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1978-03-22 第84回国会 衆議院 外務委員会 第7号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和五十三年三月二十二日(水曜日)     午後零時三十四分開議  出席委員    委員長 永田 亮一君    理事 大坪健一郎君 理事 奥田 敬和君    理事 塩崎  潤君 理事 毛利 松平君    理事 井上 一成君 理事 土井たか子君    理事 渡部 一郎君 理事 渡辺  朗君       川田 正則君    鯨岡 兵輔君       小坂善太郎君    竹内 黎一君       河上 民雄君    久保  等君       高沢 寅男君    中川 嘉美君       正森 成二君    伊藤 公介君       楢崎弥之助君  出席国務大臣         外 務 大 臣 園田  直君  出席政府委員         防衛庁防衛局長 伊藤 圭一君         外務政務次官  愛野興一郎君         外務省アジア局         長       中江 要介君         外務省アメリカ         局長      中島敏次郎君         外務省欧亜局長 宮澤  泰君         外務省条約局長 大森 誠一君         外務省条約局外         務参事官    村田 良平君  委員外出席者         外務省中近東ア         フリカ局外務参         事官      岡崎 久彦君         外務省国際連合         局外務参事官  小林 俊二君         外務委員会調査         室長      高杉 幹二君     ――――――――――――― 委員の異動 三月二十二日  辞任         補欠選任   松本 善明君     正森 成二君 同日  辞任         補欠選任   正森 成二君     松本 善明君     ――――――――――――― 本日の会議に付した案件  国際情勢に関する件      ――――◇―――――
  2. 永田亮一

    永田委員長 これより会議を開きます。  国際情勢に関する件について調査を進めます。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。大坪健一郎君。
  3. 大坪健一郎

    大坪委員 きょうは時間が大変短かいものですから、大臣に二点だけお伺いをいたしたいと思います。  最近、国際環境が非常に複雑化してまいりまして、ごく最近では、公明党訪中代表団中国を訪問される、それからたしか本日は、社会党訪中団中国を訪問されるというようなことで、日中間の問題が、日中の平和友好確立について非常に動き出しておるという印象が一般にございます。しかし、総理大臣なり外務大臣が、かねがね日中平和友好条約については積極的な姿勢を表明されておりますし、また公明党代表団中国おいでになりまして、非常に成果のあるお話し合いをされてきたわけでございますけれども、それにもかかわらず、日中間平和友好に関しての問題点には、まだなかなか詰めのむずかしい問題があるように私どもは思います。実は、日中間の問題が複雑な国際環境の中で日中間だけでは当然考えられない、日ソ日米、そういった環境、あるいは東南アジアの諸国と日本との関係も踏まえて考えなくてはならぬ問題になってきておるというふうに考えるわけでございます。全方位的に外交感覚を鋭くしなければならぬ時期ではないかと考えるわけでございます。  そうなりますと、この一月に外務大臣ソ連おいでになりましてお話し合いになったときに、ソ連善隣友好条約の草案を文章にして示そうとした。公式には受け取ってきておられないようでございますけれども、私どもが手に入れましたもので拝見しましたところでは、四島返還の問題をたな上げしておりますから、その点については絶対に承服できませんが、中身議論としては、日中間議論対応したような議論ソ連も展開し始めたという感じがございます。したがいまして、私はこの日中平和友好条約中身の具体的な、たとえば覇権条項とかということは、政府当局の慎重な審議と対応で決まることだろうと思いますけれども、日中、日ソ外交を進めていくあり方についてちょっと御質問をいたしたい。  つまり、日中平和友好条約というものの締結を進めていくいろいろな関係を強化する一方で、日ソ間の問題ということに対して相当慎重に御配慮をいただかなくてはならない。われわれはやはりソ連とも、われわれの条件に合った主体的な友好関係というものを確立していかなくてはならないと考えるわけですが、そこら辺のところを外務大臣としてどのようにお考えになっておられるか、非常に重要な時期でございますので、ひとつ伺わせていただきたいと思います。
  4. 園田直

    園田国務大臣 日本外交を進めて一つ懸案を解決するに当たって、二国間だけではなくて他の国々との関係も考慮しなければならぬことは、御発言のとおりだと私も心得ております。そこで、日中友好条約は、これは共同声明の線に従って進めておるものでありまして、あくまで中国日本の二国間の問題でございます。そこで、他国の影響によってこの問題が影響を受けることはございませんで、日中は日中で進めてまいります。しかしまた一方、ソ連に対しては、御発言のとおりに友好関係を逐次積み重ねていき、懸案の問題も解決するのは当然でありますので、その点十分配慮はしながら、影響は受けないようにやっていきたいと考えているところでございます。
  5. 大坪健一郎

    大坪委員 ちょうど時間が半分来てしまいましたが、日中の条約をつくりますときに、もしソ連が日中の条約と同じようなものを日本に対しても締結したいというふうに言ってきた場合、まあ日ソ間にはまだ四島の問題が未解決でございますから、非常にむずかしいわけでございますけれども、そういうときの対応をどういうふうにお考えになられるか、あるいは日ソ間はそういう話し合い以前に、もっとなすべき両国友好関係の推進というようなことがあるのか、その辺はいかがでしよう。
  6. 園田直

    園田国務大臣 ソ連に対しては、御承知のとおりにわが国の一貫した不変不動の方針がありまして、まず平和条約締結すること、この平和条約には未解決の問題を解決して平和条約を進める、それから他の条約はその後の相談によるという前提一つあるわけでございます。そこで、その前提が解決されて、平和条約を結んで次に友好協力条約を結ぼう、こういうことになれば、今度はその内容が問題になるわけでありまして、その二つに分けて考えているところでございます。
  7. 大坪健一郎

    大坪委員 この問題はまたこの次に継続して検討してまいりたいと思いますし、公明党の御努力社会党の御努力中国側考え方もなお明らかになってくれば、日中問題についての私ども考えも整理して、また質問してまいりたいと思います。残された時間で、日米関係についてひとつお伺いをいたしたいと思うわけでございます。  最近、日米関係に少しむずかしいぎくしゃくした関係があるのではないかという議論がございます。もちろん、アメリカでこの十一月に国会議員の選挙が行われるというような条件、あるいは日本黒字が非常に膨大になりまして、アメリカ国民の世論が、日本黒字に対して非常に厳しくなってきておるというような問題点が背景にあろうと思いますが、アメリカ当局としても、あるいはアメリカ政治社会日本に対する一般的な考え方としても、若干釈然としないところがあるのではないか。そこら辺のところをわが方も十分心をいたして推量して、両国間の関係について話を詰めていかないといけないのではないかと思うわけでございます。  私は、実は昨年国際海洋法会議の場に参りましたときにも、アメリカの方々と議論をいたしました。ことしの二月五日から十日までワシントンに実はちょっと行ってまいりまして、日米の若手の議員議論をいたしたことがございます。いろいろ率直に議論をぶつけてみますると、やはりアメリカの中に一つ議論がある。つまり、戦後日本アメリカのいわば核のかさに依存をいたしまして国民経済発展を進めてまいりました。そういう点では、経済的な負担というものが軍備に余り割かれなかったという条件がございまして、そのことはまた国際社会情勢から当然のことではあったのですけれども、ある意味では非常な日本利点になっておりました。しかしそういう利点がいまの段階にまで継続して、日本経済力世界第三位、自由世界では第二位になり、その輸出力が非常に強力なものになった現状においてまでそういう考え方日本が対米関係に臨むことは、アメリカ側から見ると、やはり世界現実に対する認識について非常に食い違いがあるように思われるという意見でございます。防衛ただ乗り論とか、簡単な言い方をするとそういう非常にぎくしゃくした言い方になりますけれども、そういう議論が一部にある。たとえば、日米安全保障体制考えた場合に、現在のこのアジア安定状況が、日米安全保障体制によって支えられているということは紛れもない現実的な事実でございますが、この安全保障条約は、第五条でアメリカ日本の国を防衛する義務を一方的に負っておる。そのかわりに、その補完措置といいますか、そういうことで、第六条に基づきまして、アメリカ極東の平和と安全を推持する任務を遂行するという場合に、必要があればわが国施設でありますとか区域でありますとかいうものを提供するということで、いわば日本の憲法で規定した動ける範囲協力をする、それが一種の相互性になっておるわけでございます。  ところが、ベトナム戦争が終わりまして、あるいは韓国からの撤兵問題等が起こりまして、アメリカ戦略配置あるいは極東に対するコミットメントの仕方が少し変わってきた場合に、この六条の効果というものがアメリカにとって変わってきておるかもしれない。一方わが国では、事前協議という観点からだけ、この六条で提供しております基地の使用問題を議論する傾向があります。全体として、国際関係として、日米間の問題としてこれを考えていない傾向がある。こういうことになりますと、やはり私ども気持ちいかんとは関係なしに、アメリカ日本関係で非常にぎくしゃくしたものが残ってくるのではないだろうか。したがって、日本黒字問題が非常に問題になっております現状でもございますから、われわれとしてはやはり安保条約の五条、六条の問題も考えて、アメリカ極東において現存しておるということの持つ、国際政治的な安定要素としての意味考えた上で、日米間の関係をもう一遍考慮し直す。たとえば在日米軍経費についてこれをもう少し大きな目で考え直してみる、あるいは地位協定についてこれをもう少し大きな意味考え直してみる、こういうことが必要ではないかと思うのです。  そういたしませんと、アメリカに育ちつつあります対日不信というものに日本が非常に鈍感であって、いつまでたっても日本はいわば防衛ただ乗り思想だ、こういうことを言われかねない。そういうことは、結果的に日米間に非常に深いところで不信の種をまくことになるのではなかろうか、こう考えるわけでございます。私は、野党の皆さんにも率直にお訴えをして、こういう問題については従来の議論の枠をわれわれお互いに一歩出て、真剣に極東情勢国際情勢現実を踏まえた議論をしてみなければいかぬのじゃないかと思っておりますけれども、きょうは外務大臣に、いま私の申し上げましたことを基礎にいたしまして、日米間の、特に六条の問題の、日本からアメリカに提供するいろいろな準備状況、そういったものが、アメリカ日本防衛義務対応するほどのものでなくなってきたのではないかというようなアメリカの感情に、どういうふうに対処するかということについて、ひとつお考えを聞かせていただきたいと思います。
  8. 園田直

    園田国務大臣 経済問題を契機にして、日米間にいろいろ問題が起こっていることは御承知のとおりであります。これについては両政府おのおの努力をしているところであります。困難な問題はありますが、これは必ず両国努力によって解決されると考えておるところでございます。しかし、日米関係日本政治経済外交の基軸であるとするならば、さらに日本米国は率直に話し合い、率直に相互理解をする必要があると考えます。こういう意味において、日本の方も在外外交ルートあるいは国会議員の交流あるいは各業界、こういうものを通じて広く国民国民の間の相互理解を深めることは必要であって、この点、もっと率直にお互い相互理解をする必要があると考えております。  しかし、防衛ただ乗り論については、これも日本はもっと率直に米国実情理解させる必要があるので、どうもただ乗り論あるいは経済黒字に対する批判が、日本防衛費を使わないで、その余った金を経済の方に使っているという非難がなきにしもあらずでありますけれども、だからといって、これを防衛費に回してどうこうということは間違いであって、ただ乗り論が言われないように、日本防衛費をある程度に抑えて、そして、経済的な発展をやっている、その発展したものを経済協力であるとか、あるいは各国際間の拠出金であるとか、こういうことにどんどん協力をしていって、そして、日本防衛費を抑えておるかわりに、これだけ米国並び世界各国協力しているという態勢をとると同時に、その実情理解させる必要があると考えております。  そのために、したがってこの米軍日本あるいはアジアにおける軍の費用をもう少し日本も考あたらどうだという御意見でございますが、これは地位協定両方の分担することは決まっておるわけでありまして、この点はアメリカも十分理解しております。日本も十分この点は承知をしておなますので、物価が上がる、そのほかいろいろの問題で、アメリカ会計検査院等米軍在日駐留経費等を云々されていることもよく承知はしておりますけれども、だからといって米国軍事費日本負担をするということは、これは大変大事なことであって、うかつにこういうことを考えるよりも、むしろ地位協定というのがあって両方でそれを守ってやっているわけでありますから、そう言われないように、ほかの方面に日本努力をする必要があると考えておるところでございます。
  9. 大坪健一郎

