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1977-11-10 第82回国会 参議院 予算委員会 第8号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和五十二年十一月十日(木曜日)    午前十時六分開会     —————————————    委員の異動  十月二十四日     辞任         補欠選任      佐藤 昭夫君     上田耕一郎君      山田  勇君     青島 幸男君  十月二十五日     辞任         補欠選任      山本 富雄君     園田 清充君  十一月一日     辞任         補欠選任      上田耕一郎君     安武 洋子君  十一月二日     辞任         補欠選任      安武 洋子君     沓脱タケ子君  十一月四日     辞任         補欠選任      沓脱タケ子君     上田耕一郎君  十一月九日     辞任         補欠選任      峯山 昭範君     鈴木 一弘君      上田耕一郎君     佐藤 昭夫君      青島 幸男君     市川 房枝君      柿沢 弘治君     有田 一寿君  十一月十日     辞任         補欠選任      加藤 武徳君     山本 富雄君     —————————————   出席者は左のとおり。     委員長         鍋島 直紹君     理 事                 戸塚 進也君                 内藤誉三郎君                 中村 太郎君                 宮田  輝君                 小柳  勇君                 山崎  昇君                 多田 省吾君                 内藤  功君                 栗林 卓司君     委 員                 浅野  拡君                 岩動 道行君                 石破 二朗君                 糸山英太郎君                 小澤 太郎君                 亀井 久興君                 亀長 友義君                 熊谷  弘君                 下条進一郎君                 園田 清充君                 玉置 和郎君                 成相 善十君                 林  ゆう君                 真鍋 賢二君                 三善 信二君                 望月 邦夫君                 八木 一郎君                 山本 富雄君                 秋山 長造君                 片山 甚市君                 竹田 四郎君                 対馬 孝且君                 寺田 熊雄君                 福間 知之君                目黒今朝次郎君                 矢田部 理君                 太田 淳夫君                 鈴木 一弘君                 矢追 秀彦君                 矢原 秀男君                 佐藤 昭夫君                 渡辺  武君                 井上  計君                 市川 房枝君                 有田 一寿君    国務大臣        内閣総理大臣   福田 赳夫君        法 務 大 臣  瀬戸山三男君        外 務 大 臣  鳩山威一郎君        大 蔵 大 臣  坊  秀男君        文 部 大 臣  海部 俊樹君        厚 生 大 臣  渡辺美智雄君        農 林 大 臣  鈴木 善幸君        通商産業大臣   田中 龍夫君        運 輸 大 臣  田村  元君        郵 政 大 臣 小宮山重四郎君        労 働 大 臣  石田 博英君        建 設 大 臣  長谷川四郎君        自 治 大 臣        国 務 大 臣        (国家公安委員        会委員長)    小川 平二君        (北海道開発庁        長官)        国 務 大 臣        (内閣官房長官) 園田  直君        国 務 大 臣        (総理府総務長        官)       藤田 正明君        (沖繩開発庁長        官)        国 務 大 臣        (行政管理庁長        官)       西村 英一君        国 務 大 臣        (防衛庁長官)  三原 朝雄君        国 務 大 臣        (経済企画庁長        官)       倉成  正君        国 務 大 臣        (科学技術庁長        官)       宇野 宗佑君        国 務 大 臣        (環境庁長官)  石原慎太郎君        国 務 大 臣        (国土庁長官)  田澤 吉郎君    政府委員        内閣法制局長官  真田 秀夫君        内閣法制局第一        部長       茂串  俊君        行政管理庁行政        管理局長     辻  敬一君        防衛庁装備局長  間淵 直三君        防衛施設庁長官  亘理  彰君        経済企画庁調整        局長       宮崎  勇君        経済企画庁物価        局長       藤井 直樹君        沖繩開発庁総務        局長       亀谷 禮次君        外務省経済局長  本野 盛幸君        外務省経済局次        長        溝口 道郎君        外務省経済協力        局長       菊地 清明君        大蔵大臣官房長  佐上 武弘君        大蔵大臣官房日        本専売公社監理        官        大槻 章雄君        大蔵大臣官房審        議官       米里  恕君        大蔵省主計局長  長岡  實君        大蔵省主税局長  大倉 眞隆君        大蔵省関税局長  戸塚 岩夫君        大蔵省理財局次        長        副島 有年君        大蔵省銀行局長  徳田 博美君        大蔵省国際金融        局長       旦  弘昌君        文部政務次官   唐沢俊二郎君        文部省体育局長  柳川 覺治君        厚生省医務局長  佐分利輝彦君        厚生省薬務局長  中野 徹雄君        農林大臣官房長  澤邊  守君        農林省農林経済        局長       今村 宣夫君        農林省農蚕園芸        局長       堀川 春彦君        農林省畜産局長  大場 敏彦君        農林省食品流通        局長       杉山 克己君        食糧庁長官   大河原太一郎君        通商産業大臣官        房審議官     山口 和男君        通商産業省通商        政策局次長    花岡 宗助君        通商産業省貿易        局長       西山敬次郎君        通商産業省産業        政策局長     濃野  滋君        通商産業省基礎        産業局長     天谷 直弘君        通商産業省生活        産業局長     藤原 一郎君        資源エネルギー        庁長官      橋本 利一君        中小企業庁長官  岸田 文武君        運輸省海運局長  後藤 茂也君        運輸省航空局長  高橋 寿夫君        労働省労働基準        局長       桑原 敬一君        労働省職業安定        局長       細野  正君        建設大臣官房長  粟屋 敏信君        建設省住宅局長  山岡 一男君        自治省財政局長  山本  悟君    事務局側        常任委員会専門        員        菊地  拓君    参考人        日本銀行総裁   森永貞一郎君     —————————————   本日の会議に付した案件予算執行状況に関する調査参考人出席要求に関する件     —————————————
  2. 鍋島直紹

    委員長鍋島直紹君) ただいまから予算委員会を開会いたします。  予算執行状況に関する調査を議題といたします。  まず、理事会において協議決定いたしました点について御報告をいたします。  質疑日は本十日とすること、案件円高対策に関する件とすること、質疑時間は総計四百十五分とし、各会派への割り当ては、自由民主党自由国民会議六十分、日本社会党百五十分、公明党八十分、日本共産党五十分、民社党三十五分、第二院クラブ及び新自由クラブそれぞれ二十分とし、これらはいずれも一往復時間とすること、質疑順位はお手元に配付いたしました質疑通告表のとおりとすること、以上でございます。  右理事会決定どおり取り運ぶことに御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  3. 鍋島直紹

    委員長鍋島直紹君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。     —————————————
  4. 鍋島直紹

    委員長鍋島直紹君) 次に、参考人出席要求に関する件についてお諮りいたします。  予算執行状況に関する調査のため、本日の委員会日本銀行総裁森永貞一郎君を参考人として出席を求めることに御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  5. 鍋島直紹

    委員長鍋島直紹君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。  なお、出席時刻等につきましては、これを委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  6. 鍋島直紹

    委員長鍋島直紹君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。     —————————————
  7. 鍋島直紹

    委員長鍋島直紹君) それでは、これより順次質疑を行います。下条進一郎君。
  8. 下条進一郎

    下条進一郎君 私は自由民主党自由国民会議を代表いたしまして、円高に関するこれからの基本的な方策等につきまして、総理並びに閣僚にお尋ねいたしたいと思います。  先ほど来の円高基調と申しますのは、途中で一服気配もありましたけれども、依然としてやはり基調的にはまだ強いものが残っております。昨日の終わり値なども二百四十六円台というようなことで、大変な厳しい状況に相なっておることは皆様御承知のとおりでございます。そこで、やはりこういう問題をびほう的に取りつくった形で処理することではなかなか解決いたしませんので、この機会に、やはり基本的にどのようにしてこの問題を解決するか、場合によってはかなり厳しい判断と努力と、そして実行力を伴う解決策が必要ではないかと、このように考えるわけでございます。  そこで、この円高問題、それに関連いたしまして、いろいろなひずみが国内国外に出ておりますけれども、そのよって来る原因というものを正しく見詰めまして、これに対してやはり私たちは思い切った対策を講じなければならないと、このように思うわけでございます。で、やはりこの問題はドル対円ということでありますので、西独におきましても、あるいはイギリスの場合におきましても、大なり小なり同じような影響を受けていることは事実でありますけれども、特に日本の場合がこのように大きな問題になっておる、そこに焦点を当てて考えていかなきゃならないと、このように考えるわけでございます。で、過去三年間、この間におきますところの日本経済成長というものが、それではどのような形で形づくられてきたかと、その内容を分析することによりまして、私たち一つの反省と将来に対する手がかりを求めることができると思うのであります。この問題につきまして最初に経済企画庁長官にお尋ねいたしたいのでありますが、四十九年から五十一年までの間における三年間におきまして、日本経済成長、それはどのような成長率中心として歩んできたか、そして、それと内需との関係はどんなような関係になっていたか、それをまず御説明いただきたいと思うのであります。
  9. 倉成正

    国務大臣倉成正君) 御案内のとおり、昭和四十九年はオイルショックの影響を受けまして戦後初めてのマイナス成長をいたしたわけでございます。その後、国民総生産は、五十年の実績名目で九・七%、実質で三・四%ということになります。それから五十一年度は、実績名目で一三%、実質で五・八%ということになっておるわけでございます。その間の内需を支えてまいりましたものを少し申し上げてみますと、いま五十年からちょっと申し上げてみたいと思いますが、五十年におきましては個人消費がやはり下支えになっております。それから、民間住宅投資というのがやはり構成比で申しまして七・四%程度下支えになると、それから民間設備投資構成比で一三・八、政府支出が二〇・八、輸出輸入がそれぞれ一三%台ということになっております。五十一年度も大体同様でございまして、個人消費支出構成比で五六・五、民間住宅が七・六、民間設備投資が二二・二という程度で、政府支出が二〇%と、輸出入が大体一四%ないし一三%と、名目数字でございます。したがいまして、総じて申し上げますと、やはり昭和五十年度、五十一年度は政府支出かなり大きな牽引力になったと申しても差し支えないのではなかろうか、しかし全体のウエートから申しますと、何といっても個人消費支出というのが全体の半分以上のものを持っておりますので、ここもやはり下支えにはなったというふうに理解をいたしておる次第でございます。
  10. 下条進一郎

    下条進一郎君 ただいまの御説明によりますと、内需内訳の御説明にとどまっておったわけでありますけれども、私はさらにもう少し明らかにしていただきたいのは、四十九年から五十一年の三年間におきまして、これは日本銀行統計によりますと、この間の成長率は七・二%であります。したがいまして、この七・二%に対する寄与率といたしまして、国内需要と、それから輸出輸入というものがどのような関連で作用したか、それが今度のこの円高の問題にも大きく影響いたしますので、そこらのところを御説明いただきたいと思います。
  11. 倉成正

    国務大臣倉成正君) 政府委員から説明いたします。
  12. 宮崎勇

    政府委員宮崎勇君) お答え申し上げます。  昭和四十九年全体の成長率は、先ほど大臣から御報告申し上げましたようにマイナスの〇・三%でございますが、そのうち海外経常余剰の分がプラスの二・二%、そのうち輸出プラスの二・九%で輸入が〇・六%のマイナスになっております。それから昭和五十年度は、成長率が三・四%で海外経常余剰分が一・四のプラスでございます。その内訳は、輸出等プラスの〇・六%、輸入等プラスの〇・八%でございます。それから昭和五十一年度は、実質成長率が五・八%でございまして、海外経常余剰が一・七%、その内訳は、輸出等プラスの二・八%、輸入等マイナスの一・一%でございます。
  13. 下条進一郎

    下条進一郎君 きわめて明快にお答えがありまして、結論的に申しますと、これを包んで言えば、成長率に対する内需寄与率が非常に低い、やはり輸出かなり持ち上げてきたということに尽きると思うのであります。これに対しまして、西ドイツの場合におきましてはそれではどのようなパターンで進んできたか、それが、やはり今度ドル問題を中心として円に風当たりが強く、マルクに対する風当たりはそれに比較して小さいという問題につながろうかと思いますが、その間のただいまの同じような成長率と、内需寄与率及び輸出との関連を御説明いただきたいと思います。
  14. 倉成正

    国務大臣倉成正君) 政府委員からお答えいたします、数字を持ってまいっておりませんので。
  15. 宮崎勇

    政府委員宮崎勇君) お答えいたします。  ただいまの、手元に詳細な数字は持っておりませんが、石油ショック以降の昭和四十九年度におきましては、大体国内国外バランスはとれておりましたが、五十年度から五十一年度にかけまして輸出ウエートが若干ふえております。その後景気の状況で、ややバランスは回復しておりますが、やはり最近になりまして若干輸出ウエートがふえているかと思われます。
  16. 下条進一郎

    下条進一郎君 これはちゃんと質問通告をしておいたのですけれども、それでは私の方で調べました数字を申し上げて御参考に供したいと思いますが、日本の場合には成長率が七・二で、それで国内需要が一・一の増でありますから、しかも輸入はその間にマイナスの四・九ということですから、結局輸出によって日本成長をやった分が多いから相手様に迷惑をかけたという形なのであります。これに対しまして西ドイツの場合には、同じ期間、四十九年から五十一年までの間には、成長率が三・三であり内需の拡大が三・三であると、そして大事な問題でありますが、輸入プラスの一九・二というふうになっておりますから、相手様に迷惑をかけないでドイツはその経済成長をやったということで、ここに大きな違いがあると、こういうことでございます。  そこで、次の質問に転換いたしますが、そういうことでありますので、私は、過去におきます日本経済政策のかじ取り、こういうところに今日の問題の原因があると、このように考えますが、総理はいかにお考えでございましょうか。
  17. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) 確かに下条さんが御指摘のように、五十年、五十一年は、わが国経済成長といいますか、わが国経済を支えた大きな力は貿易だったと、こういうふうに思います。しかし、ことしに入りましてから様相は一変しているのです。御承知のように、ことしの第一・四半期、これは一・九%、これは一・四半期についてでありますが、一・九%成長でありますが、輸出寄与という度合いはもうがたんと下がってきておる。それから、私どもが今度二兆円施策をやった、その結果六・七%成長だと、こういうふうに言っておるわけでありますが、輸出のこの六・七%成長に占める寄与度、これはもう非常に微弱でございます。結局六・七%成長を支える力は何だといいますと、とにかく国民経済の中で、寄与度というか構成比率が一番高い個人消費支出、これが支えにはなりまするけれども、非常にそれに比べますと構成比の少ない財政、この財政による需要の創出、これの寄与度が非常に大きいのです。でありますので、ことしからは様相が非常に変わりまして、財政主導型と言ってよろしゅうございましょうか、そういう形になっておる。あなたの言わんとするところは私もよくわかっています。もう少し内需をふやせ、こういうことだろうと思いますが、内需をふやす、輸出構成比寄与度、こういうものを減らせ、こういうお話ですが、そのような方向で諸施策が進められておる、このように御理解願います。
  18. 下条進一郎

    下条進一郎君 ただいまの総理の御説明のとおりに、これからの問題といたしましては、やはり内需をどのように喚起していくかというところに政策方向の重点が置かれると思いますが、実は少し離れまして、日銀総裁の方がお時間が余りないようでございますので、少し論旨が離れますけれども、総裁の方に御質問をさしていただきたいと思います。  実は、このような状態円高問題というものがいろいろ論議されておりますけれども、円高の問題が一般に論議されておりますのは、やはり貿易バランスということが中心になっております。確かに貿易バランスは、非常に大きな黒字を継続しておりますのは事実でございます。また、先行きの輸出信用状統計もございますけれども、これを見ましても、やはりかなり強いものがあるように私たちの方も見ております。そういう中で、やはり実際のドル値段あるいは円の値段、こういうものが決まりますのは、決して輸出手形輸入手形だけの売買で決まるわけではございませんで、やはりいろいろな長期なり短期資金の動きから、すべて外為市場——外国為替市場での取引の総量、それらのものが影響してくるわけでございます。それには長期資本短期資本、それからまた貿易取引、全部ひっくるめましたところの取引ということに相なるわけでございますが、限られました時間で総裁にまず伺いたいのは、そういう中で現在私たちが、こういう場合に大変な大きな問題として取り上げておりながら解決しておらないのは、いわゆる円シフト問題でございます。現在日本外国為替銀行輸入ユーザンスあるいは輸出ユーザンス、そういったものを取り扱っております。これは外貨建てで、輸入の場合にはほとんどがドル建てでございますし、輸出の場合には八割がそうでございますが、こういうものの関係での短資の債務というものは一体どういう状態になっておるのかということを御説明いただければありがたいと思います。
  19. 森永貞一郎

    参考人森永貞一郎君) 御指摘のように、現在は特に輸入につきましては外貨ユーザンスに頼っている部分が多いわけでございます。これは貿易の建て値がドルである、外貨であるということにも由来していると思いますし、また、従来内外金利が、ユーザンスを利用した方が有利であったというふうなことから、自然そのような結果になっていると想像いたします。このユーザンスは三、四カ月間の累積ということでございますので、三、四カ月たってしまえばいずれにしても決済しなくちゃならぬわけでございますから、まあ一時的な為替市場における需給要因ということには違いないわけでございますけれども、それにいたしましても、為替市場におけるこの需給要因として円シフトがどうなるかということは大変な影響を持つわけでございます。私どもかねがね、わが国為替銀行短期外貨資金の借り入れがネットでかなり額に達しておりますので、その辺を改善していくためには、できるだけ外貨ユーザンスから円による輸入金融、いわゆる円シフトに移行させた方がいいと思っておるわけでございますが、ただそれには自然の環境がそうなることが最も望ましいのでございまして、人為的にそれを推進いたしますといろんな無理が起こるというようなことで機会を待っておったわけでございますけれども、この春の公定歩合引き下げのころからかなりのスケールで、石油関係会社であるとか商社等におきましては円シフトが進んでまいったようでございます。特に九月の公定歩合引き下げに伴いまして、内外金利差は明らかにわが国の方が安いと、低いということになりましてからは大規模に円シフトが進みそうな気配を示しておったわけでございます。そこへ九月末ごろからこの円高という問題が起こったわけでございまして、単に金利の比較から申しますと円金融円シフトの方がはるかに有利なのでございますけれども、ドルの先物が現物との間にディスカウントになっておることは御承知のとおりでございます。それは先々の円高を、円の先高を示しておる一つ数字でもあるわけでございますが、そういうことになってまいりますと、むしろこの為替先高を利用した方が、仮に金利は少し高くても有利じゃないかというような思惑が国内関係者の間にはびこってまいりまして、現在鉄鋼は既定の方針で円シフトを進めつつあるようでございますけれども、その他の方面におきましては、どうも円シフトをちょっと見合わせた方がいいんじゃないかというような空気が起こってまいっておるのが現状でございます。今後この円の相場が安定いたしまして、極端な先高でないような情勢になりますれば、もともと金利日本の方がはるかに安いわけでございますから、円シフトが進んでまいりまして為替銀行のポジションも改善される、その間、自然外貨準備の減少というようなことにも通じていくわけでございますが、そういう状態が起こってくるとは思いますが、現在のところは、いま申し上げましたような事情でちょっと停滞ぎみであるということでございます。
  20. 下条進一郎

    下条進一郎君 ただいまの総裁の御説明、現状の点をよく明らかにされたわけでございますが、私はこういう現状問題を市場の成り行きに任せておいたのでは、このような円高問題の中での、要するにドルが過剰になるということを解決することにはならないと思うんでございます。そこで御質問しているわけでありますが、そのような場合に、かつて日本銀行は制度金融としてやはり輸入ユーザンスにかわる制度を持ったことがあるわけでございます。そういうことでもし、あるいはまた、後ほど大蔵大臣にもお尋ねいたしますけれども、それを促進するために、やはり現状のままに放置しないで、何らかやはり制度的に手を打たなければこれはなかなか解決しないと思うんであります。現状では、この間日銀の方でいろいろと買い支えされまして、外貨準備がすでに二百億ドル近くなっております。ところが、外国為替銀行がこのユーザンス関係で借り入れておりますのは二百二十億ドルと、こういうふうに聞いております。大変な金額でございます。これがずっと押し出ていけば、私は円高問題もかなり違ってくると思うのであります。その意味におきまして、制度的に日本銀行といたしましてはこれをどういうようにとらえ、どのように対処していかれるお考えでございますか、伺わしていただきたいと思います。
  21. 森永貞一郎

    参考人森永貞一郎君) 国内金利差という面でとらえますと、アメリカとの比較でございますが、場合によって違いますけれども、日本の方が二・二五%ないし四・一二五%金利そのものとしては安いわけでございますので、金利の面から特にこの円シフトを支援しなければならない環境は起こっていないのではないか。特に昔やっておりましたような制度金融、輸入に関する制度金融というようなことになりますと、私どもの金融調節の関係上支障を生ずることも恐れる次第でございますので、金利の面から特にこの円シフトを推進することはいかがであろうかと、むしろ為替そのものが速やかに安定する、特に顕著なる先高感が解消せられるように持っていくことの方が基本ではあるまいかと考えておる次第でございまして、もちろん量的な面でのこの円シフトの障害になるようなことは避けなければなりません。現に窓口指導等におきましても、この円シフトが起こり得る場合に備えて十分な余裕を見ておる次第でございますので、その面からは障害にならないよりは、むしろもう一歩進めまして円シフトが推進されるようにという配慮が必要であると思いますけれども、金利を含めたいわゆる制度金融的な観点ということになりますといろいろ問題がございまして、私どもといたしましてはこれを実行することは考えていないというのが現状でございます。
  22. 鍋島直紹

    委員長鍋島直紹君) 下条君、日銀総裁はお帰りになってよろしゅうございますか。
  23. 下条進一郎

    下条進一郎君 はい、結構でございます。
  24. 鍋島直紹

    委員長鍋島直紹君) 森永参考人には、まことにありがとうございました。御退席願って結構でございます。なお、正午には再度御出席をお願いいたします。
  25. 下条進一郎

    下条進一郎君 ただいまの日銀総裁は、お立場上なかなか、それはすぐやるなどというようなお答えはできにくいかと思いますけれども、やはりこの過剰ドルをどうやって追い出すかということもこの円高問題を解決するには非常に大事でございます。貿易問題も、長期資本の問題も短期資本の問題も、あるいは国内需要喚起の問題もすべて大事で、しかも、それをやることによって相当大きなロットのインバランスを解決できるということであるならば、やはり従来のいろんな経緯もあろうかと思いますけれども、それにとらわれないで勇気を持って処理していただきたい、こう思うわけでございますが、大蔵大臣に伺いたいのは、いまの問題に関連してでございますが、ただいま総裁からの御説明でございますと、要するに先物のディスカウント幅と、それから日本金利とアメリカの金利との差、これを勘案いたしましてどっちが有利かということで円シフトが起こると、こういうようなことでございますが、それ以外に、やはり先物の思惑というものがディスカウント幅以上にあるわけでございます。したがいまして、やはりいまはドルを借りた方が得だという観念がどうしてもつきまといますので、少しぐらいの金利差とディスカウント幅だけでは処理されない、だからなかなか円シフトが起こらないということであれば、全部放置しておいたのではなかなかこの問題は解決しないんでございます。したがって、どこかで思い切ってこの問題を処理しなければいけない。これはなかなか大きな問題だと思いますけれども、ぜひそこらに焦点を当てて対策を講じていただきたいし、何か方法はないか、その点につきまして大蔵大臣のお考えを伺いたいと思います。
  26. 坊秀男

    国務大臣(坊秀男君) 大変専門的なお話でございますが、おっしゃるとおりのことだと思います。そこで、これにつきましての何か手はないかということでございますが、非常に技術的な問題もございますので、事務当局からその点をお答え申させます。
  27. 旦弘昌

    政府委員(旦弘昌君) おっしゃいますような御意見もあろうかと思いますが、先ほど日銀総裁もおっしゃいましたように、この円シフトに移るということは金利関係から一番自然なことではなかろうか。したがいまして、一時円シフトに移りがけました兆しが出たわけでございますが、その後、御説明ありましたように円同傾向があらわれましてからそれが鎮静化したわけでございます。したがいまして、根本的には円高傾向がやまる、つまり市場が安定するということが第一ではないか、したがいまして、そのような方向であらゆる努力をしてまいりたいと、これが一番根本的なことではないかと、かように考えておる次第でございます。
  28. 下条進一郎

    下条進一郎君 それは先ほど私も触れた中にあるわけでありますが、自然に放置するということの答えになってしまうわけであります、いまの国際金融局長の答えは。そうすれば、この黒字問題あるいは円問題を解決する方法で何も手をつけないと、その問題については、ということになるわけでありますから、そこに何らか知恵を使っていただきたい、これが私の方の質問であり要望なんであります。  そこで、銀行局長も来ていらっしゃいますので、日銀総裁はああいうお答えをされたわけでありますけれども、やはり何らかドルを追い出す方法、要するにもういまここまで日本成長したと言われておるのに、外国為替銀行が自分の国の輸入輸出をやるのに外国から金を借りてまでやらなきゃならないというような状態資金がふえるというこの制度、これを直すためには、私はやはりもう一つ、円でやる方が得なんだということにしなければこの問題は解決しないのであります。現状においては、先物はともかくも下がるかもしれない、そういう思惑があるままにしてあるからこそ、どうしたってこの問題は解決しないのでありますから、そこに誘引をやるためにやはり安い円とその円を供給する制度を設けて、やはりドル追い出しをやるということにしなければ、これはいつになったってできませんし、これはドルの方がうまみがあるし、先行きはまだまだディスカウントがあるということであれば、これはもうどうしたってこのまま続くし、その形からでも外為市場の方ではドルがどんどん入ってくることに相なるわけであります。そういう意味におきまして、私はここらで勇気を持って、やはり何とかしてそういう短資が入ってこないように、それが一つの思惑の誘因になるわけでありますから、それ以外の形でもそういうことが起こらないようにするために、ひとつ勇気を持って解決するように当たっていただきたいと思いますが、御所感いかがでございますか。
  29. 旦弘昌

    政府委員(旦弘昌君) 先ほどの私の答弁を補足させていただきますが、私はこの事態を放置しておくと、何もしないということを申し上げたのではございませんで、根本的には円高傾向が円シフトを妨げているんである。したがいまして、その円高傾向、つまり為替市場の安定ということを図るいろいろな手だてを講ずるべきである。  そのためには現在の景気浮揚対策でありますとか、あるいは緊急輸入を図るとか、いろいろな手だてがありますので、そういう手だてを講ずることが根本的な施策でありますということでございまして、何もしないで放資するということではございませんので、御了承いただきたいと思います。
  30. 下条進一郎

    下条進一郎君 いまの国際金融局長のお答えに対して、私はもう一回この質問をしなければならないと思うのですが、何もしないということは、たとえば内需の喚起だとか、あるいはその他の輸入促進だということは、これはほかの分野で私は御質問するわけでありますので、やはりいまの円シストをどうやってつくり出す条件をつくるかという問題について、やはり先行きドル安であるとか、あるいは金利がいまのような差のままではうまみがないから起こらないということで説明されたことに対して何もしないんじゃないかという質問を申し上げたんです。したがって、そこから先は国際金融局長の守備範囲ではないと、だから私は銀行局長にお尋ねしたいと言うのでありますが、これはやはり、あるいは国際金融局長も含めて、為替管理、外国為替銀行あるいは日本の金融体制というものを、要するにどういうふうに持っていかれるのかと、私はここらで転換すべき時期に来ているんじゃないかと、そういうことについてやはり一つの方針の中でこの円シフト問題を誘導するように取り上げていただきたい、こういうことを申し上げておるわけなんです。
  31. 徳田博美

    政府委員(徳田博美君) お答えいたします。  円シフト問題、非常に重要な問題でございますが、しかし現在の段階で日本銀行に新たに制度金融をつくることについていろいろ問題点があることは、先ほど日銀総裁からのお答えにあったとおりでございます。ただ、先生御承知のとおり、現在日銀の制度といたしましては、輸入資金貸付制度があるわけでございまして、今後はこれのさらに円滑な運用に期待したいわけでございますが、そういうものを含めて今後とも検討を続けていきたい、このように考えております。
  32. 下条進一郎

    下条進一郎君 検討するということであれば、至急検討していただきたいということで、この問題はその程度にとどめます。  その次は、貿易から資本に入るわけでありますけれども、資本から入りましたので、次に長期資本のことでお尋ねいたしたいと思います。  長期資本収支につきましても、やはりこれは日本の立場上外国とのおつき合いもありますし、また総理がこの前東南アジアを歴訪されまして、かなりのコミットメントをされてこられたわけでございます。そういう意味におきまして、長期資本収支の問題につきましては、やはり日本からのコミットということがかなりの額に達しておりますけれども、実際調べてみますとディスバースメント、実際にお金を出すという面になりますとかなりおくれておるし、金、額が少ないわけでございます。この点は一体どうしてこう進まないのか。進まなければ幾ら総理がお約束なさいましても、日本外貨収支の中ではやはり金が出ていくことに相ならないわけでございます。この点につきまして、私はやはりこれは日本外貨の問題だけでなく、相手国の立場を考えてもこれは促進すべきであると思いますが、この点について外務大臣の御答弁をお願いします。
  33. 鳩山威一郎

    国務大臣鳩山威一郎君) ただいま御指摘のように、日本の開発援助につきまして支払いがおくれるという問題がございます。この問題は、これは従来コミットをいたしましてから両国政府の間で交換公文を作成いたします。交換公文を作成いたしまして、相手国の政府がどういう事業に対してどのようなものを要請するかということ、これを含めた交換公文をつくるわけでありますが、その作成の段階におきましてすでに相当おくれます。そういう意味で、去年は、おおむねODAが去年で十一億ドルくらいに上っておるわけでありますが、それは大ざっぱに申し上げますと、大体一年近くずれているんじゃないかという感じを私どもは持っております。したがいまして、これを解決するためには、まず交換公文の作成を急いでやるということで、本年は特に相手方との間のコミットを早くするということで年初来取り組んでおりまして、ことしは昨年に比べまして相当促進をしてまいっております。ただ、この実績がまだ出ませんのでありますけれども、何とか支払いを早くするように私ども最善の努力をいたしております。
  34. 下条進一郎

    下条進一郎君 ただいまの外務大臣の御説明よくわかりましたのですが、そのコミットと交換公文をつくるまでの間という時間的な問題のほかに、私が聞いておりますところによりますと、やはりまだ従来からの日本の貸しっぷりに問題があるようでございます、ターム・アンド・コンディション、これが厳し過ぎるんじゃないかと、とても発展途上国の方ではそのような厳しい条件がなかなか守れない、ローカルカレンシーの調達の問題にいたしましてもいろいろある。そういう点についてかなりの不平不満があり、そのためになかなかお金が流れていかないというようなことを聞いておりますが、その点はいかがでございますか。
  35. 鳩山威一郎

    国務大臣鳩山威一郎君) 御指摘のように、日本のODAは条件といたしましてこれが円借款が主体になっております。他国に比べますと、他国は贈与の比率が非常に高い、こういうことでございまして、贈与でありますと相手国は計画をつくるにつくりやすいのであります。日本の援助におきましても、この無償につきましては非常に出が早いということはあります。借款になりますとやはり相手国といたしまして返済の可能性というものをこれは検討しなければならぬわけでありますから、その点で事業の幅にもいろいろな制約が出てくるということも事実であります。そういう意味で条件の改善も図りたいわけでありますけれども、御承知のように日本の円借という制度は協力基金の借款になっているわけでありまして、財投に依存する要素が非常に高い、こういうことでありますので、今後の方向といたしまして、私どもは条件の改善、もっと直接国費をふやしてまいる必要があるということを希望いたしておりますが、これはしかし現下の財政事情からなかなか困難もあるということでございますが、今後努力をいたしたいと思います。
  36. 下条進一郎

    下条進一郎君 ただいまの外務大臣のお話のように、いろいろと財政のネックもあろうかと思いますが、やはりこれはかなり思い切って、相手国も喜ぶことであり、また日本外貨ポジションの改善のためにも役立つわけでありますので、相当勇気を持って取り組んでいただきたい、このようにお願いする次第でございます。  もう一つ長期資本関連いたしまして、大蔵大臣に伺いたいのでありますが、こういう場合にやはり円建て債の発行につきましてかなり思い切ってやっていただきたい、こう思うわけでありますが、その点のお見通しなどはいかがでございますか。
  37. 坊秀男

    国務大臣(坊秀男君) 御意見のとおり、円建て債というものにつきましては、大蔵君といたしましても非常な前向きの姿勢をとっております。そういうような次第で、各国から円建て債についてはたくさんの希望が出てまいっておりますが、それらの希望に対しまして、もちろん日本国内における市場といったようなものも、これはよく見守っていかなければなりませんけれども、でき得る限りそういったような円建て債の希望に対しては、これを希望に沿うて、そうしてできるだけ速やかに実現に持っていくというような態度をとっておりますので、五十二年度におきましては、五十一年度に比べましてずいぶんこれが大きく飛躍的と申してもいいくらいだんだん進んでおるということを申し上げます。  数字についてはなんでしたら事務当局から申し上げます。
  38. 下条進一郎

    下条進一郎君 いまの御方針はまことに結構だと思います。  それでは、外貨減らしということでいま問題になっておりますので、長期資本の中での大事な円建て債の問題でありますから、今年度の中で一体どの程度それが寄与できるか、その点の具体的な数字につきまして、わかる範囲で御答弁願いたいと思います。
  39. 旦弘昌

    政府委員(旦弘昌君) さかのぼりまして五十年度から申し上げますと、五十年度にはわずか年度間三銘柄でございまして三百五十億円でございました。五十一年度には六銘柄で六百二十億円でございました。それから本年度に入りまして、本年度の前半はなお日本長期金利が高かったものでございますから、われわれといたしましては円建て債につきまして前向きの姿勢をとっておったのでございますが、何分にも市場関係者相手国との間の話し合いによる問題でございますので、金利の高いうちは出方が少なかったわけでございます。しかし、その後日本長期金利が大幅に下がってまいりましたものですから非常に多くなりまして、五十二年度の十月末までのところで九銘柄で千五百二十億円すでに出ておるわけであります。なお、十一月には二銘柄、これもまだ商談が進んでおる最中でございますが、これで約五百億円程度になろうかと思います。それから十二月に、これも話が進んでおりますのが三銘柄ございまして、これも話のつきぐあいによりますけれども、大体八百億円ぐらい出るんではなかろうか。そのほかなお一、二、三月というのがございまして、これらにつきましてもいろいろ話が進んでおります。大体一月に三銘柄ずつぐらいは出るんではなかろうか。そうしますと、予測はなかなか困難でございますけれども、年度計としましては空前の額になるというふうに考えております。
  40. 下条進一郎

    下条進一郎君 長期資本収支の問題につきましては、そういうように海外協力投資、それからいまのような円建て債の問題についてぜひその計画を実行していただいて、いまの問題の解決の一助になっていただきたいとお願いする次第でございます。  次に、貿易の問題につきまして通産大臣にお尋ねしたいのでありますが、貿易問題は非常に大きな問題で、輸出輸入にわたるわけでありますが、輸出につきましてはもう御承知のようにオーダリーな輸出をぜひ心がけていただくように善処していただきたいと思います。時間の関係ですべての問題に触れることはできませんが、輸入の中で、やはり一番国民経済的に必要だし、また外貨減らしにも役立つし、ぜひやっていただきたいというのは石油の備蓄でございます。巷間伝えるところによりますと、いろんなむずかしいネックがあるやに伺っておりますが、一体どうしてこの大きな国家目的に沿う石油備蓄が順調に進まないのか、その点をお尋ねしたいと思うのであります。
  41. 田中龍夫

    国務大臣(田中龍夫君) お答えいたします。  大体御案内の五十四年度までの九十日備蓄という問題は、この点に関しまする限りはほぼ順調に進んでおると存じます。それで一番問題になっておりますのは、緊急備蓄というような問題になりますと、タンクの増設といったような問題がございまするし、そういう点での隘路はございまするが、現在までの少なくとも輸入しておりまするところにおきましては、大体順調に入っております。五十一年度末の備蓄義務量が七十五日、この水準を今日はすでに上回っております。五十二年度末におきまする八十日の備蓄目標は、これは十分達成される見込みでございます。今後ともに石油企業及び共同備蓄会社によります備蓄タンクのただいま申しました建設の促進、こういうことによりまして五十四年度の九十日備蓄はほぼ達成される、かように確信いたしております。その他のさらに積み増しと申しますか、黒字減らしという問題につきましては、これからいろいろと交渉をいたします。
  42. 下条進一郎

    下条進一郎君 ただいまの通産大臣の御説明で、いまのところの目標設定のラインは確保できるという御説明でまことに結構でございますが、現在はそういう計画を策定した時期と大分外貨事情等が違っておるわけでございます。したがいまして、アメリカにおきましても目標を二年繰り上げて備蓄に入ったわけでございます。もちろんアメリカの場合には貯蔵場所がずっと日本よりは容易であるというようないろんな事情があろうかと思いますけれども、日本はもっともっと石油に依存している度合いが高いんだし、国民経済的に見ても非常に必要なのでありますから、この問題につきまして五十五年三月末までの九十日というような目標をこの機会円高対策一つとしてもっとレベルを上げていただくと、ヨーロッパはすでにほとんどもう百日を超えておるわけでございますから、五十五年三月末で九十日という目標をもっと早くする、そればかりでなくて水準を上げるということにもっと積極的に取り組んでいただきたい。この点はいかがでございますか。
  43. 田中龍夫

