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1978-06-01 第84回国会 衆議院 科学技術振興対策特別委員会 第16号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和五十三年六月一日(木曜日)     午前十時三十四分開議  出席委員    委員長 岡本 富夫君   理事 小沢 一郎君 理事 小宮山重四郎君    理事 佐々木義武君 理事 石野 久男君    理事 貝沼 次郎君 理事 小宮 武喜君       伊藤宗一郎君    玉沢徳一郎君       中村 弘海君    原田昇左右君       与謝野 馨君    渡辺 栄一君       田畑政一郎君    瀬崎 博義君       中馬 弘毅君  出席政府委員         科学技術庁長官         官房長     半澤 治雄君         科学技術庁原子         力局長     山野 正登君         科学技術庁原子         力安全局長   牧村 信之君  委員外出席者         参  考  人         (東京工業大学         教授)     河村 和孝君         参  考  人         (東京大学助教         授)      清水  誠君         参  考  人         (東京工業大学         教授)     高島 洋一君         参  考  人         (立教大学教         授)      田島 英三君         参  考  人         (電気事業連合         会技術顧問)  田宮 茂文君         参  考  人         (日本学術会議         会員)     中島篤之助君         参  考  人         (評 論 家) 山川 暁夫君     ————————————— 本日の会議に付した案件  核原料物質核燃料物質及び原子炉規制に関  する法律の一部を改正する法律案内閣提出第  四二号)      ————◇—————
  2. 岡本富夫

    岡本委員長 これより会議を開きます。  核原料物質核燃料物質及び原子炉規制に関する法律の一部を改正する法律案を議題といたします。  去る五月二十五日の決定に基づき、本案審査のため、本日は、参考人として東京工業大学教授河村和孝君、東京大学助教授清水誠君、東京工業大学教授高島洋一君、立教大学教授田島英三君、電気事業連合会技術顧問田宮茂文君、日本学術会議会員中島篤之助君、評論家山川暁夫君、以上七名の方々から御意見を承ることにいたしております。  この際、参考人各位に一言ごあいさつを申し上げます。  本日は、御多用中のところ、本委員会に御出席くださいまして、ありがとうございました。  それぞれのお立場から忌憚のない御意見をお述べいただきますようお願いいたします。  なお、参考人方々にお願いいたしますが、御意見は、お一人十五分程度に要約してお述べいただき、詳しくは、後刻各委員からの質疑の中でお答え願いたいと存じます。  それでは、最初河村参考人からお願いいたします。
  3. 河村和孝

    河村参考人 河村でございます。  核燃料サイクルのかなめと言われております再処理問題に対しまして、私は、長期的展望に立って、技術論的並びに国際環境論的な、そういった二つ立場から意見を述べさせていただきたいと思っております。  まず初めに、技術論的な面でございますが、私が考えておりますことは、現行のウランプルトニウムサイクル、すなわち、ウラン原子炉の中に入れましてプルトニウムをつくり、そのプルトニウムを分離してさらにそれを燃料とする、そういったウランプルトニウムサイクルのほかに、実はもう一つサイクルがあります。それは、トリウム・ウランサイクルというサイクルでございますが、すなわち、トリウム原子炉の中に入れましてウランをつくる。それで、そのウランを次にまた原子炉で燃やす。これもやはり再処理トリウムからウランを分離するということにおいては、ウランからプルトニウムを分離するというサイクルと全く同じでございますが、そういった新しいトリウム・ウランサイクルというものについてもいまと同様に日本考えていっていただきたいということが、私の第一の論点でございます。それにつきまして、まず幾つかの例と、それから私の考えておりますことを述べさせていただきます。  それで、ウランプルトニウムという在来方法に比べまして、トリウム・ウランサイクルという新しいサイクルがございますが、これがどういうふうにウランプルトニウムサイクルと違うかという、その点についてまず最初お話ししておきたいと思います。  プルトニウムというのは、御承知のように核兵器につながる核原料物質核燃料物質でございます。ウラン、これはやはり核燃料核原料核兵器につながるわけでございますが、御承知のように、核分裂性ウランというものは、ウラン235、それがどれだけ入っているかということによりまして、核兵器になるかならぬか、そういう分かれが生じるわけであります。したがいまして、ウラン235というものを238という核分裂性でないもので薄めてまいりますと、安全に使える。現に軽水炉あたりでは三%とか五%、そういう濃縮度ウランとして供給されているわけであります。ところが、プルトニウムの場合は、プルトニウムプルトニウムで薄めよう、そういう考えは全くできないわけでありまして、できますプルトニウムは全部核兵器につながる、そういうことになるわけであります。  そこで、私が最初に言いましたいわゆるトリウム・ウランサイクルというのはどういうことかといいますと、トリウム原子炉の中に入れましてウランをつくる、そういうことでありますから、その場合に、ウランは233というちょっと違った形で出てまいりますが、これはやはりウラン235と同じように核分裂するものでございます。ですから、トリウムから出発しました233というウラを、238という核分裂性でないウランで薄めらる。そうなりますと、たとえばトリウムウラサイクルというものは、いわゆる核兵器につながらない安全な一つサイクルとしてわれわれは考えなければならないということになるわけであります。それが、たとえば核拡散防止の面から見た場合の第一の非常にすぐれた点でございます。  もう一つは、トリウム・ウランサイクルという、いま私がお話ししましたサイクルは、これは非常に強い放射線を出します。放射線を出しますということは、逆に申しますと、たとえば盗難であるとか、あるいはハイジャックその他がございますが、そういうものに対しまして、これは放射線検知器を使えば容易に検知できるわけでございますから、そういった二つの点からウランプルトニウムサイクルよりもトリウム・ウランサイクルの方がいいであろう、そういうふうに考えわけであります。  一方、資源的に見てみますと、ウランよりはトリウムの方が大体四倍ぐらいある、あるいはトリウムというものは、たとえば韓国あたりですと、かなりたくさんの埋蔵量があるというようなことになりますと、資源的にもかなり恵まれているということになりまして、たとえば行く行くそういうものが取り上げられるということになりますと、トリウムからウランを分けるということになりますので、再処理というものが、在来ウランプルトニウムサイクルと多少様子が違ってくるわけであります。  それでは、トリウムというものはいままで一体どういうところでどういう実績があるかということをちょっとお話ししてみますと、そのトリウムを使いました原子炉で、たとえば加圧水型という最もありふれた原子炉でございますと、アメリカインディアンポイントで一九六二年に使った実績があり、あるいはごく最近ではシッピングポートで一九七六年に使った実例がある、そういうようなことでございます。これは両方とも実用炉でございます。そのほか、実用炉ではございませんけれども、研究炉といたしましては、たとえば高温ガス炉で、ドイツの方のAVRというところで使っておりますし、OECDのドラゴンという炉でも使っております。その他たとえばアメリカでは、研究炉といたしましては、MSRE——溶融塩炉といいますが、そういうところでも使っておりますし、あるいはカナダで、カナダ炉と言われております有名なCANDUという炉でもトリウムを使ってみようというような動きがあるわけであります。  それがいずれ行く行くは使用済み燃料というものが出てくるわけでございますから、現在日本でいろいろ考えられております方法、これは主にピューレックスというウランからプルトニウムを分ける方法ですが、それがたとえばこれから五年ぐらい後に建設にかかる。建設にかかってからその寿命が約十五年あるいは二十年というようなことになりますと、これからつくる工場が、三十年ぐらい先まで寿命があるかということになるわけであります。その間にトリウムが出てこないかというと、私はそうは考えておりませんで、実はそういった三十年の間にトリウム系使用済み燃料、そういうものが必ず出てくるということになるわけであります。そうしますと、技術論的に、いまお考えになっているピューレックスを主体にいたしましたウランプルトニウムの再処理というもののほかに、トリウムウラン系燃料処理できるという再処理を同時に考えていただきたい。あるいは将来になりますと逆転するかもしれません。そういった場合にいまつくろうとしておりますプラントをそのまま転用できるというふうになれば非常にいいなというふうに私は考えているわけであります。  その際に、いろいろ技術的に問題がございます。たとえば先ほど申しましたように非常に放射線が強いということでありますから、工場の防護というものは、かなり強く、完全に遮蔽してかからなければならない、そういう問題があります。それからプロセスの工場を動かしてみますと、どうせ定期点検であるとかあるいは故障したとかというようなことで、工場の中に立ち入っていろいろ手直しをするというところが必ず生じてくると思いますが、そういう場合にも人間が近寄れる部分と、放射能が高くて人間がどうしてもそれ以上近寄れない、そこから先はたとえばロボットを使うとかあるいは遠隔装置を使うとかということになると思いますが、どこまで人間が入ってどこから先をロボットにするかというその辺の見きわめを、たとえばトリウムの方に転換した場合にここはこうなるんだということをはっきり決めておいていただきたいというふうに考えるわけであります。それがいわゆる技術論から見た私のお話したい点でございます。  それから二番目に、国際環境論のことについてごく簡単にお話しいたします。  現在、核燃料サイクルにつきましてはINFCE国際核燃料サイクル評価というところで作業が進んでおりますが、その中でいろいろな方向づけが考えられると思います。たとえばインターナショナル・フュエル・バンク、国際核燃料銀行というような構想もございますし、それからRFCC地域核燃料処理センターという構想もあると思います。あるいは日本でこれからやっていかれると思われます第二再処理工場の道もあるかもしれません。そういった中で、一つ可能性といたしまして、非常に危険な核燃料核原料物質を多くの国で相互チェックしていこうということで、いわゆる地域核燃料処理センターRFCCというものが非常に重要になってくるであろうというふうに考えられるわけでございます。そういった場合に、たとえばINFCEの結論がRFCCであるという道をとったとき、現在の日本の再処理をどういうふうに転換していくか、あるいはそういうのにうまく合わせてマッチングできるかという、その辺をひとつうまくやっていただきたいというのが私の希望でございます。RFCCは、実際に東ヨーロッパの方でそういった実績がございます。それから西ヨーロッパの方でも着々そういった実績をつくっております。もしRFCCが採用されるというようなことになりますと、恐らく日本アジア地区でのそういったRFCCセンターになる。あるいはどこかほかにセンターを持っていかれるかもしれませんが、そういうセンター日本でやるということになりますと、現在東海の第一というのですか、試験操業で、これはフランスサンゴバン・テクニク・ヌーベル社技術でやっておるわけですが、そういった技術アジア地区へ流れるということになりますけれども、その辺の問題がどうなるかというようなことが一つ問題になると思います。  それから、現在たとえば韓国並び台湾原子炉を持っております。台湾ではすでに六基持っておりますが、たとえば日本RFCCセンターになると、そういう燃料が流れてくる。そういうものを処理した場合に、どうせ廃棄物がたくさん出てくるわけです。たとえば高レベル廃棄物、中レベル廃棄物、低レベル廃棄物、そういうものを燃料を出した国に返すのかどうか、そういった問題が非常にたくさんあると思います。そういう問題をどういうふうに解決されていくのかということが問題になると思います。  そういう問題は、たとえば第二再処理工場という民間ベースの会社ではなかなかうまくいかないと思います。これはやはり国家間の取り決めというかなり次元の高いものでありますから、そういうものに対してどう対処していくか、まあうまく対処していっていただきたいというのが私の希望でございます。そういうことをやらずに、もし日本が独自の道を歩くというようなことになりますと、日本はいわゆる原子力にとっての孤児になってくる。原子力のように非常な知識集約産業といいますか、非常に密度の高い知識を必要とする産業におきましては、技術的な面並びに国際的な面から、どうも孤児になるということは非常に好ましくないと考えております。その辺のところもひとつうまくやっていただきたいというわけであります。  以上、技術論的な面としてトリウム・ウランサイクルヘの対処の仕方、それから国際環境論といたしましてはRFCCに対する対処の仕方、そういうところをひとつうまくやっていただきたいというのが私の意見であります。
  4. 岡本富夫

    岡本委員長 ありがとうございました。  次に、清水参考人
  5. 清水誠

    清水参考人 清水でございます。東京大学の水産におりまして、海洋放射生態学という分野の勉強をしております。  放射生態学は、あるいはおなじみが薄いかもしれませんけれども、放射性物質生態系とどんなかかわりを持つかということ、一つ分野としては、放射性物質生態系の中をどういうふうに動くかということ、つまりその中には生物濃縮等がありますし、生物の代謝が含まれるわけであります。もう一つ分野は、放射性物質がどのように生態系影響をするかということ。どちらかと言えば、私の専門は前者、放射性物質がどのように生物に濃縮されるかというようなこと、それも海洋環境という大変狭い分野でございますので、私の話は主に海洋環境の面から見た再処理施設、それが一体どういうものであるかということ、そういう狭い範囲のものになるかと思いますけれども、御容赦をいただきたいと思います。  再処理施設は、御存じのとおりに平常時においても大変大きな放射能汚染の源であるということが言えます。原子力発電所とはけた違いであるということはもう御承知のとおりであります。参考までに数字を挙げれば、現在東海村でもって試運転をやっております動燃の再処理事業、あれは一日当たり〇・七トンの処理で、年間二百トンの処理という非常に小さな工場にもかかわらず、大気中にはクリプトン85が一日当たり八千キュリー海洋中には一日一キュリーの全べータ、年間にすれば最大二百六十キュリーが見込まれております。そのほかにトリチウムもかなり出るわけです。これをいま準備中の東海村にあります東海第二発電所で見れば、大気中に放出される放射能年間で五万キュリー海洋中へは大体年間キュリー以下となっております。ですから、海洋中に出る放射能の量を考えますれば、原子力発電所の一年分を大体一日で出してしまうということになります。動燃の再処理工場というのは大変小さな工場ですけれども、実際に動いているイギリスのウィンズケールの例でいけば、海洋放出される放射能はずっと大きくなりまして、大体年間に二十万から二十五万キュリーということになっております。これがこの二、三年の実績かと思います。ですから、大体三けたくらいは違うということになります。  こういうふうに放出放射能が大きいものですから、当然施設周辺環境汚染かなり大きくなっております。海水にしても海底土にしても生物にしてもかなり放射能が検出をされているということになります。ウィンズケールの例を続けて申し上げれば、ウィンズケール放射性の廃液をアィリッシュシーに放出をしておりますけれども、たとえば放射性セシウム137をとりますと、アイリッシュシー海水中の濃度は施設の近傍で千とか二千とかいう数字、それからかなり遠いところへ行きましても十くらいという数字、これは単位は一リットル当たりピコキュリーでございます。  ではそれは一体どういう数字であるかというと、たとえば日本沿岸でいけば、現在ありますセシウム137というのは核分裂生成物で、放射性フォールアウトによる汚染だけですけれども、一リットル当たりでもって大体〇・二から〇・四ピコキュリーという値でございます。ですから相当けたが上がってしまうことになります。  実はウィンズケール影響というのはアイリッシュシーだけにとどまりませんで、アイリッシュシー出口から流れ出して北海へも影響を及ぼしておりまして、北海ではどのくらいかといいますと、アイリッシュシー出口に近いところで五とか六とかいう数字かなり遠くなりましても一とかいう数字。ですから、普通に考えられておるフォールアウトバックグラウンドレベルの数倍からあるいは一けた、もう少し上までいってしまっているというようなことになるかと思います。これは海水だけが汚染しているわけではありませんで、当然海底土も汚れております。海底土にしても魚肉中にしてもそこに検出されております放射性物質の量は、日本沿岸で普通にはかられているデータ、これはオリジンはフォールアウトですけれども、それの大体三けたくらい上というふうにお考えいただいてよろしいかと思います。ウィンズケールの場合にその汚染した魚肉、大体はカレイの中のセシウム137が一番大きいわけですけれども、それを食べることによってどのくらいの被曝が生じているかという内部被曝の推定としては、年間最大二百二十ミリレムぐらいが考えられております。いま二百二十ミリレムと言いましたのは実は人間被曝でございますけれども、そういうふうに海洋環境が汚れている以上、当然そこにすんでいる生物かなり放射線量を受けているわけです。アイリッシュシーにすんでいるカレイはどのくらいの放射線量を受けているか。これは汚れた海底土からの外部被曝——内部被曝も含まれますけれども外部被曝が主なものですが、大体天然の七百倍以上の線量を受けているわけです。天然線量は大体八・四というふうに推定されております。これは実はマイクロラド・パー・アワーですから、年間に直せば八千倍して大体六十から七十ミリレム・パー・イヤーくらいになりましょうか。その八・四に対して五千八百九十というのが人工の放射性核種から受けているカレイ線量ということになります。ですから七百倍くらいということになっていると思います。  このように再処理施設というのは平常時において一番大きな放射能汚染源であるということになりますから、当然その放出管理あるいは環境監視が大変重要な問題になってまいります。私は、再処理工場民営で運営される場合に次の二点でもって問題になるのではないかと思います。  その一つは、いま言った環境監視がどの程度きちんと行われるかという問題、もう一点は少し別なことでございますけれども、民営になるとすれば当然といいますか、現在の動燃もすでにそうなんですけれども、外国の技術を導入してきて工場をつくるということになるだろうと思います。そうしますと、いつまでたっても日本には自前技術が育たないということになります。これが一体どんなことを生んでいるかというのは軽水炉でもってさんざん経験をしていることではないかと思います。つまり何かが起こればいつも元に聞かなければいけないということになります。動燃東海フランスサンゴバン技術を導入してつくったわけで、現在ホット試運転をやっているわけですけれども、そういうふうによそから技術を導入してきた場合に一体どれだけその運転自信が持てるかということが一つ問題になろうかと思います。これは現在の動燃東海ホット試運転中のことですが、そのホット試運転期間中に出される放出放射能というものがあらかじめ予想をされていたわけです。それは正確な数字はちょっと忘れましたけれども、二十五とか三十とかいう数字です。ところが実際に試運転をやってみてその期間中に出された量は十七ミリキュリーですか、ですから、けたが違うわけです。最初に予想していたよりもずっと低いからいいではないかという、それは御同慶の至りと言いたいところですけれども、実はそれにはいろいろなことが絡みますのでそんなに簡単に予測が立たなかったのだという言い方はよくないかもしれませんけれども、本当に自分技術をこつこつと積み上げていったことであればそれほどの予測の違いは起きなかったのではないかと考えます。ですから、こういう問題をやる場合にどうしても自分の手で積み上げていった技術というものが必要ではないかと私は思います。ちょっときょうのお話からそれるかと思いますけれども、そういう意味では、たとえば動燃にしましても、いろいろな施設の方とお話をする機会がありましてお話をしていても、自前技術ということでもって一番誇りを持ち安全性にも自信を持っているということが伝わってくるのは実は大洗の「常陽」の方のように私は思います。  それからもう一点、民営になった場合に心配があると申しました環境監視の問題ですが、これは実際に企業がこういう工場を運営していく場合に、よけいなもの、直接必要のない部分は切り詰めるということは、ずいぶんわれわれは経験をしているわけです。現在の動燃東海でも、スタッフ、設備機器、ずいぶんよくやっていると思いますけれども、それでも環境の部門はどうも切り詰められているように私なんかは感じます。結局は下請部分にずいぶん頼っているということになります。ですから、これが民営に移るとすれば、この辺はもっと切り詰められていかざるを得ないというような感じがいたします。  それからもう一つ気になりますことは、現在の動燃でもそうですけれども、国家機関であるというような顔とそれから企業の顔と両方があります。日本で初めての再処理をやるのだ、ナショナルプロジェクトをやっているという大変に国家意識片一方ではあるのですけれども、いろいろなことを教えていただくという段になりますと片一方では企業ということが出てくる、あるいは経費の面でもかけるかけ方が違ってくるというような感じが私はいたします。  結局のところ再処理施設で一番重要なのは何かといえば、もちろん私は環境の観点からだけ言っているわけですけれども、これは放出低減化ということになろうかと思います。何代か前の科学技術庁長官の前田さんが一遍だけゼロリリースみたいなことをおっしゃったことがありますけれども、あれ以後そういう議論がなされたということを私は承知をしておりません。ゼロリリースとはいかないにしてもどんどん減らしていかなければいけないことは事実だろうと思います。しかし、それを目指す方向は多分民営ではできないのではないかというふうに考えております。実は技術というのは、といいますか、軽水炉でもって五ミリが決まったのは、かなり運転ができまして実績から五ミリが達成できるということになってそれで決まったということがあります。現在再処理についてはそれが示せるだけの実績がない。したがって、再処理についてはどのくらいの線量目標値をつくるかという目標が示せないでいるわけですが、実はこれも生物屋がこういうことを言ってはいけないのかもしれませんけれども、技術というのはある目標を示せばそれを達成するために努力をするということがあるわけですから、本来は国自体もその目標を示さなければいけないのだと思います。現在国は示し得ていないわけで、そのままで推移するとすれば、とても企業化された再処理工場でもって放出低減化をどんどんやっていくという方向には多分行かないのではなかろうかという心配をするわけです。もちろん、民営になっても国が十分に指導監督するから大丈夫であろうという議論はあろうかと思います。しかし私は、いまの国の原子力行政の姿勢にはちょっと疑問を持っております。エネルギー問題の議論は私はできませんし、ここではやりませんけれども、きょうの問題に関連することだけ言いましても、どうも環境問題には積極的でないような気がいたします。  たとえば、動燃の再処理工場ホット試運転の場合でも、工程自体の試運転、つまりその工程が予想したようにうまく動くかどうか、きちんと計画したとおりの再処理ができるかどうかというふうなチェックにのみ気がいっておりまして、実際にあらかじめ環境放出した放射性物質がどのように振る舞うかということ、生物にはどんなふうにたまるか、それから環境にどの程度影響を与えるかということを予測しておるわけですけれども、そのホット試運転期間中で、その予測が一体ちゃんとなされていたかどうかをチェックするという姿勢は余り積極的ではないように私は思います。その点に関する国の指導は不十分なように思いますし、それに、それを本当にやるとすれば、実は動燃だけのスタッフでは不足になります。ですから、当然それを補うような何かのシステムが考えられなければいけないと思いますけれども、その辺は十分ではないと私は思います。  もう一つ、ちょっと広げた話を申し上げれば、安全審査にしましてもモニタリングの中央評価にしましても、実は本来ならば、これはフルタイムの人がその仕事に当たるべきではないかと私は考えております。ところが現在は、パートタイム−−パートタイムという言い方をすると失礼かもしれませんけれども、ほかに仕事を持っていらっしゃる先生方がお集まりになって議論をするということになっております。そのパートタイムの仕事で十分なほど事務局がといいますか、それを支えるスタッフが充実をしているかと言えば、残念ながらそうではないだろうと考えざるを得ないのでございます。そうすると、そのパートタイムの委員会で何ができるかと言えば全部おぜん立てをされた料理を食べるだけということになりまして、そこでの独特の包丁さばきといったものはどうも期待ができないのではないかということになります。そうすると、現在の体制がそういうことである以上は、今度民営になる工場については十分に指導監督するといっても、どうも疑問を持たざるを得ないということがあります。  特に高レベル廃棄物の最終処分も現在まだ決まっておりませんから、再処理の経済的な採算性などということは多分計算もできないのではないかということになります。そうすると、どっちみち大きなお金が国の予算から支出されざるを得ないのだろうというふうに考えております。この辺は全く私は素人ですから、全然そうではないんだとおっしゃられれば、そうですかと言って引き下がらざるを得ないのですけれども、恐らく実態としてはそういうことになるんだろうという気がします。それならばそのお金の出し方というのはいろいろあるのではないかと思います。基礎からやって、自前の再処理工場をちゃんとつくるという姿勢でいく方がずっといいのではないか、その方が、恐らく日本の研究者、技術者は喜ぶのではないかという感じがいたします。  ですから、繰り返しになりますけれども、平常時の放出放射能の非常に大きな汚染源である再処理工場、それでの決め手は放出管理環境監視、さらには放出低減化であろうということ、それが実際にきちんと進むためには、どうも民営ではうまくいかないようである。現在の状態での民営可能ということには私は反対をいたします。  以上です。
  6. 岡本富夫

