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1978-03-24 第84回国会 衆議院 外務委員会 第8号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和五十三年三月二十四日(金曜日)     午前十時三十五分開議  出席委員    委員長 永田 亮一君    理事 大坪健一郎君 理事 奥田 敬和君    理事 塩崎  潤君 理事 毛利 松平君    理事 井上 一成君 理事 土井たか子君    理事 渡部 一郎君 理事 渡辺  朗君       石原慎太郎君    稲垣 実男君       鹿野 道彦君    川田 正則君       北川 石松君    小坂善太郎君       佐野 嘉吉君    竹内 黎一君       中山 正暉君    福田 篤泰君       福永 一臣君    岩垂寿喜男君       上原 康助君    木原  実君       久保  等君    高沢 寅男君       美濃 政市君    中川 嘉美君       吉田 之久君    正森 成二君       伊藤 公介君    楢崎弥之助君  出席国務大臣         内閣総理大臣  福田 赳夫君         外 務 大 臣 園田  直君  出席政府委員         内閣法制局長官 真田 秀夫君         内閣法制局第三         部長      前田 正道君         防衛庁防衛局長 伊藤 圭一君         外務政務次官  愛野興一郎君         外務省アジア局         長       中江 要介君         外務省アメリカ         局長      中島敏次郎君         外務省条約局長 大森 誠一君         外務省条約局外         務参事官    村田 良平君         外務省国際連合         局長      大川 美雄君         資源エネルギー         庁次長     大永 勇作君         特許庁長官   熊谷 善二君         特許庁特許技監 城下 武文君         特許庁総務部長 勝谷  保君  委員外出席者         外務省条約局外         務参事官    山田 中正君         外務省国際連合         局外務参事官  小林 俊二君         外務委員会調査         室長      高杉 幹二君     ————————————— 委員の異動 三月二十四日  辞任         補欠選任   稲垣 実男君     北川 石松君   木村 俊夫君     鹿野 道彦君   河上 民雄君     岩垂寿喜男君   久保  等君     上原 康助君   高沢 寅男君     木原  実君   佐々木良作君     吉田 之久君   松本 善明君     正森 成二君   伊藤 公介君     加地  和君 同日  辞任         補欠選任   鹿野 道彦君     木村 俊夫君   北川 石松君     稲垣 実男君   岩垂寿喜男君     河上 民雄君   上原 康助君     久保  等君   木原  実君     高沢 寅男君   吉田 之久君     佐々木良作君   正森 成二君     松本 善明君   加地  和君     伊藤 公介君     ————————————— 三月二十四日  許諾を得ないレコードの複製からのレコード製  作者の保護に関する条約締結について承認を  求めるの件(条約第六号)(参議院送付)  航空業務に関する日本国イラク共和国との間  の協定締結について承認を求めるの件(条約  第七号)  日本国イラク共和国との間の文化協定締結  について承認を求めるの件(条約第八号)(  予)  船員の職業上の災害の防止に関する条約(第百  三十四号)の締結について承認を求めるの件(  条約第九号)(予) は本委員会に付託された。     ————————————— 本日の会議に付した案件  千九百七十年六月十九日にワシントンで作成さ  れた特許協力条約締結について承認を求める  の件(条約第五号)  国際情勢に関する件      ————◇—————
  2. 永田亮一

    永田委員長 これより会議を開きます。  千九百七十年六月十九日にワシントンで作成された特許協力条約締結について承認を求めるの件を議題といたします。  これより質疑に入ります。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。高沢寅男君。
  3. 高沢寅男

    高沢委員 私、特許協力条約について御質問をいたしたいと思います。  外務大臣もおいででありますが、事柄の性格上、特許庁長官に特に集中的に私はお尋ねをしたい、このように考えるわけであります。それから、言うまでもなく私、こういう特許行政については全くの素人であります。したがいまして私の申し上げることで何か間違いがありましたら、ひとつ訂正もお願いしたい、こう考える次第であります。  まず最初に、特許協力条約でありますが、一九七〇年六月にできているわけであります。現在は七八年でありますから、それから八年たっております。政府としては、特に特許庁としては、この協力条約加盟をしようということでいま提案されているわけでありますが、この八年間、そのためのどういう準備を進めてこられたのか、なぜこの条約が七〇年にできてからいままで八年間もかかってきたのか、この辺の事情をまず最初お尋ねをしたいと思います。
  4. 熊谷善二

    熊谷政府委員 御指摘のとおり、この条約につきまして八年近くの期間がたっておるわけでございますが、各国とも、この条約を円滑に実施するために必要な国内体制整備がいずれも必要でございました。これは日本のみならず、各国ともでございまして、この条約発効を一日も早く念願している心においては変わりございませんが、今日までいろいろ準備が行われました。  具体的に申しますと、たとえば先般の五十年の法改正特許法改正が行われておりますが、これはこの条約に入るための一つの手段としまして、多項制導入という問題を取り上げております。また物質特許制度導入というものを取り上げておる、こういう改正も行われております。今日、私どもこの条約批准をお願いいたしておりますが、同時に国内法でこれを受けとめるための新しい法案を別途御審議をいただくようお願いをしておるわけでございまして、これをもちまして完全に日本側体制は整うというふうに確信しているものでございます。
  5. 高沢寅男

    高沢委員 この八年間国内体制整備でいろいろやってきた、これは当然そういうことだと思いますが、現在この特許協力条約にすでに加盟を済ませている国はどのような国があるでしょうか、それをお尋ねいたします。
  6. 熊谷善二

    熊谷政府委員 署名を行いましたのは三十五カ国ございまして、批准書を寄託いたしましたのは十八カ国ございます。今日までのところ十八カ国でございますが、今後増大するものと思われます。  主な国を挙げますと、二月末現在で批准いたしておりますのは、アメリカ西ドイツ、スイス、イギリスフランス、スウェーデン、ソ連、ブラジル、コンゴ、カメルーン等々でございます。特許大国と言われております国はいずれもすでに批准を完了いたしております。
  7. 高沢寅男

    高沢委員 いまお聞きをいたしますと、すでに十八カ国が加盟手続を完了しておる。その中には特許大国と呼ばれる国はもう皆入っている。日本も国際的には特許大国と呼ばれる一つに入るかと思うのですが、その日本がまだ加盟できていない。いまそのためのこういう国会審議であるわけですが、そういう状況を見ると、この八年間体制整備でいろいろやってきたとおっしゃる、そのとおりだと思いますが、やはり他の国に比べて加盟のための準備の進め方に立ちおくれがあったのじゃないか、こういうような感じが私するわけですが、いかがでしょうか。
  8. 熊谷善二

    熊谷政府委員 御指摘の点もあろうかとは存じますが、私どもとしては最大限の努力を払ってまいったつもりでございます。本来ならば、あるいは昨年の通常国会時点で御審議を賜るというようなタイミングであれば、当然この発効前に批准が行われておる事態になるわけでございますが、昨年の二、三月という時点におきましては、特許大国批准をいたしておりますのはまだアメリカイギリスだけでございまして、昨年の後半にかけまして各国批准が逐次行われてまいった、こういう状況になっておるわけでございまして、確かにこの条約に基づきます業務開始が、一般的には六月と予定されておりまして、私どもは十月ごろを目途に加入を考えておるわけでございますので、若干のギャップが出ることは確かでございます。この点は私ども遺憾に存じておるわけでございまして、できるだけ早く各国で足並みをそろえて加盟をいたしたいという気持ちには変わりがなかったわけでございますが、若干の時期のずれが起きたことは遺憾に存じております。
  9. 高沢寅男

    高沢委員 そういう立ちおくれのあったことは長官もお認めであるわけですから、今後は国際関係等も当然含めて、また日本国内特許行政という立場からいっても、その体制整備ということで立ちおくれのないような御努力をひとつお願いしたい、こう思うわけであります。  そこで、この条約の内容の質問に入るわけですが、まず大前提としてお聞きしたいことは、従来のわが国特許出願、これがどういうふうな状態にあるかをお尋ねしたいと思います。日本特許を求めるという出願ももちろんありましょうし、それから日本の中から外国特許を求める、こういう出願もありましょう、そういうふうな両面を含めて出願状態がどんなような状態になっているか、それをまずお尋ねしたいと思います。
  10. 熊谷善二

    熊谷政府委員 まず国内出願について御説明申し上げます。  ラウンドの数字でございますが、特許実用新案を含めまして件数昭和四十五年が二十七万二千件、四十六年が二十二万八千件、四十七年が二十七万九千件、四十八年が二十九万二千件、四十九年が三十万六千件、五十年が三十四万件でございます。五十一年もほぼ同程度で、ここ二、三年はほぼ横ばいで推移いたしております。  これに対しまして日本から外国への出願件数でございますが、昭和四十六年が二万八千件、四十七年が二万五千件、四十八年が三万一千件、四十九年が三万三千件、五十年が約二万六千件でございます。
  11. 高沢寅男

    高沢委員 同じことを、今度はたとえばアメリカあるいはイギリスフランス西ドイツ、そういう国では、その国内出願というものがどういうふうな数になっているのか。そして、外国に対する出願がどういう数になっているか、そういう外国実情がわかりましたらお知らせをいただきたいと思います。
  12. 熊谷善二

    熊谷政府委員 一九七五年の数字でございますが、アメリカは対自国出願は約六万四千件でございますが、対外国出願は九万三千件でございまして、外国出願の方が約四割四分方多いという実情でございます。ドイツにつきましては、自国出願が三万件、外国出願件数が六万件で、これは外国出願の方が国内の倍になっているわけでございます。同じくフランス自国出願が二万二千件で、外国出願が二万三千件でございますから、これも約倍という状況でございます。これに対しまして、日本は約二割程度比率である。これはいずれも特許に限っての数字でございます。
  13. 高沢寅男

    高沢委員 いま数字をお聞きいたしましたが、アメリカなり西ドイツなりフランスなり、欧米諸国自国出願よりも対外国出願の方が二倍とかいうふうな非常に多い比率になっておる。日本の場合には、自国出願に対して対外国出願は一割とか二割とかいうふうな、比率からすれば非常に少ない比率になっておる。  今度の特許協力条約がそういう国際出願の便宜を図る、国際出願をやりやすくしようという趣旨である、こう見るとすれば、この条約加盟によって受ける利益といいますかメリットは、日本ももちろんあるかもしれませんが、それよりも欧米諸国の方がはるかに大きいということが言えるんじゃないかと思うのですが、いかがでしょうか。
  14. 熊谷善二

    熊谷政府委員 二つの面からお答え申し上げたいと思います。  一つは、従来日本国内出願に対して外国出願の方が少ない、こういう点は、やはり言葉制約という問題があったと思います。今回PCT加盟いたしますれば、その言葉制約について相当程度軽減されますので、非常にプラスになるという面があろうと思います。  それから第二の問題は、最近の日本技術レベルの向上によりまして対外国出願は逐次増加をいたしておるわけでございます。この十年間の推移を見ましても、外国から日本へ来る出願件数日本から外国に出す出願件数を対比いたしますと、逐次日本側件数が上がりまして、現在ではほぼ対等レベルと申しますか、件数まで向上してまいっております。そういう意味で、いままで外国技術導入に依存していた時期から、対等の交流の時代に入ってきている、これが今日の実態であると考えております。そういう意味では、外国出願をしようという機運がますます起きている中でこのPCT条約加盟することは、まさに時宜に適したことである、こういうふうに考えておるわけでございます。
  15. 高沢寅男

    高沢委員 日本経済の中での二重構造という問題が論議されていることはもう熊谷長官も御承知かと思いますが、この特許という面においても、今度の特許協力条約加盟することで利益を受けるという立場資本の力が強い、そういうふうな立場特許外国への出願を出そうという、そういう人たちと、それから、特許関係でいろいろやっている人たちの中の多くはそういう資本の力が強いものではなくて、むしろ中小企業であるとか、資本関係でも力の弱い個人であるとかいうような立場から見れば、この条約メリットというものはないということになるのじゃないかと思いますが、この点はいかがでしょうか。
  16. 熊谷善二

    熊谷政府委員 日本出願状況を見ますと、中小企業個人、まあ町の発明家という方々国内出願では約五〇%程度を占めておるわけでございます。これに対しまして日本人の外国出願状況を見ますと、この方々は大体二割前後ではないかというふうに考えております。確かに外国出願の方はウエートが低いという状況でございます。中小企業方々が、この厳しい経済の中で今後自立的に生きていき、また発展していくためには、優秀な技術を持つということが何よりも大きい経営戦略でございまして、私どもは、この中小企業方々発明の育成ということにつきましては、今後とも大いに力を入れていかなければならない、こういうふうに考えておるわけでございます。  この特許制度自体が大企業中小企業の間で、一方において中小企業に不利に働くのではないかという御指摘の点につきましては、制度上いろいろな制度が担保されておりまして、たとえば特許権中小企業には実施させないとか、そういった問題があった場合には裁定制度がとられておるわけでございます。また不当な取引と申しますか、地位を利用した不当な行為ということにつきましては不正競争防止法あるいは独占禁止法によりまして必要なチェックを行うことになっておるわけでございまして、この特許法制の中で中小企業問題ということはそれなりの十分な配慮が行われておると私は考えております。
  17. 高沢寅男

    高沢委員 特許に伴ういろいろな制度行政、その面での中小企業への保護、いま御説明もありましたが、私はそれとともにたとえば通産省なりあるいは科学技術庁なり、そういうふうなところで総合的な立場で、中小企業に対する援助強化の政策も大いに今後拡大していただきたい、こう考える次第であります。  次へ進みまして、今度はその特許協力条約に入ることによるメリットの具体的な面でありますが、たとえば言葉の問題とかあるいは手数料や料金やそういうふうな面とか、こういう具体的な面でこの条約に入るメリットというのはどういうものがあるのか、それをひとつ御説明を願いたいと思います。
  18. 熊谷善二

    熊谷政府委員 まず第一に、日本特許庁がこの条約に基づきます国際調査機関になるという前提で私ども本件加入メリットを考えているわけでございますが、その場合に日本語の使用が可能になりまして、日本語によります国際出願特許庁が受け付けました場合に、出願者の希望いたします各国特許庁出願がなされたと同様の効果を持つことになっております。従来はそれぞれの希望する特許庁に参りまして手続をとらなければならなかった、こういう点は非常に簡便化されるということになるわけでございます。  第二に、従来はいわゆるパリ同盟条約に基づきます優先権効果を与える規定が一年間与えられておりまして、今回は翻訳書の提出が二十カ月以内に出すということになりますので、約八カ月の手続の繰り延べの余裕ができるということになるわけでございます。  さらに、この機関におきまして行われます国際調査報告、これにつきまして特許庁の方から出願人先行文献調査を行った報告書が送られてまいりますので、それによりましてこの出願を将来にわたって継続していくかどうかということにつきましての判断ができる、そういう材料出願者に与えられるということは非常に有益なことでございまして、場合によりますと出願を取り下げる、もうすでに先行文献があることがわかった以上は取り下げるということになりますと、それに伴う労力、費用というものは従来に比して軽減されることは明らかでございます。  それから、この条約の中には、ジュネーブ国際事務局におきまして国際公開を行うという制度がございます。この国際公開はパンフレットの形式で各国に頒布され、一般の方々の閲覧に供せられる形になるわけでございますが、世界各国でどういうものが出願されているかということを承知することができる、こういうことになるわけで、この点もこの条約の大きなメリットかと考えております。  最後に、先ほど先生すでに御指摘ございましたが、特に日本中小企業にとりまして、ただいままで申しました出願手続の繁雑さあるいは費用の問題、また語学問題等々ございますので、とりわけ情報に不足をしがちである中小企業にとりましては、今回はいろいろな材料が提供されることによりまして中小企業がとりわけ役に立つものと考えておるわけでございます。  ちなみに、この条約加盟する際に、アメリカでも同様、国会審議が行われましたわけでございますが、アメリカにおきましても大統領が議会に対してメッセージを出された中に、特にこの条約加盟中小企業者また町の発明家に役立つと思うということが記されておりまして、この点は各国にとりましても大体同様な事情があろうかというふうに存じております。
  19. 高沢寅男

    高沢委員 いま長官の御説明では、日本特許庁国際調査機関になるという前提での御説明もあったわけでありますが、そこで国際調査機関の問題でお尋ねをしたいと思います。  条約の第十六条の(2)、ここには「単一国際調査機関設立されるまでの間に二以上の国際調査機関が存在する場合には、」云々、こうなっておりますが、この国際調査機関というものは将来はたとえばジュネーブに置かれる、そういう単一調査機関というものができる予定になっているのかどうか、また、それまでの間、加盟する各国幾つかの特許庁調査機関ということに指定をされてやる機関はそれは一種暫定機関であって、本来、将来は単一のそういう調査機関ができるということになるのか、その辺の見通しといいますか、この条約ではどういうふうな考え方になっているのか、それをお尋ねしたいと思います。
  20. 熊谷善二

    熊谷政府委員 条約にはいま先生指摘のとおりの規定がございますが、究極の目的として、単一国際機関設立ということは一つ理想として考えておるわけでございます。これは先行文献調査という面に限られるわけでございますのでまあ一種調査機関でございますが、将来こういった単一機関ということも予想いたしまして条約規定してあることは事実でございますが、現在私ども判断といたしましては、いろいろ技術的な問題あるいは資金的な面、あるいは政治的な面もございまして、単一国際機関設立がいつごろ実現するといった具体的なスケジュールは現在できておりませんで、当面は一応将来の理想という形で掲げてあるものというふうに理解をいたしております。
  21. 高沢寅男

    高沢委員 そういたしますと、とにかく当分の間というものは幾つかの国の特許庁国際調査機関としての役割りを果たしていくということになると思うのですが、いまの条約の第十六条の(3)の(c)のところで国際調査機関に選定される要件というものが出されております。この(3)の(c)を受けた規則の中の第三十六規則のところでは、「国際調査機関最小限要件」ということで、調査機関になるためには「調査を行うために十分な技術的資格を備えた常勤の従業者を百人以上有していなければならない。」とか「調査目的のために適正に整備された第三十四規則に定める最小限資料を所有していなければならない。」とか、あるいはまた「所要の技術分野調査することができる職員であって少なくとも第三十四規則に定める最小限資料が作成され又は翻訳された言語を理解する語学力を有するものを有していなければならない。」とか、こういうふうな国際調査機関になるための条件というものが規定されておりますが、わが国特許庁国際調査機関になるためのこういう最小限条件というものの整備はされているのかどうか、この点についての長官の所見をお尋ねをいたします。
  22. 熊谷善二

    熊谷政府委員 私どもは、国際調査機関になるための条約上の要件は十分充足しているというふうに考えております。日本特許庁各国特許庁と比較いたしまして、機構の点でアメリカドイツに次ぐ人員を擁しております。御参考までに申し上げますと、アメリカは約三千名、ドイツは約二千五百名、日本は約二千三百名でございますが、この組織は、特許庁として世界で最も大きい組織でございまして、日本特許庁世界で第一級のレベルであるということが国際的な評価になっていると確信いたしております。
  23. 高沢寅男

    高沢委員 次に、国際予備審査規定条約の中にあります。この規定が設けられた目的は一体何かということ、国際予備審査をやる機関はどういう仕組みになるのか、それから、日本特許庁国際予備審査機関との関係でどういうふうな立場になるのか、このことをまずお尋ねしたいと思います。
  24. 熊谷善二

    熊谷政府委員 国際予備審査という条項が入れられましたのは、主として発展途上国に対する特許面での協力という意図からつくられたものでございます。発展途上国におきましては法制整備あるいは審査官の質、資料整備等々が必ずしも十分ではございません。そういう場合に、この予備審査機関となった機関が、出願についてのある種の判断をレポートにいたしまして、それを発展途上国において利用していただこうということになるわけでございます。ある種の判断と申しますのは、条約によりますと、その出願新規性があるかどうか、あるいは進歩性を持っておるかどうか、あるいは産業上の利用可能性があるかどうか、こういった点についての判断予備審査機関がいたしまして、それを記録として発展途上国方々に利用していただく、それによって発展途上国におきます審理を促進することが期待されておる、こういう趣旨でございます。
  25. 高沢寅男

    高沢委員 その機関はどうなりますか。
  26. 熊谷善二

    熊谷政府委員 失礼しました。特許庁としましては、この発展途上国に対する協力という大きな目的に賛同いたしておりまして、国際調査機関になりますと同時に、この国際予備審査機関にもなりたいという意図を持っておるわけでございます。
  27. 高沢寅男

    高沢委員 要するに、発展途上国特許出願を受けたときに、その出願判断するために必要ないろいろな材料というふうなものを予備審査の中で援助しよう、こういうねらいだというふうにいま御説明を受けたわけですが、条約三十五条の「国際予備審査報告」の中で、「国際予備審査報告には、請求の範囲に記載されている発明がいずれかの国内法令により特許を受けることができる発明であるかどうか又は特許を受けることができる発明であると思われるかどうかの問題についてのいかなる陳述をも記載してはならない。」こういうふうな注意書が決められておりますが、こういうことをわざわざ条約で記載したのはどういうねらいを持っておるのか、御説明を願いたいと思います。
  28. 熊谷善二

    熊谷政府委員 各国におきます最終判断はそれぞれの主権に属するものでございまして、特許性があるかどうかということについてこの予備審査報告が何らかの意味でも拘束的なものであってはならないということに対する配慮から特許性ということについては記述をせず、先ほど申しましたように新規性等々の記述を行いまして、記録的にはその範囲にとどめるわけでございますが、これは発展途上国等におきますそれぞれの国内官庁の独立性と申しますか、自主性を尊重するたてまえから、そういった注意書がなされておるというふうに理解をいたしております。
  29. 高沢寅男

    高沢委員 特許出願しているケースの、たとえば新規性とか進歩性とか、産業上の有益性とかいうふうなことについては、一定の判断発展途上国に対する援助として出してやる、しかし特許性についての判断は触れない、これはたてまえとしてはわかるが、実際上そういう使い分けができるものなのかどうか、これを御説明願いたいと思います。
  30. 熊谷善二

    熊谷政府委員 これはそれぞれの予備審査報告書を受けました国がどのようにこの報告を利用するかという心構えにかかってくるかと思うのでございます。条約三十三条にも、新規性進歩性、産業上の利用可能性に対する判断も、予備的かつ拘束力のない見解を示すということがはっきり記されております。そういう意味で、この報告を受け取った国におきまして、この資料をどのように利用するかということによって違いが出てくると思うのでございます。この国際予備審査という判断は、あくまでも条約上だけに決められました判断基準でございまして、各国のそれぞれの国内法を拘束するものではないわけでございますので、それぞれ国内法との関連におきましての利用の仕方はまちまちになる場合もあろうというふうに存じております。したがいまして、体制整備が十分でない国におきましては、この判断は事実上参考とされることが非常に多いということになろうと思いますが、ある程度整備されておる国におきましては、国内判断はあるいは独自性が強くなるということがあろうと思います。これはケース・バイ・ケースによって違いが出るものかと存じます。
  31. 高沢寅男

    高沢委員 お聞きをするとわかるような気もするし、わからぬような気もするのですが、この出願のケースは非常に新規性があります。非常に進歩性があります。非常に産業上有益性がありますと、こんなような予備審査の答えが出てくればこれは特許性があります。言葉特許性と言わなくとも、事実上特許性がありますというふうなことを言うことになるのじゃないかということでお聞きをしたわけですが、ここはそうだと言ってしまっては、なかなか条約上のたてまえにも反するというふうなことで、ではそこは、私も事実問題としてひとつ理解をするということにしたいと思います。  それで次に国際公開の問題でありますが、ジュネーブ国際事務局国際公開を行うということですが、公開の対象になるのは何と何であるか、また公開する言葉は一体何語と何語で公開をするようになるのか、それをお尋ねしたいと思います。
  32. 熊谷善二

    熊谷政府委員 国際公開の対象になりますのは書誌的事項それから要約、明細書、請求の範囲、図面それから国際調査報告といったものでございます。  それから、使用されます言語は、その国際出願が英語、ドイツ語、日本語フランス語、またはロシア語で行われておる場合につきましては、その国際出願の言語そのままで国際公開がなされます。ただ、日本語もこの中に入っておるわけでございますが、これらの国で英語以外の国、たとえばドイツ語、日本語等々でございますが、これらにつきましては、要約と国際調査報告等は英語のものがつけられまして、この翻訳は国際事務局において行って、それを添付したものが国際公開されるわけでございます。  なお、冒頭に申し上げました五カ国の言葉以外で国際出願がなされている場合、スペイン語であるとかスウェーデン語であるとかその他ございますが、そういった場合におきましては、これは英語で国際公開が行われるということになっております。
  33. 高沢寅男

    高沢委員 すると、公開がされた資料、公報ですか、そういうようなものはジュネーブから出されて、そしてそれは日本特許庁へ来ますね。そうすると、今度は日本の一般の国民がそれを見たい、利用したいというような場合には、特許庁にそういうものが備えてあってだれでも閲覧できる、こういうことなのか、あるいはそういうものは、印刷をして、特許庁へ行けば買えるということなのか、あるいは官報のようなそういう何かの公の刊行物で国民の中に配布されるのか、そういうふうな公報の一般の国民の利用のための動き方ですね、これは一体どういうふうになるのでしょうか。
  34. 熊谷善二

    熊谷政府委員 この国際公開はパンフレットの形式で行われるわけでございますが、このパンフレットは購入することが可能でございます。買うことが可能でございます。したがってまた、実際は、日本では発明協会というのがございますが、これは全国組織を持っておりまして、発明協会がこの国際事務局と提携をいたしまして国内への頒布についての事業を営むことになると予想をいたしておるわけでございます。また特許庁は、資料館等全国の閲覧所にこれを配布いたしまして、一般の人が閲覧できるようにいたす考えでございます。
  35. 高沢寅男

    高沢委員 次は、この条約の第五十七条は、この特許協力条約に基づく同盟の財政の規定をしております。国際特許協力同盟の予算ですね、これは当然、この同盟の総会で決められるということになると思いますが、総会へ予算案をつくって提出をする、これはどういう機関でやるのか、それからその財政の収入のもととして分担金という規定がありますが、この分担金というものはどういうような基準で各国へ割り当てになるのか、この御説明をお願いします。
  36. 熊谷善二

    熊谷政府委員 予算の作成は、同盟の執行委員会がつくりまして、これを総会に提案をいたしまして決定することになるわけでございますが、この執行委員会ができますまでは、国際事務局がこれを作成いたしまして、総会で決定されることになっております。  この必要な財源でございますが、パリ同盟条約の場合には、毎年の分担金を国別に負担いたしまして維持をしているわけでございますが、この特許協力条約同盟の予算につきましては、原則として国際出願に伴いますいろいろな手数料、あるいは先ほどお話が出ましたパンフレット等の刊行物の販売代金といったものによりまして賄うということをたてまえといたしておりまして、それでなお欠損が出た場合に、その欠損につきまして各国の分担を求める、こういう考えになっております。
  37. 高沢寅男

    高沢委員 その割り当ての基準は……。
  38. 熊谷善二

    熊谷政府委員 割り当ての基準は、従来から一定の方式がございまして、たとえば現在まで、パリ同盟条約の場合に、日本は約四%程度の分担金を負担いたしておりますが、これは、このパリ同盟条約執行委員会が、今日まで一貫してとっておりました一定の計算方式に従いまして出しているものでございます。  この分担金の額につきまして、現在はまだ正式に決まっておりませんが、この条約の五十七条の(5)の(b)のところに書いてございますように「国際出願の数に妥当な考慮を払つた上で」分担金を支払うということになるものと思います。
  39. 高沢寅男

    高沢委員 国際出願の数が多ければ分担金も多いということはいまの点でわかりましたが、大体従来からの趨勢から見て日本はどのくらいの、もっともその分担金も、いろいろな料金やパンフレット等々の収入で欠損がどのくらい生じるかということによってその分担金の額も当然変わってくると思いますが、もしパーセントで表現するとすれば、日本の分担金はどのくらいの分担になるのか。それからもう一つは、いま長官からこの同盟の執行委員会というものがいずれできてと、こういう御説明がありましたが、その場合には、日本がこの同盟に加盟すれば、日本はその執行委員会の一員に入るのかどうか、この辺の見通しをお聞きしたいと思います。
  40. 熊谷善二

    熊谷政府委員 出願の数を勘案いたしまして分担金の負担が幾らかということにつきまして、私どもの一応の想定でございますが、一五%以下と考えております。  それから、執行委員会のメンバーとして日本が入ることは当然であると考えております。
  41. 高沢寅男

    高沢委員 私は、この特許協力条約への加盟の結果として、特許庁にはまたいろいろな仕事が出てくるのではないかと思います。私の素人考えで言えば、いままでは出願をした人と特許庁との間のいろいろな手続とか、いろいろな書類のやりとりとかいう仕事が主な仕事ではなかったかと思いますが、今度この協力条約加盟をいたしますと、そういうものに加えて、特許庁ジュネーブ国際事務局との間におけるいろいろな資料のやりとりや通信の往来ということも出てくるだろうと思います。そういうものを考えますと、特許庁の業務がこの加盟によって非常にふえてくるということになると思うわけです。先ほど国際調査機関になるための最小限要件は十分満たしているという御説明はあったわけですが、今度のこの条約加盟に伴って仕事がふえてくるということに対して、対応できるそういう体制があるのかどうか、あるいはこれからその体制をつくるためにこういうふうな拡充策をとるとかいう予定がありましたら、それも含めてひとつ説明をお願いしたいと思います。
  42. 熊谷善二

    熊谷政府委員 本条約加盟に伴いまして、新しく受理管庁あるいは国際調査機関国際予備審査機関としての業務が追加になるわけでございます。私どもは、五十三年度予算におきましてこのPCT等に関しますいわゆる工業所有権制度国際化推進費といたしまして約四億六千万の予算が計上されておりまして、この数年来努力をいたしてまいっておるのでございますが、明年度におきましては前年度対比約二〇%弱の増加の費用を計上いたしておるわけでございます。もとより、予算のみならず機構、定員の面におきましても増員を予定をいたしておりまして、特許庁全体としましては五十三年度五十一名の増員を予定いたしておりますが、この人員予算のほか、当庁としましてはいろいろな審査資料整備、あるいは業務に携わります人間の研修の強化といった点に重点を置いて予算を運営してまいりたいと考えておるわけでございます。  なお、機構といたしましては五十三年度から新しく特許協力条約室を設置する、そこで窓口の一元化を図ってまいるつもりでございます。
  43. 高沢寅男

    高沢委員 特許庁の仕事の重要な一つである、たとえば審査官の仕事をこういう面で見ると、私の手元にある資料によれば、審査官の一人当たりの処理件数が、これは一九七三年という数字ですけれども日本の場合には一年間に二百七十九件の処理をする、それに対して西ドイツ審査官は百九十二件の処理である、アメリカ審査官の場合には百二十四件、スウェーデンの審査官は百二十八件、こういう数字で比べてみると、外国特許庁審査官に比べて日本特許庁審査官は非常に処理件数が多い、私の手元の数字ではこういうようになっております。それから審査官一人当たりの事務官の定員が、日本では〇・七五人、それに対して西ドイツは二・六九、イギリスは一・七三、アメリカは一・二四、こういうふうな数字で、審査官の仕事を進めていくために必要な事務官の定員がこれもまた外国に比べて足りない。こういう数字が私の手元にあるわけです。こういうふうなことから見ると、先ほど長官の言われた、協力条約加盟体制を進めているということでありますが、どうもその面において非常に仕事がオーバーになる、そして事務体刑が間に合わぬというようなことになるんじゃないか、こういう感じがいたしますが、そういう数字も含めて、具体的に御説明を願いたいと思います。
  44. 熊谷善二