    大坪委員 時間が来たからこれで終わります。非常に微妙なむずかしい国際環境の時期でございます。外務大臣の御健闘をお祈りしたいと思います。
  10. 永田亮一

  11. 井上一成

    井上(一)委員 まず私は外務大臣に、日中問題については大変御苦労をいただいておりますことを多としたいと思うわけであります。  すでにもう報道がなされているわけですけれども、日中問題については早期締結を私ども社会党が提唱し続けてきたわけでありますけれども、もうその時期に到達をした、総理も含めて御決断をなさったと報道がなされておるわけでありますけれども大臣はこの問題については現在の時点で締結をするということについてもう御決断をなさったのかどうか、まずお聞きをいたしたいと思います。
  12. 園田直

    園田国務大臣 数日前の委員会で、総理がすでに決断をしておるということを私申し上げたわけでありますが、それは日中友好条約締結交渉を始めることについての決断総理がすでにやっている、こういうことでありまして、具体的にいま段取りをだんだん詰めておる時期でございまして、いつ何をやって、こうやって、ああやるかという決断という意味ではございません。そういう意味においては、私も早くからこれを決断をして各位の御協力を得ながら、そういう準備をだんだん進めておるわけでございます。
  13. 井上一成

    井上(一)委員 大臣、きょうの日にでも総理詰め段階に入るお考えは、あるいは御予定はおありじゃないでしょうか。
  14. 園田直

    園田国務大臣 きょう、いろんな報告をしたり、総理の御意見を承る機会はあるかもわかりません。
  15. 井上一成

    井上(一)委員 きょう総理報告をなさるというお答えであります。  そこで、私はその報告をなさるいわゆる日中の平和条約の具体的な中身についてさらにお聞きをいたしたいわけでありますけれども、とりわけ覇権条項についてはどこまでこの問題について突っ込まれた、入り込まれた話を、あるいは決断をなさっていらっしゃるのか、お聞きをいたします。
  16. 園田直

    園田国務大臣 覇権問題についてはしばしばお答えするとおり、共同声明に盛られた線を、一貫してこの立場を守る、こういうことでありまして、具体的には相手のあることでありますから、それぞれ案を考え総理に御相談をするつもりでおります。
  17. 井上一成

    井上(一)委員 共同声明に盛られた意見を十分尊重しながら相手国交渉する、いまわが国の態度、わが国交渉する姿勢というものはどのようにお決めになられていらっしゃるのか、もう少し具体的な形でお答えをいただければありがたいと思います。
  18. 園田直

    園田国務大臣 今度の交渉が始まりますると、その交渉の中で第一の点は、いまの覇権条項をどのようにするかということが一番大事な点となることはこれはもう御推察のとおりでありまして、私も同様に考えております。したがいまして、この点は相手のあることでもあるし、それから、最後の詰めになるわけでありますから、この段階では共同声明に盛られた線を貫く、こういうこと以外は言えませんのでお許しを願いたいと思います。
  19. 井上一成

    井上(一)委員 それじゃもう一点。台湾問題については今回の条約の中で触れられるのか触れられないのか。
  20. 園田直

    園田国務大臣 これはもう当然触れるべき筋合いの問題ではないと考えております。
  21. 井上一成

    井上(一)委員 それは共同声明に盛られた、いわゆる日本の当時の総理が、これは中国田中総理が渡ってお互いに確認をし合ったわけでありますけれども、その中でとりわけ、中華人民共和国領土不可分の一部であるということが盛られ、わが国はその立場を十分理解して尊重するのだ、こういう趣旨で表現をされているわけです。さすれば台湾は当然中華人民共和国領土としてわが国認識をしているのだという解釈でよろしゅうございますか。
  22. 園田直

    園田国務大臣 共同声明でいま言われたとおりでございまして、そして、日本台湾との外交関係はそれで切れておりまして、中華人民共和国というのがわれわれの相手でありますから、この問題は向こう内政上の問題でありますから、向こうから話が出なければ私の方から話を出すつもりはございません。
  23. 井上一成

    井上(一)委員 当然そのお答えの中には、いま私が御質問をいたしましたように、台湾中国領土の一部であるから台湾問題については中国の中の問題である、だからあえて言えば、今回の条約締結に当たっても中国領土の一部であるという立場を堅持しながら締結をなさる、それゆえに一切触れられないということでありますか、そういうふうに理解をしてよろしゅうございますか。
  24. 園田直

    園田国務大臣 すでにこの問題は、外交上は決着のついた問題でございますから、当然共同声明の線で処理された問題でありますから、向こうの方から話が出なければ、こちらはこの点については一言半句も一発言はする必要はない、こう考えております。
  25. 井上一成

    井上(一)委員 それでは、いままでの事務レベル交渉の中では、台湾問題について何ら触れられなかった、あるいは触れられたけれども、それは中国の問題として、わが国は関与しなかった、こういうどちらかだと思うのですけれども台湾問題については事務レベルでの折衝の中で何ら触れる機会がなかったわけですか、あるいはその辺、そういう機会があったのかどうか。
  26. 園田直

    園田国務大臣 内容は、両方約束で公表するわけにはまいりませんけれども、いまの御質問の点は、こちらからも向こうからも一音半句も出ておりません。それは言えなかったのか、言う暇がなかったのかではなくて、中国内政上の問題でありますから、こちらが口をはさむべきことではないということから話題にはなっていないわけであります。
  27. 井上一成

    井上(一)委員 そこでさらに私は、安保条約の六条に言われておる極東条項、いわゆる極東地域とはどこまでの範囲を指すのかということをここでまずお聞きをいたしたいと思います。
  28. 中島敏次郎

    中島政府委員 安保条約に言いますところの極東範囲につきましては、先生よく御承知のとおり、日米安保条約締結されましたときの特別委員会におきまして政府統一見解を出しておりまして、その後この見解に相違はないということでございます。この統一見解によれば、まず極東は地理学的に正確に固定されたものではない。しかし日米両国が、条約にいうとおり、共通関心を持っているのは、極東における国際の平和及び安全の維持ということである。そういう意味で実際問題として両国共通関心の的となっている極東区域というのは、この条約に関する限りは、在日米軍日本施設区域を使用して武力攻撃に対する防衛に寄与し得る区域である。かかる区域は、大体において、フィリピン以北並びに日本及びその周辺の地域であって、韓国及び台湾地域の、台湾支配下に――失礼、台湾地域もこれに含まれておる、こういうのが極東統一見解でございます。これはその後、変わっていないわけでございます。
  29. 井上一成

    井上(一)委員 外務大臣にここでお聞きをいたします。  日米安保条約極東地域という中で、いま台湾支配下にある地域、こういう答弁があったわけです。先ほどのお答えでは、台湾中国領土であるという認識に立っているわけなんです。中国領土にまで日米安保条約をひっかけて、そしてそのような立場日本側中国日中平和条約締結に乗り込むということは非常におかしい。大臣いかがですか。
  30. 園田直

    園田国務大臣 共同声明では、御承知のとおりに、中国立場を十分理解することができる、こういう表現をしているはずであります。したがいまして、日米安保条約日本米国の問題でありまして、この問題については米国中国がそれぞれ話し合うべき問題だ、こう考えております。
  31. 井上一成

    井上(一)委員 大臣、私がお尋ねをしているのは、安保条約の六条のいわゆる施設区域の供与という中で、極東におけるいわゆる平和及び安全の維持に寄与するためという形の、その極東範囲はどの区域を指すのかという質問の中で、台湾も入るのだ、こういうことをいまお答えになったわけです。それ以前に台湾中華人民共和国領土の一部であるということを大臣お答えになっていらっしゃるわけです。日米安保条約は、そのいわゆる中国領土の中にまで日本は関与していることにこれはなるわけです。いかがですか、大臣
  32. 大森誠一

    大森政府委員 先ほど大臣から述べられましたように、日中共同声明におきまして、わが国は、台湾中華人民共和国領土不可分の一部であるという中華人民共和国政府立場を十分理解し、尊重するとの立場をとっております。したがいまして、中華人民共和国政府台湾との間の対立の問題は、基本的には中国の国内問題であるというふうに考えるところでございます。わが国といたしましては、この問題が当事者間で平和的に解決されることを希望しているものでございまして、かつ、この問題が武力紛争発展する現実可能性はないというように考えている次第でございます。  ただいまお尋ね安保条約の運用の問題につきましては、わが国といたしましては、今後の日中両国間の友好関係を念頭に置きまして、慎重に配慮する所存である、こういうのが政府見解でございます。
  33. 園田直

    園田国務大臣 いま局長から答弁いたしましたが、米国中華人民共和国との政府交渉では、一方は台湾から軍を撤退しろと言い、そういうことは聞けない、一方米国台湾を武力解放しないと約束をしろ、それは聞けないということで、中国米国は表面的には対立をいたしております。内々はこれはどうなるかわかりません。なおまた中国はNATO及び安保条約については理解を示すという表現をしているわけでありまして、そのような、中国言葉で言えば小異を捨てて大同につくという言葉がありますけれども、いまや日中友好条約締結しようという時期にそういう問題を取り出すことは、これはもうそれだけでひっかかるわけでありますから、私の方では台湾問題について発言する意思は毛頭ありません、こう答えたわけであります。
  34. 井上一成

    井上(一)委員 私は、園田外務大臣は非常に物わかりのいい、そうして歯切れのいいお答えをいつもしていただいておるし、日ごろからその御努力に非常に敬意を表してきたわけです。限られた時間で、私は肝心なぜひ聞きたいということだけにしぼって私の方も質問をいたしておるわけですから、核心に触れて、率直に素直にお答えをいただきたい。  重ねてお聞きをするようですけれども台湾中国領土であるということをお認めになられるわけですね。
  35. 園田直

    園田国務大臣 この委員会としては、安保条約を結んでおるわれわれと、安保条約を批判をされる皆さんとの意見の食い違いでそういうことを質問されることは当然であると思います。そこで私が歯切れよく返答できないのは、中国立場を十分理解するという表現共同声明してあるのは、こういうところにあるわけでありまして、こういう問題は後々の問題、残っておるわけでありまして、友好条約締結にまさに足を踏み入れようとしているときに、歯切れのよい返答を私がすることは、井上さんからはほめられますけれども、後々支障があるわけでありますから、この点は歯切れ悪いところでとめておきたいと存じます。
  36. 土井たか子

    ○土井委員 それでは外務大臣に関連質問申し上げます。  ただいまおっしゃるとおり非常に重要な時期ではございますが、この条約がスムーズに締結の方向に向けて歩みを進めるためにも、いまの問題については後々問題が残ろうと思います。そこで、いま井上委員が取り上げて質問をされております台湾との関係、これは外務大臣御答弁のとおり、日中共同声明の中の第三項にはっきり日本としては「領土不可分の一部であることを重ねて表明する。」「この中華人民共和国政府立場を十分理解し、尊重し、ポツダム宣言第八項に基づく立場を堅持する。」と述べてあります。そのとおりで今日まで来たわけなんですね。今回、日中平和友好条約の中でこのことを確認するかどうかという問題はいまこちらにおきましょう。しかし現実の問題としては、台湾については米台条約がございます。そのアメリカ日本日米安保条約締結いたしております。したがいまして、台湾のこの立場に対して、領土不可分ということを日本としては確認をするという立場日中平和友好条約に対して臨むということであるならば、アメリカに対してこの問題に対する対処の仕方が日本としてはあろうかと思うわけでありますが、外務大臣とされてはアメリカに対してどのような対応をなさるわけでありますか。このことをお聞かせいただきたいと思います。
  37. 園田直

