運営者 Bitlet 姉妹サービス
使い方 FAQ このサイトについて | login

1978-04-14 第84回国会 衆議院 外務委員会 第14号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和五十三年四月十四日(金曜日)     午前十時四十二分開議  出席委員    委員長 永田 亮一君    理事 大坪健一郎君 理事 奥田 敬和君    理事 塩崎  潤君 理事 毛利 松平君    理事 井上 一成君 理事 渡部 一郎君    理事 渡辺  朗君       石原慎太郎君    稲垣 実男君       川田 正則君    木村 俊夫君       北川 石松君    鯨岡 兵輔君       小坂善太郎君    佐野 嘉吉君       竹内 黎一君    中村 弘海君       渡辺 秀央君    河上 民雄君       久保  等君    高沢 寅男君       中川 嘉美君    草川 昭三君       柴田 睦夫君    伊藤 公介君       加地  和君    大柴 滋夫君  出席国務大臣         外 務 大 臣 園田  直君  出席政府委員         外務政務次官  愛野興一郎君         外務省アジア局         長       中江 要介君         外務省アジア局         次長      三宅 和助君         外務省条約局外         務参事官    村田 良平君         文化庁長官   犬丸  直君         文化庁次長   吉久 勝美君         運輸省船員局長 高橋 英雄君         海上保安庁次長 向井  清君  委員外出席者         内閣総理大臣官         房参事官    赤松 良子君         外務省アジア局         中国課長    田島 高志君         外務省条約局外         務参事官    山田 中正君         外務省国際連合         局外務参事官  小林 俊二君         文化庁文化部著         作権課長    小山 忠男君         運輸大臣官房観         光部長     杉浦 喬也君         運輸省海運局次         長       山元伊佐久君         運輸省海運局監         督課長     棚橋  泰君         運輸省船員局労         働基準課長   豊田  実君         外務委員会調査         室長      高杉 幹二君     ————————————— 委員の異動 四月十四日  辞任         補欠選任   中山 正暉君     北川 石松君   福田 篤泰君     中村 弘海君   福永 一臣君     渡辺 秀央君   正木 良明君     草川 昭三君   松本 善明君     柴田 睦夫君   伊藤 公介君     加地  和君   楢崎弥之助君     大柴 滋夫君 同日  辞任         補欠選任   北川 石松君     中山 正暉君   中村 弘海君     福田 篤泰君   渡辺 秀央君     福永 一臣君   草川 昭三君     正木 良明君   柴田 睦夫君     松本 善明君   加地  和君     伊藤 公介君   大柴 滋夫君     楢崎弥之助君     ————————————— 四月十二日  日本国イラク共和国との間の文化協定締結  について承認を求めるの件(条約第八号)(参  議院送付)  船員職業上の災害防止に関する条約(第百  三十四号)の締結について承認を求めるの件(  条約第九号)(参議院送付) 同日  日ソ平和条約即時締結に関する請願角屋堅  次郎紹介)(第三〇〇三号)  同(川口大助紹介)(第三〇〇四号)  同(鈴木強紹介)(第三〇〇五号)  同(原茂紹介)(第三〇〇六号)  同(佐野進紹介)(第三一三九号)  日中平和友好条約早期締結に関する請願(栗  林三郎紹介)(第三〇〇七号)  同(佐藤観樹紹介)(第三〇〇八号)  同外一件(鈴木強紹介)(第三〇〇九号)  同(楯兼次郎紹介)(第三〇一〇号)  同(長谷川正三紹介)(第三〇一一号)  同(兒玉末男紹介)(第三一三七号)  同(島本虎三紹介)(第三一三八号) は本委員会に付託された。     ————————————— 本日の会議に付した案件  日本国アメリカ合衆国との間の犯罪人引渡し  に関する条約締結について承認を求めるの件  (条約第四号)  日本国イラク共和国との間の文化協定締結  について承認を求めるの件(条約第八号)(参  議院送付)  船員職業上の災害防止に関する条約(第百  三十四号)の締結について承認を求めるの件(  条約第九号)(参議院送付)  世界観光機関(WTO)憲章の締結について承  認を求めるの件(条約第三号)(参議院送付)  許諾を得ないレコードの複製からのレコード製  作者の保護に関する条約締結について承認を  求めるの件(条約第六号)(参議院送付)  国際情勢に関する件      ————◇—————
  2. 永田亮一

    永田委員長 これより会議を開きます。  日本国アメリカ合衆国との間の犯罪人引渡しに関する条約締結について承認を求めるの件を議題といたします。  本件に対する質疑は、去る四月十二日に終了いたしております。  これより本件に対する討論に入るのでありますが、別に討論申し出もありませんので、直ちに採決いたします。  本件承認すべきものと決するに賛成諸君起立を求めます。     〔賛成者起立
  3. 永田亮一

    永田委員長 起立総員。よって、本件承認すべきものと決しました。  お諮りいたします。  ただいま議決いたしました本件に関する委員会報告書作成等につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  4. 永田亮一

    永田委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決しました。     —————————————     〔報告書は附録に掲載〕      ————◇—————
  5. 永田亮一

    永田委員長 次に、日本国イラク共和国との間の文化協定締結について承認を求めるの件、船員職業上の災害防止に関する条約締結について承認を求めるの件の両件を議題といたします。  まず、政府より、それぞれ提案理由説明を聴取いたします。外務大臣園田直君。
  6. 園田直

    園田国務大臣 ただいま議題となりました日本国イラク共和国との間の文化協定締結について承認を求めるの件につきまして提案理由を御説明いたします。わが国イラク共和国との間の文化交流を促進するためにイラク共和国との間に文化協定締結することは、両国間の相互理解友好関係の一層の強化に資するところ大であると考えられましたので、昭和五十二年一月に行われたマルーフ・イラク共和国大統領の訪日の機会に、福田総理と同副大統領との間で本件協定締結交渉を開始することに意見の一致を見、その後交渉を行いました結果、昭和五十三年三月二十日にバグダッドにおいて、わが方伊達大使先方アル・ハラフ高等教育科学研究次官との間でこの協定の署名を行った次第であります。  この協定内容は、戦後わが国締結した各国との支化協定と同様、文化及び教育の各分野における両国間の交化交流を奨励することを規定しております。  この協定締結は、両国間の文化交流の一層の促進に資するところ大であると期待されます。  よって、ここに、この条約締結について御承認を求める次第であります。  次に、船員職業上の災害防止に関する条約締結について承認を求めるの件につきまして提案理由を御説明いたします。  この条約は、昭和四十五年に国際労働機関の第五十五回総会で採択されたものであり、その内容は、船員職業上の災害に関する調査の実施及び統計の作成災害防止に関する国内法制の整備、災害防止計画作成等に関する規定から成り立っております。  この条約規定は、わが国においては、船員法、同法に基づく船員労働安全衛生規則船員災害防止協会等に関する法律等関係法令により、充足されているところであります。この条約締結することは、わが国の船舶に乗り組む船員の安全を一層確実なものにする上から、また、労働分野における国際協調を推進する上から有意義であると考えられます。  よって、ここに、この条約締結について御承認を求める次第であります。  以上二件につき、何とぞ御審議の上、速やかに御承認あらんことをお願いいたします。
  7. 永田亮一

    永田委員長 これにて提案理由説明は終わりました。      ————◇—————
  8. 永田亮一

    永田委員長 国際情勢に関する件について調査を進めます。  この際、園田外務大臣より発言を求められておりますので、これを許します。外務大臣園田直君。
  9. 園田直

    園田国務大臣 海上保安庁からの連絡によりますと、尖閣諸島周辺海域巡視警戒中の海上保安庁巡視船やえやま」は、四月十二日午前七時三十分ごろ、レーダーにより尖閣諸島北北西海域に多数の船影を認め、直ちに現場に急行したところ、同八時三十分、わが国領海内外に約百隻の中国漁船を発見しました。百隻のうち十六隻が、わが国領海内において漂泊、航走または操業中でありました。  これに対し、巡視船やえやま」は、拡声機たれ幕等によって領海外退去を命じたところ、中国漁船は、当該海域中国領海である旨を主張していたが、同日午後七時ごろ、全船領海外退去いたしました。  しかし、同日午後八時半ごろから再び入域、退去を重ね、十四日午前六時現在、一隻が領海侵犯中であります。なお、中国漁船は一隻百トン程度であり、機銃を装備しているものもあります。  海上保安庁においては、巡視船やえやま」を応援するため、巡視船及び航空機を派遣することとし、現在四隻の巡視船及び三機の航空機現場において監視及び退去命令を行っているほか、さらに五隻の巡視船現場に急行中でございます。  なお、領海法が施行された五十二年七月以降、尖閣諸島周辺わが国領海台湾漁船不法入域し、それに対し、警告退去措置をとった事例はありますが、中国漁船による領海侵犯は初めてである、こういう報告でございます。  四月十二日以来の、ただいま報告しました相当数中国漁船尖閣諸島周辺わが国領海内において不法操業ないし漂泊していることについては、昨十三日、在京中国大使館に対し事件概要を伝え、尖閣諸島わが国固有領土であることを述べるとともに、中国漁船不法操業漂泊行為に対し、遺憾の意を表明し、これら漁船が直ちにわが国領海より退去し、再びかかる行為を繰り返すことがないように、中国政府が必要な措置をとるよう要請をいたしました。  これに対し先方は、尖閣諸島は一九七一年十二月三十日の中国外交部声明に述べているとおり中国領土であるという態度でありました。  本件については、本日、北京においてもわが方大使館を通じて中国政府に対し申し入れを行うこととなっております。今後の対策等については、各省庁と緊密に連絡をしながら、北京からの申し入れの結果もあわせ見ながら、沈着、冷静に判断して処置をしていきたいと考えております。  なお、日中平和友好条約交渉の問題と本件とは別の問題として取り扱ってまいる所存でございます。     —————————————
  10. 永田亮一

    永田委員長 国際情勢に関する件について質疑申し出がありますので、順次これを許します。井上一成君。
  11. 井上一成

    井上(一)委員 いま外務大臣から報告を受けたわけでありますけれども、この問題について私から若干質問をいたしたいと思います。  まず最初に、わが党はかねがね尖閣列島わが国固有領土である旨の見解を明らかにしてきたわけであります。そのことをまず私は冒頭に申し上げておきたいと思う。今回の中国漁船行為は、明らかにわが国固有領土領海侵犯行為であるというわけであります。いま御報告がありましたように、尖閣列島周辺水域に約百隻の漁船集結をしたということでありますが、事務当局にまずお伺いをしたいのでありますけれども、これらの百隻余りに及ぶ船は一体中国のどの地域に所属する船なのか、私はその点を最初にお聞きいたします。
  12. 田島高志

    田島説明員 お答え申し上げます。  ただいま海上保安庁の担当の方が見えておりませんので、私が海上保安庁から伺っているところをお答え申し上げます。  船の横の名称その他から判断しまして、いろいろな地方からというふうに伺っております。  具体的にはどこかということは、つまびらかに私ども存じておりません。
  13. 井上一成

    井上(一)委員 同一地域からではない、いろいろな地域から集結をしたということでございますか。
  14. 田島高志

    田島説明員 はっきりと、どことどこの地域ということを私どもまだ伺っておりませんので、漠然としたいろいろな地域ということだけでございます。
  15. 井上一成

    井上(一)委員 そういたしますと、ただ単に偶発的な突発事故ということではなく、前もってあらかじめ組織的に準備された行為であるというふうに思うわけでありますが、いかがでありますか。
  16. 田島高志

    田島説明員 お答えいたします。  その辺のことはただいま私ども鋭意検討しておりますので、まだ結論的なものは出しておりません。
  17. 井上一成

    井上(一)委員 それらの集結された漁船はどのような状態であるのですか。
  18. 田島高志

    田島説明員 海上保安庁から伺っておるところによりますと、ある船は漂泊しており、ある船は操業をしておるという状況のようであります。
  19. 井上一成

    井上(一)委員 何かの意思表示をしておったというようなことはございませんか。
  20. 田島高志

    田島説明員 昨日の時点で海上保安庁から伺ったところによりますと、海上保安庁巡視船退去の要求をしたのに対して出ていった船もある、ある船は出ていかないでとどまっている、そういう状況であるということでございました。
  21. 園田直

    園田国務大臣 ただいまの御質問に後になって申しわけありませんが、向こうへ行っている百隻内外の船はほとんど鉄船、そして上海、広東等地域から集められたものである模様であり、中には機銃を装備する船もある。中華人民共和国国旗を掲げた船、それから、ここは中国の領域であるという表示をしたたれ幕、あるいは舷側にチョークで書いたもの等があるようでございますので、こういうことから推察をすると、偶発的なものではなくて、準備をされたものであると想像せざるを得ません。
  22. 井上一成

    井上(一)委員 大臣からいま明快にお答えをいただいたわけであります。私も、偶発的な出来事としては非常に不自然であるというふうに受けとめるわけです。これはいま大臣が言われたように、前もって準備された行為である。まあ大臣意図的な行為わが国が見ても仕方がないという客観的事実があり過ぎるということでございますね。
  23. 園田直

    園田国務大臣 準備されたものであるとしか想像できません。
  24. 井上一成

    井上(一)委員 準備された、もちろん準備というのは事前にするわけですけれども、準備されたものだという認識に立っていらっしゃいますか、もう一度重ねてお聞きします。
  25. 園田直

    園田国務大臣 そのとおりでございます。
  26. 井上一成

    井上(一)委員 その行為に対して、外務省はどういう対応をされたのですか。何かさっきの説明では、中国大使館の方に申し入れをしたということでございますが、具体的にいつ、だれが、どこで、何を、どのような形で中国に伝えたか。
  27. 田島高志

    田島説明員 お答えいたします。  きのう午後一時、在京中国大使館宋文一等書記官外務省が招致しまして、私より、海上保安庁からの連絡に基づきました、一昨日来発生した事件概要を伝えまして、尖閣諸島わが国固有領土であるというわが国の立場を述べるとともに、わが国領海内における中国漁船不法操業漂泊行為に対して遺憾の意を表明いたしました。同時にまた、中国漁船わが国領海よりの退去、それから、再びかかる行為を繰り返さないようにということを要請いたしました。
  28. 井上一成

    井上(一)委員 外務大臣にお尋ねをしますが、いま中国課長から説明があったわけですけれども、その折に宋文一等書記官は、一九七一年十二月三十日の中国外交部声明を持ち出したというような説明がさっきあったわけであります。この声明中国尖閣列島に対する公式な態度で、それを中国側がわが方に申し伝えたというか、申し入れたということに受け取ってよいのですか。
  29. 園田直

    園田国務大臣 わが方が向こう在外公館員を呼んで申し入れをした際の回答でありますから、これは中国の正式な回答であると存じます。  なお、昨日同時に私は、北京大使館の方に、北京政府に対して同様趣旨申し入れを行え、こう言ってありますが、それが本日会えることになっておりますので、その回答はまた後刻到着すると存じます。
  30. 井上一成

    井上(一)委員 ちょっとここで二つに分けたいと思います。宋一等書記官のいわゆる中国外交部声明中国政府の正式な公式態度であるというふうに受けとめられたことに対して、わが国はこれに対してどう対処されるのか、これがまず第一点。  それから、先ほどから指摘をいたしております領海侵犯に対して、いま遺憾の意を表明した。その遺憾の意をわが国在京大使館員を呼んで申し入れをしたことは、わが国の正式な抗議だと受け取ってよろしいですか。
  31. 園田直

    園田国務大臣 まず第一番のことについてお答えをいたしますが、尖閣列島わが国固有領土であることは、これは明確でございます。しかも世界各国とも認めるところであります。が、また一方、中国政府は一九七一年の外交部声明によって、尖閣列島は歴史的、地理的その他によって中国のものであるという正式の表明をしたことも事実であります。七二年の共同声明では、この点については両方から話をしないということで、触れないで今日まで来ておるわけであります。したがいまして、それに基づいても、在京公館からの、わが国領土であるという中国態度は、中国政府の正式の意思表明であると私は受け取っております。これについては、私の方は、そうではない、こういう態度をとっておるわけであります。  申し入れに対して向こうからの返答はただそれだけでございまして、あとはないわけであります。
  32. 井上一成

    井上(一)委員 もう一点、遺憾の意を表明したということについては、これは事実上の抗議だと受け取ってよろしゅうございますか。
  33. 園田直

    園田国務大臣 大臣がこの事件が起こったことを聞いてから、大臣は次のように判断をいたしました。  中国ばかりでなく、韓国、ソ連等重要な隣国とは友好関係も非常に深いわけでありますが、深いかわりに、また直接利害がぶつかるわけでありますから、紛争もとかくありがちでございます。したがいまして、この日中友好交渉再開直前にこのような事件が起こったことはまことに遺憾千万でありますけれども、まずこのような際に沈着に冷静に事実を掌握すること、相手の意図をよく認識をして、その上冷静にやらぬと、過早に行動を起こし、感情で事を起こせば、次から次へと事件を誘発するおそれがある。それは日本のためにも中国のためにもよくないことであるから、まず事実の認識をすることが第一。中国が知っておるのか、知っておらぬのか、あるいは中国意図的にやったものかどうか、こういうことを知ることが申し入れの第一の目的でございます。  第二には、申し入れをした時期には、中華人民共和国国旗を立てておるということが明瞭になっておりましたので、これはまことに遺憾であるという意思表明したわけでありまして、これに対して退去要請したわけでありますから、もちろん抗議も入っているわけでございます。
  34. 井上一成

    井上(一)委員 私はもちろん隣国との友好平和を望むものであります。だからといって、言うべきことも言わないで通り過ごしてしまうというのはこれはどうもおかしい、こういうふうに思うわけです。だから、この尖閣列島の問題については触れずにおいて、そして友好平和をという、いままでの御認識であっただろうと思うのですが、もう事ここに至ってはそうもいかないのではないだろうか。やはり言うべきことは全部洗いざらい、中国に対して主張すべきことは主張すべきである、こういうふうに思うのですが、いかがですか。
  35. 園田直

    園田国務大臣 私が判断いたしましたのは、尖閣列島については日本固有領土であるということは間違いがない。これは事実であるし、世界各国に向かって声明もしておるし、どこからも異議はなかったわけでありますが、一九七一年に中国から外交部声明異議があった、これは事実であります。  そこで、この問題は共同声明で、紛争なり問題が起こった場合には、日中両国間はあくまで平和的に話し合いで物を片づけていこう、こういうことになっておりますので、私は、ある時期が来たならば中国誤解を一掃する必要があると考えておったわけであります。しかし、そういう話し合い、そしてまた友好裏に処理をするについても、友好条約締結して、その上でやった方がよいと考えておったからその方針をとってきたわけで、その前にいたずらにいろいろな両国間の相反する問題を取り上げると、不測の事態を招くことは好ましくない、これはかえってまた友好条約締結の障害になる、こう考えたから、私は切り離して、まず友好条約だと言ってきたわけであります。  しかし、こういう事態になりますとやや変わってきたわけでありまして、まず両国間で話し合って、そして、この尖閣列島領海内外に散在する百隻内外中国漁船が引き揚げることが第一の問題であり、引き揚げた後、両国がこの問題についてどのような方針をとっていくかということを話し合う必要があると考えております。  もちろん、平和友好条約がこれと無関係に進められるべきものではありませんけれども、私は冷静に考えるならば、今後再びこのような事件が起きないためにも友好条約というものは進めていき、この問題はこの問題として処理すべきだ、このように判断しておるところでございます。
  36. 井上一成

    井上(一)委員 私は、日中平和友好条約早期締結を望んでいる者の一人であります。しかし、今日の時期になぜ中国がこのような行為に出たのか、非常に理解に苦しむわけであります。  条約交渉領海侵犯は、私は別な問題だと思ったとしても、与党内のいわゆるタカ派と称せられる諸君は納得はしないのではないだろうか、こう思うわけです。条約交渉とこの事件は決して切り離して考えられるというものではないと思うのですが、大臣いかがですか。
  37. 園田直

    園田国務大臣 中国意図がどのようなことでこういうことを計画的になされたのか、いま判断の途中ではありますが、御指摘のとおり、日中友好条約交渉と無関係にいくわけにはまいりません。そこで、いま御承知のとおり、わが方としては与党理解と協力を求めておる段階でありまして、みずから進んで総理も御理解願う努力をいたしております。  交渉再開が機が熟し、間近になってきたことは事実であります。その状態中国の方が誤認をして、このようなことをやれば日本交渉再開に出てくる、こういう判断ならば、これは誤認であろう。また、もしどうせ見込みがないからこういうことをやろうとなさるなら、これも日本に対する誤認であろう。そういう誤解は、お互いの不幸である。少なくともわれわれは、いろいろ意見があることは当然であります。一国と一国の間が条約を結ぶわけでありますから、国民の中にはあれはどうか、これはどうか、心配されるのは当然でありまして、その御心配を受けながら外交交渉を進めていくわけでありますから、その段階において、こういう意見があったからこれはここでこういうふうにということであれば、これは日中友好交渉再開の前進にならなくてかえって邪魔になる、私はこういう点がまことに遺憾である、こう存ずるわけであります。あくまでわが国は、日中友好というものはアジアの平和、そしてもっと言えば、共同声明国際信義衆参両方の決議、これに向かって進めておるわけでありますから、中国もこれを理解をされて、平和裏に早くこの船が引き揚げることを私は心の中から、今後ありとあらゆる手で要請をするつもりでおります。こういう実力行使にも似たることで、それで日本が動くと思われたら、これは全く心外でありまして、日本は進んで中国友好関係を結ぼうとはしておりますが、実力をもって何かやられた場合にこれにこたえて進むというようなことは断じて私はしない、こういう決意でございます。
  38. 井上一成

    井上(一)委員 大臣、大変残念なことだけれども、今回の事件は、日中平和条約早期締結、いわゆる条約交渉にマイナスに作用したというふうに思うのですが、いかがですか。
  39. 園田直

    園田国務大臣 そういう意味においてまことに遺憾でございます。しかし、外務大臣たる者の職責は、両国間に起こるよいこと悪いことすべてのことをとらえて、その事件を処理しながら友好関係を結んでいくということが私の責任であると心得ております。
  40. 井上一成

    井上(一)委員 園田外務大臣日中友好平和条約締結に寄せる御熱意は、私は非常に敬意を表したい、こう思います。がしかし、結局、残念なことだけれども、早期締結交渉の可能性は若干薄らいだと見なければならないと思われるのですが、これはいかがですか。
  41. 園田直

    園田国務大臣 これが非常に影響を与えたことはまことに遺憾であることは申し上げたとおりであります。このために交渉再開がどのようになるかわかりませんけれども、大臣としては、このような事態を速やかに処理をし、両方がお互いに理解をしながら、一日も早く進むように今後とも努力をする覚悟でございます。
  42. 井上一成

    井上(一)委員 この事件の起きた原因はいろいろあろうかと思いますが、私は、福田総理の日中条約にかける煮え切らない態度にあると思うのです。むしろ交渉に積極的な外務大臣に責任はないと私は思うわけでありますけれども、福田総理のもとでの閣僚の一人でありますから、この事件に対して煮え切らない福田総理の対応の仕方、そして、その閣僚の一人としての園田外務大臣のお考え、どう反省をなさっていらっしゃるのか、あるいはこれを機にどういうふうにお考えを持っていらっしゃるのか、お聞きをいたしたいと思います。
  43. 園田直

    園田国務大臣 総理は一国の最高の責任者でありますから、日本中国の未来にわたる長き両民族の行動を規制する条約でありますから、慎重に判断されたことは御承知のとおりであります。しかし、いまやその機熟して、総理みずからそれに向かって党内の方々に対する理解と協力を求めることに努力をしておられるわけであります。  いずれにいたしましても、総理のやり方が早いから遅いからといって、こういう実力行使にも似たるデモンストレーションによってそれを進めようとお考えになるならば、これは日本国並びに日本民族に対する大なる誤認であって、遺憾と言わざるを得ません。
  44. 井上一成

    井上(一)委員 さっき報告があったわけですけれども、北京日本大使館を通して、きょういわば事実上の抗議をするということでありますけれども、その内容については東京で申し入れた点と変わりがないわけでありますか。それとも、外務省として、政府としての何らかの見解をつけ加えたわけでございますか。
  45. 園田直

    園田国務大臣 申し入れの要旨は、東京在京大使館申し入れをしているのと同じでありますけれども、少なくとも外交権を委任された出先の大使館であり、一方は中国の直接の政府でありますから、応答ぶりは在京とはいささか違うかもわからぬと思って期待をしているところでございます。
  46. 井上一成

    井上(一)委員 今回のこの問題について、外務省はどう分析をされていますか。
  47. 園田直

    園田国務大臣 外務省としては、この問題をなるべく速やかに処理し、そして相互理解を深めることか大事でありまして、相手がどう思ってこういうことをやったか、ああいうことを思ってこうやったかという分析をこの公開の席上で申し述べることは、かえって今後の話し合いに支障を来すと存じますので、御勘弁を願いたいと思います。
  48. 井上一成

    井上(一)委員 公開の席ということですけれども、きょうお聞きするところによれば、与党内でもこの問題について論議がなされるわけであります。外務大臣、やはり的確に事態の把握、そして実情を把握した中で、的確な対応が迫られているというように私は思うのです。だから、申し上げにくいとおっしゃられるけれども、やはりそこをどう対応していくんだ、いわゆる平和友好を阻害しないためにも、毅然たる態度で取り組まれるのか、臨まれるのか、その点について再度お伺いをいたします。
  49. 園田直

    園田国務大臣 仰せのとおり、日本国の代表として、毅然として節度ある態度でこの処理に臨みたいと考えております。
  50. 井上一成

    井上(一)委員 限られた時間で十分質疑ができないわけでありますけれども、最後に、今回の中国側のとった行為は、むしろ私から言わしむるならば、福田総理に愛想を尽かしたもうそのための行為だというふうにも受けとめられるわけであります。先ほどから申し上げるように、園田外務大臣は十分御熱意を持っていらっしゃるわけですけれども、まあ次の内閣もあることでございますから、ひとつこの問題に対して十分外務大臣としては心して対処していただきたいと思うわけでありますが、外務大臣の御意見をここで承っておきたいと思います。
  51. 園田直

    園田国務大臣 相手のことでありますからわかりませんが、相手の中国政府が、わが方福田総理態度に愛想を尽かして、見切りをつけてこうやったということであれば、日中友好条約締結する必要なしという意思表示になりますので、私はそのようには考えておりません。
  52. 井上一成

    井上(一)委員 私の与えられた時間が参りましたので、これで質問を終えます。
  53. 永田亮一

  54. 大坪健一郎

    ○大坪委員 外務大臣の御決意を承りました。私も、問題が非常に重要な時期でございますし、しかも、大変むずかしい形で出てまいっておりますので、この取り扱いについては非常に慎重にしなくてはならぬと思います。  ただ、外交交渉は、わが国の利害と相手国の利害とかぶつかり合うわけでございますので、当然わが国として言うべきこと、主張すべきことについては明確な意思表示が必要であろうかと思います。いま同僚の井上議員からお話がございましたけれども、わが国の内閣の構成がどうのこうのということを中国意図して動いておるとは、私は毛頭信じたくないわけであります。それで、時間を十分ぐらいしかいただいておりませんので、簡単でございますけれども、非常に重要な幾つかの問題点を御質問いたしたい。  一つは、従来日本尖閣列島を自国の領土として内外に宣明をいたしておりまして、これに対して、第二次世界戦争後、サンフランシスコ条約が結ばれました後も、台湾におります中華民国あるいは中国本土におります中華人民共和国領土の主張を日本に対して明確にしてきたことがございますのでしょうか。いつ領土主張を始めたわけでございますか。
  55. 園田直

    園田国務大臣 先ほど私、発言の中にちょっと誤りがございましたが、沖繩返還の後ということはございません。サンフランシスコ条約後、そして、日本尖閣列島の領有権を宣明した後、何らの異存もどこからもございません。一九七一年六月だと思いますが、あの尖閣列島周辺に石油が埋蔵されておるという世論が起こったときに、まず台湾の方から、これは歴史的に見てわが領土であると言い、続いて同年十二月と記憶しますが、中国政府外交部声明によって、これは中国領土であると声明したもので、それまでは一切の異存も横やりもございませんでした。
  56. 大坪健一郎

    ○大坪委員 一九七一年の十二月に中華人民共和国外交部声明を発表した、一九七一年の六月に台湾の外交部声明を発表したということになっておるようでございます。台湾の場合はさておきまして、中華人民共和国外交部声明の中身における尖閣列島中国領土であるという論拠は何でございますか。
  57. 園田直

    園田国務大臣 両方の言い分は、一つは、尖閣列島は歴史的に中国領土である、次には地理的に台湾の付属島嶼である、次には、日本は日清戦争中尖閣諸島を奪取して、下関条約で清朝政府に確認させた、こういう言い分であります。
  58. 大坪健一郎

    ○大坪委員 中国側誤認があるように私どもは思うわけです。たしか、尖閣列島に人は住んでおらないけれども、これを見つけたのは明治十八年ごろじゃないかと思います。それから十年ぐらい日本政府調査を重ねた上で、たしか日清戦争の結論が出る前に、閣議決定で正式に尖閣列島領土編入を行ったと思いますけれども、中国が下関条約で清朝政府に確認させたと言っております事実と、日本尖閣列島について明確に国際的に日本領土であるというふうに法的手続をとったこととの間に、時間的にずいぶんずれがあるように思いますが、その辺はどうでございましょう。
  59. 園田直

    園田国務大臣 尖閣列島は日清戦争によって奪取したものではございません。御発言のとおり、明治十八年以降沖繩県を通じてかつて中国領土であったかどうかを調査し、そして、現地の調査を重ね、二十八年の一月に閣議決定で日本の領有権を宣明し、これに日本領土であるという標識を立てる決定をいたしておるものでございます。
  60. 大坪健一郎

    ○大坪委員 その後第二次世界戦争が起こりまして、サンフランシスコ条約で、日本が侵略戦争で奪取した領土は返還をすべしということになったということでございますが、北方領土と同様に、この尖閣諸島についてもそういう関係が全然ないと私は考えるのでございますが、その辺は確認ができるでございましょうか。  それから、日米安保条約の地位協定に従って、日本がこの島をアメリカにたしか射撃場か何かの目的で貸しておると思うのでございますが、その辺のことを御説明いただきたい。
  61. 園田直

    園田国務大臣 御発言のとおりでありまして、サンフランシスコ条約第二条によった領土の放棄の中に、尖閣諸島は含まれておりません。そして、第三条によってアメリカの施政権下に置かれ、その後返還された後は、地位協定によって米軍の射撃場として提供しておるものでございます。
  62. 大坪健一郎

    ○大坪委員 いままでもこの領海不法に侵犯したりあるいは上陸をしたような例がございますでしょうか。
  63. 園田直

    園田国務大臣 上陸した例はございませんが、侵犯は台湾の方やその他の方がごくわずかでありますがございます。
  64. 大坪健一郎

    ○大坪委員 その場合にどういう御措置をおとりになって、相手国政府はどういう反応を示しましたでしょうか。
  65. 園田直

    園田国務大臣 そのときは、退去を命じたら漁船は立ち去っております。
  66. 大坪健一郎

    ○大坪委員 台湾政府は一九七一年の六月に外交部声明で、尖閣列島が自国の領土だとは言ったものの、漁船の侵犯に関する日本抗議に対しては、どういう意思表示をしたか、はっきりいたしませんけれども、今回の中国のような論旨で議論をいたしましたでしょうか。
  67. 三宅和助

