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1978-06-07 第84回国会 衆議院 ロッキード問題に関する調査特別委員会 第6号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和五十三年六月七日(水曜日)     午前十一時五分開議  出席委員    委員長 廣瀬 正雄君    理事 塩崎  潤君 理事 増田甲子七君    理事 松永  光君 理事 箕輪  登君    理事 小林  進君 理事 横路 孝弘君    理事 坂井 弘一君 理事 大内 啓伍君       竹内 黎一君    大出  俊君       坂本 恭一君    只松 祐治君       横山 利秋君    池田 克也君       鍛冶  清君    鳥居 一雄君       正森 成二君    加地  和君  出席国務大臣         大 蔵 大 臣 村山 達雄君  出席政府委員         内閣法制局第一         部長      茂串  俊君         法務省刑事局長 伊藤 榮樹君         大蔵大臣官房審         議官      渡辺 喜一君         大蔵省国際金融         局次長     宮崎 知雄君         国税庁長官   磯邊 律男君         国税庁徴収部長 西野 襄一君         国税庁調査査察         部長      藤仲 貞一君  委員会出席者         法務省刑事局刑         事課長     佐藤 道夫君         ロッキード問題         に関する調査特         別委員会調査室         長       長崎  寛君     ————————————— 委員の異動 五月二十四日  辞任         補欠選任   加地  和君     甘利  正君 同日  辞任         補欠選任   甘利  正君     加地  和君 六月七日  辞任         補欠選任   浜田 幸一君     玉沢徳一郎君     ————————————— 五月十二日  ロッキード事件真相徹底究明等に関する請願  (正森成二君紹介)(第五四〇五号) は本委員会に付託された。     ————————————— 本日の会議に付した案件  ロッキード問題に関する件      ————◇—————
  2. 廣瀬正雄

    廣瀬委員長 これより会議を開きます。  ロッキード問題に関する件について調査を進めます。  質疑に入ります。  この際、委員長から大蔵省国税庁当局に御質問いたします。  まず第一点は、五月十六日の理事懇談会及び五月二十四日の理事会において、横山利秋君の要求資料の取り扱いについて協議いたしました結果、この問題は、国政調査権守秘義務関係という高度に政治的な問題でありますので、判断を下されました大蔵大臣並びに国税庁長官に当委員会出席を求め、見解を聞こうということになりました。  つきましては、五月十日の委員会において横山委員要求をされました児玉譽士夫君の財産増減状況等についての資料国税庁としては提出できないものか、提出できないとすれば、できないと判断されました理由について大蔵大臣並びに国税庁長官から御説明を願います。  次に、第二点は、税務職員には守秘義務という観点から、個人課税状況について個別、具体的な事項にわたって回答するということには制約があろうとは思いますが、当委員会が設置されました趣旨等にかんがみ、ロッキード事件発生前にさかのぼり、国税庁当局児玉書士夫君に対して課税上どのような姿勢で臨んでいたかを国税庁長官からお答えいただきたいと思います。  村山大蔵大臣
  3. 村山達雄

    村山国務大臣 国政調査権守秘義務関係につきましては、昭和四十九年十二月二十三日の政府統一見解にもありますように、国政調査権の行使によって得らるべき公益と、守秘義務によって守らるべき公益とを個々の事案ごとに比較考量することによって決定さるべきものであり、この場合、政府としては、国会国政調査活動が十分にその目的を達成できるよう、政府立場から許される最大限協力をすべきものと考えております。  次に、税務職員守秘義務重要性について申し上げれば、税務官署職務上知り得た納税者に関する秘密外部に漏らすことになれば、納税者税務官署に対する信頼を失うことになり、ひいては、税務行政の適正な運営を損なうことにもなります。守秘義務を守ることによりまして、申告納税制度によって支えられている税務の公正な執行を保障しようということ、これがわれわれの守ろうとする公益でございます。この公益は、国を支える礎となる非常に大きな公益と私は考え、資料の提出を御容赦願いたいと判断したところでございます。  税務行政運営上守秘義務が重要なことにつきましては、さらに国税庁長官に補足して説明させます。
  4. 廣瀬正雄

  5. 磯邊律男

    磯邊政府委員 ただいま大蔵大臣の方から御答弁申し上げましたので、一言にして言えば、その御答弁内容に尽きると私は考えるのでありますけれども、税務執行を預かる国税庁長官といたしまして、補足的に若干の私の考えを申し上げさせていただきたいと思います。  御承知のように、現在わが国の税制は自主申告納税制度をとっておるわけであります。これは納税者が、本人にとってはどうしても外部に対しては秘匿したいと思っているようなことであっても、それが税務関係することであればあらゆる一身上の秘密財産上の秘密または企業上の秘密などを包み隠すことなく誠実に申告し、これによって適正な納税をしてもらうということが、この自主申告納税制度の基本であることは申し上げるまでもないことであると思います。さらにまた、こういった納税者の方々は税務職員質問検査をするに当たりましては、納税者がこれに対して答弁をしない、もしくは偽りの答弁をし、または検査を拒み、あるいは妨げた、忌避したといったような場合に対しましては、当該納税者に対して罰則を科することによって、いわゆる間接強制をもって、納税者税務官吏に対してその質問に正しく答えてもらうということを強制しておるわけであります。これは御承知のように、刑事手続等におきます本人意思に反して供述をしなくてもよいという規定とは全く変わりまして、本人意思に反してでも、当該税務職員質問検査に際しましては、誠実にこの検査を受け、また答弁をしなければならないという間接強制規定が特色となっておるわけでございます。  同時に、このような個人秘密を知り得る立場にある税務職員に対しましては、所得税法等規定によりましてその守秘義務違反に対しましては一般公務員より重い罰則が定められておるわけでありますが、これは罰則一般公務員より重いとか軽いとかということではなくて、この趣旨というものは、やはり税務職員というものはあらゆる私人あるいは企業秘密を知り得る立場にあるために、その知り得た秘密というものは外部に漏らしてはならないというふうな趣旨によってその罰則が定められたるものと了解しております。  こういった両者関係から、納税者は進んで税務職員に対しまして真実を述べ、またこれを知った税務職員はこれを外部に漏らさないという両者信頼関係が確立されておりまして、また税務の職場においては、職務上知り得た秘密はこれを漏らさないという倫理が定着し、伝統となっておるわけでございます。こういったことは現在の申告納税制度の健全な発展のための最大の要件であると私は考えており、またこのことがひいては租税収入の円滑な確保につながるものと思うのでございます。  もちろん、先ほど大臣が御答弁申し上げましたように、政府としては国政調査権に対し最大協力をすべきものであることは言うまでもないところであります。私も政府委員としてこの国会に呼ばれ、答弁を求められた場合には、最大限の誠意を持って御答弁申し上げてまいったつもりでありますし、また本日もそのような立場で御答弁申し上げるつもりでありますけれども、同時に、税務執行を預かる責任者たる国税庁長官としては、申告納税制度の健全な発展のために納税者秘密について詳しく御答弁申し上げるということは御容赦をお願いいたしたいと考えておる次第でございます。  それから第二の問題でございますが、児玉譽士夫課税について、ロッキード事件が発生し、多大のフィクサー料その他が見つかるまで一体国税庁はこれまでどういったことをやっていたのかという御質問でございますが、これについて御答弁申し上げたいと思います。  国税当局といたしましては、ただ児玉譽士夫に限らず、かねてからいわゆる問題事案については個別的な管理をいたしております。その問題事案と申しますのは、多額収入がある者、あるいはその収入の態様が複雑多岐にわたるもの、あるいはとかくその収入等につきましての風評のある者、それから多額財産を所有している者、こういった人たちをわれわれの税務で言うところの問題事案といたしまして、これを税務署もしくは重要な案件につきましては国税局において個別管理をやっているわけでございます。  児玉譽士夫につきましても、かねてから東京国税局におきましては重要管理事案の一つといたしましてこれを管理してまいりました。特にまた、各種の資料がありました場合には積極的に調査をするという体制をとってきたわけでございますが、そういったことで、いま昭和四十二年以降の児玉書士夫公示所得金額を申し上げますと、昭和四十二年分につきましては公示所得——これは千円単位で申しますと二千八百一万九千円、四十三年分三千七百七万九千円、四十四年分七千六百六万八千円、四十五年分四千五百二十万二千円、四十六年分四千六百一万四千円、四十七年分四千三百二十二万九千円、四十八年分四千六百五十万七千円、四十九年分五千万一千円、そういうふうな公示所得であります。  これに対しまして、東京国税局におきましては四十三年分につきましての事後処理をやっております。それから四十四年分についても同じく処理をし、四十五年分、四十六年分、四十七年分についてそれぞれ東京国税局の直税部資料調査課において事後調査をやっております。  ロッキード事件が発覚するまでの税務調査はそのようにしてほとんど各年分について調査をいたしておりまして、大体少ない年で三百万円、多い年で千二、三百万円の更正増差というものを発見いたして処理しておるわけでございます。  ただ、そういったことをしながら、なぜフィクサー料のような多額の脱漏が見つからなかったかということでございますけれども、これに対しましては、国税当局としてはまことに申しわけなかったというふうにおわびするしかないわけであります。ただ、あえて弁護させていただきますと、御承知のように海外関係の取引というのは非常に調査がむずかしゅうございます。それからまた、こういった児玉譽士夫のような個人的に事業をしていない人間、そういった人の所得の把握というのは非常にむずかしい、またさらに、それがフィクサー料というような、出した方も、それからもらった方もこれをほとんど証拠を残さないようにして秘匿したいといった資料というものは通常税務調査ではこれを発見するということが非常にむずかしい、そういったことから児玉譽士夫についての課税が徹底していなかったということは遺憾ながら認めざるを得ないというふうに考えておるわけであります。  ロッキード事件が発覚いたしましてからの状況につきましては、これは御承知のとおりでございまして、これはまた御質問に応じまして後ほど御説明させていただきたい、かように考えております。
  6. 廣瀬正雄

    廣瀬委員長 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。横山利秋君。
  7. 横山利秋

    横山委員 私が先般本問題を提起いたしましたことは、もう申すまでもございませんが、私は先般こういうことを申しました。  どう考えてもロッキード事件について児玉ルート小佐野ルートがはっきりしない、しかもコーチャン追想を読んでみても、児玉小佐野ルート、また両人が一番の仕掛け人ではないかと痛感される、それは冒頭陳述書を読んでみてもある程度把握できることである、しかしながら、児玉譽士夫がどうして政府の計画を覆したか、そしてまたもらった十七億以上の金をどこへ一体使ったのか、だれと会って、だれと工作をしてそれをしたのか、大刀川がその仕事をどういうふうに手伝ったのか、小佐野がまたそれをどういうふうに協力し、援助したのかということは、依然として深いなぞに包まれておる。このことが解明されなくて真のロッキード事件の政治的な、あるいは法律違反の問題なりは解明できないのではないか。やみからやみへ真の真相が隠れてしまうのではないかということから始まったわけであります。  そこで、質問の中で、児玉譽士夫年次別財産増減状況、これは、国税庁税務署がすでに脱税において行われている方法であるから、これは行ったに相違なかろう。その年度別財産増減状況国会報告をしろ。  第二番目には、児玉譽士夫課税状況は一体どう進んでいるか。どれだけ納税されて、どれだけが滞納されておるか、その滞納額保全するために何を差し押さえておるのか、こういうことをひとつ国会報告をしてもらいたい、資料を提出してもらいたいということを委員長を通じて要求をしたわけであります。  本件について、承れば、理事会は再三にわたって議論の結果、本日、大蔵大臣長官が御答弁をすることになったと承りました。いまお二人の答弁を聞きますと、言葉は丁寧で、そしてかっこうはいいけれども、結局は協力ができないということに私は考えざるを得ないのであります。わずかに、いま長官から、四十二年以来四十九年までの公示された所得報告がありました。これは一千万円以上の公示でありますから、何も報告を受けなくても世間周知の事実でありますから、取り改めてこれが国会報告をされたとは私は考えられないのであります。  また、事後処理として、四十三年から四十七年まで最低三百万円、高いところで千二百万か千三百万円の増差をしたという報告でありますが、これも一体年度がいつの年度幾らかという報告をなさろうとはしていないのであります。したがって、私は、いろいろおっしゃるけれども、結局、本日、大蔵大臣長官は、委員会要望についてお断りをなさった、こう考えるのでありますが、そのように考えてよろしいのですか。
  8. 磯邊律男

    磯邊政府委員 横山先生の御要求資料を提出するということについては、これを御容赦願いたいということを申し上げたわけでありまして、答弁の中においてできるだけ御協力する意味の御答弁を申し上げたいということでございます。
  9. 横山利秋

    横山委員 わかりました。  それでは、資料は提出できないけれども、答弁の中で私の要望趣旨に沿うということでありますならば、まず第一の要望いたしました児玉譽士夫年次別財産増減状況をひとつお答えを願いたいと存じます。
  10. 磯邊律男

