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1978-03-29 第84回国会 衆議院 外務委員会 第9号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和五十三年三月二十九日(水曜日)     午前十時九分開議  出席委員    委員長 永田 亮一君    理事 大坪健一郎君 理事 井上 一成君    理事 土井たか子君 理事 渡辺  朗君       稲垣 実男君    川田 正則君       鯨岡 兵輔君    小坂善太郎君       佐野 嘉吉君    竹内 黎一君       中山 正暉君    久保  等君       高沢 寅男君    中川 嘉美君       正森 成二君    伊藤 公介君  出席国務大臣         外 務 大 臣 園田  直君  出席政府委員         防衛庁防衛局長 伊藤 圭一君         外務政務次官  愛野興一郎君         外務省アジア局         長       中江 要介君         外務省欧亜局長 宮澤  泰君         外務省経済協力         局長      武藤 利昭君         外務省条約局外         務参事官    村田 良平君         外務省国際連合         局長      大川 美雄君  委員外出席者         外務大臣官房書         記官      久米 邦貞君         参  考  人         (国際協力事業         団副総裁)   久宗  高君         外務委員会調査         室長      高杉 幹二君     ――――――――――――― 委員の異動 三月二十九日  辞任         補欠選任   松本 善明君     正森 成二君 同日  辞任         補欠選任   正森 成二君     松本 善明君     ――――――――――――― 本日の会議に付した案件  国際協力事業団法の一部を改正する法律案(内  閣提出第二〇号)  国際情勢に関する件      ――――◇―――――
  2. 永田亮一

    永田委員長 これより会議を開きます。  国際情勢に関する件について調査を進めます。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。高沢寅男君。
  3. 高沢寅男

    高沢委員 外務大臣にひとつお願いをいたします。私は、きょうは日ソ平和条約に関する問題で見解をお尋ねしたいと思います。  御承知のとおり、日本ソビエトの国交が回復いたしましたのは日ソ共同宣言で、昭和三十一年のことでありますから、あれからもうすでに二十二年たっているわけであります。あの共同宣言の中では、日ソ平和条約について引き続き両国で協議する、そしてそれができたならば歯舞色丹を引き渡す、こういうふうな規定になって、当然これを受けて日ソ間の平和条約というものも精力的にその妥結のための努力が進められるべきであったわけですが、これは相手のあることでありますから一方的にどうこうということは言えませんが、それにしても二十二年という、これは余りにも長かったのじゃないか。現在は福田内閣でありますが、その前ずいぶん代を重ねて各内閣がありましたが、その間に日ソ平和条約努力が果たしてわが方の側からも前向きに行われたのかどうか、これについての大臣のお考えをひとつお聞きしたいと思います。
  4. 園田直

    園田国務大臣 共同声明後、合意によりまして、平和条約交渉に基づいてソ連日本の間の定期外相会議をやりながら交渉してきたわけであります。その具体的な経緯については、事務当局から説明をいたさせます。
  5. 宮澤泰

    宮澤政府委員 ただいま御指摘になりました日ソ共同宣言の中に「日本国及びソヴィエト社会主義共和国連邦は、両国間に正常な外交関係が回復された後、平和条約締結に関する交渉を継続することに同意する。」こういう一条がございますので、これに基づきまして日本政府はその後今日まで引き続き、この共同宣言交渉のときに合意に至りませんでした北方四島のうちの、国後択捉返還ソ連側に求めるということで、あらゆる機会を通じてソ連側にその要求を続けてきたわけでございますが、不幸にしてソ連側の同意するところに至らず今日に至ったわけでございます。特に、一九七二年一月の日ソ外相定期協議の際、今後引き続き定期協議の際には平和条約の問題を取り上げる、こういう合意ができまして、その後鋭意これを続けて今日まで至ったわけでございます。
  6. 高沢寅男

    高沢委員 そのことに関係するわけでありますが、ことしの一月外務大臣がモスクワを訪問されたときに、ソビエトの方からは日ソ善隣友好条約草案が渡された。こちら側は向こうに対して日ソ平和条約のいわば草案といいますか、それを渡された、こういうふうにお聞きしているわけでありますが、その後ソビエト側では善隣友好条約の案を発表するというようなこともあったわけですけれども、そうすると、こういう問題は大体相互主義ということもあるわけでありますから、日本側日ソ平和条約向こうへ渡した案を発表されて、そしてソビエト側の案とこちら側の案の両方も含めた上でひとつ国民の検討にゆだねる、こういうふうなやり方をされたらいかがかと思うのですが、いかがでしょうか。
  7. 園田直

    園田国務大臣 ただいま御発言の、先般ソ連側に提示いたしました日本側条約案骨子でありますが、これは当然のことながら四島一括返還を基本にして出したものではありますが、この案は共同声明合意による平和条約交渉一環として行ったものでありますから、この内容を発表するつもりはございません。
  8. 高沢寅男

    高沢委員 内容を発表しない、こういうお考えでありますが、やはり外交あり方としては、今日では国民外交という言葉がよく使われる。かつての宮廷外交時代とか、あるいはその後官僚外交という言葉があったり、結局外交の当事者だけはいろいろなことは知っているが、国民は少しもわからぬ。事柄がいよいよ調印されて固まった段階で初めて国民は知るというようなことが、いままでの外交あり方ではなかったかと思うのですが、この問題にしても、これほどすでに領土問題ということが国民議論にもなっているとすれば、ここでこの草案を発表する。相手側ソビエトは手交されてわかっているわけでありますから、これを発表するということはむしろ対日本国民という意味から必要性が非常にあるのじゃないか、こう考えますが、もう一度外務大臣のお考えをお聞きします。
  9. 園田直

    園田国務大臣 仰せのとおりではございますけれども、日本側が出しました平和条約骨子ソ連側が提示いたしました善隣協力条約の案なるものとは、これは並行して並べるべきものではなくて、平和条約が一応妥結をしてから次に検討するのが善隣友好条約ということになるわけでありますから、したがいまして、日本の方では両方合意による平和条約交渉一環として出した文章でありますから、これをいまの段階で公表するつもりはございません。
  10. 高沢寅男

    高沢委員 そうすると、再度にわたってお尋ねしましたが、公表はしない、こういう大臣お答えでありますが、それはそれとして、私はその内容として考えられることについてお尋ねしたいと思うのであります。  四島の返還ということは当然その草案には織り込んである、こういうふうなお答えであったわけですが、この千島あるいは南樺太という関係については、サンフランシスコ平和条約の第二条(C)項で日本はそこに対する権利権原請求権をすべて放棄する、こういうふうなことになっているわけであります。これはすでに国際的に成立をしているサンフランシスコ平和条約であるわけですが、その千島南樺太に関するすべての権利権原請求権放棄するということと、この四島返還と言われる政府立場との関係を私は改めてお聞きしたいと思うわけです。私が記憶しているところでは、このサンフランシスコ条約が結ばれて日本国会の承認を受けたその国会の当時の論議の中で、択捉国後、つまり南千島放棄した千島の中に入っているのかどうか、こういう議論がありまして、当時の吉田内閣西村条約局長お答えでは、放棄した中へ南千島は入っている、こういうふうな答えがあったと思うわけですが、このことと、いま択捉国後、まあ歯舞色丹はもちろんでありますが、そういうふうな返還要求をされることとの関連は国際法上どういうことになるのか、お尋ねをしたいと思います。
  11. 宮澤泰

    宮澤政府委員 ただいま御指摘西村条約局長答弁が行われましたのは昭和二十六年十月十九日の衆議院におきます委員会の席上でございます。これに関しましてその後政府の方で統一見解をまとめまして、昭和三十一年二月十一日の衆議院外務委員会におきまして森下政務次官がこの西村条約局長答弁を修正されて政府統一見解を述べられたわけでございまして、この中で「国後択捉の両島は常に日本領土であったもので、この点についてかつていささかも疑念を差しはさまれたことがなく、返還は当然である」このように述べられております。  補足いたしますと、サンフランシスコ条約で、ただいま高沢委員指摘のとおり、日本千島南樺太権利権原放棄いたしましたけれども、この放棄された千島の中には、国後択捉は入っておらない。そしてその根拠といたしまして、政府は、日本が一八五五年及び一八七五年に帝政ロシアと結びました日魯通好条約及び樺太千島交換条約の中に挙げられております定義をその一つの非常に権威のある歴史的根拠として用いておるわけでございます。
  12. 高沢寅男

    高沢委員 いま宮澤さんの説明された歴史的ないきさつは私も承知しております。しかし私がいま問題にしているのは国際法的な立場からのことであって、サンフランシスコ条約では、放棄した、その前提国会でそういう政府答弁があって、その前提国会で承認されて、その前提批准書も交換した。しかしその後になって、いやあれは放棄していなかったのだ、こういうような変更が、これは政府見解ではあるけれども、そういうことは国際法上、サンフランシスコ条約に参加した国々との関係においては一体いかが相なるのか、もう一度お聞きしたいと思うのです。
  13. 宮澤泰

    宮澤政府委員 サンフランシスコ条約の二条C項におきましては千島列島という言葉が使われておりまして、英語のテキストではザ・クリール・アイランズと書いてございます。したがいまして、そのクリール・アイランズないし千島列島の中にこの国後択捉が含まれておるかおらないかという問題でございますが、サンフランシスコ条約締結当時におきましてはこの内容定義が必ずしもはっきり行われておらなかったわけでございます。したがいまして、西村条約局長国会におきまして、ただいま高沢委員指摘のような答弁をされましたが、これは当時の状況を反映いたしましたものといたしまして、それなりの意味はあったかと思いますけれども、その後しさいにいろいろ検討いたしまして政府統一見解を出しましたことは、ただいま御説明しましたとおりでございます。
  14. 高沢寅男

    高沢委員 そういたしますと、もう一つその次へ進めまして、千島南樺太放棄したことはサンフランシスコ条約で確定しておる、しかしその中の四島はそうではない、こういうお立場ですが、そうすると四島以外の千島、それから南樺太、これについてはサンフランシスコ条約放棄した、こうなっておりますが、ではそれはどこの領土になるのかという帰属サンフランシスコ条約では出されていないわけであります。しかしその帰属というものは、当然国際的な関係において確定しなければならぬということになろうかと思うのです。そうすると、これから日本政府ソビエト平和条約を結ぶとき、その平和条約の中では、択捉国後から北の方千島、それから当然南樺太、これはソビエト帰属するということを確定されるのかどうか、今後の園田外務大臣が渡した草案の中ではそういうことになっているのかどうか、この関係をお尋ねしたいと思うのです。
  15. 宮澤泰

    宮澤政府委員 日本千島列島及び南樺太権利権原放棄いたしたわけでございますから、これの帰属について云々する立場にはないわけでございます。したがいまして、ソ連との間に日本が取り決めるべきことは、日本放棄しておらない国後択捉歯舞色丹の四島、このうち二島、歯舞色丹はすでに日本に返されることが一応共同宣言の中で決まっておりますので、したがいまして残り国後択捉日本返還してもらうということを取り決めることが、結ばるべき日ソ平和条約の最も重大な点でございます。
  16. 高沢寅男

    高沢委員 そういたしますと、われわれが放棄した南樺太や、択捉国後以外の千島これはどこのものかわからぬ、しかしそれは国際的になるようになるのだということになるわけでしょうか。それはサンフランシスコ条約に参加した国々ソビエトとの間で話し合って決めてくれ、こういうことになるのかどうか、あるいはまた、事実上ソ連の有効な支配が行われているから、それでそういうものとして認めるというようなことになるのか、その関係をもう一度お尋ねしたいと思います。
  17. 宮澤泰

    宮澤政府委員 日本は桑港条約におきまして、これに調印いたしました連合国に対してこの権利権原放棄したわけでございますので、この所属その他につきまして日本としては云々する立場にないということでございます。
  18. 高沢寅男

    高沢委員 そうすると、日本は云々する立場ではない、それは連合国の問題だ、こうなってまいりますと、連合国にはヤルタ協定というものが出てくるということになるわけであります。ヤルタ協定日本は認めていない、こういうことですね。そういたしますと、これは何か三すくみの議論になるのじゃないですか。放棄をした、それを決めるのは連合国だ、そうなってくると、連合国議論になればヤルタ協定が出てくる。日本ヤルタ協定は認めておりません、拘束されません、こうなってくると、何かじゃんけんぽんの三つの関係がぐるぐる回るというようなことじゃないかと思うのですが、いかがでしょうか。
  19. 宮澤泰

    宮澤政府委員 日本は、この日本放棄いたしました島嶼ないし領土帰属連合国がどのように決めるかにつきまして、云々する立場でございませんので、これは連合国が決めるべきことだと考えております。
  20. 高沢寅男

    高沢委員 私がいま言ったのは、それはわかりました、それでは連合国が決めるとなればヤルタ協定がありますね、こう言ったわけです。では、このことについて宮澤さん、あなたの見解を聞かせてください。
  21. 宮澤泰

    宮澤政府委員 ヤルタ協定につきましては米国政府の正式な見解が示されておりますが、これにつきまして、ヤルタ協定はそれ自体として執行力を有するものではなく、または協定に表明された目的の最終的決定意味するものではなかったということでございまして、このヤルタ協定によって最終的な領土帰属が決められたものとは私は解しておりません。
  22. 高沢寅男

    高沢委員 そういたしますと、また私はおかしなことになると思うのですが、アメリカは、ヤルタ協定というものに拘束されるものじゃない、こう言った。そうするとルーズベルト大統領が当時スターリン首相に約束した南樺太千島日本からソビエトに譲るというこのことは拘束力はないのだ、国際法上の力はないのだ、こういうことですが、そういたしますと、カイロ宣言なりあるいはポツダム宣言趣旨は、日本戦争で取った領土日本放棄する、こうなっております。戦争で取った領土となれば、まさに南樺太はそうであります。しかし千島は、あなたは幕末時代から明治時代条約を引かれましたが、やはりその条約によって、択捉国後もそうであるけれども、択捉国後から北の方千島も、これは日本戦争で取った領土ではないのであります。それをそれではなぜダレスがつくったサンフランシスコ条約草案放棄するようになってきたのかということであります。ヤルタ協定アメリカは拘束されないという立場ならば、そのアメリカダレスがつくったサンフランシスコ条約千島放棄というものがそもそも出てくるはずはないのでありますが、これは一体どういうわけでしょうか、宮澤さんの見解をお聞きします。
  23. 宮澤泰

    宮澤政府委員 桑港平和条約は、当時の日本連合国と平和を回復いたしまして国際社会に復帰するための条件でございまして、そしてこの条約草案は、主として米国その他の連合国側でつくられたものでございまして、日本はこれに対して留保をつけるとか、あるいは修正を求めるという立場でございませんで、一に平和を回復して国際社会に復帰するための条件としてこれを受諾したものでございます。  どのような意図で、この日本戦争で略取したものでない千島等放棄するような条項が挿入されたかということにつきましては、日本及び私もただいまから云々する立場でないと考えております。
  24. 高沢寅男

    高沢委員 しかし、実際上日本政府サンフランシスコ条約のできた後で、日ソのそういう領土交渉をやられる過程で、たとえば先ほど言った西村条約局長は、当初は、南千島放棄した中に入っておる、こう言われておる、その後で放棄した中には入っていないと見解を訂正されている、その過程で、当時のアメリカダレスのそういう趣旨発言を求めたりというふうなことをいろいろされたけれども、択捉国後以外の千島については、一度といえどもアメリカに対してそういうふうな見解変更を求めるようなことをされたことはない、とすれば、この択捉国後以外の少なくも千島は、これは放棄したことはもう当然のことであり、当然のことというのは、その前提に、連合国申し合わせがあるからこういうことになるのじゃないかと思うのですが、そういたしますと、やはり択捉国後も含めて、この連合国申し合わせというものがかぶさってくるのじゃないのか、私はこういうふうに考えるわけであります。  そうであるとすれば、この際、四島ということでソビエト交渉されておるということでありますが、この千島帰属については、私はむしろ、改めてソビエトともはっきりと話し合いをされるのが、かえってこのあいまいな状態を明確にするためにも必要ではないか、こういうふうに考えるわけですが、いかがでしょうか。
  25. 宮澤泰

    宮澤政府委員 日本千島列島放棄いたしまして、国後択捉歯舞色丹はこの中に入っておらないという立場をずっととり続けておりますので、この点はソ連に対しても十分に主張をいたし、そしてその返還を求めているわけでございますが、日本放棄いたしました部分、すなわち千島列島につきましては、ソ連に対してこれを云々する立場ではないということでございます。
  26. 高沢寅男

    高沢委員 それでは私、最後にもう一つだけお尋ねしたいと思います。  先ほど言いました日ソ共同宣言、あの中では、日ソ平和条約を結んだその段階歯舞色丹を引き渡す、こういうことになっております。これは日本政府も結んだ日ソ共同宣言であります。  それから、現在日本政府は、ソ連に対して歯舞色丹だけではなくて、択捉国後返還要求されている、それが入らなければ平和条約は結べない、こういう立場でおられるわけです。  これは私は、いまの日ソ平和条約に対する日本政府立場と、二十二年前に日ソ共同宣言を結んだときの日本政府立場との間にはそういう違いが出てきているのじゃないか、こう思うのです。そうであるとすれば、むしろいまの日本政府立場を通していくためには、二十二年前の日ソ共同宣言のその部分平和条約を結んだら歯舞色丹を引き渡すというこの部分については、たとえば、廃棄するというようなことができるのかどうかわかりませんが、その部分についてのむしろ何らかの変更というものを、ソビエト側に提起するということも必要になるのじゃないかと私は思いますが、これはいかがでしょう。
  27. 宮澤泰

    宮澤政府委員 日本共同宣言を行いまして、その中で歯舞色丹の将来の取り扱いについてはすでに合意が成立したわけでございまして、ただいま高沢委員指摘のとおり、平和条約ができた後で引き渡すということが合意されたわけでございます。  それで、同じその共同宣言の中で、日ソ両国外交関係を回復しました後に、引き続き平和条約交渉を行う、こういう合意ができておるわけでございまして、なぜそのときに平和条約ができなかったかということは、領土問題につきまして合意ができなかった、すなわち日本側から申しますれば、国後択捉返還について合意ができなかったということで、歯舞色丹取り扱いだけは合意ができたということでございますので、これはこのまま今日なお有効でございます。  したがいまして、残り部分国後択捉につきまして、その返還について合意ができれば、そこで平和条約ができるわけでございますが、その交渉のときに歯舞色丹、すでに取り扱いが決まっておりますこれとあわせて、四島の返還を求めて条約を調印しようというのが日本政府態度でございます。
  28. 高沢寅男

    高沢委員 私、日ソ平和条約関係のことでお尋ねいたしまして、きょうはこれで終わりたいと思いますが、ただ、終わるに当たりまして、こういうふうな議論をやりますと、往々にして社会党の北方領土に対する態度というものがどうかということが出るので、念のためにそのことをひとつ申し上げておきたいと思うのであります。  社会党は、先ほど言いましたように、千島に関しては、これは戦争で取った領土ではない、こういう立場をとっているわけであります。その幕末から明治の初めにかけての日本と当時のロシアとの間の取り扱い条約は、それぞれの違いがあったにしても、戦争で取ったものではないということについては、千島全体がそういうものである、こう考えておりますから、したがいまして、われわれはカイロ宣言なりポツダム宣言なり、そういう趣旨からすれば、千島全体が日本領土として当然回復されるべきである、こういう立場をとるわけであります。  しかし、回復されるためには、その前提条件として、いまの日米軍事同盟関係であるとか、返還された千島が他日直ちに、今度はまたソビエトに対する軍事基地になるとかいうような危険性が排除される、そういうふうな前提条件があって千島全体が返還される、こういう立場社会党はとるわけであります。  その状態に行く過程の当然ステップがあるかと思いますが、そのステップ一つとして、共同宣言でわれわれが申し合わせをした日ソ平和条約を結んで、そうして歯舞色丹の引き渡しを実現する、その際に日ソの間において千島全体という領土問題がお互いの間の継続案件としてあるということを確認をする、その上に立って第二段は、先ほど言いましたような平和と中立という条件を確保した上で千島の全体の返還を実現する、というような立場をわれわれ社会党はとっているわけであります。  そういう意味においては、日ソの平和と友好関係、そしてまた日本の固有の領土の回復というような立場からすれば、私はこの立場が一番妥当な立場である、こういうふうに考えるわけでありますが、最後に、質問を終わるに当たりまして、党の立場を明らかにして、そして政府もまた、この立場が妥当な立場ではないかということを十分考慮に入れて対ソ関係を進められるように要望したい。  以上申し上げまして、私の質問を終わりたいと思います。
  29. 宮澤泰

    宮澤政府委員 ただいまの社会党のお立場、十分に拝承いたしました。
  30. 永田亮一

  31. 井上一成

    井上(一)委員 私は外務大臣に、平和問題について若干御質問をさせていただきます。  世界で唯一の被爆国であるというわが国、そんな中にあって、平和を守ることがいかに大切であるかということは、もう言をまたないわけでありますし、その大切な平和を守るためにば、大変な努力と、それからいろいろな問題に対してはとりわけ勇気ある発言、行動が必要になろうかと思います。  さて、国連史上初めてだという今回の軍縮特別総会が五月に開催されるわけでありますけれども、いままでの軍縮交渉は、一貫して大国、特に米ソ大国主義で行われてきた。そしてもう一つは、軍縮交渉の成果も、核兵器不拡散条約、いわゆるNPTなどの予防措置にとどまってきたのではないだろうか。そういう意味では真の軍縮ということにはほど遠いのではないだろうか、こういうふうに私はまず考えるわけであります。ところが今度の五月の軍縮会議は、冒頭にも申し上げましたように、非同盟諸国等の訴えで、いわゆる国連の場での軍縮が開催される初めての会議であります。またわが国も、唯一の被爆国である、あるいは平和憲法を持っている、そういう意味から、他の世界のいずれの国よりも軍縮の分野では十分に日本としては活躍ができ得るわけであります。平和を守ることで世界連帯を求める非常に絶好の機会でもあるそういう会議に臨むに当たって、政府としての基本的な姿勢をまず私はお伺いをしておきたいと思います。
  32. 園田直

