本にしてここ当分の間話し合いができるもの、そしてまたそれはしていかなければならないもの、こう思っておるわけであります
  52. 井上一成

    ○井上(一)委員 大臣から詳しく御説明をいただいているのですけれども、限られた時間ですので、要点だけにしぼって私の方も質問をいたしますので、お答えも十分配慮していただきたいと思うのです。  大臣はこの協定を遺憾に思っておるということでございますね。
  53. 中川一郎

    中川国務大臣 協定は結構だと思いますが、議定書の今年度の決め方は結果的にはわが漁民にとって遺憾なことだなと思っております
  54. 井上一成

    ○井上(一)委員 それは、北洋漁場、いわゆる伝統的な日本の好漁場が縮小されつつあるということについて国益上大きな損失だというお考えに立っての御発言でございますか。
  55. 中川一郎

    中川国務大臣 去年に比較して二万トンからも減少したことは漁民にとっても、したがって日本全体にとっても遺憾だな、こう思っております
  56. 井上一成

    ○井上(一)委員 ソ連は沖取りは禁止しようという考えに立って今後も対応してくると思うのです。いま議定書で、来年は来年のことだ、再来年は再来年のことだ。ぼくは非常に無責任だと思うのです。来年以降なおさらに減らされる可能性があるのか、あるいはもう絶対に沖取りはでき得るのだということなのですか、そういうお考えに立っていらっしゃるのですか。
  57. 中川一郎

    中川国務大臣 相手は沖取りを禁止したいということでございますが、私はこれくらいの沖取りはいいであろう、こう主張いたしまして今年決まったわけでございます。来年以降もそれぐらいはやっていいのではないか、私はこう思っておりますし、よくなるだろうと思いますが、相手のあることでございますから、約束をしてきて大丈夫でございますと言い切れない点は残っておりますが、これぐらいはやれ得るもの、こう思っております
  58. 井上一成

    ○井上(一)委員 ということは、相手のあることだから、相手が全くとらしはさせないんだ、ゼロだってあり得るということも予想できますね。
  59. 中川一郎

    中川国務大臣 相手から聞いたことがあるわけではありませんから、その点はわかりません。
  60. 井上一成

    ○井上(一)委員 今日の時点では、もちろんそういうことを相手から話すことはあり得ないと思うのです。  そこで、私は少しここで日米加漁業協定にも触れておきたいのですが、日本が二百海里の漁業専管水域を実施しなければいけないという事態に立ち至った。国際的な問題である、そういう流れである。しかしこれはやはりアメリカが先頭を切って、そしてソ連が追随をし、その結果日本漁業が大変圧迫をされてきたということです。今回もまた同様に、西経百七十五度以西までは自由に操業ができたのが東経百七十五度まで西へ締め出しを食ったということですね。そういうことで、今回の日米加漁業条約改定交渉日本としては相当な譲歩であった。そういう譲歩をしなければいけなかった理由が何なのか、またそういう強い規制に、あえて日米加漁業条約改定交渉に当たってわが国の強い姿勢を打ち出さなかったがために、アメリカからも相当な規制を受けた。それはひいては日ソ漁業交渉に影響したと私は考えるわけでありますけれども、農林大臣のお考えはいかがですか。
  61. 中川一郎

    中川国務大臣 交渉過程においても確かにそういう議論もありましたし、そういうことが影響いたしたと存じます。ただしアメリカが主張してまいりました当初の案は、アリューシャン列島がずっと出ておりますから、百七十度の線までは、アリューシャンをもって二百海里が出てきておりますので、そこまではわが方の権利である、こう言うのを、話し合いの中で百七十五度まで五度押し返したということでございまして、今年はアメリカに対しては、二海里調整である。  そこでソビエトに対しても、二百海里調整をあなたの方がやったからアメリカ側があなたと同じになって二百海里の調整を行ったものであって、今度行った調整は、あなたが行った調整に対応したまでであって、それ以上のことを言うソビエトの主張はアメリカ以上の主張である、こういうことで議論を闘わしたわけでございます
  62. 井上一成

    ○井上(一)委員 ソ連との交渉について大臣は非常に詳しく説明をなさって、厳しかったんだということを話されておるわけですけれども、むしろそれは逆に、対ソ交渉に対するあるいは甘い期待感というものをわが方が先入観的に持っていたということにも裏を返せばなるのじゃないですか。余りにも甘い考えを持って交渉に当たったんじゃありませんか。
  63. 中川一郎

    中川国務大臣 交渉に臨むに当たって、悲観的で交渉はできない、やはり希望を持って交渉しなければならぬということで乗り込んだことは事実でございます。その原因とするところは、昨年二万トンの調整を行っておるという事実、それから、資源が大事であるならば協力費等をもってカバーできるのではないか、もう一つは、日ソ友好ということからいくならば、二年引き続いてのそういった過激な変更はないであろう、こういうことをベースにして交渉すれば何とかなるのではないかと思っておったのが違ったことは事実でございまして、その点は、甘かったと言えば甘かった、の批判を甘んじて受ける次第でございます
  64. 井上一成

    ○井上(一)委員 まあ甘かったわが国の対応を率直にお認めになられたわけであります。  私は、一部報道されておりましたように、共同増殖にしてもソ連側は全く見向きもしなかったというようなことで、今後の問題として、やはりわが国漁業政策というものを根本的に見直さなければいけない、考え直さなければいけないというときだと思うのです。そういう意味では、農林大臣は、わが国漁業政策という問題で、今時点でどのように大きく転換を図ろうとなさっていらっしゃるのか、これまたお聞きをしておきたいと思います
  65. 中川一郎

    中川国務大臣 二百海里時代というものは予想以上に厳しいものであるということを——アメリカのみならず、ソビエト、そしてニュージーその他ずいぶんございます。しかし、甘かったといえ、何と言われようとも、少々の望みでも期待をかけて、それぞれの国の対応が違いますから、それぞれの国について最善の努力をして、長年築いてきた遠洋の実績を確保するとともに、そこで失い、また失いそうであります魚族資源については、今後、前浜、すなわち、わが二百海里の合理的な開発、増養殖によってこれを穴埋めしていく、こういう基本方針で、長期的には魚族資源を失わないという努力をしていきたい、こう思っておる次第であります
  66. 井上一成

    ○井上(一)委員 サケマス母川国主義が国際的慣習として確立しつつあるわけであります。しかし、第三次国連海洋法会議の非公式の統合交渉草案の第六十六条で規定するように、ソ連側に、わが国の経済的、社会的混乱を最少にするため協力する義務があるのではないだろうか、こういうふうに思うわけです。  今回のソ連側のとった交渉の中での対応を見てみますと、後ほど質問いたしますが、わが国の経済的な混乱あるいは社会的な、伝統的北洋漁業に衝撃を与えたという、このことについてソ連側の態度は余りにも一方的に過ぎるのではないだろうか、こういうふうにも考えるのですが、農林大臣、いかがですか。
  67. 中川一郎

    中川国務大臣 その点もイシコフ大臣と十分話し合った点でございます。このような事態になりますと、昨年も減船をし、ことしも減船をするということになれば、経済的、社会的混乱が起きるということも指摘いたしました。これに対して、確かにそうであろうが、二百海里時代というものはわが国も非常に厳しい対応を受けておるのである、EC等からは完全に締め出されて、一隻も出漁できないことになっている事実も知っていただきたい。あるいはまた、あなたの国は社会主義でございますからどこへでもすぐ回せますが、わが国は自由主義社会で直ちに失業するということもお話もいたしましたが、日本だけが苦しんでおるのではなくてわが国も非常に苦しんでおるということを理解いただいて、だからこそ、多くの技術屋やあるいは国内の人々が、あの真ん中の水域をあけてはならないと言うのに対応して、批判はあったけれども、あけたことをひとつ評価してほしいということで、意見の一致を見なかったわけでございます
  68. 井上一成

    ○井上(一)委員 さらに質問を続けたいわけでありますが、外務大臣がお帰りになりましたし、すぐにまた御退席だということで、これは外務大臣も農林大臣も御一緒の折に、ぜひ私はひとつこのことだけは申し上げておきたい。  いま質疑を交わしております協定、先ほど提案された議案に対して質疑をいたしておるわけでありますけれども、昨年の暮れ、日ソ、ソ日、それぞれの条約が審議されたわけであります。その際にも、もういわば条文の、あるいは逐一検討し質疑をする時間が非常に限られた。今回も、きのう署名したものをすぐに審議に付して、実はお互いに議論を、質疑を交わしておるわけであります。もうこういう条約は、こういう案件は反対はしないであろう、あるいは反対はできっこないであろう、だからもうすぐに通せという——いろいろの御苦労をいただいておる、その経過等については種々私も、それはそれなりに理解をしているのですよ。理解をしているのですけれども、立法府に対する政府の態度に問題がある。もっともっと、立法府として、われわれとして、十分審議の時間を持ってお互いに論議をすべきである。今後も年末と四月の末にやはり同じようなことがまた繰り返されるのではないだろうかと、こういうことを私はむしろ予想し、それを心配いたしておりますので、この際、こういうことのないように十分注意をしていただくように一言申し上げておきたい、こういうことでございます
  69. 園田直

    園田国務大臣 前国会においても御同様の御発言と御注意があったことをよく心得ております。今回もまた同様のようなことになりまして、きょう提案をしてきょう御審議を願うということは、まことに国会を軽視したようなことになりまして心苦しいことだと存じておるわけでありますが、交渉の経緯でおわかりのとおりに、私も農林大臣も必死に早く妥結するように努力をしたわけでありますが、やむなく今日に至り、決して反対がないだろうということではなくて、漁期というものを勘案をして、申しわけないと思いながら提案をしているわけであります。  今後については、御趣旨のことをよく考えて、もっと早目に相手の国と交渉をするなり、いろいろ方法を講じて、国会軽視などということのおしかりを受けないように、十二分に注意をする所存でございますから、今回はお許しを願いたいと存じます
  70. 井上一成

    ○井上(一)委員 そういうことを注意を喚起して、どうぞ外務大臣、退席をしてください。  さらに、農林大臣にお伺いいたします。  アメリカからもいわゆる操業水域を削られ、今回また日ソ交渉漁獲の割り当て量の大幅な削減を受けた、あるいは漁区の縮小をさせられた、さらに十七億円有余の漁業協力費を支払うことになったということでございますけれども、この十七億円はなぜ支払わなければいけないのか。
  71. 中川一郎

    中川国務大臣 支払い額の算定に当たりましては、入漁料というものがアメリカその他でも三・五%である、これに調整を加えて四・五%になったと、いきさつはありますが、中身は、やはり資源を大事にしていくという民間からの協力と、ソビエトでもサケマスをしっかり回帰せしめるためには、川をよくしたりあるいは森林の保護を図ったり、こういうことがございますので、そういう器具、機材、施設等に対してわが国の民間が協力をする、こういう立場で四・五%、十七億六千万と決まったわけでございます
  72. 井上一成

    ○井上(一)委員 さっきから民間が支払う、大日本水産会が支払うのだということをお答えになっていらっしゃるのです。これは約束はだれがなさったのですか。
  73. 中川一郎

    中川国務大臣 基本的な考え方についての話し合いは私とイシコフさんとの間でやりましたが、最終的な話し合い約束事の文書の取り交わしは水産会の亀長さんと先方との間で行われておるわけでございます
  74. 井上一成

    ○井上(一)委員 公海上での漁獲操業に関して、たとえ民間負担とはいえ、漁業協力費を支払ったというような事例はほかにありますか。
  75. 森整治

    ○森(整)政府委員 例はございません。
  76. 井上一成

    ○井上(一)委員 農林大臣、例のないことを日本がつくったわけなんです。基本的にはあなたが政府代表としてなさってきたわけです。どうお考えなんですか。
  77. 中川一郎

    中川国務大臣 公海ではありましても、遡河性魚類母川国のものであるということがはっきり出ましたのも今回が初めてでありまして、初めてのことに初めての対応をした、こう言わざるを得ないと存じます
  78. 井上一成

    ○井上(一)委員 今後多くの国との漁業交渉を進めていくわけでありますけれども、公海上の漁業協力費の支払いは私は決して好ましい前例ではないと思うのです。大臣はどうお考えですか。
  79. 中川一郎

    中川国務大臣 公海といいましても歯どめがありまして、母川国に帰属すべき遡河性サケマスということでございまして、公海についてこれが前例となって破られることは断じてあり得ない、こう思っておりますサケマスについてほかの国がまた出てくれば別でありますが、遡河性サケマスというようなものが出てくれば別でありますが、遡河性以外の魚類についてそのようなことはあり得ないし、これが前例となることにもならない、こう思っております
  80. 井上一成

    ○井上(一)委員 前例にしたくない、それはそれとして、今回の対ソ支払いは民間が実施するということで、政府は今後の課題としては検討したいというお答えがさっきあったと思うのですけれども、いまの時点で、民間に負担をさすことはやむを得ないとお考えなんですか。
  81. 中川一郎

    中川国務大臣 遡河性の、母川国に所属しておりますものに対して民間が協力するのはやむを得ない。ただし、普通の入漁料とは違いますが、金目の計算は入漁料をベースにしてやっておりますが、入漁料とは違いますので、そしてまた業界が今日のような状態でございますから、責任は民間にございますが、政府協力できるものがあったら協力したい、こういうことでございます
  82. 井上一成

    ○井上(一)委員 農林大臣、もっと深く考えなければいけない。民間に、大日本水産会に負担をさすのだ、母川国主義の背景からいって当然なんだというお答えですけれども、それを負担さすことはすなわち魚の値段が上がることにつながるのですよ。そういうふうに考えませんか。魚の原価に加算されていくのだ。
  83. 中川一郎

    中川国務大臣 全くそのとおりでございますが、入漁料あるいは協力費等のものを消費者に負担していただくのか、政府が見るのか、業界が企業努力でこれを消化していくのか、議論のあるところではございますが、私は、この程度のものならば業界の企業努力によって消化をしていただきたいと思っており、若干のところは消費者の負担される面もあろうかと思いますが、それが全部そのまま消費者負担だと、堂々といばって消費者に返すべきものではない。やはり企業努力によってやる。これは今度の問題だけではなくて、二百海里時代を迎えた入漁料に対する考え方全般的に通ずる考え方でございます
  84. 井上一成

    ○井上(一)委員 企業努力にも私は限界があると思うのです。だから、この額が企業努力ですべて賄えるということはあり得ない、むしろ企業努力によって賄える額がこの十七億円余りに到達しなかった場合には、その差額分は政府が補助を出すのだというくらいのお考えがあるのですか。でないと、結果的には国民、消費者がこの十七億円余りを負担する、魚を消費することによって負担することになるのですよ。
  85. 中川一郎

    中川国務大臣 そういう考え方もありますが、魚を食べない人が魚を食べる人の負担をするというところにもまた問題があろうと思いますから、その辺のところはいろいろと検討してみたいと存じます
  86. 井上一成

    ○井上(一)委員 わが国の年間の魚の消費量はどれくらいなんですか。魚を食べない人って何人いらっしゃるのですか。農林大臣大臣として、魚を食べない人は国民の何%なんですか、何人いらっしゃるのでしょうか。
  87. 中川一郎

    中川国務大臣 入漁料の魚を食べている人がどれくらいあるかは計算したことはありませんが、入漁料を全部国民全体で持てということには私としては賛成しかねるところでございます
  88. 井上一成

    ○井上(一)委員 私の言っていることがわからないのですか。公海上の漁獲に対して入漁料に類した負担をすることは本当は好ましくないのですよ。それをあなたが決めてこられたのじゃありませんか。あなたが決めてこられて、それは最終的には民間が負担するのだ、その民間はいわゆる魚の値段を引き上げるということによって上積みをして、国民、消費者に負担をさす。魚を食べない国民は一人もおりませんよ。入漁料を支払って得る魚を食べない人に負担をさすことはよくない、不公平であるというような認識、これは枝葉末節も、私から言えば全くもっておかしなお答えなんです。根本的な問題、いわゆる消費者に対する配慮をした漁業政策を打ち出すべきである、こういうことなんです。農林大臣。いかがですか。
  89. 中川一郎

    中川国務大臣 この金を払わずにサケマスが四万二千五百トンとれるならばあなたの言うとおりいたします。四万二千トンのサケマスを国民に供給するためには、私であろうとだれであろうと出さなければならないから出してきたのであって、私が好き勝手に出してきたみたいなことを言われても困ります
  90. 井上一成

    ○井上(一)委員 四万二千五百トンは全部ソ連近海の公海でとれるのですか。大臣、いまのお答えは間違いではありませんか。
  91. 中川一郎

    中川国務大臣 残念ながら大部分ソ連を基地とするものでございます
  92. 井上一成

    ○井上(一)委員 さきに経済企画庁も、片側ではマグロ、エビ等の輸入価格が円高によって値下がりをしているにもかかわらず小売価格が逆に値上がりをしているということを指摘しているわけなんです。このような問題についても農林大臣としては、サケマスとは逆な現象についても十分な認識を持っていらっしゃると思うのですけれども、いま四万二千五百トンの大部分はというような話、そんな中途半端な話ではだめだ。  まず第一点は、企画庁が指摘をした値下がりをしないマグロ、エビなどの問題、片側では今回の交渉に当たられたサケマスの値上がりを予想するからここで強く指摘をしているわけなんです。これに対する、物価高を抑制するという中で国民の生活を守ろうという農林省としての何らかの方針を、政策を持っていらっしゃるのかどうか。
  93. 森整治

    ○森(整)政府委員 ちょっと私事務的に御答弁さしていただきまして、大臣から後で御答弁いただいたらいいのではないかと思います。  第一点の、輸入価格が下がったのに末端消費者価格が下がらないということで、マグロ、エビそれからタコが問題になったことがございます。これは、それぞれその事実につきましていろいろ調査関係の問題がございますが、それをおきまして、何といいますか、途中の、中間の処理形態が非常に時間がかかる。要するに、原料価格が末端価格に占めるウエートが非常に少ないというようなこと。それから、逆に言いますと、いろいろ手間がかかって消費者の口に届くということで、流通経路もありますが、そういうことでそういう事実が出てきたということでございまして、ただそれもその後は小売価格に反映されるようになってまいっておりまして、この点につきましては私どもも当然、輸入価格が下がってそれが原価で正しい限りは、大いに現小売価格に反映されるよう今後も指導してまいりたいし、そういう契機をつくる意味でいろいろキャンペーン等もやった次第でございます。また、今後もそういう努力をいたしたい。  それからサケマスの問題、最初の御質問の問題につきましても、実は私どもこういうふうに考えておるわけでございます。それは、コストになったからコストにかぶせるべき性格のものとして理解をすべきであろうと思います。ただ、そうだからといって消費者にかぶせようとしても、去年のように非常に魚離れという、ちょっと言葉としては私どもいやな問題でございますけれども、そういうことで消費者が買わないそんな高いもの、そういう問題が事実出てまいりました。これについての反省というのは、今回は私ども、業界並びに小売業者に至っても非常に心配をし、またそういう警戒をしておるわけでございます。  それからもう一つ、価格というのは卸売市場の入札等で決まります。そういうことでございますから、そういう適正な価格が出るにいたしましても、先生御指摘のように若干でも何かひっかかる要素があるとすれば、ひっかかるといいますか、消費者にコスト的に反映する性格のものでございますから、なるたけ政府としましても、めんどうを見られるだけのことは見ていきたいと思います。それをいま幾らにしたいかということはまだ考えておりませんけれども、決めておりませんけれども、それぞれの協力費の内容に応じて今後検討をさしていただきたい、こういうふうに考えておるわけでございます
  94. 井上一成

    ○井上(一)委員 大臣、いま何らかの形で、いわゆる魚の値段にはね返らないように政府は検討したい、こういうことを答えられたわけです。これは大臣、当然考えなきゃいけない問題なんです。昨年も、いわゆる魚転がしというようなことで、水産業界の利潤至上主義が消費者の憤激を買った。今回のサケマスに関して、この漁業協力費の対ソ支払いが、私は魚価の高騰につながる、それは消費者に対する負担になるということを恐れているわけなんです。そういうことがあってはいけないから、それを阻止するための、そういうことがないように政府は万全の対策を講じなければいけない、こういうことを私はお聞きしているわけなんです。もう一度ここで、大臣から、そういう国民に、消費者に、決してこのことによって負担をかけないのだという決意というか、お考えを聞かしていただきたいと思います
  95. 中川一郎

    中川国務大臣 もちろん、先ほどから答弁申し上げておりますように、井上委員にも四・五ということであれば業界も大変だ、業界は消費者を考えなければいけないので、何らかの措置を講じたい、こう言っているのであって、先ほど井上委員からおまえが約束してきたのだから全部政府がやれと言われるから、そうはまいりません、こう申し上げたまでであり、もう一言言わせていただければ、向こうが一〇%を要求したのに対して四・五%に抑えてきた努力もひとつ買ってもらって、約束してきたのだ、おまえ、このやろうけしからぬ、そんなものに払うのもけしからぬ、約束してきたのはみんなおまえ責任を持てと言われてもそれはちょっと困るので、私の苦労もひとつ考えていただきたいと申し上げる次第でございます
  96. 井上一成

    ○井上(一)委員 私は、要求する側がむちゃだと言っているのですよ。一〇%要求されて四・五にした、いやいやそれをこれだけにしたから苦労してきたのだ、それは個人的な心情としては農林大臣の御苦労もわからぬことはないですよ。しかし、こういうことで協力費を負担していくことは、私は決してよくない。そんなことは国民生活を守っていくのだという観点に立てば決してよくない。ぜひ消費者に対する配慮が私はここで講じられなければいけない、こういうふうに思います。  さらに私は質問を続けたいわけですけれども、与えられた時間が経過したわけですが、大臣がさっき四万二千五百トンは大部分ソ連の近海の公海上でとれるのだというようなお答えがあったのですよ。事実ですか。
  97. 中川一郎

    中川国務大臣 これは議論の過程においても、日本の技術者、向こうの専門家いろいろと打ち合わせましたが、あの水域でとれます大方の資源は、ソ連の川に上るべき資源であることは間違いございません。
  98. 井上一成

    ○井上(一)委員 数字的にはどれくらいの数字を把握していますか。
  99. 松浦昭

    ○松浦説明員 四万二千五百トンの内訳といたしまして、今後この水域でこれだけとれるだろうと思われる数字は、北から申しまして公海部分が五千七百トン。(井上(一)委員「パーセントで」と呼ぶ)パーセントから申しますと、ほとんど全部がソ連系サケマスでございますアメリカ系統のサケがごくわずか、それから日本系のサケマスはほとんど入っていないということでございます
  100. 井上一成

    ○井上(一)委員 日本の二百海里内なり、あるいは日米加公海区域内での予想される漁獲量はどれほどなんですか。
  101. 松浦昭

    ○松浦説明員 お答えいたします。  今回の四万二千五百トンの内訳でございますが、北の公海部分、これが五千七百トン、それからアメリカの二百海里水域内で操業できる分が六千トン、それから三角水域で一部開放になりました分、この部分漁獲量が一万二千三百トン、それから四十四度以南の水域で大体一万トンくらい、さらに日本の二百海里内、これが八千五百トンというふうに予定いたしております
  102. 井上一成

    ○井上(一)委員 このことについての関連した質問は後に回します。残った質問を留保して、私のとりあえずの質問をこれで終えたいと思います
  103. 永田亮一

  104. 島田琢郎

    島田委員 大臣交渉大変御苦労さまでございました。  私どもは、特に私は大臣とは選挙区を同じくする立場から、ぜひ今回の交渉が成功してそして千秋の思いで待っております漁民の皆さんに安心して出漁願えるような、そういう決着が見られるように祈っていたのでありますが、残念ながら、昨日以来大臣からも報告があり、また農林水産委員会でこの問題に対する若干の質疑が行われました過程でも、大変心配が残る、こういう結果になりましたことはきわめて遺憾であります。  そこで、私はわずかな時間ですからたくさんの質問をすることが許されませんので、当面問題になります点二つだけお尋ねをして、ぜひひとつ沿岸におきます日本漁業の振興、こういうものを図りながらこうしたむずかしい新しい海洋法時代に入った漁業政策のあり方についても、ともにひとつ真剣に考えていかなければならない、こういう立場からお尋ねをしてまいりたい、こう思うのであります。  その前に、今回の交渉を通じて特に大臣の立場で強くお感じになりました点を、この際ひとつお聞きをしたい、こう思うのです。
  105. 中川一郎

    中川国務大臣 二百海里時代を迎えまして、私はアメリカにも参っております。なぜ二百海里をやるのかというようなことで。そのときに、沖取りというものは資源確保のためによくないものである。今度もソビエトに参りまして、沖取りというものは沿岸漁民にとって非常によくないことだ、この点が今度の交渉で、私としては資源を大事にすると言われると非常に攻めにくいという点を強く感じたことであり、日本資源を大事にするということについてよほど考えなければいけないなということが第一点でございます。  まだたくさんございますが、一つ言えと言えばそういうことになろうかと存じます
  106. 島田琢郎

    島田委員 当然資源論争ということで大変苦慮された、こういうことで特に強くお感じになったということでありますが、たまたま報告によりますと、いま一番心配されている沖取り禁止、こういう問題について一応歯どめをかうことができた、こういう評価をなさっているようでありますけれども、本当に来年以降の保証というものがこれで確実に守られる、こういうふうに自信を持っていられるのかどうか、その点ひとつお尋ねをしたいと思う。
  107. 中川一郎

    中川国務大臣 二百海里ないしは遡河性サケマス母川国のものであるという以外に、沖取りというものは未成魚すなわち将来大きくなるというものまで混獲をしてしまうという意味でよろしくないというのが向こうの主張でございます。そこでイシコフさんも、そういうことではあるけれども、西から帰ってくるソビエトに向かうサケマスの道をずっとあけて差し上げたんだ、しかし資源の確保上、下から上がっていく三角水域の、あの私が努力してもできなかった部分だけは、ひとつ沿岸に帰るように、これだけは譲ることができない、こういうことであったわけでございます。そういう背景と、できました協力協定が五年間であるということと、そのうちの議定書によってできた一年間分というものはそういった資源論をずいぶんと闘わしてできた今年の四万二千トンであり、水域であり、漁期であるわけでございます。したがいまして、来年以降また資源論において新しいものが出てくればこれはまた別でありますが、いまの資源論から言うならば、ことしいいことは、来年も再来年もそう急激な変化はないもの、私はこう思っておるわけでございます
  108. 島田琢郎

    島田委員 大臣は、資源問題ということになると非常に論争しにくい、こういうことを述懐しておられるのでありますが、交渉の中でしばしば日本の乱獲という問題が指摘されたのですか。
  109. 中川一郎

    中川国務大臣 イシコフさんの口からは、そのようなことは一切出ておりません。ただ、これを意味しているのかなというようなことはありましたが、いや、どこでどうしてこうやっているではないかということは一切ありませんでした。
  110. 島田琢郎

    島田委員 日本側の漁業もきわめて節度を守っているというふうに私どももこれは自信を持っているのでありますが、ここのところが言葉には出なかったということでありますが、向こう側にそういう認識がありますと、来年以降の問題もこれはなかなか厳しくなってまいりますので、向こう側の言うところの節度ある操業とは何かという点も、これは国内では非常に議論しなければならぬ点があると思うのです。それは理解の仕方が大変違うというものもあるということが今回明らかになったと言われておりますし、というのは、先ほども二百海里時代の新しい認識というのは日本ソビエトではずいぶん違うということも御認識なされた、こういうふうなことを井上委員質問の中でもおっしゃっておられましたので、交渉というのは、言葉も違いますから非常にやりにくいということは私どもも想像つくのでありますが、大事なのは、個々の日本漁船が乱獲しているではないか、だから、資源を大事にするという言葉を用いながら沖取りを禁止するという方向に流れていっているのではないか、こういうふうに向こう側の認識がありますと、これはなかなか大変なんでありまして、そこのところは交渉の中でもそういう事実はないということをしっかりと言ってこないと、これはなかなか向こう側の理解するところにならぬのではないかと私どもは見ていたのであります。でも、いまの大臣のお答えでは、そういうことはイシコフ漁業相からは一切出なかった、こういう認識は向こうにはないのだ、こういうふうに理解していいということでございますか、再度お尋ねしておきます
  111. 中川一郎

    中川国務大臣 私の認識はそういうことに着目したのではなくて、ソビエト側もEC等から追い出されたというのですか、魚がとれなくなった。そこでやはり前浜を大事にしなければならない。その前浜に帰ってくるソ連系サケマス日本に一網打尽にとられたのでは、どうにもわが国資源はもたない。どうかわが国の沿岸漁民のために、この西の道は開きますけれども、南の方から上がってくる道はどうかあけてくれ。そして西の道をあけた結果とれる魚は四万トン前後ではないだろうかということでございましたが、四万二千五百トンまで、いろいろな議論の過程で譲歩してくれたというのであって、乱獲するからけしからぬのだ、ここを締めるのだ、魚の数を減らすのだという話は一切出ておりませんでした。
  112. 島田琢郎

    島田委員 そこで大臣が今後の日本漁業のあり方について在ソ中にも記者団の質問に答えて考え方を述べておられるわけでありますが、この日ソ漁業交渉がこういう状態を迎える以前から、わが党としても、日本の新しい海洋法時代を迎えて基本的にはやはり沖合いを含めた沿岸における日本漁業の振興をまず主にしなければならない、こういう点でしばしば農水でも、こういう問題の議論のありました中ではこれを基本に踏まえて日本の水産漁業政策というものを確立すべきだ、こう言ってきました。  幸い、沿岸漁場整備開発法という法律ができましてもう数年を経過しているのでありますが、しかし一向にこれに対する十分な予算づけがなされないまま推移をしてきておりまして、ことしようやく、前年に比べますとかなりの予算がついて、いよいよこれから滑り出しということになるわけでありますが、これを前にして、今回の日ソ漁業交渉でいみじくも前浜の漁業振興というものが外国の立場から迫られるような結果になったのはきわめて皮肉なことでありまして、この点について遅きに失しているとはいえ、私はやはりここに政治の力点を置いて進めていかなければならないという認識に立っているのであります。  しかしながら、それは言うべくしてなかなかむずかしい。たとえば沿岸におきます漁業の主体はきわめて零細で、本当に体を張ってやらなければならない漁民の人たちによって漁業が行われ、しかも前浜の漁業がそういう人たちによって支えられてきたのであります。これは目いっぱいでありまして、これ以上の漁業者が入り込むというようなことが果たして許されるかどうかという点を考えますと、環境はかなり厳しい、これが第一の点で言えると思うのであります。  第二の点は、魚族が前浜に育つものと、あるいは遠洋、沖合いでなければならないものと、これは当然あるわけでありまして、なかなか思ったように漁種を多様にここで育て上げていくということはむずかしい、こういう点もございます。したがって、Uターン現象というものが当然起こってまいりますし、そういう中で前浜のこういう漁場をどういうふうに分けて使っていくことになるのか、魚族の振興とあわせて大変大きな問題だと思うのです。  それから、日本漁業権というのが前浜の漁業の振興ということだけで実は割り振られておりませんから、この漁業権だって根本から見直していかなければならぬということになりかねません。こういう点について具体的に大臣は、前浜の漁業振興とおっしゃっている中では、恐らく頭に幾つか描いておられるのだろうと思うのであります。この際お考えを明らかにしていただきたい。そのことによってUターンということにおびえる沿岸漁民の皆さんに安心感を与えるし、また締め出された人たちの今後行かなければならない道筋についても明示することによって安心感を与える、こういうことになりますので、この辺の考え方をひとつこの際明らかにしてもらいたいと思うのです。
  113. 中川一郎

    中川国務大臣 まず、サケについて言いますならば、わが国もまた母川国なのでございます。したがいまして、ふ化場だとかというものを増設したりあるいはふ化事業をさらに促進したり、技術的にもっと回帰率をよくするにはどうしたらいいか、こういうことについて思い切りやるべきではないかと思います。  また、前浜につきましてはテトラポットだとか、ああいうような魚礁類によって、資源を豊富にしていくという努力ももっともっとすべきですし、あるいは栽培センターによるリースというようなものも考えていかなければいかぬ、このように幾つかのことがありますが、いままでも、ことしも相当沿整事業を七〇%伸ばしておりますが、こういったことを総合的に育てる漁業ということについて積極的に取り組んでいきたい、こう思っておるわけであります
  114. 島田琢郎

