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1978-03-17 第84回国会 衆議院 外務委員会 第6号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和五十三年三月十七日(金曜日)     午前十一時十八分開議  出席委員    委員長 永田 亮一君    理事 大坪健一郎君 理事 奥田 敬和君    理事 塩崎  潤君 理事 毛利 松平君    理事 土井たか子君 理事 渡部 一郎君    理事 渡辺  朗君       稲垣 実男君    川田 正則君       佐野 嘉吉君    中山 正暉君       美濃 政市君    中川 嘉美君       松本 善明君    伊藤 公介君       楢崎弥之助君  出席国務大臣         外 務 大 臣 園田  直君  出席政府委員         外務省経済局長 手島れい志君         外務省経済協力         局長      武藤 利昭君         外務省条約局外         務参事官    村田 良平君  委員外出席者         外務省経済協力         局外務参事官  大鷹  弘君         外務委員会調査         室長      高杉 幹二君     ――――――――――――― 委員の異動 二月二十七日  辞任         補欠選任   松本 善明君     寺前  巖君 同日  辞任         補欠選任   寺前  巖君     松本 善明君 同月二十八日  辞任         補欠選任   井上 一成君     小林  進君   土井たか子君     石野 久男君 同日  辞任         補欠選任   石野 久男君     土井たか子君   小林  進君     井上 一成君 三月一日  辞任         補欠選任   井上 一成君     石橋 政嗣君   高沢 寅男君     井上 普方君   土井たか子君     伊賀 定盛君 同日  辞任         補欠選任   井上 普方君     高沢 寅男君   伊賀 定盛君     土井たか子君   石橋 政嗣君     井上 一成君 同月二日  辞任         補欠選任   井上 一成君     横路 孝弘君   中川 嘉美君     二見 伸明君   伊藤 公介君     小林 正巳君 同日  辞任         補欠選任   横路 孝弘君     井上 一成君   二見 伸明君     中川 嘉美君   小林 正巳君     伊藤 公介君 同月三日  辞任         補欠選任   土井たか子君     兒玉 末男君   松本 善明君     不破 哲三君 同日  辞任         補欠選任   兒玉 末男君     土井たか子君   不破 哲三君     松本 善明君 同月四日  辞任         補欠選任   松本 善明君     不破 哲三君 同月六日  辞任         補欠選任   不破 哲三君     松本 善明君 同月十七日  辞任         補欠選任   伊藤 公介君     加地  和君 同日  辞任         補欠選任   加地  和君     伊藤 公介君 同日  理事井上一成君及び土井たか子君二月二十八日  委員辞任につき、その補欠として井上一成君及  び土井たか子君が理事に当選した。     ――――――――――――― 二月二十四日  世界観光機関WTO憲章締結について承  認を求めるの件(条約第三号)(予) 三月十日  日本国アメリカ合衆国との間の犯罪人引渡し  に関する条約締結について承認を求めるの件  (条約第四号)  千九百七十年六月十九日にワシントン作成さ  れた特許協力条約締結について承認を求める  の件(条約第五号) 同月十五日  許諾を得ないレコードの複製からのレコード製  作者の保護に関する条約締結について承認を  求めるの件(条約第六号)(予) 同月十七日  世界観光機関WTO憲章締結について承  認を求めるの件(条約第三号)(参議院送付) 二月二十七日  看護職員条約批准等に関する請願和田耕作  君紹介)(第一六〇一号) 三月六日  看護職員条約批准等に関する請願大柴滋夫  君紹介)(第一六四二号)  同(浦井洋紹介)(第一七一八号)  同(瀬長亀次郎紹介)(第一七一九号)  同(寺前巖紹介)(第一七二〇号)  同(松本善明紹介)(第一七二一号)  同(三谷秀治紹介)(第一七二二号) は本委員会に付託された。     ――――――――――――― 三月十三日  国際人権規約批准促進に関する陳情書外二件  (第一一九  号)  核兵器全面禁止国際協定締結促進に関する陳  情書外一件  (第一二〇号)  日中平和友好条約締結促進に関する陳情書外  二件(第一  二一号)  日ソ平和条約早期締結等に関する陳情書  (第一二二号)  朝鮮の自主的平和統一促進に関する陳情書外十  六件  (第一二三号)  国際労働条約第百三十七号の批准等に関する陳  情書外一件  (第一二四号)  北朝鮮帰還日本人妻安否調査等に関する陳  情書(第一二五  号) は本委員会参考送付された。     ――――――――――――― 本日の会議に付した案件  理事補欠選任  日本国アメリカ合衆国との間の犯罪人引渡し  に関する条約締結について承認を求めるの件  (条約第四号)  千九百七十年六月十九日にワシントン作成さ  れた特許協力条約締結について承認を求める  の件(条約第五号)  国際協力事業団法の一部を改正する法律案(内  閣提出第二〇号)      ――――◇―――――
  2. 永田亮一

    永田委員長 これより会議を開きます。  日本国アメリカ合衆国との間の犯罪人引渡しに関する条約締結について承認を求めるの件及び千九百七十年六月十九日にワシントン作成された特許協力条約締結について承認を求めるの件の両件を議題といたします。  まず、政府よりそれぞれ提案理由説明を聴取いたします。外務大臣園田直君。     —————————————  日本国アメリカ合衆国との間の犯罪人引渡しに関する条約締結について承諾を求めるの件  千九百七十年六月十九日にワシントン作成された特許協力条約について承諾を求めるの件     〔本号末尾に掲載〕     —————————————
  3. 園田直

    園田国務大臣 ただいま議題となりました日本国アメリカ合衆国との間の犯罪人引渡しに関する条約締結について承認を求めるの件につきまして提案理由を御説明いたします。  現在、日米間には、明治十九年に締結され、明治三十九年に追加修正された日米犯罪人引渡条約がございますが、現行条約は、締結以来九十余年を経ており、引き渡し対象犯罪殺人罪等の伝統的な犯罪に限定されているため、国際的な交通機関発達等による国際的渉外事件増加を初めとする最近の事態に適合しなくなっている面があり、これを改善することが望まれていたところであります。  政府は、昭和五十年八月のクアラルンプール事件等を契機とする国際的な犯罪抑圧のための協力についての国内の認識の高まりを背景に、犯罪抑圧のための日米両国協力を一層実効あるものとするため、昭和五十一年一月にアメリカ合衆国政府に対し、現行条約を全面的に改定することを提案いたしました。その後、二回にわたる交渉と外交経路を通じての調整の結果、新条約案について合意が得られ、本年三月三日に東京において、本大臣とマンスフィールド駐日アメリカ合衆国大使との問でこの条約の署名が行われた次第であります。  この条約は、本文十六個条及び付表から成り、さらに、交換公文が付属しておりますが、その主要な内容は、次のとおりであります。  すなわち、各締約国は、両国法令により死刑または無期もしくは長期一年を超える拘禁刑に処するとされている犯罪について、訴追等を行うために他方締約国からその引き渡しを求められ、自国領域で発見された者を他方締約国に引き渡すことを約束しております。引き渡し対象となる代表的な犯罪四十七種類は、本条約付表に列挙されております。また、引き渡し請求犯罪政治犯罪である場合は引き渡しは行われず、自国民の取り扱いについては、被請求国は、引き渡しの義務を負わないが、裁量により自国民引き渡しを行うことができること等が定められております。引き渡し請求は、逮捕状の写し、証拠資料等の必要な資料を添付して外交経路により行いますが、緊急の場合、一方の締約国は、他方締約国より要請されたときには、仮拘禁を行い得ることになっております。さらに各締約国は、第三国から他方締約国に引き渡される者を自国領域を経由して通過護送する権利を他方締約国に認めることが定められております。  この条約締結することにより、引き渡し対象犯罪現行条約に比べ飛躍的に拡大されるのみならず、将来生じ得る新しい犯罪引き渡し対象とされることとなる等、多くの点で改善が施され、犯罪抑圧のための日米両国協力関係が一層実効性のあるものとなることが期待されます。  よって、ここに、この条約締結について御承認を求める次第であります。  次に、千九百七十年六月十九日にワシントン作成された特許協力条約締結について承認を求めるの件につきまして提案理由を御説明いたします。  近年の国際的な経済活動緊密化及び技術交流拡大という状況にかんがみ、商品輸出及び技術輸出拡大を図るためには外国における特許権の確立がますます重要となってきております。このような趨勢を反映して、国際的に外国への特許出願が増大するとともに、同一発明について複数の国において特許出願を行う事例が顕著な増加を示しております。  従来の例によれば、同一発明について複数の国において保護を求める場合には、出願人は、各国の法令に従い、各国語出願書類作成し、各国ごと出願手続をとらねばならず、これは、出願人にとってかなりの負担となっております。一方、各国特許庁は、同一発明であるにもかかわらず、それぞれ独自に調査審査を行うため、国際的に見れば、重復して労力を費やすこととなり、特許出願処理効率化を図る観点からは問題なしとしません。このような事態に対処するため、国際的な出願手続簡素化及び出願審査の面における国際協力を図ろうとする機運が高まりまして、その結果、昭和四十五年六月十九日にワシントンでこの条約が採択された次第であります。  この条約は、以上のごとき問題意識に立って、国際出願手続国際調査国際予備審査及び国際出願国際公開に関する制度を創設するとともに、あわせて開発途上国に対し特許分野における技術援助を行うことを内容としております。  わが国は、従来から技術立国を重視し、そのための基盤の拡充等観点から、工業所有権制度国際的動向に強い関心を持ち、この条約作成にも積極的に貢献してまいりました。わが国がこの条約締結すれば、外国への出願手続簡素化されることを通じてわが国国民による外国特許の取得が助長されるとの効果が期待され、ひいては、わが国の一層の経済発展にも資することとなると認められます。また、国際協力の推進という観点から言えば、わが国特許庁が、この条約のもとで、国際調査機関及び国際予備審査機関として行動すること等を通じ工業所有権分野において国際的役割りを果たすことは、それ自体としてきわめて有意義であるばかりでなく、同条約のもとでは、開発途上国に対する特許面技術援助促進も期待されます。  よって、ここに、この条約締結について御承認を求める次第であります。  以上、二件につき何とぞ御審議の上、速やかに御承認あらんことを希望いたします。
  4. 永田亮一