    園田国務大臣 今度の軍縮総会はきわめて重大でありまして、世界各国がこれに重大な関心を持っておるところでございます。  とかく国連、軍縮総会等が、国連というルールのもとに大国が競争をやる場所になっていることはまことに遺憾でありまして、真に国連の目的、軍縮の目的にかなうように、その被害者である小さい国々の団結によってこれを指導していくという方向に切りかえることが一番必要であろうと第一に考えております。  第二番目には、皆さん方と私は政党の所属が違い、立場を異にしておりますが、人間として考える場合には、戦争をなくし、平和を願うという点については紙一重の差もないと私は信じております。したがいましてこのような場所は、真に世界から戦争をなくし、そして戦争の惨禍を受ける一人一人の人間の生命あるいは健康が損なわれないようにするということが基本でありまして、そのためには何といいましても軍縮に対するわが国の立場は、唯一の被爆国として、唯一の戦争放棄の憲法を持った日本国として、そして唯一の非核三原則を持った日本として、核廃絶ということが最終の目的でなければならぬと思います。  第一には、会議の模様もさることながら、この総会において改めて日本の、いま申し上げました日本国憲法、非核三原則、そして原爆を受けた唯一の国民であるということを強く旗に掲げまして、核廃絶に向かって具体的な問題を訴えていくことが必要であると考えておるわけでございます。
  33. 井上一成

    井上(一)委員 核を廃絶し、戦争をなくし、平和を守ることは、党派を超えて紙一重の違いもない、全くそのとおりだと思います。そのために政府としてはどう取り組まなければいけないかということが、今度は問題になるわけであります。  そこで若干具体的な問題になるわけでありますけれども、軍縮総会の準備会議が過去四回開かれておるわけでありますが、近々五回目の会議が開催されるわけであります。これらの準備会議の中での各国の主な主張、提案について大まかで結構でございますからひとつ内容をお聞かせいただきたい、このように思います。
  34. 大川美雄

    ○大川政府委員 今度の軍縮特別総会におきましては、軍縮宣言という文書と、それからもう少し具体的なことを書きました行動計画という、大体二つの基本的な文書を採択することが予定されております。いままでの軍縮特別総会の準備委員会におきましては、この文書の内容についての交渉が、特に第四回目の準備委員会の会合から始まっております。第五回目の最後の準備委員会は来月の四日から約三週間の予定で開かれる予定でございまして、そこにおきまして残されている問題点につきましての詰めと申しますか、実際には交渉でございますけれども、それが行われる予定でございまして、ただし、準備委員会段階でもってすべての残された論点が全部解決されるかどうかは若干疑わしく、中には軍縮総会そのものに持ち込まれる問題もあろうかと思います。  ごく簡単に申しますと、核軍縮を最優先するということにつきましては、これはどこの国も異存がないと言えるかと思います。ちなみに軍縮総会準備のための各国の態度は、大体申しまして西側の諸国、ソ連を中心とする東側の諸国、それから非同盟の国々、この三つのグループに大別できるかと思います。この三グループが三つどもえになっていろいろ主張し合っているというような図式でございますけれども、核軍縮を最優先するということについてば三グループとも全く一致している。ただし今度の総会では、時間も限られていることでございますし、総会の期間中に具体的な交渉が行われて、特定の分野での特定の条約が生み出されるというようなところまではなかなかまいらないであろうし、またそういうことを各国とも必ずしも目標にしていないで、むしろ先ほど申し上げたような基本的な文書を採択することを主要な目的といたしております。  行動計画の中にはいろいろの分野のことが書き込まれるわけでございまして、それが現在まだほとんど固まっておりませんけれども、一つ申し上げられることは、非同盟の国々は行動計画に記載される具体的な軍縮措置について、明確な時限といいますか、期限を付すことを主張しています。それに対しまして西側、東側の国々ば、そういった厳格な期限をつけようといってもなかなか実際的ではないから、そこはもう少しほかした形の方がいいではないか、期限をつけても実際にはなかなかそれが実行できないから、厳格な期限は付すべきではないのではないかといったようなことを述べているようでございます。  ほかに、たとえば日本を含め若干の国々は、相当の数に上っておりますけれども、核軍縮を最優先とすべきであるけれども、核軍縮に没頭する余り通常兵器の分野における軍縮あるいは通常兵器の国際移転の分野での実態把握の面も全然ないがしろにすることはよくないのではないかということで、いわゆる通常兵器の国際移転問題の実態把握について何かやるべきでないかということを主張している国々もございます。  大体そんなところでございます。
  35. 井上一成

    井上(一)委員 世界の多くの国々の人々が、非常に至難なことではあるけれども、核のない世界を築くべきだというふうに願い、またそれを目指して努力をしているということであります。核軍縮を優先するのだ、そして困難ではあるけれども一定の期限も設定すべきであるとか、いまいろいろ論議がなされておる。この総会がスローガンの応酬に終わってしまってはいけない。具体的なかつ現実的な軍縮措置につながなければ、今回の国連総会いわゆる軍縮総会は全く意味がないというふうに私は考えるわけです。だから、意味を持たすためにも、わが国の軍縮に対する取り組み、提唱、提案は非常に重要であるわけであります。  わが国を含めて、通常兵器の国際移転の実態を把握すべきであるということもその行動計画の中に織り込もうではないかというふうに、準備会議で検討をなさっていらっしゃるということでありますが、今回の総会でわが国は何を重点的に取り上げて、何を訴えていくのか、その点について、できれば具体的に、核実験の全面的禁止だとか、いま言われた通常兵器の国際移転の規制だとか、さらに化学兵器の禁止をするのだとか、世界的な軍事費の削減を提唱していくのだとか、その他、政府日本の姿勢を強く訴えていく具体的な提案事項を、私はもう少しお聞かせいただければありがたいと思います。
  36. 大川美雄

    ○大川政府委員 今度の特別総会で日本が具体的に何を提案するかにつきましては、従来からも何回か御説明申し上げておることでございますけれども、基本的には、昨年四月十五日にわが国政府が国連の事務総長に出しました「軍縮特別総会についての日本政府見解」という文書に記載されているとおりでございます。  もう少し具体的に申しますと、何と申しましても、唯一の被爆国として日本は核の廃絶を希求するものである、これこそ核軍縮の究極の目標であるというのが第一の基本的な立場でございます。それに向かって漸進的に、できることから順番にやっていくという実際的なアプローチをとるべきであるということで、具体的に掲げましたことは、第一には、核軍備競争の停止、核兵器の削減ということでございます。  第二は、核実験の全面的禁止、これは協定締結を目指してのいわゆる全面核停条約締結でございます。  それから、化学兵器の禁止、これはすでに幾つかの条約案がジュネーブの軍縮委員会に出ておりまして、交渉の基礎といいますか、素材はもう出そろっておりますから、速やかに具体的な交渉に入って化学兵器の禁止条約をつくっていくべきである。すでに生物学兵器についての禁止の条約ができておりますから、今度は化学兵器の禁止条約を速やかにつくるべきであるというのが第三点でございます。  第四点は、先ほどちょっと触れましたいわゆる通常兵器の問題でございまして、これもいきなり削減というようなことは実際的ではございませんので、まず国際間で、通常兵器がどのように、どれだけの量で、どういうふうに移転されているか、武器の貿易あるいは国際的な移転についての実態を調査することから手がけるべきではなかろうかということで、通常兵器の問題でございます。  五番目には、軍事費の削減問題について、すでに国連で基礎的な作業が行われておりますけれども、それを受けましてもう少し具体的にその作業を進めていくべきではないか、こういうことから軍事費の削減という問題を提起いたしております。
  37. 井上一成

    井上(一)委員 わが国は、先ほども申し上げましたように、唯一の核被爆国として、核については世界のどこの国よりも積極的に発言する立場に立たされている。むしろわが国は、核については世界に積極的に提言をしていく責任があるのではないだろうか。それは核によって生命を奪われた日本の犠牲者に対する、後に残された平和を守ろうとするわれわれの務めでもある、こういうふうに思うわけであります。そういう意味では、園田外務大臣が当委員会で言われた、憲法上核は持てないのだという、非常に勇気あるりっぱな発言を、実のところ私は高く評価いたしております。その気持ちは、私も全くそのとおりでありますから、これまたまさに紙一重の違いもないわけであります。  しかしながら、旬日を待たずして防衛庁は、核が持てるというオプションをどうしても残したいということでありましょう、外務大臣発言を訂正した。そのことがマスコミの中で取り上げられていく。私は、常に平和を守るべきであるということを強く訴えてきた政治家の一人として、このことによって、もちろんわれわれに近い外国の人々も含めて、日本は核を持つのかという質問を内外を問わずたくさんの人からされるわけであります。また先日は、細菌兵器も持てるのだというような、まさにエスカレートした発言政府はなさっているわけです。  何でそんな発言をしなければいけないのか、むしろ私は疑問に思うのです。なぜ今日の時点でそのような発言をしなければいけないのか。われわれは、平和を守ることと、そのためには何をなすべきかを考えることが大切であり、いまの時点でそれを論じ合っていかなければいけない。法律的に持てるとかあるいは持てないとかという論議ももちろん尽くさなければなりません。しかし、法律的に持てるということがこの間の政府見解で明らかになったわけですけれども、外務大臣、法律的に持てるということは何の意味があるのだろうかと私は思うのですよ。  われわれは核を持たないのだ、持ってはいけないのだ。法律的には持てるのだというようなことを片側で表明すると、今度軍縮会議に行って、世界の各国は、本当に日本軍縮に対して積極的な取り組みをするんだろうかという疑問を持っているやさき、どれだけの軍縮に対する説得力があるのか。それでなくても、日本が経済大国から軍事大国に逆戻りをするのではないだろうかという危惧を持っている国も一、二あるわけであります。私は、ここで外務大臣が過日おっしゃられたことは絶対正しいと思います。核は持てないのだ、持たないのだ、一切の核は持たないのだということを、私は外務大臣に重ねて御決意を承りたい。その上に立って、御苦労ではありますけれども、軍縮総会に外務大臣が御出席をいただいて、外務大臣の持論である、核を持たないというその立場に立って、各国に心から核軍縮について訴える発言をぜひ願いたい、このように私は思うわけでありますけれども、外務大臣の御所見を承りたいと思います。
  38. 園田直

    園田国務大臣 まず、軍縮総会における――事務当局から答弁いたしましたが、それについて一、二補足をいたします。  私は、今度軍縮総会でやる議題については事務当局に次のようにお願いをしております。核の方の声を大きくして通常兵器の方の声は小さくしろ。その理由は、大国の持っておる核に気がねして、大国ばかりではない全般的な通常兵器の方に逃げ込んでいるという印象を与えることはよろしくないということ。それからもう一つは、核を持って脅威を与える国よりも、その脅威を受ける国が多いわけでありますから、同盟国、非同盟国を問わず、ここの話をつければ総会を動かす可能性もあるわけでありますが、通常兵器についてはあちらでもこちらでも欲しがっておる国もあるわけでありますから、これはなかなか意見がまとまらぬ。そういう政治的な意味で、議題はひとつ核の方の声をうんと大きくして通常兵器の方は声をもう少し小さくしろ、こういうふうにお願いしておるわけでございます。  第二番目の井上さんの御発言に対しては、先般申し上げましたとおり、私は第九条の解釈については、持てるとも持てぬとも言っていないわけでありまして、その他のことについて申し上げているわけでありまして、その信念はいまでもいささかも変わりはございません。
  39. 井上一成

    井上(一)委員 もう一度重ねて私は、外務大臣、くどいようでございますけれども、外務大臣の、核は持つべきでない、持たない、そして核ほど恐ろしいものはないのだ、核を廃絶するということがわれわれ政治家を中心とする日本国民の、共同の願いであり責務であるというふうに御理解をいただいておると思うのです。そのことはまさに核は持てない、持たない、ただ政策的な非核三原則ということだけにとらわれず、私は外務大臣として出席をされる日本政府代表として強くそれをアピールする決意をお持ちであると思うのですけれども、ここでもう一度はっきりとその決意は変わらないという、あるいは若干後退したとか、あるいは変わるのだとか、何らかの決意の意を一言お答えをいただきたいと思うのです。
  40. 園田直

    園田国務大臣 核については、ごく最近も、日本が八〇年から核をつくるのではなかろうかというニュースが他国で流れたこともございます。したがいまして、こういうこともはっきり明確にしておくことが必要でありまして、国内では持てるとか持てないとか議論がありますけれども、持てる、持てないよりも、持たないという決意の方が先であることは、私、政治家としての信条でございますから、その点は総会でもはっきりアピールすべきことであると考えております。
  41. 井上一成

    井上(一)委員 私は、園田外務大臣の非常に勇気ある発言、そして核を持たないという強い信念を、総会でぜひとも強調し、各国に訴えていただきたいと思うわけであります。  さらに、わが国は世界に誇り得る平和憲法を持ち、その平和憲法は何百万人というたくさんのとうとい犠牲の上に立って、反省を込めて制定されたわけであります。そういうことから考えて、今回の軍縮会議でひとつ世界に向かって、平和国家を維持するのだ、わが日本は永世的に、わが日本の国がある限り、いついかなるときにでも平和国家として貫き通すのであるといういわゆる平和国家の宣言、平和宣言を、ぜひこの軍縮会議の折に提唱なさるべきだ、こういうふうに私は思うわけであります。外務大臣、いかがですか。ただ国内的に、いやこの委員会を通して、私は外務大臣の御意見は十分理解をしておりますけれども、さらに今度は世界の会議の中で広く世界平和宣言というか、日本のいわゆる世界平和に貢献すべき立場をより明確にするためにも、ひとつ平和国家を宣言していくというくらいの強い御決意を私はいただきたいと思うのでございますが、いかがでございましょうか。
  42. 園田直

    園田国務大臣 私は第九条をめぐって、自衛権の問題で国内で論争があることはよく心得ております。あってもよいと思います。しかしながら少なくとも第九条第一項の戦争放棄の項は、いろいろ論争はありましょうけれども、これを持ちこたえることは、将来何年か後に日本が人類の先覚者であったという唯一の旗印になるという信念を私は強く持っておるものでありますから、勇気とか決意等ではなくて、静かに淡々と、この点は総会でも申し述べたいと考えております。
  43. 井上一成

    井上(一)委員 ありがとうございます。その意はまさに平和国家を宣言するというふうに私なりに受けとめさせていただいてよろしゅうございますか。
  44. 園田直

    園田国務大臣 与野党からおしかりを受けるかもわかりませんが、そのとおりでございます。
  45. 井上一成

    井上(一)委員 私はぜひ園田外務大臣のその発言を期待し、そしてそのことが世界平和確立の第一歩である。世界の平和を維持していくということは非常にむずかしいことだと思います。その非常にむずかしいことを日本が先駆けてやっていかなければいけないということを私は特に強調しておるわけであります。  なお、私はそのことについて、ただ政治の場だけでなく、軍縮というものは政府だとかあるいは政党だけの問題にすべきではない、もっと広く国民すべてが、平和を守るために、平和を維持するためにどう行動すべきであり、どう取り組むべきであるかということが国民すべてに共通の問題として、軍縮というものも認識をしていただけるようにしなければいけない、こういうふうに思うわけです。  そこで、今度は事務的な問題になるわけでありますけれども、現在外務省の中では軍縮室があるわけでありますけれども、人員も非常に少ないわけでありますし、とりわけ外務省の情文局からよく出しているパンフレットがあるわけでありますけれども、わかりやすいパンフレットで軍縮についてPRされたことが余りないように私は認識をしているわけであります。  そこで、園田外務大臣のその正しい発言を引っこめさせようとする勢力もあるということは事実です。これは大臣、大変御無礼かもわかりませんけれども、あなたの正しい発言を何とかセーブしたいという、私から言わせれば誤った、間違った勢力もあります。これはとりわけ与党の中にいらっしゃるんじゃないだろうかというふうにも思うのですが、私自身は、外務大臣軍縮、平和にかける情熱を絶やさないように、そして以前の、いわゆる戦前の誤った外交に戻らないように国民全体が関心を持ち、そして正しく認識をして、園田外務大臣の正しい考え方を国民が十分知って、あなたの考えに邪魔をしようとする勢力が出てきたら、それの厚い壁になるぐらいの国民世論というものを築くためにも、ひとつ情文局あたりでパンフレットを作成して、国民の認識を深めていくこともまた大事である。そういうことで、国内的にもこの軍縮を通じて平和を守ることの大切さ、平和国家を宣言していく土壌をつくるためにも、十分な事務体制、外務省の取り組み、そしてわが国の正しい、戦後一貫して平和外交を追求してきたんだ、さらに今後もそれを追求し続け、世界平和を確立させるんだという決意をお示しいただけるような取り組みをしていただけるかどうかお尋ねをして、私の質問を終えたいと思います。
  46. 園田直

    園田国務大臣 人間でありますから、それぞれ政治信条若干の差はありますけれども、私の考え方を抑えようとか妨害される方があろうとは存じませんけれども、少なくとも外務省内においては、やはり御理解を願いたいことは惰性と習慣というのがあるわけであります。私は能力がありませんけれども、事務の方々、当局の方々と一緒に絶えず話し合い、絶えずお願いをしているところでありますから、だんだんとパンフレットその他にも大臣の意向が出てくることであろうと考えておりますが、私微力でありますから在任中に何ができるかわかりませんが、少なくとも揺るぎなき日本外交のレールを敷くことだけは私の責任であると考えております。
  47. 井上一成

    井上(一)委員 私は、外務大臣の今後ともの健闘を祈念して質問を終えます。
  48. 永田亮一

    永田委員長 中川嘉美君。
  49. 中川嘉美

    ○中川(嘉)委員 これまで本委員会において幾たびとなく日中問題が論議されてきたわけです。そしてまた、マスコミの報道等によっても日中平和友好条約の最大の問題点が反覇権問題であることも明らかになってきたわけであります。伝えられるところによりますと、この反覇権条項と第三国との関係について日中間に若干の相違がある、このようにも言われております。私の承知しているところによりますと、それは、この反覇権条項について日本側は、本条約が第三国に対するものではないということを盛り込みたい、そしてまた一方中国側ですけれども、日中友好関係の発展というものは第三国に対するものでない、こういう点であると思います。この点だけについて言うならば、本質的な違いはそうないんじゃないか。  そこで伺うわけですけれども、もしソ連が本条約が第三国に対するものでないということを明確にしなければ納得できないんだ、そういうことをわが国の政府が配慮しているとするならば、これは大きな誤りであるということを私は指摘しなければならないと思います。  なぜかといいますと、一九七二年五月二十九日ですけれども、ブレジネフ書記長と米大統領が署名した米ソ関係の基本原則の第十一項、ここにおいて「米国およびソ連は世界の問題における如何なる特権または優越に対する要求もしないものとし、また他の何者のかかる要求も認めない。双方はすべての国家の主権の平等を認める。米ソ関係の発展は第三国および第三国の利益を害するものではない。」このように述べられているわけです。この条項は、私が見ても当然反覇権条項である。このことから考えても、本条約が第三国に対するものではないということをこの日中条約に盛り込もうとあえて固執する理由は、いわゆる対ソ関係配慮という点からは何ら見当たらぬじゃないだろうか、こういうふうに思うわけです。外務大臣としてこの文書を十分に参考にすべきだと私は思いますけれども、御見解を賜っておきたいと思います。
  50. 園田直

    園田国務大臣 このたび幸いにして交渉再開になれば、いまの御発言の問題が一つの問題点になるであろうことは全く意見が同じであります。  そもそも日中友好条約の目的は、日本と中国のみならずアジアの安定と平和を念願するからでありまして、それを損なわないようにとり進めていきたいと考えるわけでありまして、覇権条項をどのように扱うかは、条約内容に立ち至りますから、いまの段階ではお答えはできませんので、お許しを願います。
  51. 中川嘉美

    ○中川(嘉)委員 そのような御答弁であったわけですけれども、この文章によっていわゆる反覇権ということと第三国の関係については、特に問題とすべきものではないと私は思うわけで、外務大臣としてこの文章を十分に参考にしていただきたいし、また交渉の際もそういったことを踏まえた形で当たっていただきたい、このように思います。  次に、報道によりますと、外務省は与党議員の一部に対して「日中平和友好条約交渉の経緯」こういうテーマで文書を示したと言われておりますが、この文書は実際に存在したものなのかどうか、全く荒唐無稽なものなのか、まずこの点についてお伺いをしたいと思います。
  52. 中江要介

    ○中江政府委員 この文書は外務省の文書としては存在いたしておりませんが、他方荒唐無稽かというと、そうではございません。
  53. 中川嘉美

    ○中川(嘉)委員 いや、これは大変に無責任な御答弁なんで、国会答弁でこんなの初めてですよ。外務省としては云々で、これは「日中平和友好条約交渉の経緯」と題する、新聞報道でみんな知っている問題だし、それに対してこの場で、大変無責任な表現で御答弁があるということは確かに問題である。政府が確かに出したんだ、外務省としていま認められているわけです。しかしながら、マスコミが報道をしてしまったので、なかったものにしてしまったみたいな、こういう発想というのは本当によくないんじゃないか。これはこの問題だけじゃないと私は思います。これからもいろいろとありますが、覆水盆に返らずという言葉もあるけれども、大変な問題だと思うのです。外務大臣、いかがですか。
  54. 園田直

    園田国務大臣 こういう問題は率直に申し上げておわびする以外に方法はないと思いますから、率直に申し上げます。  この文書は、与党の一議員が、慎重にやれと言われる方々に説明するために資料が必要であるからよこせ、こういうことで、その場で口頭筆記みたいにして書いた文書でありますが、その文書をとられた方々がコピーをして全部に配られた、こういうのが真相でございます。その内容に至っては、慎重派の方々に納得していただきたいばかりにいろいろ逆な効果があったり、それから論理的に非常に矛盾があったりするわけでありまして、たとえば一例を言いますと、日中友好条約は慎重にやれと右、左の理屈を言う人はソ連から踊らされて言っておるんだと、反対する人に火をつけるような議論があったり、必要のない台湾条項があったりして、これは大変なことになったと思って各所におわびをして歩きまして、そしてこれが公開の席上で論議されることになりますると、ようやく順調になってきて、まさにスタートにつこうとしておる日中友好条約というものが阻害をされるおそれがありますから、どうか御勘弁を願いたい、お許しを願いたい、こういうことでおわびをして歩いて、御了解を得ているというのが真相でございます。まことに責任ある大臣として申しわけないことをした、こう思っておりますが、どうか外務省に対することではなくて、日中友好条約締結交渉という時期だとおぼしめされてお許しを願い、公開の席上でない場所でおしかりなり御指摘をいただければまことに幸いであると考え、ここで公開の席上で深くおわびを申し上げる次第でございます。
  55. 中川嘉美