    園田国務大臣 いままでの折衝でも全然その問題は出ておりませんが、今後とも出てくるとは私は想像いたしません。これが平和条約締結ならそういう問題が出てくると思いますが、今度は友好条約締結でありますから、向こうの方からもそういう話題は出てこないと存じます。その出てこないものを、事前になってこちらがどうこう言うことは、決して締結交渉をスムーズにやる道ではない、私はこのように思い込んでおりますから……。
  38. 土井たか子

    ○土井委員 中国側から話題は出る出ないという問題はありましょう。しかし、向こうが撃ち出す弾を受けてばかりいるという問題じゃなかろうと思うのです。日中平和友好条約というのは、実質的に締結する当事国である日本立場というものは、この節、共同声明を堅持するという立場で具体的に締結が進められるわけでありますから、その中身に対しては誠意ある立場というのがやはりあるべき姿だと私は思う。そういうことから考えると、いまの米台条約、そのアメリカ日本日米安保条約を結んでいるという立場現実の問題としてあるわけですね。このことについては、日本としてしかるべき立場というものをはっきり鮮明にしていかなければならないのじゃないでしょうか。中国から聞かれたから答えるじゃない。中国から問題を投げかけられたから、それに対して問題に対処するということじゃない。日本としては日米安保条約のもとにあるこの立場において、日中共同声明というものをはっきり守っていくという立場からすると、共同声明中身に対してやはりあるべき姿というものを堅持する、このことは大変大事だと思うのでお伺いをしているわけであります。いかがですか。
  39. 園田直

    園田国務大臣 共同声明中国立場は十分理解しているということを表明しているわけでありますから、この線でわれわれはその立場を守っておるわけであります。したがいまして、この友好条約締結するについて何か聞かれれば、共同声明立場を守るということを私は主張するつもりであります。それを、聞かれないうちにこちらが、あれはどうだ、これはどうだとひっかかるようなことばかり言っておったら、日米首脳者会議の方を先にやってしまって、そして日中友好条約は後に回せ、こういうことになりますから、それは得策ではない、このように考えておるわけでございます。
  40. 土井たか子

    ○土井委員 それは首脳会談の前後の問題もあるでしょう。しかし、台湾の問題に対しては、アメリカに対して米台条約の今後のあり方ということに対して、いささかの日本としては提言があってしかるべきだと思うわけでございます。いかがでございます。
  41. 園田直

    園田国務大臣 米国も大国であり中国も大国であって、米台条約意見は衝突しておるわけであります。しかし、だからといって、両方は交際しないと言ってない。片一方は、安保条約理解する、こう言っているし、米国米国で、正面切って日本みたいにやるわけにはいかぬが、いろいろ相談はしょう、こういうことで、頭越しに米国中国とやるおそれはないが、今日ではテーブルの陰でこっそり手を握られる可能性は非常に多いわけでありますから、そういう意味で私は友好条約締結は急いでおるわけであります。  したがって、大国と大国の間で話がつかずに、それは両方言い合ったままで後に残してあとの話を進めておる段階に、われわれがこれを持ち出す必要はない、こういうのが私の理解でございます。
  42. 高沢寅男

    ○高沢委員 関連でちょっとお尋ねをしたいと思います。  いま、これは中国との交渉の問題であって、平和条約ではないからこのことはこちらからは触れない、こういう外務大臣お答えでありますが、そうすると、今度のこの日中平和友好条約には平和という言葉が入っているのでありますが、この言葉意味は一体何になるのかということもひとつお尋ねしたい問題です。もし平和条約ではないというならば、その条約の名称もたとえば友好協力条約とかいうような名前にするのが、その条約の本体に適した名前のつけ方じゃないかと私は思うのですが、これをひとつ大臣見解をお聞きしたいということが第一。  それから第二にお聞きしたいことは、台湾、澎湖島の関係は、すでに御承知のとおり、サンフランシスコ条約日本は、その権利、権原を放棄しております。このサンフランシスコ条約には、われわれ日本社会党は独自の判断がありまして反対はしましたけれども、これはすでに国際条約として成立をして、日本台湾、澎湖島を放棄しているということは確定した国際的な事実ですね。放棄したその台湾、澎湖島を、ではどの国の領土になるかということについては、当時は台湾国民政府があって、国民政府が、これはおれのものだ、こう言ってきたわけです。しかし、それに対して中華人民共和国は一貫して、台湾、澎湖島はわれわれの領土である、こう言ってきたわけですね。その中華人民共和国の主張と、台湾にある国民政府の主張のこの二つがぶつかり合う関係の中で、日本としてはこれをどうするかということは大変経過がありましたけれども、しかし、先般の日中共同声明によって、日本政府もまた台湾、澎湖島は中国領土であるということを確認したわけであります。  そうなりますと、もし中国、あの台湾海峡のところで仮に何らかの紛争が発生しても、これはあくまで中国内政問題であります。こういうふうに先ほどあなたもおっしゃったわけです。そうであるとすると、その中国内政問題であることに対して日米安保条約が発動される。あの第六条の、極東の平和と安全のために日本にいる米軍極東区域へ出動する、その出動する対象の地域台湾が含まれるということは、すでにこの日中共同声明ができた後の段階においては、これは相成り立たぬ関係だと私は思うわけです。したがって、今度の日中の交渉の中であなたは日本側からこれに触れない、こうおっしゃる。それが一つ立場だと仮にしても、少なくも日本政府日米安保条約についての考え方としては、極東区域から台湾は除外されるべきものである。従来極東区域台湾を含めて言われましたが、日中共同声明のできた後においては、台湾極東区域から除外する、こういう日本政府立場が当然出てこなければならぬじゃないか、このことをお尋ねしたいと思うのです。  最初の一点と後の二点と二つについてお答えをいただきたいと思います。
  43. 中江要介

    ○中江政府委員 御質問の三点の第一点のところを私から御説明いたしたいと思いますが、今度の日中平和友好条約締結交渉の合意というのは、御承知のように日中共同声明ですでに合意されたことでその締結交渉をやっておるわけでございまして、この源になっております日中共同声明の中には、その前文の中にも、また、この平和友好条約に言及しております第八項の中にも、日中間の平和友好関係を強固にし、発展させるためにこの条約を結ぶ、こういうことがはっきりうたわれておりまして、平和友好関係という一つの術語として当時から認識されておりまして、その内容は、先ほど来外務大臣がおっしゃっておりますように、いわゆる戦争処理の平和条約という性格ではなくて、平和友好関係を強固にし、発展させるというところに目的を置いた条約でございますので、いわゆる戦争処理の平和条約的な要素は一切ない。したがいまして、領土の問題その他も入りようがないというのが私ども認識でございます。
  44. 高沢寅男

    ○高沢委員 いまの点についてもう一度お尋ねしたいと思いますが、日中共同声明にそういう平和友好関係という言葉がすでに使われておる、それを受けて今度の条約平和友好条約という名前になる、これは説明としてはわかりました。わかりましたけれども、しかし戦後処理の問題はこの条約の対象にはならぬと繰り返し言っておられるわけで、そうすると、われわれの常識的な概念では、一つの国と一つの国が戦争状態にあって、それが終わって戦後処理の問題を取り決める、それが平和条約である、こういうふうにわれわれは常識的に考えるわけですが、そういうような平和条約ではないということであるとすれば、本来ならば、あの日中共同声明の中の言葉の使い方も、平和友好関係という使い方よりも、たとえば友好協力関係というふうな使い方の方がより内容に即した妥当な言葉であった、こういうふうな見方ができるのじゃないかと私は思いますが、この点はいかがでしょうか。
  45. 中江要介

    ○中江政府委員 一つの見方としては、いろいろの見方があるわけでございますから、それを真っ向から否定するという必要はないと私は思いますが、少なくとも戦後の日中関係の出発点であり、日中双方がこれを忠実に遵守しようと言って誓い合いました日中共同宣言の中では、私が先ほど申ち上げましたような言葉の使い方になっておりますし、他方、戦争の処理につきましては、当時から何回も言われておりますように不正常な関係に終止符を打つという考え方で、過去の多少の期間不幸な状態があったこの日中関係をすべてあの共同声明で清算した。これはあの共同声明が発出されました直後の記者会見のときに当時の大平外務大臣もおっしゃっておりますように、日中間の暗い過去はすべてこれで清算した、その中に、いわゆる戦争状態の存在した期間も含めまして、暗い過去はすべて清算してこれからの日中関係はすべて将来に向かっていく、将来に向かっていく中にいろいろの構想が述べられた一つとして、平和友好関係を強固にし発展させるために日中平和友好条約締結する、こういうことで述べられておりますので、私どもがとっております解釈もまた十分理解のできることでありますし、共同声明に沿ってこれを考えますならば、私ども考えていることの方が共同声明を忠実に履行してゆくゆえんではないか、こういうふうに考えているわけでございます。
  46. 高沢寅男

    ○高沢委員 大臣お答えをいただく前に、もう一度いまの点でだめ押しですが、それでは中江局長、この前の日中共同声明が、事実上、日中間に関する限りは平和条約の役割りを果たすものであった、こういうふうに確認をしてよろしいわけですか。それをちょっとお聞きしたいと思います。
  47. 中江要介

    ○中江政府委員 そこが大変むずかしいところでございまして、私どもはそれをどういうふうに受けとめているかといいますと、日中間の不正常な状態はこれで終わった、こういう受けとめ方をしておるわけでございます。
  48. 高沢寅男

    ○高沢委員 どうも奥歯にはさまるような感じが消えないのでありますが、私がそういうことを非常に繰り返して言うのは、たとえば日中間現実に尖閣列島という問題があります。これについては外務大臣は、今度の日中の交渉では触れない、こう言っておられるわけです。それは別にやる問題だ、こう言っておられる。しかしこれも、たとえ小さな島であっても、正式に取り上げてみれば領土問題であります。もしそういうことで日中間でどうするかというその合意が成立をして、それを取り決めをするということになってくると、これも本来なら平和条約ということの中の一部の問題じゃないのか、そういう問題が現実に残ってるるじゃないかということが私は言えると思うのです。  そういうことも含めて考えますと、今度の平和友好条約平和条約ではありません。しかし、本来平和条約でやるべき問題は、現実に将来に残っております。そして、では先般の共同声明平和条約であったかというと、そうも言い切れぬ、どこをついてみても何だか大変に割り切れない、そして非常にあいまいなそういうことではないか、こう感ずるわけですが、そこのところをひとつ、すとんと胸に落ちるように説明してもらいたいと思うのです。
  49. 中江要介

    ○中江政府委員 いま先生は尖閣諸島の問題に言及されましたが、この尖閣諸島という島についてのいろいろな議論は、戦争とは全く関係のないところで起きているということがまず第一点でございまして、したがいまして、戦後処理あるいは戦争処理に絡まる領土問題という角度からは何ら関係のない問題だという点が一つでございます。  と申しますのも、この尖閣諸島について、歴史的にも国際法上も間違いなく日本の固有の領土であるし、また実効支配をしている、つまり日本以外の国がこの島について何らかの主権的な権利を行使するということは日本の力によって阻止されているというのが現状であります。それについて、一九六八年になって初めて、あの近辺に石油資源があるかもしれないというエカフェの報告があってから周辺諸国が関心を示した。で、一九六八年になって初めて関心を示したものは、これは戦争状態とは全く関係のないことでありますし、またそのころになって関心をお示しになる国がありましても、そんなものは日本として認めるわけにもまいらないし、国際法上も主張し得る根拠がないというのが日本政府の一貫した立場でございます。
  50. 高沢寅男

    ○高沢委員 この問題はなお今後も続けてやりたいと思います。  それでは時間のあれもありますから、先ほどの台湾極東区域から外すべきである、このことについての大臣お答えをいただいて、後、それについてまた井上委員、土井委員から質問を続けたいと思います。よろしくお願いします。
  51. 中島敏次郎