    永田委員長 これにて提案理由説明は終わりました。  両件に対する質疑は後日に譲ることといたします。      ————◇—————
  5. 永田亮一

    永田委員長 この際、理事補欠選任についてお諮りいたします。  去る二月二十八日理事井上一成君及び理事土井たか子君の委員辞任により、現在理事が二名欠員となっております。その補欠選任につきましては、先例により、委員長において指名いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  6. 永田亮一

    永田委員長 御異議なしと認めます。よって、理事に       井上 一成君 及び 土井たか子君 を指名いたします。  午後一時から委員会を再開することとし、この際、暫時休憩いたします。     午前十一時二十七分休憩      ————◇—————     午後一時十六分開議
  7. 永田亮一

    永田委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  国際協力事業団法の一部を改正する法律案議題といたします。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。美濃政市君。
  8. 美濃政市

    美濃委員 ただいま審議されております事業団法関係につきまして、若干の質問をいたしたいと思います。  まず第一にお尋ねしたいと思うことは、今度の事業団法改正目的とする、いわゆる技術協力に密接な関連性を持つ援助協力事業団を通じて行わす、この範囲ですね。技術協力に密接な関連で、客観的にはわかりますが、これはやはり海外においていわゆる援助協力予算執行されていくわけでありますから、もう少しこれは、たとえば五十三年度予算の中の関係予算のどのぐらいが従来どおり外務省が直接行うもので、何%ぐらいが事業団を通じて行うようになるか、こういう関係をもう少し明確にお答えをいただきたいということと、その前に、こういう関係法案提出に対しては、もう少し親切に、参考資料ですか、事業団関係内容とか、質問をして聞かなくても、見ればわかるような、やはり海外事業活動が行われておるわけでありますから、予算執行が行われるわけでありますから、国内よりも、私どもの目に触れることも少ないわけでありますので、もう少し適切な参考資料をつけて提案してくるのが、私は、政府としてそういう資料をつけて出してもらう方が国会に対して親切だろう、こう思うわけですが、それらをあわせてひとつ御答弁をいただきたいと思います。
  9. 園田直

    園田国務大臣 法案審議に際して、参考資料をなるべく多数つくって委員の手元にお届けをして理解しやすいようにやれという御指摘、ごもっともでありますから、なるべくそのように努力をいたさせます。  あとのことについては事務当局からお答えをいたします。
  10. 武藤利昭

    武藤政府委員 無償資金協力の中で、技術協力と密接に関係のあるものということについてもう少し具体的に申し上げますと、法案にも書いてございますが、これは二種類ございまして、技術協力のための施設、それから技術協力に密接な関連性を有する事業のための施設と書き分けているわけでございます。  若干内容的に申し上げますと、最初に申し上げました技術協力のための施設と申しますのは、これは数多く例がございますけれども開発途上国日本援助によりまして技術協力センターというようなものをつくる場合がございます。それでその技術協力センターというのは、センターをつくりましてそこに日本専門家等が参りまして、相手国の若い人たち技術指導に当たるということでございますけれども、そういう類の施設につきましては、これは直接技術協力を行うための施設でございますので、最初に申し上げました技術協力のための施設という範疇に入ることになるかと思います。  それから、二番目に申し上げました技術協力に密接な関連性を有する事業のための施設ということでございますが、これは施設そのもの日本技術協力日本専門家が行って行うということが必ずしもないといたしましても、その施設をつくるために日本技術協力を行うということがよくあるわけでございます。若干砕いて申し上げますと、たとえば、国際協力事業団の方で相手国がこういう種類技術協力のための施設をつくってほしいという要望がございましたときに、事業団の方から調査団をつくりまして、そういう施設をつくるために必要な調査を行う、それらの調査を行った結果といたしまして施設がつくられるという例がまたあるわけでございます。そのような場合、たとえば相手国病院をつくってほしいというようなときに、まず日本側技術協力病院をつくるための基礎的調査をいたしまして、それが結局その後病院が建設される。あるいはテレビ放送技術研修のための施設をつくってほしいというような要望がございましたときに、あらかじめ技術協力でそういう調査をいたしまして、その結果として、テレビ放送技術研修のための施設をつくってあげるというたぐいのことがあるわけでございまして、それが二番目の範疇に入るということになるかと思います。  それから、予算の内訳との関係について御質問がございましたが、実は予算の立て方と申しますか、無償協力予算の中にどういうものがあるのかということをあらかじめ申し上げた方がわかりやすいかと思いますので、そのような説明の仕方をさせていただきます。  無償資金協力関係予算は、外務省が所管しておりますものと大蔵省が所管しておりますものと二通りございます。外務省が所管しておりますものは、予算の中に経済開発等援助費という項目がございます。その中にまた水産関係災害関係文化関係、その他というような四つの小項目があるわけでございます。それから、片や大蔵省所管無償資金協力予算といたしましては、モンゴル経済協力、それから食糧増産等援助賠償等特殊債務処理というような三つのまた小項目があるわけでございます。  このうち、ただいま御審議をいただいております団法改正との関係で問題になりますのは、技術協力と密接な関係のある無償資金協力ということになるわけでございますが、この予算項目に即して申し上げますと、大蔵省所管分技術協力と必ずしも関係がございませんので、この辺につきましては従来どおり大蔵省予算でございますけれども外務省がその委託を受けて執行するという形になるわけでございます。それからまた、外務省所管分といたしまして先ほど四つばかり項目を申し上げましたが、その中でも、たとえば災害援助というようなものは、相手国に洪水が起こったとか地震が起こったというようなときに緊急に食糧援助したり医薬品等援助するという種類援助でございますので、これは技術協力と必ずしも結びつかないということで、これにつきましても事業団の方に促進業務を移管するということにはならないわけでございます。一番事業団に対します促進業務対象となりますのは、外務省所管分の中でその他と申しましたが、これが実は金額的には一番大きいのでございまして、五十二年度予算案ではこれが百三十九億円計上されておりましたが、ただいま御審議をいただいております昭和五十三年度予算案では三百二十七億円を計上しているわけでございます。このその他と申しますのは俗に一般無償と申しておりますが、この一般無償の中に技術協力と密接な関係を有する種類のものが多いということが言えるかと思います。ただ、一般無償の中でも必ずしも技術協力と結びつかないというものにつきましては、これは事業団に移管することはいたしませんで、従来どおり外務省において直接処理するということになるわけでございます。
  11. 美濃政市

    美濃委員 先ほど大臣からも御答弁いただきまして、いま大体概要の説明を承りましたが、やはりこれからも私どもがもし海外視察でもする機会があったときにはそういう関係を見てきたいと思いますので、できる限り参考資料にしていただきたいと思います。
  12. 武藤利昭

    武藤政府委員 ただいま先生から御要望ございました資料につきましては、作成するようにいたしたいと思います。  また、外国に行かれたときのための参考というお話でもございましたので、あるいは従来まで日本外国への技術協力無償資金協力でどういうような施設をどういう場所につくったかというたぐいの表も含めさせていただければお役に立つかと思っております。
  13. 美濃政市

    美濃委員 従来の実績をできる限りお願いしたいと思います。  次にお尋ねしたいことは、私から申し上げるまでもなく、この援助関係GNPの目標に対しても、あるいは贈与比率やその他の援助条件についても、日本先進外国に比較してかなり下回っておる。たとえばこれはいただいた資料ですが、一九七六年のGNPに対するわが国援助比率は〇・二%、その他の国の数字は私から申し上げませんが、アメリカ、フランス、ドイツ、イギリス等と比較していずれの国よりも下回っておるし、また贈与比率も低い。こういう関係にありますが、ことしは予算の面では〇・三%に上げて政府原案というものが決まっておるようであります。予算もさることながら、ことしのこの関係事業の具体的な執行の中でどの程度に改善されておるか。これは特に大臣にお伺いしたいと思いますが、こういう条件に対して他の国から日本として何か言われてないのか、日本条件はこれで各国との均衡がとれておるのか、それとも各国から援助体制について何か言われておるのか、それから、さっきもお尋ねしましたことしの執行体制の中でどれだけこれがよくなるのか、そういう点についてお伺いをしたいと思います。
  14. 武藤利昭

