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1978-02-16 第84回国会 衆議院 科学技術振興対策特別委員会 第3号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和五十三年二月十六日(木曜日)     午前十時三十四分開議  出席委員    委員長 岡本 富夫君    理事 小沢 一郎君 理事 大石 千八君   理事 小宮山重四郎君 理事 佐々木義武君    理事 中村 弘海君 理事 石野 久男君    理事 日野 市朗君 理事 貝沼 次郎君    理事 小宮 武喜君       伊藤宗一郎君    塚原 俊平君       与謝野 馨君    安島 友義君       上坂  昇君    田畑政一郎君       馬場猪太郎君    瀬崎 博義君       中馬 弘毅君  出席国務大臣         国 務 大 臣         (科学技術庁長         官)      熊谷太三郎君  出席政府委員         科学技術庁長官         官房長     半澤 治雄君         科学技術庁計画         局長      大澤 弘之君         科学技術庁研究         調整局長    園山 重道君         科学技術庁原子         力局長     山野 正登君         科学技術庁原子         力安全局長   牧村 信之君         科学技術庁原子         力安全局次長  佐藤 兼二君         資源エネルギー         庁次長     大永 勇作君         資源エネルギー         庁長官官房審議         官       武田  康君         資源エネルギー         庁公益事業部長 服部 典徳君  委員外出席者         外務省国際連合         局外務参事官  小林 俊二君         外務省国際連合         局科学課長   太田  博君         通商産業省生活         産業局住宅産業         課長      野口 昌吾君         工業技術院総務         部総括研究開発         官       吉田 方明君         資源エネルギー         庁石油部開発課         長       鈴木玄八郎君         参  考  人         (日本原子力研         究所理事長)  宗像 英二君         参  考  人         (日本原子力研         究所理事)   村上 昌俊君     ————————————— 委員の異動 二月十六日  辞任         補欠選任   森山 欽司君     小沢 一郎君 同日  理事小宮山重四郎君同日理事辞任につき、その  補欠として小沢一郎君が理事に当選した。     ————————————— 本日の会議に付した案件  理事辞任及び補欠選任  参考人出頭要求に関する件  科学技術振興対策に関する件(科学技術振興の  基本施策)      ————◇—————
  2. 岡本富夫

    岡本委員長 これより会議を開きます。  まず、理事辞任の件についてお諮りいたします。  理事小宮山重四郎君から、理事辞任申し出があります。これを許可するに御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  3. 岡本富夫

    岡本委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決定いたしました。  次に、理事補欠選任を行いたいと存じますが、先例により、委員長において指名するに御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  4. 岡本富夫

    岡本委員長 御異議なしと認めます。よって、理事小沢一郎君を指名いたします。      ————◇—————
  5. 岡本富夫

    岡本委員長 次に、科学技術振興対策に関する件について調査を進めます。  この際、参考人出頭要求に関する件についてお諮りいたします。  科学技術振興対策に関する件について、本日、参考人として日本原子力研究所理事長宗像英二君及び同理事村上昌俊君から意見を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  6. 岡本富夫

    岡本委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決定いたしました。  なお、御意見質疑応答の形で承りますので、さよう御承知願います。     —————————————
  7. 岡本富夫

    岡本委員長 質疑申し出がありますので、順次これを許します。石野久男君。
  8. 石野久男

    石野委員 最初に、私は原子炉衛星のことをお聞きしたいと思っておりましたが、外務省が少し遅くなるそうですから、地震の問題でお聞きしたいと思います。  去る一月十四日に、伊豆大島地震が、マグニチュード七という非常に大きいものがありました。質問の時間の関係がありまするので、災害の実情をここで述べていただかなくてもよろしいのですが、この地震を通じて、地震観測地震予知にたくさんのことがいろいろと教えられたと思います。たとえば、地下水中放射能元素ラドン濃度平常値の下がりということから平常値に戻るというデータの中から、あるいはまた体積ひずみ計が記録したデータ等から、地震予知に大きな自信を持たせるものがあるという報道をわれわれは承っております。  この際、こうした伊豆地震におけるいろいろな教訓と申しますか、報ぜられるような多くの教訓があると思いますが、そういうことについてひとつ御報告をいただきたいと思います。
  9. 園山重道

    園山政府委員 お答えいたします。  先生指摘のように、伊豆大島近海地震が一月に発生いたしまして、御承知のように、一昨年来特に東海地域、駿河湾を中心とする大地震発生可能性が学界を中心として指摘されまして、政府地震予知推進本部におきましても、東海地域中心にいろいろな観測網を強化してきたところでございます。また、それらのデータ判定をいたしますために、特に学者先生方の御協力をいただきまして、東海地域判定会というものを設置いたしまして準備をいたしておったわけでございます。  今回起きました伊豆大島近海地震は、いわば東海地域から若干外れまして来ておりますので、この東海地域に張りめぐらしました観測網が直接有効な活動をしたということではございませんけれども先生指摘のように、石廊崎等のひずみ計、その他気象庁地震計等もある程度予知ができたような状態もございます。また、その規模につきましては、必ずしも正確な予知ができませんでしたけれども、御指摘のように、地震予知関係につきましては非常に明るい希望を持たせた結果も種々あったわけでございます。  しかしながら、いま申し上げましたように、地震予知ということが、いつ、どこで、どのくらいの大きさのものが起きるかということの正確な予知をいたしますためには、まだまだ多くの研究をしなければならないというのも大きな経験でございました。私どもといたしましては、地震予知推進本部中心にいたしまして、東海地域につきましてある程度現状でできる手が打てたものと思っておりますけれども、そのほかの地域につきましてもできるだけの手段を講じていかなければいけない、かように考えておる次第でございます。  また、今回の伊豆大島近海地震での教訓一つといたしまして、特に新聞等でも報道されておりました余震情報に関して、若干情報が正確に伝わらないで、いろいろ県民の方々が非常な心配をして、ある種のパニックと称すような状態もあったということでございます。これはいわゆる予知情報というまだ学術的な段階にあるものを、一般国民方々にどうわかっていただくかという予知情報の出し方その他について非常に多くの教訓を含んでおる、こう理解いたしまして、科学技術庁といたしましても、早速、どのような状態情報が伝えられ、これがどう拡散して、どう間違っていったかというような調査を緊急に行っているところでございます。
  10. 石野久男

    石野委員 地震については、観測の問題と、情報を伝達してできるだけ地震による危害を早目に避けるということが非常に大切だと思いますが、観測の問題では、いま地震予知推進本部が全体を統括しながらやっておりますけれども、なかなか十分に行き渡っているようにも思われませんけれども、そういう点については政府はどういうようにお考えになっておるか、この際ひとつ。
  11. 園山重道

    園山政府委員 お答え申し上げます。  日本地震国と言われておりまして、方々地震危険性と申しますか可能性が存在するわけでございますが、先ほども申し上げましたように、まだ確実に予知技術が確立されたという段階ではございませんので、何をやればいいかということが明確に確立されておる段階ではございません。したがいまして、いろいろな観測手段、有効と思われるいろいろな手段地震可能性のあるところに集中するということをいたしておるわけでございが、この判断はいわゆる行政的にできるものでもございませんので、現在は、建設省国土地理院がお世話をしております地震予知連絡会というところで、地震関係学者先生方あるいは関係機関専門家方々がお集まりになりまして、全国特定地域、さらには観測強化地域というものを指定しておられます。この中で特に観測強化地域というのが、先ほど申し上げました東海地域及び関東南部ということになっておりますので、現在この観測強化地域中心にできるだけの観測を強化しようということで努力をいたしております。なお、全国につきましては、気象庁地震計のネットワーク、あるいは国土地理院が行います精密測量の繰り返し、あるいは潮位をはかります検潮観測所というものが配置されておりまして、基本的な観測全国に向かって行われておるわけでございます。
  12. 石野久男

    石野委員 内閣でいま地震予知に関するいろいろな組織が行われておりますが、それを見ますと、地震だけでも科学技術庁、国土庁、自治省、建設省、運輸省、通産省、文部省、これだけのものが全部関連しているわけですね。そしてそれを科学技術庁は一応統括していることになっていると思います。予知推進本部が、現在こういうような情勢のもとにおいて、非常に多元化していることと、それから先ほど申しました石廊崎におけるところのひずみ計の表示した数値あるいは深井戸から得られたラドンのそういう数値を一定程度統合して、そして事前にそれを予知する、そういうようなことへの体制というのが、経験も乏しかったし、どういうように処置するかという方法もわからなかったからでもありましょうけれども、後からそういう計数がずっと出てくるというと、これは予知できたな、こういうような自信が持てるようになった、こう新聞などでは報じているわけですね。私もやはりそういう報道を信じたいと思うし、またそういうことを極力進めることが大切だと思うのです。  その場合、これだけ分散しているというか、おのおの地震に対する各方面からの調査研究が行われ、データの収集が行われているときに、地震予知推進本部はこれらのものを、いま推進本部という形で集めているというのじゃなくて、もっと帰一的に、一元的に掌握する、あるいは日常業務の指導をする、そういうことについての考え方はいまのところお持ちであるのかどうか、これはひとつ、後で長官からもお話を聞きたいですが……。
  13. 園山重道

    園山政府委員 先ほども御説明申し上げましたように地震予知の手法というのがまだいわゆる確立されたという段階にございませんで、どういう観測かと申しますと、たくさんの観測がございます。微小地震計を配して、できれば前ぶれとなる地震をつかまえようとか、基本になります測量の繰り返しとか、それから先生指摘の指示ひずみ計を入れてそこの岩石のひずみを調べるとか、あるいは傾斜計を入れて地殻傾斜を調べるとか、あるいは地下水ラドン含有量を調べるとか、そのほか相当、十数種類の観測が行われているという状態でございます。したがいまして、これがある種の、何をやればきわめて有効であるという、たとえば観測優先順位はかくあるべしということが技術的にもはっきりわかってまいりますと、この地震観測体制をはっきりと決めていくということも可能でございますが、現在、いわば可能なあらゆる手段を投入して何とか前兆をつかまえようという状況でございますので、したがいまして関係機関がそれぞれ得意といたしますところ、たとえば気象庁は従来から地震計をやっております、大学研究的立場から非常に小さい地震観測することをやっております。また、科学技術庁防災センターは三千数百メートルの深い井戸を掘りまして、きわめて高感度の地震計を入れております。それぞれの機関が得意とする分野、しかもいわゆる政府機関観測機関とそれから大学研究機関、これが協力し合って観測をしているという状況でございますので、いまにわかにそれを一つ機関にまとめるということは、現在必ずしも得策ではないというように考えておるところでございます。
  14. 石野久男

    石野委員 いまの、各方面が得意のわざを持っておるから、それぞれの得意のところをやはり十分伸ばせるようにということで、一元的統括というものが非常に無理だという話ですけれども、私は、機関として一ところに集めるということと、それから情報を後からでなくて事前にいつも一ところに集めるということと、意味は大分違うと思うのです。機構的に各省全部一つのものに集めるということが非常にむずかしいことがあったとしても、やはり情報一つに集めて、そしてそれが事前対策、いわゆる観測予知とが常に時期を失しないで活用できる体制というものが必要だと思うのですよ。いま推進本部はそこまでいっていないと思いますね。それで私は、機構一元的構成ができるまでの間、情報がもっと的確に事前に統合されるような体制づくりというものが、中間的な過程として現在のままでいいのかどうなのかということに疑問を持っているわけです。そういう点についてお聞きしたい。
  15. 園山重道

    園山政府委員 御指摘のとおりでございまして、私ども地震予知推進本部におきまして各機関データを一カ所にできるだけ集めるということをやっております。これは特に気象庁が二十四時間の観測体制をしいておられますので、できるだけあらゆるデータ気象庁に集めるということをやっておりまして、それもテレメーターで集中するということを、すでに今年度の特別研究促准調整費等を使いまして、現に進めているところでございます。
  16. 石野久男

    石野委員 その進めているということはかねがね聞いてはいるのですけれども、たとえば、これは「毎日」が二月五日に出した記事で、ラドン前兆をキャッチしている、ひずみ計と同じ変化だ、こういうことが後から調査でわかるわけですね。テレメーターで統一しておりますとは言っても、これはキャッチしてないわけで、統合されてないのですよ。ですから、言葉の上では幾ら言えても、事実が行われていなければどうにもならない。やはりそのことが具体的に実質的に成果を上げるためにはまだ足りないところがあるんじゃないか。それはやはり機構を統一しなければできないのじゃないだろうか。いま局長が言うように、現在でもやっているということでできるとしたら、なぜこれができなかったのかという問題が出てくるわけですが、その点はどうですか。
  17. 園山重道

    園山政府委員 テレメーターデータを送ってくるというものには、まず適したものと適さないものとがございます。地震計動きでございますとか、あるいはひずみ計の動きでございますとか、こういったものはすぐ電気信号に変えまして気象庁中枢に即時に送り込むということがいわば比較的容易にできるものでございます。私、いま地下水中ラドン濃度の詳しい測定法につきまして不勉強でございまして、それを直ちに電気信号に変えてテレメーターで送れるものかどうかつまびらかでございませんけれども、恐らくそういった技術上の問題、それから何と申しましても現在テレメーター化を進めておる段階のものは地震計とかひずみ計とか傾斜計とか、そういうものが中心になっておりますので、先生指摘の、地下水の成分までいま直ちに計画に入ってはいないかと思います。ただ、これは御指摘のように、非常に重要なことでございますので、そういった分析等を行いまして出てくるデータ、あるいは測量による結果とか、そういったものをできるだけ速やかに、危険を判断します中枢、現実的には気象庁に全部が集まってくるわけでございますが、そこに集めるよう今後も努力をしていきたいと思います。
  18. 石野久男

    石野委員 ラドンによるところの予知というものは、今度の場合ひずみ計の問題とくしくも一致したということで非常に大きな関心を呼びますけれどもラドン測定によるところの地震予知というものは、すでにソ連とかその他の諸国で多く実績済みのところです。そういう問題が一元的に統合できないということは、推進本部があって、情報を二十四時間体制でキャッチしているとはいいながら、まだ漏れが出てくるわけです。その漏れが出てくるという理由の中に、各省の対立があるとかなんとかというふうには私は思いませんけれども、しかし情報を受けとめるかどうかという認識なり決意の問題として一つ出てきているんだと思うのです。この種の問題がほんのささいなもので、特に中国においては、ラドンとかなんとかではなくて、民間の、井戸水が上がったり下がったりするだけで、そういうことについて情報を収集して予知するというようなことなどもある。それが百発百中というわけではありませんけれども、そういう成果の上がるものについては極力それを収集しなくちゃいけないだろう。  そういう意味からすると、これだけ多く分散しておる研究あるいは観測体制ですから、いっときに一つにまとめることはできないまでも、やはり一元化の方向は切実に要求されている問題だと思うのです。地震についての関心はやはり一般の住民は非常に強いものがあるし、皆さん御存じのように、知事会等でも、特に地震については法案を整備しろ、予知の問題だけでなしに災害対策も含めてでございますが、その要請の中の大きな問題として、一元的に観測予知体制をつくってくれということが言われているわけです。一元化するということについての政府決意国民は非常に待望しているといいますか、要請している。これは各党ともそうだと思いますが、この際、地震観測並びに予知に対する一元化の問題について特に大臣はどういうふうにお考えになっておられますか。
  19. 熊谷太三郎

    熊谷国務大臣 先ほどから段々お話を承りまして、まさに御趣旨のとおりであると考えております。ただ、一元化するかどうかという点については明確なお答えはいたしかねますが、本来、地震予知推進本部任務としましては、いま申し上げましたように、各機関で行っております地震に関する研究観測に関します実務を総合的に、かつ実効あらしめますように推進していくということでございますので、ただいま例としてお話しになりましたような点につきましても、これは従来未知な点がたくさんありますので、こういう機会に得られましたいろいろなそういうデータと申しますか問題をどこで取り上げたらいいか、どの機関で取り上げるのが適当であるかということを早急に研究いたしまして、そしてそういう問題も今後の予知資料にするように努めていかねばならぬ、またそうしていきますことが現在の地震予知推進本部任務である、このように考えておりますので、一元化という問題はもう一つわれわれの上の問題でありますが、とりあえず推進本部立場からは、いまお話しのようなそういうことも取り上げるだけの価値ありと認められれば直ちにそれを取り上げて、適当な研究観測機関でそういうものの研究観測を実施してもらって、そしてそれをいろいろな場合に、特に予知の場合に情報一つとして流していくというふうに進めていく。これはわれわれの任務でございますから、そういうふうに努めてまいりたい、このように考えておるわけでございます。
  20. 石野久男

    石野委員 長官お答えは私の質問に対して必ずしもぴたっと合っていないのですが、観測体制がよければそれをやりますというのは、これはそれぞれの各省、各観測所あるいは各大学等によってやっていることですから、私はその点は非常に多としなければならぬと思っております。しかし、それを統一的に常に各資料を全部一カ所で集めて判断するという努力はされていることもよくわかっているんだけれども、それにもかかわらずまだ未熟な点が多いんだから、それを一歩でも、やはりみんなが心配している問題にこたえるということのための機構の一元的な体系をつくっていくということが大事だろう、こういうことで私は申し上げているのです。たとえばひずみ計をどうするとか、あるいは傾斜計をどうするとか、地殻変動あるいは地殻活動がどういうふうになっているかというような問題の観測は本当に各省大学とか何かでやっているわけですね。それを統一的に集計して、一定の判断を敏速に行っていくための連絡会議などの働きもよくわかっておる。にもかかわらず、まだデータの集め方が、判断を十分にするだけのものになっていない。しかも、データはすでにあちこちにあるんだけれども、それが集まらない、こういう物足りなさ、歯がゆさがあるわけです。それを一日も早くやるためには、一元的にこれを組織化するということが大事だろうと思うのです。  だから、大臣一元化の問題については明確な答えはできないということは、大臣個人としての立場なのか、政府がそういうことなのか、そこのところを私ははっきりしておいてもらいたい。政府一元化の問題について取り組んでおるのか取り組んでいないのか、ただ私がいま質問をしたから、それがいいことであるなら取り上げるというような問題として取り上げているのかどうなのか、そこをひとつはっきりしてもらいたい。
  21. 園山重道

    園山政府委員 先生指摘の、予知体制一元化を含めた予知体制はどうあるべきかということにつきましては、一昨年地震予知推進本部ができましたときからこの地震予知推進本部の課題であるということでございまして、幹事会というのがございますので、昨年の夏、本部長から、幹事会でこの体制はどうあるべきかを検討せよという御指示をいただいて、現在検討いたしているところでございます。  一方、地震予知研究計画につきましては、御承知のように、文部省にございます測地学審議会がいままですでに三回にわたる五カ年計画を出しておりまして、現在はその第三次五カ年計画の途中にあるわけでございますけれども、これが五十三年度まででございますが、現在、測地学審議会は、五十四年度から始まります第四次五カ年計画検討を進めておられまして、これが近々に、今年度中にも結論を出されるという話を伺っておりますので、私ども地震予知推進本部といたしましては、測地学審議会における今後のいわば専門的、学術的に検討されました結果も踏まえまして、この体制どうあるべきかという検討を進めておるところでございます。
  22. 熊谷太三郎

    熊谷国務大臣 政府の方針かどうかというお尋ねでございましたので、私としましては地震予知推進本部という立場からいま私の率直な考えを申し上げたわけでございまして、一元化すべきではないかという御意見が出ますのも、やはりまだ総合的にかつ効果的にこれを十分行ってないということから生まれてくる問題ではないかと考えておりますので、推進本部といたしましては、いまお話にありましたような点をさらにひとつ努力して、取り入れるべきものは取り入れていくという努力をいたします、こういうことを申し上げたわけでございます。  ただ、予知本部機構そのものをどういうふうに位置づけるかといった問題もございますが、それにつきましては近くまた地震予知を含めました対策に関する法案ども考えられているようでございますから、そういう意味では私の申し上げる範囲を少し出ているような感じがしましたので、そういうふうに申し上げたわけでございまして、政府としてどうかと言われれば、やはり地震予知を含めました地震対策本部そのものについていろいろな点からさらに強力な対策を進めてまいる、近くそれらを含めた成案を得て国会にも御審議願うというように承ってますので、そういう強力な対策がさらに一歩推進するであろう、このように考えているわけであります。それができますまで、われわれとしましては、先生お話にありましたようなことを取り入れて、もっと緻密にいろいろな点から強力に任務を進めてまいりたい、このように考えるわけでございます。
  23. 石野久男

    石野委員 大臣の御答弁の中に、地震についてさらに強力な対策というお言葉がありますが、この強力な対策ということが、いわゆる一元的な地震観測予知体制への方向性を示すものというふうに理解していいのですか。
  24. 熊谷太三郎

    熊谷国務大臣 端的にそういう言葉で表現されるかどうかはわかりませんけれども、趣旨におきましては、お話にありましたように、強力にさらにそういう方向に向かって一歩前進するのではないかと考えております。
  25. 石野久男

    石野委員 私は希望を申し上げておきますが、政府の方針というのは、総理大臣が個人で決めることではございません。各大臣がそれぞれの関係省の意見をずっと集めて、特に科学技術庁長官はそのまとめ役の仕事をしているわけですから、やはり大臣自信を持って自分の意思をその中へ入れていってもらいたい。したがって、大臣自信というものがどういう方向に向いているかをわれわれは聞きたいわけなんですよ。大臣がわれわれと違った意見を持っておれば、われわれはそれに対してもっと聞かなければならないし、私がいま申し上げたような方向を大臣が持っておるとするならば、それでは努力をお願いしますということになるわけなんですが、そこのところをもうちょっとはっきりさせてください。
  26. 熊谷太三郎

    熊谷国務大臣 さっきからの御意見、ごもっともであると考えますので、そういう考えが実現いたしますように努力をいたします。
  27. 石野久男

    石野委員 二、三日前のNHKの伊豆地震についての報道を私は見ておりましたが、画面に、トンネルが物すごく蛇行する形で大変なゆがみをつくり出している、そういう隧道内のなにを映し出されたのを見ました。そのときの解説者は東大の伯野助教授ですが、この方は確かにこういうことを言っておりました。「断層のある上には公共的な施設は絶対につくらないようにしてもらいたい」という話をしておりましたが、私はあの画面を見て、伊豆地震と断層の問題は非常に関係が深いし、これらの点について、実際はどうだったのかということについてのお話を一応聞かせていただきたい。
  28. 園山重道

    園山政府委員 お答えいたします。  御指摘のように、地震が起きるのは断層が動くということでございますので、断層の付近におきまして相当震度が大きい、あるいは被害が出るということはそのとおりであるかと思います。今回の伊豆大島近海地震におきます原因となりました断層は、大島の西の方の海底から伊豆半島の東部の東伊豆町稲取付近まで及んでいるものでございまして、この断層の付近、つまり東伊豆町、河津町で相当大きな被害が出たということでございます。
  29. 石野久男

    石野委員 細かいことは別としましても、伯野助教授が言っているように、断層というものは地震との関係では非常に密接な関係もあるし、むしろそのことの方が被害を大きく拡大していく、こういうふうに思われます。そういう意味で、やはり断層をできるだけ緻密に調べて、多くの人に理解をさせ、御忠告にもあるように、そういう上に公共施設等を極力つくらないようにというこの所見に対しては、大臣はどういうふうにお考えになっておられますか。
  30. 熊谷太三郎

    熊谷国務大臣 どうも地震あるいは断層といったような問題につきましては、特に専門家でございませんので、具体的なことを申し上げる資格はありませんが、そういう断層というものがはっきりわかっているということであれば、もちろん、先生の言われるように、非常に慎重な考え方なり態度で臨まなければならぬのではないか、こういうふうに考えております。
  31. 石野久男

    石野委員 推進本部が、特に地震予知連絡会が指定しております特定観測地域とか観測強化地域とか観測集中地域、こういうような地域というのは、なぜこういうようなところを特定観測、集中観測というようなことをやるようにしているのか、その点について御説明をちょっとお願いいたします。
  32. 園山重道

    園山政府委員 お答えいたします。  先生指摘の特定観測地域、それから観測強化地域というものは、地震予知連絡会において指定をいたしております。  特定観測地域というのは、歴史上地震があったところということが中心になっておりまして、それから観測強化地域というのは、地震のおそれがあるということで、観測を強化して地震前兆があるかどうかを確かめなければならない地域、このように理解いたしております。
  33. 石野久男