    中島政府委員 第二点につきましてお答えさせていただきます。  先ほども外務大臣あるいは条約局長からお話がありましたように、わが国といたしましては、台湾中華人民共和国領土不可分の一部であるという中華人民共和国政府立場を十分に理解しかつ尊重する、そういう態度でいるわけでございます。他方、御承知のように日中共同声明は、安保条約の問題に触れることなくして達成せられたというのが当時の事態でございまして、この状況は今回の交渉に当たりましても、日中平和友好条約交渉に当たりましても、変わろうはずがないわけでございます。  ところで米台条約は、これは当然のことながらアメリカ台湾との間の第三国間の条約でございます。それに伴って当然に日米安保条約が絡んでくるという関係にはない。日米安保条約日米間の条約でありまして、第六条の事前協議によりましても当然に台湾との関係が出てくるということには相ならないわけでございます。  台湾のその事態につきましては、この問題がかつて御論議になりました昭和四十七年の大平大臣統一見解にもありますように、この武力紛争発展していく可能性というものはまず第一に考えられない、そういう可能性というものは考えられないというのが現実にあるわけでございます。  なお、それの上でさらに安保条約の問題、先生の御提起になりました問題につきましては、その統一見解にありますように安保条約の運用につきましては、わが国としては今後の日中両国間の友好関係をも念頭に置いて慎重に配慮する所存であるということを政府として表明しておりまして、このことが、わが国安保条約との関係におけるところの台湾の問題についての対応ぶりを明確に示すものであるというふうにお考えいただきたいのでございます。
  52. 井上一成

    井上(一)委員 私はここで重ねて外務大臣お答えをいただきたい。さっき問題を提起した、そして土井委員なり高沢委員が関連して質問をしたわけでありますけれども台湾極東範囲に入るのか、入らないのか、明快に大臣からお答えをいただきます。
  53. 園田直

    園田国務大臣 安保条約においては、極東範囲台湾は入っておるわけでございます。
  54. 井上一成

    井上(一)委員 それでは、在日米軍が有事の場合には台湾に向けて出動するということもあり得るという意味なのですか。――大臣に答弁を……。
  55. 中島敏次郎

    中島政府委員 大臣お答えになる前に事務的なことをお答えさせていただきます。  先ほども私から申し上げましたように、安保条約……(「大臣大臣」と呼ぶ者あり)
  56. 永田亮一

    永田委員長 後から園田外務大臣に答弁させます。
  57. 中島敏次郎

    中島政府委員 先ほど私もお答えいたしましたように、極東範囲台湾地域が入っていることは事実でございますけれども、日中国交正常化交渉は、安保条約の問題に触れることなく達成せられたというのが当時の認識でございまして、その立場はその後も変わっていないわけでございます。  他方、安保条約の運用につきましては、いま申し上げましたように、日中間友好関係を十分に念頭に入れながら対処していく、こういうことを申し上げている次第でございます。
  58. 園田直

    園田国務大臣 いま局長から答弁したとおりだと私も考えております。
  59. 井上一成

    井上(一)委員 大臣に重ねてお尋ねをいたします。  私は決して在日米軍台湾に出動をするような事態は好まないわけですし、そういうことはあってはいけない。しかし、台湾安保条約の中では極東範囲だ。日米安保条約の六条の、極東に有事の場合はというくだりから考えれば、これは明快にひとつ大臣からお答えをいただきたい。局長の答弁で、そのとおりだ、どっちが大臣なんですか。私は園田大臣に自信を持ってお答えをいただきたい。どちらなんですか。在日米軍はそんな形の中では一切出動させない、いかがなんですか。
  60. 園田直

    園田国務大臣 いま局長が申し上げましたのは、政府統一見解でございますから、一局長発言ではないわけでございます。  なお、極東範囲に入っておれば米軍が出動することはあり得るじゃないかということでありますが、それは論理としてはあり得るかもわかりません。しかし、米国台湾から撤退しない、中国は武力解放しないと約束はしない、こう言っておるが、お互いに言い合っていることは、ここで武力紛争を行いたくないという意図のあらわれだと私は見ております。日本としては、そういう事態には事前協議の問題が出てくるわけでありますので、私は、日本中国友好関係も考慮しつつ、十分尊重して、安保体制の中で日本がやっていくことが、今日、日本の進むべき道だと考えております。
  61. 井上一成

    井上(一)委員 私は台湾中国領土であるという認識の上に立って、いわゆる日米安保条約極東区域からも、中国に対する介入というおそれもありますので、外すべきだ。だから、中国内政に干渉しないという日本立場を明確にすべきである。それで、さっき大臣は、向こうから話があれば、それに対する対応の用意があるんだということをお答えになっていらっしゃったわけです。まあ話がない間はこの問題については触れないんだ、こういうようなお答えがあったんですけれども、やはり話のある、ないにかかわらず、この問題については日本の十分な意思、主体性を明確にしていかなければいけない。  そしていま、もしそういう場合には事前協議についてという話が出ました。当然、そうなければいけないわけですけれども、私の恐れるのは、当然事前協議をやらなければいけない、そのような数々の問題を、事前協議をやらずして、何ら歯どめなくして、いわゆる日本が平和から遊離した形の中へ流れ出しつつある。それはまさにランスミサイルを横田基地を経由して韓国に送ったじゃありませんか。この点についても、核弾頭及び中長距離ミサイルの持ち込みは事前協議範囲に入っているわけなんです。だから、どうしても歯どめをしなければいけない。それであえて外務大臣に、台湾に対しては安保条約の中では極東区域に入るという認識に立っていらっしゃるけれども在日米軍からの出動はいかなるときでも一切拒否する、あるいは日本としてはそのようなことは一切しないんだということを、ここで明確にすべきであるということなんです。大臣、いかがですか。
  62. 園田直

    園田国務大臣 これは総理大臣が国防会議を開き、それぞれの意見を聞いて、総理大臣政治信念に従ってやるべきことでありまして、そのようなこと自体を想像し、一外務大臣が答弁することはできません。
  63. 土井たか子

    ○土井委員 先ほどからるる井上委員質問をされているところでありますけれども、先ほど来言われている安保条約六条に言う極東範囲の問題については何ら関係なく、日中共同声明というものは結ばれたという局長答弁でございますが、日中共同声明締結した以上は、日本は守る義務がございます。これを守るということから考えていきますと、この安保条約六条に対しても、どのように極東範囲考えてこれに対処するかという、日本としては対応義務があるわけです。日中共同声明に従っての対応義務というのがその点で、その面で出てこようということだと思うのです。  そこで、従来統一見解があるとおっしゃいますが、なるほど昭和三十五年、四十一年、四十七年、それぞれ、極東範囲に対して台湾も含まれるという政府見解が公式的に、質問に対しての答弁という形で出ていることは事実であります。同じ形で当委員会における核拡散防止条約審議の際には、アメリカ防衛する範囲を言うという答弁も出ております。したがいまして、きょう私が取り上げた米台条約というのは、そういう意味において非常に大きな意味をなす。したがいまして、これは日中平和友好条約締結の暁には、ひとつこの安保条約六条に言う極東範囲に対して、政府見解はどういうものであるかということを、統一見解としてはっきりさせていただけませんか。いまこういうことを言うと、また外務大臣は、大事な時期にそういうことを言うということはよろしくない、日中平和友好条約締結に向けて促進をさせていくという方向からいうと、これは困った話だというふうな向きでこの問題をお取り上げになるかもしれません。したがいまして、日中平和友好条約締結のときに、この問題に対する政府統一見解というものをひとつ明らかにさせていただくということがどうしても必要のように思います。大臣いかがですか。
  64. 園田直

    園田国務大臣 私が先ほど申し上げたのは、誤解いただかぬようにお願いしたいわけでありますが、皆さん方がそういう質問をし、心配をされることは、これはもう当然のことであって、これに対して大臣が答えることが適当じゃないと、こういった意味でありますから、そこのところはお許しを願いたいと思います。  ただいまの土井さんの話でありますが、将来の状態を予想して、これに対して政府統一見解を出すということはいかがなものか、よく検討してみます。
  65. 土井たか子

    ○土井委員 そうすると、出すか出さないかを検討するということですか。ひとつその中身について検討して、政府統一見解というのをきちっと出してください。いままでこの問題に対しては少し変遷があるんですよ。はっきりさしていただきたいと思います。
  66. 園田直

    園田国務大臣 両方含んでよく相談してみます。
  67. 井上一成

    井上(一)委員 まだまだこの問題については質問をいたしたいわけですけれども、限られた時間ですし、次回に譲ることにして、とりあえずこれで質問を終えます。
  68. 永田亮一

    永田委員長 渡部一郎君。
  69. 渡部一郎

    ○渡部(一)委員 私も、日中の問題につきまして少々お伺いしたいと存じます。  いよいよ決定的な段階に入りつつあろうとしている現時点におきまして、交渉の開始あるいはその進展のために、かなりの配慮をしながら当委員会でも議論しなければならないと私は存じます。したがいまして、私も十分の配慮を持って質問したいと存じますし、政府側の御答弁も、勘どころは勘どころとして述べられるとともに、当交渉の万遺漏なきを期していただきたいと思います。  まず最初に、逆にお伺いするのでありますが、日中交渉で一番問題のあるのは、明らかに、対ソ連関係、あるいは対アメリカ関係をどのように配慮するかというポイントだろうと思います。しかし、当委員会では必ずしもそれが明確に議論されておりませんので、お伺いいたすのであります。  もちろん、わが国中国との間の友好をすることは、何もソ連アメリカに断りながらやるべき筋のものではない。文句を言われる筋のものでは全くない。私は、その立場を堅持することが一国の外交方針の樹立にとって必要だという立場は大事だと存じます。それと同時に、不快に思い、かつ、日本中国との接近を心配する各国政府に対して、それをどう理解させ評価させていくかということも、日本外交の重大な仕事にならなければならないと存ずるわけであります。  それで、大臣お答えいただく前に、欧亜局長から、まず、日中交渉に対するソビエト側の現在時点における反応、また予測される反応につき、差し支えないところをお聞かせいただきたいと存じます。
  70. 宮澤泰

    ○宮澤政府委員 ソ連政府はかねて、中国という名を挙げます場合も挙げません場合もございますが、日ソ関係発展を妨害する勢力があるというような言い方で、日本に向かってもそういうことを申してきた経緯がございます。しかしながら、ただいま渡部委員が御指摘になりましたとおり、日中が友好関係を結びますことは、決してこれが第三国に対して向けられた何らかの特別な行為とか、そういうものを意味するものでございませんので、この点につきましては、園田外務大臣も、先回モスクワにおいでになりましたときに、十分にソ連側にその立場を明らかにされたと思います。  ソ連側が、日中が条約を結びました場合にどのような態度をとってくるかということの予測を言えと、ただいま御指摘でございました。私、係官といたしまして、十分な責任を持って、どのようなことをやるかやらないかということを予測をいたすことは避けたいと思いますが、日本政府は決して、中国と組んでソ連に対するとか、このような意図はないわけでございますので、ソ連政府がこれに対して何らか報復措置をとるというようなことは、もしソ連が本当に日ソ関係を大事に思い、友好関係を思うならば、そういうことはあり得ないことだと考えております。
  71. 渡部一郎

    ○渡部(一)委員 大臣が先日ソビエトを訪問されました際に、先方から善隣協力条約の草案を渡され、当方から日ソ平和条約の草案を渡されました。そして、これは検討すべき内容でないと堂々申されました。  それはわが国立場として、日ソ平和条約を優先して交渉する、もう一つ前提を言えば、領土問題の解決なくして他の関係を論議することは、日ソ関係にマイナスであるという立場からお話し合いをされたと私は理解しております。しかしながら、この日中関係交渉する意味において、日ソ関係をこういう形で冷却というか、凍結しておくことがいいかどうか。日ソ関係話し合いのパイプをもう少し広げておく、何らかの形でもっと広げておくことが、一つ外交方針としてあっていいのではないかと私は思いますが、その点、外務大臣はどうお考えか、お示しをいただきたい。
  72. 園田直