    武藤政府委員 お答え申し上げます。  御質問の第一点、外国におきます日本援助に対する評判でございますけれども、これはまことにお恥ずかしいのでございますが、芳しくないというのが実情でございます。例をとりますと、たとえばパリにOECDという機構がございますが、その中に開発援助委員会というものがございまして、そこで開発途上国に対する援助を行っております先進国側十七カ国が集まりまして、各国援助政策というようなものをお互いに吟味し合うと申しますか、審査をし合ったり、あるいは各国援助実績を見てみたり、今後どういうぐあいにしたらその援助効果を上げられるかというような相談をしたりする、そういう委員会でございますが、その委員会の会合が開かれますたびに、日本援助につきましては、量が少ないということもさることながら、その質がよくないということで批判をいただいているということは、これは私ども率直に認めざるを得ないわけでございます。その改善策についてでございますけれども、量につきましては昨年国際経済協力委員会におきまして、わが国は今後五年間に援助の量を倍増以上にするという意図を表明しているわけでございます。倍増以上ということに主眼があるわけでございまして、一方においてはそういうようなことで量の拡大を図りながら、他方においては質の改善もしていきたいと考えているわけでございますが、これをもう少し数字的に御説明いたしますと、昭和五十三年度の予算原案におきましては、ただいまお示しのございましたとおり政府開発援助関係予算をかなり伸ばしまして一五・八%という伸びを見ているわけでございます。五年間で倍増いたしますためには、これは一種の複利計算になりますので、単純に計算すれば毎年一五%ずつふやせば五年間で倍になるという計算になるわけでございますが、その一五%を上回る一五・八%の伸びを見たということによりまして、倍増以上の目的を達成したいと蓄えているわけでございます。  それから、質の点につきましても、五十三年度の予算原案におきましては意を用いたところでございまして、ただいま開発援助事業予算の総額が一五・八%伸びたということを申し上げたわけでございますけれども、その中で特に無償の部分、この無償援助をふやすということが援助の質をよくする、援助グラントエレメントを高める、それからただいま先住の御指摘ございました贈与比率を高めるということにもなりますので、五十三年度の予算原案におきましてはこの無償資金協力のための予算というものを大幅にふやしたわけでございまして、政府開発援助全体の予算伸び一五・八%に対しまして、無償予算は八九・二%という非常に大幅な伸びを見ているわけでございます。このようにいたしまして無償資金協力の比率をふやすということによりまして、ただいま御指摘ございましたような日本援助の質を改善する、それで各国の批判にもこたえるということにしたいと考えているわけでございます。  それから、援助を増大いたしますためには、予算とともに執行率を上げなければならないということはただいま先生御指摘のとおりでございます。この執行率を改善させますために、これは実は問題は日本国内の問題と相手国側との関係における問題と二通りあるわけでございます。相手国との関係と申しますと、たとえば、開発途上国でございますので、行政能力が必ずしも十分でないというような場合もございますし、あるいは先般のようなオイルショックなどというような事態が生じますと、オイルショックのために相手国の方も経済計画に大幅な手直しをしなければいけないということで、それまで日本との間に行っておりました経済協力に関します話し合いを、もう一遍やり直さなければいけないというたぐいのことが生ずるという面もございまして、こちらの方はなかなか日本だけで改善するというわけにはまいらないわけでございますけれども、少なくとも、日本国内改善できるたぐいのものはできるだけ改善しようということで、ここ一、二年来努力してまいりました。その結果、最近におきましては、執行率もかなり上がってまいっておりまして、たとえば無償について申しますと、昭和五十年度におきましては執行率が大体三一%というような低い数字であったわけでございますが、五十一年度には六〇%まで上がりましたし、それから五十二年度、これはまだ終わっておりませんので見込みでございますが、これは七七%ぐらいまで改善されるという見込みでございます。今後ともこのような努力は続けてまいりたいと思っております。
  15. 美濃政市

    美濃委員 もう一つこういう援助を行うに当たって経済効率の関係について若干お聞きしておきたいと思いますけれども国内の公共事業あるいは非公共の補助事業等いろいろ見ても、何か画一的な条件で拘束をしている。全般的に申し上げてもいいと思うのですけれども、特に非公共関係の補助事業等に画一的な補助条件で拘束して、そのために、投下したその事業に対する補助金と個人負担を合わせたその事業の投下率の効果というものが上がらないという問題が出てくるわけですね。全然上がらぬとは言いません。しかし目標とする事業効果というものは、これも当然でありますけれども国内におけるいかなる事業をやっても効果というものの目標が一〇〇%にしなければならぬということですね、公共事業であろうと、非公共の補助事業であろうと。その効果というものはやはり投下した目的に対して一〇〇%の効果があるものでなければならぬ、こう私どもは思うわけであります。ところが上がっていないものがあるわけですね。八〇%を切れるというものはないと思いますけれども、八〇%ぐらいしか効果が上がらない。たとえば、これは答弁は要りませんよ、例を申し上げておるので、それを聞いておるわけじゃないのです。農業関係の補助事業の機械等の中には一連のセットの機械を組んでいる、こういうものをつくれば補助してやるという。補助金をもらいたさに現実には要らない機械を、セットの中の必要のない機械も買わなければ全部のセットにならないから補助金の対象にならない、こういう問題があって、事業効果というものは二〇%ぐらい減殺されて八〇%ぐらいしか事業効果が発揮できてないものが大分あるわけですね。そういうことがこの中では——せっかく供与する以上、あるいは経済協力をする以上、やはりせっかくするのでありますから、事業効果が一〇〇%上がるように、何か金を出すんだから、たとえば事業団が行うとすれば、国内における条件的な拘束みたいなものを考えてつけておるのか、つけてないのか。相手方の国の希望するものに対していろいろ話し合って、全く相手方の国の言うように金を出しておるのか、それともこういう協力をする以上は、いわゆる日本流の行政の型で何か拘束する条件のようなものを多少考えてこれを執行していっておるのか、そこはどうなっておりますか。
  16. 武藤利昭

    武藤政府委員 海外経済協力は、国内におきます補助団体の事業とは若干違う面があるわけなんでございますが、その一つは経済協力として私どもが行っておりますのは、あくまでも相手国側の経済の開発、それから民政の安定に寄与する、そのために相手国側が行っている努力をお助けするというのが基本的な考え方でございます。その関係におきまして、いま先生の方から相手国が言ってくるものは何でもやってやるのかという御質問があったわけでございますが、基本的にはいま私が申し上げたようなことではございますけれども、相手が言ってきたことは何でもやっているということではございませんで、概して相手国の方からはいろいろな希望が出てくるわけでございますが、それを日本側相手国側と相談いたしまして、どういう計画のどういう分野日本協力を行えば一番効果が上がるであろうかということを吟味しながら最終的な計画をつくるということをやっているわけでございます。  それから、これは開発途上国の中でも特におくれた国の場合は、相手国自身で一体どういうことをやったら一番経済の発展に役に立つのかわからないということもあるわけでございます。そういう場合には、日本の方から調査団が参りまして、それで相手国の事情をよく調べまして、おたくの経済の状況からすると、さしあたりはこういうことをやることが一番有効ではあるまいかという助言を日本側からすることもございます。それで、相手国がその助言を受けますと、なるほどそうだ、それじゃそういうことで計画をやってみたい、じゃまた日本から何か援助してくれないかというような話になりまして、日本側の方でまず、有効適切な計画を探し出しまして、つくってあげて、最終的にはまた資金協力などいたしまして、その計画の完成を助けるというようなこともあるわけでございます。  御指摘のございました援助資金ができるだけ効率的に生かされるようにするという点は私どもかねがね留意しておるところでございまして、ただいま申し上げましたような手だてでできるだけそういう方向でやりたいと思っているわけでございます。
  17. 美濃政市

    美濃委員 私は先年欧州視察をしたときに、EC本部で、東南アジアの国ですけれども、当時ECはバターが三十万トンぐらい余剰滞貨をしておった。インドだろうと思うのですが、相手方の国は言わなかったけれども食糧援助としてバターを出した。ところが、熱帯地方だから適当な冷蔵庫はないし、結局溶けて流れてしまった。食生活にも余りなじまない、バターというものは。食習慣がない、なじまないと同時に、餓死する条件になっておるわけですから、食べ物ですから食べれるのだが、貯蔵施設も何もないものだから、かなりのバターを送ってやったところ無意味になったというのですね。いわゆる溶けて流れてしまった。貯蔵施設もない。そういう事例を聞いてきました。これを送ってやれば食糧援助のためになると思って送ってやってもさっぱり何もならなかったというようなことの話を聞きましたが、それに類するような、日本側ではこれはいいだろうと思ってやっても余り相手方の国のためにはならなかったという問題が過去に起きた実例はありませんか。  そういう点がないように、日本側で考えてこれはいいだろうと思ってやっても、相手方の国にはやった結果が効果ゼロに近い、いまの話のようなことがあると思うのですよ。これからも、ゼロなんということは少ないだろうけれども、そういう点が、せっかく援助資金を出すわけですから、喜んでもらえるように、一〇〇%効果が上がるような条件を考える。しかし、一面また、発展途上国でありますから、日本技術日本の能力から見ると指導して、そして向こうが間違っておればこちら側で指導して、たとえば施設にしても、相手方は経験がないから、有手方の希望では効果が上がらない。やはり日本側の指導で施設をした方が、どうせやるにしても、してやった方が効果は十分上がるという面もあると私は思うのですね。一概に言えないが……。  また反対に、条件の違った国に行って援助をするわけでありますから、こちら側がいいと思っても、相手側の希望どおりにすることが効果があって、いまのパターの話じゃないけれども、こちらでいいと思ってもそれが効果にならない場合もあると思うのです。両面あると思うのですね。その両面を上手に、日本側としては選択を誤らないように、その日本側の指導が正しいという条件と、それから相手方が希望する条件との選択を誤らぬようにしなければならない。こちら側の条件が全く正しいんだと思ってやってやっても、結局効果が非常にないものができ上がるという場合もあるだろうし、相手方の言う条件どおりしてやったのでは、発展途上国ですからやはり経験もないから、経験のある日本側の主導でやった方が間違いない場合もあるでしょう。両面が出てくると思うのですね。その選択を誤らなければ一番いい援助になると思う。その選択を誤ると、せっかく援助をしても効果が薄いという結果が生じる場合があるのではないかと思うのです。そういう点を今後十分注意してもらいたい。具体的な実例は私は行って見ておりませんから、どういうものがどうなっておるという感覚ではないんだが、海外へ出ていろいろなことを聞いたり何かした中では、やはりそういう面が大切だと思うのですが、この際御意見を承っておきたいと思います。
  18. 武藤利昭