    ○三宅政府委員 台湾につきましては、たびたび侵犯していまして、それに対しましてわが方から退去命令を出して、その都度従っておるということでございます。個別の退去命令につきましては、先方から特に具体的な抗議は参ってない。これは台湾でございます。  中国につきましては、漁船の侵犯がいままでなかったということで、特にそういう問題は起きなかったということでございます。
  68. 大坪健一郎

    ○大坪委員 非常に国際的に微妙な、中国の内政問題である台湾と中国との関係とも絡み合った問題のようにも思われるわけでございますし、また私ども、長い歴史の中で結果として明確になっておるにかかわらず、今回こういう問題が出てきたわけでございますが、日中友好条約を結んで、両国が平和な関係を国際的にも明確に確立をして以後起こった問題であれば、まずこの問題についての話し合いのテーブルにすぐ着けると思うのでございますけれども、いま日中友好条約を結ぼうとするやさきのことでございます。外務大臣としては大変お立場が微妙であろうかと思いますけれども、またわれわれとしては、わが国の、ただいまお聞きしましたような根拠を明白にした、鮮明な態度表現というのは必要だろうと思いますけれども、やはりこの問題については機会を見て中国話し合いをお進めになる必要があるのではなかろうか。その話し合いの中での明確な理解のもとで次の段階に進まざるを得ないのではないか。多少時間がかかっても、私どもは、日本の国益として論旨を明快なものにした折衝が要るのではないかと思いますが、いかがでございましょうか。
  69. 園田直

    園田国務大臣 十分ただいまの御発言を参考にして判断をしていきたいと思います。
  70. 大坪健一郎

    ○大坪委員 終わります。
  71. 永田亮一

    永田委員長 高沢寅男君。
  72. 高沢寅男

    ○高沢委員 先ほどの井上委員質問に続きまして、また大臣にお尋ねをいたしたいと思います。  最初にお尋ねをしたいことは、この前にもこの外務委員会で私は今度の日中平和友好条約の性格についてお尋ねをしたわけでありますが、そのとき外務大臣あるいはまた中江局長のお答えで、日本中国の間の第二次大戦の戦後処理の関係は、これはこの前の日中共同声明で全部済んでいる、したがって今度の平和友好条約はその意味においてはもう平和条約という性格は持っていないんだ、名前は平和友好条約という名前で呼んでいるけれども、中身としては一種の善隣友好条約というか、そういう性格の条約だ、こういうお答えがあったわけです。このことは、そういうことだというふうにもう一度外務大臣の確認をいただくことができますか。
  73. 園田直

    園田国務大臣 御発言のとおりでございます。
  74. 高沢寅男

    ○高沢委員 私は、もしそうであるとすると、ここには第二次大戦の戦後処理の問題がいままた尖閣列島という形で出てきているのではないか、こういう実は憂慮をするわけです。先ほど大臣説明されました、中国尖閣諸島の領有を主張した一九七一年の十二月三十日の中国外交部声明、この中の主張は、この尖閣諸島はもともと中国領土であったものを日本か日清戦争でとった、こう言っているわけです。そうしてさらに第二次大戦後日本不法にもこれをアメリカに引き渡した、こういうふうな言い方もしております。これはつまり沖繩の施政権がサンフランシスコ条約でアメリカに握られたという、この事態を指していると思いますが、それが今度は返還された。施政権が返還されて現在沖繩は日本領土である。その一部である尖閣諸島日本領土である。これが当然われわれ日本側の立場であるわけですが、ところが中国外交部声明の中では、日本がアメリカに引き渡したのは不法である、そして尖閣諸島は台湾と同じように昔からの中国の不可分の領土の一部である、こういう言い方をしているわけであります。そこで、中国側のこの立場に立てば、中国側のこの主張にもし立つとすれば、尖閣諸島の問題は、台湾の扱いと同じように、これは第二次大戦の戦後処理の問題であるということになるのではないかと思うのですが、いかがでしょうか。
  75. 園田直

    園田国務大臣 尖閣列島の問題は、これは戦後の処理の問題ではなくて、その後起きた問題であると解釈をいたしております。
  76. 高沢寅男

    ○高沢委員 大臣の言われたのは日本側の立場であります。先ほどの御説明にもありました、尖閣諸島は日清戦争の始まるずっと前から現実に日本が有効にその領有を確認し、そしてまた有効に統治してきた、こういうことで、これはそのとおりなんであります。しかし、中国側の主張はそうではなくて、日清戦争でとられたのだ、したがって第二次大戦後、あのカイロ宣言やポツダム宣言で、日清戦争でとったものは中国へ返せという、この中に尖閣諸島も入っているのだというのが中国の主張であることは、外交部声明で明らかですね。そうであるとすれば、中国側から見れば、これは第二次大戦の戦後処理の問題であるということになるのじゃないですか。この認識をお聞きしたいと思うのです。
  77. 園田直

    園田国務大臣 日本の主張、それから中国の主張は御発言のとおりでありますけれども、中国がそのような抗議をするならば、サンフランシスコ条約直後にこれは主張すべきであって、われわれは理解できないところでございます。
  78. 高沢寅男

    ○高沢委員 そういたしますと、この前、田中総理が行って、当時の大平外務大臣も行って日中共同声明を結びました。あそこで日中間の戦後処理の問題は全部済んだ、こういうことを言われたわけですが、それならば、すでに一九七一年に、尖閣諸島は台湾と同じように日清戦争でとられた、こういうふうな中国の主張があったわけですから、それならば一九七二年九月の日中共同声明を結ぶときに、この問題はそうではないですよ、この問題はもともと日本領土だ、すでにここで第二次大戦の戦後処理の問題ではないという、そのことをなぜ中国側との間に明確に確認をするということをされなかったのか。そうでなければ、日中共同声明で戦後処理の問題は全部済んだということは言えないのではないか、こう私は思うわけです。いかがですか。
  79. 三宅和助

    ○三宅政府委員 その当時におきましても現在におきましても、尖閣列島というのは日本固有領土であって、中国と話し合う筋合いの問題ではない、すなわち、日本からこれを了解ないし同意を取りつくべき問題ではないという立場は、その当時から現在まで一貫しております。したがいまして、日本側から特にこの問題について持ち出すということではなしに、日本側としては日中の共同声明でもってすべての戦後処理的な問題は解決した、その認識につきましても、先方も、間接的ではございますが、共同声明を認めたということで、同じ立場に立ったものとわれわれとしては了解しておる、こういうことでございます。
  80. 高沢寅男

    ○高沢委員 いま説明されたことは、これはあくまでこちら側の立場であるということであって、結局外交というものは双務的なものであって、こちら側はそういう考えであるが、相手側が違う考えで問題を出してくればやはりこれは紛争の問題になる、これは国際的な事件になるということが、今度のこの尖閣諸島漁船の問題でも現にそうなっているわけです。そういう意味においては、日中共同声明で戦後処理は全部済んでいるという説明の仕方、そういう立場にはやはり欠陥があったんじゃないのか、こういうふうに私は考えるわけです。私は台湾の問題にも同じような考えを持っています。やはり台湾の帰属は、サンフランシスコ条約とその後台湾の国民党政府との間の日華平和条約があったわけですから、そうであるとすればやはり中華人民共和国との間でも平和条約でこれを明らかにするというような手続が必要だと思います。このことについてはまたこれからも機会を見て申し上げたいと思うのですが、この点については私は認識に大きな違いがあるということを確認をしたいと思います。  そこで、そのことはそれとしてまた機会を改めてやりたいと思いますが、時間の関係がありますから、一つ事実関係でお聞きをしたいことは、今度中国漁船尖閣諸島へ来て、領海へ入ったということですが、私、これは新聞の報道で見たわけですが、台湾の漁船も入っておるということが報道でありますが、このことの事実の確認は、外務省なりあるいは海上保安庁、どういうふうにされておりますか。
  81. 向井清

    ○向井政府委員 お答え申し上げます。  先ほど外務大臣からもお答えがございましたように台湾の漁船が再々領海内に入っておって、これに対して退去命令を出しておる、それに従って退去しておるという事実が昨年の七月以降現在までに八十数隻ございます。最近におきましても間々そういうケースがあるということでございます。
  82. 高沢寅男

    ○高沢委員 台湾の漁船の場合には、退去を命令するとそれに従って退去しておる、こういうことでございましょうか。
  83. 向井清

    ○向井政府委員 いろいろなケースがございますが、軽微と認められる侵犯につきましては、警告を発しまして、それが直ちに向こうに受け入れられて退去をするというケースもございますし、また再三にわたって侵犯しているような船につきましては、誓約書を徴取いたしまして、その上で厳重に警告して退去せしめるというような措置をとったものもございます。いずれにいたしましても当方の警告、退去命令に対して全部従っておるということでございます。
  84. 高沢寅男

    ○高沢委員 今度のケースは、中華人民共和国の船も来て入っておる、それから台湾の船も来て入っておる、つまり、尖閣諸島領海へ入っておるというこの行為においては全く同じ姿になっているわけですが、その同じ姿の中で、中華人民共和国の方に対しては外務省から外交ルートを通じて、これに対する抗議の性格を持つ申し入れをされたということでありますが、このことが台湾に対してどんなふうになっておるのでしょうか、お尋ねをいたします。
  85. 三宅和助

    ○三宅政府委員 台湾につきましても、実は台湾との関係で、外交関係がないものですから、交流、協会を通じまして適宜その都度抗議をしております。
  86. 高沢寅男

    ○高沢委員 この一問で終わります。  この台湾の漁船の問題についても、当然厳重な、そういう外務省日本の主権行為の発動としての行為が必要になろう、私はこう思うのであります。ただ相手の台湾は、いまわれわれは外交関係を持っておるという関係ではない、こういう事情はあるわけでありますけれども、そのことも踏まえながらも、しかしやはり日本外務省としては日本の主権行為を正当に示す、こういうふうな処置が今度の事件に関しては同じようになければならぬじゃないか、こう考えますが、大臣の見解をお尋ねいたします。
  87. 園田直

    園田国務大臣 当然これは不平等な扱いをしてはならぬということは御発言のとおりであります。
  88. 高沢寅男

    ○高沢委員 以上で私の質問を終わります。
  89. 永田亮一

    永田委員長 渡部一郎君。
  90. 渡部一郎

    ○渡部(一)委員 あなたは、理事会で約束された社会党の持ち時間二十分を、どうして社会党にだけ四十分もやらせるのですか。そういういいかげんな約束をしてもらっては困るよ、本当に。なぜ議事運営はちゃんとしないか。
  91. 永田亮一

    永田委員長 何回か紙を持ってまいりましたが、多少延びまして……。
  92. 渡部一郎

    ○渡部(一)委員 そういう約束を守らない、そしてその約束をちゃんとやらせることができないというようなやり方では、当委員会の安全の運転はできない。今後は委員長におかれては明快な委員会運営をやっていただきたいと希望します。よろしいですか。
  93. 永田亮一

    永田委員長 わかりました。
  94. 渡部一郎

    ○渡部(一)委員 まず今回の事件に関しまして、私は、尖閣諸島に対するわが国の主張というものと、今回の事件の冷静な処理という問題とは、明快に区分して処理しなければいけないと存じます。  そこで、これはいままで政府日中平和友好条約についての六つの質問として委員会に配付されたものでありますが、その中で問四として「日中平和友好条約締結交渉の際、尖閣諸島の領有権の問題につき、中国との間で決着をつけておくことが望ましいのではないか。もしその必要がないというのであればわが国としては、中国に遠慮することなく、尖閣周辺の大陸棚開発を早急に行なうべきではないか。」という問いを想定して、それに対する答えとして「尖閣諸島わが国領土であることには何ら疑いもなく、また現にわが国は同諸島を有効に支配している以上、平和友好条約交渉において、この問題をわが国の方からとり上げる必要はないと考える。もしわが国の方からこの問題をとり上げた場合、わが国がこの問題につき中国側に対して何かやましい所があるかの如き印象を内外に与えることになり好ましくない。他方、尖閣諸島周辺の石油開発の問題は、この地域の大陸棚の開発問題の一環として考えるべきであり、海洋法会議の成行き等を勘案しつつ、対処すべき問題であると考える。」こう述べておられます。したがって、わが国においては、平和友好条約交渉においてこの問題をわが国の方から取り上げる必要はない、この立場は、依然として現在も堅持されていくおつもりかどうかをまず承りたい。
  95. 園田直

    園田国務大臣 当時とこういう事件が起こった現在とではもちろん若干の変化はあるわけでありますが、友好条約締結交渉の中の一つの条件として尖閣列島が議論される筋合いのものではないという考え方はいまも変わりはございません。これは別個の問題として、中国誤解を解き、あるいは相互が理解をするという方法をとるべきものだと私は考えております。
  96. 渡部一郎

    ○渡部(一)委員 私は、外務大臣のいまのお立場は明快であり、かつ適切だと存じます。しかし、先ほどの御答弁の中でそれを少し踏み出されまして、条約問題と尖閣諸島の帰属の問題は切り離して解決するという方針はちょっと変わってきた、漁船団がまず引き揚げることが先決であるというような言い方をされました。私は感情的な部分としては理解ができるのでありますけれども、これは両者の間の関係をいままで別個の問題として処理するという基本方針を混乱させる可能性のある御発言ではないかと心配をいたしております。ですから、もう一回お立場を明快に言い直していただいた方がいいと存じます。
  97. 園田直

    園田国務大臣 なかなか微妙なところでありますからさらに申し上げますが、一番最初報告しました私の末尾に、友好条約交渉の問題と本件とは別の問題として取り扱っていくということを申し上げましたが、その後の発言で誤解を与えるようなことがあったかもわかりませんけれども、いまこういう事件が起こっておるわけでありますから、この事件をほうりっ放しておいて、このままで友好交渉を進めるというわけにはまいりません。しかし、この問題はこの問題として処理をして、そして友好交渉は友好交渉として進めるということで、これは別個の問題ということをはっきりいたしておきます。
  98. 渡部一郎

    ○渡部(一)委員 尖閣列島の領有権問題に関しまして、公明党は一貫して、同列島はわが国固有領土であるとの認識の上に立って今日までやってまいりました。特に一九七一年六月、中国に第一回訪中団を出した際、私どもは当時の周恩来総理並びに中国側の諸要人に対し、尖閣列島の領有権問題についてはほぼ明確にこれを伝え、私どもの立場を明らかにいたしました。私たちの考え方では、日中共同声明の発布と同時に、同領有権の問題、日中関係の領土問題全般についてはすでに解決したとの立場に立ち、今後微小な問題点があるとすれば、両国政府間でこれを慎重かつ十分な打ち合わせと交渉をしつつ、平和裏に解決すべきであると理解しておったのでありますが、この点はどうお考えでしょうか。
  99. 園田直

    園田国務大臣 私も同様に理解をし、同様な判断のもとに事を進めていきたいと念願しているわけであります。
  100. 渡部一郎

    ○渡部(一)委員 尖閣列島は、歴史的に、また地理的に、また国際法的に、また実効的な支配という観点から、日本国固有領土として日本側に帰属すべきものであると考えますが、政府の御見識を承りたい。
  101. 園田直

    園田国務大臣 全くそのとおりで、いささかの疑念もございません。
  102. 渡部一郎

    ○渡部(一)委員 沖繩返還協定締結された際、日本とアメリカとの間で、返還されるべき対象の地域として沖繩県の中に同島が明確に含まれており、かつ同地域は米軍の射爆場、練習場としても指定された地域であり、米国側としても、尖閣列島というのは現在日本領土であるとの立場をとっておると思いますが、その点はどう判断されておられますか。
  103. 園田直

    園田国務大臣 ただいまの御発言もそのとおりでございます。
  104. 渡部一郎

    ○渡部(一)委員 先ごろ新しい領海法が施行されましたが、同島周辺の領海法の施行についてはどのようになっておるか、御説明いただきたい。
  105. 田島高志

    田島説明員 尖閣諸島の周辺十二海里は、当然わが国領海として扱われております。
  106. 渡部一郎

    ○渡部(一)委員 よく言われている主張で、日清戦争の当時、尖閣列島を台湾とともに日本側に割譲させ、そして奪いとった領土であるというような主張が中国側から行われたことがありますが、それに対して日本側はどのように説明され、対応されたか述べられたい。
  107. 田島高志

    田島説明員 政府は、七二年の三月八日、政府としての尖閣諸島の領有権問題についての見解を、国会で当時の福田外務大臣より御説明申し上げました。そこで明確にわが政府の考え方を述べております。
  108. 渡部一郎

    ○渡部(一)委員 何月何日に述べましたというのじゃなくて、いま説明なさい。
  109. 田島高志

    田島説明員 その内容を申し上げますと、尖閣諸島は、明治十八年以降、政府は、沖繩県当局を通ずる等の方法により、再三にわたり現地調査を行い、単にこれが無人島であるのみならず、清国の支配が及んでおる形跡がないことを慎重確認の上、明治二十八年一月十四日に、現地に標識を建設する旨の閣議決定を行って、正式にわが国領土に編入することとしたものであります。同諸島は、自来、歴史的に一貫してわが国領土たる南西諸島の一部を構成しており、明治二十八年五月発効の下関条約第二条に基づき、わが国が清国より割譲を受けた台湾及び澎湖諸島には含まれておりません。したがって、サンフランシスコ平和条約においても、尖閣諸島は、同条約第二条に基づきわが国が放棄した領土のうちには含まれておらず、第三条に基づき、南西諸島の一部としてアメリカ合衆国の施政下に置かれ、一九七一年六月十七日署名の琉球諸島及び大東諸島に関する日本国アメリカ合衆国との間の協定により、わが国に施政権が返還されることとなっている地域の中に含まれております。これらの事実は、わが国領土としての尖閣諸島の地位を何よりも明瞭に示すものであります。  主たる内容は、そういうものでございます。
  110. 渡部一郎

    ○渡部(一)委員 それでは時間が参りましたから、最後にまとめて一つ申し上げます。  尖閣列島問題につきましては、その帰属が日本国にあることはほぼ疑いのないところであると私は信じます。しかし、この問題に関して日中同国間に決着がついているかどうかということになれば、またこれは別個の問題であろうと存じます。したがいまして、尖閣列島問題を含み、日中関係の問題は早急決着をつけ、両国間の安定的な立場を確保することが必要ではないかと存じます。そのためには、速やかに日中間の交渉のパイプを広げ、両国関係をさらに安定したものにすることか必要ではないかと私は思います。本委員会でも私は何回か申し上げましたし、大臣にも直接お話ししたこともございますが、およそ二国間の関係で、数年の長きにわたり安定状況を迎えるということはなかなか困難なことであります。福田内閣が誕生し、外務大臣が就任され、一年有半の歳月が過ぎております。この間に日中関係は、むしろ非常に両者の状況というのは安定して進みつつあったにもかかわらず、この状況がいつまでもこのまま続くということも予想しがたいものでありました。今回の事件が、日本における議論が反映して中国側態度をこのような形にしたという議論には、私は必ずしもくみするものではありませんけれども、日中関係の交渉をいたずらに延ばしていくことが決してよい状況になるものではないと思います。園田外務大臣も、今年初頭、外務委員会におきましてお話をされました際に、日中関係の交渉を余り長くしていけば、それは交渉をまとめないということになってしまうと言われました。私はその見識に敬意を表しておったものでありますが、こういう問題が起きてくると、まさにその問題か大きく改めて振り返られるのであります。死んだ子の年を数えるというような状況になってから物を言うわけではありませんけれども、日中関係というのは、平和友好条約交渉交渉として、また領土に関する交渉交渉として、両国間で速やかに交渉を再開し、妥結するということがきわめて重要だと思いますが、大臣の御見解を承りたいと存じます。
  111. 園田直

    園田国務大臣 御発言のとおりでありまして、日中友好条約を双方が理解して満足する形で早く締結しなければこのような不測の事態が出てくる。早く締結してお互いが話し合い、お互いが理解を深め、両国間の問題をそれぞれ解決することが賢明であると思って、私もいままでやってきたわけでありますが、その鼻先にこういう事件があって、まことに遺憾でございます。遺憾でございますが、その方針のもとに今後とも努力をする所存でございます。
  112. 渡部一郎

    ○渡部(一)委員 最後に私は申し上げておきたい。  現在私たちはこの交渉の非常に複雑な立場にあるわけでありますが、日中友好関係の太綱を、また周辺の諸国に対する安定した関係を樹立することは、日本外交の急務中の急務であり言をまたないところでありますが、そのためには、私たちは、国際紛争の解決を武力で行わないことを憲法にも明記し、国是ともしているわが国である以上は、こうした紛争は常時平和的な努力を最大限に行い、外交の全能力を発揮しなければならぬものだと存じます。事態がよく認識される前に妙な予測をし、国民感情をあおり立てるだけということは慎まなければならぬと思います。中国政府全体の意思として漁船団が入域したのかどうか、漁船団の判断として入ってきたのかどうか、その辺はまだ明決になっていないようにも思いますし、私は、判断は十分冷静でなければならぬと存じます。そしてそれが大国民の雅量であろうとも存じます。  この交渉に関して、なお一層慎重に事態認識され、御報告もいただき、将来の長き安定的な関係の樹立のために御努力をいただきたいと要望いたします。
  113. 園田直

    園田国務大臣 事態の真実の把握、そしてこの行動の実情というものは十分慎重に認識をして、沈着に冷静に、しかも節度をもって処理するつもりでございます。
  114. 永田亮一

    永田委員長 渡辺朗君。
  115. 渡辺朗

    渡辺(朗)委員 尖閣列島の問題につきまして大臣にお尋ねをいたします。私の持ち時間は八分でございますので、よろしくお願いいたします。  私ども民社党も、尖閣列島わが国固有領土であるというふうに考えております。したがいまして、この事態に対しては大変大きなショックも受けております。中国漁船がどのような意図わが国領海の中に入ってきたのか、そこら辺を明確にとらえていただくこと、そしてこの処理に当たっては毅然とした態度と同時に、先ほども大臣は沈着、冷静という言葉を使われましたけれども、そういう態度でこの問題について早く処理を進めていただきたいと私も思います。  中国側尖閣列島の領有権を主張した一九七一年、昭和四十六年の主張がございます。それに対して、先ほどお聞きいたしますと、わが国では翌年、四十七年の三月八日に、国会で質問があった際に、総理大臣がそれに答える形でわが国態度表明された、こういうことになっておりますが、中国政府には公式の文書で、この中国側の主張に対して反論をされたのでございましょうかどうでしょうか。
  116. 田島高志

    田島説明員 先ほど御説明申し上げましたように、当時の外務大臣が国会で政府の見解を明らかに申し上げました。当時は中華人民共和国とは国交がございませんでしたので、そのときに伝えたということではございません。
  117. 渡辺朗

    渡辺(朗)委員 正式に国交回復後、わが国として申し入れをされたことはございますでしょうかどうでしょうか。
  118. 三宅和助

    ○三宅政府委員 その後もいろいろな形で先方に申し上げたのですが、文書の形では先方申し入れてございません。
  119. 渡辺朗

    渡辺(朗)委員 いろいろな形とおっしゃいましたが、これは正式の交渉事の際におっしゃったのでしょうか。
  120. 三宅和助

    ○三宅政府委員 二つございまして、たとえば中国側が出版している地図に尖閣列島中国領というふうになっている場合に、これに対して具体的に抗議申し入れるというような、個々のケースに対して申し入れた場合と、一般的な声明に対してこちらから一般的な形で日本の立場を繰り返した場合とがございます。そういういろいろな形で先方側には申し入れているということでございます。
  121. 渡辺朗

    渡辺(朗)委員 重ねてお聞きいたします。いまおっしゃった、地図で中国側の領有権が明記されているということに対しては、その後、抗議の後に訂正が加えられたということを確認しておられますか。
  122. 三宅和助

    ○三宅政府委員 いろいろと繰り返し繰り返し抗議しておりますが、残念ながらまだ訂正されておりません。
  123. 渡辺朗

    渡辺(朗)委員 大臣、そのように、地図一つとりましても向こうの領有権が明記されている。わが国領土である尖閣列島がそのような形になっているにもかかわらず、先ほどおっしゃいました平和友好条約、この問題を進める際に、領土問題、尖閣列島の問題は切り離してということはなかなかできにくくなっているのではなかっただろうか、過去においてです。わが国が、また大臣が今日までとってこられた態度はよくわかります。これはわが国固有領土であるから、こっちの方から問題を提起する必要はないと考えておられたわけでありますし、私もいままではそう思っておりましたけれども、今回のようなことが出てき、しかもそれを裏づけるかのごとく、今日まで抗議したにもかかわらず地図上にちゃんと明記してあるということになっておりましたら、当然この問題は平和友好条約と切り離しては考えられないということになると私は思いますが、いかがでございましょう。
  124. 園田直

    園田国務大臣 この問題と友好条約締結とは別個の問題として取り扱いますが、この問題と無関係に進めらるべきものではない、しかも状態は非常に悪くなってきておるということは御発言のとおりだと思います。
  125. 渡辺朗

    渡辺(朗)委員 ちょっと角度を変えまして、中国側がそのように、私どもの信じていることとは逆に、尖閣列島中国領土であるというふうに言っている、その水域で従来日本漁船操業をしておりましたでしょうかどうでしょうか。それに対して中国側抗議をしたことはございますか。
  126. 三宅和助

    ○三宅政府委員 日本船は従来からずっと操業しております。それに対しまして中国側は、何らの具体的な抗議は参っておりません。
  127. 渡辺朗

    渡辺(朗)委員 そうしますと、日本側では明らかに今日まで操業もしているということであって、しかも抗議は来てないということになりますと、当然固有領土中国側は認めたことだと理解してもいいと思うのですが、今回私どもの国の領土である、その領海の中に他国の漁船が入ってきた、領海侵犯である、退去を求めるというふうに言っておられましたが、まずどのような方法で退去を求めようとしておられるのか、方法をお知らせいただきたいと思います。
  128. 向井清

    ○向井政府委員 お答え申し上げます。  侵犯漁船に対します警告、退去を命じます方法でございますが、いろいろございまして、まず、拡声機によりまして、テープに仕込みました中国語によりまして音声をもって警告をし、退去を求めるということをやっております。内容的には、ここは日本領海内である、直ちに退去するように、という意味のことでございます。それからさらに、無線電話でございますが、VHFという装置がありまして、これは相手側にもあるのではないかと推定されますが、これによりまして、やはり吹き込みテープによりまして同じような内容を放送しております。それからさらに、巡視船の船橋の側壁にたれ幕を設けまして、そこに先ほど申しましたような内容の警告文を書いて相手に見せるということをいたしております。さらに、航空機からは通信筒を投下いたしまして、その中に先ほどのような警告命令文が入っておるというようなことでございまして、そのようないろいろな方法によりまして退去命令を出しておるという実情でございます。
  129. 渡辺朗

    渡辺(朗)委員 わかりました。その際に、先ほどもお話が出ました、これが偶発的な領海侵犯であるというならばいざ知らず、大臣は先ほどはっきりと、偶発的なものではないと言われました。となりますと、いまのような方法でも退去が行われないとしたら、これは拿捕というような事態も予想されるのでしょうか。そこら辺はどのようにお考えでございますか。
  130. 向井清

    ○向井政府委員 お答え申し上げます。  ただいまのところ、先ほど申しましたような方法で警告並びに退去命令を発しておるわけでございますが、現在のところ、巡視船四隻、航空機三機をもってこのような措置を行っており、さらに今後続々と巡視船の増強が図られまして、一両日中には九隻程度が現場集結するということでございまして、先ほど申しましたような退去命令と申しますものをより強力に行うということによりまして、いままでよりはかなり効果が上がるであろうというふうに考えております。そのようなことを繰り返し粘り強くやってみまして、その後の情勢判断によりましてまた次の段階のことを考えてまいりたい、というふうに考えておる次第でございます。
  131. 渡辺朗

    渡辺(朗)委員 最後に、大臣、いまのようなお話でございますけれども、外務大臣としてはどのように処理されますか。これはどのぐらいそのような粘り強い努力を続ける期間を置いて次のステップにお入りになりますか。拿捕ということもあり得るともお考えでございますか。
  132. 園田直

    園田国務大臣 拿捕するかどうかということは、海上保安庁、運輸大臣のなさることでございますけれども、私は、運輸大臣には、よく相談をして沈着に、法に照らし厳正にやっていただきたい、こういうことをお願いしているわけでございます。  なおまた、私どもとしては、そういうことから判断をして、それぞれの手段を講じて中国誤解を一掃し、これが引き揚げできるように努力をしているところでございます。
  133. 渡辺朗

    渡辺(朗)委員 それこそ本当に毅然として、かつ沈着、冷静に処理をされますよう、御努力をお願いいたします。  時間が参りましたので、終わります。ありがとうございました。
  134. 永田亮一

  135. 柴田睦夫

    柴田(睦)委員 非常に短時間でありますので、私どもの見解を述べて、そして最後に大臣の御見解を伺いたいと思います。  わが党は、尖閣列島に関しましては、一九七二年の三月三十日に見解を発表いたしております。それは、要旨を申し上げますと、この尖閣列島は一八九五年一月日本政府日本領に編入して以来、国際法上の先占に基づく取得及び実効的支配をしてきた列島であり、尖閣列島日本領土であることは明らかであると述べております。そして、台湾や中華人民共和国が領有権を主張することについて、従来の中華人民共和国発行の全中国の地図、これは一九六六年の北京地図出版社などがあるのですけれども、そこにも尖閣列島の記載は見られないし、台湾省図にも尖閣列島は入っていないことなどを挙げて、根拠がないという見解を明らかにしているわけであります。現在も沖繩県の漁場であり、沖繩県の漁業が六〇%この尖閣列島周辺に依存するというようになっておりますし、そしてまた、この事態の重大性から、沖繩県では臨時県議会を開くということを聞いております。  問題は、中国側も領有権を主張しているということであるわけです。中国側日中平和友好条約交渉のさなかに、先ほど大臣が、準備されたものであるという認識を述べられましたけれども、そういういわば実力行使で領有権を主張した事態に対応する政府態度は、きわめて重要であるというように考えるわけです。政府は、日中平和友好条約ではこの尖閣列島の取り扱いは直接関係がないというような説明をしてこられているわけですけれども、今回の実際の状況は、この問題は日中条約ではっきりさせるべき問題だということを、この具体的事実が提起していると思うのです。日中平和友好条約は、平和条約的性格から考えてみましても、領土の問題について紛争があるということではまずい。領土確定を行う必要があろうかというように思うわけです。今日の事態は、この条約交渉の中で政府尖閣列島の帰属をあいまいにしてきた過去の経過があるわけですけれども、そういうことから起こってきているというように思うわけです。  そこで、今後日中条約に関連する一つの問題として尖閣列島の帰属確定を取り上げていく考えがないかどうかということ、そしてまた、この今日の事態から考えてみて、この問題に触れないというような態度をとってきた、こういう態度は誤りではないか、こういうように思うわけです。この点についての御見解をお伺いしたいと思います。
  136. 園田直

