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1978-04-19 第84回国会 衆議院 運輸委員会 第7号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和五十三年四月十九日(水曜日)     午前十時二分開議  出席委員    委員長 増岡 博之君   理事 石井  一君 理事 小此木彦三郎君    理事 佐藤 守良君 理事 坂本 恭一君    理事 渡辺 芳男君 理事 石田幸四郎君    理事 河村  勝君       加藤 六月君    北川 石松君       関谷 勝嗣君    田澤 吉郎君       原田昇左右君    藤本 孝雄君       古屋  亨君    堀内 光雄君       太田 一夫君    久保 三郎君       佐野  進君    斉藤 正男君       田畑政一郎君    草野  威君       宮井 泰良君    薮仲 義彦君       小林 政子君    中馬 弘毅君  出席国務大臣         運 輸 大 臣 福永 健司君  出席政府委員         運輸省海運局長 後藤 茂也君         運輸省船舶局長 謝敷 宗登君         運輸省船員局長 高橋 英雄君         運輸省航空局次         長       松本  操君         海上保安庁長官 薗村 泰彦君  委員外出席者         防衛庁防衛局防         衛課長     西廣 整輝君         外務省経済協力         局政策課長   藤田 公郎君         大蔵省主計局主         計官      角谷 正彦君         大蔵省銀行局銀         行課長     吉田 正輝君         大蔵省銀行局特         別金融課長   藤田 恒郎君         通商産業省基礎         産業局鉄鋼業務         課長      岩崎 八男君         資源エネルギー         庁石油部精製課         長       清滝昌三郎君         運輸省航空局飛         行場部長    田代 雅也君         消防庁危険物規         制課長     小池 次雄君         消防庁地域防災         課長      中川  登君         運輸委員会調査         室長      鎌瀬 正己君     ————————————— 委員の異動 四月十八日  辞任         補欠選任   中馬 弘毅君     山口 敏夫君 同日  辞任         補欠選任   山口 敏夫君     中馬 弘毅君     ————————————— 四月十二日  一人一車制個人トラック運送免許の認可に関す  る請願鈴切康雄紹介)(第三〇七三号)  埼玉県伊奈町に新交通システム導入実現に関す  る請願天野光晴紹介)(第三一三四号) は本委員会に付託された。     ————————————— 本日の会議に付した案件  連合審査会開会申入れに関する件  海運に関する件(造船業不況に関する問題)  造船業不況対策に関する件      ————◇—————
  2. 増岡博之

    増岡委員長 これより会議を開きます。  この際、連合審査会開会申入れに関する件についてお諮りいたします。  ただいま地方行政委員会において審査中の内閣提出道路交通法の一部を改正する法律案について、地方行政委員会連合審査会開会申入れを行いたいと存じますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  3. 増岡博之

    増岡委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決しました。  なお、連合審査会開会日時は、委員長間で協議の上、追って公報をもってお知らせいたします。      ————◇—————
  4. 増岡博之

    増岡委員長 海運に関する件について調査を進めます。  本日は、造船業不況に関する問題について調査を進めてまいりたいと存じます。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。原田昇左右君。
  5. 原田昇左右

    原田(昇)委員 先般、本委員会で各界の参考人を呼びまして、いろいろ造船不況問題について伺ったわけでございますけれども、その参考人の御意見を通じて、造船不況の状況は非常に深刻だという印象を持ったわけでございます。このまま放置しておけば、国民経済及び地域経済にはかり知れない悪影響が出てくるのではないかということを恐れるわけでございます。ところで政府は、景気振興策に非常に積極的に取り組んでおられる点は評価するものでございますけれども、こうした構造不況対策として果たして有効な手段を用意しておられるかどうかという点については、私は、現段階においてはまだまだ取り組み方が足りないのじゃないかという印象を持っておる者の一人であります。  特定不況産業安定臨時措置法というのが先般衆議院を通過いたしましたけれども造船の場合、この臨時措置法だけではとうてい対策として十分な効果を上げることはできないのではないかと思うのです。英国等の例を見ますと、現在の造船不況に対して、国民経済並びに地域経済雇用に対する影響を考慮し、また国防上の観点も入れて、民間ベースで成り立たないものを全部国有に切りかえておるという徹底的な保護政策を講じております。また、その他の欧州諸国におきましても、大幅な補助政策を採用するに至っておるわけでございます。  そういうことから考えまして、わが国の場合もすでに企業努力でやれるという限界を超えて、政府としては、何かはっきりした将来見通しを立てて、そのもとにおいて大幅な政府の援助ないし助成というものを考えていく段階になったのではないかと考えます。  そこで、この点の所管大臣から基本的な不況現状に対する認識について伺いたいと思います。
  6. 福永健司

    福永国務大臣 原田さん御指摘のように、造船業が非常な不況にあえいでいる現状については、われわれも深く認識しているつもりであります。したがって、この不況にあえぐ造船業にどういう施策を及ぼしていくかということは、非常に大事な問題であろうと思います。  そこで私は、いろいろ申せばあることではございますが、一種の失業対策式考え方で、つぶれたり仕事から離れたものに対してどうするかということ、これももちろん必要ではございますが、それよりも何とかして事業量をふやして、そういう事態に至らずして、造船の特徴を発揮しつつしのいでいく、さらには、その後の新しい発展を期していく、こういうようなことでなければならぬ、そういうようなことを考えるわけでございます。したがってこれには、要するに積極的な施策がこの際ぜひ必要であろう、政府もこの点について重々配意すべきである、そういうふうに考えます。
  7. 原田昇左右

    原田(昇)委員 大臣の基本的な御認識は、私と全く同様と承りました。  そこで、しからば具体的に、造船業操業度というのはこれから先急速に低下していくという現状にあろうかと思いますが、将来を見通した場合にどの程度受注が確保できるか、どの程度が適正な操業であるのか、つまり現状のまま造船業を考えた場合に、これは仮にですが、一千万トン前後だろうというお話もございますけれども、一千万トンなんという需要は、世界のこのような深刻な海運不況下で確保することはなかなかむずかしいのじゃないかと思いますが、政府として一体どういうめどを将来に置いて考えておやりになるのか、はっきりしていただきたいと思います。
  8. 謝敷宗登

    謝敷政府委員 これからの日本造船業需要見通しにつきましては、国際的な問題あるいは国内の体制の問題等もございまして、確定的なことを申し上げられる段階ではございませんが、ただ私どもといたしましては、この前の、昭和五十一年に海造審がお出しいただきました世界需要が五十五年ぐらいまでは千二百万総トン程度であろうということにつきましては、ほぼそういう状態で推移しておりますので、しばらくはこういう状態が国際的に続くというふうに考えております。  しからば、その次についてはどうか、五十五年から六十年あるいは六十五年についてはどうかという点につきましては、前回の試算では千六百万トンから二千六百万トン年間需要が国際的に出てくるであろう、こういう非常に幅のある推定をしておりますが、この点について、現在海運造船合理化審議会造船施設部会におきまして数字を鋭意詰めております。したがいまして、この点について間もなく出てくるかと思いますが、これと問題は、国際的な関係においてどのぐらい日本としては需要が考えられるかという点が一つ残ります。この点につきましては、先ほど先生指摘の国際的な競争力の点につきましては、私どもは少なくとも、最近の円高ではありますが、基本的には失われておらないということが言えるかと思います。ただ第三国、いわゆる発展途上国造船業は、自国の海運のために一応の整備を始めておりますので、これが新しい要素としてこれからの需要を考えるときに考慮に入れなければならぬ問題かと思います。  それから、現状につきまして月二十五万トンベース受注ということは最低に近い数字でございまして、三月もこのような状態で推移しておりまして、これからは落ち込むことはないであろうということで、月二十五万トンベース受注基礎にいたしまして、これにどのくらいプラスの需要をつけ加えられるか、こういう点を考えながら早急に先生指摘の目標を確立するための作業を進めてまいりたい、こう考えております。
  9. 福永健司

    福永国務大臣 いま造船それ自体操業度等について将来の見通し局長から申し上げましたが、私は、政治のあるべき姿といたしましては、この点ももちろん非常に大事ではございますが、一口に言って将来の見通しというのは余り明るくない、こういう情勢であればあるほど船それ自体についての施策ももちろん大事でございますが、そのほかに、日本造船ならやれる、いままで必ずしもやっていたような仕事ではないけれども、新しくそういうことで仕事を創出していく、また、かつて苦しい時代には造船もいろんなことをやりましたから、そういうようなことで、最近はやっていなかったけれども、そういうこともやろうじゃないかというようなことを総合的に政府も考え、業界も考えているようでございますが、そういうことがいまの造船業に対して必要であろう、こういうように感じます。
  10. 原田昇左右

    原田(昇)委員 大臣から、総合的に対応していかなければいけないという御答弁でございまして、全く同感でございます。ぜひそういうようにお願いしたいと思うのですが、先ほど局長から話のありました操業度見通しという点から見ても、早急な対策が必要だと思うのです。  しかし私が、それをやる上にもまず伺っておかなきゃならぬのは、現在、金融面から造船はもうとてもあかぬという風評が飛んでおりまして、風評ならいいんですけれども、現実的にほとんど金融機関造船に対して融資をしないというような事態が起こりつつある。大変ゆゆしい問題だと思うのです。もしこんなことを放置しておったら、せっかくこれから政府が努力してやっていこうというのに、みすみす金融機関から優良な企業が見放されていくというようなことになっては大変だと思うのですが、一体金融面から見てどういうふうになっておるのか、大蔵省からぜひその現状をひとつ伺いたいと思います。
  11. 吉田正輝

    吉田説明員 造船業に対する金融支援についての御質問だと存じますが、確かに不況長期化いたしまして、構造不況業、特に造船業については金融支援を望む声が非常に強いと思っております。ただ、先生御承知のとおり、金融機関預金者預金を預かるというような点で健全性にも配慮しなければならない必要がございます。しかしながら、現有の社会情勢あるいは雇用問題、そういうことを考えてまいりますと、やはり金融機関としては可能な限り支援を行っていくのが適切ではないか、かように存じております。これは単に短期的な見通しだけではなくて、中長期的に再建のめどが立つというような場合には、積極的に支援していくのが金融機関立場である、そういうふうに考えまして、関係官庁との御連絡をとりながら指導してまいりたい、かように考えております。
  12. 原田昇左右

    原田(昇)委員 いまの一般論はよくわかりましたけれども、具体的に二、三の例で伺うのですが、造船という業種のためにはもう金融はいやだというようなことを言っている金融機関があるやにも承っておるのですが、そういう点はどうしたらいいのですか。これは金融の面から見て、どうもこういう点をやっていただけばいけるのだとか、あるいは大蔵省はもう少し指導すればいいのだとかいろいろ言われておるのですが、何かもう少し率直にその辺をお伺いしたいのですが……。
  13. 吉田正輝

    吉田説明員 ただいまもうちょっと具体的にという御質問でございますが、私どもといたしましては、金融機関造船業だからだめだというように単純に一般的に考えまして、金融支援を行わない、造船業だからだめだというようなことでは、やはり資金配分適正化とかあるいは日本経済における金融機関役割りというようなことから考えまして、適切ではないと存じております。したがいまして、その場合には、その地域における個々の造船企業重要性なり地方公共団体のその場の判断なり関連業界支援なり、あるいは主務官庁の御判断なりを総合的に判断しながら具体的に援助していくべきだ、かように考えておる次第でございます。
  14. 原田昇左右

    原田(昇)委員 そこで、何と言っても造船不況対策としては、まず第一に需要を造成する必要があろうと思いますが、需要造成にはスクラップ・アンド・ビルドとか官公庁船を大幅にふやすとかいう問題が提起されております。しかしこれらは、後で私、また詳細これに触れたいと存じますが、いずれにしても、予算的な措置等が必要だとすれば、若干時間がかかる問題でございます。一方、操業度はどんどん低下していくわけでございますから、雇用の面でも非常に不安が出てくる、信用の面でも不安が出てくるというようなことになって、特に中手造船所等では相当の問題が生ずるのではないか。  そこで、まず端的にこういう提案をしたいのですが、世界にたくさんいま老朽船がつながれておりまして、スクラップ寸前のものがたくさんあると思うのですが、これを、手持ち外貨がたくさんありますから買って、日本中手造船所等において解体する、そして造船雇用を確保すると同時に、外貨減らしにも役立ち、そして世界の船腹の需給調整にもなる。ですからこの際、相当の買船をすれば、その船主新造意欲も出てくるでしようから、こういう一石三鳥くらいのことをひとつ考えてみたらどうかと思うのですが、いかがでございましょうか。
  15. 福永健司

    福永国務大臣 ただいま原田さん御指摘の点につきましては、私も実は全然同感でもございますし、ここ数日来、業界代表等も私のところへもその点について話すために大勢で見えておりますが、率直に言って、ごく最近まで、そんな仕事をやろうという声は余り強くなかった。それよりも本来の造船の方がまあまあにいっておりましたから、そういうことであったかと言えるのでございますが、いまはとてもそんなことを言ってはいられない。そもそも日本造船関係者は、うんと昔にはこの種の仕事世界の中でも最も上手だった、こう言えると思うのですが、きのうでしたかも私、代表人たちに言ったのです。会長以下ずらり来ましたから。言うなれば、あなた方は造船業界だんなさんみたいな存在だったが、そのだんながぜひとも解撤業をやりたいというようになってきたことは、これは苦しいと言えば苦しいのだが、この動き自体に相漁に意味がある、余り恵まれていますと、それなりに緩みも出るものであるが、こういうような気持ちになって、ここでわが国造船業のたがを締め直すということも、ある意味において将来のために意義深いことであるかもしれないということを申しました。そうしたら同じような気持ちでいるようなことを向こうでも言っておられました。  そこで私は、ぜひそういうようなことにしたいと考え、その関係者等とも、いま原田さんがお話しのドル減らしというような観点から、世界じゆうにはかなり船を持っていてそれが古い、ところが、ほかのものと違ってそう簡単に売れやしないということで、買って日本解撤しようということになると、言うなれば喜んで売るというのも大分あるやに見えるわけでございまして、どのくらいドル減らしということについて貢献できるかというようなこと等についても、ある程度意見の交換をしてみました。きのうの話などでは、そのとおりいくかどうかはわかりませんけれども、相当なことができるような話をしているのです。そこで私は、経済企画庁長官ともきのう話をいたしました。いままでのところ、ドル減らしのための幾つかの項目がございますが、解撤事業などというのは、まだ大きくも小さくもその柱の中にとても入るところにいっておりませんでしたが、きのうあたりの話から言いますと、まんざらそうではない、こういうことでありますので、明後日経済対策閣僚会議をやりますが、そのときにも、これはひとつ取り上げていこうじゃないかということを言ったら、経済企画庁の方でも大変弄んで、そういうものはなかなかないものですからぜひそういうようにというお話も、ほやほやのところでございますが、進んでいるようなので、これはそういういろいろの条件がそろってまいりましたときでもございますので、ぜひ相当な実績をおさめられるような措置をとっていきたい、そしてこの種のものの意欲を大いに盛んにするようにしてまいりたい、そう考えております。
  16. 原田昇左右

    原田(昇)委員 いま大臣から大変政治家らしい高度の御判断を伺いました。大変評価する次第でございます。特に造船の場合、いままでの雇用推移等を見ますと、下請に非常にしわが寄ってきておるのです。下請協同組合構内作業に従事しているのが、一、二例を言いますと、ある造船所ではつい二、三年前二千二、三百人おったのが、いまはたった二百人を切ってしまう、こういうように大幅に整理が行われておるようでございます。そういう意味から言っても、スクラップ事業をそういう下請等も含めてやらせるということになれば、非常な雇用の確保になり、ひいては地域経済の低落を食いとめるということにもなるのじゃないかと思うのです。ぜひひとつ万難を排して推進していただきたいと思います。  ただ、若干事務的にはいろいろむずかしい問題があろうかと思います。たとえば外貨貸し制度というのは、いままでは何か三年ぐらいしかやってない。三年の返済期間か何かの外貨貸ししか考えられていないようですが、きょうの新聞あたりですと、十年くらいのを検討しておられるということでございますが、いろいろな外貨貸しをやる場合に、その程度やっていただかないと、たとえば日本船員の乗っている仕組船を買い戻す場合でも、十年くらいの外貨貸しをやっていただかないととてもやれないという感じがいたすわけです。これについても同様で、スクラップ価格で処分するにいたしましても、長期外貨貸しができないとなかなかうまくいかないのではないかという感じがいたします。  それからもう一つは、買船価格スクラップ価格との差はどういうように考えていけばいいのか、事務的にもう少し御検討をいただきたいと思うのですが、大蔵省通産省からその辺についての感触をひとつ伺っておきたいと思います。
  17. 岩崎八男

    岩崎説明員 確かにスクラップは、鉄鋼業立場から見ましても、年間三千数百万トン消費しておる重要な鉄源と考えておりまして、これの安定的供給というのは私どもも常に考えておるところでございます。ただ、スクラップ価格というのは、特に最近低迷しておりまして、市中発生くずの最上級で二万四、五千円ぐらいでございます。事家発生くずという純分の高い純粋なものが三万円強ぐらいで売れるだろうと思います。古船解撤によるスクラップがどの程度のコストでできますか、私はつまびらかにいたしませんけれども、どうもそういうスクラップの現在の市況、あるいは今後の鉄くず需給等から見まして、これがそう高騰することはないと思うのでございますが、そういう市況の中で、古船解撤によるスクラップというのが経済的にどう成り立つのか、あるいは成り立たせるようにする必要があるのか、そこらについての検討が必要じゃないかというふうに考えております。
  18. 吉田正輝

    吉田説明員 外貨貸し制度長期化についての御提案かと存じますが、ただいまの外賃貸し制度は、外為会計からの預託を受けまして運用しておるのは御高承のとおりでございます。実は、この原資は短期性のものがきわめて多うございますので、できるだけ延ばして、せいぜい三年ということでやっているのがこの考え方でございます。しかしながら、そういうことにつきましても、先生の御提案を念頭に置きまして今後も勉強させていただきたい、かように考えております。
  19. 原田昇左右

    原田(昇)委員 各省ともひとつ前向きでぜひ取り組んでいただきたいと思います。特に外貨貸しの期限の問題等について、輸出促進のときはかなり長期間のファイナンスをやったわけですから、輸入を促進する場合も長期ファイナンスをやれないわけはないと思うのです。多少事務的にはつらいところがあるかもしれませんが、ぜひ長期ファイナンスができるような仕組みを考えていただきたいと思います。これは通産省鉄鋼備蓄の問題もございますし、スクラップの問題は非常にむずかしい問題だと思うのですが、ぜひひとつ前向きに取り組んでいただきたいと思います。  それから、次に伺いたいのは、需要項目としてスクラップ・アンド・ビルド官公庁の船の拡大の問題、それから空港その他に対して浮体構造物が適用できないかとかいうような問題があるようでございますが、それらについて一つ一つ伺ってまいりたいと思います。  スクラップ・アンド・ビルドですが、これについてこの前船主協会その他関係者からもお話を承りましたけれども、なかなかむずかしい問題もあるやに承っております。外航船と内航船と若干問題は違うかとも思いますけれども、これについて運輸省からどういうように推進されようとしておるのか、また問題点はどこにあるのか伺っておきたいと思います。
  20. 後藤茂也

    後藤(茂)政府委員 造船業界が強く要望しております国内船スクラップ・アンド・ビルド政策というものについての考え方を御説明させていただきたいと存じます。  造船業事業量を高めるために国内あるいは海外に支配している老朽船スクラップして、そして新船を建造するような政策をとる、これは現在の造船業の窮状を考えますと、非常に貴重なる一つ提案であり、私どもといたしましても、何とかしてそれが実現するような方向で考えさせていただきたいというふうに考えております。  ただ、実際にただいま日本海運関係を所管している者として御説明すれば、これは御指摘のようにいろいろとむずかしい問題点がございます。現在の造船不況のよって来る原因は、端的に言えば船をつくり過ぎたことにあるということ、現在の商船船主が船を持ち過ぎておるというところにあるわけであります。われわれがいろいろな政策をとりまして馬を水際に引っ張っていくことはもしかしたらできるかもしれないけれども、この馬の腹はすでに水でぼんぼんであり、川の水はどす黒く濁っておるというのがいまの状態であって、先日参考人の人々が意見を述べましたように、簡単に水を飲もうとはしていないというのが現状ではないかと思います。  以下それについてのどのような問題点があるかということをまず申し上げさせていただきますが、第一に海運不況の問題がございます。荷物がないので、どんどん荷物がなくなった船を船主はいまスクラップしょうとしているし、現在スクラップが進んでいる、市場のメカニズムですでにスクラップが進んでいるものに対して、その上にさらにスクラップをさせるということは、荷物があってさらに商売が続けられる船について何かインセンティブを設けてスクラップをするということでなければ、スクラップはこれ以上は進まないというふうに思います。でなければ、逆に新たにつくる船について、現在のように荷物のないところで荷物のない船をつくらなければならないことになる。それは長期に見まして、日本海運経営にとってはまた新しい悩みの種をつくることになりかねません。したがいまして、このスクラップ・アンド・ビルド政策というものは、よっぽど船主立場荷物の状況、船腹の事情、そういったようなことをきめ細かに承知した上で、その上で何がしかの船主が食いついてくる、乗れるような奨励策というものをとらなければならないかと思います。  第二に、スクラップそれからビルドの関係でございますが、たとえば造船工業会が言っておられるように、二トンの船をスクラップして一トンの船をビルドするというふうにすれば、当然ながら支配船腹量は差し引き減るわけでございます。そのことは船員の雇用の機会がそれだけ減るということにつながります。この問題は、ただでさえ今日船員問題というものはむずかしい局面でございまして、この船員の雇用の機会がその面から減っていくということに対してどのように考えるかということでございます。  第三に、海運問題について一昨年以来、今後の長期海運対策というものはいかにあるべきかということで海運造船合理化審議会で御審議をいただいておりますけれども、ここで大きな問題点になっておりますのは、今日のように賃金水準が上がった日本経済を時中にしょって、したがって、日本の船員の賃金レベルというものも相対的に外国との比較で非常に高くなっているわけでございますけれども、そのような日本海運が今後高い船員コストをしょっていかにして国際競争力を保持し、維持していけるかということが今後の長期日本海運の大きな問題点になっているわけでございます。ここで新しく市場のメカニズムで出てくる以上の船というものを船主に発注させるということにつきましては、その今後の日本海運の国際競争力の維持ということについての明快なる政策というものがないままに、競争力のない新しい日本の船をつくるということに陥るおそれがあると思います。そこいらの問題を十分に検討しないで、ただやみくもに新しい日本の船をつくれば、直ちにそれがベターであるという考え方にはすぐにはなり得ない、このように考えます。  それら一連のいろいろな問題というものを背景にいたしまして、冒頭に申し上げましたように、今日日本船主は、新しく日本の船を現在計画している以上につくるということにつきましてちゅうちょしておるという事情でございます。したがいまして、これに対する対策としては、よっぽどきめ細かに、さらに勇断を持っていろいろな施策を考えていかなければ実現はなかなかむずかしいという問題をはらんでいると思います。しかし、冒頭に申し上げましたように、かと言ってこの政策の推進についてわれわれは消極的であるわけではございませんで、国全体としての方策としてこの問題は何とかして実現の方策を求めていくべきではないかというふうに考えております。
  21. 原田昇左右

    原田(昇)委員 いま海運局長からのお話ごもっともであり、理解できるわけですが、お話しのとおり、何とかどろどろの水をされいにして、飲ませ得るような水にして飲ましていく必要があろうかと思いますので、ぜひともひとつ勇断を持ってお取り組みをいただきたいと思います。  ただ、これも余りいつまでも検討ばかりしておっても始まらないと思うので、少し具体的に伺いますが、たとえば新造をしても競争力がないのだ、船員費の問題で先進海運諸国と比べて日本の方が格段に割り高になるというような話も聞くのですけれども、これについては、この前参考人お話を承りましたとき、組合閥で少し話をしようじゃないか、そういうことで、全日海の方もある程度歩み寄りをやろうというような話も出まして、かなり話し合いが行われたということも聞いております。そういう点を踏まえてひとつぜひこの問題に対処をしていただきたいと存じます。  それから、内航船については、船舶整備公団でやるスクラップ・アンド・ビルドのビルドの方についての予算があるわけですが、これ等については、もう少し大幅にこの予算を拡大して増強していく余地があるのではないかと思うのですが、いかがですか。
  22. 後藤茂也

    後藤(茂)政府委員 御承知のように、船舶整備公団は、五十三年度二百四十八億円の事業規模で内航船及び近海船のスクラップ・アンド・ビルド政策を推進するようなレールがむしろ引かれておりまして、ただいまその仕事を進めております。いま申し上げました五十三年度の船舶整備公団の事業規模は、前年度、前々年度に比べますと、相当大規模にこれまでの規模を増強したものでございまして、ただいま私どもは、その内航船スクラップ・アンド・ビルドの実際の進行状況を慎重に注目しております。  それで、海運組合総連合会に新たに船腹調整規程を認可いたしまして、新しいシステムに基づくスクラップ・アンド・ビルドを総連合の仕事として進めさせながら、それに対して、船舶整備公団を通じて従来よりもより船主にとって条件の緩い、いわば奨励的な金融措置を講じてそれを助成しようと図っているわけでございます。まだただいま四月のところでございまして、われわれが予定しております今年度の事業規模というものがどのように消化されていくか、まだ帰趨ははっきりしておりませんけれども、事柄の性質上、当然にこのような内航船スクラップ・アンド・ビルドが順調に進みましても、いまでも内航船の船腹の過剰の状態というものは相当の程度に存在しておりますし、ただいまわれわれが予算上組んでいただきました程度スクラップ・アンド・ビルドでは、全体としての理想的な船腹需給というものの回復にはまだまだ不十分であるということも認めざるを得ません。したがいまして、発足したばかりの新年度の予算の執行というものをにらみながら、今後、模様によっては漸次これを推進してまいりたいというふうに考えております。
  23. 原田昇左右

    原田(昇)委員 外航船について先ほどちょっと触れましたけれども仕組船というのは相当たくさんあるんですね。これなんかも、日本の船員でなくて外国の船員を乗せられるというようなことで仕組船というのが相当出てきた一つの根拠になっておるのではないかと思うのですけれども、中には日本船に全部乗せておるのもある。こういったのをひとつ買い戻して、外貨減らしと、いまの日本の低金利を適用していけば、かえって日本海運の増強になるというような観点から検討を進めてみたらどうかと思いますが、この点はいかがですか。
  24. 後藤茂也

    後藤(茂)政府委員 ただいま御指摘になりました仕組船の買い戻し案というものは、先ほど来話題になっておりますドル減らし対策の一環として一つ検討の材料にされているものでございまして、私どもは、これを直ちに海運政策と申しますか、海運に対する対策観点から積極的に進めるとか進めないとかいう考え方は必ずしもとっておりません。  御指摘のように、日本船主が支配しております仕組船は相当数ございまして、少なくとも外航船隻数で五百隻以上になろうかと思います。また、それらの船を、世上一般に言われておりますように、日本の外貨に借りかえまして日本籍に買い戻し、移籍をするということになれば、それらの船は日本船になるわけでございます。また、先ほど来話題になっております外貨貸し制度をこれに適用するといたしますならば、少なくとも当分の間は、その仕組船船主の実質的な利子負担部分というものは恐らく助かるわけでございましょう。そのような観点から、ある程度のものが移籍されれば、さしあたってドル減らしに対する一つの大きな成果になるということからこの議論が言われております。  ただ、御指摘のように仕組船は大体外国人船員が配乗されておる。また、それがために、日本船員を乗せた場合に比べて船員コストが安くて、それだけの国際競争力がある。これが仕組船がこれほどまでに発展をした一つの原因であろうと思いますけれども、大体五百数十隻に上ると考えられますその仕組船の中の一割弱のものについては、調べてみますと、現在も仕組船でありながら日本人船員が乗っておるというものがございます。それで、日本人船員が乗っているものを日本籍に移籍するということにつきましては、日本に移籍すると、外国人船員をおろして日本人船員を乗せなければならない、その結果、船員コストが高くなるという問題は恐らくないのではないか、したがって、仕組船の移籍については、その日本人が乗っておる約一割程度仕組船については相当に可能性があるのではないかということで、われわれとしても、関係各省との間でさらに検討を進めておるというのが現状でございます。  ただ、船でございますから、先ほども話題になっておりますように、たとえばまだ十年もてる船について、これから先三年だけの金融措置というものがはっきりして、そこから先はわからないよということでは、恐らく仕組船の移籍というものは行われにくいと思いますし、そこいらの点につきましては、新しい外貨貸し金融の条件その他について、担保の問題も含めて関係各省とさらに検討を進めさせていただきたいと思っております。
  25. 原田昇左右