    石野委員 歴史時代に大地震経験したという結果、あるいは現に活動とかあるいは活断層地域等というところを特定観測地域にし、あるいはまたそういうおそれのあるところを観測強化地域にしているということについて、これはやはり推進本部としても、この連絡会が出した線に沿って監視体制を固めていく、こういうふうに理解してよろしいわけですね。
  34. 園山重道

    園山政府委員 そのとおりでございます。
  35. 石野久男

    石野委員 こういう地域観測というのは、各省がいろいろ分かれておりまするけれども、強化体制を固めていかないといけませんが、私は地震と原子力発電所という問題を非常に厳しく見詰めなければいけない、こう思っているのです。たとえば今度の伊豆の地震で持越鉱山のいわゆるシアン鉱害というのが出ましたが、これはもう大丈夫だという構築のもとに堆積場がつくられていた。しかるにああいうような結果が出て、非常に大きな災害をかの地に与えている。また、別な形で言えば、水俣におけるところの水俣病の発生、これは地震とは関係ないけれども、大丈夫だろうと思っておったのがああいう被害が出た。地震と原子力発電所という問題は、これらのいずれのものよりも非常に重大視して考えなければいけない、こう思う。  私は特に原子力発電所の立地条件の中でこういう観測強化地域なりあるいはまた特定観測地域というようなすでに地震予知連絡会の指定を受けているところに設置される場合は、一層シビアな体制でこれに臨むことが必要であろうと思います。こういう考え方については、大臣はどういうふうにお考えになりますか。
  36. 牧村信之

    ○牧村政府委員 お答えいたします。  先生指摘のように、原子力発電所の安全性を考える場合に、地震に対する配慮というものはきわめて大切な問題であると考えております。そのために、原子力発電所の設置許可に当たりまして、原子力委員会の中にございます安全専門審査会、ここでこの立地の問題につきまして詳細な調査をすることといたしております。  そこで、その調査のやり方といたしまして、その敷地及びその周辺の過去の地震歴を詳細に調べること、それから現地の周辺の地質調査を、過去の記録、地質図あるいは現地調査、踏査等を行いまして、その敷地、地盤に与える、起こるであろう地震を想定いたしまして、その想定される地震にさらに安全度をかけた設計を実施するということで、原子炉建屋の耐震構造も審査するというふうなことでやっております。  先生指摘地震調査の強化地域等につきまして、そこに立地されております原子力発電所が現実にあるわけでございますが、それらにつきましても、たとえば南海地震というようなものが想定されて、予知の方でいろいろ御検討されております。その起こるであろう相当大きな地震を想定しまして、そこからそのサイトに至るまでに及ぼすであろう地震波の強さ等を想定いたしまして万全を期しておるというのが、現在の安全審査会におきます審査の態度でございます。
  37. 石野久男

    石野委員 地震予知連絡会が指定しました観測強化地域というものと原子力発電所の立地というのは非常に関係が深いのですね。たとえば新潟の地域、柏崎、この地域観測強化地域になっております。それから福井の美浜からあの付近にかけてのところもまたやはり観測強化地域になっているのですね。島根がまたごっそりその中へ入っている。それから伊方、これもまた伊予灘から安芸灘にかけて全部観測強化地域として指定されている地域の中にある。したがって、まずその地域の住民が地震との関係で活断層の問題を非常に厳しく取り上げるのもゆえなきにあらずでして、この点はもうちょっとこの機会に見直していただく必要がある、こう思います。  特に、私はきょうは時間の関係で多く申しませんが、現実にいま局長から話がありました伊方の問題等、佐田岬から伊予灘を越えて安芸灘のこの付近はいわゆる観測地域です。伊方発電所の前面に非常に大きな海溝がございます。これは最近になりまして土地の漁民が魚群探知機を使って観測しました。伊方発電所からせいぜい百メートルも離れないような地域のところからもうそういう状態が出ておる。幅六、七百メートルからずっと伊予灘の方にかけて長さが約二十四、五キロのそういう大きな溝です。  この問題は、中央構造線との関係があるだろうという地質学者意見もあったりして、ぜひこのことについて調査をしてほしいという地元の声が出ております。科学技術庁や通産省あるいは安全審査会の方では、心配は要らないというようなことでこれは取り上げられないでいるようでございますが、先般、私、一月二十二日にこの地域を視察しまして、いろいろ事情を聞いたり、あるいは四国電力の幹部の方ともお会いしましてお話を聞いてまいりました。私の感じでは、海底溝がずっとありますけれども、これは潮流でできたというようなことについてはちょっと理解がしにくい。やはり中央構造線にかかわっておるものだという疑い、私もそういうふうに見てまいりました。したがって、この地域についての調査をしてほしいという要求が住民から出ておりまして、私は先般の予算委員会のときにもこの問題を御質問申し上げました。一応理解はいただいておると思いますけれども、この機会に大臣に率直なところを、もう、ある、ないは別としまして——地元の人たちが自分たちの力でこれだけのものがあるということの調査もしております。その原因は何であるかということに意見の分かれがありますけれども、これは一応調査する、この地域についてボーリングをして、そしてそうでないならないでよろしい。もし、住民が心配し、地質学者も心配しているように、中央構造線に関係があるとするならば、これはやはり地震との関係を軽視するわけにはいかない、こういうふうに思います。だから、この事実を確かめるということは、地方の住民からの要求があるということだけでも必要でありまするし、仮にあってもなくても、そういうことについての疑問があれば、やはり調査すべきであろうと思います。  この際、もう多くを申しませんが、私も政府に対する質問は、ボーリングをさせるべきである、会社ができないなら政府が手伝ったっていいと思いますが、やらした方がいいのじゃないか。そして事実がなければそれにこしたことはないんですよ。もし事実があるとすると、もう安全審査は済んでいるのだからいいじゃないかというようなことでは済まされない。予測される地震への危惧というものがそこから出てきますと大変なことになってしまうと思うので、この際、大臣の所見だけをひとつ聞かしておいてもらいたい。ボーリングをさせるかどうかということですね。
  38. 熊谷太三郎

    熊谷国務大臣 ただいまお話のありましたように、原子力発電所と地震との関係はきわめて重大な問題でありまして、その点に十分の考慮を払って進めてまいらねばなりませんことは仰せのとおりでございます。それに関連しまして、いまもお話がありましたように、先般の予算委員会におきまして石野議員から、伊方発電所の地先にありますといについてひとつボーリングをやったらどうかというお話があったわけでございます。そのときも事情を申し上げて、それをいまやるということはきわめてわれわれとしましては困難——というのは悪い意味じゃありませんけれども、いろいろ理由はありますが、やるつもりがないというような御答弁をいたしましたところ、さらに重ねてその問題についての非常に御熱心な御発言もありましたので、もう一度そういうことの適否といいますか可否について検討してみようということを申し上げてきているわけでございます。現在といたしましては、なかなかむずかしいという考えにはどうも変わりありませんが、しかし御発言の趣旨は尊重いたしまして、やる、やらないということを簡単に申し上げることは困難と思いますが、そのお言葉の趣旨をさらに慎重にひとつ検討したいというふうに考えております。
  39. 石野久男

    石野委員 ボーリングをするということがなぜ困難なのかわからない。その意図するものは、ボーリングの結果を恐れてなのか。もし恐れているということであるならば、政治ではない。政府がなぜ困難なのか、その理由を聞かしてもらいたい。
  40. 牧村信之

    ○牧村政府委員 ただいま大臣お話し申し上げたわけでございますが、ボーリングをする、しないということにつきまして現在検討しておるわけでございます。その検討の中身といたしまして、私どもの方の安全審査会が行いました立場は、通常あの海域の調査というのは、現在の技術では、音波探査で行うのが非常に有効であるということになっておるわけでございます。それで、地震予知研究等も音波探査を中心に進めておるわけでございます。  安全審査に使いました前面海域の調査資料も、音波探査によりまして——先生が御指摘のといの場所は、その地質構造が非常に平板でございまして、褶曲構造もないというようなこと、あるいは断層と見られる兆候も見られないということでございまして、といは断層でないと審査会は判断しておるわけでございます。むしろ、それよりももっと前面海域の方に中央構造線に関連する断層、それも若干活動性があるのではないかというような断層と思われるものを発見しておりまして、それについての地震による影響等は、十分地盤に対する地震の影響を判断して安全というふうに結論づけておるわけでございます。  したがいまして、この検討の中におきまして、先生おっしゃいますようなボーリングを行ったらばどういう技術的な効果があるのか、そういうようなことも含めて私どもとしては検討しなくちゃなりませんので、ただいま大臣が申し上げましたように、検討しておるということを申し上げていただいておるわけでございます。
  41. 石野久男

    石野委員 お尋ねしますが、科学技術行政、原子力行政というのは、だれのために行っているのですか。
  42. 熊谷太三郎

    熊谷国務大臣 いま科学技術行政はだれのために行っているのだというお話がございますが、そういうことは言うまでもありません。  先ほど、ボーリングの結果を恐れているんじゃないかというふうなお話がございましたが、そういうことは決してありません。     〔委員長退席、小沢(一)委員長代理着席〕 その点はもうそのような考え方で困難であるということを申し上げているわけではありません。  それから、お言葉を返すようになりますが、科学技術行政は国民のために行っているということにつきましては申すまでもないことでございまして、その点もひとつ御了承いただきたいと考えるわけでございます。
  43. 石野久男

    石野委員 安全審査は安全審査会のために行っているものじゃないはずです。国民が疑惑を持ったときには、その国民の疑惑に答えるということが非常に大事なんじゃないでしょうか。少なくとも漁民が魚群探知機を使って一定のものを調べ出しております。そのことについて疑義を持っているわけです。法廷ではいろいろな争いがあったこともよく知っております。知っておるけれども、漁民が、地域住民が一定の努力をして作業をして、そこから疑問を持っておるものに対して、それに答えない。断定をせよと言っているのじゃないでしょう。調査をしてくれと言っておるのでしょう。その調査ができないということの意味は、どういう意味なんだ。とにかくそのことの結果が、いま局長の話では、技術的効果があるかどうかというようなことにあると言う。そんなばかなことがありますか。あなた方の調査技術的効果があるかどうかによって決めるのですか。そんな行政は私たちは受けとめることはできない。地域住民がこれだけ努力をして、あなた方でさえもできなかったような溝図をつくり出して調査を出しているものに対して、なぜ答えることができないのですか、なぜ調査ができないのですか。
  44. 牧村信之

    ○牧村政府委員 お答えいたします。  大臣検討中と申し上げておりまして、私はその検討を現在やっておるわけでございまして、いまその結論を出していないということでございます。ただいま大臣お答え申し上げましたというお答えの趣旨は何ら変わっていないと私は思うのでございますが、このといの問題につきましては、先ほど申し上げましたのは、審査会がどういう調査をしてどういう判断を下したかということを申し上げるとともに、ここに先生がおっしゃいますようなボーリングを打ってほしいという地元の要請、これは私どもも地元の方々からも陳情等を受け、現在裁判でもいろいろ議論され、二号炉につきましては、行政措置に対する反対が、不服審査法に基づきます反対が来ておるわけでございまして、それを審議中でございますが、その間に、地元の方々からいろいろな御要請を承っておりまして、私どもとしては、その安全審査で行いました審査結果の中身につきましては、いろいろと私どもなりに御説明はしてきたところでございますが、なお御了承を得ていなくて、ポーリングを掘ってほしいという御要請を受けておるわけでございます。その辺の情勢を踏まえて、私どもいまこの問題を検討させていただいておるということでございます。何とぞ御了承いただきたいと思います。
  45. 石野久男

    石野委員 私は住民が一定の疑問を出しておるということについて、その住民の疑問が正しくて皆さんの調査がだめだという意見で言っているのじゃないのですよ。疑問を出しておるんだから答えなさい。調査の結果でどちらの意見が正しいかということはおのずから出てくるでしょうし、また判断の仕方もあると思います。それから、住民の中には、ボーリングをしてくれと言うけれども、一本や二本のボーリングで結論を出されたんじゃかえってだめだ、そんなごまかされるようなことはやらない方がいいんじゃないかという意見もある。けれども、中央構造線にもしも関係があるとするならば、これはもうそういう意見にかかわりなくわれわれとしては検討を加えなければならぬ重大な問題だと思うから言っているのです。技術的効果があるかどうか、そんなことは問題じゃないと私は思うのですよ。地域住民に答えるという温かい姿勢がなかったら、原子力行政は進みませんよ。あなた方がそういうような立場でやったら、現地の人たちはますます硬化しますよ。しかも、伊豆の地震を見ておって、断層に対する危惧があるということに対して、あなた方は答える態度をしないでふたをしたままでやっていくんだったら、住民は理解を深めるどころか、かえって疑問を大きく拡大しますよ。私はこの調査については考えることはないと思う。やるものはやったらいいと思うのですよ。大臣、どうですか。
  46. 熊谷太三郎

    熊谷国務大臣 いまいろいろと、御趣旨はよくわかりますけれども調査というお話でございますが、その調査も、たとえばいまお話しのように、一本や二本調査したってそんなごまかしの結果になるような調査ならしない方がいいんじゃないかというふなう御意見も出ましたように、決してそのような簡単な調査というわけにはまいらぬと考えております。そして、われわれの考えでは十分調査したつもりでおりますので、どうしても地元の方が、地元のどういう方かわかりませんが、そういうことに、こういうわけで疑問があるんだというお話があれば、さらにそういう方とお話を重ねまして、そして果たしてそういうちょっと考えられないような大げさな調査でもしなければならぬという必要があると判断しましたならば、それを必ずしもどこまでも峻拒するというようなことではありませんが、繰り返して申しましたように、調査といいましてもそう簡単なものではありません。そしてその結果がどうなるかということも、ただ単純にそれで何かがわかるということもはっきりした結果がつかめない、そのような現状でございますので、いま聞きましたら、前にもよくそういうことを不安に思われる方とお話し合いをしたことはあるという話でございます。さらにそういう問題、もう一度そういう御不安に思われる方の御意見を承って、そしてその結果いろいろな判断をしてもいいんじゃないかというふうにも考えておるわけでございます。決して御発言の趣旨を簡単に考えるわけではありませんから、その点は御了承いただきたい。その考えは十分持っております。
  47. 石野久男

    石野委員 大臣の答弁は一つの言い逃れです。もうそんなことは私は聞いておれないのですよ。というのは、いまのなには、現地の人たちと話をしてやらないという、大げさな調査だという。どれだけの金がかかるのですか。私は、四億も五億もかけたら十分だろうと思いますよ、一億もかからないだろうと思います。だけれども、仮に五億かかるとする。五億の金、大きいんでしょうか。中部電力が芦浜で使った招待旅行の金だけでも四億円の金、使っているのですよ。大臣、そういうところのPRに使う金はちっとも大きくなくて、この重大な問題に、しかも現地では住民が魚群探知機を使って一定の溝図までも出しておるというようなことについて疑問——ただ観念的に言っているのと違うのですよ。一定の努力をして疑問を提起しているのですよ。それに対して地質学者も一定の意見を出しているのです。それがもし間違っているなら、間違っていていいじゃないですか、調査の結果、そういう結果が出れば。しかし、もしこの疑問を提起していた人たちの意見が正しかったとしたら、調査というものは非常に有効に動くのじゃないですか。大臣は大げさなとかなんとかと言いますけれども、いまの時代で大げさなということは、金がかかるということでしょう。それ以外に大げさということはないんだよ。いま原子力立地条件の問題で、あなた方はPRに使う金はどのくらいあるんです。自動車を出して、東海村へ連れていって頭をなでるということよりも、この調査の方がよほど効き目があるんですよ。大臣のいまのそういう答弁は、私は聞いておれませんよ。とにかくこの問題は非常に大事です。やるつもりなのか、やらないのか。ただ地元の人たちを集めて、頭をなでて過ごそうとしているのかどうか、そこのところだけでいいですよ。ちょっともう一遍答弁して下さい。
  48. 熊谷太三郎

    熊谷国務大臣 決して言い逃れなどというつもりではありません。  それから、大がかりなということは、必ずしも金だけの問題ではありません。したがって、果たしてそういうことに対してどういう調査をしたらいいか、そういうことのお答えになるような調査をするのにはどうしたらいいかということもやはり検討一つでございますから、せっかくのお言葉でございますので、いろいろな検討をしたい、こういうことを言っておるわけでありまして、決してそんな、最終まで言い逃れしていくようなつもりは絶対ありません。その点だけをひとつ御了承願いたい。
  49. 石野久男

    石野委員 一応、どういうことをやるか検討しているという科学技術庁の誠意は私は認めますよ。だが、これはほうりっ放しにするのではない、あるいはまた、この機会をなにして、あとは地元の人を呼んで頭をなでるような、そんな工作でもない、純粋にどういうことをやるのかということを一応見てみないとわからない。私は、それじゃ、この次のときにでももう一度この問題で質問しますが、どうですか。
  50. 熊谷太三郎

    熊谷国務大臣 決して言い逃れするわけじゃありませんが、この次の機会がいつになるかわかりませんが、あるいはそう簡単にそういうことが一日、二日で結論が出るかどうか、それはわかりませんから、それだけは一つ申し上げておきます。
  51. 石野久男

    石野委員 わかりました。それじゃ、この問題はあしたの予算委員会でもう一遍聞かしていただきます。     〔小沢(一)委員長代理退席、委員長着席〕  大分時間をとらせましたが、外務省の方がおいでになっていらっしゃいますから、原子炉衛星コスモス954が落下したことについての規制措置とその予防についてお聞きしたいのですが、ソ連のコスモス954号の落下事故に対して、福田総理は、過日の予算委員会で、この問題を放置しておくと、地球の消滅にまで発展しかねない、また園田外相は、今度の問題は、人類の脅威という観点からとらえ、どこの国が迷惑であろうと、主張すべきことは主張する、こういうふうに私に答えました。その後政府は、各国に働きかけをして、国連宇宙空間平和利用委員会にも問題提起をされているように承っております。  報道機関が報じているところによりますと、きうの新聞やニュースで、国連の科学技術委員会でソ連代表のフェドロフ氏が一般演説を行ったそうです。ソ連側の所見はどういうようなことを言われたか。これは昨日の毎日新聞に非常に詳しく出ておりましたが、大体ああいうようなことなんですか、どうですか。この際、どうかひとつ。
  52. 小林俊二

    ○小林説明員 ソ連は昨日、現地時間十四日午後に発言しまして、わが方代表ステートメントのほか、カナダ、スウェーデン等の提案に対して、次のように反論しております。  概略を申し上げますと、人工衛星に強力な動力源が必要であり、その点で原子力が有用であることはだれしもが認めるところである。安全性の問題については、いかなる人工衛星であっても落下すれば危険であり、特に原子力を使用しているか否かが問題なのではない。事故の際には、局地的汚染は起こり得るが、核爆弾ではない。事故の可能性はあっても科学技術の進歩はとめてはならない。また、打ち上げ国はすでに事故を防止するための措置を講じている。概略、このように述べております。
  53. 石野久男

    石野委員 打ち上げ国は事故の防止のために万全を期しているという話をしているということですが、きのうの毎日新聞報道によりますと、ソ連はコスモス954号の落下原因はいまもってわからない、こういうことを言っているそうですね。それから、他の飛行物体と衝突したのかもわからない、こういうことも言っているそうです。そして当初の段階では、コスモス954号は太平洋上で大気圏に突入して、アラスカのアリューシャン列島付近に落下すると見ておった、こういうふうに言っておる。それがカナダの方に落っこちたんで非常に驚いておる、こういうようなことも言っているそうですね。そういうようなソ連の言い方というのは、いま私はこのまま聞き逃すわけにはいかないと思うのです。わが国の態度は、こういう問題についてどういうような態度で臨もうとしておりますか。
  54. 小林俊二

    ○小林説明員 私どもといたしましては、この問題が政治的に取り扱われるということは有益な効果を生まないと考えております。これは科学技術の観点から客観的に分析し、究明すべき問題であるという点を強調いたしておるわけでございます。  私たちとして特に主張いたしておりますのは、もちろん、私どもとしては、科学技術の発展を妨げるというような措置を講ずる気はないけれども、しかしそれはあくまでも安全ということとのバランスにおいて追及されなければならないということが、私たちの最も強い論点でございます。ソ連の発言そのもののみをとりますと、その発言は、私どもの期待にこたえるものではないというふうな印象を強く持っております。  今回の委員会の会期におきまして、私どもはその他の関心ある諸国と協力いたしまして、この問題がそういう客観的な観点からあくまで追及されるというふうな結論を求めるためにあらゆる努力を続けたいと現在も考えており、その努力を続けておるわけでございます。
  55. 石野久男

    石野委員 そのあらゆる努力の具体的な国連における態様というのは、どういう形でつくられますか。
  56. 小林俊二

    ○小林説明員 ただいま私どもが提案いたしております具体的な策といたしましては、もちろんこの委員会における討議そのものでございますけれども、さらにこの委員会のもとの適当な場におきまして特別作業部会を設置するということを提案して、その作業部会においてさらに問題の追及を続けるということを推進しようとしておるわけでございます。
  57. 石野久男

    石野委員 ソ連は、現行条約に従って安全措置をとっておるのに、これ以上の規制問題などを検討するということは反対である、特に作業部会などの必要は認めない、こういうように言っておるように承りますが、そうですか。
  58. 小林俊二

    ○小林説明員 私ども承知しているところによりますと、そのとおりでございます。私どもとしては、他の関心ある諸国の同意を得て、何とかこの結論を作業部会の設置という方向に動かすように話し合いを進めておるというところでございます。
  59. 石野久男

    石野委員 現地に対してそういう指示は与えておりますか。
  60. 小林俊二

    ○小林説明員 与えております。
  61. 石野久男

    石野委員 これはソ連、それからアメリカも、やはりそういうようなことに対して消極的であるというふうな情報も承っておりますけれども、事実そのとおりですか。
  62. 小林俊二

    ○小林説明員 ニューヨーク時間十五日現在、米国はまだ一般発言をしておりませんけれども、非公式にわが方代表に対しまして、わが国の発言は妥当なものであるといったような感触を伝えておるというふうに聞いております。
  63. 石野久男

    石野委員 作業部会をつくるということに対して、各国を帯同して、総理も言っておるように、その先頭に立って規制措置をするということを望むと同時に、原子炉を積んだ衛星を打ち上げることについてもやはり規制すべきだろうと私は思うのです。原子炉衛星については、幾つかの炉のものもあればアイソトープのものもありますけれども、そしてそれが大気圏の近くであれば問題があるけれども、以遠である場合にはそう大して問題がないんだ、こういうようないろいろな意見もあるようです。と同時に、いま科学の進歩をとめてはいけないという意見もある。いろいろなことを総合いたしましても、人類はこの地球の上に生きていく、そしていろいろな安全装置はしておっても、それだけ自信を持って言っておるソ連が、現にこのような落下事件を起こしており、それを収拾することさえもできなかったというこの現実の方をやはり重視すべきだと私は思う。  そういうような意味で、私は、原子炉衛星の打ち上げについてはこの際、わが国の立場からして、やはりそれをやめさせるようにする努力をしなくちゃいけないのじゃないか。このことはすでに総理もあるいは外務大臣も予算委員会では答弁になっておるところであるけれども、国連小委員会におけるところの主張としてそういう問題をもっと積極的に発言なさる用意があるのかどうか、この際聞かしてもらいたい。
  64. 小林俊二

    ○小林説明員 わが方といたしましては、本件につきまして規制するとかあるいは禁止するとかいう具体的な措置をこの段階において結論づけるということを主張しているわけではございません。その前提として、あくまでその事態の究明に努める、その究明の上に立ってしかるべき措置を講ずるという主張をいたしておるわけでございます。その点につきましてソ連側にはあるいは何らかの誤解があるのかもしれません。私どもとしては、あくまであらゆるデータの提供を求めて、この客観的な事実を安全という側面から究明するというところに論点を置いているわけでございます。
  65. 石野久男

    石野委員 そういう観点で国連小委員会において最後まで主張を通すというそういう考え方で現地での折衝を指示し、あるいは政府自体はそういう態度でソ連やアメリカに対して、あるいは各国に対して要請をする、こういうように見てよろしいのですね。
  66. 小林俊二