    ○中川(嘉)委員 おわびをされてしまったわけですけれども、この文書が、いま御答弁になった一議員が反対派、慎重派に対して説明するため云々ということで、ただ報道によると「外務省が示した」とはっきり印刷されているわけで、こだわりませんけれども、この委員会の場で大臣が非常に慎重な御答弁を繰り返しておられるというわりには、何か非常にうかつに新聞にぽんと外務省が云々と出てしまいますと、大臣のお立場ということを考えたときに、幾らこの委員会の席上で本当に慎重になさっても、これはとんでもない。こういったことを表面に、国民の前に明らかにされてしまう、しかもこれが一議員がということになると、よけいそんなような気がするわけです。それで、私は何もこれでもってこれ以上どうこうしようというつもりはございません。大臣の御答弁も十分に私は踏まえるつもりですけれども、だから文書が存在していたとかいなかったとか、あるいはそれではそれを取り消したとか、そんなことはいまここで別にいたしたいと思います。ただ、この報道は非常に重大な内容を含んでいると私は読んだために申し上げるわけですが、「この条約は、台湾の地位には全く関係のないものであり、かえってこの条約締結の波及的効果としてその後の日台関係はより安定的なものとして維持継続が期待されよう」、大臣もこの個所はよく御存じだと思います。ですから、余りこのことについてこういう時期が時期であるだけに申し上げるつもりはありませんけれども、せめて抑えて一、二点だけ確かめておきたい気がするわけです。  その一つは、ある条約が当事国外の第三国に波及効果が及び得る、このことは一般国際法論として否定しないわけです。国際法の定めるところによると、この効果の及ぶ客体というものはあくまでも国家である。政府が日中平和友好条約が日台関係に波及効果を期待すると言ったとするならば、台湾を国家として認めない限りあり得ないと私は思うわけですけれども、大臣のお立場考えながらいま御質問しているわけなので、またわが国の国益という立場からもこれはどうしても聞いておかなければならぬ、こういうことで伺うわけでございまして、この点はいかがでしょうか。
  56. 中江要介

    ○中江政府委員 日台関係は先生も御指摘のように政府立場ははっきりしておりまして、日本と中国の関係は公の政府間の正式の関係である、日本と台湾の関係は事実上の民間の関係にすぎない、これは日中共同声明が発出されまして以来、一貫して日本政府のとっておる立場でございまして、いま私が外務省のペーパーでないと申し上げました、つまり外務省の正式見解というものでつくったものでないそのペーパーの中に述べられておるといたしましても、そこで言う日台関係というのは、あくまでも日中共同声明の精神に即した、そのとき以来日本政府が一貫してとっております日本と台湾との事実上の民間の関係、非公式の関係ということを意味していることについては誤解のないようにお願いいたしたい、こういうことでございます。
  57. 中川嘉美

    ○中川(嘉)委員 いま言われた日中共同声明ですけれども、この共同声明以後の日台関係は確かにこの事実関係の継続、維持、これを中国政府が黙示の了解をもって認めたわけで、日台の国家関係というものを認めたものではない、このように思います。政府はこの日中平和友好条約が日台関係に波及効果を期待するということは本当は考えていないと私は思うわけで、まずこの点はどうか、もう一度ここで確認しておかなければならないと思いますので伺いますが、それとも日台関係の安定というものが期待されるという認識を持っているのかどうか。日中平和友好条約そのものにかかわりなく、中華人民共和国の台湾解放の政策そのものは変わらない、このように私は思うわけですけれども、いま一度問題意識をはっきりさせる意味で御答弁をしておいていただきたいと思います。
  58. 中江要介

    ○中江政府委員 「波及的効果」という言葉意味で、先ほど先生は国際法一つ条約が波及的効果を及ぼすのは第三国についてであるという狭い解釈を前提として御議論になりましたけれども、そこで言っております「波及的効果」ということは、そういうことを念頭に置いていないということは先ほど私が申し上げましたとおりでございまして、波及的効果として日台関係があたかも国家間の関係のごとくに安定するというようなことを考えていないことは、これはひとつぜひ誤解のないようにお願いいたしたい、こういうことでございまして、日中平和友好条約はあくまでも日中間の平和友好関係を強固にし、発展させるものである。それがすべてであり、それ以上でもそれ以下でもないという点ははっきりここで申し上げておきたい、こう思います。
  59. 中川嘉美

    ○中川(嘉)委員 まあ御答弁はわかるとしましても、やはりあのような報道がなされると一般の国民は、波及効果ということになりますと国際法的にはいわゆる反射的利益ということになるわけで、たとえば米英間のパナマ運河通過協定、こういったものについてもこの条約は波及効果、すなわち国際法上の反射的な効果ということですけれども、こういったものとして第三国、まあ日本も含みますが、第三国も運河通過について反射的利益を享受しているのだということになるわけです。この委員会の場でそういう御答弁があって、ああそうかということになるかもしれませんが、そういった誤解というものが出てき得るだけに、本当にうかつにそういうものが発表されるということ、外交上ですからいろいろな秘密もあろうかと思いますけれども、十分にひとつ注意をしていただきたい、このように思います。  私たちは、日中共同声明によって台湾は中国の不可分の領土の一部である、こういう認識に立つわけですが、政府はもちろん先ほど来の答弁で同意見だと思います。念のためにこの見解を伺いたいことと、台湾問題が中国の内政問題である以上、もちろんこの平和的な解放が望ましいことの願望、これはもう差し支えないとしても、それ以上にそういったことで介入すべきじゃない、このように思いますが、これらの点についてお答えをいただきたいと思います。
  60. 中江要介

    ○中江政府委員 日本の台湾の国際法上の地位についての認識といいますのは、いま先生もおっしゃいましたように一九七二年九月二十九日の日中共同声明の第三項に明記されておりますとおりでございまして、「中華人民共和国政府は、台湾が中華人民共和国の領土の不可分の一部であることを重ねて表明する。日本国政府は、」ここに日本国政府立場が明記されておるわけでございますが、「この中華人民共和国政府立場を十分理解し、尊重し、ポツダム宣言第八項に基づく立場を堅持する。」日本政府の台湾についての立場は、この日中共同声明の第三項を忠実に遵守していくということに終始しておりますし、今後ともこの域を出てはならないというふうに考えております。
  61. 中川嘉美

    ○中川(嘉)委員 時間の関係がありますので、次に移りたいと思いますが、政界の一部では日中平和友好条約と尖閣列島の問題を結びつけようとする動きがあるようですけれども、私があえていま申し上げておきたいのは、こういった問題をここで論議するということ。やはりこういった日中平和友好条約締結の時期が非常に熟してきたというときであるだけに、私なりの角度から確認をしておきたい、こう思いますけれども、このただいま申し上げた問題について、政府はどう対処されるつもりであるか。私の私見ですけれども、日中平和友好条約は、日中両国が高度の政策を確認し合うものであって、個々の問題をここで結論を出そうとするものではないのじゃないか、まさに、日中間の平和と友好を高める政策というものを確認し合おうとするものではないか、このようにも思います。  尖閣列島の問題は、まだ日中間の外交上の問題となっていない段階ではないかということ。日中それぞれが領有を主張している事実はあっても、現実にこれが日中交渉の議題となっていない問題を日中平和友好条約と絡めるということですね、これは明らかに妥当ではないし、違った次元の問題ではないかと思います。にもかかわらず、冒頭に申し上げたように、この問題をあえてとりたてるのは、明らかに一つの意図的な作為によるものではないだろうかと私は考えるわけですけれども、政府の御見解を賜っておきたいと思います。
  62. 中江要介

    ○中江政府委員 まず第一点の、日中平和友好条約が日中間の具体的な懸案を処理するための条約ではなくて、将来長きにわたる平和友好関係を強固にし、発展させるためのものであるという点については、いま中川先生のおっしゃったとおりに私どもも認識しておりますので、この条約によって具体的な案件を処理するという考えは全くありません。  他方、尖閣諸島につきましては、これは御承知のとおり、歴史的にも法律的にも日本の領有権が確立しておるわけでございまして、そしてまた、この領有権に基づく各種の施政権が行使されておる現状にかんがみますれば、これは相手の国がいずれの国であれ、日本側から持ち出すべき問題でないということも、またはっきりしておるわけでございますので、この日中平和友好条約との関連で、尖閣諸島の問題を何とかするというような意図は毛頭ございません。
  63. 中川嘉美

    ○中川(嘉)委員 それはそこまでの御答弁はわかりますけれども、最後に聞いた重要な点についてもうちょっと……。  私は、こういった問題をあえてとりたてるのは、明らかに一部の勢力による意図的作為によるものではないだろうか、このように考えるわけですけれども、これはどうしても大臣、一言で結構ですから、その点答えてください。
  64. 園田直

    園田国務大臣 いろいろ心配されての御意見だろうと思いますが、御意見のとおり、今度の交渉の議題になるべきものではないと考えております。
  65. 中川嘉美

    ○中川(嘉)委員 意図的なものであるか、そうでないかということについての御答弁がどうも得られないようですけれども、次の問題に移りたいと思います。  鄧小平副主席が、もし条約の調印式が東京で行われるならば訪日するところの意思を表明しておられるようですけれども、もちろんわれわれもこれを歓迎いたします。もし調印式が中国最高首脳の訪日によって東京で行われたとするならば、批准書の交換はやはり北京で行われるとするのが国際慣行であるようにも私は思います。もしそうであるならば、その機会に総理みずから訪中をして批准書を交換して華国鋒主席と会談することは、いわゆる日中両国友好増進という立場から見ても意義深いものがあると私は思うわけですけれども、こういった可能性が十分考えられるかどうか、この点いかがでしょうか。
  66. 園田直

    園田国務大臣 鄧小平副主席が訪日をされるということも、調印のためおいでになるのか、その後おいでになるのか明確ではございません。これから先のことでございますから、ここで具体的にお答えするわけにまいりませんが、御意見は十分拝承いたして参考といたします。
  67. 中川嘉美

    ○中川(嘉)委員 どうも、精いっぱいの御答弁をいただいているんだろうと思うのですが、ずっと私がお聞きしていることの半分ぐらいしかいつも御答弁が返らない。また、その辺の事情は、十分私も何としても踏まえていかなければならないし、国益ということを常に考えての質疑の展開ということにならざるを得ないのじゃないかと思いますが、どうでしょうか、いまどうこうというはっきりしたことは言えないかもしれませんが、北京において批准書の交換というようなこと、また総理みずからそのときに訪中をして交換をするというような可能性、あるいは華国鋒主席との会談というようなことですね。外相として、そういうこともあり得るというふうにお考えかどうか、一言だけ御答弁をいただきたいと思います。
  68. 園田直

    園田国務大臣 御発言はよくわかりますが、先走って答えるとまた問題を起こすわけでありますが、大体外交慣例としては、相手国の最高首脳がおいでになれば、これに対する儀礼としても向こうを訪問するのが儀礼であることだけお答え申し上げておきます。
  69. 中川嘉美

    ○中川(嘉)委員 私はむしろ、外務大臣が総理にこういったことをあえて進言すべきだ、こう思います。したがって、時期を見てむしろ外務大臣が、そのことについての重要性ということを総理にひとつ進言をしていただきたい、こんなふうに希望をぜひ述べておきたいと思います。  あと、一、二問お聞きしたいと思いますが、ソ連の日中平和友好条約に対する態度ですね。たびたびこういったことが論議されておりますが、依然としてかたいのかどうか。このことに関連して伺いますけれども、中ソ関係が好転しない限り、日中平和友好条約に対する態度の好転は期待できないという見通しかどうか、この辺の感触はどうでしょう。
  70. 園田直

    園田国務大臣 夫婦げんかやきょうだいげんかのときに、御主人に味方すれば奥さんが怒るし、奥さんに味方すれば御主人が怒るし、後になって犬も食わぬということになるわけでありますから、これは大体そういうことから御推察を願う以外にないと考えております。
  71. 中川嘉美

    ○中川(嘉)委員 いよいよ夫婦げんかの例が出てしまって、私も何とも救いようがないわけですけれども、最近内外の国際政治の専門家の間に、アジアにおける国際政治及び安全保障の問題について、日米中対ソ連という図式が言われているようですけれども、外務省のこれに対する見解はいかがでしょうか。
  72. 園田直

    園田国務大臣 そういうことが言われておりますからこそ、ソ連の方は日中平和友好条約に非常に関心を払うわけであります。また米国も、中国と交際するに当たってはソ連を刺激しないように配慮されつつあると私は想像いたしております。
  73. 中川嘉美

    ○中川(嘉)委員 したがって、この図式は日米中対ソ連の権力闘争の図式となるおそれがあるように私は思います。しかし、日本としてはこういう国際間の権力闘争には絶対に巻き込まれてはならないと思います。われわれは、憲法が禁止する国権の発動たる戦争に巻き込まれることは絶対に避けなければならない、こういう意味での日中平和友好条約であるということを内外、特にソ連に向かって強く呼びかけるべきではないかと思いますが、この点についてはいかがでしょうか。
  74. 園田直

    園田国務大臣 絶対に戦争を起こさせてはならぬという御発言は、私も全く同一の意見であります。大国であるソ連米国、これは大国でありますから、いろいろ力を持っておりますから、ときどきはわがままがありますけれども、正直に言って、ソ連に行ってみましても、ソ連もそしてアメリカも、戦を起こしたくない、戦争にしたくないという熱意は両方とも持っていることは、私ははっきりわかっておるような気がいたします。
  75. 中川嘉美

    ○中川(嘉)委員 特にソ連に向かって強く呼びかける必要があるのじゃないかと私は先ほど申しましたけれども、前回の委員会でも私、類似した御質問として織り込んでありますけれども、やはりソ連に対するわが国のそういうはっきりとした姿勢といいますか、意思というものを何らかの機会に伝えるべきじゃないか。外務大臣はこの間いらっしゃらなかった、総理が出席なさったときの総理の答弁なんですが、やはり総理としても日中は日中、日ソ日ソということを強調しておられたように思いますが、それで済まされるのであればいいのですけれども、こういったことを踏まえながら、問題が起きないような交渉をさらにそれぞれの国と進めていただきたい、こう思います。  時間が参りましたので、最後に一点だけ別の角度からお聞きしたいのですが、先ほど来御答弁いただいておる中に出てきました反対派の言うには、日中条約は国益上はメリットがないのだというように何か最近話があったようですけれども、自民党の党内調整のつかなかった場合、政府は見切り発車をしないというふうに私は受け取ったわけですけれども、日中条約締結も、もしその場合には大幅に延びるものなのかどうか。見切り発車をしないということを前提とするならば、日中条約締結そのものも大幅に延びることもあり得るのかどうか。これは非常に微妙な問題だと思います。大切な問題なので最後に一問これをお聞きしておきたいと思います。いかがでしょうか。
  76. 園田直

    園田国務大臣 慎重にやれとおっしゃる方も、これまた一に国を愛しての発言でございますので、私が見切り発車をいたしませんと言ったのは、反対は反対としても、御意見を承りつつ、与党である党議の御了解を得ていきたいものでございます。こういう趣旨でありまして、これが了解が得られない場合はどうのこうのということは、ようやく御相談をしつつあるときに水を差すことになりますので、これまた大変な問題でありますから、誠心誠意与党の方々に御理解を求めておる段階である、こういうことで御理解を願いたいと存じます。
  77. 中川嘉美

    ○中川(嘉)委員 いろいろお聞きしたわけですけれども、常に、先ほど来申し上げておるように、日中平和友好条約を一日も早く締結をするという立場からのすべて私の発言であるというふうにひとつ大臣も受けとめていただいて、水を差す的な立場発言をするつもりは毛頭ない、こういうことでございますので、また今後とも鋭意御尽力をいただきたい、このように思います。  以上で質問を終わりたいと思います。
  78. 園田直

    園田国務大臣 発言にわたって終始御配慮をいただいたことを心から御礼を申し上げます。
  79. 永田亮一

    永田委員長 渡辺朗君。
  80. 渡辺朗

    ○渡辺(朗)委員 私は、いまジュネーブで開かれている海洋法会議を中心に二、三お尋ねをいたしたいと思います。  まず第一番目に外務大臣にお尋ねいたしますけれども、今回の海洋法会議に臨む外務大臣の姿勢、お考え方、ここら辺をちょっと聞かしていただきたいのでございます。どういうふうにこの会議をいま位置づけておられますか。日本の前途あるいは海洋法会議、五年越しにやってまいりましたが、そういう五年間の経緯を踏まえまして、今回の会議に対しての評価、意義づけというものをどのようにごらんになっておられますでしょうか、お尋ねをいたします。
  81. 園田直

    園田国務大臣 海洋法会議は、これはきわめて重大な問題でありますが、それにもかかわりませず案外認識は浅いわけであります。民社党ではこの点を早くから取り上げられて、おくれをとらぬようにということを盛んに御指導願っておるわけでありまして、大臣としても、これについてはいろいろ所見があるわけでありますが、まず総会その他経緯等事務当局からお答えをしまして、一番最後大臣としての海洋法会議に対する考え方を申し上げたいと存じます。
  82. 渡辺朗

    ○渡辺(朗)委員 お願いします。
  83. 村田良平

    ○村田政府委員 昨日からジュネーブにおきまして第七会期が始まっておるわけでございますが、この会議で非常に重要な問題が種々取り上げられておりますので、それらの問題に関しましてごく簡単に概括を申し上げたいと思います。  まず第一委員会というところで、恐らく今会期で最も重要だと思われます深海海底の開発の問題が議論されようとしております。これは御存じのとおり人類の共同財産ともいうべき深海海底におきます銅、ニッケル、コバルト等の資源をいかに開発するかという問題でございまして、非常に簡単に申し上げますと、開発途上国側の主張と先進国側の主張がなお大きく対立しておる。したがいまして、この問題の処理いかんが海洋法会議全体の今後の動向を左右するというほど、最も深刻かつ重大な問題になっておるわけでございます。  開発途上国側は、国際機関、オーソリティーと呼んでおりますけれども、この権限をもっともっと強めるべきである、それから国あるいは私企業が行います開発は将来はフェーズアウトすべきであるというふうな強い主張をしておりますし、また、国際機関であるエンタープライズというものが設けられる構想がございますけれども、これに対して先進国側が資金あるいは技術等の援助もすべきであるという立場をとっておるわけでございます。  これに対しまして、先進国側は、国あるいは私企業の活動というものが条約上はっきりした形で保証されなければ困るという立場でございまして、アメリカ等の中には国内で一方的な立法をしようというふうな動きもあるわけでございますので、とにかく今度のジュネーブの会期におきましては、この深海海底の問題に各国が協調して、何とか円満な秩序ある開発について合意が得られるということが必要であるということでございます。  それから、第二委員会におきましては、従来から、先生御指摘のとおり五年間にわたっていろいろな議論が行われまして、領海の問題、それから国際海峡の問題、あるいは二百海里の経済水域の問題に関しましては、相当話し合いが固まっております。  ただ、その個々の問題に関しましては、なお各国の主張が相当異なっておるところがございまして、若干例示的に申し上げますと、たとえば経済水域に関しましては、これの法的な性格がどうであるかとか、あるいは管轄権をどう行使すべきであるかというふうな点については、なお意見が分かれておりますし、また、漁業の点につきましても、長期の交渉でほぼ日本としては満足すべきであると思われる、あるいはやむを得ないと考えられる妥協案ができておるわけでございますけれども、これをもう一遍改めようじゃないかという動きがございます。特に、日本としては、たとえばサケ・マス問題に関するソ連の提案というふうなものは、非常に神経を使っておるわけでございます。  それから、大陸棚に関しましては、自然延長論というものが強くなっていることは、屡次この委員会でも申し上げたところでございますが、これに対して日本としては、国益を守るという見地から、やはり明確な距離基準、特に二百海里という基準によるべきであろうという立場でございます。ただし、二百海里以遠の収益分与についてもすでに話が出ておるというふうな大勢でございますので、その場合にも備えまして、大陸棚の外縁はいずれにしても合理的な基準で定められなければ困る、たとえば堆積層の厚さというふうなことを基準にやろうという考えが一部の国から出ているわけでございますけれども、これに対してはわが国は反対するということでございます。  それから、大陸棚及び経済水域両方に共通します問題としては、境界画定の問題がございまして、これも日本の国益にとって非常に重大な問題でございます。大ざっぱに申しまして、境界画定を衡平原則でやるという考え方と、中間線を第一義的な基準にすべきであるという考え方があるわけでございますが、日本としては中間線という立場を、この会期におきましても強く主張していくという考えでございます。  第二委員会はその程度にいたしまして、さらに第三委員会というところでも、海洋汚染の問題等が議論されておるわけでございますが、これに関しましては、わが国は、沿岸国としての立場と海洋利用国、海運国としての立場という二つの立場があるわけでございまして、これを総合的、調和的に日本の国益が確保されるように対処するという考えで臨んでおります。  なお、すでに五年の長きにわたって交渉しておりますので、何とか一日も早くこの会議をまとめなければいけないということで、恐らく今度の会期では、紛争解決とかあるいは最終条項の問題というふうな条約の最終的な形づくりの議論もあると思われますが、わが国といたしましては、一日も早く調和ある海洋法秩序ができるようにということで協力してまいる所存でございます。
  84. 渡辺朗

    ○渡辺(朗)委員 いま御説明いただいたように、私は、日本だけでなく国際的な政治の重要な問題として、これからの海洋の新秩序というものはどうあるべきか、これをめぐって国際政治が展開されていく重要な段階にある国際海洋法会議であると思います。そしてまたその中身であると思います。私は時間の関係で、多岐にわたっている問題のうち、一番深刻な南北間の対立をもたらしている深海底資源、マンガン団塊、マンガンノジュールの開発方式、こういうような問題に焦点を置いて御意見をお伺いしたいなといま思っております。  もし、深海海底資源の開発方式について南北間で分裂、対立の状態が続いて合意に達し得られなかったといった場合にどういう状態が起こると想定されますですか、これについてお伺いをいたしたいと思います。
  85. 村田良平

