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1977-10-24 第82回国会 参議院 予算委員会 第7号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和五十二年十月二十四日(月曜日)    午前十時二分開会     —————————————    委員の異動  十月二十二日     辞任         補欠選任      片山 甚市君     大木 正吾君      矢原 秀男君     小平 芳平君      下田 京子君     渡辺  武君  十月二十四日     辞任         補欠選任      園田 清充君     真鍋 賢二君      大木 正吾君     片山 甚市君      小平 芳平君     矢原 秀男君     —————————————   出席者は左のとおり。     委員長         鍋島 直紹君     理 事                 戸塚 進也君                 内藤誉三郎君                 中村 太郎君                 宮田  輝君                 小柳  勇君                 山崎  昇君                 多田 省吾君                 内藤  功君                 栗林 卓司君     委 員                 浅野  拡君                 岩動 道行君                 石破 二朗君                 糸山英太郎君                 小澤 太郎君                 加藤 武徳君                 亀井 久興君                 亀長 友義君                 熊谷  弘君                 下条進一郎君                 玉置 和郎君                 成相 善十君                 林  ゆう君                 真鍋 賢二君                 三善 信二君                 望月 邦夫君                 八木 一郎君                 山本 富雄君                 秋山 長造君                 大木 正吾君                 片山 甚市君                 竹田 四郎君                 対馬 孝且君                 寺田 熊雄君                 福間 知之君                目黒今朝次郎君                 矢田部 理君                 太田 淳夫君                 小平 芳平君                 峯山 昭範君                 矢追 秀彦君                 矢原 秀男君                 佐藤 昭夫君                 渡辺  武君                 井上  計君                 山田  勇君                 柿沢 弘治君    国務大臣        内閣総理大臣   福田 赳夫君        法 務 大 臣  瀬戸山三男君        外 務 大 臣  鳩山威一郎君        大 蔵 大 臣  坊  秀男君        文 部 大 臣  海部 俊樹君        厚 生 大 臣  渡辺美智雄君        農 林 大 臣  鈴木 善幸君        通商産業大臣   田中 龍夫君        運 輸 大 臣  田村  元君        郵 政 大 臣 小宮山重四郎君        労 働 大 臣  石田 博英君        建 設 大 臣  長谷川四郎君        自 治 大 臣        国 務 大 臣        (国家公安委員        会委員長)        (北海道開発庁        長官)      小川 平二君        国 務 大 臣        (内閣官房長        官)       園田  直君        国 務 大 臣        (総理府総務長        官)        (沖繩開発庁長        官)       藤田 正明君        国 務 大 臣        (行政管理庁長        官)       西村 英一君        国 務 大 臣        (防衛庁長官)  三原 朝雄君        国 務 大 臣        (経済企画庁長        官)       倉成  正君        国 務 大 臣        (科学技術庁長        官)       宇野 宗佑君        国 務 大 臣        (環境庁長官)  石原慎太郎君        国 務 大 臣        (国土庁長官)  田澤 吉郎君    政府委員        内閣法制局長官  真田 秀夫君        内閣法制局第一        部長       茂串  俊君        総理府統計局長  吉岡 邦夫君        公正取引委員会        委員長      橋口  收君        公正取引委員会        事務局取引部長  長谷川 古君        警察庁刑事局長  鈴木 貞敏君        警察庁刑事局保        安部長      森永正比古君        警察庁警備局長  三井  脩君        行政管理庁行政        管理局長     辻  敬一君        防衛庁参事官   夏目 晴雄君        防衛庁人事教育        局長       渡邊 伊助君        防衛施設庁長官  亘理  彰君        防衛施設庁施設        部長       高島 正一君        経済企画庁調整        局審議官     澤野  潤君        経済企画庁国民        生活局長     井川  博君        経済企画庁総合        計画局長     喜多村治雄君        科学技術庁計画        局長       大澤 弘之君        環境庁長官官房        長        金子 太郎君        環境庁企画調整        局長       信澤  清君        環境庁水質保全        局長       二瓶  博君        国土庁長官官房        審議官      四柳  修君        国土庁計画・調        整局長      下河辺 淳君        国土庁大都市圏        整備局長     国塚 武平君        国土庁地方振興        局長       土屋 佳照君        法務省刑事局長  伊藤 榮樹君        外務省アジア局        長        中江 要介君        外務省欧亜局長  宮澤  泰君        外務省中近東ア        フリカ局長    加賀美秀夫君        外務省経済協力        局長       菊地 清明君        外務省条約局長  大森 誠一君        大蔵大臣官房日        本専売公社監理        官        大槻 章雄君        大蔵省主計局長  長岡  實君        大蔵省主税局長  大倉 眞隆君        大蔵省理財局長  田中  敬君        大蔵省証券局長  山内  宏君        大蔵省銀行局長  徳田 博美君        大蔵省国際金融        局長       旦  弘昌君        文部省初等中等        教育局長     諸沢 正道君        文部省学術国際        局長       井内慶次郎君        文部省管理局長  三角 哲生君        厚生省環境衛生        局長       山中  和君        厚生省環境衛生        局水道環境部長  国川 建二君        厚生省医務局長  佐分利輝彦君        厚生省薬務局長  中野 徹雄君        厚生省社会局長  上村  一君        厚生省年金局長  木暮 保成君        農林大臣官房長  澤邊  守君        農林省農蚕園芸        局長       堀川 春彦君        林野庁長官    藍原 義邦君        水産庁長官    岡安  誠君        通商産業大臣官        房長       宮本 四郎君        通商産業大臣官        房審議官     山口 和男君        通商産業省貿易        局長       西山敬次郎君        通商産業省産業        政策局長     濃野  滋君        通商産業省立地        公害局長     左近友三郎君        通商産業省基礎        産業局長     天谷 直弘君        通商産業省機械        情報産業局長   森山 信吾君        通商産業省生活        産業局長     藤原 一郎君        工業技術院長   窪田 雅男君        資源エネルギー        庁長官      橋本 利一君        中小企業庁長官  岸田 文武君        運輸大臣官房審        議官       真島  健君        運輸省船舶局長  謝敷 宗登君        運輸省自動車局        長        中村 四郎君        運輸省自動車局        整備部長     犬丸 令門君        気象庁長官    有住 直介君        郵政省貯金局長  高仲  優君        郵政省電波監理        局長       平野 正雄君        労働省労働基準        局長       桑原 敬一君        労働省職業安定        局長       細野  正君        建設大臣官房長  粟屋 敏信君        建設省計画局長  大富  宏君        建設省都市局長  中村  清君        建設省河川局長  栂野 康行君        建設省道路局長  浅井新一郎君        建設省住宅局長  山岡 一男君        自治大臣官房長  石見 隆三君        自治省行政局選        挙部長      佐藤 順一君        自治省財政局長  山本  悟君        消防庁長官    林  忠雄君    事務局側        常任委員会専門        員        菊地  拓君    説明員        日本専売公社副        総裁       齋藤 欣一君    参考人        東京都市計画        局長       有沢清一郎君     —————————————   本日の会議に付した案件 ○参考人出席要求に関する件 ○昭和五十二年度一般会計補正予算(第1号)  (内閣提出衆議院送付) ○昭和五十二年度特別会計補正予算(特第1号)  (内閣提出衆議院送付) ○昭和五十二年度政府関係機関補正予算(機第1  号)(内閣提出衆議院送付)     —————————————
  2. 鍋島直紹

    委員長鍋島直紹君) ただいまから予算委員会を開会いたします。  昭和五十二年度一般会計補正予算  昭和五十二年度特別会計補正予算  昭和五十二年度政府関係機関補正予算  以上三案を一括して議題といたします。     —————————————
  3. 鍋島直紹

    委員長鍋島直紹君) この際、参考人出席要求に関する件についてお諮りをいたします。  昭和五十二年度補正予算案審査のため、本日の委員会東京都の地震対策に関する責任者であります東京都市計画局長有沢清一郎君を参考人として出席を求めることに御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  4. 鍋島直紹

    委員長鍋島直紹君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。  なお、出席時刻等についてはこれを委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  5. 鍋島直紹

    委員長鍋島直紹君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。     —————————————
  6. 鍋島直紹

    委員長鍋島直紹君) それでは、これより質疑に入ります。山崎昇君。
  7. 山崎昇

    山崎昇君 予算委員会最終日を迎えましていろいろな政治課題についての質問等も行われておりますが、私は、当面する二、三の問題にしぼって政府の見解をお聞きしたいと思います。  第一に、大変不幸なことがきのうまた静岡県で起きました。これは、あれだけのスピードで競技を行えば思わざる事故が起こるということは予測できるものだと私どもは思っておりますが、しかし、今日までも多くの事故があったにかかわらず依然としてそれらに対する対策がないままに競技が行われまして、ついに観客が二名死ぬという状態になりました。そこで、この問題についてその後警察当局はどういうふうに問題の把握をしているのか、まず状況について御説明願いたい。  と同時に、今日まで、この所管省は、恐らく運輸省だと思うのですが、運輸大臣行政的にこういう問題にどう対処してきたのか、お聞きをしておきたいと思います。
  8. 鈴木貞敏

    政府委員鈴木貞敏君) お答えいたします。  ただいまの御質疑富士スピードウエイ死傷事犯でございますけれども、非常に不幸な出来事でございまして、お説のとおり、昨日のレースによりまして死者二名、重傷者三名、軽傷者三名という状況でございます。警察といたしましては、この事犯につきまして、もとより当時の混乱した現場におきまして実況見分あるいは救護問題、こういった面につきまして全力を尽くしたわけでございますが、今後の問題といたしましては、やはりこの事犯の責任問題ということにつきまして現在鋭意関係者につきまして状況を調査し、取り調べその他を通じて捜査を進めておるという状況でございます。
  9. 田村元

    国務大臣田村元君) 実は、先ほど私もこのニュースを読んだばかりでありまして、いま担当者を呼んでおりますが、まだ来ておりませんので、後で詳しく申し述べたいと思います。
  10. 山崎昇

    山崎昇君 昨日起きたばかりでありますから、警察もいま調査中であり、また運輸大臣からの答弁もありました。ただ、私は、これは新聞の記事でありますが、第一線で指揮いたしました消防署の方の談話として載っている問題に大変重要なものを含んでいると思っています。一つは、選手に対する対策はなるほど事故対策としてあったかもしれない。しかし、観客に対しては対策が全然なかったと指摘されています。特に、御殿場におきましては外科病院がない。あるいは、きのうの場合でも、記事によりますというと、レースが続行されておりますから、したがって待機所におりました警察、消防の方々の救急に当たる方々現場に行くまでに約二時間かかっているという、こういうことは、終わってしまえば、遺憾であった、今後起きないようにすると、こう必ず指揮者は言いますが、事前に危険が予想されるにかかわらず何もしなかったということは、私は行政の怠慢でもあるのじゃないだろうか、こう考えます。そういう点も含めまして後で運輸大臣から重ねて答弁を求めておきます。  次に、私は総理にお聞きをしたいと思うのですが、先般ハイジャック問題が起きまして大変人命尊重ということが重要視されました。しかし、私は、人命尊重というのはハイジャックばかりでありませんで、最近の国内の状況を見ると全く憂える状況があると思います。  一つは、端的にお聞きいたしますが、最近の暴力団によります日中におきますあのピストル発射事件等々、言うならば、暴力事件がまさに法秩序がないような状況になっておる。これについて、警察は、どのように一体把握をして対策を立てているのか。あわせまして、銃砲所持についてどういう管理をしているのか。  さらに、問題は、最近、芸能界中心でありますが、麻薬覚せい剤大麻、言うならば、精神までもむしばんでしまうような状態が相次いで起きておりますが、これも人命尊重から言うと私は放置できない問題だろうかと思っています。これについて、厚生省あるいは警察答弁を求めておきたいと思います。
  11. 小川平二

    国務大臣小川平二君) 改めて申すまでもないのでございますが、法の尊重社会秩序の維持ということが民主主義の基盤でございますから、暴力団に対しましてはきわめて峻厳な取り締まりを続けております。その結果、昭和三十八年をピークといたしまして団体の数あるいは構成員とも漸減して今日に至っておるわけでございますが、反面において組織が大規模化する、あるいは活動がきわめて広域的なものになる、さらにまた拳銃等による武装化の傾向が強まってきているというのが現状でございます。ことしに入りましては白昼拳銃等の撃ち合いということで暴力団同士対立抗争が激化しておる、そのために無事の市民が巻き添えになるというような状況が出てきておりますので、この際、警察取り締まりの最重点事項といたしまして一幹部を反復検挙する、武器を徹底的に押収する、あるいは資金源を封圧する、こういう努力をいたしておるわけでございますが、暴力団実態等につきましては警察当局からやや詳細にお耳に入れます。  麻薬覚せい剤の問題も当面の大きな問題でございまして、ことに覚せい剤は農村の主婦等にまでこれを常用する者がふえている。非常に憂慮すべき現状でございますので、関係省庁とも協議を遂げまして効果のある対策を講じてまいりたい、かように考えております。
  12. 渡辺美智雄

    国務大臣渡辺美智雄君) ただいま国家公安委員長から答弁がございましたが、関係省として厚生省もあるわけであります。確かに、御指摘のように、最近覚せい剤が非常にふえておりまして、実は去年は昭和四十五年の七倍、一万人を超える。それからことしの上半期の一月から六月における麻薬覚せい剤の違反というのは去年の同期よりも二六%上回って、すでにもう六千三百九十四名と、こういうものを摘発して送致するというようなことまでやっておるのです。したがいまして、これは非常な大きな問題でございますから、警察その他とよく連携をとりましてその取り締まりに万全を期しておるわけでございます。
  13. 鈴木貞敏

    政府委員鈴木貞敏君) 国家公安委員会委員長から、暴力団取り締まりの基本的な警察態度について申し上げました。私から数字的な若干の点を敷衍して申し上げさしていただきます。  暴力団につきましては、大変いろいろ国民に不安を与えているわけでございまして、これは何としても根絶するという目標のもとに警察としては全力を挙げて取り締まりに当たっておるということでございますが、なかんずく、拳銃銃器、この問題が一番問題でございまして、暴力団取り締まりのわれわれの基本的な方針といたしまして、首領、幹部を含む構成員を反復しまして大量に検挙するというのが第一点。第二としまして、何といっても銃器を徹底的に摘発するということでございます。また、非常に多様化しておりまする資金源、いろいろの不法、枉法いろいろございますが、こういった資金源を封圧していく。この三つを一つの根幹としましてやっているわけでございますが、仰せの白昼拳銃を使う事犯等につきましては、残念ながら、ことしに入りましてから沖繩、愛媛あるいは長崎各地でそれぞれ起こっておりましていろいろ御迷惑をかけているわけでございますが、警察取り締まりによりまして、件数的に申しますと、四十八年は拳銃猟銃を発砲した事件が五十件でございました。ところが、四十九年になりますと、九十二件にふえまして、五十年になりますと、百七十九件ということで、年々非常にふえてきておったわけでございます。これではいかぬというふうなことで五十年の秋から警察としましても第三次頂上作戦ということに取り組みまして、昨年は百十八件に減り、ことしに入りましてからは九月末で七十六件と件数は減っておる、こういうふうなことでございます。  また、それによりまする被害状況でございますが、昨年は死者が二十五名、負傷者六十四名でございましたが、ことしは九月末で死者十名、負傷者三十七名と一応の数字面では減っておるわけでございますが、何といいましてもこれは国民に大変不安を与えることでございますので、集中取り締まりを実施するというふうなことを通じまして、実は過日も全国一斉取り締まりを行いまして、三千五百名を検挙するというふうなことでございますし、また、拳銃につきましても、すでにことしに入りましてから九月末で九百四十三丁押収いたしております。昨年一年間で暴力団関係から史上最高の千三百五十丁を押収したというふうな状況でございます。  これら拳銃につきましての警察取り締まりといいましょうか管理でございますが、これにつきましては、銃砲製造、販売、これにつきましては通産省所管武器等製造法によって規制されておることは御存じのとおりでございますが、所持保管等につきましては銃刀法によって規制されております。銃砲のうち拳銃は一般的にその所持が禁止されておりますけれども、猟銃につきましては法定の要件がある場合には都道府県公安委員会許可を受ければ所持できる、こういうふうになっておるわけでございます。それで、猟銃所持許可につきましては、暴力団関係者所持許可を受けることのないように厳正な審査をしておりますし、さらに許可した猟銃暴力団員の手に渡ることのないように許可を受けて所持する者に対しましても徹底した指導監督をしておるということで、銃刀法の第五条のそれぞれの項目を厳正に運用するということで全国的にやっておるというふうな状況でございます。
  14. 山崎昇

    山崎昇君 これはいま大変強い態度で臨んでおるようでありますが、しかし、最近の白昼のピストル事件なんというのは、まさにこれは無法そのものです。したがいまして、私は、もっともっとこれらの問題について政府は力を入れてもらいたいということを要望しておきたいと思うのです。加えまして、覚せい剤それから麻薬大麻等の場合には密輸がほとんどだと私ども聞いておりますが、これはやはり大蔵省税関でチェックする以外にないのではないか、こう考えますが、税関関係でどういう対策を講じているのか、お聞きをしておきたいと思います。  それから重ねて立ったついでにお聞きをしたいのですが、この暴力団の問題と関連いたしまして、最近右翼行動もまた目に余るものがある。御存じのとおり、毎日、町の中をこれ以上高くならぬと思うぐらいボリュームを上げて歩きますし、加えて大きな会合にはほとんどと言っていいぐらい妨害をいたします。先日の釧路の市長選でも右翼が大量に参りましてこの選挙戦妨害行動に出る。私は、民主主義の立場からいって、この右翼行動というものを規制しなければ大変ではないかと考えている一人なんです。最近はソ連の大使館にも押し入る、あるいは共産党の本部から出てきた人にも危害を加える、そういうことになってきておりますが、私は政府右翼対策について手ぬるいのじゃないかと思っています。これについて国家公安委員長答弁を求めたいと思います。
  15. 坊秀男

    国務大臣坊秀男君) 御質問事項については、関係者がいま来ておりません。そこで、早速お呼びいたしまして、お答え申し上げます。
  16. 小川平二

    国務大臣小川平二君) 違法な行為に対しましては、もちろん右であろうと左であろうときわめて峻厳な徹底した取り締まりをもって臨むべきものだと信じておりまするし、警察当局もさような方針で右翼団体の行動に対して対処いたしておるわけでございます。
  17. 山崎昇

    山崎昇君 ちょっと警察態度を……。
  18. 鍋島直紹

    委員長鍋島直紹君) それでは、大蔵省は後でひとつどうぞ。警察庁から……。
  19. 三井脩

    政府委員(三井脩君) 右翼に対する警察取り締まりの基本的態度につきましては、ただいま国家公安委員長から申し述べたとおりでございます。私たちは、何人であろうと、どういう団体、組織でありましょうとも、違法行為にわたるものにつきましては、これを厳正に、違法を看過することなく取り締まることにしております。ただいま御指摘になりましたように、最近の右翼は、現在のような情勢に刺激されまして、あるいは突発的に、衝動的に行動を起こしたり、あるいは時に計画的に不法行為を行うことを考えるというような状況でありまして、日ごろからこういう点については十分の関心を持って取り締まっておるところでございます。そういう意味におきまして、現行法の許す限りにおきまして厳正に措置をしておるつもりでございます。
  20. 山崎昇

    山崎昇君 まあ言っている割合に何にもしてないということだけはよく私どもわかる。毎日同じことを繰り返されているわけです。ですから、これはきょうは時間ありませんからこれ以上のことを申し上げませんが、もっとやっぱり厳しい態度をとってもらいたい。そして、私は、一体右翼というのはどこから金があって装甲車まがいの車で、そして機動隊と同じような服装を着て、あの屈強な若者が毎日朝から晩まで行動をとっているのか、だれが一体養っているんだろうか、私は疑問に思っています。そういう資金源等を含めてもう少しやっぱり政府はきちんとした態度をとってもらいたいということを希望しておきます。  次に、私は、人命の立場から物を言うならば、公害問題もまたきわめて大きい課題だと考える一人なんです。きょう本当は細かに内容を聞くつもりでおりましたが、最近環境庁長官の発言が大変世の中を騒がしておりますから、それにしぼってきょうはお聞きをしたいと思っております。  第一にお聞きをしたいのは、私ども新聞とか雑誌とか活字でこれを判断しておりますから、間違っちゃいけませんので、まず環境庁長官の見解を聞きたいのですが、あなたが九月号の「現代」に書きました、大臣なんてくだらないとか、政治家なんてくだらないと、こう書いておりますが、どういうことがくだらないのか、ひとつあなたの見解を聞きたい。
  21. 石原慎太郎

    国務大臣石原慎太郎君) お答えいたします。  そのインタビューのときもそうでしたし、幾たびかそういう機会がありましたときに私はそのようなことを申しましたが、しかし、それには文脈の前後がございます。そして、私は閣僚に初めて就任いたしましたが、名大臣というのは、黙って盲判を押すのが名大臣であるとか、あるいは、一部環境問題について私はどうも納得のできない論調がございますけれども、それに迎合すると申しましょうか、とにかく一過性のポジションなのだから、ある意味でジャーナリスチックにもてはやされるような言動をとることで名声を確保した方がいいのではないかというような忠告もいただくこともございます。しかし、私は、環境庁の長官でありますと同時に国務大臣でもございますので、やはり他の省庁との行政の絡みの中で国益というものを考えていくべきだと思います。その限りで、まあ、るる言われております名大臣がそのようなものならば、私は大臣などはくだらないもんだという意味で申したわけでございます。
  22. 山崎昇

    山崎昇君 そうすると、私は各大臣全部に聞きたいんだが、あなた方はただ盲判を押しているんですか。いま環境庁の長官から言えば、盲判を押すのが何か名大臣で、いろんなことをものを言うのがそうではないんだ、こういま答弁がありました。そこで、各大臣から全部聞きます、これは。一体、あなた方は盲判を毎日押しているんですか。
  23. 石原慎太郎

    国務大臣石原慎太郎君) いや、私はすべての大臣がそういうことをしていらっしゃるという意味で言ったのではございません。ただ、政治の中の消息通、何がしの方々が、黙ってとにかく判を押すのがとかく名大臣と言われているのだと。過去にそういう方がおられたかおられないかは存じませんけれども、しかし、私は、それをもって名大臣とするならば、そのような大臣になりたくないと思っておりますし、その意味で、それが名大臣と言われるならばそれはくだらぬことだという意味で申したわけでございます。
  24. 山崎昇

    山崎昇君 だからいま聞いているんです。黙って判こを押すのが名大臣ならば、私は大臣というものはくだらないと、こうあなたが言う。だから、各閣僚は、中には名大臣と言われる人もおるでしょう、そうでない人もいるかもしれない。きょうは公開の席上だから明らかにしてもらいたい。一体、あなた方は、毎日黙って判こを押している名大臣なのかどうか、ひとつ明らかにしてもらいたい。
  25. 園田直

    国務大臣園田直君) 書類に盲判を押して名大臣と言われるような閣僚は現内閣には一人もおりません。
  26. 山崎昇

    山崎昇君 そうすると、環境庁長官の言うことはますます私は不可解になってくる。だれかに言われたから、そういうことならばくだらないと、こう言う。私は、大臣の発言としては不謹慎だ、そういうものの言い方は。この点は、あなた自身もやっぱり大臣で、最高の行政官なんだから、もう少しきちんと物事を考えて発言をすべきだと思っております。  第二に私が聞いておきたいのは、きのうもあなたと福田恒存さんとの対談を私は聞いておりました。ここにテープを持ってきておりますが、正確を期すために持ってきたわけでありますけれども、聞いておりました。一、二点聞いておきます。  記者クラブが一致してあなたの会見拒否をするのは全体主義だと、こうあなたは述べておりますが、どういう点が全体主義なのか、これも聞いておきたい。
  27. 石原慎太郎

    国務大臣石原慎太郎君) 私が聞きましたところ、この件につきまして、反対の方も、棄権の方、保留の方もいらっしゃるようでございます。しかし、まあそれをもって少数意見というものがどういう形でそんたくされたか存じませんが、そういう意見が表に出ずに、記者クラブという名前で抗議文が参るということは、そういった少数意見というものをある意味ではそんたくしない姿勢ではないかと私は思います。過去にも、これは佐藤総理が会見を拒否されましたときにでさえ、記者クラブ全体がこれに向かって抗議文を出したということでも、「ボルチモア・サン」でございましたか、そういう体質に非常に問題があるという外電がございました。私は、今回の場合でも、少数意見というものがどういう形でそんたくされたか、それを全く表に出さずに、記者クラブという、私もよくどういう性格の団体か存じませんけれども、その団体から団体の名前で抗議文が来るということに私はいささか問題があるのではないかという気がいたしましたので、そういう発言をいたしました。
  28. 山崎昇

    山崎昇君 記者クラブの方々が話をして、そして、あなたが、そのほかにも、あれはあいまいな団体で、法人格もないなんということも言っておられます。確かに、法人格のある団体ではないと私は思う。しかし、話し合いをして、クラブという名前であなたにものを言ったから、それが全体主義的体質とは私はとれない。一体、全体主義的体質とは何なのか。集まってものを決めて、それによってあなたのところへ行ったら、それが全体主義なのか。私は、少しこれもまたあなたの思い過ごしであり、軽率な発言じゃないか、こう思うのですが、どうですか。
  29. 石原慎太郎

    国務大臣石原慎太郎君) でございますから、少数意見というものをそんたくしないという姿勢には私は全体主義的な傾向があると言われても仕方がないのではないかという気がいたします。
  30. 山崎昇

    山崎昇君 少数意見をそんたくするしないといっても、それは記者クラブで決めてやっていることでしょう。それが全体主義だというものの考え方には私は納得できないし、これは記者クラブから聞いたわけでも何でもありませんが、きのうあなたの対談を聞いていて、あなたはやっぱり少しものの考え方が一方に偏り過ぎたような考え方を持っているのじゃないんだろうか、こう私は考えます。  次にあなたにお聞きをしたいのは、赤旗記事の問題もありますが、事実を確かめてあなたはものを言っているわけじゃない。ただ確度の高いニュースソースがあったという伝聞に基づいてやっていることにすぎない。さらに、該当しない者については遺憾の意を表すが、該当する者については遺憾の意を表さないと、こう言う。一体該当するかしないかはどうやってあなたは認定するのか、これも私はわかりませんから聞いておきたい。
  31. 石原慎太郎

    国務大臣石原慎太郎君) でございますから、私は、非常に信頼すべき筋の情報に基づいて非常にはっきりした政治的なスタンスをとっている記者が何人かいると申したわけでございます。現に過去にも他の省庁でそういった形の事実がございましたことは周知のことでございますし、最近の「言論人」という新聞にもその例が出ておりました。でございますから、それによって特定の方を中傷したわけでもございませんし、またそれによって記者クラブ全体を中傷し御迷惑をかけたとは私は思わないわけで、ただ、それに該当しない方々がそれによって迷惑をこうむられたならば、それについては私は遺憾の意を表し、申しわけないという形でおわびをしたわけでございます。
  32. 山崎昇