    島田委員 大臣、そういうことはいままでも農水でもずいぶん聞いてきたのです。そういうことの考え方は、私どもとも基本的には一致をするのですが、もういま大変差し迫った状態の中で、幾つかこういう点について明確にしてあげないと安心できないという漁業者の気持ちというものがいまあるわけですから、それに的確に、しかもかなり具体的にお示しになるというのは、行政を預かる大臣としては責任があるのではないでしょうか。いまのおっしゃったようなことですと、これは教科書にも書いてあるし、改めて私が聞くような事柄ではないのであります。いかがですか。
  115. 中川一郎

    中川国務大臣 私も常識的な男でございまして、目新しいものはありませんけれども、いま水産庁でやっております増殖、養殖等いろいろ細かく言えばあります。要は、従来のペースではなくして、相当思い切ったペースで伸ばすべきものではないか、内容何々あるかということになったら、専門家から御答弁申し上げます
  116. 島田琢郎

    島田委員 そうしたら、サケマスのことだけお聞きをいたしますが、御承知のように漁業権に絡まる問題でありますが、サケマス、これは一つの組合ができていて、そしてそれぞれ共同なりあるいは個人、個人というのは最近ないのでありますけれども、漁獲というものを一つ規制といいますか、おのずから規制にもなり、一つの節度といいますか、区域というものが設定されているわけです。ですから、前浜のサケマス漁業なんといったって、いまのところ余裕があって入り込めるような状態にはない。ところが、この辺については何か具体的に、前浜でお前たちのやり方についてはこういうふうに今後するぞというものが示されてこないと、納得ができませんね。単なる減船という措置だけで済ましてしまうという考えなのか、ここのところを私は聞きたいのですよ。つまり、漁業権もいまのままにしておいてやれるかというと、私はできないと思います。手をつけるお考えがありますか。
  117. 中川一郎

    中川国務大臣 サケマス定置については最近ずいぶん資源はよくなってきたと思うのです。これもふ化養殖を数年前からやってきた効果もあらわれているだろう。それについて、定置のあり方について、道が中心でございますけれども、いま研究はいたしております。しかし、これは根本的なことではなくして、やはり回帰率を多くするためのふ化増殖事業というものをもっともっとやるべきです。これが基本でなければならないし、農林省のやるべきことだ。できれば特に根室、お互い選挙区でございますが、根室あたりでは、民間でも定置業者等から協力費をいただいて、負担金をいただいてやりたい、こういうものもありますから、定置業者はいま非常にいいときでございますので、そういった仕組みも導入してやったらどうかな、こう思っておるわけでございまして、また、新しいことでもありましたならば、御指導いただければ前向きに取り組んでいきたい、こう思います
  118. 島田琢郎

    島田委員 それから試験操業でありますけれども、オッタートロールがございます。私は、海底にブルドーザーをかけるようなああいうやり方は、テストでやるといえども認めるのは、沿岸漁場振興という立場から言えば、これは逆行するものではないか、直ちに中止すべきだという意見を持っているのですが、大臣の御見解はいかがです。
  119. 中川一郎

    中川国務大臣 私も実は資源を大事にするということからいけば、あのオッタートロールというものはまさに逆行するやり方であるということが気持ちとしてはありますけれども、いろいろとまた改善を加えておるようであり、オッタートロールラインであるとか、期間であるとか、沿岸前浜の人と業界との間で道庁や水産庁も入っていろいろ調整をやっておりますが、これを全面的にやめるということになると、従来の操業ルートもあってなかなか決しかねる。でありますが、この辺のところは十分勉強していかなければ、資源を大事にした漁業政策とは言えないということは十分認識しておるつもりであります
  120. 島田琢郎

    島田委員 お答えは要りませんけれども、私は、オッタートロールは直ちに中止させるべきだ、こう思います。これは諸悪の根源だと言い切ってもいいと思っているのです。テストもへったくれもない。こんなところにいろいろな利権が絡まるような話さえも出てくる。こんな諸悪の根源をそのままにしておいては、中川大臣の名がすたろうというものだと思うのです。思い切ってこれはおやりいただきたい。  それから、新漁場の開拓ということを盛んに宣伝もしておりますし、私どもも、漁場開拓というのは新規に、思い切った考えに立っておやりいただかないといかぬことだ。幸いオホーツク海には新大和堆が次第に開発が進んでおりまして、こういうふうな実績などもあるわけでありますが、いまいろんな海域がありますけれども、きょうは時間がありませんから、オホーツク海域における新漁場の開拓の状態というのはどういうふうになっているのか、事務当局からでも結構でございます
  121. 森整治

    ○森(整)政府委員 先生のおっしゃる新というのがどこであるか、ちょっとよくわからない面があるのですが、いわゆる北見大和堆とその周辺というふうに理解をしてよろしければ、それでお答えいたしたいと思いますが、御指摘のように、北見大和堆につきましては、いろいろな好漁場ということで、むしろオッターとの関係等でいろいろ調整、協定が行われておるというふうに理解をしております。それから、その外でもいろいろいま調査が行われておりまして、北見大和堆の沖合いのより深い海域の開発につきまして五十一年、五十二年で二カ年にわたりまして海洋水産資源開発センターが調査をしましたところ、スケトウダラを中心にキチジ等の漁獲が見られました。そういうものをまた大いに利用に供していきたいというふうに考えておるわけでございます。こういうことを通じまして、いろいろわれわれとしても努力をしてまいりたいというふうに考えておるわけでございます
  122. 島田琢郎

    島田委員 時間がなくてこういう点についての議論ができないのはまことに残念でありますが、また農林水産委員会に戻っていろいろと私の考え方なども加えながら、ひとつ真剣に沿岸漁場の振興にわれわれも協力をしてまいりたい、こう思っているわけであります。  もう何回も外務委員会でも農林水産委員会でも、あるいはその他の委員会でも指摘をされて、この対策について政府の対応を迫っているのでありますが、どうもはかばかしくいかないのが韓国漁船による沿岸の踏み荒らし、そこまで言えば言い過ぎかもしれませんけれども、かなり威圧的に二千トン級の船が出たり入ったり、かなり沿岸におって、安全操業の面で脅かすような態度に出ているのは許しがたいことだと思っているのでありますが、政府の答弁は、民間の交渉にゆだねているものをなるべく早い時期に政府交渉に持っていきたい、こういうことを言っているのでありますが、現在までの、そう昔のものでなくて結構ですが、昨年一年間、今日に至るまでの韓国漁船による被害額や被害件数が一体何件あって、そのうち解決されたものは何件か、未解決のままになっているのは何件か、将来の政府間における韓国漁船の問題に対する交渉方針についてはどういうふうにお考えになっているか、一まとめにしてお答えいただきたいと思います
  123. 森整治

    ○森(整)政府委員 全体で韓国漁船によります漁具の被害件数が千二百件、金額約四億二千四百万円でございました。最近は非常に減っておりまして、本年の三月に入りましてからは被害が四件、被害金額が約二百万ということになっております。そこで、先ほど来大臣から御答弁申し上げておりますように、両国の水産庁同士、それから民間団体ということでいろいろ話し合いを続けまして、去る四月十二日、それぞれに委員会を設ける、日本側大日本水産会と韓国側北洋漁業振興会との間でそれぞれの委員会を設けるということで合意に達しました。五月下旬第一回の両国の合同の委員会を開催をする、そこで被害処理と安全操業ルールに関しまして具体的な協議を行うということに相なっております。すでに数件の数百万円につきまして、向こうは合意をした事実もすでにございます
  124. 島田琢郎

    島田委員 長官、答弁書をそのまま棒読みするからそういうことになるのですけれども、韓国漁船の問題について、私は大臣から考え方を聞いていないのですよ。
  125. 森整治

    ○森(整)政府委員 大変失礼いたしました。  問題は操業水域の問題と被害、すでに先ほど申しました被害の処理をどうするかという問題と、安全操業のルールをどうするかという三点でございまして、第一の点につきましては正直申しまして両国間の合意を見るに至っておりません。  第二、第三の問題につきまして、いま私が申し上げましたような段階に来ております。     〔委員長退席、大坪委員長代理着席〕  それから、第一の合意を見るに至っておらない問題につきまして、少なくとも日本漁業者が守っている国内規制、具体的に言いますとオッターラインの禁止区域でございますが、そういうものも韓国の漁船に守っていただきたいということを強くただいま主張をしておるわけでございまして、初村政務次官が先週ソウルに参りまして強くその要請を行ったわけでございまして、場合によりましては外交ルートを通じてでもともかく折衝をしたいというつもりでおるということでございます。  どうも失礼いたしました。
  126. 島田琢郎

    島田委員 大臣、民間に任せておいて、この先うまくいきますか。二国間において政府間におけるしっかりした交渉の場というものをつくっていかないと、どうもうまくいかぬのではないか、私はあくまでもそう思っているのです。確かにいま報告があったとおり、相当の件数が処理された、こういうことでありますが、依然韓国漁船が、こういう話し合いの場がありながらきわめて威圧的に沿岸にあらわれる、かなり近いところまで船影があらわれることがあるのであります。こういう点、やはり沿岸漁場で安心して操業してもらうという立場からいうと、こういう点をきちっと整理をしないといかぬと私は思うのです。いかがでしょう。
  127. 中川一郎

    中川国務大臣 いま長官が申しましたように、韓国漁船との問題については三つございます一つは、被害をどうするか、これは民間ベースで話し合いをして、政府協力して実効あらしめたい。それから規制につきましては、向こうも誠意を持って船に乗り込んでくる等で非常に少なくなってきておる、こう見ております。またさらに努力をしていかなければいかぬ。あとは水域の問題でございます。これがわが国規制しておるところないしは十二海里じきじきまで来るということから漁民の皆さんに不安を与えておる。政府としてはこの点を一番心配をいたしまして、韓国政府にも折々申しておるところでございますが、何分にも相互乗り入れということで二百海里時代でありませんものですからなかなか話し合いがつかない。そこで、先般初村政務次官を派遣いたしまして、もしそういうことで話し合いがつかないならば、外交ルートで話し合う用意がありますよということも申し入れたわけです。それに対して、それはおたくの国がやることだから結構でございますが、できるだけわれわれも協力するから話し合いの場をつくろうということで、前向きで話そう、操業水域その他につきましても、漁船ももとは二千トン以上であったものを、その船はアメリカの方に回すということで、韓国としてはわりあいに小さいものにするとかいう努力、そして前向きで話し合いもしたいということでございます。  ただ、北海道の漁民にとりましてはまだまだ手ぬるいということになりますが、外交ルートにのせて正式にやるということになるならば向こうも構えてきて、それじゃということになって二百海里時代というものに突入するかということにだんだんエスカレートしていって、それが日本全体、長期的に見て北海道全体によくなるか、その辺のところもまた判断しなければならないところでございまして、今度初村さんが本当に一生懸命わが国の実態を説明していただいておりますので、この交渉の結果、また話し合おうということでございますから、これは真剣に話し合いをして被害がなくなるように、また、ルールが守られるように、それ以上に水域について十分話し合ってまいりたい、こう思っておるわけでございます
  128. 島田琢郎

    島田委員 これで私の持ち時間が超えましたので終わりにさしていただきますが、日ソ漁業交渉の結果を踏まえて、日本の新しい漁業政策が急いで確立されなければならないという重要段階に立ち至った、こういう認識の上で、それぞれ立場を踏まえて質問がなされたようでありますから、私はごく一部の問題提起にとどめたのでありますが、引き続きまして、細かな問題はまた農林水産委員会で、大臣の見解なり事務当局の進めようとしている細かな点についても、私どもの意見を交えてひとつしっかりしたものにつくり上げていこう、こういうふうに考えていますから、しっかりおやりいただくように心から願って、私の質問を終わりたいと思います
  129. 大坪健一郎

    ○大坪委員長代理 岡田利春君。
  130. 岡田利春

    岡田(利)委員 日ソサケマス漁業交渉についてせっかくの努力をなさった農林大臣、御苦労さんでした。  同僚議員が質問いたしておりますので、できるだけ重複しないで端的に質問いたしたい、かように思います。  まず第一点として、ソ連は一千万トンの水揚げがあって、他の外国の二百海里以内から六百万トン程度の水揚げがある、こう公式に発表されておったわけです。今日、ソ連では、他の外国の二百海里以内からの六百万トンのうち、一体どの程度昨年一年間漁獲が減ったのか、そういう情報については農林省としては承知ですか。
  131. 森整治

    ○森(整)政府委員 ちょっといま手持ちに資料がございません。至急調べまして、後ほどお答えいたします
  132. 岡田利春

    岡田(利)委員 先ほど大臣が言われておったように、EC海域では六十万トン、ソ連海域ではECは六万トン、十対一の関係にあって、これがパアになっておるというのがいまのECとソ連の間の実情であろうと思うわけです。一説によれば、大体二百五十万トン程度の漁獲減ではないか、こう言われておるのですが、なかなか定かな数字がつかみ得ないわけです。そういう意味で、認識を深めるという意味において、そういう点もぴしっと数字として確認をしておきたいと思いますので、後からお知らせ願いたいと思います。  第二点は、わが国サケマスのいわゆる遡河性の魚の母川主義国である、こう理解してよろしいですね。
  133. 中川一郎

    中川国務大臣 沖取りもするし、母川主義国でもある、両面を持っていると思います
  134. 岡田利春

    岡田(利)委員 わが国は法律的には、先般二百海里法が、わが国でも暫定措置法がとられたわけですが、この十二条に明らかに定めてあるわけです。わが国は母川主義国であるということを対外的に宣言しておるし、法律的にもそうだ。非公式な態度としては、すでに非公式草案について、第六十六条の定めについてもわが国は賛成の態度をとっておる。このこともわが国は遡河性の魚種については母川主義国家であるということを宣言したもの、こう理解さるべきが当然だと思いますが、いかがですか。
  135. 中川一郎

    中川国務大臣 昨年の五月でございましたか、二百海里法を決めましたときにそういう国になったわけでございます
  136. 岡田利春

    岡田(利)委員 次に、日米加漁業条約について伺っておきたいと思います。  今回、規制区域の拡大が行なわれた。西経百七十五度以東は、サンフランシスコ平和条約両国関係改善以来、抑止線として、サケマスあるいはまたハリバットをわれわれは漁獲することができなかったというのが歴史的な経過であります。今回の改定で規制区域が拡大されましたけれども、昨年の実績に対して、今年この海域でとれるサケマスの量はどの程度でありますか。
  137. 中川一郎

    中川国務大臣 昨年までのラインからことし変わりましたラインの間でとっておったものは、昨年一万二千八百トン、ラインが引かれましたので一隻も入れなくなりましたから、この海域ではゼロということになるわけであります
  138. 岡田利春

    岡田(利)委員 そうではないのではないですか。規制区域の拡大によって、母船式で言えば二万四千トン程度の実績があった。これが大体一万トンになった。基地独航で言えば大体昨年の実績の二千トン減である、こういう理解が正しいのではないでしょうか。
  139. 森整治

    ○森(整)政府委員 東経百七十五度に十度西に動きまして、まだ米国の二百海里の中が残っております。それで、大臣が申されたのは、その線の移動によりまして、全体として一万二千八百トンなくなることになる。ただ、逆に、アメリカの二百海里内でまだ漁獲可能量がございまして、それは約六千トンとわれわれは見込んでおります。こういうことでございます
  140. 岡田利春

    岡田(利)委員 先ほど、松浦部長の説明では、公海アメリカ水域の三角水域、今回規制が外された地域ですね、四十四度以南、それから日本の二百海里、それぞれ数字を示されました。合計しますと三万三千二百トンになります。四万二千五百トンから差し引きますと九千三百トンという数字が残るわけです。したがって、九千三百トンというのはどこの海域からとる魚ですか。
  141. 中川一郎

    中川国務大臣 数字をちょっと御説明申し上げます。  わが国水域でとれますものが八千五百トンでございます。それから、二百海里、アメリカ水域の三角水域でとれるものが六千トン、こういうことですから、合わせて一万四千五百トン、したがって、公海部門からとれますものが、四万二千五百トンから一万四千五百トンを引きますと二万八千トンになります。  その公海とは、日米加漁業区域の頭と、それから、今回窓をあけてくれました百七十五度と約百七十度の間並びに四十四度以南、そして日本の二百海里、ソビエトの二百海里を除く公海部門、こういうことになりまして、九千三百トンというのはどれとどれを足したものかわかりませんが、そういうことになっております。  もっと詳しく言いますと、公海部門の二万八千トンを三つに分けまして、一つアメリカの二百海里の頭、ベーリング海のところでございますが、これが五千七百トン、それから、先ほど申し上げましたあけてくれました百七十五度と百七十度の間が一万二千三百トン、それから四十四度以南の公海において一万トン、これを合わせたものがたしか二万八千トンということになるわけでございます
  142. 岡田利春

    岡田(利)委員 先ほどの説明では、この四万二千五百トンのうちほとんどがソ連の河川を母川とする魚である、こういう説明でありますけれども、この九〇%ですか九九%ですか。     〔大坪委員長代理退席、委員長着席〕
  143. 中川一郎

    中川国務大臣 いま松浦部長がおりませんが、先ほどの答弁では約九八%、こう言っておりました。
  144. 岡田利春

    岡田(利)委員 北洋におけるサケマスの状態について初めて公式に発表されたと私は思うわけです。今回の交渉に当たってソ連側は、沖取りによってベニは八〇%、シロは七七%、そして未成熟の混獲が五〇%ある、こういう資料が示されたと聞いておりますが、本当ですか。
  145. 中川一郎

    中川国務大臣 総量につきましては、そういうことで大体意見の一致を見ておりますし、ベニ、シロについては壊滅的打撃を受けておる、具体的数字はいろいろ資料等がありますから、いろいろな数字がありますから、向こうの専門家の数字、こっちの専門家の数字、実績の数字等々がありますので、数字については五〇、六〇というお示しでございますが、後でまた松浦部長等に聞いてみますけれども、相当壊滅的にやられている、こういうことは言っておりました。
  146. 岡田利春

    岡田(利)委員 私は、今回のサケマス漁業交渉の結論というものは、いわゆる帰結すべくして帰結した結論であった、こういう感じがしてならないわけです。それはわが国のいわば新海洋法時代に対応する対応の仕方が非常に遅かった。特に四年前のベネズエラにおいてはミスター三海里として大変古典的な海洋政策にすがって世界の失笑を買った。その後も対応策がおくれて、そして日米加漁業条約については従来片務的な協定がさらに拡大された。その結果として、今回のように公海規制を、ソ連側としても当然わが国に要請をしてきた。したがって、結論として四万二千五百トン程度の沖取りの漁獲量協定せざるを得なかった、こういう一連のわが国のいままでの漁業政策の流れ、そういう対応の仕方が今回こういう結論に帰結せざるを得なかったのではないか。中川さんが行こうがだれが行こうがそういう帰結になったのではないかと思いますが、いかがですか。感想をお聞かせ願いたいと思うのです。
  147. 中川一郎

    中川国務大臣 二百海里時代を迎える以前から沖取りしておりますのは日本だけでございますから、世界じゅうから注目を浴びていろいろと非難をこうむっておった。二百海里時代を迎え、しかも遡河性サケマス公海における母川国主義というものが国際的に大体認識されるようになってから、関係のありますカナダアメリカもまたソビエトも、一斉に日本に向かって力を増して意見を申すようになったということであろうと思います。そういうことで、長い間のわが国操業に対する総決算としてことしは厳しい年であった、こう思います
  148. 岡田利春

    岡田(利)委員 きのう本会議中川農林大臣日ソ漁業協力条約が五カ年間の期限で協定された、裁判権の旗国主義が確保された、この点は成果である、こう述べておるわけです。そこで、五カ年の協定が結ばれて、先ほども質問がありましたけれども、たとえば豊漁年不漁年として、そういうことをベースにすれば、五千トン程度来年上積みにしてソ連側に要請できる根拠がある。きのうも何か農林水産委員会でそういう見解を表明されたようであります。しかし、前段に質問した経過から言えばそういう考え方自体が甘いのではないか。もちろん私は沖取りを来年すぐ禁止してくる、こうは判断しませんけれども、どれだけの時間がかかるか知りませんが、少なくとも沖取りは禁止の方向に向かって進んでいく、これが国際的な情勢である、こういう理解の上に立たなければならないのではないかと思うのですが、いかがですか。
  149. 中川一郎

    中川国務大臣 認識につきましてはいろいろございますからこれは否定できませんが、向こうはだんだん減らそうとした場合、ことしは豊漁年だから減らさなくてもいいんではないでしょうかというような、いろいろな議論ができる余地はあるのではないか、こういうふうに申し上げたわけでございます
  150. 岡田利春

    岡田(利)委員 昨年の二百海里時代におけるサケマス漁業協定協定内容と今回の協定内容で、新しく規制としてつけ加えられた点は何々ですか。
  151. 森整治

    ○森(整)政府委員 まず禁漁区がございます。それから若干でございますが、若干というのはおかしいですが、四八船、中型流し網につきましても船別のクォータが設けられた。ただ、これは譲渡できる、過不足を調整できるということだと思います。  それから、強いて申しますと、いわゆるB区域にはソ連漁船の監視船が入らなかったのですが、今回はA、Bがなくなりましたからそういう区別がない。逆に言いますと、ソ連監視船が入ってくるということに相なろうかと思います。その他いろいろ網目等若干違う面がありますが、あとは大体同じだと思います。あとは、大きな面はクォータが違っておる、こういうことでございます
  152. 岡田利春

    岡田(利)委員 今回の交渉規制として加えられたのは、公海の漁場の制限、魚種の割り当て、一隻当たりの割り当て、漁期、漁網、特に網の目、それにトン数から尾数、こういうことが加わった。そして取り締まりがA海域、B海域関係で旧来のB海域取り締まり方式が採用された、こういう内容だと思うのですが、これでよろしいですか。
  153. 森整治

    ○森(整)政府委員 そのとおりだと思います
  154. 岡田利春

    岡田(利)委員 そうしますと、今回の割り当ては四万二千五百トンで三千二百八十万匹でありますから、したがって、漁船の割り当てはトン数でいくのか尾数でいくのか、方針はいかがですか。
  155. 中川一郎

    中川国務大臣 全体もトン数と尾数だと思いますし、一隻当たりもトン数と尾数だと思います。ただ、交渉過程で一番問題になりましたのは、どの船もその船で頭打ちというのではなくして、とれる船もあればとれない船もあるということで、とれない船の分はとれた船に上増しをしてとれる、この辺が交渉の一番のポイントでございまして、最高限を決めたらそれ以上は持ってはならぬということでやろう、すなわちいままで全体としての枠であったのですが、全体の船が一隻当たりも頭打ちということになりますれば、これは非常に大変でございましたが、そういう船間の調整ができるという了解をとったということが交渉の非常な成果であったわけでございます。一隻当たりトン数、尾数だったと思いますが、正確なところは専門家からまた答弁させます
  156. 松浦昭

    ○松浦説明員 船別のトン数の制限につきましては、細目につきましてはまだ残った代表団の人たちが詰めておりまして、その電報がまだ入っておりませんので明確にはなっておりません。これは作業の部会において決めるつもりでございます
  157. 岡田利春

    岡田(利)委員 五月一日から出漁するわけですからわれわれも非常に関心を寄せておるわけです。しかし、ベニは百六十万匹、シロは四行三十万匹に規制をされておるわけでありますから、上下一〇%というのが今回の合意でありますから、こう考えていくと、結局尾数で割り当てせざるを得ないのではないかという感触を私は持つわけですが、いかがですか。
  158. 松浦昭

    ○松浦説明員 ベニザケとシロザケにつきまして今回一〇%のアローアンスは持っておりますが、いわゆる最高限度量と申しますか、さような制限ができたことは事実でございます。しかしながら、この船別のクォータは基地式独航船だけにつきましての船別のクォータでございまして、公海上に操業いたしますあらゆる漁船の総体の限度量が約束されたのみでございます。したがいまして、必ずしも船別クォータとそれから総体の漁獲量、総体の限度量との間にはつながりはございません。したがいまして、われわれは今後の運用に当たりましては、全体の漁船の運航状態、またその操業状態をにらみまして、この辺で限度量に達するなと思いましたときに私どもの方から、もう余りベニはとるなとかあるいはシロをとるな、こういうような指導をしている形でありまして、必ずしも両者は結びつかないかっこうになっておるわけでございます
  159. 岡田利春

    岡田(利)委員 全面共同取り締まり方式へ拡大されたわけですが、この場合、これは旧A海域全般に及ぶのかどうか。したがって、小型サケマス漁船も今回の共同取り締まり方式両国取り締まりを受ける、こう理解してよろしいですか。
  160. 松浦昭

    ○松浦説明員 共同取り締まり方式適用されますのは、先ほど大臣からも御答弁申し上げましたように、公海部分でございますわが国の二百海里及びアメリカの二百海里内はわが方の監視船がこれをコントロールするという形になります。したがいまして、お尋ねの小型太平洋の流し網につきましてでございますが、この中の以東船という分は公海操業いたしますので、これにつきましては共同管理方式のもとに日本ソ連とのコントロールを受ける、かようなことに相なる次第でございます
  161. 岡田利春

    岡田(利)委員 先ほども協力費の問題について質問が出ておりましたけれども、これは性格的に言うと、二百海里時代の国際漁業関係の用語から言えば、入漁料なんですか、それとも別な性質のものですか。いかがですか。
  162. 森整治

    ○森(整)政府委員 サケマスという遡河性魚種の特殊な性格を持つ漁業に伴います協力費ということで、入漁料とは関係ないというふうに理解をいたしております
  163. 岡田利春

    岡田(利)委員 先ほど大臣は、サケマス、遡河性と、こう言っておりますけれども、将来、高度回遊魚カツオ、マグロの場合にも、これは国際機構がつくられて漁業をする場合には、何らかの協力費ということも問題になる可能性があると私は思うわけです。そういう意味でサケマスのみに限定して物事を考えておくという考え方はいかが、こういう気持ちが私はあるわけであります。したがって、いま述べられた点からいうと、協力費とすれば、これは何もサケマス漁業者が負担をするという原則的なものではなくして、国が補償してもいいのではないですか。  まして、当初はソ連の河川の改修だとか、あるいはサケマスのふ化場の整備だとか、積極的にわが国から漁業協力についての提言をしていったわけであります。総額百億に上る提案をわが国はしたわけでありますから、そういう経過から考えれば、こだわるべき問題ではなくして、政治判断で協力費は決着をつけるべき問題だ。少なくとも、政府がこれに対してすべてを漁業者に負担をさせるという考え方については納得できないわけですが、もう一度見解を承っておきたいと思います
  164. 森整治

    ○森(整)政府委員 先生のお言葉を返すようですけれども、これは政府補償すべきだというふうには、むしろ理解しにくいのではないだろうかと思います。やはりサケマスのそういう特殊なもの、要するに母川国ソ連である、ソ連もお金を使っている、それについてやはりわれわれも協力すべきではないかと言われれば、そうかもしれないということで、そうすると、それをとる人の一つのコスト、経費として織り込むような性格のものではなかろうか。ただ、それを先ほどからいろいろ御指摘いただいておりますように、民間に全部しょわせるのは大変ではないか、いろいろ消費者の問題があるではないかとおっしゃれば、そのとおりでございまして、いろいろな観点からいまの業界の置かれているようなこと、そういうものからいろいろ政策的に判断をしていくということではなかろうかというふうに思います
  165. 岡田利春

    岡田(利)委員 昨年はA海域二万九千五百トン、B海域三万二千五百トンの割り当てでありました。今回、もちろんA海域、B海域が撤廃されたわけでありますが、したがって、四八以南の基地独航は母船式独航と競合する、こういう状況が生まれてくることはきわめて当然の理ではないかと思うわけです。したがって、一応旧来のA海域、B海域にこの四万二千五百トンを引き直せばどういう漁獲実績が今年見込まれるのか、承っておきたいと思います
  166. 森整治

    ○森(整)政府委員 そういうお考え一つのお考えであろうかと思います。いろいろ議論があるところでございますが、今回はもう出漁目前に迫っておりますから、ともかくお互いにそういうふうに思っておったわけでございますから、いままでの秩序はそのままにしまして、あと、その母船なら母船、中型は中型、それぞれの対応の仕方を減船の中で考えていくというふうに考えたいと思っております
  167. 岡田利春

    岡田(利)委員 そうしますと、母船式独航と四八基地独航、それから十トン未満の小型サケマス、この三つのグループに分けて、どのような漁獲の割り当て量になると考えられていますか。
  168. 松浦昭

    ○松浦説明員 まだ正式に漁獲割り当て量を指示してはおりませんが、大体の考え方を申し上げますと、まず日本海のはえなわにつきましては大体去年並み、それから日本海の流し網につきましても、これも日本の二百海里内で繰業いたしますので、大体去年並み、それから太平洋の小型につきましてもほぼ去年並みにいたしたいと思っております。  そうして、このような去年並みのクォータを与えます漁船に対する総クォータ量、これを四万二千五百トンから差し引いた分を母船式と四十八度以南の流し網の双方に、去年の実績に応じて配分をいたしたい、かように考えておりますので、母船式については大体一万五千トンちょっと、それから以南の流し網につきましては二万トンぐらいになるというふうに考えております。まだ正式に決めておりませんので、その点は丸い数字で御勘弁を願いたいと思います
  169. 岡田利春

    岡田(利)委員 減船について先ほど詳しい説明がないわけでありますけれども、しかし母船式が三船団になり、一船団分独航船は三船団に配置をする。そういたしますと、独航船は二百四十五隻あるわけであります。私どもは、すでに七十三隻ですかの減船割り当てというような承り方をしておるのですが、この点はどうか。四八流し網については、二百九十八隻があって八十九隻の減船。したがって、二百九隻が残るのですか、こういう割り当てがすでに提示をされておると聞いておるのですが、いかがですか。
  170. 松浦昭

    ○松浦説明員 お答えをいたします。  大臣が先般から申しておられますことは、三割程度の減船をしたいということを申し上げておったわけでございまして、わが方といたしましては、各業界に対しまして事前に大体三割程度ということで指導をいたしてまいりましたけれども、その数値がただいま先生のおっしゃいました数値になるわけでございます。しかしながら、私どもはまだ確定的な指示を出しておるわけではございません。特に四十八度以南の流し網につきましては、先ほども大臣からお話し申し上げましたように、大体三割という線でまとめていただきたいということで業界を指導しておるところでございまして、業界もその内部におきまして、さような指導のもとに討議を行っているという状態でございます。これは最終的には団体とよく話し合いまして決めたいというふうに考えております。  また、一方で問題がございますのは母船式でございまして、これは大臣も先ほど御答弁いたしましたように、二母船を厳守するだけではどうにもあの水域では操業がむずかしいのではないかということがございますので、目下、三にいたす場合も考慮しながら検討いたしている。その場合には、独航船の隻数が七十三という減にはちょっととどまり得ないんじゃないか。と申しますのは、一母船につきます独航船の数というものはある程度の制限がございますので、その点をよく考慮しながら、母船につく独航船減船考えていきたいというふうに考えておる次第でございます
  171. 岡田利春

    岡田(利)委員 今回の減船に伴う政府交付金及び共補償費、これは前回も融資をいたしておるわけでありますから、当然政府として、財政当局として、結論を出さなければならない問題であります。ぎりぎりぎっちょんの出漁を前にしてこれらの方針が明確でないということについては、減船話し合いについても重大な支障を来すことは常識であります。そういたしますと、財政当局は、今回の日ソサケマス漁業交渉の妥結に伴って、少なくとも政府交付金は昨年を下回ることはないことは当然だと思うのですね、一年間時間がたっているわけですから。共補償についても昨年の実績が当然ございますから、そういう意味では、財政当局は、少なくとも昨年を最低にして明確に金融措置をとると、こう私は理解をいたしておるわけですが、大蔵省から見解を承っておきたいと思います
  172. 古橋源六郎

    ○古橋説明員 お答えいたします。  今回の日ソサケマス漁業交渉の結果、減船を余儀なくされます漁業者に対します救済対策につきましては、第一義的にまず減船内容が決まりましてから農林省において御検討いただきまして、その結果をわれわれと御協議をいただくということになると思います。したがいまして、農林省からその金額等につきまして御協議いただきました段階において、その具体的内容についてわれわれとしては検討をしてまいりたい、こういうふうに考えております
  173. 岡田利春