    磯邊政府委員 私がただいま答弁いたしましたのは、できるだけの御協力を申し上げるということを申し上げたのでありまして、その年度別財産増減を申し上げるということは、これは御容赦願いたいと思うわけであります。
  11. 横山利秋

    横山委員 第二番目の要望であります児玉譽士夫課税状況徴収状況についての御報告はできますか。
  12. 磯邊律男

    磯邊政府委員 具体的な数字を申し上げることは御容赦願いたいと思いますけれども、現在の財産保全状況等についてはお答えすることができます。
  13. 横山利秋

    横山委員 どういうことかよくわかりませんが、私の言いたいこと、聞きたいことはわかっているはずでありますから、時間の節約のためにも、きょうそれではここまでは申し上げられる、私の二つの主張に対してここまでは申し上げられるということを、率直にあなたの方から御報告をなさったらどうですか。
  14. 磯邊律男

    磯邊政府委員 第二番目の点でございますけれども、児玉譽士夫について現在脱税事件として告発いたしました税額は約十九億円でございますけれども、その他の方に、所得として告発はしておりませんけれども、税務上の処理として更正を打った増差税額がございます。その全体に対しまして、できる限りの税金の徴収、それから財産保全をしているわけでございますけれども、いままで徴収いたしましたのは、主として定期預金等満期が到来したもの、それにつきましては、ほとんど、その満期が到来したごとに国税の方で徴収をしておるわけであります。  ただ、それ以外に、残りの税がございますけれども、それ以外の財産、つまり、等々力にあります児玉譽士夫個人土地建物、それから別荘地、さらにまた有価証券、それからその他の若干の動産、そういったものは財産保全滞納税額保全措置として差し押さえをしておるわけであります。ただ、児玉譽士夫からは、課税額に対しまして異議申し立てが出ておりまして、現在、それが審査に移行しておりますので、したがいまして、国税通則法規定によりまして、その審査移行の段階においては換価処分ができませんので、こういった有価証券であるとか、あるいは土地建物、そういった換価を要するものについては、それを差し押さえたままになって現在滞納となっておるという状況でございます。ただ、定期預金等につきましては、これはもう満期が到来いたしましたら、逐次国庫の方に収納している、そういうふうな状況でございます。
  15. 横山利秋

    横山委員 それでは徴収済み総額、重加算を含めて総額いま児玉はどのくらいの、幾らの税を課されておるか、徴収済み幾らであるか、差し押さえした財産総額はどのくらい時価評価できるか。それを御報告してください。
  16. 磯邊律男

    磯邊政府委員 第一回に告発いたしました以降、税務署限りにおいて更正いたしました金額等を加えますと、本税が約十三億円、それから、それに加算税延滞税等を加えまして約二十億円でございます。それに対しまして……(横山委員税額ですか」と呼ぶ)税額でございます。——失礼いたしました。税額は約三十億円であります。それの約十億円というのが徴収されまして、現在約二十億円残っておるということでございます。
  17. 横山利秋

    横山委員 三十億というのは、重加算を含めた総額である、そこのところが、どうもあなたはあっちへ行ったりこっちへ行ったりするのですけれども、本税が幾ら加算税幾ら延滞税幾ら重加算税幾ら総額幾ら、そうして徴収済み税額幾ら、それはどういう方法徴収したか、残り幾ら差し押さえ保全をしておる物件は時価幾ら、もう少し系統的にお話ししてください。
  18. 磯邊律男

    磯邊政府委員 本税が約二十二億、加算税約六億五千万、延滞税約七千万、合計いたしまして約三十億でございます。それに対しまして、収納いたしましたのが約十億、現在、差し引き滞納約二十億ということになるわけであります。  それに対しまして、保全いたしておりますのが、先ほどお答えいたしましたように、不動産、株式、預金貸付金、その他合わせまして約二十八億円の保全をいたしております。
  19. 横山利秋

    横山委員 この六億五千万円は重加算も含んでいるわけですか。
  20. 磯邊律男

    磯邊政府委員 重加算税と、それから過少申告加算税、両方含んでおります。
  21. 横山利秋

    横山委員 総額三十億。十億の徴収済み、そして滞納が二十億、保全措置が二十八億、こういうことだと最終的に承知をいたしました。  その保全措置の二十八億は異議申請が出ておりますから、国税通則法によって換価できない、差し押さえたままであるということでありますが、異議申請の中で児玉側からどんな主張がされていますか。要するに、児玉側は本税二十二億について、恐らく経費についての主張がある。この間承った分では、児玉収入面については余り異議を言っていないと承りましたが、児玉側がこの審査の中で主張しておる事実はどういうものか、御報告願いたいと思う。
  22. 磯邊律男

    磯邊政府委員 異議申請として、更正を受けた税額は過大である、その理由については刑事裁判の推移を見て疎明する、そういうものでございます。
  23. 横山利秋

    横山委員 過大であるから裁判を通じて明らかにする。その間はこの審査を待ってもらいたい。これは不服審判所ですか、税務所ですか。不服審判所ですか。
  24. 磯邊律男

    磯邊政府委員 さようでございます。
  25. 横山利秋

    横山委員 不服審判所審査を待ってもらいたい、こういうことでございますね。  私、いま手元に不服審判所規定がございませんけれども、裁判がいつのことかわからない。展望ができない。不服審判所としては裁判の結果までずっと何もしないで待つことに規定上はなるのですか。期限はないのですか。
  26. 磯邊律男

    磯邊政府委員 通常不服審判所審査をいたしますときには、一方において脱税事件として告発され、起訴され、刑事事件が進行しておりますときには、いろいろな証拠資料等がもちろん検察庁の方に押収されておりますし、それからまた、一方において刑事事件の進行を妨げるのもいかがかということで、その刑事事件結審を待って不服審判所においてはこれを裁決するというのがいままでの慣例でございます。
  27. 横山利秋

    横山委員 慣例はわかりますが、法規の上から、不服審判所はいつ結審が済むともわからない裁判所の結果を待つということは、本件について審判所がこれから何もしないということになりますか。たしか審判所に提出されました異議申請については一定の期限があるはずだと思っておるのでありますが、いかがですか。
  28. 磯邊律男

    磯邊政府委員 審査請求いたしまして三ヵ月たってもそれを裁決しない場合には、民事裁判に移行することができるという規定になっております。
  29. 横山利秋

    横山委員 私は、不服審判所に決断を促したいのであります。児玉側から、自分が恐れながらと訴えておいて、そうして裁判が済むまで審判をやるなというのはおかしなことだと思うのであります。したがって、不服審判所は、法規に照らして裁決し得ない状況でありますから、児玉側になぜ異議申し立てをするのか、異議証拠書類を出せ、実証しろ、それが何も出てこないなら不服審判所に対する申請書却下すべきが当然だと思うのですが、いかがですか。
  30. 磯邊律男

    磯邊政府委員 国税通則法の第九十二条に、審査請求法定期間経過後にされたものであるとき、その他不適法であるときは、国税不服審判所長は、裁決で却下するということになっておりまして、当該事案というのは、法定期間内にされましたし、また不適法であるとも言えませんので、却下ということはできないという解釈でございます。
  31. 横山利秋

    横山委員 先ほど三ヵ月たっても裁決し得ない場合とおっしゃいましたが、それはどうなりますか。
  32. 磯邊律男

    磯邊政府委員 恐れ入ります。ちょっといま質問を……。
  33. 横山利秋

    横山委員 先ほどあなたは、三ヵ月たっても裁決し得ない場合を挙げましたが、それはどういうことになりましょう。
  34. 磯邊律男

    磯邊政府委員 その場合には、当該申請者の方から裁判所に提訴することができるということになっておるわけで、現在の場合には、児玉側からは裁判所に提訴するという動きはないわけでございます。
  35. 横山利秋

    横山委員 そうすると、もう一遍だめを押しますけれども、不服審判所適法に出された、恐らく不服審判所はそれでは三ヵ月以内に処理をしたい、通常処理をしたいから、児玉側に対して、異議があるならば異議内容を言え、理由を言え、証拠を挙げろと、こういうことを言ったに違いない。児玉側は、裁判が終わるまで待ってくれと言っている。それで不服審判所は、ああ、そうですがと言って何にもしない、そういうことですかとだめを押している。それでは不服審判所はもてあそばれているということになるじゃありませんかと言っている。不服審判所に訴えてきたものについて、何らの証拠書類も出さずに、疎明資料も出さずに、そして不服審判所をくぎづけにしておいて、ああ、そうですが、それじゃ裁判が終わるまで待ちましょうと言っておっていいのですかと言っておる。不服審判所は、訴えてきたなら訴えてきたように審査をし、審査協力をしないならば、それは却下をしてもいいんではないか、こう言っている。  私は、国税徴収状況からいって、二十八億の差し押さえをしておいて、いつまでものんべんだらりと裁判が終わるまで待っておるというのはおかしいじゃないか、こういう意味で申し上げている。  不服審判所の現状について、あなたはそれでいい、裁判が終わるまでほかっておけばいいという指示をするつもりですか。
  36. 磯邊律男

    磯邊政府委員 これは児玉譽士夫だけに限らず、一方において刑事事件が進行いたしております場合には、不服審判所としては、その刑事事件の推移を見て、その結果によって判断するというふうな慣例になっておりますので、児玉譽士夫も従来と同じような慣例でやっておるわけであります。
  37. 横山利秋

    横山委員 私は、児玉譽士夫をなぜこの問題でかくも委員会諸公とともに協力をして推進をしておるかという理由は冒頭申し上げました。これは一般の類似事件とは違うのであります。国民が非常に注目をして、ロッキードの問題の処理を適切に、迅速にしろということを言っておるときなんであります。だから、一般事件と同じように、これはまあ裁判にかかっているんだから、異議申請異議申請として、児玉側としては差し押さえはされたけれども、換価処分をさせないためには、ちょっと作文して、不服審判所に出しておけば換価処分はできないんだからという作戦に出ておることはもう火を見るより明らかな事実であります。換価処分を避けるために、とにかく不服審判所に出しておけば絶対に換価処分をしないのだから、これだけの話なんであります。それにまんまと不服審判所は、国税庁はほだされて、処分ができるものを処分をしない。証拠を出せと言えば、証拠を出さない。裁判まで待ってくれと言う。そういうような状況について、あなた方は児玉側の作戦を見抜けないのですか。それよりどうしようもないのですか。不服審判所として、国税庁として、児玉側差し押さえ換価処分をさせる防止策をやっておることについて手も足も出ないのですか。何にも方法がないのですか。
  38. 磯邊律男

    磯邊政府委員 児玉譽士夫審査請求し、それによって換価処分できない、そういうような状態になっているというのは、これは形式的にはきわめて適法な手続でありまして、それに対しては、まさに適法なことで、国税庁としてはどうにもならないわけでありますけれども、ただ、それでは早く、独自に審査請求内容審査を進めればいいではないかということにつきましては、いろいろな証拠書類その他が現在検察庁に押収されまして、そして裁判所に提出されておるというふうなこともございますので、不服審判所としては全然審査に入れないという状況でございます。
  39. 横山利秋

    横山委員 それは少し私は言いわけだと思うのであります。なるほど検察陣の手に移っておる、書類は向こうへ行っておるかもしれぬ。検察陣は、そういう場合に、換価処分をするために不服審判所として決断をした、国税庁としてもいつまでも放置はできないという場合に、あなたの求めに応じて書類を見せてくれないのですか、協力してくれないのですか。換価処分するためにやむを得ないから書類を貸してくれ、戻してくれということに協力しないのですか。また、あなた方は、実際問題として検察陣に書類を送るときに根こそぎみんな持っていかれたのですか。当然のことのように、検察庁へ送りました書類のコピーはあなたの方にあるはずであります。全部根こそぎ持っていったなんて子供みたいなことを言って国会をだましてはいけません。私も長年大蔵委員をやっているのですから、その間の事情はわかっているつもりなんですよ。あなたの方が決断をして、やろうと思うならば幾らでも方法はあるはずだ。検察陣が協力しないなんということはあり得ないはずだ。どうなんですか。
  40. 磯邊律男

    磯邊政府委員 あるいは検察庁にお願いすれば資料は見せていただけるかもしれませんけれども、申請人自身が、過大であるという理由については裁判の推移を待って疎明するというふうな態度に出ておりますので、こちらの方からあえて審査にかかっても、実際問題としてそれは調査ができないという状態でございます。
  41. 横山利秋

    横山委員 あなたと押し問答しておっても仕方がないのです。大蔵大臣、あなたは事情をおわりのはずであります。これは判断、決断の問題じゃありませんか。やる気があれば方法があると私は思うのです。単にこれは、第二番目の徴収サイドの問題でありますが、その徴収サイドの問題でも決断が足らなくて、差し押さえはしたけれども換価処分ができない。換価処分については児玉の作戦にまんまとはまってしまってどうにもならぬ。これは決断の問題ですよ。あなたも長年大蔵畑で育っていらっしゃったのだから、児玉に対する国民の要望といいますか、国民の強い監視を——いまのような話を聞いたら国民は笑いますよ。何か国税庁の態度がきわめて弱腰であるということに感じませんか。この際、大蔵大臣として長官に指示をして、このような不服審判所のあり方について裁断を下すべきだと思いますが、いかがですか。
  42. 村山達雄