    ○村田政府委員 どのような事態が起こるかということをいまから予想するのは非常に困難でございますけれども、仮定の話としまして、もしもこの問題をめぐって対立がきわめて先鋭化いたしまして、話し合いが決裂するというふうな最悪の事態を想定いたしますと、先ほどもちょっと申し上げましたような一部の先進国における国内立法の動きというものも高まってくる、またその結果、この問題は海洋法会議全体の一つの問題でございますから、海洋法会議がすべていわば挫折するという危険すらある問題でございまして、そうなりますと、海洋秩序というものが、無秩序時代というほどはなはだしいことにはならないかもしれませんけれども、せっかくこの数年間営々として話し合いを行って、新しい秩序の曙光が見え始めたというときに、それが御破算になってしまうということで、世界的に見ましてきわめて好ましくない事態が生ずるというふうに考える次第でございます。
  86. 渡辺朗

    ○渡辺(朗)委員 私は、無秩序にもなっていくであろうという非常に憂慮される状態、そういう中だからこそ今回四十名にも上る大代表団を出された、日本として取り組む姿勢よくわかるのですが、非公式統合草案がすでに提出されている。いまの深海海底資源の開発方式につきましても、草案の中では、国際機関の権利が優先する、私企業の権利が厳しく抑え込まれているということが、大体南側の意見を盛り込んだ形になっておりまして、こういうものが草案として提出されている。日本政府及び代表団としてどのような態度で臨んでおられますか。この草案に対しては賛成でございますか、反対でございますか。
  87. 久米邦貞

    ○久米説明員 わが国は、従来からの深海海底開発問題をめぐる交渉におきまして、先ほども申し上げましたとおり、国際機関を設立いたしましてこれが人類の共同財産である深海海底の資源を管理するということにつきましては異議を唱えておりませんけれども、ただ、わが国の場合には、わが国を初めとする先進国は国及び私企業が深海海底の開発の権利を有するようなそういう権利条約上保証されるということを要求しているわけでございます。現在の統合草案の規定ぶりは確かに従来の先進国と開発途上国の妥協を反映いたしましたいわゆる並行開発方式と申しますか、半分を私企業が開発し、半分を国際機関が開発するという並行開発方式が形式的にはとられているわけでございますけれども、財政上の私企業に対する負担が非常に大きいとか、あるいは技術移転等の問題につきまして、これを私企業に強制するような形になっておりまして、実質的に並行開発あるいは国なり私企業なりの開発の権利というものが必ずしも保証されていないきらいがあるわけでございます。こういうことから、現在の統合草案のままでは、わが国のみならず他の先進諸国はいずれもこれをそのままの形ではのみ得ないという態度をとっております。
  88. 渡辺朗

    ○渡辺(朗)委員 そうすると、日本代表としては非公式統合草案に対しては反対であるということですね。もう一遍確認をいたします。
  89. 久米邦貞

    ○久米説明員 わが国といたしましても、開発途上国の妥当な要求には十分これは考慮いたすつもりでございますが、先ほど申し上げましたとおり、現在の統合草案の中にはわが国として受け入れがたい規定があるわけでございますので、今回の会議で、できる限りわが国を初めとする先進諸国にとっても受け入れ得るような形に変えつつ、かつ開発途上国側の要請にも考慮を払って実質的な妥協を達成するように努力する所存でございます。
  90. 渡辺朗

    ○渡辺(朗)委員 それではその問題、ちょっと角度を変えてお聞きいたしますけれども、この海洋法会議が始まるに先立って、アメリカの方は場合によっては海洋法会議から脱退も辞せずあるいはまた単独立法を国内において進めている、こういう動きがあります。すでに下院にはそれがかかっているやに聞いております。こういった動きに対しては外務省はどのようにお考えでございますか。
  91. 久米邦貞

    ○久米説明員 米国におきまして、現在、深海海底の開発に関する国内法が議会で審議されておりますことは先生御指摘のとおりでございます。この法案は現在委員会の審議をすでに終了いたしておりますが、米国もこの第七会期は、ともかく海洋法会議におきます妥協達成に努力するということで、この第七会期中にこのアメリカの法案が成立する見通しはございません。しかし、いずれにしましても、アメリカにおきまして何らかの暫定的な国内立法が今後成立することはほぼ不可避ではないかと見ておるわけでございます。これが海洋法会議にどういう影響を与えるか、あるいは開発途上国側がこういう米国の動きに対しましていかなる反応を示すかということは、米国の議会でいま審議されておりますこの国内法の内容にもよるわけでございまして、内容自体がまだ固まっておりませんので、その辺の予想というのは必ずしも現段階ではっきりしたことは申し上げられないわけでございますけれども、わが国といたしましては、先ほども申し上げましたとおり、とにかくまず条約の形での国際合意を通じまして深海海底の開発の秩序あるいは海洋法全体の秩序を達成する努力を尽くすということでございまして、わが国がこれと同様な立法をいたすかどうかにつきましては、今後の海洋法会議の動向あるいは先進国の動向をさらに見きわめて、慎重に検討していく所存でございます。
  92. 渡辺朗

    ○渡辺(朗)委員 それでは重ねてお聞きいたしますが、二月の七日、八日、ニューヨークにおいては、アメリカの企業、ケネコット社、カナダのインコ社あるいは日本の三菱グループですか、八カ国、十一社が集まっております。そして独自に深海底開発の条約づくりをやるというような意見が大勢を占めたというふうなことも報道されております。さらには、現在ジュネーブで会議中なんですけれども、これらの民間企業の方が国際的な集まりを持ちまして、ジュネーブの海洋法会議と並行して協議を続けておりますね。こういったことに対してはどのようにお考えになっておりますか。外務省の意見をちょっとお聞かせいただきたいのです。
  93. 久米邦貞

    ○久米説明員 各国の関心を有する民間企業相互の間で種々協議が行われておりますことは承知しております。しかし、政府といたしましては、先ほども申し上げましたとおり、開発途上国との関係あるいは海洋法会議全体をまとめるということとの関連もございますので、少なくとも第七会期の進展ぶりを見守る必要がございますし、今後の海洋法会議の動向、さらには先進諸国の動向をも見きわめた上でなお慎重に検討してまいりたいと思っております。
  94. 渡辺朗

    ○渡辺(朗)委員 私、外務大臣にぜひお聞きしたいのですけれども、いまのようなお話を聞いておりますと、これがもし同意できなかった、決裂したというような場合に、無秩序な資源分割競争みたいなものすら予想される、憂慮される大事なときであります。しかも海底資源というのは、日本のこれからの将来を考える場合にも大変重要な資源としての問題提起をしている。そういうときに当たって、政府の方の方針は会議の進行状況の推移を見ながらという態度でおられる。他方、民間企業の方は国際的なグループもつくり、どんどん進めている。やはりここら辺、政府の方の方針が先にあって、むしろ政府としてそういう民間企業や何かに対する方向を指導していくということでなければいけないと私は思うのですけれども、外務大臣いかがでございましょうか。
  95. 園田直

    園田国務大臣 御承知のとおりに、第七会期海洋法会議の動向は、コンチネンタルマージンをめぐって自然延長の方向に傾きつつあって、これを前提としていろいろな問題をしぼりつつある状況で、これに基づいて日本政府努力をしておる。しかし、見通しとしては、いまおっしゃいましたように、米国その他の大国は、場合によっては国内法でこれを片づけていこうという見通しが相当多いわけでございます。そういう時期に、わが政府のこれに対応する態度は必ずしもそろっていない。御承知のとおりに、私の方では条約局の中に海洋法本部というのがありまして、ここで会議の運営あるいは進め方、他国との折衝等をやっておりますが、科学技術庁、農林省、運輸省、通産省とそれぞれ個々にこれをやっておるわけであります。  そこで、私としてはなるべく早い時期に経済閣僚会議でこれの責任者を決めて、そして全般的に運用する、特にいまおっしゃいました私企業に対する助成、補助金、こういうものはきわめて微々たる状態でありますから、これも応急の処置をとって、もし決裂をして分割制になった場合に、日本もおくれをとらぬようにやっておかないと、これは大変な問題になる。二百海里が後手に回ったとおしかりを受けたようなことでは済まぬ、このように考えておりますので、早急に閣僚会議に相談をし、それに対する対応の処置をやるべきであると考えておるところでございます。
  96. 渡辺朗

    ○渡辺(朗)委員 時間が参りましたので終わりますが、外務大臣、ぜひともこれはお願いをいたします。やはり政府の方がこれからの国際経済あるいは国際政治をにらんでいただいて、政府主導型でこういう問題についても進めてもらう、特に南北の対立の焦点になっております海底資源の問題、ここら辺は先進国のエゴイズムだけ通してはならぬと思います。途上国の意向も十分にくんでいただきながら、どのようにこれから日本が主導的な役割りを果たしていくのか、鋭意御努力のほどをお願いいたしたいと思います。  以上をもって終わります。ありがとうございました。
  97. 永田亮一

    永田委員長 正森成二君。
  98. 正森成二

    ○正森委員 外務大臣にまずお聞きいたしたいと思いますが、先日の衆議院の予算委員会で、憲法九条二項との関係で核兵器がどの程度まで持てるのかどうかという議論もございましたけれども、そのときに、わが自衛隊としてあるいは憲法上のたてまえとして、海外派兵だけは絶対にできないのだということは大臣も確認をしておられたように思いますが、そう承っておってよろしいですか。
  99. 園田直

    園田国務大臣 そのように考えております。
  100. 正森成二

    ○正森委員 自衛隊が相手国に上陸するのでなしに、領海内に入る、それは友好訪問ではなしに、相手国の明示もしくは黙示の承認がないのに相手国の領海内に入るというのは海外派兵の一種類に当たりますか。
  101. 園田直

    園田国務大臣 国際法に触れることと存じます。
  102. 正森成二

    ○正森委員 そこで私伺いますが、三月三日の予算委員会の第二分科会で、同僚委員が、主として韓国を想定いたしまして、難民救済の問題を出しました。そのときに中江アジア局長はこの問題で、速記録が長うございますから最後部分だけ読みますけれども、こう言っておるんです。「国際法上の要請と人道上の要請がいまおっしゃいましたように抵触するというか、対立しましたときには、国際法上の違法性を阻却するに十分な理由のある人道上の理由がありますれば、それはやはり国際法上の違法性を阻却して人道上の考慮から行動を起こすということは、これは抽象論でございますけれども、あり得てもいいのではないかというふうに思っております。」こう答えております。そうしますと、中江アジア局長ないし外務省は、国際法上は違法であるにもかかわらず、人道上という理由であえて領海内に入って、そして難民を救済する場合があり得る、つまりその限度で、海外派兵をしないというのが、海外派兵を容認するという見解になっておると思われるんですね。どういう意図でこういう答弁をしたのか、これはわが国のあるいはこれまでの政府の言っておりました答弁と違ってくるのじゃないかというように思いますが、いかがです。
  103. 園田直

    園田国務大臣 防衛当局並びに中江アジア局長答弁したときには私もその席におったわけでございますが、これは難民救済のために自衛艦が出動するかどうかという大げさな話ではなくて、難民救済の話からだんだん話が進んでいって、そして自衛艦が航行しておるときに難民がおった、その場合領海外であるから見捨てるのか見捨てぬのか、こういうことから議論が始まって、まさにおぼれんとする難民を見て、領海外であるからといって捨てて帰るわけにはいかぬという趣旨発言をしたものと思います。そこで、それは国際法を犯してもよいという趣旨ではなくて、そういう人道に関することであれば、後で相手国に了解を得ればそれで話がつくのじゃなかろうかという趣旨だと私は解釈をいたしましたが、当人がおりますから、当人から御答弁をいたさせます。
  104. 中江要介

    ○中江政府委員 ただいまの正森先生の御質問の側面がもっぱら自衛隊の海外派遣という自衛隊の行動の面からの御質問でございますと、長い答弁だからとはしょっていただいたためにはっきりいたしませんけれども、その前段の私の答弁のところに「いずれにいたしましても、そのケースに応じて対処していくということしかいまの段階では言えないのではないか。対処いたします必要に応じて憲法との関係で自衛隊がどう動くかというようなことは、これはまた自衛隊の方でお考えになることだろうと思いますが、外務省の立場からいたしますと、」考えておることは、国際法上の考慮と人道上の考慮であるという一般論を申し上げておるわけでございまして、自衛隊の行動について、国際法上の制約以前に憲法上の制約というものがあることは私も十分念頭に置いておりまして、その部分については私はあえて触れないで、それは別途考慮されるべき問題点であるということを念頭に置いての発言で、私の発言趣旨は、いま外務大臣が言われましたようなことであったわけでございます。
  105. 正森成二

    ○正森委員 そういうように制約されたから、結構だと思います。しかし、私は速記録を読みましたけれども、速記録では、自衛艦が航行しておる、そこへ難民がぷかぷか浮いておる、それをふいと拾ったというような、あるいは助けたというような程度じゃなしに、これを質問されました委員は、たとえば公海上あるいは韓国の領海内で難民がこちらに向かってくる場合どうするかということで、つまり船舶に乗って脱出しようとしておるような場合に、領海内に入っていって、そしてその難民救済に当たるということを当然想定しておるかのような質問だったのです。それに対して、国際法上の制約と人道上の問題があるけれども、人道上の問題があれば国際法上の要請が阻却されるというような、そういう一般論を言われますと、これは外務省としては、海外派兵を、人道上の問題については、少なくとも領海内に侵入するということについて肯定しているかのような誤解を招くおそれがあると思うのですね。  そこで、せっかく防衛局長が来ておられますから防衛局長にお尋ねしたいと思うのですが、防衛局長答弁は、これも長い速記録ですけれども、誤解を招かないように今度は少し長く読みますと、難民の救済について、「これは自衛隊が直ちにやるという問題ではないと思います。しかしながら、政府として難民の救済に当たる場合に、警察あるいは海上保安庁を使う場合もございましょうし、また、その場合に難民救済ということで自衛隊が協力するということはあり得ることだというふうに考えております。」こう答えておるのですね。これは、あり得ることだと考えている自衛隊の難民救済への協力というのは、どの程度のことまでを考えておるのか、憲法との関係も踏まえながら答弁してください。
  106. 伊藤圭一

    伊藤(圭)政府委員 分科会におきまして御質問がございましたときに、やはり人道上の観点からの御質問だというふうに私は受けとめたわけでございます。したがいまして、まず自衛隊の直接の任務ではないということを申し上げまして、政府が政策上の問題として難民救済の方針を出された場合には、まず海上保安庁それから警察等がその任務に当たるだろうけれども、協力を求められた場合に協力する場合があると申し上げましたのは、八十三条の災害派遣で、人命の救助というようなことを念頭に置いておったわけでございます。ちょうどその一月ほど前に、先生も御承知のように、五島列島の沖合いで、夜間対潜訓練をやっておりましたときに、シンガポールの船がひっくり返りました。そこで直ちに海難救助に当たりまして、そのときは二十二人の人を救い上げたわけでございます。しかしながら、その十人、ボートに乗っていた人は助かりましたけれども、海の中で泳いでいた人たち、これは時間がたっていたせいもあって、救い上げてからみんな亡くなっております。あのとき、海上保安庁の巡視艇が現場に到着するのに七時間かかっております。そういうことが念頭にあったものでございますから、公海上で訓練をしているようなとき、そして政府の方針が定まっているようなとき、協力を求められたらやはりあり得るというふうにお答えした次第でございます。
  107. 正森成二

    ○正森委員 そうしますと、防衛庁としては、あの答弁は、難民救済の必要があれば相手国の領海に入って救助活動をやるということを想定したものでは全くない、こう聞いてよろしいか。
  108. 伊藤圭一

    伊藤(圭)政府委員 海外派兵の問題は憲法で禁止されているということを、私どもは強く理解いたしておりますので、そういうことは念頭になかったわけでございます。
  109. 正森成二

    ○正森委員 それでは、アジア局長と防衛局長答弁を踏まえて、外務大臣に念のために伺いますが、昭和四十四年三月十四日の衆議院外務委員会で、愛知外相が、朝鮮半島において紛争が起こり、日本人の生命、財産を保護する必要性が発生した場合にどうするかというような答弁を求められて、「外交保護権を別の方法で活用するより以外に方法はない、自衛隊の出動は禁じられておる」という趣旨答弁をされておるのです。これは、わが日本人の生命、財産に問題が起こった場合でも、相手国の領海、領域内に自衛隊が出動するということは憲法上できないのだ、あるいは自衛隊法上できないのだという趣旨なんですね。それなのに、難民という場合には相手国の国民ですね。その国民の救済のために、自衛隊という実力部隊が、もしその難民救済行動が武力で妨害されるということになれば、当然応戦するかあるいは被害を受けるということになるわけですから、そういうおそれのある相手国の領海内に入って難民救済を行うというようなことは、これは考えておらない、あるいは現在の隊法ではできないというように思うのです。外務大臣としてはいかがお考えですか。
  110. 園田直

    園田国務大臣 自衛隊もそうでありますが、政府が自衛隊に向かって難民救済のために領海外に出動しろなどと言うことはあり得ない、やってはいけない。ただ、すれすれのところにぷかぷかしているときに、領海外だから見捨てておけ、そういうことはいかぬと、こういう趣旨でございます。
  111. 正森成二

    ○正森委員 それで結構ですが、いまの大臣答弁で、領海外へ出ていくということはあり得ないとおっしゃいましたが、それはむしろ、相手国の領海内に行くということはあり得ないというように承るべきじゃないかと思ったのですが、いかがでしょうか。公海の上なら別に問題はないわけですから。いかがでしょうか。
  112. 園田直

    園田国務大臣 そのとおりでございます。
  113. 正森成二

    ○正森委員 質問を終わります。
  114. 永田亮一

  115. 伊藤公介

    伊藤(公)委員 私は、先ほど高沢委員が御質問をされていました領土問題について、関連をしてお尋ねを申し上げたいと思います。  わが国の提示をした日ソ平和条約は公表をしないというお話を承りました。千島南樺太は、連合国がその帰属を決めてくれ、こういう御発言があったかと思いますけれども、平和条約で境界を確立をすべきものだと。日ソ平和条約草案には、この千島南樺太は全く何も書かれていなかったのか、それとも、その草案の中には、この千島南樺太帰属に関しても書いてあったのかどうなのか、お尋ねを申し上げたいと思います。
  116. 園田直

    園田国務大臣 わが方から出しました平和条約骨子なるものは、四島の問題を含んでいることは事実でございますが、その他の内容は申し上げるわけにはまいりません。
  117. 伊藤公介

    伊藤(公)委員 それでは、今後の問題でありますけれども、日ソ平和条約の中にこの千島南樺太帰属を何らかの形で明記をするというお考えでいらっしゃいますか、どうですか。
  118. 園田直

    園田国務大臣 先ほど申し上げましたとおりに、四島の問題は含んでおりますが、それ以外の内容のことは申し上げられません。
  119. 伊藤公介

    伊藤(公)委員 外務大臣、ですからそういうお考えを持っていらっしゃるかのかどうなのか。これは、日本領土問題の大変重要な問題でありますから、私はこれから日中問題をお尋ねしたいと思っているのでありますけれども、日中の問題は日ソの問題、しかも日ソの問題は領土問題と漁業問題という、きわめてはっきりした問題を抱えているわけですから、領土問題に対して国民に対して少しも明らかにされないまま日中問題をわれわれは考えることはできないわけでありますから、今後この千島、樺太の問題をどういう形で明記をしていくのかという基本的な考え方は、私は明らかにされなければならないと思うのです。いかがでございますか。
  120. 園田直

    園田国務大臣 内容は申し上げられませんが、与党である自由民主党は、四島以外のことに言及したことはございません。私も先ほどから言っているとおりに、四島の問題は含んでおりますと、こういうことでございます。
  121. 伊藤公介

    伊藤(公)委員 それでは大臣は、この千島南樺太帰属に関しては、大臣御自身はどのようにお考えになっていらっしゃるのですか。
  122. 園田直

    園田国務大臣 自身の考えではなくて、与党としても政府としても、四島以外のことに言葉をかけたことはございません。
  123. 伊藤公介

    伊藤(公)委員 いままではそういうことはなかったということはよくわかりました。今後、この日ソ平和条約は当然わが国の非常に重要な外交案件になるわけでありますから、その中でこの千島、樺太の帰属をどのようにしていくのかということは当然避けて通れない問題でありますから、これは今後の問題としてどのようにしていく方針なのか、そういう問題については全く今後も触れないという考え方なのか、あるいはまだそうした問題については十分詰めていないのか、どうなんですか。
  124. 園田直

    園田国務大臣 日ソの間に問題になっておりますのは、片っ方は解決済み、片っ方は解決しないという意見の相違はございますけれども、四島でございまして、千島、樺太の問題は両国間で問題になっていないわけでございます。
  125. 伊藤公介

    伊藤(公)委員 千島南樺太帰属に関しましては、これは平和条約第二条で明記されているわけでありますけれども、しかしその帰属に関してはソ連がこれに署名をしていないわけですから、はっきりしていないわけですから、今後日ソ平和条約の中に明記をする御意思があるのか、あるいはそういう意思は全くないのかということをお尋ねしているのであります。
  126. 園田直

    園田国務大臣 日本放棄したものでありますから、その放棄したものを、日ソ条約の中でとかく論議をする必要はなかるべしと私は考えます。
  127. 伊藤公介

    伊藤(公)委員 時間が来てしまいますので、日中の問題を関連してお尋ねをしていきたいのでありますが、中国の副主席が来日をするというお話がありました。これに対して外務大臣はどのようなお考えを持っていらっしゃるかという点が一点。  それから、日中平和友好条約の調印は、日本で調印をするというお考えを持っていらっしゃるのか、あるいは日本で調印をするということが好ましい、こうお考えになっていらっしゃるのか、二点についてお尋ねを申し上げます。
  128. 園田直

    園田国務大臣 鄧小平副主席が訪日をしてもよろしいということは、社会党の飛鳥田委員長団長以下の訪中団からのお話でございまして、直接聞いたわけではありませんが、そのようなことになれば歓迎すべきことであると考えております。  さて、これから先のことでありますけれども、いよいよ話がまとまって調印をするという場合に、東京で調印するということになれば、日本国民の大多数は喜ぶことではないかと考えております。
  129. 伊藤公介

    伊藤(公)委員 日中の平和友好条約は、言うまでもなく日本と中国の問題でありますけれども、同時にそれは、今日、日本と隣国ソ連との問題、非常に重要な問題を抱えていることはもう言うまでもないわけであります。日中平和友好条約締結することによって、日ソ間に、たとえばいま申し上げた領土問題あるいは日ソ漁業交渉等に対してどのような影響があるとお考えになっていらっしゃるのか、影響は全くない、こうお考えになっていらっしゃるのか、お尋ねを申し上げたいと思います。
  130. 園田直