    熊谷政府委員 日本特許庁審査官一人当たりの処理件数が、国際的に比較いたしまして二倍以上になっておるということは先生指摘のとおりでございます。私は、審査官が一生懸命仕事をやってもらっておるということに対して非常に感謝しておるわけでございますが、私どもとしても、もとより今日まで増員に大いに努力をしてまいったわけでございます。  具体的な例で申し上げますと、たとえば特許実用新案審査官に例をとりますと、昭和四十三年のときには七百六十六名でございました。年々は省略いたしますが、昭和五十三年の数字は八百九十八名というふうに、この間増員が行われてまいっております。  私ども特許庁の職員の増員につきましては、業務の実態に応じまして今後とも必要な範囲において考えてまいる必要があろうと思いますが、一方におきまして従来言われていた出願の滞貨というのが、これは大いに審査官努力によりましていま減ってまいっておるわけで、一件当たりの要処理期間というのが今日平均いたしまして二年三カ月前後に短縮されてまいっております。国際的には二年弱にまでこれを持ち上げれば、ほぼ国際レベルになると考えておるわけでございまして、私どもは増員によって問題を解決するということだけでなしに、これからは質の向上を図ってまいる時代に入っているというふうに考えておるわけでございます。  一件当たりの比較につきましてはいろいろ議論がございます。たとえば、いま申し上げました日本の一人当たり処理件数の中には、いわゆる実用新案の分まで入っておるわけでございます。実用新案制度は、世界ではわりと数が少のうございまして、ドイツ、イタリーと日本が主な国でございまして、その他はやっておりません。しかもドイツにおきましては実用新案は無審査でございます。そういった状況でございまして、実用新案の方が特許に対しますとより処理がしやすい面もございまして、単純な比較はできない面が実はあるわけでございますが、いずれにいたしましても、かなりの負担を審査官が担っておるということは、私は正直に認めざるを得ないというふうに思っております。  私は、今後この審査官の負担の軽減につきましては大いに努力をいたしたいと思っておるわけでございますが、他方、それじゃ今回の新しい国際出願ができましたことによって、そのために審査官が克服できない大きな負担にぶつかるかどうかという問題でございます。私はそうは考えておりません。年間三十四万件の出願があって、そのうち審査請求がありますものを考えますと約二十万件の処理をやっておるわけでございます。たとえば五十三年度の国際出願は約千五百件程度と考えております。将来これが伸びるにいたしましても大体一万件程度が一応の水準になるのではないかというように考えておりまして、全体にしますと克服できない問題ではないというのが私の判断でございます。
  45. 高沢寅男

    高沢委員 これから国際条約加盟の時代に入れば、最初長官説明にありましたように、外国からわが国への出願というものも当然ふえてくる、こういう時代に来ているわけであります。したがって、それに対応できるためには、科学技術の各分野の専門家であって、しかも外国のそれぞれの言葉に非常に能力がある、こういうふうな人をそろえなければならぬわけで、この点においてはひとつこれからも格段の御努力をお願いしたいと思うわけです。  審査官の仕事に関係してひとつお尋ねをしたいわけですが、条約の四十六条では「国際出願の正確でない翻訳」こういう項があって、出願されたものがその原文それから翻訳文の間にそごがあった場合に、その特許の範囲をどういうふうに限定するか。この条約文では「特許の範囲が原語の国際出願の範囲を超えることとなる限りにおいて特許が無効であることを宣言することができる。」こういうふうになっておりますが、ここの言葉意味は、原語と翻訳語の言葉の違いから出てくる、特許の求めている食い違いがあるとした場合に、その特許の件全体を無効とするのか、あるいは特許の求めている中のその食い違っている部分、一部これを無効とするのか、ここの四十六条の解釈といいますか、これはどちらの方なのかお尋ねしたいと思います。
  46. 熊谷善二

    熊谷政府委員 まずプラクティスを申し上げたいと思いますが、不一致の場合というのは翻訳文が原文より狭い場合がまずございます。これは一定の期間に翻訳文の提出が行われ、それ以後は差しかえができないわけでございますが、この狭くなったものにつきましては、ギャップの部分は放棄をしたものとみなすという考え方になっております。  それからもう一つは、翻訳文の方が原文より上回っているというケースでございます。このケースにつきまして、ただいま御指摘の条項を受けまして、私どものプラクティスといたしましては、特許後におきまして無効審判の請求を行うことができるようにいたしております。もし、これに対して訂正審判の請求がなかった場合には、これは全体が無効になってしまうわけでございます。しかしながら、条約趣旨は、この訂正審判の請求が行われて、もとの原語に合ったような翻訳に訂正するということを認めた上でこれを生かすというのが、条約趣旨であるというように考えておるわけでございまして、私ども国内法の方でこの訂正審判の請求が結論が出るまでは無効審判の結論は出さないというふうな措置をいたしております。これは訂正によりまして原文に忠実に合った範囲まで訂正をすることを期待した措置でございます。この措置を一般の人が利用しなければ無効審判のまま無効になってしまうということになるわけでございますが、趣旨は、軽微な部分につきましては、その部分を、軽微な誤訳は落としてその出願を生かそうというのがこの条約趣旨であると考えております。
  47. 高沢寅男

    高沢委員 いまの点に関連いたしまして、特許協力条約に基づく国際出願等に関する法律案、国内法が別に商工委員会の方で審議されるというふうに聞いております。したがいまして、これは商工委員会の方で大いに論議されるべき問題ですけれども、その国内法の方で、そういう原文と翻訳文の違いがあった、それを審査官が発見をしたというような場合に、これは異議申し立てなり更正の申し立てが出てこない限りは翻訳文でそのままいくんだというようなことが国内法の方でなされている、こういうように聞いているわけでありますが、これはいかがか。審査官がそういう間違いを発見した場合には、その間違いを是正させる措置をとるというふうなことが出願者に対しても当然親切であるし、こういうふうな立場をとるべきではないか、私はこう考えるわけですが、いかがでしょうか。
  48. 熊谷善二

    熊谷政府委員 この問題につきまして私どもの考え方を申し上げてみたいと思います。  まず第一に、各国におきます審査の段階でどのような措置をとるかということにつきましてはそれぞれの国の自主的な判断に任されておるということが第一でございます。  第二に、今度のような多数国間の取り決めでございます。多数国の国語によって構成されている国の間の国際出願の統一化をやろうとしている条約でございますので、もともと原語による出願と翻訳文とは一体であるということを前提として初めて成り立つプラクティスだと考えておるわけでございます。  第三番目に、各国国内において付与いたしますのは、その国の言語で付与いたすということになるわけでございます。したがいまして、翻訳文に書かれました語学でその国の権利が設定されるわけでございます。一定期間に翻訳文が提出されない国際出願は取り下げたものとみなすというふうになっておるわけでございまして、これはまさに原語と一体の考え方になっておるものでございます。  ところで、私ども国内法で措置いたしましたのは、翻訳文を基礎といたしまして日本語で審査をするということにいたしております。そのまま特許をされました場合に、後で原語との間に不一致があった場合にどのような救済措置をとるかは、第一に、先ほど触れました無効審判の請求と訂正審判の請求とをリンクさせまして妥当な救済措置を講ずるということが第一、第二には、いま先生指摘特許公告後におきます異議の申し立てがあった場合にそれを是正する、この二つの手段を講じております。したがいまして、特許公告に至るまでの間は日本語だけで審査を行うというたてまえにいたしておるわけでございます。したがいまして、その間にたまたま原語との間の不一致が見つかった場合に審査官の職権におきまして異議申し立てをやるということにつきましては措置をいたしておりません。  それはなぜかと申しますと、本来、先ほど申しましたように、原語と翻訳文は一致しているという前提をます疑ってそれを照合すべきであるという前提に立って審査をするということになりました場合に、これは非常にたくさんの語学がございまして、英独仏は一般的ではございますが、スウェーデン語等々各国語がございますので、これらについて原文と翻訳文を常に照合をすることを審査の段階で要求することは実際上不可能であると判断いたしております。  しからば、たまたまわかった場合にどうするかということにつきましては、制度といたしまして、たまたまわかった場合ということは、これは制度の公平性を担保することができませんのでとり得ない、法的に不可能であるという判断でございます。たまたま何かの事情でわかった、あるいはその審査官が特定の語学だけに特に詳しかったといったような場合に、その部分だけが詳しくたまたま発見できる、その他は見ないというようなきわめて恣意的な審査になりますので、これは特許制度の公平性確保という点から、私どもは、実はとうてい取り入れられないものであるというふうに判断をいたしております。  審議会におきましても、この問題が一番実は議論があったところでございまして、以上私が申し上げましたようなことを議論した上で、現在のようなプラクティスが最も妥当である、こういう判断がなされ、全会一致で答申を得たわけでございます。
  49. 高沢寅男

    高沢委員 すべてがすべてを翻訳文と原文を照合できない、これはこれでそれなりにわかります。それから、たまたまわかったものと気づかずに通っていったものでは公平を欠くという、これも議論としては成り立つかと思いますがしかし、現実に発見をした、これは偶然性の要素があるかもしれませんが、発見をした場合には、その是正の措置をとる道をあけておくということがやはり親切なやり方ではないか、私はこう考えるわけであります。  われわれの一般の日常の生活でも、たとえば交通違反というふうなものの取り締まりがありますけれども、スピードオーバーで走っている車はたいへん数が多いが、たまたまネズミ取りにつかまった者は点数を引かれたり罰金を取られたりということと、それにかからずに走っている者は何もない、不公平じゃないか、それじゃもうネズミ取りをやめろということにもなるわけでありまして、このケースの場合は、ややたとえとして適当であるかどうかわかりませんが、やはりまじめに審査官が審査をしていて発見をしたという場合には、その出願者にも注意をし、そして是正の道を開くというのが親切な行政じゃないか、こういうふうに考えるわけですが、もう一度長官のお考えをお聞きしたいと思います。
  50. 熊谷善二

    熊谷政府委員 せっかくの先生の御指摘でございますが、私どもは、この特許制度の最大の目的は、やはり公正な行政の確保というふうに考えております。どのような事情によって発見するかもわからない、いわば偶発的な処理というのを各ケースにおいて認めることは、制度の公正な運用という面におきまして問題があるということで、私どもは、これはせっかくの御指摘ではございますが、取り入れられないというふうに考えておりまして、この点も、先ほど何度も触れましたが、審議会等におきましても、こういった異議の申し立てを待ってのみ措置をするという範囲にとどめるのが妥当である、こういう判断になっているわけでございます。  事、やはり権利に関します問題につきまして、不公平あるいは恣意性ということは最も忌みきらう点でございまして、私どもは、そういった措置は、お考えとしては理解もできますが、制度としてこれを見た場合には当然取り入れられないものであるというように考えております。
  51. 高沢寅男

    高沢委員 この点については、では、見解がどうしても分かれるということで、今後もひとつ御検討願いたいと思います。  もう一つお聞きしたいのは、条約には六十四条で留保の規定がありますが、わが国加盟に当たって留保をされるのかどうか、どういう留保をされるのか、また、その目的や理由はどういうわけであるか、これをお聞きしたいと思います。
  52. 熊谷善二

    熊谷政府委員 わが国条約六十四条の(2)(a)の宣言を行うことにいたす考えでございます。これは、六十四条(2)(a)の宣言を行いますと、予備審査機関に対します翻訳の提出が二十五カ月まで許されますのが、二十カ月になるわけでございます。  なぜ二十カ月までにしたかということでございますが、日本国内の審査は、出願がありましてから一年半後、十八カ月後に一般に公開がされますが、その後、審査が行われるのが通常でございますが、この国内の公開と余り隔たらない時期にこの翻訳文の確定が行われることが審査の際に必要であるという判断でございます。一年半と申しますのは十八カ月でございますが、これを二十五カ月まで待った場合に、その間にかなりの期間の間隔ができますので、審査に問題があるということから、この二十カ月ということにいたしたい、そのためには、この六十四条の(2)(a)の留保をしなければならない、こういった趣旨でございます。
  53. 高沢寅男

    高沢委員 私、最後に、国際特許協力同盟の総会のことでお尋ねをしたいと思います。  この同盟の第一回の総会が四月の十日からジュネーブで開催されるということでありますが、この総会ではどういうことを取り決める予定になっているのか。それから、日本特許庁は、この四月の第一回の総会へどういう形で出席をされるのか、それをまずお尋ねいたします。
  54. 熊谷善二

    熊谷政府委員 四月十日の総会では、第一に、国際調査機関及び国際予備審査機関の選定が行われます。それから、この機関の選定の際に、これらの機関国際事務局との間の取り決めも、議題にあわせてかけられることになると思います。  第三に、国際出願の受け付け日をいつからにするかということが決定されるはずでございます。今日まで連絡がございますのでは、おおむね六月一日から業務開始を予定いたしまして、そういう議題になろうかというように考えております。  また、国際予備審査の請求の受け付けもいつからやるか、これも大体同日というようになろうと思いますが、これもあわせて決められる。大体以上のことでございます。  日本特許庁としましては、まだいわゆる条約加盟しておるわけでございませんので、この総会にはスペシャルオブザーバーという形で参加することを予定いたしております。  また、私どもの希望といたしましては、この四月十日の第一回総会におきまして、各国と並んで国際調査機関にしてもらいたいという希望を述べる考えでございまして、同時に、国際予備審査機関として選定されることも期待をいたしておるわけでございます。いろいろな加盟に至るまでの条件がまだ熟していない段階におきましては、加盟を待ってという条件つきの選定ということがもし可能ならば、そういった方向で第一回総会でお認めいただくようにしてもらいたいというのが私どもの考えでございまして、代表を派遣する考えでございます。
  55. 高沢寅男

    高沢委員 いま長官の御説明で、国際調査機関にもなりたい、国際予備審査機関にもなりたい、しかし、なるための条件としては、確定的になるためにはこの条約のつまり加盟国にならなければならぬということであります。  加盟国になるためには、これからこの条約国会承認、あるいはまた関連の国内法も当然成立しなければならぬでしょう。さらには、内閣の署名とか天皇の認証とか、批准書の寄託とかいうような段取りを考えてまいりますと、正式にこの加盟承認されて、そしていま言われた国際調査機関国際予備審査機関に正式になれるという、そういう総会はもうこの四月の総会では間に合わないということははっきりしておりますから、すると、その次の将来来るべき総会というものがいつごろ開かれるのか、こういう見通しはいかがでしょう。
  56. 熊谷善二

    熊谷政府委員 いまのお話の中で、私どもの考えをもう少し具体的に申し上げたいと思います。  私どもの現在考えております予定は、この四月十日の第一回総会におきまして、各主要大国と並んで日本特許庁もこの条約に拘束される条件を満たした暁は、国際調査機関あるいは国際予備審査機関として選定せられることを承認してもらいたいというのがこの四月十日の予定でございます。したがいまして、もしそれが総会で認められるならば、今後国会で御審議を賜ります条約並びに国内法の成立を待った上で、十月一日に業務を開始できるようにいたしたいと考えておるわけでございます。もしそういった段取りになりますれば、この次の総会に改めて国際調査機関としての選定等の手続をとる必要はございません。私どもはこの第一回の総会で、条件つきにいたしましても承認をいただいた上で、国内手続を一日も早く完了させていただきまして、十月一日の業務開始に間に合うようにいたしたいというのが念願でございます。  なお、次の総会はまだ確定的ではございませんが、九月末から十月の初旬にかけまして行われる予定でございます。
  57. 高沢寅男

    高沢委員 いまの御説明は、つまり四月総会で国際調査機関国際予備審査機関となることを、いわば予約の形でできれば認めてもらう、そして批准の諸条件が全部整備された段階では自動的にそのことが成立するような、そういうふうな一種の予約承認を四月総会でとりたい、こういうことですか。また、そういうことが総会の運営として可能であるのかどうか、これをお尋ねしたいと思います。
  58. 熊谷善二

    熊谷政府委員 もう少しまとめて申しますと、まだ条約の締約国となってはおりませんが、近い将来締約国となることが見込まれる、そういった、特許庁につきましてもその規模に応じて締約国となることを選定するということがこの総会で許されるかという点につきましては、私ども国際事務局との接触を通じまして、可能であるというふうに判断をいたしております。そのためには、やはり日本におきます諸手続国会での御審議を通じました諸手続が全くのめどがついていない状況では、総会でこれを認めてもらうことはむずかしいのではないか、こういう感じがいたしておりまして、手続が進んでおるということについての説明ができるならば、総会で選定することは可能であるという判断を私どもはいたしております。
  59. 高沢寅男

    高沢委員 長官のお考えはわかりました。そういうことであればなおさらこの国会を通じて、この外務の方は条約でありますが、商工委員会の方は国内法ということで審議が現に進んでおり、またこれから行われるわけでありますが、商工の方においてはまたいろいろ問題点があるやに聞いております。したがいまして、そういう点については特許庁の方でも大いに前向きに誠意を持って、審議の中で問題点に答えていく、こういうふうな態度で進められることが必要ではないかと考えるわけでありますが、以上を要望いたしまして私の質問を終わりたいと思います。
  60. 永田亮一

    永田委員長 井上一成君。
  61. 井上一成

    ○井上(一)委員 まず私は、わが国のように非常に資源の乏しい国が、いわゆる技術を中心に産業を発展させていく、あるいは世界貿易を盛んにし、その結果国民生活を向上させていく、そういう形の中での特許制度役割りというものはきわめて重要であるということの認識は持っておるわけであります。しかし今日の特許制度は、わが国の大企業がその資本力によって産業なり、とりわけ貿易を独占するためのいわゆる道具として使ってきたのではないだろうかということが言えると思うのであります。また、このたびの膨大な条約は、中小企業やいわゆる町の発明家にとって、非常に難解というか読みにくいというか、なかなか利用しがたい制度ではないだろうかということも心配をするわけであります。あるいはむしろこの条約一つの手段として、先進諸国の大資本がその持てる技術あるいは資本力によって、国内支配ひいては国際市場支配を続ける道具に使われるおそれがあるのではないだろうかと危惧するわけであります。  この点について、この条約わが国経済、特に私は中小企業あるいは町の発明家出願者にとってどのように影響を及ぼすか、そしてその中小企業や町の発明家にとってどのように利益があり、あるいはどのような点にデメリットがあるのか、その辺についてひとつ十分なる御説明を願いたいと思います。
  62. 熊谷善二

    熊谷政府委員 日本特許制度は大企業中小企業に対する支配という形での効果を持っているのじゃないか、こういう御指摘があったわけでございますが、そういった懸念については、私どももそういうようなことになってはいけないというように考えておるわけでございまして、この特許制度の中でとりわけ実用新案といった制度は考案に属するわけでございますが、中小企業方々が大いに活用されておりまして、私どもこの制度効果はその面で高く評価をいたしておるわけでございます。  他面、大企業がその地位を利用しまして中小企業を不利に取り扱う、特許その他実施の面でそういったぐあいになった場合に対する救済措置は、裁定の制度であるとか、あるいは不公正取引につきましては不公正競争防止法、いわゆる独禁法によります妥当なチェックをあわせて行う、こういう配慮が必要であるというふうに考えておるわけでございます。先生指摘のございますように、私ども特許制度によって中小企業が不当に圧迫されることのないよう今後とも十分配慮してまいりたいと考えております。  それから、中小企業の方に今度の条約がどういうメリットがあるかという問題につきましては、まず私ども中小企業方々に、この制度の概要、仕組み等につきまして全国的な説明会を行いまして、よく周知徹底を図りたい、大いに努力をいたす考えでございます。  それで、中小企業方々は、従来それぞれ直接外国語で出願をしなければならなかったのに比べまして、今回は日本語による出願が正規の出願になるわけでございますので、この面で出願手続が非常に簡素化されますと同時に、費用の点におきましても、多数国に出す場合にはとりわけ費用の節減が期待される、また国際調査報告によりまして、この出願特許継続かどうかについての判断に対して資料、情報が提供されるわけでございますので、それを中小企業の方に利用していただくことも可能であるということになりますので、私は今回の措置はとりわけ中小企業方々にとってプラスになるのではないか、こういうように考えておるわけでございます。  なお最後に、外国からの出願が多くなって、その技術支配が行われるかどうかというふうな問題につきましては、冒頭の問題と同様に私ども十分な配慮をいたしまして、そういうことのないように、これは中小企業政策全般の問題との重要なかかわりあいの問題であると考えますので、所管の部局ともよく連絡をとりながら対策を講じてまいりたいと考えております。
  63. 井上一成

    ○井上(一)委員 中小企業なりあるいは町の発明家にとってメリットがある、有利であるというお答えなんですけれども、さらに私は、どのような根拠あるいはどのような数字を挙げてメリットがあるのかということを、もう少し具体的に説明をしていただきたいと思うわけです。あるいは努力をする、十分趣旨を徹底していただくために順次説明会もするのだということが言われておるわけであります。これまた具体的にどのように努力をしようとしていらっしゃるのか。  ここで、これは今日の実情でありますけれども中小企業において特許制度が国際化に対応するためにも、やはり国自身の一定の援助制度というものも必要であるということと、あるいはいま特許庁の本庁と大阪通産局の特許室だけでいわゆる特許関係の相談業務を行っているわけであります。こういう非常に乏しい状態の中で本当に中小企業メリットがあるのだろうかというふうに、私どもはむしろ心配をしているわけであります。これは、具体的な大阪府の出願は約二〇%に近い数字であるにかかわらず、その担当事務に当たっておる特許室には数人の人員しか配置がされておらない、こういう現状からしても、本当にこの特許協力条約を結ぶことによって中小企業の皆さんがより有利な立場に置かれるのであろうかということが、私は心配であるということであります。とりわけ国際化に対応していくために、具体的にひとつ特許庁としていま努力を払われる、あるいは機構の問題も含めて、できれば可能な限り十分な御説明をいただきたい、こういうふうに思います。
  64. 熊谷善二

    熊谷政府委員 外国出願に占めます中小企業のウエートは約二〇%程度と推定いたしておりますが、先生指摘のとおり東京と大阪におきます出願者がきわめて多いわけでございます。大阪におきましては、出願件数を見ますと、五十一年は全体の約二一%、これは先生指摘のとおりでございます。大阪通産局内に技術振興課特許室というのがございまして、ここで指導業務あるいは相談業務、あるいはまた閲覧業務を行っているわけでございますが、定員は二名でございます。  五十三年、今年の一月から、当庁の出願マスターのデータとオンラインで結びつけました端末機を配置をいたしまして、審査処理のリアルタイムによります照会を可能にいたしております。これは大阪の地区の方々に対するサービス事業でございます。  大阪の地区の方々も含めまして、今日までいろいろな説明会を実施をいたしてまいっております。この特許PCT条約に関します問題を機会といたしまして、私は、大阪地区におきまして当庁の関係者の幹部の相当数によりまして、いわば一日特許庁という制度ではございませんが、それに類するような少し大規模な説明会を実は開催いたしたいと考えておるわけでございます。これが、それぞれの中小企業の方の御利用をいただきたいという配慮から、ぜひとも必要なことではないかと私考えておる次第でございます。
  65. 井上一成

    ○井上(一)委員 私は、いま大阪での具体的な事実関係を申し上げて、いわゆる受けざらとしての特許庁の対応が不十分であるということを指摘したわけであります。これは何も大阪に限らず、全国すべて平等な形で対応をしていかなければいけないわけであります。  さらに、いま申し上げるように、国際的な対応性を必要とし、あるいはそれを確保するためには、特許庁の機構それ自身あるいは組織整備等がやはり不可欠な要因になるわけであります。さっきの質問の中でも、順次人員増等も含めていわゆる努力をしてきたというお答えがあったわけですけれども、私は大変容易なことではないというふうには理解もし、そのように受けとめるのですけれども、いままでの対応があるいは措置がどうであったか、あるいは今後いままでの不十分な対応に対して反省の上に立ってとか、あるいはまた補うためにさらなる努力を必要とするわけでありますけれども、どのような措置を講じようとなさっていらっしゃるのか、私はその点についてもさらに詳しく長官の御所見を承りたい、こういうふうに思います。
  66. 熊谷善二

    熊谷政府委員 今回の加入に備えて私ども今日まで、たとえば国際問題担当調査官を設置いたしましたり、あるいはまた制度改正審議室といったものを設置しまして、法改正準備等いろいろやってまいりました。それ以外に、必要となります事務処理、資料管理の体制整備も行ってまいりました。とりわけこの五十三年度におきましては、PCTのための特別な室といたしまして特許協力条約室を設置をすることを予定しておるわけでございます。  私どもとしてはそれなりの努力をいたしてまいったつもりでございますが、民間の方々に対します説明会等につきましては、全国的に今日までしばしば説明会を開いておりまして、たとえばPCTに関します説明会あるいは審査基準の説明会といったようなものにつきまして、回数で見ますと、五十一年にはたとえば大阪の地区では五回でございますが、五十二年には十三回行っておるわけでございます。私ども、これは大阪のみならず、各地方の方々に対する説明会を通じます周知徹底は、今後とも大いに努力をいたしたいと考えております。御趣旨については十分尊重してまいりたいと考えております。
  67. 井上一成

    ○井上(一)委員 次に私は、開発途上国、特にアジアの国々が工業化を進めるに当たっては、その必要な技術が的確に付与されることが必要であると思うわけであります。とりわけ先端技術である特許情報をどのようにしてそれらの諸国に技術移転をしようとしているのか、また、このことについて特許協力条約上のたてまえを尊重した特許庁発展途上国対策とも言うべき対応策について、御説明をいただきたいと思います。
  68. 小林俊二

    ○小林説明員 技術移転の問題は、国際間の経済問題、すなわち低開発国と先進国との間の経済問題の中で一つの大きな地位を占めておる問題でございます。この特許協力条約締結に際しましても、低開発国側から強い要望がございまして、その結果、この条約第四章、特に第五十一条というものが挿入されたわけでございます。その内容は、開発途上にある締約国が専門家の養成あるいは教習用の設備の供与等を含む技術援助を受けることができるような仕組みということでございます。言いかえますれば、低開発国におきます特許制度の発展のために先進国は積極的に協力していくということを内容としたものでございまして、そのチャンネルをこの同盟が取り扱うということになるわけでございます。  また、先ほどの長官の御説明にもございましたとおり、この国際予備審査制度というものはもっぱら開発途上国の利益を念頭におきましてつくられた制度でございまして、特許出願になりました際に、その審査能力の足らざるところを補うという観点から設けられた制度でございます。  こういうふうに、本来の機能、それから特に低開発国のための援助、その二つの面におきまして、この協力条約は途上国の利益を念頭に置いてこれから運用されようとしておるわけでございます。
  69. 井上一成

    ○井上(一)委員 開発途上国の発展を基本に置いて、そしてその開発途上国が発展することにわが国が少しでも協力していくという考え方を常に持っていただきたい、こういうふうに私は思うわけです。  今回のこの条約は、さっきも、中小企業者にとりわけ十分な利点という中の一つに、日本語出願することに意味があるというふうに説明を聞いているわけであります。あるいは、外国において国際出願されたものは当然その国の言葉になるわけでありますから、それはわが国では翻訳文に基礎を置いて審査が行われると聞いているわけであります。そういうことから起こり得る問題、いわゆる原文と翻訳文の不一致の問題が今度は初めてのケースとして起きる問題であろう。あるいは関係者の間で議論を通じて、あるいはまた条約規定とか、あるいは諸外国における本件の取り扱い、とりわけわが国において審査官の負担などを考慮するときに、これらの原文と翻訳文の不一致から起こり得るトラブル、問題点にどのように対処していくのか、どういう措置をとられるのかということも、ここでぜひ長官の基本的な考え方、あるいはその措置内容を具体的にお聞きをいたしたいと思います。
  70. 熊谷善二

    熊谷政府委員 特許庁といたしましては審査は日本語で行うわけでございます。日本語で行いましたものが公告になり特許になるわけでございますが、これが原文との不一致によって是正されなければならない場合の措置はどう考えているのかという点でございます。  条約上は四十六条で、翻訳文と原文と対比いたしまして、翻訳文が原文を上回っている場合におきましては、その限りにおいて無効にするということが規定されておるわけでございます。私どもの考えておるプラクティスといたしましては、これを受けまして無効審判の請求ができる措置を講じております。したがいまして、無効審判の請求が出ますと、出願者の方はほうっておきますと無効になるわけでございますので、原文に即したように訂正をする審判請求を起こすことに相なるわけでございます。この訂正審判の審決が出るまでは無効審判の審決を待つように法律上手当てをいたしております。そういった形で原文との不一致の部分につきましては是正されることを制度的に手当てをいたしたわけでございます。  第二には、これに準ずる措置といたしまして、特許公告後におきまして異議の申し立てのあった場合に限りまして、その不一致の是正措置を講ずるということを手当ていたしております。この二つがこの不一致に関します法律上の手当てとして考えておるものでございます。
  71. 井上一成

    ○井上(一)委員 さらに、私は本委員会でも日中関係についてもこの問題については質問をしたことがあるわけでありますけれども、そもそも特許の分野における中国との関係はどのような状態にあるのか、あるいは日中間の技術協力はこの条約でどのように推進されようとしているのか、長官にお聞きをしたいと思います。
  72. 熊谷善二

    熊谷政府委員 工業所有権制度に関します日中の関係は、先般御承認賜りました日中商標条約協定だけでございます。中国におきましては、特許制度につきましてはまだ制度整備されておりません。したがいまして、本条約との関係において考えます場合には、直接には関係しないわけでございますが、私ども日中間の交流の拡大、相互の貿易の推進ということを考え、期待をいたしておりますだけに、この中国との関係につきまして、いろいろな機会を通じまして相互の工業所有権問題に関します意思の疎通に努力をいたしておるわけでございます。私ども関係いたしております民間団体におきましても、中国との間で、民間ベースで何か協力をする余地はないかということで、調査団の派遣も計画しているやに聞いておりますが、特許庁といたしましても民間ベースの協力あるいは政府ベースの協力、相ともに接触を深め、また協力をいたしてまいりたいというふうに考えております。
  73. 井上一成

    ○井上(一)委員 私は、冒頭にも申し上げたように、この特許制度それ自身の持つ意義というものを十分理解をする。が、しかし、いわゆる大企業の独占のための道具に利されては、本来の私どもの考える意義から遠く離れるものである。  そこで長官に重ねて、私は中小企業、町の発明家等、これらの方々保護され、そしてそれらの方々を育成していくという、そのような立場に常に立つ行政を推進するのだという決意の確認をここでしておきたいと思うわけであります。そして他面、そのような行政を推進するに当たっては、それに対応のでき得る行政の受けざらが必要である。そのこともまた、これはひいては中小企業者あるいは町の発明家等の方々保護、育成することに必要欠くべからざる措置であり、優先して対応すべき事柄であるということを私は特に長官に申し上げたいわけであります。このことについて長官のお考え、御決意をここでお聞きをして、私の質問を終えたいと思います。
  74. 熊谷善二

    熊谷政府委員 ただいま井上先生指摘のとおり、私ども中小企業の問題につきましては、特にこの工業所有権の問題につきまして、特段の配慮をしていく必要があるということを十分認識をいたしておるわけでございまして、今後私ども特許庁の分野のみならず、やはり優秀な技術を持った中小企業が生きていく、それは発明に支えられる、こういう基本認識に立ちまして、中小企業政策全般の中でこの問題をもっと大きく位置づけてもらうよう、関係の当局とも今後十分話し合いをし、努力をいたしたいと考えております。  なお、中小企業振興事業団とそれから発明協会と連携のもとで、いわゆる中小企業者の方に利用していただくようないい特許、これのあっせん事業も行っておるわけでございますが、こういったことも中小企業方々の真のニーズに合うようなものを発掘し、それを提供していく、こういうことも今後とも拡大をしてまいりたいと思っております。これは一例でございますが、冒頭申し上げましたような中小企業に対する十分な配慮のもとで施策を展開してまいりたいと思っております。
  75. 永田亮一

    永田委員長 午後二時から委員会を再開することとし、この際、暫時休憩いたします。     午後零時二十六分休憩      ————◇—————     午後二時二分開議
  76. 永田亮一

    永田委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  国際情勢に関する件について調査を進めます。  ただいまより総理大臣に対する質疑を行いますが、質疑者各位は、理事会で申し合わせいたしました持ち時間を厳守されますようあらかじめお願いを申し上げます。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。大坪健一郎君。
  77. 大坪健一郎

    ○大坪委員 大変お忙しいところを総理に御出席いただきましてありがとうございます。  実は、外務委員会でいろいろいま重要な議論が展開されておりますが、せんだって、特に日本国憲法と核兵器の保有に関しまして論争がございました。外務大臣は、核兵器不拡散条約の締約国としてこれを誠実に遵守すべきだというお立場から、また原子力基本法でありますとか、非核三原則というわが国の国是を考慮いたしますれば、現在わが国としては核兵器を保持することができないというお立場を明確にお述べになったようでございます。  私どもはもちろんそういうことをかたく考えておるわけでございますけれども、しかし、日本国の憲法の純粋な解釈としてこの問題をどう考えるかということはまた別問題でございます。一億一千万の国民がこの狭い島国に住んでおり、食糧の一部、それからエネルギー資源のほとんど、あるいは原材料のほとんどが海上輸送をもって賄われておるという状況でございますれば、もちろん平和を守ることによってわが国の国益を守る第一とすべきことは当然でございますけれども、国の自衛のために正当な目的の限度内でいろいろな兵器を持ち、自衛をする能力を身につけておくということも、また当然、民族的な責務であろうと存ずる次第でございます。  科学技術の進歩によりまして、たとえば非常に小型の兵器が大変爆発力の強い核を使って生まれたといたしまして、そういうものが性能が非常に局限されておって、そして防御的な目的にしか使えないようなものである、たとえば防衛的な地雷の一部にしか使えないようなものである、そういったようなものがもしできた場合にも、文言にとらわれて、こういうものは憲法上持つことができないというような解釈を、果たしてしていいものかどうか。われわれは一億一千万の日本人の将来の民族的な安全ということも考慮した上で、十分この辺のことは詰めておかなくてはならぬと存ずる次第でございまして、何遍ももうお話になっておられると思いますけれども、特に当外務委員会といたしまして、この点について総理のお考えをお伺いいたしたいと存じます。
  78. 福田赳夫