    ○小林説明員 先生御主張のとおりでございます。
  67. 石野久男

    石野委員 あと一つお聞きしておきますが、国連の中でソ連が非常に居直り的な立場で、たとえば原子炉衛星よりももっと原潜の方が放射能をまき散らすことが大きいじゃないか、なぜそれを問題にしないのだ、こういう発言があるように聞いております。私は、こういうような発言をしておるソ連に対して、国連の中でいまのような政府の方針を貫こうとする場合にはいろいろ考えなくちゃならぬ、あるいは国際的にいろいろ連携をとらなければならぬ問題があると思いますが、そういうふうな問題で何が必要なのか、外務省として考えておることの所見をちょっと聞かせていただきたい。
  68. 小林俊二

    ○小林説明員 現在ニューヨークで開会されておりますのは宇宙平和利用委員会の下部機構でございますので、直接問題になっておりますのは、その関連の、宇宙に物体を打ち上げるという観点からの問題でございます。もちろん、潜水艦のあるいはその他の原子力の公害その他危険につきましてはそれぞれの問題があろうと存じますが、それは現在のニューヨークにおける議論の対象ではございません。潜水艦といったような問題は、これは一般的な軍縮の観点から別個のフォーラムにおいて追及されておる問題でございまして、そういった観点からまた改めて考え直すべき問題であると受けとめております。
  69. 石野久男

    石野委員 この問題は、人類が地球の上で健康を保って、そして平和的に安全に住まうために非常に大事な問題を提起していると思いますので、本件については、特に科学技術庁長官は、政府の中でやはり強い意見を出していただいて、安全性を確保するための姿勢を堅持するようにしてもらいたい、こういうように私は希望いたしておきます。  私は、きょう原研の宗像理事長に来ていただいておりますが、原研労組の問題で、労働組合が定年延長の問題についてかねてから要請をしておるし、また皆さんとの間にもいろいろな折衝をしておるようです。最近、特に原研労組の方々は、私どもの方だけではなしに、各党に対してもあるいは科学技術庁に対してもその要請をしていると思いますが、二月六月に労働組合から定年延長問題の交渉申し入れが行われたのに対して、原研は、最後の決断が残るであろうからもう少し待ってほしい、こういうふうに延長要求をされたようですが、そんな状態なんですか。
  70. 宗像英二

    宗像参考人 ただいまの御質問お答えします。  定年問題については、先生お聞きになるとまた同じようなことを言うというふうにお考えかもしれませんが、われわれの方も真剣に検討しておりまして、関係者で問題がもう煮詰まってきましたので、近いうちに最後の調整をしまして労働組合と協議に入る、そういう段取りになっております。
  71. 石野久男

    石野委員 その近いうちにというのは、いつごろですか。労働組合の方は交渉を要求しておるけれども、あなた方はその交渉にも、いろいろな理屈はあるのでしょうけれども、応じられていないわけですから、これじゃ、組合の方としてはまたかというようなことになるわけですね。その近いうちというのは、いつごろのことですか。
  72. 村上昌俊

    村上参考人 ただいま理事長から答弁いたしましたように、問題点はもう煮詰まってしまってきておりまして、本当に最終的な調整をするというところだけに来ておりますので、その調整が終わり次第早急に組合と協議に入りたい、こんなふうに考えておる次第でございます。
  73. 石野久男

    石野委員 その最後の決断だとか、最後の調整とかいうのは、そんなことを言われてもわからないのだけれども、どういうことなんです。
  74. 村上昌俊

    村上参考人 定年延長の問題といいますのは、いままで先生の方からもいろいろ御指摘がございましたように、諸般の情勢から考えまして、研究所としてももちろん前向きに取り組んできておるわけでございますけれども、その延長の問題、これが人事制度全体のいろいろな基本的な問題になるわけでございますので、この定年問題を改正するということはいろいろな方面に関連するところが多うございます。その延長の仕方にもよりますけれども、その仕方によりましてはそのはね返りの仕方がいろいろの面に出てまいりまして、場合によると、そのやり方によりましてはマイナス面のはね返りなども考えられるわけでございますので、そういったようなことをなるべく少ないようにするやり方ということで、最後の調整をいろいろやっておる、こういう状況でございます。
  75. 石野久男

    石野委員 定年延長が人事問題にいろいろ影響して、そのはね返りがかえってマイナス面になってくるというようなことを言われますと、原研の場合はほかの事業所あるいは職場とどういう違いがあるかということをやはり尋ねなければいけないのですよ。科学技術庁関係でいま定年が非常に低い段階にあるのは、実際問題から言って原研だけですね。  どうして人事の問題やそのはね返りがくるとマイナスになるということになるのでしょうか、それがちょっとわからない。ほかのところ、科学技術庁関係の各事業所なり研究所等ではどんどん延長もしているし、また世間一般が六十歳だと言っているのに、原研だけがそんなことになるという理由は、どんなことなんですか。
  76. 村上昌俊

    村上参考人 いま私が申し上げましたのは、定年延長と言いますのは、延長すること自体は職員みんな希望することだと思いますし、特に高齢者につきましてはぜひそういう方向でという希望があることは当然であろうと思いますけれども、現在の原研の状態で申しましても、いまの定年で何歳、実質上五十六歳定年ということを基本にいたしまして人事制度全体が組まれておるわけでございますので、この延長の仕方によりましてはということを申し上げたわけでございまして、仕方によりましては、主として中堅どころの職員などの人事の停滞であるとか、あるいは昇任の頭打ちといったようなことが出てくる可能性もある。そういうようなことが出てくると、やはりそういうことがモラルダウンの方向にはね返っては困るといったような考え方から、いろいろな検討をしているということを申し上げておるわけでございます。
  77. 石野久男

    石野委員 所内におけるところの人事、特に中堅どころや、あるいはまた職制の上での頭打ちの問題が出てくるというようなことについて、それが定年との関係で左右されるということになりますと、働いている者の生活権というものが、いわゆる職制というものによって、職階制の問題によって全部抑えられてしまうことになる。しかも、定年問題は生活の問題と非常に関係があるし、わが国におけるところのいわゆる平均寿命が非常に伸びているということなどを考えますと、これはむちゃですよ、率直に言って。そういう職場の中におけるところの問題を前提として生活権を奪うというようなことはよくないと私は思うのです。この考え方は改めなくちゃいかぬと思うのですよ。  最近煮詰まってきたということの意味は、それらのものを勘案して、そして早急というのは、大体いつごろを言うのですか。今月末なら今月末というような意味なんですか、どうですか。
  78. 村上昌俊

    村上参考人 ただいま御指摘のように、この定年延長の問題がやり方によっては、特に中堅どころなどの職員の昇任の頭打ちその他の問題などで、マイナス面が出てくるといったようなことが実際あっては困るわけでございますので、そういうことがなるべくないような方法ということをいろいろ調整をしてやろう、そういう考え方でやっておるわけでございます。そして、そういう問題を含めまして、調整が大体終わってきておりますので、最終的な調整を近いうちに行いました上で、労組と早急に交渉を始めたい、こんなように考えておるわけでございます。
  79. 石野久男

    石野委員 人事問題に関連して、定年が昇給とかあるいは昇進とかという問題にいろいろ関係するという所内の問題は一応おきましても、とにかく定年延長というのはもう常識だと思うのです。そしてそれについて一定の煮詰まりが出てきているというお話なんですが、これは昨年の質問のときにも同じような答えがあったのですよ。それからもう数カ月過ぎております。いま煮詰まっておるという、そしてまた、労組との話し合いをするというのは、今月内にできるのですか。煮詰まっている、時期は近いというのは、いつごろのことをいうのですか。
  80. 村上昌俊

    村上参考人 先ほど来申し上げましたような問題点を含めて煮詰まってきておる、最後の調整が残っておるだけということでございますが、まあ今週といいましても、きょう、あすというかっこうで日にちもございませんし、来週適当な時期に労組に申し入れをしたいと考えておるような、そんな段階に来ておるわけでございます。
  81. 石野久男

    石野委員 長官、いま煮詰まってきているという話の中には、もちろん科学技術庁との話し合いもあるのかもしれない。私が科学技術庁の所管管内における他の事業所等と比較しても、原研は非常に定年延長がおくれているということ、同時にまた、新しい採用というものは非常に抑えられているわけですよ。時間がありませんので、私は多くを申しませんが、ことしの予算なんかでも、ずいぶん予算がふえている。けれども、人員がふえなければ、これは一人当たりの荷が非常に重くなってくるわけですよ。そういうようなことを考えると、これは定年延長の問題だけじゃなしに、定員の問題についても、もう少し科学技術庁が原研に対して、そういう事情、予算の拡大に見合うような処置をしなくちゃならない、こういうように思いますが、その点についてはどうですか。同時に、いまの労組との関係、来週中と言っているのですから、それを確実にすることを念を押してもらいたいのです。
  82. 熊谷太三郎

    熊谷国務大臣 十分、石野議員の御発言の趣旨を了承しまして、善処することにいたします。
  83. 石野久男

    石野委員 これは宗像理事長にひとつ、理事の方からの話があったように、それを確実に回答のできるように、それはまた回答しても、労働組合の側からも意見があるでしょうし、だから早いこと回答してもらわないと——内容がわからないんだから。そして、その回答だけで私いいとは言えない。労働組合の意向が十分入るような回答をするようにしてもらわないと困る。  理事長からちょっと、もう時間がないから……
  84. 宗像英二

    宗像参考人 いま先生おっしゃるとおりの線で、私ども専門家と相談しまして誠意を尽くしたいと思います。
  85. 村上昌俊

    村上参考人 ただいま私も申し上げましたように、来週中には所の方から組合に、いつ交渉したいということを申し入れたいと思っておりますが、内容につきまして納得してもらえるかどうかは、交渉した上でないとなんでございますが、そういうように煮詰まってきておりますので、そういうことを御報告させていただいて終わりにいたします。
  86. 石野久男

    石野委員 じゃ、これで終わります。
  87. 岡本富夫

    岡本委員長 石野君の質疑は終わりました。  午後一時より再開することとし、この際、休憩いたします。     午後零時八分休憩      ————◇—————     午後一時三十分開議
  88. 岡本富夫

    岡本委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  質疑を続行いたします。貝沼次郎君。
  89. 貝沼次郎

    貝沼委員 「第八十四回国会における科学技術庁長官所信表明」について質問をしたいと思います。  この長官の表明を私は何回か読みまして、そして去年の宇野長官の所信と比べてみました。そうすると、ほとんど内容は変わってないわけですね。言葉が幾つか違っているとか、並べ方がちょっと変わっている程度で、ほとんど変わっておりません。国の施策として変わっていない連続性を見るということもあるいは当然のことかもしれませんが、しかし時代は変わっておるわけでありますから、そこに科学技術庁として、やはり新しい時代に対してこういう考えを持って、ことしこそこういうことをやりたいという、そういうところが一向にうかがえないのでありますけれども、これはどういうことでありましょう。
  90. 半澤治雄

    ○半澤政府委員 御指摘のように、一部字句等に変更があるほか、よくごらんいただきますと、それぞれの重要項目ごとに五十二年度中に達成できたものは達成できた、五十三年度において予定すべきものは予定する。一、二例を申し上げますと、たとえば海洋開発を五十三年度に大きな柱として打ち立ててございますが、そういうものにつきましては特別に項目を設けて、二百海里問題がこういうふうに展開している事態に対応して海洋開発に力を尽くすというような、そういう意味での変更はあるわけでございますが、先生も御指摘のように、科学技術庁の現実に行っております施策が基本的に変わるわけではございませんものですから、その施策の発展の度合いに応じた変更程度にとどまっているということでございます。
  91. 貝沼次郎

    貝沼委員 やはりこういう所信を述べられる場合は、ある程度は長官の意向等も入れて、なるほど熊谷長官のときはこういうふうにやるんだなということを、意気込みというものを世間に知らせる必要があると思うのですけれども長官の御見解はいかがでしょうか。
  92. 熊谷太三郎

    熊谷国務大臣 御発言の御趣意はもっともであると存じます。ただ、率直に言いまして、国の科学技術の行政に関します大方針は、そう簡単に変更するというわけのものでもありませんし、熊谷科学技術庁長官というふうに御指名をいただけば申し上げたいことは、私もまだ就任早々でありまして、現在までの国の科学技術行政について歩んできました道の中で、私がまだ個人的に強くそういうことを打ち出すまでの段階には率直に申し上げましてなかったということもあると存じます。
  93. 貝沼次郎

    貝沼委員 政策そのものは連続性がありますから私はとやかく言いません。ただ、なぜこんなことを言っているかと申しますと、余りにも官僚ペースの作文になっておる。したがって、やはり長官が立法府において演説するわけでありますから、そういうこともあってもいいのではないか、こういうふうに考えるので、申し上げたわけであります。  そこで、以下この演説に従って質問してまいりたいと思いますが、まず第一は「原子力平和利用の推進」というところであります。原子力の安全性の確保ということは、これはここに書いてありますように、非常に大事なことであります。それからさらに、「国民の理解と協力を得つつ、」という国民的合意の形成、こういうものは一番大事だと思うわけでありますが、まず原子力の安全性ということについて、私は長官に初めて質問するわけでありますので、これについて少し整理をしておきたいと思います。要するに、原子力発電なら原子力発電というものが安全である、安全でないというこの判断というものはだれがすべきなのかということ、さらに、だれの責任においてこれはやらなければならないものであるか、それから、もし一般的な安全性に対する疑問というものが出てきた場合にはだれが答えるべきなのか、この三点について長官の所信を伺いたいと思います。
  94. 熊谷太三郎

    熊谷国務大臣 後でお答えいたします。
  95. 牧村信之

    ○牧村政府委員 お答えいたします。  原子力の安全問題につきましての責任の問題をお尋ねと思います。この安全を確保するのはだれが判断して行うかという御質問でございますけれども、国の立場から申し上げますと、原子力の安全性は、国が責任を持って安全の対策を講じ、規制を行い、国民に不安を与えないようにしてまいらなければならない、かように考えます。ただ、たとえば原子力発電所の運転ということを考えましても、それなりに設置者の責任もございます。そういう点は当然でございますけれども、最終的に原子炉の規制を行っております国が、安全なものをつくらせ、安全に運転させるというふうな立場で臨むべきだ、かように考えております。  次に、安全に対して疑問が起こった場合ということでございますが、若干御質問の趣旨がわかりかねるところもあるわけでございますけれども、確かに原子力の技術というものは日進月歩で進んでおるわけでございます。そのような時期におきまして、安全確保の面からは常に安全審査等におきます安全に対する尺度、安全基準と申しますか、そういうものの尺度を逐次そのときどきの技術水準で向上させてまいってそのような疑問を解決していくというふうな立場で臨むべきでなかろうか、かように考える次第でございます。
  96. 熊谷太三郎

    熊谷国務大臣 ただいま政府委員からお答えいたしましたとおりでございますが、安全の責任は最終的には国が持つべきであり、またいろいろな疑問が起きました場合には、最終的にはやはり国が答えるべきものである、このように思っております。
  97. 貝沼次郎

    貝沼委員 そこで、安全という問題について。これは「民主主義」という新聞です。ここのところに長官の判こを押してありますから長官はよく御存じだと思いますけれども、この中に長官の論説といいますか、文章が載っておるわけでありまして、いまの長官の答弁であれば安全というものについてそうだろうと私は思います。しかし、この文章を読むと、ちょっと誤解を招くところがあるわけですね。  たとえば、これは柏崎の原発建設に関する決議を二十五対一で可決したときのことが述べられておりますが、「本来原子力発電所が安全であるかないかは、之を受け入れようとする地域住民が、どこまでも自分たち自身の問題として、自からの責任において判断する問題」である、こういうふうになっていますね。いまの長官の答弁は、国が最終的に責任を持たなければならない。これですと、地元住民が責任を持つということになっておるわけでありますが、これは立地の問題じゃないかと私は思うのですね。したがって、こういう文章がありますと非常に誤解を招く。何でもかんでも地元が責任を持って安全問題はやらなければならないんだということになってきますと、国の立場がどうもおかしくなってまいりますので、したがって、安全性に対してはあくまでも国に責任があるのだ。ただ、立地の問題は地域住民のいろいろな意向があるでしょうから、そういうところは意思決定をしてもらえばいいわけですけれども、その辺のところがこの文章ではちょっと誤解を招くおそれがあるというふうに考えますので、いまお聞きしておるわけでありますが、この点について長官の見解を承りたいと思います。
  98. 熊谷太三郎

    熊谷国務大臣 どういうふうに御説明してよろしいか、どうも余り文章がうまくないのであるいはそういうお感じを持たれたかと思いますが、責任という問題は、先ほどから申し上げておりますとおり、最終的には国が責任を持つ。これはもう間違いありませんが、そういう最終の責任という問題を離れまして、どっちにしましてもそれぞれの適地において受け入れてもらわなければ原電の立地が進まないわけであります。したがって、これを受け入れるかどうかということについては、その御判断の基礎に、これは安全と考えていいかどうかという問題が当然起きてくるわけでありますが、その際、現地の住民の方は大体安全と認めて受け入れるといった場合に、ほかの関係のない方が来られて、現地の住民が受け入れようとされるのに安全でないと言われることは、いささか筋が違っているのではないか、こういうことを言いたいつもりで書いたわけであります。
  99. 貝沼次郎

    貝沼委員 この後ずっと続いて、いま長官がお述べになったようなことがあるわけでありますが、これは読んでもいいのですけれども、要するに、安全という問題と立地という問題はやはり別に議論してもいいんじゃないかと私は思うのですね。だから、この原子炉が安全か安全でないか、それを町会で議論することよりは、やはり日本の国ではいろいろ研究したりして議論しておるところがあるわけでありますから、たとえば逆に言えば、そこの地域住民が賛成したから安全なんだということにはならないわけですね。そういう誤解を招く文章になっております。これが科学技術庁長官の文章でなければ別に問題になりません。現職の長官の名前で出ておる以上、ことにこういう問題ではとかく問題が起こりがちなところでありますので、少し注意していただく必要があるのではないか、こういうところから申し上げたわけであります。  それからもう一点、この演説の中で、国民的合意の形成、「国民の理解と協力を得つつ、」こういうふうになっておりますが、この国民的合意の形成の核になるものは一体だれがつくるべきなのか、まただれがその合意の形成をするために活動すべきなのか、そして最後にその合意ができたかできないかの判断は一体何を基準にしてなさるのか、この辺のところの見解を承りたいと思います。
  100. 熊谷太三郎

    熊谷国務大臣 大変むずかしいお尋ねでございまして、適切なお答えができるかどうかわかりませんが、やはり国民的合意も、原子力の平和利用を推進しようという政府が主体となって行ってまいらねばならぬと思います。しかし、実際問題におきまして、原子力の平和利用を推進し、またそれに関係しますものがそれに協力してもらうという立場から、いろいろな団体、あるいは場合によっては企業がそれをし得ることもあると思います、あるいはそれを受け入れようとする地元がする場合もあります。しかし、中核といいますかその中心政府になるということになろうかと存じます。
  101. 貝沼次郎

    貝沼委員 もう一度この文章を引用いたしますが、先ほど長官から説明がありましたように、「何の関係もない第三者が外部から不安だ危険だとさわぎ立てるのは全くお門違いと言わねばならないが、それはそれとして、このように自らの判断にもとずいて不安も危険もないと認め、之を受け入れようとするのを無理に阻止するのは不当も甚だしい。言うまでもなく民主主義の実体はいわゆる議会制民主主義であるから、地域住民を代表する議会の意思を暴力でねじ曲げようとするのはまさに民主主義否定の暴挙と言う他はない。  近来原子力発電所の立地はこのような全く民主主義と逆行する反対運動によって著しくその推進を阻まれている。一年に何千人事故死するか分らない飛行機さえ、危険だから乗るな、飛ばすな、作らせるなと言わないのに、一人の事故死もない原子力発電所を危険だから作らせるなというのは、どう考えても理屈にあわない暴論だが、民主主義軽視の風潮は、こんな暴論まで暴力で押し切って、国民の生存に必要なエネルギーの確保を脅やかしているのが現状である。」こう続いておるわけでありますが(「発行はいつですか」と呼ぶ者あり)不規則発言がありますけれども、発行日は一月二十五日で、これは長官のときであります。  この場合に、第三者云々というのがありまして、言わんとすることの内容はわからぬこともないけれども、しかしやはり国民的合意の形成という立場から見れば、いろんな意見というものは、退けるのではなしに、むしろ受け入れて、そして説明をし、納得をしていただく、そして国民的な合意というものを形成していくという姿勢が大事なのではないかと私は思います。この場合に、これを読んでおりますと、何となく第三者を退ける考え方に思えてくるわけでありますので、こういうところは非常に誤解を招くところではないかと思うので、いま聞いておるわけでありますが、この点についての長官の見解を求めます。
  102. 熊谷太三郎

    熊谷国務大臣 私の小文をお取り上げいただいて大変恐縮でございますが、それはどこまでも、ごらんいただきましてもあるいは御理解いただけるかと思うわけでございますが、やはり議会制民主主義でありますから、議会でいろいろな議論をし検討をすることを阻止しようということ、あるいは議員を議場に入れさせなかったりあるいはその他の方法でそういう進め方を阻止する、それはいけないことだ、こういうことが主眼でございまして、いろいろの反対論があるのを無理に排斥する、こういう趣旨ではありません。そういう議会制民主主義で、国では国会、また地方では県議会なりあるいは市町村議会なりがありますが、そこで議論されることを自分たちの意思で、いわば暴力に等しい行為で阻害されることがいけないということがたてまえでございまして、重ねて言いますが、反対のいろいろな考え方があったり、あるいは疑念なり不審があるものを無理に抑えつける、排斥するということは決しておっしゃるとおり本筋のことではないと考えておるわけでございます。
  103. 貝沼次郎

    貝沼委員 このことばかりで時間はとれませんので、進みたいと思います。  そこで、ただいま議会制民主主義という問題が出てきまして、たとえば原子力発電の設置をするかしないかということは、町会なりあるいは市会、県会でいろいろ議論がなされるわけでありますけれども、ただ、その場合に、安全性であるとかこういう高度な問題になってまいりますと、果たして十分な資料なりあるいはそれを説明できる十分な専門家というものがそろっておるかどうかということを考えると、必ずしもそうではないと考えなければならぬと思うのですね。そういう場合に、あくまでも議会制民主主義だからといって議会——町会なり市会、県会にすべてを任せるということが正しいのか、それとも、何か要請があった場合には、国の方から、たとえば科学技術庁の方から専門家参考人なり何かの形で出ていって、あるいは事情を説明するとか資料を提供するとか、いろんな面で協力をするというようなことがあるのかないのか、この辺のところ。いままで、たとえば「むつ」の問題などを考えてみましても、もう長崎とかその辺の議会の結論を待つということばかりで、いわば政府は高みの見物をしておったような感じがある。なおどこかで聞こえてくるのには、新幹線がどうなるとか、こうなるとか、甘いような話ばかりちらちら出てきて、そしていろんな誤解を招いたり思惑が絡んだりしておる。こういうことでは私は本当にまずいと思う。したがって、こういうようないわば地方の議会の意思決定というものがなされるために政府は一体何をなすべきなのか、この辺についての見解を承りたい。
  104. 熊谷太三郎

    熊谷国務大臣 大変ありがたい建設的な御指摘をいただいて非常に力強く考えるわけでございます。  本来、地元が立地を決めるということにつきましては、いろいろなことを考えの中に入れて結論を出すわけでありますが、第一には、それが安全であるかどうかということが一番問題になりますことは言うまでもないことであります。また、国としましても、立地の場合のみならず、先ほどから申し上げておりますとおり、何といっても安全第一、安全ということを主眼としていかねばならぬことは言うまでもないわけであります。したがって、役所の方から先立ってそういう立地に向けてのかれこれのことさらの宣伝はいたしませんが、現地の地元の方からそういう御要望がありまして、いろいろな疑問に答えてほしいという御要請がありますならば、喜んでその御要請に応じましていろいろな疑問にお答えする、こういうことはいままでもやっておるはずでございますし、今後も、そういう御要請があれば、喜んで出しまして、率直にいろいろな御質問なりまた御要望にこたえるということにしてまいりたい、このように考えております。
  105. 貝沼次郎