    岡田(利)委員 一年足らずしての同じ問題でありますから、原則的な考え方は昨年を下回らないということは言えるのじゃないですか、いかがですか。
  174. 古橋源六郎

    ○古橋説明員 救済措置内容等につきましては、減船の規模であるとか、あるいはそれまでの準備したいろいろな出費であるとか、残存者の負担能力であるとか、今後の漁業に対する見通しであるとか、いろいろな問題がございます。昨年の例との均衡もございます。こういうようなことを考えまして、農林省において適切な措置を昨年に準じてとられるというふうに考えております
  175. 岡田利春

    岡田(利)委員 この点は先ほど大臣は、減船する共補償の分についても十分考えなければならない、こういう答弁をいたしておりますので、その点が上積みになって、昨年の例にならってこれは解決される、こう思いますが、大臣の答弁を聞いておきたいと思います
  176. 中川一郎

    中川国務大臣 申し上げましたように、昨年よりは共補償にいたしましても交付金にいたしましても厳しい情勢であるということでございまして、これから実態を積み上げた上で、大蔵省とも相談したいと思います
  177. 岡田利春

    岡田(利)委員 モスクワに、現在残っているのでしょうか、帰国したのでしょうか、大日本水産会の亀長さん、参議院議員でもあるわけですが、どういう資格で今回の交渉に参加をし、その後残って、どういう資格で一体残ったいろいろな問題について交渉しているのでしょうか。
  178. 中川一郎

    中川国務大臣 亀長さんは水産業界の代表として、先ほど申しました協力費等の問題もありますし、また民間の意向等を代表する方でもありますので御参画をいただきましたが、資格は、従来どおり、高碕さんも大日本水産会会長として参画をしたのと同じように御参画をいただき、そしていろいろ折衝をするに当たりまして相談をさせていただいた。なお、残りましたのは、今回の主目的ではありませんでしたが、懸案となっております民間による共同事業、特に貝殻島におけるコンブ、この問題も解決しようではないかということで残っていただいて話し合いをしていただき、きょうお帰りのようでございますが、結論は得ずに帰ってきたようではございますが、そういう資格とそういう目的を持って行っていただき、残っていただいたというわけであります
  179. 岡田利春

    岡田(利)委員 今後、日ソの広範な漁業協力関係というものが生まれてくると思うわけであります。したがって、政府はこの場合に大日本水産会を一本にして、日ソ関係については幅の広い漁業協力関係について認定をしていくといいますか、政府はこれを認めていくという方針なのか、いろいろなケースがあればそういう点を十分考えながら、そのケースケースごとにそういう協力関係について政府は認知をしていくという方針か、いずれか承っておきたいと思います
  180. 中川一郎

    中川国務大臣 大体、民間関係の代表の窓口は大日本水産会を考えていきたい、レアケースでも出てくれば別ですが、共同事業にしてもコンブについても、あるいは民間負担の問題にしても、大日本水産会にお願いをしたい、こう思っております
  181. 岡田利春

    岡田(利)委員 ソ連政府と民間との間に議定書締結された場合、これは大日本水産会以外に議定書締結された場合、これを認める方針ですか、いかがですか。
  182. 中川一郎

    中川国務大臣 民間代表であります日本水産会がソ連側との間に議定書になりますのか、あるいは書簡になるのか、いろいろ約束がされることは予想されます。その場合、内容によりまして承認するしないということになりまして、何でもかんでも決めたことは承認いたします。全権を与えて、すべておまえのことは正しい、こういうわけではございませんで、私が交渉に参りましても、もちろん請訓を得て、政府の了解をとりながら交渉をするのと同じように、やはり内容を見ながら、協議しながら承認をする、協力をしていく、こういうことになろうと思います
  183. 岡田利春

    岡田(利)委員 大日本水産会の場合はわかったのですけれども、大日本水産会以外の団体、会社、あるいは友好団体、これが向こう政府と正式に議定書を結び、政府が容認すればこれが実施に移される、こういう場合には、その内容を検討されて、政府としても認めるというお考え方がある、こう受け取ってよろしいのですか。
  184. 中川一郎

    中川国務大臣 その点もイシコフさんと話したところでございますが、民間の方やあるいは業界の方が直接お越しになっていろいろと話し合いがある、それも結構だけれども、そのように直接やられましたのでは、業界内部のバランスの問題等々がございますので、話し合うことは結構だけれども、わが方としては、業界全体のバランスをとるために、まとめ役としての窓口は大日本水産会にお願いしたい、こう申し上げましたら、それはそうだろうなということで、はっきりした返事はありませんが、そうだろうなという、こういうことでございました。
  185. 岡田利春

    岡田(利)委員 この点はひとつ、十分その内容等について検討されて対処されるように希望いたしておきます。  そこで私は、やはりわが国漁業政策というのは、一庁一つ業界でありますから、したがって、ともすれば政府業界の癒着の問題というのがどうも傾向としてあるのではないか、こんな感じがふだん非常にいたしておるわけであります。これはきょうの議論の対象にはならないわけでありますけれども、そういう意味で、やはり水産行政がもう少しすっきりしていかなければならない。たとえば先ほど大臣は、オッタートロール、これは資源的に言えば、気持ちとしては余り好ましくない、こういう答弁を述べられた、ところが全部百二十四トン型で、きわめて小さいトロールなんですね。ところが韓国の場合には二千トン、場合によっては三千トン、四千トンのトロール船が来てやっているということなんですから、そういう考え方に立てば問題の解決の方向というものはおのずから明確ではないか、こういう点についても十分問題を整理をされて、水産庁として一つ一つ問題を解決していく、こういう真摯な姿勢を私は特にこの機会に要望いたしておきたいと思います。  そこで、時間がありませんので、今次サケマス漁業交渉を終わり、今後五カ年間の協力協定が結ばれた、私はそういう中で、特にサケマスの水産基地の救済対策という問題についてこれから検討しなければならぬのではないか、こういう気がします。  これは私から問題を提起をしてみたいと思うのですが、一つには、北洋サケマス漁業の再編成を検討すべきではないか、言うなれば、母船式を廃止をして基地独航に統一をしていくような方向、一遍にできないかもわかりませんけれども、そういう方向も検討する必要があるのではないか、単にサケマス漁業減船をして、しっ放しというのではなくして、サケマス漁業の協業化を推進をする、そういうことも重要ではないか、いわゆる二人が一人の船を動かす、そういうことも必要ではないのか、もちろん定置についても、いま更新時期に入りますから、そういう協業化の方向はもう一つの流れであるという認識をすべきではないのか、水産加工及び関連業界の転換策をもう一歩強化をすべきではないのか、サケマスの養殖事業は、大臣はよく飛躍的にと、こう言いますが、裏づけを持って目標を定めて飛躍的にやるべきではないか、たとえば十カ年計画を直ちに策定すべきではないか、そうして三倍ないし四倍ぐらいの養殖事業を手をつけていく、十年後にはこれを達成する、そうむずかしいことではないでしょう、大体三千万匹から四千万匹ですから。二年前には北海道だけで、非公式でありますけれども、一千七百万匹の魚が揚がっているのですから、それを三千万匹ぐらいにするのはそうむずかしいことではないと思う。したがって、そういう十カ年計画を策定をして、海中飼育も考え、回帰率をアップする、それから未成熟の魚の混獲防止、これはまず定置でやれば全部ひっかかるわけでありますから、そういう点も検討して資源を増殖をしていくという計画に直ちに着手すべきだ、そういう立場に立って基地の振興対策を考えるべきだ、こう私は思うのですが、この点について大臣の見解を承っておきたいと思います
  186. 中川一郎

    中川国務大臣 まず母船式をやめたらどうかということでございますが、漁業の位置、そしてまた、母船式といってもやはり小さい独航船をベースにしてやっておる問題でございますので、にわかにこれをやめるかどうかということについては工夫をしなければならぬところがあろうと思います。  それから、四八船、中部流し網の協業化、これは私は前向きにやるべきだろうと思いますが、今回も減船するに当たりましてそういった方向が出てくるらしい、業界みずからもそういう空気もありますので、その線に沿って処置をしていきたい。  定置の再編成ということは、これはまた大きな問題でございますので、道庁が第一義的でございますから、道庁等とも相談をしてまいりたい。  サケマスの増養殖につきましては、いま五カ年計画を持っております。この五カ年計画を着実に実行するように、また、できれば改定する等の措置も講じて、これは本当に前向きにやって、母川国としての地位をしっかりしていく、こういう努力をしていきたい、こう思うわけでございます
  187. 岡田利春

    岡田(利)委員 先ほど大臣が述べられたように、もしわが国の河川にサケマスが三倍に大挙してくると、大体九万トンですね。いま三万トンですから、三倍になれば沖取りよりも六万トンというサケが帰ってくるわけです。そういう点で、新十カ年計画を直ちに着手するのが私は当然であると思いますので、大臣の検討を特に期待をしておきたいと思います。  そこで、時間がありませんから四つの点について述べて、私は見解を承って終わりたいと思うのですが、一つは、コンブの問題については、入漁料の問題で話し合いがつかぬということで亀長さんが帰ってくるようであります。それが当方は一隻当たり十万円、ソ連側は三十万というのですか、その折り合いがつかないために協定に至らないで帰ってこられると承っておるわけですが、その内容はどうかという点が第一点であります。  第二点は、着底トロールの問題がしばしば問題になって、昨年の協定の場合に双方の認識の相違というものがあらわれてきた。この点は、当然今回この問題について話し合いがなされておると思うが、どういう解決になっておるかというのが第二点でありまます。  第三の問題は、根室市における替え玉漁船の問題が問題になっておる。第二十一金亀丸というのですか、九トン未満の船が三十トンの替え玉で刺し網に行ったという問題が出ている。だがこれは率直に言うと、船で言えば全部問題があるわけですよ。たとえば十トン未満だってはかれば十トン以上というのが、遺憾ながら常識なんですから。そうしますと、全体で共同取り締まり対象になってくると非常に問題が出てくる。この点の対策は一体どう考えておられるか。  最後に、昨年の四月、五月、政府は、漁業交渉のため後から考えるから休めと言って、釧路の沖合い底引き船は千島海域に出漁するのを見合わした。それが最後は御承知のように融資で終わってしまった。乗組員は給与を、これは金を借りておったわけです。これが融資だったものですから、船主は船員に対してあくまでも貸し金だといって払わない。  こういう問題を依然として、二百海里の後遺症として残しておるのは私は非常に遺憾だと思うのです。速やかに解決すべきだと思うのですが、この四点について見解を承って質問を終わりたいと思います
  188. 中川一郎

    中川国務大臣 コンブにつきましては、一隻当たり十万、三十万の開きにやや近いのだとは思いますが、総漁獲量の一五%ほど欲しい、わが方としては五%ぐらいではなかろうか、この点もイシコフさんに、あそこに働きます漁民は本当に零細な人で家族労働で奥さんまで出てやる人でございますから余り厳しいことを言わないでください、よくお願いしてまいりまして、よくわかった、こういうことでございましたが、残念ながら話し合いがついておりません。しかし今後こちらにおいて、六月操業までに引き続いて話し合うということになっておりますので、さらにこの話し合いを進めて妥結に至りたいものだ、こう思っております。  着底トロールにつきましては、解決したという報告は来ておりますが、内容については事務当局より答弁をさせます。  それから替え玉漁船につきましては、そういうお化けのような大きなものがあってはなりませんから、しっかりしたものになるように厳重に指導してまいりたいと思います。  また、沖合い底引きの融資で問題が残っておるということでございますが、この点は事務当局より答弁をさせます
  189. 森整治

    ○森(整)政府委員 着底トロールの問題は、着底トロールを禁止しないで済むような形で合意に達しました。  それから、一番最後の根室の関係のお話につきましては、これは休漁をわれわれとしても指導したわけでございますが、一応融資の形で借りかえでつないできておる問題だと思います。まあこれにつきましては当時のいろいろな事情からやむを得なかったものでございまして、今後の経営状況を見ながら、どういうふうにするかということにつきましてはなお考えさしていただきたいと思います
  190. 岡田利春

    岡田(利)委員 最後の問題ですが、これは水産庁の見解を私も伺って、最後まで問題が残ったわけです。それをみんな一緒くたにして融資でもって処置をした、その結果の後遺症として、給与を一応仮払いしておったのが貸付金になって、返済しなければならぬということで、漁船員だけにしわ寄せが行っておるわけです。これは水産庁の見解の責任なんですよ。私はその過程において水産庁の見解を聞いておりますからね。ぜひこういう後遺症は解決してほしい。ここだけの問題で、ほかには影響がないのです。釧路の底引き船だけです。千島海域操業できなかったわけです。しかも、前浜の関係は沿岸漁民とトラブルを起こしてはいかぬから出漁してはならない、後については交渉が終わってから考える、こう言ってとめたのですから、ぜひこの問題は行政指導なり、いずれにしても、問題は漁船員の賃金が保証されるように、賃金が支払われるように解決を私は強く要望しておきたいと思います。  時間がありませんので、残念ながらこの程度できょうは終わります
  191. 永田亮一

    永田委員長 午後一時四十分から委員会を再開することとし、この際、暫時休憩いたします。     午後一時二十七分休憩      ————◇—————     午後一時四十四分開議
  192. 永田亮一

    永田委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  質疑を続行いたします中川嘉美君。
  193. 中川嘉美

    中川(嘉)委員 今回の日ソ漁業協定並びに議定書に関する質問に先立ちまして、これは漁業問題にも関連いたしますので、一点だけ大臣にまず伺っておきたいと思います。  ソ連滞在中に、先方から日ソ善隣友好協力条約あるいは日ソ平和条約、さらには北方領土問題、これらに関する話し合いがあったかどうか。もし出たとするならば、これらの問題に対するソ連側の主張に対して、大臣はどのような感触で受けとめられたのか、この点について伺いたいと思います
  194. 中川一郎

    中川国務大臣 今度ソビエトに参りましてお会いしました方は、イシコフ漁業相とコスイギン首相のお二人でございます。イシコフ漁業相との間には、日ソ友好というような言葉はありましたが、条約とか、その他平和、四つの島等の議論は一切ありませんでした。帰る前の日でございましたか、コスイギン首相に表敬する機会を得まして、お話し合いをさせていただきました。その際、向こう側から、それに関連したものとしては、わが国とあなたの国とは非常にいい関係にある、何の問題もない、さらにこれをよりよくするために、差し上げてある条約、これは善隣協力条約だと思いますが、これを検討して、もっといい関係にしようではないかと、帰りましたら福田首相にお伝えをいただきたいと、こういう趣旨のお話がございました。そこで私の方から、その点につきましては、わが国としては四つの島の問題があり、これと関連して平和条約という問題があります。この点は閣下の御理解をいただきたいところでございます。でありますが、せっかくのお話でありますから、福田総理によくお伝えいたしますと、こう申し上げたわけでございます。それに対してコスイギン首相から、先ほど理解をしてくれという話であったが、私の方からも理解してくれと重ねて申し上げておきますと、こういうことで一般的なお話に入ったということでございまして、それ以上のものもありませんし、それ以下のものもない、こういうわけでございます
  195. 中川嘉美

    中川(嘉)委員 帰国されて総理に当然御報告をされたかと思いますが、簡単で結構でございますが、総理としてはそういう報告に対してどのような意思を表明されたか、お答えをいただきたいと思います
  196. 中川一郎

    中川国務大臣 総理には、一々詳細そのほかのことも御報告申し上げましたが、そうであったかと、聞くにとどまった、こういうことでございます
  197. 中川嘉美

    中川(嘉)委員 それではまず日ソ漁業の方から伺ってまいりたいと思いますが、日ソ漁業交渉が今日まで両国間で毎年繰り返されてきたわけでありますけれども、今回の対ソ交渉を通じて、北洋のサケマス漁業の先細り、これはもう現実のものとなったのではないかと思います。もはや一年ごとの交渉というものは、その成果を評価する時代ではなくなったと言っても過言ではないわけであります。そこで私は、漁業分野における長期的協力関係の実現ということを日ソ両国が真剣に考える必要に迫られているのではないか、このように考えますが、大臣の御見解を承っておきたいと思います
  198. 中川一郎

    中川国務大臣 まさにそのとおりでございまして、二百海里の時代、遡河性サケマス漁業母川国主義の問題、これを契機として、やはり資源問題というのは双方でよく話し合って、長期的に資源が守られるように、両国漁業が振興するようによく考えるべき時期に来ている、こう思う次第であります
  199. 中川嘉美

    中川(嘉)委員 今後わが国がこの漁業交渉を少しでも有利に展開をするためには、その交渉力そのものを強化していくことが必要ではないか。そのためにも、まず日ソ漁業関係について長期的な漁業ルール、こういったものを確立をして、双方の信頼関係を再構築することが当面の課題ではないか、このように考えますが、この点はいかがでしょうか。
  200. 中川一郎

    中川国務大臣 まさにそのとおりだと思うのでございまして、今度協力協定によって五年間そういった問題について話し合っていこう、しかも五年で打ちどめではありませんで、どちらからか破棄をしなければ毎年継続してこの協定が効力を発する、その中において、議定書において、サケマスはどう処理していくか、十分話し合って決めていこうということでございますから、ルールとしては非常にいいものができた、こう思います
  201. 中川嘉美

    中川(嘉)委員 この説明書の二ページのところですが、数行ですので念のためにちょっと読んでみますが、この二行目のところに、「ソ連側は、当初より、母川国たるソ連邦が、溯(さく)河性魚類に対する主権的権利を有するとの立場から、さけます資源の保護のためとして、さけますの沖合漁獲の全面抑止を主張したが、我が国は、さけます漁業は我が国の伝統的な漁業であって極めて重要な位置を占めていることを指摘して、さけます漁業の円滑な操業の継続につきソ連側の再考を強く求めた結果、ソ連側は、日本の経済的、社会的困難をも考慮して本年については我が国のさけます漁獲をこの協定に基づき締結される議定書により認める用意があるとの姿勢を示した。ソ連側は、当初、漁獲量操業水域、取締措置漁期等の問題につき厳しい条件を提示したが、その後これらの諸問題をめぐる交渉は実務的雰(ふん)囲気の下に行われ、ここに相互にとり受諾可能な解決が見い出された。」こういうところがあるわけです。あえて私ここを読んだわけですけれども、こういったごく簡単な形でここに説明書きがされているわけですけれども、このときの交渉場面といいますか、交渉の模様、どんなやりとりとまでは申しませんけれども、いま少し大臣から具体的に、どんな模様であったのか、御説明をいただければありがたいと思います
  202. 中川一郎

    中川国務大臣 御承知のように、わが方は、松原ソビエトにおけるわが国の公使、この人を団長とし、実務者であります松浦漁業部長等、そのほかに顧問団、民間等の代表、向こうはクドリャフツェフ次官を団長として交渉を持っておったようでございます。そして二月中旬から交渉しておりました。その当初の交渉の段階では、沖取りは差し控える、ソビエト語でございますから、通訳等によっては全面禁止というような、とにかくやめろということが原則である、こういう中に話し合いが進められておったのでありますが、松浦部長が帰る直前であったと思いますが、社会的混乱を起こしてはならないので、ことしは操業していいということが、まず交渉段階で出てまいりました。その後四月に入りまして、私の代理としての農林省顧問内村さんに交渉をお願いいたしました。その結果、ことしは三万五千五百トン、そして三角水域は全面的に閉鎖する、こういうことになっておったわけでございます。  その後私が四月十一日に参りまして、十二日から会談に入ったわけでございます。わが方からはわが方の考え方を申し上げておきましたところ、二日ぐらいたってからだと思いますが、いろいろ検討した結果、水域については窓口をあけることにする、また漁獲量については四万ないし四万一千トン、その辺は定かではありませんでした。こういった水域ならば四万一千トンとれるのじゃないか、あるいは四万トンかなというようないきさつがありまして、それではわが国漁業が混乱に陥るので、何としてでももう少し漁獲量もまた水域も広げていただきたい。そのほか、その過程において取り締まりの問題で母川国主義をどうするこうするという議論があったり、あるいは漁期の問題等も話し合いましたが、それぞれ解決をしてまいりまして、最終的に漁獲量は四万二千五百トンまでまいりました。  そこまで全部解決したのでありますが、最終的に残りましたのは、漁区をもっとどうにかならないかということで、ずいぶん時間をかけ回数をかけまして議論をいたしましたが、どうしてもイシコフさんとしては、縦に張ったこの海域をあけたのであるから、東から流れてくるサケマスはここで遮断をされる、よって南から北に上りますこの三角水域の残った部分は緩和することはできないということで、平行線をたどり、ついにわが方も、ただ期間を過ぎますと出漁にも影響があるということから判断をいたし、最終妥結を見るに至った。  そこで、御指摘の点は、ことしだけやらせることかということだろうと思いますが、総合的に判断をして、新しい時代の新しい協定というものの初年度でございまして、いろいろ議論をした結果でありますが、ことしだけのものではありますけれども、五年間以上のお約束をした第一年目でこれだけのことができたということは、今後資源の問題あるいは操業等について重大な変化がない限り、これだけのものはまずまず確保できるものであろう、こう期待もし確信もしております。もちろん交渉事でございますから、相手が来年以後もこれでいくということは言っておりません。毎年毎年話し合いで決めますけれども、そういけるものと確信をしておるわけでございます
  203. 中川嘉美

    中川(嘉)委員 このことに関連をして伺いますが、ソ連が今回強く打ち出している母川国主義の主張というものは今後一層強めてくるであろう、こういうように考えるわけですが、政府としてはこれにどのように対処していくお考えであるか。午前中からもいろいろと論議されているようですけれども、この点が第一点。  それから、北洋漁業におけるわが国の伝統的実績というものをソ連側は無視しようとしているのではないか、この点に対するお考えというものはどうか。ソ連側としては、サケマスの沖取り禁止の実現を急ぐ余りに、これに執着しているわけですけれども、先ほどの御答弁にもありました、要するに経済的、社会的混乱をもたらすような急激な変化というものをわが国に及ぼすということ、これは日ソ両国間の友好親善関係の基本に悪影響を与えかねない、このように思うわけですけれども、これらの点についてソ連側がどのように考えているのか、伺っておきたいと思います
  204. 中川一郎

    中川国務大臣 向こうわが国の伝統的な北洋漁業サケマス漁業に対して、社会的、経済的混乱を起こしてはならないというところからあの程度の調整を図った、こういう趣旨の話が全体の流れとしてございます。  これに対して、せっかくではございますけれども、この程度ではわが国にとりましては社会的、経済的混乱が起きるのです。だから何とかもう少し緩和をしてもらいたい、こう申したのに対して、実はわが国もこういった新しい二百海里時代を迎えて、EC等において厳しい規制を受け、皆無の状態になって、わが国わが国なりの苦しさを持っております。こういう時代はともに苦しまなければならないと思います。こういうことで、わが方を理解しつつも、自分の方の厳しさも訴えながら、あの程度が一番適当である、こういう向こうの判断であったわけでございます
  205. 中川嘉美

    中川(嘉)委員 母川国主義の主張が今後一層強まってくるであろう、このことに対してはどうでしょうか。
  206. 中川一郎

    中川国務大臣 母川国主義の主張というのははっきりしたわけで、公海上における遡河性サケマスソ連の管轄下にある、これはもうはっきりして、これ以上のものはないわけでございます。これに対してどの程度厳しくやっていくか、これをどう実効あらしめるかということが残っておるわけでございますが、いま申し上げましたようにそういった現実、すなわち、遡河性サケマスソビエトの管轄下にあるんだという中に五年間の協力協定を結んだわけでございますし、サケマスのとり方については毎年話し合っていくということでございます。したがいまして、こういった時代に入るに当たりまして、長期協定を結ぶに当たりまして、初年度としてこれぐらいはいいだろうとお互いに合意を見たところでございますので、二年目、三年目、四年目といえどもそう大きな変化はないのではないか。と申しますのは、資源その他からずいぶん話し合った結果でございますので、今後、資源がさらに変わってくるとか、操業について異常なことが起きるとかいうような変わった変化があれば別でございますが、ここ当分変わった変化がないとすればこの程度のことは続けられるもの、こう判断いたしておるわけであります
  207. 中川嘉美

    中川(嘉)委員 漁獲量等が今日のような姿になってきたことに対しては、いまここで云々するわけにはいかない状態かと思いますが、ただいまの御答弁の範囲といいますか、御答弁をさらに後退させるというようなことがないように、ひとつ今後も強力に働きかけていただきたい、こう思うわけです。  今回のこの日ソ漁業交渉を通じて、ソ連側は、日本漁船が割り当て量を超えるサケマス漁獲を行っているという疑念を抱いているようですけれども、こういったことに対して今日までの実態はどうだったのか、ソ連側の疑念というものは解消し得たのかどうか、これらの点はいかがでしょうか。
  208. 中川一郎

    中川国務大臣 わが国操業が過去の実績において割り当て量をオーバーしているんではないか、このことについてソビエトの反応はどうであったかということでございますが、総漁獲量については、たしかいままで一割の上下のアローアンスがあった、わが国としてはそのアローアンスをそれほど大きく上回った操業はないと理解しておりますが、世上いろいろ言われております。しかし、ソビエト側からそのようなことがあるというような指摘は全くございませんで、要は、これからの資源が大事である、ソビエトへ帰ってくるべき公海上あるいは他の二百海里内の水域サケマスについても大切にしなければならぬ、この点に議論が集中されたのでありまして、漁獲量オーバーの問題が話し合いの話題となって議論されたことはございませんでした。
  209. 中川嘉美

    中川(嘉)委員 このサケマスの沖取り漁業の先細りないしは国際規制の強化への将来ということを考えますと、これに対応するあり方というものを考えて、資源保存に対する対日不信の解消を図るということが急務ではないだろうか、このように考えるわけですが、そのためにも漁業資源の増殖にわが国はどのような役割りを果たしていこうとするのか、この点政府はどのように考えておられるか、伺いたいと思います
  210. 中川一郎

    中川国務大臣 わが国は沖取りもいたしておりますが、母川国でもあるわけでございます。したがいまして、わが国に帰ってくる資源を大切に育て、増養殖等の仕事をどんどんとやっていくということは一つには必要でございます。またいま公海上沖取りをいたしておりますもの全体がソビエトサケマス中心でございます。したがいまして、今回もソビエトの河川におけるふ化養殖等について協力をした上で資源を守りたい、こういう主張でありましたが、ふ化場等については、まだ話し合いの段階で実現には至っておらない。  ただ、今度協力いたしました四・五%、民間を中心に出しますものではありますが、この程度のことで資源が確保されたとは言い得るものではない。でありますが、これはかなりの効果があるだろう、こう思っております。  もう一つは、やはりとり方について資源を大切にする、こういう基本的な考え方は、日本側においても姿勢として示す必要があるだろう、この点は向こうも十分監視していきたい、こう言っておりましたから、言われるまでもなくわが国としてもそういうふうにしていかなければならないと思っております
  211. 中川嘉美

    中川(嘉)委員 時間の関係もございますので次へ進みます。  今後の日ソ漁業関係ではコンブ漁、これが残されているわけで、大日本水産会の亀長会長が現在もソ連に滞在してコンブ漁の再開、これについて交渉中のようですけれども、再開の見通しはどんなものなのか。けさの報道によりますと、ソ連側は従来の六倍からの入漁料、これを要求しているようですけれども、ことしの漁期に間に合うのかどうか、この辺はいかがでしょうか。
  212. 中川一郎

    中川国務大臣 基本的な話し合いは、イシコフさんと私との間でも出まして、問題は大日本水産会を民間の代表として担当者と話し合おうということで亀長会長が残ったわけでございます。残りましてからお話し合いを続け、先ほど帰ってまいりまして御報告を受けましたが、入漁料についてまだ折り合いがつかなかった。そこで、この話し合い操業が始まります六月までの間に継続して話し合うということで、まだ決着を得ておりませんが、話し合いがつかなかったというわけでもありませんで、今後に期待をかけ、折衝いたしてまいりたい、こういうわけであります
  213. 中川嘉美

    中川(嘉)委員 北洋における日ソ共同漁獲ですね、これに関してわが国ソ連側にどのような提案を行っているのか。カニとかエビの共同漁獲についてソ連側は前向きの姿勢を示しているんだというふうに聞いていますが、サケとかマス、あるいはスケトウダラ等の共同漁獲についてのソ連側の態度はどんなものであるか、この点はいかがでしょうか。
  214. 中川一郎

    中川国務大臣 この共同事業も実は民間の問題であって政府間の問題ではないわけでございます。ところが、今度の交渉過程におきましてイシコフ漁業相から、日本のいろいろな団体、企業から共同事業をやろうと言ってきておるが、政府考え方はいかがであるか、こう話がありましたので、共同事業については二つ問題があろうと存じます一つは、このことによって政府間で話し合っております八十五万トン、これにどういう影響を与えるのか、これもすべて共同事業でやろうというようなことになっては大変なことでございますので、その点をひとつ心配いたしております。もう一つは、ソビエトと団体あるいは企業との間に直接取引されますと、わが国業界のバランスがとれなくなるという問題があります。こう申し上げたに対して、イシコフさんから、第一番目の、八十五万トン、日ソ政府間で話し合ったものには絶対影響を与えない、これは全然関係ありません。特に関係のない証拠とも言うべきでしょうか、クォータと関係のないエビとかカニというようなものについて話し合いたい。でありますから、その点は心配がありません。第二番の問題については、確かにそうでしょうなということで、私の方から、個々に折衝することはいいけれども、最終的窓口は大日本水産会において調整をして最終決着をする、こうしてはいかがですかと言ったら、それは結構な方法でしょうねということで、今回コンブの話と同時に、共同事業についても亀長さんがその話を受けて、話し合いをされて帰ってこられた。かなり前向きでお話をしておるようですが、今後、業界内部で話し合いをして、また最終決着をつけるための話し合いをしたい、こういうことになっておるわけであります
  215. 中川嘉美

    中川(嘉)委員 次の日米加の方にも移らなければなりませんので、いまのこの御答弁、こういった漁業に対する配慮というものはもちろんですけれども、先ほど来のサケマスの沖取りですね、この先細りとかあるいは国際規制の強化という将来を考えて、わが国としてこれらの変化に十分対応し得るような努力というものを政府がさらに払われんことを、強くこの際大臣に要望をいたしまして、次の日米加の方に移っていきたい、このように思います。  北太平洋サケマス漁業については、わが国日米加漁業条約に基づいて昭和二十八年以降実施されてきたわけですけれども、この条約を改正する理由の主な点はどういうところであるか。  また、議定書の成立経緯に関連して伺いますけれども、北太平洋漁業国際委員会の存続または類似の機能を果たすべき新委員会の設立とありますけれども、この新委員会の構成はどのようなものになる見込みなのか、どんな形のものが予想されているのか、この辺についてもお答えをいただきたいと思います
  216. 北村汎

    ○北村説明員 現行北太平洋公海漁業に関する国際条約は、いま御指摘のとおり一九五三年にできたものでございます。それから、おととしの四月になりましてアメリカで米国の漁業保存管理法、いわゆる二百海里法というのが成立したわけでございます。施行は去年の三月一日からでございます。  そこで、その法律の中に、この法律と不一致のあるような国際条約というものは再交渉するかあるいはそういうものから脱退しなければならぬということが書いてございまして、そこで、アメリカは去年の二月十日に現行条約を終了させるという意思をカナダ日本の方に対して通告してまいりました。同時に、これは通告後一年間有効でございますので、その間に再交渉しようということを提案してきたわけでございます。  他方、わが国から申しますと、やはりこの北太平洋におけるサケ漁業の安定的な操業というものを確保しなければなりませんし、そのためには北太平洋漁業国際委員会というものがいままで二十五年間果たしてきた役割りというものはやはりわれわれとしても高く評価しておるところでございます。そこで、この条約がなくなってしまいまして不安定な状態になるよりは、これを存続させて、また必要な改正を加えて安定的な操業を確保した方がわが国益に合致するという判断をいたしまして交渉に応じたわけでございます。  その交渉を四回やりました。やっときのう署名されたわけでございますが、先ほど御質問の、新しくできる委員会というものの構成につきましては、今度の改定議定書の二条に詳しく書いてございますが、これは三つの国、すなわち日米加の三つの国の委員部から成り立っておりまして、それぞれ四人の委員を出して、その委員が三つの国の委員部を構成して、そしてすべてこれは全会一致で事を決めていく、こういう構成になっております
  217. 中川嘉美