    国務大臣(田中龍夫君) 御指摘のとおりでございますが、この石油貯蔵施設の立地の促進という問題につきまして先ほどちょっと申しましたのでありますが、五十二年から五十四年度の三年間に新たに約二千万キロリッターの貯蔵施設が必要でございます。この貯蔵施設の立地は、これまた先生御承知のようになかなかむずかしい現地の専横等もございますが、深い国民的な御理解と、それからこれに対しまするわれわれの努力によりまして、これを解決してまいらなくてはなりません。そういう点から、来年度から立地促進対策交付金制度というものを創設いたしまして、そうしてこのタンクの設置に当たりましては地元にも十分に有利な条件を与え得るというような新しい制度をただいま来年度予算で折衝中でございます。
  44. 下条進一郎

    下条進一郎君 ただいまの方策も非常に大事かと思いますが、いままでの御説明の中では大体民間ベースでこの備蓄をやるという考え方が貫かれておるわけでございます。どこまでが民間の適正備蓄か、これはいろいろの基準があろうかと思いますが、これからさらにスピードアップをする、あるいはまた量をふやす、そしてこの外貨事情に寄与するということであるならば、私はある程度のものは国家備蓄という制度とあわせてこの問題の解決に当たる必要があろうかと思いますが、その点の御所見はいかがでございますか。
  45. 田中龍夫

    国務大臣(田中龍夫君) 御指摘のとおりでございまして、政府備蓄とうふうなものも、これも法の改正とともにさらに促進してまいる、かように考えております。  ただ、資金関係でございますが、現在のところでは備蓄の原油購入の資金は、政府保証の市中借り入れ及び政府保証の国債によっております。それからまた、石油の貯蔵施設並びに建設のための資金につきましては、これは財投からいたしておりますが、さらに原油購入の資金の利子補給及び共同備蓄会社への出資のための資金につきましては、石炭石油の特会の方でそれぞれ確保いたしておるのでございます。こういうふうな資金の問題がこれまた当面の今後の問題といたしましては大きな問題として伏在してございます。
  46. 下条進一郎

    下条進一郎君 確かにおっしゃるように場所の手当て、これも大変大事だと思いますが、タンカーもかなりいまあいておるということで、そのタンカーを利用するなり、あるいはまた日本かなり離島がございます。で、漁民補償の問題もあろうかと思いますが、そういう未利用であるところの島などを利用するとか、場所の手当ても相当思い切ってやっていただかなければならない。  また、いまのおっしゃいました資金の問題につきましては、従来のような石油開発公団を利用する方法がいいのか、あるいはここにくればもっと思い切って政府がじかにこれに介入できるような何らかの方法を考えるか、そこらはもう一歩踏み出してやっていただかない限り、私はいまの通産省の方で考えていらっしゃるような形での石油備蓄の構想では、今回のこの非常に大きな外貨問題を解決する一助としてはなかなか期待に沿えない面もあろうかと思うのでありますが、その点いかがでございますか。
  47. 田中龍夫

    国務大臣(田中龍夫君) タンカー備蓄という問題も、これも非常に私は今後遊休いたしておりまする係留中のタンカーを活用するということも重大でありまするし、ぜひやりたいものだと。  なお、離島におきまするこのフローティングのタンカーの問題も、これもわれわれ話を進めておりまするが、なおこの問題につきましてのいろいろと折衝の詳細につきましては、政府委員からお答えさしていただきます。
  48. 橋本利一

    政府委員(橋本利一君) ただいま下条委員から、九十日の民間備蓄に加えて、政府備蓄あるいはタンカー備蓄を進めたらどうかという御提案があったわけでございます。  政府備蓄につきましては、すでにこの八月末の総合エネルギー調査会の答申の中におきましても、九十日を超える備蓄については、石油開発公団等を活用して、いわゆる政府備蓄と申しますか、国家備蓄を進めたらどうか、こういう御提案でございます。それからタンカー備蓄につきましては、ただいま大臣からもお答えいたしましたように、安全性の問題あるいは保安防災の問題、さらには経済性の問題といったような問題点もございますが、関係各省庁と話し合いを進めておるという段階でございます。いずれにいたしましても、立地対策あるいはこれに必要とする資金、特に先ほど大臣が申し上げた三つの資金の種類のうち、現在原重油関税を財源といたしております石炭石油対策特別会計から支出しております資金、すなわち共同備蓄会社に対する出資金だとか、あるいは原油購入資金に対する利子補給金だとか、こういったものにつきましては、返済を必要としないような質の財源をもって充当すべきであろうかと思っておりますので、そういった面につきまして特段の対策を講ずることによって、御指摘のような備蓄の増強に努めてまいりたい、かように考えております。
  49. 下条進一郎

    下条進一郎君 そこで、ぜひそういうことで積極的にやっていただきたいと思うのでありますが、通産大臣にもう一点伺いたいのは、こういう不況下そして円高で大変に影響を受けているのは多数ありますけれども、中小企業というものはもともと弱い立場にあります。それが一生懸命やっても、こういう環境が悪くなったために苦労が一層倍加したということにつきまして、いろいろと対策を講じておられると思いますが、この点どういうように今後対処されるか、もう一回その点について御説明いただきたいと思います。
  50. 田中龍夫

    国務大臣(田中龍夫君) ただいまの御質問は、中小企業等に対しまする円高の深刻な打撃の問題についての御質問だと存じますが、本件につきましては、御案内のとおりに、当省といたしましては二百六十五円の時点におきまして二十二カ所の特に輸出の、産地の方に派遣いたしまして、そうして詳細なデータをとりましたが、その後の推移というものは、御承知のように非常に急テンポに円の価格が上昇いたしまして、さらにこういう問題に対しましては、基本的には円高対策の緊急融資制度というものをもちまして、これでつなぎ融資の関係を一応処理いたしております。御案内のとおりに、構造不況の関係やら、あるいは中小企業の非常な窮状に対しましての基本的な不況対策の金融処置あるいは信用補完の問題、これはいたしておりまするけれども、さらにそれに上乗せいたしました円高の緊急処置をいたしたのでございます。大体十月一日から、特に通利のほかにさらに低利に、しかもサイトの長いつなぎ融資の緊急処置をとりましたけれども、その後またさらに二百五十円を割るような事態が続いている次第でありまして、目下対策本部をつくりまして鋭意努力をいたしておる次第でございます。
  51. 下条進一郎

    下条進一郎君 いまの御説明の中でも、やはり緊急融資のことに触れられましたけれども、私は、やはりこの間、あえて十一月になられて金利を一段とまた下げられましたけれども、あの程度の下げ方では救済にならないと思いますので、また折を見てもう一考をしていただきたいと思います。  それから、全体的な問題の締めくくりといたしまして、私は総理と大蔵大臣とそれから運輸大臣にお尋ねいたしたいと思います。  これは、いままで皆様の御説明を伺いまして、どの問題をとらえましても非常にむずかしい問題だと思います。むずかしい問題でありますけれども、基本的なことを考えれば、やはり何かしなきゃならない、こういうところに来ているわけであります。そこで、目先に出ておりますのが、来年度の予算編成ということになろうかと思いますが、この予算編成の前提といたしまして、私たちが先ほど来やはり急激な高度成長から低成長へのジャンプということで、ソフトランディングでなかったために、内需のところの不均衡、それからまた外では貿易のインバランスというものが出たわけでありますので、そういう点を考慮して、もう少し前向きに内需喚起というものを含めての来年度の予算編成というものを考えていただきたい。それでなければ、なかなか先ほどの外貨減らしの問題も、いろいろつっかえるところがありますけれどもやらなきゃならない。それとあわせて両方やらなければこの大きな問題は解決しないと思うわけでありますが、来年度の問題に対しまして、経済成長率を那辺に置くや。そしてまた、それに関連いたしまして、やはり財政主導型でなければならない。重要項目を一つ一つ洗いましても、なかなかこれという明るい見通しがございませんので、そういう意味におきまして、内需喚起のためには財政主導型であるという点から申しますと、やはり国債の限度というものもいろいろ考えなければならない問題があろうかと思いますが、どう考えられるか、そして減税問題をどうされるのか、こういうような関連につきまして御所感を伺いたいと思うのでございます。  なお、この積極予算財政というものに関連いたしましては、やはり従来の見直しというものも相当大事でございます。その点につきまして、いろいろな問題のある中の一つといたしまして、運輸大臣の方には、国鉄のスト権とか、あるいは民営移管論、こういう問題もちらほら出ておりますが、そこらにどう取り組まれるか、こういう問題を含めまして、来年の経済のかじ取りについて総理、大蔵、運輸大臣のそれぞれの御所感を伺いたいと思います。よろしく。
  52. 坊秀男

    国務大臣(坊秀男君) 大変大事な問題でございますが、時間がございませんから簡単に申します。いま一番大事なことは、やっぱり財政というものを、これは日本の国の国策を遂行する上においても財政が大事である。それからまた、日本の国の経済というものをどう持っていくかということについても、根幹をなすものは財政である。財政経済とは二にして一というような関係にあろうと私は思います。そういうようなことから、まず何にいたしましても、いま予算編成中でございますけれども、要するにこの来年の経済見通しというものが、これまたいま作成しておると思いますが、これがはっきり固まってまいりませんと、具体的なことを申し上げるわけにはまいりませんが、要するにそういったような大事な財政でございまするから、財政の健全化ということをゆるがせにしては私はとうていそれはいけない。さような意味におきまして、やはり今日も将来も公債の依存度というものについては、私はこれはぜひとも既定の方針を守ってまいりたい。そうやりながら、大きな景気浮揚だとか、あるいは黒字減らしだとか、そういったような問題を片づけていくということについては、非常にこれはむずかしいことだと思いますけれども、どうしてもそれをやっていかなければならないので、ぜひとも国会の各委員会の諸先生に御理解と御協力をお願い申し上げたいと思います。
  53. 田村元

    国務大臣(田村元君) いま日本国有鉄道には四十三万人の従業員がおります。この四十三万人が多過ぎるのではないかということがよく言われるわけなんです。この点については、大方の意見は、私鉄に比べて確かに多過ぎるというような意見が強いようでございます。しかし、私どもから言えば、やはり仕事の種類やいろんなことございますから、幾らが適正な人数であるかということを即断することはなかなかむずかしいと。しかしながら、効率化、合理化を進めなければならぬこともまた事実でございます。またスト権に関しましては民営論もそうでございますが、基本問題調査会で今日御議論を願っておるという段階でございますから、私からとかく意見を述べますことは非礼に当たりますから、これは御遠慮しなければなりませんが、最近私も仄聞する程度でありまして、具体的には存じませんけれども、関係の労働組合の責任ある方あたりからの御意見として、経営形態の変更論まで出てきておるというようなことのようでございます。そうなりますと、この基本問題調査会での御審議というものがやや複雑化していくのじゃないだろうかという感じはいたしますけれども、今日のところ、特に私から論評することは差し控えたい、このように考えております。
  54. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) ただいまの日本経済の現状は、まあいろいろ問題ありますが、大事な点は、設備過剰、雇用過剰という問題が大方の企業に抱えられておる、こういうことかと思います。そういう中で大事なことは、申し上げるまでもございませんけれども、需要をどういうふうに創出していくか、こういうことでございます。先ほど来お話がありましたように、その需要の創出を、これを貿易に多くを求めることは、これはもう不可能でありまするし、またそれはすべきじゃない。そうしますと、どうしても内需の拡大ということになる。さあ内需の拡大と申しましても、設備投資の状態は一体どうなるだろう、これはまあなかなかそう活発化することは当分望めない。そういうことを考えまするときに、やはり財政の担う役割りというのは非常に大事になってくる、こういうふうに思うのです。もとより私は財政——これは節度を持って運営しませんと、これがまた経済そのものを破綻に導くおそれがある。ですから、これはもう非常に大事な財政の節度という見方をしておりまするけれども、とにかく経済あっての財政ですから、また経済を発展させなきゃならぬ、その辺の調和を一体どういうふうにとるかということがこれからの問題だろう、こういうふうに思いまして、日本社会、日本経済全体といたしまして、財政と景気、これが調和のとれた形で進んでいくということを旨として経済運営に当たってまいりたい、かように考えます。
  55. 鍋島直紹

    委員長鍋島直紹君) 下条君、時間が参りました。
  56. 下条進一郎

    下条進一郎君 非常に大事な問題でございます。それから調和ということも大変に大事だと思います。しかしながら、場合によっては清水寺から飛びおりるぐらいの勇気と実行というものもなければ解決しない問題と思いますので、総理並びに関係閣僚の一層の御尽力をお願いして、私の質問を終わります。(拍手)
  57. 鍋島直紹

    委員長鍋島直紹君) 以上で下条君の質疑は終了いたしました。     —————————————
  58. 鍋島直紹

    委員長鍋島直紹君) 次に、竹田四郎君の質疑を行います。竹田君。
  59. 竹田四郎

    ○竹田四郎君 日銀の総裁がお見えになりませんから、若干私の質問の順序を変えていきますから、また後戻りすることがあるかもしれませんけれども、その点はお許しをいただきたいと思います。  きのうの衆議院の予算委員会で、総理は、緊急輸入の三十億ドルというのは、これは実は私の願望だと、こういうふうにお述べになったというんですが、これは本当でございましょうか。
  60. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) 率直に申し上げますと、政務調査会長が来て、それで緊急輸入を計画されておるようだが大変結構だと、党においてもまあ御協力を申し上げますと、こういう話です。そこで帰りがけに、まあ何とか三十億ドルぐらいは緊急輸入したいねと、こう言っておりました。私もそう思いますよと、こういうふうなことでございました。そういうことが実相でございます。
  61. 竹田四郎

    ○竹田四郎君 しかし、世界はこの三十億ドルというものの緊急輸入をただ単なるあなたの願望と見ているかどうかということになりますと、これは私は大変な問題だと思うわけです。  経済企画庁長官に伺いますけれども、あなたは二日の日に、三十億ドルの五項目等にわたるところの具体的な提案をされているわけですね。新聞発表によると、記者会見までおやりになって、たとえば円貨建て、いまのお話のありました円貨建ての問題とかなんかについて発表になっていますね。これはあなたのアイデアなんですか、それとも経済企画庁としてそういうことを態度として決めたのかどうか、その辺がどうもきのうのあなたの答弁から考えまして、あなたのアイデアをまとめた、たとえば私のアイデアをまとめた、竹田のアイデアをまとめたという形で出したものなのか、あるいは経済企画庁でありますから、各省庁との緊密な連絡のもとに経済企画庁で議論をいたしまして、それでこれでやるんだと、こういうふうになったものなのか、その辺をはっきりしていただかないと、ただあなたの、倉成個人のアイデアであっては、これは私は実行力はないと思う。その辺は具体的にどうだったんですか。
  62. 倉成正

    国務大臣倉成正君) ただいまのお話の点は、私は総理からの御指示は、とにかくできるだけ考えられ得るあらゆる手段を尽くしてひとつ緊急輸入ができるようにという御指示をいただいておりまして、その御指示に従いまして、一つ一つできることを着実に実行していくことということで、御案内のとおり、九月二十日に対外経済対策ということを決めまして、これにおきましては東京ラウンドの積極的取り組みから始まりまして、輸入の促進、あるいは輸入については石油であるとか、あるいは穀物であるとか、航空機であるとかいうような問題、それから輸出の問題、それから資本取引経済協力、こういう問題についていろいろ決めたわけでございます。これに基づいて確実なものが七億ドル以上のものが出たわけでございますけれども、これでは不十分だからもっと積極的にいろいろな研究をしろという総理からの御指示もございまして、関係各省庁といろいろお打ち合わせをいたしまして、そして九月の二十日の対策の実施状況総理に御報告し、そしてなおその後考えられ得るいろいろな問題はどういうものがあるか、各省庁と連絡をいたしまして、現在のところ、大体こういう問題がいま爼上に上り、そしてこれについてどの程度の進行中でございますということを総理に御報告いたしました。そのことを、中身について新聞記者会見をいたしたというのが実情でございます。
  63. 竹田四郎

    ○竹田四郎君 そうすると、それは経企庁が関係各省とすっかり連絡をした上であなたはそういうふうに述べ、企画庁の長官として決めて、それを総理に報告した、こういうことでそれは間違いないわけですね。
  64. 倉成正

    国務大臣倉成正君) そのとおりでございます。ただ、その際それが三十億ドルというようなことは申しておりません。
  65. 竹田四郎

    ○竹田四郎君 しかし、いろいろ計算してみますと、あなたのおっしゃっていることがウランの購入の問題も含まれております。それから円貨建て債の問題も含まれていると、しかもあなたが各省庁と連絡をした上で決めたと、それを総理に報告をしたと、そして総理はいまはまた願望だというところへ問題を戻しているようでございますけれども、新聞に書かれている点は、総理は願望だと言ったかもしれませんけれども、その当時の十一月三日あたりの新聞を見ますと、これはぜひともやらなくちゃならぬというふうに新聞は書いてある。そういたしますと、この新聞は日本国内だけで読まれているわけじゃないと思いますね。その後各種のマスコミを見ましても、三十億ドルの緊急輸入ということは日本の政府の方針であるというふうに海外にも伝わっていると思うわけです。  福田総理は、この春以来、恐らく国際的な約束というのはずいぶん破ってきているわけですね。たとえば、ことしの経常収支の見通しについて、七億ドルの赤字だと、こういうことを言ったにもかかわらず、しかも、それが今度の見直しでは実に六十五億ドル、九月末の経常収支の実績では、これが黒字五十五億ドルでしょう。六十五億ドルの見通しの中で、半年で五十五億ドル、見通しに対して天井はあと十億ドルしかないわけです。このあとの後半で経常収支の黒字が十億ドルにとどまるなどということは、恐らくわれわれみたいな素人でも、そんなことは無理だろうと、まあ上期と同じような伸びはしないにいたしましても、かなり伸びるだろう。こうしたことも、私は国際的に大変な不信を買っていると思うわけですよ。そのほかにも、挙げれば切りのないほどたくさんの不信がぼくはあると思う。しかし、ここで円高攻勢でいじめられている。私にとってはいじめられているような感じがします。せっかくそこで三十億ドルの緊急輸入をやるということを決めたと国民も諸外国でも信じていたら、いやそれは願望であって、三十億ドル輸入されればいいなと、こういうことで、何か言葉をごまかしているというふうにしか私ども思えないんですよ。いまあなたの発言というのは非常に重要なんですよ。だから、恐らくこれからの円相場がどうなるかということについても、あなたは少し重い発言をされるだろうと私は思いますよ。そういうときに、私は、もしあなたが願望として新聞にこれだけ大きく書かれるというようなことをやるならば、なぜすぐ正式にそれを取り消さないのか。そういうことは全然やらないで、きのうまでこれは政府の決定だとみんな思っていた。きのうの予算委員会で、あれは願望でしたと、これでは私は世界の人たちの信頼をかちとることはできない。  そういうことであれば、いま円高で国民がこれだけ苦しんでいるのに、一国の一番偉い人がそういうふうに発言に慎重さを欠いている、このことはますます今後の日本経済なり円の為替相場に対して非常に信頼を欠かざるを得ない、こういうふうに思うのですけれども、福田総理にはそういう反省はないんですか。私は、この前ここへ立ったときも、世界に対する信頼をかち取りなさいと、そういうことを私は言っていると思うのです、ことしの初めから。どうなんでしょうか、私はこれはただ単なる単純なものじゃないと思いますよ、世界全体にわたることなんですから。決めたことと信じられていることを、願望だなどと、後でうまくいかないということでごますかというやり方、これは私は、あなたのような国際経済にも明るい方に対しては許されない言動だと思うんです。これがほかの経済関係関係のない大臣がおっしゃるなら、私はそれは世界的にもそれだけの影響力はないと思うんです。しかもあなたは経済のベテランの大臣だということで、自他ともに認めているわけです。私はそれではちょっと困ると思うんですけれどもね。それに対してあなた全然反省はないですか。もし反省がないということなら、もう私はあなたにはやめてもらわなくちゃいかぬ、こう思うんですよ。
  66. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) 竹田さんは何か勘違いをしておりますよ。つまりあの三十億ドルというのは、これは私がしゃべったんじゃないんです。河本政調会長がしゃべっておる。私が何かそういうことを言った言ったというような前提でお話しされておりますが、そうじゃないんです。私は企画庁長官からいろいろ報告を聞いておる。その報告、これを見てみますと、具体的に詰まっておる数字というのが七億ドルぐらいなんですよ。まあ八億ドルになりますか、非常にうまくいけば十億ドルぐらいにいくかもしらぬ、その程度のものだ。それでは私は満足しない、もう少し多額の輸入をこの際しなけりゃならぬ、こういうことをかねがね各閣僚に言っておるわけなんです。そこへたまたま河本政調会長が来て、大変緊急輸入というものを熱心に政府はやっておる、大変結構だと。まあいろいろほかに話がありまして、帰りがけに三十億ドルぐらいはやりたいねと、こういう話なんです。私は、そのくらいはやりたいもんだと、こういうふうに答えた。それを政務調査会長がどういうふうに話しましたか、話した、その結果が新聞に載っている、こういうことでありまして、まさに私のこれは願望なんです。  しかし、願望といえどもこれは世界が知った場合に、福田さんは大変努力をしておる、その努力のあらわれの一つがこれだと私は相当評価される、そういうふうに思っておるのです。しかし評価されっぱなしじゃいけませんから、これを実のあるものにしなけりゃならぬ。そこであとの二十億ドルはどういうものが考えられるかというと、濃縮ウラン、これは一つです。それからもう一つは原油のタンカー備蓄でありますが、この二つができれば相当のものになるだろう、こういうふうに思いますが、とにかく世界じゅうは福田総理はさすがだ、ずいぶん努力しているなと、こういうふうに評価してくれる、かように考えます。
  67. 竹田四郎

    ○竹田四郎君 あなた、そういうふうにして国民をごまかしちゃいかぬですよ。いまあなたは河本さんともやりたいもんだと言っているわけです。あなた自体に三十億ドルという数字はあるわけだ、あなたの頭の中に。しかもあなたの部下の一番調整企画をやるところの倉成長官は、ちゃんとそういう線で新聞記者に発表をやっているわけです。新聞に出ているんだもの。出ているでしょう、ちゃんと数字まで出ているわけです。それを、そういうことできのうから問題になったといって、それを取り消して、それだから世界の人は、それじゃそうなりました——それは私の単なる計算ですよ、こういうことを言ったって世界的に通りますか、いまのこの重要なときに。私どもですら質問するのに、円は幾らになりますかということを、特に日銀総裁や、またあなたや大蔵大臣や企画庁長官に私どもそういうことを余り聞かないんですよ。むしろそういう質問をすることによって、何らかの形であなたの口から、大蔵大臣の口から、日銀総裁の口から何かが出たら、国際的に問題になるわけですよ。倉成長官は問題になってアメリカから文句を言われたでしょう。そのくらいいまナーバスな問題にこの問題はなっているわけですよ。そういう事情だということをあなたはちゃんと知っているわけだ。それにもかかわらず願望だというような軽い発言、あるいは報告の中にウランの輸入も入っている、こういう状態で世界的に通用すると思っているとしたら、私ははなはだ残念だと思うのですね。  それじゃ聞きますが、七億ドルというのはいつまでに完成できますか、緊急輸入は、一番最初の、九月二十日の。それを具体的に各大臣からちゃんと言ってください。
  68. 倉成正

    国務大臣倉成正君) 竹田委員、ひとつ御了解いただきたいと思いますが、九月二十日の対策について総理に御報告した結果、記者会見をいたしましたときに私が記者団にお話ししましたのは、この九月二十日の対策の効果として七億ドル強、このほかに農産物の在庫の積み増し、あるいは農産物の輸入の前倒し、あるいは造幣局の銅、ニッケル等の繰り上げ購入、あるいは残存輸入制限品目の輸入枠の拡大、こういうものがございますと、それからウラン等についてもいま努力をいたしておりますという話はいたしました。それから、円建て外債の発行促進というのは、経常収支とは関係ないけれどもこれについても努力をしておりますと、これはもし成功すれば十億ドル程度になるだろうという話はしました。しかしそれ以外の発言は一切いたしておりません。したがって、三十億ドルという数字は私は記者会見でいたしておりませんから、それは正確にひとつ申し上げておきたいと思います。
  69. 小柳勇

    ○小柳勇君 関連。  いまの総理の発言から、いま経済企画庁長官の発言に関連して質問いたしますが、まず第一は、この前の予算委員会のときも、総理はここで、九億ドルぐらいの輸入では何ともならぬので拡大しなきゃならぬと。その後河本政調会長との会談があったわけだ。そして三十億ドル輸入というものを指示されたのかされないのかわかりませんが、十一月三日に倉成経済企画庁長官福田総理へ黒字減らしとして五項目の報告をしておられる。その報告が正しいかどうかを私は長官からまず聞きたいが、私が五項目を読みますよ。第一は、濃縮ウランの前払い購入、十億ドル目標。二、残存輸入制限品目二十七品目について輸入割り当て枠の拡大。三、農産物、小麦、トウモロコシ、大麦などの二千数百万ドル及び造幣局で使う銅、ニッケルの五十三年度輸入分の年度内繰り上げ輸入。四、円建て外債の発行促進、前年比増加額十億ドル。五、海外渡航外貨の買い入れ制限撤廃、現行三千ドル、また学費の送金など含め外貨の持ち出しを緩和。この五項目を総理に報告されたのかされぬのか、答弁を求めます。
  70. 倉成正

    国務大臣倉成正君) 総理に対しましては、いまお話しのような項目についていろいろ御報告を申し上げました。しかし記者会見におきまして私はいろいろな数字を、いまウランのお話について御数字がございましたが、一切申しておりません。これは相手方のあることでございますから、これはやはり交渉ごとがまだ固まらないうちにいろいろな数字を申すのは適当でないと私ども考えておりまして、一切記者会見等でいたしておりません。しかし期待をいたしているということだけは申しておりますが、数字は一切申しておりません。それはひとつお調べいただければ結構だと思います。
  71. 小柳勇

    ○小柳勇君 私は、いま記者会見したとかせぬとか、そんな質問していません。この五項目の報告を、総理長官が報告したと私は情報を取っておるが事実かどうかと、そのことを質問しているわけです。
  72. 倉成正

    国務大臣倉成正君) 項目については御報告いたしております。しかし数字についてはただいまの数字が正確であるとは思いません。
  73. 小柳勇

    ○小柳勇君 この概算をしますと約三十億ドルになるわけですよ。したがって、さっき長官はここで総理から指示されたとおっしゃった、その指示に従って大体の経企庁の方針というものを——これは概算約三十億ドルになりますよ。それをいま報告したとおっしゃるが、数字は言いません。賢明なる総理が報告も受けられて、大体の概数わかるでしょう。この重要な段階で、集中審議はだてや酔狂でやっているんじゃないんです。きょうは各大臣とも勲章の伝達式など大変な事業があるのにかかわらずここに出席を求めておるのは、内閣は連帯責任ですよ、ただ総理だけの責任じゃない。だから各省とも、いまの景気対策なり、あるいはこの円高に対する国民の不安を解消するために、こぞって大臣は来てくださいよと、福田内閣に対する参議院の議員が国民を代表して緊急な課題をいま論議しているわけだ。言葉のあやで、ここさえ何とかなればということでは済まぬ。したがって、これを総理長官に指示されて、長官がこれに対してこれをどういうふうに処理されておるか、具体的に答弁してください。
  74. 倉成正

    国務大臣倉成正君) 小柳委員にお答えいたしたいと思いますが、大変誤解があると思います。(「誤解じゃないよ」と呼ぶ者あり)いえ、そうでありません。私は事実を申し上げておるわけであります。総理に対しましては九月二十日の対策の効果、これこれは各省で、各省とも詰めまして、十分七億ドル以上のものは確実でございますと、これは完全にできますと、しかしこれ以上のものについては、これこれの項目についていま各省でも詰めていただいておりますと、また対外的に折衝いたしておるものもございますということを御報告いだしたわけでございます。したがって、三十億ドルというのが、そういうことでこれこれを合わせたというものではございません。いまお話しの円建て外債の発行などは、これは経常収支の問題ではございません。したがって、その辺はひとつ大変恐縮ですけれども多少思い違いがあるんじゃないかと思いますので、ありのまま申し上げておるわけです。総理からは一項目ずつ確実に一つでもやっていくようにという御指示をいただいておりますので、われわれも日夜苦労いたしまして最善を尽くしておるというのが実情でございます。
  75. 竹田四郎

    ○竹田四郎君 私は、この問題は言ったとか言わないとか、もうそういう段階は過ぎていると思うのですよ。あらゆるマスコミが、あるいは外国の新聞まで日本は三十億ドルの緊急輸入をやると、こういうことにもうなっているわけですよ。新聞を見たってそうでしょう。三十億ドル緊急輸入というのはトップ記事の一番上に特に書いてある。そういうふうになった私は政治責任を言わなくちゃならないし、いまの倉成長官の言い方はまるで小学生のけんかみたい、言った言わない。もうそんな段階は過ぎている。はっきりとこのけじめを私はつけてもらわなければ、これは私ども国民はもちろんでありますけれども、国際的な信用の問題にかかわる。これからの国際金融に私は大きなマイナスを残す。すでに残しているんです。この上にそういうことになったならば、一体円という問題はどうなるんです。ますます国際的に孤立をし、それが国内における一層のデフレを深めていく要因にしかならないんじゃないですか。幾ら中小企業に、おまえたちがんばれよと言ったってどうにもならぬじゃないですか。これは総理として、この政治的な決着というものを、ただ言った言わない、願望だ、願望でなかったということでなくて、いまや世界的な問題になっているわけですから、私はこれらの政治的決着をどうつけるか、あなたの決意をお聞きしたい。
  76. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) 私が、とにかく非常にむずかしい緊急輸入をそれほどまでに熱意を持っているということについては、私は世界は好感をしておると、こういうふうに考えるのであります。でありますから、私はとにかく八億ドルだ、十億ドルだと、これでとどまるべきものじゃない、あらゆる工夫をこらして、多々ますます弁ずです。多ければ多いほどいいのです。その輸入を実現をしたい。こういうふうに考えまして、いま関係各省でそれぞれ準備をいたしておるわけでございますが、何せそれだけの金の買い物となりますと、これはまあ売り手の問題があるわけでありますし、またいろいろ条件の問題もある。そういうことでありますから、慎重に私はいまここでこうするんだと、幾らだというような額は申し上げませんが、願望として政務調査会長にはそういう額を申し上げておる、こういうことでございます。
  77. 竹田四郎

    ○竹田四郎君 緊急輸入ですからね、一般の輸入とは違うわけです。日本がいかにドル減らしをやっているか、確かにそれを実行すればいいですよ。年内なら年内に三十億ドルの緊急輸入を実行すれば、それはなるほどやっぱり福田赳夫さんという人は後世に名を残した人だと、こういうことになりますよ。じゃ具体的に年内に七億ドルあるいは三十億ドル、これはできますか、各省から言ってください。そんないいかげんなことじゃ困りますよ。これははっきりした国際的な約束ですよ。
  78. 田中龍夫

    国務大臣(田中龍夫君) それでは、私の所管事項につきまして申し上げます。  まず、最初の原油の貯油の積み増しの問題でございますが、今秋までには——今秋というのはことしの秋のことです。土曜、日曜のことではございません。過去の最高の貯油量の程度までは積み増しを実施するようにいたします。これが三億一千万ドルでございまして、三百六十万キロリッターの積み増しでございます。  それから非鉄金属でございまするが、備蓄の拡充につきましては、市中銀行が金属鉱産物備蓄協会に三百億円の融資をいたしまして、十月には第一回の融資を行いまして、今年度末までには逐次継続することでございまして、これは一億ドル年度内に確実にできます。  次はウラン鉱石の輸入でございまするが、日本原子力発電とアメリカの鉱山会社との間にさきに購入契約が成立いたしまして、近く約一億三千万ドルの支払いが行われることとなっておりまするが、これにつきましては、なおできる限りのさらに追加をこれは交渉をいたしつつございます。  それからナフサにつきましては、今年度約一億四千万ドル輸入増を見込みますとともに、関係業界をば指導いたしておりまするが、これは百五十万キロリッターの分、さらにこれにつきましては若干の差益の関係でいい条件ができると存じます。  以上をもちまして約六億八千万ドル、私の方の所管事項で確実に行っておる問題でございます。
  79. 鈴木善幸

    国務大臣鈴木善幸君) 農林省関係の御報告をいたします。第一は輸入の前倒しでございます。飼料穀物、備蓄用のトウモロコシ、コウリャンにつきましては、五十三年一−三月の輸入予定量十万トンのうち、四万四千トンを年内に繰り上げ輸入する。  それから飼料大麦、備蓄用の飼料大麦について、五十三年一−三月の輸入予定量三万トンを年内に繰り上げ輸入をする。  大豆、備蓄用の大豆について、五十三年一−三月の輸入予定量二万トンを年内に繰り上げ輸入する。これはすでに実行に入っております。
  80. 竹田四郎

    ○竹田四郎君 幾らですか、金額的に。
  81. 鈴木善幸

    国務大臣鈴木善幸君) 後で申し上げます。  それから牛肉、輸入牛肉につきまして、年度内にできるだけ量をふやして輸入を行うため、畜産振興事業団が通常であれば下期輸入額の約四〇%の輸入を予定しておるところでありますが、今回はこれを七〇%にふやすよう努力をいたしております。  以上申し上げました輸入の前倒し、これは飼料用トウモロコシ、コウリャン四万四千トンで五百万ドル、飼料用大麦三万トン、三百八十万ドル、大豆二万トン、四百四十万ドル、牛肉が千百万ドル、計二千四百二十万ドルでございます。  第二は備蓄在庫の積み増し。まず小麦でございますが、年度末の政府在庫を十万トン程度増加させることを目途として、十二月積み以降の買い付けを実施する。それから飼料穀物、備蓄用のトウモロコシ、コウリャンにつきましては、明年度に計画しておる十万トンを本年度内に輸入し、備蓄の積み増しを行う。この積み増しの時期は五十三年一月積みとする。  それから第三は、飼料大麦、備蓄用の飼料大麦につきましては、明年度に計画している五万トンのうち、三万トンを本年度内に輸入し、備蓄積み増しを行う。この積み増しの時期は五十三年三月末とする。支払いは本年度内。この備蓄在庫の積み増し分、小麦十万トン、千二百万ドル、飼料用トウモロコシ、コウリャン十万トン、千二百万ドル、飼料大麦三万トン、三百二十万ドル、計二千七百二十万ドル。  第三は、残存輸入制限品目の輸入枠の拡大でございます。これにつきましても、極力国内の農畜産業者への影響を配慮しながら、需給の動向等をにらみ合わせながら輸入枠の拡大を図っておるところでございますが、水産物、農産物合わせまして一億二千万ドル余でございます。  以上が農林省関係でございます。
  82. 坊秀男

    国務大臣(坊秀男君) 大蔵省としての計画をお答え申します。  今回、対外経済対策の一環として、御指摘の造幣局の銅、ニッケル等の原材料の昭和五十三年度使用分を一部繰り上げて購入することといたしております。その具体的な購入計画は目下検討中でございますが、今回の措置は造幣局特別会計の枠内で行うこととなりますので、その額は九億円程度でございます。
  83. 鍋島直紹

    委員長鍋島直紹君) 竹田四郎君、森永参考人が見えました。
  84. 竹田四郎

    ○竹田四郎君 はい。ほかはないんですか。
  85. 唐沢俊二郎

    政府委員唐沢俊二郎君) 文部政務次官でございますが、医療機械の問題でございますが、五十二年度は、一件一千万以上の医療機械、今後二十九件、九億三千二百万の外国製品の購入を予定いたしておりますが、この執行の促進を各国立大学に早くするようにということをいま指導いたしておるところでございます。
  86. 渡辺美智雄

    国務大臣渡辺美智雄君) 私のところでも実はいろいろ考えてみたわけですが、厚生省は医療機械、医薬品等が考えられます。しかし、医薬品についてはなかなかまとまったものがありません。それから医療機械でございますが、これはがんセンターとか国立病院とか、そういうようなところでございますけれども、何せ厚生省には金がないものでございますから、きのうも申し上げたんですが、どれぐらいの予算を見てくれるのか、それがまだ決まっておらない、それが決まればその範囲で私の方はできるだけ協力をしたい、こう思っております。
  87. 三原朝雄

    国務大臣(三原朝雄君) 緊急輸入につきましては、本庁に対しましては総理の指示なり、あるいは関係省庁からの要請は受けておりません。  なお、装備品の輸入等につきましては、その特性等からいますぐどうだというようなことには計画的にならない事態でございます。
  88. 田村元

    国務大臣(田村元君) オイルタンカーによる石油備蓄につきましては存分に御協力を申し上げるつもりでございます。  それから、民間航空機でございますが、五十三年度中に買うことになっておりますものは二十六機、約十億ドルということだそうでありますけれども、これは政府として、民間航空機を買い入れるのに、本来買う機数に対していろいろと融資その他でお世話をして差し上げるということは、これは当然でございましょうけれども、便数その他の制約がありますから、いろいろな点で計算していかなきゃなりませんから、どれだけどういうものを買えということを具体的に物申すということはちょっとむずかしい面もありますし、何さまロッキードの後の航空機でございますので、ひとつそこいらのところはよしなに御判断を願いたいと思います。
  89. 竹田四郎