    貝沼委員 ただ、誤解をしていただいたら困ると思うのですが、私は推進をするためにやれと言っているわけではないのでありまして、地元議会の正確な意思決定がなされるには豊富な資料が必要であります、こういうことを言っているわけです。したがって、その資料をたとえば町長さんとか賛成派の人たちが要求したときのみ出せとかそういう意味ではなしに、その議会なら議会、あるいはその問題に携わっておる地域住民、こういった方々からの要請があった場合はその資料を提供するのは当然ではありませんか、こういう意味で申し上げているわけでありますので、この点誤解のないようにお願いいたします。  それから、その次に、「原子力エネルギーを安定的に確保するためには、」云々という、核燃料サイクルを早期に確立するという問題がございます。これに対しまして、実は気になることは、この二月にアメリカの上院、下院両方が核拡散防止政策法案を可決いたしました。これは上院が七日に可決いたしまして、下院が九日に可決をしておるわけであります。そこで、この核燃料の再処理の問題ですね、具体的には東海の再処理工場の前途というものに非常に不安があるのじゃないかというように言われておるわけですが、この二年間の暫定運転という日米合意になっておるわけですけれども、二年後においてこの法案が通過したことによって不安があるのかないのか。長官はたしか不安があるみたいな意味で説明をなさったように報道では聞いておるのでありますが、そういうことはございませんか。
  106. 熊谷太三郎

    熊谷国務大臣 詳しいことはまた政府委員から具体的にお答えいたしますが、まずもって核燃料サイクルの確立といった問題について先般のアメリカの核不拡散法が影響があるのではないか、なおそれが東海村の再処理工場の運転に支障があるのでないかというふうなお尋ねかと思いますが、結論だけ申し上げますと、直接には余り大きい影響はないと考えております。そういうふうに思っておりますが、しかし将来にわたってはいろいろややこしい国際問題が起きてくることも予想されるわけでございます。  具体的なことにつきましては、政府委員からお答えさせたいと存じます。
  107. 山野正登

    ○山野政府委員 今般の核不拡散法案の再処理部分がわが国の東海村の稼働にどのような影響を及ぼすかという点でございますが、これを当面二年間と三年目以降に分けて考えてみますと、まず当面二年間の問題につきましては、昨年の九月に日米の間の共同決定によりまして、二年間の運転方式並びに処理量が決められたわけでございまして、今回の核不拡散法案におきましては、すでに別途に了解されたものにつきましてはこの法案の対象外とするということになっておりますので、この法案の成立を見ましても直ちに影響はないということでございます。  それから、三年目以降の問題でございますが、申し上げましたように、わが国の再処理事業につきましては、もともと、アメリカで濃縮されましたウランを対象にする限りにおきましては、すでに現在の日米協力協定におきまして規制の対象になっておるわけでございますので、今般の核不拡散法で新しくわが国で行う米国原産の濃縮ウランの再処理が規制の対象になるという筋合いのものではないわけでございますので、再処理が米国の規制を受けるという点におきましては、実態上何ら変わりはないわけでございます。  したがいまして、三年目以降の運転につきまして日米が今後協議をするに際しましては、先般の日米協議におきまして米側は米側なりの基本的な規制の考え方を持ってこれに臨んだわけでございますが、今回の核不拡散法の立法の精神も全く同じ不拡散という観点からの立法でございますので、恐らく同じ態度で臨んでくるというふうに考えますので、原則的には何ら変更はないのではないかというふうに考えております。
  108. 貝沼次郎

    貝沼委員 なければよろしいのですけれども、一応これは対策検討しておかなければならぬと思うのですね。  それから、もう一点は濃縮の問題になるわけですね。日本原子力産業会議と米国フォードマイター・グループとの共催で開かれた日米核エネルギー専門家会議に出席したナイ国務次官補ら米側関係者は、滞日中にわが国関係者と核不拡散問題などについて非公式協議を一月二十四日から二十六日くらいに行ったようでありますが、このときの内容が米側からは、一つは日英再処理委託問題、それからもう一つはロンドン協議の今後の進め方、それからINFCEに対する米側の姿勢などについて、かなり厳しい態度を示したと言われておるわけでありますが、この点はいかがでしょうか。
  109. 山野正登

    ○山野政府委員 今般の米側原子力専門家とわが国の専門家との会議と申しますのは、これは政府レベルの会合ではございませんので、私自身克明にこの内容を承知しておるわけではございませんけれども、私の仄聞いたしておりますところでは、まずヨーロッパヘのわが国の再処理の委託につきましては、これは米側の従来の基本的姿勢といたしまして、包括的に米側がこれに了解を与えるわけにはまいらない。これは現在の日米原子力協力協定におきましては、わが国から第三国に移転します際には米側の事前同意が要るわけでございますが、この事前同意を包括的に出すわけにはまいらない、一件ごと、ケース・バイ・ケースにやっていきたいということは従来言っておることでございまして、その趣旨は重ねて今般米側の関係者が述べたようでございます。  それから、ロンドン協議につきましては、これはすでに関係国間におきまして一つの結論が出ておる問題でございまして、先般、三カ国はおのおのの立場をIAEAに通告したところでございまして、すでに決着を見ておる問題でございます。  それから、INFCEにつきましては、これは世界の四十カ国が参加して現在作業を開始しておるところでございまして、わが国はわが国なりの基本姿勢を貫こうとする姿勢でございますし、米国はまた米国の姿勢があるわけでございますので、おのおのが自分の国の考え方に立ちまして種々の発言がある、これはまた当然のことかと存じます。
  110. 貝沼次郎

    貝沼委員 それで、このロンドン協議のことなんですけれども、共同ガイドラインは一月十二日に公表されているわけでありますが、アメリカはさらにこれを検討していく方針である。その際最大の関心事になるのは遠心分離法によるウランの濃縮である、こういうことを明らかにしておるわけであります。  米国は、再処理に続く核不拡散問題は濃縮である、こういうふうにどうも見ておるようでありますけれども、その濃縮の中でも、ガス拡散法は莫大な資金それから電力設備が必要であるし、技術上も問題がある、だから一国ベースではなかなか開発はしにくいというところから、遠心分離の方はその点非常に簡単であるというので、この点を非常に問題にしておるらしい。たとえば英、独、蘭共同濃縮会社、いわゆるURENCO、それからいわゆる東海とか、あるいはこれから人形峠に建設しようとする日本の濃縮、こういったものはどちらも自主開発をしたものである。しかもこれが商業ベース段階にそろそろなっておるというようなところから、非常に問題だが、URENCOの方は、数カ国の国際事業であるために核拡散防止上相互に牽制し合っているから、まあいいのじゃないか。ただ、その点、動燃の人形峠でつくろうとするあるいはこれからの計画日本一国のみだから問題にしたいというようなアメリカの意向があるようでございますけれども、こういう点について科技庁としてはどういうふうにお考えになっておるのか、この点についてお伺いしたいと思います。
  111. 山野正登

    ○山野政府委員 先生指摘の問題につきまして、私も新聞記事を見たのでございますが、くだんの新聞記事のような内容を米側から私どもの方に正式に言ってきたわけではもちろんございません。ただ、米側の一部の専門家の中に、先生指摘のように、遠心分離法についてこれが高濃縮ウランの生成に使い得る技術であるとか、あるいはおっしゃるように、ガス拡散法に比べますと設備投資が少なくて済むといったふうな観点からの種々の意見を言われておる向きはあるようでございますが、私ども考えておりますのは、IAEAの行っております保障措置というものは、この濃縮事業が一国単位で行われておるかあるいは国際共同で行われておるかということによって、つまり経営の主体によってIAEAの行う保障措置の実効性が変わるというふうには考えておりませんで、これはたとえ一国単位でありましても十分保障措置は有効に働くというふうに考えております。  なお、新聞に出ておりましたような、今後国際的な濃縮事業というものをどういうふうに考えていくかという点につきましては、これは先生承知のように、INFCEの場で現在検討中でございまして、このINFCEの結論等も見ながら私どもも対応を考えてまいりたいというふうに考えております。
  112. 貝沼次郎

    貝沼委員 日米原子力協定では、米国のウランを使用しない限り、濃縮が再処理のように規制をされるということはないと思うわけでありますが、それにしても、一部の人といま局長はおっしゃいましたけれども、そういうところからのささやきがあり、動きがあるということについては、わが国としてはこれは当然対策考え、それをどうするかということをまた検討しておかなければならない問題だと思います。  そこで、人形峠の話が出てまいりましたので、ここで一言だけ確認をしておきたいのですけれども、たとえば今回のような人形峠の濃縮工場、こういうものに対して電源三法はどのように適用されるのかということですね。  さらにもう一点は、あれだけ大きなものができますと、職員とかそういうものも非常に大がかりになってまいります。御存じのように、あそこは山のてっぺんでありまして、雪も降るし、いろんな施設において大変なところでありますから、そういう面の準備というものをよくしてやらないと、せっかくの工場というものが機能を果たせないということになってまいりますので、その辺に対する考え方を承っておきたいと思います。
  113. 山野正登

    ○山野政府委員 岡山県人形峠の濃縮パイロットプラントにつきましては、これを電源特会の交付対象にいたすべく現在検討中でございまして、来年度の政府予算原案にもこの対象を前提としまして所要の経費を計上しておる次第でございます。  それから、地元にかなりな数の職員が参ることになるわけでございますので、住宅を含めまして現地における受け入れ等につきましては、地元の理解をいただきながら、よくよく地元の意向もしんしゃくして考えてまいりたいというふうに考えております。
  114. 貝沼次郎

    貝沼委員 こういう日本として非常に大事な濃縮工場でもありますし、単なる一会社の原子力発電所を一つつくるということとはちょっと意味が違ってくるわけですね。こういう意味もありますので、地域住民の意向とか、いろんな陳情も出ておると思いますから、その辺のところをよく聞いてあげて、そして対処していただきたいと思います。  具体的にどの地域がどうなり、内容としてどういうようなものになるかということが決定するのはいつごろになりますか。
  115. 山野正登

    ○山野政府委員 電源立地の促進対策交付金の交付内容でございますが、これは発電用施設周辺地域整備法の四条に定めます整備計画によることになっておりまして、整備計画に定める公共用の施設の整備に対して交付されるわけでございます。この整備計画自体は県知事がおつくりになるわけでございますので、今後指定と同時に地元からこの公共用施設整備のための整備計画というものを御提出願い、これを主務大臣が認可いたしまして具体的な配分計画を決めるというものでございまして、新年度早々には着手したいというふうに考えております。
  116. 貝沼次郎

    貝沼委員 それから、時間がだんだんなくなってまいりましたので、次に進みたいと思いますが、核不拡散条約の関係で、カーター政権は核拡散防止の観点から高濃縮ウラン、これは核兵器転用可能物質である、こういうふうに判断をしたらしく、新規分の輸出を停止させたということで、国内においてはこれによってかなり影響があるわけですね。たとえば原研のJRR2あるいはJRR4それからJMTR、それから京大の建設中のKUR2、こういったものが影響を受けるようでありますけれども、こういうことに対して科技庁はどういう考え方を持っておりますか。
  117. 山野正登

    ○山野政府委員 昨年の十一月に米国が発表しました高濃縮ウランについての輸出の審査基準でございますが、これにつきましては、従来とも米側は、高濃縮ウランを輸出します際には一定の審査をして輸出をしておったわけでございまして、そういう意味におきましては今般新しく規制を加えることにしたという性格のものではございませんが、かなり具体的に細かくその審査基準をわが方に示しております。ただ、基本的には、経済的並びに技術的に高濃縮ウランが必要であるということが評価できた場合には輸出をするというのが基本的な精神でございますので、わが国におきまして現在高濃縮ウランを使っております原研の三つの炉並びに京都大学の炉等につきまして、今後経済的並びに技術的に二〇%以上の高濃縮ウランでなければならないということにつきまして私どもも十分検討の上、低濃縮ウランに切りかえ不可能なものにつきましては、米側に十分な説明をして、今後必要な高濃縮ウランの確保に努めたいというように考えております。
  118. 貝沼次郎

    貝沼委員 それから、この演説のところに、直接言葉としては出ておりませんが、やはりサイクルという面から考えますと、現在非常にたまっております使用済みの低レベルの廃棄物のことなんですけれども、この低レベルの廃棄物は、海洋投棄であるとかいろんなことがいままで言われておりますが、はっきりした結論というものはまだ出たように聞いておりません。そこで、この低レベルの廃棄物についての処分の仕方、これの結論はいつお出しになりますか、その内容はどういうふうになりますか。
  119. 牧村信之

    ○牧村政府委員 先生おっしゃいますように、低レベルの廃棄物につきましては、現在のところ、海洋処分もしくは陸上処分をするという考え方のもとに研究を進めておる段階でございます。  やや詳しく御説明申し上げますと、海洋処分につきましては、すでに容器の健全性、あるいは現在考えております候補地点の海洋調査等も相当進んでおります。これを安全に海洋処分するためには、十分な安全審査を経た上で、しかもこれを海洋に投棄するわけでございますから、ただいま申し上げました投棄物による海産生物等への影響が出ないような方法で処分しなければなりません。そのためには、それなりの安全審査を十分する必要がございます。すでにその安全審査に関しましては、原子力安全局に設けました専門家グループによる一次の安全審査は終了しておりまして、これをダブルチェックする意味から、原子力委員会の専門部会におきましてさらにその審査内容につきまして検討を加えておるという段階でございます。  それからもう一点、このような海洋処分をするわけでございますが、公海上でいたすということで、国際的な合意も必要なものでございます。したがいまして、ただいま国会で継続して御審議を願っております基本法の改正の中に、この責任の所在の一貫化の法律の改正をお願いしておりますが、その中に、こういう海洋処分をいたします場合の物であるとか海洋処分の方法につきまして、国の確認を得た上でなければ行えないという確認行為の改正をお願いしておりますが、このようなことをお認めいただきました上で、しかも、国際的にはすでに欧州原子力機関、NEAでございますが、そこに国際的な監視機構がつくられております。そこの審査も経た上で、十分安全を確保して海洋処分をいたしたい、このように考えておるわけでございまして、その海洋試験の実施の目標時期といたしましては、ただいまのところ、それから法改正等を待ち、国際的な評価も得た上で五十四年ごろにいたしたい、このように考えて諸般の準備を進めておるところでございます。  なお、この試験を実施いたします場合に、当然水産業界の方々の御理解を得なければならない問題でございますので、この点につきましては、水産庁等と現在鋭意協議を進め、近く国の安全審査の答えが出た段階で正式に業界の方々お話しし合い、御理解を得て進めてまいりたい、このように考えております。  一方、陸地の処分につきましては、これを並行して行いたいと思っておりますが、現在、このことにつきましては研究を原研その他の機関にお願いして進めております。その結果を待ちまして実施をいたしたい、このように考えております。  なお、これの特に試験的な処分の段階におきましては、たしか昨年度であったかと思いますが、環境整備センターという公益法人を設立いたしまして、ここで実際に実施する実務を行わせたいということで、ここにおきましても諸般の準備を進めておるところでございます。
  120. 貝沼次郎

    貝沼委員 次に、「核拡散を防止しつつ原子力平和利用を推進する国際的秩序の形成」という言葉がありますので、先ほど石野議員からお話が出ておりましたが、原子炉衛星の問題なんでございます。  本来、科学技術というものは、これは私が申し上げるまでもなく両刃の剣でありまして、その判断をしていく政治というものが非常に責任が重くなってくるわけであります。ソ連の原子炉衛星がカナダに落下した。これは先ほどありましたので私は詳しくは申し上げません。それで、十四日には国連宇宙空間平和利用委員会の科学技術委員会で、日本、ベルギー、イタリア、カナダ、スウェーデンが原子炉衛星の打ち上げ禁止と安全対策検討するための作業部会の設置を求めた、ソ連のフェドロフ代表は提案を拒否した、こう報ぜられておるわけであります。また、一方米国は、二月一日、ブラウン米国防長官が七九年度国防報告のときに、宇宙兵器競争のエスカレートを防ぐための交渉を進める一方、アメリカは、ソ連の軍事衛星を撃ち落とす能力を持たなければならないとして、宇宙兵器開発への戦略的努力を開始する決意を打ち出した、こういうふうに報道されておりまして、宇宙兵器競争を決意した、となっておるわけでありますが、被爆国であるわが国にとりましてはこれは非常にゆゆしき問題でありまして、どっちとも大変な問題なんですね。したがって、わが国こそ、原子力の平和利用という立場から、しかもここに言葉がありますように、「国際的秩序の形成に貢献する」となっておるわけでありますから、これは積極的に発言をし行動を起こしていかなければならぬと考えておるわけでありますが、長官の見解を求めたいと思います。
  121. 熊谷太三郎

    熊谷国務大臣 ただいま御発言のとおりでありまして、われわれ日本といたしましては、宇宙の安全保持のために最大の努力をしてまいらねばならぬと考えておるわけでございます。
  122. 貝沼次郎

    貝沼委員 ただ単に努力だけじゃなしに、やはり具体的な行動を起こさなければならぬと思うのですね。したがって、長官としては、たとえばわが国の内閣の中において行動を起こすとか、あるいはさらに国連の場へ何らかの働きかけをするとか、こういったことについてはいかがでしょう。
  123. 熊谷太三郎

    熊谷国務大臣 午前中から述べておりますように、国連の場におきましていろいろ具体的な提案をするようにいたしまして、科学技術庁といたしましても、専門家もその国連の場に出席させまして積極的にいろいろな意見を発言しまして、そしてその実現方を要請している現状でございます。
  124. 貝沼次郎

    貝沼委員 試みに、原子力衛星というのがいまどれくらい飛んでいるかということを、私は資料をいただきましたが、時間がありませんので数字だけ申し上げますけれども、要するに、原子炉を搭載しているのは一個である、アイソトープ電源搭載が十九個ある、こういうふうになっておりまして、ソ連の方はわからないというので、合計すればかなりあるのじゃないかと私は思うわけであります。今後こういった墜落事故などないようにひとつ十分働きかけをしていただきたい。  それからもう一点は、INFCEの話がありますので関係してまいりますが、先日四日、東京都板橋区の丸富梱包運輸、ここでアメリシウムの盗難事故がございました。たしか七千線源だと思いますが、運搬において簡単に盗まれる、こういうことが現実に起こっておるわけでありますけれども、いまINFCEで一番やかましく言っているのは、いわゆるフィジカルプロテクションの場合でありますから、私は非常に重大な問題を含んでおると思います。したがって、こういうような運搬についての警備体制なりあるいはいろいろな措置というものがきちっととられるのかどうか、それがきちっとできるのはいつごろできるのか、この点について伺っておきたいと思います。
  125. 牧村信之

    ○牧村政府委員 まず最初に、先生指摘の放射性物質が盗難に遭ったことは、新聞等にも出ておりまして事実でございます。ただこれは、現在の障害防止法においては、一個当たりがきわめて小さな線源であったために法律の適用除外になっておるものであったわけでございます。これが、非常に小さなものでございますが、七千個という数がまとめられて輸送されておったということで、現在の法律の体系の中では規制外であったということでございます。幸いこのアメリシウムは見つかりまして、何ら飛散することなく回収されたわけでございます。したがいまして、今後の問題として、このような集合した場合にはアイソトープ扱いをするべきであると考えておりまして、必要な措置をこれから早急にとっていくということを考えておるわけでございます。  なお、先生指摘のPPの問題は、主として核物質の問題であろうかとも思いますが、アイソトープにつきましても、規制対象のものについてはできる限り安全という観点から盗難防止策等を考えておりまして、すでに要綱等も定めて所要の措置をとっておるわけでございます。  なお、核物質の防護、特に輸送につきましては、現在、輸送におきましては、原子力事業者等に、あらかじめ警察等へ連絡を行い、万全の措置を講ずるように行政指導をしておるところでございますが、この点につきましても、現在御審議中の基本法の改正の中に警察への届け出を義務づけるというようなことも含めまして、法律体系の整備も図っていきたいというふうに考えておりますし、こういうようなときに不測の事態が起きたときにどのような対策を講ずればいいかということも、当然準備しておかなければならないことでございますので、この点につきましては、現在関係各省間での会議を持っていろいろと検討をしておりますし、原子力委員会の専門部会にもこの問題を検討する部会を設けまして、関係行政機関も含めて幅広く審議を進めておる段階でございます。このような審議の結論を踏まえて的確に対処していきたい、このように考えておる次第でございます。
  126. 貝沼次郎

    貝沼委員 時間が参りましたので、最後に一問だけ伺っておきたいと思います。  それは、ここにもありますように、「海洋開発」という項がございます。この海洋開発の場合はいわゆる科技庁関係のものだけに文章はとどまっておるようでありますけれども、実際この技術を生かしていろいろな仕事をするわけであります。特に私は、いまエネルギーの安全供給ということを考えますと、やはり日本近海の石油の開発あるいは探査、こういったことが非常に重大な問題になってくると思うわけでありますので、その点について通産省の見解を伺って、終わりたいと思います。  なぜこういうことを言うかといいますと、いま石油の備蓄ということが非常にやかましく叫ばれておるわけでありますけれども、石油を買ってきて、たとえば船に積んでおくとか、あるいはタンクをつくっておくとか、いろいろ考えがあるようですけれども、いずれにしても非常に金がかかり、また危険であり、そして時間がかかることであります。それよりは、やはり日本近海の石油の鉱床というものを発見しておくということは、非常に有望な備蓄として考えることができると思いますので、この点についての通産省の見解を承っておきたいと思います。
  127. 鈴木玄八郎

    ○鈴木説明員 消費する石油のほとんどを輸入に頼っているわが国にとりまして、その最も安定的な供給源であるわが国周辺の大陸棚の原油あるいはガスを確保することは、先生指摘のとおり、きわめて重要であると考えております。したがいまして、通産省といたしまして、幾つかの施策を通じて今後大陸棚の原油、ガスの開発を進めてまいりたいと考えております。  まず一つは、全額国庫負担によりまして、地下構造を把握するための基礎調査を実施するということでございます。これによりまして民間の探鉱意欲を増すということを考えているわけでございます。  二番目に、これらの調査に基づきまして企業が実際に探鉱を行います場合には、石油開発公団からその所要資金の八〇%につきまして投資または融資をするということに来年度からすることになっておるところでございます。  それから三番目に、その探鉱の結果、石油、天然ガスが発見された場合、開発をするわけでございますが、その所要資金の七割を限度といたしまして、開発銀行から低利の融資をするということにいたしております。  それから四番目に、今後海底の石油を生産する場合には、ますます深いところへ移っていくわけでございますが、深い海底からの石油を生産するために、海底石油生産システムを、大型プロジェクトの一環といたしまして、来年度から七年間をかけまして技術開発を進めていきたいと考えております。  このような政策を通じまして、日本近海の周辺の大陸棚の開発を一層促進してまいりたいと考えております。
  128. 貝沼次郎

    貝沼委員 終わります。
  129. 岡本富夫

    岡本委員長 貝沼君の質疑は終わりました。  次に、小宮武喜君。
  130. 小宮武喜

    ○小宮委員 昨年の五月二十六日の当委員会で、私は米国の核拡散防止法が成立した場合においてわが国の原子力政策にどういう影響を及ぼすかということで質問したことがございますけれども、いよいよ米議会の上院では圧倒的多数をもって核拡散防止法が可決され、成立は時間の問題となっております。  この法案の内容を見ますと、改めて言うまでもなく、一つは米国が輸出したすべての核燃料の再処理は米国の事前承認を必要とする、二つ目が核非保有国がすべての核燃料を国際原子力機関、IAEAの保障措置のもとに置くことを供給の条件とする、三つ目が非常に大事な問題でありまして、二〇%以上の高濃縮ウランの輸出は大統領の直接承認を必要とする、こういうようになっておるようであります。  そこで、米国の核拡散防止法案が成立した場合に、わが国の核燃料政策にどのような影響を及ぼすのか、この点、改めて科学技術庁、通産省からお答えを願いたい。
  131. 山野正登

    ○山野政府委員 米国の核不拡散法案が成立しました場合にわが国にどのような影響があるかということでございますが、まず再処理問題につきまして、これは東海の再処理工場につきましては、昨年の九月に現行の日米原子力協力協定に基づきます日米間の共同決定ということをいたしまして、それによって現在すでにホット試験に入っておるわけであります。つまり、もともとわが国は米国の実質的な規制と申しますか、事前同意を求めて再処理をするという形になっておったわけでございますので、今般改めて核不拡散法が成立いたしましても、わが国に対する限りにおいては何ら変化はないということであろうかと存じます。  それから、二〇%以上の高濃縮ウランについての規制というのは、これは私の承知する限りにおきましては、昨年下院を通過しました下院の核不拡散法にはそのような条項がございましたが、今回上院を通過しました核不拡散法にはそれに該当する条項はどうも見当たらないようでございます。  ただ、昨年の十一月に、この核不拡散法とは別途に、米国が二〇%以上の高濃縮ウランの輸出の審査基準というものを具体的に関係国に示しておりますので、これは核不拡散法とは関係なく、もちろん別の問題としてあるわけでございます。  それから、新しく規制の対象にしようとしておりますプルトニウムと濃縮ウランの貯蔵の問題あるいはウランの濃縮の問題といったふうなことにつきましては、これはこの核不拡散法が成立を見ました後、改めて日本を含めて関係国と協定の改定作業に入るものと思われますので、わが国としましては、米国のこのような国際的な核不拡散の基本方針というものは十分理解できるわけでございますが、これによってわが国の原子力平和利用というものが損なわれないように配意しながらこれに応じていくというふうなことになろうかと考えております。
  132. 武田康