    園田国務大臣 日中友好条約締結は、一にアジアの安定と平和を願ってやるべきものでありますから、そのとおりに締結されれば、ソ連がそれによってどうこうと言うことはあり得ない。ソ連を日中共同して敵対行為をするとか敵に回すとかということであれば、これは独立国としてソ連は黙っておらぬだろう。しかし、そうじゃなくて、納得するようなアジアの平和と繁栄のためにやるということであれば、ソ連の方はそれに対するとかくのことはなさらぬだろう、こういうふうに想像をいたします。
  131. 伊藤公介

    伊藤(公)委員 日中平和友好条約締結に当たって、いろいろいま在日のソ連大使館からも、私ども個人的にもいろいろなお話を伺っています。もちろん外務省でもいろんな話をされていると思いますけれども、具体的にたとえば、領土問題あるいは日ソ漁業交渉の問題、覇権の問題、こうした問題について日ソ間でいろいろな折衝を今日までされてこられたんでしょうか、どうでしょうか。
  132. 園田直

    園田国務大臣 日ソ間で領土問題、漁業問題で交渉してきたことは御承知のとおりであります。
  133. 伊藤公介

    伊藤(公)委員 覇権の問題はどうですか。
  134. 園田直

    園田国務大臣 覇権の問題ではソ連日本の間には問題は起こっておりませんので、この交渉はいたしておりません。
  135. 伊藤公介

    伊藤(公)委員 前回の委員会の中で同僚議員がお尋ねを申し上げました、日米首脳会議の中で日中問題について触れるのかどうなのかという問題、もう日米首脳会議に関しましては具体的なテーマもいろいろ上がってきているかと思いますけれども、どのようなテーマを中心にして、また、その中に日中問題は議論になるのかどうなのか、主なるテーマを改めてもう一度お尋ねを申し上げたいと思います。
  136. 園田直

    園田国務大臣 日米首脳者会談で日中問題が議題になることはないと存じます。話題になることはあるだろうと思います。
  137. 伊藤公介

    伊藤(公)委員 日米首脳会議では、当然これはもう経済の問題は大きなテーマになると私は思います。  そこで、通貨あるいは輸入制限の問題に関してももちろん話題になると思いますけれども、日本政府としては日米首脳会議を開くに当たって、この輸入制限あるいは通貨の問題に関してはどのような立場で首脳会議に臨まれるのか、お考えをお尋ねしたいと思います。
  138. 園田直

    園田国務大臣 首脳者会議では、いま議題は両方で詰めておるところでございますが、御発言のとおり世界経済、不況克服ということが最大の問題になり、しかも当面する問題では通貨の問題、これも問題になることは当然であると存じますが、輸入制限……、輸入制限でございますか輸出制限でございますか。輸出でしょうね。――輸出制限については、私は日米通商協議で話がついたことでございますから、これについて議題になることはないと考えます。
  139. 伊藤公介

    伊藤(公)委員 もしこの通貨の問題、輸出制限の問題ですね、こうした問題が話題になってきたときにどういう立場で、お考え会議に臨まれるのか。いまのこうしたアメリカのドル防衛の政策の中で、もちろんヨーロッパの国々も動き出している。しかし、わが国は一人一人の国民努力によってできるだけ安いコストでいい製品を他国に買ってもらうというひたむきな努力をしてきたわけでありますけれども、今度アメリカのドル防衛政策、国民には非常にわかりにくい、納得のいかないアメリカのいろいろな経済政策の中で、わが国が要らないものを外国に行って買ってくるなんということは一体どういうことなんだという声が非常に高まっているわけでありますから、この通貨の問題や輸出制限の問題に対して日本国民の人たちにも十分理解のできる、納得のいく立場でひとつ首脳会議に臨んでもらいたいと私は思っているわけでございます。そこで、どのようなお考えでこうした問題については首脳会議に臨まれるのか、お考えをお尋ねしたいと思うのであります。
  140. 園田直

    園田国務大臣 いまの御発言の中で、私、なかなか頭の回転が遅いものでありますから、通貨の問題の御発言はわかりますが、輸出制限の問題を議題にしろというお話は私、ちょっと聞き違いかもわかりませんが、理解に苦しむところであります。輸出制限の問題は今度の議題になるはずはない。日本から出すべき筋合いじゃない。通産大臣は、輸出制限をする意思はございません。行政指導によって輸出をうまく指導していって、そして黒字減らしをやろうという意思はありますけれども、輸出を規制しようという考え方は日本の通産大臣にははっきりございませんので、この点は向こうに行きましても、輸出規制などやるべきではなくて、行政指導によって話し合いでいこう、こういうことだと思いますけれども、それはこちらから出すべき筋合いでもなければ、議題にすべき筋合いでもない。通貨の問題については新聞にもいろいろ書かれておりますが、これは総理と向こうの大統領との話し合いできわめて大事な問題であって、西独の首相とカーター大統領との通貨の問題に対する電話等も、電話をしたというだけで、その内容は公表されてないわけであります。こういう問題を前々もって、総理がどのようにおっしゃるかわかりませんが、こうやります。ああやりますということは、これはきわめて大事なことでありますから、こういうことはお答えは御勘弁を願いたいと思います。
  141. 伊藤公介

    伊藤(公)委員 今度の日中平和友好条約をめぐって、日中、日ソ日米という関係は非常に重要な問題であり、しかも関連を持っている問題だという気がいたします。特に日米首脳会議の中では、中国の問題、日中の問題が当然話題になるだろうと思いますので、そうした中で日本のこれからの外交あり方というものは、やはり私はこうした会議を通して多くの国民の人たちに、これから日本の進んでいく方向というものを、はっきりわかりやすい形で明らかにしていただきたい。また日米首脳会議の中の経済の問題に関しましては、やはり多くのまじめな努力をしてきた日本国民の方々がいままでの努力がむだにならないということを、日米首脳会議でも主張をすべきはきちっと主張をして内容のある首脳会議にしていただきたいということを要望して、私の質問を終わらせていただきたいと思います。
  142. 永田亮一

    永田委員長 午後一時十分から委員会を再開することとし、この際、休憩いたします。     午後零時三十四分休憩      ――――◇―――――     午後一時二十二分開議
  143. 永田亮一

    永田委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  国際協力事業団法の一部を改正する法律案を議題といたします。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。土井たか子君。
  144. 土井たか子

    ○土井委員 ただいま委員長からの御提案の趣旨に沿ってひとつ質問をさせていただきたいと思います。  まず、政府はこの五年間に政府開発援助を倍増以上に拡大するという国際公約をなすっているわけですが、どうも見ておりますと、そうしたかけ声とはうらはらに、開発途上国に対するわが国の経済協力の実績というのがどうもはかばかしくない、進捗していないというのが実情ではないでしょうか。  そこで、五十二年度予算において対外技術協力の目玉として、開発途上国に政府調査団を派遣する、そうして大規模開発プロジェクトのプランづくりに協力する、こういうことが取り上げられて、事業予算がつけられたわけでありますが、未消化のまま積み残されるというようなことが最近非常に強く指摘をされております。その実情は一体どうなっているのかということをまずお尋ねしたいのですが、いかがでございますか。
  145. 武藤利昭

    ○武藤政府委員 経済協力の執行がはかばかしくないという御批判はかねてから承っているところでございまして、私どもといたしましても、その執行を改善するためにいろいろ努力をいたしているわけでございますが、まずその経済協力の執行がなぜ思うように進まないかという理由でございますけれども、これは何分経済協力という仕事が、相手国の経済開発、民生の安定に貢献する、相手国側の開発努力を支援するということになっておりまして、それぞれの開発計画につきまして相手国側と日本政府の間でいろいろきめの細かい相談をしなければならない、そういう過程におきまして時間がかかるということがあるわけでございます。したがいまして、たとえば無償協力、技術協力など、予算をいただきましても、なかなかその年度の中に右から左へその話が進まないというたぐいのことがございまして、従来必ずしも執行率が芳しくないという御批判をいただいていたわけでございますが、この点につきましては、私どもも過去数年来鋭意努力いたしまして、執行率を高めるべく工夫をいたしてまいったわけでございます。  若干、実績について申し上げますと、経済協力のうちで外務省が直接執行いたしておりますのは、無償協力の中の一般無償、それからただいまお話がございました技術協力等でございます。その一般無償の執行率、過去三年ばかりをとってみますと、五十年度は執行率二四・五%と、これはまことにお恥ずかしい数字だったわけでございますが、五十一年は五八・六%まで改善いたしましたし、五十二年度の見込みとしては七四・八%と、ここ二、三年の間にかなり大幅に改善しているということが申せるかと思うわけでございます。     〔委員長退席、大坪委員長代理着席〕  片やただいまお話のございました技術協力については、五十年度執行率八三%ということだったわけでございますが、五十一年度は八四%に上がり、五十二年度は九〇%以上の執行率を見込んでいるわけでございます。  ただ、ちょっとこの点で補足させていただきますと、そういうことで経済協力の仕事は何分相手政府との相談があるということでございますので、これは明許繰越費ということになっておりまして、未執行のものがそのままむだになるということではなくて、その当該年度の中に相談を進め、あるいは一部分が翌年度に繰り越されて執行されるということでございますので、たとえば昭和五十年度の執行率は二四・五%ということを申し上げましたが、これは五十年度で執行できなかったものが五十一年度で執行が完了して九〇%以上の執行率になる、年度別の予算を対象といたしますと、執行率はただいま申し上げました数字よりはかなり高い数字になるということを補足させていただきます。
  146. 土井たか子

    ○土井委員 なかなか威勢のいい御答弁はなさるのですが、実際問題なかなか進捗してないというのが、私たち見ております数字の上でも事実それは指摘されている中身であります。したがいまして、本日ここに国際事業団法の一部を改正する法律案についての審議をいたしているわけでございますけれども、今後の見通しがいままでどおりである限りにおいては、どうも審議をする場合にも心もとないわけでありまして、将来に明るい展望が持ててこそ、審議をするときに、よしこれでいきましょうという気持ちにもなるわけでありますから、率直に現状についてのやはりあった姿というものをここで披瀝されて、反省すべきは大いに反省する、足らなかった点というのは大いにこの点が足らなかったということを自分で認識を持ちながらやっていくことが、今後の発展に対しての第一歩だと思うのですね。だからそういう点からしたら、いろいろと取りつくろいであるとか、いままでこういういい点があったというように、いい点ばかり強調したり、数字の点でも、ことさらやってきたという点を力説せんがために、いろいろな飾った表現での御答弁というのは、この際慎んでいただきたい。率直に現状に対しての御答弁をいただいたことの方が今後あるべき姿をお互いが考え合うことに対して貴重な資料になりますから、そういう意味でひとつ御答弁もお願い申し上げたいと思います。  さて、そこで政府が特に調査団を派遣する、そして開発途上国の大規模開発プロジェクトのプラン作成に協力する場合の実施基準というのがあるはずでありますが、どういうものが実施基準になりますか。
  147. 武藤利昭

    ○武藤政府委員 調査団の派遣基準についてのお尋ねでございますが、技術協力で行います調査、これはいろいろな形態があるわけでございますけれども、一番通常行われますのが、相手国側の開発計画の計画づくりのお手伝いと申しますか、相手国側でこういう計画をつくりたいのだけれども、そうした計画をつくるための技術的な能力が十分でないということで、日本の高い技術をもって調査団を派遣していただいた結果を踏まえながら計画を考えたいという場合が多いわけでございます。これもその計画の段階によりまして、事前調査だとかそれからフィージビリティースタディーと申しますか、いろいろあるわけでございますけれども、少なくとも一般的に申し上げられますことは、調査団というものはその相手国側の要請に応じ、相手国側の計画作成をお助けするために派遣するということでございまして、その基準についてのお尋ねでございましたが、これは調査団についての基準というよりは、技術協力全般についての基準ということになるかと思います。  技術協力全般につきましては、重要性につきましていまさら申し上げるまでもないことでございますけれども、何と申しましても先進国から開発途上国への技術移転という意味がある。それから人を通じての協力でございますので、人と人とのつき合いという国際親善の面からの効果もあるというような、いろいろの意義も踏まえながらやっているわけでございまして、そのような技術協力の一環として専門家の派遣ということもあり、研修生の受け入れということもあり、あるいは調査団の派遣ということもある、このようなことを申し上げられるかと存じます。
  148. 土井たか子

    ○土井委員 どうも釈然といたしません。いまの御答弁では、客観的に見てなるほどこれが特に調査団を派遣するというケースに当たる、そういうきわめてはっきりした認識を持つことはできません。人と人とのつながりだとか、心と心との通いぐあいということになってきますと、例の腹芸で事をいつも考えていかれる政府の十八番からしますと、国民の目から見て何がどうなっているのかさっぱりわからない。これははっきりした決め手があるのではないですか、開発プロジェクトのプラン作成に協力する場合の実施基準というのは。どうなんですか。
  149. 武藤利昭

    ○武藤政府委員 プラン作成についての実施基準というのは、先ほど申し上げましたようなことで、必ずしもそれだけに限ってということはないわけでございますが、相手国側から技術協力の要請がございましたときに、その相手国側の技術協力の要請に対応するという形で進めてまいる。その場合、もちろん日本側の方の人員的な制限もございますし、予算的な制限もございますので、相手国側の要望すべてを満たすというわけにはまいりませんけれども、そのようなところは相手国側と御相談しながら、できるだけ優先度の高いようなものから拾っていく、このようなことは言えるかと存じます。
  150. 土井たか子

    ○土井委員 大規模と言われる規模は、どれくらい以上のものについて特に調査団を派遣するということを政府としては認識されておるのですか。
  151. 武藤利昭

    ○武藤政府委員 特にどれくらい以上のものを大規模というような基準は設けておりません。
  152. 土井たか子

    ○土井委員 そうすると、そのときそのとき、ケース・バイ・ケースで、政府が特に調査団を派遣しようというふうにお考えになるとき、順番にいつでもどういうケースに当たっても行ける、こういうかっこうになるわけですね。
  153. 武藤利昭

    ○武藤政府委員 これは先ほど申し上げましたとおり、わが方の人的な制約、予算上の制約もあるわけでございまして、相手国側から要請がございましたときに、すぐ右から左へ、行きましょうとか行きませんとかいうわけにはなかなかまいりません。要請を受けて、いろいろな国の要請が全部出そろったところで翌年度の計画をつくると申しますか、そういうことになるわけでございまして、たとえば、ただいまの時点で申しますと、過去一年ないし一年以上来各国から技術協力の要請があった案件につきまして、いろいろ御相談をしながら詰めてまいりまして、ただいま御審議をいただいております昭和五十三年度の予算案が御承認をいただきました暁において、その予算の範囲内において実行計画を割り当てていく、このようなことになるわけでございます。
  154. 土井たか子

    ○土井委員 お答えいただかなくても済むようなお答えしかいただけていないわけですが、一千億円以上のプロジェクトというのが一応一つの目安になっているということが、私たちの間ではいわば常識化しているわけですが、そういうことは何ら問題にならないのですか。
  155. 武藤利昭

    ○武藤政府委員 失礼いたしました。先ほど御質問趣旨を必ずしも十分理解いたしませんでしたが、大規模プロジェクトということに限って申しますと、十件、四億四千万円ばかりを計画していたわけでございまして、その基準といたしましては一千億円以上のプロジェクトというふうに考えていたわけでございます。
  156. 土井たか子

    ○土井委員 そういうふうに慎重にいろいろとお考えになる結果なんでしょうか、どうでしょうか、開発途上国からわが国に対して経済技術協力の要請が大変強いのにもかかわらず、実際問題、計上予算が未消化に終わる最大の理由というのはどの辺にあるかというのを、われわれとしてはしきりに考えさせられるのですよ。ひとつ質問に対して合った御答弁をしていただくことを要求しまして、御答弁をお願いいたします。
  157. 武藤利昭

    ○武藤政府委員 若干先ほどの繰り返しになりまして恐縮でございますが、私どもといたしましても、先生がただいま御指摘になりましたような問題意識は痛感しているところでございまして、そのような事態を改善すべく努力をいたしておりますし、また、今後ともいろいろ工夫いたしながら改善したいと考えておるわけでございます。  それから、先ほど未消化分についてという御質問でございましたが、私、若干触れたと思いますけれども、翌年度に繰り越されることはあっても翌年度で消化されるものが非常に多いのであって、全くの未消化になる部分というのは少ないということは申せるかと思うわけでございますが、いずれにいたしましても、本件につきましては、今後ともできるだけその改善の実を上げるべく努力いたしたいと考えております。
  158. 土井たか子

    ○土井委員 昭和四十九年の八月に国際協力事業団は発足をしておるわけでありますが、現在までに手がけてこられました大型開発プロジェクトとしてはどのようなものがあるわけでありますか。
  159. 武藤利昭

    ○武藤政府委員 ただいま資料を探させておりますので、後ほどお答えいたしたいと思います。――お待たせいたしました。昭和五十二年度につきまして代表的なものから申し上げますと、メキシコの通勤鉄道、ジョルダンの総合開発計画、インドネシアの総合開発計画等が大規模プロジェクトに対する調査でございまして、昭和五十二年度におきまして八件実施いたしております。予算上は四億三千万ばかりをこのために使っているということでございます。
  160. 土井たか子

    ○土井委員 アジア全域の問題については後ほどお尋ねを進めることにいたしまして、経済技術協力というのは、当然のことながら受け入れ国の産業構造の方向づけとなってまいります。わが国の協力のかかわり合いいかんによっては、それぞれの国の経済的な運命が左右されるということになってまいります。しかも地域経済体制がそのことによって固まることになるという場合も非常に多くございます。政府としては、そうした帰結を伴うことについて十分なる意識を持って事に当たられる必要があるのではないかと思いますが、こういう点に対して常々そういう意味調査をなすっているかどうか、ひとつお尋ねしたいと思います。
  161. 武藤利昭

    ○武藤政府委員 お答えいたします。  調査と申しましても、いろいろ種類のあることは先ほど申し上げたとおりでございまして、たとえば何か細かいセンターのようなものをつくるというたぐいもあるわけでございますが、少なくとも大規模なプロジェクトに関する調査につきましては、ただいま先生御指摘になったような問題点は十分あるところでございまして、常にその地域全体の経済の情勢、将来の開発の方向などというものを踏まえながら調査はいたすわけでございます。ただ、先ほど申し上げましたことの若干繰り返しになりますけれども、そのような開発計画を最終的に決定し、採択し、実施に移すのは相手国の政府でございまして、日本側から参りました調査団というものは、あくまでも相手国の政府の決定に参考になるような材料を提供するというのが使命でございまして、その辺の限界というものは心得ながらやっておるということでございます。
  162. 土井たか子

    ○土井委員 ところで、その辺は心得ながらやっていらっしゃるというただいまの御答弁でございますが、アジア全域の中でアメリカに次いで、その国に対する援助額で言いますと日本が二番目であるという韓国についてですが、韓国については隣国であるということと、それからいま南北間の問題も種々あり、また対米間においても大変重要な位置にある、また意味を持っている国でございますから、いろいろな点での韓国に対しての、外務省は外務省なりの調査であるとか、検討をなすっておると思うわけであります。  まずお尋ねしたいのは、昭和四十六年の十一月二日付で外務省のアジア局の北東アジア課の作成に成る「最近における韓国の政治社会情勢について」という文書が実在いたしておりますか、いかがでございますか。
  163. 中江要介

    ○中江政府委員 先生御指摘のタイトルの文書が私がいま申し上げようとするタイトルの文書と内容が全く同一であるかどうかは存じませんけれども、昭和四十六年十一月二日付の「最近における韓国の政治社会情勢について」という報告書はございます。
  164. 土井たか子

    ○土井委員 同種の報告書というのは毎年出されているわけでありますか。また、一回ですか、二回ですか。どのようなかっこうでこういうものが用意されているのでありますか。
  165. 中江要介

    ○中江政府委員 もし先生の御指摘の文書が私がいま申し上げました文書のことであるといたしますと、これは外務省が直接調査した報告書というものではございませんで、韓国問題の専門家であるある民間人に外務省として委嘱をいたしまして、韓国に行って韓国各界の人々と面談した結果を中心として、国内情勢について取りまとめてもらったものである、それを部内参考用としてまとめて報告書と称しておるわけでございますが、外務省としては定期的にこういうことをやるということではなくて、先ほど先生も御指摘のように日韓関係というのは日本にとってきわめて重要な位置づけがされておる問題でありますだけに、機会を見てこういったたぐいの調査、報告というものはやっておるということでございます。     〔大坪委員長代理退席、委員長着席〕
  166. 土井たか子

    ○土井委員 そうすると、不定期であるけれども機会を見てこういう調査はその都度外務省としてはなさっている。  そこでお尋ねをいたしますが、この調査についてはこのようであります。それはどういうことかといいますと、「執務上参考となるところが少なくないので印刷配付する。」というのがまずございますね。「なお本報告中に引用された韓国要人の発言中には機微にわたる点が少なくなく、そのまま外部に漏れる場合には今後の調査および情報入手に支障をきたすのみならず、先方に迷惑を及ぼす恐れがあるので、本調書の取扱いには厳に御留意ありたい。」こういうふうに明記されているわけであります。  同種の文書としては、さきに「韓国における不実企業の実態」というのが外務省の方から民間研究組織に調査を委託されて出されたという経過もございます。それも同様の取り扱いだったと思うわけでありますが、これに似たような調査を外務省ではその都度なさりながら、これと同様の取り扱いをいままでずっと続けて今日に至っておるというふうに考えていいわけですね。
  167. 中江要介

    ○中江政府委員 同様の調査というその同様の意味はいろいろございますけれども、その調査内容、また、中に述べられていることの重要度といったものによりましては、いま御指摘のように執務参考用として部内限りの文書にしたためることもございますし、あるいは直接当事者からいろいろ説明を聴取するにとどめる場合もございますし、それは臨機応変にやっておるわけで、すべてこの方式によっているというわけにはまいらない。つまり日本としてはいろいろの方法で確かめながら執務の参考にしているということでございます。
  168. 土井たか子