    原田(昇)委員 それでは、官公庁船に移りますが、まず海上保安庁に伺いたいのは、最近のようにいろいろな領海侵犯事件あるいは二百海里の設定によって、海上保安庁の持つ役割りというものが国民に非常に認識され、また、その船隊を増強することがいかに必要であるかということをわれわれ非常に痛感しておるわけでございます。  そこで、海上保安庁には船齢をオーバーした古い船が二万四千トンぐらいあるということも言われておるのですが、これを早くスクラップして代替するということももちろん必要ですし、さらに二百海里時代を迎えて、あるいは領海十二海里時代を迎えて、新しい観点から新鋭船を整備していくということについて勇断を持ってやる時期ではないかと思うのですが、この点についてどういう御見解か、大臣からあるいは長官から伺いたい。
  26. 福永健司

    福永国務大臣 実は、この問うちの尖閣諸島におけるあの問題等と関連いたしまして、いま御指摘のようなことにつきましては、私どももいろいろ検討もいたしましたし、閣僚間でも意見の交換をいたしました。率直に申しまして、あのときに最もいい船を早く現地へやるようにという指令等も私、いたしました。ところが、正直に申し上げますと、北の方の問題であっちの方におったやつを、ないし太平洋の方におったのを急いで行けと言いましても、ずいぶん時間がかかる。妙なたとえてございますけれども、火か消えてからポンプが着いたようなことになってはというか、現にそういうこともあったわけです。それは抜かっているじゃないかというようにおっしゃるかもしれませんが、いままでのところは北も南も東も西もということには、それは一部考えてはおりましたけれども、それに対して完璧なまでの備えはなかったというのが率直なところです。でございますから、いま新しい海洋秩序のもとにおいてどうあるべきかということから申しますと、それは当然のことであり、ことに日本世界の中での海洋国といたしましてそうであるべきだ、こういうように思います。  そこで、古いやつは取りかえるとか新しいのをもっとつくるとかいうことで、新しい予算ができてすぐでございますので、これから来る年度の予算については、これはこれで配意するといたしまして、やはりここで、いままでもある程度考慮をしておりましたけれども、こういうことだけでなくて、さらに配慮すべきものである、そういうことになると、補正予算か予備費かとかいろいろ考えもあるわけでございますが、とても補正予算をすぐにやる、いますぐ通してもらってほしいといま言い出したらまた大変な問題になります。そこで、われわれといたしましては、もともとはそんなことは考えてなかったけれども、私は、尖閣列島の事件があったからどうというのではないのですが、それを言うと角が立ちますから、そういう物の言い方はいたしませんけれども、新たなる二百海里時代、新たなる海洋秩序のもとにおいてどうあるべきかということから申しまして、ぜひこの際増強する措置をとる、おおむね、まだ申し上げるのは多少早いのでございますが、内閣においてもそういうような考え方で臨もうという、表現がむずかしいのでございますが、気配がございます。  そういうことでございますので、そういう考え方のもとに、私は、先ほど勇断というお話がございましたが、勇断ないしはそれに近いような気持ちでぜひ進めたいと考えます。実は、いろいろ具体的にも私、指令をいたしまして、船はどうする、新しいのはどうするという計画を立てるように、まだ私のところに全部は来ませんが、ちょうどその途中ぐらいにあると思いますが、できるだけ早く実施に踏み切りたい、そういうように思っております。
  27. 原田昇左右

    原田(昇)委員 大変前向きな御答弁をいただいて、さすが政治家運輸大臣だと感服いたしておるわけでございますが、たとえば公共事業等につきましては、経済不況のときに公共事業費をふやすということはしょっちゅうやっておるわけですね。そして、どうせ将来橋が要るなら橋をつくっておこうじゃないか、こういう一つの経済のショックアブソーバーみたいなことをやるのが常でございます。海上保安庁の船なんか、いま外国の漁船に、追っかけても追いつかないというような船がたくさんあるのですから、将来のことを考えて、この際少し大幅につくっておくという考え方は、私は決して無理な考え方じゃないと思う。そういう意味から言っても、ことしじゅうあたりでヘリコプターつきの大型巡視船がたった一隻やっとできるという段階ではまことに心細い話でございまして、もう少しこれは十隻とか二十隻ぐらいふやすことを考えてもいいのじゃないかと思うのですが、どうですか、長官。
  28. 薗村泰彦

    ○薗村政府委員 先ほどからのお話、もう全部ごもっともなことで、具体的に申しますと、大臣の指示を受けまして、私ども、片一方では尖閣諸島の対策をやりながら計画を前向きにつくり上げるという作業を目下やっております。いま海洋二法ができまして、それに追いつけということでどんどん整備をいままでやってきたのも事実でございまして、実はお言葉を返すわけでございませんけれども、ヘリコプター搭載の巡視船は三隻でございます。それから千トン型は十隻でございます。それから三百五十トン型は六隻でございます。三十メートル三十ノットは八隻でございます。  そういうことで、私、決して数字で多いということを申し上げておるわけじゃございませんで、足りないことでございますが、いままでやってきた数字をちょっと申し上げさせていただきますと、五十二年度と五十三年度の両年度の予算を通じましてトータルしますと、たしか巡視船艇で代替が二十一隻、増強が十八隻という数字でございます。しかし、ここ一週間来の尖閣諸島の現状を見ましても、私ども海上の警備に当たる者として種々な想定をしておったのは事実でございますけれども、このぶつかった事態というのは、少し予想を上回るような異常な事態である、これではいままでの計画でどうであろうかということを謙虚に反省もいたしておりますので、繰り返すようですが、大臣の御指示を受けて前向きにこの件については行っていきたいと思います。
  29. 原田昇左右

    原田(昇)委員 それでは、次に防衛庁の方に伺いたいのですが、防衛庁につきましても、この際、古い船をリプレースするということを大幅にやってみたらどうかと思うのですが、どうですか。
  30. 西廣整輝

    西廣説明員 防衛庁の艦船建造につきましては、実は潜水艦、護衛艦いろいろございますけれども、一例を具体的に護衛艦について申し上げますと、一昨年できました防衛計画の大綱で六十隻を維持するというのが基本的な計画になっております。それに対して現在五十八隻持っておるわけですが、それではもうほとんどいっぱいだなというようにお考えになるかもしれませんが、御案内のように、護衛艦は建造に大体五年かかります。したがいまして、いま着手しても五年後になるということで、現在もうすでに既定分ができ上がってくる段階ですが、これが五十七年末の段階になりますと五十一隻まで減る形になります。そういうことで、私どもといたしましては、経済、財政事情その他いろいろな面を勘案いたしまして、事情の許す限り建造を早めまして、できるだけ落ち込みを少なくしたいというのが希望でございます。そういうことでございますので、諸般の情勢が許す限りはできるだけの艦船建造を進めていきたいというように考えます。
  31. 原田昇左右

    原田(昇)委員 ぜひ防衛庁にも十分な御検討をいただいて、古くて性能の悪いのはどんどんリプレースする、この際ひとつ大幅なリプレース計画を立てていただきますようにお願いする次第です。  それから、空港の問題ですが、大臣は、関西新空港も浮体工法で考えてみたらどうかというお話をされたことがありますが、空港建設に浮体工法を使うという問題、これについてどの程度具体的に研究が進んでおるのですか。
  32. 福永健司

    福永国務大臣 研究の点につきましては、専門的なお答えも申し上げますが、関西新空港につきましては、埋め立てを主体とするという答申は得ておりますが、その後ずいぶん何年もたちましたし、その問に造船等の技術がいろいろ進歩もいたしております。そして私、このたびの成田の問題を経験しつつ思いますことは、海を埋め立ててあちこちの山や島を削ったり、そして海を濁らせたりということでうまくいくかどうか非常に心配でございます。うまくいってもらえれば大変結構ですけれども。  そこで、主体とするという答申でございますから、いい空港をつくるということになりますと、何も埋め立てでなければならないとか、あるいは桟橋方式でなければいかぬとか、あるいは浮体工法だけでなければいかぬということでは必ずしもない、それらをいかに組み合わせるかによって、最も合理的にいろいろの目的を達成しつつうまくやれるかということ等もあろうかと思います。  そういうこと等も考えまして、浮体工法というようなことも、あの場所につくるとするならば考えたらどうか、こういうようなことを申したわけでございます。したがって、そういうこともいまいろいろな調査とともに考えていてくれるようであり、協議してもらっているところであります。地元の意見等も尊重しつつうまくやっていきたい、こういうように思うわけでございます。  ところが、その地元の中に、ごく最近になりまして、泉州沖が浮体工法でどうこうというようなことがあったら、ひとつわしの方でやろうではないかと言って、いま言うとなんですが、もうどうせそのうちに新聞に出ると思いますけれども、よそから少し移動をしておれの方で引き受けようじゃないかというようなところもあらわれてきた。しかし、これは地元をうまくやるということでどっちがどうということは私としては言いたくございません。いずれにしても、みんなでよく相談してみてもらいたい、こういうように思っておりますが、造船日本の真価が幾らかでも発揮できるようなことというのは、これまたほかの面からも望ましい、こういうように看えておる次第でございます。
  33. 謝敷宗登

    謝敷政府委員 浮体工法によります空港の建設につきましての調査は、五十二年度から始めておりまして、私の承知しているところでは、空港特会から私どもの船舶技術研究所と港湾技術研究所に対して、それぞれの項目に分けて工法としてのシステムを評価し得るだけの調査を二年間でやるということになっていると承知しております。
  34. 原田昇左右

    原田(昇)委員 いまの大臣お話大変結構だと思うのですが、いまの局長の話だと二年間かかって研究する、それができなければ一向できないというように承るのですが、それじゃちょっと困るのです。飛行場部長おられるので、もう少し前向きに、少なくともいま大臣がおっしゃったように、関西新空港はいまの二年くらいかかって研究されるのも結構ですけれども、もっと手軽な空港でどんどんやってもらったらどうかと思うのですが、どうですか。
  35. 田代雅也

    ○田代説明員 調査の進行状況につきましては、ただいま船舶局長がお答えしたとおりでございまして、昭和五十二年度から五十三年度にかけまして両研究所におきまして浮体工法を検討しておるわけでございます。  浮体工法の問題でございますけれども、何分にも世界的にも国内的にも前例のないことでございます。やはり航空の立場から申しますと、何と申しましても安全性が問題でございますし、また空港の耐久性の問題、さらにはそれの経済性、性の問題もございます。その点につきまして慎重に検討することが重要であると思いますが、先生の御趣旨もございますし、また大臣の御趣旨もございますので、できるだけ早急にめどをつけましてやりたいと考えておるわけでございます。  また、関西新空港につきまして話題に出ておるわけでございますが、それ以外に、関西新空港は非常に大きなプロジェクトでございまして、地元の方々、環境に対する影響等の問題もございますので、こういう点につきましては、われわれとしては慎重な立場で行動しておるわけでございますけれども、それ以外の空港、それより規模の小さいところについて関西新空港の前に試験的に行うことが可能であるかということも、また場合によっては検討しなくてはいけないと考えておるわけでございます。
  36. 原田昇左右

    原田(昇)委員 ぜひひとつ御推進をお願いしたいと思います。  それから次に、経済協力の分野で無償協力等で船舶が欲しいという国について、むしろ積極的にこちらから調査して供与するということも考えられるのじゃないか。ヨーロッパの経済協力の大勢を見ておりますと、かなりそういう面で積極的に船舶の協力を行っておるやに聞いておりますが、これについてどういうふうな状況であるか、外務省から……。
  37. 藤田公郎

    藤田(公)説明員 先生指摘の無償協力と申しますのは、経済開発等援助費という名目で五十二年度は百八十億円、本年度は飛躍的に伸ばしていただきまして三百九十億円が計上されておりますが、これは主として民生安定という目的のために医療施設とか学校等を主としていままで協力の対象としてきたわけでございますが、そのうちの一つ項目として水産関係援助というのがございまして、昨年の例で申しますと、五十二年度総額で百八十億円中三十億円、本年度三百九十億円中五十億円が水産関係になっております。この水産関係の無償というもので漁船または漁業訓練船というものを大体毎年供与しておりますが、一般の貨客船というものを無償援助の対象ということは、いままで援助の性格及び規模から申しまして対象といたしておりませんで、むしろ円借款の対象としては、去年の暮れでございますが、チュニジアに鉱石運搬船というのを供与しておるというのが最近の例でございます。
  38. 原田昇左右

    原田(昇)委員 円借、無償を含めまして大いに活用をしていただいて、押しつけるわけにいきませんが、待ちの姿勢ではなくて積極的にこちらから出せるものは出すという政策をとっていただきたいと思います。円借も使い残し、無償も使い残しということがないようにぜひお願いしたいと思います。  それから、最後にお伺いしたいのですが、最近の造船の倒産例を見ておりますと、連鎖倒産でやられるケースも相当ありますし、また造船所が倒産に遭って下請が非常にまいってきておるわけです。十七社造船所が倒産したために、延べ約百の下請企業が四十億にわたる不良債権を抱えて四苦八苦しておるというような状況も聞いております。  そういう状況でございますので、需要を造成するのにどうしても時間がかかる、そのタイムラグを埋めるためにも連鎖倒産防止という制度、中小企業の連鎖倒産防止は共済制度でございまして、千二百万円が限度になっておりますが、造船に対して何かもう少し考えていただかないと、これじゃとてもカバーできないと思うのです。中手企業はこの範囲外になってしまう。また千二百万円ぐらいではとても話にならぬ。こういう面から言っても、信用保証ということをどうしても考えていかないといけないのじゃないかと思うのでございます。  特に冒頭申し上げましたように、造船というのは、最近銀行からも相当冷たい目で見られておるということでもあり、また担保余力というものが非常に枯渇しておるということも聞いておりますので、何らかの措置が必要ではないか、この点についての当局の見解を承りたいと思います。
  39. 謝敷宗登

    謝敷政府委員 昨年の中堅及び中小造船所の倒産につきましては、先生指摘のような事例が見受けられます。そこで基本的には、中小企業に属します造船所につきましては、先生指摘の中小企業信用保険法によりまして倒産関連防止ということで対策をとりましたが、何分金額的に船価の大きさから比べると小さいというのが実例でございます。確かに中堅、中小造船所は一生懸命企業努力をし、この状態の中で船をつくっておるわけでございますが、たまたま船主の倒産によりまして船が引き渡せなくなる、担保としての価値はあるのですが、最近のような海運事情でございますので、担保価値にまでなかなか船が売れないということで、ややもすると売り急ぎをするということで必要以上に差額が生ずる、こういう事例がございます。  そこでこの関係では、一つ一つの船の価格の大きさ及び中堅造船所にもこの問題が及んでいるということを検討いたしておりまして、この点につきましては、共済制度に準じてあるいはある種の基金のようなものをつくる必要があるということで検討しております。  ただ問題は、船主の倒産によるケースは非常にはっきりするわけでございますが、キャンセルという点でどこまでどうこの対象の中に入れるかということ、それから関係造船所、これは全体の問題でございますので、先ほど申しました共済の意味でどこまで参加を求められるであろうか、こういう点をいま詰めておるところでございます。
  40. 原田昇左右

    原田(昇)委員 時間でございますのでこれでやめますが、いまの信用保証の問題は、ひとつ早急に御検討いただいて結論を出していただきたいと思います。これは大臣にもぜひお願いしたいところでございます。  いずれにいたしましても、造船不況を解決するには、もちろん業界に自主的に努力していただいて構造改善をやっていただくことがまず先決ではありますけれども、現在の状況においては、政府がイニシアチブをとってある程度需要造成をやっていかなければ、とうていこの底なしの不況を脱出できないということは明らかでございます。しかも、その社会的な影響が非常に大きいというところでございますので、ぜひとも総合的な、政府の強力な施策を推進していただきまして、この不況脱出にひとつ努力していただきたいと存じます。私どもも、そういう観点からあらゆる努力を惜しまないつもりでございますので、ひとつよろしくお願いいたします。  ありがとうございました。
  41. 増岡博之

    増岡委員長 久保三郎君。
  42. 久保三郎

    ○久保(三)委員 造船不況問題というのは、造船とはうらはらというか、海運造船というか、そういう形で問題をとらえていかねばならぬことは、いまさら言うまでもないのでありますが、これまでの二回の集中審議というか、その中でも申し上げたとおり、最近の政府施策というのは、たとえば特定不況産業安定臨時措置法というようなものに見られるように、後追いというか、事後対策が中心なんですね。先ほど大臣がおっしゃったように、火事が消えてからポンプが到着する。ポンプじゃ用が立ちませんからポンプでなくて清掃単かなんかでも持ってきた方がいいのですが、まあポンプなんですね、だから全然役に立たない。つぶれるものにそれじゃだめなんです。  構造不況対策の法案、いま参議院で審議中でありますが、これを静かに見ていっても、造船業対策に一体なるのだろうかというような疑問を私は持っているのです。というのは、スクラップをするわけなんですが、そのスクラップする船台に担保がついている、その担保を抜かなければスクラップはできない、だから信用保証をしよう、一つはそのための基金を設けようというようなことにとれるわけなんでありまして、これはまあ、全然なくてもいいとは私は申し上げませんけれども、物の考え方が少し違うのじゃないかというふうに思っておるのです。  いま造船の問題が一番問題になっておることは事実でありますが、同時に、海運の問題も問題になっているんですね。何が一番問題かと言うと、不景気が問題じゃなくて、もちろん不景気というのは原因なんですが、結果としてやはり雇用の問題が問題なんですね。飯が食えなくなるという問題です。だから、これはやはりそういうものに焦点を合わせていただかないと問題が解決しない。  たとえば先ほどもお話が出ましたような仕組船の買い戻し、なるほど買い戻しした場合に、船主側において利息の差額が多少メリットとして出るだろう、それからもう一つは、政府ドル減らし政策には多少メリットがあるかもしれない、しかし、これは雇用安定とか業界の体質改善には、はっきり言ってさっぱり役に立たないのです。  そこで、この造船海運の問題に焦点をしぼりますならば、害うまでもありませんが、造船は何と言ったって船をつくることが中心産業であります。その他にもいろいろ、先ほどの浮体構造物とかいうようなものもありますが、これは言うならば余技というか本業ではないのであります。もっとも大手には本業として陸上部門の問題もありますが、造船という問題にしぼれば、船をつくること以外に問題はないのです。その船をつくる、それがつくれない。これは言うならば、つくっておいてストックしておいて、売れるときにひとつ適当に売っていこうという品物ではありません、オーダーメードでありますから。そこにオーダーするものは海運産業であるということになるわけですね。  だから、いま対策としてやるのには、造船業のためには船をつくらせる、船をつくらせるためには海運の問題をまず解決しなければならぬ。その海運の問題というのに何があるかと言うと、国際競争力が低下しているという理由のもとに、今日まで仕組船あるいはマルシップ、便宜置籍船、こういう形を含めて外国用船の比重が多くなってきた、大体半々ぐらい、あるいはそれ以上に支配船腹量は持っておるわけですね。そのかたがた、今度は船員の雇用はどうかと言うと、予備員率は七二%ぐらいになっている。適正予備員率をはるかに上回っているというようなことがあるわけですね。  そこで、先般通過した雇用安定の離職者対策法ですか、これは雇用促進センターというか、そういうものを設けて、そこのルートを通して外国船に日本の船員を配乗させるというようなことも窮余の一策として考えてきている。しかし、大筋からいけば、これはオーソドックスなやり方ではない。もっとも政策が変われば、これもそうであるかもしらぬ。しかし、船員の雇用の安定ということになれば、いまの船員法のたてまえから言って、これは日本船籍の船をふやすということ、だから、いま言ったように外国用船が多いのですから、外国用船から日本船籍の船に置きかえるということをまず一つ考えるのが当然だと思うのです。そして置きかえる場合には、船腹過剰でもありますから、やはり減船の傾向は多少やむを得ぬ、しかしながら、経済性は追求していかなければならぬ。だから、スクラップするものは不経済な船をひとつ探してスクラップの対象にしたらどうか。これはだれも考え得ることですが、そうすることによって造船の方の仕事スクラップとビルドが出てくるということだと思うのです。そうすれば両方の雇用が一応確保され、安定するだろうというように考えるのは理の当然だと思うのです。そういうところに焦点を合わせないと、少し政策がぼやけてくると思うのです。  それからもう一つは、いま焦眉の急という言葉がありますが、ことしの夏くらいには船台には船が一隻もない、予約もないというかっこうが予想される。そうすれば、五年先や十年先の話をいますることは、むだとは言いませんけれども、それを含めての必要はありますが、まずさしあたり何をするかという問題を取り上げてもらわなければ、問題の解決にはならぬと私どもは思うのであります。そういう意味で、これから幾つか御質問をするのですが、運輸大臣、どうですか。  それからもう一つは、いままでの御答弁の中でかなり積極的でありましたが、五十三年度予算は通ったばかりでありますが、われわれがいま言っているようなことは新たな予算措置なり政策の展開です。しかし、五十三年度予算の中には、そういうものの展開ははっきり言ってないのです。だから少なくとも、国会がまだ終わらぬうちに補正を組めとは私は言いませんが、補正の芽を出せ、言うなら項目だけでもいいからつける工夫はないものか。ちょっと性急な話でありますが、というのは、繰り返し申し上げますように、船台にはこの夏で船はなくなってしまう、将来の見込みもないということでは、これはどうにも維持する方法はないと思うので、そういう対策をとるべきではないかというふうに思うので、大臣からひとつ御所見を伺いたいと思います。
  43. 福永健司

    福永国務大臣 いま久保さんから御指摘の点は、一々ごもっともに私も拝聴いたしたわけでございまして、お話のようにぜひここで次への芽を出す、船台に何にも船がないというようなことになってはならぬというような御指摘、この御指摘に対応する措置をとらねばならぬと思います。われわれは、そういうような観点から多少の考えも持っておるわけでございますが、お話がございましたように、予算が成立してほんのわずかしかたっていないその同じ国会で、補正とまでは私もちょっと言い出しにくいのでございますが、しかし、焦眉の急という言葉をお使いになりましたが、まさに焦眉の急に備えるために、福田総理も臨時、異例の措置と言いましたが、しかし、政府がそう言ったのと意味は多少違うにしても、臨時、異例の措置が別途またとられてしかるべきものだと私は考えるわけでございます。  先ほどちらっとなにいたしましたが、特にそういうようなことについては若干の予備費等もございますから、これらも私の観点からしますならば、まず優先的にこちらでもらうものはもらって対策を講じなければならないというように考え、もちろんそういうことだけですべてが足りるものではございませんが、いずれにしても焦眉の急に対応する心構えでいろいろ取り組んでいきたいと存ずる次第でございます。
  44. 久保三郎

    ○久保(三)委員 心がけというか気構えというかお話がありましたが、幸い来月中には総理大臣代理におなりになる予定のようでありますから、そこで閣議を開いてきちっとお決めいただく機会もなきにしもあらずなんであります。ぜひがんばっていただきたいと思います。  そこで、これは海運局長にまずお尋ねしますが、海運局長は、先ほどの御答弁の中でも、国際競争力というか海運にメリットがないようなスクラップ・アンド・ビルドは困る、そのとおりであって、単なる船をつくればいいということでもないのでありまして、先ほど言ったように、海運の体質改善をいまこの際こそやるべきだと思うのです。集約して十五年くらいになりますね、これはこの間申し上げたと思うのですが、十五年たって中核六社の財務状況を見ると、自己資本の比率というのはちっとも変わっていないのです。何が変わったかというと、支配船腹量が膨大になった、それから過剰船腹を持っているということ、それから予備員率が多くなったということ、それでは何のために集約したのか。結局これは政策なり企業方針の誤りであるということなんです。この反省をひとつしてもらいたいと私は思う。別に後藤海運局長が十五年間全部やってきたわけじゃないからどうかと思いますが、新しい海運政策を立てる場合には、そういう反省の上に立ってやらなければ、単にいまある姿を多少の手直しとか、あるいは延長線上で物事を考えることは私は誤りだと思うのです。  しかも、環境は変わってまいりました。発展途上国の押し上げもあるだろう、あるいは東欧諸国の海運の圧力もあるだろう、あるいはそうでなくても、UNCTADの同盟憲章を中心にした、言うならば民主的な海運のあり方があるわけであります。中核六社を中心にした十五年前の集約というのは、海運の自由、海洋の自由というようなことを中心にして、わが海運はどうあるべきかということになっていたと思う。それの中心的な課題は船腹増強ということ、その柱は計画造船だった。ところが、いまや計画造船も魅力がない、こういうわけです。  そうだとするならどうするのかという問題がある。結局、話は短絡しますけれども、いま当面する造船海運をくっつけた政策を展開しなければならぬ。  繰り返し申し上げますが、この際こそやはり海運の体質も変えてもらう、雇用政策もきちんとしてもらう。船員局長もおられますが、いままで運輸省の中で船員局というのは、行政改革でなくなるかもわからぬというような話題に上るほどの言うならば局であった。ところが、いまは天と地のひっくり返った話だろうと思うのです。先ほど私が言ったように、雇用をどうやって確保し、安定するかという問題になれば、本来ならば船員局長が中心になって船舶局長海運局長に大体あなたたちこうやれ、こうやれと言うわけにはいかないかもしらぬが、職制上こうすべきであるということを提案していかなければいけないのであって、このままでいったらどうなるのです。早く言えば日本の海員、そういう技術者は、ある年限が来たら断層が来て、船はありますが乗る人はおりません、いやでもおうでも世界から労働力を集めてこなければならぬということになる。そういうことを果たして予想しておられるのかどうかということ、船員の雇用の安定計画とは何だ、養成計画というのはどういうふうに展望を持っておられるのか、これは後からお答えください。  海運局長に先に聞きますが、いまの問題を中心にして、しかも、もう一つ申し上げたいのは、船主協会を中心にした話です。これはあなたもそうだと思うのですが、スクラップはいい、わかった、しかしスクラップするのにも金はかかります。だから、これを何とかしてくれという話も聞いております。これは金で解決することでありますが、ビルドはちょっと待ってくれと言うんですね。われわれははっきり言うと、ビルドしてもらわなければ困るのです。ビルドした船は日本の船籍にしてもらう、仕組船とかマルシップとか便宜置籍船、そういう形でのビルドは一切御免であります。われわれははっきり言って、そういうために金を支出する考えは毛頭ありません。何でビルドにはそういうふうに猶予期間を置いてほしいというのか私には解せない。そのことをお答えいただきたい。  以上です。
  45. 後藤茂也