    中川(嘉)委員 四回にわたってこの改正のための交渉を行ったということですが、その交渉経緯といいますか、米国、カナダ日本の対立点ですね、それはどんな点であったのか、米国、カナダ側の主張に対する日本側の対応はどうであったのか、この辺のところを御説明をいただきたいと思います
  218. 北村汎

    ○北村説明員 交渉中非常に大きな問題点となりましたのは二つございまして、一つは、やはり操業区域の問題でございます。それからもう一つは、取り締まり裁判管轄権、こういうことでございます。  そこで、操業区域の点につきましては、現行条約は西経百七十五度という線をもって、これはサケマスに限ったわけではありません、オヒョウ、ニシンその他についても適用されておるわけですが、これに対して、いわゆる自発的な抑止ラインということで日本は自発的にそれより以東では操業しないということであったわけですが、二百海里時代に入りまして、しかも遡河性魚種については母川国主義というものが国際的に認められるようになったために、アメリカ側はこの線を、交渉の当初、非常に西に移してくる提案をいたしました。これではとうてい日本サケマス漁業は存続し得ないというわれわれの判断で、鋭意交渉いたしまして、現在のように東経百七十五度、すなわち、現行よりは十度西に移るというところでまとめたわけでございます。  もっとも、その北のベーリング海の部分における公海は、当初アメリカはこれを閉じるということを言ったのでございますけれども、これも開かせましたし、その他いろいろ規制制限はありますものの、日本サケマス漁業の安定的な操業を確保するという見地で交渉いたしました。  もう一つ取り締まりの点については、当初アメリカ側は二百海里外においても裁判権を行使する、いわゆる沿岸国と申しますか、母川国の管権権があるんだという主張をいたしたのでありますが、これに対しては、わが方は非常に強く反発いたしまして、二百海里の中は国内法、それぞれの沿岸国管轄権に服するが、その外においては、裁判権は旗国主義、取り締まりは共同でやる、こういうことでおさめたわけでございます
  219. 中川嘉美

    中川(嘉)委員 結局わが国は、米国とかカナダ側にこういうことで押し切られたと考えざるを得ないわけですけれども、従来に比べて大幅な譲歩もやむを得なかったのかどうか。  もう一つは、このように米国、カナダに大幅に譲歩したことが、日ソ漁業交渉ソ連側が必要以上に圧力をかけてきたというように考えられないかどうか、政府の見解をこの際伺っておきたいと思います
  220. 加藤吉弥

    ○加藤説明員 お答えいたします。  アメリカ側の非常に厳しい条件日ソ交渉に影響しなかったとは申せません。確かに、アメリカの態度というのは日ソ交渉にも反映したということは事実でございます。しかし、これは単にアメリカということではなくて、二百海里に基づく新しい時代の厳しさ、資源問題の厳しさ、そういうものであったと考えております。  他方、裁判管轄権というわが国の国民の非常に重大な権利の問題につきましては、日米交渉におきまして裁判管轄権旗国主義という原則が認められた、この点が日ソ交渉に反映いたしまして日ソの間でも同じような原則が採用された、かような面があることを指摘したいと思います
  221. 中川嘉美

    中川(嘉)委員 このサケマスのような遡河性魚種について、公海上のものであっても母川国管轄権を有する母川国主義にはいまや対抗できないのかどうか、この母川国主義に対する政府の認識及び所見について伺ってまいりたいと思います。この点をまず先にお答えをいただきます
  222. 加藤吉弥

    ○加藤説明員 母川国主義という原則はいまや国際的な原則となっていると申し上げてよろしいかと思います。海洋法の統一草案におきましては、母川国主義という原則がすでに打ち出されております。この草案はもちろんいまだ採択されてはおりませんけれども、多くの国がそれを支持するということはいまや明らかでございます。ちなみにソ連は一昨年の十二月十日の幹部会令におきまして、ソ連邦を起源とする遡河性魚種の全回遊域における主権的権利というものを主張しておりまして、かつわが国も、漁業水域に関する暫定措置法におきまして遡河性魚種の全回遊水域における管理の権利を持つ、そういう見地に立って物事に対処するという原則を打ち出しております。かように日ソ、さらには米国におきましてもこのような原則が認められている以上、母川国主義というのはいまや国際的な大勢である、かように申し上げて差し支えないかと思います
  223. 中川嘉美

    中川(嘉)委員 第四条で、遡河性魚種以外について取り扱う国際機関の設立ということを規定しておりますけれども、この国際機関設立の目的はどういうものか、どのような機関になるのか、この点をお答えいただきたいと思います
  224. 北村汎

    ○北村説明員 この四条で規定しております河性以外の魚種の問題は、いままで現行条約におきましては北太平洋漁業委員会というものはサケマスに限らずすべての魚種、すべてと申しますか、規制対象になるいろいろな魚種について、いろいろな情報の交換あるいは管理その他いろいろな勧告をする権限を持っておったわけでございますが、今度の条約は、二百海里時代に入りましてほとんどの魚種というものは二百海里の中での問題になりましたが、しかしそれでも二百海里外における遡河性以外の魚種についても科学的な情報を交換し分析する、そういう場をこの委員会が提供するということはやはり漁業の安定操業に役立つということでございまして、将来多数国間でこのような機関ができるならば、それに基づいて委員会の機能は終了するけれども、それまでの間はこの委員会で取り扱っていこう、こういう趣旨でございます
  225. 中川嘉美

    中川(嘉)委員 時間がありませんので、まとめて最後にお聞きしたいと思います。  第六条で、この締約国以外の漁船に対する措置について規定されておりますが、韓国漁船とかあるいは中国漁船等がこの水域操業した場合どのように対応し措置するのか。締約国以外の漁船による今日までの操業の実態はどのようなものであったのか、あわせて伺いたいと思います。これが第一点。  それから、二百海里時代における世界の大勢というものは漁業規制の段階に入りつつあって、公海といえども年々厳しい環境に置かれているわけでありますけれども、北洋水域での安定した漁業秩序というものを確立するためにも、共同漁獲などを含めた関係国間の調整機関とか、あるいは日本、米国、カナダソ連、これらの協議機関というものをつくって、長期にわたる漁業資源保存とか、あるいは利用というものを考える時期ではないだろうか、このように思いますが、大臣の御所見を伺いたいと思います
  226. 北村汎

    ○北村説明員 今度の改正議定書の六条に、締約国でない国の国民または漁船がこの委員会の事業またはこの条約の実施を妨げているということを知ったときには、このことについて他の締約国の注意を喚起するというようなことが書かれてありまして、たとえば、いま御指摘の韓国のような国がサケマスについてこの地域で操業している、そういうような場合にはこの委員会締約国に注意を喚起するということで、注意を喚起された場合は、そういうような妨害的な影響を避けるために、あるいはそういう妨害的な影響から免れるために締約国はとるべき措置について協議するというようなことになっております。  それから次の、日米加ソという関係国が、将来この地域における漁業について共同して管理するような一つの枠組みをつくってはどうかというような問題につきましては、現在この地域において日米加という三カ国の枠組みと、それから日ソという、バイラテラルの枠組みとがございます。この二つによって日本操業しておるわけでございます。これについていままでの実績あるいはやり方、そういうものから見て、現在のところこの枠組みを変える必要はないのではないかというふうに考えております
  227. 中川嘉美

    中川(嘉)委員 変える必要はないというお考えですが、大臣、どうでしょうか、やはり大臣から一言お答えいただかなければならないと思う。簡単に言いますけれども、北洋水域における安定した漁業秩序を確立するためにも共同漁獲などを含めた関係国間の調整機関とか、あるいは、先ほど来出ております四つの国、日本アメリカカナダソ連、これらの協議機関をつくって、長期にわたる漁業資源保存とか利用考えるべきではないか。農林大臣としての御見解を最後に承りたいと思います
  228. 中川一郎

    中川国務大臣 底魚とかあるいは一般的な話し合いであるならば、これは考えてもいいとは思いますが、事サケマスについて話し合うということは十分研究を要するところでありまして、私としても少し時間をかしてほしいと存じます
  229. 中川嘉美

    中川(嘉)委員 時間が参りましたので終わりますが、先ほど冒頭に、日ソ善隣友好協力というふうな言い方をしたと思うのですが、日ソ善隣協力条約と訂正いたしまして、私の質問を終わりたいと思います
  230. 永田亮一

  231. 永末英一

    永末委員 わが方の漁業は沖取り漁業をやっておりますが、大臣、沖取りをやるわが方の理論的根拠は何ですか。
  232. 中川一郎

    中川国務大臣 父祖伝来わが国が、非常に苦労して開拓した漁場であるということが根拠でございます
  233. 永末英一

    永末委員 いまのような大臣考え方によれば、父祖伝来開発した漁場であるというのでわが方が沖取り漁業をやるのでございますが、これに対して、今回日米加漁業条約を見ますと、アメリカは一体わが方のやっている沖取り漁業に対してどう考えているのですか。
  234. 中川一郎

    中川国務大臣 アメリカは、遡河性サケマス母川国のものであるので、これはやめてもらいたい、ソビエト資源保護上やめてもらいたい、こういうことが相対立する意見でございます。そこでわが国は伝統的操業だけかというと、前のように相当とっておれば被害を与えるけれども、五、六万トンのところならば資源問題からいっても、そうさしたる被害はないのではないか、こういうことで話し合いをした、こういうことでございます
  235. 永末英一

    永末委員 昔はわが国の川にもサケマスが上ってきましたね。そしてまた太平洋回遊しておった。中川さんのところの川もそういうことがかってはあったと思いますが、一体わが国の河川に遡河してくるサケマスはどれぐらいあるというお考えで算定をしておられるのでしょうか。
  236. 松浦昭

    ○松浦説明員 最近の人工ふ化、増養殖事業の進展に伴いまして、かなりの数量わが国の川に上ってくるようになりました。漁獲量にして大体四万トンから六万トン程度とっております
  237. 永末英一

    永末委員 母川国主義と申しましても、これは印がつけてあるわけではありませんな。したがって、太平洋という広いところでサケマスをとるわけでございますが、わが国の方も推定で四万トンぐらいうろうろしておる、こういうことでございますから、相手方が母川国主義で、自分の川へ遡河してくるものについてはとらせない、わが方は祖先伝来と申しましても、その祖先伝来の開発した漁場について、相手方は遡河性の魚種についてはとらせない、こう言っておる。しかも、先ほどから話を聞いておりますと、とらせない母川国主義というのが一般的な世界各国の通念にだんだんなりつつある、海洋法会議でまだ決まってはいないけれどもどうもそうなりそうだ、こういう話ですな。  そうしますと、祖先が波をかぶり汗にまみれて開発した漁場も原理的には認められない、そういうことになってだんだん漁場が狭くなる、こういうことになります。祖先伝来の漁場というものをわれわれが旗印にして、一体彼らの母川国主義を打ち破ることができるかどうか、お見通しのほどはいかがですか。
  238. 中川一郎

    中川国務大臣 打ち破ることがなかなかむずかしいのでことしのようなことになったわけでございます。ただ、先ほど永末委員が、わが国サケ公海におるのだ、こういう話ではありますが、日本サケは大体どの辺をどう回って帰ってくる、アメリカサケは大体この辺をこう回っていく、ソビエト系のサケはどの辺を回るということは大方見当がつくような段階になっておるわけです。ですから、アメリカはここを通っているからここをこうしてくれ、ソビエト系は、私の国のものがこう通っているからこうしてくれ、こういうことで、しかもそれが沖取りの場合は未成魚もとるという不利な点もありまして、資源を保護するためには沖取りよりは沿岸に帰ってきたところでとることが一番いい、こういう厳しい資源論から来ます議論と、これまた先ほど申し上げました父祖伝来の議論と、過度にとっては大変ですが、四万トンや五万トン程度ならばそう支障がないのではないか、さらにはまた社会的、経済的混乱が起きないように、こういうものの絡み合いの結果が今回の結果、こういうことかと存じます
  239. 永末英一

    永末委員 資源論については後でまた伺いますが、今回のソビエトとの協定に「協力」という言葉が入りましたね。いままでは、私の記憶によれば協力という言葉はなかったと思うのでありますが、「協力」というのは一体何ですか。
  240. 中川一郎

    中川国務大臣 資源保存に関する技術的なあるいは資料的な、そういった資料の交換なり技術の交換なり、こういうことが「協力」の内容だと存じます
  241. 永末英一

    永末委員 技術、資料の交換のほかに協力費を出すということも入っておるのですか。
  242. 森整治

    ○森(整)政府委員 大臣がいまお答えになりましたのは、要するに基本的な考え方として、今回の協力費という意味の協力でございますが、サケマスの遡河性魚種が母川に帰る、それについて資源の維持、保存等についていろいろな経費がかかっている、そういうものについて、ソ連の河川で金をかけておる部分についてわが国協力したらどうかという意味で協力費ということでございます。  それから「協力」ということにつきまして、漁業協力協定につきましてはもっと広い概念で話が進められておる、こういうことであります
  243. 永末英一

    永末委員 二百海里の魚類資源水域へ入る場合には入漁料というものを払わされておるケースがございますね。しかも母川国主義、遡河性の魚種についてはおれのところのものだと思っておるその魚をとるということになりますと、協力費とは言っておりますけれども、入漁料みたいな気持ちになって金を請求しようという考えを持っておるのじゃないですか。どう受け取られましたか。
  244. 森整治

    ○森(整)政府委員 入漁料というのは、具体的に言いますと、もし二百海里の中でサケマスをとるとすれば、そこで入漁に伴う費用を払うということでございまして、今度共同事業でいろいろ問題になっておりますようなものはむしろ入漁料的な性格のものであろう。要するに、二百海里の中で、カニなりエビなりある一定の区域で日本の漁船がとった水揚げに対しての何%くらいをソ連に払うというような話が進んでおりますが、それが入漁料ということだと思います。  今回のは二百海里の中では漁業は行われておりません、サケマス漁は。追い出されてしまったといいますか禁漁になっておるわけでございまして、その外の場所でいろいろ沖取りが行われる。そのサケマスについてソ連もいろいろ経費をかけていますよ、それについてはあなた、ただでとっては困る、あるいは困ると言わないまでも日本も少し御協力いただきたい、こういう趣旨に御理解をいただきたいと思います
  245. 永末英一

    永末委員 経費をかけているかいないかまた後で聞きますが、今度の協定の形を見ますと、本協定があって議定書がある、その議定書の中で漁獲量であるとか禁止区域であるとか漁期であるとかというようなもの、それから裁判管轄権すら決められておる。そして、その議定書には、ことしの場合、一九七八年十二月三十一日までという一年限りの期限になっておる。こうなりますと、毎年毎年この議定書交渉をやらなければならない。その中で、なるほど漁獲量であるとか禁止区域であるとか漁期であるとかというその年々に関係のあるものもございましょうが、裁判管轄権というようなものは一体毎年毎年交渉するものだろうかと思う。したがって、裁判管轄権のごとき恒久的なものは本協定に盛るべきであって、毎年毎年相談する議定書に盛るべきものではないと私は思いますが、これが一つ。  それから、毎年毎年交渉しなければならないかもしれないその他の部分漁獲量、禁止区域、漁期等々については、毎年交渉するということになりますと、農林大臣交渉から帰ってこられて、五年間は安定した操業ができるのだという旨の御発言をされたやに聞き、またわれわれは、本会議場で福田総理大臣からそういう旨の答弁をいただきましたが、安定しているのだろうか。毎年毎年交渉事で、しかも先ほどから承れば、母川国主義を振りかざして、要するに公海におけるわが方の沖取りを締め出そうという底意のもとに交渉が行われますと、これはきわめて不安定なものではないかと思われる。まず第一点、お答え願いたい。
  246. 加藤吉弥

    ○加藤説明員 御指摘のとおり裁判管轄権は毎年取り決められる議定書の中に書かれております。この点は私どもとしても遺憾と申しますか、残念な結果に終わったと思っております。  ただし、何ゆえにかようになったかと申しますれば、これは交渉の経過に依存するところ大でございまして、ソ連側は御案内のとおり当初サケマス等遡河性魚類の沖取りを一切禁止するという前提を打ち出しておりまして、裁判管轄権、つまり取り締まりその他の問題はサケマスをとらせるという前提のもとで議論すべきことである、したがってそういう問題は協定本文の中には書けない。全く否定的な態度を示したわけでございます。しかしながら、先ほど来御説明申し上げておりますとおりの交渉経過をたどりまして、最終的にはサケマスは本年に限る、つまり本年の漁獲は認める、こういうことに落ちつきましたので、それとの関連において議定書に書くという決着を見たわけでございます。  このような原則的な問題を毎年毎年交渉するのはおかしいではないか、こういう御質問でございますけれども、この点につきましては、日米加協定においてもすでに裁判管轄権という原則が旗国主義ということで規定されておりますし、また今回日ソ議定書の中においても、一年ではございますけれども、同じ原則が採用され、これがいまや国際的に一つの常識的なものになりつつあるように考えております。  このような前提を踏まえて、明年度の議定書交渉に当たりましては、今年どおり裁判管轄権旗国主義という原則を貫くべく、政府としては最大の努力を傾けてまいりたいと思っております
  247. 永末英一

    永末委員 この本協定の前文には、その辺におります「生物資源に対するソヴィエト社会主義共和国連邦の主権的権利を認め、」ということを、わが方は認めているわけですね。だから、それとの相打ちにしようというのなら、少なくとも本協定中に裁判権に関しては旗国主義をとるということがはっきり明示をされていないと、主権的権利を認めているのだから、だから毎年毎年、言葉は悪うございますが、特別な配慮、お情けをもってという言葉が悪ければ使わない方がいいかと思いますけれども、要するに裁判管轄権旗国主義で日本に認める。これじゃ、これから、本来ならば漁獲量とか禁止区域であるとかというものの交渉に行こうとするときに、こういういわば権利問題、法律問題がまず壁になって非常に交渉は難航する。  いまお話を聞いておりますと、世界的風潮だから間違いないだろうというお話でございますが、そんなこと言ったら、母川国主義が世界的風潮なら締め出される傾向になっている。しかも本則で主権的権利を認めているのだからそうなる、こうなるのでございまして、これを本則に入れるという見通しはありますか、ありませんか。
  248. 加藤吉弥

    ○加藤説明員 協力協定は五年間、さらに詳しく申しますと一九八二年の十二月末日まで有効でございます。それに対しまして、議定書は毎年毎年協定で決めるということになっておりますので、来年の交渉において裁判管轄権の原則を協定本文の中に入れろという点につきましては、これはきわめて困難であろうかと思います
  249. 永末英一

    永末委員 農林大臣交渉されましてどんな気がしましたか。この議定書に盛られた経過を聞きましたら、あなたのお気持ちとして。
  250. 中川一郎

    中川国務大臣 この点について議論をいたしましたが、私は、向こうが来年も旗国主義はだめだというようなことは言ってくる感じは持ちませんでした。公海において旗国主義が認められないとするならば、これは大変な問題であるということを一点言いましたら、わかりました、それじゃあなたの方で裁判権を持ってください、持つことはいいのだが罰金を取りましょう、悪いことはよくないことだから二度としないように罰金を取る仕組みを考えましょう、私の方から取り締まり船が行って、こういう悪いことをしていますからこれだけの罰金を取るのが妥当ですと通報したら、わが国は取りませんけれどもあなたの国で取るようにしてはいかがですかと言うから、わが国では罰金は裁判所にかけませんと取れないのです。行政官がおまえ罰金よこせと言ったから出せるようなあなたの国とは仕組みが違います。こういうふうに言ったら、それもそうだなあ、それじゃ何ができるかと言ったので、行政処分はできます。たとえば一回目については違反をしたから、違反をした者は二週間の操業停止にする、こういうことは許可をするときの条件で書けます。あるいはそれが何回もやりました場合には、またそれが重くなったり、あるいは漁業法その他法律違反とはっきりなりますれば、これは裁判権を行使して罰金なり体刑なりできますけれども、あなたの通報によって罰金を直ちに取るということはできませんと言いましたら、これもあっさりそれはそうかもしれぬというので、それでは実効が上がればいいのであるから操業停止のことをひとつ詰めましょうということになって、行政処分をもって行い、法律違反の場合は日本裁判管轄権によってやる、こういうことで話し合いがついたものでございまして、実効さえ上がっておれば、これはまたむちゃくちゃなことにでもなりますれば、また日本の裁判権は非常におかしいというようなことにあるいはなるかもしれませんけれども、そう変わったことがなければ、来年また旗国主義はだめだ、だからもう一回というようなことは、私の交渉経緯からは考えられなかったわけでございまして、議定書に書いてありましても、この問題がまた来年議論されることはまずまずないであろう、こう感じたわけでございます
  251. 永末英一

    永末委員 農林大臣のお見込みのとおりこれから経過することを強く期待をいたしておきます。  それから第二点、安定していけるかどうか、毎年議定書で先ほどのような項目について交渉しなければならぬ。安定していると見ていいかどうか、お答え願いたい。
  252. 中川一郎

    中川国務大臣 この問題は非常にむずかしいところでございまして、全面沖取り禁止を言っておりましたものをことしはとらせる、それから将来については毎年話し合う、こういうことになっておりますから、漁民の間にも、また国民の多くの皆さんは、来年から不安定なんじゃないだろうか、旗国主義を含めて一切大変なんじゃないだろうか、こういう見方もあろうと存じますが、私は交渉経緯、これも私の感じでございますけれども、そういった前提で始められた協力協定が五年間の協定となった。しかも議定書ではありますが、そういった新しい時代、新しい協定を結ぶ第一年目のサケマスについての交渉は、安易にやったのではなくて、資源論とかいま言う旗国主義の根っこの問題だとかいうようなことを議論いたしまして、ことしはこれで行こうということにはなりましたが、新しい時代の第一年目の五年である。でありますから、今後、先ほど言いましたように違反が余りにもひどくて大変だというようなことや、あるいはまた資源の状態において非常にまた変わってきたというようなことがあれば、これは変わるかもしれませんけれども、そう大きな変化がないとすれば、ことしいいことが来年悪いということにはならぬだろう。そしてまた、来年いいことは再来年度も悪いとはならぬだろう。ここ五年くらいはまずまずこのくらいにしぼってスタートしたわけですから、スタートはしたけれどもその次の年にはこれがなくなってしまった、こういうようなことは交渉過程では感じられなかった、こういうふうに思って、これで行けるのだ、また行かなければならないのだということで、私は国民の皆さんに申し上げておるわけであります
  253. 永末英一

    永末委員 昨年と、それからこの協定が発効いたしましてからわが方で処置して減船しなければならぬ船を考えますと、二年前に比べると半減してくるわけである。といたしますと、先ほど大臣が言われたように父祖伝来開発した漁区には違いないけれども、わが方の船でサケマスをとってわが国民に供給するという範囲がきわめて狭められてきたことは間違いない。いま漁獲量につきましても、事情に急変のない限り、そうこれについても変わりはなかろうという大臣の御期待がございましたが、私どももそれを期待はいたしておりますけれども、これから一体どうなるのですか。われわれ日本人は、われわれ日本人の船でとったサケマスではなくて、ソ連の船でとったサケマスを買うて食べる、こうなりますか。
  254. 中川一郎

    中川国務大臣 サケマスの長い間の流れを見ますと、こういうことだと思うのです。アメリカは終戦後ああいうことでラインを引いた。ソビエトわが国の間は、一九五六年ですか、協定によってやってきた。残念ながら、これはだんだんだんだん減ってきて、おととしくらいは八万トン程度であった。ところが二百海里時代を迎えて、昨年ソビエトが二百海里から以内は排除した。その結果二万トンの減量となって六万二千トンとなった。ことしはアメリカとの二百海里に関係してこれに対応せざるを得なかった。そして緯度十度だけ東へ寄った。それに対して今度ソビエトは、アメリカがこちらへ十度来たのだから私どもも資源の意味でもうちょっと海域を狭めたい、わが国アメリカに対応すればゼロなのだがなということもありまして、ゼロという線もあったわけであります。これに対して私は、昨年ソビエトがやったことをことしアメリカがやったまでであって、新しいことをやったのではない、だからそれ以上やるのはやり過ぎてはないか、こういう論調で申し上げたわけでございます。それに対する向こうの言い分は、アメリカのやり方はいろいろ言いましたが、それは差し控えるといたしましても、アメリカの線のこちら側のサケは大部分ソビエトに帰ってくるサケなんだ、だからこれはソビエトの漁民のためにもひとつ道を開いてもらわなければいかぬ、そのためには、本当は三角水域全部をふさがなければならぬところではあったが、そうすれば大変だというので、東から入ってくる道はあけますけれども、南から入ってくる三角形水域のそこだけはあけるわけにはいかぬということで、いろいろそういった過去のことや何かを話し合って、私としては、昨年ソビエトで二万トン減ったのでことしまた減ることは大変だと言ったのでありますが、これは二百海里に次ぐ新しい遡河性サケマス母川国主義というものあるいは資源を守るための措置としてどうしても必要だということ、いろいろ議論はありましたが、そういうことでできた協力協定の第一年目のものであるということから、まずまずこの程度のものは、日ソ友好のきずなの上からいっても残り得るものだろう、こう思っておるわけです。
  255. 永末英一

    永末委員 日ソ友好協力という話でありますが、わが国はふ化放流事業を行っている。ソ連資源保護のために何をやっているか。聞くところによれば、ふ化放流事業などやっていないと私は聞いておりますソ連もふ化放流事業をやるであろう、やった場合には百億円ぐらい協力費を出さなければいかぬかなという政府の内意がもともとあったようでありますが、結局は十七億にとどまっておる。ソ連資源保護のために何をやっておるとお考えですか。
  256. 中川一郎

    中川国務大臣 ふ化放流事業については、イシコフさんは昔から関心があった、高碕さんの時代からあったと聞いております。最近までもあった。でありますから、ふ化放流事業あるいは増殖センター等に協力すれば資源問題が解決するかな、こう思って行ったわけなんです。そこで、百億程度のりっぱなふ化場を建てようと思ったのですが、交渉段階でのイシコフさんの回答は、このことは前から言ってきたけれども実現ができておらない、その後も変わったことはない、というのは、それがどういう設計においてどういう効果があってということがわからぬのです。ですから踏み切れません、ですから余りこれを重く見ても実効が上がるものではない、こういうことでありました。そこで私が、実行できるように研究をして、それにはわが国協力するというぐらいのことで前向きに考えたらいかがでございましょうか、そうすればいままでとはちょっと違うのではないでしょうかと言い、そうかなあという話はあったのですが、いよいよ文章の段階になりますと、実効を上げるためにどうこうするのではなくて、ふ化放流事業の効果について資料を交換しようという程度であって、従来と何ら変わらないものに後退してしまったということでございます。それは政治的に、もしそういうことをやれば将来日本からつばをつけられるということがあったかとは思いますが、——それもあったかどうかわかりませんが、単純にふ化放流事業というものの効果が、日本ではあるけれども本当にあるかどうかということの自信がないということも、イシコフさんの話の中から察せられましたし、向こうは、たとえば川を切り開くとか、切るべき木を切らないとかいうようなことで努力をしているし、その方がありがたいことといいますか、効果があるんだというようなことを言っておりましたが、もし技術的な詳細なことが必要でありますならば、事務当局より答弁させます
  257. 永末英一

    永末委員 私どもが聞いておりますのは、要するに自然環境を壊さないというのが彼らが考えておる資源保護の基本方針だ、したがって、沖取りで未成魚をとられては困るので、上がってきた大きなやつをとっておれば大体サケマスが世々代々循環しまして減らない。わが方はふ化放流などをやっておる。人工、人の手を加えているということを知りながら——十七億円出すというのは、あれは何に使うのですか。
  258. 森整治

    ○森(整)政府委員 人工ふ化場あるいは自然産卵場、そういうものに対します設備なり施設なり機械器具というものを、現物で提供してほしいということでございます。  先ほどのお話でございますが、日本の技術はシロザケの技術、いま問題になっているのは、ベニザケにつきまして日本の技術がそのまま適用できるかどうかというところで問題があった。ソ連といえども、もちろん人工ふ化は大いにやっておるようでございます
  259. 永末英一

    永末委員 またことしも三〇%程度減船をしなければならぬのですが、昨年は共補償補償をやったようでございますけれども、ことし三〇%減船をいたしますと、あと残っている船は千二百五十隻程度。これで全部の補償ができるかどうか、共補償ならですね。国の方でこの補償を持つつもりはないのですか。
  260. 森整治

    ○森(整)政府委員 全体を今度はちょっと分けていただきたいのですが、日本海と太平洋、小型につきましては減船はいたしません。したがいまして、母船式の二百数十隻と基地式独航船の二百何隻か、それの三割程度の減船を行わざるを得ないということでございます。  そこで、先生御質問の共補償の問題でございますが、確かに昨年とことしは非常に事情が変わっております。去年のような考え方では対応がなかなかむずかしいということにつきましてもよく承知をいたしております。そこで業界ともよく相談いたしまして、今後政府がどの程度のめんどうを見ていき、また業界としてどういうふうな考え方をとっていったらいいか、早急に決めてまいりたいというふうに、納得をいただけるような解決案を出してまいりたいというふうに考えておるわけでございます
  261. 永末英一

    永末委員 これは負担すべき分母が減っているのですからね。国の交渉でこういう結果をもたらすのだから、国が責任を持つべきだと思います。  また、先ほどから話を出しております十七億六千万円の協力費、これも先ほど伺っておりますと、あっちの政府のやっていることに対してわれわれが協力しよう、こういうのでありますが、これを民間業者に持たせますか、国が負担すべきじゃないですか、いかがですか。
  262. 森整治

    ○森(整)政府委員 これもやはりある程度の一つの経費と見るべきものではなかろうかと思います。ただそれを全部民間の負担にするのが適当かどうか、これについては私どももいろいろ配慮しなければならないのではなかろうかというふうに考えております
  263. 永末英一

    永末委員 減船に伴い関連業界にいろいろなことがございました。これに対する離職者対策等々も非常に重要な問題でございまして、これらとともにいま私が挙げました二つの補償の問題、さらにはまた協力費を出す者はだれかという問題は、私は国が責任を持つ部面が非常に多いと思います。  最後にこの点に関する農林大臣考えを伺って質問を終わります
  264. 中川一郎

    中川国務大臣 昨年も厳しい減船がございまして、これに対する措置並びに関連業界に対する措置、またこれに対します対策等をやっておりますが、ことしは二年引き続きの措置でございますので昨年より一層厳しいものがありますから、昨年を前例として、厳しいものを上乗せしてしっかりした対策を講じたい、こう思っておるわけでございます
  265. 永末英一

    永末委員 せっかく御努力を願います
  266. 永田亮一

  267. 津川武一

    津川委員 昨年二百海里問題が起きまして漁業も非常に苦労しましたが、逆に魚隠しが起きて魚価が非常に上がって国民が大変迷惑したわけであります。今度のサケマスの沖取りの制限でそういう魚隠しや便乗的な値上げはさせてはいけないと思いますが、政府の決意はいかがでございますか。
  268. 森整治

    ○森(整)政府委員 確かに昨年、魚隠しと言うのがいいのかどうかあれでございますが、需給関係がそう変わっておりませんでしたから、先行き不安ということもあったと思います。そういうことで春から秋にかけて確かに魚価の高騰を見たわけでございます。その後鎮静をいたしておるわけでございまして、私どもも、もちろん指導、注意いたしますが、むしろことしは業界自身でも去年の苦い経験、お客さんがいなくなっても困るわけですから、むしろこれは苦い経験だと思います。そういうことで非常に慎重に対応してまいると思います。またそうあってほしいし、私どももそういうふうな指導を十分してまいりたい。
  269. 津川武一

    津川委員 ことしの沖取りのサケマスで入漁料を払うことになりましたが、この入漁料分がまた魚価の高騰につながるようなことがあっても好ましくないと思いますので、この点でも上げないように指導すべきだと思いますが、いかがでございますか。
  270. 中川一郎

    中川国務大臣 入漁料ではありませんで、これは協力費でございますが、コストと考え、企業努力により消化してもらうように、また政府協力できるものはこれに協力をする、そして消費者に負担のかからないようにともどもに努力をいたしたいと存じます
  271. 津川武一

