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1978-04-05 第84回国会 衆議院 外務委員会 第11号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和五十三年四月五日(水曜日)     午前十時五十九分開議  出席委員    委員長 永田 亮一君    理事 大坪健一郎君 理事 奥田 敬和君    理事 土井たか子君 理事 渡部 一郎君       大塚 雄司君    川田 正則君       鯨岡 兵輔君    小坂善太郎君       佐野 嘉吉君    谷  洋一君       玉生 孝久君    中山 正暉君       河上 民雄君    久保  等君       清水  勇君    高沢 寅男君       中川 嘉美君    青山  丘君       正森 成二君    伊藤 公介君       楢崎弥之助君  出席国務大臣         外 務 大 臣 園田  直君  出席政府委員         防衛庁防衛局長 伊藤 圭一君         防衛施設庁長官 亘理  彰君         外務政務次官  愛野興一郎君         外務省アジア局         長       中江 要介君         外務省アメリカ         局長      中島敏次郎君         外務省条約局外         務参事官    村田 良平君         外務省国際連合         局長      大川 美雄君  委員外出席者         運輸省航空局審         議官      富田 長治君         参  考  人         (国際協力事業         団総裁)    法眼 晋作君         外務委員会調査         室長      高杉 幹二君     ――――――――――――― 委員の異動 四月五日  辞任         補欠選任   稲垣 実男君     谷  洋一君   竹内 黎一君     大塚 雄司君   福永 一臣君     玉生 孝久君   美濃 政市君     清水  勇君   佐々木良作君     青山  丘君   松本 善明君     正森 成二君 同日  辞任         補欠選任   大塚 雄司君     竹内 黎一君   谷  洋一君     稲垣 実男君   玉生 孝久君     福永 一臣君   清水  勇君     美濃 政市君   青山  丘君     佐々木良作君   正森 成二君     松本 善明君     ――――――――――――― 四月三日  日ソ漁業協力協定締結促進等に関する請願(  江崎真澄君外一名紹介)(第二七八〇号) は本委員会に付託された。     ――――――――――――― 四月三日  日中平和友好条約即時締結に関する陳情書  (第二三七号)  日ソ平和条約早期締結等に関する陳情書  (第二三八号)  朝鮮の自主的平和統一促進に関する陳情書  (第二  三九号)  国際労働条約第百三十七号の批准等に関する陳  情書  (第二四〇号)  世界連邦創設早期実現に関する陳情書  (第二四一号) は本委員会に参考送付された。     ――――――――――――― 本日の会議に付した案件  国際協力事業団法の一部を改正する法律案(内  閣提出第二〇号)  対外経済協力に関する件  国際情勢に関する件      ――――◇―――――
  2. 永田亮一

    永田委員長 これより会議を開きます。  この際、園田外務大臣より発言を求められております。これを許します。園田外務大臣
  3. 園田直

    園田国務大臣 三月三十一日の閣議において、本大臣から条約国会提出について次のとおり発言いたしましたので、御報告をいたします。  一 先般衆参両院外務委員会において、それぞれ理事会申合せに基づく委員長発言の形で、近年国際関係緊密化を反映して多数の国際条約が作成されており、このため国会提出条約が増加しているとして、これらの条約を速やかに検討、選別の上国会提出すべきである旨の要望政府に対して行われた。  二 近年の国際関係緊密化と各種の国際協力 の進展に伴い、年々多数の国際条約が作成され、その結果、国会提出条約が増加しつつあることは事実である。外務委員会の今回の要望を待つまでもなく、本来政府としても関係条約についての検討を更に促進し、その締結が適当と考えられる条約については、新規の条約及び既に採択済み条約の双方につき、逐次できる限り速やかに国会提出べく努力すべきものと考えられる。もっとも、条約国会提出促進は、もとより、外務省のみの努力によってなし得ることではなく、多くの場合、条約締結のためには特に国内法制整備等の分野で関係省庁の御協力が重要であるので、この点に関してよろしく御願いしたい。以上でございます。(渡部(一)委員委員長、それは、閣議で決まった内容を言わないのはおかしいじゃないですか。閣議報告したというだけじゃないですか。」と呼ぶ)わかりました。  右、報告をして、閣議の了承を得た次第でございます。      ――――◇―――――
  4. 永田亮一

    永田委員長 国際協力事業団法の一部を改正する法律案を議題といたします。  本案に対する質疑は、すでに去る三月三十一日に終了しております。  これより討論に入るのでありますが、別に討論申し出もありませんので、直ちに採決いたします。  本案原案のとおり可決するに賛成諸君起立を求めます。     〔賛成者起立
  5. 永田亮一

    永田委員長 起立多数。よって、本案原案のとおり可決すべきものと決しました。  お諮りいたします。  ただいま議決いたしました本案に関する委員会報告書作成等につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  6. 永田亮一

    永田委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決しました。
  7. 永田亮一

    永田委員長 国際情勢に関する件について調査を進めます。  ただいま委員長の手元に、大坪健一郎君、土井たか子君、渡部一郎君、青山丘君及び伊藤公介君より、対外経済協力に関する件について、本委員会において決議されたいとの動議提出されております。  提出者より趣旨説明を求めます。土井たか子君。
  8. 土井たか子

    土井委員 ただいま提案の件につきまして、提出者を代表いたしまして案文を朗読し、趣旨説明にかえさせていただきます。  朗読いたします。     対外経済協力に関する件(案)   南北問題の解決をめぐり、長期的かつ世界的 視野から経済協力の果すべき役割の重要性が国際的に強調されている情勢であるにもかかわらず、他の先進諸国に比べ、我が国経済協力に対する立ち遅れが際立っている。   かかる現状にかんがみ、政府左記事項につき適切な措置を講ずるとともに、重大な決意をもって対外経済協力推進に努めるべきである。      記  一、恒久平和と国際協調を宣明した我が国憲法の精神に基づき、政府は今後五年間に政府開発援助を倍増以上に拡大するため、中期的展望を明らかにし、当委員会報告するとともに、計画的にその実現努力すること。  一、政府は、我が国対外経済協力基本となる原則の確立に努め、その立案にあたっては次の事項を含み、我が国対外経済協力基本姿勢を明示すること。   (1)経済協力実施に当つては、主権尊重、互恵平等、内政不干渉原則遵守に遺憾なきを期すこと。   (2)経済協力は、協力相手国経済社会の発展と民生の安定、福祉の向上を目的とするものであることに留意し、その実施に当つては、不正の疑惑を招くことのないよう    十分配慮すること。   (3)今後とも軍事的用途に充てられる或いは国際紛争を助長する如き対外経済協力は行わないよう万全の措置を講ずること。  一、政府開発援助実施するに当っての政府関係機関による調査報告並びに政府対外経済協力に関し講じた施策を随時当委員会報告すること。  一、経済協力効率的実施を確保するため、経済協力実施体制の一層の整備改善に努めること。   右決議する。以上でございます。  各位の御賛同をお願い申し上げます。
  9. 永田亮一

    永田委員長 以上で趣旨説明は終わりました。  採決いたします。  本動議賛成諸君起立を求めます。     〔賛成者起立
  10. 永田亮一

    永田委員長 起立総員。よって、本動議のとおり、本委員会決議とすることに決しました。  この際、園田外務大臣より発言を求められておりますので、これを許します。外務大臣
  11. 園田直

    園田国務大臣 先ほどは国際協力事業団法の一部改正法律案の採決をいただき、御礼を申し上げます。  なお、ただいま可決されました御決議につきましては、政府としては、御趣旨を踏まえて対外経済協力推進に適切に対処してまいりたいと存じます。
  12. 永田亮一

    永田委員長 お諮りいたします。  本決議の議長に対する報告及び関係各方面に対する参考送付等の取り扱いにつきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  13. 永田亮一

    永田委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決しました。     ―――――――――――――
  14. 永田亮一

    永田委員長 国際情勢に関する件について質疑申し出がありますので、順次これを許します。中山正暉君。
  15. 中山正暉

    中山(正)委員 きょう、この外務委員会国際情勢に対する一般質疑をさせていただく機会を与えていただきましたことを、委員長並びに委員会皆様方感謝を申し上げまして質問に入りたい、かように存じます。  日夜、日本の外交のために大変御努力を願っております外務大臣にも敬意を表しますとともに、まず質問に入ります前に、きょうはバングラデシュラーマン大統領が来られているということを聞いております。町にも、日本の旗の周りを、グリーンに塗った旗が飾られている意義のある日であるわけでございますが、私は、ハイジャックのときに大変バングラデシュで私ども日本航空の乗員、乗客、もちろん外国の方々も乗っていてくださっているわけでございますが、その方々に対する安全のために御努力を願ったことに心から感謝の意を表したい、かように存ずるのでありますが、実は一つだけ疑問があります。それは、あのバングラデシュハイジャック防止法批准しておられません。そこできょう外務大臣バングラデシュラーマン大統領その他の皆さんにお会いになるわけでございますが、名実ともにわれわれが協力をしていただいたと感謝の念をささげられる形式的なものではありますが、物事は実質ばかりが尊重されるものではなくて、形式というものも尊重されなければいけない、物事はすべて形式から入る、こういうことでございますので、形式として、ハイジャック防止法批准ラーマン大統領にひとつしていただきたい。世界じゅうが批准をしていただくことを私は希望いたしておるわけでございますが、外務大臣ラーマン大統領とお会いになったらそういうことを御発言願うようなことをお願いができますでございましょうか。
  16. 園田直

    園田国務大臣 御発言もっともでございまして、私もさように感じますから、外務大臣同士の話し合い及びその他の会談で御発言趣旨相手と相談したいと存じます。
  17. 中山正暉

    中山(正)委員 それからまた、きょうはもう一つ大変意義のある日なんでございますが、外務大臣、何かお気づきになりますか。
  18. 園田直

    園田国務大臣 これは大変失礼いたしました。蒋介石総統追悼式の日だということでございます。
  19. 中山正暉

    中山(正)委員 ありがとうございます。きょうは自民党からも台北に三回忌の追悼式のためにたくさんの代表団方々が行っておられる日でございますし、私も昨晩、ここにおられる奥田理事そして大坪理事から質問をしないかという御依頼を受けまして、特にきょうは日中問題を中心に、準備が不足でございますが、私の感じておりますところを、外務大臣政治家同士、大物と小物の差はありますが、ひとつ感じておりますことを御質問してみたい、かように思うその日が蒋介石総統の三回忌の日であるということに、またくしき因縁を感じております。  よけいなことでございますが、私は蒋介石総統のこの世界に一枚しかない絶筆を持っておりまして、それは「政を為すに徳を以てすれば、譬えば北辰の其の所に居りて衆星の之を共るが如し」という、北極星というものの周りをいろいろな小さな星がくるくると回るのは、北極星が天の一点にじっとしていて、その周りをくるくると回るのと同じように政治をすれば、政治というものは、徳というものを中心にして政治をすると、くるくると規則正しくうまくいくものだという、論語の中の為政編言葉を私は書いていただいたのでございますが、私のを書いた直後に倒れられたということを伺っておりまして、私、世界で一枚の絶筆を持っておるのでございます。  日本を、いま考えてみましても、福島から以北はソビエトが占領をしたいという申し出があった、中華民国四国を占領することになっておったという有名な話がありますが、日本二つに分断をされるのは困るから、それでは私は四国を取らない、暴に報いるに徳をもってするという有名な言葉がございます。それから天皇制というものを護持されたのも蒋介石総統だと聞いておりますそれから中華民国関係の戦犯は死刑の人まで助かっておられます。いま落選をされておられますが、熊本から出ておられて外務大臣と同じ選挙区の方であったと思いますが、その方も死刑の判決を受けておられたのに国会議員まで務められるというようなことで、日本には大変恩恵といいますか、御配慮をいただいたことがあるわけでございますが、その国と国交も断絶されてしまいました。  そして中華人民共和国という、日本戦争に負けて四年たった国といま国交正常化を図りました。私は大変結構なことだと思っておりますが、実は、なぜ平和友好条約という世界で最初の条約にするのだろうか。私も、友好条約というならばいますぐにでも賛成をしたいと思っておりますが、平和条約という言葉は一体どういう意味なのか。平和友好、この背後に一体どんな意味があるのか。外務大臣はどういうふうに解釈していらっしゃるのか、それを伺ってみたいと思います。
  20. 園田直

    園田国務大臣 蒋介石追悼の日に当たって、終戦のときの日本国民に与えられた前総統の寛恕なる御配慮を私も追悼いたすものでございます。  御質問平和条約友好条約説明については、事務当局から説明させます。
  21. 中江要介

    中江政府委員 まず二つの点から御説明させていただきます。  第一点は、なぜ平和友好条約と言って平和条約を結ぶのかというふうな御趣旨だといたしますと、この条約平和条約ではなくて友好条約であるということでございまして、そのことは端的に、一九七二年九月二十九日の日中共同声明の第八項をごらんいただきますと、「日本国政府及び中華人民共和国政府は、両国間の平和友好関係を強固にし、発展させるため、平和友好条約締結目的として、交渉を行なうことに合意した。」こういうことでございまして、平和条約ということではない、将来の友好関係を発展させるためのものであるということでございます。  それではなぜ平和友好条約と言うのか、先生がおっしゃいますようにただの友好条約でいいじゃないかという御疑問でございますが、これは同じくこの共同声明の前文のところに、「日中両国間には社会制度相違があるにもかかわらず、両国は、平和友好関係を樹立すべきであり、」こういう基本姿勢がございまして、社会制度相違があるにもかかわらず両国が樹立すべき関係平和友好関係であるということでまず基本的な背景の説明がございまして、それから今度は共同声明の第六項のところで、「日本国政府及び中華人民共和国政府は、主権及び領土保全相互尊重相互不可侵内政に対する相互不干渉、平等及び互恵並びに平和共存の諸原則基礎の上に両国間の恒久的な平和友好関係を確立することに合意する。」いわゆる平和五原則を含めます平和諸原則によって両国間に恒久的な平和友好関係を確立する、こういう認識の仕方でございますので、そういう平和友好関係を強固にし、発展させるための平和友好条約であるということでございましたので、この共同声明が出されましたときからこの条約の名称として平和友好条約という名前認識されており、その内容は、先ほど第一点で申し上げましたように、これからの両国関係であって、日中間の過去の清算はこの共同声明で終了したという認識であったわけでございます。  他方、平和友好条約という名前条約世界で初めてかと申しますと、私どもの調べました例では、トルコとヨルダンの間、インドとネパールの間、イラクとスペインの間、イギリスとネパールの間、中国ネパールの間、そういういま申し上げましたような国の間では平和友好条約という名前条約が結ばれておりまして、これはいわゆる戦争処理平和条約というものではなくて、先生がおっしゃいました友好条約的なものというもので、こういう条約も先例としてはないわけではない、こういうことでございます。
  22. 中山正暉

    中山(正)委員 私、また、共同コミュニケに書いてあるとおりにとおっしゃったから、友好条約とでも書いてあるのかと思って楽しみにして見ましたら、これにも平和友好条約と書いてあるわけでございます。では、いま伺いましたが、なぜこれは日本人にわかるように友好とだけ書いていただけなかったかということでございますが、特に日本人同文同種中国とは同じ漢字を書いて、そして縦に書いたり横に書いたりして読むからと言いますが、これは大変認識が違うわけでございます。たとえばアメリカのことを言うときでも、日本は米国と言いますし、中国韓国は美国と書きます。これは全く違うわけでございます。それからもっと端的な例を申し上げますれば、きのう自民党議員総会でも私は言ったのですが、本日大売り出し日本人がデパートの前なんかに書いたとしますと、これは日本人が読むときょうは大売り出しをする日ですということになりますが、連中は右から読みますから、出売大日本日本国売り出したと書いたことになるわけです。そして、大変恐縮な例でございますが、日本では、お店の前に出前迅速、出前を注文したらすぐおすしなり何なりが毎度ありがとうという声と同時に来る、そういうことが出前迅速でございますが、中国人が出前迅速というと、これは大変下品な話になる。前を出すのがいかに速いかということになるわけです。それから、盗難予防と書きますと、これは盗みは予防しがたしということになる。よく戦争中に日本の憲兵が蒋介石没落と書いた。そうすると、中国人が読むと蒋介石はいまだ元気でおるということになるのだそうです。そのぐらいの差がある。特に向こうの人は言葉というものに非常にこだわります。  平和というのは、実はわれわれの感覚では敵と味方がいて、そして両方がけんかをせずに仲よくする状態が平和な状態ということでございますが、彼らが言う平和というのは、全世界社会主義的革命が行われて、共産主義化して地球が真っ赤になったときにそれは平和な状態であって、一人でも自分たちの思想と違う人が地球上に存在する間は、それは平和のための戦いをしておるわけです。戦争についてもそうでございます。  外務大臣戦争という言葉をどういうふうに解釈していらっしゃいますか。
  23. 園田直

    園田国務大臣 紛争を力をもって解決せんとする手段がいままで戦争だと言われておったと存じます。
  24. 中山正暉

    中山(正)委員 実は、毛沢東語録戦争ということについて書いてあります。これは読んでいると時間がかかりますから簡単に言いますと、戦争には二つの形がある。それは、共産主義が広まっていく戦い正義戦争であって、そしてそれを邪魔する戦争は不正義戦争である。われわれは不正義戦争には積極的に反対をするけれども正義戦争には反対をしない。成田闘争連中がここに反戦と書いてあるのは、あれは自分たち火災びんを投げ、お巡りさんを殺しながら戦っているのですが、彼らに言わせれば平和のための戦いをやっているわけでございまして、それは言葉大変認識が違う。  外務大臣、いかがでございましょう。私も賛成をいたしますから、友好条約というのにいまから字句を訂正をするようなお考えはございませんでしょうか。
  25. 園田直