    福田内閣総理大臣 大事な問題でありますので明快にお答えをしますが、わが国は憲法第九条によりまして戦力を持つことはできない。しかしながら自衛のための必要最小限の備えは、これはもとより自衛のためのものでありまするから、これはもう悪法が禁じておる、こういうところじゃないわけであります。  そういう意味において、いまお話がありましたが、核につきましても、憲法第九条の解釈といたしまして、これが絶対に持てない、こういうことではないのであります。核といえども、必要最小限の自衛のためでありますればこれを持ち得る、こういうのが私どもの見解でございます。  ただ、実際上の政策問題といたしますると、わが国は非核三原則というものを国是としておる、それからまた核拡散防止条約加入しておる、また原子力基本法を持っておる、こういうことでございますので、現実の問題として核を持つ、こういう核を兵器として持つということはあり得ませんが、憲法解釈の問題とは別個の問題であるというふうに御理解願います。
  79. 大坪健一郎

    ○大坪委員 明確なお答えをいただきましたので、これで質問を終わります。
  80. 永田亮一

  81. 土井たか子

    ○土井委員 まず総理にお尋ねをいたしますが、先月二十二日、当外務委員会におきまして、私、外務大臣に対しての御質問をさせていただいた節、園田外務大臣の御答弁の中に、今度の軍縮総会では総理がお出になるか私が出るかわかりませんけれども、核は憲法上持てないということを、世界各国のいろいろな質問に対してもこれは鮮明にすべきであるという御趣旨の御答弁がございます。総理大臣は軍縮総会にお出ましになるわけでございますか、いかがでございますか。
  82. 福田赳夫

    福田内閣総理大臣 国連の軍縮会議が再来月、五月に開かれるわけでございますが、その時点の私ども日本政府の方の政治日程がどうなるか、また私が出席すると日本政府に都合がいいというその時期が、国連の方の受け入れといたしましてどういうふうになるかという問題もあるし、また私といたしましても、時間を割いてわざわざニューヨークまで出ていくということになれば、その際には、主要各国の首脳等ともいろいろ話をしてみたいという希望もあります。主要各国の首脳がどういうふうなぐあいで参集するかというようなこともこれあり、時間もあることでございますから、いろいろこれからの推移を見て、そして私が行くかあるいは園田外務大臣が行くか、その辺は決まる、こういうふうに御理解願います。
  83. 土井たか子

    ○土井委員 いまお答えのとおりで、時間とそのときの条件が許せばというふうな御答弁だと承るわけでありますが、ただ軍縮総会というのは、これはもう申し上げるまでもなく大変大事な内容でございますので、その点に対しての内閣総理大臣の御認識というのは、これは十分なものであろうと思いますが、いかがなんでございますか。
  84. 福田赳夫

    福田内閣総理大臣 私は、まあ今世紀中はどうか知りませんけれども、二十一世紀のある時点というような時期になれば、世界一つの権威の下で動くというような時期になるかもしれない、またそうあってほしいなというような感じがいたします。しかし当面、そういう時期が来るまでの間、自分の国を守るというおのおのの国の動きは続いていくであろう。しかし、先々そういうようなことを展望し、それを念願とするということを考えてみますると、いま今日この時点においても、強大な軍備を持って相いがみ合うというようなその国のあり方というものは、私はそう賢明なあり方ではないというふうに思うのです。そういう中で、わが日本という国は非常に特殊な立場にある。わが国は、いま、経済力からいいましても、あるいは科学技術の面から見ましても、持たんとすれば強大な軍備が持てるのです。その持たんとすれば持ち得る立場のわが日本が、強大な軍備を持つことの愚かさということを説きながら軍備を持たぬという姿勢をとっていくということは、その力なきにかかわらず、軍備は持ちません、皆さん軍備はやめましょうという呼びかけをする、そしの行き方と比べますと、非常に日本のそういう呼びかけは説得力を持っておると思うのです。そういう意味で、わが日本は非常にいま軍備問題につきましては世界でも貴重な立場にある、そういうことであります。そこで、機会あるごとにわが国は、そういうわが日本立場世界に宣明し、そして軍縮への背景づくりに貢献をすべきである、このように考えております。
  85. 土井たか子

    ○土井委員 いまの総理大臣の御発言を受けて、それならばお尋ねを申し上げたいことがございます。  同じ二月二十二日の当外務委員会におきまして、園田外務大臣の御答弁の中にこういう部分がございます。間違いのないように会議録を読ませていただくことにいたします。「世界のある国々で、日本が核を持つのではなかろうかという不安があるという話でありましたが、実際にそう思われまして、そういう質問を受けたことが二、三回ございます。総理も質問を受けたことがございます。そこで、総理、私は、その際、日本国憲法によってそういう核は絶対に持ちません、その証拠は日本国憲法であります。こういうふうにお答えをしておることを御報告いたします。」というこの明確なる御答弁があるわけでございます。この当日、つまり二月二十二日という日には、園田外務大臣から、憲法上、法理上核兵器は持てない、大小問わず持てない、攻撃用であろうと防御用であろうと持てない、こういう御答弁を、ただいまお座りの総理大臣のその席にお座りになって、当委員会でわれわれいただいたわけであります。総理大臣の、先ほど来大坪委員に対する御答弁というのは、少し趣が変わっておりまして、外務大臣と違うように思われるわけでありますが、この外務大臣答弁についてどのようにお考えになりますか。
  86. 福田赳夫

    福田内閣総理大臣 私、そういうやりとりが土井さんとの間にあったという話を聞きまして、外務大臣にも聞いてみたのですが、外務大臣は少し問題を先走って考えたように私は思うのです。つまり、憲法第九十八条というのがありますね。あれで条約の遵守義務を課しておるわけでございますが、わが国はNPTに入っておる、核拡散防止条約加盟しておる、そういうことで、憲法第九十八条からいいますると、条約を遵守しなければならぬということからいうと、これは核兵器は持てない、こういうことになるのです。その辺が頭にあって憲法という言葉を使ったように私は理解したわけでありまするが、その後、園田外務大臣にも伺ったわけでございまするけれども、園田外務大臣の所見も、ただいま大坪委員に対しまして私がお答えしたのと異なるところはないのです。少し先走りまして、憲法第九十八条が頭にあった関係で土井さんにあのようなお答えをしたのじゃないか、私はそう受け取っておる次第でございます。
  87. 土井たか子

    ○土井委員 私は外務大臣答弁に対してのコメントを、わざわざ事もあろうに内閣総理大臣からいただこうとは思っておりません。内閣総理大臣の御見解はいかがなんです。憲法上、法理上核兵器は持てるのか持てないのか、その辺はいかがなんでございますか。
  88. 福田赳夫

    福田内閣総理大臣 この点は、先ほど大坪さんにお答え申し上げましたとおり、憲法上核兵器は絶対に持てないというようには考えません。核兵器といえども、それが国を防衛するための必要最小限の装備である、こういうことでありますれば、これを持ち得る、こういうふうに思います。
  89. 土井たか子

    ○土井委員 そういう旨は憲法のどこに書いてあるのですか。
  90. 福田赳夫

    福田内閣総理大臣 憲法第九条であります。憲法ですからそう具体的に書いてはありませんよ。その憲法第九条の法理からさように理解される、こういうことでございます。
  91. 土井たか子

    ○土井委員 第九条の法理とおっしゃる。それならば申し上げたいのですが、なるほど具体的に明確に書いてございません。外務大臣も、「九条にはどこにも書いてありません、」このことは明確にお答えになっているのです。核は持てる、持てない、こんなことは書いてない。ただ、書いてないがゆえに、第九条という条文をしきりに根拠としてお出しになりますけれども、果たして持てるのか持てないのかということは憲法全体から考えなければいけない。総合的に考えて、憲法全体から考えて、果たしてこれを持つことを憲法は認めているか認めていないかという判断を持つべきだと思います。そういうことになりますと、先ほど総理大臣は、九十八条の二項、つまり締結した条約に対しては遵守する義務があるというこの問題をお出しになりましたけれども、もう一つ、先日のこの二月二十二日の当委員会における外務大臣の御答弁の中には大事な大事なポイントがあるのです。それはどういうことかと申しますと、わざわざある例を外務大臣は引かれているわけであります。「この前の大戦の末期に、危急存亡のときに、江田島にイペリット、ルイサイト、ホスゲン、こういう毒ガスがございました。これを使うか使わぬかという議論があったわけでありますが、そういう際にさえも日本は使わなかったわけでありまして、」云々なんですが、実は江田島というのは残念ながら少し場所が違っておりまして、正確には大久野島であるであろうと私は考えるのです。ただ、いずれにしても、この例を何のために引き合いに出されたかというと、それは、憲法の各所に日本国民の生命と財産を守れということが書いてあるわけでありますから、この憲法の条項からしても、小型であろうと大型であろうと憲法上持てないという認識を持つべきだという趣旨の御答弁なんです。この辺は私は非常に大事なポイントだと思うのですよ。いかがなんですか。総理大臣、いかなる兵器でも同様のことが言えると思いますが、特に核兵器というのは、一たんこれが使われると大変な威力を発揮します。御承知のとおりに、広島の原爆を考えていたらもう時代おくれもはなはだしいので、核爆発と同時に、熱線と爆風と放射能というのはどれほど殺戮力を持っているかということぐらいは考えておかなければならない。これがどれだけ小型であろうと防御用であろうと、一体それはいざというときにどこで使われるのですか。そのことを考えると、外務大臣御答弁のこの点というのは非常に重要なポイントを押さえておられると私は思うわけであります。総理大臣の先ほどの御答弁に対して、少し先走りだとおっしゃるその総理大臣の外務大臣の御答弁に対しての御認識とは私は全く違って、残念ながら、外務大臣の御答弁というのは、この議事録を読めば読むほど理路整然と一貫しているのですよ。先走りでも何でもない。むしろあたりまえのことをあたりまえに言われているにすぎないと私は読みました。このいまの大事なポイントについて総理大臣はどのようにお考えですか。
  92. 福田赳夫

    福田内閣総理大臣 憲法第九条は自衛権を否定しておるわけではありません。また、日本国憲法全体の精神からいいましても、日本国外国から侵されるという際に、手をこまねいて侵されるままにこれを、侵されることを甘受しなければならぬ、こういうことは私は規定をいたしておるとは思いません。日本国は憲法全体から見たって生きる権利は持っておるわけですから、私は憲法全体が日本国民の生きる権利を否定しているなどとは全然思いませんが、その点は私は遺憾ながら土井さんと見解を異にします。  それから、園田外務大臣がいろいろ言っておられる、こう言いますが、事憲法に関する解釈の問題、またわが国の国策の問題、これにつきましては私が先ほど以来明快にお答えしておること、これが政府の見解でありますからそのとおりに御理解願います。
  93. 土井たか子

    ○土井委員 私は余り明快とも思わないのですが、九条自身が核は持てるか持てないか一切これに触れて書いてない、触れて書いてないがゆえに、九条に対してどういう認識を持つかということは、九条の文言自身に対する解釈と同時に、憲法全体からそれに対しての法理解釈というものをやる必要があるということは内閣総理大臣御承知のとおりなんです。そういう点から考えれば、九十八条二項からすればいまの核拡散防止条約というものを締結している日本立場、十三条からすれば政府は、内閣総理大臣は、日本の政治は国民について財産や生命や自由というものを最大限に尊重しなければならないという責務、こういう問題を抜きにしてはいまの九条も考えていただくことは間違いだと思っています。そういう点からすれば、考えれば考えるほど憲法の法理からすれば小なりといえども核兵器というものはこれは持つことができないといういま状態ではないか。  再度お尋ねをいたしますが、憲法上法理上——憲法というのは第九条だけじゃないですよ、憲法上法理上核兵器というのは持てるのか持てないのか、これはいかがなんでございますか。
  94. 福田赳夫

    福田内閣総理大臣 憲法上法理上、必要最小限の装備という意味合いにおきましては、核といえどもこれを持ち得る、これが政府の見解でございます。
  95. 土井たか子

    ○土井委員 まことに説得力がないわけでありますが、ひとつこのことについて総理大臣に確認をさせていただきます。  非核兵器国の安全保障、これはわが国のことを問題にして書かれた文書でありまして、わが国の核兵器不拡散条約批准についてという外務省の文書であります。「わが国のNPT署名」、NPTというのは先ほど総理大臣言われたとおり核兵器不拡散条約のことであります。「わが国のNPT署名以後の国際情勢は、核大国をめぐる緊張緩和の進展により、全体としてわが国をはじめとする非核兵器国の安全度を高める方向に推移している。とくに日中国交正常化による中国との友好関係の開始は、わが国の全般的安全保障の強化に貢献している。」こういう部分があるわけであります。総理大臣の御所見をお聞かせください。
  96. 中江要介

    ○中江政府委員 ただいま日中正常化の点に言及しておられますので私が立ち上がりましたが、いま先生のお読みになった部分、必ずしも私自身よく把握しておりませんが、要するに日本としては近隣各国、特に日本に近接しております国で、かつ核開発もやっている中国との間で国交を正常化することによって、紛争を平和的に解決するという道を開くことは日本の安全保障上意義があろう、こういう意味ではなかろうかと思います。
  97. 土井たか子

    ○土井委員 それはコメントを外務省からお伺いするために私は質問したわけじゃないわけでありますが、総理大臣にこのことに対して重ねてお尋ねをするという時間がもはやございません。  一言お尋ねしたいのですが、総理大臣は、日本国民は日本国憲法上核兵器は持てるし、核兵器を持つことは望ましいことだと考えているというふうに御認識になっていらっしゃいますか、いかがなんです。
  98. 福田赳夫

    福田内閣総理大臣 その御質問はどうも私も意味がよくわかりませんが、しばしば申し上げているとおり、わが国は核兵器はこれは絶対に持たない、非核三原則という国是まで打ち出しておる、こういうことでありますから、それでもう十分御理解できるところではあるまいか、そのように存じます。
  99. 土井たか子

    ○土井委員 いまの御答弁からすると、非核三原則も核拡散防止条約も、すべて突然政府がお考えつかれてつくられたものではないのです。すべてやはり憲法の条文なり法理なりが——やはり日本も法治国家でありまして、好むと好まざるとにかかわらずそれぞれの内容には横溢していると考えなければいけない。そのことに対する認識があってこそ核防条約締結もできたし、非核三原則の宣言もできたと思っています。憲法抜きにしてそれぞれの存在はないです。したがいまして、非核三原則や核防条約というのは政策だとしきりにおっしゃるのですけれども、その政策自身が憲法から出てきた政策じゃないのですか。したがいまして、それぞれの内容からすれば、国民は非核三原則というものに対してこういう国であってほしいという念願は、核は持ってはならない、核兵器はあってはならない、こういう認識を持っているというふうに内閣総理大臣自身も御判断になっているのであろうと私は思いますよ。国民の判断を大切にする、国民の認識を大切にする、国民のこれに対する考え方というものを大切にするということは政治の基本じゃないですか、民主主義の。そういうことからいたしますと、きょうは、日本国憲法上核兵器は持てるという、どういうわけで持てるのかという理由はお示しにならないまま御答弁をいただいているわけでありますが、ひとつ日本国憲法の上で、こういうわけで核兵器を持つことを禁止してはいないという中身を明確に文書によってお示しいただくことを申し上げさせていただいて、次の質問にバトンタッチしたいと思います。
  100. 福田赳夫

    福田内閣総理大臣 必要最小限の防御装備、これは持つことは憲法から禁じられておるわけじゃないのだ、それは核兵器であろうがなかろうが違いはないんだ、こういうことを申し上げているわけで、憲法の解釈論と政策論、これはもう本当にはっきり分けて考えていただきたいのですよ。どうも混同してお話をなさっているような私の印象ですが、この前参議院予算委員会で、政府のそれに対する見解を出しておりますから、必要がありますれば、それを配付申し上げて結構でございます。
  101. 永田亮一

    永田委員長 井上一成君。
  102. 井上一成

    ○井上(一)委員 本日は私は総理に、日中平和友好条約についてまずお尋ねをいたしたいと思います。しかし、この問題は日中間の政府交渉事でありますので、その内容にはあえて深く立ち入らないつもりでございます。  総理は、日中交渉再開の機が熟しているんだということをいままでに何回か述べてこられたわけであります。いよいよ昨日交渉再開への方針を固められたように報じられ、また私どもはそのように受けとめておるわけでありますが、その御決意のほどを可能な限りひとつお聞かせをいただきたい、かように思います。
  103. 福田赳夫

    福田内閣総理大臣 日中両国の関係は、五年前の共同声明以来、共同声明にのっとりましてきわめて順調に今日まで発展してきております。そして、あの共同声明に盛られておるいろんな案件も処理されてきておるし、また、いわゆる実務協定、これもずいぶん多数のものが締結される、こういうことになってきておる。ただ、残っておる大きな問題は、日中平和友好条約締結という問題なんです。この問題は、共同声明が締結されてから五年間になりまするが、締結されないで今日に至っておる。私が内閣を組織してから一年三カ月になりますが、この間もうしばしば皆さんにも申し上げておるところでございますが、双方が満足し得る形で、なるべく早くこれを締結したい、こういう考え方を打ち出しておるわけでございます。そういう考え方は折に触れ中国政府にも伝えられておるということでございますが、とにかく五年間条約締結されずに今日に至っておるというその背景には、いろいろむずかしい問題があったわけです。でありまするから、交渉が中断されておる、その中断されておる交渉を再開する、これはよほど慎重にやらなければならぬ。そこで、交渉が再開されるための手順、段取りをどうするかということもまた、条約締結交渉自体を円滑にするためにはその手順、段取りの交渉もまた、非常に慎重にされなければならない。こういうふうに存じまして、新しく北京に参りました佐藤大使をして中国政府の要人と接触をとらせつつあったわけでありまするが、私、それらの接触を通じてみまして、かなり交渉再開の機は熟してきた、こういうふうに見ておりますので、交渉再開、これについてどういうふうに中国政府と打ち合わせをするか、その辺の手順、段取りについての最後の打ち合わせをすることにしたらどうだろう、こういうふうに存じまして、昨日、大平幹事長にそのような趣旨のことを申し入れ、いずれ考え方を整理して党に御相談をしますから、そのときは党の方においても善処せられたい、こういうことを申し上げておるわけなんです。かいつまんで申しますと、交渉再開、これの手順、段取り、これは最後の段階に来ておる、このように御承知願います。
  104. 井上一成

    ○井上(一)委員 それは、外務大臣が来月十日過ぎに訪中を予定をしているということも含めて、あるいは与党内の調整、続いては野党党首会談、そういう政治日程を踏まえた中で再開交渉に踏ん切られるというふうに受けとめてよろしゅうございますか。
  105. 福田赳夫

    福田内閣総理大臣 この問題は、とにかく日本の政治課題として大きな問題でありますから、もとより与党と十分考え方を練り合わせなければならぬ。もっともいまの段階は条約の中身の話をしているわけじゃないんです。交渉を再開するという、その点につきましての話し合いでございますが、とにかくそれにいたしましてもねんごろなる話し合いをしなければならぬ。同時に、この問題はかねて私は皆さんにも申し上げておるわけですが、自由民主党以外の各政党にも十分御理解を得なければならぬ、こういうふうに思いますが、そういう手順を尽くして、そうして最後の手順、段取りを決めたい、こういうふうに考えております。  そこで、いま園田外務大臣の訪中というようなお話がありましたが、そういうことでまだこれからそういういろいろな手順を経た上、中国政府と接触をするわけであります。また、接触をしてこちらの考え方を申し上げる、中国側はそれに対して、それはまあというようなことになるかどうかもわからない、そういうようなことでございまするから、いま、いつごろ園田外務大臣が訪中するとかしないとか、そういうような段階までまだ来ておらないのであります。いまこれからその手順、段取りの最後の詰めをするんだ、こういうことでありまして、その詰めの具体的内容がどうなるかということにつきましては、目下、まだ申し上げることはできない、そういう段階でございます。
  106. 井上一成

    ○井上(一)委員 一定のめどというものを持った中で詰めをなさっていらっしゃると思うのです。私は、いま申し上げたように四月十日過ぎ、これは外務大臣は他の委員会で、玄人筋の推測だ、まあいわば遠からず当たっておるというようなお答えをなさっていらっしゃるわけです。そういうことで、今後の交渉再開までのめどをぜひ総理からここで承っておきたい、このように思うのです。
  107. 福田赳夫

    福田内閣総理大臣 その辺がまだ申し上げられないと、こう言うんです。というのは、わが方といたしましても、これは国内的にいろいろとるべき手順、段取り、国内的のものがあるのです。それから、さあ、国内的の手順、段取りを経ましてわが方の考え方をまとめて、そして中国側と相談をするということになりましても、中国側にも中国側の都合がありますから、そういうようなことで、私は、ある展望を持つにいたしましても、相手があることでありまして、そのとおりにいくというふうにはならぬ性格のものでありまするから、いまどういう段取りでこの交渉が進められるということをまだこの段階では申し上げかねる、こういうことであります。
  108. 井上一成

    ○井上(一)委員 それじゃ、国内的な調整あるいは詰めに続いて、日中条約締結に先立って、これは中国と日本との関係条約でありますけれども、いわゆる友好国という形の中で、アメリカに、あるいは日本と中国との条約に間接的に非常に関係を持つソ連に対して、特別に特使を派遣するというようなお考えは持っていらっしゃるでしょうか、お持ちでないですか。
  109. 福田赳夫

    福田内閣総理大臣 わが国はとにかく世界の中で、世界じゅうに目を配って外交布陣をしておるわけですから、わが国の重要なる動きにつきましては諸外国も関心を持っており、わが国の外交についてどういう反応があるかということにつきまして、わが国もまた関心を持っておるわけでございますが、どの国に対してどういう接触をする、こういうようなこと、これはいま非常に機微の段階でありますので、ひとつ差し控えさしていただきたい、お願い申し上げます。
  110. 井上一成

    ○井上(一)委員 もう一点、覇権条項の内容でございますが、条約の内容そのものであり、非常にお聞きづらいと私は思うのですが、あえて、覇権問題は先方は先方の主張をお持ちでしょうし、わが国わが国の主張があるわけであります。それはどちらの主張が通るとか、あるいはどちらの主張でこの条約締結するということは非常にむずかしい問題であり、あるいはどの辺で折り合いがつくかということも、これはまさにこれからの今後の交渉だと思うのです。もし差し支えがなければわが国の方針をお聞かせをいただければ非常にありがたいと思うのです。
  111. 福田赳夫

    福田内閣総理大臣 条約の内容に立ち入って私がいま見解を申し上げるということは、この条約を円滑に締結に向かって進行させるという上であるいは支障があるんじゃないかと心配しますので、ひとつお答えは差し控えさしていただきたいのです。  ただ、私がここで申し上げられることは、わが日本世界じゅういずれの国とも友好親善の関係を保ちたい、いずれの国に対しましてもその考え方をもって貫き通していきたい、こういうふうに考えておる。これはわが国外交の基本ですね。この基本的な姿勢、これはいかなる国とのいかなる交渉におきましても貫き通さなきゃならぬ問題であるということだけは、はっきり申し上げさせていただきます。
  112. 井上一成

    ○井上(一)委員 私は、総理は、いかなる国とも友好関係を結び、かつ、平和の維持のために日本が最大の努力をしていくのだというお考えをお持ちであるということですが、それならばあえてここで、憲法で、日本国民は平和を念願しているんだ、そして、その平和を愛する諸国民の公正と信義に信頼してわれらの安全と生存を保持しようと決意したんだという前文、そしてまた、国家の名誉にかけて、日本国民は全力を挙げてこの崇高な理想目的を達成するんだという決意を誓い合ったわが国の憲法であります。マニラでもあえて総理は、アジアの平和ということについて触れられているわけです。  私はここで、すべての国と平和友好関係をさらに深めていくんだという立場に立って、わが国は一切の戦争の中に巻き込まれないんだ、また、参加をしない、あるいはそのような事態を好まないんだという願いを込めて、世界に対して永世中立平和宣言、日本が平和宣言を内外にすべきであるという考えを持っておるわけであります。総理、いかがでございますか。
  113. 福田赳夫

    福田内閣総理大臣 わが国の憲法はまさに、そのおっしゃるような平和宣言を世界に向かってやっておるのです。わが国の憲法こそは平和宣言そのものである、このように考えます。ただ、しかし、世界じゅうがみんな釈迦や孔子様ばかりじゃありません、時に不心得の者が出てくるかもしらぬ。そういう者の侵略に対しましてわが国わが国を守る、これはもう私は当然、政府といたしましてはそれが国民に対する責任であり、また、そのような措置をとることは日本国民全部の権利である、このように考えますので、それと平和宣言、平和憲法と何も矛盾するところはない、そのように考えます。
  114. 井上一成

    ○井上(一)委員 総理、やはり一国の総理として、平和に対する強い信念を内外に示すというときが、いままさにそのときであると私は思うのですよ。平和憲法で平和を示しているんだ、そのことがわが国の憲法の最も大きな意義であるわけです。片面では平和が侵される可能性があるんだというようなことを言われているのですよ。だからこそ、もしそういうことであるならばなおさら、内外に潔く永世平和宣言をこの折にこそすべきであると私は強く提唱するわけであります。また、総理にそのような考えに立つことを私は強く希望いたしまして、後に質問を譲ります。
  115. 土井たか子

    ○土井委員 本日の質問を通じまして、外務大臣と、事憲法に関する御見解が内閣総理大臣と違っているということがはっきりいたしました。また、内閣総理大臣は、それに対して、外務大臣は先走りであったというふうなこともおっしゃっておりますが、事は小さなことではございませんで、日本の基本法に対して認識が、内閣総理大臣外務大臣との間で違うという大変重大な問題であります。内閣において憲法に対する認識が不統一であるという、この非常に重大な問題であります。本来ならば、憲法に対して認識が違うというふうなことだけでもって罷免に値すると言ったって、これは決して過ぎたことじゃない。一体このことをどのように処置なさろうというのですか。  それからもう一つは、最後にこのことをだめ押ししておきます。  いままで外務大臣答弁でも明らかなとおりで、憲法上核は持てないと各国に言ってきたという立場外務大臣にはおありになる。外国から、日本は核を持つのではないかというふうな不安があるやさきであります。したがいまして、憲法上、日本国憲法によって、そういう核は絶対に持ちませんということを言われ続けてきている立場があるわけですが、外国に対してこれはうそをつかれたことになります。どのようにこれに対しては処置をなさいますか、このことを二つお尋ねします。
  116. 福田赳夫

    福田内閣総理大臣 核装備についての日本政府の見解は、これはもうしばしば申し上げておるわけです。先般の参議院の予算委員会では、わざわざ書いたものにしてお配りしておるわけでありまして、きわめて明快にされておるわけでございます。園田外務大臣の答弁、まあいろいろなことを聞かれて、いろいろな内容のことを一つの答えの中で申し上げておるわけでございまするが、日本政府の見解は、これは文書でお配りしてあるとおりのものであるというふうに御理解を願います。
  117. 土井たか子

    ○土井委員 二つ目の質問に対する御答弁がないです。
  118. 福田赳夫

    福田内閣総理大臣 私は不敏にして、わが国が憲法上核の保有を禁じられておるということを世界に向かって申し上げてきておるというようなことは承知いたしませんが、どこでどういう人がどういう形で言っておりますのか、よく私どもも調べてみますけれども、そのようなことにつきましては、私は何ら承知しておりませんです。
  119. 永田亮一

    永田委員長 中川嘉美君。
  120. 中川嘉美

    ○中川(嘉)委員 総理に先ほど来の御答弁にも関連をして伺いたいと思いますが、この戦力不保持をうたっているところの憲法第九条について、先日来の御答弁では、禁止されている戦力というものはもう何もなくなってしまっているというふうに感じるわけですけれども、一体この禁止されている戦力に当たるものは何であるか、この点をまずお答えをいただきたいと思います。
  121. 福田赳夫

    福田内閣総理大臣 自衛のため必要な最小限度の兵備、これを超えるものが禁じられておる、このように御理解願います。
  122. 中川嘉美

    ○中川(嘉)委員 いわゆるCBR兵器ですね、これはそうすると、いまの御答弁からすると、持てないというふうに言われるのか、このCBR兵器について、これは戦力に相当しないというふうにおっしゃられるのか、この辺はいかがでしょう。
  123. 福田赳夫

    福田内閣総理大臣 これも、自衛のため必要最小限のものであるかどうかによって結論が違う、このように御理解願います。
  124. 中川嘉美

    ○中川(嘉)委員 これは必要最小限であるかどうかというような、こんな段階じゃないと私は思うのですね。CBR兵器、総理がこのCBR兵器というものについての御認識というものは十分あると私は思いますけれども、これに対していまのような御答弁であると、とにかくゼロからひとつ調べ直さなければならないみたいな、そのような響きがあるわけで、このCBR兵器というのは、御承知のとおり、ジュネーブ協定においてもこれはもう禁止されておる。持てるということになると、毒ガスもそれから細菌あるいは核戦争等が十分に想定をされることになるわけで、どうもいまの総理の御答弁によると、こういったものまでも必要最小限のものになるのかどうか検討せざるを得ないというような、まことに抽象的な御答弁に響くわけですけれども、私はいままでの論議を聞いておりまして、持てるけれども持たないんだというような、そんな言い方ではならないと思うわけです。以前の憲法は毒ガスが持てたみたいなことも言われておりますけれども、いまの憲法では持てないとあくまでも解すべきである。そうでないと、私たちはこの際、重大な決意をしなければならないと思いますが、いま一度、この点に関しての総理のお考えをお聞かせいただきたいと思います。
  125. 福田赳夫

    福田内閣総理大臣 どうも憲法の純粋な解釈論と政策論と、これが入り乱れておるのじゃないかというような印象を、これは失礼でございますが、そんな感じがするんですよ。憲法の純粋な解釈論といたしましては、これはわが国といたしましては、自衛のため必要最小限の兵備はこれを持ち得る、こういうことでございまして、それが細菌兵器であろうがあるいは核兵器であろうが差別はないのだ。自衛のため必要最小限のものである場合はこれを持ち得る、このように考えておる次第でございます。
  126. 中川嘉美

    ○中川(嘉)委員 これはどうもいまの答弁では、私はこのまま次の別のテーマに移って行きにくいものがあるわけで、細菌兵器あるいは核も含めてですけれども、毒ガス等がそういうことのためにここで検討されようとしているように響くわけですけれども、これは非常に問題のある御答弁ではないか、このように私は思います。この問題はとても満足いく御答弁ではないわけで、この際、改めてこの問題については集中的にやる必要があるのではないか、このように私は思います。きょうのところは時間が非常に制限されておりますので、このただいまの御答弁を踏まえて、これは当然政府の正式な態度というもの、姿勢というものを確認していかなければならない、このように思うわけです。この問題についてはそれでは別途に、この限られた時間でやるわけにいかない、これは十分な時間をとって改めて総理に質問をしてまいりたい、このように思うわけです。  十五分という限られた時間ですから、きょうはここで日中問題についてやはり総理の御見解を承っておきたいと思います。  去る二十二日に、外務大臣及び官房長官と総理との間で日中問題についての協議が行われた、また昨日大平幹事長との会談で交渉再開を決意した、こんな報道がなされておりますけれども、まず伺いたい点は、日中平和友好条約の交渉再開への決断をしたものと受けとめていいかどうか。  第二点は、交渉再開への具体的な方針、これが決まったかどうか。  まとめて聞きますけれども、第三点は、佐藤・韓念竜会談の第三回開催に対する訓令というものはすでに出されたのかどうか。もしまだ出していないとするならばいつごろ出されるか。  第四点といたしましては、その際の内容として、正式交渉再開を指示することになると考えていいのかどうか。これらの点について、まとめていまここでお伺いをしておきたいと思います。
  127. 福田赳夫

    福田内閣総理大臣 日中平和友好条約につきましては、大体交渉再開という方向の考え方が固まりつつあるわけでございまするけれども、正式に政府が決意をするということは、先ほど申し上げておりますいろいろな国内的な手順、段取りがあります。その結果を見た上、正式ですよ、正式な最終的な方針を決定する、こういうことと御理解を願います。  そういう段階でありますので、最後の手順、段取りの詰めをする佐藤・韓念竜会談、これはまだ当方から申し入れをいたしておりません。したがって、この会談をどうするかというような訓令につきましては、これはまだ佐藤大使に出しておりません。このように御理解を願います。
  128. 中川嘉美