    岡本委員長 ありがとうございました。  次に、高島参考人
  7. 高島洋一

    高島参考人 東京工業大学高島でございます。  私は、三十九年以来再処理の安全問題に関係しておりまして、そういうことから、ちょっと歴史的経緯を簡単に述べさせていただきたいと思います。  三十九年に一応形として安全審査会が発足しているわけですけれども、それは一つは、将来再処理工場が、そのころ原子燃料公社と言っておりましたけれども、原子燃料公社の手によって計画されているのに対して、十分に勉強しておいた方がいいだろうということで、多少とも再処理に関係のある先生方が集まってそういう勉強をし始めたわけであります。  御存じのように、四十三年に原研で、小さいプラントですけれども、ともかく再処理運転をやりまして、どうやらプロセスとしてこれを賄うことができるということはそこで確認されたわけであります。もちろん、びくびくしながらそっといろいろな問題を予想しながらやってきたわけですから、絶えず、何も故障がないのに警報が鳴ったりというような、大変な苦労をして、ともかくやったということを記憶しております。  四十四年に一応そういう経験を踏まえて動燃の再処理工場の安全審査報告をつくり上げたわけですが、その際、ウィンズケールとかラアーグあるいはマルクールなどの実際に動かしている再処理工場、あるいは計画している再処理工場の資料を参考にしたり、アメリカのNFSの資料を参考にしたりして一応評価を試みたわけです。  さっきもおっしゃったように、ウィンズケールでは廃液を、まあ私どもから見れば、かなり思い切って高いレベルのものを捨てている。そういうものが海洋でどう拡散し、あるいはどこで濃縮されて方々影響を与えるであろうかどいうようなことは、確かにイギリスはイギリスなりに大変な研究をやっているわけですけれども、私どもから見ますと、それよりははるかに少ないところに目標を置くべきであろうということで、まず、さっきもおっしゃったように三けた低いところでとにかく廃液を捨てる、それ以上は認めないということで検討してきたわけです。装置的に見ると、この線を守るというのは実際問題として大変でございまして、結局、サンゴバンの設計とはいいますけれども、あえてわが国独自の考えでやっているというところを取り上げますと、最後に廃液を徹底的にきれいにして、もうこれならば十分であるというところまできれいにして捨てるというところ、すなわち蒸発かんを強化してそれに当たる、そういうことで、一応技術的にはそれが可能であるということを認めたわけです。ただ〇・七キュリーといえども、海洋にそれが放出された場合にどのように海洋で拡散し、濃縮が起こるかということに関しては当時まだ海洋調査が十分とは言えなかったわけです。したがいまして、運転開始までには海洋調査を十分行うという条件を出しまして、そして影響がどれぐらいであるということをよく確認すること、それからもう一つは、第三者的中央監視機構を設けてほしい。要するに、私どもが技術論あるいは環境評価の面で、机の上で判断したものが実際に必ずしも適合するということは断言できないわけでありまして、非常にいろいろな面で安全率を掛けていますので、まかり間違ってもこの数値を超えることはないだろうということはありましても、それにしても詳細なことはとうていわからないということで、絶えずモニタリングをして、大丈夫であるということを確認するという条件のもとで運転をしてもよろしいということで認めたわけであります。  それから、いよいよ運転を行う場合にも、どんなにりっぱな設計をし、どんなにりっぱな材料を使って注意深くそれを検査し、これなら大丈夫だと思ってやりましても、人間のやることですから、実際に運転をしますと、必ずあちらこちらに欠陥が出てくる。この点私が原子炉の安全審査と再処理の安全審査に対して、ちょっと違った考え方を持っておりますのは、再処理の場合は元来、どなたでもやろうと思えばやれるようなやさしいプロセスでございます。一日にたった〇・七トンのものを処理するというのは、化学工業で言えば、小さな薬品工業でもそれ以上のものをやっているし、それからその内容を見ますと、硝酸で溶かして、その後TBPで抽出して、プルトニウムウラン、それからフィッションプロダクトを分けるという非常にシンプルなプロセス、もし放射能のことを全く心配しないとすると、だれでもてきることであります。しかし、ここに大量の放射能を含んでいるということになると、非常に注意深くそれを行わなくちゃいけない。したがいまして、本来ならばやさしいという面とそれから非常に注意深くやらなくちゃいけないという面を考えて、いつもトライアル・アンド・エラーの体制でやっていく。つまり、やってみてちょっと悪ければすぐに直す。直してみてもう一回やってみて悪ければ、またやる。こういうトライアル・アンド・エラーの体制でやっていただきたいということを審査会の方では希望して、現在そのプロセスを経てやっておるわけであります。  御存じのように、果たしてコールドテストでは思いもよらないいろいろなトラブルといいますか、非常に小さい欠陥とか失敗とかというのがあったわけです。もしこういうものを恐れて、初めから完璧主義でそういうことがないようにやろうとすると、あるいはできるかもしれないけれども、それは安全に対する健全な方向ではない。やはり謙虚に経験を積んで、人間がやることにはこういういろいろな間違いがあるんだなということを素直に認めて、二度とそういうことは起こさないように直していく。そういう直していくということが十分できるならば、最後には非常に安心して運転できるものができるはずである、そういうふうに考えて、現在その方向で、悪いところがあれば直していくということをやっているわけであります。したがいまして、四十四年当時に設計ができ上がって、プラントは、実際、現在できているプラントに比べると恐らく半分以上変わっている、改良されている。その改良というのは、私の考えでは今後も続いていくんだと思います。むしろ完璧主義はこういうものに対する安全への道を誤るということで、完璧だと思っても常に足元を確かめながら進めていくということを今後もやっていってほしいと思うわけであります。  幸いにコールド運転のときにいろいろなだめが出たために、そういうだめを押して改良しますと、今後は実際に少し燃えた燃料処理していくセミホットの段階でそういうトラブルが非常に減ってまいりまして、いまPWRの燃料処理していますけれども、幸いに非常に順調にいっております。そういう意味で、順調にいったからといって、初心忘るべからずで、常に今後何か起こるかもしれないということをやはり覚悟して油断なく今後も管理体制を固めて、あるいは装置の改良をやる場合にはやっていきたい。その装置の改良をやる場合に、ともするとエリートの人たちは素人では理解できないようなむずかしい装置をつけて、だから安全だと誇示することをしたがる傾向がございますけれども、私はなるべくその装置というものはシンプルでなければいけない。みんながこれならばうまくいくだろうというよく理解できるもので改良を加えていってほしい、そういうふうに私の経験上思っているわけであります。  それから環境に関しましては、いまおっしゃったように、これはもう少ないにこしたことはないのですけれども、中央監視機構の体制それから恐らく第二工場、第三工場の場合には一層厳しい規制を設けられることと思います。それで事実上ゼロリリースに近い線に持っていく努力を積み重ねなければいけないと思っております。たとえばクリプトン、沃素あるいはトリチウムの問題も、ステップ・バイ・ステップで確実にこれをとっていけるということを積み重ねながら、最終的にはちゃんとしたものにいく。アメリカはわりあいと環境庁では厳しい条件を設けていまして、たとえばクリプトンは再処理工場から九五%はちゃんととりなさいよ、沃素に至っては九九・五%はちゃんととらなければいけませんよというような規制を設けていまして、これは一九八一年度から発効になると言われております。日本でも当然それに先駆けてそういう体制を確立していく必要があろうかと思っておりますが、もはや外国のまねどころでなくて、日本こそそういう後始末に関しては一番積極的にいろいろなものをやっていくというふうになっていかなくちゃいけないと思っております。またそういうことができるRアンドDを活発に行うということによって、第二再処理工場に対しても非常に大きな貢献をするであろうし、それよりも何よりもいまの動燃のプラントを皆さんで大事に見守ってきて、それで徹底的な批判も結構ですけれども、それを生かして、だから第二再処理工場はさらに進んでもよろしいということで前進してほしいと思います。  第二再処理工場は、動燃、原研だけがやらなくちゃいけないと決めてかかるということに関して、私はむしろ疑問を感ずる。原子力は確かに危険かもしれないけれども、みんなの力でこれを育てていくという精神から言いますと、当然電力会社その他実際に燃料を出している人たちがみずから責任を感じてこれをやっていくということで、皆の力を合わせてこういうものを育てていかなくちゃいけない、そういうふうに思っているわけでございます。
  8. 岡本富夫

    岡本委員長 ありがとうございました。  次に、田島参考人
  9. 田島英三

    田島参考人 ただいま御紹介をいただきました田島でございます。  日本原子力の開発は近いうちに一千万キロワットというふうな設備容量を備えることになりまして、世界でも第二番目というふうな位置づけになるかと考えておりますが、それにもかかわらず現在のところ核燃料サイクルがクローズしていない。特に、フロントエンドは別としても、バックエンドに対する努力が足らないという批判がございますが、私ももっともな批判だろうと思います。発電以降のいわゆるバックエンドに対する見通しを少なくとも明らかにするということにもっと官民一緒になって最大の努力をするのが非常に緊急な、緊要なことだと考えております。  ここでバックエンドと申しますと、御承知のことかと思いますが、その中の主要なプロセスは、この委員会で問題になっております使用済み燃料の再処理の問題と、それから高レベル廃棄物処理、処分の問題、及びそれに関連したような問題であろうかと思います。  今回、この原子炉規制法の一部が改正が行われるといたしますと、再処理事業民営で行われる道が開くことになるわけでございますが、これについて二つばかり意見を述べさせていただきたいと思います。  第一は、先ほど来清水先生や高島先生がおっしゃったこととほぼ同じようなことでございますが、現在の東海村にある第一工場からいろいろな経験が得られておりますし、また今後数年の間にこのパイロットプラントを動かすことによっていろいろな成果が得られるだろうと思いますが、民営で行われるであろう第二再処理工場建設には、この成果を十分に生かしてもらわないと困る。それによって第二再処場工場を、先ほどもお話がありましたように軽水炉のようなことにならないで、自主技術工場であるようにすることがなければならないと思います。このことは、第一工場最初からの一つの大きな目的であったわけであります。このことはいまさら言うべくもないあたりまえのことなのでありますが、これをなし遂げるためには、民間に移したからと言って民間にすべてを任しておいては恐らくその目的を達しないのではないかと思うのであります。第一工場運転経験によっていろいろな技術が恐らく実証されることになろうかと思いますが、あるいはいろいろな問題点が生じてきたりいろいろな判断力がついたりするようなこととなろうと思いますが、また第二再処理工場になりますと工場の規模がスケールアップいたしますので、それによって新しい問題点が当然また出てまいるかと思います。先ほど清水先生がおっしゃったのはそのうちの一つのことでございます。そして、そのうちの幾つかの問題点は、恐らく基礎的な研究開発を必要とすることになるだろうと思います。この第二再処理工場を本当の意味で自主技術とするためには、どうしてもこの基礎的な研究開発を乗り越えなければならないものと考えます。これは、民間に移したからといって民間にばかり期待することはとうていできないことでありまして、政府及び政府関係機関によって行われるべきものが多々あろうかと思います。  特に、先ほど来お話がありましたスケールアップによって生ずるところの安全性の諸問題については、たとえばどういうものがあるかと申しますと、私はその方の専門ではないので非常に際立ったものを申しますと、先ほど申しました放出放射能の問題、これをいかにして低減するかという基礎的研究が恐らく必要になるだろう。それからもう一つ重要な問題として思いつくことは、スケールアップしたときの臨界管理をどうするかという問題が重要な問題になろうかと思います。そのほか、専門家から見ますと恐らくまだ多くの問題があるのではなかろうかと思います。このような基本的な問題は基礎的な研究を必要とすると考えますし、特に国民の健康と安全に関する問題は、本改正法案が成立したとして第二再処理工場民営に移るといたしましても、政府は手を抜いていいというようなものではなくて、第一再処理工場のパイロットプラントあるいはその他の政府機関を動員いたしまして、その基礎的な問題からそれぞれの重要問題を基本的に解明する必要があるかと思います。むしろ民間と政府が責任ある分担をいたしまして、りっぱな機能を持つ自主技術の再処理工場建設希望する次第であります。  第二の問題は、先ほども申しましたバックエンドサイクルのクローズする問題でありますが、再処理はバックエンドサイクルの始まりでありまして、再処理が行われますとどうしても高レベル廃棄物が発生いたします。この高レベル廃棄物処理、処分の見通しがいまだに立つまでに至っていない。この問題の最終的な解決までには、再処理工場運転稼働いたしましてかなりの時間的余裕があることはありますけれども、高レベル廃棄物についてどうするかという見通しを立てておく必要があろうかと思います。これに関しまして、なるほど高レベル廃棄物につきまして原子力委員会は昭和五十一年十月八日に方針決定をいたしております。それによりますと、固化処理及び貯蔵はいまから考えまして七、八年の範囲でパイロットプラントを動かし、地層処分は昭和六十年代から実証試験を行うことになっておりますが、果たしてそれに向かって事態は動いているかということを考えますと、私はそれははなはだ疑わしく思うのであります。  と申しますのは、幾つもありますが二つの理由だけを挙げさせていただきますと、一つは、諸外国の研究関発の基本方針と申しますか、ストラテジーと申しますか、それと比較してみますと、諸外国では非常に具体的なタイムスケジュールとともに決められた計画によって、実行性のある計画を立案し着々と進められております。しかも、アメリカカナダ、西独の諸国においては、すでにわれわれよりも十年の古い歴史を持っております。そして、最近の状況を見ますと、高レベル廃棄物処理、処分に関する研究成果の発表が加速度的に増大しているような感じがいたします。  第二番目の理由は、日本の置かれている状況を調べてみますと、自然的な条件も社会的な条件も諸外国に比べまして非常に厳しいと言わざるを得ないのであります。そのことに関しまして、実は私たち四、五人の者で、これは原子力産業会議の依頼によりまして検討いたしまして、答申ですか、意見を述べたものがありますので、その結果を読ませていただきます。  「わが国の処分に関する環境的背景」、これに関しましては、後ほど御質問があれば御質問によりまして私のわかっている範囲を詳細に御返答いたしますが、この意見の中では、「従来の知識によって、わが国の現状を見るに先進諸外国の多くで期待をよせられている岩塩層はわが国で存在せず、また、わが国で見い出されている石膏層、花崗岩ならびに玄武岩は先進諸外国が調査研究の対象としている程度の比較的安定した大規模な不透水性の地層、岩体は存在していないようである。  そのうえ、わが国においては、地勢、地質、地震、火山、地殻変動および多量の降雨量と豊富な地下水など、検討すべき特殊な自然環境条件があり、稠密な人口および産業分布などの社会的環境条件も恵まれているとは言えないので、地層処分にとっては非常に厳しい条件のもとにあることを認識しなければならない。」  そこで、日本はこのようなはなはだ厳しい条件下にあることを心配しているわけでありますが、これに対してどうしたらよいだろうかということなんでございますが、この高レベル廃棄物処分に関しましては、従来原子力に関係しなかった分野方々の協力を得ないと円満な解決が得られないという状況がございます。その他研究分野が、いわゆる原子力という従来行っていた分野と違った多方面にわたる分野がございますので、むだのない、効率のよい研究をしなければいけないというので、一つの提案といたしまして、次のようなことを提言いたしました。それは「推進体制について」「高レベル放射性廃棄物管理に関するわが国の対応策は、厳しいわが国の社会条件、自然条件等の諸要因を考慮すると、処理についても、処分についても諸種の幅広い可能性を探求して、わが国に最も適した体系に組み立てていくといういわば「道無き道を推し進む」作業が想定され、柔軟な対応の仕方が要請される。また、放射性廃棄物管理に関しては、物理学、化学、地球科学、水理学、工学、社会科学、環境等広範な専門領域にわたる関係者の密接な協力が必要とされ、また関係する省庁、研究開発機関も多々存在し、これら関係省庁、研究開発機関の連携、協調を図ることが要請される。これらの実情を考慮すると、高レベル放射性廃棄物政策の推進のため、まず要請されることは、わが国の開発体制を組織化し、総合推進計画を立案し、整合性のある推進を図ることが出来る強力な中心的組織を設けることが当面の緊急課題である。」と考えるというふうなことを提言いたしました。  このように、この高レベル廃棄物の対策については政府に強力な中心的組織をつくり、具体性のある研究開発のスケジュールのもとに、先ほど申しました十月八日の原子力委員会の決定に合致するようにすることが必要であろうかと思います。  第二の、再処理施設が民間の手によって、もし具体的に進められる状況になったとしてみても、高レベル廃棄物処理、処分はこれにタイミングを合わせて推進されなければならないと考える次第です。  以上でございます。
  10. 岡本富夫

    岡本委員長 ありがとうございました。  次に、田宮参考人
  11. 田宮茂文

    田宮参考人 電気事業連合会の顧問をしております田宮でございます。後ほど申しますように、私は同時に、現在進行しております国際核燃料サイクル評価INFCEと言っておりますけれども、その中の再処理プルトニウムを取り扱います第四部会の共同議長をしておりますので、そのような立場から意見を申し上げたいと思います。  エネルギー問題につきまして、原子力がその中核をなすと考えられておりますことは御存じのとおりでございますが、この点につきましては、米国のカーター大統領も、昨年四月七日の米国議会で行いました演説、これはカーターの不拡散方針を打ち出しました演説でございますけれども、その演説の中で「米国は国内に石油資源と膨大な量の石炭資源を有するが、石炭資源にも限度があるので、原子力発電の開発を続ける必要がある。まして、自国内に石油、石炭資源の乏しい諸外国にとっては、原子力の開発は非常に実際的で、かつ緊急なことである」ということを述べております。アメリカのような膨大な資源を有する国でも、原子力の開発は将来のエネルギー問題として大事であるという認識に立っておるわけであります。  そこで、このように重要な役割りを果たすべき原子力利用の推進に当たりまして、そのメリットを最大限に活用していくためには、現在四百万トンとか言われておりますが、限られましたウラン資源を有効に利用することが必要でございます。このために、原子力発電所からの使用済み燃料を再処理し、回収されたウランプルトニウムをリサイクルして使用し、最終的には高速増殖炉の燃料として使用することは、ウラン資源を飛躍的に有効に利用することができることになりまして、原子力のエネルギー問題における地位の向上になります。これも国際的な認識のあるところでございます。  このような見地から、御承知のように、わが国を初めイギリス、フランス、ドイツなどの先進国は、高速炉の開発を鋭意進めているのでありまして、アメリカといえども高速炉の必要性を全面否定しているわけではございません。その一例として、国務省の国務次官代理のジョセフ・ナイさんは、本年四月のフォーリンアフェアーズ誌に寄稿しました論文の中で、われわれ  アメリカでありますが、アメリカといたしましては、長期的な観点からの高速炉、これは御承知のように高速炉を開発するためには再処理を必要とするわけでありますけれども、その重要性を独断的に否定するものではない。特にフランス、ドイツ、日本のように国内資源に乏しく、輸入エネルギーへの依存度の高い国にとっては高速炉の開発は重要であろうと考える、そういう理由で、アメリカとしまして従来からこれらの国々の高速炉の開発計画に対する批判は注意深く差し控えてきておりますというふうに述べております。  以上申しました理由、それから先ほど田島先生のお触れになった廃棄物処理、処分の二つの観点から、使用済み燃料の再処理は、わが国が今後原子力利用の自主的展開を図っていく上で不可欠の条件であります。そしてこの再処理を計画的に推進する国内体制を早急に確立する必要があると信じております。  わが国におきましては、先般来御議論がありましたように、動燃事業団の東海処理施設において建設運転面で十分な経験を積み、かつ積みつつあります。その成果を踏まえて商業規模の第二再処理工場建設に進もうとしているわけでありますけれども、再処理施設建設には長期間を要しますし、また御議論がありましたように、わが国の初めての大規模再処理工場でありますので、周辺の住民の方々とか、また国民の一般の理解を得るために十分な時間をかけるべきであろうと考えております。したがいまして、このような見地から、早く責任体制を確立するということが必要でございます。  また動燃処理施設は、研究開発の意味で国が建設し、運転することとしておりますけれども、この経験を踏まえまして、この成果を十分活用いたしまして、第二再処理工場はすべてを国に依存するのではなくて、民間の総力を挙げて進むということが大事であると思います。もちろん民間が主体になるといいましても、御指摘のありましたようないろいろな研究開発その他の面につきましては、国の機関と密接な協力ということが前提でございます。  この点につきましてすでにINFCEの第四部会で、ドイツが自国の第二再処理工場計画というのを提出しております。その概要を申し上げますと、ドイツにおきましては十二の電力会社、これは現在原子力発電所運転し、もしくは運転しようとしている電力会社でございますが、この電力会社が商業再処理工場建設運転のための民間会社、DWKという名前でございますが、これを組織いたしまして、すでにニーダーザクセン州のゴーレーベンというところにサイトを決めまして、一年前に政府当局に安全審査解析書を提出しております。この工場年間大体千四百トン、まず一九八五年ないし八六年に貯蔵池を運開いたしまして、九〇年には再処理の主工場の運開をする計画になっております。わが国の第二工場計画、いま計画されております計画に規模もタイミングも非常によく似ているものでございますけれども、繰り返しになりますが、すでに会社が設立され、安全審査解析書が提出されております。  そのようなことから、第二再処理工場建設につきましては、動燃事業団の東海処理施設で得られました経験技術最大限に活用しつつ、民間の総力を挙げて効率的な運営を進めることが最も望ましいと考えております。  すでに民間におきましては、電力業界が中心になりまして、再処理事業を行うための準備が鋭意進められておりますけれども、先ほど申しましたような研究開発面、その他規制面についての政府との間の責任分担を確立しつつ、早急に進める必要があると思います。  それでINFCEでございますけれども、INFCEは御承知のように核不拡散とこういうような原子力施設のニーズとのオプティマイズと申しますか、両立するポイントを求める作業でございます。そして御承知のようにウラントリウム等の資源の可能性を検討する第一部会、それから濃縮の検討をいたします第二部会、資源の供給を安定させるメカニズムを考える第三部会、その他第八部会までございまして、第四部会が再処理プルトニウムのマネジメント、リサイクルを扱います部会でございまして、そこにつきましてイギリスと共同いたしまして私が議長を務めているわけでございますが、全般的に申しましてINFCE自体の作業は緒についたところでございまして、結論を予測するのはまだ尚早でございますけれども、二、三、INFCEの場内もしくは場外におきまして動きがございます。     〔委員長退席、佐々木(義)委員長代理着席〕 先ほど御指摘のございました国際核燃料銀行構想というのがすでに第三部会でアメリカから出ておりますが、これは大体のところ低開発国を相手にする構想でございまして、国際核燃料銀行というのを組織いたしまして、その下に、その枠の中で国際使用済み燃料の貯蔵庫をつくり、それに委託する国については、その残っております。使用済み燃料の中に入っておりますウランプルトニウムに相当する分を低濃縮ウランで供給しよう、こういう構想でございます。これは先般アメリカにおいて採択されました核不拡散法七八年にその思想がよく出ております。ただ、INFCEの場におきましてはこの構想を先進国まで拡大することは非常に不可能である、したがいまして、この構想は主として後進国向きでありまして、ドイツとか日本のような大きな核平和利用の国については適用しないということになっております。なっておりますと申すのは私の推測でございますが、なりそうでございます。  それで、現在第四部会におきましては、イギリス、フランス、西ドイツ、日本が、原子力先進国といたしましては、再処理をし、プルトニウムを活用するのだという主張をしております。そこで先ほど申しましたように、ドイツはその裏づけといたしまして、繰り返しになりますが、十二の電力会社から成る民間会社を組織し、カールスルーエで従来動かしておりました三十五トンの試験再処理工場を持っておりました会社を吸収いたしまして、またこれを建設いたしましたケバと申します会社も吸収いたしまして、そして体制を整え、INFCEの場で再処理の必要性を主張しているわけでございます。  したがいまして、繰り返しになりますが、国際的に見ましても、わが国といたしましてはこの第一再処理工場を進める体制をきちんといたしまして、その主張すべきところは主張する、国内的にもコンセンサスがあるということにいたすことが焦眉の急であろうと思います。
  12. 佐々木義武