    園田国務大臣 友好条約締結本件尖閣列島の問題とは関係がないということを発言したわけではございませんので、別個の取り扱いをしたい、こう言ったわけであります。もちろんこれは影響し、関連することは御発言のとおりでございます。したがいまして、友好条約交渉の中でこの問題が処理されるべきことではなくて、交渉交渉、それからこの問題の解決はこの問題と、二つに分けて処理したい、こういうことを言ったわけであります。  なお、いままで私が言ってきましたのは、この問題をほうっておいていいと言ってきたわけではございません。まず友好条約締結して、そうして両方相互理解の基盤を固めて、時期を見てこの問題は両方が相互に理解し合い、誤解を解くべきである、こう言ってきたわけでありますが、こういう事件があっては困るからそういうことを言ってきたわけでありまして、いままでの私の方針は必ずしも間違いではなかったと考えております。しかし、ただいまの御発言は決して関係がないということではなくて、これはやはり向こう話し合いをしなければならぬ、話をつけなければならぬ問題でございます。
  137. 柴田睦夫

    柴田(睦)委員 時間が参りましたが、結局、条約締結の後の問題とするのではなくて、この問題に対処する中において、友好条約締結するその基盤をつくっていくということを、いまから進めなければならないということを要望して、終わります。
  138. 永田亮一

    永田委員長 加地和君。
  139. 加地和

    加地委員 外務大臣にお尋ねしたいのでございますが、今回の中国側の、尖閣列島周辺の海域に漁船を大挙派遣さしてきておるという問題について、相手の非を唱える議論はたくさんなされたわけでございますが、翻って考えてみますと、日本側にも反省すべき点はいままでの経過から考えて多々あるのではなかろうか、私はそのように思うわけでございます。  一つは、田中総理中国へ行かれて国交回復共同声明を発せられた。あの中においては、私は弁護士でございますけれども、物事の取り決めはギブ・アンド・テークが原則であろうと思うのでございます。ところが中国側の方においては、第二次世界大戦中に日本から受けた損害賠償請求権をその場で放棄しておるという形になっておりまして、日本の方はいわゆる契約なり条約なり、そういう取り決めにおいて取るべきものは取っておる。その後で残されておる義務というのが平和友好条約締結でございますが、これが非常識に長引いておる。ここに中国側がいささか快しと思わない点が出てくるのではなかろうかと私は思います。  それからまた、日本の国益という点から考えても、アジアの中において、中国、ソ連、日本というこの三つの関係を考えてみますと、一日も早く中国日本が手を結び合うことによって、ソ連はいままでのように、半分はおもしろ半分で日本に対し無理難題を言ってくることも少なくなるのではなかろうか、すなわち、日本の国益にも大いに合致するのではなかろうかという点。  それからまた、覇権主義反対という問題についても、ソ連はとやかく言っておりますけれども、これは国際的に普遍的な平和原則であり、そしてソ連自身も、他の条約などではこの覇権主義反対という言葉を使っておるわけでございまして、これを理由に日本側がびくびくするのはどうも的外れである。  以上、考えてみますと、やはり日本の方が六年前の約束を実行するのに、国全体として誠実さにおいてもっと欠けた点があるのではなかろうか、このように思うわけでございますけれども、外務大臣のお考えを聞かしていただきたいのでございます。
  140. 園田直

    園田国務大臣 今回のような事件がないためにも、なるべく早く両方話し合って友好条約締結したいということは御意見のとおりでありまして、したがいまして、全幅の努力を続けてきたわけであります。しかも、ようやく機は熟して、与党理解と協力をお願いしておる段階で、友好条約締結交渉再開の間際にこのようなことがあったことはまことに遺憾で、このためにこの交渉が相当困難な状態になってきたことは現実として事実でございます。  そこで、中国がどういうわけでこういうことをなさったか、これはまだまだここで断定するわけにはまいりませんけれども、日本友好条約締結がおくれたからこういうことをやったということであるならば、そういう実力行為に至ることによって、おまえの方が遅いからけしからぬということでこういうことをおやりになるということであるならば、これは中国としても日本の実情を誤認なさったことではないか。両方友好条約というものは、両方が対等でお互いに理解し合って、お互いが十分納得ずくで締結すべきことこそ友好条約でありまして、一方の方から早く結べ、遅いからけしからぬ、遅いからこういうことをやるぞということで、果たして二国間の友好条約が結べるものであろうかどうか、こういうことは私は非常に深く考えるところでございます。
  141. 加地和

    加地委員 外務大臣の気持ちはかなりよく理解しております。  それじゃこの暗礁に乗り上げた問題を具体的にどのような手順でどのように問題を片づけていこうとされますか。その手順あるいは時期等を明らかにしていただきたいのでございます。
  142. 園田直

    園田国務大臣 これだけの重大な問題で、来るべき影響も大きいわけでございますから、手順、時期と、ようかんを切るようにはまいりませんけれども、まず当面の事態を処理すること、そのために一方には海上保安庁に対しては沈着、公正に処理してもらうと同時に、わが外務省としては中国とよく話し合って、中国誤解があれば誤解を解き、お互いが相互理解を深めて、これを一日も早く引き揚げられるように、まず当面の事態を処理する、それから次に友好条約とこの尖閣列島の問題を、それぞれ解決に向かって努力することが必要であると考えております。
  143. 加地和

    加地委員 時間がありませんのでこれで終わります。
  144. 永田亮一

    永田委員長 ちょっと速記をとめてください。     〔速記中止〕
  145. 永田亮一

    永田委員長 速記を始めて。  本日の発言時間については、理事会で協議願っておったのでありますが、最終的に社会党の四十分を含め、一時間二十分程度となったのであります。それが徹底いたしませんでした。  午後一時三十分から委員会を再開することとし、暫時休憩いたします。     午後零時二十九分休憩      ————◇—————     午後一時四十一分開議
  146. 永田亮一

    永田委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  世界観光機関憲章の締結について承認を求めるの件、許諾を得ないレコードの複製からのレコード製作者の保護に関する条約締結について承認を求めるの件及び船員職業上の災害防止に関する条約締結について承認を求めるの件を議題とし、三件について審査を進めます。  これより各件に対する質疑に入ります。  質疑申し出がありますので、順次これを許します。井上一成君。
  147. 井上一成

    井上(一)委員 いま議題になりました三案件について、私はまず船員職業上の災害防止に関する条約に関連して、ひとつお尋ねをしたいと思います。  昨年の十一月五日にアメリカはILOを脱退したわけであります。ILOに限らず、ここ数年間の国際機関の中で非常に政治的対立の兆しが部分的に見受けられて、専門機関としての本来の職務から若干はみ出しているというふうに見られることがあるわけでありますけれども、アメリカが特にILOを進んでというか、選んで脱退したのはどこに理由があるのか。また、アメリカがILOを脱退することによって、ILOはどのような政治的な影響を受けているのか、お答えをいただきたいと思います。
  148. 小林俊二

    ○小林説明員 米国のILOに対する脱退通告は、いまから約二年半前、前政権時代、キッシンジャー国務長官の書簡をもって通告が行われておったのでありますが、この通告の期限である二年間を経過いたしまして、昨年十一月に実際に脱退が行われたということでございます。  その書簡におきまして米側が挙げました脱退の理由は四点ございます。第一点は、ILOがその特色としております基本的な性格の一つ、三者構成という性格が最近の動きによって侵されておる。この三者構成と申しますのは、政府労働、使用者、それぞれが代表を送って構成する、そういう性格でございますが、ある国におきましては、労働、使用者ともに政府のコントロールのもとにあって、この三者の構成という性格が失われておるという点でございます。  第二点におきましては、いわゆる人権問題等につきまして、国によってはこれを非難し、他の国によってはこれを甘く見るといった、そういう差別的な取り扱いが行われておるという点についての不満でございます。  第三点は、適正な手続がおろそかにされている面が目につくという点でございました。これまた人権侵犯等の審査を行うに当たりまして、本来は実情の調査とか調停とか、そういったプロセスが規定されておるのでありますけれども、そうしたプロセスがおろそかにされて、一気に一定の国を非難するというような決議が採択されるという現況が目につく、そういったやり方が横行しておるという点についての不満であります。  第四点は、より一般的にILOがいま先生御指摘のような観点から、その政治的な傾向を深めておって、ILOが本来期待されておる機能を外れて政治的な性格の動きを強くしているという点に関する不満でございます。  以上の四点を理由としてILOから脱退するという通告が行われたのでありますが、実際に脱退が行われました今日、その影響はもちろん第一義的にはILOの経済的な基盤に対する影響でございます。米国はILOの全予算の二五%を負担しておりましたので、この二五%が失われたということはILOの機能並びに構成に対して大きな影響を及ぼしました。このためにILOは事業の縮小であるとかあるいは機構の合理化であるとか、そういった対応をやむなくされたのであります。しかしながら、ILOに対する米国の復帰につきましては、先進諸国を中心としてまだ今後ともその可能性があるというふうに考えておりますので、その復帰を容易ならしめるような努力が内外において今後とも続けられるだろうと考えられております。
  149. 井上一成

    井上(一)委員 ILOはアメリカの脱退によって経費の四分の一の四千二百三十万ドルをなくすることになるわけですけれども、事業の縮小を余儀なくされているわけでありますが、ILOはこのような事態に至ってどのような措置をとったのか。あるいは各国に寄付を求めてきているということでありますが、このことについての事実関係、また寄付に頼っている額がアメリカが拠出をしていた額の何%ぐらいになって、どれくらいの額になるのかどうか。なお、きょうの報道によりますと、わが国も百万ドルですか、拠出するということが伝えられておるわけでありますけれども、このことについてもひとつ詳細にお聞かせいただきたいと思います。
  150. 小林俊二

    ○小林説明員 ILOはその二五%の予算が削減をされたという事実を前提といたしまして、当初から事務局におきましてある程度の予算の削減によってこれに対処することはやむを得ないということから、その削減案を提出したのでありますけれども、これに対してその他の諸国の反応は、より多くの部分を削減によって賄うべきであるということで、種々話し合いが行われた結果、最終的には二五%のうち二一・七%を削減によって賄うということになったわけでございます。その削減は、機構の縮小あるいは会議の将来への延期、そういったことでもってこれに対応することになったわけでございますけれども、残りの三・三%につきましては各国からの自発的な拠出にまつという態度を決定したわけでございます。三・三%と申しますのは金額で申しますと五百六十五万ドルでございます。なお、ILOの予算は二年単位で作成されておりますので、この五百六十五万ドルと申しますのも二年間のILOの予算の一部をなすわけでございます。これに対しまして各国から徐々に自発的拠出の申し出がございまして、今日まで四百四万ドルのコミットメントが行われておったのでありますけれども、こうした実情を踏まえまして特にこの二一・七%というところまで予算の削減が行われたという点を念頭に置きまして、わが国としても応分のコントリビューションを行うべきであるという結論に達しました結果、一〇〇万ドルのコミットメントを行ったわけでございます。その結果、所要額五百六十五万ドルのうち日本の百万ドルを含めまして五百四万ドルというものか自発的な拠出によって賄われる、ほぼその穴埋めの見通しがついたという現況でございます。
  151. 井上一成

    井上(一)委員 ILOの事務局長であるブランシャール氏が、偉大なる国の脱退は最も貧しい労働者を向上させる機会を世界の国々から奪い去るものだという声明を出しているわけです。アメリカがILOから脱退をしたことによって労働者保護という人権擁護の場を放棄したことになり、とりわけカーター政権が、人権擁護を高く掲げるアメリカの外交政策と矛盾するものではないかと思うのでありますけれども、政府はどうお考えでいらっしゃるのかお答えをいただきたいと思います。
  152. 小林俊二

    ○小林説明員 米国がILOを特に問題視して脱退という、激しいと申しますか、思い切った行為に出たということの背後には、ILOにおきます先ほども触れましたような三者構成という特殊な代表の仕方が大いに関連があるというふうに私どもは考えております。すなわち、これは政府の一存で決定し得ることではなくて、国内における労働界あるいは使用者団体等の見解が直接反映される仕組みになっておる、そういうことからその三者の協議によって問題が決定、左右されるというところに一つの特性があったというふうに思われるのであります。しかしながら私どもといたしましては、ILOからの脱退によって米国が未来永劫ILOと縁を切るつもりである、ILOに関与したくないということが前提となっているとは必ずしも考えておらないわけでございます。むしろ脱退という行動を通じて、ILOの内部において米国が問題としているような問題点が将来是正されることを期待する、一つの期待というものが背後にあっての行動ではないかと私どもは考えておるわけでございまして、したがいまして、ILOの今後の動向いかんによりましては米国としてもこれに復帰したいという気持ちは現在でもかなり強く持っているものと私どもは考えております。
  153. 井上一成

    井上(一)委員 アメリカのILOの脱退によって、いわゆる事業縮小を余儀なくされる。その結果、ILOの目的である多数の人民に対する不正あるいは困苦及び窮乏を伴うような労働条件を改善して社会正義を確立していこう、それが世界の恒久平和に貢献するのだということ、あるいはそのため生活水準の向上、完全雇用、団体交渉権の承認、労使の協調、社会保障及び福祉立法の実現、教育及び職業における機会均等等を助長、促進することというこの目的達成に重大な影響を及ぼすものではないかというふうに思うわけであります。このことについての政府の御見解、またアメリカのILO脱退に際して当時の官房長官でございます現在の園田外務大臣は、アメリカができるだけ早くILOに再加盟することが可能となるよう、強く希望を表明されたわけであります。と同時に、ILOが本来の目的達成のため総会だとか理事会等を通じて粘り強く努力を行う旨を表明しているわけでありますが、いままでにどのような努力をしてこられたのか、またその努力の効果はどうであったのかをお聞きいたします。
  154. 小林俊二

    ○小林説明員 ILOからアメリカが脱退したということは、確かにILOという場における国の代表の普遍性を大きく傷つけるものでございまして、その点におきまして今後のILOの活動において実効性をその限りにおいて損なうものであるということは否定しがたい事実だろうと思います。しかしながら、ILOが今日まで労働者保護の観点から作成してまいりました、そして発効させてまいりました数々のILO諸条約は米国もこれを多く批准しておりますので一その批准された条約につきましては、脱退のいかんを問わず、今後とも米国について効力を維持するわけでございます。したがいまして、ILOが今日まで果たしてきた機能は、米国については今後ともその限りにおいて維持されるということは申し上げることができるわけでございます。  なお、ILOに対する米国の今後の復帰でございますけれども、その後ILO自身におきましては、現在のところ低開発国側の強い希望もございまして、従来からの構成あるいはILOの体制についての見直し作業、そのための交渉が続けられております。その一環といたしまして、米国が主張しておりました、先ほどのキッシンジャー書簡にも出ておりましたような問題点も関係を持ってきております。そうした協議の一環といたしまして、米側の問題としておりました点をため直すための努力も一部として続けられておるわけでございます。  具体的に申し上げますと、その適正な手続の無視といったような点が今後是正されるようにといった問題も、ただいま申し上げましたようなILOの機構改革の一環として話し合いの対象となっておりますし、これに対しては、この見直しのきっかけをつくりました低開発国側も理解を示して、実はこの四月の末にまたそのための政府間の作業部会が開催されますけれども、その場におきましてもある程度妥協の見通しがあるように私どもは考えております。
  155. 井上一成

    井上(一)委員 ILOの総会とか理事会運営が、アメリカ脱退後、脱退前と比べてどのように変化しているのか。
  156. 小林俊二

    ○小林説明員 米国脱退に至るまでの間におきましては、米国は一つの主張の中心としてILOの中における論陣を形づくっておったのでございますけれども、米国なき後、西側を代表する勢力といたしましてはヨーロッパ共同体、ECが一つの中心として発言権を増してきた、ECを中心として西側がまとまりを見せてきておるという点が一つの変化でございます。  先ほどちょっと申し上げました、ILOの機構改革の面においてかなりの妥協、前進が見られたということにつきましても、低開発国側のILO米国脱退ということに対する考慮、それから西側においてECを中心として新しいまとまりを見せつつある西側の態度といったような二つの面からの妥協が、将来への一つの打開策をつくり出すための基盤を提供したということも言えるかと存じます。
  157. 井上一成

    井上(一)委員 アメリカは、ILOが本来の原則と運営に立ち返ればいつでも復帰の用意があると述べているわけでありますけれども、ILOの現在の状況から見て、その見通しはどうなんでございますか。またわが国はアメリカに再加盟の要請をしているのか、あるいはそのためどのような努力をしているのか、この二点についてお聞きをいたします。
  158. 小林俊二

    ○小林説明員 ILOに対する米国の復帰につきましては、これは日本一国が米国に対して特に働きかけを行うような筋合いのものでもございませんので、ジュネーブにおきまして、ILOに対する従来からの西側の協議の一環としてその西側の非公式協議に米国の代表の大使の出席を求める等をして、西側全体の総意として米側にILO内部の状況について説明かたがた、そのきっかけを模索しておるというのが米国に対する接触の形態でございます。実体問題におきまして、米国の問題としていたような点を是正して米国が復帰しやすくするという努力は、先ほどの機構の改革の一環としても行われているものでございます。  もちろん、ILOの政治傾向といいましたような非常に一般的なあり方について、今後ILO自体の何らかの方針を鮮明にさせることによってそれを排除するといったような行き方は、実際上実行不可能でございますけれども、もっと具体的な手続の面において、あるいは体制の面において、米国が問題としておったような点をため直していく、確かにそのポイントがある、米国に理があると思われる点については、これを粘り強く、特に低開発国側に対して説得の上、是正していくという努力は続けられておるわけでございます。
  159. 井上一成

    井上(一)委員 ここで私は船員災害について若干具体的に質問をいたします。  まず、昨年の船員災害の発生状況はどのようであるのか、あるいはどのような種類の災害が多かったのか、また、ここ数年の発生件数に比較して昨年の状態はどうなのかをお聞きをいたします。
  160. 豊田実

    ○豊田説明員 お答え申し上げます。  わが国船員職業上の災害の統計につきましては、昭和五十年の数字が最近の数字になっておりますが、昭和五十年一年間で一万七千五百三十五人の船員災害に遭っておりまして、千人当たりの発生率、千人率で見ますと七二・〇という数字になっております。船の種類別で見ますと、漁船関係がこの千人率で八二・七、それから特殊船の関係が六七・七、汽船関係が五九・八という状況になっております。また、過去の状況と比べますと、昭和四十年度の災害発生率というのが千人率で一二一・一、昭和五十年度が九二・一という状況で、昭和四十年度を一〇〇とすると昭和五十年度で約六割に改善されているという状況にあります。  災害の種類としましては、海上労働という特殊性から、海中転落という事故が死亡事故の非常に大きなウエートを占めておりまして、そのほか、動揺しております船の上ですので、転倒、それから機械類に接触するというような事故が続いております。
  161. 井上一成

    井上(一)委員 本年から第三次船員災害防止基本計画が実施されるわけでありますけれども、過去二回にわたる基本計画の実施においてその計画目標を十分達成できたとお考えでいらっしゃるのかどうか。
  162. 豊田実

    ○豊田説明員 お答え申し上げます。  昭和四十三年度から第一次の五カ年計画がスタートしまして、四十八年度から昨年五十二年度までの第二次五カ年計画と、二回五カ年計画を立ててやっております。それぞれ五カ年間の目標値を立てて種々の対策を推進したわけですが、残念ながら、目標値に対して、改善の達成状況が目標値までまだ達していないという状況であります。
  163. 井上一成

    井上(一)委員 目標値を達成していない、非常に残念なことであるわけであります。とりわけ死傷について目標を達成できなかった。また、先ほどのお答えの中でも漁船関係が比較的多いわけでございますけれども、その理由はどこにあるのか、ひとつお聞かせをいただきたいと思います。
  164. 豊田実

    ○豊田説明員 お答え申し上げます。  先ほど災害の主要原因として海中転落ということを申し上げましたが、海中転落は、事故が起こりますと直接死亡事故に結びつく確率が非常に多いという事故でございます。漁船関係が非常に多いと申しますのは、通常の商船と違いまして、漁労作業で網を海中に入れたりあるいは引き揚げるという作業が海中転落に結びつく可能性が非常にあるということが原因となっております。
  165. 井上一成

    井上(一)委員 それらについて何らかの対策を持っているのかどうか。
  166. 豊田実

    ○豊田説明員 お答え申し上げます。  新しく本年度からスタートしました第三次船員災害防止基本計画の中でも、漁船事故、特に海中転落については力を入れております。具体的な対策としましては、船内において通行するところ、作業するところ、そういうところにいろいろな障害となるような、つまずく原因となるようなものを置かない、船内の整理整とんをきちんとするという環境の整備とあわせまして、漁労中のいろいろな行動につきまして安全教育を徹底させるということで、漁労の安全関係の責任者に対して一定の講習を受けさせるということをやっております。
  167. 井上一成

    井上(一)委員 法制面だとか計画面では整備されているということですけれども、これを実効あらしめるために、これらの法令の、忠実かつ適切な指導監督が行われなければ、その効果というものは実現ができ得ないと思うわけであります。そういう意味で、どのような方法で現在指導しているのか、あるいは現在の体制でそれらが十分と考えていらっしゃるのか、その点についてお聞きをいたします。
  168. 豊田実

    ○豊田説明員 お答え申し上げます。  船員災害防止の対策の推進につきましては、国のほかに第一義的な責任者である船主団体としてもいろいろな対策を立てております。まず、国の体制としましては、私どもの地方の海運局が各地区にございまして、その海運局に船員部という担当部局がありますが、その中に船員労務官という職名の職員がおります。船員労務官は具体的に各港で船に乗り込みまして、いろいろ船内の状況等について関係の法令違反の有無についてチェックするということをやっております。一方、船主団体の体制としましては、船員災害防止協会という団体がございまして、これがやはり各地区に支部を持っております。その支部を通じまして、具体的な安全教育につきまして種々のパンフレットなり映画その他教材を用意しまして、関係の船員の会合に出席して、安全衛生教育を徹底させるという体制をとっております。
  169. 井上一成

    井上(一)委員 現在はどのような種類の違反が多いわけですか。
  170. 豊田実

    ○豊田説明員 お答え申し上げます。  安全関係の違反としましては、先ほどちょっと御説明しましたが、機械の接触からの防護、具体的に申しますと、エンジンの回転部分について防護施設を設置する、船内の動揺によってそういう回転部分に接触して事故が起こるというのがかなり多いわけですが、そういうものを防護するという規定があるわけですが、これの違反というのがかなり多く見られます。  そのほかの関係としましては、船内に必要な個所に安全標識というものを表示する義務がありますが、この違反が第二番目の違反でございます。
  171. 井上一成

    井上(一)委員 本年から実施される第三次計画、船員災害防止基本計画、これは第一次、第二次と異なっている点について、どこが違うのか、あるいはまたどこに重点項目を置いたのかをお尋ねいたします。
  172. 豊田実

    ○豊田説明員 お答え申します。  第一次、第二次ともその基本的な考え方としましては、働く人についてミスがあるという前提で、ミスがあっても大きな災害に結びつかないというような環境整備を十分整えるというのが基本的な流れになっております。この点は本年度からスタートする第三次基本計画においても踏襲されております。  ただ、従来その辺の対策が非常に限定された考え方のもとで行われておりましたもので、その辺をもう少し幅広く、単に環境面というものではなくて、人の教育面も含めまして総合的にその安全確保を徹底させるということが基本姿勢になっております。  また、現在、第一次基本計画がスタートした当時と違いまして、かなり海運関係、漁業関係の船舶を中心とした技術革新が進んでおります。そういうような変化にも十分対応した対策を推進するというのが今度の計画の基本となっております。
  173. 井上一成

    井上(一)委員 さらに、私は船員の安全を考えると、海上の航行が特に問題になってくるわけであります。  そこで、次に、私は問題として少々お尋ねをいたしたいのはマラッカ海峡の航行であります。  本年三月十日、わが国とマラッカ海峡沿岸三カ国との間で、マラッカ海峡の大型タンカーの通航規制の実施時期について会議を持ったわけでありますけれども、物別れに終わっておるわけでありますか、この会議の中で、先方の言い分は何なのか、あるいはわが国の言い分はどうなのか、特にわが国のその言い分の理由、及び先方の言い分を受け入れた場合のわが国にとっての不利益というか、そういうものについて少し具体的に御説明をいただきたいと思います。
  174. 山元伊佐久

    ○山元説明員 お答え申し上げます。  マラッカ・シンガポール海峡は、日本の輸入いたします石油のうち中近東から輸入しますものの八五%がこの海峡を通ってきているわけでございまして、日本にとりましては非常に重要な輸送ルートになっているわけでございます。そのような立場でございますので、四十四年からわが国は、政府はもとより、マラッカ協議会を通じまして、航路標識の整備とかいろいろなことで安全を確保するために沿岸三国に協力をしてきたわけでございます。  ところが、非常に残念なことでございますが、五十年の一月に祥和丸というタンカーが座礁しまして、そのほかにも引き続いて事故があったために、沿岸三国はタンカーの通航につきまして非常に関心を持つようになりまして、昨年の二月に、マラッカ・シンガポール海峡を通航する通航制度につきまして大綱を発表したわけでございます。引き続きまして昨年の十一月に、この海峡の航行制度につきましてIMCOの総会に提案をいたしまして、そのルールが採択をされたという経過があるわけでございます。  そのルールの内容でございますけれども、航路を分離する方式を採用するとか、設定するとか、あるいは深い喫水船につきましては一定の航路を通るように航路を設定するとか、あるいは船底と海底との間における余裕水深につきましてこれを三・五メートルにするとか、そういういろいろのルールをつくったわけでございまして、このルールの実施は、一応現在三国が提案いたしております内容は、必要な航路標識が整備されるかあるいは一九八〇年五月十五日、いずれか遅い方の時期から実施する、こういうような内容になっているわけでございます。  それに対して日本側といたしましては、かねてから二つの点につきまして非常に強い要望を持ち出してきております。一つは、このシンガポール沖の東航のルートでございますけれども、二カ所ばかりが四百五十メートルになっておりますので、これを、安全を確保するためには六百メートルにしてほしいという点を強く要望いたしております。それからもう一つは、この実施時期についてでございますけれども、直ちに実施される場合には日本の受ける経済的なインパクトが大きいので、これを激変を緩和するという意味で、五年ばかりの猶予期間を置いてほしい、こういう主張をしてきたわけでございます。  そこで、先ほど先生から御指摘のございました本年三月における沿岸三カ国と日本との会合におきまして、いろいろと両方意見を交換したわけでございますけれども、なおまだ十分意見の決着がついていないという状態でございまして、今後も引き続いて沿岸三国と、できる限り日本の要望が満たされると同時に、安全面につきましては航路標識の整備等を含めまして三国に協力していくというような姿勢でさらに交渉を続けていきたいというように考えております。ちなみに申し上げますと、余裕水深でございますけれども、当初、日本側は三メーターで十分であるということを主張し、沿岸三国の中には、多少ニュアンスの相違はございますけれども、四メーターを主張する国もあったわけでございますけれども、最終的には三・五メーターということで落ちついております。それで、この三・五メーターの場合には、大体日本の運航する船舶で、水深が十八・二メーターを超えるもののうち、約三十隻台が影響を受ける。それから、仮に沿岸三国が主張していたように四メーターであった場合には、約七十隻台が影響を受けるということでございまして、年間の費用増で換算いたしますれば、三・五メーターで落ちついた場合には大体数十億円、それから、沿岸三国がかつて主張していた四メーターの場合には百数十億円という影響を受けるであろう、という試算がされていたわけでございますが、このuKCが三・五メーターに決められたことには、日本としては、最終的にはやむを得ないだろう、こういうように考えておるわけでございます。
  175. 井上一成

    井上(一)委員 いまの答弁の中でも、マラッカ海峡の超大型船の通航規制は、七五年一月シンガポール沖で原油流出事故を起こした祥和丸が直接の引き金になった。われわれも、航行規制は必要であるという認識の上には立っております。また一方、わが国の経済性をも考えていかなければならない、これをどのように調和して対処していかれるのかということが一点お聞きをしたいわけであります。  さらに、これも先ほどの答弁の中で、わが国の石油輸入の八五%以上がマラッカ海峡を通過している。いわばわが国のエネルギー資源の多くが海上輸送をしておって、その大部分がこの海峡を通航しているわけであります。日本経済の生命線でもあるんだというふうにも理解ができるわけです。そういうことを考えると、非常に通航規制というものについては、日本経済にとっては大問題である。しかしながら、沿岸国の主張を無視するというわけには絶対になりません。そこで、いま前段で申し上げた、どのように調和して対処されていくのかということと、もう一つ、このマラッカ海峡を通らずにロンボク海峡を迂回した場合、どれくらいの日数を要して、どれくらい船員労働時間というものが多くなり、かつその他の経費がどれほど増加していくのか、その点について少しお聞きをしておきます。
  176. 山元伊佐久

    ○山元説明員 先生の御質問の、安全性の問題と経済性の問題とのバランスの問題でございますけれども、できることならばこの両者が両立することが一番望ましいと考え、できる限りそういう姿勢で対処はしておるわけでございますけれども、どちらかと申し上げますれば、やはりこの海峡の航行の安全性が確保されることが最優先であり、また、これが確保されないで事故が起きた場合には、この海峡を大型タンカーが通航できなくなるという事態も想定されるわけでございますので、今後も日本側といたしましては、マラッカ協議会を通じまして、航路標識の整備をさらに進めていくとか、あるいは統一海図をつくるとか、そういうことで今後やっていくように計画いたしております。ちなみに、五十年までにすでに三十数億円の金を投じておりますけれども、今後五年間におきましても同額程度の金を投じまして安全対策を強化していこうというぐあいに考えております。  次は、ここが通れなくなる場合、ロンボク海峡を通過する場合の影響でございますけれども、ロンボク海峡を帰りに通るということになりますと、日数にいたしまして約三日程度、費用にいたしまして一隻当たり約二億二千万円の費用増になるというぐあいに推定いたしております。
  177. 井上一成

    井上(一)委員 もとより安全性を優先させなければいけないわけであります。  そういうことになりますと、先ほどのお答えの中でも、わが国の主張と相手国の主張、たとえば具体的に三十センチから七十センチの増減によって積み荷が一体どれぐらい減量されるのか。それによる製品、石油原価にはね返るであろうコストはどれぐらいになるのか。いま、ロンボク迂回では一隻当たり約二億二千万ですかのコスト増だと。これは一隻であって、年間の数字に直すと莫大な額になるわけであります。こういうことがまた原油の値上がりに通ずる可能性があるわけであります。  それからもう一つ、沿岸三カ国はこの規制について二年半の延長を主張したということであります。わが国はそれに対してたしか五年間の延長を求めたというように報道がされておるわけであります。積み荷等の減少からして五年間の延長を求められたのか。先ほどのお答えのように安全性を優先して考えるならば、むしろ二年ないし二年半でも、五年でも、同じことではないだろうかというふうに理解をします。相手国の期間よりもわが国がさらに延長を主張しなければいけない理由がどこにあるのか、この点についてもひとつお聞かせをいただきたいと思います。
  178. 山元伊佐久