    ○中川(嘉)委員 現時点で、こういった個別に分けた質問に十分なる御答弁はなかなかいただけないというふうに感じるわけですけれども、それでは今後の日中条約締結についてのスケジュール、これはどういうことになっているのか。いわゆる正式交渉再開ということになりますと、交渉妥結は、相手のあることですから、当然こちらの思うとおりにならないというものもあろうかと思いますけれども、総理として、正式交渉再開から妥結に至るまでにそれほど時間がかからないという見通しを持っておられるのかどうか。また、今国会国会承認を完了したいというお考えがあるのかどうか。場合によっては会期延長あるいは臨時国会の開催もあり得るのかどうか、これらの点についてお答えをいただきたいと思います。
  129. 福田赳夫

    福田内閣総理大臣 まだこの問題は交渉再開のための手順、段取りをどうするかということも最後的決定に至っておらないわけなんです。それをいよいよこれから詰めようかと、こういう段階でありますので、その先どういうタイミングでこの交渉が妥結をするとか、またその上国会にいつ、どういう手順でこれが付議されるとか、そこまでまだ読みは全然できない、そういう段階でございます。これは率直な話でございますから、御了承願います。
  130. 中川嘉美

    ○中川(嘉)委員 総理は過日の予算委員会で、わが党の委員質問に対して、条約締結への政府の基本方針に関して、たとえば党首会談等といった形ででも野党の理解を求めることを明らかにしておられる。きょうの先ほどの御答弁でも出ておりますけれども、このことが単なる事後追認というような非常に形式的なものであってはならない、このように私は思います。  そこで伺いますけれども、その時期は一体いかなる段階、その時期というのは党首会談ですが、いかなる段階で行うつもりであるのか。たとえて言えば、自民党内の調整ができた時点なのか、それとも政府のいわゆる基本方針が決定したときなのか、さらには外務大臣が訪中をする直前であるのか、こういったいろいろなケースが想定されますけれども、この辺についてお答えをいただきたいと思います。
  131. 福田赳夫

    福田内閣総理大臣 まだどういうタイミングというところまで詰めておりませんけれども、私の気持ちはなるべく早く各党へ御相談を申し上げ御理解を賜りたい、このように考えております。
  132. 中川嘉美

    ○中川(嘉)委員 総理としては園田外相の訪中を指示されるのがいつごろになると考えていらっしゃるか、これはいろいろいままでも議論されてきている問題ですけれども、新聞報道によると、またいろいろに異なったケースが報道されているようですけれども、この点が第一点。  それから、時期についてはいま申し上げましたようにいろいろ論議されているのですけれども、時期も大事ではありますが、むしろ訪中の中身、これがやはり非常に大事ではないかと私は思います。外務大臣訪中の位置づけとしては、これによっていわゆる反覇権条項の決着をつけるという目的、すなわち外相訪中が日中条約の草案作成も含めて実質的な妥結をさせたいという性格であるのかどうか、この点についてもあわせて御答弁をいただきたいと思います。
  133. 福田赳夫

    福田内閣総理大臣 園田外務大臣の訪中訪中とおっしゃいますが、日中平和友好条約締結交渉につきましては、交渉自体の手順、段取り、これをまだ決めておらないのですよ。交渉がうまくいくために、円滑に進められるというために園田外務大臣の訪中ということが有効だというように双方が判断するというようなことになれば、それは訪中ということを考えるのにやぶさかではございませんけれども、まだそういう交渉をどういうふうに開始するか、その手順、段取りにつきまして決まっておらぬというわけでありまするから、園田外務大臣が訪中して、そうしてその話の中身はどうだというところまでは全然考えておりません。このように御理解を願います。
  134. 中川嘉美

    ○中川(嘉)委員 どうも御答弁が手順、段取り、手順、段取りに終始しているような気がしてならないし、これは決まってないからということで、前提とした御答弁に終始しているように感ずるわけで、その理由はいろいろあろうかと思いますけれども、その中の一つと言っていいかどうか、自民党の党内においてやはり依然として慎重論とか反対論がある、こうしたことが日中条約交渉再開への総理の決断を鈍らせてきた一つの原因となっているのではないか、このように申し上げても過言ではないと私は思うのですが、総理はこの自民党内のこうした動きをどう考え、そしてまた対処するつもりでおられるのか、早期にこれを説得できる、こういう判断を持っておられるのかどうか、この点を伺っておきたいと思います。
  135. 福田赳夫

    福田内閣総理大臣 私が、園田訪中、これはまだ決まっておらぬ、こういうふうに申し上げておりますのは、これは御理解願えると思うのですよ。まだ手順、段取り、最後の詰めをしておらぬ、こういうことでございますから、その詰めの一つをなすこともあり得る外務大臣が向こうへ行く、あるいは向こうから人が来るかもしらぬし、いろいろのケースがあるのですが、そういうこと、まだ決まっておらない問題である、そういうことでその内容等につきましてこれを申し上げられるはずがないわけでありますから、それはほかのいろいろな、自由民主党の党内事情だとかなんとかというお話でございますけれども、そういうことはないのです。事の性質上、手順、段取り、だれがどういうふうに行き来して交渉の開始をするかというような、そういうことがまだ決まっておらないのですから、ですから申し上げられないのだ、こういうふうに申し上げておるわけなんです。  自由民主党は、これはもう自由、民主の政党でございますから、いろいろな議論があります。幅広い議論があるわけでありますが、最終的にはそれを統合いたしましてひとつ御理解を得たい、こういうふうに考えております。
  136. 中川嘉美

    ○中川(嘉)委員 ほぼ同じような御答弁の繰り返しでどうも大変残念なわけですけれども、時間の関係もありますのであと一、二問で終えたいと思いますが、今度はソ連側の問題について、一問だけ伺っておきたいと思います。  プラウダ等で、過日の中国政府四項目に対しても、ソ連敵視である、こういった懸念を表明をしているわけです。われわれは、ソ連側のこうした態度というものは誤解であろうと思うし、日中は日中、日ソは日ソ、こういう政府立場も当然理解できるわけでありますが、一方で、日中条約締結に際して、ソ連側の誤解であるとかあるいは懸念を解消するためにも、一つの方法ですけれども、何らかのソ連政府に対するわが国政府立場というもの、これを明らかにしておくことも考えるべきではないかと私は思いますけれども、総理の御見解を伺いたいと思います。
  137. 福田赳夫

    福田内閣総理大臣 日中平和友好条約は日中間の問題なんです。これは別に何の関係がソビエト連邦に対してあるわけではないのであります。お話のとおり、日中は日中、日ソは日ソなんでございますから、そういう性格の日中平和友好条約に対しましてソビエト連邦がいろいろ気を回すというようなことがある、こういうような御指摘でございますが、わが国といたしましてはどこまでも日中問題は日中問題だ、日ソ問題とはこれは違うのだ、全然関係ないのだという立場を貫き通す、これが最善である、こういうふうに考えております。
  138. 中川嘉美

    ○中川(嘉)委員 御答弁に対して申し上げるようですけれども、日中は日中、日ソは日ソということでいけば非常に結構なことだと思いますけれども、すでにこのような誤解であるとか懸念というものが出てきているという現実、こういったことに対してやはりわが国政府として、それなりにソ連側にきちっとした一つの態度を表明していくということも、私は必ず必要ではなかろうか、この観点に立って、今後ともまたわれわれもひとついろいろな角度から御提案をしていかなければならない、こんなふうにも実は思うわけです。  最後に一つだけ伺いますが、これはちょっと別の観点から竹島問題、一点だけ伺います。  長年にわたる日韓間の懸案であるところのこの竹島問題ですけれども、韓国側は日韓基本条約の際の交換公文に基づいた交渉に応じないばかりではなく、ここ数年来警備隊施設、ああいったものをつくるなどの既成事実を積み上げている。今日まで何回も開かれている日韓閣僚会議の議題にさえもなっていないという、まことに遺憾な状態であるわけですけれども福田総理はこうした韓国側の態度、これをどう考えておられるのか。竹島問題に関しては私はどうも総理が熱意がないんじゃないかと思うくらい今日まで何らの進展がないわけですけれども、やはり日本政府の対応そのものに疑問があるのではないか、このように思います。  そこで、今後どうこの問題を具体的に解決するつもりでおられるのか、総理の御見解というか御決意、これを最後に伺っておきたいと思います。
  139. 福田赳夫

    福田内閣総理大臣 竹島問題は日韓両国の見解が真っ正面からぶつかっておりますので、なかなかこれが解決、当面むずかしい問題でありますが、わが国といたしましては、わが国の領土であるという立場を堅持いたしまして、そしてこの問題に対処していきたいというのが基本的な考えです。韓国側においていろいろの動きをしておる、まことに遺憾な動きがあるわけでございますが、これに対しましては是正を求めます。同時にこの問題は、ただいま申し上げたような立場で処理しますが、どこまでも平和的処理、平和的な形の処理ということで何とかならぬかな、そういう考えで粘り強くひとつやっていきたい、このような考えでございます。
  140. 中川嘉美

    ○中川(嘉)委員 十分な御答弁とは、本日の御答弁を通じて思えないわけですけれども、御答弁を踏まえて改めてまた個々の質問を今後展開させていただきたい、このように思います。
  141. 永田亮一

    永田委員長 渡辺朗君。
  142. 渡辺朗

    ○渡辺(朗)委員 総理大臣にお伺いをいたしたいと思います。私は日米首脳会議、これについて総理にお伺いをいたしたいと思います。  訪米される日程、これは総理、もう詰められましたでしょうか。いかがでございましょう。
  143. 福田赳夫

    福田内閣総理大臣 これはある程度詰まってきておるのです。つまり、三十日東京出発、そして七日に帰国、こういうことでありまして、立ち寄り先はワシントンそれからニューヨーク、その他一、二カ所かと思いますけれども、まだその辺は詰まっておりません。
  144. 渡辺朗

    ○渡辺(朗)委員 大変いま重要な時期だと私は思います。したがいまして、日本のこれからの外交の中で大きな柱である日米関係、これを調整するということの意味でも、大変大きな意味を持つ首脳会議だと思いますので、ぜひとも懸案事項、十分討議していただきたいと思いますが、どのような問題を総理は具体的に討議をされようといまお考えでございますか。
  145. 福田赳夫

    福田内閣総理大臣 いま何といいましても、世界の最大の問題は世界経済の不安な状態、これを一体どうするか、こういう問題であります。日米両国はこの問題に対しましては非常に大事な立場にあるわけでありまして、アメリカはこれは世界第一の経済大国である、わが国は自由世界第二の工業力を持っておるという国である、その第一、第二の国の首脳会談でございますから、私は日米間では話し合うというような問題がそうはないと思うのです。やはり日米が協力して世界のためにどういうことをなすべきか、特に世界経済問題、これに対してどういう姿勢をとるべきか、こういうことについて突っ込んだ話をして、でき得れば共同して世界経済難局に取り組むというところまで持っていきたい、こういうふうに考えておるわけですが、いい機会でありますので、経済問題以外におきましても、アジアの諸問題、これはカーター大統領が非常に関心を持っているわけなんです。向こうからも話が出るでありましょうが、アジアの諸問題、また中東の問題、世界その他いろいろ政治上の問題もありまするけれども、あらゆる問題につきまして、時間の許す限り突っ込んだ話し合いをしてみたい、このように考えております。
  146. 渡辺朗

    ○渡辺(朗)委員 私は大変結構なことだと思いますが、その中で、いまおっしゃいましたアジアの諸問題、私は、日本を取り巻く、日本を含むところの北東アジアの安全保障の問題、これも当然お話し合いになるのではないかと思いますが、いかがでございましよう。
  147. 福田赳夫

    福田内閣総理大臣 安全保障というような形の話し合いは、私は、今度の会談は時間も短うございますので、ないと思いまするけれども、アジア全局にわたりまして、政治、経済、それから軍事、そういうような広範な問題の話はありまするけれども、いわゆる安全保障体制をどうだなんというようなそういう角度の話は、いま私は予想しておりません。
  148. 渡辺朗

    ○渡辺(朗)委員 総理、ただ、この間、たしか十七日でございますけれども、カーター大統領は先般、ウェーク・フォレスト大学で、アメリカの防衛政策に関する初の基調演説を行っております。私は、その中で、新しい核戦力の近代化あるいは通常戦力の再生化を目指す新たな防衛構想を打ち出しているというふうにも聞いております。私は、やはり日本の総理として、当然こういうものに真っ向から論議もされる、こういうことは重要だと思いますが、いかがでございましょう。
  149. 福田赳夫

    福田内閣総理大臣 今度の日米会談は、首脳会談につきまして言いますると、これは一日なんです。非常に時間も限られておる。そういう中で、いわゆるいまお話しのような角度の安全保障論議というような論議は、私は、議題とはならない。ただ、アジアの経済情勢はどうだ、政治情勢はどうだ、また、軍事情勢はどうなっているというような総合的、一般的な話し合い、これはあるだろうと思いまするけれども、いわゆる、かみしも着たような安全保障論議というような、そういう形の話は、私は、議題にはなってこない、このよううに見ております。
  150. 渡辺朗

    ○渡辺(朗)委員 それでは、アジアの中の諸問題、こういうふうにおっしゃいましたが、日中関係の問題、平和友好条約の問題あるいは米中関係、こういうことは総理としてお話し合いをされるお気持ちでございますか、いかがでございましょう。
  151. 福田赳夫

    福田内閣総理大臣 これは、当然そういう話題は出てくる、こういうふうに思います。
  152. 渡辺朗

    ○渡辺(朗)委員 先ほど日中関係の問題について諸委員から御質問があった際に、総理のお話を聞いておりますと、手順あるいは段取り、こういうことを非常に言っておられたのですが、その総理の頭の中にある手順、段取り、その中には、訪米してカーター大統領と日中関係、米中関係、そういったものを話し合うということも段取りの中に入っておりますでしょうか、いかがでございましょう。頭の中を聞きまして申しわけありません。
  153. 福田赳夫

    福田内閣総理大臣 入っておりませんです。
  154. 渡辺朗

    ○渡辺(朗)委員 総理、私はぜひともそれはやっていただきたいと思うのです。特に日中関係は、単に日中の問題だけではなく、やはりアジア地域の平和の問題であり、そしてまた、これからの日本の将来というものに対して大変に重要な問題にもなってまいります。ですから私は、当然お話し合いをされることがよろしかろうと思いますが、その際に米中関係、それについて私は、特に掘り下げた論議をしていただきたいと要望いたしますが、この要望はお聞き届けになりますでしょうか。
  155. 福田赳夫

    福田内閣総理大臣 日中関係、米中関係、これはもうお話には出ると思いますよ。いわゆる会談の課題、議題だ、こういうような形でないにいたしましても、いずれにしても、それは話が全然出なかったなんというようなことになれば不自然なことである、私はこういうように思いますが、いまお話を承っておりますと、私が日中平和友好条約の手順、段取りということを申しておる、その手順、段取りの中に日米会談という問題が入っておるか、こういうお話ですから、それは入っておりません、こういうふうに申し上げておるわけでありまして、日米会談が手順、段取りの中に入っておるということになれば、それは日中平和友好条約締結交渉あるいは妥結、そういうものが、日米会談を見なければ進まないんだというようなことにもなるのですから、そういうふうには私は考えておりません。両首脳の間で米中、日中、こういう話というか話題は出てくる、こういうふうには思いますが、お話のような、日米会談が日中平和友好条約交渉の手順、段取り、その中に織り込まれているんだ、こういうことは全然ありませんから。
  156. 渡辺朗

    ○渡辺(朗)委員 それでは、日米会談についてもう一つお尋ねいたしますが、今回訪米された際、話し合いをされた後に共同声明はお出しになる用意はございますか。どのようなおつもりでいらっしゃいますでしょうか。
  157. 福田赳夫

    福田内閣総理大臣 さあ、今度は交渉案件というのは別にないのです。意見の交換ということだけで。それでありまするから、強いて共同声明ということの必要もないというのが普通でしょうがね。まだ共同声明を出すか出さないか、その辺まで相談はしておりませんけれども、これは強いて出さなければならぬという性格の日米会談ではない、このように御理解願います。
  158. 渡辺朗

    ○渡辺(朗)委員 もう一つ関連してお尋ねをいたします。  新聞その他によりますと、六月に当初訪米を予定しておられたのが五月になったということで、とかくいろいろと憶測もされました。もう一度お伺いいたしますが、五月にされた意味意図、こういった点はどのようなものでございましたでしょうか。
  159. 福田赳夫

    福田内閣総理大臣 私は、当初から五月の上旬を希望しておったのです。なぜかというと、私は、国会を非常に尊重するんですよ。その国会第一主義の私からすれば、連休である五月上旬、これが国会には一番御迷惑をかけない時期であろう、こういうふうに考えましてアメリカに申し入れましたところ、アメリカの方では、ちょうど五月上旬に方々の国からお客さんがある、日本の総理大臣にはもう少し静かなときにゆっくりお目にかかりたいので、他に都合はつきませんかな、こういうような問い合わせがありましたのです。しかし私は、国会のことを考えると、もし差し支えなければ五月上旬にしてもらいたいんだということを再度申し入れたところ、それじゃそういたしましょうということになって、五月上旬になったというふうに御理解願います。
  160. 渡辺朗

    ○渡辺(朗)委員 最後に一つお伺いをいたします。  訪米の際に、大統領あるいは政府の首脳と閣僚その他とお会いになると思いますけれども、その際に民間の指導者にお会いになる用意はしておられますでしょうか。たとえばAFL・CIO会長のミーニーさん、こういうような人たちともお会いになる用意はないものでしょうか。私はなぜこんなことを言いますかというと、世界各国いま不況の中で大変苦しんでいる、経済のインバランスの中で、貿易のインバランスの中で苦しんでいる。国民の中に大変に雇用不安というものがある。特にAFL・CIOはカーター大統領に対しても大変大きな影響力を持っているといいますし、国民の中におけるそういう雇用不安をなくすということが、両国あるいは多国間の経済問題調整、このことに大変大きな意味を持ってくると思います。先ほども総理は、今回の訪米は経済問題であるこういうふうにおっしゃいました。それならば、よけいにそういう民間の方々、たとえば労働運動の指導的な方々、こういう方とも意見交換をされることがいいと思うのですが、いかがでございましょう。
  161. 福田赳夫

    福田内閣総理大臣 せっかくの訪米でございますから、各界の人とお目にかかることができるといいと思います。  ミーニーさんとは、昨年の三月訪米したときに親しく懇談をいたしておりますが、まだ民間のどういう人と会談をするかというようなことまで詰めておりませんけれども、御示唆はありがたくちょうだいしておきます。
  162. 渡辺朗

    ○渡辺(朗)委員 それでは終わります。ありがとうございました。
  163. 永田亮一

    永田委員長 正森成二君。
  164. 正森成二

    ○正森委員 私は、総理に、憲法九条三項と核兵器との関係について、わずかな時間ですが伺いたいと思います。  政府は、二月十四日に衆議院予算委員会に「F115及びP−3Cを保有することの可否について」と題する統一見解を文書で発表されました。その中には「憲法第九条第二項が保持を禁じている「戦力」は、自衛のための必要最小限度を超えるものである。」こういうようにお書きになった後で「もっとも、性能上専ら他国の国土の潰滅的破壊のためにのみ用いられる兵器(例えばICBM、長距離戦略爆撃機等)については、いかなる場合においても、これを保持することが許されないのはいうまでもない。」こういうぐあいになっております。こういう見解を政府がお決めになりましたのはいつからでございますか。今回が初めてですか、それともそれ以前にありましたか、総理。
  165. 真田秀夫

    ○真田政府委員 事実に関する問題でございますので、私からお答えをさせていただきますが、「性能上専ら他国の国土の潰滅的破壊のためにのみ用いられる兵器」というような表現は、昭和四十四年四月八日の、衆議院の会議録に載っておりますが、松本善明議員がお出しになりました質問主意書に対する政府の答弁書の中で用いられている言葉でございます。
  166. 正森成二

    ○正森委員 いまそういう答弁でございましたが、その前に、昭和五十二年七月に防衛庁が「日本の防衛」というのを出しておりますが、その中で脅威の質によって持てる兵器というのは変わってくるのだということを前提にした上で、もっとも「質的な発展、向上を図るといっても、相手国の国土の潰滅的破壊のためにのみ用いられる兵器、例えば長中距離弾道弾(ICBM、IRBM)のようなものを保有しようとするものではなく、また、核武装はしないとの従来からの政策を変更しようとするものでもない。」こういうぐあいになっているのですね。  松本善明議員の質問主意書に対する回答というのは、私は手元に持っておりますけれども、この場合と、本年二月十四日の見解で異なる点が二つあります。  それはどこかというと、まず言葉の上で、松本善明氏の質問主意書に対しては「性能上相手国の国土の潰滅的破壊のためにのみ用いられる兵器の保持は、憲法上許されない」こうなっておりますが、今回のはそれにまた限定をつけて「専ら他国の国土の潰滅的破壊のためにのみ用いられる兵器」というように、さらに絶対に持てない兵器という数を少なくしているわけですね。その点がまず文言の上で違う。  それから、昭和四十四年に松本善明氏が政府に対して質問した場合には、核兵器のことについては一言半句も触れていなかったわけであります。ところが今回は明白に核兵器が持てるのだということを前提にして、だからこそ括弧の中に「(例えばICBM、長距離戦略爆撃機等)」こうなっているわけで、その二つの点が重要な点で違うと思うのですね。そういう点はお認めになりますか。
  167. 真田秀夫

    ○真田政府委員 問題は憲法九条第二項の解釈に関連するわけでございますが、九条二項の解釈につきましては、先ほど来繰り返し総理がおっしゃっていますように、わが国の自衛のために必要な最小限度の範囲内の兵器は憲法はその保持を禁止していない、逆に言えば、その限度を超えるものは憲法九条第二項が保持についての禁止をしている、こういうことになるわけでございまして、その禁止される兵器の説明として、従来は、そのときどきの質疑応答の言葉の端々によりまして、攻撃的兵器とか脅威を与える兵器とか、いろいろな言葉を使っているわけなんですが、今回の五十二年の防衛白書に出ている言葉だとか、あるいは四十四年の答弁書に出ている言葉というのは、それは九条二項によって禁止される兵器のうちの典型的なものだという例示として書いてあるわけでございまして、それに当たらないものは全部持てるのだという趣旨で書いているものではございませんので、多少その表現の違いがございましても、九条第二項の解釈が変わるというようなものではございません。
  168. 正森成二

    ○正森委員 せっかく総理に出てきていただいておりますので、なるべく総理にお答え願いたいと思いますが、二月二十二日に土井たか子委員質問に対して伊藤防衛局長は「純粋に防御的な核兵器というものが仮に存在するとするならば、それは必要最小限の自衛力の範囲に入ると解釈されるという御答弁を」云々と、したことがあるというように答えておるのですね。そして「戦術核兵器の中にもきわめて大きな破壊力を持った戦術核兵器があるわけでございます。その中でもさらに純粋な防御的な兵器であれば憲法の否定するものではない」こう答えているのです。そうしてその例として、久保防衛局長の時代だったか、戦術核というものが仮にあるとすれば、それはこの中に入るというように言うておるわけですね。  そこで私は総理に質問したいと思うのですが、戦術核を典型としている純粋に防御的な核兵器というのは自衛権の範囲に入る、こう言っているのです。それからもう一方では、今度の政府の見解でも「性能上専ら他国の国土の潰滅的破壊のためにのみ用いられる兵器」これは絶対に持てない、こう言っているのです。そうすると、絶対に持てないものと、これはあるとすれば持てるというものの間に中間的なものがあるのですね。この中間的なものというのが、結局政府の言う軍事力の質が変わったとか、あるいは国際情勢や政治的構造が変わったという場合にはこれは広がる範囲内のものである、こういうことを言っておられるわけですか。そうでしょう、そうしか読み取れないから。総理答えてください。
  169. 伊藤圭一

    伊藤(圭)政府委員 まず私が御答弁申し上げました内容でございますが、いわゆる核兵器というものを持つ意思というものは全くございませんので、核兵器そのものを詳しく調査しているわけではございませんけれども、いわゆる広島に落ちましたような核兵器、こういったものもあの当時ではまさに戦略核兵器でございましたけれども、いわゆるキロトン級の爆発力を持ったものというものは、いま大きく分けます範疇では、戦術核兵器の中に入るものもあるわけでございます。したがいまして、そういったものであっても、もっぱら攻撃的あるいは脅威を与えるような攻撃的な兵器というものは持てないだろうというふうに御答弁申し上げたわけでございまして、その中で、先ほど法制長官が御答弁申し上げましたように、典型的なものとして、いわゆる大陸間弾道弾あるいは長距離爆撃機によって攻撃するような戦略的兵器というものは持てないというふうに申し上げたわけでございます。
  170. 福田赳夫

    福田内閣総理大臣 御指摘のように、現実の問題になりますと、判定がなかなかむずかしいと思いますが、私が申し上げているのは、憲法論を申し上げているのです。憲法の解釈論を。解釈論から言いますれば、もっぱら自衛のためのものである、そのための必要最小限度のものであるということになりますれば、核兵器であろうが何であろうが、これは区別はないのだ、こういうことを申し上げておるわけなんです。実際上、それをどういうふうに当てはめるかとなると、これは私どもの頭ではなかなか判別困難な問題が多うございますが、憲法解釈論としてはきわめて明快に申し上げることができるつもりでございます。
  171. 正森成二

    ○正森委員 総理の憲法解釈上のその言葉なら、何もここへわざわざおいでいただかなくてもわかっているわけです。それに対して、二月十四日にわざわざ政府見解をお出しになったのは、「自衛のための必要最小限度を超えるものである。」では抽象的過ぎてわからないから、どういうものなのだということで、「性能上専ら他国の国土の潰滅的破壊のためにのみ用いられる兵器」これはいかなる場合についても持てない、こう言っておられる。それから政府委員は、核地雷というようなものがあれば純粋に防衛的なものは持てる。持てるという方向に入れているのです。しかしながら、政府は一方では軍事技術上の発展やらあるいは国際情勢やら、政治構造上等の変化によってこれは変わってくると言うているわけですから、そうすると、一方は絶対に持てないものがあり、一方はいまでも持てるものがあるとすれば、その中間にあるもの、つまり、戦術核兵器で用いようによっては相手を爆撃することもできるし、あるいは国内で防御的に使うこともできるというものは、情勢の変化によっては——いいですか、総理。政策上じゃありませんよ、政策上は非核三原則があるから。憲法上は持てるというのが政府の見解なんですねと、こう聞いているのです。
  172. 福田赳夫

    福田内閣総理大臣 自衛のため、必要最小限のものは、核でありましてもこれを持ち得る、非常に明快な解釈じゃないか、こういうふうに思うのです。ただ、それをどういうふうに適用するかとなると、これはなかなかそう簡単な問題じゃありませんけれども、憲法解釈論といたしましては、私は非常に明快だと思うのです。
  173. 正森成二

    ○正森委員 私がこれほど委曲を尽くして聞いているのに、ちっとも明快ではないと思います。しかし、そういう答弁ですから……。  私は最後にもう一点だけ伺いたいと思います。  国際情勢の変化というものによって変わり得ると言われました、また九十八条二項との関係では、核拡散防止条約というのは、これは脱退する条項があるから、これを脱退した場合には、残るのは九条二項だけであるということも別の機会にお話しになりました。そこで私は伺いたいと思うのですが、核拡散防止条約の十条にある「この条約の対象である事項に関連する異常な事態が自国の至高の利益を危うくしていると認める場合には、その主権を行使してこの条約から脱退する権利を有する。」こうなっておりますが、それはどういう場合を想定しておられるのでございましょうか。それだけ伺って私の質問を終わります。
  174. 大森誠一

    ○大森政府委員 わが国といたしましては、ただいま先生指摘の条文というものを適用して脱退するというようなそういう意図は持っていないわけでございます。
  175. 正森成二

    ○正森委員 何を言うておるんですか。別の予算委員会の中でも核拡散防止条約はあるけれども、それは、九十八条二項というのは、むずかしいラテン語か何かを法制長官が使って、具体的な内容はないんだと、条約がなくなればこの問題は悪法違反はない、こう言うて、あたかも核拡散防止条約はいつでも脱退できるようなことを言うから、国民としては心配だから、それはどういう場合だ、こう聞いているのですよ。なお、いま脱退する気持ちがないという、そんなことはわかり切っている。予算委員会でそんな発言がなければここで聞きませんよ。そんなことじゃだめです。どういう場合を想定しているのです。
  176. 福田赳夫

    福田内閣総理大臣 予算委員会の話、私よく覚えておりませんけれども、恐らく憲法第九十八条はこれは条約の遵守義務を命じたものでありまして、したがって遵守すべき条約がなくなってしまうとかあるいは日本がそれから脱退するとかそういうことになれば自然その問題は消えてしまう、こういうことを言っているのじゃないか、そのように理解します。
  177. 正森成二

    ○正森委員 あたりまえの話です。ですからそれはどういう場合を第十条の至高の利益が危うくされる場合と考えているのか、これは国民として心配だから聞いているのです。
  178. 福田赳夫

    福田内閣総理大臣 私もその具体的なケース、どういうふうになるかということを勉強しておりませんから、政府委員の方からお答え申し上げます。
  179. 真田秀夫

    ○真田政府委員 私もいまお取り上げになった総理の答弁の際にはそばで聞いておったわけなんですが、あのときの総理のお言葉は、結局九十八条二項というものが憲法のその他の、私はそれを実体規定と呼んだわけなんですが、それとは性格が違うのだという性格論を説明された際に、たまたまそういう仮定の問題として、脱退すれば遵守義務はなくなるというような、九十八条二項というのはそういう条文でございますよ。で、九条とか、三十二条とかいろいろな実体規定とは性格が違うのだということを御説明になっただけの問題であるというふうに私は理解しております。
  180. 正森成二

    ○正森委員 いまの答弁には全く納得できませんが、委員長とのお約束の時間がございますから、これで終わらせていただきます。
  181. 永田亮一

  182. 伊藤公介

    伊藤(公)委員 私は、政府が自衛隊の核武装ということが合憲だ、憲法上は核をも持てるのだという統一見解を明らかにされたということは、国民にとっても非常に大きな関心事だと思います。  憲法の解釈には、持てるという解釈をされる方々もいらっしゃるでしょうし、わが国の今日の平和憲法が制定をされたその背景をわれわれがいま考えれば、憲法の解釈上も、私どもは核を持ってはならないのだという強い意思があることも忘れてはならないと思います。しかし、わが党に与えられたきょうの総理質問は十分間であります。私はこうした国運を左右するようなきわめて重要な国民の関心事を、外務委員会のわずか十分間の中で片づけることはきわめて遺憾であります。私どもはかねてから、防衛委員会の設置等によって十分な国民の理解を求めた審議が必要だと主張してまいりました。私は改めて総理に、防衛委員会の設置によって、こうした重要な問題を真正面から政府自身も取り上げていくということを提案したいと思います。  あわせてもう一点、私はきわめて具体的な点で一点だけお尋ねをしたいのでありますが、今日核を持った国がございます。その核保有国が持っている核は、自衛のための最小限度の核であるでしょうか、総理はどのような認識を持っておられるか、御見解を承りたいと思います。
  183. 福田赳夫

    福田内閣総理大臣 防衛問題、安全保障の問題、これは非常に重要な問題でありますので、この問題の論議を国会においても活発にやるべきだと思うのです。そういう意味におきまして、国会に防衛、安全保障、そういう問題を中心とする委員会が設置されるということは私は好ましいことである、こういうふうに思いますので、ひとつ国会においてもこの問題をよく御論議を願いたい、このように存ずる次第でございます。  それから、いま核兵器保有国、これは必要最小限の兵備ということで観念できる国があるか、こういうお話でございますが、精細にそういう国々について私が調べたわけじゃありませんけれども、常識的、達観的にいわゆる大国、核大国をずっと見てみまして、必要最小限の自衛のための核装備だ、こういうように受け取られない、もっと広い意味の兵備の範疇に属するものであるというような感じがいたします。
  184. 伊藤公介