    ○佐々木(義)委員長代理 ありがとうございました。  次に、中島参考人
  13. 中島篤之助

    ○中島参考人 ただいま御紹介いただきました中島でございます。  私は、ただいま学術会議の第四部の会員でございまして、学術会議は最近の総会におきまして、第十一期と申しますが、新しい学術会議の今後の三年間でどういうことをするかということでいろいろ議論をいたしまして、それで、原子力関係の問題をどう扱うかということが、これは会員各位の中で非常に関心事でありまして、今度二つ委員会が設けられることになったことを最初に申し上げておきます。一つは、エネルギー資源開発問題特別委員会というのを設けまして、原子力エネルギーのエネルギーとしての位置づけをどうするかということを三年間詰めてやりたいということであります。もう一つは、きょうのお話に大変関係がございますが、原子力平和問題特別委員会という名前でございます。これは前期末以来のいろいろな情勢の変化を考えますと、学術会議が提唱いたしました平和利用三原則というのは、そもそも核兵器とのかかわり合いから発想されたものでありますけれども、そのことの意義がもう一度改めて研究されなければならないということで、そういう特別な委員会が設けられたわけでございます。  それで、きょうの使用済み核燃料の問題の第一に私が申し上げたいのは、原子力というものが核兵器と非常に深いかかわり合いがあるということは申し上げるまでもないことでありますけれども、たとえば原子力時代が始まりましたいまから三十年前になりますけれども、有名なアチソン・リリエンソール報告というのがございまして、その中で、核エネルギーと核兵器というのは、そもそもの初めからきわめて強いインターコネクションを持っているということが述べられております。それから三十年たったわけでありますけれども、この三十年間経験というものによっても、そのことが否定されて、いまや核兵器はもうなくなって平和利用の時代だと言うことはできない、そういう状況であるということは大変残念なことでありますけれども、皆さんもよく御承知のことかと思います。  それから有名なマイター報告、カーター大統領の原子力政策のブループリントだと言われておりますが、その中には、原子力の平和利用と軍事利用を分かつ分水嶺がこの再処理技術であるというふうに述べられておりまして、これは私ども忘れてはならないことではないかと思うのであります。  ところが、今度の原子炉規制法案の改正理由を、実は資料をいただきまして昨日読ましていただいたのでありますけれども、その提案理由を拝見いたしますと、この核兵器との結びつきについてはほとんど触れられておりませんで、ただ一行、「原子力の平和利用と核の不拡散は両立し得るとの基本理念に立脚し、」ということだけが述べられておりまして、矛盾を両立させるための具体的な方法は何ら述べられていないということを私は心配いたします。原子力三原則があるから大丈夫なんだというようなことが国際的には全然通用しなかったということは、申し上げるまでもございませんけれども、昨年の日米核燃料交渉の経緯を見ましても明らかであろうかと思います。  皆さんには釈迦に説法かと思いますが、念のため申しておきますと、昨年の日米東海村核再処理施設運転に関する合意についての共同声明の中には、「日本国及び合衆国は、核燃料サイクル及びプルトニウムの将来の役割を評価するために協力する。両国は、プルトニウムが核拡散上重大な危険性を有するものであり、軽水炉でのそのリサイクルは、現時点では、商業利用に供される段階にはなく、その尚早な商業化は避けられるべきであるとの見解を共有する。」というふうに述べられております。     〔佐々木(義)委員長代理退席、委員長着席〕 こういうことと今回の民間再処理工場という御提案とがどういうかかわりを持つのか、私にはちょっと理解しかねるのであります。これも御承知のとおりでありますが、現に原子力委員会におかれましては、国際問題等懇談会を設けられまして、こういう問題についての検討をお始めになったということは聞いておりますけれども、一定の結論をお出しになって、どうするんだということを表明されたことを私は聞いておりません。なるべく近いうちに私どもとしましては原子力委員会にもお目にかかりまして、われわれがどういう点を危惧しているかということを申し上げたいと思っているわけであります。これをいたずらに急ぎますと、現在のような国際環境のもとにおいては、たとえば発展途上国に対して要らぬ誤解を与えるということが生じるのではないかということを私は恐れるものであります。これについてはまた後でちょっと申したいと思います。  次に移りたいと思います。第二の問題は、民間の再処理工場ということでありますが、その技術的、経済的困難さということについてどなたもおっしゃいませんでしたので、ちょっと申し上げたいと思うのであります。  実は、一九六〇年代の初めごろから、アメリカでも民間で再処理をすることが可能でもあるし、かつ利益もあるんだというふうに考えられた時代がございまして、企業化が行われたわけであります。そうして、行われましたけれども、はっきり申し上げれば、現時点ではすべて失敗したというのがその歴史的現実であります。  全部について触れる時間がございませんので、たとえばこれは一番有名なNFSという工場がございます。これはニューヨーク州のウェストバーレイというところにつくられた再処理工場でございまして、建設費としては当時のお金で三千万ドル程度のものでありますが、ウラン処理量が年間三百トンぐらいの工場でございまして、それで六六年から操業を開始いたしまして、結局一九七二年に一回運転を中止しております。これは、一つは従業員の被曝が非常に増大したことがその理由でございまして、もう一つは六十万ガロン——ガロンというのは私どもにはちょっとなじみの薄い単位ですが、四リッターが大体一ガロンと略算させていただきますと二百四十万リッター、そういう高レベル廃棄物が許容限度いっぱいたまってしまったということがその閉鎖の理由であります。それで施設を新たにつくり直して拡大したいということで停止したのでありますけれども、その追加投資が余りにも大き過ぎるということで、これはその後放棄されまして、現在六十万立米の高レベル廃棄物は政府の一つのお荷物——管理しておりますのはニューヨーク州だそうでありますが、これは何とかしなければならぬという形で残っておる。しかも、実際このうちのどのくらいの燃料処理したかというと、わずかに六百三十トンでありまして、しかもそのうち六割は政府からの注文であって、実際の民間からの商業再処理と呼べるものはそのうちの四割にすぎないということが記録されております。そして、商業ベースで一キログラム当たりわずか三十ドルの再処理料金しか取らなかったために資本経費も賄えないということで、この工場企業的には完全に失敗しておるわけであります。  もうこれ以上余り申し上げませんが、そのほかにもGEのモーリス工場、これは半乾式再処理法と申します新しい技術を採用して、その見込みが甘かったためでありますが、これも成功しておりません。それからアライドケミカルのバーンウエル工場、これがちょうどいま問題になっております民間第二再処理工場と同じ規模の千五百トン規模の工場でございますが、これは七千万ドルぐらいの経費の見積もりでスタートをしたけれども、環境規制、それからいろいろな保障措置関係の経費が非常に増大するというようなことで、その見積もりが十倍にも上がり、これは政府に補助金の要請をしたけれども拒否されているというようなことで、やはり困難になっておるわけです。  時間がないので、私こういうふうに米国の例だけ申したわけでありますが、この米国の場合でも、実はサバンナリバーというところの原子力潜水艦用の原子炉燃料を再処理いたします工場はちゃんと動いているのでありまして、私の申したいのは、米国ではそういう工場を幾つも動かした経験を持っておって、その技術的なバックグラウンドや経験は十分ある、にもかかわらず民間再処理工場が失敗したという事実を皆さんの記憶にとどめておいていただく必要があるのではないかということであります。残念ながら、日本ではまだわずかに動燃の再処理工場を動かし始めたばかり——と申しますよりは、私どもが大変残念に思いますのは、動燃の再処理工場をつくるということか決まりますと、原研の再処理施設はもう要らないからやめろということになる。そういうやり方か、いままで二十年間やってきたことでありまして、田島先生もおっしゃったように、本来基礎研究に戻るべきことが多いということであるにもかかわらず、実際問題としては非常に困難であったということが、私、創立以来原子力発電所におりまして大変残念に思っております。新しいプロジェクトが決まりますと、いままでの基礎研究が放棄されるというのが残念ながら歴史でございます。  時間がありませんので次に進みます。三番目に、再処理工場というのも工場でありますから、工場には必ず製品がございます。その製品は、プルトニウムと高レベル廃棄物が製品であるとおっしゃる方はないと思いますが、プルトニウムウランが製品でありますけれども、それではその用途が明確なのかというと、これがきわめて不明確でありまして、たとえば動燃の再処理工場は試験プラントだからそういうことはいいんだとおっしゃるかもしれませんけれども、分離されたいわゆる減損ウラン、これは実際は天然ウランよりは235をたくさん含んでいるにもかかわらず、その用途は濃縮ウラン工場へ戻すのかということも決まっておらなければ、別のリアクターに入れて燃すのかということも不明確である。総じてそういうような核燃料サイクルを確立するためにとおっしゃいますけれども、核燃料サイクルを確立するための総合的な検討というのは決して周到には行われておらないと私は申し上げざるを得ないのであります。  濃縮のことを申しましたのですが、今度の規制法に関連いたしまして、私、調べて驚いたのですけれども、ウラン濃縮については規制法はどこにも触れておらない。製練事業でも触れておりませんし、加工事業でも触れておらない、あるいはどこかに規定があるのでしょうけれども、少なくともウラン濃縮をいかにして規制するかということは全然触れておりませんので、これは核兵器との関連ということで申しますと、私の大変心配になる点であります。  それから、プルトニウムにつきましては、アメリカの場合では、それを軽水炉にリサイクルするためにGESMO報告と呼ばれております膨大な報告をつくりまして、社会的な、経済的なあるいは技術的な検討を行ったことは御承知のとおりでございます。そういう点もわが国ではまだほとんど検討が行われていないのではないかというふうに思います。  それから、先ほど河村先生が冒頭におっしゃったのですけれども、実は再処理というのは決して軽水炉ウランプルトニウムサイクルだけを考えるべきものではございませんで、アメリカで計画されておりました第四工場高温ガス炉用の再処理工場でありましたし、それから、当然のことでありますが、高速増殖炉の燃料をどういうふうに再処理するかというふうに、核燃料が変われば当然再処理方法が変わってまいりますから、私が申したいのは、核燃料サイクルを決める、核燃料サイクルをどういうふうに考えるかということの方が実は重要でありまして、河村先生もおっしゃったようなトリウムサイクル等々も含めて、広い視野から総合的な検討を行うことがいま必要なので、民間再処理工場を急ぐ時期では決してないのじゃないかというふうに私は考えるものであります。  それから、次に第四点でありますが、再処理工場が危険性を持っているということの特徴は、いろいろな方がもう述べられましたけれども、要するに核燃料サイクル中で発生いたしました  原子炉放射能というものがつくられるわけですけれども、その九九・九八%までの放射能というのは再処理工場に集められ、そしてせっかく防護されていた被覆が解かれるわけでありますから、よほどなことをやらなければ環境へ非常に大きなインパクトを生ずるということはもう清水先生その他から詳しく述べられたとおりでございます。  念のため申しますならば、原子炉の炉心溶融あるいは原子炉平常運転放出されます放射能とは違った核種の放射能環境に出るというのが再処理工場の特徴でありまして、一般的に申せば、比較的寿命の長い核種の、これは原子炉の爆発のようなこわさがなくて、じわじわとした危険性が確実に、しかも環境にそれがしみ通っていくという、こういうことを申すと怒られるかもしれません。確かに原子炉と違いまして高温、高圧ではありませんから、比較的軽視されやすいのですけれども、環境へのインパクトの重大性はやはり指摘をしておく必要があろうかと思います。  それから、もう一つ厄介な問題で私が申し上げておきたいと思いますのは、プルトニウムを含んだ、つまり再処理工場というとプルトニウムが製品だと申しましたので、全部製品の方にプルトニウムがいくように普通の方はお考えなんです。実は厄介なのは、しぼり取り損なった微量のプルトニウム廃棄物の中に残る。これが非常に厄介であります。これはたとえばハンフォードにありますプルトニウムなんかですと、ビスマスを使った、蒼鉛を使った、沈澱法なんかを使ったものですから、プルトニウム廃棄物の中に五%も入っているということになります。これは廃棄物だということで放置されているのですけれども、この問題はかなり重要なものである。実は現在のところは、再処理工場からの廃棄物よりも、関連して起こるプルトニウムのリサイクリングによって生ずる、たとえば加工施設その他からの廃棄物が相当ございまして、これは原研でも大変困難な問題があるのですけれども、比較的これは無視されておるということを私は申し上げておきたいと思います。これは非常に重大な問題であります。  それから最後に、五番目に、民営ということでありますが、実は学術会議は三原則を提唱いたしましたときに、単に民主、自主、公開ということを言っただけではありませんで、当時のいろいろな国際情勢、つまり軍事利用が圧倒的に多いという状況から考えて、核燃料物質、特殊核物質というのは厳重な国家管理にすべきであるということを言っておる。十八回総会の決議を見ていただけばわかりますが、そういうことが述べられてございます。それでその後実は原子燃料公社がつくられまして、原子燃料公社の一番大きな仕事というのは本来核燃料の所有をするということであったのですが、いわゆる動燃事業団に改組されましたときに、これが何となく消えて、何となくと申し上げると失礼ですが、消えてしまいまして、民有が認められるようになっておる。しかし、このことはもう一度考え直すべき時期に来ているのではないかというふうに私は考えておるわけであります。  先ほど河村さんもお触れになりましたけれども、国際的な再処理工場といったものを国際的に協調してやろう、これはいわゆる政府間ベースでもいろいろやれますが、私、きょう持ってまいりましたこの本は、昨年の夏開かれました。ハグウォッシュ会議で、アメリカカナダのグループがつくりました再処理工場のインターナショナルアレンジメントに関する諸問題、たとえば制度的な問題、技術的な問題、IAEAの関与の仕方の問題といったことを非常に詳細に検討した本でありますけれども、ただ、これを読んで感じますことは、ヨーロッパでは比較的、たとえば西ドイツとフランスとイギリスとが協調する、つまり核兵器国と非核兵器国が平和利用の再処理工場において協力するとかというようないろいろな組み合わせがあり得るわけですけれども、日本の場合はこの事業が非常に違っております。これはアジアにある。しかも中国があり、ソビエトがある。それからフィリピン、台湾、韓国といったような国がありまして、この事情が非常に変わっておりまして、こういう問題が今度具体的な問題として非常にヨーロッパと違って独自に考えなければならない問題を提供することは私は明らかであろうと思います。こういう点から見まして、これが民間工場というようなことで私はできるとはとうてい思われないのでありまして、どうしてもその辺の制度そのものをもう一度再検討する必要があるのではないかというふうに私は考えるものであります。  少し時間を超過いたしましたけれども、以上で私の意見を申し上げさせていただきました。
  14. 岡本富夫

    岡本委員長 ありがとうございました。  次に、山川参考人
  15. 山川暁夫

    山川参考人 私は、本特別委員会の議案になっております原子炉等の規制に関する法律の採択に反対の立場で発言をいたしたいと思います。  できればこの法案は廃案にしていただきたいし、百歩譲って申し上げれば、継続審議、慎重審議が願わしいというふうに考えております。問題の重要さに比較して、マスコミその他でも十分に取り上げられていない。こういう法案がいま国会に提出されているということを多くの方が知られていない。恐らく国会の議員先生方も御存じない方が多かろうと思うのです。そういう内容の問題でございます。  そういう状況の中で、早々にINFCEとのかかわりでコンセンサスを確立をする、そのたてまえを通すということで、今国会で採択されることに危惧を持つものでございます。  その理由を申し上げたいと思いますけれども、問題の焦点は、再処理工場民営化することを認めるのかどうかということではございますけれども、当然、反対の立場の立論の基礎には、再処理工場だけではない、原子力開発そのものに対する危惧というものがございます。いま、推進の立論の基礎としては、化石燃料がやがて枯渇する、エネルギー危機が来る、日本はとりわけそういう点では不安定な状況にある。それに対して原子力考えられる限りクリーンであり、安い、現実可能のエネルギー源であろう、太陽熱、核融合その他については二十一世紀にならざるを得ないであろうというような理由。それから、多くの危険が指摘されるけれども、それは相対的な問題であって、安全性というものは相対的に考えるべきであろう、事故の可能性については技術的に乗り越えていくことができるし、国際的な保障措置も完備していくであろう、そういうふうな主張が出されているわけでありますけれども、まさにその問題をめぐってコンセンサスがないわけでございます。資源が果たして本当に枯渇するのか——資源有限でございますから、枯渇する時期が来ることは明らかでありますけれども、現実にいろいろ伝えられている化石燃料、石油燃料の可採埋蔵量とか、あるいはそれ以上に、まだ可採の段階に入らないとしても考えられている埋蔵量、二兆バレルと言われるような量を考えている、あるいはブルッキングス研究所の一つの調査でございますけれども、石炭の埋蔵量だけでも良質のもので六兆トンあり、現在の世界エネルギーの消費量の五百年分に相当する、天然ガスについても、現在の世界エネルギー消費量の百五十年分がある、等々の数字、私は、それをにわかに自分で調査するわけにはまいりませんし、その信憑性を明らかにするわけにはまいりませんけれども、そういうことが伝えられている以上、果たして言われるところのエネルギー危機というものが不可避的なものとして、しかも差し迫った問題としてあるのかどうか、そのことがまず問題であろうと思います。  エネルギー問題、とりわけて石油の問題というのは資本の、企業の利潤の問題、それから国家主権の問題、とりわけて最近の国際政治を揺り動かしている南北問題に対する適切な対応というものを要請されている問題であろうと思います。  安全性の問題についても、先ほど来多くの参考人方々が申されたような疑点があるわけでありまして、それはたとえばザルツブルク会議で、先ほど御紹介がありましたアメリカの国務次官代理をしておりますナイ次官補が発言をいたしましたときに、原子力は三十年間世界のエネルギー需要を満たす究極の手段とみなされてきたけれども、最近、環境安全性、安全保障の面で深刻に疑問が出されている。アメリカは、七五年までに実に八十一億五千万ドルの金を原子力関係に投入してきておるわけでありますが、なおかつワシントンを代表する人がそういう発言をせざるを得ない。これは、一つの学者のレポートということではなくて、われわれに対して非常に大きな疑問を投げかけるものであります。  事実上、原子炉にまつわる事故というものは、故障という言い方がございますけれども、かなりの数が伝えられておりまして、核再処理工場については、いま御紹介がありましたように、GEの例とか、あるいはNFSの例とか、繰り返しませんけれども、一時操業していたのが中断になる、停止になるというケースが相次いで、現実に軍事用以外の有効な再処理工場は、世界には本格的なものとしてはまだないわけであります。  原子炉の事故についても、海外あるいは国内について数多く伝えられておりまして、たとえば一昨年の十一月に起きた西ドイツのグンドレミンゲンの沸騰水型炉の事故の場合には、放射能ネットを浴びた労働者が一人即死をして、翌日一人がまた病院で死ぬ。その二人が、放射能を浴びているために火葬もできない、キャスクに入れていまだに火葬しない形になっておる、そういうような状況さえ出ているわけであります。  日本の場合も数多くの事故をわれわれは耳にしております。十分な全貌が明らかになっているわけではありませんけれども、幾つかの文献などで、そのことがかなり詳しく指摘されております。実際に、福島の第一号炉の場合には、労働者は、ストップウォッチを持った管理者のもとで、三十秒ごとにゴー、カムバックと言うふうな仕事のさせ方をされているわけであります。しかも、こういう労働者は、ほとんど下請の労働者でございます。  全体の日本原子力発電所の操業率についても、これは多く御案内であろうと思いますけれども、七〇年の七一・八%からだんだんに減ってまいりまして、七五年には四六・九、昨年は四一・八%の操業率というふうに落ち込んで、ことしの二月現在では三四・二%の操業率でしかない。これは原子炉の数がふえてきているということにもかかわるかもしれませんけれども、それだけまた故障その他の運休というような状況を余儀なくされていることのあらわれであろうと思います。その結果としての白血病の問題なども、美浜の例とかいろいろな形で提出されております。  アメリカにおいて、かつてのスモーキー実験の場合に参加した軍人たち、兵士たちの白血病の問題が問題になりまして、二十万の規模を数えるであろう、それをどういうふうに調べ直すか、対処し直さなければならないかということをアメリカ国防省が取り上げてまいりましたのは、実にこの二月になってからのことでございます。それほどこの原子炉の問題をめぐっては状況というものはコンプリケートでありまして、単純な結論を出し得べきものではないというふうに私は考えます。  そのほか温水排熱の問題もございますし、炉心の緊急冷却装置の技術的開発についてもアメリカでようやく五十分の一規模レベルの実験的なことが行われてくるというような段階でございます。  この原子力開発について本当に安全と言い切れる人はいないのではないか、子孫に対して安全だと言い切る人は、現在世界じゅうには、原子力関係を推進される方としてもおられないのではないかというふうに思います。そういう意味では、原子力時代というものがまだ来ているわけではない、いろいろなマイナス、危険面を持っている。一時の現金が欲しいというようなことから大変な資産を失ってしまうというようなことになりかねないだろうと思うのです。事故ではない、故障であるという言い方がございますけれども、故障という言い方をすることによって何でもないような理解を与える言葉遣いにすぎないだろうというふうに私は考えます。故障というのは、つまり、それがどういう理由であり、どういう対処がなし得るものであるかというのを、非常に多量の経験則の中から確認し得ている問題でございます。事故というのは、まさにそういうことの予測外に出てくる問題でありまして、そういう経験則の中にいま原子力開発の事故、故障、どちらの言い方をしてもよろしゅうございますけれども、それが入っているのかと言えば、入っているわけではない。どんなに小さいものであったとしても、それは非常に重要な問題性をはらんでいるというふうに考えなければならぬのではないかというふうに思います。  採算性の問題もいろいろ疑問が出ておりますが、これはまた後ほど申し上げてみたいというふうに思うわけです。  どうも、素人的に考えまして、原子力開発というものがこれだけの技術的保証がある、可能である、したがってこれだけは可能である、だから日本のエネルギー問題はこうすべきであるというふうにならないで、引き算の方で考えられて、結局、足りない分が外挿法的に全部原子力発電のところに持ってこられる。そこに息せき切って原発の建設というものがやられるということになってきたのではないか。その既成事実の上に立って、今度は、これだけ放射性物質が出てくるのだから、その再処理というものはどうしても必要になってくるのではないかというふうに、既成事実を積み重ねながら、そのしわ寄せというものが結局再処理工場、死の灰の、フォールアウトの集中場になるわけですけれども、そういうものをつくるということになってきつつあるのではないかと思います。  しかも、そうなってくれば、そこにはつまり核兵器への転化の可能性の問題が当然出てまいるわけであります。最近の新聞では、何もプルトニウムに転換するまでもなく、アメリカでは使用済みウランで砲弾をつくる、来年から大量生産に入るという記事が、朝日新聞の記事でございますが、三月十九日に出てきております。そういう可能性というものも当然深まってまいりましょうし、それからこれこれ、これだけの安全装置、安全体制をとっておるから、だから安全であるということの裏側には、明らかにその工場及びその工場周辺に対する規制、あるいはいろいろな生活上の権利に対する規制というものが広がってくる。つまり大変な管理社会というものをつくり上げざるを得ない。現に特別警備保障の会社などもいままでの経過の中ですでにつくられてきておるわけでありまして、日本国家の仕組みのありようについての懸念というものを反対の一つの根拠に置きたいと私は思うのであります。  それで、そういう状態の中でINFCEの審議が続いておりまして、なるほどカーター大統領は核開発の問題については必要性を認め、それから昨年の九月十二日の共同決定においても、アメリカは主要な措置以外の再処理工場の設営についてはそれを認めるという立場に立っておりますけれども、しかし、いまアメリカの出方というのは、部分的にそういう制限措置を解く方向にいっているのか、あるいはやはりそれを停止させようという方向で問題を組み立てているのか、この辺は正確に見ておく必要があるだろうと思います。昨年の共同決定でも、硝酸プルトニウムを酸化プルトニウムにする転換工場を認めなかったという重要な歯どめを引いているところにむしろアメリカのねらいがある。アメリカのねらいというのは、もちろんこれは完全にりっぱなねらいというだけにもいきませんで、濃縮ウラン軽水炉型のアメリカがいまリーダーシップを持っております技術体系のところに世界の原子力開発の足並みを組み直そう、再処理の問題あるいは高速増殖炉の問題ではアメリカは負けてきているわけでありますから、そこはモラトリアムしてしまおうというねらいがあることは明らかでありますけれども、しかし、だからといってカーター政権の出方に対して、日本原子力樹立、さらには、誤解を招くかもしれませんが、核樹立という方向にあわただしく進むことが必要なことであるのかどうか、この辺が非常に問題になることであろうと思うのです。  それで、この法律案の説明によりますと、INFCEに対する交渉力を強めるためにやらなければならないのだということになっておりますけれども、これは大変素人的な考えでありますが、INFCEの一応の結論が出るのが来年でございます。それまでの間にあわただしく、いま国民のコンセンサスもなしにやらなければならないというその理由は一体どういうことなのか。西ドイツがやるから日本もやるべきだというふうに考え方がなる場合もありましょうけれども、そういうことで本当の国民のコンセンサスをつくる方向になるのか。やはりこれもまた既成事実を積み重ねていく方向での政策の遂行になっているのではないか。アメリカの方から見れば、これはやはり日本の一種のクーデターというふうにとらえられかねないだろうと思うのです。基本的にそれをとめていこうという方向にあるのに対して、このINFCEの結論を待つことなく、INFCEの方向を決定する方向で日本原子力政策がつくられるということは、アメリカにとっては一つの重要な挑戦と見るだろうと思うのです。アメリカは、INFCEが始まりまして以来、アメリカの国内でどういう核政策を展開しているのかについても委員会で十分御審議願いたいというふうに思います。  まして民営の問題になりますと、これは事柄の性質上乱立するわけにはまいりません。したがって、公社とか新しい会社をつくるということにならざるを得ないと思いますけれども、同時に、その民間の再処理工場をどの企業が中心になって運営をしていくのかということは、これも今後の日本経済の構造、ありようにとって非常に重要な意味を持ってくるのではないか。エネルギーの問題が重要であるだけに、その頂点の再処理のところを握り得る企業というものはやはり日本経済総体を握り得る立場に立つ、客観的にそういう位置に立つだろうと思うのです。したがって、民営というのは一口で言っても大変な企業間の争いというものを内に含まざるを得ない。また事実、法律案があってこれから動きが始まるのではなくて、御案内のようにそのためのさまざまな準備が機構的にも進んでまいりましたし、個別の企業の中ではどこにサイトを設けるかということのプログラムも組まれているやに聞いております。徳之島の問題が上がっているようなこともございますけれども、瀬戸内に置こうというふうに考えている企業もあるやに聞いております。そういう事実上の計画がまず企業側にあって、それを法律案の方で合理化するということになってきているんではないかというふうに思います。  時間が来ましたので終わらなければなりませんけれども、人間というものあるいは人類というものが生きてきたのは火のエネルギー、広くはつまり太陽のエネルギーでありまして、化石エネルギーにしても、いずれにせよ太陽エネルギーの転化形態でございます。ないしは水力のエネルギーということは自然そのもののエネルギーの利用形態でございます。人類というのは、その自然の与えてきたエネルギーというものを効率的に取り込むことによって人類社会としての発展を遂げてきたのであろうと思いますけれども、原子力エネルギーだけはそのエネルギー体系と根本的に違う。つまり物質そのもののエネルギーを物質を破壊することによって抽出をするという哲学といいますか、考え方の上に立っている。それは広くは自然を破壊することによってエネルギーをとろうということでありまして、これは人類と自然との共存関係を成り立たしむるものではないというふうに私は考えます。  最後に一点だけつけ加えて終わらせていただきます。この法律案の第四十四条の項でございますけれども、つまり動燃日本原子力研究所についての事業の承認の問題と、それから民間に対する総理大臣の指定業者としての指定の問題が書かれております。読み込みが十分深くないので間違っておるかもしれませんが、この指定の場合、つまり民間の場合には、核再処理施設が平和の目的以外に利用されるおそれがないことを含みまして四号の条件が指定されてございます。ところが承認の部分、つまり動燃、原研にかかわる部分、四十四条の二の二項でございますけれども、これについてはどういう理由でございますか、前項第四号に適合していると認めた場合というふうにしか特定されておりません。つまり、「再処理施設が平和の目的以外に利用されるおそれがないこと。」というのは条件にされていないのでございますけれども、これはどういう意味を持っているのか疑問がございます。  それから、いただきましたこの法律案資料の四十三ページでございますが、七十一条のくだりで、ここでも動燃と原研については「処分、命令、届出又は報告については、この限りでない。」ということで、明らかに区別されてございます。この民間再処理工場の設営と同時に、動燃、原研の側、つまり東海処理工場の方に一つの質的な課題といいますか、そういうものの質的な変化が起こるのではないかということも危惧でございます。  以上のことを挙げて、反対の理由といたします。
  16. 岡本富夫