    ○竹田四郎君 いまのお話を聞いていましても、運輸省はそれほど航空機の購入については積極的ではないようでありますし、農林省のお話を聞いても金額的には大したことはない。こういうふうに考えてみますと、この政治的な決着というのは総理、どうつけるんですか。これはあなたが願望であれ何であれ、世界的にこれだけ走った問題を、私は政治的決着をつけるにはやはり三十億ドルの緊急輸入をとにかくあなたがやるということですよ。また、あなたは当然輸入はふやすべきである、われわれもそう考えます。だから三十億ドル輸入というのはやっぱりやらにゃいかぬ。これじゃできないじゃないですか。緊急輸入にならないじゃないですか。来年、再来年の分まで入れればそれは三十億ドルになるだろうと思うのですね、黙っていても。緊急輸入であるのですから、先ほどの通産省の話ではありませんけれども、ことしの秋の終わりまでには、これはやっぱりそれだけやらにゃならぬ。私はそれだけの緊急な任務をあなたは与えられている。いまの分じゃどうもできそうもない。どうしますか。
  90. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) いま各省大臣から御説明申し上げたところを集計しますと、大体十億ぐらいのものでしょう。私はそれでは満足しないと、こういうふうに申し上げているのです。この際思い切ってここで輸入をやる。私はその柱といたしまして濃縮ウランの購入、それから原油のタンカー備蓄、この二つの点も関係大臣に指示をいたしておるわけでありまして、これが決まれば相当の額になってくるわけでありまして、ぜひこれを実現をいたしたいというので、いま準備を始めておる、こういうことでございます。
  91. 竹田四郎

    ○竹田四郎君 それでは、総理は三十億ドルを濃縮ウランとタンカーを含めてやっていくということでありますが、しかし実際濃縮ウランがいま十億ドル近く輸入できるんですか。これはきょうの新聞でも大変問題になっているわけですね。こういうものを入れると総理が言う限りは、私はこれはどの大臣が担当か存じませんけれども、やっぱりある程度はアメリカ側の情報というものを入れて、ぼくは総理は言っていると思うんですがね。この点は間違いないですか。またここで濃縮ウランを入れると言ったけれど、アメリカの反対で入れられなくなったということになれば、またうそをつくことになるわけです。うそのうそのうそのうそを、こうだんだん繰り返していくということに日本の政府はなってしまうわけです。これは濃縮ウランできますか、だれですか担当は。必ずできますか。
  92. 田中龍夫

    国務大臣(田中龍夫君) お答えいたします。  新聞等にもございますように、わが方といたしましてはぜひこれが獲得をいたすべく交渉をいたしておるのでありまして、さらにまた外交折衝もその間には重ねなきゃならぬと存じております。
  93. 竹田四郎

    ○竹田四郎君 普通のときは違うのですからね。普通のときとは違うのですから、その折衝をしてだめだったらもとへ返るということは、私はいまの段階では許されぬと思うんですよ。私は濃縮ウランがそんなに簡単に入ってくるとは、アメリカの現在の核政策等々から見てそう簡単じゃないと思うのですよ。これは通産大臣は約束しますね。三十億ドルの一環として、いまの総理の御発言では相当大きいものだと言うのですからね、恐らく十億ドル前後のものだと私は思うのですが、これは確実に約束しますね、世界的にも日本の国民にも。
  94. 田中龍夫

    国務大臣(田中龍夫君) 全力を挙げて折衝いたしますことをお約束いたします。相手のあることでありますから、日本だけでできることではございません。
  95. 竹田四郎

    ○竹田四郎君 私はこういう答弁じゃ満足できないですよ。とんでもないですよ、総理は言っている。努力をします、こんなことじゃ私は通産大臣の答弁に満足しませんよ。いいかげんな答弁じゃだめですよ、冗談じゃないですよ。
  96. 倉成正

    国務大臣倉成正君) 竹田委員に御了解いただきたいと思いますが、やはりこういうものは相手があることでございますから、そしてまたいろいろな数量をいま幾ら日本が買うとかいうようなことをやっぱり言うのはちょっと差し控えさせていただきたいと思うわけでございます。いま一生懸命やっているということだけで御了解いただきたいと思います。
  97. 竹田四郎

    ○竹田四郎君 だめだだめだ、そんなもの。とても満足できない、そんないいかげんなことじゃ。子供の答弁なんだもの。総理がいま言ったんだ、それをこれから努力をしてみますなんて、そんなものだめだ。そんないいかげんなもので国際的なあれをごまかそうといったってだめだ。
  98. 鍋島直紹

    委員長鍋島直紹君) それでは、午前中の質疑はこの程度にとどめます。  午後一時三十分から委員会を再開し、竹田君の質疑を続行いたします。  暫時休憩いたします。    午後、零時四分休憩      —————・—————    午後一時三十五分開会
  99. 鍋島直紹

    委員長鍋島直紹君) 予算委員会を再開いたします。  予算執行状況に関する調査を議題といたします。  質疑に先立ち、福田内閣総理大臣から発言を求められておりますので、これを許可いたします。福田内閣総理大臣
  100. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) 午前中の、竹田さんからの緊急輸入問題についての御質問関連いたしまして、申し述べたいと思います。  河本政務調査会長から、先般、国際的観点も踏まえて、三十億ドル程度の緊急輸入についての話がありました。これらの経緯もあり、私としては、現在見通しのついておる約十億ドル程度では不十分であると考えますので、さらに関係閣僚を督励して最大の努力をいたしたいと存じます。
  101. 竹田四郎

    ○竹田四郎君 いまの総理の統一見解といいますか、これについては、必ずしも私自体としても賛成するわけではございませんけれども、私の質問した趣旨は、国際的な関連の中で、日本政府のやることが非常に重要な意味を持っているから、国際的な不信というものを招かないようにしてほしい、このことが私の質問の趣意でございますので、そういう意味では国際的な不信を招かない誠実な日本であるということを貫くことによって、今後ともひとつ日本の国益を守ってもらいたい、この趣旨でございますので、今後ともひとつその点については十分にやっていただきたいと、このように思うわけであります。  もう一つ、この際伺っておきたいわけでありますけれども、これは総理からも厳命があったようでありますけれども、東京ラウンドの前に、関税の引き下げを実施をしたいということでございますが、どういう品目についてどれだけ下げて、それはいつまでに実施をしていくのか、そしてその関税引き下げによるところの輸入寄与するものはどのくらいの額に上るか、この点について御説明をいただきたいと思います。
  102. 坊秀男

    国務大臣(坊秀男君) お答え申し上げます。  関税引き下げの繰り上げ実施については、最終的な決定までには諸外国の出方を見る必要もあり、なお時日を要します。本臨時国会中に法案を提出することは困難と見られますので、次の通常国会において御審議をお願いするということになります。  今回の繰り上げ実施につきましては、内外経済情勢に照らして、関税率の引き下げを行うことが適当であると考えられる品目につきまして、目下政府部内において検討中であります。したがいまして、対象品目及びその引き下げ幅について、現在申し上げる段階には立ち至っておりません。  これお聞きになりましたかな。——関税引き下げの繰り上げ実施によって、わが国輸入は増加するものと考えられますが、対象品目及び引き下げ率について鋭意検討を行っておる現段階におきまして、具体的な輸入増加見込み額を試算することは、いまのところはちょっと困難でございます。  以上でございます。
  103. 竹田四郎

    ○竹田四郎君 大変今度は口が慎重になりまして、お述べにならないわけですが、見通しとしては大体いつごろまでに成案を得られるようになるでしょうか。やはりこれも日本の緊急輸入の一環でありますから、そう長々とやっておくわけにもまいりませんし、この点についてはかなり早くから総理の御指示があったように私承っておりますので、いつまでもずるずるやっておくということは、これはよくないと思いますが、具体的な内容は別として、いつごろまでにそれを決定をされるのか、そのおおよその目安ぐらいは御発表いただけるだろうと思いますが。
  104. 坊秀男

    国務大臣(坊秀男君) いずれにいたしましても、関税法に関連するところが多うございますので、そこで、来るべき通常国会に間に合わすということでできるだけ早くこれを決めてまいりたいと、かように考えます。
  105. 竹田四郎

    ○竹田四郎君 それでは、日銀総裁もお見えでございますので若干お尋ねをしたいと思いますが、去る七日、八日の両日BISの会議がありましたけれども、これは政府側は参加なさっていらっしゃらないようでありますが、この会議の結論というものを日銀としてはどのように評価をされていらっしゃるか、お尋ねをいたしたいと思います。
  106. 森永貞一郎

    参考人森永貞一郎君) お答えいたします。  私どもからは藤本理事が出席いたしまして、本日帰ってくる予定でございます。直接報告を受けておりませんが、現地での会議終了後連絡をしてまいりましたところを要約いたしますと、ドルがこれ以上余り値下がりをしてほしくないという点については各国中央銀行の異口同音の発言であったようでございまして、ドルの側ではエネルギー法案が通るとか、あるいは各国の景気回復が軌道に乗れば、いまのような国際収支の不調をずっと続けるわけでもないし、ドルそのものは決して心配は要らないのだというような話がございまして、結局この会議の前、二、三日来、為替市場が小康を得ておったこともございまして、出席者の間にこの通貨問題に関する危機感みたいなものはさらに感ぜられなかった。ドルについての各国の共同介入みたいなことも何ら話題にならなかった。  で、円については、私どもの出席者、この一月余りの間の推移並びにそれについての印象などコメントなどいたしたわけでございますが、各国の間ではレートそのものについては格別の議論がなかったようですけれども、国際収支の黒字の現状については各国ともかなりの関心を示したようでございます。このBISの会議はロビー的なものでございまして、何ら結論を出す会議じゃございませんですが、今後引き続きOECDの第三作業部会、あるいは経済政策委員会等が開かれることでございますので、そこで日本の国際収支の問題につきましては、また論議に花が咲くだろうということは当然予想されるようでございます。  大体以上のようなことを電話で連絡してまいりましたことをお伝え申し上げます。
  107. 竹田四郎

    ○竹田四郎君 円のレートについては余り議論はなかったということは、今日あたりの日本のレートというものが大体適正な水準にあるというふうに私どもはその議論を評価してよろしゅうございますか。
  108. 森永貞一郎

    参考人森永貞一郎君) この集まりが、先ほど申し上げましたようにロビー的なものでございまして、申し合わせで決めるとかいうような会議じゃございませんし、何しろ中央銀行同士でございますので、お互いに相手国の経済政策について露骨に批判し合うようなことはそんなに見られない、そのような性格の会議でございますので、円レートが日本の国際収支の現状から言えばこのぐらいまで高く来るのは当然じゃなかったのかといったような一般的な印象以上には、円レートそのもののあり方等について余り格別の差し出がましい議論はなかった、そういうことに御承知いただきたいと思います。
  109. 竹田四郎

    ○竹田四郎君 それでは、日本側の経常収支の黒字については大分いろいろ御意見があったようですが、それは結局日本がどういうことを——参加した中央銀行の総裁及びその代理の方が黒字減らしについてはどういう意見がその中にはあったわけでしょうか。
  110. 森永貞一郎

    参考人森永貞一郎君) 何とかいろいろと具体的な手段を講じまして、いまの経常収支の黒字をできるだけ早く縮小する努力をしてほしい、そういう抽象的な表現にとどまっておるようでございまして、具体的にどうこうというようなことは、この会議では出るべき場所でもないという感じが私の感じでございます。
  111. 竹田四郎

    ○竹田四郎君 大蔵省としてはこの会議はどんなふうに評価しておりますか。
  112. 坊秀男

    国務大臣(坊秀男君) 現在の円為替相場というものは、基本的には市場の需給によって決まってくるものでございまして、いろいろのこれに対する議論もありますけれども、これがそういったようなことで決まるものでございまするから、それをこの際いいとか悪いとかということでなくて、客観的にこう決まってきたものであるというふうに私は考えております。
  113. 竹田四郎

    ○竹田四郎君 日銀でも、特に政府はそうでありましたけれども、ひとつ全面的なドル安を避けるということのために各国が協調してドルの買い支えをしようという国際的な共同行動といいますか、いわゆる新聞に書いてあります協調介入、これは提案したんですか提案しなかったんですか。これは日銀にいたしましても政府にいたしましても、かなり神経を使って、前々からそういう方向を何とかこの会議でまとめたいという意向が非常に強かったようでありますが、結論的にはそれらについては触れられなかったと言うんですけれども、日銀にしても大蔵省にしても、BISの会議がそういうものは余り問題にならぬ会議であるというふうなことは、もう前々から御存じだったと思うんですね。それにもかかわらず、こういう提案をしようという意気込み、あるいはしたのか、その辺は具体的に私存じ上げませんけれども、その辺は一体どうなのか。せっかくそういう議論を出したけれども、それが通らなかった、あるいは問題にならなかったということは一体どうなのか、その辺が私ども非常にわからないわけでありまして、その辺の御説明をいただきたい。大蔵省の方もそれについてどう考えているのか。新聞によると、初めから無理だったというふうに反省しておられるようでありますけれども、その辺は一体どうなんでしょうか。
  114. 森永貞一郎

    参考人森永貞一郎君) 会議の性格が相互に情報連絡を緊密にして、できるだけ当面しておる問題についての思想統一を図ろうというようないわゆるロビー的な会合でございますので、具体的な提案をする場所ではないのではないかというのが私どもの会議の始まる前からの率直な印象、考え方でございました。しかし、諸外国がそこで顔をそろえておるわけでございまするので、ひょっとしたらそういう話も出ないとも限らぬのじゃないかというぐらいの感じで見ておったわけでございますが、先ほども申し上げましたように、一応の小康を得た状態のもとでございましたので、格別共同介入みたいな話が話題にならなかったというのが、率直な私の感想と申しますか、経過でございます。
  115. 坊秀男

    国務大臣(坊秀男君) やはり御指摘のように、思惑とか投機とかといったようなことは、これはないことはない。確かに人間のすることでございまするから、そういうことは絶無とは言えません。そういうことはあると思いますが、私どもといたしましては、できるだけいろんな情報というものを、むずかしいことでございますけれども収集をして、そして妥当なる相場というものを形成していくというために大いに努力をしてまいりたいと、かように考えます。
  116. 竹田四郎

    ○竹田四郎君 どうもよくわからないわけですけれども、何かそら頼みみたいな感じでありますけれども、日銀総裁にお伺いしたいのですが、そのBISの会議の後においても、実はきのうあたりのドルの動きを見ておりましても、円だけが高くなるんじゃなくて、他のポンドにしてもマルクにしても、かなり上がっていくような状況になっていると思いますね。きょうはどういう事情か私よくつまびらかにしませんけれども、そうなってみますと、日本が提案を持っていった協調介入の問題は、私は現在の段階ではどうも死んでしまっていない、むしろそういうことが望ましいような面があるのではないか。ドルの全面安というような事態というものは、今後起きてくるんではないだろうか。こういうことが、私の杞憂かもしれませんけれども、あるわけであります。そういうことは今後は起こらない、ブルメンソールが言っているように、ドルの価値はしっかりと維持されているんだと、こういうふうになかなか私は理解できないわけでありますけれども、総裁の御意見を承っておきたいと思うのです。
  117. 森永貞一郎

    参考人森永貞一郎君) 御承知のごとく、為替市場では毎日毎日いろんなルーマーが飛び交いまして、それが原因になって世界的に投機的な動きが毎日繰り返されておるわけでございまして、昨日もサウジが、いままではドルで石油を売っていましたのを、イギリス向けにはポンドにしてもいいというようなことを言ったというようなルーマーが流れまして、そのルーマーはきょうは否定されておるわけですが、きのうはそのルーマーでポンドがドルに対して強くなって、ほかの通貨もまたドルに対して強くなって、円も強くなる。それが東京市場にもあらわれたわけでございますけれども、そのルーマーは否定されまして、それに加うるに、きのうアメリカのバーンズ連邦準備制度の議長が両院の銀行委員会で、これは主としてマネーサプライの報告が主でございますが、その中で特に為替問題に言及いたしまして、ドルのこれ以上の低下を放置することは、物価対策その他の面から言っても非常なマイナスだということを非常に強い、激しい口調で警告したというような情報が伝えられまして、昨日は結果においてはドルが強くなり、ほかの通貨が少し弱くなったというようなことできようを迎えていて、きょうもその地合いが非常にあらわれておるわけでございます。  私は、このBISの会議での各国の反応、その少し前のブルメンソール氏のドルについての信認は決して低下していないという発言、さらにはまたきのうのバーンズさん、これはもう本当にバーンズさんの持論でございまして、何度もそういう発言が繰り返されておるわけですが、そういうことを総合的に勘案しますと、もうそんなにドルが弱くなるというようなことではなく、逐次安定に向かってくれるのではないかということをひそかに希望しているわけでございます。  もちろん、為替市場は市場でございますので、いついかなる事件が起こらぬとも限りませんので、的確に将来の予測をつけることはできませんし、また私の立場では申し上げるべきではないと思いますけれども、希望としては、もうこの辺で安定的な方向へ向かってくれれば大変いいがなあということをひたすら念願をしているということだけをお答え申し上げたいと思います。
  118. 竹田四郎

    ○竹田四郎君 ただ、私もドルが全面安になるということになりますと、恐らくOPECが石油価格を上げてくる、あるいはその他の資源を上げてくるということが非常におそれられるわけでありまして、また石油ショックの二の舞を演ずるということになりますと、これはまさに日本経済はえらいことになってしまうという心配をしておりますから、ドルの全面安ということはわが国としても無関心ではいられない、非常に深い関心を示さなくちゃならぬ、こういうふうに思うわけでありますが、いまも総裁の御答弁の中にありましたように、サウジがドルでなくてポンドで代金の一部を支払ってもらいたいというようなニュースも流れたことも事実であります。  また、アメリカ自体においても、たとえば長期の契約については、これは金の最でその価値を保証する金価値保証というような問題、俗に言われている金約款、こうしたものが上下両院で通った。したがって、何年か先にドルで支払うものは金何オンスのドルで払うというようなことになるだろうと思うのですけれども、そういう金約款というようなものがアメリカの国会を通ったということ自体、金を根拠にした金本位制を放棄し、また金の価値ではかるというその関係も放棄したということになりますと、どうも私は、アメリカ自体がドルに対して余り自信がないのではないのかという感じが深くするわけであります。  それに日本の円と違いまして、御承知のように、世界のどこでも一応ドルは通用するわけでありますし、日本のように外貨準備高ということで一定の枠というものがないわけでありますから、ベトナム戦争のときのように、いわゆるドルのたれ流し的な問題というものも起こり得る可能性が非常にあるわけでありまして、今日石油の大量輸入とか、あるいはカーター政権のもとの緊縮財政ではなくて、拡大的な財政措置をしていくということになりますと、私はドルの価値というものが下がっていくのではないか、ドルの減価という問題が起きてくるのではないか、こういう心配があるわけでありまして、それが起きてくれば、当然OPECの方は石油価格の値上げという形で出てくると思うのですけれども、そういう危険性というものは一体あるのかないのか。私は何かそんな感じがいたしますし、アメリカの国民も何か南ア連邦の金貨を大変集めているというようなニュースも聞かれるわけでありますが、そういうことの心配というものが私はあるような気がするんですけれども、これはどうなんでしょうか。これは総裁とそれから大蔵大臣と両方に承りたいと思います。
  119. 森永貞一郎

    参考人森永貞一郎君) 金との関連の問題につきましては、申しわけございませんが余り勉強いたしておりませんことをおわびする次第でございます。しかし、いまお話がございました、もしドルがこれ以上低落しますと、やはり石油の問題とかいろんな問題、国際的にも大問題になるわけでございます。のみならず国内的にもやはりコスト・アップ・インフレといったような問題になっていくわけでございますので、私は先般来の通貨関係責任者の言明を信頼いたしまして、そうやたらとドルが減価するような事態は避け得られるのではないかという期待を持っておりますということだけを申し上げておきたいと思います。
  120. 坊秀男

    国務大臣(坊秀男君) お答え申し上げます。  ドルに対する考え方は、私は森永総裁と全く一致いたしております。近ごろドルがスイスフランに対しましてもマルクに対しましてもドル安というような傾向、円に対してはもちろんのこと、そういったような姿を呈しておりますけれども、それがやがてアメリカドルに対して世界の信用が揺らいでしまって、そしてこれに対してドルがどんどん落ちてしまって、そして信用を失墜してしまうというようなことはまず私はないものというふうに考えます。  それから、例の金の問題、いま御指摘になった金の問題でございますが、アメリカの金約款法は金約款付債務契約を禁止した一九三三年の上下両院議決の効力を停止したものであると理解いたしておりますが、この法律の施行によって実際上私人間の、私同士の契約において金約款をつけるものがどの程度の数に達するかは予測困難でありますが、米政府当局も、金価格の変動がかなり激しい現状において、金約款付の契約が盛んに行われる可能性というものは、これは少ないであろうというふうに見ておるようでございます。このような状況下では、この法が日本経済に対して直接の影響を及ぼしてくるというようなことはまずないものというふうに考えております。
  121. 竹田四郎

    ○竹田四郎君 大蔵大臣に伺いますけれども、かつて廃止されていたのが復活したわけですね。それは一体どういう意味なんですか。そういう意味では、いままで金廃貨をやってきたアメリカドルとして、ここでそれを回復した、このことはアメリカのドルの価値というものがあるいは大きく変動をするのではないか。その際には、世界的により認められている金の価値で換算し直すと、これはやはりドルの価値の大きな変動がアメリカ自体で予想されている、あるいは経済界でもそれが予想されている、そういうふうに見ることはできませんか。
  122. 旦弘昌

    政府委員(旦弘昌君) ただいま御質問のございましたいわゆる金約款法でございますが、これは政府提案でございませんで、ヘルムス上院議員によって提案されまして十一月の一日から署名公布されたわけでございますが、この審議に当たりまして、アメリカの財務省から九月の三十日付でプロクシマイヤー上院銀行委員長あてに書簡が出ておりまして、その中で財務省のこの法案に対します見解といたしまして、「国際的に金の廃貨の方向が合意されており、又、金価格の変動が激しく、金約款付の契約が、事実上困難な現状から見て、同法案が、通貨制度に悪影響はもたない。」という見解を発表しているところでございます。したがいまして、この法案が通りましても、現実にそういう契約が行われる、あるいは金の価値が上がるということではないという意見でございます。  ちなみに、この法案は一九三三年にアメリカが金本位制を停止いたしまして、その直後にこの金約款付契約を禁止する法案ができたわけでございまして、今度はその禁止を解除したにとどまるわけでございます。その間、先ほど申しましたように、金を通貨の中心の地位から外すということがIMFの新しい協定改正におきましても認められておるところでございますので、金がいまや大きな地位は占めないということが確立された後にこの法案が通ったということでございますので、御指摘のようなことではないのではないか、かように考えております。
  123. 竹田四郎

    ○竹田四郎君 私はそうあってほしいと思うのですけれども、しかし、それは幾ら議員立法であれ、そういう必要性があることが判断されるから恐らくそういうものが国会を通過したと、こういうふうに思うわけでありますが、しかし今度の円高問題を中心として、私どもは自分の円のことばかり考えるのじゃなくて、やはりドルの減価という問題ももう少し私は政府も真剣になって考えてみたらどうだろうか、こういうふうに思います。  いまアメリカの貿易赤字、これはどのぐらいあって、そのうち石油の輸入によって一体どのぐらいの赤字を占めたのか。この点は大蔵省でしょうか、御答弁いただきたいと思います。  それから、委員長、日銀の総裁はもう結構でございます。
  124. 鍋島直紹

    委員長鍋島直紹君) 竹田君の質問にはこれで結構でございます。あとまた参考人にはよろしくお願いいたします。
  125. 旦弘昌

    政府委員(旦弘昌君) 申し上げます。  暦年で一九七六年の数字でございますが、アメリカの貿易収支の総額といたしまして、輸出が千百四十八億ドル、それから輸入が千二百七億ドル、差し引き五十九億ドルの赤字でございました。そのうち石油とその他に分けますと、石油の赤字が三百二十八億ドル、それからその他の黒字が二百六十九億ドルということになっております。なお一九七七年の上期で申し上げますと、貿易収支の全体の赤字が百二十五億ドル、石油とその他に分けまして、石油が二百十七億ドルの赤字、その他が九十二億ドルの黒字と、かようになっております。
  126. 竹田四郎

    ○竹田四郎君 特にアメリカの石油の輸入というのは、七六年の後半から七七年にかけて大変ふえたと思うのですが、これは新聞紙上ではアメリカの消費がふえたんだ、こういうふうに言っておりますが、アメリカは御承知のように国内でも石油が出るわけでありますから、国内生産を落すことによって輸入をふやす、いわゆる地下に石油を備蓄をするというようなことで、石油の輸入が非常にふえているんではないか、こういうふうに言われるのですが、特にアメリカが石油の備蓄をしているというような風評がございますけれども、これについては、国家備蓄をしているんですか、いないんですか。
  127. 橋本利一

    政府委員(橋本利一君) よその国のことでございますので的確なことを申し上げかねるわけでございますが、御指摘のように、昨年来アメリカの油の輸入が非常にふえておりまして、本年一−六月の平均で見ましても、一日当たり約八百八十万バレルぐらい輸入いたしております。一方、エネルギー全体としての消費も毎年伸びておりまして、大体四、五%程度、特にその中で石油だけについて申し上げますと、八ないし一〇%ぐらい上昇しているんじゃなかろうかということでございますが、一方、国産の原油あるいは天然ガスの生産が落ちております。かつて一九七〇年当時のアメリカにおける国内の原油は九百六十万バレル一日当たり掘っておったわけでございますが、最近では約八百十万バレルぐらいに落ちている。これは要するにエネルギーの需要が伸び国産の原油が落ちておるので輸入が非常にふえてきておる、こういうふうに見ておるわけでございます。  備蓄いかんの問題でございますが、これは、いわゆる地下で掘らないままで備蓄しているということでしたら、われわれ判断のしょうがございませんが、いわゆるアメリカの民間備蓄を私たちの利用できるデータで見てみますと、ここ一年ほとんど変わっておりません。それから御指摘の戦略備蓄、一九八〇年までに五億バレル積み増しをするという計画でございますが、これは七月から始まったばっかりでございます。一日当たり約十五万バレル程度の積み増しになっていくだろうと思います。そういったところからいたしまして、八百数十万バレルの全体の輸入の中で十五万バレルの戦略備蓄、このこと巨体はさほど大きな影響を持ってないんじゃなかろうか、かように見ておるわけでございます。
  128. 竹田四郎

    ○竹田四郎君 アメリカのことですから余り詳しいことはわからないだろうと思いますけれども、しかし今日の国際通貨の非常な混乱というものは確かに日本の黒字あるいは日米の不均衡、こういうことによる部分もきわめて大きいわけでありますが、私はアメリカのこの石油輸入というものがやはり今日の国際通貨の混乱の一つの大きな原因をなしていると思うのです。しかも日本の場合には、特に御承知のように、国内資源がないとなれば、これはやはり日本とすれば貿易をして、その黒字によって国民が生活をする、あるいは輸入をする、こういう国情なわけであります。  そういう意味では、いかにアメリカといえども、アメリカの勝手な行動で国際的な混乱というものが出てくる。今度の円高の問題についても私はかなりアメリカの円ねらいといいますか、円高ねらいというような行動があったように実は感じますけれども、やはり私は日本とアメリカがパートナーシップであるならば——これは総理もよく日米はパートナーシップだと、こう言っておるわけです。ならば、私は日本だけがブルメンソールやあるいはその他の人から非難ばっかり受けてそれに甘んじているということではなくて、アメリカのドルの性格というのは日本とまた違うわけでありますから、たれ流しができる、そういう仕組みになっておるわけでありますから、そういう意味では歯どめというものがないわけでありますから、そういう意味では、私は当然アメリカに対してもひとつドルの価値維持のために自省を求める、このことは日本の立場として私は当然言ってよかろうと思うのですけれども、こういうことを日本の政府としていままでやったのか、やった反応はあったのかなかったのか。その辺は、私はやはり円だけ責められるというそんなばかなことはないと思う。もう少しその点ははっきりとアメリカにも言うべきことは私は言うべきだ、こういうふうに思うのですけれども、これは総理なり大蔵大臣なりにお答えをいただきたいと思うのです。
  129. 坊秀男

    国務大臣(坊秀男君) いまの御指摘の御質問、私も同感でございます。やっぱりドルというものは世界の基軸通貨でございまするから、これはでき得る限り安定をしてもらわなければ日本も困るし、ほかの国も困るということでございます。そういうような関係から、今日よく非難されておりますことは、いかにもドル安、アメリカの赤字ということが、日本がアメリカへ輸出をして、日本が黒字を集めてしまっているというふうに言われますけれども、無論、私はそれは何ら責任がないということは申しませんけれども、それのみではないということは痛感いたします。アメリカが今日油を輸入しておるということにつきましては、これもそういうふうに聞いております。しかし、これに対しましてそれが一つの大きな、先ほど数字がありましたけれども、アメリカの赤字の大変大きな原因になっておるということは、これはもう避けがたい事実でございますが、それに対しまして、日本の方から直にアメリカの油の輸入ということに対しまして、それをおやめになったらということを、直にこれを言うということもこれはどうかと思いますけれども、いろいろとそういったようなことにつきましては、日本としてもアメリカに対しまして要請とか要求とかとそういうことでは私はないと思いますけれども、ありませんけれども、そういうようなことにひとつ考えたらどうかというぐらいの遠回しの、あらゆる機会にそういうことを話をしておるということだけは申し上げることができると、かように考えます。
  130. 竹田四郎

    ○竹田四郎君 総理に承りますが、やはり日本がこういう円高で非常に国民が苦しんでいるわけであります。そういう際でありますから、私はこの際、アメリカがドル価値の維持、アメリカの貿易バランスの維持のために、やっぱりアメリカも協力してくれということは、この際、パートナーシップであるならば、むしろ言った方がいいと思うのですが、いまの大蔵大臣のお話ですと機会あるごとに言っておると、しかも非常に遠回しに言っていると言うのですが、どうもアメリカ人はそう遠回りに言っても、わかってくれるかどうかわかりませんけれども、もう少し直截に私は言うべきだ、それは逆に日米の。パートナーシップというものを守っていくゆえんだ、こう思うのですが、どうでしょうか。この際、先ほども国際的に大きな発言をされておるわけでありますから、アメリカに対して私は発言をなさるべきだ、こう思うのですが、いかがですか。
  131. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) 国際通貨の安定は、これは赤字国、それから黒字国、双方に私は問題の根源があると、こういうふうに思うのです。そういうことから見ますと、今日のこの国際通貨の動揺、まだ通貨不安まではいっておりませんけれども動揺、これは黒字国であるわが日本にも責任はある、同時に赤字国であるアメリカにも責任がある、こういうふうに考えるわけです。その点はいま機会あるごとに強調しておるというふうに承っております。
  132. 竹田四郎

    ○竹田四郎君 機会があるごとにと言うのは、いまが一番いい機会だと思うのです、言うのには。だからこういう時期に、私は総理としてアメリカに対して赤字を余りふやさぬように言ういい時期じゃないでしょうか、言うべきだと思うのですが、どうですか。
  133. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) アメリカにはアメリカの事情がありましてああいう赤字になっておるわけですから、その赤字が出るその結果、国際通貨に動揺の一因を与えておる、こういうことについては、アメリカは、私はよく承知しておると思うのです。ですからいま大蔵大臣が申し上げたように、油の輸入をどうしたとかこうしたとか、そういう具体的なことは申し上げることは妥当ではないと、こういうふうに考えますが、アメリカは世界の基軸通貨であるところのドルの価値の堅持、これにつきましては最大の関心を払うべき立場にあると、かように考えます。
  134. 竹田四郎

    ○竹田四郎君 私どもは、そういう意味では、いまの段階ではやっぱりドルの全面安ということについては相当大きな関心を持つでそれを防いでいかなければならぬ、それがバーゼルのBISの会議で共同介入というものをやろうという、そういう考え方のあらわれだというふうに私は思っておりますけれども、そういう意味でひとつアメリカにも私は自省を求めたい、このことを切に政府に要求をしておくわけであります。  次に、大蔵大臣に伺いますけれども、日本の今後の円の相場というものは、大体この辺でずうっと推移をしていくと、こういうふうに考えてよろしゅうございますか。若干の波がありますよ、毎日毎日でありますから。大体いまのあたりで、さっきの日銀総裁のお話でも、大体の峠は来たような感じを私は受けたわけであります。大蔵大臣も大体そういうお考えでございますか。
  135. 坊秀男

    国務大臣(坊秀男君) 大変むずかしい問題でございまして、何とかしてこうありたいとかこうだとかというようなことは、これはだれしも関心を持つところでございますが、要するに、いまの相場の形成というものはフロート下にありまして、人為的に一つの点なり線なりというものを設けて、それに近づけていこうとか、そこで固定をしよう、そこで大体安定さそうといったようなことは、それはちょっとどうもできにくいことでございまして、やっぱり市場の勢いによりましてこれが決定していくということで、仮に私がここで大体このあたりでいいんだとかというようなことになりますと、日本がそこへ落ちつけていこうというふうな考えを持っておるというふうに相なりますと、大変これはまた相場の形成に影響をするというようなことでございますので、この点は、私がここで御質問に対してこうだということを申し上げることはひとつ差し控えさしていただきたいと思います。
  136. 竹田四郎

    ○竹田四郎君 いろいろ業界を指導されている大臣の方がいらっしゃると思います。通産大臣はもちろん中小企業、あるいは建設大臣は建設業界、いろいろ御指導をされている業界をお持ちだと思いますが、いまそういう業界が立ち行くために、一体幾らぐらいで君のところの業界はひとつ勘定しろ、こういうふうにお考えになって指導されているのか。恐らく指導されている以上は、今後うんと安くなるという、そういう目安もありません、高くなる目安もありませんということで私は業界を指導されているわけじゃないと思う。ある一定のこの辺の目安まではひとつやりなさい、だからそれまでに足りない金があったらひとつ貸してあげましょうと、こういうのが円の変動対策の融資制度とかいうようなもので私はあろうと思うのです。そういうものを、この関係大臣で一体業界を幾らぐらいの線までには耐えられるという形で指導なさっておるのか、通産大臣から順次その指導の内容と、一ドル何円くらいでそういう点を指導されているのか、ひとつお答えをいただきたい。
  137. 田中龍夫

    国務大臣(田中龍夫君) 大変むずかしい御質問でございまするが、と申しますことは、業界業界によりまして、たとえば海外への輸出関係にいたしましても、円建てで取引をいたしておるところと、それからドル建てでいたしておるところもございます。こういうところになりますと、またその中におきまする業界おのおのの強さの問題もあります。それからまた産地の関係におきまして、ただでさえ構造不況の中におきまして、さらに円高というものが大変深刻なダブルパンチを食っておるところもございますので、どの程度ということを一口に申し上げにくいのでございますけれども、私どもは幾ら幾らということをはっきりと決める、内定するというよりも、むしろ非常に変動がひどいということがやはり一番業界にとりましては深刻な打撃だろうと存じます。漸進的に来る場合はともかくといたしまして、急激にいまのような乱高下がありますことは、これはもう大変な問題でありまして、私の立場から申すならば、幾らならばということは責任上申せませんが、ただ乱高下だけはないように、たとえば円高になりましても漸進的ななだらかな変動を望む次第でございます。幾ら幾らということを申し上げることは非常にまたむずかしい問題でございますので、お答えをお許しいただきとうございます。
  138. 竹田四郎

    ○竹田四郎君 通産大臣、あなたがそういう意味じゃ業界指導では私は一番大きい立場を持っていると思うのですよ。それに乱高下はいけませんよと、これは言えませんよで、中小企業を指導できますか。大体この辺くらいの線まではあなたのところは耐えられるようにしろとか、それでなきゃ金を貸したって意味ないじゃないですか。ざるに水をくむようなもので、これだけ金を貸してやるんだから、この辺まではがんばれという、そういう目安というものがなかったら意味ないんじゃないですか。
  139. 田中龍夫

    国務大臣(田中龍夫君) ただいま、やはり行政にはつかさ、つかさがございますので、私の方は大蔵御当局なりあるいはまた通貨御当局の、申さなくとも十分におわかりのことでございますので、それに従いまして、私の方は商工行政、通産行政、内政の問題を担当さしていただきます。
  140. 竹田四郎

    ○竹田四郎君 どうもよくわからぬのですね。いま皆さんが一番困っているのは、円が一体幾らになるのか、円が幾らになったらうちの企業は引き合うのか、それまではひとつ下げられる、それ以上そういうようになったら今度は値上げをするとか、こういうことを聞かれるでしょう、通産省は聞かれないんですか、こういうことは。ぼくは聞かれると思うのですよ。そのときに、それはおっしゃるように、世界の通貨に非常な大きな影響を及ぼすというそういう発言はできないにしても、大体このくらいのところは耐えられるように、おまえの企業も努力してみろよと、そうじゃなかったら、おまえのところはこれは少し売る値段を上げろよと、そういうものというのは出さなければ、あなたの方で金を出すのも意味がなければ、またあなたの方の指導を受けている中小企業、あるいは中小企業でなくても大企業でもありますけれども、目安というものはわからぬじゃないですか、努力目標をどこへ置いていいか企業として見当がつかないじゃないですか、どうなんですか。
  141. 田中龍夫