    ○土井委員 執務の参考になさるいろいろな資料は、いまおっしゃったように取り扱いは種々あるわけでありましょうが、取り扱いには特に注意を要すると言われているこの文書を実は私は見る機会を得ました。それで一読をいたしました。内容はまことによくできている報告書であります。報告書としては実によいという印象を私は強く持っているわけでありますが、それはどういうことかといいますと、つまり冷静な目で見ている。韓国のその当時の首相を初め、二十六人の政界、財界、学界のそれぞれの要人の方に会われて、いろいろ聞いた内容をそのまま具体的に記述しながら、それに対しても冷静な批判を加えて、全体としてやはり冷静な判断を持っている。そういうものを資料として扱い、これを利用する、このことが非常に大事だと思うのですよ。そういう意味では――人名を外に出すということについてはなるほどおっしゃるとおり支障があるかもしれませんけれども、しかしこういう資料をほこりをかぶせないで具体的に生かしていくことが非常に大切だと思われます。ちなみに、いま経済援助の問題を討議しているわけでございますから、その部面に触れて書かれているところをここに取り上げてみただけでも、こういうことが言えるのではないかと思います。  まず文章について申し上げますと、これも人名については私は一切触れないようにいたしましょう。「対韓経済協力と反日感情の激化」という項目が起こされておりまして、その中で「韓国民はこれまでの日本の対韓経済協力の在り方について極めて否定的である。日本の対韓経済協力が韓国経済の再建、繁栄に寄与し、高度成長をもたらした主な要因をなしたことは彼我ともに認めるところである。しかし、日本の対韓経済協力は一部上層特権層をうるおしたが、一般国民は何らその恩恵に浴していない。のみならず、最も悪いことは日本の経済協力が不正腐敗を生む根源をなしていることである。」こう書かれているわけであります。  これはある人に会って、その人の質問に対しての答弁の形で記述されているわけでありますけれども、朴政権の現状に対してあげつらっておられる点の一つに、日本の対韓経済協力が金成坤らに食われて国民の期待するごとき成果を上げ得なかったことというのが挙げられております。金成坤と言えば、予算委員会の席においてソウルの地下鉄問題をめぐって再三再四その名前が出てまいりますし、最近では特にこの金成坤という名前は、ソウルの地下鉄について二百五十万ドルのお金の第二回、第三回の外換銀行に送られた口座名というのにも記載をされているということすらはっきり出てきているわけであります。特にアメリカのフレーザー委員会あたりではこの人物を中心にした政治工作の問題に対してもかなりいろいろな調査が進みまして大部の資料が出ておりますが、御承知のとおりこの金成坤氏は昭和四十六年十月に失脚をいたしております。この調査は四十六年十一月二日付で出されているわけでありまして、十月六日から十六日までの間調査をなすった結果がまとめられているわけでありますけれども、この間の事情を考えてみますと、時期として非常に微妙な時期にこれは調査なすっているということにならざるを得ないのですね。したがいまして、ソウル地下鉄の今日のこの大変な問題も、それから対韓援助が政治腐敗を生む温床であるということも、この報告書の中を見ただけでも外務省としてはいささかの認識を持っていらっしゃるはずであると思いますけれども、この「対韓経済協力と反日感情の激化」というところを局長は恐らくはお読みになってきょう御出席いただいているはずであると私は考えておりますので、この部分についてお読みになった局長なりの一つのお考えというものをここでまず聞かせていただきたいと思います。
  169. 中江要介

    ○中江政府委員 先ほど私が申し上げました報告書というのは、私がアジア局に勤務します直前に出された報告書でございますので、アジア局の一員として日韓関係にも携わるに当たって当時読んでおりまして、本日ここに来るに当たって読んできたわけではございません。つまり私どもとしては、いつも反省をしながら、日韓関係のみならず、あらゆる外交施策を進めていくということでございまして、この種の報告書なり参考意見というものは絶えずまじめに勉強して検討しておるつもりでございます。  この中に書かれておりますことは、当時私も読みまして日韓関係のむずかしさというものを痛感したわけでございます。ただ、金成坤氏についていま御指摘のような問題、具体的な問題については当時も認識はございませんでしたし、いまもそこのところは私どもとしては、少なくとも私としては証拠を持って云々するというだけの知識も材料も持ち合わせませんけれども、日韓経済協力につきましては忘れてはならない一つの問題点を示唆している。ただ、ここに書かれておりますことは、その委嘱をしました民間人が方々で聞いてきたところで、非常に短期間の調査でございますから、主として人の言ったことを聞いてそれなりの判断をしているということですので、これはどこの国でもそうでございますけれどもいろいろの意見がある、その意見の中にはこういう批判的な意見もあるなということで私どもは受けとめている、こういうことでございます。
  170. 土井たか子

    ○土井委員 しかもこの調査については、時期から考えますと第三次五カ年計画の前夜に当たりますが、その第三次五カ年計画に対して日本が対韓援助をどのようにするかということに対する参考ともなろうかと思うのですよ。そういう意味も含めての調査というふうにわれわれは理解をさせていただいてもようございますか。
  171. 中江要介

    ○中江政府委員 アジア局としてこういう調査を委嘱いたしますときの姿勢は、対韓援助だけではございませんで、そのタイトルにもございますように政治経済事情全体でございまして、韓国の問題についてよりよく知るための一つの方便でございます。したがいまして、経済協力という側面からこれをどう評価するかということの執務の参考にもなろうかというので印刷にしたということでございまして、経済協力を進める、あるいは経済協力の新しい計画を考えるに当たってひとつ調べてみようという発想ではなくて、むしろそれは逆なことになっている、こういうふうに御認識いただきたいと思います。
  172. 土井たか子

    ○土井委員 したがって当初は、いまの御答弁からすれば、第三次五カ年計画に対して日本が援助をどのようにすべきであるかという発想のもとに調査をしたのではないという御答弁でありますが、しかし結果としては、この調査が第三次五カ年計画に日本が援助するに際してどういうふうに事に処したらよいか、どのように考えていったらよいかということに対する一つの指針をつくる場合の参考になることは事実あるわけでございますね。このことは否定できないでしょう。局長、いかがですか。
  173. 中江要介

    ○中江政府委員 参考にはなるのですけれども、それが主目的ではなかったということは、先ほどお読みになりましたまくら書きのところにもございますけれども、これは例のニクソン・ショックの直後でございまして、極東国際情勢に大きな変動が予想される、その非常に重要な時期に一体わが隣国韓国はどういう受けとめ方になっているであろうかということが主目的でございまして、その中で第三次五カ年計画についても参考になる面も出てきている、こういうことで、参考意見としては、もちろん私どもはそれを重視して諸般の事務に対処してきている、こういうことでございます。
  174. 土井たか子

    ○土井委員 結局、私が先ほど少しその文章に沿って読みました部分で、最も悪いことは日本の経済協力が不正腐敗を生む根源をなしていることであると言われる方が韓国の要人の中にもあるというこの部分であります。  第三次五カ年計画について、さらに調査団の報告書なるものが四十七年七月、外務省の経済協力局から出ているわけであります。これは中身を読んでみて、第三次五カ年計画に入ってからのこの調査報告書という意味からいたしましても、この点は、いまアジア局の北東アジア課の方がお出しになった調査結果というものが、その後の日本の対韓援助の上で一向にいろいろ配慮される参考として使われてこなかったのではないかというふうな向きを考えさせられる部面がございます。「さらに一言韓国経済について苦言を呈するならば、経済問題に過度なまでに経済外的要素が作用している面が見受けられ、その点がわれわれにとって気がかりであった。輸入外貨割当て、商業借款供与枠を受けるためにはすべて有力者の口添えが必要であるとの声が聞かれた。また、銀行は商業ベースで資金を貸出す例は皆無ではないかと極言するものもあった。今後、韓国経済が一層の発展をとげるためには、こうした傾向を極力打破し、経済性・効率性を重視していくことが必要ではないかと思われる。」という部分がございます。これは局長も御承知のとおりだと思うのです。つまりこれは、日本として経済協力を行う場合に重々注意を要する点だということは、この文章からすぐにでも言えることなんですね。  早くも、四十六年の十一月段階に出されております北東アジア課からの調査の報告書の中にもこの点は、韓国に足を運んで現地において要人の方々の声の中にこういうのがあるということがはっきり書かれているのだけれども、第三次経済開発五カ年計画について調査団が四十七年七月に報告書を出される当時まで、こういうことが非常に強く認識されるような状況の中で、政府としてはこのことの配慮なく経済援助というものを続けられた、われわれはそのように認識をしているわけでありますが、この報告書、それからさらに韓国第三次経済開発五カ年計画の調査団の報告書、この両者はどういうかっこうでその後対韓援助の上で生かされましたでしょうか、それをひとつお聞かせいただきたいと思います。
  175. 中江要介

    ○中江政府委員 第三次五カ年計画に関する報告書の方は、経済協力という面が大きく前面に出されたものとして作成されておりますので、経済協力局の方から御説明があると思いますが、それに先立って行われました先ほどの報告書は、冒頭に私が申し上げましたように政府の機関が権威を持って調査したものというよりも、政府が委嘱をいたしまして一民間人が取材してまいった報告書である、そういうことを念頭に置いて、その中に書かれてあることをその後の対韓姿勢、特に政治経済各般にわたっての参考にするということでありまして、参考にするということはうのみにするという意味ではなくて、一つの意見としてそういう意見もあるということを念頭に置くという意味で、そういう意味では、その民間人の行いました調査の結果というものを政府機関が参考にしながら、政府政府の独自の立場で大きな日韓関係全体を念頭に置いて諸施策を遂行していく、その経済協力での面がいま御指摘になりました第二番目の調書であろう、こういうふうに私どもは位置づけておるわけでございます。
  176. 土井たか子

    ○土井委員 そこで外務大臣、いまこういうふうなやりとりを私と局長との間で続けてまいったわけでありますけれども、アメリカにおいては、火のないところに煙は立たない、こういうたとえのとおりで、煙が見えたとなるとその火のもとに対して徹底的に調査をいたします。そして、国民の疑惑を晴らすためには、議会では全力投球するという体制で事を構えます。  わが国の場合には、この調査報告書の中にも名前だけ、その部分は私は出しましたけれども、疑惑の一つである韓国のソウルの地下鉄問題をめぐって再三再四にわたって出てくる金成坤氏の事柄一つにつきましても、そういう事実はいまだ見聞していないとか、私は寡聞にして知らないとか、いろいろと忘却のかなたに事を持っていかれるという答弁しか出てまいりません。  アメリカでは、かなり調査自身が進行いたしまして、いよいよこれは怪しいということになったら、はっきりするまでは経済援助を打ち切ろうではないかということが、非常にきっぱりした形で議会の中では出てまいります。私は、いろいろな調査を外務省が省内でおやりになる、特にいろんな配慮もあってこれを外部に出すことはむずかしいとおっしゃるところもわからぬではありません。しかしながら、こういう調査が、先ほどお伺いしたとおり一回ではないのですね。そのたびごとに必要とあらば何回かやっていらっしゃるわけであります。そういう調査が、国民の目から見ればいわばやみからやみへというかっこうで、十分に活用されないまま今日に至っているといういきさつがあるのではないか。しかも、事実に対してさらに追及の歩を進めますと、それは知りません、存じませんの一点張りでありまして、記憶にございませんというふうな答弁が相次ぐような国会であっては、これはどこまでいっても日韓間の正常なお互いの提携、正常な協力というものは望むべくもないと私は思うわけであります。ひとつ日韓間のあり方を正常にしていく意味におきましても、外務省の方でいろいろと調査をなさる、そして調査結果を生かすことのためには、必要な部分について、名前を公にすることに差しさわりがあるならばそこの点は配慮をされればいいのです。必要なものをわれわれが要求したときに、資料として提供していただけるということが当然ではないかと思うわけでありますが、こういうことについて、まず外務大臣はどのようにお考えになりますか。
  177. 園田直

    園田国務大臣 経済協力関係調査の御要求があれば出すのは当然であると考えます。
  178. 土井たか子

    ○土井委員 いままでこういう要求を出しましても、いただいたためしが実はないのです。それと同時に、こういう調査を外務省としては進めていらっしゃるわけでありますから、事対韓援助に対して具体的に援助内容がそのうちどうなったかという決算報告は厳密にやっていただくという姿勢がなければ困ると思うわけでありますが、いままで当委員会において再三再四にわたって対韓経済援助の内容に対して年次報告を求めたいということも申しました。また、五カ年計画なら五カ年計画の中で日本の援助がどれだけあって、具体的にそれは何にどういうかっこうで使われたかという決算報告めいたものを出していただきたいということも要求いたしましたが、ただの一度もいままでにそれが実現されていないわけであります。このことに対して、外務大臣、どのようにお考えになりますか。
  179. 園田直

    園田国務大臣 御要求があればこれもできる限り出すのが責任であると考えます。
  180. 土井たか子

    ○土井委員 外務大臣はそのようにお答えになりますけれども、要求を幾らしても、いままでにそれが実現し得なかったというのです。これがいままでの経過であります。しかもその中では、外務省自身現地に足を運ばれて調査をされている中身に、対韓援助の問題もとらまえられて、対韓経済協力のあり方については韓国民はきわめて否定的であるという部分があってみたり、日本の経済協力が不正腐敗を生む根源をなしているというふうな部分があってみたりしますと、よけいにこのことは具体的にはっきりした、そうではないという決算の中身をわれわれにお示しいただかないと、これは国民の血税が使われるわけでありますから、国民からすれば、国民の税金を使って一体これはどういう援助なんだということにもなりかねません。この点は、外務大臣、どのようにお考えになりますか。
  181. 園田直

    園田国務大臣 過去のことは余りわかりませんけれども、要求されて報告書が出ないというのは、事件が起こった後これに対する調査等が調査中であるので出せなかったのかもわからぬと思いますが、今後の問題は、出すのが当然であると思います。
  182. 土井たか子

    ○土井委員 調査中と外務大臣おっしゃいますが、いつまでたっても調査中なんですよ。それじゃ切りをつけていただきましょう。一体いつまでにそういういままでの第三次五カ年計画に対しての総括した決算書なるものが出てまいりますか。
  183. 武藤利昭

    ○武藤政府委員 かねて御要求のございました韓国に対します経済協力の実績につきましては、目下鋭意作業中でございます。もうほどなくできるころじゃないかと思うのでございますが、何分非常に膨大な資料に当たらなければいけませんので、若干時間がかかった点は御了承いただきたいと思います。ただ、かねて御要求がありました資料のうち、やはり企業の秘密にわたる部分はお出しできないということのようでございますので、この点につきましてもあわせ御了承いただきたいと存ずる次第でございます。
  184. 土井たか子

    ○土井委員 外務大臣、お聞きのとおりなんです。これは、今回の国際協力事業団法というのは韓国ばかりを相手にしているわけじゃありませんから、韓国以外の外国すべてに対して、それぞれの国に対して同じような要求を出したらスムーズに事が進むのですね。案外われわれが考えているよりも早く、実はという報告書がいただけるのであります。なぜこれほど韓国の場合におくれるのか不思議でならない。この原因はどの辺にあるとお考えでいらっしゃいますか。
  185. 武藤利昭

    ○武藤政府委員 韓国について御要求いただいております資料が、先ほど申し上げましたようなことで、大変詳しいものの御要求をいただいているということ、それからその中には、先ほど企業の秘密に属する部分については申し上げられませんと申し上げましたが、そのような部分につきましては、外務省だけじゃございませんで、輸銀、基金、そういう金融機関の方で扱っている数字もあるというようなことで、なかなか作業は進まない、あるいはお出しできない部分もあるということでございますが、ほかの国につきまして従来このように詳細な資料を出せというような御要求は、私の承知している限りたしかなかったと思うわけでございまして、もしほかの国につきましても同じように詳細な資料の御要求がありますと、これはやっぱりかなり時間がかかることになるのではあるまいかと存ずるわけでございます。
  186. 土井たか子

    ○土井委員 それじゃ、かなり長い間要求資料について御提出いただくのを待って今日になったわけでありますから、いつごろ具体的に出していただけるかというのをひとつきょうは聞かせておいていただきましょう。
  187. 武藤利昭

    ○武藤政府委員 総額に関する部分につきましては一週間程度ぐらいでお出しできると思います。
  188. 土井たか子

    ○土井委員 それはまず総枠についてですね。あと細部にわたってはいつごろになりますか。
  189. 武藤利昭

    ○武藤政府委員 細部の部分につきましては、先ほど申し上げましたようなことで外務省以外の省庁あるいは輸銀、基金等にもわたっておりますので、そちらの方と調整をする必要がございますので、この場で私限りでいつまでと期限を申し上げることができませんので、その点は御了承いただきたいと存じます。
  190. 土井たか子

    ○土井委員 またかなりの時間を待たなければならなくなるかもしれませんが、督促を毎たびいたしますから、ひとつまず一週間以内に大枠のものは御提出をいただくように、再度ここで申し上げたいと思います。  さて、経済協力の歴史を考えてまいりますと、従来政府開発援助というのは、海外需要の喚起、それからまたそれを創出するというそういう部面から輸出振興という目的に利用されてみたり、また軍事的な均衡を維持するために利用されたりしてまいっている部面が非常に強うございます。その結果、援助受け入れ国の経済構造の歪曲化というのがそのために助長されるというふうな場合があると同時に、その国の政治であるとか社会構造の近代化を妨げるということにもなったというのが、いままでの歴史の示すところではないかとわれわれは見ております。したがいまして、この点は非常に大事だと思うのですが、アジアの諸国やその他の開発途上国に対しまして、その国あるいはその地域に対するわが国の基本的な外交政策、この外交政策に基づいての経済技術協力の基本計画というものがまず立てられていなければならないと思うわけであります。韓国に対してもそうだと思うのです。政府にはそうした準備ができているのでございますか、いかがでございますか。
  191. 武藤利昭

    ○武藤政府委員 経済協力の基本政策はたびたび申し上げておりますとおり、開発途上国の経済の発展、民生の安定に貢献するということでございまして、その具体的な経済協力の態様につきましては、これは経済協力のやり方そのものが資金協力、この資金協力にも利息の高いものもあれば安いものもある、あるいは無償の協力、技術協力、いろいろあるわけでございますけれども、そういうようなものを相手国の需要に応じ、適当に組み合わせながら配分していくということでございまして、韓国につきましても最近かなり高い経済成長を遂げてはいるわけでございますが、まだ農業部門、インフラストラクチュア等におきましていびつになっている面もございますので、その辺のところにつきましてはまだ若干援助を続けなければなるまいかということを考えている次第でございます。
  192. 土井たか子

    ○土井委員 そうすると、これですというふうなことが明示いただけるような中身にはまだ具体的になってないというふうに、いま私としては受けとめさせていただいているわけですが、これは大事な問題だと思うのですよ。外務大臣いかがですか、こういうことをお考えになりませんか。
  193. 園田直

    園田国務大臣 いまの経済協力の実情は相手国から要請されたもの個々に審査して調査しているものであると心得ております。しかし、おっしゃいますように、経済協力にいたしましても有償無償含めて相手国の実情をよくこちらが承知をしておって、そして実際に地域の住民の生活向上のためになるのか、一つの工業を向こうへつくってやるのか、こういう点もひとつ相手の援助を受ける国のあり方、それからまた一つには、いまおっしゃいましたような全般的なおおむねの計画があって、それから個々の審査を始めるべきことは、これはそのとおりしなければならぬと考えます。
  194. 土井たか子

    ○土井委員 いま外務大臣お答えのとおりだと思うのですがね。わが国はもう申し上げるまでもなく、資源を持ちません。しかし、政府は経済大国だとおっしゃる。開発途上国に対する依存度というのはきわめて高くなるわけですね。また軍備を国際的な問題の解決には絶対に日本としては用いないということも宣言をいたしております。こういうわが国としては、現在の厳しい国際社会でわが国の生存を確保していくという手段を考えますと、国民の活動による経済力と技術力が大きな柱ではないかと思われるわけであります。そうした意味から考えまして、わが国の経済協力、技術協力を単なる開発途上国への資本、技術の移転、交流という次元で考えていいのだろうか、そういうふうに考えてしまうのは間違いじゃないかというふうに考えられるわけでありますが、今後の経済協力、技術協力というものは、したがって、国際関係の政策手段としての性格というものを一段と強めてくるのじゃないか、この点は外務大臣としてはどのようにお考えになりますか。
  195. 園田直

    園田国務大臣 濃厚の度合いでありますが、必ずしも政策的な面だけでは片づけられない相手国の実情もありますけれども、しかし、いまおっしゃるような趣旨のことも十分考慮してやるべきだと考えております。
  196. 土井たか子

    ○土井委員 十分考慮してやるべきだという外務大臣の御答弁でございますから、この節少し申し上げたいことがございます。それは先ほど来対韓援助の問題について、日本はまずもって経済協力が不正腐敗を生む根源になるなんということは夢にも考えないで経済協力を韓国との間でする。また、韓国民日本の対韓経済協力のあり方については好意的であり、これを歓迎しているに違いないという思いで協力をする。しかし、かの地に行って、外務省自身が人を派遣していろいろお調べになった途次明るみに出たこの資料によると、韓国民日本の対韓経済協力のあり方についてきわめて否定的であるというふうなことを向こうの要人自身がおっしゃるような場面があるわけですし、また残念ながら最も悪いことは、日本の経済協力が不正腐敗を生む根源をなしていることなんだということもはっきりおっしゃるような状況があるわけであります。  そこで、政府はこの際、わが国の経済協力、技術協力を実施する基本原則というものを考えてまいります場合に、少なくとも三原則ぐらいは国民の前にはっきりさせられる必要があるのじゃないかと私は思うわけであります。それをいまここで申し上げてみますから、外務大臣としての御所見を伺わせていただきたいのです。  一つは、軍事目的に充てられる対外経済協力というのは行ってはならないということです。二つ目には、紛争を起こしている当事国に対する対外経済協力というのは実施しないということです。三つ目には、覇権を求めるための、目下問題になっております覇権を求めるための対外経済協力というのは行わないということです。至極当然のことでありますけれども、この三つの要件ぐらいははっきりとわが国の経済協力、技術協力を実施する基本原則として認めていくことが必要ではないかと考えますが、外務大臣としての御所見はいかがでございますか。
  197. 園田直

    園田国務大臣 きわめて重要な御意見ではありますが、さて現実的にその三カ条でいいのか、あるいは三項目を決定した場合に現実の問題で支障はないのか、こういう点も考えて、きわめて妥当な貴重な御意見としてこれを基準にして検討してみたいと考えます。
  198. 土井たか子

    ○土井委員 そうすると、これを基準として政府としては何らかの国内における法制化をお考えになる御用意がおありになるのでしょうか。いかがでございますか。
  199. 園田直