    園田国務大臣 ただいま欧亜局長から答弁いたしましたが、先ほどの質問についてお答えいたしますと、ASEANの国々は、それぞれ意向を探ってみたところ、これは日中友好関係が進むことは賛成だという意向で、特に、中には時期を急いでやった方が日本にも有利だという意見等も出ております。アメリカの方はまた、これについては賛成のような意向をしばしば聞いておるわけであります。  ソ連については、御指摘のとおりでございまして、機を見てわれわれは理解を深め、他の問題で友好関係を進めるように努力をしなければならぬと考えておるわけでありますけれども、また一面から言うと、日中友好条約締結が時間をかけておると、その間は、やはりソ連の方は好ましからざることでございますから、いろいろ意見が出てくると存じます。締結すると同時に、また、ソ連に対してはあらゆる手を打って理解を深める必要があるということは、御発言のとおりだと考えております。
  73. 渡部一郎

    ○渡部(一)委員 今回の矢野公明党書記長を経由しての日本政府に対する中国政府の意思表示の中で、四項目の中で、第二項目で、「中日両国が平和友好関係を樹立し、発展させることは第三国に対するものではない。」と明確にうたい、かつ第三項目で「中日両国が覇権に反対することは、両国政府が共同行動をとるといったことを意味するものではない。両国はそれぞれ独自の外交政策を持っている。双方とも、相手内政に干渉するものではない。」と述べ、福田首相の伝言の第二項目、すなわち、すべての国々と友好関係を保つことは日本外交の基本的方針であるという言葉にこたえております。そのことは、まさにソビエトに対するわが方の有力な回答といいますか、説明の内容になろうと思います。これはもう少し、何らかの形でソビエト政府に対して十分認識を与えることが必要ではないか、そのための手だてはもっと公式、非公式にとるべきではないかと思いますが、いかがですか。
  74. 園田直

    園田国務大臣 ソビエトに対しては、機会あるごとにそういう理解を深めるよう努力はしておるところでございます。
  75. 渡部一郎

    ○渡部(一)委員 それでもなおかつ承知しないという雰囲気があるのか、いま説明しているけれども反応がないのか、その後の雰囲気はいかがでございますか。
  76. 園田直

    園田国務大臣 御承知のとおり、日本中国が友好条約締結することは好ましいことだとは考えていないわけでありますので、そこらあたりにソ連発言やその他が出てくるものと考えております。
  77. 渡部一郎

    ○渡部(一)委員 矢野氏のこうした伝言が日本のマスコミを通して流れて以来、ソビエト側の反応として、私はとりたてた反応を聞いておらないのでございますが、その点はいかがでございますか。
  78. 宮澤泰

    ○宮澤政府委員 ただいままでのところ、私ども、格別な反応を聞いておりません。
  79. 渡部一郎

    ○渡部(一)委員 私はこれは、ソビエト政府としては、非常に慎重に事態の様相を見守っているんだろうと思います。この言葉どおりが実際の外交上の実態としてどうあらわれるかということは、むしろ日本外交のこれからの取り組みを表示するものでありますから、この内容について、そのとおり文字どおり行われるならば、ソビエト側として何も言う筋はないだろうと私も思います。したがって、それでありますがゆえに、ソビエトに対する働きかけというか、交渉ということは、かなりのグレードをもって配慮すべき時期が来ておるのではないか、私はそう考えておるわけであります。これはどうしろこうしろということじゃありませんけれども、今後の問題として十分の御配慮をいただき、対ソ関係というのもある意味配慮内容に含めつつ、交渉に当たられることを希望したいと存じます。
  80. 園田直

    園田国務大臣 ただいまの御発言の趣旨は十分配慮して、事を進めてまいりたいと存じます。
  81. 渡部一郎

    ○渡部(一)委員 次に覇権問題でありまするが、外務省の欧亜局東欧一課の四十七年五月三十日付で出された仮訳でございます。「アメリカ合衆国とソヴィエト社会主義共和国連邦間の関係の基本原則(仮訳)」となっている文がございまして、それを見せていただいたわけでありますが、これはモスクワで一九七二年五月二十九日に発布されたものであります。このアメリカ合衆国大統領とソ連共産党中央委員会書記長の名によるサインのあるものの第十一項目において覇権条項とおぼしいものがあるわけであります。読み上げてみますと、「米国およびソ連世界の問題における如何なる特権または優越に対する要求もしないものとし、また他の何者のかかる要求も認めない。双方はすべての国家の主権の平等を認める。米ソ関係発展は第三国および第三国の利益を害するものではない。」とうたわれております。言葉の上で言うならば、いま私ども覇権条項の中で最も問題にしておりまするのは、この日中国交正常化は第三国に対するものではないという部分をどういうふうに言いかえるかで、日中間議論が衝突していると承っておりますし、事実そうだと存じます。  そういたしますならば、ここの第十一項目における「米ソ関係発展は第三国および第三国の利益を害するものではない」とうたってあるこの米ソ基本原則になぞらえて言いますならば、これと同趣旨の条文はあっていいだろうと、素人考えにも思うわけであります。余り細かいことはお答えにくいだろうということは推察した上で伺うわけであります。どういうふうに言ったらいいのか、詳しく言えと言うわけにもいかぬし、詳しく言うなと言うわけにもいかぬのでありますが、覇権問題に対してはもうほとんど問題点は煮詰まってきたのではないかと私は見ているわけでありますが、これに対する原則的なお立場を表明していただきたいと存じます。
  82. 園田直

    園田国務大臣 ただいまの御発言は、重要な参考といたします。
  83. 渡部一郎

    ○渡部(一)委員 いま御交渉の途中ですから、そういう御答弁でも涙をのんで勘弁することにいたしまして、そのかわり、しっかりがんばっていただくようにお願いしたいと思うのです。  ですから私は、覇権の問題に関してわが国の側がこれまで一生懸命中国交渉し続けてきて、問題を詰めてきたこの事実というものを積み重ねて、わが国周辺の諸国にも十分の説得を行いつつ、このようなよい状況にある日中交渉というのはないわけでありますから、この時期を逃さず、日本の長い安定のために本交渉をまとめていただきたいと思うわけであります。  二月の二十一日の参議院外務委員会において外務大臣は、当時、もうあと一、二回の韓念竜・佐藤大使間の詰めを行えば様子は大体見えてくるだろうと、その冒頭には、外務大臣の訪中もあり得るのだと表明されました。大臣はかねてより慎重居士である福田総理に対して、あるときは前になり、あるときは後ろになりつつ、押したり突いたりけ飛ばしたりしながらこの問題を進めてこられた実績があります。その御苦労はまことに高く評価しているわけでありまするけれども、福田総理の周りを外務大臣が取り巻いては何か叫び立てている感じもするわけであります。  それで、行きたいのだ、中国に行きたいのだと言っておられることは明らかにわかる。中国に行けと言われたら行く決意があるということもわかりました。みんなが行けと言ったら喜んで行くという姿勢のあることもわかります。そしてできたら私の意思としても行きたいのだと言っておられることもわかりました。しかし本当に行かれるのかどうかさっぱりわからない。だから、新聞の見出しで外相訪中という見出しはもういままで何十回出てきたか知れないけれども、余り何回も見出しに出てお行きにならぬとすると、オオカミと少年みたいなもので、しまいにみんなが愛想を尽かして、また同じことを言っているなということになりかねないと私は思います。  特に相手が信義の国でありますし、今度は中国の第四項目において、園田外相が訪中なさりたいとおっしゃるのであれば喜んでお迎えすると、中国政府までがそれをこちらが要求する前に述べたわけでありまするから、事は重大になってきたと私は存じます。あと交渉を進めるためには佐藤・韓念竜氏の間で詰めるべきテーマはもうほとんどなくなってきていて、そしてあとは覇権条項に対する政治決断が必要だとまで外務大臣はおっしゃいました。佐藤大使は現地における記者会見において、弾はすでに撃ち尽くしたと述べております。こういうことを考えてみますと、外務省関係ではやるべきことは大臣以下やり尽くして、総理のサインを待っておる、福田総理が口を開くのをじれながら待っておる、そして待ちくたびれておる、もうあくびが出るほど待っておるという感じではないかと私は思うわけであります。したがって、この交渉を進めるに当って、もはやある意味の打ち合わせがどこまで来ているのかということが何回も問われているのもそこに原因があるわけであります。  私はそこで、その辺の雰囲気をお伺いしたいわけでありますけれども、要するに決断をして――交渉のとびらはもうあいているわけでありますし、中国側の四項目を見ると交渉する態勢はすべて整い、玄関口を向こうは開いているわけであります。カードのすべてが開いているわけではないが、少なくとも玄関だけは開きました。わが方も玄関口を開くときが来た。では、どういう開き方をするのか、そして本当に交渉を始められるのか、問題はそこにあると思います。その辺をでき得る限りお話ししていただけませんか。
  84. 園田直

    園田国務大臣 先般、矢野書記長を初めとする訪中団向こうで会談をされて、お話を承ったわけでありますが、その中で特に、政府と自分たち野党とは違う、野党は野党の立場を守り、政府の限界に入らぬでやってくるという、しかもそれをやっていただいたことは非常にありがたいと思います。その中で、正式に中国の方が表に向かって外相訪中歓迎ということを言っていただいたことも、これまた皆さんのおかげであると評価しております。  向こうから日本政府に対する伝言だと言われた四項目、これはいままで政府交渉で言われたことを整理して、項目ごとに挙げて伝言されたものだと承っておりますが、その四項目を見ますと、これは交渉を始めればすぐまとまるという筋合いのものではなくて、やはり依然として、いよいよ条約交渉条約案もつくるということになれば、なかなかいろいろな問題が出てくるということが予想されるわけであります。近ごろ新聞で外相が訪中して政治決着をつける、こういうことがありますが、それは間違いでありまして、これは政治決着をつけるべき筋合いではなくて向こうと話し合って、日本国民が見ても、中国国民が見ても、ソ連国民が見ても、なるほどもっともだという決着をつけるべきであって、私が行くべき筋合いのものは政治折衝をするということが目的でありまして、もはやこの段階まで来ると事務当局は最高の努力をし、最善の実績を上げた、後に残るものは政治家同士の折衝である、こう考えておるわけでありまして、そういう方向に逐次段取りを進めておるわけでございます。これは御承知のとおりに、いつごろどうだということじゃなくて、いよいよそういう段取りになるとなればこちらの手続をしますし、向こうに申し上げて、両方合意で外へ申し上げるべきことでございます。まことに御質問の趣旨はよくわかりますけれども、私がここで、大体どういう段取りができておっていつごろどうなるということを申し上げることは、きわめて困難な立場でございますので、もう近ごろ歯切れの悪いことばかりでございますが、お許しを願いたいと存じます。
  85. 渡部一郎

    ○渡部(一)委員 だんだんガードがかたくなられたのは、日中交渉が進んでいるよい徴候だと私は理解しておりまして、手放しで信頼しているわけであります。こういう日本国民がいるということをわかっておいていただきたいと存じます。  ただ、いまおっしゃいましたように、政治決着をつける時期かどうかという問題でなく、政治交渉をする段階なんだ、その段取り、手続については両方合意で申し上げるべきことだからとおっしゃったことは、重大な言い回しだろうと私は思いますから、そのお言葉どおりに承っておきたいと思います。この交渉が妙な形で延びると国際情勢の急変の結果わが国は取り返しのつかないマイナスになる可能性がある。いまの国際情勢は一日で逆転することも大いにあり得ることですから、日中関係という日本外交の基軸を安定せしめることが、百年、二百年の将来にわたってまことに重大な問題である。言うまでもないことでありまするけれども、改めて申し上げ、万遺漏なきを期し、成功裏にこの交渉締結、承認に至るよう御努力をいただきたいと存じます。それを最後に要望とさしていただきます。
  86. 園田直