    武藤政府委員 ただいま先生御指摘になりました点、まことにそのとおりだと私どもも考えております。先ほど私援助の仕組みについて申し上げましたときに、相手国のイニシアチブを尊重するという趣旨のことを申し上げたわけでございますが、これも、いま先生おっしゃいましたECのインドに対するバターの話というのは、私具体的には承知していないのでございますけれども、もし仮にそういう種類のことが起こるといたしますと、恐らくあり得る場合といたしましては、援助を与える国が、その相手国の必要というよりは、自分の方の都合で援助をやろうかというようなことを考えたときにえてして起こりやすいということは、一般論として言えるかと思います。それで、その点私ども十分注意をいたしまして、援助の押しつけということはやらないのだ、あくまでも相手国の希望に応じて援助をするのだという基本的な姿勢をとっておりますのも、ただいま御指摘のございましたような、そういう援助のむだが起こらないということも一つの大きな理由になっているわけでございます。  それから、たとえば食糧との関係におきましても、相手国がいろいろなことを注文いたしましても、それが私どもから見て果たしてうまくいくかどうかという疑念がある場合には、私どもといたしましては率直に、いまそういう御注文があるけれども、この御注文を満たすためにはほかにこういうことも解決しなければうまくいかないのじゃあるまいかというような助言をすることがございます。  たとえば最近の例で申しますと、バングラデシュという国は、御承知のとおり大変食糧に困っておる国でございますけれども、バングラデシュが食糧に困っておりますのは、全般的な食糧の不足ということもさることながら、国内での流通機構の不整備と申しますか、ある地域では非常に飢えている人がいる、ほかの地域では若干のストックがある。ただ、そのストックのあるところから飢えている地域に、その食糧を運ぶための輸送力が足らないという種類のこともあるわけでございまして、そういう問題があるときには、食糧援助もさることながら、そういう輸送力の増強ということを考えることも必要ではあるまいかというような助言をすることもございますし、それから、食糧不足だからといってやみくもに外国から食糧を輸入いたしますと、たとえば港のところに適当な食糧の倉庫がないと、悪い場合には野積みになってしまう。そうすると、これがまた使えなくなってしまうというたぐいのことが起こるわけでございますので、食糧不足を解消するために外国から大量の食糧を輸入しようと思えば、食糧倉庫をつくることが大事なのではあるまいかというようなことを申したりいたしまして、それでバングラデシュの場合には、食糧倉庫を現に日本無償協力でつくった例もございます。  そういうようなことでございまして、ただいま先生御指摘の点は、私どもといたしましても十分注意をしながら進めている所存でございます。
  19. 美濃政市

    美濃委員 次にお尋ねしたいことは、この援助の中で米の買い付けが行われておるわけですが、これは私どもは輸入と考えますが、これはどうなりますか。たとえばこの援助資金の中で、米に限らず、——ここでは米の問題をお聞きしようと思うのですけれども、米をこの援助資金で買い付けて援助物資で出す、現物が日本に入ってこないから、しかし行為としては輸入ですね。これはどうなりますか、どう考えたらいいのですか。私はどうもやはり三角貿易的な輸入と考えるのだが、しかし現物が国内に入ってこないのだからそれは輸入とならないという解釈、輸入と解釈すべきが適当なのか、まず第一番にそれを聞いておきたいと思います。
  20. 武藤利昭

    武藤政府委員 これは結論から申しまして輸入にはならないわけでございます。  その理由は、一たん日本に物理的に輸入しないからということではございませんで、むしろわが国無償資金協力の仕組みによるわけでございます。日本無償資金協力と申しますのは現物で協力するのではなくて資金、お金で協力するわけでございますね。ですから、ある第三国が非常に食糧に不足している、たとえばタイ米を買いたいというようなときには、日本がタイ米を買ってその相手国に与えるのではなくて、相手国にタイ米を買うためのお金を渡すわけでございます。相手国日本から与えられましたその援助資金をもってタイ米を直接買い付けるということになりますので、調達契約はその援助受け入れ国と物資輸出国との間で直接行われる、日本はその間には介入しないわけでございますので、いかなる意味におきましても日本に対する輸入という扱いにはならないわけでございます。
  21. 美濃政市

    美濃委員 現物を買って供与するのではなくて金で供与する、こういうことですね。しかし、それはどういうふうになっておりますか。金で供与する先の国は米を供給する国ではないのでしょう。たとえばビルマ米を買い付けておりますが、同じビルマに金を出して、ビルマ政府が米を買い入れして難民救済をするという仕組みになっているのか、それともこのタイ米、あるいはパキスタン米、エジプト米と、こういうふうに書かれておりますが、これらはいずれも、たとえばタイ米ならタイ米を対象にして考えても、タイ以外の国が希望してタイから買い付けておる。すべての買い付けが、以下ビルマ米にしてもそうなっておると解釈してよろしいのですか。
  22. 武藤利昭

    武藤政府委員 ただいま先生がおっしゃったとおりでございます。わが国が資金を供与いたしますのは輸入国に対してでございまして、たとえば例をとりますと、ラオスがタイからお米を買いたいというときに、日本はラオスにお金を渡すわけでございます。ラオスがそのお金でタイからお米を買うということでございまして、輸出国の方にお金を払うわけではございません。輸入国の方に資金を供与するわけでございます。
  23. 美濃政市

    美濃委員 この関係はよくいろいろの場合に言われておるようですが、御存じのように日本国内産米が過剰でありますから、私ども米の関係はある程度調べておるつもりでありますけれども、この希望に日本国内産米を向けるということは私は可能だと思うのですね。特に米の関係は、やはりこれからの援助の中で積極的に国内米を援助に使うという政策を、これは考えるのではなくて実行すべきだ、このように思うわけですが、これについてお伺いしておきたいと思います。
  24. 武藤利昭

    武藤政府委員 わが国は大変な余剰米を抱えておるわけでございますので、これを援助に回すということはいつも私どもの脳中にある問題ではございますし、また現実に日本のお米を援助に回したという例もあるわけでございます。  ただ、問題が一つ、二つございまして、一つは、よく御承知のとおり日本のお米というのは大変高いものでございますから、国際価格に比べて高いということのために、日本の米を援助に回すためにはそれなりに追加の資金の手当てが必要になるという問題が一つ。それから二番目に、たとえば先ほどちょっと例を引きましたタイの米を、どこでもよろしいのでございますが、たとえばタイの米をインドネシアに回すというようなことをいたしますと、食糧不足に悩んでいるインドネシアが喜ぶばかりでなくて、お米を輸出したがっているタイの方も喜ぶ、両方の開発途上国に喜んでいただけるという二重の効果があるということがございます。  それからまた、国によりましては、お米につきましてもいろいろ好みがございまして、私よく存じませんのですが、お米にも丸いお米とか長いお米とかいろいろありますし、国によってはどっちの方がいい、どっちの方は余り要らないというたぐいのこともあるということでございますので、先ほど私がちょっと申し上げました、相手国が希望しないものを押しつけるわけにもいかないというような考慮もございまして、必ずしも日本のお米だけを援助に回すというわけにはいかないわけでございますけれども、具体的な例といたしましては申し上げましたが、日本のお米が援助に使われたという例がございます。最近の例では、昨年の十月から十一月ごろにかけまして、インドネシアが日本のお米を欲しいと言ってまいりまして、これは借款でございますけれども、九万トン幾らを借款で日本のお米をインドネシアに供与したという例がございます。これも、インドネシアの方は本当はタイ米が欲しかったらしいのでございますが、たまたまそのときにはタイの方に急の輸出余力がないということで、大変急ぐので日本のお米を供与してほしいというインドネシアの強い希望があったものでございますから、日本のお米を供与したわけでございます。  そういうようにいたしまして、相手国の希望がございますれば、それからまた所要の財政資金を講ずる余地がございますれば、日本のお米を援助に使うということも考えてまいりたいと思っているわけでございます。
  25. 美濃政市

    美濃委員 私はこの価格上の問題は処理されると思うわけです。ただ、その好みの問題はもちろんあると思いますけれども、これはやはり積極的に日本の余剰米を使うべきである。ということは、価格上の問題については、これは食管で処理するかどこで処理するかは別として、国益上からいっても——去年買い付けた米は、援助は金で出しておると言うが、トンでどのくらいになっておりますか。
  26. 武藤利昭

    武藤政府委員 日本が国産米を援助に使った実績の数字と伺いましたのですけれども……。
  27. 美濃政市

    美濃委員 いや、外国のタイ米それからビルマの、去年の実績の買い付け価格ですか。
  28. 武藤利昭

    武藤政府委員 私が承知しております価格は、これはタイ米の場合でございますけれども、昨年の平均価格、これはFOBと申しております輸出価格でございますが、これが一〇%ブロークン、私はよく存じませんが一〇%砕米が入っているという数字だろうと思いますが、これを基準といたしまして、これはまたドルとの換算率があるわけでございますが、当時のレートの一ドル二百六十二円というものを用いますと、一トン当たり五万九千円という数字が出ております。これがまた、最近のように円が高くなりまして一ドル二百四十円を割るというようなことになりますと、この円建ての値段もさらに下がることになるかと思いますが、五十二年の平均ということで五万九千円という数字が出ております。
  29. 美濃政市

    美濃委員 大体そのくらいですか。買い付けた先がパキスタン米だとかいろいろありますが、若干の相違はあっても大体五万九千円くらい……。
  30. 武藤利昭

    武藤政府委員 アジア地域のお米は大体それくらいの相場でございます。
  31. 美濃政市

    美濃委員 そこで、これは大臣にも聞いておいてもらいたいのですが、いま日本の食管で、ことしの端境期には四百万トンくらいの米が残る。昭和五十年産米がもう農業倉庫に残ってきましたから。これは二、三年前にしたように、もうことしの段階で大体二百万トンはえさ用処理をしなければならぬだろう、こう思います。えさ用に処分をするということになると、大体いまの予想では三万円ぐらいです。ですから、こういうふうに国内産米の余剰ができたときは、価格上の問題はないと私は思うのです。やはり日本の価格で援助物資に使った場合は幾らも量がいかないですから、せっかく海外援助をするのですから、価格は五万九千円であれば五万九千円、そういう海外援助をする。海外価格の経済状態もありますから、そのぐらいの価格で日本の古米を出さなければ——古米はいいわけですね。私は調べておりますが、どちらかというと好みは、東南アジアのどの国も日本の新米の粘りのある米はきらうわけですから、五十年産米でもいいわけですね。三年古米ぐらいが一番いいんじゃないですか、三年ぐらいの古米でも。少し固い米を好みますし、また熱帯地方の米はおおむね和米ですから、日本の言葉で言えばいわゆる南京米ですね。ですから固いわけですね。そういう米を食習慣として食べておりますから、古米は余りいとわぬわけです。だから価格条件は、国益からいっても恐らくことしの端境期には二百万トンくらいえさ用に落とさなければならぬだろう。四百万トンという米を食用米として高い保管料と金利をかけて積んでおくということは、余りにも芸がなさ過ぎる。どうしても二百万トンくらいは処理しなければならぬ。二、三年前にえさ用に一回落としたわけですね。七百万トン残りました。そのとき五百万トンぐらいえさ用に処理をした。そのときの価格は一トン二万数千円だった。ですから、えさ用に落としたと思えば二万数千円でもいいわけですね。それもどうかと思いますけれども。だから五万九千円と言えば、やはりそういう余剰米を使うにはその価格で出していいと私は思うのです。これは政策の問題ですから、政府でお考えになればできることですからね。えさ用に落とすよりは、有利に米として食用に使えるわけです。経済援助をやるというたてまえに立てば、国内で食用に使うのも経済援助に使うのも一つの政策であります。その方向へ使うことが、余っておる米をえさに落とすよりも有利に使われて、そして援助国から喜んでもらえるということになるわけだ。ですから、これは政策としてひとつ積極的に検討願いたいと思うのです。もっと援助費をふやす中で、食糧の不足国から希望があるとするならば、私はもっと米を出していいのじゃないかと思う。生産調整もさることながら、生産調整してもやはりいまのところある程度余剰米ができていくという基調にありますから、この関係援助体制の中で、価格はそういう希望する国々の条件の価格に置きかえていいわけです。どうせ余っておる米でありますから。これをひとつ積極的に考えるべきだ、こう思います。御意見を承りたいと思う。
  32. 武藤利昭