    岡本委員長 ありがとうございました。  午後一時から再開することとし、この際、休憩いたします。     午後零時三十一分休憩      ————◇—————     午後一時十二分開議
  17. 岡本富夫

    岡本委員長 休憩前に引き続き、会議を開きます。  質疑の申し出があります。順次これを許します。石野久男君。
  18. 石野久男

    ○石野委員 参考人の皆さんには、きょうは本当にお忙しいところをありがとうございます。  持ち時間が三十分しかございませんのと、先生方の中で早くに帰られる方もございますので、そういう立場から質問を集中させていただきます。  最初に、清水先生にお尋ねする前に、高島先生にちょっとお尋ねしたいのです。  この法案は、再処理工場民営化の問題を論じておるのですけれども、再処理工場については、先生方からも、参考人の皆さんからもいろいろお話がありましたように、原子炉と比べものにならないほど放出放射能の多い仕事でございます。それだけに私どももそういう観点から、再処理工場のいわゆる安全審査の問題について、原子力委員会が行った安全審査についていろいろとやはり問題があるような気がする、私は専門屋じゃないからわからないのですが。余り細かい資料を見ておりませんのでわかりませんけれども、私どもが簡単に見たものの中で、あの安全審査の中では、再処理工場から出るいわゆるプルトニウム放出放射能の量でございますが、それはどの程度に計算されているのでございましょうか。
  19. 高島洋一

    高島参考人 いま手元に資料がないものですから、絶対値はちょっと申し上げられませんけれども、プルトニウムに関しては結局九九・九%以上はピュアな形でいまのところ、硝酸プルトニウムという形、溶液ですけれども、しまってあるわけです。これはアメリカが文句を言っていたところですけれども、この二年間はそれでよろしい。あと残りのプルトニウム、要するにトレース程度ですけれども、どうしても取り切れないというのが高放射性廃液の方に多少行くと思います。それは一番最初の抽出工程で、フィッションプロダクトとウランプルトニウムを分けるときに、非常によく分かれるとはいっても、少しトレース程度には残る。それから海水の方にはほとんど検出できない。要するに何回も低放射性廃液は処理をいたしますし、最後には蒸発して、いわば真水みたいなものだけ出している。特に御存じのようにプルトニウムというのは重い核種ですから、そういうものに対しては除染効果が非常に大きいし、恐らく検出不能だといまの段階では思います。
  20. 石野久男

    ○石野委員 私も、安全審査の書類、薄っぺらなものしか見ませんでした。細かいものはよう見るだけの資料もないし、それから見る能力もございませんので。けれども、ただプルトニウムというのは、いわゆる放出放射能の計算の中ではまず出ていなかったような気がするものですから、完全にゼロであるのかどうかということの疑問を持っておりました。計算のできないような量でありましても、処理量が多くなればやはり一定の量になるだろう、こういう心配があります。そういう点については、清水先生、全然これは問題はないのでしょうか、どうでしょうか、ちょっと所見を聞かせていただけませんか。
  21. 清水誠

    清水参考人 現在考えられている動燃処理からのプルトニウムの排出に関しましては、最大放出量として見込みは年間に六十二ミリキュリーで、一日当たり最大放出量としては三掛ける十のマイナス四乗キュリーというような数字が出ております。それで、これは廃液の方に出てまいりまして、それが海へ入ってほかの核種と同じように拡散をして生物に取り込まれてどのくらいのはね返り、人間への被曝を与えるかという計算も一応はやってございます。その被曝線量数字を私は持ってきておりませんけれども、そういう廃液中の放射性物質でもって一番人間にはね返りの多いのはストロンチウム90、場合によってはほかの核種の場合もありますけれども、内部被曝の場合はストロンチウム90、それより大分下のけたの評価だったかと思います。プルトニウムについて許容基準がいま非常に問題になっていますけれども、あれはむしろ大気といいますか、排気中に出て肺に入りましたときの問題が一番大きいように私は思いますが、海へ出た場合に海産生物への取り込みは筋肉ではそれほど大きくないものですからそういったような評価になっているかと思います。ただ、何しろ半減期が長いものですから、十分慎重でなければならないことはもちろんだろうと思います。
  22. 石野久男

    ○石野委員 いまのプルトニウムの場合は、大気中に出て肺に来たときには肺がんをつくるという一つの心配がある。海水に出た場合には、それとはちょっと別な形で、ただし半減期が長いから何かに濃縮されて入り込む、またわれわれの口の中へ入ってくるというようなことの心配はあるが、これはいまのところは大してそう心配はないとしましても、再処理工場そのものが商業用のものとして各国ともいまそれほど持っていないのです。しかしながら、原発が雨後のタケノコのように出てくるとすれば、いやでも応でもやらなければいけないことになるだろう。そうすると、それが全世界的には、大気中の問題は別としましても、七つの海の上では相当な影響が出てくる可能性、そういうものは心配せぬでもいいんだろうかどうだろうか、そういう点についての観点でどうでございましょうか、清水先生、高島先生、それから田島先生にもちょっとお聞きしたいと思います。
  23. 清水誠

    清水参考人 私から最初に。ちゃんとしたお答えはとてもできないのですが、プルトニウムのことを心配をするのだと、平常時の放出よりもむしろ別の原因の場合のことを心配した方が多分よろしいだろうと思います。  それから、廃棄物の問題であれば、当然高レベル廃棄物の中にも入っておりますので、これはほかの方の方が御専門ですから、そちらの方からお答えいただいた方がいいと思いますけれども、そういう半減期の長いものが入っておりまして、それを捨てるという場合に大変障害になりますので、そういうものをきちんと分けて処理するということがこれから重要になってくるだろうと思います。平常時の放出におけるプルトニウム、特に海の場合には、それが直ちに全世界の放射能汚染で大変なことになるというふうには、私は現在は考えておりません。
  24. 田島英三

    田島参考人 なかなかお答えしにくい問題ですが、プルトニウムはもちろん今でも、あるいは将来の第二再処理工場にしてみても、管理が悪ければ問題にならない。やはり一番神経を使って管理しなければならない核種の一つであることには間違いないだろうと思います。ただ先生の御質問のお気持ちの中に、プルトニウム毒性の問題についてお考えがあるんじゃなかろうかと思いますが、これは御承知のように前にタンブリン、ゴフマンが、空気中の浮遊性プルトニウムの粒子について、現在のICRPの基準量の十一万五千分の一にしろという提案を出しまして、アメリカのAEC及びEPA、環境保護庁に請願をいたしまして、それが何回か検討の結果、結局却下されたという事情がございます。それにつきましてわれわれも、生物学者、医学者等々の人々と一緒に一年ばかり検討いたしまして、これは最近のものですからそう珍しい結論ではないのですけれども、タンブリン、ゴフマンの言っている十一万五千分の一というのは非常にリーズナブルでないという結論が得られました。これは生物学的、医学的な検討の結果そういう結論になったのですが、われわれの結論ばかりじゃなくて、これに関しては英国その他から発表論文その他の文献がたくさんございまして、それで英国のメディカル・リサーチ・カウンシルの結論ですと、やはり十一万五千分の一は大き過ぎる、ただしいまのICRP——いまのと言いますのは、日本で使っているICRPと同じですが、それより少しは厳しくなる方が至当であるだろうというふうな結論を出しております。しかしながら、それは十倍も厳しくなるわけじゃない、多分二倍か五倍かぐらいのところだろう、大体において同じ。それと、さらにその問題は国際的にも非常に大きく問題になりまして、そして国連の科学委員会でもそれと同じようなことを取り上げておりまして、科学委員会の最終的な最近の報告でも、そのタンブリン、ゴフマンの提言を支持するような方向ではない。それから科学委員会の世界的な権威のある報告をもとにしまして、最近ICRPの勧告が改定になりましたが、それにもはっきり、ゴフマン、タンブリンのような考え方は至当でなくて、こういう考え方をした方がいいだろう、それは大まかに言って、従来の考え方と余り変わらない考え方だと言っていいと思います。詳しいことはちょっと時間の関係で申し上げません。報告書はここにあります。
  25. 高島洋一

    高島参考人 私どもがごく最近「廃液の海への放出にかかわる詳細な審査」というので調べた結果、被曝線量の評価をプルトニウムに関してやっておりますが、「骨の被曝のうち、プルトニウムによるものはコンマ一ミリレムとなる」という結論が一応出ております。その程度でございますので、少なくとも平常時のことに関しては御心配ないと思いますけれども、さっきおっしゃったようにちょっとした大きな事故が起こったり何かしますと、プルトニウムはやはり一番こわいものの一つというふうに考えております。
  26. 石野久男

    ○石野委員 再処理工場の問題は燃料サイクル立場で出てくるのでございますが、河村先生からは、トリウム・ウランサイクルの問題も考えるべきだ、そういうようなものを考えながらという前提で、特にこの種の問題については国家間の取り決めとして、民間間ではなかなかうまくいかないだろうというような発言がございました。今度の法の改正は再処理工場民営化の問題でございます。その問題とこの御意見とのかかわり合いの問題について先生の所見をもう一度お聞かせ願いたいし、山川参考人には、こういうような問題を、INFCEの問題と関連する中で民営の問題、それからINFCEの中に強く要請されておるアメリカの要求、INFCE自体の中で部会がいろいろ論議を進めておる問題等と関連しましてどういうふうにお考えになっておられるか、それをお聞かせいただきたいと思います。
  27. 河村和孝

    河村参考人 ただいま御質問がございましたのはRFCCの問題だと理解いたしましたが、INFCEの方の結論がどうなるかということを待たないと、はっきりしたことは言えないわけでございます。たとえばの話で私は持ち出したわけでございますが、たとえば先ほどお話ししましたように、地域核燃料処理センターRFCCという構想が出た場合には、自分のうちのごみを自分のうちで処理するというのをいまお決めになろうとしているわけですが、そうではなくて、やはり両隣のうちはもちろんのこと、もうちょっと隣のごみまでも一緒に処理しなければならない、そういうことになるわけであります。ですから、家族の中での同意というのではやはりまずいということもありますし、そういう事態が起こったときにいまの法律をともかくうまく適用いたしまして、何も摩擦がないようにやっていただきたいというのが私の希望でございます。
  28. 山川暁夫

    山川参考人 私はINFCEに出ているわけでもございませんし、INFCEの討議内容についても十分知っているわけではございませんので、どういう結論が出るのかということは推測の域を超えないわけでありますが、カーター政府の出方について言う限り、有名なマイター報告、つまり福田首相がカーター大統領から与えられてきたマイター報告に書かれている線が固執されるであろうというふうに思うのです。マイター報告の再処理問題についての結論部分のところではこう書かれています。「再処理によって無理に得なければならないような国家的利益は存在しない。」「再処理プルトニウム備蓄への現在の経験は、増殖炉の導入が遠い先のことで不確定でもあるため、現在価値は少ししかない。」そういう考え方を基礎にしてカーター大統領、ホワイトハウスの出方は決められておると思います。そしてカーター大統領あるいはカーター政権というものがどういうふうになるか、かなり高度の政治的な要素をはらみます。ことしの中間選挙の動向も影響しましょうし、グローバルな戦略がどういうふうにこの二年間展開するかということで決まってくることでございまして、これまた一時的に予測はできないのでございますが、時間をいただいて申し上げたいと思います。  カーター政権というのは必ずしも力強く動いてはおりませんが、なぜジョージア州のピーナツファーマーが大統領に登場してきたのか。その背景には、御案内だと思いますけれども、ロックフェラーの代表でありますデービッド・ロックフェラーを中心とするトライラテラルコミッションの非常に強力なポリシーが働いていたというふうに見るほかはございません。このトライラテラルコミッティー、あるいはそれをつくり上げてきましたビルダーバーグ会議というのがございますが、これは現在の世界的な動きを左右していく一つのオーガニゼーションであると考えていい。ついしばらく前に行われました日米首脳会談でも、多く新聞面でも見落とされているように私は思いますが、四月二十五日から二十七日までプリンストンでビルダーバーグ会議というのが開かれておりまして、前国務長官のキッシンジャーあるいは現在の大統領特別補佐官のブレジンスキー、それからチェースマンハッタンのデービッド・ロックフェラー、ロスチャイルドの代表、あるいは注目すべきなのはヘーグNATO司令官なども参加して百五名で世界戦略を討議しております。そしてその内容は完全シークレットにされておるわけですけれども、その結論を得て会議が終わりました夕方、日米協会の夕食会でブレジンスキー大統領特別補佐官がアジア政策、日本問題についての所見を発表しておる。これが実は福田・カーター日米共同声明にかわるべき質を持っていたものだと見てよろしいのであります。日米首脳会談では、日本側が共同声明を出したいと要請したにもかかわらず、アメリカ側がノーと言った。そしてアメリカ側の見解は首脳会談が開かれる前に一方的に打ち出していった、そういう事柄の運びぐあい、そして世界をリードする巨大企業の一種の連合体、そういうもののバックグラウンドを持ちながらカーター大統領は押し上げられてきたのであって、したがってまた、カーター大統領の政策に一つの個別の企業あるいは産業界から反対が出てくるということは十分あり得ることなんであります。そこに、世界の流れというものがベトナムでアメリカが破れた以降いま大きく変わってきているということが反映しているのであって、カーター大統領が右に揺れ左に揺れしておるようだから何もできないのではないかというのではなくて、日本の核武装の阻止と、それから核の分野におけるアメリカのヘゲモニーを日本及びドイツが切り崩してくることに対する対抗策が今後かなり強力にとられてくるというふうに見ておかなければならないと思います。  その問題ともう一つは、ついしばらく前にワシントンで開かれましたジョージタウン大学の国際戦略研究所主催の第四回の日米欧加の四極会議で出たやに聞いておりますけれども、アメリカの代表が日本に環太平洋の核燃料サイクルセンター設置の音頭をとるように勧告をした。その勧告の根拠になっておりますのは、出席なさいました日本エネルギー経済研究所の生田所長のお言葉によりますと、自由世界のエネルギー戦略確立による対ソ包囲網の実現にある、つまりアメリカがいま志向しております軍事、政治、経済面での対ソ戦略とのかかわりにおいて日本核燃料サイクルセンターの問題を考える、この二つの交錯した命題がどういうふうに展開をしてくるのかということで決められてくるのであろうというふうに思います。  INFCEの討議はINFCEの討議として独自なものがもちろん出てくるわけでございますけれども、このINFCEの討議が始まりますついしばらく前のことでありますが、日本が、再処理工場が完全に確立する前のいわば過渡的措置として、御案内のようにイギリス、フランス処理を委託しておるわけでありますけれども、そのために日本から二千五百億円投資する、輸出入銀行の融資率七〇%でやるということが前もって明らかにされておったわけであります。それにかかわることだと思いますが、五月三十日のワシントンポストは、日本がイギリス、フランスに再処理問題について十億ドルの金を出すということはけしからぬという立場に立っておるという報道がなされまして、同時に東電、関電のイギリスに対する委託については、アメリカが日米原子力協定八条Cを行使いたしましてそれを認めないという形になって出てきておる。先ほど最初の報告で申しましたけれども、INFCE会議における交渉力を強めるために再処理工場民営化をまずやっておくべきである、その法律をつくっておくべきであるということは、明らかにアメリカにとっては挑戦として考えられるでございましょうし、そうすればこの種のいろいろなアメリカ側からのトランプカードの提出ということは予想されるわけであります。アメリカは、昨年の十月八日でございますけれども、エネルギー省が決定し、アメリカ政府そのものの決定になっておるわけでありますけれども、この十五年間核燃料灰はアメリカが独占、貯蔵していこうという方針をとっている。ここにも再処理工場を認めないということが出てまいっておるだろうと思います。INFCEの結論は、どうあろうとも、INFCEの結論と並んで日米原子力協定というのは現に存在するわけでございますから、INFCEの結論が出た後に日本アメリカのポリシーに拘束されることになって、もちろんそれまでに第二再処理工場ができるわけではありませんけれども、サイトの設置、サイトの選択その他の諸計画が大きな空振りになってしまう可能性があるのではないかというふうに思います。  ちょっとついでながら申し上げれば、そういうことで、もう一つのもっと重要な、もっと深刻な第二の成田になりかねないというふうに私は思います。しかも、その成田から飛び立つのは飛行機ではなくて、普通の国民にとってはもっと危険なものが飛び立つというふうに言わなければならない。第二再処理工場が、伝えられるところによると五千億ないし六千億だと聞いておりますけれども、成田空港これまた六千億、七千億でございます。その他諸経費を含めますれば成田空港以上の経費がかかった後で、アメリカの政策にも拘束されながら全く大きな空振りになってしまうということになったときに、政治の分野がいかなる責任をおとりになるのかというところまで、この法案審議の際には御判断願いたいと考えております。  最後は質問をちょっと外れましたけれども、お答えにいたしたいと思います。
  29. 岡本富夫

    岡本委員長 次に、貝沼次郎君。
  30. 貝沼次郎

    貝沼委員 時間がないようでございますので、河村参考人に簡単にお伺いいたします。  トリウム・ウランサイクルウランプルトニウムサイクルお話があったわけでございます。それで、トリウム・ウランサイクルの方もこれから考えていかなければならないし、また将来はウランプルトニウムサイクルと逆転するのじゃないかという趣旨のお話だったと思いますが、技術的に見た場合、私はトリウム・ウランサイクルの方はよくわからないのですけれども、どちらがむずかしいのかということを一点お尋ねしたいと思います。  もう一点は、日本の第二再処理工場が実際に稼働するのは十数年先の話だと言われております。ところが、この法律が通りますと、それは自動的に行われていく関係になりますので、私ども立法府としては十数年先のことまで責任は持ちかねるというのが実際の気持ちでございます。したがって、そのための歯どめをしておかなければならないと考えておるわけであります。たとえば、ハイレベルから極低レベルまで、こういう廃棄物環境問題あるいは基礎的にこれとこれは当然やっておかなければならないという技術があるのじゃないかと思いますが、そういう問題は、具体的にスケジュールみたいなものをぴしっと決めて、そしてその都度それの解決策を国民の前に出して理解を求めて、国民的合意を形成しながらやっていかないと大変ではないかという感じが私はするわけでございます。  こういう歯どめの問題と、トリウム・ウランサイクルあるいはウランプルトニウムサイクルでは技術的にどちらがむずかしいのかという点、二点についてお尋ねしたいと思います。
  31. 河村和孝

    河村参考人 お答えいたします。  最初技術的な問題点ということにつきましては、私の話の中でも多少触れたつもりでおりましたが、現在の原子力核燃料システムというのは、ウランプルトニウムサイクルを中心に動いております。人間でいいますとほとんどの研究者がそちらの方に集中しておりますし、予算的に見ましてもほとんどそちらの方に集中しておるということになりますので、たとえばそれぐらいの人員と予算がトリウム・ウランサイクルの方に注がれたといたしますれば、正確な比較ができることになるわけであります。現在のところ、トリウムウラン系に対しての人員並びに予算のつけ方というのは非常に微々たるものでございますから、現時点で比較ということはなかなかむずかしい問題であるということでございます。  ただ、いじっておりまして考えられる幾つかの点をお話しいたしますと、資源的には先ほどお話しいたしましたように四倍あるいは三倍であるというふうに言われております。資源の分布を考えてみますと、ウランプルトニウムの場合には比較的偏っております。それに対しましてトリウムという燃料は世界に比較的広く分布しておる。そういうことになりますと、多くの場所から日本の方に輸入できるというメリットがあります。資源を広い地帯から求めるということは今後非常に重要な問題であろうというふうに考えるわけでございますから、少なくとも資源的な面におきましては、トリウムの方がかなりいいであろうと考えられるわけであります。  一方、そういううまいことばかりあるということでもありません。たとえば、放射能が非常に強いということを先ほどお話しいたしましたが、そのために放射線防護というものをかなりしっかりやっていただかないと、このプロセスはなかなか成り立たないということでございます。  しかし、世界の方で全然やっていないかといいますとそうではございません。たとえばアメリカにおきましてはORNL、オークリッジ・ナショナル・ラボラトリー、オークリッジ国立研究所というのがございますが、そこでウラントリウムを使いましたトーレックスという方法がございます。これは再処理のところでございますが、その方法と、その後で核燃料を実際につくる、Uの233の燃料をつくるところでTURFという工場がございます。その二つの試験工場ができているということでございます。それはアメリカの例でございまして、ヨーロッパの方でお話しいたしますと、これは西ドイツのユーリヒという国立研究所でございますが、そこで試験工場としてジュピターという工場が再処理工場として動いております。その後を受けましてサターン、これはUの233を核燃料にするところでございますが、そういう工場も動いておる。そういった実績があるわけでございます。そういうものの結果が出だしましたら正確な比較の評価ができるかと思います。それが第一点でございます。  第二点は、立法府として歯どめを考えていかなければならないだろう、そういうものに対してどう考えるかという御意見でございますが、全く同感でございます。特に原子力の場合は知識集約産業でございますし、日進月歩でございまして、しかもそのやり方が、安全なものが生まれればその安全な方へ安全な方へと動いていく技術でございます。したがいまして、歯どめということは、一定のなるべく短い期間においてしっかりとやっていかなければならない、そういうふうに考えるわけであります。
  32. 貝沼次郎

    貝沼委員 清水参考人に一点だけお伺いしておきたいと思いますが、放射性物質の生体に与える影響は十分注意を必要とするわけです。これはもう先ほどの御意見のとおりでございますが、魚介類に蓄積されて、さらに食物連鎖による蓄積等を考えますと非常に重大な問題だと思います。そこで、放出の量を減らす方向の目標の再検討はどのようにする方がよいというお考えなのか。その辺の目標を定めていかないと研究はなかなか進まないという話もありましたので、その辺で具体的なお考えをお持ちでしたらお教え願いたいと思います。
  33. 清水誠