    園田国務大臣 中国日本言葉相違は御指摘のとおりだと存じますけれども、話をする場合には、中国語日本語に翻訳し、中国日本言葉中国語に翻訳して話しておるわけでありますから、平和友好条約はいささかも両国関係に悪い影響があるものとは考えておりません。
  26. 中山正暉

    中山(正)委員 私の認識では、平和条約というのは戦争を終わらせるための条約であり、過去を終わらせるもの、それに対して友好条約というのはいまから将来に続くものということだと解釈をいたしております。  それでは外務大臣、これから中国へいずれ行かれるということでございます。交渉再開自民党の中で結論が出されたら中国に行くと言っておられるわけでございますし、きのうも総理大臣官房長官外務大臣とが御協議あそばした。どういうことを御相談あそばしたのか。それからまた外務大臣がいつも、おれは中国へ行っても言いたいことを言ってくるぞと、こうおっしゃいます。中国へ行かれて言いたいことを言おうという、その言いたいことの内容をおっしゃっていただきたい。
  27. 園田直

    園田国務大臣 きのうの総理の話は、久しぶりでございますから一緒に食事をしようということで、万般についての雑談をした程度で、日中問題について特別の協議はいたしませんでした。  私が中国に行く、行かぬは、交渉再開ということになって、その機を見て、総理から御指示があれば行くことになるわけでありまして、前もってそういうことを言うのは不穏当でございますけれども、行ったら言いたいことを言うというのは、行ったら、正しいこと、日本人々の不安に思っていること、主張すべきことは全部発言をする、こういう趣旨でございます。
  28. 中山正暉

    中山(正)委員 重ねてお伺いをいたします。  正しいことという御認識内容、それから日本国民が不安に思っているという言葉内容を御説明願いたいと思います。
  29. 園田直

    園田国務大臣 正しいこととは、日本中国平和友好条約締結することによって真にアジアの平和が樹立をされ、真にアジアの繁栄の基礎となるかどうかということにかかわる問題であります。日本の一部の人々あるいは大部分が不安に思っておることはいろいろあると存じます。たとえば中ソ同盟条約はどうなるのか、あるいは中国は真に平和を考えておるのか、そういうことだと存じます。
  30. 中山正暉

    中山(正)委員 田中内閣のときに、中国へ行かれて、過去に大変悪いことをしましたという、御迷惑をかけましたではいけないということで、そのときも言葉でいろいろ細かい争いがあったということを伺っておりますが、過去百年の間で、日本人中国人とどっちが先に虐殺事件を起こしたとお思いでございましょう。
  31. 園田直

    園田国務大臣 歴史を振り返ればいろいろいやなことがあるわけでありますが、いまこの段階でそういうことを申し上げる必要はなく、これは十分わかっていることだと存じます。
  32. 中山正暉

    中山(正)委員 実は、御承知中国はベトナムについても七百年間あそこの宗主国です。アオザイを着るのは、中国服の下にズボンをはいている姿を見ても、いかにインドネシア半島に対して中国影響が強かったかということです。いま中国をASEANの中でまだ認めていないインドネシアシンガポールインドネシアにも華僑がいっぱいおりますし、それからシンガポールリー・クアンユ総理大臣中国人でございます。その七百年間の宗主国、それからチベット、モンゴル、そういうものが全部ついていた百年くらい前に、アヘン戦争の後に全部それが離れていって、そして一番弱り切っていた中国が押さえていたのは御承知のように朝鮮半島でありました。その朝鮮半島にいる、弱り切った中国の上に強大な勢力が乗っかかってきたのが御承知のようにロシアでございます。そのロシア鴨緑江木材会社とか、鎮海にはそのころロシア人が、あそこに港をよこせと言って朝鮮半島に出てきていた歴史的な建物が、いまでも韓国には存在をいたしておりますが、それを心配されたのが西郷隆盛であることは御承知のとおりでございます。勢いのいい時代でございましたから、征韓論なんという話がありますが、あれは朝鮮半島、韓半島をせめて日本に脅威を与えないために独立をさせたいということであったのでございます。  御承知のようにいまとよく似ておりますのは、清国、ロシアに味方をしていた事大党の閔一派、それから日本側についたのが独立党の金玉均、朴泳孝という有名な方でございますが、そのとき、東学党の反乱とかいろいろなことがありましたが、時間を短くするために、釈迦に説法でございますが、その独立党が反乱を起こした、その反乱を朝鮮半島、韓半島で鎮圧をしたのは清国の軍隊であったことは御承知のとおりでございます。外務省の当時の巖も倉前さんという人が書いておられますが、それから考えてみますと、日中戦争というのは、日本蒋介石と戦ったからこそ毛沢東政権が誕生したのであって、毛沢東に文句を言われるよりもお礼を言われてもしかるべきだ、私はこう思っております。特に毛沢東は戦争中何と言っておったかというと、七割の力を休ませておけ、二割の力で蒋介石と戦え、一割の力で日本軍の邪魔をしろ、こう言っておりました。ですから、昭和二十年の八月九日に日本に原爆が二発落ちた、その直後の日本が弱り切っていたまだ不可侵条約が一年あると思っていたときにソビエト軍が攻め込んできて、百七十万丁の小銃を日本軍から奪って武装解除をして、そして機関銃を一万五千丁と貨車七百両の弾薬とそして八百両の戦車を全部毛沢東に渡したのは、実はソビエト軍であったわけでございます。  特に私は、この間政府からお出しになったこの「日中平和友好条約交渉の経緯」というのを見ると、最後に「国民の毅然たる態度を期待したい。」という後に「この条約は、台湾の地位には全く関係のないものであり、かえってこの条約締結の波及的効果としてその後の日台関係はより安定的なものとして維持継続し得るようになることが期待されよう」、こう書いてございます。  ところが、今度は十三年ぶりに中華人民共和国憲法には、台湾を武力で解放をする、こう書いてある。この台湾の武力解放、これは覇権ではないのでしょうか。
  33. 園田直

    園田国務大臣 いろいろ御指導をいただき、感謝にたえません。参考といたします。  しかし私は、百年前、三十年前、二十年前と過去をほじくってしさいに点検するならば、力と力の中に生きていこうとする過去の時代の出来事を考えると、中国のみならずソビエトもアメリカもイギリスもドイツも、ありとあらゆる国と信用して交際はできぬという結論になるわけであります。いまや時代は変わって、力のあるものは滅びる、力のあるものはみずから穴を掘っていく、こういう時代で、力のない日本がどうやってよその国々と交際をしてこの世の中から戦争をなくし、本当の平和の世界を築くか、こういう時代だと考えておりますので、やはり日本は未来を考えてやっていくべきことであって、参考にはしますが、過去を一々ほじくってどうだからこうだということは私としては考えていないところでございます。
  34. 中山正暉

    中山(正)委員 実はそれは大変なことなんですね。私が言っていますのは、私も外務大臣も自由民主党員でございます。いまのところ二議席の違いがあって、まだわが政党が政府をとっておりますときに、自由主義政治をしている台湾を捨てて、共産主義の国とつながって、そしてそれが日本の将来のために過去は振り返らないのだとおっしゃることに私は全く反対でございます。  特に、過去を振り返るなとおっしゃいましたが、幕府なんかの精神は全部「吾妻鏡」とか「増鏡」とかなっています。昔、鏡と言ったのはどういうことかというと、歴史は繰り返す、破局の原理というのがあって、破局の原理というのは、歴史というものは繰り返すということを言っているわけでございます。社会力がなくなって、軍事力がなくなって、経済力、いまの日本とよく似ていますが、この三つがなくなると必ず世の中というのはひっくり返る。だから自由民主党の外務大臣と私が対立をして、不破哲三さんと一緒にリンチを受けられた高沢先生がそうだそうだとおっしゃるところに日本の不思議さがあるわけでございます。  私の持っております中華人民共和国日本解放工作秘密指令書というのがここにあります。これにこう書いてございます。「台湾の「武力解放」」一番最後がそれなんです。今度の憲法に書かれたとおり。これは七年くらい前に香港から入手して、日本にいま千八百人ぐらい向こうの工作員が入っているということでございます。  たとえて言えば、これは実際の話でございます。私はお帰りになった方から話を聞いたので実際に申し上げますと、満州にいた昭和二十年の六月に満蒙開拓団の花嫁になって、この間帰ってきた人に私はお目にかかりました。その方が何とおっしゃったかというと、私の子供は向こうで中国人の教師をしております。ところが、その子供とさようなら、日本へ帰ってまたおみやげを持って帰ってきますからねと言いながら日本へ帰ってみて、これはちょうど土井たか子先生の地元でございますが、尼崎の区役所へ行って戸籍謄本を取ったら、満州にいるそのせがれがもうとっくに日本に帰ってきていて、それも行方不明になっている、こういうわけであります。  そんな連中を含めて千八百人くらいいま中国の工作員が入っている、こういうことを聞くわけでございますが、ここにこう書いている。「台湾の解放は、最終的には武力戦の行使、又は少なくとも、武力解放戦の準備完了と言う背景が必要である。なぜならば、これは、一国内の人民解放戦であるからだ。思想、政治戦は、蒋一派を孤立せしめ、その戦力を弱める効果は生むが、武力行使なくして蒋一派を屈服せしめ得るとするのは、敵を知らざるものである。国家権力を手中にしている独裁者は、ただ武力によってのみ打倒されるのであり、しかも最後には、外国への亡命と言う保身で、屈服を拒否するものである。我が党は、もとより、台湾解放に十分なる武力をすでに保有している。だが、戦いを急ぐ必要はない。三、五年を出ずして、我が党による日本解放が実現するとすれば、そのあかつきには、日本国現有の一切の戦争工具」つまり自衛隊でございます。だから北京が自衛隊を認めてもいい、三岡健二郎さんとも私この間やり合いましたが、ああいう自衛隊の幹部をどんどん呼び始めると、公明党が変わりました。これは戦争工具として、いまや自民党の政権のもとでの自衛隊ではなしに、ほかの政治思想による自衛隊に変革がなされつつあることは現時点でもう見えております。野党連合政権をつくろうという佐々木さんが、今度はおかしなことに、もっと防衛はやろう、こう言い出しました。それに対して、民社党向こうへ行けと言うはずなんですが、どうもそうもなっておりません。戦わずして「日本国現有の一切の戦争工具」まるで道路工事のような工具という字を書いてありますが、「及びその製造能力は、あげて我が国の使用に供せられ、戦わずして蒋一派をして海外逃亡のほか道なしと自認せしめるに足る、圧倒的な戦力の差が生じるからである。日本解放の第四の意義は、ここにある。」こう書いてある。外務大臣、その国との交渉に行かれるわけであります。  そこで日米関係はどうでございますか。いつも外務大臣は日米関係を基軸とするとおっしゃいますが、いまから一遍おさらいをしてみます。  ニクソンが頭の上を越えてキッシンジャーが北京へ入ったときにはどんな事情だったのですか。ニクソンがアメリカから中国へ入るその前に、パキスタンから入ったキッシンジャーは、手にしたアタッシ・ケースに爆薬まで詰めて、もぎ取られたら爆発するようにしてあったと言われます。それほどの元スパイ、キッシンジャー博士が北京に入られるときには、日本政府に三分前に通告があったということを聞いております。これは事実ですか。
  35. 園田直

    園田国務大臣 その事実は私は承知しておりません。おりませんが、私は、日本中国との関係を放置しておくならば米国の方が先に中国と交際を始めるということは、しばしば論文を発表し、あるいは党内でも意見を発表したところでございますから、アメリカが頭越しに中国と話をしたときに、私は当然だと思っておりました。
  36. 中山正暉

    中山(正)委員 局長はどうですか。そのときの事情を御存じありませんか。
  37. 中江要介

    中江政府委員 いま先生が言われましたように、三分間であったかどうかについては私つまびらかにいたしませんけれども、非常に短い事前の通報であったということは私も承知しております。
  38. 中山正暉

    中山(正)委員 外務省はうそをついているんですね。  ここにブレジンスキーの「ひよわな花・日本」という本があります。本当はブレジンスキーはどんな方ですかと外務省に聞きたいのですが、もう時間がありません。ブレジンスキーは、十八年前にポーランド人の外交官の息子であったのが、いまはアメリカ大統領特別補佐官でございます。いまのカーターという、日本で言えばどこか地方の知事みたいな人が突然大統領に出されたわけでございます。これは、チェース・マンハッタン銀行のデビッド・ロックフェラーとロンドンのホテルで昼飯を一緒に食いながら、おまえ大統領に出たらどうだということで紹介をしたのがこのブレジンスキーでございます。それがいま、カーター大統領は、ショージアマフィアばかり連れて大統領をやっておりますが、正統派の補佐官はブレジンスキー一人でございます。このズビグネフ・ブレジンスキーが七年前に日本に来て言っておりますことは、「一九七一年夏、ニクソン大統領が対中国接近のイニシアチブをとるに当たって、これを予告もせず、秘密裡に進めたことは、日本のエリート上層部の不満をいっそうつよめる結果になった。ことに、それに先立つ六カ月間にわたって、アメリカは北京への接近をめぐって日米間に競争はありえないと保証し、日米両国の対中国政策の調整を呼びかけていた」、そしてその次が大変なんです。「これに関する日米間の高水準の協議は実際に行なわれた」こう書いてあるのです。大統領の補佐官が日本にはちゃんと相談してあったと書いてあるのです。いかがでございますか。これは、ブレジンスキーという大統領の補佐官がうそをついているのか、日本外務省がうそをついているのか、どっちですか。
  39. 中江要介

    中江政府委員 先ほどの御質問は、事前通告がいつであったかという御質問でありましたので、私はそういうふうにお答えしたのでございますが、米中接近について日米間で高度の相談があったかどうかという点については私承知しておりません。
  40. 中山正暉

    中山(正)委員 どうも私はこの本を読んで、ああ、うそをつかれたな、二度とはだまされないという気になっておるわけでございます。外務大臣はよく、アメリカより先に行くんだ、こうおっしゃっていますが、いかがでございましょう。アメリカが先に行ったのに何でアメリカが結ぶのを待たないか。待たずに行ったらアメリカとの関係はどうなると御想像されますか。
  41. 園田直

    園田国務大臣 アメリカよりも先にやるんだということを私がどこかで発言した事実がございましょうか。(中山(正)委員「外交調査会で。もたもたしておるからかえって先に行かなければいけない……」と呼ぶ)私は、そういう発言をした覚えはございませんけれども、仮に何かあったとしても、私は、日中の問題はアメリカより先だとか後だとか、他国の関係ではなくて、日本の自主的な判断によって中国との話し合いでやるべきことだ、こう考えております。
  42. 中山正暉