    武藤政府委員 大臣の御答弁をいただきます前に、技術的な点についてただいまの御質問お答えいたします。  古米の点でございますが、これは古米でも差し支えないというのは先生御指摘のとおりでございます。三年古米になりますとどうか存じませんですが、昨年インドネシアに対して米を借款で供与したということを申し上げましたが、これも五十年産米でございますから古々米ということになるのでございますが、古々米ぐらいであればこれは十分相手国側の嗜好に合致したものということになるかと存じます。
  33. 園田直

    園田国務大臣 ただいま言われましたように、古米を積んでおいてだんだん値段が下がる、最後にはえさとなる、そういうことよりもむしろそういう考え方を配慮をして、これを使えばいいじゃないか、これは御意見のとおりでありまして、相手国日本米を望み、しかも財政的な措置が決定すればそれでも差し支えないわけでありますが、また一面には、食糧援助はビルマとかタイとかという米をつくっておる国がありますので、金で出して、こういう国々からそういう米を買って、ないところにやるという一つの金を二倍に使って、そして米をつくるところと欲しいところと、二つの国に対する援助をやっていることもございますのでそういうことになっているわけでありますが、しかし、いずれにしても始末をしなければならぬ古米でありますから、いま美濃さんがおっしゃいましたようなことも考慮をして検討してみる必要があると考えております。
  34. 美濃政市

    美濃委員 もう一点、この点で大臣のお考えを承っておきたいのですが、もう一歩進んでこういう考えをひとつ検討してもらいたいと思うのです。  いま申し上げたように、援助協力日本側は低いわけでありますから、これを引き上げる過程で、希望がなければこれは別ですけれども、やはり餓死する条件がいまだ完全に除去できない国々もあるわけですから、そういうところへ、米が必要だとするならば、もっと積極的にこの関係だけを大きくしてふやす。ふやせば日本援助も大きくなります。食糧援助をもっと前向きでふやして、そしてもちろん希望によって、金で出して希望する米を買わすということも絶対だめだとは私考えません。しかし、日本は幸いにして米が余っておるから、日本の米でよろしいというのであれば、どうしても食糧の不足国があったら、この予算のほか追加してもう少し出しますよという、何か報奨制と言ったら悪いんですけれども、その条件は別にして、たとえばことしの予算から言うならば、この決められておる予算の中で出すとすれば、やはり海外から買い付けする、金で米の買い付け援助をするということになれば、限度何万トンしか日本はできない。しかし、日本の米でよろしいということになれば、そのほか、たとえば十万トンなら十万トン出す、日本側は余分に出しますよ。だから、希望する国は希望してください。どうせ財政的に言ってもトン二万か三万でえさに落としてしまえば、本当にもうただよりは——いま三十五万五千円ですね。三十五万五千円のトン当たりの米を二万円でえさ用に落としたら、これは本当に国内無償に近いえさに落としたということになるわけです。五万、六万に売れれば値に使えるわけです。  大臣のお考えも、国際間で約束したGNP〇・七%、それから供与率も、国際環境から見れば、日本の財政力から見れば、もう少しやはりふやさなければならぬとか、ふやす中で、希望があれば米を活用したらどうか。なければこれは別です。希望があれば、余っておる米をもっと活用する。そうすれば日本援助費も上がるし、それだけ日本の国際経済協力の供与率も上がるわけです。ですから、希望があればもう少し積極的に日本の余っておる米を、聞くところによると、餓死の出る国も、国名はここで申し上げませんけれども、餓死条件がいまだ除去できなくて、食糧不足の国がかなり多いわけであります。そういうところへもう少し前向きに援助費をふやして出したらどうか。せっかく食用に使える米をえさ用に落とさぬで、五十万トンでも百万トンでもその程度は、やはり希望してくれるのであれば上積みして、日本は米でならもう少し供与をふやす用意があるよ、希望がなければ別だ、という構えをとっていいんじゃないかと思う。いかがですか。
  35. 園田直

    園田国務大臣 食糧援助とは別に、いまの古米をどうやって活用するかという観点から、おっしゃるとおりに、これを古くしてえさにするよりも、財政的措置を講じて、そして食糧援助の別枠として積んでやればいいじゃないか、こうおっしゃることは適切な御意見でございまして、そういうことも——しかし、何にしても財政措置が必要であるし、古米をそのように処理するということも必要でございますから、一遍関係各省とも、いまの御意見をお伝えして、検討する必要はあろうと考えております。
  36. 美濃政市

    美濃委員 ぜひひとつこの関係大臣にお聞きを願ったように、えさ用に落とす価格で、どうせそこへ行くわけですから、えさ用に落としたと思えばその財政措置をやらなければならぬ。そうすると、えさ用に落として二万円か三万円になる米を活用すれば、日本の国際信用も高まるし、相手国との友好親善の効果も上げられると思いますので、大臣も検討していただけるという御答弁でありますから、ぜひひとつ前向きで検討してもらいたいと思います。     〔委員長退席、大坪委員長代理着席〕  次にお尋ねしたいと思うことは、これは農産物に限りませんが、特に農産物についてお尋ねしたいと思います。  つい先年までは、日本の農産物の輸入というのは、需給調整輸入であったわけですね。需要に対して供給力の足らぬものを買うということだったのですが、昨年あたりから、いわゆる国際収支の黒字、円高という問題から派生して、いわゆる協力輸入という輸入条件が動いてきたろうと思う。しかし、農産物全体の輸入を見ても、その大宗をなすものは、需要に対する不足輸入であることには間違いありません。そう大きく動いたというのではないんだが、どうも昨年あたりから、需要量を超えるものが入ってくるようになってきた。これは、円高も続きますし、国際収支が堅調だということになれば、五十三年度はさらに農産物の協力輸入というものが高まるのではないか、こう思いますが、その関係はどういうふうに調整していこうとお考えになっておられますか。
  37. 園田直

    園田国務大臣 農産物の輸入はなかなかむずかしい問題でありまして、ASEANの国々、ニュージーランド、豪州を含む国々、特に豪州、ニュージーランド等は、農産物の自由化ということを執拗に迫るわけでありまして、一方には漁業問題とも、豪州は絡ませぬと言っておりますが、ニュージーランドあたりは非常に絡ませてやってくるわけでございます。したがいまして、この黒字減らしという点からいうと、農産物は価格が余り張りませんので、なかなか黒字減らしにはならぬわけでございます。  ただ、今日世界に台頭しようとしている保護貿易、これを抑制して、やはりお互いに門戸を開放して自由化していこう、そして世界の危機を突破しよう、こういうことになってまいりますると、その自由化ということから、金額の問題ではなくて、日本の姿勢が非常に問題になるわけでありまして、したがいまして、そういう意味から農産物の輸入が、いま美濃さんがおっしゃいましたように、国際協力というか、経済危機突破のための一つのあれになってくるわけであります。したがいまして、一方、日本の農業を保護育成しながらどうやってこういうものに対抗していくか、こういうことが農林大臣及びこの農産物の輸入その他の問題を扱う場合の非常にむずかしい点であり、重要な点であると思いますが、政府としては、その点を考慮しつつ、この大勢に対応していきたいと考えております。
  38. 美濃政市