    清水参考人 いまのことに関してお答えするのは、私にとっては大変に重荷でございます。というのは、放射線影響を直接やっている人間ではないということが一つあります。ただ、各国の現状を見まして、現在わが国では軽水炉に関する線量目標値として五ミリだけが決められておりますけれども、実はこれは早急に核燃料サイクル全体についての線量目標値みたいなものを決めないとどうしようもないということになると思います。そのためには、たとえばアメリカのEPAが出している二十五とか、ああいうことが参考になるのではないかと思います。これは全くの私見でありますけれども、私も全体としては大体あのくらい、二十とか三十とかになり得るのではないだろうかという気はしております。ただ、この辺はよほど慎重に検討しないといけない問題だとは思いますけれども、とにかく早急にそれを示すことが必要ではないかと考えております。
  34. 岡本富夫

    岡本委員長 小宮武喜君。
  35. 小宮武喜

    ○小宮委員 参考人の方、本日は御苦労さまでございました。  河村参考人にお尋ねしますけれども、先ほども話が出ておりますように、ウランプルトニウムサイクルよりはむしろトリウム・ウランサイクルの方を考えていただきたい、その理由としては、プルトニウム核兵器につながるし、トリウムの方は核兵器につながらないという立場でいろいろ申されておりましたけれども、いまトリウムを使う核燃料サイクルはまだまだ基礎的研究段階ではないのかというふうに考えます。この問題は以前にも私は科学技術庁に質問したことがありますけれども、そういう意味でトリウムサイクル技術的に経済的にむずかしい問題を抱えておるのではないかということも考えられるわけです。  というのは、現在、世界的にも実用化されておるのは、いわゆるウランプルトニウム核燃料サイクルだということを考えた場合に、世界各国がウランサイクルの方を実用化してトリウムサイクルを採用していないということについては何か理由がおありと考えておられますか、その点いかがでしょうか。
  36. 河村和孝

    河村参考人 ただいま御質問がございましたけれども、先ほどの質問と関連いたしますが、確かに現状ではウランプルトニウムサイクルということで動いております。これはやはり人間と予算のつき方が決定的な条件だと思います。それと同じくらい人間あるいは予算というものを振り向けていただきまして、それで競争できるかどうかという評価をしていただかないと結論はわからないということでございます。  現在、実用化されていないではないかという御質問でございますけれども、二、三のところは私の話の中でお話しいたしましたけれども、正直言って基礎的な段階からやっていかなければならないということは間違いないと思います。
  37. 小宮武喜

    ○小宮委員 ウランサイクルの方は現在実用化されておる、トリウムサイクルの方はまだ基礎研究の段階だと言うが、これはアメリカのカーター大統領もトリウムの問題を言っている。私たちもその問題については非常に興味を持っているわけですが、ウランサイクルの方だけが実用化されて、片一方トリウムサイクルの方はまだ研究の基礎段階だということについて、どういう理由か何かわけがあるのかどうかということをお聞きしたいのです。
  38. 河村和孝

    河村参考人 実は私も、正直言ってそこの理由が知りたいくらいでありまして、私が理解しておる範囲では、やはりウランの方に人間と研究費が多額に行ってしまった、その結果こういうことであるというふうに理解しております。
  39. 小宮武喜

    ○小宮委員 私も知りたいところですけれども、結構です。  それから、トリウムサイクルを開発してウランサイクルにかわり得るものとしていくためには今後どの程度期間と費用を必要とするか、その点どう見られておるかひとつお聞きしたいと思います。
  40. 河村和孝

    河村参考人 これもやはり関係の人たちの熱意によると思いますが、少なくともウランを開発したくらいの日にちはとらないであろう。かなり似たようなところがございますので、それよりは短くいくだろうということくらいしかお答えできないと思います。
  41. 小宮武喜

    ○小宮委員 それからもう一つトリウム使用済み燃料を再処理するには、ウラン使用済み燃料の再処理にはない困難な問題があると聞いております。先ほど、いわゆる放射能が多量に発生するとか放射線が発生するとかいろいろ言われておりましたけれども、その困難な点はどの点かということと、またこれは容易に解決できる問題であるかどうかという点について参考までにひとつ御意見を聞きたいと思います。
  42. 河村和孝

    河村参考人 放射線が強いということ、これがまず決定的でございます。そのためにどういう欠点があるかと申しますと、多少技術的なことになりますが、たとえば精製のときに使います有機溶媒、一種の油でございますが、それが放射線によりまして分解するであろうという懸念がございます。そのためにたとえば抽出装置その他をかえていかなければならないだろうというふうに考えられます。たとえばいま、動燃の方でおやりになつております平型のミキサセトラでは、抽出時間がかなり長くなってしまって油が劣化してくる、そういう問題があるわけであります。それをいわゆる縦型にすることで抽出時間を短くしよう、そういう試みがあるわけでございます。たとえば、これも例を申し上げて恐縮ですが、平屋の家を高層建築にしようというようなものでございますから、やはりそこにはかなりいろいろな問題が含まれてくるのではないかというふうに考えております。
  43. 小宮武喜

    ○小宮委員 清水参考人一つだけお伺いします。  自然の大気中にどれくらいの放射能が存在するのか。また、先ほど魚介類に与える影響の問題も言っておられましたので、海水中には放射能はどれくらいあるのか。われわれもいままで、科学技術庁にいろいろ質問しておるわけですけれども、皆さん方の立場から——たとえば発電所周辺でいろいろな防護施設をやられておりますが、むしろそれよりも高い数値の放射能が無論自然の大気中にも海水中にも存在しておるということを聞いておるわけですが、その数値は大体どれくらいと考えておられますか。
  44. 清水誠

    清水参考人 大気中のものについてはどういうふうにお答えしていいのかよくわかりません。いまおっしゃった意味を、一つ天然における放射株の被曝というふうに考えるならば、大体年間、平均的には百ミリくらい浴びるということはよく言われております。それに比べて、今度の動燃東出の再処理工場から出るものによって受ける被曝こいうものは、大気の場合には三十二、海洋放出廃液の場合には内部、外部両方合わせまして六という数字が出ております。  自然放射能大気中の話に関しましては、むしろ田島先生の方からきちんとお答えをいただいた方がいいかと思いますけれども、御参考までに海洋中にある天然放射性核種の濃度を申し上げれば、一番大きいのはカリの四十、これは一リットル当たりピコキュリーが三百という数字でございます。あと、それより一けたぐらい下がってルビジウムであるとかウラントリウムその他がございます。
  45. 小宮武喜

    ○小宮委員 時間が来ましたので……。
  46. 岡本富夫

  47. 田畑政一郎

    ○田畑委員 実はいま、法案審議中でございまして、その中で民間会社に再処理工場をやらせよう、これが趣旨でございますね。  そこで、いろいろ外国の例なども委員会としては研究しているわけでございますが、アメリカでは民間会社にやらせているけれどもあんまりうまくいかない、それからドイツは、いまほど田宮先生からお話がありましたとおり民間会社でやることになっておる。イギリス、フランスにおいては、地元でいろいろ反対運動などもありますが、一応これは公社といいますか政府関係の機関で再処理工場をやっておる。  実はこの再処理工場それ自身について、まだまだ研究不十分でございまして、これに判を押していいのかわからないわけでございます。ただ問題は、ここでそうした多くの問題がある再処理工場を認めるといたしましても、それを民間会社に任せるべきなのかあるいは公社、政府機関がこれを主としてやるべきなのかという点でございます。この点について田島先生から、いわゆる民間と官庁とが共同で研究し開発をしていくという方向を志向すべきである、こういうお話もございましたが、ひとつそういう点について御意見をお伺いをいたしたい。     〔委員長退席、石野委員長代理着席〕  なお、この工場をつくりますためには政府答弁によりましても四千億ないし五千億の費用を要する。その資金の調達についてはどうなるかははっきりしませんけれども、多分いままでの例から言いますと国家資金を大量に援助しないとこれはできないものというふうな前提に私ども立っておるわけでございます。国の費用は一銭も要らぬというふうなものではない、こう思っておるわけでございまして、そういう点もお含みおきをいただきながら、国でやるのがいいのか、民間でやるのがいいのかという点について率直な御意見をお伺いをいたしたい、かように思うわけでございます。田島先生、それから中島先生にお伺いいたしたいと思います。
  48. 田島英三

    田島参考人 私は、御承知のようにバックグラウンドは自然科学者、物理を専攻した者でありまして、原子力技術的な面ではある一部は専攻しております。もちろん原子力に関する周辺のエネルギー問題等も読んでおりますけれども、私自身が責任を持って答えられる範囲は技術的な範囲だと思います。ところが、国営にするか民営にするかという問題は、技術的な問題はもちろんでありますが、それ以外にいろいろなファクターが入ってまいります。先ほど来お話がありましたように、経済の問題、それから社会、産業国家の組織の問題、あるいは国防の問題、それから国際政治の問題等々、非常に多くの要素がありまして、それの総合的な判断からして民営でやるか国営でやるかということが決まるのではなかろうかと思うわけです。したがって、私の狭い分野から、これが国営でいいか、民営でいいかというようなことは、実は責任のある意見を申し述べることはできないというふうに私は考えるわけです。  ただ一つ技術的な問題だけから言えると思いますのは、国営でなければいけないという問題は、これは従来の技術と非常に違う問題は高レベル廃棄物に関する問題だけでありまして、これは私は自信を持って国営で管理、処理、処分をしなければいけないということだけは技術的な観点だけから言えると思います。なぜならば、高レベルの放射性廃棄物処理は、御承知のようにアクチナイド、代表的なのはプルトニウムですが、それが入っておりますと非常に長い半減期——半減期は二万四千年ばかりありますが、そういうような状況でこれを非常に長い間にわたって管理しなければいけない。その管理の年数は一体どのくらいのことを考えているのが世界の通説であるかと申しますと、アクチナイドを含んだ高レベル廃棄物については数十万年のオーダーのものをもって安全としなければいけないだろうというふうなことがIAEAその他の勧告になって言われております。こうなりますと、安全とは一体どういうものであるかとか、それだけの保障をどうするかということは、これは一つの民間の機関では不可能であるし、考え方そのものがおかしいということで、この点に関しては自信を持って国営であるべきであるということを申し上げることができますが、それ以外の前の段階におきましては、やはりいろいろなファクターが重なりあった総合的な判断で決められるものだと思います。最初お話ししましたのは、仮にこの法案が通って再処理工場民営になっても政府はそれで手を抜くなということを申し上げたのでありまして、私は民営がいいとか悪いとかその限りにおいては申し上げていないつもりでございます。
  49. 中島篤之助

    ○中島参考人 これについてちょっと参考になることを一つ申し上げさせていただきたいと思いますが、学術会議では、ちょうど九期と申しましていまから四年ほど前の終わりのときに、実は急増いたします原子力発電について見解を出しております。これは実際日本の場合には電力会社がそれぞれ民営でおやりになっているわけなんですけれども、学術会議が申しましたことは、電力会社が私企業であるということによって国民の生命、健康に安全でないようなことが起こってはならない、それに影響が及ぶことがあってはならない、そのときにはむしろ体制を考え直してくれということを政府に対して勧告をしておるということでございます。ですから、これも田島さんと似ておりますけれども、そういうことが保障されればよいということになるかと思います。ただし、再処理事業につきましては、これはまだ学術会議としてはまとまった検討をしておりませんけれども、むしろお考えをいただきたいのは、現在までの規制法がなぜ原子力研究所と原子燃料公社あるいは動燃だけの事業にしたかということでありまして、これは、扱うものが主として特殊核物質である、そういうものがもとは国家管理であったというのが歴史的にあり、それから、その後のいろいろな原子力開発の歴史の中でそれを民営に移すべき理由が一時——さっき私はそのことでアメリカの民間企業への移行が成功しなかったという例を申し上げたわけでありますが、私自身の考えは、そういうことをいますぐ民営に移すような条件ができたとはとうてい思えない。民間企業に移すということは民営の能率性のいいところを活用しようというお考えかと思いますけれども、しかし、やはり優先すべきなのは国民の健康で、あるいは生命、健康、安全にかかわる事柄というのは次元の違う問題でありまして、これは非常に慎重に考えていくべきではないかというのが私の考えでございます。
  50. 田畑政一郎

    ○田畑委員 ちょっとポイントみたいなところでございますので、高島先生からも何か御意見がございましたらひとつお願いいたします。
  51. 高島洋一

    高島参考人 私も技術屋で、法律とかそういう政策の問題になりますと責任のあるお答えはとうていできないのですけれども、ただ、こういう原子力の開発をやっている段階で見守っていますと、たとえばそういう技術的な問題にしろ、実際に活発に研究をやり、それからよりいいデザインをやろうとしているアクティビティーは民間の中にある。動燃はそれをうまく吸収してそれを生かして物にしていく。そういう状態を見てみますと、もし全く国だけがやるとすると、かえっていろいろな面で能率も悪いし、それから本当の意味で国民と密着した形でやりにくい。要するに、原子力というのはやはり国民全体の総意によってやられなくちゃいけない。そのときに、国だけが何か離れて勝手にやっているというやり方というのはいろいろな面でよくないのじゃないかと素人ながら私は考える。民間にお任せするというのでなくて、民間の意欲を生かしてよりいい再処理施設を積極的に開発していくと同時に、安全の面で国が十分なコントロールをして国民の期待にこたえる、そういう体制はいずれにしろ必要だろう。ドイツでも、高放射性廃棄物とか廃棄物の最後の後始末に関しては国が責任を持ってやるということになっておりまして、ただ、そのときにかかる費用は受益者が負担する、そういう考え方ならば日本でも同様に成り立つのではないかというふうに素人ながら思っておるわけです。
  52. 田畑政一郎

    ○田畑委員 このわが国の再処理工場問題と、それから国際的に幾つかの国が寄りまして地域センターといいますか、そういったものをつくる考え方と二つあるわけでございます。これに対しまして、わが国の政府は自主、独立路線といいますか、再処理はわが国でやる、これを第一義的、基本的原則として進めていきたいという答弁でございます。しかし、そうかといって、地域センターの問題を考えないというわけではない。これも第二義的とは申しませんけれども、それに付随するものとしてにらみながら進んでいきたい、こういう意見が本委員会において述べられておるわけでございます。これに対しまして、やはり今日は核拡散等の問題等も考え、世界の体制も考えますと、やはり地域センター構想というのを最重点的に重視すべきではないかというのが先ほど河村先生からも申されたところでございます。  さて、この件につきまして、今度再処理工場をつくるということにつきまして二百万坪の土地を要するという膨大な敷地、そしてまたそこから生ずる汚染問題というものを考えてみますと、おのずから立地の条件というのは制限されてまいりまして、たとえて言えば、人口密集地は困る、あるいはできれば海が近い方がいいというようなことになってまいりまして、うわさによりますと北海道の奥尻島あるいは南の方は奄美の徳之島というようなところが考えられているというようなことが流布されておるわけでございますね。そういうようなところが予定されなければならぬという国内情勢であるとしますならば、これはやはり共同の地域センター考えて積極的に取り上げないと、通産省あるいは科学技術庁では第三再処理工場、第二再処理工場ができる前に第三再処理工場の計画がもうあるかもしれない、こういうふうに言っているわけでありますから、そういうふうに考えますと、やはり国際的な処理ということも考えていくべきではないか。この問題でございます。この件につきましてひとつ皆様方としてはどうお考えになるかということをお聞きいたしたい、こう思うわけでございます。河村先生お帰りになりましたので、ひとつ高島先生と田宮先生にお伺いいたしたいと思います。
  53. 高島洋一

    高島参考人 その質問の趣旨、私、ちょっとぼんやりしていて、あるいは取り違えているかもしれないのですが、リージョナルセンター構想についてどう考えるかというふうに受け取ってよろしいのでしょうか。
  54. 田畑政一郎

    ○田畑委員 はい。
  55. 高島洋一

    高島参考人 再処理をやらない原子力というのは、何かのコマーシャルでありますように、何とかのないコーヒーはというのと同じで、特に日本にとっては非常に意味が薄れてしまう。つまり再処理原子力のかなめでなくてはいけない。なぜならば核燃料を十分に節約し、生かして、できるだけ安い電力を国民に供給するという意味からも、最終目標としては——そういう心構えでやらないんだ、要するに使い捨てでいいんだということであれば、原子力はせいぜい二、三十年しか寿命がないのであります。そういう意味で私は、それを五百年、千年に長もちさせるためにも再処理というものがかなめになって確立されていなければいけない。そういう意味でリージョナルセンター構想というものを非常に重視しておりまして、できればその周辺に加工工場その他も備えて、プルトニウムがたくさん蓄積されているということが大きな問題でございますので、一番いい方法は、できたプルトニウムは少しでも早く原子炉で燃やしてしまう、そういう構想考えて本格的な再処理センターというものを確立するのが将来大事じゃないかというふうに思っております。またそういうことになりますと、単に日本だけでなくて周辺の国の人たちのためにもサービスが、どの時点でできるようになるかはわからないにしても、できるような体制に持っていくべきであろうと思います。その意味で立地問題は大変かもしれないけれども、そういうものを踏まえて敷地を選んでやっていくということをぜひ考えていただきたいと思っております。
  56. 田宮茂文

    田宮参考人 リージョナル核燃料センターについてどう考えるかということでございますけれども、実はINFCEではその問題はまだ登場しておりません。と申しますのは、これは先生御承知のように多国間会議でございますので、会議での国としての発言と腹の底に何を思っておるかという点は必ずしもまだ一致しないところでありますが、現在のところ、先ほど申し上げましたように、INFCEでは、再処理をやってプルトニウムをリサイクルすべしというイギリス、フランス、西ドイツ、日本と、まだ再処理は延期すべきであるというアメリカとの対立というかっこうになっておりまして、アメリカ自身が再処理をしてよろしいというところまでは行っておりません。したがいまして、公式にはアメリカから再処理を前提とする地域核燃料センターという構想は出てこないという理屈になるわけであります。しかし、アメリカでは非公式にいろいろ検討をやっている向きがございます。それから、当然でございますが、アメリカ原子力関係者の中に独自の意見を持っているという人もおりまして、そういうところから地域核燃料サイクルセンターという構想がちらほら出てくるということはございます。したがいまして、現在アメリカが公式に言っておりますのは、少なくとも周辺地区の再処理を集めてやるという地域核燃料センターというものはアメリカの政策に反するわけでございまして、公式には出ておりません。  それで、ただ、先ほど冒頭に申しましたように、アメリカの七八年不拡散法というのを見ますと、その中には国際核燃料オーソリティーという構想が出ております。インターナショナル・ニュークリア・フュエル・オーソリティー、INFAと言っておりますが、これの構想を見ますと、これも先ほど申し上げましたように、まず国際的な核燃料銀行をつくりまして、その付属するファンクションとしまして国際的な使用済み燃料の貯蔵庫をつくる。それから、低濃縮工場の能力を拡大いたしまして、その拡大した能力をもって、その使用済み燃料を預ける国に対して、そこの中に含まれておるウランプルトニウムに相当する低濃縮ウランを供給するという仕掛けでございます。それにまた付帯しまして、この国際核燃料銀行に参加する、そこから、銀行の借り手になる国については、一国単独の濃縮再処理工場はつくらせないようにする、こういうふうになっております。  この構想全体がまだINFCEに出てきたわけではございませんで、INFCEの第三部会というところで、その国際核燃料銀行につきまして、その構想についてどういうふうに考えたらよろしいかという質問のかっこうでアメリカが提案しております。したがいまして、それに付帯いたします国際的な核燃料処理貯蔵地、使用済み燃料の貯蔵地とか、そういった問題はまだ出てきておりません。  そこで、いまのところのアメリカ考え方は、それはINFCEの会場その他で国務省の人その他にいろいろ聞いてみますと、一時アメリカとしましては、この国際核燃料銀行というものを、非常に大きなものを考えた。つまり、包括的に一手販売をするようなことを考えたのだけれども、これは当然のことながら、カナダとか豪州とかいうウラン資源国、現在すでにウランのコマーシャルマーケットができておる国に反対を受けますし、それから、アメリカの国内情勢等を考えますと、日本とかドイツのような非常に大きな国の使用済み燃料を一手に引き取るというようなことは、アメリカの国内事情もあって不可能だということで、現在考えております国際核燃料銀行というものは、非常に小規模な、低開発国向きのものであるようでございます。  ですから、全体的ないわゆる再処理を前提とします地域核燃料センターの問題はまだ出てきておりませんし、また、日本独自でINFCEの場で日本の利益だけを主張するということは、もちろん御指摘のように得策でございませんけれども、いろいろな総合的な場所で、国際的な問題に協力する場所はいろいろあると思います。第一から第八までございますいろいろな燃料サイクルの各部門において総合的に国際的に協力する、特に、低開発国をいかにして満足させるように貢献するかという総合的な戦略が必要ではないか、こう考えております。     〔石野委員長代理退席、委員長着席〕
  57. 田畑政一郎

    ○田畑委員 田宮先生、これは第三再処理工場をつくるにつきまして電力業界に——私、電力業界のことはよくわかりませんが、電気事業連合会かどうか知りませんけれども、そういうところでこの地域センターを、国際的なセンターをつくってやろうじゃないか、こういう構想が出ておるというふうに聞いておるわけでございます。出ておるか出ていないのか、話があったのかないのか、それだけで結構でございますから、それは後で…  次いで、実は先ほどから監視機構の問題が出ておるわけでございます。御案内のとおり、原子力発電所でさえ相当な問題を醸しておるわけでございますが、まして再処理工場を大規模につくるということになりますると、非常な放射能関係の汚染等が予想されるわけでございまして、こうしたいわゆる監視機構をある程度強化をするとか、あるいは改良に次ぐ改良をやっていい技術を取り入れていくべきであるとかいろいろ言われているのでございますが、やはり一番問題なのは、住民なり国民がある程度安心できるといいましょうか、そういう気持ちになれる機構体制をどうつくるのか。これはなかなか原子力発電所でもむずかしゅうございまして、中へ入って見たからといって、なかなか素人ではわかりませんし、学者先生を頼もうとすれば、それは困るといって拒否をされるしということで、なかなかむずかしい問題があるわけです。ただ機械だけをそろえて放射能の量だけを探っておけばそれでいいのかというと、それもいわゆる動植物内における蓄積というような問題は別な形でまた出てくるという点もありまして、非常にむずかしい。  そこで、これからいわゆる再処理工場をつくるに当たりまして、監視機構というものは再処理工場が動き出してから初めて置かれるというのでは、これはだめなんじゃないかと思うのでございますね。だから、もう建設設計の段階から、いわゆる民間というか住民が安心できるような、委託できるような監視機構を、政府はある程度これを保障していかなければならぬのではないか、こう思うわけでございます。しからば、一体そういう機構というものを行政的にあるいは法律的にどういうふうに保障していったらいいのか。これもまた、われわれの悩みの種でございまして、一体先生方はこういった問題についてどのようにお考えになっていらっしゃいますのか、ひとつ何かお考えがございましたらお伺いをいたしたい、かように思うわけでございます。  この点につきまして、田島先生から廃棄物の問題が出ておりますし、それから中島先生は学術会議会員でいらっしゃいますので、お二人からお伺いしたいと思います。
  58. 田島英三

    田島参考人 確かに、おっしゃるような、国民全般の方が理解されるようなかっこうであって、そして信頼を置けるようなかっこうで監視機構を設立しなければいけないだろうというお話は私もそのとおりに思うのですが、これにつきまして、私は、技術的な問題としますと、あるいは技術的な組織としますと、やる気になればそうむずかしい問題ではないだろうと思います。したがって、最初のけさのお話の中でも申し上げたのですが、やはり監視機構ということになりますと、もっぱら政府の問題になろうかと思いますので、政府がその点でも一体化といいますか、責任ある分担で処すれば、技術的な問題としてはそうむずかしい問題ではないだろうと思います。  ただ、問題になりますのは、要するに考え方の問題が、私は、なかなか国民の方にも理解できないし、また、政府の方にも時によっては理解できないような場合があると思う。と申しますのは、安全という問題が、いまでこそ絶対安全はないというふうなことがよく言われますけれども、これは恐らく原子力が導入されて初めて私は入ってきたのだろうと思います。放射能の人体への影響は、もう何回も申しますように、閾値のない直線関係であるということをわれわれは堅持しておるわけです。これは、考えてみますと、何も放射能に限った問題ではないのでありまして、大気公害であれ、化学公害であれ、すべての問題でも、私自身はかなりこの考え方は正しいというふうに考えている。それが導入されましたのは実は原子力の問題で、閾値のない直線関係である。われわれはこれに安易に妥協いたしませんで、妥協いたしませんですから、非常に歯切れの悪い話にはなるのですけれども、幾ら少なくても危険はあるんだぞというふうな歯切れの悪い話になるのですけれども、それが私は原子力一つの非常な特徴だと、こう考えておりますので、その辺の考え方の理解が国民に浸透することが必要であろう、そう思います。したがって、そういう考えに立ちますと、なるべくできるだけ安全にしようじゃないかというふうなことになりまして、絶対安全ということは到達すべくもないだろうという考えを持っておるような、そういうことであります。
  59. 中島篤之助