    後藤(茂)政府委員 お答えいたします。  第一点の海運集約からまさに十四年経過いたしたわけでございますが、その成果は上がっておらぬではないかという点でございます。これについて御説明申し上げますが、海運集約の成果といたしまして、日本海運の相互の競争、荷物の取り合い、その結果、日本海運全体が、国の犠牲においてあるいは納税者の犠牲において衰退するというような事態は、この集約の前と後と比べてみますと、格段の相違があるのではないかと私どもは考えております。日本海運全体としての営業上の協調という体制は、この十四年間に相当の成果を上げておりますし、海運造船合理化審議会で今後の長期海運対策というものをただいま御審議いただいておりますけれども、この論議の過程におきましても、この集約体制というものは、集約直後の五年間の法律上の裏づけはなくなったけれども、なお今後とも維持する方向がよろしいのではないかというような御論議が多数を占めているというのが現状でございます。  また、このような集約のもう一つのねらいは、船主に大量の船舶建造を可能にするような金融上の基礎を与えるというねらいがあったと承知しております。その結果、集約後、先ほどからいろいろと御指摘、御批判がございます仕組船、計画造船ももちろん大量建造いたしましたが、そのほかに仕組船も含めて本当に実質世界第一位の日本海運というものを達成いたしました。統計上四千万トンと言っておりますけれども仕組船を入れると一億トン以上になるのではないかと思われるような世界第一位のフリートをつくったのは、三光汽船を別にすればこの集約六社が中心になってやったわけでございまして、この点につきましても、集約の成果というものについて大騒ぎしたけれどもだめだったじゃないかという点の御批判は、お言葉を返すようでございますけれども、私どもは、必ずしもそのようには考えておりません。  ただ、日本の船でもって一億トン船ができるところが半分はリベリアの旗が立ってしまった、これはどういうことだ、これは明らかに御指摘のように、昭和三十八年、九年の論議の際には、恐らくは船主の方もそれから政策当局者も念頭になかったことでございまして、その後の日本経済発展世界経済の動きの結果、ほめた話ではございませんが、このようなかっこうになっておるということでございまして、そういうようなことになぜなっているのか、今後の日本海運というものは、日本人が乗った日本籍の船を中心にしてどのように維持していかなければならぬかということを、たびたびおしかりを受けておりますけれども、一昨年の暮れ以来一年半にわたって海運造船合理化審議会で御審議をいただき、近々その答申の骨子のごときものがまとまるところにまで来ておるわけでございます。  これは、たびたび言われておりますように、やはり日本海運の運航コストが、最近非常にのしてまいりました近隣諸国の船員を乗せた船の運航コストに比べて相対的に高くなってしまったということの一つのあらわれではないかと思います。したがって、今後の対策というものは、ただいま申し上げましたように、海運造船合理化審議会の最終的な答申はまだ出ておりませんけれども、これは、やはり日本の船員を乗せて日本に籍を置きながら、なおかっ近隣諸国の人が乗った船と比べて拮抗できるような条件をつくり上げるのでなければ、これは何と騒いでみても船員の雇用の機会というものはだんだん先細りになっていくしかないのではないかというのが私ども考え方でございます。  御質問の第二点のスクラップ・アンド・ビルド政策というものについてただいまいろいろとお話が出ておりまして、このスクラップ・アンド・ビルド政策については、今後の日本海運のあり方というものを考えに入れながら実施に移すべきであろうという御指摘は、先ほどもこちらもそのように申し上げましたけれども、そうでなければならぬというふうに思っております。  船主協会の人々が、あるいはこの問題について、スクラップはいましますけれども、ビルドの方は二、三年待ってくれませんかという趣旨のことを述べておりますのは、先ほど来るる述べておりますように、このスクラップ・アンド・ビルド政策というものは、一見造船のためには本当にこの際窮余の策として貴重なる提言であろうかと思いますけれども海運の側から見ますと、大体荷物がないのですから、スクラップ・アンド・ビルドでなくて、スクラップするあるいは海外売船するということが現在大量に行われておる、そういう状態のもとでさらに新しい船をつくるということは、現在荷物がある船をつぶしてその荷物を積む新しい船をつくるということでなければ商売上は成り立たぬはずでありまして、それがうまくいけば、スクラップするけれどもビルドは待ってくださいという話は消えるのではなかろうかというふうに私どもは思っております。  その意味では、船主の方々がスクラップはすぐやりますけれどもビルドは一年待ってくださいという話に、私どもがそうだそうだと思っているわけではございませんので、むしろこのスクラップ・アンド・ビルド政策というものは、国際競争力がちゃんとあって、したがって、この運賃市況でもとにかく何とか見込みが立って、端的に言えば日本の船会社ができ上がった船の設計図と能力とを見て、この運賃市況で十年間持てるわなという自信のつくような条件をつくるのでなければ、スクラップ、アンド・ビルド政策というものはできないというふうに思っております。  また、その一面におきましては、ただいまもいろいろと海運労使の間で話が進んでおりますけれども、船員のいろんな制度の近代化その他の問題についてのお話というものが労使の間でさらに進展することが必須の条件ではないかというふうに考えております。
  46. 高橋英雄

    ○高橋(英)政府委員 先生から二点御指摘がございましたが、一つは今後の雇用政策をどうするか、もう一点は船員の養成規模等についてどうするのかということかと思います。  最近の船員の雇用情勢は、御案内のように大変厳しくなっております。有効求人倍率で見ましても、陸の〇・五以上に対しまして五十二年の暦年の推移でございますが、〇・三前後ということでございます。また、先生指摘のように、特に海運会社の一部におきましては、雇用船員の例の予備員率というのが非常に高くなっておる、あるいは海員学校、商船大学、商船高専等の新規の学卒者、海員学校は別にしまして、特に商船高専、大学の新卒については、海上企業へ就職することがこの一、二年大変困難になっております。こういった情勢を踏まえまして、運輸省といたしましては、今後の雇用対策をどうするかということについて、昨年、船員中央労働委員会に諮問をいたしまして、幸い昨年の十二月にその御答申がいただけまして、私どもとしては、この船中労からいただきました「今後の船員雇用対策の基本方針」というものを基本として今後の雇用対策を進めてまいりたい、かように考えておるわけでございますが、具体的に申し上げますと、まず基本的な対策といたしましては三つございます。  一つは、目下海運造船合理化審議会におきまして、今後の新しい海運政策を審議中でございますが、先ほどの先生のお言葉をおかりすることになりますけれども、船員局の立場としましては、この新たな海運政策の中で、日本商船隊の中におきまして日本船員を配乗する、日本船舶を確保するということを強くお願いいたしておりまして、こういうことによって日本船員の職域を確保するということが第一点でございます。第二点としましては、船舶の技術革新に応じまして船員制度の近代化を図っていく。これは蛇足のようでございますけれども日本の船舶の国際競争力を高めるためにもメリットがあるというふうに考えております。それから第三番目が、船員の養成規模を適正化するということ、この三つが今後の雇用対策の基本的な問題であると考えております。  それから、具体的に比較的効果が早くあらわれるというふうな雇用対策といたしましては、次の二つのことを考えております。一つとしては、これは昨年の末に成立いたしました船員の雇用の促進に関する特別措置法によりまして、特に特定不況業種である近海船等、こういう業種の方の離職船員につきましては、この法律の給付金制度の運用によりまして、再就職の促進あるいは生活の安定を図るということをやっております。それからもう一つは、これも先ほど先生がお取り上げになりましたこの法律に基づいて近く設立を予定されております船員雇用促進センターを通じまして、離職船員及び過剰な雇用船員を外国用船等に積極的に配乗することによりまして、新しい日本人船員の職域を拡大するということで雇用の促進、安定を図っていきたい、かように考えているわけでございます。  それから、ただいま申し上げました中に出てまいりました船員の養成規模の適正化という問題、これは現状が船員の需給状況が非常に供給過剰ということで、商船高専、商船大学の学生が卒業しても海上企業へ就職することが困難というふうな状況でございますけれども、ただいまの海運会社におきます船員の年齢別の構成規模というものを見てみますと、若い人が少なくて中高年の方が多い。数字はちょっと不確かでございますけれども、従来は四十五歳以上の方が全体の船員の一一%前後を占めるというのが通常の推移でございました。それが最近では二三%前後ということになっておりまして、遠からず若い船員が必要であるというふうなときが来るのではなかろうかということでございまして、ただ現状だけを見て直ちに規模を云々するということは問題があろうかと思いますし、また他方におきまして、この船員の教育なり訓練のあり方にかかわりがあるという事項が三つ、目下流動的であるという事態がございます。  それで一つは、国際的な問題といたしまして、政府間海事協議機関でございますが、IMCOにおきまして、船員の訓練及び資格に関する国際条約が検討されております。そして、これはこの夏には採択されるというふうな見込みになっております。また国内におきましては、先ほど申し上げましたような船員制度の近代化という問題が検討されております。これは五十二年度と三年度で一応検討を終わる予定になっております。それからもう一つは、先ほども申し上げましたように、海運造船合理化審議会におきまして、新たな海運政策というものが現在鋭意検討されておる。これらの問題は、いずれも船員の教育及び訓練の内容あるいは規模に大きな影響を与える問題でございますので、私どもとしましては、これらの問題点についての推移というものを踏まえながら、しかしながら、今年度中できるだけ早い機会に、海上安全船員教育審議会に船員の教育訓練のあり方について諮問をし、検討をしてまいりたい、かように考えている次第でございます。
  47. 久保三郎

    ○久保(三)委員 船員局長に続いて聞きましょう。先ほど言ったように、日本の船員がだんだん雇用の機会を失っている反面、日本船主の支配船腹量の半分以上が外国船である。形を変えた日本の船なんでありますが、それに、結局船員費の問題ということで、言うならば外国船員を乗せている。  それで、話は違いますが、御承知のとおり陸上では、外国から労働者を入れてくることについて政府はこれを禁止しているわけなんです。これは理屈を言うわけじゃありませんけれども、形を変えたやり方で、外国の労働者を使って日本の労働者が失業しているということはいかがにお考えでありますか。
  48. 高橋英雄

    ○高橋(英)政府委員 大変むずかしい御質問でございますけれども、確かに陸上では、政府の方針としてそういうふうなことが決められておるのでございますが、海上につきましても、やはりその趣旨は尊重しなければならないというふうに私ども立場としては考えております。したがって現状は、まあ海運政策上やむを得ないことかと思いますけれども、私ども立場としては好ましいことであるとは考えておらない。したがって、今後の海運政策においては、やはり日本人船員を配乗する日本船舶を確保していくということをお願いしていくと同時に、当面の措置として、そういう外国用船に日本人船員を船員雇用促進センターを通じてどんどん乗せていくというふうなことを進めたい、かように考えているわけでございます。
  49. 久保三郎

    ○久保(三)委員 実情について知らぬわけじゃありませんが、まあ無理難題をふっかけるような話かもしれませんけれども、やはり国が決めた方針は正しく行うために努力するというのが行政官の姿勢だと思うのです。形を変えたやり方で、まあ曲がっているわけですね、だから、これを認めざるを得ないから、曲がったままで多少これにということでは、これは迎合という雷葉がありますが、政策現状に迎合していっている。もちろん、そういうことが必要な場合もあるんですよ。しかし問題が問題ですからね。現状を踏まえて、それじゃやむを得ぬから仕組船にも乗ってもらおうじゃないかというのは、これははっきり言って本筋としては受け取れない。  だから、問題の根源は何かと言うと、船員費が高いということでしょう。何で高いのかという問題も一つありましょう。しかし現況では、日本海運の国際競争力の問題にとって船員費が高いことは二次的な問題だと私は思っているんです。これは海運局長に聞いた方がいいかもしれませんが、二重に賃金を払っているようなかっこうですからね。はっきり言って、これは船員費ではないのです。  それからもう一つ海運不況の大きな原因は、用船に言うなら的確な判断ができなかったものが多い。たとえばオイルショックというのは偶発的なものといえば偶発的かもしれませんが、あのときに大型のタンカーをどんどん用船していった、それでつぶれかかった会社もありますね。会社の放漫経営というか、そういうもののために国際競争力をなくしているという問題がありますね。  そういうものを考えないで、船員費が高い、船員費が高いと言うけれども、大体三回くらい世の中で言うとそれが定着するものでありますが、仏の顔も日に三度というから、その筆法でやっているのかもしれませんけれども、これは海運局長に聞いた方がいいと思うのですが、船員費が高いために国際競争力がなくなっているのかどうか、私は違うと思う。  経営全体として言うならば、先ほど自己資本比率も申し上げたように、はっきり言って内部蓄積がないのです。全体として体質的に弱っているのです。どんどん高度成長時期に金を借りて、金を貸すから船をつくれ、つくった船は用船しよう、これでどんどんやっていった。そういうところの問題をいま改めて検討し直さなければ、日本海運の今後のあり方というのはむずかしいのじゃないかと思うのです。  それでさっきも、これまでの延長線上や手直しではだめですということを言っているわけなんです。これはどういうふうに考えているのか。船員費が高いから国際競争力がなくて、外国の船員を乗せるために便宜置籍船というまことに便宜的な方法でやっておられるのか。そして仕組船という建造方式も半ば認知していこうというのか。今後も仕組船方式をとろうとするのかどうか。私はこれは問題だろうと思うのです。  海造審でどういう答申をお出しになるかわかりませんが、日本の船で日本の船員を最小限度とる。もっとも外国用船を一杯もやっちゃいかぬなどというやぼなことは言いません、輸送には波動がっきものですから。しかし、用船もでき得べくんば日本の船を用船してもらうということが本筋だと思うのです。しかし、その辺のところは、今度のスクラップ・アンド・ビルドにしても、私はビルドを待ってくれと言うのです。船腹過剰と言うが、全体が過剰ならまず第一に外国用船、その中には仕組船も含めてマルシップもあるでしょう、マルシップは二百隻かそこら少なくともあるのじゃないですか、そこで、そういうものを持ってきてつぶしてください。そうして日本船籍の船をつくってください。これは荷物を積んで動いているのでしょうからね。動かない船をスクラップするだけでは困るのでありますから、いまのようなマルシップ、それから仕組船仕組船かなり新しいものが多いようですから、全部はいかないと思いますが、いずれにしても、そういうものがあるのですから、そういうものを中心にしてやったらどうか。  そうすれば、船腹構成も変わってくる、船員の配乗もそれで増加してくる、造船の方も多少でもメリットが出てくるということなんだから、そのためには前倒し、後から雇用調整給付金とかそういうものをくっつけるよりは、前もって金を出した方が政策的にもいいのではないかというふうに思っておるわけですが、海運局長はどう思いますか。
  50. 後藤茂也

    後藤(茂)政府委員 お答えいたします。  第一点の船員費が高い、船員費が高いで、ほかのことは言わぬじゃないかという点でございますが、確かに現在の日本海運の総合的な国際競争力ということを考えます場合に、船員コスト以外にもいろいろと比較をして問題になる点があるかもしれません。ただ、私どもがいまはっきりつかまえられるもので、しかも、この四、五年、十年の間に急激に日本海運競争力を弱めてきた、そこのところのデータがぐっと変わってきたところは、私どもは、船員コストが相対的に非常に高くなったということがやはり一番大きな原因だということは言わざるを得ないわけでございます。  ただ、海運の経営なり船のタイプなりにおきまして、船員コストと申しましても、一隻が百億円もかかってその資本コストが年に十何億円かかる、そういう船の場合の船員コストの全体のコストに占める比率は小さいものでございます。したがって、その部分の国際比較で多少日本側に不利でございましても、全体としてそれを打ち消すだけの余地が若干ある。それに比べまして小さな船では船費が少ない、したがって運航コストに、船費に占める資本コストの割合が非常に少ない、だから、船員コストの違いが非常にきいてくるというところでは、本当に太刀打ちできない状態というのが明快に出てくる、これは事実がそうではないかと思います。  ただ、お断わり申し上げておかなければならないのは、いわゆる船員コストが商い高いと言っておるが、その原因として船員制度なり賃金レベルの問題を言っておるわけじゃございません。そういうところに原因があるのではなくて、先生が御指摘になりましたような用船政策の結果からするところの日本船の予備員率が必要以上に高くなっておること、ここのところが船員コストにはね返ってきて計算上の船員コストというものを非常に押し上げておる。これは船員制度なり賃金レベルの問題、そういったような問題のいわば結果ではないのでございまして、要するにたくさんの船員を日本の船会社が抱えていながら、それと無関係に大量の外国人の乗った船を用船している、そこに商売のウエートを置いて、そして自分の抱えた船員さんには一年間に二百日以下しか船に乗せないような雇用状態をつくり上げたということ、その結果、船員コストが統計的に非常に高くなっております。その原因は、いわば船員制度そのものにあるのではなくて、いわば雇用と用船というものとの適当なバランスというものをとるのについて、若干われわれの目から見ればおかしなことが行われている、その結果、船員コストは数字の上で非常に高くなってくる要素も多分にある、そういうことが言えるかと思います。  ただこの場合、先ほど御質問の第二点でお触れになりましたけれども、過去における日本海運の用船政策が失敗であったか成功であったか、ここいらは私どもはここでいまにわかにあれは失敗でありましたということをお答えするだけの勇気はございません。日本海運にはもちろんいろいろ問題はございますけれども、大タンカー船主のような立場になれば、ノルウェーの大タンカー船主であるとか、ギリシャのタンカー船主であるとか、世界に名だたるそういう大タンカー船主とお互いに拮抗しながら大きな商売をやっておるわけでございまして、それがうまかったかうまくなかったかは後世の史家がそれを判定するしかないと思います。  ただそれが、前に申し上げましたように、日本の場合に船員をいわば生涯雇用契約の形でたくさん雇っておきながら古い船は売る、新しい船はたとえば仕組船の形でどんどんふやすというふうな結果、予備員率が非常に高くなっておるということは明らかな事実であると思っております。  御質問の第三点に、スクラップをするのにマルシップや外国人が乗っておる日本の支配しておる船をスクラップするのはどうだというポイントがございました。これは御指摘のように、いまいろいろと話題になりました仕組船について調べてみますと、これは大部分が船齢五年未満の非常に若い性能のいい船でございます。それから二百隻云々とおっしゃいましたマルシップにつきましても、調べてみますと、これも船齢の若い比較的新しい船が多いようでございます。物理的に老朽船であって、しかも日本人が事実上支配すると言われておって、そして外国人が乗っておる船というのは、俗称チャーターバック船と呼ばれておるものであって、かつて日本船主が自分で運航しておって、古くなったから外国の船主に売り渡して、しかも商売上用船して使っておる、こういうものでございますけれども、これは調べてみますと老朽船が相当にございます。そこで、この場合、つぶすつぶさないの問題については、チャーターバック船の一隻一隻についてさらに詳細に調査しなければなりませんけれども、単なる海外のペーパーカンパニーを日本側の船主がつくって、そこに売った形にするというようなチャーターバック船というのは、どちらかと言うと例が少ないようでございまして、香港とかその他の海外の資本家と日本の船会社とが組みまして、そしてその海外の資本家が海運に投資する一つのやり方として、日本で使い古した古船を買って、その船に日本人でない人を乗せて、それを日本の船会社に用船に出す、それはそれ自体として、海外のどこかの国で海運経営を独立して行っているという形のものがある程度あるようでございます。全部とは申しませんけれども。したがいまして、それをつぶすつぶさないという問題は、日本側の都合だけで、一存だけでいくものではないだろうと思います。ここいらの問題は、さらによく調査をいたしまして、全体としてスクラップ・アンド・ビルドの運用については、日本の船員の雇用の問題が絡まるわけでございますから、その点についてできるだけ被害の少ないように、また、うまくいけば、長い目で見て将来の新しい海運政策の展開にいい布石になりますような考え方を、知恵をしぼってまいりたいと思っております。
  51. 久保三郎

    ○久保(三)委員 あなたのお話を聞いていると、スクラップするものは何にもないようなお話なんですね。先ほど冒頭に言ったように、長期展望で五百杯も六百杯もつぶす計画をいまさしあたり考える必要はないんですよ。スクラップ・アンド・ビルドは一杯でも二杯でもいいんですよ。何でもいいから、とにかくさしあたりつなぎをつくるということから誠実に考えてもらわないといかぬ。しかし、海運長期展望はもちろん考えながらやってもらわなければいけない。海運のデメリットが大きくてこれはだめだというなら仕方がありません。そういうことから考えていくと、どうもいまのお話を聞くと、確かに運輸大臣、あなたの後ろにいる局長は専門家です。しかし、本当の専門家であるかどうかというのはこれはまた違う。船主協会というのが本当の専門家でありますから、あなた方としてはやはり誠実に日本の国の立場から問題を考えてもらうということを、ひとつ大臣からきつく言ってもらわぬと困るのです。  それから、用船の失敗であったかどうかを後世の史家が判断するなんというのは、これは後世の史家が判断することじゃないのです。もうすでに失敗という判定は出ているのです。そのために会社がつぶれかかったり会社更生法を出しているのがあるじゃないですか。九杯も十杯も借りてしまって運ぶ油はないということがつい最近まであったじゃないですか。それじゃ少しのんびりし過ぎているのじゃないかということなんです。後世の史家が判断するならば、海造審の答申は旧態依然たるものが出てくるのだということになってしまうのです。それでは一年半もかけて御論議いただいても価値がないのじゃないかと思う。それほど権威のない方を集めてやっているわけじゃないわけだから、もうちょっと前向きでいかにあるべきかを考えていただきたい。  なるほど海運局長としては、海運の擁護をするのは結構なんです。しかし間違ってはいけない。日本の国としてどうあるべきかということを考えてもらわなければいけない。いずれにしても、そういう問題を頭に置いていただいて、今後の具体策を大臣のところで早急に練ってもらいたいと思うのです。  そこで、続いて海運局長にお尋ねします。  念書船というのがございましたね、この念書船というのは、念書を持ちながら、形を変えて近海船の中に割り込んできているわけです。だから、マルシップもそのとおりなんです。たとえばあなたの方の調べとよそで調べた数では、実際言ってマルシップの数もだいぶ違うのです。何回もマルシップなんというのは変わってくるんですね。だから、そういう念書船などの建造は、もちろんいまおやめになっていると思うのでありますが、ただマルシップみたいなものも、今度は用船期間を短くしましたが、それだけじゃなくて、いまや雇用の問題をどうするかということでてんやわんやの騒ぎをしているのでありますから、この際はそういう制度はきちんと整理をするお考えはありませんか、いかがですか。
  52. 後藤茂也

    後藤(茂)政府委員 念書船と申しますのは、日本造船所で外国船が建造されるに当たりまして、政府が許可をするにつきまして、日本のトレードには参加しないということの一筆を入れてもらって許可をするものであることは御承知のとおりでございます。これらの船がいわば日本の船に参加することをさせないということの市場のマーケットに及ぼす効果というものはだんだんなくってきておる。つまり、日本向けのトレードだけが東南アジアのトレードの大部分であったという時期ではいまやなくなりまして、韓国の合板企業といったようなものが非常に大きくなりまして、それで韓国向けの木材の輸送が日本向けの木材の輸送に対して相対的には非常に大きくなってきておる。念書船の効果というものは非常に薄くなっておるというのは事実です。ただ、今日ただいま日本向けの海上秩序というものを維持いたしますためには、この念書船というものをいま直ちにやめるというような考え方は持っておりません。  マルシップそのものにつきましては、さきに海員組合といろいろとやりとりをしております。マルシップをわれわれとして奨励する気は毛頭ございませんが、余りおもしろくないかっこうであるということは私ども承知しておりますけれども、これを直ちに禁止するということが直ちに日本船員雇用の機会にはつながらないのじゃないかというのが私ども考え方でございます。
  53. 久保三郎

    ○久保(三)委員 近海船の邦船の比重というかそういうものは、たしか四十六年ごろだったか、大体六〇%ないし七〇%くらいなんですね。結局、外国船の配船というのは残りの四〇%から三〇%だ。ところが最近では、これが逆になってしまったですね。邦船の比率というのは大体三〇%内外なんですね。そういう事実は海運局長もお認めになっていると思うのでありますが、これは好ましい姿ではない。もちろん木材の輸入も停滞ぎみでありますから、これはいろいろ問題はあるかもしれませんが、しかし問題は、さっき言ったように、海運会社の船腹所有の形態が変わってきたということも見逃すわけにはいかないと思うのです。そういうものが政策として介入ができないということは、何かまだまだ海洋は自由であるということだけが原則になっているような感じがいたしてならないわけです。これについては何かの歯どめをしてもらわぬといけないのじゃないのか。海造審ではそんなものは問題になっていないのですか、議論はしていないんですかどうですか。これはいかがでしょう。
  54. 後藤茂也

    後藤(茂)政府委員 近海船について日本側の積み取り比率が非常に下がっておるではないかという御指摘がございました。これは先ほどからいろいろと申し上げておりますように、近海船以外のあらゆる外航船を含めて日本海運全体の当面している問題が近海分野で一番目立った変化を見せておるということだとわれわれは理解しております。したがって、御指摘のように、いまのように日本の船員コストが相対的に一番高くなっている点で、それを処置するにつきましても、一番むずかしい分野だというふうに承知しております。しかし、むずかしいからといって手をこまねいているわけじゃございません。  それから御指摘のように、だいぶ下がったではないかというお話でございますけれども、この下がっているのも御承知のように南洋材、インドネシアから日本向けの木材でございますが、ここでは日本側とインドネシア側の船主の間に協定がございまして、そして運賃が相当に適正な水準に維持されております。かつてハドル、九ドルというところにまで下がっておりました運賃がただいまは十七ドルレベルに大体安定をしております。そういった安定のもとで初めて高コストの日本船が約三割程度の営業が続けられているわけでございまして、結果的にいま三割というあらわれた数字は、すでに船主その他の相当な努力の結果、それが維持されておるというふうに御理解をいただきたいと思います。今後の問題といたしましては、こういった近海船の分野などに非常にはっきり出てまいりますけれども、運賃を適正なレベルに安定させるための努力が非常に必要なのではないかと思っております。  木材についての例を挙げましたのは、ある程度それが成功している例であろうかと思いますので申し上げたわけでございます。  海造審の中でこれが議論されたかどうかという点につきましては、海運全般の船員コストの問題について、たとえにはときどき出ておりますけれども、その問題を直接正面から取り上げた議論はただいままでは行われておりません。
  55. 久保三郎

    ○久保(三)委員 時間がありませんので最後になりますが、一括して御質問申し上げたいと思います。  いま海運局長からお話がありました近海船対策で、これの問題調査会というのをつくっていろいろおやりになったのですが、その後何もやっていない。海造審にみんなげたを預けたようなかっこうかもしれませんけれども、いずれにしても、もう少し掘り下げた検討をお願いしたい、こういうふうに手前どもは思っております。  それからもう一つは、海員の雇用の問題です。これは海員組合が一番尤たる組合でありますが、かなり機動性を持った柔軟な考え方を最近は持っておられるんですね。単なる雇用の形態だけで船員費の高騰が来ているというふうには手前どもは考えてないということだけは申し上げておきたいし、また問題があるならば労使間の解決も進んでやっていただくようにして、何と言ったって雇用の安定が先決でありましょうから、そういう方向で御指導を願いたい、こういうふうに思います。  次に、最後になりましたが船舶局長、あなたが主役だけれども、例のいま参議院で審議している法律案ですね、これは設備廃棄がつきものでありますが、設備廃棄とは言っていないで構造改善ですが、この構造改善では大幅な設備廃棄が予想されるのかどうか、それから産業の再編成、業界の再編成というものを予想されているのかどうか、その場合に中小分野は確保できるのかどうか、この三点についてお答えいただきたい。  それから、これは大臣にお尋ねしてお答えいただいた方がいいのでありますが、LNGの問題について、これは早急に手はずを決めて持っていく性格のものだ、エネルギー政策から言っても。いま日本船は一つもないのでありますから、早急に実現というか着工の運びに至るようにお願いしたい、こういうふうに思います。  それから、もう一つ大臣にお答えいただきます。設備廃棄というか、いままでにもうつぶれた会社もございますし、つぶれかかっている会社もあるのですが、いずれにしても、造船所は船をつくるところではありますけれども、さっき海運局長からの御答弁のように、ビルドの方は進んでやりましょうなんという感じは持っていない。しかし、これはやってもらわなければいけませんけれども、しかし国だけに頼ってはっなぎができない。予算も通ったことでありますし、しかも重点は公共事業でありますから、地方が重点でありますから、公共事業を中心にした造船所ででき得る仕事をぜひ地方自治体に指示して、造船所操業を高めてもらう手配を関係の閣僚にも言ってもらうし、地方自治体にもそういう指導をしてもらってつなぎをとるべきではないか、こういうふうに思うのです。  以上です。
  56. 福永健司