    国務大臣(田中龍夫君) この間から申し上げておりますように、私の方といたしましては、円高対策の推進本部を設けまして、十一月の四日の日にも全国の通産局長並びに関係の各部局長が集まりまして真剣に討議をいたし、また具体的な金融対策あるいはその他の諸般の救済処置等をいたしておると同時に、また同日には金利を通利七分六厘を六分二厘に引き下げていただきましたし、そういう問題に対しましてあらゆる努力を払っておるような次第でございまして、このいろんな影響に対しましてはその対策に対しまして真剣に取り組んでおります。  かような次第でありまして、私どもが担当いたしておりますのは中小企業あるいは貿易産業、そういう問題でございまするが目下レートの問題等につきましては慎重に検討を進めてまいっておりまして、産地別にもいろいろの信用不安が起こりませんように大蔵当局あるいは日銀とも相談をいたしまして、中小企業のみならず中堅企業に対しましてもいろんな努力をいたしております。ただ円レートにつきましては、私の立場上、これはその御担当の大蔵当局なりあるいはその他の方面と緊密に御連絡をいたしまして善処いたしております。
  142. 竹田四郎

    ○竹田四郎君 大変長い御答弁いただいたんですが全然わからない。いま一番問題はそこじゃないですか。だから、そういう指導をしていますか、どうなんですか。ここで幾ら幾らということを言わなくてもいいですよ。君の企業は大体どの辺までは耐えられるようにしろ、君の企業はどのぐらいまで耐えられるようにしろ、そういう指導は末端ではしているんでしょう。金額を言いたくなければ言わなくてもいいですよ。あなたのおっしゃったことは、私はそれほどドルや円に直接は影響はないと思いますけれども、あなたがそのぐらい御心配になるんですから具体的な金額はいいですから、そういうふうに指導されているんですか、されてないんですか。
  143. 田中龍夫

    国務大臣(田中龍夫君) ただいまるる申し上げたように、細かい指導をいたしておりまするが、何しろ変動相場制でございまして、さような日々が変わるような状態、これに対しまする諸般の対策は、やはり御担当のつかさつかさの方にお願いを申しておる次第でございます。
  144. 竹田四郎

    ○竹田四郎君 私はそれでは通産行政の指導はできないと思うのですがね。通産省がそれじゃまことに日本の国民は頼りがないんですが、運輸省はどうですか。
  145. 田村元

    国務大臣(田村元君) 造船なんか円建てでやっておりますからいまさした困難もございませんので、十分これから慎重に検討いたしてまいります。
  146. 竹田四郎

    ○竹田四郎君 運輸大臣、私の質問をお聞きになっていたんですか。——もう一回申し上げますが、いま一番問題になるのは、一体一ドルが何円になるかということが企業をやる者としては大変な目安になると思うのですよ。だから、なるほど造船は円建てのところもあるでしょう。しかし円建てでないところもある。そういうときには一ドル何日くらいでとにかく企業が成立するのか。だからこのぐらいまでがんばれと、そういうような指導を運輸省として私はなさるのが当然だろうとこう思うんですよ。だから幾らぐらいをおおよそそのめどとして指導をされているのか、そのことをひとつお伺いをしているわけです。
  147. 田村元

    国務大臣(田村元君) 大変高級な御質問でございまして、ちょっと私もいま直ちにここでどのようにお答えをしてよいかわかりませんが、そのような指導を私自身はまだいたしておりません、正直のところ。しかし、今日の造船等におきましても、いかに円建てでもいろんな面で影響が出ておりますから、急速な円相場の変動というものは私どもにとってやはり困惑いたしておるということだけしかちょっといま申し上げることはできません。
  148. 竹田四郎

    ○竹田四郎君 建設大臣はどうですか。
  149. 長谷川四郎

    国務大臣長谷川四郎君) 大変むずかしい御質問でございますけれども、建設省といたしましては、所管公共事業はいずれも国民生活というものに密接な関係のあるものでございます。しかしながら、私の方は現在建設企業として使っておられる資材というようなものはほとんど国内産のものでございまして、いずれそういうような景気の変動等を見つつ適切な今後の処置を執行していきたい、こういうふうに考えております。
  150. 竹田四郎

    ○竹田四郎君 労働大臣どうですか。
  151. 石田博英

    国務大臣(石田博英君) 私どもの方では、去る七月に通産省の中小企業庁が調査をいたしました十一都道府県の十九業種につきまして、十月末現在のドル価格においてどういう影響があるか、その部門においてどれくらいの雇用量があってそれに対してどういう対処をしようとしているかという調査をいたしました。それは十月末の時点であります。その時点におきましてはまだ雇用に対する影響は出ておりません。しかし、御質問の趣旨の、幾ら幾らになるかというのはこれは私どもの所管ではございません。できるだけ安定を望みたい。その対応の仕方は、おおよそのめどといたしましては、現在は出ていないけれども、まず四つに分けて、十月末の時点でなお十分国際競争力のあるもの、合理化の余地があるもの、あるいは過去の蓄積である程度赤字に耐えられるもの、しかし最後にはやはり減産その他操業短縮等を要するもの、こういうふうに分けて見られると思います。したがって、現在では雇用に対する影響はありませんけれども、第四の段階のものについては、いずれ雇用調整というものが行われることがあることを想定しつつ現在対応の仕方を考えております。しかしながら、これはよく御承知だと思いますけれども、いわゆる構造不況産業の場合も同一でありますが、いま幾ら要るかというところまではわかるのです。しかしながら、健康体になるのにどれくらい減らせばいいかということは、労使関係その他の関係がございましてなかなかその数字を言うてくれないというのが現状でございますが、なお個々に分けてヒヤリングを続行しているところであります。で、出てきた状態に対応するのは、雇用安定資金を使用いたしまして構造不況産業に対するものと同様の措置を講ずるつもりでございます。
  152. 竹田四郎

    ○竹田四郎君 実は私、各大臣の答弁を聞いて、これで政府なのかなとし実はがっかりしました。少なくともこれだけ国民が困っているというのに、大体幾らぐらいまではがんばれ、それ以上になったら君のところはもう業種転換を考えなければいけないんじゃないか、その金については政府の方でめんどうを見てやろう、君のところもどのぐらいまではがんばれ、それ以上になったら幾らかそれは事業を縮小せざるを得ないだろう、そのときにはひとつめんどうを見てやる、こういう積極的な指導体制というものが全然ない。私は幾ら幾らということを各大臣ここで言ってくれなくてもいいと思う。少なくともこのくらいという、末端指導では大体その目安というものを言ってやる必要が私はあると思う。これじゃ全然国民は、幾らがんばって、政府が総合経済政策をやるなりあるいは来年度予算をこうすると言ったって、何をしていいのか、どこに目標を向けていいのか、まさにかじのない大海の船と同じようなさびしさというものをこれを私は企業はいま感じていると思うんですよ。経済がわかる福田さんの閣僚がこういうことじゃ私は困ると思うのですね。これじゃ指導できないでしょう。  ここで数字を言ってくれなくてもいいんですよ。あるならあると言ってくれればいいんですよ。そうすれば、その線に基づいて企業は、がんばるところはがんばるでしょう。業種転換をしなけりゃならぬところは私は業種転換に踏み切ると思うのです。せっかくいろいろな融資制度はできても、そういうめどがなければただ借金をたくさん負うだけですよ。借金奴隷に中小企業はなってしまって、業種転換も事業転換もできない、そういう方へ行ってしまうんじゃないですか。まあ賢い人は早く先を見るでしょうけれども、そう賢い人ばかり私はいないと思う。いま政府に求めているのは私はそういうことだと思うのです。どうなんですか、総理大臣。私聞いていて、私は事業をやっていないからいいけれども、きわめて頼りない政府だと、こう言わざるを得ないと思うのですがね。ここで私は数字を言ってくれとは言わぬですよ。あるかないか、それをおっしゃってくれただけでもいいですよ。それを明確にしてもらわなければ、幾ら金をつぎ込んでも、また幾ら努力をしても、私は今日のこの日本経済の危機を乗り切るということは非常に困難だと思うのですが、総理大臣どうですか。これじゃまことに大臣のところへ行ったって頼りないです。もう少しその辺を明確にしてもらわなきゃ困る。
  153. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) 先ほど通産大臣がるる申し上げましたが、どうも話が私聞いておってかみ合ってないんです。通産省におきましては、一ドル二百何十円の場合、何十円の場合、一体この業界はどういうふうになるだろうというようなことにつきまして、現地調査までいろいろやって、その影響度というものを調べて、それを基本にいたしましていま円高の諸対策を進めておるわけなんです。この具体的な客観的事実を、円高がどういうふうに響いているかという、そういうことをよくとらえて、それに基づいていろんな対策を進めておると、こういうことでございまして、まあ話がちょっとかみ合いませんでしたが、やっていることはそのとおりのことをやっておる。  ただ、一つ一つの業種になりますと、同じ貿易会社でありましても、輸入が二割か三割しかないが輸出の方が六割、七割と、こういうような輸出ウエートの多いもの、これは非常に平均的な影響よりは多いわけでございます。逆に輸入の方が多い、輸出が少ないというようなものにつきましては、そういう貿易会社はいい影響を実は受けると、こういうことになり、輸出輸入がとんとんだというような企業につきましては、この為替影響はそうは受けておらぬ、こういうようなこともあり、一つ一つの企業について見ますると、受けるところの影響はこれはばらばら、まちまちでありまするけれども、総体としてどういう深刻な状況であるかということにつきましては、通産省においてつぶさにそれを検討いたしまして対策を立てておる、こういうことでございます。
  154. 竹田四郎

    ○竹田四郎君 通産大臣総理の答えの方がよくわかる。あなたの御答弁聞いてもちっともわからぬ。総理の答弁なら、ああそうかなあ、かなりやっているなあと。しかし通産大臣のさっきの答弁じゃ、これはとても私は納得できないんだ。幾らそれは私の言い方が悪かったかもしれませんけれども、その辺はもう少し明確に答弁しなけりゃ通産省は見捨てられますよ。通産省じゃなくて通産大臣が見捨てられますよ。もう少しその辺をひとつわかるようにしていただきたいと思うのです。  問題を次へ移しまして、いま非常に国際収支の中で問題になっているのは、経常収支だけが非常に強く言われているんです。これは先ほど下条委員もその点に触れられたわけでありますけれども、為替相場は私は経常収支だけで決まっていくものじゃないと思うのですよ。資本収支等もこれはやっぱり全体として影響されていくんだろうと思うのです。そういう意味では、もう少し基礎収支も含めての対策。これは円建て外債なんというのは一つそういう面であろうと思うのですけれども、もう少し早急にできるものとして外国為替銀行の対外債務ですね、こういうものはもう少し何とかならぬものですか。いま短期の対外債務でも、政府の方からの資料によりますと、二百四十七億ドルぐらい持っているわけですね。日本で借りているものが百二十億ドルぐらいでございますか、そうすると、その差額というのは大変な差額なんですね。三分の一それを整理したところでドル減らしには私は大変役に立つと思う。全部返してしまったらもうとんとんくらいになってしまう。こういう状況に私は数字の上ではなると思うのですが、どうしてそういうことがもっと積極的にされないんでしょうかね。もう少しその辺に、銀行にも協力を求めるし相手側にも協力を求めるというようなことが、私はもう少しできそうなものだと思うのですけれども、これは何でできないんですか。そういう面での資本収支あるいは基礎収支によるところの黒字減らしというのは全然関係ないんでしょうか。その辺はどんなふうにやっているんですか。これは大蔵省でしょう。
  155. 坊秀男

    国務大臣(坊秀男君) 外為銀行の収支等につきましては、国金局長からお答えさせます。
  156. 旦弘昌

    政府委員(旦弘昌君) ただいま御指摘のように、長期資本収支は経常収支の外にありまして、それを加えましたところで基礎収支ということになるわけでございますけれども、いま御指摘の為銀の短期の債務は基礎収支も関係ございませんで金融勘定になるわけでございます。  しかし、御指摘のありましたように、日本の為銀の対外ポジションが非常に負債が多いということはおっしゃるとおりでございまして、数字も九月末のところで、御指摘がありましたように二百四十七億ドル短期の負債を持っております。同時に、他方資産を持っておりまして、それが百二十九億ドルでございますから、差し引きのネットのポジションは百十七億ドルの負債超になっておるわけでございます。したがいまして、ちょうど九月の末には外貨準備は約百七十八億ドルでございましたけれども、もし何らかの為替上の混乱が起こりましてこの短期の債務を返さなくちゃいかぬというような事態が起こりますと、差し引きといたしまして外貨準備からそのネットの負債を取りましたところは六十一億ドルしか残らないというのが現状でございまして、ドイツなどに比べましてもその辺のポジションは非常に日本は弱くなっておるということは御指摘のとおりでございます。  これに対して、御質問の御趣旨は、こういうような多額の短期債務は何とかならないかという御指摘であろうと思いますが、全くおっしゃるとおりでございまして、ただこれは短期金利の問題でございますので、ユーロの金利の方が国内金利に比べまして安いときにはそちらに行きがちなわけでございます。けさほどもお話の出ましたように、この夏ごろから日本短期金利が下がってまいりましたものですから円シフトが始まり出したわけでございます。ちょうどそういうことでこの為銀のポジションも改善に向かうやさきであったわけでございますが、その後円高の問題が起こったものでございますから、その円シフトが一応いま足踏み状態であるということでございます。おっしゃるように、このポジションは改善されるべきでありますが、円高の趨勢がとまりますれば再び円シフトが起こる可能性がございまして、そうなりますればこのポジションも改善されていくんではないかというふうに考えます。  問題は、したがいまして、どうしてこの円高の傾向が終わるであろうか、どういうふうな対策をとるべきかということでございまして、それにつきましては対外対策の推進が根本ではないかと、かように考えております。
  157. 竹田四郎

    ○竹田四郎君 私は確かに論理的にはおっしゃるとおりだと思うのですけれども、やはりいま日本が集中的に円高の攻撃を受けている時期でありますからね、為銀だって日本の銀行なんです、大部分が。そうなれば私は日本の国益のために銀行も、そのぐらいの努力はしてみてもいいと思うのですよ。われわれには何かあそこが聖域であって、一生懸命経常収支、経常収支でそっちの方ばっかりやって、先ほどみたいに総理大臣がいじめられる結果になっちゃうのですけれども、その辺も何か措置が私はできないことはないと思うのですが、これは総理大臣、少し措置をして、やはりドルのたまっているというものを軽くしていく、このことが必要じゃないですか。ただ自然現象に任せておくべきでは私はないと思うのです。総理大臣、どうでしょうか。
  158. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) お考えは私も理解もできまするし、そのように考えるべきだと、こういうふうに思います。ただこれは長いいきさつがありまして、戦後とにかくわが国が発展してきておる。その背景はいろいろありまするけれども、一つの背景はアメリカの銀行から借金をした、それで日本経済が泳いできた、こういう経過があるわけです。わが国為替銀行といたしますと、有事の際にアメリカから借りるような立場にあるわけでありまして、この良好なる両国の為替銀行間の関係、これを維持したいという気持ちはこれは各為替銀行にあると、こういうふうに見られるわけであります。  そういうことで、いま金利関係日本は安い、アメリカは高いと、こういう高いところから借りるというようなことですね、これは不自然な状態でありますから、自然にそれは是正されていいんです。いわゆる円シフトというのが起こっていいんです、起こるべきです。また起こる傾向にあったわけでありますが、いま円高問題がにわかに起きまして、円シフト、その傾向がいま阻止されておると、こういう現状でございますが、アメリカと日本との為替銀行間の長い歴史を見ますると、そう急にアメリカからの借り入れ超過という状態を消すというのはなかなかむずかしい。しかし、その円シフト等を通じまして逐次これを是正する、これは私は考えていかなければならぬ問題である、そのように見ております。
  159. 竹田四郎

    ○竹田四郎君 これは私は全部をやってしまえと、こういうわけじゃありませんよ。少しずつがまんしてもらえれば、こういう時期でありますから私は日本の黒字減らしの一環としてやっぱりそれをちゃんと取り上げてもらう。それを百億ドル全部ここで消してしまえというようなそういうことは私も考えておりませんです。しかし黒字減らしには私は大変役に立つ。そういう意味でこれはぜひひとつ検討をしていただきたいと、こういうふうに思います。  それから、この際ですが、日本の対外援助ですね、これはいつも、政府の特に開発援助、これについては諸外国からも日本はどうも自分の国の商品は売るけれどもひもつきでない対外援助というのは少ない。これは恐らく他の国に比べても私は政府の開発援助というのは少ないと思うのです。こういう際ですから、私はそういうものをやりまして開発途上国の産業、経済というものを引き上げていく。これも余り近視眼的に、日本の商品を買わなければ金を出さないというような、そういうことであっては私はならぬと思うのです。長い目で見ればそうした開発途上国も日本の広い意味での市場になり得るわけであります。いまはそれが市場になり得ていないというところに今日の厳しさというものがあるわけであります。この際、対外援助とかあるいは日本が納めるべき国際的な金融機関、こういうものへの拠出、こうしたものを私は積極的にやっぱりやっていくべきだ。そしてその援助もひもつきでないものにしていく、こういうふうに私はやるべきだと思うのですけれども、これはいつも予算委員会のときには、ことしはこれだけ積みますよと言っても、実際の決算のときになるとぐんと低くなる。あるいはこれはアンタイドでいきますと言っていながら実際アンタイドのものは一割か二割であとは全部日本商品を出してしまう。こういうことじゃなかなか私は納得されないと思うのです。だからこの際、そういうものも思い切って、ドルはあるわけでありますから、私はやるべきだと、こういうように思いますけれども、これは総理どうですか、かなり積極的に私はやるべきだと思いますが。
  160. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) 資本収支の面におきまして重要な課題は、対外経済協力の問題であると、こういうことは御説のとおりでございます。そこで、政府の方では対外経済協力ですね、これは予算を伴うものですからこれはおのずから制約がありまするけれども、とにかく予算で計上しておると、こういうものにつきましては積極的にどんどんやっていこうと、こういう考えで進めております。お話がありましたが、予算に組みましても残がずいぶん出るのです。そういう状態はことしはひとつなくしていこうというのでかなり作業は進んでおります。  それからタイド、アンタイドの問題でありますが、これもかなり改善はされてきております。特別の事情のないものはひとつアンタイドだと、こういうような方針で、これからもさらにアンタイド化を進める、こういう考えでございます。
  161. 竹田四郎

    ○竹田四郎君 これは外務大臣なり通産大臣、どちらかになりますけれども、来年のそうした政府開発援助に対する希望ですね、途上国の希望、こういうものはかなり来ているんですか。それとももう日本からの援助はひもつきだから余り要望は来ていないというんですか。どうなんですか、その辺。
  162. 鳩山威一郎

    国務大臣鳩山威一郎君) 諸外国の要望は、これは大変大きなものがございます。ただ要求という形で取りまとめたものはないのでございますけれども、諸外国のわが国に対します開発援助の増大の要望は大変大きいものがあるというふうに私どもは考えております。したがいまして、来年度の予算につきまして、私どもは極力、五カ年間に倍増以上ということを宣言してあるわけでありますけれども、私どもはその倍ということよりももっとスピードを速めてふやしてまいりたいと、かように考えております。
  163. 竹田四郎

    ○竹田四郎君 ぜひ私はこれはやっていくように大蔵省もひとつ予算を組んでいくという態度を持ってもらいたいと思うのですが、大蔵大臣どうですか。
  164. 坊秀男

    国務大臣(坊秀男君) 非常に大事なことでございますが、その内容をよく説明を受けて、そして善処をしてまいりたいと思います。ただ要求があったから組むというものでなくて、効果だとかあるいはその内容だとか、そういったようなものについて、ひとつよく相談をいたしましてまいりたいと、かように思います。
  165. 竹田四郎

    ○竹田四郎君 総理大臣に伺いたいと思うのですが、日本のこういう現在の経済的な危機、これは先ほどあなたもおっしゃっておられたわけでありますけれども、民間設備投資はだめだ、輸出はだめだ、こういうふうになりますと、結局内需の拡大、これがどうしても一番大きなことにならなくちゃならないわけでありますが、内需の拡大ということをもう一つ言い直していけば、恐らく個人消費支出を大きくすること、あるいは財政的な支出を大きくしていくこと、まあ公共事業というようなことになるわけでありますけれども、ただ内需内需と言っても、私は一つのやっぱり方向というものがあるんではないだろうか、こういうふうに思うんですよ。来年度は恐らく内需拡大のための刺激的な予算を計上するということになると思いますけれども、これも、ことしにいたしましても公共事業はかなり組んだ。組んだけれども、最終的には円高というような問題も起きまして、経済はそれほど向上しなかった。あるいは内需を引き起こすことによって今度は民間設備投資をふやしていく、稼働率を高めていく、こういうようなことになっていくわけでありますが、その際も、どういう業種の稼働率を上げていくのか、これはやっぱり輸出の問題、こうしたことにも私は大変大きな影響が出てくるし、今後の日本経済構造というものを考えても、どこに重点を置いていくのか、これはやっぱりいま考えてみなくちゃいけない。ただいたずらに何でも景気を上げればいいということではなしに、石油ショック以来のこの不況の中で、日本経済構造自体がかなり変わりつつあることは事実だと思うのですね。そう考えてみれば、これからあるべき日本経済構造に沿うた形での内需の拡大、あるいはそれに相応していくような産業構造の変換、こうしたものをやはりいま考えていくべきであると、こういうふうに思うのですよ。たとえば不況産業あるいは円高によるところの産業に対するいろんな融資制度はあるわけでありますけれども、こういう融資制度も将来の産業構造を考えながら転換をしていく、こういうふうにしなければ、幾ら金をかけてもこれは仕方がないと思うのです。その辺のお考え方は基本的にまだ具体的にはなっておらないと思いますが、基本的に総理のお考えを聞いておきたいと思います。
  166. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) これからの経済政策の運営は、まさにそういう考え方でやっていかなけりゃならぬだろうと、こういうふうに思います。それで産業構造審議会でこれからの産業構造をどう変えるかということを勉強しておりますが、その検討を見る必要もあるんです。しかし、その検討を待たず、いま構造不況業種というのが出てきておるわけです。これはもう目の前にそういう問題が出てきておるわけなんです。その構造不況業種につきましては、一つ一つ一体稼働率をどの辺を適正とするかというようなことをいま調べております。もう大方調べができ上がっておりますが。その調べに対しまして、当面カルテルを一体どうするんだと、また設備稼働の制限をカルテル等を活用した上どうするんだと、こういうような調整をやっておるんです。それから、そういう調整と同時に設備の廃棄までしなけりゃならぬ、こういう業種もあるわけなんです。それに対しましては設備廃棄政策を進める、こういうふうにしているわけですが、特殊なものにつきましては、そういう特殊な措置をしながら、全体として日本経済のかさ上げをしなけりゃならぬ、こういうふうに考えまして、いままでのような高度成長ではございませんけれども成長政策はこれをずっと続けていく、こういう考え方で、この間の二兆円施策、こういうものもそういう考え方に立脚しておる、このように御理解願いたいと思います。
  167. 竹田四郎

    ○竹田四郎君 時間がなくなりましたから、あと円高差益の関連問題について二、三承りたいと思うのですけれども、何か円高で損ばかりしているような話が新聞紙上は多いわけでありますけれども、しかし円高でもうかっている企業というのは、また一方では大変あるわけです。この間のある新聞によりますと、日本石油の九月の中間決算においては経常利益が百五十七億円あった。そのうち実に為替差益によるところのものが百三十八億円の利益を上げていた。これは大変なものです。経常利益のほとんどは為替差益で利益を上げている。あるいは電力九社をとって見ますと、一年間に二百六十円ベースでいった場合には七百四十一億円の利益がある。あるいは東京、大阪、東邦瓦斯の三社で百三十九億円の利益がある。そのほかいろいろな利益を上げている状態であります。大蔵省に頼んだ資料でも、特に石油関係の化学工業なんかの利益の上げ方というものを見ますと、去年の二倍から三倍、こういうような申告所得が出ているわけです。これには金利引き下げというものもかなり作用をしているだろうと私は思いますけれども、いずれにしても、金利引き下げにいたましても、あるいはこの円高にいたしましても、その企業の努力によってそれだけの利益を得たわけではない。不労所得と私は言ってよかろうと思う。片一方ではこんなにみんなが円高で企業がつぶれ、あるいは仕事を奪われるというのに、片一方ではぬくぬくと巨大な利益をむさぼっているということはこれは国民のお互いの公平という立場からも、これは私は許せないことだと思うわけであります。こういう利益を得たものに対しましては、私はこの際、かつて行った臨時利得税、こうした税制を復活させて、当然そういうところからの為替差益なりあるいは金利引き下げによって得られた巨額な利益に対しては、私は当然それは税金によって国に吸い上げるべきだと、こう思うのです。これはどうでしょう。
  168. 坊秀男

    国務大臣(坊秀男君) お答え申し上げます。  円高によりまして、御指摘のように大変それによってもうけた企業があるということは、これはもう言うまでもございません。そういったようなものと、他面におきましては、これまた損をしたという会社、企業がございますが、そのもうけた会社につきましては、当然円高によろうが何によろうが、これはその企業の益金として税法上は計算されます。それからまた損をしたという場合には、これは損金として計算されます。したがって、そういった損益につきましては、それぞれ、益金に対しましては税が課せられる、損金に対しましては損金勘定ということになるということでございまして、そういったような場合に、ひとつ益金、損金を決めていくためには、一つの、いまもおっしゃられましたが、標準というものが、水準といいますか、それが決められなければならない。税法上そういったような標準を決めるということにつきましては、これは一つの大きな問題があろうと思います。そういうようなことで、この為替円高により損をした得をし、たということに対して、特に税法でもって決めていくと、税法でもって措置をしていくということにつきましては、相当これは考えなければならないということで、ただいまはそれを実行しようということは考えておりません。ただ問題は、こういったような為替相場による損益というものは、これはやがてまた市場の実勢というものによってこれが調整されていくということは申すまでもございませんが、いま円高によっての損得に対しまして税をかける、あるいは法人税以外に新たに屋上屋を架するというようなことについてはただいまは考えておりません。
  169. 竹田四郎

    ○竹田四郎君 これは納得できないですね。片っ方ではこんなに苦しんでいるのに、片っ方ではその利益を普通の法人税に基づく以外はもう納めない。こんな不公平というのは私は許すわけにはいかぬと思うのですよ。これは何らか別個な形のあり方もぼくはあると思うのです、税法だけではもちろんないと思います。まず、一番いま財政の逼迫しているときに、私はやはり国の国庫にそうしたもうけは入れていく。そうしてみんなの生活が成り立つように、私はそこがいま一番やるべきことだと、こういうように思うのですよ。総理、そういう不公正を認めておいて、これから皆さんがまんしてくださいよ、税金も上げますよというのを承知しますか、私は承知しないと思うのですがね、そのぐらいのことをやらなければ。どうですか。
  170. 倉成正

    国務大臣倉成正君) ただいまの税の問題については大蔵大臣からお答えがございましたが、円高による輸入品価格の低下を、効果を国内の販売価格に反映させていくということは当面の物価対策の重要な課題でございます。総理からもしばしばこれについてしっかりやるように御指示をいただいているところでございます。そこで卸売物価の点につきましては、ことしの一−九月でとりましても、為替要因で低下した比率がマイナスの一%ということでございます。卸売物価についてはかなり円高が原材料の輸入価格の低下に寄与していると考えております。そしてまた同時に、卸売物価に関して申しますと、これは原材料の輸入、石油であるとかあるいはその他の原材料の需要者の方がかなり大手が多いわけでございますから、この両者の交渉に任しても十分円高の効果が反映されると考えておるわけでございますが、消費財につきましてはなかなか消費者の方は十分な情報も持ちません。したがって、これをそのまま任しておくのではなかなかうまくいかないということで、政府としてできるだけこれを反映するように努力しておるわけでございます。  そこで、具体的に申し上げますと、先般三十六品目について、昨年の十二月とことしの六月と比較した輸入品価格の動向調査をいたしまして、輸入価格、小売価格ともに下落したものが腕時計、木材、配合飼料、乗用車、カラーフィルム、書籍、雑誌等がございます。しかし輸入価格上昇にもかかわらず、小売価格の下落または横ばいのものがそのほか十一品目等ございますけれども、残念ながら輸入価格は下がったにかかわらず、必ずしも小売価格が下がってないというものが幾つかあるわけでございます。これらについては、それぞれ国内の需給関係であるとか、高級品として定着したとか、いろいろな問題がございますけれども、これらの問題についても、なおこれを並行輸入その他を活用することによって下げていくようにという努力をいたしているところでございます。  この調査を発表いたしました後の動きとして、配合飼料について工場建て値、トン当たり六万四百円が五万五千四百円と五千円ほど九月から下がりました。それからウイスキーはジョニーの赤で三千七百円から三千二百円というのが……
  171. 竹田四郎

    ○竹田四郎君 時間がないから細かいことはいいですから、後で書類を見せてください。
  172. 倉成正

    国務大臣倉成正君) はい。それではその後の動きが、配合飼料、ウイスキー、木材、グレープフルーツ、カラーフィルム、自動車、書籍、灯油等についてございますが、政府に関する物資としては、たばこの値下げ、それから牛肉、航空運賃、医薬品等がございます。これらについてそれぞれ値下げをいたしました。同時に電力、ガス料金については、為替差益を今後できるだけ長期間現行料金で維持するためにこれを活用していく、そういう方針でございます。
  173. 竹田四郎

    ○竹田四郎君 これは下がるのはあたりまえであって、物価が少しぐらい下がったからそれで不公正は解消されたというふうに私は思いません。そういう意味では、そうした円高による差益、これは国民全体に還元するのは私はあたりまえだと思います。これについては時間がありませんから余り論争をしませんけれども、総理はぜひそのくらいのことはして、片っ方ではその三〇%を守れるかどうかわからぬというそういう苦しいときに、これは差益によってうんともうけたそういうものをそのまま見過ごしておく。若干卸売物価を下げた、あるいは消費者への価格を下げたからそれでいいと、これじゃ国民は許さないと思うのですよ。この辺はとにかくひとつ検討してもらわなければいけない、こう思います。  それから、これは農林大臣に時間がありませんから聞きますけれども、一般の企業に為替差益が出たからおまえら下げろ下げろなんて言ったって、政府が差益を得ているものを自分のところは知らぬ存ぜずでおまえら下げろ、おまえら下げろと言ったって、これはなかなか国民もまた納得しないと思うのですよ。農林省はこの輸入外麦の差益というもの、これは私はかなりこれから期待できると思うのです。しかし、これは米の問題がありますね、国内の過剰米の問題がありますから、それとの調整を私はやらなくちゃいかぬと思う。だから一般的にいますぐやるかどうかはこれは別として、私は前にも提起したことがありますけれども、食糧庁の方で学校給食会に米麦を相当程度渡しておりますね。これは学校給食会でもそれは受けていると思う。米についてはたしか一般の価格の三五%引きで学校給食会には渡していると思うのです。だから、私はまず麦の問題もそれをやってみたらどうか。そして現在の米と麦のこの関係は、枠はある程度そのままにしておいて、やっぱり小麦の値段を下げてプールする。これは文部大臣はできると思うのですけれども、そういう形によって、やはりまず、その場合にもいろいろやり方があると思うのですが、私は学校給食費をそれによって引き下げていく、これはできないことはないと思うのです。政府みずからがそういう形で下げていくことによって、やはり私は民間ももっと値下げをしなさい、こういう指導ができると思うのですが、自分の方は下げないでいて、おまえたちだけ下げろと言ってもこれはなかなか納得できないわけでありますから、私はやり方によってはその辺からまず手をつければつけられないことはないと思います。前にも私はその点は全然例がないとは思いません。努力はした点はあると思うのですけれども、ぜひひとつ農林大臣の方からそういうことをやって、文部大臣もそれを受けて、やっぱり食糧庁にそういう要求をしていくことによって、円高差益を還元していく手はあると思うのです。私の案はごくわずかなものです。もっといろいろなことができると思うのです。そういうことをやるべきだと思うのですが、農林大臣と文部大臣、どうですか。
  174. 鈴木善幸

    国務大臣鈴木善幸君) 麦の売り渡し価格の決定は、御承知のように食管法によりまして外麦のコスト価格あるいは内麦のコスト価格、米の消費者価格、そういうものを勘案をして適正に決める、こういうことに相なっております。したがいまして、外麦の値段がこれは上がったり下がったりするわけでありますが、その外麦価格の高騰あるいは円のレートの問題、そういうものが直ちに政府の食管からの売り渡し価格にストレートで反映をさせるという仕組みには相なっておりませんことは竹田さん御承知のとおりでございます。  かつて昭和四十九年、外麦が非常な高騰をいたしました。その際、一般会計から千四百億食管に投入をいたしました。翌年の昭和五十年にも八百億入れておるわけでございます。そういう状況でありますけれども、これを直ちに麦の政府売り渡し価格にそれを反映をさせるということはいたしておりません。できるだけ安定的に、米価あるいは国内麦価等との関連等を考えましてやっておるのが食管の問題でございます。  そういうようなことで、いまそういう背景の中で、竹田さんが学校給食のために麦の払い下げをもっと安くしたらどうかと、こういう御指摘、これはおっしゃることも私はよくわかるわけではございますけれども、しかし、御承知のように米の消費拡大、米の需給の均衡ということがいま最大の農政上の課題になっておるということで、私は学校給食等におきましても文部省の御協力を得まして、米飯の導入をもっと、週一回は二回、二回は三回というぐあいにやっていきたい、こう考えておりますわけでございまして、私は、いまバランスがとれておるところの学校給食における主食の米と麦の値段、これは三五%の米の値段を割り引きずることによってバランスをとっておるわけでありますが、そのバランスを崩してまでこれをやるということはいかがかと、むしろ私は米の消費拡大等のために米飯の導入ということを積極的にやっていきたい、このように考えておる次第でございます。
  175. 海部俊樹

    国務大臣(海部俊樹君) 農林大臣がいろいろ申されたとおりでございますが、文部省といたしましても、食管会計から製粉会社が外麦を買いまして、それを製粉して、それが全国一律に低価で安定的に供給できるように十一億六千万円の補助政策をとって、安定的にいくようにしておりますが、さらに米食給食の重要性等をいま十分考慮いたしまして、そちらの方にも全力を挙げていきたいと、こう考えておるところでございます。
  176. 鍋島直紹

    委員長鍋島直紹君) 関連質疑を許します。対馬君。
  177. 対馬孝且

    ○対馬孝且君 いま農林大臣からお答えを願いましたが、私は先ほど来から政府側の答弁を聞いておりまして、本委員会でも再三、還元を消費者に回してもらいたいと総理にも訴えました。流通機構にぜひメスを入れてもらいたい、これも訴えました。端的にいまの小麦の問題を申し上げますが、これは十月十三日現在で五十二年度の食管会計のレート問題を調べてまいりましたが、小麦の国際価格の値下がりを含めまして六百億の負担が軽減をされているわけです。これでいきますと、差益の関係では百五十億、それから国際小麦の価格の値下げによるものが四百五十億——六百億ですから、いま現在日本へ入っておりますのが四百五十万トン、これを割ってみますと、大体一トンにつきまして一万三千四百二十八円に結果的には値下がりができると、こういう答えが出るわけであります。これを一斤当たりに直してみますと、二百六十三グラムに直してみますと三円五十八銭下がることになるわけです。つまり食パンの八枚入りが大体四円下がると、こういう答えが出るわけですよ。
  178. 鍋島直紹

    委員長鍋島直紹君) 時間が来ましたので、簡単に願います。
  179. 対馬孝且

    ○対馬孝且君 それをひとつ何とか消費者の方に下げてもらいたい、こういう答えになるわけで、この点ひとつ農林大臣実質的にこれを先ほども申しました給食の関係に生かすことができるんではないか、こういう点を具体的に私は申し上げたいわけです。
  180. 鈴木善幸

    国務大臣鈴木善幸君) いま対馬さんから計算をされた結果の御発表がありましたが、そのとおりでございます。そのとおりでございますが、先ほど来竹田さんにもお答えをしておりますように、国際麦価が上がった下がった、あるいはレートがどうなったということを一々その都度反映をさせるというような仕組みにはなっておりません。なるだけ食管制度でそういう乱高下というものは遮断をして、そして米価その他とにらみ合わせ、また国内の麦価のコスト等をにらみ合わせながら価格を決めていきたい。ことしの米価を決めました際に、直後に麦価も上げろというのが農業団体から、米の消費拡大の見地からそういう強い要求があったわけであります。しかし、私はいま御指摘になったように、国際麦価の動向あるいはレートの動き、そういうことがございますので、今日までその値上げをしないできたと、これは消費者のことを考えた結果でございまして、その点につきましては、十分私どもも考えておるということを申し上げておきます。
  181. 対馬孝且

    ○対馬孝且君 学校給食の分だけは一斤四円下がるんですから、その分だけは生かして初めて民間サイドに、やっぱり政府みずから身をもって下げたと、これが手本を示すことが私はいま一番大事なことだと、こう思うのです。総理、その点ひとつそういう体制をとるように指導願いたいと思うのですがね。
  182. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) まあ給食ですから、米価を下げるがいいか、あるいは麦価を下げるがいいかと、こういう問題もあろうと思うのです。とにかく食管制度というのがありまして、長期にわたって安定的に学童に給食をすると、こういうたてまえでできておりますので、なかなか流動的な活用というのはできない。その点がまた国民の見ておる常識的な見方、そういうものと合わないと、こういうような点もあるかもしれませんが、まあよく考えてみます。
  183. 竹田四郎