    ○中島参考人 この監視機構の問題につきましては、学術会議としましては、実はちょうど一九七四年でしたか、例の分析化学研究所の事件という日本の科学史上大変困ったいわゆる捏造事件というのが起きまして、そのときに学術会議としましては関係の方々にお集まりいただきまして、主として環境放射能の測定体制のあり方について政府に十項目ほどの勧告をいたしております。それが取り入れられて実現されたということにはなっていないというのは私大変残念だと思っておるのですけれども、そのときに申しましたことは、実はわが国での環境放射能の監視体制と申しますのは、一九六三年ごろがピークでありました例のフォルアウト、大気中核実験に対します環境放射能の監視体制、それからその後六四年から始まりましたアメリカ原子力潜水艦の日本への寄港に伴います監視体制、この二つから成っておる。ところが、原子力発電が非常に大規模化してくると、当然いま御質問がありましたようなことを具体化しなければいけない。結局、そういうフォールアウトの体制というもので、これは一言で申しますと、日本環境全体に対してどういう影響が及んでおるか、たとえばプルトニウムならプルトニウム日本の地表中にはいまどのくらいあるかということはほぼつかまれておるわけであります。これはたとえば〇・九ミリキュリー・パー・平方キロメートルぐらいであるというようなことはわかっておる。今度できます原子力施設あるいは特に再処理工場のようなものは、いわゆるメンスケールの環境監視体制を改めて検討しなければならないということを中心にしていろいろなことを申しております。測定体制をどうしなければいかぬか、人材の養成をどうしなければいかぬか。それから、これは科学技術庁だけではございませんで、文部省関係で学術会議から前から要望しておりました環境放射能研究所、これは実は非常に小さい形で金沢大学に低レベル放射能実験施設というものが昨年から発足しておりますけれども、それでは非常に不十分なものであります。こういうものは早く共同利用研究の体制に移り、人材の養成が行われることが望ましい。  それからもう一点は、地方自治体をどうするかという問題について、これはかなり大胆なコメントをいたしまして、科学技術庁から思い切って地方自治体に権限を移したらどうかという提言をいたしました。実はこれについては学術会議の中でもあるいは専門家の中でも果たしてやれるかという御意見がありましたけれども、われわれとしてはあえて提言という形でそういうことも考えてみなければいけない状態にきておるということを申しております。きょうその資料をこういう御質問があると思いませんで持ってまいりませんでしたが、必要でしたら後でお送りいたしたいと思います。
  60. 田畑政一郎

    ○田畑委員 一言で結構でございます。
  61. 田宮茂文

    田宮参考人 電気事業連合会と申しますか電力業界で、地域核燃料サイクルセンターについてどう考えておるかという御質問だと思います。  ただいまのところ、電力業界は、第二再処理工場は国内向けと考えております。このことはドイツも同様でございます。ただし、その国際的な協力につきましては柔軟な姿勢でおります。
  62. 田畑政一郎

    ○田畑委員 どうもありがとうございました。
  63. 岡本富夫

    岡本委員長 次に、貝沼次郎君。
  64. 貝沼次郎

    貝沼委員 先ほど河村参考人清水参考人にお尋ねをしたわけでありますが、そのうちの一点だけ田島参考人にお尋ねしておきたいと思います。  この第二再処理工場が実際に稼働するまでにやはり私は歯どめというものが大事だと思っておりますが、こういう歯どめというものについてどういうふうにお考えかということでございます。
  65. 田島英三

    田島参考人 歯どめという意味が実ははっきり理解できないのですけれども、一つは、再処理をやりますといやでも高レベル廃棄物が出てまいりますので、それの見通しが立つか立たないかというのが私は一つの歯どめになるのじゃなかろうかと考えておりますが、それでお答えになっているかどうかよくわかりませんですが……。
  66. 貝沼次郎

    貝沼委員 実は先ほどもちょっと申し上げたのですが、この第二再処理工場が実際に稼働するのは十数年先のことになる。国会においてはいま議論をしておりまして、この法律が通りますと自動的に稼働することになる。ところが、十数年先のことはとてもじゃないけれども見当がつかない。技術もどれぐらいであるかもわかりませんし、諸外国との関係においてもどうなっておるかもわかりませんし、あるいは先ほど話がありましたようにトリウム・ウランサイクルの方が先に行くかもしれません。こういったことがありますので一概にいいだろうというわけにまいりませんので、そこでただいまお話がありましたように、ハイレベルの廃棄物はどうするかとか、あるいは環境問題とか、あるいは基礎的にこれぐらいは当然研究をし解決をしておかなければならないというような具体的な問題のスケジュールをきちっと決めて、その都度その解決したことを国民の前に報告をし、そしてその理解を求めていくようにしておかないとなかなかむずかしいのじゃないか、こういう感じを私持っておりますので、それで一言で歯どめと言っておるわけですが、こういうような歯どめということが必要ないものかどうかということに対する見解でございます。
  67. 田島英三

    田島参考人 ただいま申しました後で御説明がありましたので、そういう意味では幾つかつけ加えた項目を挙げたいと思います。  まず、第二再処理工場をつくるにもピューレックス法を使うのかどうかというようなことを明確にするということは当然のことなんですが、午前中のお話でも申し上げましたように、特に問題にしたいと思いますのは、臨界管理という問題はスケールアップされるための非常に大きな問題点で、基礎的な研究を必要とするのではなかろうか。先ほど来、午前中からありましたような高放射能放出が予想されますので、その低減化を固めておく必要があるだろうと思います。  それからもう一つは、これは再処理から高レベル廃棄物処理、処分に行くまでの戦略問題と関係するわけですが、もし必要ならば輸送問題、これがかなりの遠くへ行った場合の問題点として指摘されるのじゃなかろうか。  最後に、先ほど来申し上げました高レベル廃棄物処理の問題及び処分の問題というのがつくだろうと思います。  これらに至る場合には、先ほどちょっと触れましたけれども、安全の考え方というのをもう一回考え直さなければいけない。数十万年の安全とは一体何を意味するのかということから実は考えなければいけないかもしれないと思いますので、したがって、これらの処理をするときの安全審査のやり方というものに対した考え方というようなことが一つの全体をコントロールする問題になりはしないか、そういうように思います。  そういうお話でよろしいかどうかわかりませんが……。
  68. 貝沼次郎

    貝沼委員 わかりました。  それから、高島参考人田島参考人にお尋ねをしたいと思いますが、再処理技術について大学とかそれから研究所、こういうところの研究結果、成果、それと第二再処理工場技術、これはサンゴバン技術、これらを今後どういうふうに考えていくべきなのか。もう全然別個に考えていくのか、それともある程度わが国の自主技術ということを考えますと、大学の研究室等のことは相当取り入れていかなければならぬと思いますが、この辺についてのお考えを聞かせていただきたいと思います。
  69. 高島洋一

    高島参考人 大学の研究がどれぐらい生きるかということになりますと、実際のところ御存じのように頭でっかちでお金もなくて学生の教育にふうふう言っているいまのような現状で、多額のお金のかかる原子力の開発研究に協力できるシェアというのはそれほど大きいことは期待できません。しかしながら、問題意識を持って、たとえば民間会社、動燃事業団その他が多額の金でやっている研究の中にはすき間がいっぱいございまして、大学でないとそういう基礎的なことができないという問題もたくさんありまして、私としてはできるだけそういうものをテーマに選んで少しでもお役に立つ方向で安全研究に寄与したいと思っております。  それで、こういうものが実は日本もようやく芽生えてきまして、たとえばクリプトンの除去の問題、これは一昨年、私ウィーンの会議で講演をいたしましたけれども、逆にアメリカの方から、日本はそんなにクリプトンの研究を活発にやっているのか、それをもう原子炉の排出ガスにアプライしているのか、そういう規制になっているのかというような質問を受けたぐらい、日本はあたかもクリプトンの除去に関してはすごくやっているように過評価されてしまったわけですが、実は外国に少しでも追いつかなくてはいけないし、外国のまねばかりして、結局外国からもらうものはもらって外国には何も差し上げないというようなことではいかぬということで、クリプトンに関しては意識的にかなり積極的に研究開発をやるように政府にも呼びかけたりなんかしたわけであります。そんなことがほかの分野にも徐々にいまや及びつつありますので、特に再処理の安全対策の技術的進歩というのは外国の力はもちろん大いにかりたいと思っておりますけれども、日本でもそういうものを積極的にやりつつあり、それからフランス、西ドイツもその研究の内容の交換をしようじゃないかという申し出も出てきている状態でございますので、これから政府の金の入れ方次第でございますが、有効にやればいい線でいくのじゃないかと思っております。
  70. 田島英三

    田島参考人 私、大学に籍を置きますが、実は余りよく存じませんで、印象を申しますと、いま高島先生がおっしゃったように日本の大学はこの問題に関してそれほど活発でないという印象を私も持っております。それで今後、午前中のお話でも申し上げたのですが、要するに第二再処理工場を仮に建てる、民営であれ国営であれ建てるとしましたら、それに向かってかなりの基礎的な研究開発を進めないと、今度こそとにかく軽水炉の場合と違って自主技術を確立しないといけないと思っております。  そういう場合に、金の流れで大きい小さいを仮に申させていただきますと、どうしても非常に金のかかる仕事が多いだろう、こう思いますので、その金の流れで申しますと、やはり何といっても動燃が主体になって、それに原研が次の主体になるのじゃなかろうかと考えておるわけで、そこで次の再処理工場をつくるための基礎的な技術的な開発ということをねらいまして、かなりの開発研究を進めて、今度こそ自主再処理工場というふうにしたいものだ、そう考えております。
  71. 貝沼次郎

    貝沼委員 それから高島参考人にもう一点伺っておきたいと思いますが、先ほどいろいろなコールドテストからホットテストのときのことが話されまして、安全の装置はシンプルでなければならないという言葉があったのでありますが、この安全の装置というところなんですけれども、もう少し中身を聞きたいと思います。
  72. 高島洋一

    高島参考人 ちょっとその点に関しては、実は私の主観が強過ぎるとも言えます。安全というものは、なるべくシンプルな安全対策が効果的であるというふうに私自身は経験上言っているのであって、これはケース・バイ・ケースで絶対なものではないわけです。実はこういうことを言うのは、とかく原子力には非常にエリートの先生たちが集まって、自分でなければ考えつかないようないい考えを持ってきて押しつけるということもなきにしもあらずで、そういうことが本当の意味の安全につながらないのじゃないかということを私自身は感じたものですからそういう言い方をするのです。皆さんも恐らく経験があって、いろいろなものをやるときに、複雑なものはアイデアとしてはいいけれどもどうも壊れやすいとかうまくいかないということを体験されていると思いますけれども、単にそういう意味で私申し上げたので、ケースによっては複雑な安全対策も講じなくてはいけないということも、当然もちろんあり得るわけです。
  73. 貝沼次郎

    貝沼委員 わかりました。  それで、これに関連して田宮参考人にお尋ねをしたいと思いますが、先般いろいろな警備とかその辺のことをやっておる専門家の方にお話を伺いましたら、フィジカルプロテクションの問題で、わが国の場合防護は高度な機器による、これに頼っておるところが非常に多い、余りにも機器に頼り過ぎているところがあってむしろ心配なのではないか、したがってこういう防護というのはやはり本来的には人間が主体となってやらなければできないことではないかという点で心配がなされておりました。この点についてどういうふうにお考えかお聞かせ願いたいと思います。
  74. 田宮茂文

    田宮参考人 フィジカルプロテクションでございますけれども、実はINFCEにおきましても、核不拡散性と申しますか、核拡散に対する防護というのが一つの評価のアイテムになっております。これは先生御承知のように、いわゆるセーフガード、それから封じ込めと言っておりますが、たとえば出口、入り口を一つにするとか、それからサーべーランスと申しまして、物並びに人間の出入りを監視するという考え方に加えまして、もう一つフィジカルプロテクションということであります。その点につきましては、私の聞き及びますところでは、現在IAEAの場で国際的なフィジカルプロテクションのクライテリアと申しますか、場合によっては国際間条約になるようなものが審議中だというふうに聞いております。その結果を待ちたいと思いますが、先生の御指摘のように、機器だけではなく、やはり機器と人間とをコンバインした形で、一番有効なフィジカルプロテクションというものを考えるべきではないかと、主観としては思っております。
  75. 貝沼次郎

    貝沼委員 もう一点、田宮参考人にお尋ねしたいと思います。  それは、先ほどからお話が出ておりますように、地域核燃料センターRFCC、こういったものがもしつくられるといたしますと、当然の問題として、先ほど田島先生からもお話がありましたように、運搬の問題が出てまいります。この場合に、このセンターそのものは、あるどこかの国でできるでしょうが、その国へ各国が持ち寄るという関係になってまいりますと、いろいろな責任の問題とか、それからその警備その他の問題が出てくると思います。この辺についてはINFCEではどのように議論なされておりますか。
  76. 田宮茂文

    田宮参考人 先ほどお答えいたしましたように、INFCEではまだ地域核燃料センターの論議が起きておりません。ただ、先生の御質問に対して御参考になると思いますが、これは第四作業部会におきまして、現状技術の評価ということで、たとえば再処理から出てまいりますプルトニウムの貯蔵、運搬、それから燃料加工、加工をしたものの運搬、それからその前の使用済み燃料の運搬ということにつきまして、各国がそれぞれペーパーを出しております。たとえば、プルトニウムのヨーロッパ域内におきます運搬につきましては、CEC、ヨーロピアン・コミュニティーがペーパーを出しております。それから、その域外、つまり、インターナショナルなプルトニウムの運搬につきましては、イギリスがペーパーを出すことになっております。これらにつきましては、来る九月中旬の第四部会において、ペーパーがそろったところでその安全性なり環境性なり核不拡散性なりの議論が行われることになっております。
  77. 貝沼次郎

    貝沼委員 最後に、中島参考人にお尋ねをいします。  先ほどのお話で、プルトニウムを含んだ廃棄物、加工工場、リサイクリングのときのプルトニウムがある、こういうお話がございまして、これについて日本はまだ対策がおくれているということで、諸外国の制度なども検討して、さらにこれに対策をとるべきであるという意味だったと思いますが、この辺のところをもう少しお願いしたいと思います。
  78. 中島篤之助

    ○中島参考人 先ほど清水先生はおっしゃらなかったのですけれども、実は、再処理工場ではありませんが、プルトニウムによる局地的な環境汚染として有名なものとして、ロッキー・フラットという、これはアメリカ核兵器工場だったと思うのですけれども、それにプルトニウムが拡散したという事故がございます。これのケースは工場の外に出してあったドラムかんが腐って、それで風で飛ばされて、周辺環境汚染したということが報告されております。これは、大分後になってからそういうことを環境庁が気づいて調べたら、非常に広い範囲にわたって汚染が起こっていたということです。私が申しましたのは、実はそういうことが、わが国でも気をつけないと、起こり得る状況があるということをさっき御指摘申し上げたわけでありまして、実は私のおります原子力研究所におきましても、これは少量ですけれども、昔、これは動燃の加工施設なんかに比べますと非常に小さいものでございますけれども、プルトニウムの研究施設がございます。その一部を解体して大洗に移転をしたわけですけれども、そのときのいろいろな廃棄物が、これは廃棄物処理場に結局来ざるを得ないから、あるわけです。しかし、それはあるというだけの状況になっておるということであります。ですから、案外プルトニウムがこわいということで、実際にできた硝酸プルトニウムがどうなるかというのは、これは厳重なセーフガードの対象になるわけですけれども、案外廃棄物には目が行かないことがあり得るから注意していただきたいということを申し上げたわけであります。そういうことでよろしゅうございましょうか。
  79. 貝沼次郎

    貝沼委員 では、終わります。
  80. 岡本富夫

    岡本委員長 次に、小宮武喜君。
  81. 小宮武喜

    ○小宮委員 最初に、田宮参考人にお尋ねしますが、東海村の再処理工場をめぐって、アメリカ日本の間にいろいろ問題が起きたわけですが、その結果、最終的にはINFCEに持ち込まれたというような経緯を踏まえまして、先月開催されたINFCEの第四作業部会の東京会合においてどういうことが話し合われたのか、またその結果はどうであったのか。幸い田宮参考人は部会の議長を務められたということを聞いておりますので、その辺ひとつお話を願いたいと思います。
  82. 田宮茂文

    田宮参考人 第四部会、これは再処理プルトニウムのリサイクルの部会でございますが、それも実はサブグループが二つございまして、サブグループのAというのが再処理でございまして、サブグループのBというのがプルトニウムのリサイクルでございます。先般東京で行われましたのは、概括的に申しまして、私どもの方の部会では、まず現状の技術の評価をやろう、現状の技術と申しますのは、再処理で言いますとピューレックスでございます。評価といいますのは、安全性環境影響、それから経済性、それと核不拡散性でございます。  それで、ザブグループA、再処理につきましては、その比較するベースケースといたしまして、西ドイツが千四百トン・プラントというペーパーを提出いたしました。この西ドイツのペーパーは、先般申しましたように、西ドイツがゴーレーベンで計画しております西ドイツの商業再処理工場のプラントに基づくものでございます。そのものではございません。基づくものであります。これは千四百トンの工場でございますが、技術ピューレックス、それから一つ申し上げておきたいのは、コロケーションと申しまして、同じサイトに出てまいりますプルトニウムを混合酸化物燃料、モックスと申しておりますが、モックス燃料に加工する工場を併置する。それから出てまいりました同じ場所に、先ほど来からお話のございます高レベル廃棄物の固化装置をつくる。それから、その固化したものを貯蔵する設備もつくる。ただし、永久貯蔵については政府が責任を持つ、こういう仕掛けでございます。そして、ドイツ側の言い分でございますと、そういうふうにコロケーションにすることによりまして、ここに入ってまいりますものは使用済み燃料であり、出てまいりますものはモックス燃料のアセンブルである、そういうことによって核不拡散性というものは非常に強いのだという説明でございます。これに対しまして日本側も、いま考えております第二工場計画に基づく日本側の案というもの、第二工場案を出しております。さらに九月になりますと、イギリスが、日本、ドイツとイギリスで考えているのの違う点を出します。これがサブグループAの主なことでございまして、そのほかに少し別なことでございますけれども、資源の有効利用ということがINFCEで検討すべきことの中に入っております。これに関しましてイギリスが世界の各地区を分けまして、たとえばヨーロッパ、北米、それからインドを含むアジア大陸、日本というふうに分けまして、その地域におきます原子力発電計画とそれに必要なウランの量、それからその地域のウラン埋蔵量というものの比較のペーパーを出しまして、これは当然のことでありますけれども、アメリカにおいては十分賄えるけれども、ヨーロッパと日本では足りないという結論を出したペーパーを出しました。これはアメリカから全部クレームがついたペーパーでございますが、そういうことがございました。  それからサブグループBのプルトニウムのリサイクルにつきましては、先ほどちょっと触れましたけれども、プルトニウムが出てまいりましたときにそれを加工し、それを運搬し、それを原子炉で燃やし、さらにそれを使用済み燃料に戻すということで、それのそれぞれのケーススタディーをやりました。まず輸送につきましては、先ほど申しましたようにECが出しました。それからイギリスがこの次に出します。それからファブリケーションにつきましてはベルギーがモックスの二百トンプラントというのをペーパーを提出いたしました。それからそれを燃す原子炉の組み合わせといたしましては、日本が五千万キロのPとBとの半々の組み合わせ、それに基づきまして、プルトニウムをリサイクルする場合、ウランだけリサイクルする場合、リサイクルしない場合というものの物量バランスを出しました。それからさらにまた、日本がこの経済評価をするためのコストデータでございますが、つまりイエローケーキからウエーストディスポーザルに至りますまでのコストを既存の文献から全部集めまして、それを一九七七年現在に合わせたデータを出しました。これにつきましては非常に好評を得ましたが、まだいろいろ足りないところがございます。  そういう次第でございまして、いよいよ九月からまず既存の技術の評価に入ります。それから同時に技術の代替技術といたしまして、たとえば再処理で申しますればコープロセッシングとかパーシャルプロセッシングとか、それからお聞き及びだと思いますけれども、イギリスの私のコーチャーマンでありますマーシャルの考えておりますシベックス法とか、そういったものの評価に入る段階でございます。
  83. 小宮武喜

    ○小宮委員 昨年の日米共同声明では、わが国は混合抽出法の研究を行い、その結果をINFCEに提供することになっておりますね。この問題を取り扱う第四作業部会では大体どのような取り上げ方をするのか、その点いかがでしょうか。
  84. 田宮茂文

    田宮参考人 先ほど申しましたように、そのコープロセッシングにつきましては先生御指摘のとおり日米協議で動燃がやることになっておりまして、INFCEに提出することになっております。それを受けまして日本代表といたしましてはその代替技術一つとしてコープロセッシングの日本の研究結果を提出するという約束をしております。これは先ほど申しましたように九月以降になると思います。
  85. 小宮武喜

    ○小宮委員 次は、田島参考人にお伺いします。  高レベル放射性廃棄物はガラス固化してしまえば何か非常に少量の固化体になって、その管理も量的にも大変ではないというようなこともちょっと伺っておるわけですが、こういった点についてはやはり十分国民に理解してもらう必要があるのではないか、こういうように考えますが、ガラス固化によってどの程度の容積のものとなるのか、ひとつ具体的に教えていただきたいと思います。
  86. 田島英三

    田島参考人 百万キロワットの発電所考えまして、使用済み燃料毎年三十トン出すとしますね。それを再処理いたしますと、廃液で発生量が大体一トン当たりコンマ五立米ぐらいになりますので、年間三十トン出しますと大体十五立米ぐらいになります。それを固化いたしますが、固化の仕方が、何を固化体にするかというもので実際の最終的な大きさは違いますが、いま各国が非常に注目しておるのは硼珪酸ガラスというガラス固化で、それをしますと大体減容率が七分の一か八分の一ぐらいになりますので、三十トンの再処理量に対して二・五立米ぐらいになります。それはどうするかといいますと、キャニスターと申しましてステンレスの直径三十センチぐらいで三メートルぐらいのものにガラスを詰めるというのが各国ぐ考えられているところですが、それですと、結局十二、三本になるのじゃなかろうかと思います。すなわち、百万キロワットの年間のあれが十二、三本、それで将来どのぐらい出るだろうかということを概算でやってみますと、二〇〇〇年の時点で、それまでの発電量その他の仮定によって遅いますが、キャニスター、いまの三十センチ、三メートルというもので総量が四千本ぐらいと、プラス燃料被覆管のハルの固体廃棄物が七千立米ぐらいできる。そういう計算もありますし、大体において七、八千本、二〇〇〇年の累積本数がそのぐらいなこととお考えいただければ結構だと思います。仮定によって多少違いますが……。
  87. 小宮武喜

    ○小宮委員 この高レベル廃棄物の固化処理技術フランスが一番進んでおるということを聞いているわけですが、固化処理技術確立の将来の見通しについては大体どうなんでしょうか。
  88. 田島英三

    田島参考人 どうも私、実際やったわけでもなしに文献で読んだだけの話で、その範囲で申しますが、確かにフランスではパイロットプラントまで進んでおりまして工業運転に入ろうとしておるわけです。実際固化体ができるまでの年数がこれから十年以上あるということを考えますと、私は日本技術として、やる気になればそうむずかしい問題じゃないというふうに考えております。そんなに一年でつくれというわけではない、十年以上の年数がありますので、自主技術ができないなどとはとても思っておりませんです。
  89. 小宮武喜

    ○小宮委員 参考人意見の中にも、高レベル廃棄物処理、処分について可能性を求めて柔軟な態度が必要である、こういうことを言われたように記憶しておるのですが、これはどういうことでしょうか。
  90. 田島英三