    ○山元説明員 まず第一点の費用の問題でございますが、先ほど最初に御答弁申し上げましたように、UKCが三・五メーターということになりますと、三十隻台の船が通れなくなります。したがいまして、一隻大体年間二億二千万の費用増でございますので、大体七十億程度の費用増になろうかと思います。  それから第二点の猶予期間の問題でございますが、日本側が五年間の猶予を主張いたしましたのは、現在のタンカーの耐用年数から見まして、一応現在のタンカーが大体従来どおり通れるということを想定して五年を主張したものでございます。  しかし一面におきましては、確かに先生の御指摘のように、安全性の点に重点を置けばできるだけ早くこれを安全実施することが望ましいということでございましょうし、沿岸三国も恐らくはそのような観点から二年半ということを提案してきたのだろうと思われます。したがいまして、この問題につきましては今後外務省ともよく御相談しながらどのような結論をつけるか、今後さらに検討してまいりたいと考えております。
  179. 井上一成

    井上(一)委員 先ほど少し触れられたわけでありますけれども、危険水域三カ所に航行分離帯を設置するそうでございます。その設置する資金及び回転基金を日本側で援助をするという約束をされたそうですか、その額、そしてその額で三カ国が納得をされたのかどうか、そのことについてお尋ねをいたします。
  180. 山元伊佐久

    ○山元説明員 従来からも航路標識につきましては日本のマラッカ協議会が中心になって設置してまいったわけでございますけれども、今後も、今回の安全対策に絡みまして必要とされる航路標識あるいはそれに関連する航路標識につきましては、従来どおりマラッカ協議会が寄贈をするということで考えております。  しかしながら、現在の時点では最終的に航路標識を幾つ整備するかはまだ確定をいたしておりません。したがいまして、金額もまだ確定はいたしておりませんけれども、航路標識以外のたとえば海図の統一とか、そういうものも含めまして、今後五年間に要する費用は大体三十数億円程度だというぐあいに計画いたしておりますし、おおむねの方向としては三国もこれを納得するのではないかというぐあいに考えております。
  181. 井上一成

    井上(一)委員 その額等については、相手国に事務的な形で折衝をなさっていらっしゃるのですか。
  182. 山元伊佐久

    ○山元説明員 まだ航路標識の設置の数が確定いたしておりませんので、金額的に幾らで日本が協力しようか、あるいはそれで結構だという段階まではまだ至っておりません。ただ、日本側としては従来と同じような考え方で進めようということでございまして、従来の日本側の協力につきましては、三国も十分評価いたしておりますので、それほどトラブルはないものだと考えております。
  183. 井上一成

    井上(一)委員 そういう中で五年間ということについては、わが国としても余り固執はしないという立場に立っていらっしゃるのですか、いわゆる延期期限。
  184. 山元伊佐久

    ○山元説明員 猶予期間を日本側が五年を主張し、沿岸は実質二年半だと言っておりますが、この点につきましては、もう一度よく外務省とも御相談しながら日本側としての最終的な態度を決めていきたいというぐあいに考えております。
  185. 井上一成

    井上(一)委員 さっきもお尋ねをしたように、私は五年間という根拠をこの際もう少し明確にしていただきたかったわけなんです。外務省と御相談をしてということなので、ここで余り深く尋ねることがいいのかどうかわかりませんけれども、できればなぜわが国が五年間を主張するのかということを明確にしていただければと思うのですが……。
  186. 山元伊佐久

    ○山元説明員 非常に抽象的になって恐縮でございますけれども、このルールが直ちに実施されますと経済的なインパクトが急激であるということ、それともう一つは船の新造あるいはそういういろいろな点から考えました場合に、現在就航いたしておりますタンカーの耐用年数から見まして、おおむね五年程度が必要ではないかというぐあいに考えていたわけでございます。しかしこれは、安全という面から考えれば、三国の申し出ている点につきましても考えねばならない点もあろうかと思いますので、今後さらに詰めていきたいと考えております。
  187. 井上一成

    井上(一)委員 最後に一つ外務大臣にお伺いをいたしたいと思います。  先ほどから質疑の中でも、大臣なりに理解はしていただけたと思うわけでありますけれども、何としても安全性優先の中で、わが国の経済問題とどう調和させていくかということが大事なことであります。とりわけいま指摘をいたしましたマラッカ海峡の航行については、わが国の経済のいわば生命線でもあろうかと思うわけであります。が、半面、沿岸三国にとってはVLCC、いわゆる大型船の航行によって海洋汚染の被害のおそれを、もうすでに祥和丸等を通してはだで感じ取っているわけであります。また一方、その船に乗り組む船員の安全性も十分考えるならば、経済的な面ばかりを考えてはならないというふうに思うわけであります。この問題は、もちろんわが国の国益も考え、また国際協調をもって、円満に相互理解をもって解決を図るべきだ、私はこのように希望するわけでありますけれども、外務大臣の御意見を最後に伺って、私の船員職業上の災害防止に関する条約に対する質疑を終えたいと思います。
  188. 園田直

    園田国務大臣 マラッカ海峡通過の問題については、外交的には関係沿岸国が必ずしもまだ意見が一致してないこともあります。それにまた、こちら自体の船の問題等につきましても、国益、経済的な計算ばかりでなくて、おっしゃるとおり船員の安全あるいは航行の安全、いろいろ問題がありますから、十分御指摘の点に注意をして進めていきたいと考えます。
  189. 永田亮一

    永田委員長 高沢寅男君。
  190. 高沢寅男

    ○高沢委員 私は、許諾を得ないレコードの複製からのレコード製作者の保護に関する条約、後、略称レコード条約というふうに呼びたいと思いますが、これについて御質問をいたしたいと思います。  今度、この条約作成をされてわが国も加入をする、この目的は、要するにいわゆる海賊盤というものを防ごうという趣旨であるわけでございますが、日本におけるこの海賊版がつくられて出回っているその実態は、まずどういうふうな姿にあるのでしょうか。
  191. 犬丸直

    ○犬丸(直)政府委員 いわゆる海賊版の問題でございますけれども、国内におきましては、一応法制上、現在の著作権法によりまして国内のレコード製作者の権利は保護されております。したがいまして、もちろんその権利の保護の法律の実体が、完全に施行されておるかということでございますけれども、ほぼ現状におきましては、それほどそういうものが横行しておるとかというようなことによって権利が侵されているというような状況はないものと私どもは考えておる次第でございます。
  192. 高沢寅男

    ○高沢委員 それでは、日本レコードが今度は海外において海賊版を複製されて、そういうものが出回っておるというような実態がどのくらいあるのか。またそういうふうな地域、主にどういうふうなところに日本レコードの関係の海賊版が出回っているということなのか、その実態をお聞きしたいと思います。
  193. 犬丸直

    ○犬丸(直)政府委員 現在の段階におきましては、国内法において国内のレコード製作者の権利が保護されているというだけのことでございまして、海外におきましては、まだそういう関係の保障が確立しておらない。そういうことからして、今回の隣接権保護条約に加盟するという問題も起こっているわけでございます。  それで実態でございますけれども、国外のことでございますから、これはなかなか把握がむずかしゅうございまして、正確なデータを持っておりませんけれども、いわゆる先進国におきましてはそれほどないのではなかろうかと考えられますけれども、いわゆる開発途上国におきましては、いろいろ旅行者の目あるいは新聞記者の方たちのお話を伺いますと、そういういわゆる海賊版が出回っておるというような状況もあるように聞いております。今後よく調べてみたいと思っております。
  194. 小林俊二

    ○小林説明員 国際レコードビデオ製作者連盟という機関がございまして、この機関の調査によりますと、一九七六年、一昨年におけるいわゆる海賊版レコード、テープの地域別の売上高が出ております。内容は省略いたしますが、合計いたしますと約五億ドルに上る海賊版のレコード、テープが出回っておるということでございます。その中で地域として多いものは、アジア太平洋地域日本を取り巻く地域が一番多いようでございます。
  195. 高沢寅男

    ○高沢委員 大体見当としてはわかりましたが、そうしますと、そういうふうな海賊版の多く出回っている、それは、先ほどの文化庁長官のお話でも、発展途上国というふうな考え方で見るとすれば、そういう国が今度のこのレコード条約に加盟をしないと意味がないわけですね。そういう意味においては、そういう国々の加盟を促進する、加盟をさせる——させると言うと、ちょっと言葉が適当じゃないかもしれませんが、加盟を促進する何か手だてというものはあるのかどうか、それをお聞きしたいと思います。
  196. 小林俊二

    ○小林説明員 これはもちろん各国の主権に属する事柄でございますから、強いるということは不可能でございますけれども、まず率先してわが国が加わるというのも、これもその後に各国がつながるということを期待してのことでございます。多くの国がこれに参加して、国際的にこういう権利を実体的に実効的に保護していくということが当然であるという雰囲気が盛り上がってくれば、それによって各国認識も深めることができるということを期待しておるわけでございます。
  197. 高沢寅男

    ○高沢委員 実は、この間ここで特許協力条約という、これとは多少性格が違いますが、その特許のそういうふうな手続を国際的に協力するという条約の審議があって、この条約の中には、そういう開発途上国が加入しやすいような、いわば開発途上国に対する援助になるような、そういう内容が条文としてあったわけですが、今度のこのレコード条約にそういうふうな条文がないということは、何かちょっとその点が少し足りないんじゃないかという感じがするのですが、いかがでしょうか。
  198. 小林俊二

    ○小林説明員 レコード保護条約の上には特に、御指摘のように開発途上国のみに認められた特例の規定はございませんけれども、この条約は、教育または学術的研究のための使用を目的とする場合にはその締約国の権限ある機関が許可を与えることによってレコードを複製することができるという、いわゆる強制許諾、許諾を強いることができるという制度を各締約国が国内法令によって採用できるという規定を設けてございます。開発途上国は、この制度を国内法令で採用することによりましてレコードを複製し、自国の学術、文化の発展を図ることができる道を開いておるわけでございます。  なお、著作権関係の国際条約におきます開発途上国のための特例措置内容は、著作物に関する強制許諾制を開発途上国のために認めることとするものでございます。過去におきましても、いわゆる途上国におきましては著作権といったような概念が必ずしも法制的にあるいは実体的に確立していないという面がございますので、この点は国際協調の面からいって好ましくない現象でございます。そういう観点から、日本といたしましても、たとえば著作権に関するセミナーを東南アジア諸国のために開催する際に積極的に協力するといったようなことで各国認識を深め、相互の利益を認識していく方向で協調を推進したいという考えから努力を払っておる次第でございます。
  199. 高沢寅男

    ○高沢委員 著作権の保護に関する国際条約がいろいろありますね。たとえばベルヌ条約というのがあって、この加盟国はベルヌ同盟という同盟をつくっています。それから工業所有権の保護の関係ではパリ条約というものがあって、この加盟国はパリ同盟というものをつくっております。今度のレコード製作者を保護する条約は、加盟国でそういう何々同盟というようなものをつくることが予定されているのかどうか、その点。それから、もしそういう何々同盟というものをつくることが別にないとすれば、ほかのたとえばベルヌ条約でベルヌ同盟ができているというケース、こういう同盟のあるとないとでは一体どういう違いがあるのか、それをお尋ねしたいと思います。
  200. 小林俊二

    ○小林説明員 このレコード製作者を保護するための条約は、この条約作成に先立って作成されましたいわゆる隣接権条約というものの中から、特にレコード製作者のための保護が緊急を要する、要するに海賊版の出回り方が余りにも目に余るという現況をとらえましてこの条約作成されたような次第でありまして、いわば単発的にそういった現在の目に余る状況をとりあえず抑えるということから作成されたという観点もございまして、ベルヌ条約とかあるいはパリ条約のように包括的に体制を定めて、その基本となる同盟を設置するといったような観点とはやや観点を異にする面がございます。ある意味におきましては、とりあえずの措置を性格として持っておるということもできると思います。  その実際的な条約の施行は、各国におきます輸入の抑圧という点、要するに海賊版の輸入の抑圧というところに大きな意味があるわけでございまして、レコード製作者に新しく権利を与えるといったような面はむしろ乏しいわけでございます。したがいまして、各国におけるそうした規制措置という点にその条約の主眼があるということから、その実効性も各国によって図り得る。国際的な長期協調と申しましても、国際的な義務を各国が引き受けるということでその条約の目的が達せられるという観点から、特に同盟といったような国際的な連帯組織をこのためにつくるという必要は乏しかったものと想像いたします。
  201. 高沢寅男

    ○高沢委員 いま説明されました隣接権条約ですね、それとこのレコード条約との関係ということはまた後ほどお聞きをしたいと思いますが、いま言われました隣接権条約の場合には、実演者の権利なりあるいはレコード製作者の権利やあるいは放送事業者の権利や、この面における一種の包括的なそういう性格の条約になって、それはローマ条約とも呼びますが、この場合には加盟国によってローマ同盟というふうなことになるのでしょうか、その点をひとつお尋ねしたいと思います。
  202. 小林俊二

    ○小林説明員 この隣接権条約の場合にも、同盟といったような国際的な連帯組織を予定しているという事実はないようでございます。その理由につきましては、私ちょっと確信を持って申し上げる事実がないのでございますけれども、恐らくこの場合にもその対象とする権利の範囲が、特許権であるとかあるいは著作権であるとかといったような非常に広範な権利に比べて限られたものである、いわゆる二次使用権的な新しい概念であるといったようなことに関係があるのではないかと思います。隣接権条約が実際問題としてまだわが国もこれを批准する段階に達していないというのも、その権利の内容において各国間の考え方あるいは実際の制度にかなり相違があるといったようなことでございまして、新しい権利として今後経験を積み重ねて国際的に確立していく段階にあるものであるということに関係があるのではないかと想像いたします。
  203. 高沢寅男

    ○高沢委員 先へ進んでいきたいと思います。  この条約の第二条に「公衆への頒布を目的とする作成又は輸入」こういうふうなものからレコード製作者を保護する、こうなっておりますが、この「公衆への頒布を目的とする」これは一種の、何といいますか、営業目的というふうなことにもなろうかと思うのですが、そういう頒布もあるでしょうし、また中には一種の同好会的な、サークル的な、そういう仲間の中で、ある一つのものをみんなで聞こうじゃないかというような形で複製物をつくるというようなやり方もあろうかと思うのですが、その辺の境目をどの辺でつけるのかということはどういうふうにお考えでしょうか。
  204. 小山忠男

    ○小山説明員 この条約におきましては、公衆への頒布を目的とする複製を防止するという点に主眼があります。  その公衆への頒布との関連におきましていま先生がおっしゃいました、たとえば個人的に利用する場合の複製との関連がどうなるかという点につきましては、この条約の第六条にその法の制限に関する規定がございまして、現在、その個人的使用あるいは少数の友人間における使用、そういったような小範囲における使用につきましては、各国の国内法令によりまして、著作権を制限して自由にやってよろしいという制度がございますけれども、この条約の第六条によりまして、そういう著作権に関する制限の制度をレコードにつきましても準用するという考え方を採用できるというふうにしてございます。
  205. 高沢寅男

    ○高沢委員 いま説明されました第六条の関係のことになるわけですが、強制許諾ということがあるわけですね。その場合に、「強制許諾に係る許可に基づいて行われる複製について、作成される当該複製物の数を特に考慮して(b)の権限のある機関が定める公正な補償金が支払われること。」こういうふうになっておりまして、強制許諾に対しては公正な補償金を払う、こういうことになっておりますが、この場合の公正な補償金というものはどういうふうにして決定されるのか、その場合の決定の基準といいますか、そういうものはどういうものを基準にして行われるのか、あるいはこういうふうな面において日本と外国ではそういう補償金の決め方や基準に違いがあるのかないのか、こういう面についてお尋ねをしたいと思います。
  206. 小山忠男

    ○小山説明員 公正な補償金につきましては、特別に条約上の基準といったものはございません。でございますから、結局この条約締約国の各国の国内法の判断によるというふうに考えられております。  それで、現在この条約の解釈としましては、一応、国際的な一般の取引におきまして通常支払われております金額、こういったものが基準になろうかというふうに考えられます。
  207. 高沢寅男

    ○高沢委員 日本の場合には、いま言われたそういう取引の実態が基準になるということですが、その強制許諾に対して、あなたの関係の著作権を制限して、この複製は、たとえば百枚認める、これについては著作権はひとつがまんしなさいというような場合に、百枚という数をわかりやすくとりましたが、そういう場合には、音楽のLPの盤であれば大体どのくらいの金額になるのか、説明願いたいと思います。
  208. 小山忠男

    ○小山説明員 LPの例について申しますと、現在音楽の作品をLPレコード作成するという場合には、音楽の著作権者に五・数%の印税がいくというふうになっております。レコード製作者はそういう音楽の著作権者に著作権料を払った上でレコードをつくるということをやっております。  それで、今度はそういうふうにしてでき上がりましたレコードを第三者が複製するという場合には、その著作権者に対する著作権料の支払いのほかに、そのレコードをつくりましたレコードメーカーに対しまして一種のレコード印税を支払う、こういうような仕組みになっておるわけでございます。
  209. 高沢寅男

    ○高沢委員 ですから、仮に百枚とこう見れば、百枚の複製をひとつ認めろということに強制許諾でやるとすれば、レコード製作者に払われるその場合の補償金というのは、大体どのくらいの金額になるか。
  210. 小山忠男

    ○小山説明員 現在、日本はこの条約による強制許諾制を採用していませんので、そういうレコードメーカーに払います。種のレコード印税、この点につきましては、ちょっとはっきりした数字を申し上げることはできないのでございます。
  211. 高沢寅男

    ○高沢委員 そこにそのままいてください。  そうすると、まだわが国はこういう強制許諾の補償金を払うというような制度がないが、今度この条約に加入するということになれば、これを受けて国内法としての著作権法の中にこの旨が入るということになるわけですか。
  212. 小山忠男

    ○小山説明員 この条約におきましては、そういう強制許諾制を各国で採用してもよろしいということになっておりまして、そういう強制許諾制を採用することが義務づけられてはおりません。したがいまして、採用するかどうかということは各国判断によるということです。  それで、わが国の場合は、特にこの条約の加入に伴いまして著作権法を改正してこの強制許諾制を採用するという必要制はないと考えておりますから、そういう意味での改正を考えてはおりません。
  213. 高沢寅男

    ○高沢委員 そうすると、わが国は強制許諾制は採用する必要はない、こういうことですね。
  214. 小山忠男

    ○小山説明員 おっしゃるとおりでございます。
  215. 高沢寅男

    ○高沢委員 わかりました。強制許諾制をわが国の国内制度として採用する必要がないというお考えはわかりました。しかし、先ほど言いましたような、営業目的で複製をつくろうというふうなものは別といたしまして、そうでなくて、いろいろなサークルとかあるいは研究者とかいうようなものがその立場で利用したい、そのための複製を望むというふうなものがずいぶんあるんじゃないかと私は思いますが、そういうことに対して、それを大いに保護するということからすれば、強制許諾という、こういう制度はあった方がいいんじゃないか、こんなふうに私、素人考えで思いますが、その点はどうなんでしょうか。
  216. 犬丸直

    ○犬丸(直)政府委員 その点につきましては、条約が通り、法律の改正ができました後で、その実態をよく調べまして検討してみたいと思っております。
  217. 高沢寅男

    ○高沢委員 それでは、次の方へ進みたいと思います。先ほどお話しのありました隣接権条約ですね。このことについてお尋ねをしたいと思うのであります。  わが国はまだ隣接権条約というものに加入はしていないわけであります。しかし、すでに国際条約としてこういう条約が存在しているということもまた事実であります。そうであるといたしますと、この隣接権条約の中では、レコード製作者の権利ということもまた規定されているわけでありますから、これがあるのにわが国はこれに加入しないで、そしてレコード条約の方へ加入する。今度の場合そうなっているわけでありますが、今度のレコード条約で保護しようというそういう目的が、この隣接権条約ではやれないのかどうか、この点についてまずお尋ねをしたいと思います。
  218. 小林俊二

    ○小林説明員 レコードの海賊版の問題に限って申し上げますと、隣接権条約におきましては、レコード製作者に対しまして、他のたとえば放送とかその他におきますいわゆる二次使用権を認めるというのが隣接権の条約の目的でございます。それに対しまして今回のレコード製作者保護条約の方は、いわゆる海賊版が輸入されたり、製作されたり、頒布されたりすることを国が刑罰その他の措置をもって防止するという点にございます。こうした輸入頒布を防止する、阻止するという点は隣接権条約からは抜けておりますので、この点はこの条約によって初めて担保される利益であろうと思います。
  219. 高沢寅男

    ○高沢委員 隣接権条約と今度のレコード条約との関係はわかりました。わかったわけですが、しかし日本はその隣接権条約に入っていない、こういう現実の姿があるわけです。  そこで、著作権という関係で見ると、わが国はもうベルヌ条約も入っているわけですね。それから、万国著作権条約の加盟国にもなっているわけです。それから、つい最近の八十国会では、万国著作権条約のパリ改正条約、これについても加盟の手続をとったわけです。そして今度はレコード条約というもの、これもまた加入するというふうに考えてみますと、著作権に関係するいろいろある条約の、大体日本はこれもこれも皆入っているという形になって、隣接権条約だけ入っていないという形はいささか不自然じゃないか、私はこういう感じがするわけです。これに加えて隣接権条約日本が加入するということになれば、こういう著作権に関連する各種の国際条約のいずれも日本は入っていて、その関係は非常に整備されているという姿になるんじゃないかと思うのですが、わが国文化的な水準というそういう見地からいっても、やはり隣接権条約は早く入るべきじゃないか、こう思いますが、まだ入っていない、これは一体どういう理由あるいはどういうお考えがあってまだ入っていないのか、それをお尋ねをしたいと思います。
  220. 犬丸直

    ○犬丸(直)政府委員 隣接権条約におきましては、先生御指摘のように広く実演家、放送機関、レコード製作業者等の権利を保護しているわけでございまして、その隣接権条約の趣旨につきましては、私どもは大変賛成しております。その方向で、本来基本的には、各国加入すべきものであると考えております。なお、わが国におきましては、昭和四十五年に著作権法を全面改正いたしましたときに、国内におきましてはすでに隣接権保護の内容規定いたしまして、保護しておるわけでございます。したがいまして、その方向としては私ども賛成しておるわけでございますが、やはりそれぞれの国によって事情がいろいろ違います。一口に隣接権といいましても、著作権のような非常に古くから確定した概念でございませんので、実態がいろいろまちまちでございます。そういうこともございまして、国内のいろいろな体制、条約に加入した場合に本当に実行ができるかどうかという体制等を勘案した上で加入しなければならないということで、加入の方向でございますけれども、なおいろいろな状況を検討しておるという段階でございます。  ちなみに、現在加入しております国がまだ二十カ国にとどまっております。アメリカ、フランス、ソ連というような大国もまだ加わっておらないところもございます。そういったような国の動向も見きわめながら、それからわが国でも隣接権の保護が進んでまいりましたのは四十六年以来でございます。その実態の進行状況等をよく勘案いたしまして、今後できるだけ早く締結したいと思っておるわけでございますけれども、その方向で検討してまいりたいと考えておる次第でございます。
  221. 高沢寅男

    ○高沢委員 いま長官の説明されたように、もう国内法の関係では、著作権法の中へ第四章という一つの大きな章を設けて、そこでこの隣接権の保護ということが規定されているわけでありますから、その意味においては、もう日本の国内の体制では、隣接権を保護するという体制はできているというふうに言って私は間違いないと思います。国内の体制でできているのに、そういう趣旨の外国の条約があるのに入っていないということはいささか不自然ではないか、私はこう思います。いま言われました加入の状況が二十カ国という程度で、その加盟国の中でもアメリカとかというふうなところもまだ入ってはいないというふうなことではありますが、私はその点では、逆に日本のような国が加入することによって、隣接権というこの権利の扱いがまだ国際的に十分熟していない、こう言われますが、むしろ日本が加入するというふうなことによって、国際的にもこういう権利の扱いがむしろ熟していく、それが促進されるというようなことにもなるのじゃないかと思いますが、その意味において、もう一度長官にそういう加入という問題についての前向きのお答えを私はぜひいただきたいと思うのですが、お考えをお聞きしたいと思います。
  222. 犬丸直

    ○犬丸(直)政府委員 ただいまおっしゃいましたように、隣接権の保護というのは、法制的には一応完成しております。著作権法に一章設けて規定しておるわけでございますけれども、やはり実態がきちっと固まってまいりませんと、条約に加入するということになりますと、加入したけれども実態がうまくいかなかったということになりますれば、これは国際的な信義の問題でもございますし、先ほど申し上げましたような諸国の情勢等も考えまして、もちろん気持ちとしては基本的な方針は前向きでございますが、よく実態を踏まえて検討いたしてまいりたいと思っております。
  223. 高沢寅男

    ○高沢委員 いまの長官のお答えの中で、もし実態が伴わなければ加入してもと、こういうお言葉がありましたが、その実態がという言葉をもう一つ具体的に説明をしていただきたいと思います。
  224. 犬丸直

    ○犬丸(直)政府委員 一つは、条約に加入いたしますると、他の締約国における権利が、著作者の隣接権者の権利が確保されるということと、それから今度逆に外国から入ってまいりますものにつきましても、隣接権者に対して許諾をしてもらうとかその権利が保護される、この両面があるわけでございます。そういった両面から、いろいろ現在のわが国におけるこういう実演活動の実態に影響が及ぶわけでございます。そういったものが十分に加入にたえ得る状況になっておるかどうかということをやはり確認する必要があると思いますので、その点につきましてなお検討を進めたいと思っておるわけでございます。
  225. 高沢寅男

    ○高沢委員 私の手元にNHKのラジオ放送を調べた調査資料があります。それに基づきながらまたいまの点をもう少しお聞きしたいと思います。  これは日本芸能実演家団体協議会、略称芸団協と呼ばれる団体が専門の調査機関へ委託して調査したものだ、こういうことで私もその資料をいただいたわけであります。それによりますと、NHKのラジオの全放送時間の中で二六・三%が音楽演奏の時間になっている。その音楽演奏の時間の中でちょうど八〇%ぐらいがレコードの演奏の時間になっておる。そうすると残りの二〇%、これがつまり実際に音楽をやる人たちの生の演奏がラジオで流れる時間。実演者たちの生の出演の時間というのは音楽の時間の中の二〇%、あとの八〇%はレコードで音楽を流す時間、こういうふうになっておるということであります。その八〇%のレコードの中で日本レコードの音楽は約一六%、そして六四%というものは外国版のレコードの音楽である、こういうふうな実態がまず調査によって明らかになった、こういうふうなことなんであります。  そこで、その実態を一応前提に考えてみますと、一六%日本レコードを使う、この面については先ほど言われた著作権法の中の隣接権の規定がすでに国内法ではありますから、そこで日本レコードを使ったという場合には、そのレコードの音楽を演奏した実演家の人たちに対しては二次使用料を払う、またそちらの側からすれば二次使用料を受ける権利がある、こういうふうな形になっているわけであります。そういう実演家の人たちの二次使用料を受ける窓口団体は、これは文化庁が指定されて、それで芸団協と日本レコード協会がその二次使用料を受ける窓口団体ということになっている、こういうことであります。その日本の国内のレコードを使ったそれに対する二次使用料の支払いの金額はどのくらいかというと、何かNHKの昭和五十年の支払いの合計金額が一億三千万円ぐらいの金額であった、こういうことであります。そこで、まずいまの私が説明したそういうふうな実態調査、そういう実態であるということが、文化庁の方で掌握されている事実関係もそういうことかどうかということをまずお聞きしたいと思います。
  226. 小山忠男

    ○小山説明員 現行の著作権法におきましては、レコードを放送あるいは音楽有線放送に使った場合には二次使用料を実演家並びにレコード製作者に支払うということが定められております。この規定に従いまして、現在、日本放送協会並びに日本民間放送連盟等から、芸団協並びに日本レコード協会との協定によりまして一定額が毎年支払われています。それで、この二次使用料の金額でございますけれども、日本放送協会と日本民間放送連盟が昭和五十一年度に支払いました額、これは両者を合計しまして一億三千万円でございます。それから五十二年度におきましては、この合計額が一億八千万になっております。
  227. 高沢寅男

    ○高沢委員 その数字はわかりました。  そうすると、これはまあ当然のことでしょうが、外国のレコードを使った分については二次使用料の支払いはなされていない。現在隣接権条約にも入っていないし、支払いはなされていない、こういうことですね。
  228. 小山忠男

    ○小山説明員 おっしゃるとおりでございます。
  229. 高沢寅男

    ○高沢委員 外国のそういうレコードを製作した人、そこで演奏した実演家の外国の人たちに対して、私はこれは少し恥ずかしいのじゃないか。とにかく海賊版がいけませんということでいまのこのレコード条約になっているわけですが、日本のNHKなり民放なり、そういう放送で大いに外国のレコードを使っている、この実態は明らかです。使っているけれども、隣接権条約に入っていないから二次使用料の支払いはいまは一切ゼロ、こういうことは一種の合法的な海賊版みたいなことじゃないですか。もちろんこれは海賊版とは違うと言われると思います。確かに海賊版とは違うけれども、しかしそういう外国の著作権というものがあるレコードをどんどん使いながら、支払いはゼロということで済ましているということは、これは一種の文化的な行政のあり方なり何なりということから見て少なくとも恥ずかしいことである、余り名誉なことじゃない、こういうふうに言うべきじゃないか。そうすると、その意味からいっても、やはりその隣接権条約に入って、そういう支払うものは外国の実演者にも払う、外国のレコード製作者にも払う。そのかわり日本レコードを外国で使っている、それについては払ってもらう、こういうお互いの関係を確立するのがいいのじゃないか、こう私は考えるわけなんです。その外国の二次使用料を外国へ向かって払う、こうなれば金額はかなり大きくなる、そういうお金は出したくないという放送事業者の気持ちが、実は隣接権条約わが国が入らない一番の大きな原因になっているのじゃないかと私は見ます。そうであるとすれば、その点は私は逆に心配ないと言いたいのです。もし隣接権条約に加盟して、そうして放送局、放送事業者が外国のそういう二次使用料を外国へどんどん払うという事態が出てきて、そのお金がもし惜しいならば、その分レコードを使うのをやめて、日本の実演者の生の演奏をその時間に使えばいいわけでありますし、そういうふうにすればそれだけ日本の実演者の仕事もできる、それだけまた日本文化、芸術、芸能の発展の道にもつながる、こういうことだと思います。いろいろ文化庁長官がこの隣接権条約に加盟するに当たって障害があると先ほどから言われる障害は、私は恐らくその辺だと思うわけですが、そうであったとしても、この際あえてその加盟をやられるということの方が、結果としてまたその後ちゃんとした解決の道を生んでくる、そしてそれは日本文化、芸術、芸能の発展の道にもなる、こういうことだと思います。そういう意味において文化庁長官、このレコード条約ができるというこの時期に、やはり隣接権条約はできるだけ早くやります。加入しますというお答えをいただきたいと思います。どうぞひとつ答えてください。
  230. 犬丸直