    山崎昇君 不思議なんですね、あなたの言うことは。政治的スタンスを持った者がいるとあなたは言う。その者にはあなたは遺憾の意を表さないと言う。そうでない者には表すと言う。じゃ、だれとだれとだれがそういうスタンスを持った者なのか、明らかにすべきじゃないでしょうか。そうしなければ、あなたは遺憾の意を表すと言ったって、だれに表すのかわからぬじゃないですか。それは明確にしてください。
  33. 石原慎太郎

    国務大臣石原慎太郎君) でございますから、私はそういう政治的なスタンスをとっている人を特定していないわけでございます。ただそういう方が何人かいるということを申しただけで、私は新聞記者の中にもそういう政治的なスタンスをとる方がいられてもしかるべきだと思います。それについて私はとがめているわけではございませんが、そういう記者が何人かおられるということを言っただけでございまして、それによって私はどなたか特定の方を中傷したことにもならないと思いますし、また記者クラブを中傷したことにもならないと思います。
  34. 山崎昇

    山崎昇君 しかし、本当に不思議な答弁ですな。何人かいるとあなたが言っておいて、そしてその者の事実を明らかにしない。記者クラブに文句を言ったのではない、その者に文句を言ったんだと。じゃ、その者がだれかと言えば、あなたは明確にしない。それはやっぱり卑怯じゃないでしょうか。あなたとあなたとあなたは私と政治的に違うとか、あなたは別な感覚でやっておりますとかもしその者が言われるならば、その者はそれで納得するでしょう。そういうことを言わずに、あなたは漠然として記者クラブに対してものを言う。その記者クラブが話し合いをしてあなたのところに行かなければそれは全体主義だと言う。これは通らぬ理屈ですよ。  その次にあなたにお聞きしておきたいのは、これも公害から言えば大変な問題であります経済との調和の発言問題であります。これは少なくともあの公害立法をつくったときは、与野党一致をしてあらゆる方々の意見を入れて、その背景には命までも失うような公害患者が続出して、そういう背景であの問題ができ上がった。言うならば国民的コンセンサスができたと私ども判断してもいいと思う。そういうことについて、その法律を執行しなければならぬ行政責任者でありますあなたが、魔女狩りだとか、あれを廃止したのはどうも納得できぬとか、廃止されちゃったのは仕方ないんだとか、こう言うあなたは大臣として私は全く不適格だと思う。この真意についてもあなたから一応聞いて、私はこの問題についてもっと質問を続けたいと思う。
  35. 石原慎太郎

    国務大臣石原慎太郎君) 四十二年に、いろいろ論議の末に、生活環境の保全に関する条項でいわゆる経済との調和条項が入りましたことは御存じだと思います。私はそのころ国会におりませんでしたが、四十五年に参議院におりましたときにこれが与野党一致で採択されて削除されました。まあ言いわけをするわけでございませんけれども、本当に駆け出しの議員でございましたが、その後今日はからずも環境庁を預かる身になりまして、当時の社会情勢と今日の社会情勢とかなり違ってまいりましたし、公害問題そのものの性格も変わってきたと思います。そういう意味で、一たん四十二年に非常に論議を呼んで入れたものを、四十五年でいたずらな誤解を避けるためにということで佐藤総理答弁されていらっしゃいますが、しかし、これは、冷静に理性的に読めば、決していたずらな誤解を招くような文章ではないと思います。経済との調和というものは、決していかなるニュアンスでも経済の優先ということを意味しないと思いますし、この調和という言葉の中にはそれはいろいろなものがあると思いますが、しかし、今日経済状況も変わってまいりまして、環境問題における経済的な側面、それにかかる技術、費用、それが経済やあるいは社会全体に及ぼす効果等々もますます一層冷静に考えなくてはならない時期に来ていると思います。そういう意味で、私は、あの時点で一回入れたものをまた削除したということで要らざる新しい誤解を生じたのではないかということは否めないのではないかという気がいたします。それは、言いますれば、とにかく取ってしまったのだから環境問題に関しては経済というものを無視してでもこの改善を図らなくちゃいかぬという、そういう観念がある立場の方々にはあるような気がいたします。いずれにしましても、私たちはこの問題を冷静に取捨選択する時期に来ておりますが、しかし、断っておきますけれども、私は環境問題において第一義的、に優先されなくてはならないものはこれは人間の健康であると思います。しかし、生活環境の保全に関しては、やはり経済というものの側面を十分考慮していかなければ、今日の経済状態の中で環境問題における経済的な側面というものの比重はますます大きくなっておりますので、そういう意味で言ったわけでございますが、しかし、基本的に私は公害基本法というものを遵守尊重していくつもりでございます。
  36. 山崎昇

    山崎昇君 いま答弁を聞きましたが、あなたのものの考え方というのは、当時いたずらな誤解を招いちゃいけないからというのであの条項を削ったと。そんな単純なことであの条項を削ったわけじゃありませんよ。あの背景には人の命が直接かかわっておったでしょう。加えて、あのままに放置すれば、日本全体が公害列島になってしまう、そういう言うならば背景があって与野党が一致したわけです。一体、今日、どれだけのじゃあ環境行政が変わっているでしょうか、公害が変わっているでしょうか。いっときのような騒ぎは確かになくなった。しかし、私は本当は聞こうと思っておったカネミ油にしたって、八年何カ月の裁判に時間を費やして、いまだにあなたあの公害で苦しんでいる者が存在するではないですか。新しい公害がまた発生しているではないですか。そういうときに、一番公害の基本ともいうべきこの問題について、またその責任を持っているあなたが、単なるそういう考え方だけでこの問題について特に魔女狩り的であれを削除したなんぞという言葉の使い方は、私はこれまた不謹慎だと思う。どうでしょうか、不謹慎じゃないでしょうか。どこが魔女狩りなんでしょうか。
  37. 石原慎太郎

    国務大臣石原慎太郎君) あの時期には、四日市の公害でございますとか、水俣でございますとか、非常にラジカルな恐ろしい形であらわれた公害がたくさんございました。ということで、私たちも高度成長にうつつを抜かしている中で、そういう新しい現実に当面して、まあ社会全体が一種のパニックになっておったと思います。それは否めないと思いますが、その中で、決して単にムード的とは申しませんけれども、そのパニックのもたらす非常に感情的な情念的な衝動というものがああいう論議を導いてあの条項の削除に至らしめたのではないかと私は思った次第でございます。そういうことで、魔女狩り的という表現をいたしましたが、これが適切でなければ取り消さしていただきます。ただ、私は、一回入れたものをあそこでまた論議をして取り去ったことで、しかし冷静に読めば何も今日に至らなくともあの時期にもうすでに公害の経済的側面というものの比重はかなり大きなものがあったと思いますが、そういう意味で、あれを削除したことで新しい誤解というものを生んだことは否めないというつもりで、そういう意味で申したわけでございます。
  38. 山崎昇

    山崎昇君 いまあなたは適切でなければ取り消してもいいと言う。これは、私は、一介の議員だとか、あるいはそう責任のない人が簡単に言うなら私はそれでも了承する。しかし、公害行政の最高の責任者であるあなたが、簡単に取り消してもよろしゅうございますなんていうことで私は認めるわけにはいかない。なぜならば、あなたは一般的に言って住民運動というものを軽視するのじゃないだろうか。日本の公害立法は、住民から発せられて、政治家がこれを言うならば取り上げて与野党一致でやったものですよ。その背景に尊い命があったことはあなたも御存じのとおりだ。それが単なるパニックで私どもがいいかげんにやったものではない。あなたの認識そのものが根本から私は誤りがあるのじゃないかと思っているんです。そういう意味で、この点をいまあなたは取り消してもいいと、こう簡単に言われるけれども、あなたの本心というのはそこにあるのじゃないかというふうに考えざるを得ない。  もう一点あなたの発言で聞いておきたいのは、十一月にやめるであろう、後任者には引き継ぐ、しかしまた自分からはやめませんと、こういう発言もあるようでありますね。これをまた私は見ておって、これは新聞しか見ておりませんから、あなたからあなたの考え方を聞いてまた質問したいと思うのです。一体これはどういうことなんでしょうか。
  39. 石原慎太郎

    国務大臣石原慎太郎君) 私のその言動につきまして、報道しましたある種の新聞社にはすでに私から抗議をいたしました。しかし、他の大方の新聞はそれを非常に正確に報道してくださっていると思いますが、これは水俣の若い患者さんたちが上京されまして、予算委員会の間に一時間会いましたが、とても時間が足りない。また、なるたけ周囲に人のいないところでゆっくりお話をしたいということで、私は宿屋に訪ねて行きまして、いま園田官房長官にも御協力願って、この若者たちを救う財団を考えておりますが、なかなか時間がかかります。そして、ぜひそれを実現してほしいし、とにかく働きたいのに働けないと、これから人生を迎えていく人たちが働けるのに働けないということはいかにもつらいと思いますので、私もそういう財団を通じ、あるいはこれからできます水俣研究センターにも、公務員以外の役職でその方々を積極的に採用していきたいと申しまして、ただ、研究センターができますのも先のことですし、財団もことしじゅうに発足したいと思いますが、十二月になるかどうかわかりませんということで、十一月に辞任云々ということは私は言ったのではなしに、世間一般と申しましょうか、大方の新聞が十一月に改造があるということをしきりに申されておりますので、私は、その際、私も辞任していないかもしらないが、しかしこのことは後の次の環境庁の長官にちゃんと申し渡してまいりますから安心してくださいということで申したわけでございます。
  40. 山崎昇

    山崎昇君 この毎日新聞のこれはそうすると誤りですか。いろいろありますが、最後に、「自分の方からやめるつもりはないか、」「そういうことはないですよ。」と。
  41. 石原慎太郎

    国務大臣石原慎太郎君) その記者が参りましてその真意をただしましたので、私はいまのような説明をいたしました。そうしたら、ああ改造ということですか、自分からやめるわけじゃないんですかと言うから、そのとおりですということを申しただけでございます。
  42. 山崎昇

    山崎昇君 そこで、福田総理にお聞きします。自分からやめるつもりはない、しかし十一月ぐらいには内閣改造があると自分はやめるかもしれぬ、こういう話なんですね。そうすると、内閣改造はあるわけですか。本人は、自分の意思ではないけれどもやめさせられるということを予測してものを言っているわけですが、それについて総理大臣の見解を聞いておきます。
  43. 福田赳夫

    国務大臣(福田赳夫君) ただいまのところ、内閣改造については私は考えておりません。
  44. 小柳勇

    ○小柳勇君 委員長、関連。
  45. 鍋島直紹

    委員長鍋島直紹君) 関連ですか、関連を許します。小柳君。
  46. 小柳勇

    ○小柳勇君 総理大臣にいまのに関連いたしまして。  各大臣が、たとえば重要法の改正などについても真剣に取り組んでおられます。ところが、いまの山崎君の発言にもありますように、ある大臣はもうおれは十一月でやめるんじゃないかと、そういう内閣改造があることを予想しておられる大臣もあるかもしれぬ。私、一番心外なのは、衆議院の予算が終わりましたところが、翌日の新聞は一斉に、もう衆議院で予算が上がったから、あとはもっぱら自民党内の役員選考と内閣の人事が話題である、政局の焦点であるという新聞の発表があった。自民党のいま各派閥はありませんようですけれども、親分衆が衆議院におられるから、そういうような方向に政局は転換したかもわかりませんが、重要な補正予算の審議が参議院でこれから始まるときにそういう話題が出るということもこれは大きな政治的な問題である。したがって、これから、たとえば十一月七日で閉会になりまするが、一説によるとこれを会期延長して重要法案を上げなきゃならぬという声もあるようです。しかし、各大臣が、おれはもう十一月で終わるんじゃないかと言って取り組まれたら、これまた国民に対しても不信ですね。したがって、この際、内閣としてやるなら早くやってもらいたい、もう十一月七日を終わったらすぐ。重要法案などということを言わないでやってもらう。でないと、本気で——残った大臣は一生懸命やられますよ。また、かわる大臣はかわっていただくと、そういうことをけじめをはっきりしませんと、福田内閣の株は上がらぬのじゃないかと思うし、世の中の不景気もよくならぬじゃないかと、そう思いますので、総理大臣の見解をお聞きいたします。
  47. 福田赳夫

    国務大臣(福田赳夫君) 御提言といいますか、御忠告といいますか、謹んで拝聴いたします。私は、ただいま改造ということを具体的に考えておると、こういうことではないということも重ねて申し上げさしていただきます。
  48. 山崎昇

    山崎昇君 本当に私は聞けば聞くほど不思議になってくる。総理大臣は内閣改造は考えないと言う。閣僚は、自分からやめないけれどもそのころにはあるだろうと自分で予測をしている。こういう内閣に対して一体国民は信頼をおくかどうかということになると、私は政治的に考えてきわめて不信しか残らないと思う。そういう意味では、総理大臣の見解と違うことを述べるわけでありますから、私は、政治家としても大臣としても、閣内の不統一とまでは言わぬまでも、やはり不適格であろうと思う。  先ほど来、私は、四つばかりの点にしぼってあなたの見解も聞きましたが、どれを聞いてもあなたのものの考え方に対して国民が納得できるものではない。そういう意味で言うならば、あなたみずからやっぱり進退を決すべき時期に来ているのじゃないでしょうか、どうですか、石原長官にお聞きをします。
  49. 石原慎太郎

    国務大臣石原慎太郎君) 十一月にやめるであろうと、内閣改造があるであろうと言ったのは、私じゃございませんで、これは新聞でございます。私は、できる限り、いままだ未解決の問題がございますから、これに鋭意取り組むつもりでございますし、水俣の若い患者の救済の財団、あるいは検診、認定の体制もしきましたけれども、これが、滞りなく運営されるのを見届けたいと思いますし、あるいは生活環境のそれこそ保全のために、この場合にはいろいろ経済的な問題もあるかもしれませんけれども、主唱いたしました生活の快適性の問題その他やりかけた仕事がたくさんございますので、これがめどがつくまで、改造がない限り私はいまの仕事を続けたいと思っております。
  50. 山崎昇

    山崎昇君 これだけ国民の不信感を招いて、そして簡単に自分の言ったことを取り消してみたり、遺憾だと言ってみたり、あなたのものの考え方自体が環境庁長官としては全くふさわしくないというのが大方の見方じゃないかと私は思っている。そういう意味では、これは大臣でありますから私は余り失礼なことは言いたくないと思っていますが、みずから進退を決するように重ねてあなたに忠告をしておきます。  先ほど質問した運輸大臣答弁、大蔵大臣の答弁を求めておきます。
  51. 田村元

    国務大臣田村元君) 早速調べました。主催が、日本モータースポーツ協会、これはJAFとTBSと富士スピードウェイ、こういうことになっております。JAFというのは日本自動車連盟でありまして、これは記録の公認をするというような、記録をオーソライズするために、そういう点で加盟をしておるようでございます。このJAFは確かに運輸省の所管ということもあります、運輸省警察庁の所管。ただ、このモータースポーツ協会が主催しておるグランプリそのものは私どもに関係がないのです。これは法人格も持っていないようなことのようであります。しかし、ああいう重大な事態が起こったのですからこれは無視できません。そこで、早速いま運輸省から担当者を呼びまして、いかに所管外とはいえども、これはゆゆしき一大事であるから野放しにもできまいと、警察庁と十分相談して、もう起こったことは十分の対策を講じるということでまあ仕方がないかもしれぬけれども、今後二度とこのようなことが起こらないように十分な対策を講じてということで相談しろと、こう言っていま緊急に指示を与えました。
  52. 坊秀男

    国務大臣坊秀男君) 御質問事項は関税の執行のことでございますので、ただいま関税局長が参っておりますからお答えさせます。
  53. 戸塚岩夫

    政府委員(戸塚岩夫君) お答えいたします。  アヘンとか、大麻覚せい剤等の麻薬類の取り締まりは、税関におきまして最も力を入れておりますことの一つでございまして、その検挙件数も、また摘発いたしました数量も、逐年増加の傾向にございます。先生御指摘のとおり、水際での取り締まりが大変効果がございます。一例を申し上げますと、五十一年の覚せい剤の検挙件数でございますが、税関では三十八件、警察でありますと一万七千件を超えております。その三十八件はまあ件数にいたしますとわずか千分の二ぐらいになりますが、それで挙げました数量は全体の三分の一、三十三キロに当たりますが、そういうように非常に少ない件数でたくさんの覚せい剤を挙げているというのが実情でございます。私ども麻薬犬を使いますと麻薬等の摘発は相当うまくいくという情報もございますので、鋭意検討しておるところでございます。
  54. 山崎昇

    山崎昇君 次に、まだ農林大臣がおられますから、米の生産調整で一言聞いておきます。  五十三年度はどういう状況になりますか。
  55. 鈴木善幸

    国務大臣鈴木善幸君) 農民の皆さんの稲作志向、いまだに非常に根強いものがございます。また、一方におきまして米の消費は連年減少しておると、こういうような状況でございまして、米の過剰基調、これは相当憂慮にたえない状況にございます。今年度の十月末にはおおむね三百数十万トンの在庫保有になる。また、来年平年作でありますれば四百数十万トンを超えるのではないかと、こういうような状況でございまして、また一方におきまして、麦でありますとか、大豆でありますとか、あるいは飼料作物でありますとか、そういうような国内の需要の面から言いましてもぜひつくっていただきたいそういう主要作物の生産が、残念ながら停滞をしておる、こういうような状況でございますので、従来から水田総合利用対策ということで、農業団体、農民の諸君に協力を要請して進めておったわけでありますが、速やかに米の需給均衡を図る、そして足らざる主要作物の生産を伸ばす、これが日本の農政の上から大事なことだと、こう考えまして、一歩を進めまして生産性の高い水田の利用、水田利用再編対策というものを、相当長期にわたって、十年ぐらいにわたりまして今後強力に進めてまいりたいと、このように考えております。したがいまして、今回の生産調整は緊急避難的なものでなしに、日本の食糧の将来を考え、そして恒久的な日本の農業の再編成と、こういうような角度で今後農民諸君の理解と協力を得ながら着実にこれを推進してまいりたいと、このように考えております。そのためには、米以外の麦でありますとか、大豆でありますとか、あるいはてん菜でありますとか、そういうような主要作物、戦略作物と申しますか、それらの作物の米価との相対価格の是正、さらにまた稲作の転換のための転換奨励金の水準の引き上げ、あるいは土地改良その他の対策、また価格と生産奨励金とを合わせた稲作との相対的な収益性のバランスがとれるような方向で、今後この転作が円滑に進められ、そして総合的な食糧の自給力が向上できるように、こういう方向で取り組んでまいりたいと考えておる次第でございます。
  56. 山崎昇

    山崎昇君 大臣、具体的にいろいろ知事会あるいは農協を通じまして生産調整をあなた方はやっているようなんですが、この内容を少し説明してほしい。
  57. 鈴木善幸

    国務大臣鈴木善幸君) これを円滑に進めてまいりますためには、政府だけでできる問題ではございません。そこで、全国知事会あるいは地方公共団体さらに農業団体等と十分協議をしながら、いま申し上げたような転作奨励金の水準の引き上げの問題あるいは転作を進めた後の予約限度数量を上回るいわゆる余り米と申しますか、それの処理の問題、そういう問題で具体的に協議をし、理解を求めながら進めてまいる考えでございます。その内容につきましては、政府委員から詳細に御報告をいたします。
  58. 澤邊守

    政府委員(澤邊守君) 農業生産者団体から提出されております意見のうち主なものを申し上げたいと思います。  ただいま大臣もお答えいたしましたけれども、まず、転作ができるように収益性の稲作とのバランスを確保するということが前提になるので、奨励金の額を大幅に引き上げてほしいというのが第一でございます。それから次に、価格政策につきまして、米価と転作作物との価格政策、行政価格においてアンバランスが大きいので、できるだけその相対関係を転作物に有利なように是正を図ること。第三に、消費の拡大につきまして、政府もいろいろやってはおるけれども、単に農林省だけではなくして、政府全体の政策として学校給食の問題なり、その他本格的かつ具体的な対策を講じてほしいというようなことでございます。さらに、転作を進めますためには、土地条件の整備改善をする必要がございますので、排水その他土地改良計画につきまして計画的に拡充をするようにというようなこと。ただいま大臣が申しました達成をした場合の過剰米の、超過米の全量買い上げをぜひ行ってほしいというようなことが主でございまして、他に細部を申し上げますと三十項目ぐらい具体的な要請が出ておりますので、われわれとしましては、それを逐一検討いたしまして、取り入れるべきところは取り入れるということで、最終に取りまとめたいということで検討を急いでおるところでございます。
  59. 山崎昇

    山崎昇君 私の聞いているのは、来年度で調整するのは百七十万トンとも言われ、いろいろ言われていますから、そういうのは幾らになるのか。それから、もし百七十万トンとすれば、水田面積に直したらどれくらいになるか。あるいは、それがいままで傾斜配分で生産調整をやっておりますが、府県に対しては、そういう方針をとるというのか、そういう政府側の考え方を数字的にいまお聞きをしたい。
  60. 澤邊守

    政府委員(澤邊守君) 現在まだ最終的な決定まではいたしておりませんけれども現在のところ、来年度は百七十万トンの米の生産調整を実施したいというように考えております。これは面積に直しますと約四十万ヘクタールになります。これを転作を原則といたしまして実施をしてまいりたいというふうに思っております。  それから最後は何でございましたですか。
  61. 山崎昇

    山崎昇君 各府県に対してどういうふうに……。
  62. 澤邊守

    政府委員(澤邊守君) 配分の仕方でございますけれども、これはできるだけ早く配分をしてほしいという要請が強く出ておりますので、私どもといたしましては、十一月の半ばを目途に県別に配分をしたいということで作業を急いでおりますが、その際、今後の適地適産と申しますか、それぞれの稲作なり、あるいは転作作物の地域性等も十分要素に入れながら、適性公平に配分をしてまいりたいということで、現在作業を急いでおるところでございます。
  63. 山崎昇

    山崎昇君 たとえば、いままでにやったような配分でいくと、私は北海道でありますが、北海道は三〇%ぐらい、もしこれをそのまま当てはめたとすれば、北海道の場合は十二、三万ヘクタールになりますね。北海道全体としては約二十六万ヘクタールくらいですから、半分は農民の首を切らなきゃならなくなっちゃう。これは私は、下手したら農民一揆が起きるくらいの大事件じゃないかと思うんですよ。一体農林省はこれをやるだけの自信がありますか。私はこれは総理にも考えてもらいたいですがね、この生産調整というのは、本当に農民を殺すことになっちゃう。これは慎重の上にも慎重にしてもらわなきゃならぬし、そういう意味で、十一月の半ばごろと、こう言うんですが、どうされるのかもう一遍聞いておきたい。
  64. 澤邊守

    政府委員(澤邊守君) 率直に申しまして各県別の配分は非常にむずかしい問題でございます。実は関係団体あるいは地方公共団体等の要請もいろいろお聞きしているわけでございますが、この点に関しましてはなかなかコンセンサスが得られません。端的に申し上げますと、いわゆる米の主産地と言われるようなところにつきましては、できるだけ、先ほど私が申しましたような、適地適産の原則で地域分担というものを十分反映させるような配分をすべきであるというような御意見が非常に強い、それ以外の地域におきましては、特に西日本あるいは北海道が多いわけでございますが、ここではこれだけ調整目標数量を大幅に引き上げるときであるので、できるだけ均等配分をしろと、そういうような御意見が強いわけで、考えようによっては相当強い対立があるというところは率直に申し上げて認めざるを得ないと思います。  私どもといたしましては、地域分担とか、適地適産ということも長期的には十分考慮してまいらなければいけないと考えておりますが、ただ一気にドラスチックにそれだけを唯一の要素にして配分をするということは、基本的な方向としてはいいにしても、なかなか現実的ではないというところも考えまして、それらの調和をどこでとるかということで苦労しておるところでございます。私どもといたしましては、できるだけ適正公平にということでえりを正して配分をしたいということで御協力をいただきたいと思っております。
  65. 山崎昇

    山崎昇君 時間がなくなりましたからもうやめますが、最後に総理に、私はいまの世相その他考えるときに、この一外人の指摘ではありますが、言葉を最後にあなたに贈って締めくくりにしておきたいと思うのです。「日本は軍事的敗北は経済的勝利に変わったが、その経済的勝利は文化的敗北に変わりつつある。」という指摘がありますが、私はいまの日本の国情を考えるときに、余りにも金中心の世の中になり過ぎておる。そういう世相は政治が変えなきゃなりませんから、この言葉をあなたに最後に提示をして、私の質問を終わりたいと思います。(拍手)
  66. 鍋島直紹

    委員長鍋島直紹君) 以上をもちまして山崎君の質疑は終了いたしました。     —————————————
  67. 鍋島直紹

    委員長鍋島直紹君) 次に、多田省吾君の質疑を行います。多田君。
  68. 多田省吾

    ○多田省吾君 私は、最初に当面する外交問題について二、三お尋ねしたいと思います。  本予算委員会におきましても、日韓癒着問題、金大中事件についていろいろ取り上げられました。さきに韓国のKCIA部長をされていた金炯旭氏がアメリカ下院のフレーザー委員会におきまして、金大中氏事件はKCIAの犯行である、あるいは日韓癒着という問題についても証言があったわけでございますが、今度はアメリカ下院の倫理委員会で、二十一日の公聴会におきまして金炯旭氏の新たな証言があったわけでございます。アメリカの下院議員のクィレン議員が、韓国のような安定した政府がその政府を支持している米国に金を出すのはだれかから命令を受けてのことか。金炯旭氏が、そうだ。クィレン議員が、他の国にも同じ政策をとっているのか。金炯旭氏は、そうだ、日本にもやっている。クィレン氏が、日本の政府高官を支援するためにか。金炯旭氏は、そうだ。他方、日本は韓国に対する経済協力を拡大している。クィレン氏が、米国よりも日本の方がやりやすかったか。金氏は、日本については私が直接手を下したわけではない。  こういうようなやりとりがあったわけで、私もこれは新聞から質問したわけでございますが、さきに、金炯旭氏の金大中事件に関する証言問題では、総理はたびたびあれはもう八年前にKCIA部長をやめた私人であり、伝聞にすぎないということで拒否されたわけでございますが、今度のはほぼ一九六七、八年、九年ごろでございますから、金炯旭氏がKCIA部長、現職の時代の体験でございます。総理はこれをどう思われますか。
  69. 福田赳夫

    国務大臣(福田赳夫君) いま多田さんがお示しになりましたアメリカの国会での問答ですね、最後の部分で、金炯旭氏は自分がこの問題に携わったわけではないと、こういうふうに言っているわけであり、結局、金炯旭氏の主観を述べたというような性質のものと私は見ております。どうも金炯旭氏の言っていることは、これは事実と違う点が多い。警察庁の調べあたりでも事実に合ったことは少しも言っておらぬと、こういうふうに言っておるわけであります。この金炯旭氏の発言の全体として、私はそうこの人の発言に大きな証拠性があるというふうな感じがしないんです。率直に申し上げます。
  70. 多田省吾