    田島参考人 若干説明が必要かと思いますが、普通ヨーロッパでやっております方式は、先ほど申しましたようにキャニスター、三十センチ、三メートルのものを硼珪酸ガラスに詰めて地層処分するというのが大体の趨勢です。その地層処分も実は各国の情勢によりまして第一候補にしているのはいろいろ違いますが、ある国では岩塩層、ある国は花崗岩層、ある国では粘土層等々を考えておるわけです。日本の場合ですと、いままでの文献調査をやった限りにおいては、先ほど申しましたように、非常に適切な地層が見つかりそうもないという可能性が非常にあるわけです。その場合に一体どうするかといいますと、一つは高レベル廃棄物処分の高レベルの内容を、先ほど中島さんがおっしゃったように、プルトニウムなどのアクチナイドが入っておりますので、そのアクチナイドを取り除くということが一つ可能性であります。アクチナイドを取り除くとどういうことになるかと申しますと、これは放射能の強さあるいは発生熱を考慮いたしますと、八百年ぐらいたてばアクチナイドを取り除いたものは非常に少なくなりまして、八百年から先はアクチナイドだけになります。要するに普通のアクチナイドの入った高レベル放射性廃棄物を取りますと、それから発生している放射能あるいは熱は、八百年くらいまでは分裂生成物が主体でありまして、だから八百年を超えますというと分裂生成物は減衰し切ってしまいますので、後はアクチナイドが数十万年続くというかっこうになりますので、もし日本で適地が見つからないということになりますと、アクチナイドの分離という問題も、ヨーロッパでは取り上げていないけれども考慮する必要があるだろうというのがフレキシビリティーとする点です。  もう一つのフレキシビリティーを考えたのは、ただいま諸外国で述べておりますのは硼珪酸ガラスですが、これはある程度の水に溶解いたしますので、その溶解に対して非常に耐性の強いメタルマトリックスという方法が実はベルギーで開発されております。それは燃焼しましてメタルの中にビーズ玉のようにして鉛で詰め込むようなものですが、これになりますと非常に水に対するレジスタンスが高くなるということであります。ところがこれはずっと金が高くなるということがあります。そういうようなほかの国ではもはやある意味では捨てているような可能性も、日本としては日本の地層と合ったものでもっと虚心坦懐に初めからやれというのが先ほどの趣旨でございます。その他いろいろな可能性があろうかと思います。  以上です。
  91. 小宮武喜

    ○小宮委員 参考人は、国民の健康と安全を守るために、政府は民営の場合といえども再処理工場に手を抜いてはいけない、政府と民間が責任を分担しなさいということを言われたわけですが、責任を分担する具体的な方策というのはどういうものを考えられますか。
  92. 田島英三

    田島参考人 これは総括的に全部を申し上げるのはちょっとやそっとでできる話じゃないだろうと思いますが、一口に言いますと、再処理工場を推進する母体が安全を守ろうというのは全く筋が通らない話で、恐らく非常にはっきりした切れ目というのはそこらにあろうと思います。したがって、安全審査に関連するもろもろのことは当然政府がやらなければならぬだろうということが一つ。  もう一つは、安全審査に限らないまでも、とかく民間の企業と申しますと、金と時間とを節約して基本的な研究開発はしないというのが従来の習慣でありますので、そういう問題に対しては、政府が積極的に時間と金を惜しみなくやって基本的に推進をすべきである、そういうふうなことであります。
  93. 小宮武喜

    ○小宮委員 次は、高島参考人にお尋ねします。  動燃処理工場の安全審査に当たって参考人は直接担当されてきたわけですけれども、安全審査の際の基本的な考え方についてどういう点に留意されたのか、その点ひとつお伺いしたいと思います。
  94. 高島洋一

    高島参考人 まず提案されたプラントの設計に関して詳細な検討をする。それから臨界問題がやはり最大の問題であるということから、臨界計算を詳細にやってその安全性を確かめる。そういう細かいことに関しては一つ一つだめを詰めるようにして検討してきました。たとえば材料にしても、原子炉で使う配管材料は同じステンレスでもわりあいとカーボンの多いものを使っているのに対して、再処理は流体を流すのが非常に多くて、配管が非常に多いわけです。したがいまして、配管材料に関しましては極端に吟味をする。それから当然組み立てる場合の溶接の問題も厳重にこれを調べていただく。一番最初の安全審査の場合は、もちろん図面だけの判断で、そこに何もできていませんから、そういうものをつくるならば動燃の実力からいってうまくつくり得るし、それを使って安全に運転する能力があるであろうという判断で許可しているわけですけれども、それで終わりにしないで、むしろ大事なのは、そういったチェックをしたものが本当に実行されているかどうかということを調べなくてはいけないということで、そういうチェックも続いてしているわけであります。  その次に、心がけとしましては、まずコールドテストを通水試験からやるわけですが、通水試験をやって、硝酸の試験をやって、初めて天然ウランを使ってテストをやって、それから少しずつホットの物を入れてやる、そういう段階を踏んで審査体制をきちんとやろう、そういう心構えで延々と実は安全審査を続けてきた次第でございます。
  95. 小宮武喜

    ○小宮委員 もう時間が来ましたから急ぎますが、特に動燃の再処理施設技術フランスから導入したわけですけれども、これを日本の方でいろいろ改良あるいは技術を加えて、日本に適した技術に持ってきたわけです。今後どういう点が改良すべき点と考えられるのか、まだまだ改良するのはこういうものがあるということで、もしお気づきであれば教えていただきたいということと、第二再処理工場に進むのにこういう技術面の基盤が確立されておると考えられるかどうか、その点、二つの問題を高島参考人にお伺いします。
  96. 高島洋一

    高島参考人 第二再処理工場に対する規制がはっきりしてくればいまのような御返事もできるかと思いますけれども、いまの段階で大丈夫だというようなことは私の口からとても言えない。  それから、いま言った改良というのが今後どういうことが考えられるかといいますと、これでいいということは絶対にないので、幾らでも改良していかなくちゃならない問題がこれから出てくると思います。  その前にさっきなぜそれじゃトリウムサイクルはまだ実現しないのかということに対して何かもやもやとした感じで、ちょっとそれお答えしておきたいと思うのですが、トリウムは御存じのようにウラン238と同じで、そのものは核分裂を起こさない。どういうふうにしてトリウム燃料化するかというと、中性子を当ててトリウム232を233に変えて、それが自然崩壊してプルトアクチニウム233に変わって、さらにそれが半減期一月ぐらいというような長い間を経てやっとウラン233になるわけです。そのやっとウラン233になったので初めてそれが燃料として使えるということで、初めは燃料がないわけです。ウラン233がない。ですから233を十分たくさんつくった上で初めてスタートする。それでトリウムと組み合わせて、233がなくなるよりもトリウムが233に変わる方が多くなるような増殖炉も考えることができるということでトリウムが興味を持たれているわけですが、まずその233をつくるということが非常に大変なものですから、まだそういう段階に行っていないし、それをつくるためにはウラン235の非常に濃いものをトリウムとまぜて燃さなくちゃいけない、そういうことでありますのでおくれている。  それから、トリウムというのは化学的になかなか溶けなくて、いまのピューレックス法ではだめなんでございます。したがって、どういうことをやるかというと、硝酸アルミを硝酸の中に加え、それからさらに弗化水素を入れることによって、触媒作用その他によってトリウムをうまく硝酸に溶かしていくということで始まるいわゆるトーレックス法というのがあるわけです。実はいまピューレックス法が確立されておりますけれども、今後われわれが使う使用済み燃料というのはますます非常によく燃えた燃料を扱うようになる。最終的には高速増殖炉から出た燃料を再処理するということになるわけですが、その段階にわたってピューレックス法では補えないものが、いま言ったトーレックス法をアプライすることによってウランの溶解とかウランのプロセスにもそれが役に立つということで、河村さんがおっしゃったトーレックス法も並行して考えろというのは、第二再処理工場は別として第三再処理工場ぐらいになると真剣に考えなくちゃいけないだろう。まあそういうことで、しょっぱなの溶解工程からも今後来るべきものに備えてよりよい溶解方法——それから抽出の場合はいまはもう安全第一、確実に抽出できるというのでミキサセトラを使っているわけですけれども、これは安全といっても容量が大きいためにだんだんプルトニウムの量が多くなってくると臨界問題が起こってきます。したがいまして、一瞬にして抽出ができ、分離ができるような方法ということで遠心抽出器というものをフランスでは開発しているわけです。ところがこれがさっき言った私の持論で、むずかしいものはかえって危険だということがありまして、そういうむずかしいものを考える前にパルスコラムといって非常にシンプルな、細かい塔の中を液体が上がったり下がったりしながら抽出を行って出していく、そういうタイプの方がむしろ実際は進歩的で安全ではなかろうかというようなことをいま議論しております。恐らく第二再処理工場はそういうパルスコラム方式に行くんじゃないかというふうに私は予想しております。  それから最後の廃液を放出する場合に、当然規制はまた一段と厳しくなる。     〔委員長退席、貝沼委員長代理着席〕 そうすると、よりきれいにした廃液を外へ捨てなくちゃいけない。余りきれいになりますと、これはむしろ飲んだ方がいいとかあるいは工場の中でもう一回使った方がいいんじゃないかということで、事実究極的には廃液は捨てなくて中できれいにしながらぐるぐる回していく、そういう方法も、第二再処理工場ではそこまでいかないかもしれないけれども、第三再処理工場ぐらいになってくるとそういう進歩があるんじゃないかということで、進歩というものは必ずあるものと考えております。
  97. 小宮武喜

    ○小宮委員 最後に、これは五月二十九日の朝日新聞の夕刊に出ておるわけですが、カナダ原子力規制委員会のH・インハーバー博士らの研究として、各種エネルギー源により同百里のエネルギーを発生させる際の労働者及び公衆に対する危険度の比較が紹介されているんです。同量のエネルギーを得るためには、原子力より太陽熱の方が危険だというようなことが出ております。そうしますと、この研究によれば、原子力は石油、石炭との比較ではもちろん、クリーンエネルギーと言われる太陽エネルギーとの比較においてもはるかに安全であるという結論を出しているわけですが、この研究についてひとつ高島先生、田島先生、中島先生、各三人の先生方から所見を承りたいと思います。
  98. 高島洋一

    高島参考人 相対的議論で原子力というものは非常に安全であるということをおっしゃる方がいますし、私もぜひそうでありたい。しかし、そうであるということを言うのをはばかるのは、まだまだわれわれももっと謙虚になって安全問題に取っ組んでいかなくちゃいけない。しかし私は最終的にはそういうことが言えるんではなかろうか。つまり原子力のスタートのときから、まず安全を第一に掲げながら原子力というものをやってきた。確かにいろいろなトラブルは起こりましたけれども、まあほとんど人に害を与えるということもなくて、産出するエネルギー当たり安全性の評価ということになると、確かにカナダなんかがそういう評価をするのはもっともだと思います。一つは、カナダは再処理をしないのです。使い捨てということもあって。だから反対の方から言わせれば、再処理しないんだからあたりまえだというようなことになるかもしれませんですけれども、まあ私としては、原子力をまじめにやっていこうという者はやっぱりあくまでも謙虚な気持ちで、仮にそうであってもそういうことを口にしないでやっていくべきじゃないかと思っています。
  99. 田島英三

    田島参考人 なかなか何とお答えしていいかわからないのですが、いろいろそういう統計は出てまいります。私もその新聞を読みましたので、別に驚きとも考えていないわけです。ただ数字かなり、このオリジナルを見ておりませんのでわからないのですが、気をつけて見ないといけないということがあり得ます。  その一つを思いついたところを申しますと、統計のデータの根拠なんですが、ある場合は将来の推定で行っているし、ある場合は実績をもってしている。それはそれ自身でもうすでに大きな意味があるわけです。それから仮にいまの統計が正しいとしてみましても、それの社会的インパクトという面で考えますというと、それはそのとおりの比率にはいかないだろう、こう思うわけです。と申しますのは、原子力発電所には潜在的な意味で大きな放射能を含んでおるわけです。それがまあ百年に一回とかあるいは何十年に一回とか起きて、それを平均して延べてしまいますというと争ういう統計になるかもしれませんですが、それが起こったときのインパクト、社会的なインパクトとなりますと、その新聞に上がっていたようなそういう割合では恐らくない。また別の社会的な心理が働くといいますかインパクトが働くので、それによって、いま高島さんが言ったように原子力は安全であるなどとは決して申せない、むしろ緊張のうちに安全が守られるというふうに考えております。
  100. 中島篤之助

    ○中島参考人 田島先生が大変適切なことをおっしゃいましたので、私つけ加えることはございませんけれども、私その記事を読んでおりませんのですが、確かに問題はそういう似たような、たとえば原子炉が事故を起こさずに平常時で運転しているときに微量に出てくる放射能が与えるインパクトと、それから少し汚い発電所、化石燃料をたいている発電所との比較をすればこちらがクリーンだという話はいろいろあるわけです。ですけれどもそうではなくて、原子力の一番大きな問題、これはマイター報告にも書いてあることですけれども、事故の確率がゼロではなくて、これが結局社会的なインパクトとして非常に大きな心理的な負担になるということがあるわけであります。それが一つですね。それからもう一つは、田島先生かきょういろいろ強調されました高レベル廃棄物処理、処分について、やはり社会的にこれでもうけりがついたというようなことには決してなっておらないわけですから、そういう意味で私は安全を主張することはできなかろう、私自身はそういうふうに考えております。
  101. 小宮武喜

    ○小宮委員 これで質問を終わります。
  102. 貝沼次郎

    貝沼委員長代理 次に、瀬崎博義君。
  103. 瀬崎博義

    ○瀬崎委員 参考人の先生、御苦労さまでございます。恐縮なお願いですが、持ち時間が少ないのでできるだけ簡潔なお答えをいただきたいと思うのであります。  私どもの共産党もこの原子炉規制法の改正案、つまり再処理工場の民間移行には強く反対しておりまして、その理由の一つが、現実に原子力三原則が守られていないような原子力行政のもとで再処理工場が千五百トン規模で民間に拡大されるということはまさにわが国の核武装の危険の有力な根拠をつくり出す、そういう意味があるわけであります。     〔貝沼委員長代理退席、委員長着席〕  この点では、きょうも再処理工場核兵器の結びつきを強調されました中島先生に伺いたいのでありますが、そういうことをやはり国民全体が認識しておく必要があると思うのです。そのためにはやはり核兵器生産につながるということをある程度具体的、数量的に示していただくとわかりがよいと思うのですね。そこで、再処理される核燃料プルトニウム発生量との関係、らにはそれと原爆製造量との関係、さらにはそれと原爆製造量との関係等、核兵器生産の潜在的能力を、厳密に科学的ではなくて結構なんですが、国民にわかりやすい形でひとつあらわしていただきたい。  それと、かつて私もそういうことを国会で質問したことがあるのですが、できるだけそういう可能性を過小評価しようという政府側答弁としては、燃焼度の低い使用済み核燃料の場合は確かにそのプルトニウムは直ちに原爆に使われるけれども、燃焼度が高い原子力発電所のようなところから生まれてくる使用済み核燃料はそのままでは原爆にならない、こういうことも正式に答えております。果たしてそうなのかどうかということ。  それから、確かに燃焼度の問題が一方にありますから、そういう点では原爆に製造しやすい使用済み核燃料をつくり出す原子炉は別にあるかもしれませんが、プルトニウムを抽出する再処理工程だけをとった場合、いわゆる商業用の再処理工場がそのまま軍事用の再処理工場に役立つものなのかどうか。使おうと思えば大幅な改造が要るのかどうか、あるいは全く使えないものかどうか。  以上、三点のお答えをひとついただきたいと思います。
  104. 中島篤之助

    ○中島参考人 十分な資料を用意しておりませんのでなるべく簡単にお答えいたしますが、これは仮に百万キロワットの軽水型の原子力発電所考えますと、日本のはなかなか順調に動いておりませんが、順調に動いたとしますと一年たつと大体三分の一を交換する、約三十トンのウランが出てまいりまして、その中でそのときにできるプルトニウムの量が、これはもちろん燃やし方によるわけでありますけれども、ほぼ二百キログラムぐらい取れるだろうということになります。それでそのプルトニウムでどのぐらいの原爆ができるかということですけれども、その臨界量がほぼ十キログラムぐらいというふうに考えるのが普通やられている推定の方法です。これは御質問の第二点にも関係いたしまして、高燃焼度の核燃料ではプルトニウム240ができてしまいますので、それが核爆発の効率を下げることは確かですけれども、昔は私どももそれがあるから原爆ができないのだというふうに言っておりましたけれども、最近は、たとえばマイター報告でも、それは非常にはっきりと核爆発材料になり得る、これは下手にやれば効率の悪い原爆になるし、うまくやると余り効率も下がらないで核兵器材料になり得るようになってきているということも聞いております。もちろんこの辺は軍事機密で、確たる資料があるわけではありませんけれども、そういうことが言われておりまして、そういうのは全く原爆材料として考えなくていいんだということにはならないと私は思っております。たとえばそういうことを前提にいたしまして、マイター報告でも、原子力と核拡散の可能性という表がございまして、それによりますと、日本年間三百十個の核弾頭を製造できる国だ、ちなみに西ドイツはこれでは四百ぐらいでしたかというようなことで、群を抜いて西ドイツと日本が核武装可能国として挙げられておるわけでありまして、これはやはり忘れてはいけない点ではないかというふうに思います。  ただし、核兵器の問題というのは基本的には政治の問題でありますから、仮に核兵器をつくろうという決心をした場合には、軽水炉を動かしてそしてプルトニウムを取るというのは確かに能率が悪いのでありまして、これはエネルギーを生産した方が得だということは申し上げておいた方がいいと思います。というのは、普通の軽水型の商業発電所というのは百万キロですと最近三千億円近くもかかる。三千億円もかけてそして非常に能率の悪いことをやってプルトニウムを取るよりも、そういうことができる国ならばもっと安いお金で核兵器生産用の原子炉をつくった方がもっとずっと安い原子炉が簡単にできる、そういう国ならばそういう工業力も持っているということになってしまいますから、これは非常に容易だということになろうかと思います。ちなみに、実はそういう意味では、こういうことを言うと非常に怒られるかもしれませんが、電源開発株式会社が導入を考えておりますCANDU、それから動燃事業団のATRというような重水炉は一般に燃料をとめて交換するのではなくて、燃料を次々と入れながら取り出すことができるような仕組みになっておりますから、そういう意味ではプルトニウム240も少ない理想的な核兵器材料ができる、こういう問題についても具体的に歯どめを考えておく必要があるのではないか。以上が第二点のお答えです。  それから第三の再処理問題、これはむしろ非常に簡単でありまして、恐らくほとんど変更しなくて、というよりもむしろジルカロイ被覆の濃縮ウラン燃料を再処理するのがむずかしいのでありまして、それより燃焼度の低いウランプルトニウム系からプルトニウムを抽出すること自体はむしろ技術的にはずっとやさしいというふうに言えると思います。だから改造は必要ないだろうと思います。
  105. 瀬崎博義

    ○瀬崎委員 それから幾つかありますわれわれの反対理由の二つ目の問題として、やはり技術的な困難さということをわれわれは考えるわけです。この点でも中島先生は特にアメリカの例など挙げて強調されたわけですが、特にNFSの中断は放射性廃棄物の処置に因ったからだというお話でありました。これは多分に素人の私の考えることですからあるいは範疇が違うかもわかりませんが、東海動燃の再処理工場でもホットテストわずか数カ月の段階で早くも中低レベル系の廃棄物貯蔵所が不足してきて、たとえばスラッジ貯蔵所は現在五百立米三基あるわけですが、新しくことしから第二スラッジ貯蔵所として千立米二基、二百立米一基の増設計画を持っておりますし、それから廃溶媒の貯蔵タンクの方も現在二十立米四基あるのを倍増する計画になっていますね。これなどは当初は廃溶媒を燃やせると思っていたのが、どうも燃やせないということで、急遽そういう増設になったという説明が実はこの場で、本委員会であったわけであります。そうなってきますと、問題の高レベル廃液についてもわれわれとして深い疑問を持ってくるし、不安を感ずるわけでありますが、中島先生は、東海工場の高レベルの貯蔵問題についてそういう不安はないというお考えなのか、あるいは不安があるとすればどういう点か、お伺いしたいと思います。
  106. 中島篤之助

    ○中島参考人 いまの高レベル廃液の貯蔵施設が十分であるかどうか、それから実際の事故が起きますとそういうものがふえたりするケース——高レベル廃液はふえないと思いますが、中低レベルなんかいろいろふえる可能性があるわけですね。それで、まず午前中に説明しましたNFSのケースというのは、これは初期のことであったと思うのですけれども、高レベルのスラッジを中和してしまったために、さっき田島先生から御指摘があったように、たとえばプルトニウムを除こうなんということを考えてもできないような状態になってしまっていて、それで非常に困難がある。ですから、うかつなことはできないのです。その点ではPNCの場合、私は、むしろ私より高島先生の方がよく御存じのはずだと思うのですけれども、動燃団で考えておりましたことは、たしか九十立米のタンクを三個だけ持っておって、もう一つ予備を持っておったのでしょうか、何か四基で三百六十立米ですね。それからちょっと勘定してみますと、さっきのNFSの場合には六年間六百三十トンの燃料処理いたしまして、そして三百トン、つまり容量の二年ちょっと分ぐらいしか操業しなくて満ぱいになってしまって、しかも処置に困っているということが起こっておるわけですね。その量からちょっと換算してみますと、動燃のは十分かなと、仮に五年間無事に動いて千トン処理するとちょっと足らなくなるのではないかという感じを私は持っております。ただし、いまのところはINFCEで逆に制限されておって九十トンしか処理ができない、二年たったら見直しをするということになっておるので、かえって救いがあるのかもしれませんけれども、初めからそういうものがわかるものじゃないと言えばそれまでですけれども、十分だったというふうに——私は、危惧を持っておるかと言われれば、大変危惧を持っておるということであります。
  107. 瀬崎博義

    ○瀬崎委員 これは高島先生に伺いたいのですが、いわゆる過去の経験技術的評価について、やはりきょうおいでになった先生がずいぶん意見が分かれるわけです。中島先生の場合は、いまのNFSを初めアメリカの三つの民間の再処理工場いずれも失敗した、そういう経験から学ぶならば、日本でうかつに再処理工場を実用規模でやるべきではないというふうな結論に発展しているわけですね。ところが、高島先生のお話は、すでに日本でも原研で小規模な実験で成功しているし、アメリカのそういう経験も学べば、第二再処理を千五百トン規模で民間でも十分やれる、こういう方へ発展している。こういう大きな評価の分かれ目になってくる原因を、先生は先生なりにどこにあるかお考えになっていると思うのですね。そういう中島先生と高島先生の意見の分かれ目を、高島先生はどこにあるとお考えですか。
  108. 高島洋一

    高島参考人 大変むずかしいですが、まあまじめな話、私はモーリスのGEプラントなんかをつぶさに見てきて、GEが称するところでは、世界一安全で非常に簡便にできたいいプラントであるというので、自慢をするために私に見せてくれたわけですけれども、実際行ってみまして私なりに気がついたのは、日本人というのは初めから安全問題というものを非常に神経質に考えているために、まずしょっぱなから、レイアウトが向こうは非常にシンプル過ぎるというか、特に固体のハンドリングが非常に雑である。それで、ウランを最後に精製するところでは、御存じだと思うのですけれども、脱硝と称しまして硝酸を飛ばしてUO3をつくっていくそのプロセスがございますが、そこが何とも詰まってばかりいて一向にうまくいかない。しかも、リモートコントロールで放射能のレベルの高い部屋の中で、ろくろくFPを除染しないような状態でそういうことをやっているということで、まずその安全に対する心構えが、ぼくから言わすと、なっていないという印象を受けました。正直なところ、そういう意味ではアメリカかなりずさんであるというふうに思います。  その点、フランスサンゴバンの話というのは、実は私はむしろいろいろな面で敬服させられるのは、たとえば高放射性廃液をいかに最小の量で保管するかということに対して、ソルトフリーといいますか、プロセスが最後にフィッションプロダクトの溶液だけになるようにするために、なるべく必要のないものを導入しない、塩分を入れない、そういうことに非常にきめ細かい配慮がありまして、したがって、さっき中島さんがおっしゃるように、高放射性廃液の貯蓄能力は九十立米のタンクが四基あるだけでも五年間は多分大丈夫そうであろうとおっしゃったとおりでありまして、私は、その心構えとしては、日本はやはり安全に対してはアメリカとは比較にならないぐらいいろいろな点で配慮をしている。それが逆に言うと自信がないからそうだと言われればそのとおりなんですけれども、ただ、そういうことをしてやってみた手ごたえから言いますと、われわれのやっているのはやはり安全に対していささかオーバーだったかもしれないけれども、慎重にやっていって、何と、安全審査が昭和四十四年に一応終わったのにもかかわらず、十年近い今日になってやっとスタートし始めた、その間に改良に次ぐ改良をやっているということで、まあこういう心構えでやっていく限りは再処理は安全にやっていけるというふうに私自身は思っているわけです。
  109. 瀬崎博義