    園田国務大臣 経済協力について選考の基準、調査の方向等を法制化する段階ではないと考えますが、十分研究してみます。
  200. 土井たか子

    ○土井委員 かつて七十五回国会において参議院に対してでありますが、わが党は対外経済協力計画の国会承認等に関する法律案というのを提出いたしました。そして付託されたわけでありますが、この内容に対して、これは外務大臣も御承知おきいただいていることだと思いますが、どのようにお受けとめいただいているかをひとつお聞かせいただきたいと思います。
  201. 園田直

    園田国務大臣 われわれが田法案と呼んでいる法律案のことだと思います。承知しております。
  202. 土井たか子

    ○土井委員 それで外務大臣とされては、この法律に対してどういうお考えをお持ちか、それから、まだ日本においては法制化という段階ではないとおっしゃる理由はどの辺にあるのか、その辺に対してお聞かせくださいませんか。
  203. 武藤利昭

    ○武藤政府委員 ただいま御指摘のございました法案につきまして特に問題となっておりましたのは、「民主主義の原理に反する統治を行う国に対しては、対外経済協力を行ってはならない。」とか、それから「軍事目的に充てられる対外経済協力を行ってはならない。」とか、「経済協力計画を作成し、国会に提出してその承認を受けなければならない。」「六月に一回、対外経済協力の実施状況について国会に報告しなければならない。」等が主要点であったと理解いたしておりますが、この中で、特に私どもといたしまして当時疑問だと思っておりましたことは、一つには、この「民主主義の原理に反する統治を行う国」というものを、一体だれがどういうふうにして判定をするのか、この判定を日本政府が一方的に行うということになると、これはあるいはその相手国に対する内政干渉のおそれが生ずるのではあるまいか等の問題点、それから、「対外経済協力計画を作成し、国会に提出してその承認を」受けるということが一体実際上どういうようなことになり、それが経済協力の実施を果たして円滑に行う手だてとなるのであるかどうかというようなことで問題意識を持っていたと理解しているわけでございます。  現状におきましても、私まだ、この法案につきまして十分に考えている時間的余裕はなかったわけでございますが、当時そのような問題点を政府側から指摘いたしたということは聞いておりまして、そのような問題点は現在もなお残っているのではあるまいかというような印象を持っているわけでございます。
  204. 土井たか子

    ○土井委員 外務大臣、いまのような印象を持っておられることをいま御答弁の中で承ったわけでありますけれども、なおかつ外務大臣から、いま法制化することは時期が早いというふうな意味の御答弁を先ほどいただいたわけであります。  ただしかし、これはどうでしょう、現に予算委員会の席を通じて、例のソウルの地下鉄の問題に対して種々取り上げられ、いろいろな疑惑を追及していけば追及していくほど、当然調べられてしかるべき問題が調べられていないわけであります。調べるその当事者ということになってくると、恐らくは海外経済協力基金であるとか会計検査院なんというのが途端に考えられてくるわけでありますけれども、海外経済協力基金は何ら調査の権限はございませんし、また会計検査院にしても、日本の国内におけるメーカーや商社に対して調査権限というものを持っているというわけでありますから、いろいろ外国に対してその間の事情を一々取り調べていくということがどうしてもできないわけであります。したがいまして、自後そのことがどうなったかという調査をやるというのはなかなか至難のわざなんですね。  したがいまして、援助をやるに先立って、一定の基準というものをかちっと決めておいて、そしてその基準に合致したものについて援助を認めるというやり方こそ、私は一番大切な問題じゃないかと思うわけであります。援助をやってしまってから後、疑惑がわいて、それに対しての調査を進めるといったって、これは十分にはなりません。  したがいまして、そういう点から言っても、一つはその辺が非常に大切であるということと同時に、アメリカなんかではもうすでに海外不正支払い防止法というのをつくっているわけですね。これなんかは、外国に対しての援助が実は一つのルートになりまして、政治の中に腐敗行為というものを生み肥やしていくということは絶対あってはならないということから、非常にこの点に意を用いて、腐敗行為の対象となる客体としては、外国政府の公務員、それだけではなく、外国の政党並びに外国の党員までも含めて考えているという法律であります。非常に厳しい法律なんです。しかし、それほどシビアにアメリカの場合なんか考えているわけですね、この問題に対して。日本が法制化をするということがまだ早いと言われる向きが私にはどうしてもわからない。  今回、国際協力事業団法の一部を改正する法律案の審議は、大型プロジェクトということを問題にしつつあるわけでありますからね。こうなってくると、よけいにいま申し上げているけじめということをきちっとやっていただかないと、取り返しのつかないようなことにもなりかねません。国民の税金を使うわけであります。国民の疑惑に十分こたえ得るような体制を組むというのが、やっぱり政治の基本ではないでしょうか。また、責任ある態度ということになるのではないかと私は思いますけれども、外務大臣、いかがでございますか。
  205. 園田直

    園田国務大臣 ごもっともな意見でございますが、経済協力のあり方がいろいろ問題であることは御指摘のとおりだと考えますが、それをためるために法律をつくって、経済協力関係だけの汚職を防止するとか、あるいはそれぞれの国との経済協力を法律によって規制されて、そして一年分の計画をつくってその承認を受けるとか、あるいは決算を報告するとかということを法制化されることは、この経済協力が外交政策上の観点からもしなければならぬ場合に、外交政策上の手のうちを見られる、それから弾力性を失う等のことがありますので、いまの汚職防止については他の法律案でやるとか、あるいはもう一つは、いまの経済協力のあり方、特に協力をする場合に公文の取り交わし方の場合、いまのように、決めたらその先は何にもできないということで果たしていいのかどうか。いまおっしゃいましたように、その文書を取り交わす際に、何かあったら両国調査をするとか、あるいは両国合意をした使用目的にたがう場合には一応中止するとか、何らかそういう方法を研究すべき段階であって、法制化することは、私は、うかつにやると角をためて牛を殺すことになりかねない、こういうことでありますので、なお十分検討する余地があると考えます。
  206. 土井たか子

    ○土井委員 それでは先ほどの、私がここで少し述べてみました三つの基本原則に対しては、考えてみようとおっしゃった外務大臣の御答弁でございますが、どういう形でこの基本原則を生かすことができれば生かそうというお考えをお持ちなんでいらっしゃいますか。
  207. 園田直

    園田国務大臣 経済協力を、有償無償にかかわらず、決定する場合の選考の基準の一つとして、いまの御意見も入れ、他の条項も含んで検討してみるべきではなかろうか、こういう意味でございます。
  208. 土井たか子

    ○土井委員 そうすると、援助を決定する場合の一つの目安として、政府とされては何らかの基本原則といいますか、目安を、やはり客観性を持たせたものにしておいていただく必要がどうしても私はあるように思います。そうでないと、その都度口頭で、言ったの言わないのといって大変また問題になってまいりますので、ひとつ客観的に、国民の目に鮮やかに映るような問題にこれをしていただきたいと私は思うわけでありますが、外務大臣、いかがでございますか。
  209. 園田直

    園田国務大臣 これは、省令にするとかあるいは大臣の方針にするとか、その点も含めて検討してみます。
  210. 土井たか子

    ○土井委員 まだほかに私は質問事項を残しておりますから、後、わが党の井上委員質問を続行していただき、さらにきょう予定されております正森委員の御質問が終わりまして後、許されるならば質問を続行させていただくことにいたします。
  211. 永田亮一

  212. 井上一成

    井上(一)委員 私は前回相当質問をいたしまして、一定の答弁はいただいたわけでありますので、重複はできるだけ避けてお答えをいただきたいと思います。  今日、開発途上国がいまの世界経済の中でいわゆる新しい国際経済秩序を樹立していこうという政治目標を定めて、資源を一つの柱あるいは南のいわゆる開発途上諸国の団結というものを主要な柱として、いわゆる第三世界の国際経済における正当な権利の回復とその主権の確立を求めているのが現状だと思います。そういう意味では、南北問題の焦点は現行の世界経済秩序の変革へと大きく動いているのではないだろうか。そういう観点に立って、政府自身が今日の南北問題の動向についてどのように受けとめていらっしゃるのか、まずお聞きをいたしたいと思います。
  213. 園田直

    園田国務大臣 南北問題の基本的な問題はいま御指摘をされたとおりでありまして、新しき経済秩序というか、人類が生存せんとする新秩序をつくるというところに根幹があると考えるのは、御指摘のとおりでございます。
  214. 井上一成

    井上(一)委員 いままで、第二次大戦後アメリカが築き上げてきた既成の世界経済秩序は、いわばドルと核のかさによって守られてきたわけであります。今日、相対的にアメリカの経済的地位が低下しておる。そういう意味では、今日の世界経済秩序というものが崩壊とまではいかなくとも、それに近い状態に置かれておるのが現状ではないだろうか。一体このような状況をもたらした要因は何なのかということなのです。どこにそのような原因があるのか、政府はどのようにお考えでいらっしゃるのか、この点についてお聞きをいたします。
  215. 園田直

    園田国務大臣 私は専門ではございませんので、いろいろ問題があると思いますが、一番大きな問題は金本位体制の経済が必然的に変わっていきつつある、こういうふうにとらえておるわけでございます。
  216. 井上一成

    井上(一)委員 わが国がいわゆる南北問題の解決を考えるときに、どうしてもやはり新しい経済体制というものに対する対応が迫られていくわけであります。  そこで、開発途上国のいわば求めるべき新しい経済秩序に対して、それでは具体的にわが国はどう対応していこうとお考えでいらっしゃるか、この点についてもお聞きをしておきたいと思います。
  217. 園田直

    園田国務大臣 南北問題に対する対応でまず第一に大事なことは、政治経済について南北両方の人間の権利、国家としての存立、そういうものがそれぞれ回復をされて、どの国もどの地域も、ひとしく人間としての権利を共有し繁栄をするという方向に地ならしをしていくことが新秩序の根底であると考えております。
  218. 井上一成

    井上(一)委員 いま大臣からお答えがあったわけでありますけれども、旧態の古い秩序の中で、世界的に経済利益を受けたのはやはりわが国ではないだろうか、私はこういうふうにも思うわけです。そういう立場に立ちながら、いま新しい世界経済秩序を打ち立てようとするいわゆる開発途上諸国の主張するあるいは目標とする立場に協力をしていくべき対応策というものが、当然わが国に必要ではないだろうか。だから、ただ暫定的に世界経済は全般に不況である、あるいはそういう形の中で手直しだけで事が足りるんだという安易な考え方でこの南北問題に取り組んでいただくと非常に誤解を受けるおそれがあるし、そういう考えに立つならば、海外経済援助というものも本当の趣旨での海外経済援助にならずして、やはり古い植民地主義、いわゆる覇権主義的発想に受けとめられる可能性があるということを、私はここで特に申し上げておきたいと思うわけです。  さて、そういう意味で、それではわが国がこれからそれらの新しい経済秩序をつくり出していくための具体的な政策として、いまどのように対応をする政策をお持ちなのかどうか、あるいはもうすでにそのような形の中で協力をしているんだという事例があればお聞かせをいただきたいと思うのです。
  219. 園田直

    園田国務大臣 これは理想に走るかもわかりませんが、経済協力というものも、いまのようにそれぞれの国が二国間で自分の国の都合から協力するのではなくて、軍備に使う金をお互いに出し合って、そしてこれを世界共通の公共事業または世界共通の問題として南北問題の解決、地域の開発等にやることが必然であり、しかもいま世界経済が不況といえども、個々に刺激をしておってはなかなか脱出できないので、むしろ世界的な企業の刺激、あるいは公共事業の実施ということをやる方向に行くべきではなかろうかと、理想に過ぎるかもわからぬが、考えておるわけであります。  なおまた、先ほど出ました通貨の問題にいたしましても、単に関係国々だけでやりくりをしておって、果たしてこのまま行けるのかどうか、これも専門じゃないからわかりませんけれども、通貨というものが金本位の通貨から銀本位通貨に変わるのか、それとも特別の国だけしか持たない金銀だけではなくて、すべての国が持っておる国力であるとか、あるいはその国の民族の素質であるとか、秩序であるとか資源であるとか、こういうものの裏づけで通貨が出てくるのか、これは非常に理想ではありますが、通貨もそのように金本位から変わってくる、社会の必然性に向かって前進している、その必然性を見ながら、目の前の問題をどのように、混乱しないで変わるべき時代に持っていくか、こういうことを考えてやらなければならぬと思いますけれども、専門家ではございませんから、具体的には私もまだわからぬところで、一生懸命に勉強しておるところでございます。
  220. 井上一成

    井上(一)委員 私は、少し事務的になるかもわかりませんが、そこでちょっとお聞きをしたいのです。  いわゆる石油危機以降に、開発途上国、とりわけ非産油開発途上国を中心に、対外債務の残高が急激に増加をしている、いわゆる債務に対する将来にわたっての返済能力が一体あるのであろうかという危惧の念が国際的に高まりつつあるわけなんです。  それで、これらの諸国の対外債務の現状はどうなっているのであろうか、わが国の開発途上国に対する債権額は一体どれぐらい現在あるのか、お聞かせをいただきたいと思うわけです。
  221. 武藤利昭

    ○武藤政府委員 ただいまお尋ねの数字につきましては至急調べておりますので、できるだけ早く御報告したいと思いますが、その前に、まず基本的な姿勢について申し上げますと、開発途上国の債務問題、これはただいま御指摘のございました南北問題の中でも特に重要な問題の一つであるわけでございますが、つい最近ジュネーブにおいて開かれました貿易開発委員会におきましてこの問題が取り上げられ、それで、まずとりあえずの措置といたしまして、開発途上国、特に開発途上国の中でも貧困な開発途上国の公的な累積債務につきましては、援助供与国の方でその解決のためにできるだけの措置をとるということにすでになっているわけでございまして、具体的にどのような形でそのような累積債務の解決をするかは個々の援助供与国に任されるといたしましても、来年五月に開かれますUNCTADの総会までの間に、そのような解決、あるいはそれと同等な措置を図るためにそれぞれの国が工夫をいたしまして、この問題の解決に進んでいくということが基本的な方向であるわけでございます。  それから、ただいまございました数字について申し上げますと、ただいままで日本が供与いたしました資金の総額でございますが、これが、貸付残高といたしましては大体一兆三千八百二十七億円ぐらいあるわけでございます。これはわが国が供与いたしました円借款の貸付残高でございますが、これが一兆三千八百二十七億円。その中でも、特に貧困開発途上国と言われておりますLLDCにつきましては、これが六百七十一億円、それから、ただいまちょっとお話のございました石油危機等によって特に影響をこうむった国、MSACと申しておりますが、これが四千二十九億円、それから、そのほかの貧困開発途上国に対しまして八千三百六十一億円、このような数字がございます。     〔委員長退席、大坪委員長代理着席〕
  222. 井上一成

    井上(一)委員 数字についてはわかりました。  それで、基本的な姿勢という中で、ジュネーブでの国連貿易開発会議のお話が出たわけであります。ここではアメリカ最後発途上国に対して援助資金全額の利子減免措置を行いたいという意向を表明されたと報道をされております。西ドイツやイギリスも、この閣僚会議最後発途上国の債務負担軽減措置を打ち出しているというふうにも受けとめているのですが、わが国はこの会議でどのような意向を表明されたのか、これもお聞きをしたいと思います。
  223. 武藤利昭

    ○武藤政府委員 アメリカがいまお話しのような措置を考慮しているということは私どもも承知しております。たしかハンフリー法案と呼んでいたと思いますが、これがアメリカの議会において目下審議中でございまして、この法案が可決されれば、そのような特に貧困開発途上国に対する利子の減免について措置をするという意向のように聞いております。  それから、この間ジュネーブで行われました経済開発委員会で決められましたことの一つは、このような累積債務を改善する方法といたしまして、過去の二国間の開発援助の条件の再調整、あるいはこれと同等の措置をとるよう努力するということが一応の結論だったわけでございます。  この措置のとり方につきましては、これはその国その国の経済協力の仕組みが違うわけでございますので、一律の措置をとるというわけには必ずしもまいりません。  それから、わが国の場合は、わが国の制度上の問題がございまして、すでに与えました借款の条件を過去にさかのぼって調整するということはむずかしいというような事情もあるわけでございますが、ただ、必ずしもそういうような過去の条件の再調整措置ということに限られているわけではございませんで、先ほど申し上げましたように、それと同等の効果を有する措置であれば、そういう措置でもよろしいということになっているわけでございまして、そういうことであれば、いろいろな措置をとるその工夫の余地も広がってくるということでございます。わが国といたしましても、本当にそのような各国がそれぞれ行います調整措置に劣らないような措置をとりたいということでございまして、その具体的な内容につきましては今後各省とも御相談いたさなければならないわけでございますけれども、少なくともそういうような経緯を踏まえながら、積極的にこの問題には対応してまいりたいと考えているところでございます。
  224. 井上一成

    井上(一)委員 いま局長から、必ずしもいわゆるアメリカと同じような方策と限らない、それに準じたというか、むしろそれ以上の策も、私は、それはいいことだから非常に結構だと思うのです。いま目下考えておるということですが、大臣、やはり貿易黒字でいまわが国が、円高の問題もありますし、世界の各国から、いわば経済の中ではむしろ孤立化をさせられるようなおそれがある今日であるわけでありますから、ひとつ、その南北問題を解決することにもつながるし、そしてわが国の、いわゆる覇権に通じないのだという、軍事大国に通じないのだという確固たる立場を明確にしながら、こういう莫大な債務に対する、石油危機以降支払いが危惧されておる国々に対して、アメリカ以上にあるいはイギリス、西ドイツ以上に強い政策を打ち出すことが私は大事である。大臣のその決意を、局長からは具体的にはまだ案がないんだ、でもそれ以上のことは、それに同等なことは考慮したいということですが、大臣のお考えがあればひとつここでお聞かせをいただきたいと思います。
  225. 園田直

    園田国務大臣 いま御発言のとおりに私も考えているところでありまして、たとえば日本が孤立しようという情勢があると言われたわけでありますが、その理由はいろいろあるわけでございます。  日本が自分だけで楽をして自分だけでもうけて、その金は世界に貢献しないという意見もあるし、あるいはまたこの国防、自衛の問題がありますけれども、日本が自衛に使うべき金を、皆さん方のように自衛隊の費用を削ってまでとは言いませんけれども、自衛上使う金があればそれを倍にしてこれを南北問題に使うとか、こういうことに意を用いないところにそういう非難は起きているわけであります。したがいまして、私はそういうことから、次に補正予算を組まるべき時期があれば、こういう面をもっとどんどん補正予算の中に入れて、これがすべてに黒字減らしにも内需にもそれから世界の人々から疑われないということにもなるし、世界の好意を求めるためにもなるわけでありますから、この場合には、補正予算の中でもっともっと上積みをしてやるべきである、これが意思表示である、こういうことで経済閣僚会議ではこういう点を主張し続けておって、何とかこれをしたいめどをいまつけておるところでございます。
  226. 井上一成

    井上(一)委員 私は、前回も特にアフリカ諸国に対する、いわゆる日本とのかかわり合いが非常に強い特定のアジア諸国、もう先ほどわが党の土井委員からもお話がありましたけれども、やはり経済援助というものは、ただ単にその行動を起こすだけでなく、起こした行動を、経済援助がどう波及しているかということを確かめることの方がより大切だと思うのです。そういう意味では、日本の姿勢が十分相手の国に、好意を持って、善意を持って認識をしていただけるような効果を私はまず願いたい。とりわけ、アフリカ諸国に対する本当にさみだれ的経済援助は考え直し、かつ長期的にそして持続的により経済援助がその相手国の国民をして有効かつ適切に作用するように、特に私はこれはぜひ要望としてお願いをしておきたいと思います。  そんな中から、わが国の経済協力援助というものが、今回のこの条約で、いわゆる外務省が本来なすべき仕事の重要な柱であるにかかわらず、部分的とはいえ、いわば協力事業団に下請化的な形で仕事をやらしていくわけなんです。そこが大きな、私と考えが違うんだと言ってしまえばそれまでですけれども、私はそういう考え方に立つと、一体外務省のする仕事は何なのかという考え方を持たざるを得ないわけであります。  それで、いままではこの南北問題についても、欧米先進国はきわめて真剣に取り組んでいるわけですけれども、わが国はいわば上手な世渡りというか、世界経済の舞台では利口な立ち回り、自由という表現を使う人たちもいらっしゃいますけれども、自由かつ利口に立ち回っているというのが、日本のいわゆる世界経済における姿ではないだろうか。それも大手大企業、いわゆる独占資本のみがそういうような形で立ち回っていた、これが大きな過ちであったということです。だから過ちを繰り返さないためにも、繰り返させないような機構が必要であり、そういう形の中で、私自身は前回にも外務大臣には、特に経済協力にもっともっと、いわば正しい経済協力ですね。正しい経済協力に積極的に取り組まなければいけないし、とりわけ世界的視野に立って南北問題の解決、あるいはわが国としての積極的な、応分の責任を分担していこうという意味から、経済協力省を設置するというくらいの強い意気込みで取り組む姿勢を示してほしいということを申し上げたわけでありますが、きょうもまた、外務大臣にそれくらいの強い姿勢でこの問題は対応していただきたい、こういうふうに思うのですが、大臣の決意のほどを聞かしていただきたいと思います。
  227. 園田直

    園田国務大臣 まず、経済協力について先般からも井上さんからいろいろ御意見を賜り、私も所見を述べたところでありますが、この問題大事でありますから、改めてまたこの委員会の席上で申し上げておきたいと思います。  経済協力で大事な点いろいろございますが、いままでは経済協力を有償無償にかかわらず決定する段階ですでに手を離れてしまうわけでありまして、消極的に言えば、その後不正事件が起ころうとも調査はできないし、あるいは停止もできない一積極的に言うと、いま井上さんがおっしゃいましたように、経済協力の後々ずっとその地域、その国の立場になってこれを実効あるように進めていくという、その効果の拡大といいますか、そういうことができないわけでありますから、こういう点に外務省はもっと重点を置いて、そして最初に経済協力の交換公文を取り交わすときに、ここできちんとし、その後においても外務省が要所要所は目を通すべきでないか、こういうことはおっしゃるとおりであると思っておりますので、これは真剣に私は事務当局にお願いをして、こういうふうな方向へ検討したいと考えておるわけであります。  なおまた、そういうことで経済協力は逐次、よい方向へよい方向へ御協力を得ながらやらなければならぬところでありますが、その次の問題についても御指摘のとおり、これを十分留意をして、外務省はまず出発した後の要所要所に目を配る。そして場合によっては、ちょっと待て、こう言う権限を持つ。実施は事業団にやらせる。こういうことはけじめをつけてやらなければならぬことで、将来はおっしゃるとおり、経済協力大臣あるいは経済協力省というものをつくるようなところまでいかねばならぬところでありまして、日本がかつての軍艦や大砲を持っておった時代のことを考えれば、それをつくるだけの金をこれに注げばいいことでありますから、これこそ私は世界に貢献する道であると考えておるわけでございます。
  228. 井上一成