    津川委員 次はサケマス母川国主義についてでありますが、交渉されてみまして、ソ連はどんな態度で大臣に、母川国主義でこの魚はおれのものだからとらせないあるいは制限するというふうに言ってきたか、そこら辺の実情を少し話していただければと思います
  272. 中川一郎

    中川国務大臣 三角水域を通る魚は全部ソビエトへ帰ってくる魚でございます。それを日本が途中でとるのは本当に困るのであります。ただし従来の実績もありますから、東から入ってくる分だけは私の裁断であけました、南からの分だけは協力してもらいませんとわが方の漁民が困るのです。こういう感じでございました。
  273. 津川武一

    津川委員 そこで、従来の日ソ交渉の席上でサケマス母川国主義が問題になったことがございましたでしょうか。私は今度の交渉が初めてでないかと思いますが、この点はいかがでございますか。
  274. 中川一郎

    中川国務大臣 これは海洋法が出まして、海洋法において議論となり、さらにアメリカの二百海里においてもそういうことになり、したがって、ソビエトも昨年からはっきりそれを言い出すようになったわけであります
  275. 津川武一

    津川委員 日ソ漁業交渉で正式に出たのは、今度の沖取りの制限もしくは禁止の場合が初めてではなかったかと私は思っているわけでございます。そこで、この沖のサケマス日本は従来どんなふうに考えてきたのでございましょうか、この点を明らかにしていただきます
  276. 中川一郎

    中川国務大臣 沖にいますサケマスにつきましては、世界じゅうが目をつけないでわが国が長年にわたって開拓し築いた大事な漁場である、こういう認識で漁獲をしておったと存じます
  277. 津川武一

    津川委員 そこで、その魚を漁獲する権利は日本にあると思ったのでございますか。
  278. 中川一郎

    中川国務大臣 そういうことでございます
  279. 津川武一

    津川委員 そこで、サケマス母川国主義について少し歴史的な検討もして政府の態度も聞いてみたいと思います。  私たちが知っているところでは、一九三七年十一月十五日にアメリカで臨時議会が開かれ、アラスカ代表のダイモンド議員が、アラスカのサケマス資源の保護を目的として、ベーリング海の大陸棚上のサケ漁業に対してその管轄権を行使しようとするアラスカ・サケ漁業保護法案を提案しております。ここで、日本サケマスをとっていることが問題になったわけであります。  このときの法文を見ますと、「アラスカ水域内で孵化したさけは、合衆国の所有物とみなされるべく、商務長官の定める法令によらずにアラスカの沿岸に隣接する水域においてこれを漁獲することは違法である」こういうような形でアラスカからアメリカ母川国主義を出してきて、これが母川国主義の先駆ではないかと思うわけであります。この考え方がずっとアメリカで受け継がれておる、こういうふうに思われるのでございます。ここらあたりもよく考えて事を進めなければならないと思います。  そこで、今度は戦後の戦争処理でございますが、アメリカにそういう要求が続いてあったので、一九五一年日本アメリカに屈辱的な形でいろいろな戦争処理をされた中で、アメリカ漁業界のそういう要望に何かこたえなければならぬ状況になりまして、平和条約の中に日本漁業に対する恒久的な制限規定されることのないように、これを緩和するという立場から、この際日本政府は進んで今後の漁業に対する日本の公正な態度を明らかにしておくことが必要であるということに意見が一致して、二月七日第三回の吉田・ダレス会談に際して次のような書簡が交換されております。  「日本政府は、濫獲から保護するために、国際的又は国内的処置によって、措置が既にできているすべての水域における現保存漁場で、且つ、日本国民又は日本船が一九四〇年に操業していなかった漁場では、自発的措置として、日本の居住国民及び船舶に漁業操業を禁止します。但し、これは日本政府が有する国際的権利の放棄を意味するものではありません。このような漁場の中には、東部太平洋とベーリング海の水域の鮭、ハリバット、にしん、いわし及びまぐろ漁場が含まれましょう。」こういうふうになっているわけです。このときは、日本の国際的権利とみなして、国際的権利を放棄するつもりはないと言っているのです。いまでもこの考え方でございましょうか。
  280. 北村汎

    ○北村説明員 ただいま先生から戦前の一九三七年にさかのぼってのお話がございました。突然のお話でございますので、私どもも詳しいことをまだ調べておりませんが、私の記憶する限り一九三五年あたりからベーリング海、特にブリストル湾における漁業の問題について、日米の間でいろいろやりとりがあったということを承知しております。一九三七年十二月に日本政府は、翌年一九三八年のサケマス調査船の派遣を取りやめるという決定をしております。それからまた、翌年三八年三月には、日本政府は、日本漁船は政府の許可なくしてサケ漁業は行わない、それから、ブリストル湾への進出は今後も自発的に差し控えるという発表をいたしております。  それから、さっき先生御指摘の戦後の一九五一年二月の吉田・ダレス書簡でございますが、これは、昭和二十六年二月七日に吉田総理とダレス特使との間に書簡が交わされまして、先生おっしゃいましたように、漁業交渉の行われるまでの間は、日本政府は、乱獲から保護するために、国際的または国内的措置によって措置がすでにできているすべての水域における保存漁場で、かつ日本国民または日本船が一九四〇年に操業していなかった漁場においては、自発的な措置として、かつ日本の有する国際的権利の放棄を意味することなしに漁業操業を禁止する旨、約束した、こういうふうにございます。これが一九五二年のいわゆる現行日米加漁業条約に発展していくのでございますが、とにかく、この時点におきましては、まだ二百海里時代ということでもございませんし、また母川国主義というような考えは一部、アラスカの漁民で、自分のところの川に帰ってくる魚は自分のものだという考えは一部にはあったかもしれませんが、それが大きな国際的な声とは全然なっておらなかった時代でございますので、その時代におきましては、一九五二年の条約において決めましたように、これは自発的な抑止ラインということで、それまで操業していなかったところでは今後は操業しない、しておったところでは、いままでしておった以上にはとらない、こういうことで漁業資源保存を図るということになったわけでございます。ですから、私どもといたしましては、母川国主義という考え方は、二百海里時代に入ってきて、沿岸国が自国の漁業専管管轄権を拡大するという考えの一環として出てきたものでございまして、まだ多くの海が公海であった時代において存在はしてなかったのではないかと考えております
  281. 津川武一

    津川委員 母川国主義という言葉はなかったかもわからぬけれども、明らかに同じ内容を持っていたわけです。それに対して、日本がとるのは国際的権利だと書いてあるので、いまでもそう思っていますか、と聞いているのです。これが一つ。  第二番目には、この文章の中には乱獲という言葉が出てきているので、日本が乱獲しておったのかどうかという点について重ねてもう一つ答えていただきます。国際的権利である、いまでもそう思っているのか、この時代にどんな乱獲があったのか、事実認識でございます
  282. 加藤吉弥

    ○加藤説明員 御指摘の一九三〇年代に日本の乱獲があったかどうかという事実は、どうしても主観的なお答えにならざるを得ないと思いますが、私、専門外の者として、あるいは乱獲というような事態があったのかとも考えております。  国際的な権利の点につきましては、先ほど来しばしばお話に上っております国連海洋法会議の統一草案の中で、確かにいわゆる母川国主義という原則がうたわれておりますが、同時に遡河性魚種サケマス漁獲を行ってきた国の権利というものもかなり手厚く考慮されているわけでございます。御案内のとおり、従来、サケマスをとっていた国の経済的な混乱を避けるために母川国は注意をしなければならない、こういう規定がございます。その規定からもうかがわれるとおり、日本サケマスをとるということは、国際的に不当なことである、あるいは非法なことである、こういう議論は成り立たないと思います。むしろ逆に、従来からのサケマス操業という権利は当然主張し得るものであるし、相当な妥当性を持って国際的にも主張し得るものである、かように考えます
  283. 津川武一

    津川委員 そこで、こういう形でカナダアメリカ母川国主義を、その言葉はどうあろうが、内容的にとってきてこの間の日米加条約となり、そして日本サケマス漁獲する領域が決められて、今度、さらにまた、西経百七十五度だったものが十度も西に移されて、日本がかなり苦しい場面に立ち至ったわけであります。  国際海洋法会議では、草案であってまだ決定されてない。これから国際海洋法会議に臨んで、日本の主張する態度は母川国主義を認めて会議に臨むのか、そうでなく、従来主張してきた国際的な権利として、決まるまでは少なくともその態度で行くのか、この点を明らかにしていただきます。外務省でも水産庁でも結構です。
  284. 松浦昭

    ○松浦説明員 お答えをいたします。  昨年五月二日、国会を通過させていただきました漁業水域管理法、わが方の法律の中におきましても母川国主義をとっておるわけでございまして、国際的な観点から申しますと、海洋法の統一草案に盛られているような内容における母川国主義というものはわが方もこれを認めているわけでございます。したがいまして、母川国の第一義的な権利というものは認めておりますけれども、同時に、伝統的な漁業国の経済的、社会的な混乱を来さない、そういう制限された公海におけるわが国の主張というものは貫いてまいりたいという基本的な立場でございます
  285. 津川武一

    津川委員 わかりました。  第二の問題は、先ほど出てきた乱獲という言葉は使いたくないのだけれども、やはり乱獲のことで少し質問してみたいと思います。  中川農林大臣は、ソ連から資源問題を突かれると反論できなかった、苦しかった、こういう意味の感想を述べておりますが、イシコフ漁業相との間の資源論はどんなぐあいだったのか、これを明らかに教えていただきたいと思います
  286. 中川一郎

    中川国務大臣 資源論で苦しかったのは、あの三角水域を通る魚はソビエトに向かって帰ってくる魚でございます。これを、東も南もあけますと、ソ連の漁民は非常に困ります。と言うのに対して、そうではないという反論がなかなか苦しかったということであって、乱獲について苦しかったことは全くございません。
  287. 津川武一

    津川委員 今度の交渉で、禁漁区域の設定、従来のB区域までソ連監視船が乗り入れるようになる、中型流し網の船別割当が決まっている。割当を、重量だけでなく、尾数で決めてきた、こういうことなどは、かなり、何か向こうで、決まった以上のものをとったことに対する警戒、規制ではないかと思うのですが、今度みたいに漁船別の割当と尾数を決めたことについて、どう考えておりますか。
  288. 松浦昭

    ○松浦説明員 まず、総漁獲量につきまして、トン数のみならず、尾数につきましても、今回議定書の中で規定をしてまいりました。このことは、できるだけ資源の保護を図るためには小さな魚をとるべきではないという基本的な思想でございまして、これは私どもも、資源の保護を図る上においては、できるだけ成魚になったものをとる、さような意味では、トン数だけではなくて、尾数についても規制をした方がいいと考えたわけでございます。これは、あくまでも資源保護という面でわが方も協力しようという精神から出たものというふうにお考えをいただきたいと思います。  それから、船別のトン数でございますが、これは、すでに中部の流し網につきましてはA区域の操業につきましては船別のノルマを課しておったわけでございまして、それがB区域に及んだという状態でございます。この点につきましては農林大臣いろいろと交渉されまして、船別のノルマは定めるけれども、しかしながらもしも船別ノルマに達しないような船があった場合には、残ったトン数は、これはほかの船にトランスファーするということが行われるように交渉していただきましたので、また向こう側もそれを了承しましたので、具体的に船別ノルマから生ずるような弊害はなくなっているというふうに考えておる次第でございます
  289. 津川武一

    津川委員 ソ連がいままでなかった母川国主義を出して貫いてきたり、従来なかったみたいな漁船別を割り当ててきたり、割り当てを尾数制も導入してきたりするのは、沖合いではソ連はとってない、とっているのは日本なんです。その資源を守るとすると、日本漁獲からソ連が守る、こういう点だろうと思うのです。こういう点でソ連では、乱獲しているという日本の状態に対して何らか指摘があったかどうか、そういう乱獲のことで農林大臣との交渉の席上でいろいろな折衝が出てきたかどうか、この点を答えていただきます
  290. 中川一郎

    中川国務大臣 乱獲という言葉は全くございません。ただ、資源を守るためには漁獲量を従来のように認めるわけにはいかぬという議論はありましたが、乱獲があるなんと言っているのは、国内でちらほら聞きますが、ソビエト側では全く聞きません。
  291. 津川武一

    津川委員 私も、最初に申し上げたように、乱獲という言葉を使っていいのかどうかということを非常に考えながら問題を進めておりまして、農林大臣から乱獲ということは向こうからは一言もなかったというわけですが、それはそれなりにいいとして、向こう日本の乱獲を心配している向きはありませんでしたか。
  292. 中川一郎

    中川国務大臣 心配している向きもありません。適正な漁獲をしなければならぬということは言いましたが、過去においてあったから心配するなんという話はありませんでした。
  293. 津川武一

    津川委員 なかなかさっぱりした言葉でよろしいのですが、いろいろ世論に伝えられるところで、農林大臣のいまの言明にかかわらず、農林大臣が一番苦労したのは、日本規定外のものをとっていないか、小さな魚をとって捨てていないか、またほかのものをとって捨てていないかなどという議論がかなり大きくされて、農林大臣がかなり苦しい場面に追い込まれたというふうに私たちはいろいろな状況から判断しているわけでありますが、いま大臣から、そのようなことがなかったということであれば何ともありません。しかし、この間も朝日新聞にいろいろな記事が出ております。乱獲の問題ですが。私たちはあの朝日新聞の記事には同調いたしませんし、あえてここではしゃべりませんが、いろいろな情勢でいって日本がうんととったときに、三十万トン、三十五万トン、三十七万トン、いま、そのときの消費と日本人のサケマスの消費、食べていることは大体同じくらいじゃないか、こういう試算が出てくるわけであります中川農林大臣がそういうことを言ったので、私も試算の根拠はここであえて明らかにしませんけれども、大体、サケマス日本の市場を通過して消費されているのは三十万トン、六百億円前後じゃないかと言われております。いま実際に日ソカナダ日米間の条約日本漁獲が容認されているのはどのくらいになっておりますか。
  294. 中川一郎

    中川国務大臣 前には朝日新聞のようなこともあったかと思いますが、アローアンスもありますし、そういう中で、言われるようなことはない、私はこう承知いたしております
  295. 津川武一

    津川委員 正式に公的にとることの約定ができておるサケマスの量はどのくらいになっております
  296. 松浦昭

    ○松浦説明員 公的にと申しますか、実際とっておる量も含めまして、アメリカ水域はクォータがございません。これはその水域に入れないという規制が従来からあったわけでございます。したがいまして、日ソ間で決めておりますところの、去年は六万二千トン、ことしは四万二千五百トンになったわけでございますが、この数字と国内の漁獲量、大体四万トンから六万トンぐらいの間、この数字が実際にわが方が漁獲している数量でございます
  297. 津川武一

    津川委員 いろいろな資料を集めたりいろいろな話を聞いてみますと、何か国民の一つの常識として出てきておるのは、家庭消費が二十四万トン、かん詰めが九万二千トン、業務用需要が四万八千トン、これから輸入が三千トンばかりありますので三十七万トン、そこいらあたりが実際にとられておる。このことを中川農林大臣の言明のいかんにかかわらずソ連が何よりもよく知っておる。ソ連がこの実情をよくつかまえておるので、私たちの交渉がかなり苦しい立場に追い込まれるのではないかと思います。  そこで、私たちは漁業資源を守る立場から、いろいろの点で、こういう点で日本というものの先の見通しもよく考えて、先の長い運命を考えてみるときに、この立場をもう少し検討して、その立場に立ってソ連ともっと交渉すべきじゃないか。中川さんが何と言明しても、そのためにかなり苦しい立場に置かれたのじゃないか、こういう国民的な認識に立っているわけです。したがいまして、中川さんがそうじゃないと言えば、はいと言うほかに仕方がありませんけれども、ここの点を明らかにしていかなければ事がおさまらないのじゃないかと思います。現にこの事実に対して前だったか、元の自民党の農政部長であった代議士がやはりそういう言葉で表現しないで、何という表現でしたか、かなりおもしろい近代的な表現で、「時代はすでに二〇〇海里時代、資源有限、国際漁業規制強化の厳しい時代に突入しており、高能率漁業方式について根本的な再検討を要請される」、かなり大規模なものによる協定外のものをとっていくという形に対して、自粛して、われわれの立場はこうだ、きれいにやるんだという立場を明らかにして漁業交渉するのでなければ、本来の日本の主張が貫かれないのじゃないか、そんなふうに考えたので、あえて母川主義の問題と規定以外のものをとっているという事実の指摘に終わったわけであります。  これで終わります
  298. 中川一郎

    中川国務大臣 言いっ放しではありますけれども、私から申し上げておきます。  いろいろなことを言われますけれども、そのような、外国から言われるようなことはやっておらないし、また今後ともやらないようにしていかなければならない、私はこう思っております
  299. 永田亮一

    永田委員長 伊藤公介君。
  300. 伊藤公介

    ○伊藤(公)委員 今度の日ソ漁業交渉で農林大臣ソ連で大変御苦労されて、交渉中、日本の新聞は次々とその状況を克明に書き上げておられました。どの新聞を見ましても、きわめて厳しい交渉、押し切られた日ソ漁業交渉、そういったかなり大きな活字が見受けられました。恐らく多くの国民の皆様方も同じような印象を受けながら、今度の厳しかった日ソ漁業交渉をいろいろな角度から受けとめられたと思うのであります。農林大臣は北海道の御出身でもございますから、大臣交渉を終えて日本に帰られて、もちろん地元だけでなしに、いろいろなお声があったと思います。先日の本会議場では、御批判の声はなかったという強い答弁もありましたけれども、日本に帰国をされてから、国民がいま、農林大臣ソ連で取り決めをされてこられた今度の交渉についてどのように受けとめられているか、私はまず率直にいまの大臣の御感想を承りたいと存じます
  301. 中川一郎

    中川国務大臣 国民の皆さんの感想は私にはまだよくわかりませんが、私自身としては、相手もあり、また従来とは違って、母川国主義というものが国際的に定着をした、そういう厳しい中ではありましたが、二年連続厳しい漁獲量の削減、したがって減船、こういう結果を招いたことは残念であり、申しわけなかったな、私は心からそう思っている次第でございます
  302. 伊藤公介

    ○伊藤(公)委員 私は、六万二千トンが四万二千五百トンになった、あるいは非常に減船をした、そういう数字の上の厳しさももちろん受けとめなければならないと思っているわけでありますけれども、ことしの日ソ漁業交渉はきわめて特徴的な意味があった。今日までわが国は世界に冠たる漁業国としてきたわけでありますから、交渉に当たっては常に、日本の長い歴史と伝統、漁民の人たちが新しい漁場を開拓してきたという実績に基づいて、強い立場でわが国の主張をしてきたことはもちろんであります。しかしことしは、そうした実績というものが考慮されないで、まさにゼロからの交渉になったという意味においては非常に重要な意味を持っている今度の交渉であったのではないかというふうに私は受けとめているわけであります母川国主義を強く打ち出してきたというソ連の立場ももちろんありましたし、厳しい状況を突きつけられてくる中で交渉することはきわめてむずかしいこともわれわれは承知をしている上で、しかしわが国にはわが国なりの伝統と歴史、いままでの交渉の基本的な立場というものがあったわけですから、ことしの交渉の中ではむしろそうした立場というものを捨てて、ゼロからの出発をしなければならなかったという意味においては、非常に重要な意味を持ったことしの日ソ漁業交渉になったのではないかというふうに私どもは考えているわけでございます。特にわが国の漁船の沖取りを認めるということでは農林大臣は現地で大変な御苦労をされたと思いますけれども、ことしはこういう形で決着がぎりぎりつきました。しかし当然これからの将来どうするかという不安は非常に大きな問題として残っているわけであります。将来の問題について、あるいは来年の問題について交渉の中で多少の話し合いがあったのか、あるいは現地で大臣はそういう主張をされたのか、その辺のいきさつをお尋ねしたいと思います
  303. 中川一郎

    中川国務大臣 ことしは御承知のように二百海里第二年目だと存じます。昨年が二百海里の苦しみをソビエトアメリカ等とやった年だと思うのです。ことしは遡河性サケマス母川国主義の実質的第一年目であったと思うのです。アメリカとの調整、カナダとの調整、そして母川国主義を表面に出してきての折衝、したがってゼロからのスタート、こちらは実績を確保したい中での話し合い、その火花を散らした結果が、五年間の協力協定ということになりました。そこで、その目玉ともなるべきサケマスについての第一年目の話し合いがことし行われた。その際、将来に向かってはどうかということでございますが、将来に向かっては毎年話し合おうという以外は話しておりません。しかし、新しい二百海里時代、そして新しい母川国主義時代を迎えての初年度の苦しみであったと存じます。この初年度は、来年以降資源に対する大きな変化だとか、あるいは操業に対する秩序の乱れとかいうようなことがありますれば、これはまた大きく変化するかもしれませんが、しっかりした操業を行い、そして資源に大きな変化がなければ、ことしをベースにして、今後当分の間続くものであろう、こう深く確信をし、信じており、またそれに向かって努力しなければならぬ、こう思っているわけであります
  304. 伊藤公介

    ○伊藤(公)委員 確認の意味でお尋ねしておきたいのでありますが、農林大臣のことしの交渉の印象からすれば、沖取りが来年以降、もっと厳しくというよりはゼロになるなどということはあり得ないという御感想を持って交渉を終わられたのかどうかということが一点。  それから、漁業に関しましては非常によくとれる年もありますし、あるいはとれない年もあるわけでございますけれども、豊漁年、非常に魚がとれるという年に関しては、ことしよりもっと条件がよくなる、こういう見通し政府としては持っていられるのかどうか。  二点についてお尋ねいたします
  305. 中川一郎

    中川国務大臣 四万二千五百トンに落ちつきますまでの間、というよりは、六万二千トンが四万二千五百トンという数字に固まります過程で、そういうふうになりました要素として考えられるのは、アメリカ水域での縮小、それからことしは不漁年であるということ、それから三角水域を設定したということ等々を勘案してできたのが四万二千五百トンでございます水域の拡大はまず望めないであろう。話はいたしますが、ことしの交渉経緯から見て、アメリカソビエトカナダ、この三つの水域については言えませんが、四万二千トンに決まる過程で要素となっております不漁年が来年は豊漁年でありますから、来年の話し合いをする上において、減らしました五千トンを、来年の漁獲量を決めるに当たって持ち出すことはあり得ることであり、これは相手がのむかのまないかは別として、ことしの厳しい四万二千トンに減っていった数字の中に五千トンが入っておりますから、来年は、これは復活してくれということは言い得る経緯であったと考えております
  306. 伊藤公介

    ○伊藤(公)委員 先ほども議論になりましたけれども、四万二千五百トンという制限を受けたわけでありますけれども、その四万二千五百トンというものは、公海上のものも含まれる、あるいはアメリカの二百海里というものももちろん含まれて四万二千五百トンということになっているわけでございます。しかも、漁業区域が減少して、あわせてその上に非常に厳しい漁業区の新たな設定があったわけでありますけれども、こうしてみますと、限定をされた四万二千五百トンというものそのものも、実際に確保できるのかどうなのかという心配が出てくると思うのですね。こういう点については政府はどのようにお考えになっていらっしゃるでしょうか。
  307. 松浦昭

    ○松浦説明員 確かに漁区がかなり制限をされておりまして、むずかしい操業になるということは事実でございますが、今回は相当早期に出漁ができるということ、それからまた幸いにして東から西へ向かいます魚の通路につきましては、これはすべての水域について開放されておるわけでございます。また、南から北に入る水域につきましても、できるだけ北の水域を確保したいということで、実現はできなかったわけでございますが、しかしながらこの水域につきましても、漁獲の努力を集中することによりまして十分に漁獲はできるというふうに考えております
  308. 伊藤公介

    ○伊藤(公)委員 年々漁獲量というものが非常に厳しい制限を受けてきているわけでありますが、それに対応するいろいろな施策を講じなければならないということはもとよりでございます。そこで、わが国サケマスの人工ふ化、養殖をしていく漁業分野での協力を提案をしてまいりました。しかし、わが国漁獲割り当ての増加をねらうという考え方はもろくも崩れてしまった、受け入れられなかったということでありますけれども、将来に対する日本側の考え方、見通しというものに非常に甘い点があったのではないかという気がするわけでございます。これはなぜソ連側に受け入れられなかったのか、失敗に終わったのか、どこにその原因があったのか、お尋ねをいたします
  309. 中川一郎

    中川国務大臣 人工ふ化放流による協力というものがもろくも消え去った、予想が外れた、こういうような御指摘でございますが、これは決して予想が外れたわけではありませんで、イシコフさんも古い時代からではありますが、やりたいなということであったわけで、向こうの言っておったことにこっちが乗ったわけでございます。ただ、議論をいたしてみますと、サケのふ化放流は日本でもやっております向こうでもやっておるそうですか、シロとかベニ等についてやってみても、本当に回帰してくるのだろうかという技術的な問題があってにわかに受け入れがたい、また、それによって資源が確保される保証はない、それは今後研究してみよう、こういうことになったわけでございまして、もろくも消え去ったわけでもありませんが、役には立たなかったことは事実ですが、将来にこの問題はまだ残っておるわけでございます。そういうわけで、今度は資源を大事にすることの代償としてふ化放流の事業をやればもっととってもいいのではないかということの話し合いにはなれなかったということは事実でございます
  310. 伊藤公介

    ○伊藤(公)委員 それから、今度の漁業交渉において、ソ連側日本漁獲の仕方というものに対してかなり不信を持っていられたのではないかということがいろんな角度から指摘をされているわけでございます。これは今度の交渉の中で魚種別の割り当て数あるいはトン数の制限、尾数制限あるいは監視を非常に強化をしてきたというようなことがあるわけでありますけれども、最近、制限以上の違反の漁船が建造されているということが報道されているわけであります日本側の漁業者の漁獲をしていくルールというものもやはりきちっと守っていきませんと、これからますます厳しい交渉の中でも、相互の信頼関係の中で交渉を続けるということは非常に困難になってくると思うわけでありますが、こうした面に関しての行政指導は、その状況をどのように認識をしてやられているのか、どうでしょう。
  311. 森整治

    ○森(整)政府委員 最近新聞で報道された件の御指摘だと思いますが、これは一定のトン数の制限を設けましていろいろな漁業上の許可を与えておるわけでございますが、その許可のトン数以上の実力を持った造船を行って操業をするというケースがあるという問題でございます。それにつきましては、いろいろ私どもも、要するに、造船の検査を行っているわけでございますから、そういう問題につきまして具体的にいろいろ調査をいたしております。したがいまして、違反船がある場合には直ちに減トン工事を行わせまして適格船として出漁させる。それが都道府県知事の権限に属するものであれば、都道府県知事がそういうことを確実に行うよう今後十分指導してまいりたい、こういう方針で臨みたいと思っております
  312. 伊藤公介

    ○伊藤(公)委員 交渉は相互の信頼の上に成り立っていくものでありますから、世界のどこの国との関係であっても、やはり今後国際社会の中で信頼を基礎にして交渉ができるように、ひとつ行政指導もきちっと国内で今後もやっていただきたいということをお願いを申し上げたいと思います。  先ほどから、実は漁業協力費として十七億円を費やす、現物で供与するという内容についていろいろな質疑がありました。入漁料でも三・五%なんですね。しかし公海上で四・五%というのは、これはいささか高過ぎるのではないかという気がするのです。しかもこうした予想外の供与ということが、結局、回り回って、先ほどの農林大臣の御答弁でも、原則的には業者がこれを負担するんだ、こういうことでありますけれども、業者が負担をすると言うけれども、結局、それは回り回って消費者、国民の一人一人がサケマス、魚を食べるときにみんな負担をするということになっていくわけでありますから、この交渉の中で四・五%というのはいささか高過ぎる、こう私は思うわけでありますが、この点についてはどのようにお考えになっていらっしゃるのか。それから、いま申し上げた政府が何分かの補助をするということでありますが、その補助はどのようにしていくのか。そして業者が原則的には負担をするというお話ですが、一体、それじゃ業者にはどういう形で負担をさせるのか。消費者にはできるだけ負担をかけないという形でぜひひとつやってほしい、こう思うわけでありますが、この四・五%という問題についてどのように大臣はお考えになっていらっしゃるか。それから実際にその補助をするという内容についてはどのように分担をしていくのか、お尋ねをいたします
  313. 中川一郎

    中川国務大臣 大分四・五%についての議論がありますが、ソビエト側は一〇%欲しいと言ったのです。それはなぜかというと、サケマス公海に出ていって育つのは、自分の国でいろいろとふ化放流をやったり、あるいは自然保護のために河川をよくしたりしているために魚が公海におるのであるから、これをとる人は一〇%ほど納めてほしい。こう言うのに対して、わが国は二百海里でとる入漁料も三・五%ぐらいだから、それぐらいまでは出せるかもしれないが、それ以上を出すとしてもなかなか大変ですよということだったのです。  そこで、四万二千五百トンに決まった段階で一〇%はどうしてくれますかという話がありましたから、当初、そういった魚を育てるということについては協力すると申しましたので、三・五%に何がしかを足しましょう。後ほど三万五千トンに七千トンを足してくれましたから、〇・七ぐらいの気持ちを足して四・二%ぐらいでいかがですか。取り引きずるわけではありませんが、五ぐらいにしてくれ、丸くする意味で、という話がありましたから、丸くするのには四・五%という丸くする仕方がありますよ。そうしたら、それでいきましょうと決まったのが四・五%でございます。  いってみれば、一〇%サケマス資源をよくするために欲しいと言ったものを四・五%にしてきた。それじゃ、だれがこれを負担するのかと言えば、サケマスをとられます方がこれを負担するのが一応原則である。これは業界の方もいたし方なかろう、こういうことで、業界の代表であります亀長会長と向こう側とどういう支払い方法にするかという話し合いがつき、書簡もできまして、いまその具体的な払い方について話をいたしております。これはふ化放流、その他施設、機械等について現物で差し上げるという方向でございます。  それを見て、その中で政府協力できるものはどの程度がいいかなと考えますが、確かに消費者に負担さしてはいけないことは事実でございますが、それはいやだと言うならば、もう四万二千五百トン根っこからなくなるわけでございますから、これを出すことにしたことだけは御了解をいただきたいし、しかも一〇%が四・五%に下がったということも御理解いただきたいし、出し分について政府がどの程度持つかはこれから消費者も考え業界の実態も考えて応分の措置をとりたいということでございます
  314. 伊藤公介

    ○伊藤(公)委員 冒頭に申し上げたとおり、ことしの交渉わが国にとっては非常に転期になる交渉だというふうに受けとめなければならないだろうと思います。そこで、わが国漁業政策そのものを私は百八十度転換をして、今後どうしていくかという、前向きに具体的ないろいろな対策を立てなければならない。これはやはり正しく、日本漁業に従事をする業界の方々も、あるいはもちろん政府も、それからわれわれ自身も、そういう形で受けとめて、これからに臨まなければいけないと私は思っているわけであります。  農林大臣は前庭の開発に取り組む必要がある、こう言っておられるわけでありますけれども、サケマスについては現在沿岸において、実際にはいまどのくらいとっていられるのか。また実際はどれだけの量があれば国内需要というものは足りるのか。そして今後沿岸で国内の需要を満たすことが可能であるかどうか。そのために回帰率の問題もいろいろ議論をされるところでありましょう。せっかくのサケマスが出ていっても帰ってこない、帰ってくる率はわずか三%ぐらいだ、こう伺っているわけでありますけれども、そうした回帰率の問題についても、やはり国が挙げて対策を立てなければならないことであろう、こんなふうに思うわけであります。将来の見通しとして沿岸漁業というものをどのように考えていられるのか、またどのくらいの量があったら現状では国内需要を満たすことができるのかどうなのか。
  315. 森整治

    ○森(整)政府委員 推計でございますが、大体五十一年で約十万トン、五十二年で約十二万トンでございます。このうち沿岸に回帰しておりますサケの生産は五十年で見ますと六万トン、これは非常に多い年でございます。あと、五十一年で三万九千トン、約四万トンというふうに見ていただきたいというふうに思います
  316. 伊藤公介

    ○伊藤(公)委員 時間が参りましたので、日ソ漁業の問題に関しましては一応質問を終わらせていただきますけれども、これは何回も繰り返すようでありますけれども、ことしの漁業交渉を契機にして、新たな、日本漁業全般を考え直さなければならない非常に歴史的な転換のときだということを、ひとつ強く認識をして、今後の問題に取り組んでいただきたいということをお願い申し上げたいと思います。  日米加公海漁業に関する国際条約の改正につきましては、時間が参りましたので、以下保留をして私の質問を終わらせていただきたいと思います
  317. 永田亮一