    ○犬丸(直)政府委員 おっしゃいましたように、文化的な面におきましてもわが国が一流国として世界に立つためには、こういうようなものにも加入いたしまして、その世界一流国の仲間入りをしなければならないわけでございます。しかし分野によりましては、残念ながら文化的にまだ輸入国であるというような状況がございます。それで究極の方向といたしましては、当然これは加入すべきものと考えておりますけれども、そこへ至ります過程におきまして不要な摩擦のないようにしなければならないと思います。それでできるだけ加入できる条件をつくること、これは私どもだけでなくいろいろな方面に御協力いただかなければならないと思いますけれども、そういった方向で努力をし、私どもといたしましてもできるだけ早く加入できるように努力いたしたいと考えておる次第でございます。
  231. 高沢寅男

    ○高沢委員 最後に、せっかく園田大臣いらっしゃいます。著作権とかこういうことは大臣の所管事項ではないとは思いますけれども、しかし何分にも条約締結であるという関係からいって、また大臣が国務大臣として国政全般を見られるというふうな立場からいって、いま文化庁長官とのやりとりのありました隣接権条約、私はやはり日本はこの条約への加盟を早期にすべきだというような考えでありますが、これについてひとつ大臣のお考えを最後に聞かしていただいて、終わりたいと思います。
  232. 園田直

    園田国務大臣 近ごろいろいろな問題が起こるごとに国益国益という言葉が乱用されるわけでありますけれども、国益とは、利害のみならず、国の国際的な信用、そしてまた信義、こういうものを含めた国益というものが大事でありますので、この問題は四十六年かにやられて以来日は浅うございますけれども、いまやりとりの中で発言されたあなたの御意見等も、実態を調査をして、条約締結に向かって関係各省と協議を進めたいと考えます。
  233. 高沢寅男

    ○高沢委員 以上で私の質問を終わります。
  234. 永田亮一

  235. 草川昭三

    草川委員 公明党・国民会議草川昭三でございます。  私は、船員職業上の災害防止に関する条約、いわゆる百三十四号条約について少し質問をさしていただきたいと思うのです。  まず最初に、大臣が大変お忙しいようでございますので、このILOの基本的なことだけお伺いをしたいと思います。  御存じのとおりに、いまわが国と海外の諸外国との間には貿易の摩擦が非常に大きいわけでございます。特に経済的な摩擦があるわけでございますが、このILOの基本的な考え方である公正労働基準というものを推進する上においては、私、ILOというのは非常に重大な役を果たすものだと思うのでございますけれども、いまわが国の批准状況というものを見ますと、今度で三十六番目になるのでしょうか、これはアラブ首長国連邦、エジプトと並んで三十三位ではないだろうか、こう思います。しかも、常任理事国というのでしょうか、先進国だけを比べてまいりますと、非常にこれがおくれてまいりまして、条件が悪くて、四十九番目になるわけです。かつては一年間で数本の批准が行われたわけでございますけれども、最近では、平均しますと一年に一本ぐらいしか上がってきておりません。そういう点で、今後労働界の方からも、基本的な条約というものをもっと結ぶべきではないだろうか。たとえばILOの百五号条約、強制労働廃止に関する条約、あるいは百十一の差別待遇、あるいは百十七の社会政策、百二十二の雇用政策等、基本的な条約を速やかに促進をすべきではないだろうかという声があるわけでございますが、まずその点をお伺いしたいと思うのです。  同時に、第二番目の問題でございますが、先ほども少し出ましたように、アメリカがILOを脱退をいたしましてから、ILOは事業縮小二一・七%、三千六百六十万ドルぐらいの経費節減、そして残りを加盟国の寄付に頼るというので、日本は非常に遅まきながらようやく百万ドルの支出を決めたわけです。しかし、この順番もベルギー、ノルウェー、スウェーデン、オランダ、フランス、こうずっとやってまいりまして、最後に日本がようやく決めた。しかも、為替差益があるわけでありますから、実質的には百万ドルというものも特別の出費増にはならないのではないか、こう思うわけでございます。ただ、この百万ドルを支出をした場合に、日本政府はかなり条件をつけたようであります。あるいはまた、事業縮小に対してどう対応をしておみえになるのか、あるいはまた、基本的なアメリカの脱退に対する復帰の要請等をどのようにされるのか、その点だけ、ひとつ大臣からお伺いをしたい、こういうように思います。
  236. 園田直

    園田国務大臣 お答えをいたします。  確かに御指摘のとおりに、各条約、特にILO関係等の条約の批准、締結がおくれていることは事実でございます。先般からも衆参両方の外務委員会でこれに対する決議をしていただいたわけでありまして、私もこの点について閣議で関係各省の協力も求めたわけでありますが、そのおくれております理由の一つというのは、各種の条約内容と国内法の体制が違っておる、これをどう調整するかということ、それからまた一つには、わが国の実情と沿わない点もあるということで、関係各庁との調整が非常に手間取るわけでございます。しかし、いずれにいたしましても、そういう点を克服をして、事務的な折衝を進め、この批准が適切に、機を失せずいくように、今後努力すべきであると考えております。  ILOの脱退については、御承知のとおりに、日本自体も、それから加盟国からもいろいろ相談等を受けまして、石田労働大臣の時期に私官房長官でございましたが、アメリカに脱退をしないようにいろいろと努力したわけでありますが、ついにああいう結果になったわけであります。その後、そのときの話の経緯もありまして、そして、なるべく早く復帰してもらいたいという努力はいまなお続けておるところでございます。  なおまた、アメリカが脱退されたことによって一番困っているのは、いま御指摘の金の問題でございまして、一応、本年度は、御承知のとおりに人件費、事業計画、会議等削減をしてこれをやったわけでありますが、アメリカの復帰を急ぐとともに、一方にはまた、日本がこういう国際機関あるいは世界共通の問題等に対する基金あるいは費用の負担をどうもけちけちするということが、日本がまた一面逆な方向で厳しく責められている原因にもなりますので、そういうことも考慮しながら、こういうものの費用の負担等は日本も今後もっと積極的に貢献する必要があると考えております。
  237. 草川昭三

    草川委員 大臣、これで結構でございます。  ただ、いま大臣がおっしゃられたように、今後の費用の分担は積極的にしろというお話がございましたが、局長の方でも課長でも結構でございますが、現実には日本にILOの東京支局というのがあるわけでございますけれども、人員がかなり削減をされておるわけです。皆さんもう御存じのとおりに、いまたとえば自動車産業にしても、鉄鋼産業にしても、あるいはその他の産業についても、労働外交というものも非常に活発になってきておりますけれども、現実に東京のILO支局を通じて、日本の国内の状況というのも翻訳をしたり、労働界もそれをヨーロッパの方々にも訴えたり、あるいは向こうの生の情報というものもILOの東京支局を通じて国内に入ってくるわけであります。いわゆる経営側の方々はそれなりに、あるいは政府側の方々はそれなりにルートがありますが、労働界というものはどうしても支局を通じないとニュースが入ってこないという点があります。現実にいまおっしゃられたように、百万ドルを出すわけでございますから、そのときの条件、アジアに対する人員削減をしないならしないというようなことを強く申し出をしてこの百万ドルが出されておるのかどうか、明確な御答弁を願いたいと思います。
  238. 小林俊二

    ○小林説明員 ILO東京支局の構成あるいは予算その他がどのようにあるべきかということはILO自体の問題でございますけれども、日本政府といたしましても、ILOの地域活動を促進し、また、わが国における支局の活動を重視いたしておりますので、現在ILO東京支局には十名の職員がおりますけれども、この十名の職員を維持するようにということを申し入れております。ただいまの私どもが受けている感触では、何とか維持できるのではないかというふうな印象を受けているところでございます。
  239. 草川昭三

    草川委員 いま維持ができるのではないだろうかという見通しがありますけれども、現実にあの事務局の中ではすでに配置転換が行われておるわけですよ。あるいはあるメンバーについては解雇というのでしょうか、これでやめてもらいたいというような内示もあるわけでありますね。だから、私はその対策が後手後手になっておるのではないだろうか、こう思うのですけれども、これは私強く要望しておきたいと思うのです。現実は私が言ったことが正しいわけでございますから、ひとつILOに対する厳重な申し入れをして、特にアジアあるいはわが日本という重大な役割りを果たすところでございますから、支局の人員削減については厳重な意思を通知をしていただきたいというように思うわけであります。  続いて、災害防止条約の本文の中身に入って御質問をしたいわけでございますけれども、この条約の第七条に「船長の下で災害防止について責任を負う適当な者」という言葉があるわけでございますが、この「適当な者」ということについてのお伺いをしたいわけであります。  これは安全委員会内容にも入るわけですが、私どもが海員組合の方々だとかいろいろな方に少し聞いてみますと、当初勧告案の第八項にあった文章にセーフティー・オフィサーという表現があったようであります。ここを労働者側の方の発言等もありまして、かなり激論の末「適当な者」、スータブル・パーソンというのですか、こういう表現に変わったと私どもは聞いております。ところが御存じのとおり、船員というのは士官、属員というように分かれておるわけでございまして、一般的にはオフィサーと部員、クルーというのですかレーシングというのですか、こういうように分かれておるわけでありますが、このように言葉が変わったのは、本来権威のある人をこの安全委員なんかに任命するということが筋なのか、あるいは現場で働いておる乗組員いわゆる属員というのですか部員というのですか、そういう人も現場を知っておるから、そういう人を任命するというように変わっていったのか、あるいは日本語で言うように、ひとつ全く適当な人をよろしく頼むという形でこの第七条が変わってきたのか御答弁を願いたい、こういうように思います。
  240. 小林俊二

    ○小林説明員 ただいまの御質問に対するお答えを申し上げます前に、先ほどの百万ドル任意拠出の点について補足申し上げますが、この拠出を通報するに当たりまして、わが国といたしましては特にアジアにおけるILOの事業を重視するように、削減をできる限りその点においては避けるようにという申し入れをした上でこのオファーをいたしたという経緯がございます。また、先般ILO事務局の事務次長わが国に参りました際にも、この東京支局の削減はぜひとも避けるようにということを非常に強く申し入れた経緯もございますので、先生の御指摘の点は私どもとしても十分今後とも体して処理してまいりたいと存じます。  ただいまの御質問でございますが、当初この条約採択の前段階でございました予備技術海事会議というものがございました。この会議におきまして事務局が配付した文書の中では、御指摘のように「ア コンペテント セーフティー オフィサーオア コンペテント セーフティー オフィサーズ」という表現になっておりました。その後、この問題は当初勧告として考えられておったのでございますが、勧告ではなくて条約とするということが決定されまして、さらに条約の案文を固めるという段階になりました際に、現在のように「適当な者」、スータブル・パーソンという表現になったという経緯がございます。この点は御指摘のとおりでございます。  その理由でございますが、これは恐らく当初案に言うオフィサー、士官でございますが、オフィサーでは災害防止について責任を負う上で適切な資格を限定し過ぎているのではないか、むしろオフィサーに限定するのではなくて、それ以外の船員でも適当な人間を責任者に指名した方がこの安全確保の目的に達するのではないかといった現場の声が反映されて、こういう広い表現になったのではないかと推測いたしておるわけでございまして、現在の書き方が災害防止上責任の軽減をもたらしたものであると私どもは考えておらない次第でございます。
  241. 草川昭三

    草川委員 私どももいま参事官が言われたような立場で、現場を知る人に責任を持ってもらいたいという意味で、これは特に運輸省サイドになるわけでございますが、これがさらに国内における現実的な安全委員会等の任命にはね返るようにぜひお願いを申し上げたい、こういうふうに私は思うわけであります。  そこで今度は運輸省にお伺いをすることになりますけれども、この条約が成立するに伴いまして当然国内体制の整備が必要になってまいります。ところが、先ほど来からも御質問があったように、大体陸上に比べて海上労務者の災害度数率というのは三倍以上じゃないだろうかと思いますし、いうところの重大災害が多いわけであります。第三次船員災害防止計画が出た後、あるいは第一次、第二次というのもございますけれども、船員職業上の災害の推移というのが千人率いわゆる千人当たりの年間の災害発生件数で数字がずっと出ておるわけです。ところがこれは陸上でいいますと、いわゆる休業時間数だとか強度率だとか災害度数率だとかといういろんな見方がございまして、いわゆる災害の重い、軽いというのが非常にわかるようになっております。ところが海上の場合はそうではなくて件数で出てまいりますから、一件といいましても死亡災害もあれば単なる災害もあるわけでございまして、陸に比べるとおくれておるわけです。海員組合の方もそういう意味では、陸上の労働安全衛生法に基づいたような船員労働安全衛生法をつくってもらいたいという要望もすでに出ておるわけでございますが、現状は一体どういうことかということを少し聞きたいわけであります。  特に私がしぼって質問をしたいのは、いわゆる船員労務官の不足というのがひど過ぎるのではないだろうか。陸上と比べると基準監督官でありますが、まずこの船員労務官というのは現状で満足をしてみえるのかどうか、あるいは増員の計画があるのかどうか、運輸省にお伺いをしたいと思います。
  242. 豊田実

    ○豊田説明員 お答え申し上げます。  現在私どもの地方海運局に属しております船員労務官は五十三年度で百二十二名おります。昭和四十五年当時、この船員労務官の数は八十五名という状態でありましたが、その後年々増員いたしまして現在の水準になっております。現在の状態が一〇〇%満足かどうかという御指摘ですが、私どもとしてはこの船員労務官の数についてはさらに増員に努めていきたいというふうに考えております。
  243. 草川昭三

    草川委員 百二十二名の労務官が全国に散らばったとするならば、ほとんど目が届かぬということに近いと思うのです。先ほどの答弁をお伺いしておりますと、漁船災害が非常に多い。漁船の場合なんかは、特に操業中に労務官が乗るわけではございませんから、結論的には港に着いたときに少し見る程度ですから、まずこれは監督官的な仕事がほとんど不可能だと思います。しかも、同時に漁船操業ということになりますと、たとえばサイドブロワークというのですか、手すりのところなんですけれども、あれも高くすれば安全かもわかりませんけれども、低くしないと操業がうまくいかないという例もあるわけですから、常に安全というものと操業というものは矛盾をするわけであります。私はそういう意味では労務官の基本的な姿勢というものをもっと充実をしていただきたいというように思います。あるいはまたこの船員労務官は、いま問題になりますところの仕組み船、混乗船あるいは便宜置籍船というのでしょうか、こういう船が日本も非常に多いわけですが、そういう船に対する影響力というのはないと思うのですね。だから、そういう点では第三次の災害防止計画が立てられているわけでございますが、もっと人的にもひとつ基本的に増員を図っていただきたいということの要望を特に強く申し上げておきたいというように思います。  なお、一言だけで結構ですが、仕組み船だとか便宜置籍船等に日本人が乗っておる場合にもいままで労務官は監督をされておるのかどうか、簡単に御答弁を願いたいと思います。
  244. 豊田実

    ○豊田説明員 お答え申し上げます。  船員労務官の業務範囲は、日本船員法の適用についての監督というのが仕事になっております。御指摘の仕組み船、便宜置籍船等につきましては、日本の船舶ではなくてそれぞれの国に属する船舶ということになっております。わが国船員法におきましては対象が日本籍の船舶ということになっておりまして、法令上船員労務官の監査の対象にはなっておりません。
  245. 草川昭三

    草川委員 そういう現状でございますけれども、現実には日本の造船所でつくった船でありますし、それから運航も士官クラスはほとんど日本船員の方が乗ってみえるわけでありますから、逆に労働条件を引っ張る非常に大きな役割りを果たすわけでありますから、いろいろな機会を通じて仕組み船、混乗船等についても労務官が何らかの形で監督ができるようなことを、これも要望を申し上げておきたい、こういうように思います。  次に移りたいと思いますけれども、ILO条約締結をされましたときに、たくさんの関係する条約もあるわけでございます。たとえば第五十五回のILO総会では百三十四号条約というのが採択をされております。船員関係の幾つかの条約が採択をされておるわけでございますが、その中に婦人に関する規定があるわけであります。一つは、船員設備条約という百三十三号条約、百三十四というのは先ほどのことでございますけれども、この百三十三号条約の第八条一項には「女子が船内に雇い入れられている場合には、女子のため別個の衛生設備を設置する。」というようなこともございます。あるいは、これは勧告でございますけれども、一九七〇年には船員が奥さんを同伴するようなことを認めるということ、こういうことを考慮すべきであるというような勧告もあるわけでございますが、これはちょっと避けまして、同じく一九七六年の第六十二回のILO総会では船員の年次有給休暇条約というので、百四十六号の中でILOの文書としては初めて船員の出産休暇ということに言及をされているわけであります。船員の出産休暇でありますから当然女性船員ということになります。ところが、日本では婦人の船員は非常に数が少ないわけでございまして、ほとんどが、どちらかというならばフェリーボートなんかのウエートレスだとか、あるいは近海船の母ちゃん機関長だとか父ちゃん船長というような形での船員はいるわけでございますが、ここで申し上げるようなある程度の、一万トンだとか五万トンだとか外航船だとかというような船の船員には女性というのは乗っていないわけです。  これは一つ具体的な例を申し上げますけれども、東海大学を卒業された若原さんという方でございますが、甲種の船長さんの筆記試験だけは通ったんだけれども、現実には船会社に女性だからというので採用されていない、こういう例がございます。せっかく女性で外航船の船長の資格を取ったのだけれども、船に乗れないために実際はこれが宙に浮いてしまうというような例があるわけであります。  そこで、きょうここにわざわざ大変恐縮でございますけれども総理府の方からおいでを願っておる婦人問題担当室にお伺いをするわけですが、四月十日から第三十回婦人週間が始まっておりまして、全国的に婦人問題の国内行動計画を活発に実施されておみえになるわけであります。いまのようにせっかく女性が船長の資格を取りながらも船に乗れないという差別があるわけですが、一体どういうようにお考えになっておみえになっておるかお伺いしたいと思います。
  246. 赤松良子

    ○赤松説明員 お答えいたします。  ただいま先生から御指摘のございました国内行動計画というのは、男女の平等ということを第一の眼目にしているわけでございまして、その中に「法制上の婦人の地位の向上」というのがあるわけでございます。そして、具体的には「雇用、職業における男女平等の確保のための婦人労働関係法令、その他広く各種法令上の問題点について検討を行う。」というふうに明らかにしているわけでございます。婦人問題担当室といたしましては、この関係諸法令というのはいろいろな省にまたがっているわけでございますので、それぞれの省で御検討をしていただいているわけでございますが、基本的な考え方として、男女の平等の確保のために必要な見直しをしていただきたい、このように考えている次第でございます。
  247. 草川昭三

    草川委員 室長は前に労働省にもお見えになったと聞いておりますし、かなり国際的にもいろんな運動をなすってみえるわけでございますが、国内の行動計画をやられるのも結構ですし、どんどんやっていただきたいし、マラソンをやるのも結構でございますけれども、そういうものより、現実にこれほど端的な例はないわけですよ。せっかくそういう資格を取りながらも、関係法令との関係があると言いますけれども、私はそうじゃないと思うのです。これは後ほど運輸省の方にもお聞きしたいと思うのですけれども、沿岸フェリーの船長さんだったら何も深夜労働には関係ないわけですよ。朝乗って夜帰るわけですから、やろうと思えば十分やれるわけですよね。そういうものを積極的に国内行動計画の運動の一還としても取り上げられることが、男女差別というものもなくなるわけでございますし、世の中がずいぶん変わっていくと思うし、国際的にもそれは非常に高く評価をされることではないかと私は思うのです。この種の具体的な事例があるわけですが、これを室長として取り上げられて、運輸省あたりに働きかけをされる気はないのかどうかお伺いしたいと思います。
  248. 赤松良子

    ○赤松説明員 先生の御指摘が、法律で深夜労働が禁止されているということに置かれているのかと思いましてそのように申し上げましたが、現在の法令に抵触せずに就職できるということであれば非常に結構なことでございまして何ら問題はないわけで、ぜひそういうことを進めたいと思います。必要があれば私ども具体的に応援をさせていただきたい、このように考えております。
  249. 草川昭三

    草川委員 では、少しここで運輸省にお伺いをしますけれども、いまのような具体的な事例について運輸省の方としてはどういうようなお考えを持っておみえになるでしょうか。
  250. 高橋英雄

    ○高橋(英)政府委員 先生お取り上げになりました若原さんの場合でございますが、私どもも新聞で見た範囲で、詳しいことは承知いたしておらないのでございますが、新聞で見た範囲によりますと、若原さんの場合には、外航船の船長になりたいというふうな希望をお持ちのようでございます。その場合には、甲種の船長というふうな資格が要るわけでございますけれども、筆記試験の方はお取りになられた。しかしながら、船舶職員法の規定によりまして、甲種の船長としての免許を取得するには、さらに口述試験が必要である。それで、その口述試験を受けるためにはある一定の乗船履歴がなければいかぬ、こういうふうなことになっておるわけでございます。したがいまして、若原さんの場合には、乗船履歴を得るためには、どこか船会社に就職をいたしまして、船に乗ってある一定の期間、ある一定の職務の経験を積まなければいけない、かようなことになっておるわけでございます。ところが女性の場合には、実際問題としてなかなかそのような船長になることがむずかしいということで、御不満を持っておられるというふうに新聞等で拝見しておるわけでございますけれども、そもそもこういうふうになった理由の一つは、最近におきまして、船員の雇用情勢というのが大変厳しくなっておりまして、したがいまして、一般的に船舶職員の新規の採用というものが非常に少なくなっております。たとえば商船大学という船舶職員を養成する専門の大学がございますが、こういった大学の卒業生でも、約三百名程度卒業生がございますけれども、海上の企業に就職できる方は、最近では五十名前後というふうな非常に残念な状況でございます。そういった状況にあるということが一つ。  それから二つ目には、船員法の八十八条の規定によりまして女性の夜間労働が、先ほど来お話が出ておりますように、禁止をされておるわけでございます。したがいまして、女性の方を職員として船舶に乗り組ませたといたしましても、夜間当直ということがどうしてもできない、そういうふうなことで、船会社としては雇用情勢の厳しい折もあわせまして、女性の採用がなかなか困難である。そのために船に乗れないので乗船履歴が得られない。したがって、筆記試験は通ってもなかなか甲種船長としての免状が得られない、こういうようなことかと思います。  それで、この女性の夜間労働の禁止の問題につきましては、船員法だけではなく、陸上の労働基準法でも同じような趣旨の規定がございます。特に海上におきましては、陸上と比べますと厳しい労働環境にあるわけでございますので、女性の保護のためには、こういう規定は特に必要ではないか、かように考えております。したがって、特に今日のような雇用情勢の厳しい折、女性の外航船の船長ということは実際にはなかなか困難である、かように考えておるわけでございます。  ただ、私どもといたしましては、先ほど先生もお話しのように、女性の職員もおるわけでございまして、大体千八百名ぐらいの女性の船員がおるというふうに聞いております。したがいまして、女性の船員の職域を拡大していくということにわれわれも関心は持っておらないわけではございませんけれども、やはり第一次的には、船会社がそれを採用するかどうかという問題になるわけですけれども、われわれといたしましても、今後可能な限り配慮をしてまいりたい、かように思っておる次第でございます。
  251. 草川昭三

    草川委員 いまの局長のお話は、一般論としての現況では私どもも十分わかりますけれども、それを余り明確に言われると明らかに女性差別ということになります。だったら、東海大学自身もそういうコースをやめた方がいいと思うのですよ。そんなような現状ならかえって罪つくりになるような気がしてなりません。しかし、日本の国際的ないろいろな関係から申し上げれば、多少なりとも女性でそういう意識のある人がおるなら、甲種船長があったってやはり日本のためにもいいじゃないだろうか。それこそ国際関係からいって、私はそんなにたくさん女性の方々が現在の男性の船員の職場を奪うということじゃないと思うのです。それはぜひ前向きな形で、こういう方はまれでございますから、せっかく夢をかなえさせていただきたいと私は思うし、それから総理府の方も、いま言われたような事例があるわけですから、いやみを申し上げるわけでは決してございません。これは本気でやればやはり日本の一つの非常にほほ笑ましい話にもなるわけですから、これこそ今日の国内行動計画の具体的な問題として取り上げていただきたいことを要望しておきたいと思うのです。  最後になりますが、時間がございませんので、一つILOの中身について、実はILOの討議内容というのは非公開なんです。内容というのは、現地のプレスリリースというのですか、新聞発表用だけしか発表されておりません。ですから、一体どういう討議があったのかというのは、経営側は経営側で報告をする、労働側は労働側で報告をします。だから、ときどき食い違いがあるわけです。特にスト権問題なんかで提訴をしたときに、前向きで取り上げると片一方は言うし、一方はそんなことを言った覚えがない。これが日本の国内で大変問題になってくるわけです。特にこれからこのスト権問題等については非常に問題になるのですが、ILO東京支局には原文が来ておるわけですが、これが貸し出しがされません。その場で見る程度になっておりますので、私はぜひこの会議の公開ということを、知る権利があるわけでありますから、一回ILOの討議内容が具体的に市民に公開をされるよう求めたいと思うのですが、その点についての御意見を賜りたい、このようにお願い申し上げます。
  252. 小林俊二

    ○小林説明員 ILOの議事規則でございますが、その第八条によりますと、「会議は、原則として公開とする。」というふうになっております。「但し、政府代表一人又は使用者グループ若しくは労働者グループの過半数の請求があるときは、理事会の会議は、非公開とする。」いま先生の御指摘の点は、この非公開の場合のことをおっしゃっておられるのかとも存じますけれども、こういったプラクティスはむしろ例外でございまして、議事録につきましては、総会及び理事会の議事録が各会期ごとにILO事務局から刊行されておるわけでございます。その他わが国内におきましては、ILOに関する報道活道が、御指摘のようにILO東京支局及び財団法人日本ILO協会で行っておるということでございます。したがいまして、原則は公開、例外的な場合に非公開の事例があり得るという現況でございます。
  253. 草川昭三

    草川委員 最後になりますが、私が申し上げたのがちょっと質問の仕方が悪かったわけですが、われわれが一番知りたいのは、本来の非公開の内容がこれからの問題になってくるわけであります。一般的な公開されておる会議についてはさほど問題がないわけでありますし、私がいま申し上げたいのは、特にこれからのスト権問題なんかに一体ILOはどのような対応をしたのか、これが非常にこれからの問題になってくるわけでございまして、私ども自身としてもどう対処をするかということにジュネーブの意向というものも十分に参考にしていきたいと思うので、特にこの非公開になっております会議会議録というものはわれわれにもぜひ公開をされるよう強く要請して、時間が来ましたので、私の質問を終わりたいというように思います。どうもありがとうございました。
  254. 永田亮一

    永田委員長 中川嘉美君。
  255. 中川嘉美

    ○中川(嘉)委員 私はレコード条約の方からまず伺ってみたいと思いますが、この条約作成をされてから七年、発効してからすでに五年という年月がたっているわけですけれども、今日までわが国が加盟しなかった理由は一体どういうところにあるのか。提案理由説明によりますと、わが国は非常に被害国の立場にあるということですけれども、そうであればなおさらもっと早くこの条約に加盟すべきではなかったのか、こんなふうに思うわけです。  そこで、今日まで加盟をしなかった理由をまずお答えいただきたいと思います。
  256. 吉久勝美

    ○吉久政府委員 お答え申し上げます。  わが国はここ数年来、従来懸案とされてまいりました著作権関係条約を順次締結をいたしてきているわけでございまして、去る第八十回国会におきましても万国著作権条約のパリ改正条約締結の御承認をいただいたばかりでございます。これらの緊急の案件を一応終わりましたので、このたび、従来から懸案といたしておりました本レコード保護条約の御承認を今回お願いをするという段取りに相なってきたわけでございます。
  257. 中川嘉美

    ○中川(嘉)委員 そうしますと、この著作権関係の条約を順次一つ一つ結論を出さなければならないという理由が主な理由であると解釈するわけですが、いま被害国の立場にあるというわが国の現状、これについて伺いますけれども、わが国レコードの無断複製についてそういう立場にあるということは、具体的に言ってどの程度のものなのか、実態は一体どういうふうなものなのか、この辺をお聞かせをいただきたいと思います。
  258. 小林俊二

    ○小林説明員 先ほど触れましたとおり、いわゆる海賊版のレコード、テープの作製におきましては、わが国を取り巻くアジア太平洋地域がそういった件数あるいは金額におきましても最も多いという統計が出ておるわけでございます。これは国際レコードビデオ製作者連盟という国際機関の調査によるわけでございます。このアジア太平洋地域の中では、金額の順に申しますと、インドネシア、マレーシア、シンガポール、フィリピン、台湾、韓国、香港といったところが海賊版が最も多く作製されているという実績を残しておるようでございます。特にわが国レコードの海賊版の作製という統計は出ておりませんけれども、私どもの承知しているところでは台湾、韓国、香港といったところでわが国レコードの海賊版が出回っている件数が最も多いのではないかと想像をいたしております。
  259. 中川嘉美

    ○中川(嘉)委員 この条約には、日本文化的な関係が非常に深い東南アジア諸国とかあるいは朝鮮民主主義人民共和国、さらには韓国、中国等が入っていないわけですけれども、どういう理由で入らないのか、これらの諸国が入らないことによるわが国への影響はどういうものなのか、被害国という立場からの御説明もいろいろあったようですけれども、この辺をめぐってお答えをいただきたいと思います。
  260. 吉久勝美

    ○吉久政府委員 先生御指摘の東南アジア諸国におきましてはフィリピン、インド等を除きまして、多くの国々は現在まだベルヌ条約あるいは万国著作権条約というような基本的な著作権関係の条約にも加入しておらない次第でございまして、したがいまして、レコード保護条約などにつきましてもまだ加入の段階に至っていないというふうに理解をいたすわけでございます。したがいまして、わが国レコードにつきましては東南アジア各国におきまして相当無断で複製されているという心配があるわけでございまして、今後これらの国々が条約に加入するよう、私どもといたしましてもいろいろな機会を通じまして要請をいたすことはもとよりでございますが、そのためには、わが国みずからもこの条約に入ることによっていろいろお願いすることも迫力を増してくるわけでございますし、また国際的な防止組織、防止措置に積極的に協力してまいるという国際的な任務もわが国にはあるのではないかと思うわけでございます。このようなことによりまして、わが国レコード製作者の保護に大きく寄与するのではないかと思うわけでございます。
  261. 中川嘉美

    ○中川(嘉)委員 中国わが国との関係になりますが、この二国間には商標協定があるわけですけれども、中国が著作権とか工業所有権の条約にも加盟していないという現状にあることを考えて、わが国との二国間での無体財産権に関する条約締結をこちらから提案するつもりがあるかどうか、この辺はいかがでしょう。
  262. 小林俊二