    ○多田省吾君 総理は、直接手を下したわけではないからとおっしゃいますけれども、アメリカのいわゆる米韓癒着、対米議会工作にしましても金炯旭氏が直接金を渡したわけではない、朴東宣という人を使ったわけです。また関係したわけです。この場合も、金炯旭氏が日本に対しては直接手を下したわけではないかもしれませんが、これははっきりと間接的に金炯旭氏が理解し、体験していることなんです。ですから、私は証拠性が薄いとか、そういうことは言えないと思います、現職のKCIA部長でもございますし。  私は、アメリカの議会であれ、こういうことが公式にもう世界じゅうに流されている。アメリカ側のこのような対米議会工作に関しては敢然として、アメリカの下院でありますが、倫理委員会とかフレーザー委員会におきましてその追及をやっていると、場合によっては下院等におきましては韓国に対する援助等を差し控える決議をするかもしれないとまで言われているわけです。ところが、わが国においては総理がその証拠性が薄いということをおっしゃって、金大中事件にしましても、今度の対日議会工作の金が渡った疑いのある問題につきましても調べようとしない、これは非常に私は後退姿勢だと思います。  ですから、私は金炯旭氏は金大中事件に関しましても身辺の保護がはかられるならば日本に行って証拠書類をもって証言もしたいし、また、このたびの議会工作の問題も私は同じだと思います。ですから、金在権氏の言質がまだ得られないということを理由に、自民党でもなかなか金炯旭氏、金在権氏の証人喚問問題に応じませんけれども、私は金炯旭氏だけでもやはり証人喚問を要求すべきであるし、また、金在権氏に関しましても二カ月、三カ月前から第三国のしかるべき条件で応じたい、話し合いをしたいと、こう言っているとき、そういう答弁だけで、確かに金在権氏はいまはアメリカ人かもしれない、しかしロサンゼルスに家のある方でございます。外務省が本当に真剣にやるならば、こんなに二カ月も三カ月も答弁がおくれるわけもないし、非常に消極的だと私は思いますが、その点に関して、総理とひとつ外務大臣からもう一回御答弁をお願いしたい。
  71. 鳩山威一郎

    国務大臣鳩山威一郎君) 十月二十一日の米下院の倫理委員会におきます金炯旭氏の発言につきまして、外務省といたしましては、速記録はなかなか時間がかかりますので、市販の議事録を至急入手するようにいま手配中でございます。当日の委員会にわが大使館からも傍聴に派遣をいたしておりまして、その報告を受けておりますが、その報告と新聞に報道されたものとやや感じが違ったような報告も受けておりますけれども、これらにつきましては発言議事録を受けて至急検討いたしたいと思っております。いま総理がおっしゃいましたように、金炯旭氏がどうも自分で責任を持ってなかったような発言にも聞けるわけでありまして、その辺は調べたいと思っておるわけであります。  それから、金在権氏につきまして、外務省といたしまして、アメリカ大使館の方に鋭意催促をいたしておるわけでありますが、この接触の方法がまだ決まらないという段階でありまして、今後とも接触方につきまして鋭意努力をいたす所存でございます。
  72. 小川平二

    国務大臣小川平二君) 金炯旭氏が金大中事件に関しましていろいろな機会に証言あるいは発言をいたしておりますが、宣誓の上で行いました証言の一部を後の機会に否定をしている、あれは意識的にうそを言ったんだというようなことも申しておりまするし、また、事実無根の発言もございまするから、率直に申しまして、信憑性という点において問題なしとしない、かように考えるわけでございます。  警察の捜査は、国家公安委員会規則で決めておりまする犯罪捜査規範というものに従って行われておるわけでございますが、その百七十一条「事実を明らかにするため被疑者以外の関係者を取り調べる必要があるときは、なるべく、その事実を直接に経験した者から供述を求めるようにしなければならない。」、これは捜査の常道というべきものでございますから、金炯旭氏の発言のいわば情報源でありまする金在権氏にまず接触を求めようということで、ただいま外務大臣から説明がございましたように、合衆国政府を通じて折衝をいたしておるわけでございます。  最近の発言につきましては、詳しいことは何も知らないというのでございますから、これは全く具体性を欠いた発言でございます。捜査の当局は、具体的な犯罪の容疑事実がありません限り捜査に着手すべきものではございませんので、当面捜査上の措置はとるつもりがないわけでございます。
  73. 福田赳夫

    国務大臣(福田赳夫君) 金炯旭氏の発言は、もうとにかく非常にわが国として迷惑な発言が多いわけであります。その迷惑を政府としては取り払わなけりゃならぬとは思います。思いまするけれども、しばしば申し上げておりますように、金炯旭氏の発言自体、全体を流れるトーンが、どうもそう信憑性といいますか、これを取り上げて云々するという根拠がないんじゃないか、そのような感じがいたしまして、金炯旭氏自身を呼んで調べる、それについての踏ん切りを政府としてはつけない、こういう態度をとってきておるわけです。  ただ、金炯旭氏の発言の中に、いろいろ参考になる点がある。その顕著な発言、これは金在権氏と金炯旭氏の会談です。金公使は、これは当時責任ある日本大使館の公使という立場にあった。その人と金炯旭氏は話をしておる、こう言うんですから、金在権氏の話、これを聞くことは大変有効であろうというので、金在権氏との接触までいま努力をしている、こういうわけでありまして、決して金大中事件をもみ消そうとか、そういうような態度をとっておるものではないということを御了知おき願いたい、かように思います。
  74. 多田省吾

    ○多田省吾君 総理にもう一回。  この政治家を買収する政策を金炯旭氏がKCIA部長在任時代にやったんだと、日本の政府高官を支援したんだと、そのために経済協力は拡大されたじゃないかと。実際この前のわが党の峯山議員の質問でもおわかりのように、この十三年間韓国に対する援助は政府民間合わせて一兆円に達しております。また第三次においては三・六億ドル、また今回の第四次に際しましても政府ベースで五億ドルやろうとしておるじゃありませんか。そのような客観的な姿も合致していると私は思う。こういった具体性のある問題に対しましては、政府としてもやはり対外的に考えても、私はもしそういうことはないと言うならば、はっきりもう調査しなければならないし、これは早速政府において前向きに調査すべきである、このように思いますが、どうですか。
  75. 福田赳夫

    国務大臣(福田赳夫君) 疑いがあるというような事態がありますれば、これはもう早速調査します。しかし、金炯旭氏の発言だけでこれは捜査活動を始めるというようなことは私どもは考えておりません。私も長い間日本と各国とのつき合い、韓国を含めてです、ずっと見ておりますが、日本の政界で他の国からお金をもらってわが国の政策を左右する、そういうようなことがあるというような認識はいささかも持ちませんがね。私は金炯旭氏のあの発言というものを、大変いまの私どもの政治認識からかけ離れたものである、こういうふうに考えております。ただ、そういう、どうもそれにもかかわらず何か疑いがあるというような事実でもありますれば、直ちに捜査活動を開始します。
  76. 多田省吾

    ○多田省吾君 次に私は日中平和友好条約に関しまして、自民党内におきましても、AA研等が非常に積極的に推進されておりますし、また日中議連等をあわせてこの臨時国会にも日中平和友好条約の締結促進に関する決議案も出したいというような意向もあるようでございます。私は、もはや総理の決断にかかっている、このように思います。早急にもう決心すべきである、このように思います。  それからもう一つは、昨日藤山訪中団に対しまして李先念副首相が、日本に中国の工業近代化のための技術協力を新たに要請されたようでありますが、その件に関しましてどう考えられますか。
  77. 福田赳夫

    国務大臣(福田赳夫君) 日中平和友好条約につきましては、しばしば私が申し上げておるところではありますが、双方が満足し得る条件を早くつくり出しまして、そして条約の締結を行いたい、こういうことであります。まあそういうための環境づくりと申しますか、それは私は静かに進行しつつある、こういうふうに認識をいたしております。  それから、中国側の対日技術協力への期待といいますか、希望といいますか、これは私は大変結構なことだと思います。わが国として提供し得る技術、こういうものがありますれば喜んで提供するという基本的立場、これはまあ条件だとかいろいろありますよ、ですからここで一概に言うわけにまいりませんけれども、基本的な姿勢といたしましては、喜んでその期待に対応すべきであると、こういうふうに考えております。
  78. 多田省吾

    ○多田省吾君 次に、外交問題の三といたしまして、最近のハイジャック事件に絡んで総理はたびたび西ドイツの先例は考えたいと、このようにおっしゃっておりますが、今後もまた西ドイツが警備の不足な外国の十三空港に西ドイツの警備員を置くということで、一カ所においては大体決まったような報道がされています。これをどう考えられるか。  また、ハイジャック問題に絡みまして、法務省におきまして今度過激派の裁判に絡んで、弁護士が出なくても裁判ができるように法律改正をしたいというような意向もあるやに思われますが、これは憲法三十七条違反とも受け取れますし、またそのハイジャック問題に絡んでは、極刑、死刑に処せとか、感情的な衝動的な意見もともすれば多いわけでございますが、私はやっぱり冷静に総合的に沈着に考えなければならない問題だと思いますが、それをどう思われますか。
  79. 鳩山威一郎

    国務大臣鳩山威一郎君) 私から、西独の警備員の派遣につきましてお答えをさしていただきたいと思いますが、一般的に外国の空港におきまして、その国が当然主権を行使するのがルールでございますので、西独の場合に警備員を派遣するという点につきましては、当該国の了解が当然必要であろうと思うわけでございます。しかし、その了解につきまして、一空港について了解を得たような報道も私も承知しておりますが、これらの点につきまして、今後なおよく調べてまいりたいと思っております。しかし、主権の問題でありますので、なかなか問題としてはむずかしい面を含むであろうということだけを申し述べさしていただきたいと思います。あとの点につきましてはほかの所管の官庁から。
  80. 瀬戸山三男

    国務大臣瀬戸山三男君) 裁判の進行についてのお尋ねであります。  一般に民事、刑事を問わず、私の見るところ裁判が遅延しがちのような感じを持っておりまして、御承知のとおり、法治国家において法律の効果を上げるのは、やはり裁判で最終決着する場合にはできるだけ早く結論を出すというのが国民の期待するところであります。でありますから、従来から毎年判事の増員、書記官等の増員あるいは事務能率が上がる方法等について予算を求め、その措置をとっておることでございます。ただ、いまお話のように、刑事裁判の場合に、特に特定の考えを持っておるという犯罪の場合に、ややもすると特別に裁判が遅延しておるという現状でございます。でありますから、法治国家としての実を上げることが期待どおりにいかないということもしばしばあるわけでございます。そういうことは憲法上から言いましても、刑事訴訟法から言いましても、これは国民の期待に反することであると、だからどこに原因があるか、こういうことを突き詰めて改善すべきところはないかということをいま検討しておるわけでございます。今度のハイジャック事件に関連して特に考えましたことは、全部じゃございませんけれども、裁判の遅延の関係でハイジャックにはかかわりがあるような点もある、こういう問題もあるわけでありまして、ハイジャック防止対策を考える場合に、そういうものも含めて検討する必要がある。しかし、いま多田さんが何か裁判官なしに裁判ができるというような、これはだれも考えておることでもございませんし、そういうことは憲法上、法律上できるわけではございません。ただ被告人に与えられたる権利あるいは弁護権等の乱用がしばしば行われておるように見られる節がある。よけいなことでありますけれども、国民に与えられておる憲法上の権利はこれは乱用してはならないということが憲法に規定してあるわけでありまして、そういうことも勘案して何らかもう少し工夫する点がありはしないか。しかし、いま仰せのとおり人権に関する問題もありますから、事は軽々に判断すべきでない、慎重に考えてやらなきゃいけないということで、この臨時国会にお願いしようというハイジャック防止対策の問題には含めないで、しばらく時間をかけて十分に検討をいたしたいと、こういう準備を進めておりますが、細かい点については事務当局から御説明いたさせます。
  81. 伊藤榮樹

    政府委員(伊藤榮樹君) ただいま大臣からお答えいたしました点に関連いたしまして、私どもがいま検討しておりますことは次のとおりでございます。  今日、過激派の裁判を中心に非常に裁判が遅延いたしております。その理由は、細かいことまで挙げれば相当いろんなことがあると思いますが、やはり一つの大きな原因といたしまして、弁護人が被告人と意思を通じまして退廷戦術、不出頭戦術、辞任戦術等をとりまして、裁判の遅延をはかるということがひとつ顕著にうかがわれるわけでございます。その点につきまして何らかのさしあたり改善ができないかということを私ども検討しておるわけでございまして、たとえば弁護人の辞任、不出頭、退廷、こういう裁判所を無視したような行動が被告人自身の責任に帰せられるような一定の事情がありますような場合には、被告人が弁護人とともに憲法上の権利あるいは刑事訴訟法上の権利を乱用しておるというふうに認められるわけでございまして、そういう場合にはあらかじめもう期日の定まっておりますような数開廷の間弁護人の出頭を求めないで手続を進める、そしてその間に国選弁護人を裁判所でつけると、こういうような方法をとることができないかということを現在検討しておるわけでございます。
  82. 小川平二

    国務大臣小川平二君) 大体外務省、法務省から申し上げたことで尽きておると存じますが、外国の主権のもとで日本の警察警察活動をするということにつきましては、まず日本独自の立場でこの点を解決しなければならないと存じまするし、それから荷物の検査、ボデーチェックというようなことは、本来それぞれの航空会社が輸送約款に基づきまして徹底的に行えるはずのものでございます。日本の警察が出向いていきましてこれにつけ加えて何ほどの有効なことができるのかどうか、この点も研究しなければならないと存じますが、西独の事例につきましては早速取り調べて参考にするつもりでございます。
  83. 多田省吾

    ○多田省吾君 私も、西独の事例と日本の立場は全然反対の場合もございますし、取捨選択はよろしくお願いしたいと思います。  次に私は、公害問題で御質問したいと思います。  第一にカネミ油症問題でございます。これは食品公害でございますので厚生大臣と総理にお伺いします。先ほど山崎議員も触れられましたが、十月五日に福岡地裁でカネミ油症についての民事訴訟の判決があったわけです。この判決では、PCBの混入した油を販売した大量の健康被害者を発生させました直接責任者のカネミとともに、PCBを製造販売してまいりました間接責任者の鐘化にも過失があったとして原告側が全面勝訴しております。政府はこのような重大な事態に対しましてどのようにいままでも対処をしてきたのか、具体的にお伺いしたいと思います。  まず、細かいことでありますが、第一に、判決で食品の安全性についてきわめて高度の注意義務を負うとしておりますが、厚生省はその安全対策についてどのように対処しましたか。  第二に、カネミ及び鐘化の過失責任を全面的に認める判決があったこの時点におきまして被害者の救済対策をどのように進めていきますか。  第三に、鐘化は控訴をいたしましたが、そのことによって私は救済対策が非常におくれるのではないかと危惧いたします。総理、この鐘化の態度についてどう考えられるか、初めにお伺いいたします。
  84. 福田赳夫

    国務大臣(福田赳夫君) この種の問題は、原因者負担といいますか、この場合は製造者負担といいますか、そういう考え方で対処していくべきものでありますが、これは結局訴訟になる。その訴訟の係属中被害者というか、こういう方々が生活上または医療上いろいろ問題が起こってくる。そういうことにつきましては、政府といたしましてはあるいは研究費を支出いたしましてそういう原因究明でありますとか、あるいは今後の施策、そういうものをどういうふうにするとかそういう検討をいたしてきております。同時にその間の被害者の健康等の問題あるいは生活の問題、そういうことにつきましては、健康問題に国が協力をする、あるいは生活のために世帯更生資金、こういうものを活用いたしまして特例的な措置をとるとか、いろいろ政府としてなすべきことは努力をすると、こういう姿勢をとってきております。
  85. 渡辺美智雄

    国務大臣渡辺美智雄君) お答えをいたします。  基本的にはただいま総理大臣から答弁のあったとおりでございます。  御承知のとおり、安全対策は非常に重要な問題でございますから、かねてから食品衛生法に基づきまして、厚生省といたしましては食品の衛生のための監視、指導、あるいは添加物の安全の確保、それからいろんな調査、研究、こういうようなものをやってまいっております。  なお、営業者の自主的な管理、こういうようなことにつきましても、保健所等を通しまして、あるいは環境団体等を通しまして、安全の対策についていろいろと指導をやってきておるところでございます。  ただいまもお話がございましたが、特にこの鐘化問題が起きましてから、昭和四十四年の八月に食品衛生法施行令を改正をいたしまして、食用油脂の製造業、これを許可業種に指定をいたして監視を強化をすると、こういうような措置をとってきたわけであります。  また、四十七年の六月には食品衛生法等、営業者の自主管理を強化する措置をとりまして、有毒物質の混入防止等の措置基準、これをつくりました。そして食用油脂の製造業の規制をさらに強化すると、こういうような措置もとったわけであります。  なお、このカネミの油症患者の救済にどういうふうなことをやったかと、これはともかく非常にお気の毒な状態でございますから、この事件発生の特殊性にかんがみまして、まず、その研究費等を出して、油症治療の研究というものを継続をさせ、そしてまた一方、患者に対しては継続的な、診定患者と、こう言っておりますが、患者の発見等に協力をしてきておるわけでございます。  それから、総理も言ったように、生活困窮者に対する世帯更生資金の貸し付け等について、非常に三%というような低利の資金を貸したり、あるいは毎月の生活資金、あるいは技能習得のためのいろんな助成、療養のための助成、こういうようなこともやってきておるわけでございます。  なお、鐘化の控訴の問題でございますが、この問題につきましては、これは憲法上認められた一つの権利でございますから、控訴それ自体をやるなとか、けしからぬというようなことは厚生省としてはなかなか言うわけにはまいりません。まいりませんけれども、こういうような事態にかんがみまして、できることならばこれはまあ示談といいますか、和解の方向がいいのではないだろうかというように考えてはおるわけでございますが、具体的に控訴相ならぬというようなことはなかなか言えない立場にございます。
  86. 小平芳平

    小平芳平君 関連。
  87. 鍋島直紹

    委員長鍋島直紹君) 関連質問を許します。小平芳平君。
  88. 小平芳平

    小平芳平君 よく厚生大臣も総理大臣も質問の内容を把握して答弁していただかないと困るんです。  第一には、十月五日の判決以後、食品の安全性についてはきわめて高度の注意義務を負うという、そういう判決が出た。それ以後、安全性についてどういう手を打たれたのか、これが質問の第一点です。  第二点は、同じくこのカネミは直接油を売って被害が発生したんですが、PCBを生産した鐘化も責任があるんだという判決が出ているわけでしょう、十月五日。その時点において救済対策がおくれやしないかということを心配するんです。ということは、確かに控訴するというのは権利。ですけれども、従来政府はどういう態度をとったかと申しますと、これは総理大臣もよく聞いていただきたいんですが、たとえば四日市の訴訟判決があったときに、時の通産大臣は被害者救済を急ぐべきだと、判決全文を検討した上場合によっては通産省として企業側に控訴を思いとどまるよう助言することもあり得ることを示唆しているという、こういう新聞報道が出ているわけです。またイタイイタイ病の控訴審判決、このときなどは第一審の判決が出た段階で判決に服すべきだった、患者の苦しみを考えると、高裁への控訴で裁判を長引かせるべきでなかったと、時の環境庁長官がこういうふうに言っているんですよ。患者の救済を優先すべきだと言っているんです。水俣病判決のときも同じことを、環境庁長官が被害者の補償に努力すべきだと、チッソが控訴権を放棄したんですが、このときは控訴権を放棄したのは当然のことだと、こういう発言をしているわけです。したがいまして、この鐘化に対して政府は会ったんですか、会っていないんですか。話をするつもりなんですか、するつもりがないんですか、そういうことをお聞きしているんです。  それからもう一つ、これで終わりますから。PCB汚染が非常に深刻だということをニュースでも言っておりますが、平常人の百倍も労働者の血液の中からPCBの蓄積が発見されたという報告がなされております。労働大臣、労働省はこうした労働者をPCBから守るためにどういう具体策をとられますか。以上です。
  89. 渡辺美智雄

    国務大臣渡辺美智雄君) 先ほども申し上げましたように、食品の監視や指導やそういうような一連の措置は判決以前から続けて実はやっておるわけです。  それから、油脂業種という食用油脂業種も許可基準の中に指定をいたしまして、それで厳重な監視下、監督をやっておりますと、こういうことであります。したがって、判決があってもなくても前からその問題が起きたときからすでに数年間にわたってそういう点は十分注意をしておりますと、こういうことを申し上げたわけです。  それから、鐘化の責任の問題につきましては、裁判でそういうことが言われておるわけです。したがって、われわれといたしましてはすでにもう控訴いたしましても一人三百万円までのやつは執行されているわけですから、ですからこういう問題は長引くことよりも、何とか両者の話し合いによって、裁判所の方針も出ていることですから、ともかく和解の方向でやっていただきたいということについては、ともかく義務的に押しつけることはできないわけです、これは。しかしながら、内面指導においてはそういうことは陰に陽に話はしておるわけでございます。  それから、救済対策については特別に立ちおくれというようなことはございません。
  90. 石田博英

    国務大臣(石田博英君) この鐘化の問題がやかましくなりましたときに、京都の撚糸機業所で潤滑油に使っておった油の中にPCBが多量に混入されておったということがわかりました。したがって、これは基準法内の規制措置をとりまして、その混入を禁止いたさせて今日に至っておるわけでありますが、その後昭和五十年に京都の衛生研究所から、その事業所の中において残存しておる油の中にPCBが混入しておるものがたくさんある、床下にこぼれたものとか、あるいは機械に付着しているものとか。そしてそれがそこで働いている労働者の血液の中に非常に高い標値のものが出ているという報告を受けまして、そして労働省といたしましては、京都の労働基準局を通じて実態調査をいたしたのでありますが、しかし、その調査の範囲内では、自覚症状を訴える者はそのときはなかったわけであります。改めてこのたび、同じ京都の衛生試験所から同様の報告が近く公衆衛生医学会などに出されるということを聞いておりますので、その新しい時点においてさらに調査をいたし、そして、そういうことが労働者の健康に害を及ぼさないような措置を至急に講じたい。で、御承知のごとく、労働安全衛生法の施行令によりまして、この種の油を製造する設備等については、労働大臣の許可を受けることになっておる次第であります。
  91. 小平芳平

    小平芳平君 厚生大臣、それではすでに鐘化を呼んで行政指導をなさったんですか、なさったら鐘化はどんなふうに言っておりましたのでしょうか、それが一つと、それから救済はおくれておりませんとおっしゃるんですけれども、治療法さえわからないわけじゃないですか、いま現実問題として。おくれるもおくれる、大おくれにおくれているんでしょう。いかがですか。
  92. 渡辺美智雄

    国務大臣渡辺美智雄君) 治療法の問題につきましては、いままでも累計数億円の金を出しまして、それは鋭意研究をいろいろしているわけです、助成をいたしまして。  それから、それはおくれていると言われましても、学問の問題でございますから、厚生省が金を出したから、あしたからその治療法がきちんと確立されるというものではなかなかない。しかし厚生省といたしましては、できるだけのそういう調査研究については応援をして、それで一刻も早く明確な治療法を開発してほしいということで努力をいたしております。  それから、どういうように鐘化を呼んでやったかというようなことにつきましては、これは具体的な問題をここでなかなか申し上げられません。これはもう向こうは向こうで一つの見解を持っておりますが、これにはいろいろ、陰に陽にということを私が申したのはそういうことであって、要は強制的に押しつけるわけにはいかないことの問題でございますから、なるべく患者救済を早めるというような点において、こういうことを長引かせないような努力というものをわれわれはしておりますと、こういうことであります。
  93. 多田省吾

    ○多田省吾君 私は、公害問題に関連しまして、昨日の石原環境庁長官のフジテレビにおける御発言は、余りにも重大な問題を含んでいると思いますので、もう一回私は御質問したいと思います。  公害防止、また環境から人命を守る憲法が公害基本法でございます。そして、その大元締めが環境庁長官だと私は思います。その環境庁長官から、昨日は、念のため御発言をここで読ませていただきますと、つまり、「経済との調和ということは日本ではもうタブーになってしまって、要するに公害の法律の中からその文章だけ取っちゃったんです。それはもう与野党一致でね、これもやや魔女狩り的なね、非常に私にとってみると不思議な現象にしか思えないんですがね。なくなっちゃったものは仕方ないんで、やっぱり冷静にトレードオフ、その取捨選択する時期に来ているわけですね」と、こういう発言をなさったわけです。  私は、その当時はもう日本に公害がはびこりまして、そして経済優先と受け取られかねないこの経済との調和の問題、やはり徹底した公害規制をやるために、敢然として国民の世論のもとで取ったわけです。そしてまた、かわりに入れたわけでございますが、この私の議事録にも、時の総務長官でございますか、山中貞則総務長官が参議院の公害対策特別委員会におきまして自民党の議員の方の質問に答えられて、こう答えておりますよ。「第二項の経済との調和条項が、まさに私たち政府・自民党というものが公害に対処する姿としての、いわゆる」「踏み絵的に政府の姿勢を要求されておる、まず最大の個所であろう、場所であろう。しからば、この問題を私たちは削除することにちゅうちょがあってはならぬ。」、そういうことをはっきりと明言した上で、全員賛成のもとにこの公害基本法が改められたいきさつがございます。そして、現在におきましても、公害病認定患者は五万人を数え、きのうも四日市の公害の犠牲者の方の慰霊碑まで建てられました。また四大裁判におきましても、原告が全部勝訴いたしまして、そして企業が敗れております。また、わが日本は決して公害がおさまったわけではなしに、世界一の公害先進国として悪名がとどろいており、エコノミックアニマルという名前とともに世界じゅうで喧伝されている状況ではありませんか。マクロ的に見れば、日本公害列島の姿はますます悲惨なものになっております。その時期におきまして、経済優先とも受け取られるような御発言があったことは、私は非常に遺憾だと思います。  で、一応山崎委員質問に答えられて撤回されるような御発言もございましたが、私は第一番目に、環境庁長官が、国会議員のときにこの法案に賛成されたのか、また欠席されたのか。それから第二番目に、人命尊重を第一とする環境保全についてどう思われるのか。第三に、環境庁の任務をどう考えられるのか。この三点をあわせてもう一回御見解をお聞きしたいと思います。
  94. 石原慎太郎