    中山(正)委員 実はこのいまカーターの相談相手がこう書いております。「具体的な障害があるにしても、中国との接近という方向は大多数の日本人にとって、心情的にも魅力のある道だといえるだろう。」しかし「中国問題は、また別なかたちで日米を突如として分断させる可能性がある。」日中をやったらアメリカと切れると書いてある。私が日中条約の後に来るものを予測しているのは何かと言えば、防衛庁、私はアジア集団安全保障条約というものに入ってくると思うのです。そのころに日本政治が変わっていきます。このブレジンスキーも後で予測しております。日本自民党がつぶれるだろうと書いております。「今後五年間に、劇的な左旋回が起こる見通しはないが、左翼はその力を増し、日本政局における強大な勢力となるだろう。」「自民党は左翼の内政プログラムを導入するように努めるだろう」、確かにそのとおりで、いまもう大阪とか東京は知事さえも出るとか出ないとかややこしいことを言っておりまして、大政翼賛会は日本にできつつあります。京都だけは特異な立場でいま選挙をしておりますが、地方において特に大政翼賛会はできつつあります。「同党自体は団結力を弱め、連合体制に頼るほかはなくなるだろう。」だから公明党が自衛問題で変わってきたんですね。そしてそこへ総理大臣が、はるかに敬意を表すなんて言っている。いまごろいいかげんなことを言うなといって電報を打たなければいけないんです。そういうときは。「こうして、日本の政局は、安泰にサヨナラを告げる。その代りに、政権をにぎる指導部内で、勢力再編成が頻繁にくりかえされ、ある程度の、政治的混乱さえ起こるであろう。」そして「中国は今後とも、日本にとって格別魅力ある対象としての地位を持ちつづけ、日米関係の劇的な決裂が生じた場合、少なくとも心情的に魅力ある脱路を提供するだろう。同時に、中国は今後とも、日本国内の尖鋭な政治的分裂のタネになるだろう。」と書いている。  これからいきますと、日本政治が変わってくる、そのころにソ連が何を言うかというと、北方領土を返しましょうとこう来ます。そのころです。そうすると日本人の心がそれますから、日本ごと取れるときが来たら多分返すでしょう。  もう時間がありません。またの機会をぜひいただきたい。もうこの問題は党内で新聞記者を締め出して議論する問題ではございません。私は、もっと自民党内での慎重派――野党が皆やれやれと言う。毛沢東語録にこう書いてあります。彼らがやらないでおこうというものをやらせろ、彼らがやりたいと思うものはやらせるな。野党が全部、さあ中国とやりましょう。自民党の中でもめている。これはあたりまえの政調会で協議するような問題ではない。もっとオープンにして、これでいいのかと……。四十年前にアメリカから七〇%輸入ダウン、そしてABCD包囲ライン、そして移民拒否。仕方がない、満州に王道楽土をと考えた石原莞爾、板垣征四郎はいま日本にいっぱいおります。また円高であおられる。しょうがない。そして二百海里をアメリカが先に宣言する。輸出の問題が起こってくる。しょうがない、中国貿易だ、シベリア開発だ。日本人の考え方は全く変わってない。  特に注意しなければいけないのは、いまアメリカ日本を捨てよとしている時代が来た。ブレジンスキーは七年前には、日本を放しては危ないと思ってこれを書いていますが、いまはこの理論が逆に利用されています。歴史を振り返ってみますと、野坂参三は、アメリカ中国の延安と相談して日本に送り返してきた。亀山幸三という人の「戦後日本共産党の二重帳簿」という本によると、もちろんこの人は昭和七年、私が生まれた年に、延安に亡命をして、昭和十年にはアメリカに寄っておりますが、アメリカに寄っておって加藤勘十と会っております。そして延安に入って岡野進と名前を変えて、日本人のくせに日本人を撃っておった男でございます。それがいま共産党の大将でございますが、実は、天皇制廃止と天皇家の存在は別だと言う野坂参三をわざわざ日本に送り返してくる手はずをしいたのはアメリカなんです。  そんなことを考えてみますと、この複雑怪奇な時代に、中国との問題、――もう時間がありませんから、一方的に物を言って終わりにしますが、大臣、特に千五百万トンの大慶油田の石油なんて、――中東の石油は、こうしますと落ちます。ところが大慶油田の石油というのは、パラフィンが多くて重質油ですから、こうしても落ちません。ジャムみたいに、こうして逆さまにしても落ちてこない。落ちたら固まる。摂氏七十度に温めて載せて、その載せたタンカーで摂氏七十度に温めて、そして持ってきたらまた摂氏七十度に温あて保存をする、その石油を使ったら機械が傷む。そんな石油三百七十万トン、電力会社も引き受けないと言っています。そんなものに操られての中国貿易。この間、外務省からもらった「経済と外交」というのを見てみますと、中国との貿易は支払い方法がわからないと書いてあります。そんなもので、国民に夢のような思いをさせる。  また覇権とはどういうことかというと、実は一国革命主義である。自分たちは、世界でまずソビエトに革命が起こってその次に中国に革命が起こって、第三の革命が日本で起こる、その日本で起こる革命が世界革命の導火線である、こう言うのです。  防衛庁にせっかく来ていただいていますから、最後に。ソ連はわざと北方領土を返さないのに、アメリカは沖縄を日本に返還しました、これはアジアから抜けていくためです。アジア安保に入らなくてもいい、こう言っているのです。私も驚いたのです。堂々と「世界」に出ているカーターズコミュニズム、カーターの共産主義アメリカは共産党を非合法化していますが、共産党団体には活動を許していますから、それが労働組合で民主党の中にもぐり込んでいます。だからラルフネーダーがしきりに公害問題をやると、日本の革新が騒ぐ。そして朴東宣を呼んでやれと言っているワシントンにビルのあるアメリカの共産党が活動している。第三インターはパリにありますが、第四インター、きのうも成田の実地を見に行きましたら、一番過激なのは第四インターだということですが、第四インターというのはシカゴかニューヨークにあって、これはどうもトロツキー、ケレンスキーがアメリカに亡命したときの組織が、いまそのまま強大になってきている。そしてアメリカの内部撹乱のためにいま一生懸命努力しているという話を聞くわけであります。そんなときに、防衛庁、いかがでございますか。中ソ条約、日中条約を結んだ後、だれも北朝鮮のことを言いませんが、ここにまた「四人の金日成」というおもしろい本があります。いまの北朝鮮の金日成は、ソビエト軍の大佐でございます。中国とソ連の軍事同盟条約のことはみんな問題にしますが、スターリングラードの攻防戦に三千人の韓国人を引きずっていった金日成の、北朝鮮と中国の軍事同盟のことはだれも問題にしません。防衛庁、どうお考えですか
  43. 伊藤圭一

    伊藤(圭)政府委員 いま先生から非常に高邁なお話を伺いました。私どもは現実に与えられました情報で判断をするわけでございますが、現実におきまして、中ソの間におきましては厳しい対立があるというふうに判断をいたしておるわけでございます。
  44. 中山正暉

    中山(正)委員 私は、中ソ論争は八百長論だと思います。もう時間が来ましたからよけいなことは言いませんが、朝鮮半島の動乱のときには二百万の義勇軍を送ったのに、なんでバングラデシュの印パ紛争のときに一人の義勇軍も送らなかったのですか。シアヌーク殿下はどこへ行ったのですか。シアヌーク殿下にモスクワで亡命政権を持たせたらプノンペンとの関係が切れる、アジアでのKGBの本部はプノンペンです。この間、私はタイへ行ってきましたが、フォンサリ州のムンゲンというところまで雲南省から八レーンの高速道路がついて、ラオスから、いまタイ国、ビルマに中国人のゲリラがどんどん入ってきているということを聞きましたが、その人に聞いた話では、いまでもカンボジアのプノンペンにはソビエト人が十一人、大使館の閉ざされたとびらの中にいる、北方には二百人のソ連将校がいる、こういうことでございました。思いをはせれば、大変物騒な世の中になってきた、こういう考えを持っておりますので、またの機会を得たい。  本当は自民党が一番たくさんの所属議員がおるのですから、委員会でこんな野党と同じ時間の配分をするというのはおかしいと思う。野党はこの問題に賛成なんですから、みんな最後に賛成すればいい。与党の中に反対があるんだから、その反対の者が反対の論拠を明らかにしながら、横綱である大臣の胸をかりたらいいと私は思っておりますので、この問題はわれわれもなかなか簡単にはおりません。そのことだけを申し上げ、材料はまだいっぱい、山ほどあるのでございますが、この問題は、きょうはこれでおいておきます。  どうぞひとつ外務大臣、一人によって国は興り、一人によって国は亡ぶという言葉があります。昔のように戦争を売って国をとる時代ではございません。一人の人間を籠絡してわが方に心理的に引き入れたら、それでもうその国は亡びます。ひとつその辺は日本の将来を考え、今後ともぜひ日本のために御努力をいただく、これは総理大臣にお伝え願いたいと思うのです。  私は、日本世界のために働いていないと思われますから、自衛隊というのをやめて、日本に国連軍というのをつくったらどうかと思うのです。まず民間から募集して、国連軍に日本が出して、世界紛争中の真ん中へ全部日本人を入れる。こんなもの、小銃一丁で間へ入れますから、世界の平和のために戦う、国連主義に生きると言うならば、日本の自衛隊を国連軍と名前を改めて世界じゅうの紛争に参加させる、そういう世界的なものにしておかないと、福田ドクトリンとマルコス大統領におっしゃいましたが、福田ドクトリンは、自民党が天下をとっている間は決して軍事大国にはならないということでございますが、中国、ソ連が日本を手に入れて、そうして日本の自衛隊をソビエト、中国が使ってアメリカに対抗する時代が来たら、日本は再び軍事大国になるであろう。赤い星の軍事大国でございます。もちろんそのときにはサクラのマークは消えてなくなります。そういう気持ちでおりますので、この憂国の至情をひとつおくみ取りをいただいて、今後の御交渉にいろいろとお考えを深く、日本の運命がその赤いネクタイの下にあるお胸にかかっておるということを肝に命じていただきますようにお願いをして、時間が超過いたしましたので、委員の皆さんにもおわびして終わります。  ありがとうございました。
  45. 園田直

    園田国務大臣 一言中山さんに申し上げます。  きょうの委員会は、日中友好条約批准委員会ではございませんので、賛成の野党の諸君発言せぬでもいいというのは間違いであって、国際情勢の分析の委員会でありますから、それぞれ発言されるのが当然だろうと思います。  なお、中山さんのいろいろ仰せられたことは、決して聞き流しせずに深刻に判断をいたしますが、まあ狭い日本の国で、その中の一つの政党で、その政党の中で私と中山さんほど違う意見もあるわけでありますから、大きなアメリカにおいてはいろいろ意見があるわけであります。  どうか中山さんも、いまおっしゃったような本も結構でございますが、それと反対の意見もたくさん出ておりますから、それも読んでいただいて、中山さんの憂国の至情、私の愛国の至情、両方ともにお互いに相助けつつ行きたいと考えております。
  46. 中山正暉

    中山(正)委員 いろいろ御指導ありがとうございました。  ところが、外務大臣から御指摘をいただきましたようなそういう本を読めば読むほど、私は心配になってまいりますし、私のところに、外務大臣のいろいろな個人的なことまで書いて、外務大臣のお友達なんかから来た手紙をきょうはお読みをいたしませんでしたが、外務大臣についても御心配をなさる方がたくさんおられるわけであります。元落下傘部隊におられた、その同じ部隊の方々外務大臣に対するお話とか、いろいろな手紙が私のところにいっぱい来ます。  そんなことでございますから、アメリカは民主党と共和党しかないから、どっちがつぶれても同じ体制のものが立ちますが、日本はそうではない。日本は、ある日突然、皆さんがためていらっしゃる預金通帳のお金のゼロが一つになる日が来る。それからどんなにりっぱな土地に住んでおられても、ある日突然それがただになる日が来る。生命保険だ何保険だとかけていても、ある日政治が変わったら、そんなものは突然みんな紙くずになる日が来る、こういうふうにお考えを願いません限りは、われわれが自由民主党という自由主義政党に所属している意義がございませんので、私と園田外務大臣が対立するのはおかしいと思いますから、お胸をあえてかりますが、今後ともひとつ御指導をいただきますようお願い申し上げます。
  47. 永田亮一

    永田委員長 中川嘉美君。
  48. 中川嘉美

    ○中川(嘉)委員 ただいまの論議を聞いておりまして、同じ自由民主党の中でも、大臣中山委員との御意見に非常に大きな開きがあるということを私たちも再認識をするわけでございます。  そこで、日中平和友好条約締結ということに対して政府・与党である自民党内の調整、これがつかないというために政府の予想に反して大幅に延びるようでありますけれども自民党内で調整がつかない問題これは一体どういう問題であるのか、また、この自民党内の調整そのものの見通し、これがどのようなものか、まずお答えをいただきたいと思います。
  49. 園田直

    園田国務大臣 ただいま新聞等で御承知のとおりに、与党に対して御理解願うようにだんだんと努力しておるわけでございます。与党の外交調査会、外交部会でいま論議をされているところでありますが、あと一、二回私に対するいろいろな御質問があって、それに基づいて自由民主党の最終態度を決定されると思いますが、だんだん話し合いは進んでおるものと私は判断いたしております。
  50. 中川嘉美

    ○中川(嘉)委員 自由民主党内の外交部会あるいはまた調査会、こういったところで討議をして自民党内の意見をまとめつつあるというふうにも御答弁があったわけですけれども、私は、その際懸案となっているところの台湾問題であるとかあるいは尖閣列島の問題とか、さらには中ソ条約の問題あるいはソ連の対日態度の問題、そしてまた覇権問題こういった諸問題について大臣がいろいろとお答えをされる中にも、自民党内でこれらの問題というものは当然出てくるであろう、こういうふうに思います。もしそうならば、国民の前に当委員会においてもお話しをされることが必要ではないか、こういうふうに思うわけですけれども、これらの諸問題についてどのようにお考えでおられるのか。私は、ただいま申し上げたあえて五つの項目ということになるかと思います。台湾、尖閣列島、中ソ条約、ソ連の対日態度、さらには覇権問題、これらについてどのように考えていらっしゃるか、どのような形で党内を説得、というと語弊があるかもしれませんが、説明をなさるのか、これについてお答えをいただきたいと思います。
  51. 園田直

    園田国務大臣 いま申されたようなことが一つの問題点になると存じますけれども、これはほとんどが交渉が始まってからの内容に属する問題でありますから、党内でそういうことをお聞きになっても私はお答えするわけにまいりませんので、党の御意見を伺いつつ、私が今後交渉を進める参考にはいたしますけれども、私は、与党内で大多数の意見がまとまることを待って交渉再開に進む、こういうことでございます。
  52. 中川嘉美

    ○中川(嘉)委員 われわれが考えるには、もういまの段階で、仮にこの委員会でそのような項目に対して個々に結論めいた御答弁ができないとしても、やはり党内で、ここまで煮詰まってきた諸問題、条約締結の直前と申し上げても過言でない、こういうときに、大臣の御答弁を聞いておりますと、成り行き次第といいますか、どういう御質問が出るかわからない、出たときに勝負しよう、ある程度のところまではひとつ答えておこう、この時点であるから、ここから先は、ちょっと同じ党内でも言うわけにはいかないというふうに聞こえるわけなんです。  この中で一つ一つ詰めていくということはなにですけれども、たとえば覇権問題、この覇権問題については、わが党の矢野書記長がせんだって中国側と十分話し合って、詰めて帰国をしたわけですけれども、そのときにも十分な詰めというものはすでに行われ、そして総理にも帰国後に報告を申し上げている、このように私たちは考えているわけです。政府としてこのほか、覇権問題ということになるとどういうところに問題があるのだと考えておられるのか、もう論議の余地はここでほとんどないのではないか、私はこのように思いますが、この覇権問題についてちょっと大臣の御意見を承っておきたいと思います。
  53. 園田直

    園田国務大臣 覇権問題については、わが方は共同声明に書かれた立場を一貫して通しているわけであります。中国の方も、共同声明の文句をそのまま写せばよいじゃないか、こういうことで基本方針は一致しているわけでありますが、さて、これを条文にどう盛り込むかということになってくると、問題が出てくるのではなかろうかと推察をしておる程度でございます。
  54. 中川嘉美

    ○中川(嘉)委員 幾たびとなくこの外務委員会において日中問題が焦点となった。私自身もやはり日中問題、ほかの問題に関する質問はもちろんですけれども、その全般なら全般で常に触れてきた。わが国にとっても非常に重要な問題なわけですけれども、そのたびごとに、今回はここまで進展したのだというような感触が残念ながらいただけない。こんな感じで、大臣がっかりされては困るわけですけれども、どうも最近の福田総理の日中問題に対する意欲というものがなくなってきたのじゃないだろうか、また、外務大臣の姿勢そのものも、国民の受けとめ方としては、若干後退したように受けとめている方が多いようにも実は聞いているわけなんですけれども、こういったところは、総理の姿勢が後退したのか、外務大臣御自身なのか、この辺ひとつ明快な御答弁をこの際いただいておきたいと思います。
  55. 園田直

    園田国務大臣 総理の日中友好条約締結についての意思、意欲は少しも後退してない、むしろだんだん機が熟してきた、それによって環境の整備もみずからやろうという御決意だと私は推察をいたしております。私が後退したか前進したか、どのようになるか、一に皆さん方の御批判を静かに受けておりますから、今後の実行によって後で御判断を願いたいと思います。
  56. 中川嘉美

    ○中川(嘉)委員 後で判断をしたときに、外務大臣が結論的に非常に努力をされた、最終的には意欲を持って取り組まれたのだというような中国側との引き続き交渉を心から要望するものでございます。  ところで、条約締結の際に、中国側から代表が日本に来られるというふうに聞いているわけですけれども、このことについては政府として何か具体的な手を打っておられるか、また、その見通しはどうか。いつものことながら、明確な御答弁があるいはと思いますけれども、率直なところをひとつ、いまの時点における段取りをお答えいただきたいと思います。
  57. 園田直

    園田国務大臣 社会党の飛鳥田委員長が帰られてからのお話で、向こうからそういう話があったということを承っておりますが、その後政府は、これに対して何ら向こうと連絡はいたしておりません。と申しますのは、これは交渉再開されて、まとまって、今度は最後に調印をどこでやるかというときに出てくる問題でありますから、交渉再開に先立ってこういう話を政府が正式にまだすべき段階ではない、こう考えておりますので、すべては両国の意思によって、国民大多数の御支持を受けながら、うまくこれを解決したいと熱願をしておるものでございます。
  58. 中川嘉美

    ○中川(嘉)委員 中国問題、きょうのところは私はこの程度にしておきたいと思いますが、冒頭にも伺ったように、党内調整というものが長引くことによって、交渉というものを渋滞させるようなことがあってはならない。まして、交渉そのものが後退をしてしまうというようなことがあっては絶対ならないと私は思うわけで、政府・与党内の説得ということは政府の重大なる責任ではないか、こう思いますので、このことを十分認識をして、政府の明確な態度というものを、いわゆる慎重派の皆さんに対して示すということによって、条約締結というものを一日も早く促進をされるように、外務大臣に強く要望をしておきたいと思います。  次にお聞きしたいのは、本委員会で領土問題、これが種々論議されてきたわけですけれども、同じ領土問題でも、将来に向けて非常に大きな問題としてクローズアップされるであろう南極問題、これについて若干伺っていきたいと思います。  御承知のとおり、南極大陸、これは世界でどの国家にも帰属しない唯一の大陸、いわゆる陸地であるわけですけれども、最近世界各国の科学調査の結果、南極大陸が非常に豊富な地下資源を埋蔵しているということがだんだんわかってきた。また、水産物についても、南極周辺海域はオキアミが非常に大量に生息している。そして、各国の南極大陸及びその周辺に対する関心が非常に高まってきているわけでございますが、こういう意味で、私は実は昨年の五月二十五日当委員会で、将来起こり得るかもしれない南極の領有と分割、こういうような事態が生じた場合に、日本国はこういう事態にどう対処すべきかということについて若干御質問したことがあります。しかしその後、南極大陸及びその周辺海域の資源をめぐって各国の関心が非常に深まりつつある、このように思われますが、そういった観点からさらに若干の質問を行っていきたいと思います。  その第一点ですけれども、南極条約が成立するまでの期間に、南極大陸の領有権を主張した国はどことどこであるか。前回のときもお聞きしたかと思いますが、ここでもう一度確認しておきたいのです。そして、領有主張の根拠というものは一体何か、この辺をまずお答えをいただきたいと思います。
  59. 大川美雄