    園田国務大臣 御発言の趣旨は重々かたく守り、御期待を損なわないように間違いなしに進めることを申し上げて、私のお答えといたします。
  87. 永田亮一

    永田委員長 渡辺朗君。
  88. 渡辺朗

    ○渡辺(朗)委員 本日は国際情勢審議の日でございますので、日中問題もぜひやらしていただきたいと思いますが、いまもう一つ重要な国際問題が起こっております。中東の紛争が大変深刻な事態に来ているというわけで、この問題につきまして私、大臣に御質問をさしていただきたいと思います。  まず、アラブ・イスラエル紛争がベギン・サダト会談ということで大変明るい曙光が見えてきたと思いましたけれども、またゲリラ活動、それに対するイスラエル側の報復活動、こういうことで大変あの地域というものは深刻な状態を迎えております。これは私は、国際外交に臨む日本姿勢世界各国が注目している今日の情勢の中で、日本政府としてどのような態度を出すのかということは大変に重要な問題だと思います。  そういう意味でまず大臣に、中東和平の見通しについてどのようにお考えになっておられるかをお聞きしたいと思います。
  89. 園田直

    園田国務大臣 いろいろ紆余曲折、困難な問題が起こっておりますが、当事者はもちろん、世界各国も中東に平和が来ることを念願しておるわけでありますから、紆余曲折はありますが、この和平工作は必ず成功するように努力をしなければならぬ、また、和平は来るものと考えております。
  90. 渡辺朗

    ○渡辺(朗)委員 外務大臣日本政府として、この今日の情勢、事態を迎えて何らかの意思表示をされましたでしょうか、お伺いいたします。
  91. 岡崎久彦

    ○岡崎説明員 三月十六日、在京アラブ六カ国大使が外務省の中近東アフリカ局長を来訪いたしまして、十三日にイスラエル側の申し入れがあったのに対しまして日本政府がとった態度を高く評価する旨前置きしました上、イスラエルのレバノン侵攻は国際法及び国連憲章の違反であり、日本がこれを非難するよう要請してまいりました。また、翌日、アルジェリア大使はアラブ外交団を代表して、福田総理大臣に対する電報によって、同趣旨のアピールをしてまいりました。  これを受けまして二十日、外務省情文局長は次のような談話を発表いたしました。「一、日本政府は、従来より、中東における公正かつ永続的和平の早期達成を希望し、又、わが国は、平和愛好国家としていかなる武力行使にも反対している。二、日本政府は、最近のレバノンにおけるイスラエル軍の軍事行動にまで発展したアラブとイスラエルとの間の武力行為によって無事の人命が失われていることを極めて遺憾とするものであり、かかる武力行為が中東和平の達成を阻害するに至ることを深く憂慮する。三、日本政府は、国連安保理決議四二五に従い、イスラエルがレバノンの領土保全に反する軍事行動を直ちに停止し、すべてのレバノン領から同国軍を撤退せしめ、同地域における平和と安定が可及的速やかに回復されることを強く希望する。」
  92. 渡辺朗

    ○渡辺(朗)委員 三月十九日に国連の緊急安保理事会が開かれました。そこで安保理事会は決定をいたしております。一つは、いまの日本政府の出された内容も含んでおりますが、イスラエルのレバノン南部からの即時撤退、もう一つは国連平和維持軍の派遣及び駐留という問題であります。これに対しては日本政府はどのような態度をお示しになったでございましょうか。
  93. 園田直

    園田国務大臣 いま御指摘のとおりでありまして、安保理事会が三日間という短期間の間に国連軍設置を含む決議を採択し、右に基づいて事務総長が具体的措置をとりつつあることは高く評価をしておるわけであります。右決定に基づいてイスラエルが一日も早く占領地から撤退し、国連軍がその任務を回避できることを希望するところでありまして、それぞれの国にそれぞれの方法で伝達をしておるわけでございます。
  94. 渡辺朗

    ○渡辺(朗)委員 外務大臣、その点重ねてお尋ねをいたします。  国連平和維持軍をレバノン南部に派遣し駐留させる、そして先遣部隊はすでにもう到着するきょうこのごろの状態であります。それに対して日本政府として、外務大臣として、賛成でございますか反対でございますか、その点お尋ねをいたします。
  95. 園田直

    園田国務大臣 賛成でございます。
  96. 渡辺朗

    ○渡辺(朗)委員 それでは国連平和維持軍の派遣という問題についてお尋ねをしたいと思うのです。  今回、聞くところによりますと、四千名ぐらいの混成部隊を世界各国から派遣をする、そのうちの一千名は補給部隊であるというふうにも聞いております。今回の平和維持軍につきまして、日本政府には国連から何らかの要請はございましたでしょうか。
  97. 園田直

    園田国務大臣 国連では日本憲法をよく承知されておりますので、具体的な要請はございません。
  98. 渡辺朗

    ○渡辺(朗)委員 国連に日本が加盟しましてから今日まで、国連平和維持軍がたびたび各地域に紛争時に派遣されております。そういう場合に、いまだかつて要請されたことあるいは協力を求められたことはございませんでしたでしょうか。
  99. 園田直

    園田国務大臣 ございませんが、ただいままで五八年、レバノンのときに一回だけ要請されましたが、日本はこれを丁重にお断りをいたしました。
  100. 渡辺朗

    ○渡辺(朗)委員 いま五八年に一度要請があったけれども日本は丁重に断られたと言われました。丁重に断るということはどのようなことでございましょうか。私は、国連加入当初であるならばともあれ、今日世界で非常に大きな役割りを果たしている日本でございます。平和維持の問題についてもただお断りするだけでよかったのでしょうか。そこら辺、丁重なお断りをされたという中身についてでございますが、お尋ねをしたいと思います。
  101. 小林俊二

    ○小林説明員 お答えいたします。  わが国が国連に加盟をいたしましたのが一九五六年でございますから、五八年と申しますと加盟当初といってよい時期でございました。わが国の内情につきまして、まだ国連サイドにおきまして十分理解されてない点があったかと存じます。したがいまして、その時点におきましてわが国の国内法制を説明いたしまして、現段階におきましては御要請に応ずることはできないという事情を了解してもらったというのが経緯でございます。その後、その事情を了といたしまして、同じような要請は繰り返されておらないのでございますけれども、今後こうした問題は私どもとしてさらに積極的に、常に課題として検討すべき問題だと存じております。
  102. 渡辺朗

    ○渡辺(朗)委員 私いまお尋ねしているのは、確かにレバノンのときの五八年以降二十年たっている。今日、検討しなければならないとおっしゃいましたけれども、いますでに十九日には国連のそういう決議も行われ、そうしてまた平和維持軍が派遣されるという事態が来ている。これがもし拡大するような事態になってくれば、あるいは明日でも再度日本に対して協力の要請が来るかもわからない。これに対して、これから検討するということでは、二十年間というもの何らそういう事態を予測し、あるいは何も準備あるいは検討ということなしでこられたのかと、私大変不思議に思わざるを得ないわけであります。その点、何らかのお心構えなり方針なりというものをお持ちではないかと思いますが、いかがでございましょう。
  103. 小林俊二

    ○小林説明員 これは軍事要員の海外派遣という問題でございますので、非常に微妙な、国内世論の動向とのかかわり合いの大きな点でございます。私どもとしては、もちろん過去二十年間この問題について目をつむっておったわけではございません。常に可能な方途を研究いたしてまいったのでございますけれども、こうした方向を実現に移すということは、そうした世論の支持ということのかかわり合いを十分念頭に置かなければならないという問題でございます。私どもとしては、そういう意味から国内世論の動向に非常に注意深く考慮を払っておるということでございます。検討は常々してまいっておるわけでございますけれども、それを実現に移すということは、単なる検討とは違った、一つ政治的な判断が必要となるということでございます。もちろん単に理屈の上で申しますならば、ただいまのところ自衛隊法による制約はございますけれども、それをたとえば文民の形で派遣するとか、あるいは外務省の事務官に併任して出すとかいうようなことは考えられないわけではございません。しかしながら、私どもとしてはむしろそうしたこそくな手段をとるよりは、世論の支持があるならば、これをまともに正面から法改正というような問題に結びつけて考えていくべきであろうかといった議論も省内にはあるわけでございます。そうした観点から、実現の具体的な方法について常々検討を進めてまいったということでございます。
  104. 渡辺朗

    ○渡辺(朗)委員 外務大臣、いまのような御答弁でよろしいのでしょうか。たとえば補給部隊が今回も派遣されている。レバノンで一般の市民たちがたくさん倒れている、そういう状態の中で、たとえば医療団を派遣してほしい、こういうふうな要請があったとき、外務大臣はどのようにおこたえになりますか。中近東については今日まで、日本の国会において論議が少なかったのではないかと思いますけれども、先般の外務委員会でも外務大臣は、大変積極的にこれからの関係改善を日本としてやっていくのだということを言っておられる。私はいい機会であろうと思うのです。そういうような点を踏まえまして外務大臣としていかがお考えでございますか。いま、あした、そういうような要請があったという場合には、どのように対処されますでしょうか。
  105. 園田直

    園田国務大臣 御発言のとおりでありますが、事はきわめて重大でありまして、国連に入っている以上、世界の平和に寄与することはその責任であります。したがって、憲法に海外派遣を禁止してあるということも考えて、いまの医療班であるとかあるいは補給班であるとか、あるいは衛生部隊であるとか通信隊であるとか、こういうことだけでも出して協力するという意見もありますが、これまたうかつにいたしますと、海外派遣の一つの突破口になって、それから崩れる可能性国民の方からも非難されるおそれもあります。しかし、何か民間の医療班ぐらいは編成して協力してもいいのではないかということも考えますけれども、これは慎重に検討したいと考えております。
  106. 渡辺朗

    ○渡辺(朗)委員 外務大臣にもう一つ関連してお聞きをしたいと思います。  先般三月二日でございましたけれども、予算委員会の分科会において民社党の同僚議員から防衛庁の伊藤防衛局長質問しました際に、朝鮮半島で有事の際、難民の救済には自衛隊の出動ということはあり得るというふうな形を言われていると私は記憶しております。武力行使のために行くのではない、警察行動である、しかも中近東においてこれが拡大していった場合にはそういう戦乱の中で大変たくさんの犠牲者が出る。ああいうところは酷暑のところでもあります。あるいはまた医療品なんかも不足している、そういうところでもございましょう、施設もない。そういった問題について要請を受けたとき、私は難民救済活動ということで理解もされるのではあるまいかとも思いますが、いかがでございましょう。
  107. 園田直

    園田国務大臣 自衛隊の国内の災害出動と、それから国際的な非常災害に対する出動とは本質を異にしておりますし、それから民間を編成してと、こう言いますが、また義勇軍などということになってさましたらこれは大変でございますから、御意見は十分わかりますが、慎重に検討してみたいと存じます。
  108. 渡辺朗

    ○渡辺(朗)委員 この問題、時間がなくなりましたので、私一、二要望だけをさしていただいて終わらざるを得ないと思うのですが、私はこういう問題について真正面からの議論をしていくことがやはり必要ではないかと思うのです。そうでなければ国民の方も一わからないままいってしまうであろう。また国際的にも、国連に加盟してからすでに二十数カ年もたっているのに、相変わらず日本という国は独善的な国だ、よその国の問題に対しては言葉だけであって、何ら具体的な手を差し伸べてくれぬではないか。国連第一主義という言葉がある場合には、国連の決定あるいはそういうことに対して日本は何ができるのか、真正面から大いに具体的な論議をするべきだと私は思いますので、次にもまた、国連火消し部隊の構想なり、あるいは安全保障機能、こういったものを日本としていかに保持すべきなのか、あるいはそれに対して参画すべきなのか、論議をさせていただきたいと思いますが、ぜひとも外務大臣、前向きに検討を続けていただきたいと思います。どうぞお願いいたします。  これをもって終わります。
  109. 園田直

    園田国務大臣 いまの御発言はきわめて大事な問題でありますから、十分検討いたします。  なお、先ほど私が憲法と申し上げましたのは自衛隊法の言い違いでございますから、訂正をいたします。
  110. 渡辺朗