    国務大臣石原慎太郎君) お答えいたします。  四十五年にこの調和条項が削除されましたときに、私まだ参議院の駆け出しでございまして、そのときの国会会期中、どのタイミングでこれが可決されたか、私よく覚えておりませんし、多分私も事の重大さがよくわからぬままに出席していたと思います。ただ、私いまになってみますと、言葉にこだわるわけでございませんけれども、調和という言葉の中には、優先というニュアンスは全くないわけでございまして、むしろこの条項が結果として経済優先になるということを防ぐのは、行政の姿勢の中ですべきことではないかと思うわけでございます。そういう意味で、一たん非常に論議の末に四十二年に入れたものをまたここで取ったということで、先ほど申しましたが、要らざる新しい誤解、つまり環境、特に生活環境の——御存じのように、これは健康の保全の中には調和条項というものはございません。環境の保全の中からもこれを取ってしまったことで、環境の保全に関して、経済よりも何よりもとにかく環境の保全が優先するんだ、絶対優先するんだという論を導きかねないうらみがあったんではないかという気がいたします。そういう意味で、私はあの発言をしたわけでございます。そしてまた、先ほど取り消しましたのは、そういう趣旨を、やや魔女狩り的云々という、そういう表現は好ましくなければ、私取り消させていただきますが、ただ、四十五年にこれを取り消しましたことで新しい誤解を招いた、そういう論を導き出したということは否めないという意味で申したわけでございます。  それから、環境行政は、これは何といっても人間の生命、健康というものは、これはもう絶対すべてのものに優先すべきものだと思います。しかし、その他の問題になってまいりますと、日本の経済もかつてとは違いまして、いろいろ大きな問題を構えておりますが、そういう意味で、何を取り、何を捨てるかという形の冷静な取捨選択ということを行うべき時代に来ているんではないかと、その取捨選択というものは調和という表現の中に入ってもいいんではないかという気がする次第でございます。
  95. 多田省吾

    ○多田省吾君 石原長官は、魔女狩り的という言葉は撤回されたようでございますけれども、根底に横たわるどうも私には環境優先よりも経済優先だというようなお考えがあるやに思います。これは私は絶対に納得できませんし、その姿勢は私は改めるべきだと思います。
  96. 石原慎太郎

    国務大臣石原慎太郎君) お答えいたします。  私は、決して環境の保全に関しましても経済が優先すべきものとは絶対に思いません。ただ、その中でOECDも言っておりますように、冷静な取捨選択というものを行うべきだということを申しておるわけでございます。これはひとつどうか御理解願いたいと思いますけれども、私は、決して環境の保全の問題においては、経済が優先してしかるべきだなどということは毛頭考えておりません。
  97. 多田省吾

    ○多田省吾君 私は先ほども申しましたように、環境を守るということが最も大事な人間の生命、またあらゆる生命を守っていくということにおいて重大な問題があります。ですから、いま石原長官のいままでの発言のような経済の調和をとったことがどうして不思議なのか、全然いままでの論旨から言って納得できないわけです。これは総理大臣、いままでの質疑を聞かれて、またきのうの発言を聞かれて一応魔女狩りというような発言は撤回されたようでございますけれども、この一連の石原環境庁長官の姿勢というものは、私は非常に環境庁の行政に対して国民の皆様また公害患者の皆様等が不信を持つに違いない、このように思われるのですが、総理は一体どう考えられますか。
  98. 福田赳夫

    国務大臣(福田赳夫君) 私も石原長官の話をよく聞いていましたが、結論から言いますと、これは石原長官も環境あるいはその背後にある生命の問題これが最優先だということについてはいささかの私どもとの認識の違いというものはないんです。ただ、石原長官は経済の問題も大事だと、生命、環境の問題との調和という問題が出てくるだろうと、その調和というときには冷静に判断しなければならぬと、こういうことを強調されておるんです。しかし、それはどっちをどういうふうに優先するかというような、そういう選択の問題になりますれば、これはもとより生命、環境が優先をする、これはもう透徹したそういう考え方を持っておりまするから、その辺についての誤解を与えるような言動、これについては石原長官に今後とも是正に努めていただくというふうにいたします。
  99. 多田省吾

    ○多田省吾君 次に、私は景気回復の問題について総理質問したいと思います。  今度の円高二百五十円台というものは定着したように思います。米国財務長官の発言によって九月末から円高になり、またドル防衛という再度の発言でまた小康状態を得ておりますけれども、こういう円高の状況においては繊維産業あるいは雑貨等の輸出が極度に脅かされまして、そのために経済成長も〇・四%ほど下がるのではないかとさえ言われているわけでございます。新聞報道によりますと、自民党の河本政調会長が二十一日の役員会等で、最近の円高で非常に深刻な影響を受けている地域、業種がある。また補正予算成立後に具体的な対策を検討したいとか、九月に決めた総合景気対策の効果も円高で減殺されたとか、こういうことをおっしゃっているやに出ております。私はそのことを云々しているのではなくて、そういう考えが内閣にもあるんじゃないかと、このように思われます。私は、この円高による再度の危機に対しまして、もし必要な場合には景気対策の第二次補正予算も提出すべきであると思いますし、また石油や食糧の海外の大量備蓄なんかも自民党内で一部考えられているようでございますが、その点に関してはどう考えていらっしゃいますか。
  100. 福田赳夫

    国務大臣(福田赳夫君) 円高に関連いたしまして、私が最も関心を持っておるのは二つあります。一つは、円高によりまして輸出、特に零細な輸出業者、これのこうむる損害といいますか苦しい立場、これを国家としては援護しなければならぬ、この立場の問題です。これはいま今日この段階におきましてもいろいろ施策をとっておりまするけれども、この円の価格の成り行きいかん、これも見定めました上、これは有効適切な対処をいたします。  それからもう一つの問題は、どうもほっておきまするとことしの貿易収支は非常に大きな黒字になる、したがって経常収支においても同様な傾向が出てくる。これはいま世界じゅうが非常に苦しんでおるそういう中において、日本の貿易収支がまた経常収支が大幅な黒字であるということは、世界経済の中における日本として、これは妥当なこととは考えません。これはどうしても是正する必要がある。是正するためには内需が振興されまして、そしてわが国の経済社会が全体として上昇過程に向かうということが基本ではございまするけれども、その基本政策、今回の二兆円事業費の施策、こういうこともそのためでございまするけれども、それは効果がかなりずれるおそれがあるわけであります。  そういうことを考えまするときに、ここで臨時緊急な輸入対策を考える必要があると、こういうふうに考えておりまして、先般来、この際思い切ってできる限りの努力をしてみようということでいろいろ構想を固めておるわけであります。まあ一般的内需振興方策、それが根底でありまするけれども、非常緊急の対策といたして緊急輸入を大幅に行う、こういう考えでいま作業を進めておるところでございます。
  101. 多田省吾

    ○多田省吾君 この景気回復のために政府はこのたび大幅な公共事業の追加をされましたけれども、この前も同僚の矢追議員が官公需の問題等に絡みまして県別に非常に契約率がばらばらであるとか、あるいは金の支払いがおくれているのじゃないかというような資料を示されましたけれども、やはり中小零細企業に対する官公需がまだ非常に少ない、まだ三四、五%ですか、われわれは五〇%を要求しておるわけでございます。また官公需につきまして、八十三社といわれるような大手の業者は非常によろしいのですが、それ以下の中堅また中小零細業者の中には官公需があればいい方で、あっても工事を一二%ぴんはねされたり、あるいは中には建設業者の新聞では二〇%から二五%もまずぴんはねをされる、そういうような苦情を訴えているものがございます。共同発注の推進とも絡んでそういった問題で建設大臣また公取また総理はどのようにお考えでございますか。
  102. 長谷川四郎

    国務大臣長谷川四郎君) 建設省といたしましては、官公需の中小企業の受注、これの確保をしなければならぬ、従来からこの点については十分配慮しているところでございますが、ただいまお話がありましたように、年々年々上昇しております。五十年四二・七%の直轄でございますが、それが昨年は四三・七%まで切り上げ、本年度五十二年度の予定といたしましては四四・三%目標に進めておりまして、年々年々この点につきましては上昇率を高めておる次第でございまして、特にその問題につきましては所管の建設業者に対しまして事務次官通達をし、また局長からは特にそれが実現するようにその方法を行っており、特にまた小さい方がたくさんあります、いずれにしても、四十三万もあるわけでございますから、その中の小さいものに対しては、これが共同体をつくって、そして共同の請負をするというような体制も整わせております。したがって、分割発注の問題さらに発注標準というものをつくりまして、この目的を達するようにいたしておるところでございます。  なお、これらに対しましては、私も、この四月二十六日には直接業界の代表の皆さんお集まりいただきまして、特にこの面については御注意を申し上げて、そのとおりに現在は進んでいるのでございます。
  103. 橋口收

    政府委員(橋口收君) 建設業の元請業者と下請業者との関係につきましては、いろいろ問題があることは承知をいたしております。ただ、請負契約でございますから、特殊な契約の形態でもございますので、主として建設省の系統で御指導いただいておるわけでございますが、仮に、先生がおっしゃいましたように、下請代金につきまして、不当に代金をカットするとか値引きをするとかいうことになりますれば、これは法律上問題になり得ると思いますし、また、親事業者がその優越的地位の乱用行為としまして、仮に下請業者に対してある種の圧迫を加えるということであれば、事案の性質によっては独占禁止法上の問題として取り上げ得ることが起こり得るということは申し上げられると思います。
  104. 多田省吾

    ○多田省吾君 最後に、繊維業界からは、大変な円高のときにおいて、無担保の長期低利資金の融資とか、あるいはすでに借りた政府金融機関の利息も八%程度にしてもらいたいとか、あるいは過剰設備の廃棄に絡んで税制上の優遇措置をとってもらいたいと、こういう要望が強いわけでございます。また、造船協力業界からも船舶の解撤三百万トンの問題、こういった提示がされておりまして、一昨日の参考人の陳述によりましても、両大臣もよく御存じと思いますが、繊維あるいは造船協力業、こういった最も大変な業種に関しましてどういう対策をとられようとしておりますか。
  105. 田中龍夫

    国務大臣田中龍夫君) お答えいたします。  繊維関係につきましては、最も深刻な影響をこうむっておりますので、通産省といたしましては、各産地別に担当官を派遣いたしまして詳細な情報を入手いたしておりますが、特にその中におきましても対外依存度の強い商社におきましては、もはや操業できないというような限界に達しておるようなところもございます。御案内のとおりに、これに対しましてとりました政府の処置といたしましては、政府系の三金融機関に対しまして、特別融資等についての個々の実情に応じました、あるいは返済期限の猶予の問題でありますとか、金利の引き下げでありますとか、返済条件の緩和でありますとか、こういうふうなきめの細かい指導をいたしておりまするが、特に円高の問題に関連いたしまして、十月一日から為替変動対策の緊急融資制度を実施いたしまして、この融資制度におきまして、さらにきめの細かい、特につなぎ融資の問題の手当てをいたしております。  それからまた、中小企業の倒産対策の緊急融資制度等々の、従来からありましたかような制度も同時にあわせて積極的に機動的にこれを行っております。当面、特に中小企業の振興事業団によります繊維関係の無利子によります設備の買い取り、これ十六年間の無利子の融資をいたしまして、そうして過剰設備の廃棄等を促進いたしておるような次第でございます。  なお、中小企業の信用保険制度と申しますものがあるのでありまするが、これは御案内のとおりに、不況業種につきましての指定によりまして、紡績業、織物業等々の四十五種につきましては本年の十一月の一日から金利軽減の処置を講ずるようにいたしております。なお、金利の軽減の問題もございまするが、過剰設備の税制上の問題、これも非常にむずかしい問題でございまするが、過剰設備の廃棄を推進いたします場合におきましては、中小企業振興事業団の設備共同廃棄事業の融資制度、これを積極的にいたしたい。なお、事業協同組合をつくりましてこれによりまする買い上げを行った場合におきましては、廃棄事業者に生じまする譲渡益につきましては、税制上の固定資産を取得したときは課税が生じないように特段の処置を大蔵当局にもお願いをいたしておる次第でありまして、五十三年度の税制改正におきましてはこれを当初から強く要望をいたしております。  また、賃機業者に対しまする助成の問題も御懸念であろうと思うんでありまするが、相互扶助の精神に基づきまして協同組合等を設立いたし、その円滑な運営を中心といたしまする組織化対策をば鋭意進めてまいっておりまして、賃機業者の共済制度というもの、これをぜひ推進いたしまして相互扶助によってこの難局を切り抜けてまいるように特に指導をいたしておりますが、このような自主的な努力を助長するようにわが方といたしましては指導をいたしております。  それから、最後に一言だけ申し上げておきますが、円高対策の推進本部を本日、前々からこれはずっと作案いたしておりましたが、本日正式に決定いたしまして、そうして円高対策に対しまする国内国外のあらゆるひとつ施策を総合的にまた関係各省と緊密な連絡をとりましていたすように、今日から対策本部を発足いたします。
  106. 田村元

    国務大臣田村元君) 造船関係の不況というものについては、私どもの仕事として最も頭を悩ましておる問題の一つであります。要するに、世界的な問題でありますし、OECDとの話し合いとか、いろんな問題がございます。そういう中で苦慮しておる。しかも、日本の持っておる造船の量というものは世界的なシェアとして大変なものであります。そういうことで、私どもはいろんなことをやってまいりました。造船本来の失業者、それから下請等の失業者合わせて三万にも達したというようなことで、労働対策、いろいろな問題、労働省にもお願いしましてやってまいりました。しかし、何といっても仕事をとるということが一番大切なこと、雇用対策も当然でありますけれども、そういう失業者が出ないように仕事をたくさんとっていくということが何よりも基本的な問題、そういうことで私ども必死になってこれと取り組んでおります。あるいは輸銀の問題にしましても、いろんな問題がございます。  そこで、特に下請問題のこの解体の問題でございますけれども、三百万総トンという計画もあるやに聞いておりますけれども、これはもう世界的にも解体業というものが成功しておる例もございます。わが国もうんとやっていきたいと思いますけれども、率直に言いまして問題もまたなきにしもあらずでございます。と言いますのは、世界全体の解体規模が現在年間五百万総トン程度でございます。このうち、現在のことでございますが、わが国の解体量は既存の業者によるものが年間十万ないし二十万総トン程度であるということ、それから海運不況対策として国際的に共同解撤が議論されておりますけれども、世界的に海運業界が合意に達する見通しがなかなか薄いという問題もございます。それから御承知のように、現在平電炉、この業界の深刻な不況がございます。でありますので、大量のスクラップを供給した場合にスクラップの需給のバランスが著しく崩れるというおそれもございます。こういう問題点はあります。ありますけれども、要するにやはりアイデアということも考えなきゃなりませんから、いろんな面でわれわれは解体業に対して保護を加えていきたいし、奨励もしたいし、問題点の解明もしていきたいと、このように考えておる次第でございます。
  107. 多田省吾

    ○多田省吾君 最後に、高成長時代にも置き去りにされた福祉、これはいまの時代にも最も大事な問題です。成長といい、また景気回復といっても、人間生活を大事にする福祉が私は一番大切だと思います。その面で厚生大臣にいま一番問題になっております年金、基礎年金の検討はどうなっているのか、あるいは老齢福祉年金、田中前厚生大臣は早く二万円にしたい、これはどうなっているのか。また年金の落ちこぼれ対策——掛け捨ての人も大分まだやっておりますが、そういった総合的な調整の問題、この三点をお聞きしたいと思います。
  108. 渡辺美智雄

    国務大臣渡辺美智雄君) 基礎年金の問題につきましては、目下年金の基本構想懇談会におきまして鋭意検討をいたしております。ことしじゅうぐらいに一応中間報告をしていただけるのではないだろうか、かように考えております。  それから、福祉年金二万円の問題でございますが、私どもといたしましても、老齢福祉年金につきましてはできる限り引き上げたいと思いまして、ことしも一一%余の改善を図ってきたところでございます。しかし、一挙に二万円にするということにつきましては、実は膨大な資金を必要といたします。そういうようなこともございまして一挙に二万円にすることはむずかしいと考えております。しかしながら、できるだけその改善には今後とも努めてまいりたい、かように思います。  それから落ちこぼれ問題、この問題につきましては、いままでも二回にわたりまして救済を図ってきたことでございますが、今後も非常に善意でありながら年金に加入できなかった、あるいは途中でいろんな事情があって納められなくなって、それっきり放棄してしまったというような方も私はあろうかと存じます。したがって、この落ちこぼれを、恒例的にいつでも払わないでおいても政府にめんどう見てもらえるんだということになってしまうというと大変なことになってしまって、みんな払わなくなってしまいますから、そういうようにほかに不公平が波及するということのないような形で落ちこぼれの方については、これは救済の問題を検討しておるところであります。
  109. 鍋島直紹

    委員長鍋島直紹君) 以上をもちまして多田君の質疑は終了いたしました。(拍手)  午前の質疑はこの程度にとどめます。  午後一時から委員会を再開し、山田君の質疑を行います。  これにて休憩いたします。    午後零時十二分休憩      —————・—————    午後一時二分開会
  110. 鍋島直紹

    委員長鍋島直紹君) 予算委員会を再開いたします。  昭和五十二年度補正予算三案を一括して議題とし、山田勇君の質疑を行います。山田君。
  111. 山田勇

    ○山田勇君 総理、御承知かもしれませんが、ちょっとショッキングな事件のお話をいたします。  これは去る十月の十一日の各新聞に載った事件ですが、三年前に妻と離婚した男がことしの二月から愛人と暮らし始めたのですが、自分の連れている五つになる実の娘が愛人との生活に邪魔になるので、夜中に川に投げ込んで殺し、その後警察へは何食わぬ顔で捜査願いを出し、二日後水死体となって発見されたわけですが、娘の葬式の席では、娘はだれかに殺されたと涙を流して訴えていたんですが、警察の追及で一カ月ぶりにわが子殺しを自供したという、大阪で起こった、常識では考えられない異常な事件でございます。この二十七歳の男は、逮捕後の調べでも、子供をとるか女をとるかと言われると女をとると口走り、どこに親としての資格があるのか、腹の底から憤りを感じるものでございますが、親しか頼ることのできない幼い子供を殺し、自分の欲望しか考えない、この非情な事件総理はどうごらんになっておられるでしょうか。
  112. 福田赳夫

    国務大臣(福田赳夫君) 普通の倫理観ではとても解釈できないようなそういう行為が行われる、私は非常に残念なことだと、こういうふうに思います。やっぱり人間社会がどうあるべきかという社会に対する正当なまた正常な倫理観、これが大事になってきているのじゃないか、こういうふうに思います。どうも私はそういう点に日本社会の問題があるような感じがしますが、政治はまさにその正常な倫理観、道徳観、こういうものを取り戻すために最大の注意を払わなきゃならぬ、そういうふうに存じます。
  113. 山田勇

    ○山田勇君 総理、実は、私は、いまの政治のあり方がこの父親と余り変わりがないのではないかと考えるのです。親である政府が弱い国民を見捨てている、そういうような姿勢に見えてならないんです。  さて、不況が長引いているわけですが、政府は一日も早くこの不況から脱出したい、その糸口をつかみたいといういろいろな施策を講じておりますが、九月三日に決定しました総合経済対策、すなわち、公共事業の推進、構造不況対策、また雇用対策など、その裏づけとなるただいま審議中の補正予算案、政府の御努力は一応私は認めるといたしましても、私は連日の総理答弁を聞いておりまして、恐らく一般国民もそうだと思いますが、大きな不安を感じるのであります。それは、たとえば金利引き下げの問題一つにいたしましても、苦しい生活の中から将来のことを考えてせっせと預貯金をしている国民に対してはその目減りを辛抱させ、一方、大企業などに対しては金利の負担を軽くする。まず大企業のめんどうを見なければ、人減らしでますます失業者が多くなり、困るのは一般国民大衆だといった、まず大きく強い者を守る。それがうまくいけば小さい弱い者も助けてやろうという、まかり間違えば弱者切り捨ての姿勢が基本にあるように思えてなりません。総理は口を開けばきめの細かい行き届いた施策をと申されますが、中小企業の倒産は依然として高水準で続き、失業者は百万人、先日の参考人のいろいろなお話を伺っておりますと、学者の説によれば三百万人という大台に乗っております。中高齢者の就職難、低所得者の生活はますます苦しくなっております。まだまだ十分とは言えない福祉政策も、はや後退の見直し論が政府与党の間でささやかれておりますが、いろいろな公害問題にしましてもほとんどが国民を犠牲にする方向に進んでいます。私は、政治というものは、まず第一に弱い者を救うこと、この姿勢が基本になければならないと考えます。親が子を殺す事件は異常と思いますが、いまの政治も表面はやさしい親の顔をしていましても、裏側では平然と子を見捨てる非情なところがあるように思えてなりません。これは私の偏見でしょうか。抽象論のようですが、国民にとって一番大切なところです。総理、偽りのない総理の政治観をお聞かせ願いたいと思います。
  114. 福田赳夫

    国務大臣(福田赳夫君) 山田さんのお話は、どうもいまの政治は強い者を助ける政治だというような御印象のお話でございますが、決してそうじゃないんです。少なくとも、福田政治というものは、これはもう弱きを助け強きを抑える、これは私も一片の任侠の血がたぎっているわけですから、そんなようなことは絶対にありませんから、その辺は御安心を願いたいと思います。  まあ、しかし、政治としますと、いま一番当面する問題は何だと、こう言いますると、これは不況を克服することです。この不況の克服、これは何をねらいとするかと言えば、これはもう一般国民が生活に安心してその日その日を送り得るという状態にしたいと、こういうことなんです。そういう過程でいろいろの施策が出てきます。出てきますが、窮極の目的はそこにあるんだということだけはお忘れなく、ぜひよろしくお願い申し上げます。
  115. 山田勇

    ○山田勇君 続いてもう一つ総理質問をいたしますが、経済大国とか大幅な貿易収支の黒字で世界じゅうから非難を受けているような昨今の日本の状態ですが、私は、先日、ある新聞で、スウェーデンの国際経済開発協力相が、国連総会第二委員会で、スウェーデン政府は最貧国すなわち貧しい国に対して、同国が持っているすべての政府借款を帳消しにするよう議会に承認を求めるという態度を明らかにしたとあるのを読みましたが、わが国も、この際、率先して貧しい国々に対しての借款供与を帳消しにすることを表明してはどうでしょうか。最貧国とは、産油国を除く途上国一般を指すと見られると報じておりましたが、日本政府は、これらの国々に対する借款は大体どのくらいになっているのか、わかっておればあわせてお答えをいただきたいと思います。
  116. 鳩山威一郎

    国務大臣鳩山威一郎君) スウェーデンの経済協力大臣が国連総会第二委員会におきまして演説をいたしまして、その中で、いま御指摘のような、油を出さない最貧国に対しまして、公的債務約二億ドルでありますけれども、これを帳消しにするという議会の承認をこれから求めたいという趣旨のスピーチをいたしたのでございます。  この問題は大変経過がございまして、いわゆる南北問題の協議の場におきまして、あるいは国際経済協力会議、あるいはDAC、国連貿易開発会議等でずっと交渉のあった問題でございまして、途上国側といたしまして、この累積債務の問題、これに対しまして、一律的に最貧国に対しましては公的債務を棒引きにする、また、それ以外の途上国に対しまして、民間債務等含めまして延べ払いの措置をとるというような要求があったわけでございます。これにつきまして折衝が続けられておりますけれども、主要国の考え方は、一律的な措置をとるということにつきましては反対の立場をとっておりまして、むしろ困った国に対しましてはケース・バイ・ケースで対処をしていくべきだと、こういう態度をとっており、わが国も同じような態度をとっておるわけでございます。  公的債務だけで、開発途上国全体に対しまして、昨年一九七五年の末しかありませんが、これは千七百三十九億ドルになっておりまして、その中で最貧国に対してどれだけあるかということにつきまして、いま定か——正確な数字を持ち合わせておりません。しかし、経過としてそのようなことになっておりまして、この問題につきまして今後とも検討してまいりたいと考えております。
  117. 山田勇

    ○山田勇君 一つの国の中ででも富める者が貧しい者を救うというのが現代の政治哲学だと考えるのですが、幸運にも豊かな国に生まれ合わせた人々は、貧困と病苦に悩む世界の恵まれない人々に対して援助の手を差し伸べるのはもちろんのことであります。過去においても援助は続けられてきたわけですが、これらの債務の返済が現在では大きな負担になってきているのです。総理は、先般、ASEAN諸国を歴訪され、友好善隣外交を推進され、心と心の温かいつながりを強調されておりますが、途上国に対する借款の帳消しということも前向きに考えることが、南北問題ひいては世界の平和に大いに貢献することだと考えますが、総理は先ほどマニラにおいて苗木を植えた。しかし、その苗木にも水が必要だと思います。その水はそういうふうな形で借款等を最貧国に対して取り消す意思があるかないかをもう一度総理にお尋ねをしておきます。
  118. 福田赳夫

    国務大臣(福田赳夫君) 最貧国の債務をわが国としてこれを帳消しにする、これはちょっと聞こえはいいような感じがしますが、しかし、実際これを真剣に考えてみると、そう簡単なものじゃないんです。わが国は、とにかく、日、米、独、あるいは日、米、欧と言われるような、世界の経済に大きな影響を与えるような国であります。ですから、わが国がそういう国際問題について発言をする、姿勢を打ち出す、これはかなり慎重でなければならぬわけでございますが、さて、世界の先進諸国が一律に債権を棒引きにしましたということになったら、さあ次の借款を与えるというような国が非常に少なくなってくるのじゃないか、そういうふうな心配がまず出るわけであります。そういうこと一つを考えてみましても、さあ、かっこうはよろしゅうございますが、そのかっこういいという態度をとる前に、やっぱり先進国同士で歩調を一体どうするか、よほど固めなきゃならぬ、こういうふうに思います。まあ、いま外務大臣から申し上げましたように、この問題は、一律というと、いろいろのそういう弊害が出てくる。ですから、一つ一つの国、その国の実情に応じまして、そうしてその国に金銭上関係のある国々が相談いたしまして対策をとると、こういう方式をとっておるわけでありますが、しかし、棒引きというところまでいかぬでも、共同に行動が先進国間でできぬかと、こういうと、それはする道があるんです。あるいは緊急借款を与えましょうとか、これは現に進行をいたしております。いろいろな角度から、南北問題、これはひとり一国内の社会的問題というのみでなくて、国際社会における社会問題でありますから、これをどうするかということは、いま世界政治の最大の課題の一つであります。その中で、とにかく責任のある立場にあるわが日本としては、日本社会におけると同じような気持ちで、しかも実効が上がるという方式をどういうふうにするかということをいま先進諸国の方々との間で打ち合わせておると、できたものから逐次実行しておると、こういうことでございます。
  119. 山田勇

    ○山田勇君 大蔵大臣にお尋ねをいたします。  私は、かつて福田総理が大蔵大臣のころ、たしか昭和四十四年だったと思いますが、予算委員会で税金を国民がどうすれば喜んで納めるようになるのかというふうな質問をいたしました記憶があるのですが、日本国民である限り当然納税の義務があるわけですが、総理府が昭和四十八年に二十以上の男女三千人を対象に実施した調査によりますと、所得税など支払う際の実感として苦痛だと訴えた人が五一%もあったと発表されております。欧米先進国に比べて日本の税金はかなり安いとはされておりますが、それでも税金を払うのは苦痛と感じるのはなぜでしょうか、大蔵大臣にお尋ねをいたします。
  120. 坊秀男