    ○大川政府委員 南極大陸につきまして領有権を主張している国は、私どもの知っております限りで七カ国ございます。オーストラリア、ニュージーランド、チリ、アルゼンチン、イギリス、フランス、それにノルウェーであります。  その根拠といたしましては、イギリス、フランス、ノルウェー、豪州、ニュージーランドの場合には、発見及びそこにおける探検活動を根拠としているようであります。それからアルゼンチン、チリにつきましては、本国、それぞれの本土からの近接性ということと、両国がそれぞれスペインから分離独立いたしました際の領土に対する継承権ということを根拠にしていると承知いたしております。
  60. 中川嘉美

    ○中川(嘉)委員 この南極条約は、各国の領有権の主張というものを一応凍結しているわけですけれども、この領有主張国の権原までも否定はしていないわけで、もしその凍結が解除されるならば、これまで領有を主張してきた国の権原が顕在化して、そして領有権主張の権利となり得るかどうか、この点はいかがでしょうか。いまは凍結されているわけですけれども……。
  61. 大川美雄

    ○大川政府委員 この南極条約と申しますのは、いわば半永久的な、非常に有効期限の長い条約でございます。一応条約の文面上は、三十年たてば条約の見直しといいますか、再検討をやるという趣旨の規定がございますから、大変長い期間の条約です。六一年に発効いたしまして、それから三十年と申しますと一九九一年になるわけです。ですから、それまでは少なくともいまのようなそれぞれの国の主張は凍結されたままになっている、こういうことでございます。
  62. 中川嘉美

    ○中川(嘉)委員 そうすると、凍結をしている条約ではあるけれども、それ以降についてというか、凍結そのものが解除された後、どういう事態になってくるのか、先ほど申し上げたようなものが領有権主張の権利となり得るかどうか、この辺はどうでしょうか。
  63. 大川美雄

    ○大川政府委員 その点は去年の五月にもあるいは御答弁申し上げたような記憶もございますけれども、この条約の規定が改正されるかあるいは条約そのものがなくなる場合には、御指摘のような事態が起こり得ることもあろうかと思います。少なくともその条約の有効期間中はそれぞれの国の主張は凍結されますけれども条約の解釈としては、条約がなくなった後は、それが全然死んでしまっている、なくなっているということにはならないのではないかと思います。
  64. 中川嘉美

    ○中川(嘉)委員 たしか私の記憶でも、前回の御答弁としては、領有権主張の権利となり得る、こう御答弁があったように記憶しているわけですね。  次に進みますけれども、南極条約は、南極大陸において任意の国が資源の開発を行い、その果実を自国の所有物にすることを禁止しているのかどうか。現行の南極条約は、経済活動を禁止していないようにも解釈できるわけなんですが、この辺はいかがでしょうか。
  65. 大川美雄

    ○大川政府委員 南極条約は南極地域、あるいは海域も含むべきであろうかと思いますけれども、それの資源の開発につきましては、これを明文で許容する規定もございませんし、さりとてそれを禁止するとかあるいは規制するという趣旨の規定もございません。ありますのは、この条約の締約国の代表者、原署名国が、幾つかの事項につきまして特定の措置を立案したり、審議したり、それぞれの政府に勧告する趣旨の規定があります。その事項の中に一つ「南極地域における生物資源を保護し、及び保存すること。」という事項が挙がっているわけでございます。御指摘のとおり、近年になりましてこの地域における資源、それも鉱物資源もそれから生物資源も含めての資源全般についての国際的な関心が大変高まっております。そこで、南極条約の協議国間におきまして、こういった資源の保存と利用について、この条約では余りはっきり規定されていないものでございますので、もう少し明確に、国際協力あるいは国際的な規制についての枠組みをつくるべきではないかという考え方が出てまいったわけです。そこで、現在すでに具体的な枠組みづくりの話し合いが始まっております。日本といたしましても、南極地域の無制限な資源開発活動にある程度の歯どめをかけて、国際的なレジームのもとに合理的な利用を図ることが必要ではないか、こういう立場から、そういった国際的な話し合いに積極的に参加いたしております。
  66. 中川嘉美

    ○中川(嘉)委員 いま私が申し上げたことについては、昨年の委員会で、現在の南極条約は科学的な調査に限られている、したがって特定国による開発、占有を意味する開発は認められないと思うがどうかということに対しては、政府側としては、私どももさように理解をしているといった御答弁がありました。別に一つ一つチェックするつもりはないのですが、やはり非常に重要なことなので伺うわけですけれども、こういったことは政府の不確定な見解であるのかどうか。この一、二年の間に大分事態も変わってきている。経済活動と開発はその間においても全くできないというふうな解釈に立っておられるのか。たとえば、アメリカあたりが非常に優秀な機械を持ち込んできて、そしてそういった開発をしないとはまた言い切れないような事態があってはならないし、この辺について、ただいまの御答弁を一応素直に受けるというふうにいたしまして、次の質問に入っていきたいと思います。  この条約の適用範囲ですけれども、先ほど海域も含むというふうに御答弁があったわけですけれども、これは南緯六十度以南というふうになっていますね。この六十度以南における漁業はオキアミなんかですけれども、そういった漁業は禁止されていないものと解していいのか、禁止されているのか、ちょっとこの辺がもう一つ明確でないので、お答えをいただきたいと思います。
  67. 大川美雄

    ○大川政府委員 私が去年の五月に御答弁申し上げましたときの私の言い方にあるいは若干舌足らずの点があったかもしれませんけれども、その趣旨は、先ほど申しましたように、この条約の現在の規定ぶりでは、南極地域の資源を開発することを明文で許容した規定はないんだという気持ちであったわけでございまして、ただ、同時にそれを禁止するあるいは規制する規定がないことも事実でございます。条約の適用地域につきましては、条約の第六条で「南緯六十度以南の地域」、これは「すべての氷だなを含む。」ということが書いてございます。ですから、その南緯六十度以南におけるオキアミ資源につきましても、先ほど私が申し上げましたとおり、明文の規定での許容もございませんし、禁止あるいは規制の規定もございませんので、さればこそ、現在オキアミを含みます南極地域の生物資源について、これの保存とそれから合理的利用を図るための国際的な枠組みをつくろうといういわゆる条約づくりが始まっているわけでございます。
  68. 中川嘉美

    ○中川(嘉)委員 そういった意味でも非常に重要な時点に来ているのではないかと私は思うわけで、たとえばオキアミの漁業については、私ども調査したところによれば、六十度以南それから以北、この両方にまたがってこの漁業が行われているというふうに聞いているわけですけれども、そうなりますと、明らかにその海域における開発なりあるいはそういった漁業等が暗黙のうちに認められているように考えられるわけで、そうなってくると、たとえば石油等の海底資源、こういったものにも当然関連してくるし、六十度以南におけるこういった資源の問題が当面すぐ出てくるような気がしてならないわけですけれども、いまの御答弁の中で、その条約づくりにいま臨んでいる最中である、いわゆる明文化をしたものをはっきりと残していかなければもちろんならないと思うわけで、その点の重要性をさらに私はここで強調しておきたいと思います。  現在、南極大陸において各国が科学調査、あるいはそういった名目でそれぞれに基地を設定をして科学調査活動とかあるいは資源探索活動ですね、こういったものが現実に続けられているわけですけれども、これが今日まで長期にわたっているということ、それからもう一つは、人の居住も行われているということ、これはもう事実なわけで、このことはやはり先ほどの領有権の問題に戻るようですが、将来領有権主張の権原となり得るのかどうか、もう一度確認をしておきたい。ずっといままで居住しているとかあるいは基地を設けたあるいは科学調査をやってきた、そういったことが将来この領有権主張の権原となるのかどうか、この点はいかがでしょうか。
  69. 大川美雄

    ○大川政府委員 そのような現在の活動が将来の領有権の主張の根拠になることは第四条で禁止されております。第四条では、そういったような活動が将来の領有権への主張の根拠にならないんだということを明文で述べております。
  70. 中川嘉美

    ○中川(嘉)委員 そうしますと、そういったものは根拠にならないということですが、これは一つの例なので伺っておきます。先日と申し上げた方がいいと思いますが、南極のアルゼンチン基地ですね、ここにおいて、アルゼンチン国籍の婦人が出産をした、こういう報道を見たわけです。見出しが「南極っ子第一号アルゼンチン基地で誕生」となっておりまして、その次に「定住権また問題か」と、大きな見出しでこう書いてある。このことはアルゼンチンが南極における領有権主張の有力な既成事実をつくり上げるための布石とするのじゃないだろうか、こんな見方もありますが、政府は、南極大陸における出生、すなわち出産そのものですね、これが領土権主張の手がかりとなり得ると考えられるかどうか、これをお答えいただきたいわけです。先ほど申し上げた報道の見出しでもうちょっと下の方を見ていきますと、「領有権主張への強力材料」、こんなふうに大きく書かれておるわけですけれども、いわゆる属地主義から言うならば、主張し得るのではないかと私は思いますが、この点をあわせて御答弁いただきたいと思います。
  71. 大川美雄

    ○大川政府委員 ただいま御引用になりました報道は私は存じておりませんでしたけれども、少なくともアルゼンチンに関する限りは、この条約ができます前からあそこに領有権を主張しておりまして、それがこの条約の有効期間中は一応凍結された形になりますけれども条約によってそれが完全に否定されたということでもございません。ですから、アルゼンチン人の子供があそこで生まれたということがアルゼンチンの現在の立場あるいは将来の立場に何らかの要素をプラスすることにはならないと思います。
  72. 中川嘉美

    ○中川(嘉)委員 それでは、外務省の見解、政府の見解としては、これはまあ新聞報道でございますが、こういった懸念と言ってはなんですが、「領有権主張への強力材料」とかいったこういう見出しそのものに対してはむしろ否定的である、そういうことはないと思いますというふうに私も了解しておきたい、こう思います。  今度、わが国にも関連する問題ですが、平和条約第二条の(e)項で、「日本国は、」「南極地域のいずれの部分に対する権利若しくは権原又はいずれの部分に関する利益についても、すべての請求権を放棄する。」このことを承認して、さらに、この請求権の放棄については、政府平和条約発効までに生じた請求権である、こういうことを、昨年五月のこの委員会で御答弁をいただいているわけですけれども、この点について間違いがないかどうか、再度確認をしたいと思います。
  73. 大川美雄

    ○大川政府委員 昨年五月に御答弁申し上げた考え方に間違いございません。
  74. 中川嘉美

    ○中川(嘉)委員 さらに政府見解は、将来の問題として日本が南極地域において何がしかの領有権を主張できるとすれば、南極条約の有効期間終了後か、南極条約加盟国の全会一致による条約改正が実現した場合、たとえば締約国が南極を分割して領有するというような体制になった場合、その一環として日本も主張できるかと思う、こういう御答弁でもあったわけですが、私は、南極領有権問題はやはり将来に向かって非常に重大な問題になることを予測するものですから、さらに明確にしておきたいと思うわけです。  いま言ったように、政府が前提とする条件のもとで、すなわち南極条約の有効期間終了後か、あるいは南極条約加盟国の全会一致による条約改正が実現した場合、これは条件となるわけですが、このもとで日本は領有権を主張できるんだ、こういう確信のある見解をここで述べておいていただきたい、このように思います。
  75. 大川美雄

    ○大川政府委員 昨年私がそういう御説明を申し上げましたのは、現在の南極条約の規定ぶりの解釈として申し上げたわけでございますが、わが国としましては、南極地域は各国による領土分割の対象とされるべきではないのだ、南極をめぐって領土分割の争いが各国間に生ずることは国際社会全体にとっても好ましくないのだ、こういう立場をとっております。したがいまして、各国の領土権の主張につきましても認められないという立場をとります際には、これは日本の立場も含めてのことでございます。
  76. 中川嘉美

    ○中川(嘉)委員 今日まで、政府を含めて一般に南極の領有権についてはきわめて無関心であったのじゃないだろうか、このことをむしろ反省すべきじゃないかと私は思うわけで、たとえば学者の見解といったものもまたそのように私には思えるわけなんです。「日本の領土」という本が高野教授によって書かれているわけですけれども、「日本の領土」の中に出てきます南極地域に関する文章ですけれども、「無主の地としての南極地域には最近各国の領土的関心が高まっている。日本としてはもとよりこれに領土権を有するのでないが、ありうべき領土的発言権をこれによって、確定的に放棄したのである。」「放棄したのである。」こうなっております。この書物のほかには、「日本講和条約研究」というのを書かれた入江教授によりますと、「日本は南極地域のいずれの部分に関する権利、権原又は利益についても、一切の請求を放棄したのである」こういうふうに言っております。さらに「国際法学会編」の「平和条約の綜合研究」という本を見てみますと、「日本は南極地域に関する領土的発言権を一切放棄したのである」として、現在、将来にわたって領土的発言権をすべて放棄したかのような見解を述べておられるわけですが、これら諸学者の見解を政府はどう見ておられるか。少なくとも平和条約締結後の将来にわたる南極の領土的発言権ということになりますと、これをも無条件に放棄したかのような見解というものは、私は非常に問題があるのではないかと思うわけですが、政府の見解を求めたい。  去る五十二年五月のこの委員会における御見解としては、これら諸学者の見解とは相違する御答弁をいただいているわけですけれども、この点はいかがでしょうか。政府の見解をいま一度、こういった学者の諸説に対してどのように考えられるか。
  77. 村田良平

    ○村田政府委員 昨年の当委員会においても御答弁申し上げたところでございますが、わが国が平和条約第二条によりまして放棄いたしましたのは、平和条約発効当時におきましてわが国が有しておりました南極地域に対する権利、権原あるいは利益についての請求権を捨てたということでございまして、この規定があるからといって、その後、平和条約発効後にわが国が、あるいはわが国の国民の活動等によりまして、あるいはその他の理由によって、南極地域に何らかのわが国の権利、権原あるいは利益が発生する、それに対して場合によっては請求権を持つということまで、つまり平和条約から未来に向かってわが国の立場を放棄したというふうには考えておらないわけでございます。
  78. 中川嘉美

    ○中川(嘉)委員 いまの御答弁がやはり私は将来に向かって非常に大事なものとなってくると思いますのでいま確認をさせていただいたわけですが、くどいようですが、もう一つの論文で、これは私もきわめて疑問が抱かれるので、特に政府のはっきりした見解というものを求めておきたいのです。昭和二十七年に出版された「対日平和条約」という本ですけれども、その中で、南極の領有権について次のように言っております。「いずれにせよ、日本は、今回の権利放棄によって現在直接失われるものはないが、将来南極地域に対する主権設定の問題が国際的に論議されるような場合には、いっさい発言権をもつことができなくなるわけである。」こういうふうに出ているわけですね。将来にわたっていかなる事態においても日本は南極領有権について一切の発言権というものを放棄したのだ、こういうことになっていますけれども、ただいま政府からの御答弁を考えてもこういった所論には私は大きな疑念を抱かざるを得ない、こういうふうに思うわけです。政府の見解、すなわち発言権も含んだ領有権の主張ができるのだ、こういった見解そのものと大きな相違が出てくるわけですが、将来日本の重大利益に対するこの発言権を確認していく意味政府の見解というものを確かめておきたい、こういうふうに思うわけです。すなわち無主地である南極に対する日本の請求権放棄というものは平和条約締結までのものであって、この著書の所論のように将来にわたって一切の発言権の放棄というものは誤りであると解すべきではないか。改めて政府の明確な御答弁をいただいておきたい、このように思います。
  79. 村田良平

    ○村田政府委員 平和条約にこの規定が置かれましたゆえんは、わが国の場合には、先生御存じのとおり明治の末期に白瀬中尉の南極探検等もございまして、当時特にわが国としては先占の意思を明確に表示するというふうなことはしなかったわけでございますけれども、しかしながら少なくとも何らかの請求権を留保しているのではないかというふうに国際的に考えられる立場におったわけでございます。そこで連合国としては、そういった白瀬中尉の活動等に由来するような、あるいはその他何らかの理由による日本国の請求権というものは放棄すべきであるという立場をとりまして、それが平和条約に規定された、これが私どもの考え方でございます。したがって、平和条約以後にわが国の何らかの権原あるいは権利が発生するということはこの平和条約の規定によって妨げられておらない。ただそのことと、しからば――もちろん現在は南極条約自体有効でございますから、日本がその請求権を持つということはそもそもあり得ない、凍結されておるわけですけれども、仮定の話としまして、現行条約が廃棄されるというふうな事態においてそれでは直ちにわが国が領有権を主張すべきであるかどうかというのはもちろん別問題でございまして、わが国としては基本的には南極大陸に各国が領土の分捕り合戦のようなことを行うのは望ましくないという立場をとっておりますので、将来といえどもそういう立場から日本の政策をとっていくのであろうと思いますが、純法律的には平和条約との関係では先ほど申し上げたとおりでございます。
  80. 中川嘉美

    ○中川(嘉)委員 以上、私の質問とただいまの御答弁等によって、平和条約第二条(e)項というものは、(a)項における朝鮮の独立とか、あるいは(b)項の台湾放棄、(c)項の千島放棄あるいは(d)項の委任統治の放棄とはいわば本質的に相違すると結論づけられるのではないか、こういうふうに思うわけです。(e)そのものは(a)(b)(c)(d)とは本質的に違う。したがって、将来無主地である南極のいわゆる領土領有問題あるいは分割問題、こういったことが国際会議等で討議されるような場合、日本も当然主張できる立場にあるのだという点を私は実はきょうここで確認をしておきたかった、こういうわけですけれども、そのように了解してよろしいですか。
  81. 村田良平