    ○小林説明員 日中貿易協定交渉が行われた経緯もございますが、この交渉の際にこの問題についての話し合いも実は行われたのでございますが、これに対しまして中国側は、工業所有権全体につきましては、国内体制が整っていないことを理由といたしまして、とりあえず商標についてのみ取り決めを別途結びたいという回答をしてまいった事情がございます。そこで商標協定締結されることになったわけでございますが、工業所有権保護に関する多数国間条約中国が加盟する可能性は当面乏しいという印象を私どもは受けております。したがいまして、わが国との間で二国間協定締結することも実際問題としてむずかしいのではないかという認識を私どもは持っておる次第でございます。
  263. 中川嘉美

    ○中川(嘉)委員 むずかしいのではないかという認識というお話ですが、その認識にとどまってしまうのか。今後の政府のとるべき態度としてはどのように対処していこうとしておられるのか、そうでないのか、この辺をもう少し明確にお話しいただきたいと思います。
  264. 小林俊二

    ○小林説明員 御指摘の無体財産権の保護という問題は、それぞれの国内体制によって担保される必要のある事項でございますので、相手方の体制いかんによって可能であったり不可能であったりするわけでございます。したがいまして、もちろん中国が社会主義国であるという観点から、わが国のような経済体制の場合とは実際問題として異なる点か多いと思いますので、その担保の仕方、保護の仕方にも——実際に先方がそういう気持ちになったとしても、わが国におけると同じような体制、あるいは普通の先進工業諸国におけると同じような体制でそういう保護が行われるわけではないと思いますけれども、いずれにいたしましても、中国政府側の政策なり意図なりがこの問題につきましては最も大きな要因となりますので、今後ともわが国といたしましては、この点については話し合いの機会をとらえて、交渉あるいは打診を行うことになると存じますが、現在の体制においてはそのきっかけがつかみがたいというふうに考えております。
  265. 中川嘉美

    ○中川(嘉)委員 ここで条文について若干伺いますが、第一条の(a)項「「レコード」とは、実演の音その他の音の専ら聴覚的な固定物をいう。」ここのところですけれども、製作者保護の立場から、最初に固定したものがカセットテープのような場合も同じような意味合いに解していいのかどうかという点はいかかでしょうか。
  266. 小山忠男

    ○小山説明員 カセットテープにつきましては、この条約に言う「複製物」に入るというふうに考えております。
  267. 中川嘉美

    ○中川(嘉)委員 複製物というふうにたしかいま言われましたね。これは「「複製物」とは、レコードから直接又は間接にとった音を収録している物品であって、当該レコードに固定された音の全部又は実質的な部分を収録しているものをいう。」  「複製物」の説明はここにあるようですが、そうすると私は、素人の立場かもしれませんが、たとえばある歌手が、いわゆるわれわれの考えているレコードというのは丸いやつですけれども、そうでなくて、歌そのものを初めてカセットテープに入れたという場合、それをだれかがほかのものにとっていったみたいな場合、これはどうなんでしょう。これはいわゆるレコードと考えなければいけないのではないかという立場から、いまこの御質問をしているわけですけれども。
  268. 小林俊二

    ○小林説明員 その場合は、レコードの中にテープも含まれるというふうに考えております。あるいは解釈されております。
  269. 中川嘉美

    ○中川(嘉)委員 そうすると、先ほどの御答弁は単に「複製物」というお答えがあったように思いますが、ここでは明らかに違うんだ、(a)項に言っているところの「レコード」にそういった場合には当然入るというふうに解釈していいわけですね。
  270. 小林俊二

    ○小林説明員 御指摘のとおりでございます。
  271. 中川嘉美

    ○中川(嘉)委員 今度は条約の第三条ですけれども、「この条約を実施するための手段は、各締約国の国内法令の定めるところによるものとし、著作権その他特定の権利の付与による保護、不正競争に関連する法令による保護及び刑罰による保護のうちいずれかのものを含む。」という保護の方法としてこの三つの方法を規定しているわけですけれども、主要国はそれぞれどの保護の方法を採用しているのか、また、わが国が著作隣接権によるところの保護を選んだのはどういうところにあるのか、この辺はいかがでしょうか。
  272. 吉久勝美

    ○吉久政府委員 ただいまの件につきましては、たとえば西独、イタリア、スウェーデンなどにつきましてはわが国と同じく著作隣接権の付与によっているところでございますが、こういう国の方が非常に多いようでございます。ただし、米国、英国などにつきましては著作権の付与によって保護をいたしておるわけでございます。なお、フランスにつきましては不正競争に関連する法令による保護を行っている国でございます。  なお条約には、刑罰による保護の手段が認められておるわけでございますが、これはわが国の提案に基づき簡便な手段として考慮されたものでございますが、これにつきましては、先ほど申し上げました特定の権利の付与によるところはすべて刑罰の適用もいたしておるのでございますから、それらの国におきましては、刑罰による保護もいたしておるわけでございますが、なお、刑罰による保護のみによっておるものにつきましても、若干の国はそういう例もあるようでございます。なお、わが国におきまして、特定の権利の付与による第一の方法につきまして現在御承認を願っておるわけでございますが、このような態度をとりましたのは、御承知のように、わが国におきましては著作隣接権制度が非常に整備をされておりますので、わが国の国際的な地位からいいましてもその方が最適であると考え、また国内におけるレコード保護法制の統一上も、特定の権利を付与するという方式の方が法制上望ましいのではないかというような観点から、第一の手段によることといたしておるわけでございます。
  273. 中川嘉美

    ○中川(嘉)委員 この第四条に、途中から読みますけれども、「当該保護期間は、レコードに収録されている音が最初に固定された年の終わりから又はレコード最初に発行された年の終わりから、二十年よりも短くてはならない。」こういうふうに保護期間について定められているわけですけれども、これで見る限りでは、保護の開始の時点、いつから保護されるかという、これかどうもここでははっきりしないように思うわけなんですか、一体この保護の開始の時点というのは具体的にいつなのか、いつから開始なのか。  また、「発行」という言葉がここへ出てきますが、これはどのような行為を指して言うのか。ベルヌ条約とかあるいは万国著作権条約には発行についての定義というものがありますけれども、どうしてこの条約にはそれを設けなかったのか。  これらの点についてお答えをいただきたいと思います。
  274. 小山忠男

    ○小山説明員 保護期間の関係でございますけれども、この条約の第四条におきましては、保護期間の開始につきまして明確な規定は置いておりません。しかしながら、この条約の解釈としまして、そのレコードの作製されました時点から保護が始まるというふうに解釈をいたしております。  日本の場合は、そういう解釈に従いまして、著作権法におきまして、そのレコードの保護期間につきましては、レコードに音が固定されましたときからその保護が始まりまして、その音が固定された日の属する年の翌年から起算して二十年を経過した時点で満了するというふうな考え方を採用しております。  それからもう一点の「発行」の意味でございますけれども、この「発行」とは、そのレコードの複製物を相当多数の公衆に頒布することを意味するというふうに考えております。この条約におきましては特に「発行」につきましての定義を置いておりませんけれども、第一条の(d)に「公衆への頒布」につきましての定義がございまして、ここに言う「公衆への頒布」というものが「発行」に該当するというふうに考えております。
  275. 中川嘉美

    ○中川(嘉)委員 そうしますと、「当該保護期間は、」とこう出ているのですが、「レコードに収録されている音が最初に固定された年の終わりから」というのは、あるいはその次にある「レコード最初に発行された年の終わりから、」というのは、あくまでもこの「二十年よりも短くてはならない。」という、そのときから二十年ということであって、先ほどの御答弁の中にあったように、保護そのものは初めて固定されたときから始まるのだというふうに解釈していいのかどうかということですね。ちょっとこれだけでいくと、あくまでも、その「年の終わりから」というところ、これは両方ともそれにかかりますね、「年の終わりから」という表現ですね。そこから起算して二十年という起算の時点を言っているのであって、保護期間の始まりではないということかと思いますが、この点をもう少し明確にというか、確認をしておいていただきたいと思うのです。あくまでもここに「当該保護期間は、」と主語で出てきていますから、これではどうも誤解を招くのではないかと思うので実は私は聞いたわけです。いつ一体開始されるのか。日本の場合は、先ほど言われたように、初めて固定をされたときからで間違いはないのか、この点をもう一度明確にしておいていただきたい。
  276. 小山忠男

    ○小山説明員 おっしゃいますように、この条文におきましては保護期間の始まる時期につきまして明確に規定されておりません。それで、この第四条に掲げておりますのは保護期間の終期でございまして、保護期間の終了する時期を示しております。  各国の解釈としましては、この保護期間の開始につきましては、当然にそのレコードがつくられました時点から始まるというふうに考えておりまして、これは国際的な共通の考えであるというふうに理解しております。
  277. 中川嘉美

    ○中川(嘉)委員 それではそれはそのとおり受けとめるとして、次に参ります。  わが国の保護期間は二十年間ですけれども、最長の保護期間を定めている国はどこなのか、また加盟国以外でもって最短の保護期間を定めているのはどういう国なのか、保護期間の平均というのはどのくらいなのか、さらに、二十年間というのはどのような基準から決まってきたのか、これらについてお答えをいただきたいと思います。
  278. 小山忠男

    ○小山説明員 各国における保護期間の状況でございますけれども、長い保護期間を採用している国の例としましては、たとえば英国におきましてはレコードの発行後五十年という制度をとっております。また、アメリカ合衆国におきましては著作者の死後五十年という考え方を採用しております。それから、短い期間については、たとえば東ドイツとかポーランドにおきましては十年間という期間を採用しております。  それで、条約上この二十年という期間を採用した理由としましては、著作権に関するベルヌ条約におきましては、著作権に関する標準的な保護期間を死後五十年としております。また万国著作権条約におきましては、保護期間を死後または発行後二十五年というふうに定めております。このレコード保護条約におきましては、こういった著作権関係条約の保護期間あるいはこのレコード条約よりも十年ほど前にできました隣接権条約の二十年、こういった保護期間を参考にして二十年という期間を決めたというふうに理解しております。
  279. 中川嘉美

    ○中川(嘉)委員 平均というのは、そうするとどうなんでしょう、いまお答えをいただいた範囲で大体どのぐらいと見ておいたらいいかということですね。
  280. 小山忠男

    ○小山説明員 各国の平均としましては、二十年ないし三十年というところがその平均に当たろうかというふうに考えております。
  281. 中川嘉美

    ○中川(嘉)委員 第七条の三項ですけれども、「いずれの締約国も、自国についてこの条約が効力を生ずる前に固定されたレコードについては、この条約を適用することを要しない。」こういうふうになっておりますが、条約が発効する前に固定されたレコードは保護する必要がない、こういうことでわが国はこの条項を採用するのかどうか、わが国がこの条項を採用した場合には、外国においてわが国レコードも同じ扱いを受けるのか、この辺についてまずお答えいただきたい。また、すでにこの条約を採用している国はどこか、これらの点はいかがでしょうか。
  282. 小山忠男

    ○小山説明員 この条約におきましては、その適用につきまして不遡及の原則を採用しておりまして、この条約が発効する前に固定されたレコードにつきましては、この条約によりまして保護する義務がないということを決めております。それで、各国におきましては一応この不遡及の原則を採用するというのが通例でございまして、日本の場合におきましても、著作権法におきまして国内のレコードの保護期間を算定する場合にもこの不遡及の原則を採用しておるという状況でございます。
  283. 中川嘉美

    ○中川(嘉)委員 時間が限られておりますので、レコードに関してもう一点だけ伺いたいと思うのですが、第十三条のところ、一項、二項等に各国語がずっと並んでいる、本書あるいは公定訳文に関連して並んでおりますが、なぜ日本語を入れなかったのかという疑問がここで出てくるわけなんです。人口的に見ても世界の四十分の一を有するわが国のこの実態からしても、当然条約の本書なり公定訳文は日本語でもって翻訳作成されるべきではないか、このように思うわけですが、なぜこのような交渉結果になったのか、この点についてお答えをいただきたいと思います。
  284. 山田中正

    ○山田説明員 お答え申し上げます。  実はこの条約交渉いたしますときに、日本語を正文なりもしくは公定訳文にするというふうな検討は私どもの方では全くしていなかったようでございます。  一般的に申しまして、多数国間条約の場合に正文となりますのは、通例といたしましては国連で公用語となっております五カ国またはそれより以下のものでございまして、一般的な多数国間条約日本語を正文にするということは非常にむずかしいことであろうかと存じます。ただ、先般御審議いただきました特許協力条約におきましては日本語を公定訳文にするようにいたした例もございますので、今後は先生御指摘の点を踏まえまして、そのような可能性のあるものについてはそのように努力していきたいと考えます。
  285. 中川嘉美

    ○中川(嘉)委員 それでは、世界観光機関憲章の方に移ってまいりたいと思います。  時間も余りありませんので重点的に伺ってみたいと思いますが、この説明書によりますと、WTOの一九七八年の総予算は二百六十一万ドルということですが、本年のわが国の分担金の額、これは千三百七十八万円が計上されているわけですが、来年以降の分担金の額は果たしてどのぐらいになるのか、この点をお答えをいただきたいと思います。
  286. 杉浦喬也

    ○杉浦説明員 お答えいたします。  分担金の算定方法がございまして、本年度は四月からでございますのでちょっと違いますが、平年度化いたしますと約千八百万円ということになります。
  287. 中川嘉美

    ○中川(嘉)委員 千八百万円、そういった金額に近いというか、千八百万以上の場合もあるでしょうけれども、こういう分担金を負担してWTOに加盟するからには、当然それに見合うメリットがなければならない、あって当然であると私は思うわけです。観光の分野における国際協力に寄与するということも意義のあることなんですが、加盟による具体的なメリットはどういうところにあるのか、この点はいかがでしょうか。
  288. 愛野興一郎

    ○愛野政府委員 具体的なメリットと申しますか、わが国がWTOに加盟する意義であろうかと思いますが、これは観光分野における国際協力のための中心的機関であるということ、それから、すでに九十八カ国が加盟いたしておりますので、わが国も応分の寄与をする責任があるということであります。同時にまた本憲章はその三条において「開発途上にある国の観光の分野における利益に特に注意を払う。」ことと規定をいたしておりますが、具体的には、国際連合等との密接な連携のもとに開発途上国における観光開発のための技術協力を行うことになっておりまして、わが国の発展途上国に対する援助の供与を標榜する政策と合致をしておるということであります。また、本機関によって作成される観光統計、加盟各国の観光政策等に関する資料等、わが国にとり重要な資料が入手できるメリットがあるわけであります。なかんずく、国際会議及びセミナーへの参加を通じてわが国についての正しい理解が促進され、わが国の観光政策の促進に合致する、こういうメリットがあるというふうに考えておるわけであります。
  289. 中川嘉美

    ○中川(嘉)委員 開発途上国への協力であるとか供与であるとかは当然考えられるわけですけれども、やはり千八百万円という分担金を支払うなりのわが国にとってのメリットというもの、これは当然常に念頭に置いていただかなければならないんじゃないか、このように思いますし、このことを要望しておきたいと思います。  貿易立国あるいは観光立国といわれるのは資源の乏しいわが国の宿命ではないかとも思うわけですが、現在外貨の保有額が多いからといって観光立国という政策を捨ててしまってはならないのじゃないか、このように思います。日本の観光政策ということを政府としてどのように考えておられるのか、いま一度御見解を承ってみたいと思います。
  290. 杉浦喬也

    ○杉浦説明員 御指摘のように、最近の国際観光の収支を見ますと、かなりの赤字になっております。やはりこのこと自体、諸般の情勢が変わってはきておりますけれども、望ましいことではございません。やはり来訪外客の増加ということにつきましては十分な政策がとらるべきであるというふうに考えておる次第でございます。国際交流、国際親善という立場からいたしまして、現在かなり日本人が外国へ参っておりますが、それと同様に外国人が日本へ来て、日本理解するということがぜひとも必要であろうというふうに考えております。  このような観点から、従来以上に国際観光振興会等を通じまして外客の誘致宣伝活動ということを強化いたしていきたいと思いますし、また受け入れ施設としましては国際観光ホテル等の整備も十分にやってまいっていきたいというふうに考えております。  なお、国際観光につきましては、日本人が外国へ参った場合のマナー上の問題点がいろいろと指摘されております。こういった点につきましても、関係業界を通じまして強力に指導をしてまいりたいというふうに考えておるわけでございます。
  291. 中川嘉美

    ○中川(嘉)委員 御答弁の中にありましたように赤字ということなんですが、現在は外貨の保有高も多いので安心しているかもしれないわけですけれども、昨年度の観光による外貨の収支、これはいま具体的に御答弁の中に数字は出ておりませんが、受け入れの方が三億一千万ドル、それからこれに対して持ち出しの方は十六億六千万ドル、こういうことになっておるわけで、このように国際観光収支の赤字幅が非常に拡大している傾向にあるわけで、決して無策のままで推移していってはならないということを意味しているのじゃないかと思うわけです。どのような事情が発生をして、いつ日本の外貨が減少するか、決して予断を許さないわけですけれども、国際観光収支というものをやはり当然バランスのとれたものにする努力ということ、これはぜひとも必要ではないかと思います。  御答弁の中にもいろいろな施策があったようですけれども、外国人観光客を日本に誘致するということ、これはやはり重要な課題ではないかと思います。その対策の一つとして、やはり国際会議とか国際機関あるいは国際的な行事、こういったものをわが国に誘致することは非常にいい打開策ではないかと思いますが、こういった国際会議とか国際機関もしくは国際的な行事、こういったものについて、当面何か政府の計画とか構想があったら、お聞かせをいただきたいと思います。
  292. 杉浦喬也

    ○杉浦説明員 国際会議なり国際的な行事の誘致でございますが、特殊法人の国際観光振興会の中に専門の部局を設けております。国際的にはコンベンションビューローというふうに称されておりますが、これが活躍をいたしまして、世界各国の国際会議及び国際的な行事につきまして、前広に情報をキャッチし、世界各国十六カ所に駐在員がございますが、それらを通じまして国際会議各国別に日本へ誘致するというような方向に向かって努力をしておるところでございます。
  293. 中川嘉美

    ○中川(嘉)委員 ここで憲章の内容について若干伺いたいと思いますが、第七条の一項「機関の賛助加盟員の地位は、観光について特別な利害関係を有する政府間及び非政府間の国際団体並びに商業的な団体及び協会であって」云々と出ているわけですが、日本で賛助加盟員になると思われる団体としてはどういうところが考えられるか、この点はいかがでしょうか。
  294. 杉浦喬也

    ○杉浦説明員 日本の予想されます賛助加盟員でございますが、従来公的旅行機関国際同盟に参加をいたしておりましたものは、WTOにわが国が加盟いたしますと、手を挙げますと自動的に参加できるという条項もございますので、従来のIUOTOに加盟しておりまする国際観光振興会、それから財団法人日本交通公社、この二者が加盟をする意向でございます。
  295. 中川嘉美

    ○中川(嘉)委員 それでは、第九条に参りますが、第二項のところに「各加盟国及び各準加盟国は、総会の各会期に、五人を超えない代表によって代表されるものとし、また、このうちの一人は、当該加盟国又は準加盟国によって首席代表として指名される。」こうなっておりまして、この「五人を超えない代表」というのは、わが国としてはどのような地位の人を考えておられるか。また、首席代表としてどういう人を考えておられるのか。この点はいかがでしょう。
  296. 小林俊二

    ○小林説明員 具体的な人選の問題になりますと、その出席すべき会議議題内容等によって、あるいは各国の代表のレベル等によって左右される面が非常に多いわけでございまして、ただいまのところ、次の総会にどういうレベルで代表を送るかということについては、全く考えがまとまっておりませんけれども、そういった事情を念頭に置いて、運輸省ともよく御相談の上、決定したいと存じております。
  297. 中川嘉美

    ○中川(嘉)委員 この首席代表という場合、どこのだれということは無理かと思いますが、首席代表ということになると、どういうクラスの方ということになるのでしょうか。
  298. 小林俊二

    ○小林説明員 まだ具体的に総会準備というような段階に達しておりませんので、お答えしにくい面もあろうかと思いますけれども、きわめて常識的に申し上げますれば、部局長クラスといったようなところが首席代表として派遣されるということになるのではないかと想像いたします。
  299. 中川嘉美

    ○中川(嘉)委員 第十条のところで、「総会は、二年ごとに通常会期として、」云々とあるのですが、この二年ごとに通常総会を開くこととした理由はどういうところにあるのか。なぜ二年というふうになっているのか。この点はいかがでしょうか。
  300. 小林俊二

    ○小林説明員 総会は、この機関の最高の意思決定機関でございます。他の国際機関の例に照らしましても、総会が二年あるいは四年に一回という頻度で開かれるということは、間々あることでございます。この機関には理事会がございますので、実際の業務の運営は理事会が決定する、総会は全体としての方向づけを行うということで、相補っておるという次第でございます。
  301. 中川嘉美

    ○中川(嘉)委員 きょうは時間の関係で、本来ならば一つ一つをもう少し詳しく伺っていきたいところなんですが、あと十四条について、さらには附属書についても、もう一つずつ伺っておきたいと思います。  十四条なんですが、「理事会は、公正かつ衡平な地理的配分を達成するため、総会が定める手続規則に従い五の加盟国につき一の加盟国の割合で総会が選出する加盟国で構成する。」この五カ国に一国の割合で理事国を選出するわけですが、現在の理事会の構成はどのようになっているか。また、わが国としては、加盟すれば理事国に立候補する考えがあるのかどうか、これらの点はいかがでしょうか。
  302. 小林俊二

    ○小林説明員 現在の理事国は二十カ国でございます。ただいまの先生御指摘規定に基づいて選出されたものでございます。国名を挙げますと、エジプト、イラク、ケニア、モロッコ、パナマ、スペイン、ソ連、米国、バングラデシュ、オランダ、カメルーン、インドネシア、ナイジェリア、ペルー、ポーランド、タイ、ベネズエラ、ザンビア、エクアドル、マリということでございます。私ども、まだ運輸省と具体的に協議はいたしておりませんけれども、将来、加盟後、適当な期間を経過した後におきましては、わが国理事国に立候補するということも当然考えられてしかるべきことだろうと存じます。
  303. 中川嘉美

    ○中川(嘉)委員 このWTOに関して、最後にもう一つだけお聞きしますが、先ほど申した附属書の三番目のところに、「予算は、各国における経済的発展の水準及び観光の重要度を基礎として総会が決定する割当方法による構成員の分担金及び機関のその他の収入によって賄う。」この中の「割当方法」ですけれども、ただ「割当方法」というふうになっているだけでは、もう一つ不明確なわけなんですが、そこで、総会が決定する方法というのは具体的にどのようなものなのか、この割り当て方法についてお答えをいただきたいと思います。
  304. 杉浦喬也

    ○杉浦説明員 現在の分担金の割り当て方法につきましては、一九七二年のザンビアのルサカで開催をされました会議におきまして決められたものであると言われております。ルサカ方式と言われておるようでございます。具体的にどういう算定方法であるかといいますと、まず予算を二分の一にいたしまして、その二分の一の最初の金額につきましては、全加盟国が均等に分担をいたします。それから残りの二分の一につきましては、各加盟国にそれぞれ一定の方式、数式がございます。これは各国の国民所得と、それから一人当たりの国民所得、それから国際観光収入、この三つの数字を加重平均いたしまして、これをもとにいたしまして、各国の順番をつけまして、五つのグループにいたします。この第一から第五までのグループにどこかの国が入るということになるわけでございますが、第一のグループに所属しておりますのはアメリカでございまして、わが国は第二のグループに入るということが予想されております。
  305. 中川嘉美

    ○中川(嘉)委員 以上で終わります。
  306. 永田亮一

    永田委員長 ちょっと速記をとめてください。     〔速記中止〕
  307. 永田亮一

    永田委員長 速記を始めて。  渡辺朗君。
  308. 渡辺朗

    渡辺(朗)委員 私は、きょうは二つの問題、世界観光憲章と、それからILO百三十四号の問題、二つについての質問をさせていただきたいと思います。  初めに、WTOの憲章についてでございますが、次官にお尋ねをいたします。  公的旅行機関国際同盟というのがありました。それがこのたび政府間観光機関、これに改組した理由というのはどこにあったわけでございましょうか。これらの問題について、あるいは重複しているかもわかりませんけれども、お尋ねをいたしたいと思います。
  309. 愛野興一郎

    ○愛野政府委員 ただいまの御質問の一番大きな理由は、低開発国に対する技術援助、こういったものに寄与していきたい、これが最大の理由であります。
  310. 渡辺朗

    渡辺(朗)委員 いままでの公的旅行機関国際同盟では、低開発国に対する観光開発援助ということはできなかったのでございますか。そこら辺をひとつ……。
  311. 小林俊二

    ○小林説明員 ただいままで活動いたしておりました、先生御指摘の機関は民間の機関でございまして、各国における観光開発ということをもっぱらその業務の内容としておったわけでございますけれども、国連におきましては、観光分野を取り上げる国際機関、専門機関というものが存在いたしませんでした。しかしながら、観光という業務は、低開発国にとりましても、いわゆる貿易外収入の大きな潜在的な価値を持つ業務でございます。その面においで、当然先進国から協力を、あるいは援助を仰ぎたいといったような希望が、国連あるいは先ほどの機関に対しても寄せられておったのでございます。しかしながら、そういった低開発国に対する観光分野における技術援助といったような問題は、それまで業務の内容といたしておりませんでしたし、また、そのための予算手当てもございませんでした。そこで、この際、民間機関を政府に改組して、その上で国際連合の技術援助資金の配賦を受けて、低開発国に対しても観光分野で技術援助を行っていきたいということになって、この改組が実現したというのが実情でございます。
  312. 渡辺朗

    渡辺(朗)委員 この憲章は一九七〇年にできておりますし、その憲章採択に当たっては、日本政府は積極的に賛成をした。そして、いま七八年でございますが、大変長い時間がたっておりますけれども、おくれたのは何らかの支障があったわけでございましょうか。そこら辺はいかがでございますか。
  313. 小林俊二

    ○小林説明員 この機関につきましての憲章が採択されましてから、必ずしも各国の批准ぶりが非常に急速に進んだということではございません。むしろ非常におくれておって、しかもその構成国が地域的に偏っておったという事情がございます。そこで、この機関が、実際に世界的な観光に関係のある各地域を網羅する機関に発展するかどうかということについての若干の問題もございましたので、わが国といたしましては、その機関のこの憲章の批准ぶりを見守っておったということもございます。また、この機関が民間の機関の改組というかっこうで実現したということも、手続的に若干、厳密に法的に申しますれば奇異な印象を与える面もございました。そうしたことから、各国がこれを真に政府間機関として受け入れて、またそういった発展を可能ならしめていくかどうかといったような推移を見守るという問題点もあったわけでございます。
  314. 渡辺朗

    渡辺(朗)委員 先ほど次官の方から、この憲章を採択するに至ったのは、途上国の観光開発に寄与するということが非常に大きな目的に加えられたからだというお話でございました。今後この憲章、これに基づいて日本としてはどのような協力が可能なのか、あるいはすでにそういう要請が途上国から来ているのか、そういう点についてお尋ねをいたしたいと思います。
  315. 小林俊二

    ○小林説明員 この機関自身は、もちろんいまだ日本国は加盟いたしておりませんので、この機関を通ずる低開発国に対する観光分野の援助ということも具体化はいたしておりませんけれども、わが国のバイラテラルな二国間の関係におきましては、観光の分野におきましても幾つかの援助をいたしております。  その例を二、三申し上げますと、たとえば円借款でございますが、昭和五十二年にバングラデシュに対しましてホテル建設のための円借款六十四億円を供与いたしております。また、技術協力の分野におきましては、昭和五十二年度におきまして、アジア、中近東、アフリカ等からこの分野における三十九名の研修員を受け入れております。また、インドネシア及びタイに対しましては、観光開発調査のための調査団を派遣しております。さらに、東南アジア貿易投資観光促進センターというものが東京に置かれておりますが、この観光センターの設立に当たりまして、わが国は財政的な寄与もいたしておるわけでございます。このように、観光の分野におきましても、わが国わが国自身のイニシアチブにおいてバイラテラルな援助を今日まで行ってきたということでございます。
  316. 渡辺朗

    渡辺(朗)委員 次に、説明書をいただきまして読みましたら、昨年十二月三十一日現在で、締約国は九十八カ国、それから準加盟国が一、賛助加盟員が六十九。このリストを見ますと、大きな国ではイギリスとそれから中国が入っていないのですけれども、これらの国は加盟するのでしょうか、いかがでございますか。
  317. 小林俊二

    ○小林説明員 私ども承知いたしておりますところによりますれば、イギリス、イタリアはきわめて近い将来に加盟の見込みであるということでございます。中国につきましては、国内における外国人観光客の取り扱いに関する政策の問題もあろうかと思いますが、加盟の動きがあるというふうな情報には接しておりません。
  318. 渡辺朗

    渡辺(朗)委員 それでは次に、関連いたしまして台湾政府あるいは台湾の観光機関、これは加盟をしているのでございましょうか。
  319. 小林俊二

    ○小林説明員 台湾は、中国ということで一度加盟した経緯がございますが、いわゆる中国代表権の関係で、中国を代表する権利がない、その立場にはないという判断がこの機関の方から下されまして、事実上脱退と申しますか、排除と申しますか、加盟国とはみなされないという状況になったという経緯がございます。したがって、一遍入ったけれども排除されたと言うことができるのではないかと思います。
  320. 渡辺朗

    渡辺(朗)委員 これ、台湾の政府なりあるいは観光機関が、たとえば民間の機関、そういうのが、加盟国でなくとも準加盟国あるいは賛助会員ということにはなれるわけですか。     〔委員長退席、塩崎委員長代理着席〕
  321. 小林俊二

    ○小林説明員 現在、と申しますのは七七年十二月三十一日現在でございますが、準加盟国としてここに加盟しておりますのはジブラルタルのみでございます。準加盟国として加盟いたしますには、宗主権を持っている本国の承認が必要であるということだそうでございます。
  322. 渡辺朗

    渡辺(朗)委員 賛助加盟員というのはいかがでございますか。
  323. 小林俊二

    ○小林説明員 現在のところ、アラブ観光連盟等六十九団体が賛助加盟員としてこの機関に加盟しておると承知しております。
  324. 渡辺朗

    渡辺(朗)委員 ですからその際に、台湾の観光機関がそういう申請をした場合どういうことになるのか、そしてまた、日本政府態度というのはどういうものになるでございましょうか。
  325. 小林俊二

    ○小林説明員 賛助加盟員として民間団体がこの機関に加盟する場合は、その団体の所属する国が締約国であることが条件となっておるというふうに承知しております。
  326. 渡辺朗

    渡辺(朗)委員 これは実は中国代表権の問題ということで台湾政府、それから中華人民共和国政府という問題がこういう場合にも、こういう組織の上にも蒸し返されて、またトラブルの種になりはしないだろうか、そういうことでお聞きしておるわけでございます。したがいまして、仮定の問題ですけれども、そういう際にはどういう事態が起きるのか、日本としてはどういう態度をとるのか、あるいはこれは規約上そういうことはあり得ないということなのか、そこをひとつ明らかにしていただきたいわけです。
  327. 小林俊二