    国務大臣坊秀男君) お答え申し上げます。  税金というものは、これはまあ国民である以上は納めなければならないということは、国民の皆さんがよく自覚していらっしゃる。ところが、税金は安ければ安いほどこれはもうありがたい、私もそう思っております。私自身もそう思っておりますが、しかしながら、いまの日本のいろいろな国民に対する福祉その他のサービスから考えまして、もうそれほどべらぼうに安いというわけにはまいらない。そこで、相当な、ある程度の負担の苦痛というものを感じるということは申すまでもないことでございますが、それをどんどん下げてしまうということは、これは許しません。そこで、まあ喜んで——喜んでというわけじゃありませんけれども、満足して税金を納めてもらうという一つの方法は、これらの税金が公平であるという観念を国民の皆さん方に理解をしてもらうということが非常に私は大事なことだと思います。そういうようなことで、いやしくも税制が公平であるということは、制度の上におきましてもこれを執行する上におきましても一番大事なことであろうと思います。  そういったような立場に立ちまして今日までずいぶん税制の公平化ということをやってまいりました。それは租税の特別措置というものがございますが、その特別措置というものは、これは税は納めてもらわなければならない、国の収入はそれでもって満たしていかなければならないけれども、しかしながら、ある政策があると、大事なそのときにおける政策が一つなり二つなりあると、その政策を着実に効果的に実現していくためには、その税が公正であるということに多少の犠牲を忍んでもらいまして、あるものに対しましては税を政策目的のために負担を軽からしめるというようなことが行われます。これを称して租税特別措置とかあるいは政策減税とかというふうに言っておりますが、そういうようなことが一たび始まりますと、その政策目的がすでに満たされた後にもそういったような税を犠牲にしたような措置が長く続いていく、これはもう惰性でもって続いていくわけですね。そういったような場合に、何としてでもそういったような措置は是正をしてそして公平化していかなければならないということで今日までずいぶんそれをやってまいっておりますが、今後もそういったような心構えでもって税の公平化ということをやっていかなければならないと、かように考えております。
  121. 山田勇

    ○山田勇君 政府税制調査会の中期答申は初めて増税の方向を打ち出しております。欧米に比べてかなり安いとされている日本の税金も、その見返りが少なければ決して安くありません。反対に、税が高くても、その見返りが国民一人一人に満足感を与えられれば高いとは思わないわけです。故佐藤総理が福祉元年を高らかに宣言されたのはつい先年のことですが、それが早くも福祉見直し、すなわち後退の論議に政府与党の間で起こっております。高福祉高負担とよく言われますが、これが額面どおりであれば国民は文句はありません。ところが、これが国民を欺く増税の隠れみのに使われてはわれわれ国民はかないません。重症心身障害者などの施設は、その需要の五割にも満たない数でございます。高齢化が進む老人対策など、本当に増税が必要なれば、まずその先に、いま焦点となっております医師優遇税制を初めとする税の不公平を是正し、歳出を徹底的にチェックしてむだを省くこと、国民への満足のいく見返りをすることなど、すでに論議が尽くされているかもしれませんが、要は、国民に理解とコンセンサスを求めるためにも、わかりやすくその展望を国民に示すことだと思いますが、大蔵大臣にお伺いいたします。特に、巷間伝えられるところによりますれば、大蔵大臣と医師会の会長さんとの不仲が言われております。その中で、医師優遇税制というものに対して国民は大臣に非常に期待をいたしておりますが、いかがですか。
  122. 坊秀男

    国務大臣坊秀男君) 先ほど申し上げましたとおり、税の公平ということは、どうしたってこれは一遍に完璧というわけには私はまいらないと思いますけれども、できるだけスピーディに公平化をやっていかなければならないと、かように考えておりますが、ただいま例にお引きになりました医師会長と私とが不仲とかなんとかというそういうことではございません。私は、できるだけ税の公平を期していくためには、いま指摘された社会保険診療報酬に対する税制というものも、今度の税制調査会におきましてもこれは是正すべきものであるというふうにおっしゃられておりますけれども、私はそれも尊重いたしまして慎重にこの解決をしてまいりたい。できるだけ早くその効果を出していきたい、慎重にやってまいりたいと思っております。
  123. 山田勇

    ○山田勇君 次に、説明員の方にお尋ねをいたします。専売公社の方、御苦労さんでございます。  専売公社は、十月の十七日、最近の為替相場の動向にかんがみ、輸入製造たばこの現行小売定価の見直しが適当であるとして、英国製紙巻きたばこを中心とする値下げをこの十一の一日から実施することを決定されました。このことは時宜を得た処置として喫煙者からは歓迎されることだと思いますが、大体で簡単でよろしゅうございますから、値下げの内容、経緯を御説明願いたいと思います。
  124. 齋藤欣一

    説明員(齋藤欣一君) 先生御指摘のとおり、十一月一日から、輸入たばこの一部のものを値下げし、ごく少数でございますが値上げするものもございますが、そういったことで小売定価の調整をいたすということになっております。輸入たばこの値段を決めます場合は、外国メーカーの売り値——公社か買いに行くと買い値になりますか、それがベースになりまして、あとは、国内にいろいろな経費もかかりますし、それから財政専売でございますので財政収入ということも考えなきゃいかぬ。その銘柄の品質なり、あるいは需要の動向、そういったようなものを総合勘案して決めておるわけでございます。今回の場合は、御承知のとおり、円高ということで、購入価格がその分下がってきているではないかと、その部分を消費者にお返しするという観点から検討をいたしたわけでございます。  そこで、ただ、現在の価格は、御案内かと存じますが、五十年の十二月に決めた値段でございます。したがいまして、二年近くたっております。その後、外国からの売り値というものも、外国でも、御承知のとおり、人件費も原料費も物価も上がっておりますので、売り値がだんだん高くなってまいっております。それと、円の為替が強くなってきていること等総合的に計算をいたしまして、そうしてイギリスの場合は、むろん契約価格も上がってきているわけですが、円高が大変強い。アメリカの場合は、円高もございましたけれども、契約価格の方の上がりが強くてなかなか円高によって吸収できなかったというふうなことで、イギリスものを中心といたしまして値下げをいたしました。現在、二十カ国から約百二十四の銘柄を輸入しておりますが、その中で、五十七銘柄を値下げ、それから九銘柄を値上げ、残りの五十八銘柄を据え置きと、そういうふうにした次第でございます。
  125. 山田勇

    ○山田勇君 公社もいろいろ工夫されて、うまいたばこを愛好者にということで、国産たばこにも外国産の葉をまぜられておるようですが、その割合は大体どのぐらいですか。特に輸入葉を一番たくさん混入しているたばこの品目を、一品目で結構ですから、挙げてください。
  126. 齋藤欣一

    説明員(齋藤欣一君) 現在、外国葉たばこと国産葉たばこの使用割合は、平均いたしまして、外国葉たばこの混入率が三割程度でございます。  それから混入の割合は銘柄によって違いますが、いま最高の銘柄とおっしゃいましたが、大変値段の高い、たとえばハイライトエキスポートといったようなたばこは、正確な数字を覚えておりませんが、恐らく六割から七割程度の外国葉を混入していると思います。
  127. 山田勇

    ○山田勇君 ライセンスという言葉がありますが、ライセンスというのはいわゆる輸入葉を使って五品目ぐらいですかつくっているたばこがありますが、これはどうして値下げの対象にならなかったんですか。そのライセンスという言葉もちょっと説明していただきたいと思います。
  128. 齋藤欣一

    説明員(齋藤欣一君) ライセンスと申しますのは、簡単に申しますと、外国のたばこ会社のブランドの名前というものを使うことを公社は許諾を受ける。したがいまして、公社で、外国で出しておりますブランドを自分でつくって売るということでございます。現在四つの銘柄を出しております。これは名前を外国のものを使うことを許されているということでございまして、確かに外国名ではございますけれども、製品としては国内製品でございます。したがいまして、今回の措置と、要するに為替という関係から起こってまいります措置には該当しない。国内製品であるという意味におきましては、たとえば私たちの売っておりますセブンスターとかチェリーとかいうものと全く同じでございます。
  129. 山田勇

    ○山田勇君 外国の葉を輸入する場合は、ドル建てでお買いになっておりますか。
  130. 齋藤欣一

    説明員(齋藤欣一君) これは相手国によって通貨はそれぞれ違うわけでございますけれども、大部分はドル建てでございます。場合によってポンド建てを輸入する場合もございます。
  131. 山田勇

    ○山田勇君 これを輸入葉をドル建てで買っているということになれば、当然円高の中で為替差益の問題が出てきます。ということになれば、先ほど副総裁がおっしゃったように、国内品目のたばこの中にも、五〇%、平均したら三〇%混入してたばこをつくっているということになれば、当然その為替差益の問題からいきますと、国内のたばこも値下げをしてもいいのではないかというふうに思うのですが、いかがですか。
  132. 齋藤欣一

    説明員(齋藤欣一君) 確かに、先生がおっしゃいますように、その点だけから考えますと、輸入葉を安く買えるということでこれはコストを減らすという方向に働くわけでございます。御案内かと思いますが、葉たばこの場合は、購入いたしましてから二年間貯蔵いたしまして、実際に使いますのは二年後でございます。その間のいろいろな変動もございますし、それからもう一つは、さっき申し上げましたように、その点につきましては確かにコストの引き下げということになりますけれども、ほかの要因——国内産葉は、これも御案内かと思いますが、大変な勢いでとにかく値段が上がってきております。そのほかのいろいろな紙でございますとかを初めとする材料費、人件費も当然上がってきておる。そういった、上がるものもあれば下がるものもあるという中で、専売公社はできるだけ値上げをしないようにということで努力をしているということでございまして、御質問の点に限れば先生のおっしゃるとおりでございますけれども、いろいろな要因があるということを御承知いただきたいと思います。
  133. 山田勇

    ○山田勇君 最後にもう一点だけお尋ねしますが、しかし、こういう世界情勢の円高の中で今後とも輸入葉は続けていくわけですが、その中で、これだけの円高が続くということになれば、今後ともそういう問題国内品目について値下げということは絶対に公社としては考えられませんか、それが一点。  もう一点お尋ねしておきますが、紙巻きたばこには注意事項が書いてありますが、パイプたばこには注意事項は書いておりません。それはどうしてですか。
  134. 齋藤欣一

    説明員(齋藤欣一君) 国内たばこの定価につきましてどうするかということは、これは大変大きな問題でございます。現在、さっき申し上げましたように、三割程度の外国葉を輸入しておりますが、これが相当安くなりましても、なかなか国内の一般定価を下げるというふうなことには、先ほど申し上げましたようなほかの要素ということとの関連におきましてむずかしいのではないかというふうに考えております。  それからもう一つ質問のございましたパイプたばこには注意表示はしてないではないかと。確かにそうでございます。恐らく外国におきましてもパイプたばこに注意表示をしておる例はないかと思っております。これは一つは沿革的なものがございまして、十数年前昭和三十七年にイギリスのロンドン王立医師協会というのが「紙巻きたばこと肺がんその他との関係」というものを公にいたしましてからこの問題が大変世界的に注目を集めるようになったわけでございますが、その後、WHOの勧告などを見ましても、議論は紙巻きたばこということが中心になっておりまして、パイプたばこは話題になっていない、そういった沿革的な理由がございます。恐らく、その基礎にございますのは、いろいろな研究の結果、紙巻きたばこの方がパイプたばこよりも健康に対する影響は多いというふうなそういったデータに基づいてそういうことになっているのではないかというふうに思っております。
  135. 山田勇

    ○山田勇君 そうしますと、ちょっと次の問題にも関連があるのでもう一点公社の方にお尋ねをしておきますが、そうしますと、公社としては、紙巻きたばこの紙に発がん性のそういう因果関係があるというふうに受けとめているわけですか、公社の方としましては。
  136. 齋藤欣一

    説明員(齋藤欣一君) 公社といたしまして、一体喫煙が健康にどんな影響があるかということについては、権威をもってお答えをするような立場にございません。ただ、社会的に大変問題になつておりますし、それから喫煙者の方々が大変気になさるというふうなこともございますので、私たちなりにいろいろ研究もしておるわけでございますが、したがいまして、ただいま御質問の紙巻きたばこの紙が悪いのではないか、こういった議論が一時十年ばかり前に外国でもございました。しかし、一体果たしてそういうことであるのかどうかということについて、そうであるとかないとかというふうにお答えをするだけのデータを持ち合わしておりません。  付言して申し上げますと、シガレット——紙巻きたばこの煙とパイプたばこの煙とは違うようでございます。紙巻きたばこの煙は、酸性で、吸入しやすい、肺の中に入れやすい。しかし、パイプたばこの煙は、アルカリ性で入れにくいと、そういったことから違いが出てくるのではないかといったような議論もございました。これも別に公社として権威をもってそうだとかそうでないとかいうふうにお答えするような、そういう権威というものを持ち合わしているわけではございません。
  137. 山田勇

    ○山田勇君 公社の方、結構です。
  138. 鍋島直紹

    委員長鍋島直紹君) 齋藤副総裁、御退席を願いまして結構です。御苦労様でした。
  139. 山田勇

    ○山田勇君 最近の新聞、週刊誌などにマリファナの問題が大きく取り上げられておりますが、多数の芸能人などの検挙で社会的にもいろいろと論議を呼んでおります。実際には、ごく普通の職業の人、学生、女性、家庭の主婦の中にまで吸煙者は広がっておると言われておりますが、実態を厚生省の方ではどうつかんでおられるでしょうか。
  140. 中野徹雄

    政府委員(中野徹雄君) お答え申し上げます。  マリファナの事犯は最近顕著に増加の趨勢にございますが、その実態につきましては、主として先生御承知のとおりの把握できておりますのは芸能関係等を中心するものでございます。
  141. 山田勇

    ○山田勇君 私は、マリファナを吸った人々は、案外法を犯した罪の意識が少ないのではないかと思います。が、国家的な超法規の問題は別にして、法律がそこにある限り、当局としては取り締まるのが当然であると考えるのですが、いろいろな文献などを見ますと、アメリカ等では相当にマリファナに対する考え方が日本と違うのに驚きます。アメリカでは、マリファナ経験者が三千六百万人、常用者が国民の一割の二千二百万人、カーターやフォード大統領の子息たちも経験者だと。また、マリファナの害は酒たばこ並み、ないしそれ以下とか。アメリカ厚生教育省の年次報告は、「コーヒー、たばこと並んで国民生活の本格的一部になってきた」と述べています。私自身はたばこを少し吸う程度で、酒は飲みませんから、別に酒、たばこが人生になくてもそうさびしいとは思いませんが、酒やたばこが多くの人々から愛されるのは、害があるとわかっていても、人間は、時として気持ちを変えたい、心の憂さを晴らしたいということを考えるからでしょうが、マリファナもそんなものの一つという軽い気持ちで吸う人がふえているのではないでしょうか。  わが国の麻薬取り締まりはアヘンから始まったとされております。アヘンはその麻痺作用によって快感を得られますが、中毒に陥りやすく、常用すると心身を害し、ついには廃人になります。明治三十年に阿片法が制定されておりますが、大正時代に入って麻薬の種類が増大しましたが、麻薬の取締法規はその吸食によって害される公衆の健康を保護することを目的としています。大麻取締法も同じ目的で制定されているわけです。したがって、最近のように、さきに述べましたような無害論的な傾向に対しては、当局としては積極的にその害悪の大きいことを国民にPRしなければならないと思います。酒やたばことは基本的に違うということをはっきりさせなければいけないと思います。何かにつけてアメリカに追従することの好きな日本ですが、この問題についてはっきりと一線を画するお考えかどうか、大臣にお尋ねをいたします。
  142. 渡辺美智雄

    国務大臣渡辺美智雄君) 大麻の害につきましては、世界的に評価をされているものは、一九七一年に世界保健機関の依存性薬物専門家委員会、及び、一九七二年にアメリカ合衆国の大麻及び薬物乱用委員会というところで行ったわけです。それらによりますというと、少量の使用の場合でも、知覚、感覚の変化、あるいは陶酔感を経験する、こういうような状況になる。多量に使用した場合では、通常、急性中毒症状、こういうふうなことに陥いりやすい。しばしば幻覚、妄想などを伴うことが明らかにされておるわけであります。また、長期大量使用の場合には精神依存を形成すると、こういうことが言われておって、いままでそういうようなことが言われております以上、われわれといたしましては、やはり大麻等取り締まり、マリファナの取り締まりというものは徹底的にやる必要がある。アメリカでは、あなたからおっしゃったように、確かに、多少、個人使用、所持その他についてルーズな点もあるようでございますが、日本とアメリカは全然違うのであります。だから、日本は日本らしく、最近新聞を見ておわかりのように、厚生省といたしましては警察その他の関係機関と連絡をとりながら一掃を図っているところでございます。
  143. 山田勇

    ○山田勇君 局長、お尋ねしますが、この大麻についてアメリカの調査を行われたと思うのですが、どの程度——いま大臣と私たちか持っている資料との食い違いがちょっとあるのですが、局長、どの程度アメリカの件について調査なさったですか。
  144. 中野徹雄

    政府委員(中野徹雄君) お答え申し上げます。  先生御指摘のとおりに、わが国におきますマリファナの議論の一つの焦点になっておりますものが、アメリカにおける大麻の扱いでございます。実は、大臣から御答弁申し上げましたように、麻薬大麻覚せい剤などは、国際的にすでにその害というものははっきり権威のもとに認められているわけでございまして、また、この取り締まりのための条約もございます。アメリカは現にそれに批准をいたしております。わが国も批准をいたしておるわけですが、その中で、アメリカのみが非常に変わった大麻の取り扱いをしているわけでございます。  大麻は、世界的に見ますと、中近東地域、あるいはインドの一部など、非常に貧しい地域にその使用が蔓延しているわけでございますが、先進国といたしましては、アメリカが、先生御指摘のように、非常に多数の常用者、経験者を持っております。そのことが実はわが国の国内でも非常に大きな誤解を招いておりまして、これは大麻の害が少ないからたとえば酒とたばこと同じように扱っていいのではないかという議論を生むもとになっております。しかし、この件についての政府の見解は、これはアメリカが余りにも大麻の使用者が多くなった。先生御承知のとおりに、一九六〇年代の終わりの主としてベトナム戦争の影響で起きたいろいろな社会的な変化の際に蔓延し始めたものでございまして、現に日本にも流入いたしましたのはベトナム帰休兵の手を通じてでございます。これが余りにも蔓延したために、すでにもうこれを処罰の対象にするということができないというのが実態のように思われます。そのために、私は、実は大臣の御指示もございましたので、アメリカ司法省の在日の担当官に面談をいたしましてその点の確認をいたしました。その担当官の説によりますと、もうアメリカではたとえばヘロインの常用者が四十万人というふうに言われておりますが、大麻については先生御指摘のような千万台の常用者がおるわけでございます。これはもう時すでに遅く、いまさらこれを取り締まることは不可能になっている、個々人を処罰するということが不可能になっているということでございまして、その担当者の見解は、日本のわれわれの見解と全く同じでございました。  なお、つけ加えますと、その結果、現在アメリカのいわゆる若者たち、ヤンガー・ゼネレーションはマリファナに相当程度の耐性が、習慣性が生じておりまして、その使用量が急速にレベルが上がりつつあるということが非常に心配されているということを申しておりました。  日本の場合につきましてその担当官の発言をここで御紹介いたしますと、日本でも現在異常な勢いで覚せい剤あるいは大麻等の常用者がふえつつあるわけでございますが、この状況はちょうどアメリカのいまから十年ぐらい前に見られた状況と全く同じであって、いまこれに対する急速な対応策を講じない限り、日本も手おくれになるのじゃないかということを申しておりまして、約三年たてば、日本はこのままでいけば麻薬に関してあるいは覚せい剤等に関しまして手おくれになる、アメリカと同じような状況になるだろう。さらに、これに直接間接に先生御承知のように暴力団が絡んでおりますので、アメリカの治安の状況が悪いことはよく知られておるわけでございますが、今後このまま推移すれば三年ぐらいでそういう状況になるだろうということを申しておりました。  以上でございます。
  145. 山田勇

    ○山田勇君 捜査の状況はどうなんですか、厚生省麻薬取締官の方の。
  146. 中野徹雄

    政府委員(中野徹雄君) 御承知のように、麻薬関係あるいは覚せい剤関係の捜査は、警察及び厚生省に所属いたしますところの麻薬取締官事務所が扱っております。麻薬取締官事務所は全国八カ所にございましてブロック別に置かれておりまして、ここにいま約百七十名の麻薬取締官が配置されておりますが、この取り締まり状況は、正直申し上げまして当方の麻薬取締官事務所は薬そのものの専門家でかつ司法警察職員という形になっておりますので、もちろんそれなりに努力をし相当の成果を上げているというふうに私は解釈いたしておりますけれども、たとえば暴力事犯等に関係いたしますところの覚せい剤につきましては、これは主として警察のお力でやっていただかないととても当方の手が出ない、かような状況にございます。
  147. 山田勇

    ○山田勇君 これは寄付行為の問題でありますので自治大臣にお尋ねをいたします。  私は、今回の参院選挙の後、ある個人の方から当選のお祝いとして二十万の献金を申し受けたわけですが、たまたま選挙では私は余りお金を使いませんでしたので、さしあたって資金の必要もなくお返ししようと考えたのですが、せっかくの志を無にするのもどうかと思い、ありがたくお受けしまして、この金を何か有益なことに使いたいと考えました。選挙区における寄付行為が禁止されているということはもちろん知っておりましたので、国連大学が資金不足に悩んでいるということをちょっと聞いておりましたので、ここなら国際機関であるのでまあ大丈夫だろうと考え、先方に連絡し献金をしたのですが、念のために自治省に問い合わせたところ、国連大学は東京に所在しているので違法になるということで、せっかく国連大学の方に喜んでいただいたわけですが、結局、目的を達することができなかったわけです。私はこれはどうも納得がいかないので、いろいろ調べもし、人の意見も聞いたのですが、候補者などの行う寄付を全面的と言えるほどに禁止した現在あります公職選挙法第百九十九条の二は厳し過ぎるのではないか。選挙に関すると否とにかかわらず寄付を禁止しているのは、善意の寄付行為を違法とする現行選挙法を何らかの形で改正しなければならないと思うのですが、もちろんこれは公選法の改正が論議された過程で論議は十分尽くされたこととは思いますが、この問題について自治大臣に御所見を伺いたいと思います。
  148. 小川平二

    国務大臣小川平二君) 公職の候補者等が選挙区内の者に対してなしまする寄付につきましては、従来は選挙に関してなされるものだけを禁止しておったわけでございますが、各種の名目で選挙地盤の培養のための寄付がなされる、そしてこのことが選挙に金のかかる大きな原因になっておりまするので、一昨年の改正で、親族に対する寄付等を除きまするほか、一律にこれを禁止することにいたしたわけでございます。こういう考え方は、第五次の選挙制度審議会の答申にも述べられておるわけでございます。  いま、善意の寄付だけは例外的な扱いをすべしという御意見かと存じます。この点につきましては法律改正に際していろいろ議論があったわけでございまして、およそ寄付と名のつくものを全部禁止するということで一体社会人として通用するのか、社会生活ができるのかというような御意見もあったわけでございますが、先生が国連大学に寄付をなさいまする場合、何人も善意を疑う者はないわけでございまするけれども、例外を認めますると、これが善意の寄付、つまり選挙を意識せざる寄付であるか、あるいは選挙のための寄付であるのか、これを判別するための客観的な基準を設けるということは不可能でございます。例外を認めるということになりますると、結局、公職選挙法が改正前の姿に戻らざるを得ません。せっかく一昨年慎重審議の結果改正をしたわけでございますから、御理解をいただいて御協力を願いたい、こう考えておるわけでございます。
  149. 山田勇

    ○山田勇君 ちょっと時間がございませんのでテンポを上げて質疑をしたいと思いますが、この間大阪で聴覚障害者の全国大会が開かれました。これは厚生大臣も文部大臣も協賛ということで賞が出ておりました。そこへ仮に私が行って、そういう人たちと一緒にコーラの一杯でも、コーヒーの一杯でも飲もうとか、そういうことは絶対できないわけです。これ自体がいまの寄付行為になってしまいます。まあ行ってあいさつする程度で終わるのですが、本当の善意として、一生懸命野球を身障の方がやっておられる、まあコーラの一杯でも飲んで元気をつけてがんばりましょうと言いたいのですが、それすらやれない。たとえば、今回の選挙において私に善意で非常に協力をなさった方が先日亡くなられた。しかし、それの香典も花束も弔電も贈ることができない。ですから、これは金絡みですからね、自治大臣。たとえば限度として年額百万なら百万その意思があればそういう形で寄付をするというふうなことをできるようにもう一度検討できませんでしょうか。
  150. 小川平二

    国務大臣小川平二君) まあ法律を改正いたしました趣旨にかんがみまして、たとえ一定の限度を設けるにいたしましても、御提案のようにするについては、これは問題があろうと存じます。この場でお約束はいたしかねる問題でございます。
  151. 山田勇

    ○山田勇君 これは本当はNHKの方にお聞きする問題とは思いますが、放送法との関係もあってむずかしいかもしれませんが、参考人の制限等もございましたのでこれは郵政大臣にお尋ねをいたしたいと思います。  先ほど申し上げましたように、私は聴覚障害者の方たちからよく陳情を受けるのですが、せっかくテレビを見ていても、大事なこと、肝心なところがわからないことが多くて困ると。たとえば台風接近の緊急情報などの際でも、見ていても、アナウンサーの言っていることがわからない、せめてテレビの画面に緊急放送的なものに対してはテロップ、いわゆる字幕などを入れてもらえないかということで、これは技術的にもむずかしい問題もありましょうし、放送法等もございましてむずかしいでしょうが、郵政大臣としては、こういうふうな形で何かこれにいい考えがないかどうか、ひとつお聞かせを願いたいと思います。
  152. 小宮山重四郎

    国務大臣小宮山重四郎君) 大変いいアイデアでございます。私自身もそういうことを考えたことはございますけれども、先生御承知のとおり、放送法第三条にございますように、法律の権限によらざれば何人も番組に対しての干渉、規制ができませんので、先生のおっしゃいました発言をNHK、民放に伝えておくということでお答えにさしていただきたいと思います。
  153. 山田勇

    ○山田勇君 もう一つ、これは郵政関係ですが、電話のことなんですが、やはり耳の聞こえない方は、電話をするとき非常に手間と時間がかかるわけです。家の中で手話で通じて、また手話で答えてそれを言葉にするというふうなことで非常に電話料金が高くつくのですが、国の方として、電話料金の割引とか、基本料金の半額とか、そういうふうなことは考えていただけないでしょうか。
  154. 小宮山重四郎

    国務大臣小宮山重四郎君) 福祉の寝たきり老人等については特別な優遇措置がございますけれども、実際通話者が聾唖者であるかどうかということの判断が大変しにくうございます。この点についても、今後研究課題として研究さしていただきたいと思います。
  155. 山田勇

    ○山田勇君 大臣、自治体では、基本料金の半額自治体負担というふうなことをやっている自治体もあるのですよ。ですから、実際に厚生省と連絡、をとって、現在の聴覚障害者の実態を把握して個別に調査すれば、こういうのはうその申告をする人なんかないのです。だから、そういう点において非常に電話料金が高くつくということですから、これは通話料金をまけろということはちょっと問題があるわけです。ビジネスに使ったりいろいろですが、基本料金はせめて半額ぐらいまけていただけないですかどうですか。
  156. 小宮山重四郎