    ○竹田四郎君 どうもありがとうございました。(拍手)
  184. 鍋島直紹

    委員長鍋島直紹君) 以上で竹田君の質疑は終了いたしました。     —————————————
  185. 鍋島直紹

    委員長鍋島直紹君) 次に、鈴木一弘君の質疑を行います。鈴木君。
  186. 鈴木一弘

    鈴木一弘君 国際通貨基金が昨年の四月三十日に総務会で第二次改正案を承認しました。わが国は昨年五月二十四日に国会で承認をして、そうして六月十八日にIMFに対して受諾の通告をしておりますが、まだこの第二次の改正案が発効に至っていないようでありますけれども、実情はどうか、まず伺いたいと思います。
  187. 旦弘昌

    政府委員(旦弘昌君) 十一月四日現在で第二次協定改正の批准状況でございますが、五十八カ国、総投票権数の五八・九三%でございます。なお、発効要件は、八十カ国で、投票権数で八〇%以上ということでございます。
  188. 鈴木一弘

    鈴木一弘君 アメリカ合衆国はこれは承認をしておりますか。
  189. 旦弘昌

    政府委員(旦弘昌君) アメリカ合衆国は昨年の十一月の十七日に批准書を寄託いたしております。
  190. 鈴木一弘

    鈴木一弘君 この改正の中では、秩序ある為替取り決めを確保し、安定した為替相場制度を促進するため、他の加盟国及び基金に協力する義務を負っているということが明記されております。その中に、自分の国の事情を考えながらその政策を秩序ある経済成長を促進する目的に向けるように努力する、秩序ある基礎的諸条件及び不規律な変動をもたらすことのない通貨制度の育成により安定を促進するように努力する、国際収支を調整する過程においてないし競争上の優位を得るため他国より自分の方が優位を得るということのために為替相場を操作することはしな、この義務と両立する為替政策を実施しろと、この二とを守るかどうかについて監督を行うというようにあるわけであります。これから見ると、アメリカが、まだこれは発効はされておりませんけれども、少なくも受諾をし、その通告をIMFにしたとなれば、当然これは守るべきであろうと思いますし、また日銀にとっても、このところにあるような不規則な変動をもたらすことのないということがありますが、これは介入というものを速やかにするべきではなかったかという二つの疑問が出てくるわけですが、それについての御答弁をお願いしたいと思います。
  191. 旦弘昌

    政府委員(旦弘昌君) 第二次協定改正案の中に、ただいま御指摘のような条項があることはそのとおりでございまして、まだこの協定が発効はいたしておりませんけれども、その趣旨とします精神につきましてはわれわれとしても尊重すべきものであろうと考えております。
  192. 鈴木一弘

    鈴木一弘君 日銀はどういうふうに思っていますか、このことについて。
  193. 森永貞一郎

    参考人森永貞一郎君) IMFの規定が発効いたしますれば、先ほどお読み上げになりましたような精神に沿っていろいろな型の為替制度をとり得るというようなことになっておるわけでございますが、精神はいまおっしゃったような規定の精神で、もうすでにこのガイドラインもあることでございますし、またランブイエにおける協定もあることでございますので、各国ともただいまお読み上げになりましたような気持ちで為替政策の運用に当たっておる次第でございます。日本といたしましてももちろんそのような精神で為替政策の運用に当たっておりますことは申し上げるまでもないところでございます。
  194. 鈴木一弘

    鈴木一弘君 これはまだ発効されていませんけれども、それじゃことしの四月二十九日にIMFの理事会の決議で為替相場政策に関する監視ということで決議が採択されている。その第一項目は、加盟国は、国際収支の効果的な調整を妨げるため、あるいは他の加盟国に対して不公正な競争上の優位を得るために為替相場を操作することを回避する。つまり、いまで言えばアメリカが日本の国に対して優位を保つためのようなそういうことのために為替相場を操作することはいけない。それからもう一つは、第二番目は、為替相場の短期的な乱高下に見られるような無秩序な状態に対処するのに必要な場合には、為替市場に介入しなければならないと。これはIMFの、いわゆる発効するものではなくて、ことしの四月二十九日の理事会の決議で、日本もこの理事会の決議に入っているわけです。とすると、この決議事項も守らなかったということになるのじゃないか。ところが、アメリカについては、第一項目の優位を得るためだとかこういったことで為替相場を操作することは回避しろという決議がなされているのに、たび重なる日本黒字に対しての非難攻撃、そうして円高非難というものがされてきた。これは明らかに為替相場を操作することを避けるということじゃなくて、為替相場を操作することを意識したとしか言いようがないわけでございます。この点は、総理、いかがにお考えですか。
  195. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) 基軸通貨国であるアメリカがみずからの輸出を助成するというような趣旨でドル安をねらって行動した、こういうふうには私は考えておりません。おりませんけれども、基軸通貨が世界市場において動揺をする、これは私は世界の経済の発展のためによろしからざることである、こういうふうに考えるわけでありまして、意図的なドルの動き、そういう見方はいたしませんけれども、このドルの価値が動揺しておるという状態はきわめて遺憾である、そのように考えております。
  196. 鈴木一弘

    鈴木一弘君 この点は基軸通貨がそういうことでは困るということがはっきりとわかってきたのですけれども、じゃもう一つ、第二項目目の短期的な乱高下に見られるような無秩序な場合には介入をしなければならないということがはっきりとありますけれども、この理事会決議について日本銀行が乱高下という意識を持たなかったのだろうか、この間の相場について。私ども、介入が非常に遅かったのは乱高下の意識を持たなかったからじゃないかというふうな感じを受けるのですけれども、それがひいては全面的なドル安となり、世界の為替相場それ自体を混乱させるといいますか、そういう一因にもなるわけですけれども、その点の認識はいかがなんですか。意識的にわざと乱高下と見なかったのかどうか。
  197. 森永貞一郎

    参考人森永貞一郎君) 市場の実勢をながめておりまして乱高下ありと見られる場合、要するに市場が荒れまして価格が大幅に動くような場合が多いわけでございますが、そういう場合にはちゅうちょなく介入いたしておるのが現状でございます。何日に幾ら介入したというようなことは申し上げられませんのでございますが、新聞紙上等においてややもすれば日本銀行は介入を忘れたのではないかとか意識的にやめているのではないかというような報道が行われたこともございますが、私どもといたしましては、毎日毎日の市場の実勢に即しましてちゅうちょなく介入する必要があると認めたときには介入いたしておる次第でございまして、乱高下を放置いたしましたようなことはないつもりでおります。
  198. 鈴木一弘

    鈴木一弘君 私は、介入前にも乱高下だと日銀が認識をしたということが出るだけで相場というのはうんと変わってくると思うのですね。そういう言葉がいままで出たことが余りなかったようだ、今回は。いままでの為替相場のときとはそこら辺に大きな違いがある。何かその辺に御意識があったんでしょうか。
  199. 森永貞一郎

    参考人森永貞一郎君) 乱高下と申しますその定義でございますが、これはなかなかある期間内にこのぐらいの率とかあるいはこのぐらいの幅動いた場合とかいうようなそういう基準になかなか乗りにくいのでございまして、市場の動向と申しますか、投機的な取引が横行して、取引量もうんとふくれて、そして大きく動くというような、そういう総合的な状況判断のもとに乱高下ありと認定して、必要があれば介入しておるというようなことでございまして、九月末から今日までの経過を振り返りましても、そういう事態の変化がございますようなときにはすかさず介入しておるのが実情でございます。それがそのとおり新聞その他に出るわけじゃございませんので、あるいは日本銀行の介入政策が変わったのではないかというような誤解を生むようなこともないではなかったわけでございますが、私どもの気持ちといたしましては、乱高下に対しましてはすかさず介入する、そして相場変動をならしていくということに努力をしてきたつもりでございます。
  200. 鈴木一弘

    鈴木一弘君 これは総理にお願いしたいのですが、第二次のIMFの改正案が発効される、もうすぐだろうと思います、八〇%のところ現在五八%を超えておりますので。そういう状況になってきておりますが、その発効された後ですと、いまのように、理事会決議よりさらにきついものがはっきりと協定として出てくるわけでありますから、それを避けたいということかどうかわかりませんが、その発効前に一ドル二百何十円台というふうに持っていこうと、いままでの日本の円についてこれをさらに円高に持っていこうという既成事実をつくって優位に保とうと、こういうように総理はお考えじゃないと思いますけれどもアメリカは考えているのじゃないか。それがこういうようなIMFの九月の総会でも黒字攻撃でやられましたり、たびたび重なってきておりますが、そういうように考えられるのじゃないか。もしそうでなければ、あの昭和四十八年のときにパリで二十カ国の通貨会議があった、それでいわゆるスワップの拡大も行われて、ドルの買い支えができるような態度まではっきりとあのときにはできたわけです。それの拡大までされているけれども、そういう発動もなかった、ニューヨークにおける買い支えもあり得ないと、こういうことになると、何かアメリカ自身、それよりも発効以前にそういう既成事実をつくろうという感覚でやったのじゃないかと類推されるのですけれども、そういうようにお考えになりませんか。
  201. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) 今回のドルの価値の低下というか、ドル安につきましては、これはいろいろ説をなす人がおります。それは聞いておりますけれども、私はアメリカが意図的にこのドル安を政策として進めたという感じは持ちません。私は、九月の末にIMF総会があった、その場で各国の指導者たちが集まって、その席でアメリカの赤字問題、また日本の黒字問題、そういうことが話題に上った、そういうようなことがきっかけとなって一月間のこの激動という事態になったと、こういうふうに見ておるわけであります。基軸通貨がぐらぐらする、これはもう非常に残念なことなんです、残念なことでありますが、それが私はアメリカの計画的な施策として出てきたんだというふうな受け取りはしておりません。
  202. 鈴木一弘

    鈴木一弘君 この通貨問題については、もう毎回毎回何年かごとにこれは起こっております。一番問題になった四十八年のときにも、ドル減らしであるとかいろいろなことがさんざん叫ばれた。また同じことの繰り返しをやっているように思うんですよ。やはり、ドル問題、こういう円対策の問題、通貨問題ということになれば、長期的にものを運んでいかなきゃいけないのじゃないか。あの昭和四十八年のときに、三百八円になった、それが守れるかどうか、フロートになるかということでずいぶんと苦労したわけです。そのときから現在に至るまで果たして日本の政府のとった指導といいますか、その対応は十分だったかどうかということは本当に心配するわけです。これから先も、またここで気がつかないと、同じことを起こすのじゃないか。  そういう意味で、ここで輸出輸入の構造について伺いたいと思うのです。輸出構造、輸入構造を変える、そういうことで、将来、問題になっている貿易収支とか経常収支が膨大な黒字を起こさないという経済体質に改める必要があるのじゃないか。それをやらないで、いままでと同じように売りやすいところに売り込んでいって黒字を積み上げ、そしてまた円切り上げになる、円高倒産を起こす、こういうことが前回もあり、また今回もある。このまま置いておけばまた次もあるということになれば、貿易政策不在の政治と言わざるを得なくなる。これだけは避けなければならない。その被害は、中小企業であるとかあるいは労働者にしわ寄せされる。一体、これからどういうようにこういう産業構造のあり方といいましょうか、輸出輸入構造というものを改めるべきかというプラン、これを私は示すべきだと思うのです。一つ例をもって言えば、輸入構造を見ても、もっと完成品輸入の方に比重を高めるようにする必要があるのじゃないか。原材料輸入であっても、やはり中身を半製品、いわゆる付加価値をつけたものを輸入するという、そういうようにするべきじゃないか。いわゆる原鉱石であるとか素材の輸入ということをしているのを半製品輸入というふうに持っていこうと、こういうように改めるということが非常に大事じゃないか。西ドイツの場合は完成品の輸入が五〇%というように日銀の外国経済季報から出ておりますけれども、それに比べるとわが国の場合の方がはるかに輸入の中に占める完成品の割合は少ない。この点が日本に対する風当たりが強いという一つ原因になっているのじゃないかと思うのです。その点についてお伺いしたいと思います。
  203. 田中龍夫

    国務大臣(田中龍夫君) お答えいたします。  ただいま仰せられました輸入貿易構造の問題でありますけれども、お話ではございますけれども、西独と日本と比べてまいりまする場合に、日本自体がほとんど食糧、原料、燃料を海外に依存をして、そうして付加価値を加え輸出していくというようなこの基本的な構造というものは変えられないと存ずるのであります。ただ、その中におきまして、より輸出構造の高度化、あるいはまた知識集約型、さらにまた製品輸入の増大という問題につきましては、これはもう今後ともに仰せのとおり努力していかなきゃならない、かように考えております。しかしこの問題につきましては、特に御指摘の中で半製品の輸入の問題、これはもう私は十分に考えていきたいものだと、かように考えておりまするが、ドイツの場合と日本の場合、ヨーロッパにおけるドイツの環境と、原材料、原料、燃料を全部依存いたしておりまするアジアにおける日本の環境、この貿易環境というものも非常に差異があるように存じております。しかしながら、いまおっしゃった意味は十分に私どもも同じことを考えておりますので、それに向かって努力をいたしたいと思います。
  204. 鈴木一弘

    鈴木一弘君 確かに、西ドイツとは違う環境にあることはわかります。しかし、なぜ西ドイツが余り非難をされないで日本ばかりが非難されるかということもこれは考えなければならないことです。いつまでもいつまでも同じように原材料だけたくさん入れていればいいんだという、そういうことではならないと思うのですね。いままでの輸入構造を見て、いま食料品の話が出ましたけれども、食料品は一四、五%ですよ。それから機械機器が一〇%、こういうものを除くと、あとは全部原材料品です。そういうのと、西ドイツのは五〇%を超えるものが完成品、こういうところに先進国の日本に与える影響が多いのじゃないか。だから、その点は、確かにおっしゃるとおりに資源が乏しいから原材料で入れなければならないと言うけれども一、それは加工貿易でもいろいろ輸入構造の改革を考えなければならない。これは本気になってその点は具体策をこれから示していただきたいと思うのですけれども、どういうような作業でもっていく予定でございますか。
  205. 田中龍夫

    国務大臣(田中龍夫君) ただいま申し上げたように、われわれはより集約化、より高度化を目標に今後の構造変革のビジョンを打ち出していかなければならない、かように考えておりますけれども、しかしながら、ただいまも申し上げたように、完成品輸入の問題につきましては、あるいは先般もECの貿易大臣が見えられました際にも、両国の間に委員会をつくりましてできる限りの完成品輸入を図ってまいりたい、あるいは、アメリカとの間に同様の輸入の促進の委員会をつくる、さらにまた展示場を持ち、今後のまた完成品輸入につきましては積極的な国としての施策を進めてまいる、こういうことをいたしたいと、かように考えております。
  206. 鈴木一弘

    鈴木一弘君 輸入はまあそれでいいですが、今度輸出の問題ですが、輸出国と輸出品の両方の構造を改めなければいけない。最初に輸出品の方ですけれども、国内の産業構造を改めていかなければ、これからもまたこういう円高問題で苦しめられる。そう言っても、これは具体的なプランがなければ、幾らいまの知識集約型になさるとか、業構造を変えるとかと、こうおっしゃっても、これはぼくらとしては納得はできないわけですね。ちょっと見てみても、日本の場合は完成品の輸出が非常に多い。ほとんど完成品として出ている。見てみれば六七・五%ぐらい完成品として出ています。それに対して半製品の輸出の方は七・三%程度。ところが、西独と比較すると、またとおっしゃるかもしれませんけれども、西独の例を見ると六、七〇%が完成品、あとは半製品、食料品というようになっている。したがって、もう少し半製品をふやすということを考えていいのじゃないかということが考えられるのですが、いま申し上げたのは西独の例ですけれども、そういう点でもうちょっと完成品よりも半成品輸出ということを考えるべきだと思いますが、その点どうですか。
  207. 田中龍夫

    国務大臣(田中龍夫君) ただいまお話しのように、戦後の日本関係から申しましても、むしろ付加価値の点に特に重点を置いていたしておりましたが、仰せのごとく半製品で輸出をしてそして相手国の国内で完成品にすると、こういうふうな二国間貿易収支や相手国の雇用関係に与える影響というような面を考えましても、できるだけ摩擦の少ない輸出をしていこうと、同時にまた、輸出先の国の製造業者の関連の直接の投資が少なかったことも同時に原因と考えられますが、わが国の今後の進むべき方向といたしましては、ただいま御指摘のような方向が望ましいものだ、かように私どもも考えております。
  208. 鈴木一弘

    鈴木一弘君 いま一つ、今度は輸出先の問題ですけれども、西独とは大分違いますけれども、西ドイツの場合のアメリカヘの輸出の比率は、一九七四年に七・五、七六年に五・六と、これは日銀の「外国経済季報」からとったのですけれども、そういうふうになっていると、それに対してわが国のはかなりの額に上っていることはもう事実でございますが、これは将来何割ぐらいに持っていこうとするのか、いま二〇%超えていると思いますが、それで時期はどのぐらいにしようと、そういうように具体的なプランを持って輸出の先を変えていくという、散らしていくという、そういうことが必要じゃないかと思うのです。一方のアメリカだけに偏重であると、やっぱり輸出しやすいところがすぐそばに巨大な消費国があれば、そこにばかり行ってしまうというそういうことになると、また二度、三度と円高問題で同じケースで騒がれなきゃならない。やはりこの辺で産業構造それ自体として直していく必要があるのじゃないか。現在二三%ぐらいいっていますが、その点どうですか。
  209. 田中龍夫

    国務大臣(田中龍夫君) 御指摘のように、西独の場合におきましては、ECの域内輸出の依存度が非常に高いのでございまして、日本の場合におきましては、やはり戦後の関係もございまして対米依存度は事実上非常に高い。しかしながら、日本輸出の対米依存度の問題も、戦後の日米経済関係が特に緊密でありましたのでありまするが、その後、製品及び原材料の貿易の面でも両国の補完関係というものは非常に強いのでありますが、しかしながら、この輸出構造を漸次やはり多極的にしていきたいと、こういうふうなことであります。  たとえて言いますと、一九七〇年の対米関係三一%から、一九七六年には二三%に減少の傾向を示しておりますが、わが国の構造におきましてもこういうふうにひとつできるだけ多極的な姿において安定感を持ちたいと、かように考えております。
  210. 鈴木一弘

    鈴木一弘君 これは、総理、いつもこういう論議のときには輸出の問題等で多国間に変えていきたいとか構造を変えたいということを言われるわけですよ。それがなかなか実効が上がらない。事実は一番やりやすいアメリカとの貿易にすぐ走ってしまうと、こういうことが大きいし、また日本で完成品にしてできるだけ付加価値をつけて輸出した方が有利だというこういう感じもあると思います。これはどうしても改めていかなきゃならない基本だと思うのですけれども、その点について大臣から伺いましたけれども、総理の御決意を伺いたいと思います。
  211. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) 対米輸出は、通産大臣が申し上げたように、かなり顕著にわが国輸出の中で対米の占める比率は落ちてきておるわけです。二三%に昨年はなっちゃったんです。まあアメリカはとにかく世界で最大の経済大国でありますから、他の国と違いましてわが国との間の貿易のパイプ、これが非常に太かるべきものです。わが国はアメリカに次いで自由社会第二というんですから、もう太いのは当然でありますが、いま問題はアメリカからの工業完成品ですね、これの輸入が少ないと、こういう問題があるわけなんです。これにつきましては、一つは、わが国が先ほども話がありましたが資源に非常に乏しい国である、こういう問題があります。それからもう一つは、わが国石油ショック後の立ち上がり、これはわりあいに順調にいったわけです。そこで、ことに石油ショック直後の四十九年ですね、あれは百三十億ドルの国際収支の赤字を出す、それを何とか回復しなきゃならぬという国民総努力が行われたわけです。それが成功し、そしてまあ勢い余ってというか今日に至っておると、こういうような状態であります。わが国のある種の製品について強大な輸出力がついた。反面、わが国は相当科学技術の革新をやったわけです。したがって、外国から買いたいような品物が総体として少なくなってきていると、こういう背景もあるわけです。そういうようなことを彼此勘案いたしますと、今日の黒字というのは、一つはただいま申し上げましたような循環的な要素もあると、こういうふうに見ておりますが、とにかく対米貿易バランスがいま非常に乖離をしておるという状態はこれは健全な状態ではないと、こういうふうに私は思いますので、いろいろ努力をいたしましてこれが是正をいたしたいと、かように考えております。
  212. 鈴木一弘

    鈴木一弘君 二三%に落ちたという話があったんですが、その前の年は二〇%でございました。若干ふえてきているわけです。だから、そういう点ではやはり何か対米輸出についての基本的なガイドラインというものが必要じゃないかという感じがしてならないわけですから、よろしくお願いをしたいと思います。  それから大蔵省の発表で外貨準備高が十月末で百九十五億ドルと、こういうように言われておりますが、そのほかに、外国の報道として、外為銀行にドルの預託をしてある、そういうことで外貨準備高が三百億ドルを超えていると伝えられているわけです。  これは日銀総裁にお伺いしたいのですけれども、外為銀行は実際には相当多額の対外短期負債を抱えていると思います。確かに五十二年八月で二百二十八億ドルぐらいあるはずだと思うのですけれども、この点はいかがでございますか、最近の推移を伺いたい。
  213. 旦弘昌

    政府委員(旦弘昌君) 為銀の対外負債の最近の推移を申し上げますと、本年の六月におきましては二百五十五億千五百万ドルの負債でございます。それから七月には二百五十一億七千七百万ドル、それから八月に二百四十五億七千四百万ドル、それから九月には二百四十七億三千万ドルの負債がございました。他方、資産がございます。
  214. 鈴木一弘

    鈴木一弘君 わが国の外為銀行が、いまの話からいくと二百四十七億ドルということになりますと、いわゆる外貨準備高に匹敵する、それを超えるような短期負債をしょっている。これは健全な外貨の蓄積状況とは言えないと思います。それに対して外国からああいう非難を受ける。非難を受ける筋は、外貨隠しといったようなそういう非難等については、これは全くいわれのないものだと思わざるを得ないと思うんです。その点について、これはもっと的確に政府においても日銀においても、実情の説明はもちろんのこと、反論をすべきではないかと思うのですが、何か黒字を過大に出させ過ぎていてしかも黙っているということでは、これは及び腰で日本だけが悪人になるような感じでございます。この点、総裁、いかがですか。
  215. 森永貞一郎

    参考人森永貞一郎君) お話しのように、為替銀行かなり巨額の短期債務を負っておるわけでございまして、短期債務のほかに短期の債権もございますので、それをネットでどう考えるか、どのぐらいになっているかという問題にもなってこようかと思いますが、いずれにいたしましても、ネットの債務超過額はかなりの額でございますので、私ども中央銀行間のいろいろな話し合いのときには、日本の実情は実はこうなんだということはよく説明をいたしておるつもりでございます。表面の外貨準備の著増にかかわらず、為銀の——これはまあ理論的にはすぐに差し引くべきものではないかもしれませんが、一種の流動負債でございますので、やはり関連して考えるのが適正かと思いまして、同時にそれをこれだけの負担があるんだということはよく説明に努めてきたつもりでございます。
  216. 鈴木一弘

    鈴木一弘君 これは日銀が出された「経済統計月報」から見ているのですけれども、これを見ていると、ずっと見ていっていわゆる対外短期資産負債残高というのを見てまいりますと、純資産が黒字となっていたのは四十七年五月から四十八年六月までで、それで四十八年の七月に赤字が四億六百万ドルですか、それになって以来、現在のようにずっとふえてきている。こういうように実に推移は明らかなんですけれども、これは過大な短期負債ということですから、これは何かきちっと指導をするべきじゃないかということを思うわけです。そのためにいろいろ預託等を使うとかということができるのじゃないかとも考えられるのですけれども、それが一つと、西ドイツなどでは民間銀行のドルの借り入れがほとんどゼロだということも伺っているんです、事実かどうか知りませんけれども。そういうことで、今後の国際収支、為替政策の運用、こういうことで大きな差が出てくるような感じがする。その点、いかがでございますか。どういうふうに見るべきか。
  217. 森永貞一郎

    参考人森永貞一郎君) 西ドイツの場合は、民間銀行の短期債務のネットの残高は、お話しのように日本に比べれば三分の一にも足りないような状態でございますので、外貨準備との関係では日本と比べればはるかに充実しているということはそのとおりだと思います。私ども、為替銀行のネットの短期債務がとめどもなく増加することにつきましてはいかがかという感じで臨んでおるわけでございまして、そのためには、いわゆる円シフトも自然にそれが推進されるような環境をつくり出し、それによって対外債務の国内債務への切りかえが自然に行われるようにということをこいのぞんでおった次第でございまして、この春ごろから比較的順調にそれが進んでおりましたのが、昨今の円高ということでちょっと停滞ぎみになっておることは、けさほど申し上げたとおりでございます。方向としては、まさにそういうことを歓迎すべきであり、それができるような方向にいろいろな施策を進めていくということは当然今後考えていかなければならぬ問題だと思っております。
  218. 鈴木一弘

    鈴木一弘君 ですから、まあいまの御答弁でわかりましたけれども、外貨減らし政策は、物を買うことだけが、また輸入をふやすことだけが、というものではないと思うのですね。やはりいまのように、外為銀行を含めて、対外短期資産とか負債のその資産内容を改善していく、こういうことが非常に大事だと思うのです。その点に外貨を使うと、これが一つには大きな外貨減らし政策になるのじゃないか。まあこそこそした預託なんというのをつつかれるよりは、堂々とそういうことではっきりとおやりになった方がいいのじゃないかと思うのですが、御決断はいかがでしょうか、総理のお考えは。
  219. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) 御説ごもっともなんです。そういう考え方の施策を進めておるわけですがね。先般、経済総合政策、あれと相並行いたしまして日本銀行が公定歩合引き下げをやる、こういうことをやったわけですが、あれはいろいろなねらいがありますが、一つはこの円シフト、それをねらってのことなんであります。かなり円シフトがあるという予想でありましたが、それがまあはからずも時を同じくして起こったこの円高、これで帳消しというか、停滞をしていると、こういう状態ですが、この円問題が安定してくるということになりますと、円シフトというものはまた予期した傾向になってくるだろうと、こういうふうに思います。いずれにいたしましても、この問題は問題としてあるわけでありますから、十分配慮してやっておるところでございます。
  220. 鈴木一弘

    鈴木一弘君 ずっと調べていきましても、昭和五十二年になりましても、まあ一時少し、七月、八月ぐらいまでには確かに純資産として資産と負債との差額が減ってきていますけれども、まだまだ減っているという実効の上がっているところまでは総理のおっしゃるようにはいっていないようなそのときの感じだと思います。やはり、一つは、オイルショックですね、あれが原因でこういうように短期負債がふえてきた。そういう点から、輸入金融のためにやむを得ないやむを得ないということでこうきちゃったのですけれども、その点もよく外国に話をしていただきたい。もうこれは当然のことだと思いますけれども、それをぜひやっていただきたいと思います。  それからもう一つここで聞きたいのは、経常収支のみで日本がどうのこうのということを議論されているわけですけれども、いまの純資産の問題を諸外国と比較して伺いたいと思うのですけれども、これは「大蔵省国際金融局年報」で調べたところでは、一九七五年、GNPに対する純資産の比率は、日本は一・五%、それに対して西独は九・〇%です。アメリカは五・五ということで、実に日本の場合のGNPに対する純資産の比率も西独の五分の一以下ということです。一人当たりということの純資産になると、日本は約六十三ドル、それに対して西独は五百四十ドルですよ。九倍から十倍近い。アメリカが三百六十六ドル。こういうような状況であるのに攻撃されるのはどうか。これは一九七五年のことでありますので、現状はどうかをまず聞いて、それでなぜ攻撃をされなきゃならないかということを伺いたいと思うのです。現状を知らせてください。
  221. 旦弘昌

    政府委員(旦弘昌君) 先生がおっしゃいましたのは五十年末の数字であろうと思いますが、五十一年末の数字を申し上げますと、GNPに対します純資産は、西独の場合には九・九、それから日本が一・八%。それから人口当たりの純資産は、これはドルでございますが、西独が六百七十六、それから日本が八十四・五でございます。
  222. 鈴木一弘

    鈴木一弘君 それから外貨準備についてもやはりそういう比較をするべきじゃないかと思うのです。たとえば、GNPに対してどのぐらいか、何%か。日本は二・七、西独は八・七。あるいは、人口一人当たりの外貨準備高は、これは一九七五年でありますけれども、日本は百十四ドル、西独が五百二十二ドル。なぜ片っ方はこんなに外貨準備高が多いのに攻撃されないで、日本は少ないのに攻撃されているのか、さっぱりわけがわからない。これは最近の情勢はどうですか。
  223. 旦弘昌

    政府委員(旦弘昌君) 外貨準備のGNPに対します比率の五十一年末の数字を申し上げますが、西独が七・九%、日本が三二%。それから人口に対します外貨準備は、ドルでございますが、西独が五百三十九ドル、それから日本が百四十六・五ドルでございます。
  224. 鈴木一弘

    鈴木一弘君 こういう点から見ると、外貨準備が多いとかなんとかということはこれは比較にならない論議だと思います。やはり、経済力といえば、国民一人当たりの外貨準備高とか、国民一人当たりの純資産とか、こういうことになるだろうと思うのです。それが西独の五分の一であるというような、あるいは外貨準備については大体三分の一か四分の一という状況です。それなのにこういうふうに非難をされる。やはりこの辺は強くアメリカあたりにも文句を言わなきゃいけないし、そういう会議において強く言わなきゃならない問題だと私は思うのですね。この点はいかがでございますか。
  225. 旦弘昌

    政府委員(旦弘昌君) 先ほど申し上げました一人当たりの外貨準備高、あるいはGNPに対します外貨準備高、あるいはその前に一部お答えいたしましたように、為銀のネット債務と外貨準備との関係、これらいずれをとりましても日本の場合は西独よりは劣っておるわけでございまして、もちろんこれらの数字は公表されておりますし、われわれもこういう問題が議論になりますときにはこれらの数字を示して日本外貨準備が言われるごとく大きなものではないということを旧しておる次第でございます。  たとえば、イギリスにおきましては、昨年の年末には外貨準備が約四十億ドルでございましたが、十月末には日本を超しまして二百二億ドルになっておるわけでございます。また、一つ外貨準備がどのくらいであるか推しはかるめどとしまして、輸入の何日分ぐらいの外貨準備があるかというような数字もございます。日本の場合には三カ月分ぐらいでございますが、ドイツの場合には四カ月半に近い。それからイギリスも最近外貨準備がふえまして四カ月近くなっております。これらの数字はすべて公表されておりますし、機会あるごとにわれわれもその説明はいたしておるところでございます。
  226. 鈴木一弘

    鈴木一弘君 いま一つは、外貨準備の構造、内容ですね、それも変えるべきじゃないかと思います。これは一九七六年十月末現在でIMFで発表になったやつですけれども、これを見ますというと、わが国が持っているこのときの外貨の総準備が百四十三億SDR、西ドイツが三百十億SDRになっております。ところが、それについて、またアメリカが百六十億SDRの総準備でありますが、その中に占めている外貨準備の中を見るというと、SDRは日本が持っているのが四億六千、それからアメリカが二十億、西ドイツが十七億。いわゆるSDRを外貨準備の中に持っているのが西独の三分の一、米国の四分の一、また、そういうものを抜いた金とかIMFの準備ポジションとか、こういうものを抜いた外貨準備を見ると、その準備の内容はアメリカと同じぐらいですけれども、西ドイツに比べると外貨準備は西ドイツの半分ぐらいということになっております。だから、せめてこの辺から考えても、この外貨準備の中におけるSDRについて、四・六億のいまのSDRじゃなくて二十億ぐらい必要じゃないかというふふに考えられます。また、IMFの準備のポジションも非常に少ないような感じがするのですけれども、こういう外貨準備高の中身、これはIMFで発表になったものですけれども、これについて、これはやはりSDRをふやすとかIMFの準備ポジションをふやすとかいう、外貨準備そのものよりもそちらの方にウエートを入れていくという行き方、こういうことはいかがなんでしょうか。
  227. 旦弘昌

    政府委員(旦弘昌君) 十月末の外貨準備で申し上げますと、わが国外貨準備は約百九十五億ドルでございますが、そのうち金及び外貨が百七十七億ドル、それからゴールドトランシュが約十二億ドル、SDRが六億ドル弱でございます。御指摘のように、日本の金の保有高というのは諸外国に比べましてかなり低いのは事実でございます。
  228. 鈴木一弘

    鈴木一弘君 金のことは私はまだ申し上げてなかったんですよ、金はもう大分変わってきておりますから。IMFの扱いも変わっておりますか・ら。SDRのところとIMF準備ポジションはどうか、これをふやす意思はないのかと、こういうことです。
  229. 旦弘昌

    政府委員(旦弘昌君) SDRにつきましては、先ほど申し上げましたように、日本の割合はなお低いわけでございますが、これは原則としてIMFによる配分でございまして、SDRで日本政府に支払いがされるという部分もごくわずかございますが、大部分は配分でございます。現状といたしましては御指摘のように非常に低い。それから総額といたしましても、日本外貨準備はドイツなどに比べますと約半分であるということは御指摘のとおりでございます。
  230. 鈴木一弘

    鈴木一弘君 私は、そういう点でやはり西ドイツや何かとの外貨準備高の中身、実体がちょっと違う、こういうことでいろいろ圧力受けるといういろいろな背景ができているような感じがします。  いま一つ、金の問題も、確かに金はこれからIMFでも扱わなくなってくるわけであります、SDRが通貨単位になるわけでありますので。それよりも、金の問題で言うと、昭和五十一年二月にポルトガルが西ドイツとスイスに自分の国の金を担保にして三億ドルの借款をした。それから一九六四年——昭和三十九年にイタリアの銀行の金を担保にして西独がドイツ連邦銀行の外貨準備のうちから二十億ドルを供与した。これが一九七六年に更改をされました。金の値段が下がっているということでイタリアが五億ドル返したということがございますけれども、こういうやり方をすれば、金を買うとか買わないとかということは別にして金担保融資というようなことをやる、まあこういうことで私はドイツあたりの攻撃が非常にかわされているような感じもするわけなんです。こういうことについての考えとかいうものはございませんか。これは、総理、どうでしょう。
  231. 旦弘昌

    政府委員(旦弘昌君) 御指摘のようなケースがドイツに対しましてあることはそのとおりでございます。ただ、日本に対しましては、その金担保で金を貸してくれという話がまだ来たことがないわけでございまして、それが実情でございます。
  232. 鈴木一弘

    鈴木一弘君 もう一人矢迫さんがあとにおりますので、最後に総理にお伺いしたいのですけれども、私は、一つは、日本の今回の円高問題に対する姿勢で対米姿勢が非常に大事じゃないかということでずっといままでの論点を進めてきたのですけれども、一つは農産物でありますが、サクランボなどについてイギリス式にいわゆる補助金で価格差の補償をするというようなことで自由化をする。まあ非常にお金もかかるかもわかりませんけれども、ほかの品物に比べれば私は違うと思いますので、そういうことで外圧を避ける。カーター大統領の出身も出身でありますから、こういう点の考え方をやはり大胆率直にとっていくべきじゃないか。国内のことも大事でありますけれども、それ以上に国際的に孤立してしまったのでは日本国が経済的に外国に隷属しなきゃならないということになりかねない。そういうことを避けるためには、この辺は決断を持った処理が必要じゃないか。  いま一つは、先ほども竹田委員質問されておりましたけれども、今回の円高は逆を言えばドル安です。ドルが異常に世界じゅうにたれ流しされたことから起きているわけです。とにかくアメリカの対外負債は九百億ドル以上だろうと私は思います。それに対して準備高が百八十億ドルということで、これは話にならない。当然アメリカ自身ドルの買い支えをやり、そして収支の改善を図るべきだろうと思いますね。こういうポイントを抜いて、アメリカのほしいままの気持ちで円の相場が左右されたのではかなわない。こういう点で強い姿勢をとっていくべきじゃないか。それから先ほど申し上げましたような国内的にも整備をしなきゃならないことはありますけれども、そういうことよりも、国際的にも金を担保に金を貸すなんということもできるわけでありますし、いろいろな方法を考えて外圧を避けるべきだろうと思いますので、この二点についてお伺いしたい、アメリカに対する姿勢ですね。
  233. 鈴木善幸

    国務大臣鈴木善幸君) アメリカのサクランボの輸入の問題につきまして私からお答えをいたします。  御承知のように、サクランボは昭和三十五年にすでに自由化をされておるわけでございます。ただ、御承知のように、コドリンガという害虫がそれに寄生をしておるということで植物防疫上の観点から今日までこの自由化が実質輸入が行われていなかったわけでございます。その後、アメリカにおきましてもこの防除技術の開発等を進めまして、わが方に資料等も数次にわたって送ってきております。わが方からもまた専門の技術者を派遣いたしましたりしてその防除の技術が確実になされておるかどうかということでやってまいりましたが、最近におきまして心配のないほどそれが進んでおるということも確認をされてきております。したがいまして、国際植物防疫条約の観点からも、すでに自由化もされておりますことでありますから、これをいつまでも輸入を引き延ばすというわけにまいりません。私どもは近い機会にこれを輸入をする道を開く考えでございますが、ただ、サクランボの生産者等の事情もございますので、その出荷時期等と余り競合しないような配慮等もいたしましてこの問題は早急に処理いたしたい、このように考えております。
  234. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) 今回の円高問題の背景には、わが国の国際収支の問題、それからアメリカの国際収支の問題、両方が背景としてあると思うのです。そういうことを受けまして円に対してドルが減価すると、こういう現象もありまするが、同時に、マルクやスイス・フラン、世界的な市場においてドルにおいて減価が行われると、こういう傾向もあるわけです。国際経済の舞台で通貨が動揺する、これは非常に好ましくないことでありまして、その通貨の動揺というものは、えてして赤字国、黒字国、こういう顕著な現象、そういうところから起こりがちでありますが、やっぱり経済運営において主要な経済先進国はこれはもう節度ある経済政策をとるべきだと、こういうふうに思います。黒字国の責任ももとよりそれはありますよ。しかし、同時に赤字国の責任と、こういうこともあるわけであります。赤字国の責任問題につきましては、折に触れ時に応じましてアメリカにも私どもといたしましては強調いたしておるわけでありますが、今後ともその姿勢で臨みたいと、かように考えます。
  235. 鍋島直紹