    ○小林説明員 厳密に法的に申しますと、あるいは若干の問題が生じ得るかと思いますが、きわめて常識的にお答え申し上げますれば、台湾の民間機関が賛助加盟員として加盟する場合には、その台湾に実効的な支配を及ぼしている政府がこの機関の締約国としての地位を認められていないということからして、申請は受け付けられないものと存じます。
  328. 渡辺朗

    渡辺(朗)委員 それでは、別の問題に関連してお尋ねをさせていただきたいと思います。  昭和四十七年の十二月に観光政策、観光問題について、国際観光の意義及び政策の方向ということで、総理の諮問に答えての答申がございました。国際観光の問題点、そういうことについて、その後はそのような答申は行われておりますでしょうか、いかがでございましょう。
  329. 杉浦喬也

    ○杉浦説明員 観光政策審議会といたしましては、その後国際観光につきまして取り上げられておりません。
  330. 渡辺朗

    渡辺(朗)委員 実はその答申の後、五、六年たっておりますね。そして四十七年答申が行われたときには、これは日本の国民が海外に行くというのも、その答申に載っている数字では百三十九万と書いてある。外国人が日本に来たのは七十二万と書いてある。去年、五十二年度には、日本の人たちが海外に行かれたのでは数は三百十五万にふえている。これは大変なふえ方でございます。外国人観光客が日本に来たのは幾らになっているのかわかっていたら数えていただきたいのですが、私はそういう大変大きな変化が起こっている中で、日本のこれからの国際観光に対する考え方というものもかなり再検討しなければならぬと思うのです。そういう点について、まず外国人はどのくらい日本に、ことしは無理ですね、昨年度来ておりますでしょうか。それから、昨年度三百十五万と申し上げた私の数字、日本人が海外に行った数字、これは正しいのでしょうか。
  331. 杉浦喬也

    ○杉浦説明員 外人が日本に参りました昨年の数字は百二万人でございます。それから日本人が海外に参りました数字は先生おっしゃいました三百十五万人でございます。
  332. 渡辺朗

    渡辺(朗)委員 これは四十七年から五十二年を比べますと、日本人が海外に行ったのは二・二七倍ぐらいになりますね。それから外国人が日本に来ているというのは二倍もなっていませんね。何かそういうところにも日本の観光政策の中に、特に日本の観光資源それから受け入れ体制の整備、やはり何か欠陥もありはしないだろうか。私は答申書を読んだら大変いいことを書いてあるので、このとおり行われたらすばらしい観光立国もできるのではないかと思ったのですが、こういう観光政策そのものについて何か再度打ち出すような考え方はお持ちでございましょうか。
  333. 杉浦喬也

    ○杉浦説明員 御指摘のように外客が来る割合と日本人が出ていく割合を比べますと、非常にアンバランスになってまいっております。こうした点、いろいろな原因がございます。非常に遠隔の地であって、航空運賃が高いとか、あるいは日本の物価高、最近では円高の問題でございますね。そうした非常に高いというイメージがあるということ等、いろいろな原因ございますが、いまこの時点で、先生いま御指摘になりましたように、もう一度国際観光につきまして再検討してみたいというふうに私ども考えております。特に第一番目の問題としましては、いま御審議願っておりますWTOへの加盟という一つの大きな転機がございます。そうしたことを踏まえまして、海外の技術援助等の問題、これをもう一回観光問題として取り上げる必要がある。  それから第二番目は、いま先生おっしゃいましたように、海外へ向けての日本人の旅行者が非常に多くなった。そこでまたいろんな問題も出ております。先般のグアムの問題等もございますが、安全の問題、マナーの問題等、もう一回ここで見直しをする必要があるのではないか。  それから第三番目としましては、外客の受け入れ体制の問題といたしまして、あるいは国際会議場の問題、あるいはホテルの問題等々、受け入れ施設の整備につきましてもう一回考えるべきではないかという、大体この三つの問題につきまして再検討したい。できますれば観光政策審議会にもう一回御相談を申し上げましていろいろと御検討を願いたいというふうに考えておる次第でございます。
  334. 渡辺朗

    渡辺(朗)委員 いま大変重要なことをおっしゃいましたので、大変いいことですから、ぜひ進めていただきたいと思います。外貨を持ち出すだけが国策ではないと思います。やはり日本は観光立国として大いに海外からも来てもらう、そういうことも含めましての方策をひとつ確立していただきたいと思います。これを要望いたします。  次に、時間の関係もありますので、ILO百三十四号条約に入らしていただきます。まず条約に「船員」ということが書いてありますが、この「船員」とは定義はどのようにいたします。
  335. 豊田実

    ○豊田説明員 お答え申し上げます。  条約第一条で船員の定義がございます。「「船員」とは、資格のいかんを問わず、この条約の適用を受ける領域において登録され、かつ、通常海洋航行に従事する船舶に雇い入れられるすべての者をいう。」という表現になっております。この船員の定義は、国内法の船員法の定義と同じ趣旨で、国内法におきましても、船舶のうち、港であるとか河川であるとかいうところだけ航行するものについては船員法の適用から外されておりまして、通常海洋航行に従事する船舶を対象としております。
  336. 渡辺朗

    渡辺(朗)委員 それは、五トン以上とかいうふうなトン数の規定はございませんか。
  337. 豊田実

    ○豊田説明員 船型で五トン未満については適用になっておりません。これは小さい船で、通常海洋航行に従事しないという意味からでございます。
  338. 渡辺朗

    渡辺(朗)委員 そこで、もし昨年度の統計がありましたら教えていただきたい。船員の死傷、疾病という数でございますが、お持ちでございましょうか。
  339. 豊田実

    ○豊田説明員 お答え申し上げます。  昭和五十年度の数字が最近の数字になっておりますが、昭和五十年度におきまして、全体の災害発生件数が、一年間一万七千五百三十五人の船員の方が災害に遭っているという状況でございます。千人当たりの発生率として七二・〇という数字になっておりますが、内訳としまして、災害関係が約三〇、残りが疾病関係という状況になっております。
  340. 渡辺朗

    渡辺(朗)委員 これは私個人的に感じるのですけれども、この条約の中に現場労働者の、船員の意向を反映さして安全を確保していくという点がもっと強く打ち出されてもいいのではないかと思っているのです。これに関連しまして、私は、国内法の方での改正というようなことは何か必要でないのだろうか。たとえば二十年前の船員法というのがあります。労働安全衛生規則がある。そういうものは現状にそぐわなくなってきておる。一つの例ですけれども、クレーンの作業の場合、陸上だとそれを操作するのにライセンスが必要とされますね。しかし海上の場合には野放しでしょう。やはりそういうところに傷害や何かが起こる率が高い、こういう問題が出てきているのではないかと思いますが、その点いかがでございましょう。
  341. 豊田実

    ○豊田説明員 お答え申し上げます。  海上労働の場合の法制としましては、船員法に基づきます船員労働安全衛生規則というものを中心としていろいろな規制をしております。いま御指摘のございましたクレーン作業につきましては、特殊な作業ということで、私どもの法令上も一定の熟練者を要求してございます。それから資格の問題につきましては、海上の場合、船舶の運航という作業とあわせていろいろな資格要件を要求してございまして、この体系としましては、船員法のほかに船舶職員法という法律がございまして、一定の国家試験を義務づけてございます。
  342. 渡辺朗

    渡辺(朗)委員 この問題はまた改めてお聞かせいただきたいと思っておる点ですが、さらにもう一つ関連しまして、船員関係の未批准の条約、これが二十幾つあるはずでございます。どうしておくれているのだろうか。たとえば十五歳未満の年少者の船員に係る条約であるとか、そういうようなものがあるはずでございます。これはおくれているのはいかがでございます。どういう理由がございますか。
  343. 高橋英雄

    ○高橋(英)政府委員 ILOの船員関係の条約のうち未批准のものは現在二十八あるわけでございます。ところがそのうち、その後改正の条約等が採択されたために実質的に今後批准の対象となり得るものは、ただいま御審議願っております百三十四号条約を含めまして二十一あるわけでございます。  こういった未批准のILOの船員関係の条約につきましては、一つにはその内容わが国の法制と異なる点がありまして、それの調整が必ずしも速やかにいかないということ、それから二つには条約内容わが国の海上労働の実態と必ずしもそぐわない点がある、そういうふうなことで速やかに批准することが困難で今日に至っているというようなわけでございます。  私どもといたしましては今後におきます海上労働の実態等の推移を踏まえながら、できるだけ法制を初め国内の体制の整備を図りまして、一つでも多く、少しでも早く批准ができるように努力してまいりたい、かように考えておる次第でございます。
  344. 渡辺朗

    渡辺(朗)委員 いまおっしゃった未批准のものでやはり急いでもらわぬといけないものも多々あるわけでございますが、ぜひひとつその点鋭意御努力をいただきたいと思います。またそれをしないと、たとえば女子の深夜作業、深夜労働、そういうものを禁止する条約、これも未批准でございます。こういったものをほったらかしにしておいて、たとえば日本政府は、福田総理もASEANを回られました。心と心の触れ合いである、ASEANとの協調の時代がやってきた。しかし香港であるとかあるいは他の国々において、もしそこで働いている人たち——こういう深夜作業を禁止するようなILO条約、こういうものに日本は入っておらぬ、公正な労働基準というものを日本は示すべきではないのか、入ってないということは深夜労働をやっているんじゃないのか、たとえばそういう短絡的な見方をされる場合もある。そこで心と心なんと言ってもこれが空文になってしまう。そういう点でもILOのそういう条約というものは大変大切な意味を持っていると私は思いますので、次官、ひとついかがでございましょう、大いに推進をしていただきたいと思います。
  345. 愛野興一郎

    ○愛野政府委員 いまの御意見は私どもも大いに理解するところでありまして、ILO関係の未批准の条約につきましても、国内法の整備等々との関連もありますから、政府もそういった体制を十分整えながら前向きに取り組まなければならぬ、こういうふうに考えております。
  346. 渡辺朗

    渡辺(朗)委員 さてそれで、今度はILOというものについてどのようにお考えなのか、そこら辺をぜひお聞かせいただきたいと思います。  そういう観点から、昨年の十一月一日にカーター大統領がILOからの脱退ということを声明した、このことは大変大きなショックをもたらしております。当時、ここにはいま外務大臣いらっしゃいませんけれども、外務大臣が官房長官でございました。そしてILOにアメリカが再加入することを強く希望するということを言っておられる。そしてまたILOがその本来の目的を達成するように、一層有効に機能するように、総会であるとか理事会であるとかILOの事務局に対して粘り強い努力をしていくということも記者会見ではっきりとおっしゃっておられる。ILOの総会は近々近づいてまいります。どのような努力をしておられるのか、その成果が上がったのか、そこら辺をお聞かせいただきたい。
  347. 小林俊二

    ○小林説明員 ILOにおきましては、ただいま機構改革に関する話し合いが進められております。先ほどの答弁でも申し上げたところでございますけれども、その直接のきっかけは、ILOが非常に長年にわたって堅持してまいりましたさまざまの体制が、戦後新しくメンバーとなりました低開発国側、途上国側の観点からして納得できない、あるいは改変すべきであるといったような希望が強く打ち出されたところに直接のきっかけがあるのでございますけれども、そうした機構改革に関する話し合いの中で、米国が問題としておりました点も取り上げて同時に改革をしたいということを、これは先進国側からの要望でございますが、取り入れて、協議を進めておるところでございます。  その具体的な一つの点は、デュープロセスと申しますか、問題を進める上において定められた手続を十分に満たした上で行うべきであるという米側の主張も取り上げられておるわけでございまして、この点につきましては、これは具体的には議事規則の改正でございますけれども、現在のところ、その方向で低開発国側からも一つのアプローチ、歩み寄りがございまして、この四月の末に予定されております作業部会におきましては具体的な妥協という方向に向かってさらに前進が見られるのではないかと思っております。こうした機構改革の一環として米国の考えておる点もアコモデートしていきたいというふうに私どもは努力してきたわけでございます。
  348. 渡辺朗

    渡辺(朗)委員 いまの機構改革の問題、たとえば議事規則十七条、この改定は日本から打ち出されておられますか。
  349. 小林俊二

    ○小林説明員 議事規則の改正につきましては、二月の作業部会でわが国からも具体的な提案をいたしております。
  350. 渡辺朗

    渡辺(朗)委員 それが受け入れられたから、日本政府は百万ドルの拠出をされることを決められたわけでございますか。
  351. 小林俊二

    ○小林説明員 わが国の百万ドルの任意拠出の事態につきましては、ただいまのお話に直接の関連はないと申し上げた方がよろしいと思います。
  352. 渡辺朗

    渡辺(朗)委員 私はその点ちょっとひっかかるので、お尋ねをしたいと思うのです。  これはアメリカが脱退した遠因もあれば直接の動機もある。やはりそういうことのかなめになるのが議事規則でございます。     〔塩崎委員長代理退席、委員長着席〕 それをほったらかしにしておいて、そしてアメリカが脱退した二五%の拠出金というものの穴埋めを日本がやっている。しかも、そういうことですぐ総会が来るということになりますと、何のことはない、何のためにアメリカは脱退したのかということにもなってしまう。これはやはり運営の方向を本来のものに返そうというアメリカ側の意図があったからそういう態度をとったのであろうと思うのですね。そうしますと、これはいままでの運営がそのまま認められた形で穴埋めだけを日本がやっているということになりませんか。
  353. 小林俊二

    ○小林説明員 米国の脱退によりましてILOが受けました経済的な影響はきわめて多いわけでございまして、二五%、四分の一の経費の節減を、あるいは手当てを必要とするという事態になったわけでございます。その中におきまして、二一・七%までは経費の節減ということをもって対処するという結果が出ておるわけでございます。したがいまして、任意拠出によって穴埋めをするというのは残りの三・三%にすぎないわけでございまして、その三・三%の穴埋めができたからといって、米国の脱退に基づく経済的な影響が克服されたということにはならないわけでございます。二一・七%の節減ということは依然として事実として残るわけでございます。
  354. 渡辺朗

    渡辺(朗)委員 私が聞きたいのは、日本政府が自由世界の中で、アメリカが脱退してしまいますと、一番大きなILOに残っている国になりますね。それだけに、やはり責任は大きいと思うのです。またそういう西欧の諸国がやはり同じような不満を持っている。だからこそ、いま本来の方向に返すという当時の園田官房長官が言われた方向というものをいま努力しなければ手おくれになってしまうのじゃないか。そういう意味で申し上げているので、そこら辺をちょっとお聞かせいただきたい。たとえば、米国が脱退するあのときの直接の契機になったのは、たしか七四年のイスラエル非難決議です。一九七五年のPLOのオブザーバー加盟であります。一つお聞きしたいのですけれども、その二つの、七四年イスラエル非難決議の際に日本の政、労、使はどのような態度をとりましたか。そしてPLOのオブ加盟に対しての日本政府態度、労使ともどもの態度をちょっと聞かしていただきたい。
  355. 小林俊二

    ○小林説明員 先ほどはわが国の任意拠出の点だけを申しましたが、任意拠出の点は、任意拠出をいたしまして、日本としては、わが国といたしましては、ILO内外におきまして、米国が問題とした点をあくまで問題として今後とも主張していく方針でございます。先ほど申しました機構改革の面におきましても、この点を強く認識しながら改革を進めるという方向で努力を続けておるわけでございまして、この任意拠出云々によりまして、わが国が米国脱退の影響をむしろ相殺するということを念頭に置いているものでは毛頭ございません。  そこで、ただいま御指摘のございましたPLOオブザーバー加盟決議及びイスラエル非難決議の問題でございますが、まさにこの二つの決議が米国脱退の直接のきっかけになったわけでございます。  イスラエル非難決議につきましては、わが国としては、この問題が政治的な性格を多分に有するものであって、ILO本来の活動の機能を逸脱するものであるという立場から、採決に当たりましては棄権いたしました。またPLOオブザーバー参加につきましては、これを可能ならしめるための総会議事規則の改正という形で提出されたものでございますが、この点につきましても、わが国は採決に当たって棄権したのであります。
  356. 渡辺朗

    渡辺(朗)委員 労使の態度はわかりませんか。
  357. 小林俊二

    ○小林説明員 失礼いたしました。その三者構成の投票ぶりを細かく申し上げますと、政府及び使用者側はいずれも棄権をいたしました。労働者側はイスラエル非難決議につきましては賛成いたしております。
  358. 渡辺朗

    渡辺(朗)委員 いまちょっとはっきりしなかったのですが、イスラエル非難決議の際には政府は棄権、労働側は、これは賛成ですか、反対ですか。使用者側は賛成ですか、反対ですか、棄権ですか。
  359. 小林俊二

    ○小林説明員 PLO参加のための議事規則改正につきましては、政府労働者側が棄権いたしまして、使用者側は賛成いたしております。
  360. 渡辺朗

    渡辺(朗)委員 私は、使用者側がたとえばそこでPLOのオブ加盟に対して賛成している、これは使用者側であるから政府の知ったことではないとは言えないと思うのですね。やはりPLOの加盟というのは、ILOの伝統であった三者構成ということ、これからやはり違反する。そういうことを日本がやはりやっているわけです。やはりそういうところから直していかないと、拠出金だけで何か処理できる問題でもないし、もっと根本的にはILOの伝統みたいなもの、これはやはり守り続けるというところから私は日本のイニシアチブが発足する、発揮できる、そういうふうに思いますので、ここら辺についてのお考えを聞かしていただきたいと思います。
  361. 小林俊二

    ○小林説明員 使用者側の賛成投票の背後にある物の考え方につきましては、憶測するほかないわけでございまして、あるいはアラブ諸国に対する何らかの考慮があったのではないかという推測も可能でございますが、むしろ政府労働あるいは使用者側がそれぞれの考えに基づいて行動をするというところに三者構成の本来の意義があるわけでございまして、政府といたしましてはそういった観点からわが国の三者構成における投票ぶりが異なった、食い違ったということが基本的にILOにとって問題だろうとは思っておらないわけでございます。
  362. 渡辺朗

    渡辺(朗)委員 これは、イスラエル非難決議の際、PLOのオブザーバー加盟の際、ともに政府は棄権でございます。棄権というのはどういう意思表示でございましたか。私はあえてそれをお尋ねしたいと思うのです。もう一遍言いますと、そういうことに対して三者構成でないというのをはっきり知っていたら、なぜ反対できなかったのです。棄権というのは一番あいまいな態度ではございませんか。それでアメリカ脱退後は自由世界における第一番目のILOの中に残っている国である、こういうことは言えないと思います。政労使の態度が違うことはあり得ると思いますけれども、しかし棄権というのは日本政府がとられた態度でございます。
  363. 小林俊二

    ○小林説明員 イスラエル非難決議にせよ、あるいはPLOの参加にせよ、問題の本質上きわめて国際政治的な性格の強い問題でございます。こうした問題に対するわが国態度を決定するに当たりましては、それに関連するあらゆる情勢を念頭に置いて対処する必要があるわけでございます。イスラエル非難決議につきましては、わが国といたしましては本来その内容がILOの処理すべきことではないという観点から、これに棄権する。すなわち、これは投票によって意思表示すべき問題の対象として適当ではないという立場からこれに棄権したものでございます。また、PLO参加にかかわる議事規則改正は、PLOの政治的な立場、すなわち国際法上の立場についてこの参加の資格を有するか否かという点において疑義があったということから、これに対して判断を差し控えたものだろうと思います。
  364. 渡辺朗

    渡辺(朗)委員 時間が参りましたので、これはまた別の機会にぜひいろいろ突っ込んでお話も聞きたいと思いますが、ともあれ、私はILOの立て直しというものは、これはいま非常に重要なタイミングのもとに置かれている。それだけに日本がひとつ責任をもって他の先進諸国、途上国とも協力しながら空洞化させないように御努力のほどをお願いしたいと思います。  では、終わります。ありがとうございました。
  365. 永田亮一

  366. 柴田睦夫

    柴田(睦)委員 最初に、世界観光機関憲章の問題に関連いたしまして質疑いたします。  近年日本からの海外旅行は急増の一途をたどっているわけでありますけれども、それに伴いましてまた不名誉な非難も強くなってきているというふうに認識いたしております。そこで、そのことも踏まえて、世界観光機関に加盟するに当たりまして対外的観光政策の基本をどのように考えていらっしゃるのか、まずお伺いいたします。
  367. 杉浦喬也

    ○杉浦説明員 国際観光が非常に重要であるという点につきましては、私ども十分認識をしておるところでございまして、やはりこれからの社会は国際的な親善、国際交流というものが非常に重要であると考えております。  こうした立場から、お互いにそれぞれの国を旅行によりましてはだに触れてみるということが非常に重要ではないかということでございまして、今後とも国際観光旅行につきましては、私ども、入ってくるお客さん、また日本から出ていく日本人、両面にわたりまして十分な政策を講じてまいりたいと考えております。
  368. 柴田睦夫

    柴田(睦)委員 憲章の第三条の二項で、第三条に掲げてある「目的を追求するに当たっては、開発途上にある国の観光の分野における利益に特に注意を払う。」ということが特にうたわれているわけです。  そこで、特に日本の場合はアジアに位置するわけですけれども、発展途上国の観光発展に対する協力の問題ですけれども、アジアにおけるこれらの諸国が観光発展のためにどういうものを必要だと言っているのか、そういうことを研究されていると思いますけれども、御答弁願いたいと思います。
  369. 杉浦喬也

    ○杉浦説明員 開発途上国におきまして国際観光というものについて非常に関心が深いということでございますが、これはやはり外貨を獲得するという端的な手段としまして観光収入を得るということが第一番でございますし、またそれによりまして観光事業にいろいろな人が従事するということで、雇用の機会を増大させるというような意味合いもあるわけでございます。そうした観点から、最近日本に対しまして開発途上国、特にいま東南アジアの諸国から観光に関する技術的な援助あるいは経済的な協力という面でいろいろな申し込みがすでにございまして、それに対応いたしまして、わが国でも各種の技術協力なり経済協力をすでに実施しておるところでございます。
  370. 柴田睦夫

    柴田(睦)委員 それでは、いま言われましたアジア諸国からの要求に対して日本がどういう協力をしてきたか、その内容ですけれども、実績の内容についてちょっと説明していただきたいと思います。
  371. 杉浦喬也

    ○杉浦説明員 まず技術協力でございますが、国際協力事業団のお金によりましてわが国で観光セミナーというものを開催いたしまして、開発途上国の政府の関係職員等を受け入れまして研修を実施しております。昨年の実績としましては、東南アジア、中近東、アフリカ等から二十六名研修員が参っております。  それからもう一つは、観光開発の調査でございますが、これは観光の専門家を派遣をいたしましてマスタープランをつくるという仕事をやっております。具体的には、昭和五十一年から五十三年にかけましてタイのパタヤ地区、それからインドネシアの北西部スマトラ地区の二地区におきまして観光開発計画を作成をいたしております。  なお、パタヤ地区におきましては引き続き、マスタープランができましたので、実行計画を現在練りつつあるところでございます。  それから二番目に経済協力でございますが、主としてホテルの関係がございます。昭和五十一年にブルガリアのソフィアにおきまして、総額四十八億円の借款を海外経済協力基金から行っております。またバングラデシュ、これは昭和五十二年でございますが、バングラデシュのダッカにホテルを建設するために、海外経済協力基金から六十四億円の借款を行っております。  そのほか、わが国におきまして東南アジア貿易投資観光促進センター、SEAPセンターと称しておりますが、これが東京にございまして、ASEAN諸国等の観光宣伝等を中心といたしまして、各種の事業を実施いたしておるところでございます。
  372. 柴田睦夫

    柴田(睦)委員 日本の観光基本法には前文を設けて、また第一章の第一条で政策の目標、この法律の中身においてきわめて崇高な観光に対する見解を表明しているわけです。ですから、国際観光ということになりますと、単に観光ということではなくて、この法律にもありますように、国際社会の親善だとか相互理解だとか、これを増進するということに目を向けなければならないというように思っております。そういう中で、発展途上国の要求に対していま実績など、またこれからの目標などを伺ってまいりましたけれども、今後そういう問題についてどのような協力をしていくのか、もう一度お伺いいたします。
  373. 杉浦喬也

    ○杉浦説明員 いままでの実績は先ほど申し上げたとおりでございますが、今後WTOに加盟をいたしますと、国連の諸機関、特に国連の開発計画と密接な関連を持つことになるわけでございまして、こうした開発計画の一環としまして、観光開発、技術協力という面でさらに一層の要請があるのではないか。わが国としましても従来にも増しましてこうした要請にこたえてまいりたいと考えておるわけでございます。
  374. 柴田睦夫

    柴田(睦)委員 観光基本法の第五条に基づいて「昭和五十二年度において講じようとする観光政策」として第八十回国会に提出されておりますけれども、その中に「海外旅行の健全化の推進」ということが一項設けられておりまして、中を見てみますと「旅行業者が不健全な旅行を企画募集しないようにすること」ということが書かれております。非常に問題になっておりますのは、いわゆる旅行先での売春という問題、これはアジア諸国、韓国、台湾といったところで特に言われますけれども、このアジア諸国では日本人旅行者に対して厳しい非難が起こっているというのが今日の状態であるわけですけれども、運輸省はこういう状況について把握しているのかどうか、お伺いします。
  375. 杉浦喬也

    ○杉浦説明員 日本から外国への旅行者が非常にふえてきておる現状の中で、特に東南アジア等への旅行客が増加をしておる中で、いま先生御指摘のように、マナーの面でいろいろと問題が生じておるということにつきましては十分私ども承知をしておるところでございます。
  376. 柴田睦夫

    柴田(睦)委員 単にマナーという問題だけではなくて、いわば観光売春という言葉さえ聞かれるわけです。特に韓国の場合を見てみますと、とりわけ強い非難がここにあるわけです。軍事独裁政権のもとで国民が苦しめられている、そしてそういう中で日本から進出した資本にもまた苦しめられている、そういういろいろな苦しみを持った人が、こうした日本の観光客の事態を見て非難するのは当然のことであると思うわけです。この種の行為がこのまま続くということになりますと、さらに日本は不名誉な批判を受けることになると思うのですけれども、これはやはり観光政策の問題として対処しなければならない問題であるというように考えるわけです。この点につきまして、ひとつ外務次官の御見解をお伺いしたいと思います。
  377. 愛野興一郎

    ○愛野政府委員 ただいまの先生の御意見はまことにごもっともでありまして、特に海外旅行者のマナーの問題についてはしばしばいろいろと言われるところであります。基本的には国民一人一人の心構え、マナーの向上ということにかかっておると思うわけでありまして、外務省といたしましては、小冊子の「海外旅行のアドバイス」それから「楽しい海外旅行のために」というものを作成をいたしまして、各都道府県の窓口を通じて配布いたしておりますほか、新聞、雑誌、講演等を通じて、その周知徹底を図っているところであります。  また、邦人の海外旅行者の中で、残念ながら海外でひんしゅくを買うような行動をとられた実態を把握いたしました場合は、具体的な事例につき報告があった場合は、運輸省を通じまして、業者に注意を喚起しているところであります。
  378. 柴田睦夫

    柴田(睦)委員 これは世界観光機関憲章にも反する問題です。「人権及び基本的自由を普遍的に尊重し及び遵守することに寄与する」という目的を持っているこの憲章に違反することが明らかであるわけです。さきに言いました「昭和五十二年度において講じようとする観光政策」を見てみますと、「海外旅行の健全化の推進」というところで、講じるべき政府措置を幾つか述べています。たとえば、「旅行業モニター制度を実施して、」「旅行業者の活動をチェックする。」とか、あるいは一日本人の海外旅行の実態調査の結果に基づき、」「具体的施策を講ずる。」とか、こういうことが書いてあるのですけれども、このことが実際に健全化の実を上げているのかどうか、最近そういう健全化の実が上がっているかどうか、その状態についてお伺いします。
  379. 杉浦喬也

    ○杉浦説明員 ただいま御指摘のモニターあるいは実態調査等、まず現実の姿を十分確かめたいということで昨年実行しておるところでございまして、そうした実態調査を踏まえまして、私どもとしましては、特に旅行業者を通じまして指導を行っておるわけでございます。具体的には日本旅行業協会を通じまして、特に添乗員が問題でございますが、添乗員の研修を厳密にやるというようなことで、実際に研修を行っております。あるいはまたこれは昭和四十九年につくっておりますが、同じ日本旅行業協会で、いわば旅行業の行動基準といったような意味合いで旅行業綱領というものをつくらせまして、この綱領に従って行動をするということをお互いに確認をしておるわけでございます。その他政府全体といたしまして、運輸省、外務省総理府等、それぞれの立場でパンフレット、ポスターあるいは雑誌掲載等を通じまして、これらのマナーの励行等PRに努めておるところでございます。
  380. 柴田睦夫

    柴田(睦)委員 最近の書物などを読んでみますと、表向きは旅行業者による不健全な企画募集のようなことは減ってきているようでありますけれども、実態は、裏に回れば前と変わっていないというように読んでいるわけです。いままでのやり方だけでは、健全化の措置としては不十分ではないかという疑念が生ずるわけです。そこで巧妙なやり方で不健全な行為へ導くような旅行業者に対しては取り消しだとか、あるいはそのおそれのある者に対しては登録拒否といったような厳しい措置をとっていく必要があると思うのですけれども、現行の旅行業法上そうしたことが可能であるのかどうか。またそういうことまでやらなければならないと考えているのかどうかお伺いします。
  381. 杉浦喬也

    ○杉浦説明員 現在の旅行業法によりますと、欠格条項というのがございまして、その条項に当てはまる場合におきましては登録取り消しということになるわけでございますが、本件におきまして具体的にそういうようなケースが当てはまるかどうか、これは検討をいたしませんと、なかなか法律上の問題はむずかしい点があろうかと思います。ただ、そうした趣旨といいますか、そうした精神で旅行業者があるべきであるというふうには思っておりますので、十分指導監督を努めてまいりたいというふうに考えておるわけでございます。
  382. 柴田睦夫

    柴田(睦)委員 世界観光機関憲章の目的にも反し、しかも相手国の人々に深い打撃を与えるというような不健全な行為を、日本政府としてはただの一つも許してはならないというふうに考えるわけです。そういう意味で、やはり監視を十分にやって、実態をよく把握してこれに対して厳しい態度をとることが大事であると思うのですけれども、最後にこの点の外務次官の御見解を伺います。
  383. 愛野興一郎

    ○愛野政府委員 ただいま運輸省の観光部長の答弁にもありましたように、わが国の国際的な信用を高めるためにも、先生が言われたような点に十分留意をして、今後とも国民の一人一人のマナーの向上等に努力をすると同時に、業者に対しても適正な指導を行っていかなければならぬ、こういうふうに考えております。
  384. 柴田睦夫

    柴田(睦)委員 次に、船員職業上の災害防止に関する条約に関連してですが、日本では、日本国籍以外の、たとえばリベリア籍の船など、外国船への日本人乗組員がふえているように聞いておりますけれども、その状況はどうなっているのかまずお伺いします。
  385. 棚橋泰