    村山国務大臣 横山委員も、不服審判所ができました経緯については十分御承知だと思うのでございます。かつては、異議の申し出がありましても換価処分ができる規定がございました。しかし、あれは何年でございましたか、それは納税者の利益を不当に害するものであるということが問題になりまして、そして不服事案の処理につきましては、納税者の利益と、それからいわば納税者全体を代表する国の利益をどこでバランスさせるかというのが制度論として問題になったわけでございます。したがいまして、現在の制度は、民事訴訟に三ヵ月以内に移られるというのは相手方に与えられた権限でございまして、そして、まだ異議申し立て中は換価処分はできない、こういう利益を納税者に与えました。そのかわり、国の側としては債権保全はできます。延滞税は依然として進行してまいります。ここがちょうど納税者と国との利害の調節点である、こういうことでたしか制度はできておったと思うのでございます。  したがいまして、ただいま聞いておりますと、異議申し立て、不服申し立て児玉側で、向こうの方がその理由を言わないわけでございますから、だから棄却もできない、また認めることもできない、却下もできない、こういう状況にありまして、まさに法律が、何といいますか、通常の場合は予定していなかったでしょうけれども、法律が考えておるぎりぎりの線で、延滞税は進行しておる、差し押さえ本税の方あるいは財産保全はやっておる。向こうはいわば期限の利益を放棄して、事実上待っておる。(横山委員却下すればいい」と呼ぶ)却下はできないことになっておるわけでございます。これは法律上明らかでございます。  そういうわけで、国と納税者の利益というものは、普通の不服審判所においては、それが何びとであれ平等に取り扱うことになっておるので、いま膠着状態だということは残念ながらいまの法律ではそのようにならざるを得ないかと、かように思っておるところでございます。
  43. 横山利秋

    横山委員 私は、おっしゃるとおり不服審判所創設のときの提案者の一人でありますから、その間の事情はよく承知しております。しかし、いま法律論争をあなたとやっても仕方がないのでありますが、常識的に物を言っている。異議申請不服審判所にした。不服審判所がそれを適法に受理した。しかるに、審査ができない状況納税者がしておる。書類を出せと言っても出さない。そして裁判の進行中は審査をしないようにさせておる。裁判がいつ終わるかわからない。一切の協力不服審判所にしない。納税者児玉裁判で争うということであって、不服審判所で争う意思はないこと、明白なんであります。不服審判所で争う意思は毛頭ないこと明白でありながら——もう彼ら自身が言っているのでありますから、裁判の結果までは作業をしてくれるなと言うのですから、不服審判所で争う意思はないのであります。そういう明白な意思表示があるのにかかわらず、不服審判所裁判の結果まで待つというのはいかがなものかという、常識的なことを言っている。しかも、それによって換価処分ができない、徴収ができないということでありますから、不服審判所規定をもう一遍整理をなさって、御検討なさって——異議申請をしたけれども一切の協力をしない納税者に、いつのことかわからない、いつまでも、それが適法であるから却下もできないなんておかしいと私は思います。そういう点について児玉と詰めた話をしましたか。児玉の方がどうしても書類の提出ができない、異議内容も疎明もできないというのだったら、不服審判所としてはこれは却下せざるを得ないということがきわめて常識的な話だと私は思いますが、それがなぜできないのか。
  44. 村山達雄

    村山国務大臣 実際問題といたしますと、児玉の方も実は何ら利益がないわけでございます。御案内のように、差し押さえられておりますから、その利用権あるいは財産の処分権を失っているわけでございます。延滞税だけはかさんでいる、こういう形になるわけでございます。したがいまして、児玉側は、このことによって積極的に利益を得ている、そういうことにはならぬのではなかろうか。ですから、今度の不服審判制度をつくりましたときの、異議の申し出があったら元本の換価処分ができないというのは、その点を見通してそして一般納税者の不服のある人とそれから国税徴収権の限界をどこに定めるか、そういう割り切った考え方でこの制度ができ上がっているわけでございますので、特に利益を与えているということにはならない。早く決着をつけたいという気持ちはわかるのでございますけれども、これは児玉譽士夫に限らず、一般の税について不服のある者につきましてはやはり法律においては平等に取り扱うことになっておるのでございますので、遺憾なことでございますけれどもやむを得ない、かように思っているところでございます。
  45. 横山利秋

    横山委員 児玉に積極的な利益がないから心配しなさんなというお話は、私はきわめて遺憾千万な答弁だと思うのであります。私の質問はそういうことじゃなくて、児玉財産換価処分ができるようにあらゆる努力をし工夫をしろ、不服審判所に対して指示をしろ、こう言っておるのにかかわらず、差し押さえはしてあるんだから、児玉に積極的な利益はないのだからまあそう御心配なさらずにこのままにしておきましょうと言わぬばかりのお話で、私は大変遺憾千万な御答弁だと思います。しかし、この問題に余り時間をとりましてもあれですから、とにかく徴収状況については一応の状況はわかりました。しかしながら、私はその結果、現状に強く不満の意を表し、そしてあなた方がさらにこの不服審判所にかかっております問題の処理に鋭意努力をされんことを強く要望をいたしたいと思います。  そこで、第一の問題に返るわけでありますが、第一の問題でありますところの財産増減状況、それは言えないということの理由が私はよくわからないのです。徴収状況についてはある程度、われわれの気持ちをそんたくされたかわかりませんけれども、ある程度おっしゃいました。これにもまだいろいろ聞きたいこともございますけれども、時間がございません。財産増減状況、つまり児玉年度別収入を得た状況についての内容はあなたの方ももう明白だと思うし、冒頭陳述の中にも状況がもうわかっておるわけであります。そのことをなぜ言えないか、もう一回ひとつ聞かしてください。
  46. 磯邊律男

    磯邊政府委員 滞納処分状況等につきましては、国税庁がどういうことをやったかということを申し上げる意味において御答弁申し上げたわけでございますけれども、児玉譽士夫自身の財産増減状況につきましては、これはまさに個人である児玉財産内容に入ることになるわけでありまして、そういった意味でこれの御答弁はお許し願いたいということをお願いしているわけです。
  47. 横山利秋

    横山委員 わかりました。簡潔にお願いします。  次に、公判の開廷前の訴訟書類は非公開であるからという答弁が以前ありました。公判が開廷されれば、いま国会には御報告ができないとされておる児玉譽士夫財産あるいは収入、相手方等については検察庁としては当然裁判所に提示なさると思うのですが、法務省いかがですか。
  48. 伊藤榮樹

    ○伊藤(榮)政府委員 脱税事件の立証に必要な範囲においていろいろな証拠を出してまいります。証拠として公判で取り調べを受けましたものについては当然国会でも御報告申し上げる、こういうことでございます。
  49. 横山利秋

    横山委員 公判には提出できる、しかしながら国会には提出できない。恐らくそれは法廷における検察陣の戦術上の問題かというふうには考えられるわけでありますが、私の申し上げる児玉年度別財産増減の問題は公判に差し支えがないと思いますが、伊藤刑事局長はどうお考えになりますか。
  50. 伊藤榮樹

    ○伊藤(榮)政府委員 脱税事件の立証の方法として、損益計算法による方法とそれから財産増減法による方法と二つございます。損益計算の方法財産増減方法も、どちらで計算をしましても正規の経理が行われておれば答えは一緒になるわけでございますが、帳簿等が不備な案件が多うございますので、そのどちらかで立証する。児玉の場合には、現在損益計算法で検察陣が立証を行っておるところでございます。しかしながら捜査の過程で、本来一緒になるべき損益計算法と財産増減法の両面から十分検討を加えて、その両方の計算に不突合な点があればできるだけ縮めるという、そういう努力をして処理をするのが検察の普通のやり方でございますので、そういった点まで詰めた上で現在公訴を提起しておるわけでございます。ただ、そういうように損益計算法で立証しておりますけれども、将来弁護人、被告人の反証段階におきましてどういう主張が出てくるかもしれない、それによっては財産増減の点から検察陣がもう一回補充的な立証をしなければならぬ、こういうことも考えられるわけでございます。したがって財産増減の結果につきましては、弁護人、被告人の反証を見て立証の要否を検討する必要がある、そういう意味におきましてその段階に至るまで検察当局としてはそれを明らかにすることを御勘弁いただきたい、こういうふうに思っておるわけでございます。
  51. 横山利秋

    横山委員 国税庁にお伺いしますが、いまお話しのように損益計算の方法で法廷で立証する、しかし財産増減の方は余り関係がないと思うけれども弁護人の主張があるからまあ勘弁してくれ、こういうような趣旨だと承りました。もちろん国税庁としては両方の側で調査をなさっていらっしゃるでしょうね。
  52. 磯邊律男

    磯邊政府委員 そのとおりでございます。
  53. 横山利秋

    横山委員 そこで、私は国会国会裁判裁判というたてまえを貫きたいと思うのですけれども、その訴訟維持のためのすべての材料を提出しろと必ずしも言っているわけではないのであります。国会児玉なりあるいはロッキード関係者を罪に落とすことが目的でなくて、真の目的はロッキード事件真相は一体何であるかということで、その中で児玉小佐野のルートが明白でないから、そのルートを剔抉することによってロッキード事件の政治的な真相というものを明白にしたい、こういうことが私どもの本旨であることは御存じのとおりであります。ところがどうしてもうまくわれわれが剔抉できない、あなた方が協力ができないというところに本質的な状況があると思うのであります。  そこでもう一度あなたにお伺いいたしますが、差し押さえられました物件は時価評価二十八億と言われるのでありますが、その差し押さえ物件の明細、その評価額の状況、それを御報告願えますか。
  54. 磯邊律男

    磯邊政府委員 不動産約十三億、その他株式、預金貸付金その他であります。合計して約二十八億であります。
  55. 横山利秋

    横山委員 私が申し上げておるのは、差し押さえ物件の等々力の個人土地建物、別荘、有価証券、動産、その明細を出せと言っておるわけです。
  56. 磯邊律男

    磯邊政府委員 それは先ほど第一の問題で御答弁申し上げましたように、個人財産そのものを開示することになりますのでお許し願いたいと思います。
  57. 横山利秋

    横山委員 委員長にもお聞き願いたいのでありますが、徴収状況については若干の疎明がございましたが、あとのことにつきましていまの答弁のようにどうしてもお答え願えないわけであります。時間も参りましたし、私としてもこれでは本件質疑が十分意を尽くしません。  それで、これから大臣並びに長官に事後のためにお伺いをいたしますが、これは御相談なさってきょうの御答弁だと思うのであります。もちろん一般政府委員として御答弁なさったと思うのでありますが、証言法によってあなたが証人として仮にお出になりましてもいまの答弁と同じことになりますかどうか、念のためにお伺いをいたしたいと思いますが、大臣どうですか。きょうは一般政府委員としてお出になりまして、委員会がそれでは困る、審査ができません、私もそう思っておるわけでありますが、たびたびの本委員会におきまして申し上げておるわけでありますが、証人として一遍委員長にもお願いしたいと思っておるのであります。その理由は、時間の関係上もう全部整理をしてきましたが、三木総理大臣、福田総理大臣、福田一法務大臣、瀬戸山法務大臣、予算委員会における福田法務大臣の戒告決議、それから松浦君の総理大臣に対する質問主意書、それに対する答弁ロッキード事件における捜査処理に関する中間報告等々、すべてがロッキードに関しましては最大限国政調査協力をするということを述べられておる。ところが税に関しましては、いま徴収でわずかのことをおっしゃったけれども、私どもの質問に対してほとんど答弁を拒否なさる。そこで私どもとしては、証言法によって御答弁を願いたい。委員長にも理事会で一遍御相談願いたいと思うのでありますが、これはどうせそういう議論になりましたときにあなた方にこの意向をお聞きになると思うのですが、証言法の公務員である人が証言をする場合の条項は御存じのとおりでありますが、もし証人に喚問されましたら、これは特別の場合でございます。決しておどかすつもりではございませんが、私どもがそれを強要いたしますゆえんは、とにかくロッキードという特別の事案である。一般守秘義務とかあるいはあなたの方の立場というもので答えられないという一般論でございますから、この際、歴代の法務大臣が特別の協力をするというその議長裁定と、それから総理大臣、法務大臣の歴代の大臣が約束をしたことを引用いたしまして、証人としてあなた方にお出願いたい、こう私は委員長要望をしたいと思うのでありますが、そういう場合にはまた別の感覚があってしかるべきだと思いますが、どうお考えでありますか。
  58. 村山達雄