    福永国務大臣 公共事業と関連いたしましての御指摘でございますが、まず最初に、いま話題に出ております造船会社等がどうなるかということで、たとえば市長とか知事とかいうような人たちも大変心配して私のところにも相談に来ているものがございますが、率直に申しまして、それはひとり造船ということにとどまらずして、会社によっては造船所の火が消えることはその町の火が消えることであるというような事情等もございまして、そういうつぶれるとかなんとかということが絶対にないようにと、いま鋭意いろいろな方面の人々の協力を求めつつ、私どももできるだけのことをいたしたい−いたしたいというより現にやっております。具体的にどうしましたということは一切私は申さずにおりますが、だんだん何とかなりそうになってきておるようなことでございます。なお、これは一層一生懸命にやりたいと思います。  公共事業と関連いたしましては、そういう意味である地方に、造船等の影響で不況という中でも特にそういう著しい傾向があるところ等もございますし、公共事業についての予算がすでに成立いたしまして、そうしたものの配分についてそういう事情を考慮した施策を講じるようにというので、関係方面と、その点については連絡を密にしてやっておりますし、また一例を挙げますと、たとえば建設大臣なんかの関係で、建設省の仕事としてはいろいろあるが、造船仕事になるような公共事業も考えてもらうようにという連絡もしております。建設省等では、その点についてもよく理解をしてくれて、臨んでおるわけでございます。  エネルギー政策等との関連につきましては、よくまた所管の局長等を督励いたしまして、お話のありましたようなこと等について留意をしていきたいと考えます。
  57. 謝敷宗登

    謝敷政府委員 先生お話は、特定不況産業安定臨時措置法に基づきまして、造船業について設備の処理あるいは業界全体の合理化、さらには中小造船所に対する配慮をどうするか、こういう御質問と拝聴いたしますが、基本的に設備の問題につきましては、法律に書いてございますように「廃棄若しくは長期の格納若しくは休止」ということがございまして、全体の設備の量につきましては、これから海運造船合理化審議会、現在も準備作業としてやっておりますが、全体で千九百万トンの起工量を挙げたわけでございまして、それが外航船が六百万トン、その他の中小型船の五十万トンを入れまして六百五十万トンであれば従来の操業短縮等の措置で賄える、こういう見通しをしていたわけでございまして、実態は、少なくとも需要としてはこれよりも少なくなるということに対応いたしまして、もう一つは千九百万トンはタンカー等を主にした建造量でございますが、これをそのまま残しておきますと、やはり国内での過当競争が出てくるということで、設備の処理はかなり大幅にやらなければいかぬと思っております。  ただ、処理と申しましても、先ほど申しましたように、格納、休止、転用という問題がありまして、大臣から再三お話がありますように、新しい分野への施設の転用というのもその中に入ってまいります。したがって、具体的に格納、休止、廃棄という問題につきましては、これから詰めてまいりたいと思っております。  それから、再編の問題を含むかということでございますが、これは単に設備の処理だけでなくて、やはり業界全体が長期にわたって今後安定していくための施策でございますので、安定基本計画におきましては、この点は、どういう形かは別にいたしまして、安定のために過当競争を起こさないという観点で何らかの措置が必要である、こう考えております。  それから、中小造船所の問題につきましては、これは二つグループがあると思いますが、いわゆる外航船に乗り出していない中小造船所につきましては、これは現在国内の漁船その他内航船等で比較的需給のバランスもとれている、こう考えておりますので、そこは対象の外にするかどうか、これも検討課題でございますが、千数百あります造船所全体を対象にするということでなくて、当面緊急に問題となっております造船所のグループというものを対象にして考えるつもりでございます。  ただ、その中でも中手といいますか、そういった造船所については、造船専業の性格あるいは今後の事業転換への時間的な猶予等も十分配慮しながら、大手の総合重工メーカー、重工業である造船所との間で、これまでも配慮をしてまいりましたが、安定基本計画では当然これらの相互関係を十分配慮して進めなければならない、こう考えております。
  58. 後藤茂也

    後藤(茂)政府委員 LNGについての考え方対策いかんということでございますが、LNGにつきましては、従来日本のLNG輸入プロジェクトでは日本の船を使うというふうな考え方はございませんし、また日本の船会社の方にLNGの方に発展をするというムードがございませんで、いらいらしておったのでございますが、最近ようやく日本の船会社にもLNGの輸送に参加するという動きが出、また、そのプロジェクトを担当する方、進める側にも、それに日本船を利用するという動きが出てまいりましたので、近々審議会にお諮りをしながら、LNGに対する新しい国の施策というものを検討させていただいて実施に移したいと考えております。
  59. 久保三郎

    ○久保(三)委員 どうもありがとうございました。
  60. 増岡博之

    増岡委員長 午後一時から再開することとし、この際、暫時休憩いたします。     午後零時二十三分休憩      ————◇—————     午後一時二分開議
  61. 増岡博之

    増岡委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  質疑を続行いたします。佐野進君。
  62. 佐野進

    ○佐野(進)委員 午前中から審議が進められております海運造船不況の問題につきまして、大臣並びに関係局長質問をしてみたいと思います。  この問題につきましては、過日特定不況産業の法案が提案されましたとき、その連合審査の際にも若干の質問をしてきたわけでございますけれども、あの当時から比較いたしまして、事態はますます深刻な様相を深めておりまするし、当面する対策がいかに重要であるかということについて、大臣を初めわれわれ等しく認めておるところだと思うのであります。  そこで私は、この際大臣に御質問してみたいと思うのでありまするけれども、この問題は、日本経済が当面する不況の中で集約的にというか集中的にというか、ともかく代表すべき不況業種として、また不況産業としていま存在しておると言って言い過ぎでないと思うのであります。したがって、不況克服を叫び、経済の安定的成長を願うということがその目標であると常々発言している福田内閣にとっては、最大の課題でなければならないわけであります。  したがって私は、この前連合審査の席でも申し上げたのですが、特定不況産業業種の一つとして、通産省所管として法案の審議が行われたわけでございますけれども、むしろその性格、性質、そういうものから見れば、運輸省がこの問題だけを取り上げて、積極的に対応すべきものではなかったのか、単独立法としてこれを提案し、審議し、法案となし、そしてこれを中心にして、むしろ今日の不況を克服する突破口としての役割りを担わすべきではなかったか、そういう気がいたしてならなかったわけであります。  そして、その気持ちはいまなお変わらないわけでありますが、しかし、この取り組みの経過を見ておりますと、そのような私どもの希望と比較いたしまして、遺憾ながら不況産業の一種としてとらえられたという範囲にのみとどまり、その対策は遅々として進まざるがごとき感じを持たざるを得ないわけであります。  午前中の大臣答弁の中において、幾つかの点において積極的に発言があったことについて私も評価するにやぶさかではございませんが、ただ事の重大さに比較いたしますると、きわめて微温的な発言にしかすぎなかったと判断せざるを得ないわけでございまして、それは今回の法律提案にも示されたような政府の姿勢にその根本的な原因があるのではないか、こういうように判断をいたしておるわけでございまするが、冒頭まず大臣の、今日における日本経済不況の現況と、海運造船業界の置かれている立場並びにこの状況をいかにして突破すべきかということについてお考えがあろうと思いますので、その決意をまず最初にお伺いしておきたいと思います。
  63. 福永健司

    福永国務大臣 ただいまお話しの点は、大変大事な点だと私もしみじみと感じておる次第でございます。さきに特定不況業種に対して立法するところがあったのでございますが、佐野さんは単独に対処するようなことの方がかえってよかったのではないかというお話でございました。実は、この立案の過程におきまして、正直に申しますと、私どもだけの法案も考えたわけでございます。しかし、お話のように考えたころよりここへ来てなお一層深刻の度合いが増したということになりますと、この点についてただいまお話がございましたが、私どもは、通産省関係で幾つかの業種を挙げ、その後に四番目あたり造船に関してのものが挙げられているというこの配列のぐあいから励ますと、一番深刻なのではなくて、何かよそのものにくっついて、法案の配列の形だけから言いますと、わが方の関係のものが書いてあるというようなかっこうで、その点はそう言われれば、私も別に特に弁解する等のことはいたしたくはないのでございますが、率直に申しまして、そういう形にはなりましたが、私どもといたしますと、四つ並んでいて四番目に書いてあるから、前の方が順に大事で、さして大事でないようなこととは決して考えていないのでございます。  確かに一見いたしますと、そういう感じが一般にするということは自然の姿であると思うのでございますが、私どもはいま申し上げました所存でございますから、その法律に書いてある順序はともかくといたしまして、私たちとしては最もこれが大切なものである、最近の情勢からすると、さらにそれを強調しなければならない、今度の法律に掲げてありますことにつきましては、そうい気持ちで対処しなければならぬと思いますが、率直に申しまして、あそこで取り扱っております範囲は、この種の対策を大きく考えた場合には、言うならば一部分であり、そしてまた、ある考え方からいたしますと、ああいう処置にならないように考えていくことも大切であろうか、こういうように思うわけでございます。  いまいろいろお説もございました。私も、ごもっともに存じますが、そういう精神を体しまして、この問題の処理、この事態の処理につきましては、あれも一部分であるがもっと広く、大きく精力的に対処していく、こういうことにいたしてまいりたいと存ずる次第でございます。
  64. 佐野進

    ○佐野(進)委員 積極的な答弁をいただいたわけでありますが、まさにそのとおりだと思うわけであります。あの法律がまだ参議院において審議されております過程でございますので、このことの内容については、もはや衆議院は可決いたしておりますから、それについてとやかく申す必要はないと思うわけであります。  ただ、大臣がいま言われたとおり、事態は、まさにあの法律を乗り越えて大きく発展しておりますし、ここ数日来の大臣の動き、政府の動きを見ましても、また、そのようなことになっておるわけであります。したがって、先ほどの質問にありましたけれども大臣は実力大臣である、運輸省としては久しぶりに大物大臣を迎えて、政治的に物事を解決するにきわめて恵まれた条件にある、こう評価されておるわけでありますし、私どもも、そう思う一人の立場に立ってこれから幾つかの問題点について質問しながら、積極的に大臣の対応をお願いしたいと思うわけであります。  そこで、まず御質問申し上げたいわけでありますが、今日の海運造船不況現状の中で何をやったらいいかということになりますと、午前中の討議の中にもありましたけれども、もはや行うべき的はしぼられてきていると言って言い過ぎでないと思うのであります。当面する最大の課題は、いま用船が不足し、さらに造船の注文が極度に減少し、その中で雇用にしわ寄せされていく、結果的に倒産が続発する、こういうような悪循環が繰り返されておるわけであります。  したがって、まず一番大切なことは、何としてもこの悪循環の中における不況をどうやって克服するかということが最大の課題であり、その不況を克服するためにどうやって需要を創出していくのかということが第二の課題となってくるわけでございます。同時にまた、倒産というような事態は招かないように、あるいは倒産に至らずとも雇用の減少をどうやって防ぐかということが課題であり、さらにまた不幸にして倒産が起きた場合におけるところの対策、これをどのようにするかというところに問題はしぼられていると思うのであります。したがって私は、逐次それらの問題について質問してみたいと思うわけであります。  第一に、先ほど海運局長から御答弁がございましたけれども、結局用船が必要でなくなって海運業界不況のどん底に立たされておる、結果的に船腹が過剰になり造船に対する注文がそこにいかない、こういうことになってきておるわけでございますが、どの程度過剰船舶が現在存在しておるのか、この点について海運局長にまず聞いておきたいと思います。
  65. 後藤茂也

    後藤(茂)政府委員 お答えいたします。  船腹の過剰の状態が統計的に数字で非常に明らかなものはタンカー部門でございます。タンカーにつきましては、私の手元にございます統計、これは英国のロイド統計でございますけれども世界の総タンカー船腹トン数が重量トンで三億三千五百万、このうち、この英国の統計によりますと、昨年の年央の係船量が三千万重量トンでございます。こういう統計がございます。これによりますと、おおむね一割係船ということになります。ただ、この三千万重量トンの係船という統計につきましては、係船量が月々非常に変わるようでございまして、統計の出所によってそれぞれの数字が違うようでございますが、一番最近の本年三月の統計というのがギブソンというところから発表されておりますが、それによりますと、三億トン強に対して四千万重量トンの係船ということでございます。タンカーにつきましては、係船以外にいわゆるスロースティーミングと申しまして、経済的、機械的にできるだけ遅く走らせるということが一般に行われておりまして、残った船が動いているスピードは、通常の設計上の経済スピードよりはぐっとスピードを落としているようでございます。そのことによってどれだけよけいな船腹を無理無理吸収しているかという数字は、人によって見方はございますけれども、大ざっぱに申しまして六千万トン程度に換算できるかと思います。したがって、世界のタンカーは三億三千五百万トンという統計がございますが、約一億トンよけいである、そういった感じでございます。  タンカーを除きます貨物船については、このロイド統計では世界の総船腹量は三億一千三百万重量トンという統計がございまして、そのうちの六百万トンが係船だというふうに出ております。この場合は係船量はそんなに多くございません。これは日々、日本海運会社の話などを聞いておりますと、日本海運会社が実際に運航しております船のうちの相当の部分は、たとえば鉄鋼会社であるとか石油会社であるとかですと十年とかそういった長期の用船契約を結んでおりまして、その長期の用船契約が十年前に結ばれてちょうどその期限が到来したような船は次々とお払い箱になっておるようでございまして、日本の場合は船員問題その他がございますから、直ちに係船ということにはなっておりませんけれども、実際は極度の赤字運航を迫られながら、浮いてはおるけれども、実質的には係船に等しいような状態に置かれている船が相当にあるのではないかというふうに想像されます。
  66. 佐野進

    ○佐野(進)委員 それでは、いまのは国際的な係船状況でございますが、わが国の状況はどの程度でありますか。
  67. 後藤茂也

    後藤(茂)政府委員 実は、いま申し上げましたように、日本の船の係船というのはほとんどなきに等しい状態でございまして、強いて申せば、これはまだ統計の上に上がってこない、造船所に発注して物としての船はでき上がっておるのだけれども船主が引き取りをしない、したがって、造船所の沖にまだ完成せざる船として泊まっている、あるいはそういうようなものが若干の例がございますけれども、御承知のように、外国の船主が係船をいたします場合には、当然自然にその船にかかる船員に関する費用が要らなくなる、ところが、日本の場合にはそうはいかないという事情がございまして、先ほども申し上げましたように、日本船主は自分の持っている船を係船するということは非常に例が少のうございます。少ないけれども、どれぐらいあるのだということが元来あるはずでございますが、余り少ないものですから私はいま手元に資料は持ってきておりません。あっても、これは微々たるものでございまして、それはむしろ隠れたる係船というものがほかにたくさんあるのだということを御説明申し上げた方がよろしいと思います。隠れたる係船というのは、本当は経済的には動かしても得にならないのであるけれども、しかし、ほかのいろいろな事情で、見た目は動いている船というのが相当あるというふうに考えられます。
  68. 佐野進

    ○佐野(進)委員 私がいま海運局長にお聞きいたしましたのは、当面する対策の中で最大の課題は、先ほど申し上げましたとおり、不況の克服であり、需要の創出であり、倒産防止ということを前提にして質問しておるわけですが、これから申し上げるその質問の前提としていま海運局長の答弁を聞いておいたわけであります。  世界的には船舶はきわめて過剰の状況であり、わが国も、外面的にあらわれている船舶数は少ないとしても、実質的には相当の過剰船舶があるということは間違いのない事実だ、こう判断されるわけであります。     〔委員長退席、石井委員長代理着席〕 そういうような状況の中で、今日、注文を受けて造船をしようとする船台はほとんど空き同然の状況であり、ことしの八月以降になればその前途は全く真っ暗やみである、こういうような状況であるとするならば、船は余る、注文は来ない、そうすれば仕事がない、結果的に倒産をするか、他業種に転換をするか以外にないということは理の当然であります。  そこで考えられたのが、御承知のとおり解撤でありまして、すでに中小造船業界においては、幾つかの組合をつくりながら解撤の事業に携わりつつあるわけでありまするけれども、しかし、その成果はきわめて微々たるものであるように判断をされるわけであります。したがって、この解撤の現在の状況について、ある程度私も調べておりまするが、次の質問のためにお聞きするわけでございますので、簡略で結構でございますから、船舶局長から、その状況と今後の見通し等についてひとつお答えをしていただきたいと思います。
  69. 謝敷宗登

    謝敷政府委員 現在やっておりますといいますか、五十二年度に船舶解体業に対する技術改善費補助金を出しておりますが、これは主として造船所下請の事業者の新しい事業の転換先として研究の上出てきたものでございます。新しい転換先でございますので、二十二万五千総トンを対象にして一億四千六百万円強、グロストン当たりで六百五十円の技術改善費補助金を出す予定で予算を組んだわけでございます。  それで、これは交付決定といたしまして、中小の下請事業者が協同組合をつくってやる形でございますが、実績では九組合できまして七万七千グロストン、補助金額として五千万円強という状態でございます。
  70. 佐野進

    ○佐野(進)委員 そういたしますると、五十三年度の見通しはどうなるのですか。
  71. 謝敷宗登

    謝敷政府委員 五十三年度といたしましては、下請でなくて中小造船業者が自力でやる、たとえば内航船スクラップ・アンド・ビルド等に関連してのスクラップにつきましては、従前どおり続けていっております。ただ、下請事業者からは先ほどのような実績しか出てまいっておらなかったものですから、五十三年度としては、特に下請事業者を対象とした解撤については予算に計上しなかった次第でございます。
  72. 佐野進

    ○佐野(進)委員 五十二年度がいまだ事態深刻にならざる状況の中で予算を計上し、五十三年度に予算を計上しなかったということは一体いかなる理由ですか。
  73. 謝敷宗登

    謝敷政府委員 これはいろいろ要因がありますが、一つは、当初考えました買船が思うように下請事業者にできなかったこと、それから一番大きな要因は、解体費用として考えておりましたコストが予想以上に高かったこと等でございます。したがいまして、このまま続けますと、赤字が非常に大幅に出てくるということで、五十三年度の予算編成時期に、解撤をこのまま続けるということについて解体事業者から特に強い要請もございませんでしたし、私どもも、このまま赤字幅を大きくしながら続けていくということについては、その時点では児送った次第でございます。
  74. 佐野進

    ○佐野(進)委員 大臣、私がいま質問を続けていることをお聞きになっておわかりだと思うのでありますが、今日の造船不況を脱却していく道が解撤事業にあるということは衆目の認めるところであろうと思うのであります。しかるに船舶局長のただいまの答弁は、前年度一億四千六百万の予算を計上してそれに対応しておきながら、赤字が出たから本年度は計上しなかったということの持つ意味は、結果的に、この解撤事業が今日の造船不況を克服する上において避けて通ることのでき得ない重大な課題であり、運輸省当局としては積極的に取り組まなければならない問題であるにもかかわらず、中小下請造船企業者がその事業を行うについて出た欠陥をそのまま認めた形の中において対応しなかったということは、運輸省としてはいささか不勉強というか、不熱心というそしりを免れないのではないかと私は判断をするわけでございまするが、これからの質問をする関係もございますので、一応大臣の見解をお聞きしておきたいと思います。
  75. 福永健司

    福永国務大臣 佐野さんのおっしゃることは私、ごもっともに存じますが、先ほど局長が答弁いたしましたのも、それなりに多少の理由はあるわけでございます。しかし、いまこういう状態にある造船業等についてどう考えるかということになると、それだからと言って、五十三年度政府施策において前年度において講じたこともしないということであってはならぬように私は実は考えるのでございます。予算というものを持った者としては、本来のたてまえからいたしますと、計上してない年は何とかしてそれなりのことを言っていかなければならないということになりましょうが、どうも私は幾らか佐野さんと同じような考えを持つ。それは運輸省には迷惑かどうかはわかりませんけれども、私といたしましてはそういうことでございます。  局長が説明しましたように、五十三年度予算を計上したころ、ないし少し前まではああいう説明も一応よかったかもしれませんが、ここまで来ると、新たなる事態にどう対処するかという観点からの顧慮もさらに一層必要であろう。しかし、これは挙げて政治判断によって政治的に対処するということでございます。局長は事務的に非常に忠実な答えをいたしておりますが、それと私の言うこととがそう矛盾するわけではなくて、それをもう一つ越えた物の考え方、そして特に最近の情勢指摘されての佐野さんの御意見、いま伺いながら、もう少し時間をいただきまして、私、関係の諸君とも相談をいたしまして、検討するだけでなくて何とか手を打ちたい、こう思います。そういうことでございますので、御理解をいただきたいと思います。
  76. 佐野進

    ○佐野(進)委員 私は、大臣御心配のように、船舶局長運輸省当局の責任をここで追及するとか、指摘をして足りないということについて責めようという気持ち一つもございません。当面する造船不況ないし海運不況の状況をどうやって乗り切っていくかということについて、これから質問する上に必要でございましたので見解を聞いたわけであります。  そこで、船舶局長がいまお答えになりましたけれども、結果的に言うならば、当面最大の必要性を持つものであると判断されておったこの解撤事業について、本年度は遺憾ながら予算が計上されておらなかった。しかし、大臣政治的な配慮、これはこれからの質問に関連がございまするが、その政治的配慮に基づく措置がお約束になれる。これは冒頭の質問に対する大臣の御見解からするならば、私は当然の措置であろうと判断するわけです。  ただ、それを進める前に、もう一度船舶局長にお伺いをしておきたいと思うのでありまするが、赤字が出て結果的に採算が成り立たない、その形の中で予算計上を見送った。その当時はそう判断されたのであろうと思うのでありまするけれども、その赤字の出る原因は一体どこにあったのか。このことについては知っておるのですが、一応質問関係上聞いておるわけですから、簡単にひとつお答えいただきたい。
  77. 謝敷宗登

    謝敷政府委員 五十二年度予算で消化いたしましたものは、ほとんど国内のマーケットから買船をしたものでございます。したがいまして、ライトウエートといいますか、船の重さ当たり四十ドルから五十ドルの相場でございます。ところが、こういう事業を大々的にやります場合には、国際的なマーケットがございます。これはライトウェート当たり九十ドル、約二倍でございます。したがいまして、できましたものは、先ほど申しましたように、国内船及び外国船の改造に伴う解撤が最重点になるかと思います。したがいまして、今後は国際的なマーケットの九十ドル台、これは主として台湾、韓国等のいわゆる工事費のコストが中心になって変わる値段でございますが、日本としまして今後やっていくとすれば、こういつた特に極東におきます買船のマーケットに対応しまして、従来やっておりました意味での解体のコストをどうやって縮めていくかというのが、これを成り立たせるポイントだと思います。
  78. 佐野進

    ○佐野(進)委員 いま言われましたコストの問題がありますが、もう一つは、スクラップ化された鋼材のいわゆる鉄くず等の価格と申しましょうか、その価格の不安定な状況が結果的に解撤作業を成り立たせなかった大きな条件ではなかったかと私は思うのでございますが、それはどうですか。
  79. 謝敷宗登

    謝敷政府委員 先生御案内のように、日本国内におきますくず鉄の市場としましては、溶解くず用のくずと、それからもう一つは伸鉄と言いまして、そのままの型で引き抜いて棒鋼なりそういったものをつくるという二つの市場があるわけでございますが、一番基本になります鉄鋼用のくずが、御案内のような鉄鋼の生産減で、これは自家発生分も含めてかなりの量がたまっておりまして、それから伸鉄用のスクラップは、年間大体百万から百五十万と言われて、市中から出てきます分はその半分ぐらいというふうに考えられますが、これがようやく最近になりまして少し上がってきているということで、非常に大量に船を解体してスクラップが出てまいりますと、そのスクラップをどういうタイミングでどういうふうに売るかというのが、市況性の非常に強い商品でございますので、ここがポイントになろうか、こう考えております。
  80. 佐野進

    ○佐野(進)委員 大臣にお尋ねします。  いま船舶局長から答弁がありましたように、いわゆる解撤事業におきまして、外国においては採算が成り立つ、特に台湾その他の国においては、この事業が有望なる事業として採算上成り立っておる、しかるにわが国は、中小が九つの組合をつくってこれを行ったが、赤字であってそれがなし得ない、したがって、ことしは予算を計上しないということになったと、こういうことですが、結果的に言うならば、その障害をどうやって乗り越えていくことができるのか、その障害を乗り越えていくために何をなすべきか、これが当面する課題ではないかと思うのであります。  したがって私は、ここで幾つかの実例を交えながら質問をしてみたいと思うのでありまするが、中小ではこれは採算がとり得なかった、しかし、大企業であれば、これの採算がとり得る条件、あるいは採算がとり得なくとも、それの採算をとり得る措置政治的に行うことによってこれを進めようとする動きがいまあるわけであります。したがって、その動きを具体的に大臣はもう把握をされておられると思うのでありますが、たとえばいま言われたことの中で二つの条件があるわけであります。一つは、国内船の解体ではこれはもはやペイする条件ではない、しかし、外国においては、先ほど海運局長から御答弁がありましたとおり、非常に膨大なる余剰船舶が係船されておるということが一つであります。それからいま一つは、いま船舶局長からお答えがありましたとおり、いわゆる鉄くず化した、解撤したものが、結果的に価格の乱高下によって採算として成り立たない、したがって、この措置をどうするかということが当面する一つの大きな課題であろうと思うのであります。  そこで、大臣にお伺いをいたしたいと思うのでありますが、昨日の新聞紙上に「船舶スクラップ事業 造船業界が進出へ 運輸省了承 売買会社設立も計画」、こういうような見出しの中で、運輸大臣関係業者とお会いになって、これら売買会社を設立する形の中でこの事業の推進に対して積極的に対応されたいという御見解が発表され、いわゆる大手造船会社と言われておる日本造船工業会の主要なメンバーがこれに対して積極的に要請したということが報道されておるわけであります。  五十二年度予算に計上されたのは、中小下請企業人たちへの対応であります。今度は大手造船会社の代表者であります。したがって、その規模はきわめて大きく、その行わんとする対策は、造船業界はもちろん、日本経済に対してきわめて大きな影響を与えるということが予想されるわけでありますが、大臣は、これに対してどのように、新聞紙上でなく、この委員会の席上、御判断になり、対応されんとしておられるか、御見解をお示しいただきたい。
  81. 福永健司