    伊藤(公)委員 防衛論議は改めてやらしていただきたいと思いますが、一国の総理がその国のすべての国民の安全と平和を維持していくというきわめて重要な責任ある立場にいながら、今日の世界状況の中で核の問題あるいは核保有国の実態というものをよく認識をされていないという総理の御答弁は、最高責任者としてきわめて私どもは理解ができない。今日の国際状況の中で、核の問題を度外視して世界の平和はないわけですから、今日の緊張緩和の中で核の問題は、特にわが国の国民の立場から言えばきわめて重大な問題だ、私どもはそう受けとめております。差し迫った日中問題がございますので、私はこれ以上防衛の問題について議論をしようと思いませんけれども、ぜひそうした認識でわが国の憲法と核の問題については政府でしっかりしたお考えを持って新しい政治に立ち向かっていただきたいと思います。  日中問題について何点か御質問をしたいと思いますけれども、総理は昨二十三日、大平幹事長と会談をされて、日中平和友好条約の交渉の再開に踏み切るという決断をされたと伝えられております。あわせて、交渉再開について党内の了承を取りつけるための党内の調整を要請したと伝えられているわけでありますけれども、先ほどからの総理のお話を伺っておりますと、またきょうになって明快な御答弁がない。条約交渉の再開については決断をされたのかどうかという点をまずお尋ねいたします。
  185. 福田赳夫

    福田内閣総理大臣 最終的な決断はいたしておりません。自由民主党との調整、その他のいろいろな問題があります。そういう経緯を踏まえまして最終的な決断をする、こういうことで、しかも私が最終的な決断をいたしましてもそれで事が決まったわけじゃないのです。これは交渉の相手があるわけですから、相手とどういうふうな手順、段取りで交渉しましょうかという相談をしなければならぬ、そこで本当の段取り、手順というものが決まってくる、こういうことでございます。
  186. 伊藤公介

    伊藤(公)委員 段取り、手順ということでございますが、その総理の言われる段取り、手順というのは、どういう段取り、手順でございますか。たとえば佐藤・韓念竜氏の会談をさらに指示をされたのか、あるいはされるおつもりなのか。その手順、段取りの内容をできる範囲内でお聞かせいただきたいと思います。
  187. 福田赳夫

    福田内閣総理大臣 私が手順、段取りと申しておりますのは、交渉でありますからだれとだれに交渉させるとか、それから交渉の場所を一体どうするとか、また交渉の日取りは一体どういうふうに考えるとか、そういうようなことなんです。そういうようなことをやはり慎重にお互いに打ち合わせておいた方が、この条約交渉が円滑に進む上において妥当であろう、こういうふうに考えまして、その手順、段取り、こういう問題につきましてもずいぶん慎重に構えておる、こういうことであります。
  188. 伊藤公介

    伊藤(公)委員 佐藤・韓念竜の会談についてはいかがですか。
  189. 福田赳夫

    福田内閣総理大臣 佐藤・韓念竜会談というのは、日本政府が中国政府に対しまして、こういうふうな手順、段取りにしようじゃないかという腹案がまとまりますれば、それをひっ提げまして佐藤・韓念竜会談ということになる、こういうふうに思いますけれども、それを一体どういうタイミングで開くかということはまだ決定いたしておりませんです。
  190. 伊藤公介

    伊藤(公)委員 昨日われわれがいろいろお聞きした状況から比べると、きょうの総理のお話を伺っている範囲内では、どうも決断がはっきり出てこない、むしろいささか後退をしたという印象を受けざるを得ません。  この条約交渉の最大の懸案になっている覇権条項について、先日中国側は公明党の訪中団に対してはっきりした見解を示されました。その第二項で、「中日両国が平和友好関係を樹立し、発展させることは第三国に対するものではない。両国はいずれも覇権を求めず、いかなる国及び国家集団が覇権を求めることに反対する。覇権を求めるものには、それに反対する。一方で覇権反対を言いながら、もう一方では「だれに対するものではない」というのでは、ロジック(論理)に合わない。事実上、覇権主義は中国を脅かしているとともに、日本をも脅かしている。」こういう見解が明らかにされているわけでございます。  この中国側の見解に対して、わが国立場をどのように総理はお考えになっているのでしょうか。これを認められるのでしょうか、あるいは認めないという立場なんでしょうか。
  191. 福田赳夫

    福田内閣総理大臣 覇権条項云々ということになりますと、まさに条約交渉の中身の、しかも非常にデリケートな点に関するわけなんです。ですから、いろいろいまお尋ねがありましたけれども、私からこの席でお答えすることは妥当ではないということでお許しを願いたいと思います。
  192. 伊藤公介

    伊藤(公)委員 覇権反対は本来すべての国を対象とすべきだと私は思うのです。しかし条約上、この条約は第三国に対するものではない、こう書きますと、中国側の主張するように、もちろんこれは論理上合わないわけであります。私はむしろ総理に提案をさしていただきたいのでありますけれども、反覇権条項はすべての国に対するものだ、すべてのものに対してだと書いた方がむしろ合っているんではないかと思うのですけれども、総理の御見解いかがでしょうか。
  193. 福田赳夫

    福田内閣総理大臣 御所見として承っておきます。ありがとうございました。
  194. 伊藤公介

    伊藤(公)委員 中国側からは、先ほど申し上げたとおり、すでに覇権条項に関してはっきりした回答が出されてきているわけであります。それでは、この回答が出るまで、わが国は覇権条項に対してどのような字句でこの交渉に当たるお考えで進めてこられたのでしょうか。
  195. 福田赳夫

    福田内閣総理大臣 これは非常に機微な条約交渉の内容に関するので、くどいようでございますけれども、この場でこれを申し上げることはひとつ控えさせていただきたい、このように存じます。
  196. 伊藤公介

    伊藤(公)委員 時期的に大事な時期だということは私もよくわかりますけれども、すでに中国側ははっきりした姿勢を示してきているのです。回答を出してきているわけですから、これだけ多くの国民の監視の中で、わが国立場というものははっきり総理の口から示す必要があると私は思う。中国の方ではこういう答えで出てきておるのに、わが国の姿勢が少しも国民の前に明らかにされないで、いつまでも段取りだ、段取りだと言って延ばされておる。総理御自身はこれに対してどのようにお考えになっているのですか。はっきりお答えできませんか。
  197. 福田赳夫

    福田内閣総理大臣 いずれはっきり申し上げられる時期があると思いますけれども、いま伊藤さんもおっしゃるように、非常にデリケートな時期なんですよ。しかも私の一言一行、これはずいぶん注目されておるのです。そしてしかも、短い言葉でございまするものですから、その解釈をめぐっていろいろな解釈まで出てくる。それは条約交渉の前途が円滑にいく、そのためにこれがいいことであるかというと、私は決していいことではないと思うんですよ。そういうようなことで、いまこの段階で条約の内容についての私の見解を述べることはひとつお許しを願いたい、このように存じます。
  198. 伊藤公介

    伊藤(公)委員 時間が参りましたので、終わります。
  199. 永田亮一

    永田委員長 福田内閣総理大臣に対する質疑はこれにて終了いたしました。      ————◇—————
  200. 永田亮一

    永田委員長 次に、千九百七十年六月十九日にワシントンで作成された特許協力条約締結について承認を求めるの件を議題といたします。  質疑を続行いたします。土井たか子君。
  201. 土井たか子

    ○土井委員 それでは、ただいまより特許協力条約について少し基本的に、いままで御質問の中でまだ具体的な御答弁をいただいていない点について申し上げて、各条文についてさらに質問を進めてみたいと思います。  まず、発明の法的保護ということを完全にする、このために審査主義ということが問題になってくるわけでありますが、審査官の職務遂行上についての独立性ということは認められるのですか認められないのですか。また、認められるとするならばどういうふうに認められているのですか。この点はいかがでございますか。
  202. 熊谷善二

    熊谷政府委員 審査官によります審査でございますが、現行の特許法の四十七条に「特許庁長官は、審査官特許出願及び特許異議の申立を審査させなければならない。」このようになっております。私ども審査官の審査の内容につきまして、たとえば長官の指示あるいは裁量、こういうふうなことは、たてまえとして、この四十七条によりまして審査官判断に任せておる、こういうふうに御理解賜りたいと思います。
  203. 土井たか子

    ○土井委員 そうすると、審査官というのは出願事件について審査をして、許否の査定をする権限を持つ単独の審査機関だというふうに理解をしていいわけでございますか。いかがなんですか。
  204. 熊谷善二

    熊谷政府委員 いわゆる単独の機関というのが正しいかどうかわかりませんが、少なくとも特許について審査し判断を行って最終決定を行う対外的な責任は特許庁長官が担っておるわけでございますが、審査の内容につきましては、ただいまの条項によりまして審査官にこれをゆだねておるということでございます。審査について独立した判断を持って処理をする、こういう権能を与えておるわけでございます。
  205. 土井たか子

    ○土井委員 条約との関連性でいまお答えになっておるわけですが、本来審査官というのは、先ほどの質問を申し上げておるのは独立性が確保されているかどうかということをお尋ね申し上げているわけなんです。  そこで長官、それじゃついでまでに申し上げますが、昭和五十一年八月三十一日に判決の出ました事件において東京地裁で特許庁長官が陳述をされておりますが、その陳述内容にこういう部分があるのをひとつ御確認いただけるかどうかということに質問を切りかえましょう。     〔委員長退席、大坪委員長代理着席〕 それは、「審査官出願事件について審査をし、許否の査定をする権限を持つ単独性の審理機関であり、審査官のした行為につきその主体を特許庁長官であるとすることはできない。」こうなっておるわけなんですが、この辺は確認をさせていただいてよろしゅうございますか。
  206. 熊谷善二

    熊谷政府委員 私どもそのように考えております。
  207. 土井たか子

    ○土井委員 そこで次に、この条約による出願の審査においても同じように考えてよろしゅうございますか。
  208. 熊谷善二

    熊谷政府委員 基本的には同じ考えでございます。  やや補足して申し上げますと、新しく国際調査機関になった場合、あるいは予備審査機関になった場合の審査は審査官に行わせるということを、私ども国内法でそういうことで御審議を賜るようにいたしております。それから国内に入ってまいりました外国語の出願につきましては、これは国内法に従いました四十七条の規定によりまして、独立性のもとで仕事を行う、こういうふうに処理をいたす考えでございます。
  209. 土井たか子

    ○土井委員 したがって、それは国内法上の問題になってまいりますから、当委員会における審議は、さしずめただいま条約に対しての審議をしているわけでありまして、後日、商工委員会での審議の途次ただいまの問題は具体的になってこようかと思いますが、再度その辺は私はだめ押しをさせていただいて、さらに次にいきたいと思います。  それは、出願に関する審査の本質から考えまして、審査官特許庁長官の補助機関というふうに理解しては間違いである、特許庁長官の補助機関というふうに理解することはできない、審査官を独立の地位にあるというふうに理解しなければならない、こういうことに相なると私は思うのでありますが、この点をひとつ確認させてくださいませんか。
  210. 熊谷善二

    熊谷政府委員 国内法の方で、現在商工委員会に付託されております案の第八条というところで、国際調査報告につきまして、ただいま申しましたように特許庁長官審査官国際調査報告を作成させなければならない、こういうことになっております。審査官調査報告書を記述いたしまして、それに署名をして、それを国際事務局の方に送付する、こういうことになるわけでございます。そういう意味特許庁長官の補助機関という言葉には当たらないというふうに思います。審査の内容については審査官判断にゆだねている、こういうふうに御理解賜りたいと思います。
  211. 土井たか子

    ○土井委員 そうすると、くどいようですが、結局はその独立性は確保されているということでございますね。
  212. 熊谷善二

    熊谷政府委員 そのとおりでございます。
  213. 土井たか子

    ○土井委員 そこで、条約出願審査体制というのはわが国の場合に大丈夫であるかどうかということが大変に問題になってまいります。これについては高沢委員の方からも、少し具体的な数字も挙げての御質問が午前中あったようではありますけれども、具体的には四十七年ごろだったのでございましょうか、特許庁の方ではこの協力条約の小委員会の方で、この条約加盟する場合には少なくとも二百名くらいの増員が必要ではないかというふうな向きのことが試算されていたやに私たちは聞き知っているわけでありますけれども、片や、この特許協力協定専門委員会審議経過概要というのを拝見いたしますと、その中では、「日本では年々約十万件の特許出願があり、その四分の一は外国、主としてアメリカからの出願である。現在八百人の審査官がおるが、勿論全員が英語は読めるし、二百人以上がドイツ語とフランス語を読むことができる。審査官の人数は、出願増加に対応して年々急速に増加しつつある。従って、日本は、国際サーチを要する件数に比較して、十分準備ができていると信ずる。」という報告内容があるわけであります。しかし、片や四十七年ごろに二百人くらいの増員が必要だというふうに試算をされた中身はそのままたな上げみたいなかっこうになっているわけでもありますので、大変これが気がかりなんです。大丈夫なんですか、どうなんですか。実情について少し御説明を賜りたいと思うのです。
  214. 熊谷善二

    熊谷政府委員 先生指摘の部内の委員会で、いろいろな所要人員の算定をいたしたことがございます。そのときに二百名といったような数字があった時期もございますが、これは作業過程の中の資料でございます。その後四十七年から今日まで毎年かなりの増員をいたしておりまして、私のただいまの記憶でございますが、四十七年以降すでに百数十名程度の増になっていると思います。現段階で私の判断といたしまして、この特許庁審査官の実態を踏まえまして、今度のPCTの受け入れは十分可能であるというふうに判断をいたしておるわけでございます。  数字をやや申し上げますれば、特許実用新案につきましての処理件数は、年ベースで申しまして約二十万件の処理をいたしておるわけでございます。ところで、PCT出願は五十三年度、私ども予定しておりますのは年半ばからではございますが、大体千五百件程度出願、こういうふうに考えておるわけでございます。今後漸増するといたしましても、万を大幅に超えることにはならないと考えております。この程度のことは、全体の処理を大幅におくらせるといったようなことなしに受けとめてまいることができる、かように考えておる次第でございます。
  215. 土井たか子

    ○土井委員 その辺はひとつ無理のないようなやり方で十分に、条約加盟した以上は日本として手落ちのない行き方、しかも庁内でいろいろなぎくしゃくした無理が起こらないような行き方というのをお考えいただかなければならないと思います。  追って条文について、前後する部分も出てくるかもしれませんが、さらに質問を続けます。条約十七条の(3)の(a)という個所を見ますと、その条文の個所から考えられますことは、この国際調査機関発明単一性の要件について判断するということがここに規定されていることになるのでございますか、どうなんですか。
  216. 熊谷善二

    熊谷政府委員 そのとおりでございます。
  217. 土井たか子

    ○土井委員 単一性の要件判断が具体的にできるのは、先ほど来お尋ねをしている審査官ではないかと思われるのですが、どうでございますか。
  218. 熊谷善二

    熊谷政府委員 御指摘のとおりでございます。
  219. 土井たか子

    ○土井委員 といたしますと、条約のずいぶん終わりの方になってまいりますが、ずっと終わりの方の、これは非常にむずかしい条約で、見るのにもずいぶん苦労するわけでありますが、第四十規則四十の二の(c)、お手元のところではもうおわかりいただいておりますでしょうか。この外務省から配られている日本語訳では、二百四十ページのところでございますが、この条約の第四十規則、四十の二の(c)の「三人の合議体」とは、具体的に何者を指すわけでありますか。これは審判官ですか、審査官ですか。だれを指すわけでありますか。
  220. 熊谷善二

    熊谷政府委員 審査官ではなく、審判官を考えております。
  221. 土井たか子

    ○土井委員 そうすると、ここでは審査官ではなく審判官でありますね。また、この四十の二の(c)に記載されております「上級機関」というのは一体何を指しているわけでありますか。
  222. 熊谷善二

    熊谷政府委員 条約で想定しておりますのは、通常裁判所でございますが、日本の場合にはこの上級機関は想定いたしておりません。
  223. 土井たか子

    ○土井委員 上級機関を想定していない国は、日本以外にどこがございますか。
  224. 熊谷善二

    熊谷政府委員 各国制度の詳細につきましては、現段階ではまだ必ずしも十分つかまえておりません。
  225. 土井たか子

    ○土井委員 しかし、この条約締結に当たっていろいろ準備は重ねてこられているはずでありますし、審議会にも属されて、これに対しての検討を進められているはずでありますから、この辺は海外の事情についても御検討の上で、わが国としてはどういう措置を講ずることが適切であるかというお考えもあっての上のことだと思います。したがって、わが国でこの上級機関というものは持たない、とらないということになれば、同様の措置を考えておる国は、外国にどこにあるかということを、これは当然だれでも考えるところだと思うのですが、この辺はお調べはないのですか。
  226. 熊谷善二

    熊谷政府委員 いま御指摘の条項にもございますように、異議につきましては「国際調査機関内の三人の合議体その他の特別の機関又は権限のある上級機関が審理する」ということになっておるわけでありまして、この条約全体を通じてのことでございますが、各国国内的ないろいろなプラクティスがございます。それに合わせてどれを選択するかは各国の自由という考え方がかなり取り入れられておるわけでございまして、つまり各国実情を尊重するというような規定になっておるわけでございます。日本の場合には、従来こういった審査官の査定に対します異議、その他の措置につきましては、審判官が三人の合議体で従来処理をしているのが例でございまして、それで十分足りると考えておるわけでございます。この場合「又は」云々のことにつきましては、それぞれ各国判断すべき問題と考えております。
  227. 土井たか子

    ○土井委員 そういう立場はわかるわけでありますが、しかし、この協力条約加盟をしているそれぞれの国が寄って協力体制というものを形成していくわけでありますから、したがいまして、日本以外にそういう事情の国はどういう国があるかということは、やはりあらまし知っておく必要があるのじゃないか。これは、知らないより知っておいた方がいいですよ。  それで、この条約十一条の(3)というところを見ますと、内外国出願効果の同一ということを規定している条文でございます。この十一条の(3)からいたしまして、審査においても内外国同一手続をとるということになるわけでありますか。どうなんでございますか。
  228. 熊谷善二

    熊谷政府委員 これは、正規の国内出願効果国際出願について与えるための出願日の規定でございます。実際の審査は、外国からの国際出願の場合は翻訳文が二十カ月内に提出されますので、その後において審査が行われるということになるわけでございます。それまでは審査はできないことになっております。
  229. 土井たか子

    ○土井委員 いまの御答弁からいたしますと、同一手続をとらない場合もあるわけですね。
  230. 熊谷善二

    熊谷政府委員 国際取り決めでございますので、国際段階における手続という点は、これは従来なかったプラクティスでございます。条約上の規定に従ってとるわけでございますが、たとえば指定国段階に入りました場合、あるいは選択国段階に入って国内に入った段階につきましては、それぞれの国内法で処理するわけでございます。私どもは、この国際出願制度国内制度につなぐための必要な法的措置を、別途国内法案という形で御審議を賜っておるわけでございます。国内に入った段階は、基本的には従来のプラクティスと同じである。ただ、条約上との関係でつなぎをどうするかという点については新しい措置を取り入れているわけでございます。
  231. 土井たか子

    ○土井委員 そうすると、ちょっとお答えの内容からいたしますとなおかつ釈然としない点が少し残るわけですが、端的に申しまして、これは条文からすれば、条約の二十七条の(1)にいう、いまおっしゃった問題は、「国内法令は、国際出願が、その形式又は内容について、この条約及び規則に定める要件と異なる要件又はこれに追加する要件を満たすことを要求してはならない。」と書いてございます。これに違反しないような手続面での措置が講じられるという、こういうことの確信はおありになるわけでありますね。いかがでありますか、その点。
  232. 熊谷善二

    熊谷政府委員 条約規定に違反をしていないと確信いたしております。
  233. 土井たか子

    ○土井委員 そうすると、先ほどの御答弁では、内外国出願効果同一というものを規定している十一条の(3)というこの条文から考えまして、したがって、審査においても内外国同一手続をとられるべきはずであると一応だれでもが考えるですね、この手順の点について。条約二十七条の(1)に違反しないという、このことを前提として考えられるというふうに認識をさせていただいていてようございますか。
  234. 熊谷善二

    熊谷政府委員 ちょっと先生の御指摘の点が理解が十分じゃないのかもしれませんが、私の理解としましては、この二十七条の「国内要件」というのは、国内法令に従来慰めております記載の内容なり方法なり、こういったものについての実体的な内容についての考えを示しておるものでございまして、他方、十一条の(3)の問題は、これは国際出願日についての規定だけでございます。ただ、このことから、内外出願の同一というようなことにつきまして、先生の御指摘の点がどのような点に御関心をお持ちになっておりますか、もう少しお示しいただければ具体的にお答えを申し上げたいと思います。
  235. 土井たか子

    ○土井委員 これは、二十七条にいうところの、この(1)の部分なんですが、内容をよく見ますと、「国内法令は、国際出願が、その形式又は内容について、この条約及び規則に定める要件と異なる要件又はこれに追加する要件を満たすことを要求してはならない。」こうなっておるわけでありますから、国内法令の中でこの国際出願ということを考えた場合に、たとえば先ほど挙げた十一条の(3)の国際出願日というものについても、これはやはり一つ要件でございますから、その要件についてこれに追加する要件を満たすことを要求するということは認められないという条文だというふうに、読んで字のごとしとわれわれは考えます。したがいまして、そういう点からすると、この内外国出願効果というものを同一に規定している十一条の(3)項の趣旨からすれば、この二十七条の(1)項に従って、国内法令はこの十一条の(3)項と違った法令を用意することはできないというふうに理解してようございますかという質問にもなるわけです。いかがでございますか。
  236. 熊谷善二

    熊谷政府委員 二十七条の形式または内容という点でございますが、これは条約の第三条、つまり国際出願に関する点、第四条、願書に関する問題、第五条、明細書、第六条、請求の範囲、第七条、図面、第八条、優先権の主張といったものがその内容でございまして、片方の十一条の(3)項は、国際出願日に関することの取り決めだけでございます。もちろん、この形式または内容ということに国際出願日のことも含まれているわけでございまして、それを含めましての規定として二十七条を理解いたしております。
  237. 土井たか子

    ○土井委員 そうすると、その御答弁の結論とすれば、いまのこの質問に従って言うと、二十七条の(1)項に矛盾するようなあり方で十一条の(3)項というものは考えられない、こういうことになるわけですね。
  238. 熊谷善二

    熊谷政府委員 基本的にはそのとおりだと考えます。
  239. 土井たか子

    ○土井委員 基本的にはとおっしゃるから、例外があるように大変に気にかかるわけでありますが、もし、基本的とおっしゃって、特に例外をいま意識しておっしゃっているのならば、その点についての御説明をさらにいただけたらと思います。
  240. 熊谷善二

    熊谷政府委員 いま突然のお話でございますので、具体的な例外事項については思い当たりません。
  241. 土井たか子

    ○土井委員 それで少し先に歩を進めまして、これから条文を追ってまいります。  二十七条の(8)というところを見ますと、この(8)のところでは、締約国は自国の国家的安全を保持するために必要と考える措置を自由にとることができるというふうに規定がされてあります。  先般、実は私、質問主意書を出させていただきました。その質問主意書の中で、ただいま私が読みました条約第二十七条の(8)という条文について、「「自国の国家的安全を保持するために必要と考える措置」を締約国が自由にとることができるのであるが、我が国において右必要と考える措置とはどのようなものであるか。」という質問をさせていただいたわけであります。そうしましたら、それについて返ってきた御答弁は、「御質問の措置は、我が国の工業所有権法との関係においては予定されていない。」こういう一行の御答弁でございました。ところが特許法の二十六条というところを見ますと、「特許に関し条約に別段の定があるときは、その規定による。」という規定になっております。これは御承知のとおりだと思うのです。  そこで、その国家的安全ということを保持するためにある条約があるかどうかという問題を少しひもといてみました。大変古いのですが、日米相互防衛援助協定という、これは広い意味での条約がございます。日米相互防衛援助協定というのは外務大臣、これはわが国の国家的安全を保持するためにある協定だろうと私は思うわけでありますが、いかがでありますか。
  242. 園田直

    ○園田国務大臣 そのとおりであると解釈をいたします。
  243. 土井たか子

    ○土井委員 いま外務大臣の御答弁のとおりに、保持するためにあるということが確認をされております。といたしますと、この特許協力条約の二十七条の(8)の、国家的安全を保持するために必要と考える措置の関係は、この日米相互防衛援助協定との関係ではどのように理解をされていいわけでございますか。というのは、わざわざ日米相互防衛援助協定というのをアトランダムに取り出したわけではないので、その四条を見ますと、両政府というのは日本アメリカなんですが、両政府は、工業所有権の交換の方法、条件規定する取り決めを作成し、その交換を促進し、私人の利益保護と秘密の保持を図る、こういうことが規定されているわけなんですよ。したがいまして、私はこれとの関係が出てこようと思うわけでありますが、この特許協力条約二十七条(8)と、いまの日米相互防衛援助協定四条との関係というのは、どのように理解をされてしかるべきなんでございますか。
  244. 小林俊二

    ○小林説明員 ただいまの条文に基づく措置といたしまして、わが国と米国との間で、防衛目的のためにする特許権及び技術上の知識の交流を容易にするための日本国政府アメリカ合衆国政府との間の協定というものが締結されております。しかしながら、この協定は事実上、いまだ運用の段階に至っておりませんので、わが国といたしましては現在、この協定に基づく措置を実施しておらないわけでございます。したがいまして、先生ただいま御指摘のような規定は、実際上存するわけでございますけれども、事実上今回の協力条約に基づく、本条文に基づいての特別な措置というものは、日米の間を含めまして予定されていないというふうにお答え申し上げることができるかと存じます。
  245. 土井たか子

    ○土井委員 そうすると、もう一度繰り返しになりますが、気にかかるのは特許法の第二十六条なんです。特許法の第二十六条では「特許に関し条約に別段の定があるときは、その規定による。」こうなっているのですが、この二十六条に規定する条約ということを考えてまいりますと、特許協力条約というのは言うまでもないわけですね。と同時に、この日米相互防衛援助協定というのは含まれるのですか、含まれないのですか、いかがになるわけでございますか。
  246. 小林俊二

    ○小林説明員 法的には含まれると存じます。
  247. 土井たか子

    ○土井委員 法的には含まれる、法理論的には含まれるということなんですね。実際、法的には含まれるのだけれども、それではなぜこれが実施されていないのか、その理由は那辺にあるのでございますか。
  248. 小林俊二

    ○小林説明員 これは実際上の必要を予定して作成された条約であると思いますけれども、事実上その必要が今日まで、実際業務の面において生じなかったということであると推測いたします。
  249. 土井たか子

    ○土井委員 そうすると、これは実際問題として実施されてないという御答弁でございますから、この日米相互防衛援助協定の四条に言う交換の方法に関する取り決めも現にない、秘密の保持を図るための措置、それは法律を立法するという措置も含めてそういう措置はない、このように理解をしていいわけでございますか。
  250. 小林俊二

    ○小林説明員 先ほど御指摘ございました第四条に基づく取り決めは、私がその表題を読み上げました先ほどの協定でございます。そこまでは措置がとられたわけでございますけれども、それ以上の実際上の措置はとられていない。したがってそのフレームワークがつくられたというところでとまっておるということでございます。
  251. 土井たか子

    ○土井委員 そのフレームワークとおっしゃるのは、どうもよく私はわからないのですが、その四条に言うところの交換の方法、これは条件というふうに申し上げていいと思うのですが、それに関する取り決めは現にございませんね。
  252. 小林俊二

    ○小林説明員 先ほど読み上げました、防衛目的のためにする特許権及び技術上の知識の交流を容易にするための日本国政府アメリカ合衆国政府との間の協定、この長い名前の協定でございますが、これが第四条に言うところの取り決めの一つと言ってよろしいかと思います。ただ、それが実際上運用の段階に達していないということを申し上げたわけでございます。
  253. 土井たか子

    ○土井委員 運用の段階に立ち至らないで今日に至っているということだと思うのですが、秘密の保持を図るための措置についても同様でございますね。  ところで、先ほど特許法の二十六条に規定する条約には、特許協力条約は言うまでもなく、日米相互防衛援助協定というものも法理論的に入るという御答弁をただいまいただいたわけでありますが、そういたしますと、先ごろ私が質問主意書を提示いたしましたことに対して、この答弁の一行に書かれている「御質問の措置は、我が国の工業所有権法との関係においては予定されていない。」というふうな答弁書と矛盾しはしないかと思うわけでありますが、いかがでございますか。
  254. 小林俊二

    ○小林説明員 この工業所有権法との関係においてと申しましたのは、具体的には特許法、実用新案法、意匠法、商標法の四つの法律を指すわけでございますが、これらの法律との関係におきましては、この条約第二十七条(8)に掲げてございますような措置をとる予定が全くないということをお答え申し上げたわけでございます。
  255. 土井たか子

    ○土井委員 日本側はそういうことだというただいまの御答弁ですが、この日米相互防衛援助協定四条の存在に対応したアメリカ側の特許法の規定というものは、現にどのようになっているかということを掌握されていらっしゃいますか、どうですか。
  256. 熊谷善二

    熊谷政府委員 詳細については承知をいたしておりません。
  257. 土井たか子

    ○土井委員 これも、実は条約は数ある中に、今回この二十七条の(8)という部分は、自国の国家的安全を保持するために必要と考える措置を自由にとることができるという、これは国家安全上と申しますか、大変大事な項目だと私は思うのです。したがいまして、現に日本においてはこれに関連する条約の上での措置というものがあるのかないのか。あるとするならば、日本は言うまでもなく、相手国がどういうふうな措置をそれに対して講じて、今日に至っているかということに対して、やはりこれは宛ておいていただく必要があるのではないか、このように考えます。  外務大臣、そのようにお思いになりませんか。
  258. 熊谷善二

    熊谷政府委員 私どもも十分調査いたす所存でございます。努力をいたします。
  259. 土井たか子

    ○土井委員 この二十七条というところを見てまいりますと、二十七条の(8)というところ、その後段の部分を日本語に翻訳された条文に従って見てまいりまして、「自国の一般的な経済利益保護のため自国の居住者若しくは国民の国際出願をする権利を制限する自由を制限するものと解してはならない。」と、こう書いてありますが、まことに回りくどい、わかりにくい条文の体裁になっております。  この問題について、実は日本国憲法について言うと、二十九条の私権に対しての保障規定、これは、公共の福祉という概念に反しない限りにおける私権ということに対して、これを権利として保障するという体裁になっているわけでありますが、ここに言う「一般的な経済利益」というのはどうも抽象的であって、具体的にどういうことを内容として認識することをこの条約は予定しているところなのであるかということが一層よくわからないのです。  そこで、まずお尋ねを始めたいのですが、条約二十七条の(8)、そしてただいま私が指摘している後段の趣旨についての御説明と、こういうふうな条文を制定するに至った制定経緯をひとつお聞かせいただけませんか。
  260. 小林俊二

    ○小林説明員 これは、現実におきましては予見されないような特殊な状態のもとにおいて、その一定の技術国際出願がその国の利益を著しく害するといったような場合の念のための規定であると私どもは理解しておりまして、したがいまして、わが国といたしましては、現在のところ一般的経済利益のためといったようなことで国際出願をする権利を制限する予定は全くございません。したがいまして、その具体的な内容につきましても、予定されているものを持っているわけではないと申し上げ得ると思います。
  261. 土井たか子

    ○土井委員 どうもしかし、条文を拝見していって、この点は大事なポイントらしいから、はっきりした概念をひとつ確定してこの条約の条文解釈に当たらなければならないという意味で、ただいまの点も私は、これははっきりしておくべきポイントだと思ったのですよ。ところが、これに当たる事例というのは日本では恐らく起こり得ないから、それに対して日本としては、そういう考え方に対して確定する必要なしと、にべもなく、非常にあっさりとお答えになるわけでありますが、そんなあっさりしたお答えで大丈夫なんでありますか、これは。今後大丈夫ですか。これに加盟してやっていくのですよ。大丈夫でございますね。
  262. 小林俊二

    ○小林説明員 これは審議の過程におきましてはオーバーライディング・ナショナル・インタレストといったような言葉が使われておったような経緯があるようでございますが、その内容といたしまして、別段具体的な事例を協議されたというような記録は承知いたしておりません。したがいまして、これは将来の万一のための規定というふうな了解をいたしております。そうした万一のための各国間の利益を擁護するための規定でございますので、この規定の存在自体が私ども加盟に何らかの問題を投げかけるというようなことはないと私どもは存じております。
  263. 土井たか子

    ○土井委員 一たんこの条約締結いたしますと、国内法化されるべき措置を日本としては講じなければならない。そのためには特許法の一部改正という手続もあろうかと思うわけでありますが、そういう作業が進む中で、恐らくこの点はもっと鮮明に追及されるべきポイントだろうと思いますけれども、ただいまの条約二十七条の(8)ということから考えまして、憲法二十九条との関係で、わが国国際出願をする権利を制限できるかできないかというのは大変問題だと思うのです。どうなんですか、わが国国際出願をする権利というものを制限できるとお考えなんですか。もしできるとするならば、どういうふうな場合を制限する場合というふうにお考えでいらっしゃるのですか。
  264. 小林俊二