    村山国務大臣 率直に申し上げますが、私からも長官からも申し述べていますように、この所得税あるいは法人税その他相続税等、御案内のように申告納税制度に支えられておるわけでございます。したがいまして、その人の財産所得全部にわたりましてわれわれはそれを質問あるいは検査権等のいわば間接強制手段をもって真実を述べてもらっておるわけでございます。したがいまして、納税者は当然そういうことは世間には公表されない、そういういわば納税者との信頼関係にあってできておる次第でございますので、いま証言法によって求められたらどうか、こういうお尋ねでございますが、残念ながら答えは同じになると思うのでございます。
  59. 横山利秋

    横山委員 委員長初め同僚諸君にも御検討願いたいと思うのでありますが、私も納税者秘密を守るについてやぶさかではありません。なぜ秘密を守るか、それは税務行政上必要だから。なぜ必要か、国民の信頼を得るから。国民の信頼ということが税務行政上必要だから、したがって納税者秘密を守る。こういう三段論法になっておることは御存じのとおりであります。しからば本件のような、世界を揺り動かしたロッキード事件、そして議長裁定もあって、また内閣総理大臣最大協力をするという約束をされたロッキード事件、その事件について、国民の信頼は一体どちらに寄るだろうか。児玉とか小佐野とかあるいは田中とか、そういう人々の納税者秘密をあくまで守るのが国民の信頼を得るゆえんなのか、それともこれほどの希有の事件であり、議長や大臣が約束をされました最大限協力であるがゆえに、これだけは特例中の特例として納税者秘密と称するものを国会報告することが税務行政上に対する国民の信頼を集めるゆえんなのか、ここは選択の問題だと思うのであります。  ですから、時間が参りましたので委員長初め理事の諸公にお願いを申し上げます。私は、国税庁長官並びに大蔵大臣を証言法に基づく証人として喚問されるようお願いをいたしますが、いかがでございますか。
  60. 廣瀬正雄

    廣瀬委員長 ただいま横山委員から御要請のございました証人喚問については、理事会で篤と検討いたしてみたいと思っております。
  61. 横山利秋

    横山委員 以上で終わります。
  62. 廣瀬正雄

    廣瀬委員長 次に、坂井弘一君。
  63. 坂井弘一

    ○坂井委員 やりとりを伺っておりまして、率直に申し上げまして、ロッキード事件の重大性にかんがみて政府国会に対しては最大協力をするという厳粛なる約束、それがいまの答弁ではその姿勢、協力の具体的な内容というものが全くあらわれてこない。はなはだ遺憾に存じます。  そこで、国政調査権の本質と申しますか、あるいはあり方といいますか、これについてまず、きょう法制局にもおいでいただいておりますので、若干法制局の見解を伺いながらお尋ねをしてみたいと思います。  私は、この国政調査権の本質は、国政調査権というものが、仮に憲法上明文の規定があるとなしにかかわらず、議院がこの憲法上の権能を実効的に行使をする、そのためにいわば議会にきわめて当然な形で、言うなれば自然権と申しますか、そういう形で認められた補助的なあるいは補完的な権能である、こう理解をいたしております。したがって、この自然権としての国政調査権には証人を喚問したりあるいはまた横山委員からの要請もありました文書の提出を求める、そういう強制権、その裏づけを与えて、真の意味国政調査権の存在を明らかにしたのが憲法六十二条の制定の趣旨であろう、こういう理解であります。  ただお断りしておきますが、憲法六十二条ではしからば強制権を直接的に持たしているかというとさにはあらずして、この強制権は今度はこれを受けました議院証言法においてそれが法制化、明文化されておるという関係にあろうかと思います。したがって、憲法で定められたこの国政調査権、日本国憲法の国政調査権の特色は何かというならば、強制権の裏づけがあるということであろう、こういう私の理解であります。一般的な理解であります。法制局、私の見解に対しまして、簡単にひとつお答えを、見解を承りたいと思います。
  64. 茂串俊

    ○茂串政府委員 ただいまお話のございました国政調査権のいわば本質でございますが、これは御指摘のございましたように、憲法第六十二条に由来するものでございまして、議院が国政に関する調査を行うことに関連しまして認められておるものでございまして、国政の対象が非常に広範なものであるということに対応しまして国政調査権の及び得る範囲もきわめて広いものであるということは、これはもう申すまでもないことでございます。  その本質につきまして若干申しますと、この国政調査権の性格につきまして、国会が持つ立法あるいは行政監督の権能を有効に行使するために議院に与えられた補助的な機能であるというのがいわば通説的な見解でございますが、このような調査権につきましては、いわゆる三権分立のたてまえからしまして国政調査権の行使につきましては一定の範囲の限界が存するということ、これは当然のことであると思うのでございます。そこで、ただいま御質問の強制権的なものであるかどうかという点でございますが、これにつきましては、御指摘のございましたように、いわゆる議院証言法にのっとりまして一定の段取り、手続が定められております。その段取りに従って、いわば法的に担保されておるということも言えようかと思うのでございます。ただ、国会法百四条に基づくところのいわゆる国政調査権につきましては、これはいわば立法府と行政府との間の協力関係という関係に立つものであるというふうに考えられます。
  65. 坂井弘一

    ○坂井委員 そこで、私はこのあり方、国政調査権のあり方としては、たとえばいまも児玉の具体的な問題が挙がっているわけですが、私企業でありますとか私人の反社会的な行為といいますか、ましてやロッキード事件というきわめて重要な事件、こういう事件を問題とする場合においても、この国政調査権の行使のあり方といたしましては、つまり最終的にはそれらの事件の内容を究明する中で、やはり立法でありますとかあるいはもろもろの施策、そういうものをその中から見出し、政策を立案し、あるいは再発防止というようなところに結びつけていくということのためにこの社会悪の実相というものを究明するのでありまして、決して個人の暴露でありますとか個人に対する糾弾でありますとか、あるいはまた摘発をするとか、そういうようなことを目的として国政調査権を行使するものではない、これは国政調査権のあり方であろう、私はこういう立場に立って、以下お尋ねするわけでありますので、あらかじめひとつお含みおきいただきましてお答えをちょうだいしたいと思うのであります。  大蔵大臣質問いたしますが、先ほどの御答弁を伺っておりまして、公務員には税法上の守秘義務がある、したがってかくかくしかじかの理由でもって提出することはできない、こういうことでございますが、これも私は提出をすることができないという具体的な理由、説明ははなはだ不足しておる、欠けておる、実はそう思う。なお、やはり一般論的な形式的、抽象的な理由を挙げての断り方という気が実はしてならぬわけであります。  そこで、お尋ねしたいのは、いずれにしても文書の提出は拒否するということでございますが、これは前段申しましたように、国会に対して政府最大協力をする、その協力立場を踏まえて、きわめて高度な政治的な判断の上で文書の提出は断る、その場合には総理にも御相談をされて文書提出を拒否、こういうことに相なったのでしょうか。
  66. 村山達雄

    村山国務大臣 本日の問題につきましては総理とは別段相談いたしておりません。
  67. 坂井弘一

    ○坂井委員 これは総理、政府挙げて国会に対する真相解明のための協力という約束があって、具体的に一つの問題を取り上げて、児玉、この文書の提出をお願いしたい。それに対して出せない。出せないとされる政治的な意味合いにおける政府のその責任の姿勢にはいささか欠けているものがあるのではないか。税務関係ですから当然大蔵大臣が最高の責任者でありますから、その御判断のもとにということでしょうけれども、しかし少なくとも総理も、政府がこれは挙げて協力をいたしましょう、しなければいけないということでありますが、そういうお答えが返ってきますと、やはり余り協力しようという積極的な姿勢ではないのではないか、こう実は私は疑わざるを得ないわけであります。ならば、たとえば大蔵大臣は、この種の資料の要請等があった場合に、それはまさにケース・バイ・ケースで、児玉の場合は出せない、しかしほかに具体的な問題で要請があった場合に、それはまたケース・バイ・ケースで、しかも同時にこの重要性にかんがみ、十分政治的な協力をしなければならぬ、そういう姿勢に立ってケース・バイ・ケースで今後は判断される、実は一切拒否するというような感じに受け取れてならぬわけなのであえてこういうことを聞くわけですけれども、それは全くケース・バイ・ケースで判断します。出す場合もある、当然こういうことになりますか。
  68. 村山達雄

    村山国務大臣 先ほどから御説明しておりますように、税務調査に与えられた間接強制をもとにして調査をいたすわけでございます。もちろん納税者個々によりましては、中には税の脱漏をはかっている者も当然あるわけでございます。しかしそういう人たちにも真実を述べてもらうために調査権が与えられておりますし、またその担保によるところの協力がなければ税務の適正な執行はできないことは当然でございます。したがいましてその問題は、脱税者であるとかあるいは正当な申告をしている人であるとかそういったものによって区別すべき筋合いのものではない、やはり法の前に平等という意味では、この権限に基づく守秘義務というものは共通のものであろうと私は思っているわけでございます。別途それが有罪になる、刑事事件になるということになりますれば、当然のことでございますけれども刑事事件としてその問題は明らかになってくるわけでございます。税務に関しましてはいま言ったような趣旨からいたしまして、犯罪者であろうとそうでなかろうと、申告納税制度を支えておるこの基本的な原則にかんがみますときに、やはり機微にわたる個々の財産内容所得内容、そういったことは残念ながら申し上げられない、かように考えているところでございます。
  69. 坂井弘一

    ○坂井委員 それでは確認の意味でもう一度尋ねますけれども、それは裁判の進行段階を見て云々、これは別としても、この種のようなケース、ほかにもいろいろ資料要求をしたいということがあろうかと思うのです。そういう場合でもいまの税務上の守秘義務ということでもって一切出せません、こういうことになりますか。
  70. 村山達雄

    村山国務大臣 一般的の統計資料でございますとか、あるいはどんなふうになっているかというような税務行政の監査についてのお尋ねでございますれば、喜んで協力さしていただくわけでございますけれども、個人個人所得内容あるいは財産そういったものは、まさに税務が適正に執行が行われるために、間接強制をもって与えられておる権限に基づいて初めて知り得るわけでございます。したがいまして、もしそれをいかなる場合であろうとも役所が何らかの形で出すということになりますれば、一般的なこの法律関係によって担保されておる、いわば納税者との間の信頼関係が基本的に失われる結果になると思うのでございますので、残念ながら御要望には応じかねる、こう申し上げておるところでございます。
  71. 坂井弘一

    ○坂井委員 しからば、できるだけの協力をいたしますということの協力のあり方として、先ほど国税庁長官はこの委員会のやりとり、答弁の中で、一定の協力という形だろうと思うのですが、課税状況でありますとか、資産の状況について若干の説明をされました。私は、これはそれなりに結構、それなりに結構だけれども、これは一々これはどうだあれはどうだと根掘り葉掘りいろいろ聞かなければ、そういう小出しをしていただけないのか、そんなものじゃなかろうと思う。この場で答弁できるならば、ほかに何が協力の形として具体的に答えられるものなのか。もっとほかにもあるのでしょうかどうでしょうか。ありとするならば、ここでまとめて日を改めても結構だと思う、最大限のここまでは委員会の中で報告できますということをまとめて報告される御意思はございませんか。大蔵大臣どうですか。
  72. 村山達雄

    村山国務大臣 いまの点は非常に具体的な問題になりますので、国税庁長官から答弁させます。
  73. 磯邊律男

    磯邊政府委員 先生ただいま御指摘になりましたように、私はこの委員会におきまして、できる限りの御協力を申し上げる意味で、許される最大限の御答弁を申し上げておるところであります。そのほかに別途こういった状況であるというふうな概括的な報告をここで申し上げるということは、これはちょっとどの程度まで報告していいのか判断つきかねますので、先生方の御質問に応じまして、お答えできる範囲のお答えをさしていただくことで御容赦願いたいと思います。
  74. 坂井弘一

    ○坂井委員 大蔵大臣、それを言いたいのですよ。だからその辺までぼくは総理と御相談なさってもいいのじゃないでしょうか。大蔵省として国税庁長官の意見もいろいろあるでしょう。皆さんがいろいろ協議なさって、国会に対して最大のわれわれ協力をするのだ、じゃどこまで言えるだろうか、どうだろうかということで、一つの案としておまとめになって、委員会に出てそこで報告される、これぐらいの姿勢があって初めて協力をしているということになるのじゃないでしょうか、こう言っているのであって、いろいろ聞いていけば、まだ根掘り葉掘りで幾らか出てくることがあるのかもしれません。しかし、それは余り言いたくないから、委員会で言われれば仕方がないや、こういうことになるのか、それじゃ全く協力じゃないでしょう。つまり、通常委員会においていろいろな角度からいろいろなやはり意見を持って聞いているというのとは違うのです。根本的に当委員会は。私はそう理解している。最大限協力をしますという神聖な、厳粛な国会に対する約束があって、そして本委員会が行われておる。そこでこんな形でしか協力ができない。きわめて消極的だな、こうとしか受け取れない。こういうことを言っておるのであって、どうですか、大蔵大臣、いま私申しましたようなことを一度またよくお考えになって、少しはおまとめになってみたらどうでしょうか。だから、報告できるものはできる、できないものはできないで結構です。しかし、これがぎりぎりいっぱいのことでございます。われわれはそれを報告を聞いて、ああここまでが協力の具体的な中身か、そうか、それはそれなりに理解しますよ。いかがでしょう。
  75. 村山達雄