    永田委員長 井上一成君。
  318. 井上一成

    ○井上(一)委員 先ほどに続いて農林大臣にお伺いをしたいと思います。  アメリカ水域規制を受けた中では今回どれほどの漁獲量が減じたわけでありますか。
  319. 松浦昭

    ○松浦説明員 先ほど大臣が御答弁いたしましたように、ここ数年間の平均的な数字で申しますと、一万二千八百万トンぐらいになります
  320. 井上一成

    ○井上(一)委員 それでは実質的に今回の日ソ漁業協定で減量された分は、アメリカ規制を受けて一万二千八百トンが減量されたということでございますね。
  321. 中川一郎

    中川国務大臣 交渉過程では、昨年は六万二千トンであった。アメリカ水域では一万二千八百トン減っておるはずである。それに不漁年であるから五千トン減るはずである。そうすれば四万四千トンがソビエトとは関係なしに妥当な数字ではないか。ソビエトは三角水域を除き四角の窓をあけたけれども、そこで四万一千トンとれると思っておる。四万一千トンがいいと思うが、足して二で割って四万二千五百トンにしよう、こうなったわけでございます
  322. 井上一成

    ○井上(一)委員 私の申し上げているのは、昨年よりも減量された分については、実態としてはどの水域でどれだけということにはまだ十分把握できないかもわからないけれども、全体的な中ではアメリカ規制を受けた中で一万二千八百トン減量された、そういうふうに受けとめてよろしゅうございますか、こういうことです。
  323. 中川一郎

    中川国務大臣 実態としてはどうなるかわかりませんが、四万二千五百トンをはじく過程において、減らすべき要素として一万二千八百トンはあるのではないですかということがあったことは事実でございます
  324. 井上一成

    ○井上(一)委員 そういうことで、むしろアメリカ規制がなければ、ソ連との交渉の中で一万二千八百トンは——満額となるかどうかは別として、まだわが国漁獲量が四万二千五百トンよりもさらに多くの数字を保証できたのではないかというふうにも考えるわけです。  さっき大臣は、ほとんどがソ連の河床で産卵をしたサケマスだということを言われました。私は、それはそれなりに理解をいたしたいと思います。大部分がそれだ。だが、ここでお聞きしたいのは、公海上で協力費を支払うのも今回が初めてである。これは大変な前例になるというおそれを私は持つわけですが、いわば日本の二百海里の中でとるサケマスに対してでも協力費を払うことになったわけです。そうですね、うなずいていらっしゃるから。どうですか。日本の二百海里の中でとるサケマスに対しても十七億円余りの協力費を負担することになるわけですね。
  325. 中川一郎

    中川国務大臣 十七億六千万の内訳の中には、アメリカの二百海里もわが国の二百海里の中も含んで積算をしたということでございます
  326. 井上一成

    ○井上(一)委員 わが国の二百海里の中でとるサケマスについてもソ連に帰属する、いわゆる母川国主義にのっとって、そういう観点で金を支払っていくのだということでございますね。
  327. 中川一郎

    中川国務大臣 わが国の二百海里の中では監視その他規制は受けませんが、十七億六千万の基礎には、ソビエトの魚が二百海里の中におるのであるからということで、算出の基礎の中に入ったというわけでございます
  328. 井上一成

    ○井上(一)委員 大臣わが国の二百海里の中でとる魚にまで協力費を払っていくという漁業政策がいいのかどうか、考え直さなければいけないと私は思うのです。そんなことをすれば、日本ソ連資源をお願いして、協力費を渡してとらしていただいているということになるのじゃないですか。
  329. 中川一郎

    中川国務大臣 ソビエト側に言わせれば、もっともっと莫大な費用がかかっておるのだが、そのうちの四・五%に相当する十七億六千万円ぐらいのものは、どこに泳いでおろうとわが国に帰ってくるものであるから、それだけをとるとすれば協力してほしいということで決まったのが十七億六千万でございます
  330. 井上一成

    ○井上(一)委員 日本の二百海里の中でとる魚にまで協力金を払っていくということに、私は私なりに矛盾を感じているのです。だから、農林大臣は、協力金を支払うのがあたりまえだとお考えなのか、いや、それは私と同じように矛盾を感じているのだとお考えになるのか、どちらですか。
  331. 中川一郎

    中川国務大臣 自分の納得しないことを言えばいっぱいございます。二百海里を引いたことも、そんなに沿岸国が言えるのかと言えますし、母川国主義をいまこうしてにわかに言うということも、もう少し弾力的であってほしい等々のことは幾らでもありますが、ましてや協力費を払わなければならぬというそのこと全体についてもすっきりしないものがありますが、要は、ソビエトとの間で今後円満に魚をとっていくためには、自分では納得できなくても折れるところは折れなければならないかな、こういうことでできたのが十七億六千万でございます
  332. 井上一成

    ○井上(一)委員 相手のあることだから、こちらでは納得ができなくてもということですけれども、ソ連の魚をとらしてもらっているのですから、十七億よりさらに増額した額を来年ソ連から要求されたって、相手のあることだからと言って、それと交渉をしながら、いわば低い額で何とかお願いをいたしますというような姿勢で今後とも漁業交渉に当たられるのですか。
  333. 中川一郎

    中川国務大臣 そこでわれわれが言っているのは、国で払えということになれば、国が払うならもっと払えもっと払えということになりますので、民間が払うことが原則であって、民間ではこれ以上払えません、こういうことのためにもそういうことのめどはしっかりしておかなければいかぬ、これから向こうがどう言ってきても、なるべく出さないようにしたい。そのためにもやはり業界が受け持つものである。こういうことで折衝しているのも、まさにそういうことから、幾らでも出せと言われない歯どめのためにやっている。このことも御理解いただきたいと存じます
  334. 井上一成

    ○井上(一)委員 そこに確固たる漁業政策がないと私は思うのです。民間を一つの壁にすればソ連側は多くの額を要求しないであろう、そういうのはずるい考え方だと思うのです。そういうことについては、負担をすることが当然なのかあるいは当然でないのか、こういうことももっと明確にしなければいけないし、逆にそういうことが消費者に対して魚の値段を引き上げる結果になり、あるいは零細漁民に対する生活の不安になる。昨年も騒がれた魚転がし、いわゆる大手水産会社は、魚がとれなくなって、それでなおかつ利益率を上げているわけですが、またぞろそういうことが繰り返されるおそれもある。そういう意味で、いま国民の側に立った漁業政策が全くないということをここで強調しておきたい。なお、それに対して十分な手だてをすべきである。  もう一つ、農林大臣、大変御苦労はしていただいたと思います。しかし、これは、国民的な立場に立ったら、魚価の高騰をもたらすことにつながって、決して国民が納得のできる漁業交渉ではなかった。もちろん、何回も残念の意を表されておりますけれども、今後に悔いを残さないためにも、この折に新しい政策を打ち立てるべきであると思います。その点のお考えをお聞きしたいと思います。  さらに続けて外務大臣に伺いますが、このような状態が続く限り日本漁業外交はりっぱなものでない。少なくともしんの一本通った漁業外交をこの折につくり出すべきではないだろうか。頭を下げて、お金を払って、どうぞとらしてください、わが二百海里の中のサケマスも含めてそういうことをお願いしなければいけないような漁業外交が本当にいいのであろうかどうか、そういう点についても疑問を持っております漁業外交についてどんなお考えを持っていらっしゃるのか、外務大臣からもお聞きをして、私の質問を終えます
  335. 中川一郎

    中川国務大臣 けじめをつけろ、しっかりしろ、もうそのとおりでございます。しっかりして魚がとれるならば非常に結構ではございますが、ソビエトわが国との関係、今日の漁業の実態、昨年でも、業界は苦しい苦しいと言ったけれども、もうかった実態もあった、いろいろなことを総合して、国益上どの線が一番いいのか、屈辱的になってはならない、旗国主義だけはどんなことがあっても守らなければならぬときには守らなければなりませんし、けじめをつけなければならぬところはけじめをつけなければならぬけれども、その辺はやはり総合的にいろいろと判断をしてみてやったのが今回の交渉であり、そういう意味では、頭を下げて金を出して買ったものでもありません。堂々と互恵の精神できちっと言うべきことは言い、やった結果がこういうことでございます。御批判はいろいろあろうと思いますが、私どもとしてはあれやこれや総合的に過去のいきさつ、将来に向かっていろいろと判断した結果がこういうことでございまして、御批判は甘んじて十分受けますが、一生懸命やったことだけは理解をしていただきたいと存じます
  336. 園田直

    園田国務大臣 お答えをいたしますが、現状の厳しい環境において、過渡期において、同僚でありますが、中川農林大臣はよく健闘してここまで確保されたと思っております。  しかし、今後の漁業問題については、新しい二百海里時代、私が環境が厳しいと言ったのは、ソ連日本の間の環境が厳しいという意味ではなくて、漁業の取り巻かれた環境というのは厳しいという意味でございます。新しい二百海里時代は、資源有限という時代だから、沿岸国が自分の方の漁源というものを確保しつつ資源の増大を図りながら将来の漁業に備えよう、こういうときであります。また一方には魚種別によって、母川主義、遡河主義というものが出てきておりますが、これまた日ソ関係ばかりではなくて、世界の趨勢になってきつつあるわけであります。  一方また、この日ソ漁業につきまして考えましても、日本から言えばいまのような立場でございますけれども、ソ連の側から言えば、北欧から締め出され、それから米加の方から締め出されて、ソ連ソ連なりにまた苦しい環境にあるわけであります。  こういう状況のもとに、わが国としては外務省、農林省がよく緊密に連絡をとりつつ、沿岸国の漁源増大の線に寄与しつつ、わが国の実績を守りつつ、なおまたいままでの伝統ばかりに頼らずに、新しい漁場の開拓、そして魚群の増大等を、内政、外交とともに相携えてやらなければならぬと考えておるところでございます
  337. 永田亮一

  338. 土井たか子

    ○土井委員 ただいま審議中のこの漁業についての外国との協力関係であるとか、そのために協定を結ぶ問題であるとか、あるいは協定に従っていろいろと交渉を進めるという問題は、一方では資源の問題であり、他方ではやはり外交の問題、いわゆる漁業交渉というのは外交交渉の問題であるという側面を持っていることは事実なのでございますが、午前中、中川農林大臣の方から、協定そのものについては私としては満足だけれども、議定書については残念であったという意味の感想を漏らされました。農林大臣のその御感想は御感想として、外務大臣とされては、今回、外交交渉というふうな意味からして、これを成功と見ていらっしゃるか、ある意味では少し宿題が残ったというふうにお考えになっていらっしゃるか、いかがでございますか。
  339. 園田直

    園田国務大臣 先ほども申し上げましたが、現下の厳しい状況においては、農林大臣よく健闘されたと思っておりますが、一つは国会から御注意を、井上さんから受けましたが、交渉そのものがいつも土俵際になって、漁期を迎えてぎりぎりの線で交渉するということは、こちらがなかなか有利でございません。何とかしてこの交渉をもっと早目に漁期等に余裕を置いてやりたいと努力してきたところでありますが、今回はやはり相手のあることでありまして、最後のぎりぎりの線までになったわけであります。なおまた日ソの実務協定その他の面から、漁業だけに限らず、多様の面から、多角的に今後日ソ友好関係を進めていかなければ、漁業だけ切り離して交渉というのは、なかなかうまくいかぬものであるという、外務大臣としての反省をいたしております
  340. 土井たか子

    ○土井委員 ただいま外務大臣の御答弁になりました漁業問題だけを切り離して考えるということは、今後いよいよむずかしくなるであろう、多角的な外交交渉というのがどうしても必要になってくる、私はそれはもうそのとおりであると思うわけでありますが、そのとおりだと思うからこそ、いまから少しお尋ねをしなければならない気持ちに駆り立てられるわけであります。  それは、中川農林大臣御出発の前四月五日の当外務委員会におきまして、私は外務大臣に対して中川農林大臣が御出発になるのに際しまして、これは直接魚問題ではないけれども、日ソの魚問題に対して悪影響が出るということをしきりにやはり懸念をする一つの問題が、いま懸案として日本にはある。それは何かというと日中問題である。そういうことからすると、こちらとしてはこのことに対して積極的に話を持ち出さなくても、向こうから持ち出される話に対して受け答えを全然しないというわけにはいかないでしょう。そういうときにはどうなさるかということをどのようにお考えになりますかと言ったら、それは大事な問題だから、ひとつ農林大臣の出発前に十分なる連絡をとりたい、このように外務大臣はお答えになったわけであります交渉が重ねられまして、ソビエトから刻々伝えられてくるいろいろな情報の中で、新聞紙上を通じて私たちが知らされました一つの出来事は、ソビエト側は早く善隣協力条約締結してもらいたいということを中川農林大臣に申し入れをして、中川農林大臣もこれに対してわが国の立場を主張しつつ、しかしなおかつせっかくの申し入れであり、機会であるので、その言葉は内閣総理大臣に必ず伝えるというお約束をされたやにわれわれは報道で知っているわけでありますが、これは事実なのでありますか、いかがでありますか。
  341. 園田直

    園田国務大臣 私の発言はそのとおりでありまして、私が中川農林大臣は同僚ではあるがよく健闘された、漁業に対する影響は大きいけれども、これだけの成果を上げられたと高く評価するゆえんのものは、出発前に、政治問題には一切絡まれないように御注意を願いたいというお願いをし、農林大臣も承知したと言って出られたわけでありますから、幸い今交渉中に北方四島の問題、それから日中問題と、政治問題はこちら側からも向こう側からも一切出さずに、政治問題に絡まずにこの漁業問題を切り抜けてこられたというところを高く評価をしておるわけであります。  いまの善隣協力条約の問題は、漁業協定が、漁業の問題が詰めが終わって、最後にコスイギンと会われたときに出された話であって、この漁業問題には影響なしに切り抜けてこられた、外務大臣はこのように解釈いたしております。  事実は農林大臣から御報告を願います
  342. 中川一郎

    中川国務大臣 出発に先立ちまして、外務大臣とも相談をし、今度の魚の話は新しい日ソの魚の関係を結ぶことであるので、この漁業協定がうまくいくようにという親書を、福田総理からお預かりをして持ってまいったわけでございます交渉に入るに当たりまして、実はこういう福田首相からブレジネフ書記長あての書類を持ってきておりますが、できましたら、表敬しながら直接お渡ししたいとは思いますが、御都合も悪いことでしょうからあなたからお渡しいただいても結構でございます。いずれにしてもお渡しの方法をお願いいたします。こう申し上げたのでございます。  そして、交渉をいたしておりますうちにだんだん難航してまいりまして、最後の大詰めでございまして、確かに技術的には行き詰まったが、親書もあなたの首脳に来ているはずで、そういう判断からまた考え直していただくわけにはいかぬでしょうか、こういう話をしましたら、確かに受け取ってお渡しもしてございます。そしてまたよく相談をしてこの案をつくっております。またこの上とも相談をいたしますが、親書に対する返事は必ずあるはずでございます。こういう話でございます。  そして、話し合いが大体、いま園田外務大臣からお話があったように、あと調印だけという段階になりまして、すなわち、二十一日の金曜日午後八時に調印が行われたのでございますが、その直前の午後三時半に会おうという話がその朝来ました。前の日から会おうという話はありましたが、時間の設定はその日でございます。そして、お会いをいたしまして、こちらからは重光大使、それから水産会の亀長代表、通訳の四人、向こう側からも、イシコフさんと外務省からお一人、通訳の四人、表敬をいたす機会を持ったわけでございます。  そこで、向こう側から歓迎のあいさつ、そして、魚の問題がうまく二人の間でついて結構であった、ついては日ソ関係であるが、わが国とあなたの国は非常にいい関係にある、しかし、もっとよくしたいと思っておるのであるが反対する者もいるようだ、しかし、あなたのところに差し上げておる条約は、わが国とあなたの国とをよくする上において非常に役立つものだと思うから、ひとつ福田総理にもお伝えを願いたい、こういう話がありましたので、私からは、今度こういう目的で参りましたし、話し合いがつきましたが、昨年が二万トン、ことしが二万トン、非常に日本の漁民にとっては厳しいものでございますから、ことしは仕方がないとしても、来年以降急激な変化が起こりませんようにどうぞひとつ首相も御協力を願います。なお、親善協力条約のお話もございましたが、御承知のようにわが国には四つの島と平和条約という問題がありますので、この点は御理解をいただきたいと存じます。しかし、せっかくお話がありましたからそのまま総理にはお伝えいたしましょう、こう申し上げたわけでございます。  それに対して向こう側からは、理解をしてくれということであるが、私の方も理解してほしい、さらに日本ソビエトが仲よくしていくことについて、こういう観点からこういうことであると、いろいろ意見がありまして、会が終わりかかった際、私の方から例の大韓航空のお願いをして御回答をいただいた、これがすべてでございます
  343. 土井たか子

    ○土井委員 いま、非常に御苦労された中川農林大臣から、るる経過について大変細やかな説明を込めての御答弁をいただいたわけでありますけれども、どうなんでしょう、漁業問題というのが重荷になって意のある外交ができないというのは、私は間違いだと思っております。やはり外交というのは、国益という立場からすると一歩も後に引かないではっきりした姿勢というのをとり続けるということは、どこまでもこれは言うまでもない出発点でございまして、漁業問題が重荷になって意のある外交ができなくなるということであってはならないというのはだれしもが考えるところだと思うのですね。  いま中川農林大臣の方からの御報告の中でも、いわば漁業問題と政治問題というのの絡みというのは大変微妙な問題でありまして、漁業漁業だ、こっちの問題はこっちだと理屈では切り離していろいろ組み立てていくというのもできるでしょうけれども、実際問題に当たった場合には、まことにそこのところが大事で、しかも微妙で、しかも、後々一年、二年、三年先に向かってどういうふうにそれが方向転換というものをもたらしてくるかということから考えると、一つ一つが非常に大事な意味を持つということにもなってくると思うのです。そういうことから、中川農林大臣御自身も、いまの日ソ平和条約について、わが国の立場というものを理解してほしいとソビエト側に対しても説得をせられ、それに対しての御説明もなすったということもいまの御答弁の中でもうかがい知れるわけでありますけれども、しかし、従来よりのわが外交姿勢からすると、先日ソビエト側が公表いたしました日ソ善隣協力条約内容からすると、とてもとてもこの条約結構でございますと言う立場にはございません。これはもうはっきりこういう条約に対しては協力をすることができないという中身であることも事実であります。  私、きょう一冊だけ手に持ってまいりましたけれども、「今日のソ連邦」、これはもう言うまでもございませんが、ソ連大使館の広報部が出している雑誌でありますけれども、この中を見ましても、特に最近、日ソ善隣協力条約に対してのわが国に対する協力の呼びかけというのをあっちこっちに散見いたします。このことに対して、あらゆる場合にあらゆる場所でいろんな呼びかけが繰り返し繰り返し行われるということは言うまでもない話なんです。今回の漁業交渉の中からいたしましても、沖取り禁止ということを、ソビエト側が、来年はことしに比べるとさらに強く目指すであろうということもはっきりします。そういうことからいたしますと、これはどうなんでしょう、今回中川農林大臣は魚は魚の問題として大変な御苦労の末、向こう考えていたことに対して、十分とは言えないかもしれないけれども一定の上積みをさせて、話が済んだ後この問題が出たわけでしょう。そうしたら、きっぱりした姿勢、きっぱりした態度、きっぱりした物の言い方からすれば、この善隣協力条約というのはお話にならないといってけ飛ばしてくるというのも、私はきっぱりした態度の一つとしてはあるはずだと思うわけでありますが、この点はいかがなんですか。
  344. 中川一郎

    中川国務大臣 私は私の国の立場を申したつもりで、こういう問題がありますからひとつあなた様御理解くださいと言ったのであって、それ以上のことは、言ったことを、そんなことも伝えるわけにはいかぬというものでもないので、言ったことをお伝えはしますけれども、わが国わが国の立場がありますと申し上げてきたのであって、表現はどうか知りませんが、あなたの趣旨を申してきたつもりでございます
  345. 土井たか子

    ○土井委員 外務大臣はどのようにお考えになりますか。やはり諸般の事情からするとはっきりしているのは、ソビエト側には沖取り禁止という基本姿勢というのははっきりございます。来年についてはいよいよこの点は厳しく恐らくは主張するでございましょう。そして片やこの問題がございますわが国としてはどのようにこの問題に対する対応というものを外務大臣としては考えられ、また、とることが至当であるというふうにお考えになっていらっしゃるか、いかがでございますか。
  346. 園田直

    園田国務大臣 農林大臣が、話が終わった後で向こうから話が出たときに、こちらの主張をちゃんと主張されて、しかし話だけは伝える、こう言われたことは至当なことであると考えております。善隣協力条約内容については御承知のとおりでありますから、わが方は依然としていままでの方針と変わりはございません。しかし、これはこれとして、ソ連日本と善隣関係を深くしたいという考え、それから日本が各方面からソ連との友好関係を深めたいという線は鋭意努力をしながら、相互理解を深めつつ、漁業の問題も明年度の土俵をつくるように努力をしたいと考えております
  347. 土井たか子

    ○土井委員 いまの御返答からすると、さらに私は外務大臣お尋ねをしたいことがございますが、農林大臣の御退席の時間がございますので、先に農林大臣にあと一問だけをひとつお尋ねをして、どうか御退席をお願いしたいと思います。  二百海里時代になりまして、昨年が二百海里元年なんですが、わが国の遠洋漁業について、二百海里時代にはどうあるべきかという構想というのをやはりがっちり持つ必要があるなと私は昨年来思い続けてまいりました。ことしになりまして、つい先日、四月十八日に閣議に提出されました漁業の動向に関する年次報告、いわゆる漁業白書がございます。私は、この漁業白書をいま申し上げましたような意味においてずっと拝見をさせていただいたのですが、どうもこの中身を読みまして、遠洋漁業を見直す必要があるということに対する認識というのが残念ながら十分うかがえないのです。率直に申しますが。  今回のような問題も含めまして、サケマスの後にはカツオとかマグロなどの高度回遊魚類規制の動向というのが沿岸国から出てきているということも事実なのでありますが、どのようにこれに対応していくかということを考えていらっしゃるのだろうかというふうに見た場合には、やはり関係国と粘り強い交渉を続ける、そして既存の漁場を確保するということが至上命題になっているのですね。日ソ漁業に関する交渉にも予断を許さないものがあるというふうに書いてあるわけであって、それじゃそれに対してわが国としてどうするのかということが、どうもしかとした姿勢としてないのです。それは交渉を粘り強く続けて、相手に対してこっちがどういうふうに持っていったら説得が効くか、相手に説得をして言うことを聞いてもらう、これが何よりも大事な問題なんだ、以上のものは何もないのです。率直に言えば。私はこれは問題だと思うのですが、農林大臣、このことについてどういうふうにお考えになっていらっしゃいますか。
  348. 中川一郎

    中川国務大臣 二百海里時代というのはここ二、三年世界の大勢になってしまったわけでございます。これに逆行しようとしてもこれはとうてい及ぶべくもない。そこで、二百海里に対応する方法としては、やはり、書いてございますように、それぞれの国に対して文字どおり粘り強く交渉をして、そして既得権というものを確保していく、それには既存の漁業実績というものも十分考えなければならぬという、これまた海洋法の考え方でもございます。しかし対応の仕方は画一的なものではございませんで、各国それぞれ事情が違うわけでございますアメリカにはアメリカの事情、ソビエトにはソビエトの事情、ニュージーにはニュージー、それぞれありますから、それぞれに対応して、文字どおり粘り強く既得権を確保する、こういうこと以外にいま方法がない。そういう方向でできるだけの努力をして、二百海里初年、そしてことしは遡河性サケマスの実質第一年、こういうものに対応していきたい。そしてまた、ここにも書いてあろうと思いますが、こういう時代に対応して、沿岸資源、すなわち前庭の開発あるいはオキアミ等の未開発資源の開発等、こういったことに対処していく、これがあるべき姿だと思って、文字どおり粘り強くがんばっておる次第でございます
  349. 土井たか子

    ○土井委員 農林大臣おわかりになっていらっしゃるのだろうと思いますが、ただいまのは私の質問趣旨を御理解いただいた上での御答弁ではないようであります。これは違うのです。それならば、どういうことを私は言わんとしているか、そしてお伺いしたかったかということを再度、簡単に申し上げましょう。  これはどういうことかというと、いままで見てまいりますと、他国の二百海里水域日本の全漁獲量の四一%というのを日本はとってきたわけなんですね。それで四十年の漁獲量というのを見ると、約六百万トン、これが五十二年には千六十万トンと、物すごく拡大しているわけです。このふえている内容をずっと探索しますと、みんな遠洋漁業なんですよ。遠洋漁業によってきたのですね。ところが片や、遠洋漁業にそういうふうに一生懸命になりながら、日本の周辺の近海漁業の実態はどうかということになると、これは御承知のとおりに、海洋汚染等々に対して、まず自分の周辺からということをもう深刻に考えなければならぬ世界でも有数の国が日本であります。だから、まあ私の住んでいる周辺でも、日本でも有数な漁場だった漁場がだんだん奪われ、失われ、そして漁民の方々は転業を余儀なくされる。転業をしないでやっていこうとしたら、とる漁業からつくる漁業というのにどんなことがあっても変えなければ漁業は成り立たない、こういうことなんでしょう。片や、そういう問題をそのままにしておいて外国と交渉に出かけたって、この交渉内容というのはどういうことになるかというのは、内政のいわば延長が外交である、内政というものが、ひっくり返せば外交に反映するという、こういうことからすると、私は、今回の白書を見ていて、何だか日本としてここから考えていこうじゃないかという基本的な姿勢という、もう一つはっきりしたものがうかがえないなと思ったのです。いまの農林大臣、粘り強く外交交渉をやる以外にない、大変な執念には敬服いたしますけれども、しかし、粘り強く外交交渉をやるのには外交交渉に臨む基本姿勢というものが何かあってしかるべきだと思いますよ。この点、いかがでございますか。そういうことを私はお伺いしたくて先ほどお尋ねしたのです。それが白書にないのです。
  350. 中川一郎

    中川国務大臣 私もそういう意味で答弁したつもりで、こういう時代には前庭を大事にしていくというのはその意味でございます。沿岸、庭先を大事にする、それは公害その他もありますが、また、育てる漁業、沿整事業をやるとか、サケマスのふ化事業をやるとか、いま水産庁でもいろいろ案を技術的に立てておりまます。これらを積極的にやってこの二百海里時代に対応したい、こういう意味を先ほども申し上げましたし、記者会見でも申し上げておるところでございまして、決して質問趣旨に反したつもりでございません。土井委員の御指摘もまさに当を得ておりますし、私もそれを受けてやってきたつもりでありますし、さようにがんばってまいりたいと存じます
  351. 土井たか子

    ○土井委員 もう御退席の時間ですから、それじゃ一言。  いまの御答弁からすると、意欲満々だという大臣の御答弁でございますけれども、それならば、わが国周辺の水域について、水産資源についての計画的な二百海里時代における調査というものをきちっとやっていただきたいなと思いますよ。これがまだないです。これはやはりどうしてもやっていただく必要があるように思います。だから、今回のこれを見ていて、私はその辺期待をかけて見たのですが、これがうかがえないのですね。私はやはり今回のこの漁業白書の内容からしたら、二百海里の二年目ですから、このことに対して手がける一つの基本施策というか、基本計画というものが具体化されていてしかるべきだと思って読みましたが、非常にさびしい思いをいたしました。いかがです。
  352. 中川一郎

    中川国務大臣 私としては調査もやっておるつもりであり、二百海里に対応する沿整事業その他、もろもろのことをやっていると思いますが、時間がありませんので、具体的内容については事務当局より説明をさせます
  353. 森整治

    ○森(整)政府委員 二百海里はもちろんのこと、二百海里の外のいろいろ、海山というのがございます。そういうところの資源調査、いろいろ調査船を出しまして、あるいは直接水産庁の船あるいは民間のそういうセンターがございますが、そういうところの船、それぞれいろいろ全部フル活動いたしましてやっておる。それから転換でいろいろ減船になりました船も調査船として活用する、そういうことまでやっております。それから、御存じでございますが、一例としてはオキアミの企業化につきましてもいろいろ努力をしておるわけでございまして、さらにいろいろ御指摘、御注意がございますれば、そういう点も含めまして、もっともっとわれわれとしましては御趣旨の線に沿うように努力してまいりたいというふうに考えておるわけでございます
  354. 土井たか子

    ○土井委員 御答弁は何とでもうまい作文ができるわけでありますけれども、単なるそういう御答弁に終わらないで、白書の中身にもやはり二百海里時代の日本の領海とか日本の二百海里漁業専管水域、これにおける漁業のあり方なり資源の実態に対する調査、そういうものがまとめられたものをひとつかちっと出していただくわけにいかないですか。いままで私は、いろいろ漁業白書の中でも、そういう点で認識を持ちながら関心を払って読もうということになってくると、どうもああこれだな、こういうことなんだなということで説得、聞かせられるような中身というものがもう一つ薄いのですよ。こういうものを一つにまとめて出すというようなことをお考えになりませんか。いかがです。
  355. 森整治

    ○森(整)政府委員 私どもとしてはできるだけそういう御理解をいただくようなつもりでつくっておるわけでございますけれども、いろいろ御注意の点もう一回反省をいたしまして、さらに御理解をいただけるような形でのものにはまとめてまいりたいというふうに考えております
  356. 土井たか子

    ○土井委員 さて外務大臣、先ほど善隣協力条約の問題に対して御答弁をいただいた節、私自身は、ソビエト側から事あるたびごとに、この問題というのは恐らくこれから取り上げられていくであろうということは予想できるわけでありますから、そういうことからいたしますと、もうわかっているような問題ではありますけれども、再度この善隣協力条約に対して日本外務大臣、外務省としてどう臨まれるかという基本姿勢をやはり確認をしておきたいなという気になります。どうですか、以前と全く変更ありませんね。
  357. 園田直

    園田国務大臣 一貫して変更はございません。
  358. 土井たか子

    ○土井委員 そうすると、今回中川農林大臣ソビエトから帰られて、その間の事情についての御報告も外務大臣としてはお受けになっているかと存じますけれども、これはやはり内閣総理大臣に伝言をする伝言をしない、この問題は儀礼的なことであるかもしれません。しかし、やはりそれに対して示される一つの態度というものが、この協力条約に対して日本としてはどのように考えているかということのひとつはっきりさせる場所でもございますので、これを持って帰って総理大臣に伝えましょうと言われるよりも、やはりきっぱりと、これはわれわれとしてはお受けするわけにはいかないんだというふうに言うことの方が、前後左右考えた場合に、よほどわが国の外交姿勢としては信頼をかち得るものであると私は思いますが、いかがでございますか。
  359. 園田直

    園田国務大臣 外務大臣なら当然いまおっしゃるような発言をして帰るべきところでありましょうけれども、農林大臣は、漁業が曲がりなりにも話がついた後でありますから、主張を言ってお伝えだけはする、こう言われたことでございますから、仕方のなかったことだと考えます
  360. 土井たか子

    ○土井委員 しかし、これは仕方のないことだで済むでしょうか。私はやはり外交の一元化とか窓口一本化という立場で外交問題は考えていくべきだと思いますけれども、しかし当委員会においてもいろいろ外国からの反応というものは、外国の外務大臣がどう発言する、どういう行動をとるということだけでその国の外交姿勢を推しはかるわけではございません。あらゆる場合に撃ち出される弾というものを受けて、こっちとしてはどう考えているか、どういうふうにこの問題に対処しようとしているかということをやはり考えるわけでありますから、この節、農林大臣でしかも場合が場合であったということで、それでよろしい、仕方がなかったじゃないかで済ます問題であろうかと私は思います。  したがいまして、これについてもう一言、やはり外務大臣としてははっきりした何らかのけじめというものが必要なのじゃないかと私は思いますが、どのようにお考えになりますか。
  361. 園田直

    園田国務大臣 場所が場所だからということではなくて、善隣協力条約に対する日本の主張は、農林大臣ははっきり北方四島を解決して平和条約を結ぶことが先決であってという主張はしておられるわけでありますから、そしてさらに、御発言のような趣旨で総理大臣はことづけをもらったわけでありますから、そのことづけに対する返礼というかっこうでいまの点ははっきりすればいいと考えております
  362. 土井たか子