    ○武田政府委員 お答えいたします。  アメリカの議会での審議の状況は、先生指摘のとおりでございますし、また原子力局長お話にあったとおりでございます。内容についてもそうでございますが、私どもといたしましては、エネルギーの安定供給を確保する、こういう見地から、核不拡散という問題にも万全を期しながら、ウラン資源の確保なり、あるいは濃縮、再処理等の核燃料サイクルの確立、こういうものをしていくことが必要と考えておりまして、これは昨年の日本とアメリカとの交渉におきましても、アメリカと十分話し合いをし、そして日本立場を理解してもらいながら答えを出してきたわけでございますが、今後、先生指摘の核不拡散法、これが法律としてアメリカの中で確定し、でき上がった段階以降、将来とも、先ほど申し上げましたような、私ども日本立場が満足できるようにアメリカとも十分な協議を行い、緊密な協議を行っていきたいと考えている次第でございます。
  133. 小宮武喜

    ○小宮委員 通産省も科技庁も余り影響はないというような判断のようですが、いずれにしましても、核拡散防止法が成立した、そのことによって直接出てくるかどうかはわかりませんけれども、昨年九月に日米共同決定で、二年間の期限つきでスタートした東海村再処理工場は、一九七九年、来年の九月以降は現行のプルトニウムの単体抽出方式で再処理を続けることが可能かどうかという問題に私は思いをいたすわけです。もちろんそれはいま、この核燃料サイクル評価でいろいろ検討がされておりますけれども、それでは、この再処理とプルトニウムの取り扱いを担当している第四グループの作業状況、討議状況はどういうようになっておるのか、わが国は共同議長国にもなっておりますので、ひとつ外務省からお答えを願いたいと思う。
  134. 太田博

    ○太田説明員 お答え申し上げます。  ただいま先生指摘の、INFCEにおける再処理問題を扱います第四作業部会の進捗状況ということでございますけれども、これは先生指摘のように、わが国がイギリスとともに共同議長国ということで、この作業部会の運営について非常に大きな責任を持っておりますので、当初からわが国といたしまして、もちろんINFCE全体をきわめて重視いたしておりますけれども、その中で特に第四作業部会につきましては力を入れまして、日本も全力を挙げてこれに取り組んでいる次第でございます。  それで、具体的には、これまでに、昨年末ロンドンにおきまして日本と英国が準備いたしました作業文書をもとにいたしまして、これから二年間の第四作業部会の仕事の運営の仕方につきまして第一回の会合を開催いたしまして、そこで今後の仕事の段取りについて作業部会としての合意を見るに至りました。  そこで、実は第四作業部会のもとに二つのサブグループ、小作業部会を設けるということが決まりまして、一つは再処理についての作業グループ、もう一つはプルトニウムの取り扱いと、それからプルトニウムのリサイクルの問題、この二つのサブグループの設置が決まりまして、これをどういうぐあいに運営していくかにつきまして、本年早々日本と英国が中心になりまして再び会合を開きまして、今後の作業の段取りを固めた次第でございます。  それで、直ちに実質的な作業に入っておりまして、わが国は特に第二サブグループ、プルトニウムの利用及びプルトニウムのリサイクルの問題につきましては、日英共同議長国ではございますが、特に日本が責任を持ってやるということで、わが国が中心になりましてこれから実質的な作業に入る、そういう段階でございます。  それで、先ほど申しましたように、わが国はこの第四作業部会を特に重視しておりますので、次の全体の作業部会の会合、これは五月に予定されておりますけれども、これはぜひ東京でやりたいということで、作業部会全体の賛同を得まして、来る五月にはそのサブグループの作業を踏まえまして、第二回目の第四作業部会の会合が東京で行われることになっております。     〔委員長退席、大石委員長代理着席〕
  135. 小宮武喜

    ○小宮委員 この東海村の再処理問題は、いまはいわば執行猶予の状態でありまして、来年九月以降の取り扱いはサイクル評価の結論待ちということになっておるわけです。このサイクル評価に臨むに当たって、わが国の基本方針としては単体抽出方式を基本方針として臨んでいるわけですけれども、私が心配するのは、予定どおり二年以内に果たして結論が出るかどうか。それで、いまの討議状況もわかりましたけれども、こういう会議の性格からいって、これは右か左かというものではなくて、これは採決で決めるとかなんとかという問題ではなくて、仮に結論が出たとしても、たとえばそれが二本立ての結論であったり、あるいは玉虫色になる可能性も私は強いと思うのです。その場合、この現行の共同決定では、自動延長の規定がございませんから、一九七九年の九月になれば、今度は、もしその玉虫色か二本立ての結論が出たとしても、それをめぐってさらに日本とアメリカとの間にまたそこで交渉開始をするということになるのは明らかだと思う。だから、日本が期待するように単体抽出でよろしいという結論が出れば別ですけれども、いまのような各国の状況から見た場合に、その可能性は非常に少ないのではないか、むしろ玉虫色か二本立てかということになった場合に、私はやはり、先ほど申し上げましたように、また日米でこの問題を協議しなければならぬというもとの状態に戻ってくるのではないかということが予想されるわけです。そうなった場合、東海村の再処理工場は来年九月以降は運転停止だとか、あるいは凍結とかいうような事態が起きないとも限らないと思うのです。皆さん方は、そう言うと、いや既定方針どおり何とか努力をいたしますというような逃げの答弁をされるかもしれませんが、やはりこの問題はその時点になってからあわてたんでは大変なことになるのですよ。だから、私はそういう意味で、そういう事態が来るのではないかということを恐れておるので、いまのサイクル評価の結論の見通しについてどういう考え方をしておるのか、その見通しに自信があるのかどうか、その点、科学技術庁もですが、外務省あたりも、もし何かそういった所見でもあれば、ひとつお聞かせ願いたいと思うのです。
  136. 山野正登

    ○山野政府委員 まず、東海村再処理工場の二年後の運転につきましては、先生指摘のように、INFCEの結果を見、かつまた混合抽出法についての実験等の結果を見て、混合抽出法というものが技術的に可能でありかつ効果的であるということについて両国が合意した場合に限って混合抽出法に切りかえましょうということになっておるわけでございまして、この「INFCEの結果に照らして」という言葉でございますが、おっしゃいますように、INFCEの結論というものが二年以内に必ず右か左かはっきり決着がつくといったふうな性格のものでないということは御指摘のとおりだと思いますが、しかしながらその審議経過、検討経過によりまして、おのずから国際的な合意といったふうなものは形成されていくものであろうというふうに私ども考えておりまするし、また先般の日米交渉におきまして、きわめて厳しい交渉であったにもかかわらず、結局は相互の十分な理解を得ました上で決着を見たといったふうな貴重な経験もあるわけでありますから、このINFCEの最終結論を得るまでもなく、できるだけ前広に、このINFCEの検討経過もにらみながら日米間の交渉を始めまして、三年目以降の運転をできるだけ穴のあかないように円滑に推移させていきたいというふうに考えております。
  137. 太田博

    ○太田説明員 補足させていただきます。  ただいま山野原子力局長の御説明のとおりであろうかと思います。先生指摘のとおり、このINFCE、二年間で結論が出るかどうかについてはわれわれ自身も実ははっきりしたことがわかりませんけれども、できるだけ一生懸命、わが国の原子力開発に障害を来さないような方向に話がいくように努めているわけでございまして、たとえば評価をいたします場合にも、単に核拡散上の危険というようなことを余り大きく取り上げることをせずに、それとバランスをとるように、たとえばエネルギーの安全保障、こういう観点からの評価というのもぜひするべきであるというのがわが国の立場でございます。  それから、二年たって凍結の可能性もあるというお話でございますが、ただいまの山野局長お話のように、わが国としては、二年たってからあわててどうこうということがないように、できるだけ早目早目にアメリカと協議をいたしまして、アメリカがわが国の立場を十分理解するように努めるとともに、INFCEでわが国の主張がほかの主要国の理解を得られるようにぜひ努めたいというふうに考えております。
  138. 小宮武喜

    ○小宮委員 いまの局長の答弁で、両国が合意した場合にのみ混合抽出法に切りかえるという問題ですけれども、私は日米共同決定のあの経過を見て、またあの決定の内容を見て、これも以前当委員会で私は指摘しましたけれども日本はあれでわが国の主張が通ったというふうに考えられておるかもしれませんが、逆にアメリカはあそこの中で基本方針はあくまでも貫いているわけですよ。それだから、いまただ単にそういうことを言ってみても、東海村の再処理は現状のままで再延長が簡単にできるかどうかということについて、私は非常に疑問を持っておるわけです。そういうなまやさしいものではないぞということを腹の中に入れておいていただかぬと——結論が出ない、出ないからそれまでお互いに合意した場合にのみ混合抽出法に切りかえるということになっておるからといっても、共同決定は正式には自動延長じゃないわけですよ。そこでまた話し合わなければいかぬわけです。そこでまた昨年と同じような立場で交渉が行われるということになるのではないかということを私は懸念しておるわけですが、私の心配が杞憂であれば幸いですよ。いままでの科学技術庁のこの問題に取り組む姿勢は、われわれがいままで何回聞いても、何だか楽観ぎみな、厳しさというものをどうも持っていないような気がします。そういう意味でこれは非常に大事な問題だし、再延長を認めるかどうかという問題はその時点でまた話し合いをするわけですよ。合意した場合にのみ混合抽出に切りかえるとしても、それはまた二年たったら、一九七九年の九月に話し合うわけですよ。  そこで私は、いまの、アメリカで成立した核拡散防止法というものがいかなる作用を及ぼすかという問題も非常に奥深く考えて見ておるわけです。もしそういうことで安易に、話し合いをするんだから話し合いがまとまらなければいまのままで、単体抽出の形で二年も三年もやっていけるんだというような単純な、短絡的な見方では私は非常に危険だと思う。もしその時点で混合抽出へ転換ということになれば、少くとも五年かかるわけでしょう。本格的に改造をやるとすれば十年も十五年もかかるわけでしょう。そうしたら日本の再処理工場はどうなるのかということを考えると、やはり早目対策を立てるべきじゃないのか。だから、そういったことをサイクル評価の中で——ぎりぎり二年間たって結論が出た、それからまた交渉を始めた、いろんな話し合いで妥協点が見出せるかもしれませんけれども、そうなった場合に、これを切りかえるのに日本の再処理問題はまた途中で停止されるわけですよ。これは非常に支障を来すわけです。私が言いたいのは、この問題については日本が既定方針どおり進んでいく、いわゆる単体抽出方式でやれるかどうかということで、もっと原子力外交を積極的に進めるとか、あるいは対米交渉をやるとか、アメリカに対しての説得等、こういうものをやはり早目にやるべきではないのか。ぎりぎりのところまで来てからそんなことを始めたって問に合いませんよ。その場合に日本の原子力産業はどうなるのかということを言いたいのです。その点について、もう一度科学技術庁外務省からひとつお聞かせ願いたい。
  139. 山野正登

    ○山野政府委員 ただいま再処理の技術的諸問題につきましてはINFCEで検討中でございますから、余り予断めいたことを申し上げるのは適当でないかもしれませんが、現在の日米共同決定というものが自動延長でないということは御指摘のとおりでございますし、またこの次の交渉がきわめて円満にかつスムーズにいくものとも限らない。昨年同様きわめて厳しい場面もあり得るということも御説のとおりでございまして、私どもは決して今後の日米交渉というものを楽観しておるわけではなくて、御指摘のように、できるだけ前広にわが方の計画にそごを来さないように十分配慮してまいりたいというふうには考えております。  一点、御参考までに申し上げておきますが、今般の上院を通過しました再処理法案の中を見てみますと、米側が再処理を事前承認いたします場合の判断基準といたしまして、再処理をする場合に非核兵器国が転用物資を核爆発装置につくり変えるのに対して、十分事前にタイムリーな警告を米国が与えることを保障するような条件下で行われるか否かというのを重要な判断基準としておるようでございまして、このタイムリーな警告を発し得るかどうかという点につきましては、御指摘のように、再処理の技術的な対応といったふうなものももちろんその一つの要素ではございますけれども、相手国の保障措置の状況でございますとか、あるいは原子力の平和利用についての基本的な考え方といったふうなものも十分判断の中に入れられまして、幅広い範囲で総合判断されるべきものというふうに考えておりますので、もちろん再処理の技術的な対応も重要問題ではございますが、それ以外の問題も同時に考慮に入れまして、米側と鋭意折衝したいというふうに考えております。
  140. 太田博

    ○太田説明員 補足させていただきます。  日米交渉の今後について余り楽観すべきでないという先生の御指摘は、まことにそのとおりだと思います。昨年、日米間では合意が成立いたしましたけれども、アメリカが原子力の平和利用を通ずる核の拡散の危険性、これについてきわめて厳しい見方をしているということは、依然として少しも変わってないというふうに考えられます。  わが国は、昨年の交渉の過程で、日本は唯一の被爆国であるし、平和憲法もあり、非核三原則もあって、日本が核の軍事転用をする危険は全くないということはるるアメリカに説明したわけでございますけれども、アメリカの考え方は、単に日本だけではなくて、国際的に核の拡散を防止するために日本ももっと貢献してほしいというような感じでございました。したがいまして、INFCEでわが国のエネルギー上の立場をあるいは原子力政策上の立場を貫くと同時に、アメリカの核の拡散に対する強い懸念を念頭に置きまして、日本として国際的にどういうふうにしてこの問題に貢献できるか、そういう点についてもやはり真剣に考え、かつ関係国と協議していかなければならないのではないか、そういうふうに考えている次第でございます。
  141. 小宮武喜

    ○小宮委員 私、非常に最悪の場合を考えて物を言っておるわけです。それくらいわが国としては考えておってちょうどいいのではないか、私はそういう立場から物を言っておるわけです。だから、余り心配しなくてもいいというような考えが腹の中にあるかもしれませんが、私はやはりそう相手は甘くありませんぞと。たとえば岡山県の人形峠の濃縮ウラン自主開発の問題についても、これは日米原子力協定の対象になっていない。しかし、私はこの問題も当委員会で指摘したことがあるのです。これがいま実験段階だからいいようなものの、やはりこれが本格的に操業に入った場合に、必ずアメリカから文句が出てくるぞということを言ったわけです。現にもうそういった徴候が出てきたじゃありませんか。いわゆる多国間利用の問題だとか、いろんな話がもうすでにアメリカの方から出ておりますよ。だから、そういう意味では、アメリカの核政策そのものが、われわれが考えておるような単純なものではありませんよということを考えた場合に、やはり私はそういった万全の体制を整えることが必要だということを常に強調しておるわけです。  たとえば電力業界の三千二百トンの使用済み燃料の海外委託再処理の問題にしても、これが原子力協定の十条A項三号の規定でやっぱり米国の事前同意が必要になっているわけですね。そうすると、これらの問題にしたって、たとえば東海村の再処理工場の継続運転あたりが今後焦点になるわけだけれども、それが合意できないような状態の中で電力業界の海外委託処理の問題だけを切り離して認めるだろうかという心配もあるわけだ。そうなれば、これはまた大変なことになるわけですね。この点は、科学技術庁、どうですか。
  142. 山野正登

    ○山野政府委員 英仏への再処理委託につきましては、現在すでに契約済みのものもあるわけでございますし、またこれに加えまして、昨年の九月でございましたか、フランスに委託契約をし、また本年三月くらいにはイギリスに委託契約をしようとしているわけでございます。これらの委託契約に基づきまして使用済み燃料を向こうに送り出します際には米国の事前同意が要るわけでございまして、昨年の日米交渉の際にこの話も、交渉ではございませんが、日本の実情をよく先方に理解してもらう意味で十分私どもも説明を尽くしたのでございますが、そのときの米側の対応ぶりは、一括してこれを承認するわけにはまいらないけれども、ケース・バイ・ケース、必要に応じて認めていく方針であるということを言っておるわけでございまして、すべてだめだという態度ではない。ただ、一括処理はできないが、ケース・バイ・ケースにシッピングごとにこれを処理していこうという基本的な姿勢でございまして、必要不可欠なものまで拒否するという態度ではないというふうに考えております。もちろん、わが国の必要性につきましては、先生指摘のように、十分先方の理解を得る必要はあろうかと存じております。
  143. 小宮武喜

    ○小宮委員 たとえば政府がいま国会へ提出しておるいわゆる第二再処理法案の問題にしても、これは年間一千五百トンの再処理能力を持つものですけれども、これも日本の場合のいまの法律案では単体抽出になっているわけですが、これは私はアメリカは首を縦に振るだろうかという心配もあるわけです。というのは、先ごろ来日したアメリカの国務次官代理も、日本の第二再処理工場は混合抽出方式にすべきであるということを述べてもいるわけです。そういうことを考えた場合、いまの再処理法案だって、単体抽出で法案が仮に通ったとしても、これがそのまま単体抽出で今後将来にわたって認められるかどうかという問題も私はあると思うのですよ。この点、局長、どうですか。
  144. 山野正登

    ○山野政府委員 第二再処理工場につきましては、これは使用済み燃料再処理の需給関係から申し上げますと、大体一九九〇年ごろ運転開始を目標にいたしておるものでございまして、これを考えますと、今後五年くらいの事前準備をいたしまして、その後建設に入るといったふうな運びになろうかと思います。つまりこれからまだ数年間のリードタイムがあるわけでございますので、その間の技術進歩等も当然考慮に入れる必要があるわけでございますので、第二再処理工場の運転方式というものを現在単体の抽出方式というふうに決めておるわけでは決してないわけでございまして、これは今後の技術進展に応じまして選定していくべき問題であろうかと考えております。  ただ、そのように運転方式自体は未定でございましても、必要な会社の設立でございますとか、あるいは候補地点の選定といったふうな諸作業は進めていく必要があるわけでございまして、そういう意味で、今後、技術進歩等も勘案しながら、若干の修正等はあり得るとは存じますが、基本的な問題につきましては、これから準備を進めていかないと間に合わないといったふうな問題であるということを御理解いただきたいと存じます。
  145. 小宮武喜

    ○小宮委員 アメリカの核燃料政策というのは、あくまで単体抽出でなくて混合抽出だということにアメリカの基本姿勢があると私は思うのですよ。そうなれば、いままでの交渉のいろいろな過程では、再処理問題にしても、日本の顔も立てなければいかぬし、急にそう言ってもなかなかむずかしいという問題で、これは二年間の期間を置いたわけですね。その二年間の期間というのは、アメリカの言う一定期間を置くという期間に該当するんだという見方もできるわけです。だから、日本として単体抽出方式でやっていけるかどうか、これをいつまでも続けるというのは私は非常にむずかしいというような気がしてなりません。大体、日本は何でもアメリカの言うことは聞くべきだというような姿勢が見受けられるじゃありませんか、日米通商交渉にしたって、すべてが。そういう中で、日本がどこまで単体抽出方式を貫き通し得るかというのは私は疑問だ。いずれの時期かには、やはり混合抽出方式に切りかえざるを得ない時期に来るのではないかということを非常に私は心配しているわけですが、そういう立場から、日本も東海村の施設内においてOTLを使って混合抽出だとかあるいは混合貯蔵、混合処理の研究を進めておるようですが、どの程度まで実験研究が進んでおるのか、その点御説明を願いたい。
  146. 山野正登

    ○山野政府委員 まず、混合抽出法に将来切りかえざるを得なくなるのじゃないかという点でございますが、私どもは永久に単体抽出法でいきたいと考えておるわけでは決してございませんで、将来、混合抽出されたものから直ちに混合酸化物をつくります共沈法といったふうな技術もこの混合抽出法の技術にあわせまして確立された段階では、これが技術的、経済的にも利用し得るということになるわけでございますので、その時点になれば当然混合抽出法でももちろん差し支えないわけでございます。  そういう観点から、現在、動燃事業団を中心にいたしまして混合抽出法の研究を進めておるのでございますが、これまでに行っておりますのは、動燃事業団の東海事業所の小型の抽出機を用いまして予備的な研究をいたしております。これはまだ金額にいたしましてたかだか四百万円程度のごく基礎的な実験でございますが、これに続きまして今年の二月下旬、今月の下旬くらいからいよいよOTLといいます実験装置を使いまして本格的な抽出法の実験に入るわけでございますが、今後五十三年度におきまして大体二千八百万円程度の予算を投入しまして必要な技術開発をする予定でおります。  なお、先ほどちょっと触れました、この混合抽出法に付帯いたします共沈法の研究開発もあわせて進める予定にいたしておりまして、これには、政府予算原案が認められました暁には、概算十億円ばかりのものを投入してまいりたいと考えております。
  147. 小宮武喜

    ○小宮委員 先ほどのウラン235の二〇%以上の高濃縮ウランの問題ですが、核防法にはそれがないというような話でございましたけれども、しかし別の規定であるという話もありました。そういう立場から、別の規定であろうと、やはり二〇%以上の高濃縮ウランの輸出については大統領の特別承認ということになると思うのです。そうなりますと、私はこれも非常に心配するのですが、わが国には二千三百トン以上の濃縮ウランが貯蔵されているわけですが、この供給制限の対象となる二〇%以上の高濃縮ウランということになれば、約七百キログラムくらい貯蔵されておるということを聞いております。今後米国から供給を受ける高濃縮ウランだけではなくて、いま貯蔵しておる高濃縮ウランも法の制約とかあるいは制限は全然受けなくて、今後も高濃縮のウランは、二〇%以上であろうと自由に輸入できるということですか。
  148. 山野正登

    ○山野政府委員 ただいまわが国がすでに保有いたしております二〇%以上の高濃縮ウランについては何ら規制はないわけでございまして、今後新しく米国から輸入いたします高濃縮ウランについての輸出規制の問題でございます。
  149. 小宮武喜

    ○小宮委員 そうであれば、結局、アメリカとしては、二〇%以上の高濃縮ウランは極力二〇%以下のウランに切りかえなさい、それでもなお高濃縮ウランを日本が使いたければ、三十項目以上の新しい米国の審査基準に合格し、かつ厳しい保障措置の適用が必要ということのようであります。したがって、そうなれば、これは先ほどからの質問にもありましたけれども日本原子力研究所の研究炉のJRR2、JRR4、材料実験炉のJMTRの三基、この既設の原子炉が制限を受けるばかりか、これも京都大学が建設中の第二号研究炉一基も制約、制限を受けることになります。それでも、この既設の炉は手持ち貯蔵があるから一時的にはしのげたとしても、京都大学の二号炉の場合は運転が非常にむずかしくなってくるのではないか。これが完成後であれ、またこの炉体の改造を強いられるという問題になってくる。ということになれば、時間と国費の浪費になる、自主研究もなかなかできないようになってくるという問題があります。だから、核不拡散と原子力平和利用の両立は可能であるというわが国の基本方針でやっておりますけれども、今後のいろいろな動きを見てまいりますと、非常にむずかしくなってくると思います。  しかし、それにしても、やはり日本はあくまで核不拡散と平和利用とは両立するんだという問題について、アメリカあたりに誤解と、それで不当な制限を受けないように、十分理解と協力を求めて保証を取りつけるように努力すべきだと私は思うけれども、そこで、外務省、科技庁、通産省、それぞれの立場でひとつ御答弁を願いたい。
  150. 山野正登

    ○山野政府委員 この米国の高濃縮ウランの輸出政策につきましては、基本的には国際的な核不拡散の強化という理念に基づくものでございますので、わが国もその基本理念には別に反対ではない、むしろ賛成しておるわけでございます。そこで、協力するだけの点は協力してまいる立場もあるわけでございますが、今後本件に対する私どもの対応としましては、現在高濃縮ウランを使っております研究炉等につきまして引き続き低濃縮ウランに切りかえることはできないかどうかという点を精査いたしまして、これが技術的にも経済的にも不可能であるということが判明しました暁には、その理由を十分に米側に説明いたしまして、その理解を得るというふうにしたいと存じます。  米側もこの輸出申請を評価するに際しましては、先ほど米側からわが方に参りました通報によりますと、この判断基準としまして、高濃縮ウラン輸出許可申請のための情報の提供ということを要求するということになっておりますが、その目的が二つございまして、一つは米国のエネルギー省の濃縮能力との整合を図るという観点、第二が申請案件につきまして高濃縮ウランが必要であるということにつきまして経済的、技術的に評価をするという二つの観点、つまり供給を確保しようという観点と核不拡散を確保しようという観点、両方の立場からの評価がうたってあるわけでございまして、ただ、米側は高濃縮ウランの輸出を抑えればよろしいという単純な立場ではないというふうに考えられますので、先生指摘のとおり、わが方の必要不可欠なものにつきましては私どもも説明を尽くしますし、また米側も十分理解してくれるものと思っております。
  151. 太田博