    委員長鍋島直紹君) 以上で鈴木君の質疑は終了いたしました。(拍手)     —————————————
  236. 鍋島直紹

    委員長鍋島直紹君) 次に、矢追秀彦君の質疑を行います。矢追君。
  237. 矢追秀彦

    ○矢追秀彦君 ただいま総理がアメリカに対する姿勢について少し言及をされました問題について続いて伺いますが、その前に、昨日米国のFRBのバーンズ議長が上院においてドル価値の維持についての証言を行われた、こういうことを聞いておりますが、その内容について日銀総裁にまずお伺いいたしますが、その内容、さらにこれに対する日銀総裁の見解、それをお伺いしたいと思います。
  238. 森永貞一郎

    参考人森永貞一郎君) 昨日のバーンズ議長の証言は、上院銀行委員会において行われたものでございまして、主たる議題はマネーサプライ目標値等についての報告があった次第でございますが、それに付加いたしまして、最近の外為市場におけるドル相場の低落の問題につきまして大変強い意見が表明されたようでございます。  私どものニューヨーク駐在参事が電報いたしてまいりましたところによりまして要約して申し上げますと、   最近の外為市場におけるドル相場の低下は、米国政府当局の物価安定化努力に水をさすものとなっている。また、準備通貨としてのドルの減価は国際的にも大きな問題を引き起す可能性がある。米国としてはドル価値の低落を黙認するような態度をとるべきではない。最近のドル相場の低落は内外景気回復段階のズレに基づく貿易収支の大幅赤字を反映したものであり、従ってその是正は容易なことではないが、米国としては単に諸外国の景気拡大を待つだけでなく、1石油の輸入削減を図るためのエネルギー政策の確立、2新規設備投資促進のための企業環境の整備、3適切な財政金融政策・構造対策の遂行等あらゆる手を打つべきである。  ということを言っておるようでございます。  なお、銀行委員長からの質問に対しまして、その質問と申しまするのは、日本及びドイツに対しましては国際収支の現状からもう少し円なりマルクなりの相場が高くてもいいのじゃないか、過小評価されているということを認めさせるべきではないか、そういう質問委員長からございましたが、それに対しまして、バーンズ議長は、   もしそういうことをすれば、ドル安に一段と拍車がかかり、国際経済に大洗乱を招く結果となりかねない。  と答えておる山でございまして、かねがねバーンズさんはドルの価格の信認が世界経済のためにいかに必要であるかということを強調しておられたのでございますが、そのかねての持論がこの機会に表明されたものといたしまして私どもも歓迎をいたしておる次第でございます。
  239. 矢追秀彦

    ○矢追秀彦君 きょうは市場で少しドル高になっておるようでありますが、もう終値が出ておると思いますので、その終値は幾らになっておるのか、こうなった結果はバーンズ議長の証言の影響と見てよいのかどうか、その点、日銀総裁、いかがですか。
  240. 森永貞一郎

    参考人森永貞一郎君) 本日の終値は二百四十七円三十五銭でございます。昨日の終値二百四十六円九十銭に対しまして四十五銭ぐらいドルが強くなって円が安くなっておるということでございます。バーンズさんの証言を受けまして昨日の欧米の為替市場ドルが少し高くなった、その地合いを東京市場も映しておるわけでございます。そのほかにも、サウジアラビアがイギリスに対する石油の取引にポンドを使うといううわさがございましたのを否定したというようなことも今日のような市況をもたらしておる一つ原因ではないかと思っております。
  241. 矢追秀彦

    ○矢追秀彦君 総理にお伺いしたいのですが、米国内部においてもいまのバーンズ議長のような政府に対する批判といいますか、ドル安が必ずしもよくないということが出てきておるわけです。言うならば九月末のブルメンソール発言に端を発した今回の円高、結局最後は米国自身にもその火の粉はかぶってくると、こういう結果になるという事態を考え出したと思うのですが、それに対して総理はいまも折に触れてアメリカにも言うんだと言っておられますが、この最近の円高になってきたときに、政府としてきちんとアメリカに対してドル防衛策について抗議を強力にされたことは余りなかったと思うのです。その点について、まずいままで何もしてこなかったと極論いたしますと私は言いたいのですが、それについてどうか、これからどういうふうな形で——いま総理はいろいろ言われましたけれども、どういう場を通じ、どういう方法でやられるのか、その点をお伺いしたい。
  242. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) わが国の大蔵省とアメリカの財務省、これはもう非常に緊密に連絡をとっておるわけです。とにかく、自由社会で第一のアメリカ、第二の日本ということでありますから、その両国がどういう行動をとるかということは、これはもう世界に非常に大きな影響がある。そういうようなこともこれあり、これはもう実に緊密な連絡をとっておるわけであります。そういう間におきまして、アメリカに対しましていろいろ感想は述べておるわけです。これは非常に機微な政策でございますから、抗議だとかそんなような形はとりません。これはいま一番大事なことは、日米欧の三極が本当に話し合って事態を解決するということであります。お互いに抗議をする、悪口を言う、責任のなすり合いをする、そういうような態度を仮にとるということになったら、これはもう大変な混乱が起こってきます。そうじゃない、お互いにお互いの立場を理解し、そして気づいたことを申し上げるというような行き方ですね、これが私は本当にこういう重大な時期は好ましいことだと、こういうふうに思います。そういう考え方のもとに緊密な連絡をとっておるということでございます。
  243. 矢追秀彦

    ○矢追秀彦君 緊密な連絡をとっておると言われますが、抗議といって私は何でもけんかしろというわけじゃないのですけれども、現実に円がここまで上がってきたのはブルメンソール発言が契機となって、この間私はこの予算委員会でも申し上げたように、あの長官の発言とちゃんと大体合っているわけですよね、相場の動きが。だから、ただ緊密な連絡、けんかしちゃいかぬのだから仲よく話し合うんだ程度で直ってきたならいいですよ、現実には直っていないわけですから。極端に言うと、こっちは殴られっぱなしです。殴り返せという意味じゃありませんよ、私は。もう少し強い姿勢でいってもらわないと、そうでなくても対米追随外交と言われてきたんですから、政府はいままで。その点について私はもう一度考え直していただきたいと思うのです。  それと、先ほど来も議論に出ておりましたが、結局、ドル安、ドルのたれ流しの一番の原因は、やはり石油の大量のアメリカの輸入だと思います。これは先ほどエネルギー庁長官もおっしゃっておりましたけれども、アメリカの需要という面を強調されておりますが、しかし、これだけ大量の、ドルが安くなっても構わないからどんどん買いつけておるというのは、何か私は戦略があるような気がしてならぬと思うのです。そこで、七一年の八月にニクソンショックがあり、十二月にはスミソニアンレートが決まり、そしてその次には七三年になって円フロートになりましたです。そして、その年末にあのオイルショックになって大変な状況になったわけです。この間、日本貿易の黒字は減らなかったわけですね。そういうことから、次のOPECの値上げということをすでに事務局長は示唆をしておりますし、この点も含めたアメリカといわゆる米政府、メジャー、そういった点の戦略があるような気がしてならぬのですが、総理はその点はどうお見通しですか。
  244. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) いま世界経済が戦後最大の混乱期であります。この混乱がさらに激化するというようなことになったら、一体世界はどうなるか。私はいまとにかくアメリカの世界における立場ということを考えてみますると、アメリカの一番の関心事は世界の安定だろうと思うのです。そういうことを考えまするときに、世界の基軸通貨であるドルを政略的に減価さして、そして世界を混乱さして、そして一時的に輸出で有利な体制をとるというような、そんな目先だけを見た政策をアメリカがとるとは私は考えない。これはいろいろの事情があって石油を輸入した、これは現実のことでありまするから。しかし、それはいろいろな事情があって輸入したんだろうと思うが、それがドルを減価させるための政略から出たんだというような考え方は私はいたしませんがね。しかし、アメリカの国際収支上の赤字が膨大なものだと、そういうようなことでドル安という現象が起こってきた。これはもう非常に遺憾なことです。私はアメリカもちょっとこれは問題が深刻になってきておるなというような感じを持っておるのじゃないか、こういうふうに思いますが、とにかくアメリカが基軸通貨圏として節度ある経済運営をしてもらいたいということは切に私は期待しております。
  245. 矢追秀彦

    ○矢追秀彦君 OPECの値上げの問題はどうですか、石油の値上げ。
  246. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) OPECの値上げ問題につきましては、値上げがないことを切に期待しております。
  247. 矢追秀彦

    ○矢追秀彦君 期待だけじゃだめで、だから私はわざわざ先ほど過去の例を申し上げて言っておるわけです。だから、いま日本としては相当対策も講じなくちゃいけないし、私はアメリカの戦略というのもその辺に一つはあると思う。これはきょうあしたに値上げになるとは思いませんけれども、来年の半ばごろは私は非常に心配をしておるわけです。ただ願うだけではいかぬと思うのです。もう少しカーター大統領のエネルギー政策、いまいろいろ議会との間に暗礁に乗り上げております。また、高速増殖炉だってカーター大統領はつくらせぬと、こういうふうな方向です。そうすると、原油というものがアメリカにとってはどうなのかというふうな、そういう上から総理はやはり判断してもらわぬと、ただ願うだけでは、いまこれだけ国民が不安になっているので私は納得できないと思います。いかがですか。
  248. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) 値上げのないことを願っておりますが、さてそういう、願いを込めてどういう行動をしておるか、こういうことにつきましてはなかなか申し上げにくい点が非常に多いわけです。しかし、そういうこともあるかもしらぬというようなことのためには、今度の備蓄、そういうようなことは大変有効だと思いますが、しかし、その石油が上がらないことは非常に願わしいんだという思いを込めましていろいろ施策をとっておるということだけははっきり申し上げます。
  249. 矢追秀彦

    ○矢追秀彦君 次に、アメリカは今年前半で七・五%の経済成長を一応達成した。そういった意味では、国際会議における約束も果たしつつある、アメリカは。しかし、日本の場合は、きのうの衆議院でも六・七の達成が非常にむずかしいというふうな答弁が総理からあったと新聞で伺っておりますが、もしこれが達成されなければ、また国際的に大変な問題が起こる、国内はもちろんのこと。この六・七の達成、これだけでも私はまだまだ問題があると思うのです。それでもなおかつ諸外国は、特にアメリカは、日本にもっと経済成長ができるんだと、能力があると言ってくると思うのですけれども、まずこの点を重ねてお伺いしたい。
  250. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) アメリカは、七%成長なんというような状態じゃありません。これは大体私どもの見るところでは五ないし六%成長という程度にとどまるのじゃないか、そのように私どもは見ますし、アメリカでもそういうふうな見方をする人が多いと、こういう状態でございます。他方、わが国はどうかというと、あの二兆円施策によりまして悠々というか余力を持って六・七%成長できると、こういうふうに私は見ておったんです。あの施策がなければ五・九%という見方だったのですが、あれをとりますと、二兆円施策の波及効果は四兆円をかなり上回ると、こういう結果になるわけなんです。それを、昭和五十二年度内において一兆五、六千億ぐらいしか効果は出まい、あとは五十三年度だと、こういうふうにかなりゆとりを持って見ておるわけなんですよ。ですから、悠々とあるいは着実に六・七%成長は実現できると、こういうふうに見ておったところが、今度の円高問題が起きてきて、そしてこれはかなりのデフレ効果を持つわけです。それがどの程度になりますか、これはこれからの為替の動きがどの辺で安定するか、それを見ないとはっきり申し上げることはできませんけれども、しかし、いずれにいたしましても、かなりのデフレ効果だけは持つと、その程度はちょっとわからぬと、こういうことなんです。しかし、それにいたしましても、とにかく四兆円を超える波及効果を持つ施策を打ち出したわけですから、これを繰り上げてやるとか、あるいは効果的にこれをやるとか、そういうことを心得ますれば、私はこの成長目標というものは達成できるのではないかと、こういうふうに考え、あの施策を効果的に、またいかに迅速にやるかということに全力を傾けていきたいと、このように考えております。
  251. 矢追秀彦

    ○矢追秀彦君 時間がありませんので、次に通産大臣にお伺いしますが、中小企業為替変動対策緊急融資これは現在申し込みが幾らで貸し付けが幾らになっておりますか。
  252. 田中龍夫

    国務大臣(田中龍夫君) お答えいたします。  十一月十日の現時点では二百九十五件で四十億円ほどに相なっております。
  253. 矢追秀彦

    ○矢追秀彦君 貸し付けの終わったのは。
  254. 田中龍夫

    国務大臣(田中龍夫君) 詳細は政府委員からお答えいたしましょう。
  255. 岸田文武

    政府委員(岸田文武君) 御質問ございました為替変動対策緊急融資の利用状況でございますが、手元に五十二年十月末現在で集計したものがございます。これによりますと、三機開合計いたしまして、貸し付けの申し込みをいたしたものが二百九十五件、四十億三千五百万円、それから貸し付けの実行に至りましたものが三十六件、五億三千万円でございます。
  256. 矢追秀彦

    ○矢追秀彦君 大臣、これで緊急融資と言えますか。これが発表されたのは九月の二十日ですから、きょうでもう五十日たっているわけですね。三十六件五億円、こんなのは通常と変わらないですよ。今度は、三機関でたしか一兆三千億ぐらい用意されたはずですね、お金は。いかがですか。
  257. 岸田文武

    政府委員(岸田文武君) この制度は十月一日から発足いたしまして、各産地にこの制度についての調査をいたしましたところ、各産地ともこの制度は知っておるし、利用いたしたいというふうに答えております。ただ、いま各産地におきましては手持ちの仕事がございまして、それによってとりあえずの資金繰りをつけておる。これからだんだん仕事が減ってまいりまして、いわばつなぎ資金がどうしても必要だという時期にこの制度が本当に動き出すのではないかと思っておるところでございます。
  258. 矢追秀彦

    ○矢追秀彦君 そういう答弁だからだめなんですよ。現実は一日も早くお金が欲しいんです、皆さん。申し込みは殺到しているわけですよ。ところが、まず事務の手続が時間がかかることと、たとえば中金の場合なぞは担保を一三〇%要求されているわけです。二千万円借りるためには一三%の担保を出せと言われても、貿易をやっている方というのはそんな担保を持っていないです。大手は別として。結局、そういうふうなことで現実は全然進んでいないわけです。これでは緊急融資にもならないし、中小企業を助けることにもならぬわけです。これは何とか早急に動くようにしていただきたい。窓口になかったらこんな二百九十五件の申し込みはない。これはあしたでも欲しいんですよ、皆さん。大臣、いかがですか。
  259. 田中龍夫

    国務大臣(田中龍夫君) 当該つなぎ融資の問題でありますとか、あるいは中小企業倒産対策の緊急融資のようなもの、これらは特に緊急性の高いものでございますから、御趣旨に従いましてその処理の迅速化、各機関に対しまして特にその処置を簡易にし迅速にいたしますように指示をいたしてございます。
  260. 矢追秀彦

    ○矢追秀彦君 これはぜひ早急にお願いしたいと思います。  次に、そのほかの対外経済対策の進捗状況を先ほどもいろいろ出ておりましたが伺いたかったのですが、極論をいたしますと、いまの緊急融資と同じようにほとんど動いていないわけですよ。これは、総理、きちんと全部チェックをしていただいて、今日までどこまで進んだか、ナフサはどこまできているのか、ウランはどこまで買い付けを終わったのか、あるいは非鉄金属はどうなのか、きちんとしていただきたいと思うのです。  もう一つ、ここで外務大臣にお伺いしたいのですが、この際、在外公館の国有化、これをもっと考えていただいてはどうか、進めていただいてはどうかと思いますが、今年度予算ではむずかしいのかどうか、来年度予算でどこまでやれるのか、それをお伺いしたいと思います。
  261. 鳩山威一郎

    国務大臣鳩山威一郎君) 在外公館の国有化につきましては、前回のニクソンショックの後の措置といたしまして四十七年度に補正で四十六億の追加をしていただいた経緯がございます。四十八年には八億九千万円の追加をしていただいた経緯がございます。その後、予算ではおおむね三十億程度の営繕費の計上をしていただいて今日に至って年々整備を図っております。しかし、なおモスコー大使館でありますとか、サウジアラビアでありますとか、緊急に設置を必要とするところがございまして、外務省といたしましてはこの予算の増額をお願いをいたしたいところでございます。しかし、全体の予算の枠の制約がございまして、毎年継続的にやっていこうということで進めてございます。しかし、今後とも何とか知恵を出して急速な整備ができないものか、目下検討しております。
  262. 矢追秀彦

    ○矢追秀彦君 総理、いまの問題とその前の問題。
  263. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) 円高対策につきましては、これはもう私が陣頭指揮というくらいの態度を持ちまして、決まったことにつきましてはその実行、それからまだ決まらないものにつきましてはその進行状況を常にチェックし、これを督励しておると、はっきり申し上げます。
  264. 鍋島直紹

    委員長鍋島直紹君) 以上で矢追君の質疑は終了いたしました。(拍手)     —————————————
  265. 鍋島直紹

    委員長鍋島直紹君) 次に、渡辺武君の質疑を行います。渡辺君。
  266. 渡辺武

    渡辺武君 最初に総理大臣に伺いたいと思うのですが、十月二十六日の夜のテレビ対談で、総理大臣が、円高は物価安定に強い武器になるという趣旨の発言をされた。ところが、これが日本総理大臣円高容認あるいは円高歓迎というふうに受け取られて、ロンドンの為替市場などで円買いを進める一つの要因になって、これが東京市場にはね返ってきて、それで二百五十円台割れという状態が起こる一つのきっかけになったわけですね。大臣に伺いたいのですけれども、総理大臣円高容認あるいは円高歓迎という立場におられるのか、真意を伺いたい。
  267. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) 私は、今回のようなこのような乱高下的な円為替上昇、これはもう少しも好むところじゃございません。ただ、あのテレビ対談では、何か御質問があったそれに対するお答えだったかと思いますが、まあ円高というのは一方においてこれは強力な物価安定の武器であると、こういうふうに話したんです。これはあたりまえのことなんですが、それがまさか相場に影響するというようなことはゆめゆめ思いませんでしたがね。私は外電のその翻訳の仕方が、何か意図的か意図的でないか存じませんけれども、ゆがんだ翻訳の仕方で報道されたんだと。全体を見れば全然その調子は違っております。
  268. 渡辺武

    渡辺武君 円高歓迎は総理大臣の真意でないという御趣旨の答弁ですが、この春にも大臣は同じようなことを発言されて、これがやっぱりきっかけになって円が上がっているんですね。ですから、そういう経験を踏まえて言いますと、私はやっぱり不用意な発言だったのじゃないかというふうに思わざるを得ないですね。やはり、大臣として、経済の専門家で、しかも内閣総理大臣でしょう。円の高騰というのが物価の問題だけで考えられるような事態でないことはこれは明らかなことなんだから、やっぱり不用意な発言であったということはこれはちゃんと認めてもらわなきゃいかぬし、一言釈明してもらわなきゃいかぬと思う。どうですか。
  269. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) 私は、ああいう趣旨で発言したわけじゃないんです。ですから、恐らく私のこのテレビを聞いておられた人は、円高歓迎なんていうようなそんな受け取り方は一人もしておらぬと、こういうふうに思うのです。ただ、ロイターでありますか何か存じませんけれども、外電がそれをそのところだけをとって、そうして英訳をして、その英訳も私は後で読んでみましたよ。ちょっとおかしな翻訳をしております。そういうことで、海外で誤って伝えられた、それがはね返ってきたと、こういうことで、これは総理大臣の発言というのはずいぶん気をつけなきゃいかぬなあという感じを深くいたしましたが、私が申し上げた趣旨はそんなことじゃないんです。これはもう日本国じゅう聞いた人はだれもそう思っていると思います。
  270. 渡辺武

    渡辺武君 きょうも、この委員会で、緊急輸入三十億ドルの問題が大きな問題になりました。緊急輸入三十億ドルというのを、これはどうも私の願望だというような立場に立っているというのが明らかになったわけですけれども、いままで円がどんどんことしの初めから上がり始めて、特に九月からも上がってきて、年初来一七・七%の事実上の切り上げになっている。もう二百五十円台を割っているというような事態が現出している。いままでの政府の円高対策がほとんど功を奏しなかった、あるいはほとんど無策に近かったというこの事実そのものが示しているわけですね。日本銀行総裁もおられますが、日銀の態度は、これは乱高下については介入するけれども、相場は実勢に任せるんだと、いわばそう申し上げちゃ失礼だが、傍観者的な態度としか考えられないような態度をとってこられる。アメリカが、私ここにモルガン・ギャランティー・トラストのあれが書いた報道を持っておりますが、円を政策的に切り上げさせるべきだということを言っているんです。そうしてブルメンソール・アメリカ財務長官のあの発言がきっかけでたびたび円が上がったように、円に対する集中攻撃が行われているでしょう。そういうときに、大臣がいま言ったような、円が高くなるのは物価にいいんだというような趣旨の発言をするというのは、まさにこうしたアメリカの円切り上げ政策大臣はやっぱり片棒を担いでいるのじゃないかという感じがしてならないんです。一体、このものすごい円高、これに対して今後どう対処しますか、これを伺いたい。
  271. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) まあ一月の間に八%も九%も通貨価値が上がるという状態は、これは私は好ましくないと、こういうふうに思うんです。私は、九月の二十八日から始まったあの乱調子ですね、これは全く予想しなかった。ただ、ちょうど同じ時期にIMFの総会がワシントンであって、そしてアメリカの赤字が膨大化したという話が出る。日本の黒字が展望として相当のものになりそうだという話が出る。そういうような間で円高ドル安基調というものが出てきたのじゃないかと思いますが、これは私率直に申し上げまして、まあ不明のいたすところかもしれませんけれども、このような一月間の乱調子というもの、これが出てくるとは実は思わなかったわけなんですが、しかし出てきちゃった。これに対してどういうふうに対処するかということになれば、私は二つしか道はないと思うんです。一つは、これはアメリカの国際収支がもっとぴんとすると、こういうこと。もう一つは、日本の国際収支が過剰黒字ということが改められると、こういうことだろうと思うんです。しかし、そういう状態がすぐ出てくるということは、大きなアメリカ経済、大きな日本経済、そう簡単なものじゃございません。これは時間がかかります。私は、しかし、時間はかかるけれども、その傾向がずっと出てくる、こういうことになれば、それで問題の解決の糸口になってくると、こういうふうに思うわけです。そういうことで、国内においては内需の拡大政策をとる。また、同時に、緊急輸入というか、私は先々の日本の国際収支を考えてみるとそう楽観はしておりませんけれども、いまとにかくことしあるいは来年、そういう時点をとってみるとかなりの黒字が出そうだ、これをそう放置しておくわけにいかぬというので、内需拡大政策をとると同時に、緊急的に輸入政策、これもしなけりゃならぬし、あるいは経常収支外におきまして資本のいろいろな動きにつきましてもいろいろな工夫をしてみなけりゃならぬ、こういうふうに考えるわけです。まあとにかく早く国際通貨全体として安定すると、こういう状態に持っていきたい、こういうふうに考えます。
  272. 渡辺武

    渡辺武君 経済福田と言われる総理大臣が、これは思いがけない事態だということをおっしゃっている。これは総理経済政策そのもの、これがやっぱり失敗したということを意味すると見なけりゃならぬと思うのですね。余り外から思いがけない事態が起こって云々というようなことはおっしゃらない方がいいと思うんです。事態は非常に深刻ですよ。けさの新聞に出ておりました帝国興信所の中小企業倒産の調査で、この十月に千六百件を超えているというんですね、件数として。戦後最高ですよ。しかも、その中で円高倒産がもう出始めてきているという記事があります。特に輸出中小企業はこのものすごい円高で恐らく大変な打撃がこれから先ずっと広がっていくだろうと思う。  私、通産大臣に伺いたいと思う。七月中旬に通産省が現地調査をされている。それでこの調査の結果によれば、私はここにその報告を持っておりますが、「採算レートは二百七十五円又は二百七十円とする産地が多く(二十二産地中十二産地)、二百六十五円のレートが定着すれば多くの産地で相当の影響を受けるものと予想している。」という調査結果が出ている。これは七月の段階です。いますでに二百五十円台割れという事態がわれわれの目の前に起こっているんですよ。どういう影響が予想されるのか、その点を伺いたい。
  273. 田中龍夫

    国務大臣(田中龍夫君) ただいま御指摘になりました七月の二十二カ所の輸出産地に対しまする調査でございますが、かようなことから大変にその後の急速な進展がございまして、十一月の四日でありますが、先ほども申し上げたと存じまするが、通産局長会議及び円高対策の連絡推進会議を合同で通産省本省でいたしました。品目によりまして差はございますけれども、既契約分につきましては、ドル建て比率の高い業種、産地を中心かなり為替の差損をこうむっておる、また、新規の契約につきましては、商社やバイヤーの模様ながめの関係からも成約がおくれておる一方に、輸出向けの単価の引き下げ等を余儀なくされておるということから、ほとんどの業種あるいはまた産地で、受注残の減少等、非常に大きな影響をこうむっております。  このような円高影響を受けます輸出関連の中小企業に対しましては、十月一日から実施いたしておりまする為替変動対策緊急融資につきましても、去る十一月四日にその金利をさらに引き下げまして、または償還期間の延長等も閣議で決定をいただきまして……
  274. 渡辺武

    渡辺武君 影響だけ言ってください。
  275. 田中龍夫

    国務大臣(田中龍夫君) そういうふうな関係から各七十地点ばかりの個所におきましては相当深刻な影響が出ております。これに対しまして、各都道府県あるいはまた通産局を挙げてこれが対策に取り組んでおる次第でございます。
  276. 渡辺武

    渡辺武君 時間がないのでどうも急がざるを得ないのですが、相当深刻だという御趣旨の話ですが、中小企業為替変動対策緊急融資制度、これについて一、二点伺いたいと思う。  先ほどの矢追議員の質問では、すでに実行された件数がわずか三十六件、金額にして五億三千万円という非常に微々たるものです、いまのところね。私は、この一つ原因として、このせっかくの融資制度、これがまだ金利が高い、それから据え置き期間も短いということがあるのじゃないかと思うのです。とにかく二百五十円台割れという深刻な事態で、今後成約はもうかなりなくなるだろうとあなた方の調査の中にも言われている。非常に深刻な事態ですよ。したがって、金利は、いま六・二%に下げたと言ったけれども、いま低金利の時代ですから、少なくとも五%以下くらいに下げる必要があるのじゃないか。それから償還期間、これも据え置き三年を含めて少なくとも八年間くらいは設定する必要があるのじゃないか、こう思いますが、どうですか。
  277. 田中龍夫

    国務大臣(田中龍夫君) 御案内のとおりに、ただいま七分六厘の通利を六分二厘に引き下げ、また償還期限も五年を六年にする、据え置きも一年を三年に延長すると、こういうふうな据置をとりましたばかりでございます。なお、御承知のとおりに、これはつなぎ融資でありまして、基本には今度の二千万円と五百万円というのは根っこには六千万円プラス二千万円でありまするし、かような措置をしばらく見まして、そうしてまた変に臨みまして臨機の措置をお願いしてまいりたいと、かようにも考えております。
  278. 渡辺武

    渡辺武君 何しろ内閣総理大臣でさえ予想できなかったような二百五十円台割れという事態が起こっているんだから。これは、あれですか、なお調査を進めておられるようだけれども、調査の結果によってはこの融資制度をさらに改善する、そして業界の要望にこたえる方向でもっといろいろな点で改善するという余地はありますか。
  279. 田中龍夫

    国務大臣(田中龍夫君) これもあくまでも緊急の対策でございますので、その実況を見ましてさらに善処をいたしたいと、かように考えております。
  280. 渡辺武

    渡辺武君 それからもう一点。これはせっかくこういう融資制度ができた。それで私調査しましたが、大阪の眼鏡レンズ製造工業協同組合の話なんですけれども、二千万円の融資を受けに行った。ところが、中小企業金融公庫の大阪支店に申し込んだところが、代理金融機関として富士銀行の平野支店、これがあるのでそこから貸し付けを受けろと、こう言われた。ところが、行ってみましたら、担保の評価額、これは六割だというんですね。それで、とてもいま持っている担保では融資を受けられないといって断られたという。ところが、この緊急融資制度によれば、担保の評価をもっと弾力的にやれという趣旨のことが書かれているでしょう。その方針が通っていない、代理金融機関に。どうしますか。
  281. 田中龍夫

    国務大臣(田中龍夫君) 本件はいささか具体的な問題でございますので、担当の政府委員からお答えいたします。
  282. 岸田文武

    政府委員(岸田文武君) 私どもも、この制度を始めますときには、いわば緊急の措置であるということの性格にかんがみまして、担保の徴求については弾力的にするようにという指示をいたしました。いまお話しの件は初めて伺う話でございますが、具体的なケースにつきましてもよく勉強し、なるべく困っておる中小企業者の窮状にこたえられるような運用をいたしたいと思います。
  283. 渡辺武

    渡辺武君 この件については、至急実情を調査して、そして改善しますか。
  284. 岸田文武

    政府委員(岸田文武君) 資金の使途、担保の内容等、少し具体的に調べてみたいと思います。
  285. 渡辺武

    渡辺武君 それからこの中小企業対策につきまして通産省の方針をずっと見てみますと、事業転換政策というのに相当の比重を置いておられるように思うのですね。これは十月七日の朝日新聞に出ている記事ですけれども、通産省の事務次官が新聞記者会見でこういうことを言っているんですね。「今回の円高でやっていけない業界が出た場合は「円相場の水準をいじるのではなく、その業界が他の仕事に転換するとか、その水準でもやっていけるよう合理化を進めるなどの措置を講じるべきだ」と指摘」したと。これは事務次官の発言だけじゃない。「エコノミスト」のことしの七月十九日号に矢野通商政策局長、これがインタビューに答えてやはり同じようなことを言っているんですね。「円高という現象だけをとりあげて、単純に業界の不利だと見るのは賛成じゃありません。むしろ長期に見て、それが構造改善につながるのなら、やはり産業構造を変えていく必要があります。」と、こう言っている。  先ほど、総理大臣は、この円高に対してはこれはもう対処していくという趣旨のことを言っている。通産省は、円レートをいじるべきじゃないんだと、むしろ業種転換、事業転換、これを促進する方向でやらなければいかぬ、そういう趣旨のことを言っている。あなた方は、この中小企業対策の中で、いま言った緊急融資制度などもやりながらも、同時に事業転換政策というのをかなり強調しておられる。それは、つまり、円のレートが高くなった、これを一つの圧力、武器にして、そうしてこの際中小企業を整理淘汰していこうというつもりがあるのじゃないですか、どうですか。
  286. 田中龍夫

    国務大臣(田中龍夫君) そのことは非常に誤解も多いのではないかと思いますが、御案内のとおりに、円高によりまする深刻な打撃、これに対しましてはわれわれは全力を挙げてその緊急の救済処置等々をいたしております。しかしながら、構造不況といったような繊維類を初めいろいろな問題につきましてはそれだけではいけないのでありまして、今後将来転換して、そうして新しい活路る求めるということは、これはもう産業のビジョンの上から申しましても当然行わなければならないことでございます。両々相まちまして当該問題の緊急処理、それからまた、長期、中期に見ましてその転換対策、この問題につきましてはまた労働省とも緊密な連絡をとりまして、転換資金だけではなく、労政の面におきましてもいろいろと御相談をいたしておるような次第でございます。
  287. 渡辺武

    渡辺武君 いま、いままで輸出でやっていた輸出中小企業、これはそれぞれの地域ではかなり重要な産業なんですよ。新潟の燕にしましても、堺の刃物にしても、大阪の眼鏡やレンズにしましても、そのほか例は挙げませんけれども重要な産業なんです。それが円が高くなって大変な事態になってきている。そのやさきで、言ってみれば円高は好ましいんだ、これを使ってこの際事業転換を促進させろ、整理をしていこうという趣旨の発言をする、こんなことをやられてたまりますか。聞きたいと思うんです。事業転換と言うけれども、転換先がありますか。
  288. 田中龍夫

    国務大臣(田中龍夫君) そのようなことは誤解でございます。われわれはいまのこの機会円高を利用してどうこうというようなことは毛頭考えてもおりません。また、中期のビジョンの問題につきましてある程度まで構造不況等の業種におきましては転換を望んでおるところもございます。これらの実例等につきましてもひとつ中小企業庁の長官から御説明をお聞きいただきとうございます。
  289. 渡辺武

    渡辺武君 誤解だと言うけれども、私は誤解しているわけじゃないですよ。だれが誤解しているんです。ちゃんと朝日新聞に記者会見で通産省の事務次官がこう述べたということも書かれているし、同じ趣旨のことは「エコノミスト」にも載っているんだ。私はその記事に基づいて言っているんです。だれが誤解しているんですか。——いやいや、大臣に聞いている。
  290. 田中龍夫

    国務大臣(田中龍夫君) お答えいたします。  ただいま申しましたのは、円高を利用してそうして転換をさせようと思っておるということにつきましては、私はそうではなくて、この円高対策はあくまでも誠心誠意これに取り組んでまいっておるのでございます。ただ、それと並行いたしまして、われわれの方といたしましては構造不況の問題がございます。この円高のショックを受けましたところにはダブルパンチを受けておるところがある。すなわち、構造不況でもって深刻な状況にありますところにさらにまた円高が加わっておる、こういう産地の場合におきましてはやむを得ず転換を考えなきゃならぬ、こういうような両両相まった気持ちでございまして、その点はどうぞ誤解のないようにいただきとうございます。
  291. 渡辺武

    渡辺武君 ここには十一月六日付の朝日新聞に財界の大物の桜田武氏の言葉が載っております。これを見まして私はびっくりしましたよ。財政制度調査会の元会長さんです。政府とも縁が深い。その方がこういうことを言っている。「かつて三十五万人いた石炭産業の労働者を二万人にしたような産業間の配置転換、つまり産業構造の変革だな、それを相当大がかりにやらないといかん」、こういうことを言っている。これは円高の問題に特に関連してということではありませんが、まさに財界の首脳部がそういう気持ちを持っている。産業構造政策では大体そういう方向でいままでもずっと議論が進められてきている。いま円高を契機にして邪魔になる中小企業は整理淘汰しようということが政府の政策だというふうに私はここで断言して差し支えないと思う。しかし、時間も余りありませんから先へ進みますけれども、事業転換と言うけれども一体どういうところに転換をさせようと考えておるのか。これは経済企画庁長官に伺いたい。
  292. 田中龍夫

    国務大臣(田中龍夫君) 一言だけ釈明をいたしまするが、政府の政策として断言をしてはばからないというのはこれはとんでもない違いで、私はそうでないことを断言いたします。
  293. 倉成正

    国務大臣倉成正君) ただいま通産大臣からお話がございましたが、急激な円高というのがこれは望ましくないということでございます。日本の産業が国際社会の中でこれから新しい対応をしていかなきゃならないということはやはり渡辺委員もお認めいただくと思うわけでございまして、開発途上国からいろいろ追い上げを受けている産業ということになりますと、これらの国との調整を図っていくということも必要ではなかろうかと思うわけでございます。基本的には、日本の産業は、省資源・省エネルギー型の産業、また技術集約的な産業、また開発途上国その他と国際的な調和をした産業構造を考えていかなきゃならないと思いますが、同時に雇用の面を考えていくことが非常に大切なことである。したがって、当面の対策としては、やはりどうしても雇用問題に最大の重点を注いでいくことが大切であると、物価の問題と雇用の問題というのが最大の課題の一つであると申し上げたいわけでございます。
  294. 渡辺武

    渡辺武君 桃色のビジョンを言われましたが、実際の中小企業の事業転換の実情はどうなっていますか。事業転換法に基づく転換の場合で五十二年の五月から十一月までの事業転換計画認定実績というのを中小企業庁から出していますね、これでちょっと御説明いただきたいと思う。
  295. 岸田文武

    政府委員(岸田文武君) 昨年の十二月に事業転換法ができまして、今年三月に業種指定をいたしました。業種指定は、これから国際的あるいは国内的に大きな構造変化が予想される業種を指定いたしまして、その業種に属する企業は都道府県に計画の認定を受け、その認定を受けたことを前提として金融上あるいは税制上あるいは労務面の応援手段が動き出す、こういう形になっておるわけでございます。当初は計画の策定あるいは打ち合わせ等に時間を要しておりましたが……
  296. 渡辺武

    渡辺武君 いいよ、そういう詳しい経過は要りません。結論だけ言ってください。
  297. 岸田文武

    政府委員(岸田文武君) 最近かなり認定が出てまいりまして、先ほどございましたように、二十六件の計画認定が行われたという状況になっております。
  298. 渡辺武