    ○棚橋説明員 先生御指摘のように、最近わが国の海運で外国の用船が非常にふえておりまして、一口に申し上げますと、わが国は全部で大体一億一千二百万トン程度の船を動かしておるわけでございますが、そこうち日本船は五千八百万重量トンくらいでございまして、残る五千三百万重量トンというものは外国用船でございます。この中で御指摘の便宜置籍船がどのくらいあるかということでございますが、便宜置籍船と申しましてもいろいろな国がございますが、最も多いのがリベリア、パナマでございますので、この二国の船籍の船を見ますと大体三千八百万重量トンくらい、外国用船の約七〇%がこれらの便宜置籍船でございます。
  386. 柴田睦夫

    柴田(睦)委員 リベリア船あるいはパナマ船などいわゆる日本の便宜置籍船での事故発生率はきわめて高いということが国会でも答弁されているわけですけれども、リベリアやパナマはこの条約を批准しているかどうか、お伺いいたします。
  387. 小林俊二

    ○小林説明員 リベリア、パナマともこの条約をいまだ批准いたしておりません。しかしながら、この条約が採択された会議におきましては、両国ともこれに賛成の票を投じております。
  388. 柴田睦夫

    柴田(睦)委員 この条約にも入っていない状況ですけれども、このリベリア、パナマといった国の災害防止措置あるいは法令の整備状況、これはつかんでいらっしゃいますか。
  389. 小林俊二

    ○小林説明員 国内法の点につきましてはつまびらかにいたしておりませんけれども、リベリア、パナマ両国ともILOの船員関係の条約批准数は比較的多うございまして、リベリアの場合には九本、パナマの場合には二十二本の関係条約をすでに批准いたしております。  国内法の点につきましては、もしできれば運輸省の方から御答弁願いたいと思います。
  390. 豊田実

    ○豊田説明員 国内法令については私ども資料を入手してございません。
  391. 柴田睦夫

    柴田(睦)委員 そこで、OECDやIMCOなどでもこの問題が取り上げられていると聞いております。あるいはILO自体でもやはり論議になっているというように聞いているのですけれども、そういうところでのこの論議の進展状況はどういうことになっているのか、わかればお聞かせ願いたいと思います。
  392. 小林俊二

    ○小林説明員 申すまでもなく、船舶は旗国主義によってその国の国旗を掲げる船籍を有する国の法体制に従うことになりますので、外国船籍の船舶に他国の船員が乗り組む場合にも当然のことながらその船籍国の法律によって規制が行われるわけでございまして、そのことから先生御指摘のような種々の問題点も起こっておるわけでございます。  この問題に関係のあります国際機関といたしましては、OECD、IMCO、ILOといったところが挙げられるわけでございますが、まずOECDにおきましては海上安全、それから海洋汚染防止の観点から、ILO、IMCO等の条約に定められた事項の実施に必要な措置をとるよう勧告がすでに作成されております。またIMCOにおきましては、特に外国船籍の船舶に他国船員が乗り組む場合に限らず、基準に満たない船舶に対する規制をどのようにして強化をしていくかということについて検討が行われております。七五年十一月の総会におきましては、基準を満たしていない船舶に対して監督を強化すべきであるという内容の決議が特に採択されております。またILOにおきましては、一九一九年の設立当時からILO内部に海事担当部門を置きまして、もっぱら船員労働条件の問題を審議し、国際的な労働基準を作成する場として海事総会、予備技術会議等が開催されております。そこで船員労働問題に対する国際労働条約あるいは勧告が数多く採択されてきたわけでございます。また最近の海事総会——海事総会と申しますのは、ILO総会の中で特に船員に関する問題を取り扱う総会でございますが、その総会におきましては、さらに便宜置籍船に関する問題を含む決議もすでに採択されておるわけでございます。
  393. 柴田睦夫

    柴田(睦)委員 リベリアやパナマの国内法の整備状況についてはわからないということであったわけですけれども、一つは、日本がILOの常任理事国になっているということから考えてみましても、こういう問題についてリーダーシップをとっていく必要があると思うわけです。そういう中で今後この便宜置籍船の災害防止というような問題について国際的に対処していかなければならないというように考えております。  そこで事故の発生率が高いと言われておるこうした便宜置籍船、こういうところで日本労働者がどのくらい外国船に乗り組んでいるのか、またそういうところの雇用状況はどういうものであるか、あるいは災害状況、また災害に遭った場合の補償はどうなっているのか、こういう問題をまとめてみる必要があるというように考えます。政府自身がそうした問題について実態をつかんでいないというようなことになれば、今後の対策も立てられないということになるわけでありますが、こうした提案した問題をまとめてみようというようなお考えがあるかどうか、最後にお伺いします。
  394. 高橋英雄

    ○高橋(英)政府委員 外国の船籍であります外国用船等につきまして、日本船員がどのくらい乗り組んでおるかということでございますが、これは私ども正確な数字を把握するのが困難でございますけれども、推測も含めまして千五百人程度は乗っているのではないかなというふうに思いますが、このうち果たして便宜置籍の船に何人かという数字までは正確には把握いたしておりません。  それから、これらの便宜置籍船その他外国用船に乗っております日本人の船員等が災害を受けたかどうかという状況等についても、私ども詳しくは把握いたしておりません。  それから、こういった船に乗る場合の乗り方でございますが、日本の船会社の雇用船員が出向という形で乗っておる場合、それから、失業船員職業安定所を通しましてこういうふうな外国船に乗る場合等、大体大きく分けますと二つのケースがあるわけでございます。今後こういった外国船に乗っております日本船員の実態については、私どもといたしましてもできるだけ把握するように努めたいと思いますし、またこういった船員の保護につきましても、国際条約の場以外にもこういった外国船をチャーターしております日本の船主等を通じまして、日本船員の保護についても行政指導をしてまいりたい、かように考えております。
  395. 柴田睦夫

    柴田(睦)委員 終わります。
  396. 永田亮一

  397. 伊藤公介

    伊藤(公)委員 私は、世界観光機関憲章の細かなことをお尋ねする前に、いろいろと先ほどからわが国の海外渡航と外国のお客さんが日本に来る数が非常にアンバランスであるというお話がございました。わが国の観光というものの管轄をしている省はどこになるわけでございますか。
  398. 杉浦喬也

    ○杉浦説明員 観光なりあるいは観光レクリエーションというような分野で、いろいろな意味で多方面に行政を受け持ち、それぞれ指導しておるわけでございます。関係各省と申しますと非常にたくさんの数がございます。たとえば私どもの方の運輸省としましては、国際観光の問題あるいは旅行業者の指導監督の問題、ホテル、旅館等の問題あるいは通訳案内業の試験の問題というような立場の関係法令があり、また行政指導を行っておるわけでございますが、そのほかに外務省あり厚生省あり環境庁あり文部省あり、あるいはまたそれを総括するという意味におきまして総理府ありというようなぐあいに、非常に多方面にこの観光レクリエーションの問題が分散をされておるわけでございます。そうした意味合いにおきまして、観光問題というのはかなり幅の広い行政対象であるということが言えようかと思います。
  399. 伊藤公介

    伊藤(公)委員 松下幸之助さんなどという、財界人であると同時にかなり見識を持った方が、将来日本は観光立国としてもっと外国のお客さんに日本に来ていただいて、そして日本でもう少し時間を費やしてもらうということに国土を見直していくべきだというような見識のある意見をまとめられている方もいらっしゃいますし、それぞれの世界でそういう意見が非常に最近ふえているようでございます。  私は、外国のお客さんが日本に来る数と日本から外国に出るという数が非常に違うという点、これは非常に大事な問題だと思っておるわけでありますが、昨年の統計の中で、あるいは近年の統計の中で、一度すでに日本に観光の目的で来られた方が再度日本に来られた、つまりたとえば私どもがフランスのパリに行く、そうするとパリという町は春行けばマロニエが非常にきれいに咲いてすばらしい、秋行ってもまたパリの秋はすばらしい、もう一遍あのパリへという観光客は非常に多いわけでございます。私が四年住んでいたベルリンの町も、春三月から十一月ごろまで世界の音楽祭が開かれていて、カラヤンを初め世界的に有名な人たちがタクトを振っている。ベルリンという町に行けばいつでも音楽が聞ける。そうすると、ベルリンに行ってみてあの雰囲気の中で音楽を聞いてすばらしかった、もう一遍ベルリンへ行ってみよう、こういう観光客は非常に多い。これは事実だと思いますね。そこで、日本の国もやはり外国のお客さんが、東洋の非常に珍しいいろいろな情報がある日本に一遍は行ってみよう、そして来たお客さんにもう一度また何年か後に夫婦でそろって来てもらうか、家族で来てもらうか、友達と来てもらう、そういう国であるということが私は非常に大事な問題だと思うのです。ですから、できたらその統計をお尋ねしたいと思っているわけでありますが、昨年あるいは一昨年、一度日本を訪れた観光客の方々の中で二度あるいは三度訪れたという方々は全体のどのくらいのパーセンテージになっているか、おわかりだったらひとつ御説明をいただきたいと思います。
  400. 杉浦喬也

    ○杉浦説明員 数字的に調査をいたしまして何%ぐらい、そういう二度、三度の外客があるかということを実は把握いたしておりません。しかし、日本に参りました外国のお客さんにアンケートで聞いてみたりあるいは外国に行かれました日本のジャーナリストが日本にもう一回来たいかどうかというふうな質問をされたことを私ども聞いたことがございますか、それによりますと、一度日本に来られたお方は異口同音に、全部と言っていいほどもう一度来たいということを言っておられるというふうに聞いております。
  401. 伊藤公介

    伊藤(公)委員 恐らくそのお話は私は事実であろうと思いますし、実態を掌握をしていると思いますけれども、しかし要は現実に二度三度日本の地を踏んでもらっているかどうか、そしてたとえば二度三度四度、来るたびに日本というものに深い認識を持って、さらに日本の国に愛着を持ってもらっているかどうかという実態を正確に掌握をするということが、私は、正しい、これから日本が観光立国としてやっていく場合には非常に大事な問題だと思っているのです。実はむしろその中に、日本に一遍来たあるいは回数を重ねるごとに日本に対してかなり失望をしている人たちが多い。私は海外に五年ほど生活をしていて、その期間に、日本に行ってきたよ、こういう人たちの話をずいぶん伺いました。しかし、行ってみたけれども話に聞いていたほどではない。つまり、いろいろな話で、日本はいい国です。こうまず外交辞令で言いますけれども、実際には日本の川はどこを見てももう死にかけている。山を見ても、この山はといって山に行けばコカコーラのかんや何かがあっちこっちに散在をしている。行った先々では初めて会った日本の接待をしてくれた方は二日、三日、一週間はいいけれども、そのうちにはみんなめんどうになってほうり出されてしまう。語学も通じない。あるいは夜の町に出ても、そこには本当に日本の伝統的な文化というものをお客さんに親しんでもらうという配慮が必ずしも行き届いていない、飲みに行ってもお金だけとられて心配なところしかない。いろいろな角度から、私は先ほどとっぴなことをお尋ねしましたけれども、国際的にわが国がこれから観光立国として伸びていく場合に、観光という、そうした問題をどこで管轄をしていくか。これはもちろん自然の問題もありましょうし、それぞれのいろいろな省庁にまたがる問題でありますけれども、観光庁あるいはそういうものを総括して管轄するような省庁も、これからわが国が本当に観光を大事に考えるなら、あるいは国際的な社会で日本の立場をもっと大事にしていくという意味から言えば、機関のあるいは制度上の統合、きちっとした制度化をしていくことも必要ではないのかというふうに私は考えたから御質問したわけであります。政務次官、せっかくお座りでございますからどのようなお考えを持っていらっしゃるか。観光で国を立てよう、自然もある、伝統もある、歴史もある、文化もある、しかも日本人は比較的いろいろなものに対して美的な感覚も持っている民族だという意味から言えば、観光という面が占めるこれからの役割りは非常に大きい。しかしそういうことでいままでのわが国の政治全般を見てくると欠けていた点がずいぶんあると思いますけれども、この辺で観光庁、いまいろいろ行政改革をするという時期にこういう提案がいいかどうかわかりませんけれども、あるいは連絡機関みたいなものをつくられて立ち向かっていくということが必要ではないかと思いますが、いかがですか。
  402. 愛野興一郎

    ○愛野政府委員 卓越した御意見をお聞かせいただきましてなかなか答弁にならぬかと思いますが、松下幸之助先生の本は私読んだわけではありませんが、いずれにいたしましても、観光というものは、自然と観光、産業と観光あるいはまた民族の歴史、文化、伝統と観光あるいは風俗と結びついた観光、こういったものをもっともっと観光立国の基本にすべきであるという御意見であろうと思うわけであります。そういった意味でまいりますと、まさに先生がお述べになった御意見も最も大事なことであると考えます。しかしながら、それだけ広範囲にわたっておるとすれば、今度は行政的にその省庁を一つにまとめて観光省というようなものをつくるということになりますと、行政管理庁とかあるいはまた大蔵省とかという問題も出てまいってくるわけでありましょうから、ともかく観光立国としての基本をまず形成すべく、各省庁の連絡機構等をつくりまして検討することは必要ではなかろうかというふうに、これはあくまで私見でありますが、思っておる次第でございます。
  403. 伊藤公介

    伊藤(公)委員 一度日本に訪れた方々がどのような印象を持っているか、あるいは観光として来た方々がもう一度日本の国を訪れておられるかどうかというような実態調査をしていただきたいと思いますし、いままでのデータの中でそうしたものが出せる面もあると思いますから、そうしたものは後日ぜひ資料をいただきたいと思いますけれども、いかがでございますか。
  404. 杉浦喬也

    ○杉浦説明員 日本に来られた方、外人に対するアンケート調査といいますかモニター、そうしたものを国際観光振興会で実行しておる点がございますので、そうした内容につきましてお出しできます資料かどうか検討させていただきまして、先生のところにお持ちしたいと思います。
  405. 伊藤公介

    伊藤(公)委員 それから、先ほどちょっと御答弁がありましたけれども、観光政策審議会でございますか、これは恐らくこれからの日本の観光をどうするかというようなことを審議されているところだと思いますけれども、このメンバーはどういうメンバーでございましょう。構成メンバーをお知らせください。
  406. 杉浦喬也

    ○杉浦説明員 観光基本法に観光政策審議会の規定が出ております。構成員は現在の人数で二十七名でございまして、内閣総理大臣の諮問機関としまして、総理府に設置をされております。この委員の方々は、観光に関する学識経験者といたしまして、たとえば国際観光振興会の会長、日本観光協会の理事長、日本旅行業会の会長、ホテル協会の会長、国際観光旅館連盟の会長、こういうように、観光業そのものについての協会の代表というようなお方が入っております。そのほかに一般的な学識経験者といたしまして、作家の方とかあるいは大学の先生、県知事さん、国鉄、日本道路公団の副総裁、あるいは商工会議所の副会頭というようないろいろな立場からする観光に関連する学識経験者というふうな方々をもって構成されておるわけでございます。
  407. 伊藤公介

    伊藤(公)委員 よくいろいろな問題で審議会が設けられておりますけれども、どうも私は、審議会というものが本当に現場の生の声を反映していないという場面がずいぶん多いような気がしますね。いまいろいろとお話を聞きますと、学識経験者、大体学者と役人さんというのは本当に現場の声が届いていない。私の兄貴も学者ですけれども、学者の言っていることは大体机の上で考えていることで、生の意見があんまり体に触れていない。もう少し名もなくてもいいから具体的にそういう方々の声を聞くという審議会に、これはもう審議会という審議会はみんなそういうことが言えると思いますけれども、特に観光の問題は外国のお客さんなり日本を訪れた方々が体で感じて日本というものを感覚的にとらえて帰る。理屈で日本がいいとか悪いとかということを考えて日本はよかったと言う人はないわけですから、歩いてみたり物を食べたり物を見たりしながら、日本という国はすばらしい国だ、あるいは伝統的な文化を非常に大事にする国だ、——文化庁の予算を見れば〇・何%、千分の一予算なんというくらいですから、外国のそれぞれの国からすれば日本文化なんというものは、予算だけでわかるわけではありませんが、予算一つ見ても千分の一文化だということですから、そういう意味でひとつ審議会そのものももっと生の声が審議会の中に反映できるように、構成メンバーの点でも十分検討して進めていただきたいと思うわけであります。  そこで、先ほどもお話しになりました、わが国をこれから観光立国として進めていくのに、技術援助、それから海外旅行をする場合の安全、マナーの問題、それからホテルとか国際会議場の問題等三つの点が挙げられました。具体的に技術援助とは一体どのような技術援助が好ましいとお考えになっているのか、あるいは安全、マナーの問題、ホテル、国際会議場の現状についてどのような状況なのか、ひとつ御見識をまず伺っておきたいと思います。
  408. 杉浦喬也

    ○杉浦説明員 技術援助の実態につきましては、先ほども申し上げましたが、研修員の受け入れという点で国際協力事業団からのお金によりまして、主として東南アジアでございますが、その他アフリカ、中南米等も参りますが、観光に関する各般の技術に関する研修あるいはホテル等の研修というような研修員の受け入れという形でいままでもやっております。今後も恐らく、特に東南アジア各国からは日本に向けまして観光に関する各種のノーハウにつきまして勉強したいという方々がかなり出てくるのではないかということでございまして、これらにつきましてはどんなに大量でありましても、わが国も十分受け入れまして研修をしてあげたいという点が第一点でございます。  それから逆に、日本から観光の技術開発といいますか、たとえばホテルの建設に当たりましての立地条件、ホテルのレイアウトというような直接的な観光開発、あるいは観光開発の中に占めます観光施設、そうした面での調査依頼というものもかなりふえてくるのではないか。いままでもタイのパタヤ地区とかあるいはインドネシアのスマトラ地区におきまして観光開発計画のマスタープランをつくっておりますが、今後もそうしたような技術開発計画というような点についての希望がたくさん出るのではないか。こうした点につきましても、十分これに対応をしていかなくてはいけない。  その他、今度は逆に日本から外国へ参ります場合の日本人の安全問題、あるいは日本人のマナーの問題、こうした点につきまして従来も主として旅行業者を通じまして指導を強めておるところでございますが、さらにもっとこれを徹底するためにいかなる方策が立てられるべきであるかということを、もう一回この時点で考えてみたい。  それから、第三番目としまして申し上げました外客誘致の一環としまして国際会議場の建設の問題を考えたい。これはまだ私ども私見でございますが、現在は国際会議場として国有でありますものは日本で一カ所、京都の国際会議場でございます。これもかなり有効に使われておりますが、やはり何といいましても東京の地区に国際会議場がない。これは東京でやる場合はホテルの会議場を使って実施しておりますが、もっと規模の大きいものになりますと、なかなかこの受け入れがむずかしいという点もございます。何とか東京地区に国際会議場が必要ではないかというふうに思っておるわけでございますが、こうした点につきましても今後十分に検討を進める必要があるのではないか。  以上のような諸点につきまして、なかなか私ども知恵を出さなければいかぬわけでございますが、今後観光政策審議会の場におきまして具体的に方向づけをお願いしたいと考えておるわけでございます。
  409. 伊藤公介

    伊藤(公)委員 観光の問題で非常に問題になるのは、お客さんの案内をしてくれる方、あるいは外国のお客さんであれば特に通訳の方ですね。こういう方々がどんな働きをしてくれるかということが非常に大きな役割りを果たすと思うのです。われわれも外国にいろいろな機会に行かしていただいても、現地を案内していただく方の感じでずいぶんその印象が違うわけでございます。それぞれがビジネスでみんなやっているわけでありますけれども、やはりそうした方々に対する適切な指導というものは非常に大事だと私は思うわけでありますが、通訳案内業の試験の合格者がいるわけですね。いま六千人を超えると伺っていますけれども、語学別に見まして、日本に来るお客さんが比較的多い国に対して、やはりそうした方たちへの語学をもって案内するという方が非常に多いだろうと思いますけれども、その語学別にはどんな実態になっているかをお伺い申し上げたいと思います。  それから旅行ガイドをしていただく方たちがいるわけでありますが、旅行ガイドの就業状況ですね。なかなか専門にできない、せっかくそういう資格を持っていてもなかなかそういうチャンスがないという方々も非常におられるようでありますけれども、そういう状況は一体どうなっているか。  また、これは実態調査をしないとなかなかわからないと思いますけれども、こうしたガイドあるいは通訳の方々に対する外国のお客さんの評価はどんなような評価になっているのか。  また、このガイドの方々に対するどのような指示をされているのか。やはり、かなりいろいろな経験を持ったり、人格的にもすぐれた方でないと、接客、お客様相手でありますから、なかなか好印象を持っていただくというわけにはいかないと思いますが、そうした方々に対する指導はどのようになっているのかといったことを、まとめてお尋ねをしたいと思います。
  410. 杉浦喬也

    ○杉浦説明員 まず、ガイドの数でございますが、今日までガイド試験に合格をいたしました合格者の総数は六千七百二十三名になっております。  これを語学別に見ますと、英語のガイドが圧倒的に多くございまして、五千七百十七名でございます。そのほかフランス語、スペイン語、 ドイツ語、中国語、イタリア語、ポルトガル語、ロシア語がございますが、百名ないし二百名というような数でございます。  この合格者のうちで、現実に通訳案内業として県知事の就業免許を受けております者は総計千八百三十五名になっております。現実にお仕事に使われる資格を持つのは千八百三十五名でございますが、先生もいまおっしゃいましたように、なかなか通訳案内業者の商売上の需要というものが季節的にバランスがとれておりません。来訪、来客に対応いたしますると、暇なときと忙しいときが非常にアンバランスであるというような事情等もございまして、年間を通じて安定した就業がむずかしいという難点がございます。詳しく実態調査をしておりませんが、どうもこの千八百三十五名のうちの半分くらいは、通訳を副業でしかできないというようなのが実情のようでございます。  この通訳案内業に対しまして、実際にその案内を受けました外人さんがどんな印象を受けたかという点でございますが、ガイドさんの協会ができておりますが、日本観光通訳協会という協会で調べたところによりますると、自分の国に帰りまして、いろいろな手紙が参っておるようでございます。手前みそになるような感じでございますが、非常にたくさん感謝状が届いておるということでございまして、中には外人客から、非常に気に入ったから本国へ来いというような招聘を受けた人もあるようでございます。ただ、別なアンケート調査等によりますと、中には英語といいますか、語学というものが非常に下手くそであって、案内も不手際であるというような意味での苦情といいますか、印象を持たれた場合もあるということでございますが、概して言いますれば、わりかし評判は悪くないというふうに言っていいかと思います。  こうしたガイドさんが外人に接することによりまして、日本の印象は非常によくなるか、悪くなるかという大事な商売でもございますので、私どもの方といたしましては、通訳案内業者につきまして、この協会を通じて、十分にりっぱなガイドさんになるようにということで指導を続けておるところでございまして、協会でも定期的に研修などを行って、技能、人格等の向上に資しておるというのが実情でございます。
  411. 伊藤公介

    伊藤(公)委員 最後に、具体的なあれですけれども第二十二条ですね。事務局長の手続が記されておりますけれども、現在の事務局長はどんな経緯で任命をされたのか、また、これは四年の任期をもって任命されるとあるわけでありますけれども、三選もできるのかどうか。  それから、こうした国際機構に日本の方たちが働けるという場面を積極的につくっていくべきだと思いますけれども、事務局職員としてわが国からも送り込むというお考えを持っているのかどうか。  それから、いろいろな国際機関があるわけでありますけれども、分担金を滞納すると、構成員としての権利の行使や特権を停止されるケースがあるわけでありますが、このWTOではどのようになっているのかお尋ねをいたします。
  412. 小林俊二

    ○小林説明員 お答えいたします。  まず事務局長の件でございますか、現在のWTOの事務局長はフランス人、ロべール・ロナティーという人であります。この人はWTOの前身であります公的旅行機関国際同盟、IUOTOの事務局長であった人であります。この人が一九七五年五月の第一回のWTO総会において、先ほどの規定に基づきまして四年の任期でWTOの初代の事務局長に任命されたものでございます。再任可能という規定になっておりますので、三選も可能なのではないかと解釈いたしております。  また、WTO事務局の職員でございますが、予算の定員は九十二名でございます。現在のところ職員数は八十三名でございます。二十八カ国からの国民によって構成されているということでございます。  実は、この機関に日本からも事務局職員を送るべきではないかという御意見は、本件が参議院の外務委員会におきまして討議された際にも指摘ございまして、その結果、私どもでは直ちにマドリードの在スペインわが大使館に訓令を出しまして、この事務局へ日本人職員を送り込むための打診をさせておるところでございます。その結果、もし可能であればぜひとも有能な事務局員を送り込みたいというふうに考えております。  それから分担金でございますが、構成国が分担金の支払いを二年分以上延滞した場合には、財政規則に基づきまして、総会及び理事会における投票権の行使、それからWTOからの情報、資料の入手等のサービスを受ける権利が失われるということになっております。
  413. 伊藤公介

    伊藤(公)委員 お約束の時間を超えておりますけれども、ILO条約について一、二点だけお尋ねしておきたいと思います。  まずILOの条約で、特に船舶について非常に関係の深いリベリアあるいはパナマですね、これが現実には加盟を、私はしてないと思いますけれども、これはどういうわけなのか、それから、これは加盟するかどうか。非常に重要な国でありますから、見通しについてまずお尋ねをしたいと思います。
  414. 小林俊二

    ○小林説明員 リベリア、パナマともこの百三十四号条約は批准をいたしておりません。その批准をしていない理由は、また批准の予定につきましては、必ずしもわが国といたしまして明らかにいたしておりませんけれども、両国ともこの条約の採択に当たりまして、海事総会におきます採択に当たりましては政府代表、使用者代表、労働者代表のいずれもが賛成票を投じております。また一方、リベリア、パナマ両国ともILOの船員関係の条約の批准はかなり積極的にいたしておりまして、先ほどもお答え申しましたように、リベリアは九本、パナマは二十二本の関係条約を批准いたしております。こうした状況から判断いたしますと、両国とも近い将来にこの百三十四号条約も批准することも期待できるのではないかと考えております。
  415. 伊藤公介

    伊藤(公)委員 最後に、三点まとめてお尋ねを申し上げます。  まず、わが国船員数ですね、いろいろな船があるわけでありますが、外航船員、内航船員、漁船員、この船員数は現在どのくらいになっているのか。  それから、海運業界の非常な不況、あるいは世界的な漁業規制によって漁業が非常な不振に陥っている。船員の求人数は非常に減っているわけでありますけれども、その実態、それから失業数の現状はどのようになっているのか、その対策はどうするのか。  それから、海運界の不況によって商船大学、商船高等専門学校を新規に卒業をした方々の就職状況がどうも芳しくないという声を聞いておりますけれども、その状況はどうなっているのか。船員として教育を受けて、ぜひその道に進んでいきたい、船に乗ることだけにいま夢を抱いてその道に進んでいる人たちが実際に船に乗れないということは、こうした学生の人たちにとっても一生の問題でありますから、非常に大きな問題だと思いますけれども、こうした対策についてはどのように考えているのか。この三点についてお尋ねをして、私の質問を終わります。
  416. 高橋英雄

    ○高橋(英)政府委員 初めに船員の数でございますけれども、現在日本船員数は約二十七万名程度でございます。このうち外航船に乗っておる船員が大体五万名程度、内航船に乗っておる船員が約七万名、合わせて十二万から十三万名くらいになるわけでございますが、そのほかに漁船船員がこれも十二万名余でございます。あと残りは大体官公庁船とその他ということでございます。  それから最近の船員の求職、船員に対する求人状況でございますが、これは先生御指摘のように、漁業については二百海里問題があり、海運業については最近の不振というふうなことを反映いたしまして、求人数は減っておるわけでございます。ちなみに数字を申し上げますと、数年前までは新規の求人数が年間で七万人ないしは八万人くらいございましたが、最近では二万人から三万人というふうなことでございます。こういうふうに求人が少なくなり、そして一方失業者がふえてくるということで、失業者の数につきましては、私どもの船員職業安定所で把握しておる数字としては、毎月求職の申し込みをしたけれども就職できなかったという残の数が、大体七千人ないし八千人程度というふうな状況でございます。  こういった状況に対処するためには、基本的には産業政策と申しますか、漁業におきましては新しい漁業を開拓していくとか、あるいは海運業におきましては、日本船員の乗ります日本船舶を確保するための新しい海運政策を確立していくことが必要でございますけれども、これはなかなか時間のかかることでございますので、私どもといたしましては当面効果的な対策ということで、先ほど来いろいろとお話が出ております外国船に日本船員をもっと乗せていくべきではないかというふうなことで、外国船に日本人を乗せるという仕事を専門にやる民間の一つの機関として、政府の助成も得て船員雇用促進センターというものが近く設立されることになっております。こういう機関を通しまして、外国用船に日本人の船員をもっと乗せていくということで船員の雇用の拡大を図っていくという対策を当面考えております。  それから、商船大学あるいは商船高専の卒業生の就職の状況でございますが、先ほど来申し上げましたような厳しい雇用情勢を反映しまして、新規の学卒者の海上企業への就職が非常に困難になっておりまして、商船大学の場合には最近は大体三百名程度卒業生があるわけですけれども、秋に卒業生が出るわけですが、一昨年と昨年の卒業生については三百名のうち海上企業へ就職された方は五十名前後というふうな状態になっております。これらにつきましては、無理やり役所がこういう卒業生を海運会社に押し込むというわけにはまいりませんので、日本船主協会等船主の各種の団体を通しまして、われわれとしてもできるだけ学卒者を採用してもらうように働きかけておるところでございます。
  417. 伊藤公介

    伊藤(公)委員 外務省の方から中国問題についての説明があるそうでございますから、これで私の質問を終わります。      ————◇—————
  418. 永田亮一

    永田委員長 この際、外務省中江アジア局長より発言を求められておりますので、これを許します。中江アジア局長。
  419. 中江要介

    ○中江政府委員 このところ問題になっております尖閣諸島周辺における中国漁船による領海侵犯問題につきまして、きょうの昼、在北京日本国大使館から中国外交部に対して申し入れをいたしましたときの状況について第一報が接到いたしましたので、外務委員会御審議中でございますが、発言を許していただきまして御報告させていただきたいと思います。  外務大臣の命によりまして次のとおり申し上げます。  本十四日十一時より約一時間、当館——当館といいますのは、在北京日本国大使館の堂ノ脇公使が、外交部に王暁雲アジア司副司長を往訪、中国漁船領海侵犯問題に関し、海上保安庁報告に基づき、一昨日来発生した事件概要を伝え、尖閣諸島わが国領土であるとの立場を述べるとともに、わが領海内における中国漁船不法操業漂泊行為に対し遺憾の意を表明した。また、中国漁船わが国領海よりの退去、及び再びかかる行為を繰り返さないよう要請した。  これに対し、先方は、尖閣諸島中国領土であるという従来どおりの態度であったが、一昨日来の同地域における漁船操業の事実関係については実態を調査するとのことを述べ、それ以上のことは述べなかった。  以上でございます。
  420. 永田亮一

    永田委員長 本日は、これにて散会いたします。     午後六時四十九分散会      ————◇—————