    ○太田説明員 ただいま先生指摘のように、核の拡散の防止とそれから原子力の平和利用、これが両立できるという点について日本はアメリカの理解と協力を得るように努めるべきであるということは、御指摘のとおりだと思います。実はこの両立の問題がまさにINFCE、国際核燃料評価の作業の命題でございまして、われわれといたしましても、この核の不拡散と原子力の平和利用の推進、これは両立できるし、また両立させなければならない問題であるかというふうに考えております。  そういたしますと、このINFCEというのは八つの作業部会できわめて高度に技術的な検討はいたしますけれども、その目的というのは、いまも先生が御指摘のようなこの二つの命題をいかに両立させるかというきわめて、言ってみれば高度に政治的な問題でもございますので、われわれといたしましても、INFCEをそういうふうに認識いたしまして、できるだけの努力をしたいというふうに考えております。
  152. 小宮武喜

    ○小宮委員 いまの説明で、二〇%以上の高濃縮ウランを二〇%以下に切りかえることが技術的に可能かどうか、また経済的にそれがどうかという問題が、見きわめというか開発というか、そういう問題を解決すれば切りかえてもいいというような話があったわけですけれども、そういう立場からこの方の研究もやはり十分進めていただかないと、これは既設炉のJRR4は原子力船「むつ」の舶用炉試験設備であって、またJMTRは原子力発電所などの核燃料や炉材を照射試験する共同施設でもあるわけですね。そうしますと、手持ち量である程度つないだとしても、後が続かないということになれば、早晩これも運転停止だとか、やはり問題になってくるし、そうなれば原子力発電所や原子力船の安全研究や国内原子力産業は壊滅的な打撃をこうむることになってまいります。そういう立場から、先ほどからしつこく、強力な対米交渉と説得を進めることが急務であるということを言っておるわけです。  さらに、わが国は新型転換炉や高速増殖炉、核融合などの自主開発を進めておりますね。それには強烈な中性子の照射に耐え得る炉材が要求されるわけですから、そのためにも高濃縮ウランを燃料とする材料試験炉が不可欠であるし、また高濃縮ウランの供給が今後だめになるということになったり、あるいはアメリカから厳しい実行不可能なような条件がついたりするとこれは大変なことになるわけです。だから、そのことも十分研究し、考えていただいて、この問題には今後誤りのないような対応策を考えていただかなければならぬと思うのです。  そこで、そうなると、わが国の、たとえば岡山県の人形峠の濃縮の問題、これなら原子力協定に関係なしにどんどんやれるんじゃないかという気もしますけれども、これも先ほど申し上げるように、もうすでにこれにもアメリカは目をつけて、今後規模が拡大をする場合はいわゆる多国間利用として、かつ十分な保障措置を講ずる必要があるということで、二国間交渉を行いたいと申し入れる方針であるということも聞き及んでおるわけでございますが、この点について、申し入れはまだないものと思われますけれども、早晩この問題もアメリカと日本の二国間交渉の対象になることは時期的に必至になってくるという場合に、わが国のとる態度としてはどうするのか。
  153. 山野正登

    ○山野政府委員 まず第一点の高濃縮ウランに対する対応につきましては、私、先生と全く同意見でございます。  それから、第二点の多国間によるウラン濃縮の問題でございますが、これは米側がわが方に正式にもちろん申し入れた事実もございませんし、非公式にわが方にそのような趣旨でアプローチしてきたこともございません。しかしながら、多国間で濃縮工場をつくるということにつきましては、まさに現在核燃料サイクル評価におきまして検討中の問題でございまして、私どもも自主工場、自立工場の必要性というのはかねて申しておるところでございますが、この国際的な協力によります濃縮工場というものの必要性というものを否定しておる立場では決してないわけでございまして、自立工場にあわせまして、別途に国際的な協力事業にどのように対応していくか、参加していくかということにつきましては、INFCEの検討の結果も参考にしながら過ちなきを期したいというふうに考えております。
  154. 小宮武喜

    ○小宮委員 そこで、サイクル評価会議も今後実質的な討議に入るものと考えられますけれども、アメリカではサイクル評価に備えて調査機関やシンクタンクを駆使していろいろな対策を立てておるようです。ところが、わが国では、原子力委員会と外務省がそれぞれサイクル評価対策協議会、対策方針検討会を設けてはいるものの、外部の学者あるいは専門家は片手間でやっておるのではないかということが言われているわけです。したがって、わが国も原子力外交の基本政策の確立と推進体制の確立が急務でありますから、原子力外交の体制整備を、学者専門家方々もできるだけ常勤に——これは相手方にいろいろ仕事の都合もありましょうから、常勤に近いような形で、サイクル評価会議に臨むための体制を整えるべきだということを考えるわけですが、これは外務省科学技術庁に御答弁願います。
  155. 山野正登

    ○山野政府委員 INFCEに対する国内の体制でございますが、ただいま科学技術庁外務省、通産省の三省庁が主として所管官庁でございますが、協力体制を大変密にしてやっておる状況でございます。  ただ、INFCEというのは非常に専門的、技術的な問題をたくさん扱いますので、外部の専門家の知恵というものも借りなければならないわけでございますので、原子力委員会の中にINFCEの対策協議会というものを設けまして、八つの研究会をその下に設け、広く外部の専門家にも集まっていただいていろいろ検討を行っておるところでございます。  おっしゃいますように、これは外部からの協力でございまして、もちろん非常勤でございますけれども、二年間の検討ということでございますので、このためだけに常勤職員にするというわけにもまいらぬ問題でございますが、非常勤かつパートタイムではございますけれども、十分に機能を果たしていただけるように万全の措置を講じたいというふうに考えております。
  156. 太田博

    ○太田説明員 補足させていただきます。  先ほど御説明を申し上げましたように、INFCEにおける検討がいよいよ実質的な段階に入ってまいってきております。したがいまして、いままでも相当時間と手間がかかりましたけれども、これからはいままで以上に時間と人手、労力を投入しなければならないことになるわけでございまして、いままでもわれわれはこのINFCEの重要性にかんがみまして最善を尽くしてきたつもりでございますけれども、今後一層国内の体制強化に努めて、わが国としてINFCEに十分臨めるような体制でまいりたい、そういうふうに考えております。
  157. 小宮武喜

    ○小宮委員 政府は、経常収支の黒字減らし対策として、アメリカから大量の濃縮ウランの購入を計画して第一次交渉が行われたはずでありますが、その交渉の経過について簡単に御報告願いたいと思います。
  158. 武田康

    ○武田政府委員 先生指摘のアメリカからの濃縮ウランの購入につきましては、昨年でございますけれども関係官庁の担当者を派遣した実績がございます。御指摘のように、対外経済対策の具体化のための諸施策の一環でございますけれども、ウラン鉱石、それから濃縮液も含みます濃縮ウランの購入について検討しておりまして、現在外交ルートを通じて接触を行っておるところでございます。その実現のためにはアメリカ政府の意向も重要なファクターでございまして、現在のところ、いまだ具体的には結論を得ていないという段階でございます。
  159. 小宮武喜

    ○小宮委員 この交渉においてアメリカ側が出した条件というのは、日本の各電力会社が米国製の原子炉や原子力機器をパッケージしてウランの売却をやりたい。したがって濃縮ウランだけを切り離しては売却しない。だから濃縮ウランも売るけれども、それと同時に日本の各電力会社はアメリカの原子炉も買いなさい、原子力機器も買いなさい、ということが条件に出されておるというような話も聞くわけです。そうなりますと、これは政府の中にも、一部はこの際日本が譲歩してもやむを得ないのではないか——やむを得ないということは、アメリカ製の原子炉を買うこともやむを得ないのではないかということに通じてくるわけです。もしそういうことになった場合は、わが国の原子力産業は壊滅するような状態になることは明らかですが、この問題について日本としてどういう態度で次の第二次交渉に臨むのか、その点をひとつ明らかにしていただかぬと、これは大きな問題ですから、ひとつこの点を明らかにしてもらいたい。
  160. 武田康

    ○武田政府委員 濃縮ウランの購入につきまして、先ほど申し上げましたように、外交ルートを通じまして接触を行っているところでございますけれども、その内容とか見通しにつきましてまだ申し上げる段階ではございません。  なお、先ほど機器の問題が出ましたけれども、これは別途通商局及び機情局の方からお答えさせていただきたいと思います。
  161. 小宮武喜

    ○小宮委員 非常に歯切れの悪い答弁をしておるわけですけれども、これは非常に大きな問題なのです。だから、私の意見を言わしてもらえば、やはりパッケージで濃縮ウランの購入と原子炉を購入する問題、原子力機器を購入する問題については絶対のむべきじゃないということを、私の意見として強く申し上げておきます。  したがって、米国で核拡散防止法が成立すれば、当然日本との原子力協定の改定交渉が行われるのではないかというように私は考えますけれども、これはわが国の核燃料サイクル路線の選択にもつながる大きな問題でございますから、その意味日本としての基本姿勢をひとつ明らかにして臨むべきだ、私はこういうふうに考えます。これからの日米原子力協定の交渉というのは、日本の核燃料サイクル路線の選択を迫られる交渉になるというふうに私は考えますので、その点について、どうでしょうか、最後にひとつ締めくくりで、大臣から、どういう態度で日本は臨むのか、どういう姿勢を堅持するのか、その点一言御答弁を願って、私の質問を終わりたいと思います。
  162. 熊谷太三郎

    熊谷国務大臣 先ほどからいろいろお話を承っておりまして、先生のいろいろ御心配になる点は決して御心配過ぎる問題ではなくして、十分に御心配のような点をわれわれが前もっていろいろ処理してまいらねばならぬと考えているわけであります。  また、原子力平和利用の問題につきましては、大体、技術もいままでのところ技術導入でございまして、自主的な技術が非常におくれている。それに加えまして、この原料が日本にはほとんどないという両様の面から、きわめて不利な態勢にあるわけでございます。したがって、技術の面では一刻も早くこの自主技術を確立していかなければなりませんし、また原料の入手その他の問題につきましては、今後非常に厳しい国際情勢、ことにアメリカを中心としますそういう情勢に対応してまいらねばなりませんので、この上とも決意を新たにいたしまして、そういう点を十分ひとつそのつもりで推進してまいりたい、このように考えているわけでございます。
  163. 小宮武喜

    ○小宮委員 質問を終わります。
  164. 大石千八

    ○大石委員長代理 次に、瀬崎博義君。
  165. 瀬崎博義

    ○瀬崎委員 私は、まず最初に再処理工場の問題について質問をしたいと思います。  昨年の臨時国会では、例の原子炉等規制法の改正案の中で、再処理を民間に拡大する部分は切り離されて修正されているわけでありますが、その後また政府は直ちにこれを推進しようとしてきているわけです。一方、わが国最初の東海の再処理工場は、昨年九月に始めた原研のJPDR、研究用の原子炉の使用済み核燃料を使っての試運転を十二月で一応終わったのですかね、ことし二月になっていよいよ商業用の原子力発電所の使用済み核燃料を使っての試運転に入っているわけですが、その途端にまた人身被曝事故を起こしているわけであります。  まず、お尋ねしておきたいのは、その原研のJPDRの使用済み核燃料と、それから東電福島の原子力発電所から搬入された使用済み核燃料の同一量を比較した場合、そこに発生しているフィッションプロダクト、核分裂生成物質ですね、平たく言えば死の灰でありますが、この倍率はどのくらいになっているわけですか。
  166. 牧村信之

    ○牧村政府委員 ただいまの使用済み燃料の中に入っておる核分裂生成物質という御質問でございますが、ちょっと手元に資料ございませんが、燃焼度で申し上げさせていただきたいと思います。  今回使用いたします福島のBWRの燃料は、燃焼度にいたしまして六千六百から一万二百、平均して九千四百でございます。初期濃縮度は二%程度のもの、冷却日数は千七百五十日程度のものでございます。その中に約二十キロくらいのプルトニウムが含まれておるというものでございます。JPDRの燃焼度はたしか二千程度のものであったかと思っております。
  167. 瀬崎博義

    ○瀬崎委員 これはもう専門家の方だったらわかっていると思うのですが、概念的に言って、大体どのくらいの倍数の核分裂生成物質が発生していると見たらいいのですか。オーダーだけでも言っていただきたいと思います。
  168. 牧村信之

    ○牧村政府委員 ただいまJPDRの平均燃焼度二千と申しましたが、平均して三千八百九十くらいでございます。  それで先生、核分裂生成物質の量はという御質問でございますが、これは冷却期間等にもよりまして非常に異なるわけでございますので、計算すればすぐ出るものでございますが、いまちょっと手元にないので……。
  169. 瀬崎博義

    ○瀬崎委員 それじゃ、質問している間にわかったら答えてください。  大体燃焼度で約二倍半ですね。——わかりましたか。
  170. 牧村信之

    ○牧村政府委員 お答え申し上げます。  JPDRが五掛ける十の四乗キュリー、それから福島が二掛ける十の五乗キュリー・パー・〇・七トンでございますので、約五倍と御判断いただけたらと思います。しかし、先ほども申し上げましたように、冷却期間によって非常に異なるものでございます。
  171. 瀬崎博義

    ○瀬崎委員 研究用の原子炉から出てくる使用済み核燃料に比べれば、商業用に使われている原子炉から出てくる使用済み核燃料は、それは比較にならない高いレベルの死の灰を保有するわけですね。  私が聞いているのでは、二月の十日に、夕方ですが、クレーンホールの作業員二人がハンド・フット・モニターで汚染されていることが発見された。汚染量は衣服で二・三掛ける十のマイナス五乗マイクロキュリー・パー・スクエアセンチ、一平方センチメートル当たり。これはガンマー、ベーターを含む。それから顔も被曝しておって、これが二・三掛ける十のマイナス五乗マイクロキュリー、吸引しておったために、体内に入っておったためにボディカウンターではかると二ナノキュリーのコバルト60が検出される、そういうふうに聞いているわけであります。しかも、汚染の範囲が非常に広くて、クレーンホール約四百平米と、それから更衣室の約三百平米、こういう範囲に汚染が広がっていて、その最高値が一・六掛ける十のマイナス五乗マイクロキュリー一平方センチメートル当たりです。こういうことが起こった。  これは一月三十一日に再処理工場に到着して、同日キャスクは除染をし、二月一日プールづけし、二月三日に取り出し、二月十四日剪断開始になっているそうでありますが、この汚染の原因については確認されましたか。
  172. 牧村信之

    ○牧村政府委員 汚染の報告を私ども二月の十三日に受け取っておりますが、その概要は、ただいま先生も御質問の中にございましたとおりでございますが、衣服、顔の汚染は二・三掛ける十のマイナス五乗マイクロキュリー、この一名の方でございます。これは許容値の二けた以下、百分の一程度でございます。それから体内に微量のベーター、ガンマー各種を吸引したようでございますが、この程度は二掛ける十のマイナス三乗マイクロキュリー、これは許容値の二千五百分の一であったわけでございます。  この汚染が起こりました原因は、燃料を取り出す作業後にクレーンホールに置きました、クレーンをつったり何かする道具でございますが、これを一度除染いたしまして、それを置き場に置いたわけでございますが、この除染作業が不十分であったこと、それからその除染作業を行いましたことを正しく確認していなかったことが一つの問題点でございますが、十分除染しなかったために、そこの置き場のクレーンの部品の移動という作業が実は行われたわけでございますが、その際に作業員の衣服、それからくつに付着した。それが作業員の移動に伴いまして管理区域内の施設を汚染さしたということでございます。  しかしながら、この汚染の程度でございますが、動燃が自主的に定めております管理値、これは許容値以下で管理しておりますけれども、幸いにしてそれを大幅に上回ることはなかったということでございます。その汚染を発見しまして直ちに除染をしたということでございます。
  173. 瀬崎博義

    ○瀬崎委員 大体、十日に起こった事故の科技庁への報告が十三日、これも夜遅かったというふうに聞いているのであります。またこの事故は公表もされていなかったということも聞いている。十三日には動燃事業団の本部において東海工場から連絡を受けておりながら、そこで対策会議を開いて、役所への報告に値しないとか、あるいは将来とも軽微なものについては所内ニュースで発行する仕方でやりたいというふうなことを決めておったということなんですが、こういう事実はあったわけですか。
  174. 牧村信之

    ○牧村政府委員 十日に起きまして、動燃が、十三日の朝でございますが、本部でこの情報を受け取り、所内のこういう汚染等の対策会議が設けられておりまして、そこで議論され、動燃の判断といたしましては、管理区域の、動燃自体が設けておる管理基準のレベルあるいはそのレベル以下であったことから、この汚染の事実を所内に周知させることは当然いたしましたが、それを通常いままでやっておりますように、新聞クラブ等に報告することは、この程度であれば行わないでいいではないかということを考えまして、その点につきまして、十三日の夕刻、私どもの方へ連絡があったわけでございます。  したがいまして、先生おっしゃいますように、対外発表につきましては、この汚染につきまして所内に周知させ、所内の対策を立てることを十分にいたし、また所内の作業員等に、同種の作業をしておる方々に十分周知し、今後の自覚を促すということ、それからこの程度の汚染につきましては直ちに外部に発表することなく、後々またいろいろな報告書等にまとめて報告するようなシステムを考えてみたいというふうなことで、動燃から私どもの方に申し入れてきたわけでございます。  私どもは、かねてから動燃の置かれた現在の社会的な立場も考慮いたしますと、このような考え方が直ちに一般の人に受け入れられるとは限らないというようなことも考えまして、再度検討するように指示いたした次第でございます。その際、この汚染の事実の公表もあわせて検討するように指示した次第でございます。  そういうようなことを行いまして、十四日の朝に、従来と同様の方法でこれからは公表するということで動燃も判断いたしまして、私どももその方法がベターであるということで、今後はこういうような発表をしないということをしないように指導し、動燃も了承した次第でございます。
  175. 瀬崎博義

    ○瀬崎委員 従来発表もしておった、また科技庁へも直ちに報告しておったようなこういう事故について、今後報告しないとか発表しないというふうな新しい方針を動燃が決めるに当たって、事前に科技庁の方から過去の方針を変えることについて了解を与えるといいますか、つまり科技庁が五十年の十二月に出しておった局長通達などの方針を変更してもよいというふうな内々の行政指導のようなことはしておったのですか、してなかったのですか。
  176. 牧村信之

    ○牧村政府委員 発表の手段につきましては、原子力局長並びに安全局長名で監督命令を出しました際、それ以降、動燃もこういうような発表の仕方もあるかもしれない、真剣に考えたいということを言っておったことは事実でございます。しかしながら、これをやることは外部、一般方々その他に非常に——了解を得られた後でなければそれはできない問題であるよ、慎重に考慮しなさいというふうに言っておったやさきでございます。今回動燃がそういう意向を持ちましたのは、動燃としてそうしたいということで、われわれとしてはやや残念でございますけれども、動燃がそういう判断をして持ってきたものに対して、若干検討の期間はあったかもしれませんけれども、われわれとしては十三日にそれは受け、十四日いっぱいかけて、それは適当でないというふうな判断で動燃に指示をしたという次第でございます。
  177. 瀬崎博義

    ○瀬崎委員 大体、昨年の九月から十二月まで、いわゆるJPDRの使用済み核燃料を使ってのテスト中にすら、十数件のいわゆる被曝事故、汚染事故というものを起こしているわけでしょう。そして、たしかあれは十月の末だったと思いますけれども、今度は原子力局長と安全局長の二人の名前で、連絡通報を含む安全管理の徹底について厳重注意が出されたわけでしょう。これに対して事業団側は、マイナートラブルについても連絡通報体制を前よりも強化する、こういうふうな報告を科技庁に出しておきながら、その舌の根も乾かないうちに、これに反するような方針を打ち出して科技庁に相談をかけてきたらしいのですが、これでは科技庁の権威を無視されている、あるいは科技庁と事業団がなれ合いで、かっこうだけ強い姿勢を示したのじゃないか、こういうふうに見られても仕方がないと思うのですね。だから、こういうことについて科技庁のもっと一貫した明確な姿勢というものをここで明らかにしてほしいと思うのです。
  178. 牧村信之

    ○牧村政府委員 ただいま先生がおっしゃいましたトラブル等の通報連絡体制につきまして、先生指摘のように、昨年度の再処理工場等の運転に伴いまして起きましたトラブルにつきまして、この通報体制が当時、たとえば東海研究所でございますと、東海研究所の所長がやるのか、事業を行っておる責任者がやるのか、こういうような点につきまして、動燃の体制が必ずしも明確でなかった。しかも本部がそれは受けまして、本部がどういうふうにそれに対応するかという点につきまして事業所間の違い等も若干見られたわけでございます。そこで動燃としましては、私どもも指導いたしまして、この連絡通報体制を一本化して、しかも責任を持って対応できるようにしてほしいという指導をしていたわけでございます。したがいまして、ある意味では強化することは当然でございますけれども、その発表の仕方につきましてはいろいろ考えられるというような議論も実は起きており、われわれも議論をしておったわけでございますけれども、いずれにいたしましても、今回の件は、動燃が一方的にそういう見解をもって行いたいと言ってきたところで、われわれはノーと言ったわけでございまして、私どもの指導は、今後も国民並びに住民の心配を招かないようなことでこの通報体制あるいは発表の仕方というものを考えていきたいというふうに考えております。
  179. 瀬崎博義

    ○瀬崎委員 先ほど、被曝の原因はクレーンのつり具の除染作業の不十分さと、それから正しく確認をしていなかったということだと言われましたね。それでは、このクレーンのつり具が確実に除染されているかどうかのチェックの責任は、放射線管理課にあったのですか、それとも前処理課にあったのですか、どちらですか。
  180. 牧村信之

    ○牧村政府委員 これは前処理課というところが作業を実施しておりますが、作業中のこういうことでございますので、前処理課がやるべきことになっておるようでございます。
  181. 瀬崎博義

    ○瀬崎委員 ところが、保安規定とか安全作業基準というものを見ても、クレーンの除染作業の安全管理責任が前処理課にあるということはどこにも出ていないし、またその点検の方法等も載っていないのでありますが、これは一体どこに、どのように定められているのですか。
  182. 牧村信之

    ○牧村政府委員 私ども、この通報を受けまして、先生指摘の点を実は十分確認しろということで担当課に確認させたわけでございますが、保安規定には事細かく、こういう際にはこの場所においてこういうような除染をしろということは書いていないわけでございますが、当然、こういう作業の行われた後、金具の除染をするということはやらなければいけないことに保安規定でなっておるわけでございますが、先生指摘のように、作業マニュアルの方にはその点の整備がなお不十分であったようでございます。動燃は、直ちにこのトラブルの経験を生かして、作業にそういうことを必ず行うということにいたしましたし、マニュアルの整備につきまして直ちに行うように担当課を通じまして指示をしておるところでございます。
  183. 瀬崎博義

    ○瀬崎委員 去年の十月二十七日、あのときに一連の事故が起こっておりまして、すでにそのときにこの保安規定あるいは安全作業基準の一定の見直しが必要なのではないか。本来、今回のテストというのはそういうことも含めてのテストではないか。そのためには、当然、この保安規定の認可は科技庁長官がやっているわけなんだから、科技庁にも重大な責任はあるのだ。あのときに果たして科技庁は、この安全作業基準等の見直しを指示したのか、あるいは科技庁みずからが検討したのか、答えていただきたいと思います。
  184. 牧村信之