    福永国務大臣 きのう造船業界の役員等が大ぜい参りました。−どうも失礼しました、おとといでございます。おととい、かなり大ぜいが参りました。正直に申しまして私はそうみんなに顔なじみというわけじゃございませんので、いま佐野さんがおっしゃいましたそれが、おおむね大手の諸君の代表だったということなんですが、私がそのときに申しております物の申し方は、造船業界全体の人と会って話をしているような気持ちで相対しておったわけで、ただいま伺って、ああそうだったのかなというような気持ちでございますから、したがって、これからいろいろな実際施策を進めていく上については、別にあのときに会った人たちにだけどうとかというつもりでは一切ございませんが、実は私、そういう話が出まして、その解撤業をやるということでございましたので、まず聞きました。  君たちは今度は本気でやるのか、一時は余り解撤業なんというものはやりたがらなかったが、本当にやるのかという質問をいたしました。本当にやると言う。それで、かなりそれに運命をかけてもやるというようなことで、会社をつくって出資をしてでもやってもいいと思います。こういう話です。そこいらあたりまでは私どもにも、そういう気構えでいくとすれば、これはこれで何とかなるんじゃないかという感じを受けました。そろばんに合うのか、政府が何か考えるとしても、政府を頼りにするだけでは、これではとてもだめでございますから、そういう種類のことを申しましたら、いろいろ話しております中で、自分たちも本当に日本が困っていたころにはそういう仕事を好んで求めてやりました、容易ではございませんでした、しかしその当時、その種の仕事日本が諸外国に比していろいろの点においてすぐれておったという誇りは持っております。昨今のような情勢でございますと、仕事がなくて遊んで暮らさなければならないということ等もだんだん迫ってきておる、そういうことになると、幾らか勘定に合わない、少し足らぬという程度なら遊んでいるよりも一生懸命に仕事をして、少しぐらい足りないところは勘定に合うように大いに努力するという懸命の対処、努力をしたいと思う、少し調子がよかった歳月が続いた後であるだけに、ある意味においてはこういうことがまたここで一段と筋金を入れ直すことにもなろうかと思うので、本当に真剣な気持ちでやりたいと思います。こういうように言っておりました。  私は、この言葉にはある程度打たれたのでございます。そういうことであるとすれば、政府もこの熱意にこたえたい。いま伺いますと、大手造船の諸君だったということでございますが、これは大手であろうと中小であろうと変わりはないと思うし、むしろ解撤事業などというものは本来中小により適しているのじゃないかという気も、私、元来素人考えでございますけれどもいたします。  そこで、政府がこれからどうするかということについては、皆さんの御意見等もいろいろ拝聴してでございますけれども政府がこの種のことで何かやるといたしますと、おととい話が出ました、そういうことに出資をして一生懸命にやろうという言葉で表現された大手の人たちに限ってどうこうという所存は毛頭ございません。私が多少認識不十分であったために、その人たち、確かに大手の人もいましたので、多少の——私自身はそのときに記者会見はしておりません。新聞社の人たちがそのときに参りました役員の何人かにちょっと話を聞かせろというので、それが記事になったのだろうと思います。  したがって私は、いまも申し上げておりまするように、広く造船全体を考え、そしてその中で中小においてはどうすべきかということ等については、いろいろ配意をいたしまして実際に施策を進めていくべきである、こういうように考えます。
  82. 佐野進

    ○佐野(進)委員 いま大手と読みましたけれども、大手、中手、中小にかかわらず共通した問題でありますから、大臣がそうお気になさらないで結構だと思います。  この際、海運局長と船舶局長に、その行動、その対策等についていいか悪いかだけで結構ですから見解を聞いておきたいと思います。造船業界全体が解撤の問題について前向きに取り組んだ姿勢を評価するかしないか、この点について行政当局の責任者のお二人に聞いておきたい。
  83. 後藤茂也

    後藤(茂)政府委員 海運立場から見まして、それは結構なことだと思います。
  84. 謝敷宗登

    謝敷政府委員 従来から中小の下請事業者が解撤する場合も、施設貸与その他で協力していたわけでございますが、造船業界が打って一丸となって解撤に本気で取り組むということは、私としては非常に望ましいし、期待もしたいと思っておるのであります。
  85. 佐野進

    ○佐野(進)委員 そこで、きょうは通産省大蔵省から来ておられますから、後の質問に関連がございますのでお二方に若干聞いておきたいと思うわけでございます。  先ほど来私が質問を申し上げた経過の中で、解撤事業について運輸当局としては積極的に取り組むという姿勢が明らかにされたわけであります。ところが、積極的にこれと取り組む上においてネックになるのは、先ほど来指摘を申し上げておりますように、いわゆる赤字になるということ、それから船舶が国内的にきわめて量が少ないということです。したがって、中小だけでもそのような状況であったのに造船業界全体として取り組むとするならば、その弊害は非常に大きく前面に出てくると思うのであります。運輸省当局だけでいかに努力をしようとも、この問題の成果を上げる上において限界があることは当然であります。  ここに資料がございますけれども、このように鋼材の値崩れあるいは急騰等きわめて大きな波乱含みで推移するという状況の中で赤字を出さずにやりなさいと言ったって、これはできないわけです。  そこで、鋼材備蓄が日本の経済を左右し、しかも、その焦点が造船業不況にあると言われているとき、政府は積極的に取り組むわけでございますが、これら解撤によって生じた鋼材の処分については、目下鉄鋼不況と言われている状況の中ではきわめて安値に放置されなければならぬ、それが出た場合、さらに値崩れを招きかねないという状況の中では、少なくとも備蓄という方法において対処すべきではないかと判断されるのでありますけれども通産省基礎産業局としてはどう判断し、どう対処していくか。  きょうは課長さんですから、余り無理なことを聞くのはどうかと思いますけれども、もしできるならば、そういう主張があったということを局長なり大臣に伝えていただくということを前提として見解を聞いておきたいと思います。
  86. 岩崎八男

    岩崎説明員 確かにスクラップというのは、日本年間三千数百万トン使われておりまして、そのうち二千万トンぐらいが市中から出てまいります。先生指摘のとおり、このスクラップ価格が非常に変動いたします。石油ショック後の四十九年度は四万円を超えておりました。ところが、この二、三年は二万円であります。このスクラップを直接使いますのは、高炉というよりは主として平電炉でございます。平電炉の主要製品は小棒でございます。その小棒の値段が公共事業の回復とともにようやく今年に入って回復をしてまいりました。これは三年来初めてのことでございます。そこでスクラップもいまようやく二万四、五千円というところになっております。鉄鋼需給そのものを中期的に見ました場合に、今後そう大きくふえるということはないのではなかろうかと考えております。そういたしますと、スクラップ価格が今後そう大きくこれを上回る、たとえば石油ショック後みたいな形になるということは余り考えられないのではないか。加えていま円高で、余り高くなりますと、海外からスクラップ輸入が入ってまいります。したがいまして、いまの二万四、五千円というのは、現状の需給から考えますと、一つの均衡点ではあるまいかという気がいたしております。  ただ、いまのは市中発生のくずの状況でございますが、それと、こういう古船から出てまいりますスクラップ、これは品質の差がございます。したがいまして、市中くずが二万四、五千円で売れますときには、古船スクラップのある一部がそれより高く売れることは当然あり得るかと思いますが、そういうスクラップ全体の市況の中で解撤船によるスクラップがどう経済的に成り立ち得るのか、そのためにはどういう施策が必要であるかということが問題ではなかろうかというふうに考えております。
  87. 佐野進

    ○佐野(進)委員 きわめて大きな問題でありますので、先ほど申し上げたように、これは後で運輸大臣に御質問してあれしたいと思いますが、課題としてひとつ検討してもらいたい。  それから、銀行局にお尋ねをしたいと思うのでありまするが、先ほど来私は質問を続けておるわけでございまするけれども解撤事業は結果的に造船不況対策に対するきわめて大きな課題であるということがわかったわけでございまするけれども、しかし、さればと言ってこの事業は、これを遂行するについては、いま申し上げましたような幾つかの条件が前途にあるわけであります。そうしてその条件を一つ一つ克服していかざるを得ないわけでありまするが、私は、その中においても特に必要なことは、先ほど申し上げましたとおり、中小であっても、九の組合をつくり、その解撤を行い、九万トンですかの解撤を行う中で赤字が発生したということで、五十二年度をもって補助を打ち切るという措置運輸省当局はとらざるを得なかった。したがって、先ほど海運局長にお尋ねをいたしましたとおり、わが国内におけるところの係船状況はつまびらかでないが、しかし、潜在的にはたくさんあるとしても、外国においてばきわめて多数の、いわゆる二千四百六十万総トン以上現在係船中の船舶が存在する。先ほど海運局長の御答弁によれば、もう少し多くなる、もう少しどころかあとまだ相当多くなるという状況であります。  したがって、わが国経済の状況の中においていま最も大きな課題は、不況という面でなくしてドル減らしであると思うのでありますが、この蓄積されたドルをいかにして減らすかということが、わが国経済の諸外国に対しての最大の課題であるといたしますならは、この課題解決のためにも、わが国産業を好況に導くためにも、ここに着目し、ここにその対策を入れることは当然ではないか。特に大手、中小あるいは中手ともに、解撤事業こそ当面の造船不況を克服する上に一番大切だと判断されておるとするならば、そこに着目しなければならない、にもかかわらず、これには非常にいろいろな条件があるわけであります。  たとえば船舶売買会社がこの船を買おうといたします。しかしわが国は、結果的に言うならば造船会社が不況産業でありまするから赤字である、買う力はない、一体その金をどうするのか、こういうようなことになってくるわけでございまするが、一つの考えとしては、これらについてはいわゆる政府資金を投入する、しかし、直接政府資金を投入するという方法等はなかなかむずかしい、したがって、一定の金額を輸銀等に融資し、輸銀等を通じてこれらに貸与し、それらが買船する形の中でいわゆる解撤作業を進めるということも、一つ考え方として存在するのではないかと判断されるわけであります。しかも、これは国策に合い、国の経済発展のために必要なる措置であると判断されるわけでありまするが、金融当局としてこれらの措置が可能であるかどうか。不可能であるとしても政治的に解決してもらいたいと思うのでありまするが、その見解はどうか、お伺いをしておきたい。
  88. 藤田恒郎

    藤田(恒)説明員 お答え申し上げます。  いま先生の御指摘のございました点につきまして、この解撤事業を進めるに当たり政府系の金融機関としてどこまで対応できるかということを考えてみますと、まず一般的に申し上げますと、解撤事業を行う企業そのものに対してどこまで政府金融機関が融資できるかという問題であると思います。その裏には、もし解撤事業を行う企業が中小企業でございますれば、中小企業金融公庫からの融資の道は可能でございます。しかし、中小企業以外すなわち大手につきましては、これは日本開発銀行が担当しておりますけれども、その場合には設備投資でないと融資できないというたてまえになっておりますので、若干むずかしいのではなかろうかと思います。  それから、さらにいま輸銀等を通じて云々という御指摘がございましたが、その点につきましては、御承知のように輸銀は外国からの輸入金融を行うことが一つ役割りになっておりますので、海外からたとえば解撤のために船舶を輸入して解撤事業を行うというふうな場合には、輸銀の輸入金融の対象になるのではないかと思います。ただ、これは輸銀法上、輸入金融を行う場合にはいろいろ制約がございまして、たとえば国民経済発展に重要な物資そのものでないと金融ができないという制約もございますので、いま質疑応答を通じまして私どもも大体あらましは理解できたわけでございますけれども、なお詳しくお伺いいたしまして、その対象になるのかならないのか判断をしてまいりたいと思います。法律的にはそういうことでございます。
  89. 佐野進

    ○佐野(進)委員 大臣、いま両省のそれぞれ見解をお聞きしたわけでありますが、解撤事業を進め、先ほど来大臣から答弁がありましたように積極的、前向きにこの問題に対処されるとするならば、いま当面中小の一つの実験的な状況の中で、大手、中手、中小が合わさってこの解撤事業をし、日本経済発展に役立つとするならば、それぞれの省庁との連絡はきわめて必要なことであり、しかも、それぞれの省庁におけるところの行政的見解において不可能でないという判断があるとするならば、大臣が通産大臣あるいは大蔵大臣と積極的にひとつ御接触の上、前向きに対処していただく道を開いていただきたい、私はこう考えるわけですが、その御見解を、簡単で結構でございますからお示しいただきたい。
  90. 福永健司

    福永国務大臣 先ほどからのお話の中にもありましたように、たとえばドル減らしというようなことは、いまの日本がどうあるべきかということから出てくる一つの結論でございます。したがって、そのことをどういうように運んでいくかということか、いろいろその他のことに関連をしていくわけでございます。あさってになりますか、関係閣僚会議もやることになっておりますが、そういうところはもちろん、個別的にもいま係官の諸君からの見解の表明も私、伺っておりますが、内閣の大きな施策一つとして、佐野さんいまお話しのようなことについては大いに努力をいたしたいと存じます。
  91. 佐野進

    ○佐野(進)委員 そこで大臣に、時間も大分経過いたしておりますので、二点ほど質問をいたしたいと思うのでありますが、私がいま申し上げましたとおり、経済閣僚会議があるわけでございますけれども、この造船の問題に関してあるいは海運の問題に関して、先ほど申し上げておりますようなきわめて重要な課題でありますので、政府の各省庁と特別にひとつ実力大庭として連絡会議なり調整会議なりその他を、運輸省が主管してお持ちになっていただいて、これが対策政府として積極的にお取り組みをいただけるお考えをぜひひとつお示しいただきたいということが一つと、それからもう一つ、先ほど申し上げたとおり、私が大手と申し上げたので、大臣は、私は大手だけじゃないんだよ、中小も何もみんな考えているんだよと繰り返し御答弁になったわけでありますが、この点はもう大手も中手も中小もない今日の状況であろうと思いますので、これら関係者を含めた対策会議を、これはもう完全に運輸省が所管していただいて、海運、船舶両局を中心にひとつ対策会議をお持ちになっていただく、そして行政指導の適切を期していただきたい、こう考えるわけでございまするが、この二点についての御見解をお示しいただきたい。
  92. 福永健司

    福永国務大臣 他の省庁と関係いたしましての協議会式のものにつきましては、どこが主になってやるのがよろしいか、解撤だけでございますと、いまの御説のようなこともございましょうが、類似の問題がほかにもあろうかというような気もいたしますが、いずれにいたしましても、これは相談をさせていただくことにいたします。  運輸省を中心といたしましての対策会議的なものにつきましては、いまのお話をよく伺っておいて、関係局長等で早速相談をするようにいたしたいと思います。
  93. 佐野進

    ○佐野(進)委員 私は、いま冒頭質問する際申し上げましたとおり、不況の克服と需要の創出、そして倒産防止ないし倒産した企業に対する対策、これをきょう御質問申し上げたいということで準備をいたしてまいりましたが、時間の関係上、不況克服と需要の創出の面だけで終わらざるを得ません。しかし、この際まだ若干時間が残っておりますので、倒産に関連する問題について質問をして、海運局長ないし船舶局長の見解を聞いておきたいと思うわけであります。  御承知のとおり、倒産は中小にしわ寄せされると言われておりますけれども、結果的に中小あるいは中手というように倒産が進んでおるわけでございますので、これらの問題に対する対策は最も大切な問題であろうと思うわけであります。  したがって私は、過日一つの具体例として新山本造船の問題と大和海運の問題について御質問をいたしたわけでありますけれども、その処置についてはまだ万全が期せられておらないわけでございます。この際、その処置について御見解をお伺いするとともに、倒産防止に関して、海運業界あるいは造船業界ともどもその地域あるいは関連産業に与える影響はきわめて大きいので、これら防止のためにどのような措置をおとりになる御見解か、その決意を含めてひとつお二人にお聞きし、最後に大臣から、その面についての御見解を聞いて私の質問を終わりたいと思います。
  94. 後藤茂也

    後藤(茂)政府委員 御指摘の倒産ケースにつきまして、大和海運について御説明申し上げます。  大和海運は二月の十日に和議開始の申し立てを行いましたけれども、その後会社の人たちから報告を受けておりますところでは、この和議の申し立てについての債権者の話し合いというのがいま進んでおりまして、ただいまのところ重大なる支障なく話が進んでおりますようでございますから、この話がまとまりました時点におきましては、この会社は何がしかのかっこうで、さらに世間に不安を残さないようなかっこうで事業が継続できるのではないかというふうに見通しをしております。  この大和海運が南太平洋定期航路を経営しているということとの関連におきましては、定期航路の経営会社が倒産その他の状態に陥りますと、国際的に多数の関係者をめぐって零細なる外貨建ての債権債務というものの処理の問題を生じまして、非常にめんどうな問題が起こりますし、また国際的にも好ましくないということから、私どもは、この会社が経営しております南太平洋定期航路の経営の継続につきましては、特別の配慮をいたしておりますが、この点につきましても、ただいまはほかの会社から船を差し立ててもらって、その会社の信用によってBLを発行し、荷主の不安を解消するという形を、同盟規定の中でそういうことができるということでやっておりまして、ただいまのところは南太平洋航路をめぐる太平洋諸島の零細なる荷主あるいは港湾関係業者との関係も問題がなくて円滑に処理が進んでおるという状態でございます。
  95. 謝敷宗登

    謝敷政府委員 新山本造船所は資本金四千万、従業員二百五十八人で、昭和五十三年の二月八日に和議手続開始の申し立てを行っております。負債総額二百四十億でございます。この会社につきましては、経営の内容としてはそう悪くなかったと思っております。ただ、先ほど先生指摘の大和海運との債務保証等が最終的には問題になったということでございます。ただ、この会社にとりましても、大和海運以外に国内の中小の船主に船をつくっておりまして、これがほとんど手形で延べ払いという形である、したがいまして、そういった中小の船主が数件倒産をいたしましたあおりを新山本造船は受けまして、その意味で、船を担保に持っておりますが、その売り値が担保価値よりも低いとか、あるいはもちろんコストよりも低いということで差が欠損となって出てきているということから資金繰りにショートを来したわけでございます。  こういうことも考えまして、この会社自身はそういう実態でございますし、優良な船主も持っておりますので、和議が早く成立しますように会社の社長からもいろいろ事情を聞いておりますので、立ち直りを期待したいと思います。  一般的には、中小船主の倒産によります関連倒産が見受けられますので、それを受けまして、少なくとも担保にとってある船を安く売り急がなくてもいいようなそういう制度を、業界全体がお金を出し合うこと等をも考慮しまして検討している段階でございまして、これについても具体化について検討し、詰めていきたいと考えております。
  96. 福永健司

    福永国務大臣 関係局長等を督励いたしまして成果を上げるようにいたしたいと存じます。また、これらのことの経験を将来に生かしたいと考えております。
  97. 佐野進

    ○佐野(進)委員 質問を終わります。
  98. 石井一

    ○石井委員長代理 次に、薮仲義彦君。
  99. 薮仲義彦

    薮仲委員 私は、当面する造船不況について、何点か大臣初め関係の皆さんにお伺いいたします。  先ほど来言われておりますように、造船不況現状というものは、ここ二年間その深刻の度合いがさらに深まっているわけでございますが、事実上倒産した造船会社も、五十三年の二月現在では三十二社、負債総額も二千億を超えておる、こういう実情にあると聞いております。倒産の状況は、当初五十一年ごろは資本金が五百万から一千万前後、従業員数も七十人から八十人の小規模造船所が倒産に追い込まれておったわけでございますが、昨年の夏以降は資本金が一億から三億、従業員も三百人から五百人、いわゆる中堅造船所に波及して、あの大きな波止浜あるいはいま問題になっております佐世保重工のように非常に深刻な状態になっておるわけであります。  ここで私がまず大臣に冒頭に御決意を伺っておきたいのは、造船不況と言っても、先ほど来指摘されましたように、後追いの対策ではなくして、もう少し前向きの姿勢で取り組んでほしいというのが、業界のひとしく一番望んでいらっしゃることであり、その方がかえって雇用の安定にもなるのじゃないか、こう思うわけであります。  そういう意味で、今後大きな柱になりますのは、いわゆる需要というものをどうやって創出していくか、もう一点は、構造改善といいますか能力を縮小するという問題をいかに好ましい形で実現するか、これがその柱になろうかと思うのです。  そこで最初に、需要の創出の面でございますけれども、先ほど来指摘されておりましたように、まずスクラップ・アンド・ビルドが大きなものだと思います。第二番目には、さしあたって何だと言いますと、いま話題になっております石油の備蓄に関連した貯油センター、官公庁船の建造というような問題が具体的な形で出ております。  造工等の言う計画をそのまま行うならば、スクラップ・アンド・ビルドで約三千億、あるいはいま計画されている貯油センター等で一千八百億、官公庁船、中でも海上保安庁を主体とした船は約一百億程度、こうなりますと五千億の需要創出が可能ではないかということも考えられるわけでございますが、ここで一番大事なのは、スクラップ・アンド・ビルドがその大きな柱になるのではないか。  そこで、先ほど来の質疑の中で出てまいりましたように、一番問題になるのは船主側の意向が非常に大事だということ。海運局長の考えもわからないわけではないのですが、先ほど大臣は、造船の火が消えることは町の火が消えることだとおっしゃいましたが、私も造船の町に住んでおりますからよくわかります。特に佐世保などは、市民二十五万人のうち三万五千人以上の方が何らかの形で造船関係している。こういうことは単に造船の町の火が消えるのではなくして、日本造船の将来が一体どうなるのだ、あるいは大きな経済不安、社会不安の要因になりますので、いろいろな困難があっても、いまここで大臣に望まれるのは、政治家として運輸大臣としてこの難局を乗り切るために何としても造船不況だけは安定した形に持っていっていただきたい、そしてこの多くの方々の要望にこたえていただくことが、いま特に運輸省並びに当運輸委員会に一番望まれていることではないかと私は思うのです。  そういう意味で、スクラップ・アンド・ビルドは、いろいろ船主側の意向もあり、困難があるかもしれませんが、需要創出の上では大臣の御決意が一切を克服できる一つのかぎであろうかと思いますので、まず、さしあたってこのスクラップ・アンド・ビルドに対する大臣の御決意を伺っておきたいと思うのでございます。
  100. 福永健司

    福永国務大臣 ただいま薮仲さんがお話しの点につきましては、確かに幾つかの困難はあろうと思いますけれども、およそ政治はその困難を克服して、さらにそれを乗り越えて問題の打開、解決を図っていかなければならぬわけでございます。いろいろお話がございましたようなことに十分気をつけまして、私は一生懸命に成果を上げるべく努力をいたしたいと存じます。
  101. 薮仲義彦

    薮仲委員 それでは、この問題をちょっと具体的に考えてみたいと思うのでございます。  現在、タンカー及びノンタンカーの総トン数で申し上げますと、いまスクラップ・アンド・ビルドの対象として考えられております船齢が十年以上の船でタンカーが二百八十六万五千総トン、ノンタンカーが五百十六万四千総トン、都合八百二万九千総トンあるわけでございます。この中で、タンカーについては船腹過剰という問題もあり、これをスクラップしてもいかがかと言われておりますので、さしあたってはノンタンカーの部分についての需要の創出が非常に必要な問題であろうと思うのでございます。  そこで、ノンタンカーの五百十六万四千総トン、聞くところによりますと造工等もノンタンカー部分について年間二百万総トン程度スクラップし、百五十万総トンのビルドをしたいという意向を持っておるわけでございます。ここのところが、先ほど来問題になっておりますように非常に大変な部分でございますが、ここで船主側が問題にするのは何なのかと言いますと、船価の簿価とスクラップの値段との差を一体どう調整するか、そのような問題もあろうかと思うのでございます。  この点、細かい数字はここでは申し上げませんが、われわれが聞き及ぶところでは、簿価と船価との差は、年間二百万総トン程度スクラップしたときに九十億程度の金額が必要になるのではなかろうか、それに対する何らかの形での措置が望めないだろうか、これが一つ需要創出についてのかぎではないか、こう思うわけでございます。もしもこの壁が乗り越えられますと、先ほど申し上げましたように、年間にして九十億程度の財政支出によって三千億の需要が創出できることになりまして、国全体としては非常に好ましい結果になるのじゃないか。そのような事柄について大臣は何とかこれを乗り越えられないか、問題は多々あろうと思いますが、具体的な一つの問題として、この辺のスクラップしたときの助成等を含めたお考えはいかがか、お伺いしたいのでございます。
  102. 福永健司

    福永国務大臣 考え方の大筋は先ほど申し上げたような次第でございますが、それぞれ主管局長等において具体的な施策は言えることもあり、これから考えること等もございましょうが、若干考えていることを申し上げることにいたします。
  103. 後藤茂也

    後藤(茂)政府委員 船主老朽船スクラップして、そのかわりに新しい船をつくるという考え方の前提として、スクラップをいたしますと、現在、その老朽船の簿価と期待されるスクラップ値段との間に大きな差がある、これが一つの障害になっておるという御指摘、また、したがってそれに対して何らかの財政的補助云々という御提案であると承ります。  そこで、まず御説明を申し上げておきますが、これがスクラップをしようとする船主スクラップをしたがらない一つの障害でございまして、仮にこの障害か解けたからといってビルドをするかしないかは全く別の問題でございます。したがいまして、スクラップ・アンド・ビルドの問題を克服すべき難局がどこにあるのかということをこれから深く洗っていくにつきまして、スクラップの簿価と時価との差額をどうするかという問題は問題の入り口の外の問題、まだ入り口から入っていない段階での問題だということをまず御説明しておきます。  そういうこととして御説明申し上げれば、いまも御指摘のように、現在老朽船の簿価それからその船を具体的にスクラップした場合に期待される時価との間には相当の差がございまして、その点に何らかの考慮、配慮を考えることが問題の入り口に入っていく一つの手段ではなかろうかと考えます。
  104. 薮仲義彦

    薮仲委員 先ほど来海運局長の話を聞くと、造船に対する希望が非常に暗くなるわけでございますが、その辺、日本の将来を含めて可能な限り努力をし、何とか打開しなければならないというのが運輸省当局に与えられた大きな課題だと思うのです。  その辺の調整は大臣としての御決意に多くを期待しなければならないと思うわけでございます。入り口の問題でひっかかったわけでございますけれども、これが解決しませんと、今後構造改善を含めて造船業界は非常に深刻な状態になるのではないかと思いますので、重ねて大臣の御決意を伺いたいのでございます。
  105. 福永健司

    福永国務大臣 なかなかむずかしいことがたくさんございます。わが運輸省はむずかしいことを解決していかなければならぬような宿命にいまあるような気がするのでありますが、海運局長海運局長で、まず入り口前後のところでは、ああ申し上げるのもこれまた無理からぬところでございます。私どもよく相談いたしまして、今後に対処いたしたいと存じます。
  106. 薮仲義彦

    薮仲委員 では、大臣の実行力に大いに期待いたしまして、次の質問に移らせていただきます。  先ほども問題に出ましたけれども、造工が今度スクラップ化という問題を出しているようでございますが、この造工の目指すスクラップというのは、いわゆるスクラップ・アンド・ビルドスクラップなのか、それとも造工自体スクラップそのものをやろうとするのか、その辺のところと、現在日造協等が、先ほども指摘ございましたように、スクラップについては努力をなさっておった、この辺との関係性について、いまお答えいただける範囲内で結構でございますので、船舶局長からお答えいただきたいと思います。
  107. 謝敷宗登

    謝敷政府委員 先ほど大臣からお話しのありました造船工業会の正、副会長が参りまして決意のほどを言われて、早速共同の出資会社をつくるべく準備をしているようでございます。ただその場合に、造船工業会がいま考えておりますのは、スクラップ・アンド・ビルドのSにしましても、それから単純な老朽外国船の輸入船のスクラップにいたしましても、基本的には本気になって自分たちの技術なりあるいは海外におきます売買のネットワークなり、そういうものを使いまして自分たちでやりたい、こういうことでございます。したがいまして、具体的にその両者の場合におきまして、いずれにしましても、スクラップについてそういう決意がなされ、準備が進んでいるということは、私ども非常に大きな前進だと思います。  それで、日造協等の略称で言われております造船の大手、中手下請事業者が中心になっております日本造船協力事業者団体連合会のやっておりましたスクラップとの関係でございますが、これは五十二年度は言うなれば自分たちが中心になって、大手の協力は得ましたけれども、まあ実験的、細々という段階でございます。ことしに入りまして日造協自身も自分たちだけでなくて、造船業者の従業員と自分たちも一丸になってこれに取り組んだ方がいいという考え方で、一体になってやります。こういうようなことを申しております。したがいまして、具体的になってまいりますと、実際の作業については当然造船下請業者も活用しまして、これまでの経験も全体の技術改善の中に生かされるもの、こう考えております。
  108. 薮仲義彦