    国務大臣小宮山重四郎君) 厚生省、電電公社等とも話し合って、その結果、御報告申し上げさしていただきたいと思います。
  157. 山田勇

    ○山田勇君 時間が来ました。総理、いまるる私が身体障害者の問題についてお尋ねをいたしました。そういう中で、いまの放送法一つ取り上げても、やはり編集権の侵害ということになって、何らかの形で少しいい方向に変えようとしても、そういう形で法律が壁になっているということが多々あります。いわゆる寄付行為についてもそうでございます。そこで、この中に地方区選出の大臣方がおられますが、たとえば鳩山外務大臣なんて全国区候補者です。そうしますと、赤い羽根を胸に先日つけておられましたが、これは寄付行為になりますと、厳密に究極的に詰めていけば違法行為ということになるわけなんで、これはやはり善意という形の中でこういう法律が障害になっているという点があるので、総括的に、大臣、こういう問題について、これは総理一つの決断にもかかわることなんで、ひとつ御所見を伺いまして、私の質問を終わらしていただきたいと思います。
  158. 福田赳夫

    国務大臣(福田赳夫君) いろいろ具体的な問題につきまして御質問があり、それぞれ閣僚からお答えをしておりますが、とにかく、わが福田内閣は、弱きを助け、強きを抑える、この精神でやってまいります。
  159. 渡辺美智雄

    国務大臣渡辺美智雄君) 赤い羽根は寄付行為になりませんから、ぜひともひとつ議員さんは率先して共同募金に御参加をいただきます。
  160. 鍋島直紹

    委員長鍋島直紹君) 以上をもちまして山田君の質疑は終了いたしました。(拍手)     —————————————
  161. 鍋島直紹

    委員長鍋島直紹君) 次に、柿沢弘治君の質疑を行います。柿沢君。
  162. 柿澤弘治

    ○柿沢弘治君 まず、私が御質問を申し上げる大臣以外の皆さんはぜひお役所にお帰りいただいてお仕事に専念をしていただく、もしくはほかの委員会出席する余地をつくりたいと思いますので、お願いを申し上げます。
  163. 鍋島直紹

    委員長鍋島直紹君) この点は、慣例によりまして、総括質問中は全大臣の出席を要することになっておりますので、御希望として承っておきます。
  164. 柿澤弘治

    ○柿沢弘治君 それでは、委員長の御裁断に従います。  私は、今日の日本の政治、そして現在の福田内閣の政治を特徴づけている幾つかの問題点、決断力の欠如ということについて、国民の中にある疑問を率直に問いただしたいと思います。  まず、景気対策についてでございます。  本年の一月の国会でも、新自由クラブは、もっと積極的な財政政策、景気政策をとらなければ景気の回復は不可能だと言ってまいりましたが、総理は六・七%の成長に自信を持っておられました。その後、一体何が変わったのですか、そしてどこの見通しが誤ったのか、御説明をいただきたいと思います。
  165. 福田赳夫

    国務大臣(福田赳夫君) まず、福田内閣が決断がどうも乏しいと、こういうお話ですが、そんなことはないんです。これは誤解であります。福田内閣は、悪いことにつきましては決断はなかなかいたしません。しかし、いいことに対しましては果敢な決断をする、このように御承知を願います。  それから景気問題ですが、これは一つはやっぱり構造不況業種の問題が非常に深刻な問題である。私どもが考えてきた以上にこれは重大な問題であるということをしみじみ考えるわけでありますが、景気は、まあ悪い悪いと言いましても総体といたしましてはとにかくほうっておいても五・九%成長、世界第一の水準の成長を実現を見ると、こういう状態です。そう大きく狂ってはいないんです。ただ、問題は、構造不況業種という問題がありまして、これが景気といいますか、人気といいますか、気分を非常に低迷さしておる。その辺についての見通しというか、それがまあ多少私ども甘かったかもしれません。その辺であって、全体のかじの取り方につきましては、私は、まずまずだれがやってもこれまでのことをやっておる、こういうふうに思っております。
  166. 柿澤弘治

    ○柿沢弘治君 総理から構造不況業種について見通しが甘かったというお話がございました。参議院選挙後の七月末の国会でも、早く不況対策の追加をという国民の声を聞きながら、八月の指標を見てからと言って総理は決断を延ばしてまいりました。そして三カ月空費をしてしまったわけですが、その三カ月の間に、総理は、日銀の短期観測以下どんな指標をごらんになり、どういう御判断を下したのでしょうか。七月に判断をしていればもっと有効な対策がとれたと私どもは考えますが、いかがでございますか。
  167. 福田赳夫

    国務大臣(福田赳夫君) これは、日銀の短期観測もあるし、また経済企画庁を中心とするもろもろの経済の動き、とにかくありとあらゆる捕捉し得る資料というものは全部見ている。そして、今度、打つ対策というものが誤りがない、これを期したわけです。まあ新自由クラブの方では公債を幾らでも出せというようなお気持ちのようでありますが、それは、もう公債をうんと出して、そして公共事業をどんどんやる、減税もやる、そういうことにしたら、景気はすぐよくなります。しかし、その後一体どうなんだ。私どもは今日の状態だけ考えているわけじゃないんです。来年のことも再来年のことも未来永遠の日本国のことを考えているんです。そう目先にとらわれた施策はできない。慎重な配慮をして最善の策をとったと、こういうことであります。
  168. 柿澤弘治

    ○柿沢弘治君 それでは伺いますが、きょうの新聞にも出ておりました。五十三年度予算では歳出の規模は三十三兆円になるだろう。これは見通しでございますが、その場合に、公債依存度の三〇%を守ることは不可能だというような判断が出てきております。来年も三〇%を死守するつもりですか。
  169. 坊秀男

    国務大臣坊秀男君) 先に私からお答え申します。  ただいま、五十三年度の予算につきましては、鋭意慎重に編成の作業を続けておるところでございます。柿沢議員は特によくその間の事情は御存じのことと思います。そこで、今日、私どもの考えといたしましては、非常に異常なる状態にある日本の国の財政を健全化していきたいという考えが先に立っております。そこで、私どもといたしましては、今日、どういう予算にしてどういう経費をどうするというところまで申し上げる段階に来ておりませんけれども、少なくとも公債依存度三〇%というものは何としてでもそれ以内に食いとめてまいりたいと、かように考えております。
  170. 柿澤弘治

    ○柿沢弘治君 私もぜひそう期待しておりますが、来年の初めの予算委員会でその結末がどうなるか、ぜひ見たいと思います。私はむずかしいと思います。今度の二兆円の事業規模の追加については私どもも賛成しております。しかし、それを年度の初めにやっておけば、年度間に十分な効果を発揮した。いまは十一月、もう半年以上たってしまっておりますから、算術的に小学生の計算でも、効果は半分以下になっていると思いますが、そう考えてよろしゅうございますか、総理
  171. 福田赳夫

    国務大臣(福田赳夫君) 年度初めには繰り上げ支給、繰り上げ実行と、こういうことをやっておりましたので、その補正が仮にありましても、なかった場合とそう私は大きくは違っておらぬと、こういうふうに思います。とにかく今度は二兆円の事業費を追加いたしまして六・七%成長を実現をする。ちょっと円高問題が水をかけた、これはあります。ありまするけれども、これには適当に対処いたしまして、そしてぜひこの政策目標、これは実現をしたい、これはかたくそういうふうに信じております。
  172. 柿澤弘治

    ○柿沢弘治君 景気対策は、後手後手に回っては十分な効果は発揮しない、総理御存じのとおりでございます。福田内閣の決断力の欠如で不況が長引いた、中小企業ほかの企業は苦しんでいる、そういうことにならないように私ども期待を申し上げます。  次は、行政改革の問題です。福田総理行政改革を主張されたとき、私たちは大多数の国民とともに歓迎をいたしました。それは、大赤字を抱えた財政の再建のために、税金のむだ遣いの節約がどうしても必要だと考えたからです。しかし、その後、人員の整理はやらないとおっしゃって、おやおやと思いました。そうして、最後は機構いじりだけに終わりそうになり、それも役所の抵抗でうやむやになってしまいました。もう行政整理や補助金の合理化はおやりにならないつもりでしょうか、総理のお考えを伺いたいと思います。
  173. 福田赳夫

    国務大臣(福田赳夫君) 結論的に申し上げますと、これはもうやってのけます。つまり、いま世の中は変わってきた。それに対しまして、政府も、あるいは企業も、また国民も、みんな変わった姿勢を示さなきゃならぬ。つまり、高度成長体制から安定成長体制へ国民のあらゆる分野で転換しなけりゃならぬ。これは、企業の方ではすでに本当にその真剣な努力が始まっておるんです。政府の方がのほほんとしておる、そういうわけにはまいりません。いま、出血させない、こういうようなお話でありますが、いまとにかく雇用問題、こういうことが重大な問題のとき、現実に血の出るような行政整理、これは私はすべきじゃないと思うんです。しかし、将来の財政膨張、あるいは将来の役所の定員の増加、そういうものにいま歯どめをしておくんだ、これは私は非常に大事なことであり、また意義の多いことだと、こういうふうに思いますが、そういう考え方をもちましての行政改革、これは断じてやります。
  174. 柿澤弘治

    ○柿沢弘治君 私たち新自由クラブは、簡素で効率の高い政府ということを言っております。その意味で、行政改革を思い切ってやるためには、仕事の見直しと整理が必要だと思います。その点で、役所だけでなく、与党の代議士さんまで巻き込んで行政改革つぶしをやっていると聞いておりますが、総理大臣の思い切った勇気ある決断を私たちは期待したいと思います。  次に、不公平税制の問題でございます。  税金の不公平に関する国民の不満は高まるばかりでございます。しかし、これについても政府は決断力の欠如を国民の前にさらけ出していると思います。先日、根本医療基本問題調査会長の医師会での発言がありました。その後総理のところへ釈明に行かれたそうでございますが、その真意を教えていただきたいと思います。
  175. 坊秀男

    国務大臣坊秀男君) 直接その問題のお答えにはならないかもしれませんけれども、背景を申し上げます。  先ほども申し上げましたとおり、租税が公平であるということはもう何よりも大事なことであります。これはもう釈迦に説法だと思いますけれども、制度の執行の面にも、これはもう国民に負担をかけるということでございまするから、これが公平であるということが信頼のもとになっている。信頼してこそ租税の執行ができると、こういうふうに私は考えております。さような意味におきまして、今日までも不公平税制ということにつきましては鋭意これを公平化するということに努めてまいりましたが、やはり今度の税制改正におきましても中期税制の答申をいただきましたが、その中にはやっぱり公正を期すべしというような提言がありますが、私はその提言を尊重いたしまして、できるだけ速やかにそういったようなことについての実現を期してまいりたいというふうに考えております。
  176. 柿澤弘治

    ○柿沢弘治君 できましたら私は総理からお伺いしたかったわけです。つまり、根本会長は是正はやらないと医師会で言ったと伝えられ、その後総理のところではやると言ったと伝えられている。どちらなのか、お伺いをしたいと思います。
  177. 福田赳夫

    国務大臣(福田赳夫君) 率直に申し上げますと、そのどちらでもないんです。この根本氏の話は、医師会の会合で話をしたと。それは、この中期答申を直ちに実行するということは考えておらぬと。まあ、この問題は、ひとり税制だけの問題ではない、これは医療費という問題にもかかわりのある問題なんです。幅広い見地から検討すると、そういうことを申し上げた、そういうことを私のところへ伝えに来たわけなんです。
  178. 柿澤弘治

    ○柿沢弘治君 ちょっとわかったようなわからない感じなんですが、続けます。  根本発言に対して、厚生大臣、大蔵大臣が閣議で反発をされたと伝えられております。近来まれに見る大変勇気のある発言だというふうに思いますが、両大臣のお考えを伺えれば幸いでございます。
  179. 坊秀男

    国務大臣坊秀男君) お答え申し上げますことは、これはダブるかもしれませんけれども、根本発言については私はお聞きも何にもしておりません。しかしながら、私は、先ほども申し上げましたとおり、税制の公平化というものはどうしてもできるだけ速やかにやらなければならないということを考えておる次第でございます。
  180. 渡辺美智雄

    国務大臣渡辺美智雄君) 私は医師会を預かる厚生省の大臣でございます。だが、この医師税制の問題は、非常に根っ子の深い、長い問題であります。世間では医師優遇税制なんと言っておりますが、これは間違いでありまして、社会診療報酬の特例措置と言うのが正しいわけです。私のところへもお医者さんから電話がありましたり、きのうも何十人かのお医者さんとゆうべほかの件で会ったんですが、大学病院とか国立とかたくさん勤めている勤務医の方が十三万のうち半分以上実はおるわけですから、その人たちがテレビや何かで医師優遇、医師優遇と言われるものだから、うちの子供がもう学校へ行くのいやだとか、そういうひけ目を感じると。それは、したがって、医師優遇税制ということは国会なんかでは使わないでもらいたいという話がありました。ああ、私もうっかりしておったけれども、本当にそうだなあというふうに実は思ったわけであります。したがって、社会診療報酬に対する課税の特例は、いま大蔵大臣が言ったようなことであって、私どももこれは合理化、公正化を図るということは結構なことでございますが、しかし、それにはそれなりの下地もいろいろあるわけであって、私は開業医は必ずしも優遇されていると思わないんですよ。たとえば、減価償却にいたしましても、一般の中小企業は割増制度が認められているが、開業医には認められておらないとか、あるいは病院や医療機械の耐用年数が、国際観光ホテルはともかく三十年とか三十五年という建物の耐用年数が、病院なら鉄筋コンクリートで五十年とかね。それから医療法人というものをいまから何十年か前にこしらえ出したんですが、この医療法人をつくるには医者三人以上でなきゃいかぬとか、病院がベッド数何十とかと決めていろいろ制限を加えて、それでその医療法人をそれでもつくったところが、今度は農協よりもどこよりも高く株式会社並みの税金ぶっかける。あるいは、相続税の問題や何かでもそういうような隘路をつくって合理化を片っ方でふさいでおいて、そうしてただ単に特例措置だけを取り上げて責めても、これはいろいろ問題があるのじゃないか。したがって、中小企業よりも減価償却制度の面で医者や何かが不遇だということになると言い分が出てくるわけですから、ですからそういうような問題を全部ひっくるめてこの問題は専門家会議等で速やかに解決さるべきものである。まして、直ちに廃止をしろなんということは、これは大げんかになっちゃいましてね。厚生省は武力は持っておらないんです、これは。厚生省は本当に平和を愛し、社会福祉を推進する役所でございますから、一方においては米ソにまさる大戦争だなんて言ってやられますと、医療行政を預かって医師会と真っ正面から衝突というようなわけにはなかなかいかない。したがって、私は、話し合いによっていろいろ総合的にこれは平和裏に解決を図っていただきたいと、こういうことでございます。
  181. 柿澤弘治

    ○柿沢弘治君 厚生省が平和的な国家であることわかりますけれども、そのために武力のある大臣がいらっしゃったんだと思います。  いま、医療法人の制度、減価償却の問題等、税制のほかの面とくるめて解決をしたいとお話がありましたが、その点について大蔵大臣はどうお考えになりますか。
  182. 坊秀男

    国務大臣坊秀男君) 税制の公平化ということを私は先ほど来申し上げておりますとおり、一番大事なことだと、かように考えております。その一番大事なことをやっていくためには、いろいろな方法もありましょうけれども、要するに、第一義的には税制の公平化ということを大蔵大臣としては期待しております。
  183. 柿澤弘治

    ○柿沢弘治君 どうもいまの大蔵大臣の答弁では私の質問に答えていないと思いますが、先に進みます。  私たちも診療報酬の問題とこの問題とが密接に絡み合っていることは認めます。しかし、診療報酬の改定についてのめどがないままにこのままずるずると延びていくということでは、もう国民の皆さん納得しないんじゃないだろうか、その意味では期限を切って診療報酬の改定及びこうした制度の是正にまじめに取り組むという姿勢が必要だと思いますが、厚生大臣いかがお考えでしょう。診療報酬はいつ改定されるつもりですか。
  184. 渡辺美智雄

    国務大臣渡辺美智雄君) 診療報酬につきましては、実は物価、賃金等の上昇というようなものを考えまして、必要に応じていままでも改定をしてきておるところでございます。約一年半程度未改定という状態でありまして、病院等でやはり医療従事者のベースアップやいろんな問題ございますから、私といたしましては、適正な改定はしなければなるまい、こう考えておるわけであります。したがって、これにつきましては、いままで中医協を開いて数回三者構成でいろいろ議論をやっておりまして、厚生省といたしましても、これは財源の問題とも絡む話でございますから、大蔵省ともよく相談をして、情勢が許すならば来月諮問をしたいと考えております。
  185. 柿澤弘治

    ○柿沢弘治君 そうした機会に具体的な措置をとられることを期待いたします。いま医療を担当する方々国民との間にある不信感、これは心ある医療関係者方々も一様に心を痛めておられることと思います。医療の健全な発展を確保しつつ、国民に納得できる解決策を見出すために政府の勇気ある決断を期待したいと思います。  次に、年金制度の改善について伺います。  いまやわが国でも本格的な老齢化社会を迎え、年金制度についての国民の関心は著しく高まっております。年金水準の引き上げについて厚生大臣のお考えをお聞きしたい。特に諸外国に比べてどうなっておりますか。
  186. 渡辺美智雄

    国務大臣渡辺美智雄君) 日本の年金制度は、概して申し上げますというと、諸外国と比べて私は遜色がないと、こういうように思っております。諸外国と比べてというお話でございますから、一、二例を申し上げますが、たとえば退職年金、つまり老齢年金月額で申しましても、イギリスの場合は三万五千六百円程度が平均であります。日本の場合は現在、去年の十二月現在で六万八千五百円ぐらいでございます。また、アメリカが六万六千円、スウェーデンが単身で五万七千円、夫婦で九万四千円、フランスが五万一千円、西ドイツが労働者年金七万五千円、職員年金が十二万一千円、こういうような支払い状況になっております。確かに西ドイツなどから比べると、日本の場合は六万八千円では低いではないかと、こういう御議論があります。しかし、わが方は男六十歳、女五十五歳から厚生年金は支給する。西ドイツの場合男も女も六十五歳というのが原則でございまして、六十五歳から支給するのと六十歳から支給するのでは、そのもらう先が五年違うわけですから、先が短いわけですからえらい影響力があるんです。したがって、そういう点もやはり全部考えていただかないと、外国と比べて日本が悪いとかどうとかという議論にはなかなかならない。  掛金の問題等につきましても、日本は千分の九十一という掛金、九・一%労使折半、ドイツは千分の百八十、つまり日本の約倍の掛金を実はしておるわけであります。こういうような点からも、給付費に対する補助は、日本は給付費の二〇%、ドイツの場合は一二ないし一五%、こういうようなことでございまして、やはりこういうようなふうに日本の年金というものは私はなかなかよくできておる、ただ未成熟であると、老齢化がまだそれだけ進んでいないというところから支給額も全体として低いわけでございますが、金額的にもあと十数年過ぎますとこれは大変莫大な金額になって、政府の財政というものは、相当大変なこれは負担になるということはいまから予測をしなければなるまいと、こう思っております。
  187. 柿澤弘治

    ○柿沢弘治君 わが国の拠出制年金の成熟後の水準が諸外国に比べて決して遜色ない、低くないということは私も認めます。しかし拠出制年金には、二十年ないし二十五年の掛け続けを必要とするわけでございます。そうしたもどかしさがある。拠出制年金の恩恵を受けられない現在高齢者の方々のために老齢福祉年金を現在の一万五千円からもう少し引き上げられないかと思いますが、どうでしょうか。
  188. 渡辺美智雄

    国務大臣渡辺美智雄君) 御承知のとおり、国民年金が後から追っかけてできたわけでございまして、そこから老齢福祉年金の話が出てきたわけであります。年金に入りたくてもすでにもう年をとっちゃっておる、そのためにさかのぼって年金になかなか入れない、そういうような高齢者の方に老齢福祉年金を差し上げることにいたしました。これも千円から出発いたしましてだんだん上げてまいりまして、三年ぐらい前には一遍に三千円ぐらい引き上げまして、ことしも一一・一%という引き上げをいたして、ほかの年金は大体九%前後です。それで一万五千円ということにしたわけです。午前中の質問にも二万円にしろ、そういう話もあったではないかという御議論がありますが、これは年金というのは、柿沢さんに私が説明するまでもなく、全部関連しているわけですね。これは拠出制の人よりも、拠出しないで政府からいただく福祉年金が高くなったりしたのではこれはアンバランスになるわけですよ。お金を掛けていた人よりも掛けない人が年金が高くなっちゃったと。現在は、五年拠出制年金が一万六千四百円程度です。十年が二万二千四百円程度です。したがって一万五千円のやつを仮に五千円上げるということは、二万円ということになれば、五年、十年の人はもっともっと上げるということになるし、十年を上げれば十一年も上げる、全部上げるということになりますから、ただ千円上げて六百億で済むという話じゃない。したがって五千円で五、六、三千億円あればいいのじゃないかという話でなくて、膨大な金額になるし、これが直ちにまた恩給等にも波及せざるを得ないという問題もございますから、大幅な引き上げということは言うべくして財源の問題と絡んでむずかしい。しかし政府といたしましてはできる限り今後も財政事情の許す限り改善に努力をしてまいりたいと思っております。
  189. 柿澤弘治

    ○柿沢弘治君 私たち新自由クラブは、いますぐもらえる年金として老齢福祉年金一人二万五千円、夫婦で五万円ということを提案しております。他の野党ではもっともっと高い数字ですが、これは数兆円の負担になるから容易ではない。しかし私どもの試算では、夫婦五万円、年間に約七千億の財源追加が必要と思います。これも少ない額ではありません。しかしお年寄りの老後の安心感を少しでもふやすために、それだけの追加の負担をいま働いている青壮年の人たちにお願いできないだろうかということを真剣に問いかけてみる、それが今日期待されている政治ではないかと考えますが、総理大臣のお考えはいかがでしょうか。
  190. 福田赳夫

    国務大臣(福田赳夫君) 年金制度としますと、これはもう相対的に見まして、わが国は世界で一級のところまでいったと思うのです。ただ問題は、いま御指摘の福祉年金、この問題がある。これは財政措置を多額に必要とするという問題でありまして、なかなか大幅な引き上げが困難でございますから、これも財政事情を見て、その許す限りにおいてできる限りの努力をしていく、こういう考えでございます。
  191. 柿澤弘治

    ○柿沢弘治君 私たちは行政改革や不公平税制の是正が実施された後、たとえば一般消費税を福祉税という形で年金の充実などのために使う税金にしてはどうかという提案をしております。大蔵大臣の御所見を伺いたいと思います。
  192. 坊秀男

    国務大臣坊秀男君) 新税と申しますか、一般消費税と申しますか、税制調査会の答申、これをやるかやらぬかというところまでいまいっておりません。しかしながら、どうしても将来を展望いたしてみますと、日本の国の税の中で、結局正常化していくためには、所得税を増税するか、あるいは消費税を増税するかという二途が残されておるように答申では言っておる。これをどうするかということについては、広く国民の皆さんの選択にお任せする。どうせやらにゃならないんだと、しかし、どういう方法でもって将来やっていくかということについては、国民の皆さんにひとつ選んでもらうということでございますが、仮にそれをやるといたしまして、一般消費税をいまおっしゃられたような目的的なものにしていくか、あるいはそうでなしに、歳入の中のあるいは直接税あるいは消費税といったようなものを二本の柱にしていくかといったようなことにつきましては、これからひとつ来るべき税制調査会にも諮りまして、そうして決めてまいりたいと、かように考えております。
  193. 柿澤弘治

    ○柿沢弘治君 私たちは、国民の皆さんもそれが本当に福祉のために使われるということであれば、何がしかの負担増も引き受けようと考えていただけるのではないかと実は期待をしております。政治にはそうした信頼感が必要だと思います。しかし政府のように、増税答申は税調のそれであって政府のものではない、ただ国民にお任せをしております、コンセンサスをということで投げ出してしまうのはいかにも腰がすわっていない。むしろ、まじめにそれを問いかけて、訴えをし議論をすることが必要ではないかと思いますが、いかがでございますか。
  194. 坊秀男

    国務大臣坊秀男君) いま申し上げましたことは国民にげたを預けると、そういうつもりでは毛頭ございません。やはり国民の負担をお願いをするという場合には、これはやっぱりいずれかをやらなければならない、あるいは両方ともチャンポンにやらなければならないといったようなことに遭遇いたしておるときに、これはどれがいいかというようなことにつきましては、国民にお任せというよりも、つまり日本は民主主義、議会主義でございますから、国会の諸先生方にお任せというよりもひとつ審議をしていただくということによって決定していきたいと、かように考えます。
  195. 柿澤弘治

    ○柿沢弘治君 いずれにせよ、時間切れで増税問題を国会へ持ってくるというようなことはしないでいただきたい。その意味では、政府与党の皆さんにももっと本腰で国民の皆さんとの対話をしていただきたいというふうに思います。  次に、ハイジャック事件に移ります。  私は、今回福田内閣のとった措置、赤軍派への素早い、かつ全面的な譲歩、旅券まで持たせてやるというおまけのついた譲歩を納得できないと考えている日本人の一人です。まず第一に、国内における法秩序の維持に重大な損害を与えたという点です。今回の釈放犯の中には、強盗致死も含めて殺人犯が三人います。大道寺あや子は、三菱重工爆破事件で八名を爆死させ百六十五名に傷害を負わせているのです。これら事件の被害者や亡くなられた方の御遺族の無念さを考えると、人の命は地球よりも重いなどという美辞麗句に逃げ込んでしまってよいのでしょうか。法の執行に責任を持つ政府が殺人犯の刑の執行の責任を中途で放棄したのでは、被害者や御遺族への責任を果たしたとは言えないでしょう。これら事件関係者に対して政府として謝罪もしくは遺憾の意を表する必要があると思いますが、法務大臣、いかが考えますか。
  196. 瀬戸山三男

    国務大臣瀬戸山三男君) 今度のハイジャック事件の解決のために、柿沢さんのおっしゃるとおり、現に重大な犯罪を犯して多くの生命を犠牲にし、また身体に傷害を及ぼしている犯罪人を、あるいは判決執行中、あるいは未決裁判中放したということは、そういう犯罪のために被害を受けられた、あるいは生命を失われた遺家族等これはもう理解に苦しむ気持ちであるということは、十分われわれも痛感をいたしております。ただ、いまあれには承服できないというお話でございましたが、御承知のような一連の犯罪行為の経過の中で、百数十名の乗客、乗員の生命を何とか救いたいものだと、しかも国外においての犯罪でありますからなかなか手の及ばないところにある。そういう際に、いわゆる法秩序の問題と、あるいはそういう被害者、遺家族等の心情と比べてみて、政府としてはそれこそ断腸の思いで決意をしたと、こういうことでありまして、申しわけないと言えばそれでございますが、そういう気持ちは、みんながそう思っておるわけでございます。  ただこの際、既決の犯罪の収容中の執行を放棄したわけではございません。なおこれによって一時裁判が停滞しておりますが、裁判権を失ったわけではございません。これはあくまでも可能な限り追及をして、執行すべきものは執行し、裁判によって処断すべきものは処断をする、こういう決意でおるわけでありますから、ひとつ御理解をいただきたいと思います。
  197. 柿澤弘治