    ○村田政府委員 ただいまの先生の御見解のとおりであろうと思います。
  82. 中川嘉美

    ○中川(嘉)委員 では、もう一点伺いますが、南極のオキアミの話を先ほどちょっと出しましたけれども、これはできれば大臣の御意見をちょっと伺ってみたいと思うのです。  このオキアミの争奪という点について、これは当然将来の資源問題との関係で南極の二百海里実施という動きがあると聞いているわけですけれども政府はこれに対してどのように対処しようとされるか、大臣の現時点における御見解を承っておきたいと思います。二百海里ですね。
  83. 大川美雄

    ○大川政府委員 先ほど申し上げましたように、南極地域に対して領有権を主張している国々がございます。その主張はもちろん凍結されておりますけれども、その主張に立てばそれぞれ南極の特定の地域についていわば沿岸国ということになるのだろうと思います。その国の立場に立てば。そうしますと、その沿岸から沖へ向かって二百海里までの海域に対して特定の管轄権を主張できるんだという議論になるのであろうかと思いますけれども、わが国につきましては、そもそもそういった南極地域に対する領有権自体をも認めない立場をとっておりますので、仮にそういった国々が二百海里を主張してもわが国としてはそれは認められない、そういう立場をとっています。それがわが国の立場でございます。
  84. 中川嘉美

    ○中川(嘉)委員 私は、この二百海里問題に関連していろいろ御質問をしたいわけで、これをしていきますとかなり時間も要するわけですので、先ほどの御質問なさった方、かなり時間超過なさっていますし、私時間がまだ十分ほど余っているわけですけれども、そういうことで、次の委員の方に質問を譲ってまいりたいと思います。きょうは、この辺で終わりたいと思います。
  85. 永田亮一

  86. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 最初に日中問題についてお伺いをいたしますが、福田総理は、つまり政府側は与党にいろいろといま意見をまとめてもらいたいという努力をされておるようですが、どういうふうにまとめてくれということを福田総理は要請されておるのですか、与党に。
  87. 園田直

    園田国務大臣 日中友好条約の問題はいよいよ交渉再開する時期に来たと思うから、交渉再開について与党の御理解を得たい、こういうことであります。
  88. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 そうすると、つまり日中平和友好条約締結するために交渉をしていいかどうかということをお伺いされておるわけですか。
  89. 園田直

    園田国務大臣 交渉再開さしてほしい、こういうことでございます。
  90. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 そうすると、たとえば一例を挙げますと、覇権条項の問題がどういうふうになるか、どういうふうにすべきかというような内容ではなしに、締結交渉をしていいかどうか、それだけのお伺いなんですか。
  91. 園田直

    園田国務大臣 そのとおりでございます。
  92. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 ちょっとおかしいんですね。日中平和友好条約は早く結びなさいということは、例の四十七年十一月八日衆議院本会議で、当時の日中共同声明に関する決議として、早く締結しなさいと決議されているんですね、これは。国会の意思なんでしょう。それをいまさら何をお伺いしているのですか。わからないのですね。どうなんですか、それは。
  93. 園田直

    園田国務大臣 なぜ交渉再開をしなければならぬかという理由について、外務大臣は、日中共同声明で約束してございます。衆参両議院でも決議をしてございます。したがって、交渉再開をさしていただきたい、こういうふうに言っておるわけでございます。
  94. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 おかしいですね。わからないのですよ、それだけだったら。国会決議しているでしょう、与党も賛成して。どこに問題があるのですか、それは。それは国会決議内容に抵抗することなんですかね、国会決議に。
  95. 園田直

    園田国務大臣 与党としてはいろいろ意見があるところでございましょうけれども交渉その他の内容について不安があるからだと思います。私は、交渉再開した後のことは外務大臣の権限でございますから任してもらいたい、こう言っておるわけでございます。
  96. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 そうすると、内容についてのいろいろな問題じゃなしに、そのことだけとすれば、あとは政府のやることだから任してください、こういうことなんですか、もう一遍確かめておきますけれども
  97. 園田直

    園田国務大臣 なかなか微妙な問題でありますが、与党でありますから、どうも外務大臣は先走り過ぎる、これに任したらどうなるかわからぬという不安もあると思いますが、そういうことも意見を承りつつ、与党の御意見を早く決定してもらいたい、こういうことでございます。
  98. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 じゃ、いま具体的に何が問題になっています。与党の中で。具体的に言ってください。何が問題になっているのですか。
  99. 園田直

    園田国務大臣 何ということではなくて、外務大臣に、どういう方針かとかどういう意思かとか、こういうことを確かめられる会合が一回終わっただけで、あとまた二回、三回とあるわけであります。
  100. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 そうすると、外務大臣は具体的に、たとえば覇権条項についてはこういうふうに条約案文ではしたいというようなことまでもおっしゃって意見を求められておるのですか。
  101. 園田直

    園田国務大臣 言ってはおりません。
  102. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 そうすると、政府の考えはおっしゃらずに、ただ自由に意見を出せ、こういう段階なんですか。
  103. 園田直

    園田国務大臣 いろいろお聞きになっておられますから、それに対して内容は申し上げませんが、政府の考え方や基本方針は申し上げて了解を求めておるところでございます。
  104. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 そうすると、それだけ聞いてもわからないのですよ、何がどんなに問題になっておるのかですね。いまの御答弁わからないですよ。何がどう問題になっているのですか。
  105. 園田直

    園田国務大臣 与党の御意見をなるべく早く取りまとめるように御相談をしておるところでございます。
  106. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 それは内容も含めてまとめるということですか、その条約案文等の内容も含めて。
  107. 園田直

    園田国務大臣 両国間の長きにわたる未来を決めることでございますから、いろいろ与党の中には御意見があるわけであります。その御意見は承っております。
  108. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 いま外務大臣が具体的におっしゃったのは、どうも外務大臣が行ってしまうと何やるかわからぬという不安もあるだろうということだけですね。そういう意見もあるというそれだけですね、具体的なことは。それで、そうするとどういうふうに与党の意見がまとまれば先に進むのですか。
  109. 園田直

    園田国務大臣 いろいろ御意見が出た後、交渉再開してよろしいということになれば、それで交渉再開に進むわけであります。  いま、どういうことかわからぬとおっしゃいましたけれども、ただいま現実に質問をされたのをごらんになっておわかりになったと思いますが。
  110. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 あの種の議論は、これはもうあなた、国会決議なされる、あるいは共同声明が結ばれる以前の論議の段階じゃないですか。いまごろそういうことをやるというのは、一体福田総理のリーダーシップというのはどうなんでしょうか、どこにも見えないじゃないですか。私は、こういうことではこれは全く政府の方の姿勢は後退した、そう見ざるを得ぬのですが、どうでしょうか。
  111. 園田直

    園田国務大臣 総理もいろいろ努力をしておられるところでございます。
  112. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 それでは国会決議もあることですから、それを踏まえて先に進むように努力をしていただきたいと思いますが、そこで覇権条項のことについてちょっとお伺いしておきます。  中国側は、共同声明の覇権条項を本文に入れようという主張ですね。それに対してわが外務省の方は、本条約は第三国に対するものではないというものを何かとにかく入れようということから始まったようですが、それは両極端でしょう。新聞報道によると、その中に二階堂氏の考え方が出てきた、公明党矢野書記長の考え方も出てきた、それはちょうど中国側の考えと外務省の考えの中間に位する考え方でしょう、言うなれば妥協案と申しますか、折衷案と申しますか。二階堂氏の案と公明党矢野書記長の考え方は、どちらが中国側の考えに近いと判断されておりますか。
  113. 園田直

    園田国務大臣 応援団の側の御意見は参考として承っておりますけれども、これは外務省案とは全然関係ございません。外務省交渉再開に入ってからこの問題を中国側と話をするつもりでございます。
  114. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 それでは外務大臣の見解をお伺いしておきますが、たとえば共同声明の覇権条項を本文に盛る、そして参考になるのは、公明党訪中団に示された鄧小平副首相の四点のうちの第三項目目であろうと思うのですね。つまり日中の共同行動を意味するのではない、あるいは内政不干渉原則は維持する、この点でありましょう。そういうものを含んだ、あるいは外務省の第三国に対するものではないということも含めて、外務大臣が談話で日本側の立場を明確にするといったような考え方については、どう思われますか。
  115. 園田直

    園田国務大臣 いよいよ交渉再開がだんだん迫ってきているわけでございまして、その内容についてはどういう考え方かということは、幾ら楢崎さんでもお答えするわけにはまいりません。
  116. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 具体的にこういうことも考慮の中、選択肢の中に入りますか、私いまこういうことを聞いているのです。
  117. 園田直

    園田国務大臣 御推測を願う以外にございません。
  118. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 私が思うとおりに推測しておっていいわけですか。
  119. 園田直

    園田国務大臣 楢崎さんの御推測が当たっているとは言っておらぬわけでありまして、御推測願う以外にありませんと言っているのです。
  120. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 その選択肢の中には入るのではないか。それというふうには言えないでしょうが、いろいろな選択肢があるでしょう、これをまとめるために。その場合の一つの選択肢であることには間違いないと私は思うのですが、どうでしょうか。
  121. 園田直

    園田国務大臣 まことにつらいところですが、お答えはできません。
  122. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 外相談話の形もございましょう、あるいは条約本文とは別に、その種の鄧小平副首相が示された第三項と、日本外務省が言っている第三国に対するものではないという、この二つをミックスしたものを両国外務大臣共同声明をやるとか、あるいはもう少しきちっと言うならば、交換公文でその種のことをやるということも選択肢の中に入るのじゃありませんか。
  123. 園田直

    園田国務大臣 いまの御意見、御参考にはいたします。
  124. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 それでは日中問題はそのくらいにしておきます。  施設庁長官来ておられますか。――昨日ラビング在日司令官が施設庁長官のところに来られて、円高ドル安に伴い駐留米軍の駐留費が非常に苦しくなっている、したがって日本側の負担増を要求されたという報道が載っておりますが、どういう要求を司令官が持ってきたか、具体的にお答えをいただきたいと思う。
  125. 亘理彰

    ○亘理政府委員 お答えいたします。  昨日ラビング在日米軍司令官が防衛庁を訪問いたしました。これは事務次官のところへ参ったわけでございまして、私も陪席いたしました。在日米軍司令官が防衛庁へ参りますのはときどきあることで、きのうの趣旨も表敬訪問ということでございます。具体的に何かの案件を持って要望しに来たとかそういうことではなかったわけでございます。新聞にいろいろ報道されておりますが、私が立ち会って聞いておった範囲ではそういう具体的な話になったというふうには承知しておりません。時間も通訳入りで三十分くらいで、実はきょうから防衛庁事務次官が東南アジア等の視察に出張しておりまして、そういう関係の話でありますとか、大体雑談的なやりとりでございまして、具体的な案件を持ち要望を持ってまいったというふうな話し合いの内容ではなかったわけでございます。
  126. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 では新聞の報道は間違いですか。
  127. 亘理彰

    ○亘理政府委員 私の承知しているところでは、新聞報道にあるような具体的な話ではなかったということは間違いございません。きのう事務次官が夕方記者懇談会の席で施設庁関係の問題についてもいろいろ次官に聞いてもらいたいということで参ったというふうに言われたそうでございますが、次官が言われたのはその範囲を超えてないと承知しております。
  128. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 この種のあれは重要な問題でして、後でお伺いしますけれども、恐らく五月の日米首脳会談で米側から持ち出される問題ではなかろうか、このようにわれわれは判断をしておるわけです。  外務大臣にお伺いしますが、五月の日米首脳会談でいわゆるドル減らしと申しますか、それとの関連において日米防衛分担金の問題について日本側の負担増を求めるというようなことが予想されるわけですが、その種のことは議題になりましょうかね。
  129. 園田直

    園田国務大臣 いまのところ議題にはならぬと思います。
  130. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 日本側の考えている議題の中には入ってないということですか。――わかりました。  それでは私はここでもう一度再確認をしておきたいと思うのです。  せんだっても申し上げたのですけれども、いままでずっと国会で論議をやってきた内容、そして政府側の答弁なりあるいは統一見解、そういうものが出された。出されてきたのですけれども、最近になってそれが無視されあるいは訂正をされるというケースがふえたわけです。この防衛分担金の問題についてももう一度再確認をいたしておきますが、実は四十九年度の予算審議の場合にちょうど岩国、三沢基地の新規の施設建築の問題がありました。たしか金額は十億だったと思うのです。そのときに私は地位協定の二十四条二項の解釈について激しい論争をしたわけです。そしてその結果、ここに議事録もあるのですけれども、当時の大平外務大臣が統一見解を出されたわけですね。その中でこういう見解になっているのです。「原則として代替の範囲を越える新築を含むことのないよう措置する所存であります。」これが地位協定二十四条二項に関しての統一見解であります。この統一見解は今日も厳守されますね。
  131. 園田直

    園田国務大臣 楢崎さんの質問に対して当時、大平外務大臣が答えたいわゆる政府の統一見解と称するものは、運用についてはそのとおりだと心得ております。
  132. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 この経過の中でもう一度ポイントを申し上げておきますと、つまり、日本側が負担すべき施設の費用というものは、いろいろな過去のやりとり、文献等によりまして借り上げ料と補償費という二点になっておるのです。それで、施設を新築するのは日本側の負担でないというのがわれわれの三十四条二項の正確な解釈である。それに対して論議が行われまして、リロケーションの場合は、ある施設が古くなってそれを建てかえる新築は、代替の範囲内においてならいいだろう、こういうふうになってきたのです。そのこと自体が拡大解釈だと言ってわれわれは反対をしたのです。しかし、そういう統一見解になった。この点は施設庁長官も確認されますね、いま外務大臣は確認をされましたけれども
  133. 亘理彰

    ○亘理政府委員 お答えいたします。  私ども安保協議委員会の合意に基づいて施設の工事をやっておりますが、これは地位協定の範囲内であることはもとよりでございまして、大平答弁の趣旨の範囲で実施しておるわけでございます。
  134. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 いま関東計画と称されておるうちの横田における住宅ですね。これの非公式の要求五百戸ということが言われておりますが、非公式にはそういう要望が出ているのですか。
  135. 亘理彰

    ○亘理政府委員 米軍側の住宅が不足で弱っておるという話は雑談の間で出ることはございますが、公式にも非公式にも何百戸というふうな具体的な要望はまだ受けておりません。
  136. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 おかしいですね。四十八年のリロケーション問題のときにそういう話があるということを私は確認しているのですよ。おかわりになったからあれかもしれませんが、そういう非公式な話が出ているということを確認しているのです。金額にして三百億じゃなかったですかね。
  137. 亘理彰

    ○亘理政府委員 四十八年のとおっしゃいますと、いわゆるKPCP、関東平野における米空軍施設の統合計画が固まる前のことだと思いますが、その当時においてどういう話がございましたか、私、いま明確に承知しておりませんが、最近のこととして先ほどの御質問にお答えいたしたわけでございます。最近住宅が不足だという雑談的な話は聞いておりますけれども、具体的に何百戸不足だからどうしてくれというふうな話はまだ受けておりません。
  138. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 そうしますと、丸山次官が昨日記者会見の中で話されたことが記事になっているのだと思うのですけれども、こういう全然リロケーションと関係のないこの種の新築というものは、当然アメリカ側の負担であって日本側の負担ではないということは確認してよろしゅうございますね。
  139. 亘理彰

    ○亘理政府委員 先ほども申し上げましたように、いずれにしましても私どもは地位協定の範囲内、大平答弁の趣旨の範囲内でやるべきことをやるという考えでございます。
  140. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 いや、具体的に聞いているのです。たとえば横田に五百戸建ててくれというような要求が仮にあったら、それはアメリカ側の負担でなさるべきであるというこの態度は変えませんねと聞いているのです。
  141. 亘理彰

    ○亘理政府委員 具体的な要望は、先ほども申し上げたとおり米側から受けていないわけでございます。具体的な要望、どういう事情でどこにどう足りないというふうなことがありますれば、われわれとして地位協定に基づいてできる範囲のものであるかどうかを検討しなければなりませんが、そういう具体的な要望内容もまだ米側から受けておりませんので、もしそういうものが出てまいりましたら検討することはもとよりでありますが、それはあくまで地位協定の範囲内、大平答弁の趣旨の範囲内で対処をすべきものと考えております。
  142. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 では、もう一度確認をしておきます。そのような要求があっても、「代替の範囲を越える新築」は日本側の負担ではないですね。
  143. 亘理彰

    ○亘理政府委員 再三繰り返すようでございますが、具体的な案件の内容を受けておりませんので、その具体的な態様を踏まえませんと申し上げられないわけでございます。いずれにしましても、先ほど来繰り返し申し上げて恐縮でございますが、地位協定並びに大平答弁の趣旨の範囲内で対処するということを考えております。
  144. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 あなたはおかしいのじゃないですか。何でそんなに逃げるのです。統一見解を守るとおっしゃったでしょう。統一見解の内容を私は言っているのです。「代替の範囲を越える新築」等は日本側の負担ではない、アメリカ側の負担である、これが統一見解じゃありませんか。そのとおりしますと、なぜおっしゃらないのですか。もう一度正確に大平さんの答弁を読みましょうか。そのとおり私は言っているのですよ。そういう答弁をするから危ういのだ。ごまかそうとしている。「原則として代替の範囲を越える新築を含むことのないよう措置する」、これが見解なのですよ。このとおり私は言っているのです。なぜそのとおりしますと答えられないのですか。
  145. 亘理彰