    美濃委員 いま大臣のお話を聞いておって、やはり現況では、いま大出からお話があったような状態が動いていくと思うのですね。しかし、一面、考えますと、食糧については今後貿易上の問題も私は出てくると思うのですね。  一月ころですか、テレビに出ておりましたが、これはNHKが報道しておりましたが、日本の自動車の売れ行きもそう長くはない。アメリカすら、いま日本の自動車の売れておるのは、価格条件でもなければ質的条件でもない。ただガソリンを食わないという一点にある。アメリカまで行って、テレビがやっておりましたね。日本の車はガソリンを食わぬから買うんだ、質もよくなければ価格条件でもない、こうアメリカの消費者が言っておりましたね。日本のNHKがやったのですが。アメリカが、日本のいまの自動車と同じような生産体制にも、工場を直して入ってきた。だから日本の自動車の売れ行きというものは、もう先行きは余り長くは見込まれぬという。自動車の売れ行きは、いまこれだけ売れておる自動車が、売れ行きが鈍化した。  たとえばその前を考えてみると、日本の経済成長政策で、戦後の外貨の獲得をして日本の経済の復興の足がかりをつくった繊維、造船というものはもう構造的不況産業ですね。恐らく三、四年後には、私は自動車も構造的不況産業になると思う。輸出はもう思うようにいかぬ。そうなったときに、いまの自動車にかわるべき商品があれば別ですが、いま自動車が売れておるだけの輸出商品がなかったとしたら、四、五年先に日本の国際収支はイタリアあるいはイタリア以下の厳しい条件にならざるを得ないということも、考えておかなければならぬ条件じゃないのでしょうか。  そうすると、いまの条件で、農業というのは困ったもので、たとえば牛肉を輸入するあるいはオレンジを輸入するということで、いま生産できておるものをそういう海外条件で破壊してしまうと、輸入すれば供給量が過剰になります。そこには、もう経営維持のできない経済条件に追い込まれて、いまの生産が破壊されて、四、五年先に国際収支が悪くなったときには取り返しがつかぬと思うのですね。  そういうことを考えますと、われわれとしては何としても、特に食糧については、やはり協力輸入というのは避けるべきだ。あらゆる手段を講じて協力輸入というのは避けるべきだ。不足輸入は当然である。需給上不足するものを輸入することは当然だ。これは積極的に、安定的供給のために、不足量を安定的に買い付けをして供給するという政策は断然であるけれども協力輸入だけは、特に食糧については避けるべきである。いかなる国も避けておるわけであります。  それからもう一つこの機会に申し上げておきたいのですが、ニュージーランドの副総理が去年来て、院内の委員長室で特に農林水産の国会の連中に会いたい、こう言うので、当時の委員長以下各党理事が会ったわけです。そのとき私どもに開口一番言った話は、うそを言わぬようにしてくれ、ニュージーランドが輸出するものはやはり肉と乳製品しかない、日本政府の、さも日本の商品を買ってくれたらあなたのところの肉なり乳製品というものをもっと買いましょうというニュアンスに基づいて、われわれは十五年間も貿易をしてきた、十五年間うそを続けられたと言うのですね。そして結局は、ニュージーランドも経済的の発展途上国ですから、経済的に弱い国だからやはり日本から輸入超過になる、そういうことをやらぬようにしてくれ、約束を守ってくれということで来ておるので、その約束の解決がつかなければ私は国へ帰れない、十五年間日本にうそを続けられてきたのだ。食糧生産というものはどの国も大切なんだ、来てみたら日本にも酪農があって、日本の酪農をやめてまでニュージーランドのものを買ってくれなんという気持ちはさらさらありません、うそをつかぬようにしてくれということだったのですね。うそをついては困るのだ。支払い手形がたまるということは個人でも因りますよ。そういう行為に対してわれわれは何とかしてくれという解決を迫って来ておるのだ、買えぬなら買えぬでもいいと言うのですね。買えぬければ物を売らぬようにしてくれ、借金をつくらさぬようにしてくれというのが、ニュージーランドの副総理が私どもに言われたことなんです。  それからもう一点、この国会は経済国会ですが、こうなってくると農林物資といえども、需要に対する不足量の買い付けは農林省でいいと思うのですね、しかし協力輸入で相関関係処理するということになると、具体的な需給調整ではないですから、具体的な問題は別としてもこれはやはり外務大臣、特に対外経済協力大臣もできたわけでありますから、外務省の一つの経済外交の方針となってきますね。農林省だけの物の脅え方でなくなってまいります。農林省のいわゆる幹部職員やあるいは農林大臣が反対しても、やはり政府全体が協力輸入ということはより大切だということになると、農林省の反対を抑えてでもそれは押し切っていかれる。たとえば牛肉を例に申し上げますと、今日の農林省の畜産局の見解は、牛肉の消費量は三十二万ないし三万トンである。これは農林水産委員会の速記録にもはっきり出ております。そのうち国内の生産量は二十五万ないし六万トンである、不足する輸入量は七万トンないし八万トンということを明言しておる。上期において四万トン、三万五千トンと五千トンの調整をやる。下期四万トン。こういう状態だからもう不足量いっぱい買い付けた。そこへアメリカから横やりが入って、ホテル用という名称であろうとどういう名称であろうと一万トンないし一万五千トン、現実に牛肉の輸入がふえるということになると、やはり生産に対する問題は起きてくるわけでありますね。ニュージーランドの副総理も一概に肉を買ってくれとは私どもには言いません。国会の委員長室で私どもと会って頼まれたことは、買えぬのであれば売らぬようにしてくれ、だまさぬようにしてくれということだったのです。何が何でも買ってくれとは言いませんでしたよ。日本もやがては、さっき私が申し上げたような条件で国際収支が悪化しないという保証もないわけですね。そういうことを考えましたときに、ひとつ外務大臣として食糧に対する協力輸入という考えは持たぬようにしてもらいたい、こう思うのですが、いかがですか。
  39. 園田直

    園田国務大臣 だんだん話を承っておりますとなかなかむずかしい問題でありまして、ここで外務大臣が簡単に答弁できる問題ではございませんけれども、一面からいうと、国内の生産者と消費者の立場で——この前米国の方がおいでになったときに、日本の黒字が百何十億、アメリカは赤字が何十億、こう言っておるけれども日本のお米は大体国際価格の五・五倍、肉は六倍、住宅は十倍、そういうことで日本国民は生活をしておる、これから計算をすると百何十億というのはアメリカの赤字と同様の数十億の黒字にしかならぬ、こういうところに問題があるのだ、こう言ったわけでありますけれども、肉につきましてもニュージーランド、豪州の肉を買い入れると、日本の酪農その他は全滅をする。それから柑橘類についてもそのとおりでございます。ところが一面、同じ国内でも消費者の方は、こういうのをどんどん買ってなぜもっと肉を下げぬのか、こんなべらぼうな肉を食っているのは日本だけじゃないかという声は日増しに強くなってきておるわけでございます。  そこで世界の趨勢はどうかというと、ニュージーランドの副首相がどう言ったかわかりませんが、それは本当のことを言っているわけではございませんので、前々契約した肉の数量をそのとおり買わなかった事実はありますけれども、その後両方で話し合ってちゃんと結末はつけたわけであります。いま要求をしているのは、これを買わなければ魚はとらせぬ、こういうわけで、先般も鈴木農林大臣が参りまして、日本でこれを直接買うと日本の畜産業というものがだめになるから、経済援助の金で買って、これをよその国に回すようにしましょうという話をしたけれども、それでも納得しないくらいに執拗に迫っておるわけであります。  ここで私は、農業政策というものはわかりませんけれども、自動車などがどんどん売れていくのは、過去十年間各企業が血の出る思いをして体質改善をやって、そして自由化に対抗する手段をとってきたわけで、ガソリンは食わない、値段は安い、こういうことでどんどん売れているわけでありますが、日本の農産物というのは自由化されたら五倍から六倍の値段でありますからとうてい太刀打ちはできない、しかし消費者はそれを望む、こうなってくると、日本の農業政策の過去のあり方というものが、いまになってからでは追いつきませんが、少なくとも、ミカンをつくるにしても低金利、長期融資などということではなくて、本当は公共事業みたいに政府が直接金を出して地盤の整備等をやって、将来必然的に来る自由化に対しても日本の農業は何とか相撲がとれるようにすべきであったのではなかろうかと思いますけれども、今後どのように自由化の波を防ぎながら日本の農業を育成していくかということは、農林大臣として非常に大きな問題があるわけであります。いまの御意見はよくわかりましたけれども、やはり趨勢というのはだんだん自由化の方に向かってくるということは、そのスピードをどうやって抑えるかというだけであって、必然性ではなかろうかということで非常に、外務大臣、農薬の専門でございませんから、そういう問題で心配をしているところでございます。
  40. 美濃政市

    美濃委員 いろいろ農業上の問題でいま私が申し上げましたように、将来の食糧の自給というものは世界のいろいろな国で重要な政策だ、いま大臣からいろいろお話がありましたけれども、農産物の価格上の問題やそういう問題は派生する問題だ、やはり基本的には日本政府として可能な限り食糧というものは自給体制を堅持するんだ、この政策は福田内閣もひとつ堅持すべきであると私は思うのです。  その考え方の中から、非自由化の問題や価格政策の問題、それからもう一つは、これも日本国内条件海外条件の差でございまして、たとえば大臣からも牛肉の安い高いの話がありましたが、白人種の食べる牛肉というのは常食ですから、草でつくった脂のない肉でなければ、しかもそれを焼いて食わなければ、勅物たん白を常食にするわけですから、日本のすき焼き肉のようなああいう脂肉、しかも穀物を食べさして、最後の仕上げは牛にビールを飲ましてビールびんでたたいて筋肉の中に脂肪を入れたようなすき焼き肉を、一日六百グラム、八百グラムの大きなビフテキを常食にしたとしたら、白人種といえども、三年たったら体がどろどろになっちゃうでしょう。ですから、オーストラリアあたりから入る牛肉が安いというのは、恵まれた放牧条件で卓だけ食った肉なんでありますから、輸入してきた牛肉はすき焼きにはならぬわけです。日本の特殊事情で、昔からの伝統でああいう肉をつくって食べておる。あの肉を、草だけでつくった肉と十把一からげにして高い安いと言うのは間違いなんです。織物にたとえれば、すき焼き肉なんというのは絹の極上物と考えればいいわけです。化学繊維や木綿と絹とを十把一からげにして、ただ価格上の問題で高い安いと論評したのでは、それは物の判断になっていないわけなんです。  そういう問題もございますから、価格上の問題その他細かい問題は別として、やはり極力協力輸入は避けて、高い安いの問題、あるいは大臣の言われたように、日本の農産物のコストが高いとするならば、やはりいまお話のあったような政策を政府としてはやって、コストを下げるということを御努力願わなければなりません。大綱としては食糧の自給ということは堅持していくんだ、協力輸入というのは極力避けていく、こういう考え方でひとつ経済外交の方針を貫いていくべきだ、こう思うわけです。  細かい問題は農政上の問題になってまいりますから論じませんが、どうかひとつそれを大臣も堅持してもらいたい、このことを強く要望しておきたいと思います。
  41. 園田直

    園田国務大臣 実は私も選挙区が農業の方ばかりでございまして、いまおっしゃることはよく理解できます。そういう意味で、日本の農業が甚大な被害を受けないように、外交上の点からその点については十分鋭意努力をしつつやっていくことだけは申し上げておきます。
  42. 美濃政市

    美濃委員 以上で終わります。
  43. 大坪健一郎

    ○大坪委員長代理 伊藤公介君。
  44. 伊藤公介

    伊藤(公)委員 オイルショック以後、多くの開発途上国は経済的にきわめて困難な状況の中で先進国にいろいろな無償資金による経済協力の増大を強く要望していると思います。特に、御承知のとおりわが国は黒字国として開発途上国からは強い経済協力の要請があるわけでありますけれども政府としてこうした国々の要請にどのように対処していくのか、基本的な考え方をまずお聞きしたいと思います。
  45. 園田直