    ○土井委員 今度のような問題というのは事あるたびごとにこれから出てこようと思いますが、そういうことに対しては、やはり姿勢というものは曲げないで、きっぱりした姿勢をとり続けるということが何といっても基本問題でございますので、再度このことをひとつ確認をさせていただいて、さてこの協定中身について少しお尋ねを進めます。  中川農林大臣が帰ってこられてから、本協定締結する以上は五年間は大丈夫だろうというふうな御発言があった。午前中もこのことが取り上げられておりました。しかし、ただこの協定中身からいたしまして、五年は大丈夫だろうとおっしゃることからいたしますと、ひっかかる点が二、三ございます一つは、この七条の個所を見てまいりますと、七条の2というところで「この協定は、第三次国際連合海洋法会議において多数国間条約が採択された時に、両締約国が再検討することができる。」こう書いてございます。この第三次国連海洋法会議については、ただいま沖取りは認めるのか認めないのか、この問題はどういう方向に展開しつつあるのか。それから、母川国主義というのが一体慣行として固まりつつあるのかどうなのか、この点についての動向はどのようにお考えになっていらっしゃいますか。
  363. 加藤吉弥

    ○加藤説明員 御質問の第一点は、沖取りを認める方向にあるのか否かという点でございました。この点についてはけさほども申し上げましたとおり、母川国の権利を認めるという大勢と相並んでサケマスについて漁獲を続けてきた国の権利も保障されるという形で統一草案が出ております。したがって、母川国の権利と相並んで漁獲の権利というものも認める、大勢としてその方向に動きつつある。特に日本のような場合には、伝統的にサケマス漁獲を行ってきた国でございますから、特にその第二点の漁獲を継続できるという点に主眼を置いて外交努力を続けていきたいと考えております
  364. 土井たか子

    ○土井委員 わが国のその主張は、いま御答弁のとおりの努力をお続けになるということでありましょうが、五年間大丈夫だろうというふうに農林大臣が言われるその根拠は、この協定は五年有効だというところに一番の問題点があると思います。ただしかし五年の間、第三次国連海洋法会議においてのいま言われた方向で、沖取りは認めないとか母川国主義という方向に固まりつつあるという問題が現状のままであるかどうかですよ。恐らく多数国条約として採択されるという可能性はなきにしもあらずだと思うのですが、この点はどのようにお考えになっていらっしゃいますか。
  365. 村田良平

    ○村田政府委員 土井委員御案内のように、現在第七回の会期がジュネーブで開かれているわけでございますが、最大の問題は深海海底の問題でございまして、この問題が解決いたしませんと海洋法会議がまとまらないということでございます。しかし仮に仮定の話としまして、深海海底の開発に関して各国が歩み寄るという事態が見られましたならば、現在の第七会期で最終的な合意を見るということはとうてい考えられませんけれども、あと何回かの努力によりまして近年中に海洋法会議がまとまる可能性というのはあると存じます。  それから、その際に現在問題となっておりますところの遡河性魚種の取り扱いがどうなるかという見通しでございますけれども、現在の第七会期におきましてもこの点はまだ正式に議論されておりませんが、一部の国から沖取りを禁止するというふうな考え方が会議場外で若干示唆されているというふうなことがございますけれども、いまの六十六条というのは過去数年間の交渉の結果、お互いの妥協の上に成立しておるものでございますので、これを動かしたくはないという考え方が相当強うございます。したがいましてわが国としては、この六十六条の妥協は動かすべきでないという立場から主張を続けてまいりたい、こういうことでございます
  366. 土井たか子

    ○土井委員 そこで、いま五年以内にこの海洋法会議の問題というものが固まって、多数国間でそれが採択されるという可能性は全くないとは言えないのでしょう。いかがなんですか。
  367. 村田良平

    ○村田政府委員 全くないどころか、先ほど申し上げました深海海底の問題さえ片づけば、むしろまとまる可能性が高いと思います
  368. 土井たか子

    ○土井委員 そうなると、国際的な客観情勢として、果たして五年間大丈夫だと言い切ることができるかどうかという一つの点は、この協定内容から推してもございます。これは一つ言えるだろうと思うのですね。そういうふうに考えられると思いますが、いかがでございますか、外務大臣
  369. 加藤吉弥

    ○加藤説明員 日ソ協定について申し上げますれば、その第三条におきまして、遡河性魚類を含む漁業資源保存及び合理的利用について協力を行うという原則が書かれてございます。そして、この原則は五年間有効でございます。砕いて申しますと、サケマスという資源保存するということ、そしてそれを合理的な範囲で漁獲できるという権利がここで保障されたものと私どもは解釈しております。したがって、日ソ間においては、サケマス漁業を合理的に継続するという原則だけは維持された。この原則を根拠といたしまして、今後年々行われます議定書交渉において、できる限りわが方の満足すべきラインで、漁獲高、漁期あるいは水域というようなものを決定するための交渉を進めていきたい、かように考えております
  370. 土井たか子

    ○土井委員 いま言われた合理的利用ということの中からすると、この協定で認めている第三次国連海洋法会議における多数国間が採択した内容に矛盾することは、むしろ許されないと考えなければいけないのじゃないですか。合理的利用という範疇には、いま私が言っていることを含んで考えないと、合理的とは考えられないということが成り立ちますよ。したがって、日ソ間で、その点は大丈夫だ、客観情勢がどう変わろうとサケマスについては五年間これで大丈夫だという、いわば手形をわれわれは取得したというふうに考える節、いま御答弁でもおっしゃいました合理的利用というのが問題になるのでしょう。ですから、合理的利用について協力をするということを決めている本協定は、合理的の内容として、やはり第三次国連海洋法会議における多数国間が採択する内容に縛られるということも、ちゃんと協定でこれをお互い確認し合っているわけですから、ちゃんと認識していなければいけないのじゃないですか。この点いかがなんですか。
  371. 加藤吉弥

    ○加藤説明員 私は先生の御質問に対して、日ソ協定の枠内でお答えしたつもりでございます。  この三条で使用されております合理的利用」と申します意味は、資源保存、増大ということを前提として、その資源を枯渇させない範囲においてとる、しかもその方法、漁期その他についても、そういう合理的な範囲で物事を進める、かような意味で解釈しておりまして、必ずしも国連海洋法との関係で合理的という言葉を使っていないというのが私どもの解釈でございます
  372. 土井たか子

    ○土井委員 国連海洋法会議との関係で使っていないとおっしゃいますが、この協定自身がその国連海洋法会議との関係を認めている協定なんですよ。そうでしょう。協定内容では「第三次国際連合海洋法会議において多数国間条約が採択された時に、両締約国が再検討することができる。」と書いてあるわけですから。
  373. 加藤吉弥

    ○加藤説明員 御指摘のとおり、七条二項においては、国連海洋法会議で採択されたときには再検討する、こう書いてございます。しかし、現在はまだその交渉中でございまして、統一草案も採択されず、国際的な合意が達成されておりません。それが達成されたときには再検討する、かような規定でございます
  374. 土井たか子

    ○土井委員 これは私の言っていることと決して違った御答弁をいただいているわけではないということを、いまの御答弁で私は伺うわけでありまして、これにばかり時間を費やすわけにいかないので、私の考えているとおりだなということを私自身考えて、次にいきます。  いま第三条のところで使っている日本語の用語は「合理的利用」なんですが、本来どうも「合理的利用」というのは、用語として使われてきた例というのは余りないので、いままでの同種の問題をずっとひもといてみますと、「最適利用」という用語が日本語としては使われてきた。特に、ソビエトの最高会議幹部会令などを見ましても、日本語で仮訳として出されているのには「最適利用」という用語が使われております。今度の協定にも、前文の中には「最適利用」という用語が使われているわけでありますが、前文で「最適利用」と言っている場合と、第三条で「合理的利用」と言っている場合とは、ちょっと違うのではないか。第三条で特に「合理的利用」ということを言われているのには、ソビエト側が非常に強い姿勢で遡河性の魚種に対しては母川国主義、特に沖取りというものを認めないという姿勢で臨むということが散見できるように私は思うのですが、そのように考えてよろしゅうございますか。
  375. 加藤吉弥

    ○加藤説明員 先生御指摘のとおり、ソ連の幹部会令、それから昨年の日ソ、ソ日協定、それから本協定の前文においては「最適利用」という表現を使っております。「最適利用」と「合理的利用」とはどこが違うのかという御質問でございますが、そう大きな差はない、ただ、「合理的利用」という方が「最適利用」よりも一般的で幅広い表現であろう、かように考えております
  376. 土井たか子

    ○土井委員 幅広いということと同時に、客観情勢というものに即応して、より多角的にこの問題に対して考えるという、利用内容に対してやはりいまおっしゃった幅の広さというものを要求しているという側面もあるのじゃないか。そういう意味で、ソビエト側が考えている母川国主義であるとか沖取りを認めないというふうな姿勢というものがこの中にもうかがわれるのではないかというふうに思って読んだわけでありますが、そういうことからすると、実は最高会議幹部会令の内容でも、二百海里法というものの中で母川国主義というものを明記しまして、ソビエト側は、沖取り禁止というのを母川国主義のいわばその反対側にある一体のものとして非常に強力に国際会議においても主張してきているという立場は、もうだれでもが知るところであります。したがいまして、今回はこのような交渉が妥結して、ただいま協定に対して当委員会で審議をするという段取りになっているわけでありますけれども、これから年を追ってこのソビエト側の姿勢というのは、強固になることがあっても弱くなることはないだろうと思うのですね。したがいまして、議定書というのは、毎年この漁獲量というものに対して、減ることはあってもふえることはない。場合によったら、ゼロであってもしかしなおかつ議定書はこの協定に従って必要である、議定書が必要である限りは一年一年この議定書に対して国会の審議を意味として必要とする、こう思われますけれども、外務大臣、このことについてはどのように考えたらよろしゅうございますか。
  377. 園田直

    園田国務大臣 明年度の問題については、いろいろ要素が変わることでありますから、いま答弁をいたすことは適当ではないと考えております
  378. 土井たか子

    ○土井委員 いや、外務大臣、そういう意味で私は言っているのじゃないので、ソビエト側の姿勢というのは今度の交渉ではっきりわかっているわけでありますし、客観的にいろいろなソビエトの国際会議で主張する内容であるとか、あるいは幹部会令などを読んでもどういう立場かというのはもうはっきりしているわけですから、来年再来年に向けてどういう立場で臨むかというのはわかるわけですね。いまのこの協定に従って議定書というのは一年更新でやっていかなければいけないわけでしょう。その議定書内容は、たとえ漁獲量というものがゼロになったって議定書議定書としてつくらなければいけないわけです。この議定書は国会審議の対象として当委員会にかけられるはずだと思うけれどもどうなんですかということをお伺いしているのです。
  379. 加藤吉弥

    ○加藤説明員 来年以降だんだん締められていくのではないかということでございますが、昨年の夏の海洋法会議の席上におきましてソ連が沖取り禁止という原則を打ち出したことは御高承のとおりでありますし、今次交渉の過程におきましても沖取り漁禁止ということでかなり長い間突っ張っておったわけでございます。しかしわが方から、従来の伝統と実績というものをこの際無視するような態度をソ連側がとるとすればわが国に経済的、社会的な混乱を生ずる、こういう主張をいたしまして、その結果、今年の議定書に書かれているような漁獲が認められた次第でございます。この過程が示すとおり、沖取り禁止というソ連の態度が確定したとか日本によって承認されたとか、そういう事実は全くございませんし、将来どうなるかということを予見させる材料もそこではまだ出てきていない、かように考えております。  明年以降の議定書をどう取り扱うかという点につきましては、先ほど外務大臣から御説明がありましたとおり、将来のことでございますから予見することは避けたいと思っております。ただし交渉の結果として国民の権利及び義務に新たに何らかの変更ないし規制を加えるようなものが生ずる場合には、当然のことながら国会の審議をいただき、かつ御承認を得る、政府としてはかように考えております
  380. 土井たか子

    ○土井委員 私これで質問を終えます。次に時間の都合がございますから……。ただ、いまの御答弁では非常に大事な点があいまいなんです。外務大臣に一言だけお答えをいただいて、私は終わります。  議定書というのは、ただいま審議しております協定と一体のものなんですよ。この協定は五年有効なんですが、議定書については来年から一年一年更新されていくわけです。この議定書は国会の審議の対象になるのですか、ならないのですか、この点だけをお答えいただいて、私は終わります
  381. 園田直

    園田国務大臣 いま申し上げたとおり、議定書を国会に審議をお願いするかどうかということは、その来年度の議定書内容次第だということで、いまからは御答弁はできない、こういうことでございます
  382. 土井たか子

    ○土井委員 それはおかしいですね。それは納得できないということを一言申し上げて私は終わります。これはおかしいですよ。議会主義の原則からしてまことにおかしいことを外務大臣はおっしゃる。御承知のとおりに条約というのは国会の承認を得ないと有効にならない。事前あるいは事後に国会の承認を必要とするということは手続上はっきり憲法が明記しているところです。いまの協定中身と一体のものとして議定書というのはいま審議しているわけですね。議定書は毎年変わるのですよ。協定は五年間変わらないのです。これは一体のものとしていま審議しているという意味をひとつようく吟味していただいて、理解していただいて、正確な御答弁をお願いしたいと思います。よろしゅうございますか。
  383. 園田直

    園田国務大臣 たとえてとお答えすると誤解を生じますけれども、たとえば裁判管轄権に変更があるとかあるいはその他当然国会のお許しを得なければならぬ問題が出てくれば国会に御審議を願うことは当然だと、いまのところでは考えております
  384. 土井たか子

    ○土井委員 私、次にバトンタッチいたしますが、いまの問題は非常に重要なので、私、留保して、後でもう一度再度質問をいたします
  385. 永田亮一

  386. 野村光雄

    野村委員 最初に園田外務大臣に、今回の日ソ漁業交渉におきますところのこの結果と、それから交渉のあり方、この二点につきまして大臣の御認識等承りたいと思います。  御存じのとおり、今回の交渉内容につきましては、漁期を目前に控えました関係漁民にとりましては非常に大きな衝撃を受けておりまして、その内容につきましては実に四万二千五百トンと、こういう大幅な減少を見たわけでございます。さらに漁業協力費に対しましても、十七億六千万円を払わなければならない、さらに漁場の大幅な締め出しというもの、いままで北洋漁の宝庫と言われましたこの漁場を締め出された、こういうことによりまして、水産王国とまで言われましたわが国の水産業界は大きな衝撃を受けておりまして、この今回の交渉内容につきまして外務大臣としてどういうふうに認識していらっしゃるかということが一つ。  もう一つは、昨日も中川農林大臣に農水委員会で私質問いたしまして、その中で特にしみじみ大臣がおっしゃっておりましたことは、今回の交渉、出漁期のぎりぎりいっぱい迫ってまいりましたそういう中で、今回のこの内容については、時間の制約等があって非常に心残りをしていると、交渉に当たりました中川農林大臣みずからがこういう反省をいたしておるわけでございますけれども、こういうわが国にとって年中行事のように避けて通れないところの漁業交渉、来る年も来る年も出漁期直前まで、ぎりぎりいっぱいにならなければ具体的な交渉が煮詰まらない、こういう交渉の長年のあり方、こういうことに対してやはりもっともっとゆとりを持った交渉に改善をする必要があるのじゃないか、こういうふうに私は思うわけですけれども、外務大臣としてのこの二点に対する率直な御見解を承りたいと思います
  387. 園田直

    園田国務大臣 御承知のとおりに今日の国際漁業をめぐる環境は非常に厳しいわけでありまして、その厳しい中に行われたこの交渉が、政治的な要因とは全く関係なく実務的な雰囲気のもとで合意を見、裁判管轄権の合意を得、サケマスも、当初心配しておりましたが、本年度も継続をして確保することを得たことは、曲がりなりにも成果を上げたと考えております。  なお、いまの交渉期日を漁期ぎりぎりまでにしないでもっと余裕を持ってゆっくりやれとおっしゃることは、われわれも全くそう思っておりまして、先年からそういう趣旨交渉をなるべく早めるようにしたわけでありますが、今回も七十五日間かかってようやくぎりぎりに結末を見たようなわけでございます。今後もその点については十分注意をして交渉をやるようにしたいと考えております
  388. 野村光雄

    野村委員 そういたしますと、こういう漁期とは別にいたしまして、外務大臣、特に昨日中川大臣が申されておりました中で具体的に明らかになってまいりましたことは、今回の交渉の劈頭に当たりまして、わが国としてはソ連に対してサケマスの増養殖等の漁業協力というものを前提条件として、せめて昨年度の六万二千トンを確保したい、こういう考えで臨んだようでございますけれども、ソ連はそれに乗ってこなかった。こういうことに対して非常に大きな悔いを残すと、きのうおっしゃっておりました。こういう漁業資源とか増養殖等の問題というものは、今回の直接の漁業交渉とはまた別個の問題でございますので、漁期を目前に控えた交渉の中で出していくというような外交政策、漁業交渉のあり方、こういうものに対しても、むしろ別途の時期にこれを煮詰めていく、こういう具体的な考えなり反省なりを、外務省としては今回の交渉の中でどういうふうに受けとめているのか、この点あわせてちょっともう一回聞きたいのです。
  389. 松浦昭

    ○松浦説明員 お答えをいたします。  主として水産庁の問題でございますので、私どもの方からお答えをいたしたいと思いますが、この人工ふ化場の新設あるいは実験センターの設置といったような考え方は、すでに河野大臣あるいは高碕大臣の時代からあったお考えでございました。イシコフ大臣との間にもその後赤城大臣あるいは安倍大臣、何代かの大臣がいろいろとお話をされ、またその間に合意があったようでございます。したがいまして、さような合意を前提にいたしまして、今回の交渉におきましても、さような意味での資源の増大を図るのでわが方の漁獲を認めてほしいというのがわが方の態度でございました。しかしながら、ソ側は、必ずしも日本の技術というものがソ連の河川において直ちに適用できるものでないという問題、あるいはその効果が非常に遅いといったような点から、これに乗ってまいらなかったということでございます。しかしながら、技術的な面での詰めというものは過去何年間かやっておりますことでございますから、また先ほど申しましたように長い間両国大臣間でお話のあったことでありますから、このような漁期間際の交渉といったようなこととはまた別に、当然何回か話し合っていくべきである、またこれを実現していきたいというふうに考えておる次第でございます
  390. 野村光雄

    野村委員 次に、昨日質問できませんでした問題で、今回の交渉内容、特に議定書内容につきまして、特に二、三点お尋ねいたしますけれども、四万二千五百トンになるという大幅な漁獲量の削減、これによって漁民の受けた衝撃とあわせまして、今回の議定書の中で最も漁民が憂慮いたしておる問題は、四万二千五百トンになったこととあわせて、今回は重量と匹数の規制すなわち三千二百八十万匹、こういう規制議定書の中で結ばれております。漁民にとりましては、トン数はもちろんのこと、あわせて二重規制をかけられたということに対しまして、非常に困惑をいたしておる次第でありますけれども、わが国としては今後ともこういう考え承認していく考えなのか。とりあえずことしだけはやむを得ない、こういうことで承認をしたのか、この問題のいきさつと、もう一つは、じゃ、どのようにして技術的に匹数を確認していくのか、この問題に対してお尋ねをいたしたいと思います
  391. 松浦昭

    ○松浦説明員 確かに今回の議定書の中では、総トン数のみならず尾数も規制になったことは事実でございます。ただ、この尾数の規制をいたしました趣旨及び内容を申し上げますと、尾数は平均重量をもとにしてとってございまして、いままでの漁獲構成を前提にいたしました場合には、決して無理な尾数ではないわけでございます。しかも、尾数の方が非常に多くなってトン数がこのトン数ということになりました場合には、むしろ小さな魚をとるということが起こるわけでございます。したがいまして、われわれの観点といたしましては、日本資源の保護を図るということが必要でございますし、また余り小さな未成魚をたくさんとることは適当なことではございません。したがいまして、私どもといたしましては、このような制限を設けまして資源の保護をわれわれも図っていって資源を子孫に伝えていくことが必要であるという観点から、この尾数の合意をいたしたという次第でございます
  392. 野村光雄

    野村委員 そういたしますと、いまの御答弁を聞いていますと、四万二千五百トンという数量にこだわるよりもむしろ匹数にこだわった方が、わかりやすい言葉で言いますと、わが国としてはよけいとれるのだ、こういうことで有利である。そういたしますと、これから出漁いたします漁民は、どこまでも総トン数よりも匹数でとっていくということになるのですか。
  393. 松浦昭

    ○松浦説明員 その点は、やはり従来からの規制のとおりトン数を主体にしてとってまいりたいというふうに考えております。しかしながら、尾数の方が余りにも従来の構成以上に多くなるということになりますと、さような場合には未成魚を多くとるというかっこうになりますから、したがって、トン数を主体にいたしますが、尾数もこれをオーバーしないようにしたいということであります。換言いたしますと、従来の大きさの構成比を前提としてとってまいります限り、トン数をこれだけとりました場合には尾数をオーバーしないという状態になるということでございます
  394. 野村光雄

    野村委員 この問題でこれ以上やりとりするつもりはございませんけれども、ただ漁民の立場に立ちますと二重制約をかけられた、こういう精神的な負担を非常に受けておりまして、この問題に対しましては、ひとつ漁民が不安を感じないような対応を具体的に出漁前にしていただきたいということを要請いたしておきます。  次に、今回の議定書の中で裁判管轄権の問題がございます裁判管轄権の問題を通しまして最終的にはソ連監視体制が一段と強まってくる、こういうことだけは議定書の中でもはっきりいたしてまいりました。  ここで二点お尋ねいたしますけれども、裁判管轄権というものは、本来でありますと、毎年毎年こういう重要な法的根拠の問題を漁業交渉の中で煮詰めながら決めるということに対しては、私どうも納得ができないのでございますが、こういうあり方をわが国としても好んでいらっしゃるのか。この裁判管轄権の取り扱いの問題と交渉の経緯からいって、わが国としてこれを望んでいらっしゃるのかということと、もう一つは、ソ連監視体制が一段と強化されてくることはもう間違いないようであります。これは再々にわたりまして私も農水委員会の方でも質問しましたけれども、特に二百海里以降におきますわが国周辺に対するソ連監視船取り締まりというものは非常に大きな紛争を巻き起こしております。その中で、なおかつ今回の議定書によりまして強化されるということになりますと、それでは果たしてこれに対するわが国の海上保安庁としての対応策ができているのか。こういうものに対してはまだ非常に不備なようでございますけれども、この二点につきましての対応策をこの際ひとつ漁民の前に明らかにしていただきたい。     〔委員長退席、大坪委員長代理着席〕
  395. 加藤吉弥

    ○加藤説明員 御質問の第一点、裁判管轄権の問題についてお答えいたします。  御指摘のとおりこのような原則問題が毎年毎年更新されるべき議定書の中に含まれるような結果になったことは、必ずしも私どもとして満足すべき結果だとは考えておりません。しかし、これは交渉の過程においてやむを得ざる妥協としてこうなった次第でございまして、先生御案内のとおり、ソ連は非常に強く沖取り禁止という原則を打ち出してまいりまして、そのために取り締まりとか裁判管轄権という、つまり沖取りを認めることによって生ずる結果の問題は協定の中には書けない、こういう態度を強く維持したわけでございます。それに対してわが方は伝統的な北洋漁業の権利、それから将来生ずべき、場合によっては生ずることがあるべき社会的、経済的困難という理由を先方に強く主張いたしまして、その結果、今年の議定書サケマス漁獲が認められたわけでございますが、それとあわせてその漁獲議定書に違反するような場合の取り締まり、それから裁判管轄権の問題をそこに一括して書く、このような結果になったわけでございます。しかしながら、日米加議定書におきましても裁判管轄権旗国主義という原則が認められておりますし、今年も日ソでこのような原則が認められました以上、来年以降の議定書交渉に当たっても今年の交渉の結果をあくまでも貫き、裁判管轄権旗国主義という原則は維持してまいりたいと考えております
  396. 松浦昭

    ○松浦説明員 第二点についてお答えいたします。  今回の議定書におきまして裁判管轄権旗国主義にいたしたわけでございますが、これは初めはソ側は旗国主義ではなくて、向こう監視船がつかまえました場合にはソ連の裁判所で裁判をしたいということを言ってまいったわけでございますけれども、中川大臣がイシコフと非常に強く交渉していただいて、従来どおりの旗国主義を貫くことができたわけでございます。したがいまして、ソ連の二百海里内において操業いたしまして罰金を次々とソ連監視船にかけられる、こういった事態は今度の議定書では起こらないわけでございます。したがいまして、向こう側がつかまえました場合にもわが方に必ず引き渡しをいたしまして、われわれの手によりまして、つまり日本国政府の手によりまして行政処分をするか、あるいは漁業法に基づきましての公正なわが国の裁判を受けられるという形になっておるわけでございます。  したがいまして、今回はわが方の旗国主義を貫いたという点で、この議定書はむしろ高く評価されてしかるべきだというふうに考えるわけでございます。  なお、加えまして申し上げたいことは、国際的な協定を守っていきます場合のわが方の協力と申しますか、わが方の協定の遵守ということはどうしても守ってまいりたいというふうに考えておりますので、われわれの、われわれの手による行政指導というものはしっかりやってまいりたいというふうに考えている次第でございます
  397. 野村光雄

    野村委員 私も事情はよく知っておりまして、交渉の結果から見れば、ソ連側の言い分から見れば、監視体制が若干強化されたといえども、わが国において裁判ができるということをとったんだから大変な有利だった、こういう御答弁ですけれども、去年の実態から考えれば、漁民の立場から見れば裁判管轄権といい、監視の一段的強化といい、これは関係漁民にとっては大きな精神的負担というものは強いられたわけでございます。この点に対しましては、このことによって不必要なトラブル等が起きて、そのことによって漁民に大きな犠牲が強いられないような事前対策を十分に関係漁民に対しては周知徹底せしめて、こうこうこういうふうになったら違法になるぞ、こういう内容はいつも現場の漁民に周知徹底されてないところに大きな紛争が起きております原因がございますので、十分周知徹底をされることを要望いたしておきます。  次に、今回の交渉の中で大きな特徴として私たちが認識いたしておりますのは母川国主義の問題でございます。これは先ほど来各委員の方からも若干触れておりますけれども、今回の漁獲量が大きな減少を見た、見ざるを得なかった、こういうことに対しては、ソ連が改めて母川国主義というものを表に出してまいりまして、これに押されて日ソ漁業交渉が今回大きな制約を受けた、こういう特徴を今回改めて出してきたわけでございます。一応国連海洋法会議においてこういう世界の大勢とはなってきておりますけれども、この母川国主義に対してわが国としては、ソ連の言い分に対してどのように認め、また、どのように認識していらっしゃるのか。この母川国主義わが国考え方は基本的にどういうようなのかということと、今後の対応策、この二点についてお尋ねをいたしたいと思います
  398. 松浦昭

    ○松浦説明員 お答えをいたします。  大臣からもお答えをいたしましたように、母川国主義は実はわが方も認めているわけでございます。昨年の五月二日に国会の御承認を得ました漁業水域法におきましては、わが方も、わが国の河川に遡上いたしてまいりますサケにつきましては母川国主義をとっておるわけでございます。したがいまして、母川国主義がけしからぬということにはならないわけでございますが、しかしながら、母川国主義をとりつつも、その中で伝統的な漁業を行ってまいりました漁業国が、経済的な混乱あるいは社会的な混乱が起こらないようにという条項が統一草案の基本でございますので、さような点を今後とも主張してまいりたいというのがわが方の態度でございます
  399. 野村光雄

    野村委員 外務大臣にこの機会にもう一つぜひお尋ねしておきたいと思ったのですが、これは外務大臣で適当でなければまた水産庁の方でもよろしいと思うのですが、実は、日ソ漁業交渉というのは毎年こうやってこういう経過をたどって後退に後退を積み重ねている。特に二百海里時代へ入って、ソ連自身も米国ないしカナダ等の大きな制約を受けながら、そのしわ寄せが結局日本にくる、こういう新しい段階を二百海里で迎えた。そういう段階の中で、日ソ日米加とこういう対応策もありますけれども、むしろ、この四カ国、近隣国が運命共同体にあるわけですから、今後の資源の保持問題、増養殖問題等、少しでも資源を有利に増殖したり保持する、こういう基本的な問題等で四カ国がここらで一つのテーブルに着いてやはり運命共同的な立場の中でお互いにざっくばらんに将来の漁業のあり方に対しては話し合う必要があるのじゃないか、私はこういうように思うのですが、外交的な立場の中で、外務大臣としては、この点に対してはどのようにお考えになっていらっしゃるのか、お聞きをしたいと思う。
  400. 園田直

    園田国務大臣 いまの御質問、なかなかむずかしい問題ではございますが、ソ連イシコフ漁業大臣あたりはいまの御発言のようなことを言っておるようでございます。しかし、御承知のとおりに、二十数年来この二つの異なった枠組みの中で今日のようなことが出てきておるわけでありまして、いまのところはむしろ二つの基盤の違った枠組みの中で日本漁業問題を努力していくことがいいのではなかろうか、このように私は考えておるところで、いまの御提案も今後十分研究はしてみますが、まだ、みんなが寄って一つのテーブルに着いてやるということは果たしていいことかどうか、なかなか問題が多いと考えているところでございます。     〔大坪委員長代理退席、委員長着席〕
  401. 野村光雄

    野村委員 高度な外交問題となりますと、私どもが考える以上のむずかしいものがあるのかと思います。しかし、私は、こういう近隣国が同じような漁場を目指しての今後の課題でありますから、十分ひとつ前向きに検討していただきたいものだ、こういうことだけを御要望申し上げておきます。  次に、中川大臣が今回の日ソ漁業交渉から帰ってまいりまして、サケマスの沖取りについては今後五カ年間は継続できると思っていると、まあ、思っているですから、継続できるともできないとも、これはとり方によっては両方、非常に便利な言葉を使っていらっしゃるのだけれども、われわれの立場から、印象的には継続できるようになったんだ、こういう受け方をしているわけですけれども、この具体的根拠と見通しにつきまして御答弁いただきたいと思います
  402. 松浦昭

    ○松浦説明員 御答弁申し上げます。  中川大臣が何度も繰り返してただいまの御答弁をいたしたわけでございますが、それは、中川大臣がイシコフ大臣交渉されましたときの印象として、そういうお考えをお持ちになったということでございます。これは、私どももそばについておりまして、さような印象を持って帰ってまいったわけでございますが、これは、中川大臣もおっしゃっておられますように、今後の資源状態の変動あるいは国際的な協定の遵守関係、こういったものに問題が起こるというようなことがございました場合には別でございますけれども、いまのような状態が続いております限りは、資源の方についても十分な措置を図った次第でありまして、したがいまして、一年間の議定書でございますが、毎年毎年今回の協定のもとに協議をしていくことによって、漁獲の量その他の規制措置を今後とも五年間は続けていけると思う、こういうことを申し上げた次第でございます
  403. 野村光雄

    野村委員 そういたしますと、中川大臣の発言は、余り期待できるものではないんだ、このことで余り期待していると期待外れになるぞと、こういう警告として受けとめておく、こういうことでよろしいのでございますね。
  404. 松浦昭

    ○松浦説明員 さようなことではございません。むしろ、五カ年の間継続できると思うということが前提でございまして、さようなことでまた今後とも取り組んでいかなければならぬという基本的な姿勢でございます。しかしながら、万が一資源の状態等において変動があり、あるいは国際的な問題がいろいろと起こりますと、たとえば協定の遵守等において起きますと事は違いますということを申し上げておるわけでございまして、あくまでも、これは将来とも続け得るということが前提になっての御答弁というふうにお考えいただきたいと思います
  405. 野村光雄

    野村委員 最後に一点だけ御質問いたします。  昨日の質問を通しまして明らかになってまいりましたことは、大幅にわが国の北洋サケマスの宝庫と言われる漁業水域から締め出された、非常に制約された中で四万二千五百トンをとらなければならなくなった。それでは、このサケマスの宝庫とも言われる水域から締め出されて、いよいよこの区域でとってもいいぞと指定された区域の中では、四万二千五百トンの割り当てをとるということに対しては一〇〇%自信がないような状態の御答弁をきのうしておりました。それで、ことしようやくとれるようになりましたこの区域での資源の状態はどういう状態なのか。また、今日までのこの区域内での漁獲量の実績はどういう実績をもってきているのか。またあわせて、さらにきのうの御答弁をもう一回確認をしてみたいと思います
  406. 松浦昭