    村山国務大臣 いま国税庁長官から答えましたのは、非常に機微にわたる問題でございますから御質問に応じて最大限お答えしたい、御協力の実を御質問に応じてやりたい、こう言っているわけでございますので、御理解賜りたいと思うのでございます。
  76. 坂井弘一

    ○坂井委員 質問に応じてやること自体悪いとは言っていないので、それはそれなりの一つの方法でしょうということです。いま大臣がそういう御答弁でございますから、強いてこれ以上この問題言いませんが、しかし、ここで答弁の形ならできるけれども文書では出せない。これまた一体その理由はどういうことで文書で出せないのだろうか、私は非常に不思議に感じる。これは議事録になるのです。委員質問に対してぎりぎりいっぱい、こんなこと普通では言えぬことだけれども言ったのだと言って議事録に残る、それは許される。文書で要求すればそれは出ない。その辺の理由というのは全く一般的な国政調査の中で、また一般的な国税当局、大蔵当局の守秘義務という考え方の中での範囲しか出ていないとしか私には実は思えないわけで、だから、そういう意味で本当に協力しようという姿勢があるのかないのか、残念ながら答えはなし、こう言わざるを得ないということを実は申し上げているのであって、これはひとつ十分お考え直しをいただきたいと思います。  それならば、なおまた改めて伺いますが、国政調査、これによって得るところのわれわれの立場から言えば公益、それから、一方では守秘義務ということがありまして、私人のプライバシーとかあるいは基本的な人権でありますとか、またときには行政に支障を来さないためにとかいうような意味もあるかと思いますが、そういう二つの公益、この二つの公益両者をにらみながら比較考量する、勘案し出すべきか出さざるべきか、言うべきか言うべきではないか、こういう判断をされる、こういうことだろうと思うのです。統一見解のあれは。そういうことだろうと思うのですが、それならば、その比較調整をする、それは一体だれとだれとだれですか。税務の問題に限っては大蔵大臣とわれわれロ特の委員会、あるいはまた委員個人との間でやるのですか。だれとだれの問でこの比較考量するのでしょうか。それは一方的に政府がするのだ、大蔵省が、大蔵大臣がやるのだ、こういうことでしょうか。
  77. 村山達雄

    村山国務大臣 ごく常識的に申しますれば、行政庁は行政庁でやるだろうと思いますし、また、国会国会立場でまた意見があり得ると思うのでございます。いま求められておるのは、われわれ大蔵省の考え方を求められているわけでございますので、大蔵省の考え方を申し上げているのでございまして、一般的に意見というものは、国会なら国会、個々の議員なら議員それぞれみんな意見があるだろうと思うのでございまして、私たちが申し上げているのは、いま大蔵省の考え方を申し上げているのでございます。
  78. 坂井弘一

    ○坂井委員 重ねて伺いますが、国政調査権の行使によって得られるべき公益、そして一方では守秘義務によって守られるべき公益といいますか、この二つの公益ですね。この二つの公益を比較考量する。そこで、出すか出さないかの判断は、いまの問題等に限ってはこれはやはり大蔵大臣がされる、こういうことですが、ここに調整の作業というのがあってしかるべきだと思うのですね、出すか出さないかの場合に。調整についての具体的な方法があるのじゃないでしょうか。それはどうお考えになりますか。われわれは出してもらいたい、提出を要請する、国政調査権という権能に基づき、また国政調査の必要ありと言う。政府は、一方では、くどいようですけれども最大協力をするというお立場。しかし守秘義務はある。この場合に出せないのだと言う。この資料要求については最終的に大蔵大臣は出せないのだと判断されたのだが、その判断の際に、要請しておる国会の方と二つの公益を比較考量しながら、出すべきか出さざるべきか。しかしこういう具体的な方法であるならばこれは出せるとかいうような幾つかの出せる方法があるのじゃないでしょうか。たとえばいまこの委員会委員質問に対して答弁という形で答えるというのも一つの調整の方法だろうと私は思う。ほかにも調整の方法があるでしょう。どういう調整の方法大蔵大臣はお考えになっていらっしゃるかということを伺いたい。
  79. 村山達雄

    村山国務大臣 いまわれわれは国政調査権に対しまして最大限の御協力を惜しまないということはしばしば言ったのでございまして、国税庁長官が答えておりますのは委員の方々の具体的の質問に応じまして最大限お答えしておる、かように御理解願えればありがたいと思います。
  80. 坂井弘一

    ○坂井委員 ですから、たとえば文書提出の要請には応ずるわけにはいかぬ、こうした場合に、しかし委員会秘密会ならば出せますとか、あるいは理事会ならば、そこならば出せますとか、あるいは仮に出せないとしてもそこではかなり詳細に報告ができますとか、あるいは委員会秘密会も議事録をつくらない、そういう委員会にしてもらえばそこで言えますとか、つまり私の言いたいのは、たとえば先ほど答えられた、これは皆会議録に残るわけです。これはいいとか悪いとか断定して言っているのじゃないのですよ、方法として、その一つとしてということで言っているわけです。たとえばということで、この委員会秘密会にしましょう、議事録はつくらない、そういう条件であるならばもっともっとここまで協力することができますとかいうようなことがあるのかどうか。あるいはこういう形の抽象化してということであるならば出せますとか、調整をするという意味協力をしようという中から初めて次善の策として出てくる問題だろうと私は思うのです。あなたの立場に立って言っているのです。その場合にはいま言ったような幾つかの方法がございます。というようなことを当然のことながら検討されていかがでございましょうか。これくらいの姿勢があっても決しておかしくないのじゃないでしょうか。そういうような案をお出しになるならば、私たちとしても真剣にそれを検討して、たとえば理事会等で皆さんの意見の一致があるならば、じゃそこでこういう幾つかの内容を提示された、その中のこのところを選択してというようなことになるのじゃないのでしょうか。したがって、そういう意味でいまのような幾つかの方法、そういうことは当然お考えの中にあってもいいのじゃないでしょうかと、こう伺っておるので、大蔵大臣、いかがでしょうか。
  81. 村山達雄

    村山国務大臣 繰り返し申し上げて恐縮でございますけれども、やはりわれわれは、この守秘義務というものは、全体の公益のために個人秘密を守らねばならぬ、こういう立場でできていると思っているのでございます。調整というお話でございますが、やはりそれは具体案がございませんとなかなかうまくいきませんので、おっしゃるような、御質問を通じましてわれわれは最大限にお答えの中で御協力さしていただきたい、こう思っておるのでございます。  いま秘密会というお話がございましたけれども、これは私の率直な感じでございますけれども、遺憾ながら非常にむずかしい、やはり結果は同じであろうと思っている。それだからといってやはりわれわれの守秘義務は解除されるものではないのであろう、こういうように思っておるわけでございます。
  82. 坂井弘一

    ○坂井委員 じゃ、少なくともロッキード委員会が一定のある一つの方法を仮に——ほかにも調整の方法が幾つか、もっともっといろんなことがあるかもしれませんが、そういうことを考えて、たとえば委員会でそういうふうな形でそういう方法で一定の協力を要請した場合には、それは前向いてといいますか、非常に尊重してそういう要請には応じよう、こういう姿勢なのか、それとも、いろんなあれが私いま仮に想定するだけでも幾つかあるわけですけれども、そういうことは幾ら言ってきたってもう全く応ずる余地はない、そういう姿勢なんでしょうか。どっちでしょうか。
  83. 村山達雄

    村山国務大臣 いや、坂井さんいまどういうことをお考えなのか私わかりませんが、具体的な提案がございませんとにわかには答えられませんが、私がるるお答え申し上げておるような基本的な立場で御運解いただきまして、その上で何らかの具体案が出ますればそれについてお答え申し上げたい、かように思います。
  84. 坂井弘一

    ○坂井委員 時間が参りましたので終わります。
  85. 廣瀬正雄

    廣瀬委員長 次に、大内啓伍君。
  86. 大内啓伍

    ○大内委員 国政調査権守秘義務の問題につきましてはいま議論が幾らか硬直しているようでございますから、この問題は後でお伺いをいたします。  幾らか問題を変えまして、国税庁長官お見えでございますから、ちょっと事実関係について確かめたいことがございます。  いまロッキード公判の一つの大きな山場が田中元総理の丸紅ルートにかかわる五億円の収受にかかってきておることは御案内のとおりでありますが、この田中元首相にかかわる五億円の収受につきまして、すでに国税庁当局課税処理をされているわけであります。しかしこの問題は、言うまでもなく、田中元首相側は一切その事実関係を否定しておりますし、またそれを裏づけると思われた田中秘書の笠原政則氏のメモの信憑性をめぐりましてもこれは大変な争点になってきている。さらには丸紅側の二人の運転手、松岡、野見山両氏は供述調書を全面的に否認をいたしまして、これらの調書は検事が勝手に作成したものである、いまこの問題の事実関係の認定につきまして大変な争いが起こっているわけであります。国税庁当局はすでにその収受があったという認定に立たれているようでありますが、この際、その根拠を明らかにしていただきたいと思います。
  87. 磯邊律男

    磯邊政府委員 田中角榮氏の五億円の問題につきましては、国税当局といたしましては、田中角榮氏が受託収賄をしたというその公訴事実、それからまた国会におきます法務省のロッキード事件の捜査処理に関する中間報告、そういった各種の事情というものを総合勘案いたしまして課税すべきものと心証を得たので課税したというのが実情でございます。     〔委員長退席、増田委員長代理着席〕
  88. 大内啓伍

    ○大内委員 そうしますと、その事実関係の認定は、具体的にお尋ねをいたしますが、昭和四十八年八月十日の一億円分、昭和四十八年十月十二日の一億五千万円分、昭和四十九年一月二十一日の一億二千五百万円分、同じく昭和四十九年三月一日の一億二千五百万円分、これを指しているわけでございますか。
  89. 磯邊律男

    磯邊政府委員 そのとおりでございます。
  90. 大内啓伍

    ○大内委員 国税庁当局がこの田中元首相の五億円分について、その収受があったという事実を認定しているということはこれは重要なことであると思うのでありますが、しかし国税庁当局はこれに対して脱税等の立件は行っておりませんですね。それはどういう理由でしょうか。
  91. 磯邊律男

    磯邊政府委員 田中角榮氏は一方において受託収賄で起訴されておるというのは御高承のとおりでありまして、起訴されまして有罪になりますと、これは必要的没収もしくは追徴ということになって、その段階におきまして一応その収受した五億円というものの経済的利益がなくなるわけでありますが、そういったことも勘案いたしまして、一方においては刑事事件が進行しておるということもございまして、検察当局とも協議しました上で、あえてこれを査察事件として立件しなかったということでございます。
  92. 大内啓伍

    ○大内委員 大蔵大臣にお伺いしますが、この五億円の収受に関しまして外為法違反はございますか。
  93. 村山達雄

    村山国務大臣 残念ながら、あるかないかいま私は急にはわかりません。     〔増田委員長代理退席、委員長着席〕
  94. 大内啓伍

    ○大内委員 大蔵省としては調査をされていますか。
  95. 磯邊律男

    磯邊政府委員 国税当局としてはその関係は調べておりませんけれども、後ほど調査いたしまして御答弁させていただきます。
  96. 大内啓伍

    ○大内委員 それは国税庁長官が答えることではないと思います。大蔵省の答えをいただきたいと思います。
  97. 村山達雄

    村山国務大臣 後ほど調べまして、いまどういうことになっているか御報告いたします。
  98. 大内啓伍

    ○大内委員 ぜひ御報告をいただきたいと存じます。  さてそこで、先ほど大蔵大臣は、個人財産所得内容を明らかにすることはできない、それは税務行政の公正な執行を図り、かつ租税収入の円滑な確保を図るために必要である、私は一般論としてその御説明もわからないではないのでございますが、そういたしますと、たとえば所得税法の第二百四十三条あるいは法人税法の百六十三条、さらには地方税法の第二十二条等に規定されております税務調査の結果知り得たことはいかなる場合でも公表できない、つまり職務遂行上知り得た秘密についてはこれを公表できない、こういうふうに大蔵大臣としては理解をされておりますか。
  99. 磯邊律男

    磯邊政府委員 所得税法の規定等にございますように、その職務執行するに当たって知り得た秘密はこれを漏らしてはならないということになっておりますので、個人がそれを公にしたくないと思われるようなこと、それについてはこれはすべて守秘義務の対象になるというふうに考えております。
  100. 大内啓伍