    薮仲委員 このように造工までスクラップということに乗り出してまいりますと、やはりスクラップについて好むと好まざるとにかかわらず取り組んでいかなければならないことになってくるかと思うのでございますが、船舶局でいまつかんでいらっしゃる範囲内で結構ですから、鉄くずのいわゆるスクラップの需給関係、また、この鉄くずの値段というものは非常に乱高下するものでございますが、こういう鉄くずの備蓄の状況というのは、備蓄協会が果たしてその機能を十分果たしているのかどうか、こういうことは、やはり日本の将来の造船にとっては取り組んでおかなければならない大事な問題でございますので、いまつかんでいらっしゃる範囲内で伺いたいと思います。
  109. 謝敷宗登

    謝敷政府委員 私どもが承知しておりますところでは、くず鉄価格の乱高下を防止するために通産省が指導されてつくっておられます備蓄協会では、五万トンの量を対象にしてやっておられると聞いております。  そこで問題は、いかに安く船を買ってきて、いかに市況に合わせて有利に鉄くずを売るかということが一つの大きなポイントだと思います。そういう意味で、これから造船工業会が共同の会社をつくって過当競争をしないで買船価格をつり上げないようにやっていきながら、かっ発生しましたスクラップを有利な時期に売るということについていろいろ検討しておるようでございます。それぞれの造船会社のいろいろなネットワークも持っておられますので、自前でする点についてもやるという決意を聞いておりますが、ただ、有利な時期に売るということになりますと、スクラップの工事をいたしました時期と、それから鉄くずをいろいろ仕分けて、高いものは高いもの、溶解物は溶解物と仕分けて、ある程度寝かしておくという点については、従来以上に少し長い金融措置が要るかと思いますが、この点については造船工業会が検討しているところと思います。
  110. 薮仲義彦

    薮仲委員 いま申し上げたこのスクラップの問題は、これからいずれにいたしましても運輸省当局にかかわり合いの出てくる問題でございますので、十分な検討を要望しておきます。  それでは、次の問題に移らせていただきますけれども、いまいわゆる浮体構造物といいますか、それを、長年日本の国が蓄積してきました新しい技術によりまして実りあるものにしようというような事柄から、関西新空港あるいは新高松空港が話題になっておりますけれども、この辺について、初めての海上空港という構想でございますが、ここで何点か航空局のお立場を伺っておきたいのです。  一つは、技術的な面で、潮の干満等もありまして、誘導電波をグラウンドから発信して誘導していく等の問題もございまして、技術上の問題はクリアできたのか、あるいは飛行場そのものの耐用年数、それから、そういうものを含めた経済性、さらには一番大事な安全輸送という観点から、埋め立てした空港とこの海上空港とを比較した場合、現時点でおわかりになる点があれば、特に海上空港については不安がなければないというようなお考えがあれば、そのことだけお伺いしておきたいと思うのです。
  111. 松本操

    ○松本(操)政府委員 先生いま具体的に空港の名を挙げて御質問でございましたが、浮体工法によって海上空港をつくるということは、何せわが国にとってはもちろん、世界的にも恐らく初めてのことであろうかと思います。現在のような時世でもございますので、その方面の、特に造船関係の御専用の方がいろいろと研究されておることは私ども、よく承知しておりますし、私どもとしても、またそれぞれ専門の部門にいま検討をさせておる段階でございますけれども、大体海の上に飛行場をつくります場合に、従来の考えでございますれば当然埋め立てということになりますが、そのほかに、これはオランダあたりで得意としておりますような干拓でありますとか、あるいはニューヨークのラガーディア空港がその例にあるそうでございますが、海の中にくいを打ちまして、そのくいの上に板を渡すと言うと、雑な言い方になりますが、滑走路に相当する部分等を張り合せるくい打ち工法、それから、いま先生おっしゃいましたように、浮体工法と通称されております船の大きなものをつなぎ合わせたような形で海の上に浮かべる、こういう工法があるわけであります。  その中でも埋め立てば、これは長い間の経験がございますので、そういまさら新しく開発するということは技術的にはなかろうが、ただ、最近のように環境問題がいろいろむずかしくなってまいりますと、埋め立てそのものについてのいろいろな議論がございますので、そういう点についての研究は今後とも進めていかなければならない。そこで浮体工法ということになりますと、遺憾ながら全く新しい技術でございますので、いま具体的に、たとえば電波高度計に対してどうであるかとか、あるいは耐久性がどうであるかとか、あるいはそれを総合して安全性がどうであるかという個々の点についての御質問でございますけれども、目下はせっかく研究中であるということであって、全く話にならないというふうなものではもちろんないと思います。これからの技術として十分にこなしていけるものであろう、こういうふうには思いますけれども、いまの時点で既存の海上空港の工法と対照して具体的に利害得失を述べよ、こういうことでございますと、大変残念でございますけれども、いまのところ、そう具体的に申し上げる段階までには至っていないというふうに考えております。
  112. 薮仲義彦

    薮仲委員 この問題は、今日まで鋭意蓄積されました日本造船技術を生かす上で非常に希望の持てる一つの構想でございますので、鋭意御研究をお願いいたしておきたいと思います。  次の問題に移りますけれども、先ほど需要創出の二番目に挙げました海上貯油センターについて二、三伺っておきたいのでございますが、ごく簡単に通産省の石油備蓄に関する基本的な考えをお示しください。
  113. 清滝昌三郎

    ○清滝説明員 お答申し上げます。  現在、わが国におきます備蓄の政策といたしましては、世界のレベルと同様な備蓄を行うというふうな趣旨のもとに、五十四年度末に九十日の民間備蓄を行うというふうなことで対策を進めている段階でございます。
  114. 薮仲義彦

    薮仲委員 それでは、九十日備蓄ということを前提にして陸上ないしは海上にという構想がいろいろあるようでございますけれども、きょうはその中で特に海上への備蓄ということにしぼってお伺いすれば、現在、いわゆるタンカーによる備蓄それから貯油センターによる備蓄と三つの方式が考えられておりますけれども通産省としては、さしあたって、あるいは今後長期の問題といろいろ分けられるかもしれませんけれども、どちらを考えていらっしゃるのか、その辺をお伺いしたいと思います。
  115. 清滝昌三郎

    ○清滝説明員 現在の石油備蓄の方式は、すべて陸上タンクによって行われてきておるわけでございます。今後の見通しにおきましても、陸上というものが主体を占めるということは十分想定されるわけでございますけれども、御承知のようにわが国におきます立地条件の制約、こういった諸般の事情から、これにかわるべき新しい備蓄方式といたしまして、従来からいろいろ検討されてきた経緯もございますが、その結果、先生のおっしゃいましたタンカー備蓄につきましては、まだ法律が通っておりませんが、これから公団法が改正されました暁には、国家備蓄にタンカーによる備蓄方式を採用する、ただし、これは最終的には陸上のタンクに移しかえるという趣旨で、いわばつなぎの意味で実施する計画が進められております。  それからもう一つ、いわゆる洋上備蓄と申しますか、海上に浮かべます大型のタンクによります備蓄方式も、新しい方式ということで以前から検討されていた経緯がございます。具体的に今回、企業民間ベースによりまして計画が具体化されるべく地元折衝等が行われておるということでございますが、全体の量的な面から申し上げますと、やはり陸上が主体を占めるということにはなろうかと思います。
  116. 薮仲義彦

    薮仲委員 具体的に申し上げますけれども、上五島洋上石油備蓄というような形になっているわけですが、海上貯油センターの構想があるわけですね、この貯油センター構想について、この次に私、お伺いしょうと思っておりますが、船舶局あるいは消防庁等のいろいろな安全に関する問題が出てくると思いますが、今後そういう問題あるいは地元との話し合いが解決されて安全であるということになれば、通産省としては、海上へ備蓄をしたい、備蓄をする、そういう考えですか。
  117. 清滝昌三郎

    ○清滝説明員 現在、私どもが具体的に聞いておりますそういったプロジェクトは、ただいま御紹介ございました上五島におけるプロジェクトでございまして、現在のところ、まだ地元との折衝等にしばらく時間がかかるというふうな情勢は聞いておるわけでございますけれども、地元等の理解と協力が得られて受け入れがスムーズにいくということが一方期待される面もございますので、そういった暁にはこれを推進したいというふうに考えておるわけでございます。
  118. 薮仲義彦

    薮仲委員 それでは、船舶局にお伺いしたいわけでございますけれども、特にさっきの空港もさることながら、この海上貯油センターというのは、世界でも例のないようなものを日本の国で初めてやるわけでございますが、先ほど来の安全の問題、さらには環境アセスメント、漁民との問題、あるいは地元住民との関係等々が、これから非常に大事な問題になろうと思うのですが、それもさることながら、構造物本体の安全はどうなのか、あるいは技術的な面は問題ないのか、こういう点についてちょっとお伺いしておきたいのでございます。  いわゆる運輸技術審議会から「浮遊式海洋構造物による石油備蓄システムの安全指針」というものが出されたわけでございまして、これによって今度は運輸省関係法令等の整備を図り、いわゆる安全基準というものを確立すると思うのでございますが、そういうものを含めて、いわゆる技術、耐用年数、さらには関係法令等を貯油センター構想というものは十分クリアできるのかどうか、船舶局としてはその辺のところどのようなお考えでいるか、これは船舶局のお立場から伺いたいと思います。  もう一点は、消防庁にも同じことでお伺いしておきたいのですが、やはりこの問題については、危険物技術基準委員会から「海上貯油センターに対する安全基準に対する指針」が出されたと思いますけれども、それについて今度は消防庁の立場で、この海上タンクの安全についてどうお考えであるか。船舶局と消防庁にお考えを伺っておきたいと思います。
  119. 謝敷宗登

    謝敷政府委員 造船業が目指すべき新しい技術の展開といたしまして、先生指摘の二つの方向がここにありますが、一つは空港なりあるいはアクアポリス、アクアポリスではすでに経験を積んでおりますが、浮力を得る部分と利用する部分を海の表面で分けまして、それで新しい形のいわゆる海洋構造物をつくり上げていくというタイプと、それから従来の船の形なり構造を応用して海洋貯蔵施設をつくっていくという二つの方向があろうかと思います。  それで、上五島の海上貯油システムにつきましては、後者の技術の発展でございまして、私どもとしましては、実績といたしまして五十万トン、約三百八十メーターぐらいのタンカーについては十分安全を確保しながらつくってまいっております。さらに設計あるいは強度の検討については、八十万トンまですでに海運造船合理化審議会で詳細に検討をしております。そういう意味で、船舶の従来の経験を生かすという意味で、より具体的に近い技術でありまして、基本的には十分対応できる、こう考えております。  ただ、長期間貯蔵いたしますので、自然条件あるいは全体の配置なり港湾の施設等、船舶局以外の分野もかなりございますが、これらを総合して、安全の確保について、先生指摘のように運輸技術審議会で四月七日に答申をいただいたわけでございます。したがいまして、私どもとしましては、その構造あるいは耐用年数等につきましても、従来の船型の技術の応用でございますので、これよりも大きいものについても、すでに技術的な検討を終えているということで、この安全指針をさらにブレークダウンしまして、具体的な規定の整備を可及的速やかに終了いたしまして、これの審査、指導に当たりたい、こう考えております。
  120. 小池次雄

    ○小池説明員 ただいまの御質問でございますが、先般安全指針を技術委員会検討していただいたものを当省でまとめまして、これをもとにいたしまして基準づくりに入っていきたい。在来のタンクにつきましては、すべて陸上地域においての管理あるいは運用を行ってまいってきておるわけですが、今回の場合は陸域、海域というのを一体として監視、制御されていくというような、ある意味におきましては変形的な、あるいはいままで類のないようなものでございます。したがいまして、陸域の部分における各種の立地構造、あるいはまた一体となるタンク部分についての構造等々につきましての安全、防災という問題につきましては、いままでの指針を十分に生かして、基準に反映させてまいりたい。同時にまた、これに関連する安全あるいは防災という問題に関して、特に海に浮かぶ部分に対しましては、運輸当局とも十分な整合性を持ちながら担保をしてまいりたい、かように考えております。
  121. 薮仲義彦

    薮仲委員 私は、ここで大臣にお願いをしておきたいのでございますが、先ほど来お話ししましたように、通産省は民間からの意向であり、安全ならば石油を備蓄いたしましょう、海上でも結構です。こういうようなお話ですし、このような新しい技術が行われるときに一番問題になりますのは、陸上部分と海上部分で所管する官庁も違うということでございます。陸上部分は、従来ならば消防庁が石油コンビナート防災法、あるいは消防法等でその基準づくりを進められていくでありましょうし、今度運輸省当局の立場になってまいりますと、いわゆる船舶安全法あるいは港則法、そういうような法令がこれにはかかわり合ってくる。さらには地元自治体との問題、漁業春との問題等、非常に新しいものであるがゆえに関係する省庁も多いし、関係当局も多い。これはいみじくも、先ほど大臣運輸省はどうも困難な問題とおっしゃったわけでございますが、成田の例にもありますように、一つ間違いますと、非常にまた困難が想定されるわけでございますので、浮体構造物の主体構造部分は、何と言っても運輸省の船舶局あるいは通産省が基本的な構想を持っておる国家的な石油備蓄という問題でございますので、その辺、大臣のところで何とぞ調整をうまくして、最も住民が望んでいる安全というものが確認をされ、好ましい形でそれができ上がる、あるいは安全が確認されなければこれは慎重であらねばならない、このようなことを言わなければならないと思うのでございますけれども、その辺、大臣のお考えと御決意をお伺いしたいのでございます。     〔石井委員長代理退席、委員長着席〕
  122. 福永健司

    福永国務大臣 ただいま一部教訓のようなことも伺ったのでございますが、私どもといたしましては、重々そういう点に気をつけていかなければならぬと思います。安全の確保等は当然でございます。そういうように心がけてまいりたいと思います。  ただ、たとえば関西新空港について、素人の私が浮体工法云々というようなことを言ったわけでありますが、これは思いつきで言ったのではなくして、私は、薮仲さんと違って大分年寄りでございますので、長い問いろいろな経験をしてまいりまして、日本民族は今日まで非常にいろいろな危険にもさらされてまいりまして今日の状態に来ていることを、私は私なりによくここまできたなというような気もするわけでございますが、それだけに大事にしていかなければならぬと同時に、いろいろな事情が重なってきたときに、運命の打開というものは安全を確保しつつ、しかも世界の諸民族に先駆けた行き方もまた考えていかなければならぬ。だからと言って、先ほどからお諭しがございますように、そういうことを求めて一つやりそこなったらまさに大変なことでございます。そこらを私といたしましても頭に置きつつ言っておるわけでございまして、したがって、実際にこういうことを手がけていくということにつきましては、重々安全を心がける。だがしかし同時に、国土狭く資源の乏しい日本民族がいかにして運命を開拓していくかという面からいきますと、それはそれとして、世界のほかの民族と違ったものも追求していかなければならない、そういうようなことを考えつつ対処してまいりたいと存じます。
  123. 薮仲義彦

    薮仲委員 大臣の善処をよろしく望んでおきます。  そこで、今度はまた話題を変えさせていただきますけれども、次は、海上保安庁に関することでございますが、二百海里時代に入ったわけでございます。漁業者の安全操業あるいは海難救助、海洋汚染防止あるいは領土、領海の保全というような問題も、これからは海上保安庁としては非常に大事な問題であって、その責任は年を追って重要性というものが叫ばれてくると思うのでございます。  そこで、私が指摘したいのは、領海三海里からいわゆる二百海里時代というのを迎えたのは非常に急速ではなかったか。短時日の間に三海里から二百海里時代を迎えなければならない。また海上保安庁としては、現状がどうあれ、とにかく二百海里に対応する諸般の情勢というものをつくっていかなければならない、こういう情勢を迎えておるわけでございます。  ここで大臣に少しは希望の持てるような御決意を伺いたいのでございますが、上百海里時代にふさわしいといいますか、将来あるべき海上保安庁の増強を含めた姿、あるいは本当に日本のコーストガードと言うにふさわしい、ある意味では親しまれ、安心感を与えられるような海上保安庁づくりということも非常に大事な問題だと思うのでございますが、その辺の大臣の御決意を伺っておきたいのでございます。
  124. 福永健司

    福永国務大臣 冒頭に御激励をいただいて恐縮に存じますが、御説のように、私も、この海洋国日本が今後に対処していく、ことに徹頭徹尾平和的に対処していく、こういうことを考えますと、コーストガード的な海上保安庁の使命は非常に重大であると私は考えるわけでございます。  今度の尖閣諸島の問題につきましても、徹頭徹尾そういう観点から対処したつもりでございます。一つの試練であったと考えます。世の批判はいろいろあると思います。中にはもっと勢いよくやれという御説もあるし、また努めて静かにやれという御説等もあっていろいろございます。いろいろございますが、私どもは、冷静にして、かつ毅然とというような気持ちで対処してまいりました。  そういうような観点からいたしまして、しからばそういうことに対処するだけに、海上保安庁が人的にも物的にも遺憾なくそろっているか、こういうことになりますと、人的の方面はみんなで一生懸命やってくれますから、これはこれといたしまして、物的の面等については、確かに新しい海洋秩序の時代、二百海里の時代になって間なしではございますけれども、ある程度の備えは確かにいたしました。いたしましたが、現実にごく昨今の情勢等も考えたときに、これはもう少し考えなきゃいかぬのじゃないか、こういうようなことを思うわけでございます。  そういう点から考えたときに、それじゃ新しくどうしようかというようなことで、対処するにいたしましても、物によっては考えてすぐに間に合わぬものがある、船その他についてそういうことが言えると思います。そうすると、新しい年度を待ってとかなんとかと言っている話では、それから手配したのでは、さらにまた相当期間おくれるというようなこと等もございます。  さような次第で、この大きく変わった新しい時代には、足らなかったこと等については、ちゅうちょすることなく速やかに対処しなければならぬ。だがしかし、一方において当然予算とか会計年度とかいろいろなことがございますが、それはそれといたしまして、その中でもどういうように早い対処をしていくかということ等も考えていかなければならない。ただいまそういう考え方のみでなくて、現実的にいま計画いたしておりますので、なるべく早くそうしたことにも踏み切ってまいりたいし、関係の諸方面の理解も得ていきたい、こういうように考えております。  いずれにいたしましても、お話のように、新海洋秩序のもとにおいて海洋国日本がどうあるべきか、特に平和的にコーストガードの使命を達成する海上保安庁がどうあるかということについては、一生懸命関係者一同対処していきたい、こう考えております。
  125. 薮仲義彦

    薮仲委員 どうか大臣のその御決意を具体的な形で大臣の時代にその糸口といいますか、将来にわたる大きな希望が見出せるような構想を実現していただくようお願いいたしておきます。  そういう観点から、本年度の建造数が何隻で多いとか少ないとか、本年度は増強六隻ということになっておるのでございますが、それが多いとか少ないということは、大臣の将来構想の中で着実にやっていただけるということを多としてそれはおきまして、話を現実の問題へがたんと落としますと、将来への体制もさることながら、現状を見てまいりますと、われわれは、もう少し現状も整備していただいた方がよろしいのじゃないか、こう感ずることがございます。  それで実は、耐用年数ということも、各省庁に聞いてみますと、いろいろおっしゃるものですから、さだかなことはわかりませんけれども、一応二十五年を過ぎたというものについて指摘するならば、現在海上保安庁が保有しております四百五十トン型、このうちの十三隻は二十五年を過ぎております。さらに巡視艇と言われる二十三メートル型、十五メートル型、また十五メートル型を改造したものがございますが、二十三メートル型は二隻、十五メートル型は五隻、改造艇は十三隻、いわゆる艇と言われる船は二十隻が耐用年数二十五年を過ぎております。それから、もうちょっと小さな船で水路業務用船、灯台業務用船、これらも水路業務用船は二隻、灯台業務用船は六隻、計八隻、以上全部足しますと、四十一隻は二十五年の耐用年数を過ぎておる、こういう船艇であるわけでございます。  海上保安庁は非常に手入れがいい、二十五年過ぎても大丈夫だという意見もあるかもしれませんけれども、私も、海のそばに住んでおりまして、現在の海上保安庁の船艇の持っている性能といいますかスピードといいますか、ただいまの大臣の御決意から言うと、悪い言い方かもしれませんが、ちょっと古いのじゃないかなと思います。船員の船室の問題等もありますが、いわゆる性能、整備、スピード等が時代相応ではないのじゃないか、これだけの優秀な造船技術を持っておる日本なんですから、このような老朽船については、大胆に思い切って、ある意味では速やかに、それに乗っている優秀な海上保安庁の皆さんもいるわけでございますから、問題は船をつくるということだけでございまして、要員その他はあるいは優秀な船になればもっと合理化されるかもしれません。そういう意味合いにおいて、やろうと思えばこれは早速にできる問題でございますので、この辺、大臣の決意といいますかお考えは、何としても私は早期に全部代替していただきたい、こう思いますけれども、いかがでございましょうか。
  126. 福永健司

    福永国務大臣 一口に申しまして、ぜひ薮仲さんおっしゃるように私もしたいのです。そこで、そういう考え方海上保安庁長官等にも早速、そうはいかぬかと言ったのでございますが、一部進行しておりますし、それから、もう少したってからというのを、ここで何とか早くというような動きにもなっております。  多少具体的に、海上保安庁から申し上げさせていただきたいと思います。
  127. 薗村泰彦

    ○薗村政府委員 先生お話しのとおりの老朽船の実情でございます。原則として巡視船は二十五年、巡視艇は二十年という耐用年数で、木造のものは十五年とか改造したものはさらに短くて十年とか、いろいろな耐用年数がございますが、四百五十トン型にかなり老朽のものを持っているし、それ以外の巡視艇にもかなり古いものを持っているので、合計で四十一隻と先生指摘になられたとおりでございます。  私ども、いま大胆からも申し上げましたとおり、五十二年度から五十三年度にかけて、御承知のとおり海洋二法の施行がちょうど去年のいまごろ早まったということで、何とか追いついていかなければいかぬということを考えて、五十二年度の当初予算、それにプラスして五十二年度の補正予算で、もう一つ予算的な措置を講じてきた、そこで三回目が、実は先般御可決いただいた五十三年度の予算ということでございまして、その両年度を通じまして古い船を代替するということで、巡視船艇だけで二十一隻、その他のいま先生からお話ございました灯台とか水路の船を入れると、たしか三十三隻代替を行ってきましたが、まだ古いのが四十一隻残っているという現状でございます。  また、私ども実は従来からもこの委員会で、おまえたちは新しい海洋法時代が来るのに全体的な計画を持っておらぬのかという御指摘でございましたが、実は私どもは、構想を持って、内部的には逐次処理してきたつもりなんでございますが、特に今回のここ一週間の出来事を振り返ってみますと、その構想の中で検討すべきものもあるという感じがいたしますので、大臣の御指示も受けまして、この際早急に検討してみたいという考えでございます。
  128. 薮仲義彦

    薮仲委員 どうか大臣並びに保安庁長官の努力によって、好ましい海上保安庁が整備されることを心から望んでおきます。  次の問題に移らせていただきます。次の問題は余り前向きではなくて残念なんですが、現在問題になっております特定不況産業安定臨時措置法案に関連してお伺いをしたいわけでございます。  この法案が成立いたしますと、業界が安定計画の作成ということになろうかと思うのでございますが、その安定計画を作成するに当たって、運輸省がいわゆる能力縮小に関する指針を定めると思うのでございますが、この指針は大体いつごろお出しになるのか、その辺をお伺いしたいと思います。
  129. 謝敷宗登

    謝敷政府委員 現在国会で御審議をいただいております特定不況産業安定臨時措置法におきまして、需要の創出と並びまして、過剰設備について身を縮めるといいますか、そういう処理をしなければならぬと考えております。  それで、法律によりますと、処理すべき設備の量とか処理の方法、先ほども申しましたように廃棄、凍結あるいは転用といった問題、それから、それをいつごろから始めるかということ、さらには事業転換、生産の受託、委託、共同販売等、設備の処理にあわせて行うべき措置を盛り込んだ安定基本計画を定めることになっております。  現在は法律の御審議中でございますので、三月の初めから従来ございました造船施設部会で準備をしておりますが、これのもとになります中期の、あるいは長期も含めました需給の見通しとの関連がございますので、これは鋭意進めて、少なくとも法律案の成立の暁にはすぐにでも出せる形で検討をしております。  それから、これに基づきまして設備の処理等をやっていきますが、これはいきなり安定基本計画という段階になります前に——法律によりますと、多数の業者が特安法の指定の申し出をしなければなりません。それで初めて政令指定で安定基本計画ができるわけでございますが、それに先立ちまして、そういった業界の方の特安法の指定の申し出のよりどころとなるべき再建の方策について、法律案が通りました暁にすぐにとりかかりまして、後段に出てまいります安定基本計画の基本的な骨格を全部この中に盛り込んでいきたい、こう考えております。  なるべく早くその結論を出すということで、先ほど来委員会でお述べいただいておりますように、夏以降の船台ぐりの問題も十分頭に置きまして、それに対して基本的な方向が示せるようなタイミングで、いま申しましたような段取りで進めてまいりたい、こう考えております。
  130. 薮仲義彦

    薮仲委員 それでは、その指針を早期に出すようにということを要望しておきます。  次に、まだ法案が通らない段階で云々することもいかがかと思うのでございますが、これは要望という形で申し上げておきたいのでございますが、この設備の廃棄等を含めまして、いわゆる能力の縮小ということが大きな問題だと思うのでございます。われわれが考えますことは、先般行われました操業度の短縮というときに見られましたように、造船にも大手、中手、小手、いわゆる小船工、中造工、造工とあるわけでございますが、少なくともその辺のところの思いやりといいますか、そこのところはその指針の中で十分考えていただきたい。特に小船工等は船台一台、あるいは漁船専業というような方も多くございます。きょうは問題にいたしませんけれども、漁船の建造等を見てみますと、ピーク時の約八一%ほど建造いたしている現状でございますので、現在問題になっております構造不況といった問題とは多少意味合いが異なっているのじゃないか、そのように考えられますので、設備廃棄については、造工、中造工、小船工、そういう中である程度の基本的な差といいますか、能力に応じた縮小があってしかるべきだと思うのでございますが、その辺いかがでございましょうか。
  131. 謝敷宗登

    謝敷政府委員 いま先生指摘の点につきましては、それぞれの業界内部でも非常に真剣に議論が行われておるところでございます。  それで私、ここで申し上げてみたいと思いますのは、漁船造船所までも含めますと、約千六百ぐらいの数がございます。今回の構造不況と言われておりますのは、主として外国船を対象にしている造船所だと考えております。したがいまして、漁船あるいは内航船を中心にしておりますいわゆる小船工グループにつきましては、今度の対策といいますか、別途需要の確保とかしかるべき指導はいたしますが、いまのところは能力の縮小という対象には考えておりませんし、また業界からも、そういうことではなく、むしろ信用の供与なり仕事の確保という面で言われておりますので、これは恐らく対象の外になるのではないか、こう考えております。それで、あと残りました大手、中手の問題でございますが、これは、これまで当委員会でいろいろいただきました御意見あるいは参考人の御意見も十分頭に入れて対応してみたいと考えております。  ただ、私がちょっと気にかかりましたのは、この前の操業短縮のときに、操業度の調整で、操業度の短縮の比率を逆に大手に非常に強く、中手段階をつけて緩くしたわけでございます。これはこれなりに基本的には正しかったと思いますが、中手の方々が逆に、全体的にそれだけ仕事があるのではないかというようなお感じを持たれた向きもちょっとありまして、そういう意味では、体制の対応が遅かったというふうに見られる向きもあります。その点につきましては、対象外も含めまして、非常に厳しい状況もよく浸透するように配慮をしながら、全体としては、当委員会でいろいろ御指摘の点を十分頭に置いて対応してまいりたい、こう考えております。
  132. 薮仲義彦