    渡辺武君 その二十六件の中で、レストランとかタクシー業、小売業(雑貨等)、寿司屋、大豆タンパク粉末製造業、菓子食品卸売業、飲食業(ラーメン店)、それからマンション経営、そういうところに転換したのがありますね。いままでは刺しゅうレース製造業あるいは製材業、染色整理業等々をやっていたところが全然違った業種に転換している。   〔委員長退席、理事中村太郎君着席〕 いま経済企画庁長官が言った桃色の展望とはかなり変わった業種に転換せざるを得なくなっている。その件数が二十六件中十三件ある。半分近くはこうしたいわば第三次産業的なところに転換せざるを得なくなってきている。これは私は非常に重大だと思う。前のドルショックのときのドル対法に基づく転換の場合は、六十三件中九件が自分たちの従来の仕事とかかわりのない業種に転換しただけでした。今度はそういうわけにいかなくなってきている。私はここに現在の事業転換問題の非常に重大な性格が含まれていると思う。中小企業の方々は何と言っているかといいますと、事業転換しろ事業転換しろ、事業転換すれば低利の融資もくれる等々のことを言ってくれるが、転換先がない、墓場にでも転換しろとでも言うのか、こういうことを言っているんです。これから円が二百五十円台割れになったなら、主要な輸出中小企業の地元は恐らくなだれ現象的に大変な状態が起こるだろうと思う。なだれ現象的に起こるこういう問題を事業転換で片づけることができますか、いま言ったような状態で。今後どういう対策をとりますか、伺いたい。
  299. 岸田文武

    政府委員(岸田文武君) 私どもも、円高問題が起こりまして産地にどういう影響を受けているのか、またどういう対応をするのかということを調べてみました。今後の対応といたしまして、一部のグループは、この際新製品を出し、あるいは高級化して、発展途上国の製品では追いつかないような製品をつくり出すという方向を示しております。しかし、一部には、やはりいままで持っていた設備を少し戦線整理せざるを得ない、あるいは他の分野に転進を図って自分の持っている能力を発揮せざるを得ない、こういう答えも出ております。したがって、私どもは、やはり中小企業もみずから悩みながら何とか生きる道を探していこうと思っておるんだと思いまして、これらの道をいかにして応援するかということを最大の課題として取り組んでいきたいと思っております。その中で、転換の問題でございますが、私どもはこれらの転換を希望する人たちに対してどこへ行けということは申しません。むしろ、その部分こそは企業者の方が一番知恵をしぼっていくべき分野であろうと思っております。従来の事例を見ますと、確かに成長性の高い分野へ行った場合に成功例が多いことは事実でございますが、たとえ繊維ではあっても、あるいは雑貨であっても、非常に高級品への道をたどることによって活路を見出した事例もたくさんございます。私どもはいままでの成功例あるいは一部の失敗例というものをたくさん集めまして、それらから教訓を読み取れるような作業をし、なるべく多くの中小企業の方々にそれを見ていただく、こういうことに力を入れていきたいと思っておるところでございます。それらを参考にして今後の行き方を決めていっていただければと思っておるところでございます。
  300. 渡辺武

    渡辺武君 参議院の商工委員会輸出中小企業の方々、業界の方々に来ていただいて公聴会をやりましたが、そのときにも、何とかこの為替レートを安定させてほしいと非常に強い要望が出ているんですね。つまり、いままでの仕事を続けたい、そのためには為替レートを何とかしてほしいんだと、こういう気持ちであって、決して事業転換をやりたいなどという気持ちじゃないんですよ。  それで、総理大臣に伺いたいのですが、問題は、この円高を利用してそうしてこういうところを整理淘汰するのでなくて、やはり伝統のある輸出中小企業、これが経営を維持することができるように為替レートをできるだけ安定させることが必要だと思う。その点についてどう思われますか。
  301. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) 前段はどうもいかがかと思うのですがね。円高を利用してそうして中小企業の整理を行うと、そんな考え方は毛頭持っておりませんから。そうじゃないんです。円高で苦しいだろうと、何とか温かい手を政府としては差し伸べていきたいと、この一念に燃えているわけですから、その辺はひとつ全く誤解に満ち満ちたお話であって、ひとつ誤解のないようにぜひお願いをいたしたいと思います。  後段の円為替レートの安定、これはもうぜひ必要だ。そのためにいろいろの施策をこらしておると、こういうことでございます。
  302. 渡辺武

    渡辺武君 日本銀行総裁においでいただいておりますので、時間もないのでまとめて二点伺いたいと思います。  私、いまの円高原因は二つあると思うのですね、いろいろな原因があるけれども主な原因として。一つは、日本の経常収支が黒字を続けているということですね。もう一つは、アメリカの国際収支が赤字でドルが弱含みだと、この二点がいろいろな要因の中でも一番重要な要因じゃないかと思いますが、その点はどう思われるか。  それからもう一つついでに伺います。日本の経常収支が円がどんどん高くなっているのにもかかわらず依然としてふえ続けている。このことは、普通に変動相場制のもとでは為替レートの変更が国際収支を調整するものだというふうに言われていたけれども、まさにその機能が限界に来ているということを物語っていると思います。その点はどう思いますか。
  303. 森永貞一郎

    参考人森永貞一郎君) 基本的な背景としては、おっしゃるように、日本の国際収支、なかんずく経常収支の黒字が大きいということだと思っております。それと同時に、これまたお話がございましたように、アメリカの国際収支が、経常収支が大変な赤字であり、来年度もそれが余りよくならないという見込みが当局者から発表されたわけでございます。その発言によりまして、とみに円高感、ドル安感が高まってまいりまして、まあそこへ投機的な動きも加わりまして、この一月余りの間の余りにも急激な円高が招来されたというふうに私ども理解いたしております。その間、乱高下的な動きに対しましては遅滞なく介入もいたしましたが、やはり実勢には抗し切れない面がございまして御承知のような相場づきになっておりますことはいまさら申し上げるまでもありません。  それから第二の点の変動相場制の機能が喪失してきておるのではないかという点でございますが、私はまだそこまで変動相場制の機能が落ち込んでおるとは思いません。やはり、国際収支の実情、為替市場の実情によって相場が上がったり下がったりすることが国際収支の調整に寄与しておる機能は依然として認めざるを得ないと思います。ただし、変動相場制だけに任しておいていいかということになりますと、それにはおのずから限界があるわけでございまして、やはり国内政策が変動相場制の機能の運用のほかに伴わなければならぬのではないか。各国の例で見ましても、変動相場制のもと為替相場がどんどん下がっていきました場合に、国内政策がそれに伴いませんと、為替相場は低落、インフレの促進という悪循環が起こってしまって、一向本来のあるべき調整機能を果たせなかったという例もあるわけでございまして、さらにはまた、黒字国の場合には、為替は上がったけれどもそれが国内経済にデフレ的影響を及ぼして輸出もなかなか減らないというようなこともあり得るわけでございます。したがいまして、変動相場制の運用、加うるに国内経済政策の適切なる運用ということが伴う必要があると思うわけでございまして、現在わが国におきまして内需の刺激、内需の振興による輸入の増加という対策が正面からとられておりますのもその辺のことから来ておると思います。私ども、この内需刺激による国際収支への影響の出ることの一日も早からんことを希望しておる次第でございますが、若干時間がかかるのは御明察のとおりでございますので、その間一つずつでも輸入増加のためにできる手段を打っていっていただきたいということをひたすら政府にもお願いをしております次第でございます。
  304. 渡辺武

    渡辺武君 総理大臣に伺いたいのですが、いま日銀総裁からも言われましたが、変動相場制での為替レートの変更をするだけではだめだと言っていますね。まさに円が急騰したと、そのことが、いまも話に出ましたように、輸出中小企業に深刻な打撃を与える。それだけでなくて、大臣もきのう衆議院で答弁されていたけれども、景気対策に水をかけられたという趣旨のことも言っていますね。非常に深刻な事態がいま来ていると思う。私は、この円高一つの重要な原因であるアメリカの問題、これについてはきょうは触れる時間がありませんから、主として日本の経常収支の黒字の根源である大企業の集中豪雨的な輸出、この問題について伺いたいと思う。これを規制しなければ私は問題のポイントを外すことになると思うのです、解決策の。   〔理事中村太郎君退席、委員長着席〕  すでに、先ほど申しました桜田武氏が責任者になっております産業計画懇談会、ここでも、「貿易構造の改革」という木の中で、「いまの場合、日本国内事情からいって特殊な産業には輸出規制を行ふことが国益である。ところがこれを相手国の側からみれば、過去一年の如き日本輸出著増は、抑へて貰はなければならぬといふ、相手国にとっての大きな国益がある。」と、こういうことを言っている。大企業の集中豪雨的輸出は抑えろと。これは財界の首脳部の一人が言っている。もう一つ、ここに東京銀行の「東京銀行月報」というのがあります。これの十月号、ここでも同趣旨のことを言っております。時間がないから読みません。私は、内需の拡大、それによる輸入の増加なんと言ったって、緊急輸入そのものがあやふやな話です。そうでしょう。どうしてもこの黒字の元凶である大企業の集中豪雨的輸出を抑えなきゃならぬと思う。ある新聞に輸出中小企業のある人がこういうことを言っているんです。あの集中豪雨的輸出をやっている大企業が恨めしい、恨みに思う、そういう趣旨のことを言っています。私ども共産党は、こうした大企業の集中豪雨的な輸出については輸出均衡税、こういう新しい税金をかけて、そうしてそこから出てくる収入を、これをこの円高で大きな打撃を受けつつある輸出中小企業に対する助成に回したらどうだろうかというふうに考えますが、この点どうお考えでしょう。総理大臣に伺いたい、まず基本政策
  305. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) まあ渡辺さんは、いつもお目にかかりますと大企業性悪というような立場の御議論でございますから、渡辺さんの話としては私は理解できます。できまするが、いま現、実の問題といたしまして大企業の集中豪雨、そういう現象はほとんどもう消え去っておるわけであります。まあいっとき、この春ごろはそういう苦情がずいぶんありました。そこで、私ども政府といたしましては、この大企業というか輸出業界に対しまして、集中豪雨的なことをやっちゃいかぬ、どこまでも秩序ある輸出でなければならぬということを要請いたしまして、この輸出業者はそういう態勢に移行しておるわけであります。今日その問題が集中豪雨的輸出から起きておるというようなそういう認識は持っておりません。やっぱり私は内需を拡大して輸入をふやす、これですね、これを根幹とした施策、これを進めなけりゃならぬだろうと、こういうふうに思うんですが、それには多少時間がかかる。そこで緊急輸入、こういうことを考えざるを得ないと、こういうふうに思うのです。  それから、そういう大企業の集中輸出というような現象、いまはもうなくなっておるという状態下において、輸出業者に対してこの円高が非常に厳しい圧力を与えておるわけです。そういう際にまたここで税を重ねてかけるかと、こういうことになる。まあ理論的に私はいまこの時点に輸出業者に対して重課すべしという議論は成り立たないんじゃないかと思うのです。いま問題は円高ですよ。円高で利益をする人は輸入業者なんです。そっちの方の問題に着目されるというならこれは一つの考え方として理解はできまするけれども、輸出業者に、円高でずいぶんそれは重圧を受けている、そこへまた税金をかけてどうしようという議論は、私は理論的にも納得できませんがね、それをやる考えはありません。
  306. 渡辺武

    渡辺武君 いろいろ理由は述べられたが、結局、たとえば自動車の場合ですと、昭和五十一年には四三・八%輸出を伸ばしている。テレビの場合だったら七五・六%も輸出を伸ばしている。鉄鋼の場合ですと、昭和四十九年は前の年に比べて二倍以上も伸ばしている。これはまあ大企業が大体中心ですね、こういう集中豪雨的な輸出、これが国際的にも大問題になっている。経常収支の黒字、これの主要な原因にもなっているわけでしょう。いま総理大臣内需を拡大して輸入をふやすんだと、こう言っているけれども、その内需拡大政策というのは、つまり六・七%の成長を維持するという政策なんでしょう。ところが、その六・七%の経済成長率をもし仮に実現したとしても、政府の見通しそのものでも六十五億ドルの経常収支の黒字になると、こういうふうになっておる。そうでしょう。改定見通しでそうですよ。当初は七億ドルの経常収支の赤字になるはずなのに、六十五億ドルの黒字になるということになるんですよ。経常収支はふえるばっかりじゃないですか、そうでしょう。しかも四月から九月までのわずか半年間に経常収支はすでに五十五億ドルもふええている。あと十億ドルの残りしかない。そういう状況です。その根源にあるのは、大企業は円が高くなっても依然として競争力を持っている。たとえば鉄鋼の場合は、これは経済企画庁の経済月報の五月号に出ているんですが、大体百四十円、これのレートが、これが大体限界利益確保可能の線だという。二百五十円台割れくそくらえという状態ですよ。物すごい力を持っているんです。そ連中が輸出を伸ばす。もうすでに自動車だってことしの一月から九月までに二四%も輸出を伸ばしている、これだけ大きな問題になりながら。それを規制する、つまり税金をかけて、前の年よりもふえた分について仮に五%程度の税金をかける。私どもの計算では、ほぼ年間一千億円くらいの収入になります。それをこの集中豪雨的出をな輸やった、大企業のやった結果として円が上がって大きな打撃を受けている輸出中小企業、これを助成するために財源として回したらどうですか。当然のことですよ、これは。もう一回伺います。
  307. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) これを要するに渡辺さんのお話を伺っておりますと、輸出を抑えろと、こういうことです。しかし、一般的に申し上げまして、輸出を抑えるという考え方はいかがであろうかと。これは集中豪雨的なやり方、これはもう抑えなきゃならぬ。しかし、一般的に輸出が伸びている、それを抑えちゃうということになれば、これはわが国としては縮小均衡と、こういう形になる、そうじゃないんです。輸出の方は、これは集中豪雨があっちゃいけませんけれども、適度の輸出、これはどうしたって伸ばさなければならぬと、こういう立場にわが国はあるわけだ。しかも今日かなり輸出というものはそう伸びてはおりません、これは。もう輸出の増勢というものは鈍化をしている。これからまた円高だというようなことになるとさらに鈍化の勢いに水をかけられると、こういう傾向になってくるわけなんですよ。そうじゃなくて、輸入もふやし、輸出は適度の水準に保って、そうして日本経済全体が底上げを逐次されていくという形こそを展望すべきであって、もうみずからの力をもぎ取って、そして小さくなってと言ったら、これは日本人全体の生活がどうなりますか。そういうことを考えますと、まあ渡辺さんのただいまの所論は賛成しがたい。
  308. 鍋島直紹

    委員長鍋島直紹君) 時間が参りましたので、簡潔に願います。
  309. 渡辺武

    渡辺武君 大臣、強きを助け、弱きをくじくという立場では国の政治はよくないです。とにかく、アメリカで鉄鋼の輸入について課徴金を取ろうかという話も出ているわけでしょう。外国で課徴金を取られるよりも、日本国内でこれほど害悪を与えた大企業の集中豪雨的な輸出に対して適当に税金をかけて、困っているところの救済にこれを回す、これは当然のやるべきことだと私は思う。そのくらいのことをできないですか。前には、輸出を伸ばすために、輸出振興のための特別な減税制度をやっていたでしょう、いまはないけれども。そういうことができるのだ。だとすれば、過度な輸出、これを抑えるために税金をかけて、そうしてこれを国内の困ったところに回していくというのは当然のやるべきことだと私は思う。この点お答えいただきたい。  それからもう一点、最後に。あのスミソニアン会議が終わったときに、水田大蔵大臣が帰ってこられたときにこういうことを言ったんです。円のレートがこんなに高くなった、これからは経済政策を変えなきゃだめだ、福祉優先の経済政策をやらなきゃならぬと、こう言われた。これは残念ながら実行されなかった。しかし、いまあのスミソニアン会議のときの切り上げ率よりもよっぽど大きな切り上げ幅で円が二百五十円を割っているというこういう事態、日本経済全体に対する深刻な影響があると思う。こういうときこそ、アメリカに言われたからだから円の値上がり、これ好ましいかのような発言をして、それをさらに積極的に推進する……
  310. 鍋島直紹

    委員長鍋島直紹君) 簡単に願います。
  311. 渡辺武

    渡辺武君 立場をとられたりするようなことはやめて、為替政策についても自主的な立場をとる。同時に、国の経済も大企業本位の経済ではなくして、国民の生活をこそ優先的に守っていく経済に切り変えなきゃならぬと思うんです。この点どうですか。
  312. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) 前段の、この際大企業の輸出業者に課税をすべしという議論は私はどうも理解できませんね。いま利益を受けるのは輸入業者の方なんですよ。輸出業者の方は、いま円高で大変な打撃を受けている。そこへ課税すべしと、こういう議論は私はこれは了承できない。  それから、経済政策を変えたらどうだというお話でございますが、これはいろんな面において円高に対する調整を、これを行わなきゃならぬと、こういうふうに考えております。かねがね言っておるんです、私は。低成長時代になってきた、これからは生活関連、これを政策として重視しなきゃならぬと、こういうふうに言っております。つまり成長よりも生活中心経済政策ということを言っておるのでありまして、円高になったからいまさらまたそれを変えるというような考え方は持っておりませんです。
  313. 鍋島直紹

    委員長鍋島直紹君) 以上で渡辺君の質疑は終了いたしました。(拍手)     —————————————
  314. 鍋島直紹

    委員長鍋島直紹君) 次に、栗林卓司君の質疑を行います。栗林君。
  315. 栗林卓司

    ○栗林卓司君 私は、事態は大変深刻だと思うのです。経済企画庁の出した資料を拝見しますと、一ドル二百四十円台で採算がとれる製品というのは繊維産業でゼロ、鉄鋼産業でゼロ、一般機械産業では全体のわずかに三・八%、輸送機械産業では全体の九・七%、精密機械産業では全体のわずかに五・六%。まあほとんどの輸出商品が採算割れになっている現状だと思います。ただ、円筒というのは輸入原材料の価格も下げるわけだから、よってもってそう影響は大きくないという見方もありますし、たとえば鉄鋼産業の場合、輸入原材料が下がるから円高に対して中立的なんだという見方もあるようですけれども、これは円高がモデレートに変わったときの話でありまして、こう急激に変わった、しかも、いまの異常な在庫率を考えますと、実態というのは経済企画庁の資料が示すような深刻な状況だと私は思います。  問題なのは、三年続きの不況の後でこの円高に見舞われたことだと思います。月に一千件以上の倒産が続いてすでに二年でありますけれども、その負債金額というのは、足してみますと約八兆円あるそうです。この八兆円の不良債権がどこかの銀行とか企業の含みとして実は残っておる。しかも、ある試算によりますと、八兆円のうちの約二兆円はもう取り立て不能の回収不能債権。現在全国銀行の貸し倒れ引当金を全部足しますと約一兆五千億円だそうですから、貸し倒れ引当金を超えた回収不能債権。では不良資産はどうかといいますと、建設業で土地を保有するために銀行から借りた借入金残高というのはおおむね十三兆であります。そのうちの約八割、十兆というのが市街化調整区域外ですから、当面開発のめどが立たない。不動産業を含めた資本金一億円以上の一部上場企業ということを考えますと、販売上の土地所有、動かないわけでありますけれども、これは約三十兆に達する。こういう不良債権、不良資産を抱えながらいまの深刻な円高という事態を迎えた。何も短絡して比較するわけではありませんけれども、震災手形を抱え、しかも金解禁に踏み切る。これは大幅な円の切り上げでありました。そのころのことを思い返しながら、まことにもって深刻な事態にわれわれはいま立たされた、こうつくづく思うわけでありますけれども、総理の御判断を伺います。
  316. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) まことに私は深刻な事態である、こういう認識でございます。今回の円高問題が起こらぬでもなかなかこれは大変な状態だと、つまり企業収益ですね、これが余りよくない。それから雇用の状態、これもよくない。そういうことをとらえてみますと、経済全体としてなかなかこれは容易ならざる事態であるというふうに考えておったところへこの円高の問題だと、こういうことで、ダブルパンチというか、そういう状態の今日である、こういうふうな認識であります。早くこの円相場を安定さして、その安定の上に立ってこの二重パンチ下の日本経済にどういうふうに対処するか、これを深く検討しなければならぬ、そのように考えています。
  317. 栗林卓司

    ○栗林卓司君 そこで、当面は内需の喚起を図りながらと、こういう話で二兆円の事業規模追加があったわけですけれども、企画庁長官にお尋ねしますけれども、この二兆円の事業規模追加というのはどれぐらいの内需喚起に波及効果を含めてなると御判断ですか。
  318. 倉成正

    国務大臣倉成正君) 二兆円の今回の総合対策の効果は、乗数効果を入れますと四兆円程度のものになろうかと思います。一年間ぐらいの間で考えますと三兆円強、五十二年度中には一兆五十億から六千億程度と、そういうふうに計算をいたしております。
  319. 栗林卓司

    ○栗林卓司君 お尋ねした気持ちは、先ほど同僚議員の質問に対して、四兆円を上回ると、こう総理がおっしゃっておりました。これまで経企庁長官は三兆数千億円とおっしゃっておられた。そこで、その辺の食い違いのところを一つ確かめておきたかったわけですけれども、それは総理の御発言も経企庁長官の話も、実態としては同じものだと、こう理解してよろしいですか。
  320. 倉成正

    国務大臣倉成正君) この総合対策をことしの初めにやったら幾ら効果が出るかということになりますと三兆円強と。しかし、全体を計算すると、乗数効果を入れまして四兆円以上になると。総理のお答えになったとおりでございます。
  321. 栗林卓司

    ○栗林卓司君 わかりました。  では、総理もお触れになりました、そうは言いながら、なかなかもってデフレ効果が出るので先行き心配が伴うとありましたけれども、大蔵大臣にお尋ねしますけれども、なかなかここまでの円高ということを想定はできなかったという中で年度末を迎えていくわけでありますけれども、税収に対して心配が出てこないのだろうか。なかなか先の話ですから確としかお答えはいただけないと思いますけれども、そうは言いながらいまの深刻な不況、しかも三月と、こう見てまいりますと、どういう感触で税収をごらんになっておりますか。
  322. 坊秀男

    国務大臣(坊秀男君) まだ税収に対しましては確固たるこれ見通しがついておりません。しかしながら、今度の円高、思いも寄らぬ円高というようなことで、むろん収入にある程度影響が起こってくるということは避けられないことだと思います。
  323. 栗林卓司

    ○栗林卓司君 今後の政策とも絡むのですけれども、まあ円高の不況企業に対して法人税の還付ということもしなきゃいかぬでしょう。それやこれやを考えてまいりますと、歳入が確保できるだろうかという不安が本当のところを言うと高まってきたというのが実態ではないのでしょうか。
  324. 坊秀男

    国務大臣(坊秀男君) いま申し上げましたことを繰り返すようでございますけれども、ここで幾ら幾ら、大体どれくらいのものがこれが足りなくなるかということは、まだ申し上げる段階ではございません。
  325. 栗林卓司

    ○栗林卓司君 いや、私がお尋ねしているのは、わからないのですよ、幾ら足りなくなるかあるいは余るかということは。ただ、足らなくなる心配が一つ出てきたのではないのだろうか。なぜ伺うかと言いますと、仮にの質問で恐縮ですけれども、足らなくなったらどういう処置をおとりになるんでしょうか。
  326. 坊秀男

    国務大臣(坊秀男君) 足りなくなったらどういう措置という御質問を受けますと、それにはこういうような態度をとるというような、それに具体的なそういうものは、今日のところはまだ考えておりませんので、そこで一般的のお答えをするよりも、税収につきましては現行の税制を徹底的に見直す。それからまた、その他の税制調査会における答申等について、これまた何を採択していくかといったようなことだとか、他面におきましては、歳出の面におきましてでき得る限りのこれはもう真剣なる検討を行いまして、スクラップ・アンド・ビルドの精神に徹しまして、そして予算の編成をやっていきたいという、一般的のお答えは申し上げることはできますけれども、いまの該問題についてそれに対して何をやるかということを聞かれましても、それについて今日的確なるお答えを申し上げる段階にはなっておりません。
  327. 栗林卓司

    ○栗林卓司君 私の質問が不正確だったかもしれません。  今年度において歳入不足が仮に出たら、それはもう増税というわけにいかぬわけですから、恐らく公債発行、時期的に言うと、いや足らなくなったというのは来年に入ってわかるわけですから、当然公債発行しかない。かつてのように、歳入の計算を一月ずらしてみる、ああいうやり方はもうとれそうもありませんから。そうすると、私の言うのは、いまの円高の結果として、あれほどいやだといっていた公債依存率三〇%を結果として今年度を抜く可能性が出てきたのではないのでしょうかと聞いているんです。
  328. 坊秀男

    国務大臣(坊秀男君) 来年度のことを申し上げておりましたが、本年度におきましても、おっしゃるようなことがあるいは起こってくるかもしれませんけれども、それに対しては、歳入の補てんをするためにもう手がないじゃないかと、こういうお話でございますが、私どもといたしましては、何としてでもいろんなことを考えまして、その考える具体的なものについてはまだ私の頭にありませんけれども、やはり三〇%の公債依存度というものはこれは守ってまいりたいと、かように考えております。
  329. 栗林卓司

    ○栗林卓司君 守ってまいりたいではなくて、結果として守れるのでしょうかということです。仮定の質問ですから、先にいってまた改めてお尋ねしますけれども、ただ、どちらにしても、仮定の議論にせよ、ちょっと心配がふえてきたことだけは事実であります。  そこで、もし結果として今年度三〇%超えた場合に、私はこれに対して大蔵省は答えなきゃいかぬ。どういうことかといいますと、三〇%にこだわっていなかったらもっと規模の大きい不況対策ができた、もっと内需は振興できた、よってもっていまの円高はこれほどひどくならなかったかもしれない。ところが三〇%にこだわったために中途半端な景気対策になった、しかも時期がおくれた、よってもってこの円高に追い込まれて、しかも財政はというと、そのあおりを食らって三〇%を突破した。かりにそういう事態になったら、この点について大蔵省は明確な見解をお出しになるべきだと思いますが、いかがですか。
  330. 坊秀男

    国務大臣(坊秀男君) まあぎりぎりに詰められてまいりますとおっしゃるようなことでございますけれども、私はやはり財政でも何でも、これは私には知恵はそんなにございませんけれども、やっぱり人間として知恵を出していかなければならぬときに来たっておるということでございますので、何としてでも三〇%というものを、これをどうしても守っていきたいと、こう考えております。
  331. 栗林卓司

    ○栗林卓司君 時間がありません。総理にお尋ねしますけれども、公債というのは幾ら出したらいいのだろうか、可能限度というのはどこなんだろうか、この議論というのは、財政規模からではなくて、一番正しいのは金融市場の姿からどれぐらい出したらいいかということの上限が決まってくるのではないのだろうか。私が思いますのは、貯蓄超過額——個人部門です。それと企業部門の投資超過額、いわばその見合いの関係から大体公債発行の最高限度というのはこうなんだと決まってくるのではないのだろうか。ある資料によりますと、ことし去年と、実は公共事業の発注規模が少なかったために貯蓄超過が残ってしまった。ある意味では円高の大きな原因になったとさえ言われているわけであります。したがって、来年度の予算編成で、まずもって公債発行依存率三〇%を守るか守らないかが大きな焦点だと思いますけれども、そのときに、公債というのは幾らまでなら発行できるんだということを決めるのは、財政ではなくて私は金融市場だと見るべきではないかと思いますけれども、御見解いかがですか。
  332. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) まあ金融市場の状態を見て、そして公債の発行額を決める、これはもとより重要なことです。しかし同時に、その金融市場というものを単年度で見るわけにいかぬ。二年、三年、まあ三年ぐらいなロングレーンジで見ていかなけりゃならぬ。そういうことを考えまするときに、今日この時点では、いま経済の問題が非常に深刻だというのは、要するに過剰労働力、過剰設備と、こういうことにあるわけなんです。それを財政によってひとつ需要を喚起して、ここ二年ぐらいをかけてそして埋めていこうというわけだ。その埋まった場合には設備投資がまた起こってくるわけです。そのとき一体どういうふうな状態に金融市場が動くであろうかということもまた金融市場の問題としてこれはよく見ておかなけりゃならぬわけなんです。三〇%というのは、坊さんが決めたマジノラインというか、みたいなもので、これは神様が決めたわけじゃないんです、坊さんが決めたわけです。神聖にして侵すべからずと、こういうふうには私は考えておりません。おりませんけれども、しかしいま三〇%というこの高い公債依存度、これは財政として見ましても大変なことなんです、それ自体が。そういうようなことを考えて、不可侵論というか、神聖にして侵すべからずとまでは考えておりませんけれども、三〇%を超える公債発行状態、これで一体来年はどうなるんだろう、再来年はどうなるんだろう、そういうようなことを考えますと、これは深憂にたえないんです。まあ経済あっての財政でありますから、その辺はよく心得ておりまするけれども、やっぱり財政も健全性を維持しなけりゃならぬ。同時にこの経済、これはデフレギャップを早く埋めるというために財政が重要な役割りを演ずる、こういうことですね。これが両々できるような施策を編み出すということが私は妥当な考え方じゃないか。ここでもう公債はどんどん出してもよろしい一それはまあ公債を無制限に出せば、それは一挙に景気は噴き上がって、そしてデフレギャップも埋まるでしょう。それはしかしつかの間の何というか繁栄現象であって、さあ二年たったらどうなる、三年たったらどうなるというようなことを考えまするときに、そうもいかないです。その辺の調整、財政経済。それから財政の運営に当たりましては公債発行額、そういうものをどういうふうにとるかということは、本当に国全体のバランスの中で決めていかなけりゃならぬ、こういうふうに考えております。
  333. 栗林卓司

    ○栗林卓司君 ちょうど昭和恐慌を抜け出したときの公債依存率が三二か三ぐらいでございました。だからということを言っているつもりではありません。問題なのは、いま総理も言われたように、緊急避難として公債発行に訴えるのはいいのだけれど、それが図に当たって民間が元気になってきたときに、公債の縮小をどうするかという難物が待っている。その意味では軽々に扱っていいとは思いませんけれども、ただ緊急避難として求められているものは、それはそれでその時期に必要なのでありまして、本当に公債発行がいいかどうかというのは、その後にどうするか、実は事後処理にこそあるんじゃないか。  そこで日銀総裁にお尋ねするのですけれども、こういう深刻な事態になりますと、じゃ金融市場を見ながら財政というのはここまでの仕事をしてくれないと困るのだという点について、もう積極的に御発言をなさっていっていい、衆知を集めていい時期ではないんだろうかと思いますけれども、この点いかがお考えでしょうか。
  334. 森永貞一郎

    参考人森永貞一郎君) 現下の国内経済の情勢にかんがみまして、当面、先般御審議いただきました補正予算その他の総合対策の効果の発揮されるのを見守りながら、今後どうするかということを慎重に考えるべき段階だと思いまして、その意味では来年の予算につきましては、どちらかといえば内需刺激型の予算が必要になってくるような経済情勢ではないかと私も考えてはおります。ただし、その場合に財源その他の面でどういう問題が起こってくるかということになりますと、これは目下大蔵当局におきましても鋭意検討中の問題でございますので、その辺の検討の結果を待たないで、私がかれこれ申し上げることは差し控えた方がよろしいのではないかと存じますけれども、それは一つだけ必要なことは、やはり財政には財政の健全性を将来にわたって保証する手段、措置が必要だということでございまして、それをどこに求めるかというのが一番大切な問題ではないかというふうに考えております。
  335. 栗林卓司

    ○栗林卓司君 では時間がありませんので、先に進んでお尋ねしたいのですけれども、先ほど日銀総裁の方から国際決済銀行での会議の印象として、円がこれまで高くなるのはいいところじゃないかという感触があったというお話がございましたし、国内で見ると、とても耐えがたい円ドルレートであると。この違いがどこからきたのだろうかという点で、この円高というものをどういう性格のものとして理解をしたらいいのだろうか。総理にお尋ねをしたいと思うのです。  海外の要人がどうしゃべっているかと言いますと、大統領経済諮問委員会委員長のシュルツさんはこう言っているのです。米国の貿易赤字の原因というのは、第一に原油輸入の急増である。第二には米国の景気が総体的に見て好調であったことである。日本のことは別に触れてないのです。二番目に言っているのは、この程度貿易赤字は大した問題ではないのだと。三番目に言っているのは、しかし問題なのはこの赤字が政治的諸問題を引き起こすことである。イギリスのヒーリー蔵相が言っているのは、日本が自分で産業構造を変えるという前向きの政策をとらない限り、外圧をかけて産業構造を変える以外に方法はない。例のブルメンソール米財務長官が何と言っているかと言いますと、日本は黒字を早く減らさないと世界に保護主義を拡大させるおそれがある。日本政府の意図並びに善意を疑うわけではないけれども、いまや問題は結果である。  こういういらいらした話を見ておりますと、私は円高というのは純粋の経済問題というよりも政治問題の色合いが強いのじゃないのだろうか。自由貿易主義をとるのか、保護貿易主義をとるのか、あるいは各国の政権の安定度の問題、もっと立ち入っていくと個々の議員の当落の問題、そういうものが絡み合ったものとして実は円高問題が出ているのではないのだろうか。本当は為替レートによって貿易収支を変えろと言ったって二、三年は軽くかかるんです。来年までに減らせと、そんなむちゃはとうてい通るわけにいかない。にもかかわらず、非常に性急に求められているというのは、経済問題ではなくて政治問題だからではないのだろうか。  時間がありませんから続けて申し上げてしまいますと、では一体来年は黒字が減るかといいますと、従来の経験例では、短期的には円高になると黒字はふえるんです。緊急輸入の話がありましたけれども、恐らくいま話題に出ている緊急輸入の額以上に日銀はドル介入に使ったはずであります。使ったというかドルを買ってしまったはずであります。なかなかもって黒字なんか減らない。しかも外の方は政治問題としていらいらが出てくる。このときにわれわれはどういう対応をしていったらいいのか。内需の拡大をしなければいけませんけれども、私はそれだけではない。もう一つは何かというと、自由貿易主義をとるのか保護貿易主義をとるのか、実績をもって示すことがいま一番必要なのではないか。世界が保護貿易主義になりましたら、残念ながら一億一千万の日本民族の前途というのは大変多難なものにならざるを得ない。自由貿易が一番国益にかなうのであります。そうなってくると、実は農業政策についてかねての議論でありますけれども、日本みずからの犠牲を払いながら、農業政策に私は自由貿易主義の風を鋭く当てていかないと、いまの円高問題は消えないのじゃないか。これはすぐれて日本の政治問題であります、もともとはこれは私は政治問題だと思います。その意味では総理の決断、この農業問題をどう扱うか。この点について私はいま本当に求められると思いますけれども、御見解を伺います。
  336. 鈴木善幸

    国務大臣鈴木善幸君) 私は、日本の農林漁業者も同じ日本丸に乗っておるわけでございますから、そういう意味で、日本丸の安全な航行をはかるために、農林漁業政策の面でも、この厳しい国際経済の中においてできるだけの協力をしなければならない、このように心得ております。  私は、わが国の農産物の輸入は相当高い水準にあると考えております。対米貿易を見てまいりましても、昭和五十一年度におきましては、アメリカからの輸入のうち四七%が農畜産物でございます。また、昭和五十二年度の上期における農畜産物の輸入は五一%と半分以上を占めておるわけでございます。こういう高水準にございますが、私はやはりこの緊急事態に対処しまして、今年度の輸入の第四・四半期の前倒し、また家畜の飼料その他、国内の農業に影響の少ないそういう面につきましては、相当の備蓄積み増しもやるということで、積極的にこれに対応をいたしておるところでございます。  私は、農業の問題で完全な自由化をとっている国は世界にどこにもないと、わが国の残存輸入品目の農産物の水準というのは西独並みというぐあいに考えておりまして、しかもその残存輸入品目は、御承知のように日本の基幹的作目であるかあるいは地域的に相当重要な作物であるか、そういうものをやっておるわけでございます。しかし、私どもは今後におきましてもできるだけこの残存輸入制限品目につきましても輸入枠の拡大ということに努力をしておりまして、今年度は一億二千万ドル前年度よりもふえる、下期におきましても四、五千万ドルふやすように努力をしておるわけでございます。私は、この日本の農業が、御承知のように高度経済成長のもとで都市勤労者の所得が年々向上して、農村、山村、漁村等の農山漁村民の所得がこれに追いつかないというようなことで、米価その他の面でもこれは国が相当の助成をやってきたわけでございます。でありますから、振り返って見ますと、米価におきましても国際米価の五倍もする、肉も三倍、五倍もするというような状況になっております。しかし、これは私は当然政府として農山漁村民を保護するためにとるべき措置である、このように考えております。でありますから、今後前向きで検討はいたしますが、農山漁村民に大きな影響を与えるようなことはやはり慎重にこれは避けなければいけない、このように考えておる次第でございます。
  337. 栗林卓司

    ○栗林卓司君 日銀総裁は結構です。
  338. 鍋島直紹

    委員長鍋島直紹君) 森永参考人には大変長時間にわたり御出席をいただきまして、まことにありがとうございました。どうぞ御退席ください。  井上計君の関連質疑を許します。井上君。
  339. 井上計