    ○大内委員 いま国税庁長官は、すべて守秘義務の対象になるというふうにおっしゃられたのですが、これは昭和四十九年十二月二十三日の国政調査権守秘義務との関係に関する政府統一見解というものを念頭に置かれて答弁されていますか。と申しますのは、この統一見解では、先ほど来も幾らか御議論がございましたけれども、守秘義務によって守られる公益国政調査権の行使によって守られる公益とを一般論ではなくて個々の事案ごとに比較考量することということが統一見解としてはっきり述べられているわけなんです。もしいま国税庁長官がおっしゃるように所得税法、法人税法あるいは地方税法等の規定をそのままただ引用されまして、すべてのケースにおいて守秘義務というものが成立するということになりますと、この統一見解は崩れてしまいますよ。これは個々の事案によってその公益の度合いをはかって一つ一つ結論を出すんであって、私はそういう意味からお伺いをしているんであって、税務調査の結果知り得たことにおいても、これはたとえば国政調査権に基づく公益の確保というものがより重要である場合にはこれは公表しても差し支えない、こういう解釈を法律的にもとるということがこの統一見解に即した解釈じゃございませんか。でないと、いま国税庁長官がおっしゃられたことは一方的になってしまいますが、この辺はどういうふうにお考えでしょうか。
  101. 磯邊律男

    磯邊政府委員 その政府の統一見解というのは、ただいま先生御指摘のとおりでございますけれども、それを秘匿することによって得る公益と、それから国政調査権の行使によって公表されることによって得る公益、その比較考量の問題であるということが結論でございますが、私たち国税当局といたしましては、現在の申告納税制度趣旨等から考えましてこれを公表しないということがむしろ現在の申告納税制度を健全に発達させる意味において必要なんではないか、むしろその方が重要なのではないかというふうに考えておるわけでありますが、ただ統一見解の後の方には、しかしながらやはり国政調査権の行使に対しては最大限協力すべきであるということが最後にうたわれておりますので、この席上におきましてはそういった趣旨最大限の御答弁を申し上げておるということでございます。
  102. 大内啓伍

    ○大内委員 私は先ほど村山大蔵大臣の御説明を一般論として理解できないことはない、こういうふうに申し上げたんです。しかしこの四十九年の十二月に出されました政府の統一見解というのはそれらの一般論の議論を経まして、個々の問題について国政調査権の行使あるいは守秘義務とどちらを優先させるべきかという論争の後に個々の事案ごとにそれは決定するんだ、つまり具体的に言いますと、所得税法あるいは法人税法の規定規定としてございますけれども、それが果たしてそれに基づく守秘義務が妥当かどうかということは、その国政調査権に基づいて確保しようとしている公益とのパランスによってそれを個々に検討した上で答えを出さなければならぬということが統一見解でございまして、国税庁長官の言っていることは一般論なんであります。問題は、いまたとえば児玉譽士夫氏の財産形成あるいは所得内容等についていま当委員会において質問があり、それを公表できないということになると、その一般論だけでは無理なんです。なぜ児玉譽士夫氏の財産形成の状況あるいは所得内容を公表することが国政調査権の行使として求めている公益以上に守秘義務公益の方が大きいかということを具体的な事例によって証明しなければその守秘義務の公正さを主張することにはならない。大蔵大臣、そう思いませんか。
  103. 村山達雄

    村山国務大臣 もちろん、あの統一見解では個々の事案によって両者公益の比較考量をすべきである、こういうことでございますし、また、委員の方々の具体的な話は児玉譽士夫に関する具体的な問題として御質問を受けていると承知しているわけでございますので、その個別事案、具体的なケース・バイ・ケースと申しますか、個々の事案としてわれわれは判断さしていただいてお答えを申し上げておるところでございます。
  104. 大内啓伍

    ○大内委員 この大蔵大臣の説明で幾らかはっきりしましたが、そうしますと、先ほどの国税庁長官答弁は若干言葉不足だと思うのであります。つまり、税務調査の結果知り得たことについて、すべての場合においてこれは公表できないということではなくて、国政調査権の行使によって必要な公益を確保する、それは重要だと認められたものについては公表し得るケースがあり得る、こういう答弁でないとちょっと正確ではないと思いますが、長官、いかがですか。
  105. 磯邊律男

    磯邊政府委員 私たちは、このロッキード特別委員会における国政調査権の行使の重要性にかんがみまして、普通の委員会ではお答えをお許し願うような点までもここで御答弁申し上げておるつもりでございます。そういった意味におきまして、実質的には、この児玉譽士夫案件につきましては、個々にその重要性というものを考えまして御答弁申しておる、その意味においては比較考量の上御答弁申し上げておると申してもいいのではないかと思っております。
  106. 大内啓伍

    ○大内委員 これは一般論として聞いておきましょう。職務遂行上知り得た秘密であっても公表し得る場合があるということですね。そういうことでしょう。
  107. 磯邊律男

    磯邊政府委員 それはやはりケース・バイ・ケースによるということだろうと思います。
  108. 大内啓伍

    ○大内委員 ケースによってはあり得るということですな。そんな回りくどく言わないで、その辺ははっきりしてくれませんか。これは一般論としても今後重要な基準になりますので、ひとつお願いいたします。
  109. 磯邊律男

    磯邊政府委員 それはまさに政府統一見解に示されておりますように、国政調査権の行使とそれから守秘義務との比較考量の上で個々に判断するということでございますから、そういった場合もあり得るということでございます。
  110. 大内啓伍

    ○大内委員 そうしますと、国税庁長官がすべての場合に公表できないと言った前言は取り消されますね。
  111. 磯邊律男

    磯邊政府委員 私が先ほど御答弁いたしましたのは、国政調査権との関連において守秘義務を申し上げたわけじゃなくて、所得税法の規定の解釈として、税務職員職務上知り得た秘密を漏らしてはならないということを申し上げたわけであります。
  112. 大内啓伍

    ○大内委員 本当は追い詰めれば追い詰められるところですが、まあやめましょう。  私は、児玉氏の財産所得内容を明らかにできない、それは公益上の理由からであるという御説明については若干疑問を持っているわけであります。と申しますのは、ロッキード事件が発生をし、この反社会的な事件について当特別委員会が設置されたということ自身が、実は国政調査上の公益上必要だという立場に立ったことは論をまたないわけであります。したがって、その真相を明らかにすることが実は公益上重要な課題になっております。そうすると、この真相を解明するためにいまロッキード公判が行われているわけでありますが、何といっても、やはり児玉ルートの解明というものがこの最も重要な内容であることは論をまたないわけです。たとえば児玉譽士夫氏の脱税事件は国民の大多数にとってきわめて忌まわしい事件であって、この膨大な脱税に対してどのような課税措置がとられるのかということが国民の重大関心事であることは論をまたないわけであります。同時に、刑事事件の対象になっている脱税事犯のみならず、児玉氏の財産形成状況についても、国民はそこに大きな不正があるのではないか、そういう疑惑を抱いていることも明らかだと思うのです。したがって、そうした国民の疑惑に対して国税当局がその真相を明らかにするということは公益にかなった措置だと理解すべきではないでしょうか。児玉納税財産状況国政調査権の求めに応じて明らかにすることによって守秘義務が崩壊するという解釈は少しおかしいのじゃないでしょうか。その点、国税庁長官いかがですか。
  113. 磯邊律男

    磯邊政府委員 たびたびここで御答弁申し上げておりますように、やはり児玉譽士夫氏彼自身については確かに脱税犯として現在公判係属中でございますけれども、私たちから見ますと、一方においてはやはり一納税者でございまして、そういった意味において納税者財産内容を公開するということについては、やはりどうしても現在の申告納税制度というものの趣旨から考えてお許しいただきたいということをお願いしておるわけでございます。
  114. 大内啓伍

    ○大内委員 私は一般論としてその長官の御説明は理解できないことはないのです。ただ児玉事件というのは、国民にとっては先ほど来申し上げておるように本当に、非常に忌まわしい、いやな事件なんですね。そして国民の皆さんは、それについてやはり徹底的に究明してほしいという感情を持っておることは世論調査から見たって明らかなんですよ。ですから、そういう個々の事案についてはまさに政府統一見解に示されているように、どっちの方が本当に公益上の利益にかなうのかなということをこの事件についても深く勘案して、先ほど御答弁されたように、その公益上の比較考量によってはそういうものを公表することもあり得るという一つの原則に立って、そういうものを明らかにすることの方がむしろ公益上かなうのではないか。つまり、たとえば児玉譽士夫氏のそうした財産状況や何かを公表することによって税務行政に対する信頼、つまり国民の信頼を失うでしょうかね。逆じゃないでしょうか。そういうことを、国税当局がこれは個人秘密でございます。基本的人権にかかわることでございますと言って隠していることの方が税務行政に対する国民の信頼を失うことになり、したがって、公益の確保はできないのじゃないでしょうか。その辺の私は価値判断というものが非常に重要だと思うのですよ、この事件については。その辺はどうでしょう。私はそう思うのです。少なくとも、むしろ児玉譽士夫氏のそうした個人財産あるいは納税、それらの実態をつまびらかにすることの方が税務行政上も公益にかなう措置だ。これは個々の問題ですから、長官のおっしゃるように一般論ではなくて、個々の問題として考えればそういう結論になると思うのですが、いかがでしょうか。
  115. 磯邊律男

    磯邊政府委員 お言葉を返すようではなはだ恐縮でございますけれども、私国税庁長官といたしましては、児玉譽士夫脱税を摘発し、それの刑事訴追を求めたというところで国民の、納税者の方々の御期待なり御信頼にこたえる道であろうかと考えておりますが、さらにそれから進んでそういった個人財産の公表まですることは、むしろこれは申告納税制度の健全な発展のためにマイナスであるというふうに考えておるわけであります。
  116. 大内啓伍

    ○大内委員 この辺はいずれにしても水かけ論になると思うのです。しかし、諸外国の例を見ましても、たとえばアメリカ等の例を見ましても、これらのことはみんなほとんど公開されていますよ。それがやはり民主政治とかあるいは本当のガラス張りの行政、納税ということなんですよ。どうして日本じゃできないのでしょう。もちろんアメリカと日本とは違うんだという議論をすればそれまでですけれども、国民の信頼を得るためには、疑惑が持たれている者について個人といえども責任を負う、しかも、これは反社会的なこれだけの大きな事件じゃないですか。しかも、これは国内問題だけじゃなくて国際的な問題でもある。そういうときに国政調査権がいろいろな壁によって一歩も入れない。片っ方は公判という壁、片っ方は税法という壁、片っ方は国家公務員法、地方公務員法という壁。皆さんの論理が成り立つとすると、国政調査権というものはいかにむなしいものであるか。国権の最高機関といいながら、国政調査権政府の解釈が違ったときにはにっちもさっちもいかない。  これは法制局長官伺います。——いませんか。それじゃ村山大蔵大臣に聞きますけれども、国政調査権政府の解釈が違った場合にはだれが判断するのですか。憲法の国権の最高機関の国会意思が優先するのではありませんか。政府としてはどういうふうにお考えでしょう。
  117. 村山達雄

    村山国務大臣 その点につきましては政府の統一見解がありますし、また議院証言法がある種の調整をとっておるものと考えておるわけでございます。
  118. 大内啓伍

    ○大内委員 私の時間はすでに過ぎましたので、後で次長の方で、先ほどの外為法違反の説明をしたいというので、それをいただきまして質問を終わります。
  119. 廣瀬正雄

    廣瀬委員長 この際、先ほど外為法違反に関する大内君の御質疑について国際金融局次長出席いたしましたので、発言を許します。宮崎次長。
  120. 宮崎知雄

    ○宮崎(知)政府委員 御質問の、田中前総理に対して丸紅社から支払われた五億円の件につきまして、これが外為法の違反であるかどうかという御質問でございますが、その資金がロッキード社から支払われるべき性格の資金であるということでありますと、これは支払いの方法が外貨かあるいは自由円で支払われる場合には許可は要りませんが、それ以外の方法で支払われる場合には許可が要るということになっております。本件は居住者である第三者を通じて支払いが行われておりますので、許可を取得していない場合には外為法の違反になるということでございます。  それからもう一点、本件について大蔵省調査をしたかどうかという御質問でございますが、その件につきましては、本件はすでに強制捜査の段階に入りまして、司法当局の手で調査が行われ、現在裁判中ということでございますので、大蔵省としては調査いたしておりません。
  121. 大内啓伍

    ○大内委員 以上をもって、終わります。
  122. 廣瀬正雄

    廣瀬委員長 次に、正森成二君。
  123. 正森成二

    ○正森委員 私は、いままでの同僚委員、なかんずく先ほどの大内委員国政調査権守秘義務との関係の立論を基本的に正しいものだと考えております。そういうことを前提にして、できるだけ重複しないように短時間の質問を行いたいと思いますので、大臣並びに国税庁長官答弁をお願いしたいと思います。  まず最初に伺いたいと思うのですが、先ほどの答弁の中で、まだ納められていない税額約二十億円について二十八億円を保全のため差し押さえた、こう言われましたが、それは国税徴収法に基づいて差し押さえられたのですか。
  124. 磯邊律男