    ○渡辺(朗)委員 どうもありがとうございました。
  111. 永田亮一

    永田委員長 正森成二君。
  112. 正森成二

    ○正森委員 日中平和友好条約に関連して、中ソ相互援助条約との関係について、私はお尋ねをいたしたいと思います。  この問題はすでに予算委員会等で他の議員などがお話しになっていることでもございますけれども、このソ連中国との相互援助条約というのは、単に前文で「日本帝国主義の復活及び日本国の侵略又は侵略行為についてなんらかの形で日本国と連合する国の侵略の繰り返しを共同で防止することを決意し、」こういうようになっているだけでなしに、本文の第一条で、「両締約国は、日本国又は直接に若しくは間接に侵略行為について日本国と連合する他の国の侵略の繰り返し及び平和の破壊を防止するため、両国のなしうるすべての必要な措置を共同して執ることを約束する。」云々というように、条約の本文の中に入っております。これは、たとえばワルシャワ条約などと比べてみますと、ワルシャワ条約では前文の中に、この条約締結するに至った由来としてドイツについて触れておりますけれども、本文の中であくまでいかなる国も名指しをしておらないことは御承知のとおりであります。  そういうようになりますと、すでに共同声明を結んで、共同声明の中で、平和五原則を厳守して相互の関係で武力を行使しないということを双方確認した段階でも、この中ソ条約というのは矛盾してくるわけですが、いよいよ平和友好条約ということになりますと、この条項が非常な問題になってくるということは識者の指摘しているところであります。  新聞で報道されているところでは、中国の要人は、名存実亡と言いまして、名は存するけれども実際には滅びておるのだというような表現をしておられるようでありますが、しかし、世の中の道理として、名存実亡というのは、名亡実亡になるか、あるいはまた復活して名存実存になるかという中間の段階であるというように思うわけです。この中ソ条約を見ますと、一九五〇年四月十一日に効力を発生しておりますから、一年前に通告するということで、一九七九年の四月にはどちらかの国がいずれかの意思表示をするということになると思います。その見通しはいかがか、あるいはわが国としては交渉の際に何らかのコメントをなさって、はっきりした形のものをおとりになるのかどうか、伺いたいと思います。
  113. 園田直

    園田国務大臣 いまの中ソ同盟条約は、モスコーに参りましたときに私はお尋ねをいたしましたが、向こうではこれを延長するとか打ち切るとかという返答はございませんでした。中国に行っても私は話をするつもりでございます。ただし、中国ソ連ソ連中国がどのような条約を結ばれるかということについてもわれわれは干渉できないわけでありまして、これは御理解を願いたいと思うわけであります。  われわれは、日中友好条約を結ぶ一方、ソ連とも平和条約を結ぼうとしているし、ソ連とも平和条約締結しようとしながら、片一方で安保体制をつくっているわけであります。これはおのおのの国のことでありますから、これに対して、打ち切れあるいは続けろと言うことは内政干渉にわたるわけで、その資格はない、また発言する必要もない。その点ははっきりしたい。ただし、名存実亡とおっしゃっているのは、訪中をされた方々に対する座談といいますか、話の中に出てきた言葉でありまして、向こう政府から日本政府に話されたことではないわけであります。  なおまた、どこの国とどういう条約を結ばれようと、これは相手国の自由でありますけれども日本を敵視したり、日本を仮想敵国としたりする条約は困りますということは言ってもいいだろう、こう私は論理的に考えておりますので、この点については、いまあなたが質問されたことは日本国民大多数も不安に思っているところでありますから、国民が納得されるような話をして聞いてきたい、こう思っておるわけでございます。
  114. 正森成二

    ○正森委員 最後の答弁のくだりで大臣のお気持ちは出たと思いますけれども、なるほど、中国に対してもソ連に対しても、第三国とこういう条約を結べと言うことは内政干渉にわたる場合がきわめて多いと思います。しかし、現存している条約わが国が名指しされているものについて、今回結ぶ条約と精神においてあるいは条約的に矛盾するのではないかと言うことは、内政干渉ではなしに、当然独立国としての権利であると思うのです。その点は区別して対処なさることを希望したいと思います。大臣のいまの御答弁で、その区別をなさるように感触を得ましたので、微妙な問題ですから、これ以上伺わないようにいたします。  中ソ同盟条約についてもう一点伺いたいと思います。  それは、この条約の第三条に「両締約国は、他の締約国に反対するいかなる同盟をも締結せず、また、他の締約国に反対するいかなる連合及びいかなる行動若しくは措置にも参加しない。」こういうように明記されております。この間、公明党の代表が中国に行かれましたときに、「一方で覇権反対をいいながら、もう一方ではだれに対するものではないというのではロジックに合わない。事実上、覇権主義は中国を脅かしているとともに日本をも脅かしている。」こういうことが四項目の中に入っております。そして鄧小平副主席は会談の中で、「もしソ連が横暴に覇権を求めれば、それと友好関係発展させることができるだろうか」というように発言されておりまして、わが国は別として、中国側が、この覇権条項を少なくともソ連を頭に置いて考えているということは、いままでの、交渉とは言えないかもしれませんが、報道の中で明らかだと思うのです。  そうすると、もしそういう事実があるとすれば、そういう考えで日中平和条約を結ぶということになれば、中国みずからがいま私が読み上げました中ソ条約の第三条に事実上抵触することになるのじゃないか。それは、共同行動はとらなくても、「措置にも参加しない。」こうなっておりまして、条約を広い意味で措置と考えればそういうことになって、中国側にとっても、この問題は非常な矛盾になってくるという論理的な問題になると思いますが、そういう点についての御認識はいかがでしょうか。あるいはまた、会談の際にお話しになる御用意はございますか。
  115. 園田直

    園田国務大臣 中国政府が伝言をしたという四項目、これは私が先ほど申し上げたとおりに、話がついて、行ったらすぐ締結できるという筋合いのものではなくて、いままで終始一貫して中国が言ってきたことを項目に挙げて整理をされて言われただけだと、こう解釈しているということは、いまあなたが質問されたような趣旨も含んで、私はそれをそのように答えたわけであります。  中ソ同盟条約の第三条ですか、これも確かに私は拝読しておりまして、これについて私がいまここでどうこうは申しませんけれども、やはり日米国の納得する、理解のできるようなことは必要であるとは考えております。
  116. 正森成二

    ○正森委員 もう一点伺いたいと思います。  共同声明の中では平和五原則を確認しております。その平和五原則の中に内政不干渉、相互不干渉という項目があるのは厳然たる事実であります。そこで、内政干渉というのはどの程度のものを言うのか、御認識伺いたいと思います。
  117. 園田直

    園田国務大臣 いろいろ意味は広いわけでありますが、私としては国内の政治、行政、他国との外交防衛、すべてのものを含むと考えております。
  118. 正森成二

    ○正森委員 そうしますと、平和友好条約などができたときに、あるいは航空協定が結ばれた場合に、お互いに祝意を表するために国会がお互い代表団を派遣するというような場合に、中国側代表団はだれだれでなければならぬとか、だれを除けというようなことは内政干渉になりますか。
  119. 園田直

    園田国務大臣 いまのような場合に、私の方でだれはいかぬ、だれでいいというケースは、一般の旅行とかあるいは政治的な何かのことで来られる場合は別ですけれどもお互い条約締結ができた祝賀の交換をやるというようなことでは、そういう場合はちょっと考えられぬと思います。
  120. 正森成二

    ○正森委員 ところが、わが党の宮本委員長が一月二十六日の代表質問でも申しましたように、この前東京と北京間の航空路の開設の記念飛行に各党国会議員が参加しましたときに、衆議院の議院運営委員会が割り当てたメンバーの中にある党の議員がおるということで、それが受け入れられないということを言っているわけですね。私はあえて名前は申しませんけれども――梅田勝というわが党の議員であります。当時運営委員会理事でございました。  こういうのは先ほどの大臣の一般的な御定義によると明白な内政干渉であるということはきわめて明らかだと思うのですね。こういう点について、私は今後中国側に対しても、もし平和五原則を守るというなら、平和五原則はもともと周恩来総理が言い出されたことでございますから、このような内政干渉はなすべきではないということを明白におっしゃるのが独立国としての当然の立場だと思いますが、いかがです。
  121. 園田直

    園田国務大臣 これは理屈になりますが、あのときはどなたはいけないと言ったのじゃなくて、向こうの方でどなたにはビザを出さない、こういうことを言ったわけでありますから、ビザを出すことは相手の国の自由と言えば自由でありますから、必ずしもこちらにだれはいけない、だれを入れろと言ったわけじゃないから、内政干渉だとはわれわれは表立って言っていないわけでありますが、しかし、いまおっしゃったようなことを北京に行ったら会談において話すか、これは会談の中で話すほどのことじゃありませんが、休憩中のお茶飲むようなときに、こういうことで共産党が怒っておったよくらいな話はしてもいいと存じます。
  122. 正森成二

    ○正森委員 会談の中身から休憩中のお茶の間に格下げになったわけですけれども、私がこういうことを言いますのは、それは非常にゆゆしい問題だ。ビザを出すのは相手国の権利だというようにおっしゃいますけれども、事実上それによって、だれが来てはいけない、だれは来いということになっておるわけですね。これが共産党だからそういうようにお茶の間で済まされるかもしれませんが、自由民主党は来たらいかぬとか、あるいは自由民主党の福田派は来たらいかぬとか、そういうようなことを言い出して、事実上それを底意に置いてビザを出さないということになればこれは大変なことである、こういうことはお互いに厳に慎まなければならない、こう思うのですね。外交官に対してペルソナ・ノン・グラータというような場合は、これは過去のいろいろなことであるかもしれないし、相手方が言える場合はあるでしょうけれども、しかし、お互いに祝意を表明するために一国の国会が決めた人名に対して、この人に対してはビザを出さないと言うようなことは平和友好を続けていく道ではないということは、非常にはっきりしていると思うのですね。ですから、そのことはぜひとも頭に置いていただきたいというように思います。  私は実はそのほかにも、先ほど社会党が御質問になりました安保条約台湾条項との問題について伺いたいと思っておりましたが、お約束の時間が来たようでございますから、またの機会にさせていただきます。
  123. 永田亮一

  124. 伊藤公介

    伊藤(公)委員 すでに日中問題につきましてずいぶん質疑が行われてまいりました。しかし、いよいよ日中問題はまさに大詰めに来ているという認識を私もしておりますので、日中問題についてお尋ねを申し上げたいと思います。  実は二十日の参議院の予算委員会園田外務大臣は、すでに福田総理決断はされている、こう述べられておるわけでありますが、この福田首相の決断とは一体何を決断されたのかお尋ねをしたいと思います。
  125. 園田直

    園田国務大臣 つい先刻も申し上げたとおり、日中友好条約交渉を再開するという決断がすでにされておる、こういう意味でございます。
  126. 伊藤公介

    伊藤(公)委員 先ほどもお話に出ましたけれども園田外務大臣の訪中ということにつきましてはすでに決断をされているのでしょうか。いかがでしょう。
  127. 園田直

    園田国務大臣 これは総理みずから、外務大臣が訪中することもあり得るということを相当前に言われたはずでございますが、総理の頭の中には、それも一つの方法として考慮の中にあるようでございます。ただ、いつ、どのようにして、どうやるかということはまだ決まっておりません。
  128. 伊藤公介

    伊藤(公)委員 それでは外務大臣お尋ねをしたいのですけれども外務大臣の訪中は恐らく実現をすると私は思いますが、外相の訪中は、日中平和友好条約締結をする、こういうことで訪中をされることになるのでしょうか、あるいは交渉をするのだということの訪中になるのでしょうか。いかがでしょう。どちらでしょう。
  129. 園田直

    園田国務大臣 いまから検討し、相談し、決めることでありますが、条約締結のために外務大臣がわざわざ行くことはないので、やはり条約締結のための交渉ということになると存じます。
  130. 伊藤公介

    伊藤(公)委員 これからのお話し合いということになろうかと思いますけれども外務大臣御自身としては、訪中はいつごろが適当だとお考えになっていらっしゃるのでしょうか。
  131. 園田直

    園田国務大臣 私自身が、いつごろになるか、まだ見当がつきません。
  132. 伊藤公介

    伊藤(公)委員 覇権問題につきましてはもちろん双方にいろいろな考え方があるわけでございますし、つい先日も四条件が明らかになってまいりました。外務大臣が訪中をするということは、覇権問題について政治決着をするのだということになるのでしょうか。どうなんでしょうか。
  133. 園田直

