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熊谷政府委員 この問題につきまして私
どもの考え方を申し上げてみたいと思います。
まず第一に、
各国におきます審査の段階でどのような措置をとるかということにつきましてはそれぞれの国の自主的な
判断に任されておるということが第一でございます。
第二に、今度のような多数国間の取り決めでございます。多数国の国語によって構成されている国の間の
国際出願の統一化をやろうとしている
条約でございますので、もともと原語による
出願と翻訳文とは一体であるということを
前提として初めて成り立つプラクティスだと考えておるわけでございます。
第三番目に、
各国の
国内において付与いたしますのは、その国の言語で付与いたすということになるわけでございます。したがいまして、翻訳文に書かれました
語学でその国の権利が設定されるわけでございます。一定期間に翻訳文が提出されない
国際出願は取り下げたものとみなすというふうになっておるわけでございまして、これはまさに原語と一体の考え方になっておるものでございます。
ところで、私
どもは
国内法で措置いたしましたのは、翻訳文を基礎といたしまして
日本語で審査をするということにいたしております。そのまま
特許をされました場合に、後で原語との間に不一致があった場合にどのような救済措置をとるかは、第一に、先ほど触れました無効審判の請求と訂正審判の請求とをリンクさせまして妥当な救済措置を講ずるということが第一、第二には、いま
先生御
指摘の
特許公告後におきます異議の申し立てがあった場合にそれを是正する、この二つの手段を講じております。したがいまして、
特許公告に至るまでの間は
日本語だけで審査を行うというたてまえにいたしておるわけでございます。したがいまして、その間にたまたま原語との間の不一致が見つかった場合に
審査官の職権におきまして異議申し立てをやるということにつきましては措置をいたしておりません。
それはなぜかと申しますと、本来、先ほど申しましたように、原語と翻訳文は一致しているという
前提をます疑ってそれを照合すべきであるという
前提に立って審査をするということになりました場合に、これは非常にたくさんの
語学がございまして、英独仏は一般的ではございますが、スウェーデン語等々
各国語がございますので、これらについて原文と翻訳文を常に照合をすることを審査の段階で要求することは実際上不可能であると
判断いたしております。
しからば、たまたまわかった場合にどうするかということにつきましては、
制度といたしまして、たまたまわかった場合ということは、これは
制度の公平性を担保することができませんのでとり得ない、法的に不可能であるという
判断でございます。たまたま何かの
事情でわかった、あるいはその
審査官が特定の
語学だけに特に詳しかったといったような場合に、その部分だけが詳しくたまたま発見できる、その他は見ないというようなきわめて恣意的な審査になりますので、これは
特許制度の公平性確保という点から、私
どもは、実はとうてい取り入れられないものであるというふうに
判断をいたしております。
審議会におきましても、この問題が一番実は議論があったところでございまして、以上私が申し上げましたようなことを議論した上で、現在のようなプラクティスが最も妥当である、こういう
判断がなされ、全会一致で答申を得たわけでございます。