    ○小林説明員 この問題は憲法解釈の問題でございますけれども、きわめて常識的に申し上げますれば、公共の福祉という概念に「一般的な経済利益保護」という名目あるいは理由が該当し得るかどうかという点から判断されるべき問題ではないかと存じます。
  265. 土井たか子

    ○土井委員 そうはおっしゃいますけれども、現に、日本国内法である特許法の九十三条のところに「公共の利益」という文言がございます。公共の利益というのは特許法の九十三条でどういうふうに理解していいのですか。どういうふうな場合が予想されているわけでございますか。  特に、これとの関連で、もう一つ時間を節約する意味お尋ねをいたしますと、原子力基本法の第十七条というところを見ますと、「原子力に関する特許発明につき、公益上必要があると認めるときは、特許法第九十三条の規定により措置するものとする。」というふうな規定になっております。したがって、九十三条の公共の利益、略して公益と言ってもいいと思いますが、公益上あるいは公共の利益上というのはどういうふうな場合を想定をしているというふうに考えられるわけでありますか。これは大変大事なことだと思いますよ。
  266. 熊谷善二

    熊谷政府委員 特許法の九十三条には、御指摘のとおり、公共の利益のための通常実施権の設定の裁定の規定がしるされております。ここで、具体例としましては、たとえばがんの特効薬とか、そういった一般に渇望されておるものが合理的な実施が行われない、こういうような場合にそれをそのままに放置してはおけないということで大臣の裁定を求める、こういう規定でございます。
  267. 土井たか子

    ○土井委員 さらに、これは同じ特許法なんですが、「特許を受けることができない発明」というのがございます。これは三十二条の条文の内容だと思いますが、この特許を受けることができない発明というこの発明について出願するということは、今回の条約では可能なんですか、いかがでございますか。
  268. 熊谷善二

    熊谷政府委員 国際出願として出願することは可能でございます。
  269. 土井たか子

    ○土井委員 そうすると、この特許法の三十二条の規定が設けられたそのもともとは、憲法の二十九条の二項によって理解する、解釈するということがやはり日本国内においては大切なんでありますか。どうなんでしょう。
  270. 熊谷善二

    熊谷政府委員 いわゆる不特許事由でございますが、二つ掲げてございまして、第一は、「原子核変換の方法により製造されるべき物質の発明」、それから第二は、「公の秩序、善良の風俗又は公衆の衛生を害するおそれがある発明」、こういったものは不特許事由になっておるわけでございます。  この第一の「原子核変換の方法により製造されるべき物質の発明」が不特許事由になっております理由は、これは日本とたとえばアメリカ、つまり外国との間の技術格差が余りにもはなはだしいという実態に即しまして設けられた規定でございます。  第二の条項は、公の秩序、善良の風俗でございますので、特段の説明は要らないかと思います。(土井委員「ちょっと終わりの方が聞こえない」と呼ぶ)二号は、「公の秩序、善良の風俗又は公衆の衛生を害するおそれがある発明」、こういったものにつきましては、趣旨から見て特許されるべきものではない、こういうことで不特許事由にいたしておるわけでございます。  なお、補足して申し上げますと、国際出願はなされますが、それぞれの国で不特許事由としております内容が異なっております。日本は一号、二号に掲げておるものを不特許事由にいたしておりますが、その他の国におきましては、またこの条項が国によって異なるわけでございます。したがいまして、国際出願されましたものがそれぞれの指定国の段階におきましてそれぞれの国内法に沿って処置が行われるということに相なる次第でございます。
  271. 土井たか子

    ○土井委員 次に、これは読んでいて、この条文自身、訳されているのは日本語に訳されているわけでありますが、私も日本人であることは間違いないのですが、何遍読んでみてもよくわからないという条文がこの中にあるのですね。これを訳されるのにずいぶん苦心をなさったんであろうということは憶測にかたくないのです。読んでも、読んでもわかりませんから。それで、その辺も含めまして少し聞いてみたい条文があるのです。  それは仮訳といいますか、いままで特許庁の方でいろいろ審議の過程で日本語を問題にしながらやってこられたと思いますが、その節使用された日本語というのは、一体どなたが訳された日本語でございますか。
  272. 熊谷善二

    熊谷政府委員 私どもの執務資料といたしまして、当庁の職員によって行ったものでございます。
  273. 土井たか子

    ○土井委員 そうすると、それは特許庁訳というふうに認識をさせていただいてよろしゅうございますか。
  274. 熊谷善二

    熊谷政府委員 特許庁の仮訳でございます。
  275. 土井たか子

    ○土井委員 これは外務省にお伺いしたいのです。  いま仮訳とおっしゃいましたが、特許庁が翻訳されたその翻訳文に対しては、これは仮訳というふうに認識してよろしゅうございますか。
  276. 小林俊二

    ○小林説明員 政府部内の慣行といたしまして、各関係省庁とも、自己の関係する条約あるいは協定につきましては、それぞれとりあえずの措置として訳文を作成することがございます。これは外務省限りで作成した訳文についても同じでございまして、いずれも仮訳という言葉を使っております。
  277. 土井たか子

    ○土井委員 従来、私、外務委員会に属している一員でありますけれども、仮訳というのは、外務省が訳して、法制局をいまだ通過していない訳について仮訳だというふうに今日まで認識いたしてまいりましたけれども、この認識は変えなければいけないわけでありますか。
  278. 小林俊二

    ○小林説明員 仮訳と申します言葉は法律用語ではございませんで、行政実務上、実際問題として使っておる言葉でございますので、それほど厳密にお考えいただく必要もないように私ども解しております。
  279. 土井たか子

    ○土井委員 そうすると、特許庁訳は仮訳というふうに言っても間違いじゃないというただいま御説明のとおりにいたしまして、今回のこの公定訳、正式な訳ですね、これはどのように考えたらいいんでしょう。これはやはり政府訳でございますか、外務省訳ですか、従前のその審議会用に特許庁が使用されたのが特許庁訳といたしますと。
  280. 山田中正

    ○山田説明員 お答え申し上げます。  仮訳と申しますのにはいろいろな段階があるかと思いますが、先ほど特許庁長官から申されましたように、特許庁でおつくりになったのは特許庁の仮訳でございます。それと、今回この条約国会に御提出するに当たりまして、外務省といたしましては、特許庁とも相談の上法制局に持ってまいります仮訳を作成いたしまして、その後、法制局審査をいたしまして、内閣として国会に正式にお出しするテキストを作成した次第でございます。
  281. 土井たか子

    ○土井委員 いろいろな御苦労があると思うのですが、条約というのは、公布によって正文の法規範として国内法としての効力を有していくわけですが、このため、条約の正文の意味、内容と法文の内容というものが完全に一致してなければ困るわけであります。  これは二国間の場合は、お互いの国が幾たびか交渉を重ねまして、具体的に使われる用語の内容も、その討議の席の上で、どういう意味を持っているかということを確かめ合うことができますし、二国間であると、英文と日本文を当事国として用意をして交換すれば事足りるわけであります。ところが、多数国間の条約ということになりますと、これは申し上げましたようなことが必ずしもうまくまいりません。もうすでに条約案文というものができ上がってしまってから、これに加盟するということを考える国が後から続々出てくるというかっこうになるわけであります。今回のこの特許条約も、これは多数国間条約でございますね。  そういう点からいたしますと、この会議の席に臨むとか他国といろいろな交流を持って用語に対して点検をしてその意味、内容というものを把握していくという努力というものは、十分な機会があるとは言えない。したがって、邦文に訳す際にいろんな努力が、条約の正文と一致させんがためにあったと思うわけでありますが、従来内閣の法制局とされても、こういう場合においては会議の議事録であるとか会議の草案であるとか、参考になるようなものを調査をするということが、どうしても邦文に訳する場合に大事な一つの仕事であるというふうに考えてこられていると思いますが、いかがでございますか。
  282. 前田正道

    ○前田(正)政府委員 先ほど来お話がございますように、多数国間条約におきましてはすでにテキストができ上がっておりますので、これをどのように翻訳するかということが一つの問題でございますが、そのときの原則的な態度といたしましては、できるだけ原文に忠実にという考え方で翻訳の審査に当たっております。と申しますのは、仮に国内法との関係のようにいたしますならば、私どもが審査の段階で条約の案文をつくってしまう、そういうことになりますので、基本的には原文に忠実にという解釈ないし翻訳の態度で当たっております。ただその場合に、御指摘のようにどうしてもその事情がわからないというものにつきましては、私どもが直接というわけではございませんけれども、外務省なり関係省を通じまして、国際会議等における経緯、その他外国事情、こういったものにつきましてもあわせて審査を行うということは先生指摘のとおりでございます。
  283. 土井たか子

    ○土井委員 今回の特許協力条約について、条約作成時にさかのぼっていろんな検討された資料というものがございますかどうですか。もしあるならばどういう資料を邦文に訳す際に検討資料として用いられたのでございましょうか、いかがですか。
  284. 山田中正

    ○山田説明員 いま御指摘になりました点につきましては、本件条約採択会議の際の記録の資料がございます。それを中心にテキストと参照しつつ作業いたした次第でございます。
  285. 土井たか子

    ○土井委員 その記録の資料というのは、これは公開されておりますか。
  286. 山田中正

    ○山田説明員 特許国際協力条約外交会議の記録という、私、いま申しましたのは必ずしも正式なタイトルではなく、少し間違っておるかもわかりませんが、そういう形の文書が出版されておりまして、公開されておるはずでございます。
  287. 土井たか子

    ○土井委員 それは少なくともただいま審議をいたしております今回の条約について和文に翻訳する節、そういう資料も参照しながら日本語に訳したというふうな意味で、これは一つの参考文献というぐらいに御紹介いただく必要があるように私は思います。特に私は読んでいってわかりにくい日本語に遭遇いたしますと、この内容をどのように理解していいかというときにはたと困るわけでありまして、いろいろそういうときに、その裏づけとしてそういう参考になるような資料というのはどうしてもあらなければならない。特に出願人立場からいたしますと、これはもう切実な問題を抱えての方々でございますから、日本語によって中身はどういうことなのかということがわからないときに、ひとつこれを参照になさい、このことを参照にして実はわれわれとしては日本語の訳を作成したんですよ、とおっしゃるものを明示しておいていただく必要がどうもあるように私は思います。実は日本語を読んでいてそう思った。だから、この点明示していただくとすればいまの資料でございますか。したがって、もう一度その資料についてはっきりおっしゃっておいていただいたら結構だと思います。
  288. 山田中正

    ○山田説明員 先ほど御答弁申しました資料、英語名で出ておりますが、「レコード オブ ザ ワシントン ディプロマティック カンファレンスオン ザ パテント コオペレーション トリーティー」、私いまここに手元に持っております資料、これでございます。
  289. 土井たか子

    ○土井委員 それは翻訳されていますか、どうですか。
  290. 山田中正

    ○山田説明員 翻訳いたしておりません。
  291. 土井たか子

    ○土井委員 資料として使われたのはそれただ一つでありますね。それ以外にはございませんか。
  292. 山田中正

    ○山田説明員 当時、会議政府代表が参加いたしておりますので、その代表団の報告等ももちろん参照いたしております。
  293. 土井たか子

    ○土井委員 そうすると、その代表団の報告はまさか横文字で書かれているとは思わないわけでありますが、日本語での報告書というのはすでにあるわけでありますね。どうですか。一つ一つこういうふうに私は質問していくと時間が非常にかかるのです。ひとつその辺をお考えをいただいて御答弁の方でも配慮をお願い申し上げます。
  294. 山田中正

    ○山田説明員 私申し上げました会議の際のわが方代表団の報告と申しますのは、一冊のもので公開するような形のものではございませんで、その会議の前にもいろいろな専門家会議が行われておりましたし、そのときの報告の電報でございますとか、報告文書でございますとか、いろいろな内部資料のことでございます。
  295. 土井たか子

    ○土井委員 ただ、内部資料内部資料とおっしゃるようなことを相変わらず続けていかれますと、やはり出願者立場からしたら今回はずいぶん不親切な取り扱いになりますよ。私これを読んでいて、どうもこれは取り上げようによったら白と黒ぐらい手続の上で結果が違ってくるというふうな条文が実はあるのです。ただいまよりそれを申し上げましょう。  まず、先ほど私がお伺いしたときに特許庁訳と言われたのを、これを仮訳といたします。仮訳の場合と今回手元にいただいているこの正文の訳との間で少し違いが出てきているわけなんです。どういうふうな違いが出てきているかというところを見ますと、条約の八条の(2)の(a)というところ、その条文では「(b)の規定が適用される場合を除くほか、(1)の規定に基づいて申し立てられた優先権の主張の条件及び効果は、」云々と、こういうふうに規定されているのですが、どうなんですか、特許庁訳はこのとおりでございましたか。ここの表現は違っておりましたか、いかがでございますか。
  296. 山田中正

    ○山田説明員 いま先生指摘になりましたように、特許庁の方で作成されました特許条約の仮訳では、御指摘のところは「(b)の規定に従うことを条件として、」と訳しておりまして、今回国会に御提出申し上げましたテキストの訳とは違っております。
  297. 土井たか子

    ○土井委員 ついでに申し上げますが、特許庁とされては、いままで特許庁訳に従っていろいろ審議をされてきたということでございますね。それは言えますね。
  298. 熊谷善二

    熊谷政府委員 従来仮訳をベースに作業を進めてまいっておりましたが、ただいまのように変わりましても、実体面での差があるとは考えておりません。
  299. 土井たか子

    ○土井委員 実体面で差があるかどうかというのはこれからひとつ起こってくる問題でありまして、条文の上での表現が違うことによって条文の意味、内容が違ってくるということがよくあります。この場合も、「に従うことを条件として、」という場合と「適用される場合を除くほか、」という場合と、これは全く同じ意味、内容かというと、私はさにあらずということになると思いますよ、厳密に言えば。  ただ、この後を見てまいりまして、同じような意味で、同じ用語、これは実は英語では「サブジェクト ツー」というところがひっかかる部分だと思うのです。同じような場所で、条約の十一条の(3)というところをひとつごらんいただきたいと思います。この十一条の(3)は、「第六十四条(4)の規定に従うことを条件として、(1)」云々、後ずっと続いているわけですね。この場合は、ただいまの公式の訳文も、「に従うことを条件として、」となっております。特許庁訳とこれは同じなんです。この十一条の(3)号について言うならば。  さらにもう一つの条文を引き合いに出したいと思うのですが、これはなかなか骨が折れるのです。もう一つは、条約の四十六条というところをごらんいただきたいと思います。四十六条で、真ん中よりも後の部分、「当該締約国の権限のある当局は、それに応じて特許の範囲を遡及して限定することができるものとし、特許の範囲が原語の国際出願の範囲を超えることとなる限りにおいて特許が無効であることを宣言することができる。」こう書いてあるのですが、これは実に読みづらい条文でございますけれども、この「限定することができるものとし、特許の範囲が原語の国際出願の範囲を超えることとなる限りにおいて特許が無効であることを宣言することができる。」という部分は、本来特許庁訳ではどのように表現されておりましたか。これと同じ表現でございましたか。どうですか。
  300. 熊谷善二

    熊谷政府委員 特許庁の仮訳におきましては、この部分は、「当該締約国の権限のある当局は、それに応じて特許の範囲を遡及して限定し、」ここまでは同じでございますが、「特許の範囲が原語の国際出願の範囲をこえる部分については」と、こういうふうになっておりまして、「限りにおいて」ということと違いがございます。
  301. 土井たか子

    ○土井委員 さて、いまのように、特許庁訳と今回の公式の訳との間で、少し表現の上で違うと、言ってしまえばそれまでの違いであると恐らく抗弁なさるかもしれませんが、訳の上で違いがあるわけですね。  そこでちょっとお尋ねをしたいのですが、この十一条の(3)というのは、そのまま読みますと、アメリカの留保条件に従った場合の規定と読めるわけでありますが、それはそのように読んでよいわけでございますか、いかがでございますか。
  302. 熊谷善二

    熊谷政府委員 御指摘アメリカにつきましては、この六十四条(4)の留保をいたしておりますので、この留保に従いましてこの規定を解釈する、こういうことになるわけでございます。
  303. 土井たか子

    ○土井委員 その十一条の(3)については、留保しているということに従って云々と、いまお答えになったとおりに考えて、特許庁の場合も、今回の正文の訳の場合も読めるわけでありますが、それなら、この八条(2)の(a)という個所で、同じように、従来は特許庁訳が、「に従うことを条件として、」という表現であったのが、今回いただいているこの正文の訳では、「適用される場合を除くほか、」という表現に変わったのはなぜでございますか。
  304. 山田中正

    ○山田説明員 先生、先ほど御指摘ございましたように、この八条のところでは日本語訳を変えておりますが、英語の方では、これも先生指摘のように、八条の場合も十一条の場合も「サブジェクト ツー」という同じ表現を使っております。  私どもといたしましては、条約日本語に訳します場合に、できるだけ正確に訳そうと努めておるわけでございますが、「サブジェクト ツー」というものを訳します場合に、一般的に申しまして、二つの場合があるかと存じます。この言葉が用いられておりますのは、条約の中での二つ以上の規定の適用関係を書いておる場合でございますが、一つの方の規定が適用されました場合に他の規定の適用が排除されるという場合に使われました際には、それをよりわかりやすくいたしますために「適用される場合を除くほか」というふうに訳しておる次第でございます。  先生指摘の八条の(2)項の場合につきましては、(b)項が適用されて、指定国の国内法令の定めるところによります場合と、もしくは(b)項が適用されなくて、(a)項の条約の定めるところによる場合と、排他的な関係にございますので、「適用される場合を除くほか」と訳した方がより正確であろうかと思った次第でございます。
  305. 土井たか子

    ○土井委員 より正確と、大変御配慮のほどの御苦心には敬意を表するわけでありますが、どうもそのために「サブジェクト ツー」に関する訳文に統一性がなくなっている。やはり訳文と条約の本体とは完全に一致していなければいけないわけでありますから、したがいまして、そういうことからすると、公定訳文というのはやはり統一あるようにお考えいただくことがまずは基本であってしかるべきだと思われます。したがって、「サブジェクト ツー」なんという用語に対しては、その前後左右を見た場合に、よりわかりやすく適切に表現しようとしたならば、この場合はこうだ、あの場合はああだということも言えるかもしれませんけれども、本来この特許庁の方が何々「に従うことを条件として、」と訳されていたことをわざわざ変えられたというのには特に意味があるに違いないと思うのです。特に意味があるに違いない。特に意味がなければ、やはり統一性を欠くような訳文というのは差し控えるべきだというふうに思います。どうも統一性がないのですね、見ていると。これはそういうことが言えますが、これに対しての配慮というものを今後していただけませんか。いかがですか。
  306. 前田正道

    ○前田(正)政府委員 先生の御意見に基本的に異論を申し上げるつもりは少しもございませんけれども、ただ、先ほど申し上げましたように、テキストが与えられておりまして、私ども言葉を補いたいと思いましても、テキストに制約をされまして補えないという場面があるわけでございます。  その一例として、先ほど御指摘をいただきました十一条の(3)の「第六十四条(4)の規定に従うことを条件として、」という方は、その六十四条は宣言をすることが認められているわけでございます。宣言が行われました場合には、またその宣言に伴う特定の効果が発生いたしますものですから、そういう条件に従うことになる。したがいまして、十一条の(3)の場合には、六十四条(4)の宣言が行われた場合には六十四条の(4)の規定に従うことを条件として、とこう書けばわかりやすいんじゃないかと思うのですが、そこまで補うのは、いかにも原文がありませんので、いかがであろうか。  それから第八条の方は、先ほど外務省の方から御答弁がございましたように、相互に適用排除の関係になりますので、「除くほか」と翻訳いたしました方がより原文に忠実であろう。それぞれのコンテクストにおきまして一番どれが正確と申しますか、そういう訳になるであろうかということで苦心はしておるつもりでございます。
  307. 土井たか子

    ○土井委員 過ぎたるは及ばざるがごとしということわざがございますので、非常に御配慮いただいておることには敬意を表しつつ、やはりその辺は統一性を欠かさないように、一つは原文に忠実であることのためにはいろいろな御配慮が必要だとは思いますが、公定訳文で同じ英語があっちではこうだ、こっちではこうだというのがすぐにでもわかるような訳し方はいかがかと思われるんですよ。だから、いまおっしゃいました、そこまで説明すれば十分だと思われるけれども、そこまで言わなくてもわかるであろうというお考えにとどまらないで、ここまで言ってもまだ十分でないという気持ちで、ひとつだれにでもわかるような条文に、しかも本当に誤解をしないような条文に、翻訳の場合にも心してお考えいただきますように重ねて申し上げます。
  308. 前田正道

    ○前田(正)政府委員 ただいま先生指摘の点につきましては、一層努力をいたしたいと思います。
  309. 土井たか子

    ○土井委員 今回、その点についてはさらに厳しいことを言えば、統一をするように修正さるべきであるというところまで私は言いたいと思うのですが、これは一たん出した条文に対してもう一度再検討を求めるということはなかなか大変なことだということもわかります。したがいまして、今後この条文に対して恐らく問い合わせがいろいろ来るだろうと思いますよ。わかりやすく懇切丁寧に、間違いのないように、それに対してのいろいろな御指導をしていただくことはもとより、やはり一つのテキストみたいなものを用意なさる節は、その辺も留意したテキストを御用意いただくことがどうしてもこの節、条文を読んでいて必要だと思われます。  というのは、条文について最後に私はお聞きしたい。この四十六条なんですが、四十六条の条文を見ますと、先ほどおっしゃってくだすった特許庁訳は私は非常によくわかる。「限定し、」「範囲をこえる部分については」という訳だったわけですから、その範囲を超える部分については無効になるという部分無効といいますか一部無効といいますか、そういうことがこの効果として出てこようかと思うのですが、今回私たちが審議をいたしておりますこの正式の訳文について言いますと、「特許の範囲が原語の国際出願の範囲を超えることとなる限りにおいて特許が無効であることを宣言することができる。」こうなっているのです。そうすると、「特許の範囲が原語の国際出願の範囲を超えること」となれば、全部がこれは無効となるというふうにも読めるわけでありまして、何だか日本語というのは定かでないという気がするんですよ。どうです。何遍読んでもこれは誤解を生ずるおそれがあるなという気がしてならない。いかがでございますか。
  310. 熊谷善二

    熊谷政府委員 私ども、本条約の実施を円滑にやるためには、先生指摘のとおり、全国的に説明会を開きまして、ただいま先生から御指摘のあったいろいろな資料その他につきましても、それを織り込みましたものをもとに説明会をして、一般の周知徹底を図りたい、かように考えております。  ただいま御指摘の四十六条の趣旨でございますが、私どもこの条約の解釈といたしまして、一部無効の場合、それから全部無効になる場合、こういう場合もあろうと考えております。
  311. 土井たか子

    ○土井委員 そうすると、それは締約国の権限のある当局というのがそれに対して限定できるというふうに理解していいわけですか。
  312. 熊谷善二

    熊谷政府委員 ただいま全部無効の場合もあり得ると申しましたが、これは二十七条に全部無効のことが規定されておりますので、訂正させていただきます。  本条におきましては、実質部分無効、こういうふうに御理解賜りたいと思います。部分無効であるということでございます。
  313. 土井たか子

    ○土井委員 そうすると、これは部分無効ということが明確にわかるような日本語であってほしいですね。むしろその辺は特許庁訳の方がはるかに明確ですよ。部分無効というふうなことを認識し得る条文の体裁になっています。今回わざわざその辺誤解を生じやすいような方向に改変されている。改正ではなくて、これは改悪と言わなければならないような変え方になっているのじゃないかと私は思われてならないのですが、この辺どうお考えになりますか。これはもういろいろむずかしいことを考えないで、端的に考えてそういうふうに思われてならないのです。どうでしょう。この条文の長官のお考えを率直に聞かせてくださいませんか。
  314. 熊谷善二

    熊谷政府委員 ややむずかしいお尋ねでございますが、私どもも外務省、それから法制局と御相談をいたしまして、その中で出た最終結論といたしましてお示ししております訳になっておるわけでございます。これが最も妥当なものだと考えておるわけでございます。  実際のプラクティスといたしましては、わかりにくいという点を先生指摘でございますが、私どもはこれを受けまして国内法の方での無効審判、訂正審判という措置を新しく設けまして本件の措置を十分に取り込むことができる、かように考えているわけでございます。実質的な措置については支障は生じないというふうに考えております。
  315. 土井たか子

    ○土井委員 それは特許庁の方の専門的立場から実務担当の場合に、大体われわれとしては大丈夫だとお思いになっても、いろいろ出願をされる立場からすると、やはり条文はわかりやすい条文でなければ困りますよ。だから、そういうことからすれば、この条文は特許庁だけがお読みになるわけじゃない。一般国民が読んでわかるような条文でなければ困るのです。そういうことからいたしますと、この四十六条の条文は実にわかりにくい。全部無効と誤解を受けても仕方がないような体裁にこれは変わってしまったんです。そういうことも含めまして、この節この点を指摘し、そうしてわかりやすい解説書というものを用意していただかなければならなくなってまいりました、こうなってくると。よろしゅうございますか。
  316. 熊谷善二

    熊谷政府委員 御指摘のとおりにいたします。
  317. 土井たか子

    ○土井委員 条文自身が非常にわかりやすく明確であるならば、そういうむだな費用を使う必要はないわけであります。だけれども、もう私はいまの条文を読んだら、必ずそういうことをさらに用意しなければならないような、非常にわかりにくい条文になってしまったなという感をぬぐい去るわけにはまいりません。  さて、最後に、私は一言だけこの点を聞かせていただいて終わりにしますが、去る二月の八日に私が質問主意書を提出いたしましたが、その中に「米国、ソビエト社会主義共和国連邦、ドイツ連邦共和国、スイスの留保条項及び条項別の留保理由は何か。並びに我が国の留保予定条項及び条項別理由。」というものについて御質問をさせていただいたわけです。御答弁はいろいろそれについてあるのですが、その中で、「我が国としては、第六十四条(2)(a)の規定に基づく宣言を行うか否かについて、現在検討中である。」こう書いてあるのです。非常にこれは大事な部面だと思います。御答弁いただいたときは、これはもう御案内だと思いますが、三月七日でございました。この節は検討中だったわけでありますが、ただいまも検討中なのか、ある程度の結論めいたものが出ているのか、さらにまだ検討中であるならばいつごろこれに対し結論めいたものが出るのであるか、このことについての御答弁をいただきたいと思います。
  318. 熊谷善二

    熊谷政府委員 六十四条(2)(a)の宣言を行う考えでございまして、それを前提といたしましてすでに国内法案を提出いたしておる次第でございます。  さらに補足させていただきますと、六十四条(2)(a)は国際予備審査の問題でございまして、通常ならば国際出願日と認定されましてから二十カ月以内に翻訳文を出せばよろしい、しかしながら予備審査をやる場合に、通常は二十五カ月までこれが延期されるというふうになっております。それでは、私ども、実際の運用といたしましてなるべく早く翻訳文を確定したいということ、それがないと審査に支障が生ずる、あるいは国内の公開制度との比較等からいきまして問題があるということで、これを留保いたしまして、結果として二十カ月以内に翻訳文を出せ、こういうふうな考えで措置をとっておるわけでございます。
  319. 土井たか子

    ○土井委員 そうすると、現在検討中というのは、もはや検討中ではないわけですね。
  320. 熊谷善二

    熊谷政府委員 そのとおりでございます。
  321. 土井たか子

    ○土井委員 終わります。
  322. 大坪健一郎

    ○大坪委員長代理 中川嘉美君。
  323. 中川嘉美

    ○中川(嘉)委員 ただいま議論されているところの特許協力条約ですが、各国における特許権付与についての実体的要件をそのままにして、いわゆる手続面だけの統一化を図ろうとしているわけですけれども、このことは果たしてどのような意義を持つものなのか。また、将来の方向ですけれども、たとえば世界共通の特許権の付与というような実体的要件の統一化というようなことを考えておられるのかどうか、この点についてお答えをいただきたいと思います。
  324. 熊谷善二

    熊谷政府委員 世界的な特許制度というのは一つ理想でございまして、パリ同盟条約、明治十六年に締結されましたこの条約以来の一つ理想でございますが、現実の問題としましては統一的な世界制度というものはかなり先のことでございまして、そういうものはいまのところ実現可能性があるとは判断いたしておりません。ただし、今回のPCT条約に基づきまして、御指摘のとおり手続の統一化が行われるということ、これに限りましても大変ないわば画期的な前進であると考えておるわけでございまして、もともと工業所有権というものは国際的な性格を持っておりますだけに、今回の条約は高く評価さるべきものであると考えております。
  325. 中川嘉美

    ○中川(嘉)委員 わが国特許庁国際調査機関になることが予定されておりますけれども、このために必要な人員あるいはまた資料、こういったものはどのようなものであるのか、またそれらの整備状況はどうか。さらに伺いますが、この条約国際予備審査に関する制度も創設することになっているわけで、この機関を設けた理由はどこにあるのか、またわが国はこの機関にもなるように聞いておりますが、そのような機能を果たすだけの余裕があるのかどうか、あわせてお答えをいた  だきたいと思います。
  326. 熊谷善二

    熊谷政府委員 この条約加盟に伴います人員の面あるいは資料整備の面、また国際調査機関のみならず国際予備審査機関として活動するにつきましての人的あるいは予算的な体制につきましても、私ども十分に対応できるというふうに考えております。今日まで署名後約八年間、いろいろ準備を続けてまいりまして、十分受けとめ得る実態に参っておるというふうに考えております。
  327. 中川嘉美

    ○中川(嘉)委員 第八条の「優先権の主張」というところに関して伺いますが、パリ条約では出願優先権についての規定がありますけれども、その優先権とこの条約国際出願とはどのような関連があるのか、御説明をいただきたいと思います。
  328. 熊谷善二

    熊谷政府委員 具体的に申し上げますと、たとえば日本の法人が日本特許庁国際出願をいたす場合に、すでに旧パリ条約のもとでの出願を、たとえば一年前に行っているというふうになった場合に、この国際出願日は第一国の出願日までさかのぼる、こういうことになるわけでございます。国際出願日の認定に当たりまして、従来のパリ条約に基づきます優先権を主張し得る期間、これは一年ございますから、この一年の期間はさかのぼって優先日——優先日と申しますか、国際出願日というふうに認定されるわけでございます。いわば重複といいますか、従来のルートによる効果も重複して恩典として認め得る、こういうことになるわけでございます。
  329. 中川嘉美

    ○中川(嘉)委員 この提案理由の説明によりますと、この条約効果一つとして発展途上国への技術援助が期待される、このようになっておりますが、この条約によって設立される技術援助委員会、これはどのような構成でどのような仕事を行うのか、またわが国としてはこれらの件についてどのような協力をなし得るのか、この辺はいかがでしょうか。
  330. 熊谷善二

    熊谷政府委員 いま先生指摘技術協力委員会につきましては五十六条に規定されておるわけでございますが、発展途上国並びに技術援助を行う国それぞれにつきまして、公平に代表されるよう考慮した上で、総会がその構成員を任命するということになっております。私ども国際調査機関国際予備審査機関になることを予定しておりますので、当然この委員会のメンバーとして入る考えでございます。
  331. 中川嘉美

    ○中川(嘉)委員 どのような協力をなし得るかということについて、もう少し明確にお答えをいただきます。
  332. 熊谷善二

    熊谷政府委員 これは今後この委員会で計画がつくられますが、具体的には専用家を発展途上国に派遣をしてその国での特許法制整備ということに対して協力をする、あるいは先方の研修生に対する研修を行うとか、あるいはまたいろいろな資料の提供、特許情報その他の提供、またこれらの事務を行うに当たりましてのいろいろな諸設備に対する援助といったような問題がこの委員会で討議をされまして、計画として決められるはずだと考えております。
  333. 中川嘉美

    ○中川(嘉)委員 この条約の四十六条、先ほど来翻訳の問題が多々出ておりますが、一点だけ聞いておきたいと思います。  いわゆる「国際出願の正確でない翻訳」というところについて、ここでは原文とそれからわが国に提出された翻訳文とが不一致であることが判明した場合、その翻訳文は原文を超える限りにおいて特許が無効である、こういう規定ですけれども、これは特許後の措置であって、審査中においては何も規定されていないわけですけれどもわが国の場合、翻訳文が原文と一致していない場合どのようにするつもりなのか、またこれは条約の精神から考えてもおかしくはないのか、この辺についてお答えをいただきたいと思います。
  334. 熊谷善二