    ○瀬崎委員 私どもが反対する三つ目の理由として、やはりこの再処理工場安全性の問題があるわけですね。逆に言いますと、われわれ人間の生存、健康あるいはわれわれを取り巻く環境にとって、再処理工場が非常に危険な存在であるという認識があるわけですが、いまたまたまその方向へも話が進みました。  大変率直な話で恐縮な面もあるのでありますが、この点でもやはり先生方の認識は大分違うように思うのです。  高島先生は先ほどトライアル・アンド・エラーを強調されたわけですね。確かに、国民の生命とか健康に悪影響を与えないという前提があるならば、私はやはり科学技術の進歩のためにそれは正しいことだと思うのです。しかし、一方、危険性は中島先生がきわめてシビアに強調され、核燃料サイクルのいわば九九・九八%の放射性廃棄物がこの再処理工場に集中するんだ。われわれも常識的に、とかく軽水型の原子力発電所の危険がいろいろ論議される中で、特に燃料棒の被覆管のちょっとしたピンホールであるとか変形を問題にするのは、やはりそこから死の灰が漏れるからということにあるわけですが、その被覆管は再処理工場で溶解してしまって、いわば死の灰を解放するわけですね。だから、どう見てもわれわれは、非常に危険なものであるという認識が取れないわけです。だから、そうなってきますと、ちょっとしたエラーでも、事再処理については、相当大きな影響を現在においてかあるいは将来においてか人類に及ぼすであろう、国民に及ぼすであろうと考えざるを得ないわけなんです。ですから、決してわれわれは傲慢さから技術の完璧主義を求めているのではなくて、やはり国民の安全、それから環境の保全というささやかな願いから、軽率な試行錯誤は、この際、こういう技術については実行に移すべきではない。人間のやることだからあちこちに欠陥が出るのは当然だというふうにいま先生言われたわけですが、むしろ、そういうことがわかっているのなら、謙虚に基礎研究を積み重ねるとか、あるいは実際実験が必要なら、最小限度の規模の実験施設で実験を積み重ねる。そうして絶対にそういう国民の安全を脅かすようなことがないという段階で、初めてそこそこの規模の実験に着手される。多少のエラーはそこで出てくるだろうけれども、それは事前に、それは絶対にそういう人類の生存に影響するような害が及ばないという科学的な裏づけまである段階で、拡大されていくべき性質のものじゃないか、こういうふうに思うわけです。  私はそう思うのだけれども、後で高島先生の御意見を改めて伺いますので、先に中島先生の御意見はどうか、伺っておきたいと思うのです。
  110. 中島篤之助

    ○中島参考人 私も、原子力研究所におりまして、原子力開発をやっていく上で、実を言いますと、日本の再処理に対する研究開発のやり方というのはきわめて不備だということをまず申し上げなければならない。さっきもちょっと申しましたけれども、私が現におります原子力研究所の原子炉化学部というところで、ささやかながら、というのは、原子炉化学の二つのテーマというのは、高純度材料の研究と再処理の研究ということが当初あったわけです。ところが、原研の中で工学試験設備をつくりまして、これは十億円ぐらいのお金をかけてプルトニウムを抽出して、このときにはパルスカラムを使ったのですけれども、そういうことをやるということになりますと、われわれの方の研究はもうやめということになった。それで今度はプルトニウムが取れた段階で、動燃の方がいよいよ再処理工場、これは当時はパイロット工場とはおっしゃらなかったと思うのですが、本格的再処理工場だというのでお始めになると、原研の方はもう人員を配置転換してやめということが、理事会の命令で決まってしまう、こういうやり方は基本的に間違っておったということを、私はまず申し上げたい。  それから次に、大学との関係で私はぜひ申したいと思うのですけれども、実は日本では、残念ながら大学と科学技術庁関係との間の研究というのは切断されておるわけであります。これは当初、御承知の方もあろうかと思いますが、東京大学の矢内原先生が、大学の自治を原子力研究が脅かすのではないかということを心配されまして、それで、最初原子力基本法をつくりましたときに、国会の附帯決議でそういうことが出てまいりまして、たしか科学技術庁設置法の第三条に、大学関係の研究には及ばないということになった。これは、現在になりますと、やはり再検討を要する事柄でありまして、大学関係の研究者と科学技術庁関係の研究者、あるいは、たとえば今度の提案理由でも、国の総力を挙げてとありますけれども、国の総力はおろか、国の機関の中、民間は別として、大学と科学技術庁というようなところでさえ十分な研究、連絡はできないような体制に、はっきり申し上げてなっている。大学の方々のいろいろなアビリティーを十分に使うということになっていない体制になっている。この点はむしろ西ドイツなりフランスなり、そういう国とは違っておる。ただ、一挙にそういうのをなくすのがいいのかどうかというのは、これは非常に慎重な検討が要ります。これは、日本の現在の政府の施政の方向がどっちにあるかということも考え合わせ、その矢内原先生が言われた趣旨が、軍事研究が大学の自治を破壊しないようにということから出されたことでありますから、これは慎重な検討が要りますけれども、しかし、少なくともそういう不十分な研究体制にあるということは申し上げておかなければならない。  さて、それで安全かどうかということですけれども、これは実は、さっき私アメリカのことを申し上げましたのは、動燃であるから曲がりなりにも改良に次ぐ改良ができたのでありまして、これが利潤を問題にする企業の場合には、一体企業のプロジェクトとして成り立つのかという問題が直ちに出てくるわけでありまして、私はむしろ、再処理工場というのは民有に移すべきではない。というのは、結局これは現在の原子力技術に対する認識が、もうプルーブンの、でき上がったものだという考え方をまだとれないのではないかというふうに私は考えますので、一挙にスケールアップをしたりすることは適当ではないというふうに考えておるわけです。
  111. 瀬崎博義

    ○瀬崎委員 時間の関係がありますので、質問事項をまとめて申し上げますので、恐れ入りますが、順序に従ってお答えいただきたいと思います。  ただいまの同じ問題について、私は、こういう再処理技術というような問題については、そう軽々にトライアル・アンド・エラーを実施すべきものではないということなので、これに対して、ただいまの中島先生の御意見に対する反論等もあれば、含めて高島先生に伺いたいのが第一点であります。  次に、私どもがこの法改正に反対している第四の理由には、やはり安全審査の不安がついて回っているわけであります。その最たる例が原子力船「むつ」でありまして、だれがどう見てもやはり基本設計には誤りがあったと思うのですが、これを国の安全審査でチェックできなかった。一時は責任のなすり合いが運輸省との間で起こったことは御存じのとおりであります。それから、ただいまも申し上げました、いまの東海の再処理工場についても、動燃事業団が出してきた廃溶媒については焼却できるという前提で安全審査がパスしているわけでありますが、ちょっとやってみただけで、これは燃やせないというふうなことが明らかになってきた。少なくとも国の安全審査ですから、事業主体が出してくるいろいろな基本設計、プランに対しては、さらに高い水準でいろいろチェックしてこそ国民は信頼が置けるものだと思うのです。そういう期待が外れてきている原因は一体どこにあるのか。それからさらに、せっかくそういう高い水準の安全審査をしていただいたとしても、それが政治的配慮によって動かされるとするならば、結局伝家の宝刀は生きないわけです。そういう点で、いままでの安全審査が果たしてそういういろいろな政治的思惑を乗り越えて、厳密に科学的に行われたのかどうか、大変不安を持ちます。といいますのも、これは安全審査とは別の機関でありますが、この間「むつ」の修理問題が政治的解決に向かってちょっと進んでいるわけですね。あの例の安藤委員会と称するものは、一年前にはふたを外して修理することにお墨つきを与えた。今度は、わずか一日の審議で、例の核封印方式という文学的表現による修理方式をまた認めている。こういうふうな政府の諮問機関の態度を見ていますと、こう言っては大変——ここにいらっしゃる方はそうではないと思うのですが、学者あるいは専門家というレッテルをもらっていらっしゃる方ですら政治に従属している点をわれわれは憂えるわけです。そういう意味で、かつて原子力委員会にもいらっしゃった田島先生の、われわれの杞憂に対して先生がどういうふうにお考えなのか、それを伺いたい。これが第二点目であります。  それから、私どもが反対する第五の理由として、先ほど田島先生御指摘の、高レベル廃液の民間管理は適切でない、これは国家管理すべきだとおっしゃいました。そうだとすれば、当然こういう法改正を出してくるときには、国家管理をどうやるのかということも法律に載っていなければいかぬ。あるいは、われわれは認めるわけじゃないけれども、民間がやるとするなら、民間と国がやる間の線引きは一体どこでやるのか、その引き継ぎはどうやるのか、国の方の管理監督体制は半永久的にやらなければいかぬのですが、それは法制上どういうふうに裏づけるのかというのがなければ、民間に門戸を開放するというふうな法律は出すべきではない、私はこういう見解を持っているのですが、こういうことに対しての田島先生の御意見も第三点として伺っておきたいと思うのであります。  それから、先ほど中島先生から、核燃料サイクルに利用できないようなものなら再処理を急ぐ意味がないということをおっしゃいました。減損ウランを一体どうするのか、これを濃縮工程に入れるのか、あるいはそのまま他の原子炉に回すのか、こういうお話もありました。また、濃縮工程に回す場合、日本でやれるのかどうかという問題もあります。これは、主として推進を担ってきょうおいでになっているのが電事連の田宮先生でありますから、こういう点をひとつお答えをいただきたいと思うのです。  それから、最後に、原子力船「むつ」の問題が出たついででありますが、あの核燃料はたしかステンレスで被覆してあったと思うのですね。現在の東海の再処理工場ではどうもそれは処理できないのではないかというふうなことも聞いているのでありますが、この点についてのお答えをいただいて終わりたいと思うのであります。
  112. 高島洋一

    高島参考人 それじゃ私から……。  トライアル・アンド・エラーというのは、多分理解していただけると思うのですけれども、たとえば通水試験とか、あるいは硝酸を入れてやる試験とか、ウランを入れてやる試験の際に、そういうトライアル・アンド・エラーで悪いところを徹底的に直す。もちろん、初めに、われわれの目も自分なりには十分光らせたつもりで、大事なところを全部チェックはしております。それから、動燃側も、実際つくるに当たって、これなら大丈夫だという自信を持ってつくっているのでしょうし、検査も十分やっている。ただ、それにもかかわらず、二百、三百というチェックポイントがありますと、どうしてもその一つ二つ三つと、これでは不十分だというところが出てくる。それを早目に試行錯誤でチェックして、本番でそういうことが出るようでは困るという意味でやったのでございまして、いいかげんにやってみたらよかった、悪かったということから始まって直していくという意味では決してございません。  それからもう一つ、廃溶媒ですけれども、御存じのように、廃溶媒の中にはTBPというのがありまして、燐酸がございまして、その燐酸の規制その他で、われわれの方では放射能に関しての審査はもちろん厳重にやっているわけですけれども、そういう燐酸の問題とか、あるいは水の中の油分の問題、これはまだ最近になって出てきたほかの規制というのがありまして、そういうものから見直しをしなくちゃいけないということであったと思います。
  113. 田島英三

    田島参考人 安全審査に関して、「むつ」の問題の件ですが、これは一口に申しますと、御承知のように、大山委員会の報告書というのが出ておりまして、あれに尽きているというふうに私は了解しております。いろいろなことが書いてあったと思いますが、一口に言いますと、要するに責任体制が不明確なまま、しかも弱体であったと言わざるを得ないと思うのであります。  ただ、その後、多少変わったところを申しますと、安全研究というふうなのが政府あるいはその方で非常に注目をされて、推進といいますか、安全研究の推進が図られてきたのは多分一九七三年ころじゃなかろうかと思うのですが、それは実体的に推進されたかどうかということではなしに、たとえば予算の面を見ますと、最近はそれの成果がある程度出てきている、そう言っていいのではないか。たとえばコードにいたしましても、日本独特のコード、同じ問題について別のコードが開発されてきているというふうなことを考えますと、日本独特の安全研究の成果が一九七三年か二年ころからの成果として出てきているのではなかろうか。したがって、希望的観測と言われるかもしれませんけれども、今後は多少変わってくるのじゃなかろうかというふうに私は思っております。(瀬崎委員「高レベルの国家管理の法制化の問題」と呼ぶ)一緒に出すべきじゃなかろうかということ、これは本来なら出すべきだと思うのですが、実は、これは政府の方でどう考えているかわかりませんですが、日本では、法律を出すということになると、ある程度の戦略とかストラテジーとかいうものがないと、ぼくは出しようがないのじゃなかろうかというような気がいたします。その点では、日本の場合ですと、私の承知している限りでは、処分まで含めまして、五十二年十月八日の原子力委員会、あれ以上の発展はそう期待できないのじゃなかろうか、いまの段階でちょっと出せないのじゃなかろうかというような気がします。それは出すべきであるということは言えるかもしれませんけれども、出しようもないのじゃなかろうかというふうな気がいたしますので、そう思っております。
  114. 田宮茂文

    田宮参考人 再処理をして出てまいりますウランプルトニウムの使用計画があるかという御趣旨だろうと思いますが、これは先ほど来申しておりますように、高速炉のインベントリーとしてプルトニウムを使い、それから減損ウランはそのブランケットとして使うのが本命でありますけれども、その中間地帯におきましては、高速炉の実用時期というのが九〇年以降ということになっておりますので、その間におきましては軽水炉でリサイクルする、それから、日本の場合ではATRでリサイクルする。減損ウランにつきましては、現在、動燃でやっております遠心分離のパイロットプラントがございますが、この行く末といいますか、商業化がどうかということはございますけれども、それに使用する。それから、そのほかにも、御承知のように、豪州との間で、豪州国内に新分離工場をつくろうという計画が、まだフィージビリティースタディーの段階でございますけれども進んでおりますので、そういう日本もしくはジョイントの濃縮工場でニューフィードするということは可能だろうと思います。  ただ、御指摘のように、非常に固まった計画がいまあるかと申しますと、まだ多少流動的でありますが、そういう方向で現在電力業界も考えてやっている次第でございます。
  115. 中島篤之助

    ○中島参考人 「むつ」の問題についてお答えすればよろしいですか。——ステンレスの被覆、「むつ」というのは実は非常に古い原子炉、十年前のもので、いまあんな軽水炉はないのじゃないかと思うのです。それに固執していらっしゃるので、私、あえて申し上げれば、私ならば——私、昨年、長崎県の研究委員会として、燃料棒を抜いた方がよほどちゃんとできるということを申し上げたので、この際、燃料棒をつくり直した方がよほどいいのじゃないかと思うのですよ。なんで核燃料を抜かないことにあれほどこだわられるのか、私には理解できない。先日も私は長崎県に参りまして、私、率直に申し上げたのですけれども、「むつ」問題は、もはやわれわれ科学者から見ますと、もうわけのわからぬ話になっておりまして、核封印などというのは、これは文学的とおっしゃったけれども、これは何のことやら私どもにはわからない。どうせ原子炉というのは、圧力容器というのはボルトで厳重に締めてあるわけでありまして、こんなことは初めからわかっていると私は思うのですね。  そこで、私どもは、漁連の方々にアドバイスをしてきたのですけれども、本来もう一回低出力でちょっと動かしてみるべきなんだ、そして放射線が漏れたのがどこで、どういうふうに漏れたのかということもわれわれの見解によれば明らかではない、それがまず先である、それが終わってから次にまず修理計画を立てるべきである、それから改修を行うべきであるということをむしろ申し上げてきたわけです。率直に、科学的に言えば、政治的なことを考慮しないで申し上げれば、それが正道であるというふうに私は申し上げたいと思うのですね。  ですから、御質問の再処理ができるかということは、これは持っていってやれと言えばできないことはないかもしれませんが、非常なトラブルが起きて、動燃は多分いやだと言うのじゃないでしょうか。現場の技術屋としては、ステンレスが魚に飛び込まれたらそれは困るだろうとむしろ思います。
  116. 岡本富夫

    岡本委員長 次に、中馬弘毅君。
  117. 中馬弘毅

    ○中馬(弘)委員 中島先生は先ほど自主技術の開発の必要性を強調されましたが、昨日は各電気事業者の責任者の方々から今度の第二再処理工場の諸元、いろいろお聞きいたしました。二百万坪、千五百トン、そして技術サンゴバンというようなことでございますが、現状でいたしましたならば自主技術で場合によってはできるんだとか、あるいはもう少し資金さえつぎ込めばできるんだとか、六十五年めどでございますが、これを五年くらい延ばせばできるのか、そういったことを学者の立場からひとつお答え願いたいと思います。中島参考人高島参考人にでもお願いしたいと思います。
  118. 中島篤之助

    ○中島参考人 私、きのうのお話を直接伺っておりませんからどういうことをおっしゃったのかわかりませんけれども、私のいま考えておりますところは、率直に申しまして動燃の再処理工場経験も実は科学者には十分公開されておりません。たとえば廃溶媒の話も実は国会の方が一番知っておるような状況で、科学者はまだ知らない。こういうことでなく、事故なんかをわれわれがアクセスできるような形で公表できるようなことをまずやっていただかないと、いまのことには大変お答えしにくいと思うのです。  実はこれも学術会議のことで恐縮なんですけれども、昨年の秋に政府に勧告いたしましたのは、再処理工場だけではなくて、原子炉の事故も含めまして、そういう情報を収集、貯蔵、保存、それから公表するシステムを早くつくってほしい。これが一番完備しておるのはやはりアメリカでございまして、余り大きな規模でなくて、やる気さえあればできる。NSICと申しまして、ニュークリア・セーフティー・インフォメーション・センターですか、そういうものがオークリッジ国立研究所の一部につくられておりまして、りっぱな活動をしております。日本原子炉の事故もわれわれはそのNSICによって知っているという状況を早く改めていただきたいということを申したのでありまして、それが日本の自主技術を蓄積していくまず基本的な第一歩になるのではないか、その辺から始めなければならないだろうというふうに考えております。  五年後にできるかどうかということについては、私としては……。
  119. 中馬弘毅

    ○中馬(弘)委員 いや、六十五年をめどにしておりますが、たとえば完成時期をまた五年ほど延ばせば自主技術でやれるんだとか……。
  120. 中島篤之助

    ○中島参考人 ただ、私がけさ申しましたことですけれども、六十五年の時期までに日本ウランプルトニウムサイクルで進むのかどうかということが実は根本的に問われているんではないでしょうか。私はむしろそう考えます。そのことをもう一度再検討し直すべきではないかというのが実は私の考えであります。ウランプルトニウムで進むのかトリウム考えるのか、あるいはそのほかのサイクル考えるのかというふうなことを総合的に検討——これはいやおうなしにアメリカから言われて始まったことですけれども、再検討をせざるを得ないのではなかろうかというふうに私は考えております。
  121. 高島洋一

    高島参考人 五年先というのは、そのころ、もしその計画があるとすると、安全審査が始まるような時期じゃなかろうかと思います。それで、自主技術がその後どのくらい第二再処理工場に生きてくるかということに関しては、まだ想像もつかないわけでありますけれども、少なくともいまの動燃の再処理工場よりかなりいいものができる、そうして自主技術かなり取り入れたものができるというふうに思います。
  122. 中馬弘毅

    ○中馬(弘)委員 もう時間も過ぎておりますので、簡単なお答えで結構でございますがお一人ずつお願いしたいと思います。  いま委員会での審議の途中でございまして、結論を申すのはなんでございますが、この法律が仮にできましたならば、これは民間で進むわけです。民間でやる方が安全だとかあるいは国がやる方が安全だとか——むしろ国がやる方が、効率が悪かったり不安全な場合が多いような気もいたすわけであります。いずれにいたしましても、法律や制度も大切でございますが、運営面あるいは管理面がそれ以上に重要だと思っております。現在の原子力委員会あるいは科学技術庁、動燃事業団、こういったそれぞれについて、この法案が通って行われた場合に、どういう点に皆さん方問題点をお感じになっておるか、また改正すべき点があれば、どういうところであるのか、率直な御見解だけをそれぞれ、山川さんからでもお答え願いまして質問を終わらせていただきたいと思います。
  123. 山川暁夫

    山川参考人 私の基本的な考え方はすでに申し上げまして、先ほど来御質問に出ておりますように、同じような根拠をもとにして見解が大きく分かれていくということがまさに実情でございます。しかも、それは日本だけではなくて、マイター報告を御紹介いたしましたけれども、安全保障、安全問題について、問題はむしろ深刻になってきておるんだという認識が国際的にも出てきておるという状況で、再処理工場を拡大し、しかもそれを民営化するということは大変望ましくないことで、そのしわ寄せが必ず後に立地の問題その他で——これは最初に申し上げたことになりますけれども、本当に国民の多くはこういう法案がいま出ていることを知らないのでありまして、それが立地の問題その他が具体化されてまいりましたときには、かなり大きな社会問題として発展をしてくる。それで、いまここで論議されておるような技術レベルの問題を乗り越えたもっと大きな政治的な諸問題に発展をしてくるというふうに思うのでございまして、法案が通った後どういうふうにすべきかという御質問でございましたけれども、私にはそういうふうに考える余地のない問題でございます。  ただ一点申し上げれば、今度の法案は、昨年の日米共同声明及び共同決定との絡みにおいて考えられなければならないと思うのでございますけれども、その共同声明の中に、主要な措置以外はやってよろしいというふうになっている。主要な措置とは一体どういう内容を持っておるのか。つまり、逆に言えばやっていいという課題は特定されていなければならない。この法案が仮に通るとするならば、特定されていなければ国民も了解できませんし、あるいは国際的にも納得せしむるものにはならないだろうというふうに思うわけです。法案的な問題で言うと、そういうことでございます。  それから、午前中の発言ですでに申し上げましたけれども、私の知り得ている情報で言えば、これは明らかに企業がすでに先行しておるわけであります。再処理工場を設定するための事務局は設けられたということを指しておるのではございませんで、企業の側ですでに膨大なプロジェクトの研究が進んでおる、立地も目標が決まっている、徳之島あるいは奥尻というようなのは存外に当て馬かもしれない、そういうふうな状況で先行していることが法案に表現されてきているというふうに考えます。その辺も今後の最終的な採決に至るまでの間にぜひお取り上げ願いたいというふうに思います。
  124. 中島篤之助

    ○中島参考人 時間がないようですから、発言の機会を与えられましたので簡潔に……。  今度の規制法を見まして気がつきます点は、ウラン濃縮の規制が全然ないのは私、大変不思議に思いました。私はむしろ法律を一回引っ込めていただいて、お出しになるときはそのことをお考えいただきたい。これは私が第一に重要と考えております核兵器との絡み合いにおいて、やはり規制のやり方が明確になっておることが望ましいと考えるからであります。
  125. 田宮茂文

    田宮参考人 政府にお願いしたいことは、各種の基準その他の整備をしていただきたいということ。それから先ほど来お話がありましたような政府機関におきます研究の御協力をいただきたいということ。最終的には長期資金の融資をお願いしたい、こういうことでございます。
  126. 田島英三

    田島参考人 個々のことについては最初の午前中のお話あるいはその後の質問について申し上げたので繰り返しませんが、この事業は、原子力開発として国として非常に大きな事業である、そういう新しい認識を事業主体である、たとえば民間のものと同時に政府自体に持っていただきたい、私はそう思うわけです。原子力開発の非常に大きな画期的な事業である、そういう感じがいたします。
  127. 高島洋一

    高島参考人 民間がやるか国がやるかということに関して、私は法律的なことはよくわからないのですけれども、いずれにしろ平和利用に徹して健全な体制で、国だけがやるとか民間だけがやるとかいうのじゃなくて、日本国民の支持を受けながらやっていくという体制でこれが行われるのならば、今度のような改正は結構だと思っております。
  128. 中馬弘毅

    ○中馬(弘)委員 長時間貴重な御意見、ありがとうございました。
  129. 岡本富夫

    岡本委員長 以上で参考人に対する質疑は終了いたしました。  参考人各位には長時間にわたり貴重な御意見をお述べいただき、ありがとうございました。  本案審査に資するところきわめて大なるものがあったと考えられます。委員会を代表いたしまして厚く御礼を申し上げます。  次回は、来る八日木曜日午前九時五十分理事会、十時より委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。     午後四時二十四分散会