    ○松浦説明員 確かに、先生御指摘のとおり、今回規制が新たに加わりました禁漁区、いわゆる三角水域と申される水域は、非常に重要な水域でございまして、この水域におきまして漁獲ができませんと相当に操業に支障を来すということは事実でございまして、しかるがゆえにまた中川大臣もがんばられたということでございます。しかしながら、幸いにしてその後漁期あるいは漁区についてかなりの相手方の譲歩も得ました状態になりました。特に、この北の公海部分から南の四十四度のところまでの水域が縦にずっとあいております。そういたしますと、東側から来るサケは、先生御承知のとおりに、サケはずっと移動してまいりますので、この水域におきまして漁獲を行いますれば、十分にこれは漁獲ができる、また、南からの北上の分も、うまく捕らえれば、これは十分に漁獲ができるということで、私どもは、四万二千五百トンの漁獲を達成できることについて自信を持っております
  407. 野村光雄

    野村委員 それでは、時間でございますので、以上をもって私の質問を終わります
  408. 永田亮一

    永田委員長 渡部一郎君。
  409. 渡部一郎

    ○渡部(一)委員 本委員会理事会における打ち合わせの途上、ただいま議題となっております二つの案件のうち、いわゆる日ソ漁業協定の採決に関しては、当外務委員会の伝統的な審議のあり方に関するさまざまの合意の方向と違うものがあるのではないかという不信を強く抱いておるものであります。すなわち、この協定は、漁業分野における協力に関する日本国政府ソヴィエト社会主義共和国連邦政府との間の協定一つと、北西太平洋における千九百七十八年のさけます漁獲手続及び条件に関する議定書の、まさに二つの協定を論ずるものだからであります。もちろん、この二つは同時に交渉され、相補いつつ日ソ間の漁業に関する大きな分野を構成しているわけではありますけれども、先ほど園田大臣自身が、協定に関しては賛成であるが議定書に関してはきわめて遺憾であると表明されましたが、私もその感を深くするものであります。  そうすると、本採決に当たり、協定に対しては賛成、議定書に対しては反対という意向を表示したい党があったとしても、決してそれはとめるべき態度ではないと思います。その点を考慮するならば、こうしてこの二つの協定を一案件にして持ち込んだということは、少なくとも外務委員会の審査権に対して重大な干渉をしたものではないか、政府はこの点をもっと慎重に考えるべきではないか、私はそう思うのであります。この辺は従来改善されつつあった方向でありますが、現在この審議の前提に当たるこうした議論に対してどういう見解をお持ちか、まず担当官からお伺いしたいと存じます
  410. 村田良平

    ○村田政府委員 渡部委員指摘のとおり、現在御審議をいただいております協定及び議定書は、それぞれ独立の承認条項を持っておりますので、形の上では別個の条約でございます。従来二つあるいはそれ以上の複数の条約を一括して国会に御提出して一括して御承認を得るという慣行がございましたが、この慣行につきまして、渡部委員その他の委員から、当委員会あるいは予算委員会等におきまして、いろいろな御質問あるいは政府に対する御批判を受けたわけでございます。私どもといたしましても、法律的あるいは政治的にきわめて密接な関係のある複数の条約を一括して御提出する必要があるという、そういう事態があり得るという認識には立ちつつも、決してこのような慣行を乱用してはならない、原則としては一条約案件とすべきであるという認識に立ちまして、特にこの両三年間はこの提出方式につきましても非常に慎重に検討し、そしてただいま御指摘のありましたような方針に沿って処理をしておったわけでございます。  今回、この日ソ協定及び議定書を一括案件といたしましたにつきましては、その方針を決めます前に私どもとしても慎重に検討したわけでございますけれども、以下申し述べますような理由によりまして、例外的にこれは一括承認案件として御提出させていただいたわけでございます。  まず第一点は、法律的な側面でございますけれども、この議定書協定の第三条を受けておるわけでございまして、日ソ間の協力の具体的な措置を定めるために毎年作成されかつ署名される議定書をつくる、こういうことになっており、また議定書の前文におきましても、この議定書協定に基づいておるということが明瞭に書かれておるわけでございまして、いわばこれは主従関係と申しますか、親子関係条約であるわけでございまして、その附属議定書というタイトルではございませんけれども、従来、著作権条約及びその附属議定書等を一括して御承認をいただいたそういうのと類似した関係に法的にあるわけでございます。  それから、より重要なことは実質面でございまして、渡部委員御案内のとおり、交渉の当初から、わが国といたしましてはソ連との長期漁業協力サケマス漁獲というものは不可分のものである、車の両輪であるという方針交渉をしてまいったわけでございまして、日本政府としては、本来ならば長期協定の中にサケマス漁業に関する規定もその長期協定の一環として規定されるということを念願してそのように交渉したわけでございます。たまたま交渉の結果といたしましては議定書が独立の文書になりましたけれども、そういった意味で、この議定書は長期協定といわば一体をなすものというふうに実質的にもお考えいただきたいわけでございます。  それから、第三点の一番重要な点でございますけれども、そもそも日本政府あるいは日本国の基本的な認識といたしまして、公海におきますサケマス漁業と申しますものは、あくまでソ連との、長期漁業協力の一環であるという姿勢は、この際、国内のみならず国外に対しても明確に打ち出す必要があると思うわけでございまして、この両件を別の案件として扱うということは、この両者の緊密な認識に関する日本国の姿勢というものを問われることにもあるいはなるかという判断をいたしまして、はなはだ例外でございますけれども、今回はこのようにさせていただいたということでございます。  しかしながら、先ほども申し述べましたように、従来御指摘いだだいております点は私ども十分心得ておりまして、今後ともこのような一括提出というような慣行は、よほど必要なかつ例外的なとき以外は決して乱用しないという方針で臨む所存でございます
  411. 園田直

    園田国務大臣 いま御注意をいただきまして事務当局からお答えをいたしましたが、例外的な場合に、特に法的、政治的に密接な関連のあるもの二つを一緒にお願いしたわけでありますけれども、政府としては、いかなる場合にも国会の条約審議権を損なわないように、渡部委員の御意見等も十分配慮し、従来国会で表明された御意見もあることでございますから、一条約案件ということを原則として今後やる所存でございます
  412. 渡部一郎

    ○渡部(一)委員 ただいま一応の御説明はいただきましたが、今回、ソビエト政府との交渉の経緯を踏んまえて例外的な措置をとったことをお述べになりました。私は、例外的な措置であると弁明されるならば、それはそれで了承したいと存じます。しかしながら、ただいまのお話の中にもありましたように、この問題については私どもは、議定書に表示されている漁獲数量あるいはさまざまな制限措置に、きわめて不快の念を持っているわけであります。そうすると、まだ採決の表示をする以前の段階でありますが、その漁獲量についてはなはだ不満を持っている政党あるいは国会議員がここにおったとすれば、彼はその議定書の数字に対して不満なためにどういう採決をしたらいいか、これはきわめて奇妙なことになるわけであります協定は賛成だが議定書は反対であるという場合には反対しなければならないのか、あるいは賛成しなければならないのか、これは国会審議の上でまことに微妙な奇妙な立場に、当人をあるいはそのグループを追いやるものであります。これは棄権したとしてもおさまらない状況が出てくるわけであります。  しかも、本協定の審議に当たりましてお話を伺っておりますと、議定書は来年また結ばれるものであり、その議定書については単独に提出される形になろうということであります。そうすると、協定議定書との分離は、来年においては形の上にもあらわれてくるという状況が生まれてしまう。まことに奇妙な状況と申しますか、論旨一貫せぬ状況が生まれていると思います。  したがって私は、例外的と言われたやり方、今回非常なスピードで本件を上げなければいけなかったという事情、対ソ的に二個の協定を一括した日本側の立場を貫徹するためにこうした議論をされたという点については、私はそのような説明ならばそれは認めざるを得ないと思いますが、重ねてそうした事態については今後、十分慎重なお取り扱いと言うか、今後はこうした問題を残すやり方というものをぜひとも改めていただきたいと望みます
  413. 園田直

    園田国務大臣 大臣から重ねておわびをしておきますが、理由のいかんにかかわらず結果としては審議権を害するようなことになりましたことを深くおわびを申し上げて、今後は十分注意をいたします
  414. 渡部一郎

    ○渡部(一)委員 きょうの夕刊によりますと、ソ連漁業相が新聞記者との会見の中で、北洋のベニ、シロを中心とするサケマス資源の荒廃は日本漁船による沖取りと未成熟魚などの乱獲が原因で事態はきわめて深刻だ、ソ連漁業問題専門家は、日本漁船による海上での魚獲の全面中止を強く勧告している、ということを述べているようであります。  当委員会の審議を通して、私たちは乱獲問題というものにはあえて触れませんでした。あえて触れておりませんけれども、日本の新聞にはそれがかなり報道され、漁業交渉の冒頭に先方から持ち出され、わが国代表団はきわめて困難な立場に追い込まれたやに伺っております。したがって私どもは、その実態をここで論議するに忍びませんが、今後こうした問題について農林省はどういう態度で臨んでいかれるのか、条約あるいは協定というものは、それを結んだら最後、確実に誠意を持って実行しなければならないし、その協定を遵守しなければならない、これは論を待たぬところであります。戦前のわが国外交がしばしば、諸外国と協定あるいは条約を結びつつも、これを白紙に、あるいは脱法しあるいはこれを空洞化させながら第二次大戦の方へ向かって走り続けたということは、わが国にとって痛ましい教訓であり、新憲法の中においても、諸規定において諸外国とのさまざまな協定は守ること、遵守するとしているわけであります。それであるにもかかわらずこうした非難を浴びているということは、一体よいのか、悪いのかは論を待たぬところであります。したがって、今日までの問題については、私はあえて触れようとはしません。しませんが、今後、この協定に盛られた内容について、漁業問題の監督官庁には真摯な取り組みが必要ではなかろうか、そうでなければ日本の外交全体が疑われる起因になるのではないか、こう思いますがいかがでございますか。
  415. 森整治

    ○森(整)政府委員 御指摘のとおりでございまして、もちろんいわゆる乱獲という言葉の意味につきましていろいろな言葉の使い方があったかと思います。新聞の報道につきましても、私は、そういうことがしばしばいろいろな意味で使われていると思うのでございますが……(渡部(一)委員「そういう末梢的なことを言うておるのではない。何を言うとるんだ。協定を守るか守らぬか聞いているんじゃないか。何を勝手なことばかり言っているんだ」と呼ぶ)本日のイシコフの談話につきまして、資源保護という観点から非常に熱心な話し合いが行われまして、その上で協定が結ばれた。それにつきまして、先生御指摘のように、今後その実施に当たりましては、厳正な態度と注意をもって資源の保護ということに当たっていくように、われわれとしても努力をしてまいりたい、こういうふうに考えております
  416. 園田直

    園田国務大臣 所管ではありませんが、漁業外交を進める上の大事な問題でありますから、私からも意見を述べさせていただきます。  新しい二百海里時代が来たという根源は、それぞれ沿岸国が、資源有限ということで、魚群というもの、魚源というものの確保、そしてこれを増大をしていくということから出てきておるわけであります。したがいまして漁獲する方は協定なり議定書をよく守って、いやしくも乱獲とかあるいは幼魚をとっておるとか言われることがないばかりでなく、進んでその地域の魚源の増大に寄与するということが漁業外交を進める第一歩であると考えますから、ただいまの御発言の趣旨は私から責任を持って農林大臣にも相談をし、よく御発言の意のあるところを伝える所存でございます
  417. 渡部一郎

    ○渡部(一)委員 私は、いまの外務大臣のお言葉のとおりなら、まことにごもっともな御意見であり、決意の表明と評価したいと存じます。  ただ、農林省に重ねて言いますよ。うわさによれば、あなたがよけいなことを言ったから私は言うのですが、シロザケをとって、シロザケというのはお金にならないからというので海洋へ投棄して、その投棄されたところに無数のカモメが群がっておる。そうして日本漁船はさらにベニザケをとる。そうしてシロザケを片っ端から投げ捨て殺していく。これは何事かという批判はアメリカの沿岸において、カナダの沿岸においてすでに実見され攻撃されたところであり、漁民の対日感情をきわめて悪化させた原因として指摘されたところであります。そうでしょう、御存じでしょう。  ところがいま同じことが言われ、そしてそれに対してうろたえるのみで、ろくろく弁明をせず、そして適切な態度をとらないとしたら、これは何と評価するか。私はそういうことを一々黙認し放置していくことが、さらに厳しい漁獲規制を招いた大きな原因であると言わなければならぬから申し上げておるのです。だから、私は実態がどうかを論戦するのを好まない。いまここには不確かな材料しかないはずです。だから今後において適切な態度をもって、わが国は一たん外交交渉場裏において交渉したことについては厳に守っていく、それが平和外交としての日本の立場を堅持し、他国に今後の信を問うゆえんになるのではないか。結んだ協定を片っ端から破るのではなくて、結んだ約束というものは、一たん日本の外交官が結んだからには厳守していくという厳格なる態度があって、相手国の違法を責め追及できるのではないか。協定を破りながらやることができるのは超軍国主義しか存在しない、そんなものは。超軍国主義国家であったとしても、協定を片っ端から破ったことによる国際世論の反撃というものははかり知れないマイナスをこうむる。だから、私の言うことをわかっていただかなければ、あなた方のやっていらっしゃることはさらにマイナスを招くから私は申し上げておるのです。  外務省の方はよくおわかりのはずだ、そんなことは、約束したことは守らなければならぬということは。ところが、水産庁の皆さんがわかっているのかわかっていないのか、私は今回の交渉を見て、はなはだ不信かつ不十分の感覚を受けるので申し上げたのです。そうしたら、乱獲という言葉が適当であるかどうかなんて、そういう答弁はするべきでない。私は、そこのところをもう一回、決意を持っていまの外務大臣の表明にこたえていただきたい。
  418. 森整治

    ○森(整)政府委員 私の発言で大変申しわけない発言をいたしたようでございまして、おわび申し上げます。先生が御指摘になったことに私お答えするつもりでおったのでございますけれども、その点私の言葉が足りませんでしたらお許しをいただきたいと思いますが、やはりこれだけのいろいろな交渉の過程でいろいろな問題が出てまいります。これを今後しっかりと守って、また漁民にもそういう指導をしていくということは当然のことだと思っております。この際、深く反省をしながら、万遺憾のないような指導体制をとってまいりたい、こういうふうに考えておる次第でございます
  419. 渡部一郎

    ○渡部(一)委員 終わります
  420. 永田亮一

  421. 津川武一

    津川委員 私は昨日、農林水産委員会中川農林大臣に、先ほども中川農林大臣に今度のことで質問いたしまして、今度は外務大臣質問が続きますが、その前に一言水産庁に、今度の議定書協定で、母船式独航船はどのくらい減船になりましょうかしら。
  422. 松浦昭

    ○松浦説明員 お答えをいたします。  午前の農林水産委員会でもお答えをいたしたわけでございますが、いまのところ大臣が御答弁申し上げておりますのは、三割程度ということを申し上げたわけでございます。これを基準にしてまいりますと、母船式独航船減船が七十三という数字になります。しかしながら、果たしてあの海域の中で四母船を入れて操業させることが適当であるかどうかということは十分に考えてみなければならないことでございまして、その場合には、母船三に減船する場合も検討の対象としなければいかぬ、こういうふうに考えておるわけでございます。その場合には独航船の隻数は、これをつけてまいりますには、一母船当たりやはり一定の限度がございます。そのような場合には、この減船隻数が若干上回ることがあるということがございます。これはもちろん母船を三にするかそれとも四にするかということでございまして、その検討の結果を待ちまして決定をいたしたいというふうに考えておる次第でございます
  423. 津川武一

    津川委員 中型流し網はどうなります
  424. 松浦昭

    ○松浦説明員 四十八度以南で操業を行っております流し網につきましては、現在の隻数が二百九十八でございますので、三割程度の減船ということで、三割といたしますと八十九の減船になります
  425. 津川武一

    津川委員 そういう点で、漁船に一つの変化が出てくる。水産庁のこれから漁業する漁船に対する認可の変化、いろいろなものが出てまいりますが、そこで、母船から離された独航船は、これから、基地から出漁させるようにすべきじゃないかというふうに思うわけであります。これが、私たちが今度のことで前から考えていることでございますが、これはひとり私たちだけではないのです。自民党の水産部会長をした人の私案で見ますと、その人の私案は「さけます漁業規制措置について」という私案です。こう書いてあります。「母船方式は、母船が漁場の中心点に位置して傘下の独航船を周辺漁場に配しこれを駆使する高能率漁法がその特質であるが、その反面、母船経費が多額にのぼるため所属独航船の精算手取は基地」、これは漁港です。「基地から直接出漁する中型流し網漁船に比較して相当の格差があるといわれ、そのために母船所属独航船から基地出漁方式に改めるようとの要望が強かつたものである。」こういうふうなことを自民党の水産部会長が言っているわけであります。したがって、新しいこれからの漁業の許可制度はこうした見地から再検討すべきと思うのです。この点はいかがでございますか。
  426. 森整治

    ○森(整)政府委員 そういう御意見がかねてからございますことにつきましては、十分承知をいたしております。また一つの御見識なり御見解、御意見だと思います。ただ、出漁が迫っておる段階でそういう問題をいま取り上げることにつきましては、かえって非常に混乱を起こすというふうに考え、この問題は先の問題として検討にさしていただきたい、こういうふうに思います
  427. 津川武一

    津川委員 次は、この漁業協定をめぐる領土問題でございます。  報道によると、これは二月十七日付の東京新聞ですが、ソ連協定案の全文が報道されたわけであります。それの今度の日ソ漁業協定案によりますと、「第五条 本協定はいかなる規定も、第三次国連海洋法会議において検討されている海洋法の諸問題についても、相互の関係における諸問題についても、いずれの政府の立場または見解をも害するものとみなしてはならない。」こう書いてありますが、これが今度提案されたソ連協定案の全文だというふうに報道されておりますが、こういうことがございましたでしょうか。
  428. 加藤吉弥

    ○加藤説明員 ただいま先生が引用されました東京新聞に書かれているような趣旨規定を提案した事実は全くございません。
  429. 津川武一

    津川委員 ないとすれば、これは誤報だと言い切れるわけでございますか。
  430. 加藤吉弥

    ○加藤説明員 完全な誤報でございます
  431. 津川武一

    津川委員 次に、日本側の立場でございますが、今度の協定を審議する中で領土問題、こういうことを取り上げた事実はございましょうか。それとも、この協定の案文の中から最初から全然問題にしないで落としておったのでございましょうか。この点はいかがでございますか。
  432. 加藤吉弥

    ○加藤説明員 ソ連側からいわゆる領土問題について直接間接に話を出したことは一切ございません。
  433. 津川武一

    津川委員 日本側からはどうです。
  434. 加藤吉弥

    ○加藤説明員 日本側からも出しておりません。
  435. 津川武一

    津川委員 そこで外務大臣、これは非常に大事なことであって、やはりこの協定の中に、議定書の中に領土問題が絡んでいると私は思っているのですが、なぜ日本は領土問題を問題にしなかったか、この点を答えていただきます
  436. 園田直

    園田国務大臣 昨年の漁業交渉では私もその一端を受け持ったわけでありますが、確かに領土問題が絡んでなかなか処理に困ったわけであります。幸い今年は両方からこの問題が出ませずに、先ほど出ました日中問題など政治的問題は一切絡まないで、実務的な雰囲気の中でこの協定が行われたわけであります。しかしながら、やはりこの領土の問題は、われわれが主張しているように四島返還の問題を解決して、一日も早く平和条約を結ぶことが今後の交渉に有利であることは事実であります。今回は両方からそれが出されなかったという事実を喜んでおります
  437. 津川武一

    津川委員 協定なり議定書なりにこの領土問題が何にも出ていないのでございましょうか。それとも出ておりますか。
  438. 加藤吉弥

    ○加藤説明員 協定本文及び議定書において領土問題は出ておりません。
  439. 津川武一

    津川委員 今度交換された議定書、その2で、「北西太平洋の距岸二百海里水域外側水域におけるさけます漁獲に関する共同規制措置は、次のとおりとする。」とあって、「(1) 東側は東経百七十度の線、南側は北緯四十四度の線並びに西側及び北側はソヴィエト社会主義共和国連邦及びアメリカ合衆国の距岸二百海里水域の線をもつて囲まれる水域におけるさけます漁獲は、禁止される。」明らかに領土で線を引いておる。こういうことに対して日本はなぜ領土を問題にしなかったのか。私は、日本も領土を問題にして線を引くならば、歯舞、色丹並びに千島列島の周辺においてもう少し主張ができたし、有利にいったんじゃなかったかと思います日本があえて領土問題をこの協定議定書の中で問題にしなかったのは、非常に弱い立場に追い込んだんじゃないかというふうに思われます。今度の協定議定書から領土問題を抜くことができなかったのに、日本はあえてこれに触れなくて、あえて立場を不利にしたんじゃないかと思いますが、この点の考え方、もしまたこれに対する批判などということがありましたらお知らせいただきます
  440. 加藤吉弥

    ○加藤説明員 先生御指摘のとおり、協定の第三条、それから議定書の第二項に「距岸二百海里」というような表現が書いてございます。しかし、これは一般的な表現でございまして、境界線を具体的に画定したものであるとは解釈しておりません。したがって、この表現が領土問題、わが国北方四島の問題に関係していると私どもは考えておりません。
  441. 津川武一

    津川委員 協定の三条以外はこの二百海里、領土問題の内と外のものが全部関係しているのです。これはソ連の方はちゃんとそういうようなかっこうで言っているんで、日本だけが主張しなかったのに対して、やはり何か領土問題に対するこちらの主張の弱さがある、こういうふうに感じるわけでございますが、外務大臣どうでございます
  442. 加藤吉弥

    ○加藤説明員 先ほど外務大臣からも御答弁がございましたとおり、昨年の漁業交渉において先方が領土と魚を絡めてきて、そのために長い交渉になった経緯は、先生よく御承知のとおりでございます。その結果についても先生御案内のとおり日ソ協定、つまりモスクワ協定でございますが、その八条、それからソ日協定東京協定の第七条におきまして、相互間のいかなる問題についても立場を害さないということになっておりまして、領土と魚は切り離す、わが国の領土に関する主張はこの漁業協定によって何ら影響されないという留保をもって本問題を解決したとおりでございます。  したがって、今回の交渉においてその問題が蒸し返されるとか、その問題がさらに新たな角度から議論されるといったような事実は全くございませんでした。
  443. 津川武一

    津川委員 ソ連は、やはり至るところで領土問題が問題になるような協定議定書をつくって、日本はそれに文句一つ言わないので、かなり安心しているんじゃないでしょうか。日本くみしやすしというふうに考えている。私は、こういう領土問題に対する日本の立場を今度の協定議定書はかなり弱めたんじゃないかと思います。私たちは領土に対して、千島列島と歯舞、色丹が日本の歴史的な領土で、その早期返還が長年にわたる正当な、国民的な要求であると考えております。したがって、この点はやはりあらゆる機会において、特に正式の外交交渉において主張すべきだったと思っております。  また次の問題は、サンフランシスコ条約第二条(C)項の千島列島関係部分の廃棄を関係各国へ通告することによって、千島列島に対する領有権を主張し得る国際法上の根拠を確立し、その上で対ソ交渉に当たるべきだ、こんなふうにも考えているわけであります。  三つ目には、北海道の一部であることが明らかな歯舞、色丹両島については、日ソ共同宣言で返還が合意されております。この速やかな返還を促進するためにも、将来にわたっていかなる軍事基地をも設置しない明確な態度を表明すべきだと考えているわけであります。私はこういう立場から、今度の交渉に当たって領土問題は抜くべきものではなかったということを申し上げ、あれでよかったのかなという感じを強くするものでございます。再度外務大臣の答弁を求めます
  444. 園田直

    園田国務大臣 国際的にこの問題を宣明すべきだということは、御意見のとおりだと思います。なお、返還された場合はどうこうということは、これは返還という話が起きた場合の条件でございますから、いまこちらから申し上げるわけにはまいりません。
  445. 津川武一

    津川委員 大事な協定でございますが、時間もなくなりましたので、この協定議定書が結ばれるに当たって、私たちが考えてこれからやるべきことを申し上げて、質問を終わります。  一つは、漁業区域の縮小、漁獲量の削減に伴い、北洋サケマス漁場の許可制度を再検討し、母船式操業の縮小と中小漁業者への優先的な操業許可を図ることとともに、これを可能ならしめるために、米国、カナダと必要な交渉を行うこと。また、操業規模の適正化や、協定条約の遵守等により、漁業資源の悪化をもたらし国際的にも不信を買っている乱獲的漁獲の根絶を図るよう指導し、明年以降の漁獲量の確保、禁漁区の縮小、撤廃の実現のために条件を整えること。  二つ目には、昭和五十二年六月六日の衆議院外務委員会決議にかんがみ、日ソ漁業協力協定日ソ間の未解決、懸案である領土問題に何らかの影響を与えるものでないということを明確にするとともに、将来の真に公正な海洋秩序の確立を展望し、日ソ米加四カ国によるサケマスなどの漁業資源の保護、増養殖、調査、有効利用のための共同管理方式の実現を図るよう積極的なイニシアチブを発揮すること。  三つ。漁獲量の削減等に伴う減船及び水産加工関連業者の休業、操業短縮に対し、国の責任で適正な補償を行うこと。また、漁業水産関連業種で働く労働者の雇用安定、失業救済を図るため、漁業離職者臨時措置法、特定不況業種離職者臨時措置法に基づく対策を強化拡充すること。  四つ目には、サケマス漁獲量の減少等に便乗したいわゆる魚転がしや魚価つり上げを規制し、水産物の適正な価格による安定供給を確保すること。  五つ目には、漁業政策の根本的転換を図り、サケマスの養殖の積極的拡大を含め、沿岸、沖合い漁業を重点とする漁業の多面的振興を図ること。  時間があればこれ全部質問すればよかったのですが、ないので、ここで終わります。もし大臣にこれに所見があれば聞かしていただきます。なければ、これで終わります
  446. 園田直

    園田国務大臣 委員長から発言を許していただきましたので、先ほど土井先生から、この議定書、毎年変わるんだ、そこでこれは来年度議定書をつくった場合に国会の承認を得るのか、こういう御質問に対し、私の答弁が慎重過ぎて裏側からお答えをいたしましたので、さらに補足をして答弁を変更したいと考えております。  この議定書は、公海水域で共同取り締まり規定がございますので、その結果、わが国の国民が公海上において漁獲するに当たってソ連取り締まり、拿捕、臨検等にも服せしめられることになるわけでありますから、国民の権利義務、こういうものに関係がある、よって議定書承認を願っておるわけであります。  そこで、予想でありますけれども、明年度の議定書もやはりこの権利義務に関する同様の議定書になるものと想像されますので、明年度の議定書も国会に承認を受けることになるでありましょうと、こういうことに変えさせていただきたいと存じます
  447. 土井たか子

    ○土井委員 ただいま外務大臣からの御発言がございましたが、先ほど質問中に一部留保をした質問から、まずはこのことに対するお答えをいただくのが順当であったであろうと私はいま考えております。それからいたしますと、先ほど当委員会における同僚の渡部委員の方からの質問に、本来二件として提案されるべき案件が一件として提案されていることに対して外務大臣は遺憾の意を表明されました。その点から考えても、当然議定書に対してはいかような、ただいまの理由に対する御説明があってもなくても、来年は当委員会に対して審議にかけられるというのが当然であろうと思います。また、いまその協定内容について見ました場合にも、「この協定は、それぞれの国の国内法上の手続に従って承認されなければならない。」という一項があるのと同様に、議定書についても、議定書内容では「それぞれの国の国内法上の手続に従って承認されなければならない。」と明記の規定がございます。こういう関係からいたしましても、来年再来年、毎年作成されることに従って議定書は国会の審議を必要とする、このように考えますが、再度外務大臣からの御答弁をひとつお示しいただいて終わりにしたいと思います
  448. 園田直

    園田国務大臣 そのとおりでございます
  449. 土井たか子

    ○土井委員 終わります
  450. 永田亮一

    永田委員長 これにて両件に対する質疑は終了いたしました。     —————————————
  451. 永田亮一

    永田委員長 これより両件に対する討論に入るのでありますが、別に討論の申し出もありませんので、順次採決いたします。  まず、漁業分野における協力に関する日本国政府ソヴィエト社会主義共和国連邦政府との間の協定及び北西太平洋における千九百七十八年のさけます漁獲手続及び条件に関する議定書締結について承認を求めるの件について採決いたします。  本件は承認すべきものと決するに賛成の諸君の起立を求めます。     〔賛成者起立〕
  452. 永田亮一

    永田委員長 起立総員。よって、本件は承認すべきものと決しました。  次に、北太平洋公海漁業に関する国際条約を改正する議定書締結について承認を求めるの件について採決いたします。  本件は承認すべきものと決するに賛成の諸君の起立を求めます。     〔賛成者起立〕
  453. 永田亮一

    永田委員長 起立総員。よって、本件は承認すべきものと決しました。     —————————————
  454. 永田亮一

    永田委員長 この際、大坪健一郎君、土井たか子君、渡部一郎君、青山丘君、津川武一君及び伊藤公介君より、両件に要望決議を付すべしとの動議が提出されております。  提出者より趣旨説明を求めます。渡部一郎君。
  455. 渡部一郎

    ○渡部(一)委員 私は、自由民主党、日本社会党、公明党・国民会議、民社党、日本共産党・革新共同及び新自由クラブを代表して、ただいま議題となりました動議について、その趣旨の御説明をいたします。  案文の朗読をもって趣旨説明にかえさせていただきます。  案文を朗読いたします。     漁業分野における協力に関する日本国政府ソヴィエト社会主義共和国連邦政府との間の協定及び北西太平洋における千九百七十八年のさけます漁獲手続及び条件に関する議定書締結について承認を求めるの件並びに北太平洋公海漁業に関する国際条約を改正する議定書締結について承認を求めるの件に対する要望決議(案)   このたび日ソ及び日米加漁業交渉において、さけます漁獲に厳しく制限を受けたことにより、伝統的北洋漁業に従事してきた我が国水産業界及び国民が蒙つた影響は甚大である。   よつて政府は、次の諸点に留意して早急に特段の措置をとるよう要望する。  一 漁獲高激減に伴う救済措置、消費者保護の立場に立つ諸施策、漁業方式の検討等万全の措置を講ずるよう努めること。  二 次年度以降の折衝において資源保護に努めることはもちろんであるが、本年度漁獲量を下回らぬよう、また、禁漁区を拡大せぬよう努めること。  三 さけます等の漁業資源の保護、増養殖、調査、有効利用を図るなど、新しい漁業秩序の確立を期すること。  四 漁業協力協定の運用に当たつては、前三項の趣旨を生かすこと。 以上であります。  何とぞ委員各位の御賛同をお願いいたします
  456. 永田亮一

    永田委員長 以上で趣旨説明は終わりました。  採決いたします。  本動議に賛成の諸君の起立を求めます。     〔賛成者起立〕
  457. 永田亮一

    永田委員長 起立総員。よって、両件に要望決議を付することに決しました。  この際、ただいまの要望決議について政府の所信を求めます外務大臣園田直君。
  458. 園田直

    園田国務大臣 ただいまは、協定並びに議定書について、出漁期等関係上、無理な日程で御審議をお願いし、また、いろいろ御注意を賜った点等もありましたが、委員各位には熱心に御審議を願い、御承認いただいたことを厚く御礼を申し上げます。  ただいま採択されました決議は、本件決議が、委員会の全会一致をもって採択された決議であることを十分踏まえ、今後の諸問題に対処してまいりたいと考えます。  まことにありがとうございました。     —————————————
  459. 永田亮一

    永田委員長 お諮りいたします。  ただいま議決いたしました両件に関する委員会報告書の作成等につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  460. 永田亮一

    永田委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決しました。     —————————————
  461. 永田亮一

    永田委員長 次回は、明後二十八日委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。    午後六時二十四分散会      ————◇—————