    熊谷政府委員 御指摘のとおりこの条項は特許後の措置でございますが、特許後の措置として具体的なプラクティスとしましては、翻訳文の方が原文より上回っているものにつきまして無効審判の請求を起こすことができる、こういうことにいたしてございます。それに対しまして出願者の方では、全部無効になりますと困りますから訂正審判を請求することになるわけでございますが、その訂正審判の審決が出るまでは無効審判の審決は待つ、こういう法的な手当てを講ずることにいたしております。これが第一。  それから特許後の問題に準ずるものといたしまして、特許公告後の場合は、異議申し立てを待ちまして、それに限って救済措置を講ずるようにいたしております。
  335. 中川嘉美

    ○中川(嘉)委員 わが国の場合に、審査中において翻訳が原文と一致しない場合ですね、これを私先ほど伺っているわけですが、審査中において、ここに何も規定されていないという前提でお伺いしたわけですけれども、どのようなふうに対処されるか。この点はいかがですか。
  336. 熊谷善二

    熊谷政府委員 審査中は翻訳文を基礎に審査をすることにいたしておりまして、原文との照合はいたさない、こういうことにいたしております。この趣旨は、翻訳文は、たとえば二十カ月以内に提出されなければ国際出願自身が取り下げになったものとみなすというふうになっておりますように、原語と翻訳文というものは一体でございます。そういう意味で、また特許自身はその国の言語で付与されるわけでございます。そういうことをあわせ考えまして、審査の段階におきましては日本語だけによって審査を行う、こういうプラクティスにいたしておるわけでございまして、このことにつきましては、四十六条の注解というのがございますが、国際的にも承認されておる措置でございます。
  337. 中川嘉美

    ○中川(嘉)委員 五十九条のところで紛争の規定がありますけれども特許出願を行うのはあくまでも私人であって、適用されるのは保護を受ける国の国内法であります。ここで言うところの国際司法裁判所に付託されるような国家間の紛争というものはどのような場合に起きると考えられるか。私はこのような段階にまで事態が発展する可能性というのはむしろ少ないのではないかと思うわけですけれども、もしそういうものがあるとするならば、具体的にどういうケースを指すのか、明らかにしていただきたいと思います。
  338. 山田中正

    ○山田説明員 先生指摘のように、五十九条が取り扱っております問題は、締約国間の紛争でございます。したがいまして、例といたしましては、考えられますのは、一つは締約国となりました国がその条約上の義務を履行いたします場合に、その国内的な措置が必ずしも他の締約国の解釈と一致しておらないというふうな、条約の解釈上の違いに基づく措置をとっておるような場合、そういう事態が考えられるのではないかと存じます。
  339. 中川嘉美

    ○中川(嘉)委員 これはいろいろなケースが当然考えられると思いますが、このことに関連して、この特許協力条約以外にUNCTADにおける工業所有権制度の検討、パリ条約改正の動きとか、あるいは商標登録条約、菌の寄託に関するブダペスト条約など、こういった国際的な動きが非常に盛んである。これ自体は結構なことですけれどもわが国としては、こうした動きがあるから参加するという態度であってはならないのではないか。もっと主体的な、また長期展望のもとに、わが国としてどう対応するかということを考えるべきではないかと思いますけれども、この辺のところについての方針を伺いたいと思います。
  340. 小林俊二

    ○小林説明員 いわゆる技術移転の問題でございますが、特許もその一つの形態でございます。この問題は南北問題の一つの大きな問題となっているということを午前中にもお答え申し上げたのでございますが、この問題は今回の特許協力条約が真っ正面から取り組んでいるわけではございませんで、今回の特許協力条約と申しますのは、すでに百年の歴史を持つ先進国間を中心として発達してきました特許制度をさらに発展させるという、その延長線上にあるものでございます。その延長線上にあるものでございますけれども、その間において、いわゆる途上国の特許制度整備発展に協力するという観点からの配慮が払われているということもお答え申し上げた次第でございます。したがいまして、それは特許制度の発達という面から見た低開発国に対する協力という問題でございます。  それはそれといたしまして、特許制度の発展とは別に、いわゆる工業開発のための技術の移転という問題は、依然として残っておるわけでございます。その問題は、今回の協力条約とは別に、たとえば先生先ほど御指摘のございましたUNCTADにおきまして、鋭意検討が進められておる。しかしながら、伝統的な特許権の運営、発展に今日まで協力してきました先進国側の考え方と、新しく工業開発に手をつけつつある途上国側の考えとの間にはかなりのギャップがございまして、その間の妥協を図るという作業は、必ずしも非常に順調に進んでおるとは申しかねる点がございます。特許の問題に関して申し上げますれば、現在パリ条約改正といったような面も、途上国の観点を配慮しながら、検討が進められておるという現況でございます。
  341. 中川嘉美

    ○中川(嘉)委員 わが党の方から関連質問がございますので、私はあと一点だけ伺いたいと思いますが、わが国は、天然資源の不足をカバーする意味からも、技術革新ということを活発に行って、そして技術立国としての道を開かなければならないのではないか。そのためには今後の特許行政をどのように進めるべきだと考えておられるか、この点について最後にお伺いをしておきたいと思います。
  342. 熊谷善二

    熊谷政府委員 先生指摘のとおり、日本が生きる道としまして、技術立国は最大の政策課題であるというふうに考えております。自主技術開発を支えるものが特許制度でございますので、特許制度を通じまして自主的な技術開発並びに海外との間の技術交流を促進してまいる、これが大変重要な仕事であるというふうに考えております。今後とも世界的な協調体制と申しますか、世界的な協力体制のもとで、日本特許制度もそういった国際化の方向に向かって進めていくということが、ただいま申しました日本技術開発を支える特許制度として大変重要な役割りを果たすのではないか、かように考えておる次第でございます。
  343. 中川嘉美

    ○中川(嘉)委員 以上で私の質問を終わります。
  344. 渡部一郎

    ○渡部(一)委員 関連して御質問させていただきたいのでありますが、この条約について私は多少疑問になっておりますところを二、三御質問したいと存じます。  まず、後ろの方から、第六十二条の規定でありますが、「締約国となるための手続」こう書いてあります。この締約国になる手続の(4)のところに「(3)の規定は、いずれかの締約国が(3)の規定に基づいてこの条約を適用する領域の事実上の状態を、他の締約国が承認し又は黙示的に容認することを意味するものと解してはならない。」とありますが、これはどういう意味でありますか。実例的にお示しをいただきたいと思います。
  345. 山田中正

    ○山田説明員 いま先生指摘ありました点、締約国が条約の適用宣言をいたします場合は、一般的に本国本土でないところでございまして、施政権を及ぼしておるようなところ、そういうところへの適用宣言をするわけでございますが、そういう適用宣言をした国があってもほかの国はその国の権限を認めることにはならないというのが四項の趣旨でございます。(渡部(一)委員「実例的にお示しをいただきたい」と呼ぶ)アメリカの場合、自国外国関係について責任を持っておる地域、信託統治等を含めまして、包括的に適用宣言をいたしております。
  346. 渡部一郎

    ○渡部(一)委員 この規定の場合、私どもが想起するのは、中華人民共和国と及び台湾の例あるいは朝鮮半島の状況等が、現在両国ともここへ入っておりませんから、私たちは問題にはならないというふうに考えてもいいのではないかと思いますが、いずれかの締約国がこの他の締約国が承認しまたは黙示的に容認する領域の事実上の状態というものを拒否している規定というものは、私どももこれは十分計算の上考慮しなければならないと思います。わが国にとってはこの条約はどういう意味を持つか、お示しをいただきたい。
  347. 山田中正

    ○山田説明員 この条約の締約国が(3)の規定に基づきましていずれかの地域に適用宣言をいたしましても、それはわが国立場には何ら影響するものではないという趣旨でございますので、わが国が認めてないものを締約関係に入ったために認める結果にはならないということでございます。
  348. 渡部一郎

    ○渡部(一)委員 第六十四条の「留保」についてでありまするが、第六十四条の「留保」で、(1)、(2)、(3)、(4)の規定に基づく留保をわが国はいずれもつけなかった理由は何でありまするか、お答えをいただきたい。
  349. 熊谷善二

    熊谷政府委員 私どもは、この六十四条の(2)(a)につきましては宣言を行う考えでございます。留保をする考えでございますが、これは先ほど申しましたように、翻訳の提出期間を留保しない場合には二十五カ月までを提出期限にするわけでございますが、これを留保することによりまして二十カ月までにするという措置でございます。これはいわゆる予備審査の選択国となった場合の取り扱いでございます。  他の条項につきまして留保をいたしておりませんのは、もともとこの第二章の規定予備審査機関として特許庁がなるかどうかという際に十分議論があったところでございますが、私どもはこの予備審査制度は、主として発展途上国に対する協力という大きな目的がございますので、事務上は若干の負担にはなりますが、こういったこれからの国際的な責務の一環としてこの第二章については留保はしないで実施する、こういう姿勢が肝要である、こういうふうに判断いたしまして、留保しないこととしたわけでございます。
  350. 渡部一郎

    ○渡部(一)委員 (3)、(4)、(5)の規定についてはどうお考えでありまするか。
  351. 熊谷善二

    熊谷政府委員 (3)につきましては、日本国際公開制度を現にとっておるわけでございます。ところが、アメリカのように早期公開制度をとっていない国は、これにつきまして留保をしなければ国内との間の整合性がとれないという問題があるわけでございますが、日本の場合にはその必要はない。国際公開は、日本の従来の特許法におきますところの早期公開制度と同様の効果を持つことになっておるわけでございます。そういった理由から、これは留保する必要がございません。  それから、第(4)の(a)につきまして、「自国特許が公表の日前の日から先行技術としての効果を有することを定めているが工業所有権の保護に関するパリ条約に基づいて主張される優先日を先行技術の問題については自国における実際の出願日と同等に取り扱わないこととする国内法令を有する国」、これはアメリカでございます。アメリカは通常の諸国と違いまして、通常は先願主義でございますが、アメリカは先発明主義をとっておるわけでございます。そういった面から、これを留保しないとアメリカは困るわけでございます。国内の従来のプラクティスを相当変えなければならない、こういうことになるわけでございます。そういう意味で留保する必要があると思いますが、日本はその必要はないということから、これを留保いたしておりません。  第(5)は、これは国際紛争の問題でございますが、この問題につきましてもその必要を認めておりません。  大体、以上の趣旨でございます。
  352. 渡部一郎

    ○渡部(一)委員 第五十九条の紛争の項目に入りますが、この紛争の項目を拝見しますと、二つ以上の締約国間の紛争において、交渉において解決されないものは紛争当事国が他の解決方法について合意しない限り、また国際司法裁判所規程に合致した請求を行うことによって付託することを合意しない限り、紛争はそのまま現状のまま存在し、固定され、紛争を処理しないための条項と見えますが、いかがですか。
  353. 小林俊二

    ○小林説明員 この条約または規則の解釈あるいは適用に関しまして紛争が生じました場合、本条の適用を留保していない締約国との間においては、一義的には交渉が行われる。また紛争当事国が合意するその他の解決方法、たとえば第三国による仲裁といったようなものも考えられるわけでございますが、そうした手段によりまして、紛争の解決のための努力が払われるわけでございます。しかしながら、その他の解決方法につき合意に達しない場合には、当該紛争を国際司法裁判所に付託し得るとされておるものでございます。したがいましてこの条項は、現在の時点におきまして考えられるあらゆる紛争解決の手段を網羅しているということが言えると存じますので、通例の条約におきます紛争解決の方法にのっとったものであるというふうに言えるかと存じます。
  354. 渡部一郎

    ○渡部(一)委員 そうじゃないですよ、それは。要するにこれはこういうように麗々しく書いてあるけれども、何ら紛争について最終的な解決の方法はないということを国際的に認めたものにすぎない。つまりいままでは交渉したり、あるいは他国の仲介によったり、あるいは話し合ったり、あるいは司法裁判所への付託を両国で相談したりしてもだめな場合——そういうだめなものが大きな問題として現在起こりつつある。たとえば原子力エネルギーの開発に伴う諸技術であるとか、あるいはテレビに関する先進的な特許等については、国際間において、わが国の方が優先順位があるということで紛争が起こっておる、それを巨大国同士で争っておる。そうしたら、それが解決できない、これは要するに解決できないことは永久に解決できないとして葬るために設けられている条項でしょう。だからここの第五十九条のところは紛争解決という条項ではなくて、「紛争」と書きっ放しになっておるじゃないですか。紛争はこんなものです。これが指定された紛争です。後は片づけないのです。だめなのです。そういう条項じゃありませんか。
  355. 小林俊二

    ○小林説明員 先生指摘のように、現在の国際社会の足らざるところを御指摘になっておられるのだと思います。私が先ほど申し上げましたのは、現在の時点において、国際社会において考えられる主権国家間の紛争解決のあらゆる手段を網羅していると申し上げたのでありまして、それによって足らざるところがないと申し上げているわけではございません。
  356. 渡部一郎

    ○渡部(一)委員 今度の答弁は正確ですね。そうでなければいけないです。要するにこういう問題の場合は、だめな部分がうんとあるわけですね。だからこのだめな部分をほっておいていいかということになるわけですね。私がここで指摘をしておきたいのは、紛争解決するための合同機関を設けるなり、国際的な裁判所を設けるなり、何らかの仕組みというのをつくっておかないと、今後重要な特許、重要な先進技術というものは、ますます大きな比重を持つに至るであろう。そうした場合に、こうした条項しか持たない紛争解決の方式では、今後わが国にとって大きなマイナスになる可能性というものはきわめて高い。だから今後こうしたものについて努力をするつもりがありますかといま伺おうとしているわけなんです。いかがですか。
  357. 小林俊二

    ○小林説明員 私、特許制度の専門家ではございませんけれども、承知している限りにおきましては、この国際間におきます特許制度の発展というものは、十九世紀の後半以来約百年の歴史を持って、先進工業国を中心として発展してまいったわけでございまして、パリ条約もそうした先進工業国間の協力に基づいて今日までその道を歩んできたものでございます。したがいまして、この特許協力条約の運用につきましても、この特許制度の発展という限りにおきましては、各工業国はその利益を共通にしている面が非常に多いと申し上げることもできると思います。したがいまして、これに基づく紛争といったようなものも、先ほど御指摘のございましたような国際社会における足らざる面はございますけれども、この問題に限ってのみ申し上げますれば、それほど重大な問題点が将来に横たわっている、紛争から生じてくるということは、締約国それぞれも考えていないのじゃないかと私は想像いたします。
  358. 渡部一郎

    ○渡部(一)委員 それは、悪いですが、あなたは想像力不足ですよ。特許なんかで争うということは百年前の世界ではだれも想像しなかったでしょう。いまはそれが想像される時代になりました。そうして今後の百年を考えるならば、特許というものによる先進技術の優先的な独占あるいは確保というものは、国際間の紛争の中の巨大なテーマになる可能性があります。これを解決するための紛争解決のためのルールがない。ルールがないというよりも、現在あるだけのルールはここに書いてあるが、それでもだめな大きな穴があいていると私は指摘している。だから、それを埋めるための外交努力あるいは特許担当官僚の努力というものが必要じゃありませんかと私聞いておるのです。そんなことは必要ないはずですと言わないで、今後努力しますと言った方がかっこうがいいのじゃないでしょうかね。どうしてがんばるのでしょうね。そんなことは想像もできません。だから私が想像力不足だなんて言わなければならない。おかしな答弁だな。
  359. 園田直

    ○園田国務大臣 いまの御指摘は非常に適切な御指摘でありまして、第三国の調停、それから国際司法裁判所、これもともに相手国が合意をしなければできないことでありますから、全部決めてはないわけであります。当面は事務当局が言うとおりにそういう紛争のおそれはないということでありますけれども、こういう問題はとかくそれだけでは済まない問題でありますから、締約国同士が全部力を合わして、そういう紛争が起きた場合にどのように解決するかという方法は検討する必要があると考えております。
  360. 渡部一郎

    ○渡部(一)委員 大体私の意図が正確に伝わったようですから、その次、第四十六条をあけてください。  ここでは「国際出願の正確でない翻訳」と、まさに条約文ではあり得ないようなことが書いてあるわけであります。「国際出願の正確でない翻訳」これはまさに多国間における大きな利害が衝突する問題になる。ところが残念なことに「国際出願が正確に翻訳されなかった」と認定するのはだれかという主要な命題が落ちているわけですね。  もう一つ、六十七条「この条約は、ひとしく正文である英語及びフランス語による原本一通について署名する。」ここで規定されているのは重大ですね。英語とフランス語が原文となっていることです。日本語ではない。紛争になった際には、少なくともこの原文が常に持ち出されることをこれは示している。そうして事務局長は公定訳文を日本語でつくることになっておる。さて、そうすると問題は三つ、四つあります。  まず、国際出願が正確に翻訳されないと認定できるところはどこかということです。そして、その認定について争いが起こったらどうするかということです。次に、公定訳文が正確でないとだれかが認識したらどうなるかということです。そうして、もっとめんどうくさいのは、今度はそれを認定するのはだれかということです。だから、翻訳に関するエラーの部分を処理する部局というのがここでは明快に規定されてないという弱点があります。この点は追加交渉で煮詰められなければいけないのではないかと私は思いますが、いかがでしょうか。紛争処理というよりも、翻訳の部分についての詰めをどこでやる、だれがやる、だれが詰めるのか、その点はお答えをできる限りいただきたい。
  361. 熊谷善二

    熊谷政府委員 四十六条に「当該締約国の権限のある当局は、それに応じて特許の範囲を遡及して限定することができる」云々というふうに、後につながっているわけでございますが、この「当該締約国の権限のある当局」というのは、それぞれの国内官庁であるそれぞれの国内特許庁がこれに当たるものと解釈をいたしております。
  362. 渡部一郎

    ○渡部(一)委員 それは国際出願の部分だけであります。私の言ったのは両方、二つ質問があった。後ろの部分はお答えになってない。  もう一回申し上げますと、締約国の権限のある当局は、それに応ずることができるのですね。ところが「国際出願が正確に翻訳されなかったため、」というのは、何も権限ある当局が正確に翻訳されなかったと認定するかどうかという問題を別に規定しているものではありません。私だって正確に翻訳されてないじゃないかと言ったら、あなた方応じなければならないわけだ、この部分どおりにいけば。さあどうなんですか。これは非常に奇妙ですね。つまりこの条約はそこらじゅうに微妙な穴があいています。微妙な穴というよりも、むしろいままでの特許法のお役人さんたちがやった物の考え方で条約を見ているわけですが、条約文というものは、一瞬滑り出したとたんに恐るべき力を発揮する。これはありとあらゆる人が国際出願に対して文句を言い、翻訳が正確でないと言って特許庁に食ってかかる可能性ができるわけですね。そうすると、この辺はもう少し各国政府で詰めておいた方がいいのじゃないでしょうか。詰めておかないと、翻訳が正確にされなかったということが出願ごとに常に問題が提起されるでしょう。そうして特許庁が変じて翻訳庁になるでしょう。それをあえて引き受けるとおっしゃるならそれでもよい。しかしおたくの庁内はごたごたするのじゃないかと私は思いますね。だからどうしてこんないいかげんな文章を書いてしまったのか、それともこれは、日本文だからこんなことになっておるのか、私は不明ですね。だからこれは締約に当たって、もう少し追加で攻め込んで、各国の間で、正確に翻訳されてないという訴えをどういう手順、手続で受け取るかというのは詰めておかれた方が交渉官としては適切ではないか。今度の総会でやってもいいのではないかと私は申し上げておるのです。
  363. 熊谷善二

    熊谷政府委員 大変重要な指摘だと存じますが、この四十六条の趣旨は、たとえば軽微なミスと申しますか、軽微な誤訳がある。誤訳そのものだけでその出願全体を無効にすることは望ましくない、こういうことで、軽微のものはその部分を是正した上で存続させよ、こういった趣旨だと理解をいたしております。したがいまして、いわゆる原語と翻訳文につきまして一字一句細かく照合するという、いわゆる翻訳認証官といったところまでのことをここで議題にしているわけではなくて、当該出願に書かれております記載事項にあらわれている発明がどういう発明なのか、その発明の範囲が原語の場合と翻訳文の場合が違う、その場合の措置について、超える部分につきましての無効を宣言することができる、こういうふうに理解しておるわけでございます。
  364. 渡部一郎

    ○渡部(一)委員 長官、ちょっと待ってください。  あなたの特許庁長官としての御説明はわかりますが、これは国際条約ですから、あなたはその国際条約を自分の勝手に解釈することができないお立場にあります。ですからこれは来るべき総会においてあなたがその点を各国に確かめて、いまの意見を確かめて、こういうやり方でよいのですね、わかりました、皆そういうやり方でいきましょうというようなある種の合意が得られなければいけない。だから私は追加議定書とまでは言いませんよ。そこまで厳重に言っているのではないが、少なくとも少し穴があき過ぎているのではないかと思うところが何カ所も散見するので、追加交渉をなさることを、追加意見を申されることを希望するわけなのです。いかがですか。
  365. 熊谷善二

    熊谷政府委員 この条約を今後実施していく過程におきまして、各国とも同じような認識のもとでの運用が行われなければならないことは先生指摘のとおりでございます。私どもただいまの点につきましても、今後の運用上誤りなきを期すためにも、国際事務局と本件につきましての確認は十分行いたいと考えております。
  366. 渡部一郎

    ○渡部(一)委員 公定訳文はいつ発布され、それを日本側はいつ受け取るのですか。
  367. 山田中正

    ○山田説明員 お答え申し上げます。  日本語の公定訳文については、いまだ事務局と協議いたしておりません。国会で本条約につきまして御承認をいただきました後に、事務局と協議いたす予定でおります。
  368. 渡部一郎

    ○渡部(一)委員 公定訳文とここに出されている日本語の訳文とは当然違うことが予想されますね。これは日本政府が訳したのでしょう。条約局で訳したのでしょう。よろしいですか。だから法律的に非常に奇妙なことが起こり始めているのです。公定訳文ができる。ここで挙げられているものは、皆さんが条約局と特許庁で翻訳した、そしてこれは法制局審査にかけた、そしていまここへ提出された。違っていたら法制局の審査は再度必要になるでしょう。そうしたら一体この委員会の審査はどういうことになるのですか、これは。幽霊とお化けを相手にして審査をしたことになる。
  369. 山田中正

    ○山田説明員 お答え申し上げます。  私どもといたしましては、条約原文にのっとりまして、一番正確な日本政府訳をつくろうと努力した次第でございまして、その結果を現在御審議いただいておるわけでございますが、事務局と協議いたします場合には、当然私どもといたしましては、これは日本政府が責任を持って原文を忠実に訳したものである、したがって、これを公定訳として採用するように交渉する予定でございます。なお、御参考までに申し上げますと、ストラスブルグで作成されました特許分類条約がございますが、その場合にも同様の制度がございまして、政府といたしましては国会に御提出申し上げましたテキスト、それを事務局と交渉いたしまして、そのままのものを採用してもらった経緯がございます。
  370. 渡部一郎

    ○渡部(一)委員 それは手続上から言うと逆ですね。そういう手続は前に行われたことがあったとしても、法制局で審査されているのは、これです。これから公定訳文が出てくるのです。そして公定訳文が出てくるものが実質上の条約になるわけです。わが方は、公定訳文でも何でもない、日本政府が正しいと信ずるものがここへ出ているだけですね。これが正しい訳だと言って、もし公定訳文が違っていた場合には、わが国政府は公定訳文の間違っているのに同調しなければいけないのです。公定訳文と日本政府の訳と一致させるように努力するとおっしゃったけれども努力する前に、国政の審査権はどうなります。あなたはインチキな資料をここへ持ち出して本委員会にかけ、そして当委員会を愚弄したと言われても仕方がないでしょう。このややこしい条約上の、非常に瑣末的な——いま神学的な論争を私は展開しようとしておるのではないが、そこで保障措置が明らかに必要でしょう。だからこれは本委員会に参考資料として提出したとあなたは言わなければいけないはずだ。英仏両文が原文ですと説明しなければならないはずだ。これは参考資料ですと説明しなければならないはずだ。そして参考資料であるこの日本文が公定訳文と違うときは、直ちに外務委員会にそれを提示して、御了解を得ますと言わなければならないはずだ。そして重大な誤訳、エラー等があった場合には、改めて事後の承認を得るというのが本当ではないでしょうか。違いますか。
  371. 山田中正

    ○山田説明員 いま先生指摘になりました点、非常に重大な点でございますが、条約の正文はあくまでもこの条約規定いたしてございますように英仏両文でございますが、わが国条約締結いたします場合に国会の御承認要件となっておりまして、国会で御承認いただきますのは、やはり日本語のテキストを提出いたしましてそれに基づいて御承認いただくわけでございます。先生指摘の、万一国会に出したテキストと後ほど確定する公定訳との間に差ができたらどういうふうなことになるかという御指摘でございますが、私どもといたしましてはそういう事態が起こらないように最善の努力をしたつもりでございますが、これはもちろん仮定の問題でございますが、万一そのような事態が起こりました場合には、もちろん当委員会と御協議すべき性質のものであろうと存じます。
  372. 渡部一郎

    ○渡部(一)委員 非常に重要な問題についてお答えいただきました。今後こういうふうに当委員会に一回審査にかけたらそのまま承認されるというのでなく、何回か審査を継続しながら、憲法で規定されている当委員会条約審査権について明瞭に、事前事後の審査を正確に得るような努力を続けなければいけないと存じますし、それは今後の関係各省の御努力にまちたいと存じます。委員長もひとつこの点十分配慮され、委員長におかれては公定訳文が発布されましたら当委員会に必ず提出あるいは御説明されるよう要望いたしますが、よろしゅうございますか。
  373. 大坪健一郎

    ○大坪委員長代理 御趣旨に沿うようにいたします。
  374. 渡部一郎

    ○渡部(一)委員 それでは、私の質問はこれで終わります。
  375. 大坪健一郎

    ○大坪委員長代理 渡辺朗君。
  376. 渡辺朗

    ○渡辺(朗)委員 ただいまの特許協力条約について、特許庁長官お尋ねをいたしたいと思います。  いままで逐条審議にも似た形でいろいろ審議をされておりますので、ここでは重複を避けまして、数点だけ、特許ということについて私はまずお尋ねをしたいと思います。  第一番目にお聞きしたいと思いますのは、特許というのは特許権があり、それを売ったり買ったりということもございます。つまりわが国技術貿易収支というものに大変関連が出てくると思うのですが、いままで私聞きましたところでは、この技術貿易の収支は対価の支払い額、それに対しまして対価の受取額、受取額の方をAとし、支払い額の方をBとした場合に、A対Bは一対四から一対三というような形であったというふうに聞いております。これからの状態、これから推移していくであろう状態というものをどのように見ておられるのかということを、まず私はお聞きしたいと思います。特許庁長官資料ございましたらお答えをお願いいたします。
  377. 熊谷善二

    熊谷政府委員 ただいまの技術貿易収支の推移でございますが、「科学技術研究調査報告」、これは総理府統計局から出ておる資料でございますが、それによりますと、対価支払い額と受取額につきましては、先生指摘のように大体三分の一から四分の一、つまり日本の方が支払いが多いわけでございます。受け取りが三分の一ないし四分の一というような実情になっております。しかしながら、これは既往におきます日本の高度成長の際に、外国からどんどん技術導入が行われましたそれに対するロイアルティー、支払いがかなりの部分を占めておるわけでございまして、新規に行われた輸出あるいは輸入というものだけに限って見ますと、昭和四十七年から非常に明らかなパターン変化がございます。  四十七年からむしろ日本技術輸出の方が輸入を上回っておりまして、たとえば、四十七年は収入の方が支出を二割五分ほど上回っております。四十八年は同様二六%、四十九年は三七%上回っておる。また五十年は四一%上回る。新規のものに限りましてはそういうような状況になっております。これは私の理解では日本技術力の繁栄であり、またいまや技術貿易収支につきましては、ようやく外国との間で対等技術交流を行う時代になってきたということの証左であろうと考えているわけでございます。今後ますますこの傾向はふえていくのではないか、かように考えます。
  378. 渡辺朗

    ○渡辺(朗)委員 この協力条約加入した場合、これは日本側からすると、外国に対する特許出願というのは非常に容易になる。と同様に、外国の方からも日本に対してのそういうことが容易になる。この事態を見た場合に、これからの推移というものをどのように推測をしておられますか。
  379. 熊谷善二

    熊谷政府委員 最近の外国特許出願状況を見ますと、昭和四十年をベースにしまして昭和五十年の時点でたとえばアメリカ国内出願がどうなっているかといいますと、これは絶対件数が減少いたしております。同様にフランスドイツもしかりでございます。一割から三割方件数が減っておるわけでございますが、外国出願はむしろふえておるというような状況になっておるわけでございます。  日本は、それに対しましてこの十年間に二倍から三倍近い出願の伸びがあるわけでございまして、日本技術開発力を基礎にいたしました今後の特許出願件数というものは、なかなか根強い活力があるものと理解をいたしております。そういった意味で、いまや対等技術交流をすべき時代に入ってきて、安易には外国から技術が入らない。もしいい技術をとるためには、日本からもいい技術を向こうに提供しなければならない。クロスライセンスと申しますか、そういう時代にいまや入ってきているものと考えます。こういう意味におきまして、外国から日本に向けての出願もふえるでしょうが、同時に日本から外国に出ていくものの方がむしろ効果としては多いのではないか、こういうふうに私としては理解をしているわけでございます。
  380. 渡辺朗

    ○渡辺(朗)委員 いまのお話を聞いておりますと、技術貿易収支、これは貿易外収支になるわけです。これが今後はふえていくというふうに理解してよろしいわけですね。  それでは次にお聞きいたします。  もう一つ特許というものがその国の科学技術の発展に対してどのように貢献しているのか。貢献度というようなものの指標は何かございますでしょうか。ありましたら、たとえば数カ国、あるいは日本だけでも結構でございますが、教えていただきたい。この数年間の推移というものを教えていただきたいと思います。
  381. 熊谷善二

    熊谷政府委員 これは経済企画庁で発表されている資料でございますが、今後五十年代から六十年代にかけましての経済成長の平均六%といった伸びを見込んでいる中で、いわゆる技術開発と申しますか、技術の革新によって伸びる効果、寄与率は大体六割から七割組み込まれている、こういうふうに考えております。日本の過去の統計を見ましても、三十年代ぐらいには技術革新の経済成長に占める寄与率は二割程度ぐらいであったと思いますが、その後逐次上がりまして、最近は六割前後あたりになっているのではないか、こういうふうに考えておりますが、全体として今後の日本経済成長に寄与をいたします技術開発の効果、また同時にそれを支える特許制度役割りは大変大きいものと私は考えております。
  382. 渡辺朗

    ○渡辺(朗)委員 さて、もう一つ、二つお聞きしたいのですけれども、先ほど、出願をして処理されるのに必要とする期間は二年三カ月ぐらいだという御答弁があったやに聞いております。よその国ではいかがでございましょうか。いままで聞いているところによると、日本なんかでずいぶん長い時間、三年ぐらいもかかったというふうに聞いておりますけれども、よその国と比べまして最近の状態はいかがでございましょうか。あるいはこれからの見通しというのはうんと縮まっていくように期待していいものでしょうか。そこら辺を教えてください。
  383. 熊谷善二

    熊谷政府委員 昭和四十五年度末におきましては、特許実用新案につきましての平均要処理期間というものが約五年でございました。その後逐次処理の促進を図りまして、先ほど先生指摘のとおり、本年の二月末現在で、平均要処理期間と  いうのは二年三カ月程度になっておるものと推定をいたしております。  各国でございますが、昭和五十年の数字をもとにして計算しました私どもの試算でございますが、主要国で一番早いのはアメリカが一年七カ月が平均要処理期間となっております。ドイツは一年九カ月でございます。イギリスは一年十一カ月というふうに理解をいたしております。なお、今後私ども、まずは平均要処理期間を二年まで持っていきたい、五十三年度末には実は少なくともその辺まで持っていきたいというのを私どもの目標にいたしておりまして、大体二年前後になりますれば、ほぼ国際的なレベルまで達したものと評価して差し支えないのではないかというふうに考え  ておるわけでございます。
  384. 渡辺朗

    ○渡辺(朗)委員 ぜひ一つスピードアップしていただくようにお願いをしたいと思いますが、ともあれ大変出願件数が多いのはアメリカに次いで日本であり、そして西ドイツだというふうに聞いております。  これは大変むずかしい問題になるかもわかりませんけれども特許庁長官にちょっとお伺いしたいんですけれども、この三カ国だけを比べてみて何か出願件数が非常に飛び抜けて多いんですけれども、三カ国だけを見ましても比較して特徴的なものは何かございますでしょうか。といいますのは、産業であるとかあるいは重化学工業のようなものに必要なそういう特許出願ということと、それから町の発明家、思いつき、アイデアというようなものと、何か件数としては膨大であるけれども、案外分けることもできるのではないかと素人考えに思うのですが、そこら辺の観点からのアメリカ日本西ドイツ、こういうふうな国々を比べた場合お感じになるような、感想でも結構でございます。あるいは数字があれば示していただくと、何かカテゴリー別に分けていただくとありがたいんですけれども、いかがでございましょう。
  385. 熊谷善二