    磯邊政府委員 さようでございます。
  125. 正森成二

    ○正森委員 所得税法には、二百四十三条で税務職員に対する特別の守秘義務を課しておりますが、国税徴収法にはそういう特別の守秘義務を課した罰則つきの規定というのはないように思うのですが、いかがですか。
  126. 磯邊律男

    磯邊政府委員 そのとおりでございます。
  127. 正森成二

    ○正森委員 それにもかかわらず、あなた方がどういう財産差し押さえたかについて答弁を十分にしていないという状況がありますね。私は、所得税法の守秘義務についても国政調査権との関係で、公益の必要から比較考量しなければならない、本件の場合には国政調査権が優先すると思いますが、特に国税徴収法のように、その特別法で特別の守秘義務を決めていない場合には、所得税法によって質問検査権等によって知り得たことよりももっと国政調査権協力しなければならない範囲が大きいというのは理の当然であろうと思うのですね。その点についてはいかがですか。
  128. 磯邊律男

    磯邊政府委員 私はここで御答弁をお許し願いたいと申し上げておりますのは、ただ所得税法にそういった守秘義務規定があり、罰則が加重されているからお許し願いたいという趣旨ではございませんで、これはやはり現在の申告納税制度趣旨ということを考えますと、この健全な発展のためにひとつここで御答弁するのはお許し願いたい、こういう意味で申し上げておるわけであります。したがいまして、所得税法には特別な罰則が加重されておるけれども、徴収法にはそういった罰則がないからということをもって、徴収法についてはここでお答えしてもいいということにはならないのじゃないかと考えておるわけであります。  といいますのは、私たちの税務行政というものは、納税とそれから賦課徴収という一連の税務手続によって税務行政執行されるわけでございまして、所得税法による調査もそれから徴収法による滞納処分も、やはり現在の自主申告、自主納税制度の事務処理に全体としてそれが包含されるわけでありますから、そういった意味で、ここで御答弁申し上げるのはお許し願いたいと言っておるわけでございます。
  129. 正森成二

    ○正森委員 おかしいじゃないですか。先ほど同僚委員質問に対しては所得税法の二百四十三条などを引いて、そこに守秘義務が課されておる、こう言うておるから、それじゃ国税徴収法の関係にはそういうのがないじゃないかと言えば、守秘義務があるから、罰則があるから言えないのじゃない。それじゃ一体、罰則があろうとなかろうと言えないというんなら、それを貫く根本的な、国政調査権に対しても言えないという統一的な根拠法規なりあるいは原理は何なんですか。所得税法に二百四十三条が決められているから言わないのじゃないと言う以上は、国家公務員法百条に書いてあるから言えないということも理屈が通らないでしょう。それじゃ、国家公務員法百条の職務上知り得た秘密とか所得税法二百四十三条の調査によって知り得た秘密、これを言ってはいけないというものは関係ない、それを超えてわれわれは言えないのだというその至上的な原理というのは一体何なんです。本当にそうなんですか。性根を入れて答えてくださいよ。
  130. 磯邊律男

    磯邊政府委員 私が先ほど所得税法の罰則の件に触れましたのは、罰則を加重するというその趣旨というのは、申告納税制度のたてまえから見て特にこれを公表することは好ましくないという趣旨から罰則が加重されたという、その現在の申告納税制度の基本的な考え方としてこれを援用したわけであります。  しからば、現在の申告納税制度というのは、先ほどから申し上げておりますように、すべて納税者には真実を伝えていただく、それから税務官吏というものはすべてを知り得る立場にあります。そういった意味において、罰則が加重されているとかされていないとかという意味にかかわらず、知り得た秘密というものはこれを他に漏らさないということが現在の申告納税制度を健全に発展させる道であるというふうな趣旨において、ここでお答えするのはお許し願いたいということでございます。
  131. 正森成二

    ○正森委員 そうすると、これはおもしろい議論になってきましたけれども、所得税法二百四十三条とか国家公務員法百条は関係がないのだ、申告納税制度納税者がいろいろ秘密にわたることも言ってくれて課税ができるのだから、申告納税制度を守るために言えないのだ、所得税法二百四十三条等の税法や国家公務員法百条の守秘義務関係ないのだ、こういう申告納税制度を守るためだという一点にしぼられるわけですか。
  132. 磯邊律男

    磯邊政府委員 国会国政調査権に対してはその理屈だと思います。
  133. 正森成二

    ○正森委員 それでは、私はそういうものとしてお話ししていきたいと思うのです。  あなたの言うのにも一つの理屈があって、国務大臣所得税法等に縛られない、縛られるとすれば官吏服務紀律だ、これは罰則がないということでありますから、あなたがそういうことを意識していまの答弁をしておるというなら、それもまた一理屈であります。しかしながら、もしそういうことになりますと、国家公務員法の百条の二項は職務上の秘密というように言っておりますね。国家公務員法の百条の一項は職務上知り得た秘密と言っている。講学上は百条の二項の方が範囲が狭いのである。百条一項の方は、職務上知り得た秘密だから、いろいろ客体側から聞いてきたことが入る、百条の二項は職務上の秘密だから行政庁側の秘密である、こういうことになっているんですね。そしてこの百条の二項に関係する部分については、これは議院証言法などでも同じですが、職務上の秘密を言う場合には、上司の許可を得なければならない、こういうぐあいになっているのですね。もし上司の許可を得ないという場合には、これはあなたがよく御承知のように、いまはしなくも大臣も、議院証言法で一定の調整が図られているという答弁がありましたが、それは五条の三項で、国家の重大な利益に悪影響を及ぼす旨の内閣声明というものを出せば、国政調査権に対抗できるということだと思うのですね。しかし私は、もしそういうぐあいに立論を進めていくなら、児玉のように外為法や所得税法に違反しておる刑事被告人、そしてこの人物は納税申告制度をまさに守らないで、隠して財産をため込んでおった。しかもそれは刑事犯罪になるものであったから、いまのように国会で問題になっておる。その人間を守ってやることによって、まじめに申告する、納税申告制度を本当に正しくやっている国民の利益が侵害されない、あるいはそれを守らなければ侵害されるというのは、理論がおかしいのじゃないですか。むしろ、納税申告制度を本当に守ろうと思えば、納税申告制度を守って自主的に真実の申告をする、あるいは初めはいろいろ言っておったけれども、質問検査権によって国家に協力してそういう答弁をするという者の利益を守るためにこそ、こういうぐあいに納税申告制度を正しく活用しないで財産を隠した者、しかもそれは刑事事件になった者、外国に対しても国家の威信を傷つけておる者、こういう者については国政調査権の発動によって最小限申し上げるのだということが、もしあなたが罰則によって言わないのじゃない、納税申告制度の精神を守るためだと言うなら、まさに国政調査権に対して言わなければならないということになってくるんじゃないですか。
  134. 磯邊律男

    磯邊政府委員 その点につきましては、先ほども御答弁いたしましたように、私たちは児玉譽士夫脱税を摘発し、これに刑事訴追を求めるということによって納税者信頼を得、それからまた申告納税制度発展のために非常に有効であったというふうに自負しておるわけでありますけれども、同時にやはりその内容を発表するということは、児玉譽士夫といえども一納税者でありますから、その納税者財産内容等についてここで御答弁申し上げるということはやはり現在の申告納税制度のたてまえからむしろマイナスであるというふうに私は考えて、先ほどから御答弁申し上げておるわけであります。
  135. 正森成二

    ○正森委員 全然理屈になっておらないですね。申告納税制度をまさに無視した者を守るために、善意な申告納税制度を遵守している者に害があるからというような理屈を持ってくる。逆じゃないですか。申告納税制度協力しない、しかも犯罪にまでなった、国家の威信を傷つけておる場合には、こういうぐあいに国政調査権のたっての発動によっては言われることがあるのですよ、しかし申告納税制度に従っておる国民に対してはそういうことは必ず守秘しますよということであってこそ、国税庁に対する国民の信頼というものは高まる。これは理の当然じゃないですか。また、あなた方は検察庁に告発をしておる、あるいは国税犯則取締法による手続をとっておるというようなことで、国民に対する責務は済んでおると言われるかもしれませんが、国政調査権としてはそういうぐあいに告発した後差し押さえ換価についてどういうぐあいに進んでおるかということを追及していくというのも当然国政調査権内容であります。  私は、残念ながら時間があと五分ですから、理屈だけ言っておると理屈で終わってしまいますから、そういうことを前提にして具体的に伺いますから、国政調査権に対する最大限の尊重ということは政府の統一見解でも出ておりますから、具体的事例について答えてください。  先ほどの横山委員質問に対して、残り財産として等々力の家だとか別荘だとか土地建物、それから有価証券と動産、こういうものを差し押さえておる、こう言いました。その後で実際上差し押さえしておるのが約二十八億円である、そのうち十三億円が不動産である、残りが株式その他である、こう言われました。そうすると、不動産の中には等々力の家や別荘、こういうものは全部入っておるわけですね。通常不動産というものは非常に価値があるものだとされておるわけです。ところが二十八億円のうち半額以上の十五億円が不動産以外のものであるということになると、国民としては果たしてそんなに財産があるのかな、国税庁差し押さえておるというけれども、これは国税不服審判所にかかっておるために換価手続ができないということになっておるのだから、本当に価格が下落しないで押さえているのかな、正直者がばかをしないのかなというように思うのは当然であります。したがって、株式その他と言われましたが、株式の銘柄まではいいから、株式は何万株差し押さえておるのか、その他というのは何なのか、貴金属なのか金の延べ棒なのか、そういう点について明らかにしてください。
  136. 磯邊律男

    磯邊政府委員 それは先ほど御答弁いたしましたように、不動産については約十三億、その他株式、預金貸付金その他でその残りの約十五億ということでございます。
  137. 正森成二

    ○正森委員 その内容を言いなさいと言っているのですよ。
  138. 磯邊律男

    磯邊政府委員 先ほどはここまで御答弁させていただいて、お許しをいただいたわけでございます。
  139. 正森成二

    ○正森委員 だからいままでの論議の中で、それだけでは不十分だと言っているのですよ。株式が何万株ぐらい言えないのか。
  140. 磯邊律男

    磯邊政府委員 私はこの委員会では、他の委員会では御容赦願う以上の御答弁をしておるつもりでございます。
  141. 正森成二

    ○正森委員 国税徴収法では罰則もないのです。その罰則もないことについて最大限尊重すると言いながら、なぜ言えないのです。納税申告制度と言いますけれども、徴収関係納税申告といったって直接関係ないじゃないですか。所得税法や法人税法は関係があるけれども、国税徴収関係は把握した税額について払わない場合に、それを差し押さえていくという手続じゃないですか。申告納税制度と直接関係がないじゃないですか。だからこそ特別の罰刑を設けていないのです。それに対して、国政調査権に対してなぜ協力できない。株式だとかその他だとか言っている場合に、私は三菱の株が何万株、何が何万株とまでは要求していないのです。株式が一体何万株かぐらいは言えるのがあたりまえでしょう。その他と言うなら、その他というのは貴金属だとか金の延べ棒が何キロだとかダイヤが何カラットとか、そんなことまでは言わなくてもいいけれども、それぐらい答弁できるのがあたりまえじゃないですか。委員長、そう思いませんか。私は、そういうふざけた答弁をするなら、国政調査権に対して全く敬意を払っておらない、尊重する気がない、こう言っても過言ではないと思います。一体あなたはそんなことで、もし証言になった場合に、国家の重大な利益に悪影響を及ぼす、こう言って証言が拒否できると思っているのか。そんなでたらめな国家はないよ。——答弁
  142. 磯邊律男

    磯邊政府委員 私は、先ほどから申し上げておりますように、当委員会におきましては、普通御答弁申し上げる以上のことを御答弁申し上げまして、当委員会国政調査権に御協力申し上げておるつもりでございます。したがいまして、ただいま御答弁申し上げた以上のことは、これを御容赦願いたいとお願いしているわけでございます。(正森委員「だめですよ。答弁になってない。そんなことでは質問が続行できない」と呼ぶ)
  143. 廣瀬正雄

    廣瀬委員長 速記をとめて。     〔速記中止〕
  144. 廣瀬正雄

    廣瀬委員長 速記を始めて。  国税庁長官の発言を求めます。
  145. 磯邊律男

    磯邊政府委員 ただいまの御質問に対しましてお答えいたします。  不動産のほかの債券等といたしまして、現在押さえております今後の徴収可能見込み額でありますけれども、預金が約九億、貸付金約二億八千万、それから有価証券につきましては、株式の数、株数でありますが、約七十二万株、割引債が約百四十枚、それから、その他差し押さえしました動産としまして、検察庁で押収しています動産を含めまして約二百二十点、以上であります。
  146. 正森成二