    薮仲委員 では、最後に大臣に。  先ほど来、何点か大臣の御決意も伺ってまいりましたけれども造船業界を取り巻く状態というのは、日本の国にとって非常に大塔な問題が数多くございますし、そういう意味合いにおきまして、どうかこの困難な状況を乗り切っていただきたい、また何としても乗り切らなければならないのじゃないか。そういう意味合いを込めて大臣の御決意を重ねて承って、私の質問を終わりたいと思います。
  133. 福永健司

    福永国務大臣 造船業不況不況という中でこれは本当に深刻なものであり、皆さんのいろいろのお話等も本日伺ったわけでございます。私どもといたしましては、誠心誠意この問題と取り組んでぜひ何とかいたしたい、こういうふうに考えるわけでございます。
  134. 薮仲義彦

    薮仲委員 終わります。
  135. 増岡博之

    増岡委員長 河村勝君。
  136. 河村勝

    ○河村委員 大臣は先ほど、運輸省は非常に困難な問題をやらなければならない密命にあるように思われるとおっしゃいましたけれども、宿命という言葉ははなはだ不穏当であって、本当は重大なる責任があるんですね。造船業は自由企業ではないのです。造船法に基づいて建造設備をつくるのは運輸省の許可が要る。五百トン以上の船は全部。それから臨時船舶建造調整法では二千五百トン以上。だから、いずれにせよ、大多数の船がこうして政府の許可によって設備もつくられている。したがって、一般の企業とは違うのです。それにもかかわらず、現在千九百万トンの設備能力ですね。そして昭和五十五年の運輸省の推定が、六百五十万トンくらいあれば足りるというわけでしょう。三分の一ですね。なるほど、石油ショックによって世界的な不況が起こったということは事実だけれども、それにしても千九百万トンの設備能力までつくらした、実際には五十五年というのは、かなり不況が緩和されつつある時期ですね、それでいて三分の一しか需要がないというようなところまで設備を拡大させたというのは、これは企業にもそれぞれ先行きの見通しを判定するだけの能力や義務があると思うけれども、しかし、もともとがんじがらめで国が縛っている、それをやっているのは運輸省自身ですね、ですから、ここまで持ってきた、これだけのどん底の不況にしたということについて、大臣が宿命論かなんかでおっしゃっているのは、ちょっと見当が違いやしないか、一体その責任をどうお考えになっているのか伺いたい。
  137. 福永健司

    福永国務大臣 私が先ほど申し上げました場合のは、河村さんがいまお話しのこととは多少違うことですが、確かに宿命という雷葉を使いました、たかしかし、私はそのとき当然甘受すべき事態というようなことを意識してそういう言葉を使ったのでございますが、まさにいま御指摘のように、そういうことについて重大責任を感じつつ対処しなければならぬわけでございまして、いっでも宿命という言葉を責任ということに置きかえて、私、そう大して違いはない、そのくらいな気持ちで申し上げた次第でございます。  そういう意味から申しまして、いまいろいろ困難な事態に立ち至っておりますが、そういうことについて運輸省はある程度の責任があったのではないかということは、これはもう当然考えなければならぬことでございます。そういう責任があるということであればあるほど、その今後の対策についてはより一層われわれは真剣に取り組んで、何とか打開の方途を講じていかなければならない、こういうふうに考えております。
  138. 河村勝

    ○河村委員 過去のことを言っても仕方がありませんけれども昭和四十六、七年の当時に、一体なぜここまで膨大な設備能力を持たせるように業界を誘導したかということが重大な問題なんですね。  今度、構造不況業種のいろいろな問題に私も取り組んでやってみますと、大体設備能力を二〇%以上落とさなければならぬところが多いのですけれども昭和四十七、八、九、この三年ぐらいで二〇%から三〇%設備をふやしたところが大部分なんですね。ですから、この四十七、八、九で、いま廃棄しなければならぬ設備を新しくつくっておるというところがほとんどなんです。造船も多分私はその例に漏れないだろうと思う。四十九年というのは日本がマイナス成長のあったときですから、このときに発注したという意味ではもちろんありませんよ、設備投資は四十八年にやれば四十九年まで続くわけですからね。  そこで、四十六年からこの不況に至るまで、一体どのくらい船をつくったのですか。
  139. 謝敷宗登

    謝敷政府委員 造船法によりまして設備を許可いたします場合に……(河村委員「船ではなくて設備能力でした」と呼ぶ、海運造船合理化審議会に、その基準となるべき需給について諮問をしまして「整備のあり方について」という具体的な答申をいただく、省令でもそういう決め方をしております。  そこで、四十五年の三月に「今後の造船施設の整備のあり方について」という諮問に対しまして答申をいただいておりますが、この中には、世界の建造需要等を勘案いたしまして五十年の建造需要量が約千二百八十万、こういうことを目標に整備を行う必要があるということで、具体的にいわゆる大型化とそれからコンテナ等に対応します設備を中心にして設備の整備をするという答申が出てまいったわけでございます。  したがいまして、これに沿って関係の具体的なケースを処理してきたわけでございますが、四十六年に至りまして非常に強い船腹需要が出てまいりまして、答申にも、四十六年の六月の答申が新しく出ておりますが、これにはここ当分の間、船舶の建造需要はきわめて強いので、これに対応するような設備の整備を図る必要があるという答申をいただいたわけでございます。この時点では、輸出入物資の安定輸送の確保等のために大量の船舶の建造が必要であるという空気が、造船業界よりもむしろ海運業界、荷主業界に非常に強くて、私どもは逆に、何でそういうふうな造船規制をして小さく抑えているのだというような非常に強い批判も受けたわけでございます。  それで、四十六年の答申をいただいて、一件一件スクラップ・アンド・ビルドということで、古い施設の一定比率をつぶしながら、大型化、高速化等に対応してまいりまして、実績から申しますと、四十九年度に千九百万トンつくっておりますから、この間に約七百万トン弱つくったわけでございます。そういたしますと、この間、逆に当時の船価は非常に高騰いたしまして、その意味から言いますと、私どもは、船価の高騰をやはりやわらげるという意味からも、一応スクラップ・アンド・ビルドをやりながら新しい施設の整備をやってまいった次第でございます。  ただ、この見通しにつきまして、その後四十八年以降に狂ったことにつきましては、私どもも、見通しについて大きく前提条件は変わったということでこれに対応すべく努力をいたすつもりでございますが、当時の状況はそうであったかと思います。
  140. 河村勝

    ○河村委員 大臣、千二百万トンの能力のあったものを、わずか二年の間に七百万トンふやしているんですね。いましきりに海造審の答申をいただいてと言っておりますけれども、これはしょせん隠れみのですよ。まるっきり隠れみのと言ったら海造審に失礼かもしれないけれども、こういう答申の原案を書くのは大体運輸事務当局です。それが五割じゃきかないんですよ。一千二百万トンプラス七百万トン。当時いかに一時的に船腹需要が強かったにしても、これでは問題が起きるのはあたりまえなんですね。ですから、ここまで持ってきた運輸省の責任というのは私は非常に重大だと思う。したがって、一般の構造不況業種に対するよりも罪は深いんですよね、自由企業でありませんから。  ですから、他の業種においては、たとえば鉄鋼などの場合には、自分で勝手につくっておいて後で政府にめんどうを見てもらえというのはぜいたくだ、そこで極力自主再建を図らして、どうにも手の及ばぬところを手助けすればいいという理屈もあるけれども、この造船業界については、そういうことは言えないのです。ですから、他の業種とは違った取り扱いがやられるべきであるし、やられても決して公正を欠くことではない。  そういう意味で、まるまる政府がめんどうを見ろとは申しませんけれども、可能な限り資金的な手当てをしてでもこの不況回復の手助けをするという決意がなければならないと私は思うのですが、大臣、いかがでございますか。
  141. 福永健司

    福永国務大臣 造船につきましては、ただいま河村さんのおっしゃるような気持ちで責任も感じ、したがって、これからさらに一層の努力もするということでありたいと思います。
  142. 河村勝

    ○河村委員 そこで、先般来何名かの参考人業界からあるいは労働界から、また学者等をお呼びして意見を聞いたのでございますが、結論的に言って、方向としては、先ほどからも話が出ておりますように、根本的には構造改善をやるしかしようがない。それには設備廃棄、休止を伴う、だけれども、一遍にぎりぎりまで設備廃棄をやれば、その間に大きな雇用不安が起こります。ですから、雇用摩擦を避けながらだんだんと設備廃棄をやっていかなければならない。そして、その問のつなぎとして、雇用創出をしてやらなければならない。業界だけで新しい需要創出をやる力はもうございません。ですから、需要をつくってやるのには、国が手伝ってつくってやらなければならない。それ以外に、この苦しい時期を通り越してとにかく安定的な状態に持っていくことは不可能である、そういう認識に立ってこれからの政策を展開する以外にはない、そういう結論になると思いますが、大臣、いかがでございますか。
  143. 福永健司

    福永国務大臣 同感でございます。
  144. 河村勝

    ○河村委員 そこでとりあえず、まず需要創出の方から申し上げますが、この前、参考人の特に業界の方々の大体総合的な意見として、八月ごろになるともう新しい受注量がゼロになってしまう。だから、それまでの間に、とにかく当面のつなぎ需要をつくらなければならない。恐らく向こう三年ぐらいの需要をつくってやらなければ安定成長への軌道に乗せることはできないでしょう。  それで、今年度で言えば、輸出で二百五十万トン、スクラップ・アンド・ビルドで百五十万トン、これはいま解撤可能な船が六百万トンと見て三年に分けて、ことしは二百万トン、一・五対一の解撤対建造比率でそれで百五十万トン、それから官公需五十万トン、合計四百五十万トン、これだけ手当てができれば、大手で言いますれば三五%か四五%の操業度ではあるけれども、他の造船以外の部門、これとならして計算をすれば六〇ないし六五%の稼働率、操業度だからまあまあ辛うじて息がついていける。中手で言いますと、四〇ないし四五%の設備廃棄を前提としてこれだけの需要創出があれば、六〇ないし六五%の操業度が維持できるであろう。私は、ずいぶんぎりぎりの控え目な要求であろうと思うのですけれども、まず大体計算上、もしこれだけのことを実行すれば、いま私が申しましたような程度操業度が維持できるということになるのかどうか、その辺の検討は、これは大臣でなくて結構で、事務当局で恐らくされておるはずだと思うのですが、いかがですか。
  145. 謝敷宗登

    謝敷政府委員 五十三年度の起工量ベースでずっと申し上げますが、五十三年の三月末で五十三年度の起工量ベースとして決まっていますのは二百六十万トンぐらいあります。それが先ほどからお話しがありました八月くらいまでということでございます。それから今後、私どもとしましては、月に約二十五万トンベースは三月もとれましたし、一番低いところに落ちましても月二十五万トンぐらいはとれていく見通しでございます。ただそのうちで、全部五十三年度にする仕事になるのじゃなくて、五十四年度の仕事に二十五万トンの五万トンぐらいは一部移っていく、こういう想定をしてみますと、五十三年度は約四百五十万トンから四百万トン、これは手持ちがありましたらこういう状態になるわけです。したがいまして、これに外航船を中心にして考えますから六百万トンとの差、これがいわゆる手当てを要する量になろうかと思います。したがいまして、百五十万トンから二百万トンという数字を想定してございますが、そういうことで外航船で六百万トンになりますと、その他も五十万トン足し算しまして六三%という当初目標でございますので、これにどのぐらい足し算ができるか、プラスアルファの需要創出ができるかということによって、最低の場合ですと、先生のおっしゃるような非常に厳しい、四〇%を割るような数字にもなるおそれがあるかと存じます。
  146. 河村勝

    ○河村委員 そうしますと、業界で言っておる要求ではあるが、このくらいのものは総量としてめんどう見なければ何ともならぬということになるであろうと思います。  そこで、スクラップ・アンド・ビルドについては、先ほどの海運局長お話では、解撤船の簿価とスクラップ価格との差をどうするかという問題は入り口の問題であって、本当はまだ問題があるというふうに非常に奥歯に物のはさまったような言い方でありましたが、先に入り口の方から聞きましよう。  昨年来中小の関連企業を中心にスクラップ化が行われておって、それが昨年一億四千六百万円ですかの予算がついておった、この一億四千万余の予算措置基礎というのは、トン当たりで六百五十円だと思いますが、この算出基礎はやはり簿価とスクラップ価格との差が基準になっているのだと思いますが、一体スクラップ価格の値段というのはどのぐらいに見てはじいたのですか。
  147. 謝敷宗登

    謝敷政府委員 この点は簿価ということを基準にしておりませんで、国際的にどのくらいで国際マーケットで買えるだろうか、こういういわゆる国際マーケットでの買船の相場が船の重量トンでトン当たり九十ドル台、ですから、グロストンに画しますと百八十ドル台を基準にしてやったものです。——失礼しました。グロストンで逆です。四十五ドルです。
  148. 河村勝

    ○河村委員 もしこのスクラップ・アンド・ビルドで二百万トンスクラップをして、百五十万トンビルドをすると仮定をして、それで簿価とスクラップ価格との差額を国でめんどうを見るというたてまえに立てば、一体金額にしてどのぐらいになりますか。
  149. 後藤茂也

    後藤(茂)政府委員 その簿価とスクラップバリューとの差で正確な資料をまだ自信があるものを持っておりませんが、われわれがサンプル調査をした限りでは大体トン当たり五千円と見ております。したがいまして、仮に二百万トンスクラップするといたしますと百億円です。
  150. 河村勝

    ○河村委員 そうすると、他の条件がなければ、少なくとも百億の手当てができればこれは可能であるということになるわけですね。  そこで、海運局長がさっきから言いたそうにしていた問題点というのは、それは船主との関係でしょうが、一・五対一の解撤、建造の比率で、それで古い船をつぶして近代化船をつくる、高能率船をつくるということであれば、船腹量も減るし、そう船主側に被害はなかろうと思います。雇用関係から見ても、近代化船をつくれば日本船員を乗せることができるであろうから、雇用問題についても大きな問題はないと思うので、結局は建造のときの建造費、これの負担、それと簿価との差ですね。結局建造費の負担をどうやって軽減ができるかという問題に尽きるのだろうと思いますが、いかがです。そういうことでよろしいのか。
  151. 後藤茂也

    後藤(茂)政府委員 一つ荷物の問題がございます。ただいまの市況は、地域により積み荷の種類によりいろいろと事情は違いますけれども、もちろん景気がこういう状態であるからといって海上荷物がなくなるわけではありませんけれども、当てにした程度荷物の量の増加がもちろんない、のみならず全体としては、物によっては減るという状態になっております。  典型的な例は鉄鉱石でございまして、鉄屋さんは鉄鉱石の買い付けについて長期的な計画を立て、長期的な船腹手当てをしておりますけれども、その一環として日本の船の相当の部分が、老朽船と言われておるものが長期契約をやっている。その十年なら十年の長期契約がちょうど期限が参りますと、鉄屋さんはもうこの船は要らないよ、こう言うわけでございます。したがって、そういう船は老朽船でありまして、それをつぶして新しい船をつくっても、もう鉄屋さんは荷物を積んでくれない、そういうふうな状態にあるわけでございまして、したがって、それよりもう少し生きのいい船をつぶさないと、新造船というものにはつながらないのではないかという考え方ができるわけでございます。生きのいい船というのは、若干まだ荷物がある船ということになりますが、そういう船をつぶしてまで、いまの状態で船をつくるのかということが一つの問題でございます。  そこで、仮にその船をつくった場合に、御指摘のように新造船の船価と、それから今度スクラップされる船のこれから先の償却が済んだものの資本コストとの差というものは、これはもちろん相当ございます。それだけで済むかと言うと、必ずしもそうではございませんで、やはりこの場合に、御指摘のようにこれから先新しい船をつくるという状態のときには、午前中からいろいろと話題になっておりますように、船員コストを含めて日本の船舶の競争力というものが耐えられる状態になっていなければそれができないわけでありまして、したがって、スクラップ・アンド・仕組船ビルドあるいはスクラップ・アンド・マルシップビルドであると、話がきわめて簡単ではないかと思うのでございますけれども、そんなことをする気は毛頭ないわけでありまして、日本船をつくるのであれば、その日本船はちゃんと商売上物になるような船でなければならないわけでございます。  しかしこの船価が、幾らいろいろとやりましても、やはり新しい船はそれだけ一年度、二年度の資本コストは高くなりますが、船員コストの方は従来と同じである、だから、それで外国船と競争しろと言っても、それはなかなかむずかしいという事情がございます。したがって、われわれといたしましては、単に古いスクラップされる船の資本コストと新しくつくられる船の資本コストがイーブンになるように何がしかの財政措置というものがとられれば、それで二つ目の問題は終わりである、問題は全部解決だというふうにはいかないのではないかと思います。それでもなおかつ、この船の国際競争力というものはまだまだ弱いのではないか。したがって、言いかえれば船主はそれでは船をつくりましょうというふうに意欲を燃やさないのではないかということが一つの問題でございます。
  152. 河村勝

    ○河村委員 ただ、そういうこれからの近代化船をつくっていく際には、いままでとは全体の経済の様相が変わってきていますから、労使間の話し合いも従来とは全く私は変わった話になると思う。また、そうしなければもう日本が生きていけない時期に来ているのですから、そこのところは私、十分にまとまる可能性はあると思う。  そこで、事は急ぐわけですね。スクラップだけなら、先行すればスクラップ仕事だけでも中小の方はかなり潤うでしょう。だけれども、多少の差はあってもビルドが伴っていかなければ、造船工業全体ではちょっと無理でしょうね。ですから、早急にこれは運輸省内でも大臣——船舶局と海運局との間ではかなり利害相克があるわけですね。セクショナリズムの存在するのは官庁の通弊であって、これは直らないものと考えて対処しなければならない問題ですから、ひとつ大臣が積極的にその間を調整して、それで船の方の関係で労使に問題があればそれに乗り出すというぐらいの覚悟がないと、二、三カ月以内にスクラップ・アンド・ビルドの問題を片づけることは私はできないだろうと思うが、大臣どうされますか。
  153. 福永健司

    福永国務大臣 同じセクショナリズムと申しましても、省が違う二つのところでいろいろ言っているのとは多少違うと思いますし、そこらがちょっと違うようにしなければ、大臣がいても意味ないと思います。よく両方の言い分を聞いたりしながら、言うのは言うとして、いかにして調整するかということも、局長ぐらいになったらそのぐらいのことはできる連中が運輸省にはそろえてあるつもりでございますから、また河村さん等の御忠告なんかもいただきつつ、そこいらをまとめていきたいと存じます。
  154. 河村勝

    ○河村委員 そこで、その次に官公需、官公庁船の代替建造ですが、五十万トン、このくらいはできますか。
  155. 謝敷宗登

    謝敷政府委員 官公庁船で五十万トンという数字業界で言っておりますが、いま私どもとしましては、先ほどからいろいろ出ております海上保安庁を初めとした関係各省の耐用年数経過船について、鋭意その具体的な需要に結びつけられるように要請をしているところでございます。
  156. 河村勝

    ○河村委員 何だかよくわからないお返事でありますが、これは海上保安庁の巡視船艇や東大の船とか何とかそんな練習船、そうしたものだけで賄えるとは思えない、これには当然防衛庁の艦船が入らなければならないと思うのですけれども、その辺の相談というのはどの程度進んでいるのですか。
  157. 謝敷宗登

    謝敷政府委員 防衛庁の艦艇につきましては、業界の見方がちょっと実態と離れておりまして、業界は総老朽船を三年間で単純に割って仕事量という計算をしておりますが、防衛庁の方の艦艇の建造は五年ほどかかって従来もやっていますし、それだけに一番高い船ですと一隻五百億前後の船もございます。したがいまして、そういう単純に全体の耐用年数を超えた船を三で割るというのは、私どもとしては、業界数字はちょっと実態にそぐわない、こういうことで具体的にどういうのが実態にそぐうかということを私どもなりに検討しているところです。
  158. 河村勝

    ○河村委員 時間的には相当急ぐのであって、少なくともわれわれは、臨時国会をこの会期に引き続いてぐらい、遅くとも七月には開いて補正予算を組まなければ、これは何も造船業だけのことではなくて全体の不況並びに円高対策ができないという考えでおりますが、それにしても幾ら政府ががんばっても九月でしょうね、そうすると、そう時間がないわけです。ですから、そのめどをつけるのには、いまごろは少なくとも原案ぐらいなければならないはずだと思うのですが、まだ何か寄り寄り相談しているという程度のことで、たたき台程度の案もできていないということですか。
  159. 謝敷宗登

    謝敷政府委員 船舶局の立場としましては、造船所仕事量の穴をどれだけ埋められるかという立場検討はしておりますが、数字についてはまだ確定をしておりません。
  160. 河村勝

    ○河村委員 通常官公需の場合には、初年度に要る予算、これは建造費の何分の一ぐらい要ると考えてよろしいか。
  161. 謝敷宗登

    謝敷政府委員 船によりまして初年度、二年度とまたがるものもございますが、防衛庁を除いては単年度もしくは両年度にまたがると見当をつけてよろしいかと思います。防衛庁は五年ということを防衛庁の方もこの委員会で御説明をしております。
  162. 河村勝

    ○河村委員 単年度または両年度、もちろん予算的にできればよろしいけれども、予算にもなかなか制約がある、そうすれば、とにかく仕事が動き出せば、これは後は金融等でつないでいく方法もあるわけですね。ですから、こういう緊急の際には、通常の例によらなくても、たとえば頭金を一割だけ払って、それで建造の発注をするということも可能なはずで、そういうことを考えないと、恐らくなかなかむずかしいのじゃないかと思う。そういうことは一体考えられないのですか。
  163. 謝敷宗登

    謝敷政府委員 私どもとしては、造船業立場をも考えますと、官公需船は契約、起工、進水、竣工等、従来の慣例に従って建造資金が支払われることが望ましいわけでございまして、それを金融でつなぐということになりますと、また別途担保等の問題もございますので、その点におきましては、確かに仕事を前倒しでするということと資金繰りという点と両面から検討が必要と考えておりますが、私どもとしては、いままでの部内の検討では通常の支払いの基準によって検討をしているところでございます。
  164. 河村勝

    ○河村委員 これは、やはり大臣でないとだめですね。量、質ともに備わればこれに越したことはありませんけれども、国の財政もなかなかそう簡単ではないわけですから、どちらにウエートを置くかと言えば、やはり受注量の方なんですね。頭金さえ入って、発注さえ確保されれば仕事はできるわけです。それで金も金融でつなげる。その方が景気の回復、つなぎ需要としてははるかに有効なわけですね。ですから大臣、事務的に言うとそういうことになるのかもしれないけれども、こういう場合には、そういうことも頭に置いておやりになってしかるべきだと思いますが、いかがでございますか。
  165. 福永健司

    福永国務大臣 私、こういうことは余り事務的には詳しくは承知していない性分なんでございますが、いまどういうことが必要かということについては、私なりの考えも持っておる次第でございまして、これはひとつよく研究をさせていただきたいと思います。
  166. 河村勝

    ○河村委員 時間も余りなくなりましたが、設備廃棄の問題についてお尋ねをいたします。  これはいつやるのだ、あるいはどういうやり方でやるのだと聞けば、いずれ海造審の答申待ちという返事になるであろうと思いますけれども、方式はそう変わらないはずです。問題は、やはり設備廃棄をやるのについての債務保証あるいは融資、これが一番大きな問題になるだろうと思う。特定不況産業安定臨時措置法、これはいま参議院に行っておりまして、まだ成立はしておりませんけれども、近く成立をするはずでありますが、ここで問題なのは、まだまだそう大きなスケールのことを考えていないために、債務保証なんかも担保抜き借金の債務保証という程度しか考えておらない。それから設備廃棄そのもの、これに要する融資等も、これは別段何も手当てを考えていない。だから、造船のような不況の深刻な企業に対して、特に設備廃棄の必要なのは中手でしょうから、これの手当てがないと、私は、法律ができても設備廃棄がなかなか進み得ないだろうと思う。その点を一体どう考えておるのか、それを聞かせてほしい。
  167. 謝敷宗登

    謝敷政府委員 特定不況産業安定臨時措置法一つの柱は、過剰設備を休廃止あるいは転用いたしまして、能力を縮めて過当競争を防止する、こういう基本的なことだと考えております。  そこで、現在の信用基金につきましては、いろいろ御議論があるところでございますが、造船あるいはその他の産業を区分けしてやるということでなくて、対象産業全体として資金的な配慮をするということになっております。私どもは、特に大手、中手造船所でいきなり廃棄ということになるのかどうか、若干問題があろうかと思います。むしろ休止なり転用なりというのが中心で、廃棄というのは一その中で直ちに廃棄してもいいというものもあります。この辺は企業の自主性なり実態も尊重してほしい、こういう希望も聞いております。  そういう意味で、資金量としてどのぐらい要るかというのは、きわめてラフな試算をしたこともありますが、これはむしろ当初の試験でございまして、今後先生お話しの海運造船合理化審議会検討もさることながら、いま業界の実態をよく詰めてもらっております。それが審議会の再建策あるいは基本計画に反映すると思いますので、実態に応じて対応していきたいと考えております。
  168. 河村勝

    ○河村委員 しかし、いま千九百万トンの能力があって、五十五年度の需要が六百五十万トンというのでしょう。そうなると、そう小手先でいくものではないですね。今後の船腹需要量を考えて、能力的には五十五年度六百五十万トンとして、それから先一応安定してから一体どのくらいまでこれが回復すると運輸省としては想定をしているのですか。
  169. 謝敷宗登

    謝敷政府委員 私も、いまここで具体的な数字を申し上げるのは私見にわたるわけでありますが、私なりの考え方なり感触を申し上げますと、まず千九百万トンという能力は、タンカーが七割五分ぐらいのときのあれでございます。したがって、今後貨物船主体なり、あるいはそれ以外の高級な船を中心にして考えますと、貨物船主体で言えば千二百万トンぐらいだと私は考えております。したがいまして、六百五十万トンありますと、これが一年か二年の間であれば何とか操業短縮で対応できる、それから他に転用して対応できると考えていたのですが、それが六百万トンを割ることも予想されるということで、少なくとも千二百万トン、これは残業時間を含んでおりますので、正常な時間ベースに戻せばもう少し低くなると思います。それから五十五年以降につきましては、これはいろいろな試算がありますが、いまの過剰船腹はかなり老齢船がありますので、それらをスクラップする時期がしばらくすれば来るということも頭に置きながら、過剰船腹の処理が進んでまいりますと、いろいろな見方はありますが、世界的には二千六百万トンなり、低く見ても千六百万トンなりの需要が出てくる。これが五十五年で出てくるか五十六年で出てくるか五十七年で出てくるか、この辺時期の問題はいろいろ説がありますが、いずれにしましても、過去の最高までにはいきませんが、かなりの量が出てくるであろう。ただ、そのときにはかってのように世界の五割というのは問題がありますので、そこは発展途上国の伸び等も見ながら、どのくらいの規模に置くかということをまず考えまして、その上で設備の稼働率をたとえば八〇とか九〇とか見て設備の休廃止、転用を考えていくということかと思います。
  170. 河村勝