    熊谷政府委員 件数につきまして、各国をそれだけで比較するのはいろいろな点で問題もあろうかとは思いますが、しかし一応の比較の材料でございますので、これをもとにして申し上げたいと思いますが、アメリカ国内出願が最近の数字によりますと約十万件でございます。しかし、アメリカ特許しかございません。実用新案はないわけでございます。日本特許だけで見ますと大体十三万件程度ということになろうかと思いますが、あと特許を上回る実用新案があるわけでございます。  実用新案は、先生指摘のように考案でございまして、特許と比較いたしますと高度さにおいてやや落ちるものではございます。しかしながら、私は日本のこの特許出願の中で、実用新案制度も非常に大きな役割りを占めているというふうに考えております。と申しますのは、日本技術の特徴と申しますと、たとえば外国の場合に、基本的な特許というものは外国側にはあるが、日本にそれがあるかといった議論がよくされるわけでございますが、確かに日本技術は、いわゆる応用技術あるいは生産技術といったものが非常に得意でございまして、直ちに生産にそれが適用される、こういうものが非常に多いわけでございます。  生産に直結いたしましたいろいろな、発明に至らないでも、創意工夫あるいは考案というものがかなりあるわけでございまして、これがやはりかなり特許出願という形においてあらわれてまいっておるわけでございます。この点は、たとえば発展途上国問題を考えます場合には、最も期待されている技術の種類であろう。基本特許をいきなり持っていきましても発展途上国は消化できないわけでございまして、やはり基本的な技術をマスターした上での応用的な技術というものが日本は最も得意である。最近、国際的に見まして一番得意な点は、エレクトロニクス面が国際的に見て日本の評価が一番高い部面であろうかというふうに考えております。
  386. 渡辺朗

    ○渡辺(朗)委員 私、最後にあと一問だけお伺いをさしていただきます。  この条約の定めている出願手続というのは、これまでの出願手続に比べて全く新しいものになるわけですね。したがって、そうなると手続が円満に行われて、それから混乱が起きないような、そういう十分な配慮を行政庁の責任でやっていく必要があろうと思います。その点、特許庁としては具体的にどのような普及活動あるいは広報活動というようなことを考えておられるでしょうか。そこら辺をお聞かせいただきたいと思います。
  387. 熊谷善二

    熊谷政府委員 一つは、全国的に組織的な説明会を実施いたしまして、各地で周知徹底を図りたいというふうに考えております。当庁の中に工業所有権相談所というものがございますが、こういったところあるいは官公立のいろいろな機関を通じましても協力を求めてまいりたい、こういうふうに考えておるわけでございます。  なお、手続の円滑化のために特許協力条約室というのを新設いたしまして、そこで窓口の一元化を図りたいと考えておるわけでございます。
  388. 渡辺朗

    ○渡辺(朗)委員 私は、これで質問を終わります。ありがとうございました。
  389. 大坪健一郎

    ○大坪委員長代理 正森成二君。
  390. 正森成二

    ○正森委員 特許協力条約PCTにつきまして、統計によりますと、わが国においては自国出願した件数と海外に出願した件数との比率をとってみますと、海外へ出願した件数は約二六%である。ところが他国は、自分の国に出願するよりも他国へ出願した件数が非常に多いという統計がございまして、したがってこのPCT承認あるいは批准しても、わが国の国民や発明家あるいは企業に余りメリットがないのではないかという意見もございます。しかし、同時にこのPCTには、そのことによって非常に利益になる、特に中小企業にとっても利益になると思われる規定もまたあるわけですね。そこで、私はそのような規定幾つかについて順次質問したいと思いますので、いま私が申し上げましたような観点から国民によく説明をしていただきたいと思います。  第一番目に、この条約の十一条を見ますと、国際出願日という制度がございます。これによりますと、たとえば、日本なら日本に提出をいたしまして、そしてアメリカだとかイギリスだとか西ドイツだとかフランスを指定国にいたしますと、日本出願した日が国際出願日としてすべての指定国でその日にさかのぼって権利が保護されるという規定になっておりまして、これは非常に有利かつ便利な規定であるというように言われているのですが、そういうように理解してよろしゅうございますか。
  391. 熊谷善二

    熊谷政府委員 そのとおりでございます。特に、日本国際調査機関になります場合には、日本語出願されまして、それが国際出願となるわけでございますので、とりわけいままで語学等につきまして問題のございました中小企業方々あるいは町の発明家といった方々は、日本語でまずは正式なものを受けとめてもらうという点では大変プラスになることであるというふうに考えております。
  392. 正森成二

    ○正森委員 いまそういう答弁がありましたが、たとえば、ステファン・P・ラダス教授ですか、ハーバード大学だと言われておりますけれども、この方がお書きになりました書物を見ますと、第十一条の(3)は、条約の中で最も重要な条文であるということで、国際出願は、国際出願日から各指定国における正規の国内出願効果を持っておるのだということで、この規定がこの条約の中でも非常に大切な規定であるということを指摘しているんですね。それは間違いございませんか。
  393. 熊谷善二

    熊谷政府委員 私もそのように承知いたしております。
  394. 正森成二

    ○正森委員 ところが、この十一条の(3)を見ますと、日本国の訳では、「第六十四条(4)の規定に従うことを条件として、」という、言ってみれば留保条件がつけられているわけですね。そして第六十四条の(4)を見ますと、六十四条というのは留保の規定でありますが、こう書いてあります。「(a)自国特許が公表の日前の日から先行技術としての効果を有することを定めているが工業所有権の保護に関するパリ条約に基づいて主張される優先日を先行技術の問題については自国における実際の出願日と同等に取り扱わないこととする国内法令を有する国は、自国の指定を含む国際出願であつて他国においてしたものを先行技術の問題については自国における実際の出願と同等に取り扱わないことを宣言することができる。(b) (a)の宣言を行つた国は、その限度において第十一条(3)の規定に拘束されない。」こうなりますと、ここに記載されている限りにおいては、国際出願日の有利性というのが全面的に拒否されるということになるわけですね。これはこのPCT条約の有益性を非常に根底的に制限するものであるというように思われるわけですが、一体こういう横暴な留保条項をつけた国というのは何カ国あって、その国の名前は何と申しますか。
  395. 熊谷善二

    熊谷政府委員 アメリカ一国でございます。
  396. 正森成二

    ○正森委員 お聞きになったとおりでありまして、この条約の存在意義といいますか、あるいは非常な有益性をただ一カ国だけが拒否しているということになるわけであります。私は、これはきわめて遺憾なことだと思いますが、アメリカは将来、この問題について自分の確保を変更する意思はないのですか。
  397. 熊谷善二

    熊谷政府委員 先住御指摘のようなこの留保を解除するような考え方につきまして、アメリカが何らかのアクションを起こすといったようなことは聞いておりません。  ただ、私どもの推定でございますが、これはアメリカがいわゆる先願主義ではなしに先発明主義をとっておるということからくることでございまして、それぞれの国内事情もまたあったものと理解いたしております。
  398. 正森成二

    ○正森委員 そこで私は次に伺いたいのは、この点に関連して、国会に提出されておる訳文に非常に不明朗な点があるのではないかということであります。それは私が読み上げました第十一条の(3)を見ますと、「第六十四条(4)の規定に従うことを条件として、」というように訳されているわけであります。そして第十一条の(3)の規定は「サブジェクト ツー アーティクル シックスティーフォー」、こうなっているわけですね。「サブジェクト ツー」という言葉が使われております。ところがほかの条項では、たとえば私はずっと見てまいりましたが、七条の(1)、八条の(2)(a)、それから三十七条の(4)(a)、五十三条の(6)(a)、五十九条というものを見ますと、いずれも全部「サブジェクト ツー」というようになっているわけですが、それらの条文の訳は例外なしに、たとえば七条を見ますと、「(1) (2)(ii)の規定が適用される場合を除くほか、図面は、発明の理解に必要な場合に要求さされる。」ということで、「除くほか」という言葉が使われておりまして、これはこの条文こそが本格的な条文であって、規定されているところは例外規定なんであるということが非常にはっきりしておるわけですね。ところが同じ「サブジェクト ツー」であるにもかかわらず、この十一条の(3)の最も根本的な点についての条文、しかもアメリカ一国だけが横暴をやっておる条文については、明白にそれはアメリカは例外なんだということを示して何々を除くほかとすればよいにもかかわらず、「第六十四条(4)の規定に従うことを条件として、」というように、あたかも六十四条(4)というのが上位規定であるかのごとき規定をしているというのは、全くアメリカに遠慮し、おもねるものではありませんか。なぜこんな訳をしたのです。
  399. 山田中正

    ○山田説明員 お答え申し上げます。  いまの先生指摘の点につきましては、先ほど法制局第三部長からも御答弁申し上げましたが、適用を除外しておるのではございませんで、第六十四条の規定に従うことを条件としてこの三項の規定の適用があるということでございますので、このように訳しておる次第でございます。
  400. 正森成二

    ○正森委員 そんなばかなことがありますか。六十四条の(4)の規定に従うことを条件としてなんて言いますけれども、同じことでしょうが。六十四条の(4)に規定される場合は除くということでしょうが。同じことでしょう。それじゃほかの場合もどうして、何条の規定に従うことを条件として、とやらないのです。ほかの場合には何々の規定を除くほかというように、きわめて明確にそれが例外規定であるということを認めているでしょう。それだのにこの条文に限ってこういうぐあいにしておるのは、これは何か、あたかも十一条の(3)という根本的な規定と、六十四条で横車を押しておるのが同等であるかのような、むしろ六十四条の方が上位にあるかのような、そういう印象を与えるように、作為的に国会に提出した条文をつくり上げておるというように解されても仕方がありません。そうでしょう。何でほかの条文と同じようにしないのですか。そうすることによって全く日本文として意味が通じないとかいうならば別だけれども、むしろ何々を除くほかとする方が、他の条文との解釈から見ても整合性があり、すっきりするにもかかわらずそういうことをやったのは、アメリカに遠慮し、あたかもアメリカが例外ではなしに、それは条約本文全体と同等である、あるいはアメリカの方が上位であるかのような印象をつくり出すためでしょう。
  401. 熊谷善二

    熊谷政府委員 この十一条の規定は、国際出願日というものは十一条の規定どおり「正規の国内出願効果を有するもの」ということで決めるわけでございまして、ただ条件があります。それは六十四条の(4)(a)に書いてございますように、先行技術の問題については、その部分に限っては実際の出願と同等に取り扱わないこと云々という規定がございまして、その部分についてだけ特別な取り計らいを留保しているわけでございますので、そういう意味で「除くほか」といたしますと全体が外れることになります。出願日を含めて例外ということになる場合は「除くほか」、こういう形になるかと思いますが、これは出願日そのものが適用され、単に先行技術に対する効果についてだけ留保しておる、こういうことだと私は理解いたしております。
  402. 正森成二

    ○正森委員 それだったらますますもって、何々の規定が適用される場合を除くほかとする方が正しいのですね。それなのに、そういうきわめて限定されたものについてだけこういう例外があるのだというのに、大きな顔をして「第六十四条(4)の規定に従うことを条件として、」というようなのは、もってのほかの訳し方じゃないですか。いまの特許庁長官説明だったら、いよいよもって、何々の規定が適用される場合を除くほかというようにするのが日本語として当然のことでしょう。  そこでもう一カ所、「サブジェクト ツー」を非常に不合理な、何々の規定に従うことを条件としてというように訳している個所があるのですね。それはどこか知っていますか。少なくとももう一カ所あるが、どこか知っていますか。——おわりにならないようですから、時間の関係で私から申し上げます。六十三条の(2)にそういう規定があるのです。六十三条の「この条約の効力発生」というところで、(1)の「(3)の規定に従うことを条件として、」とか、(2)のところで「(3)の規定に従うことを条件として、この条約が(1)の規定に従って効力を生じた時に締約国とならない国は、批准書又は加入書を寄託した日の後三箇月でこの条約に拘束される。」というようになっているのですね。
  403. 山田中正

    ○山田説明員 いま先生から御指摘ございました六十三条(2)項の訳し方でございますが、この条約が効力を生じたときに締約国とならない国がその後に加入する場合の規定ぶりがこの(2)項でございますが、(3)の宣言をした国につきましても、条約自体は(2)項の規定に従ってその国について発効する、ただし、その宣言した国につきましては特定の部分が留保されることになるということでございまして、(2)の規定の適用が排除されるわけではございません。したがいまして、このような「規定に従うことを条件として、」という訳し方にいたしたわけでございます。
  404. 正森成二

    ○正森委員 英語と日本語のことですからややこしいですけれども、このときだって、(3)の規定が適用される場合を除くほかとしても一向構わないわけでしょう。(3)の規定というのは、第二章の規定なんかについて留保している国という場合がある場合にはこういうように例外をつくるのですよ、こう書いてあるのでしょう。だから、その場合だって何も大きな顔をして「(3)の規定に従うことを条件として、」と言わなくても、(3)の規定が適用される場合を除くほかは、こうなったらすべて締約国になれるのだ、あるいはこの条約発効するのだというようにしてもいいわけでしょう。それで日本語としてちっとも意味は変わらないわけです。なぜこの六十三条についても「(3)の規定に従うことを条件として、」こうなっておるかというと、(3)には、第二章の規定やこの条約に付属する規則中同章の規定に対応する規定を留保している国がある場合には、こういう特別な扱いをするのだという規定なんです。そうすると、第二章の規定や第二章を留保している国というのは、これまたアメリカだけでしょう。そうじゃないですか。少なくともアメリカは留保しているでしょう。
  405. 山田中正

    ○山田説明員 この点につきまして留保いたしております国は、フランス、ルクセンブルク、スイス、米国の四カ国でございます。
  406. 正森成二

    ○正森委員 前の一カ国よりはややふえましたけれども、四カ国で、その中にはアメリカが入っておるわけです。つまり、アメリカが入っている場合には、この規定が適用される場合を除くほかと書けば、日本語として非常にすっきりしているし、すべてのこの条約について「サブジェクト ツー」の日本文が統一されるにもかかわらず、そういうやり方をしないで「この規定に従うことを条件として、」というように非常に遠慮した規定になっているという共通性が出てくると思うのです。こういう翻訳の仕方というのは、法制局と相談したのか外務省の条約局と相談をしたのか知りませんけれども、非常にアンフェアな翻訳の仕方である。こういう訳し方をしなければならない必然性は何もないのですね。そうじゃないですか。答えられないでしょう。——答えられないようでありますけれども、時間の関係で、与党の理事の方からいろいろサインがございますようですから、私は次の方に移りたいと思うのです。  こういう翻訳の不備というのは、先ほど土井委員質問をされました四十六条についても言えるわけなんですね。ここに英語の原文がございますけれども、四十六条はこういうぐあいになっているのです。最後の方だけ読みますと、「アンド デクレア イット ナル アンド ヴォイド ツー ジエクステント ザット イッツ スコープ ハズ エクシーデッド ザ スコープ オブ ジ インターナショナル アプリケーション イン イッツ オリジナル ランゲージ」こうなっているのです。ですから、これは文字どおり原語における国際出願の範囲を超えた部分についてはその効力を無効とするという意味なんですね。ところが、そういうように訳せば非常にわかりやすいにもかかわらず、先ほど土井議員も指摘されたように、その範囲を超える限りにおいて特許が無効であるというように、超える部分だけが無効であるともとれるし、超える限りにおいて特許全体が無効であるかのようにとれるように訳しておる、こういう点があるのです。これは将来非常に紛争を残す可能性のある問題点だ。  時間がありませんから言ってしまいますと、あなた方は以前はこうは訳していなかったのですね。たとえば昭和四十六年にこの条約が署名されましてから間もなくのときにはこう訳していたのです。「その特許最初の言語における国際出願の範囲を超える範囲で無効である旨を宣言することができる。」ちょっと日本語としては生硬でありますけれども。その後、昭和五十一年六月の特許庁訳というのがあります。ここでは「特許の範囲が原語の範囲を超える部分について特許が無効であることを宣言することができる。」この訳が一番いいのですね。大学の試験ならこの訳なら満点だし、いまの出てきた訳なら少なくも二、三十点引かれるということになると思うのです。なぜこんな訳にわざわざ変えたのですか。五十一年六月から現在までの約一年余りの間に、どこから入れ知恵されてこういうぐあいに変わったのか答えてください。
  407. 山田中正

    ○山田説明員 お答え申し上げます。  いま御指摘ありました部分につきましては、内容につきましては先生おっしゃいますとおり、超える範囲の部分ということでもちろん私どもも了解いたしておりまして、それを原文を見つつどのように訳したらよかろうかということで、特許庁法制局とも協議いたしまして決定したものでございます。英語の「ツー ジ エクステント」という言葉条約によく出てまいりますが、よく訳しております例といたしましては、何々の範囲内においてとか、何々の程度においてとか、何々の限度においてとか、何々に限りとかいうふうなのが通例でございますので、この場合、限るという現在の表現でわかるのではないか、それが一番適当な訳ではないかと考えて訳を作成した次第でございます。
  408. 正森成二

    ○正森委員 それがちょっとも適当ではないのですね。悪くなっているわけですね。われわれも大学の試験のときに、こうしようかああしようかと思って迷いに迷って、それでこっちにしようと思った方が間違っていて、点を引かれて落っこちたという例がありますから、特許庁もそういうことがあり得るのかもしらぬけれども、しかし、過ちというのは改むるにはばかることなかれで、ここで聞いておられる方はほとんど全部、私が指摘したように、範囲を超える部分についてというようにするのが何ら疑問の余地はないということがはっきりしていると思うのですね。そういうぐあいにお直しになるか、あるいは何らかの形でそれの解説をお出しになるとか、そういうようになさるお気持ちはありませんか。大学の試験と違って、まだいまならやり直しがきくのですよ。
  409. 熊谷善二

    熊谷政府委員 翻訳の問題でございまして、いままでの経緯は、先生指摘のとおりいろいろあったわけでございますが、私どもとしましては、いま条約局からお話がありましたように、最善と思って出しているわけでございますが、誤解を生ずることはよくございませんので、今後、全国的な説明会を行います中で、内容については明確に説明するようにいたしたいと思います。
  410. 正森成二

    ○正森委員 それでは、そういう答弁がありましたので、時間もございませんから先へ進みます。  同じく翻訳の問題について伺いますが、先ほど同僚委員質問されましたので簡略に言いますが、国際出願の原文と翻訳文が不一致の場合には、今度商工委員会に提出される特許法の改正案の百八十四条の四、五、六ではみなす規定というのがあって、これは翻訳文を原文といいますか正文とみなしてしまうわけでしょう。そして百八十四条の十四でもし異議でも出て、それが違っているということになれば、全体として拒絶してしまうわけでしょう。それで、異議でも出てこない限りは幾ら間違っていても、あるいは間違っていることに気がついても、みなす規定があるわけですから、推定規定ではないわけですから、みなす規定になってしまえばそれでいかなければしようがない、こういうことになるわけでしょう。解釈としてはそういうことですね。
  411. 熊谷善二

    熊谷政府委員 外国語によります出願国内にリンクさせますときの措置として、日本国内出願された「願書とみなす」ということを第百八十四条の六に規定いたしております。それで、審査中はこれですべてやるわけでございますが、ただ、このまま特許がされて、自乗一向これは修正ができないということではございませんで、先ほどの条約の四十六条の運用に基づきます措置といたしまして、特許後の無効審判あるいは訂正審判とのリンクという措置による救済、それから特許公告後におきます異議申し立てによりまして措置をする、こういった措置を考えておるわけでございます。
  412. 正森成二

    ○正森委員 その御答弁は先ほどの同僚委員の答弁の中で私も承っております。しかし、なぜ特許の公告をした後に異議でも出てきたのでなければ直せないのか。あるいは特許をしてしまえば、訳文が範囲が狭ければ出願人に不利になるし、範囲が広く訳されておれば第三者に不当な侵害を与えるということになるわけですね。だから特許庁が審査している場合に、これはわれわれでも往々あるわけですが、私も英語がよくできるわけじゃありませんけれども、非常に大事な個所だからこれは原文に当たろうとか、あるいはどうも訳がぎこちないから原文を見ようという場合はあり得るわけですね。そうするとその場合に、ああ、これは訳がおかしいなあとか、私の理解がおかしいなあというようなことがわかるわけです。だから、特許庁の職員の方もすべてがすべて英語の達人ではないでしょうけれども、しかし、審査といいますか書類を読んでいておかしいという場合に、当たってみて、ああ、間違っているなあと気がつくことは、これはあり得ると思うのですね。あり得ても、それをそのまま原文同様にしてやらなきやならないというのは非常に不合理であって、そういう場合には、その出願人に対して注意をして直させる措置をとるとかいうことが当然できてしかるべきである。諸外国においては、それは全部が全部、一言一句見るということではないけれども、訳文が間違っていると気がついた場合には、それを是正することができる権限が与えられておる国が大部分であるにもかかわらず、わが国ではみなす規定のために、間違っているということがわかってもみすみすそのまま進めなきゃならないというようなことは非常におかしいのですね。  それから、特許法の施行規則の十三条の二では情報提供の制度があるんですね。情報提供の制度があるのに、ここは訳が間違っておりますよというようなことを何らかの人が言うてきたとしても、何にも手を出すことができないということでは、これは本当の公平さを欠くということになると思うのです。ですから、この条約が通りましても、国内法審議というのは商工委員会でこれからも行われるわけですから、百八十四条の六の規定等を十分に考慮されるということを私は望んでおきたいと思うのですが、いかがですか。これは特許庁の職員初め、関係者が非常に強く望んでいることなんですね。
  413. 熊谷善二

    熊谷政府委員 今回の条約では、翻訳文の扱いは非常に重要な問題でございまして、私どもが工業審議会で議論いたしました際も、本件が最大の課題になっていたわけでございます。それで、いろいろ議論がございましたが、審査中におきましては日本語によって審査を行う、ただ、権利になった後の措置につきましてどこまで救済の措置を講ずるか、こういう点がかなり議論ございまして、当初は裁判所だけでいいのではないかという議論もあったのでございますが、やはり審判制度を活用しての措置が早うございますし、そういった方がいいのではないかということになりました上に、さらに公告後は、たとえば補償金請求権その他、特許に類します登録されたものとほとんど変わらない、それに準じた法的効果を持つわけでございますので、それに準じて異議申し立てを待って措置をする、こういうことまで議論が行われまして、そういう答申を受けまして今回法制化したわけでございます。この工業所有権審議会におきましては、裁判官、弁護士、弁理士の方々並びに各界の企業関係の方、あるいは消費者の関係の方もおられますが、過去におきまして二年近い時間をかけて出た答申でございます。全会一致の答申でございまして、私どもはこの問題は非常に簡単に措置をしたつもりではございません。十分考えた上での措置でございます。
  414. 正森成二

    ○正森委員 いまの答弁は、私は重大な国会軽視の発言があると思うのです。審議会で二年間慎重にやったからそれでいいのだという答弁でしょう。国会を何と心得ておるのだ。審議会で幾ら審議をしても、国会で不十分な点が発見されれば与党が修正したりあるいはみずからいろいろ考えたり、ましてや、私が言っているのは条約そのものじゃなしに、これから審議をされようとする国内法について言うているのだから、措置を考えることがあっても当然じゃないか。審議会を通ったからそれでいいのだという答弁をするのなら国会で何のために審議してもらうのだ。いまの発言は非常に重大です。そのままわれわれは見過ごすわけにはいかない。
  415. 熊谷善二

    熊谷政府委員 ただいま私の言葉足らずで、国会の御審議につきましていささか問題の点を御指摘賜りまして私としても大変申しわけないと存じますが、そういう趣旨は全くございませんので御理解賜りたいと思います。  私はいままでの審議会で議論されました経緯を御説明申し上げただけでございまして、重ねて申し上げるようでございますが、この問題は種々議論をいたしまして、国内法の段階でさらに十分御審議をいただくべき問題であろうかというふうには考えておる問題でございます。そういう重大な問題だと理解をいたしております。
  416. 正森成二

    ○正森委員 それじゃ特許庁長官が一応訂正したかっこうになりましたから私もそんなに深追いするつもりはありません。商工委員会審議の際に、いずれ各党から御意見が出ると思いますけれども国内法を制定する場合には十分それらの希望、要望に耳を傾けて善処していただきたいということを申し上げさせていただきたいと思います。  そこで、十一条の国際出願日が、わが国の国民あるいは発明家企業中小企業を含めて有利に働くという問題から出発いたしまして、大分いろいろ横道にそれましたけれども、それ以外に、この条約には中小企業等に有利な点があると思うのです。それをもう一、二点申し上げさせていただきたいと思います。  たとえば十五条に「国際調査」という項目があります。ここの国際調査は私の理解では事前に特許庁国内の官庁としてPCTでも一定の調査機関としての役割りを与えられて調査をするということで、それを出願人に知らせてやると、もし同じようなもので先行技術が出ていればこれは特許になりませんよということでむだな費用を節約してやるとか、これは大丈夫、いけそうだという示唆を与えるとかという意味で、わが国の国民あるいは企業等にとっても有利に働く面があり得ると思うのですが、そう理解してよろしゅうございますか、説明してください。
  417. 熊谷善二

    熊谷政府委員 御指摘のとおりでございます。中小企業にとりまして情報の提供がなされますので、今後の特許出願を継続するかどうか、むだな出願だと判断いたしますと取り下げになりまして、経費の節減につながるわけでございまして、中小企業にとりまして特に利益のあるものと考えております。
  418. 正森成二

    ○正森委員 そこで、そういう前提で要望したいのですが、そういうように国民に便益を十分に図るためには、略してミニドクと呼ばれている最小限資料というのですか、そのたぐいのものを十分に備えるとか、条約の前文の「新たな発明を記載した文書に含まれている技術情報の公衆による利用が容易かつ速やかに行われるようにすることを希望し、」とか、こういうことを十分サービスをしてあげる必要があると思うのです。  特許庁の中に公衆の閲覧室というのもあるようですけれども、それはどのくらいの広さで、十分に公衆に対して利用され得るようになっておりますか、あるいはミニドクは十分にございますか、その点を伺いたいと思います。
  419. 熊谷善二

    熊谷政府委員 特許庁内にございます公衆閲覧所のスペースは五百五十平米でございます。  なおミニドクでございますが、私ども庁内に十分整備をいたしておりまして、利用できる状況にあると判断をいたしております。
  420. 正森成二

    ○正森委員 非常に心強い答弁でありますが、私どもが別にお聞きしているところでは、公衆閲覧室はしばしば満員になって利用されがたいような状況になるとか、ミニドクは非常に心細い資料整備状態であるとかいうことを聞いておるわけです。ですから、おごる平家は久しからずといいますけれども特許庁長官みずからが、十分にそろっておるのですとなると、これ以上よくなりようがないのですね。ある程度はそろっているけれども、まだまだ不十分なんだという謙虚な気持ちがあって初めて前進することができるわけですね。ですから、まだこれからも充実させなければならない点がある、あるいは改良しなければならない点があるということをお認めになって、もしそういう点があるとすれば前進されるお気持ちはありますか。
  421. 熊谷善二

    熊谷政府委員 いま御指摘の点は、私先ほどさらに御説明すべきだったのでございますが、特許関係資料は現状のみならず今後増大することがかなり予想されます。そういう意味におきまして、庁舎のスペース等を考えますと、また同時に、民間の方々の場合もそれぞれ社内的に特許管理をなされておりますので、同様の問題を抱えておられるわけでございます。その場合に、やはり関係資料の、たとえばマイクロ化を進めていくとか、二次文献でアプローチをしていくといったことを中心といたしまして、簡略なサーチの方法ができるようなことも今後考えていかなければならないと思っております。今後ともそういう面では大いに努力していきたいと考えます。
  422. 正森成二

    ○正森委員 なお、そのほか本条約が有利に働き得る場合として第三十一条に「国際予備審査の請求」というのがあります。     〔大坪委員長代理退席、委員長着席〕 この国際予備審査が請求され、それが特許権等について相当経験を持っておる先進国で行われて、そこの予備審査の肯定的な結果が付属書類につけられますと、こう申してはなにでございますが、発展途上国等で特許制度に十分なれておらない国では、たとえば日本があるいはフランスがこういう意見をつけておるということで、特許を得やすくなるという意味で非常に肯定的に働く場合がある、あるいはそれはまた発展途上国の審査を援助する意味を持っている点も指摘されるのですが、そういう理解の仕方も可能なわけですが、お答えください。
  423. 熊谷善二

    熊谷政府委員 そのとおりでございます。
  424. 正森成二

    ○正森委員 それでは、大体私がお聞きしたいと思う最小限は聞きました。ほかにまだ数点ございますけれども、私が委員長とお約束しました時間の最小限の部分は過ぎましたので、これで終わらせていただきたいと思います。
  425. 永田亮一

  426. 伊藤公介

    伊藤(公)委員 できるだけ重複を避けて四点だけお尋ねしたいと思います。  この条約は一九七〇年に署名をされてそれから七年間経過をしているわけであります。その間にいろいろ十分な検討をしてきたというお話もございましたけれども、他国の例で言いますと、署名をしてから批准加盟をするまで七年間というのは、常識的には大体こういう経過でよろしゅうございますか。
  427. 熊谷善二

    熊谷政府委員 本条約は、各国とも実は相当な準備期間を要しまして、今回ようやく発効にこぎつけたわけでございますが、他の条約におきましても同様なケースが見受けられるかと思います。署名から発効まではかなりの時間がかかっておるものがございます。たとえば、私ども関係では、商標登録条約というようなものも、署名は行われておりますが、国際的にまだ発効していない、かなりの期間がたっておるわけでございまして、条件の成就を待たないと発効に至らないという状況のものがございます。
  428. 伊藤公介

    伊藤(公)委員 いろいろ本条約批准するメリットというのを聞いてまいりました。万一この条約批准加盟しなかったときのデメリットを具体的にお尋ねをしたいと思います。これが第一点。  それからもう一点は、ストラスブール協定によって定められた国際特許分類と本条約とは、どのような関係にあるのかを御説明をいただきたいと思います。
  429. 熊谷善二

    熊谷政府委員 世界はこのPCTによりまして今年六月から業務を開始いたします。日本がこの条約加盟しない場合には、従来どおりのパリルートによります取り扱いしか日本の国民は便益を享受できないわけでございます。この条約がねらっております効果が期待できない状況になるわけでございまして、特許大国としての日本は国際的な責任を果たせないという面も生ずるかというふうに考えます。  それから、ストラスブール協定でございますが、このIPCによる分類はすでに効力を日本においても発効いたしておるわけでございますが、この特許協力条約におきましても、処理に当たりましては、このIPC分類を付与することによりまして処理を行うことになるわけでございます。
  430. 伊藤公介

    伊藤(公)委員 最後に、最近特許庁では出願審査請求の適正化の指導をされたと伺っているわけでありますけれども、これはいかなる目的で行われたのか、またその結果はどういうことになっているのか、御説明を伺って、質問を終わります。
  431. 熊谷善二

    熊谷政府委員 本事業は、昭和五十一年から続けたものでございますが、有効な発明はどんどん行っていただくことが必要でございますが、むだな出願が非常に多いという現状がございます。たとえば、出願されましても、特許になりますのは半分以下になるというのが実情でございますので、出願に当たっては、特許に値するものを出願していただきたい、事前調査と事前の評価をやってもらいたい、これが回り回って民間の方々にとってもプラスになる、こういうことで、個別に各社とコンタクトをとりまして、適正化事業として協力を要請しておるわけでございます。  最近の効果としましては、出願状況は大体前年度並みにこの三年間推移しておりますので、これは景気問題等もございましょうけれども、そういった適正化事業による効果もその中に織り込まれているものと評価いたしております。
  432. 永田亮一

    永田委員長 これにて本件に対する質疑は終了いたしました。     —————————————
  433. 永田亮一

    永田委員長 これより本件に対する討論に入るのでありますが、別に討論の申し出もありませんので、直ちに採決いたします。  本件は承認すべきものと決するに賛成の諸君の起立を求めます。     〔賛成者起立〕
  434. 永田亮一

    永田委員長 起立総員。よって、本件は承認すべきものと決しました。  お諮りいたします。  ただいま議決いたしました本件に関する委員会報告書の作成等につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  435. 永田亮一

    永田委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決しました。     —————————————     〔報告書は附録に記載〕     —————————————
  436. 永田亮一

    永田委員長 次回は、来る二十九日水曜日午前十時理事会、同十時三十分より委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。     午後七時十五分散会