    ○正森委員 わかりました。割引債の百四十万というのは、単位は何ですか。
  147. 磯邊律男

    磯邊政府委員 失礼いたしました。割引債は全部なくなっております。これはすでにもう満期になりましたので徴収いたしました。
  148. 正森成二

    ○正森委員 その百四十万というのは百四十万円ということですか。
  149. 磯邊律男

    磯邊政府委員 百四十枚です。
  150. 正森成二

    ○正森委員 百四十枚ですか。単価がわからないからわからないのです。
  151. 磯邊律男

    磯邊政府委員 債券の百四十枚の総額は約六億でありまして、これは、中には一万円券とか五万円券とかございますので、一枚当たりの単価はわかりません。
  152. 正森成二

    ○正森委員 それでは時間になりましたので、あとの質問もありましたが、私の分はこれで終わらせていただきます。
  153. 廣瀬正雄

    廣瀬委員長 次に、加地和君。
  154. 加地和

    加地委員 ただいま国税庁長官が、株券、預金十五億ほどの、さらにやや詳しいことを申されました。それを申されるまでに一紛争あったわけでございますけれども、これを詳しくおっしゃったことによって、何か特別に申告納税制度とか、いわゆる国税庁立場として失ったものがありますか。それほどのことじゃないでしょう。何も隠して隠していわゆる大事があるほどのことでも何でもないと思うのですけれどもね。なぜ、あそこまでひた隠しに隠そうとされたのか。あらかじめ、もう庁内、大臣なんかと打ち合わせて、ここまでは言うてもいいことというぐあいに決めておられたから言われなかったのか、あるいは、何か格段に越えてはならない一線であったから隠そうとされたのか、そこをちょっと聞きたいですね。
  155. 磯邊律男

    磯邊政府委員 私たち、個人財産の現状とか財産内容については、やはり納税者として秘匿したい事項でございますので、それについてはもうできるだけ御答弁申し上げることはお許し願いたいというのが基本的な考え方でございます。
  156. 加地和

    加地委員 ところが、すでに差し押さえられておる物件というのは、いずれ競売処分になる可能性があると思うのです。そのときには、入札とかいろいろな方法をおとりになりますから、いずれ世の中にわかってくるのですね。ですから、差し押さえされておる財産というのは、もう全く私的な財産じゃなしに、これは半ば公の財産になりつつあると思うのですよ。でございますから、私は、ここまでかちっと国税庁の方が押さえておるとかどうとかということが、国民にとって信用してもらうためにも、詳しく言っても、もう差し押さえをしてしまった以上は言ってもいいのじゃないかな、それも一つの基準じゃないかなと思うのですけれども、これについてはどう思われますか。
  157. 磯邊律男

    磯邊政府委員 私たちとしては、その人が滞納しているということを公表するのもいかがかと思っておりますし、いわんやその人が滞納した場合に国税当局財産差し押さえをして、それによって財産内容が公になるということ、それはやはり個人秘密を侵すということになって好ましくないことだと考えております。
  158. 加地和

    加地委員 守秘義務国政調査権関係について、ただ国家公務員法、地方公務員法があるからじゃなしに、秘匿されることによる公益、それから国政調査権重要性ということで個々に判断をしていくというのが統一見解になってきておりますね。それで、そもそも秘密というのはまだ世間に知られていないこと、公の場に出ていないことが秘密であって、本人がどんなに知られたくないと思っても、一たん公になったものというのがあると思うのですね。たとえば新聞でも明らかになるとかあるいは公開の法廷で提出されたとか、本人にとっては出したくないけれども、これはもう秘密でなくなってきていると思うのですよ。いまのような基準というものですね。本人は知られたくないけれども一たん公になったもの、これをあえてなお守秘義務の範囲内とお考えになりますか。
  159. 磯邊律男

    磯邊政府委員 秘密という内容の定義でございますが、これは先生御専門でいらっしゃるから十分おわかりだと思いますが、主観的な秘密、つまり人に知られたくないと本人が思っておるその主観説、それから客観的にこれは秘匿すべきものだというように言われているいわゆる客観説、それから両者の折衷説とかいうふうな秘密の定義というのは私の知り得る範囲では四種類ほど学説が分かれておるようでございますけれども、いずれにしましても、新聞で出たからといって本人が、やはりそれは官の立場あるいは公の立場においてそれを認めるあるいは公表するということについては、やはり本人が秘匿したいと思う事項であれば、それを発表するというのは秘密を漏らすということになるのじゃないかと私たちは考えております。
  160. 加地和

    加地委員 公開の法廷ですでに出てきたものはどうですか。
  161. 磯邊律男

    磯邊政府委員 公開の法廷で出てきたものにつきましては、それを秘匿する重要性というものはもうかなり少なくなると思います。
  162. 加地和

    加地委員 法務省の方にお尋ねいたしますけれども、児玉譽士夫についての所得税法違反等の裁判の進行状況を教えてほしいのです。また一審判決までどのくらいかかるか。すでに調べた証人の数、これから調べる数あるいはまた児玉譽士夫の争い方、またその争点、またその争点を検察側で大体どういう証拠でもって立証していこうとしておられるか、また証拠の点数等、すでに法廷にあらわれたものであればできるだけ詳しく発表していただきたい。
  163. 佐藤道夫

    ○佐藤説明員 御説明申し上げます。  児玉被告人の関係する所得税法違反事件公判は、去る五月十八日で十九回の公判を迎えておりますが、その間、まず冒頭手続におきまして被告人側、弁護人の主張も含めてでございますけれども、被告人の主張は要するにロッキード社から年額五千万円程度のコンサルタント報酬を受領していたという事実は認めておりますが、その余の事実はすべてこれを否認しております。さような次第で、被告人が否認しておるという状況で、現在検察側の立証が続いておるわけでございます。  若干公判の経過の詳細を申し述べますと、すでに検察側の方で喚問いたしました証人といたしましては、児玉被告人の銀行取引関係について元北海道拓植銀行の築地支店の支店長南善一氏等の銀行関係者が七名、それから児玉被告人の確定申告の実態についての関係といたしまして日総建設代表取締役福島秀夫氏、同じく盗難小切手の関係につきまして元玉川警察の署長である佐野行雄氏ら二名、それから三光汽船によるジャパンライン株式買い占め事件の問題に関連いたしまして元ジャパンライン社長の土屋研一氏ら二名、それから同じく熱海観光道路を台糖、台湾製糖のことでございますが、台糖に買収させたという事件で、台糖の社長である海江田一郎ら台糖の職員及び熱海ビーチラインの設計に関与した技研興業社員ら八名、さらに福田太郎氏の供述の検察官調書の任意性、特信性の関係で福田太郎氏を取り調べました元東京地検検事の山辺力、それから同じく福田太郎氏の主治医でありました東京女子医科大学教授小林誠一郎氏等々の証人尋問を行っております。  そのほかに証拠物といたしまして現在まで公判廷に顕出いたしましたものは計百五十点でございます。かなり膨大なもので逐一申し上げるわけにもいきませんが、いずれにいたしましても所得内容及び所得の帰属関係に関連いたします銀行帳簿類あるいはまた伝票その他の取引関係書類が証拠物の主たる内容になっておるわけでございます。  それから公判の見通しでございますが、検察官の立証は順調に進んでおるというふうにわれわれは考えております。いずれにいたしましても、訴因もかなり膨大なものでございまして、関係証人、関係証拠物も相当多量に上っておりますので、かつ被告人側においても今後鋭意争ってくるということも考えられますので、それらを含めまして、いまの段階におきまして公判の終結の見通しを述べることはいささか困難ではないかというふうに考えております。  以上でございます。
  164. 加地和

    加地委員 法務省の方にもう一つだけ聞いておきたいのですけれども、大ざっぱなところで、いままで半分ぐらいは済んでいますか、まだ山で言えば五合目まで行っていないのか、あるいは大体何合目ぐらいのところまで来ているのか。  それと、もう一つついでにお聞きしておきたいのは、国税庁から脱税で告発のあった件で正式に起訴するかどうかというのは、脱税金額等について何か基準を設けておられるのでしょうか。
  165. 佐藤道夫

    ○佐藤説明員 お答え申し上げます。  まず第一の点につきましては、ほぼ中腹あたりに差しかかったところではないかというふうに考えております。ただ、訴訟というのはきわめて流動的なものでございますので、今後の見通しその他につきましては、いま現在におきましてはなかなか述べがたいということを御了承いただきたいと思います。  それから第二の点、これは、起訴基準的なものは一切設けておりません。ただ、全国の検察庁におきまして検察官がそれぞればらばらな処理方針を行うのもなにかと考えられますので、一応の目安的なものはございますが、いずれにいたしましても、それは一般事件の場合も同じことでありまして、事犯の悪質性あるいは金額の多寡その他を総合判断いたしまして公判請求をするか、あるいは不起訴にするかということを決めることに相なるわけで、特別基準的なものはございません。
  166. 加地和

    加地委員 では国税庁にもお尋ねしたいのでございますが、検察庁の方へ脱税者について告発する何か金額的な基準などがあるのでしょうか。それからまた、新聞等で見ますと、何億という脱税であっても大体執行猶予がつくようなんですけれども、これは法務省の方のあれかもしれませんけれども、いままでの大口脱税で実刑に科された人というのはありますか。
  167. 磯邊律男

    磯邊政府委員 検察庁に告発する脱税事案につきましては、査察によって立件、捜査するケースというのはきわめて個別的な色彩が強い事案でありますから、したがって、それぞれの事案の金額あるいはその範囲、証拠力、そういったものを総合勘案いたしまして、検察庁と協議いたしまして告発するかしないかを決めるというふうな方法をとっております。それからいままでの実刑でありますけれども、記憶では、昭和二十年代のころに実刑の懲役刑の判決を受けて執行猶予がつかないかったという件が数件あるように記憶しております。
  168. 加地和

    加地委員 そうすると、二十年代のみにあって三十年代、四十年代、五十年代にはないという意味に受け取れますが、新聞で見たら何億あるいは十億、二十億を超える人もありますのに、なぜそんなに軽くなってきているんでしょうね。
  169. 佐藤道夫

    ○佐藤説明員 裁判に関する事柄でございますので私の方から答えさせていただきたいと思いますが、ただいま国税庁長官から御紹介のありましたとおり、実刑というものはほとんど皆無に近いわけでございます。われわれといたしましても、この原因等につきましていろいろ調査研究いたしておるところでございますが、一番大きい理由は、やはり判決時に至りますとおおむね重加算税あるいはその他の税をすべて完納いたしまして、言うならば被害のない状態になっているというところを裁判所がかなり重く見ておるようでございます。そのほか、やはり国民一般納税意識がまだ十分に高揚されていないということも非常に大きい理由じゃなかろうか。何かつかまった者がつかまり損という感じが国民の間にかなり広く蔓延しているということも、脱税事犯に対しまして裁判所当局が強い刑罰をもって臨むことをちゅうちょさせている大きい理由ではなかろうかというふうにも考えておりますが、いずれにいたしましても、脱税事件につきまして実刑判決を獲得することが租税担当検事の一つの使命であるというふうな感じで、私ども検察当局にもそういう趣旨の話の申し入れをしておるというふうな状況でございます。
  170. 廣瀬正雄

    廣瀬委員長 国税庁長官から先刻の答弁について訂正を要する件があるそうでありますから、それを許します。
  171. 磯邊律男

    磯邊政府委員 先ほど正森委員の御質問に対する答弁でありますが、預金約九億と申しましたが、現時点におきましてはその九億が、かなり満期到来した分が国庫に入っておりまして、現在の残高としては約一億五千万でございますので、その点訂正させていただきます。
  172. 加地和

    加地委員 もう持ち時間がありませんので私の考えだけ述べたいと思うのですが、ただいま大口脱税についてほとんど実刑判決も出ない。また新聞を見ましても医科系統の大学であるとか何々の家元であるとか、もう何億円台の脱税者が後を絶たないというところを見ますと、国税庁長官が先ほどから、この秘密を守れば申告納税制度が発達していくんだ、申告納税制度を守るために秘密を守ることが非常に大事なんだという考え方は、どうも最近の脱税摘発状況を見ますと、余り正しくないんじゃないかなという気がいたします。同僚の議員も先ほどからおっしゃいましたように、やはり大口脱税者についてはかなり国民の前に明らかにしていく方が、いわゆる、悪い者ほど得をする世の中じゃないんだという遵法精神等を促していくのにきわめて重要でなかろうかと私は思うのでございます。  またいずれ別の機会でこのことを論じたいと思いますけれども、きょうの感想でございます。
  173. 廣瀬正雄

    廣瀬委員長 次回は、来る六月十四日水曜日午前十時理事会、午前十時三十分委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。     午後一時四十五分散会