    ○牧村政府委員 お答えします。  指示もいたしましたし、検討もしたわけでございます。ただ、今回のようなことにつきましては、私ども、実はいま作業マニュアルに書くべきことではないかと考えておりまして、動燃にはそのように指示したわけでございますが、先生おっしゃいますように、いまホットテスト中でございまして、JPDRの経験を踏まえ、直すところは直し、やっていくのは当然でございます。また、その前にはウラン試験の結果を踏まえて、修正するものは修正していくのが姿勢でございますが、幸か不幸か——不幸かと言った方がいいのかもしれませんけれども、JPDRの場合には非常に燃焼度も低い燃料を使ったこと、それからもう一点は、キャスクの構造が違ったということもございまして、JPDRでもこういう金具を使って作業をしておるわけでございますが、その際には今回発生しましたような汚染が経験されておりません。したがいまして、今回福島炉の燃料キャスクの操作に当たりまして、JPの経験と申しますか、大丈夫だろうといった、若干作業する方に安易な考え方があったやに見受けられます。したがいまして、先ほども申し上げましたように、この事故を契機にいたしまして、今後こういうようなトラブルを起こさないような措置を十分とるようにさせるようにいたしたいと思いますし、動燃側もマニュアルの整備等を実施したいというふうな意向でございますので、何とぞその辺のところは御了承をいただきたい、こう考える次第でございます。     〔大石委員長代理退席、委員長着席〕
  185. 瀬崎博義

    ○瀬崎委員 これは大臣に伺っておきたいのでありますが、いまも安全局長の説明のように、JPDRの使用済み核燃料の場合は燃焼度が低かったので、今回のような汚染というものがたとえあったとしても、実際上発見はされにくかった。これが燃焼度の高い福島のを持ってきたらこういう問題が新たに発生した。しかし、これも相当冷却期間が長いわけですね、いまの燃料は。今後はさらに燃焼度の高いものとか、あるいは冷却期間の短いものを扱うようになってくるだろう、そこにはさらにまた大きな危険というものが生まれてくるわけですね。したがって、こういうものの汚染のオーダーが低いということを強調して、何でもなかったんだという態度こそ、私は非常に危険だと思うのです。そういう点で、安全作業マニュアルの変更も一遍検討しなければならないほどの中身があるわけですね。そういうような重要な問題を、一方においては、いや所内だけに知らしておけばそれでいいんだ、科技庁への報告もこの程度ならやらなくてもよい、公表もしなくてもよい、こういう態度こそ、やはり事故の過小評価につながると私は思うのです。  私も、これは新聞で知っただけでありますけれども、アメリカでは、下院の保健等環境小委員会というところで、戦後行われた大気圏内核実験にさらされた米軍人などのがん発生から、低水準放射線の及ぼす身体への危険が論議されているように聞くわけですね。日本で初めての再処理工場のテストなんですし、また人体被曝が現にあるということは、大きかったときにはそれこそ安全上大変なんです。そういう点では、あらゆる角度からそういう教訓を生かすということが必要ですから、当然これの監督官庁——現在、民間にやらさないで、原研とか動燃しか再処理をやってはいけないというふうに法律が規定しているのも、国が管理をしないと、こういう最初の危険なプロジェクトはとうてい国民の安全上ゆるがせにできないというところから来ているんだと思います。そういう点では、やはり大臣自身が今回のトラブルについても動燃に対して一定の指示をきちっと下すぐらいの決断をしておいてほしいと思うのです。大臣の御答弁を求めたいと思うのです。
  186. 熊谷太三郎

    熊谷国務大臣 そういう点につきまして、なおひとつ十分に検討いたしまして、そういう心配がないように努めてまいりたいと存じます。
  187. 瀬崎博義

    ○瀬崎委員 私が言っているのは、二人の局長の名前で通達を出しておっても、なかなかそれが守られにくいというふうな風潮が事業団にあるようですから、今度は大臣自身から、それは文書によるか口頭によるかは別にして、一度厳重な注意をするとか、あるいは大臣自身も一遍工場を視察して、こういう危険性というものをつぶさに認識していただくくらいの必要があろうと思うのです。そういう姿勢をみずから示していただくべきではないか、こう思うのですが、いかがですか。
  188. 熊谷太三郎

    熊谷国務大臣 承知いたしました。
  189. 瀬崎博義

    ○瀬崎委員 次に、原研の職員の、主として定年制にかかわる待遇の問題について質問をしたいと思います。  まず、原研の方にお尋ねをしたいわけでありますが、定年を延長しなければならぬということについては、もう確認済みなんですね。
  190. 村上昌俊

    村上参考人 おっしゃるとおりでございます。
  191. 瀬崎博義

    ○瀬崎委員 では、ごく近いうちに理事者側としては最終的な調整を行って、来週中には労働組合の方に対して協議の申し入れをしたいとしているその内容の中には、きちっと定年の延長問題というのは入っている、こういうふうに理解していいわけですね。
  192. 村上昌俊

    村上参考人 いまお話しのございました定年延長の問題についての内容を、組合と交渉するつもりでございます。
  193. 瀬崎博義

    ○瀬崎委員 この問題が非常に時日を要した、またむずかしかったという理由として、いわゆる人事全般に及ぶ、場合によっては若い人々のところで昇任、昇格等の頭打ちのような問題が起こったらかえってマイナスになる面も出てくるので、その点慎重を要するというお話でしたね。われわれが原研の職員の方々やあるいは労働組合の要望を受けて国会でも主張していることは、要は定年だけ延ばせばいいということを主張しているわけじゃ決してないのですよ。私自身はこの問題を去年の十一月二十四日に当委員会で当時の宇野科技庁長官に強く要求したのでありますが、その理由として、まず第一は、若いフッレシュな人々の能力というものは新技術の開発に非常に大事だ、これは言うまでもないことなんです。一方では、やはり技術の蓄積ということも大事なんだ。そういう点からも、機械的に五十六歳やそこらで定年を切ってしまうというのは正しくないのではないか。  第二点は、最近のように研究開発の規模が非常に大きくなってくる、総合的な研究開発の成果が求められてくるような時代には、若い技術者からも信頼され、また多くの多面的な技術者の能力がそれぞれフルに発揮されながら組み合わされていくような、そういうリーダーといいますかまとめ役、こういう者が必要なんで、こういう点では積極的に経験豊かな人材を保全していく、そういうことが必要だろう。  それから第三には、原研の労働組合が実際にアンケート調査をやられた結果からも、定年延長は切実な要望であることが出ている。  第四番目には、国会に請願書が出された。千五百名の職員中千百名の署名が出て、自民党を除く各党が紹介議員になったといういきさつがある、請願そのものは保留になりましたが。  第五点としては、政府関係機関の同じような特殊法人を見ても、原研というのはきわめて例外的な状況になっている。こういう意味合いで定年というものを延ばしてほしい。  そういう意味では、若い人との関係も重視しながら、全体として研究のレベルアップを願えばこそ安心してできる研究体制を、というので要求しているわけですね。こういう点は十分御理解なさっておりますね。
  194. 村上昌俊

    村上参考人 私、ただいまお答え申し上げましたところで、あるいは多少誤解がありましては何でございますので、定年延長の問題あるいは定年問題ということ自体は職員全部も非常に関心が強いことでもございますし、現在の諸般の状況から考えましてもこういう問題に前向きに取り組むべきであるということについては、原研の基本方針としてそのように考えておるわけでございます。  それで、どういうような形でこの問題に対処していったらよいかという問題につきましては、午前中もちょっとお答え申し上げましたけれども、このやり方によりましていろいろな点にはね返りも出てくるので、そういう面で一挙に大幅な延長などをいたしますと、逆に中堅職員などのところへの人事の停滞であるとか、あるいは昇任の頭打ちとかいったようなことが出てきては困る。そういうようなことになりますと、先ほど先生指摘のような、そういったような中堅職員の力を十分発揮させるというようなところに相反する結果になったのではまずい。そういったようなこともいろいろ考えまして、この問題を煮詰めて、現在最終調整を行っている、そういうような状況のところでございます。
  195. 瀬崎博義

    ○瀬崎委員 この原子力研究所というのは、政府研究機関の中でも原子力分野ではいわゆるしにせといいますか、言葉は悪いですが、非常に伝統もあるし、国民の信頼も厚いわけですから、ここで研究者が安心して研究に打ち込める状態にあるのかどうかは非常に大事なことだと思う。そこで、これは大臣にお伺いしたいのですが、去年の十一月二十四日の本委員会で宇野長官がこういう答弁をしております。  「これは理事者にも言っておるのですが、予算がないから、したがって定員の問題で、定年制を延長するというようなことになれば若い人を採用しにくいのだというのは理屈にはならないよということを、お互いにしゃべり合っておるわけですが、今後のバランスの問題なり、あるいは年齢構成の問題なり、いろいろな問題があろうと思いますけれども、前向きの姿勢でお出しになってはどうか、出されたら私は、もちろんそれに対して財政当局と渾身の力をしぼって折衝することは当然であります。」  当然、内閣の継承性がありますから、これを引き継いでいかれると思うのでありますが、こういう前科技庁長官の方針は全く変化がない、こういうふうに見てよろしいですね。
  196. 熊谷太三郎

    熊谷国務大臣 結構でございます。
  197. 瀬崎博義

    ○瀬崎委員 村上理事に申し上げたいのですけれども、いまのような大臣のお言葉なんですね。だから、現在の定員とか予算というものの枠を固定して定年の延長ということを起こせば、これは当然いまの中堅の研究者、技術者にしわが寄ったりあるいは若手の採用に影響してくる、そういう点は渾身の力を込めて財政当局と折衝するということなんですから、やはり折衝に値するようなものを理事者側が出さなければ、まずそこで遠慮しておったら話にならないと思うのですね。この点、いいですね。
  198. 村上昌俊

    村上参考人 この定年の延長の問題につきましては、私、けさ以来たびたび同じことを申し上げているようなところもあるわけでございますけれども、財源の問題もさることながら、一挙に余り大幅な改正の仕方をするということははね返りがいろいろ出てくる。人事の問題と申しますのは、御承知のように、基本的な問題に手をつけますと、はね返りといいますか関連するところが非常に有機的にいろいろございますものですから、その辺をよく見ながら、徐々に漸進的に対処していきたい、こんなに考えておるわけでございます。  そういうようなことに考えておりますし、五十三年度の予算につきましても、もちろん十分という何ではないかもしれませんけれども、私どもいま内示をいただいております中をよく見てみますと、非常に細かい御配慮をいろいろいただいてもおりますので、五十三年度についてはこの予算でやっていける、こういったようなことを考えておるわけでございます。検討しておるところでございます。
  199. 瀬崎博義

    ○瀬崎委員 定年で非常におくれをとっている原研なんですが、一方、これは主として若手の技術者に関係する方なんですが、いわゆる交代勤務になる場合の交代手当等を見ましても、原研はまた悪いのですね。といいますのは、まず現在でありますが、二直と三直に対しては交代手当がついています。一級から四級までが千円、それから五級が千三百円というふうに私は聞いておる。違っておったら訂正してください。これに対して動燃の方は、二直の場合は交代手当が一律千円、それから三直の場合が一律二千円、平均すれば千五百円、こういうような形で、明らかに格差があるのですね。しかも、その五級という人はパーセンテージにしますと約一三%ほどなんですよ。ほとんどが一−四級の千円ですね。大ざっぱな計算ですが、五割違う。これはいかにも開き過ぎるというような感じがしているのですね。そこで、何か現在これの改正の問題が起こっているそうです。ところが、原研の当局の案というのは、一、二級が千百円、三、四級が千三百円、五級が千五百円ですね。ほとんどが一、二、三、四級なんですから、大体平均して千二百円くらいのところが出るのですか、あるいは千二百五十円くらいでしょうか。それだけ上げてみても、大分動燃から見れば低い、こういうことになりますね。年輩の人の方でもレベルは低い、若手の技術者に対してもレベルが低い。いいところがないような感じがするのですが、こういう点ではやはりもう少し思い切った改正をすべきじゃないかと思うのですが、いかがですか。
  200. 村上昌俊

    村上参考人 ただいまの御指摘の交代手当の問題についてでございますけれども、交代手当の問題につきましては、ただいま先生お話のございましたように、現在、新しい改定案を労組に提示いたしまして、交渉している最中でございますし、明日もその交渉の場が持たれるようになっているような段階でございますので、最終的にどのように決着するかはまだなにでございますけれども、私どものところの交代手当といまお話のございました動燃事業団の場合と、この制度にも差がございますし、手当のやり方に差がございますし、それから原研、動燃以外の——こういったような交代勤務といいますのは必ずしも原研、動燃だけではございませんで、民間企業にもたくさん事例がございますわけで、そういったようないろいろな事例を調べてみました結果で申し上げますと、原研の今回提案している交代手当自体も決して特に非常に低いといったようには考えておらないわけでございます。
  201. 瀬崎博義

    ○瀬崎委員 私ももちろん細かい現場の状況というものを知るよしはないのでありますけれども、しかし一応両方の労働組合から聞いて、そういうふうないろいろな違いというものをある程度考慮に入れたとしても、原研の方は今度当局が示した案でもなお低い、こういうふうに聞いて私もいま質問をしているわけなんです。  ですから、もう一度聞いておきたいのでありますが、もちろんこれは労使間で交渉されるべき問題でありますし、どうしても組合側の納得が得られにくい、また組合側からいろいろ道理のある要求が出てくるならば、これはやはり考慮していく、こういう余地を持っているのだ、当然それもまた、先ほど大臣の言われた、今度政府政府なりにいろいろ財政の問題も考えていくという中に入っていると思うのですが、こういうふうに考えておいてよろしいですか。
  202. 村上昌俊

    村上参考人 労使の交渉の問題でございますから、組合の方からいろいろ、要求あるいは要求の理由など、そういったようなものをよく聞きまして、また半面、所の方からも所の方の側の立場で、動燃だけでなく、いろいろ社会一般のそういうような諸手当の実情などを調べまして、それらに基づいた提案をして、お互いに話し合って解決をしていく、これはそのように考えております。
  203. 瀬崎博義

    ○瀬崎委員 もう時間がありませんので、ごく簡単に最後に、例の原子炉宇宙衛星の墜落問題について尋ねておきたいと思います。すでに共産党・革新共同は、軍事目的の人工衛星および原子力衛星などの全面禁止等を求める決議の案というものを発表しているわけであります。この中では、宇宙条約の改定問題を初め、軍事目的の人工衛星及び原子力人工衛星の打ち上げ並びに人工天体の軍事利用を全面的に禁止すること、さらには、非軍事的目的の人工天体についても落下の危険を防止する安全対策を義務づけることなどをうたっているわけでありますが、主として日本の場合、原子力衛星の全面禁止等の実効ある措置をかち取ろうと思えば、外交的な面での努力中心になるかと思うのですけれども科学技術庁が所管している守備範囲でできることは一体何かということも、この際明らかにしておく必要があろうと思うのですね。そういう点では、当然予想される原子力衛星などの危険について何らかの科学的な研究、たとえそれが相当な推定を含むものであったとしても、そういう不測の事態の予測等を行っていたのかどうか。それから、今後こういう事態に直面して、わが国はわが国なりに、宇宙開発事業団とかあるいは東大の宇宙研とか宇宙航空研究所とか、そういうところで、現在たくさん回っている人工衛星等の危険について何らか専門的に研究を進めてみようというふうなプランでも持っているのか、こういう点についての答弁をお願いしたいと思うのです。
  204. 園山重道

    園山政府委員 お答えいたします。  先生指摘のように、現在、人工衛星約九百個、あるいはロケットの残骸等含めますと四千五百個程度が宇宙空間を回っておるということでございまして、私ども、これがいずれ地上に落ちてくるものということは承知をいたしておったわけでございますけれども、いずれもこれは燃え尽きまして、地上に落下して被害を与えるということはほとんどないものと思っておったわけでございます。  今回の原子炉を積んだ衛星、ソ連のコスモスが落ちたということで非常に心配をいたしたわけでございますが、これに対する先生質問の、こういった回っている衛星を地上から監視するなりしてその落下について予測するなり予知するなりという面につきましては、残念ながら余り力がないわけでございます。現在の宇宙開発事業団は人工衛星追跡の機能を持っておりますが、これはやはり宇宙開発事業団が打ち上げますところの人工衛星の追跡を目的といたしておりますので、いずれも電波による追跡ということでございまして、その使います電波の周波数等も非常に限られたものでございます。したがいまして、先生指摘のような、現在飛んでいるものをいずれも監視するというようなことになりますと、そのような施設をつくりますことは、非常に大規模なものでいござますし、われわれとしてはなかなかそこまで手は及ばないものと思っております。しかし、どういう衛星がどういう軌道になると落下の危険があるとか、そういうことにつきましては、今後も研究をしていきたいと考えておるところでございます。
  205. 瀬崎博義

    ○瀬崎委員 ただ一般論としてそういうことをお聞きするだけでは、これは国民も満足できないと思うのですよ。安心できないと思うのです。先ほど外務省の方の発言の中にも、たとえ国際間のいろいろな交渉にしたって、これが政治的に論じられるのでは困る、やはり科学的、客観的な根拠のもとにこの危険が論じられなければならぬというお話がありましたね。そういうことになりますと、現在飛んでいるものの大仕掛けな追跡等はいますぐ日本ではできないにしても、理論上の危険性の予告とか、あるいは今後の危険についても理論的な危険の予告あるいは被害の程度などはこれは研究できると思うのです。そういうものがやはり一つの世界の世論を引っ張っていく上では重要かと思うのですが、この点では大臣に最後に伺っておきたいのですが、やはりどこかの機関を決めて、それできちっと予算も組んで、そしてこのような原子力衛星、軍事衛星などに対する危険についても研究を進めるということにしないと、またのど元過ぎれば熱さを忘れるというようなことになるのではないかという心配があるのですね。こういう点はいかがでしょう。
  206. 熊谷太三郎

    熊谷国務大臣 なかなかむずかしい問題でございますから、いまここですぐ検討申し上げますということもはっきりは申し上げられませんが、そういう点も理論的に研究をし、それからそういう場合の内容としまして、どういう結果になるかということについてもやはり研究をしますが、またそういう程度の研究を直ちに公表してかえって不安を与えるということについても考えなければならぬ点がありますから、そういうものも含めまして、検討までには至らぬかもしれませんが、われわれの部内でよく研究していくということを申し上げておきます。
  207. 岡本富夫

    岡本委員長 瀬崎君の質疑は終わりました。  次に、中馬弘毅君。
  208. 中馬弘毅

    ○中馬(弘)委員 先般の大臣の所信表明に対する質疑ということで質問させてもらいたいと思います。  この所信表明を読ませていただきまして、先ほどもちょっと問題になっておりましたが、大臣の科学技術というものに対する取り組み方といいますか、一つの哲学といったようなものが全然入っていないのを非常に残念に思ったわけでございまして、きょうはまずその点から少しお伺いしたい。これは今後いろいろな科学技術の審議をしていく上において基本的なことでございますので、まずここからお願いしたいと思います。  申すまでもないことでございますが、科学技術といいますものは、人類が幸せな生活を享受できる、高度な文明社会を創造するという目的に対する手段だと思います。科学技術の進歩そのものが目的でないことは、経済発展が人類の目的でないことと同様だと思います。しかし、この人類の目的になくてはならない手段であることも事実でございまして、ただ、経済発展でもあるいは科学技術でも、往々にして目的を離れて、あるいは目的を忘れて手段が独走しがちなことはお感じのとおりかと思います。人類はこの点について何度か過ちを繰り返してまいりました。火薬というものを人を殺す爆弾に利用してみたり、あるいは農薬が生態系の破壊につながったりもいたしております。また、抗生物質が新たな細菌をつくっていくこともございますし、そして原子力が原子爆弾をというようなことにもなってきております。最近問題になっております遺伝子を操作するといったようなこと、あるいは男女の産み分けを可能にするといったようなことは、人類の生存に対して場合によってはしてはならないことかもしれません。そういう観点に立ったときに、大自然の摂理に深く思いをいたして、神を恐れる気持ちというものが何か必要な気がするわけでございます。  この科学技術の進歩と人類の生存との調和、これを広範に検討し、一定のルールと対策を制度化する必要があるんじゃないか、このように考えるわけでございますが、こういった科学技術というものに対しての大臣のお考え方、それからそういったことを指導する体制科学技術庁がいまあるのかないのか、そういったことも含めての御答弁をお願いいたします。
  209. 熊谷太三郎

    熊谷国務大臣 過日の所信表明におきまして哲学がないのは大変残念だというお話でございまして、それに関連いたしましていろいろな内容のお話がございました。そういう御発言に対する御答弁になるかどうかよくわかりませんが、一応まとめました考えを申し上げてみたいと存じます。  申すまでもありませんが、わが国が資源・エネルギー問題、環境・安全問題等数々の問題を克服しながら長期にわたって経済の安定成長と国民生活の向上を達成してまいりますためには、何としましても国民の英知を結集し、科学技術の発展を図ってまいりますことが必要であることは言うまでもないと考えておるのでございます。  したがって、わが国におきます科学技術の発展を図りますためには、当庁といたしましては、一方においては科学技術あるいは研究開発につきましての総合企画調整官庁としまして、各省庁におきますこの関係の諸施策についてその総合的な推進を図ってまいりますとともに、一面におきまして、当庁みずから各般にわたる研究開発を積極的に推進する、こういう二つの柱で進んでまいるということでございます。  当庁自体が研究開発を推進してまいる問題としましては、原子力の平和利用、宇宙、海洋、地震予知などを初め、ライフサイエンスでありますとかあるいは航空技術、遠隔探査技術、レーザー技術等についての研究開発を計画的に推進いたしますとともに、全般にわたりまして科学技術振興基盤を整備することに意を用いまして当庁の予算案を編成いたした次第でございます。  なお、細かい点、さらにお尋ねをいただければ申し上げたいと存じます。
  210. 中馬弘毅

    ○中馬(弘)委員 先ほどこちらが申し述べましたことは、原子力という問題についても同じかと思います。  原子力と人類の生存の関係大臣はどのように御判断なさっておりますでしょうか。
  211. 熊谷太三郎

    熊谷国務大臣 原子力と平和利用の関係でございますが、これは私個人の考えというよりは、一般的な考えに通ずるかもしれませんが、やはり原子力という問題は非常に高度の科学技術と言わねばなりません。平和目的に利用しますれば、人類の進歩、国民の生活の向上その他に非常に寄与いたしますが、しかし過ってほかの方法に使うということになりますと、これは人類といいますか地球の破滅にもつながる非常に何ものにもかえがたい重大な結果を招くことになるわけでございます。したがって、この調和をどう図っていくかということを一番大きな関心事にしなければならぬ、このように考えております。
  212. 中馬弘毅

    ○中馬(弘)委員 この安全性の問題ですが、この観点での考察が必要かと思います。原子力安全委員会を設けるという話にもなってきておりますけれども、この安全委員会というものが原子力開発を進めるための方便であってはならないと思っております。時の権力や利害に対して超然たる態度で結論を出すというような組織でなければならないと思っておりますし、そういう意味での国民が信頼するものでなければならないという気がいたすわけでございます。そのためにも、役所の第二の事務局とするというようなことではなくて、専門のスタッフを置かなければならないような気がいたすわけでございますが、その点はどのようにお考えですか。
  213. 熊谷太三郎

    熊谷国務大臣 これは、安全委員会をつくっても、それが役所の管轄に置かれては国民が十分信頼しないではないかというふうな御趣旨の御発言かと存じますが、これはきわめて重大な問題であると存じますので、ここではっきりどちらがいいということを申し上げることは控えさしていただきたいと考えます。
  214. 中馬弘毅

    ○中馬(弘)委員 補足でもありましたら……。
  215. 牧村信之

    ○牧村政府委員 補足さして御説明さしていただきます。  ただいま国会に御審議を煩わして安全委員会の設置をお願いしておるわけでございますが、来年度の予算におきましては、安全委員会ができることを前提にいたしまして科学技術庁原子力安全局の中に安全調査室を実は新設を認められております。ここにおきまして科学技術庁内の、原子力安全委員会が行いますダブルチェック等の主要業務の事務局を、中立的な立場で行い得るような体制を来年度予算で、原案でお願いしておるわけでございます。  また、安全委員会の運営につきましては、すでにいろいろと御説明しておるところでございますけれども、安全委員会の委員は学識経験者をもって充てるつもりでございます。この学識経験者の人選に当たりましては、両院の意見を聞いて定めさしていただくということで、一方、従来の原子力委員会の委員長は国務大臣が当たるわけでございますが、新しい安全委員会の方は、委員長も学識経験者をもって中立的に安全の政策につきまして審議し、立案するというふうな形を考えている次第でございまして、先生御懸念のようなことはないような形で進むことを考えておる次第でございます。  そのほか、原子力の安全問題に関しましては、安全委員会ができました際、また行政の一貫化がお認めいただきますと、直ちに安全審査のあり方も従来とは変わった形で行われるわけでございますので、その辺の体制の整備あるいは地元の住民との対話というような観点からは、従来原子力委員会も行ってはきておりましたけれども、公開ヒヤリングという新しい制度をぜひ発足し、対話をさらにふやしていきたいというような、いろいろな新しい試みも現在検討を進めておりますが、ぜひそういう観点から安全規制の業務を、体制をもっと整えて強化してまいりたい、かように考えております。
  216. 中馬弘毅