    ○亘理政府委員 いわゆる大平答弁が出ました経緯は、私もしさいに承知はしておりませんけれども、当時の国会審議の経緯に照らして、既存の施設区域内でのリロケーション、改築などとの関連での新規提供について述べたものと承知しておりますので、その趣旨は逸脱することのないように対処するという考えでございます。
  146. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 あなたはなぜ後先にいろいろつけるのですか。私は中身をわざわざ言って、この統一見解を守りますかということを言っているのですよ。どうしてはっきりしないのですか。
  147. 亘理彰

    ○亘理政府委員 統一見解とおっしゃるのはいわゆる大平答弁だと思いますが、それは守るということは再三申し上げておるとおりでございます。
  148. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 中身を言ったら、あなたはいろいろ別のことを答弁するのでしょう。だからその点はこれからもきちっと守っていただきたい。円高、ドル安という問題が起こったからといって、こういう原則あるいは条約の解釈がリベラルになっては困るのです。そのことを申し上げて質問を終わります。
  149. 永田亮一

    永田委員長 この際、午後一時十五分まで休憩いたします。     午後一時十分休憩      ――――◇―――――     午後一時十八分開議
  150. 永田亮一

    永田委員長 休憩前に引き続き、会議を開きます。  質疑を続行いたします。土井たか子君。
  151. 土井たか子

    土井委員 午前中自由民主党からの御質問がございまして、ただいまの日中平和友好条約の問題につきまして、いまだに過去の亡霊に非常にとらわれているような御質問があったわけでありますから、私たちはいまさらながら驚いたわけでありますが、ただいまそういうふうないろいろな状況を抱えながら、外務大臣は大変に御苦労をされている最中であります。  そこで、そういう意味からいたしますと、どうしても気にかかる問題が一つ出てまいっておりますのでお聞きしたいと思います。  中川農林大臣はこの十一日に訪ソをされて、十二日からイシコフ漁業大臣と日ソ漁業交渉で会談をされるというふうな報道がございますが、これは事実でございましょうか。
  152. 園田直

    園田国務大臣 大体そのような予定で訪ソされるものと承っております。
  153. 土井たか子

    土井委員 きょうは日ソ関係について質問をする予定にはいたしておりませんから、その部分には触れないでおこうと思いますが、中川農林大臣が訪ソをされる折に日中平和友好条約についてソビエト側に説明をされるような向きの報道が一部流れております。これは大変気にかかるところでございますのでお聞かせいただきたいのですが、外務大臣とされては、また外務省とされては、そのことを御承知おきになっていらっしゃるのか、いずれかですね。
  154. 園田直

    園田国務大臣 農林大臣とは二人で話し合いまして、向こうの立場もよく承るし、私の方の立場もよく話してございますから、中川農林大臣が向こうへ参りまして、日中問題等を議題にして話すことはないと存じております。
  155. 土井たか子

    土井委員 ただ、こちらが積極的に議題にしないというふうな前提で臨みましても、間々話題がその問題に及ばないとは限りません。本来、外交の一元化というのはしばしば外務省側から言われている言葉でございますし、われわれもそうでなければならないと考えております。そういうことからいたしますと、ソビエトに行って日中問題を、こちらからは積極的でなくとも、話題の上で取り上げられるというふうな場合に、政府としては一体の説明でないと、やはり誤解が生じてまいります。その辺のところは、外務大臣と農林大臣との間で十分お打ち合わせになっていると存じますが、いかがでございますか。
  156. 園田直

    園田国務大臣 お互いに立場を了解しておるところでありますが、いまの御発言趣旨は大事なところでありますから、出発前にはさらにもう一遍綿密に二人で話し合いたいと存じます。
  157. 土井たか子

    土井委員 それで、この日中平和友好条約については、ただいま自民党内でのいろいろなやりとりというのが、まことに何だか新しい局面をつくり上げているようなかっこうで、国民はただいま見聞きをいたしているところでありますが、日中は日中、日ソは日ソということで、この現実の国際環境の流れの中で実現していこうという基本姿勢でございますね。しかしこの問題は、理屈の上では割り切れますけれども、どうも現実の国際環境の中では割り切ってばかりはいられない問題もございます。この日中条約交渉再開締結までの段階の中で、ソビエト側に対してこの日中条約についての説明をするという機会があるのかないのか。特に外務省としては、このために特使を派遣するなどという必要があるというふうなお考えがおありになるのかないのか、この辺はいかがなんでございますか。
  158. 園田直

    園田国務大臣 御発言のとおり、日中は日中、日ソは日ソと申しましても、重要なる隣国の二つの国でありますから、関連なしに、影響なしにあるとは考えません。しかし、交渉を再開してうまく締結するという期間の間にソ連に対して外務省としてどうこうという、理解を求めるという場面は考えておりません。
  159. 土井たか子

    土井委員 私自身は、日中条約締結することで日ソ全体の関係が悪くなるなどというふうなことは考えてもおりません。また、そうあってはならないと思っています。しかし、いまその日中条約に対して、自民党内にも一部あるようでありますけれども、消極的な方々の中には、ただいまの日ソの魚問題で悪影響が出てくるのではないかという懸念をしきりに宣伝されるという向きもございます。日ソ間のこれからの交渉でございますから、いろいろだだいま聞くことは時宜に適さないとは存じますけれども、この日中条約締結するということで、外交上の今回の漁業交渉に負い目になって安易な妥協を強いられるようなことは絶対にあってはならない、このように考えておりますが、外務大臣の御意見をこの点について承りたいと思います。
  160. 園田直

    園田国務大臣 私も御発言と同様に考えております。
  161. 土井たか子

    土井委員 そこで、先ほど楢崎委員の方からの御質問にもございまして、大変微妙な問題でもございますし、具体的にこの場で明らかにするお立場にただいま外務大臣はおられないということをわれわれは百も承知をいたしておりますが、ただ日中平和友好条約については、日中共同声明の中身にもとらないように具体的にこの交渉を進めるという現在までの段階について、新たな提案を日本側はしないかどうか、またいままでの段階から、外務大臣御自身は一歩も後退はしないというふうなはっきりした御覚悟なりお立場というものがここで表明していただけるかどうか、ひとつそのことを承りたいと思うのです。
  162. 園田直

    園田国務大臣 すでに締結をされた日中共同声明の線によって友好条約締結することは、終始一貫した日本政府の方針であり、しかもそれがまた日本国民にとってもソ連にとっても理解を得る道であると考えておりますから、前進も後退も断じていたしません。
  163. 土井たか子

    土井委員 もう事務レベルの問題は収拾して、あとは政治的決断にかかっているという段階だと思うわけであります。この段階における外務大臣の果たされる役割りというのは、私は一二〇%だと思っておるわけでありますから、ひとつ園田外務大臣の毅然たる御覚悟、お立場というものを再度確認させていただくことにいたしまして、次の問題に移ります。よろしゅうございますね。  さて、戦後の冷戦体制の中で、いろいろな落とし子がございましたが、大きな問題としては、ドイツ、ベトナム、朝鮮の分裂国家が存在するという問題がございます。しかし、この三つの分裂いたしました国家のうち、もうすでにドイツやベトナムは、それぞれ全く異なったプロセスで終着点に現在は達しているわけであります。一つ残りました朝鮮半島は、依然として東西の冷戦構造が残されたままになって現在に至っていると申し上げても間違いはなかろうと思います。このことは、朝鮮半島人々にとって不幸なことであるばかりではなくて、われわれも含めて、アジアの平和にとっても大変重要な課題になっております。朝鮮半島の統一ということで、いろいろと各界の方から各様に提案がすでにされているわけでございますけれども朝鮮半島の統一がベトナム型で統一されるようなことがあっては絶対にならないと思いますし、そのような芽はひとつ平和のうちに摘み取っておかなければならないということが、現在朝鮮半島に対しては至上命題だというふうにも申せるかと思うのです。  カーター政権の言う在韓米軍の撤退、このことで朝鮮半島に新たな脅威が起こるということではなく、歴史の流れの中で撤退問題を考えて、朝鮮半島の平和について日本は一体どういうふうにしなければならないのか、そして何ができるのかというふうなことをいろいろ考える時期に来ているのではないかというふうに思うわけでありますけれども、ひとつこの点に対して、まず大まかに外務大臣の御所見を述べていただきたいと存じます。いかがでございますか。
  164. 園田直

    園田国務大臣 全然南北の間に緊張がないとは申しませんけれども、米軍の撤退によっていろいろ心配されたような大きな変化はないと判断をいたしております。そこでわが国としても、一日も早く南北間の対話が再開をされて、朝鮮半島に緊張の緩和がもたらされ、話し合いの中に問題が解決されていくことを心から願うものであります。  そういう基本的な立場から、わが国としては、南北対話再開がもたらされるような国際環境を醸成するために、関係諸国に対して積極的に働きかけ、協力をしていくべきと考えております。  三番目には、同時にわが国の北の方に対する態度も、それぞれ人的、物的交流を関係諸国等の模様も見ながら漸次進めていくべきときではないか、このように考えておるわけでございます。
  165. 土井たか子

    土井委員 北に対しての人的、物的、いろいろな交流ということを漸次積み重ねて、相互間で正しく理解し合えるような状況をつくるということが目下必要だというふうなことは、歴代の外務大臣の御答弁の中にももうすでに再三再四にわたって述べられてまいりましたところでございます。ところで政府は、南北の対話というものをいま外務大臣の御答弁どおりに希望すると言われておりますけれども、希望するという受け身の姿勢じゃなくて、もう一つ積極的に対話をする道を日本自身が考えるべきだという時期に来ているのじゃないか。そういうことを考えた場合に、一体日本としてどういうふうなことを具体的に考え、行うことができるか。このことに対して外務大臣はどのような御所信をお持ちでいらっしゃいますか。
  166. 中江要介

    中江政府委員 先ほど園田外務大臣もおっしゃいましたように、日本として、南北の対話が一九七二年の七月四日の共同声明の線に戻って再開されるような国際関係の醸成に努めてまいりたいということでございまして、その点は土井委員も御指摘のように、何度も日本外務大臣なり政府の当局者が言っておることですが、なかなかそれが実現にはほど遠いという現実もまた認めざるを得ないわけでございます。  朝鮮につきましては、そもそもサンフランシスコ条約でわが国が朝鮮の独立を承認するというところまでは非常に筋道がはっきりしておりましたにもかかわらず、その後不幸にも分断された。この分断されたにつきまして責任を持っている国が幾つかございまして、独立を承認するということでサンフランシスコ体制のもとで国際社会に復帰しました日本が、一国でこの南北の問題に何らかの力が出せるかというと、これはなかなかむずかしいことでございますので、先ほど大臣もおっしゃいましたように、あらゆる機会を通じまして、この朝鮮半島の緊張の緩和について、第一義的な責任を持っている第三国としまして、アメリカ中国、ソ連というような国々との対話の場におきましては、日本朝鮮半島の将来についての関心なり考え方というものについて意見交換をしているということが一つございます。  他方、御承知のように南北鮮ともに国連にはオブザーバーを認められておりまして、国際連合のような多数国の国際会議なり国際機関の場においてお互いの理解を深めるということも継続して努力しておりますし、さらには南北鮮ともに認めている国が五十数カ国という現実に着目いたしましても、この両朝鮮の間に現実的な歩み寄りというものがあってもいいにもかかわらず、そしてまた韓国の方は、御承知の一九七三年の六月二十三日の朴大統領声明というものによりまして、体制の異なる国とも対話を開く用意がある、こういう積極姿勢を示しておりますにかかわらず、北朝鮮の当局の方では、残念ながらいままで、韓国のいまの政権を直接の当事者として話し合うことはできないという、非現実的なと私どもから思われる政策をとっておりますために、南北の対話の再開というのは滞っている。これは非常に遺憾なことでございますけれども日本としてでき得る範囲内では引き続き、じみちではありましてもこの努力を続けていくということで現在のところは対処している、これが現状でございます。
  167. 土井たか子

    土井委員 るるいま局長の方から事情についての御説明を含めての御答弁をいただいたわけですが、日中平和友好条約締結ということは、現在自民党内でいろいろ問題はございましても、条約締結ということ自身は時間がだんだん解決してくれるものでございます。日中間のような関係が築かれる中で、いま私が取り上げております朝鮮半島がこのままであってはならないということも、これはもう具体的に現実の問題として考えていかなければならないわれわれの課題であります。  そこで、そういうことから三月の七日にユーゴのチトー大統領がアメリカのカーター大統領と会見をしまして、その中で、米国と北朝鮮の接近を軌道に乗せるということに対しての提案をいたしたという情報が新聞紙上に報じられております。その中で、いわゆる南北の平和共存というドイツ方式で解決をしていく提案を行ったのに対して、カーター大統領の方も基本的にはこれを了解したという向きが報じられております。非同盟路線の北朝鮮がチトー大統領の仲介に応じて両朝鮮の共存ということに踏み切っていくかどうかということが一つの大きな問題点にいまはなってきているような感がするわけでありますが、これに対する外務大臣の率直な御意見をひとつ伺わせていただきたいと思います。いかがでございますか。
  168. 園田直

    園田国務大臣 カーター大統領とチトー大統領がどのような話をしたかということは正式には承っておりませんけれども、各所からの情報でそのように承っております。そこで、これがほかの方ではなくてチトー大統領からの提案でありますから、これがうまくいけば一つの道であるとも考えますけれども、なかなか現実においてはこれを受け入れられないのではなかろうかと想像いたしております。
  169. 土井たか子

    土井委員 ただいまの外務大臣の御答弁でございますが、カーター大統領の言う、いかなる解決も韓国を含めてという前提で、韓国抜きでは応じられない姿勢というものがアメリカ側にはあるわけでありますが、韓国を含めての解決を北も認めるのではないか、そうして北とアメリカとの対話が始められるのではないかというふうな向きもいろいろ憶測の中でただいま動いていっております。くれぐれも申し上げておきますけれども、こういうふうな状況の中で日本政府というのが一体どういうふうな態度をとるかということはこの問題に対して非常に微妙な影響を及ぼす、与えるということは言うまでもございませんので、この状況がもし展開されるやになりますと、大臣とされては、日本としたらどういう態度をとるべきだというふうな御所信でいらっしゃいますか、ひとつ承らしていただきたいと思います。
  170. 園田直

    園田国務大臣 新聞または各所からの情報で承っておることについて、うまくいけばという前提で答弁するのはやや軽率かもわかりませんが、これがうまく道が開けてくれば喜ばしいことでありますので、日本としてはまた日本の立場からこれに対する協力をしたいと考えております。
  171. 土井たか子

    土井委員 ところで、三月の七日から十八日にかけて米韓両軍合わせて十一万人を動員して韓国全土で大演習、チームスピリット78が実施されたわけであります。政府としてこの演習の持つ意味をどういうふうに分析していらっしゃるのか、ひとつ承りたいのです。これが北に対して威圧感を持たせたという結果になっていはしないか、非常にこの点はあらゆる場面で指摘をされているわけでありますが、政府としてはこの演習についてどのように分析をし、意味を考えていらっしゃるか。いかがでございますか。
  172. 園田直

    園田国務大臣 今度の米韓合同演習は軍事的な意味よりも政治的な意味が非常に強いと私は判断をいたしております。その政治的なアメリカのねらう効果とは、韓国から撤退をする、ベトナムからは撤退をした、したがってASEANの国々が自国の防衛というものについて、アメリカアジアに関心が薄くなって逐次下がっていくのではなかろうかという不安に対して、そうではない、韓国の防衛に対しては公約どおり責任を持つ、と同時にASEANの平和についてもそれぞれ約束したとおりにやるんだということを示すための政治的ねらいが一番大きかった、このように考えておって、しかも、その効果は相当あったのではないか、こう思います。  ただし、これをやったことについて、当然南と対決をしておる北の方に好意を与えたはずはありませんけれども、かといって、この米韓合同演習のために、北と南の緊張緩和に大した障害を与えることはなかった、こう思っております。
  173. 土井たか子

    土井委員 せっかくの外務大臣の御答弁でございますけれども政治意味がむしろこの演習には大きかったのではないかとお考えになっていらっしゃるそのお立場からいたしますと、むしろ政治意味からいたしますれば、朝鮮半島の平和の維持を希望するという側面からすると、この演習は北に対して挑発をもたらしたのではないか、むしろ北に対しての挑戦を意味したのではないか、実質的な対話を希望しながら、片手でナイフを突きつけたようなかっこうになっているのではないか、こういうふうに言う立場もございます。ですから、政治意味からすると非常に効果を上げ得た、その効果の面についてはプラス・マイナス両面あるでしょうけれども、いま私が申し上げたような点は、非常にぬぐいがたい大きなマイナス点として考えておかなければならない側面ではなかろうかと私は思うわけであります。実はこの演習はアメリカが考えた芝居にすぎないというような声も一部で聞かれるわけでありますが、問題は、日本からの出撃がスムーズにいくかどうかということがこの演習の見どころであるというふうに、演習に対して読む見方もあるわけでありまして、今回の演習で、朝鮮半島有事の際、日本の在日米軍基地が効果的に使用し得る状況にあるというふうに、日米韓ともこの演習を通じて判断したかどうかということが、一つはそういう意味で大変気にかかるわけであります。この点はいかがでありますか。
  174. 中島敏次郎