    ○柿沢弘治君 被害者、御遺族の皆さんに対する総理のお気持ちも伺っておきたいと思います。
  198. 福田赳夫

    国務大臣(福田赳夫君) 私は、国会の本会議でも断腸の思いであると、こういうふうに申し上げましたが、そういう私の言葉、それはとにかく重要犯人を釈放すると、こういうようなことになると、やっぱりそれに関係した国民の一部の人、そういう人もいろいろな感触があるだろう、そういうことも配慮いたしまして、私は断腸の思いであると、こう申し上げておるわけであります。御了承を願います。
  199. 柿澤弘治

    ○柿沢弘治君 いずれにせよ殺人犯の釈放は国内テロリスト予備軍を勇気づけ、事件の再発を容易にし、結果として人命を軽視することになると思いますが、総理大臣、いかが思いますか。
  200. 福田赳夫

    国務大臣(福田赳夫君) 私は、人命も尊重され、法の権威も保たれる、これが一番いいと思うんです。さあ現実のケースケースに当たりまして、それはどういう処置をとるべきかと、こういう問題に当面したわけでありますが、あのときの私はケースのさばき方といたしましては、やっぱりあれでよかったと、こういうふうに思うんです。非常に残念なことである、これはもう断腸の思いでございまするけれども、しかし、あの措置自体としてはあれ以外になかったのじゃないか。あれが仮に間違って百五十人の人質が全部犠牲者になるというようなことを想像してみれば、これは私は日本の国民感情、これは私は私の措置を許さないと、こういうふうに思います。私は、その辺はドイツと大分わが日本というのは事情が違うところがあるのじゃないか、そういうふうに思いますが、まああなたはどういう感触を持つか知りませんけれども、あなたのお話を承っておりますと、百五十人なんか犠牲にしたっていいじゃないかと、法の権威を保てと、こういうお話ですが、私はその考え方はあの際にはとり得なかったと、こういうことを本当に心から思っておるわけであります。
  201. 柿澤弘治

    ○柿沢弘治君 私は、百五十人の人質の身を犠牲にしてもいいじゃないかということで申し上げているのではありません。そういうふうにいま総理は断定をされましたけれども、その点は若干行き過ぎだと思います。お取り消しをいただきたいと思います。
  202. 福田赳夫

    国務大臣(福田赳夫君) とにかく私は、人命も救われ尊重される、法の権威も保たれる、これが一番いいと思うんです。しかしあのダッカで、周囲はクーデターの騒ぎが始まっている、そういうさなかで、そんな繊細なみごとな曲芸というものはこれはできないです。私は、とにかくせっぱ詰まってきた、その瞬間において何をするかというと、やっぱり人命尊重、これをあの際としてはとらなきゃならなかったということでありまして、あなたが、それは百五十人なんか構わぬというようなことは意味しないんだということでありますれば、私の説に御賛同くださったんだと、そう理解いたします。
  203. 柿澤弘治

    ○柿沢弘治君 脱線することは私の本意ではありませんが、私も前のクアラルンプール事件のときに、官房長官の秘書官として対策本部の中で意思決定のメカニズムを見てまいりました。断腸の思いはわかりますけれども、もっとしっかりした判断というものが、意思決定のメカニズムがあっていいというのが私の実感からの言葉でございます。  その問題は終わりますが、第二は、テロリストに対する国際的な連帯の輪からわが国がいとも簡単に脱落して国際的な責任を放棄したということでございます。国際世論は、日本の対応策に厳しいというふうに新聞では見ておりますが、何かお調べになったことがあればお教えいただきたい。外務大臣にお願いいたします。
  204. 鳩山威一郎

    国務大臣鳩山威一郎君) 日航のハイジャック事件とルフトハンザの事件がつながりましたので、諸外国は公式には論評はいたしておりませんけれども、新聞等にはいろいろな批評が出ているわけであります。総じて言いまして、しかし日航機の場合の日本政府のとった措置につきまして、これは大変苦しい措置だったという、しかし何とかできなかったかとか、そういう、仮にあの際に大変危険な道をとれということは各国とも、ストレートにそういうような主張をしている国は私は見当たらない、しかしテロリストに対します国際的な危惧の念というものは大変主張をされておると、そういう感じでございます。
  205. 柿澤弘治

    ○柿沢弘治君 私もこうした問題について、一か八かというような決断はないと思います。その点では決して単純な議論をしているわけではありませんが、やはりこれからの国際協調、国際連帯ということを考えるともう少しほかに方法はなかったかというふうに考えます。ダッカ事件の際、政府はどことどこの国に犯人の受け入れを要請なさいましたか。官房長官にお答えをいただきたいと思います。
  206. 鳩山威一郎

    国務大臣鳩山威一郎君) 私から答えさしていただきますが、二十数カ国にわたって上空通過なり、あるいは給油のための着陸なり、あるいは最終的な受け入れなり、いろいろな折衝をいたしたわけでありますが、どことどこということは御勘弁いただきまして、大体におきまして中近東方面の諸国、まあ東南アジア辺も含めまして、それらの国々でございます。
  207. 柿澤弘治

    ○柿沢弘治君 犯人をぜひ受け入れてほしいとお願いした国に、今度は犯人の受け取りを拒否するような条約に入れと、入ってほしいというような矛盾した外交政策はとっておられないと思いますが、いかがでございますか。
  208. 鳩山威一郎

    国務大臣鳩山威一郎君) 日航機の場合に、犯人の受け入れ、着陸許可を交渉したわけでありますが、さればといって、これから今後ハイジャック事件を根絶したい、そのためにはいずれもこのヘーグ条約、東京あるいはモントリオールも含めまして、これらの条約に全世界の国が入ってもらうことが好ましいのでありまして、先般の、特に日本がアルジェリアと折衝したから、したがいまして今後日本は三条約につきまして、世界全体がまだ七十八カ国しか入っておりませんけれども、日本としてぜひ国連加盟国は一国も残さず加盟してもらいたい、そのような主張をするのに私どもはちゅうちょすることはない、そういう考えであります。
  209. 柿澤弘治

    ○柿沢弘治君 日本の要請に応じて条約に入った国には、今度また起こったときにぜひ受け入れてほしい、そちらも超法規的措置でということは絶対お願いしないと思いますが、そう考えてよろしゅうございますか。
  210. 鳩山威一郎

    国務大臣鳩山威一郎君) これからハイジャック事件を根絶しようという理想のもとに努力をいたしております。そういう意味で、二度とこのような事件が起こらないこと、そういうことを念じて努力をしておるわけであります。
  211. 柿澤弘治

    ○柿沢弘治君 いまのもお答えいただいたことになってないと思います。また多分超法規的措置をとろう、とる余地を残しておこうという御答弁だと思います。殺人犯を、クアラルンプール事件を含めて五名も相手国がいやがるのに無理に輸出した日本が、それらの国に犯人の受け取り拒否の条約に入れ、入らない国があるから起こるんだというのは、国際的に見て甘えの構造と言われても仕方がありません。私たちは、それでは国連でも国際社会でもイニシアチブをとる外交はできないと思います。総理大臣のお考えを伺います。
  212. 福田赳夫

    国務大臣(福田赳夫君) ああいう事件が起こってしまったものですから受け入れのお願いをしたのですよ。私どもは人命を本当に地球よりも重しと、こういうふうに見ておるのですから、それに万一のことがあってはならぬというのでお願いをした。今度は違うのです。そういう事件が起こらないようにしようじゃないかというお願いをするわけですから、どこに矛盾がありましょうか。私は堂々と、今回の事件で二十数カ国にいろいろ協力をお願いした、その国々に対しましても、この国際条約に入ってくださいというお願いをいたすつもりであります。
  213. 鳩山威一郎

    国務大臣鳩山威一郎君) ただいま福田総理からもお答えがありましたけれども、私どもの気持ちをそのように勝手に解釈されてもらっては困るのでありまして、ハイジャック事件というもの、これは西ドイツ政府といたしましても、あなたもヨーロッパにおられたから御存じと思いますが、大変いままで悩みに悩んできたわけであって、一九七〇年の初めのころはずいぶんつらいような処置をとってきたわけでありまして、今回のテロリストに対します西独政府の大変な、もうこれは戦争と考えなければいかぬ、いままでに大変悲惨な結果をずいぶんなめておるわけでありますから、そのようなことも十分考えていただきたい。日本といたしまして、これからもう一度超法規的な措置をとるというようなことは、現在そのようなことは全くないようにしなければならない、全く考えてはならない、このように御理解をいただきたいと思います。
  214. 柿澤弘治

    ○柿沢弘治君 そうしたことは一切考えていないというお答えと理解いたします。  いま外務大臣からもお話がありましたように、これからの問題は、犯人の要求がどんどんエスカレートをするという心配でございます。その点では西ドイツも最初は譲歩を重ねてきたが、ある段階で強行策に転ぜざるを得なかったというふうに聞いておりますが、西独関係の主なハイジャック事件に関して、犯人側の要求内容、西独政府の対応がわかりましたら教えていただきたいと思います。
  215. 鳩山威一郎

    国務大臣鳩山威一郎君) 詳細はまた事務当局から補足をさせますが、犯人の要求とその処理の関係で、特に西独政府は、特にミュンヘンオリンピック事件のときに、これは御承知のようにイスラエルにアラブゲリラがつかまっておる、その二百人のアラブゲリラを釈放しろという要求を出したのがミュンヘンオリンピックの事件である。このような要求が出て、イスラエル政府はこれはもう承知するわけにはいかぬ、断固拒絶をしたと、そのために悲惨な結果になったわけでありますけれども、人質はたしか九人だったと思いますが、これは全員射殺されざるを得なかったわけであります。したがいまして、ゲリラ側あるいはテロリスト側といたしましても、不法なエスカレートした要求を出した場合には、それを政府はのむわけにいかないという措置がとられることは、もうこれは常識だろうと思いまして、今後大変エスカレートした要求が出されるのではないかというようなこと、もしそのような、これは将来また再びこういう事件が起こっちゃ困りますけれども、そういう意味で過去の例を見ますと、そういう受け入れがたいような要求が出たときはもう断固処置せざるを得ない、そういう結果を来たすことは歴史の示しておるところであろうと思います。
  216. 宮澤泰

    政府委員(宮澤泰君) 西独航空機に対しますハイジャック事件は、最近のものを含めまして過去に主なものは二件ございますが、その間に同じくテロリストによりまして、これは航空機に対するハイジャックではございませんが、やはり誘拐事件、大使館襲撃事件と二、三ございますので、かいつまんで経過を御説明申し上げます。  最初に起こりましたものが七二年二月のものでございますが、これはカイロで裁判中のアラブゲリラ四人の釈放を要求いたしまして、ドイツ政府は、これに対しまして犯人側と交渉の上五百万ドル支払うということで人質を釈放せしめました。  次に、ミュンヘンオリンピック事件でございます。これはただいま大臣が御答弁になったところでございますが、イスラエル政府が犯人側の要求を拒否するという態度を西独側に伝えましたために、結局これは西独政府は犯人を射撃いたしまして、人質全員、犯人五人が死亡いたしまして、犯人三人が重傷を負って逮捕されました。  次は、七二年十月二十九日のやはりルフトハンザ機に対するハイジャック事件でございますが、これはミュンヘンオリンピック事件の犯人たるアラブゲリラ三人の釈放を要求いたしたのでございますが一これに対しまして西独政府は犯人側の要求どおり三人を釈放いたしました。  次は、七五年の二月二十七日、ローレンツというキリスト教民主同盟のベルリン支部長の誘拐事件でございますが、これに対しましては犯人側は、西独に拘留中のバーダー・マインホフ・グループ六人の釈放を要求いたしまして、西独政府はこれに対しまして犯人側の要求を入れまして、上記テロリスト集団の五人を釈放いたしました。  次は、七五年四月のストックホルム西独大使館襲撃事件でございますが、これは犯人側は西独内に抑留中のバーダー・マインホフ・グループ二十六人の釈放を要求いたしました。これに対しまして西独政府は犯人側の要求に応じないという方針をスウェーデン政府に通報いたしましたので、最終的にはスウェーデン警察と犯人側が激しい銃撃戦をいたしまして、犯人五人が逮捕され一人が死亡したわけでございます。ちなみに同大使館員二名が犯人により射殺されました。  その後、ブーバックという検事総長が殺害されました事件、それからドレスナー銀行頭取のポント氏が殺害されました事件、これは多分誘拐に失敗して殺害したのであろうと思われておりますが、この事件がございまして、その次が今回のシュライヤー西独使用者連盟会長の誘拐事件とルフトハンザのハイジャック事件でございます。これの結末については柿沢委員御承知のとおりでございます。  以上、通覧いたしますと、これは第三回政府のとった処置でございまして、また個々の事件につきまして、そのときどきの事情に応じまして対応策も違ったかと思いますので、断定的にただいま御質問に肯定的なお返事も申し上げられませんが、上記各事件の結果を時間系列的に見ますと、一九七〇年代の前半におきましては、やはり身代金の支払い、それから拘留中のテロリストの釈放といったように、犯人側の要求を入れた例が多うございましたが、一九七五年二月のただいまのローレンツ事件及びストックホルムのドイツ大使館襲撃事件の経験及びその後の殺害事件が二件ございました。これらを経まして、最近ではやはり西独政府も人質の生命確保にはもちろん努めながら、やはり社会秩序の維持及び法治主義の貫徹の立場から、犯人側の要求には断固として戦うという態度を固めているように思われます。
  217. 柿澤弘治

    ○柿沢弘治君 会田雄次さんの「決断の条件」という本がありますが、この冒頭で、「私たちは、殆んど決断や選択という能力を持たないのではないかと思うほど「優柔不断」な国民である。実業界や政治界でのトップたちのいわゆる一世一代の決断とかいわれる話を調べてみても、そこに真の決断は殆んど見られない。ほとんど各種各様の自然的、社会的、政治的、経済的、社内的、党派的状況に押され、それに順応しただけに過ぎぬ場合が殆んどである。」と書いております。私は二度あることが三度とならないように、しっかりとした対策と、それに対する事前の対応策の考慮を政府にお願いしたいと思います。  最後に、大震災対策の充実について伺います。  大震災対策も都市住民の安全保障に係る重大問題です。総理は世田谷の野沢に住んでおられますが、大震災が発生したときの避難場所がどこか御存じですか。
  218. 福田赳夫

    国務大臣(福田赳夫君) 私は駒沢公園に逃げます。
  219. 柿澤弘治

    ○柿沢弘治君 よく御存じでございます。国土庁長官はいかがでございましょう。
  220. 田澤吉郎

    国務大臣(田澤吉郎君) 私は赤坂議員宿舎におりますものですから、あの辺は非常に広うございますので、そんなに遠くへ避難しなくてもよろしいと考えております。
  221. 柿澤弘治

    ○柿沢弘治君 各大臣の避難場所を調べてみましたが、皆さん大変いいところに住んでおられて大体生き延びられるようですが、石田労働大臣、どちらか御存じでしょうか。
  222. 石田博英

    国務大臣(石田博英君) 私は生き残れない方でありまして、多摩川の巨人軍のグラウンドでございます。とても行けません。
  223. 柿澤弘治

    ○柿沢弘治君 何キロございますか。
  224. 石田博英

    国務大臣(石田博英君) 歩いたことはありませんけれども、六、七キロあるんじゃないかと思います。
  225. 柿澤弘治

    ○柿沢弘治君 労働大臣のお体なら大丈夫だと思いますが、三・三キロ、なかなか大変でございます。私も実は江東区のデルタ地帯、深川に住んでおりますが、夢の島まで二キロ余り、橋が五本もありまして、全部震災になったら落ちるというクラスCというものでございます。そのほかに八キロほど歩かないと避難場所に届かないというところもあって、いま東京に住んでいる多くの人たちは自分の命の不安にかられているのが現実でございます。そうした中で政治はいままでどれだけのことをしてきたんでしょうか。国土庁長官政府がいままでやってきた大震災対策をぜひお教えください。
  226. 田澤吉郎

    国務大臣(田澤吉郎君) お答えいたします。  御案内のように、首都圏での大きな地震というのは一九二三年の関東大震災なのでございます。それで、この大震災はマグニチュード七・九、震度六でございまして、この震災での死者が当時の資料によりますというと九万九千三百余名になっておるわけでございますが、地震で死亡した人というのは千人から千五百人なんですよ。あとの大部分は火災による死者なんでございまして、そういう点から考えますと、やはり地震が起きてから二分ないし五分というのがその地震を大きくするかしないかを決定する大きな時間なんでございます。ですから、やはり私たちはその間に防災活動を進めるということが一番大切である。また、できたら地震予知というものをより一層研究をいたしまして、天気予報のように確実なものにしていくことが災害を防止する面での一番大きい要素だと思いますので、そういう点を加味しながら昭和四十七年に中央防災会議が大都市震災対策推進要綱というものをつくりまして、一つは都市防災の強化、あるいはまた防災意識、防災体制の強化、あるいは地震予知というものを基本にしながら、具体的に、積極的にその対策を進めているというのが現状でございます。
  227. 柿澤弘治

    ○柿沢弘治君 国の防災対策予算は五十二年度四千三百八十二億。しかし、そのうち二千八百一億はいわゆる街路事業で、本来の意味で危険地域に投入されている予算は数百億にすぎません。これではとても地震には間に合わない。気象庁長官、最近における地震の発生の確率についてお伺いをいたします。
  228. 有住直介

    政府委員(有住直介君) お答えいたします。  地震発生の確率という御質問でございましたが、これははなはだ私ども残念に思っておりますけれども、まだ学問、技術が進歩しておりませんで、何割というふうなはっきりしたお答えできないのでございますが、大地震の起こりそうな地域があるかということについてお答えさせていただきたいと思います。  日本は全国どこでも地震に対して安全だというところはないのでございますけれども、広い地域に被害を及ぼすおそれのある大地震、それからまた、地震としては一回り小型だけれども人口密度の非常に大きい大都市で起こります、局部的な地震だけれど大被害を起こすというような地震、いわゆる直下型地震と言っておりますけれども、そういうものについて注目しておるわけでございます。歴史時代にさかのぼりまして、過去の地震の起こり方とか明治以来の観測というものに基づきまして、可能性のあるところ、大地震が起こる可能性のあるところ、それからまた直下地震が起こるようなところ、そういうものにつきましては、首都圏を含んでの南関東が指摘されております。東海地域が大地震、それから直下型としては南関東。  そういうことで、これらの地震の可能性の度合い、特に時間的にどのぐらい切迫しているかということを判断するためには各種の観測強化が大事でございまして、観測網から抜けるおそれがあってはいけませんので、極力観測強化をする。そういうことで関係機関の御協力のもとに、目下その両地域について観測強化と、それからデータの収集というものが進みつつあるわけでございますが、現在のところ大地震の切迫している徴候というものはあらわれておりません。けれども今後とも観測体制、常時の監視体制というものを整備して、大地震発生に関するより的確な情報を出していきたいというふうに努力していきたいと、こういうふうに思っておるわけでございます。
  229. 柿澤弘治

    ○柿沢弘治君 ぜひお願いをいたします。  よく引用される河角博士の六十九年周期説ですと、来年から準危険期に入ります。関東大震災並みの大地震が起こったときに首都圏、東京での物的、人的被害はどのくらい想定されますか。都防災会議、日本都市センターの報告書などがありますが、消防庁長官にお願いいたします。
  230. 林忠雄

    政府委員(林忠雄君) お答えいたします。  ただいま御指摘のありました想定を含めまして、いろいろな機関がいろいろな段階で想定をやっておりますけれども、実はこの地震の発生時期、規模、それからその日の気候、風速、風向、季節などによりまして、これらが変化いたします場合に非常に変化するものですから、現在、大体このぐらいの地震が関東地区に起こったときにこのぐらいという正確な数字はつかめておらないわけでございます。ただ関東大震災のときに比べての人口の密集度その他大変悪条件も増加しております。まあ防災建築がふえたというような好条件もございますけれども、さらに、それにも増してたくさんのガソリンスタンドとか、たくさんの車両ということで、これはもう相当大きな被害ということを考えて対策をしなければならない、こう考えておりまして、私ども消防庁といたしましては、これらのデータをそろえまして地方公共団体に提供いたしまして、地域防災会議をつくるためのそれぞれの地区の想定をやれるようにということで指導しております。
  231. 柿澤弘治

    ○柿沢弘治君 日本都市センターの想定ですと、これは消防庁の方々も入った作業でございますが、大体四、五十万の人が亡くなるということを言われております。米田滋さんの想定でも大体四十万から七十万、死者でございます。物的損害は二十一兆円という説、四十兆、五十兆という説がございますが、いずれにせよ、ただ東京の問題ではなくて日本の首都機能の壊滅、日本経済の壊滅状態をもたらすような大きな被害が起こると思います。その点で、東京都も自治体としてこれまでも努力されてきていると思いますが、国との協力がこれからも不可欠と思いますが、この点について参考人の御意見を伺いたいと思います。
  232. 有沢清一郎

    参考人有沢清一郎君) お答え申し上げます。  東京におきます政治、社会、経済等の諸機能の集中あるいは人口の集中等によります、これに対する震災対策といいますものは、全国的なレベルあるいは首都圏のレベルでも検討されなければならないという問題であろうかと思います。  まず、都はこれまで何をしてきたかということについてお答え申し上げます。  まず、現状について申し上げます。たとえば市街地の建物の不燃化率と申しますのは約二〇%でございます。危険物取扱所が約九万個所、区部でございますけれども、消防活動困難個所というのが約三七%を占めておる現況にございます。どれ一つとりましても、地震災害に対する東京のか弱さと申しますか、ひ弱さが露呈しておるものでございます。しかし都市に一〇〇%の安全性を求めることは、言うべくして現実には非常にむずかしい問題だろうかとも思います。都といたしましても、できる限りの安全を求める、これが行政の責任ではなかろうかと考えております。  次に、都のレベルでやっております震災対策といたしましては、ハード面の対策といたしまして、先ほども大臣に御質問いただいた避難場所の問題、避難道路の確保、あるいは御説の橋梁の安全確保の問題、あるいは江東防災六拠点の事業化、防災活動拠点の取得、市街地再開発都市事業の不燃化等を努力しておるものでございます。また、ソフト面の対策といたしましては、市民防災組織の確立、防災無線網などの情報連絡体制の整備、あるいは飲料水、食糧等の物資の確保等に努めてまいったわけでございます。特にハード面につきましては、御承知のように膨大な費用と長い年月がかかるものでございます。  そこで、東京都といたしましては、自治体なりにいろいろ努力をいたしておるところでございますけれども、残念ながら限界がございます。したがいまして、国への要望について三点ほど説明さしていただきたいと思います。  まず一つは、大都市問題の解決でございまして、これは先ほども申し上げましたように、都の過密問題即災害対策に連なる問題でございまして、国でもすでに第三次全国総合開発計画あるいは首都圏整備計画等をお立てになっておるわけでございまして、私どもといたしましても、それら事業の推進を図っていただきたいということでございます。  二点目が震災対策特別法の制定でございます。震災対策のためのハードな事業といたしましては、防災再開発事業あるいは市街地再開発事業、住宅地改良事業等いろいろございます。また、河川の整備、避難道路の整備なども多くの事業があるわけでございまして、このため、かねて都としても国にお願いしておるところでございますけれども、震災対策を総合的、体系的に考える必要があるわけでございまして、これらの対策といたしまして、震災対策のための特別法の制定をお願いしたいと思います。  第三に、財政の援助の問題でございます。先ほどもお話ししましたように、自治体東京都といたしましても限度がございます。この防災都市づくりのためには都市の不燃化、江東防災六拠点の事業、また避難場所の確保等に先ほども申し上げましたように膨大な経費を必要といたします。これまでも国の協力を得まして資金援助を受けてきたところでございますけれども、残念ながら現状では必ずしも十分と言えない状況にございます。今後、国庫補助並びに起債枠のより一層の拡大をお願いしたいと思うわけでございます。  以上で終わります。
  233. 柿澤弘治

    ○柿沢弘治君 ありがとうございました。  首都機能の崩壊は日本の社会と経済の崩壊だというふうに考えますと、地方自治体に任せておいてはいけないと思いますが、建設大臣、国土庁長官、どちらでも結構ですが、国としてその点どうお考えか、お聞かせいただきたいと思います。
  234. 長谷川四郎

    国務大臣長谷川四郎君) ただいま東京都からのお話がございましたように、都市の不燃化の現状を見ると、昭和五十年の現在で十大都市では非木造率が棟数で一六・九%、したがって床面積で四四・一%、その他の都市では棟数で一〇・六%というような現状でございまして、これらの問題を解決するのには何としても不燃化の問題が優先するわけでございまして、なるべく今後の建築問題等に対しましては不燃化をもって行うようにしていきたい。  さらに避難地と避難路であります。せっかく避難地に指定されていても、そこまで行くまでの間に火が回ってくるというような状態もございますので、避難路をなるべく堅牢な避難路とし、そして防壁をつくってもらいたい、こういうような計画でただいま着々とその方向に進めておるところでございます。
  235. 柿澤弘治

    ○柿沢弘治君 現在、補正予算でも公共投資の追加が行われておりますし、五十三年度でもさらに増加をせざるを得ない、景気対策としてそうなると思います。しかし国の公共投資に哲学がないという感じがいたします。従来、産業活動の拡大に伴って後追い的に産業基盤の充実をやってまいりました。それから生活基盤の充実についてもやってまいりました。しかし、いま産業活動が停滞しているときこそ、そうした後追いではなく、本当に住民の命を守る安全保障のための投資が必要なのではないか、その意味で公共投資の哲学の転換、発想の転換が必要な時期に来ていると思いますが、総理大臣のお考えを伺いたいと思います。
  236. 福田赳夫

    国務大臣(福田赳夫君) 哲学というと、ちょっとどうかと思いますが、私どもは政策の基調を産業優先から生活優先へ、こういうことを申し上げておるわけであります。
  237. 柿澤弘治

    ○柿沢弘治君 ただの生活優先ではなく、安全優先へというふうに考えていただいたらどうかと思いますが。
  238. 福田赳夫

    国務大臣(福田赳夫君) 安全ばかりというわけにもまいりませんね。安全を含め、安全に重点を置き生活優先、このように御理解願います。
  239. 柿澤弘治

    ○柿沢弘治君 死者の数では第二次世界大戦にも匹敵するかもしれないという危機を前にして、政治が無力でいいはずはありません。そのために私は大震災対策特別措置法の早期の制定を必要と考えますが、消防庁長官国土庁長官、いかがお考えでしょうか。
  240. 田澤吉郎