    園田国務大臣 開発途上国に対するわが国の経済協力の方針は、南北問題の解決に向けて経済協力の果たす重要性というものは十分認識をしておりますが、特に開発途上国と深い相互依存関係にあるわが国でございますから、各国の自主開発、自主独立に日本も参加をする、各開発途上国でそれぞれ努力をしておられますが、そのみずからの国づくり、みずからの未来の開発に日本も参加をして協力をする、そして世界の開発に貢献するために努力をすることが日本の責任であると考えております。  なお、御承知のとおりに、この経済協力に対しては、各地を回りましてもアジアの国々で、近い日本の国の経済協力はヨーロッパの国々に対してどのような比率になるかという質問をよく受けるわけであります。御承知のとおりにこれは、ASEAN、ASEANといいながら、日本の経済協力が今日まで世界で十三番目ぐらいの順位にあるわけであります。したがいまして、今後五カ年間に量からいってもこれを倍増していくという方針で、今年度の予算からそのような予算を準備しておるわけでございます。  また、援助の理念として、わが国は今後とも開発途上国の自主開発、自主独立を補完する、そして所得の向上、人間の基本的要求の充足という目的にかなうよう強力に推進していく所存でございます。このためには、産業開発とともに医療、教育等の分野において、開発途上国の発展の段階に応じて援助を充実してまいりたいと点えておるところでございます。
  46. 伊藤公介

    伊藤(公)委員 DACの加盟国十七カ国の経済協力実績は南北問題に対する主要国の貢献度を示す指標になっていると思いますけれどもわが国の場合、相対的にも、もちろん絶対的にも非常に立ちおくれが目立っていると私は思います。  こうした実情の中で、昭和五十一年の八月に対外経済協力審議会が、わが国のODA「政府開発援助を遅くとも昭和五十五年までに対GNP比率において少くとも現在のDAC十七カ国の平均水準程度に到達させるよう目標をたて、その増大に努めることが必要である。」こう勧告をしているわけであります。しかし、いま大臣からも御答弁がありましたけれども、これまでのような既成の目標を追求をしていくというだけで、一体、当面の南北問題に対するわが国の基本姿勢として十分であるのかどうなのか、やはりこれまでの考え方の基本姿勢そのものを変えていく必要があるのではないかと私は考えておるわけでありますが、大臣の率直な御意見を承りたいと思います。
  47. 大鷹弘

    ○大鷹説明員 お答え申し上げます。  ただいま御指摘もありましたように、また大臣からもお答えしましたとおり、援助の量に関しましては日本はDAC十七カ国中の十三位であります。しかし、問題は量だけではなくて、援助の質の問題がございます。この点におきましては、残念ながらわが国は十七カ国中の十七番目でございます。そこで、全体としてわが国援助が非常にまだ見劣りがするということは、政府としても非常に強く意識しております。そこで五年間に倍増以上、この以上というところが大変大事なのでございますけれども倍増にとどまらず、できるだけそれを超えたものに持っていきたいというふうに、量に関しましては考えております。それから質についてもできるだけこれを改善していきたいということで、来年度予算では無償協力の比重を大分ふやしております。いずれにしましても私どもとしましては、非常に真剣にこの問題に取り組んでおるところでございます。
  48. 伊藤公介

    伊藤(公)委員 考え方はよくわかりました。しかしちょうど昨年の暮れに、私ども新自由クラブの訪韓団が、私もそのメンバーの一人として、初めて日本に一番近い韓国を訪れて、政府の高官あるいは民間の方々にいろいろなお話を承ってまいりました。しかし、わが国援助しているにもかかわらず、民間の方々の対日感情というものは、必ずしも正しく理解をされていないという、非常に強い印象を私どもは受けて帰りました。  あわせて、たとえば韓国の中で私どもが非常に耳にして帰ったことは、日本が今日までいろいろな援助を差し伸べてくれた、しかしもはやいま日本の世論は、韓国がすでに日本に追いつくところまできた、問もなく韓国は日本を追い抜くであろう、そのことに関してすでに日本は、韓国に対して追い抜かれるということを非常に心配をしている。そのことは事実私どもが、日常に日本のマスコミ、新聞等に関しましてもこうした記事を現実に見ているわけでありますけれども、これまでのように、経済援助というものが主従の関係、与える者と与えられる者という関係でなしに、同じ立場に立った対等の友好関係あるいは援助というものがその内容においても量、質的に行われないと、アジアの中においてせっかくの援助が必ずしも生かされていかないというこれまでの経過というものを、やはり私どもは率直に反省をしなければならないと思うのです。特に私は、アジアの中におきましてもそれぞれの国が、異質な文化あるいは国情というものをお互いに理解をし合うとか、あるいは単純な交流をするというだけの関係からもっと深いものに、たとえば共同研究をするとか、共同のプロジェクトを持って一緒に働くとか、やはりアジアの中におけるわが国の果たさなければならない役割りというものが、もう一つ時代が進んできているのではないかという気がするわけでございます。  最も近い韓国を訪れて、私たちはいろいろな複雑な感情を持ちながら帰ったわけでありますけれども、率直に、これからの日本の経済援助に関しましては、特にその質的な面で、先ほど大臣の御答弁の中に、医療とか教育の面までというお言葉がありましたけれども、言葉だけではなしに具体的に、それでは医療はどうするのか、あるいはアジアの中における教育の問題はどうするのか、その上でわが国が一体どのようなことを具体的にできるのかということを、具体的に示していかなければならないときだろうと思いますけれども、具体的な教育、医療という問題がございまして、こうした面についてはどのような考え方をいまお持ちになっているのか、具体的にひとつお示しいただきたいと思います。
  49. 大鷹弘

    ○大鷹説明員 韓国に対する日本援助につきましては、韓国国民によってそれなりに評価されるということを私どもは考えております。しかし、ただいま先生御指摘のとおり、広く韓国の国民に理解され、評価されるような援助ということを私どもも常日ごろ心がけております。最近になりまして韓国の方から、いわゆる韓国の国民の福祉に直接につながったようなプロジェクトについて援助してほしいという要望がございまして、たとえば農村開発でありますとかあるいは医療ネットワ−クに対する援助とか、そういうものが挙げられます。私どもとしては、こういう傾向はわが国の立場から見ても大変いいことだと思いまして、できるだけ広く、韓国の一般国民に感謝されるようなものに援助の方向を持っていきたい、そう考えているところでございます。
  50. 伊藤公介

    伊藤(公)委員 きょうは、えらい部分的な問題でそう話をしている時間はありませんけれども開発途上国の経済、社会開発に寄与する上で、わが国技術協力が果たす役割りは非常に大きいと私は思いますけれども日本を除いた主要先進諸国に比べると、わが国の果たしている役割りはまだ十分だとは言い切れないと思うのです。技術協力が果たす役割りの中で、開発途上国に寄与する最大のメリットは一体何なのかということを、明確に外務大臣から御答弁をいただきたいと思います。
  51. 大鷹弘

    ○大鷹説明員 技術協力のメリットと申しますと、何と申しましてもこれは人的な開発につながるということだろうと思います。つまりいろいろな資本面の協力、これはいわゆる物を通ずる協力でございますけれども技術協力は被援助国の人間開発に資するという面がございます。これは結局は開発途上国が前進していくためには、人的な面と物的な面が有機的につながらなければならないわけです。したがって、私どもといたしましては、技術協力のこの側面を非常に重視しておりまして、同時にこれはもう一つの大きな役割りをいたします。それは、技術協力は人と人との接触の場を生みます。     〔大坪委員長代理退席、委員長着席〕 日本専門家が向こうに行って技術をトランスファーする、あるいは向こうから研修員を呼んで日本で勉強してもらう、こういうあれを通じて、先方とわが方との心と心の触れ合いの場がふえるということで、その意味からも技術協力というものは非常に大事なものだと私どもは思っております。
  52. 伊藤公介

    伊藤(公)委員 技術協力の実施に当たって、開発途上国わが国に強く求めていることは、それぞれの分野におけるわが国の特に非常に高い水準、進んだ技術効果的に導入をしていきたいということであろうと思います。こうした要請にこたえるため最大の課題は、それだけのわが国の中における国際人の養成というものが非常に重要な課題であると私は思うのです。援助はする、あるいはしたいと思っても、現実にそれでは開発途上国に出向いてそれだけの指導ができる人材養成というものを、この国の中で実際にいままで私どもはやってきたのかどうか。わが国の派遣専門家の量的あるいは質的な拡充のために、これまで一体どのような処置をとってきたのかという問題がまず第一点。  それからもう一つは、民間の協力ということが、やはりこれから非常に重要な問題だと私は思いますけれども、民間ではシルバー協力隊などというものが、いろいろな角度から検討されていると思いますけれども、その実態は一体どうなっているのか、これが第二点。  それから第三点は、青年海外協力隊という形でこれまでにずいぶん派遣をされた若い世代の方々がいたと思いますけれども、この方々の帰国をされた後、日本での受け入れ体制というものは一体どのようになっているのか、この三点について端的にお答えをいただきたいと思います。
  53. 大鷹弘