    ○河村委員 いま船舶局長は千二百万トンと言いましたが、これはいみじくも昭和四十六年当時の設備能力ですよ。ですから、田中列島改造ブーム以後不況になるまでにつくった分を廃棄しなければならない、こういう結論に最後は戻ってきたわけですね。ですから、政府の責任たるやきわめて重大なんですよ。したがって大臣、本当に宿命ではなくして、責任と義務を痛感して大馬力でやられることを最後に要望して質問を終わります。
  171. 増岡博之

    増岡委員長 小林政子君。
  172. 小林政子

    ○小林(政)委員 造船不況はいま深刻な事態を迎えておりますけれども、新たな発想に立ってこの不況対策、そしてまた需要の創出、雇用の安定を図ることが緊急に必要なことだと思います。深刻なこの事態が起こったその責任と申しますか、それを国際的な傾向ということにその責任を求めるということだけでは当を得ないのではないか。いままで国内的に政府がとってまいりました政策上の責任、こういう立場からこの原因を、あるいはいままでの政策上の問題等をこの際明確にした上でこそ本当に正しい対策、解決策を打ち出すことができるのだと思います。  そういう立場に立って、このような深刻な事態を招いた現状について、政府はどのような認識のもとに新しく対策を打ち立てようとされているのか、この点についてまずお伺いをいたしたいと思います。
  173. 謝敷宗登

    謝敷政府委員 現在造船業がきわめて深刻な不況に陥っているということにつきましては、私どもも十分にその実態を認識して対応してまいりたいと考えております。  この問題のよって来るところはいろいろございますが、基本的に世界の船腹のバランスが極端に崩れたということかと思います。造船の場合におきましては、かつて昭和三十年代の初めから中ごろ、後半にかけまして一遍、これほどではありませんが、生産量が三割ぐらい落ちたことがございます。造船は、最近でこそ建造期間が短くなりましたが、かなり長期にかかっての受注生産であるということから、船腹の需給のちょっとしたアンバランスがきわめて強い新造船需要になってあらわれる、こういう特徴が一つございます。前回の不況のときは、これを克服いたしますために大型船の開発をやりますと同時に、それまで少なかった輸出船の需要を高めるという努力をして、業界もその努力の方向を実現されまして乗り切ってきたわけでございます。その後、短期的には若干のサイクルはございますが、少なくとも生産量が前年よりも低かったというのはありません。今回、生産量そのものがきわめて落ちてきたわけでございます。  そこで私ども造船業の施設の近代化を進めながら、抑制的に設備の増設については対応してきたつもりでございますが、先ほども御答弁申し上げましたとおり、四十六年ごろに従来の予想を上回る非常に強い船舶の需要が出てまいりました。これは国内船も外国船もともに出たわけでございますが、船台に手付金を打って、つくるべき船をまだ決めないで船の予約をするといったようなきわめて異例な、かつ不安定な状況等も見受けられましたし、それから非常に船価の高騰を招いたということで、その状況を緩和し、さらに健全に発展させるという意味で、老朽施設をスクラップしながら新造船能力について拡充を認めたわけでございます。この点につきましては、むしろ非常に重い腰を上げながら設備の拡充をやっていったということかと私、いま考えておりますが、そこで国際的に、むしろオイルショックによりまして、油の需給関係が非常に極端に狂ったということでございまして、これが単年度だけでとまりませんで、船舶の需給の場合には、四、五年先までの、需給関係を見ながら設備の発注をしていくわけでございますが、この単年度におきます油の消費量の若干の狂いが数年間たまりますと、きわめて大きな船腹上のアンバランスになってくるわけでございます。この点につきましては、石油ショック以降、私どもも、急速にこういった事態に対応すべく、操業短縮の線を海運造船合理化審議会の答申をいただいて実行したわけでございます。  したがいまして、本来ですと、不況対策としてはむしろ早く手を打ったと私は考えておりますが、あともう一つ狂ってまいりましたのは、昨年の初めから秋、冬にかけましての円の対ドルレートの高騰でございまして、この点につきましては、かなり影響を受けております。したがいまして、いまとなりましては、こういう外貨のポジションである、あるいは為替のポジションであるということを根底に置きまして、新しい事態に対応するということでいろいろ措置を考えていかなければならない、こういうふうに考えておる次第でございます。
  174. 小林政子

    ○小林(政)委員 先日来この委員会参考人の方をお呼びしまして、私どもいろいろと事情をお聞きしたわけでございますけれども、そのときに学者でいらした参考人の方から、輸出船だとかあるいは外航船舶の大型化というような非常に偏った国の政策によって、現在の大型タンカーの船腹過剰というものを、設備の拡充ということもあって招いたのではないかという指摘がございましたけれども、私は、もっともだという感じを受けたわけです。  そこで、いまのこういった深刻な不況の中で、従来どおりのやり方でこの不況対策あるいは需要の創出あるいは雇用の安定というようなことで、この線上で今後やっていかれようとしているのか。ここでは根本的な発想の転換というものが必要ではないか、このように私は考えますけれども、再度お伺いをいたしたいと思います。
  175. 謝敷宗登

    謝敷政府委員 運輸省不況対策としてこれまでいろいろな施策を講じ、さらに、これからも進めようとしておりますが、需要の創出等については、両三年を目標にした短期的な問題の性格を持つものと、それから長期的につながるものとありますが、こういった構造改善と需要の創出に努める一方では、長期的には、いま日本造船業が持っています技術を新しい分野に発展させて新しい展開をしていくということも、私どもとしては、調査研究の対象にしておりまして、たとえば安定基本計画をつくります場合におきましても、そういった部門をどういうふうに展開していくかというのも当然考慮さるべき問題だと考えております。  したがいまして、先ほど来園内船に関します海運造船との関係がございましたが、わが国造船業といたしましても、国内船需要の基本であるということは痛感をしているところでありますので、海運業の実態によく対応し、海運業の近代化に対応できるようにということを、造船業界としてもそうですし、私どももそういうことを考えております。そのために実質的な新しい事業の展開のほかに、輸出と国内船とのバランスの問題ということも検討の材料かと考えております。
  176. 小林政子

    ○小林(政)委員 私は、ここ数年来の外航船の建造実績、それから国内船の建造実績というものを調べてみました。昭和四十六年から五十一年までの外航船舶の建造の実績は二千百五十五万トン、その中で計画造船の場合を見てみますと一千百八十二万トン。また国内船の場合を見てみますと、船舶整備公団で建造したものの比率は、この数年来わずかに一七%、二〇%を割っているんですね、それに対して外航船の場合には、日本全体でつくった外航船の中で半分以上、五五%が計画造船である、こういう比率が出ている。これはトータルでございますけれども、年々で調べてもそういう傾向というのは変わらない、こういう状況が続いているわけです。したがって、この比率を変えていくというようなことも今後重要な問題ではないか、このように私は考えておりますけれども、この点についての見解をまずお伺いいたしたいと思います。
  177. 後藤茂也

    後藤(茂)政府委員 御指摘のように、外航船の新造船建造についての計画造船の比率と、内航船の建造の場合の船舶整備公団共有船の比率とは非常に差がございます。これは内航船につきましては、外航船と全くその事情が違いまして、内航海運組合法、内航海運業法その他の法律でもって、いわば日本船のみ参加できる資格のあるマーケットでございますが、そこで法律なり行政なりの対象としてここでいろんな事業に対する対策というものがとれるわけでございまして、御承知のように船腹需給調整、そういったような対策も組合法を通じてやっております。国内経済が負担できる運賃というものは、ここである適正なレベルに維持することもできますし、実際にうまくいっているかどうかは若干また問題でございますけれども、それから船腹調整の方もここで全体が過剰船腹を調整しようとすれば理屈の上でそれができるわけでございます。  したがいまして、新しく船を建造しようとする船主の場合に、それを建造しやすくするように船舶整備公団を通じていろんな施策をとっておりますけれども外航船の場合には他国の船との競争力を均等にできるように条件をいわば特殊によくしてやるというふうな配慮が若干されておりますが、内航船の場合にはそういうことが行われていない。また事実、現在の時点で金利水準を見てみましても、船主に事実上供給される実質的な資金の金利相当分は、船舶整備公団の場合は七・六%、開発銀行の金利は六・五%、その他もろもろ全く別々に建てられているものでございますから、いろいろそういうふうに差がございます。  したがいまして、それだけに内航船の場合には、いわばそれ以外のいろんな行政の対象として行われた施策の結果、船舶を新たに建造するについてこの船舶整備公団によって建造しなければ話にならない、そういうふうな事情は非常に少ないわけでございます。それで、市中の通常の金融機関を通じて、そしてその資金を調達して船をつくるということが、船舶整備公団を利用して船をつくることに比べてそんなに大きな差がない、その結果がおっしゃいますような一七%といったような結果となってあらわれているのではないかというふうに私どもは承知しております。  これは今後の問題といたしまして、果たしてこれでよろしいのかどうか、これはむしろ海運対策の一環として、内航海運に対するより合理的なる資金の投入を図る意味では、この一七%がだんだん高まるような方策を考えるべきではないかというふうにひそかに脅えておりますけれども、従来の経緯はそういうことであったし、また開発銀行の計画造船との比較を単純にするのは間違いではないかというふうに私は考えております。  計画造船について申し上げれば、いま申し上げましたとおりでございまして、これは最近、御指摘になりましたトン数以外に膨大なる外国籍の仕組船の建造ということがあるわけでございまして、これはまた開発銀行の金利水準なり融資条件というものがよりアトラクティブでなくなっているという事情はございますけれども、これはそれなりに今日もなお相当な意味を持っておりまして、御指摘のように外航船国内船建造に占める比率というのは相当商うございまして、ことに最近のような不況の時期には、絶対量は非常に少のうございますけれども日本船をつくるについては開銀の悪逆たたかなければほとんど夜が明けないというふうな事情になっているのは、またその背景と意味があってのことだと理解しております。
  178. 小林政子

    ○小林(政)委員 私は、やはりこの仕組みが違うということは当然のことだし、そういう内容については存じておりますけれども、しかし、いままでの傾向として、ともかく内航海運対策というものがある程度低く抑えられてきていた、こういうことが言えるのではないか。やはり重点がどこに置かれていたかと言えば、船舶の大型化であり、輸出船であり、そして外航船である、こういうところに非常に大きなウェートが国の政策の中で置かれてきていた。そこで、こういった際には今回この内航海運対策あるいは造船不況の克服という点からも、もっと中小海運に対して力を入れるべきではないだろうか、このように考えているわけでございます。  したがって、これらに対して、中小造船船主などに対するやはり助成措置というようなことも含めて、この問題については新しい角度から見直していくというような姿勢をとることが私は必要ではないかと思いますけれども、これは大臣にお伺いをいたしたいと思います。
  179. 福永健司

    福永国務大臣 直ちに見直すということを、あんまりよく知らない私が申しますと、これまたそれなりの影響もあろうかと思いますが、先ほどから小林さんお話しの点等については、よく見まして、今後に対処させていただきたい。見直しますと言いますと、何か方向が変わってしまうような印象を与えますので、よく見た結果、そういうことにあるいはなるかもしれませんが、そういう気持ちで対処させていただきたいと思います。
  180. 小林政子

    ○小林(政)委員 やはりこの際、内航海運対策というものを重視されるお考えはありませんか。
  181. 福永健司

    福永国務大臣 そういう意味でよく見ていきたい、こう思います。見直すと言いたいところなんでございますけれども、見直すというのは、意味を取り違えられると、そういうことについては方針が変わってしまうのだという印象で、まあそういう意味でないということを申し添えて見直しますと申し上げても結構なんでございます。
  182. 小林政子

    ○小林(政)委員 私は、内航貨物船の建造計画のアンケートというものを、船舶整備公団が提出したものを持っております。これは昨年四月実施をいたした回答内容でございますけれども、やはり内航貨物船舶に対しても非常に要望が強いのですね。  たとえば老朽船等の所有状況、これはどうなっていますかという問いに対して、五十二年四月現在で、回答を寄せた六百四十社が、九百十七艘の老朽船を持っている、二十五万一千三百二十九総トンという数字が回答として寄せられておりますし、また、そのほか改造したいという船舶の数字も、ここにはっきりと調査の結果出ております。  しかも、建造計画の中で、五十三年度に建造計画は四百三十三艘の希望が出ている。トン数で言いますと二十八万四千四百四総トン。うち公団の共有建造を希望するものは三百四艘、そして十九万九千七十総トンという数字が五十三年度には出ておりますし、結局五十三、五十四、五十五と、この三カ年で、この調査の結果によりますと、八百二十八艘の建造計画の希望が出ております。そしてそのうち公団の共有建造を希望するものが五百九十一艘、三十七万一千七十一総トン、こういう回答の結果が出ている。このことは結局、民間の内航船主は、具体的に老朽船をここで建造を新たにし直したい、こういう希望がいかに強いかということをこの数字は示しているというふうに私は思います。  ことしの予算を見てみますと、結局、内航貨物の貨物船の共有建造については、船舶整備公団に対して財政投融資として百五十八億円計上されております。これは昨年に比べて十二億円の増額でありますけれども、一体これで何艘の、何トンの船の建造というものを考えているのか、それがここに出されているアンケートとの関係でどういう状況になるというふうにお考えになるのか、この点についてまずお伺いをいたしたいと思います。
  183. 後藤茂也

    後藤(茂)政府委員 五十三年度の船舶整備公団の予算で予定しております内航貨物船の建造トン数は六万七千五百トンでございます。ただ、この六万七千五百トンの中には二万トンの近海船が含まれております。これは総トンでございます。
  184. 小林政子

    ○小林(政)委員 実は、いまことしの予算では六万七千五百総トンということでございますけれども、具体的には、公団共有の建造、五十三年度にそれを望んでおりますのは三百四艘、十九万九千七十総トンということで、この数字は相当の開きがあると思います。これは、いかに内航船主が古くなった老朽船を新しく建造したという希望を潜在的に持っているか、こういうことを示しているのだと私は思うのです。  こういう立場から、具体的に船主に対してこれが本当に実現できるように、また、そのことが不況対策としてもきわめて重要であるという立場から、国が積極的な助成措置を内航海運に対してとっていく必要があるのではないか、このように考えますけれども、この点についてお伺いをいたしたいと思います。
  185. 後藤茂也

    後藤(茂)政府委員 先生の御指摘のとおりでございまして、内航船主の一人一人に聞いてみますと、御指摘になった公団のアンケートの結果に出ましたように、老朽船はたくさん持っております。それから新たに船を新造したいという気持ちを持っている船主は非常にたくさんございます。集計をいたしますと、いま御指摘になったような膨大な数字になります。私どもといたしましても、今後船舶整備公団の事業計画を立てますについては、一方ではできるだけそのような要望にこたえるような施策をとってまいりたいと思っております。  ただ、よけいなことでございますけれども、内航海運については従来から船腹過剰ということが強く言われておりまして、人によりましては、現在は六十万重量トンの船がよけいである、需要に対して過剰なトン数が六十万重量トンあるのだというようなことが言われております。  したがいまして、ただいまの一人一人の船主気持ちというものは、そういうことであるのは恐らく間違いないことでありましょうけれども、これが経営上成り立つだろうか、新しい船というものをつくって、その船が経営に乗るか乗らないかということになりますと、必ずしもこれはそのとおりになるとは限らない。やはりその点につきましては、先ほど申し上げましたような船腹需給調整であるとかあるいは運賃であるとか、そういうことの内航海運全体のいわば企業対策ということを並行して進めていくことが一方では必要ではないかというふうに考えております。
  186. 小林政子

    ○小林(政)委員 ただいま私が申し述べたこのアンケートの数字、これはやはり潜在的にこのような要求が非常に強い。しかし、いまのような不況の中では、やりたいという希望は持っていても、結局その裏づけになる資金需要というものがなかなか思うようにならない。私は、官公庁船の建造等の問題もさることでございますけれども、この問題を積極的な不況対策として取り上げていくためには、何らか内航海運に対して資金手当てを行っていくということが、やはり不況対策の上からもまたきわめて重要な内容を持っているのではないか、このように考えますけれども、この点についてお伺いをいたしたいと思います。大臣、答えてください。
  187. 福永健司

    福永国務大臣 先ほどから伺っておりまして、そういうような希望なり考え方を持っておられる人が多い。これに、いま小林さんおっしゃるような方法を講じていくべきだという点は、これはこれなりにそういうように思いますが、同時に、車を買いたいという者が多いからというので、うんと買わせて道路がめちゃくちゃに混雑するというようなことについては、これは別途考えなければならないというのと同じで、問題はおおよそ違いますけれども、先ほどから聞いておりますと、船をつくりたいと、こういう話もあるが、個々にはそういう人が非常に多いけれども、これを言うままに全部つくらしたら一層不景気にするということも、やりようによってはあるかと思います。  そこで、そういう点につきましては、小林さんのおっしゃることも確かに道理のあることでございますが、そのままみんなにそういうように認めたら、先ほど海運局長が言うように、ちょっとまたいかがかという結果も出ると思いますので、そこいらあたり運輸省としてはどうあるべきかというようによく考えて対処しなければならないのじゃないか。しかし、これは素人の私でございますから、物の考え方がラフであるかもしれませんけれども、伺いつつそういうようなことを感じておるわけでございます。
  188. 小林政子

    ○小林(政)委員 私は大臣、そういう姿勢では本当にいままでの責任を大臣自身が感じて、今後新たな決意でいまの造船不況に対して具体的にかじをどこに重点を置いてやっていこうとされているのかという点で、いまの答弁を聞いて全くそれこそ不安を感じます。むしろいままで重点が、大型造船だとか外航船舶だとか輸出船というものに相当大きなウエートを国の政策としてかけてきていたところにいろいろ問題が出てきていた。この際やはりもっと内航海運を重視していこう、こういう立場で国の政策を、中小船舶、造船所も含めてそこに私は重点を置くということが当然のことではないかというふうに実は考えております。この立場に立ってもう一度大臣から御答弁を願いたいと思います。
  189. 福永健司

    福永国務大臣 いま小林さんが言われますような意味においては、重点をそちらへというような意味においては私はその点傾聴をいたしており、われわれも心得ていかなければならないと思いますが、数字的におっしゃった、こういうように数字があるのだからそっちの方へというのは、傾向的には確かにいま御説のございましたことについては留意していくべきものだと思いますが、そっくりそのままそうしたらいいというようには考えませんという意味で先ほどのことを申し上げたわけでございまして、そこいらをよく考えて対処すべきものである、こういうように思います。
  190. 小林政子

    ○小林(政)委員 私も、何も一挙にいま挙げた数字をことしの予算で全部やれなんということを言っているのじゃないのです。そういう傾向を強めた政策をとっていくべきではないかということを申し上げているので、その点については誤解のないようにしていただきたい、このように思います。  そしてもう一つは、何と言っても当面の措置として仕事の確保という点、これが緊急に倒産防止対策と同時にきわめて重要な問題だというふうに私は考えております。先ほど来から官公庁船の問題などもいろいろと出てきております。事実私も、海上保安庁の五十二年度末の船の状況がどうなっているか、こういうことも調べてみました。実際に巡視艇を現在三百七十艘海上保安庁は保有しておりますけれども、そのうち三十九艘は海上保安庁が発足当時に造船されたその耐用年数をはるかに超えているものである、こういう古いものが四十一隻もあるということからも、先ほど来これの建造という問題も出ておりますが、仕事を確保するという点からは官公庁船の中での一つの方向をこの中で実施してもらわなければならないというふうに考えております。  また、気象庁が所有をいたしております観測船についても調査をしてみましたが、昭和三十五年に建造されたもので、もうすでに十八年も経過をしているものから、あるいはまた三十八年、三十九年、四十九年と、気象庁は六艘の観測船を持っておりますけれども、この中で「長風丸」という船で観測を行った、そういう内容について気象庁の乗組員が機関紙に載せた記事がございますが、これを見ますと「長風丸は小さいため、波浪計の新測器が開発されていながら置く場所がないため、昔のままの観測を続けています。」ということが書かれておりますし、船をもっと大型新船にしてほしいという要望がここでは書かれております。そして「昭和四十二年二月の台湾坊主の時のことを話します。」ということで、機関紙に「一八時の観測の時は静穏で、二〇時三〇分頃から急に時化もようとなった。二一時の観測値を通報したが、その時の二一時の天気図ではカットされている。今年の台風七号でもそうだが、船の観測を軽視する傾向があるのか。」ということもここには書かれております。  私は、この気象観測という問題は、非常に重要な問題だというふうに考えておりますけれども、この問題について現場でその観測をしているそういう船が、実際には小型船で二百六十五トン、しかも古い建造のものであって、実際にその能力を十分発揮することができないような状況であるというこの記事を見まして、本当にもっともっとこういう官公庁船を大型化してほしいとか建造を新たにしてほしいとか、代替建造の問題というのは非常に重要だというように考えておりますが、この点について今後十分ひとつ予算措置等も含めて御検討をしてもらいたい、このように考えますけれども、いかがですか。
  191. 福永健司

    福永国務大臣 海上保安庁の船につきましては、すでにいろいろ申し上げてもおりますが、いまお話がありましたように私たちも対処してまいりたいと思いますし、気象庁の船につきましての話は、初めて伺った部分等もございますが、よく調べまして、ぜひ今後なるほどということになるような対処をいたしたいと存じます。
  192. 小林政子

    ○小林(政)委員 時間がないということでございますので、私は、総括的に何点かについて大臣に伺っておきたいと思います。  一つは、造船業においていろいろといま問題になっております過剰設備というこの実情から考えてみて、大型ドックを利用した中型船の受注建造には一定の制限というものを今後設けていくことが非常に大事ではないだろうか。一定の民主的な規制を図らなければ、この中小造船あるいはそこで働いている労働者の雇用の確保という問題も図れないのではないだろうか。この点について今後の方向づけについて大臣から伺いたいと思いますし、また下請企業仕事の確保に配慮して、造船不況下請労働者のしわ寄せにならないように、こういう点も十分今後の対策の中では配慮をしていかなければならないのじゃないだろうか。また資金面の問題についても、一定の造船需要の回復に至るまでの間、中小造船業の倒産を防止するために運転資金の確保ということは、先般来参考人の方からも強くこの点については要求の出ていたところでもございますし、これらの問題について今後どのような配慮をされていらっしゃるのか、これらの点についてお伺いをいたしたいと思います。
  193. 謝敷宗登

    謝敷政府委員 事実だけ私の方から説明させていただきます。  造船業の過剰設備の処理に当たりまして、あるいは運用に当たりまして、大型ドックを一定の制限を加えて運用すべきではないかという点につきまして、従来から大型ドックといえども、小型船をつくります際に一・五隻以上はつくらせない、いわゆる並列建造の禁止をやっております。本来ですと数杯並列建造できるわけですが、そういう制限を加えております。  今後の過剰設備の処理に当たりましても、いわゆる大型ドックといいますか、総合重工メーカー、専業メーカー等についての配慮は行ってまいりたい、こう考えます。  それから、下請企業へのしわ寄せでございますが、これは四十九年から五十一年の三月までの実態でございますと、造船業の本工よりも社外工の減員が多かったのですが、五十二年の九月までに至ります一年半では本工の方が雇用転換あるいは出向等で逆にふえておりまして、社外工については本工に比べて減員が減っておる事態もございます。  なお、下請企業につきましては、仕事の創出等、親企業とともに、親企業でやります工事が下請企業にも及ぶように検討してまいりたいと思います。  それから、資金的につきましては、中小企業につきましては、中小企業一般につきまして昨今の実態にかんがみて種々の特別な資金配慮がなされておりますが、造船業及び下請につきましては、それらの措置についてすべて指定業種の指定をしておりまして、今後とも中小企業庁と連携をとりながら対応してまいりたいと思います。
  194. 小林政子

    ○小林(政)委員 終わります。      ————◇—————
  195. 増岡博之

    増岡委員長 ただいま小此木彦三郎君外四名から自由民主党、日本社会党、公明党・国民会議、民社党及び新自由クラブの五派共同提案による造船業不況対策に関する件について決議されたいとの動議が提出されております。  まず、提出者より趣旨の説明を求めます。小此木彦三郎君。
  196. 小此木彦三郎

    ○小此木委員 造船業不況対策に関する件について、自由民主党、日本社会党、公明党・国民会議、民社党及び新自由クラブの五党を代表いたしまして、提案の趣旨を御説明申し上げます。  まず、案文を朗読いたします。      造船業不況対策に関する件   我が国造船業は、目下、深刻な不況に直面しており、国民経済及び地域経済に、はかり知れない悪影響を及ぼしつつある。   かかる事態にかんがみ、政府は、緊急に次の措置を講じ、現下の造船不況を克服するとともに、早急に各種機関を督励し、長期展望に立つた造船政策を確立し、我が国造船業の中・長期の安定の確保に遺憾なきを期すべきである。  一 造船業の安定化のための構造改善について、各方面の協力を求め、債務保証、融資等について可能な限りの措置を講ずるとともに、中小専業造船業の分野の確保及び雇用対策について配慮すること。  二 スクラップ・アンド・ビルド方式による内外航船舶の建造を推進するための諸施策を講じ、また官公庁船等の早期代替建造及び海洋汚染防止のためのタンカーの改造を促進し、特殊船舶、海上構造物の建造その他国家的要請に基づくもの等について積極的な行財政上等各般の措置を講じ、緊急に需要の創出を図ること。  三 関係企業の倒産等による連鎖倒産を防止するため、必要な金融対策を講ずること。  四 当面の造船業不況克服に当たつては、労使協力して対処するよう必要に応じ適切な指導を行うこと。  五 雇用保険法に基づく雇用安定資金制度、特定不況業種離職者臨時措置法に基づく措置等の充実に努め、特に雇用調整給付金については、実情に即応し積極的、弾力的運用を図ることにより雇用対策に遺憾なきを期すること。   右決議する。 以上であります。  わが国造船業は、目下、深刻な不況に直面しており、わが国国民経済及び地域経済にはかり知れない悪影響を及ぼしつつあります。  当委員会におきましては、三月以来、現下の造船不況の実情と各般の対応策について鋭意調査を進めてまいりましたが、本日、五党間において本決議案を取りまとめた次第であります。  本決議案の内容は、造船業の構造改善の円滑な実施、中小専業造船業の分野の確保等、スクラップ・アンド・ビルドの実施等による需要の創出、連鎖倒産防止の金融対策、労使の協力及び雇用対策の万全について緊急に措置を講じ、現下の造船不況を克服するとともに、早急に海造審関係行政機関を督励し、長期展望に立った造船政策を確立し、わが国造船業の中長期の安定の確保に遺憾なきを期するよう、政府に対し強く要請せんとするものであります。  何とぞ御賛成を賜りますようお願い申し上げます。
  197. 増岡博之

    増岡委員長 以上で趣旨の説明は終わりました。  ただいまの小此木彦三郎君外四名提出の動議のとおり、造船業不況対策に関する件を本委員会の決議とするに賛成の諸君の起立を求めます。     〔賛成者起立〕
  198. 増岡博之

    増岡委員長 起立多数。よって、さよう決しました。  この際、ただいま議決いたしました決議につきまして、政府から発言を求められておりますので、これを許します。福永運輸大臣
  199. 福永健司

    福永国務大臣 ただいま御決議のありました事項につきましては、政府といたしましても、御趣旨に沿って十分配慮してまいりたいと存じます。
  200. 増岡博之

    増岡委員長 なお、本決議の議長に対する報告及び関係各方面への参考送付の取り扱いにつきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  201. 増岡博之

    増岡委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決しました。  次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。     午後四時四十四分散会