    国務大臣(田澤吉郎君) 先ほど消防庁長官からもお話がございましたように、地震発生の時期によって地震の規模が決定するわけでございます。たとえば地震が朝起きたのか、朝、昼、夜によって違います。また夏であるか冬であるかということによっても違うわけでございます。また風があるかないか、あるいは強風であるか弱風であるかということによって、その地震の規模が違うわけでございまして、私たちはそういういわゆるあらゆる条件を、最悪の条件を考えながら防災対策にいま一生懸命努力をしているわけでございまして、そういう点から考えますというと、ただいま建設大臣からお話がありましたように、都市防災としては、やはり耐震建築というものが一番重要でございます。それからやはり都市の再開発というものを思い切って進めてまいらなければならないのでございますから、そういう点から言いますというと、新しい震災対策の道というものをこれから私たちはつくり上げていかなければならない、かように考えます。
  241. 柿澤弘治

    ○柿沢弘治君 特別立法について。
  242. 林忠雄

    政府委員(林忠雄君) ただいま申し上げましたように、震災に対する被害の想定、それを考えますればこれに対して政府は当然全力投球で防止に当たらなければいけない。特別立法につきましては現在国土庁その他とも相談をして研究中でございますけれども、当面地震の予知技術がまだ十分進んではおりませんにいたしましても、これに何らかの法的効果を与える必要があるかどうかということ。それからいまいろいろ御指摘のありました防災都市を完璧なものにするための必要な特別措置、財政措置、それから一般には災害が起こりましたときの応急対策その他に災害対策基本法ございますけれども、これで十分運用し切れるかどうか、震災については何らか特別のことを考えなければいけないか、地方団体、都道府県知事や市町村長がどういうふうに対処するか、それに対しても補完的な立法が必要か、こういうことについて現在研究を進めておる段階でございます。
  243. 柿澤弘治

    ○柿沢弘治君 財政的な特別措置の必要性を大蔵大臣はどうお考えになりますか。
  244. 坊秀男

    国務大臣坊秀男君) 対震政策と申しますか災害対策と申しますか、そういったようなことに対する施設をつくっていくということは大変大事なことだと思います。そこで、この対震政策というものを分析してみますと、公園だとか、あるいは街路とか、あるいは市街地の再開発だとか、あるいはその他避難道路だとか、そういったようなものになろうと思います。で、そういったようなものに対する施設を整備していくためには、今日までは一般会計におきまして、また特別会計におきまして、そういったようなことの実現を図るべく、鋭意努力をしてまいっておりますが、このあたりは柿沢委員よく御存じのことだと思いますが、今日さしあたってしからば何かこう特別の会計をつくるとかというようなことについては、いまのところは考えておりませんが、十分検討を要することだと思います。
  245. 柿澤弘治

    ○柿沢弘治君 私も予算編成に少し携わってまいりましたけれども、いまの予算の増分主義では数百億の根っこから本当に防災に役立つ財政的な援助というのは不可能だと思います。予算の増分主義を断ち切った、たとえば大震災対策特別会計の創設、その中での別枠の一兆円の防災公債の発行、その場合には、たとえば東京都の都民については都民税、特別区民税に一〇%程度の付加税をかけて、自分たちの命を守るために負担もいたしますというくらいの思い切った措置が必要だと思いますが、特別会計、特別公債、特別税について大蔵大臣の御意見を伺います。
  246. 坊秀男

    国務大臣坊秀男君) 特別会計につきましてはいま申し上げたとおりでございますが、しからばその地震対策公債というものをどうかと、こういうお話でございますが、御案内のとおりただいま公債が非常に依存度が高くなっておりまして、そういう事態におきまして、無論大事なことだとは思いますけれども、いまその上に特別のそういった目的の公債を出すということは、これはよほど慎重を要することである、そういうようなことを考えてみますと、さしあたって取り急いで公債を出すとか、あるいはまた税制のこともおっしゃいましたけれども、特別に対震災の目的税をつくれという御趣旨かとも思いますけれども、これはいまの事態におきまして、さしあたって急に五十三年度からどうしようという、これはむろん五十三年度から税制について何をどうしようというところまでいっておりませんが、その中に取り入れるということは考えておりません。
  247. 柿澤弘治

    ○柿沢弘治君 総理は一人の命は地球より重いとおっしゃいましたけれども、いま四、五十万の人命が地震によって人質になっているのです。日本の民族の将来のために御決断をお願いしたいと思いますが、いかがでございますか。
  248. 福田赳夫

    国務大臣(福田赳夫君) 震災問題は本当にこれは真剣に考えなけりゃならぬ問題であります。私も総理大臣になるずっと前から、この問題の重要性ということについて指摘をしておるわけです。またPR、そういうこともやっておるんです。結局これは一筋なわじゃいかない。これはもう本当に総合的な対策を必要とするわけでありまして、一番基本的には、首都圏だとか近畿圏だとか中部圏だとか、あの過密大都市、この問題をどういうふうにするか、こういうことじゃないかと思いますが、今度の三全総、新しい全国総合開発計画におきましても、とにかく都市への人口の集中化を何とか食いとめられぬかということをやっておるわけですが、そういう構えを踏まえましていろいろ工夫をしてみたい、こういうふうに考えています。
  249. 柿澤弘治

    ○柿沢弘治君 どうも大都市圏では自由民主党の議員が弱いものですから、大蔵省に対する圧力がなかなかかからないというのが実情でございます。しかし四、五十万の命を守る事業に本格的に取り組めるかどうかというのが今日の日本の政治と行政の活力と指導力を試されているというふうに考えていいのではないかと思います。何らかの思い切った対策をとらないまま大地震による日本の崩壊を迎えたとき、人々は必ず無力な政治によって日本は滅びの道へ進んだのだと言って私たちが批判をされることになることは明白でございます。総理大臣を初めすべての閣僚の皆さんに、私たち自身のためだけではなくて、子供たちや孫たちの生き延びられるような町をつくる。日本人の半分は大都市圏に住んでいるわけでございますから、その点についての十分の責任をお感じいただいて、予算の増分主義などにとらわれない総理大臣の蛮勇を私たちは期待をしております。そのとき初めて福田内閣は決断と実行の内閣だという評価を後世に残すことになる。ぜひ私どもも期待をしているわけでございます。お願いをいたして、終わりといたします。ありがとうございました。
  250. 鍋島直紹

    委員長鍋島直紹君) 答弁要りますか。
  251. 柿澤弘治

    ○柿沢弘治君 要りません。
  252. 鍋島直紹

    委員長鍋島直紹君) 有沢参考人には御多忙中のところ本委員会にご出席をいただき、まことにありがとうございました。御退席を願って結構でございます。  以上をもちまして柿沢君の質疑は終了いたしました。(拍手)  これにて質疑通告者の発言はすべて終了いたしました。昭和五十二年度補正予算三案に対する質疑は終局したものと認めます。     —————————————
  253. 鍋島直紹

    委員長鍋島直紹君) それでは、これより補正予算三案の討論に入ります。  討論の通告がございますので、順次これを許します。なお、御発言の際は賛否を明らかにしてお述べを願います。山崎昇君。
  254. 山崎昇

    山崎昇君 私は、日本社会党を代表して、ただいま議題となっております昭和五十二年度一般会計補正予算昭和五十二年度特別会計補正予算及び昭和五十二年度政府関係機関補正予算三案に対し、反対の討論を行うものであります。  政府は、今年度当初予算編成において景気回復を最重点課題に置き、財界からの強い要望のもとに、大型公共投資公定歩合の引き下げなど、大企業向けの景気対策を行いましたが、支出構造の転換と産業構造政策を明らかにしないままの公共投資の拡大は不況の克服につながらず、数次にわたる金利引き下げ政策も大企業の金利負担を軽減したにとどまり、設備投資の増大をももたらさず、政府の政策は完全に失敗したと言わねばなりません。この結果、今日わが国の経済不況はますます深刻化し、国民生活は企業の倒産、失業とインフレ、物価高の中で重大な危機にさらされております。このような状態は、石油ショックのみによってもたらされたものでは決してなく、戦後の大企業中心、重化学工業偏重の経済成長が生み出した矛盾の累積によるものであり、持続的なインフレ、物価高、富と所得の格差拡大、独占、寡占体制の強大化、生産と需要のギャップ、経済の二重構造など、構造的原因によるものであります。  とりわけ、最近数年間の自民党政府の経済政策が依然として大企業の利益を中心とした金利引き下げや大型公共投資を増大する反面、勤労国民に対しては一昨年来の賃上げ抑制、消費者米価や公共料金の大幅引き上げ、所得減税の回避などを続けた結果、勤労者の実質所得の切り下げ、個人消費の伸び悩みが続き、需給の不均衡に拍車をかけ、不況を激化させたことは明らかであります。また、その結果として輸出の増大、輸入の停滞により、国際収支に大幅な黒字を生み、海外から円買いの為替攻撃を受け、異常な円高のため、わが国経済を一層の窮地に陥れるに至っているのであります。このような観点に立って今回の補正予算を検討しますと、景気不況対策を見ても、その内容はきわめて不十分と言わねばなりません。  二兆円の公共事業と言いながら、一般会計の公共事業費支出三千九百億円による事業規模は一兆円にすぎず、残り一兆円の事業は住宅金融公庫の融資を主体とした住宅建設に期待をしているのでありますが、年度内完全消化の保証はありません。  また、中小企業対策費はわずか百億円、構造不況業種対策費はわずか五億円の支出にすぎないのであります。中小企業の信用保証枠の拡大もなく、既往借入金金利の引き下げ措置も、赤字企業にのみ適用する片手落ちな対策では、将来への展望は全くないのであります。  当面の雇用改善の具体的内容は明らかにされず、貿易の黒字減らしの効果も示されない上に、民間設備投資は冷え込んで上昇気配はなく、景気の安定的推移は全く明確にされていないのであります。  わが党は、昭和五十二年度当初予算編成に当たっても、当面の緊急課題として、不況とインフレから国民生活を防衛するため、雇用の安定、国民生活優先の政策を主張し、一兆円の所得税減税、社会保障の充実、失業保障対策の強化、生活環境の整備、地方財政危機の打開等を重点課題とする予算を要求しましたが、この方針の正しさはますます明白となっております。本補正予算の編成に当たっても、特に最終消費需要の拡大、生活環境整備の推進、雇用の創出、拡大、構造不況業種への対策などを重点にするとともに、歳入面においては財政の健全化とインフレの防止のため、国債依存率は極力抑制し、減債方向を明確にすべきであると主張しましたが、その方針を十分に取り入れているとは言えないのであります。その上、今補正予算は来年度予算と一体となって経済改革のてことしての位置づけをしなければなりませんが、政府案にはそのような展望はありません。  以上の諸点を指摘いたしまして、私の反対討論を終わります。(拍手)
  255. 鍋島直紹

    委員長鍋島直紹君) 次に、宮田輝君。
  256. 宮田輝

    ○宮田輝君 私は、自由民主党・自由国民会議を代表して、ただいま議題となりました昭和五十二年度一般会計補正予算外二案に対し、賛成の意見を表明するものであります。  その理由の第一は、今回の補正予算は、総合経済対策を実施するための財政的措置を講ずるもので、景気対策の一環として現下の不況を克服するという重要な役割りを果たすものと期待できるからであります。  最近、わが国の経済情勢は緩やかな拡大基調にありますものの、設備投資などの民間需要は依然としてふるわず、雇用情勢の先行き不安があるほか、構造不況産業があり、業種間の景況に格差が出ております。また、国際収支面の大幅黒字は、諸外国との貿易摩擦や円高問題を生じております。  政府では、これらの問題に対処するため、これまで公共事業等の施行の促進や金利の引き下げなど、一連の景気対策を講じられておりますが、今回、さらに考えられる可能な限りの政策手段を講じて、わが国経済に一段と活力を与え、その安定的発展を図ろうとするのが、さきに決定を見た総合経済対策であります。  一年後の需要創出効果三兆円と言われる総合経済対策は七項目から成り、予算及び立法措置を伴わない金利の引き下げなど、各般の施策はすでに実施に移されているのがありますが、何と申しましても、今回の総合経済対策の中心は事業規模約二兆円の公共投資の追加であります。公共事業は発注から施工まで時間的ずれはあるものの、景気に対して即効性、浮揚効果があるのは大方の見方であります。  今回、公共事業の追加一兆円、住宅金融公庫の十万戸の貸付枠の追加、地方単独事業を対象とする地方債の追加は、公共事業の前倒し後の下期においても息切れすることなく、順調な受注が行われることになり、これらの措置は、低迷している国内需要の拡大に大きく寄与するのみならず、雇用情勢の改善及び国民生活充実の基盤となる社会資本の整備が図られるものとして、政府の措置は、苦しい財政事情の中で時宜にかなったものと思うのであります。  第二は、公債依存度を三割以下とし、借金財政膨張への歯どめをかけている点であります。  五十二年度末の国債残高は三十一兆円、国債費は二兆三千億円に上り、公債依存度の三割という水準は国際的に最高のものとなっております。公債発行は、なるほど景気調整の有力な手段ではありますが、これが長期化すると、それはあたかも当然の既得的な財源と思いがちになり、ひいては財政の膨張、放漫化を招くおそれなしとしません。  今般、政府は、千三百四十億円の既定経費の節約に努められる一方、公債発行は建設公債二千五百十億円の増発、特例公債千百二十億円の減額を行い、差し引き千三百九十億円の公債増加にとどめて、公債依存度を三割未満に抑えたことは、赤字財政の中での苦しい補正予算の編成に際しても、財政の硬直化の打開とその健全化を図ろうとする姿勢がうかがえるものとして評価できるのであります。  このほか、補正予算では、三年続きの大幅な赤字に悩む地方財政に対し、税収落ち込みの補てん措置や公共事業の追加に伴う負担増に対処するための地方債の引き受けなどの措置が講ぜられておりますほか、人事院勧告六・九二%アップを完全実施するための経費六百九十三億円の計上、また、構造不況や円高により影響を受ける体質の弱い中小企業に対する特別対策費百五億円の補正措置などが講ぜられておりまして、当初予算作成後の事態の変化に対応した財源対策がとられております。  以上、今回の補正予算を中心とした総合経済対策における思い切った一連の景気対策は、やがて実体経済に浸透して、今日の停滞している経済活動に活力を注入し、わが国経済の安定成長路線への定着が図られるとともに、雇用不安の解消に大いに寄与するものと思われ、今日の国民的期待に適した補正予算であることを申し上げまして、補正予算三案に対する賛成討論を終わります。(拍手)
  257. 鍋島直紹

    委員長鍋島直紹君) 次に、佐藤昭夫君。
  258. 佐藤昭夫

    佐藤昭夫君 私は、日本共産党を代表し、提案されている補正予算三案に対し、反対の意見を述べます。  反対理由の第一は、景気対策のための公共事業と言いながら、その内容が依然大企業奉仕の従来型景気対策の継続、強化となっていることであります。一般会計、財投融資含めて一兆円を超える公共事業費は、高速道路、新幹線などの大型プロジェクトが中心であり、国民生活に密着した公共事業ではありません。現に、住宅建設について住宅金融公庫融資を拡大すると言いながら、基本である公営公団住宅の本年度建設を三万三千戸も削減し、持ち家主義を強めるものとなっています。いま必要なことは、公共住宅の当初計画の達成とともに、公団空き家三万戸にあらわれているように、住宅政策を国民本位に改め、国庫補助制度の新設、関連公共施設費負担などで、安くて住みよい勤労者住宅の建設を進めることであります。そしてプレハブ校舎の解消、希望者全員入学を目指す高校増設、保育所や老人施設の拡充、下水道整備などを含めて、公共事業全体を真に国民生活に密着した方向に転換しなければなりません。  第二の理由は、国民生活を守る立場が著しく欠如していることであります。国鉄運賃の法定制の緩和と再引き上げ、健保料金や初診料、入院費負担の引き上げ等は、二けた近い物価の上昇をますます激しくさせるものであり、物価を安定させるという政府の公約にも違反するものであります。また、月々千五百件を超える倒産が続いている中小企業の対策についても、既応金利の引き下げは不況業種の特別高金利のものに限定し、官公需の拡大や、下請企業保護、構造不況業種対策もなきに等しいと言わなければなりません。完全失業者百万人台が恒常化しているもとでの雇用対策についても、労働四団体及び野党五党の一致した法案要綱がつくられているにもかかわらず、政府はこれに応じようとしていません。この際、政府主導の物価値上げは一切中止し、老齢福祉年金の一万八千円への引き上げ、失業給付の改善、中小企業の仕事の拡大、円高による被害の救済、二百海里問題による減船補償など、国民生活を守る施策の即時実施を強く要求するものであります。  第三の理由は、財政の危機に一層拍車をかける点であります。政府は、巨額の防衛関係費やYX開発補助金など大企業向け支出の見直しや、大企業、大資産家優遇の不公平税制を改めることなく、またもや千四百億円の国債を増発し、国債依存率を二九・九四%に引き上げようとしています。このため、財政の累積赤字は五十二年度末で何と三十一兆円になり、すでに一般消費税の実施や一連の福祉政策の切り捨ての企てもあるように、大企業の利益のために国民生活の一層の破壊をもたらす国家財政の極端なまでのゆがみ、破綻となっているのであります。  以上のように、本補正予算案は、当初予算と相まって従来型の景気対策を強めることを通して、ますます大企業を援助しながら、国民生活の破壊、中小企業の経営危機に拍車をかけるものであり、現下の不況を打開するものともなりません。さきにわが党が提示した当面の景気対策及び補正予算に関する日本共産党の提案並びに衆議院で提出した組みかえ動議は、財源も示した実現可能なものであります。本委員会でも明らかになったように、こうした国民生活を守る緊急要求に耳を傾けない政府態度は、同時にファントム問題での卑屈なまでの対米従属の姿勢、金大中事件を初めとする日韓問題での主権まで放棄した癒着ぶりとも一体のものであります。私は、こうした政府態度を強く批判し、本補正予算案に対する反対意見の表明を終わります。(拍手)
  259. 鍋島直紹

    委員長鍋島直紹君) 次に、矢原秀男君。
  260. 矢原秀男

    矢原秀男君 私は、公明党を代表して、ただいま議題となりました昭和五十二年度補正予算三案に対し賛成の討論を行うものであります。  公明党は、現下のきわめて困難な経済情勢の克服は、一刻の猶予も許されない深刻な事態であり、国民生活を守る緊急避難的な意味から、補正予算三案に賛成の立場をとるものであります。  明確にしておきたいのは、これによって福田内閣の経済政策の万般を認め、かつ、今回の総合経済政策を肯定するものでは断じてありません。むしろこの機会に福田内閣の諸政策に対し、反省と政策の転換をより一層強く求めたいのであります。  さて、現在の深刻な経済情勢によって、国民生活、中小企業など、あらゆる面にわたって社会的弱者に対するしわ寄せが増幅されております。中小企業を主に倒産件数は毎月千五百件を上回り、構造不況業種については先行きの光明を見出せないまま経営危機に追い込まれ、高い失業率の持続、また有効求人倍率は月を追って低下し、国民は生活水準を切り詰めることで毎日を何とか切り抜けているのが実情であります。加えて、最近の円高によって輸出の道がとざされ、繊維、雑貨など極端な経営難にあえいでおります。  わが党は、早期から今日の事態に思いをいたし、六月の二十四日に政府に対し、景気回復をし、国民生活を守るため補正予算の速やかな編成を求める見解を発表し、その後、政府へ強く申し入れを行ってまいりました。しかるに政府は、八月の景気対策の発表の段階においてさえ補正予算の編成をあいまいにし、結局無為無策のまま今日に至ったことは、まことに遺憾なことと言わざるを得ません。しかし、日本経済を一刻も早く景気回復の軌道に乗せ、雇用不安を解消し、生活不安を取り除いていくために、本補正予算は不満足な点が多々ありますが、次善の策として政府案を成立させることが国民の期待に沿うものであると判断したのであります。  また、衆議院段階における公明党、民社党、新自由クラブの共同要求による、住宅金融公庫の貸し出しについて低所得者に対する無抽せんの優遇措置等についての政府・自民党との確約は、マイホームの夢が持てなかった人々への一歩前進の措置として評価するものであります。  以下、わが党の本補正予算に賛成する理由を簡明に申し上げます。  第一は、さきに申し述べたごとく、現下の深刻な経済情勢を克服するためには、補正予算の編成は欠くことのできない措置であり、早期の成立が緊要の課題であります。  第二には、今回補正における住宅金融公庫の貸出枠十万戸追加において、特に今年度における低所得者に優遇措置を講じ、来年度からの金融について貸付総枠並びに貸付限度額の増額等を含め、金利負担の実質的引き下げを積極的に推進することを政府が確約したことであります。  第三に、今回の補正予算は、これまでのわが党を初めとする野党側の主張を幾つか取り入れていることであります。その一は、政府関係機関の貸し倒れ準備金を産投会計を経て一般会計への繰り入れを行っていること、その二は、所得税の減税実施による地方税の減額分を財政投融資で補てんし、将来、臨時地方特例交付金とする措置をとったこと等であります。わが党は、政府関係機関の貸し倒れ準備金の取り崩しについては、第八十国会でも提唱し、昭和五十年度予算の参議院における修正案では共同提案者として同様の主張をしましたので、今日の措置で予算計上の仕方に工夫の余地の前もっての話し合いの必要性があるものの、政府の決断に一定の評価をするにやぶさかではありません。  以上が本補正予算三案に賛成する理由であります。  最後に、われわれがこの際明確にしておきたいことは、この補正予算三案に賛成することが、国鉄運賃改正案や、主任手当を具体化するいわゆる教員給与改善に関する法律案等、政府提出の法律案のすべてを認めることではありません。これら法律案に対する態度補正予算案と立て分けることをここに明確にいたすものであります。  さらに、経済情勢の推移の中で必要な場合には速やかに第二次補正予算を編成し、景気対策を実施すべきこと、中長期の経済見通し、財政計画を改定し、国民の先行き不安感を払拭すべきことを強く要求し、賛成討論を終わります。(拍手)
  261. 鍋島直紹

    委員長鍋島直紹君) 次に、栗林卓司君。
  262. 栗林卓司

    ○栗林卓司君 私は、民社党を代表して、ただいま議題となりました昭和五十二年度補正予算三案に対し、賛成の討論を行います。  今回の補正予算は、過剰在庫、過剰設備の重圧下に置かれた不況の実態に照らして不十分であります。しかし、それにもかかわらず賛成する理由は、第一に、不十分な内容とはいえ、一日も早く成立させることが不況対策上重要であると判断したこと、第二に、不況下の中小企業対策、住宅対策、あるいは地方財政対策の面で、わが党の主張が趣旨において織り込まれたものであること、以上二点であります。  なおこの際、従来を振り返って若干申し上げたいと思います。  昭和四十九年に行われた参議院選挙の直後、過度の経済引き締めの一部解除が期待されておりました。しかし、選挙における自民党の敗北及びいわゆる田中金脈問題は、与党内を混乱させ、不況対策がおくれ、その年の暮れに有効求人倍率は一を割るに至りました。翌昭和五十年、政府は第三次不況対策として公共事業の前倒しを行い、第一次、第二次の対策とあわせて、景気が回復する見通しを国民に与えました。しかし、その見通しは外れ、秋に第四次不況対策が追加され、政府はこれによって翌昭和五十一年三月までに稼働率を正常状態に回復し、景気がよくなることをほぼ確約いたしました。しかし、この見通しも外れ、輸出の増加という手助けにもかかわらず、不況感は逆に深まりました。しかるに政府は、昭和五十一年度予算を景気に対し中立的なものとし、その後のロッキード事件、自民党の派閥抗争による政治の空白もあって、景気の停滞という事態を招きました。そして、景気調整期間を一層長引かせる結果を生んだのであります。ことしに入って、年度前半に公共事業七三%を前倒しに執行し、その結果、夏までに景気が上向く見通しを改めて国民に与えました。しかし、これも外れ、いま政府は二兆円の事業規模の追加により、改めて不況からの脱出を確約しております。この一連の経過を通じて、私は不況の実態に対する政府の認識のずれを指摘しなければなりません。  一体、需給ギャップはいつ解消するのか。産業構造審議会の報告によると、おおむね昭和五十四年から五十五年と試算しております。これは息の長い中期的景気対策の必要性を示唆するものであります。にもかかわらず、依然として単年度財政の枠の中で前倒し云々の政策を繰り返し、あるいは与党みずから政治の空白を生み出してきたことに問題があったと言わなければなりません。  問題は昭和五十三年度予算であります。息の長い景気回復策の一環として位置づけなければなりません。一般的であると選択的であるとを問わず、増税は景気回復に逆行するものであります。そして、少なくも二年間は財政に一層の負担を求めながら需給ギャップの解消と経常収支の黒字縮小を急がなければなりません。  以上の点を重ねて強調して、昭和五十二年度補正予算三案に対する賛成の討論を終わります。(拍手)
  263. 鍋島直紹

    委員長鍋島直紹君) 次に、柿沢弘治君。
  264. 柿澤弘治

    ○柿沢弘治君 私は、新自由クラブを代表して、ただいま上程されております昭和五十二年度補正予算三案に賛成するものであります。  賛成の理由は、当面する経済の重大な事態にかんがみ、一日も早く政府の総合対策の実施が必要であると考えるからでございます。しかし、現在の景気の深刻さを考えると、今回の政府の措置は、今回の補正予算も含めて必ずしも十分なものとは考えられません。私たちは、景気の落ち込みと今回の対策との間にやはりすでにずれが生じていると考えるものであります。特に国際通貨における変化、円高問題を契機として国内の経済に深刻な打撃が与えられております。そうした補正予算の策定時には予期しなかった国際、国内経済への新たな問題について、これから政府は速やかに対策を立て、これに関連した諸施策を実行していくことを強く要望するものであります。もし、これらの措置にもかかわらず、特に雇用、企業、倒産等について事態の改善が行われない場合には、政府はさらに追加の補正予算の提出も考えるべきであると思います。  また、すでに編成作業が始まっている昭和五十三年度予算についても、政府がまたまた景気に対して後手に回ることのないよう、早期に野党を初め国民各層との対話を開始するよう政府・与党に提案をいたすところでございます。  また、今回の補正予算は国鉄運賃の値上げと健康保険法の改正を含んでおります。われわれは、これらの点については今後両法案の審議の過程で十分討議をし、一定の修正を求める所存であることをつけ加えて討論を終わります。(拍手)
  265. 鍋島直紹

    委員長鍋島直紹君) 以上をもちまして討論の通告者の発言は全部終了いたしました。討論は終局したものと認めます。  これより採決に入ります。  昭和五十二年度一般会計補正予算昭和五十二年度特別会計補正予算昭和五十二年度政府関係機関補正予算、以上三案を問題に供します。三案に賛成の方の起立を願います。   〔賛成者起立〕
  266. 鍋島直紹

    委員長鍋島直紹君) 多数と認めます。よって、三案は多数をもって原案どおり可決すべきものと決定いたしました。(拍手)  なお、審査報告書の作成につきましては、これを委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  267. 鍋島直紹

    委員長鍋島直紹君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。  本日はこれにて散会いたします。    午後三時五十四分散会