    ○大鷹説明員 お答え申し上げます。  第一点、日本の、技術協力に携わる人材の養成の問題でございますけれども、確かに御指摘のとおりこれは大きな問題です。わが国の場合、何と申しましても語学的なハンディキャップもありますし、さらに外国の事情に必ずしも通じていないという場合がございますので、私どもといたしましては、先方に出向いて十分に先方と交流をして、そうして仕事をりっぱにやっていけるそういう人材の養成については苦心をいたしております。目下のところ、国際協力事業団等でそういう方々の事前の研修制度というものに力を入れている次第でございます。  第二の点でございますが、シルバー協力隊の話は先ごろから私どももいろいろな方々からお話を伺っております。私どもといたしましては、できるだけ前向きに、こういう運動と申しますか、事業には協力したいと考えております。ただし、シルバー協力隊につきましては、まだ細かい点が詰まっていないところがたくさんございますようで、いずれだんだんこういうものが具体的になってきました段階で、どうして私どもが、せっかくのこういう有為の人材に協力していただけるか考えてみたいと思っております。  第三番目の、平和協力隊の帰国後の問題でございますけれども、これも私どもは常日ごろ苦心をしているところでございます。帰ってこられた方々の何割かは、六割ないし七割の方々につきましては、私どもの方で再就職のお世話をしなければいけない、そういう対象になります。もちろん国際協力事業団に採用したり、さらに国際協力事業団専門家として活動していただくとか、いろいろなそういう手も打っておりますけれども、同時に、民間への再就職についてもできるだけごあっせんを図っております。先般もたまたまある新聞に平和協力隊の記事が出まして、その中で再就職の問題があるというようなことが書かれておりましたが、大変な反響がございまして、民間のある企業家が、何人でもいいからそういう者を引き受けたい、こういうお話がございました。したがって、国内でのPRについてもこれから十分配慮していきたいと考えております。
  54. 伊藤公介

    伊藤(公)委員 わが国が国際的な人材を育てるという意味において、技術はもちろんでありますけれども、いまお話の中にありました語学教育の問題、私は実はこの場が適切であるかどうかわかりませんけれども、ちょうど外務大臣御出席でありますし、実力大臣でありますから、むしろ政府の新しい方針として、この問題をもう少し国家的な見地から取り上げていただきたいと思っているわけであります。  いまわが国は受験シーズン、大変な受験戦争の中で、みんな学校に入るのはなかなか大変だ。しかし、そんな狭い受験戦争をくぐり抜けて、いま中学校から語学教育を始められて、中学、高校、大学、約十年間語学教育が行われても、大学を出ても国際人として実際に——御出席の外務省関係の皆様方は別にして、これからアジアの中で経済援助をしていく、あるいは人的な交流もしなければならない。もうヨーロッパの中では、一つの国際的な機構の事務所で、国境を越えて若い世代の人たちがみんな共同作業をして、共同でプロジェクトを立てて、そして新しいヨーロッパ全体を貫くような大きな作業に参加しているという状況の中で、アジアの中におきましても新しいプロジェクトをつくって、国境を越えて一つの作業を、アジア大陸を縦断するような作業をしていかなければならない。そんな時期に、わが国の国際人としてのまず語学力は大変立ちおくれている。しかも、いまの教育制度の中では、これはもうこれから十年たっても二十年たっても、先行きは全く明るくない。教育制度の改革をしなければ、国際人としての、語学に強い日本人を育てるということは全く不可能だと私は思います。隣の中国ですでに、英語、ロシア語、日本語、三つの特に主要な語学を低学年にまで引き下げて、国際人としての中国人を育てるという国家目標を掲げて新しい出発をしているという状況の中にもかかわらず、わが国は非常に立ちおくれている。  ひとつ外務大臣から、これはもうひとり外務省の問題だけではなしに、日本の、これから国際社会の中において生き延びていく上の最低の条件だと私は思いますけれども、この問題には強い姿勢で、国家的な見地から取り組んでいただきたいと思いますが、外務大臣の御所見を承りたいと思います。
  55. 園田直

    園田国務大臣 いま伊藤さんが発言されております経済協力、それから世界的なプロジェクト、これは非常に大きな問題であると私も考えております。  第一、経済協力の面からいいますと、今日のように二国間あるいは多国間の経済協力というものはやはり規模が細か過ぎて、そしてややもするとマルチナショナリズムになるおそれがあります。世界的な不況を克服する意味においても、ここらあたりで世界的な公共事業をつくって、たとえば運河をつくるとか、あるいは日本から韓国、朝鮮半島を通って、中国大陸を通って、中東を通ってヨーロッパに行く新幹線をつくるとか、あるいは人工衛星にしても、宇宙にあるちりは元素でありますから、これから新しい資源をつくるとか、そういう世界的な規模の公共事業を計画し、これに各国が足並みをそろえて投資することによって、世界的な企業の投資、景気の刺激、それから科学技術の振興、いまおっしゃいました国境というものをだんだんブロック世界的なものに持っていく、こういうことは非常に必要なことで、現在の経済協力から未来の経済協力にわれわれは眼を向けるときであるということは全く卓見である、私自身もそのように考えております。  それから、まとめてお答えをいたしますが、技術協力はすべての出発点であります。技術協力をやることによって人間と人間がお互いに交流をする、技術と学問に国境はありませんから、同一目的に向かって技術と学問が一緒になって努力をする、これが経済協力なり、あるいはその他の外交の出発点になるということもまた御意見のとおりだと私は思っております。  そこで、開発途上国が必要としている技術というものは、日本の高度な技術を求める点もありましたけれども、いまやアジアの国々は、自分の国を工業化するということよりも、むしろ日本の経済協力が、農民なりあるいは漁民なり一般大衆の生活にどのように寄与するかというふうに、でっかい工場をつくることから、真に国民の生活水準の向上のために経済援助を受けたいという方向にだんだん変わってきているような気がいたします。  そこで技術の方々も、非常な世界的な学者であるとか世界的な技術者、これも必要でありますけれども、まず開発途上国技術、それから協力、こういうものを必要としているときでありまして、いま御承知のとおり建設省、農林省、総理府、それぞれ所管ごとにこういう開発途上国の開発隊というべき者をやって、そしてそこで要請されたものは非常な効果を上げているわけでありますけれども、何にしても数が少ない。それから言葉の面が非常に影響している。将来はやはり開発途上国援助をするわが国と一緒になって、現地の国に言葉、技術、こういうものを交流する文化センターというものを逐次つくっていって、現地で言葉を覚え、現地でお互いに技術を交流するというようなことも一つの大事な点じゃないか。サウジアラビアで文化センターを、私先般参りましたときに話が合いまして、ただいま準備しているのもその一つでございます。そういう点からやはり技術協力についてはここで真剣に考えなければならぬ。そのまず第一は、語学、国際マナーの指導、こういう点も含めてこれをもっと大規模にやるべきだ、こういうことは御発言のとおりに考えておるところでございます。
  56. 伊藤公介

    伊藤(公)委員 特にアジアあるいは石油産油国でない中近東の国々、こうした国々に対して、いま大臣からいろいろお話がございましたけれども、文化センターの設置ももちろん一つの問題であろう、新しい計画であろうと思いますけれども、今日まで工業に対する援助ということに非常に視点が置かれて、必ずしも真にその国の民心をとらえていないという場面がずいぶんあったと思うのです。これはアジアの中におけるアメリカが今日まで果たしてきた歴史的な役割りと、また、今日アジアの中に立っているアメリカの立場ということも、私たちはいろいろな立場から十分研究をしなければならないと思いますし、まして同じアジアの一角に私たちも生活をしているわけですから、まさに足元の問題でもございますので、先ほど隣の韓国のお話を、ほんの一例を申し上げましたけれども、ぜひ民心を離れない経済援助にこれから徹していただきたい。  あわせて、これから私たちがお金ではなしに、名実ともに本当に同じ立場に立って、アジアの国のそれぞれの方々と交流をしていくためには、何としても語学は何をおいても優先して、国の中でいろいろな研究をし、具体的にその改革に取り組まないと、もう手おくれになってしまうという気がいたしますし、国際人として日本人の海外に生活をしている人たちの実態を、いろいろ私どもお話を伺いましても、国際社会における日本人の果たす役割りというものは、経済だけではなしに、もっと文化的な面でも果たさなければならないのではないか。たとえば町づくりでヨーロッパのパリに行けば、やはりパリという町は、絵の名作を世界じゅうに売ってあの町はできている。あるいはウィーンやベルリンの町に行けば、春三月から暮れまで一年間世界の音楽祭をやってその町は生計を立てている。そういう町はずいぶんあるわけであります。しかしそれでは日本の国の中に一体世界の文化都市として成り立って生きる地方自治体、そういう市町村というものはあるのかというと、どうもそういう町が日本にはない。私どもは本当に文化の面でも世界に信頼をされる国としてこれから成長していかなければならないのではないかという意味におきまして、国際人としてわが国がこれから成長していく上でどうしても欠くことのできない語学の教育に関しましては、ぜひ国家的な見地から十分それぞれの関係の方々で知恵をしぼっていただいて、具体的な改革に取り組んでいただきたいと思います。  強く要望をして、最後に、わが国が経済協力を実施する場合に、できるだけ援助をする相手の国の実情をやはり私どもは知っている必要がある、こう思います。具体的なプロジェクトの評価選定を私どもがもし誤りますと、大変な摩擦や失敗を避けられないわけでありますし、もちろん相手国の失望、反発を招くわけでありますから、どんなにこれまでのような経済援助をしても、あるいは先ほどのお話のように、経済の費用をたとえ倍増したとしても、それは結局実らないということになってしまいます。相手国が本当に歓迎をする経済協力を実施するために、政府としては一体どのような具体的な実施の措置をとっていくのか、最後にお尋ねをして私の質問を終わりたいと思います。
  57. 園田直

    園田国務大臣 かゆいところに手の届くような経済協力をやれとおっしゃることは当然であります。かゆくないところをかくと痛くなるわけでありますから、そのためには御発言のとおり相手国の実情を認識すること、同時に、さらに進んでその国の資源開発のためにはどこが問題であるかという調査、診断、こういうことから相手の国と一緒になってやることが一番大事だ、こう考えておるわけであります。そしてまた、相手の欲するところを知ることが、話をしてから金が出て仕事が始まるまでの期間を短くするわけでありまして、どうも日本の経済協力は時間がかかり過ぎる、話をしてから忘れたころに出てくる、こういうこともありますので、十分注意をして、調査並びに現地における在外公館の活用、あるいは特に技術、学問を持った人の交流等を図って、相手の国の欲するところを知るということに重点を置くようにしたいと考えております。
  58. 永田亮一

    永田委員長 次回は、来る二十二日水曜日午前十時理事会、午前十時三十分より委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。     午後三時十分散会      ————◇—————