    井上(一)委員 いま外務大臣が言われたように、近い将来担当の省をつくって正しい経済援助を、わが国の応分の責任を果たすためにもより充実をしていくべきである、私はこういうふうに思います。  そこで最後に、国際協力事業団の副総裁に、今度は事業団に対して事業団の決意を実はお聞きしたい。  外務大臣がその答弁の中でるる意のある姿勢を示されておるわけであります。事業団はそれを受けてやられるわけですから、決してその枠からはみ出ることはないわけでありますけれども、過去の事業を踏まえた中で、いままず一番何を反省し、今後何を中心に置いて、どのような考え方を中心に置いてこの海外経済援助の事業に取り組むのか、ひとつ明快に、簡単で結構ですが答弁を願いたいと思います。
  229. 久宗高

    ○久宗参考人 御紹介いただきました事業団の副総裁の久宗でございます。  ただいまの大臣のお話と関連いたしまして、私どもも長年――まだ三年の経験でございますが、経済協力を進めようといたしますと、どうしても今回問題になっていますような無償案件が同時に取り扱われなければ効果が非常にむずかしいということを痛感しておりますので、ただいま大臣からお話のございましたような政府の御決定に従いまして、それとの関連におきます技術協力と無償との結びつき、それによる効果のある展開ということを着実に進めてまいりたいと考えておるわけでございます。
  230. 大坪健一郎

    ○大坪委員長代理 速記をとめてください。     〔速記中止〕
  231. 大坪健一郎

    ○大坪委員長代理 速記を起こしてください。  園田外務大臣
  232. 園田直

    園田国務大臣 御出席の委員の方々、委員長に、この際、こういうことは慣例がないかもわかりませんが、私一言おわびを申し上げ、事業団副総裁にきつく申し渡すことがございます。  委員会というものは、しかられたり法律案を通すための委員会ではございません。その法律案が通ったらその法律案を運用するのは事業団でありますから、その事業団は大臣答弁なり委員の方々の御質問をよく承知をして、この法律が通ったらこれを基礎にしてやるべきことで、これが立法府と行政府の厳然たる意気でなければならぬと私は考えております。  大臣まことに申しわけないことながら、事業団総裁が出張しているそうでありまして、いやしくも自分が将来預かろうとする法律案が通ろうというときに出張するがごときはもってのほかでありまして、なおまた、本日委員の方から呼ばれて副総裁が来たそうでありますが、これも不謹慎であります。呼ばれなくとも事業団の幹部は来て、大臣委員の方々のやりとりを聞いて、これを厳粛に実行しようとする熱意がなければ、どのような法律案をつくっても、これは抜け穴だらけになるわけでありますから、この委員会の席をかりて、慣例ではないかもわかりませんが、大臣たまりかねてこういう発言をし、おわびすると同時に、副総裁をしかるわけではありませんが、今後この法律案が上がった後、十分総裁はこの議事録を勉強して、幹部以下、この間行われた長時間のやりとりを詳細拳々服膺するように、皆さん方の前で副総裁に申し伝えたいと思います。  以上でございます。
  233. 井上一成

    井上(一)委員 まことにそのとおりであります。私は多くを語らなかったわけでありますけれども、いま大臣お答えになったその気持ち、そのお考えを事業団は真剣に受けとめて、海外経済協力事業が推進するように一層の努力をされることを、特に私からも強く要望をしておきます。  まだまだ質問をしたいことがたくさんあるのでございますけれども、大臣の時間の都合がおありですから、私はこれで質問を終えます。
  234. 大坪健一郎

    ○大坪委員長代理 正森成二君。
  235. 正森成二

    ○正森委員 私は、国際協力事業団法を審議するに当たりまして、国際協力事業団と密接な関係があるソウル地下鉄の問題について、若干国際協力事業団との関係をただしながら質問をしたいと思います。  ソウル地下鉄の問題は、御承知のように一号線の借款二百七十二億四千万円くらいの中から二百五十万ドル、約七億八千万円という工作資金が韓国側に流れていたということを当事者である三菱等の商社が認めた。さらにそれと同様の工作が日本側に対してなされた疑惑も伺っている、こういう事件であります。そこで、国際協力事業団の前身である海外技術協力事業団は、この地下鉄一号線について、三次にわたる調査団を派遣しておりますが、調査団派遣の期日と、派遣の根拠についてお伺いいたします。
  236. 武藤利昭

    ○武藤政府委員 お答えいたします。  ソウル地下鉄建設に関します調査団の派遣の経緯でございますが、まず、昭和四十五年七月に開かれました第四回の日韓定期閣僚会議におきまして、韓国側から、ソウル首都圏の都市交通事情を改善するため電化及び地下鉄を含む都市交通計画立案に関する総合調査を早急に行うよう要請をしたわけでございます。日本側はこのような要請に理解を示しまして、調査に協力するため、同年の秋都市交通調査団を派遣するということを日韓定期閣僚会議の席上約したわけでございます。それで、このような話し合いに基づきまして、昭和四十五年九月、都市交通計画調査団を派遣いたしました。同調査団は十二月に報告書を提出したわけでございます。これが第一次調査でございますが、これに引き続き、地下鉄一号線及び国鉄電化について技術面からの補足的調査を行うために、昭和四十六年三月から四月にかけて第二次調査団を派遣したわけでございます。
  237. 正森成二

    ○正森委員 第三次調査団が抜けておりますが、第三次調査団は、昭和四十七年二月から三月にかけて同じく派遣したんではありませんか。
  238. 武藤利昭

    ○武藤政府委員 失礼いたしました。  昭和四十七年の二月二十五日から三月十二日にかけまして、第三回目の調査団が派遣されたわけでございますが、これは地下鉄一号線の要員の教育、訓練計画の勧告等を行うためのものであったと承知いたしております。
  239. 正森成二

    ○正森委員 そこで、現在韓国では一号線に続いて二号線の計画が進められております。この二号線についても事業団はすでに二次にわたって調査団を派遣していると承知しておりますが、その期日及び派遣の根拠は何ですか。このたびも日韓定期閣僚会議合意に基づいて派遣されたのですか。もし違うとすればその理由を言ってください。
  240. 武藤利昭

    ○武藤政府委員 お答え申し上げます。  二号線の建設に関しまして実施した調査の経緯についてでございますが、まずその経緯の根源から申し上げますと、第二号線の調査につきましては、閣僚会議で提起されたものではございません。このような技術協力に基づく調査を行うために、閣僚会議の決定等の手続は必要としないわけでございまして、いかなる開発途上国との間の関係においても同様でございますが、相手国側と日本国との間に合意が成立すれば、それに基づいて調査が行われるわけでございます。いずれにいたしましても、二号線の建設に関しましては、閣僚会議の決定等を経ることなしに、韓国側からの要請に基づき、日本側がこれに合意いたしまして調査を行うこととなったわけでございます。  それで、ただいま御指摘のとおり二回にわたって調査をしたわけでございますが、第一回目は昭和五十一年の九月から十月にかけまして、二号線に関します予備的調査及び技術的助言を行うための調査団が派遣され、続きまして昭和五十二年の四月から五月にかけまして、この計画に関する技術的、経済的、財政的妥当性を調査するための第二次調査団が派遣されたわけでございます。調査のための調査団を派遣いたしましたのはこの二回でございますけれども、調査報告の草稿ができました段階で、この草稿につき韓国側に説明をし協議を行うために、昨年十一月にミッションが派遣されております。  経緯は以上のとおりでございます。
  241. 正森成二

    ○正森委員 いまの局長答弁ですと、一々閣僚会議は要らないんだということですが、それならば、なぜ昭和四十五年のときには日韓定期閣僚会議の共同コミュニケに基づいて調査をしたのですか。今度は明らかに違っているのですね。それはどういうわけかということを私は問題にしたいのですが、第八回の日韓定期閣僚会議昭和五十年の九月に開かれておりますが、その共同コミュニケの中では、「両国の閣僚は、先般開催された国際復興開発銀行主催の対韓国協議グループ会議において、韓国が、一九七〇年代後半期間中に所要の経済成長を達成するためには、民間ベースの資金とあわせ引き続き長期低利の借款を含む外資を必要とすることが留意されたことに注目しつつ、今後韓国の第四次経済開発五カ年計画事業のうち政府ベースの協力を必要とする案件については、同計画が成立した後、政府間実務者レベルの協議を通じ検討の上適切な案件につき具体化していくことに意見の一致をみた。」となっております。そこで、この中に包括的な政府合意があって、以後はもう実務者レベルで相談すればどんどんできるということになっているからではないですか。
  242. 武藤利昭

    ○武藤政府委員 お答えいたします。  経緯的に申し上げますと、かつての日韓閣僚会議におきましては、せっかく双方の閣僚が相会しながら、この次の円借款の金額はどのくらいにするとか、どういう調査をやるとかというたぐいの、経済協力の非常に細かい話をするために時間をとられてしまって、本来閣僚会議の目的であるところの大所高所からする議論の方が十分に行われなかったということから、本来実務者レベルで協議すべきものは、直接閣僚会議で取り上げることをせず、閣僚会議は、その本来の趣旨であるところの大所高所についての意見の交換を行う場として、十分その時間をとることが適切であろうということで、このように取り扱いが変わったわけでございます。技術協力のみならず経済協力案件につきましても、それ以降は閣僚会議の場で取り上げるということはいたしませんで、実務者レベルの協議において検討していくという体制に切り変えられたわけでございます。
  243. 正森成二

    ○正森委員 長々とお話しになりましたけれども、私の質問に対しては答えてないのですね。時間がないから、そのことだけを指摘しておきたいと思うのです。  ここに「大韓民国地下鉄二号線建設計画調査報告書」という国際協力事業団がつくったものがありますけれども、この報告書を見ますと、こう書いてあるのですね。「今回二号線についても一九七七年から始まる韓国政府の第四次五ケ年計画の重要プロジェクトとして取り上げられることとなり、日本政府に対し強い調査協力要請がなされたものである。日本国政府は、二号線建設計画について技術協力を行なうことを決定し、国際協力事業団がその業務を実施することとなった。」こういうように明記されておるのですね。つまりこのことは、第八回閣僚会議合意に基づく第四次五カ年計画への協力の一環として申し入れがあり、それに合意したということになるのじゃないですか。
  244. 武藤利昭

    ○武藤政府委員 第四次五カ年計画に対する日本側の協力の態様につきましては、その妥当なものについて日本側が協力をしていくということが基本的な姿勢でございまして、第四次五カ年計画に関するものであれば何でも日本は協力する、そういう趣旨ではないわけでございます。  確かにこの二号線の計画は第四次五カ年計画の中に含まれているということで、韓国側はこれに熱心だったということは事実でございますし、日本側といたしましても、韓国側がそのように熱意を有しているプロジェクトであるということを勘案しながらその調査に応ずることにしたわけでございますけれども、そういうことで、あくまでも、調査をしてほしいという要請に対しまして、調査をしてあげるということをもって応じたということでございます。
  245. 正森成二

    ○正森委員 調査に応じたということは、すでにもう日本政府が、協力の妥当なものであるということを判断したことになるのじゃないですか。この国際協力事業には一体お金が幾らかかって、その金はどっち持ちですか。韓国持ちですか、日本持ちですか。また、この調査団派遣の要請を受けた具体的な日付及び韓国側のだれから日本側のだれに要地唄があったか、明らかにしてください。
  246. 武藤利昭

    ○武藤政府委員 韓国側から要請がございましたのは昭和五十年三月十三日でございまして、これは韓国政府から、口上書をもちまして在韓日本大使館に申し入れがあったものでございます。  それからその経費についてでございますけれども、本件調査に要しました経費は、予備調査七百万円、本格調査九千七百万円、計一億三百万円でございます。通常、この種の調査にはこの程度の費用がかかっているということでございます。
  247. 正森成二

    ○正森委員 つまり、一億三百万円のお金がすでに日本側から支出されておるわけでしょう。それは結局、日本側が、この韓国の第四次五カ年計画のプロジェクトというのは妥当なものであると思うから、国民の税金の中からこういうものを出しているのでしょう。そうすると、その次にやってくるのは、今度はこれについて借款の上での協力もするということになってくる可能性があると思うのですが、この調査報告書では、資金計画として借款を見込んでいるのですね。この調査報告書の十二ページを見ますと、ちゃんとこう借款を使用するということを見込んで計画を立てているのですね。ですから、これは日本側が資金協力をするということを前提にした計画ではないのですか。
  248. 武藤利昭

    ○武藤政府委員 この借款は、一般的に外国の借款を当て込んでおるということでございまして、日本の借款を当て込んでいるという意味では必ずしもないわけでございます。現実の問題といたしまして、過日予算委員会の席上でも申し上げましたけれども、この二号線の計画につきましては、韓国側から日本側に対しまして借款の要請は一切参っておらないのが実情でございます。
  249. 正森成二

    ○正森委員 現段階ではそういうように言うておりますけれども、一号線の経緯を見ると、第一次調査団が派遣された昭和四十五年の段階では調査だけだったのです。ところが、四十六年の第五回日韓定期閣僚会議で、韓国側は、「日本側技術調査団派遣が実現したことを歓迎し、この結果に基づいて同プロジェクト実施に必要な八〇百万ドルの借款供与を要請したのに対し、日本側は、これに同意する」、こうなっているのです。だから一号線の場合でも、最初は技術協力と借款は切り離されているのだけれども、結論としてやはり借款供与に踏み切ったわけです。二号線については、すでに昭和四十七年の第六回定期閣僚会議で韓国側は、「ソウル地下鉄第二、第三号線建設計画のため、資金協力を日本側に要請した。」ということになっておるのです。そして韓国側の要請に対して、「日本側は、ソウル地下鉄建設計画については、第一号線工事の完成後において検討する旨述べた。」こう言って保留する形になっておるわけです。すでに一号線は完成しましたから、結局先ほど私どもが申しました第八回日韓定期閣僚会議及びそれをさらに再確認した昨年の第九回日韓定期閣僚会議合意によって実務者レベルの協議で具体化できる。これは韓国側が要請してくれば、日韓定期閣僚会議の共同コミュニケを待たなくても実務者レベルで実施できるということになるのではないですか、それともコミュニケがまた要るのですか。
  250. 武藤利昭

    ○武藤政府委員 これも過日の予算委員会の席上申し上げたと思いますけれども、技術協力と資金協力とは本来別なものでございまして、この両者が結びつく場合が多いことも事実でございますが、必ずしも結びつかなければならないということでもないわけでございます。技術協力は技術協力といたしまして、本来相手政府が、自分の国の開発計画でございますから、自分の国で計画をつくらなければいけないわけでございますけれども、そのための技術力がない、資金がないというようなときに、そのような相手政府の要請に応じて、日本側が技術協力としてそういう調査を手助けするわけでございまして、それはそれで一貫して一つの作業となるわけでございます。  そのような日本側が行いました技術協力としての調査の結果を踏まえまして、相手国側は資金の需要についてのめどを立てなければならない、資金の手当てをしなければならないということでございますが、その段階において日本に対して円借款の要請がある場合もあればない場合もある。これは韓国の例だけではなくて、一般的に開発途上国との関係について私は申しておるわけでございますが、そういうことになるわけでございます。  二号線につきましては、ただいまお示しのとおりに、昭和四十六年でございましたか、その話が向こう側から持ち出されたことがあったわけでございますが、それ以来韓国側から二度と資金協力の話を持ち出したことはないわけでございまして、韓国側が二号線に対する資金協力で日本を当てにしているのであれば、恐らくとっくに韓国の方から要請がなければならないはずでございますけれども、それ以来何もない。したがって、そのときそういう話があったわけでございますけれども、本件はもう忘れ去られたと申しますか、たな上げといいますか、もうそれっきりになっているというふうに私どもとしては了解しているわけでございます。
  251. 正森成二

    ○正森委員 一局長がそういうことを言い切っていいのですか。二回にわたって国際協力事業団が一億円以上のお金を使って技術調査をしているのです。それは相手側からの要請があってやっているのですよ。この調査報告書を見ますと、「一号線の車両を基本とし、部品の互換性を高めるようできるだけ共通部品の採用をはかったものとする。」となっていまして、一号線の車両とできるだけ共通部品でやるようにと書いてあるのです。  それから、借款の返済、14の3のところですが、表を見ますと、借款の利率は五%で、五年据え置き、十五年返済ということになっているのです。ところが、そういう低い借款を供与している国はなかなかないのです。日本の海外経済協力基金だけが長期のものについては三・五%、短期のものについては五・七五%、平均してほぼ五%という数字になるのです。ですから、借款の金利についてもあるいは地下鉄車両の部品についても共通性を持つものでやるということで全部この報告書は書いているのですね。しかも、つい二、三年前に技術的に協力してほしいということで言うてきて、一億円以上もわが国が金を出しておるのに、絶対に借款については言うてこないのだ、だから、それはもうたな上げというか、忘れ去られるというか、オシャカになったものだというように確実に言うていいのですか。  外務大臣、これは閣僚会議なり閣僚が決めることだと思うのです。事務当局がああいう自信ありげなことを言いましたけれども、それならば、本当に借款を言うてきても、向こうが忘れ去っているのだからわが国はやらないということをこの場で大臣から答弁してください。――事務レベルがそんなことを大きな顔で答弁していいのか。
  252. 園田直

    園田国務大臣 いま御指摘の問題についてはいろいろ大臣考えるところがありますから、仮に借款を言ってきた場合には、簡単には返答しないつもりでございます。
  253. 正森成二

    ○正森委員 簡単に返答しないと言われましたが、いまわれわれはソウル地下鉄の問題の疑惑についていろいろ追及しております。また、この報告書を見ますと、いままでのは交直両用だから値段が高いのは当然だったけれども、今度は直流で、日本の地下鉄と同じタイプのものでいく。ところが、見積もり額は一億二千万円なのです。国鉄で私が調べましたら、現在大体六千万円ないし七千万円なのですね。そういうようにまたまた二倍ぐらいの値段をつけておるということになれば、これは言うてきても慎重にやるということになるのはあたりまえなのです。  ところが、いま武藤局長答弁したのは、そんなことはもう韓国側は忘れ去ってしまったことだということで、事務当局にあるまじきことを言うておるのですね。そこまで言うのなら、大臣、閣僚として、ソウル地下鉄については、借款があっても、相手が忘れ去っておることであるし、忘れ去っておるものにわが国から金を出す必要もないから、絶対にいたしませんと答弁してください。その答弁をしないのなら、局長、ここへ来ていまの言葉を取り消せ。
  254. 園田直

    園田国務大臣 武藤局長答弁の誤りはおわびをいたします。私が簡単にいたしませんと言ったのは、まだ言ってきていない現状でありますから言ったわけであります。借りに来ましたならば、私は私としての腹があるわけでありまして、簡単に返事せぬということは、しばらくしたら返事するという意味ではございません。
  255. 正森成二

    ○正森委員 局長事務当局にあるまじきことを答弁するな。何だ、その態度は。いつからあなたは大臣になったんだ。大臣より上じゃないか。でかい顔をするな。
  256. 武藤利昭

    ○武藤政府委員 もし私、先ほど失礼なことを申し上げたとすれば、それはおわびいたします。  私が申し上げました趣旨は、改めて申し上げますと、そういうことで、それ以来韓国側から何も言ってきていないということは、従来の私どもの経験からいたしまして、本件については、韓国側といたしまして日本側に要請を出すという気持ちが恐らくないのではあるまいかという私の印象を申し上げたわけでございまして、その辺の言葉遣い等、もし不注意がございましたならばおわびをいたします。
  257. 正森成二

    ○正森委員 それでは、そういうことで先に進みますけれども、私の言葉遣いにもし不注意の点があればとか、失礼な点があればとか、そんな仮定形で言わなくても、大臣を目の前に置いて、ずいぶん大臣をないがしろにするような発言をしておるのですよ。そういうことを発言して、もし相手側から借款要請が来て、軽々しくは許可ないし合意はなさらないでしょうけれども、一定の歯どめをかけた上でこれはやはり借款をすべきものだというようになったらどうなるのですか。大臣の目の前で局長がああいう思い切った答弁をして、それなのに許可をしたのはどういうわけだということで、大臣、外務省に対する責任追及になるのですよ。そういう軽々しい発言は断じてすべきではない。しかも、予算委員会では、大出委員質問に対して大臣は、実務レベルで簡単にできるようになっていることに対して、これは慎重にやらなければいかぬ、そういう手続的な問題についてはよく考えるという答弁もしておられるのですね。そういうことなのに局長がそういう軽率な発言をするというのはもってのほかだということを私は注意しておきたいと思うのです。きょうの審議は、国際協力事業団の総裁がインドへ出張しておるというから、よくよくのことだろうと思って、それでも審議は促進しようということなんですけれども、そういうことで副総裁でも審議をしておるのに、局長は非常に口幅ったい言い方をする。国会を何と思っておるのかというように言わなければなりません。私は、そのことを強く注意しておきたいと思います。  そこで、次の質問に移りますけれども、一言だけ大臣お答え願います。  この国際協力事業団の技術協力等を見ておりますと、ASEAN五カ国に対する比率が非常に高いわけですね。技術協力だけについて言えば、九〇%を超えております。そこで、わが国が開発途上国に対して平等公正にやるという意味から言えば、ASEAN五カ国以外にも、たとえば朝鮮民主主義人民共和国とか、あるいはベトナム民主共和国とか、そういうところにも、技術協力の要請があれば、妥当な案件についてはこれからもどしどしやっていくべきだというように思うのですけれども、どうお考えでしょうか。
  258. 園田直

    園田国務大臣 ASEAN、中東、アフリカを含む隣国に重点を置くことは当然でありますが、その他の地域においても、協力の申し入れがあり、妥当なものであれば、これは当然やるべきだと考えております。
  259. 正森成二

    ○正森委員 終わります。     〔大坪委員長代理退席、委員長着席〕
  260. 永田亮一

    永田委員長 本日は、これにて散会いたします。     午後三時三十八分散会