    ○井上計君 福田総理は、円筒はあらしのようなものだ、したがって通り過ぎるまでじっと首をすくめている以外に仕方がない、こういうふうなことを言われたということが最近新聞に報じられております。事実かどうか知りませんけれども、しかし、もし事実だとするとこれは大変なことだというふうに思います。総理の頭を通り越したあらしが吹き荒れまして大変な状態になっておる。これはもう御承知のとおりであるわけであります。私ども連日のように輸出関連の中小企業の方々にお会いをいたしておりますが、円高についての深刻な状態はもう私どもの想像以上でありまして、私のような者に対しましてもこの円高についての政府の無為無策、これらの憤り、まるで私のような者を総理やあるいは大蔵大臣、通産大臣と間違えているんではないかと思えるほど怒りを実はぶちまけてこられると、こういう状態であります。日商の永野会頭でさえが、いまの企業はみんな床下にプロパンガスをもう回しておると、もう蔓延をしておる。したがって、もう倒産になりゃ一遍だと、こういうふうなことを言われておる。  こういうことも聞いておりますけれども、そういう中で、先ほどから総理を初め関係大臣の方々の御答弁を聞いておりますと、どうも認識についてまだ不十分ではないか、あるいは危機感について、どうも実態についての若干まだずれがあるのではないかと、こういうふうな感じがいたしてならぬわけでありますけれども、もうこの時期になりましてもああだとかこうだとかという時期ではないと思います。もうとにかく考える、同時に動く、走る。これらが一体となりませんと、この危機は切り抜けることができないと思いますけれども、総理からいま一度明確にお考えをひとつお聞かせをいただきたいと思います。時間がありませんので一言で結構でありますからひとつお願いをいたします。
  340. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) この今日の円高が巻き起こした事態、これに対する認識がどうも井上さんよりはわれわれの方が薄いんじゃないかというようなお話ですが、私どもも本当に真剣にこの事態は考えておるんです。しかし対処の方法というのはそう簡単じゃございません。いまいろいろの実情調査、どういう深刻な影響を与えるか、そういう実情調査をしておりますが、そういう調査の結果を待つまでもありません。とにかく急ぐのは金融だと、こういうので緊急対策融資ですね、これをやっておると、こういうわけでありますが、実情をよく見定めましてどういう対処をすべきかということですね、これについてはいま真剣にこれを考えておる、こういうことでございます。
  341. 井上計

    ○井上計君 総理のお答えをひとつ前提といたします。  そこで、通産大臣にお伺いしたいわけでありますが、円高緊急対策の十項目が先ほど発表され決定をされました。しかし、よく見ますと、どうもお題目の羅列であるというふうな感をぬぐえないわけでありますが、その中で強いて言えば二つ、すなわち緊急融資制度とそれからもう一つは税制上の特別措置、この二つがあるわけであります。緊急融資制度につきましては先ほどから矢追委員渡辺委員からもいろいろ質問があり、また要望や指摘がありましたので、もう時間がありませんからこれは省略をしますが、ぜひ即時、従来と同じような考え方での融資制度の拡充、見直しでは遅いと思いますので、一図ひとつ強力な処置をとっていただく、これを要望いたします。そこで税制上の特別措置でありますけれどもどうなんでしょうか、これはこの税の還付については通産大臣、もう決定したんでございますか、お伺いいたします。
  342. 岸田文武

    政府委員(岸田文武君) 円筒対策としまして、かつてドルショックのときに行いましたような法人税の還付の問題、これは研究に値する問題ではないかと思いまして、内部でいまいろいろ詰めております最中でございます。
  343. 井上計

    ○井上計君 いま中小企業庁長官のお話では、まだ内部で詰めておると、こういうことであります。実はにおいだにまだかがしてもらえぬというような中小企業のひとつ気持ちがあるわけでありますが、大蔵大臣、このことにつきましてはどうお考えでございましょうか、お伺いいたします。
  344. 坊秀男

    国務大臣(坊秀男君) 四十六年、四十八年にやりました法人税の還付でございますが、これにつきましてはいまお答えがあったように、関係省庁においていろいろと研究相談をいたしておりますが、どうしてもこれは必要だということに相なりますれば、これは明年度の税制改正の中においてこれを扱っていこうと、こういうことでございます。
  345. 井上計

    ○井上計君 大蔵大臣の御答弁では、どうもまだ期待をしておる中小企業者はよかったなあという感じがなかなか起きないと思いますが、通産当局と大蔵当局とでいま検討しておられるということであります。先ほど私が要望いたしましたように、考えて動いてすぐ走っていただかぬとどうにもならぬと、こういう情勢でありますが、福田総理のひとつ御決断以外にないというふうに考えますが、総理はいかがお考えでございましょうか。
  346. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) まだ私のところまで問題が上がってこない段階でございますが、早急に検討いたしまして結論を出すようにします。
  347. 井上計

    ○井上計君 ぜひひとつ総理、大蔵大臣、通産大臣は、この問題はもう検討というよりもぜひやると、こういうふうなお考えで今後ともお進めを至急にいただきたい、このように要望しておきます。  次に、円高差益の問題であります。対策であります。先ほど各委員からこれについても若干お話があったようでありますし、また竹田委員から、これについてのいわば新しい税をつくったらどうかというふうなこと、それについては大蔵大臣は、その考えは全くないというふうな御答弁が先ほどありましたが、ところが先ほどの渡辺委員質問に対しまして、輸出大企業についての特別な税ということについてはこれはおかしいと、しかし輸入業者に対する税は考えられるという意味の総理の御答弁があったわけでありますけれども、総理いかがでございましょうか。オイルショックのときに設けられた会社臨時特別税のようなものをこの際ひとつ設けること、これが私は不満を持っておりますところの多くの輸出、特に中小企業に対してやはり政府もここまで考えておるんだと、だからその不満を少しでもやわらげなさいと、もう一生懸命やっておりますという政治姿勢になってくると思うのですけれども、総理のこの点についてのもう一度お考えをお伺いいたします。
  348. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) 確かに輸入業者、輸入ばかりやっておるというのでなくて輸出もやっているものがあるかもしれませんけれども、輸入する人はそれだけ有利に輸入ができると、こういうことになるわけなんです。ただ私どもといたしましては、とにかく為替差益、これを国民に還元をする、それには輸入商品の売り値を引き下げる、これをまずとにかくやるべきだと思うのです。いま企画庁を中心にいろんな商品につきましてその努力をいたしておりまするが、その努力によりましてこの輸入差益の国民への還元、つまり輸入物資の値下げができないと、こういうことになれば、これはいまお話の税の問題という問題も起こってくるわけなんですが、その国民への還元、つまり輸入商品の価格の引き下げができるかできないか、この辺をよく煮詰めました上で結論を出したいと、かように考えております。
  349. 鍋島直紹

    委員長鍋島直紹君) 井上君、時間がありませんので簡単に。
  350. 井上計

    ○井上計君 それでは最後に簡単に申し上げます。  先ほど渡辺委員が、円高を利用して中小企業の整理淘汰を考えておるんではないかという御発言がありました。私はそのようなことを考えておりません。中小企業の中にも行く先があれば転換をしたいという輸出関連企業があることはこれは事実であります。しかし、行く先が全くないんだと、といって値上げすることは不可能だと、こういうふうな中小企業が圧倒的でありますから、これらについて前向きに、それらの輸出関連中小企業がこの円高の中で、あるいは今後どのようなレートになるかわかりませんけれども、そのような中でもやっていけるような施策、指導、助成を特にひとつお願いをいたしたい、これをお願いいたしまして、質問を終わります。(拍手)
  351. 鍋島直紹

    委員長鍋島直紹君) 以上で栗林君、井上君の質疑は終了いたしました。     —————————————
  352. 鍋島直紹

    委員長鍋島直紹君) 次に、市川房枝君の質疑を行います。市川君。
  353. 市川房枝

    市川房枝君 きょうの審議の主な題目は円高問題についてでございますが、これは非常に重大な問題でございますけれども、それらはいままで各党の同僚委員の方々がお取り上げになりましたので、私は、消費者の立場で、円高による利益を特定の企業、団体等に独占させないで、一般消費者に還元してほしいと、そういうことについて簡単に関係当局の方にお伺いしたいと思います。  この問題については、総理の指示があったろうと思いますけれども、すでに十月十四日に企画庁が各省の物価担当官会議で、この円高の差益を消費者に還元するために六項目からなる値下げを行政指導するということに決定して発表になりました。どういう基準でこの外国たばこの値下げ以下六項目だけを選ばれたのか、それから約一カ月たちますが、その実施状況はどんなか、また、将来の見通しについて、企画庁長官から簡単にまず伺いたいと思います。
  354. 倉成正

    国務大臣倉成正君) 物価担当官会議で六項目を決めましたのは、当面、その時点におきまして実施できる見通しのついたものをとりあえず一日も早く国民の前に明らかにしようという趣旨でございます。したがって、すべてを網羅したものではございません。  そこで、外国たばこについては、英国製の紙巻きたばこを中心に九・二%値下げを行うことを決定し、十一月一日から実施をいたしております。  輸入牛肉につきましては、畜産事業団の小売り目安価格を平均でキログラム当たり百円、五・七%引き下げることといたして、十一月十一日より実施をする予定でございます。また、五十二年度の下期の輸入量を上期に比べ一万トン増加することといたしております。  それから国際航空運賃については、国際的な協定がございますから、この場において審議の結果、関係政府の認可を待って十一月二十日から日本発普通運賃について適用されている四%のカレンシーサーチャージを撤廃することを決定いたしました。  医薬品については、平均で五・八%の引き下げを行うこととし、十一月十一日官報に告示をいたします。  民間取り扱い物資については、十月十八日付で主要な輸入関係三十八団体及び流通関係十六団体に対して円高による輸入品価格低下の効果が国内消費者価格にも十分反映されるよう通産省から協力要請を行いました。その後、物価担当官会議ではまだ詰まっておりませんでしたが、電力・ガス料金については為替差益を今後できるだけ長期間現行料金を維持するために活用する方針になっております。  以上でございます。
  355. 市川房枝

    市川房枝君 いま企画庁長官から御説明を伺いましたが、一般の消費者の立場から申しますと、輸入品がことしの一月ごろに比べますと約二割ぐらい安くなっているわけでありますが、値下げの幅がいま伺いましたところだと少し少ないという感じがしますし、それから多くの品が一般の消費者でなくやっぱり少しお金持ちの方なんかに適用されるようなふうに思えるわけでございます。したがって、一般国民からは円高によって大して何にもいいことはない、こういう感じを持っているようであります。  それからこの六項目は、そのときの事情で決めたんだとおっしゃったのですが、この六項目の中に、国民生活に最も関係の深い、また輸入量の多い、したがってそれだけもうけが多い石油あるいは食料品には全く触れていないのを非常に不満に思います。  そこで、まず、たばこの値下げ、いまちょっと御説明がありましたが、いまもありましたけれども、愛用されているアメリカたばこはほとんど入っていないんですね。イギリスのたばこが多いんですし、値下げも非常にわずかだというふうに思いますが、その理由を、大蔵大臣、ちょっと説明をしていただきたいと思います。
  356. 大槻章雄

    政府委員(大槻章雄君) お答え申し上げます。  日本専売公社が輸入する米国の紙巻きたばこにつきましては、前回定価改定を行いました五十年と本年とを比較いたしました場合、外貨建て契約価格が二二%上昇したために、円相場の上昇によってもこれを完全には吸収できず、円建て購入原価は八%上昇しておるわけでございます。したがって、今回の定価改定においてはその小売価格を引き下げることができなかったわけでございます。  なお、米国のパイプたばこ三銘柄、葉巻たばこ五銘柄につきましては、外貨建て契約価格の上昇がそれほど大きくなかったので、先ほど経済企画庁、長官からも御答弁がございましたように、十一月一日から小売価格の値下げを行っていると、かようでございます。
  357. 市川房枝

    市川房枝君 次は、石油を担当しておられます通産大臣に伺いたいのですが、石油がどうして企画庁の六、項目から除外されているのかということが疑問なんです。石油は非常に大量の輸入をしているわけでありまして、石油精製会社はずいぶんもうかっている。消費者団体の計算で見ますと、約四十億円ぐらいもうかっている、こう言うんです。私ども素人にはなかなかよくわからないのですが、いまちょっと企画庁長官から話が出ましたが、それに関連して、だんだん寒さに向かっていきますと、必需品である灯油の値段、それから石油をたくさん使っている電気、ガス料金も値下げしてよいはずではないかということで、消費者団体がその運動を盛んにいま始めておりますが、いま企画庁の長官のお話ですというと、そのまま据え置くんだというふうに決定したとおっしゃいましたけれども、その利益たるやずいぶん大きい利益があるので、ちょっと一般の国民からは納得ができないんです。もちろんこれからの円高がどういうふうにいくかということも問題がありますけれども、しかし、いままでに大分もうかっているんで、それが石油会社の利益となるというのはどうも納得できないのですが、いかがですか。
  358. 田中龍夫

    国務大臣(田中龍夫君) お答えいたします。  物価担当宮会議の申し合わせにおきまして石油製品について特に言及はいたしておりませんけれども、その第五項におきまして、石油製品をも含めて民間取り扱い物資については必要に応じて適切な対応を図るということに相なっております。  なお、石油の問題は、確かに差益の点におきましては非常に大幅に出ておる。全体の輸入量から申しましても四十数%でございますので、その差益の還元の問題は特にわれわれの関心を持っておるところでございます。エネルギー長官から詳細にわたりましてのお答えをいたさせますので、どうぞ御了承いただきます。
  359. 橋本利一

    政府委員(橋本利一君) 私から石油製品と電力とガス料金についてお答えいたしたいと思います。  ただいま、石油についてかなり為替メリットが出ているという御指摘でございましたが、それも事実でございますが、一方で、御承知のように、ことしの一月と七月にOPECで原油価格の引き上げをやっております。あるいは、備蓄、保安、防災、かようなコストも上昇いたしております。そういったものも含めまして、いわゆる為替差益とさようなコスト上昇とどういうふうに相殺されていくかということが問題点だと思うわけでございますが、直接いま家庭用の灯油についてお尋ねがございましたが、御承知のように、昨年の九月時点におきまして、十八リットルの灯油をいわゆる店頭における小売価格で七百二十五円にとどめるように指導してまいったわけでございますが、昨今の情勢について申し上げますと、私の方のモニター調査の結果によりますと、この九月における全国平均価格が七百十八円ということで、若干ではございますが値下がりをいたしておる。これは一つには円高を背景にしているということもあろうかと思いますが、需給事情によるところも多かろうと思います。この点につきましては、今後も、レートの推移、あるいは十二月に予定されておりますOPECの総会、こういった状況を見ながら適切に対処してまいりたい、かように考えております。  それから電力料金につきましては、一定の前提を置きまして試算いたしますと、五十二年度中で約七行四十一億円の為替メリットが出てくるという計算はでき上がっております。これをキロワットアワーにいたしますと十八銭、標準的な家庭で大体月百二十キロワットアワー使用いたしますので、二十一円六十銭ということになります。同じように前提を置きましてガス料金を計算いたしますと、トータルで百三十九億円でございます。これは一戸当たり大体八十一円ぐらいになろうかと思います。さような数字が出てくる反面、電力料金あるいはガス料金といったいわゆる公共料金についてはできるだけ長く低位に安定させることも必要であろうということでございまして、私たちといたしましては、来年の三月にいわゆる原価計算期間が切れるわけでございます。それ以降もできるだけ長くこの為替メリットを活用して現行料金水準を維持するというのも消費者に対する為替メリットの還元の方法ではなかろうかと、また電気あるいはガス料金についてはその方がむしろ適当ではなかろうかということでございまして、先ほど企画庁長官から御答弁ありましたような対応をわれわれとしては決定いたしたわけでございます。
  360. 市川房枝

    市川房枝君 灯油が下がっていると、こうおっしゃったんですけれども、高くなっているところもあるんです。OPECの方で値上げをしたことは私も承知をしております。ですから、そこの関係で利益が出ているけれども、しかし、その細かい数字をいまちょっと伺いましたけれども、なかなか素人にはわかりにくいといいますか、全然値下げをする余地が一体ないのかどうか。金額の問題はありますけれども、一般消費者から言うと、自分たちの生活に直接関係あるのは、円高になってあんなにいろいろマスコミなんかで言われていても何にも関係ないんだ、ちっとも得することはないのじゃないかという、国民感情といいますか、そういうものから少し考えていただきたいと思います。  それから次には農林大臣に伺いたいのですが、国民の命に欠くことのできない食料は農林省の担当なんですが、輸入の牛肉のことはさっきちょっと出ておりました。しかし、その他の食料品ということでは入っていないように見えるのですが、食料品の中で水産なんかも魚転がしから今度の為替の差益なんかで相当もうかっているようなんですが、ここでは特に私は小麦の問題だけをちょっと伺いたいと思うのです。小麦は輸入の母もずいぶん多いし、それから小麦は海外の相場がずいぶんいま安くなっているらしいのです。それが、国内ではむしろ高くといいますか、国際価格に比べてずいぶん高く売られている。国民はそれを買っているわけなんですが、今度の円高の問題で余りこの問題はそう一般的にまだ取り上げられていないのですけれども、もちろん例の食糧管理特別会計にそのもうけが入っている、それが農民の方から米を高く買って赤字が出ているのの穴埋めに使われているということは私は承知しているのですが、しかし、一般の国民の人にしてみれば、そこのところは余りはっきりしていないといいますか、そうしてやっぱりどうして小麦の問題は今度の為替の差益の中で全然触れられていないかということを疑問に思っていると思います。一体、外国からの輸入、それから今度の為替の差益で小麦でどれくらいの金額が食糧管理特別会計の方へ入っているのか、伺いたいと思います。
  361. 鈴木善幸

    国務大臣鈴木善幸君) 小麦の問題でございますが、これは年初来為替レートも動いておりますし、また、国際的な麦価もわりあいに低位に推移しておったわけでございます。そこで、いま、食管勘定におきましては、今年度の消費者米価は改定をいたしましたが、その際に政府の売り渡し麦価も改定すべきだという御意見が各方面からございました、農業団体等からもあったわけでありますが、私は、為替レートの動き、なお国際麦価の推移、そういうものを慎重に見守ってまいりまして、今日までこの改定、値上げはいたしておりません。そこで、食糧管理勘定の中では現在五百五十億ないし六百億程度の黒字が出ております。そこで、それだけの黒が出ておるのであれば、これを売り渡し価格を下げて値引きをして消費者に還元したらどうかと、こういう素朴な御意見が出てくるわけでございます。ただ、市川先生すでに御承知のように、食管制度におきまして食管法の規定に従いますと、国際麦価のコスト、あるいは国内麦価のコスト、さらに米の消費者価格、そういうものを総合的に勘案をしてそして麦の政府売り渡し価格を決めると、まあこういうことに相なっておるわけでございます。そのようなことから、海外での国際価格の動きや、あるいは為替レートの動き、それがそのまま政府売り渡し価格に連動をするということには相なっておりません。その具体的な例は、昭和四十九年に大変な国際価格の高騰があったわけでございますが、その際、政府としては、それを直ちに消費者のパンや何かに反映をさせるようなことがあってはいけないということで、千四百億一般会計から補てんをいたしまして、その海外での値上がりをそのまま反映しないように措置したわけでございます。昭和五十年にも八百億入れております。そういうようなことでございまして、私どもは、今日までとにかく据え置いてきたというのは、いろいろのそういうことを考慮いたしまして、消費者にできるだけこの為替レートの円高関係もあるいは国際価格のことも考えまして据え置いてきたと、こういうことでございますので、御理解をいただきたいと思います。
  362. 市川房枝

    市川房枝君 時間がなくなりましたので、最後に総理にちょっと伺いたいと思います。  いままで簡単に関係当局から御意見を伺っておりましたが、その円高の利益を国民に還元すると総理がおっしゃっておりますことは、どうも看板だけで、一般の消費者がその恩恵を受けることはあんまりなさそうだと、こういう感じがするわけですが、まあ一番はっきりわかるのは灯油の問題ですけれども、私はちょっとでも下げるというか、そういうことをしてくださらないと、国民は感情的にやっぱりなかなか納得をしないのじゃないかと思います。消費者団体が、ここ数日来、関係官庁なんかに陳情をしております。政府の方にも行っているはずですが、ちょうどきょうあすは全国から……
  363. 鍋島直紹

    委員長鍋島直紹君) 市川君、時間が来ております。
  364. 市川房枝

    市川房枝君 消費者団体の代表が集まりまして、三千人集まってこの問題も討議しているはずだと思います。総理はこういうことに対してどんなふうにお感じになっておりますか。総理は前の井上さんに対する答弁でもこの問題をおっしゃっておりましたが、実は幾ら総理が熱心でも、これはみんな行政指導ですね。そうすると、なかなか弱いんです、実現が。小さいことならばできますけれども、少し大きいことだとなかなかできにくい。だから、本当は、大企業の輸入業者にははっきりとどれくらい為替で益金が出てるのかということを届けさせてその金額を消費者に還元する、あるいはまたそのために被害を受けておる人たちに配分するような何か法的な裏づけが必要ではないか。これは前の委員のどなたかからもそういう意見が出ておりましたけれども、あのときは税金で処理をするようなお話が出ておりましたけれども、どうも行政指導では弱い。もうちょっと総理のお考えになるように実現をしていただくためには、やっぱりそういう措置が要るのではないかと、こういうふうに思いますが、総理の御感想、あるいは、この機会に、国民に対して、消費者に対して、はっきりとこの問題に対する総理の決意をおっしゃっていただきたい。
  365. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) いまの日本経済ですね、この中では特殊な事態がありませんと物価が上がっていく傾向があるわけですね。賃金の上がり、こういうものはなかなか避け得られませんわね。そうしますと、どうしてもコストが上がる。そうすると、物価、生活費、それはそれだけ負担が重くなっていくと、こういうことになってくるわけですが、今度円高という現象がありまして、それだけをとってみますと、当然というか、自然に放資しておきますと上がるその勢いをかなり消すという力があるわけであります。でありまするから、これは国全体として見ますと、卸売物価なんかにはかなり響いてきます。それがまた消費者物価にもはね返ってくる。物価の動きにはかなり大きな力を持ち、それがやがて生計費の負担減少と、こういうことにはね返ってくるだろうと、こういうふうに思います。  まあ特徴的なものを何かこう下げると非常にいいわけでございますが、それは、製品として輸入されてくる品物ですね、そういうようなものにつきましては、たとえば、ウイスキーでありますとか、あるいはビスケットでありますとか、あるいは洋服の生地でありますとか、そういうものは目について、こういうような形で下がったなあと、こういう感じになってきますけれども、日本貿易の約八割は原材料でしょう。これはすぐ下がったなあという形になってこないんです。これはやっぱりかなり行政指導なんかして、それをもとにしてつくるところの製品の価格が下がるようにと、こういうふうにしなければならぬわけなんですが、そういういま努力をしております。  さあ、法的に利益をどうする、あるいは値を下げさせるということは、これはとても繁雑で、なかなかやり切れないのじゃないかというふうに思いますが、まあ精いっぱい行政指導でその実を上げたいと、こういうふうに考えております。
  366. 市川房枝

    市川房枝君 時間を少し超過して済みませんでした。(拍手)
  367. 鍋島直紹

    委員長鍋島直紹君) 以上で市川君の質疑は終了いたしました。     —————————————
  368. 鍋島直紹

    委員長鍋島直紹君) 次に、有田一寿君の質疑を行います。有田君。
  369. 有田一寿

    有田一寿君 私の持ち時間は二十分というきわめて短時間でございますので、問題を二点にしぼってお尋ねいたしたいと思います。同時に、二、三の提言をさしていただきたいと思います。第一は、わが国の国連大学に対する拠出金の問題についてであります。第二は、福田総理財政経済運営に対する姿勢についてお伺いをしたいと思います。  まず、国連大学へのわが国の拠出金についてでございます。国連大学は、ウ・タント国連事務総長が昭和四十四年に提唱して、四十七年の国連総会で決定されたものであります。四十八年に日本の強力な運動もあってわが国に誘致されたという経緯がございます。目的は人類の存続あるいは福祉開発。第一回のテーマもすでに決定して研究に入っておるわけでございますが、三つありまして、世界の飢餓、天然資源の管理、人間と社会の開発、これに五億ドル要るわけですけれども、とりあえずは四億ドルの基本金をもってその果実をもってこの大学は運営するということで出発したわけでありまして、日本が一億ドル、アメリカが一億ドル、ヨーロッパが一億ドル、その他一億ドルということであります。これに対して、まずわが国の拠出金の状況を外務大臣から簡単にお開かせ願いたいと思います。
  370. 鳩山威一郎

    国務大臣鳩山威一郎君) わが国が国連大学へのプレッジは一億ドルのプレッジをして、これはおおむね五年くらいで拠出をしようということで、毎年二千万ドルずつの拠出を続けて、三年間拠出をして六千万ドルの拠出をいたしました。ことしの予算が一千万ドルということに、これは財政状況等もありまして一千万ドルになったわけで、ことしの予算までで七千万ドルの拠出ができる、こういう状況でございます。
  371. 有田一寿

    有田一寿君 五十二年度予算でそれまで二千万ドルずつ計上されてきたものが一千万ドルにベースダウンされているというのはどういう事情でしょうか、外務大臣にお伺いします。
  372. 鳩山威一郎

    国務大臣鳩山威一郎君) これは先ほど有田先生がお述べになりましたように、各支持する国が拠出をすることになっております。現在までのところ、日本が——ことしの始まる前の状況ですが、予算折衝の段階でありますが、現在までのところ日本のみが六千万ドルを拠出しておる。その他の国はわずか六百万ドルしか拠出をしていないというのが実態でありまして、他の国々がこれに協力をしていない、こういう事態であります。そこで、私どもといたしましては、大口出資国でありますアメリカに対しまして、アメリカがぜひ出資してもらいたいと、そのためにアメリカに対して少なくとも一千万ドル以上の出資をぜひしてもらおうと、こういう発想のもとに、日本といたしましては一千万ドルにとどめアメリカの協力を要請する、こういうことにいたし、ことしの年初にモンデール副大統領が見えましたときにも、わが方から、ぜひとも国連大学に出資をしてもらいたいということを要請いたして、副大統領もその点はよくわかったということで帰られました。ことしはカーター政権といたしましてはぜひともアメリカの出資を獲得するように努力をしてくれたわけでありますけれども、先般、アメリカでは、下院の方は通ったわけでありますけれども、上院におきまして予想せざる結果になり、そしてまた両院協議会でもこれは通らなかった、こういう経過でございます。
  373. 有田一寿

    有田一寿君 私が申し上げたいのは、国際経済協力あるいは国際機関へのサービスという点において、私はよほどの腹構えをもって今後ともこれに当たらないと、今回の円高あるいは日本に対する羨望、やっかみ、憎しみ等、そういうものが背景にあると思っておりますので、この遠因はやはりわが国の姿勢にかかっているということを考えざるを得ないわけであります。二千万ドルを三回拠出いたしました、四十九、五十、五十一年と、今回、アメリカがまだ出していないからというので一千万ドルにダウンさせたということ、私はこのこともきわめて不満でありまして、そこに問題がありますが、アメリカがなぜ拠出をすると言い、しないと言い、またすると言って結局最後に両院協議会で否決したという背景にあるものがこれはきわめて重大だというふうに考えておるわけであります。仮にモンデール副大統領が約束したと言っても、私はこれはもうきわめてむずかしいというふうに見ておるわけでございます。なぜアメリカがそういうことになったかということを時間の関係で私の方から言ってみますが、間違ておればどうぞ御訂正をいただきたい。一つは、この背景にあるものは、アメリカの国連に対するアレルギーと申しますか、第三世界がやはり発言権を強めてきた、あるいはイスラエル排除決議案等に見られるように国連で思うようにならないという焦燥感、しかも出すものは国連経費の四分の一、これはアメリカが出している。アメリカの大学が今度つぶれかかっているのにこの国連大学に出す必要はないという考えもあるようであります。あるいは、アメリカの納税者の立場を考えて国連大学に出す必要がないという考えもあるようであります。また、日米貿易における赤字、これがやはり一つの大きなネックになっているということは争えないこれは事実であります。したがいまして、わが国が、アメリカが拠出をまだしてないからそれをじっと見ながらベースダウンしていくというんじゃくて、この大学ができるときのあの日本の意気込みを考えたならば、一億ドル日本が出す、しかも二千万ドルずつ五回に分けて五年間でこれを完全に納めるということを言ったはずであります。よそが出してないからベースダウンをしたということは私は情けない。  かつまた、これも御質問するより私がもう言いますけれども、決まった予算の国連大学への支出が例年おくれて、これは大蔵省的な感覚かもわかりませんが、大蔵大臣にお尋ねすべきかもわかりませんが、七、八月にでもあるいは出してやればもう予算は決まっているんだからいいのを、翌年の一月か二月まで引っ張ってそこで大学に渡す。ところが、大学は、その果実をもって運営するわけですから、たった二十五億円といえども、これは一カ月に一千万円の金利になります、五%で計算して。それがあるとないでは大学運営は左右されるということでありまして、これは早く出してもらいたいというこれは私のお願いであります。それから五十三年度予算で三千万ドルは組む必要があるのではないか。そうすれば、日本はちょうど一億ドル拠出したことになる、もっと言えば、アメリカが渋っておる一億ドル、もしくはその他のいわゆる小さな国々の合わせて一億ドルというものを日本が出してやってもいいのではないか。それぐらいの国際協力をなすべきではなかろうかということを強く考えるわけであります。  世界へのサービス、特に発展途上国へのサービスという問題については、腰構えをはっきりと決める必要があるのではないか。これを考えますと、日本は貧乏の道徳については大変得手だと思うのです、長い間貧乏してきた国ですから。しかしながら、金持ち、ドル持ちになってからのモラルというものはこれから身につけていかなければならないのが正直なところだろうと思います。持った物が減っていくという不安感がのきません。私自身について見てもやはりそういう考えはまだあります。他を生かしながら自分もその中で生きていくというそういう相互扶助の考え方、いわば国際性を持って世界の中で生きていくんだというそういう心構えを基本的に持つようにしなければならないのではないかという考えが強いわけでございます。そこら辺について福田総理にお尋ねしたいのですが、どういうふうにお考えになりますか。
  374. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) 他人と助け合って、そして他人もよくなる、世の中全体がよくなる、世界全体がよくなるという中に日本の繁栄を求めていくというその考え方は、私は有田さんと全く一緒ですが、国連大学をどうするか、こういう問題につきましては、私はいきさつをよく存じませんので、はっきりしたことを申し上げかねます。
  375. 有田一寿

    有田一寿君 いまいきさつをよく知らないとおっしゃった総理はまことに私は正直だと思うのですけれども、あのとき日本に誘致したその前に国連の中で日本がどれだけこの大学が人類の未来の希望を開くものであるということを力説したか、それによって国連総会で決定したと言っても差し支えはございません。かつ、決定した後、日本に誘致するときのまことに情熱的なあの動き、これは官民一体となって誘致したことが成功した。最後には、カナダと競り合って、いわば優勝戦で日本が勝ったわけですね。そして日本に来た。ところが、いま国連大学は行き倒れになろうとしている。まだ仮本部でやっている。研究は一生懸命やっています。だから、これはやはり総理にも知っていただきたいし、かつまたいま申し上げたことをどうしても私は実現していただきたいと思うわけであります。それはお願いをしておいて、第二の問題に移ります。  現在の経済不安、きのう、きょうにわたって円高中心にする審議が行われたわけでございますが、この外為市場における円高ドル安、あるいは外貨保有高の膨張、−国内的には内需不振、不況業種の拡大、倒産、投資意欲の減退、不公平税制に対する不満、失業の増加、あるいは増税反対、これは不況から来ることではありますが、それらの現象は私は今後とも次々に連鎖反応を起こしていくだろうと思います。事ここに至った原因は何であるか。総理はいろいろ挙げられるでしょうけれども、私をして言わしむれば、やっぱり大事をとり過ぎて大事を引き起こしつつあるという感触でございます。  それで、俗に人は一番得意なもので失敗するということがございます。財政の専門家である、私にお任せくださいという総理にお尋ねをしたい。ロンドンの先進国会議総理が公約したと言われます六・七%の経済成長率と、経常収支のマイナス七億ドルというもの、これはたった六カ月前のことでございます。あれは五月でした。五月と言えば通常国会が開かれておるころ、今日の事態をどういうふうにお見通しになって首脳会議でそういうことをおっしゃったのか、意地の悪い質問のようですけれども、どうしてもこれだけはお尋ねをしておきたいと思います。
  376. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) 首脳会談のテーマというか議題は、これはまず世界各国の現状認識、これを統一しようじゃないか、こういうことです。そういうことで、まず失業、これが一番の大問題、それからそれに関連いたしまして不況、それからさらにインフレ、この三つが世界各国が当面しておる最大の問題で、これを一体どういうふうにするか、こういうことです。そのどういうふうにするかということにつきましては、まず第一に、各国がその示しておるところの経済見通し、これを実現することに努力をする、こういうことでございます。その席では、国際収支問題というのは、これはもうほとんど、ほとんどでしょうな、もう話じゃないんです。問題は、失業をどうするか、景気をどうするか、それからインフレをどうするか、この三点にしぼられておるわけです。それで、経済見通しというけれども、経済見通しとなれば、それは成長率の問題もある、物価の問題もある、あるいは国際収支の問題もいろいろありまするけれども、そこで主として論ぜられた各国の経済見通しというのは、成長率、この問題です。  私はその席で六・七%成長を実現するということを公言をしたわけですが、その後、どうも見ておりますと六・七までいかない、まあ五・九になりそうだ、そういうようなことから先般の二兆円需要造成政策をとったと、こういうことなんですが、私は、世界各国がいま共通の問題として失業の問題不況の問題、インフレの問題を抱えておる。そういう中において、わが国もまた同じような問題を抱えておる。そこへさらにこの円高問題という問題を抱えて、非常に深刻な状態だなあと、こういうふうに考えておるんです。何か、いま、得意な面でどうもしくじるというような、私が何か財政経済かに得意で、そこの面でしくじると、こういうようなお話のように聞きましたが、私は別にしくじったとも考えておりませんが、とにかく全力投球をいたしまして国の経済を安定させ、また同時に国際社会に対する責任を果たしていきたいと、このように考えております。
  377. 有田一寿

    有田一寿君 いまマイナス七億ドルのことにはお触れになりませんでしたけれども、まあそれはいいとして、私は、福田総理はそのときも大変重要視されたというふうに当時の新聞記事は報道しておりましたし、忘れもしませんが五月の十五日ですか、NHKの討論会で、鳩山外相も一緒に、私もそれに参加したときのいろいろ議論の記憶がまだはっきりしておりますけれども、そのときに不安に思ったのは、やはり六・七の成長率、これはむずかしいと、重荷を背負ったということと、七億ドルマイナスの問題でそれが議論されました。これが達成できればいいけれども、できないときはそのことが国際的に不信を招いてエゴイズムと批判されますし、それが今日の円高を招いた一つ原因になっていると私は思わないわけにいかない。昨日も衆議院で質問があっておりましたけれども、謀略説、これが出るのも、諸外国のやはり憎しみが背景にあるからだと思うのです。実際は謀略でないかもわかりません。しかし、そういう説が出る背景というものは考えなきゃいかぬ。  その首脳会議のときに、フランスの大統領から、今後の国際経済においては管理の面が必要だと言われたようでありますが、このことは、やはり今度の円高ドル安という通貨問題、あるいはドルの偏在の問題を契機にしまして、管理的な思想がクローズアップするおそれがある。先進国が保護貿易主義に逆戻りすれば自由貿易体制が破壊される。これは栗林委員も先ほど質問しておられましたが、それに対して私どもは大変な危機感を持っておるわけでございます。三つの機関車だということを言われて、アメリカ、西ドイツ日本に重荷を背負わされたけれども、これは背負わされて背負った限りは、やはり完遂していくんだと、そして国際信義を維持するという姿勢が政府になければならないと思います。  だから、ここで申し上げたいのは、だれがいまここでかじ取りをやっても、そんなに完全にこの自由主義経済体制をどの国もが満足できるように運営するということはだれもようしません。どの政党でも、じゃおれに政権をとらしたら完全にやるよと、それはできないと思うんです……
  378. 鍋島直紹

    委員長鍋島直紹君) 有田君、時間が来ております。
  379. 有田一寿

    有田一寿君 はい。したがいまして、どうか福田総理にお願いしたいのは、やはり謙虚に、ひとついろいろな声に耳を傾けながらぜひとも運営をするようにしていただきたい、そういうことでございまして、保護貿易主義というのも、国内のそれぞれ失業問題を抱えておるその苦悩の中から保護貿易主義という政策が打ち出されてくるわけでありますから、これはわりに説得力があります。それで最初に国連の問題を例として申し上げましたけれども、アメリカが国連アレルギーを起こすというのもそういう背景があるからでありまして、この国連大学に対する拠金の問題も、どうかひとつ、大きな観点に立って、よその分も引き受けられる限りは引き受けるというぐらいの心構えをもって国際協力、国際サービスをしていただきたい。そして、福田総理は、どうか、あなたは一番財政の専門家であると御自分も思っていらっしゃるでしょうし、正直に言えばみんなそう思っています。だから、だからおれに任せておけとおっしゃらずに、だからその知恵をどうぞお出しくださって、皆の意見も謙虚に聞きながら、ひとつ間違のない経済運営を勇敢に大胆にやっていただきたいというのがお願いでございます。ありがとうございました。(拍手)
  380. 鍋島直紹

    委員長鍋島直紹君) 以上で質疑通告者の発言はすべて終了いたしました。  これにて散会いたします。    午後七時六分散会