    ○中馬(弘)委員 いずれにしましても、国民がそのような信頼を寄せる形と実質を備えていただきたい、このように願うわけでございます。  所信表明の中で第一番に原子力開発を取り上げておられます。そして事実予算面でも最大のウエートを占めておりますけれども、この原子力開発というもの、いまの日本にとって非常に大事なことだと思っておりますが、その目的はどう御理解願っておりましょうか。目的という意味は、先ほどの人類の幸福とかそういうことじゃなくて、エネルギーと考えてよいわけですか。
  217. 山野正登

    ○山野政府委員 非常に大げさな申し上げ方をいたしますれば、社会経済の発展と人類福祉の向上のためということになるのでございましょうが、私ども、来年度の予算編成をするに当たりまして考えました主要項目と申しますのは、まず当面の代替エネルギーといたしまして軽水炉の定着という観点から、安全研究と核燃料サイクルの確立というのを二本の柱にしたわけでございます。  それから、中期的、長期的な目標としまして、動力炉の開発並びに核融合の開発というものを位置づけたわけでございまして、これらいずれもエネルギー対策という観点からの立案だったわけでございます。
  218. 中馬弘毅

    ○中馬(弘)委員 目的とするところが、このエネルギーと、無資源国日本にとって石油が枯渇するかもしれないというそのことに対しての一つ対策だ、このように思いますが、一九八五年エネルギー危機説がございます。これは非常に根拠に乏しいような気もいたしますが、この点についていかがでしょう、石油の見通し。
  219. 大永勇作

    ○大永政府委員 お答え申し上げます。  先生指摘のように、今後におきます石油の見通しにつきましては、いろいろな見通しがあるわけでございまして、昨年来、大体一九八五年あるいは一九九〇年前後になりますと石油の増産が頭打ちになりまして、いわゆる供給限界に達するという見方が一般的でございますけれども、もちろんこれに対して、そういうことにならないだろうという説もまた最近では出てまいっております。  それで、一九八五年ないし一九九〇年前後に石油の増産限界に達するであろうという見方でございますが、現在、一年間の世界におきます石油の消費量が約二百億バーレルでございます。キロリッターに直しますと、これを六・二で割った数字になるわけでございますが、これに対しまして、年々の新規の石油の発見量が約百五十億バーレルでございます。現在、確認埋蔵量は三十三年分の石油があるわけでございますが、いま申し上げましたようなことで年々の消費量が新規の開発確認埋蔵量を上回るようになってまいりますと、だんだんこの三十三年分を食いつぶしてまいるわけでございまして、いま申し上げました一九九〇年ごろになりますと、これが十五年とか十年とかといったようないわゆる可採年数にまで落ち込むであろう。そうなってくると、それから先は石油はむしろ減少ぎみになるであろう、こういうふうな見方でございまして、現在におきます一般的な見方としてはそういう考え方が非常に強いということを申し上げておきたいと思います。
  220. 中馬弘毅

    ○中馬(弘)委員 それが事実であるかあるいは根拠に乏しいか、そのことは別にしまして、資源の何もない日本にとって、石油に頼るあるいは外国の資源に頼るといったことが長続きはしないということは、これはもう言うまでもないことだと思います。そういうことからしますと、エネルギーの多様化ということでの原子力、これは非常にわかるわけでございますが、もう少し大事なこともありはしないか、余りにも原子力だけに今度は偏っていはしないかという気がするわけでございます。  今後の経済成長とエネルギーの問題になってまいりますけれども、結局はその弾性値の問題でございまして、産業構造を大きく転換し、省エネルギーを強力に進めるならば、弾性値がたとえばゼロであっても経済成長は可能なわけでございますね。そうしますと、エネルギーの消費は現状のままで経済成長が図れる。そうするならば、新たな電源立地も必要ないということにもなってくるわけでございます。また、ウラン自体も日本で産するわけじゃございません。しかもウラン保有国の外交戦略にすら使われている現状を考えるときには、やはりもう少し外国の資源に頼らない方法を考えていかなければならないのじゃないか。そのまず第一点は省エネルギー技術の開発あるいはシステムの開発ということになりましょうし、もう一つとしましては、サンシャイン計画を初めとする新エネルギー技術の開発、ここに相当の力を入れていかなければならないという気がいたします。それが最近の科学技術庁の取り組み方あるいは予算を見ておりますと、余りにも原子力一辺倒になり過ぎていはしないかという気がするのですが、その点の御見解を伺いたい。
  221. 熊谷太三郎

    熊谷国務大臣 今後のエネルギーの多様化といったような問題につきましては、当庁ももちろん考えてまいらねばなりませんが、大体は御承知のようにエネルギー庁においてお考えになっていることでございまして、われわれとしましては、やはりエネルギー多様化の非常に有力な問題であります原子力、われわれの方は原子力平和利用という立場の役所でございますので、これに核融合等を入れますとどうしても予算がわりあいに多くなってくる、こういうわけでございまして、われわれがエネルギーの多様化について特に原子力ばかりに頼っておる、こういうつもりではありませんが、役所のたてまえとしまして比較的原子力の面が多い、こういう結果になっているかと存じます。
  222. 中馬弘毅

    ○中馬(弘)委員 来年度の予算でございますが、省エネルギーあるいはサンシャイン計画等新エネルギーの技術開発、こういったものに対しての予算が大幅に増額されておりますが、これはこのこととして評価したいと思います。しかし、省エネルギーとかあるいは新エネルギーの開発といったことは国家百年の大計を立てて推進すべきもので、言葉を返せば長期的な展望に立った戦略的な政策というものが必要なことでございまして、単なる景気対策としてやるべきものではないという気がいたします。今度の諸施策も、ことし限りではなくて、長期のプログラムにのっとったものだと理解してよろしゅうございますか。
  223. 大澤弘之

    ○大澤政府委員 お答えいたします。  エネルギーの研究開発を長期的な立場から考え計画的に遂行していくべきではなかろうかというようなお話に承りますが、私どもの方も全くそのとおりに考えておりまして、現在、科学技術会議におきまして、エネルギーの研究開発についての基本計画ということにつきまして諮問を受けておりますので、その答申の作業にかかっております。その中では、いま先生がおっしゃられましたいわゆる原子力以外の新エネルギーの研究開発につきましても一つ計画をつくり上げたい、こういうことで現在作業をしておる段階でございます。
  224. 中馬弘毅

    ○中馬(弘)委員 そういうことであるならば、少しそれぞれについてお伺いしたいと思いますが、今度は省エネルギー関連の設備の租税特別措置をするとか、あるいは投資減税という話も出てきております。これは具体的にどのような基準のものを対象とするか、はっきりしているわけでございますか。
  225. 大永勇作

    ○大永政府委員 先生指摘のように、今回、税制の改正におきまして、省エネルギー設備につきまして四分の一特償ということに相なりました。さらに省エネルギー設備につきましては、それをそのまま投資減税の対象にもするということになったわけでございますが、この対象設備をどうするかという点につきましては、現在なお大蔵省と詰めておる段階でございまして、具体的には今後の問題でございますが、たとえば廃熱ボイラーでございますとか、あるいはいわゆる炉頂圧発電に使います廃圧力の回収設備でございますとか、そういったいわゆる省エネルギーのための機械、装置というものがこれの対象になるということになろうかと思います。
  226. 中馬弘毅

    ○中馬(弘)委員 これはいわゆる生産設備的なものに限っているわけですか。それとも、それを需要する方、消費者とかそういったようなものが何か省エネルギー的なものを買ったらとか、それに対しての助成措置があるというようなことはあるのですか。
  227. 大永勇作

    ○大永政府委員 いま申し上げましたように、まだ設備としては詰めておるわけでございますが、一般的にはいわゆる省エネルギーを行うための付加的な設備、省エネルギーをやるための設備——省エネルギー型の設備というのではなくて、省エネルギーをやるための設備というのが中心になろうかというふうに考えております。
  228. 中馬弘毅

    ○中馬(弘)委員 この対象期間は来年度限りというようなことも聞いておりますが、その点はいかがですか。
  229. 大永勇作

    ○大永政府委員 投資減税の方につきましては先生指摘のとおりでございますが、特別償却の方につきましては、これは必ずしもそういうことではなくて、少なくも今後教年間程度は継続するものというふうにわれわれとしては了解いたしておる次第でございます。
  230. 中馬弘毅

    ○中馬(弘)委員 投資減税が来年度限りということですが、何か景気浮揚のためのものであるならば一年限りということも考えられますけれども、それこそ日本の国家百年の大計、本当にこれから国民挙げて省エネルギーに取り組んでいかなければならないというときに、省エネルギーの投資、これも一年限りだということは何か納得がいかないのですが、その点はいかがですか。もう少し長期的に考えなければいかぬ。
  231. 大永勇作

    ○大永政府委員 投資減税というのは、先生承知のように、これはまさしく景気浮揚のための特別の措置でございまして、当該年度におきます対象設備の取得価格の一〇%をいわゆる税額控除するという、これは臨時特例の制度ということでございますので一年限りということでございますが、これとは別に省エネルギー機器につきましての特別償却、これは税額控除ではございませんで、いわゆる四分の一の特償でございますので、初年度において取得価格の四分の一だけが、税額からじゃなくて、所得から控除される。これはいわゆる一般の制度で——一般のといいますか、特別制度でございますが、投資減税のような臨時特例ということではない制度でございまして、これにつきましては、いま申し上げましたように、一年限りの措置ということではないわけでございまして、これは投資減税とは別に続いていくということでございます。
  232. 中馬弘毅

    ○中馬(弘)委員 いずれにしましても、景気対策だとかそういったことでやるべき問題じゃないということをつけ加えておきます。  次に、ムーンライト計画についてですが、これが九億から十五億ですか、倍増されております。少し具体的な御説明を願いたいと思います。
  233. 吉田方明

    ○吉田説明員 ムーンライト計画につきましては、昭和五十三年度の予算で発足いたしまして、従来大型プロジェクトであるとか基礎研究であるとかいう個別にやっていたものを、省エネルギーの観点から技術開発を進めるために取りまとめたものでございまして、昭和五十三年度の予算で二十億円を政府原案に予定をしているわけでございます。
  234. 中馬弘毅

    ○中馬(弘)委員 そのほか、省エネルギーとしましては、たとえば運輸部門でのトラックとかマイカーから鉄道あるいはバスでの大量輸送へというような方策もいろいろ考えられるわけでございますが、そういうことを全般的に所掌する部署というのは、どこになっているのですか。
  235. 大永勇作

    ○大永政府委員 たとえば自動車におきます燃費の向上、あるいは自動車に限らず、そのほか産業用機械等におきます使用効率の向上といったようなことは私どもで所管いたしておるわけでございますが、いま先生指摘になりましたのは、自動車交通から国鉄の交通に切りかえるとかといったような、いわゆる総合交通体系の問題になろうかと思うわけでございますが、そういった問題になりますと、ちょっとこれは通産省の手は離れるわけでございまして、運輸省あるいは内閣の方でおやりになる問題であろうかというふうに考えております。
  236. 中馬弘毅

    ○中馬(弘)委員 いまのお答えでも明らかなように、何か各省庁それぞれ別個にやっておって、この問題はよその省庁の問題ですという話によくなってくるわけですが、この総合的なエネルギー政策を立案、指導する何か独立の部署あるいは担当官といったようなものの必要性を、大臣はどのようにお考えでございましょうか。
  237. 熊谷太三郎

    熊谷国務大臣 これもなかなかむずかしい問題でございまして、一元化という問題は、エネルギー問題だけでなしに、いろいろな問題で常に言われておるわけでありますが、これはどうも私が答弁するのは余り向きではないかと存じますけれども、非常に高い見地からどういうものを一元化するかという結論が出てくるわけでございまして、そのむずかしい問題についてはちょっと私が答弁しかねます。省エネルギーの問題、これにつきましては、やはり国全体の問題でございまして、エネルギー閣僚懇談会といったような中でも議論されますが、いま申しましたように、全般的な問題でございますので、交通関係等におきましては運輸省においてそういう問題の研究が行われましょうし、もちろん通産省はエネルギーの主管官庁でございますから、サンシャイン計画などを初めとしまして、あらゆるエネルギーの問題、さらにその省エネルギーという問題も、先ほどお話のありましたように、推進されているわけであります。科学技術庁としましては、やはり各省にまたがっております研究開発の総合推進調整でございますから、そういう省エネルギーの研究開発等につきましても、それらを総合調整いたしまして、研究開発の成果が有効に能率的に結論づけられ、実行に移されるように努力しているわけでございます。  もう一面の直接の省エネルギーの研究開発といたしましては、代替エネルギーで、省エネルギーではございませんが、たとえば海洋におきます——いまちょっと具体的に思い浮かびませんが、いろいろな面で独自の研究も進めている。  一元化すべきかどうかということにつきましては、ちょっとここで私の立場からは申し上げかねます。
  238. 中馬弘毅

    ○中馬(弘)委員 次に、新エネルギーの技術開発の問題に移りますけれども、サンシャイン計画、これは通産省の方で鋭意努力なさっているようでございますが、四年目に入って基礎研究から開発研究段階に移ってき、また中には実用化といったようなことも進んでまいっているようでございます。先日もちょっと新聞にも出ておりましたソーラーハウスについてお伺いしたいのですが、これは業者に対して幼稚産業保護的な一つの助成策をとっているのか、また、業者だけでなくて、需要家にもそれを普及させるような施策をとっておられるのか、そのあたりを少しお伺いしたい。
  239. 野口昌吾

    ○野口説明員 御説明申し上げます。  ソーラーハウスにつきましては、私ども将来の省エネルギーの観点あるいは新しいエネルギーの源としての価値を非常に評価いたしまして、積極的にこれを推進していきたいと思っているわけでございます。  通産省といたしまして、具体的にはサンシャインの中で研究開発を進めておる一方、すでに一部企業の中にはもう商品化を始めているところもあるわけでございます。そういう段階ではございますけれども、すでに商品化を始めておる企業につきましては、開発銀行の普及のための融資であるとか、それから制度としてございます重要技術開発費補助金などを活用いたしまして、研究開発の助成を行っておるわけでございます。  将来もこれにつきましてはまだ技術開発すべき内容は多々ございます。特に、エネルギー効率を上げ、かつ一方ではコストダウンをする、つまり重油なり灯油との競合、競争をするものでございますから、灯油よりよくなりませんと、実際の普及というのがなかなか進まないのが実情でございますので、コストダウン、それとエネルギー効率を上げる、そういうことがポイントだろうと私ども思っておりますが、そういう点につきましては、現在ございます重要技術開発費補助金などの拡充をいたしまして、積極的に実証研究等をやって普及に努めたいと思っておるわけでございます。
  240. 中馬弘毅

    ○中馬(弘)委員 太陽エネルギーの利用に関しまして、太陽電池というのは大体技術的にも確立をされてきておるかと思います。しかし、コストの面でまだ普及するには至っておらない。一平方センチ当たり一万円もするというようなことも聞いておりますが、これはたとえば何百万個もつくるというようなことをはっきりと打ち出せば、量産効果で下がるものでございますか。そのあたり、技術的なことに関しますけれども、ひとつお教え願いたいと思います。
  241. 吉田方明

    ○吉田説明員 太陽電池は有力な新エネルギー源としまして、サンシャイン計画の一環として現在鋭意研究開発を進めております。先生指摘のような現状価格を大幅に引き下げるために、このサンシャイン計画の中におきまして、革新的な製造技術の開発という基礎研究を現在行っております。現在の段階では製造技術の革新的な開発というところにねらいを定めておりますが、今後の問題としまして、一九八〇年代の後半には何とか大量生産の方向に持っていきまして、実用化のめどをつけたいということを目標にしております。
  242. 中馬弘毅

    ○中馬(弘)委員 もうそろそろ実用化段階に入ってきたものもあろうかと思いますが、これもただ政府やその周辺の研究所あるいは企業だけではなかなか物事は進まないと思います。一つの国家プロジェクトでもございますし、能力や人材等の面でもいろいろな制約条件が、それだけの範囲であれば余りにも多過ぎるというような気がいたします。やはり民間の企業全般の自主性を発掘してあげてやるような施策を国としても大幅にやっていかなければならないのではないか、そういう意味での提言を申し上げておきます。  このサンシャイン計画なんですが、予算は大幅にふえましたが、額はせいぜい五十五億、核融合の方を加えましても百億にも満たないほどでございます。アメリカは、聞くところによりますと、こういった新エネルギーの技術開発に一兆円近い金を使っている。こういったことからも大幅な努力が必要かという気がいたします。そして来年度以降も大幅な予算を要求していかれるのかどうか、その点の御所見をお願いしておきます。
  243. 吉田方明

    ○吉田説明員 サンシャイン計画は、昭和四十九年度から国家的なプロジェクトということでエネルギーの長期安定に資するために進めているものでございます。現在はその段階がおおむね順調に進展しておりまして、一部のものについては基礎研究からプラント開発へ入っております。予算につきましては、五十三年度の政府原案の中において、一般会計におきまして五十五億二百万が予定されております。なお、サンシャイン関連予算ということで、特別会計に二十六億二千七百万が計上されておるわけでございます。  今後の見通しでございますが、今後は逐次プラント開発ということになってまいりますと、資金の量が増加していくということでございまして、研究開発に支障のないような形で予算を今後要求して、五十四年度以降充足してまいりたいと考えております。
  244. 中馬弘毅

    ○中馬(弘)委員 この新しいエネルギー技術開発のもう一つの柱としましての核融合について、この第二段階研究開発、これは基本計画どおりに大体進捗していると理解してよろしゅうございますか。
  245. 山野正登

    ○山野政府委員 核融合につきましては、いま先生指摘のように、第二段階に差しかかっておるわけでございますまして、本年度から臨界プラズマ実験装置というものの建設に着手しておるわけでございます。私ども目標としておりますのは、昭和五十六年ないし七年にこのJT60という臨界プラズマ実験装置を完成しようということを目標にしておるわけでございまして、いよいよ来年度の予算におきましては土地の取得費といったようなものも含めてお願いしておるわけでございますが、従来のところ、予定どおり進んでおるというふうに申し上げてよろしいかと存じます。  なお、原研のトカマク型の核融合研究に加えまして、京都大学、大阪大学あるいは名古屋大学等におきまして別途の核融合の基礎研究というものも順調に進められております。
  246. 中馬弘毅

    ○中馬(弘)委員 それにちょっと付随してお聞きしておきますけれども、たとえば大幅な人員だとか、あるいは予算を新たにつぎ込んだら、その予定が早まるというようなことはあるのですか、ないのですか。
  247. 山野正登

    ○山野政府委員 予算並びに人員的に申し上げますと、先ほど申し上げましたスケジュールに合わせまして必要経費並びに人員を算定いたしておりまして、本年度核融合関係のわが方予算は約八十億円であったかと存じますが、五十三年度は五割増の百二十億円をいま政府原案に盛り込んでおります。  それから、人員につきましては、約百数十名の者が原研における核融合担当従事者数でございますが、来年度はたかだか二十名程度しか伸びませんけれども、これも五十年代半ばのJT60の完成を目指しまして逐次ふやしていきまして、JT60の試験を始めますときまでには所要の人員を確保したいというふうに考えております。
  248. 中馬弘毅

    ○中馬(弘)委員 以上、特に日本独自でできる、あるいは外国に依存しなくても済むエネルギーのあり方といったことに本当に力を入れていかなければ、いまのように非常に複雑になってまいりました国際情勢の中にありましては日本の将来が危ぶまれるわけでございまして、その意味からも、ただ原子力、いまの形での軽水炉型の原子力というものだけに頼ることは非常に危険だと思っております。そういうことでの御努力をお願いしたいという気がするわけでございます。  次に、原子力船の問題を少しお聞きしたいと思います。  原子力船の問題につきましては、事業団のあり方を昨年の暮れに、研究所への改組ということで、実質三年間の延長をいたしました。これはどういう形で研究所へ移行するためのプログラムとして事業団内部で進めておられるか、その点の御答弁をいただきたいと思います。
  249. 山野正登

    ○山野政府委員 事業団を将来研究開発機関に移行いたしますことにつきましては、先般の国会におきます事業団法の審議の経緯並びに法案修正の御趣旨を私ども体しまして、科学技術庁部内並びに運輸省、事業団、関係者の間において現在検討を進めておるところでございます。いかなる研究開発をその守備範囲とするか、あるいは体制機構等はどうするか、ほかの関係機関との関係のあり方はどうするかといったふうなことについて現在検討を進めておるところでございまして、今年いっぱい程度の期間には成案を得たいというふうに考えております。
  250. 中馬弘毅

    ○中馬(弘)委員 それに関連しまして、「むつ」は青森と長崎でキャッチボールのようなことをやっておりますけれども、そのあたりの現状を少し御報告願いたいと思います。
  251. 山野正登

    ○山野政府委員 まず、長崎県側に対します現在の状況を申し上げておきますと、御承知のとおり、昨年の四月に佐世保市の方は、政府が五十一年二月にお願いしましたとおり、つまり核燃料棒を装荷したままで受け入れましょうという市議会の決議を通報してこられ、また一方、同じ四月に長崎県の方は核燃料棒を抜いて入港することを条件に政府の要請を受け入れましょうということが県議会において議決されたという通報があったわけでございます。その後私どもは、この双方違う結論であるわけでございますが、この両者そろって一本の結論がぜひ望ましく、必要なわけでございますので、政府におきまして改めて政府の見解を打ち出してこの調整を図る必要があるわけでございまして、現在、諸般の情勢を検討しまして、わが方の最終的な態度というものを固めておる段階でございます。  それから一方、青森県に対しましては、これはやはり御承知のとおり、四者協定というものがございまして、私どもこの履行を迫られておるわけでございますが、残念ながら修理港問題というのが決着を見ていない現在、まだ完全にこれを履行するわけに至っていないわけでございまして、修理港問題が解決するまでの間、暫時の猶予を青森県側の方にはお願いしておるという状況でございます。
  252. 中馬弘毅

    ○中馬(弘)委員 「むつ」もいろいろ問題を後に引いておりますけれども、事業団が研究所へ改組するというあの法案が通った時点で事業団の性格も変わったものだと理解しておりますし、「むつ」もそういうことで何が何でもこれを実用化にまで持っていかなければならないということではないと思います。研究材料と考えてもらっていいわけでございまして、そうするならば、技術的にももう十年前のものでありますし、陳腐化したもの、これをいっそ廃船にしてしまって、ちょうど各造船メーカーも船台があいて困っているときでありますから、いままでの技術を本当に生かした形でいまから新たなものをつくっていくというようなお考えはございませんか。
  253. 山野正登

    ○山野政府委員 「むつ」は実用船を目指しておるわけではございませんで、「むつ」自体はあくまでも実験船でございます。御指摘のように、確かに計画自体は十年前に立案されたことでございまして、内容的にはかなり古い技術に属するものもあるわけでございますが、しかしたとえ古い技術に属するものでございましても、この「むつ」の本来の使命、実験の目的といたしましては、たとえば陸上炉と違いまして、船舶に搭載しました舶用炉が海の動揺にどう対応するか、あるいは負荷変動にどう対応するかといったふうなことについての研究中心課題になるわけでございまして、そのこと自体は舶用炉の設計が新しいか古いかといったふうなことには直ちに直結しない問題であろうかと存じます。せっかくこれまで多額の国費を投入して開発してまいったものでございますし、また、先般の大山委員会におきましても、適当な改修を加えることによって所期の目的を達成し得るという最終的な結論もいただいておるわけでございますので、その線に沿いまして今後ともこの開発を進めてまいりたいというふうに考えております。
  254. 中馬弘毅

    ○中馬(弘)委員 時間も参りましたので終わりますが、過去にこだわらずに、ひとつ新しい発想で今後の科学技術のあり方に取り組んでもらいたいということを要望いたしまして、質問を終わらしてもらいます。
  255. 岡本富夫

    岡本委員長 以上で質疑は終了いたしました。  本日は、これにて散会いたします。     午後五時二十二分散会