    ○中島政府委員 お答え申し上げます。  まず、このチームスピリットの実施に当たって、在日米軍施設区域が効果的に使用されたかどうかという点でございますが、これが米軍の必要性にとって果たして効果的であったかどうかという点につきましては、米韓間の演習のことでございますので、われわれといたしましてこれを評価するというようなことはする立場にないわけでございます。いずれにいたしましても、米軍がわが国の施設区域を使用いたしますのは、安保条約に基づきまして、日本国の安全と極東における国際の平和及び安全に寄与するということでございますので、私どもといたしましては、その安保条約目的の範囲内において許容せられておる演習活動であったというふうに認識いたしておる次第でございます。
  175. 土井たか子

    土井委員 そこで、いまの御答弁は実はあいまいな御答弁でありますけれども、すでに三月の初めの予算委員会の席では、防衛庁の伊藤防衛局長から、朝鮮有事の際の協力体制についてアメリカと協議の用意を持っているというふうな御答弁が出ておりますが、それに先立って、早くも坂田防衛庁長官時代に、安保条約五条の日本が侵略を受けた場合における日米共同の対処について、防衛小委員会検討することになっている。現在も行われている。そうしてしかも、安保条約六条の極東における国際の平和と安全についても、日本アメリカとの間で具体的に検討するようなことをすでに発言されているわけでありますが、その内容についてはそのとおりに理解をしておいてよいわけでありますか。
  176. 中島敏次郎

    ○中島政府委員 防衛協力委員会の作業につきましては、累次御説明申し上げておりますとおりに、過去の第何回でしたかの委員会におきまして、委員会の行うべき作業につきまして合意が成立いたしております。それは三つほどございまして、まず第一に、安保条約第五条の予想しておりますところの、わが国に対して武力攻撃があった場合、またはそのおそれのある場合における問題点の協議、研究ということでございます。第二点といたしまして、それ以外の安保条約に関連する問題と、第三点といたしまして、共同演習その他の問題ということになっておりまして、ただいま防衛協力委員会はその第一の問題に取り組んでおるという事態でございます。すなわち、安保条約第五条の問題について作業を行っておるということでございまして、それ以外の問題にはいまだ至っておらないという状況でございます。
  177. 土井たか子

    土井委員 いま第五条についての検討を重ねている段階だという御答弁でありますが、日米安保条約の第六条についても、極東有事、つまり朝鮮有事の事態を含む極東有事の事項について、日米の協力のあり方をさらに具体的に検討するということが、すでに予算委員会の席でも明らかにされております。このことについての段取りはそのとおりなんですね。
  178. 中島敏次郎

    ○中島政府委員 ただいま私が申し上げましたとおり、その第二の議題、すなわち、一、わが国に直接武力攻撃がなされた場合、またはそのおそれのある場合の諸問題、その第一の問題以外の極東における事態でわが国の安全に重要な影響を与える場合の諸問題というのが、第二の議題として掲げられておるわけでございます。これはいま先生お触れになりましたような、特に朝鮮半島との関係における事態というような具体性を持った問題ではないわけでございますが、いずれにせよ、この問題はまだ取り上げられておらないわけでございまして、いずれ第一の問題が終わりましたときにこの問題に移行していくという順序でございます。
  179. 土井たか子

    土井委員 ただ、その極東有事ということの中には朝鮮有事ということも当然含められると考えますが、いかがなんですか。
  180. 中島敏次郎

    ○中島政府委員 朝鮮であるか否かは別といたしまして、極東における事態でわが国の安全に影響があるというような場合に、日米間の協力の問題としてどのような問題があるかということを洗い出そうということでございます。
  181. 土井たか子

    土井委員 いずれかは別といたしましてという御答弁じゃない。私がお伺いしているのは、極東有事という中に朝鮮有事ももちろんのこと含めて考えられなければならないのですねということをお尋ねしているわけですよ。答弁をはぐらかさないでください。
  182. 中島敏次郎

    ○中島政府委員 この点は再三御答弁申し上げているところでございますが、防衛協力委員会は実は特定の具体性を持った作戦計画を策定するというような場ではないわけでございます。安保条約に基づきまして、軍事面を含めた日米間の協力の仕方について、どのような問題があり、わが国はどのようなことがなし得、どのようなことがなし得ないかということを一般的に協議研究するというのが委員会の場でございまして、そういう意味をもちまして、先生のおっしゃられたような朝鮮有事の場合に対する特定の対処の仕方というような問題の取り上げ方がなされるわけではないということを申し上げたかった次第でございます。
  183. 土井たか子

    土井委員 ただしかし、そうすると、予算委員会の席で防衛庁の防衛局長が御答弁されていることと違うことをいま局長としてはお考えになっていらっしゃるわけですか。防衛局長の御答弁の中では、朝鮮有事の事態を含む日米安保条約第六条の発動の際の在日米軍基地提供などについての協力体制について話し合うということを考えている、こういう中身なんですよ。いかがなんです。
  184. 中島敏次郎

    ○中島政府委員 第五条の事態以外に極東における事態で、わが国の安全に重要な影響を与える場合と言えば、一般的に申せば条約第六条の問題がポイントになると思います。第六条の問題が極東における国際の平和、安全の問題にかかわるという意味で、朝鮮半島における事態が影響がないということは全くあり得ないことでございます。ただ、朝鮮半島における事態を具体的に想定して、それの場合の対処ぶりを検討するというような性質の作業をこの小委員会はやるところではないということを申し上げたわけでございます。
  185. 土井たか子

    土井委員 外務大臣にお尋ねをしますが、一九六九年の佐藤・ニクソン共同声明に言う、韓国の安全は日本の安全という、例のあの共同声明内容そのものは現在も生きておりますか、いかがなんですか。
  186. 中島敏次郎

    ○中島政府委員 この点も従来からしばしばお答え申し上げているとおりでございますが、先生御指摘の共同声明における個所は、その当時の政府朝鮮半島における事態の認識を述べたものでございますが、いずれにせよ、朝鮮半島における平和安定の維持というものが、わが国の安全と深いかかわりがあるという基本的な認識については、その後も変わっておらないわけでございます。
  187. 土井たか子

    土井委員 そうすると、この安保条約六条の、極東の安全に寄与する場合の在日米軍基地の提供などについて協議するという中身についても、いまの基本的な問題というのを抜きにして考えることは恐らくないだろう、このことははっきり言い得ると思いますが、外務大臣、いかがでございますか。外務大臣答弁をお願いいたします。
  188. 中島敏次郎

    ○中島政府委員 外務大臣の御答弁の前に、事務的なことを私から一言加えさせていただきますが、いずれにいたしましても、当時、六九年のコミュニケに関連いたしましても、佐藤総理その他から、事前協議の問題についてはイエスもノーもあるんだ、わが国の国益を踏まえながら自主的に判断するんだ、そのことは、その共同声明の条項によっても変わっていないのだということを明確に御答弁申し上げておるということを追加させていただきたいと存じます。
  189. 園田直

    園田国務大臣 いま局長の答弁したとおりでございます。
  190. 土井たか子

    土井委員 イエスもノーもあるというのは、これは事前協議をやってみなければわからない話でありまして、いま日米防衛協力委員会で詰めている問題は、その事前協議の内容をどうするかこうするかということではないのでしょう。
  191. 中島敏次郎

    ○中島政府委員 防衛協力委員会の作業といたしまして、事前協議にかかわる問題は一切触れないということに明確に合意されております。
  192. 土井たか子

    土井委員 その事前協議に関するところには一切触れないという日米防衛協力委員会が、安保条約六条の問題について、さらに安保条約五条の問題に対して、極東における国際の平和と安全、さらには、日本が侵略を受けた場合における日米共同の対処、こういう問題に対して具体的に討議をしておこうということなんでしょうね。その中で、再度繰り返して申しますけれども、極東有事ということを考えた場合に、朝鮮有事もその中に入りますねということをお尋ねをしているわけであります。外務大臣、これは入りますね。極東有事の中から朝鮮有事は抜けるのですか。
  193. 園田直

    園田国務大臣 協議の中は、極東の問題で特別朝鮮の場合どうこうという協議はしていないということでありますが、しかし、有事の際の地域の中にそれが入ることは当然だと思います。
  194. 土井たか子

    土井委員 そこで、日本が朝鮮有事というふうな場合に、協力する姿勢を表明することになるのではないかという問題が、一つはこの日米防衛協力委員会の問題として出てまいります。現にチームスピリット78という問題がどういうふうに政治意味で取り上げられようとも、片やこういう問題に対して、日本としては具体的にどのように事に対処しているかということが、実は現実いろいろ見た場合の一番の決め手になるわけでありますから、政治的判断を、いろいろの憶測を含めて、それぞれのよるべき立場で物を見るということになりますけれども、しかし、具体的事実というのは、まごう方ない事実でございまして、これに対しては、それは憶測でいろいろと物を見ることにはなりません。具体的事実ということが厳然としてあるというその問題でありますから、したがいまして、いま私がここで申し上げている極東有事ということの中に朝鮮有事ということが入ってまいりますと、日本が、この朝鮮有事ということに対してアメリカ協力する姿勢をとって、その事に対処するということになるのではないか。このことは、朝鮮半島に対して、南北の話し合いということを片やで日本としては非常に求めながら、片方の手では、ピストルを相手の胸ぐらに突きつけているようなかっこうになるのではないか、この辺が非常に憂慮されるわけであります。  したがいまして、外務大臣、ここで一つ私がお尋ねをしたいことは、いわば日米防衛協力委員会での討議の席では、日米両国の制服組を中心にして、有事の際の日米協力のあり方というものをいろいろ討議を進めるわけですね。文民統制というのが、いわば日本の自衛隊に対しても、日本の防衛のあり方に対しても基本的に忘れられてはならない一つ基本線であります。文民の立場からしますと、こういう問題に対して一体どうあるべきであるかというやはり一つの考え方がなければならない。外務大臣とされては、この点をどういうふうにお考えになっていらっしゃいますか。
  195. 中島敏次郎

    ○中島政府委員 事実関係につきまして一点御説明させていただきますが、先生承知のとおり、この日米防衛協力委員会は、日本側におきましては、外務省アメリカ局長、それから防衛庁におきましては防衛局長が主になり、アメリカ側におきましては、在京米大使館の公使が主になってやっておるわけでございます。何分にも、作業は軍事的な側面が中心になりますので、当然に制服組の研究が必要になるわけでございまして、そういう意味におきまして、小委員会の設置いたしましたところの部会における作業は、制服組が主になって作業をやっているわけでございますが、これにつきましても防衛庁防衛局、それから外務省アメリカ局の人間が一緒になって作業をやっておる、そういう意味で、シビリアンコントロールの体制というものは十分に確保しつつ、この作業を進めておるということを御説明させていただきたいと存じます。
  196. 園田直

    園田国務大臣 いま局長が申し上げましたが、この協議会における協議というものは、いろいろな情勢を判断をして協議をしているわけでありますから、特定の場合にこうするという決定づけたことを協議する場所ではございません。かつまた、その場所にはアメリカ側も日本側も文官が参加しているわけでございますが、これを最後にどうやるかどうかということは政府の決定するところでございますから、制服組の戦闘の面からのみくる行動に引きずり込まれることは断じてないと思います。
  197. 土井たか子

    土井委員 当委員会において、極東有事ということの中に、朝鮮有事というのは当然含まれて考えられなければならないのではないかという質問をいたします場合にも、それは、いかにうまく質問逃れというものを答弁の中でしょうかという答弁が見え過ぎるぐらい見えてしようがないのです。そういうその場しのぎの答弁で、何とかその場をごまかして、ここでのいろいろな討論に対して、時間さえたてばよいというふうな姿勢で文民統制をやろうとされても、これはそうはいかない。やはり制服組が中心になって、アメリカ側との間での協議というものは展開されていくわけでありますから、よほど文民の側はそういうものに対して強い意気込みと、しっかりした基本姿勢というのを持っていないと、実は統制はおぼつかないと私は考えております。シビリアンコントロールについていろいろな資料も現にございますし、国会の中でこのことに対して討議された場合も二、三ではございません。しかしながら、過去のいろいろな例を見ましても、一たん軍隊をつくると、文民統制と言って、それがきかなかったという歴史ばかりでございます。したがいまして、日本においても、有事の際の協力体制というものの中に、一体極東の範囲内に朝鮮が入るか入らないかというのはもう言うまでもない話でありまして、一体その朝鮮の有事の問題に対してどういう協力体制を日米間で組もうとしておるか、日本におけるアメリカの軍事基地がそのためにどのように使用されようとしているかという問題に対しましても、やはり率直な具体的事実に即応した答弁というものを当外務委員会においてもひとつやっていただくという姿勢をお持ちいただかないと、どうにもこの文民統制というものは私はきかすことができないだろうというふうにも考えるわけであります。いま外務大臣としては、独断専行で制服組はやれるような体制にはなっていない、だからそこのところは大丈夫だろうというふうな御答弁でありますけれども、さらに別の機会に、この安保条約の第五条、さらに第六条についてはその条文に即応して質問を展開していくことにしていきたいと思います。  さて、あと一つ残りの問題があるのですが、これは、本年三月十五日からワシントンにおいて日米航空交渉が行われました。今回の交渉は、現行の日米航空協定の不平等性を是正するということを日本側は目指しまして、そのことを要求内容に掲げてその場所についたということでありますけれども、その交渉の経緯をひとつ、あらましまず御説明賜りたいと思うのです。
  198. 中島敏次郎

    ○中島政府委員 本件、日米航空交渉は、御承知のように一昨年の秋から開始いたしまして、わが方といたしましては、日米間に存在いたしますところの航空権益の不公正の是正を期するということで開始せられたわけでございまして、自来、今回の協議を含めまして六回の協議が行われたということでございます。最近の協議は、いま御指摘のように三月十五日から開催いたしまして、ワシントンで高島外務審議官及び寺井運輸省顧問を日本側の代表とし、先方、カッツ国務次官補、スタイルズ国務省航空部長ほかがこれに参加いたして行われたわけでございます。しかしながら、まことに残念でございますが、と申しますより、今回の交渉におきましては、わが国の空港の事情とそれからチャーター、低運賃問題等をめぐる日米両国の立場の懸隔が相当見られる、こういう事態を踏まえまして、日米両国間でここ三年程度の暫定的な解決を図ろうということで交渉を行ったわけでございますが、まことに遺憾ながら、その具体的な成果がなくして終わった。これは、暫定解決の条件として日本側が地点の獲得を要求いたしましたのに対しまして、米側が、日本側として現段階では受け入れることの困難なチャーター業務の自由化とそれから低運賃の実現というものを要求し、また成田の離着陸枠についてまだ不確定な要素が日常に多いこの段階で、米側がはっきりとした保障を求めた。こういうような事実がありましたために、ついに今回の交渉では妥結に達しなかったということでございまして、今秋の交渉再開を目途といたしまして具体的な期日等につきまして、今後外交チャンネルで相談しながら決めていく、こういう構えになっているわけでございます。
  199. 土井たか子

    土井委員 ただいまの局長の御答弁では、残念とか遺憾とか、しきりに、聞いていて苦しくなるような表現がしばしば出てくるわけでありますが、現在までの段階でこの日米航空交渉というのは成功していないということが一口で言えるのではないかと思いますが、その辺いかがなんですか。所期の予定どおりに日本としては交渉は進めているのですが、どうなんですか。
  200. 中島敏次郎

    ○中島政府委員 当初期待しましたような日米間の航空権益の不公正の是正ということについて合意がいまだに達成せられていないという点におきまして、当初の予想どおりにいっていないという点は、遺憾ながら事実そのとおりであると思います。
  201. 土井たか子

    土井委員 その所期の予定どおりに進めることができなかった、日本としては決して成功とは言えないというふうな現段階のこの交渉経過について、スムーズに事が進まなかった理由は那辺にあるとお考えでいらっしゃいますか。
  202. 富田長治

    ○富田説明員 お答え申し上げます。  いま中島局長からお答えがございましたように、アメリカサイドとしては日米航空協定が日本側にとって不均衡であるということをなかなか認めようとしないというところに、大きな問題があろうと思います。それは基本的にわれわれの交渉がうまくいかない理由ではなかろうかと思っておりますが、それに加えまして、最近カーター大統領が航空について非常に強い関心を持っておられまして、いま中島局長から御答弁がありましたように、チャーターの自由化、低運賃というようなことについてちょっとわれわれがついていけないような自由化政策を出しておられる、あるいは政策を出しておられるということで、なかなかそれがうまくまとまらないというところに問題があろうかと思います。
  203. 土井たか子

    土井委員 答案に書く解答としてはそういう御答弁だろうと思うのですね。ただ、しかし、これはどうなんでしょう。一口に言って、国際間のつき合いというのは何と言っても互恵平等ということの原則に基づかなければならないということが言えます。日米航空協定ほどこの原則に離反した条約はないというふうに言うことができると思うのです。これは、世界にこれぐらい、いまの互恵平等という点から言ったら離反した条約はなかろうとさえ言えるように思いますが、外務大臣、このようにお考えになっていらっしゃいますか。
  204. 園田直

    園田国務大臣 日本と米国の航空状況は非常な不均衡であることは御発言のとおりであります。したがいまして、この不均衡を是正すべく努力をしておるわけでありますが、また一面、日本国内の航空体制というものももう少し考慮をしなければ、チャーター便の自由化といった場合にはアメリカだけが得をして日本は何も得をせぬ、こういう事情等もあるわけであります。いずれにしても、アメリカは航空協定の改定に応ずるということを明言しましたし、それからその他の問題についてもいろいろ話し合っておるわけでありますが、最後には、この成田空港がいつ開港になるかどうなるかわからぬという時点で、成田空港に対するスロット、離着陸の枠などというものを決めてしまおう、こういうことでありましたので、暫定協定に至らず帰ってきたわけであります。
  205. 土井たか子