    園田国務大臣 政治的な決着という意味がはっきりしないわけでありますが、こういう大事な問題は、政治的な、いいかげんなところで決着すべきことではない。やはり日本国民が納得をし、中国国民も納得し、世界各国国民がもっともだという条約締結すべきでありますので、その折衝に私が政治的折衝をやることはありますけれども政治的決着をつけることはございません。
  134. 伊藤公介

    伊藤(公)委員 そうすると、外相が訪中をされて交渉をされる一番大きなテーマは、どういう問題が交渉の問題になるのでしょうか。
  135. 園田直

    園田国務大臣 大きなテーマは、友好条約締結というのが一番大きな問題になるわけでございます。
  136. 伊藤公介

    伊藤(公)委員 日中平和友好条約締結するということに関して、ソ連側がいろいろな注文をつけてきているわけであります。私どもは、日中平和友好条約締結して、日中関係の新しい時代を早急に築いていくべきだという立場に立ちつつも、対ソ関係ということももちろんわが国外交にとってはきわめて重要な問題でございます。ソ連の主張の中に、わが国領土問題の解決を見ずして日ソ平和条約締結ができない、こういう立場をとりながらも、たとえば先ほども問題になりましたけれども台湾の問題あるいは尖閣列島の問題、こうした問題が明確に決着がつかない、はっきりした姿勢を示さない中で日中平和友好条約締結をするということは大変問題があるのではないか、こういう発言をしているソ連に対して、わが国はどのようにこれを考え理解をしているのか、基本的なお考えお尋ねしたいと思います。
  137. 園田直

    園田国務大臣 私が直接参って話をしましたときも、その後のソ連発言等を見ましても、日中友好条約ソ連が注文をつけたという事実はございません。ソ連の方で、台湾がどうの、尖閣列島がどうのという発言も、私はいままでまだ聞いたことはございません。
  138. 伊藤公介

    伊藤(公)委員 日中平和友好条約締結するに当たって、これからの交渉の中で、尖閣列島の問題についてはわが国としては話し合いをするつもりがあるのか、どうなのか。いかがでしょうか。
  139. 園田直

    園田国務大臣 これは伊藤さん御列席のところでアジア局長が説明したと思いますが、もう一遍繰り返しますと、尖閣列島はわが国の固有の領土であって、今度の戦争でどうこうという問題が起きたわけではございません。中途において石油ができるという話が出てから、台湾の方で、あれはおれの固有の、所属の領土だと、こう言うし、中華人民共和国でも追っかけて、これにそうだと言ったことでありまして、その後話題には上っておりません。これは御承知のとおりに日本の政権下にあって日本が主権を行使しているわけでありますから、因縁をつけるのは向こうであって、私の方からこれに因縁をつける理由はない。したがって、これは今度の友好条約とは別個の問題である、このように考えております。
  140. 伊藤公介

    伊藤(公)委員 日韓大陸棚協定の際にも大変問題になったわけでありますけれども、尖閣列島を含んで東シナ海の海底開発の問題は、これからわが国にとっても非常に重要な問題だと私は思います。今後わが国政府としては、この東シナ海の海底開発についてはどのような将来の見通しを持っていらっしゃるのでしょうか。
  141. 園田直

    園田国務大臣 これこそわが国のあれでありませんので、友好条約を結んだ後、そういう問題が出てくるかどうかによって検討すべき問題でございます。
  142. 伊藤公介

    伊藤(公)委員 これ以上日中問題でいろいろお尋ねしても、いま、はっきりした外相の訪中であるとか、決断の時期等については、恐らく御答弁がむずかしいというふうに私も思います。ただ、中国側姿勢というものは、ここで非常に明確になってまいりました。また、民間の貿易協定も結ばれた、日本の国内における世論も日中平和友好条約について強い国民的な世論も盛り上がってきている。こうした中でやはり決断の時を失しないということが私どもは非常に大事な問題だと思います。ぜひ、できるだけ速やかに政府決断を強く要望して、質問を終わらしていただきます。
  143. 永田亮一

  144. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 一番最初に、日中問題についてお伺いします。  私どもの推測するところでは、もはや佐藤・韓会談、いわゆる事務折衝はもう来るところまで来て、これ以上は決断だけだというふうに思うわけです。その点について、事務折衝の再開を福田総理決断されたということは、いわゆる妥結への大きな前進である、このように思わざるを得ないわけです。  そこで、外務大臣が訪中をされる事態というのは、これはほぼ完全に締結、妥結の見通しがあっての訪中である、こう思わざるを得ませんが、それでよろしゅうございますか。
  145. 園田直

    園田国務大臣 仮に私が中国へ参ることになりましても、妥結するという見通しがついているということは、相手のあることでありまするし、どうなるか、まだまだ問題はいろいろ残っておりますから、今後の折衝によるものと考えております。
  146. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 外務大臣がいよいよ腰を上げられるときは、妥結という見通しがなくちゃ、恐らく大臣も行かれないんじゃないですか、どうですか。まだ十分どうなるかわからぬという段階でも行かれることがあるのですか。
  147. 園田直

    園田国務大臣 四項目等をごらんになっても、まだ必ずしも意見は煮詰まってない。私が行けば話がつくという筋合いのものではない。しかし、事はきわめて大事な問題であり、アジアの平和のためにはこれを解決しなければならぬ問題でありますから、見通しがついたら行く、つかなかったら行かないというものではなくて、全精魂を傾けてやってみる、こういう決意でございます。
  148. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 幸いにしてもし交渉がうまくいった際に、これはサンフランシスコ条約のときにも例があるのですが、超党派の調印ということ、こういうことは好ましいことであると外務大臣はお思いになりますか。
  149. 園田直

    園田国務大臣 これは国会でお決めになって政府に要望される筋合いのものでありますから、私がどうこう言うわけじゃありませんけれども、そのようなことになればありがたいと私は思っております。
  150. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 日本の方の希望としては、北京と東京とどちらを――願望としてで結構ですが、田中元総理は北京に行って共同声明を出されました。このたびはどういう願望を持っておられますか。
  151. 園田直

    園田国務大臣 うまくまいれば、日本の方で調印式が行われればきわめてかっこうのいいことであるとは考えております。
  152. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 蒋介石氏の三周忌でございますか、四月三日ですかね、大体それが行われた後ぐらいが外務大臣の訪中の時期になるんじゃございませんか。その辺はどうでしょうかね。
  153. 園田直

    園田国務大臣 楢崎さんの質問でありますが、私は、それとは関係は全くないことだと考えております。
  154. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 それでは次の質問に移りますが、防衛局長がおられないのでなんですけれども、常識的なことですから、大臣にお伺いします。  憲法と核の問題ですけれども、自衛のために必要最小限度であれば、そういう核兵器が開発されれば、九条解釈としては持ち得るのだという解釈でございましたね。いま各国が持っている現有の核兵器で見れば、これは自衛のための必要最小限度の兵器と思われますか。
  155. 園田直

    園田国務大臣 いまのをもう一回、ちょっと済みません。いまの核ならば……
  156. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 現在各国が持っておる核兵器を例に挙げれば、日本にとって、このぐらいの兵器ならば自衛のための必要最小限度の核兵器であるというような兵器は現在ありますか。それを聞いているのです。
  157. 園田直

    園田国務大臣 これは、どの兵器がどういうことになるかということは、外務省の判断すべきことではないと思います。しかし、核兵器を持ち込めないということは、私がこの前答弁したとおりでございます。
  158. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 つまり私が言いたいのは、現有の、現在ある各国が持っているような核兵器をもし日本に持つ場合――これは非核三原則があることはわかっていますよ。九条の解釈はそうじゃないでしょう。それとは離れて、九条の解釈自体としては持ち得るという解釈でしょう、この前の統一見解は。ところが、現有の核兵器では、ないはずですね。局長がおりませんからやむを得ませんけれども……。つまり、仮定のことを言っているのですね。ここに一つのごまかしがあるのです。  原子力潜水艦の場合でもそうでしょう。原子力を推進力に使うことが一般化すれば云々と言う。しかし、一般化していないから、原子力基本法では、原子力潜水艦は持てない、こうなっているのですね。  だから、一つそこにごまかしがあるのでありまして、自衛のため必要な最小限度の核兵器なんというのは、あり得るわけがないのですよ。それをわざわざ仮定の問題としてやるところに一つの問題がある。  それで、もう時間が来たようですが、私はこれは大事なことだと思うのですよ、立法府としても。解釈がいろいろあるときは、国の方針あるいは国民の意識の方向の解釈をとるべきである、こう思いますが、どうですか。
  159. 園田直

    園田国務大臣 この前にあなたから質問の際にも、私は憲法九条には規定していないと、これに触れないで、非核三原則、原子力基本法それから憲法の精神その他を見て、政治的な信条として持てないと、こう言ったわけでありますが、いまの問題は、憲法九条だけであとが何にもない場合、現有の兵器はどういうものが持てるか、こういうことは政府統一見解の解釈でありますから、これは防衛庁とそれから法制局長官に聞いていただかなければ、どうも楢崎さんの質問はうまいものですから、あふられて私がやっていると後になってひどい目に遭いますから、私からお答えするわけにまいりません。
  160. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 そうではなしに、私がいま頭に浮かんでいるのは、外務省の玄関に銅像がありますね、陸奥先輩の。陸奥さんはどういうことを言ったかというのですよ。外交で一番大事なのは、条約の解釈ではなしにすぐれて方針だと言っているのですよ。そういう人をあの銅像として置いてあるのですよ。つまり、解釈というものは方針によってどうでも解釈できるという、裏返せばそうなるのです。だから方針の方が大事であって、解釈がいろいろある、たとえば二つあるときには――二つあると言ったのですから、この前法制局長官は。持てない、憲法上核を持てないという解釈もあるが、政府としてはこの九条解釈として、自衛のため必要最小限度の範囲内ならば、核兵器であると普通の兵器であるとを問わないという解釈をとると言ったのですから、二つあるのです。その際には、二つある際には、国の方針の方に合致する解釈をとるのが大事ではないかということを私は申し上げたいのです。  それで、その点をあなたに聞いたけれども、あなたは法制局長官でなくちゃわからぬとおっしゃいますが、このくらいは、ベテランの政治家である園田外務大臣としては、私の言っていることは理解していただけると思うのですが、そこを私は申し上げておるのです。だから私は、この問題についての国の方針は、いわゆる非核三原則、これは国是だとおっしゃいました。これは確定しているのです。国是とは憲法に匹敵する方針だ、こう確定しておる。そういう国是があるときに、この問題についての九条についての解釈が二つあるならば、その国是の方向の解釈をとるのが大事なことではないかということが一つ。  いま一つは、憲法、法律も全部そうですけれども、一条だけ引き抜いて解釈するなどということは最も慎むべきことですよ。憲法全体の法理と申しますか、法体系と申しますか、それから判断すべきであって、一条だけ取り抜いてあれするなんというのは、これは非常に意図がある。なぜか。政府は解釈をする際に、われわれはその非核三原則の国是の方をとるが、政府としては、恐らく大臣じゃないでしょう、防衛庁でしょう。政策としては持たないけれども、しかし、いざというときには持ち得るという、選択肢の中にそのフリーハンドを持っておきたいという考えがあるから、私はああいう解釈が出たんだ、このように思うわけですよ。  もう時間がありませんから、最後に大臣の、いま私が申し上げたことについての見解をお伺いして、終わります。
  161. 園田直

    園田国務大臣 政治にとって方針、政治家の信条というものがきわめて大事であることは御意見のとおりであります。  九条の解釈について私は、速記録を読みますと、持てるとか持てないとか言わないで、規定してありませんというような表現をしているはずでございます。これが私の信条をにおわした発言でありまして、それ以上の発言は、政府のいままでの見解を変える発言をただいま私がやるわけにはまいりません。これで御勘弁願いたいと思います。
  162. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 終わります。
  163. 永田亮一

    永田委員長 次回は、明後二十四日金曜日午前十時理事会、同十時三十分より委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。     午後三時散会