    土井委員 いま大臣がお話しになった経緯もあるかと思いますけれども、これ、いかがなんですか。日米航空協定については二つも実は密約か過去にあったのじゃないですか。一つは昭和三十四年に輸送力条項の適用に関する合意議事録というものがありますし、六年おくれて昭和四十年に、日米外交当局間で秘密合意文書を正当とするために取り交わされた交換公文というものがございます。わかりやすく言うと、アメリカ側が一片の通告で太平洋線の定期便については自由に増便させることができて、しかも日本側がそれを拒否できない、自動認可をしなければならないということになっているわけですね。もちろん、その内容日本の国内法である航空法やこの航空法の施行規則で決めているところと矛盾するということは言うまでもございません。ですから、国内法と矛盾するような密約を片やで結ぶ。それだけでなくて、その六年後に外務省は当時のパーシー駐日公使との間に日米航空協定が存続する限りこの議事録は有効であるという立場を認めるということにもなったわけなんですが、こういう密約について、日本の国内のいろいろな法令と非常に関係が深い、日本の国民の権利義務にとって直接間接関係のあるこの条約内容であるにもかかわらず、このことに対してこれをこっそりと結んで国民に知らせない、国会にもこれを諮らないというふうな行き方は私は常識では考えられないと思うのです。当時の事情は、いろいろ日米間であったことは事実ですよ。しかしながら後々この密約の及ぼす影響というのは絶大だということを考えますと、こういう結び方をしたということは私は穏当ではないと思いますけれども外務大臣、これをどういうふうにお考えになっていらっしゃいますか。
  206. 中島敏次郎

    ○中島政府委員 ただいま御指摘の合意議事録なるものが存在しますことはかってこの委員会でも御論議がありましたところで、そのとおりでございます。一九五九年に両国政府の航空当局間で航空協定の輸送力条項の適用について細目を取り決めたということでございます。一九六五年の航空交渉の際にその五九年の合意議事録の効力を確認するために文書の往復をしたことがある、これは交渉の過程における担当者の間で取り交わされたものである、こういう事実でございます。  その中身は、いま先生もお触れになりましたように輸送力の事後審査主義を確認するものであるということでございまして、アメリカは航空協定を戦後結びまして以来、一貫して輸送力につきましては事後審査主義という立場を貫いているわけでございます。わが国もその日米間の協定をつくりまして、この事後審査主義の原則そのものはこれを受け入れるということでやってきたわけでございまして、これはその航空法に基づくところの運輸大臣の権限の大枠の中で処理するということで行われている次第でございます。
  207. 土井たか子

    土井委員 それは、事実についての事情説明は結構でございます。外務大臣いかがですか、そういうふうな経過があったにしろ、これはやはり国民の権利義務ということに非常に重要な影響を与えますよ。そして一たんこういうことを締結すればこの航空協定が存続する限りこの不平等な取り決めに日本は準じなければならない、こういうことになってしまっているわけですね。こういうことが隠密裏に日米間で結ばれて、国会でも追及されると初めて、実はということを言い出されるようなかっこうになっていた。このこと自身はまことに私は正常じゃないと思うのですがね。いかがでございますか。
  208. 園田直

    園田国務大臣 過去のことでございますが、まことに遺憾でございます。
  209. 土井たか子

    土井委員 そのまことに遺憾な状況というのが実は今日の大変な苦境というものをもたらしているということにも私はなると思うのですが、今回、カーター大統領は昨年の十月でしたか議会に親書を送られて、その中で運賃自由化による新たな市場の開拓で、アメリカ国民だけでなくて国際航空全体の利益を図るということを述べて、IATAという国際カルテルに挑戦することを宣言しているわけですね。アメリカが航空協定交渉において非常に強い態度をとるのは、こういう大統領の方針があるからではなかろうか。そういうことからすると、こういう問題についてわれわれとして気にかかるのは、やがて来るべき五月の日米首脳会談においてこういうことが議題になるかどうかという問題でありますけれども、これはいかがですか。五月の日米首脳会談で当然こういう問題も議題になるのでしょうね。そして日米間においてのこの不平等を是正することに対して最大の努力を払われるということは当然だと思いますが、いかがなんですか。
  210. 園田直

    園田国務大臣 今度の日米首脳者会談では航空協定の問題は議題になっておりません。総理が先日委員会で首脳者会談でこの問題を大統領に注意を喚起したい、こういう発言をしておられるわけでありますが、これはなかなか微妙な問題でありまして、実は交渉団が帰ってきて私に報告に来て劈頭、うまくまいりませんでした、暫定協定をつくるに至りません、申しわけありません、こう言いましたから、大臣は、よく振り切って帰ってきた、こういうことを言ったのでありますが、私はこの航空協定をもっと腰を落ちつけて、アメリカの方は早く協定に結末をつけようという強い意欲でありますけれども日本はそれを振り切って成田空港のスロット問題あるいはその他の問題等もいろいろ考慮して、まあ向こうが改定に応ずるということを言ったわけでありますから、廃棄というわけにはまいりませんが、それくらいの決意でやらぬとこれはなかなか大変だと思いますので、注意を喚起する程度で議題にしないでいただきたいと私は思っておるわけであります。
  211. 土井たか子

    土井委員 いま非常に消極的な外務大臣の御答弁でございますけれども大臣も御存じのとおり、イギリスの例を引き合いに出すことが、この節、ある意味では私は重要な問題を示唆しているのではないかと思います。バーミューダ協定と呼ばれた米英航空協定をイギリス側は非常に高姿勢で破棄しまして、そしてアメリカ側から多くの譲歩をかち取ったという例がございますね。昨年六月に新協定締結に成功したわけでありますが、わが国もこのイギリスのようにただいまの不平等きわまりない日米航空協定というのを破棄するくらいの強い姿勢が必要なんじゃないか、それくらいの強い姿勢で臨まなければ不平等是正というのはできないのじゃないかと思われるわけでありますが、いかがなんでございますか。
  212. 中島敏次郎

    ○中島政府委員 イギリスの場合の事実関係につきましては先生ただいま御指摘のとおりであろうと思います。ただイギリスの場合につきましてはわが国と違いまして、いまアメリカ側が求めておりますところのチャーターの自由化、それから低運賃の導入という点につきましては非常に前向きの姿勢を従来からとっておりまして、米英間にその共通の基盤があったということがバーミューダIIの成立及びその後のチャーターその他についての新協定の締結について非常に力があったという実態が一つございます。他方、わが国の場合にはいまのチャーターの自由化の問題につきましても、また低運賃の問題につきましても、大きな航空政策の問題としてわが国としてどうこれを考えていくかという点を今後検討していかなければならない事態でございまして、そういう意味におきましてアメリカ側の航空政策と日本側の航空政策とが相当の隔たりがある、こういう実態があるわけでございます。  いま廃棄の点にお触れになられましたが、先ほど大臣からもお触れになりましたが、私どもといたしましてはいずれにしろ交渉を継続する、ことしの秋にはこれを再開するということで双方が問題点をじっくり詰めていこう、こういうことでございますので、その毅然とした態度で粘り強く交渉するということで、今後の交渉の成果を期待いたしたいというふうに考えている次第でございます。
  213. 土井たか子

    土井委員 粘り強い交渉もそれは結構でございますけれども、いたずらに時間を引きずっていっても決して成果を生まない交渉もあるわけでありまして、一つはこの見通しに対しては相当強くこちらとしては構えていなければ、このことに対してもう半歩も前進はないだろうと私は思います。これは非常に不平等きわまりない条約を前提にしての交渉でありますから、したがってよほどのことでないとこのことに対してはうまく事は動かないであろうと思われます。  もう一つ、この航空協定の日米交渉について日本側にとってうまくいかないことの理由の一つに、成田空港の空港事情があると私は思うわけであります。いかがでございますか、この点は。
  214. 中島敏次郎

    ○中島政府委員 仰せのとおりだろうと思います。
  215. 土井たか子

    土井委員 仰せのとおりとおっしゃるのは、具体的にはどのようにそのことを認識されていますか。
  216. 富田長治

    ○富田説明員 お答え申し上げます。  実は成田につきましては、まだよくわかっていないといいますか、やってみなければわからない要素がずいぶんございます。たとえば油の量でございますけれども、これも、実際運航してみないと、どれだけ油があってどれだけの飛行機が飛ばせるかよくわからない、そういう不確定要素がございます。その辺をアメリカがはっきりしろと言うものでございますから、この段階でわれわれははっきりできない、変に約束しても守れなくなる事態になったら困るというようなことで、非常に問題がむずかしくなっているわけでございます。
  217. 土井たか子

    土井委員 はっきりできない要素があるような空港について開港を急ぐということ自身が大変無理なんですよね。無理を承知の上で、しかし成田開港ということをしきりに宣伝して、成田開港するならば増便をと、向こうが迫ってくるのはあたりまえなんです。そのことを、不平等条約を前提にして受けて立たなければならない立場が日本にはあるのじゃないですか。成田開港といったって、これ、先ほどのあのハプニングがないといたしましても、暫定開港でしょう。外国の航空会社にとって、開港して一体メリットがあるのでしょうか。いかがですか、羽田と発着回数は大変に違ってきますか。また、羽田と比べて大変にこの辺が有利であるという点があったら知らせてください。
  218. 富田長治

    ○富田説明員 成田の問題でございますが、そもそも、もう羽田で外国航空はもとより国内航空もふやす余地がなくなったということから、新しい空港をつくらなければならないということで成田に新国際空港を建設したという事情は御存じのとおりでございます。残念ながら油の問題でいま不確定要素があると申し上げましたけれども、少なくとも現在飛んでいる飛行機は飛ばせるということは、これは確実でございます。ただ、これをふやすについては、実は本格的なパイプラインができます三年後でなければ飛躍的な増加は見込めないというのが現状でございまして、したがいまして、将来の楽しみとしては相当たくさんの飛行機が飛ぶようになる、羽田のままではそれはとうていできないことであるということが大きなメリットかと思います。
  219. 土井たか子

    土井委員 パイプラインができてみなければそれはわからない。三年先になるか、四年先になるか、それもよくわからないのですよ、三年先というのがただいま予定になっているわけでありまして。しかし、現実の問題は、航空交渉の上ではこの成田開港ということが大変大きなキーポイントになることも事実なんです。だから、まだ不確定要素が非常にたくさんある、海のものとも山のものともわからないこの成田空港というものを問題にしつつ交渉をやるところに、大変日本にとっては負い目がある、こういう問題があるのじゃないですか。  さらに、大臣にその点はお尋ねしたいと思うのですが、今回成田への移転というものを外国の航空会社に要求する正当な法的根拠は、日本としてはどこにございますか。いかがでございますか。
  220. 富田長治

    ○富田説明員 民間国際航空は、シカゴ条約というもので、国際的に同意された条約がございますが、そのもとによって運営されているわけでございますが、その中で、飛行場はそれぞれの政府が決めることができるというような規定になっていると承知いたしております。したがいまして、今後東京の国際空港はここであるということを日本政府が決めることになる、そういうわけでございます。
  221. 土井たか子

    土井委員 日本政府が決めれば当然それに準じなければならないという義務が、いまおっしゃった条約であるのですね。条約に加盟していない国はどのようになるのですか。
  222. 富田長治

    ○富田説明員 条約には、実はそこまで細かく、たとえば従わなかったときにどうするかというようなことは書いてございません。ただ指定する権利があると書いてあるだけでございます。一方、これは国内法で見ますと、すべて日本に参ります飛行機は、事業計画を運輸省に提出しまして、その認可を得る必要がございます。したがいまして、その認可で、成田へ行かなければ飛行機は飛ばしてはならないということをわれわれが各外国航空会社に申しつける権利がございます。
  223. 土井たか子

    土井委員 認可の問題もありますし、それからさらに税関の問題もあるでしょう。したがって、これは明確に言うと、成田に移らなければならないという権利義務関係は、はっきり明確に規定した法律的根拠というのはないはずなんです。ただしかし、日本政府として成田に移転をしてくれということを外国の航空会社に強要する場合に、問題になるのは、いま申し上げた税関の関係というのが非常に出てくると思いますね。もし外国の航空会社が、行くことをいやだと拒否されたらどうなりますか。
  224. 富田長治

    ○富田説明員 できるだけそういうことのないように行政指導を続けてまいるということが第一でございますが、それにもかかわらず、どうしてもいやだというような場合には、航空法の第百二十九条の四によって事業計画等の変更命令を出すことになろうかと思います。
  225. 土井たか子

    土井委員 大変強硬策をおとりになるということがその結果出てくるわけでありますが、そういう強硬策をとらなくても、実は国際空港としてこれは非常に有力な、有能な空港だということになったら、先を競って航空会社というのは移転を希望するはずだと思うのですよ。成田の場合は、客観的に見て羽田に比べると大変にいい空港だということが言えるかどうかというのは、これはもうあらゆる資料に基づいて言った場合に、思わしくない点ばかりが出てまいります。目の前のことを取り上げただけでも、経費の上から考えて、正式にはまだ決定をされていないでしょうけれども、空港使用料とか着陸料とか給油施設の使用料なんというのは羽田よりも高くつくという問題も出てまいりますし、それからアクセスの点から考えましても、羽田に比べて不便であるということはもうはっきり言えます。  さらに、航空会社がこの空港を使用する場合に、国際空港というのは少なくとも二十四時間その空港が使用されるということが原則として考えられていなければならないはずであるということは一応言えると私は思うのです。いままで外国の空港でも、ロンドンの第三空港やケネディ空港の大拡張というのも、空港建設のもたらす環境破壊ということからこれをあきらめた。それはなぜかというと、やはり空港使用時間帯について制限をしなければならないという問題がそれに付随して出てくるからですね。今回のこの成田について言うと、どうなんですか、少なくとも午後十一時から翌朝六時までの運航規制が行われることは、現にもう決まってしまっているのでしょう。いかがなんですか。
  226. 富田長治

    ○富田説明員 そのとおりでございます。  一言つけ加えさせていただきますが、ほとんどの国で、ヨーロッパ各国において、カーフユーと申しまして、夜間発着の禁止をいたしております。
  227. 土井たか子

    土井委員 ただ、それは在来空港について問題はあるわけであって、どうなんです。新しく空港建設をする際に、たとえばワシントンのダレス空港なんかは、ジェット機の就航を前提として設計計画して、非常に広大な敷地面積をとって、そしてその内容は、周辺に対して環境破壊、つまり航空機の騒音を初めとする公害が及ばないことという配慮をしながら、;十四時間、飛行機の発着陸が可能であるという条件を備えるということに非常に苦慮したといういきさつがあるわけですね。少なくとも国際的な常識から考えると、国際空港というのはそうあってしかるべきだと思われます。その点の配慮というものが、どうも今回の成田空港においては余り見られないわけです。しかも、アクセスの点からいっても先ほど申し上げましたとおり不便である、使用料は高くつく、いろいろな点から考えて、外国の航空会社に対して羽田からこの空港に移転することを強要するということは、外務大臣いかがですか、日本の国際的な社会においてのいろんな信頼をかち取っていく上からいってプラスでしょうかマイナスでしょうか。私は、成田空港のもたらしていることは、今回の日米交渉ということも、もちろんもう日本にとっては非常な負い目になっているということも事実でありますけれども、国際間に今後及ぼす影響というのは非常に大きいということを言わざるを得ないと思います。特にいま供用を開始しようとしている滑走路についても、当初の計画の四千メーターからはるかに削り取られた三千二百五十メーターと、寸詰まりになってしまっている滑走路たった一本なんですね。横風用の滑走路も建設しないままで供用開始ということを早くもしようというこの実情であります。こういういろんな点を勘案して、外務大臣どのようにこの点をお考えになっていらっしゃいますか。
  228. 園田直

    園田国務大臣 新空港開設に当たって他国の航空会社の飛行機を事業変更を求めるなどというような強制的なことではなくて、相談ずくでやるようにすべきだと考えております。
  229. 土井たか子

    土井委員 ただいまのその御答弁の中には、成田空港の供用開始ということに対しては、もうすでに政府の統一見解で来る何月何日というのは発表されてはおりますけれども、しかし、これはあくまで暫定開港です。暫定開港の中身もまだまだ、先ほど航空局当局がお答えになったとおり、不確定要素というのは多々あるわけですね。供用開始もわずかに滑走路が一本、その一本も四千メーターはるかに足りない。いろいろなこれに付随する施設に対してまだまだ不十分なままでの供用開始というかっこうであります。こういう問題に対して、外務大臣として一言あってしかるべきだと思うのですが、いかがでございますか。
  230. 園田直

    園田国務大臣 各国の航空会社が信用して成田を使えるように諸設備を早く完備をし、国際信用を早くかち取るように努力するよう、航空関係大臣にも注意を喚起いたします。
  231. 土井たか子

    土井委員 ただ、ここの場所でのそういう御答弁というのは、これは私たちとしてはここで確認することができるわけでありますけれども、実は、日米航空交渉というものの基盤の一つに、この成田空港の開港問題というものもかんで動いていっているわけでありますから、日米首脳会談の中でこれは取り上げられる議題にあらずということで全くこれに触れないというわけにはいかないだろうと私は思うのです。この事柄は日米首脳会談の中で取り上げられる議題から外れましても、重要な話題の一つとして日本側からむしろ持ち出して、向こう側に問いかけるということであってしかるべきだと思いますが、いかがでございますか。
  232. 園田直

    園田国務大臣 総理が答弁されたとおり、大統領に注意を喚起したいと言っておられるわけでありますから、いまの御発言総理にもお伝えをいたします。
  233. 土井たか子

    土井委員 終わります。
  234. 永田亮一

    永田委員長 本日は、これにて散会いたします。     午後二時三十三分散会